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2019/12/30

お題「年末なので12月決定会合主な意見を大したこともないのだが鑑賞で勘弁/ご挨拶」

今日って平日ダイヤと祝日ダイヤが入り乱れる日でしたっけ???と認識をしながら別に調べようとしないで向かうこのものぐさ太郎。


〇12月決定会合主な意見

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2019/opi191219.pdf

・一応消費に関わる認識を見てやろうじゃないの

『T.金融経済情勢に関する意見 』の『(経済情勢)』とか普段はまあどうでも良いのですが、消費増税後の影響ガーとあれだけ言っていた日銀ちゃんなのでどういう認識を示しているのかは要確認。

『・市況は好転しているが、内外経済のリスクが高止まりするもと で、景況感は後退し、物価の動きも弱い。』

って掴みから始まっているのですが、この意見の人は景況感後退っての短観製造業DIを捕まえて話をしていると思うのですが、今のネタって製造業と非製造業のデカップリングの話なので、そっちを崩しに行く話をしないと議論にならなくてただ「言ってみただけ」になるとおもうの。

『先行きは、所得から 支出への好循環の前提である海外経済の改善、総雇用者所得の増大に加え、消費税率引き上げで消費性向が下がらないか、見極めが重要である。』

金曜にネタにした黒田総裁の覇気成分皆無講演の理屈を見ると、前提にもちろん消費はあるのですが、もう一つの大きなポイントが設備投資で、海外とのデカップリングがあるから海外の改善が多少遅れるくらいでは無問題、という話をしているので、こういう意見ではそもそもの政策ロジックを崩しに行けないので、多少厳しく申し上げますと、こういう意見は「政策議論に響かないアリバイつくりの発言」という感じですわな。

『・消費は、10 月以降大きく落ち込んでいる。これは前回の消費税率引き上げ後に生じたような消費の停滞の始まりの可能性もある。本年 12 月短観の小売業の業況判断は、現状は悪いが先行きは改善する姿となっている。前回の消費税率引き上げ後も同様の姿がみられたが、実際に消費が改善したのは3年程度たってからであった。』

まあ変に意見言うよりはこの方がイイシテキダナーだと思う。

『・個人消費を取り巻く環境をみると、10 月以降も雇用・所得環境は良好であり、消費者マインドは幾分改善している。現時点では、個人消費の底堅さに変調をきたしているとみる必要はない。』

さあどうなんでしょう。こればかりは結果出てこないと何ともですが、まあ意見には隔たりがありますな。あって当然だけど。


・唐突に出ているこの意見は何なんでしょう

でもってこの経済情勢コーナーのラストなんですけどね。

『・わが国の輸出と輸入に占めるドル建て比率の差や対外直接投資などに起因する実需の円売り・ドル買いが、投機的な円買いを上回る場合には、ドル円相場の安定が続く可能性がある。』

・・・・・・・・いやまあ仰ることは分かるのですが、これは何を意図して入れているのかが良く分からんという代物。うーん謎。


・物価の部分を見ると2%早期達成のためにどうしたらよいか的な認識に基づく話が存在しないのが泣ける

次が『T.金融経済情勢に関する意見 』の『(物価)』になりますが、物価目標の話をしている筈なのにドンドンと早期達成というのが無かったことになって行く攻撃になっています。

『・ 消費者物価の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けるこ とや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、 2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』

はいはい大本営大本営。

『・ 景気の拡大基調が続き、プラスの需給ギャップが維持されるもとで、物価が徐々に上昇していく基本的なメカニズムは維持さ れている。』

はいはい大(以下同文)。

『・ 物価は、堅調な設備投資に伴う生産性向上効果などもあり、上 昇率が抑制された状況が続いている。生産性向上の余地が縮小 し、物価が徐々に上昇率を高めるまで、緩やかなプラスの需給 ギャップを維持することが肝要である。』

出たな生産性向上が起きているから物価が上がらない良い物価上がらない論。

『・プラスの需給ギャップが物価上昇を支えているが、プラス幅は 縮小したままである。 「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、一段と高まってはいないが、注意が必要な状況は続いている。』

大本営ですなあ。でもって最後が割とイミフなんだが、

『・「物価安定の目標」に向けたモメンタムを構成するマクロ的な需給ギャップと中長期的な予想物価上昇率に関する最新の情報を、外部に十分に提供していくことが重要である。 』

って話なんだが、需給ギャップに関しては推計値を既に出しているので、何を今さらジローという感じではありますし、中長期的な予想物価上昇率ってはっきり言って鉛筆舐め舐めの世界であって、むしろその結果出てくる企業や家計の行動の方から見ていくしか無いんじゃネーノ(個人の感想です)とは思うのでありまして、うーんこのという感じなんですが、基本的にここで書かれた物件は議事要旨に載せないわけにも行かないという感じの暗黙の流れが出来ておりますので、この人は急に何をもってこの話をしたのかというのを記事要旨の時に確認したい。

でまあ今回の「主な意見」の物価の所を見てて思うのですけれども、その前が展望レポート回なのでそっちの方が充実しているのはしゃーないにしましても、

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2018/opi181031.htm/
金融政策決定会合における主な意見(2018年10月30、31日開催分)

を見ますと物価の所って、

『・消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
・物価の前年比は、4〜6月を底に徐々に持ち直しており、短観の販売価格DIがプラス圏で定着するなど、物価上昇の基本的なメカニズムはしっかり作動している。
・消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、緩やかにプラス幅の拡大を続けていくとみられる。しかし、その動きは弱く、かつ不安定であるため、2%に達するには暫く時間がかかると見込まれる。
・需給ギャップが拡大するもとで現実の物価が上昇し、「適合的期待」を通じて予想物価上昇率も上がることがメインシナリオであるが、その前提となる海外経済で下振れリスクが高まっている。
・プラスの需給ギャップのもとで物価上昇が遅れているが、これは供給面における生産性向上が物価上昇を抑制するなど、物価変動メカニズムが複雑化しており、先行きの不確実性も高まっていることが影響している。』
(この引用部分上記URL先の10月会合主な意見から、以下はまた12月会合主な意見からに戻ります)

ってなっていまして、達成時期に関する話とかが(だいぶ形骸化してしまっているとは言うものの)出ているのですが、今回の会合主な意見では最初の大本営による「2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる」以外って遅れるとかそういう話すら出てこなくなっております。

これはつまり何を意味するかと言えば、まあ何ぼ何でも2%達成時期に関してのこだわりが残っているのであれば主な意見の中にも早期達成派はもとよりいやー時間がかかりまっせ派だって、それに関する何らかのエクスキューズが反映された意見が出てきてもおかしくない訳ですよ。すなわち、事ここに至って2%の早期達成に関しては議論にすらならないという事ですし、片岡さんあたりの追加緩和主張に関しても物価の早期達成的な看板が無くはないものの、じゃあどうやって物価目標の早期達成という話に繋がるか的なもんが無いという状態ですので、要は置物リフレ理論の方々も「じゃあお前2%早期達成してみろや」と言われると無理という認識なんでしょ、というのが伝わって参ります。


・金融政策に関する部分を鑑賞するが今回は火力がイマイチ足りない

『U.金融政策運営に関する意見』のコーナーは火力のある方の火力十分のご意見を拝見しながらその火力で暖を取るのがこの寒い中ではお楽しみ、というまるで趣旨の間違えた読み方をしておりますが、冬だというのに火力が足りなくて怪しからんですな。

まずは最初の方の大本営大本営を見ます。

『・「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れは一段と高まってはおらず、現状の金融市場調節方針と資産買入れ方針を維持することが適当である。

『・息長く経済の好循環を支えて、「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策運営方針を粘り強く継続すべきである。』

はいはい大本営。

『・ 金融・財政のポリシーミックスのもとで、現行の緩和政策を維持することで、息の長い経済成長を支えることが重要である。 その際、緩和政策の副作用について多面的に点検しつつ、充分留意して政策運営することが肝要である。』

「金融・財政のポリシーミックス」とかいうようなキャッチーな話(よくよく考えてみれば先般の総裁講演にもありますように、共同文書で出しているもの自体がポリシーミックスなので殊更ここでそれを強調するというのは本来の政策建付けから考えるとおかしいのだが)をぶっこみつつ政策の副作用への配慮とかこれはどう見ても某ちゃんとした方の副総裁だと思いますが、これが某ちゃんとした方の副総裁という前提の下での感想ということで個人の感想ですになりますが、今はやりのポリシーミックスネタをぶち込みつつ副作用への配慮をぶち込む、という辺り、全方面に配慮しています(ただし配慮するのと実行はまるで別問題なのですがこのお方の場合)アピールをしている辺りにあざといサムシングを感じますなあ(個人の偏見です)。


次が下振れリスクだから追加緩和を意識云々の話になります。

『・ 海外経済の動向を中心に、経済・物価の下振れリスクに注意が 必要な情勢が続いており、引き続き、緩和方向を意識した政策 運営を行うことが適当である。』

『・ 世界経済を取り巻く環境には未だ高い不確実性が残っており、 政策判断についても予断を持てない状況から脱しているわけではない。』

問題は緩和したからと言って何に効くのかという話であって、本来的に言って追加緩和したら経済物価にプラスの影響が明らかにある、と思ってるんだったら追加緩和してみろやゴルァというはなしでありまして、マイナス深堀にしても長期超長期金利の引き下げにしても、やるだけ無駄だし金利モノの期待リターン低下で運用利回りに対する直接的な問題に加え、利回り確保の動きから訳分らんリスクを取るようになって将来の地雷をバンバン撒く、というデメリットの方が既に効果よりも見えやすくなっておりますのですが。

『・ 下方リスクの厚い現在、追加緩和の要否を引き続き検討すべきであり、リスクシナリオの一環として次なる景気後退への備え を考えておくべきである。その際は、金融政策もさることなが ら、政府の財政政策および成長政策との連携強化が一層重要になる。』

片岡さんだと追加緩和提案をしろって意見なので違うかなとか思ったのですが、この後に出てくる意見を見るとちゃっちゃと追加緩和をしろという話をしているのはこれだけなので、片岡さんの意見がこれかなあという感じで、片岡さんの追加緩和提案に関しても漲るパワーみたいなのが感じられませんのでこれはいただけません、顔を洗って出直してきましょう。


これはクソワロタ。

『・ 前回の消費税率引き上げ時には、約半年後に「量的・質的金融 緩和」の拡大を行ったが、今回も消費の基調次第で、一層の金融緩和が必要になる。』

えーっとすいません、前回そうやってQQE2を実施したものの全然効果なく、買入の限界だのなんだのとか言われてきて1年3か月後に「補完措置」ってのやったら更に政策の限界をやいのやいの言われて、ブチ切れマイナス金利突撃したらあばばばばーになって総括検証からのYCCになったんですけれども、それを再現しろと仰せでしょうか。

あとまあついでにご指摘して進ぜますと、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
「量的・質的金融緩和」の拡大

『ただし、物価面では、このところ、消費税率引き 上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因とし て働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、 原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げ る方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』(この部分だけ上記URL先2014年10月決定会合声明文より)

となっていて、需要の「一時的な弱さ」と「原油価格」を持ち出して追加緩和したのですが、背景は「物価下押し圧力の残存するリスク」だった訳でして、はてさて状況はその後変化しているというのに、ここで前回消費増税の後追加緩和したから今回もとか言うのは、状況が全然違うのに前回中期の指値オペがこの水準で行われたから今回もなんとかかんとかとか言い出しているスットコドッコイ何とかスト程度には話が短絡的なので赤点再履修を命じたい所ではありますな。


さて次の意見。

『・ 政策枠組みは不断に検討すべきだが、IMFが提言するような物価安定目標のレンジ化は、日本銀行の物価安定へのコミット メントを弱体化させる惧れがある。 』

理屈の上では仰せの通りですが、そもそもコミットメントゆうて7年やって全然達成していないコミットメントが如何なものかという話があるのですから、IMFが報告でどういうのを出してくるのかは知らんですが、目標達成したことにするという屁理屈構成について考えるべきではないか(ってかさすがにここまで苦しいとなんか神風(米国の再利上げとか欧州のマイナス金利見直しの動きとか)が吹いたら屁理屈祭りを繰り出そうと考えているんじゃないかとは思いますけどね、個人の妄想ですけど)という所ではあります。まあ単体ではこの意見はそうですねとは思うが、だから何?でもありますね。


これは酷いというのが次に。

『・ 現状の金融政策は、ある程度柔軟なイールドカーブ・コントロールにより、景気悪化に対して金利の低下を許容することで、一定の景気刺激効果がある。しかし、足もと、金利は上昇気味にあり、これでは不十分な惧れがある。 』

不十分とかお前は何を言ってるんだという所でして、むしろ景気悪化(というよりは金融緩和祭り)を過度に織り込んだ価格形成の修正が起きているだけの話で、本格的な景気ヒャッハーを織り込んでるんだったら超長期がこんなにフラットせんわ(年初来で比較して)という話であって、そういう総合的なアセスメントをしないで直近の動きだけで言い出すとかどこの能無しだよとしか申し上げようがありませんし、不見識にも程があるのでちょっとドラム缶で行くマリアナ海溝片道ツアーにでも行って研修してきた方が宜しいのではないでしょうか。


ガイダンス文言云々のご意見。

『・ モメンタム、物価目標、政策判断の関係が不明瞭で、モメンタ ムの具体的な判断基準も不明確である。フォワードガイダンス は物価目標自体と具体的に紐づけた強力なものに修正することが必要ではないか。』

まあ言う事は分かるのだがそれやって物価上がるの??????????


副作用論が2名なのかな?後者は鈴木さんだと思いますがもう一人いるのかね。

『・金融システムは全体として安定性を維持しているが、構造問題 や低金利環境の影響が累積し続けていることを踏まえ、金融仲 介機能への副作用に留意することが重要である。』

『・ 家計・企業の合計では金融資産超過となっており、預金に口座 維持手数料が賦課されることになれば、資産利回り低下の影響 が借入に伴う負債コスト低下の効果を上回る可能性がある。ま た、株価などの動向次第では、相対的に収益率の高い株式を多く持つ主体がより優位となり、所得格差が拡大する可能性もある。この点、ドイツでは、法人に加え個人の大口預金にも実質 的にマイナス金利を適用する動きや、口座維持手数料を引き上 げる動きが進んでおり、国民経済への影響を含め、ドイツの状 況を注視していく必要がある。 』

欧州の見直しの動きに乗れるもんなら乗りたいんですねわかります。


最後のジンバブエスペシャルが火力不足、やりなおし。

『・ 政策の枠組みの中で、特定の政策だけをことさらに取り出して 論じたり、特定の業界や、業界の一面をことさらに取り上げる ことが重要な場合もあるとは思う。しかし、きわめて緩和的な 金融環境が長く続くもとで、政策の評価にあたっては、経済や 金融システム全体に目配りしつつ、その効果を点検していくこ とが肝要だと考える。』

他にジンバブエ節っぽいのがあまりない(さっきの市場金利云々の所はジンバブエちっくなところがある)のですが、この前の金懇でデトックス終了しちゃったんですかねえ寂しいですなあ(棒読み)


〇てな訳で年末のご挨拶

本年もアタクシの駄文にお付き合いいただきましたようで誠に恐縮至極にございます(平伏)。新年は普通に6日から更新しますので(その前は毎年やると大口叩いた結果やらないので大口叩くのは自主規制ということで)すが、来年はちょっともう少し円債ちゃんにマシな時代になって欲しいので、ございますが、まあ海外から神風が吹かないと無理でしょうな・・・・・・・・・・・・・・・・

ご健康にご注意いただきまして良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします(^^)。








2019/12/27

お題「オペ紙は現状維持/黒田総裁年末恒例の経団連審議委員会での講演でありますが・・・・・・」

歳末のおまいう案件キタコレ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191226/k10012229511000.html
安倍首相「国難とも言える状況」少子化対策進めるよう指示
2019年12月26日 19時08分

そもそも自分が7年間首相やってる間に事態がドンドン悪化しているのにこの他人事感が凄いとしか申し上げようがない。国難突破解散したのどこのどなたでしたっけ??

ついでに記事中に「希望出生率」とかいう指標があるんだがまた現実を誤魔化すインチキ指標を作ったなさては。


〇オペ紙は無難に現状維持ですな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191226c.pdf(今回)
当面の長期国債等の買入れの運営について

前回はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191129e.pdf(前回)

『日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしており、当面、以下のとおり運営することとしました(2020年1月6日より適用)。 ── 次回公表は2020年1月31日17時を予定。』

へいへい月末の5時ですかそうですか。30分くらい前倒しにならんですかねえ。

0−1年:100-1000、月2回(変更なし)
1−3年:3000-5500、月4回(変更なし)
3−5年:2000-4500、月4回(変更なし)
5−10年:2000-5000、月4回(変更なし)
10−25年:500-1500、月3回(変更なし)
25−40年:0-500、月3回(変更なし)
物価連動国債:300、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

・・・・・・・ということで年末に変なネタをぶっこむのも何ですし、変なネタぶっこまれてしまいますとそれはそれで今日が忙しいということでまあ変更なしですな変更なし。

なお、年初一発目の輪番は最早恒例ではございますが大発会の日に行われまして、大発会に休暇を取らせないという強い意志を感じます(大嘘)が、それはそれとして今年の年初一発目の輪番は中期超長期が予定されております。年初一発目の超長期輪番で云々というのは懐かしいアレ事案ですな(一々蒸し返すアタクシ)。




〇黒田総裁定例の年末経団連講演ですが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191226a1.pdf
好循環の持続に向けて
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──
日本銀行総裁 黒田 東彦


・本文に入る前に題名の推移を確認してみましょう

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_all/index.htm/
講演・挨拶等
年別一覧

「日本経済団体連合会審議員会」で検索しても良いのですが、こちらの講演は年末に行われるのが仕様になっておりますので、年別一覧をポチっとなとしていっても見やすい。

2013年12月25日 黒田総裁 【講演】「デフレ脱却の目指すもの」(日本経済団体連合会審議員会)
2014年12月25日 黒田総裁 【講演】「『2%』への招待状」(日本経済団体連合会審議員会)
2015年12月24日 黒田総裁 【講演】「転換点を迎えて」(日本経済団体連合会審議員会)
2016年12月26日 黒田総裁 【講演】「世界経済の新たなフェーズと日本経済の課題」(日本経済団体連合会審議員会)
2017年12月26日 黒田総裁 【講演】「人手不足を越えて:持続的経済成長への展望」(日本経済団体連合会審議員会)
2018年12月26日 黒田総裁 【講演】「わが国の経済・物価情勢と今後の展望」(日本経済団体連合会審議員会)
2019年12月26日 黒田総裁 【講演】「好循環の持続に向けて」(日本経済団体連合会審議員会)

いやーこうやって推移を眺めると楽しいですなあ(棒読み)という所でございまして、デフレ脱却を目指して2%に招待されたのにパーティーがいつまでも始まらずに2%物価目標がドンドン遠くなって行くので現実逃避というか転進というかなお題が続いておりますなあ、というのがもうねという感じでございますなうははははははははははは。

などと軽く確認したところでさて本文に参ります。


・ついに好循環しか話すことが無くなったか

冒頭のマクラの部分ですけどね。

『令和という新しい時代の幕開けとなった今年も残すところ1週間となりました。本日は、この1年を締め括るにあたり、まず、今年の内外経済を振り返るとともに、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。そのうえで、やや長い目でみた日本経済の姿と今後の課題について申し述べたいと思います。具体的には、日本経済に働いている好循環のメカニズムと、これを持続させていくための課題についてご説明します。』

好循環が続いているのに何で物価は2%行かないんでちゅかねえとかいう以前の問題で、「好循環を持続させていくための課題」とかもはや2%達成のための課題ですらないお題になっているのがああ無情ってところでございますが、逆に言えば5年前に「2%への招待状」とか言ってた招待状の履行が不渡りになっているんですが、そういうのしらっとすり替えてしまうのって黒田さん恥ずかしくないのかなとか思ってしまいますな。


・海外とのデカップリングが今の所の命綱

『2.今年の内外経済 』というのがありまして、海外の方はパスしまして『(わが国経済の動向) 』という小見出しに参ります。

『続いて、わが国経済についてお話しします(図表2)。この1年のわが国経済を振り返ると、世界経済の減速の影響を受けて、輸出が弱めの動きを続け、製造業の業況感が慎重化しました。一方、国内需要は増加基調が続き、非製造業の業況感も総じて高水準を維持しました。』

はい。

『これまで、わが国では、世界経済や外需の変動が、景気動向全体に比較的直ぐに影響を及ぼすケースが数多くみられました。しかし、今回は、これまでのところ、外需の弱さにもかかわらず、内需が底堅さを維持していることが特徴的です。』

毎度の説明ですが確認しておきましょう。

『内需の底堅さを支えている一つは、設備投資です。12 月短観の設備投資計画をみても、引き続き、しっかりと増加を続ける計画となっています(図表3)。』

やはり12月短観でニッコリだったか。というか同じ話って9月短観でもあった訳でして、そもそもがその辺りを理由にしてそれまでの正調黒田節を撤回して10月会合でモメンタムの点検とかいう茶番をぶち込んで政策をステイにした理由の大きなファクターであるというのは、設備投資がデカップリングする内需の底堅さを支える要因の最初に出される位に重要な話なのですからして、何で支店長会議の挨拶でこの話を踏まえなかったのかって思いっきり思うのよね。そういう話をしていれば10月会合直前になって急速に追加緩和期待の火消しをしないでも済むし、最後の方まで追加緩和待ったなしみたいなトンチキ予想も出なかったと思うの。

って話が逸れてしまいましたがその続き。

『この設備投資の増加が、省力化・効率化投資や建設投資、成長分野に対する研究開発投資といった、短期的な景気動向に影響されにくい息の長い投資に支えられていることが、外需に左右されにくい内需の堅調さをもたらしていると考えています。』

ホンマカイナとは思いますがまあそういう認識、つまり外需が立ち上がってこない前に設備投資がコケると日銀は物凄く説明が苦しくなって、追加緩和をしなければ理屈に無理が発生することになりますので設備投資動向はしばらく重要ですな。なお外需が立ち上がってくれば「足元若干弱含みとなっておりますが堅調な外需が今後設備投資のドライバーとして働くことが期待できる」とか言いながら好循環の継続と言い張ることが可能になると思われます(日銀文学の文脈だと多分そうなる。もちろん追加緩和したいときは別の理屈が登場する)ので、設備投資は外需が立ち上がるまでの間の命綱という感じになりますな。

『さらに、内需については、個人消費も、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかな増加が続いています。当面の注目点は、消費税率引き上げの影響です。10 月の個人消費は、台風などの自然災害の影響もあり、やや大きめに減少していますが、そうした影響を除けば、2014 年の増税時と比べて、税率引き上げ後の反動減は小幅にとどまっているとみています。』

という理屈になっているのですが、個人消費って増税の駆け込みは無かった癖に反動は普通に発生しているという謎現象になってませんでちゅかねえとかいう風情も漂っておりまして、とりあえずその辺は「自然災害の影響」という便利な言い訳があるのでクソ粘りをしておりますし、どうせ来年の1−3はお賃金上昇ガーとか言ってクソ粘りをするんだと思います。たぶん個人消費の方は相当盛大にコケてこないと日銀の心はそう簡単に折れないと思われます、というのはこの説明のパートを見ても分かりますように、設備投資の要因と持続性の説明がやたら丁寧になっていて、個人消費の説明は割とアバウトになっておりまして、これ丁寧な説明をしている方が当然重要だと思っている部分になりますので、まあそんなこんなを考えますと、日銀の地蔵モードの理屈が苦しくなるとすれば、来年前半辺りで海外経済がまだ立ち上がってこない中で設備投資がコケだす、というのが一番苦しくなるパターンだと思います。

ということで先行きの話が次にありますがこれはただの大本営発表。

『先行きも、内需は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、増加基調をたどるとみています。すなわち、これまでの世界経済の減速や消費税率引き上げ、自然災害の影響から、内需の増勢はいったん鈍化するものの、大きな落ち込みは回避されると見込んでいます。また、世界経済も先行き成長率を高めていくと予想されます。そうしたもとで、わが国経済は、緩やかな拡大基調を続けると考えています。』

なお、多少の落ち込みに関しては「〜内需の増勢はいったん鈍化するものの」とヘッジを打っておりますのでセーフ、という建付けになっており、まあ先ほどの設備投資と個人消費が衆目の一致するレベルでこれはアカンという事にならない限りは地蔵モードでクソ粘りが可能な建付けになっておりますので念のため。


・物価については最早ろくすっぽ説明しないというモードに入っているようで

でもってこの小見出しの残りが物価なのですが、

『次に、物価についてです(図表4)。この1年を振り返ると、消費者物価の前年比は、生鮮食品を除くベースでみると、エネルギー価格下落の影響などからプラス幅を幾分縮小しました。もっとも、より基調を示す生鮮食品・エネルギーを除くベースでみると、昨年に比べて幾分高めの伸びで推移しました。先行きについても、景気の拡大基調が続くもとで、企業や家計の物価観が改善し、「物価安定の目標」に向けて徐々に上昇率を高めていくと予想しています。』

・・・・・・・・何ですかこの紋切り型の説明はという感じでございまして、前回(昨年)だって「景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べれば、なお弱めの動き」とかそういうアセスメントしていたのですが、もう見事なまでに清々しく物価の話をしない、という状況になっておりまして、まあ前回のお題が「わが国の経済・物価情勢と今後の展望」だったのに今回は物価のぶの字もないお題になっている時点でお察しではあるのですが、ここに来て一段とまたギアを変速しまして、物価の言い訳すらしないで話を進めていく(もちろん声明文や展望レポートとかではそういう訳には行かないのでこういう講演などで、ということです)というフェースに来やがりましたな、という所ではなかろうかと存じます(個人の感想です)。


・よって金融政策運営の話も紋切り型にも程がある訳でして

この部分の次が小見出し『3.日本銀行の金融政策運営 』になります。

『続いて、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。 日本銀行は、2013 年の「量的・質的金融緩和」の導入以降、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、強力な金融緩和を推進しています(図表5)。そうしたもとで、今年は、世界経済の減速が続き、わが国の経済・物価の下振れリスクが大きくなったため、日本銀行では、夏場以降、緩和方向を意識して政策運営を行うスタンスを明示してきました。10 月には、この点をより明確にするため、経済・物価の下振れリスクがかなり高い状況が続く間は、政策金利は、現在の水準を維持する、あるいは、状況によっては、現在の水準よりも引き下げるという方針を示しました。日本銀行としては、引き続き、様々なリスクを注意深く点検したうえで、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる方針です。』

後ろに(棒読み)と付けても違和感のないこの紋切り型スタイルに地蔵モードの決意を感じました。


・財政政策の話が出てきてポリシーミックスの説明ついでにMMTに斬りかかるの巻

でもってその後が政府の経済対策の話。

『ところで、今月初めに、政府は、 「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を公表しました。最近、世界的にも、金融政策と財政政策との連携に対する関心が高まっていますので、この機会に、改めて基本的な考え方をご説明します。』

ほう。

『中央銀行が物価安定目標を実現するために金融緩和政策を推進している状況において、政府が財政政策を活用する場合には、これらの相乗効果によって、景気刺激効果はより強力なものとなります。こうした政策の組み合わせは、「ポリシー・ミックス」と呼ばれ、マクロ経済政策として標準的な考え方です。今回の経済対策についても、日本銀行が強力な金融緩和を推進するもとで、景気の拡大基調を維持するために大きな効果を持つと考えられます。』

という理屈が登場できるので、おそらく1−3に変な落ち込みが無ければ今度は持続的に堅調な内需のファクターに政府支出をぶっこんでくることによって地蔵モードを持続させることになるとみられます。

そして・・・・・・・・

『ただし、金融政策と財政政策との連携については、マクロ経済政策に対する信認の確保という面で注意すべき論点も含んでいます。経済学が想定するポリシー・ミックスは、金融政策、財政政策がそれぞれの政策目的に基づき、適切に実施されることが前提となっています。しかし、最近の議論の中には、ポリシー・ミックスを、中央銀行による財政ファイナンスと混同しているものもみられます。』

MMTそのものに関しては兎も角としましても、MMT振り回して財政ガーという話をしている連中の論調を見ますと、どこからどう見てもMMTの理屈を打ち出の小槌理論に使っているようにしか見えませんですので(個人の偏見です)、まあこうやって斬りかかっていくのは順当ですな。

でまあそれが順当なのは良いのですが、

『金融政策と財政政策との連携を考える際には、それぞれの役割分担を明確にすることが重要です。2013 年1月に公表された政府と日本銀行の「共同声明」は、この点を明確に意識して作成されています。政府と日本銀行が、両者の役割を明確化したうえで、その実現に向けて、それぞれが自主性を持って取り組むという「共同声明」の枠組みは、極めて有効に機能していると考えています。』

共同声明の政府の部分のパートには「また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。 」というのがありますので、まあ一応この話の中で共同声明をリファーしても良いちゃあ良いのですが、若干この共同声明への言及は別のきな臭さを感じない訳でもないのですが、それは共同声明云々という文言をみた時にアタクシが直感的に思っただけなのでまあ気にしない方が良いのかもしれないけど気になったのでメモ残しておく。

・・・・・・・・でもってこの次の小見出しが『4.好循環の持続に向けて 』になってしまうというのがもうねという感じでして、物価が上がらない言い訳すらろくにしないという時点でお前らの物価目標はどうなったんだと小一時間問い詰めたい訳ですが、この日銀お得意のなし崩し攻撃って何なんでしょうかねえと。

てな悪態は兎も角一応ちょっとだけ鑑賞しますね。


・そもそもそんな好循環が回っているならとっくの昔に2%達成しているのではないでしょうか

『4.好循環の持続に向けて 』の最初の辺りを読んだだけで先を読む気を無くす説明になっているのがもうねという感じなんですけど。

『ここまで、今年の内外経済を振り返りつつ、そのもとでの金融政策運営についてご説明してきました。ここからは、もう少し長い目でみた、わが国経済の動きについて、お話ししたいと思います。 』

だそうで、

『 2013 年の「量的・質的金融緩和」の導入以降、わが国経済は大きく改善しています。この背景には、3つの好循環メカニズムの働きがあると考えています。』

だそうなのですが、

『第1に、企業部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが働いていること、第2に、家計部門においても所得から支出への循環が働いていること、第3に、企業部門と家計部門の間で、企業収益の増加を起点に、賃金が上昇し、その結果、販売価格すなわち物価の引き上げが可能になり、企業収益がさらに増加するという好循環が作動してきていることです。』

お前は何を言ってるんだという例の煽り画像を貼り付けたくなる説明ですが、第1はまあ分かるのだが、第2とかナンジャソラだし第3とかナメトンノカという説明でして、第3のメカニズムのどこがどう回っているんだと小一時間問い詰めたいし、だいたいからしてそんなのが回っていたら物価がとっくの昔に2%目標達成しとるじゃろという所でして、

『日本経済の持続的な成長のためには、こうした好循環を途切れさせないことが重要です。本席では、企業経営者の皆様に特に関係のある、@企業における所得から支出への循環と、A賃金と物価の循環に絞ってお話しします。』

いやその大本営発表だか神話の世界だか何だか知らんけどBをちょっと説明した見ろやと申し上げたいところですが、誠に遺憾なことに3番目のメカニズムは何とか細胞よろしく「ありまぁ〜す」で終わっておりますのではいはい大本営大本営としか申し上げようがない。


でもって先を読む気が起きないとか言いつつもしょうがないからAの方を見て進ぜよう。

『(賃金と物価の循環) 』って小見出しです。

『次に、2つめの好循環についてお話しします。先ほど、企業収益の増加を起点として、賃金が上昇し、それが、販売価格すなわち物価の引き上げを可能にすることを通じて、企業収益のさらなる増加につながっていると申し上げました。このように企業収益が持続的に増加していくためには、賃金と物価の好循環が働き続けることが重要です。』

は??

『2013 年の「量的・質的金融緩和」の導入後、デフレのもとで失われていたベースアップの慣行が復活し、6年連続で実施されてきました(図表 12)。こうした中、プラスの物価上昇率が定着し、日本経済は、既に「デフレではない」状況となっています。』

ってそもそもベアがあまねく行われているという認識が大丈夫なのかという気がするんだが。

『ただし、こうした賃金上昇と物価上昇の好循環は、なお力強さに欠けています。』

そらそうよ。

『その理由の1つとして、デフレのもとで、長期にわたり厳しい雇用環境を経験したことで、労使ともに、賃金よりも長期的な雇用の安定を優先するという行動様式が定着し、賃金の上昇局面になっても、それが根強く残っていることがあります。』

この辺の認識も相次ぐ最近の大企業の年寄り向けリストラの話とかを見ているとちょっと現状認識違くないかという気がするんですよねー、と年寄りのアタクシは思う(個人の感想です)。

『また、企業が、生産性の向上によって、人件費などのコスト上昇圧力を吸収し、販売価格への転嫁を緩やかなものにとどめてきたことも影響しています。』

でたな生産性向上。でもってこのあとは・・・・・・・・・・・


・メカニズムの話をしているのかと思ったらただの2%物価上昇の宣伝に切り替わるの巻

『企業の皆さまの中には、厳しい競争環境のもとで、賃金や販売価格を引き上げていくことは現実的な選択肢ではないと考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、賃金や物価が緩やかに上昇していく経済を実現することは、企業経営の観点からもメリットがあると考えています。ここでは、そのメリットを2つ申し上げたいと思います。』

と話が循環メカニズムの説明じゃない方に向かっていく次第で、なんかずいぶんと雑な説明だなというお話になっています。ちなみに第1のメカニズムに関しては説明することがまあ可能でしょという内容なので物凄い勢いで説明しているという対照も味わいがありますが、第1の方はまあ引用するまでもないという感じなので飛ばしてしまいました、一応長広舌を振るっているので確認してもよろしいかと。

『第1に、通常、名目賃金の水準は引き下げにくいことを考えると、賃金の上昇率を引き下げる余地がある方が、景気が悪化した場合に、企業が労働コストを調整しやすいということです。』

すげえ糊代論きてるし、大体からして名目賃金水準が引き下げにくいという認識がたぶんそれは周回遅れの認識ではなかろうかと思うんですが。

『先程、長引くデフレのもとで、わが国では、賃金より雇用の安定が優先されたと申し上げました。しかし、こうした極端な状況を除くと、企業が名目賃金の水準を引き下げることは難しい、経済学の用語で申し上げると、名目賃金には下方硬直性がある、ということが実証研究で明らかになっています。』

はあそうですか。

『仮に、景気が加速も減速もしていない状態で賃金・物価上昇率がゼロだとすると、景気後退期に労働コストを調整する方法としては、雇用を減らすか賃金を引き下げるかという厳しい選択肢しかありません。しかし、賃金・物価上昇率がある程度のプラスであれば、企業は、賃金の上昇率を引き下げることで、実質的な労働コストを調整することが可能になります。このことを経済学者のジェームズ・トービンは、「プラスのインフレ率は、労働市場の潤滑油の役割を果たす」と述べています。』

ということで話がただの2%物価上昇目標のメリットの話になっているのだがそういうことは物価目標を達成してから言えという感じですな、なお第2というのは、

『第2に、他の先進国と同様に、2%の物価目標の実現を目指すことは、長い目でみた為替相場の安定につながるということです。』

という話になるので最早ここで鑑賞の方は終了ということでよろしゅうございますでしょうか。







2019/12/26

お題「市場雑談メモ/ラガルド総裁の記者会見ネタ続き」

なんじゃこりゃ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191225e.htm/
金融安定理事会による「レバレッジドローン及びCLOに関する脆弱性」の公表について
2019年12月25日 日本銀行

FSBというと指標金利問題でトレーダブルレートだの言い出すわ(でもって最初それで動いていた英国とかもトレーダブルは無理だわという話になるという無駄な混乱を招いた筈なんですが)、シャドウバンキング規制で無駄な方向で斜め上な規制強化して短期市場におけるクッション機能のあったMMFをトレジャリーオンリーにしてしまうわと、現場に介入すると頭でっかちで碌な事をしない連中というイメージしか無いのですが(個人の偏見です)、公表文書読もうと思ったら英文しかないのかー、日本語訳出ないかなー(棒読み)。

https://www.fsb.org/wp-content/uploads/P191219.pdf
Vulnerabilities associated with leveraged loans and collateralised loan obligations

なお本文29ページでPDF自体は48ページあります。年末年始の読み物にどうぞ(ワタクシが読むとは言ってない^^)。


〇市場世間話メモ

・折角10年ゼロから若干プラスで着地しそうだったのに・・・・・・・・・

うーんこの。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28Z0I1
2019年12月25日 / 15:15
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸で引け、長期金利は-0.020%に低下

『<15:08> 国債先物は続伸で引け、長期金利は-0.020%に低下

国債先物中心限月3月限は前営業日比29銭高の152円11銭と続伸して取引を終えた。前日の米金利の低下を反映し、朝方から堅調に推移。長期債対象の日銀による国債買い入れ結果は強めと受け止められ、上げ幅を拡大した。10年最長期国債利回り(長期金利)は前日比2.0bp低下のマイナス0.020%。』(上記URL先より、以下同様)

という訳で、昨日は朝から堅調推移したあと、長期超長期輪番はまあさすがに同額でオファーされまして、長期輪番が強めで後場一段高となるの図という事になりやがりまして、折角年末の10年カレントがゼロ辺りで美しく着地しそうな感じだったのに、まーた中短期は政策金利以下の水準だわ10年はマイナス圏に入るわ20年は30割れるわという水準に突っ込んでしまいまして実に美しくない(個人の感想です)。

昨日も申し上げましたが、別に短国だって2年だってマイナス1桁金利の所であれば海外の買いが薄くても政策金利水準との裁定とかモノとしての国債ニーズとかあるんだから普通にさばけるじゃろ捌けないならちょっと甘くすればエエヤン程度の話で、別に問題になるような水準でもないのだから市場に任せておけば良いものを、途中で日銀がしゃしゃり出てきて市場のリズムをおかしくしやがってというのもありますし、大体からしてこの程度の動きで一々反応してたらまーた市場が日銀オペばっかり見て動くようになる訳で、YCCの弊害を緩和しましょうというのに逆行するじゃろうがという感じでありますわな。

まあゆうて昨日超長期減額したらもっと意味不明ですから、短国買入を2000ならともかく突如5000とか打った時点でアカンタレだったという話ではあるのですが、マイナス金利深掘り観測(というのも正調黒田節を延々とやっていた日銀による自作自演相場ではありましたが)によるアレ相場の是正がいい感じで進んで、まあ政策金利水準から見たら止まりところかなという所にやっと来たというのに金利押し下げしてどないすんねんと割としつこくブーブー言うアタクシなのでした。年末の10年がゼロ(か1bp位の)利回りになっておー美しいとかいう気満々で正座待機していたのでちょっとガックシ(個人の偏見です)。

『TRADEWEB
    OFFER  BID   前日比  時間
2年  -0.116  -0.108  -0.013  15:05
5年  -0.115  -0.109  -0.025  15:02
10年  -0.023  -0.014  -0.02  15:07
20年  0.287  0.296  -0.025  15:07
30年  0.422  0.432  -0.024  15:08
40年  0.443  0.452  -0.023  15:07』

ということで先物が一番強いのですが全般的に堅調ですが、先物ちゃんも何か妙に強かったり弱かったりで中々難しいですな。とは言え出来高連日1兆半ば程度でアレですが。


・でもって今日はオペ紙

何せ今月はこちらにありますように、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191129e.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について

『── 次回公表は2019年12月26日17時を予定』

となっておりますので、金曜でもなく本日に公表というタイミング(ちなみに昨年は28日が銀行営業日最終日のところ27日の17時に公表)という気が利いてるのか利いてないのかよくわからんお日取りでの公表でして、これが実は来月の輪番を動かす気が先月末の時点で満々で、輪番動かすのをアナウンスした後に2営業日入れておけば年初の前に相場がガス抜き出来るからその方がエエでとか思って今日にしておりましたらそれはそれで面白いのですが、まあうっかりそういう変な前例を作ると年末のオペ紙出るタイミングでまた思惑とか下らないことが発生してしまいますので、そういう事ではないと思いますが、しかし何で金曜じゃなくて今日なんでしょうかね。まあ早めに出る方が良いちゃあ良いけど。

でもってまあそもそもが輪番ペース自体がだいぶ落ちている訳でして、先般アタクシがざっくり計算しましたように(また月末の数字出たら2020年の計算を行いますが)長期国債の増加額が3兆行かないというペースな訳でして、年初からそう威勢よく輪番減額とかする地合いでもないでしょ(というかそれしたら短国買入を無駄に増やしたのは何だったんだという話になる)と思いますし(フラグ)、それを考えますとMBの前年対比云々とかゆー所で切りの良い年末値に関して、何で短国買入増やしてわざわざ年末値を上げるような事をするのかね(今年は十分に拡大しているので4000億円増えても増えなくても大差ないけど来年は何せ長期国債の拡大が3兆切るのでETFその他あるにせよ無駄にハードル上げておく必要はなかったと思うので)とは思うのでもありました。

まあ年末はこのまま無事モードかと思ったら思わぬネタが出ましたって感じの一昨日からの流れでしたな。


〇ラガルド総裁記者会見ネタの続き

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is191212~c9e1a6ab3e.en.html
INTRODUCTORY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 12 December 2019


・例のフクロウ発言はこちら

先日ネタにしておりました質疑の次にあったのが例のフクロウ発言。

『Madame Lagarde, you were discussing the merits of the two instruments or the two main instruments at your disposal; the negative interest rates and QE. I wonder if the economy were to worsen next year, if there was one that you think would be more appropriate to use first that maybe was less - had less risks attached, some people on your Governing Council for instance are much more concerned about QE as a policy tool. I wonder if you share that concern and see QE as more of an exceptional unconventional tool.』

質問の前半は仮に追加緩和するとしたらマイナス金利とQEのどっちが優先ツールになりますか、って質問。

『My second question was also about your Governing Council and there has been a certain amount of disagreement in recent weeks over policy, public disagreement. Your predecessor was worried about publically challenging the ECB's decisions. Is this something that is - is this a concern that you share, that if national central bank governors criticised the ECB's decisions, that could be harmful for the institution?』

でもって後半はECB内での意見の大きな隔たりが思いっきり表に出て百家争鳴的に見えている点についてラガルドさんどう考えますかという質問でして、フクロウ発言はこの後半の質問に対する答えに相当する部分で出てきます。

『President Lagarde: I see exactly where you're trying to get me! But once and for all, I'm neither dove nor hawk and my ambition is to be this owl that is often associated with a little bit of wisdom.』

キタコレ!「知恵の象徴であるフクロウ」というのはドメドメジャパニーズのアタクシでも一応知っていました。でもって何がフクロウかと言えば、

『I'm not full of vanity but I will certainly try to bring the best out of the members of my Governing Council in order to arrive at monetary policy decisions and use of instruments that will be as consensual as possible.』

これはラガルドさんですわという感じですが、(だいぶ前にネタにした)冒頭の俺流宣言と言い、この「皆さんの意見を聞きながら謙虚にやっていきます」と言い、結構どさくさに紛れて(もないか)ドラギ先生を砲撃している感はありまして、まあその辺既に市場でもそういう話にはなっていると思いますが、ドラギ先生特に最後の方はちと強引にやっていた(からこそ退任した途端に百家争鳴モードになっているのですから)でしょうなあという風情でしたので、こうなりますとタカ派の地位が相対的に上昇しますわな、という話になるのは必定、というかそういう相場形成だと思うの。実際にはそう簡単に正常化だのマクロプルーデンスの観点からの緩和水準の水準調整(スウェーデン方式、マイナス金利は撤回するけどその後の利上げはだいぶ先というバランスでやっているパターンですな)とかそんな話は難しいし、理屈の構築がかなり難しいとは思いますが。

『I am not suggesting that we will arrive at complete agreement on everything, and I'm sure that the strategic review, particularly in our definition of the medium-term objectives and how we go about it, will be a source of great debate amongst ourselves. But I'm also of the view that once something has been debated at length and in depth and in honesty and with good faith, then some decisions eventually stand. They are the decisions of the central bank. I don't have a different view from that perspective.』

でもって政策戦略枠組み見直しの話の方に持って行きますが、当然そちらでは「これから皆さんと討議しますから今特に決め打ちのものは無いですよ」で済ませます、というのがフクロウ発言の部分でした。

でもって追加緩和のツールキットに関してですが、

『Are some unconventional tools better than others? This is also something that we will be assessing as part of the strategic review because I think that we need to look in retrospect and assess what has been most helpful, what has worked best, what combination of them has worked best.』

マイナス金利とAPPのどちらが有力か、というようなお話に関しても政策戦略枠組み見直しの中で行って参りますが、これまでの成果なども良く参考にしていきます、と模範解答。

『I don't think that I would reduce it as you have to interest rates or unconventional measures, because I think within those unconventional measures, you have a variety of things that allow to target better, to also give a better indication of time. I think in that respect forward guidance is also a very interesting set of components that anchors into time, that gives a sequence, that gives enough clarification to something that by nature is going to be a little bit ambiguous nonetheless.』

と言いつつ別にツールはマイナス金利とQEに限定される訳ではなく、という話をしながらしらっとフォワードガイダンスも有力ではないかという話をしている辺りに味わいがありますな。

『But it introduces this element of mechanicalness or automaticity in how things are re-stated in the course of time.』

ということでどっちがどうというような答えはしないの当然といえば当然ですが、回避しつつもフォワードガイダンスの話が入る辺りがちょっとお洒落でした。


・散々緩和しているのに何でスラックが残っているのという質問

ちょっと飛びまして(実はその間にECBデジタル通貨の質問があって結構な演説があるので、そっちにご関心のある向きはご覧あれと思うのですがアタクシはそもそも本件詳しくないのでパスしてしまいます)こんな質疑が。

『Madame President, the ECB is running a very accommodative policy, despite the fact that the eurozone unemployment rate has gone back down to pre-crisis levels. What does this suggest about the magnitude of the output gap in the eurozone? What are the specific signposts that the Governing Council is looking for in order to gauge the amount of the remaining slack?(後半割愛)』

散々大規模緩和行って失業率は金融危機前まで戻っているのですが、スラックは残っているという状況になっておりまして、はてさてスラックがどの位残っているのかとか、金融政策のギャップに対する影響度とかどうお考えでしょうかとかそんな質問ですかね。

『President Lagarde: On your first point, and concerning the use of our various instruments in order to deliver on our mandate, we have one objective and that's price stability as defined under the strategy as it stands today. That's the goal, that's the aim and that's what we are pursuing. I wouldn't venture too much into this theory of the output gap, how much slack there is, how much slack there is not.』

『Informed by good discussions that I've had with colleagues on the other side of the Atlantic, including at the Fed, they had… They now say actually that they had strongly underestimated the slack of the employment market. At 7.5%, do we still have some? My hunch is that we do, but I would not guesstimate on that particular front. I think we tend to get it more often wrong than right. That's not passing out judgement on the forecasting ability of the ECB, because I think that we do actually have more trust in our forecast.(後半割愛)』

フィリップスカーブがどうのこうのみたいな理屈に関しては当然それに則って政策やるんですけど、だからと言ってそこに固執しすぎる訳ではないというような感じになるんでしょうかね、勝手に意訳すると(違ってたらすいませんというか教えてジェネラル)。計測の質問だから財政ガー構造改革ガーの話にはならなかったですな。



・質問が1つしかないとな!!というのはちょっとウケました

この先にもグリーンディールの質疑とかもあるのですがそちらも飛ばしまして最後の質疑。

『I would like to know if the Governing Council has discussed at all the limits of the APP programme in this meeting, or if it is planning to do it so in the near future. Or it is something more for the strategic review?』

『President Lagarde: You only have one question?』

『Yes.』

『President Lagarde: Everybody has two! I was surprised. My answer is very quick; no, we have not discussed it. Thank you very much and I'll see you next year, so happy holidays, Merry Christmas and whatever you celebrate. I hope you are happy and making other people around you happy.』

質問自体はAPPの上限に関してとかその関連の議論ってありましたかという話なので答えは無かったよで終わっておりますが、そういやECBの会見って2つ質問ってのが多いわな(^^)。







2019/12/25

お題「何故か短国買入増額とな/刈込平均ェ・・・・・・・・/10月会合議事要旨」

年の瀬にこれはまたwww
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191225/k10012227451000.html
秋元議員側に中国企業から数百万か 収賄で捜査
2019年12月25日 5時08分

〇イミフな短国買入増額でツイストとな

相場様は消化試合と思ったら昨日はこれですよこれ。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of191224.htm
国庫短期証券買入 5,000 2019年12月25日

5000億円・・・・・・だと?????

いやまあ確かに先週金曜の3Mは、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20191220.htm
国庫短期証券(第878回)の入札結果

5. 価格競争入札について
(1)応募額 12兆9,292億円
(2)募入決定額 3兆5,573億8,000万円
(3)募入最低価格 100円02銭4厘0毛 (募入最高利回り)(-0.0893%)
(4)募入最低価格における案分比率 47.9069%
(5)募入平均価格 100円02銭8厘5毛 (募入平均利回り)(-0.1061%)

ってな訳でまーた片足マイナス一桁台になったのはなったのですが、そもそも前日の売買参考統計値ちゃんを見ますと、878回の平均値単利って、

http://market.jsda.or.jp/html/saiken/kehai/downloadInput.php
(12/24を指定してちょ)

国庫短期証券 878 2020/03/30 -0.110

となっているし、周りの銘柄の売参値は▲15bp近辺な訳で、▲10ちょいの銘柄って直近で入札のあったこの3Mカレントと1Yカレントであって、前回の3Mの売参値は既に堂々の▲15bpな訳ですよ。

じゃあGCやコールが高止まっているのかと言えば全然そんな訳でもなく、

http://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

GCのT/Nレートを見れば

2019/12/10 -0.017
2019/12/11 -0.006
2019/12/12 -0.003
2019/12/13 -0.099
2019/12/16 -0.093
2019/12/17 -0.095
2019/12/18 -0.096
2019/12/19 -0.095
2019/12/20 -0.070
2019/12/23 -0.060

ということで、積み期間が変わってマイナス金利適用残高が増加したと思われる16日のスタート分からは金利は低い方で推移していましたし、20日23日と確かに上昇しましたけれども水準はまだこんなもん。

無担保コールを見ましても、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_m.htm
から直ぐに拾えるのだけ並べても

2019/12/17 -0.057%
2019/12/18 -0.060%
2019/12/19 -0.061%
2019/12/20 -0.061%
2019/12/23 -0.059%

となっていて、いやあの別に何の問題もない水準にいるんですけど何考えてるんですかこの短国買入増額って感じですし、先週の短国買入が通常ペースの1000億円オファーに戻った直後にこれなのも良く分からん。通常ペースに戻ってなかったらまだ5000っての想定可能な増額だけど、戻っていたのですから入札の片足マイナス10割れを受けて2000(前回から2回入札あったから)にするならともかくですし、大体からして先々週金利が上がっていた時だって久々の増額して2000億円だった訳で、別にここで短国買入増額しなくて相場が崩れるとかそういう訳でも何でもないし、オフザランの水準は別に問題ない状況なのに5000に増額というのは何ぞという話ですな。

でもってまあこれを見て普通に考えるのは「増額を行う必然性のない所で増額しかもイレギュラーもイレギュラーをするのだから何か意図がある」ということであって、その意図が何かと考えたら、そらもう当日に入札の予定されている2年国債ですがな、と思ってしまうのは必定な訳でございまして、その結果・・・・・・・・・・・・・・


毎度のロイターさん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28Y12B
2019年12月24日 / 15:21
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は小反発で引け、閑散相場のなか2年債周りにざわめきも

『本日の注目は、今年最後の入札となる2年債。中期債の主な買い主体の1つである海外勢の多くがクリスマス休暇に入るなか、一部で警戒感があったが、入札結果は順調。「金利水準が上昇してきたことで、担保需要などがあるコアな国内勢の買いがしっかり入ったようだ」(国内証券)との見方が聞かれた。』

『事前には、新発2年債利回りが、2016年11月17日に、イールドカーブ・コントロール導入後初めての「指し値オペ」が入ったときの買い入れ利回りマイナス0.09%に近づいていたことを指摘する声もあった。新発2年債の利回りは前日時点でマイナス0.100%だった。』(上記URL先より、以下同様)

ってそれもう大昔の話だし状況違うのに指摘する向きいるのかよとツッコミを入れようと思ったらさすがにこのような指摘のようで(^^)。

『「16年11月当時は、トランプ氏の大統領選勝利で米金利が急速に上昇していた。しかし足元の金利水準上昇は年末要因が大きく相場は落ち着いている。指し値オペが入る可能性は低い」(国内銀行)との見方が大勢で警戒感が強かったわけではない。』

そらそうよ、というかこの時期はまだYCCぶっこんだ直後でレベル感とかその辺の日銀と市場の間合いも手探り状態だったですし(しかしオペ増額しないでいきなり指値はナンヤソラとは思いましたけど)、まだこの時期は展望レポートなどで示す物価見通しは「見通し期間中に2%近辺に達する」という見通しになっておりまして、今のように「2%早期達成??どちらのどなたさんのお名前でしょうか???」となっておりませんでしたので、そらもうトランプが財政ヒャッハーで状況改善したらもしかしたらもしかしてみたいな発想にもなるし、まあ状況は全然違う訳ですよ。今はそもそもが政策が地蔵状態だし、2%達成は全く持って見通せないしですから、そらもう短期政策金利よりも高い水準の短いゾーンの国債だったら日銀当座預金チャージとの裁定が入って来るでしょ、という認識が共有されている訳で、確かに昨日の2年は事前に需給どうよとか言われてましたが、そうは言いましても水準調整したので時間を掛ければ捌けるでしょという物件だった筈なのよ。

然るに・・・・・・・・・・

『ただ、市場予想通り「指し値オペ」は入らなかったが、日銀は国庫短期証券(TB)買い入れ予定額を前回の1000億円から5000億円にサプライズ増額。「短国入札は低調な結果となっていたものの、相場が崩れているわけでもない。3カ月物と2年債は連動性もあり、2年債利回りの上昇を抑制したかったのではないか」(別の国内証券)との見方も出ていた。』

という話になる訳でして、入札が微妙に強くなるわその後も強いわとか、別に自然に任せておいて特段問題のなさそうな所に謎のメッセージ登場と来たもんだから相場のリズムが変調になってしまいましたなというお話。

TRADEWEB
   OFFER  BID   前日比  時間
2年 -0.105 -0.099   -0.006  15:12
5年 -0.09  -0.084   -0.006  15:09
10年 -0.003 0.006   -0.002  15:12
20年 0.309  0.319   0.001  15:12
30年 0.444  0.455   0.007  15:12
40年 0.464  0.473   0.014  15:06

でもって苦笑を禁じ得なかったのは超長期ちゃんが甘くなってツイストになっていることで、そういえば今日は今月最後の輪番で長期超長期でございますので、まさかとは思いますが短国買入増やしたので超長期輪番減額とかいうようなオモシロプレイが出るのではないかとかそういう事を考える人もいるでしょうなあとか思いながらこのカーブを眺めておりまして、いやだからそういうのは別に許容範囲内で動いている時とか、ちょっと金利が上がったりしても別に相場が崩れるとかそういう地合いでも何でもない時に変な介入して相場の自然なリズムを崩すなよなーと思うのでしたが、まあ今日これで輪番いじったらそれはそれでワロエルのですが、さてどうなんでしょ(そらやった方がオモロイのですが、この時期に動くのはさすがに如何な物かとは思う)。

ま、かつて年初一発目の超長期輪番をサプライズ減額した挙句に無駄に金利が上がって結局後日オペ増額する破目になったという悪事例があるように、年末年始に動く必然性が無い所で動くのは鬼門だと思うんですがさてどうなりますでしょうかねえ・・・・・・・・・・・

#という訳で消化試合の筈がまさかの相場雑談ですっかり覚醒の巻という所ですなあっはっは


〇刈込平均が順調に減速しているんですが大丈夫なのか基調的インフレ率(という備忘メモ)

http://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

図表よりはデータ見た方が手っ取り早いですが、

     刈込平均値 加重中央値 最頻値
Jan-19     0.5    0.1    0.2
Feb-19     0.4    0.0    0.2
Mar-19     0.5    0.2    0.2
Apr-19     0.7    0.2    0.3
May-19     0.7    0.2    0.3
Jun-19     0.6    0.2    0.3
Jul-19     0.6    0.2    0.3
Aug-19     0.4    0.0    0.2
Sep-19     0.3    0.0    0.2
Oct-19     0.3    0.0    0.3
Nov-19     0.2    0.0    0.3

刈込平均ちゃんが順調に伸び率を下げてきておりまして、しかもこれがどう見ても数カ月のトレンドという感じになっておりまして、えーっとそれで良いのかモメンタム、という所でございますが、とりあえずメモメモということで。



〇10月会合議事要旨である

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2019/g191031.pdf

短国買入と基調的インフレのネタの後に議事要旨って時点でお察しな訳ですが、まあ鑑賞にお付き合いくださいませ。


・モメンタムの評価云々が実にアレ

展望レポート回なのに展望レポートの検討部分は鑑賞しない(つーか鑑賞しても無駄)という暴挙を演じまして、『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』にいきなりワープします。冒頭の

『金融政策運営に関する検討にあたり、委員は、まず、「物価安定の目標」に向けたモメンタムについて、前回会合以降に公表された短観を はじめとする各種経済指標や国際金融市場の動向なども踏まえつつ、 評価を行った。』

というのが無駄に段落が長いのですけれどもめげずに鑑賞しましょう。

『初めに、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを評価する際の主な要因のうち、マクロ的な需給ギャップについて、大方の委員は、引き締まった状態にある労働需給や高水準の資本稼働率を反映して比較的大幅なプラスとなっているとの認識を共有した。そのうえで、輸出が弱めの動きを続けることや消費税率引き上げなどの影響により、いったん、プラス幅を縮小するとみられるものの、見通し期間を通じて、景気の拡大基調が続くもとで、均してみれば現状程度のプラスを維持するとの見方を共有した。』

ほうほうそれでそれで?

『次に、中長期的な予想物価上昇率について、これらの委員は、指標ごとに動きが幾分異なるが、総じてみると、横ばい圏内で推移しているとしたうえで、先行きマクロ的な需給ギャップがプラスを維持していくもとで、上昇傾向を辿るという見方で一致した。』

マクロ的な需給ギャップが相応のプラス圏内にある期間が長い中で横ばいだった予想物価上昇率が何をもって上がるのかという根拠を示さないといけないのですが、

『ある委員は、予想物価上昇率に関する短観等のサーベイをみると、企業や家計の物価に対するスタンスが積極化する兆しも窺われており、先行き実際の物価上昇率が高まっていけば、中長期的な予想物価上昇率もそれに応じて上昇していくという見方を示した。』

『何人かの委員は、家計の値上げ許容度や、消費関連業種の販売価格判断DIが改善傾向を続けていることも、先行き物価上昇率が 高まるとの見通しを支持していると述べた。』

という物語を並べるしかありませんな。

『さらに、「物価安定の目 標」に向けたモメンタムのその他の判断材料として、何人かの委員は、 前回会合以降、米中通商交渉などの進展期待の強まりなどを背景に、 リスクセンチメントが改善するもとで、原油価格や国際金融市場が落ち着いている点も指摘した。』

何という無理矢理な言い訳。

『この間、ある委員は、内外経済のリスクと不確実性の高まりから、製造業を中心とした企業と家計のマインドが慎重化していることを踏まえると、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れは相応にあるという見方を示した。また、 一人の委員は、長短金利操作の導入以降、デフレには陥らないという意味で物価上昇のモメンタムは維持されているが、2%の物価目標に 向けたモメンタムは維持されていないとの見方を述べた。』

前者がジンバブエ先生で後者が片岡さんでっしゃろと思うが、この人たちはだから有効な手段として何をするという説得力のある話が出来ない(どう見たって行くのが無理なんだからできないの当たり前なんですが)のでこれはこれで惜しくも机上の空論に留まる。

『こうした議 論を経て、大方の委員は、@先行きの物価は、当面、原油価格下落の影響などを受けるものの、マクロ的な需給ギャップや中長期的な予想 物価上昇率の動向などを踏まえると、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが一段と高まる状況ではないこと、A海外 経済の下振れリスクは引き続き大きく、このリスクが顕在化した場合 には、わが国の経済・物価にも相応の影響が及び得る状況にあり、引き続き注意が必要な情勢にあること、について認識を共有した。』

『そのうえで、委員は、今回の点検結果を、 「『物価安定の目標』に向けたモ メンタムの評価」として対外公表することが適当であるとの認識で一 致した。』

まさかとは思いますが政策アクションから逆算してアセスメントを作ったのではないでしょうか?????


・政策アクションは地蔵ですがその間のお話

『以上の議論を踏まえて、委員は、金融政策の基本的な運営スタンス について議論を行った。』

で??

『大方の委員は、「物価安定の目標」に向けたモ メンタムが損なわれる惧れが一段と高まる状況ではないことから、現 状の金融市場調節方針と資産買入れ方針を維持することが適当であ るとの認識を共有した。』

まさかとは思いますが以下同文。

『多くの委員は、プラスの需給ギャップができるだけ長く持続するように、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、現 在の政策のもとで、きわめて緩和的な金融環境を維持していくことが 必要であると述べた。ある委員は、「物価安定の目標」の実現にはなお 時間がかかることを踏まえると、強力な金融緩和を継続していく方針を対外的に強く発信すべきであると述べた。』

ふーん。

『別の一人の委員は、経済・ 物価の下振れリスクが大きい現状を踏まえると、追加緩和の要否を引き続き検討すべきであると指摘した。そのうえで、この委員は、海外経済の影響を受けやすく、予想物価上昇率が物価安定の目標にアンカーされておらず、現実の物価上昇率と目標の距離が大きい日本こそ、 予防的金融緩和論が一番妥当するのではないかと述べた。』

そもそも展望レポートの方で「海外の影響が小さい」という見通しになっているのでその時点で話がかみ合わない上に、予防的緩和は良いんだがじゃあ副作用が少なくて有効な策はあるのか、これまでやって行かなかったのに追加緩和をするとなぜ行くのか、というのを説得力持った説明をしてくれないと何ぼ言っても負け犬のオーボエでございますがな片岡さん。

『これに対し、 何人かの委員は、今回は現行の金融緩和政策を維持することが適当で あるが、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる 惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加の緩和策を講じる必要がある と指摘した。』

まさかとは思いますが追加緩和を行う時になって急にモメンタムのアセスメント(以下略)。

『複数の委員は、リスクシナリオの一環として、次なる景気後退に備えるべきであり、その際には、金融政策面での対応のほか にも、財政政策やその他の政策など、政府の経済政策との連携強化が 一層重要になるという見方を示した。』

別に連携とかせんでも普通にやってればいい話だと思いますがねえ。


・フォワードガイダンスについて

『さらに、委員は、政策金利のフォワードガイダンスについて、議論を行った。』

何かただの同義反復になってしまったインチキガイダンスな。

『多くの委員は、海外経済の持ち直し時期が後ずれすること を踏まえると、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる 惧れについて、注意が必要な状況がしばらく続くと指摘した。そのう えで、これらの委員は、先行き、相応の長い期間にわたって緩和方向 を意識した政策運営をしていく必要があることが確認されたことを踏まえると、今回の会合で、現在のフォワードガイダンスの見直しを 検討することが適当であると述べた。』

ぷぷぷ。

『見直しの方向性に関し、何人かの委員は、これまでの情報発信との連続性の観点から、フォワードガイダンスを「物価安定の目標」に向けたモメンタムと関連付けるとともに、政策金利の下方バイアスを示すことで、7月の会合以降、緩和方向をより意識して政策運営を行っている日本銀行のスタンスを明確にすることができるとの見方を示した。』

ところが実際にはその後の情報発信が地蔵スタンスを明確にしているのは何なんでしょうかねえ。

『これに対し、ある委員は、 フォワードガイダンスは、物価上昇率の低下を容認しないスタンスが示されていること、内容が具体的であること、具体的な条件にもとづいて行動することが約束されていること、の3つの要件が満たされている、強力なものにすることが望ましいと述べた。』

具体的に物価が上がるような施策で副作用も少なくこうかはばつぐんだ!ってのがあるなら今すぐ実施すれば良いだけの話で、その話もないのにガイダンス振り回したって上げ底がバレるだけ(既にバレバレとは言え)の話なんですが片岡さん。

・・・・・ということで、あの文言が声明文最後の躊躇なく云々の所と意味が同じじゃねえか、などというようなツッコミが発生していなかったという残念な事実は分かりましたです、いやはや何とも。


・最後の部分はいつもの話だが

『このほか、委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。』

というのも留意するだけ点という感じのお話ですけど、

『複数の委員は、金融機関の財務状況は現時点では健全であるが、低金利環境が長期化することによる累積的な副作用に留意する必要があると指摘した。』

留意して何かするのでしょうか?????

『ある委員は、金融政策は、銀行経営ではな く、経済全体との関係で考えるべきであると指摘した。』

ジンバブエ先生キタコレ!!!

『そのうえで、 この委員は、「量的・質的金融緩和」導入後、銀行の当期純利益が増加 したこともあり、銀行によっては職員数を増加させるところもあったが、この間、利益の改善をもたらした債券・株式売却益の増加や信用 コストの低下は、職員数の増加とは関係ないため、採用した人材でどう利益を上げるかという視点が重要であると述べた。』

結局この人は5年間(この時点では半年弱任期残っているから4年半でも良いけど)何を見て仕事をしていたのでしょうかと思いますし、こんな不見識なのを推挙する方も推挙する方だし、大体からして経済学者の世界には切磋琢磨とか自浄作用とかそういうものは存在しないのかと小一時間問い詰めたいし、まあ経済学者に対する信認の低下には多大なる貢献をされた方ですなあとは思います。

『一人の委員は、 長期金利が現状程度で長期間継続する場合、国民ニーズが高い終身保険や年金保険などの商品の提供を維持することが困難となり、生命保険業界としての社会的使命を果たせなくなる可能性があると述べた。そのうえで、この委員は、年金や投資信託は、円債運用において、金 利が 0.1%低下すると数百億円の収益減になる可能性があるほか、マ イナス金利適用残高の約半分を占める信託銀行の残高は年金や投資信託からの受託財産であり、その分のマイナス金利は実質的に年金や 投資信託が負担しているという見方を示した。』

鈴木さんキタコレなのですが、残念ながら今の政策委員会に聞く耳が無いので馬の耳に念仏とはまさにこれでございますけれども、しばらく前まではジンバブエ先生のジンバブエ節をこのコーナーの最後に登場させて頭がクラクラした読後感を与えていたのに対し、締めが鈴木さんの意見の方がまだ読後感がマシですな。


・・・・・・・・というわけで何だかねえという感じです。寧ろこの展望回以降すっかりと地蔵モードに豹変した理由についてを12月会合議事要旨の所で見たいなという感じです。








2019/12/24

お題「虫干しネタでラガルド総裁のECB定例記者会見ネタでございます」

イイシテキダナー
https://jp.reuters.com/article/ecb-netherlands-knot-idJPKBN1YR0HI
2019年12月23日 / 15:38 /
ECBの超低金利政策、逆効果になるリスク=オランダ中銀総裁

あとFSBがこんなのぶっこんでましたが、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191220a.htm/
金融安定理事会による「『主要な金利指標の改革』進捗報告書」の公表について
2019年12月20日 日本銀行

英文の原文しかないのでちょっとパス。

〇相場様が相場様なのでラガルド会見でも

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is191212~c9e1a6ab3e.en.html
INTRODUCTORY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 12 December 2019

最初のラガルドさんの演説(?)だけでその後をやっていませんでしたが、どうせ相場も相場だし今週ネタ切れになるから温存したという訳では毛頭ございません(棒)。

・1.6%の物価は2%に近くないそうな

別に近いってことにしておけばエエヤンと思うのですが何故かそういう話になるのね、ということで最初の質疑。

『My first question is about the inflation forecast that you just read out. The 2022 forecast is now 1.6. Is it compatible with your idea of close or below 2%?(後半割愛)』

『President Lagarde: One thing that the introductory statement does not specify, but you will find it I'm sure in the findings of the Eurosystem macroeconomic forecast, is that in our 2022 forecast for inflation, while the entire year is forecast at 1.6%, the fourth quarter is at 1.7%. Directionally, it is slightly increasing over the course of the 2022 forecast that we have for inflation. Is it satisfactory? It is certainly directionally good. But is it the aim that we pursue? No, indeed.(後半割愛) 』

方向として上昇に向かっていく、という見通しであってそれ自体は結構なことだが、ではその数字が良いのかというとアカンだそうです。ちなみに経済見通しは四半期展開も出しているそうで(ステートメントではそこまで細かくは出していない)、四半期展開すると後ろに行くほど2%に近づいていく、という話になっているのだが、まあそれって金融政策が適切に設定されているという置きにしてDSGEだか何だかのモデルを回すと長期的には均衡状態になるんだからそら上がるわと思うがそこは気にしないことにする。


・TLTROの折り返しは多い方が良いものの・・・・・・・・

今の質問の後半ですが、

『(前半割愛)Second question is about TLTRO. The auction this morning it's fair to say didn't go too well. Banks took out fewer loans than the ones they are set to repay, so that undoes some of your work in terms of adding excess liquidity into the system via QE. What do you make of the auction, and how concerned are you about this low take-up?』

ECB理事会の日にTLTROのロールがあったのだが減ったそうで、それって流動性供給という趣旨から行ったら減ってるからアカンヤンという指摘なのですがこれに対しては、

『President Lagarde:(前半割愛) On TLTRO: my recollection of what was taken this morning was something like ユーロ97.3 billion, which is a little less than what was coming for maturity Do I regard that as half success, half failure? Neither.』

ほうほう。

『I would tell you two things; one is, I think we have seven auctions in the course of this TLTRO III - so I would not draw a conclusion from this one. I would wait a little bit, particularly given the fact that this one is taking place at year end. At year end, you close your book, there are many considerations that come into play, so I would not draw too many conclusions from this one. I would have preferred it to be a little bit higher, closer to ユーロ120 billion than to ユーロ100 billion, but we'll look carefully at the next one.』

ラガルドさんって最初の演説(?)の時もそうなのだが「二つある」とか「三つある」とか言いながら切れ目が分かり難いんですけど、これも2つあるとか言いながらどこで切れるんやとは思いますが、どうも「そもそも今回初回だから」というのと、「折り返しが増える方が良いけれども、それ自体に大きな意味を持たせるのはどうなのか」という話をしているような気がするが要するに次回以降もTLTRO3が伸びないとなる時にどういう話になってくるのかは不明。ただ直ぐに問題視はしない感じはします(ってか問題視したって受動的なものだから如何ともしがたいですわな)。


・レビューで物価目標の変更は行わないそうな

質問も答えも何か妙に複雑なので読みにくいのですが。

『My first question, if I may follow up on the review of what you said about the review: you said… Does the fact that you are launching the review, or launched the review, while you still haven't met your mandate, limit how much you can actually - limits your wiggle room to how much you can actually change your definition of the mandate, or your goal, since you haven't reached it yet? That's my first question.(後半割愛)』

物価目標が全然達成できていませんが今回のレビューで物価目標の定義や目標そのものを変えたりしませんかねえ、というのが趣旨のようだ。そら今の時点ではこう答えるでしょう。

『President Lagarde: On the timing of the strategic review, there is never a good timing because you could argue equally that if and when you have delivered on the way in which you've defined your mandate, then why bother about a strategy? I think it cuts both ways. My purpose is really, after 16 years of the same strategy, which is the rule today and that we will respect and will continue to respect until such time when our strategic review is completed, by the way. I think it is timely, coming to this job new. It's just the most appropriate moment to rally support of members around the table to re-examine the effectiveness, appropriateness of each and every single instrument that we've used in the past to take assessment of that.』

『Then to redefine for ourselves what exactly will be this medium-term objective that will deliver on the mandate that we have, which is not changing by the way. You said that we change our mandate -- no, the mandate is price stability. The way in which we deliver on the mandate is the one that will be under the strategic review.(後半割愛)』

前半というかアタクシが区切ったところまでなのでかなりの部分は「今回の見直しは16年も同じのでやっていたのでその間の変化に対応するというタイミングの問題でっせ」という話なのですが、どうもラガルドさん初回のせいでもあるのでしょうが、やたら細かく説明する感じで、しかも字面だけ見てると教えて差し上げましょうっぽい感じなので、この辺はドラギとはだいぶ違うわと思うのでした。でもって結論は最後の方にあって要するにそっちの見直しはしませんよという話ですが、そらまあ今その話をうっかりしたら金融緩和の正常化思惑が盛り上がってしまいますからよーせんじゃろ、とは思います。


・マイナス金利の副作用を何で計測するのかというお話

『(前半割愛)The second question is on negative rates, because we've heard quite a lot from you, from other members of the Governing Council, about side effects of negative rates. At the same time, your statement today says, repeats you're committed to adding stimulus if it's needed. The question is how committed you still are, or maybe you're increasingly worried that side effects should actually be reflected in how you express your commitment, how you give your guidance.』

マイナス金利の副作用についてECBメンバーからも指摘の出る中、金利についてはガイダンスをだしておりますが、さて副作用の指摘が増える中でそれはどうなのよって質問ですな。

『President Lagarde: (前半割愛)Side effects: well, first of all we are very aware of the side effects. I think it's been a constant in the policy of the Eurosystem to actually measure, monitor the side effects. This is part and parcel of the work that is done, and we will certainly continue doing that. We might develop that work further. Clearly, what we have done was always intended to deliver on the mandate as defined under the current strategy, to create the conditions for growth.』

この辺は副作用については当然考えておりますがな、という話なのですけど、その話するにも一々「我々は経済が成長する環境を作るために金融政策を行っています」とか説明していて、くどいちゃあくどい。

『On that point I think that the use of interest rates in particular has been quite efficient in order to lower the financing costs. That clearly seems to have worked and seems to work properly when I look at the increase in the volume of financing both for the non-financial corporates and for the households. When I look at the decrease in the cost itself, I think that this is a policy that works. 』

マイナス金利政策は企業の借入コストを下げるのに有効で、その結果企業や家計の借入が伸びているので効果が認められるって話をしております。

『Now, the side effects are a preoccupation, there is no question about that, and we would not be doing our job if we were not monitoring and being extremely attentive to that balance of cost benefit of such measures.』

でもって最後にまた副作用は最大の関心事項であることは間違いありません、という説明をしているのですが、その前の話から想定すると、企業や家計の借入が伸びなくなるとアカンとか言い出すことになりそうなのですが、うーんそれはどうなのかという気がします。でもってこの次にも副作用の質問がありまして・・・・・・・

『Just to carry on with the side effects, do you believe there is such a thing as a reversal rate? Will this be something that is looked at by the strategic review? Will it examine in more depth the side effects of your policies?(後半割愛)』

リバーサルレートのようなものはありますかそれって政策レビューで扱いますかって質問に対して、

『President Lagarde: On the first point, the reversal rate: my understanding of the reversal rate is that you are facing a reversal rate when credit begins contracting.』

と来まして、クレジットが減少するような状況になったらそれはリバーサルレートだ、ということで、まあ言いたいことは分かるんだがそう割り切って良いのかという気はします。

『That's how in economic theory the reversal rate is defined.』

それが経済セオリーによるリバーサルレートの定義です(キリッ)ってゆうとるがそれはちと言い過ぎではなかろうかと。クレジットが落ちる前に当然ながらへなちょこな与信とかへなちょこな投資とかが進んでいって、それが金融機関の与信コスト拡大や保有有価証券などの質劣化に繋がって、金融機関が体力的にアカンから貸出減らすなどと言いだすのはその先にある話なのですからして、クレジットが縮小してどうのこうのだからリバーサルレートとか言ってるのはリバーサルをとっくに超えて時すでにお寿司状態だと思うんですけどねえ。むしろそれをプリエンティブに受け止めて行かないと(個人の感想です)。

『Given the progression rate that we are seeing at 3.8%, the most recent one, in the non-financial corporate sector, 3.5% and growing in the household sector that certainly does not meet the definition of credit contraction. We are still seeing credit expansion. Are we attentive to that credit expansion and those credit numbers? Of course we are, because it's clearly one of the clear objectives that we have to facilitate the financing of growth, to facilitate the investment, facilitate the creation of employment and so on, and so forth. We are not seeing it and of course we are looking very carefully at the indicators of credit growth in the economy.(後半割愛)』

でもって現状では貸出が直近で非金融企業で3.8%、家計で3.5%伸びていて、クレジットの縮小などということは起きておりませんので無問題だし、この借入拡大によって投資や雇用などが伸びているという現象も起きているのを確認してまっせ、ということですから単純に企業や家計向け信用の拡大だけを見ている訳ではない(貸出が伸びてもそっちが伸びないならまあ別の評価をするんでしょ、とは思う)ので、それはそれでへいへいそうだっかという所ではあるのですが、ただまあポイントを貸出の伸びにしているのって、いやだから量だけじゃないと思うんだが、とは感じるのでありますがどうっすかねえ。


・日本化の質問をされたら財政と構造改革の話が出てくるの巻

さっきの質問の後半はユーロ圏は日本化してませんかって質問でそら日本化しとるじゃろとか外野は思いますがそれを言ったらおしマイケルなのでそうは言わないで矛先が財政と構造改革に。

『(前半割愛)Secondly, given that growth continues to be very weak, even by 2020 you're not expected to achieve your core target, your core objective. Do you think there's a risk of Japanification in the eurozone?』

成長見通しが弱くて目標中々達成しないようですがユーロ圏の日本化懸念はどうよ、だそうですがそれってやっぱ人口動態が大きいと思うの(個人の感想です)。

『President Lagarde: (前半割愛)Yes, it is weak growth and it's not at potential. We're seeing reaching towards potential in the medium-term horizon. The 1.4% for 2022, we're getting close to the growth potential of the euro area.』

ECBの見通しって域内の成長見通しがやたら低くて、何せ「We're seeing reaching towards potential in the medium-term horizon.」って中期的なタイムホライズンで成長率が潜在成長並みに近づいてくるとか物凄い勢いでのんびりした見通しになっておりまして、こんだけ金融緩和して(実はマイナス金利政策が全然緩和じゃなかったという可能性がありますがそこはパスしまして)この成長見通しってナンヤソラというとことではあるのですよね。てな訳で・・・・・・・・

『It would be very welcome to have other policies join the monetary policy in order to support the reduction of slack and to arrive at that growth potential and why not exceed it? So that would be very welcome, both in fiscal terms and in structural reform terms as well.』

と、矛先が財政と構造改革に来るということで、別に限界云々の話はしていないし、質問でもそういう話は飛んでこないから既に自明という認識が共有されているのかもしれませんけれども、金融政策単独での限界という言葉を言わずに盛大に金融政策単独での限界というか、金融緩和だけでは加速力はありませんですよスラックを縮小させるためには財政と構造改革にジョインしてもらわないと、とかゆうとる訳で、金融政策万能とか限界が無いみたいなアホウな話はしておりませんな。でもって日本化云々ですが、

『Japanification, I don't think that we are there at all. I think that, certainly from the enterprise credit, there is a major difference between the situation that Japanese enterprises are, or Japanese households are, relative to the situation of the euro area equivalent. I don't think that Japanification is in the cards at all.』

日本化というのは大企業のクレジットなどから来るという話をしていて、これが不良債権問題の話をしているのか、企業や家計の資金ポジションの話をしているのかがこれだけだと良く分からんのですけれども、もし資金ポジションの話をしているんでしたら、それって政府部門が真っ赤っ赤になりますと必然的に民間部門の資金ポジションが余剰になってしまう訳でして、需要が足りなくてスラックを埋めるために財政をホイホイだせば良いのかというと、それを散々やった挙句に民間カネ余りモードになる訳で、クレジットが伸びないのがどうのこうのみたいな話をしながら財政の話をするのも長い目で見るとそこはまた微妙な話になるような気もしますな(個人の感想です)。


・マイナス金利よりもAPPの方が効くのではないかという論点に対して

今回はひたすら何の工夫もなく最初から質疑をずーっと飛ばさずに引用しておりまして、まあ手抜きと言ってしまえばぐうの音も出ないのですが、割とこう質疑が流れるように進んでいるので飛ばさなくてもよいというのがあります。とりあえず日銀総裁記者会見もこのような感じで進んで頂きたいというか、日米欧の中で日本の会見質疑がどうもねと思いますが、最近に関して言えば聞く方よりも、答える方が思いっきり木で鼻をくくった説明に終始している、というのは昨日ネタにしました通りでして、そっちの方がアカンやろとは思います、と思わず全然関係ない悪態。

『If I may, I have two questions and go back to the toolbox and negative rates. As Governor Visco from the Bank of Italy, said in a recent interview with Handelsblatt, I am more in favour of asset purchases compared to negative rates. The impact of negative interest rates is small and with potential negative side effects, as we said. The impact of asset purchases is larger and more widespread. What is your opinion on this comparison?(後半割愛)』

イタリア中銀のビスコ総裁が独ハンデルスブラッド紙のインタビューで話した内容をリファーして質問していますが、ビスコ総裁の見解としてはマイナス金利の効果は小さくて潜在的な副作用がある一方で、資産買入政策のインパクトは大きくてより広がる、という話で、ラガルドさんのご意見は如何でしょうか、という質問。

まあビスコ総裁の話は前半は仰せの通りですが後半が???でして、結局のところAPPでイタリア国債買えってポジショントークのような気もせんでもないですがラガルドさんの答えですが、この部分パラグラフの切り方が変で次のパラグラフの途中まで前半の質問の答えがあって、後半は中央銀行の独立性という意味で財政云々の話を絡めた質問ですけどそれは割愛しますが、その答えが引用部分の先にあるという図になっておりまする。

『President Lagarde: All right, on the toolbox, I'm not going to revisit the past, number 1. Policy decisions that were made, stand, and were re-endorsed yet again. My view of it is that they form a package.』

「困った時のパッケージ」という言葉は今勝手に作りましたが、日銀ちゃんの得意とする説明でして、例えば「リスクプレミアムの過度な拡大に対応」という名目でおっぱじめた筈のCP社債買入などが、どこからどう見てもその役割を終了しているのにも関わらず「パッケージとして効果がある」などと意味不明の供述を繰り返しながら漫然と継続されているというような事案がございまして、政策のツールについて意味を持たせながら実施しているのに、個別ツールの効果や存在意義について説明が苦しいと見るやすかさず「パッケージとして効果を発揮している」という説明をするのは中央銀行(というか政策当局)の得意技でありますな。でもってラガルドさんもここは突かれるとややこしいので「パッケージ」で回避するのでした。

『There were several components to that package and I think that the intention was for some of the measures, such as the interest rate, to actually have an impact on the short-term end of the yield curve, the forward guidance that was also part of the package that gives a clear calendar and induces an automatic adjustment, depending on the state of the economy. It also gives and is intended to have an impact on the medium-term end of the curve. The asset purchase programme that was re-initiated is intended to have an impact on the long end of the yield curve.』

とは言え一応個別の説明はしていますが、基本的に金利を下げるという話をしておりますの。

『Based on what we are seeing, all three seem to have had the impact and certainly it has been perceived as such. I'm not going to dissect between each and every item of the package.』

でも結局パッケージで逃げております・

『I think that they are there together. The two-tier system was clearly an additional attribute in order to deal with some of the negative effects that you've referred to, and is also part and parcel of the package. I wouldn't take a view on one element or the other.(後半割愛) 』

政策運営の二つの柱(ちなみにこの二つの柱はECBが先で日銀は後でその用語を使いだしましたが英文に直した時に真似っこにならないようにしている)まで持ち出してきたか、という所です。


てな訳でダラダラと質疑を最初から読んでいてまだ半分弱なのですが本日は時間が無くなってしまいましたのでここでご勘弁願いたく存じます。虫干しネタでサーセン。







2019/12/23

お題「国債発行計画備忘メモ雑談/MPM総裁会見は何ちゅうかこう雑ですなあと思いました」

ふーん。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191219-00000109-kyodonews-pol
維新「司書はAIで代替可能」 唯一反対、増員決議できず
12/19(木) 15:52配信

『学校図書館で子どもの読書や学習を支える学校司書の配置増を求める国会決議案に、与野党で唯一、日本維新の会が「近い将来、司書の仕事は人工知能(AI)で代替可能になる」と反対し、臨時国会(9日閉会)への提出が見送られていたことが19日分かった。』(上記URL先より)

何でしょうねえここ教養の軽視ってのは、まあそれでしたらまず隗より始めよって言葉もありますので維新の議員さんは全員AIに代替したらよろしいんじゃないでしょうかねえ。


〇国債発行計画キタコレだが発行上振れ回避するのは真正面からやった方が良いのではないかと

https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2020/191220.html
令和2年度国債発行計画等を策定しました
令和元年12月20日
財務省

https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2020/calendar191220.pdf
<カレンダーベース市中発行額>

40年が+0.6兆円で流動性供給入札が▲1.2兆円というのは事前観測通りですし、その内訳も事前観測通りですが脚注が色々と怪しい。

『(注1)市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や発行状況に応じて、年度後半の発行額を変更する可能性がある。』

ふーんという感じですが、市場環境で一々ホイホイ変更するというよりは(というかそれはあんまりやるべきではない)発行状況という方で、額面と手取りのブレが大きいので減額調整あるでよという話だと勝手に妄想するというかそういう推測がコンセンサスだと思うのですがそうですよね。

『(注5)流動性供給入札については、右表のゾーン区分・発行額で行うことを想定しつつ、市場参加者と の意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整。』

ということで流動性供給入札は5-15.5年を年間1.2兆円減額することになりましたが、まあこれ自体はPD懇でも減らせるのここでしょの大合唱だったので順当な話ですな。

でもって最後の脚注が、

『(注6)利付債の表面利率の下限を0.1%から引き下げることとし、各社の対応状況を踏まえつつ、令和2年10月以降実施することを予定している。』

おーマジかよ刻み変えるのやるのかよー、と思うのですが、まずもってこの状況ってマイナス金利政策などという珍妙な政策を実施しているから起きている弊害(財務省的には金利が低くてウマーですけどね)なのでありまして、マイナス金利とかいうトンチキ政策が解除されればこんな件で悩まんでも済むというのに、「令和2年10月以降実施することを予定している」とかいう事ですから、これはもう財務省様におかれましても日銀のマイナス金利政策の長期化を見込んでしまいましたという事でして、本来政府と日銀の共同声明には「これをできるだけ早期 に実現することを目指す。」とあるのですから早期に実現してマイナス金利も解除という話になる筈なのですが、惜しくもこのような予定を組まれてしまいまして、しらっと日銀をdisっている格好になっているのがチャーミング。

しかし何ですな、これ長期化したらそらそれで慣れの問題になるのかも知れませんんが、少なくともマイナス金利終わってしまうと、後々になって10年既発で1銘柄とか2銘柄だけ変な刻みのクーポンの国債が残る形になっちゃって、後々その銘柄だけ嫌われ銘柄とかになって変な歪みが起きそうですな。

それにこの話ってどう見てもマイナス金利政策やっている時限定の話でしょ(カンナ屑程度でもプラスの金利になっていたら0.1クーポンで何の困ることがありましょうぞという話だから)と思う訳でございまして、何ちゅうかその為にこういう手間暇かかりそうな対策するの???って感じで、もし発行手取り額が上振れて困るというのであれば、正面切って発行を減額する方が筋なんじゃないのかね(予算を先に決めないとイカンとかそういう話はあるにせよ)とは思いますし、余計な事務対応が発生しないからその方が良いような気がするし、大体からしてそらプライマリーディーラーとかは対応できるかも知れんけど、それ以外の人たち対応するのめんどい、かどうかは良く分からん、別に刻みの細かい債券はあるので大丈夫ちゃあ大丈夫のような気もするが、まあその辺の手間暇との天秤とは思いますけど。


あとご案内の通り、
https://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/pd/index.html
国債市場特別参加者制度

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/200106.pdf
国債市場特別参加者制度運営基本要領
(令和2 年1 月6 日改訂版)

つーことで新旧表を見ると、

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbsp/200106ComparisonTable.pdf
国債市場特別参加者制度運営基本要領 変更案(新旧表)

第U非価格が15%→10%になっていまして、これも上振れ抑止策ということなのでしょうが、元々が10%だったのが途中から15%になりまして、今回元に戻す形ではあるのですけれども、プライマリーディーラーに参加するメリットを削減するってえのも(お家の事情は分かるけど)微妙にもにょる話ではありますなあ、とは思いまする。



〇控えめに申し上げて政策に関する説明が投げやりと思うのですがこの総裁会見

定例記者会見、まあヘッドラインは追いかけていたものの超長期金利云々のところくらいしか反応する箇所も無かったという感じではありますがそうは言いましても鑑賞するとこれがですなあ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk191220a.pdf

・景気認識に関して

という割と普通の質問が来ました。まあどうせでしたら10月のMPMの時点でそれまでの黒田節を引っ込めて、最近は更に先行きの緩和バイアスに関してが棒読み感満載になっている(雨宮副総裁の金懇など)という変化について質問して頂きたい所ではありますがまあこれはこれで正統的に良い質問。

『(問) 米国と中国が貿易協議で部分的な合意をしました。海外経済のリスクというのは少し減少したというようにお考えでしょうか。また、国内経済につ いても 10 月のときと景気認識に変化はございますでしょうか。』

でもって回答。

『(答) 確かに、米中の貿易協議の部分的な合意であるとか、英国の総選挙の結果として合意なき離脱のリスクが低下したとか、その他海外のリスク要因について若干明るい方向への動きがあることは事実ですが、やはり依然として海外経済のリスクは全体としては高い水準にあり、警戒を要すると思っています。』

声明文の表現を「リスクが高まりつつある」から「高い」に変化させてベクトルをやっと横向きにしたというのがジャパン。よくよく考えてみればFEDにしろECBにしろその辺のリスク認識は下げてきている(から緩和打ち止めという話になる)という一方で周回遅れでリスク認識の話をしているというのがもうねという感じです。

『特に、米中の貿易協議の進展を受けて、15 日に予定されていた米国による対中 追加関税が見送られることによって、米中貿易摩擦が一段と拡大する事態が回避されたことは結構なことだと思います。国際金融市場でも好感されており、 投資家のリスクセンチメントはひと頃に比べて改善していると思います。今後、 グローバルな通商関係が安定化して、現在縮小している世界貿易が再び活性化していけば、世界経済にとって大きなプラスになると期待されます。』

うーんこの説明。寧ろ問題になってるの貿易戦争で企業活動のマインドが下がっているという話しであって、「通商関係が安定化して現在縮小している世界貿易が再び活発化していけば」って確かに企業マインドが改善したら世界貿易の活発化につながるからゆうとること自体が変な訳では無いのですが、本質は貿易障壁がある無いの話ではなくて、この問題って特に日本の貿易先における企業活動マインドがどうなっているかというのが効いてくる話じゃないかと思うのよね。でもってその観点ではなく単に貿易交渉ガーとか言われましても何ちゅうかこの説明に心が込められていない感がするんですよアタクシとしましては(個人の偏見です)。

『ただ、今 後の米中通商交渉の行方については、両国の間になお対立点が残っていることもありますので、引き続きその帰趨を注視していく必要があると思います。また、英国のEU離脱の問題につきましても、来年 1 月 31 日に合意なき離脱に なる可能性はほぼゼロになったと思いますので、離脱して 1 年間の経過期間に EUとの新しい経済関係の構築を図ることになると思いますが、これも 1 年間の経過期間の間にどこまで新しい経済関係が構築されるかといった点にまだ 若干不透明な点も残っています。』

それはそうなんだが。

『このため、海外のリスクがひと頃に比べて若干低下したというか、やや明るい兆しがみえてきたことは事実ですが、依然と してかなりリスクは高い水準にあり、引き続き注意していく必要があると思い ます。日本経済そのものについては、緩やかな拡大が今後も続いていくとみています。』

という説明になっているんだが、これ日本の話をどスルーしているのも雑な話でして、そもそもおまいら最初に政策金利のフォワードガイダンス入れた時に「消費増税の影響ガー」って言ってた訳でして、まさしく消費増税ぶっこんだ影響が徐々に見えてくる時期に差し掛かっているというのに、この質疑の中で消費増税の話に触れない(確かに質問のマクラは「海外」だったから答えないと言われてしまえばそれまでかも知れないけど)で、日本経済の話は1行コメントってのがこれまた雑な説明してやがるなと思う訳ですよ。

だってそうでしょ、元々消費増税の影響をはじめとする不確実要因がどうのこうのというのを政策金利を上げない言い訳として声明文に書いているってことは、少なくともそのレビューが一部でも実際にできる時期になっているのだったら最重要だった筈な訳で、むしろ聞かれる前に説明する位の話なんですが、この前に出てくる冒頭説明では消費税については「消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも」とか「消費税率引き上げなどの影響を受けつつも」とかしか言及せん訳でして、まあつまりこれはそもそも当初にぶっこんだフォワードガイダンス文言における消費増税云々というのは単におためごかしに入れていた、という話だったという事になってしまうので、もうちょっとそういうの整合性というのを考えて頂きまして、「消費増税の影響については現時点では懸念していたような大きな問題にはなっていないことを今回も点検の結果確認しました」くらい言われる前に説明して、せめて整合性くらいは気にして頂きたいと思う所であります(って小姑かお前はとか言われそうだがまあ細かいのよワシは)。


・追加緩和バイアスについて正面から聞かれると追加緩和バイアスとは答えるでしょうが

次の質疑ですが、

『(問) FRBが 3 回続けてきた利下げを休止して、ECBもこの間の会合では現状維持でした。10 月頃と比べるとだいぶ海外の金融政策の状況が変わって きていると思いますけれども、総裁自身の追加緩和への心持ちというか気持ち、 考え方は、10 月の会合時点と比べて変化はございますでしょうか。』

金利のフォワードガイダンスにECBの真似っ子で無駄な緩和バイアスを入れるというオリジナリティーの欠如としか申し上げようがない文言が入っているので緩和バイアスという答えをするのは仕方ないとしてさてその回答は。

『(答) FRBにしてもECBにしても、特にFRBは昨年、正常化に向けて バランスシートの縮小や短期金利の引き上げを行いましたが、今年に入って、世界経済の不透明性その他に鑑み、政策金利を 3 回にわたって引き下げました。 その後、おそらく米国経済が比較的堅調に推移しているといったことを踏まえて、今回、金利については変化させずに、当面、米国経済の状況や金融市場の動向を見守るということになったのだと思います。』

『ECBの場合は、正常化に向けた準備が行われていたのですが、やはり今年に入って、EUの経済がやや減速したことを踏まえて、金融緩和をもう一度行いました。その後の状況をみて、今回は、特別な変更を行わなかった、 ということだと思います。』

で?

『わが国の場合は、経済は、比較的緩やかながら拡大を続けていますが、物価は、依然として、0%台半ば前後というところですし、様々な海外のリスク等を踏まえて、ずっと大幅な金融緩和を続けてきました。特に、海外経済の動 向を中心に、下振れリスクが大きくなったということで、7 月の金融政策決定会合以降、金融緩和方向への意識を強めて政策運営を行うスタンスを明確にしてきました。このところ、世界経済には前向きな動きもみられていますが、引 き続き不確実性が大きいので、やはり経済・物価の下振れリスクには注意が必要な情勢が続いています。従って、引き続き、緩和方向を意識した政策運営を行っていくことが適当ではないかと考えています。』

うーんこの棒読み感。まあこう答えるしかないと言ってしまえばそうかも知れんけど何だかねえ。


・マイナス金利についての質問

次がこんなんありました。

『(問) 今日、スウェーデンの中央銀行がおそらくマイナス金利政策を解除する見通しです。ECBの先立ってのマイナス金利の深掘りの後のマーケットのリアクションであったり、FOMCの議事録とかを見ていても、マイナス金利の有効性に対する懐疑的な見方というのが拡がっているようにも思われるのですが、改めて今、日銀として行っているマイナス金利政策への評価を総裁からお聞きしたいと思います。(後半割愛) 』

まあ当然肯定評価するのは当たり前ですが。

『(答) スウェーデンのことについては、まだ私から具体的に申し上げる段階 ではないと思います。スウェーデン経済は、比較的順調・堅調に推移しており、成長率の面からも物価上昇率の面からも、好ましい状況が既に実現しています ので、金融政策についてそういったことが考えられ得るとは思いますが、具体的なことについてはまだ私から何か申し上げるのは僭越だと思います。』

まあ当然こう答えるわな。

『なお、ECBは、以前の金融政策決定会合で、ユーロ圏経済の減速が著しかったこと を踏まえて、様々な緩和措置をとる一環としてマイナス金利も更に深掘りしま した。ただ、その際に、当座預金の全てにマイナス金利を適用するのではなく、わが国と同様に階層化し、一部にマイナス金利を適用する形にしたうえで、マイナス金利を更に深掘りしたということだと思います。』

というのは分かるのだが、

『マイナス金利だけを取り出して議論するというよりも、経済・物価・金融情勢に応じてどのような金融緩和を行うか、ということの一環として行われているということではないか と思っています。』

で??

『わが国については、日本銀行の当座預金のごく一部に−0.1% の金利を適用するという金融調節方針は、適切だと思いますし、今回の金融政策決定会合でも維持することが決められました。(後半割愛)』

という事で話を当座預金の階層化とかの技術論の方に逸らしてスルーする次第で、副作用対策がどうのこうのという話ですらないのが(そらまあ正面切ってマイナス金利の弊害についての言い訳できないのは分かるが)マイナス金利継続の説明が政策の追加的効果とデメリットの累積みたいな正面切った話で行うのは苦しいから横道の説明をせっせと行う、という流れに繋がっているんだと思います(個人の感想です)。


・そんなんではさすがに許さずにマイナス金利の弊害に関する質疑はいくつも登場

まずは預金金利の話ですな。

『(問) マイナス金利に関連する質問なのですが、今、一部の銀行で口座維持手数料の導入を検討するような動きも出始めているということなのですが、こうした動きについてはどのようにご覧になっていますでしょうか。マイナス金利政策を導入した当初から、こうしたことは想定されていたのでしょうか。』

というか寧ろマイナス金利政策ってのは預金金利がマイナスにならんとポートフォリオリバランスも何も限定的になるし、マクロ的に絶賛預金超過の状態になっていて市場金利がマイナスで預金金利がゼロ金利制約だったらただの金融機関課税にしかならないのですから、当然ながら当初の時点で預金金利がマイナスになって、社会的批判に関しては当然日銀が引っ被る、という覚悟をもって政策をぶっこんでいかないと話にならんのですが、まさかとは思いますがその前に導入した補完的措置が全然効かないどころか「政策の限界」とか言われだして、その限界論に対して脊髄反射でプッツンした結果がマイナス金利だったとかそういう事は無いですよね。

『(答) 口座維持手数料云々というのは、いずれにせよ各金融機関の経営判断 にかかることなので、具体的な個別案件のコメントは差し控えたいと思います。』

金利叩き潰すことによって金融機関の基礎的な利鞘を叩き潰しているの日銀なんですけど。

『一般論としては、そもそも最近は金融機関において、ATMによる公共料金の支払いやインターネットバンキングの普及など、決済サービスの高度化が図ら れています。一方で、個人情報保護、マネロン対策などの社会的な要請に応える取組みが進められており、そういったことに伴って、一定のコストというのは当然かかるわけです。このように、社会インフラである決済システムをより 向上させていく観点からは、提供される決済サービスの内容とこれに対する適正な対価としての手数料をどのようにバランスさせていくかということについて、考えていくことが重要だと思います。』

お前は何をいってるんだという感じでして、金利が無かったらこういう業務を運営していく中で上がって来る収益が無くなるからそら赤字だ何だという話になるんですけどねえ。

『マイナス金利と直結して、こうい うことが起こるということではなく、そもそも金融機関の提供するサービスについては、当然そのコストに見合った手数料というものが徴求されることは普通のことだと思います。ただ、具体的にどういう形でどのようにコストをカ バーするかというのは、それぞれの金融機関の経営判断に任せられていると思います。』

この屁理屈については放置プレイをしておくとそのうち日銀が金融緩和の効果として金融機関の経営見直しが起きてコスト構造の改善が起きたとか言い出す一大シバキアゲ理論を言い出しそうですな、あーオソロシ。


てな訳ですので、

『(問) そうしますと、この先も金融緩和の手段としてマイナス金利の深掘りというのは選択肢の 1 つであるということでしょうか。』

というのは単体ではしょうもない質問っぽいけれども、黒田さんの方が「無限に金利を下げられるのか」という質問を含意しているという反応をしているのでまあ良い。

『(答) それはその通りです。もちろん、マイナス金利というのも、いくらでもマイナス金利にできるという話でもありませんし、マイナス金利が非常に大きなものとなり、それが金融機関の収益に大きな影響を与えるということになれば、金融仲介機能にもマイナスの影響があり得ます。今のところ、そういう水準では全くありませんので、マイナス金利の深掘りというのも、金融政策として必要な事態になれば十分あり得るとは思います。いずれにせよ、金融政策 についてはマイナス金利だけでなく、あらゆる金融政策手段についてその効果と副作用を常に点検していく必要があると考えています。』

マイナスを幾らでも下げるわけには行かない、という答えだけはマシなのですが、現状認識がおかしいし、デメリットが累積するという時間の問題を(聞かれてないから答えていないだけと言ってしまえばそれまでですが)スルーですかそうですかという所で。

でもって更にマイナス金利のデメリットに関する別の方からの質問。

『(問) 総裁はかねてから、政策運営に当たってはコストとベネフィットを比較しながら決めていくというようにおっしゃっています。昨今、手数料を設け るという話もありますが、地方銀行の経営状況をみてみますと、中間決算でも 減益になる金融機関が多かった、あるいは年金運用にしても、予定利率を見直して事実上減額になるような制度変更をするような企業も出てきております。 ベネフィットを上回るようなコストになっていることはないから、現状維持を しているのだと思うのですが、そのコストをみてみますと、今のところ少し以前よりも増えつつある、あるいは注意が必要な情勢になっているというように お思いでしょうか。』

デメリットの累積に関する質問ですな、よすよす。

『(答) その点は、私どもも十分に認識しており、「総括的な検証」でイール ドカーブ・コントロールを導入した際にも申し上げたように、短中期の金利引 き下げは内需を刺激する効果が非常にあるわけですが、特に超長期の 20 年、30 年、40 年といったところの金利の引き下げは、むしろ年金や生命保険の運 用利回りの低下を通じて、消費者のマインドにマイナスの影響を与える惧れが あります。金融緩和は必要な限り続けるわけですが、その場合にも、そういった副作用には十分に注意しなければならないということで、イールドカーブ・ コントロールを導入し、適切なイールドカーブを形成してきたわけです。』

って説明しているんだけどさ、だったら「短期金利を下げるぞ下げるぞ」という黒田節をやった結果のあの相場ちゃんというのを見れば分かるように、政策金利を下げるぞのやるやる攻撃やっている時が一番イールドカーブにフラット化圧力が掛かりやすい訳ですからして、寧ろやるべきことは短期政策金利の引き下げを行い(行えば短期の金利は下がるわな)、その一方で金利引き下げの打ち止め宣言をして、先行きの金融政策に関しては横ばいから状況が改善すれば引き上げ方向、って形で示した方がよっぽど短期の金利は下がるしイールドカーブは立つと思うんですけど何でフォワードガイダンスの政策金利の部分で緩和バイアスを入れるんですかねえとしか申し上げようがない。この1年、達観してみれば超長期の金利って思いっきりフラットニングしているんですけど。

『そういった意味では、コスト面にも十分配慮していく必要があり、配慮してきていると思いますし、今後も更にそういう必要性が高まっていく可能性はあると 思っています。』

どう見てもフラットニングが進行しているのですから全然配慮になっていませんが。でもって何故かここで金融機関経営の長広舌が始まる。


『また、金融機関に対する影響という意味では、常に金融システムレポートでも書いています通り、低金利の状況が続く中で金融機関の収益にマイナスの影響を与える可能性があるということですが、その一方で、地域における人口減や企業数の減少ということもあって、やや構造的に貸出業務に基づく収益が低下してきているというトレンドもあります。』

はいはい構造問題のせい構造問題のせい。

『今の低金利の状況だけで なく、そういった構造問題もあって影響が出ているという中で、確かに、低金利環境が長く続くと金融機関の収益にマイナスの影響が出てくる可能性があ るわけですし、そうなった場合に金融仲介機能が損なわれると、まさに金融緩 和の効果が損なわれることになりますので、そうならないように留意する必要があります。他方で、そうしたもとで過剰なリスクをとった結果として金融機 関にダメージが生じれば、これも金融仲介機能が損なわれることになりますの で、低金利環境が続くもとでの金融機関への影響を十分注視していかなければならないですし、注視しているわけです。』

注視だけなら猫でも出来ますが。

『特に、ここ 6、7 年、地域金融機関も、英語で言うと respectable と言うのでしょうか、相応の収益、利益水準を保ってきたのですが、貸出に基づく通常の金融機関のビジネスの利益はずっと減少し、それが株式や債券の売却益と信用コストの低下で埋め合わされ、ある意味で相応の収益水準純益が保た れてきました。しかし、今後もそうたくさんキャピタルゲイン、益出しができるようなものがあるわけではないでしょうし、信用コストもここまでくると若干底打ちと言いますか、反転の兆しもありますので、ますますこういった金融 機関への影響、金融緩和や低金利環境が長続きすることの副作用に十分注意していく必要があるということは、私どもが前から言っている通りです。』

でも何もしないんでしょ?

『ただ、現時点で、信用仲介機能が損なわれているかと言われると、金融機関の融資は 2%台半ば程度の増加が続いていますし、ヒートマップでも赤信号がたくさん点いているわけではありませんので、信用仲介機能が衰えるということにもなっておらず、過剰なリスクをとって何か行き過ぎになっている ということも今のところありません。このため、直ちにどうということではありませんが、やはり注意していく必要があるということはその通りだと思っています。』

えーっとすいません顕在化した時には手遅れなんですけど・・・・・・・・・・・・・・・・


とまあここやたら大演説をぶっこんでいまして、一応なんか言って置かないとヤバかろうという認識はあるんでしょうなあ、というのは何となく把握しましたが、説明自体は相変わらずの状態であることには変化がありません。


・ハマコーとな

この質問はワロタ、というか浜田大先生って影響力あるの?????

『(問) (前半割愛)また、安倍首相のブレーンである浜田宏一内閣官房参与が、弊社のインタビューで、マイナス金利は銀行の経営体質を低下させて、金利が下がり過ぎると却って経済にマイナスに働くという「リバーサル・レート」の発生を招く惧れがあるので、避けるべきであるという発言をされました。かつて日銀の大胆な緩和を支持していた、かつ安倍首相のアドバイザーである浜田氏から、 こうした日銀の政策の副作用についての発言が出たことについてのご所見をお願いします。』

そもそも弊社ってどちらの弊社さんでいらっしゃりますかぬ、という位にノーケアーでしたが。

『(答) (前半割愛) 次に、浜田先生の発言について、詳細は存じませんが、マイナス金利 は金融緩和政策のパッケージの中で行われているわけですし、浜田先生自身も 今のマイナス金利をやめろとか、金融緩和をやめて正常化しろといったことをおっしゃっているのではないと思います。私どももマイナス金利に限らず、金融緩和、特に低金利環境が長期化するもとで、金融システムにどのような影響 が出るか、あるいは副作用が大きくならないかということは十分注視していますので、私どもの政策を批判されたとは思っていません。』

一々相手にする気が無いというのは把握しました(^^)。


・でもって超長期イールドカーブ発言なんですが

木曜の会見のハイライトというか他のネタは今更相場ちゃんが動くネタでもないのですが、こちらは毎度の露骨発言キタコレということでイブニング何銭かは反応していましたな。

『(問) 総裁は、少し前になるのですが、イールドカーブのフラット化につい て懸念を表明されていたと思います。それから少し時間が経って、超長期金利も上がってきて、今のイールドカーブの形状についてどういうふうにご覧になっているのか、一部では超長期がフラット化していることについて少し懸念 もあるようですが、その点についてもお願いします。』

でもってこのお答え。

『(答) 私も、超長期のところはもう少しスティープになってもいいのではな いかと思っていますが、私どもの金融政策の操作目標は、当座預金の政策金利残高について−0.1%の政策金利を適用し、10 年物国債の操作目標をゼロ%程 度にするというもので、そのもとで適切なイールドカーブの形成を期待すると しています。また、必要があればそれぞれの年限の国債の買入れ額について調整を行ってきているわけです。ですから、今のイールドカーブが非常に困ると いうことではないと思いますけれども、私自身は、もう少し超長期のところが上がってもおかしくはないと思っています。』

何かね、投げやりというか雑というかな発言にも程がある訳でして、まあそもそも論として政策金利のフォワードガイダンスで追加緩和バイアスを掛けている状態で超長期の金利がスティープする訳ねえだろナメトンノカ(今は単に政策金利のフォワードガイダンスにおける緩和バイアスを市場が完無視しているから金利が上がっているだけの話)というお話だし、こんな品のない言い方をしなくてももっと伝える方法はあるはずですわな。

つまりですね、「海外経済や消費増税などのリスクはここに来て低下してきている、しかも今後政府の実施する財政支出が景気刺激的に働き、経済物価情勢に好影響を与えるとみられる中で、市場金利もこれを反映して直近ではやや上昇傾向がみられるが、これは経済物価情勢を踏まえた自然な動きであると認識してる」とか説明するならそういう言い方をしろよ中央銀行なんだから、と思う訳で、「経済物価情勢を踏まえた自然な市場金利の形成」というような話からの経済物価情勢へのアセスメントの説明をするってのが本筋だろ常識的に考えて、と言う中で思いっきりマニュピレーションみたいな話ししかしない辺りが、もうこのやる気のなさというか投げやり感というか、もうちょっとまともな説明してくれやゴルァと思うのでありました。

てな感じで、まあ今回の会見、やる気云々という以前の問題で雑な受け答えが多いなあと思いましたです、消化試合でもプレイはちゃんとやっていただかないと困りますんで。






2019/12/20

お題「スウェーデンマイナス金利解除キタコレ/MPMレビュー」

日銀とか言ってる場合ではなく昨日のハイライトは日本時間17時30分ですがなってことで、声明出たあとリクスバンクのサイトが重くなってたような気がするが気のせいかもしれん。

〇スウェーデンマイナス金利解除キタコレ

まあ前回予告通りではあります。でもっていつもの事なのですがこちらのURLがクッソ長いのでリンクは途中までの所にしか貼らないようにして(しないと画面が乱れると思うので)おりますがちゃんと飛ぶ予定になっておりますので宜しゅうに。

https://www.riksbank.se/en-gb/press-and-published/notices-and-press-releases/press-releases/2019/repo-rate-raised-to-zero-per-cent/
Repo rate raised to zero per cent
Press release

『Inflation has been close to the Riksbank’s target of 2 per cent since the start of 2017, and the Riksbank assesses that conditions are good for inflation to remain close to the target going forward. Therefore, in line with the assessment in October, the Executive Board has decided to raise the repo rate from -0.25 per cent to zero per cent.』

(;∀;)イイハナシダナー

『The forecast for the repo rate is unchanged, and the repo rate is expected to remain at zero per cent in the coming years. 』

とは言いましても向こう何年間かはゼロ金利政策が続くってんですから(これも10月の公表通り)まあ出口云々という話ではないのですけれども何はともあれマイナス金利解除ですよマイナス金利解除。でもって声明文。

『Inflation on target』という小見出し。

『Similar to economies abroad, the Swedish economy has entered a phase with lower growth. However, the slowdown is occurring after several years of high growth and strong developments on the labour market, and overall it means that the Swedish economy is going from a stronger-than-normal cycle to a more normal situation.』

海外諸国と同様にスウェーデン経済もやや成長鈍化の局面に入ってきていおり、その影響は労働市場がこれまでの強い改善からややスローダウンという辺りに表れているが、これは経済がノーマルよりも高いレベルのサイクルからノーマルなレベルへの変化ということを意味する(ので無問題)。

『Inflation has been close to 2 per cent since the beginning of 2017. After an expected decline over the summer, it has once again risen to just under 2 per cent.』

まあゆうてこれがある訳ですので、どうせ日銀にスウェーデンの話をぶつけても「いやいやいや物価目標達成している状態が続いてからやっとマイナス金利解除なのですから物価水準が全然アカンタレの日本でマイナス金利解除とか何をおっしゃるウサギさん」と切り返されて軽く一刀両断で終わってしまうと思われるのが残念無念。

次の小見出しが『Monetary policy remains expansionary』

『Developments since the monetary policy meeting in October have on the whole been as the Riksbank expected. The economic prospects and outlook for inflation are largely unchanged. The Executive Board has therefore decided to raise the repo rate from -0.25 per cent to zero per cent, in line with the forecast from October.』

前回の決定会合以降の推移は見通し通りであるので、10月会合で予告したように利上げしますぜ。

『The forecast for the repo rate is unchanged, and the rate is expected to remain at zero per cent in the coming years. In accordance with the decision from April 2019, the Riksbank is purchasing government bonds for a total nominal amount of SEK 45 billion, with effect from July 2019 to December 2020.』

金利パスについてはこの声明文の下の方に表が出ていまして、

Forecast for the repo rate Per cent, quarterly mean values

       2019 Q3     2019 Q4    2020 Q4    2021 Q4    2022 Q4
Repo rate -0.25 (-0.25)  -0.25 (-0.25)  0.00 (0.00)  0.00 (0.00)  0.13 (0.13)
Note. The assessment in the October 2019 Monetary Policy Report is shown in brackets.
Source: The Riksbank

ってあるので、利上げ幅が25bpだとすると2022年の10月終わり位に利上げとかこらまたエライ先の話になりますなって事ですな(なおその話は前回予告ホームラン通り)、ナムナム。

でもって国債買入は継続します(7月開始してて来年末までのトータルが450億スウェーデンクローナだそうな)とのこと。

『With this expansionary monetary policy, the economy is expected to be balanced in the coming years and conditions are deemed good for inflation to remain close to the target going forward.』

そもそも「expansionary monetary policy」によって経済が「is expected to be balanced」というのもナンヤソラという見通しではあるのですが、まあこう言って置かないと正常化という話になってしまいますのでこういう話になる。

でもって次の小見出しが『Monetary policy adjusted according to outlook』でして、

『If the economic outlook and inflation prospects were to change, monetary policy may need to be adjusted.』

そら(仮に見通しに変化が生じれば)そう(金融政策の調整が行われる)よ。

『Improved prospects would justify a higher interest rate. But if the economy were instead to develop more weakly than forecast, the Executive Board could both cut the repo rate and take other measures to make monetary policy more expansionary.』

見通しが悪化したらまた利下げするし他の拡張的な施策をするよという部分が仮定法過去になっていて、見通しが改善する方は仮定法になっていない(もののwouldだから別に強い話でも何でもないと思うけど)辺りは一応今後改善するとイイナア位のお気持ちは籠っているのでしょうかねえ、知らんけど。

次の小見出しが『Important with measures to mitigate risks linked to household indebtedness』と来ていますが、北欧諸国ってのはどうしてそう家計がホイホイ借金するんだ(デンマークとか家計債務のGDP比とかがOECD諸国の平均を軽くぶち抜いている筈)。

『Swedish households are heavily indebted and thereby sensitive to changes in economic conditions.』

ほうほう。しかし「heavily indebted」って中々チャーミングな表現ですな。

『In order to reduce the risks linked to household indebtedness and address the structural problems on the Swedish housing market, measures within housing and tax policy and appropriate macroprudential policy are required.』

ということで住宅市場および家計の借金体質がスウェーデン経済のリスクでありマクロプルーデンシャルな政策対応が必要です。という話をしておりまして、まあそうでしょうなあとか思うのですがこれが北欧の仕様のようなのでまあアレ。

でもってリクスバンクってマネタリーポリシーレポートを年に6回も出していて今回もだしていたりするのですけれども、まあその辺まで追いかける時間はない(というか普段さすがにこの中銀まで追っかける体力が割けない)ので今日は勘弁ということで(そのうち気が向いたら読みますけど)。

まーこれマイナスをゼロにしたからと言って別にそれで経済コケるとかそういうこと無いでしょ(個人の妄想です)と思うのでありまして、スウェーデン経済に置かれましては是非とも堅調に推移して頂きまして、何なら物価が上振れて利上げ前倒しになっていただきとう存じます。なお声明文の中には政策金利だけではなくて経済物価見通しも入っていますが、

左から2018、2019、2020、2021、2022の見通し(年平均)で()が前回10月見通し

CPI 2.0 (2.0) 1.8 (1.8) 1.8 (1.9) 1.8 (1.8) 2.1 (2.1)
GDP 2.2 (2.3) 1.1 (1.3) 1.2 (1.2) 1.7 (1.6) 1.9 (1.8)

とかなっていまして、今年鈍化した成長が来年も鈍化したままで、再来年からまた上昇するんだが物価の方に反映するのはラグ1年となっていますな、でもって感応度弱いですがなとか思いますが、2018年と2019年の実績値見ると2019年に成長鈍化する中でCPIそんなにサガランチ会長なのでまあこれはこれで良いのですかねえとか思いながら見通しを見るのでありました。関連面白ネタでも探してみまして何かありましたら続報という事で。


〇MPMレビューの方を後にするという不届き者ですがまあノーイベントだから勘弁してくらはい

・声明文現状判断:自然災害を言い訳にして現状判断と生産を下方修正し公共投資を上方修正

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k191219a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/k191031a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1910a.pdf(前回展望レポート基本的見解)

政策は変更が無いので項番2から。前回が展望レポートの回なので基本的に景気認識の話は展望レポートにあって、声明文にあるのは政策ガイダンスの所だけになりますので比較引用先が微妙にずれますな。

『わが国の景気は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。』(今回)
『わが国の景気は、輸出・生産や企業マインド面に海外経済の減速の影響が引き続きみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している。』(前回展望レポート)

経済の判断自体は例によって例のごとく「基調としては緩やかに拡大している」といういつもの結論になっておりますが、前回「海外経済の減速の影響が引き続きみられるものの」ってあった所に今回は、「影響から〜弱めの動きがみられるものの」になっていて、弱めの動きってのが入っておりますんで現状判断下がってるじゃろという話。

ただしこの理由に新たにぶっこんだのが「自然災害など」ということで、天災なので致し方ないし、自然災害要因なので連続的に引っ張る要因ではありません、という話になるのであくまでも一時的でヘーキヘーキ、ということにしたいんでしょうな。


『海外経済は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は弱めの動きが続いており、鉱工業生産は、自然災害などの影響もあって、足もとでは減少している。』(今回)

『海外経済は、減速の動きが続いているが、総じてみれば緩やかに成長している。そうしたもとで、輸出は弱めの動きが続いている。』(前回展望レポート)
『以上のように、輸出は弱めの動きが続いている一方、国内需要が増加していることから、鉱工業生産は横ばい圏内の動きとなっており、』(前回展望レポート)

ということで、生産の現状認識を下方修正していまして、その要因が自然災害などの影響だそうです。まあこの「など」ってのも曲者なんですけどね・・・・・・・・・・

『一方、企業収益が総じて高水準を維持するなか、設備投資は増加傾向を続けている。個人消費は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加している。住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は緩やかに増加している。この間、労働需給は引き締まった状態が続いている。』(今回)

『一方、企業収益が総じて高水準を維持するなか、設備投資は 増加傾向を続けている。個人消費は、消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加している。 住宅投資と公共投資は、横ばい圏内で推移している。』(前回展望レポート)『労働需給は引き締まった状態が続いている。』(前回展望レポート)

途中で飛んでいるのは前回の展望で生産の記載箇所が今回と違っているためです。でもってこちらでは公共投資の判断を上方修正しておりまして、ここからは企業の設備投資が落ちないことと、公共投資が出てくることを期待しているというところでして、これ設備がコケだすと日銀は言い訳に苦しくなって来ますわなと思いますし、ここが持ちこたえている分には意地汚く粘るでしょ。

『わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。』(前回展望レポート)

マイナス金利で金融機関に対しては引き締まっていますけどね!!まあここの判断は変わらん。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、0%台前半となっている。 予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。 』(前回展望レポート)

実績値の部分が変化ありますが、これに関しては実績値を出しているだけの話なので気にしません。


・声明文先行き判断は政府支出を上方修正

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、基調としては緩やかな拡大を続けるとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、2021 年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる。 』(前回展望レポート)

展望と声明文の見通し期間が違うので表現がちと違いますがゆうとることは同じなので判断不変。

『国内需要は、消費税率引き上げなどの影響を受けつつも、きわめて緩和的な金融環境や積極的な政府支出などを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向き の循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(今回)
『国内需要については、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による下支えなどを背景に、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続するもとで、増加基調をたどると考えられる。』(前回展望レポート)

消費税引き上げ云々って展望レポートの方では基本的にリスク要因にしか記載が無くて、声明文では記載があるという現象になっていますが、これもまた見通し期間の違いで、声明文だと向こう半年とかその位(長くて1年)の話をしているので消費増税の影響がという話をするものの、もうちょっと長いタイムホライズンではそんなに大きなファクターではない、とかそういう話になるんでしょうかね。

でもってこちらですが、政府支出の見通しを上方修正しておりますな。


『輸出も、当面、弱めの動きが続くものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調としては緩やかに増加していくとみられる。』(今回)

『海外経済については、成長ペースの持ち直し時期がこれまでの想定よりも遅れるとみられる。そのため、輸出は、当面、弱めの動きが続くことが見込まれる。もっとも、海外経済は、各国のマクロ経済政策の効果発現やIT関連財の グローバルな調整の進捗などを背景に成長率を高め、総じてみれば緩やかに成長していくとみられる。こうしたもとで、わが国の輸出は緩やかな増加基調に復していくと予想される。』(前回展望レポート)

基本的に言ってることは同じですな(分量が違うのは声明文と展望レポートの違いがあるから)。


『消費者物価の前年比は、 当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2% に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる(注2)。』(今回)

『先行きの物価を展望すると、消費者物価の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、見通し期間を通じてマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景 に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(前回展望レポート)

はいはい大本営大本営。


・海外リスク要因の判断文言がしらっと変更

項番4はリスク要因。声明文では展望で示すリスク要因中「その1」のみを記載するのは仕様です。

『リスク要因としては、保護主義的な動きの帰趨とその影響、中国を始めとする新 興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバルな調整の進捗状況、英国のEU 離脱問題の展開やその影響、地政学的リスク、こうしたもとでの国際金融市場の動 向などが挙げられる。こうした海外経済を巡る下振れリスクは引き続き大きいとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある。』(今回)

『第1に、海外経済の動向である。具体的には、保護主義的な動きの帰趨とその影響、中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、IT関連財のグローバ ルな調整の進捗状況、英国のEU離脱問題の展開やその影響、地政学的リスク、 こうしたもとでの国際金融市場の動向などが考えられる。こうした海外経済を巡る下振れリスクは高まりつつあるとみられ、わが国の企業や家計のマインドに与える影響も注視していく必要がある。』(前回展望レポート)

10月展望の時点ではまだ「下振れリスクは高まりつつあるとみられ」とあって、高まりつつあるのに何で追加緩和しないんでちゅかねー(棒読み)って感じでしたが、今回はこの部分、定性的な「高まりつつある」からしれっと定量的な「大きい」に表現を変更して、ベクトルを横向きにしやがりましたな。まあ政策が地蔵モードなんだから当然ちゃあ当然(寧ろ前の時の判断と政策が不整合)なんですがしらっと変更しやがったという感じです。


・ガイダンス文言は不変です

項番5は本来は声明文と比較しますが、前回新しく入った政策金利のガイダンス文言に関しては前回声明文では別書きだったので展望レポートの最後の部分と比較します(前回声明文のURL要らんかったですな)。

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マ ネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実 績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、「物 価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長 短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。今後と も、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・ 金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な 政策の調整を行う。特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大 きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高 まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる(注3)。』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これ を安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金 融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生 鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損な われる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る 水準で推移することを想定している。今後とも、金融政策運営の観点から重視 すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価 安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。 特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先 行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合 には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる。』(前回展望レポート)

・・・・・・・・・躊躇なく躊躇中ですけどね!!!!!!!


・その他ぶっこんできた施策があって

ETFの貸し付けはこれ事前に言ってた件の具体化。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191219b.pdf
指数連動型上場投資信託受益権の貸付けに関する特則」の制定等について

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191219c.pdf
(参考)ETF貸付制度の導入について

ETF界隈には詳しくないのでまあ専門家の意見を聞かないといかんですが、機関投資家との売買とかで証券会社が買う方は兎も角として売る方に関してはこれあると便利は便利なのかなあとか、よー知らんけど。


ところで何ですかこの貸出支援基金の施策は
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191219e.pdf
「貸出支援基金の運営として行う貸出増加を支援するための資金供給基本要領」の一部改正等について

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191219f.pdf
貸出増加支援資金供給の見直しについて

『1.見直しの趣旨

・貸出増加支援資金供給を利用しつつ市中の貸出を増加させてきた金融機関を引き続き支援することで、強力な金融緩和の継続に資するよう、制度趣旨を踏まえつつ、一定の条件の下で借り換えを認める。』

ってあるんですが、この制度自体ちょっともうフェードアウトしたらどうよとか悪態をついていたアタクシ的には何ぞこれという感じではありますがそのうちまたネタにすると思いますが今の所良く分からんので判断保留。






2019/12/19

お題「虫干しネタでFEDとECBの会見(の冒頭説明)」

へー。
https://jp.reuters.com/article/usa-holidayshopping-idJPKBN1YM23J
2019年12月19日 / 02:38
米「スーパーサタデー」、今年最大の売り上げも 各社とも顧客体験重視

『[ワシントン 18日 ロイター] - 今年はクリスマス直前の土曜日である「スーパーサタデー」が2019年で最も売り上げが多い日となる見込みだ。感謝祭とクリスマスの間が短いため、消費者の駆け込み需要が発生している。』(上記URL先より)

米国消費とか出来上がりの小売売上を漫然と見ている位のアタクシなのでこの辺の何とかデーとか言われましても乱発したら効果が逓減するような気がするとかいうのは不景気脳ですかそうですかすいません。

・・・・・と思ったのですが、記事の下の方を見ると

『多くの小売業者は、年末における消費急増の時期が後ずれしていることを受け、実店舗をクリスマス直前まで開けることで対応している。』(上記URL先より)

だそうで、最初の「感謝祭とクリスマスの間が短いため、消費者の駆け込み需要が発生している」というのの意味が分からんのでちょっと米国に詳しい人教えて下さいお願いします(平伏)。

#なお今日はMPMのような気がするがプレビュー雑談する気も起きないノーイベントでしょどうせ


〇FOMC議長会見ネタの続きをやろうとしてFEDのページをみたらこんなのありました

余談で恐縮ですが。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/other20191218b.htm
December 18, 2019
Federal Reserve Board launches new Twitter account highlighting research published in the Board's working papers and notes series, other staff articles, and conferences
For release at 2:00 p.m. EST

『The Federal Reserve Board on Wednesday launched a new Twitter account aimed at increasing access to the research done by the more than 400 economists and other research staff at the Board.』

ほうほう。

『The new account-@FedResearch-will highlight research published in the Board's working papers
and notes series, other staff articles, and conferences.』

要するに新着リサーチ作品に特化したご案内がツイッターで見れるということのようで。

『Staff members at the Board conduct research on a wide variety of topics in economics and finance. The Board's Finance and Economics Discussion Series and its International Finance Discussion Papers-along with the FEDS Notes series-offer a venue for Board staff to publish their work to stimulate discussion. The papers and notes reflect the views of the individual authors and do not communicate policy positions of the Board or the Federal Reserve System.』

なお出てくるものは個人の感想ですというお話ですが、この辺りも微妙に味わいがあって、正直FEDのリサーチペーパーまで読んでいる余裕はないので極稀に適当に引っ掛かったものでオモロそうなものを見る程度なのですが、アタクシ的にはサンフランシスコ連銀とか忖度モード爆裂の現行政策ヨイショレポートが出てくるのが仕様だった時代とかよくSF連銀のエコノミックレターとか何とかいう名前で出ていた小文とかはチェックしたりしてましたな(最近ちとさぼり気味ですサーセン)。なお日銀のペーパーの場合はいや何でもありません。

『The Board's @FederalReserve Twitter account will continue to provide official news and information about the Board.』

元々のツイッターの方はそれはそれで同じように運用するようですの。まあ新着情報はメールサービスの方で見るというのはだいぶ前からありますが、あれが出た時も随分便利になったなーとか思った位の昭和脳ですのでつい脊髄反射してしまいました。

ということで本題。

〇FOMC記者会見のオープニングリマークは物凄く手堅い感じでした(昨日の続き)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20191211.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference December 11, 2019

昨日まではPRELIMINARY版だったのですが今朝になったらFINAL版になっておりまして、そもそもFINALを引用してネタにしている時点でアタクシ的には大敗北(遅すぎ)ということでしょんぼりしながら昨日の続きをば(涙)。

経済(成長率)、労働市場、物価とSEPの鏡の順に説明が来て、金融政策のパートになります。

『Over the course of the past year, our views about the path of interest rates that would best achieve our employment and inflation objectives changed significantly, as the economy faced some important challenges from weaker global growth and trade developments.』

掴みは今年の利下げに関する説明でして、

『As the year progressed, we adjusted the stance of monetary policy to cushion the economy from these developments and to provide some insurance against the associated risks. In addition, inflation pressures were unexpectedly muted, strengthening the case for a more supportive stance of policy.』

利下げスタンスになった理由の説明として「some insurance against the associated risks」というのに加えて「inflation pressures were unexpectedly muted」とインフレ圧力が弱いという話を入れています。まあ最近は毎度入れているのでサプライズでも何でもなくただの平常運転ではあるのですが、インシャランスで利下げしたというのを強調すると、今度は「じゃあインシャランス要らなくなったら利上げじゃろ利上げ」という話になってしまうので、(別にコアPCEで1.6%だったらそんなに低い低い言う事ねえじゃんとアタシャ思うのですがまあそれは兎も角として)現状の物価が中々2%までアガランチ会長であることを強調することによって、現状の政策金利水準をキープするための言い訳を作っておるわけですな。

『Rather than modestly increasing the target rate for the federal funds rate this year, as seemed appropriate a year ago, we reduced it by 3/4 percentage point. This shift has helped support the economy and has kept the outlook on track.』

利下げしたので経済見通しがオントラックで推移できました(キリッ)って説明。

『The medians of participants’ projections for economic growth, the unemployment rate, and inflation are little changed from a year ago, aside from a lower inflation projection for 2019. Of course, that is the function of monetary policy-to adjust interest rates to promote employment and price stability in response to forces acting on the economy. 』

でもってSEPのまとめで、足元の物価見通しだけ下げたけどあとはおおむね同じですよというこれは数字に出ている通りのお話。

『We believe that the current stance of monetary policy will support sustained growth, a strong labor market, and inflation near our symmetric 2 percent objective.』

でもって今後の政策についてですが、

『As long as incoming information about the economy remains broadly consistent with this outlook, the current stance of monetary policy likely will remain appropriate. Looking ahead, we will be monitoring the effects of our recent policy actions, along with other information bearing on the outlook, as we assess the appropriate path of the target range for the federal funds rate. Of course, if developments emerge that cause a material reassessment of our outlook, we would respond accordingly. Policy is not on a preset course. 』

という説明で、ここもと急にこの辺の説明に安定感出てきたわという感じですが、現状の政策を特に動かす気が無いという状態になったので説明が安定した、と言ってしまえばそれまでという気もします(よくよく考えたらパウエル議長就任以来ずーっと金利が上げ下げどっちかモードだったりしていたのですから)が、決め打ちコミュニケーションで市場に無駄に織り込ませようとして上も下もやり過ぎてしまうパウエルしぐさがようやっと落ち着いてきた感じです。

とは言いましても、これ単に動く気が無いから落ち着いているだけで、今のインシャランスの解除モードを展望するようになったらまーた余計な事を言い出してタントラムっぽくなるのではなかろうかという気もするのです。でもって恐らくなんですけれども物価が上昇してくるとそのへんがワチャワチャとしてくると思うので、今後は雇用統計とかよりも(まあ賃金は重要だと思いますが)物価指標の方にこの人たち盛大に反応すると思います、でまあその時に慌てないためにはアベレージターゲットだのメイクアップストラテジーだのという話は有用ちゃあ有用なのですけれども、そうは言いましても物価が2%上振れて推移しだすと恐らくは腰が据わらなくなるというのがアタクシの読み筋なので面白いから米国は早く物価上がれやと思うのでした。

最後はバランスシートというか超過準備に関する説明。

『Finally, I wanted to note that we’ve been purchasing Treasury bills and conducting repurchase operations, consistent with the plan we announced in December.1』

はい。

『These technical operations are aimed at maintaining an ample level of reserves and addressing money market pressures that could adversely affect the implementation of monetary policy.』

「technical operations」と技術的対応を強調。まあこれ毎度申し上げていますが、FF誘導目標をレンジにしているから却って話がややこしくなっているだけで、昔みたいにFF誘導目標をピンポイントに戻して、日々の多少の振れは知らんがなと達観した方が良いと思うんですけどね。

『Our operations have gone well so far; pressures in money markets over recent weeks have been subdued. To address possible pressures in money markets over the year-end, we’ve been conducting term repo operations spanning year-end. We stand ready to adjust the details of our operations as appropriate to keep the federal funds rate in the target range.』

これね、銀行が規制上レポ市場に昔みたいに資金を出せないから金利上昇圧力が高まるってんだったら、寧ろRRPを撤廃した方がミューチュアルファンドやGSEから金がホイホイと出てくるんじゃなかろうか(ただしそれをやったらFEDシステム直接参加者とそれ以外の不公平感が高まるのでIOERもスタンディングファシリティ的な水準(少なくとも誘導目標から下)に下げればいいんじゃないですかーと単純に思う(そうすればFEDの払う利息も減るので財政的にもウマー。金融機関はプンスカでしょうが)のですが、何でそっちの方向に議論が行かないのかが不思議で不思議でしょうがないのですが、スタッフレベルで中銀同士情報交換とかしている筈なので、日銀から教えて差し上げたら如何でしょうかとか思うのですけど、何か触れてはいけないものとか何でしょうかねえ・・・・・・・・・・・

『Thank you, and I’ll be happy to take your questions. 』

ということで質疑に参りますがその前に・・・・・・・・・・


〇これまた放置プレイのECBラガルド会見ですが冒頭でいきなりぶっ放しているのでそこだけでも

こっちも放置プレイで誠に申し訳ございません。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is191212~c9e1a6ab3e.en.html
INTRODUCTORY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 12 December 2019

冒頭ステートメントだけ寝起きでECB(なおプレカンはちょっと遅くまで起きればライブで見れますが何せ年寄りなので余程の時じゃないとちょっと・・・・・・・)の時にやったのですが、会見の冒頭でラガルド先生中々良いぶっ放しをしておられるのでとりあえずはそれだけでも。

『President Lagarde: Before the questions I'm going to take just a couple of minutes of your time to tell you a few things.』

おうお前らの質疑の前にワシからちーとゆうことがあるんじゃよー聞いとけや、ということで。

・立ち合いからのブチカマシキタコレ

『One is, each and every President has his or her own style of communicating.』

オレ流宣言キタコレ(^^)。

『I know some of you are keen to compare and rate or rank. I will have my own style.』

と来た後がお洒落でして・・・・・・・・・

『As I've said before, don't over-interpret, don't second-guess, don't cross-reference.』

これは立ち合いからのブチカマシといった所ですな、まあこう言われた位で怯むような記者も居ないでしょうけれどもこれはワロタ。

『I'm going to be myself and therefore probably different. Point number 1.』

というのが言いたいことの1番目だそうな。タフネゴシエーターでその手の武勇伝は色々とあるとは何となく仄聞しておりますが、会見でもドラギ俊彦とはだいぶ違ってくるんでしょうなあと思うとこれはこれで楽しみですわ。


・政策の枠組み見直しについての説明ですが大掛かりなものになる予定だそうで

『Point number 2, this introductory statement probably rings a few bells for those of you who follow those documents very carefully. But some of you will be disappointed that it does not include anything having to do with the strategic review.』

2番目は一転して普通の話になっておりますが、これから行う政策枠組み見直しに関する説明をしておりましけれどもこれが結構長いので、それなりに気合が入っているのかなとちょっと思いましたですよ。

『It is intended to be that way, so the introductory statement does not include, does not refer and should not be associated with the strategic review that we are considering. I'll be happy to give you - I can do that now actually if you want - a little bit of my thinking and our collective thinking on the strategic review because I know that it is of interest to some of you.』

つーことでちーと先に政策枠組み見直しに関するワシの見解と現状での全体的な見解を説明しようかと思うんじゃがのう。

『Shall I do that now? Yes, that's easier, and then you can as questions!』

という訳で政策枠組み見直しの説明になります。

『First of all, there is nothing unusual or extraordinary about having a strategic review. I actually consider for myself that it's a little bit overdue. Legitimately so, because there were many other things to do but the last strategic review was in 2003. It's been 16 years since there has been a strategic review, so it's quite legitimate to have a strategic review at this point in time. 』

そもそも政策枠組みの見直しという事自体は特別なものではない(常にレビューするものである、って意味でしょうな)のであって、むしろラガルドさん的には2003年以来大きな見直しが行われていないのはアカン話で、枠組み見直しをするのが遅すぎだわ位の認識だ、だそうな。

『Second, that strategic review needs to be comprehensive, needs to look at all and every issue, will turn each and every stone and will take its time but will not take too much time. By that I mean my plan is to actually get the review started in the course of January. Don't ask me which week or which day or which second, but it will be in the course of January. Our goal is to complete it before the end of 2020.』

今回の枠組み見直しは包括的なもので、多くの内容を含むことになるので、来年1月のどこかで開始してから、年末までには見直しが完成するというのをゴールに置いていますよ、とのこと。

『Third, about the strategic review, it will be reaching out to not just the usual suspects, but it will also include consulting with Members of Parliament and I've committed to that with the European Parliament. It will reach out to the academic community, of course. It will reach out to civil society representatives and it will aim at not just preaching the gospel that we think we master, but also listening to the views of those to whom we reach out.』

欧州議会を始めとして幅広い主体の見解や協議も行いますよと。

『It is the point of every strategic review by all central banks that are conducting this exercise to actually look at their objective, how they define their medium-term objective in particular, how they give content to the price stability that is in their mandate, and it is the only objective that we have in our mandate ourselves.』

『So that topic indeed will be core and centre to our strategic review. There is no preconceived landing zone at this point in time.』

でもって政策の目標設定とか中期的な目標とかをどうするかとか、そういう所とかのレビューもしますし、現状でどこかの着地点を想定している訳ではないと。

『Indeed it will also address the major changes that have taken place over the course of the last 16 years, and by that I include the massive technological change that our societies are facing.』

これまで16年間やっていた今の枠組みの見直しは、この間の社会的な変化なども考慮に入れたものになりますよ、と来るのですがここでいきなりズコーっとなるのがですな・・・・・・・・・・・

『It will include the immense challenge that climate change is addressing to each and every one of us, wherever located, and whatever our mission and duties.』

き、きこうへんどう??????

『It will include aspects of inequality that are certainly rising in our economies, and all of those will be addressed with a view to exploring each and every corner of the business that we conduct as a central bank to see how those businesses are affected and how we can take them into account to better respond to the mission that we have, and to deliver on our mandate: serving the euro area citizens, and delivering on the mandate of price stability.』

お気持ちは分かるのですが、格差とかそういう話になってくるとそれは中央銀行のマターとは言い難いのではないでしょうか、と思う次第で、なんか変なものが出来上がるような懸念はこの辺見ているとある。

『That's on the strategic review, and if you have additional points that I can answer, I will.』

だそうです。とは言えまだユルユルの状態ですから、

『But I will not go into much further details when it comes to the substance, because the framework has not yet been completely agreed and discussed with members of the Governing Council. I have certainly made a point of my tenure to include members of the Governing Council and to seek their views and their consideration before any decision is made.』

質問にはお答えしますがそもそもがまだフワフワした段階なので細かいことはこれからです、というのはそらそうよという所ですな。でもって冒頭演説(?)の最後は・・・・・・・・・


・最後に記者をリスペクトしてます発言をするものの・・・・・・・・・・

『Let me add I have huge respect for the work that you do. You are a main audience for the central bank.』

とリスペクト発言をするものの、

『But you are not the only audience, and I would also encourage you not to try to draw too many conclusions or decisive findings from communication that I would address to a different audience with a slightly different language in order to be maybe better understood by those who do not have your level of skills and in-depth knowledge of the matters that we deal with.』

てめえら浅い理解で下らねえ解釈した記事書くんじゃねえぞおうわかっとるじゃろうな、だそうです。

『With that, I am happy to take questions. Christine is going to monitor that. When I don't know, I will tell you that I don't know! Maybe you will know, Luis.』

散々ぶちかましておいて最後は質問イラッシャイマセと来ておりまして、分からん時はデギンドス副総裁がお話しますのでよろしゅうに、と締めております。

#てな訳でFEDとECBの質疑は後日でボチボチと成敗しますサーセン






2019/12/18

お題「雨宮副総裁金懇会見:政策地蔵モードを無回答攻撃で示す/FOMCパウエル会見より(その1)」

やっとそうなったか。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191217/k10012217631000.html
記述式問題 導入見送り発表 萩生田文科相
2019年12月17日 10時01分

でもって本件に関してこんなのが出てて、この粗雑極まる現状認識で今の案が推進されていたのかと思うと頭が痛いしスズカンってこんなトンチキだったのかよ度し難い(自粛)だなと思うしこのトンチキを起用した前の文科相はとりあえず(内務省検閲のため削除されました)。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191216-00000016-pseven-soci
大学入試のマークシート偏重に識者「将来の失業者量産」危惧
12/16(月) 16:00配信

途中で頭がクラクラしてくるので体調の悪い時に読むのはお勧めしません(−−;


〇雨宮副総裁金懇会見は挨拶同様に追加緩和ネタを盛り上がらせないモードとな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk191213a.pdf

ということですがまずは景気認識に関する順当な質問から。最初の今日はどうでしたか質問の次に来る奴から参ります。

・経済情勢の話は威勢の良い部分の説明がやたら丁寧という辺りに味わいがある

『(問) 外需が弱めの一方で、国内需要は底堅いということを講演でお話しされていますが、内需の底堅さ、とりわけ個人消費について、その根拠を教えて頂けますか。消費増税の影響は、前回の増税時よりは限定的ではないかということですが、消費マインドも弱いままですし、ボーナスも前年比若干のマイナスなのではないかという報道もあります。』

うむ。

『また、製造業の業績が世界経済の悪化の影響を受けて少し下がってくると、いずれはそれが所得・賃金を通じて サービス業など非製造業にも悪影響を及ぼしてくると思いますので、そうしたリスクをどれくらい高いとみていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。』

でもって後半は、

『また、先般、政府が発表した経済対策の大まかな規模等が出てきているのですが、これが日本経済に今後いつ頃どの程度影響を及ぼし得るのか、現時点でどう見ていらっしゃるのか、かつ 12 月、1 月の決定会合でその辺りをどういうふうに見通しに反映されるお考えなのか教えてください。』

という質問の答えなのですが、

『(答) 個人消費や内需をどう読むかというご質問ですが、まず念頭に置いておかなければいけないことは、10 月以降の個人消費関連の計数は、台風の影響といった特殊要因もあり、基調を読むには、少し時間をかけてデータの蓄積を待つ必要があるかと思っています。』

夏には明日にでもマイナス深堀をするのではないかという黒田節が連発していたというのにこの落ち着きようったら何がどう変わったらこうなったのか、つーかこの会見でも残念ながらそこに関する質疑が無いのですけれども、黒田節満艦飾だったものが急変したトリガーが何なのかというのが分かると、コミュニケーションしやすくなるし、そもそもコミュニケーションって別に政策の決め打ちアナウンスすることじゃないと思うのよね。

『10 月以降、個人消費関連指標は確かに弱いものが多いわけですが、特殊要因の影響もありますし、そうした影響を除き、 かつ今のところ私どもが得ているヒアリングを通じた産業界の情報を踏まえると、基本的には駆け込みの反動は前回の引き上げ時ほど大きくないという判 断を大きく変えるところまでは至っていません。』

『むしろ、経済の大枠という議論をしますと、輸出・生産が弱めなのに対して底堅い内需という構図は基本的には変わっていませんが、やはりこの輸出・生産の弱さが、内需の一部にも影響を及ぼし始めていることは事実です。端的には、例えば、設備投資のうち製造業の機械投資のようなものは、輸出・生産の弱さが影響を与えていることは事実だと思います。』

ほうほう、とか思っているとこの先が威勢の良い話になる。

『しかも、短期的には、消費税率引き上げの影響もあって内需も当面は幾分鈍化する可能性はあると思いますが、来年を展望しますと、そうはいっても、設備投資については全体として中長期的な視点に立つ投資、例えば省力化ですとか研究開発といった投資需要は根強いです。また、振れを均してみれば、人手不足、労働需給の引き締まりを背景とする良好な雇用・所得環境、あるいは政府の様々な施策を背景に、個人所得の底固さは維持されるでしょうし、公的需要、政府支出については、後の質問にありますが、経済対策の効果も出ますので、全体としては、内需の堅調さは何とか維持されるのではないかとみています。』

ということなのだが、これだと10月会合で黒田節満艦飾からの何もしないでっせ攻撃への一大豹変(としか外野には見えない)の理由になっていない訳ですよ。だって設備投資が中長期的に堅調とか労働需要の引き締まりとかいう話は前からそういう認識だし、政府支出の話は最近になって出てきた話で、別に10月末時点ではやりそうだというのはあったけど規模が大きくなってきたの最近の話であるからして、これで説明されても10月に豹変した背景が分からないのよ。まあ聞かれていないから答えていないってのも分かるんだけどさ。

『それから、政府の経済対策については、今回は三つの柱があります。 自然災害対応と下方リスクを乗り越える対応、それから中長期的な生産性や成長力の強化という観点から対応は講じられたわけであり、時宜を得た適切な対 応だと思います。当然、短期的にみても、政府支出が内需を支える効果があり ますし、中長期的な成長力の強化の支援という観点から、家計や企業の成長期待が強化されることを期待しています。一般的に、金融緩和と財政支出は、景気刺激の適切なポリシーミックスですので、そうした対応を取られていると思います。従って、来年の経済見通しにどうかということは、これから分析が進む中で、金融政策決定会合で議論していくことになると思いますが、基本的には成長率見通し等にはプラスに作用するものだと思っています。』

ということですが、金懇挨拶の方でもそうなのですが、金融政策の話は物凄い勢いであっさり味の説明しかしないのに、景気判断が強い話に関しては無闇矢鱈と説明が丁寧で、この正直者!って感じではあるのですが、つまりは要するにそういうことでしょという感じですな。

でもってその次の質疑に更に味わいがありましてですな・・・・・・・・・・・


・判断変更のトリガーについて聞かれても無回答という辺りがもうね

てな質疑を受けてこの質問は中々良いですな。話がうまくつながっている。

『(問) 本日の講演で言われていたように、経済指標の基調を読むのはなかなか難しいかと思います。特に物価とか生産の基調をみるには、それなりのデータの蓄積が必要ということですが、そうすると10〜12 月、1〜3 月という感じで時間がかかるかと思います。』

はい。

『そのデータの蓄積の前にも、それぞれの指標の基調を変えるような状況というのは、どういう状況が想定できるのか、お伺いできますでしょうか。』

イイシテキダナーな感じですがこの回答がまたアレ。

『(答) ある程度時間をかけてデータの蓄積を待つ必要があると申し上げたの は、いくつか意味があります。一つは、今、焦点になっている消費税率引き上げの影響という観点で申し上げると、元々この消費税率引き上げが消費あるい は経済に与える影響を考えるときには、短期的な消費税率引き上げ前の駆け込 みとその反動は“行って来い”の話であるわけです。むしろ重要なのは、実質所得の減少を通じた、より中長期的な効果です。それがどういう影響を及ぼす かについては、単なる駆け込みとその反動というものを超えた時間軸で判定していく必要があります。』

これ単体では御尤もなのですが、では何で政策金利のフォワードガイダンスを当初導入した時に「政策金利については、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」とかいう話をしていたのかというのが物凄く疑問になる訳で、消費増税の影響が行ってこいでその先の中長期的な効果が問題になるのであれば、そもそも論として金利ガイダンス文言バージョン1の意味は何だったのかと小一時間問い詰めたくなるのですが、最近は過去との整合性を華麗にスルーする(からこそコミュニケーションがぐちゃぐちゃになってしまうのだが)のでそんな昔のことは昔の事ですかそうですか。

『もう一つは、10 月以降は天候不順、自然災害という特殊要因が影響していますので、これを除いて考える必要があります。』

これはさっきも聞いた奴ですな。でもってこの次の説明がお洒落。

『基本的には私どものシナ リオは、内需については、先程挙げたいくつかの理由、個人消費については良好な雇用・所得環境と政策的な下支え、設備投資については中長期的な観点か らのいわば戦略的な投資、そして政府支出については経済対策を含めた効果と いったものが基調の堅調さを支えるとみています。今申し上げたそれぞれの内需項目に関するメカニズムに何か支障が生じるかどうか、あるいはそのメカニズムを大きく打ち消す要因が出てくるかどうかという観点から点検していくことになろうかと思います。』

「基調を変えるような状況というのは、どういう状況が想定できるのか」という問いに対して「基調を変えるような要因が出てくるかかどうかです」って見事に無回答でお答えしておりまして、なにか特定の話をした場合に、それが閾値に引っ掛かって来ると追加緩和ヒャッハーとなってしまうことに関して物凄い勢いで予防線を構築しているというのが見て取れるかと思います。


・よってイールドカーブの事を質問されても当然のごとく無回答

黒田節満載時代に超長期のカーブがどうのこうのと言っていたのは何だったのかという感じですが、

『(問) 今週、久しぶりに、10 年物金利が、短い期間ではありましたが、プラス圏内を付けました。これについてどのように受け止めていらっしゃるのか教えてください。日銀の金融政策、イールドカーブ・コントロール(YCC)に どのような影響があるのか教えてください。また、全体としてイールドカーブについて、一時期、9 月頃だと思いますが、少しフラット化し過ぎているという見方があったと思いますが、現在どのように考えているのか教えてください。』

前半がマクラの積りなのかもしれませんが、その部分がアカンのでして、その隙にきっちりとつけこむ雨宮さん当然ながらゼロ回答なのがチャーミング。

『(答) いつも申し上げていることですが、長期金利も含めて市況や市場金利の短期的な日々の動きについてのコメントは差し控えたいと思います。そのうえで、ここ暫くの全体的な長期金利、あるいはイールドカーブ全体の動きについて申し上げれば、大きくいえばYCCという枠組みのもとでの現在の調節方針と整合的な、あるいは、調節方針の範囲内での動きである、と理解しています。』

ということでゼロ回答キタコレでして、もうちょっと定性的な聞き方をしないと行けなかったように思えます。


・政策レビューの質疑の回答は色々とオモロかったですな

『(問) 中長期的な話ですが、今年から来年にかけて、Fedだけではなく ECBも金融政策のレビューに着手するという話があります。日銀の場合は2016 年の総括検証から 3 年経ちますが、その後、より緩和の長期化が見込まれ るという状況の変化はあったと思います。今後、より国内外の情勢が安定する局面で、日銀として再びレビューの機会を検討するようなお考えというのはあるでしょうか。』

これは「より国内外の情勢が安定する局面で」って入れている辺りが良い質問ですわ。

『それに関連して、特に 2%の物価安定目標と直結したオーバーシュート型コミットメントは、現在、マネタリーベースと結びつけていますが、 YCCに移行してから、実質的に金利を重視している中で、このコミットメントの再検討が論点になる可能性というのは今後ありますでしょうか。』

これもまた良いですな。でもって答えですけれども、

『(答) ご指摘の通り、私どもが大きな規模で金融政策の枠組みのレビューを最後に行ったのは 2016 年でしたが、それに対してFRBやECBは、ある程度、非伝統的金融政策の正常化を意識したうえで、正常化のプロセスで、あるいは場合によっては、正常化の後の金融政策のフレームワークを研究・検討するという考え方で検討を始めたわけです。』

ほーん、FEDはそうですがECBはそうなのかいなというのが微妙ですけどにゃ。

『それに対して、私どもは、2016 年の 「総括的な検証」をもとにYCCを導入した後、「物価安定の目標」を実現するために、YCCのもとで粘り強く金融緩和を進めるという対応を進めてきている最中です。』

ほうほうそれでそれで?

『その意味でFRBやECBが大きく金融政策のレビューをする 必要があった、あるいは、することが適切と判断された状況とは違うと思います。』

そ、そうか?????

『従って、現在は、YCCという枠組みに何か大きな問題が生じているとは 思っていませんので、この枠組みのもとで、粘り強く緩和を続けるということが基本となると思います。』

えーっとつまりそれは総括検証からのYCCは元々のマイナス金利付きQQEに大きな問題が生じたから実施したという事でよろしいのでしょうか?????

『ただし、そのうえで、金融政策の枠組み、あるいは、金融政策運営の基本的な考え方については、数年に一度の乾坤一擲の大きなレビューをしないと見直さないというわけではなく、』

ここで不覚にも茶を吹いてしまったのですが、どうも総括検証は乾坤一擲のレビューだったようです。

『極端に言えば、毎回毎回の 金融政策決定会合で、あるべき金融政策運営のあり方について議論しているわけですので、そうした議論の中では色々な選択肢を排除せずに検討していくと いうことだと思います。』

ほうほうそうですかそうですか。でもって後半の部分の回答。

『今ご指摘のあった、例えばオーバーシュート型コミットメントについては、私自身は今の段階で何かYCCのもとでの金利コントロールとオーバー シュート型コミットメントで不都合が生じている、あるいは、政策運営上問題が生じているとは思っていませんが、ご案内の通り、金融政策決定会合でも、コミットメント政策やフォワードガイダンスのあり方については、色々な意見 が出ています。引き続きそうした点も含めて、毎回の決定会合で議論していくというのが私どもの現在の基本的なスタンスです。』

色々な意見が出ているってえことはまあ不都合が生じ掛けているということですね分かります(^^)。


・なお副作用論も華麗にスルーするのでつまりは・・・・・・・・・・

副作用云々の質疑も幾つかあったのですが流れは同じだったのでこの質疑だけ引用します。

『(問) 本日の懇談会でもおそらく出た話題だと思いますが、長引く低金利環境で地銀の基礎的収益力の低下はずっと続いていると思います。そうした中、 追加緩和を行う場合、金融機関の経営に配慮した副作用対策にどの程度留意するのか、例えばマイナス金利の深掘りといった政策オプションをとる場合には、 副作用対策をセットで打ち出すという見解はあるのか、この辺りのお考えをお 聞かせください。(後半割愛) 』

これがまた華麗な模範解答が展開されます。

『(答) まず副作用、とりわけ金融機関経営に対する影響については、いつも 申し上げている通り、私どもは金融政策運営を考える際にはその金融緩和の効果と副作用のバランスをどうやって取っていくか、金融緩和の効果を最大限発 揮させるためにはどうしたらよいかという問題意識で、色々取り組んでいるわ けです。』

へえへえそうだっか。

『金融緩和や低金利の副作用の中には、金融機関収益に対するマイナスの影響が強くなり過ぎて、いずれ金融仲介機能にマイナスの影響を及ぼすリス ク、あるいはリスクテイクを促し過ぎて将来の金融システムの不安定化につな がるリスクなど、いわば金融仲介を通じたルートもあると思いますし、そうした狭い意味の金融機関行動ではなく、長期金利の低下が行き過ぎて、例えば年 金や保険の持続性に関する懸念などをきっかけに消費者マインドにマイナス の影響を与えるリスクも含め、総合的に判断する必要があると思います。』

とはいうものの、

『金融機関収益だけ単独で取り出してというよりは、あくまで様々な効果や副作用を総合的に判断したうえで、最適な政策対応を取っていくということになろうかと思います。(後半割愛) 』

という模範解答で、まあそらそうよという答えになる(ので質問する方は「金融機関収益」という文言を持ち出さない方が良くて、この文言を使うと必ず「金融機関収益単体を考えるのではない」っていう切り返しを食らって切り込みが不発になるということをもう少し考慮して質問文言を考えて頂きたい)のですが、模範解答に終始しておりますな。


・・・・・・てな訳で、追加緩和の話に直結する質問に対しては無回答で返し、副作用論に関しても模範解答で返すということで、とにかく今回の雨宮副総裁の会見(と金懇挨拶)は「先行きの金融政策運営に関して言質を一切与えない」というのに徹していたように見えまして、これはまあ金融政策は地蔵モードに戻ったという事を意味するんでしょうなあとは思いましたが、まあそれが功を奏したのかどうか知らんですが(寧ろその他大ネタの方がでかかったという事でしょうけれども)雨宮さんの金懇と会見で相場インパクト出たようには見えなかったので、「動かん」という意味での大勝利だったって感じですな。


〇色々と出遅れネタだらけで誠に相済みませんがFOMC会見の冒頭ステートメント

FOMCの朝に政策がノーイベントだから調子に乗って読んでいたら時間が無くなるという間抜けプレイをした件ですがその後ドタバタしていてすっかり遅くなりましたがまあ市場も結局謎の行ってこいだったので勘弁ということで。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20191211.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference December 11, 2019

最初にボルカーさんへの弔辞みたいな話があるのですがそこは飛ばしまして、まずは決定内容の説明。

『Turning to today’s meeting, my colleagues and I decided to leave our policy rate unchanged, after lowering it a total of 3/4 of a percentage point at the previous three meetings. As always, we base our decisions on judgment of how best to achieve the goals Congress has given us-maximum employment and price stability. Our economic outlook remains a favorable one despite global developments and ongoing risks. With our decisions through the course of the past year, we believe that monetary policy is well positioned to serve the American people by supporting continued economic growth, a strong job market, and inflation near our symmetric 2 percent goal.』

金利を維持しましたよああ今年の政策は適切だったからご案内の通り米国経済は結構な推移でしたよ。だそうで。

『The economic expansion is in its 11th year, the longest on record. Household spending has been strong-supported by a healthy job market, rising incomes, and solid consumer confidence. In contrast, business investment and exports remain weak, and manufacturing output has declined over the past year. As has been the case for some time, sluggish growth abroad and trade developments have been weighing on those sectors. Even so, the overall economy has been growing moderately. And with a strong household sector and supportive monetary and financial conditions, we expect moderate growth to continue. As seen from FOMC participants’ most recent projections, the median expectation for real GDP growth slows slightly over the next few years but remains near 2 percent. 』

経済全般の話はいつも通りですが、家計が強くてその背景に労働市場の強さとお賃金の上昇と消費者コンフィデンスの強さがあって、一方で企業の投資と輸出が弱くて工業生産も年を通じて減少していますが背景には海外経済の弱さと貿易戦争がありまっせ、でも経済は全体としてgrowing moderatelyであって、家計と「金融環境」が経済を支えていますって話。説明自体はいつも通りなので別にサプライズ感はありませんが、金融環境ってのは要するに株価とかの市場の話だったりしますから、まあ海外やら貿易戦争云々を除けばケツに火が点くのは株価下がった時でしょうなあということで。

その次が雇用の話ですが、雇用は強いのでまあねってところですが、パウエルさんの仕様として、こういう時に「政策の効果がマイノリティだったり地方だったり低スキル労働者だったりする人たちにも恩恵が来ております」ってのを強調するのがいつものことながらパウエルさんのちょっとした特徴。

『The unemployment rate has been near half-century lows for well more than a year, and the pace of job gains remains solid. Participation in the labor force by people in their prime working years, ages 25 through 54, has been increasing. And wages have been rising, particularly for lower-paying jobs. People who live and work in low- and middle-income communities tell us that many who have struggled to find work are now finding new opportunities. Employment gains have been broad-based across all racial and ethnic groups and all levels of education.』

というのがこの辺の部分ですな。

『These developments underscore for us the importance of sustaining the expansion so that the strong job market reaches more of those left behind. We expect the job market to remain strong. The median of participants’ projections for the unemployment rate remains below 4 percent over the next several years.』

ここは見通しのSEPの数字。

でもって物価ですが、

『Inflation continues to run below our symmetric 2 percent objective. Over the 12 months through October, total PCE inflation was 1.3 percent and core inflation, which excludes volatile food and energy prices and is a better indicator of future inflation, was 1.6 percent.』

ここは結果の数字。

『While low and stable inflation is certainly a good thing, inflation that runs persistently below our objective can lead to an unhealthy dynamic in which longer-term inflation expectations drift down, pulling actual inflation even lower. In turn, interest rates would be lower as well and closer to their effective lower bound. As a result, the scope for interest rate reductions to support the economy in a future downturn would be diminished, resulting in worse economic outcomes for American families and businesses.』

掴みに「物価が低くて安定しているのは確かに良い事だが」とかあるのが微妙にお洒落なのですが、マンデートより低い水準で長期間推移するとインフレ期待が下がってイクナイといういつもの話にはなりますのでまあ普通ちゃあ普通の説明。

『Against the backdrop of a strong economy and supportive monetary policy, we expect inflation will rise to 2 percent. The median of participants’ projections rises to 1.9 percent next year and 2 percent in 2021. We are strongly committed to achieving our symmetric 2 percent inflation goal.』

でもって(最初の成長の所でもそうでしたがスルーしましたけど)最後の部分ではSEPの見通し数字の説明をしております。これパウエルさんになってスタイル変更になりまして、以前は見通しの話の後にSEPの数字について独立パラグラフで説明していたのですが、そういう細かい所は当然ですがスタイル変更になるというものです。

さてここからが政策の話になるのですが、と書いた時点で次の展開がお分かりになると思いますが、例によって段取りと寝起きからの頭の起動速度に問題がありまして時間が無くなってしまいましたので続きは明日でご勘弁して頂きとう存じます(平伏)。








2019/12/17

お題「日銀短観物価見通し関連は相変わらずの地蔵モード/雨宮副総裁金懇は消費増税後の企業の価格設定行動に言及」

うむ。
https://jp.reuters.com/markets/bonds
国債利回り
米国債10年 利回り
US10YT=RR
+1.887 +0.066

・・・・・・・・今日戻るなら何で先週末金利下げたのでしょうか訳分らん。


〇短観企業の物価見通し:消費増税の適合的期待効果は次回にお預け、ということにしておきましょう

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2016/tkc1912.pdf
短 観(「企業の物価見通し」の概要)―2019年12月―
第183回  全国企業短期経済観測調査

『1.販売価格の見通し(現在の水準と比較した変化率)』ですけれども、この前3回分(つまり年初来)の推移を見ましたので、せっかくなのでこの1年の推移を確認してみましょう。

全規模合計 全 産 業

1年後 3月:0.8%→6月:0.7%→9月:0.6%→12月:0.6%
3年後 3月:1.2%→6月:1.2%→9月:1.0%→12月:1.0%
5年後 3月:1.5%→6月:1.5%→9月:1.3%→12月:1.4%

大 企 業 製 造 業

1年後 3月:0.1%→6月:0.1%→9月:0.1%→12月:0.0%
3年後 3月:-0.3%→6月:-0.1%→9月:-0.1%→12月:-0.2%
5年後 3月:-0.5%→6月:-0.3%→9月:-0.3%→12月:-0.3%

大 企 業 非製造業

1年後 3月:0.5%→6月:0.6%→9月:0.4%→12月:0.4%
3年後 3月:0.9%→6月:1.0%→9月:0.8%→12月:0.8%
5年後 3月:1.0%→6月:1.1%→9月:1.0%→12月:1.0%

まあ何と申しますか、物の見事に地蔵状態になっておりまして、どこがどうモメンタムが維持されているのかさっぱり分からんのですが、あまりそうやってイジメていると日銀ちゃんがキレてじゃあ追加緩和するとか言い出されてもそれはそれで迷惑千万なので、こういうのを見た場合は「企業の価格設定行動がプラス水準で維持されており、もはやデフレではないという状況を作り上げることに成功した(なお製造業は輸出とかもありますしまあね、という事で華麗にスルーする)」とヨイショをしないといけないようですなナムナム。

でまあこんな状態でボラも何もないので最近はこれが出てもそもそもベンダーヘッドラインになるのか位の勢い(まあなりますが)ではありますが、まあ内訳見ると物凄い微妙な誤差の範囲内ではありますが製造業の部分で微かに下がっているのが見られるのは、ただの誤差なのか、業況判断DIがパッとしないことを反映しているのかというのはそこまで詳しく分析する脳味噌も無いのでアレなのですが、日銀の方では個票ベースから分析していると思うので、中では何らかの考察が行われているものと拝察します。


でもって『2.物価全般の見通し(前年比)』に参りますが、こっちはと言えば、

全規模合計 全 産 業

1年後 3月:0.9%→6月:0.9%→9月:0.9%→12月:0.8%
3年後 3月:1.1%→6月:1.0%→9月:1.0%→12月:1.0%
5年後 3月:1.1%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.1%

ということですので、まあこれも悲しいまでに地蔵になっておりまして、しかも上がる雰囲気が感じられないというこの状況ということですが、これまた「企業の物価観がプラス水準で維持されており以下同文」でヨイショするしか無いですな。需給ギャップがプラスを維持していく中で実際の物価が上昇すると適合的期待形成でインフレ期待が上昇していくに違いない、という話なのですけれども、根性論というよりは待ちぼうけ論状態になっておりますが大丈夫でしょうか。

そして、この調査を開始した当初にやたら数字が高めに出ていて「大企業などは報道や証券会社のエコノミスト見通しなどに影響されやすいが中小企業のインフレ目標がより実際に感じるものに近い(キリッ)」と日銀が言っていたのに今やすっかりダンマリというご都合主義全開モードになっている(と前回も悪態ついた)中小企業の物価観をこれまた1年分並べてみます。

中小企業 製 造 業

1年後 3月:1.1%→6月:1.0%→9月:1.0%→12月:0.9%
3年後 3月:1.2%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.0%
5年後 3月:1.2%→6月:1.2%→9月:1.2%→12月:1.2%

中小企業 非製造業

1年後 3月:1.1%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.0%
3年後 3月:1.2%→6月:1.2%→9月:1.1%→12月:1.1%
5年後 3月:1.3%→6月:1.3%→9月:1.2%→12月:1.2%

延々と地蔵状態でして、もう1年どころではなくほぼ同じ数字なので、この辺で普通に均衡状態なのではなかろうか、とか言いたくなる状況ですし、何気にここに来てジリジリとではありますが、数字が何となく下がり気味になっております。

でですね、この次にネタにします雨宮副総裁の先週の金懇挨拶と会見にちょろっと指摘されているのですが、雨宮さんというか日銀ちゃんの説明を見ますと、今般の消費増税に伴いまして、特に人件費がモロに効いてきている非製造業の中では消費増税に併せてコスト上昇も乗っける動きがどうのこうのというのがあるんですよね。

まー確かに生活者的に見た時にはそんな感じもするので、これはまた消費増税便乗で物価が上がってそれによって瞬間的にはインフレ期待がまた少し堅調にでもなってくれると、日銀今度こそ最後のワンチャンあるでとか思わないでもなかったのですが、この短観って調査期間が11月13日〜12月12日となっていて、まあ大体前半で8割強とか回答が来るとか聞いたことがあったような気がするので、11月中旬から下旬のサーベイだと思うのですが、価格設定で消費増税分にコストをしらっと乗っけてくる動きが散見される割にはこの辺の数字に全然反映していないのは何でじゃろとか思う訳ですよ。

という話になると当然ながら素人のアタクシの考察が及ぶところではないのですが、値上げしてみたのは良いのだが結局値上げ効果が不発どころか数量落ちてアカンがねという話になったらまーた元の木阿弥になるということを念頭に置いて今のところは企業の価格設定や物価観が強くなれない、という時間帯なのでしょうなあと一応日銀寄りの解釈をしておきましょう。

なお、そういう解釈をしてみたものの3月短観での企業の価格設定、物価観が地蔵のままということになりますと、消費増税という自動物価上昇装置を使っても適合的期待形成に働きかけることが出来ないと来たもんだという話になるのでそらもうアカンがなという話になりそうな、ということで3月短観に全然期待しないけど期待しておきましょう。


〇雨宮副総裁岡山金懇である(遅くなりました)

珍しくも先週木曜の金懇なのにまだHTMLバージョンが出てこないですな。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191212a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 岡山県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 雨宮 正佳


最初の挨拶部分がこういう締め方になっておりますの。

『さて、皆様との意見交換を始めるにあたり、先ずは、私から、世界経済を含めた経済・物価情勢についての日本銀行の見方と、そのもとでの金融政策運営の考え方についてお話します。特に、最近多くいただく質問の3つ、 「世界経済の減速はいつまで続くのか」、「その影響は国内需要に及ばないのか」、「消費税率の引き上げの影響はどうか」について焦点を当てながら、ご説明したいと思います。』

なので一応見通しということでその辺は読みつつ鑑賞鑑賞。


・海外経済に関して

最初の説明部分はめんどいので飛ばしまして結論に近い所から参りますと、

『こうした世界経済の減速について、当初は、2019 年内には持ち直しに向かうとの見方が多かったものの、実際にはその時期が遅れ、IMF(国際通貨基金)や日本銀行も含めて、多くの機関が世界経済見通しの下方修正を余儀なくされました。』

はい。

『持ち直しが遅れている背景には、米中貿易摩擦が拡大・長期化してきたことや、中国において成長率の低下が続いていることなどが挙げられます。』

ほほう。

『それでは、世界経済の成長ペースが鈍化した状態はいつまで続くのか、言い換えれば、持ち直しの時期はいつになるのでしょうか。日本銀行では、不確実性は大きいものの、来年の半ばにかけて緩やかに成長率を高めていくとみています。』

しらっと回復時期の見通しが今年の春時点での見込みから1年も後ろに倒れてしまいましたな。

『最新のIMFの世界経済見通しでも、世界全体の成長率見通しは、2019 年は 3.0%まで減速したあと、2020 年は、過去平均並みである 3.4%まで復する姿となっています(前掲図表1)。』

それは良いんですが「来年の半ばにかけて緩やかに成長率を高める」となると普通に考えて前半の逆ゲタを取り返せないからIMFの見通しが強すぎと日銀は見ているという話になるんですが・・・・・・・・

『このように、先行き世界経済が持ち直していくと考えられるメカニズムの一つに、各国のマクロ経済政策の効果が発現していくことが挙げられます。』

ほーん。

『今年に入ってから、多くの新興国・資源国が利下げを行っています。また、先進国でも、FRBは、世界経済の弱さや通商動向がもたらすリスクによって米国の景気・物価が実際に下振れることを未然に防ぐため、7月から 10 月まで3会合連続で利下げを行いました。ECBも9月に金融緩和を行っています。こうした緩和的な金融政策運営は、各国の経済・物価動向を安定化させることを通じて、世界経済の持ち直しをサポートすると考えられます。FRBが今朝の会合で、政策の現状維持を決めた背景として、これまでの保険的な利下げによって、先行きの米国経済が支えられることを指摘しています。』

日本は何で追加緩和をしなかったんでちゅかねえ(棒読み)。

『世界経済の持ち直しを牽引するもう一つの原動力として、今回の減速のきっかけとなったグローバルなITサイクルの持ち直しが挙げられます(図表3) 。世界的な半導体需要は底を打ちつつあり、この先、スマートフォンやデータセンター向け需要の持ち直しが見込まれます。また、やや長い目でみれば、世界的に5G通信関連の需要増加も期待されるようです。こうした中で、日本における在庫削減局面も概ね終了しており、輸出や生産も、IT関連財については、増加の動きがみられ始めています。』

つまり電デバがこけたら見通し修正必至ということですねわかります。

『さらに、世界経済を巡る最も大きな不確実性である米中通商問題については、10 月の対中追加関税の引き上げ見送りの後も、さらなる進展に向けて交渉が継続しているようです。こうした動きは、国際金融市場でも好感されており、投資家のリスクセンチメントは、ひと頃に比べて改善しています。今後、グローバルに安定的な通商関係が再構築されていくのであれば、縮小してしまった世界貿易を再び活発化させることに繋がることが期待されます。』

どうせトランプが再選するまではマイクパフォーマンス大会なので、そうなると来年の秋までは何のかんのと調子が良くなると足を引っ張るとかになるのか、さすがにマイクパフォーマンス大会に世間が飽きてくるのか、来年はどうなるんでしょうかねえとは思う。

『このように、世界経済については、持ち直しに向けた兆しが少しずつみられ始めていますが、先行きの不確実性には引き続き注意が必要であり、日本銀行では今後の動向を慎重にみています。』

はあそうですか。

『米中通商交渉については、前向きな動きがみられていますが、米中両国の間には、なお様々な問題に関して対立点が残っており、今後の交渉の行方については、引き続き不透明感が強いと言わざるを得ません。また、中国経済を始めとする新興国経済の足取りや、本日総選挙が予定されている英国のEUからの離脱問題の展開、さらには地政学的リスクなど、注視が必要なリスクが数多くあります。』

『先行き、企業が、世界経済のリスクを意識した状態が長く続くことになれば、設備投資スタンスが再び積極化するまで、予想以上に時間がかかる可能性もあります。このように、世界経済に関する下振れリスクについては、注視が必要な局面が続くと考えています。』

ということで特段突拍子のない話もなく、まあごくごく普通のお話ですな。


・国内はThis time is differentになるのでしょうか

でもって国内ですがこっちもそんなに変わった話ではなくて(例によって国内経済の話の途中から)、

『このように外需が弱めの一方で、国内需要が底堅い、という対照的な動きが続いていることが、今回局面の特徴として指摘できます(図表5) 。』

短観もそうでしたな。

『わが国経済は、過去、世界経済の変調を受けて、製造業へのマイナスの影響が内需にも波及するかたちで、大きな景気変動が生じる局面がしばしばみられました。ただし、今回局面では、輸出は弱めの動きが続いていますが、国内需要は企業、家計、公的部門の3部門ともに増加を続けるなど、これまでのところ、世界経済の減速による内需への影響は限定的です。日本銀行では、この先も、所得と支出の好循環メカニズムが働くもとで、内需は増加基調をたどり、世界経済の減速による内需への影響は限定的にとどまるとみています。』

展望レポートでも今回この理論で来た訳ですが、これが本当の本当に構造的な変化か何かがあって、This time is differentと言っているのか、それとも単に政策変更をしたくないから強弁しているのか、というのがよー分からん(ってあからさまに後者と分かったらそれは間抜けなので後者だとしても美しい理屈は用意するじゃろ)のですよねこれがまた。

『すなわち、短期的には、世界経済の減速や消費税率引き上げの影響から内需の増勢はいったんは鈍化するものの、大きな落ち込みは回避されるものと見込んでいます。そこで、設備投資、個人消費、公共投資の順に、先行きの見通しをやや詳しくお話したいと思います。』

ってな話で、この3項目の話がまた細かいので長いのですが、たぶん日銀としては設備投資がコケると心が折れると思うので、設備投資のところだけ理屈を確認しておけば良いと思います。

『はじめに、設備投資です。わが国の設備投資は、全体として増加傾向を続けています。世界的には設備投資が弱めの動きとなっている一方で、わが国の設備投資が増加傾向を続けている理由として、わが国では、短期的な景気動向に左右されにくい息の長い投資が増えていることが指摘できます(図表6) 。』

まあ素敵。

『一つは、タイトな労働需給を反映した省力化投資です。労働需給の引き締まった状態が続く中、長い目でみても人手不足が継続するとの見方から、特に労働集約的な非製造業で、省力化・効率化ニーズが高まっています。こうした状況は、有効求人倍率が全国上位3位に入るようなきわめてタイトな労働需給に直面している岡山県の皆様は、より強く感じられているのではないかと思います。』

ほう。

『人手不足に直面している小売業や宿泊・飲食業、建設業といった業種では、省力化・効率化に向けた取り組みを進めるもとで、機械投資に加えて、ソフトウェア投資も活発に行われています。また、成長分野に対する研究開発投資も増勢を維持するとみています。足もとでは世界経済減速の影響を受けている自動車や化学といった業種でも、長期的な視点に立った競争力向上を目的に、研究開発投資の増加ペースを維持する計画となっています。さらに、建設投資も、都市の再開発や、e コマース普及に伴う物流施設の建設、インバウンド需要の取り込みを企図した宿泊施設の建設など、様々な需要を受けて高水準を続けています。』

物凄い勢いで大攻勢という感じの説明です。

『このように、わが国の設備投資は、全体として増加傾向にありますが、当然、一部には世界経済減速の影響もみられています(図表7)。例えば、製造業の機械投資です。特に、設備投資に使われる資本財関連の業種や、自動車関連業種の機械投資が最近は弱めとなっており、先程、輸出や生産活動に関して世界経済減速の影響が大きいと申し上げた業種では、設備投資にも同様の影響が生じています。先行きの設備投資は、息の長い投資が下支えすることで、均してみれば増加基調を維持するとみていますが、目先は、世界経済の持ち直しが遅れるもとで、製造業の機械投資を中心に増勢が鈍化すると考えています。』

ということで以下が個人消費、公共投資ですが、とりあえず目先の増勢鈍化までは織り込んでいまして、じゃあその先は大丈夫かという点で勝負になってくると思われますので、そう考えますとよほどのことが無い限り国内景気判断の部分って目先そう簡単には挫けない(実際の景気が挫けるかは別問題ですが)と思われますな、うんうん。


・物価に関しては消費増税便乗値上げにコスト転嫁の動きが出ている話をアピールするの巻

という訳でまたまた飛ばして物価の所ですが、これまたその途中から鑑賞しましょう。

『そのうえで、最近の物価動向をみますと、既往の原油価格の下落の影響や携帯電話関連の値下げもあって、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は+0%台半ばにとどまっています。長期にわたる低成長やデフレの経験から、賃金・物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が家計や企業に根強く残っていることなどから、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、物価は弱めの動きが続いています。』

という話に毎度なっているのですが、それが延々と続いているということは実は現状ってのは適正な水準なのではないかという気もせんでもないですなああっはっは。

『こうした中で、10 月に消費税率が引き上げられました。税率引き上げを受けて、企業の価格設定スタンスが変化しないかという点は、今後の物価動向をみるうえで重要なポイントになります。』

12月短観ェ・・・・・・・・・・・・・

『特徴的な動きを、2点ご紹介したいと思います(図表 10)。 』

キタコレ!

『一つは、耐久消費財の価格の動きです。テレビや家電などの耐久消費財については、消費税率引き上げ前後に需要の増加と反動減がみられています。そうしたもとで、価格の動きについては、需要増加がみられた税率引き上げ前は、強含んでいました。一方、需要の反動減が生じる税率引き上げ後の価格設定は、区々となっています。』

ほう。

『例えば、比較的価格変動の大きいテレビやノートパソコンの価格は前年比マイナスに転じている一方で、冷蔵庫や掃除機などが含まれる家事用耐久財の価格については、高めの前年比プラスが続いています。』

ふーん。

『もう一つは、外食などのサービス価格の動きです。サービス価格については、税率分をしっかりと転嫁する動きが確認できます。今回、外食の消費税率は10%に引き上げられた一方、軽減税率の導入により、惣菜などのいわゆる「中食」も含めた食料品の消費税率は8%で据え置かれました。そのため、外食の価格は、「中食」との価格競争を意識して、税率分を転嫁しきれず、税抜きの価格が弱含む可能性が指摘されていました。』

はい。

『しかし、10 月の外食の価格の動きをみると、税率分をほぼ完全に転嫁している姿となっています。外食産業では、人件費や物流費などのコスト上昇を受けて省力化・効率化の取り組みが行われていますが、その努力で吸収しきれないコスト分を徐々に価格に転嫁する動きがみられています。こうした中で、多くの外食関連企業が、今回引き上げられた税率分を販売価格に転嫁したということです。このように税率分を販売価格に転嫁する動きは、他のサービス価格でも確認できます。』

文面から嬉しさが伝わってきます。

『もちろん、今後の消費動向次第で、企業の価格設定行動も変わり得ることには注意が必要ですが、今のところ、企業の価格設定スタンスに大きな変化はみられておらず、消費税も含めたコストを転嫁する動きが続いていると考えています。』

ということで、なんか物凄くここに期待しているという感じが伝わって参ります。実際はもう数か月してみないと分からないんでしょうけれども、これで2014年同様になったら日銀の心が折れるのは必定。

なお、『こうした状況も踏まえて、物価の先行きについての日本銀行の見方をご説明します。』以下の話は上記の部分も加えた形での毎度おなじみの大本営発表になっているので今回殊更読む意味はありません。



・金融政策のパートの分量がやたら少ないところに「動かないという気合」を感じます

でもって『4.日本銀行の金融政策運営 』なのですが、これがまた1ページにも満たない分量になっておりまして、金融政策を動かさない気が満々であることがそれだけでも分かろうというものです。

先行きの金融政策に関しては、

『今後も、世界経済の動向を中心とした経済・物価の下振れリスクについて注視が必要な局面が続くと考えており、当面、緩和方向を意識した金融政策運営が適当と考えています。引き続き、様々なリスクを注意深く点検したうえで、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる方針です。』

と「緩和方向を意識した(緩和するとは言っていない)政策運営」という話をして躊躇なくとか言っているのですが、その直後にすかさず、

『以上が、日本銀行の基本的な金融政策運営の考え方ですが、その際、金融市場や金融仲介機能に及ぼす影響などを含め、政策の効果と副作用の両方を考慮することが重要だと考えています。この点に関して、日本銀行は、低金利環境や金融機関間の厳しい競争環境が続くもとで、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクや、金融システムが不安定化するリスクがあることを認識しています。』

となっていて、先行きの説明よりもこっちの方が長いくらいになっているのがチャーミング。

『現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断していますが、今後とも、こうした点を含め、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえながら、適切な政策運営に努めていきたいと考えています。』

ということになっていまして、副作用のふの字も言わない辺りもさすがは大本営と思ってしまいますが、まあヘッドライン的には「緩和方向を意識した金融政策が適当」という辺りを取られやすくなる文章構成にするものの、副作用という文言を使わず(使うとヘッドラインにされるリスクの高いパワーワードなので)字数で副作用ネタを稼ぐことによって金懇テキスト見た時に緩和バイアスが強い訳ではないというのを見せるというこの巧妙な見せ方にさすがだわと感心するのでありました。


・・・・・・・しまった会見やってる時間が無くなってしまったので金懇挨拶だけで勘弁して下さい。

#さすがにここから大戦争相場にはならんと思いたいので(年初から暴れる予感はあるのだが)ネタはボチボチ成敗していきます






2019/12/16

お題「短観私家版チェック/ニュース雑談メモ/短国マイナス10復活とか市場メモ」

そういやすっかり話題にならないと思えば・・・・・・・・
https://this.kiji.is/578480390457181281
北方領土「2島引き渡し」も困難
安倍政権、日ロ長門会談から3年
2019/12/14 18:33 (JST)
コピーライト一般社団法人共同通信社

『安倍政権内で14日までに、北方領土交渉の落としどころとして検討してきた譲歩案の「2島引き渡し」について、近い将来にロシアから同意を取り付けるのは困難だとの見方が強まった。背景には「ロシアに態度軟化の兆しが見えない」(政府筋)との判断があり、首相官邸や外務省で諦めムードが漂う。』(上記URL先より)

どうせ困難なの同じなんだったら端から譲歩とかする必要がなかったのではないのではなかろうかと(棒読み)。

〇短観だったのでいつもの私家版チェック

短観概要
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2016/tka1912.pdf

・先行きDIの達成度合い

         (9月時点)     (12月時点)
         現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業   +5→+2       ±0→±0 
製造業中堅企業  +2→▲1       +1→▲4        
製造業中小企業  ▲4→▲9       ▲9→▲12

非製造業大企業   +21→+15    +20→+18
非製造業中堅企業  +18→+9     +14→+7
非製造業中小企業  +10→+1     +7→▲3

前回の短観の時はこんなこと書いたんですけどね。

今回なんですけれども、先行きDIの達成度合い、という意味では製造業大企業が未達になっていますけれども、他の所は前回見通し数値よりも良い内容となっています。でもってその製造業大企業ですけれども、世間様の予想ではもっと悪い数字を見ていた(ほぼゼロ位だった筈)ので、これまた予想よりも良い内容、ということでまあその点では印象悪くない、という話になるのかと思います。

とは申しましても、これ前回からの傾向が更に続いていて、水準という意味では製造業は足元、先行きともに着実に悪化してきており、ついに中堅企業まで先行き予測DIがマイナス圏に突入していますし、現状DIでも中小企業は前回カツカツマイナス程度でしたが今回は明確なマイナス圏ということで、製造業が更にアカンタレになってきているのは暗雲モードという感じですな。そしてその一方で非製造業の強さたるやという感じで、そもそも前回見通しよりも良い上に、水準的に見ると非製造業の中堅中小が前回と同じ水準を維持していますし、下がったとは言え大企業の水準も盛大に強いということで、まあ「輸出などは微妙だけど内需が堅調なので経済の回復基調は確保されている」って話になるんでしょうが、このデカップリング状態どこまでやれるものなのか、輸出コケても大丈夫なのか内需、という所ではありまする。

ということで、一見すると思ったほど悪い結果が出なかったので強い、ということになるのですけれども、必ずしも強いという訳ではないとか、そんな感じなので、ケチをつけようとすればケチをつける説明が出来るし、経済の拡大メカニズムはレジリアントであるという説明も出来るという、ある意味日銀にとっては都合の良い物件(エコノミスト的な意味ではなくて政策の屁理屈構築的な意味で、ということね)が出てきたという感じを受けましたがどうでしょうかね。(ここまで9月短観の時に書いた駄文です)

でもって今回ですが、製造業は概ね前回悪化すると思っていたら案の定悪化するという結果に対して非製造業は思ったほど悪化しませんですなあ状態という、この益々製造業と非製造業のデカップリングモードになっておりまして、ナンヤソラにも程があるのですがこの持続性はどうなるのとかそんな話ですが、設備投資計画のグラフとか見てると製造業に関してもこのアチャーなマインドに対してそれを反映してドカンと下がったとかそういう感じではないようには見える(個人の感想ですが本職の人の解釈違ってたらゴメンやで)ということですから、まあこういうのはどっちでも好きに解釈できるという絵ですわなと思うの(さっきの個人の感想があっていればの話ですけど)。

でですな、最近急に追加緩和とかいう話がどっかに行ってしまわれてすっかり先行き判断というかリスク認識が強くなられました日銀ちゃんと致しましては、これはもうもちろんの事、「製造業のマインド面には注意する必要があるが、実際の設備投資行動については順調に推移しており、先行きに関して悲観することはなく、緩やかな回復で需給ギャップのプラス傾向も維持されると見込まれるのでモメンタムは維持されている(キリリッ)」という判断になるでしょうな、うんうん。




・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲12→▲14      ▲11→▲11
製造業中堅企業 ▲20→▲21      ▲17→▲19
製造業中小企業 ▲24→▲26      ▲10→▲23

非製造業大企業   ▲31→▲32    ▲31→▲30
非製造業中堅企業  ▲40→▲43    ▲40→▲42
非製造業中小企業  ▲44→▲48    ▲42→▲47

こちらは前回の時点でこのように書いたんですが、

さて今回はちょっとこちらはアチャーという感じが漂っておりまして、前回時点での先行き見通しが「ここから更に人手不足感が高まる」を維持していたのですが、その予測指数を達成できてるのは非製造業大企業だけという結果になっております。(というのとこの後出すけど時系列確認をしています。この部分9月短観の時に書いた駄文)

今回ですが、まあデカップリングしているから仕様ちゃあ仕様なのですが、製造業の雇用判断DIって先行き予測にも関わらずジリジリとマイナス幅の縮小(強さの縮小)が起きておりますなという感じですが、非製造業がとりあえずそんなに下がってない(マイナスの縮小が少ないという意味)ですし、そらまあ水準そのものはどマイナスであることは同じなので良いっちゃ良いのですが、この微妙な微妙感が何とも。

前回現状判断の3期時系列作ったのでそれを生かして4期時系列を作りますと、

製造業に関しては

       (現状判断DIの3、6、9、12月)
製造業大企業  ▲18→▲14→▲12→▲11
製造業中堅企業 ▲26→▲23→▲20→▲17
製造業中小企業 ▲31→▲26→▲24→▲10

なので、前回の駄文では雇用判断の所が前回(なので今から見ると前々回の6月短観)辺りでピークアウトを迎えたかも知れませんねえ遺憾ですねえとか申し上げた、のですが、製造業中小とか見ると何気にこれアチャーな感じになって来ているように見えましてはてさてどうなるのやら。

なおついでに非製造業ですが、

       (現状判断DIの3、6、9、12月)
非製造業大企業  ▲29→▲29→▲31→▲31
非製造業中堅企業 ▲41→▲40→▲40→▲40
非製造業中小企業 ▲39→▲41→▲44→▲42

つーことで今年はデカップリングがメインテーマでしたが、従来はこういうデカップリングは続かんと言われておりましたが、ディスタイムイズディファレントになるのでしょうか(ならないんでネーノ)。



・販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲4→▲5        ▲6→▲8
製造業中小企業 ▲2→▲3        ▲4→▲3

非製造業大企業  +5→+5       ±0→▲1
非製造業中小企業 +2→+3       +2→+2



仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

        (9月時点)        (12月時点)
        現状→12月予測       現状→3月予測
製造業大企業    +5→+9        +6→+8
製造業中小企業  +26→+30       +24→+28

非製造業大企業  +12→+15       +11→+12
非製造業中小企業 +22→+28       +22→+27


前回はこんなことを書きました。

製造業の販売価格判断は中小企業もマイナスになるわマイナスは着実に拡大しているわという状態ですが、一方で仕入価格判断の方もせっせと改善していて、元々前回にも書いていますように、この数字って企業サイドから見たら堅めに出すバイアスが思いっきり反映されているので、絶対水準は仕入と販売で比較する意味はなさそうなのですが、変化という点で見れば仕入の改善の方が大きそうに見えますので、これまた今回も企業マージンは改善してるんジャマイカという話になると思う。

でもって企業マージンに改善の香りと言いましても、何気に雇用判断がピークアウトとか業況感が製造業の方でうーんこのという状況を踏まえますと、こりゃ企業サイドは来たるべき下向きモードに備えてマージンの確保もせにゃならんぜよとか、そんな防衛的な感じになっているのがこの辺りに反映されているんじゃないの、みたいな妄想は楽しく(楽しくはないが)膨らんでまいりますな、うんうん。(というのが前回9月短観の駄文です)

でもって今回ですが、基本的に堅めバイアスで数字が出るにしましても、仕入価格判断は上がるというのに販売価格判断の方が製造業で先行き下を向いている(前回はまあゆうて横這い)感じが出ているのがうーんこのという感じでして、そら業況感も徐々に押し戻されるわと思いますし、これ逆によく設備投資計画が堅調のままでいるわとか思ってしまいました。


・金融商品取引業の先行き判断DIが的中しているとな!


        (9月時点)        (12月時点)
        現状→12月予測       現状→3月予測
金融商品取引業  ▲27→▲21         ▲21→▲3

前回9月短観ではこんなことを書いておりました。

でもって今回珍しくも9月時点での先行き予測通りの数字になったのですが、まあここもとずーっと「次回は大きく改善」という予想を出しては外しというのが連発しておりましたので、心が折れたところが底値という所だったのかも知れませんが・・・・・・・と思ったらまーた今回の先行き予測が大幅改善というのに何かのフラグしか感じません勘弁してください。




・預金金融機関に関しては下げ止まり感

        (9月時点)        (12月時点)
        現状→12月予測       現状→3月予測
銀行業       ±0→▲4         +2→▲4
協同組織金融業   ▲5→▲8         ▲5→▲5

前回9月短観ではこんなことを書いておりました。

先にキタコレだった協同組織金融業の悪化は止まっていますが、銀行業の方が追いついていく流れになっているようにしか見えませんのですが、なんでマイナス金利深堀するんでしょうかねえ。深掘りして物価目標2%が早期達成するんだったら別に特攻して頂いても結構というか今すぐ特攻しろとい所ですが、今までマイナス金利やっていて物価上昇が加速しないのにマイナス拡大したら物価上昇が加速するというのを水晶玉占いよりはマシな精度で説明してみろやゴルァとか思いますし、大体からして何とかストとかも深掘り必至とか言ってるけど、じゃあお前ら何とかストなら深掘りした結果としてどのような波及経路で2%の早期達成が出来るのか説明してからその予想出せやこのスットコドッコイ、と矛先がまるで別の所に向かったことをお詫びいたします(「達成は無理だがヤケクソで特攻するとみられる」というのであれば予想としては成立するのでそれはそれで有り^^)。(というのが前回9月短観での駄文です)

・・・・・・ってこれ9月短観の時って出たの10月頭だからまだ黒田節でマイナス金利深堀ガーだった時ということで何かアタクシ無駄にイカっておりますな、と今となっては大仏の微笑で思う訳ですが(^^)、まあ別に改善する雰囲気は漂っていませんが、というか改善せんわなとは思いますけど、ただまあここ2回で踏みとどまっている感はあります。それが良い事なのか下手な延命なのかは分からないですけれどもね。

以下ニュースと市場の俺様備忘メモで他の大ネタはどうしたというツッコミはしないでください。


〇英国総選挙と米中協議の俺様用備忘メモですサーセン

まあどっちも変なネガティブサプライズに成らなかったですねということで。

事前の調査が当たらない(というか盛大に外す)のが仕様の英国選挙、今回は直前に「労働党追い上げて接近」とか言われたのが労働党大敗北という結果になるとか一々笑いを取りに行かないと気が済まないジョンブルクオリティ。

https://www.bbc.com/news/election/2019/results
UK results: Conservatives win majority
After 650 of 650 seats declared

CON Conservative:365 +47
LAB Labour: 203 -59
SNP Scottish National Party: 48 +13
LD Liberal Democrat:11 -1
DUP Democratic Unionist Party:8 -2
OTH Others:15 +2

でもって右にある選挙区ごとの結果の塗り絵が毎回こんなもんちゃあこんなものなのですが中々味わいがある。まあとりあえずこれでやっと合意あるんだか無いんだか知らんけど方は付けて来るでしょうし、その後の話も保守党が責任もってケツを拭くんでしょよー知らんけど。でもってSNPがスコットランドが独立してEU再加盟する住民投票実施とか言い出す(もう言ってるけど)のだがこれがまた意外に大騒ぎになるとかどうせそんなオチが待っているのが空飛ぶモンティ・パイソンなブリテンクオリティ。


でもって米中はやっぱりレスラートランプのマイクパフォーマンスでしたかそうですかと
いうことですが、なんか確かに合意しているんだがただの先送りのような気がするんだが。

https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-idJPKBN1YH1ZO?il=0
2019年12月14日 / 02:00
米中が「第1段階」通商合意、関税発動猶予 米農産物購入拡大へ

『[北京/ワシントン/上海 15日 ロイター] - 米中両政府は13日、「第1段階」の通商合意に至った。トランプ米大統領は15日に予定していた対中追加関税の発動を見送り、発動猶予と引き換えに中国は米農産物の購入を拡大していくと強調。さらに「第2段階」の合意に向けた交渉を直ちに開始すると表明した。』(上記URL先より)

でもってトランプ先生の次回作は、

https://jp.reuters.com/article/qatar-forum-trade-mnuchin-idJPKBN1YJ04W?il=0
2019年12月15日 / 16:02
米中の「第2段階」通商合意、複数回に分割も=米財務長官

『[ドーハ 14日 ロイター] - ムニューシン米財務長官は14日、米中が「第1段階」の通商合意に至ったことについて、世界経済の成長にとって「非常に良い」と述べた上で、第2段階の合意には複数回の段階を経て至る可能性があるとした。カタールで開かれたドーハフォーラムで語った。』(上記URL先より)

ということなので、まーたこれ細々と演出機会を出しながらマイクパフォーマンスという事ですが、中国ちゃんの方はどういう事考えてマイクパフォーマンスにお付き合いしているのでしょうかとは思いますが、はいはい演出演出ってやっていればとりあえず最終的には先送りだけはされるので、このオッサンの言う事は話半分に聞いておけば別にエエヤンとかそういうイメージなんですかねえ(個人の妄想です)。

まあいずれにせよ年初からどうせまた何か色々ネタが登場する(トランプが年初から早速中国に難癖をつけだすに100ドラクマ)んでしょうが、クリスマスを前に一旦年内の不確実性ネタは一時休戦ということですなうんうん。ああそういえば今週はジャパンの金融政策決定会合があったような気がしますな(棒読み)。

という自分用メモですいません。


〇これまた俺様備忘メモですが市場世間話メモ

・中々アレな下に行ってこいでしたが

いやはや。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28N1T7
2019年12月13日 / 15:24
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、長期金利は-0.025%に水準を戻す

『 <15:15> 国債先物は反落で引け、長期金利は-0.025%に水準を戻す

国債先物中心限月3月限は前営業日比11銭安の152円28銭と反落して取引を終えた。米中通商合意期待や英保守党の過半数議席獲得を背景に朝方から売りが先行。その後は、割安感から買い戻しが入り、下げ幅を縮小した。10年最長期国債利回り(長期金利)は前日と横ばいのマイナス0.025%。』(上記URL先より、以下同様)

って事ですが、割安感から買い戻しが入りというか何なんのこの土俵際からのガブリ寄りという感じでしたな。まあゆうてキャッシュの方が強いからそういうことなんですかねえよー知らんけど。
  
『現物市場では、超長期ゾーンは当初売り圧力が強まった。「ポジション調整の動きやデュレーションを取りたくない投資家が長期金利がゼロ%を付けたところで、短いゾーンに資金を移している」(外資系証券)との声が聞かれた。ただ、引けにかけては押し目買いが優勢となった。新発20年債は0.290%、新発30年債は0.430%と、いずれも前日と横ばいの水準で終了。新発40年債は前日比0.5bp低下の0.445%。』

現物が揃いも揃って引けだの強だのとかで先物ちゃん位しか売れるもんが無いとかそういう事なのかも知らんですけれども(個人の妄想です)、毎度のロイターさん気配(この日の市況ページには途中からいつもの「TRADEWEB」表示が抜けております)だと、

     OFFER  BID   前日比  時間
2年  -0.134  -0.126  0.002  15:14
5年  -0.13  -0.122   0.002  15:14
10年  -0.031  -0.019  0.004  15:14
20年  0.281  0.292   0.002  15:14
30年  0.418  0.429   -0.001  15:14
40年  0.44   0.45   -0.004  15:13


てな訳でうーんこの先物だけ安。ちなみにその先物の日中足が盛大に下放れ寄りからの
日中大上昇という図になっていましたが、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 20年3月限

(例によって例のごとく東証日中取引始まったらこれは当日のになってしまいます)

2019/12/13 日中取引
151.95(08:45)
152.36(14:29)
151.93(08:45)
152.28(15:02)
-0.11(-0.07%)
38,247

ということでまーた寄付きで高安のどっちかつけるの巻とかなんかここの所先物がやたら荒ぶっておられますが諸々の年内の戦いモードは休戦モードということで一つどうなんでしょうかしらとは思うのですがさてどうなる。



・積み期間変わってマクロ加算も変わったら短国3M入札もマイナス10台と

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20191213.htm
国庫短期証券(第876回)の入札結果

5. 価格競争入札について
(1)応募額 14兆6,705億円
(2)募入決定額 3兆5,275億4,000万円
(3)募入最低価格 100円03銭1厘0毛 (募入最高利回り)(-0.1154%)
(4)募入最低価格における案分比率 0.9973%
(5)募入平均価格 100円03銭4厘5毛 (募入平均利回り)(-0.1284%)

・・・・・・・という訳で順当に資金需給の勝利ということでよろしいのかとは思うのですけれども、一応は数字を見ないと、とは思わないでもなかったのでとりあえずマイナス10台に戻ってまあそんなもんでっしゃろというお話でよろしい訳ですな。ただのメモメモ。


#年末の月曜ですからこんなもんで勘弁してつかあさい(と意味不明の言い訳)







2019/12/13

お題「ECBは当然現状維持ですが現状判断やリスク認識をお気持ち上方修正しとりますな/その他少々」

これわwwww
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191212/k10012211821000.html
日本に再び「化石賞」小泉環境相の演説受け 国際NGO
2019年12月12日 6時40分

『小泉大臣は「驚きはない。受賞理由を聞いて私が演説で発信した効果だと思った。的確に国際社会に発信できていると思う」と話していました。』(上記URL先より)

まあこの化石賞ってのも大概にアレという感じですので、今回の進次郎大先生のお言葉であらされる所の「発信した効果」とは高度な煽りである、と解釈して起きますが、まさかとは思いますが以下割愛。

#そんなことよりグレートブリテンのジェネラルエレクションですよ!!!

だいたい今日はECBからの英国総選挙だというのにイベントの狭間を狙ってるのかというタイミング(というより経済界の要人集めるのに来週以降では無理があるからというスケジュール感は分かるが)で雨宮さんの金懇が打ち込まれるわ(ECBは兎も角英国総選挙は後から入ったイベントというのは分かるけど)で何かネタが飛び交いますな。

〇ECBは会見QAを見ないと何とも

・結果は当然ながら据え置き

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2019/html/ecb.mp191212~06d84240ae.en.html
Monetary policy decisions
12 December 2019

『At today’s meeting the Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.50% respectively. The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it has seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within its projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics.』

設定金利水準に変更はなくて、「The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it has seen the inflation outlook robustly converge to a level sufficiently close to, but below, 2% within its projection horizon, and such convergence has been consistently reflected in underlying inflation dynamics.」というフォワードガイダンス文言にも変更はありません(てか敢えてこっちは前回の決定公表文からコピペしてみて一致を確認^^)。

『On 1 November net purchases were restarted under the Governing Council’s asset purchase programme (APP) at a monthly pace of ユーロ20 billion. The Governing Council expects them to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates, and to end shortly before it starts raising the key ECB interest rates.』

予定通りAPPの拡大開始しましたよああそれからAPP拡大は金利のガイダンス期間中継続しますよでも利上げ開始したら買入もそのあとさっさと停止しますんでよろしゅうに、というのも同じですの。

『The Governing Council intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the APP for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

償還再投資に関してはずーっと同じ説明でこれまた同じ。


・冒頭ステートメントは現状判断とリスク認識を若干引き上げ

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is191212~c9e1a6ab3e.en.html
INTRODUCTORY STATEMENT
PRESS CONFERENCE

Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 12 December 2019

とりあえず今朝の時点ではQAがアップされていなくて、さすがに朝っぱらから聞いている時間も意思もないので(昨晩聞けやというツッコミはしないようにお願いします)今日あたり出てからまた確認しますが。

物凄く手抜きモードで今回は政策決定部分のコメントはパスしてその次から参ります。よって第5パラグラフより。

なお前回のINTRODUCTORY STATEMENTと比較してみるので前回はこちらから。
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2019/html/ecb.is191024~78a5550bc1.en.html(前回)


『The incoming data since the last Governing Council meeting in late October point to continued muted inflation pressures and weak euro area growth dynamics, although there are some initial signs of stabilisation in the growth slowdown and of a mild increase in underlying inflation in line with previous expectations.』(今回)

『The incoming data since the last Governing Council meeting in early September confirm our previous assessment of a protracted weakness in euro area growth dynamics, the persistence of prominent downside risks and muted inflation pressures.』(前回)

今回は「there are some initial signs」ってことで、「stabilisation in the growth slowdown」と「a mild increase in underlying inflation」という明るいネタをぶっこんできております。ただまあタカ派バイアスとか言われるのもイクナイからそこに「in line with previous expectations」と入れてはおるのですが、まあ判断引き上げは引き上げ。

『Ongoing employment growth and increasing wages continue to underpin the resilience of the euro area economy.』(今回)
『At the same time, ongoing employment growth and increasing wages continue to underpin the resilience of the euro area economy.』(前回)

雇用とお賃金の話はまあ同じ。前回はこの部分の後、今回パラグラフが分かれている部分に対応する部分がある。

『The comprehensive package of policy measures that the Governing Council decided in September provides substantial monetary stimulus, which ensures favourable financing conditions for all sectors of the economy. In particular, easier borrowing conditions for firms and households are underpinning consumer spending and business investment. This will support the euro area expansion, the ongoing build-up of domestic price pressures and, thus, the robust convergence of inflation to our medium-term aim.』(今回)

『The comprehensive package of policy measures that we decided at our last meeting provides substantial monetary stimulus, which will contribute to a further easing in borrowing conditions for firms and households. This will support the euro area expansion, the ongoing build-up of domestic price pressures and, thus, the sustained convergence of inflation to our medium-term inflation aim. 』(前回)

政策の効果でこんな良い事が!!という話なんですが、そっちに関しては今回は「which ensures favourable financing conditions for all sectors of the economy.」ってのがあって、all sectors of the economyとは大きく出たなという感じですな、うんうん。

でもって今回のステートメントにはその次に物価とフォワードガイダンスの話がありまして、これに相当するのは前回だと政策決定の中でガイダンスの修正を行ったので、政策変更の説明部分に本件に関する話があります、ってことで比較しておきますと、

『In the light of the subdued inflation outlook, the Governing Council reiterated the need for monetary policy to remain highly accommodative for a prolonged period of time to support underlying inflation pressures and headline inflation developments over the medium term. We will, therefore, closely monitor inflation developments and the impact of the unfolding monetary policy measures on the economy. Our forward guidance will ensure that financial conditions adjust in accordance with changes to the inflation outlook. In any case, the Governing Council continues to stand ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』(今回)

『The Governing Council reiterated the need for a highly accommodative stance of monetary policy for a prolonged period of time to support underlying inflation pressures and headline inflation developments over the medium term. In particular, the Governing Council’s forward guidance will ensure that financial conditions adjust in accordance with changes to the inflation outlook. In any case, the Governing Council continues to stand ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation moves towards its aim in a sustained manner, in line with its commitment to symmetry.』(前回)

「stand ready to adjust」とか「commitment to symmetry」とかの辺りの文言にも手を加えずに、subdued inflation outlookなのでフォワードガイダンス通りにしっかりと緩和政策をやっていきまっせという話は同じですの。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Euro area real GDP growth was confirmed at 0.2%, quarter on quarter, in the third quarter of 2019, unchanged from the previous quarter.』(今回)
『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Euro area real GDP growth was confirmed at 0.2%, quarter on quarter, in the second quarter of 2019, following a rise of 0.4% in the previous quarter.』(前回)

ここは実績値の話なのでスルー。

『The ongoing weakness of international trade in an environment of persistent global uncertainties continues to weigh on the euro area manufacturing sector and is dampening investment growth. At the same time, incoming economic data and survey information, while remaining weak overall, point to some stabilisation in the slowdown of economic growth in the euro area.』(今回)

『Incoming economic data and survey information continue to point to moderate but positive growth in the second half of this year. This slowdown in growth mainly reflects the ongoing weakness of international trade in an environment of persistent global uncertainties, which continue to weigh on the euro area manufacturing sector and are dampening investment growth.』(前回)

さっきの所であった「some stabilisation」の話が登場なので若干上方修正。

『The services and construction sectors remain resilient, despite some moderation in the latter half of 2019. Looking ahead, the euro area expansion will continue to be supported by favourable financing conditions, further employment gains in conjunction with rising wages, the mildly expansionary euro area fiscal stance and the ongoing - albeit somewhat slower - growth in global activity.』(今回)

『At the same time, the services and construction sectors remain resilient, despite some moderation. The euro area expansion is supported by favourable financing conditions, further employment gains in conjunction with rising wages, the mildly expansionary euro area fiscal stance and the ongoing - albeit somewhat slower - growth in global activity.』(前回)

ややこしいのだがECBのステートメントはパラグラフの切り方が会合によって異なったりしまして、前回はこの部分次のパラになってやがります。でもって海外がアレだがサービスとか建設は引き続きレジリアントでっせというお話で基本的にゆうとることは同じだと思います。

今回はこの次に定例のスタッフ見通しの更新がある(前回はそのタイミングじゃないので該当箇所なし)。

『This assessment is broadly reflected in the December 2019 Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area. These projections foresee annual real GDP increasing by 1.2% in 2019, 1.1% in 2020 and 1.4% in both 2021 and 2022. Compared with the September 2019 ECB staff macroeconomic projections, the outlook for real GDP growth has been revised down slightly for 2020.』(今回)

2020年の成長見通しをちょっとだけ下げたそうな。でもって経済のリスク認識。

『The risks surrounding the euro area growth outlook, related to geopolitical factors, rising protectionism and vulnerabilities in emerging markets, remain tilted to the downside, but have become somewhat less pronounced.』(今回)
『The risks surrounding the euro area growth outlook remain on the downside. In particular, these risks pertain to the prolonged presence of uncertainties, related to geopolitical factors, rising protectionism and vulnerabilities in emerging markets.』(前回)

挙げてる内容は同じですし、下方リスクがでかいというのも同じですが、その程度について今回はしらっと「somewhat less pronounced」と若干の改善というのがあって、さっきの「some stabilisation」と共にちょこっとだけですが威勢が良くなっておりまして、ラガルドさんに代わっていきなりこれというのに味わいがあるのか無いのかというのはQAをよく読んでおきたいと思います。

でもって物価。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation increased from 0.7% in October 2019 to 1.0% in November, reflecting mainly higher services and food price inflation. On the basis of current futures prices for oil, headline inflation is likely to rise somewhat in the coming months.』(今回)

『Euro area annual HICP inflation decreased from 1.0% in August 2019 to 0.8% in September, reflecting lower food and energy price inflation. On the basis of current futures prices for oil, headline inflation is likely to decline slightly further before rising again at the end of the year.』(前回)

この辺は実績値と近いタームの見通しなのでまあそこまで気にすることは無くてなるほどと思っておけば良い話。

『Indicators of inflation expectations stand at low levels. Measures of underlying inflation have remained generally muted, although there are some indications of a mild increase in line with previous expectations. While labour cost pressures have strengthened amid tighter labour markets, the weaker growth momentum is delaying their pass-through to inflation. 』(今回)

『Measures of underlying inflation remained generally muted and indicators of inflation expectations stand at low levels. While labour cost pressures have strengthened amid tighter labour markets, the weaker growth momentum is delaying their pass-through to inflation.』(前回)

しらっとこちらもさっき出ていた「基調的なインフレに関してはthere are some indications of a mild increase」が入っていましてちょこっとだけ上方修正ですが、「in line with previous expectations」なのでだから政策がどうだという話には直結しませんのでよろしく、というお話。

『Over the medium term, inflation is expected to increase, supported by our monetary policy measures, the ongoing economic expansion and solid wage growth.』(今回)
『Over the medium term inflation is expected to increase, supported by our monetary policy measures, the ongoing economic expansion and robust wage growth.』(前回)

中期的な見通しとその背景の文言は不変。でもって今回はこれまたスタッフ見通しのリビジョン部分があるので引用しておく。なお物価に関するリスクがどうのという話は前回もそうなのですが今回も特に物価を別建てで明記はしていませんので経済の所と一緒だよという事ですな。

『This assessment is also broadly reflected in the December 2019 Eurosystem staff macroeconomic projections for the euro area, which foresee annual HICP inflation at 1.2% in 2019, 1.1% in 2020, 1.4% in 2021 and 1.6% in 2022. Compared with the September 2019 ECB staff macroeconomic projections, the outlook for HICP inflation has been revised up slightly for 2020 and down slightly for 2021, mainly driven by the expected future path of energy prices.』(今回)

物価見通しに関しては2020年をちょこっと上げて2021年をちょこっと下げていますがこの要因はエネルギー価格動向の先行き見通しをいじったからですということなので、他意はありませんって言いたいんでしょうな。つまり見通し不変。


・なおラガルドさんのパワーワードが来たようですな

パワーワード頂きましたって感じでメディアもニッコリ。
https://jp.reuters.com/article/ecb-lagarde-idJPKBN1YG24A
2019年12月13日 / 02:04
ECB金利据え置き、新総裁は「フクロウ派」 独自スタイル強調

『またドラギ前総裁が9月に発表した景気刺激策に不快感を示した複数のECB理事会メンバーとともにコンセンサスを模索することが目標であると強調。「はっきり申し上げておきたいが、私はハトでもタカでもない。私の夢は知恵の象徴であるフクロウになることだ」とした。』(上記URL先より)

ということで会見QAが楽しみですな。


〇これは続報待ちですわ(国債入札見直しとな)

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-12-12/Q2C6WCT0AFB401
年初から国債入札見直し、マイナス金利による上振れ是正
占部絵美、野原良明
2019年12月12日 11:30 JST 更新日時 2019年12月12日 12:19 JST

『財務省は年明け以降、国債入札ルールを順次見直す。日本銀行のマイナス金利政策の影響で入札実績が国債発行計画を大幅に上回っている現状の是正が狙い。2020年度発行計画も新ルールを反映したものとし、乖離(かいり)が改善されなければ、来年度下期にあらためて計画見直しを検討する。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。』(上記URL先より、以下同様)

それは別にどうぞどうぞなのだがマイナス金利政策だって長続きさせるのには無理があるのですから目先1年か2年堪えてれば良いだけな話をここでやるんですかそうですか。

『関係者によると、同省は来年1月、国債の安定消化を担うプライマリーディーラー(国債市場特別参加者、PD)への特典として追加購入を認めている第2非価格競争入札の応札限度額を入札額の15%から10%に引き下げることで発行額を抑制。』

今落ち着いてるから良いけどちょっとボラが出だすと入札がイベントリスクとか言われるようになっていたりしてたのついこの前だと思うんですが第U非価格減らすのってどうなんでしょうかね。

『マイナス金利下でも最低0.1%と定められている国債の表面利率を来年10月にも0.001%刻みで引き下げ、額面を超える価格を下げる。』

ちょっと待て、何で急に刻みが2桁も細かくなるんだ1桁ならともかく。って大体からしてそんな刻みで発行するの初回は良いけどリオープンルールとの絡みがある訳で、カレントからズレた0.001%刻みのクーポンのリオープン新発とか何か禿しく使いにくそうなのですがいきなり千分の1パーというのはちと過激ではなかろうかと。

でもって今ざざーっと見た感じだと(なお日経本紙は購読していないロクデナシなので紙媒体は手元にない)続報が見当たらなかったので続報待ちですがメモ。


〇雨宮副総裁金懇ですが時間が・・・・・・・

ちょっとこんなタイミングで金懇打ち込まないで頂きたい(笑)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/ko191212a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191212a1.pdf

最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 岡山県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 雨宮 正佳

読みどころとしては、最近の物価動向がどうのこうのという辺りでポジティブな話をしているところがちょっと新しいかなという感じです。金融政策に関してはそんなに変わった話をしている感じでも無かったのですが詳しくは週明けに(大汗)。


〇おまけで英国総選挙メモ

とりあえずBBCの速報だけは見ましたがBBCの予想はCON368(+50)LAB(-71)SNP55(+20)LD13(+1)とかそんな感じのようで無事といえば無事なんですがSNPの躍進をどう評価すりゃ良いんだこれ・・・・・・









2019/12/12

お題「FOMCは無事にノーイベント/円債ちゃん市場雑談メモ」

政府方面がアレの為すっかり放置プレイですが我らが地方政府も誠にアレ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53209120R11C19A2AC1000/
都構想、松井氏「反対意見は遠慮願う」 住民向け説明会
関西 社会・くらし
2019/12/11 13:19

『松井一郎大阪市長(大阪維新の会代表)は11日、大阪市を廃止して特別区を設置する「大阪都構想」の制度案を巡り、住民から意見を聞く「出前協議会」で「(市民の質疑は)あった方がいいが、反対論の意見は時間が限られているからご遠慮願いたい」と述べた。』(上記URL先より)

寧ろ反対意見を聞く場じゃねえのかよ公聴会みたいなもんなんだから、と思うのだがまあ大阪維新だし松井一郎だしなのだが、反対意見はイラネとかお前は封建領主の積りかという民選知事って何なんでしょうねえ全く。

と思うがこっちはまたパターナリズムの極みの民選知事がいつものパターナリズム全開で・・・・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53050230W9A201C1L83000/
東京都、善行にポイント 小池知事「SDGs切り口に」
ネット・IT 東京 社会・くらし
2019/12/6 18:18

『東京都は三菱総合研究所などと時差通勤などの善行にポイントを付与する実証実験に乗り出す。小池百合子知事が6日の記者会見でポイント事業「東京ユアコイン」を正式に発表した。社会貢献を促す独自のポイント制度を通じてキャッシュレス化を推進する。』(上記URL先より)

>善行にポイントを付与する
>善行にポイントを付与する
>善行にポイントを付与する

お前はガンツ先生かと小一時間(直ぐに分かるあなたは年寄りだしガンツ先生を知らない若者はレッツ検索^^)。



〇FOMC声明文:以下も含めて見事にノーイベントですわな

今回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20191211a.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20191211a1.pdf

前回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20191030a.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20191030a1.pdf

・第1パラグラフ:全文一致キタコレ

1パラから全文一致ですわよ。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in October indicates that the labor market remains strong and that economic activity has been rising at a moderate rate.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in September indicates that the labor market remains strong and that economic activity has been rising at a moderate rate.』(前回)

もちろん正確にはここのオクトーバーとセプテンバーに変更がありますが(^^)、総括判断から以降現状判断部分のこのパラグラフは見事な全文一致。

『Job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low. Although household spending has been rising at a strong pace, business fixed investment and exports remain weak.』(今回)

『Job gains have been solid, on average, in recent months, and the unemployment rate has remained low. Although household spending has been rising at a strong pace, business fixed investment and exports remain weak.』(前回)

同じっすなあ。

『On a 12?month basis, overall inflation and inflation for items other than food and energy are running below 2 percent. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(今回)

『On a 12-month basis, overall inflation and inflation for items other than food and energy are running below 2 percent. Market-based measures of inflation compensation remain low; survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed.』(前回)

こっちも同じということですから当然政策は据え置き。


・第2パラグラフ:工夫の跡がみられますな、一見するとハトっぽいが微妙ではある

前回は利下げしているのでその辺は一致しないのは当然として、その他多少

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

は良しとしまして、

『The Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1-1/2 to 1-3/4 percent.』(今回)

『In light of the implications of global developments for the economic outlook as well as muted inflation pressures, the Committee decided to lower the target range for the federal funds rate to 1-1/2 to 1-3/4 percent.』(前回)

前回は利下げしているのでここの文言が違うのは仕様。、


『The Committee judges that the current stance of monetary policy is appropriate to support sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective.』(今回)

『This action supports the Committee's view that sustained expansion of economic activity, strong labor market conditions, and inflation near the Committee's symmetric 2 percent objective are the most likely outcomes, but uncertainties about this outlook remain.』(前回)

前回あった、この政策により経済拡大と強い労働市場と2%物価目標が「the most likely outcomes」ってこの「最も見込まれる結果」という表現がしらっと抜けているのですが、これ例えば今年1月とかのように政策動かしていない時にもそのような書き方をしていたんですけど、先行きに自信があるならthe most likely outcomesみたいなヘッジクローズ入れないというのが中銀文学の基本なので、ヘッジクローズ取って何気に先行きの自信ニキを示していますな。

『The Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook, including global developments and muted inflation pressures, as it assesses the appropriate path of the target range for the federal funds rate.』(今回)

『The Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook as it assesses the appropriate path of the target range for the federal funds rate.』(前回)

でもって先行きについてモニターして必要な施策を云々のこの部分に「including global developments and muted inflation pressures」ってのを入れているので、これ一瞬見るとこっちに目が行ってしまいますし、まあ確かにこう書いてあるのですから、政策金利の引き上げバイアスが無いのを表明した形になっていて、恐らくそういう意味は込められているんでしょうなあとは思います。なお前回もさっき引用したところで「but uncertainties about this outlook remain」ってありますので、特段警戒度上げた訳でもないのですけれども、市場がプレマチュアーに暴れだされても困るのでって話でしょうな。なにせ(この後やりますけど)SEPのドットチャートは変態仮面ブラード大先生も利下げになっていませんから、その辺を中和したんでしょう(個人の感想です)。


・第3パラグラフ:ここは全文一致

先行きの金融政策の修正については幅広いデータを参考にしながら行っていく云々の部分は毎度同じ。

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(今回)

『In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its maximum employment objective and its symmetric 2 percent inflation objective. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments.』(前回)

最早めんどくさいのでパラ丸々比較でご勘弁。


・第4パラグラフ:全員一致キタコレ

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; Esther L. George; Randal K. Quarles; and Eric S. Rosengren.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Richard H. Clarida; Charles L. Evans; and Randal K. Quarles. Voting against this action were: Esther L. George and Eric S. Rosengren, who preferred at this meeting to maintain the target range at 1-3/4 percent to 2 percent.』(前回)

ということでブラード先生が利下げ提案をするというようなオモシロ事案も発生せずに安泰安泰。


・IOERとRRPも据え置き

今回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20191211a1.htm
Implementation Note issued December 11, 2019

前回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20191030a1.htm
Implementation Note issued October 30, 2019

HTMLの下の方をポチっとなとすると出てくる物件(PDFだと声明文の後に出てくる)ですが、主要なところだけ確認すると据え置き。

『・The Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to maintain the interest rate paid on required and excess reserve balances at 1.55 percent, effective December 12, 2019.』(今回)

『・The Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to lower the interest rate paid on required and excess reserve balances to 1.55 percent, effective October 31, 2019.』(前回)


『In addition, the Committee directs the Desk to conduct overnight reverse repurchase operations (and reverse repurchase operations with maturities of more than one day when necessary to accommodate weekend, holiday, or similar trading conventions) at an offering rate of 1.45 percent, in amounts limited only by the value of Treasury securities held outright in the System Open Market Account that are available for such operations and by a per-counterparty limit of $30 billion per day.』(今回)

『In addition, the Committee directs the Desk to conduct overnight reverse repurchase operations (and reverse repurchase operations with maturities of more than one day when necessary to accommodate weekend, holiday, or similar trading conventions) at an offering rate of 1.45 percent, in amounts limited only by the value of Treasury securities held outright in the System Open Market Account that are available for such operations and by a per-counterparty limit of $30 billion per day.』(前回)

ついでにディスカウントウィンドウのレートも据え置きな。

『・In a related action, the Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to approve the establishment of the primary credit rate at the existing level of 2.25 percent.』(今回)

『・In a related action, the Board of Governors of the Federal Reserve System voted unanimously to approve a 1/4 percentage point decrease in the primary credit rate to 2.25 percent, effective October 31, 2019. In taking this action, the Board approved requests to establish that rate submitted by the Boards of Directors of the Federal Reserve Banks of Minneapolis and San Francisco.』(前回)



・SEP:経済物価見通しほぼ不変、中立金利もほぼ不変で来年は金利据え置きがかなり多数

んな訳でSEPである。

今回
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20191211.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20191211.htm

前回(9月)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20190918.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20190918.htm

引用はHTMLの方から行ったりしますがビジュアルはPDFの方が見やすい。

・成長率見通し

毎度のごとく手抜きでメディアンだけ引用しますし手抜き貼り付けです。

左から2019、2020、2021、2022、ロンガーランである。

Change in real GDP
2.2 2.0 1.9 1.8 1.9
September projection
2.2 2.0 1.9 1.8 1.9

なおCentral Tendencyを見ると2020年のレンジが微妙に上がっていますがまあ誤差。


・失業率

Unemployment rate
3.6 3.5 3.6 3.7 4.1
September projection
3.7 3.7 3.8 3.9 4.2

見通し下がっていますがロンガーランも下がっているのでこれは同じみたいなもん。


・物価見通し

PCE inflation
1.5 1.9 2.0 2.0 2.0
September projection
1.5 1.9 2.0 2.0 2.0

Central Tendencyを見ると微妙に先の所で下がっていないわけでもないがまあ誤差。


コアPCEの方はロンガーランは無いので数字は4つだけ出ますが、
Core PCE inflation4
1.6 1.9 2.0 2.0
September projection
1.8 1.9 2.0 2.0

足もとが下がっているけど先行き不変。Central Tendencyを見るとなぜか2021年が少しだけ上がっている訳でもないがこれまた誤差という事にしておく。


・政策金利見通し

これはまあ状況が9月から変わっているのであまり前回と細かくは比較しませんが、

2020年の見通し
現状維持:13名
1回利上げ:4名

前回はこんな感じでした。

「今回の年末までの見通し
現状維持:5名
1回下げ:7名
1回上げ:5名

来年の見通し
1回利上げ5名のうち、1回利上げ1名横ばい4名
現状維持5名のうち、1回利上げ2名横ばい2名1回利下げ1名
1回下げ7名のうち、横ばい7名」
(この部分は前回9月SEPでのドットチャートを見てあたくしが書いた駄文です)

ということですので、前回と単純に比較しにくいのですが、まあ概ねこの感じだと2020年に利上げしろ派が退潮したって感じになっているのではないかと思います。

でもって2021年ですけど、

2020年据え置き派13名中
据え置き:5名
1回利上げ:4名
2回利上げ:4名

2020年1回上げ派4名中
1回利上げ:1名
2回利上げ:3名

となっていて、エライのんびりとした利上げコースになっておりますが、まあ前回もそんな感じちゃあそんな感じでして、2022年の年末のドットについても9月もそうでしたが今回もまたまた「全員揃って自分の出している中立金利よりも低い」っぽい数字ですな。

よって「利下げはしないけど利上げはのんびり」ということで、利下げバイアスについては市場に出さないようにしながら、利上げバイアスも出さないようにするというような感じになっているので現状維持現状維持って事になるのですかね。

ロンガーラン(中立金利)は、

今回
3.25%:1→1
3.00%:1→1
2.75%:3→2
2.50%:8→8
2.375%:1→1
2.25%:1→2
2.00%:1→1

とドットが1つ下がっている(または2.75が2.50になって2.50が2.25になったか)のですが、今回はあんまりカワランチ会長となっています。


〇オープニングステートメントはかなり安定の内容だが続きは明日(サーセン)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20191211.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Remarks December 11, 2019

えーっとすいません。どうせ今回ノーイベントだからオープニングステートメントまでじっくり読んでやれ、と思って喜び勇んで読んだのは良いのですが、結局書く方が追いつかなくて続きは明日ですすいません。(この下にある円債市場雑談は昨日の夜なべ仕事)

ただまあ内容に関してはパウエルさんの中の人が本来の姿を取り戻したのかエライ安定感のある内容とお見受けしましたがどうでしょうかね。ま、ウゴカンチ会長なのだから安定するのは当然かもしれませんけれども(^^)。





〇日々謎相場なのでメモメモ

・ちょっと待てなんだその思惑は(というのは一昨日の件ですが)

一昨日の市況後講釈なのでどうでも良いといえばどうでも良いのだがさすがにこれは・・・・・・

https://www.nikkei.com/article/DGXLASS0IMB04_Q9A211C1000000/
債券15時 長期金利、マイナス0.025%に低下
2019/12/10 15:42
日本経済新聞 電子版

『10日の債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは低下した。前日比0.010%低い(価格は高い)マイナス0.025%を付けた。短期間で急速に利回りが上昇したため、日銀が国債購入を通じて上昇を抑えるのではないかとの思惑が広がり買いが優勢になった。』(上記URL先より)

ちょwwwwおまwwwwwwwwww

えーっとすいません、金利上がったって言ったって10年0%マークしたばっかりだし20年は0.30%に届くか届かないか状態だし、中期だって別にマイナス水準にいるんですけど何でそこで金利上昇抑える必要あるんですか日銀のイールドカーブコントロールの長期金利水準幾らだか覚えてますかという所でして、ちょっとお前ら頭というのは使わないと退化するぞいい加減にしろと思ったのだが、何ぼ何でも話に無理があり過ぎる次第で、記事書く方ももうちょっと物事を考えて頂きたいと斯様思うのでありました。

・・・・・・・などと大口を叩いていたら明日の輪番がいきなり増額になってお遍路の旅に出ざるを得なくなってしまったらそれはそれで特級フラグ建築士になるんだが、いや寧ろ年初来で見たら超長期のカーブが盛大にフラットしてるんだから超長期減額じゃろ減額、とか思う訳ですが、そういや先般も「超長期のイールドカーブをスティープさせるために国債発行計画で云々」みたいな国債管理政策の意味くらい勉強してから記事書けや的な物件も散見されていたりして、貴殿の頭の中にあるのはオガクズか何かかと小一時間問い詰めたくなるのは何なんですかねえマッタクモウ。


・昨日は短国買入が絶賛ニバイニバーイだがその前にもあったのを不覚にもどスルーしていましたサーセン

昨日の短国買入オファーですが、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of191211.htm
国庫短期証券買入 2,000 2019年12月12日

倍増キターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーー!!!

・・・・・・と言いましても茲許ずーっと何があっても毎週1000億円だったのが2000億円になったわけで、倍増は倍増ですけれども、まあ元々の額が些少でございますので、些少の倍と言っても些少な訳ですが、これはまあお気持ちって奴ですなお気持ち。5000だのとかにしたらこりはビックリという話になりますけど、確かに金曜の3Mに続いて月曜の新発6Mも片足マイナス一桁台とは言えまあ▲10bp水準ですし、特に慌てるような時間帯でもないし、だいたいからして月曜からマクロ加算の掛け目が下がって、そこに来て今週来週と金曜には財政の散超が連発で来る(年金定時払いと国債償還)ので、まあ現時点でマイナス一桁台前半とかいうのならともかく、そうでもないなら別にここで慌てて金利上昇を止めに掛かるほどのものでもないと思われる(個人の感想です)ものの、そうは言いましてもちょっと急にボラも出たし、丸無視している訳ではなくて市場動向は見てますよ的な感じっすかねえよー知らんけど。

というかですね、ジンバブエ祭りでおじいちゃんどスルーしておったのですが、金曜にこんなのがありましてですな(超大汗)。

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of191206.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 30,000 2019年12月9日 2019年12月10日
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式> 15,000 2019年12月9日 2019年12月27日

27日エンドの方は一本だけ残っておられる共通担保オペのロール分ですが、T/Nで3兆円の共通担保固定金利をテンポラリーに打っておりまして、ここもとGCとかコールが高止まりしているので、それに対応してみましたって感じですが、対応したというよりはこれもまたお気持ちオペでございまして、それは結果の方を見ればまあ分かるかと。つまり結果は・・・・・・・・・

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba191206.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(12月10日エンド分) 0 0
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(12月27日エンド分) 5,757 5,757

ということでして、そらまあコールやレポがプラス圏内に突撃した訳でもないので、それならT/Nの共通担保に用はなしという事だとゆー感じですが、そうは言いましても一応金利上昇してホイホイとプラス圏になるのは如何なものか的なサムシングな追加オペだったので、まあそういうことなんでしょうな。


・ところで引け際に急にカーブが変わった気がしたんだが

昨日の債券市場ちゃん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28L11Q
2019年12月11日 / 15:19
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、限月交代前の短期的な売り

『<15:07> 国債先物は反落で引け、限月交代前の短期的な売り

国債先物中心限月12月限は前営業日比30銭安の152円09銭と反落して取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同2.0bp上昇のマイナス0.005%。材料が乏しい中で、限月交代前の短期的な先物売りが現物売りを引き込む展開となった。』

『先物売りの要因とみられているのは、12月限から3月限への限月交代だ。出来高が接近しており、あすにでも限月交代する可能性が大きい。市場では「限月交代を控え、短期筋のポジション調整による先物売りが続いているようだ。限月交代すれば売りは一巡するだろう」(国内証券)との指摘が出ている。』(上記URL先より、以下同様)

という話なんだが、昨日の場中って5年と10年はパラレルでしたけれども、先物との関係は下がると先物弱くなって戻るとその弱さが少し緩和されるみたいな感じなので、まあ先物主導は先物主導だと思うのですが、先物が後場高値付けたのが前後場足見ると14時52分に高値152円21銭付けて大引けが152円09銭とか10分で12銭下がっている間に、最後いきなり中期と長期超長期の関係がひっくり返って・・・・・・・・・

『TRADEWEB
    OFFER  BID   前日比  時間
2年  -0.115 -0.108   0.007  15:07
5年  -0.099 -0.092   0.013  15:03
10年  -0.009 0.001   0.017  15:07
20年  0.288 0.299   0.011  15:07
30年  0.427 0.438   0.009  15:05
40年  0.447 0.457   0.005  15:07』

途中20年カレントってどこまで言っても5糸甘水準とかで、ちょっと待てそれ1日前の場中で先物同じところにいた時より断然強くなっているんだがどうなっとるんじゃという風情だったのですが、先物が後場高値から引けに推移するドサクサに中期が復活して超長期が失速して終わってみればそれほどのフラットニングになっていませんでしたモードで、何でそうなったのかという感じではございまする。

しかしまあ何ですな、前日取引中盤以降の謎の大上げをお返しして余りある先物下げという風情で、何か上がるにしろ下がるにしろ無駄に派手な動きをしやがりますなあと思いますし、ちょっと力のありそうな動きがあると見事に市場ちゃんが無抵抗主義になってしまっているのですかねー何だかよー知らんけど、ってな感じの相場でございました。

不思議な動きではありますが、なんかこう今年の変なポジションの大掃除でもしてるんですかねえ位の勢いで微妙に変な感じではありまする。






2019/12/11

お題「相場ちゃんがよく暴れたので備忘メモ/ブレイナード理事講演より(その3)」

最近は債券ちゃんだけ謎の荒ぶるボラ相場ですが、それよりもこの水準での気温のボラの方が体に堪える次第(年寄りなので)でして、気温のボラはPL直入で相場のボラはBS直入する程度と言ったところでしょうか、と訳の分からぬ妄言モード(−−;

〇5年入札滑って10年0%とかになったのですが何ですかこの相場は(市場備忘メモ)

いやもう何ですかこのボラは。

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 19年12月限
(昨日数字と日中足が見れるのは今日の日中取引寄付きまで)

2019/12/10 日中取引
始値:152.30(08:45)
高値:152.43(14:49)
安値:151.86(12:35)
現在値:152.39(15:02)
前日比:+0.13(+0.08%)
取引高:67,243

まあボラと言いましても先物ちゃんで言えば前場は下がり続けて入札結果出た直後に安値付けたあとに、いったん軽く上げ下げしたと思ったらその後猛然と上昇したという図なのですが、前場の高安が29銭で後場の高安が47銭とか中々よーやって頂きましたし、10年の0%出合いとかもあったので折角なので備忘メモ。

またもロイターさんで恐縮ですが、
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28K1BR
2019年12月10日 / 15:28
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反発で引け、5年債入札が乱高下を演出

『<15:07> 国債先物は反発で引け、5年債入札が乱高下を演出

国債先物中心限月12月限は前営業日比13銭高の152円39銭と反発して取引を終えた。一時151円86銭まで下落し、中心限月としての年初来安値を更新、2018年12月14日以来の低水準を付けた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同1.5bp低下のマイナス0.025%。一時、3月6日以来となるゼロ%に浮上したが、後場中盤以降は再びマイナス圏に沈むなど荒い値動きとなった。』(上記URL先より、以下同様)

昨日は先物の寄りが前日比プラスで始まったと思ったらそこからズルズルと下がった訳ですが、下がる過程において20年カレントはBBで全然0.30%(1毛甘)を付けようとしないわ、10年カレントは先物が前場安値近辺になる頃になってやっと0.00%(1毛甘)の付値と10年もそうなのですが20年とか何なんですかこの強さはという感じで推移の巻。

結局前場引けの先物が152.04(-0.22)で終了したのですが、5年が多分2甘位(2甘だと▲8.5bp)とかで、ベンダーのヒアリングベースの予想足切りが100円89銭とかそんなもんだった訳ですが、後場始まった途端に10年の0%がまたも出合うわとか思ってたら先物が152円割るわと風雲急を告げるスタート。でもって落札結果は、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20191210.htm
5年利付国債(第141回)の入札結果

6. 価格競争入札について
(1)応募額 6兆2,558億円
(2)募入決定額 1兆5,554億円
(3)募入最低価格 100円80銭 (募入最高利回り) (-0.066%)
(4)募入最低価格における案分比率 43.9215%
(5)募入平均価格 100円88銭 (募入平均利回り) (-0.083%)

ふーんテール8銭かなるほど・・・・・・・ってお前これ5年入札やん!ということで5年でテールが1毛7糸とかこれはマーライオン入札と思ったら先物真空地帯の中で安値マークするわ、一回切り返したと思ったらまた下がるわで(ノ∀`)アチャーって感じでしたが、その間ナンヤソラと思ったのは10年カレントちゃん0%のまま梃子でも動かず、20年は前場後半からBB付値が無かったのでアレなのですが結局付値ベースの0.30%が付かずじまいだったと思うの。

・・・・・・とか何とか言ってたら先物がホイホイ戻って、さすがに先物戻っても10年0%のままじゃんとか思って負ったのですが、そのうち10年とか普通に戻りだして、取引終盤にかけてはブルフラットするわで、まあ後ろの方に買いでもあったんでしょうけれども、下がってフラットニング、上がってフラットニングとか横綱どころか親方モードになっておられる超長期オソロシス。

てな訳でロイターさんからの続き。

『乱高下を演出したのは5年債入札。為替スワップのベーシスが低下し、海外投資家にとって妙味が低下していることや、日銀の中期債オペが年内残り2回しかないことなどから、事前から弱いとの予想が多く、午前は現物や先物でのヘッジ売りが出たとみられている。また「10年債のゼロ%を試す動きも先物主導であったようだ」(国内証券)という。』

『実際、入札はテール(落札価格の最低と平均の開き)が8銭と16年2月18日の9銭以来となる大きさに拡大。最近では3銭開けば低調と言われるだけに、事前予想通り弱い結果となった。』

でまあその後切り返したのですが、別に他市場で何かがあった訳でもなく(米金利若干低下してたかも知れんけど)なのに円債独自の要因で暴れるというのがもうねという所でして、まあどうせ5年入札は低調だったけれどもまあ金利も上がったようなので(なお超長期の金利がそんなに上がった訳ではないのですが・・・・・・・)よーしパパ年内分の買入行っちゃうぞーとかそんな動きなんじゃなかろうかと思うのだがさっぱり分かりませんなという風情でロイターさんの相場後講釈も答えに困った感アリアリでよろしい。

『しかし、相場はその後反転。先物はプラス圏に浮上、長期金利は前日比マイナス水準まで沈んだ。特段の材料が出たわけではなく、日本株やドル/円は小動き。「5年債入札は弱かったが、事前予想通り。イベント通過で、午前に出ていたヘッジ売りが買い戻されたようだ。また長期金利がゼロ%を付けたことで、目先の達成感が出た可能性もある」(国内銀行)との指摘が聞かれた。』

テール8銭で事前予想通りもねえだろとは思うが。でもって気配はこんな感じだったそうで。

TRADEWEB
   OFFER  BID   前日比  時間
2年 -0.122 -0.114  0.004  15:10
5年 -0.112 -0.105  -0.006  15:10
10年 -0.027 -0.017  -0.011  15:10
20年 0.275  0.286  -0.015  15:10
30年 0.413  0.425  -0.023  15:11
40年 0.435  0.444  -0.027  15:08

でもって先物ちゃんが13銭高ですのでどう見てもブルフラットです本当にありがとうございました、って話なのですが、いやあのですなこの水準を昨年の年末から今年の年始(今年は年始に株為替の大暴れがあって(大発会の朝にNYダウが前日比2.8%も下がって戻って来るなよ〜でしたな)年末と年始のどっち使うかも悩ましいんですが)、年末だと各カレントって(ただし単利)、

2年▲0.145%
5年▲0.155%
10年▲0.005%
20年0.490%
30年0.705%
40年0.840%
(カレントの単利です。あたくしの手控え帳ベースなんで5糸位ズレてるかも知れませんが、一応売買参考統計値で再度確認はしましたよさすがに^^)

とかの水準で、昨年の年末から見たら思いっきりツイストフラットしているというこの相場ちゃんという風情でありまして、いやまあ絶対水準がマイナスだのコスト割れだのというのは買いにくいのは分かりますし、そういうのが累積してこの結果という事なのでしょうけれども、それにしても10年0%はまだしも、20年の30bpって別に止まり所なのか(倍の60なら話はまだ分かる)という感じの止まり方をしやがりまして、ちょっとどんだけ強いのよ。昨日の朝の妄想では5年が流れて10年の0%と20年の0.3%を乗せてきた後にどうなるのかというのを見たいとか不謹慎な事を考えていたのですが、全然それどころじゃなかったとか参りました。

・・・・・・・ということで何を今さらという昨日の相場メモなのですが、とりあえず近来にしては割と壮絶な相場だったので備忘の為にメモらさせていただきましたサーセン。


〇ブレイナード理事の講演ネタ続きである(その3)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20191126a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/brainard20191126a.pdf
November 26, 2019
Federal Reserve Review of Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications: Some Preliminary Views
Governor Lael Brainard
At the Presentation of the 2019 William F. Butler Award New York Association for Business Economics, New York, New York

『Policy at the ELB』って所です。

『Second, the Committee is examining what monetary policy tools are likely to be effective in providing accommodation when the federal funds rate is at the ELB.16』

つーことで2%インフレ目標により強くコミットというかインフレ期待をアンカーさせるために物価をもうちょい上げないとイカンのでは的なトーンが全体に流れる物価目標に関するストラテジー(というかコミュニケーションというか)の検討に次いでFOMCでやってて既に議事要旨にも出ているのがこの「ゼロ金利制約下における政策ツールの検討」でございますな。


・なんでツールキットの検討をするのかについて

『In my view, the review should make clear that the Committee will actively employ its full toolkit so that the ELB is not an impediment to providing accommodation in the face of significant economic disruptions.』

既にワシらは十分なツールキットを持ってますけんゼロ金利制約でも困らんのは明確、とか最初に大見得を切っておりますがそうは言いましても他のツールの検討もしているという建付けになっていますな。

『The importance and challenge of providing accommodation when the policy rate reaches the ELB should not be understated. In my own experience on the international response to the financial crisis, I was struck that the ELB proved to be a severe impediment to the provision of policy accommodation initially. Once conventional policy reached the ELB, the long delays necessitated for policymakers in nearly every jurisdiction to develop consensus and take action on unconventional policy sapped confidence, tightened financial conditions, and weakened recovery.』

『Economic conditions in the euro area and elsewhere suffered for longer than necessary in part because of the lengthy process of building agreement to act decisively with a broader set of tools.』

じゃあ何で他のツールキット検討するかというと、これらのツールキットのうち、新手の物だと法令的な整備をするのに時間が掛かったり、制度の作りこみにも時間が掛かったりするというのは欧州で見られた事案でもありますので、タイムリーに政策を実施するためには準備が必要だし、タイムリーに適切な政策ができないと回復にかかる時間が更に長くなってその間にインフレ期待の低下だの何だのとアカン奴になってしまいますがな、とかそんな話をしておりますな。


・フォワードガイダンスは有効とな

『Despite delays and uncertainties, the balance of evidence suggests forward guidance and balance sheet policies were effective in easing financial conditions and providing accommodation following the global financial crisis.17 Accordingly, these tools should remain part of the Committee's toolkit.』

金融危機以降のフォワードガイダンス政策は有効で今もツールキットであるべき、というここまでは良いのだが、ブレイナード理事は量的緩和の方に関して何か微妙な見解を示しているのだ。


・量的緩和政策は出口が大変だというのを理由に「無骨な手段」と消極扱いなのが何とも

『However, the quantitative asset purchase policies that were used following the crisis proved to be lumpy both to initiate at the ELB and to calibrate over the course of the recovery.』

手元のデイリーコンサイスを見ると「lumpy」ってゴツゴツしたとか無骨とかそんな意味でした。

『This lumpiness tends to create discontinuities in the provision of accommodation that can be costly. To the extent that the public is uncertain about the conditions that might trigger asset purchases and how long the purchases would be sustained, it undercuts the efficacy of the policy. Similarly, significant frictions associated with the normalization process can arise as the end of the asset purchase program approaches.』

テーパータントラムがトラウマだったようで、資産買入政策は出口政策が難しいし買入が増えればそれだけ更に大変で、そのことが認識されてしまうと買入政策の有効性もさがるんじゃネーノという説明なのだが、何故かこの姐さん、QE1が流動性供給で市場機能回復のための政策だった件をスルーしている感じがするのだが大丈夫かとは思う。


・金利キャップ政策にご興味を持たれているようだが机上の空論っぽいのが何とも

『For these reasons, I have been interested in exploring approaches that expand the space for targeting interest rates in a more continuous fashion as an extension of our conventional policy space and in a way that reinforces forward guidance on the policy rate.18 In particular, there may be advantages to an approach that caps interest rates on Treasury securities at the short-to-medium range of the maturity spectrum-yield curve caps-in tandem with forward guidance that conditions liftoff from the ELB on employment and inflation outcomes.』

物価の実績に紐付けてフォワードガイダンス政策と短期から中期辺りの国債金利にキャップを付ける政策の合わせ技を使うと有効なのではないか、というお話なのですが・・・・・・・・・・・・・・

『To be specific, once the policy rate declines to the ELB, this approach would smoothly move to capping interest rates on the short-to-medium segment of the yield curve. The yield curve ceilings would transmit additional accommodation through the longer rates that are relevant for households and businesses in a manner that is more continuous than quantitative asset purchases.』

短期金利がゼロ制約なのだからイールドカーブキャップへの移行はスムーズでっしゃろとか、金利政策だから量的緩和より分かりやすいので一般にも伝わりやすいので追加緩和効果が出るじゃろ、という認識で、

『Moreover, if the horizon on the interest rate caps is set so as to reinforce forward guidance on the policy rate, doing so would augment the credibility of the yield curve caps and thereby diminish concerns about an open-ended balance sheet commitment.』

それにフォワードガイダンスを付ければ、オープンエンド型でどこで終わるか分からん資産買入政策をするよりも分かりやすいので出口のタントラムも起きにくいじゃろ、

『In addition, once the targeted outcome is achieved, and the caps expire, any securities that were acquired under the program would roll off organically, unwinding the policy smoothly and predictably.』

しかもガイダンスでターゲットにした物価が達成できたらその後はプログラムは終わるとなっているので出口がスムーズでしかも予見可能ですがな、とかどう見ても机上の空論っぽくなってくる。

『This is important, as it could potentially avoid some of the tantrum dynamics that have led to premature steepening at the long end of the yield curve in several jurisdictions.』

テーパータントラムどんだけトラウマだったのよ・・・・・・・・・・・・

『Forward guidance on the policy rate will also be important in providing accommodation at the ELB. As we saw in the United States at the end of 2015 and again toward the second half of 2016, there tends to be strong pressure to "normalize" or lift off from the ELB preemptively based on historical relationships between inflation and employment.』

『A better alternative would have been to delay liftoff until we had achieved our targets. Indeed, recent research suggests that forward guidance that commits to delay the liftoff from the ELB until full employment and 2 percent inflation have been achieved on a sustained basis-say over the course of a year-could improve performance on our dual-mandate goals.19』

フォワードガイダンスに関しての話に戻っていますが、もうちょっと引っ張った方が良かったのではという研究がありまっせという紹介をしているようですの。なおこの脚注19がバーナンキだったりするのですが・・・・・・・・

ただこれってフィリップスカーブがフラットだからそう言えるのであって、カーブが立ってきたらそんなの無茶という話だし、しかも結局のところ事後的にしか分からんのだから、結果論じゃろ結果論と思うのですが、まあブレイナード理事は基本緩和長期化上等スタンスなのは分かる。

『To reinforce this commitment, the forward guidance on the policy rate could be implemented in tandem with yield curve caps.』

で、話は戻ってフォワードガイダンスと金利キャップ政策の合わせ技にご執心のブレイナードさん。

『For example, as the federal funds rate approaches the ELB, the Committee could commit to refrain from lifting off the ELB until full employment and 2 percent inflation are sustained for a year.』

例えばゼロ金利制約になった時には完全雇用と2%物価(実績値なんでしょうな)が1年間持続するまで出口に行きませんとかそんなのはどうよということだが、それフィリップス曲線がフラットなままであることが前提になっているので、もしこれやっている時に物価がちょっと上がりだしたら多分中央銀行としてそのまま1年の動きを待つとかそんなこと出来ないと思うのですけどねえ・・・・・・・・・・

『Based on its assessment of how long this is likely take, the Committee would then commit to capping rates out the yield curve for a period consistent with the expected horizon of the outcome-based forward guidance. If the outlook shifts materially, the Committee could reassess how long it will take to get inflation back to 2 percent and adjust policy accordingly. One benefit of this approach is that the forward guidance and the yield curve ceilings would reinforce each other.』

状況によって変化させたらガイダンス政策の時間的不整合にモロに嵌るのだが・・・・・・・

『The combination of a commitment to condition liftoff on the sustained achievement of our employment and inflation objectives with yield curve caps targeted at the same horizon has the potential to work well in many circumstances. For very severe recessions, such as the financial crisis, such an approach could be augmented with purchases of 10-year Treasury securities to provide further accommodation at the long end of the yield curve.』

でもって更にシビアーな状態だったら10年金利のキャップとかいうのもアリでしょう、だそうですが、

『Presumably, the requisite scale of such purchases-when combined with medium-term yield curve ceilings and forward guidance on the policy rate-would be relatively smaller than if the longer-term asset purchases were used alone.』

この最後の部分、どう見ても日本の先行事例を誤解していると思うし、FOMCの議事要旨とかそれこそバーナンキ辺りでもそういう指摘していてどうみても間違いなのだが、「単純に資産買入をするよりも金利キャップ政策の方が買入が少なくて済む」というこの認識、ジャパンのYCCってのはその前の膨大な長期国債馬鹿買入政策がやり過ぎで行き詰ったから買入ペースを落とすための方便として導入したもの(というのは今ではまあそういう認識ですよね〜)であって、YCCになってから買入ペースが減っても金利コントロールできているように見えるのは、それ以前に日銀の買入が死ぬほどあったので価格支配力を握ったというのが一つの要因、そしてもう一つの要因はそれをやっても物価が全然アガランチ会長であったが為に、出口とかそういうものを市場が意識しないような環境が延々と継続しているからなのであって、価格支配力を握るレベルまで国債を買うというのが先に必要なのと、そもそも出口を意識したら、出口でも何でもない昨年7月のあの時だって指値オペに盛大に札が入ったんですから、マジ出口の時に買入が爆発的に増えるのは明らかなんですが、日銀は自分らの事例をちゃんと説明して差し上げないと、このままだと物凄く間違えてFEDが金利キャップとか言い出す可能性があって非常に懸念されますな。

いやまあゼロ金利制約に引っ掛かるような事態にならなければ顕在化しませんけどね。

以下『Monetary Policy and Financial Stability』というのがあって、いやお前それは今懸念しろよという話のオンパレードなのですが、基本的にブレイナードさん的には(Before closing, it is important to recall another important lesson of the financial crisis:とはゆうとるものの) オマケっぽい感じになってるので今回はパスします。





2019/12/10

お題「市場メモ/ブレイナード理事の政策枠組み見直し中間レビュー講演より(その2)」

あらまあ。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/other20191209a.htm
December 09, 2019
Statement from Chair Powell on the death of Paul A. Volcker
For immediate release

『I am deeply saddened by the passing of Paul Volcker. He believed there was no higher calling than public service. His life exemplified the highest ideals-integrity, courage, and a commitment to do what was best for all Americans. His contributions to the nation left a lasting legacy. My colleagues and I at the Federal Reserve mourn this loss and send our condolences to his family.』

まあ90歳越えてましたから大往生ではありますが。

〇市場俺様備忘メモ雑談

・輪番同額ですな&中々抜けませんのう

http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of191209.htm
国債買入(残存期間1年以下) 500 2019年12月10日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000 2019年12月10日
国債買入(残存期間25年超) 300 2019年12月10日
国債買入(変動利付債) 1,000 2019年12月10日

金利をぶち上げるなら超長期減額、と言いたい所ですがそんな刺激的なことはしませんですかそうですか、(そもそも緩和政策やっている上に一応金利のフォワードガイダンスに関して低下方向にバイアス掛けた表現をしているのに、そんなに露骨なプレイはちょっとしにくい筈なんですよね、と言いつつ減額した11月頭のプレイは何だったのでしょうか・・・・・・・・)という所でしたが毎度芸も無くロイターさんから。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28J18N
2019年12月9日 / 15:16
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、長期金利はゼロ%に届かず

いいですねーこの見出し、ということで引用の巻。

『<15:07> 国債先物は続落で引け、長期金利はゼロ%に届かず

国債先物中心限月12月限は前営業日比19銭安の152円26銭と続落して取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同0.5bp上昇のマイナス0.015%。一時、マイナス0.005%まで上昇したが、11月米雇用統計を好感したリスクオン相場は限定的で、3月6日以来となるゼロ%には届かなかった。』(上記URL先より、以下同様)

てな訳で昨日は先物叩かれても10年は0%に届かず20年は0.300%が精一杯でそこから金利はアガランチ会長で後場中盤以降は先物叩き料理も力尽きたのか戻ってしまいましたな。

『現物市場で新発2年債は前日比1.0bp上昇のマイナス0.125%、新発5年債は同1.5bp上昇のマイナス0.105%。「6日の残存3年超5年以下対象の日銀国債買い入れオペ結果が弱かったことから、5年債はあすの入札への懸念がある」(国内証券)という。新発20年債は同0.5bp上昇の0.295%、新発30年債は同0.5bp上昇の0.440%。新発40年債は取引が成立しなかった。』

結局先物が弱くて5年がパッとせずで、さて今日の5年国債入札ですよ5年国債という所ではあるのですが、5年が滑って先物叩かれついでに10年プラス金利おうちょっとやってみろやと申し上げたいのですがさてどうなるのやら。



・という中でマクロ加算なんですが・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191209a.pdf
日本銀行当座預金のマクロ加算残高にかかる基準比率の見直しについて

最近スルーしまくっておりましたがちょうど短国が入札で片足▲9bp台にギリギリ入るという地合いなので反応。

『日本銀行は、日本銀行当座預金のうち、ゼロ金利が適用されるマクロ加算残高 の算出に用いる基準比率(「補完当座預金制度基本要領」4.(3)イ.に定める 基準比率)について、次のとおり定めることとしました。

2019年12月〜2020年2月積み期間:31.5%(注)

これにより、日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)は、上記3積み期間において、平均して5兆円程度となる見込みです。』

ということで12−2の積み期間(12/16〜3/14)については毎度の事ですが資金需給的にへこむ(除く12/20の国債償還)のでマクロ加算も減るというのが仕様なのですが、まあこのマクロ加算も四半期ベースでやっておりましたけれども、そもそもがMB自体オーバーシュート型コミットメントは残っているので拡大方針は拡大方針としても、そのペースが著しく緩くなっている中ですと、これ3か月ごとの設定だと資金需給のブレに対して設定荒くねえかという気もするのですが、最近そこまでこの辺を詳しく追っかけていない(というかこれ毎日細々追っかけないと追いつくのが大変なのよね〜)のでその辺の話はパス。

まあこの3か月は平均したらこういう話になるのでしょうが、途中に国債大量償還ちゃんがあるのでそこの所で瞬間的にマイナス適用が増えて短国ちゃん地方とかの金利低下圧力になるということになると思うのでありますのでメモということで。

以前のように盛大にMB増えるんだと季節要因の出入りよりもそっちのファクターの方が大きかった訳ですが今だとどう見ても季節要因の出入りの方が効きそうですし、マクロ的なマイナス金利残高適用額もかつての10兆から5兆に減らしている関係上、実際のマイナス金利残高適用額のブレがマイナス残高適用額全体対比で大きくなるので、まあそこをきちんと追いかけないと本当はいかんのだが、とはここもとの短国ちゃんを見ていて思うのでした(超大汗)。まあアタクシの反省の弁になっておりまして誠に申し訳ありませんメモメモということで。


〇ブレイナード理事講演で金融政策枠組みレビューの中間報告チックな話をしているのだが

ということでジンバブエ祭りで中断が入りましたが先週木曜の続きですいません。

#そういえばジンバブエ祭りに関しては人それぞれツッコミの刺さる場所が違っておられるようでせっせと夜なべしてツッコミ場所を探して並べた甲斐がありましたとニッコリ(^^)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20191126a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/brainard20191126a.pdf
November 26, 2019
Federal Reserve Review of Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications: Some Preliminary Views
Governor Lael Brainard
At the Presentation of the 2019 William F. Butler Award New York Association for Business Economics, New York, New York

後半の、というよりは本題の方の(最初の現状の金融政策に関する話は正直マクラ扱い)話は、先般来延々とやっているFOMCでの金融政策枠組みの見直しに関する中間レビューで講演のお題もそのものズバリになっておりますな。


・政策レビューに関するお題を見ると現世利益的には緩和バイアスっぽくなる訳ですが・・・・・・・・・・

まずは『Review』って小見出しから参ります。

『The Federal Reserve is conducting a review of our monetary policy strategy, tools, and communications to make sure we are well positioned to advance our statutory goals of maximum employment and price stability.3 Three key features of today's new normal call for a reassessment of our monetary policy strategy: the neutral rate is very low here and abroad, trend inflation is running below target, and the sensitivity of price inflation to resource utilization is very low.4』

「Three key features of today's new normal」のせいで見直しをしとるという事で、米国および世界的な自然利子率の低下、トレンドインフレ率がターゲットを下回って推移し続けていること、フィリップス曲線のフラット化、というまあそうですねというのから始まりまして、

『First, trend inflation is below target.5 Underlying trend inflation appears to be running a few tenths below the Committee's symmetric 2 percent objective, according to various statistical filters. This raises the risk that households and businesses could come to expect inflation to run persistently below our target and change their behavior in a way that reinforces that expectation. Indeed, with inflation having fallen short of 2 percent for most of the past seven years, inflation expectations may have declined, as suggested by some survey-based measures of long-run inflation expectations and by market-based measures of inflation compensation.』

何故かここで順番が変わって最初にトレンドインフレの低下の話をしておりますが、ああだこうだ言ってますが、要するにトレンドインフレが低下するとインフレ期待が低下するリスクがあるし、現にサーベイや市場の示す期待インフレは低下しとりますと。

『Second, the sensitivity of price inflation to resource utilization is very low. This is what economists mean when they say that the Phillips curve is flat. A flat Phillips curve has the important advantage of allowing employment to continue expanding for longer without generating inflationary pressures, thereby providing greater opportunities to more people. But it also makes it harder to achieve our 2 percent inflation objective on a sustained basis when inflation expectations have drifted below 2 percent.』

でもってフィリップスカーブのフラット化の話が次に来て、フラット化することによってインフレが跳ねることを気にしないで金融緩和をすることが出来るというメリットがある、というのが来ているのでまあ大体枠組み話で出てくるであろう話もお察しできると存じますがまあそういうのをメリットとして挙げていますが、一方でフィリップスカーブがフラット化しているので一旦物価が2%目標から下方シフトすると物価目標達成が難しくなるというのがデメリット、ということですが、よくよく考えたらフィリップスカーブがフラットになった状態の時に物価が下がるドライバーis何とか書きながらしょうもない事を思ってしまいました(たぶん理屈上はインフレ期待の下方シフトがドライバーということになると思う)。

『Third, the long-run neutral rate of interest is very low, which means that we are likely to see more frequent and prolonged episodes when the federal funds rate is stuck at its effective lower bound (ELB).6 』

自然利子率の低下は金融政策運営においてゼロ金利制約に引っ掛かる可能性が高まるということを意味します。

『The neutral rate is the level of the federal funds rate that would keep the economy at full employment and 2 percent inflation if no tailwinds or headwinds were buffeting the economy.』

これは自然利子率の定義について。

『A variety of forces have likely contributed to a decline in the neutral rate, including demographic trends in many large economies, some slowing in the rate of productivity growth, and increases in the demand for safe assets.』

自然利子率が低下している要因ということで毎度の話をしているのだが、これも最近見ていてホンマカイナと思ってしまうのは「demand for safe assets」だから自然利子率が下がるという理屈って規制要因などの変化でどうのこうのみたいな話で、確かにまあ言いたいことは分かるし、そういうニーズがあるのもそうなんですが、何か違和感のある説明で、もちろん規制上の云々はあるにせよ、それは小手先の話であって本質的にはトレンド成長率が下がって投資リターンが落ちている方が本質何じゃネーノという気はする。まあどうでもいいけど。

『When looking at the Federal Reserve's Summary of Economic Projections (SEP), it is striking that the Committee's median projection of the longer-run federal funds rate has moved down from 4-1/4 percent to 2-1/2 percent over the past seven years.7 A similar decline can be seen among private forecasts.8 This decline means the conventional policy buffer is likely to be only about half of the 4-1/2 to 5 percentage points by which the FOMC has typically cut the federal funds rate to counter recessionary pressures over the past five decades.』

この辺はその水準が下がりましたねーという話。

『This large loss of policy space will tend to increase the frequency or length of periods when the policy rate is pinned at the ELB, unemployment is elevated, and inflation is below target.9 In turn, the experience of frequent or extended periods of low inflation at the ELB risks eroding inflation expectations and further compressing the conventional policy space.』

さっきの話の繰り返しで政策余地発動余地が無くなっているとインフレ期待の低下が起こりやすくなって、その結果さらに苦しいことになりますがなというお話でして、

『The risk is a downward spiral where conventional policy space gets compressed even further, the ELB binds even more frequently, and it becomes increasingly difficult to move inflation expectations and inflation back up to target. While consumers and businesses might see very low inflation as having benefits at the individual level, at the aggregate level, inflation that is too low can make it very challenging for monetary policy to cut the short-term nominal interest rate sufficiently to cushion the economy effectively.10』

それによって金融政策が効かなくなって来るリスクが高まりまして、そうなると経済がアチャーになった時の利下げ余地とかも無くなってイクナイので、企業や家計からしたら物価が上がらんでもエエではないかとかいう論点はあるかも知れんがイクナイ、ということですな。まあ本当にそうなのかしらというのはだいぶある訳で、それは政策割り当ての問題で別に金融政策でなくたっていいじゃないか経済政策だものという話もあるとは思うのですが、それを言い出すと中央銀行としては金融政策の居場所がなくなってしまう(実際にはマネポウィングではなくプルーデンスのLLR方面があるのでなくなりはしませんが)ので、そういう話にはならない、という組織バイアスがここには存在しますし、金融政策でマクロ安定化が出来ないという話になると、アタクシ浅学菲才でよーわからんのですが、ニューケインジアン涙目とかそういう話になるんでしたっけ。

『The experience of Japan and of the euro area more recently suggests that this risk is real.』

ここで日本だけではなくてユーロ圏まで引き合いに出されているのがお洒落。

『Indeed, the fact that Japan and the euro area are struggling with this challenging triad further complicates our task, because there are important potential spillovers from monetary policy in other major economies to our own economy through exchange rate and yield curve channels.11』

おまけにユーロ圏や日本がゼロ金利制約から全然抜け出せないことによってこいつらの国の金利水準が低いままで、その結果為替市場とかサーチフォーイールドとかのせいでワシらにもスピルオーバーが来るとかエライ言われようですが、かつてのFEDって新興国方面から金融政策のスピルオーバーが来るのでもうちょっとこう手心というか何というかお願いできませんですかねえとか言われても知らんがなと完全黙殺だったのに、最近はこういうことを言うようになったのか時代も変わったわとか思うし、かつて麿が金融政策のスピルオーバーとか言っても逆さ絵ウスラハゲは完全黙殺だったのからしたら隔世の感だし逆さ絵ウスラハゲは麿に土下座してこいって感じですな(話が逸れた)。

『In light of the likelihood of more frequent episodes at the ELB, our monetary policy review should advance two goals. First, monetary policy should achieve average inflation outcomes of 2 percent over time to re-anchor inflation expectations at our target. Second, we need to expand policy space to buffer the economy from adverse developments at the ELB.』

てな訳で政策枠組み見直しのお題としては2つあって、1つが「2%を平均して達成させてインフレ期待を再度アンカーさせること」、もう1つが「ゼロ金利制約に頻繁に引っ掛からないで済むように政策発動余地を作る」というお話。

これって究極的には「物価水準を上げる」という話になるので、超長期的に見れば中立金利水準を引き上げましょうという話ではあるのですが、その過程において物価上昇を容認する形になるので、足元から中期的に見た場合は金融緩和状態を長期化する(追加緩和するかどうかは別の話になる)話になる、ということでございますし、ブレイナード理事がこういう形でレビューのお題をまとめている以上、基本はこの線で執行部は考えているということだし、まあ議事要旨見るとそれに対する反対論も相当強そうなので、さてこの発想がそもそも論としてどうよという所から揉めてるんでしょうなあというのもありまする。


・フレキシブルな平均インフレ目標は今のシンメトリックとあんまり変わらん気がするんだが

ということで次の小見出しが『Achieving the Inflation Target』となる。

『The apparent slippage in trend inflation below our target calls for some adjustments to our monetary policy strategy and communications.』

出オチのようにストラテジーとコミュニケーションの見直しが必要と言い切っておりますな。

『In this context and as part of our review, my colleagues and I have been discussing how to better anchor inflation expectations firmly at our objective.』

でもって議論していると。

『In particular, it may be helpful to specify that policy aims to achieve inflation outcomes that average 2 percent over time or over the cycle. Given the persistent shortfall of inflation from its target over recent years, this would imply supporting inflation a bit above 2 percent for some time to compensate for the period of underperformance.』

オーバーザサイクルで2%の物価上昇をするのを達成するように、というのを明確化するのはインフレ期待のアンカーに対して一つの助けになる、とのことですが、そもそも物価目標ってのはリジッドな数値なのではなくて、オーバーザサイクルでの2%の事じゃろうと思うのだが・・・・・・・・・・

『One class of strategies that has been proposed to address this issue are formal "makeup" rules that seek to compensate for past inflation deviations from target. For instance, under price-level targeting, policy seeks to stabilize the price level around a constant growth path that is consistent with the inflation objective.12 Under average inflation targeting, policy seeks to return the average of inflation to the target over some specified period.13』

ということでメイクアップストラテジーの話が出てきて、プライスレベルターゲットとアベレージインフレーションターゲットの話があるんですが、まあどちらも期限を切らないで話をするとオーバーザサイクルとどう違うんだということになりますので特定期限とか特定のスタート水準を示した形で実施って話になるんでしょうが、これに関しては大昔にブランシャールがプライスレベルターゲットの話をした時に当時のドナルドコーン副議長が「実務的にまるで使い物にならんわヴォケ」と講演でケチョンケチョンな扱いをしたというのが印象に強く残っておりまして、まあどうなんでしょうかねと思う。(かと言って時期を示さないでこの概念持ち出してもオーバーザサイクルと言ってることがおなじなので、ただのシンメトリックターゲットと言ってるのと同じになる)

『To be successful, formal makeup strategies require that financial market participants, households, and businesses understand in advance and believe, to some degree, that policy will compensate for past misses.』

『I suspect policymakers would find communications to be quite challenging with rigid forms of makeup strategies, because of what have been called time-inconsistency problems.』

でもってブレイナードさんもさすがにメイクアップストラテジーに関するコミュニケーションの難しさについては認識しているようで、時間的不整合の問題があってコミュニケーションはチャレンジングとの認識。

『For example, if inflation has been running well below-or above-target for a sustained period, when the time arrives to maintain inflation commensurately above-or below-2 percent for the same amount of time, economic conditions will typically be inconsistent with implementing the promised action.』

で時間的不整合の例示。そらそうよという感じですが、メイクアップ終わった後に政策変更、ということになりますのでヤヤコシヤですわな。

『Analysis also suggests it could take many years with a formal average inflation targeting framework to return inflation to target following an ELB episode, although this depends on difficult-to-assess modeling assumptions and the particulars of the strategy.14』

でもってフォーマルなアベレージターゲットにしても物価が下がったのを上げるのには時間が掛かるのではないか、と先般のゼロ金利制約の時の教訓からも分析されるので難しいよねというお話。

『Thus, while formal average inflation targeting rules have some attractive properties in theory, they could be challenging to implement in practice.』

てな訳でフォーマルなアベレージターゲット政策は理屈の上では魅力的なのだが実務上の困難が多いのでは、という割と穏当な結論。

『I prefer a more flexible approach that would anchor inflation expectations at 2 percent by achieving inflation outcomes that average 2 percent over time or over the cycle.』

なのでブレイナードさんはオーバーザサイクルで2%達成しましょう的なフレキシブルターゲットに魅力を感じるそうなのだが・・・・・・・・・

『For instance, following five years when the public has observed inflation outcomes in the range of 1-1/2 to 2 percent, to avoid a decline in expectations, the Committee would target inflation outcomes in a range of, say, 2 to 2-1/2 percent for the subsequent five years to achieve inflation outcomes of 2 percent on average overall.』

うーんこの。

『Flexible inflation averaging could bring some of the benefits of a formal average inflation targeting rule, but it would be simpler to communicate. By committing to achieve inflation outcomes that average 2 percent over time, the Committee would make clear in advance that it would accommodate rather than offset modest upward pressures to inflation in what could be described as a process of opportunistic reflation.15』

コミュニケーションもしやすいし、フレキシブルな方が良いという話なんだが、これを言い出すと今のシンメトリックでフレキシブルな枠組みとどこがどう違うのかって話になる気がするんですよねー。

ということで以下はゼロ金利制約下の政策ツールの話になるのですが時間が無いので本日はここで勘弁。



2019/12/09

お題「何か金利が上がりましたな(メモ)/ジンバブエ先生金懇会見/ブレイナード理事講演予告編」

先般来の大学共通テストもそうなんだが最近の中央官庁は「何でこうなっているのか」というのを考えずに物事の設計をしようとするアホウじゃないと勤まらないのかと小一時間問い詰めたい。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53051270W9A201C1MM8000/
銀行間送金、公取委が調査 決済の参入障壁を問題視
経済 2019/12/7 1:30日本経済新聞 電子版

決済って経済の根幹部分なんですからして、そこにどこの馬の骨とも分からん連中が既存インフラのフリーライドな「新しいテクノロジー」をぶっこんだら地獄しか待ってないんですけど公取ってのは敵国のスパイでもやってるのか。

〇市場メモ雑談というか備忘メモ

・3M短国入札9bpキタコレ

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20191206.htm
国庫短期証券(第874回)の入札結果

5. 価格競争入札について
(1)応募額 10兆431億円
(2)募入決定額 3兆5,270億9,000万円
(3)募入最低価格 100円02銭6厘5毛(募入最高利回り)(-0.0986%)
(4)募入最低価格における案分比率 47.7217%
(5)募入平均価格 100円03銭1厘9毛 (募入平均利回り)(-0.1187%)

おー足切りマイナス一桁ベーシス台キタコレというところで、ここもとGCとかコールとか高めに推移しているみたいですなあ位で(ジンバブエとかで忙しかったのもあり)ございましたけれども、海外のニーズがちょっと細るとこんな感じとかそんな感じなんでしょうかねえよー知らんけどな。

まあそもそも論として日銀ちゃんの鬼買いが無くて、利下げ期待が別に無いのであれば、モノとしてのニーズはもちろんあるのでその分だけ金利が低くなるのはシャーナイナイとしても、本来はそんなにドマイナスに突撃する必然性は無い物件だなあというのと、たぶんこれ資金偏在の関係があると思うのですが、なんとなく調べかけてそのまま(ジンバブエとかで忙しかったのもあり)放置プレイになっておりましたので、短国入札が9bpになって放置プレイ失敗の巻となってしまいましたな(大汗)。

なお売参の方を見ると874回の売買参考統計値平均値単利は▲10.7bpになっておりますな。


・金曜日はよー動きますの

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28G1LN
2019年12月6日 / 15:29
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、長期金利は約8カ月ぶりに−0.015%に上昇

『<15:15> 国債先物は反落で引け、長期金利は約8カ月ぶりに−0.015%に上昇

国債先物中心限月12月限は前営業日比35銭安の152円45銭と反落して取引を終えた。前日の米債安が重しとなり、朝方から売りが先行。中長期債対象の日銀国債買い入れオペの結果が弱めとなったことも、円債の下押し材料となった。10年最長期国債利回り(長期金利)は前日比3.0bp高いマイナス0.015%と、4月18日以来の水準まで上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

ってな訳で中長期の輪番は特に減額にもならなかったのですが、それでもあばばばばーの巻。
  
『中長期債対象の日銀による国債買い入れオペの結果は弱めと受け止められた。「中期ゾーンは需給の悪さが示された格好だ。来週の5年債入札への警戒感が広がっている」(国内証券)との声が聞かれた。現物市場では、全年限で金利上昇圧力が強まった。新発2年債は前日比2.0bp上昇のマイナス0.135%、新発5年債は同3.5bp上昇のマイナス0.120%。』

ってこれさっきの3Mの入札が足切り▲9bp台まで上昇した後場の寄りに中期とか先物とか滑って始まっていまして、達観して言えば短国は足元需給ですから中期が一緒になって滑る理由も本当はあんまりないのですが、背景に利下げ期待皆無状態になったので▲10台後半でもまだ金利低すぎだわというのがあるのかどうかは知らんですけど、まあ気分的にはそんな感じなんですかねえよくわかりません。

『新発20年債は前日比3.0bp上昇の0.295%、新発30年債は前日比2.0bp上昇の0.435%、新発40年債は前日比2.0bp上昇の0.460%。』

『  OFFER   BID   前日比   時間
2年 -0.137  -0.13   0.02   15:11
5年 -0.124  -0.117  0.032   15:12
10年 -0.021  -0.011  0.029   15:09
20年 0.289  0.299   0.033  15:07
30年 0.432  0.442   0.021  15:11
40年 0.455  0.466   0.022  15:05』

先物と中期が弱くて10年もまあ大体そんな感じですが超長期はフラットニングですかそうですかという感じですが、米国様も金利が少々上昇したことですし金利上げたいなら超長期輪番減額チャンスですが、それはあまりにも露骨な金利上昇狙いなのでそもそも緩和政策しているのにそれで良いのかという所ではありますが、そんなのよりも10年のプラス金利を見てみたいですな。




〇ジンバブエ先生の会見は金懇ほど面白くないのでサラサラと流す

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2019/kk191206a.pdf

いや真面目な話、この挨拶要旨見せられてから3時間半後に質疑応答な訳ですから、そらこれ記者の方もツッコミできんわと思いますよ。ねじり鉢巻きでやる気満々で集中しても3時間半でツッコミどころを的確に質問するの無理だわ。ということでジンバブエ先生の金懇挨拶テキストって日銀のスタッフの方と記者の方(と市井におりますジンバブエヲチャーという変人)しか読まんじゃろと思うのですがご苦労様ではございます。

・ということなので質疑応答の前に小ネタである(英訳関連)

日銀のサイトの右上にある「日本語」「English」ってののイングリッシュちゃんをポチっとなとしますとこちらに飛びます。
http://www.boj.or.jp/en/index.htm/

でまあいつものように新着情報に相当する部分の一覧に相当する部分(いちいち入力を英語にして打つのがメンドイというやる気のない理由ですサーセン)をポチっとなとしますとこれが。
http://www.boj.or.jp/en/whatsnew/index.htm/

Dec. 5, 2019 Announcements
Speech by Board Member Harada in Oita (Economic Activity, Prices, and Monetary Policy in Japan)

ってのがあるのですが、それはそれとして何故か櫻井さん金懇挨拶の英文がジンバブエ先生のより後に
出ているという事実isある。

Dec. 5, 2019 Announcements
Speech by Board Member Sakurai in Hyogo on Nov. 27, 2019 (Economic Activity, Prices, and Monetary Policy in Japan)

よくよく見ますと、

Oct. 11, 2019 Announcements
Speech by Board Member Funo in Shimane on Oct. 3, 2019 (Economic Activity, Prices, and Monetary Policy in Japan)

とかいうのもありまして、英訳版作るのに時間かかっているケースと掛かっていないケースがあるのですが、現時点(12/9)での新着にある中で時間が掛かっていないのはジンバブエ先生の金懇全てと政井さんの金懇になっておりまして、ジンバブエ先生の金懇のあの難しすぎる日本語をどう訳したのか(たぶん担当は情報サービス部だと思うんだが)と思ったのですが、

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2019/data/ko191205a1.pdf

こちらを拝読すると、どうもそのまま英文にしている感じで、例の書き言葉で何で進次郎になるのやらという場所に関しても字面通りにそのまま翻訳してる感じisあるという風情でございまして、この時間の差異は何なんでしょうとか味わいを感じてしまいました。

ということで質疑応答。


・一つの質問に対する答えの中でも最初と最後で言っていることが違うとかワロスワロス

大分県に関することも含めた最初の質疑応答はパスして、次の質疑はワロタ。

『(問) 挨拶要旨を拝読しますと、低金利に伴う現在の金融機関の経営問 題については、貸出以上に預金が集まっているという構造問題であって、日銀の金融緩和による副作用ではないと位置付けているようにも読める のですが、原田委員は、金融緩和による金融機関経営への影響という副作用は存在しないと考えておられるのでしょうか。また、これに関連して、追加緩和を行う場合、金融機関経営にも 配慮した副作用対策が必要という議論もあるわけですが、原田委員は、銀行部門の効率化を進めるためにも、追加緩和を行う際には副作用を軽減するような対応は必要ないとお考えなのでしょうか。』

これは当然のイヤミ。

『(答) まず、金融機関の困難は日本銀行の金融政策によるものであるかということだと思いますけれども、金融機関というのはお金を集めて相対的に安全な運用をするところですが、集まったお金を十分に運用する機会がないのですから、それが主要な問題であると申し上げたわけです。』

相変わらず銀行業への理解が無いのは兎も角として、質疑応答の方では「運用機会が無いのが問題」と仰せになっております。いやー日銀の事務方も入れ知恵大変ですなあという所でございますが、これを見たところで「おお想定問答が何故かあるじゃん」とか思った次第。

何せ今回の金懇挨拶に限らず今までの説明だと「預金が集まり過ぎるのが悪い」という説明になっておった訳でして、あーたそれは資金循環とかご存知ですかという話なのですが、「運用機会が無い」ならばこれは経済の問題であるという話になるので一気に常識的に近い話になるので、これは事務方の想定問答でも読んでるのかという話なのですが・・・・・・・

『低金利は全く影響していないと言っているわけではありません。それから、なぜ低金利かということについて、日本銀行が低金利にしているから低金利 なのだというご理解の方ももちろん多いと思いますが、私が挨拶要旨で書いていますように、現在の低金利は、名目の低金利で、過去にデフレを脱却できなかった結果としてデフレが続いており、その結果低金利になって いるということです。』

まあこの辺りは本領を発揮していて結構なのですが、過去のデフレがって全部過去のせいにしておりますが、昨日今日実施したならともかく、6年半という過去にお前らのオモシロ理論でQQEっての実施したのに全然物価やらインフレ期待やらが威勢よく上がらん時点でこの「過去のせい理論」もまるで説得力が無いのですが。

『ですから、結果として、名目の低金利になっていることが、金融機関の経営に影響を与えていることは事実だと思います。し かし、では名目の低金利という問題を克服すれば、金融機関の問題は全て解決するかというとそうではなくて、』

では、インフレ目標を達成すれば経済の問題は全て解決するかというとそうではなくて、ってそもそもインフレ目標達成が全然見通せませんでしたねこれは失礼しました。

『需要と供給の問題で、供給が過多だから経営が苦しいという問題は克服できないと申し上げています。』

どうも喋っているうちに徐々にジンバブエ音頭に戻って来るという仕様のようで、ここに来てやっといつもの供給が過多という話になってくるのですが、最初は「運用機会が無い経済状況に問題がある」と経済政策運営の問題のような話をしていたのですが、同じ話の中でいつもの「預金が集まり過ぎるのが悪い」になるのですが、このおっちゃん最初と最後で言ってることが違っているの気が付いているのでしょうかってまあ気が付く位ならあんな珍妙な金懇挨拶要旨は書きませんですかそうですか。


『次に、追加緩和についても今述べたことと同じだと思います。金 融機関を取り巻くそういう経済構造があることが金融機関経営の問題の主因です。金融緩和の副作用は小さいと思いますが、全くないと申し上げているつもりもありません。その面において、効率的な政策であれば、そ ういう対応をとるということは十分合理的なのではないかと考えています。』

政策に関しては別におっちゃんが何を言っても市場は反応しない(というかこの人が何を言っても市場が反応しないことが確定して以降、金懇挨拶がドンドンとジンバブエワールドになって行ったって感じだと思う)のですが政策になると急に穏やかな話をするのは何ですかこれ???


・片岡さんを後ろから砲撃とか政策に関しての意欲何もないのねこの方

次の質問の答えはヘッドラインにもなっていましたが質問の後半の方になりますので前半割愛。

『(問)(前半割愛)また、それに付随して、財政と金融のポリシー・ミックスという 観点から、政府のこの度の財政支出に伴って日銀の金融政策として何かしらのアクションが必要になるとお考えでしょうか。 』

『(答)(前半割愛)次に、政府の対策に対して、日本銀行の金融政策についてあえて 何かするということはあるのか、ということだと思いますが、現在のイールドカーブ・コントロールのもとで金利を維持していること自体によって 相乗効果が得られますので、特に追加的なことを考えなくても大丈夫だと思っています。』

あらま。

『念のためですが、追加的な政策を考えなくていいと申し上げたのは、他の条件が変わらないもとで、政府が財政を拡大するというこ とだけであれば、現在の政策を続けているだけでいいのではないか、特に 何かする必要はないと考えていると申し上げたということです。』

ということですので、そもそもこれは現状でも追加緩和を否定しておりまして、しかも財政と云々という片岡さんの提言に関しても盛大に後ろから砲撃しておりまして、世界標準の金融政策だったら普通に考えて同じ結果が出てくると思うのですが、世界標準の金融政策であらされる所の置物理論とは何だったのかと小一時間問い詰めたい。


・銀行業に関する質疑があるのでちょっと拝読して進ぜよう

この質問は茶を吹いてしまいました勘弁してください面白すぎます。

『(問) 挨拶要旨の中で、銀行が人と資本を放出すれば経済全体にプラス になると指摘されていらっしゃいました。これまでも、預金が集まりすぎるという銀行の構造的な問題をよく指摘されていらっしゃいましたけれ ども、これまで以上に率直な直言と思われます。任期中に思ってこられた ことの総括でもあると思うのですけれども、こういうちょっと踏み込んだ言い方をされている思いをもう少し補足して頂けますでしょうか。 』

しかし折角質問しているのに何だこの答えは。

『(答) 全体として、今回の金懇が最後ですからそれなりの思いはあるかもしれませんが、この部分について思いがあるということではありません。 似たようなことは他でも書いています。預金が集まりすぎているということは、当然、預金を集めていることに関連している店舗や人員を減らすことになります。人と資本を放出するというのと、あるところで減らすというのはほぼ同義語です。』

しかしまあ何ですな、金融機関の店舗って融資もしているんですけど(最近は法人部とかいうように分化もするとは言いましても顧客企業は融資だけじゃなくて決済や預金にも使いますからねえ)とか思いつつ、どうもこう5年間審議委員やって銀行とは何ぞやということを知らないままで終わるっぽいのですが、それ以前の問題として何とか総研で金融も含めた話をして客先として金融機関にも行ってたと思うのだが、この人は人生においてどういう勉強をしておられたのかと不思議で不思議でしょうがない。


・まるで分っていない・・・・・・・・・・・・

後の方の質疑でもうちょっとツッコんだ質問があったんですけど・・・・・・・・・・・・・

『(問) 挨拶要旨の中で、銀行について、数でも資金量でも上手くダウン サイジングできれば、利益を得られるようになりますというご発言があり、 例えば、銀行の支店数のみならず、銀行再編の必要性にも触れられたのではないかと思うのですが、原田委員の中で、いま例えば、地方銀行ですと 100 行超ありますが、望ましい地銀の数としてどのくらいをみていらっ しゃるでしょうか。

また、挨拶要旨を通じて、銀行の預金に焦点を当てられましたけ れども、例えば大分もそうですが、銀行の役割として、例えば地域のため にということがあったりですとか、地方銀行と一言で言っても都市型地銀とあるいは僻地山村を営業基盤にしている銀行もありまして、例えば預金 あるいはそういったものをダウンサイジングすれば全て収益が改善して いいんだというのは、少し短絡的な議論なのかなと思いますが、銀行の役割について改めてお聞かせください。』

まあ前半の方はどうでも良い回答しかしようがない(現にそこは答えていない)ので応答の方は前半は割愛しますが、まあそういう認識でいらっしゃいますかそうですかというのが後半に来る。

『(答)次に、銀行は利益だけのためではなく色々なことをやっているので、単にダウンサイジングすればよいということにはならないのではない かというご質問です。基本的には、銀行は資本主義と市場主義の中心にある組織だと思います。それが福祉政策をやるというのは変な話だとは思いますが、現状、事実としてそういう面があるのは確かだろうと思います。』

福祉政策と来たか。

『そういう地域政策や福祉政策としてやる必要性があれば、そういう政策を とっていくということは、ある程度必要なのかもしれません。現在、海外で、店舗を減らしたり、銀行の数を減らしたりした結果、銀行預金を持つことが非常に難しいという方が多数おられて、それが格差拡大をもたらしているという議論があります。』

店舗云々の話は何かズレている気がするのだがそんなことよりもズレている話があるのでここはスルー。

『そういったところでは、店舗や銀行を何とか残すとか、あるいは銀行に対して小規模先への融資を義務付けるといった政策を行っているところもあります。』

でもってこの次が盛大に吹いた。

『そういう政策が、将来的に必要になるのかどうかはわかりませんが、今の段階でみれば、ゆうちょ銀行などを含めた銀行、預金を預かってくれる機関はたくさんありますので、現在 少しぐらい減ったからといって、海外のように預金を持つのが大変で差別だとか格差を作るといった状況ではないと思います。』

えーっとすいません、金融機関に資金が集まり過ぎることが問題だという状況の中、ゆうちょ銀行さんの所では預金が集まっても問題ないとかお前は何を言ってるんだとしか申し上げようがないのですが、まさかとは思いますがゆうちょ銀行さんはもう郵政省貯金局ではない、という事をお忘れになっておられるのではないかと大変に危惧されますし、大体からして郵政省貯金局のままだったとしても貯金の形で打ち返された資金をどないしますねんという話になるのでまあ同じですが、何故かゆうちょ銀行さんに押し付けるという謎理論ェ・・・・・・・・

とか何とかまあ会見の方は政策に関して何故か知らんがまるで追加緩和をする気が無いというのが伝わっただけであとは金懇挨拶程の面白ネタも無い(この最後の方の質疑(というか最後が御当地質問だったので実質最後)のゆうちょ銀行に預金超過を押し付ければ良い理論という珍理論のご開陳があったのは面白ネタ)という感じでしたな。



〇ブレイナード理事の金融枠組みに関する講演ネタは明日にでも(大汗)

ということでサラサラ流した(これでもまあいっかと思ってだいぶ飛ばした)つもりですがイヤミの二つ三つ言っている間に時間が無くなってブレイナードの話をしている時間が無くなってしまったのですが、折角なので予告だけしておきます。

これまあ色々と論点があるのですが、一つ気になっているのは(議事要旨にもその話がありますが)「金利キャップ政策」に関してどうも先行事例(要は日銀)の解釈を間違っているのではないかというお話。

つまりですね、どうもこの人たち「金利キャップ政策をした方が通常のAPPでの債券買い入れよりも結果的に買入量が少なくて済む」とか思っている節があって(しかも例によって例のごとくそういう時に逆さ絵がそういう考察を示していたりして逆さ絵は日本の理解を徹頭徹尾間違えているんだからいい加減に反省して考察するのヤメレと思うんだがそれは兎も角として)、あれは結果的にそうなっているけれども、その前段階として「国債をアホ程買いすぎてしまって、政策が持たなくなってしまったから買入を抑制するためにYCCをぶっこんだ」というのがあり、その時点で既に中央銀行の買入がドミナントにも程があって、価格支配力なんてもんじゃネーヨ状態だったから減っただけであるし、そもそも論として物価目標の達成が1ミリも展望できない経済物価情勢なので出口云々の話にならん、というのがあり、その条件下において買入が少なくても金利が押さえられている、というのがあるんですよねー、という辺り、たぶん分かっていないと思うの。

・・・・・・・ってのが一番最近のFEDの議論で気になるところ。もちろんELBに引っ掛からなければ顕在化しないのですが、引っ掛かった時にこの認識だとあきらかにアカン事が起きると思う。

#詳しくは明日






2019/12/06

お題「満を持してジンバブエ先生の大分金懇挨拶である」

一昨年のジンクスも発動することなく無事にPCが動いているようなので、本日は実用的には全く価値のない見世物見物ということで始まり始まり。

〇これはジンバブエ先生の臭大成ですわwwwwwwwwww

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191205a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 大分県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

先日の櫻井さんの場合はHTML版がほぼ同時位に出ていましたが、ジンバブエ先生の場合はPDF版のみが先行してリリースされます。しかしいつぞやの金懇では変なテキストエディタ使っていたみたいでコピペで死にそうになりましたが、今回はMS標準の文書作成ツールっぽくて無事に引用出来て何よりです。

でもって今回のジンバブエ先生の金懇は、先般の石川金懇の神だのなんだのという狐憑き的な物ではなかったので、迫力という面ではパッとしませんが、内容に関しては臭大成としか申し上げようが無い感じで、石川金懇が狐憑きモードとすれば、今回のは・・・・・・・・・・というのを見て行こうではありませんか。

なお皆さまもお分かりと思いますが相場のポジション運営に対しては1オングストロームたりとも役に立たない内容なのに分量は平常運転の2倍以上(なので昨日の夜から書き出していつもの倍以上の時間を掛けておりますよ当然ながら)ですので、全部読んでから時間の無駄とか言わないでくださいよろしくお願いします(平伏)。



・因果関係の説明を1ミリもしないで相関関係だけで効果を宣伝するジンバブエ音頭から始まります

最初の挨拶は飛ばしまして、というか「厚くお礼申し上げます」ってお礼を申し上げた後にこんなの聞かされて良く皆さん席を蹴立てて変えるとか机をバンバン叩くとかしないですなあと感心してしまいます。

『日本銀行は2%のインフレ目標達成を目指して 2013 年4月から量的・質的金融緩和政策(QQE)を行い、さらにマイナス金利、イールドカーブ・コントロール政策、金融緩和継続のための枠組み強化、フォワードガイダンスの明確化、など様々な政策を導入しています。』

と来まして毎度のごとく、

『その結果、経済は好転しています。2014 年度の消費税の5%から8%への引上げ、2019 年 10 月の8%から 10%への引上げ、2015年半ばから 2016 年初や 2018 年後半から 2019 年にかけての世界経済の減速、生産年齢人口の趨勢的な減少もあって、この間、景気が力強く拡大した訳ではありませんが、現在までのところ、景気拡大がなんとか続いています。』

と来ます。そしてその次に、

『本日は、日本銀行が行っている金融政策について説明し、それがどのような成果を上げているのかについてお話しします。まず、成果は明らかです。失業率は約 30 年ぶりの水準に低下し、生産性も向上しています。問題は物価が上昇していないことです。』

と、いつものパターンで続くのでこちらもいつものパターンでツッコミを入れますと、そもそも金融政策がどのようなルートで効いた結果としてこのような成果となったか、という因果関係の説明が1ミリも無く、相関関係だけで説明をしている訳でして、相関関係だけで良いんだったら「あまちゃん」放送開始が効果を発揮したとか置き換えても同じなんですがそれは、というのもお約束のツッコミになりますな。つまりのんさんがまた能年玲奈さんに戻ってもっともっと大活躍してくれたら物価は上昇するんですよきっと(半分真顔)。

つーかですね、そもそも論としてそれ以前の問題として、「問題は物価が上昇していないことです」って説明をしておりますように、元々QQE導入というのは2%物価目標を2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成するために導入した政策でありますからして、その政策によって「物価が上昇していない」というのは、それはつまりこの政策が所期の目的を達成していない、すなわち政策導入によって想定した効果が発現して居ない、ということに他ならないので、普通はそういうのを「失敗」と言いますし、控えめに申し上げても「成功していない」のは「問題は物価が上昇していないこと」なのだから明らかな訳ですよね。

でもって、所期の効果を発揮できずに、控えめに言っても「成功していない」政策な訳ですから、そのような場合、普通は「相関関係としてはそうなっているが、因果関係は別の所にあるのではないか?」と考えて検証するのが学者というか学生実験だってその位の姿勢で臨むわと思う訳でして、相変わらず因果関係の説明もしないまま相関関係だけで効果とか言い出す人間に博士号を授与したのはどこのアホウだと小一時間問い詰めたい(なお調べればすぐわかりますがお察しの人が教授をしていた時のお察し習院とかいう所です)。


・まーた複式簿記も銀行経理も理解していない話なのですがそれ以前に・・・・・・・・・

でもってこれがまた凄いのですが、さっきの直後にこういう文章が繋がっていて、突然話が飛んで何が何やらだし、内容は毎度の「預金が集まり過ぎる」ネタなのですな。

『それによって金利が上昇せず、低金利が、銀行経営を圧迫しているという議論が強まっています。しかし、銀行経営の困難は、貸出需要以上に預金が集まってしまうという構造問題に依るものです。銀行は、この問題に対処する必要があります。』

この部分、再度続けて引用するとこうなるんですよ。

『本日は、日本銀行が行っている金融政策について説明し、それがどのような成果を上げているのかについてお話しします。まず、成果は明らかです。失業率は約 30 年ぶりの水準に低下し、生産性も向上しています。問題は物価が上昇していないことです。それによって金利が上昇せず、低金利が、銀行経営を圧迫しているという議論が強まっています。しかし、銀行経営の困難は、貸出需要以上に預金が集まってしまうという構造問題に依るものです。銀行は、この問題に対処する必要があります。』(先ほどの引用部分の再掲)

この段落、もうちょっと話が続くのですが、最初に「金融政策について説明し、それがどのような成果を上げているのかについてお話します。」で始まっているのに、金融政策の話もなく、成果については何の因果関係の説明もなく失業率と生産性の話を行い、物価が上がらないのが問題という話をしながら、銀行経営がどうしたこうしたという話に飛ぶというこの話の飛びっぷりにも呆れますが、呆れている間に見落としていけない話の構成もあります。

・・・・・・というのはですね、「問題は物価が上がっていない」という認識を示したうえで、その物価が上がっていないことが原因で「それによって金利が上昇せず、低金利が。銀行経営を圧迫しているという議論が強まっています」って話をしているんだから、QQEが所期の効果を上げずに、未だに金融政策の目標を達成していないせいで問題が起きている、という指摘があるのに、そこは完全に話をスルーしているというのがもうねという感じです。さらにこの続きが・・・・・・・・・


・また例の藁人形論法である

『また、金利を引き上げれば、貸出需要の低下、物価の下落、円の上昇、景気後退、企業倒産の増加(銀行にとっての信用コストの増加)などが起きるでしょう。金利の引上げは、問題の解決になりません。』

さっきは金利が上昇しないのは物価が上がらないからという話をしているのですから、政策の効果が上がれば物価は上昇して金利が上昇する筈ですし、金融政策やっているのに物価目標達成しないのですから、それに対してやり方を何とかしろと言っている訳で、どこの世界に金融引き締めをやれとか言い出す奴が居るのかと貫禄の藁人形論法キタコレだし、リバーサルレートの議論って「閾値を超えて金利を下げたら却って引き締め的になってしまう」という話でもある訳ですが、そういう点の考察はあるのか、ってジンバブエ先生の認知の歪みでは無理なのは分かりますが、まあ何にをおっしゃるやらという感じですな。

『現在の低金利の要因の一部が、後述するように、過去のデフレ的な金融政策によるものであることを考えれば、現在の緩和的な金融政策を継続し、景気の持続的拡大を目指し、物価と金利の上昇を待つことが唯一の道だと思います。』

とのことですが、QQEおっぱじめて7年も経過しているのに、何が過去のデフレ的な金融政策かという話で、今の金融政策が物価上昇に効いてないからこの有様なんじゃないかという考察が無いのは仕様とは言え情けない。



・実質金利が大きく低下しましただそうですが・・・・・・・・

さて、その次の小見出しが『1.金融緩和の手段 』でありまして、まあどうでもいいのですがその中でこんな説明がありました。

『このような政策を行った結果、名目金利の低下と予想物価上昇率の上昇によって実質金利(名目金利−予想物価上昇率)が大きく低下しました。』

予想物価上昇率がろくすっぽ上がらないから物価目標達成できてないはずなんですがどこのパラレルワールドにお住まいでいらっしゃるのでしょうか???????????????

『実質金利が低下したことで、投資が刺激され、株価が上がり、為替が減価しました。』

普通金利引き下げによる政策効果波及メカニズムというのは、借入コストの低下によって限界的な投資の余地を拡大して、将来の需要を手前に引き寄せる形で需要を喚起するとかそういう話をすると思うのですが、ジンバブエ大先生の場合は何故か金融市場ルートしか考えていないようです。

『株価の上昇は、さらに投資を引き上げ、豊かになった家計は消費支出を拡大します。これらのチャネルを通じて実体経済が好転しました。』

金融市場ルートしか考えていないようですが、金融市場ドリブンで行けるのは最初だけで、そのあとは実体経済にバトンタッチしないと持続的なポジティブフィードバックループにならんと思うのですが、株価が更に上がると投資が更に上がるとか、ジンバブエ先生1980年代からやってきたんですかと小一時間問い詰めたい。


でもって話は続きまして、更にその次の小見出しが『2.大胆な金融緩和政策の成果 』となっていて、まあ先ほどから申し上げているツッコミ部分満艦飾という感じなのですが、一々突っ込んでいると時間が無限に浪費されますし、何よりもその先の方に行くとジンバブエ祭りが絶賛大開催されますので、ここは涙を呑んで(気が向いたらまたやる)次の小見出しに参りましょう。

・・・・・・と思いましたが、この中に前半の中では一番アタクシの頭を混乱させるかいしんのいちげきが登場するのでそっちを鑑賞しないといけないんだった。


・論理とかそういう以前に日本語になっていないという恐ろしい文章があるのだが

『2.大胆な金融緩和政策の成果 』の中で『財政状況の改善 』というのがありまして、

『大胆な金融緩和は、景気を刺激し、税収を拡大し、財 政状況を改善させています。図2は、一般政府の財政収支、政府総債務残高、政府純債務残高の対 GDP 比を見たものです。一般政府の財政赤字の対 GDP 比は、2012 年度の 8.3%から 2017 年度には 2.7%へと 5.6%ポイント低下し6、急速に上昇していた政府純債務の対 GDP比は、2012 年度の 121%からはほぼ横ばいとなっています。』

因果関係が無くて単に見せかけの相関かも知れないとかそういうツッコミはさておきまして、この次の段落が兎に角凄いとしか言いようがないしこれはモノホンのアレなのでまずはこの段落通しで引用します。

『ここで、政府純債務が重要だということを説明しておきたいと思います7。政府純債務は、政府総債務から政府の金融資産を差し引いたものです。日本は、政府総債務は大きいが純債務はそれほど大きくないので問題ないという議論がありましたが、現在、純債務でも大きなものとなっています。しかし、政府債務の破綻可能性を考える時には、純債務が重要です。債務が大きいので、金利が少しでも上昇すると大変だと言う議論がありますが、この時には、純債務で考える必要があります。なぜなら、金利が上昇するときには、政府の金融資産の受取金利も上昇しますので、この分は相殺できるからです。 』

・・・・・・・これは小泉進次郎も裸足で逃げ出す日本語だしこれを話の中でなく原稿で書けるのは進次郎を遥かに上回っていると思われます。この段落、一文ずつ区分けして再読しましょう。

「ここで、政府純債務が重要だということを説明しておきたいと思います。」

なるほど説明してくれるんですね。

「政府純債務は、政府総債務から政府の金融資産を差し引いたものです。」

これは用語の定義ですか(まあこの政府の金融資産って概念も微妙なのだがそこは今回はパスしておく)。

「日本は、政府総債務は大きいが純債務はそれほど大きくないので問題ないという議論がありましたが、現在、純債務でも大きなものとなっています。」

ほうほうそうですか純債務も大きくなっているのですか(なお図表を見ても近年は大きくなっていないように見えるのだがどこを起点に話をしているんだ、というのもある)。

「しかし、政府債務の破綻可能性を考える時には、純債務が重要です。」

えーっとすいません、政府純債務が重要だという説明をする、と言っておいて「(政府)純債務が重要です」とか言われましても説明になっていないのですが・・・・・・・・・・・・

「債務が大きいので、金利が少しでも上昇すると大変だと言う議論がありますが、この時には、純債務で考える必要があります。」

政府純債務が重要という説明は何処へ??そしてさっき「純債務も大きなものとなっている」と言ってたのですから、純債務で考えたら大変だという話になるような気がしますが。

「なぜなら、金利が上昇するときには、政府の金融資産の受取金利も上昇しますので、この分は相殺できるからです。」

でも純債務増えてるんでしょ????

・・・・・・・で何が凄いと言いまして、この『財政状況の改善 』というお話はここで終わっていて、この先は次の小見出しに進んでしまうのです。論理的思考以前に日本語として成立していない文章としか思えないのですがジンバブエ先生大丈夫でしょうか?????

#ああそれから債務と資産の金利更改ミスマッチがあったら「この分は相殺できる」とかのんびりした事言ってられないかも知れませんよね、その辺はまずもって分かって無さそうなジンバブエ先生ェ・・・・・・・・


てなわけでこちらの次は小見出しが変わって『3.なぜ金利は低いのか 』という小見出しなんですけどこの調子が延々と続くのだ。

『QQE 開始以来、雇用は改善、生産性も上昇、財政状況も改善しています。では何が問題なのでしょうか。物価が上がっていないことです。日本銀行は、QQE 開始前に、消費者物価の対前年比で2%の上昇を目指すと決めましたが、2019 年 10 月の消費者物価上昇率(除く生鮮)は 0.4%で目標に遠く及びません8。』

と、またさっきの話ですがこの次からがもうね。

『これに対して、別に物価が上がらなくても良いではないか、というご意見もあるかと思います。物価が上がらず、雇用が良く、生産性も上がり、財政状況も改善しているなら、なお良いではないかというご意見です。』

えーっとすいません、長くなりすぎるから引用飛ばしたけど、その話を今の今まで政策の効果が出たと言って自画自賛してたの貴方様なんですけど突然どうした????

『しかし、物価が上がらないと金利も上がらない、金利が上がらないと金融機関が困るという問題があります 9。 』

えーっと、さっきは金融機関が困るのは金利が上がらないからではなくて、預金が集まり過ぎるような構造があるからだという話をしていたんですけどさっき言ったこと忘れちゃったのかなあ???

次の段落も誠にアレ。

『「日本の金利はなぜ低いのか」と言えば、「それは日銀がそうしているからだ」と言われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。』

ほうほうそれそれで?

『なぜなら、金利を低くしていれば景気が過熱して物価が上がり、2%を大幅に上回るインフレになったりします。』

なっていませんが。

『それを避けるためには、金利を上げなければならなくなります。あるいは、自然と金利が上昇します。』

なっていないのでそうなりませんね。

『要するに、低金利政策の長期的帰結は、物価と金利(名目金利)の上昇です。』

まさかとは思いますが低金利政策を何年やっているのかご存知ではないのでは??

『逆に言えば、過去の景気悪化に対して、十分に金利を引き下げなかったのでデフレに陥り、金利も低くなってしまったのです 10。また、金利低下は、日本だけのことではなく、世界的です。』

えーっとすいません、QQE始めてもう6年半なんですけれども今更何を仰せなんでしょうか。


・金利が世界的に上がっていない話を延々としているのだが何を言いたいのかさっぱり分からない件について

何で金利が上がらないのかというコーナーの続きはこういう話になります。

『図3は、主要国の 10 年物国債金利を示したものです。見やすくなるように、5年ごとの平均金利を取っています。』

エライ雑だな。

『世界的に金利が低下し、図では分かりませんが、10 年物国債利回りは、2019 年半ば以降、日本、ドイツ、フランスでマイナスとなっています。 』

ということですが、

『なぜ金利が低いかと言えば、実質経済成長率が低く、インフレ率も低いからです。実質経済成長率とインフレ率のそれぞれを見ても良いのですが、ここでは両方を合わせた名目 GDP 成長率を見てみましょう。図4で主要国の名目 GDP 成長率を見ると、総じて低下しています。 』

で?

『 確かに名目成長率は低下していますが、これだけでは金利の低下を説明できません。』

いやあの今しがた「なぜ金利が低いかと言えば、実質経済成長率が低く、インフレ率も低いからです。」って言って、実質経済成長率とインフレ率を総合して名目GDP成長率って話をしていたのに、何でここで急に「これだけでは金利の低下を説明できません」になるんだよ最初の定義づけがおかしいんだろうよ。

『図5は、縦軸に名目長期金利を取り、横軸に名目 GDP の成長率を取っています。図の各点は 1990 年から現在までの各国の5年ごとの平均値を示しています。2000 年代まで、金利は名目成長率と同じように動き、かつ、名目成長率よりも2%ポイント程度高い状況にありました。』

『ところが、2010 年代後半に入ると、金利は名目成長率よりも2%ポイントも低く、かつ、成長率が多少伸びても金利はなかなか上がらないという傾向が現われています。』

とくるので何かの考察が来るかと思えばその次が凄い。

『しかし、金利が名目成長率よりも低いという状況は、2010 年以降のことですから、名目成長率が上がれば金利も速やかに上がっていくのかもしれません。ここ5年か 10 年の話が、永久に続くと考えなくても良いのかもしれません。』

ナンヤソラwwwww椅子から転げ落ちそうになったわwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

『なぜ、名目 GDP の低下以上に、金利が低下したのでしょうか。金利の低下は、物価上昇率の低下、実質成長率の低下に加えて、貯蓄投資バランスの変化などで説明できるとされています 11。』

だったら最初からISバランス出して説明しろやこのスットコドッコイ。

『その要因として、人口構成の変化、格差の拡大、新興国の予備的貯蓄の余剰、投資財価格の下落、巨大 IT 企業の利益率の高さと余資の大きさ、公共投資の低下、安全資産の不足 12、財政状況の改善などの理由が指摘されています。』

凄いハチャメチャな説明だなおい。

『また、現在の金利の低下は、景気循環的なものだという議論もあります。』

ちょwwwwwお前さん今しがた「なぜ、名目 GDP の低下以上に、金利が低下したのでしょうか。」って問題提起してるのに何で景気循環の話に戻るんだよwwwwwwww

『貯蓄投資バランスの変化とは、投資が減少し、貯蓄が増加したから金利が低下したのではないかということです。 』

もう話が飛びすぎですが、この次の説明もまた凄くてですね。段落が次の段落になるんですけれども、

『これらの理由のうち、日本について、財政状況の改善の影響のみについて考えてみます。』

その要因だけで考える理由が全く示されずにいきなりこれですよ。

『まず、日本の金利は日本の貯蓄と投資の関係から決定されると考えます。』

ちょっと待て、最初の所でお前「なぜ金利が低いかと言えば、実質経済成長率が低く、インフレ率も低いからです。」って話しとったのに何でここでは「日本の金利は日本の貯蓄と投資の関係から決定されると考えます。」になるんだよ大丈夫かおい。

『そして、財政状況の変化は、民間の貯蓄と投資の決定になんら影響を及ぼさないと仮定します。』

なんでそうなる????

『 2012 年度において、日本の長期金利は 0.8%、総貯蓄=総投資(国内投資+海外投資)は 115 兆円です。2012 年度から 2017 年度にかけて、一般政府の赤字は 26 兆円縮小しました。』

ちょっと待て何だその数字。

『財政赤字の減少で、総貯蓄はこの分増加したはずです。』

????????????????????????????????

『図6は、金利と総貯蓄=総投資の関係を示したものです。貯蓄の利子弾力性は小さいとされていますので、貯蓄供給曲線はほぼ垂直に書いています。投資の利子弾力性を1と仮定して、そのような傾きを持つ投資需要曲線を書いています。結果として、一般政府の赤字が 26 兆円縮小したことによって金利は 0.18%ポイント低下したことになります 13。』

何か無茶苦茶過ぎてどこをどう突っ込んで良いのかというレベルなんですけれども。ちなみにここで不幸にもリファーされている(その前にも実はリファーされていた)スタッフペーパーも斜め読みしたんだが、何か物凄く変な読み方をしているとしか思えん。

でもってこの話の結論が、

『これを大きいと解釈するか小さいと解釈するかは難しいところですが、財政赤字が金利を上げるなら有益な投資を減少させて将来の日本を貧しくするので大問題ですが、財政赤字が金利を上げないのなら有益な投資を減少させることもないので大した問題ではないことになります。 』

ということだが、無茶苦茶好き勝手に仮定を置きまくって謎の一次関数を出して「財政赤字が金利を(大して)上げない」という結論を出してそれを基に結論を持って来るとか、そういう講演は大分県経済を支える要人の方々の前で行うのではなく、別府の方に行く途中に高崎山ってのがあるからそちらで講演でもされたら如何でしょうか??????


・低金利が問題であるという議論に

次の小見出しが『低金利を問題とする議論』である。

『以上、ご紹介した低金利を巡る議論の他に、低金利政策によって非効率的企業が滞留し、生産性が低下し、自然利子率を低下させたという議論があります。これは低金利によるゾンビ企業滞留論と呼べると思います 14。』

『また、現在の低金利は、過去の低金利が、需要を先食いさせ、それゆえに金利を低下させたからだという議論もあります 15。』

需要を先食いさせ”それゆえに”金利を低下させたとかどう見たってそんな批判ないでしょ。低金利で先食いできる需要が長期化した結果先食いしまくったから低金利政策の効果が逓減して政策が効かなくなっているとかそういう議論をまた例によって藁人形殺法を使っているんでしょう。何せこの型の場合リファレンスが書いてあるからと言っても鵜呑みには出来なくて、書いてあるものを思いっきり曲解してリファーしている可能性が思いっきりあるので油断はならない(後にその例が出てくるので乞うご期待)。

さてゾンビ云々の話だが。

『まず、第1の低金利政策によって非効率的企業が滞留し、生産性を低下させたという議論ですが、QQE によって生産性が上昇しているのですから、あり得ない話です。』

?????????????

『また、非効率な企業を高金利で市場から追放すれば、雇用問題を起こします。』

別に高金利で追放しなくったって雇用問題起きるんですが。というかこの先の方で本人としては大真面目に金融機関経営に対して提言しているつもりなんでしょうが話が無茶苦茶、という作りの金融機関経営珍理論が盛大に展開されるのですが、そっちのほうでは「儲からない事業はやめてダウンサイジングしろ」と連呼しているというのが物凄い勢いで前後矛盾していて、ジンバブエ先生の首から上についている物体はカボチャか何かなのかと小一時間問い詰めたい。

『ところが現在、金融緩和によって人手不足が起きています。非効率企業を追放するなら、人手不足と賃金上昇で起こすのが良いでしょう。』

そもそも金融緩和で人手不足が起きるなら昔から起きてるわ人口動態知らんのかお前は、という感じですが、まあ勿論その話はめんどいから割愛した前半の方にあります。

『第2の、金利の引下げは将来の需要の先取りに すぎないと言う議論ですが、現在生産が増加し、人々は豊かになっています。』

お前は俺を何回椅子から転げ落ちさせれば気が済むのか。

『豊かになった人は、将来もより豊かな生活を求めるのではないでしょうか。』

金利の引き下げは限界的な借入コストを引き下げることによって有効需要を喚起する、という話しから遥かにぶっ飛んだ何かおとぎの国の世界のような話になっているのだが大丈夫か。

『QQE によって為替が安定し、より多くの外国人観光客が日本を訪れるようになっています。』

それは以前と比較して海外対比で日本が相対的にコスト安になったからより多くの観光客が来るようになっているということに他ならないのですが、何でそれで「人々は豊かになっています」という話になるんでしょうかねえ。

『これらの人々は将来来るはずの人を現在呼び込んでいるだけで、将来はこの人たちが来なくなって日本はさらに貧しくなると考えるのは、あまりにも奇妙な考えだと私は思います。』

そんな奇妙な藁人形出さないで下さい。



・ジンバブエ先生はどうも人の話を理解どころか曲解するのでリファレンスもあてにならない件

という不思議話の続きで話はまた飛ぶのだが、ジンバブエ先生のリファレンスがあてにならないといいうことをここで示しましょう。

『QQE を開始した時、それほど時間をかけることなく2%物価上昇率の達成は可能だと考えていました。物価上昇率が2%に近づけば、金利を上げなければならず、金利がこれほど長い期間ゼロ、またはマイナスになるとは考えていませんでした。多くのエコノミストもそう考えていたと思います 16。』

QQEやってそうなるのか懐疑的な方はたくさんいたはずですが、ここでリファーしているのが早川さんでまあいいとばっちりなのですが、ここの引用が物凄いことになっていまして・・・・・・・

『16 例えば、早川(2012)は、「今、銀行は、国債を山ほど持っている。量的には圧倒的に大手行が持っているが、大手行の債権のデュレーションの長さは2年ちょっと。それと比べて地銀などは4年ぐらいと長くなる。…地銀などは、貸出の資金需要もない。ここ(国債)しかないというので、デュレーション延ばしになってしまう。国債の価格が下がった時、誰が損するかというと、メガバンクよりも、地域金融機関ということになる」と述べています (早川英男「わが国金融業の課題」『新国策』公益財団法人国策研究会、2012 年 11 月号)。これは、金融緩和が最終的に金利を上 げることを前提とした議論である。また、4年の国債にリスクがあるというのは、4年程度で物価が 上がり、金利が上がることを前提としていることになる。』

ってなっているのですよ。まずは通しで引用してみましたが、これを逐次読んでいくとジンバブエ先生の物凄さが分かるのですけれどもね。

「 例えば、早川(2012)は、」って来てリファーしてるのは「(早川英男「わが国金融業の課題」『新国策』公益財団法人国策研究会、2012 年 11 月号)」な訳です。然るにジンバブエ先生、QQEを開始した時云々という話をして、「多くのエコノミストもそう考えていたと思います」という話のリファレンスにこの早川さんの話を使っているのですが、言うまでもありませんが2012年11月号掲載の文章というのはどこからどう見てもQQEの前なのですが、何でこれがリファレンスになるのでしょうか貴殿の首の上に乗っているのはピーマンか何かでしょうかと小一時間問い詰めたい。

てなわけで当然ながら2012年11月の執筆なので、QQEで物価2%になるとかそういう想定でこの文章を書いている訳でもないはずなのに、この文章を堂々と「多くのエコノミストもそう考えていたと思います 16」の例にするというジンバブエ先生のしぐさを見ますと、まあ一事が万事でして、この人他人のペーパーとか講演とかをリファーしているけれども実は本人言ってないことを勝手に書いているのではないかと思わざるを得ないわけですよ。

さらに、この早川さんの説明部分を再掲すると、「銀行は、国債を山ほど持っている。量的には圧倒的に大手行が持っているが、大手行の債権のデュレーションの長さは2年ちょっと。それと比べて地銀などは4年ぐらいと長くなる。」(債券じゃないのかと思いますがそこは気にせず)っていう話から「国債の価格が下がった時、誰が損するかというと、メガバンクよりも、地域金融機関ということになる」っていう話をしているのは、要するに「日本の金融機関は金利上昇時にリスクがあり、それは特に地域金融機関の方がリスクなのだが、保有国債のリスク量を勘案しないで国債保有金額だけ見るとそうは見えないので注意が必要」という話をしているだけでしょと思うのですよね(実際どうだったのかは早川さんにお伺いしたい所ではありますが)。

それを何をどう読むとそういう結論になるのか、ジンバブエ先生は「これは、金融緩和が最終的に金利を上げることを前提とした議論である。また、4年の国債にリスクがあるというのは、4年程度で物価が上がり、金利が上がることを前提としていることになる。」とか、前半はまだしも「4年の国債にリスクがある」とか何をどう読むとそういう理解が出来るのか全く分からないのですが、とりあえず小学生の国語からやり直した方がよろしいのではないかと御助言申し上げたいですな。



・話の前提がおかしいので何をいってもおかしい

更にこのコーナーのワケワカラン話は続く。

『金利低下の要因に話を戻します。金利は名目成長率よりも2%ポイントも低くなりましたので、前述の財政赤字の減少だけではその理由を説明できません。』

そもそも論としてさっきは飛ばしたけど金利の説明するのに単年度のフローの財政赤字が増えた減ったというのが説明変数になるのかよとしか申し上げようがない(プライマリーバランスがずっと赤字なんだからストックベースの赤字は増え続けている筈なのでさっきの話もそもそも妙ですわな)。

『正直に言えば、なぜ金利がこれほど下がっているのか十分には解明できていません。しかし、2%程度の物価上昇率の維持に成功していたイギリスとアメリカの金利は日本よりも高いのですから、日本の場合、過去のデフレ的金融政策が金利を引き下げたのは確かです。』

物価上昇率が低いから金利が低いのではないでしょうか?????

『また、金利が名目成長率よりも2%ポイントも低くなったのはここ5年、10 年のことにすぎません。それが永久に続くと考える必要もないかも しれません。』

でたさっきの謎説明!なのですが、何が凄いと言いましてもこの話がここで終わっていることでして、もう何を言いたいのかが全く分からない次第。昨年の7月に思いっきり話題になった金沢金懇では神だのバベルの塔だの歌舞伎の雷神不動北山だのが登場して鬼気迫るものがありましたが、中身は無茶苦茶ながらもとりあえず謎の勢いだけはあったのですが、今回の場合は直前に言ったことと反対の事を言い出したり、突如話がワープしたり、政府純債務が重要なのは政府純債務が需要だからですみたいな話を何度もしてみたりとか、今回のはどうもこうはいはいおじいちゃん満州の話はさっきもしたでしょう的なサムシングを感じて止みません。


・池井戸潤さんの小説をリファーしながら金融機関経営論を語る中央銀行政策委員wwwwwwwww

さてさて、この次の見出しが、『4.低金利と銀行経営 』ということでお話が始まるのですが、その前にちょっと先の方の脚注を見て盛大に脱力をしたのですけどね。脚注19という奴なんですが、

『19 フィクションだが、池井戸潤氏の銀行小説『オレたちバブル入行組』( 2004 年)、『シャイロックの子供たち』(2006 年)、『ロスジェネの逆襲』(2012 年)(年数は単行本の出版年。いずれも文春文庫にあり) でも、同じことが 活写されている。話は誇張されているが、私が個人的、断片的に得ている情 報と類似している。』

ちょwwwwwwおまwwwwwww

ちなみにその後にも、

『22 金融庁「『顧客本位の業務運営』の取組成果の公表状況」2.共通 KPI−(1) 運用損益別顧客比率@(2019 年 11 月 6 日)。前述の『シャイロックの子供た ち』16 頁、にも、投信販売で顧客が損失を被っていることが 描かれている。』

『25 前述の池井戸潤氏の小説でも、銀行の縮小という解決策は全く考慮されて いない。フィクションでも難しいことを現実に行うことはなおさら難しいということは理解できる。』

って「銀行の銀行」の最高意思決定機関にいるのに銀行業務を池井戸潤さんの小説で勉強してんのかよお前はwwwwwww

というあきれ果てて物も言えない(言ってるけど)モードなのですが、そういう方が銀行経営に対して本人は大真面目で提言しているつもりなのでしょうが、まあ控えめに申し上げて抱腹絶倒の珍理論が展開されるので心して読まないと行けません。


・ジンバブエ先生金融機関経営論を語るのだがどうみてもはいはいおじいちゃんモード

ということでやっとのことで『4.低金利と銀行経営』という章までたどり着きました。ちなみにここで本文23ページ中15ページ(ただし最後の3ページは大分県の話とかなので実質は20ページ)ですよ。

『理由は完全には解明できていませんが、金利は世界的に低下し、日本のみならず、欧州の多くの国でマイナスになっています。』

もうこの表現だけでお腹がいっぱいですがそんなことを言っていると先に進めないので自分に鞭打って前進前進。

『それに対して銀行は不満を募らせています。低金利は雇用を改善し、生産性も高めていますが、これが銀行経営の困難を引き起こしているという議論が度々聞かれるようになっています 17。』

金利が低下している理由は解明できていないのに低金利が雇用を改善したり生産性を高めているというのは疑似相関なのかも確認せずに解明されたことになっているとか宗教ですな宗教、というのがマクラにあって金融機関経営論を騙るんですからもうね。では参りましょう。


・担保や保証人を取れば債務者の返済可能性を無視して良いという街金金融論キタコレ

『銀行の機能とは何か』という小見出しが最初に登場しますのでご高説を拝聴。

『 低金利と銀行経営の関係を考える前に、そもそも銀行の機能とは何かを考えてみたいと思います。銀行はなぜ利益を得ることができるのでしょうか。金融論の教科書によると、銀行の機能は1)情報生産、2)資産転換があり 18、この2つの機能によって銀行は利益を得ることができると説明されています。』

「銀行の銀行」にいるのに金融機関の機能を教科書と池井戸潤さんの小説から勉強しているのかよwwww

『 1)の情報生産機能とは、預金者に代わって、借り手の投資の将来収益やその資産内容を審査し、貸出実行以後も、計画通りの結果が出ているかを審査し、借り手が正しい会計情報を提供しているかをチェックすることです。』

ほうほう。

『銀行は同時に、担保や経営者個人の保証を求めます。十分な担保と個人保証があれば、銀行は会計情報のモニタリング負担が軽減されるので、これで情報生産コストが低下します。』

あのーすいません、十分な担保と個人保証があっても当然モニタリングしますけど。てか債務者の返済能力丸無視して担保と個人保証だけで貸すとか街金もビックリの金融論で、通俗小説の読みすぎを心配したくなります。大体からして債務が焦げ付いた時の回収には当然手間暇もストレスも掛かるのであって、担保や保証人とっていて最終的にフルカバーされても面倒なんですけどねえ。

『担保と個人保証は預金者には取れませんから、これは銀行が情報生産機能を果たしていることになります。』

何か妙なのだが、担保や個人保証は信用補完の為の物であって、担保があるからどう見ても失敗する投資だしこの債務者の返済能力超えるけど金貸してやるわとかナニワ金融道の読み過ぎなのではないでしょうか。

『企業が会計情報を整備・拡充すれば、規模拡大に伴って、資本市場から資金を調達でき、銀行から借り入れる必要はなくなります。日本の多くの大企業が借入をしているのは、銀行が安く貸してくれるからです。銀行にとっては利幅の薄い貸出になります。』

何か色々変だが次の段落に進む。なお、ここで一言付け加えさせていただきますが、先ほど「金融論の教科書によると」という記述があり、脚注18というのがありましたが、その脚注18を見るとこれがまた、

『18 例えば、岩田規久男『金融』第4章、東洋経済新報社、2000 年』

とか一々細かい所まで笑いを取れるのがジンバブエクオリティ。


・さらに謎の金融論が展開されるのだがこれ聞かされた経済界の皆様に同情を禁じ得ない

次の段落に来るとさらにパワーアップ。

『そもそも将来の収益など分からないものです。』

そんなこと言い出したら何もできませんけどまあそこを諒として次の文章に行くといきなりのけぞる。

『一方、銀行以外でも、企業の将来の収益をより正しく予測しうる企業は様々に 存在します。』

おじいちゃんつい今しがた「将来の収益など分からない」って言ってませんでしたっけ大丈夫でちゅか???

『親会社は下請け企業の売り上げをある程度知っています。自分が発注しているのだから当然です。経営に関与している商社などもそうです。銀行は情報優位にある彼等とも競争していることになります。』

どうもこの方は「企業間信用」というものをご存知無いようです。売掛とか買掛とかご存知ですか????

『仮に貸出先企業が大成功したとしても、銀行にとって得られるものは、わずかな利鞘にすぎません。』

何で話がそこに飛ぶ????

『銀行は預金者のお金を投資できないのですから、ベンチャー企業に投資して何十倍にもなるということは起こりえません。』

ってこの段落、話が全然つながっていないし、この理屈言い出したら融資そのものが否定されるんですが何を言ってるんでしょうかねえ、と思いつつ気を取り直して次の段落に進む。


『企業の将来の収益の予測という、正しいかどうか分からないことを評価しようとすれば、評価者の裁量が拡大し、評価者が権力者になってしまいます。』

さっきは企業の将来の収益を予測しうるという話をしながらまた将来の収益は分からないという話をおっぱじめるし、「評価者の裁量が拡大し、評価者が権力者になってしまいます」って個人営業している金貸しかよお前という所で、会社組織でまともに融資をしている所で担当者の一存で融資出せるようなシステムねえだろ会社勤めしたことあるのかお前と小一時間だし、社会人としての常識が欠如した人間の教育を怠ったD総研は製造物責任をマリアナ海溝よりも深く感じて頂きたい。

『組織の運営方法を誤ると、融資をチェックしている審査部門は機能せず、人々を評価している人事部門は組織内の権力闘争に向かうという小説の世界になってしまいます19。』

えーっとすいません、「企業の将来の収益の予測という正しいかどうかわからないことを評価」する機能は融資審査部門になるので、「評価者の裁量が拡大し、評価者が権力者になる」んだったら融資審査部門が権力者になると思うのですが何で急に人事部門がここで出てくるのでしょうか全く意味が分かりません。

とは言いましても、文章および脚注を見ればわかりますように、ここのリファレンスが池井戸潤さんの小説なんですけど(と何度も池井戸潤さんの名前が出てこれは池井戸さん飛んだとばっちり)。さっきも引用しましたが脚注19は、

『19 フィクションだが、池井戸潤氏の銀行小説『オレたちバブル入行組』( 2004 年)、『シャイロックの子供たち』(2006 年)、『ロスジェネの逆襲』(2012 年)(年数は単行本の出版年。いずれも文春文庫にあり) でも、同じことが 活写されている。話は誇張されているが、私が個人的、断片的に得ている情報と類似している。』

しかもさっきは飛ばしましたけど、この「私が個人的、断片的に得ている情報」ってのがアホかと馬鹿かとって話で、あんたら正面玄関から金融機関に行って金融機関の状況について考査できる権限あるのに、何で「個人的に、断片的に得ている情報」で金融機関経営を騙っているんでしょうかよくこれ聞いてる金融機関の偉い人たち怒りださないわと思いますが、ほぼ間違いない想像としては、終了後に大分支店長が皆様に土下座行脚をして回っていたんでしょうなあ(もちろん事前にも土下座をしているとして)と思いますと、モノホンのアレのケツ拭きをする部下の皆様大変だし、しかもこのモノホンって別に日銀が主体的に選んだわけでもないというのが災難としか申し上げようがありませんな。


・そしてジンバブエ先生究極の金融機関経営論が登場する

まあさっきも似たような話をしていましたが、この段落の最後を飾るジンバブエ先生の金融機関経営論が物凄い。

『むしろ、担保など外形的に分かることだけで融資をすれば、審査部門や人事部門を大幅に縮小し、コストダウンできるでしょう。』

・・・・・・・・・ちょっといいから今すぐ高崎山に隠棲してこいとしか申し上げようがありませんが、日本銀行政策委員会政策委員が金融機関に対してこのようなご見解を披露されていることにつきまして、金融庁さんのご見解を賜りたいのですが誰か聞いていただけませんでしょうか?????

『銀行が企業の将来の収益を考えるのは例外的な事例にとどめ、外から分かることで貸せばよいということです 20。外形的審査だけでも、預金者にできないことを銀行はしていることになります。』

凄いですよね、これを大分県経済を代表する企業経営者(金融機関含む)の前で発言できるというのがどういう思考を基にしているのかと思いますし、こんな珍理論で何度もリファーされてしまった池井戸潤さんいい迷惑にも程がある次第で、あたしゃ池井戸さんの小説読んだことない(ついでにテレビドラマも見たことない)から実際にジンバブエ先生のような妄想を誘発する効果があるアジビラ小説なのかどうかというのは分からんのだが、これだけ見ていると池井戸さんの小説を読むと銀行に対するすさまじい偏見を誘発する有害図書なのかと勘違い(だと思うのだが)をしてしまいますなオソロシス。


・資産転換機能の話がわけわからんのだが金融論の教科書ではそういう説明なのかいな

てな訳で先ほどの部分までは余りの凄まじさにこっちの息も上がってしまう金融機関経営珍理論(しかも多分これギャグでも何でもなく本人大真面目にガチで信じて話していると思うのがまた凄いのだ)でしたが、次の段落に入ります。

『2)の資産転換機能には、2つの機能があります。まず、@短期の預金を集めて、それを長期の貸出に転換することです。借りる側は機械を買ったり建物を建てたりする訳ですから、急に返せと言われても困ります。銀行は、多数の預金者のお金を預かることによって、長期に貸し出すことが可能になります。』

読んでるアタクシもう息も絶え絶えになりそうでしたがやっと普通の事が書いてあるわと思うがそれは一般的に満期変換機能と言わんかと思うがまあ良しとして次。

『次に、A債務不履行の可能性のある貸出資産を、リスクのない預金に転換することです。』

??????????????????

『これによって、預金者は安心して銀行に資産を預けることができます。』

??????????????????

『これは1)の情報生産機能によってリスクのある資産を全体としても安全な資産に転換することです。 』

後段はマジでだから何としか申し上げようがない。ジンバブエ先生も最後の一文で書いていると思うだが、それはただの(1)情報生産機能、の同義反復ではないでしょうか??????


・ジンバブエワールド全開だわさっき言ってたことと全然違う話が始まるわ

てな訳で一瞬(かなり微妙とは言え)現実に戻りかけたと思うと直ぐにジンバブエワールドに戻るのが直後の次の段落というのがもうね。

『これらの機能によって銀行はどれだけの貸出を維持することができるでしょうか。』

????

『土地があっても預金は少ないという人もいますが、事業に成功すれば預金は増えていきます。人々が豊かになっていきますと、長期に資金を寝かしておくことのできる人も増えていきます。すると、長期金利と短期金利の差も縮小してしまいます。』

お前は何を言ってるんだ。

『世の中には、高い金利でもお金を借りる人もいますので、そういう人に高い金利でお金を貸すことはできるでしょう。しかし、そういう人は少数派です。』

投資期待リターンと借入金利の関係によって借入需要が喚起されるから金利を下げると需要が出るという事になっている、というような話は何処に行ったのでしょうか、というかこの段落支離滅裂過ぎて何を言いたいのかがジンバブエ研究の第一人者を自称する(大嘘)アタクシでも理解できない。

理解できない時は次の段落で伏線回収があるかもしれないので頑張って読んでみる。

『不完全な担保でも貸出はできます。自分のお店を出したい人がある程度の金額の頭金を作ればその人の勤勉さや堅実さを評価できます。』

えーっとおじいちゃんさっき担保とかでフルカバーされたらジャンジャン貸せるから審査不要って話をしてたし、将来の収益は分からないと言いながら分かると言いながら分からないって話をしてませんでしたっけ??????

『銀行にとって担保不足でも、失敗すれば数年間の努力を無駄にするのですから、真剣さは確かです。』

真剣にやれば事業が必ず成功するとは何て素敵なジンバブエワールドなのでしょう!!!!!

『住宅ローンも、頭金10%〜20%では担保として不十分でしょうが、借り手は、なんとしてでも自宅を守りたいと思うものですので、それで問題ないようです。』

どうも小説の読み過ぎで現実とジンバブエワールドの区別がつかなくなったようですが、そういう人を題材にした古典名作がありましたな。その人ドン・キホーテ・ラ・マンチャって言うんですけど。


・やっと計数の話が出たと思ったら・・・・・・・・・・・

次の段落に進みましょう。

『銀行の資産を見ると、2019 年9月末時点で、貸出 509 兆円のうち、法人向けが 324 兆円(うち中小企業向けが 206 兆円)、個人向けが 144 兆円です(日本銀行「預金・現金・貸出金」)。個人向けについては、2019 年9月末時点で、住宅資金が 131 兆円、消費財・サービス購入資金が 10 兆円となっています(同「個人向け貸出金」)。』

ほう。

『利幅が確保できそうな貸出は、中小企業向けと個人向けを合わせて 350 兆円ぐらいではないでしょうか。』

ではないでしょうか、って中央銀行の政策委員なのに把握してねえのかよwwwwww

『集計ベースは異なりますが、2019 年8月末時点で、5%以上の金利での貸出は貸出総額 485 兆円のうち、5.9 兆円しかありません(同「利率別貸出金」)。 』

ちょwwwww5%以上の貸出金出してきてどうするんだよ。しかもこれで計数の話おしまい。


・相変わらず資金循環を理解していない模様

次の小見出しである。『貸出以上に預金が集まる日本の銀行』だが、ここは資金循環を理解していないいつもの話です。

『さらに、貸出以上に預金が集まってしまうという問題があります。図7は日、米、英、独、仏の銀行の預貸率(貸出÷預金)を示したものです。日本では、1990 年代の末まで、ほぼ 100%程度であった預貸率は、急速に低下し、今や 60%程度となっています。一方、日本以外の国では、預貸率は低下していますが、アメリカを除いては 100%程度です。貸すだけの預金しか集めていないと言えます。それでも、欧州の銀行も経営が苦しい状況にあります。まして、預金が集まりすぎている日本の銀行はさらに苦しくなってしまうでしょう。』

それは政府部門の資金不足が恒常的に拡大している結果なんですけどねえ、というのを何度指摘されても理解できないんでしょうなあこの先生。次の段落に進みます。

『QQE 導入以来、それまで減少傾向にあった銀行(国内銀行)の貸出は、2019 年9月までで 79 兆円増えていますが、預金は 161 兆円も増えています(日本銀行「民間金融機関の資産・負債」)。』

だから資金循環。

『これに関連して、金融機関に人材が集まらない、中途退職するという報道があります 21。報道では、これが悪いことであるかのように書かれていましたが、結果的に必要以上の預金集めにつながっている人員や店舗の削減が可能になります。これは、銀行業、ひいては、日本経済全体の生産性を上げることにもなります。』

まるで分っていない・・・・・・・・・

『また、日本の銀行は、貸出が伸びず、預金が集まりすぎることに対して、預金を減らすより、リスクの高い貸出、リスクの高い運用手段に傾斜し、かつ、顧客にも預金よりも投信を推奨するようになっているのではないかと懸念されます。』

えーっと、貯蓄から投資へというのを国を挙げて推奨していますし、低金利政策によるポートフォリオリバランス効果って話はどちらへ???ああそれから預金が伸びるのは政府部門の資金不足が以下同文。

『金融庁は、投資信託を保有している顧客の運用損益(手数料控除後)を算出していますが、この資料によれば、2019 年3月末で、運用損益率がマイナスの顧客が 34%を占めているということです 22。保有期間は3年程度と思われますが、この間、わが国を含む主要国の株価が上がっていますので(日経平均は2割5分ほど上昇)、本来ならほとんどの投信がプラスになるはずですが、手数料の高さでこのようなことが起きるのだと思います。』

どういう理解をするとこういう結論になるんでしょうかねえ。まああの金融庁の資料も期間の切り方とか恣意的だろという感じで、株式投信に特化している運用商品だけ扱っている金融機関の成績が良くなるような切り方しているからなんだよそれというのはあるが。

『金融庁は、一部の投信販売会社が、手数料収入を上げるために、投信間の乗り換えを勧めていることに警鐘を鳴らしています 23。また、前掲資料に掲載されたグラフで、投資信託のコストとリターンを業態別に見ると、相対的に、銀行や対面の証券会社は高コストでリターンの低い投資信託を販売している一方、直販を行っている投信会社やネット系の証券会社は、低コストでリターンの高い投資信託を販売しているように見受けられます 24。』

株式型投信の成績が良いような期間の切り方の問題がある訳で、これ例えば昨年9月起点で昨年末あたりで切ったら全然別の結果になるんでちゅけどねー。


・という訳でジンバブエ先生の金融機関経営珍理論のまとめになります

次の段落がこの章の最終段落になります。

『やはり低金利状況にある欧州の金融機関には、長引く収益低迷を受けて大規模な経営効率化を進めているところがあります。欧州では、労働慣行もあって、大胆な雇用調整は容易ではないようです。そこで、欧州の金融機関は、日本を含む世界各国で組織体制の見直しを進めています。』

はあそうですか。

『一方、日本は大胆な金融緩和によって人手不足になっていますので、こうした見直しは欧州よりも容易なはずです。』

ジンバブエ先生どうもおとぎの国にいらっしゃるようですね。

『銀行が数でも資金量でもうまくダウンサイジングできれば、利益を得られるようになります。』

最初の方で「しかし、銀行経営の困難は、貸出需要以上に預金が集まってしまうという構造問題に依るものです。」って言ってたと思うのですが、銀行の数減らしてもそこの構造変わらないし、資金量でダウンサイジングするためには資金循環の理屈から言いまして政府部門の資金不足を大幅に是正しないと資金量のダウンサイズはできないんですけどまあ分かっていないのでもうどうしようもない。

『資本主義と市場経済においては、儲からない仕事を止めて、儲かる仕事に転換することが必要です。』

最初の方で「また、非効率な企業を高金利で市場から追放すれば、雇用問題を起こします。」とか言っていてこれですし、儲かる仕事に転換するって銀行がいきなりタピオカコーヒー売るとかそういうの業法で出来ないし、それやりだしたら銀行の機関銀行化が起きて金融の不安定化に繋がるんですけどね。

『その過程で、銀行が人と資本を放出すれば、日本経済全体ではプラスになるはずです。』

わけわかんない。

『日本において仕事を止めることの難しさは分かりますが 25、銀行という、資本主義と市場経済の根幹をなすべき機関に、このことを理解していただければ、日本の生産性はより顕著に改善すると思います。』

って言ったって資金余剰の問題は政府部門の絶賛大赤字を何とかしないといけないんだし、借入需要が乏しいのは経済の潜在成長力が弱すぎる上に成長期待がないんだから、その辺何もせずに(なおジンバブエ先生によれば金融緩和で何とかなるらしい、7年近く何とかなっていないのに何でなるんだろう)金融機関は死ねと言わんばかりの話で金融機関経営珍理論を締めるとかよくもまあこんな話が出来るもんだと呆れてしまいまして、まあ集大成ならぬ臭大成だわと思うのでありました。

あとこの次の『おわりに』ってのの最初が寝言なのですが、おじいちゃんの寝言におつきあいするのはキリの良い所でここで勘弁という事でよろしくお願いいたします。

まあジンバブエ先生におかれましては任期が終了しましたら別府温泉地獄めぐりに入水するなり高崎山に隠棲なさるなり、といったスキームをご推奨しますとか言いたくなってしまう訳です、というかそのまま帰ってこなくてエエンですが大分県が迷惑ですかそうですか。





2019/12/05

お題「グローバルステーブルコインに関する黒田総裁講演/ブレイナード理事の金融政策講演(ただし先週火曜日)」

さて本日は・・・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/calendar/index.htm/
5(木)10:30 ○ ● 【挨拶】原田審議委員(大分)

キターーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーー!!!!!

ということでジンバブエ審議委員様の最後の金懇挨拶でございますので、最後は華々しく打ち上げ花火をバンバンと上げて頂きまして、掉尾の一振で史上最高値をマークして頂きたいと今からワクワクしております。

#なお再任した場合最後の金懇挨拶にならんのですが・・・・・・・・・・・・


〇債券市場的に全然現世利益問題ではないが決済のイノベーションという総裁講演

こんなのがぶち込まれておりましたが。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2019/data/ko191204a1.pdf
決済のイノベーションと中央銀行の役割―ステーブルコインが投げかけた問題―
創立35周年記念FISC講演会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦
2019年12月4日

・ステーブルコインに関する解説が物凄い勢いであるのですけれども・・・・・・・・・

まあアレです、どうせ黒田さん決済とか興味なさそうにしか思えない(個人の感想です)ので、本件って総裁講演にはなっていますが事実上総裁代読みたいなもんでしょ(かなり偏見)という感じなのですが、前半の方でステーブルコインに関する論点がこれでもかと並べられているので整理に丁度良いのかなあと思うのでした。

マクラの途中から引用しますと、

『このように、決済を巡る話題には事欠きませんが、今年一年を振り返ってみて、決済関連のニュースの中でも話題となったのは、フェイスブックが主導するステーブルコイン「リブラ」でした。ステーブルコインは、価格変動が大きく決済手段として使い難いとされてきた暗号資産(仮想通貨)の問題点を解決するスキームとして登場しました。これまで、各国で多数の民間デジタルマネーが登場してきましたが、リブラは、フェイスブックが築いた巨大な顧客基盤をベースに、独自の通貨建ての取引をグローバルに普及させるポテンシャルを持っている点で、これまでの民間マネーとは異なります。』

はい。

『リブラのようなグローバルステーブルコインは、法的な明確性や技術の安定性が確保されれば、多くの人が利用する便利な決済手段になり得ますが、マネーロンダリング(資金洗浄)やサイバーリスク、データ保護、消費者・投資家保護など様々な課題が解決されないと、利用者はステーブルコインのメリットを持続的に享受できません。』

『また、グローバルステーブルコインが普及すれば、金融システムや金融政策の波及効果にも影響を及ぼす可能性が考えられます。』

てな話が以下展開される訳です。

『したがって、グローバルステーブルコインに関 しては、G7 の作業部会報告書でも指摘した通り1、様々な課題やリスクへの対応 が十分整わないうちに、発行されるべきではありません。そうした認識は、G20 財務大臣・中央銀行総裁会議でも共有されました。』

・・・・・・てな話なんですが、結論から先走ってしまいますけれども、今回の論点整理を見るとどこからどう見てもステーブルコインは少なくとも民間主体で行うのは金輪際ダメというような話になっているようにしか読めませんでして、だったら最初からステーブルコイン自体を通貨偽造関連法規でしょっぴけば良いだけの話しじゃん(日本だったら通貨偽造に関して準備罪だってありますし)と思うのですが(ということをすると多分法規の濫用になるような気がするがそういうツッコミはしないでくらはい)、何でそっちに話が行かないんでしょうかねえと最新テクノロジーに関しては写真を撮られると魂が抜ける程度に意識の低いアタクシは思うのですが、正直この辺りの話そんなに気合入れて勉強してないので以下の説明を読みながらなるほどと勉強中という感じですな。

『この講演では、初に、国際金融システムの安定性を確保するための「グローバルガバナンス」という視点から、公的当局のステーブルコインへの対応について整理したいと思います。クロスボーダーの資本移動が自由なもとで国際金融の安定性を維持するためには、各国当局が協調して国際的に整合性のとれたルールや規制を策定し、それをグローバルステーブルコインの発行主体に遵守してもらう必要があります。グローバルステーブルコインに対し、中央銀行も含め公的当局が適切に対応するには、ステーブルコインの取引規模の拡大が金融安定という国際公共財の供給チャネルにどのような影響を及ぼし得るかについ て、しっかり把握することが重要になってきます。 』

だったらそもそもステーブルコインを国際機関で発行することにして民間の発行を禁止した方がエエンチャイマスカと言い出すとそれはSDRと何の違いがあるのかという話になるような気がしますが。

でもってこの講演、その後に、

『これらの点を整理したうえで、既存のリテール決済サービスの改善に向けた課題について、次に述べたいと思います。ステーブルコインをはじめ民間部門のイノベーションが生まれる背景には、既存の決済システムの問題点――例えば、国際送金の費用が高く、着金までの時間が長いなど――が関係しています。したがって、新たなデジタルマネーの登場に対して、リスクや課題を強調するだけではなく、既存の決済システムに対しても改善を促していく必要があります。』

てな話になっていまして、やはり意識が高いですかそうですかという話ですが、

『先ほど申し上げました通り、わが国では、新たな決済手段が登場し、顧客の利便性の改善につながる動きも出てきていますが、キャッシュレス決済が普及するには、なお課題があるように思います。この点について、本日の講演では、決済サービスの相互運用性という考え方を軸に整理したいと思います。』

となっていますがそこはパスの所存。


・話が金融トリレンマから始まるという壮大な流れです

『2.グローバルガバナンスの視点からみたステーブルコイン 』という章になりますが、


『各国の規制・監督当局や中央銀行は、リブラのようなステーブルコインの構想に対して、各国単独で対応するのではなく、互いに協調して対応する必要性を強く認識してきました。その背景を理解するには、「金融トリレンマ」という概念が有用です2。 』

お、おぅ・・・・・・・・・でもって『(金融トリレンマ)』という小見出しになるのですが、

『金融トリレンマとは、@自由な資本移動による金融統合(financial integration)、 A金融安定(financial stability)、B国内金融規制(national financial policy)の 3つを同時に組み合わせることはできないというものです。どれか一つは諦めなければなりません。』

為替のトリレンマの変形バージョンですな。

『例えば、金融が統合された世界で、各国がそれぞれ独自の国内金融規制を維持した状況を考えてみましょう。規制が緩い国の金融機関は、リスクテイクを積極化させ、海外市場での投融資を活発化させます。また、規制の緩い国の企業や家計は、金融機関から(非自国通貨建てを含め)借り入れを積極化させます。こうしたレバレッジの拡大は、最終的には、金融の不安定化をもた らす可能性があります。』

『つまり、このケースでは、金融統合(financial integration) と国内金融規制(national financial policy)の 2 つを選択すると、金融安定(financial stability)を犠牲にしなければならないということです。金融が統合された世界で、金融安定を実現しようとすれば、各国当局は国内金融規制を改め、国際的に 整合性のとれた規制(globally consistent financial policy)にする必要があります。』

へいへい。

『グローバルステーブルコインは、世界中の顧客から集めた資金を見合いにトークンを発行し、集めた資金は政府短期証券や銀行預金など主要国の法定通貨バスケットにリザーブとして運用するというものです。』

まあしかし先進国の自然利子率が低下して金利水準自体が低位に張り付くことになると通貨発行益自体が減る訳ですし、政府部門が発行するならば徴税が究極的には担保になるけれども民間が発行すると預金か短期国債が見合いになるのだから益々通貨発行益のメリット無いんじゃネーノとは思うのだがその辺はさておきまして、

『ステーブルコインが国際送金手段として利用されることで、クロスボーダーの資本移動がより促進されます。これらの点を踏まえると、グローバルステーブルコインは、金融統合 (financial integration)を深化させるスキームと言えます。』

なるほど。

『したがって、グローバルステーブルコインの登場によって、金融が不安定化することを回避する―― すなわち、金融安定(financial stability)を維持する――には、国際的に整合性の とれた規制(globally consistent financial policy)が必要不可欠です。』

そらそうだ。

『今夏以降、グローバルステーブルコインへの対応について、各国の規制・監督当局や中央銀行 が協調し討議を積み重ねてきたのには、こうした背景があります。』

それは分かります。

『グローバル化した金融活動がもたらし得る利益は非常に大きく、民間主体に は規制回避(regulatory arbitrage)のインセンティブが強く働きます。ある一部の国や法域でグローバルステーブルコインの取引が禁止されても、規制の緩い他の国や法域で取引が増えれば、その影響はストレス時などに国際金融市場全体に広く及びます。』

うんうん。

『例えば、先進国でステーブルコインが普及しなくとも、新興国でステーブルコインの取引が増えれば、先進国の政府短期証券や銀行預金がステーブルコインの裏付け資産として増加していきます。』

という理屈は分からんでもないのだが、先進国での使用を全面禁止してオフショアで使いたければ自己責任で、となった時にそんなに普及するもんなのかなというのは直観的に疑問なのですけれども。

『しかし、ステーブルコインに対する信頼や評判が損なわれたり、あるいは裏付け資産の価値が低下した場合などには、顧客がステーブルコインの償還――すなわち、法定通貨への換金――に集中する可能性が考えられます。コインの発行主体は銀行預金を急激に引き出したり、政府短期証券の売却を余儀なくされ、このことが先進国の金融市場のボラティリティや脆弱性を高めるよう作用すると考えられます。』

まあその理屈はわかるが

『こうしたリスクを緩和するには、ステーブルコインの発行主体の規制回避を抑制するよう、各法域の規制・監督体制を互いに整合的にしておく必要があります。また、合法かつ健全な資金取引は、金融安定や金融統合の大前提であり、 AML/CFT 対策は各国間で整合的に運用されなければなりません。加えて、サイバーリスクやデータ保護、消費者・投資家保護なども含め、既存の規制領域を超 えた、国際的な協調が必要となります。』

協調して禁止すればええやん。


・FBの構想は国際公共財へのフリーライドという指摘が味わいがあってよろしいですな

次の小見出しが『(公共財としての金融安定)』な訳ですが、中々キツイ説明になる。

『ところで、金融の安定(financial stability)は、各国の企業や個人、金融機関が経済活動を行っていくうえで必要不可欠な「公共財」です。公共財には、ある主体の消費量が他の主体の消費量を制約することがなく、また、対価を支払わない 利用者を排除することが困難である、という 2 つの特徴があります3。』

ほうほうそれでそれで?

『そして、公共財は消費をいくら増やしても、対価を支払う必要がないため、フリーライダー問題が発生し、市場に任せきりにしておいては、公共財は供給されません。』

全然関係ないけど公共財を民営化しようとかやっている動きがジャパンの政府方面にあるような気がしますね。

『金融の安定も、これらの特徴が当てはまると考えられます。このため、各国の公的当局(規制・監督当局や中央銀行)が、適切な規制体系の構築によるプルーデンス政策や金融政策の運営を通して、金融の安定や通貨価値の安定という公共財の供給に努めているわけです。』

ということで・・・・・・・・・

『グローバルステーブルコインは、その価値を、主要各国の法定通貨の価値に紐づけて安定化を目指したものであり、いわば「国際金融の安定」という国際公共財――各国の公共財のバスケット――を活用したスキームと言えます。国際金融規制(global financial policy)とは、国際公共財の節度ある消費ルールと解釈するとわかりやすいと思います。グローバルステーブルコインの発行体は、公共財を利用して決済サービスを提供する以上、そうしたルールを遵守する必要があります。』

物凄い勢いでFBをdisっているようにしか見えませんがいいぞもっとやれ。

『もし、グローバルステーブルコインの発行体が、国際金融の安定という公共財を過剰に消費すると――すなわち、発行体のリスク管理能力を超えて、業容を大幅に拡大させると――、リスクが顕在化したときに、急激な資本移動を誘発するなど、国際金融市場にストレスを及ぼします。そうなりますと、中央銀行は後の貸し手として流動性供給を行ったり、場合によっては政府が財政政策を発動するなどして、金融安定維持という公共財の供給のために公的当局は追加のコスト負担を余儀なくされる可能性があります。』

(;∀;)イイシテキダナー

『過去を振り返ってみると、2000 年代中盤にかけての「大いなる安定(Great Moderation)」の時期に、米欧の金融機関は過度なリスクテイクに走りました。金融機関に対しては、従来から規制が課されてきましたが、多くの先が同時にリスク認識を緩めたこと――すなわち、金融安定の持続を過信したこと――が、信用の増加と資産価格の上昇を相乗的に増幅させていきました。』

『その後の国際金融危機をきっかけに、マクロプルーデンスの視点を取り入れた金融規制の体系が築かれていきましたが、これは、金融機関に対して、金融安定という公共財の 節度ある消費ルールをより厳格化させたものと言えるでしょう。』

非常に良い説明なのだがそれは今の金融政策運営に関してブーメランになるような気もするが気にしないで先に進む。

『国際金融危機後、金融機関に対する規制が強化される中で、「信用仲介」においては、銀行にかわって、投資ファンドなどのノンバンクが米欧市場を中心にプレゼンスを高めていきましたが、フェイスブックによるリブラの構想は、「決済」の面でも、銀行にかわって、ノンバンクがプレゼンスを高めようとしていることの表れとみることができます。信用仲介、決済いずれの機能を担うにせよ、銀行だけではなく、ノンバンクも、公共財の節度ある消費ルールを遵守する必要があります。』

それはよっぽどうまくやらないと難しい上に失敗したときの災厄が大きすぎるんだから端から禁止すればええやん、とアナクロニズム丸出しの思いが直ぐに出てくるアタクシですがこの説明、更にキツイ指摘になって来ます。『(グローバルステーブルコインと金融版「共有地の悲劇」) 』という小見出しに参りまして、


・グローバルステーブルコインは共有地の悲劇をもたらすリスクとな

『ところで、公共財には、「ある人の消費量が他の人の消費量の制約にならない」という特徴があることを先ほど指摘しました。私が、空気という公共財をいくら過剰に吸い込んでも、皆さんの空気の消費量を制約することはありません。では、グローバルステーブルコインの発行体が、金融安定という公共財を過剰に消費することを私がなぜ問題視しているのか、皆さん疑問に思われるかもしれません。』

いやまあここまでの説明で十分わかると思いますが(^^)。

『理由を一言で言えば、グローバルステーブルコインの取引規模が拡大すると、 金融安定が「公共財」から「共有資源」に変容する可能性があるからです。』

はい。

『共有資源とは、対価を支払わない利用者を排除することが困難という点では公共財と同じですが、ある主体の消費量が他の主体の消費量を制約するという 点で公共財と異なります4。漁業資源はその典型です。多くの主体が消費できる共有資源は乱獲されると、資源の枯渇を招くという問題があります。これは「共 有地の悲劇」と呼ばれる問題です5。』

『共有地である牧草地に、複数の酪農家が牛を放牧する場合、それぞれの酪農家は利益を増やそうと、より多くの牛を放牧するでしょう。牛が増えても共有地の広さは一定であるため、やがて牧草の再生力 が失われ、土地は荒れ果て、全ての酪農家が被害を受けることになります。』

ということで・・・・・・・・

『グローバルステーブルコインは、こうした「共有地の悲劇」をもたらす可能性があります。』

キタコレ!!!

『中央銀行は、金融政策やプルーデンス政策を通して、金融の安定や通貨価値の安定という公共財の供給を行っています。一方、グローバルステーブルコインは、中央銀行によって供給された通貨価値の安定という公共財を活用したスキームであることは先に指摘した通りです。』

フリーライダーと言わないだけ抑制はされています(^^)。が、せっかくなのでフリーライダー呼ばわりしてキャッチーなヘッドラインになって欲しかったという風には思う、というかそうなるのはそれはそれで刺激的だから直接的にキャッチーな言葉を使わなかったんでしょうが、まあこれはFBはフリーライダーと言っているのに等しいわな。

『公共財の過剰消費によって、ステーブルコインの取引規模が拡大し、各国の法定通貨を代替するようになれば――すなわち、法定通貨とは異なる独自の通貨建ての取引が増えれば――、中央銀行の金融政策の波及効果が弱まります。そして、金融政策の効果が弱まれば、金融や通貨価値の安定という公共財の供給に支障を来すようになりますので、公共財を活用したステーブルコインの価値が不安定化するだけではなく、多くの経済主体の活動に負の影響が及ぶことになります。これは、金融版「共有地の悲劇」と言ってよいでしょう。金融安定は、グローバルステーブルコインの取引規模拡大により、公共財から共有資源に変容するのです。』

中々痛烈ですが仰せの通り。

『グローバルステーブルコインによる法定通貨代替のリスクは、経済基盤が脆弱だったり、決済インフラが十分整備されていない国において、大きいと考えられます。そうした国々で法定通貨の代替が拡がり、金融政策の効果が弱まれば、実体経済や金融が不安定化し、その影響は先進国も含め他国に波及します。』

『経済のグローバル化が進み、金融システムの相互依存関係が強まったもとでは、先進国の金融市場も不安定化するリスクがあります。この結果、国際金融の安定とい う国際公共財の供給が減少し、共有地の悲劇が起こり得るのです。 こうした悲劇も含めステーブルコインがもたらし得る様々な問題に対して、 公的当局は内外の連携のもと適切に対処していく必要があります。』

ということで中々きつくて、次の『3.リテール決済システムの改革』という部分の冒頭で、

『以上みてきたように、グローバルステーブルコインは国際金融システムや決済システムに大きな影響を及ぼし得るため、様々な課題やリスクへの対応が整わないうちに、発行されるべきではありません。』

ということですが、微妙に腰が弱いというかまあ意識高い方の仕様だなーとか思うのは、その後に、

『一方、私ども中央銀行としては、民間のイノベーションを促進すべきとの立場にあることもはっきりと申し上げておきたいと思います。』

って話なのだが、(もはや全然金融と関係ない話になっちゃいますが)そもそも論として最近出てきているイノベーションとやらって、単に公共財にフリーライドしてるだけやんと思うような物件ばっかりじゃんとか思う位にウルトラコンサバティブなアタクシであって、リブラ話ってその公共財へのフリーライドをイノベーションとか言う動きの一つの極北みたいなもんじゃねえのか位には頭が固くて、お前はどんだけアナクロなんだとツッコミが大量に来そうですが、まあそんな事を思いつつも、さすがにグローバルステーブルコインはいったんストップして良かったですねとは思うのでありましたです。はい。

#と、なんかアタクシの固陋ぶりの自己紹介みたいになって申し訳ありません


〇ブレイナード理事講演ネタの前にちょっと小ネタ

ただいまからブレイナード理事講演ネタを投下する所存ですが、引用の為にFEDのページ見に行ったらトップの横の方に何やら面白そうなバナーがあったので見てみたらこんなのがありました(^^)。

(URL長いのでリンクは途中まででしか貼っていませんがこの先に飛びます筈です)
https://www.federalreserve.gov/faqs/I-received-a-suspicious-looking-e-mail-that-claims-to-be-from-the-Federal-Reserve-is-it-a-scam.htm
I received a suspicious-looking e-mail that claims to be from the Federal Reserve. Is it a scam?

内容はまあお察しですが、FRBを騙った詐欺メールってあるのかそらまああるわなとか思いつつ、
日銀のトップにも注意喚起のバナーがあるのでこの注意喚起があるのは当然なのですが、今回FEDの
トップページの割と直ぐに目に着くところにドドーンとぶっこんでいるのはほほうと思いました。、

http://www.boj.or.jp/about/organization/notice/index.htm/
日本銀行やその役職員の関与を装った不審な連絡・勧誘・ウェブサイト・SNSアカウントなどにご注意ください

まあ余談ですけどね。



〇ブレイナード理事の金融政策話と金融政策枠組み論の話がございましてですな

ブレイナード理事が金融政策枠組み見直しに関する私家版中間レビューな講演を先般しておりましてですな、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20191126a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/files/brainard20191126a.pdf
November 26, 2019
Federal Reserve Review of Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications: Some Preliminary Views
Governor Lael Brainard
At the Presentation of the 2019 William F. Butler Award New York Association for Business Economics, New York, New York

でもって今の金融政策運営という現世利益の話がちょっとあって、その後枠組み見直しのブレイナード版中間レビューがあるんですが、そこらの地区連銀総裁だったら軽くスルーするところなのですが、ここはブレイナード理事なだけに一応チェックかなー、と思ってネタにする次第、ではありますが今日は時間の関係でそっちではなくて現世利益方面の話をネタにして明日はどうせジンバブエ祭りになるので来週にその続きを。

なお枠組み見直しの話で色々なネタをぶっこんでいるのですが、特にゼロ金利制約後の金融政策ツールに関する部分でちょっとこれは大丈夫かという気がせんでもない部分があるので、そこは気になりました、と掴みだけしておきます。


・現状の金融政策に関してはやはり動く気がサラサラ無いという説明になっています

んな訳で最初の小見出しの『Outlook and Policy』から。

『There are good reasons to expect the economy to grow at a pace modestly above potential over the next year or so, supported by strong consumers and a healthy job market, despite persistent uncertainty about trade conflict and disappointing foreign growth.』

潜在成長率をやや上回る成長が続く見込みであって、その背景には個人消費が強いことと労働市場が強いことがあり、一方で貿易問題と海外の成長力の弱さはあるけれども、そっちは前者で乗り越えますよ、という基本線に関してはここもとの議長やらウィリアムスやらの執行部のコメントと同じです。

『Recent data provide some reassurance that consumer spending continues to expand at a healthy pace despite some slowing in retail sales. Consumer sentiment remains solid, and the employment picture is positive. Housing seems to have turned a corner and is poised for growth following several weak quarters.』

更に最近の指標はこの見方を裏付けるものになっている、という話も同様ですし、ここもと住宅市場が強くなってきている話の指摘もこれまたパウエルの先般の議会証言での説明と平仄があっていて、最近はこの辺の統制が取れている感じがします。

『Business investment remains downbeat, restrained by weak growth abroad and trade conflict. But there is little sign so far that the softness in trade, manufacturing, and business investment is affecting consumer spending, and the effect on services has been limited.』

企業投資とかは海外とか政治要因とかで弱めなのですが、これが個人消費などに波及する気配はそんなにありません、と強気。

『Employment remains strong. The employment-to-population ratio for prime-age adults has moved up to its pre-recession peak, and the three-month moving average of the unemployment rate is near a 50-year low.2 Monthly job gains remain above the pace needed to absorb new entrants into the labor force despite some slowing since last year. And initial claims for unemployment insurance-a useful real-time indicator historically-remain very low despite some modest increases.』

雇用に関しては威勢の良い説明。

『Data on inflation have come in about as I expected, on balance, in recent months.』

物価に関してはこの後目標よりも低い水準ですという話が続くのですが、出オチがas I expectedなので悲観モードではありませんわなと。

『Inflation remains below the Federal Reserve's 2 percent symmetric objective, which has been true for most of the past seven years. The price index for core personal consumption expenditures (PCE), which excludes food and energy prices and is a better indicator of future inflation than overall PCE prices, increased 1.7 percent over the 12 months through September.』


『More broadly, the balance of risks remains to the downside, although there has been some improvement in risk sentiment in recent weeks. The risk of a disorderly Brexit in the near future has declined significantly, and there is some hope that a U.S.?China trade truce could avert additional tariffs.』

でもってリスク認識ですが、これ先ほどありましたように先週火曜日の物件なので米中のテンションに関する認識は直近とちょっと違うかも感はありますが、下方リスクと言いつつも以前よりマシという説明。

『While risks remain, financial market indicators suggest market participants see a diminution in such risks, and probabilities of recessions from models using market data have declined.』

金融市場の動きを見ると、市場参加者もこれらのリスクがやや減少してきたという認識になっていることを示している、とまあ威勢の良い話が続きまして、最後に金融政策について、

『The baseline is for continued moderate expansion, a strong labor market, and inflation moving gradually to our symmetric 2 percent objective.』

と来まして、

『The Federal Open Market Committee (FOMC) has taken significant action to provide insurance against the risks associated with trade conflict and weak foreign growth against a backdrop of muted inflation. Since July, the Committee has lowered the target range for the federal funds rate by 3/4 percentage point, to the current range of 1-1/2 to 1-3/4 percent.』

3回も保険で利下げしたのはsignificant actionだよという事で、

『It will take some time for the full effect of this accommodation to work its way through economic activity, the labor market, and inflation.』

今後はこの効果を見るのに多少お時間を頂く、ということだが、それは良いんだけど何で75bpだったの?50でも100でもないのは何でなの?という疑問がありますなあ(ってどうせこんなの鉛筆舐めて腰だめの世界なんですけどそれを言っては身も蓋もない)、と言いたくなりますが、まあ現世利益的には当面利下げもしないし利上げもしないと言っています。

『I will be watching the data carefully for signs of a material change to the outlook that could prompt me to reassess the appropriate path of policy.』

material changeがあれば即座に対応、というのはそうじゃなかったら動かん、ということで、この辺パウエルの議会証言ときっちり話が整合しているので別に新しい話でも何でもないですけれども、執行部はほぼ一枚岩で「当面は動かん」ということにした、というのは示されたかと思います。

#ってこの話基本前座みたいなもんでメインイベントは後日ということでご勘弁賜りたい







2019/12/04

お題「日銀保有国債残高関連(2021年分の雑考入り)/市場メモ備忘メモ/低金利と金融安定に関するスタッフペーパー」

マイクパフォーマンスばっかりやっているうちに池乃めだかコースとな。
https://jp.reuters.com/article/china-us-idJPKBN1Y71TA
2019年12月4日 / 00:17 / 2時間前更新
対中通商合意「大統領選後も」、トランプ氏が長期戦示唆

どう見ても今日はこれぐらいにしといたるわです本当にありがとうございました。

でもって案の定とばっちりがこっちに。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191203/k10012200951000.html
NATO首脳会議開幕へ 米大統領「私とキムは仲がよい」
2019年12月3日 21時01分

『またトランプ大統領は、会談で在日アメリカ軍の駐留経費の負担をめぐり、「安倍総理大臣には『アメリカを助けてくれ』と言っている」と述べ、日本側に負担額を増やすよう求めたことを明らかにしました。』(上記URL先より)

記事の方では記述がありませんが、パツキンヅラ先生、また「ニッポンは金持ちだから金出してくれるでしょう」とかお前の世界観は1990年で止まっているのかと言う話もしておられたようですな。

・・・・・・と言いつつここもと「どうせ何とかなる」みたいな感じでダラダラと株が上がっているので、一発雰囲気を冷やしておいてからドラマチックに米中第一段階合意キタコレとか演出効果を狙っている可能性もこのオッサンの場合はアリエールなので(個人の妄想です)油断も隙も無いとは思うけどね。



〇国債保有明細を見ながら償還額を計算するのだが2021年の償還も確認の巻

毎度お馴染み月初2営に出てくる営業毎旬とか日銀保有長期国債銘柄別残高とかを使って毎度の計算をしてみました。なお例によってヘッジクローズですが、この計算、不肖このアタクシがエクセルちゃんでヘコヘコと(国債の各銘柄の償還日を売買参考統計値のエクセルデータから取って来るなどして)切ったり貼ったりソートしたりしながら計算しているので、本人は正確に出しているつもりですが間違っていたらゴメンやでということでご利用は自己責任で(というか計算そんなに面倒ではない)。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

なお、毎度の事ですが以下全部額面ベースで計算しております。定義的に言えば「日銀保有国債残高」は会計評価ベースの話になる(ちなみに会計評価は償却原価法を使っていて、3月末と9月末に償却原価の洗い替えを行っている筈です)ので、その分のズレが生じます。昨年12月末対比でみた場合、営業毎旬報告ベース(会計評価ベース)では11月末の国債保有残高は22兆4,038億円の増加で、額面ベースの21兆5,390億円と1兆円弱の乖離があって、実は増加ペースが落ちてくるとこの差分もデカかったりしますがそこは一旦置いて考えて参ります。

#てか償却原価での洗い替えがあるから会計評価ベースの増減がそのままMBに跳ねている訳でも無かったりするのでそこまで細かく掘る必要があるのか説isあるのでまあ額面ベースで勘弁してちょんまげ


・暦年2019の長期国債保有残高は15兆円弱増加見込み

昨年12月末の保有残高:4,443,070億円
本年11月末の保有残高:4,658,460億円

なので増分が215,390億円になります。今月の償還が118,236億円、買入は(1年以内輪番が全部当月償還銘柄になるとして)49,400億円になるので、結論としては147,054億円の増加になる見込みです。なお前月同じように計算した時に増加見込みが146,277億円だったのでまあこんなもんでしょう。増加しちょる増加しちょる。


・問題の暦年2020年の長期国債保有残高は現状でも3兆円行かないのではないかと

来年の償還額:566,578億円

ちなみに前月集計した時が563,938億円になっていまして、差分は2,640億円ですので、ここからそう大きな変動はない(1−3年の買入で2020年12月償還が入るか、今月の1年以内買入で今月の償還銘柄以外が入るくらいしか変動要因が無い、1年以内買入に関してはアタクシの計算の置き方では償還銘柄が入るので年内ツーペーとなるとしている)と思われます。

でもって現状のペースの買入額が、1年以内買入を除いて変動利付を月500(ちなみに変動利付も償還が残り17銘柄しか無くてそのうち6銘柄が2020年償還なのでもうちょっと真面目に計算する必要はあるのかもしれないが勘弁してくんなまし)で計算すると、月額の買入が4兆9,400億円(実際は変動利付も償還銘柄が多く入りそうなのでもうちょっと少なく見積もっても良いかもしれんがそこは1年以内で償還銘柄が入らない可能性もあるので両方ともネグってしまいます)になりますので、年間の買入額が、

来年の購入額:49,400×12=592,800億円

となるので、このままですと2020年暦年は今から輪番減額一切なしでも増加は3兆円を切るという有様になるのでありました。一応アタクシ方式の計算だと26,222億円なので、月額に直すと2,185億円とかになってしまいまして、4で割ると500億円、3で割ると700億円とかでして、いやもう輪番減額余地ないじゃんとか思ってしまいますが・・・・・・・・・・・


・オーバーシュート型コミットメントは「中長期的なMB拡大をコミットしたもの」と開き直るという大技を使えば・・・・・・

暦年2021年の償還額なんですけどね、これがまた2020年対比で多分償還減るんですよ。

2021年の償還額:470,029億円

・・・・・とは言いましても。2021年といえば2年先の話ですからして、輪番の1−3年が2年カレント近辺が入ってしまうという仕様がありまして、この暦年2021年の償還額って10月末の銘柄別保有残高から計算すると456,411億円となっており、この1か月で13,618億円分償還が増えているのよ。

でもって1-3の輪番が月額16,800億円ですから、まあかなりの部分が2021年償還銘柄が打ち込まれている、ということになります。今月はまさに2年カレントが2021年12月償還ですからそらもう打ち込まれますが、月が経つにつれて徐々に2021年償還が物なし芳一オフザランになってきますので、途中からは2021年償還ものはあまり増えなくなって来る筈です。

とか何とか考えますと、来年の償還額の56.7兆円は確かに多いので国債保有残高が伸びない(どころか少しやる気出して輪番減額したら長期国債保有残高まさかの減少あるでという状態)のですが、再来年になると「2020年の一時的な償還の偏在が解消される(キリッ)」という話になります。まあここからまだ2021年償還の打ち込みは続くとは思いますが、何ぼ何でもここから10兆も増えんじゃろと思いまするに、「オーバーシュート型コミットメントや日銀保有長期国債残高の拡大方針というものは、短期的な保有銘柄の償還偏在のような一時的要因の話ではなく、あくまでも中長期的に現行の政策を続けるような環境にある間は、MBや保有長期国債残高の増加方針を継続するものである」(キリリッ)とか開き直ってしまえばまだ減額できる、という理屈をぶっこめばまだまだ減額は可能である、という事になるのでありました。

・・・・・・ってまあ暦年の2021年の残高増減が気になるようなころまでこの政策枠組みが持っているのかどうかも良く分からんですけれども、とりあえず来年の長期国債残高が減少する可能性が出るような減額をしたとしても「資産買入方針として日銀が保有する長期国債残高の拡大方針は続いております、ただし短期的には償還の山があるために一時的に減少することもあるかも知れませんなああっはっは」という事になるんでしょうな(個人の妄想です)。

なお、MBだけで言えばETFが(ブレはあるけど)6兆円あるし発行銀行券もトレンドとして増えている(のだが消費増税でキャッシュレス決裁割引キャンペーンが盛大な効果をだしているらしいので発行銀行券の伸びが止まったりしたら笑えるのだがさてどうなるのやら、といつもニコニコ現金払いのアナクロジジイのアタクシは思う)という状況もあり、ついでに日銀保有短期国債の市場買入分(償還乗り換え分があるから営業毎旬の数字は銘柄別残高と合致しない)は76,723億円となっていますので、いざとなったらこれを増やせば帳尻は合う(けど帳尻合わせに行くと短国の需給が多分大逼迫してしまうので金利全体に影響を与える可能性があるのであまりやらないでしょ)という図だし、2021年は上記の状況なので、まあ気にせずすっとぼけることが可能という暫定的な結論を置いてみますが個人の感想なのでご利用は自己責任で(^^)。

しかし「80兆円」って誰も何も言わなくなったけど、ぶっこんで半年もしないうちから形骸化しているのに放置プレイって何なんでしょうかねえこの文言入れてて恥ずかしくないのかね政策委員会は、とは思う。



〇10年国債入札ェ・・・・・・・・(その後米金利低下しましたが)

まあ今朝になってみれば池乃めだか師匠スキームの登場によって
https://jp.reuters.com/markets/bonds
米国債10年 利回り
US10YT=RR +1.705 -0.131

とかなってやがるので過去の話っちゃあ過去の話なんですけれども俺様備忘用にメモメモ。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28D191
2019年12月3日 / 15:21
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、10年債入札低調で金利は半年ぶり高水準

『 <15:05> 国債先物は続落で引け、10年債入札低調で金利は半年ぶり高水準

国債先物中心限月12月限は前営業日比22銭安の152円54銭と続落して取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は一時マイナス0.020%と4月18日以来の高水準を付けた。弱い米景気指標や貿易を巡る不安で株安・円高が進んだが、本格的なリスクオフには至らず、10年債入札が低調な結果になると円債は軟化した。』(上記URL先より、以下同様)

ってなもんでまあ先週前半の金利低下もワケワカランかったですけれども、先週後半から昨日までで先物って連続下げで1円以上下がっているんですよね何やってるんだこの相場。

『こうした中、本日実施された10年債入札は、テールが流れ応札倍率も低下し、低調な結果となった。前日に国債先物が大きく下落し事前調整が進んだこともあり無難予想も少なくなかったが、結果は弱かった。』

てな訳で入札ちゃんは

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20191203.htm
10年利付国債(第356回)の入札結果

6. 価格競争入札について
(1)応募額 5兆6,797億円
(2)募入決定額 1兆7,301億円
(3)募入最低価格 101円24銭 (募入最高利回り)(-0.026%)
(4)募入最低価格における案分比率 95.7891%
(5)募入平均価格 101円40銭 (募入平均利回り)(-0.042%)

ということでして、某ベンダーの出していた市場予想足切りが101円43銭くらいでしたので、毎度おなじみの流れ入札になってしまいましたが、昨日は前場の調整が足りなかったという感じでしたかね、それまで下がっているからこんなもんなのかとは思いましたが、やはり前場に調整して日計りベースでもヘッジがワークした状態で入札を迎えんとアカンでしたかねえ。なお金利がプラスになれば多分話は全然別になると思う。

てな訳で以下俺様備忘用引用メモは続きます。

『中短期債には担保需要のある銀行勢、超長期債にはプラス金利を求める年金や生損保といった、それぞれに固有の需要を持つ投資家層が存在するが、10年債には「他の年限と比べて特有の需要は乏しい」(国内証券)という事情がある。日証協が発表する投資家別売買高をみても、主な買い主体は毎月ばらけている。10年債は金利水準が上がってきたとはいえ、依然としてマイナス圏。日銀の買い入れオペのオファー額も減っている。「相場の地合いが入札に反映しやすいゾーンであることが、今回の低調な入札の背景」(別の国内証券)との見方が多い。』

要は10年金利プラスになればエエのよプラスになれば。

『現物市場で新発債利回りは上昇。2年債は前日比1.5bp上昇のマイナス0.155%、5年債は同2.5bp上昇のマイナス0.135%と、ともに4月以来の高水準。20年債は同2.0bp上昇の0.290%、30年債は同1.5bp上昇の0.440%、40年債は同1.5bp上昇の0.475%となった。』

TRADEWEB
    OFFER  BID 前日比 時間
2年  -0.156 -0.149 0.015 15:04
5年  -0.141 -0.135 0.02 15:13
10年  -0.032 -0.022 0.024 15:11
20年  0.281 0.291 0.014 15:05
30年  0.434 0.444 0.013 15:12
40年  0.468 0.477 0.011 15:14

てな感じのようですが、トランプの今日はこの位にしといたるわ攻撃によってまーた金利が下がってしまうのが実に惜しい(不謹慎)なところで、10年一時(というか2時でしたなガハハハハハ)▲2bpまで来てくれたというのにこの寸止めで反転する辺りが相場様の何とも言えない味わいというものを感じさせてくれますが、この間何気に20年カレントって0.3%に届かない辺りがこれまたもうねとも思います。

でもって今回金利上がっている中で超長期は相変わらずの(金利が)アガランチ会長なのですけれども、中期も割とコケてて5年の▲10という節目も見たかったなあとは思いますが、いずれにせよこの辺の流れって黒田節でマイナス金利深堀を散々煽りまくった後遺症がモロに出ていると思われますので、梯子外された方の恨み骨髄に達するって奴のような気がするんですけど日銀のコミュニケーションポリシーもうちょっと何とかならんのか(元の政策がヘッポコだから説明が継ぎはぎでグダグダ、って最近もどこかで見てる気がするんだが気にしないことにする)とは思いますです、はい。


〇微妙なネタを扱ったスタッフペーパーが出てたのだが中々の難物なので・・・・・・・

https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/19-E-21.html
Discussion Paper Series2019-E-21
Prolonged Low Interest Rates and Banking Stability
Kosuke Aoki, Ko Munakata, Nao Sudo

スタッフペーパーシリーズ(スタッフじゃなくて外部の方が書いているものもあります)の日本語版はこちらになりますが、

http://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps19.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2019年収録分

どう見てもこの英文ペーパーに相当する日本語ペーパーの物件が無い、ということでして、一時よく話題になっておりましたが「日本語で出すとお題が刺激的なので英語が先に出てからしらっと後日日本語版が出るんでネーノ」というネタに今回も該当する(なお日銀に聞いても「何をおっしゃいますかそもそもスタッフペーパーは政策とは関係ないんですからそんな変な事考えませんよ(棒読み)」という答えが返ってくる筈)物件でして、先般題名だけご紹介しましたがそれだけでは勿体ないのでせめてアブストラクトだけでもと。

てなことでまずは再掲になりますがご紹介ページの
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/19-E-21.html
から引用します。

『Banks in developed countries share a common concern that prolonged low nominal interest rates may pose a threat to their business, as the level of nominal interest rates is often positively correlated with bank profits in the data.』

そういう話は10年前にして頂きたかったのですが、結局のところ欧州が幅広くゼロ金利制約どころかマイナス金利政策とかいう頓狂なものを始めて、短期間で終わるショック政策だったら良かったのにそれが第一次大戦もかくありなんという長期塹壕戦になってしまって、ようやく弊害がバカスカ見えてくるようになってから初めてこういうのが堂々と出る(指摘はあれどもこういうスタッフペーパーが出ない訳で)ようになるんですわなというのはちと悲しいが出ないよりは何ぼマシか分からんのでそこは勘弁する。

『It is not well understood, however, how low nominal interest rates impact bank profits and what they imply for banking stability.』

ほうほうそうですかそうですか。

『To address these issues, this study theoretically explores how the level of nominal interest rates affects bank profits and banking stability in the long run by extending a model of bank runs constructed by Gertler and Kiyotaki (American Economic Review, 2015). 』

ということでここでリファーされているペーパーの年代を見ればお察しの通りで欧米のケツに火がついてくれないと中々こういうのの学術的レビューが進んでくれないんですよね、仕方ない面は多々あるにせよ日本なんてそれこそ延々とProlonged Low Interest Ratesなんですけど、どうも海外の方々がそれを見ても他人事感満載でケチャップを買え位の話しかしない訳ですよプンスカ。

・・・・・というのは良いのですが、ここで出てくるrunという単語なんですが、in the long runの方は期間という意味で良いと思うのですが、model of bank runsの方なんですけど、先行研究のペーパー見てないからこっちの本文を泡を吹きながら読むと(本文の24ページ辺りからこのモデルを使った分析の章がある)、どうも経営があじゃぱーになる方の(この先に「a bank run equilibrium」っての出てくる)runっぽいのですが、お願いだから多義に読める言葉をこういうモデルの時に使わないでくれ素人が読むのに困るんですが清滝先生って感じです。

『The model, calibrated to Japan and other developed countries, makes three predictions:』

その3つの推定とは。

『 (1) low interest rates do indeed reduce bank profits by compressing the deposit spread;』

預貸スプレッドを圧縮する、ということで「do indeed」とか言うまでもありませんがみたいなニュアンスなんですかねとか思うのですがこの表現オモロイ。

『 (2) due to the presence of the effective lower bound of the policy rate and a slow recovery of bank net worth after a run, low interest rates bring the economy closer to a state where a bank run equilibrium can exist;』

ゼロ金利制約に引っ掛かる状態が継続して銀行の資産が回復しない状態が続くと銀行の経営があじゃぱー状態になる均衡を近づけるとかそんな話をしているっぽいです本文をヒーコラ読んだところでは。ということで誰かこのペーパーのこのモデルの部分解説キボンヌ(と救援要請をするためにネタにしたのではないかというツッコミになりそうですがその通りですすいませんすいません)。

『(3) although there are quantitative differences across countries, a decline in nominal interest rates does not necessarily bring the economy to a state with a bank run equilibrium on its own, except for in severe cases where the TFP growth rate or the target inflation rate falls below zero.』

ちょwwwwおまwwwwww

えーっと、アタクシの怪しい語学力とまるで無い学で読みますと、「名目金利が低下したからと言ってそれだけで銀行があばばばばーになるような経済状態が招来されるのではないのですが、全要素生産性あるいはインフレーションレート(これ目標インフレって書いてあるのだが目標と現実に差異があったらどうなるねん)がゼロ以下に低下するような深刻なケースの場合はヤバいっすよ」という風に読んだのですが、どう見てもジャパンの事例です本当にありがとうございました・・・・・・と思ってしまいますが、さすがにそこは火消しがあります。

火消しちゃんは本文にあるんですけどね、ということで本文はこちら。

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/19-E-21.pdf
Prolonged Low Interest Rates and Banking Stability
Kosuke Aoki, Ko Munakata, and Nao Sudo
Discussion Paper No. 2019-E-21


『1 Introduction』の章で本文4ページ、PDFファイルだと6枚目になりますが、そこからさっきの3つのポイントの話があって、

『Our ndings are summarized in three points. Firstly, prolonged low nominal interest rates lower bank prots by compressing the deposit spread. 』

とか何とか言いながら話が始まるのですが、ちょっと時間と知能が欠けているのでパスしましてさっきの3番目のポイントの所がその次のページ(なので本文5ページPDFの7枚目)の中段に、

『Thirdly, low nominal interest rates do not necessarily mean that the economy is in a state with a run equilibrium. Indeed, based on our calibration for Japanese economy, neither a low TFP growth rate nor a low target ination rate causes a run on its own when taking a positive value.』(直近2つの引用だけ直上のURL先のペーパー本文から引用)

とありまして、ジャパンの場合も全要素生産性とインフレ率は低いけどプラスだから別に銀行があばばばばーの均衡に近いとかそういうことはございません、という話にはなっておりますのでご安心の程を(^^)。

#という訳で何かやたら難しいんですが無理矢理ネタにして救援要請ということです(超大汗)







2019/12/03

お題「何か金利上がりますなあ(市場メモ)/債券市場サーベイ/FOMC議事要旨からレポ市場関連」

トランプって中南米に付け火するのが趣味のようなのですが中南米って本質的には米国の庭じゃネーノと思う訳で庭に好んで付け火ってのどうなのとは思うんだが・・・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/us-steel-tariff-idJPKBN1Y61S5
2019年12月3日 / 00:50
米、ブラジルとアルゼンチンの鉄鋼・アルミに関税=トランプ氏

『[ワシントン 2日 ロイター] - トランプ米大統領は2日、ブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに直ちに関税を課すと表明した。トランプ大統領は早朝、ツイッターに「ブラジルとアルゼンチンは大規模な通貨切り下げを実施してきた。これは米国の農業部門に良くない。このため、両国から米国に輸出される鉄鋼とアルミニウムに直ちに関税を課す」と投稿した。ただこれ以上の情報は明らかにしなかった。』(上記URL先より)


〇超長期輪番減額しませんでしたが何か金利上がってますな(備忘メモ)

うーんこの。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N28C112
2019年12月2日 / 15:10
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、中国・財政・入札と売り要因重なる

『国債先物中心限月12月限は前営業日比40銭安の152円76銭と続落して取引を終えた。10年最長期国債利回り(長期金利)は同3.5bp上昇のマイナス0.050%。中国、財政、入札とネガティブ要素が重なる中、円債は徐々に下げ幅を広げる展開となった。』(上記URL先より、以下同様)

ということで、なんかここもと妙に動くのですが、まーだいたい米国の10年金利が上がったりすると反応している感もあるのですけれども・・・・・・・・

『11月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は、中国国家統計局発表分に続き、財新/マークイットの発表でも、堅調だった。「米中通商協議の行方は不透明要因だが、景気に関しては、今後も刺激策の効果で持ち直しが続くとの期待が高まっている」(ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏)という。』

って別に中国PMIで一々動かない時もあるのに動くときはこれですよ。

『「あすに10年債入札、5日に30年債入札を控え、今週は超長期ゾーンを中心に需給的に重い」(国内証券)ことも、押し目買いが入りにくい要因になっている。本日実施された日銀の中期・超長期国債対象の買い入れオペでは「残存期間10年超25年以下」が弱かった。』

まあ10年は重そうにしているので今日の入札に向けて水準訂正したいのは分かる。

『経済対策の財政規模が10兆円規模となる可能性が浮上してきたことも、潜在的な売り材料となっている。「前倒し債があるので、カレンダーベースの市中発行額に大きな修正はないとみられるが、世界的に財政拡大局面に入りつつあるので、海外金利の上昇を通じた影響が及ぶ可能性がある」(りそなホールディングスのチーフストラテジスト、梶田伸介氏)という。』

って財政の話で金利上昇とかいつの時代の話だというか、国債発行計画は「どこを減額すれば市場が困らないか」という話をしている中なのにそれで売り材料かよ。

『完全雇用に近い状態での財政拡大に「経済は押し上げるが、インフレなどへの影響が心配だ」(別の国内証券ストラテジスト)との声もあった。』

そんなんで物価が上がってたらとっくの昔に物価上がっているんですが・・・・・・・・・

とまあ何かロイターさんにコメントした方に悪態ついているような感じになってしまっているのは誠に恐縮なのですが(別にそういうつもりではないので申し訳ない)、結局のところ何がネタなのかと言われるとよー分からんので(10年がやたら重そうだから10年入札前の調整というのはあると思うけどそれだけで40銭下げるのはちょっと)40銭も動いたので悪材料が重なるとでも書くしかないのは分かるのですが、一々それってそんなに下げる話でしたっけ感は強いので、まあ何なんですかねえという所で。


しかしまあ何ですな、
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of191202.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,200 2019年12月3日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 3,400 2019年12月3日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000 2019年12月3日
国債買入(残存期間25年超) 300 2019年12月3日

昨日の輪番ちゃんは超長期前半の上限を下げた直後の月初一発目攻撃だったし、昨日は朝っぱらから何か知らんが金利上昇傾向でしたので、ここを先途と超長期輪番減額ぶち込んで来たら面白かった(超不謹慎)とは思うのですが、輪番減額なしでも別に相場水準が戻ることはなく、とは言っても20年カレントとか輪番オファー後ちょっと強くなっていてありゃーって感じだったのではあるのですが、さてはこの前の超長期輪番減額がドンピシャの金利上昇タイミングだったのでまた連発するとそれはそれで目立って色々と言われるとマズいので前回の減額のほとぼりが冷めるまで自粛してるのかとか勝手な妄想に走っておりますがさてどうなんだか。

というただのメモを置いときます、てか米国10年金利って上がってるのか今朝も。

https://jp.reuters.com/markets/bonds
米国債10年 利回り US10YT=RR +1.828 +0.052


〇やったね!市場機能が向上しているよ!!(なお・・・・・・・・)

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1911.pdf
債券市場サーベイ <2019年11月調査>
回答期間:2019年11月5日〜11月11日

以下、『』をつけると見にくくなるので引用部分も『』つけませんが、結果に関する部分は上記URL先から引用しております、よろしくお願いいたします。

・鏡の部分の整合性ェ・・・・・・・・・・・

(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度(注)

機能度判断DI(現状)
前回-38→今回-32

って改善してるやん!!と思ったら3か月前との比較は、

機能度判断DI(3か月前と比べた変化)
前回-15→今回 0

って前回対比で改善していると答えている人がいないのですが何ですこの整合性、という話になるのですが、機能度改善DIの回答項目が、

1. 高い
2. さほど高くない
3. 低い

になっていて、低い→さほど高くないに変わったという事なんでしょうが、そもそも「高い」というのが恒常的に1社だけ回答をしている大変にユニークなお方でいらっしゃいますなあという方がいるだけで、さほど高くないと低いの中での回答なので、改善してないけど低い→さほど高くないにしたのに変化の方は「改善した」にしなかったとかそういう事ですか何だかよく分かりません。


・こっちはちょっとだけ面白かった

(2)債券市場の機能度・流動性に関する各論

@貴行(庫・社)からみたビッド・アスク・スプレッドについてご回答下さい。

ビッド・アスク・スプレッド判断DI(現状)
前回-2→今回-4

ビッド・アスク・スプレッド判断DI(3か月前と比べた変化)
前回-15→今回-10

3か月前よりもスプレッド判断が改善しているのに現状の判断は悪化してるってこれまたナンヤソラという感じですがそれはさておき、

A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。

注文量判断DI(現状)
前回-35→今回-34

注文量判断DI(3か月前と比べた変化)
前回-18→今回-13

ってやっとここで整合性のある回答になっているのは兎も角としまして、スプレッドは拡大したけれども市場参加者の注文量は拡大しているという結果(なお水準)でして、これは


B貴行(庫・社)の取引頻度についてご回答下さい。

取引頻度判断DI(現状)
前回-29→今回-19

取引頻度判断DI(3か月前と比べた変化)
前回 -11→今回10

となっていまして取引増えたので板も増えたんじゃネーノとか、取引増えたら案の定スプレッドは拡大しましたとか、まあ何となくそうかも知れない(ただし現状判断と変化の整合性が妙なのが妙なのですが)というのが並んでいたのでオモシロスという感じ。

まあこの回答時期が上記にありますように、11月の頭ということで、夏の黒田節からの大山鳴動して鼠一匹がただの同義反復フォワードガイダンスという攻撃な上に月初に超長期輪番減額攻撃ということで、まあこの夏から秋にかけては黒田節を真に受けた方々が利下げ待ったなしとかいうコメントが続発してみたり、マイナス深掘りヘッジということでマイナスの深い中期を泣きながら(かどうかは知らんが)ヘッジ買いしてみたりとか、色々とお洒落な動きがあったのを梯子全部外しという大技で返されるという攻撃でしたので、そらまあ取引も増えたしオファービットは拡大するし、となったんでしょうかね、とは言っても相変わらず市場機能の方は低いという人が沢山ですけど。

まあ珍しく味わいがあったので細かく(という程でもないが)鑑賞してみました。


〇ここで唐突に10月FOMC議事要旨ネタを投下

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20191030.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20191030.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
October 29-30, 2019

今更何ですかという所ではあるのですが、レポ市場に関するレビューとかそっちの話が冒頭(先般ネタにした金融政策の枠組みの話の次のセクション)にあるのでそれを備忘代わりに投下するのでした。

『Developments in Financial Markets and Open Market Operations』という小見出しから。

『The manager pro tem first reviewed developments in financial markets over the intermeeting period. Early in the period, market participants focused on signs of weakness in U.S. economic data with some soft data from business surveys viewed as substantiating concerns that global headwinds were spilling over to the U.S. economy. Later in the period, markets responded to news suggesting favorable developments around Brexit and a partial U.S.-China trade deal. On balance, U.S. financial conditions ended the period little changed.』

ここは市場全体の話で、前回FOMC以降前半はリスクオフ、後半はリスクオンで終わってみればそんなに金融環境は変化なかったね、ということで。

『Regarding the outlook for U.S. monetary policy, the Open Market Desk's surveys and market-based indicators pointed to a high likelihood of a 25 basis point cut in the target range at the October meeting. The probability that survey respondents placed on this outcome was broadly similar to the probability of a 25 basis point cut ahead of the July and September meetings.』

連銀デスクの(プライマリーディーラーを中心にした)ヒアリングによれば今回(10月FOMCね)25bpの利下げを高い確率で織り込み済みで、7月9月のFOMC前と状況は同じです。

『Further ahead, the path implied by the medians of survey respondents' modal forecasts for the federal funds rate remained essentially flat after this meeting. Meanwhile, the market-implied path suggested that investors expected around 25 basis points of additional easing by the end of 2020, after the anticipated easing at this meeting.』

確かに〜って感じですが、連銀デスクがヒアリングすると中心的な今回利下げしてから来年は金融政策変更なしの見通しが大勢なのだが、市場の数字は今回利下げしてから来年0.25%利下げを織り込んでいると。

というのは全体の話で以下が短期市場ネタ。

『The manager pro tem next turned to a review of money market developments since early October. On October 11, the Committee announced its decision to maintain reserves at or above the level that prevailed in early September through a program of Treasury bill purchases and repurchase agreement (repo) operations.』

リザーブ水準を9月頭の水準またはそれ以上に維持し、そのためにシステムレポと短期国債買入を活用するというアナウンスを行った10月11日以降は・・・・・・・・・

『After the announcement, the Desk conducted regular operations that offered at least $75 billion in overnight repo funding and between $135 and $170 billion in term funding.』

ONのシステムレポを日々750億ドル以上、タームのシステムレポを1350〜1700億ドル実施したそうな。

『These operations fostered conditions that helped maintain the federal funds rate within the target range through two channels.』

2つのチャネルとは?

『First, they provided funding in repo markets that dampened repo market pressure that would otherwise have passed through to the federal funds market, and second, they increased the supply of reserves in the banking system.』

レポ市場のファンディングニーズによってFF市場からの資金シフトが起きる圧力を下げたことと、超過準備を拡大したことによってFF市場の金利をレンジ内に収めることに効果があったとな。

『In anticipation of another projected sharp decline in reserves and expected rate pressures around October 31, the Desk announced an increase in the size of overnight repos to $120 billion, and an increase in the size of the two term repo operations that crossed the October month-end to $45 billion.』

10月末の大きな資金吸収に備えて10月末跨ぎの資金供給を多めに実施したそうな。

『With respect to purchases of Treasury bills for reserve management purposes, the Desk had purchased more than half of the initial $60 billion monthly amount for October, and propositions at the five operations conducted to date had been strong. Respondents to the Desk surveys expected reserve management purchases of Treasury bills to continue at the same pace for some time. The combination of repo operations and bill purchases lifted reserve levels above those observed in early September.』

でもってビルの買入も合計で600億ドルほど(一発目がその半分以上で10月は合計5回実施)行い、リザーブの水準を9月頭の水準に引き上げましたと。

『The manager pro tem finished by noting that the Federal Reserve Bank of New York would soon release a request for public comment on a plan to publish a series of backward looking Secured Overnight Financing Rate (SOFR) averages and a daily SOFR index to support the transition away from instruments based on LIBOR (London interbank offered rate). Publication of these series was expected to begin in the first half of 2020.』

これは指標金利改革で今後の指標金利となる予定の後決めSOFRの公表に関する話。

『By unanimous vote, the Committee ratified the Desk's domestic transactions over the intermeeting period. There were no intervention operations in foreign currencies for the System's account during the intermeeting period.』

オペレーションに関しては後付けでFOMCの承認を取る建付けになっています。


でもって今後のオプションに関するお話が続く。

『Review of Options for Repo Operations to Support Control of the Federal Funds Rate』という小見出し。

『The staff briefed participants on the recent experience with using repo operations to support control of the federal funds rate and on possibly maintaining a role for repo operations in the monetary policy implementation framework over the longer run.』

今回のレビューと今後の話な。

『Ongoing capacity for repo operations could be viewed as useful in an ample-reserves regime as a way of providing insurance against unexpected stresses in money markets that could drive the federal funds rate outside the Committee's target range over a sustained period.』

システムレポは「ample-reserves regime」においても有効だってそら当たり前だと思うが。

『The staff presented two potential approaches for conducting repo operations if the Committee decided to maintain an ongoing role for such operations.』

でもって今後のオプションとして2つ。

『Under the first approach, the Desk would conduct modestly sized, relatively frequent repo operations designed to provide a high degree of readiness should the need for larger operations arise; under the second approach, the FOMC would establish a standing fixed-rate facility that could serve as an automatic money market stabilizer.8』

もうちょっと少額で頻繁に予見可能な形でシステムレポを行うというのと、固定金利の常設レポファシリティを作るという話。脚注8は『8. The staff briefed the Committee in June 2019 on the possible role of a standing repo facility in the monetary policy implementation framework. 』という話です。

『Assessing these two approaches involved several considerations, including the degree of assurance of control over the federal funds rate, the likelihood that participation in the Federal Reserve's repo operations could become stigmatized, the possibility that the operations could encourage the Federal Reserve's counterparties to take on excessive liquidity risks in their portfolios, and the potential disintermediation of financial transactions currently undertaken by private counterparties.』

プロコン分析の論点色々ありまして、オペレーションに応じるのがスティグマ扱いされないかとか、オペレーションによって流動性供給が過剰になってしまわないかとか、金融仲介機能に対するディスインターミディエーションになる惧れは無いのかとか諸々の話。

『Regular, modestly sized repo operations likely would pose relatively little risk of stigma or moral hazard, but they may provide less assurance of control over the federal funds rate because it might be difficult for the Federal Reserve to anticipate money market pressures and scale up its repo operations accordingly.』

『A standing fixed-rate repo facility would likely provide substantial assurance of control over the federal funds rate, but use of the facility could become stigmatized, particularly if the rate was set at a relatively high level. Conversely, a standing facility with a rate set at a relatively low level could result in larger and more frequent repo operations than would be appropriate. And by effectively standing ready to provide a form of liquidity on an as-needed basis, such a facility could increase the risk that some institutions may take on an undesirably high amount of liquidity risk.』

オペ形式の方がスティグマ問題とかモラルハザードの問題が起きにくい代わりにレートコントロールの点では常設ファシリティに劣るという話ですが、常設ファシリティに関しては金利コントロール機能は強いのですが、その一方で利用者のスティグマ問題や、これによる流動性供給が過大になりやすいリスク、ひいてはその流動性によって市場参加者が流動性ヒャッハーになるリスクなどがありまっせ、と常設ファシリティに厳しめの話をしていて、アタクシ的にはああこれは良かったなと思う(結構米国方面の何とかストは常設ファシリティの話をしていたように思えるのですが、本質的に市場介入になる話なので、常設ファシリティがペナルティ金利で設定されるのでなければ、あまりよくない建付けになるなあと思っていたんですよ)。


『In their comments following the staff presentation, participants emphasized the importance of maintaining reserves at a level consistent with the Committee's choice of an ample-reserves monetary policy implementation framework, in which control over the level of the federal funds rate is exercised primarily through the setting of the Federal Reserve's administered rates and in which active management of the supply of reserves is not required.』

ここからFOMC参加者の議論、当面は大きめの超過準備を持ったままになりそうですな。

『Some participants indicated that, in such an environment, they would have some tolerance for allowing the federal funds rate to vary from day to day and to move occasionally outside its target range, especially in those instances associated with easily identifiable technical events; a couple of participants expressed discomfort with such misses.』

FF金利の需給要因によるブレに関しては、数名はエエンチャウノかと言い、2名はぶれるのはケシカランとのご見解。

『Participants expressed a range of views on the relative merits of the two approaches described by the staff for conducting repo operations.』

常設ファシリティかレギュラーオペかの話。

『Many participants noted that, once an ample supply of reserves is firmly established, there might be little need for a standing repo facility or for frequent repo operations.』

ちょwwwwwwと思ったがまあ要するにこれらのフレームワークはあくまでも保険的な話ですってことですね。

『Some of these participants indicated that a basic principle in implementing an ample-reserves framework is to maintain reserves on an ongoing basis at levels that would obviate the need for open market operations to address pressures in funding markets in all but exceptional circumstances.』

レギュラーオペの賛同者数名でして・・・・・・・

『Many participants remarked, however, that even in an environment with ample reserves, a standing facility could serve as a useful backstop to support control of the federal funds rate in the event of outsized shocks to the system.』

常設ファシリティが支持されるのかよ・・・・・と思いますが、

『Several of these participants also suggested that, if a standing facility were created that allowed banks to monetize a portion of their securities holdings at times of market stress, banks could possibly reduce their demand for reserves in normal times, which could make it feasible for the monetary policy implementation framework to operate with a significantly smaller quantity of reserves than would otherwise be needed.』

『A couple of participants pointed out that establishing a standing facility would be similar to the practice of some other major central banks.』

『A number of participants noted that, before deciding whether to implement a standing repo facility, additional work would be necessary to assess the likely implications of different design choices for a standing repo facility, such as pricing, eligible counterparties, and the set of acceptable collateral.Echoing issues raised at the Committee's June 2019 meeting, various participants commented on the need to carefully evaluate these design choices to guard against the potential for moral hazard, stigma, disintermediation risk, or excessive volatility in the Federal Reserve's balance sheet.』

『A couple of other participants suggested that an approach based on modestly sized, frequent repo operations that could be quickly and substantially ramped up in response to emerging market pressures would mitigate the moral hazard, disintermediation, and stigmatization risks associated with a standing repo facility.』

ちょっと時間の関係で端折っておりますが(汗)、常設ファシリティの方がFOMC参加者の間では分が良さそうではあるのですが、これ設計の仕方による面もあって、先ほど申し上げましたように常設ファシリティの金利をペナルティ金利にしておけばモラルハザード問題とかは回避できるし、市場機能は維持されるのですが、ただそうなると今度はリーマンショックの時のディスカウントウィンドウと同じくスティグマ問題が焦点になるので、まあ難しいよねというか、だったらディスカウントウィンドウでも同じじゃんという事になりますわな、うーんこの。

『Participants made no decisions at this meeting on the longer-run role of repo operations in the ample-reserves regime or on an approach for conducting repo operations over the longer run. They generally agreed that they should continue to monitor the market effects of the Federal Reserve's ongoing repo operations and Treasury bill purchases and that additional analysis of the recent period of money market dislocations or of fluctuations in the Federal Reserve's non-reserve liabilities was warranted. Some participants called for further research on the role that the financial regulatory environment or other factors may have played in the recent dislocations.』

よって今回は継続審議となりましたということです。』







2019/12/02

お題「超長期前半は減額か追認か/投資家懇談会議事要旨鑑賞/その他メモ」

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191201/k10012198161000.html
JDI元幹部が死亡 自殺か 5億7800万円着服したとして解雇
2019年12月1日 19時07分

『会社の調査に対して元幹部はギャンブルに使ったなどと着服を認めたということで、会社は去年12月に懲戒解雇にしたうえで警察に刑事告訴しました。その後、ジャパンディスプレイは、先月27日になって、元幹部から、「着服とは別に、過去の決算で不適切な会計処理を行っていた」との連絡を受けたと発表しました。元幹部から連絡があったのは前日の26日だったとしていて、不適切な会計処理を行った理由について元幹部は、「当時の経営陣から指示があった」としていたということです。』(以上上記URL先より)

・・・・・・・・・・・・・ちょっと待て何だこの展開は。


〇オペ紙の超長期は現状追認なのか減額示唆なのか

月末といえばオペ紙。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191129e.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について

『日本銀行は、長期国債等の買入れについて、弾力的に実施することとしてお り、当面、以下のとおり運営することとしました(2019年12月2日より適 用)。
── 次回公表は2019年12月26日17時を予定。』

年末だけは30日の17時とかいう畜生運用は行わないようになっていますがそれはさておきまして今回ですけれども・・・・・・・・・・・

0−1年:100-1000、月2回(変更なし)
1−3年:3000-5500、月4回(変更なし)
3−5年:2000-4500、月4回(変更なし)
5−10年:2000-5000、月4回(変更なし)
10−25年:500-1500、月3回(500-2000から上限を下方修正)
25−40年:0-500、月3回(変更なし)
物価連動国債:300、月2回(変更なし)
変動利付国債:1000、隔月1回(変更なし)

前回は物価連動国債を増額して遂にBEIに直接働きかける政策キタコレ(なおそれでBEIが上がったかというと・・・・・・)という大技のあと、黒田節の勢いがMPM後の会見でも続く中で月初一発目の超長期前半を減額するというプレイに出てきました(1200→1000)のですが、今回はオペ紙で上限が減額になりやがりました。

・・・・・・のですが、当初の1200ってのもレンジの中心(1250)だったので、この上限変更が現状追認なのか今月の減額を予告しているのかが良く分からんのですが、まあそもそも先月がレンジの中心にあるのに減額しているんですから別にそんなの委細構わず減額するでしょうな、うんうん。

まーいずれにせよ超長期の前半が減額になるかどうかという話はどうせ今日超長期輪番のオファーがありますし、最近のパターンだと月初に減額してくるというのの他に金利が上がりそうな時というのがありますので、一応今月減らすなら今日でネーノとは思いますけど、それ以外で金利が上がりそうな時があればその時かもとは思いますが端から減らす気満々だったら今日でしょ今日。

というのはですね、国債発行計画が出た直後に輪番の上げ下げをすると「国債発行計画に対応した輪番の調整」みたいに言われてしまいますが、それを言われるのは日銀としてはマズーな筈で、これまでも(平均残存年限の縛りがある時代の話ですが)国債の発行平均年限が長くなったのだから輪番の平均残存も長期化した方が良いのではないでしょうかみたいなツッコミを受けると物凄い勢いで否定するというのが日銀の仕様で、これはまあ財政従属チックな話になるのはイクナイという思想に基づくものなので言いたいことは分かる(のだが当初のニバイニバイの時に7年にしたの国債の平均発行年限がとか説明してたじゃんとか思うのだがまあ終わった話なので別に気にしないことにする)という事でして、そうなりますと国債発行計画が出たところで輪番の上げ下げってあんまりやらんのとチャイマスカ(発行計画が全部変更なし位で出てくれば別かも知れんが)と思いました(個人の感想です)のでやるなら今日かな〜とか。

減額余地があんまりない(そもそも1000しかないんですから)のでそんなにホイホイと減らすのでしょうかいや減らさないのではというのもありますけれども、まあ中央銀行の市場介入はインターバンクの資金需給調整だけやっていて下さい派としてはドンドン減らして良しというところではございますな、うんうん。


〇国債投資家懇談会の方も軽く鑑賞

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_jgbi/proceedings/outline/191126.html
国債投資家懇談会(第81回)議事要旨
日時 令和元年11月26日(火)13:30〜14:50
場所 財務省 第3特別会議室

これちょっとだけ味わいがあったのは、PD懇は翌朝とんでもなく素早く出てきたのですが、投資家懇の方は少々お時間が掛かったということで、まるめて表記するのが難しかったのか決裁権限者が出張にでも行ってたのか(^^)。


・業態別(といっても銀行と生保ですか)ご意見でも鑑賞&10年減額の話があまりないのが味わいある

『○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。』の所ですがまともにネタにしているととんでもない引用大会になってしまいますので軽く鑑賞という感じで。

まず銀行。

『・最近の国債市場については、マイナス金利が深くなると同時に、低利のドル負債を抱える主体の価格影響力が高まったことにより、海外金利の影響を受けやすくなったと感じている。米国債の逆イールドが生じたことによりイールドカーブのフラット化の圧力がかなり高まった状況と比較すると、足元、米国債のイールドカーブも相応な形状になってきたので、こうした環境下では、政策金利の変更がなければ、一定程度落ち着いてくると思っている。』

イールドカーブインバートはリセッション入りだから金利低下だヒャッハーとかいう絵に描いたようなバンドワゴン効果相場は何だったのか。

『今後の運用見通しについては、外貨需要がある銀行においては、担保需要の観点から、一定程度の国債保有が継続されると考えている。また、イールドカーブが運用に資する形状であれば、プラス金利のゾーンには一定程度の需要はあると思うので、当社はそれほど保有できるわけではないが、規制等を踏まえながら、投資していくことを考えている。』

なるほど。

『来年度国債発行計画については、当局からの説明資料の国債管理政策の意見等にもあるが、海外の中央銀行をはじめ、海外投資家が5年債を買っていることで、それ自体が邦銀の外貨調達にかなり役立っていると考えている。海外投資家がドルを使って円を運用すると、国内投資家にとって円を使ってドルを調達することになっている。海外投資家に日本国債を買ってもらうことによって調達サイドにも役立っているので、海外の中央銀行をはじめとする海外投資家が購入可能なゾーンについては、可能であれば、需給がひっ迫しないように配慮してほしい。』

なるほどなるほど。

『・足元、残存10年以下の金利がマイナス圏で推移している中で、イールドハンティングの動きから超長期ゾーンへの需要が集まっていると感じる。日銀買入オペの減額等により、一定程度改善されてきてはいるものの、同ゾーンの金利や流動性が低く、イールドカーブがフラット化する状況が続いているのではないか。』

というこちらは生保さんと見られるお話。

『一方で、生保は経済価値ベースの資本規制の導入に向けた議論が始まる中で、社内の内部管理、ALM上の観点から、超長期債に対する投資ニーズが継続的に強い状況にある。足元の低金利状況において、国債だけでなく、ヘッジ外債やクレジットへの投資も組み合わせて行っているが、国債の金利が上がってくれば、このようなところも変わってくるのではないかと思っている。』

そらそうよ。

『来年度国債発行計画については、前倒債を減らす目的で発行額全体を減らしていく方向もあるだろうが、20年債など超長期債に関しては、できれば現状維持あるいは増額をしてほしい。特に、報道にもあった40年債については、流動性が低い中で、イールドカーブ全体のフラット化誘発要因にもなることもあるため、是非とも増額を検討してほしい。』

40年債こちらも大人気な訳ですが、そういや50年債云々のニュースってあれロイターさんでも実は英文のニュースしか見当たらず日本語のニュースが出ていない時点でお察しという感じですが、こちらの方の指摘だけではなく、多くの方が指摘しているように40年国債の市場ちゃん自体がまだ未整備な状況な訳ですから、その時点で50年が出るとか思う方がもう少し勉強しましょうモードではあります。

でまあこの40年ちゃんですが市場整備のためにはもうちょっと発行残高があった方が良いでしょうなあとは思うのですが、それはそれとしましてもじゃあ40年ちゃん今大人気だからと言って恒常的に大々的にニーズがあるのかと言いますとこれがまたというのもあったりしまして、と申しますのはまあ財務省ちゃんが市場の意見を聞いて回るの今に始まった話じゃなくてかなり前からやっているのですが、「金利が上がればニーズがある」というのは曲者の意見だったりしまして、いざ金利が上がってみるとその時になって「もっと金利が上がるかもしれない」とか「既存のポジションがやられておりまして」とか何とか言い出して押し目と言い難い雰囲気でマジっぽい金利上昇が起きると急に買いの手が引っ込んでしまって(そらそうなんだが)そのタイミングが増額の後だったりするとナンジャソラみたいな話になってしまう、というのを傍から見ていて思ったという記憶があったり無かったりする訳ですよ人間長生きしますと。

・・・・・と話が逸れてしまいましたがこちらの方のお話の続きを。

『一方、減額が必要という場合には、日銀買入オペが減額されていることの見合いから、流動性供給入札の減額を検討してほしい。対象ゾーンごとの発行額に関しては、四半期ごとに、市場動向や市場参加者の意見を踏まえて決定されると理解しているが、現段階では、チーペスト銘柄の需給は日本銀行の国債補完供給によって緩和しているため、残存5-15.5年に減額余地があるのではないかと考えている。他方、流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンに関しては、先ほど述べた理由から現状維持が望ましい。』

流動性供給入札に関してはSLFの変更が効きましたな。意見皆さんご一緒。

『昨日の国債市場特別参加者会合では、10年債に減額余地があるのではないかとの意見があったようだが、このゾーンはプラス金利になった場合に需要が見込めることや、流動性供給入札を減額するということであれば、そのゾーンとのバランスもあるため、更に減額が必要であれば、2年債や5年債も含めて減額を検討するべきではないかと思っている。』

ということでして、PD懇では10年減額の大合唱だったのに対しまして、投資家懇では10年減額の声があまり聞かれず、金利がプラスになったらニーズ出るから別に減らすことないんじゃないですかねえ的な方が圧勝という感じになっているのが実に味わいが深いなあと今回はここには感心(というか何というか)しましたですよ。

でもって中短期の減額余地、という(たぶん)生保さんと思われる見解と、さっきの海外のJGBニーズがあって中短期のJGB需給が逼迫するとベーシススワップに跳ねてしまうから中短期も金利が過度に下がらんように、という話と思われる(たぶん)銀行さんと思われる見解と、どっちも言いたいことは分かるんですが、こうやって見解の多様性が出ているのでこれはこれで味わいがあるのですが、結局のところそのへんの業態内でのお家の事情ちゃんというのは揃ってしまっていて、しかも相場観もへったくれも無いようなこの政策環境の中ですと、それをアグリゲートしてみれば市場のニーズが全部揃ってしまっているので、全体のニーズが見れる(お家の事情が見れるとは言っていない)PDの所に来ると市場のニーズが全部揃っているように見えてしまい、懇談会で出てくる見解が一致してしまうという事になるんですかねえ、と小学生並みの感想で恐縮ですが。


・多少違った見解もあってオモロイので鑑賞用と備忘用にネタにしておく

こんなのがありました、って感じですが。

『・2014年10月の日本銀行による大規模金融緩和の拡大以降、日本国債から円建外債へのシフトがかなり大きな規模で起きた。その動きがこの半年〜1年くらいでようやく止まり、日本国債の投資額は増えも減りもしないような状況になっているのが今の環境かと思う。』

ほほう。

『当社は10兆円強の日本国債の保有残高があるが、インデックスで運用しているため、基本的には発行量に応じて保有している。顧客の入出金やポートフォリオ調整に応じて、大体コンスタントに毎週、残存20年超の超長期ゾーンで数百億円、残存10年以下のゾーンで数千億円程度の売買を行っている。日本国債のイールドカーブが立った方が、海外の国債に対して相対的に魅力度が高く、顧客が入ってきやすい環境になるため、イールドカーブが立つ形を考えると、来年度国債発行計画においては、増やすのであれば基本的には40年債がよいということになると思う。』

とここまでは同じ話ですが、

『ただし、毎週売買している感覚からすると、20年債に比べて30年債や40年債はまだ流動性に少し不安があるというのが正直な印象であり、可能であればもう1〜2年程度、今のような環境で温めてから増額でもよいのではないかと考えている。』

なるほどこれは興味深い。

『流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンについては、当初はショートカバー銘柄の供給ということで、市場の安定化に非常に効果があったと思っているが、最近のマーケットの動きを見ると、入札日に投機的な動きが見られ出している印象がある。超長期ゾーンへの投資を行う観点からは、あまりに荒い値動きをされると困る。イールドカーブが立っていることと、ボラティリティが低いことが投資魅力度につながるため、その意味では、減額するのであれば流動性供給入札の残存15.5年超ゾーンがよいのではないかと考えている。』

ということで割と異彩を放つ意見を後半に持ってきているので、もし通しで見るなら最初の3つくらい読んだ後後半に飛んだ方がオモロイです。

『・残存10年以下のイールドカーブを見ると、若干改善したとはいえ、残存2〜8年はほぼフラットな状況が続いている。また、残存10年あたりは少し割安に放置されている。これは、一つには日銀買入オペが減額されてきた影響で、例えば10年351回債、残存8年半あたりまでの日本銀行の保有残高は、流動性供給入札で供給されたとはいえ80%ほどである一方、カレント債の銘柄はまだリオープン2回目で20%ほど、その手前2銘柄は50%ほどと、銘柄によってかなり保有残高に差が出てきている状況である。』

まあしかしそう考えるとこの金融政策、まともに外しに行くときには地獄を見そうですな(だからこそ徐々に買入を減らしていかないとエライことになるから減らしているというのはあるんでしょうが)。

『流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンは、イールドカーブの形状だけ見ていると減額余地があるようには見えない。特に、入札結果を見ても、残存6〜7年あたりは相変わらずしっかりとした需要が見えているため、今ここで減額して、スクイーズが起きないとは言えないのではないかと感じている。従って、流動性供給入札の発行減額は慎重にしてはどうかと思っている。』

これは異彩を放っていますが確かにこの理屈の言いたいことは分かる。

『一方で、30年債、40年債といったプラスの金利のゾーンにはどうしても投資家としての需要があり、現状、残存10年以下のところは国債を担保にしたファンディングでも逆ザヤの状況になっており、投資としては見合わず、ずっと保有していると損が確定することから、どうしてもプラス金利の債券に投資せざるを得ない。そのため、30年債、40年債の減額は投資家としては厳しい。』

こっちはまあ普通ですけどね。


・これは面白かった

最後まで飛びますけど。

『・生保の資本規制との関係については、短期的な移行期だけの特殊な需要と、移行期が過ぎた後の安定した時期の需要をうまく見極めて、一時的に需要が高まってもその後どうなるかということを含めて、長期ゾーンや超長期ゾーンをどうするか、慎重に考える必要があるだろう。』

これはその通りで、PD懇よりは投資家懇の方が足の長い話をしていますけれども、そうは言いましても規制対応に関する話(飛ばしましたが生保さんの規制対応に関するコメントと合わせて超長期へのニーズが云々という話は幾つか出ています)とかに関してもどうしても現状でどう対応するのかという話になりますし、保有国債が償還されて向こう2年とかそのくらいだと償還されるのがハイクーポン(という程でもないのだが今になってみればハイクーポン)でさてポートの平均利回りどうなりますねん的な話になってしまうのはシャーナイナイ。でもってそらまあ運用側は自分の目先数年の事情見てればよいのですが、ゴーイングコンサーンとして発行する方としてはそれだけでは視点が足りないという話になるのでこういう指摘になるのは正しいですな。

『また、前倒債の水準を適正化することは大変重要だと思うが、一方で、自然災害等が多発している中で、補正予算等において、当初予算では予期しなかった支出があることから、市場の需要に応じて国債を安定的に発行していくことが重要である。』

なるほど。

『足元では直接的な影響はないが、イールドカーブが改善し、物価が上がってきたときに、英国や米国と比較すると、日本の税制は、日本の物価連動債に対し、少々よくない建付けになっており、市場を少しかく乱するような潜在的な問題を抱えていると考えている。今後、物価が上がり、物価連動債に対する需要が出てきたときには、市場の声を聞きながら、この問題への対応を検討する必要がある。』

ですよねー。物国に関しては税制が鬼門なので省内で調整してくださいお願いします(難しいですかそうですか)。



〇指標金利改革取りまとめキタコレ(のメモだけ)

キター!!
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2019/rel191129f.htm/
「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議」の取りまとめ結果の公表について(日本円金利指標に関する検討委員会)
2019年11月29日
日本銀行金融市場局

ということでご紹介ページちゃんを鑑賞。

『「日本円金利指標に関する検討委員会」(事務局:日本銀行)は、本日、「「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議」取りまとめ報告書」(全文 [PDF 751KB] 、ポイント [PDF 537KB] )を公表しましたので、お知らせします。』

はい。

『「金利指標改革」は、2014年以降、金融安定理事会(FSB)の提言をもとに、金融商品・取引の性質に応じた適切な金利指標の使い分けの実現を目的に進められてきました。しかしながら、LIBORが2021年末をもって恒久的に公表停止されるリスクが高まっていることから、最近では、LIBORの公表停止に備えた対応を中心に検討が進められています。』

うむ。

『こうしたなか、「日本円金利指標に関する検討委員会」では、これまでの議論の結果を整理したうえで、円金利指標の今後のあり方に関する意見を国内外の幅広い関係者から募集するため、「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議」 [PDF 884KB] を公表し、2019年7月2日から9月30日まで意見を募集しました。

市中協議には、金融機関・機関投資家・事業法人等、幅広い業種から意見が寄せられました。本報告書は、これらの意見をもとに、市中協議の結果を取りまとめたものです。関連資料を含む詳細につきましては、「日本円金利指標に関する検討委員会」 をご覧ください。』


てな訳で

全文
http://www.boj.or.jp/paym/market/jpy_cmte/data/cmt191129b.pdf

要約
http://www.boj.or.jp/paym/market/jpy_cmte/data/cmt191129a.pdf

となっているのですが、まだざっとしか読めていないので何なのですが、ターム物RFRを使うって結論になったのは分かるんですが、そもそもOISとかの市場がアレな中でそれを参照するターム物RFRってのも何かアレっぽくなりそうで、後決めTONARの累計値で何でアカンかったのかというのが結局のところ慣れの問題とかなのかねとか思うのですが、そもそもターム物金利というのが短国3M以外に現実のトレーダブルレートとして汎用性がなさそうに思えるので、だったら一番頑健性の高い(何ぼ何でも翌日物取引は無くならんじゃろうし取引高だって沢山あるじゃろ、という文脈で)のにガラッと切り替える、ってのはやっぱり難しいのかなあとか勝手な愚感想。

まあ暫定的にはTIBORで代替って感じになるんですかよくわかりません(読み込みが足りん)。