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2021/08/31

お題「ジャクソンホールの続きでドナルドコーン先生の講演を拝読(金融不均衡警戒話)」

あっそう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210830/k10013232351000.html
千葉県 東京パラリンピックの「学校連携観戦」中止を決定
2021年8月30日 18時18分

記事にもあるけど、当初は「教育的意義が高いんだから感染対策徹底して実施する」て威勢よく言ってたんだし、今回の事案って教諭のコロナ陽性の可能性に対する考慮がザルだったという対策の不備なんだから、再発防止措置を取って継続するもんかと思いましたが(棒読み)、教育的意義とはその程度のもんだったんですかねえ(超棒読み)。


〇ジャクソンホールあれこれ:ドナルド・コーンが金融不均衡警戒をぶっこむとな

そうなのか・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/ny-stx-us-idJPL4N2Q13TG?il=0
2021年8月31日5:20 午前
米国株式市場=S&Pとナスダック最高値、FRB議長のハト派姿勢受け

あのジャクソンホールを捕まえてハト派というのはどういう解釈になっているんだと思うのですが、パウエルの「物価上昇がテンポラリーの理由」だってあれ2番目の「急激に上昇した品目が落ち着いてきた」以外はインフレ上振れや持続化警戒の「注意が必要」を最後に必ず入れてるんですけど、と思うのだが市場の反応を見てハト派って言い出して、その講釈を受けてバンドワゴン効果みたいになっている気がします。(個人の感想です)

でまあそうやってハト派ヒャッハーしている中恐縮ですが、ジャク穴ちゃんでは昨日申し上げました通り、ブラインダー御大とコーン御大が登場しておられた訳ですが、

ジャクソンホール2021のお品書き
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/macroeconomic-policy-in-an-uneven-economy/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Macroeconomic Policy in an Uneven Economy
FRIDAY, AUGUST 27, 2021
9:00 a.m. , US/Central
The Federal Reserve Bank of Kansas City hosts dozens of central bankers, policymakers, academics and economists at its annual economic policy symposium.

ブラインダーさん登場の個所は

11:00 a.m.
The Interaction of Fiscal and Monetary Policy
Panelists:

Alan Blinder | PDFPresentation
Professor
Princeton University

Gita Gopinath | PDFPresentation
Economic Counsellor and Director of the Research Department
International Monetary Fund

Eric Leeper | PDFPresentation
Professor
University of Virginia

ってことで財政政策と金融政策の相互作用って話なのですが、ブラインダーさんのプレゼンを見ると、

https://www.kansascityfed.org/documents/8329/A5_matrix_Blinder.pdf

・・・・・・ちょwwww

ということでパネルの内容はIMFのゴピナス(と読むのか?)さんとヴァージニア大学のリーパー先生のプレゼンでも読むしか無いので一旦パスいたしまして、机上の空論大嫌いの我らがドン・コーンが何をゆうとったのか、というのがこちらになります。

1:00 p.m.
Remarks
Speaker:

Donald Kohn | PDFRemarks
Senior Fellow
Brookings Institution

何がお洒落って他の人たちは講演なりパネルなりのお題がちゃんと載っている(最初のジョージ総裁とパウエル議長のリマークは「オープニングリマーク」になっていて、あと「ジェネラルディスカッション」が何回か挟まれてますそれ以外ね)のですが、何故かこのドン・コーンのだけ「講演」とだけなっているのですが、何でこの講演だけお題が書いていないのかは講演を見れば一発で判明します。「Remarks」ってあるところがハイパーリンクになっています。

https://www.kansascityfed.org/documents/8333/Jackson_Hole-Kohn.pdf
Building a More Stable Financial System: Unfinished Business
Remarks by Donald Kohn
Robert V Roosa Chair in International Economics, Brookings
At the Federal Reserve Bank of Kansas City symposium
August 27, 2021

ということで、なんかおっちゃんのお題講演のテーマと違くね?という感じですが、講演の前置きからもうセクシーな内容がぶっこまれるのでありまする。


・金融安定化のお話なんですけど・・・・・・・・・

『Twice in this still-young century central banks have had to take steps, unprecedented in size and scope, to limit the economic fallout from financial instability. While we can’t expect a financial system to withstand an overnight shut down of the global economy like we experienced in March 2020 without support from central banks and fiscal authorities, the financial market turmoil at that time highlighted vulnerabilities that were visible well beforehand.』

ということで、今般のパンデミック対応で金融安定のために大規模なサポートをしていますが、サポートが無い限りは金融システムのグローバルなシャットダウンみたいなのが起きるちゅうことやね、と仰せで。

『The system is stronger than it was going into the Global Financial Crisis (GFC), but much remains to be done, especially in nonbank finance.』

リーマンショック以降の各種対策強化によって金融システムはより頑健になりましたが、まだ行うべきことは残っており、特にノンバンクのファイナンス分野にそれが多い、とのお告げ。

『I’m going to reflect on some of the actions that need to be taken, drawing on the recent recommendations of a Task Force on Financial Stability in the U.S. that I co-chaired, and on my experience as an external member of the Financial Policy Committee at the Bank of England.1』

コーンさんって米国金融安定化タスクフォースの議長と、BOEの金融安定会議の外部メンバーなんですね、ということですが、では何の話をおっぱじめるかというのの一発目にぶっこんでいるのがこれ。

『To preview, here are the main points I plan to make.』ということですが、その1番目が・・・・・・

『1. Dealing with risks to financial stability is urgent.』

金融安定に対するリスクに対応するのは喫緊の課題である、と来まして、

『If the economic and financial situation evolves as seems to be expected in financial markets, credit should flow, and financial markets will continue to serve the needs of the economy.』

と、ここまでは良いとしてその次、

『But the current situation is replete with fat tails?unusually large risks of the unexpected which, if they come to pass, could result in the financial system amplifying shocks, putting the economy at risk. Shoring up our defenses against financial instability can’t run on Federal Reserve or, even worse, FSOC time where near endless analysis and consensus building delay needed action for years.』

今の状況はファットテイルに十分な状況であるということで、金融不均衡が積みあがっている、というお話をぶっこんで来るのでありました。でもって2番から4番までの話があるんですが、そこをいったんすっ飛ばしまして、エグゼクティブサマリー部分の結論を見ますとこう書いてあります。

『I will not be directly addressing the unevenness issue that is the subject of this year’s Jackson Hole symposium.』

自分でも場違いのテーマをぶっこんでいるのは自覚しているようで。

『We learned during the Global Financial Crisis in 2007-09 that addressing wealth inequities by allowing leverage and maturity transformation to build up or encouraging easier lending criteria are not sustainable and can be counterproductive.』

リーマンショックからの教訓として、レバレッジや満期変換の積み上がりや融資基準がガバガバになるような事を許容することによって、資産の不均衡な拡大が起きるという現象は、持続不可能であり、最終的には非生産的な結果となる、ということを得ました。

『Jay Powell’s answer to a related question at the last press conference was spot on:』

と、前回のパウエル会見での議長の発言を引用してきまして、

『We need strong and resilient financial systems that can serve everyone through the cycle; this is especially in the interest of low- and moderate- income people, who could well bear the brunt of the recession were financial systems to prove unstable. Tools other than capital or liquidity relief are required to address financial disparities and inequities. 2』

頑健な金融システムが景気サイクルのどの時点でも必要であり、特に中低所得者に対してそれは重要です。とかいうのを引っ張り出してきて、この1番のお話になるのでした。


・コーン先生徐々にトーンアップするの巻を鑑賞しましょう

『Urgency』という小見出しになります。

『I see considerable urgency for getting on with the task of making the financial system more resilient to unexpected developments. At the last FOMC the Board staff characterized financial vulnerabilities as “notable”, reflecting some asset valuations, leverage in corners of the financial system, and persistent structural issues. 3』

ということで、金融不均衡問題ですが、金融不均衡が“notable”である、と最近のFOMCでスタッフが指摘しておりますように、一部の資産価格、金融システム全体に係るレバレッジ、構造的に解決されていない問題(というのはさっき出てきたノンバンクとかの話)などがありまっせ、と来やがりまして、

『Moreover, these vulnerabilities have arisen in the context of truly unprecedented circumstances, making it difficult, if not impossible, for policymakers or market participants to predict the future with confidence.』

更に、真に前例のない現在の環境において、これらの金融システムに対する脆弱性は高まってきており、政策当局及び金融市場にとって脆弱性への対処が困難になってくるでしょう、とか何とか仰せです。

『There’s the virus of course and the public and private response to its evolution. In addition, fiscal policies are raising Federal debt-to-income to record peacetime levels and a new monetary policy framework has yet to play out in practice.』

もちろん感染症対応というのがあって、それに対応した政策ではあるものの、財政政策も大盤振る舞いによって連邦政府の債務レシオは戦争している時以外でのレコード出ベルになっており、あたらしい金融政策のフレームワークも未だに実行されている(大緩和が続いてるってことけえのう)。

『Yet, market participants appear to have priced in very low interest rates for a very long time even as the economy recovers and, judging from risk spreads and equity prices, are quite confident that higher debt levels can be serviced and sustained?even though a disproportionate increase in private debt has been among lower-rated business borrowers.4 』

益々ドン・コーン先生威勢良くなるの巻キタコレ!

金融市場の参加者は、経済が回復しているにも関わらず超低金利政策が長期化する、という期待からリスクプレミアムや株価などをプライシングしており、さらに、民間の負債が既に信用力の低い企業などの間でも不均衡な拡大を示しているという現状となっているのにも関わらず、高水準の負債レシオも持続可能と見なしているように見えます。

とかぶっこむぶっこむ。

『Some of those vulnerabilities arise from the effects of the extended period of low rates on borrower and lender behavior. In the absence of robust macroprudential tools, monetary policy could be forced to act to contain these heightened risks, at considerable loss of economic output.』

とは言いましても、さすがにだからバブル退治の利上げしろとまではぶっこんできてませんで、頑健なマクロプルーデンシャルツールを活用することによって、いまここに高まっているリスクに対応しておかないと、経済不均衡対応の金融政策を実行するという、その後の経済にとって極めて宜しくない結果を招く対応を強いられることになる、と説明しております。

とは言いましても、要するにそれって「少なくともテーパリングはちゃっちゃとやらんかい!」とケツを叩くの巻という話をしている訳でして、絶賛超越大緩和政策を、もう少し穏当な緩和政策にしておかないと、金融不均衡は更に拡大して、結局はバブル崩壊からのあばばばばーになりまっせ、という話をしているので案の定ドナルドコーン先生はドナルドコーン先生でした、というお話なのでございますな、うんうん。

『In addition, the nearness of the ELB raises the cost of economic weakness arising from instabilities in the financial system because it constrains the ability of the central bank to cushion the effects by easing policy5』

政策金利が下限制約に近い時は、追加緩和余地が限られることから、金融システム不安定化に対処するコストも大きくなります(要は利下げ以外の緩和をしないといけなくなるってことですな)。

『And, given government debt levels, fiscal policymakers may perceive that their scope to respond to a financial meltdown also is limited.』

更に、今の連邦政府の債務レベルが高い事によって、財政当局の金融システム不安定化対応の能力も限られます。

『Potential constraints on fiscal and monetary policy easing in a future financial stress event bolster the case for making extra sure the financial system is resilient today.』

このような制約があるので、今金融不均衡が盛大に拡大するのは極めて良くない、という話で締めております。


でもって時間の関係上項番2〜4をパスしてしまいますと、ちょっと恣意的な切り取りっぽくなってしまいますので本当はパスしない方が良いのですが例によって時間が無いので続きは明日にでも行いますが、コーンさんは「だから利上げしろ」とかそういう話まで話を飛躍させている訳ではなくて、金融安定化のためにプルーデンスのツールを使うとか、ノンバンクに対する規制が甘いのでその辺を強化しまよしょうね、というような話をこの先の方では行ってはいるのですが、ただ、現状が「金融不均衡が積みあがっており、このまま不均衡拡大を放置した場合、今の金融財政政策の状況では問題が顕在化してバブル崩壊が起きた時に対処が困難になる」って話をしているのですから、そこから必然的に「超越大緩和政策の程度を見直すべき」という話になってくるとしか思えませんな。

ということで続きは明日なのですが、コーンを講演にお招きした時点でだいたいこの手の話がぶっこまれるのは自明、でまあカンサスシティ連銀は伝統的にタカ派系だから、カンサスシティ連銀のシンポジウムだけにそういうバイアスは掛かっているんでしょうけれども、それにしてもジャクソンホールでこれをぶっこみにいかせる、というのは従来の緩和緩和の世界からは違いますよねー、とアタクシは思うので、パウエル講演がハト派的ってのもナンジャソラ、となってしまうのでありまする。





2021/08/30

お題「ジャクソンホールは正常化への方向性は明確にしめしたしインフレ警戒も見せましたな」

パラ行ったから感染した訳でもないだろうに、と思ったら斜め上の事情だった。
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/825715
【速報】パラ学校観戦、引率の教員感染 生徒ら150人検査へ 千葉市、観戦は継続の方針
2021年8月29日 20:30 | 無料公開

『市教委によると、感染が判明したのは30代〜50代の男女教諭。23日に50代女性に発熱の症状が出たのを皮切りに28日までに体調不良が相次ぎ、26〜29日に陽性が判明した。感染経路やクラスター(感染者集団)に該当するかは市保健所が調査中。』(上記URL先より、以下同様)

ふむふむ。

『6人のうち40代と50代の男性教諭が25日の幕張メッセでのパラ観戦で1年生を引率。40代教諭は27日、50代教諭は28日にそれぞれ発症した。』

『同校が発熱した教諭の確認後にパラ観戦を行ったことについて、市教委は「観戦を見直す際の指針は特になかった」と釈明。』

引率した先生が25日の時点で体調が悪かったかどうかがこの記事だと良く分からん(まあこの市教委の言い草だと実は体調不良でも隠蔽されてそうだが)のだが、体調不良が相次いでいるのにそのままスルーでイベント実行って千葉市教育委員会はテロでもしたいんでしょうかねえ。


〇ジャクソンホールあれこれ:式次第を見た時点で正常化へのやる気を感じました(マジで)

ジャクソンホールシンポジウムですが、だいたいここからリンクをたどって行けば必要な情報に到着できるので、アタクシはここをブックマークしております。

https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/
Jackson Hole Economic Symposium

そこの右肩に「今年のアジェンダをここでみれまっせ」というのがありますが、そこをポチっとなとしますと、金曜の昼前(日本時間の)になって更新されましたが、今回の式次第が出まして、今見るとその式次第にリンクがあって、講演原稿だったりパネルで使った紙芝居だったりが出て来るという仕様になっております。

https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/macroeconomic-policy-in-an-uneven-economy/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Macroeconomic Policy in an Uneven Economy
FRIDAY, AUGUST 27, 2021
9:00 a.m. , US/Central
The Federal Reserve Bank of Kansas City hosts dozens of central bankers, policymakers, academics and economists at its annual economic policy symposium.

これまでは3日間(と言っても初日は夜に開会の辞があるだけなので、そのあとは飲み会って感じなのでしょうけれども)だったのが、前回のオンラインジャクソンホールで2日制になりまして、と思ったら今回が1日制であるのは金曜の駄文でも申し上げておりましたが、金曜の昼前に式次第マダーとピコピコしてたら式次第が出て参りまして、それを見たアタクシ「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」状態でしたよ(マジです)。

『Materials for the symposium, during which participants discuss economic issues, implications and policy options, will be posted as they are available. All times listed below are in the Central Time Zone.

Federal Reserve Chairman Jerome Powell’s remarks will be streamed at External Linkwww.YouTube.com/KansasCityFed. A printable version of this year's agenda is available PDFhere. Learn more about the theme of this year's event here. To learn about the symposium's history read External LinkIn Late August.』

ってのは日本時間金曜の朝の時点では出てたのですが、式次第をみましたらこんな構成。

『Agenda

Aug. 27, 2021
9:00 a.m. - 12:00 p.m.
Morning Session
Chair:Janice Eberly
Professor Northwestern University

9:00 a.m.
Welcome and Opening Remarks externalpresentation
Speakers: Esther L. George
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Kansas City

Jerome H. Powell | External LinkRemarks
Chair
Board of Governors of the Federal Reserve System』

ということでパウエルさんのご案内の挨拶は朝っぱらから。これお品書きを全部引用しているとやたらと
縦にダンダラと長くなるので途中割愛しますが、アタクシがキタ━━━━(゚∀゚)━━━━となったのは
この2か所でございます。

『10:40 a.m.
General Discussion

11:00 a.m.
The Interaction of Fiscal and Monetary Policy

Panelists:
Alan Blinder | PDFPresentation
Professor
Princeton University

Gita Gopinath | PDFPresentation
Economic Counsellor and Director of the Research Department
International Monetary Fund

Eric Leeper | PDFPresentation
Professor
University of Virginia』

アラン・ブラインダー!!!!

『1:00 p.m.
Remarks
Speaker:
Donald Kohn | PDFRemarks
Senior Fellow
Brookings Institution』

ドン・コーン!!!!!!!!!!

という事でございましてですね、ブラインダーとコーンを呼んでる時点でどこからどう見ても高圧経済バンザイ方向の話が出る訳が無いのであって、これは金融緩和を牛の涎の如くダラダラと継続するのダメ!ゼッタイ!!って方向性であるのはほぼ確定ですな、とまあ思った(し知り合いとはそういう話で盛り上がった)訳ですよ。


しかも今回のジャクソンホールの特徴としまして、前回(コロナ真っ最中の初のオンライン企画)と前々回のお品書きと比較すると分かると思うのですが、

2020年
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/navigating-decade-ahead-implications-monetary-policy/

2019年
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/challenges-for-monetary-policy/

前々回まではリアル会合でしたけど、まあ前回に関してもそうなのですが、あちこちの中央銀行の方が出てきてああだこうだと話をする、というのが結構目立つじゃないですか。でまあこれって別に宗論対決の場とかじゃないので、各国の中央銀行のエライさんが出て来て講演だのパネルだのをやりだすってえ事になりますと、その場で突発性大滝秀治症状になって「お前の話はつまらん!」とか言い出す中銀のエライ人とかがいる訳もなく、まあ中央銀行馴れ合いの褒め合いみたいな場になってた感は多分にあった訳ですよ(個人の感想です)。

然るに、今回出てきたお品書きって他国の中銀の総裁副総裁チーフエコノミストクラスがだれも出てこなくて、IMFの人がパネルで出て来るだけだし、しかも登場場所がアラン・ブラインダー入りのパネルディスカッションとなっておりまして、残りは学者のお話。

でもってブラインダーとコーンというゆうてみれば麿やダブル山口元副総裁ズのような重鎮が登場して講演やパネルをぶっこんで来る、ということで、ここ数年の世界の中銀馴れ合いセッションではない何かを感じ取ることが出来まして、これはパウエル講演に期待が持てるというものです!!!!



〇ジャクソンホールあれこれ:パウエル講演は方向性としての正常化転換を明確に示しましたね

パウエル講演ですが、さっきのお品書きの所にあるリンクからでもこちらに行けます。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20210827a.htm
Speech
August 27, 2021
Monetary Policy in the Time of COVID
Chair Jerome H. Powell
At the "Macroeconomic Policy in an Uneven Economy," economic policy symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming (via webcast)


・経済状況の話ですがこちらは従来通りですけど「いまはチャレンジングな時期」ですとよ

前置きの部分は前置きのマクラなので割愛して経済状況の『The Recession and Recovery So Far』から参ります。

『The pandemic recession-the briefest yet deepest on record-displaced roughly 30 million workers in the space of two months.2 The decline in output in the second quarter of 2020 was twice the full decline during the Great Recession of 2007?09.3 But the pace of the recovery has exceeded expectations, with output surpassing its previous peak after only four quarters, less than half the time required following the Great Recession. As is typically the case, the recovery in employment has lagged that in output; nonetheless, employment gains have also come faster than expected.4』

経済状況はコロナでドカンと歴史的な落ち込みをしましたが想像以上の勢いで戻って来ました。

『The economic downturn has not fallen equally on all Americans, and those least able to shoulder the burden have been hardest hit. In particular, despite progress, joblessness continues to fall disproportionately on lower-wage workers in the service sector and on African Americans and Hispanics.』

シンポジウムのお題が「Macroeconomic Policy in an Uneven Economy」なだけにいつもの「ショックの影響はアンイーブンで回復もアンイーブン」の話しですね。

『The unevenness of the recovery can further be seen through the lens of the sectoral shift of spending into goods-particularly durable goods such as appliances, furniture, and cars-and away from services, particularly in-person services in areas such as travel and leisure (figure 1). As the pandemic struck, restaurant meals fell 45 percent, air travel 95 percent, and dentist visits 65 percent. Even today, with overall gross domestic product and consumption spending more than fully recovered, services spending remains about 7 percent below trend. Total employment is now 6 million below its February 2020 level, and 5 million of that shortfall is in the still-depressed service sector.』

アンイーブンなのは製造業とサービス業の差にも表れています、ってのも従来言ってたお話で、その結果、

『In contrast, spending on durable goods has boomed since the start of the recovery and is now running about 20 percent above the pre-pandemic level. With demand outstripping pandemic-afflicted supply, rising durables prices are a principal factor lifting inflation well above our 2 percent objective.』

耐久財などの需要が盛大に拡大する中でコロナに起因する供給制約があって物価が2%をwell aboveとなるファクターになっています。

『Given the ongoing upheaval in the economy, some strains and surprises are inevitable. The job of monetary policy is to promote maximum employment and price stability as the economy works through this challenging period. I will turn now to a discussion of progress toward those goals.』

てな訳でそんなチャレンジングな状態にある中で金融政策をどないすっぺかという話については、マンデートの達成に向けた状況について考えることが必要ですな、ということで次に行く。


・先に雇用の話が来ましたが最大雇用はまだ(当たり前)の認識なのは同じですが全体の威勢は良い

次の小見出し、『The Path Ahead: Maximum Employment』に入る。

『The outlook for the labor market has brightened considerably in recent months. After faltering last winter, job gains have risen steadily over the course of this year and now average 832,000 over the past three months, of which almost 800,000 have been in services (figure 2). The pace of total hiring is faster than at any time in the recorded data before the pandemic. The levels of job openings and quits are at record highs, and employers report that they cannot fill jobs fast enough to meet returning demand.』

最初のパラグラフは物凄い勢いで威勢の良い話をしておりますね。

『These favorable conditions for job seekers should help the economy cover the considerable remaining ground to reach maximum employment. The unemployment rate has declined to 5.4 percent, a post-pandemic low, but is still much too high, and the reported rate understates the amount of labor market slack.5 Long-term unemployment remains elevated, and the recovery in labor force participation has lagged well behind the rest of the labor market, as it has in past recoveries.』

大変すばらしい勢いで改善して最大雇用に向けた進展をしているとは言え、失業率5.4%は依然として高いし、労働市場の実際のスラックに対して率自体が低めに出ている(つまり労働参加率が低いって事じゃな)し、長期失業率は高いし、など水準的にはまだまだ、とここでいつも通りの認識を示します、っていうか物価がマンデート達成状況なので雇用まで達成したらテーパーどころか利上げですからこれはこういうのも順当。

『With vaccinations rising, schools reopening, and enhanced unemployment benefits ending, some factors that may be holding back job seekers are likely fading.6 While the Delta variant presents a near-term risk, the prospects are good for continued progress toward maximum employment.』

労働供給制約の要因が解消(ワクチン接種の進展、学校の再開、失業給付ボーナスステージの終了)が進めば労働供給の問題は徐々に緩和されるでしょう、ただデルタ変異株に関しては近いタームでの懸念事項ですが、基本的にはそれが大きな障害とは認識していないようですね。

ということで、こちらは威勢の良い話をしながら最大雇用達成はまだですよ、という何時も通りの話ですけど、威勢のよさは感じた。


・物価に関してはリスクシナリオの物価上振れ警戒を強調しているように見えますね

次が『The Path Ahead: Inflation』で物価なのですがここで丁寧に説明しておりましてですね・・・・・・・・・

『The rapid reopening of the economy has brought a sharp run-up in inflation. Over the 12 months through July, measures of headline and core personal consumption expenditures inflation have run at 4.2 percent and 3.6 percent, respectively-well above our 2 percent longer-run objective.7』

現状の数値が「well above our 2 percent longer-run objective」なのはまあ言うまでもないので順当。

『Businesses and consumers widely report upward pressure on prices and wages.』

お賃金キタコレ!!!!

『Inflation at these levels is, of course, a cause for concern.』

現在のレベル(PCEベースのヘッドラインで4.2%、コアで3.6%)がコンサーンなのはそらまあそうです。

『But that concern is tempered by a number of factors that suggest that these elevated readings are likely to prove temporary. This assessment is a critical and ongoing one, and we are carefully monitoring incoming data.』

で、以下のような一時的な要因だと思っている、ということなのですが、今回はその項目を説明する前に上記のように「This assessment is a critical and ongoing one, and we are carefully monitoring incoming data.」って言ってるのはポイントでして、つまりは「今はこれらの要因で一時的に物価が押し上げられている、という認識なのだが、もしこれらの要因が実は一時的じゃあありませんでしたテヘペロってなったらアカーン!」という文脈なのであって、どう見ても高インフレ警戒です本当にカムサハムニダ。

では要因。

『The dynamics of inflation are complex, and we assess the inflation outlook from a number of different perspectives, as I will now discuss.』

『1. The absence so far of broad-based inflation pressures』

今の所ブロードベースの物価上昇圧力は生じておりません、だそうです。

『The spike in inflation is so far largely the product of a relatively narrow group of goods and services that have been directly affected by the pandemic and the reopening of the economy. Durable goods alone contributed about 1 percentage point to the latest 12-month measures of headline and core inflation. Energy prices, which rebounded with the strong recovery, added another 0.8 percentage point to headline inflation, and from long experience we expect the inflation effects of these increases to be transitory. In addition, some prices-for example, for hotel rooms and airplane tickets-declined sharply during the recession and have now moved back up close to pre-pandemic levels. The 12-month window we use in computing inflation now captures the rebound in prices but not the initial decline, temporarily elevating reported inflation. These effects, which are adding a few tenths to measured inflation, should wash out over time.』

この部分、微妙に切り所が無くてパラ引用になって長くなってしまいましたが、要するに現状では個別ベースで見た場合、上昇しているのは供給制約を食らっている一部の財、パンデミックで需要が激減して1年前に価格が激下がりした旅行などの一部サービスのリバウンド、それからエネルギー価格などに集中しておりますよ、という説明になっております。

『We consult a range of measures meant to capture whether price increases for particular items are spilling over into broad-based inflation. These include trimmed mean measures and measures excluding durables and computed from just before the pandemic. These measures generally show inflation at or close to our 2 percent longer-run objective (figure 3). 』

問題はこれがスピルオーバーするか、といういわゆるセカンドラウンドエフェクトになるかどうかって話であって、

『We would be concerned at signs that inflationary pressures were spreading more broadly through the economy.』

全体的な物価上昇に広がっていくような兆候が起きるかについてよく観察しておりまっせ、という結びになっておりますように、従来だと「これこれは一時的要因だからヘーキヘーキ」「でも注意はしなきゃね♪」みたいな感じのトーンでまとめていたのを、今回はきちんと「一時的要因じゃなくなってしまうのはダメ!ゼッタイ!!」という締め方になっておりまして、普通に持続的インフレへの移行にならないかを注視しまっせという形でリスク認識と言うか懸念と言うかを示していて、インフレ上振れ警戒トーンを強めた説明になっております。

『2. Moderating inflation in higher-inflation items』

『We are also directly monitoring the prices of particular goods and services most affected by the pandemic and the reopening, and are beginning to see a moderation in some cases as shortages ease. Used car prices, for example, appear to have stabilized; indeed, some price indicators are beginning to fall. If that continues, as many analysts predict, then used car prices will soon be pulling measured inflation down, as they did for much of the past decade.8』

『This same dynamic of upward inflation pressure dissipating and, in some cases, reversing seems likely to play out in durables more generally. Over the 25 years preceding the pandemic, durables prices actually declined, with inflation averaging negative 1.9 percent per year (figure 5).9 As supply problems have begun to resolve, inflation in durable goods other than autos has now slowed and may be starting to fall. It seems unlikely that durables inflation will continue to contribute importantly over time to overall inflation. We will be looking for evidence that supports or undercuts that expectation.』

次の項目は「ここもと盛大に上がっていた一部の財やサービスの価格が落ち着いてきました」ということでこちらはまあ穏当なトーンですね。では次に行きます。

『3. Wages』

お賃金キタコレですが内容を確認。

『We also assess whether wage increases are consistent with 2 percent inflation over time. Wage increases are essential to support a rising standard of living and are generally, of course, a welcome development. But if wage increases were to move materially and persistently above the levels of productivity gains and inflation, businesses would likely pass those increases on to customers, a process that could become the sort of "wage-price spiral" seen at times in the past.10』

賃金から物価へのスパイラル的な物価上昇圧力についての言及キタコレ。

『Today we see little evidence of wage increases that might threaten excessive inflation (figure 6). Broad-based measures of wages that adjust for compositional changes in the labor force, such as the employment cost index and the Atlanta Wage Growth Tracker, show wages moving up at a pace that appears consistent with our longer-term inflation objective. We will continue to monitor this carefully.』

今のところはそのような兆候は見当たらないものの、今後の動向には注意したい、ということですね。

『4. Longer-term inflation expectations』

長期的なインフレ予想登場。

『Policymakers and analysts generally believe that, as long as longer-term inflation expectations remain anchored, policy can and should look through temporary swings in inflation. Our monetary policy framework emphasizes that anchoring longer-term expectations at 2 percent is important for both maximum employment and price stability.』

インフレ予想(インフレ期待)のアンカー大事大事ねー。

『We carefully monitor a wide range of indicators of longer-term inflation expectations. These measures today are at levels broadly consistent with our 2 percent objective (figure 4). Because measures of inflation expectations are individually noisy, we also focus on common patterns across the measures. One approach to summarizing these patterns is the Board staff's index of common inflation expectations (CIE), which combines information from a broad range of survey and market-based measures.11 This index captures a general move down in expectations starting around 2014, a time when inflation was running persistently below 2 percent. More recently, the index shows a welcome reversal of that decline and is now at levels more consistent with our 2 percent objective.』

ウダウダと書いてあるけど、要するにいろんな方法で計測した結果インフレ期待は現状マンデートと整合的だと。

『Longer-term inflation expectations have moved much less than actual inflation or near-term expectations, suggesting that households, businesses, and market participants also believe that current high inflation readings are likely to prove transitory and that, in any case, the Fed will keep inflation close to our 2 percent objective over time.12』

とは言いましても、物価が高い状態が続くと適合的にインフレ期待が更に上振れるリスクがあるので注意しないとね、ということですが、まあインフレ期待は計測しにくいので、結局はブロードベースの物価上昇と賃金の所、つまり賃金と刈込平均辺りの物価が一番タイムリーマナーで分かりやすいかな、って思いますね。


『5. The prevalence of global disinflationary forces over the past quarter century』

世界的にディスインフレーショナリーなので米国だけインフレってのもねー、というのを出しています。まあホンマカイナって気もしますけど。ここは細かく読まなくても良さそうなのでハリツケだけしておきます。

『Finally, it is worth noting that, since the 1990s, inflation in many advanced economies has run somewhat below 2 percent even in good times (figure 7). The pattern of low inflation likely reflects sustained disinflationary forces, including technology, globalization and perhaps demographic factors, as well as a stronger and more successful commitment by central banks to maintain price stability.13 』

『In the United States, unemployment ran below 4 percent for about two years before the pandemic, while inflation ran at or below 2 percent. Wages did move up across the income spectrum-a welcome development-but not by enough to lift price inflation consistently to 2 percent. While the underlying global disinflationary factors are likely to evolve over time, there is little reason to think that they have suddenly reversed or abated.』

『It seems more likely that they will continue to weigh on inflation as the pandemic passes into history.14』

ということで最後に、

『We will continue to monitor incoming inflation data against each of these assessments.』

『To sum up, the baseline outlook is for continued progress toward maximum employment, with inflation returning to levels consistent with our goal of inflation averaging 2 percent over time. Let me now turn to how the baseline outlook and the associated risks and uncertainties figure in our monetary policymaking.』

よってベースラインシナリオでは物価は上ぶれする訳ではないよ、ということですが、まあ普通に警戒トーンを見せていますよねって所です、よって金融政策に関しても当然ながら・・・・・・・・・・・・


・金融政策は普通にテーパー実施を示唆して利上げとの分離論もいつも通りって感じですね

『Implications for Monetary Policy』です。

『The period from 1950 through the early 1980s provides two important lessons for managing the risks and uncertainties we face today.』

ほうほう。

『The early days of stabilization policy in the 1950s taught monetary policymakers not to attempt to offset what are likely to be temporary fluctuations in inflation.15 Indeed, responding may do more harm than good, particularly in an era where policy rates are much closer to the effective lower bound even in good times. The main influence of monetary policy on inflation can come after a lag of a year or more. If a central bank tightens policy in response to factors that turn out to be temporary, the main policy effects are likely to arrive after the need has passed. The ill-timed policy move unnecessarily slows hiring and other economic activity and pushes inflation lower than desired.』

『Today, with substantial slack remaining in the labor market and the pandemic continuing, such a mistake could be particularly harmful. We know that extended periods of unemployment can mean lasting harm to workers and to the productive capacity of the economy.16』

1950年代の教訓は、一時的な物価上昇に早まった引き締めで対応するのはイクナイ、ということである、と来て今は労働市場のスラックやパンデミックの影響がある経済ですよね、とプレマチュアータイトニングの弊害を説明しています。

『History also teaches, however, that central banks cannot take for granted that inflation due to transitory factors will fade. The 1970s saw two periods in which there were large increases in energy and food prices, raising headline inflation for a time. But when the direct effects on headline inflation eased, core inflation continued to run persistently higher than before. One likely contributing factor was that the public had come to generally expect higher inflation-one reason why we now monitor inflation expectations so carefully.17』

でもってその後はグレートインフレーションの教訓キタコレで、インフレ期待の上振れを警戒しないといけません、と両にらみの説明。

『Central banks have always faced the problem of distinguishing transitory inflation spikes from more troublesome developments, and it is sometimes difficult to do so with confidence in real time. At such times, there is no substitute for a careful focus on incoming data and evolving risks. If sustained higher inflation were to become a serious concern, the Federal Open Market Committee (FOMC) would certainly respond and use our tools to assure that inflation runs at levels that are consistent with our goal.』

見極めるのは非常に難しいが、もし物価上昇が想定よりも高く、しかも持続的になるようであれば、必要な措置を取らないと行けないと来まして、インフレ上振れへの対処を先にぶっこんでいるのがチャーミング。

『Incoming data should provide more evidence that some of the supply-demand imbalances are improving, and more evidence of a continued moderation in inflation, particularly in goods and services prices that have been most affected by the pandemic. We also expect to see continued strong job creation. And we will be learning more about the Delta variant's effects. For now, I believe that policy is well positioned; as always, we are prepared to adjust policy as appropriate to achieve our goals.』

今後のデータを見て行く必要があるという説明の中で、さっきのインフレの2番(一時的に上昇した一部の価格が落ち着いてきている)を示して、かつ今の政策自体は良いポジションにいるという説明をして上のぶっこみを中和していますね。

『That brings me to a concluding word on the path ahead for monetary policy. The Committee remains steadfast in our oft-expressed commitment to support the economy for as long as is needed to achieve a full recovery. The changes we made last year to our Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy are well suited to address today's challenges.』

ということで先行きは決め打ちしないで状況をよく見て行きますよ、という話ですが・・・・・・

『We have said that we would continue our asset purchases at the current pace until we see substantial further progress toward our maximum employment and price stability goals, measured since last December, when we first articulated this guidance.』

テーパリングネタキタコレ!

『My view is that the "substantial further progress" test has been met for inflation. There has also been clear progress toward maximum employment. At the FOMC's recent July meeting, I was of the view, as were most participants, that if the economy evolved broadly as anticipated, it could be appropriate to start reducing the pace of asset purchases this year. The intervening month has brought more progress in the form of a strong employment report for July, but also the further spread of the Delta variant. We will be carefully assessing incoming data and the evolving risks. Even after our asset purchases end, our elevated holdings of longer-term securities will continue to support accommodative financial conditions.』

テーパーの条件、物価は達成、雇用に関しては議論中と来まして、最後に「テーパー終わってもバランスシートに残高は維持されるので緩和効果は続く」と言ってますのでやる気満々なのは分かった。

『The timing and pace of the coming reduction in asset purchases will not be intended to carry a direct signal regarding the timing of interest rate liftoff, for which we have articulated a different and substantially more stringent test. We have said that we will continue to hold the target range for the federal funds rate at its current level until the economy reaches conditions consistent with maximum employment, and inflation has reached 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time.』

『We have much ground to cover to reach maximum employment, and time will tell whether we have reached 2 percent inflation on a sustainable basis.』

でもってその次に「テーパーと利上げの分離論」になっておりまして、利上げに関しては今後時間を掛けて見て行く必要があるし、大体からして雇用の水準が全然足りないアルねという説明ですね。

最後はまあご挨拶みたいなもんです。

『These are challenging times for the public we serve, as the pandemic and its unprecedented toll on health and economic activity linger. But I will end on a positive note. Before the pandemic, we all saw the extraordinary benefits that a strong labor market can deliver to our society. Despite today's challenges, the economy is on a path to just such a labor market, with high levels of employment and participation, broadly shared wage gains, and inflation running close to our price stability goal. Thank you very much.』

ということなので、まあテーパーはとっととやるけど利上げはまだまだでっせ、というのを入れながら、インフレ警戒の方は結構強くお見せしたな、って感じだと思います。






2021/08/27

お題「ジャクソンホール前からとっととテーパー発言をタカ派が主張とな/中村審議委員宮崎金懇記者会見」

秦の趙高かよ・・・・・・・・・
https://nordot.app/803472807638056960?c=39546741839462401
ラムダ株、首相報告は3週間後 7月に五輪関係者で判明
2021/8/26 12:53 (JST)8/26 13:11 (JST)updated
コピーライト 一般社団法人共同通信社

『厚生労働省は26日の参院厚労委員会で、7月に国内で初めて確認された新型コロナウイルスの変異株で南米ペルー由来とされる「ラムダ株」感染について、菅義偉首相と加藤勝信官房長官への報告は、判明から3週間後の8月13日だったと明らかにした。田村憲久厚労相には同16日に説明したとしている。』(上記URL先より)

ここで公共放送ニュース記事の過去ログを確認してみましょう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210806/k10013186021000.html
国内初 ペルーで確認「ラムダ株」羽田空港検疫 感染確認の女性
2021年8月6日 18時40分

タイムスタンプがどこからどう見ても「2021年8月6日 18時40分」にしか見えないのですが、そこから更に1週間も経って報告が行くって秦の二世皇帝胡亥もビックリですが、「ガースーは知らなかったので無答責」狙いの答弁をしている(大臣への報告が後というのが怪しい)んだったらウソツキなのでハリツケ獄門、事実だったら亡国の組織にも程があるのでハリツケ獄門って所ですな。


〇ジャクソンホールですがその前に何か発言がでてますの

ジャクソンホールシンポジウムの式次第は米国中央時間の26日午後7時ということなので、あたくしの計算ミスってなければジャパンの本日朝9時に出て来るので惜しくも式次第の確認が今はできないのですががが。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-urgent-idJPKBN2FR1JQ
2021年8月27日12:22 午前
FRBタカ派、議長講演前に早期テーパリング要求 「9月公表・10月開始を」

『[26日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のタカ派は26日、パウエル議長の重要講演を翌日に控え、資産購入には効果がないとして早期のテーパリング(量的緩和縮小)を要求した。』(上記URL先より、以下同様)

って書き方になっているんだが「資産購入には効果がない」のだったら別にそのままでもエエヤンと思うので、この記事の書き方はおかしい。「効果に対する副作用が大きい」のか「資産購入の効果は今の経済状況には必要がない、過剰な効果になる」というのなら分かるのですが、地の文章が悪いのか翻訳がへぼなのか分からんが要修正でしょこれ。

・・・・などと一々悪態をつくから煙たがれるんですけどね!!!!!

ただまあこちらの記事、サムネに堂々のブラード総裁が鎮座ましましている時点でお察し感が強くなるので、まあいつもの人が仰せです、と言う話。

『セントルイス地区連銀のブラード総裁は、CNBCテレビとのインタビューで「現時点では資産購入は必要ない」と明言、来年の第1・四半期末までに資産購入を終わらせるよう改めて主張した。』

今まで言ってた通り。

『さらに「連邦公開市場委員会(FOMC)では良いコンセンサスが得られ、好ましい巻き戻しのプロセスに入ることができるだろう。われわれはテーパリング計画に関してまとまりつつある」と語った。合意の時期などには触れなかった。』

まさかとは思いますがその「まとまりつつある」というのはブラード総裁の想像上の存在に過ぎないのではないでしょうか?????


『カンザスシティー地区連銀のジョージ総裁も、引き続き経済の成長や雇用の増加が予想されることから、FRBは早めにテーパリングを始めるべきと提案。FOXビジネスとのインタビューでインフレ率の上昇は「資産購入を縮小する機会になる」と述べ、年内の調整も可能との見方を示唆した。』

記事の書き方が(ロイターさんとは思えないレベルで)ヘボくて、「年内の調整」が何を意味するのかがさっぱり分からないのですが、まあとっとと着手しろという話なんでしょうな。


『ダラス地区連銀のカプラン総裁は、CNBCテレビとのインタビューで「9月のFOMC会合で買い入れを調整する計画を発表し、10月またはその後すぐに計画を実行し始めるというのが、引き続き私の考えだ」と強調した。』

というかですな、市場ちゃんも既に「9月アナウンスで10月とか11月開始」も可能性としては見ていると思いますし、むしろ「テーパーは分かったけどその後本当に利上げ着手の条件がホイホイと揃うんけ?」って話になっていると思いますし、テーパリングの期間も1年より短いかもっていうのは既に想定に入れてて、来年の秋に入る頃にはテーパリングプロセス終了ってのはサブシナリオくらいに入っていると思ってるんですけど、どうもこう最近のメリケン債券市場は何を織り込んで動いているのかがさっぱりワカランチ会長で、その場の雰囲気と勢いとポジション調整で動いているんでネーノって気がするので(個人の感想です)、何が何やらわかりません。


『デルタ変異株のまん延については、3総裁とも経済への影響が深刻化することはないと楽観視。カプラン氏は「企業側からは少なくとも過去の感染拡大と同様、今回の流行も乗り切っており、ビジネスへの影響は一段と限定的だという声が多く聞かれる」とした。』

という部分に関しては、別にタカ派だからどうのこうのというよりは、基本的に(日本はちょっとアレですけど)米国とか欧州とかは比較的「まあ蔓延したとしても別に去年みたいな全面的な強烈ロックダウンで経済ストップ、みたいなことはせーへんのでそこまであばばばばーになる訳ではないでしょ」って見通しを出してるのタカ派だけじゃないと思います。


まあいずれにせよ、ジャクソンホール正座待機(と殊勝な事を言ってるがどうせ今晩ライブ聞いても明日録画聞いても同じじゃろと全然正座待機する気が無いナマケモノのアタクシです)で、その後の反応を見て「ああなるほど市場ちゃんはそういう織り込みをしてたのか」という後付けで追っかけておくだけ、という屁の役にも立たないプレイしか出来なさそうな自分というのが我ながら情けない所ではあります、ちーん。



〇中村審議委員宮崎金懇記者会見:マリーアントワネット理論のツッコミが無い、全員赤点再履修

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210826a.pdf
中村審議委員記者会見要旨
―― 2021年8月25日(水)
午後2時から約35分
(宮崎市・東京間オンライン開催)

・・・・・ということで小見出しで思いっきり出オチになっておりますけど、いやあの金懇テキスト読んだら普通にあの「給与が上がらないのならば株式投資をすればいいじゃない byマリーアントワネット」の部分を見て「ナンジャコリャー」となると思うのですが、今回の質疑応答で誰もその点突っ込まなかったってのって何なんだよという感想が沸き起こると共に血圧が急上昇して健康に非常によろしくないでございますわ。

えーっとですね、この「給与が上がらないのならば株式投資をすればいいじゃない」理論って、昨日も申しあげましたように、(1)図表を見れば家計の可処分所得上昇のドライバーは殆ど雇用者報酬の増加なのであって、サプリメンタルな部分で「海外の成長を取り込んで」とかお前は何を言ってるんだ、(2)家計の皆様が貯蓄をこれだけ株式等に振り向けたら、って話をしているんですが、それって貯蓄をする余剰のある家計は株式等への投資で更に余剰が拡大するけど、貯蓄する余裕がない家計は海外の成長も取り込めず、企業の分配も伸びないのでそのまま余裕のないままでいやがれ、っていう格差拡大絶賛推奨論のつもりで言ってるのかおんどれ、(3)でまあこの説明が、例えばそこらの学者センセ辺りから出てきたのでしたら、「あっそう」という感じでスルーしても良いんですが、ついこの前まで日本を代表する大企業で、しかもその経営側におられまして、その点では米国やドイツ(比較に出てたのがその2国ね)と比較した時に、日本の雇用者報酬が伸びず、結果として家計の可処分所得が伸びず、内需が低迷しっぱなし、という状況の一翼を担っておられたサイドのお方にそう言われちゃいますと、なんか「当社は今年も定昇ベアゼロ賞与前年並みしか出ませんので、従業員の皆さんは株式等への投資で収入アップに努めてください」って経営に言われた従業員みたいな気分になるんですけどねー。

などとまあ色々とツッコみたくなってくると思うのですが、何でこの部分にツッコミ飛ばねえんだよと思う訳で、気候変動がどうのこうのとかいう質疑してる暇があったら「家計の可処分所得が伸びない」というもっと手前にある重要な問題を聞いて欲しかったですね、全員赤点再履修にも程がある。


・半導体の話は中々結構な質疑でした

ということで途中にこんな質疑があったんですけどね。質疑応答の8ページから9ページに掛けて。

『(問) 冒頭、半導体についてお話がございましたけれども、現在の半導体不足が及ぼす企業業績や物価への影響、あとそれによる中央銀行としての懸念などのご所見をお願いします。審議委員は民間時代に、半導体を近くで見ておられたと思うので、それも踏まえてご所見をお願いいたします。』

はい。

『(答) 私が日立製作所のCFOであったとき、投資家の皆さまから、何故半導体をやっているのか、と言われていました。非常に長い間言われていて、何故そのような質問をされるのかなと思っていたほどです。』

と仰ったのでしたらもうちょっとここから話を敷衍させて頂きたかったのですが、話は変わってしまっているのが残念です。では続きに参ります。

『私が半導体に関わっていた頃に比べると、半導体メーカーは、中国を除くと、欧米の西側諸国ではかなり減りました。そして、一つずつがかなり大きくなって、シリコンサイクルが徐々に消えていきました。』

ふむふむ。

『しかし、半導体は、産業のコメといわれるほど必要なものであることは変わっていません。半導体がないと今のハードウェアは動きません。』

アタクシも人の事はあまり言えないのですけど(大汗)、この冒頭からの流れ、話がポンポンと飛んでて前後のつながりが無いのは勘弁して頂きたいのですが・・・・・・・・・・

『デジタル化を推進しようとしても半導体がないとできませんし、自動車もCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)という方法が進んでいますが、CASEとは関係のない自動車でも今は非常に多くの半導体を使っており、半導体のないハードウェアはあまりないほどになっています。』

やっと話が繋がった。

『国内の民間の半導体工場が燃えてしまったとか、米国で寒波のため工場が少し止まってしまったということで影響がありましたが、供給能力、キャパシティの問題は投資をしていけば徐々に埋まっていくだろうと思います。』

うーん、その「投資をしていけば」が何故成立するのかって話をして欲しいんですよね。半導体メーカーの数が減ったんだったら、寡占を利用して生産能力の増強を程々に抑えれば業界全体で半導体価格が上昇してウハウハになるんでネーノ、って思ってしまうのですが、なぜそうならないのか、メーカー間の競争が激しい事には変わらないからとかそういう背景があるのだとは思うのですが、もと業界の人として説明をするのでしたら是非そういう話を聞きたいです。

#ところで話の最初に出てきた「投資家の皆様から聞かれた」のは何を言いたかったの????

さらに続きます。

『ただ、問題は、今はグローバルにサプライチェーンが拡がっていますので、たしかマレーシアの工場は後工程だったと思いますが、東南アジアでの半導体工場が止まると、半導体はチップができないということになります。』

『こうした工場の操業が新型コロナウイルス感染症の影響で止まってしまいますと、これは投資の問題ではなくなってしまいますので、結構、長引く可能性があると思っています。』

ん???さっきの米国で寒波のため云々と何がどう違うのこの話???

『従って、世界の経済の回復に対して、少しネガティブな問題がまた一つ出てきたという気がしています。』

ということで、

『もっとも、全てのラインが止まっていくということではありませんので、おそらく半導体の値段が少し上がるのかなという気がしますが、ワクチン接種と医療体制の強化がきちんと進捗して徐々に公衆衛生上の措置をとらなくても良くなれば、この問題はなくなると思います。』

さっきの投資云々の話しは一体全体何を言うために持ち出したのでしょうか。なんかここだけ説明してくれれば良かったような気がします。

『ですが、年内、半導体不足が解消されることは、少し想定しづらいという気がしています。日本銀行全体の意見ではないかもしれませんが、私の感覚ではそのうな気がします。』

うーんこの、まあ何となく言わんとすることをアタクシなりに解釈すると、「半導体製造に関しては世界的な統合と分業化が進んでいるので、その中の一工程を担う国や地域において感染症拡大による工場の稼働低下や休業などが起こると以前より影響は大きい、今回の問題は感染症拡大によって物理的に稼働ができなくなっているという事が原因なので、防疫措置による社会活動制限の悪影響が解消されれば解決に向かうけれども、一工程が止まると全体に影響する、という性質上、どこかの国、特に東南アジアで感染症の影響が続くと半導体生産には引き続き影響が及ぶので、少なくとも年内に状況が改善されることはないでしょう」って事を説明したんだと思いました。


・新しモノ好き(婉曲表現)な香りがしますなあ

質疑応答見てると気候変動とDXの話しとか熱心にしておられますので、まあ金懇のそっちの部分もネタにして差し上げた方が良かったような気がしますが、その辺はとりあえずすっ飛ばしまして、この質疑をみていて、なるほど中村さん新しモノ好き(婉曲表現)だなあと思ったので引用します。

『 (問) 今の質問と関連なのですが、午前中の講演でも下振れリスクに注意というお話をされていましたし、今のお話を聞いても、暫く景気の下押し圧力が続くということでした。しかし、先々景気回復シナリオというものはある、ということは変わらないかと思うのですが、その前にやはり下振れリスクが強まり、景気回復のメカニズムに何か影響を与えるようなことになると、中央銀行としても政策を発動しなければならないような局面が来るかと思うのですけれど、その辺の状況をお伺いできればと思います。』

と、下振れ意識なら追加緩和に関してどうですかという質問だったのですが、先にネタバレしておくと「下振れは意識しているけど底割れはしない(キリッ)」って説明になっていて、追加緩和のつの字もありませんでした。ということで答えの方をみますんですけどね。

『(答) 景気の下振れには注意をしなければいけないと思いますが、今のところ、底が割れるようなことにはならないのではないかと思っています。』

質問した人は「もし底が割れるようなリスクが顕在化したらどうするんですか」と聞いているのでその時点で話がかみ合ってないのですが、これは黒ちゃんとかと同じ話法だけに(以下自粛)。

『デルタ株に対しても、今のワクチンが効かないということではどうもないとのことですし、抗体カクテルも効いているとのことですから、そういう面でいうと、私は、下振れリスクは、ペントアップ需要がどのくらい後ずれするのかということと、ペントアップの需要がどれほどあるのかということかと思います。』

抗体カクテルの話しとかぶっこんで来るあたり、新しモノ好き(婉曲表現)だなあとおもいました、まる。

『本日の講演でも資料としてお出ししましたが、米国では、家計の現預金が従来の増加トレンドよりも 3.1 兆ドル増えたということがあったわけで、その後ワクチン接種率が 6 割に近づくと、結構、公衆衛生上の措置がなくなり、相当のペントアップ需要が出ました。わが国でも、家計の現預金は、この 3 月期で従来の増加トレンドよりも約 37 兆円増えていました。ですから、わが国もペントアップ需要が出る環境になればと思っています。』

この点のツッコミは昨日もしましたので割愛ですが、数字ってこれでいいのけ?

『圧迫されていた、抑圧されていた欲望といいますか、使いたい、自分の欲求を満たしたいというマグマがだんだん溜まっているということもありますので、そのタイミングの問題だと思います。』

ただし上級国民に限る・・・・・こうですか、わかりません><;

『本当は夏休みが一番のタイミングだったと思うのですが、それが年末の長期の休暇のようなところ、もしくはその先の春休みか、そういうところに後ずれするかなという気がします。まだ大きな下振れ――昨年の 4-6 月期のような下振れ――にはならないと思います。』

ほうほう。

『それは先ほど申し上げましたように、致死率が昨年とは全く違うからです。この前まで、インフルエンザほどではないですけれどもその倍程度の約 0.2%だったわけですから。』

いやあのそうかも知れんけど中等症で自宅療養の人が云々とかいう話が真っ盛りの中で、そう力強くおっしゃるのは何か凄いな。

『従って、ロックダウンが行われて、経済活動が全て止まってしまうということはないでしょうから、景気回復のメカニズムが崩れてしまうということではなく、後ずれするのではないかと今は想定しています。』

・・・・・・まあ見通しは見通しでああそうですかってな話ではありますけどね。

#来週はジャクソンホールやってからこっちに戻るかどうか検討します。




2021/08/26

お題「中村審議委員宮崎金懇挨拶を鑑賞の巻」

ほうほうそうですかそうですか。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bf8202d737d64169757f5bc2ab3a0e02594dbc42
首相「明かりは見え始めている」…ワクチンは「デルタ株にも効果」と強調
8/25(水) 21:55配信

というご説明だと「明かりが見えない状態なのにオリパラを特攻した」となってしまい、「コロナに打ち勝った」云々の話はどうなったんだと思うのでございますがどうなんでしょうかねえ。というか変なフラグ建てるなや。

まあ「言ってることが途中で変わってしまう」と言えば置物理論の最たるものでございまして、まあそういう意味では2年たった時に置物を辞任させなかった時点で「都合が悪くなると新しい理屈を出して誤魔化す」という路線は確定していたということですな(白目)。

・・・・・と、強引に話を日銀方向に持って行きましたが(笑)、中村審議委員2発目の金懇がやって参りまして、前任の布野さんが(トヨタ出身、ということもプレッシャーになったんだと拝察致しますのであんまりケチョンケチョンに言う気は無いのですが)途中から完全にこけし人形状態になってしまったのに対しまして、中村さんは結構これから楽しめそう(別に上から目線ではありませんので念のため申し添えます)な金懇挨拶だったのでその辺を鑑賞鑑賞。


〇中村審議委員2発目の金懇はまあ色々な意味で面白かったので今後も楽しみにします

いつも思うのですが、
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko210825a.htm/
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
宮崎県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中村 豊明
2021年8月25日

HTML版が速攻で出て来るケースと、今回のように翌日以降にならないと出てこないケースというのがあって、何でその違いが発生するのか、とか悪態ついてると全部が翌日以降に出るようになられても困るのですが、差が発生する原因はどこにあるのかが昔からずーっと気になっていて、何でそんな事に拘るかと申しますと、その差が発生する理由によっては何らかのインプリケーションは得られる可能性があるから、という事なんですが、これは情報サービス局マターなのか政策委員会室マターなのか、はたまた企画局マターなのか、うーん。

ということで挨拶要旨と図表はPDFになります。以下こちらから引用します。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210825a1.pdf


・経済物価見通しの先行きリスク要因の所で早速ご自身の見解を出しているのはポイント高い

最初が経済物価見通しの話ですけれども、ここは展望レポートに沿った大本営発表なので、まあ皆様先刻ご承知の通りということでパスしましてその次の『(3)経済・物価のリスク要因』から参ります。

『もっとも、こうした見通しを巡る不確実性は大きく、特に当面は、国内外で拡がりつつある新型コロナウイルスの変異株などによる感染拡大の影響を中心に、下振れリスクに注意が必要です。』

というのはまあ全員が全員指摘する話なので良いとしてその次からがポイント高い。

『そのうえで、その先も見据えた時に、私が特に注目しているポイントを3点お話します。』

正座待機。

『1点目は、サービス消費のペントアップ需要です。』

ほほう。

『米国では家計の現預金残高(本年3月末時点)がトレンド対比+3.1兆ドル増加し(図表5)、その後、ワクチン接種の進展に伴い、ペントアップ需要が顕在化し、経済活動が活発化しています。』

はい。

『日本でも、家計の現預金残高(同)は、過去最高の1,056兆円に達し、トレンド対比+37兆円増加していますので、ワクチン接種や医療体制強化の進展などにより感染症の影響が和らいでいけば、失われた消費機会を取り戻すべく平時よりも消費支出が増加することでペントアップ需要が顕在化し、経済活動が活発化することが期待されます。』

うーん・・・・・・・・・

6月決定会合の議事要旨を見ますとですね、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2021/g210618.pdf

『また、多くの委員は、先行き、ワクチン接種の進展などに伴い感染症への警戒感が和らいでいけば、いわゆる「強制貯蓄」の取り崩しが個人消費を押し上げる可能性もあるとの見方を示した。』(この部分だけ直上URL先の6月決定会合議事要旨本文10ページより引用しています)

ってなっていて、中村さんだけの考えではないように見えるのがオソロシスなのですが、あのですね、昨今のコロナ対応の右往左往振りと、コロナ開始直後なら兎も角1年以上経過してるのに、野戦病院の一つも作らないで下級国民は自宅で療養してろモードの塩対応な状況だったら当然家計は防衛的にならざるを得ないじゃないですか、って思うのですけどそれって下級国民の僻み根性ですかねえ。

感染症の警戒感が軽減されたとしても、感染症の対応がアレというのを見ると、なんかまた変異株の変異株でも出たらどうするんだ(大体からしてここから冬に向かって進んでいくんだし)とかで、そらまあ消費増えない事は無いでしょうが、ペントアップしに行くかねと思うのですけど、なんかそういう認識になっているというのが違和感ありますわ。

とは言いましても、概ね読者の皆様がお察しの通り、アタクシも相当の変わり者なのは自覚しているので、まあ普通にテレビとかでペントアップ消費キャンペーンでも垂れ流されたらホイホイと皆さん消費するのかもしれませんが、アタクシは別にペントアップしませんけんのう(変異株流行に伴い家の備蓄のペントアップは実施しました^^)。

『感染再拡大の影響などから、ペントアップ需要が顕在化する時期はやや後ずれしたとみていますが、その後は、想定以上に経済活動が活発化する可能性があると考えています。』

とまあそんな感じでペントアップが出るらしいという楽観的なお話でしたが2番目は何でしょう。


『2点目は、企業の価格設定行動です。』

ほうほう。

『感染症への警戒感が続くもとで値下げによる集客には限界があるほか、感染症対策や世界経済の回復を受けた輸入原材料価格の上昇によるコスト増などを踏まえると、企業が値下げにより需要喚起を図る行動は引き続き広範化しないだろうと考えています。』

まあこれも従来より日銀が主張しているお話、コストプッシュに耐えるのがしんどいというのは分かるのですが、衣料品とかみたいにもはや通年セール状態になっているところもありますが、まあこれは感染症の影響が一部に出ているだけ、と言ってしまえばそれまでなのではあそうですかということにしておきます。

『そのうえで、その先も見据えると、既往の売上減少により対面型サービスを中心に増大した借入債務を返済するためには、米国で一部にみられるような、ペントアップ需要の顕在化にあわせた価格の引き上げによって、コスト増加分の転嫁を含めた採算性の改善を実現することが重要です。』

なんちゅう楽観的な見通し。

『こうした需要の改善に対応した価格設定行動などにより、債務の返済や、生産性向上に向けた取り組みが順調に進んでいくか、動向を注視しています。』

まあ多分無理だと思うのですが、注目しておきましょう。んじゃ3番目に参ります。

『3点目は、企業の中長期的な成長期待の動向です。』

ほうほうそうですかそうですか。

『6月短観の業況判断DI(全産業全規模)は4四半期連続で改善しています。設備投資計画(全産業全規模、含む金融機関)は、2020年度は前年度比▲8.1%で着地したあと、2021年度は同+9.4%の増加と、2019年度と概ね同水準に戻る計画ですので(図表6)、足もと、企業の中長期的な成長期待が低下している様子は窺われません。ただし、2021年度計画には前年度からのずれ込みが含まれていることには、留意が必要です。』

問題は企業部門の好調さが全然家計に回って来る感じがしないことなんですけどにゃー。

『経済の持続的な成長には、後ほどお話するデジタル化や気候変動対応などの構造改革の加速が、持続的な生産性の向上に繋がることによって、中長期的な成長期待が高まることが必要ですので、企業の投資動向を注視しています。』

DXは分かるが気候変動はちょっと・・・・・・・という感じですし、「構造改革の加速で生産性向上」ってそれ労働分配に回らんって話じゃねえの、という悪寒が漂ってきますが、まあそういうことだそうです。


・大本営発表成分が少ないというのもポイントが高いのですが・・・・・・・・・

次が金融政策運営の話になりますが、そこはまあ大本営発表なのでパスするとして、その先に、

4.日本経済の構造変化
5.デジタル化と気候変動対応

というコーナーがありまして、本文全14ページある中で、最後のご当地経済ネタが2ページありますので、その手前までで本文12ページなのですが、本文5ページの前半4分の1あたりから先がこの4番と5番、ということですな。さっき引用した部分は中村さんの見解、とは仰せになっていますが、概ね展望レポートなどで示されているポイントを敷衍したような面もありましたが、この4番と5番は中村さんの見解キタコレという感じでございまする。ということで鑑賞する訳ですが・・・・・・・・・・・・・


・失われた20年の説明の図表がですなあ

『4.日本経済の構造変化』の『(1)「失われた20年」とデフレ』に参ります。まあ小見出しの時点で唸るんですが・・・・・・・・・

『次に、より長期的な視点から日本経済の構造変化とその課題について、私自身が1975年から2020年まで勤めていた民間企業での経験も踏まえて私見をお話したいと思います。』

正座待機。

『1985年のプラザ合意まで、ドル/円レートが概ね200円を上回る円安環境のもとで(図表9)、日本は輸出主導型の経済成長を実現してきました。この間、国内では中小企業を組み込む形で産業クラスターが構築され、企業は製品輸出を通じて海外経済の成長を取り込み、その恩恵を国内労働者の雇用や勤労所得の持続的な増加という形で家計に還元しました。そして、家計は余裕資金を銀行に預けて国内経済の高成長に伴う高い金利収入を得て消費を拡大し、銀行は企業への貸出を通じて利鞘を稼ぎ、企業は借り入れた資金を設備投資や研究開発投資などに活用して輸出や生産を拡大するという好循環が発揮されていました。』

という説明があるんですが、「家計は余裕資金を銀行に預けて国内経済の高成長に伴う高い金利収入を得て消費を拡大し」って辺りがダウトでありまして、金利収入は消費拡大のドライバーじゃねえだろと一応こちらも戦後20年ほど程度の生まれなので思いますし、だいたいからして図表10で示している「日米独の家計の可処分所得」ってのみたら利子収入や配当収入が可処分所得のドライバーになってねえだろ(サプリメンタルには効いてるようには見えなくもないですが)としか思えんのですが、この部分がこのコーナーの後半の伏線になっていて後で回収される予定です。

『プラザ合意後の1980年代後半には1ドル120円台への円高が進行しました。こうしたなか、政府が輸出主導型から内需主導型への経済構造の転換を促したこともあって、製造業の海外生産移転が進み始めました。』

海外移転がすすんだのはもうちょっと後のような気がするんですが、まあ企業規模などにもよるのでよくわからん。

『また、国内では、家計の可処分所得の増加(図表10)を背景とした活発な個人消費にも支えられて、非製造業が急成長し、当時は内需主導型成長が実現したという見方もありました2。』

で、次のパラグラフになりますが、

『しかし、1990年代前半にバブルが崩壊し、企業は雇用・設備・債務の「3つの過剰」3を抱えることになりました。』

まあ事実関係はそうですけど、そのバブルが崩壊したのは何でですねんとかそういう話が無くて、何か天災みたいな言い方になっているのが引っ掛かりますな。3つの過剰を抱えたのって、企業が過大投資をしたから過剰になったんでしょと思う訳でして、何ちゅうかこの途中全部割愛でバブル崩壊がアクシデントみたいな話の展開はちょっと引っ掛かりますなあ。

『雇用慣行を含む働き方の改革はなかなか進まず、多くの企業は業績悪化に対して人件費・償却費などの固定費削減や人件費の安い新興国への生産拠点シフトなどのコスト構造改革で対応し、付加価値を高める事業ポートフォリオ改革は先送りされました。』

とのことですが、そもそも過剰を抱えている状態なのに付加価値を高める投資とかしてる場合じゃないのですから、それって問題は「付加価値を高める事業ポートフォリオ改革は先送りされました」の原因を作ったその前の過剰投資とは何だったのかという話なんじゃなかろうかと思うのですが、まあ先に進みます。

『こうした状況に更なる円高も加わり、1990年代後半からデフレが進行しました。ここで、かなり単純化した形ではありますが、企業からみたデフレの影響を考えてみたいと思います(図表11)。』

・・・・・・この図表11『企業からみたデフレの悪循環と望ましい好循環』なんですが、PDFだと27枚目(図表がやたら豊富で表紙含めて37枚もあるのよこの金懇挨拶要旨)になりますが、何ちゅうかこの図表の言わんとする事は以下で説明しているから言わんとすることは読み取れるのですが、一見すると風が吹けば桶屋が儲かっているような図に見えてしまうのでもう少しこう何というかですなあ・・・・・・・・・

まあそういう図なので説明が以下のようになる。

『約15年に及んだデフレのもとで、日本企業は海外経済の成長に伴う輸入原材料の価格上昇や新興国からの低価格品の流入などに直面し、売上や利益が減少し、生産性が低下しました。』

から説明が始まるんですが、そもそも図表11の左上肩に書いてあるように、問題はデフレなのではなくて「内需低迷→デフレの悪循環」であって、デフレは結果なんじゃなかろうかと思うのですが、なんかこう置物チックな図表と共に、デフレが原因のような説明になっているのが中々ポイントが高い(褒めている訳ではない)。

『そこで、固定費削減策が実行されましたが、終身雇用慣行などから雇用維持が優先され、付加価値を高める事業ポートフォリオ改革は先送りされ、生産性の低迷により、賃金は抑制されることが多かったように思います。また、設備投資や研究開発投資なども絞らざるを得ず、魅力や競争力のある新製品・サービスの創出遅延に繋がりました。この結果、食料品のような先送りできない生活必需品以外では需要が低迷し、一段と価格を下げて需要を維持する悪循環が生まれました。さらに、デフレの長期化により、将来の売上や利益の拡大期待が低下し、デジタル活用等のイノベーションへの投資余力も低下しました。』

デフレが原因のような説明になっていますね!

『この間、家計をみますと、従業者数の7割を占める中小企業の労働者の多くは、新興国とのコスト競争や、少子高齢化・生産年齢人口減少といった構造問題を抱えて力強さを欠く内需に直面し、賃金が上がり難い状況に陥り、海外経済の成長の恩恵を得難くなりました。そして、家計は終身雇用慣行や年功序列型賃金体系の中で賃金が持続的に上がるという期待が持てず、将来への不安が募り、不確実性に備えるべくリスク性資産への投資を抑えて現預金を保蔵する構造が定着したように思います。』

この最後の文ですが、「家計は〜将来への不安が募り、不確実性に備えるべくリスク性資産への投資を抑えて現預金を保蔵する構造が定着したように思います」ってなっているのですが、普通ここの部分は「リスク性資産への投資」じゃなくて「消費」じゃないの???って思うので、物凄く違和感があるのですけれども、この部分も次のコーナーの伏線なのでそこで回収されます。乞うご期待。

『このように、約15年間という長期にわたるデフレのもとで、企業と家計の双方で変革や投資が先送りされ、変革の速さで世界に後れをとり、生産性の低迷に繋がったと思います。』

いやだから図表11でも「内需低迷→デフレの悪循環」って言ってて、問題はデフレよりも内需低迷であってデフレはその結果じゃなかろうかと思いますけどまあ良いです。


・グローバル化の恩恵を企業が家計に回していないのがアカンという指摘を華麗にスルーしてますね

次の小見出しが『(2)グローバル化の進展と家計の収入構造』であります。

『その後、2013年以降の大胆な金融緩和や機動的な財政政策により、こうしたデフレの流れは止まりました。そして、海外経済の成長を取り込むため、サービス輸出であるインバウンド需要の促進策などが講じられ、サービス輸出のプレゼンスが高まりました(図表12)。』

図表12を見ますとサービス輸出、以前よりは高まっているけど、「プレゼンスが高まりました」っていうほどメインドライバーになっているようには見えませんがまあ物の言い方の問題だからスルーしまして、

『民間でも、リーマンショック以降、製造業の大手企業が海外需要の取り込みを目的とした海外進出を強化したほか4、2013年頃からは非製造業の大手企業を含めてM&Aの活用が進み、対外直接投資が一層拡大しました(図表13)。こうした動きなどを反映して、第一次所得収支(海外への投資に伴う収支)の黒字幅は拡大し、現在も経常収支黒字の主因となっています(図表14)。』

さいですな。

『痛みを伴う構造改革を行いながら進めてきたグローバル化が奏功し、大手企業は、連結業績の改善や海外子会社からの配当金・ロイヤリティの増加などを通じて海外経済の成長を取り込めるようになりました。そして、連結業績の成長が株価に反映されるとともに、株主への配当としても還元されています。このような企業の構造改革努力の成果が現れ、日本の上場企業の企業価値を表すTOPIXは、世界の名目GDPのトレンドに沿って動く傾向が強まっています(図表15)。』

イイハナシダナー。

『この間、日本の家計の収入構造をみますと、雇用者報酬は2013年頃から緩やかに増加していますが、それまでの減少分を取り戻す程度となっています(図表10)。利子収入は1991年をピークに2005年まで減少を続け、その後も低迷しています。配当収入は緩やかに増加していますが、利子収入の減少分を補うほどではありません。』

ですねー。

『こうした収入面の変化や社会構造の変化などを反映して、家計の可処分所得は1998年をピークに低迷してきましたが、2010年代前半から漸く改善傾向に転じました。』

社会構造の変化、とか外部要因のような説明をしているのですが、さきほどは企業様が海外の成長を取り込んでいるから企業価値(株価)が世界の成長を取り込んで上昇している(キリリッ)って話をしていた訳でして、しかも前半の失われた20年に至る前の好循環時代の説明では、「企業は製品輸出を通じて海外経済の成長を取り込み、その恩恵を国内労働者の雇用や勤労所得の持続的な増加という形で家計に還元しました。」って仰せだった訳でして、社会構造の変化、とか外部要因みたいな言い方じゃなくて、企業が労働分配を渋っているっていう話なんじゃないですかねえと思ってしまいました(個人の感想です)。

『これに対して、米国では雇用者報酬、利子収入、配当収入が全て増加しており、2020年の可処分所得は1990年代前半の3倍以上に達しています。ドイツも、利子収入は緩やかに減少していますが、雇用者報酬や配当収入がそれ以上に増加し、可処分所得は1990年代初の2倍程度に達しています。』

とのことですが、図表10を改めて見まさうと、どう見てもこの差分のドライバーは雇用者報酬にしか見えないんですけれども、何でこういう話になっているかというと、この先の話の伏線になるのでありました。


・雇用者報酬が上がらないなら株や投信に投資すればいいじゃない

ということでこの『4.日本経済の構造変化』の収束に向かって伏線が回収されていきます。

『こうした中、日本の家計が保有する金融資産は、1990年度末の1,017兆円から、「失われた20年」の間も増加を続け、2020年度末では1,946兆円と約2倍になっています。しかし、内訳の推移をみますと、現預金と比べて株式や投資信託の伸びは鈍く、金融資産構成の日米欧比較でも、日本は現預金が54%と突出して高く、株式や投資信託は合計14%と低いことが分かります(図表16)。この結果、日本の家計所得において雇用者報酬が占める割合は極めて高くなっています。』

と来ましてこの次に伏線が盛大に回収されます。

『先ほども申し上げましたように、グローバル化を進めた企業の業績には海外経済の成長が取り込まれていますので、家計がそうした企業の株式やそれらを組み入れた投資信託への投資を徐々に増やしていけば、配当等の増加を通じて、海外経済の成長の恩恵を中長期に亘り家計の可処分所得に取り込むことができます。』

なるほど。

『他の条件を一定とした大雑把な試算ですが、日本の家計が金融資産の2割、約400兆円を現預金から株式や投資信託に追加投資し始めた場合、配当利回りを1.6%とするといずれ毎年5兆円規模の可処分所得が家計に加わり、可処分所得を2%程度押し上げる計算となります。そして、これが個人消費に回れば、国内経済の好循環に繋がることが期待されます。』

キターーーーーーーーー!!!

えーっとですね、アグリゲートすりゃそうかも知れませんが、そもそも株式投資だの投資信託だのに生活費をぶっこむわけにはいかないのでありまして、そういう余裕のない家計の可処分所得は上がらんのでありますので、それって意地悪い言い方すると格差拡大系のお話になるんすよね。

・・・・・でまあここでああ成程!と思ったのは7月会合の主な意見。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2021/opi210716.pdf

こちらの2ページ目に、

『・家計が、適切なリスク分散と長期保有の視点のもとで、現預金の一部を株式や投資信託に投資することで、配当収入などを通じて海外経済の成長を取り込むことが期待できる。』(この部分だけ直上URL先の2021年7月決定会合主な意見の2ページより引用)

というのがあって、唐突に出てきたもんだからまさか新しく就任された審議委員様が我田引水でもおっぱじめたのかと密かに心配していたのですが、今回の金懇テキストを読んで、ああ良かった他の人の意見だったわ、と安堵しました。元々そんな我田引水を端からおっぱじめるような御見識の方では無かろうと思ってはおりましたけど、まあ確認できて安心安心。


ということで中村さんの金懇テキストに戻ります。さっきの続きね。

『日本でも、他の先進国と同様に、現預金として保蔵されている一部を振り向ける形で、適切なリスク分散を図りながら投資信託などに投資し、長期保有の視点で配当・分配金を通じて安定収入を得る資産構造への変革意欲がもう少しあっても良いと思います。』

雇用者報酬を米国やドイツ並みの勢いで引き上げてからそういうことは仰っていただきたいものです。

『過去、金融市場の混乱と株価の急激な下落は幾度も生じましたが、多くの上場企業は、これらを乗り越えて、グローバル市場での地歩を固めながら、持続的な成長を追求しており、それが株価にも反映されるようになっていると思います。』

どうちて雇用者報酬に反映されてないんでちゅかねー。

『現在、過去のバブル崩壊のトラウマが少ない若年層を中心に投資信託などへの関心が高まっているとの声が聞かれており、2020年度末の個人株主数(延べ人数ベース)は前年度比308万人増え、7年連続で増加するなど、これまで根強く残っていた現預金志向に変化の兆しが現れています。また、企業が運用する年金基金のうち従業員自身が運用商品を選ぶ確定拠出型年金(企業型)の加入者数が約750万人5まで増加するなど、労働者が金融商品を自ら選択する場面が広がっています。そして、金融リテラシーの高まりを受けて、長期投資を前提に短期的な運用リスクを受け入れてリターンを高めようとする動きも広がりつつあり、確定拠出型年金の利回りが確定給付型年金の利回りを上回るようになりました。ESGなどへの関心の高まりとも相俟って、現預金として長らく眠っていた家計の金融資産が日本の経済成長や社会変革に貢献する度合いを高めるとともに、企業も持続的な成長と企業価値の向上を実現する経営戦略を強化し、金融業界もこうした流れを一層後押ししていくことを期待しています。』

ということでこのコーナーでさっきまでの伏線が回収されています。いやまあ勿論仰せの向きは部分的には誠に仰る通りではあるのですが、雇用者所得が増えないなら株式や投資信託への投資をして収入を増やせばいいじゃないって言われましてもですなあ、と労働者側のアタクシは思う訳で、なんか「言ってることは仰せ御尤もなのですが、マクロ政策に携わる人の話としてはちょっと違うんんでネーノ」って感じで、もっと企業の皆さんは(金懇だから出てるのは労働者じゃなくて雇用してる側ですわな)労働分配を高めて内需の拡大に貢献して頂きたい、みたいな話に持って行って頂きたかったなあ、と思いましたが、まあ面白かったので今後も是非この調子でお願いいたします。


なお、時間が無くなってしまいましたので、DXと気候変動の所は会見ネタと同時に成敗する所存ですが、場合によっては割愛いたします。




2021/08/25

お題「基調的な物価とかのメモ/ラガルド総裁会見の「質問の筋を外して回答」攻撃が気になってきたのでという虫干しネタ」

東京煽りンピック・・・・・ってダジャレに加齢臭が強すぎですいませんすいません。
https://nordot.app/802745250993684480
歓迎会への批判「理解できない」
組織委幹部が反論、40人で会合
2021/8/24 12:56 (JST)8/24 19:35 (JST)updated
コピーライト 一般社団法人共同通信社

『東京五輪・パラリンピック組織委員会の高谷正哲スポークスパーソンは24日の記者会見で、国際パラリンピック委員会のパーソンズ会長や理事を招いて23日に東京都内で開いた歓迎会を巡り、新型コロナウイルス感染拡大の状況下での集会は飲食を伴わなくとも不適切ではないかとの指摘に対し「質問の意図が全く理解できない」と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

下級国民の質問する意図が上級国民のワシらには全く理解できない、とは金メダル級の煽り文句ですが、おまけに今回は汎用性の高い話法まで提供するのが素晴らしい。

『高谷氏は「(組織委、政府など)それぞれのパートナーのトップが直接あいさつする場は、今の社会の慣習においては適切な範囲内の対応と強く考える」と反論した。』

>今の社会の慣習においては適切な範囲内の対応と強く考える

・・・・・・・・・これは汎用性が高い!!!!

#サムネ見る感じだと結構密にみえるんだけどな〜人数絞ってオンライン併用できないのかね〜


〇幾つかメモメモ(基調的なインフレ率とかジャクソンホールとか)

・基調的なインフレ率がちょっと上向いてまいりました!!!!!!(なお水準ェ・・・・・・・・)

さて、
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動
(1)刈込平均値・加重中央値・最頻値

こちらを見ると上昇キタコレな図になっておりますが、何せこのグラフよく見れば(よく見なくても分かりますが)上下のスケールが1.5%までとなっている、というそもそもお前ら2%物価目標やる気あんのか状態のスケールに設定されておりまして、変化を見やすいのは結構なのですが、そもそもグラフの上を突き抜けないと2%じゃない、というのを見せられると全米が泣いたという感じですな。

エクセルの方の数字を落としてきます。例によって左から刈込平均、加重中央値、最頻値で、今回から2021年以降の数字が2015基準年ベースのもので出されています(のでそこでスペース入れました)。

Dec-19 0.3 0.0 0.2
Jan-20 0.3 0.0 0.3
Feb-20 0.2 0.0 0.3
Mar-20 0.1 0.0 0.2
Apr-20 -0.1 0.0 0.3
May-20 0.0 0.1 0.3
Jun-20 0.1 0.1 0.3
Jul-20 0.0 0.1 0.1
Aug-20 0.0 0.1 0.1
Sep-20 -0.1 0.1 0.2
Oct-20 0.0 0.1 0.3
Nov-20 -0.1 0.1 0.1
Dec-20 -0.3 0.0 0.1

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1

・・・・・刈込平均を見ると直近でホイホイと上がっているように見えるのは結構なのですが、そうは言いましても0.2%ぽっちかよというのと、刈り込むと急にプラテンとか携帯電話どんだけ悪党なのかという感じ(なんですよね??これって????)ですし、そもそも論として携帯電話の物価算出方法がなんか間違っている(大体からして海外の携帯電話関連ってそんなに悪さしている話を聞いたことが無いんだが)んでネーノって言いたくなりますね。

ただまあ最頻値とか加重中央値とか思いっきり地蔵モードになっていて、まあ何と申しますかな数値になっているのは何も変わっていない訳で、今度の9月会合の記者会見ではどこかの記者様誰でも良いんですけれども、「米国は物価上昇してどうしようという話をし、欧州はまだ目標に行かないとは言うものの見通しが1%台半ばで推移しているのですが、なぜ日本の物価だけ圧倒的に低いんでしょうか」って質問して欲しいですし、大体からしてポンコツドテカボチャ政策委員共はこの件についてはどのように考えているのか教えて欲しいわ。

ま、刈込平均が上向きになっているからこの調子で何とか、って感じですけどどうなんでしょうかね。


・ジャクソンホール

URLがクッソ長いので例によってハイパーリンクが途中までになっていますがちゃんと飛びます
https://www.kansascityfed.org/newsroom/2021-news-releases/Kansas-City-Fed-to-host-Economic-Policy-Symposium-online/
Kansas City Fed to host Economic Policy Symposium online
Due to the recently elevated COVID-19 health risk level, the Federal Reserve Bank of Kansas City will host its 2021 Economic Policy Symposium virtually on Friday, Aug. 27.
August 20, 2021

へいへいそうだっか。まあシンポジウムのお題はとっくに出ていましたが、すっかりネタにするのを忘却していたのでメモっておきます。なんかこう忘却してるとそのうち「はいはいおじいちゃんリーマンショックの武勇伝はさっきもしたでしょ」とか言われる老害一直線ぽくって正直ビビってる。

『KANSAS CITY, MISSOURI - Due to the recently elevated COVID-19 health risk level in Teton County, Wyo., the Federal Reserve Bank of Kansas City will host its 2021 Economic Policy Symposium, “Macroeconomic Policy in an Uneven Economy,” virtually on Friday, Aug. 27.』

ということで、今年のお題は“Macroeconomic Policy in an Uneven Economy,”ということで、コロ助の影響が人によってチャイますがな、という状態の中でのマクロ経済政策、って話ですが、まあそういう話をするんでしたら、じゃあアンイーブンだから弱い方にフォーカスしたマクロ経済政策をやったとして、その場合って、緩和的なマクロ経済政策が特に資産価格を必要以上にブーストすることになって、それは金融不均衡のリスクを高めるんじゃないか、とかそういう話でもしてくれる人出て来るかなーってのはちょっとだけ期待しています(のだがたぶんそれは今のマクロ経済政策に真っ向相反するのでそんな話は出てこないだろうなあと思う)。

ほんらい、アンイーブンな部分は分配政策などで賄うもので、マクロ経済政策自体はあくまでも全体のバランスを考えるべきであり、弱っている部分に過度にフォーカスした結果格差拡大とか金融不均衡発生とかになるんでネーノ、などという話を金融市場の中の人間が言うのもアレですけど、まあそんな事は思うんですけどね。

でもってこのジャクソンホール、相変わらずなのですが式次第が出るのがギリギリなのですが、パウエル議長の講演のお時間だけ先行して公表しているのがチャーミング。

『Federal Reserve Chairman Jerome Powell’s remarks will be livestreamed to the public at 9 a.m. CT/10 a.m. ET on Aug. 27 via the Kansas City Fed’s YouTube channel at External Linkwww.youtube.com/KansasCityFed. Invited attendees will participate in an online academic symposium following the speech.』

ということで、パウエル議長のお言葉は米国東部時間の27日午前10時からカンサスシティ連銀のユーチューブで見れるというお告げだけは先に来ておるな。

『The program’s full agenda will be available at External Linkwww.KansasCityFed.org at 7 p.m. CT/8 p.m. ET on Aug. 26. Continuing with past practice, conference papers and other materials will be posted as they are presented during the event. After the event, a transcript will be posted on the Bank’s public website.』

式次第は米国東部時間の26日午後8時に出るそうです、どういうお題が出るのかだけは見ておくかな。


〇ジャクソンホール正座待機なので夏休み超虫干しネタの先月のラガルド会見の続きですがやっぱ手詰まりなんだろうな

引き続きのこれですサーセン。
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2021/html/ecb.is210722~13e7f5e795.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 22 July 2021


・住宅価格上昇に関する質問がECBでもあったんですがラガルド総裁の答えが蒟蒻問答にも程がある

こんな質問がありました。

『(前半割愛)The second question was on house prices, which are rising very quickly in the eurozone; I think the fastest pace in 15 years. Is that something that's concerning you, is that something you should be thinking about or doing something about given also your new focus on owner-occupier housing costs?』

ユーロゾーンでの住宅価格上昇が過去15年最大の勢いでホイホイ上昇しているそうなのですが、このことについてのご懸念とかありますか、帰属家賃を考慮に入れた物価判断をするって先日言ってましたが何かその辺で考えはありますの?という質問なのですが、

『(前半割愛)Your second point was about the owner-occupier housing costs, and on that page I just want to signal that I have written to President von der Leyen to ask her to please commission Eurostat in order to accelerate the work that they do in order to capture owner-occupied housing costs for the future so that we have an index that includes the owner-occupier housing costs together with other costs, and certainly to take that into account better in the index. In the meantime, we are also taking into account those costs using alternative indexes when available. This is a matter that we discussed a little bit as well in the course of our meeting today.』

・・・・・住宅価格が物凄く上がっている件についてのコメントを求めているのに、質問した人が先般の帰属家賃を物価判断に加える云々に言及したことを捕まえて、物価統計の話に完全に持って行ってすっかり回答を誤魔化しております。

昨日引用したあたりでもそうなのですが、当初はそうでもなかったような気もするのですが、最近のラガルド総裁会見で特に思うのは、こういう感じで質問に対してまともに答えないで、斜め上の話をおっぱじめる、という話法がすっかり定着している辺りが気になります。まあ質問にまともに答えないというのは我らがの黒ちゃんも似たようなもんなのですが、黒ちゃんの場合は斜め上の答えではなくて想定問答丸読みの答えをしてくるので、ラガルドはんよりもマシなのかも知れん、というように思えるくらいにここの所全般的に回答が不誠実感満載になって参りましたな(個人の感想です)。

ただまあちょっと分かりやすいのは、ラガルドはんの場合は、答えに困る質問に対しては質問の筋を外すどころか斜め上から回答してくる、という傾向にあるのではないか(個人の感想です)と思われるところでして、いやどうせこの住宅価格上昇、すなわち金融不均衡ネタって、毎度おなじみドイツ連銀とそのお仲間たちが大好きそうなネタですから、この点を梃子に話が行われていても全然不思議ではないというか寧ろ話をしてない方がバイトおじさんらしくない、というレベルだと思うの。

然るに、住宅価格急騰に関する話をおっぱじめると、当然ながら金融緩和がろーわーふぉーろんがーの弊害という話に帰着しますので、そういう話には死んでも触れないようにする、というラガルドさんの気概が感じられる斜め上の回答という感じでして、いやまあお気持ちは分かるのですが、こんな感じで斜め上の回答ばっかりしていると、いずれしっぺ返し来るでしょどこぞの大甘記者会見とは違って、と思うのでした。



・フワッとした語句に対する定義づけを求めて来る記者の皆さんグッドジョブ

今回の会見で二つほどそういう質疑があったのは面白かったです。

『(前半割愛)Secondly: at least one member of the Governing Council has gone on record recently as saying that the medium term is not two or three years, but rather that it's state dependent. Would you agree with that?』

いつも言ってる「medium term」の定義づけについてですが、まあこれはそこまでゴリゴリとは聞いていないのですが、この質問で聞いている「it's state dependent」に同意するか?ってのも割と諸葛孔明の罠っぽい質問に思えます。

『(前半割愛)On the medium term, yes. We are playing with two different times, if you will.』

ほほう。

『A lot of what is anchoring our forward guidance is actually the projection horizon. So we are talking about, depending on when you start the clock, three or a little over three years. That's the projection horizon and that's where we have set our three legs, the three conditions, the three criteria to trigger our decision. 』

『The medium-term horizon is probably a little beyond that and is also helping us take into account other matters that have nothing to do with inflation calculation, but which have to do with employment, with climate change, with factors that we have to take into account, but that are not specifically driven to inflation, and our inflation forecast.』

金利のフォワードガイダンスで示している判断基準としてのミディアムタームというのは、政策金利引き上げ判断をする条件の中で示しているミディアムタームであって、物価見通しとか経済見通しに関わる期間なので2〜3年という話しだわな、というのを言ってますが、後半のはまた話を煙に巻く攻撃になっていて、物価見通しとは別の文脈、即ち雇用や気候変動など、我々が物価以外のファクターで情勢判断をする際には、そのタイムホライズンが物価とは違うので、その場合は違いますよ、という蒟蒻問答な答えをしています。

まあ質問者の意図は質問者じゃないと分からんのと、不覚にもこの質問者がリファーしている「at least one member of the Governing Council has gone on record recently as saying that the medium term is not two or three years, but rather that it's state dependent.」の文脈がイマイチ不明なのですが、ただ「it's state dependent」って言ってるのは、情勢判断をする対象によって違う、という意味で言ってるんじゃないように見えるので、質問者の意図を外して回答する攻撃をぶっかましているような気がしますね。


別の人からこんな質問が。

『Just a quick question on the APP: was there any discussion around whether that also should be more strongly linked to the forward guidance alongside the forward guidance on interest rates?』

前半はまあどうでもよいのですが、回答の方が前半後半混ざってしまっているのでついでに引用しておきます。

『Then to your point about the transitory inflation: can I please ask for a little more information on what is meant by inflation being able to go moderately above its target, and if there is any sense - as the previous question asked - about what happens if it stays below target for too long? Is there a point when that also needs to lead to more action?』

transitory inflationの定義について聞くとは割とあくどい質問(褒めてます)。

『Lagarde: We did not discuss any relation between APP and interest rates, and we really focussed our exercise on the work on our revisiting and revising the forward guidance on ECB interest rates. So this matter was not up for discussion today.』

でもって後半部分。

『So there is the transitory period and inflation moderately above target. That is often referred to as overshooting, so what we are saying here is that we accept the fact - this is what is meant by this may also imply - that there will be moderate overshooting. 』

『Moderation is a factor of judgement yet again. I am not going to venture in any particular numerical assessment of what is moderate overshooting as opposed to excessive overshooting. I think what matters is that we accept it. It is incidental. It happens. We are not deliberately overshooting but we recognise that the especially forceful or persistent policy decisions that we make may imply moderate overshooting.』

まあ決め打ちできないとかそういうのは分かるんだが、「ジャッジメンタル」で済ませてしまっているのが中々豪快な回答でして(個人の感想です)、パウエルとかは「一時的なファクターによって起きてその後そのファクターが消えたら戻ってしまう」っていうような説明をしている(ま、米国の場合は実際に今「モデレートなオーバーシュート」をしているので説明せざるを得ない、というのはあるけど)のですが、せめてその定性的な話位しろよと思うのですが、「そういうことも起こり得ます。それはその時の情勢に寄りますのでその時に判断します」みたいな回答しかしてなくて、それでガイダンス文言にはモデレートなオーバーシュートはOKって入れてるんだからナンジャソラって感じですね。

まあこの点についてもうっかり何かを言うとドイツ連銀に攻撃を食らうから定量どころか定性的な話もしない、という気概は伝わるのですが、何ちゅうかもうそれで良いのか???って感じの回答をしておりますが、どこまでこれで押し通して行けるのか、今後この手の「定義は何だよ明確化しろ」質問がどの程度飛ぶようになるのか、ってのも見ものになるかな、と思っています(思いっきり個人の感想ですが)。








2021/08/24

お題「7月のECBは金利ガイダンスは入れたけど結局全ての判断を9月の経済物価見通し改定まで先送りしてたという事で」

どうしてこんなのばっかり人選してくるのか。
https://www.asahi.com/articles/ASP8R6H1XP8RULFA01H.html
政府の規制改革会議議長に夏野剛氏 五輪巡り不適切発言
2021年8月23日 19時53分

そもそも夏野という時点で控えめに申し上げて論外おぶ論外なのですが、直近にこれをやったばかりなのを選んでくるというセンスが凄くて頭がクラクラする。

『夏野氏は7月に出演したインターネットテレビの番組で、子どもの運動会や発表会が無観客なのに東京五輪だけ観客を入れたら不公平感が出てしまうとの意見に、「クソなピアノの発表会なんかどうでもいい。それを一緒にするアホな国民感情に、今年選挙があるからのらざるを得ない」などと発言。「そのうち誰かが金メダルを取ったら雰囲気変わると思います」と述べた。』(上記URL先より)


〇フォワードガイダンスとPEPPの質疑だらけだった先般のラガルド会見を今更ジロー

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2021/html/ecb.is210722~13e7f5e795.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 22 July 2021

最早先月のネタになってしまっておりまして甚だ面目ないのですが、結局の所ECBは何をどうしたいのか、というのを確認する企画の巻でありまする。

・ガイダンスで「見通し期間中に2%」とあることと物価見通しの齟齬に関するツッコミとその回答

3番目の質疑から参りますが(最初のはこの前ちょろっとやりましたので)。

『Your new 2% target was quite front and centre when it came to your plan for interest rates today. You said that inflation should be to 2% well ahead of the end of the projection horizon, but your last projections in June actually saw inflation moving away from this 2% target. So what are you going to do about that? Doesn't this imply that a more forceful response is needed?』

金利のフォワードガイダンスの中で、物価見通しが「well ahead of the end of the projection horizon」の時点で2%に到達し、というのがありますし、2%目標というのは2%が上限じゃなくてセンターである、という認識を示している、というのも分かったのだが、と来まして、6月のECBのスタッフ見通しでは、2021年が1.9%、22年が1.5%、23年が1.4%となっている、という事実を踏まえて質問をしていて、利上げの条件がそういうものだったら、今のようにドンドン2%から遠ざかるという見通しの状態だったら追加緩和策を実施するのが筋なんじゃないですかねえ、というイヤミ質問。

『Secondly, again on this well ahead of the end of the projection horizon: you just mentioned that that means about the midpoint of your projection, so are we right to be looking more at the second year of your inflation forecasts rather than the first? Is there an understanding about what this actually means?』

こちらもガイダンスのコミュニケーションの問題で、今回のガイダンスの「well ahead of the end of the projection horizon」の時期が見通し時期の中央辺り、とのお話だとすると、ワシらは物価見通しについて1年目よりも2年目の方を重視してみて行くべきってことですか?という確認みたいな質問。

ラガルドさんのお答え。

『Lagarde: Well, I think it means exactly what is written in that statement. I know that it's going to take a little time to unpack it and really understand all the subtlety and the details of it, but it's pretty straightforward. We want at least 2% at the end of our projection horizon, which by the way varies over time. We do forecast '21, '22, '23 but as you know it slips into yet another year when we get closer to the end of the first year. So in December '21 we will add an extra year, so it's a little bit misleading to say your first or your second year - which is why I prefer to adopt the midpoint reference in terms of indication. It doesn't mean to say that it's cast in stone, because, by and large, the Governing Council will use its judgement to apply those criteria which I have mentioned.』

先にミッドポイントの方に関する答えをおっぱじめましたが、その中央云々ってのはあまり重要な話ではなくて、見通し期間中に2%を維持できる、という状態が必要である、というお話であって、別に1年後とか2年後とかの2%がピンポイントで重要だという訳ではない、と蒟蒻問答をしております。

『On inflation: let me remind you what we are doing at the moment, and that is really the second part of the discussions that we had today. We have not changed in that respect, and we are still looking at making sure that we can preserve favourable financing conditions to all sectors of the economy. We would counter any tightening that would counter what we want to realise in terms of inflation.』

言ってることがどっかのポンコツ中央銀行みたいで笑えるのですが、「現在の金融政策による緩和的な金融環境を維持すべきである、タイトニングになるような事が起きないようにするのが、我々の物価目標達成に向けて重要である」とか何とか仰せでして、物価が先々下向きなのに何で追加緩和しないの?という質問に対する答えになってないですな。

とは言えそれだけで手ぶらという訳に行かないので更に説明が続き、

『What do I mean by that? We want to alleviate the downside impact of the pandemic on our inflation target, and that's what we are aiming for with our PEPP. PEPP was for the emergency period of the pandemic. We are still in that period of crisis, which is why PEPP is still ongoing. We believe that any particular exit would be absolutely premature in that respect, but our goal is to come back to that pre-pandemic moment and the inflation target as we had it at the time in our forecast.』

今何をしているか?と言えばPEPPをしております。PEPPはパンデミックによる物価のダウンサイドを回避するものです、でもってパンデミックが続く中ではPEPPが必要で、これが継続している間は早まった出口政策とかとてもとても。

などと供述をしており、追加緩和の事を誤魔化したわけですが、どこぞのポンコツ中銀のポンコツ記者会見とは違いまして、無慈悲なツッコミが飛んでくるECBの会見なので、後の方でフォローアップ質問が飛んでくるのが実に素敵である。だいぶ後の方の質疑に飛びます。


『My first question: I wanted to follow up on what Carolynn was saying earlier; that your projected inflation will be 1.5% or lower next year and the year after. Given your new forward guidance, doesn't that imply that you should be expanding your monetary stimulus straightaway, or soon? Or is it that you think that the new forward guidance itself will be enough? Should there be something extra?(後半割愛)』

全力で直球質問をぶっこみに来ましたが、物価見通しが先に行くと徐々に2%から離れて下がっていく、という見通しを出しているんだったら、それって今の政策では足りないって事を意味していませんか??何で追加措置しないんですか??との更問登場である。

・・・・・・まあ何ですな、どこぞのポンコツ中銀の場合はちゃんと「先行きに物価が上がる」という図を嘘八百でも出してくるのでこうはならん(ただし早期達成の看板との整合性は問われる)のですが、確かにこのECBのスタッフプロジェクションは見せ方に問題があるんでネーノという感じはする。どうせ2023年の物価見通しなんて鉛筆舐め舐めなんだし(個人の偏見です)、「適切な政策を取っていくことによって長期的には経済は長期均衡に収斂する」というDEGEだか何だか知らんけど、まあそういう屁理屈を使えば、長めの方の見通し数値って基本的に長期均衡水準に収斂するような図になると思うのですが、ECBの場合は何であんなトンチキな物価見通しを出しているんでしょ(手前から積み上げ方式で出しているのかね?)とは思います。

でもってそれに対するラガルドはんのお答え。

『Lagarde: First of all, I would not anticipate what our inflation forecast will be next year, and the year after; we know well that forecasting is a tricky game - not a game actually - but it's a tricky exercise.』

いや確かにそうなんですが、先行きの物価見通しを予想するのはトリッキーゲームもといトリッキーな学習であるって何ちゅう身も蓋もない説明。

『I would certainly not anticipate. For the moment what we have is a forecast at the end of '23 of a sizeable 1.4%. We'll see what that is in September and I think that we have to take each quarter of projections as they come and then adjust what we need to adjust using all our instruments. 』

確かにこの前の見通しはそうですが9月にはまた見直しが、っていや何じゃその回答。

『Yes indeed, we believe that forward guidance is going to play a role in the set of tools that we have available, some of which we are using extensively at the moment. But as I said also, we will continue to determine by this joint assessment whether financing conditions remain favourable in order to support the recovery. We will look jointly at inflation and see what movement there is to be seen.(後半割愛)』

でもって結局追加緩和をしないのか、という質問に対しては金融環境が適切に緩和的かどうか、などのような総合的なアセスメントを行って判断して行きますよ、という全然回答になっていない回答をしてお茶を濁しております。

まあ何ですな、この点に関してアタクシが勝手に妄想するに、そもそも利下げがもう出来ないという認識の中で、追加緩和ツールが碌すっぽ無いので手の打ちようがない、ってのと、ドイツ連合軍が追加緩和とかお前は何を言ってるんだと強硬に反対しているんではなかろうか、というようなのがあって、ラガルドさん的にもムニャムニャと蒟蒻問答を続けるしかない、って状態になっているんだろうなあ、とか妄想しております。


・金利が地蔵で追加緩和手段も出てこないとなるとPEPPの質問が多くなるわけですが

んな訳でガイダンスの質問は「いやガイダンスは分かったのだがお前の物価見通しだったら何で追加緩和をしないの」という見通しとガイダンスの齟齬の話と、それに対する蒟蒻問答ぶりが目立ったという感じでございます。

ガイダンスの方は「一時的な物価上昇だけでは利上げ判断をしません」っていうのを織り込もうとした結果、却って物価見通しの出し方が難しくなっている(能天気にDSGEモデルぶん回して〇年後には長期均衡水準、って出しちゃうとガイダンス文言との整合性上ややこしい事になり兼ねない)なあと思いましたが、まあいずれにせよガイダンス文言との整合性はさておき、動かんというのだけは見えたという感じで、そうなるとPEPPの話が喫緊のネタになりますわな。幾つか質問があったのですが適当に拾ってみます。


まずは2番目の質問になりますが、

『(前半割愛)Then I have a question on whether you have discussed PEPP and the potential change in the programme once it is expiring by the end of March, so whether you think it's needed that it has to transition into some sort of other programme.』

3月にPEPPの期限が来ますが、衣替えをして継続する、というようなプランは無いの??と来ましてそのお答え。

『(前半割愛)On the rest: essentially I would summarise it by steady hands. The use of our instruments such as PEPP, APP, has been steady hands because we conducted the joint assessment that you are all now familiar with, which is to assess the financing conditions and determine whether they are favourable all the way through from market interest rates all the way to household loans. Then we take a good look at inflation and its various components, so based on that joint assessment, which essentially is broadly in line with what we saw in June, we decided steady hands to keep this significantly higher pace of purchases compared with what we did earlier But PEPP, that was not discussed as a programme, and anything like that would be totally premature. It was not an issue for debate.』

久々にこの訳語に困る「steady hands」文言を見ましたが(汗)、APPもPEPPも金融環境の緩和のツールとして機能していまして、金融環境全体を考慮して政策運営しています云々、という話をしておるのですが、現状では6月の見通しに概ね経済物価は沿って推移しているので、現状の「significantly higher pace of purchases compared with what we did earlier」を維持するのが適切、と言う話をするにとどまっており、先行きの話に関しては時期尚早で片付けております。


ちょっと先に中々意地の悪い質問があってワロタ。

『(前半割愛)The second question: we have this affirmation that the PEPP will be conducted until the Governing Council judges that the coronavirus crisis phase is over. But what is the level of knowledge of pandemics about central bankers that would allow them to say one day that the pandemic is over? Which criteria will you use to assert that, yes, it is over?』

PEPPの期間として「the Governing Council judges that the coronavirus crisis phase is over」っていう話だが、お前ら感染症の専門家でも何でもないのにどうやってそれを判断するの????と来ました。

『(前半割愛)Now, you're right that the decision that was made on 18 March in relation and that actually constituted PEPP indicates that the PEPP, the pandemic emergency purchase programme, will continue until at least March '22, and such time when the Governing Council determines that the pandemic crisis is over.』

来年の3月22日までは少なくとも継続しますが、このころには感染症危機は終了してるでしょ、という見通しになっております。

『 Now, we are not doctors. Many of us are economists, not all actually; some are even lawyers by background but we are clearly informed - as you are - by scientists, by experts, and by the observation of facts when it comes to employment, manufacturing, services, trade in the economic translation of what the crisis is about.』

途中に「we are clearly informed - as you are -」と「as you are」を入れているのがイヤミに対するカウンターアタックですね!!!

『That's how we will proceed and our hope collectively is that thanks to vaccination, thanks to determined action on the part of all citizens, that pandemic crisis will be over sooner rather than later.』

感染症の専門家の見解と共に、企業などの活動状況などを判断の材料にします、とまあそりゃそうだという回答ではありますが、ちょっと笑ってしまう質問でした。


PEPPのペースについての質問もありました。

『Two questions, if I may. One is on PEPP and your guidance on PEPP. You say - well, you repeat - the guidance that the PEPP purchases will be done to prevent a tightening of financing conditions that's inconsistent with countering the downward impact of the pandemic on the projected path of inflation. You just said earlier in your statement that you have some way to go before the fallout from the pandemic on inflation is eliminated. Does that mean that we should not expect any time soon a slowdown in the pace of PEPP purchases?(後半割愛)』

PEPPはパンデミック危機における金融環境のタイトニングを予防するためのものであり、パンデミック危機が物価に与える悪影響があるうちにPEPPが終了する事は無い、という説明をしていましたが、これは即ちPEPPのペースが近いうちに減少されることは無い、という意味で宜しいでしょうか?との質問。

『On the pace of purchases of PEPP: we will continue to be guided by the joint assessment that we have committed to, which is favourable financing conditions throughout the economy, all sectors included, and the outlook for inflation. On that front, we are very, very attentive to all the components of inflation, and while we are seeing some - we have seen some rise in inflation, 1.9% in June after 2% in May - we also want to go underneath that inflation to understand exactly what is going to move. 』

『But we have some pretty positive signs in the short term, although the medium term doesn't look as promising. I think all of that is premature, if I may say, because we will be delivering our projections in September, which will be more indicative of what we see on the outlook front in terms of possible revision. 』

『I don't know to what extent it will be revised up or down, but it will certainly have an impact on what we do going forward.』

さっきも9月見通し云々という説明があった、というかこれ書いてる都合上前後がズレているのですが、さっき引用した方が後にあって、こっちの方が先にあります。

でもってですね、ここで「9月に見通しを改定するときに、先行きの政策に関してよりクリアカットなものが見えて来るのではないかと想定しております」って話をおっぱじめておりまして、その説明の中で、「we have some pretty positive signs in the short term,」とか言ったりしながら(ただし中期的にはまだまだ全然ダメダメネーと言ってるけど)説明しておりまして、きれいな言い方をすればECBはデルタ株などの状況を見ながら9月に方向性を出してくるけれども、現状の基本線はもう少し先行きに関して明るい見通しを出しながら政策調整(なのでPEPPも基本的にはあんまり長期にわたって引っ張ることはしない)ってことを考えながらも、まだまだ全然決め打ちする段階ではない、なのかハト派とタカ派の意見がマッコウクジラなので全然決まらんのか、はたまた米国の出方次第ではまた変わって来るかもしれないと思っているのか、まあよくわかりませんが、とりあえず7月のECBは「9月に行われる定例の先行き見通し改定まで問題を先送りしました」というのが実際の所なのではないかと思いましたです、はい(個人の感想です)。







2021/08/23

お題「レーン理事がECBの金利ガイダンスに関して説明のブログポストをしていたのでそっちを先に鑑賞の巻」

ゼロ打ち当確な上に(ゼロ打ちなんだから当たり前だが)何じゃこの大差は。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210822/k10013216971000.html
横浜市長選 立民推薦の山中竹春氏 当選確実 小此木氏ら及ばず
2021年8月22日 20時55分

ガースー終了のお知らせですが、まあガースー総裁選出れない→新総裁でご祝儀支持率回復→総選挙、の方が自民的にはオイチイかも知れませんな。どう見ても政局です本当にありがとうございました。

ちなみに上記URL先は今見に行きますと得票数入りの「2021年8月23日 2時31分」の記事に差し替え(サムネは同じ)になっています。しかしIR誘致に関してはガースーちゃん林市長にああだこうだ言ってぶっこませておいて小此木さんは誘致反対って梯子外しにも程があり過ぎてワロタというかワロエナイ。

#どこの誰とは言わないけれども、とりあえず何とかストの俄か政治解説(ちなみに対象は単数ではない)がクソのように役に立たないというのが良く分かりましたわw


〇フォワードガイダンスの解説をレーン専務理事がしてやがるのでそっちを先にw

7月ミニッツが当初想像以上の大漁だったので思わず木曜金曜とがっつり読んでしまい、ラガルドの会見Q&A鑑賞が後回しになってしまっているうちにお盆休みが終わってしまいました(ミーは別に関係ないのですが)が、良く良く見るとレーン専務理事がフォワードガイダンスの解説ブログをポストしているので先入れ先出しの精神?によってそれでも確認しようという企画になりまた。

https://www.ecb.europa.eu/press/blog/date/2021/html/ecb.blog210819~c99d1b768d.en.html
THE ECB BLOG
The new monetary policy strategy: implications for rate forward guidance
Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB
Frankfurt am Main, 19 August 2021

『Today, I will explain the revision to the Governing Council’s rate forward guidance that we announced in our latest meeting. This should be viewed as a fundamental step in implementing our new monetary policy strategy, since it is essential that our approach to setting our policy rates is fully aligned with delivering our symmetric two per cent inflation target over the medium term.』

ということで金利のガイダンスについての解説をはじめますお!という事ですが、正直あのガイダンス文言ってアウトカムベースに見せかけておいてジャッジメンタルな部分が結構多かったりするので、会見でも質問がガイダンスの話でぐるぐる回っておりましたので、レーンさんが説明してくれるのはアリガタヤ。

『Forward guidance on the path of interest rates is an effective tool to steer interest rate expectations.[1] In particular, state-contingent formulations of forward guidance provide a powerful automatic stabilisation mechanism.[2]』

「state-contingent formulations of forward guidance provide a powerful automatic stabilisation mechanism.」というのがホンマカイナという感じなのですが、一応レーン理事によればワイの書いた「https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2020/html/ecb.sp200221~d147a71a37.en.html」でも見ろやということのようですな(そこまで今日は無理なのでパス)。

『In one direction, should the inflation outlook improve more than anticipated, the expected time horizon to the first increase in interest rates automatically shortens. In the other direction, if there were setbacks to the inflation outlook, the time to lift-off would automatically lengthen.』

インフレの見通しが改善すると利上げ見通し開始時期が自動的に短くなり、悪化すれば自動的に長くなる、というのが「automatic stabilisation mechanism」っていやそのりくつはおかしい、と思うのだが、頭の良い人の理屈はよー分からんのでこの辺の屁理屈に関してはもっとレーンさんの発言等(なお無茶苦茶物凄い勢いで出てくるので全然読んでられない)をみないと何ともかんともなのでパス。

『In general, the systematic approach to monetary policy embedded in rate forward guidance has the capacity to boost inflation expectations and thereby strengthen inflation dynamics. In turn, stronger inflation dynamics are the key to eventual normalisation of policy rates.』

シンメトリックマネタリーポリシーということなので物価のダイナミックが強くなって頂かないと正常化できませんよ、という話をしておりまして、要は利上げまで時間があるでって話なんでしょうな、とは思いますが本論を見ます。


・先にストラテジックレビューの話がありますがここはいつも通りなのでほぼ単なる話のマクラ

『The new monetary policy strategy』って小見出しが先に来る(その次にガイダンスの話になる)。

『The new monetary policy strategy incorporates two innovations that warranted an update to our forward guidance on interest rates: first, the redefinition of our price stability objective as a symmetric two per cent inflation target over the medium term; and, second, a conditional commitment to take into account the implications of the effective lower bound when conducting policy in an environment of structurally-low nominal interest rates.』

つーことで先にストラテジックレビューのお話がございまして、今回の特徴は2つあって、一つはシンメトリック2%ターゲットに変更したこと、もう一つは構造的に金利が低くなるという経済環境の中にある中で、政策金利の実効下限問題を考慮に入れたコンディショナルコミットメント(身もふたもない言い方をすると、要は今の状況だと緩和長期化、って話です)ですよ、というお話。

で、その二つの説明に関しては従来通りの説明になっています。飛ばしても良いのだが引用だけはしておきます。

『The two per cent inflation target is intended to provide a sufficient safety margin to protect the effectiveness of monetary policy in responding to disinflationary shocks. The symmetry of the inflation target means that the Governing Council considers negative and positive deviations of inflation from the target to be equally undesirable.』

2%ビローじゃないのはネガティブショックに対してマージンを取っておきたいから、という説明です。これはほぼすべての先進国中銀で同じ話をするのですが、現実問題として実は金融政策オンリーで物価の安定が図られる訳ではなくて、財政ちゃんカモーンって話になっている、という現状を鑑みるに、別に金融政策のバッファーの為に2%をシンメトリーにする意味ってあるの???という議論はあると思う(国民厚生の最大化のために政策は行われるべきであり、政策発動の糊代の為に政策を実施するものではないでしょ、ゴリゴリと言ってしまえば)のですが、うっかりそれを口に出すと死んじゃうのでどこの中銀もそれは言わない暗黙の了解となっていますwww

『The conditional commitment to take into account the implications of the effective lower bound when conducting policy in an environment of structurally-low nominal interest rates reflects the asymmetric nature of the constraint imposed by the effective lower bound. While central banks can technically raise nominal interest rates without limits, there is only limited space to lower rates into negative territory, owing to the lower bound on cash. This limited ability to lower rates, if left unaddressed, will result in persistent downward deviations of inflation from the target, especially if the economy is repeatedly hit by disinflationary shocks. In turn, this could result in inflation expectations settling below the central bank’s target inflation rate.』

コンディショナル云々はさっき申し上げた通りの話なんですが、政策金利に「there is only limited space to lower rates into negative territory, owing to the lower bound on cash.」って言ってるのは、もはや利下げ余地は無いですよって話をしているのと同じですわな。

『To address the asymmetry of the effective lower bound constraint, the commitment to a symmetric inflation target requires especially forceful or persistent monetary policy action when the economy is close to the effective lower bound, to avoid negative deviations from the inflation target becoming entrenched. Proximity to the lower bound can arise either from a low equilibrium real interest rate or from large and persistent disinflationary shocks influencing the inflation expectations embedded in nominal interest rates, or from a combination of the two factors.』

『An especially forceful or persistent response to negative deviations is warranted by the need to support the anchoring of longer-term inflation expectations at two per cent, which helps to maintain price stability over the medium term. This implies that, faced with large adverse shocks, our policy response will include an especially forceful use of its monetary policy instruments. In addition, closer to the effective lower bound, it may also call for a more persistent use of these instruments. This may also imply a transitory period in which inflation is moderately above target.』

この辺りもいつも通りの話をしていて、まあストラテジックレビューに関しては政策糊代論を中心にして、「2%シンメトリー」だし「金利の上げ余地は何ぼでもあるけど下げ余地は小さく、そもそも自然利子率が低い状態なんだから、物価が多少上振れしても一時的なら無問題無問題」という話をしております(なおこれ全員一致ではない、というのも忘れてはいけない)。


・金利のガイダンス文言、内容的には勿論ハトではあるのですがジャッジメンタル成分だらけのようです

『Rate forward guidance』に入ります。

『A commitment to maintain monetary accommodation on a persistent basis is essential in view of the effective lower bound constraint and the shortfall in the medium-term inflation outlook relative to the two per cent target.』

レーン理事によれば、今回の文言変更は長期間に渡る金融緩和維持を企図したものであって、なぜそうするかと言うと政策金利水準が実効下限水準制約に近い水準にあることと、中期的な物価見通しが2%ターゲットに届いていない事によるものである、だそうです。

『Under the conditions we currently face, forward guidance reinforces the Governing Council’s commitment to attaining the inflation target by clarifying that our policy rates will be lifted only if the evidence is sufficiently robust to allow us to see with a high degree of confidence that the inflation rate will reach two per cent on a durable basis.』

でもって政策金利のリフトオフの条件は、「only if the evidence is sufficiently robust to allow us to see with a high degree of confidence that the inflation rate will reach two per cent on a durable basis.」ってことで、「物価水準が2%レベルに持続的なベースで上昇する、ということに対して高い確度で確信が持てる、と見れるような力強いエビデンスが得られるときに限る」と言っているのですが・・・・・・・・

『In particular, our revised forward guidance spells out how our policy reaction will be especially persistent in conditions in which nominal interest rates have been close to their lower bound for some time and the outlook for inflation is still well below our target.』

新しい政策金利ガイダンスは、今の政策金利が実効下限水準に近いという状態で、物価の見通しが依然として2%目標よりも低い状態にある時には、今の政策金利水準が特に長期化しますよ、と言う事を示している、とのことですが、それってジャッジメンタルに見通しが2%続く、ってことになるとあっという間にリフトオフの条件来るやん、と思うので何だかそれでいいのけ??って感じがするんだが。

『Specifically, our forward guidance now reads:』

『“In support of its symmetric two per cent inflation target and in line with its monetary policy strategy, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it sees inflation reaching two per cent well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term. This may also imply a transitory period in which inflation is moderately above target.”』

これはステートメントに示されているガイダンス文言ですが、しかしこれ見れば見るほどダンダラが長すぎて、こういうのはさすがにガイダンスとは言わんじゃろ位の勢いの話ですわな。

『Following the preamble that underscores that alignment with the newly-adopted strategy and in support of the symmetric two per cent inflation target, the forward guidance describes three key conditions that should be met before interest rates are raised:』

利上げの為のキーとなるコンディションは3つあるんですと。でまず最初の条件ですが、

『The first condition “until we see inflation reaching two per cent well ahead of the end of our projection horizon” provides reassurance that the convergence of inflation towards the new target should be sufficiently advanced and mature at the time of policy rate lift off.』

『Moreover, requiring the inflation target to be reached “well ahead of the end of the projection horizon” helps to hedge monetary policy against the risk of reacting to forecast errors, which tend to be larger at longer horizons.』

“until we see inflation reaching two per cent well ahead of the end of our projection horizon”の意味合いについて、レーン理事は、利上げ時期において、物価が2%目標に向けて十分に上昇しており、かつ先行き見通しが必ずしも当たる訳ではないという事へのマージンも取っている、というような状態であることを意味する、というような趣旨の説明をしていますな。

2番目。

『The second condition that we expect inflation to reach two per cent not only well ahead of the end of the projection horizon but also “durably for the rest of the projection horizon” telegraphs that reaching the inflation target should be lasting and not just be the result of short-lived forces that lead to one-time increases in prices that are unlikely to lead to persistently higher year-over-year inflation.』

“durably for the rest of the projection horizon” というのは、一時的な物価上昇によって2%上振れしても、その後また下がるという見通しであれば利上げ着手なんぞ駄目駄目アルネという事を意味する、ということだそうな。

3番目。

『The third condition “progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term” signals that policy rates should not be lifted unless underlying inflation is also judged to have made satisfactory progress towards the target.』

3番目で指摘している“progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term”ってのが一番フニャフニャしている表現なので、この部分の解説があるのがアリガタヤで、まあレーン理事もこの部分についてはこの次にもう1パラグラフ使って説明しております。

1番目と2番目の話ってガイダンスと言いつつほぼ見通しベースの話になっていますので、この部分ってのは無茶苦茶雑に言ってしまえば見通しの鉛筆舐め舐めでどうとでもなる話なのですが、この基調的な物価が〜の部分って実績ベースの物価に対するガイダンスの話になるから、たぶんドイツとかオーストリー辺りのバイトおじさん一味と揉めたんでネーノ(個人の妄想です)という話なのでここの解説は読まないと。

『This condition is based on the realised data and provides an extra safeguard against a policy tightening in the face of cost-push shocks that might elevate headline inflation temporarily but fade quickly.』

この部分は今引用したところの続きになりますが、「This condition is based on the realised data」とありますように、ここは実績ベースの話になるので、そらバイトおじさんもグチャグチャ言い出しそうですが、ここでレーンさんはここの文言について「一時的な要因であって、すぐにその要因は消えるでしょう、というような類のコストプッシュインフレーションショックが起きた際に、政策の引き締めに走らないようにする保険としての意味がある文言」と仰せです。さらに次のパラグラフに続く。

『It is important to keep in mind that “underlying inflation” is a broad concept and refers to the persistent component of inflation that filters out short-lived, reversible movements in the inflation rate and provides the best guide to the medium-term inflation developments.[3] 』

問題はこの“underlying inflation”という基調的な物価とかたぶん日本語的には言ってるやつですが、レーンさんは「一時的要因を排除して物価を見た場合中期的にどう動いているか」と言ってまして、

『In view of the state-contingent nature of the forces shaping underlying inflation trends, underlying inflation is not proxied by any single indicator, and central banks routinely monitor a host of measures of underlying inflation. 』

それは一つの指標で示されるものではないので、いろいろな角度から物価を分析して計測していくものです。

『These measures typically range from simple exclusion measures that strip out certain volatile components of inflation to more complex statistical approaches that exploit the cross-sectional variation of all inflation components, and thereby also account for persistent effects of volatile inflation components.[4] 』

例えば一時的な変動の大きい物価構成要素を除外して計算する、などの方法があるが、これに関してもすべての物価構成要素について様々な角度から計測し、変動の大きさに関しても持続的な効果があるものに関しては考慮に入れる、などの方法によって計測されるものです、だそうです。

まあこういう説明だと、単純化してしまえば刈込平均指数とコア指数を見るのが吉、と言う話になるのですが、その点についても上記のように禅問答的な説明になっておりまする。

『It follows that some judgement is required both in terms of the choice of indicators and the assessment of their signals, while at the same time, the analysis of realised underlying inflation adds discipline to the assessment of whether inflation is set to stabilise at the target over the medium term.』

でもって結局「some judgement is required both in terms of the choice of indicators and the assessment of their signals」という話になっておりまして、結局の所今回リバイスされたガイダンスって全部のコンポーネントが「ジャッジメンタル」ということになっていまして、そらまあジャッジメンタルならバイトおじさんも賛成するわって感じですな。

ストラテジーレビューは全員一致じゃないのにこのガイダンスが全員一致っていうのは中々ワロエルのですが、背景が「ガイダンスと言ってるけど全部ジャッジメンタル」ならまあバイトおじさんも賛成するわと思ってたので、やっぱりそうかという事は分かった。まあ今の執行部はラガルドもレーンもシュナーベルもパネッタも基本的に緩和長期化でガッチリ行こうぜな人達だから、そう簡単に出口云々とならない、というECBのマイナス金利さえなくなれば日銀も真似っ子してマイナス金利撤回してくれると思ってるアタクシ的には涙目の展開ではあるのですが、まあ今後欧州の物価がどう推移して、その推移次第ではドイツが突き上げしてくれて、みたいな素敵な展開になってくれませんかねえ(日本が自主的にマイナス金利政策の誤りを認めるとか黒ちゃんのいるうちにはあり得ないしあったら全身白塗りか金粉塗りで日銀北門前で暗黒舞踏して差し上げるわ)という所ではありまする。

『Finally, the sentence that the forward guidance “may also imply a transitory period in which inflation is moderately above target” makes explicit that rate forward guidance that is committed to avoiding premature tightening may imply that inflation runs moderately above the target for a temporary period.』

何で3つ並べてるのにファイナリーが出るんだよとおもったら、ガイダンスの最終文言の解説でしたが、これは一時的な上振れ容認文言のことです。

『However, such transitional dynamics are fully in line with delivering the two per cent inflation target in the medium term. The transitory property of such a phase is underpinned by the commitment to lift rates once we see inflation reach two per cent on a durable basis, conditional on this criterion being met well in advance of the end of the projection horizon and that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term. 』

『More generally, the acknowledgement that the persistent policies that may be required to address the implications of the effective lower bound may imply such transitory phases in which inflation is moderately above target is included in paragraph 6 of the monetary policy strategy statement.[5]』

と、この部分でしつこく今の政策が長期化するというのをアピールしておりまして、とりあえず執行部がハトである、というのは良く分かったがエライアピール熱心ですなあとは思いました。



・まとめ部分はAPPとかの言及はあるが内容は特にない

最後が『Conclusion』です。

『The opening sentence of paragraph 8 of our monetary policy strategy statement stipulates that “The ECB is committed to setting its monetary policy to ensure that inflation stabilises at its two per cent target in the medium term.” Through the strong set of conditions linking our policy rates to reaching the two per cent target, our new rate forward guidance is an elemental step in fulfilling this commitment. In addition to rate forward guidance, paragraph 8 also highlights the potential roles of asset purchases and longer-term refinancing operations, as appropriate, in addressing the effective lower bound constraint on policy rates.』

『We stand ready to adjust all of our instruments, as appropriate, to ensure that inflation stabilises at our two per cent target over the medium term.』

最後はストラテジックレビューに戻ってて、何で戻るかと言うとAPPとかTLTRO3とかも続けまっせという事を追記したかったようです。

『The revision to rate forward guidance constitutes just the first step in implementing our new strategy. The monetary policy strategy statement lays out the range of factors that will shape our monetary policy decisions in the coming months and years, with further context provided by the accompanying overview document.[6] Accordingly, the new monetary policy strategy should be viewed as laying strong foundations for future decision-making, in the service of delivering our price stability objective.』

最後の所はまあ別に何か追加的に意味のある話をしている訳ではなくて、ストラテジックレビューに沿ってこういうのをぶっこんで2%目標達成に向けて進んでいきますよ、という話をしていて、とりあえず執行部がハト派なのはここで言われるまでも無いのですが、ガイダンス文言を読んでも、なんか結局ジャッジメンタル成分が濃厚に混入されているので、アクチュアルの物価や賃金が上がりだすと色々とアイヤーとなるんでしょうが、まあその辺は米国とチャイますので、こっちについては暫くはネタとしては面白いのですが、現世利益的にはPEPPの扱いのほうしかネタは無い、って感じでしょうなあと思います。







2021/08/20

お題「FOMC議事要旨続きです」

何をどうするとここまで下手くそなメッセージの出し方を出来るのか、と「テレワーク徹底の要請なのに対面だわ、マスクはしてないわ」というサムネ見て真っ先に思いました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/de5916f8b443557bc3c140d93bacfd672100d234
首相、出勤7割削減を要請 テレワーク徹底、同友会に
8/19(木) 12:10配信

これじゃあ「なお我々は上級国民なので別」という上級アピールをしているようにしか見えない次第で官邸のセンスが壊滅的にダメすぎる。今に始まった事ではないが。

なお経済同友会の桜田会長は、

『桜田氏は協力する姿勢を示した上で「営業などの現場で、顧客の要望を受けて出勤しているケースもある」として、対面にこだわらない取引が広がるよう、政府に環境整備を求めた。』(上記URL先より)

との事ですので、「私も顧客の要望を受けて対面しているんです(><;」と弁明をしているように読める(実際は知らんが)のがポイント高いですね!!!!!!


〇FOMC議事要旨続きです

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20210728.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20210728.pdf
Minutes of the Federal Open Market Committee
July 27-28, 2021

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held by videoconference on Tuesday, July 27, 2021, at 9:00 a.m. and continued on Wednesday, July 28, 2021, at 9:00 a.m.1

という訳で昨日の続きでいつもの『Participants' Views on Current Economic Conditions and the Economic Outlook』ですけれども、今回は寝起き逆順読みではなくてちゃんと出てくる順に読んでまいります、とか言っても最初から読むのではなくて、経済情勢を全部飛ばすという手抜きプレイにでまして、雇用情勢に関する議論から先を拝読しようかと存じます。(いつもより少し多めで)5パラ目から参ります。


・雇用情勢について&賃金に関して

5パラ目。

『Participants commented on the continued improvement in labor market conditions in recent months driven by strong demand for workers.』

雇用情勢について、労働力の需要がここもと高まっております、という情勢なのですが、

『The monthly pace of job gains had picked up, with employment expanding 850,000 in June and with notable increases in the leisure and hospitality sector. Nevertheless, the household survey showed that the unemployment rate remained elevated at 5.9 percent in June, and the labor force participation rate and employment-to-population ratio were little changed in recent months.』

雇用の伸びは特にコロナ直撃ヒット業界のリバウンド要因で強い物があるが、一方で失業率はまだまだ5.9%だし、労働参加率などの指標は元に戻っていないので・・・・・・・

『Participants indicated that the economy had not yet achieved the Committee's broad-based and inclusive maximum-employment goal.』

よってマンデート達成には届いていない、というのが参加者の見立て。

『Several participants remarked that the labor market recovery continued to be uneven across demographic and income groups and across sectors. Participants generally noted that supply-side factors related to the pandemic-such as caregiving needs, ongoing fears of the virus, increased retirements, and expanded unemployment insurance payments-continued to weigh on labor force participation and employment growth. 』

ここで書かれている話(雇用回復が局地的だとか、コロナの影響や失業給付金(゚д゚)ウマーの影響で労働市場に戻ってきていない人たちがいますよ)の話は何度も指摘されている件です。

『A majority of participants anticipated that most of these factors would ease in the coming months. They also noted, however, that the spread of the Delta variant may temporarily delay the full reopening of the economy and restrain hiring and labor supply.』

これらの特殊要因は向こう数か月とかで剥落すると思うのだが、デルタ株の状況次第ではワカランチ会長、とまあ結局ここでは「まだ雇用のマンデート達成してませんよね」という見解が一致したというだけの話しで、折角いつもより多めに引用を開始したのに今まで言ってた話しかしておもんないわーとぶー垂れながら次の6パラへ。


第6パラグラフはお賃金の話で、これは注目せざるを得ない。

『Participants observed that recent wage increases had been moderate on average.』

最近のお賃金の伸びは「平均すればモデレート」との認識になっています。まあインフレ及びインフレ期待の面からすればお賃金の動き重要ね。

『However, District contacts had continued to report having trouble hiring workers and had indicated that this difficulty was putting upward pressure on wages in some sectors or leading employers to provide additional incentives to attract and retain workers.』

さっそく「はうえばー」が出て来まして、幾つかのセクターにおいては新規の人員確保が難しくなっており、それによってお賃金の引き上げを行う必要が出てきており、その動きによって、企業経営者が既存人員のつなぎとめの為に今の労働者に対して追加的なインセンティブを与える動きも起きている、という実に裏山鹿にも程がある話ではありますが、そういうのが起きてます、ってのも従来より言われてますね。

『Several participants noted that their District contacts expected that difficulties finding workers would likely extend into the fall.』

数名の参加者によれば、自分の所の管内でコンタクトを取っている企業経営者たちによれば、この状況はおそらく秋までは続くんじゃないかとみている、だそうです。6パラの話しはここで終わっているので、一応お賃金絶賛大上昇ムーブは一過性とみているということでしょうね、というかそうじゃなかったら物価の方が危なくなるので、ということで次のパラからは物価である。


・物価に関しては上振れリスクに関する記述で物凄く穏当な書きっぷりにしているのが目につきます

7パラ。

『In their discussion of inflation, participants observed that the inflation rate had increased notably and expected that it would likely remain elevated in coming months before moderating.』

ここもと物価が盛大に上昇していましたが、向こう数カ月はこの調子が続き、その後物価上昇はモデレートになるでしょう、という風に参加者は観測しているとのこと。まあそうじゃなかったらアクションしないといけなくなるからそういう見方になるのは当たり前ですね。

『Participants remarked that inflation had increased generally more than expected this year and attributed this increase to supply constraints in product and labor markets and a surge in consumer demand as the economy reopened. They noted that many of their District contacts had reported that higher input costs were also putting upward pressure on prices. Many participants pointed out that the largest contributors to recent increases in measures of inflation were a handful of sectors most affected by temporary supply bottlenecks or sectors in which price levels were rebounding from depressed levels as the economy continued to reopen.』

ここでは物価が上昇しているのが想定以上である、という話をしながら、じゃあ要因は何なのよという話をああでもないこうでもないとしておりますが、基本的にはコロ助からの一大リバウンドムーブによる需要爆発という一時的現象に供給が追いつけていない所に加え、コロ助の影響がサプライチェーンや労働供給に残るというような要因による一時的な投入コストの急増加、という話しで、コストプッシュ要因によるものですよ、という説明になっています、というかディマンドプルで3%とかだったら止めに掛からんといかんのだからこういう理屈になる。

『Looking ahead, while participants generally expected inflation pressures to ease as the effect of these transitory factors dissipated, several participants remarked that larger-than-anticipated supply chain disruptions and increases in input costs could sustain upward pressure on prices into 2022.』

先行きに関して、概ね物価上昇圧力はこれらの一時的な要因が剥落するとモデレートって予想だけど、数名(several)の参加者は来年も物価上昇圧力が続く可能性があるで、という指摘をしています。

『In their comments on inflation expectations, some participants noted that measures of longer-term inflation expectations had remained in ranges that were viewed as broadly consistent with the Committee's longer-run inflation goal.』

インフレ期待の話ですが、現状では長期のインフレ期待はマンデート水準とされる位置にあるとの認識。

『Several participants indicated that the recent increases in survey-based measures signaled a risk that longer-term inflation expectations might be moving up above levels consistent with the Committee's goals. 』

また数名(several)ですが、最近のサーベイベースのインフレ期待を見ると長期インフレ期待が望ましくない上振れを示すリスクをシグナルしている、との指摘をしていますけど、その一方で、

『Other participants pointed to the substantial decline in TIPS-based longer-term inflation compensation since June as suggesting that investors perceived reduced risks that inflation could run persistently above the Committee's 2 percent goal.』

他の参加者はTIPSベースの長期インフレ期待が6月に盛大に下がっており、物価が長期間2%を上回るリスクに対する警戒度がさがっているで、と来まして、

『A couple of participants noted that recent readings on forward inflation compensation could be read as suggesting investor concern that inflation over the longer term could run persistently below the Committee's 2 percent inflation goal.』

2名の参加者は、市場のインフレ期待のフォワード値を見ると(FEDは市場から観測されるインフレ期待を「inflation compensation」と表現しておりまして、その前に在りますように一般的なサーベイなどから出てくるようなインフレ期待を「inflation expectations」としているので分かりやすくで非常にありがたい)、むしろロンガータームで見た場合、市場は物価が2%を継続的に割り込む姿を見ている、と指摘していますが、まあ先日も申し上げた通り、市場の中の人が言うのも何ですが、「市場の価格から推計されるインフレ期待」とかいうのはノリと雰囲気で常にオーバーシュートしてるわ(これは「イールドカーブから見たリセッション入り確率」とかも同じですけど)と思うので(きわめて偏った個人の感想です^^)、こういうのを真に受けて話を展開するのは如何なものかと思う。まあ真に受けているのではなくて議論の為に持ち出しているだけだと思うけどさ。

・・・・・でまあここでこのパラ終わりでして、賃金の話が出たんだから物価との絡みの話しでも書くのかと思えばそういうのは書かない、ということですが、これアタクシが物凄い勢いで邪推するに、昨日ネタにしたテーパリング議論の所でも思いましたが、今回はテーパリングをちゃっちゃとやるよー!っていうのを穏便にアナウンスするために、利上げ議論に直結するインフレ上振れリスクとか、インフレ期待上振れリスクのような部分についての詳述を避けてやがるな、と思いっきり邪推しておる訳ですよ。なぜならここでインフレ上振れリスクをビンビンに出してしまうと、そらもうタカ派色が満載と言う事になってしまい、そうなるとテーパリングがタントラム、って事になってしまうので、分離工作の逆になってしまうのですな。

とか何とか直ぐに裏読みしてしまうのが悪い癖ですが(笑)、まあ基本的にはとにかくテーパーをなる早で成敗して、次どっちに行くにしても政策発動余地(再度緩和するならAPP再拡大、そのまま正常化するなら今度こそ利上げの話)を作っておかないといけないし、後の事は(よほど物価が馬鹿跳ねしない限り)後で考えましょうよ、ってな感じなんでしょうなあと思いましたので、違和感はありません(個人の感想です)。


・先行きリスクにはさすがにアカン方のインフレ上振れリスクの指摘があった記載がありますね

8パラ目は不確実性とリスクについて。

『In discussing the uncertainty and risks associated with the economic outlook, many participants remarked that uncertainty was quite high, with slowing in progress on vaccinations and developments surrounding the Delta variant posing downside risks to the economic outlook.』

不確実性とリスクと言えばコロ助と言って置けば間違いない、とばかりに多くの(many)参加者がコロ助コールですね。

『A number of participants judged that the effects of supply chain disruptions and labor shortages would likely complicate the task of interpreting the incoming data and assessing the speed at which these supply-side factors would dissipate.』

数名(A number of)の参加者はサプライチェーン問題と労働供給不足問題によって今出ている経済データを読み取るのが難しくなっており、供給要因による影響がいつまで続くのかを読むのも難しい、って言ってるので、これはハト系(タカではない)の人達ですね。

『Some participants noted that there were upside risks to inflation associated with concerns that supply disruptions and labor shortages might linger for longer than currently anticipated and might have larger or more persistent effects on prices and wages than they currently assumed.』

一方で数名(Some)の参加者は物価のアップサイドリスクについて言及していて、サプライチェーン問題と労働供給不足問題がこの先、想定以上に高まるあるいは長期化するなどをして物価やお賃金への影響を与えるリスクがあるで、とこれはアカンタイプのインフレアイヤーリスクについて言及していますね。


・ファイナンシャルスタビィリスクに関してはド直球のネタと仮想通貨やステーブルコインの指摘があって中々

9パラ目はファイナンシャルスタビリティ

『Participants who commented on financial stability emphasized the risks associated with elevated valuations across many asset classes.』

割とド直球で「資産価格のバリュエーションの上昇によってもたらされるファイナンシャルスタビリティ問題」とかぶっこんでいますな。市場はそんなにここには反応してなかったっぽいのだが。

『A few participants highlighted scenarios in which a prolonged period of low interest rates and broadly elevated asset valuations could generate imbalances, which could increase financial stability risks.』

数名(A few)の参加者は低金利継続と資産価格の全般的な状況がファイナンシャルインバランスを招くリスクに言及、とこれまた火の玉ストレートですね。

『Some participants commented on the housing market and noted that ongoing rapid house price increases reflected both demand and supply factors.』

数名(Some)の参加者は住宅価格が需要と供給の両面から急速に上昇している点に触れている、とこれもまた割と直球ぶっこんでおります。

『Several participants noted that the lack of evidence of deteriorating mortgage underwriting standards could mitigate risks associated with high housing valuations; a couple of other participants, however, expressed concern that a home price reversal could pose risks to financial stability.』

住宅市場のもたらす金融不均衡リスクに関しては更にこのように議論がありまして、さすがホームエクイティが拡大するとヒャッハー消費が盛んになる国(個人の偏見です)だけに住宅価格は下がると困るのだが暴騰されても困る、という話をしておりますなあと思いました。

この後が面白くて、ワシらの現世利益的にはあんまり関係ないけど、

『Some participants cited various potential risks to financial stability including the risks associated with expanded use of cryptocurrencies or the risks associated with collateral liquidity at central counterparties during episodes of market stress. 』

『In connection with the former set of risks, a few of these participants highlighted the fragility and the general lack of transparency associated with stablecoins, the importance of monitoring them closely, and the need to develop an appropriate regulatory framework to address any risks to financial stability associated with such products.』

仮想通貨とステーブルコインの話をしておりますがな。


・政策に関する議論になりますが物価の先行きに関して真っ向から意見がぶつかっているようですね

10パラ目から最終の14パラまでが金融政策の話になります。

『In their consideration of the stance of monetary policy, participants reaffirmed the Federal Reserve's commitment to using its full range of tools to support the U.S. economy during this challenging time, thereby promoting the Committee's statutory goals of maximum employment and price stability.』

ここはどうでもよい。

『Participants judged that the current stance of monetary policy remained appropriate to promote maximum employment as well as to achieve inflation that averages 2 percent over time and longer-term inflation expectations that are well anchored at 2 percent. Participants also reiterated that the existing outcome-based guidance implied that the paths of the federal funds rate and the balance sheet would depend on actual progress toward reaching the Committee's maximum-employment and inflation goals.』

ここもどうでもよい、ということで10パラ目はほぼ毒にも薬にもならないお経でした。

11パラ目に参ります。

『Participants discussed the progress toward the Committee's goals since December 2020, when the Committee adopted its guidance for asset purchases. They generally judged that the Committee's standard of "substantial further progress" toward the maximum-employment and inflation goals had not yet been met, particularly with respect to labor market conditions, and that risks to the economic outlook remained.』

『Most participants anticipated that the economy would continue to make progress toward those goals and, provided that the economy evolved broadly as they anticipated, they judged that the standard set out in the Committee's guidance regarding asset purchases could be reached this year. 』

この部分は昨日引用したテーパリングに関するこーなーで既に書かれていた事の繰り返しですが、この先の部分では労働市場に関する話がああでもないこうでもないと議論されました、って話になります。

『With regard to the labor market, participants noted that the demand for workers had been strong in recent months, while the level of employment had been constrained by labor supply shortages and hiring difficulties.』

という総論はさっきも出た。

『Several participants emphasized that employment remained well below its pre-pandemic level and that a robust labor market, supported by a continuation of accommodative monetary policy, would allow further progress toward the Committee's broad and inclusive maximum-employment goal and a return over time to labor market conditions as strong as those prevailing before the pandemic. 』

最初のは穏当な方の意見で、数名(Several)の参加者は雇用がコロ助前の水準に戻っていませんですね、まだまだなので緩和的な金融緩和のサポート(つまり利上げは急がない)が必要ですね、という話だが、

『A few other participants judged that monetary policy had limited ability to address the labor supply shortages and hiring difficulties currently constraining the level of employment.』

他の数名(A few other)はそもそも金融政策では現状の労働供給力不足やら雇用確保の困難さに対応する政策を出すっての無理げーじゃね?と身もふたもない指摘をしています。

『Several participants also commented that the pandemic might have caused longer-lasting changes in the labor market and that the pre-pandemic labor market conditions may not be the right benchmark against which the Committee should assess the progress toward its maximum-employment objective.』

で、しれっと重要な話がこのパラグラフの最後にあるのですが、数名(Several)からは、そもそもコロナによって労働市場を巡る状況が変わったのだから、マンデートの示す最大雇用水準というのについても変化が生じている筈で、それを考える必要があるんとチャイマスカ(つまりコロナ前まで戻らないとダメな訳ではないんでネーノって話ですな)というのをぶっこんでおります。


12パラ目は「顕著な進展」の物価パートに関する議論。

『With regard to inflation, participants commented that recent inflation readings had been boosted by the effects of supply bottlenecks and labor shortages and were likely to be transitory.』

ではあるものの・・・・・・・

『A few participants noted that, while the specific results depended on the period used in the calculation, some measures of average inflation were already moving above, or would soon move above, the Committee's 2 percent goal, supported by strong demand, a tight labor market, and firming inflation expectations. 』

『Some other participants emphasized that recent high inflation readings had largely been driven by price increases in a handful of categories. These participants pointed out that there was no evidence of broad-based price pressures or of inappropriately high longer-term inflation expectations. 』

物価に対する見解は結構な水と油ムーブになっていて、最初の人たち数名(A few)は、既に物価はマンデートの水準を上離れしておる、あるいはそうじゃなかったとしても間もなく上離れするわ、とかエライ勢いでタカ派な指摘をしているのに対して(誰だこの過激な指摘は??)、他の人たちはいやいやいやいやまだまだブロードベースの物価上昇にはなってねえだろ、と指摘とマッコウクジラ対決ですな。

『Several participants also commented that price increases concentrated in a small number of categories were unlikely to change underlying inflation dynamics sufficiently to overcome the possibility of a persistent downward bias in inflation, as might be associated with the effective lower bound on the policy rate.』

数名からは今の物価上昇は局地的なもんだからそれに対処する必要は無いし、今ゼロ金利制約にある中で物価の下落リスクへの対応余地が乏しいんだから慌てるんでねえよ、みたいなコメントがでておりまして良い感じのマッコウクジラ竜虎対決という感じですね。


・リスクマネジメントアプローチから考えたテーパリングに関してと言いながら意見が割れている事を見せてます

でもって13パラはリスクマネジメントの観点からのテーパリングと来ましたよ。

『Many participants remarked upon risk-management considerations when contemplating how and when to make changes to the Committee's pace of asset purchases.』

さてどういう話かと言えば、

『Some participants suggested that it would be prudent for the Committee to prepare for starting to reduce its pace of asset purchases relatively soon, in light of the risk that the recent high inflation readings could prove to be more persistent than they had anticipated and because an earlier start to reducing asset purchases would most likely enable additions to securities holdings to be concluded before the Committee judged it appropriate to raise the federal funds rate.』

物価が想定以上に高止まりするリスクを勘案するとテーパリングをとっとと開始することが望ましくて、それによって利上げの前にテーパリングを完了させることができまっせ、と来まして、

『A few participants expressed concerns that maintaining highly accommodative financial conditions might contribute to a further buildup in risk to the financial system that could impede the attainment of the Committee's dual-mandate goals. 』

他には盛大な緩和の長期化による金融不均衡拡大りすくもあるでよ(だから早くしろ)まで来ています。

『In contrast, a few other participants suggested that preparations for reducing the pace of asset purchases should encompass the possibility that the reductions might not occur for some time and highlighted the risks that rising COVID-19 cases associated with the spread of the Delta variant could cause delays in returning to work and school and so damp the economic recovery.』

一方で、デルタ株の拡大とかのリスクもあるので急ぐ必要はないという指摘とか、

『Several participants also remained concerned about the medium-term outlook for inflation and the possibility of the reemergence of significant downward pressure on inflation, especially in light of the recent decline in longer-term inflation compensation.』

そもそも市場のインフレ期待とか見たら物価の低下圧力の再発可能性だってあるって見られてるんだから急ぐなよ、という指摘などが出ておりまして、

『In addition, several participants emphasized that there was considerable uncertainty about the likely resolution of the labor market shortages and supply bottlenecks and about the influence of pandemic-related developments on longer-run labor market and inflation dynamics. Those participants stressed that the Committee should be patient in assessing progress toward its goals and in announcing changes to its plans on asset purchases.』

先々の不確実性は高いのだから、テーパリングプロセスについては慎重であるべきだ、ということで、まあ意見がまとまっていないというのを見せておりますね。


・最後にまたテーパリングと利上げの分離工作で締めています

では最後14パラです。

『Some participants emphasized that a decision to reduce the Committee's pace of asset purchases once the "substantial further progress" benchmark had been achieved would be fully consistent with the Committee's new monetary policy framework and would help foster the achievement of the Committee's longer-run objectives over time.』

『A couple of participants also noted that a tapering of asset purchases did not amount to a tightening of the stance of monetary policy and instead only implied that additional monetary accommodation would be provided at a slower rate.』

『Several participants emphasized that an announcement of a reduction in the Committee's pace of asset purchases should not be interpreted as the beginning of a predetermined course for raising the federal funds rate from its current level.』

『Those participants stressed that the Committee's assessment regarding the appropriate timing of an increase in the target range for the federal funds rate was separate from its current deliberations on asset purchases and would be subject to the higher standard, as laid out in the Committee's outcome-based guidance on the federal funds rate. 』

『Nonetheless, a couple of participants cautioned that it could be challenging for the public to disentangle deliberations about the two tools and that any decisions the Committee made on its asset purchases would likely influence the public's understanding of the Committee's other policy intentions, including with regard to future decisions concerning the target range for the federal funds rate.』

ええい時間がない、ということで羅列だけしましたが、最後の部分でまたも「テーパーと利上げは別問題」というのをキチンとアピールしないといけませんね、という話が色々な参加者から出ました(雑なまとめですいません)というので締めていました。





2021/08/19

お題「寝起きでFOMCのテーパリングに関する議論コーナーを拝読してみたよ」

どうしてこう人選が毎度アレなのか。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021081800827&g=pol
デジタル監、伊藤穣一氏見送り 政府
2021年08月18日16時47分

〇テーパリングは割とちゃっちゃとやりそう&利上げとは別物の分離工作に余念がないのは把握した

という訳で寝起きでFOMC議事要旨。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20210728.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20210728.pdf

引用は例によってHTMLバージョンの方から行いますが、いつもの逆順読みをしようかと思いながら最初から目を泳がせていたら、レポファシリティの話の後に何と『Discussion of Asset Purchases』というのが6パラグラフも並んでいて早速そっちに釣られクマーとなってみるクマー。

・とりあえず今回はバックグランドの議論をしたので、というのから入る

これはさすがに逆順読みとかしないで最初から順番に読みますね、では1パラ。

『Participants discussed aspects of the Federal Reserve's asset purchases, including progress made toward the Committee's maximum-employment and price-stability goals since the adoption of the asset purchase guidance in December 2020.』

ちなみに一応目を泳がすだけ、と言いましても、まず『Discussion of Asset Purchases』の文字列で目が止まり、その後「including progress made toward the Committee's maximum-employment」という辺りの文字列を見てこれは釣られクマー案件であると確信した(全部読む前にネタに採用を確定したのでこれで外れだったら泣きながら「ここはどうでもいい」とか書かないといけません)。

『They also considered the question of how asset purchases might be adjusted once economic conditions met the standards of that guidance.』

もう方法論の話になっていますね!!!まあ遅かれ早かれテーパリングをするのはダンディールだし、ここもとの地区連銀総裁の発言とかからすると、「利上げ着手を遅くするためにテーパーを早める」という趣旨でテーパーテーパーと言っている訳で(変態仮面はもっと過激派なので外れ値)、実はアタクシも今回のテーパーって下手したら半年くらいで終わらせる勢いでやってくるんでねえかと思ってるんじゃがどうじゃろ(なおそれだから長期金利が跳ねるとは限らんというのが相場様の楽しい所ではある)。

『Participants agreed that their discussion at this meeting would be helpful background for the Committee's future decisions about modifying asset purchases. No decisions regarding future adjustments to asset purchases were made at this meeting.』

次回以降の会合でのバックグラウンドとして今回の議論は有益である、なお今回はテーパリングに将来の関する合意は特に無かった、と釘はさされましたがバックグラウンドとやらの話になるのけ?ということで2パラ目になる。


・資産買入の波及チャネルについてだが、この理屈は「金利政策とAPPの切り離し」を狙ってるんチャウか?

『The participants' discussion was preceded by staff presentations that reviewed the principal channels through which asset purchases exert effects on financial conditions and the economy, with a focus on the implications of these channels for the Committee's deliberations regarding future adjustments to the Federal Reserve's asset purchases.』

APPの波及チャネルに関してスタッフがプレゼンテーションしてて、それをベースにしながら行ったそうな。

『The presentations noted that, in the staff's standard empirical modeling framework, the effect of asset purchases on financial and economic conditions occurred primarily via their influence on the expected path of private-sector holdings of longer-term assets.』

ホンマカイナという理屈ではありますが、スタッフの経験的なモデリングフレームワークでは、資産買入の金融環境や経済環境に対する効果は、資産買入が起こす所の民間部門の長期資産保有の先行き期待に対する影響を主な波及経路にしている、だそうでナンジャソラ感は否めませんが次に行く。

『In that framework, larger Federal Reserve holdings of these assets reduced private-sector holdings, exerting downward pressure on term premiums and, consequently, keeping longer-term interest rates and overall financial conditions more accommodative than they otherwise would be.』

FEDが長期資産を持つことによって、民間セクターの長期資産保有がFEDの買入分だけ減るので、それが長期金利のタームプレミアムを下げて、その結果(買入が無い時と比較して)長期金利が下がって、それによって全体的な金融環境をより(買入が無い時と比較して)緩和的にする、という理屈を繰り出してきました。

ただね、この理屈色々と無理があって、じゃあ政府が国債発行減らしたら金融緩和になるし、国債増発したら金融引き締めになる、みたいな話になっちゃうのだが、民間部門が恒常的に資金不足になっていて、「割り当て」が金融政策になるような経済なら兎も角、今の金融からの与信行動の制約って資金量とかではなくてバランスシート制約の方なんだから、中銀の長期資産買入の額そのものがタームプレミアム下げるってのは(日銀みたいにアホほど買えば別なのかも知れないが)どうなのよって思うし、経済物価情勢に対する市場の見方が変わって動く方が断然デカいじゃろ、とは思いますので無理筋感はある。

『The staff noted that, because plausible alternative approaches to the tapering of asset purchases would likely not lead to significant differences in the expected path of the Federal Reserve's balance sheet, these approaches would have similar financial and economic effects in the staff's standard framework.』

と思ったらスタッフはノートした、ということで次の所では考えられる複数のテーパリングアプローチでは、特にFRBのバランスシートの将来の姿の期待パスに大きな差が出てこないので、スタッフのフレームワークで見た場合、同じような結果になりまっせ、という話をしておる、そりゃ買入量だけの話をすれば、半年だろうが1年だろうがロンガーランで見たら同じことなんですからそうなるわな。

『The presentations highlighted, however, that alternative tapering approaches could have significant financial and economic effects not fully captured in the staff's standard empirical framework.』

おいこら。

『In particular, changes in asset purchases could be interpreted by the public as signaling a shift in the Committee's view of the economic outlook or in its overall policy strategy, with implications for the expected path of the federal funds rate.』

資産買入の変更は一般の人々にFEDの経済物価見通しのシフトと金融政策全般にわたるシフトのシグナルとしての効果があります、って何で波及効果の時にバランスシートの話だけしててこっちではシグナリングの話をするんじゃ、と思ったら・・・・・・・・

『Changes in the flow of asset purchases could also influence yields, but this influence would likely be modest outside of periods of stressed financial market conditions.』

資産買入のフロー変化は金利形成にも影響を与えるがこの影響そのものは、金融市場の状況にストレスが掛かっているような状況でない限り、まあ軽微なもんでしょ、という話で2パラ目を締めています。

・・・・・・・ガチで寝起き読みで、しかもキーボードに向かう前に下読みタイム(さすがにFOMC声明文は前回比較するからまず比較をしてからおもむろにキーボードに向かう)設けてなくて、今回はここの1パラ読んで目が止まったので2パラ目以降は読みながら書いているんですけど(さすがに小見出しはパラグラフ書いた後に入れてます、為念)、これ何となく話が見えてきた感があって(個人の霊感です)、要は「テーパリングをする際に、将来の利上げに対する話は全く別ですよ、と言う形で金融政策の全体のシフトを織り込ませないようにすれば、テーパリング単体で金融環境が大きくタイト化することは無いですよ」という理屈を捏ねている訳です。

ナンジャソラという感じの理論展開はしますが、従来通りと言えば従来通りで、テーパリングと金融政策全体のスタンスの分離、即ち利上げは急がないよメッセージが出るフラグがビンビンに立っていますね(個人の感想です)。


・まずは"substantial further progress"に到達しているかのアセスメントから始まるパーティシパントの議論コーナー

では3パラ目。

『In their discussion of considerations related to asset purchases, various participants noted that these purchases were an important part of the monetary policy toolkit and a critical aspect of the Federal Reserve's response to the economic effects of the pandemic, supporting smooth financial market functioning and accommodative financial conditions, which aided the flow of credit to households and businesses and supported the recovery.』

ここからがFOMCパーティシパンツの論議部分になります。最初の辺りはAPPが重要なツールで重要な役割を発揮してきましたってのを確認しました、って話だから毒にも薬にもならない話。

『Participants discussed a broad range of labor market and inflation indicators.』

最初は経済物価情勢の議論をしたそうな。

『All participants assessed that the economy had made progress toward the Committee's maximum-employment and price-stability goals since the adoption of the guidance on asset purchases in December.』

昨年12月から見てマンデートに向けて経済物価が進展している、というのは「全員が」認めていますので、つまり実はこれは進展不十分で莫大なスラックは残ったままで、みたいな認識は皆無ということで、超ハト派であろうと進展しているのは認めているのですな。

『Most participants judged that the Committee's standard of "substantial further progress" toward the maximum-employment goal had not yet been met. At the same time, most participants remarked that this standard had been achieved with respect to the price-stability goal.』

"substantial further progress" については殆ど(most)の参加者がまだそれには到達していない、との認識を示していますが、そのうち物価に関しては殆ど(most)の参加者は到達していると認識しています、となっているので、「いや実は物価のマンデートは全然未達で」と言う人は少ない、ということですな。

『A few participants noted, however, that the transitory nature of this year's rise in inflation, as well as the recent declines in longer-term yields and in market-based measures of inflation compensation, cast doubt on the degree of progress that had been made toward the price-stability goal since December.』

おお、こういうのを見たかったんですがと言う事でこの部分、「一方で数人(A fewなので3人は居る)の参加者は、今は一時的な要因で物価が上がっているという現象であり、さらに市場の長期金利が下がったり、債券市場価格から計測される市場のインフレ期待が下がっているのを見ると、物価に関して"substantial further progress"と言えるのかどうかは疑問がある、と反対を仰せです。

まあ反対いるのは健全だなーと思いますが、はっきり言って債券市場価格から見るナントカ、ってのはそらまあ全く役に立たないとは言いませんが、別に市場が完全に将来を予測する目をもっている訳ではないですし、むしろ金融の発達に伴い、かどうかはともかくとして、より短期間でのパフォーマンスがああだこうだわ言われるこのご時世の元で、あまりその市場からのシグナルをネタにし過ぎるのもどうなのか、と市場の中の人が言うのも何なんですが、この理屈はこの理屈でちょっともにょりますな。


・見通し通りに経済物価情勢が進展すれば年内テーパリング開始が妥当キタコレ!!!!!

と、まあ「さらなる顕著な進展」のステージへの議論が行われていたという話があった所ですが、まだまだこの3パラはまだ続くのですが、ここでいきなりぶっこんで参りました。

『Looking ahead, most participants noted that, provided that the economy were to evolve broadly as they anticipated, they judged that it could be appropriate to start reducing the pace of asset purchases this year because they saw the Committee's "substantial further progress" criterion as satisfied with respect to the price-stability goal and as close to being satisfied with respect to the maximum-employment goal.』

今後に関してですが、と来ましていきなりぶっこまれているのですが、仮定法過去形使っていますけど、経済物価情勢が想定通りに進展すれば殆ど(most)の参加者は、テーパリングを年内に開始するのが妥当となるだろう、というお告げが来ました。

とは言え、まあ何のかんの言いながらテーパリング開始は遅くても年明け早々から開始じゃろって感じには既になっていたと思うので、まあこれ自体は今までのFED高官発言の中で織り込まれている物件だと思いますので、それ自体がサプライズって程ではないと思いますが、とにかく「利上げの話と分離してテーパーは織り込ませてしまおう」というメッセージになっていますね。

『Various participants commented that economic and financial conditions would likely warrant a reduction in coming months.』

Various participantsは年末とかじゃなくてもう少し早くの着手が可能、ってコメントがあるんですな、その一方で、

『Several others indicated, however, that a reduction in the pace of asset purchases was more likely to become appropriate early next year because they saw prevailing conditions in the labor market as not being close to meeting the Committee's "substantial further progress" standard or because of uncertainty about the degree of progress toward the price-stability goal.』

他の数人(Several others)は来年の早い時期までテーパー着手は待った方がエエンチャウノとのご意見。

『Participants agreed that the Committee would provide advance notice before making changes to its balance sheet policy.』

いずれにせよ事前にアナウンスする、と言ってるがまあこれもその意味では事前アナウンスですな。


・テーパリングはどうもこりゃ遅くとも来年秋くらいには終わらせるつもりじゃないのか(個人の感想です)

4パラ目になります。

『Participants expressed a range of views on the appropriate pace of tapering asset purchases once economic conditions satisfied the criterion laid out in the Committee's guidance.』

次はテーパリングのペースですね。

『Many participants saw potential benefits in a pace of tapering that would end net asset purchases before the conditions currently specified in the Committee's forward guidance on the federal funds rate were likely to be met.』

多くの(Many)参加者は「利上げの条件が整う前にテーパリングプロセスを終了させる潜在的な利益を見ている」だそうですので、これは1年かけてチンタラテーパリングではない、というように思えますがどうでしょうか。

『At the same time, participants indicated that the standards for raising the target range for the federal funds rate were distinct from those associated with tapering asset purchases and remarked that the timing of those actions would depend on the course of the economy.』

でもって、このペース云々と利上げの条件が整ったかどうかという話は別物であるという話を同時に行っている、と来まして、とにかくテーパリングと利上げの分離工作に余念が無いのは分かった。

『Several participants noted that an earlier start to tapering could be accompanied by more gradual reductions in the purchase pace and that such a combination could mitigate the risk of an excessive tightening in financial conditions in response to a tapering announcement.』

数人(Several)の参加者はテーパリングを早めに行う事は、将来の利上げをより穏健なペースで行うことができることになるって話をしてますね。


・国債とMBSのテーパーの速度を変えるべきか否かの話

5パラ目。

『Participants exchanged views on what the composition of asset purchases should be during the tapering process. Most participants remarked that they saw benefits in reducing the pace of net purchases of Treasury securities and agency MBS proportionally in order to end both sets of purchases at the same time. 』

国債とMBSの削減ペースに差をつけるかという話ですね。

『These participants observed that such an approach would be consistent with the Committee's understanding that purchases of Treasury securities and agency MBS had similar effects on broader financial conditions and played similar roles in the transmission of monetary policy, or that these purchases were not intended as credit allocation. Some of these participants remarked, however, that they welcomed further discussion of the appropriate composition of asset purchases during the tapering process. Several participants commented on the benefits that they saw in reducing agency MBS purchases more quickly than Treasury securities purchases, noting that the housing sector was exceptionally strong and did not need either actual or perceived support from the Federal Reserve in the form of agency MBS purchases or that such purchases could be interpreted as a type of credit allocation.』

ここは2つの論点があって、MBSの買入がクレジットアロケーションに影響を与えるという効果をどの程度認めるのか、という話と、それを踏まえて住宅市場の過剰な強さを沈静化させるるためにMBSの買入ペースを速めに落とすというのがありやナシや、という話。

ただ、パウエルの言ってる話では「国債もMBSも効果は同じ」ということになっているのですがどうなるやら。


・最後のパラグラフでまたもしつこくテーパリングと利上げは別物アピールをしていて相当警戒してるんでしょうね

最後に6パラ目。

『Participants commented on other factors that were relevant for their consideration of future adjustments to the pace of asset purchases. Many participants noted that, when a reduction in the pace of asset purchases became appropriate, it would be important that the Committee clearly reaffirm the absence of any mechanical link between the timing of tapering and that of an eventual increase in the target range for the federal funds rate.』

テーパリング終了時期に関する論点として、テーパリングペースによって利上げ時期が云々されるのはイクナイ!とまたこの分離論になっているのがしつこいしつこい。

『A few participants suggested that the Committee would need to be mindful of the risk that a tapering announcement that was perceived to be premature could bring into question the Committee's commitment to its new monetary policy framework.』

『With respect to the effects of the pandemic, several participants indicated that they would adjust their views on the appropriate path of asset purchases if the economic effects of new strains of the virus turned out to be notably worse than currently anticipated and significantly hindered progress toward the Committee's goals.』

ということで、最後までしつこいまでの「テーパリングと利上げは別のレベルの話だよ分離工作」の連呼が行われておりまして、まあ相当気にしてるんでしょうなあというのは良く分かりました。

#他の所はECBネタと共に明日以降成敗します所存






2021/08/18

お題「お盆休み虫干しネタでECBのフォワードガイダンスのラガルドはんによる説明を鑑賞(その1)」

黙って食べてたのに打ち合わせが出来るとはおまいらエスパー??
https://www.asahi.com/articles/ASP8K5CZ3P8KUTFK011.html
「会食ではなく打ち合わせ」二階氏、5人で日本料理店へ
会員記事
2021年8月17日 16時35分

『自民党の二階俊博幹事長、公明党の石井啓一幹事長ら自公幹部の計5人が17日昼、東京都内のホテル内の日本料理店で会談した。政府が5人以上が集まる会食の自粛を求め、同日には緊急事態宣言の地域の拡大・延長が決定するさなかの会食。出席者は「黙食だった」「会食ではなく打ち合わせ」などと釈明している。』(上記URL先より)

・・・・・「会食ではなく打ち合わせコース」がアナーキー系居酒屋で流行するのか。


ちなみに話は全然違いますが、昨日は必要緊急の書店詣でを謹んで行いまして、黙々とて本を探して「カバーお願いします」「どうも」以外の発声を行わずに、大枚2970円(2700円+消費税)はたいて「デフレと闘う」と書いてある割にはただの日記っぽい内容が多いジンバブエ日記を査収して参りましたが、パラパラと見た感じでは、神とか言ってた金懇のような迫り来るパッションがまるで感じられ無いし、だいたいからして政策の波及経路とかそういう話をもっとちゃんとして欲しいのですが、ただの感想文というか悪口の羅列っぽくて、予想通り全然おもろくないわ金返せという感じではありますが、まあ皆様の需要があるかどうかわからんですけどジンバブエ日記日記を書かないといけないから読みますわという所です。

日記形式なんで、何かエピソードみたいなのがあったりするんですけど、いやお前それ本当にそうだったの???みたいなのが(置物日記の時にもそういうのがありましたけれども)と読んでて引っ掛かるのが多くて、まあ要は過去の事実関係に脚色部分(婉曲表現)が無いかどうかを一々確認しないと安心して読めないのがこの一派の仕様なんですよねー。

まあ人間だから多少自分に都合よく記憶が形成される(婉曲表現)のは仕方ない面はあるのですが、それをそのまま気持ちよく本人がダラダラと垂れ流しているものを「歴史」と勘違いしてはいけない、とかそういや保阪正康先生や半藤一利先生も言ってますわな、とかそういう事を思い出しました。

・・・・・すいません余談ばっかで。


〇パウエル議長が学生とかとのセミナーに出てましたが特に何もなし(メモ)

パウエル、という文字列を見るとアタクシは自動的に反応するので確認確認。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20210817a.htm
August 17, 2021
Welcoming Remarks
Chair Jerome H. Powell
At Conversation with the Chair: A Virtual Teacher and Student Town Hall Meeting, Washington, D.C. (via webcast)

ということで「パウエル議長とお話をしよう!」みたいなのがあって(と言ってもリモートのようですが)裏山鹿にも程があるわ(まあワシが会ったらまず色紙だして「サインください!」とか言い出しそうなのな位にミーハーなのでので論外ですが)という感じでございますが、なんかお話をしております。

・・・・・・とは言いましても、引用するまでもなく学生(と言ってもそんじょそこらの学生さんではなくて、『The students here today are the policymakers and legislators of the future.』(上記URL先より)だそうですけど)向けの一般のご挨拶といった風情で、Q&Aがあったのでそっちではちょっとお話があったかも知れませんけど、まあ別にどうということはないようですな。
よってメモだけでした。一応ロイターさんの記事はっておく。

https://jp.reuters.com/article/us-fed-powell-idJPKBN2FI224
2021年8月18日4:36 午前
〔情報BOX〕パウエルFRB議長の発言要旨

『発言の要旨は以下の通り。

*新型コロナは引き続きわれわれと共に存在し、しばらくはその状態が続く公算
*人々や企業はコロナに適応することを学習
*デルタ変異株が経済に重要な影響を与えるかどうかは依然不明
*サービス業に従事する何百万人もの人々がいまだに仕事に就けず、回復が完了したと判断するには程遠い
*FRBは実際の緊急事態のために用意したツールを完全に片づけている最中
*デジタルマネーはますます重要になりつつある
*FRBがデジタル通貨を持つべきかという質問は非常に興味深く、困難も伴う
*FRBの決定は直接的な政治的支配から独立
*金融セクターは経済のリスクにならず
*コロナの世界的大流行(パンデミック)はなお経済活動に影を落としている』(上記URL先より)

でもって上記のような話はさっきのオープニングリマークの方には無かった(と思う)ので、参加者とのQ&Aセッションでの発言でしょうな、という所ですね。


〇お盆休み超虫干しネタになってしまいましたがECBの今さらレビュー(会見続き)

すいませんすいませんすいません。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2021/html/ecb.is210722~13e7f5e795.en.html
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 22 July 2021

他にネタが無いのもありますが、あのだんだらフォワードガイダンスに関しての質問が連発しておりまして、説明も連発しているのですが、やっぱり何かガイダンスの変更は色々と微妙な気がします。


・金利ガイダンスは全員一致かという質問に対して無駄に長広舌を振るっているのはなぜ?

最初の質疑から長い。

『Could you run me through your discussion on changing the forward guidance? We hear that you couldn't get unanimity on the guidance two weeks ago. Did that happen today? Was the forward guidance supported unanimously or was there dissent? How is this guidance different than what you discussed two weeks ago?』

2週間前の全会一致じゃなかった、というのはストラテジーレビューの方ですが、今回は全員一致だったのか?というのと、今回のガイダンスとストラテジーレビューの違いについて説明してくれや、というのがあります。

実はこの質問、後半のお題が、

『Second question is about the Delta variant, which you mentioned a couple of times: we know it's more contagious and UK infection numbers are rising quite rapidly. Do you see a risk that the emergency phase of the pandemic will last longer than now many think because of Delta? Is Delta properly factored into your risk assessment?』

という訳でデルタ株の影響に関する質問もあったのですが、ラガルドはん開口一番、

『Lagarde: Well, I will need at least an hour to go through all your questions! You cover huge ground, so let me tackle your first question, which had to do with how we reached our decision in relation to forward guidance.』

と言って、このあとフォワードガイダンスに関する演説が始まります。ちなみにデルタ株へのお答えは後半にちょろっとだけあっさり味の一般的な回答(影響が大きいかどうかはきちんと注意してみて行くよ)になっておりましたのでそっちはパスします。

『Let me take you back just a little bit to our strategy review and the strategy - the monetary policy strategy that we adopted unanimously.』

レビューは全会一致じゃなかったけどマネタリーポリシーストラテジーは全会一致だったとな。

『You have to think in terms of the strategy that we adopted as the framework within which we weave monetary policy. There was unanimity on the framework. This is really the basis against which we develop monetary policy as we go, and depending on circumstances, so unanimity there.』

と仰せなのですが、

『There was unanimous agreement around the table that we had to revise our forward guidance, and that forward guidance had to implement our strategy review. We did not have unanimity, but we had an overwhelming majority about the calibration of the forward guidance on ECB interest rates.』

ガイダンスを見直すのは全員一致ですが、フォワードガイダンスは我々のストラテジーレビューの道具なので(ストラテジーレビューと同じく)全員一致にはなりませんでした、だそうな。

『That's what I had anticipated and what matters most is the fact that directionally, we were all on the same page and determined to revise the forward guidance as we did, but also to make sure that it is geared to implement our strategy. So that's very bluntly how it happens and what matters really is this chain of events, if you will, amongst us.』

全会一致にならないことは織り込み済みです、って話もしてて、別にこの「全員一致」に拘ることは無いと思うのですが、票決を取って誰が賛成誰が反対ってのを公表すると、各国中銀総裁という立場が鮮明になってしまって、EUの中で地域対立みたいなことが起きるのが懸念とか、そういうことでもあるのか、なんか米英日みたいに統一国家じゃないから難しいんでしょうな。その辺のニュアンスは頭ではわかっても実感としては中々理解しにくいんですがアタクシは。

と、ひとしきりこの全員一致云々の話しをしていましたが、次にガイダンスの説明になります。(小見出しだけ入れますが今の続きになります)


・最初はガイダンス文言読んでるだけなんですけど3本の足があるそうな

上記から続きます。ラガルドさんのご回答。

『Now, you asked me to dissect the forward guidance that we adopted, and if you don't mind, I am going to take you through a little exercise of going through that long sentence, which is probably the one that is a little bit more lengthy in the whole presentation that I gave you.』

ガイダンス文言の説明をしますよちょっと長いけど、だそうですが。

『It's a bit more lengthy because the forward guidance rests on three key criteria, if you will, or three legs of forward guidance. I will take you through that.』

3本の足?があるようで(支柱とかそういう風に言うのが適切だと思います、為念)。

『First of all, in support of our symmetric 2% inflation target and in line with our monetary policy strategy, so we are well anchored in our strategy. We remind ourselves that we are targeting 2% inflation and our commitment is symmetric.』

シンメトリック2%ターゲットがストラテジーの基本である、と前置きを入れまして、

『The Governing Council, so it is not relying on any kind of projections. It is the Governing Council in its judgement that expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until - and that's when it begins to be important - we see inflation reaching 2% well ahead of the end of our projection horizon. That's leg number 1.』

一本目の足の説明をしているのは良いんですが、この説明ではガイダンス文言そのまんまで詳しい説明になっていないような気がするんだが。

『Leg number 2: durably for the rest of the projection horizon and,』

いやそれも書いてある文言どおりや!

『third leg, we judge that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at 2% over the medium term. We add to that a sentence that you might remember from the strategy review, which is: this may also imply a transitory period in which inflation is moderately above target.』

うーん、結局説明が「2%の物価目標を見通し期間の最後よりも十分前に達成できるという見通しがあり、かつその後の物価水準も着実に2%で推移するという見通しがあり、中期的に物価が2%水準で安定するという状況と整合的な水準に基調的な物価が十分に上昇している」時期まで今の政策金利を維持または追加利下げを行う、という説明から全然外に出てないじゃんという感じです。


・これはお茶目な言い間違え

さらに今の続きです。

『So, by these three legs we are essentially saying, first of all, that we want to see inflation reach 2[1]% well ahead of the end of our projection horizon.』

この部分ですが、原文の方では「1」がハイパーリンクになっていて、ここをポチっとなとしますと、

『Updated: The President verbatim accidentally said “3 %”』

ということでラガルドはん本音のポロリ来たでという所、かどうかは知りませんが、まあラガルド総裁としては物価オーバーシュート大歓迎位の気持ちでいるんでしょうなというお茶目な言い間違いがありました。さらに続きます。


・やっと細かい文言の説明になります

またまた今の続きです。

『Now, you might say, what is well ahead? Well ahead first of all is determined by judgement of the Governing Council but it is essentially the midpoint in our overall horizon.』

ここから次のパラグラフですが(これスタッフの段落の切り方がアレ)、

『Just to remind those of you who do not necessarily know what our projection horizon is, at the moment we project '21, '22, '23. So, we want to see at least 2% on the horizon, but well ahead of the end of this horizon.』

ということで、まず最初の足(?)の「見通し期間の終わりよりも十分前に2%に到達するという物価見通し」ですが、これについては「見通し期間の中間あたり」という回答が得られました。ECBのスタッフによる4半期ごとにリバイスされる中期見通しは、今だと2023年までの期間を想定しておりますので、その中間あたり(いまだったら22年の後半とか)に物価が2%に行っているという見通しが無いと利上げしませんよ、と言う話をしておりまして、物価見通しが2023年に2%になったからといってホイホイ利上げしませんよ、という話ですが、これ見通し期間のケツで2%達成って見通しが出ると、「よーしあと1年したら利上げだな!」という話になるのかどうか、結局この辺りは時間的不整合の問題をどう対処するのかは将来の見ものではあります。

んで次ですが2番目の足で言ってる「durable」とは何ぞやという話。

『The second aspect is that we want that 2% to be durable, so we want it - and that's the second part of the statement - it says: durably for the rest of the projection horizon. So, it can oscillate a little bit but it cannot go below 2%, essentially.』

見通し期間中に物価が2%を下回る予想になっていないこと、だそうです。これ見通し期間が将来長くなる方向で変更とかされますと話がややこしいことになりそうですね笑。

『The third one, which is important as well, is that we want to look at the current circumstances and in particular the current underlying inflation, to see whether directionally these underlying inflation components actually lead us into that upward trend that will help us reach the 2% target that we are committed to.』

3番目の足の部分の文言が文学的過ぎて分からんのだが、その解説らしきものがこれです、基調的な物価が2%に向かって実際に上がっている事が3番目の足のようです。そらまあ今は物価が2%よりひくいという状況なのですから(7月のヘッドラインは2.1予想ですけどね)、そら上向きトレンドになっていないとそもそも見通しとして上昇して2%達成だぜヒャッハーとは出しにくいと思いますが、そもそも論として基調的な物価というのも、政策に絡む説明ではホイホイと出て来る(洋の東西を問わず)のですが、実際には何の数字ですねん、という話になるとフワフワだったりするのが味わい深いのでありまして、結局具体的なスレッショルドはよくわからんですな。

『So you've got three legs: one that is in the present, you could argue that there is an element of outcome based in that one, where we look at the underlying inflation factor and we see whether directionally we're aiming towards our target. Then we want to see it on the horizon but we want to see that to have been sufficiently lasting so that essentially at midpoint it is already there.(この先はデルタ株の話になるので割愛)』

うーんこの。3番目の基調的物価云々が「アウトカムベース」ということですが、そもそもさっき申し上げた通り、基調的物価自体が幅のある概念で、アウトカムベースはアウトカムベースではあるのですけれども、具体的な指標(例えばHICPのコア、みたいな決め打ち方式)に紐がついている訳ではないので、この「基調的な物価が上昇している」というのもジャッジメンタルな部分が入るし、残りの足に関しては明らかに見通しベースの話なので、何か微妙な物件ではありますな、とは思います(そういう質疑が後で出て来るが今日はパスね)。

まあ何ですな、ラガルドさんはさっきのお茶目な言い間違いにありますように、本人は緩和縮小にはかなり慎重だし、インフレ上振れ何ぼのもんじゃい!となっているのは見え見え。明確な指標紐付けガイダンスを今回回避したのは、一時的な物価上昇を受けても指標紐付けガイダンスだとヒットしてしまうので、そこを避けたんではないかと思うのですが、そのためにジャッジメンタルな要素が多くなっておりまして、これは今後タカ(概ねブンデスバンクとなかまたち)とハト(執行部と南欧)が、このジャッジメンタルな部分に関して何か言及バトルとか始めるとおもろいなあ(他人事感満載でサーセン)とは思うのですが、しかしこの文学的な表現でも全会一致にならなかった理由(はさすがに質疑で出てこなかったし回答もできんじゃろとは思うけど)はどういう事なのか、というのを知りたいですなドイツ様。


以下、この会見はフォワードガイダンス説明会場となっておりまして、ニュアンスとか文言とかの質問が連発する中で、PEPPの質問とかデルタ株の質問も出るでよ、という風情になりますので、適当に見繕って今週中に成敗致します(すいません)が、まあECBの場合は当分動く気が無いというか、どう逆立ちしても米国よりも先に正常化に動くとは思えないので、米国の方を主にみておけばエエジャロ、という安易な発想をしておる今日この頃でございまする。






2021/08/17

お題「ハイパー今更ジローですがECBのオープニングリマークの形式が変わったので確認」

風の噂に(ではなく密林などに出ていますが)待ちに待ったジンバブエ日記が上梓されたと聞きましたので、これはどう見ても必要緊急の書店訪問イベントが発動しますね。マネタリーベース置物直線一気理論の反省文とか当然無いと思いますので(あったら逆にビビるわw)、金懇テキストを読んでいくだけでも中々鬼気迫るジンバブエ節が今回の著書でも見られるのか、はたまた編集が良識的に入ってしまっているのかはお楽しみにしたいと思いますし、金懇でのジンバブエ節にどの位編集が入っていたのか、ということを想像することも出来そうですね。

で、書店の方にはならんどるのけ??(最近書店にとんとご無沙汰しておりまして)

・・・・・と、こう書きますと「ジンバブエ日記日記を早よだせやヴォケ」という皆さまからの温かいご声援がまたプレッシャーになりますなwww


〇日米欧が揃って出したので目先ノーマークで良いやと放置してたECBネタ(超虫干し)

どう見ても証文の出し遅れです本当に申し訳ございません(が俺様備忘メモなので残しておかないと)。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2021/html/ecb.is210722~13e7f5e795.en.html
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 22 July 2021


・今回から様式が変わったので・・・・・・・・

今までと様式が違うのですが、最初に全体観の話をして、その後「経済活動」「物価」「リスクについて」「金融及びマネタリーコンディション」「まとめ」という小見出しで説明がある、という物件になっているのですが、最初の全体感の部分が長いので何か物凄く座りが悪い(個人の感想です)。今後これを見て行く、となりますと、従来よりも読む部分が多くなる(まあそれを意図してるんだから仕方ないのですが)ということで困ったなあとか思うのでありました。

まずは全体観。

・最初に「主に今回はこの話をした」ってのが今後も続くのけ??

最初のご挨拶はさておき、その次から。

『At today’s meeting, the Governing Council focused on two main topics: first, the implications of our strategy review for our forward guidance on the key ECB interest rates; and, second, our assessment of the economy and our pandemic measures.』

今回のお題が2つある、とのことですが、最初の「政策金利のフォワードガイダンスに対する我々のストラテジーレビューが示唆すること」ってナンジャソラという感じで、2番目が「経済と我々のパンデミック対応手段に対するアセスメント」でまあこれは意味わかる。

でもってこのお題に対する解説が続く。

『In our recent strategy review, we agreed a symmetric inflation target of two per cent over the medium term.』

一々説明する事かよ(別に新しい決定じゃないんだから)と思いますが、シンメトリー2%に合意したから何なのかと言いますと、

『Our policy rates have been close to their lower bound for some time and the medium-term outlook for inflation is still well below our target. In these conditions, the Governing Council today revised its forward guidance on interest rates.』

ということで、こちらはステートメント(をすっ飛ばしてて恐縮ですが)にありますように、

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2021/html/ecb.mp210722~48dc3b436b.en.html
Monetary policy decisions
22 July 2021

の2パラ目に、

『In support of its symmetric two per cent inflation target and in line with its monetary policy strategy, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it sees inflation reaching two per cent well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term. This may also imply a transitory period in which inflation is moderately above target.』(この部分だけ直上URL先の7月会合声明文より引用)

とクッソ長い金利ガイダンスガイダンス文言で、「ECBは政策金利水準を、現状水準かより低い水準で維持します。でもっていつまでかと申しますと、物価が見通し期間の終了よりも十分前の時点で2%に到達し、その後見通し期間の終了までの間も持続的にその水準を維持し、かつ実際の基調的物価が、中期的に物価目標の2%で安定することに整合的な状況に十分になっている時までです」だそうで、クッソ長いにも程があるガイダンス文言に代わりました。なおその中には「一時的に物価がモデレートリーに2%を上回る状況も含まれていますので上振れも容認しますよ」というのもありますな。

というのをぶっこんでいるのですが、まあこれだけクソ長い文言である、ということは色々と揉めたんでしょうなあというのが伝わる次第で、どうせドイツのバイトおじさんとラガルド姐さんの意見が水と油で全然合わなくて揉めるからこういう文言になるんでしょうなあとは思いました。


でもってそのガイダンスのラガルドはんによる説明・・・・と思いきや、

『We did so to underline our commitment to maintain a persistently accommodative monetary policy stance to meet our inflation target.』

『In support of our symmetric two per cent inflation target and in line with our monetary policy strategy, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until we see inflation reaching two per cent well ahead of the end of our projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and we judge that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term. This may also imply a transitory period in which inflation is moderately above target.』

『Let me turn to the assessment of the economic outlook and our pandemic measures.』

何だよガイダンス文言読み上げただけかよ、ということでして、もしこれがラガルド姐さん(基本的にこの人はハトである)が満足する文言だったらもっと説明したのかなーとか妄想が捗りますが、碌な説明もなく経済状況の全体観に進むのでありました。

『The recovery in the euro area economy is on track. More and more people are getting vaccinated, and lockdown restrictions have been eased in most euro area countries. But the pandemic continues to cast a shadow, especially as the delta variant constitutes a growing source of uncertainty.』

コロナの影響は弱まっているけれどもまだ残っており、変異株の拡大が今後の不確実要素である、と言う感じで、まあアレです。米国のように物価が上放れしてしまってマンデートのコンフリクトが起きていると大変なのですけれども、そうでもないという状況ですと「コロナガー」って言ってりゃ良いんですからある意味今の中銀は説明楽なのよね。

『Inflation has picked up, although this increase is expected to be mostly temporary. The outlook for inflation over the medium term remains subdued.』

物価は今ピックアップしているけれどもこれはほぼほぼ一時的な要因で先行きに関しては中期的に見て抑制された状態が続いている、てな話。

ちなみにインフレーションに関してはECBはこれまた見やすいページがあります(どうも改修作業をしているようだが)。
https://www.ecb.europa.eu/stats/macroeconomic_and_sectoral/hicp/html/index.en.html
Measuring inflation - the Harmonised Index of Consumer Prices (HICP)


でもって物価の話はおしマイケルで次が金融環境というか企業の借入環境と言った方が適切(だし金融政策の波及経路考えたら企業の借入の環境を見るのが妥当ですわな)。

『We need to preserve favourable financing conditions for all sectors of the economy over the pandemic period. This is essential for the current rebound to turn into a lasting expansion and to offset the negative impact of the pandemic on inflation.』

金融環境は緩和的で、この緩和的な環境を維持することによって今経済に起きているリバウンドの動きを経済拡大へとつなげて行き、感染症の悪影響をオフセットすることができますよ、と来まして、

『Therefore, having confirmed our June assessment of financing conditions and the inflation outlook, we continue to expect purchases under the pandemic emergency purchase programme (PEPP) over the current quarter to be conducted at a significantly higher pace than during the first months of the year.』

PEPPによる資産買入プログラムは引き続きこの四半期においては従来通り年初数か月の時よりも顕著に高いペースで実施していきますよ、と仰せです。ほうほうそうですかそうですか。

『We also confirmed our other measures to support our price stability mandate, namely the level of the key ECB interest rates, our purchases under the asset purchase programme (APP), our reinvestment policies and our longer-term refinancing operations, as detailed in the press release published at 13:45 today. We stand ready to adjust all of our instruments, as appropriate, to ensure that inflation stabilises at our two per cent target over the medium term.』

その他の政策金利やPEPPじゃない方の資産買入、TLTROなどの施策は従来の施策を維持します。

『I will now outline in more detail how we see the economy and inflation developing, and then talk about our assessment of financial and monetary conditions.』

ということで、今回は政策金利に関するフォワードガイダンスの変更があったから長くなっただけという事のような気がしますが、それにしましてもガイダンス文言の説明くらい入れれば良いのに、と思ったりはします。また、ガイダンスでガチガチにしてしまったから、というのはあるかも知れませんが、以前はもうちょっと何かを実施した時と言うのは、この実施によってどういう効果をもたらして、今後どのような点を注意していく、みたいな説明があったと思うのですが、文章が長い割には中身に乏しいステートメントですな、と思うのでありますが、さて明細の方を確認しますとですな、


・経済の見通しは強い、消費も伸びるし設備投資も伸びるし、だそうです裏山鹿

最初の小見出しはさっき申し上げたように経済の状況についてで『Economic activity』で4パラグラフあります。

『The economy rebounded in the second quarter of the year and, as restrictions are eased, is on track for strong growth in the third quarter.』

経済活動制限の緩和により2Qの経済はリバウンドして、3Qも力強い成長が見込めるでしょう。

『We expect manufacturing to perform strongly, even though supply bottlenecks are holding back production in the near term. The reopening of large parts of the economy is supporting a vigorous bounce-back in the services sector. But the delta variant of the coronavirus could dampen this recovery in services, especially in tourism and hospitality.』

製造業は強いですし、供給制約なんぞ何ぼのもんじゃいってなもんでっせ、と威勢良くて、非製造業についても経済の再開で力強く戻っていますが、変異株の拡大がサービス、特に観光などの関連に悪影響でしょう、とここまでが1つ目のパラ。

『As people return to shops and restaurants and resume travelling, consumer spending is rising. Better job prospects, increasing confidence and continued government support are reinforcing spending.』

次のパラグラフですが、最初のこの部分を読みまして、ジャパンの状況と比較したら全俺が泣いたという感じでございまして、ECB様におかれましても、雇用の先行きに対する改善や、コンフィデンスの改善や、政府の継続的なサポートが消費を支えています、とかいう現状認識をなさっておいでで、一方のジャパンはと言えば雇用はアレ、コンフィデンスは下がるわ、政府のサポートはコロナ対応の前にお祭りの方ばっかり(でも世論調査でお祭り開催が高く評価されてしまうんだからそりゃ仕方ないよね)という有様なのがもうねという感じです。まあどうでもいいけど。

『The ongoing recovery in domestic and global demand is boosting optimism among businesses. This supports investment. For the first time since the start of the pandemic, our bank lending survey indicates that funding of fixed investment is an important factor driving the demand for loans to firms.』

域内および海外の回復が続いているので、企業の楽観が拡大して企業の投資が増えており、パンデミック以降初めてとなりますが、バンクレンディングサーベイにおいて、企業の設備投資が資金需要拡大の重要なファクターになっている、という回答が得られている、という位に企業の設備投資意欲が強い、と来ました。

でもって次のパラグラフになりますがここからが先行き見通しみたいですね。

『We expect economic activity to return to its pre-crisis level in the first quarter of next year.』

来年の1Qには危機以前の水準に経済は戻ると見ているキタコレ。

『But there is still a long way to go before the damage to the economy caused by the pandemic is offset. The number of people in job retention schemes has been declining but remains high. Overall, there are still 3.3 million fewer people employed than before the pandemic, especially among the younger and lower skilled.』

とは言え雇用を見るとまだまだダメージは大きく残っている、という説明になっています。でもって最後のパラグラフになります。

『Ambitious, targeted and coordinated fiscal policy should continue to complement monetary policy in supporting the recovery. In this context, the Next Generation EU programme has a key role to play. It will contribute to a stronger and uniform recovery across euro area countries. It will also accelerate the green and digital transitions and support necessary structural reforms that lift long-term growth.』

最後のパラグラフはクッソどうでも良い事しか言ってませんでした。残念無念。


・物価に関してはそもそも経済にスラックがあって賃金が上がらん状況で基調が上がらんとのお告げ

『Inflation』ということで、物価については3パラグラフで説明しています。

『Inflation was 1.9 per cent in June. We expect inflation to increase further over the coming months and to decline again next year.』

向こう数カ月は物価があがる(さっきのインフレーションダッシュボードによれば7月のHICPの予想が2.1%になっていましたな)ものの、来年になるとまた物価上昇率は鈍化するでしょう。

『The current increase is largely being driven by higher energy prices and by base effects from the sharp fall in oil prices at the start of the pandemic and the impact of the temporary VAT reduction in Germany last year. By early 2022, the impact of these factors should fade out as they fall out of the year-on-year inflation calculation.』

一時的要因として述べている要素の説明は従来通り。米国のように予想より上振れとかそういう話は一切ない。でもって次のパラグラフ。

『In the near term, the significant slack in the economy is holding back underlying inflationary pressures. Stronger demand and temporary cost pressures in the supply chain will put some upward pressure on prices. But weak wage growth and the past appreciation of the euro mean that price pressures will likely remain subdued for some time.』

見通しの前提として、EU域内経済においては、まだ経済に顕著なスラックがある、という認識をしめしていまして、その顕著なスラックがあることに加え、賃金の伸びが弱く、さらにはユーロが上昇したことも、物価上昇圧力を抑制するので、一時的な要因が何ぼのもんじゃい状態である、という認識になっておりますので、お賃金は強いわ上昇が持続的になっているわという米国とは全然ステージが違う、という説明になっております。まあそれが正しいのかどうかは後付けにならんと分からんですが、ただこういう認識であれば政策は少なくとも地蔵だし、何か緩和しゅだんでもあったら緩和した方がエエンチャウノという話になるのですが、日本以上に金利下げが厳しそうな中で追加政策もなさそうなので地蔵継続となるんでしょう。そんな中で気候変動方面に打って出るラガルドはんって、大陸打通作戦あるいはインパール作戦か、って風情も漂う訳ですが・・・・・・・・・・

でもって物価のパートの最後のパラですが。

『There is still some way to go before the fallout from the pandemic on inflation is eliminated. As the economy recovers, supported by our monetary policy measures, we expect inflation to rise over the medium term, although remaining below our target.』

我々の政策サポートと経済の改善によりミディアムタームで見れば徐々に物価目標に近づく、というのは別に見通しとかいうよりもただの呪文の世界。

『While measures of longer-term inflation expectations have increased, they remain some distance from our two per cent target.』

でもって何気にほほーと思ったんですが、インフレ期待は上がっているんですね、まだ2%達成には遠い状況ではあるものの、とは入れられてますが。

ということで、ここまでの所を見ると、従来の説明にあった「エコノミックアナリシス」よりも丁寧な説明になっている(元が元だけに全体があっさり味なのは仕方ないとして)感はあります。


・リスクバランスの説明ですが物価のリスクの話をしなくなったのね

『Risk assessment』は1パラグラフ。

『We see the risks to the economic outlook as broadly balanced. Economic activity could outperform our expectations if consumers spend more than currently expected and draw more rapidly on the savings they have built up during the pandemic. A faster improvement in the pandemic situation could also lead to a stronger expansion than currently envisaged. But growth could underperform our expectations if the pandemic intensifies or if supply shortages turn out to be more persistent and hold back production.』

経済のリスクに関しては上下ともにあって概ねバランス、ということでそのコンポーネントの説明をしているのは良いんですが、物価のリスクに関する説明が従来一応あったのですが、今回からは無しですかそうですか。まあ経済のリスクアセスメントだしておけば十分と言ってしまえばそれまでですけどね。



・金融環境とマネタリーアナリシスにM1だのM3だのという文言が消滅してるのですが

『Financial and monetary conditions』は3パラグラフあります。

『The recovery of growth and inflation still depends on favourable financing conditions. Market interest rates have declined since our last meeting. Financing conditions for most firms and households remain at favourable levels.』

最初が市場金利水準と企業や家計の借入環境に関するアセスメント。

『Bank lending rates for firms and households remain historically low. Firms are still well funded as a result of their borrowing in the first wave of the pandemic, which in part explains why lending to firms has slowed. By contrast, lending to households is holding up. Our most recent bank lending survey shows that credit conditions for both firms and households have stabilised. Liquidity remains abundant.』

2つ目のパラでは銀行借り入れに関する金融環境(金利水準とアベイラビリティ)について説明していました。もちろん良好な環境ですよという話だが。では3つ目のパラ。

『At the same time, the cost for firms of issuing equity is still high. Many firms and households have taken on more debt to weather the pandemic. Any worsening of the economy could therefore threaten their financial health, which could trickle through to the quality of banks’ balance sheets. It remains essential to prevent balance sheet strains and tightening financing conditions from reinforcing each other.』

3つ目のパラグラフは最初に企業の株式発行環境について説明していてナンノコッチャとか思いましたが、以下の説明は「企業や家計がパンデミックを機に負債を積み上げている」という話のマクラっぽくて、企業や家計セクターの負債拡大というのは、将来の金融環境の悪化や、負債拡大に伴うバランスシート制約発生のリスクなどがあるので、企業や家計の負債拡大状況については注意しないと行けない、という話で締めています。

・・・・・・ということでお分かりの通り、このコーナー「Financial and monetary conditions」と言ってますが、マネタリーコンディションの話はしてなくて、従来必ずマネタリーアナリシスの部分で出していたM1とかM3の分析は無くなってしまいました。いやまあ実際にはM1とかM3の分析しているとは思うのですが、オープニングリマークに出てこなくなりましたので、まあ要するにそういう事やぞという話でありまして、マネタリーベース直線一気理論だのマッカラムルールだのといったものは初めから無かったんや!!!という話でございますが、何故かそのような理論を信奉しておられる(筈なのに野口某大先生は関係が薄いとか言い出す曲学阿世っぷりが凄いですが)方がボードに何人もおいでになる中央銀行ェ・・・・・・・・・・


・最後が纏め

『Conclusion』というほど大したことは言ってないが引用。

『Summing up, the euro area economy is rebounding strongly. But the outlook continues to depend on the course of the pandemic and progress with vaccinations. The current rise in inflation is expected to be largely temporary. Underlying price pressures will likely increase gradually, although leaving inflation over the medium term still well below our target. Our policy measures, including our revised forward guidance, will help the economy shift to a solid recovery and, ultimately, bring inflation to our two per cent target.』

今まで説明した話と同じ。

『We are now ready to take your questions.』

ということで今更ジローにも程がありますが、ECBのQAも成敗して行こうと思います(すいませんすいません)。






2021/08/16

お題「ECBの気候変動対応の工程表を見たがオペ導入する日銀ってエライ先走りましたな」

あっそう。
https://nordot.app/799615503404892160
東京都が積極的疫学調査を縮小
2021/8/15 21:26 (JST)8/15 21:43 (JST)updated
コピーライト 一般社団法人共同通信社

この人たちは昨年からこれまでの間何をしてたんすかねえ。


〇ECBは色々とぶち上げてますがオペをするとかは先の話のようで

ECBのトップページ
https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

今(8/16)見に行きますと森の中のワインディングロードのサムネが思いっきりトップにございまして、

『STRATEGY REVIEW

Key milestones on our climate roadmap
Our action plan lays out an ambitious roadmap to take the effects of climate change into account. On this path, we will pass three major milestones that guide our commitment to do our part to tackle climate change.』

とか何とか仰せ(ちなみに暫く前からトップのサムネがこれになっています、いつからかは忘れた)なので、じゃあ気候変動対応のロードマップでも見てやろうかと拝読するとこんなのが出て来る。

https://www.ecb.europa.eu/ecb/climate/roadmap/html/index.en.html
What's our roadmap to greening monetary policy?

右の方には『Climate change and the transition towards a greener economy can have an effect on price stability. We need to be ready and take climate change risks into account when making our policy decisions.』ということで、気候変動のどこがどう物価安定に寄与するのか知らんのですが(国民厚生の最大化という文脈で気候変動に伴うリスクを軽減したいというのは分かるが物価安定は何ぼ何でも話が飛びすぎだろ・・・・・・)まあそういうことなので、

『We at the ECB are doing our part to tackle climate change within our mandate.

As a result of our strategy review, we’ve agreed on an ambitious roadmap on how to integrate climate change considerations into our work. What are the milestones on our road ahead?』

てな訳でロードマップがあるのですが、よく見ると結局やること調査研究やん、という感じでございまして、まあ何ですな、ECBの場合はマイナス金利政策をぶっこんで日本よりも長くやっている訳ですが、お約束のようにマイナス金利の弊害は出るわ物価は行かないわ(米国の流れで神風モードになるやもしれんが)ということで、EUタクソノミーとかそういうのに乗っかるムーブになっているものの、良く見れば「調査」なんだよなー。

という中で、何をどう煽られているのか、はたまた脱炭素を看板政策にしているらしいガースー先生へのヨイショなのか知らんですけど、日銀が真っ先に気候変動何とかオペとか言い出しているのが、なんか真っ先に飛び出してみたら誰も後ろに居なかった的なサムシングを感じますが、まあ拝見拝見。

『First milestone: Paving the way with reliable data』

・・・・・・・・なるほど。

Paveっての手元のデイリーコンサイス英和辞典(ただし古いバージョン)でみたら「舗装する」とか「準備する」とかありまして、「まずは信頼できるデータを集める」って気候変動関連で言えば本家本元様で有らされるところのECB様が仰せですが、ECB様ですら信頼できるデータをこれから整備しようって状態なのに年内には「気候変動対応オペ」を始めよう、という大胆不敵な中央銀行がおられますし、しかも10年間くらいやるとか意気揚々なのですが、データがザル状態なところでオペやるとは実に凄いですなwww

などという悪態はともかくとして、まあそんな訳で最初の中間目標は「信頼できるデータを集める」ということで、まあ中央銀行のよくあるパターンですが、調査とかする分にはあまり文句が出ない(金融機関へのヒアリングとかこられると迷惑なんですが)ですし、中央銀行のDNAとしてそういう「お勉強モノ」は大好物ですので、まあそこから来やがったなという感じですね。


でもって最初に出て来るのが

『1. We will gather data needed for climate change risk analyses』

ということで。

『Climate-related policies and measures depend on reliable data. That’s why we work on new indicators that help to assess banks’ carbon footprints. We will look at how to measure their vulnerability to climate-related physical risks and will work to improve our indicators, in line with progress at EU level on environmental sustainability disclosure and reporting.』

>Climate-related policies and measures depend on reliable data.

いやその通りなんだがお前ら他所様(日銀)を散々煽っておいてこれは華麗な梯子外しェ・・・・・・・・・・・

#なお今回の日銀の気候オペ突撃プレイですが、実際には止めるにやめられなくなっていた成長基盤貸出を終了させる口実にぶっこんだだけ説もありますが

『2. We will adapt our models and make them fit for climate change』

題名からしてお勉強の香りがプンプン。

『Macroeconomic models are at the heart of our analyses and decisions. We will enhance our models to better take into account the effects of climate change. This will help us to assess the impact of climate change and related policies on the economy, on the financial system and on how our monetary policy feeds through to people and businesses.』

マクロ経済モデルに気候変動要素を組み込む、とか言い出す有様ですが、これはワイも老骨に鞭打って気象予報士試験を受けた方がエエですかね(実は1度受けて撃沈したことがある)。


『Second milestone: Knowledge is the driving force』

次の中間目標はお勉強方面ではなくて実態調査系の話のようです。

『1. We will check our own exposure to climate risks』

『We will be carrying out stress tests of our own balance sheet in 2022 to check how exposed it is to climate risks.』

こっちは何かのリスクをチェックする、みたいな話のせいか期日が書いてありまして、ここで「2022年」という文字出てきますが、2022年に気候変動リスクに対してどのように表現できるかというののストレステストを行うそうです。「We will be carrying out stress tests of our own balance sheet in 2022」って言ってるんだから来年に実施するってことだと思いますが、この次に「企業や金融機関のリスクをチェックする」ってのがあるから「our own exposure」ってのはECB(と各国中銀)のエクスポージャーってことかね???


『2. We will check firms’ and banks’ exposures to climate risks』

『Our economy-wide climate stress test that was conducted in 2021 showed that the costs to banks and companies of adapting swiftly to green policies are much lower than the costs of doing nothing and dealing with severe natural disasters in the future. In 2022, we will carry out a separate supervisory climate stress test of individual banks to figure out how well they are prepared for climate risks that might materialise.』

今年実施した気候変動ストレステスト(あとの文章を読めば分かるのですがこれは個別行のストレステストとかではなくてマクロストレステストですな)は、金融機関にしろ企業にしろグリーン政策を行うことによって何もしないで気候変動に伴う自然災害の拡大を迎えるよりはリスクが少なくなることを示した、という結果になっていたそうで、あんまり真面目にその辺を確認していないのでどこを確認すれば良いのか教えてジェネラル(たぶんECBのことだからどっかに分かりやすいリンク集ページを作っている)といった風情ですが、そら「グリーン政策を実施することによって自然災害が減少する」って置きにすりゃそうなるだろ当たり前じゃねえか、などと無粋な事は申しませんけれども、来年のストレステストは、「we will carry out a separate supervisory climate stress test of individual banks to figure out how well they are prepared for climate risks that might materialise」だそうなので、個別行に対して気候変動リスクが顕在化した時のストレステストをするらしい、何だかねー。


最初のマイルストーンが「勉強するぞ勉強するぞ」ってお話なのに対してこっちの個別検査します系の方が妙に具体的なのが笑えるというか、この手の話しって手前のマイルストーンから順にやって行く話だったら、手前の結果を踏まえて先の話になるんだから、先の方がフワッとした話になりそうなものですが、2番目の具体的にストレステストする系の話が具体的なのが中々味わいがありまして、あたかも「結論が決まっているけれどもPTが始まります」みたいな時ってこんな線表を見ますよねーなどと言っていると内務省検閲になるので以下自粛と言う事で(^^)。


『3. We will make disclosure of climate risks a priority』

実際は気候変動リスクよりも大きなリスクがあろうとも気候変動リスクが優先になる、という結論先にあり気の強い意志を感じますねこの小見出しは。

『To effectively assess climate risks and how they could affect us as well as banks and businesses, we need to know much more about those risks. That’s why we will introduce climate-related disclosure requirements for using private sector assets as collateral in our monetary policy operations and for our private sector asset purchases. We will announce further details in 2022.』

2022年に金融政策および個別セクターの資産買入に関して気候変動リスクを踏まえてどのようにすべきか、という詳しいお考えをお示しになるそうですが、どう見ても中央銀行の領分を逸脱してます本当にありがとうございました、といって風情ですが、なにせマクロ経済の調整の方が次の打つ手無し、という状況になっている中央銀行としては、自分たちの仕事を作らないと組織の存在に関わる訳でして、こうやって戦線を拡大しないとアカンのでしょうな。

『4. We will review how credit ratings reflect climate risks』

そんなもん中央銀行が口出すなやと思いますし、大体からしてそういうのは民間が勝手にやってるという建付けにすれば良いものを、クレジットレーティングを監督とか規制の中にたくさん取り込んでしまうからこういう話になるんだし、その結果規制アービトラージみたいなのが発生するのもうアホか馬鹿かとって感じですが。

『Ratings provided by credit rating agencies are a key tool to understand the overall riskiness of assets.』

そもそもそういう権威付けすんなやアホがと思いますが以下続きを。

『Therefore we are checking how ratings agencies include climate risks in their ratings. Additionally, we will consider developing minimum standards to ensure that those risks are consistently included in our own internal assessments.』

中央銀行がそこまで格付けに突っ込んでいくのどうなんでしょうね、とは思いますが、格付けのアセスメントにおける気候変動リスクの扱いについてECBがミニマムスタンダードを作るかどうかを検討するでしょう、だそうです。


でもってその次の目標が、これらを踏まえた、

『Third milestone: Action based on reliable data and best knowledge』

ということですが、なんかまだ詳しいものが何もないけどとりあえずオペを入れてみる、とか言ってオペをぶっこみに言ってる日銀とは何なのかという感じですな。


『1. We will include climate risks into our collateral framework』

担保政策に気候変動リスクを考慮に入れる、だそうです。

『We will consider climate risks when evaluating assets that banks want to use as collateral to get loans from us. This means that assets with higher climate risks could be treated differently than assets with lower climate risks. We will keep supporting innovation in the area of sustainable finance. Since the beginning of 2021, we accept certain sustainability-linked bonds as collateral and for our asset purchases.』

中央銀行がグリーンなんちゃらに対して価値判断示すってのどうなのかと思いますが、次が資産買入でして、そもそも中央銀行が民間信用の直接買入を行ってエエノカという議論は無いのかねと思ってしまいますが、
『2. We will make our asset purchases greener』

だそうです。これはクレディアグリコールとラボバンク大勝利ということですね(全然違う)。

『We will further include climate-related criteria when guiding our corporate asset purchases. This could include looking at how issuers are complying with the Paris Agreement or how they are committed to similar goals. Additionally, as of 2023 we will start disclosing climate-related information on our corporate asset purchases.』

一瞬この字面見た時に2023年からグリーン買入オペでのするのかと思ったら、社債等の買入によって保有したものについて、気候変動関連の情報を開示します、ってことですが、まあ当然ながらそう言う事をするということは、グリーン関連を熱心に買いますよっていうニュアンスを示しておりますな、という感じですね。


・・・・・・・・・という事で先日のECB政策決定の前に何かここ数日ずーっとこれをトップのサムネに置いているというECBのアピールを感じるので、週明けと言う事もあってこんなもんの鑑賞を行いましたが、まあこういう話ですとやはり気象予報士試験に金融機関の人間がぞろぞろと受験する(ちょうど連ドラのお題にもなってるんですよね、テレビ見ないからよー知らんけど)ということですな!!!!!(大嘘)




2021/08/13

お題「テーパリングとっととやれ系の地区連銀総裁も利上げには慎重なのね(カンサスシティジョージ総裁)」

3日早くに玉音放送ですかそうですか。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210812/k10013196681000.html
「東京の感染拡大 制御不能な状況」東京都のモニタリング会議
2021年8月12日 19時41分

・・・・・・・まるで今まで制御していたかのような表現をしている時点で赤点再履修なのだが、去年の今頃いうなら兎も角、1年あったのにお前ら何やってたの?


〇講演テキストがあるのでインスタントで読んでみるジョージ総裁講演

という話の前にPPI
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-dollar-idJPKBN2FD23K
2021年8月13日5:17 午前
NY外為市場=ドル上昇、米卸売物価高止まりでインフレ懸念台頭

昨日はCPI見てインフレがピークアウトとか言ってて翌日のPPIでいきなりジャガーチェンジって何考えとんねんというか真面目に分析しとるのか(まあワタシも別にしてないけどさ)と小一時間ですが、記事中のこれはワロタ。

『アクション・エコノミクスのアナリストらは「PPIが前日の消費者物価指数(CPI)と併せて、インフレ懸念の台頭をうながすもの」と分析。』(上記URL先より)

いやあのそれ昨日の時点でPPIを見ないと判断できないってコメントしてたのおたくさんは、と思いました、まあ別に昨日はこの方への取材記事が無いから知らんけどさ。


でもってジョージ総裁ですが、カンサスシティ連銀は先代が盛大なタカ派でして、むしろジョージ総裁になっておとなしくなったという感じだったのですが、ここに来て急に本家帰りしたという風情で、これ自体はさほどサプライズではないのですが、ただまあ暫くタカ派の中ではおとなしめだった人が獅子吼って感じになっているのお洒落なので一応ネタに(ただし手抜きバージョン)。

https://www.kansascityfed.org/documents/8239/2021-George-NABE-08-11.pdf
Is the Economy Tight or Slack?
Remarks by
Esther L. George
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Kansas City

小見出しを見ると、

A tight economy
The evolution of factors contributing to a tight economy
The outlook for monetary policy

という小見出しの時点でお察しのように、ジョージ総裁は「経済はタイトな状態である」と力強く仰せでして、そりゃ昨日の朝っぱらにヘッドライン出ていたようにとっとと緩和縮小、という罠とおもいましたが、2番目の小見出しが状況の詳しい説明なので、要はその説明の条件が本当に合っているのか??というのを確認しよう、というのが本来の読み方だと思うのですが、まあ執行部とか執行部系とかではないフリーダム地区連銀総裁なのでその辺はスルーしまして最初の所と最後の所を読むという手抜きプレイで。


・経済はスラックではなくタイトだとはこれまたエライ盛大に強い話を

『A tight economy』って小見出しから参ります。

『You don’t have to look hard to spotsigns of an economy that has run into constraints.Business surveys are reporting a record number of job openings. In addition, workers are quitting jobs at a record pace, typically a sign of a hot labor market when alternative opportunities are plentiful. Not surprisingly, many firms are reporting raising wages or expecting that they will be raising wages soon.』

最初に「あちこちで供給制約が起きている」という話をしていますが、言ってるの労働市場の話ばっかりですな。

『Strong demand and limited supply are also apparent in depleted inventories. The inventory-to-sales ratio for retailers is at a record low and far below historical norms. The rundown in inventories has been particularly notable in the automotive sector, where the days’supply of available vehicles for sale, at just under 30 days, is less than half its typical level.』

今度は需要に対応するために在庫がバンバン片付いていますという話だが自動車販売の話しですの。

『Tight supply and high demand are behind the recent increase in price inflation. Prices, as measured by the consumer price index (CPI), increased 5.4 percent over the 12 months ending in July, matching June’s increase and remaining at the fastest pace of increase in over a decade.』

供給がタイトで需要が高いのでプライスインフレーションが起きています、ってんで講演当日にでたCPIの話をしていますな。ちなみに指摘しているのは前年同月比でして、未だに前月比がメインでヘッドラインになるCPIやPPIの扱いが不思議ちゃんではある。

『To be sure, some of the increase in prices simply reflects a reversal of price declines recorded earlier in the pandemic, particularly for service categories like airfares and hotels.』

「some」 of the increaseと言ってる時点できな臭いように、

『But the normalization of some prices is not the whole story. Other prices have moved far above pre-pandemic levels.』

一部の価格が正常化したから、というのは全体のストーリーではない、と仰せでして、「それ以外の価格もパンデミック前の水準よりも引きあがっている」とご指摘です。

まあ何ですな、一時的に盛大に上がった価格が落ち着いてきた(最近だと材木の価格とか)からやっぱり一時的、って指摘するのも理屈としては分かるんですが、そういう動きがあるのに前年同月比が高止まりしたままになっている背景が何なのってのはジョージさんはこう仰せですが、実際どないなんでしょとかそういうのの分析、なんとなくどっかにありそうな気もするが、まあ興味ありますな。

『The sharp increase in car prices has been widely reported, not just as it relates to new cars but also used cars and even rental cars.Indeed, durable goods more generally have experienced large increases in prices, sometimes at the fastest pace in decades. Outside of consumer prices, there’s also been a sharp rise in commodity prices and transportation costs.』

でもってこの部分ではさっきの「Other prices have moved far above pre-pandemic levels.」の説明をしているのですが、自動車と耐久消費財とエネルギー価格上昇に伴う輸送コストを例示しているだけということでジョージ総裁の説明ちょっと雑だな、という感じですが、この説明で「エビデンス」と言い切ってしまうのはちょっと・・・・・・・と思うのだが次のところでエビデンスと仰せなのにはちょっと???である。、

『Based on this evidence, the economy shows clear signs of tightness. An important question is: Will this tightness persist with implications for the path of monetary policy?』

現状の経済はタイト化のサインを明確に示しており、この経済の持続するタイト化が金融政策のパスにどんなインプリケーションを与えるか、ってことですが、経済の状況に関してああだこうだ説明している部分を華麗にパスして手抜きで最後の金融政策の所を見る。

『The outlook for monetary policy』という小見出しですが、

『What does this mean for monetary policy and the Federal Open Market Committee’s long-run objectives for the economy? How should policymakers account for today’s “tight” demand and supply dynamics in their decisions about the path of asset purchases and interest rates?』

そういうタイトな経済という中で政策はどうすべきかという話になりまする。

『Since last December, the Committee has stated that it expects to keep the policy rate near zero until the labor market has reached levels consistent with maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time. The FOMC also expects to maintain its purchases of Treasuries and mortgage-backed securities until substantial further progress has been made towards these employment and inflation goals.』

ここは話のマクラだからキニシナイ。ここからが本番。

『Without question, the combination of fiscal and monetary policy supports at the onset of the pandemic bridged the economy’s transition from a deep contraction to a robust rebound.』

緩和的な金融政策と財政政策のセットはパンデミック経済が急回復して今の経済になるために重要な働きをしましたのは言うまでもありません。

『Now, with the recovery underway, a transition from extraordinary monetary policy accommodation to more neutral settings must follow.』

回復はまだ途上にありますが、エクストラオーディナリーな金融緩和政策はより中立的な設定に移行すべきであります。

『Today’s tight economy as I described earlier certainly does not call for a tight monetary policy, but it does signal that the time has come to dial back the settings.』

今のタイトな経済は、金融引き締めを必要とするような状態ではないが、超金融緩和という設定を戻していくべき状況である、って辺りがヘッドラインになっていましたな昨日の朝方には。

『With year-over-year inflation running well over the Committee’s target and steady progress in monthly employment gains, the FOMC’s long-run objectives for price stability and employment are in focus.』

FOMCのマンデート達成はフォーカスに入っている、だそうですので、パウエルからはだいぶ離れた見解になっています。まあタカ派なんでそうなんですけど、ただ先ほども申し上げましたように、ジョージさん前任ほどの我が道を行く徹底タカ派って訳でもなかったので、ワタクシ的にはジャガーチェンジ感を受けましたのでネタにしている次第。

『While recognizing that special factors account for much of the current spike in inflation, the expectation of continued strong demand, a recovering labor market, and firm inflation expectations are consistent, in my view, with the Committee’s guidance regarding substantial further progress toward its objectives. I support bringing asset purchases to an end under these conditions.』

今の物価に関しては特殊要因が多くあることは認めますが、それを加味しても現在の状況はAPPの拡大を終了させるべき状態ですよ、と大きく出ました。

『As this adjustment gets underway, public attention will naturally turn to timing for adjusting the policy rate, though it is important to note the timing of the tapering of asset purchases is not mechanically connected to the timing of any policy rate adjustment.』

本来利上げとテーパリングは必ずしもセットでは無いのですが、テーパリングが始まると(終わると、ではなくてその期間中に)、市場の次の興味は利上げの時期、ということになるでしょう。

『With both upside and downside risks in play, and multiple policy tools in use, judging the achievement of criteria for raising rates is more complicated.』

でもって利上げの話になると上下のリスクもあるし、政策ツールとしてAPPが生きている中なので、利上げの判断はより複雑になる、と来ております。

これなんですけど、だいたい今までのタカ派地区連銀総裁も実は「利上げの時期は判断難しいけど、テーパーはちゃっちゃとやれ」という話をしておりまして、これって一つには超絶緩和政策による緩和のし過ぎからの物価上昇を警戒しているのがあって、その結果として経済を殺しにいってでもインフレを止めないと行けなくなる、という事態にならないようにってのがベースにあって、だからこそ緩和度合いの縮小を行って、その結果を見ながら次の利上げを急ぐのか急がないのかを考えていきたい、って思ってるんだとは把握しているのですけど、よく考えたらテーパーやれるときにやっておかないと今のFEDって次の緩和手段が事実上無いので、パンデミック再拡大からの下方ショックには政策発動余地作りたいってのもあるのかなとは思ってます(個人の妄想です)。

『One might argue that today’s inflation dynamics are likely to keep inflation moderately above 2 percent for some time and align with the Committee’s threshold criteria. On the other hand, the criteria for judging maximum employment are murkier.』

ここで複雑になる、の意味合いの説明が始まるのですが、雇用の方のマンデートに関してはマンデート達成を判断するのは複雑ですよ、と来まして何を言ってるのかというとこの次では「パンデミック前の水準に戻らなくても実は最大雇用状態になっている可能性があるよね」という話をしています。

『While it is clear that we remain far from the historic low levels of unemployment achieved pre-pandemic, it is less clear to me that such a benchmark will be the best guidepost in the current expansion. The pandemic introduced a number of frictions into the labor market, many of which are likely to evolve over time. Barring further intensification of the virus, I would expect these frictions to fade, promoting strong job gains and a relatively fast approach to maximum employment. However, the experiences of the past year may well have resulted in a number of structural changes to the labor market, including how, when, and where people work.』

コロ助によって労働市場がタイト化している(から賃金がホイホイ上がる)状況というのが、実はアフターコロナになっても構造的な変化によって固定化される可能性もありますし、そうだとしたらパンデミック前の水準に戻っているかどうか、ということで雇用のマンデート達成を判断するのは行き過ぎになってしまう可能性がある訳で、最大雇用の判断についてもパンデミック前と後ではその最大雇用が示す数値などに変化が起こり得る、ということになりますよ。との仰せ。

『These changes could affect the assessment of maximum employment in ways that are not yet clear.』

よー知らんけどな、と最後につけているので判断ムツカシアルネとは思っているようですが。

『As witnessed during the last expansion, it can take some time to draw individuals back into the labor market. This is not an argument for keeping rates unchanged but ensuring accommodation adjusts as the economy expands, avoiding imbalances and instability that can derail such gains.』

『Needless to say, the road ahead to policy normalization is likely to be a long and bumpy one as we navigate inflation and labor market dynamics in the post-pandemic economy. Considering the financial stability landscape also will be key to the achievement of our goals.』

『Along the way, a careful assessment of the data will be essential in shaping the narratives that guide policy decisions, balancing nimbleness and patience and steering clear of policy errors.』

緩和政策を正常化させる道のりは長くてデコボコした道になりますし、労働市場に構造変化が起きているか否か、などのように慎重に判断をしないと行けないことが多いので、データを十分に分析しないと行けませんね、というような感じの説明で、まあ基本的には「難しい」と言ってる意味は過去よりも強くない数字でも雇用マンデート達成かも知れないって文脈なのでタカ派であることは間違いなさそうですが、ただし、こういうトーンで「よく検討しないと行けない」って言っているのは、基本的に「テーパーはとっととやれ」ではあっても、それが直接に利上げに繋がるか、というとそうでもない感じがしますので、そんなに利上げの方まで前のめりになっている訳ではない、というバランスなんじゃないかなーと思います(個人の感想です)。

あと、どさくさに紛れてしらっと「Considering the financial stability landscape also will be key to the achievement of our goals.」とは仰せなものの、今回のテーマにそぐわないというのもあるのでしょうが、金融安定の具体的な話は皆無ですな。

#来週は欧州方面の虫干しを構想しておりまふ





2021/08/12

お題「FOMC会見ネタの虫干しと直近の高官発言備忘メモ」

昔から雨公だけは何故かPPIにしろCPIにしろ「前月比」の話をするんですよね。
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-idJPKBN2FC1US
2021年8月12日1:31 午前
米CPI、7月は前年比5.4%で13年ぶり高水準維持 前月比では鈍化

でもって
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPL4N2PI3YM?il=0
2021年8月12日6:01 午前
UPDATE 1-NY外為市場=ドル下落、米CPI伸び鈍化

って反応してるんですが、前年同月比ヘッドラインが+5.4%でコアが+4.3%なのに「伸びが鈍化したからヒャッハー」ってなるのはちょっとどうなのと思ってしまうんだが。

ちなみにアタクシが小僧の頃(20世紀終わり)でも「前月比」ばっかりクローズアップされていた(うっかりすると前年同月比の話が出てこない)ので、歴史的にそういう見方をするのが仕様なんですよね。


〇本日の地区連銀総裁発言は立ち位置通りの発言ですな(俺様備忘メモ)

この真夏の最中に発言が多いですが、

ダラス連銀と言えば何故かタカの人が多いのですが、
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-kaplan-idJPKBN2FC22O
2021年8月12日3:16 午前
FRB、10月にテーパリング着手すべき=ダラス連銀総裁

『[11日 ロイター] - 米ダラス地区連銀のカプラン総裁は11日、米経済が自身の予想通りとなれば、米連邦準備理事会(FRB)は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で10月からテーパリング(量的緩和の縮小)に着手することを発表すべきと述べた。』

『また、国債購入額の削減には約8カ月間かかるとし、すぐに削減を実施することで、FRBが利上げに「忍耐強く」対処するための柔軟性が増すとの見方を改めて示した。』(上記URL先より)

カプランがとっととテーパーと来るのは別にサプライズでは無いのですが、ここにありますように、とっととテーパリングやれって言ってる方々もさすがに今すぐ利上げという話をしている訳ではなくて、むしろ緩和の調整を早くしないとオーバーキル引き締めをしなければいけなくなるぞな、というロジック(変態仮面は外れ値なので気にしないことにする)になっていると思うの。


名前がエルメスの回し者みたいなんですが顔はオッサンのリッチモンド連銀総裁
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-barkin-idJPKBN2FC1UF?il=0
2021年8月12日1:21 午前
米、テーパリングに「近づく」 なお数カ月要する可能性=リッチモンド連銀総裁

『[アッシュビル(米ノースカロライナ州) 11日 ロイター] - 米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は、連邦準備理事会(FRB)が景気支援の解除に踏み出せる程度に労働市場が回復するにはまだ数カ月かかかる可能性があるとの見通しを示した。

バーキン総裁は10日(訂正)に行われたロイターとのインタビューで、量的緩和の縮小(テーパリング)の開始について、「われわれは近づいているが、明確な時期は不明だ。実際にその時期に近づけば、経済情勢が許す限り、迅速にテーパリングに踏み切り、正常な環境に戻すことを支持する」と語った。』(上記URL先より)

まあ何ですな、昨日もウダウダと申し上げましたが、従来想定していたパスと違って「物価が上振れしている」という状況だし、おまけに雇用のミスマッチによって、全体的には完全雇用に遠い状態なのに賃金はホイホイ上がっている、という状況になっているので、当初思い描いていた余裕を持った対応をしていると上振れのリスクがありますよね、ってな事に加えまして、先般目出度く経済対策の追加予算法案がどうのこうのとかありましたように、本来テンポラリーで局地的な供給ミスマッチが主因(ということになっている)物価上昇とか賃金の上昇に対して、財政が需要を付けに行きますと、それうっかりすると普通にディマンドプルのインフレになりかねない訳でして、まあそういう状態なので、「大いに前広にアナウンスしてテーパーして、そこから更に余裕をもって正常化に取り組みます」と言ってて大丈夫なの???ってのが今のFEDの悩みどころな訳ですな(個人の感想です)。

よって本当ならば「実際にその時期に近づけば、経済情勢が許す限り、迅速にテーパリングに踏み切り」たいんでしょうが、事前にあれだけ「十分に事前にアナウンスする」と言ってしまった手前、いきなり9月会合で10月から開始しますとか言い出すのは(9月に12月から開始するというのであればセーフですが)騙し討ちになってしまいますので、カプラン総裁のいうようなタイムスケジュール無理じゃんと思うんですよね。

でまあ昨日は色々と妄想してみたんですが、9月FOMCはSEPがあって、ドットチャートを早く無くせば良いのにとは思いますが、まあそう簡単になくせないでしょうから出て来るであろうドットチャートがさすがに上ぶれ(2023年のレートが特に)すると思いまするに、9月のFOMCでテーパー着手の話をしちゃうと利上げの話とテーパーの話を分離する、という工作が水の泡になってしまうので、そうすると9月は予告ホームランにとどめておいて11月頭(2−3日)のFOMCで12月または年初早々から開始しますというような感じでぶっこんでくるのが順当なのかな、と思いますし、10月だの11月だのに着手するためには、9月のFOMC(21-22日)に決定をしないと間に合わないのですが、その前にFOMCは無いので、ジャクソンホールでアナウンスするか、7月FOMCの議事要旨で思いっきり予告ホームランをするような見せ方をするか、しかないと思うんで、まあそう考えると11月頭のFOMCで決定→12月の買入または1月の買入よりテーパリング、になるけど、その時点ではもうダンディールになっている、という感じになるんじゃないでしょうかねえ、と妄想してみました。


なお、CPI見てヒャッハーとかやってる相場を容認するなら放置プレイですが、容認しないのであれば執行部与党系のFRB高官から水ぶっかけタカ発言が出て来ると思いますのでそれも確認したいですの。



〇引き続き虫干しネタで恐縮ですがFOMC後のパウエル会見

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20210728.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
July 28, 2021


・デルタ株にはワクチンパワーだぜ!という話

ちょっと別の論点になりますが、デルタ株の影響がどうのこうの、という話になった時、総じてワシら民間人サイドは「デルタで再度のあばばばばーリスクが懸念されますよねー」って話をするのですが、概ね中央銀行とIMFとかは、日銀ちゃんもそうなのですが、「まあリスクはリスクですけどねー(鼻ホジホジ)」と言った風情で、さすがにリスクですよと言っておかないと色々とマズーだからリスクって言うけど見通し見る限り、肚の中ではそんなに懸念してないですよ、って感じですよね。

という点について質問したらまたパウエル議長が長広舌を振るっているのでそちらを確認するのだ。

『RACHEL SIEGEL. Thank you, Michelle. And thank you, Chair Powell, for taking our questions. I wanted to follow up on what you said about there tending to be less in the way of economic implications from each wave of COVID cases. Could you elaborate on what you've seen to that end during previous waves? And then, looking forward, how vulnerable is the labor market to the Delta variant? I'm thinking or wondering if you have concerns that jobs that may have come back in travel or tourism could be susceptible if people started reconsidering their travel plans or if caretakers were suddenly faced with the prospect of schools not reopening? How do you see some of those risks going forward? Thank you so much.』

コロナ感染ウェーブが起きてもその影響は徐々に小さくなりますって説明(最初の方でしてた)してたけど、デルタ株の影響とかについてもうちょっと詳しく説明してちょうだいな、ということのようですけど、回答が1ページ半になる長広舌です。

『CHAIR POWELL. Sure. So if you remember the summer wave last year of COVID, which was largely southern and western states, the economy just performed much better than anyone expected. You know, we were coming off the spring wave where there were a lot of shutdowns. And then this big second wave hit, and I think the natural thing to do is to expect that it would have a real impact on the economy. It was much less than people thought.』

ということで、流行アゲインで春先のセカンドウェーブの時には経済にリアルなインパクトがあると思うのが自然だし私もそう思いましたが、実際にはそこまでのショックみたいな事は経済に起きませんでしたよね。という話から入りますが、この説明切りどころが難しいアルね。。

『People --what's happened is, first of all, many people are vaccinated. They're going on with their lives. Secondly, we've kind of learned to live with it. A lot of industries have kind of improvised their way around it. Particularly, for example, buying a new home, that process of buying a new homevery quickly moved to much more of a virtual process. And so they were able to -- you know, to do that. And other industries as well have gone to take out and, you know, no contact things. It's -- so that can all -- it seems like we've learned to handle this now. I think people would like to get back to, you know, the way things were. And I hope to some extent, we will over time. Of course, the big wave we had last winter did have significant employment effects, particularly in, you know, hospitality and leisure and other entertainment, other areas with a lot of direct contact. A lot of jobs were lost then because that was a very strong wave that happened in the winter months last year, just before the vaccines arrived. 』

今年の春の再流行の影響が小さかったのはワクチン接種が進んだことと、コロナでの制限がある生活様式に人々が慣れ、企業もそのニーズに対応するような動きが出来ている事です。一方で昨年コロナが最初に来た時には経済に物凄い勢いでダメージを与え、ワクチンの前なので感染症もビックウェーブになりましたよ、だそうです。

『So with Delta, we're just going to have to watch. Again, with a reasonably high percentage of the country vaccinated and the vaccine apparently being effective, we're not experts on this but it seems like the good going-in estimate would be that the effects will probably be less. There probably won't be significant lockdowns and things like that. But, again, those are not decisions for us or -- nor is it something we're be --we'd be expert in. In terms of the channels, you know, I -- this is kind of speculation, but it's pretty -- it's just is that people, you could imagine school districts deciding to wait a month or two for the Delta wave to go -- I'm not saying this will happen, but that it's easy to imagine that. It's also easy to imagine that some people might say, you know what? I'm just going to -- I'm just going to wait a couple of months before going back to work. Wouldn't be hard to imagine that happening. If schools don't open, then caretakers have to stay home. And if people don't go back into the labor force, then the job growth won't be as strong, those kinds of things. So, I don't -- it doesn't -- again, sitting here today not being able to really know the future, it doesn't seem as though the effects will be very large. But there may be effects. And they -- it may be that the effect is to slow the economy down just for a period of months or not. There are many parts of the country where it might not have an effect, and we're just going to have to see what the economic effects are. 』

クッソ長くて恐縮なのですが話が流れるように繋がっていて切り処が無かったので延々と並べてしまいましたけれども、デルタ株に関しては「再度見る必要がある」とは言ってまして、その理由はワクチンとの関係で、デルタ株の猛威が今のワクチンではダメダメヨーだとすると、結局元の木阿弥になってしまいますので、そうなるとやれロックダウンだ学校休校だとか(その中で労働市場のコロナによる供給制約継続の話を混ぜている)になってしまうと、大きな影響が起きるだろう、とまあ思いますわなと。

でもってパウエル自体はそれについて「I'm not saying this will happen, but that it's easy to imagine that.」と仰せな訳でして、デルタ株の影響を見極める時間は欲しいと思っているんですなあ、というのは理解しました。

ただ、基本的にはワクチンがワクワクチンチンパワーを発揮するので従前のような経済落ち込みにならん、というのがメインシナリオで、やはりワクチンの効果を高く評価しているのですが、さてこれが過大評価なのか適正な評価なのかはわからんですな。まあその辺も気になるからパウエルとしては、この時点(7月末)であんまり決め打ちの話をしたくない、ということなんでしょうなあというのは把握しました。

でまあ把握したのは良いんですが、話は毎日そこに戻りますが、じゃあ何でブレイナードはあんなにインフレ上振れとインフレ期待上振れに言及したのか、クラリダはテーパーどころか2022年末とは言え利上げの話題を入れてきたのか、というのが整合性取りにくくて難しいんですよね。



・時間的不整合問題へのツッコミに対しての回答

ということで今回の会見、テーパリングの質問の他に物価の質問も多くて、最後の方に飛びますけど、物価の上振れに対処という説明に違和感がある、とぶっこんできた記者がいましてですね。

『GREG ROBB. Hi. Thanks for taking my question, Chair Powell, I was going to go back to inflation a little bit. I'm just kind of surprised by your tone. It seems like you're just sort of warning that, if inflation gets too high, you know, the Fed will act.』

インフレが高くなり過ぎたら我々は行動する(キリッ)と言ってましたけど、あたしゃあんたのそのトーンにちょっとびっくりしてるんですよ、からの。

『Isn't it true that, I mean, a little inflation is good for the economy and that we -- if somehow maybe we can get the economy out of this sort of place where we've always got to be close to the zero lower bound? Isn't there a good story to tell and you're sort of panicking people?』

以前あんさんがたは多少のインフレは経済に良いし、ゼロ金利制約に引っ掛かるような経済は政策運営上好ましくないので、そういう状況からは脱却しないと行けない、って言ってた筈なのに、何で今になってインフレ上振れの時に行動する、って言い出してるの??とはまさに時間的不整合問題にも程がある。


『CHAIR POWELL. I certainly don't have that in mind. No, look. We -- as you know, we were targeting a moderate overshoot of 2 percent inflation for some time. We want inflation expectations to be centered on 2 percent.』

我々はモデレートな2%からのオーバーシュートが幾分かの間続き、インフレ期待が2%に維持されることを目指しております。とまあそう答えるわなという話しから始まるのですが、これまた1ページくらいある大演説モードになっておりますので、話の流れを分けるとこんな感じで切れるかな、とか思いながら引用してみます。

『We feel like they may be a little bit below that. So the bigger picture is that, you know, that would be a healthy thing. This is a different thing. This is --this is not that. That was the kind of inflation we were thinking about that comes from, you know from a very, very strong labor market and a booming economy maybe. That was the kind of inflation. This is something different. This is really driven by the supply side, which is not able to hand -- to handle this big spike in demand that we're seeing.』

『As the economy reopens with vaccination and fiscal support and monetary policy support, the supply side just all over the world you're seeing the same thing, which is it just can't keep up. And there are labor shortages in a lot of places, the same sort of thing. So, you know, there's absolutely no sense of panic. 』

『I just I've explained, I think, several times here today that the best -- my best estimate is that this is something that will pass. It's really a shock to the economy that will pass through. And, you know, if you look at where forecasters are, people who actually write down a forecast for a living, very, very strongly they see it that way.』

現状の経済物価情勢が怪しからんとかそういう認識なのではないですよってことでああでもないこうでもないと説明しているのですが、やはり引用してぶったぎってみた最初の所にあるように、ロンガーランゴールを想定していた時の状況と違いますよ、ってのがありますよね(以下はその状況の説明)。つまり、「That was the kind of inflation we were thinking about that comes from, you know from a very, very strong labor market and a booming economy maybe. That was the kind of inflation. This is something different. This is really driven by the supply side, which is not able to hand -- to handle this big spike in demand that we're seeing.」って話で、当初の想定では雇用が完全雇用状態で経済が強い中でどういう政策運営していくか、という話だったのですが、今の物価上昇は供給サイドの問題から生じているインフレなので状況がちと違いますよと。

『Now, we -- but, you know -- we're actually responsible for this, though, so we have to take seriously the risk, the risk case, which is that inflation will be more persistent, that it might actually move inflation expectations up and that we might -- that the kind of things that might require a response.』

『We -- again, we don't see that now. But we have to be on the alert for it. And people have to understand and believe that we will react if we need to. And we will. 』

『But, again, it's not -- it's not my base case. My base case is that is, as I've said repeatedly, is that inflation will move back down. And no. We're not -- we have not at all changed our view, and I haven't changed my view that inflation running above 2 percent, moderately above 2 percent is a desirable thing. This is not moderately above 2 percent. This is well above 2 percent. But it's also not the kind of inflation we were looking for. This is really driven by a supply side shock.』

ベースラインシナリオに何か変化があった訳ではない、というのはこの会見でも何度か申し上げた通り、という風に仰せですが、物価は基本的にはサプライサイドによる供給制約問題が解消されれば2%のターゲットに向かって落ち着いていくでしょうと見ているけど、もしそうじゃなかったら対応する、といっただけの話で、それが起こるとかそういう話をしている訳ではない、ということですな。

・・・・・と考えると、ブレイナードやクラリダのインフレ上振れリスク発言と言ってることはそんなに変わってはいないのですが、ただ言い方が目立つ言い方になっているのと、クラリダの場合は利上げの話があったから刺激的に見えた、というのはあると思います。でまあ政策に関してどうなのと考えた場合なんですが、この先のリスクを実際にはどの程度で考えているのか、パウエルとクラリダとブレイナードは示し合わせて言ってるのか好き勝手に言ってるのか、とかその辺りは現段階での発言だけでは想像するしか無いので何とも言えないのですが、まあ一つ確実に言えることは、物価上昇から賃金上昇という今のサイクルですが、物価も賃金も局地的な供給制約が従来に無い勢いの急速な経済リオープンによって上昇しているということになっていますが、これが賃金の上昇がディマンドプル要因になって、そのままスパイラルに物価が上昇する、という要するにインフレ期待のアンカーが外れた状態に経済主体が行動するようになる(よって潜在成長率の上昇や全要素生産性の上昇を伴う訳では無い)ってのが一番中央銀行としては死亡パターンですし、例えば日本の狂乱物価とか言われた時代って賃金と物価のスパイラル的な上昇が起きたように、たぶんインフレ加速するには賃金の盛大な上昇が一番効く筈なんで、そうなったらFRB大敗北になる、というのは言えると思うんですけどどうですかね。


・そんな訳で最後の質疑がお賃金

などと書いたのは最後の質疑(さっきのが最後から2番目)をネタにするマクラでもあるのですが。

『DON LEE. Hi, Chair Powell. I wonder if you could talk about wages. Many workers seem to have gotten some good wage gains in recent months. What can workers generally expect going forward? And it doesn't sound like you're concerned about rising wages feeding into broader inflation; is that right? 』

イイシツモンダナー

『CHAIR POWELL. So wages have moved up. A lot of that is driven by new hires. And it's -- a lot of it is driven at relatively low-paid jobs in the service industries as people come back. So that's not troubling.』

現状のお賃金上昇は主に新規雇用者に対するお賃金上昇によるもので、しかもサービスセクターの低賃金の労働者に関するものです、ということでこれは従来よりFED高官が指摘していますが、経済のリオープンに伴いサービス産業での需要が戻って来たのですが、コロナコワイヨーで労働市場に戻らない人とか、学校やら保育施設やらが再開してないから子供の世話しないと行けないから労働市場に戻らない人とかがいて、そのミスマッチの為に新規雇用者に高いサラリーやベネフィットを用意しないと行けない、というのが主因ですよ、という認識を示しています。よって・・・・・・

『And we don't see -- there is a form of wage inflation that can lead to price inflation, and we're not seeing that right now. And that really is if what we call unit labor costs move up and which really puts -- move up in a way that is -- that is hard for companies to manage and puts them in a situation where they have to accept substantially lower margins or raise prices. 』

『Now, when it happens gradually, when that -- if you -- we've seen in a long expansion sometimes unit labor costs do move up and put some pressure on margins, in a long expansion, that's been happening late in the expansion. That's not a problem, either.』

よって現在の賃金上昇が広範囲なインフレ圧力に繋がっているとは見ていない。もちろん労働コストが上昇して行けば企業はどこかで価格転嫁をすることになるが、その動きの速度が緩やかで、かつその間に経済が成長を続けているのであれば、この動きは健全な動きであり、まさにそれはコロナ前の拡大期に起きていた現象なので無問題である。

『The problem is if it happens in a way that pushes firms broadly into raising prices. It was called the wage price spiral. We don't see that now. This is something that was a feature of the high inflationary era of the great inflation, but it's not a feature now. We don't see that now. 』

問題になるのは賃金と物価のスパイラル的な上昇が起きて広範囲に物価が上昇することだが、今はそういう状態ではない、グレートインフレーションと言われた時期に確かにそのような事が起きたが、それはそのような現象は見られない、と来まして、

『Of course, we'll be watching it. And this is one of the reasons why we're watching so carefully to see whether labor force --whether people do come back and accept jobs. Given the very large number of job openings and a very large number of unemployed people, we'd like to see, you know, those -- some matching going on there so people get back to work. We think labor supply would be -- would be a healthy thing. You know, but wages moving up across the spectrum, consistent with inflation and productivity is a -- is a good thing.』

勿論注意する必要はある、ということですが、労働供給制約問題に関してはワクチン接種だの学校等の再開によって徐々に供給制約が解消するだろう、と見ているのも賃金スパイラルは起きないだろうという見方を補強している、という説明になっています。

まあこの部分に関しては財政がまーた出てしまうのがそろそろ唸る感じではあるのですが、そういう意味ではお賃金動向の所が強いのが続くとかなりFEDは焦るんじゃないかなと思いました。

まあそんなところで引用大会になって恐縮至極。





2021/08/11

お題「引き続きの虫干し企画だがパウエル会見とその後のブレイナードクラリダ発言のトーンはやっぱり違いますね」

皆さんが判断すべきなのはその通りなんだがよりによってバッハの銀ブラwww
https://mainichi.jp/articles/20210810/k00/00m/050/118000c
バッハ氏の銀座散策 丸川五輪相「不要不急かは本人が判断すべきだ」
スポーツ 速報
毎日新聞 2021/8/10 13:26(最終更新 8/10 23:38) 278文字

なお、
https://news.yahoo.co.jp/articles/a0108513b4f3ef0639a6fe17f9a720ba3655dbd0
テレ朝社員ら10人が五輪打ち上げで朝まで飲酒…酔った女性社員はビル2階から落下
8/10(火) 18:16配信

実はマルタマ先生古巣の事案を忘れさせるために自ら突撃した・・・・訳はないと存じますが、上級国民の皆様は本人が判断すべきだが下級国民はお上の要請とやらを聞けということですね、わかります(ゲッソリ)。


なお、クッソどうでも良いのですが
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210810a.htm/
第22回情報セキュリティ・シンポジウムの開催について
2021年8月10日
日本銀行金融研究所

シンポジウムを開催する前に政策委員の選任が巨大なセキュリティーホールになっているのを何とかした方が良い(主体的には無理だけど)のではないかと思われます、って前にも書いたっけ??


〇お盆企画でFOMC後のパウエル会見をボチボチ見て行くの巻の続き(虫干しネタでスイマセン)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20210728.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
July 28, 2021

昨日の続きです(すんません)。

・物価の上振れに関する質問

現状でFEDのサイトにあるのは「PRELIMINARY」版ですが(あんまり真面目に確認したことはないのだが、だいたいミニッツが出るあたりでFINAL版になってる希ガス)9ページ目まで飛びます。

『JAMES POLITI. Thank you very much. Chair Powell, how would you describe the risk to the outlook on inflation at the moment after the last data came out higher than expected? Do you believe the risk are, you know, tilted to the upside? And does the Committee share that view? Or are they in balance? Are you still worried that there could be a hit to demand from the Delta variant that could tilt them sort of to the downside again? If you could give us a sense of that, that would be very helpful.』

でもってこの物価に関してはブレイナードとクラリダが揃いも揃って上振れリスク、もうちょっと丁寧に言うと「一時的だと認識している物価上昇が持続的になるリスク」と「物価が高めの状況が続くことによって現状2%近辺でアンカーされているインフレ期待が適合的期待形成によって上方にアンカーが外れるリスク」というポイント(アクチュアルの物価がサガランチ会長になることと、インフレ期待が上振れること)について話をしておりましたし、クラリダ副議長に至ってはご丁寧に「3%の物価上昇は本来は「幾分かの上振れ」で許容されるものではないのだが、現状の水準はコロナ後という特殊要因が重なっている一時的なものだから勘弁して差し上げている」という趣旨にどう見ても取れる説明をしていた訳ですが、さてさてこの時パウエル議長は何と答えたかと言いますと・・・・・・・・・・・・

『CHAIR POWELL. Sure. I'd be glad to. So if you look, again, if you look at the most recent inflation report, what you see is that it came in significantly higher than expected. But essentially all of the overshoot can be tied to a handful of categories. It isn't the kind of inflation that's spread broadly across the economy.』

以下この答え延々と1ページになるのですが、今の物価上昇は局地的な一部のカテゴリーの動きで、コロナ後の反動によるものでっせ、という説明がおっぱじまる。

『It's new, used and rental cars; it's airplane tickets; it's hotels and it's a couple of other things. And each of those has a story attached to it that is -- it is really about the reopening of the economy.』

はい。

『So we look at that and we think that those are temporary things because the supply side will respond. The economy will adapt. We have a very adaptive, adaptable, flexible economy and labor market. And it's a real -- a real asset that we have. And so we think that inflation should move down over time.』

そういう事だからそのうち下がるぜ、とのことですが、

『Now, we don't have any --much confidence, let's say, in the timing of that or the size of the effects in the near term. I would say in the near term that the -- the risks to inflation are probably to the upside. I have some confidence in the medium term that inflation will move back down.』

その直後にこれわwwwという感じでして、「we don't have any --much confidence」と言ってみるわ、ニアータームのリスクはアップサイドで、ミディアムタームについてはインフレが戻って来るでしょうという幾分かのコンフィデンスがあります、とか割と微妙な言い方をしております。

『Again, it's hard to say when that will be. I will say, though, that, you know, we -- inflation is half of our mandate. Price stability is half of our mandate.』

物価についての先行きは決め打ちするのが難しいのですが、物価はあくまでもマンデートの半分です!という説明に走っておられます。

『And if we were to see inflation moving up to levels persistently that were -- that were above, significantly, materially above our goal and particularly if inflation expectations were to move up, we would use our tools to guide inflation back down to 2 percent.』

勿論この文言はオープニングリマークの方にもありましたんですが、物価上振れが持続的になったり、インフレ期待が上振れた場合は対処するツールがあるので対処する、とまあ普通に仰せになっているのですが、ただまあブレイナードやクラリダと違ってリスクを強調はしていないですな、という感じなので、この辺でもFEDの執行部系要人の皆さんって発言のトーンを調整している感が強いなあと思ったりするのでした(地区連銀総裁は基本我が道を行ってる人の方が多いのでそういうのは無い)。

『So, we won't have an extended period of high inflation. We think that some of it will fall away naturally as the process of reopening the economy moves through. And it could take some time. In any case, we will use our tools over time as appropriate to make sure that we do have inflation that averages 2 percent over time. 』

とまあそういう話であります。上振れリスクの可能性についての話をしていない分だけブレイナードやクラリダよりは緩い言い方になっています。

・・・・・でまあちょっと話は飛ぶんですが、アタクシが見た某Bとかいうベンダーの場合だから全てがそうなのか分からんのですが、そもそも「あの」ブレイナードが「あれだけの」トーンで物価のアップサイドリスクの説明していたのに何で市場ちゃん反応しないでクラリダちゃんで反応したのかと思って過去のヘッドラインをつらつら見直していたのですが、よく見たら某B社のだとブレイナードの発言に関してはテーパリングの条件を満たすかどうかの部分が思いっきりヘッドラインになっていて、物価云々の話しはスルーされていたのね、というのに気が付きました。

先日のパウエルの議会証言だったと思うのですが(ちゃんと整理してないからすぐに忘れるので、古い方から整理しようとか無謀な事を考えずに新しい方からちょっと整理していきますよマジで)、そもそもロンガーランゴール&ストラテジーを策定した昨年9月の時点では、その前提条件として、「雇用が完全雇用になったとしても物価が中々アガランチ会長」っていう経済を前提に置いてて、そういう状況であるならば(物価が上に跳ねにくいんだから)多少の物価上振れを容認しても無問題だしメイクアップストラテジーだしアベレージターゲットだ、って話をしていた訳で、現状は雇用が(遅行指標なんだから当たり前なのですが)イマイチ戻ってない中、物価の方がコロナ後の物凄い勢いでの需要回復と、コロナでダメージを受けた一部の供給ボトルネックにダブルで反応して上昇する、という事案が発生している訳なので、そもそも前提条件が違ってしまっているんですよね。

だからタカ系の地区連銀総裁とかがテーパー早くしろとか、変態仮面ブラード総裁が来年の春にはテーパー完了しろとか言い出すのですが、まあこういうのを見ますに、ブランシャールが偉そうに言ってたプライスレベルターゲットについて、当時のドナルド・コーンFRB副議長が「理屈としては話は分かるが現実の政策では使い物にならん」とケチョンケチョンに講演でこき下ろしていたのも、実際に3%だのの物価になって意外に下がらんじゃんおいおい、という風になるとやっぱりブランシャールは机上の空論、という話になるなーなどと思うのですが、まあそんなこんなで「物価の上振れリスク」があるというのが前提にあれば、当然ながら完全雇用達成までのほほんと待っている訳もなく、恐らく従前よりはテーパリング開始のスレッショルドが手前になる、って話になるんちゃいますかねえ、という位には思いますがどうなんでしょうかね。

#とは言ってもどうせ最短でもテーパー示唆はジャクソンホールなので当初のワイの予想通りだが


・などと能書きを書いていたらフレームワークの質問がありましてですね(^^)

この質疑のちょっと後になるのですが、実質的にフォローアップしている質問がありました。12ページに飛びます。

『RICHARD MILLER. Thanks very much, Michelle. Chairman Powell, you just alluded to the fact that you're prepared to use your tools to slow the economy down, if need be to -- if inflation looks like it's getting out of control.』

と、さっきの質疑の最後で言ってましたが、

『I want to just try to understand that in the context of the framework and the forward guidance.』

などと言ってるけど、これは記者の人は分かってて質問してるんだろうなあって思いました(ただの霊感ですが)。

『Does that mean you'd be prepared to raise interest rates even if we're not at maximum employment at that point, should you see this danger of inflation? And, two, does it also mean you'd be prepared to raise interest rates, even if you are still buying assets?』

これはフレームワークの根幹にかかわる質問なのでとても良い質問です(ちなみに聞いてるのはブルームバーグの人です、最初に引用した質問はFTの人)。

『CHAIR POWELL. Thank you. So, there's a -- there's a part in our statement on longer-run goals and monetary policy strategy, which, Rich, I'm sure you're familiar with, which talks about that case in which the two goals or intention -- most of the time, if you have high inflation, you also have high employment.』

これパウエル議長も質問者のミラーさんは内容を分かったうえで質問してるんだろうなって思いながら回答していますね(個人の妄想です)、味わいが深い。

『They tend to go together. This is a situation where they're temporarily in different directions. We're not at full employment, but we are having high inflation. We feel like we're going to be making good progress over the next -- over the course of the next year, couple of years, really, toward maximum employment.』

現状は物価が上振れ雇用は未達ですが、来年から再来年に掛けて良い状態になっていく(雇用が改善してテンポラリーな物価上昇は落ち着く)とみております。

『This is a very strong labor market. If you look at the number of job openings compared to the number of unemployed, it's -- we're clearly on a path to a very strong labor market with high participation, low unemployment, high employment, wages moving up across the spectrum, that -- that's the path that we're on, and it shouldn't take that long in macroeconomic time to get there. So that's what I think is really the likely case.』

よってモーストライクリーなシナリオでは雇用が色々な面で強くなっていくし、マクロ経済的な意味での時間はそこに至るまでそんなにかからんとみている。

『And, again, it's not timely for us to be thinking about raising interest rates right now.』

アゲインと言ってるのは昨日引用した部分でその話をしていたからです。そういう見通しだから今の時点で利上げがレーダーにも入っていませんがな、だそうですが、その1週間後にクラリダ発言ェ・・・・でしたな。

『What we're doing is we're looking at our asset purchases and judging what is right for the economy and judging how we -- how close we are to substantial further progress and then tapering after that.』

ということで、今検討しているのはテーパリングに着手できるか否かという話であって利上げがどうのこうのなんて何をおっしゃるウサギさんという感じで話をしておりますが、

『The question you asked about, would we raise rates if we hadn't finished cutting -- hadn't finished the taper, hypothetical question.』

ちょwwwおまwwww

えーっとですね、これパウエル逃げやがりましたなという感じで、質問者は「物価と雇用のコンフリクトが物価の上昇方面で出る場合には対処するって話なんだが今のフレームワークとの整合性はどうなの」と質問しているのですが、その質問は「現状そのような事は起きない」で誤魔化しまして、質問の後半で「テーパリング前とか途中だと資産買入拡大中って状態だけど、そういう状況においても利上げって出来るの?」というのを質問してた方への回答に逃げましたwww

『You know, we'd faced the circumstance at that time. We could always just -- you know, one thing one could do would be to just cut asset purchases all the way to zero if you wanted to do that. But it's just hard to -- it's hard to answer what you would do without knowing a lot more about the situation. Ideally, you wouldn't be still buying assets and raising rates because, of course, you're adding accommodation by buying and removing accommodation by raising rates. So that wouldn't be ideal. I'll say that.』

理念的には可能ですよ、ただし実際にやるとなるとそういう状況になったことが無いからムツカシアルネ、だそうですが、まあそこはそう回答するっきゃないですな。

ということで、会見の時はあまり前のめりトーンを出したくなかった、ということが大体読み取れる感じがこの辺まででもしますが、よくよく考えてみればアタクシこのFOMC出た時も声明文とSEPの見通しは強いじゃないのって書いた覚えがある訳で、だいたいパウエルの会見って声明文でのトーンを中和する(特に声明文が強いトーンの時)方向で話をする傾向にある(個人の感想です)ので、まあそういうことだったのかな、とか思うのですが、この手法あんまり使いすぎると発言を話半分で聞くのが正しいって事になるんでそれも何だかなーとは思うのでありました。

という辺りで本日は勘弁して頂きますです、はい。





2021/08/10

お題「CPI基準改定でまたも携帯電話ショックですかしらこれ/今更だがパウエルFOMC会見を見てクラリダ講演との温度差を見る」

ん??
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210809/k10013191431000.html
神奈川県 新型コロナ 過去最多 新たに2166人感染確認
2021年8月9日 18時06分

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210809/k10013190941000.html
東京都 新型コロナ 2884人感染確認 月曜日としては過去最多
2021年8月9日 21時01分

東京が少ないのか神奈川が多いのか良く分からんがバランスが妙。


〇CPIェ・・・・・・・・・・・・・・

https://www.stat.go.jp/data/cpi/2020/sokyu.html
2020年基準改定について

https://www.stat.go.jp/data/cpi/2020/pdf/def2020-2015.pdf
消費者物価指数 2020 年基準改定による遡及結果について
令和3年8月6日
総 務 省 統 計 局

『概況

2021 年6月の総合の前年同月比は、2015 年基準では 0.2%であったが、2020 年基準では-0.5%となり、基準改定により 0.7 ポイントの下方改定となった。』

>0.7 ポイントの下方改定
>0.7 ポイントの下方改定
>0.7 ポイントの下方改定

ちょwww


2ページのケツに『3. 新旧基準で寄与度に差がある主な品目(2021 年6月) 』というのがありますが、

通信料(携帯電話)-0.50
ガソリン -0.03
携帯電話機 -0.02
マスク -0.01
たばこ(国産品) -0.01
テレビ -0.01
りんご 0.01
水道料 0.02

ということで携帯電話通信料金が突出して下げ効果を出している、という素敵な結果になっておりますが、その次の3ページに、

『4. 「通信料(携帯電話)」における新旧基準の寄与度差について』

というのがあるので拝読。

『2020 年基準改定により、旧基準の動きと差が見られた「通信料(携帯電話)」について、主な要因となったモデル式1の改定内容とその影響度は以下のとおりである。』

ほうほう。

『○ 「通信料(携帯電話)」のモデル式では、価格を調査する利用パターンを、各種統計データなどから推計した通話時間と通信量の利用分布を基に、通話時間及び通信量の組合せにより設定している。

○ 2020 年基準改定において、加重平均に用いるウエイトの更新のほか、以下の対応を図り、精度の維持向上に必要な改定を行った。

・ 近年における通信量の利用増加を的確にモデル式へ反映させるため、通信量の利用パターンをこれまでの3パターン(低・中・高)から4パターン(低・中1・中2・高)に、より細かく設定

・ 従来型携帯電話機の契約割合の急減や、今後のサービス提供終了を踏まえ、モデル式から従来型携帯電話を除外

○ 他方で、2021 年4月の大手各社によるスマートフォン向け低廉プランの提供開始により「通信料(携帯電話)」指数は大きく下落した。また、これらの料金プランは通信量が比較的多い中・高利用者における通信料の変化に大きく表れた。

○ この通信料の変化が、2015 年基準と比べて中・高利用パターンの割合が大きい 2020 年基準指数の下落により大きく表れ、基準改定によるモデル式効果はマイナスとなった。

○ さらに、2015 年基準で下落していた指数を 100 に戻すリセット効果や、通信料への支出増加を反映したウエイト効果が、共に改定を拡大する方向に働いた。

「通信料(携帯電話)」の 2021 年6月の新旧基準の寄与度差は-0.50 となった。そのうちモデル式の改定効果が-0.24 となり、下方改定の主な要因となっている。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・・

リセットとウェイト効果で下がるのは言われていましたけど、モデル式いじったらしれっと-0.24も下がっていて、何ですかこの謎のモデル式効果って、というかなんかCPIショックとか言われた昔の基準改定を彷彿させる(昔過ぎて忘れましたが2005年基準の時で2006年の夏でしたよね)ナンジャソラ状態になっておりますが、これによって他の主要国で物価が早々とホイホイ上昇しだしている中で日本だけ▲0.5%ですよ▲0.5%ということで、物価目標の達成時期はどうでもよいと仰せではあるのですが、確かあんさんがた「適合的期待形成ガー」とか言ってませんでしたっけという話でございまして、これは何か措置をしないといけないんじゃないですかねー(棒読み)という風情ではありますな、南無阿弥陀仏。


しかしまあ何ですな、政府様肝いりの携帯電話料金引き下げ(別に既存のユーザーの料金が契約そのままで下がる訳ではない)によって絶賛デフレモードとかお洒落にも程がある結果になっておられまして、笑ってしまうしかありませんが、日銀には2%物価目標をといっておきながら、政府が率先してそれを邪魔するという状況で何がどう政策協調なのかちょっと説明して頂きたいものだと思いますし、9月決定会合で味方の筈のリフレ派の皆様から梯子を外されていて可哀想にも程がある片岡さんが遂に息を吹き返すのかと思うと中々熱いものがこみ上げて参りますな、アイヤー。



〇お盆休み(ワイは全然休みじゃないが)虫干し企画で今更ですがFOMC会見をば

ローゼングレン先生が秋からテーパーとか仰せのようですが、
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-rosengren-idJPKBN2FA1XW?il=0
2021年8月10日5:45 午前UPDATED
FRB、9月にテーパリング計画公表を 「今秋に開始」=ボストン連銀総裁

ローゼングレン先生がタカ派な事を言うのは仕様なのであまり気にせずに虫干しネタの方をさきにやります。(ハト派がタカ、あるいはタカ派がハトな事を言うとか、執行部系の人間が何か言い出す場合は反応するのですけれども、そうじゃないと反応しない(今誤変換で「飯能市内」って出てきて一人でウケた)ので、そういうのは後回しにする(市場ちゃんが反応した場合は反応します)ということで。

という訳で今更ですが会見Q&Aを見ましょう。なんか先日のブレイナードとクラリダの講演でステージが変わってしまった気もしますがキニシナイ。まだPRELIMINARYだな。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20210728.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
July 28, 2021

・「顕著な改善」を数字で出さないのかと問われても当然すっとぼけるパウエル議長

冒頭、毎度おなじみCNBCのリーズマン記者の質問ですけど。

『STEVE LIESMAN. Thank you very much. Mr. Chairman, I wonder if you might be able to put some, I don't know, numbers or maybe more detail around this concept of substantial further progress. What counts as the progress numerically, if you will, or citing data, if you could, that you cited in the statement today? And if you could be more specific about what substantial further progress would look like and if that would then lead you to an announcement of an actual reduction in the purchases of your assets. Thank you. 』

数字を出せ数字をと来ましたが。

『CHAIR POWELL. Great. Thank you. So, more detail on substantial further progress. So, let's talk about the maximum employment part of that.』

から始まるのですが、これがまた二言位で済みそうな話をああでもないこうでもないとこねくり回す。

『As you know, with maximum employment, unlike with price stability where we can target a number of 2 percent on average, with maximum employment, there isn't a single number that we can target. We monitor a broad range of data about different aspects of the labor market. There's unemployment, unemployment among different -- different age groups and such. There's participation. There's wages. There's all kinds of flow data. And we look at all of it to try to arrive at a picture of what is maximum employment.』

物価は2%というのが明示的にあるが雇用の場合は色々な状況を総合して考えなければいけません(キリッ)。

『So, there isn't -- I can't give you a set of numbers, for example, a numerical threshold like we used for a time back in 2012, I guess it was. We didn't do that here. What we said was substantial further progress toward our goals. And what we said was we would keep -- effectively, we'd -- we would give advance warning as we -- and, you know, more and more clarity as we move forward.』

2012年に同じように「労働市場の顕著な改善が見られたら」とかいうのを使ってQE3でしたっけ2でしたっけのスレッショルドを設けたことがありますが、「状況が改善してくるとその辺りはより透明になりますよ」と
来まして、

『And that's what we're going to try to do.』

あっそう。

『So, what would substantial further progress be? I'd say we have some ground to cover on the labor market side. I think we're some way away from having had substantial further progress with max -- toward the maximum employment goal. I would want to see some strong job numbers. And that's kind of the idea.』

近くなればより明確になります、という蒟蒻問答の世界。

『STEVE LIESMAN. If I could follow up, you talked about one side of the equation. You didn't -- does it mean you feel like you've reached your goal when it comes to the inflation side? Thank you.』

物価については?と追加質問。

『CHAIR POWELL. So, inflation is running well above our 2 percent objective and has been for a few months and is expected to run up certainly above our objective for a few months before we believe it'll move back down toward our objective. The question whether we've met that objective formally is really one for the Committee to make. I can't -- I can't do that by myself. But it's clear that, at this time, inflation is actually running above 2 percent. And, again, has been and will be, at least we expect it will, in coming months before returning down toward our target. 』

物価については既に達成している、という認識を示しております。そりゃそういう認識だったら現状見通しを上振れる物価上昇が起きたら雇用目標未達の中での物価上昇発生アイヤーって話になりますがな、ということでございますが、アクチュアルのCPIが5%だ6%だとでもなれば別ですが、そうじゃなくて3%程度でホイホイと動いているうちは「来年辺りから下がってきて2%になりまっせ」という言い訳を通し切る事はできますので、物価に関しては上振れというか持続的な状況になるかどうか、を注意しておけばエエンチャウノという感じだし、言い訳効かなくなるの来年の2Q位からだと思うので、まあ雇用統計の方に反応したくなるのは分からんでもない。


・当たり前だがテーパリングに関する質問が続く次第

次の人はロイターのサフィール(と読むのか)記者です。

『ANN SAPHIR. I apologize. I -- just to follow up on the question, I want to ask, you know, is it correct to see this as the start of the advance notice process, you know, before a taper? And, also, can you speak to how the recent surge in COVID factors into your thinking on the taper. Thanks.』

本当にテーパリングの十分前にアナウンスするんかいなというのとコロ助の影響についての質問です。

『CHAIR POWELL. So, as you know, we're in a process now where what we said is that as -- at this meeting and in coming meetings, we're going to be continuing to assess the economy's progress toward our goals and give advance notice. We'll be trying to provide additional clarity about our thinking, both in the post-meeting statement and in the minutes and in the public comments that people make. You know, our approach here has been to be as transparent as we can. We have not reached substantial further progress yet. So we're not there, and we see our ways as having some -- we see ourselves as having some ground to cover to get there.』

この会見の時点では「まだ(テーパリング着手開始を検討する)顕著な改善に至っていない」の方を強調していた訳ですが、その後クラリダ講演では「利上げ時期」の話をしながら物価上昇の行き過ぎリスクについて言及する、という流れになっているのを見るに、まあこれはアタクシの勝手な妄想になりますが、発言のトーンを市場見ながら適当に調整しつつ、テーパータントラムが起きないようにしている、って考えているのかなあということで、露骨にやる気満々だとタントラムになるけど、あんまりやる気を否定しまくると結果として金利が下がり過ぎてしまうので、この場合もやっぱり実際にテーパーするという時にタントラムになってしまうので、まあそう都合よくコントロールは出来ないのですけど、金利が下がり過ぎると後の捌きが大変になるからガス抜きしてるんでしょうな。と思いました。

『So that's what I would say. In terms of -- in terms of COVID and the Delta strain, I'll say a couple things. Of course, it will have significant health consequences for many. And we need to keep that in mind before we start -- before we mentioned and move to the economic questions. This is a -- rising cases in a number of parts of the country, and some forecasts are for them to rise quite significantly. We'll see. What we've seen, though, is with successive waves of COVID over the past year and some months now, there has tended to be less economic -- less in the way of economic implications from each wave. And we will see whether that is the case with the Delta variety. But it's -- you know, it's a -- it's certainly a -- not an unreasonable expectation. So, it certainly is plausible if people would pull back from some activities because of the risk of infection. Dining out, traveling, schools might -- some schools might not reopen. We may just -- we may see economic effects from some of that, or it might weigh on the return to the labor market. Some people might choose -- again, we don't have a strong sense of how that might work out, so we'll just be monitoring it, monitoring it carefully. 』

影響ありますよという話はしているものの、景気の根本的な見通しを下げるような話はしていなくて、「我々は全体の経済にどういう影響を及ぼすかを見る」と全体感の話をしているということは、要は局地的な影響に留まるっしょという認識をしめしております。まあ別にこれはFEDが楽観的という訳でもなくて、世銀の見通しにしてもそうだし、何故か日銀の場合もそういう感じで強い展望レポートを継続しているの、そんなもんなのかなーと思うのですけどまあそういうことのようです。


・という訳でして、この時の会見と先日のクラリダ副議長の話がトーン違うよねってことになる

次の質問は物価の上振れに関する質問なんですけど。

『NICK TIMIRAOS. Hi, Chair Powell. Nick Timiraos at the Wall Street Journal. In your opening statements in March and April, you noted that a transitory rise in inflation above 2 percent this year would not meet the threshold of moderately exceeding 2 percent for some time, and I noticed you didn't repeat that qualification last month or today.』

ティモラス記者芸が細かい。3月4月のFOMC後のオープニングリマークでは今年の物価上昇に関しては「モデレートリーかつ一時的にに2%を上回る状態」の範囲内である、と説明していましたが、6月7月のFOMC後の会見ではこの点についての言及がなかったですね、と来まして、

『And so, in your view, has the rise in inflation this year met the threshold of moderately exceeding 2 percent for some time?』

今年の物価上昇に関して、3月4月の認識を変化させたのか?という質問ですが、


『CHAIR POWELL. That would, again, be a question for the Committee. But I would really say the guidance that you're talking about is really the guidance to do with liftoff, right? That's -- what the guidance is for liftoff, we had to have labor market conditions consistent with full employment, inflation at 2 percent and on track to run moderately above 2 percent for some time. It really isn't relevant now.』

いやいやいやいやいや、その質問は利上げに関するスレッショルドの話でんがな、という説明をしておりまして、そげなタイミングではなかとよ、と仰せになっております、更に、

『It -- because we're really -- we're looking at a tapering asset purchases. We're clearly a ways away from considering raising interest rates. It's not something that is on our radar screen right now. You know, so when we get to that question, when we start to get to the question of liftoff, which we are not at all at now or near now, that's when we'll ask that question. That is when that will become a real question for us. 』

ワシらはテーパリングプロセスについて(顕著な改善が起きているかどうかを見極める相談をしている、ということなので)検討をしている所ではあるが、利上げ何てとてもとても、「We're clearly a ways away from considering raising interest rates.」でございますし、そういう状況は我々のレーダースクリーンに機影もみあたりませんがな(It's not something that is on our radar screen right now.)って仰せだった訳ですが、これを言ってたのが28日の事で、そこから1週間ほどしか経っていないのにクラリダが利上げがどうのこうのとか言い出すってのお前らどういう相談してるんだよという感じですが、何ぼ何でもこの1週間でビューがガラッと変わるような物件があったとも思えず(雇用統計の内容はクラリダ副議長講演の時点でまあクラリダさんとかは知る立場にあるっぽいのでそこの要因はあるのかも知れませんが)な訳で、何じゃその君子豹変(議長と副議長の違いはあるけど)っぷり、という話になると思います。

という訳で、さっきから書いておりますように、ミーの勝手な妄想になりますけど、テーパリングヒャッハーで盛り上がるのはジャク穴かその後の9月FOMCまで待ってもらいたいがために利上げの話を別問題だしレーダーサイトにそんなものは無い、とまで議長が発言したものの薬が効きすぎて債券市場が10年1%割でじゃソイヤソイヤとラリーをおっぱじめたので、こりゃ水をぶっかけないと行かんぜよ(その前のブレイナードの物価とインフレ期待上振れリスク言及も債券市場スルーしてましたし)となって調整した、という風に考えないと何ぼ何でも辻褄が合わないんじゃネーノという感じです(個人の感想です)。

まあこの辺は正直よー分からんのでして、現実問題としては物価状況が上振れするとコンフリクトが生じ、雇用情勢が順調であればとっととテーパーって感じだとは思うのですが、どうもその出し方が市場の反応を見ながらああでもないこうでもないと出してくるので振り回されてアカンですな、と思いました。


#連休明けなので今朝はこの程度で勘弁していただきとうございます(というか朝からPCのご機嫌が麗しくなかった)




2021/08/06

お題「クラリダ講演ネタ続きですがインフレアップサイドのリスクも言及してますな/デーリー総裁インタビュー記事」

この前出てた物件ですが、例によって日経新聞に課金してないから見れ
ないんですけど、とりあえず題名を見てお前が言うな案件だったので。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB128UD0S1A710C2000000/
円安頼み「貧しい日本」生む 円の実力、48年前に逆戻り
通貨漂流ニクソン・ショック50年B
経済
2021年8月3日 17:47 (2021年8月4日 5:32更新) [有料会員限定]

いや円高恐怖症煽りまくったのお前だろお前、という話しで、貧しい日本生むとか言ってるお前らが先に貧しくなれやこのクソボケ以外の感想が題名で湧かなかったんですが、中身はどうだったんですかね。


〇昨日寝起きの手抜き読みをしたクラリダ副議長のスピーチですが経済のパートも読んでみると色々とキナ臭いんですよね

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20210804a.htm
August 04, 2021
Outlooks, Outcomes, and Prospects for U.S. Monetary Policy
Vice Chair Richard H. Clarida
At the Peterson Institute for International Economics, Washington, D.C. (via webcast)

そもそも論としてここの所最早テーパーはダンディール(着手時期が年内か来年の頭か、って位の話でしょもはや)って感じの情報発信が続くFEDちゃんと、ご案内の金利を形成する市場ちゃんの感覚の差はどこにあるのか、というのが物凄く気になりますな、ということで経済物価状況と先行き見通しの部分をみておこうなじゃないの、というのが動機なんですけどね。

昨日寝起きにつき目を泳がせただけで華麗にすっ飛ばした前半の『Outlooks and Outcomes for the U.S. Economy』である。

『With the release of the gross domestic product (GDP) data last week, we learned that the U.S. economy in the second quarter of this year transitioned from economic recovery to economic expansion.1』

冒頭がこれでして、先週出たGDP統計によりますと、4−6月期の米国経済は回復局面から拡大局面になった(=日本の経済官庁とか日銀とかの言い方だと潜在成長率よりも高い成長って意味ですな)と朗々と(かどうかは知らんが)ぶっこんでおります。

『Given the catastrophic collapse in U.S. economic activity in the first half of 2020 as a result of the global pandemic and the mitigation efforts put in place to contain it, few forecasters could have expected-or even dared to hope-in the spring of last year that the recovery in GDP, from the sharpest decline in activity since the Great Depression, would be either so robust or as rapid.』

(遠い目)って奴ですな。こんなに威勢良く回復するとは思いませんでしたよねー、だそうです。

『In retrospect, it seems clear that timely and targeted monetary and fiscal policy actions-unprecedented in both scale and scope-provided essential and significant support to the economic recovery as it got under way last year.』

後付けで考えますとタイムリーで大規模でスコープを絞った財政金融政策を行ったことが効果がありました、というのはまあ仰せの通りだなあと思いますし、同じようにスコープを絞った筈なのですがやってたことがGoToいやなんでもありません(吐血)。

『Indeed, just recently, the National Bureau of Economic Research's Business Cycle Dating Committee determined that the recession that began in March of last year ended in April, making it not only the deepest recession on record, but also the briefest.2 Moreover, with the development and distribution of several remarkably effective vaccines, the monetary and fiscal policies presently in place should continue to support the strong expansion in economic activity that is expected to be realized this year, although, obviously, the rapid spread of the Delta variant among the still considerable fraction of the population that is unvaccinated is clearly a downside risk for the outlook.』

という訳で昨年末からおっぱじまったコロナリセッションは本年4月をもって終了して、落ち込みも戻りも過去最大っていう結果になりましたが、今後はワクワクチンチンパワーが財政金融サポートも助けにしてヒャッハーですよ、という威勢の良い話をしますが、返す刀でデルタ株が出てきたのが懸念ですし、米国ではかなりの人がまだワクチン接種未済で、それがダウンサイドリスクとして考えられる、だそうな。

『That said, under the latest Congressional Budget Office (CBO) baseline forecast, the economy by the end of 2021 will have entirely closed the output gap opened up by the recession. If so, this would be the most rapid return following a recession to the CBO estimate of the trend level of real GDP in 50 years.』

最近の議会予算局による見通しによれば、本年末にはコロナリセッションで生じた需給ギャップのマイナスをすべて埋めることになり、そうであれば、ここ50年間のトレンド成長にキャッチアップするということで、リセッションからの急速な回復としては過去最速になりまっせ。

というのが1パラですな。デルタ株ネタをちょろっと挟んでるけど「過去になかった勢いでのリセッションからの回復」を連呼しておりますね。んじゃ2パラ。

『Importantly, while it is customary in business cycle analysis to date the transition from the recovery phase to the expansion phase according to the calendar quarter in which the level of real GDP first exceeds the previous business cycle's peak, in past U.S. business cycles, the recovery in employment has always lagged the recovery in GDP, and this cycle is no exception. Indeed, at the end of the second quarter of this year, even though the level of real GDP was 0.8 percent above the level reached at the previous business cycle peak, the level of employment as measured by the household survey remained about 7 million below the level reached at the previous business cycle peak.』

ふむふむ、前回のビジネスサイクルのピークを上回ったら回復フェーズから拡大フェーズって定義になるのね、という説明をしておりますが、雇用の回復は経済成長に対してラグをもって起きるので、経済の方が前回のピーク(これは説明はないけど、前年比云々ではなくて、GDPの全体の数値という意味で言ってるんだろうなと解釈したけど合ってますよね?)を0.8%上回っているけど雇用者数は700万人下回っていますよ、と仰せでして・・・・・

『So while it is accurate to say we are in the expansion phase of the cycle in terms of economic activity, we remain in the recovery phase of the cycle in terms of aggregate employment.』

従って雇用に関しては拡大ではなく回復フェーズにある、と言う事を2パラ目では仰せです。だから何なのという話ですけど、昨日ネタにした政策マンデート水準がどうのこうのという話の中で、22年末には利上げ着手が出来る(するとは言ってなかった)環境になる、という話の前振りだったんでしょうね。次のパラグラフではまた別のネタになります。

『In June, the Federal Reserve released its most recent Summary of Economic Projections (SEP) for GDP, the unemployment rate, inflation, and the federal funds rate.3 The SEP provides summary information about the empirical distribution of the individual modal projections at the time of the Federal Open Market Committee (FOMC) meeting submitted by each of the FOMC participants (currently 6 Governors and 12 Reserve Bank presidents). Each individual submits projections for the modal, or most likely, outcome for each variable in the survey under his or her assessment of the appropriate monetary policy path.4 Of course, if a participant's subjective distributions for possible outcomes for GDP, unemployment, and inflation are symmetric, the mode of each distribution submitted by each participant will equal its mean (and median), but in general, there is no presumption that the subjective distributions-or, for that matter, observed empirical distributions-for these variables are symmetric. Indeed, an important addition to the SEP introduced in December 2020 is a set of charts showing the historical evolution of diffusion indexes for the assessment of the balance of risks to the GDP, unemployment, and inflation projections submitted by each participant.』

3パラ目はSEPの説明を延々としてやがりました。見通しは見通しだよとか、これは全員の見解を並べたものだよとか、どういうものをSEPで示していますか、ってな話をしていますが、まあ今更ジローなのでパスする。(話の切りどころが難しくてパラグラフ全部一発引用になってしまうま)


4パラ目で6月SEPの解説になる。

『In the June SEP round, my individual projections for GDP growth and the unemployment rate turned out to be quite close to the path of SEP medians for each of these variables over the 2021?23 projection window.』

クラリダさんの経済物価見通しは概ね予想の中央値近辺だそうな。

『Under the "median of modes" outlook in the SEP, GDP growth this year is projected to be 7 percent on a Q4-over-Q4 basis, which, if realized, would represent the fastest four-quarter GDP growth since the 1980s. Under the projections, GDP growth does step down to 3.3 percent in 2022 and further to 2.4 percent in 2023, but to a pace that still exceeds the projected pace of long-run trend growth in all three years of the projection window.』

この辺は6月SEPの中央値で見た経済成長の今後の姿。23年までの間潜在成長率というか長期均衡成長率を上回る成長を示す、つまり23年まで景気は拡大をする、という見通しになっています、というのはご案内の通り。

『Not surprisingly, the projected path of robust GDP growth in the SEP translates into rapid declines in the projected SEP path for the unemployment rate, which is projected to fall to 4.5 percent by the end of this year, 3.8 percent by the end of 2022, and 3.5 percent by the end of 2023. This modal projection for the path of the unemployment rate is, according to the Atlanta Fed jobs calculator, consistent with a rebound in labor force participation to its estimated demographic trend and is also consistent with cumulative employment gains this year and next that, by the end of 2022, eliminate the 7 million "employment gap" relative to the previous cycle peak I mentioned earlier.5』

という成長見通しを背景に雇用に関しても失業率は急速に改善を示して、21年末には4.5%の見通しが22年末には3.8%にさがりまっせ、というお話をしておりますが、アトランタ連銀のモデルを使って計算すると、この間に労働参加の回復も起こって、過去のトレンド値に回復していき、2022年末には先ほどの労働市場の話の中であった、「前回の経済サイクルのピーク時から見た場合に現在700万人の雇用ギャップがある」というギャップも解消される、即ち労働市場も回復から拡大局面に移る、ということだそうで、そら22年末には利上げ着手の条件が整うわ、というお話を前段の方ではしていた、ということですね。


5パラ目でこのコーナー最後になりますが、22年末利上げの条件云々よりもこっちの方が重要だと思いまっせ、って話。

『As is the case for GDP growth and the unemployment rate, my projections for headline and core PCE (personal consumption expenditures) inflation are also similar to the paths of the SEP median of modal projections for these variables.』

物価見通しの話になりました。クラリダさん個人もSEPの中心値にだいたい近い見通しだ、と仰せです。

『Under the projected SEP path for inflation, core PCE inflation surges to at least 3 percent this year before reverting back to 2.1 percent for the next two years. Thus, the modal baseline outlook for inflation over the three-year projection window reflects the judgment, shared with many outside forecasters, that most of the inflation overshoot relative to the longer-run goal of 2 percent will, in the end, prove to be transitory.』

SEPの見通しは現状の物価上昇圧力は一時的ですよ、ということになっておりますが・・・・・・・・

『But, as I have noted before, there is no doubt that it is taking longer to fully reopen a $20 trillion economy than it did to shut it down. Although in a number of sectors of the economy the imbalances between demand and supply-including labor supply-are substantial, I do continue to judge that these imbalances are likely to dissipate over time as the labor market and global supply chains eventually adjust and, importantly, do so without putting persistent upward pressure on price inflation, wage gains adjusted for productivity, and the 2 percent longer-run inflation objective.』

ここから更にまだ経済のリオープンが進みます。現在の需給ミスマッチ(供給制約と労働需給ミスマッチ)は大きいものの、一時的現象であって、これはいずれ解消されるものであり、持続的な(望ましくないレベルの)物価上昇圧力や、生産性上昇を上回るレベルでの持続的な賃金上昇を伴ったりせず、2%物価目標水準に収まってくる、と見込んでおります。

とここまでは穏当、と言っても説明がイマイチ穏当じゃありませんのはこの次の前振りな訳でして、

『But let me be clear on two points. 』

キタコレ!

『First, if, as projected, core PCE inflation this year does come in at, or certainly above, 3 percent, I will consider that much more than a "moderate" overshoot of our 2 percent longer-run inflation objective.』

今後下がって来ると見込んでおりますので宜しいのですけど、今年のコアPCE物価上昇率は3%、または恐らく確実に3%以上になりますが、この数値は本来私たちが容認している「モデレートな」オーバーシュートという水準をとても大きく(much more than)上回っていますよ、とキタコレな訳でして、よく何とかストの方が雇用雇用と仰せなのですが、FEDちゃんはどうも物価のオーバーシュートが持続的になったらアカンヤロと思ってるわけで、何で雇用雇用と何とかストが指摘するのかが謎っすね〜。(昨日ネタにした7/30のブレイナードもそうだったじゃろ)

『Second, as always, there are risks to any outlook, and I believe that the risks to my outlook for inflation are to the upside.』

こらまたド直球の火の玉ストレートキタコレですな。まあ確かに雇用がフル回復する前に物価の方がトマランチ会長になってコンフリクトが生じる、ってのは捌きが難しくなるから政策運営的に起こってもらわれると困る話ではあるのですが、30日のブレイナードと言い、このクラリダと言い、インフレ上振れをマジで懸念しているような言い方で、本当に懸念しているのか金融市場があまりにもその点を軽視していると思って水をぶっかけているのかが良く分からんところではありますが、これ自体は割と物価上振れリスクについてのトーンが強いと読むもんじゃなかろうか、と思うのでありました。

なお、ここまでが経済物価の話で、後半の金融政策の話は昨日の駄文で申し上げた通りでございます。結局最初から最後まで全文精読モードになりましたが、話者がクラリダだけに止むを得ませんね!!!!



〇SF連銀デーリー総裁のPBSニュースインタビュー記事ですが最初の掴みが中々味わい深い

https://www.pbs.org/newshour/show/why-keeping-delta-variant-in-check-is-so-important-to-our-economy
Why keeping delta variant in check is so important to our economy
Aug 4, 2021 6:40 PM EDT

PBSニュースアワーって書いてあります。インタビュー時間は10分でして、PBSの場合は文字起こしがついているという親切設計になっております。

『As the economy tries to regain ground lost during the pandemic, and the delta variant threatens its progress, the nation’s top economists are watching a number of measures of recovery -- from housing costs and ownership rates, to jobs, interest rates and inflation -- closely. Judy Woodruff talks to Mary Daly, president of the Federal Reserve Bank of San Francisco, about what she is seeing.』(上記URL先より、以下同様)

でですね、このインタビュー番組ですが、見てて「おー」と思ったのは、そのあとの文字起こし『Read the Full Transcript』を見ますと・・・・・・・・

『Judy Woodruff:Let's pick up now on questions about the costs of housing, as well as larger concerns about jobs and economic growth.』

ということで質問しているキャスターさんが話をするのですが、

『Mary Daly is the president of the Federal Reserve Bank of San Francisco. She is part of the Fed's Board of Governors that votes regularly on key decisions about interest rates, jobs, inflation, and the Fed's role in the economy.

Mary Daly, welcome back to the "NewsHour." We appreciate your being here.

Paul Solman's report just now, housing prices going through the roof, not just in Boise, but in many parts of the country, how concerned are you?』

ということで一発目が住宅価格の上昇の話になっていて、これで10分強のうち4分少々が住宅価格が上昇しておりますが、みたいな話をしていまして、そっちの方が味わいを感じましたな、うんうん。


ちなみにテーパリングがどうのこうのという話は、6分30秒くらいの所から金融政策がどうのこうのという話しの流れで出てきます。最初の質疑が50秒くらいで次の質問が7分20秒位から始まります。その部分を引用しておきますね。

『Judy Woodruff:And in connection with that ? in a way, I'm circling back to what we talked about earlier.

You said just a couple of days or a couple of weeks ago strong economic recovery is going to allow the Fed, the Central Bank, to slow its asset purchases before the end of this year. Are you now prepared to say that that is definitely going to happen?』

『Mary Daly:I'm not prepared to say it's definitely going to happen, because, as you know, we're a data-dependent Fed. And the end of the year is far away at this point, in terms of counting the Delta variant and other things that could happen.

So I'm looking for continued progress in the labor market, continued putting COVID behind us, rising vaccination rates, the things that are so fundamental to us saying that the economy has achieved that metric of substantial further progress.

Right now, my modal outlook is that we will achieve that that metric at later this year or early next. But, again, data dependence, that's how we have gotten this far, and that's how we will make good policy going forward.』

『Judy Woodruff:But it's something that looks likely at this point?』

『Mary Daly:My modal outlook, the one that I think is the most likely to happen, is that we will do something on the asset front, asset purchase tapering, by the end of this year or early next.』

ということでテーパリングは年末か来年の早い時期、っていうことですが、まあこれ自体は最早市場も織り込んでいると思ってるんですけどその認識で良いんですよね(最近の雨人の考えることは良く分からん)????





2021/08/05

お題「寝起きでクラリダ副議長講演(22年末の利上げ着手可能性の話)/7/30のブレイナード講演(物価の話が多い)」

政府与党連絡会議とは何だったのかという話ですが・・・・・・
https://nordot.app/795566995605405696
自民もコロナ患者入院制限の撤回要求
2021/8/4 17:18 (JST)8/4 17:36 (JST)updated
コピーライト 一般社団法人共同通信社

一方でガースーさんこの突っ張りムーブ。
https://nordot.app/795599044028940288
コロナ入院制限方針、撤回しないと首相
2021/8/4 19:25 (JST)8/4 23:56 (JST)updated
コピーライト 一般社団法人共同通信社

『菅首相は政府による新型コロナウイルス患者の入院制限方針に与党から撤回要求が出ていることについて「撤回しない」とした上で「必要な医療を受けられるための措置だ。説明し理解してもらう」と記者団に述べた。』(直上URL先より)

ということですがただの自民党支持維持のための芝居なのか、学術会議の時みたく意味不明にスイッチが入って全く突っ張る必要のない所で突如全ツッパリモードになっているのかが良く分かりませんが、突っ張ってるヒマがあったら中国じゃないけど突貫工事でとにかく療養施設つくれよ、って1年以上たって何でそういう話になるのやら・・・・・・・

#まさかとは思いますが「必要な医療」というのは「上級国(ここで通信が途絶える)


〇さて米国ですがFOMC会見ネタではなくて先入れ先出しネタ方面ですが(汗)結構タカ的な発言多いんですよね

ほうほう。
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-fed-idJPKBN2F52E4
2021年8月5日5:25 午前
NY外為市場=ドル上昇、FRB当局者発言を材料視

『FRBのクラリダ副議長は4日、米経済が雇用や物価の目標達成に向け引き続き順調に推移しているとした上で、2023年に利上げを開始できる状況にあるという認識を示した。ダラス地区連銀のカプラン総裁は「7月と8月の雇用統計で進展が続けば、近く量的緩和の縮小に着手するのが得策だ」との考えを示した。』(上記URL先より)

カプラン総裁が強い話をするのは仕様だからどうでもよいのですが、クラリダはんがお話をしたとな、ということで溜まっているネタを飛ばしていきなりそれを見る訳ですが。


・クラリダ副議長の講演を(短いので)寝起きでちゃちゃっと確認だがもはやテーパーではなく利上げ時期の話ですか

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/clarida20210804a.htm
August 04, 2021
Outlooks, Outcomes, and Prospects for U.S. Monetary Policy
Vice Chair Richard H. Clarida
At the Peterson Institute for International Economics, Washington, D.C. (via webcast)

ピーターソン経済研究所(というのか?)でのご挨拶みたいな感じですが、ここで本来は経済の話を読まないと行けないのに、それを前提にした金融政策の話を先に読むのが手抜き読み。

『Prospects for U.S. Monetary Policy』って所からが現世利益の話なので読む。

『In September 2020, the FOMC introduced-and since then has, at each subsequent meeting, reaffirmed-outcome-based, threshold guidance that specifies three conditions that the Committee expects will be met before it considers increasing the target range for the federal funds rate, currently 0 to 25 basis points.6 This guidance in September of last year brought the forward guidance on the federal funds rate in the statement into alignment with the new policy framework adopted in August 2020.7 To quote from the statement, these conditions are that "labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time."』

最初に政策金利の話をおっぱじめるのか・・・・・・・・・・・

『While, as Chair Powell indicated last week, we are clearly a ways away from considering raising interest rates and this is certainly not something on the radar screen right now, if the outlook for inflation and outlook for unemployment I summarized earlier turn out to be the actual outcomes for inflation and unemployment realized over the forecast horizon, then I believe that these three necessary conditions for raising the target range for the federal funds rate will have been met by year-end 2022.8』

で、先ほど申し上げた経済の状況および先ほど申し上げた見通し、ってえのが前半にあって、まあ本来は前半を読んでからこっちになるのですが、とりあえずはそういう見通しであれば2022年の年末には利上げに着手する条件が整う、と仰せになっております。そうなりますと23年中に2会合に1回利上げしたらFFは1.00-1.25%になりますが、それは6月のSEPの見通しよりも全然上の数字になってしまうまという感じですので、いやまあ6月FOMC以降さらに状況が改善していて下振れリスクが減ったということなんでしょうが、おいおいやるなおっちゃんって感じですね(年に2回利上げとかだと6月SEPの中央値が0.50-0.75の所だから丁度良いのですが)。

『Core PCE inflation since February 2020-a calculation window that smooths out any base effects resulting from "round trip" declines and rebounds in the price levels of COVID-19-sensitive sectors and, coincidentally, also measures the average rate of core PCE inflation since hitting the effective lower bound (ELB) in March 2020-is running at 2.7 percent through June 2021 and is projected to remain above 2 percent in all three years of the projection window.』

『Moreover, my inflation projections for 2022 and 2023, which forecast somewhat higher inflation than do the SEP medians, would also, to me, satisfy the "on track to moderately exceed 2 percent for some time" threshold specified in the statement. 』

えーっとですな、クラリダさんのこれが無かったらネタにする予定(今日間に合えばネタにする)だったブレイナード理事の7/30の講演ってのがあったのですが、こちらお馴染みのハト派大魔神姉御な訳ですけれども、この人の講演でも物価の上振れリスクについてしつこく言及していました(ただしハト派らしく「現状その兆候は見られない」という断りを入れながら)というのがあって、あのブレイナードまで物価上振れからのインフレ期待上振れリスクとか言い出しているんだ〜って所だったのですが、一方で米金利様の方はブレイナードまでもがそういう事言ってるから、などという殊勝な反応をしないでいる、というオモシロ相場になっている訳ですな。

まあアレです。完全にアタクシの妄想の世界になるんですけど、どうも今回のFEDはテーパータントラムを警戒するあまりに市場に出したメッセージが効きすぎちゃって、金利低下の方がトマランチ会長みたいになってついにクラリダ砲をぶっこむ、みたいな感じになっているのではねーかとか考えると中々味わいがありますが、先般も申し上げたと思うのですが、パウエル議長って市場を見ながら発言のトーンを調整している感じは昔からありまして(最初にやらかした反省によるものだと思う)、調整しながら着地させようとしたものの、市場ちゃんというのはそういう風に政策当局の意図通りには誘導されませんですぞ、ってな感じなのかなとも思います(個人の妄想です)。

『Finally, while my assessment of maximum employment incorporates a wide range of indicators to assess the state of the labor market-including indicators of labor compensation, productivity, and price-cost markups-the employment data I look at, such as the Kansas City Fed's Labor Market Conditions Indicators, are historically highly correlated with the unemployment rate.9 』

『My expectation today is that the labor market by the end of 2022 will have reached my assessment of maximum employment if the unemployment rate has declined by then to the SEP median of modal projections of 3.8 percent.』

このパラグラフの最後に雇用に関する話(さっきまでは物価の話)が入りますが、あーでもないこーでもないと言ってますが、要は2022年末で失業率が3.8%(6月SEPの中央値)より低ければ最大雇用とか言ってるようですね。

でまあ何がお洒落ってテーパリング着手の話をしているのではなくて利上げの話をしている事でして、今さらテーパリングがどうのこうのゆうても市場ちゃんはダンディールだと思っているだろう、って事なんでしょうかね。利上げ話を持ってくるとか金利低下ヒャッハー祭りに一生懸命水掛けようって話しですが、ワッショイワッショイとなっている場合は水を掛けても力水みたいな感じになってしまうかも知れませんのですが、まあドル高になってるんだから少しは冷却効果があったんですかねえ、よー知らんけどソイヤソイヤワッショイワッショイ。

んでもって次のパラグラフに参ります。

『Given this outlook and so long as inflation expectations remain well anchored at the 2 percent longer-run goal-which, based on the Fed staff's common inflation expectations (CIE) index, I judge at present to be the case and which I project will remain true over the forecast horizon-commencing policy normalization in 2023 would, under these conditions, be entirely consistent with our new flexible average inflation targeting framework.10』

『I note that under the June SEP median of modal projections, annualized PCE inflation since the new framework was adopted in August 2020 is projected to average 2.6 percent through year-end 2022 and 2.5 percent through year-end 2023.11』

22年末に利上げの条件が整うという話ですからそうなんですが、23年から正常化に着手する、という動きは昨年9月の新しいフレームワークにも合致するもんです、という話をしておりますな。ちなみにパラの最初にしれっと「インフレ期待が2%で十分にアンカーされている場合には」というのがありまして、このインフレ期待に関してはさっき申し上げた7/30のブレイナード講演でインフレ期待の上振れリスクへの言及があったりしておりますのよ。

『In the context of our new framework, it is important to note that while the ELB can be a constraint on monetary policy, the ELB is not a constraint on fiscal policy, and appropriate monetary policy under our new framework, to me, must-and certainly can-incorporate this reality.』

一転してしれっとここでもお洒落な論点を繰り出しておりまして、ゼロ金利制約は金融政策の足枷になるが、財政政策の足枷になる訳ではない、という事実を踏まえた上で新しいフレームワークの下での適切な金融政策運営をしましょうね、みたいな事を仰せです。

『Indeed, under present circumstances, I judge that the support to aggregate demand from fiscal policy-including the more than $2 trillion in accumulated excess savings accruing from (as yet) unspent transfer payments-in tandem with appropriate monetary policy, can fully offset the constraint, highlighted in our Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy, that the ELB imposes on the ability of an inflation-targeting monetary policy, acting on its own and in the absence of sufficient fiscal support, to restore, following a recession, maximum employment and price stability while keeping inflation expectations well anchored at the 2 percent longer-run goal.12』

ということで、現状のようなゼロ金利制約に引っ掛かっている状態の中で、今行われている盛大な財政政策が、金融政策と一緒になって効果を発揮しておりまして、これによって物価目標と最大雇用をもたらすことになるでしょう、というようなお話をしていて財政大事です、という話をしております。


んじゃ次のパラグラフに参ります。

『Before I conclude, let me say a few words about our Treasury and mortgage-backed securities (MBS) purchase programs.』

テーパリングの話が「お話の最後にちょっとだけ申し上げますが」状態になっているのテラワロス。

『In our December 2020 FOMC statement, we indicated, and have reaffirmed since then, that we will maintain the pace of Treasury and MBS purchases at $80 billion and $40 billion per month, respectively, until "substantial further progress" has been made toward our maximum-employment and price-stability goals.』

はい。

『Since then, the economy has made progress toward these goals. At our meeting last week, the Committee reviewed some considerations around how our asset purchases might be adjusted, including their pace and composition, once economic conditions warrant a change. Participants expect that the economy will continue to move toward our standard of "substantial further progress." In coming meetings, the Committee will again assess the economy's progress toward our goals. As we have said, we will provide advance notice before making any changes to our purchases.』

なんかもうテーパーするのは確定みたいな感じでサラリと原則的な話だけになっていますな。

『The outlook I have described in these remarks is, of course, only one of many possible paths that the economy may take. I began by noting that the recovery to date has been surprising, and it is plausible-indeed, probable-that more surprises are in store. The economic outlook is always uncertain, both because new shocks can arrive-which, by their nature, cannot be foreseen-and because our knowledge of the workings of the economy is imperfect. Additionally, the recovery and expansion following the pandemic are unlike any we have ever seen, and it will serve us well to remain humble in predicting the future. 』

『In light of these uncertainties, the Committee is rightly basing its judgments on outcomes, not just the outlook. Looking ahead, our policy decisions will continue to depend on the data in hand at the time, along with their implications for the outlook and associated risks.』

最後のパラグラフでは「見通しに関しては今の経済が今までになかった動きなので、先行きの見通しだって決めうちできるものではないので、状況を謙虚に点検しながら政策を考えますよ」という話をしておりますな。



・んでもってブレイナード理事の7/30講演で物価の上振れに言及してるのよね

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/brainard20210730a.htm
July 30, 2021
Assessing Progress as the Economy Moves from Reopening to Recovery
Governor Lael Brainard

At "Rebuilding the Post-Pandemic Economy" 2021 Annual Meeting of the Aspen Economic Strategy Group, Aspen, Colorado

とりあえずサラサラと流してみますと、経済の見通しに関しては冒頭の3つのパラグラフにありまして、

『The economy is reopening, consumer spending is strong, and hundreds of thousands of workers are finding jobs in the hard-hit leisure and hospitality sector each month. Pent-up demand has outstripped capacity in some sectors, as businesses that had pared back to survive the pandemic are encountering bottlenecks as they rehire and restock.1 These mismatches have made it more difficult to interpret the first few months of reopening data.』

『The second quarter of 2021 saw a large wave of demand buoyed by fiscal transfers, resulting in annualized real personal consumption expenditures (PCE) growth of 11.8 percent. Real gross domestic product grew at an annual rate of 6.5 percent in the second quarter of 2021, slightly less than many forecasters had projected, as that strong consumer demand outstripped production, resulting in a significant decline in inventories.』

再生に加えてペントアップ需要が爆発してもう強いのよ、というお話をしておられましてですね、

『The tailwinds to growth from the fiscal stimulus during the first half are shifting to headwinds that will continue through the remainder of 2021 and 2022. Even so, pent-up consumption and full reopening are expected to more than offset fiscal headwinds in the second half such that PCE is expected to grow at a robust rate, and growth is expected to remain strong through the remainder of the year. By the end of the year, the U.S. economy is expected to achieve average annualized growth of 2.2 percent since the onset of COVID-19-slightly above most estimates of longer-term potential output growth.』

『In short, growth this year is expected to compensate fully for last year's sharp contraction-as a result of the strong policy response, effective vaccines, and the resilience and adaptability of American households, workers, and businesses.』

今後の話しでも、財政支出の神風が(前年比で見た時に)逆風に化ける訳ですが、そのようになったとしましても、消費のペントアップと、今後更に進展する経済のリオープン全開への流れがあって、財政の崖はオフセットできる、とかエライ威勢の良い話をしておりました。

でもって時間と量と積み残しネタの関係もありますので、この次に労働市場の話があるのですが端折りまして、今回のブレイナードさんですが、講演の(目の子で)半分くらいのスペースを物価に使っているのがほほうという感じですので、物価部分を鑑賞しましょう。

『Today's data showed that core PCE inflation rose 0.45 percent in June, once again driven by outsized contributions from a handful of categories. New and used vehicles contributed just under 40 percent of the June increase in core PCE, while price increases for travel-related items like hotels, airfares and rental cars contributed another 25 percent.2 All told, price increases associated with vehicles and vacations, categories that comprise about 8 percent of the core PCE basket, were responsible for over 60 percent of the June core PCE price increase.』

足もとでのPCEインフレーションの話をしていますが、コンポーネントを見るとパンデミックで落ちた需要が復活したセクターの価格と、自動車関連の価格上昇が効いている、という話を最初にしております。

『Recent high inflation readings reflect supply-demand mismatches in a handful of sectors that are likely to prove transitory. In assessing inflation, an annualized 24-month measure that looks through the steep declines and subsequent rebound in prices in categories affected by the pandemic currently has core PCE inflation running at 2.3 percent and headline PCE inflation running at 2.4 percent. It is reasonable to expect these measures to remain near those levels for much of the rest of the year. By comparison, this 24-month measure was running at 1.6 percent in December 2020.』

現状の高いインフレは需給のミスマッチによって起きていますがミスマッチ自体は一時的とみられます、と来て何か知らんが24か月の物価変化を年率換算したものを使ってインフレーションのアセスメントを行う、という話をおっぱじめました。

でもって問題というかネタになるのはこの後。

『I am attentive to the risk that inflation pressures could broaden or prove persistent, perhaps as a result of wage pressures, persistent increases in rent, or businesses passing on a larger fraction of cost increases rather than reducing markups, as in recent recoveries.』

物価上昇圧力がより広がるとか、実は一時的じゃなかった、というようなリスクについて注意しています、というのがぶっこまれておりまして、あのブレイナードがこれ言うのか、って感慨が湧くわけですが、そうなる可能性としてはお賃金の動向、家賃の動向、コストアップを吸収して売り上げを稼ぐよりもそのまま価格転嫁してしまえという動きが広がるかどうか、という辺りが注目のようです。

『I am particularly attentive to any signs that currently high inflation readings are pushing longer-term inflation expectations above our 2 percent objective.』

特に注意しているのは今現在の物価高が適合的に作用して人々のインフレ期待が2%を超えて高まることです、と来ましたよ!で、次のパラグラフに参ります。

『Currently, I do not see such signs.』

今の所そのような兆候はない、ということです。そりゃそうだと思いますが、ただまあこういうのに言及するというのがもうねという感じですよね。

『Most measures of survey- and market-based expectations suggest that the current high inflation pressures are transitory, and underlying trend inflation remains near its pre-COVID trend. Since the June FOMC meeting, five-year, five-year-forward inflation compensation based on Treasury Inflation-Protected Securities has declined a little less than 20 basis points, on net, and it currently stands at 2.2 percent, at the low end of its range of values prior to the 2014 decline. The second-quarter reading from the Federal Reserve Board's index of common inflation expectations stands at 2.05 percent, which is at the bottom of the range that prevailed from 2008 to 2014, when 12-month total PCE inflation averaged 1.7 percent.3』

現状のインフレ期待に関して、ということでサーベイとか物価連動国債から見る5年先5年インフレ期待とか、FRBの一般的なインフレ期待のインデックス(?)とかそんなものを出していまして、これらによると今の所はインフレ期待が上振れするというようなサインは無いとのお告げ。

『Many of the forces currently leading to outsized gains in prices are likely to dissipate by this time next year. Current tailwinds from fiscal support and pent-up consumption are likely to shift to headwinds, and some of the outsized price increases associated with acute supply bottlenecks may ease or partially reverse as those bottlenecks are resolved.』

『Lumber prices have fallen, wholesale used car prices appear to have peaked, and auto semiconductor production is projected to expand.』

でもって最初の所で経済に関してはペントアップと経済フルオープンが財政の崖を打ち負かすような話をしておりましたが、物価に関しては財政の追い風が向かい風になって、供給制約やミスマッチによる物価上昇は一段落するでしょう、ということになっております、ただフワッと言うだけだとアレなので木材価格とか中古車価格が落ち着いてきている話とか、半導体の生産拡大という具体例を挙げていますね。

『While there is good reason to expect that the inflation dynamics that prevailed for a quarter-century will reassert themselves on the other side of reopening, I will remain vigilant to any signs that inflationary pressures are likely to prove more persistent or that expectations are moving above target. If inflation moves persistently and materially above our target, we would adjust policy to guide inflation gently back to target.』

ということで物価に関してはいずれ落ち着くと思っていますが、私はインフレーショナリープレッシャーとインフレ期待が持続的とか上振れするリスクについては警戒していますよ、とまた言いまして、もしそうなら必要な措置を取る、と仰せでしてこれがブレイナードの発言ですかって感じではありますがあんまり市場ネタになっていなかった希ガス。

以下は経済見通しの上振れ下振れリスクの話、テーパリング着手議論の話をしておりますが、時間的にもアレなので物価部分を主に見ただけで勘弁させて頂きとう存じます(平伏)。






2021/08/04

お題「7月会合主な意見その他である(虫干し債務解消シリーズですサーセン)」

こちらは昨日の2コマ漫画になります。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210803/k10013178171000.html
東京都 コロナ 3709人感染確認 1万4000人自宅療養 1か月で13倍
2021年8月3日 22時55分

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA033410T00C21A8000000/
ワクチン2回接種後、行動制限の緩和検討 官房長官
政治
2021年8月3日 15:00

・・・・・・・いやおまえ「今のタイミング」でそれを言う話かよ?と思うのだが、もしかしてGoToトラベルでも始めるつもり??帰省自粛の話はどうなったの?????


〇最近はすっかり中身がスッカスカになりましたが7月会合主な意見

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2021/opi210716.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2021 年 7 月 15、16 日開催分)1

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』をみますとまあ別にあっそうって感じの意見しか無いのですが、見ててナンジャソラというのも少々ございますな。


・6月短観は業況判断と設備投資はやたら強かったけれども雇用判断はその勢いについていけてないと思うんだが

こんな意見がありましてアタクシ思いっきり引っかかる。

『・6月短観などをみると、製造業を中心に人手不足感が幾分強まっているように見受けられる。そうしたもとで、雇用者所得が持ち直していけば、消費の力強さにもつながり得る。』

え????と思って6月短観の私家版分析を読み直してみますと、7月2日の駄文ではあたくしこのように私家版分析をしておりましたんですよね。

(以下6月短観を受けて書いたアタクシの7/2の駄文を再掲します)

・雇用判断DI:おや??こようのようすが・・・・・・・・・・・・

(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測      現状→9月予測
製造業大企業   ±0→▲3      ▲2→▲5
製造業中堅企業  ▲2→▲6      ▲9→▲13
製造業中小企業  ▲3→▲6      ▲7→▲4

非製造業大企業   ▲13→▲13    ▲10→▲13
非製造業中堅企業  ▲17→▲20    ▲18→▲21
非製造業中小企業  ▲22→▲26    ▲22→▲29

こちらですが、製造業大企業と非製造業の全体に渡って「前回の現状判断よりは雇用判断がタイトあるいは横ばいになっているものの、3月時点の予測よりも雇用判断が緩んでいる」というのがちょっとだけ気になりました。見通しよりも雇用の不足感が強くない、って話ですと、お賃金とかが威勢よく伸びてくれないって事に繋がらないかと思う訳です。

いやまあ水準自体は全セクターで不足超過(って変な日本語だな)となっているので、別に目くじら立てる話じゃないのかもしれないけど、業況判断が特に製造業であれだけ威勢よく前回の判断を超過達成しているのに、こっちは若干とは言えその逆になっているのが不思議ちゃんではあります。

(ここまで7/2に書いたアタクシの駄文の再掲でございます)

あのですね、短観ってここの所業況判断が強くて設備投資強いんですけど、雇用判断の方がそれに整合するような勢いになっていない、という風に読めると思うんですけど。いや確かに水準は「不足超」ではあるんですけれども、非製造業は前回の雇用判断DIよりもマイナス(不足)幅が縮小しているし、製造業は業況判断が無茶苦茶強いのに、雇用判断は改善していると言っても製造業大企業の所が見通し程強くなっていない、というのがあって、これではお賃金の改善に中々直結してくれないと思うのね。

日銀の展望レポートちゃんだと「所得から雇用への前向きな循環メカニズム」様が企業部門でワークしていますってえ話になっていて、確かに設備投資強いからワークはしているんですけど、これ見ると個人所得の方まで回ってきて、個人所得からの需要拡大ってのはもうちょっと先になるんじゃないのかねー、って話になると思うんだけどなー。

と、違和感感じたので短観私家版分析を持ち出してみましたが、私家版分析なだけに別にアタクシが必ず正しいとは思わんけど、さすがにあの短観を見て賃金上昇に波及していくという読みをするのは無理筋じゃネーノ、と思ったので盛大に突っ込んでみました、まる。


・これは何ぞ????

主な意見に載せる内容かよ!!!というのがありました。

『・ 家計が、適切なリスク分散と長期保有の視点のもとで、現預金の一部を株式や投資信託に投資することで、配当収入などを通じて海外経済の成長を取り込むことが期待できる。』

ちょwwwwなんぞこれwwwwwwwwww

いやあのですな、金融広報中央委員会での講演なら兎も角金融政策決定会合で何の話をしてますねんという感じですが、如何にもどこかの誰かさんが出した意見っぽくて頭が痛くなってきました。


物凄く難しい事を言っているように見えるが何が何だかさっぱり分からないのがこれ。

『・ 輸出企業の価格設定行動の変化や現地生産の動き、昨年春にみられた有事のドル買いの復活など、外国為替を巡る環境変化により、金利低下が経済に影響を及ぼす経路にどのような変化が生じていくか、注視していく必要がある。』

?????????????マジで言ってることの意味することが分からんのですが、これ議事要旨でもうちょっと詳しく解説していただけませんかねえ、またはご本人が金懇で説明するとか。いや本当の本当にこれ何を言いたいのかが全く理解できない、日本語で書いてあるから書いてある字面の意味は分かるんですが、言いたいことがさっぱり分からん(お前が言うなとか言われそうですが却下)。


・藁人形論法キター!

続きまして『U.金融政策運営に関する意見』に参りますが、ここで置物一派お得意の藁人形論法が炸裂するの巻なのでした。曰く、

『・ 資源価格の上昇で消費者物価(除く生鮮食品)の前年比も上昇するが、2%の「物価安定の目標」の安定的達成には距離があり、時期尚早に金融を引き締めないことが重要である。』

どこの世界で金融引き締めしろという人がいるんでしょうか。だいたいからして米国様とかと違って日本のコアCPIが3%だのになる訳でも無いのに、引き締めろとかいう話が出る訳ないじゃんと思いますし、こちとらマイナス金利とYCC止めてゼロ金利政策と2%物価目標達成までの時間軸だけ出せば話は簡単だし政策の持続性も1ミリも問題ないですよ、って言ってるだけなんですけど、何でそれが「時期尚早に金融引き締め」になるのかさっぱりわからんですが、まあ藁人形論法って奴ですな。

ま、それ以前の問題でマイナス金利政策というのは今の日本における経済主体の資金ポジションから見たら、企業と家計という資金余剰ポジションから、政府という資金不足ポジションに対するチャージを発生させているんだから、そもそも論としてマクロ的に引き締めじゃろお前らマイナス金利政策で金融引き締めやってるんだぞこのヴォケという話は出てきませんな相変わらず。

まあマクロ的にマイナスなのと、そうは言ったって前向きな投資をする主体は企業の中でも資金需要があるから金利を下げるのは効果的ってえ話はあるでしょうが、別に借入金利がマイナスになる話しでもなくて、とっくの昔に金利は下がりきっているのですから、前借り効果とかとっくに無くなっておるじゃろ、というような話はまるで無いのですねまあいつもの事ですが。


・だったら追加緩和したほうが良いんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)

『・大規模な財政支援策が行われている先進国の中には、ワクチン接種が進み、経済が正常化する中で、インフレ率が高まり、金融緩和の縮小を模索する動きもみられる。デフレマインドが根強いわが国でも、政府と連携しつつ、粘り強く金融緩和を継続することで、「物価安定の目標」である2%につなげていくことが重要である。』

と思うんだったら追加緩和でもしたら如何でしょうか(棒読み)。これも何か言ってるようで見事に何も言ってない意見ですなあと思いますし、お前らちょっとそこ席どいてワシに主な意見書かせろって言いたくなるわ(なお字数制限w)。


・片岡さん!はやく具体的な提案して下さい!!!!

どう見ても片岡さんな意見。

『・ 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と目標達成を早期に実現する必要がある。』

その意見はもう何回も聞いているんですが具体的に何をするかを出してくれないと話が盛り上がらないんですよ片岡さん!!!!!

まさかとは思いますが就任直後に渾身の研究の末満を持して出した「15年国債金利が0.2%未満」という提案が金融市場を爆笑の渦に巻き込んでしまったことがトラウマになっているのでしょうか??お願いだからちょっと提案出してくださいよ〜。


・気候変動対策オペの意見がたくさん並んでいるのですが執行部の対外説明と微妙な違いを感じました

今回は前回に引き続き気候変動対応オペに関するコーナーが設置されておりまして、『(気候変動対応を支援するための資金供給)』の主な意見があるんですけれども、これがまた誰かいちゃもんでも付ける向き居ないのかと思うと全然いないので、一見すると全部が執行部の意見かというような感じですが、まあ2度読みすると執行部かそうじゃないかは何となく見えて来まして、そうやって読み直すと、どうもこのオペ、黒ちゃんが会見で対外説明していた感じと違う受け止めが

何と11個もあるので、一人で2つとか出した人もいるという計算になりますが・・・・・・・・・・

『・ 気候変動関連分野での各国の取り組みの現状に鑑みると、市場中立性への配慮と政策の柔軟性を併せ持つ、気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給の仕組みは適切である。』

『・ 対象投融資の具体的な判断を金融機関に委ねつつ、一定の開示を求めることで規律付けを図る仕組みは適当である。』

ここまで執行部(と勝手に決め打ち)。

『・ 気候変動対応のための資金供給では、政策の説明責任、データ収集の観点から、金融機関による事前事後の一定の開示が必要である。移行リスクに鑑みて、トランジション・ファイナンスは対象とすべきである。また、政策効果の検証が望まれる。』

3つ目で辛うじてこりゃ執行部じゃないな、というのがありまして、「また、政策効果の検証が望まれる。」とイイハナシダナーな事は言ってるんですが、いやお前だったら今般廃止予定の成長基盤強化貸出の政策効果の検証をするように提案しろよと思うんですが、そっちに何で頭が回ってくれないの??とお父さんは残念に思うのでした。

『・ 気候変動対応の新たな資金供給手段については、気候変動を巡る外部環境が流動的なもと、中央銀行のマンデートとの関係に十分に留意しつつ、対象範囲を慎重に選ぶことが重要である。』

だったら何で今導入しないと行けないの???というツッコミをして頂きたかった。これは執行部なのかただの審議委員なのかよくわからん。

『・ 息の長い取り組みとなる新たな資金供給は、貸付利率を0%としたうえで、貸出促進付利制度上の付利は0%とすることが適当である。また、2030 年度まで借り換えを認めることで、実質的に長期のバックファイナンスを提供できる。』

これは執行部なんだが、そもそも1年リセットで借り換えだったら途中で政策金利上がったらそれまでなのですが(成長基盤貸出本則は4年固定)この理屈は相変わらずイミフである。

『・ 気候変動対応を支援するための資金供給は、長い目でみてマクロ経済の安定に資すると考えられる、息の長い前向きな取り組みである。こうしたことから、気候変動問題に対する本行の立場や取り組み方針を分かりやすく示し、内外の市場関係者はもとより、国民一人一人に正しく理解してもらうことがきわめて重要である。』

はいはい執行部執行部という感じですが、この資金供給が「息の長い取り組み」だったらもっと時間を掛けて導入の話をすれば?と思うんだが、なんかECBに煽られて慌ててぶっこみました、って風にしか見えませんけどにゃあ。

『・ わが国では、化石燃料への依存度が高く、間接金融が大きな役割を担う。中央銀行が直接介入して気候変動対応を進めていくと、金融システムに様々な歪みが生じる可能性がある。この点、今回の仕組みは、金融機関が自らの判断で行う気候変動対応投融資を支援する形としており、そうした影響を回避できる。』

というか、確か会見後の総裁の説明って「起爆剤」でしたっけ、要はこの日銀の取り組みによって気候変動対応に関する国民全体のモチベーションを喚起しましょう、みたいな定性的な効果というかシグナリング効果というか、そういう感じの話をしてたと思うのですが、ここの主な意見を見ていると、執行部の説明じゃなさそうに見える方の意見が、「今回のオペで気候変動対応の動きに定量的な効果をもたらす」的なサムシングを感じるので、なんか話がズレている気はする。もしかしたら執行部かも知れんがこれは執行部じゃないと見た。



・まあ結局オペの方は竜頭蛇尾になって研究方面に日銀はリソースをぶっこみに行くと見た

と、ここまで7個意見が出てきましたが、8個目以降は何か気候変動オペじゃない方面の話になっておりましてですね・・・・・・・・・

『・ 気候変動対応に向けた経済・社会の変革には巨額の投資が持続的に行われるエコシステムの構築が重要であり、海外で検討が進んでいる国境炭素税の導入や環境債市場の整備などの情勢変化を適切に把握しつつ、情報発信などを通じて変革に貢献すべきである。』

オペと全然関係ない話キタコレですが、その次も・・・・・・・・

『・ 脱炭素社会の実現には新規の研究開発・設備投資が欠かせず、そのためには経済成長が必要である。気候変動対策と経済成長の両立に向けて一層の調査・研究が重要である。』

脱炭素社会で経済成長ってのもナンジャソラ感がありますが、「一層の調査研究が重要」らしいですよ。

『・ 金融政策の観点から気候変動問題に取り組むに当たっては、経済・物価への影響について、予断を持たずに、政策判断の基盤となる調査・研究の蓄積を進める必要がある。』

また「調査・研究の蓄積を進める必要がある」だそうです。

『・ 気候変動問題がマクロ経済に具体的にどのような影響を及ぼすのかについての分析や調査・研究を、引き続き深めていくことが重要である。』

ということで、5つも調査研究が必要という話が出て来まして、これはもうどこからどう見ても、調査統計局か金融機構局か国際局かわかりませんが、その辺りの部署の中で「気候変動何とか室」なのか課なのか分かりませんが、そういうのが対外的にドカーンと出てきますな。やったねパパ!役職ポストが増えるよ(何かセットで削減になるのだったらカワイソス)!!!!!などと下世話な事を直ぐに考えてしまうのがアタクシの悪い癖です(−−;

ま、たぶん調査統計局(調査するから)か金融機構局(別に気候と機構を引っ掛けている訳ではなくて気候変動問題が金融システムの頑健性につながる話となっているから)の中に新たに作るみたいな話になるんでしょうかねえ。まー昭和温泉旅館の増築に次ぐ増築をするよりは前向きっぽいですよね。それを中央銀行がやる仕事かって気もしますが、まあ中の人的には昭和温泉旅館よりもマーケットバリューがありそうですね(ニッコリ)。



〇日銀ネタの累積債務は解消ですがたぶんこのペーパーはオモロイのではないかと言うご紹介をば

・インフレ期待に関するペーパーが出てるのだが英語先行なので・・・・・・・・・

日銀の新着情報ページ。
https://www.boj.or.jp/whatsnew/index.htm/

最近「職員の新型コロナウイルスへの感染について」の頻度がジャンジャン上がってきておりますが、直近では支店での罹患者が、というのがちょいちょい出てくるようになっておりまして、コロ助パワー恐るべしナリよという感じなのですが、それは兎も角として、

『 7/30(金)調査・研究 (論文)金融研究所DPS:ノイズ情報モデルにもとづくインフレ予想と情報発信に関する分析 』

というのに釣られてポチっとなとしてみますと、

https://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps21_e.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ(E-Series : 英語版)
2021年収録分

英語かよ!という感じでエグゼクティブサマリーを見に行くとこんなのがありました。
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/21-E-07.html
Inflation Expectations and Central Bank Communication with Unknown Prior
Tatsushi Okuda, Tomohiro Tsuruga

冒頭に『We construct a noisy information model of central bank communication on future inflation rates and highlight an informational friction that plays a key role in explaining several empirical properties of firms' inflation expectations.』ってあるので、企業の価格設定行動などにつながる企業のインフレ期待に対して中央銀行の情報発信がどのような影響を与えるか、って文章のように見えますが、日本のデータとかそれ企業のインフレ期待動いてるのかよというのを使って研究しておりますので、その点で言えば政策のベースに使うような話があるかも知れませんなーと思ったのですが何せ英文なんでちょっと読んで早速積読になっております(汗)。



・先般の国際コンファランスの内容が出ていました

その1個上に

『 7/30(金)調査・研究 (論文)金融研究所DPS:2021年国際コンファランスの模様 』

というのがあります。まあこれは眺めるだけの物件ですが、ふーんと思いながら眺めました。夏枯れでネタが切れたら(今年はカレンダーの配置上夏枯れ期間が長くなりそうと思ってる)ネタにするかもしれませんが。

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/21-J-05.pdf
「ニューノーマルへの適応:
COVID-19後の展望と政策課題」
2021年国際コンファランスの模様
Discussion Paper No. 2021-J-5



・そんな事よりもFSR別冊ですよ!!!

『 7/28(水)調査・研究 金融システムレポート別冊「2020年度の銀行・信用金庫決算」 』

要旨
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb210728.htm/

要旨はあっさり味にも程があるので全文を見る必要があります。
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb210728.pdf
2020年度の銀行・信用金庫決算

フルカラー色刷り36枚組の豪華バージョンになっておりますので是非ご覧ください、ってもう皆さん見ておられますかそうですか(なお月末月初だったり海外中銀イベントだったりでアタクシ最初に斜め読みしただけでネタにするほど精読できていないです、超大汗)。





2021/08/03

お題「遅れましたが雨宮副総裁金懇会見:質問に対して徹底的に話を逸らしているのが気になりました」

ワクチン確保も(まあマスクがアレだったから想定はしてたが)気休め言ってグダグダになってる癖に私権制限の話になると急に生き生きするんだよなー。
https://www.sankei.com/article/20210802-GJHAC3QGPVN7LH4V57YIPIZJPM/
自民・下村政調会長、ロックダウン「国会で議論を」
2021/8/2 13:03

私権制限の強いのとか与えたら連中、自分等の不手際を批判されたら予防拘束とかするんじゃねえかこいつら位の心配はしておるアタクシ。

色々と成敗物件が溜まって誠に恐縮ですが、日銀ネタから成敗致します。


〇雨宮副総裁新潟金懇会見ですが分量はあったのですが中身が・・・・・・

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210726a.pdf

こちらなんですが11枚組キタコレと思ったのですが、これがまあドイヒーなことに何かネタになるものが碌すっぽ無い、という代物で全俺が泣いた。何せ冒頭発言の所で丸々2ページ半を費やした挙句に次の質問が、

『(問) 脱炭素経済・脱炭素社会への今後の移行が、新潟県の経済にどのような影響を与えるのかという点につきまして、ご意見・ご所見をお伺いさせて頂きたいと思います。』

っていやまあご当地質問はお約束とは言え、そういうのは経産省に聞いてくれよって質問が来てお蔭をもちまして10ページと4分の1の質疑応答のうち3ページと3分の1がこの時点で終了しておる(とほほ)。


・翌日に黒ちゃんが日本記者クラブ講演で説明した話(市場の失敗に対処)となんか話が違くね??

『(問) 気候変動のためのスキームを、先日、日銀として骨子を公表されまして、これまでの金融政策から裾野が拡がっているようにもみえますが、政府はグリーンのほかにデジタルも成長戦略に入れています。今日公表された 6 月決定会合の議事要旨では、一人の委員が、ポストコロナ時代に向けた経済社会構造の変化を踏まえて、日銀としても様々な工夫を検討していく必要があるのではと指摘されていました。日銀が、ちょっと気が早いですが、気候変動以外にこういった構造変化に対応できる措置について、新たな分野に踏み込んだ措置をとる可能性があるのか、漠然とした質問で恐縮ですが、その辺についての考え方を教えてください。(後半割愛)』

この点ですが、この金懇の翌日に黒ちゃんの日本記者クラブでの講演があって、そこで詳しく説明があったのでネタにしましたけれども、日銀の整理としては「気候変動への対処は典型的な市場の失敗に対処するものであるから、政府部門が対処しないと解消が難しく、主体は政府が行うものだが、中央銀行としてはこれをサポートするために気候変動のオペをいれました」という整理整頓になっているんですよね。

然るに、先般の黒ちゃん講演をネタにした時にも申し上げましたが、この気候関連オペを「成長基盤強化貸出の後継」とか言い出す(それ自体は成長基盤強化という結局何だったのかという貸出(実は4年固定だから「実質ゼロ金利政策からの脱却」が見えてきた段階で4年固定に千客万来となるという凄まじい緩和効果を出す、という仕掛けがあったんだが肝心の脱却が出来なかったのである意味物凄い地雷装置なこの貸出が不発のまま終了することとなった、というのはメモとして置いておきますよ皆さんお忘れなく)を終わらせる方便として言ったんでしょうが、それがミスリードになってこういう質問が定例会見でも出たしここでも出るの巻になってるんだよなー。

つまりね、昭和温泉旅館政策は政策の継ぎはぎもそうなんですが、理屈が一々継ぎはぎになっているので、今回のような質問が登場してくるんです。本来「市場の失敗に対処する」気候オペと「成長力強化の呼び水とする」成長基盤強化は別のコンセプトなのですから、後継とかになり得ないのですが、気候変動ネタに対処するついでに成長基盤強化オペを止める口実に使おう、というように機会主義的にてきとーなもんをくっつける(成長基盤強化オペを止める口実が政策に意味が無かったですゴメンチャイというか、無理矢理成功したことにする(潜在成長は上がってないけど)屁理屈を構築するか、しかないので良い逃げ場だと思ったんでしょう執行部としては)のとかマジで政策のロジックも効果検証も何もかもがグダグダになるので勘弁してくれませんかねえ、とこの前と同じ悪態なのだがこれトサカに来るので何度も言う。

雨宮さんの回答なんですけど、まずクソ長くてこの前半部分の回答だけで1枚まるまる分答えている、という時点でロジックが昭和温泉旅館になっているのがわかるというものですが、その長広舌を確認しましょう。

『(答) まず一つ目ですが、マクロ経済政策主体として中央銀行が行うべき金融政策ということについて、基本的なあり方を考えた場合、いくつか重要な要件があると思います。』

いきなりそもそも論から開始。

『一つは、それぞれ国毎に多少違いますし――だいぶ共通しているところはありますが――、それぞれの中央銀行に課せられたマンデートの範囲内で、あるいはマンデートとの整合性を保ちながら行うということです。』

『もう一つが、マクロ経済政策主体として、政府・国会から独立性を付与されている以上、個別の資源配分への介入はできるだけ控えるような対応を取るべきということが基本原則になると思います。』

マンデートは達成しないわ個別資源配分には介入しまくるわですけどね!!!!

『ただそのうえで、この原則で綺麗な万古不易の線引きができるかというと、そう話は単純ではないです。例えば中立性といっても、ぴったり中立かというと、例えば世界の中央銀行も、国民経済に存在するあらゆる全ての金融資産を全部比例的に買っているわけではなく、色々な理由で応用を利かせながら買っています。』

え??すべての資産を全部比例的に買うのが中立?????????

『今申し上げたようなマンデートの範囲内で、マンデートと整合的という条件のもとで、それぞれ必要な経済政策の対応は、時代とともに変わっていきますので、今あるやり方が全てということではないと思います。ただし、何度も言いますが、中央銀行制度という民主主義の中で決まった、付託されたマンデートを実現するうえで、かつその独立性、自主性を持ちながらやるという範囲の中で、やるべき原則というのは維持すべきだろうと思います。』

維持してましたっけ?まあいいですけど。

『その中で、例えば日本銀行も、最近では成長基盤強化という、おそらく普通の考え方では、潜在成長力の強化そのものは、伝統的な中央銀行の金融政策の目的には入らないわけですが、日本の場合は「デフレ脱却」という、大きな日本銀行の目的を達成するためには、潜在成長率を引き上げ、それで自然利子率を引き上げ、金融緩和の力を強めることが大切だというマンデートの中でこれが必要だということでやっているので、そうした政策はあり得るのだろうと思います。』

お、それで潜在成長力上がったけ?????

『ただ繰り返し言いますが、マンデートとの整合性と、できるだけ資源配分に対しては中立であるべきとの原則のもとで考えていく、ということになろうかと思います。これは世界の中央銀行でも同じだろうと思います。(後半割愛)』

ということでですね、なぜだか知らんのですが、この時には「市場の失敗に対処するものだから政府部門の出番で、その側面支援をするスキームを作ってみました」という説明になっていないのがある意味不思議ちゃんでございまして、上記のようなそもそも論をするよりも、普通に「成長力強化などは民間の創意工夫による活動によって行われるもの(日銀の成長基盤強化貸出は「呼び水」効果を狙ったもの)であり、今回の施策は市場の失敗に対処するもの」で済んだと思うのですが、そういうと「後継」問題でツッコミが来るのを嫌ったのかなあ。なんかよく分からんですね。



・政策の昭和温泉旅館化の質問に対する回答に泣いた

同じ人の質問の後半部分がしれっと優秀だったりする。

『(問)(前半割愛、というかさっき引用した質問の後半です)また、これに関連しているのですが、最近「貸出促進付利制度」、また、今回の気候変動への取り組みと、日銀の政策がどんどん多様化・複雑化してきているように思います。その理由や背景について、副総裁ご自身はどうみていらっしゃるでしょうか。』

なるほど!昭和温泉旅館とか言うから悪態になるので、「どんどん多様化・複雑化している」というと何か進歩しているみたいに聞こえて角が立たないんですね!!これは良い応対話法なので覚えた!!!!

『(答)(前半割愛)それから、多様化・複雑化している背景ですが、それに対しての答えは、やや矛盾するかもしれない二つの面が思いつきます。』

ほほう。

『一つは、経済がこれだけ複雑化し、難しくなり、従って経済政策に求められる要請も、それだけ複雑に、難しくなっているのだと思います。』

・・・・・(;゚д゚)

ちょっと待て、経済が複雑化して難しくなったのはQQE以降なのか????????

『一時期、中央銀行は「物価の安定」のみを目的に、例えば資産価格への影響や、金融システムへの影響、あるいはバブルの可能性などとはいったん切り離して、狭い意味での「物価の安定」のみに専念すべきだという議論もありました。』

いぇーい!置物聞いてるか〜!

『もっとも、ここ数十年、経済や金融の動き、現実の動きを踏まえると、おそらく中央銀行が持てる金融政策手段で対処すべき対象は、より複雑で多様であることが明らかになってきていることがあると思います。』

ここ数十年????????どう見てもQQE2以降に昭和温泉旅館になったことについての質問なのですけど何の話をしてるんだ、と思ったが要するに答えられないから別の話をして誤魔化すという忍法煙巻きの術を使って質問からドロンしてるんですね!!!

なお脱線はさらに続く。

『それに加えて、実は、皆様方の世代的にはあまりご存知ないかもしれませんが、日本銀行も 1990 年くらいまで、例えば、輸出促進の割引手形制度や、中小企業向けの特別な割引制度などを結構持っていました。』

節子、それは金融自由化前の話だから色々な制度があるのは当たり前や。

『中央銀行の目的規定は実は昔から結構色々な議論があり、先ほどの話と繰り返しになりますが、守らなければならない原則は絶対あると思いますが、そのもとではある程度範囲は広いわけで、その意味では実はこれを非常に狭くとらえるという考え方自身が、ここ数十年の特徴的な考え方だったかもしれないという気もします。』

という話なんですが、前半の回答も「市場の失敗への対処」というような割り切り方じゃないのを見ると、実は雨宮さん規制経済志向があるんでネーノとか深読みしたくなっちゃいましたが、話を誤魔化すために単に言い出しただけなのかも知れないので何ともですが、とりあえず今の政策が昭和温泉旅館になっていることについては申し開きの余地がないので話を誤魔化すしかない、という事は把握した。


・コロナオペの特別付利の後継制度はどうなるんでしょうかねえ

まあそんな面倒なことをしないで、マイナス金利撤廃してYCCも止めて、その代わりに「(極端な金融不均衡発生の惧れなどがある場合は別ですが原則として)2%物価安定目標を"達成した"と判断されるまで超低金利政策を継続する」だけの政策にしてしまえば、どうせ物価上がらんのだから時間軸はクッソ長いままだし、金利が跳ねるほど上がる訳もないし、余計な仕事(マクロ加算調整の為の当座預金操作というマイナス金利の押し付け合いとかいう不毛な作業や輪番の当てっこみたいな売買的には重要だけどマクロ的には生産性皆無の作業)が無くなって、その分の人的リソースをより生産性収益性の高い事業に振り向けられるので良いことずくめだと思うんですけどねえ。

という悪態はさておき。

『(問) 冒頭お話がありました「貸出促進付利制度」でお伺いしたいのですが、現在、「貸出促進付利制度」ではコロナオペがですね、プラスの付利が適用されておりますが、コロナオペは期限がございまして、期限を迎えたらプラス付利の適用されている資金供給はなくなるということになると思います。同付利制度は、利下げ時の副作用を軽減したり、機動的な利下げを行うことを可能とする狙いもありますが、プラスの付利の資金供給がなくなることによって、機動的な利下げというものに対して支障をきたす可能性があるのかどうかについてのお考えをお願いします。』

そら聞くわ。

『(答) まず基本的な枠組みをご説明申し上げると、金融政策として運営している付利制度と、前回のコロナ対応オペや今回の気候変動対応は、別の政策としてやっていますので、何か両方セットにしてこちらがへこんだらこっちを増やしますといった考え方はとっていないということです。』

特別付利のカテゴリー1がコロナオペ無くなったら無くなる、って質問しているのにこの答えは無いでしょ雨宮さん・・・・・・・・・

『コロナもそうですし、気候変動もそうですし、あるいは成長基盤もそうだったわけですが、これらは別の政策として考えるということです。』

じゃあ特別付利を紐付けるなよという話で、一事が万事その場その場の瞬発力で後先のこと考えずに政策を昭和温泉旅館するから話がグチャグチャになる訳ですな。

『従って、例えばコロナオペがいずれ期限が来て減少したらどうなるかということは、その時の状況次第で、やはり金融政策上、何か手当てが必要であるということであれば、おそらく考えることになると思いますが、何かその両方をリンクさせて考えるということはありません。』

その場しのぎで何か考えます、と思いっきり回答をしていて全米が泣いた。


・・・・・・という訳で、まあ翌日にあった黒ちゃんの日本記者クラブでの講演が本命だったのかも知れませんけれども、雨宮さんの金懇&記者会見にしては、金懇は気合抜けだし、会見は質問に対してまともに答えないという代物で、なんか釈然としない物件でございました。まあ質問にまともに答えようとしても立ち往生するの待ったなしだけど、雨宮さんだったらその一流の屁理屈パワーを発揮してああでもないこうでもないと屁理屈捏ねまわして斬り返すと思うのですが、上記質問に対する回答が徹頭徹尾話を誤魔化して回答しないというスタイルになっていて、ちょっとこのやる気の無さを感じたのは気になるところではありました。

まさかとは思いますが、あと1年半ちょいを全部消化試合の積りでいる訳ではないですよね??????


#本当は主な意見ネタも成敗するつもりでしたが、ちとショパンの事情で明日積み残し海外ネタと共に成敗する所存でありまするすいません







2021/08/02

お題「野口審議委員ロイターインタビューデビュー戦だがこれは後半にどころがありロイターGJ過ぎです!!」

これに限らず馬鹿を黙らせた方が良いと思うの政府与党の皆さんは。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e99d923a607f14ed6ceab5fdfd4126e45c60c5b1
選手の活躍「政権に力」 五輪開催で自民河村氏
7/31(土) 17:58配信

まあある意味正直者と言ってしまえばそうなのかも知れませんが(苦笑)、この馬鹿が林芳正に負けますように、ナムナム。


〇野口審議委員のインタビューはロイターでしたが先生への微かな期待は打ち砕かれてダメダコリャ

審議委員の皆様は金懇の前にインタビュー記事がどこかのベンダーから出て来る、というのが仕様になっているのですが、野口審議委員はロイターさんだったようでございますな。ということで金曜にこんなのが。

https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2P51YN
2021年7月30日12:35 午前UPDATED
インタビュー:物価目標への議論、ワクチン順調なら年末以降の開始が妥当=野口日銀委員

・・・・・・もうね、題名みた瞬間にダメダコリャ(いかりや長介の画像貼付割愛)って感じでして、コロナ対策と物価目標達成って別に相反するものでも何でもない訳でして、これが何かの金融不均衡是正を行うとか、そういうのに対処するために物価目標とコンフリクトを起こすってんなら理屈は分かるのですが、そもそも論として物価目標達成とコロナ対策は両立し得るものなのに、それをまるで別物のように言っている時点でダメダコリャでありまして、やはりリフレ派は乾燥ヘチマかジンバブエしかいなかったかと鼻毛の先っぽくらいの期待が野口先生には無くは無かった(ので、ちょっと褒め過ぎたかと思いながら、就任記者会見では「切れ者で曲者」という評価をして差し上げたのですが、やっぱりリフレ馬鹿でしたね、残念無念)のですが、やはり期待にそぐわぬトンチキ説明に全米が泣いた。

ということで記事を拝読。以下引用は断りの無いものは上記ロイターニュース記事、断りのあるものは別のソースでURLを示しておきます。


・コロナ対策と2%物価目標早期達成は相反するものでは無い筈なのですが

『[東京 30日 ロイター] - 日銀の野口旭審議委員は、ロイターのインタビューで、現時点では新型コロナウイルス対応を最優先に取り組むべきだが、ワクチンの普及が順調に進めば、物価目標達成に向けた議論を年末から来年にかけて始めるのが妥当だと述べた。』(以下断りの無いものは上記URL先にありますロイター記事になります)

・・・・・(゚д゚)

いやあの日銀が総力挙げてコロナワクチンの開発でもしてるんなら話は分かるんですが、別にコロナ対応のマクロ政策実施と2%物価目標の早期達成に向けた政策手段の検討は矛盾せんじゃろ、とさっきも申し上げたのですが、もう凄い勢いで出オチなのに感動した。

『<追加緩和、需給ギャップや物価のトレンド急変が条件>

野口委員は、足元の経済状況について「(新型コロナウイルスの)感染症がまだ収束していないので、事前の予想よりは経済の落ち込みが継続している状態」と指摘。現時点では感染症への対応が一番重要な課題だと述べた。』

えーっとそれに対応したFEDちゃんは物価が上振れて下さいましたが、何で別口で考える必要があるんでしょうか???意味わからん。

『一方で「ワクチンが普及し、経済が正常化してくればコロナ禍で積み上げられた強制貯蓄のペントアップ需要が盛り上がってくる」と期待感を示した。』

あー主な意見で強制貯蓄のペントアップって言ったたの野口さんだったんですね。そら貴方様みたいな勝ち組の方はそうかも知れませんけど、今般の感染症対応における政府与党の一連のグダグダ対応を見てたら、しょみーんといたしましては、「何か起きた時にまた政府がグダグダ対応を取って、自分の雇用とか売り上げとかが安全じゃなくなるリスクってあるよね」と考えて、コロナ前よりも防衛的な行動を取るんチャイマスカと思うのですが、いやまあ全てを諦めてなるようになるしかないので防衛とかしないっていうノーガード戦術に国民の皆さんが走るなら別でしょうけど。

『2%の物価目標達成に向けた政策の議論は「そうしたペントアップ需要の一巡を見極めてからでも遅くないのではないか」と述べた。』

いま議論しろよ馬鹿というか、お前らじゃあ展望レポートで何の議論してるんだよ。

『議論の開始時期はワクチンの普及状況次第であり、「変異株の影響もあり不確実性は大きいが、順調に行けば年末から来年にかけてというのが妥当ではないか」と話した。』

だったらお前さんの言う追加緩和をとっとと行って、ペントアップの盛り上がりという追い風が吹いた時に一気に物価目標達成が出来るような環境作っておけよ、って話で意味がさっぱり分からないのですが、単にこの大先生、そういう手段が無いので「コロナ後に」とか言って手段が無いという問題を先送りしようとしているだけなのではないか疑惑も考えたくなりますな。

ちなみにその次にこうありまして、

『野口委員は就任会見で、日本経済を再び成長軌道に戻すために、まずコロナ対応に取り組み「その上でもう一度、本来の目標である2%目標に向けて、政策をさらに進めていくことが大事だ」と述べていた。今回のインタビューでは、その見解に改めて言及した上で、議論開始の時期を「年末から来年にかけて」と提示した。』

就任会見の時にそんな事言ってましたっけって改めて自分の駄文読み直してみたが、まあ確かにそういう発言があったのですが、全体的なトーンとしては「追加緩和に関しては今後日銀での議論を踏まえて考えますが、現状では特に必要ない」って感じで片岡さんの梯子を外す話をしていた訳ですな。

しかし、この説明だとロイターさんのつけた小見出しと話の齟齬が無いか???と思ってその先を読むとですね、


・改めて2%達成に向けた議論をコロナ後にすると言いながら何もしない宣言をしているという言うだけ番長

『野口委員は追加緩和の判断について「一般的に言えば、経済が何らかの要因により急速に落ち込んだり、冷え込むことがあり、需給ギャップや物価のトレンドが急激に悪化する状況になれば、躊躇なく追加緩和が実行されるべきだ」と指摘。』

えーっとすいません、さっき先生、「ワクチンが普及し、経済が正常化してくればコロナ禍で積み上げられた強制貯蓄のペントアップ需要が盛り上がってくる」と期待感を示した、って仰せになりまして、更にそれを受けて、物価目標達成に関する政策議論に対して「変異株の影響もあり不確実性は大きいが、順調に行けば年末から来年にかけてというのが妥当ではないか」と仰せになっておられるのですが、その一方で、「一般的に言えば、経済が何らかの要因により急速に落ち込んだり、冷え込むことがあり、需給ギャップや物価のトレンドが急激に悪化する状況になれば、躊躇なく追加緩和が実行されるべきだ」ってことは、それ普通に追加緩和をしない、って話になりますよね。

追加緩和をしないのに2%の物価目標達成に向けた政策の議論を改めて行うもへったくれも無いじゃんお前は何を言ってるんだという感じですし、むしろコロナの落ち込みのリスクがある中で追加緩和を実施して、ペントアップ需要が盛り上がる中で物価上昇圧力に転じる米国作戦(別にそこまで狙った訳じゃなくてただの結果オーライ(オーライかどうかは知らんが)なだけですけど、昨年9月に出したストラテジーの前提条件が全然違っている所から致しまして)は何で取らないんでちゅかねえ・・・・・・・・・・

と思えば、その直後にはこのようなご発言があります。

『需給ギャップや雇用、賃金といった経済の基本的なトレンドが崩れない限りは「現状の相当強力な金融緩和措置を粘り強く維持することが重要だ」と述べた。』

ズコーって感じで、議論を開始しても現状と変わらんって何だよそれ。結局尤もらしい事こねくり回して何も言ってないのと同じ、というお話でした。


でですね、これヘッドライン(最初ロイターのネット版だと当然のように記事が出るのが後になるので、別のベンダーで「ロイター通信でのインタビューによりますと」って報道されたので先に見た)だとこの先の追加緩和手段の話がヘッドラインにあったから、コロナ後に追加緩和ってまた随分と寝ぼけた追加緩和しますねえと思いながら見たんですが、そもそも現状政策維持って話なのに追加緩和手段の話をしているのもイミフにも程がある。

『追加緩和の場合の具体的なツールとしては、マイナス金利の深掘りや資産買い入れの増額などを挙げた。イールドカーブ・コントロール(YCC)の下で「長期金利操作目標の変更の場合は、目標金利の引き下げや、対象年限の長期化も1つの選択肢になる」とも述べた。』

でもやらないんでしょ?????

『長期金利ターゲットの対象年限長期化の場合、例えば15年、20年金利をターゲットにするのかとの質問に対し、野口委員は「そういうことにならざるを得ない。その場合はいろいろな反作用・副作用が当然出てくるが、それでもやらないといけない局面かどうかで判断することになるだろう」と話した。』

何も言ってないのと同じですねこの人。ただの言うだけ番長。


・リフレ派が遂にマネタリーベースの効果を無視しだしました!!!!!!!!!!!!!!!

・・・・・・という事ですがその次の部分がお前それでもリフレ派か、って話でテラヒドス。

次の『<オーバーシュート型コミットメントの意義>』という小見出しはロイター良くぞ質問した!素晴らしい!!感動した!!!

『日銀は、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を採用し、人々のインフレ期待に働きかけることを狙っている。』

置物一派の顔を立てるために、と言った方が正しいのですが、日銀様はこのような説明をしておりますな。2016年の総括検証の本文4ページPDF5枚目にあります。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2016/k160921b.pdf
「量的・質的金融緩和」導入以降の経済・物価動向と政策効果についての総括的な検証【背景説明】

『(4)予想物価上昇率の形成におけるマネタリーベースの役割

マネタリーベースの拡大は、「物価安定の目標」に対するコミットメントや国債買入れとあわせて、金融政策レジームの変化をもたらすことにより、人々の物価観に働きかけ、予想物価上昇率の押し上げに寄与したと考えられる。一方、マネタリーベースと予想物価上昇率は、短期的というよりも、長期的な関係を持つものと考えられる。したがって、マネタリーベースの長期的な増加へのコミットメントが重要である。』(この引用部分のみ直上URL先、2016年9月21日公表の上記文書より引用)

ということですが、野口大先生のご説明は中々のアレ。

『野口委員は「インフレ期待そのものに働きかける効果については、個人的にはそれほど大きくないのではないかと思っている」と指摘。オーバーシュート型コミットメントの意義はむしろ、金融政策の将来的な方向性について一定の見通しを示すことだと語った。』

>インフレ期待そのものに働きかける効果については、個人的にはそれほど大きくないのではないかと思っている
>インフレ期待そのものに働きかける効果については、個人的にはそれほど大きくないのではないかと思っている
>インフレ期待そのものに働きかける効果については、個人的にはそれほど大きくないのではないかと思っている

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

はあああああああ????????????お前何言ってるの??????????????

という感じで、おんどれらはマネタリーベース直線一気理論唱えたり、マッカラムルールとか何とかルールとか持ち出したり、フリードマンの物価は貨幣的現象ってのを持ち出してたりした筈なんだが、自分等の理論が間違っていましたすいませんって学究の徒が言えないのってもうダメじゃんとしか申し上げようがない訳で、しかも「オーバーシュート型コミットメントの意義はむしろ、金融政策の将来的な方向性について一定の見通しを示すことだと語った」ってそれは「フォワードガイダンス」ってのがあって既に日銀は色んなガイダンスを設けているんですから、だったらこのコミットメント要らんじゃろとしか申し上げようが無いわけですな。続きを読みましょう。

『「オーバーシュート型コミットメントが存在しないと、仮に例えば日本においてペントアップ需要で物価が上振れし、2%に一時的に近付いただけで、金融市場が政策変更を織り込み始める可能性がある。それは経済にとっては引き締め効果を持つので物価目標達成の妨げになる」と述べた。』

あのーすいません、日銀の声明文の(基本的に)最後の項番に記載されている政策ガイダンス文言を百万回くらい朗読して頂きたいんですけど。

しかもですね、「ペントアップ需要で物価が上振れし」って思ってるんだったら、今この時点で追加緩和を実施すれば、ペントアップ需要による物価の上振れとやらを後押しするし、それによって適合的期待形成が変化するかも知れないんだから強力な追加緩和とやらを実施するの今だし、それはコロナ対策と何ら相反するものでは無い筈なんですけど、言ってることと政策手段の話が全然整合性取れてないですな。

『野口委員は「インフレ期待を一挙に転換させることを狙うより、時間は掛かっても現在の強力な金融緩和を継続して需給ギャップを着実に改善させ、需要の圧力によって賃金・物価の引き上げを促すのがより現実的な政策だろう」と語った。』

おいこら、それはお前らが悪口雑言誹謗中傷しまくった麿日銀ドクトリンそのままだっての分かって言ってるの???と思うのですが、もしかしたらこの人達自分たちが言ってた過去は勝手に脳内改変されて歴史捏造が行われるような仕様になっているのか?????学究の徒として普通の神経してたら恥ずかしくて言えないと思うんだが、と思うのでありました。

ちなみに最後の小見出しはどうでもよいので割愛しますが、最後の小見出しの冒頭に『野口委員はリフレ派の論客として知られる。』って入れてるの、どう見てもこれロイターさんの記者および編集の皆様わざと書いてるでしょ、という雰囲気が物凄く伝わってきて、大変に素敵なインタビューでした、というかこれ後半のオーバーシュート型コミットメントの話が面白過ぎて、ロイターさんグッドジョブ過ぎます!!!!

#成敗すべき物件がアホほど溜まってしまいましたが、とりあえずこれに飛びついておかねば、ってことで本日はこれで勘弁