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2021/09/30

お題「大阪(リモート)での総裁講演では経済の先行きと物価に関する話を一応それなりに踏み込んで行っていますね」

第1回で超僅差だけど1位になったのは笑った。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210929/k10013282241000.html
自民党新総裁に岸田氏 決選投票で河野氏に勝利
2021年9月29日 17時38分

まあ皆様お察しの通り、イキリパワハラツイッターエゴサーチ先制ブロック大魔王の河野太郎大先生の一人負けって結果に終わったのは個人的にはメシウマ過ぎて昨日はご機嫌でしたが、問題は岸田さんが安倍さんにペコペコしたまま送るのか、はたまた安倍離れできるか、って辺りだな、とか思ってます。

何か首班指名して代表質問してから解散総選挙みたいで、「ちゃんと答弁をする誠実な人」を印象付ければそれはそれで良しとは思うのですが、どうせなら4日国会召集冒頭にガースー首相のままで解散して総理・総裁分離で選挙をすれば人事を巡るボロも出ないし、ガースーは思い出解散できるし(暴論)。

まー安倍チルドレンを次の選挙で振り落とすところから岸田さんの安倍離れは始まるんでネーノと思いますけどね。


〇出遅れて恐縮ですが黒ちゃん大阪での講演で物価が上がらん理由の説明を一応してるじゃん

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko210927a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210927a1.pdf
【挨拶】最近の金融経済情勢と金融政策運営
大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
日本銀行総裁 黒田 東彦
2021年9月27日

何とHTML版が出てしまったので(汗)引用の都合上HTMLバージョンの方から引用します。


・企業部門の好循環が家計部門の好循環につながる自律回復メカニズムがイマイチ見えてこない・・・・・・・・

『2.経済・物価情勢』の『経済情勢』の先行き見通し辺りから参りますが、従来日銀公式の説明って先行きはコロナ(やワクチン)次第なんですがそれが終われば好循環でっせ、という雑な説明だったのですが、今回の黒ちゃんの説明は・・・・・・・・

『先行きについては、当面、公衆衛生上の措置や感染症への警戒感が続く間は、個人消費の足踏み状態が続くとみていますが、その後は、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、わが国経済の回復傾向は明確になっていくというのが、メイン・シナリオです。』

『ポイントは、堅調な企業部門が支えている間に、個人消費も回復に転じることで、経済全体で好循環が強まっていくかどうかです。こうした観点から、次の2点に注意が必要と考えています。』

という話ですが、例えば9月頭の若田部副総裁の広島金懇では「先行きを見通すうえで重要な二つの「待機資金」と「予想」」という小見出しを使って家計と企業に積みあがっている待機資金の話と企業の成長期待とインフレ予想が重要、って話をしていたんですが、では今回の黒ちゃんどういう話をしているでしょうか??


『第1は、最近のデルタ株の流行が、個人消費に与える影響です。先ほど申し上げたように、足もと対面型サービスを中心に下押し圧力がかかっています。ただ、政府による様々な施策や日本銀行による資金繰り支援策にも支えられて、企業倒産や失業はかなり抑制されています。その結果、個人消費を規定する雇用・所得環境をみると、失業率の上昇は、経済活動の落ち込みと比べ小幅にとどまっています(図表4)。また、昨年度に減少した雇用者所得も、人手不足感の強い業種における賃上げの動きもあって、足もとでは下げ止まりから持ち直しに向かっています。』

うーんこの。どうもこう「(日銀の言う)前向きな好循環が企業部門に留まっているのは企業が個人に分配しないからじゃろ」的な話には持って行かないという気概を感じますが、

『この間、わが国でも、ワクチン接種は速いペースで進んでおり、人口対比でみた接種した人の割合は、米欧と遜色ない水準まで上昇しています。今後、ワクチン接種証明書や陰性証明書の活用などにより、感染抑制と消費活動の両立をいかに進めていくかが課題となりますが、以上のような雇用・所得環境を踏まえると、個人消費は、ペントアップ需要にも支えられて、回復に転じる可能性が高いとみています。ただし、そのタイミングやペースについては、今後の感染動向に大きく左右される点には留意が必要です。』

うーむ。何というかですね、アタクシの個人の感想ベースだからそれが絶対正しいとかいう気はサラサラないんですが、今回の感染症拡大におけるアカンかったのは、出だしの「マスクは十分にあります」からの「実はマスクは全然ありませんでしたサーセン」から始まる「安請け合いして希望的観測で話を進めたらその後大コケ」というのを手を替え品を替えやって貰ったことで、それにより「この政府の言う事を真に受けてたらマズいので自衛しないと」みたいになってシュリンクしてしまったものが多いのではないか、ちゅうことでして、まあそうやって「こりゃ自分で防衛しないと」となると感染症の拡大ペースとかは低くて済んだかも知れんけど、当然ながら家計も防衛的になって貯蓄が増える、とかだったんでネーノと思うので、そらまあ日銀にそれをどうこうせえ、ってのは無理なんですが、もうちょっとこう「政府のコロナ対応のドタバタが信頼感を下げている」ってのを認めた方がエエンチャウノとは思うのよね。

もちろん正面切って言うと大変なことになるという大人の事情は分かるんですが、根っ子がそこにあるとなればペントアップ需要ってそんなに起きるんかいな、とは思いますけどね。

・・・・まあ何ですな、この「ただし、そのタイミングやペースについては、今後の感染動向に大きく左右される点には留意が必要です」って所にその思いが入っているのかも知れないのですが、どうもこう能天気な見通しに見えてしまうんすよね。

『第2は、一部でみられる供給制約や、最近の感染拡大がグローバルなサプライチェーンに及ぼす影響です。自動車販売やデジタル関連需要の回復などを背景としたグローバルな半導体不足は、なお供給面の制約となっています。さらに、わが国とサプライチェーン上のつながりが強い東南アジアでは、急激な感染拡大に伴って、工場の閉鎖を含む厳格な公衆衛生上の措置が講じられており、わが国製造業に対しても、部品調達の滞りなどの影響を与えています。』

ほうほう。

『このため、輸出や生産は、目先いったん増勢が鈍化すると予想されます。ただ、そうした動きは一時的であり、やや長い目でみれば、挽回生産や在庫復元の動きにも支えられて、輸出や生産の増加基調は続くとみています。そのもとで、企業部門で働いている収益から設備投資への前向きの循環も維持されると考えています。』

うーんこのという感じでして、何でしょうこの説明だと「企業部門の前向きの循環が家計部門に向かう」という図じゃないんですよね。その1は「既に家計部門は貯蓄を増やしたりしているのでコロナが収束すればその分の挽回消費が出る」でその2が「企業の供給制約とそれがいずれ解消する」という話になっていまして、いやそうじゃなくて家計部門への所得移転が進み、かつそれがサステイナブルであるというコンフィデンスを家計が得られれば、もっと前向き好循環が出て来ると思いますし、だいたいからしてこの講演経済団体相手なんですから、昔の覇気あった時の黒ちゃんみたいに「企業部門での前向き好循環を是非家計にも回して頂きたい」位の話をして欲しいんですよね。

『これらの点を中心に、来月に作成・公表する「展望レポート」に向けて、内外経済の動向を注意深く点検していきます。』

との事ですが、昔はベアだの春闘に注目だの色々と言ってくださっていたのが何もかも皆懐かしい。


・遂に「海外も物価が上がらない悩みが起きているので日本だけではない」と言い切れなくなったのですが・・・・・・・

次が『物価情勢』。

『続いて、物価情勢です。わが国の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%程度となっています(図表5)。ただし、足もとの物価動向には、一時的な要因の影響が大きくなっているため、注意が必要です。まず、本年春の低価格プランの導入により大幅に下落した携帯電話通信料の1品目だけで、消費者物価全体を▲マイナス1%ポイント強押し下げています。一方、昨年物価を押し下げていた、エネルギー価格とGo Toトラベル事業による宿泊料の割引は、その反動という形で、足もとでは、物価を押し上げる方向に作用しています。これらの一時的な要因を除いた、いわば実力ベースの消費者物価の前年比は、このところ小幅のプラスで推移しています。このほかにも、日本銀行では、物価の基調を把握する観点から、様々なコア指標を点検していますが、いずれの指標をみても、経済活動の落ち込みとの対比で物価は底堅い動きを示しています(図表6)。』

という話をしているんですが、さっきすっ飛ばした経済情勢についての冒頭で『最初に経済情勢です。わが国の景気は、内外における感染症の影響から引き続き厳しい状況にありますが、基調としては持ち直していると判断しています。』って説明しているし、大体からしておまいら直近7月の展望レポートで本年度の経済成長見通しを実質で+3.8%(中央値)ということで、現状の潜在成長率と考えているものを禿しく上回る高成長を見込んでいるのに、物価の足もとの数値について、「経済活動の落ち込みとの対比で物価は底堅い動きを示しています」って詭弁にも程があるだろという話ですな。

企業部門では前向きの循環メカニズム、と企業部門限定だけど無茶苦茶強い言い方をしていて、今年度の成長率見通しが潜在成長率を3%近く上回る見通しをだしているのに、物価の話になると急に「経済活動の落ち込み」とか言い出すこういう詭弁学園な説明をするのちょっとこう大概にして欲しくて、「経済活動の回復が進むものの物価の上昇が緩やかにとどまっています」って現状認識部分で大本営発表するから出て来る政策が昭和温泉旅館になるんじゃと思うのはアタクシだけでしょうかねえ。

まあそれは兎も角として欧米比較が次に出て来る。

『もっとも、わが国の消費者物価が、米欧との対比で弱い動きとなっていることは否定できません。米国で注目されるPCEデフレーターの前年比は4%を超え、30年ぶりの高い上昇率を示しているほか、ユーロ圏の消費者物価の前年比も3%程度まで上昇するなど、米欧では物価上昇圧力がはっきりと高まっています(図表7)。』

「弱いです」って認めない辺りの往生際の悪さが大本営っぽくて素敵ですね(褒めてない)。

『こうした米欧との対比でみた、わが国の物価の弱さの根底には、予想物価上昇率に関する適合的期待形成のメカニズムの強さ、すなわち、過去のデフレの経験から物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が経済主体の間に定着しているという事情があると考えています。』

おいこらちょっと待て、海外も物価が上がりにくくなっていて、グローバルなトレンドでどうのこうのって説明してる時ならまだしも、欧米主要国で物価が上がっていく中で日本だけ上がらん理由を「適合的期待形成」にしちゃったらオイルショック級の供給ショックによるコスト大プッシュ物価ショックでも起きない限り未来永劫物価が上がらん、って事になりゃせんかと思うんだが、だったら2%物価目標に向けてマイナス金利だのYCCだの資産馬鹿買入だのやる必要あるのかよ???????と思うんだが何と言う開き直り。

『このことを最近の企業行動に即して詳しくみると、次の2点が指摘できます。』

気を取り直して先を読もう。

『第1は、感染症による需要の変化に対する企業行動の違いです。』

ほう、

『米国企業は、需要減を受けて雇用を削減したため、需要の急回復に直面して、思い切った賃金や価格の引き上げにより、雇用を回復させつつ需給のミスマッチの解消を図っています。』

それは労働慣行の違いもありますし、超手厚い失業給付や雇用プロテクション貸出プログラムみたいなのがあったからですな。

『これに対し、わが国では、米国ほどの需要の拡大がみられていないほか、企業は基本的に雇用を維持しており、需要が増加しても、価格を据え置いたまま速やかに生産量や出荷量を増やす余地を残しているとみられます。』

何か供給制約で殆どを説明しているんですが、需要減で雇用維持したら必然的に企業収益が悪化するので、「需要が増加しても、価格を据え置いたまま速やかに生産量や出荷量を増やす余地を残しているとみられます」って説明は言いたい意味は分かるけど何ちゅうかモヤっとするなあ。

『このことは、足もとのボトルネックの深刻度合いの違いにつながります。』

ん?

『米欧では、経済活動の再開に伴う需要の急増に供給が十分に追い付かず、一部品目では生産者の入荷の遅延が深刻化していますが、わが国では、これまでのところ、米欧ほどの入荷の遅延はみられていません。』

うーんこの。

『第2は、川上段階から川下や消費者段階への価格転嫁力の違いです(図表8)。』

はい。

『世界経済の堅調な回復を受けて、グローバルな市場で決定される商品市況は、はっきりと上昇しています。こうしたもとで、生産者段階の物価は、程度の差はありますが、日米欧ともに大きく上昇しています。もっとも、わが国で、速やかに価格を引き上げている企業は、一定のフォーミュラに従ってコストを転嫁する慣行が定着している素材業種が中心であり、最終需要に近い、加工業種や消費関連業種では、コストの増加をマージンの縮小によって吸収する傾向が米欧対比で強いように見受けられます。』

需要が踊らないからですわな。なおこれだけで説明が終わっておる。


・適合的期待形成が非常に強いのに何で今回は先行きの物価が需給ギャップに反応すると言えるんでしょうか?????

でもって物価の見通しになります。

『先ほどお話しした経済の見通しやわが国企業の価格設定行動の特徴を踏まえると、先行きの物価は、上昇していくとみていますが、ペースは緩やかなものになると考えています。』

何でそうなる????

『すなわち、消費者物価の前年比は、当面、エネルギー価格の上昇を主因に、プラス幅を拡大させていくと予想しています。』

コストプッシュじゃん。

『ただ、国際商品市況の上昇を転嫁する動きは、フォーミュラに基づく値決めの慣行が確立しているエネルギーを除き、限定的なものにとどまるとみています。その後は、携帯電話通信料による下押し要因が剥落するほか、需給ギャップの改善が続く中で、企業の価格設定スタンスも次第に積極化していくことが期待されます。そのもとで消費者物価は、徐々に上昇率を高めていくとみています。』

いやあのその点なんですけど、さっきの説明(企業行動の前の所)で適合的期待形成の話を思いっきりして、そっちが岩盤で動かない、と言う状況だから物価が中々上がらんと言ってるのに、何でこの先は「需給ギャップの改善が続く中」程度で「企業の価格設定スタンスも次第に積極化していくことが期待されます」って結論になるんだか。

・・・・・だったら「インフレ期待に直接働きかける金融政策」を実施した方が話が早くね(なお盛大に実験した結果インフレ期待への直截的な働きかけは見事に不発に終わりました)って事になりますがな、って感じで、特に「海外の物価も上がりにくくなっていてグローバルな問題(キリッ)」で説明できなくなってきて、適合的期待形成が非常に強いって言い訳をすると、そんなに強い適合的期待形成に対して、なぜ「今回は違う」と言えるのかという所の説明に無理が生じて来ると思うのよね。

まあつまりは「2%」は中長期的な目標というか「経済物価情勢のあるべき姿(当面の目標ではない)」に切り替えて、昔みたいに「当面は1%定着を目指して」というのに、昔はその説明を前面に押し出していなかった「適合的期待形成」をかまして、「1%定着を目指すことによって徐々に適合的期待形成を変化させていくことによって物価安定を図る」って話にしないと、いつまで経ってもできもしない目標を掲げて死ぬまで科挙を受け続けて落第するみたいな事になるんでネーノって感じですな。


なお、記者会見はあって何と35分もしていたのですが、マジで見るべきものは無かったのでURLを貼るだけにしておきます。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210928a.pdf


あとですね、会見云々で言えば、先日来悪態散々つきましたけど、特に最近の黒ちゃんの定例会見の方は質問に対してまともな答えをしないで、関連項目の想定問答丸読みでござる、ってな感じの答弁を繰り返しておるのですけれども、少なくとも今の時点で見てると岸田自民党新総裁はこれまでの安倍菅話法ではなくて、ちゃんとした説明をするように見えますので、黒ちゃんも今までの調子での話法を続けていると、どこかで無慈悲な砲火に見舞われてしまう(特に大門先生方面などなど)のではないかと愚考しますので、もうちょっとシャキッとして頂きたいものだと存じます(個人の感想です)。








2021/09/29

お題「カプラン総裁も辞任ですがそんなに極端なタカハト勢力変化って起きないはずなんですよね/総裁MPM会見/基調的物価が改善」

さあ自民党総裁選ですよ!!!ってこれ場中に間に合わんのかコマルナー。

〇健康上の理由とか言わずに堂々と辞任するカプラン総裁キタコレ

これは往生際の宜しい理由表明ですな。
https://www.dallasfed.org/news/releases/2021/nr210927kaplan.aspx
News Releases
Rob Kaplan to Retire as Dallas Fed President
For Immediate Release: September 27, 2021

『DALLAS-The Federal Reserve Bank of Dallas announced today that President and CEO Rob Kaplan will retire from the Bank effective October 8, 2021.』

キタコレ!

『He has served as the 13th president and CEO of the Dallas Fed since September 8, 2015. Kaplan was previously the Martin Marshall Professor of Management Practice and a Senior Associate Dean at Harvard Business School.』

ってもう6年やってたのか。

『Statement from Rob Kaplan

It has been my great honor to serve as the President and CEO of the Federal Reserve Bank of Dallas for the past six years and to work with the superbly talented professionals at the Bank who are helping to build a stronger economy for all communities in the Eleventh District and our nation. It also has been a privilege to work with my Federal Reserve System colleagues and serve as a member of the Federal Open Market Committee.』

とご挨拶なのですが、

『The Federal Reserve is approaching a critical point in our economic recovery as it deliberates the future path of monetary policy. Unfortunately, the recent focus on my financial disclosure risks becoming a distraction to the Federal Reserve’s execution of that vital work. For that reason, I have decided to retire as President and CEO of the Federal Reserve Bank of Dallas, effective Friday, October 8, 2021.』

わたくしのファイナンシャルディスクロージャーを巡る問題がFRBの重要な業務に阻害となるようになってきたことを踏まえまして辞任します、とローゼングレンの腎臓病でどうのこうのよりは堂々と直球投げたのだけはマシですな。

『During my tenure, I have adhered to all Federal Reserve ethical standards and policies. My securities investing activities and disclosures met Bank compliance rules and standards.』

規程違反をしている訳ではないですよ、ということを言うのはまあ言うだろうなあとは思うけど、まあ政策に携わる人がやっちゃうのってどうなのよとは思いますな。(なおその件に関しては後の方でまた説明がちょっとだけある)改革の名のもとに自分たちで利権を作ってゲフンゲフンってのに比べれば悪質性はなさそうとは言え。

『I am proud of the work we have done at the Dallas Fed during the past six years and am confident that my colleagues will continue to play a vital role in supporting our nation’s economic recovery.』

以下パウエルによるカプラン退任に寄せる辞などもありますがパスしまして、

『Statement from Greg L. Armstrong, Chair, and Thomas J. Falk, Deputy Chair, on behalf of and with unanimous endorsement of the Board of Directors of the Federal Reserve Bank of Dallas』

ダラス連銀のボードメンバーの全員一致によるステートメント、というのがあります。

『Robert S. Kaplan has served as President and CEO of the Federal Reserve Bank of Dallas for the past six years, providing strong leadership and making meaningful contributions to the Bank, the Federal Reserve System and our country. He brought a critical set of skills to the Dallas Fed and Federal Open Market Committee stemming from his extensive career in the financial sector and higher education.』

これはバックグラウンドキャリアの話。

『Rob also made great progress toward his goal of increasing the positive impact of the Dallas Fed on the Federal Reserve System, particularly in the area of economic research thought leadership. Rob also continued and substantially enhanced the involvement and positive impact on the communities of the Eleventh Federal Reserve District.』

ダラス連銀はいろんな経済誌数をだしたりしてますが、それらにも重要な貢献をしたとか何とか。

『Under Rob’s leadership, the Dallas Fed has elevated its role as a convener to bring interested people together to solve problems that are restricting the economic performance of their communities. Rob was able to accomplish these things by emphasizing talent development at the Dallas Fed with a focus on diversity, equity and inclusion.』

その他こんな貢献をしましたよ、というようなのがあって、

『Rob made the decision to retire as President and CEO of the Bank, effective October 8 to eliminate any distractions to the Federal Reserve System surrounding his personal investment activities.』

と、ド直球で「personal investment activities」についての話が始まる。

『Upon joining the Bank, Rob systematically sold all of his personal holdings related to financial institutions over which the Federal Reserve had regulatory oversight or were otherwise restricted. Rob also conducted his investment activities in accordance with the rules and policies of the Federal Reserve System.』

カプラン総裁は就任にあたって保有する金融機関の株式などを全部売却して、その後の投資活動はFRBのルールに沿って行っていました、だそうな。

『So, while the Board of the Dallas Fed understands Rob’s motivation to put the Federal Reserve System above any personal considerations, we accept his retirement with deep regret and believe the nation and the Eleventh District will feel the impact of the loss of his leadership.』

よってカプランの政策判断には個人的利益を目的とした動機はありませんでしたよ、だそうですわ。

『The Dallas Fed board thanks Rob for his many contributions and wishes him the best in his future endeavors. He will be missed. 』

でもって謝辞と。

『First Vice President Meredith Black has graciously agreed to delay her impending retirement to serve as interim president during this transition.』

後任が決まるまでは筆頭副総裁のメレディス・ブラックさんが当面総裁代行をするそうです。


〇ちなみにこれでFEDのタカが2名抜けるとは言っても基本的に大きな変化は起きないのが地区連銀の仕様

ということでタカ派で鳴らしたお二方の退任、ということで早速「タカ派の後にハト派の人が来たら」みたいなトークも散見されるのですが、少なくともダラス連銀に関して言えば、カプランの前任のフィッシャー総裁も大概にタカ派右翼の方でして、ダラス連銀って基本的にタカ派が総裁やるところ、というような感じで濃淡が出る場合はありますが(リッチモンド連銀はバーキン総裁の前がラッカー総裁でラッカーさんも大概のタカ派でした、くしくもラッカーさんの場合は情報漏洩問題とかで首が飛んでた気がするけど)、あとはジョージ姐さんが総裁やってるカンザスシティ連銀の前任の総裁はタカ派の最右翼なホーニッグさんでした)、基本的にモロに政治任用されるようなケースと違って属人的に突如ヒョーヘンする、というようなもんではない筈なんですよね。

いやまあ詳しくは選定過程を見ないといかんのですが、基本的に中の人達で後任の選任を行う(昨日ネタにしたボストン連銀では後任決めるコミッティーで只今候補を選定中(もともと来年ローゼングレンの任期があったからそれ用に準備していた)ってありましたよね)ハズで、妖人のうんこ理論に洗脳されたバカボンが急に変なのを選定する、みたいなバグは起きないのが仕様になっとるはずですよ〜。

ということでごさりまする。


〇黒ちゃんのMPM会見ネタの続き

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210924a.pdf

昨日は会見要旨として文字に落ちているのを見ながら、聞いてて何でこう黒ちゃんの会見って何言ってるんだか分からない感が強いのか、という理由につきまして「そもそもこのおじちゃん、質問に対してちゃんと回答していなくて、関連する想定問答を丸読みしているだけなので、言ってることは間違ってはいないのだが(なお我田引水の日銀言い訳屁理屈の場合もある)話がかみ合っていないので何を言ってるのかわからん」ということではなかろうか、という仮説を提唱させて頂きました。


・質問の話の筋を外す例はこんなのにもある

昨日引用した質疑のちょっと先になりますが、

『(問)(前半割愛)次に、冒頭の質問にもあった中国恒大集団についてですが、これを過剰債務の問題ととらえた場合に、本当に中国の一企業の特殊な事例なのか氷山の一角なのか、という問題もあろうかと思います。また、世界の金融緩和が景気を支えている一方で、こういった過剰債務を膨らませるというなかなか悩ましい問題もあろうかと思います。そういったバランスについて、総裁がどのようにお考えになっているのか、当局はこういった金融緩和の継続と債務の抑制もしくは発散を抑えることについてどのように取り組むべきとお考えなのかについて、ご見解を伺えればと思います。』

自民党総裁選と気候変動オペ以外に聞くことがないせいか、こうやって金融緩和政策の過剰による金融分均衡の問題(昨日ネタにしたのは企業部門からのトリクルダウンの問題)みたいなのが来るので、最近毎度クッソ悪態つきますが、何気に今回は変なデコイが無いせいか良い質問も飛ぶのですが、何せ黒ちゃんが質問の筋を外して答えるのよね。

『(答)(前半割愛)二点目の中国恒大集団の影響については、現時点で、コロナ禍のもとでの企業債務の増大がもたらす問題の一例であるとは考えていません。かなり長い期間にわたって中国の不動産業の規模が大きくなってきている中で、この特定企業の債務がかなり膨大になっているということですので、あくまでもこの企業の問題であり、仮に同様の問題があり得るとしても、それはあくまでも中国の不動産業の問題であると思っています。』

と、この時点で回答のポイントを微妙にずらしているのですが、

『先進国や様々な途上国をみると、不動産業が非常に急激に拡大し、不動産価格が上昇している国もありますが、全てがそうでもありません。これはあくまでもこの当該企業、そして中国の不動産業の問題としてとらえるのが適切ではないかと考えています。』

と、他の主要国でも不動産価格が上昇して、政策当局が腹の中でどの程度(ノ∀`)アチャー状態なのかは兎も角、中銀の会見で割とガシガシ質問される問題になっている、というような件についても華麗に誤魔化してしまうのがこの回答の悪質なところですな、その結果、

『もちろん、何かをきっかけにして国際金融市場への影響が出てくるかについては注視していかなければならないと思いますが、今の時点でそういった全体の問題になるとは考えていません。』

いやだから質問は中国恒大集団の問題が波及するかどうかとかいう話じゃなくて、質問者が言ってるのは「世界の金融緩和が景気を支えている一方で、こういった過剰債務を膨らませるというなかなか悩ましい問題もあろうかと思います。そういったバランスについて、総裁がどのようにお考えになっているのか、当局はこういった金融緩和の継続と債務の抑制もしくは発散を抑えることについてどのように取り組むべきとお考えなのかについて、ご見解を伺えればと思います。」という重めのネタでしょ。

その質問を完全にスルーしてチューゴクコーダイの話に矮小化して説明するってのがもうアレで、パウエルやラガルドだったら正面から答えるぞこの質問、と思うので、この際FEDの会見に出て来る面々に土下座して登場してもらって英語で会見してもらった方がエエンチャウノ位に思ってしまいますわいやマジで。

なお、昨日もガースーと比較した訳ですが、「その指摘は当たらない(キリッ)」ってのガースーの得意技でございましたが、ガースーの場合はそもそも問題の本質を分かっていない可能性があるのに対して、黒ちゃんの場合は明らかに質問されたことが重いネタであることを理解している筈なのに(してなかったらただの耄碌か質問の仕方がど下手くそかのどっちか)、その重いネタに何も答えようとしないで、質問の肝心の趣旨を微妙に外した枝葉末節部分の回答で想定問答を朗読する(これがまた会見の画像みてると物凄い勢いでタックシール(目次だと思う)貼ってるファイルだかノートだかをめくってるのがモロ見えなのが萎える)っての流石に酷いんじゃないの、と最近の会見見ててとみに思うのでありまする。


・この質問は若田部副総裁以下の置物一派に是非同じことを聞いて欲しい

某A新聞の某Hさんだったような気がしますが、これは総裁に聞くよりも是非置物一派の金懇(くしくもたしか野口審議委員の金懇があるじゃないですか近いうちに)で質問して頂きたいので伏してお願い致します。まじで回答を聞きたい。

『(問) 先ほどの「共同声明」の質問にも関わる話なのですが、最近、安倍前首相が講演会でこんなことを言っています。コロナ対策では政府・日銀連合軍でやっているので、政府が発行する国債は、日本銀行がほぼ全部買い取ってくれている、ということでした。そして、日本銀行というのは言ってみれば政府の子会社の関係なので、連結決算上、実はこれは政府の債務にもならない、というふうに安倍さんは言っていました。』

そもそもこの理論について「ジンバブエも裸足で逃げ出す超理論」とか言ってたら当時の提唱者の原田大先生にジンバブエ原田の二つ名がついてしまった訳ですが、まさにジンバブエキタコレですな。

『一方で、昨日、立憲民主党がアベノミクス検証委員会で、日銀の異次元緩和は出口戦略がなく、どうやってテーパリング、ソフトランディングをさせるのか見通しが全く立っていない、という指摘をしています。』

これは「ステルステーパリングをしています」と黒ちゃんに言わせるための孔明の罠ですね!!!

『これは、誰が言ったとかどの党が提言したというのは関係なく、この見方というのは両側から存在して論者がいるわけですけれども、この両方の見立てはどちらが正しいのか、あるいはどちらも間違っているのか、総裁はどのようにお考えでしょうか。』

そもそもこのジンバブエ理論はジンバブエ大先生が審議委員ご就任前に提唱され、若田部大先生も副総裁ご就任前に提唱されておられた理論な上、非常に都合の宜しい事に若田部先生のご説は朝日新聞でのインタビュー記事だったりするんですよね〜(ニッコリ)。

でもってこのころまでは過去ログをちゃんと整理していた(マイナス金利の前夜辺りから元のプロバイダーのレンタルサーバーの容量が一杯になったのと、マイナス金利政策のせいでワシの主に生活していた市場がハナクソ程であっても収益を上げる市場だったものから、マイナス金利の押し付け合い、という参加しなくていいんだったら参加する必要が全くないという焼け野原市場になってしまってゲンナリになっていた)のでサクッと見つかりましたが(笑)。

ジンバブエ理論(ロイターは過去記事を残しているので心底助かる)
https://jp.reuters.com/article/idJPKBN0KM0FA20150113
2015年1月13日3:33 午後
インタビュー:日銀は景気重視を、国債買入増も選択肢=早大教授

『一方、国債買い入れの増額について「国民の借金を日銀が減らすことだ。誰も困らず公平である」とした。』(直上URL先より)


若田部先生のジンバブエ理論ですが、残念ながら当該記事は現在公開されていない、という朝日新聞使えね〜(ってまあどこでもそんな感じなんでシャーナイですけど)のでリンクはしませんが、紙なり朝日新聞社の中でのアーカイブなりで探すために当該記事の当時のURLを記載します(デッドリンクだからリンクはしません)。

http://www.asahi.com/articles/ASH1V5GGDH1VULFA024.html
日銀法改正でアベノミクス再起動 若田部昌澄・早大教授
聞き手・福田直之
2015年2月5日09時17分

なお、ワイは
http://www.doramemon7743.sakura.ne.jp/hatsugenharada.html#harada150206
で書いたんですけど、この時若田部大先生は、

『そのうえで、政府と一体と考えられる日銀が持っている国債260兆円は国のバランスシートから落とせる。』

と若田部副総裁は仰せだった、と同記事から引用してネタにしたアタクシが見つけているので、是非ともこのジンバブエ理論についてご説明を頂くようにお願いいたします。黒田総裁に質問できるんだから若田部さんにも質問できるでしょ(と煽るwww)。

なお、黒田総裁は例によって「政治家様の発言には云々しません」で逃げておりますので、仮に黒ちゃんに今度同じこと聞くんだったら、若田部副総裁が2015年にこのように言ってました、って笑撃の記事を引っ張ってきて質問した方がオモロイと思います。

黒ちゃんの回答は前半は政治家様の発言だからで逃げて後半は想定問答丸読みです。当然ながらステルステーパーに関する孔明の罠には引っ掛かりませんでした。

『(答) 政治家の方の発言についてコメントするつもりはありませんが、日本銀行の金融政策は、あくまでも日本銀行法に定められている物価の安定と金融システムの安定を目指して行っているわけです。従って、政府の財政といいますか借金を助けるという目的で行っているわけではありません。』

『他方で、現在行っているイールドカーブ・コントロールのもとで金利を低位においているということは、政府が財政政策という観点から支出を拡大する場合に金利が上がることが防がれるわけですので、そういう意味では、財政政策と金融政策の協調といいますかポリシーミックスが行われていることは事実だと思います。しかし、何度も申し上げますが、日本銀行の金融政策は、あくまでも物価の安定と金融システムの安定を目指している、それに尽きると思います。』

と、このように答えて、後半の出口云々でバランスシート云々の質問には端から回答しない(うっかり回答すると孔明の罠)という辺りはまあそうだね、と思いました。


#ほぼ暇ネタっぽい会見だったのに長くなってしまいました(超滝汗)



〇基調的な物価がエライ勢いで改善したように見えたがまあちょっとだけでした

毎度おなじみのこれ
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

こっちの図表というかグラフを見ますと、
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

特に上段のグラフ『(1)刈込平均値・加重中央値・最頻値』のゴシック実線でありますところの刈込平均がレッドスネークカモーン!って感じでピ〜ヒャララ〜と上昇(って東京コミックショウの三蛇調教ネタとか老人しか知らんですねすいませんすいません)の図になっているのでおー!と思ってエクセルの方を見る。

今日はめんどくさいので2020年基準で計算している今年の頭の部分から引用しますけど。

例によって左から、刈込平均値、加重中央値、最頻値の順です。数字は前年比%ね。

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2

まあ確かにレッドスネークカモーンな感じもせんでもないのですが、中央値とか最頻値は相変わらず地蔵だし、そもそも+0.3%如きでレッドスネークカモーンも無いのですが、何せPDFバージョンの図表はスケールが上下1.5%で真ん中の線が0%なもんだから結構な大動きに見えてしまうという作り(これはこれで見やすいので結構なのですが)で、2%はグラフの縦軸の向こう側、と言う時点で悲しみも感じるグラフなのでまあ派手に動いたように見えますね。

ただ、上昇品目、下落品目の方を見るとこうなっていまして、

例によって左から、上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率で%単位です

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9

8月は上昇品目が増えるわ下落品目は減るわで、なんか結構威勢の良い事になっているのですが、これがただのコストプッシュであってディマンドプルじゃなかったりすると悲しいので、きっとこれはディマンドプルに違いない!!!と思ってニッコリすることにしますが、さてアタクシのお財布の方はいやなんでもありません。


・・・・・・とか何とか申しているうちに時間が無くなってしまいまして、議事要旨ネタとか大阪講演とその後の会見ネタとかがスルーになってしまいましたすいませんすいません(軽く流すつもりのMPM会見で無駄にねじり鉢巻きをしてしまいました・・・・・)。本日はこれにて勘弁。







2021/09/28

お題「FED方面からネタが大量投下されているのでクリップ/黒田総裁会見だが質疑の噛み合わなさに全俺が泣いた」

あちゃー。
https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2GN1HB
2021年9月27日11:38 午後
米ボストン連銀総裁、30日に退任 腎臓悪化で「生活様式の変更」望む

何かFEDから色んなネタが投下されたのでニュースクリップして回っているだけで引用増量企画になってしまいました(大汗)。

〇健康上の理由と言う名前のいやなんでもありませんキタコレ

ということでローゼングレンさんですが、まあ本件はネタにするタイミングを逸していましたので今さらですが、今月の頭に出てた話でして、

https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2GJ07C
2021年9月23日1:15 午後
パウエル議長、FRB当局者の私的金融取引に不快感

『[22日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は22日、ダラス地区連銀のカプラン総裁とボストン地区連銀のローゼングレン総裁が積極的な金融投資を行っていたことに不快感を示し、FRBの倫理規定を徹底的に見直した上で厳格化すると表明した。』(上記URL先より、以下同様)

というネタなんですけど、

『議長は21─22日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、倫理規定について「変更する必要があり、そうするつもりだ」と語った。』

『カプラン、ローゼングレン両総裁が職務を遂行できると引き続き信頼しているかとの質問には、「信頼感という点では誰も満足していないだろう。FOMC当局者で、このような問題が提起されるのをうれしく思う者はいない」と述べた。』

サーセンQ&Aまだネタにしてません。

『パウエル氏は、両総裁の取引について、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などが今月初めに報じるまで認識していなかったとした。パウエル氏は、地方債を含む自身の保有資産についても質問され、地方債を長年保有しているが、積極的な取引はしていないと答えた。「地方債はFRBが購入することはないとされていたことから常にFRB当局者にとっては安全な投資先と考えられていた」と述べた。』

『しかしFRBは昨年、金融市場の混乱を防ぐために地方債を購入した。パウエル氏は政府の倫理当局に確認したところ、利益相反はないことが分かったとした。』

とまあそういう話でして、さすがにこれはカプラン先生も健康上の理由(婉曲表現)待ったなしという所で、いやーしょーもねーどうせ民間に戻れば高給ウハウハなのにバッカじゃなかろかルンバ♪という感じですな。

ルンバおじさんの退任リリース。
https://www.bostonfed.org/news-and-events/news/2021/09/rosengren-retirement.aspx
Boston Fed President Eric Rosengren Announces He Will Retire Sept. 30
Disclosing health condition, he moves up his planned departure by 9 months

『Boston Fed President and CEO Eric S. Rosengren announced that he will move up his long-planned retirement from June 2022 to September 30 of this year. He retires after more than 35 years of service at the Bank, the past 14 as president. His planned June 2022 retirement was aligned with mandatory retirement age for the position.』

ということで、ああだこうだと辞任に対する謝辞が並んでおりますが、株式売買ガーという話しは無いのはお察しの通り。途中はすっ飛ばして後任に関してですが、

『Leadership Transition

The Bank’s bylaws provide for a solid plan for leadership continuity. The role of interim president and CEO will be assumed by Kenneth C. Montgomery, the Bank’s first vice president and chief operating officer.』

とりあえずは第一副総裁でCOOのケネス・モンゴメリー副総裁が総裁代行を務めるそうな。

『Given that Rosengren was facing mandatory retirement at age 65 next June, preparations were well under way for conducting the search for the Bank’s next president. The search committee will consist of the six non-banker Federal Reserve Bank of Boston board of directors members, and will be chaired by Paxson.』

もともとローゼングレン総裁は来年の6月で65歳になって、その時点で定年(というのがあるようで)を迎えるので、退任自体は既定路線でしたので後任人事自体は既に検討を行っているそうです。

『By U.S. law, only directors not affiliated with regulated banks or financial institutions are eligible to help select a Federal Reserve Bank president. The choice must be approved by the Federal Reserve’s Board of Governors. 』

地区連銀総裁の任命はFRBの承認が必要なのけ?

『Much more information will be available soon on the search for the next president of the Boston Fed.』

ということでカプラン総裁の行く末が注目されますな。


〇またまたFED高官発言が相次いでいるようですな

おんどれら喋り過ぎじゃこっちの成敗が追いつかんわ。

・エバンス総裁(昔ハト派で今タカ派なんですがこの人は元々物価重視派なので物価が上がると急にタカ転するのが仕様)

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-evans-idJPKBN2GN1HF
2021年9月27日11:43 午後
テーパリング開始間近、23年の利上げ想定=シカゴ連銀総裁

『[27日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンス総裁は27日、米経済は債券購入プログラムの縮小を開始するための連邦準備理事会(FRB)の基準を間もなく満たすとしたほか、利上げが正当化されるのは2023年後半になるとの見解を示した。』(上記URL先より、以下同様)

『一方、21─22日の連邦公開市場委員会(FOMC)で公表されたドットチャートにおいて、エバンス総裁は23年の利上げを想定したと言明。従来は24年前半の利上げを予想していたが、「23─24年に十分なインフレを生み出せないことよりもインフレが行き過ぎる可能性のほうが心配だ」とした。』

ということでインフレ上振れ警戒がベースにあるようですな。

『その上で「個人的な見解では、長期的な期待インフレ率を2%に固定するためには、景気拡大期に2%を適度に上回るインフレ率を受け入れ、(景気後退時に)ほぼ必然的に発生する2%割れを相殺すべきだ」と語った。』

そらそうなんですが、いわゆる平均物価目標とかプライスレベルターゲットというのは、この「適度に上回って安定推移」という器用な事が出来るのか出来ないのか、という問題があり、我らがドナルド・コーン元副総裁は在任中にブランシャールのプライスレベルターゲット論を講演でケチョンケチョンに悪態ついたのですが、どうも今の所の世の中の動きをみてますと、ドン・コーンの方に分があるように見えますな。


・カシュカリ総裁(ハト派)

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-kashkari-idJPKBN2GN1WT
2021年9月28日3:43 午前
米FRB、失業者の再就職が最優先事項 物価も注視=ミネアポリス連銀総裁

『[27日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、失業者が再就職できるようにすることが連邦準備理事会(FRB)の最優先事項になるとの考えを示した。カシュカリ総裁は、FRBは物価情勢も緊密に注視していくとも表明。このところのインフレ高進は恒常的な物価上昇を示すものではないとし、「短期的な物価の動きに反応したくない」と述べた。』 (上記URL先より)

まあ結局の所物価の今の上振れをアカン奴とみるか見ないかという話があるのと、そっちの話はあんまり表沙汰というか講演などのメインネタにはならんのですが、金融不均衡問題と、まあこの2点についてのリスク認識の大きさの違いがタカハトを分けている、というのが現在のFEDなのであって、経済の先行き見通しに対するタカ派とハト派の違い、ってのではないので、まあそういう意味では伝統的なタカ派、ハト派という言い方も適切なのかどうか、ってのは微妙なんですよね。

つまりですね、例えば早々に物価が2%になって動か無くなれば、別に利上げしろしろいう人もいなくなるでしょうし、来年の初夏位まで3%を大きく超えるような物価水準で進んでいくと、そら労働者の方も生活給引き上げしないと死んじゃうんですけど、って話になってお賃金の引き上げからの物価上昇定着からのインフレ期待上振れとなるし、そうなると「わはははは!ハト派仮面、もうのがれることはできんぞ!」となってくらやみ団ならぬ議会辺りから光線銃発射されて火達磨になるの図(AA略)になるのですし、まあ何ちゅうか今のタカハトってのも単に「物価動向をどう見るか」だけの話になっているので、状況変化したら変化するかも知れないですよね、とは思います。逆に考えると、そういう状況なので、ボラは出やすいかなと楽しみに(不謹慎)しております。


・ブレイナード理事(この人は基本はハト派だが最近は旗幟不明なサムシング)

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-brainard-idJPKBN2GN1WO
2021年9月28日3:48 午前
雇用はテーパリング基準に「やや不足」=ブレイナードFRB理事

『[ワシントン 27日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード理事は27日の講演で、米の雇用はFRBが資産買い入れ削減を開始する基準に「まだ少し足りない」と述べ、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)が秋にかけて雇用に及ぼすリスクを強調した。』(上記URL先より、以下同様)

暫く前にブレイナードが講演で「インフレ期待の上振れリスク」について言及した、というのを当駄文でネタにしまして、あの時に「あのブレイナードがインフレ期待の上振れに言及とな!」と結構アタクシ的にはびっくらたまげたちゃんだったのですが、まあそういうのをぶっこんできていたのですが、いざテーパリング予告ホームランが来るとこう来るのか、中々妙なムーブをする人ですな。

『同理事は、22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明の文言を踏襲した上で、雇用拡大が「私が望むように」続けば、経済は資産買い入れ削減の基準に「間もなく達するかも知れない」と述べた。ただ、8月に見られた雇用の減速は、デルタ型変異株の感染拡大が飲食・旅行業などに影響を及ぼしたためで、今後も続く可能性があると警告。「予測不可能なウイルス感染状況を考慮すると、われわれは、将来の経済状況を正しく予測する能力について謙虚になる必要がある」と述べた。』

ということですが、政治的な立ち位置を考えながら発言している節があるお方(個人の感想です)なので、物価上昇に対する世の中の不満を踏まえつつも、いざテーパリングとなるとその影響がどう出るのか、というのも気にしているのかなー、と全然違った観点で解釈してしまうアタクシは性格が悪いですかそうですか。


なお、ブレイナード講演に関しては寧ろこっちの方がアイヤーって感じです。同記事の後半ですけど、

『また同理事は、米国は気候変動のリスク評価で他の中央銀行に遅れをとっていると指摘。気候変動はその性質上、資産価格の急激な変化という点でも、金融システム全般の変化という点でも、大きなリスクをもたらす可能性があるとして「すでに他地域では、国際的に事業を展開する米大手銀による気候関連の金融リスクの測定・監視・管理を巡る監督が行われている。米国は追い付く必要がある」と述べた。』

ちょwwwwwww

『中銀デジタル通貨を巡っては、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)下で非接触型の決済手段が求められる中、議論がより「顕著に目立ってきた」とし、他の主要中銀がデジタル通貨に移行した場合、米国が同様のものを提供しないとは考えにくいとの見解を示した。』

おいwwwwwww

ということで、まあ政治的なサムシングを考える人だなーってのは把握しました。


・ウィリアムズNY連銀総裁&FRB副議長(最近はタカっぽくなっている元々執行部系のハト系)

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPL4N2QT3F2?il=0
2021年9月28日2:33 午前
資産購入ペースの縮小は間もなく正当化=ニューヨーク連銀総裁

『[27日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は27日、米経済の改善が予想通り継続すれば連邦準備理事会(FRB)は資産買い入れペースの縮小を間もなく開始する可能性があると述べた。ニューヨークのエコノミック・クラブが主催したオンラインイベントで、FRBのインフレ目標に向けて「実質的な一段の進展」があり、雇用の最大化についても「非常に良好な進展」があったことは明らかと指摘。「米経済が予想通り改善し続けると仮定すれば、資産買い入れペースの縮小は間もなく正当化されるかもしれない」とした。』(上記URL先より、以下同様)

ということで、まあこの辺が平均値なんでしょうな。よほど飛んでもないのが次回雇用統計で出てこない限りはテーパリングにレッツゴー三匹。

『ただ「雇用最大化の達成までにはまだ長い道のりがある」としたほか、「インフレ率が持続的に2%に達しているかどうかは時間の経過とともに明らかになっていく」とした。』

ということなので、まあ普通に考えて年末までは物価が高い状態でも「いちじてきげんしょう」で粘るというのも見え見えで、テーパー終わった辺りで物価がマジで2%近辺で落ち着きだしてしまえば、そらまあ雇用を言い訳にして利上げ着手に関してはクソ粘りするでしょうと思います(個人の感想です)。「物価が中々上がらず安定する中で雇用に対して物価が反応しにくくなっている」というのが2020年9月バージョンの金融政策ストラテジーの前提条件なのですから、米経済がそっちに戻ってしまえば緩和政策クソ粘りモードに戻るでしょうし、現在は「雇用がそこまで改善してない中で物価はホイホイと上がる」ということで、そもそも論としてあのロンガーランゴール&ストラテジーの時と前提条件が違いますからね(いまだにそこの所をスルーした解説とかを見るけど、そういう説明するのはさすがにちょっとアカンのとチャイマスカね)。


ということで何かドバドバとFEDニュースがあったのでそちらを一通りネタにしましたぞな。



〇MPM総裁会見は特に見るものもないのですが備忘上ネタにする

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210924a.pdf

昨日はつい悪態成分が高くなってしまいましたが、この会見って会見要旨見ているよりも会見を聞いてる方がトサカに来るという代物なのでして、昔の黒ちゃんはどこに行ってしまったんでしょうかと残念でなりません。


・質問の言い方にも問題が無いわけでは無いのだが質疑が全然噛み合わない例

実質2番目の質疑なんですけどね、

『(問) 二点お願いします。先ほどご指摘のように、企業部門は好調で、ワクチンの接種も進んで、消費は、今後行動制限も緩和されてくるのであれば、回復していくのでは、と思われます。外需と内需のバランスについて伺いたいのですが、これまでは外需が牽引して内需の落ち込みを補っていたと思うのですが、そこのバランスが、少し米中経済が来年減速していく見通しであれば、外需の力が少し弱まって逆に内需の支えを受けるという形になるのでしょうか。また、それが日本の回復、経済回復のタイミングにどう影響を及ぼすのかについて、ご見解をお願いします。(後半割愛)』

まあこれ聞いてて質問の方も「お前は何を言ってるんだ」って感じはありまして、「外需と内需のバランス」とか上手い事言ったつもりなのかも知れないけど質問の趣旨が物凄く意味不明になる言い方でして、これそもそもの質問は「米中経済が来年になって少し減速していく、という見通しのようだが、外需の支えが弱まった時に日本経済が自律回復できるという見通しは何を根拠にしているのか」って趣旨だと思うんだが、いくつもの話を盛りこみ過ぎなんですよね。

ま、質問者に対して同情の余地があるのは、そもそもこの会見って更問が事実上禁止みたいなもんだし、特に最近は黒ちゃんの答弁がクッソ長いので、他の記者が質問するだろうと思ってスルーしようにも、そもそもの全体の質問件数が少ないので、聞きそこなうかもしれない、というのがあるからいろんなことを盛り込んでしまい、その結果黒ちゃんの回答が更にクソ長くなり、という悪循環に嵌っている気がします。

まあ何ですな、とりあえず今の60分縛りというのを止めて思う存分質問できるようにしないと、時間縛りあるくせに黒ちゃんが牛の涎のようなダラダラ回答するから会見がグダグダになる一方なんで、改善してほしいですよね日銀記者クラブ様と日銀広報様。


回答がとにかく酷い。

『(答) 最初のご質問については、ご指摘の通り、また先ほど申し上げた通り、企業部門では比較的明確な好循環がみられるわけですが、消費、家計部門はやや弱い状況です。もちろん、ワクチンの接種率が国民全体で 5 割を超えていますし、高齢者では 8 割を超えているという状況で、次第に消費の回復に向けた基盤は整いつつあるとは思います。』

それ質問した人のオウム返しなんですが、まあ確認のために冒頭では質問者のオウム返しがあるのは話術としてアリだから勘弁するけどこの次がもうね。

『ご指摘の外需と内需のバランスは、なかなか難しいところです。まず、現在の外需の状況をみると、中国経済はワクチンの普及というよりも、むしろ新型コロナウイルス感染症の収束がかなり早かったこともあって、経済は順調に回復しています。また、米国も色々な指標でみる限り、急速に回復しています。』

そんなことは言われんでもわかっとるし、質問者のオウム返しいつまでやるねん。

『他方、中国の急速な回復が、少し減速していくのではないかという議論はありますが、そもそも中国経済の足許の成長はかなりしっかりしていると思います。』

その理由も何も言わずに米国に話が飛ぶ。

『また、米国も、変異株の流行で色々な影響が出てきているのではないかと言われますが、実際、経済指標でみる限り、消費も生産もきわめて順調に伸びていますので、今の時点で米中の経済が非常に減速して外需が弱くなっていくという見通しを持つ必要はないと思います。』

そもそも質問者は「非常に減速して」というような前提で質問していないので、想定問答丸読みにしてもこれは質問者に失礼。

『ただ、今の高い成長率は、米中、それから欧州もそうですが、昨年の落ち込みからの回復で前年比が高めに出ているわけです。IMFの見通しでもあるように2022 年や 2023 年も 2021 年と同じような高い成長率ではないとは思いますが、それでも米国経済は既に感染症流行前の水準に回復していますし、外需については引き続き、比較的しっかりしているのではないかと思っています。』

最初からこの線で説明しろよ・・・・・・・・・・・・それまでの前段全部余計だろ。

『成長率自体は、来年、再来年と下がっていくと思いますが、経済全体の回復は比較的順調とIMFなどの国際機関もみていると思います。』

IMFの見通しの話しですべて説明するというのも酷くて、まあこの「も」ってのに日銀が含まれているのかもしれませんけど、日銀がどう見ているという話をメインにして、IMFを従にして説明して頂きませんと、日銀の該当部署の立場というものがだなあ・・・・・・・・・

『そうした中で、日本の内需については、企業部門は比較的しっかりしているのですが、家計の消費が、特に対面型サービスを中心になかなか回復してきません。』

『これは、基本的には、感染症の流行に対して緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などがとられていることもありますし、国民全体が外出や外食を抑制するということで、消費が弱くなっているということです。多くのエコノミストも言われているように、ワクチンの普及あるいはその他の措置によって感染症のリスクが低下していくにつれて、消費も回復していくだろうと思っています。(後半割愛、というか直ぐにやる)』

えーっとですね、質問者は既に質問の中で「ワクチンが普及して行動制限も緩和されたら企業部門が好調だしこれから回復すると見るのだが、外需の減速をカバーするに足る回復なのか(質問の説明がヘボなので確かに分かりにくい面もあるのだが)」って質問しているのでああって、感染症の影響が弱くなってきたら日本が回復するというのを所与にして、その力を聞く質問に対して、所与の話で回答するとか、質問を真面目に聞いてるのか、どうせ更問されないし、連携した質問も(FEDのように)飛んでこないから、想定問答の当たり障りのない部分で回答しとけ、とでも思ってるのか知らんけど、質問と回答が全然噛み合っていないのがお分かりになるかと思います。

あたくし思うに最近特にこの傾向が会見の前半に強くて、後半になると少し話が成立している感もなくは無いので(個人の感想です)、会見前にプレ会見でもやって肩慣らししてからの方がエエンチャウノかとか思ってしまいますわよ。


さて、分割しましたけど今の質問の後半に参ります。

『(問)(前半割愛、というかさっきの続き)二点目はそれとちょっと関連するのですが、ご指摘のように企業部門では所得から支出への前向きな好循環がはっきりとみえて、先行きもそれが続くように思われるのですが、家計ではなかなかそれが進んでいないようにもみられます。企業から家計へのトリクルダウンというか、家計部門が支出にもっと前向きになるための条件、および消費が本格的に持ち直していくタイミング、これもなかなか読みづらいと思うのですが、現時点での見通しをお聞かせください。』

と来まして黒ちゃんの後半の回答。

『(答)(前半割愛、というかさっきの続き)これは二番目のご質問とも関連するわけですが、企業が比較的順調に回復していることの効果が家計に及んでいないのではないかというご意見についてです。』

と来ているのですが、そこからの回答がこれはさすがにわざと的を外している(トリクルダウンが回っていないというのを認めるとアベノミクスだったり置物理論(さすがに一々引用しませんが、ハマコー大先生が「実質賃金が一旦下がってもその後雇用が伸びて結局トリクルダウンが達成される」というような趣旨の名言あるいは迷言を行ったのは皆様ご案内の通り)に重大な欠陥があった、ということを認めることになるから)んだと思いますが、

『日本の場合は、欧米の場合と違い、昨年来、新型コロナウイルス感染症の関係で生産などが落ち込んだ時も、企業は雇用を維持しました。雇用面では比較的しっかりしているわけですが、賃金面では、ベアは依然として続いていますし賃金の上昇はありますが、それが比較的小幅にとどまっている、ということはあると思います。』

雇用維持したので回復もしないとな。

『ただ、それが消費の弱さを説明すると言いますか、主たる原因であるとは思いません。』

ほうほうそうですかそうですか。

『貯蓄が非常に増えており、収入が落ち込んだり、足りなくて消費できないということではなく、色々な形で政府の支援などもあり、それから雇用も確保されているということもあって家計の収入はあっても、消費に回らないということです。』

消費に回らないのは今回のパンデミック対応の様々な動きを見て家計が一層保守的になった、というのにアタクシとしては100ドラクマという感じなんですけどね。

『やはり感染症に対する国民の慎重な行動が消費を抑制しており、特に対面型サービスの外食・宿泊等を抑制しているということだと思います。従って、それが収束するにつれて、俗にいう強制貯蓄がわっと出てきてペントアップ需要で消費が爆発的に拡大する、とまでは言いませんが、ペントアップ需要はあると思っており、感染症が収束するにつれて、消費も力強くなっていくと考えています。』

という話をしているのですが、いやだからその定性的な部分は既に質問者が質問の中でゆうとるじゃろうと思うのですが、なんかこの質問に対する答えになっていないんですよね。確かに質問に関連する想定問答の項目はちゃんと読んで説明はされているのですが。

てな訳で一事が万事でこの調子なので、時間もアレにつき(本当は今日全部成敗するつもりでしたが)続きは明日。


〇大阪での黒ちゃん挨拶(リモートですが)ネタの頭出しだけ

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210927a1.pdf
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
大阪経済4団体共催懇談会における挨拶
日本銀行総裁 黒田 東彦
2021年9月27日

何かベンダーのヘッドラインにすらなってなかった気がしますが、大阪での講演がありましたので、明日はこれもまとめて成敗しつつ、FEDおっかけをしないと、という感じですな、うんうん。






2021/09/27

お題「さすがに日銀ネタを何日も放置できませんのでMPMレビュー」

何か最近は(昔よく見てた)BOEまで話題になる一方でMPMはスルー&スルーというのが仕様になっている(一部オモシロオペの関係者以外どうでもよいのだから仕方ないけど)のですが、一応日銀おっかけウン十ウン年のアタクシとしてはネタにしないのはおっかけの名折れ(^^)。

てな訳でサラサラと日銀ネタ、の前に雑談

〇MPMと関係ないんですがこの対談の途中の小見出しと中身のギャップに味わいを感じた

https://www.boj.or.jp/announcements/koho_nichigin/backnumber/67.htm/
「にちぎん」No.67 2021年秋号/2021年9月24日発刊

『ピックアップコンテンツ』

『インタビュー/扉を開く
大海原の風を越えろ 白石康次郎(プロセーラー)』

ヨットマン(とは言わんのか)の方なので出来ない無茶はスンナとかマイナス金利
政策へのインプリケーションでも出るかと思ったら、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210924a.pdf

まあまあ面白い話でしたが、途中の小見出しに『失敗が頭をかすめたら、達成はできない』ってあって、途中にも『誰にでも失敗はあるなどというそんな生半可な気持ちでやったら、ヨットでの無寄港・無補給での世界一周なんてとても達成できません。』(PDF5枚目の途中から)って白石さん言葉があるので小見出しになったんだと思いますが、どこかのQQEにヨイショをしようというために根性論を対談で行っているのかと思えばさに非ず。

今引用した部分ですが、その直後に『どの挑戦も同じだけ頑張ったけれど、結果は違いました。厳しい現実ですが、それが自然を相手にする競技の奥深さだと思います。』とありまして、技術を磨いて、自然と向き合って、自然を知ることによって力を発揮する、という話なのでありまして、基本となる技術(航海機関士としての技術)を徹底的に習得し、その上で自然と真摯に向かい合い、自然の力を最大限に引き出せるような漕艇を行って最高のパフォーマンスを上げる、という根性論とは対極の話になっておりました。

ということで、一瞬気合があれば政策が達成するインプリケーションがあるかのように見せかけていますが、こちらは「ぼくのかんがえたせかいひょうじゅんのさいきょうのきんゆうせいさく」をもちだして、それがすべての問題を解決の方向に進めるかのような傲慢な態度でぶっこんできた金融政策が見事に不発に終わったどこぞの日銀総裁に対するいい感じのイヤミとなっていまして今日も広報誌「にちぎん」は平常運転で結構結構(^^)。


〇ほいじゃら誰も注目してないけどMPMレビューで無風声明文

声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k210922a.pdf

前回声明文はこちらですが、
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k210716a.pdf

景気判断に関する記述は前回MPMと同時公表展望レポート基本的見解を使います
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2107a.pdf

・経済物価情勢現状判断は横ばいです

項番3の経済物価情勢判断以降の記述を前回と比較します。

『3.わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。』(今回)
『わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。』(7月展望レポート)

現状の基本認識は不変です。


『海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。』(今回)
『海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。』(7月展望レポート)

海外経済の判断も横ばい。

『そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、一部に供給制約の影響を受けつつも、増加を続けている。』(今回)
『そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は着実な増加を続けている。』(7月展望レポート)

輸出や生産の部分、結論は同じですが「一部に供給制約の影響を受けつつも」のヘッジクローズ入りですが、需要減や供給力の限界のせいではないので判断としてはこれまた横這い。

『また、企業収益や業況感は全体として改善を続けている。設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。雇用・所得環境をみると、感染症の影響から、弱い動きが続いている。』(今回)
『また、企業収益や業況感は全体として改善している。設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。雇用・所得環境をみると、感染症の影響から、弱い動きが続いている。』(7月展望レポート)

企業部門の判断はその他のコンポーネントで横ばい、雇用所得環境も横ばい。


『個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力が依然として強く、引き続き足踏み状態となっている。住宅投資は持ち直している。公共投資は緩やかな増加傾向を続けている。』(今回)
『個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力が強く、足踏み状態となっている。住宅投資は下げ止まっている。公共投資は緩やかな増加を続けている。』(7月展望レポート)

住宅投資が「下げ止まり」から「持ち直し」に戻っていますが、個人消費は足踏みが「引き続き」足踏みとなっていますな。まあ足踏みなのは変わらんので横ばいですが、その場足踏みをどこまで足踏みで表現引っ張れるのか問題はあるけど、今月末の緊急事態宣言解除に期待してるんでしょ。


『わが国の金融環境は、企業の資金繰りに厳しさがみられるものの、全体として緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、企業の資金繰りに厳しさがみられるものの、全体として緩和した状態にある。』(7月展望レポート)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格などは上昇しており、0%程度となっている。また、予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格は上昇しており、足もとでは0%程度となっている。また、予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。』(7月展望レポート)

金融環境、物価の判断は同じままですな。ということで若干の出入りはあるけど基本的な部分は全部横ばいになっています。


・経済見通しは同じ

次に項番4の先行き見通し

『4.先行きのわが国経済を展望すると、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、ワクチン接種の進捗などに伴い感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済はさらに成長を続けると予想される。』(今回)

『先行きのわが国経済を展望すると、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、回復していくとみられる。すなわち、ワクチン接種の進捗などに伴い感染症の影響が徐々に和らぎ、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果が経済を支えるなかで、所得から支出への前向きの循環メカニズムも働いていくと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済はさらに成長を続けると予想される。』(7月展望レポート)

展望レポートの場合、先行き見通し期間が声明文よりも長いので、表現が微妙に違いますが、言ってることは前回と同じです。


・物価見通しでは「目先0%」が削除されたので少し強くなりました(オントラックの範囲内と思う)

物価情勢に関しては、展望レポートの説明は(展望レポートなので当たり前ですが)長いので、ちょっとだんだらになりますが比較します、

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギー価格などの上昇を反映して小幅のプラスに転じていくと予想される。その後、経済の改善が続くもとで、携帯電話通信料の引き下げの影響剥落もあって、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(今回)

『消費者物価の前年比は、目先、0%程度で推移すると予想される2。携帯電話通信料の引き下げが下押し要因として、また、エネルギー価格の上昇が押し上げ要因として作用すると見込まれるが、これらの一時的な要因を除いたベースの消費者物価の前年比は、小幅のプラスで底堅く推移すると考えられる。感染症のもとでの需要の弱さが影響するものの、需要減少の一因が感染症への警戒感であることや、感染対策に伴うコスト増などから、企業が値下げにより需要喚起を図る行動は、今後も広範化しないと予想される。

その後、経済の改善が続くもとで、当面のエネルギー価格上昇の影響に加えて、携帯電話通信料の引き下げの影響剥落などもあって、消費者物価の前年比は、徐々に上昇率を高めていくと予想される。現在横ばい圏内で推移している中長期的な予想物価上昇率も、感染症の影響が収束に向かい、企業の価格設定スタンスが徐々に積極化していくもとで、再び高まっていくと考えられる。』(7月展望レポート)

ここで念のため6月MPMの声明文を比較しますと、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2021/k210618a.htm/

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、目先、0%程度で推移すると予想される。その後、経済の改善が続くことや、エネルギー価格の上昇、携帯電話通信料の引き下げの影響剥落などから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(6月声明文)

とありますように、今回「目先0%」が「小幅のプラスに転じていく」と上方修正されたはされたのですが、展望レポートの見通しでもわかりますように目先は0%だけど近いタームで0%から小幅のプラスということになっているので、まあ今回はオントラックの上方修正ということですが、まあ物価がオントラックの上方修正をするだけでもアリガタヤアリガタヤってなもんですからね!!


・リスク要因は同じ

まあ同じですわな、ついでにさっきURL乗っけた6月声明文から比較します。

『5.リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響といった点について、不確実性が大きい。さらに、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。』(今回)

『こうした先行きの見通しについては、感染症の帰趨やそれが内外経済に与える影響によって変わり得るため、不透明感が強い。また、上記の見通しでは、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されると考えているが、これらの点には大きな不確実性がある。』(7月展望レポート、鏡の部分になります)

『リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響といった点について、不確実性が大きい。さらに、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。』(6月声明文)

全然変わっていないのが分かると思います。


・政策ガイダンスも不変

ガイダンスは7月声明文と比較します。

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続 するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、Bそれぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ−REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。

当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。』(今回)


『3.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、Bそれぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ−REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。

当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。』(7月声明文)

まあ当然である。


・反対するのは良いいだけどもうちょっとなんか成案の文章出してくれないの???

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員。反対:片岡委員。片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。

(注2)片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。』(今回)


『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員。反対:片岡委員。片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。

(注2)片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。』(7月声明文)

反対するのは良いんだが何かもうちょっと工夫と言うものをして頂きたい。



〇気候変動オペ関連:まあ残高自体は増えるんでしょ、残高自体は

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210922a.pdf
「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション基本要領」 の制定等について

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210922b.pdf
「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションの運営に関する細目」の制定について

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210922c.pdf
(参考)気候変動対応オペの概要


・謎の遅延

今回不思議だったのは、上記の3セットが出てきたのがMPM結果発表から45分ほど経過した後に出てきたことで、本件は(めんどくさいから引用しないけど)声明文にもあった通りで、参考というのは別にして、他の物件はMPMでの議決事項になっていて、どうせこの要綱とか普通に事務局案が執行部案になって出てきて、はいチャンチャンって決まっていると思うので、PDFのバージョンも遅滞なく出て来る(近年のMPMでは常にそうでした)のが普通で、PDFが直ぐに出せないのって、声明文がいつもそうですが、議決結果まで入れないといけないとか、当初執行部案に対して文言の修正が入ったとか、それこそ議決時に議長案に文言修正が入った、というようなことが起きると、決定会合終了直後にはいつもわたくしたちが見ている「文書ソフトを使って作った文書の紙をスキャンしてPDFにする」じゃないとロジ的に間に合わんのよ(その後綺麗なのが作られて差し替えになるのは皆様ご案内の通り。

ただですね、要綱の文言とかそういう所って普通揉めようがない部分の筈で、もちろん内容そのものが当初執行部案から差し替えになったら間に合わないのですが、その割にはMPM素早く終わっていたので、このPDFの謎の遅延は謎でありますわな。何で遅れたんじゃろ。


・まあ何か残高は増えそうですな

本来はここで基本要綱を真面目に読み込まないといけないのですが、どうもこう茶番臭の漂うオペなのであんまり真面目に読もうという意欲がわかず(いけませんんわ)最後の「概要」だけ拝読してみるの巻。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210922c.pdf(再掲)
気候変動対応オペの概要


『趣旨
・ 民間における気候変動対応を支援するため、わが国の気候変動対応に資する投融資の残高の範囲内で行う資金供給オペレーション』

新規貸し出しだけではなく、既存の貸出の中で「気候変動対応に資する投融資の残高」があればそれも対象になるんですってわよ奥様。

『貸付対象先
・ 気候変動対応に資するための取り組みについて、TCFDの提言する4項目(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)および投融資の目標・実績を開示している金融機関』

アタクシこちらの辺りに関してはそこまで詳しくない(何か詳しくないと困るっぽいのでそろそろ重い腰を上げて勉強しますが)のですが、先日出てた日銀の取り組み方針だと、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210716b.htm/
気候変動に関する日本銀行の取り組み方針について
2021年7月16日
日本銀行

『(2)金融システム』の項に『加えて、コーポレートガバナンス・コードの改訂を踏まえた気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)等に基づく開示の質と量の充実を、金融機関に対して促していく。』

『(5)業務運営、情報発信』の項に『情報発信の面では、TCFDによる推奨内容を踏まえた開示を行うほか、気候変動に関する日本銀行の取り組み全般について、対外説明を充実させていく。また、その際には、日本銀行ホームページに新たに設置した専用のサイト(「気候変動」)を活用していく。

ってな感じで記述がありまして、まあTFCD推しなのは前からそうなのですが、とは言っても従来の言い方だと「TFCD等に基づく開示」とか「TFCDによる推奨内容を踏まえた開示」ってなっていてたのですが、今回の貸し付け対象先の選定においては「TFCDが絶対」というような書き方になっているようにアタクシには読めて、いや別に決めの問題ちゃあ決めの問題なのですけれども、気候変動に関する云々についてはTFCDが唯一絶対みたいなオーソライズを日銀が独自判断でして良いもんなのかという点は多少もにょもにょするところではあるのですが、これもう国の方針で決まってたんでしたっけ(不勉強なので知らんが仕方ないのでこれから勉強するわ)。


とまあ微妙にアレではあるのですが、とにかくTFCD様が金科玉条らしいのでまあそういう事だぞという話ですけど、これまあオペ参加する金融機関の気候変動対応に対する対外アピールになるから参加する人はホイホイと出て来るに100インドネシアルピア。


『貸付期間
・ 原則1年(繰り返し利用することにより長期の資金調達を可能とする)』

これは当初案通り。

『貸付利率等
・ 貸付利率は0%
・ 貸出促進付利制度上のカテゴリーV(0%付利)を適用
・ 補完当座預金制度上の「マクロ加算2倍措置」を適用』

マクロ加算2倍2倍を入れているのは、利用促進よりもコロナオペ落ち後をイメージしてるんでしょ、とは思いますのと、あたくしの個人的感想では、「TFCD準拠の開示をしてこんなに気候変動対策の投融資に取り組んでます」ってアピールするのにこのオペ便利だから別にこんなインセンティブ無くても使う金融機関がいそうなもんだが、まあそんなのシランガナなのが大勢だったら2倍2倍は必要ですからこの辺はまあ実際のヒアリングを踏まえての結果でしょうな。

『気候変動対応に資する投融資

@ 国際原則・政府の指針に適合する投融資
―― 貸付対象先は、基準として用いた国際原則・政府の指針を開示する
A @に準じる投融資
―― 独自の基準を定めている貸付対象先は、その内容を開示する』

ということで一応お手盛り原則も可能とはなっていますが、そもそもの貸し付け対象がTFCD云々ってなっているんですよねー。

『実施期間
・ 金融調節上の支障がない限り 2031 年3月 31 日まで

今後の予定
・ 本日から貸付対象先の公募を開始する
・ 初回のオペは 12 月下旬にオファーする予定(それ以降は、原則として年2回オペを実施)』

ということでまあどうなる事やら。


〇総裁記者会見・・・・・・は時間があんまり無いのですがたぶんつまらんです

黒ちゃんの会見
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210924a.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2021年9月22日(水)
午後3時半から約60分

ショパンの事情により最近はこの会見の中継を見たりしているのですが、2013年の頃からトシも食ってしまったから仕方ない面はあるとは言え、パウエルやラガルドの会見を毎度見てからこの会見の映像を見ると泣きたくなって来る訳でして、まあ冒頭から説明が想定問答棒読みチックと言いますか、ボソボソと喋るわ心は籠ってない(個人の感想です)わ、質問されても想定問答をボソボソと読むわで、ガースーのへっぽこ会見といい勝負というか、ガースーの場合はあれで本人なりに努力とか工夫をした結果ああなった、というのが分かるだけまだマシで、黒ちゃんの場合は端からやる気無いし、ボソボソダラダラと想定問答を朗読しているだけなのに45分経過したら「そろそろ時間ですので」とか日銀記者クラブの幹事社が言い出すし、質問が全然連携していないから全然話に発展性が無いし、ということでまあ実は引用する意味がないのですけど、ちょうど時間も無くなったので明日ちょっとネタにしますが、まあそういう会見で見てて腹立たしいを通り越して情けなくなって来るんですよね。

ま、黒ちゃんとしては自分が信じてぶっこんだマネタリーベース置物理論が見事なまでに机上の空理空論であったのが明らかになっていて、しかも当初の張本人はしっかり逃げ切っているのに、失敗を認めたら死んでしまうの当事者に一人残される格好になって今更引くに引けないし、しかも黒ちゃんのことだからどうせ自分の理論が完全崩壊したの位は理解できていて、これが理解できないで能天気に「頑張ればまだまだ大丈夫」とか思ってられる方が幸せなのですが、そこまで脳内お花畑ではない黒ちゃんとしてはまあしんどいでしょうなあ、とは思うので同情の余地が無いわけでは無いのですが、こちとらマイナス金利でどんだけ無駄な労力吸い取られてるんだという被害者の会会員なので、まあ自業自得ざまあwwwwwww以外の感慨が湧かないのはアタクシの人間が未熟な所でありますな。

と毒電波だけ流して続きは明日。








2021/09/24

お題「FOMCレビュー:オープニングリマークは物価の記述と予告ホームランネタが白眉かな」

さてさて1日遅れの答え合わせでもしてみますか、と思ったらほっほーそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2QP2U0?il=0
2021年9月24日5:15 午前
米金融・債券市場=利回り急上昇、中銀のタカ派転換で

『 [ニューヨーク 23日 ロイター] - 米金融・債券市場では米債利回りが急上昇した。米連邦準備理事会(FRB)が早ければ来年にも利上げを実施する道筋を示したほか、イングランド銀行(英中央銀行)の金利見通しやノルウェー中央銀行の利上げなどを受けた。』

『米10年債利回りは7月中旬以降で初めて1.4%を上回った。欧州の中銀によるタカ派的なメッセージを受け、英国債などに対する売り圧力が強まり、米債市場にも売りが波及した。[nL4N2QP2G2]』(上記URL先より、下記の市況も同様です。)

30年債 15時42分 1.9268% 前営業日終値 1.8480%
10年債 15時40分 1.4096% 前営業日終値 1.3310%
5年債 15時41分 0.9253% 前営業日終値 0.8670%
2年債 14時54分 0.2587% 前営業日終値 0.2400%

いやー世界的に緩和縮小とか物価上昇とかいう話をしているのに、完全に別世界になっている日本な訳でして、最近はすっかり「世界的にも物価が上がらないというのがトレンドで〜」と言って自分たちの目標未達の言い訳をしていたのですが、何で日本だけ取り残されているのか、ということになりますと日本の政策が当を得ていないから、ということではないでしょうか、と思うのだが総裁会見でそういう質問が飛ばないんだよな〜。

#というか最近は諸般の事情によって某社様が提供している総裁会見中継をライブで見てるんだが、初期の覇気満々だったのはどこへやらで想定問答をかったるそうにボソボソと喋っててポンコツ化が著しくて見てらんない(こちらもポンコツジジイなのでオマエモナーではあるが、笑)というかガースー首相の会見かよって感じっすな


・・・・・ああすいません昨日は遠足の朝かよって感じで勢いよく目覚めてアップしました(ので本日は23日版を下に掲載します)のですが、そこでドッと疲れがでてしまい(何の疲れだかわからんが)ぐうたら人間となって後続はありませんでしたのでFOMCネタから参ります。


〇FOMCレビューでパウエル会見のオープニングリマークでテーパリングの期間の話があったとな

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20210922.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
September 22, 2021

ということで今朝になったら(つまりワシントンの昨日昼間と思われる時間帯に)Q&A付になっておりますが、とりあえずはオープニングリマークを見るあるよろし。

・経済の全体観の説明ではニュータイプコロ助の影響が局地的に留まるとの認識を改めて説明

『CHAIR POWELL. Good afternoon. At the Federal Reserve, we are strongly committed to achieving the monetary policy goals that Congress has given us: maximum employment and price stability.』

これは最初の挨拶なのでいつもの文言。

『Today the Federal Open Market Committee kept interest rates near zero and maintained our current pace of asset purchases. These measures, along with our strong guidance on interest rates and on our balance sheet, will ensure that monetary policy will continue to support the economy until the recovery is complete.』

予告ホームランをぶちこんでおりますが、ぶち込んでいるのは予告ホームランであって政策アクション的には現状維持だし、ガイダンス文言に変更は無いのでこれはこんなもん。

『Progress on vaccinations and unprecedented fiscal policy actions are also providing strong support to the recovery. Indicators of economic activity and employment have continued to strengthen.』

最初が経済の現状判断の話で、ワクチンパワーと財政パワーで経済活動が強まってるぜ、というのは従来通り。

『Real GDP rose at a robust 6.4 percent pace in the first half of the year, and growth is widely expected to continue at a strong pace in the second half. The sectors most adversely affected by the pandemic have improved in recent months, but the rise in COVID-19 cases has slowed their recovery. Household spending rose at an especially rapid pace over the first half of the year, but flattened out in July and August as spending softened in COVID-sensitive sectors, such as travel and restaurants.』

『Additionally, in some industries, near-term supply constraints are restraining activity. These constraints are particularly acute in the motor vehicle industry, where the worldwide shortage of semiconductors has sharply curtailed production. Partly reflecting the effects of the virus and supply constraints, forecasts from FOMC participants for economic growth this year have been revised somewhat lower since our June Summary of Economic Projections, but participants still foresee rapid growth』

声明文の方で第1パラグラフにニュータイプコロ助の影響が経済の拡大スピードをスローにしておる、というのがあって、まあここの文言が目立ったのでおーと思いながらも、声明文をより詳細に読み込んで見ると、ニュータイプコロ助に関しては経済の全体に対してスローにさせている訳ではなく、もともとコロ助初期バージョンの頃から食らっておられてセクターに対して改めて影響が出ている、という説明なので、ニュータイプコロ助に関しては昨年に行われたような再度の大規模ロックダウンみたいなことにならん限りは別にヘーキヘーキ、という認識を示している、というのをより明確に説明していますね。

後段では半導体をはじめとする工業部品の供給制約問題が当初見込みよりも長引いており、(需要が当初見込みより強い事も相まって)特に自動車などを始めとする半導体利用する産業に悪影響を与えていて、これがどうも想定の上を行って成長の阻害要因になっているので、今回はSEPで示されているように、21年の成長率見通しを引き下げましたが、先行きの急速な経済拡大は引き続き見込んでいるそうな。


・労働市場の説明では8月雇用統計はまあ一時的要因みたいな感じで強い強い

次が労働市場の話になりますが、ここはここで味わいがある。

『As with overall economic activity, conditions in the labor market have continued to improve. Demand for labor is very strong, and job gains averaged 750,000 per month over the past three months. In August, however, job gains slowed markedly, with the slowdown concentrated in sectors most sensitive to the pandemic, including leisure and hospitality.』

ここなんですけどね、先般の雇用統計の数字はお賃金のほうは兎も角NFPのヘッドラインはアイヤーって感じの数字だった訳ですけれども、パウエルさんの(というかFOMCの)評価としては「3か月の平均で月75万人の拡大を続けている強い状態ですが何か?」と仰せなうえに、8月雇用統計がめっちゃスローダウンしているけど、このスローダウンはレジャーや対人サービスなどのコロ助直撃セクターに集中しており、って説明をしているので、つまりこれは「8月の雇用統計は向かい風参考記録ですのでドントウォーリーだぜ」って言ってるわけですな。

『The unemployment rate was 5.2 percent in August, and this figure understates the shortfall in employment, particularly as participation in the labor market has not moved up from the low rates that have prevailed for most of the past year. 』

『Factors related to the pandemic, such as caregiving needs and ongoing fears of the virus, appear to be weighing on employment growth. These factors should diminish with progress on containing the virus, leading to more rapid gains in employment. 』

失業率の数字自体に関しては、コロ助の影響によって労働市場に参加しなかったり参加できなかったりする人が居て、その分だけレーバーフォースが伸びてこないという影響があるんで、今後のコロ助退治によってその辺は変化するでしょうが、同時に雇用者数自体は盛大に伸びるでしょう。

『Looking ahead, FOMC participants project the labor market to continue to improve, with the median projection for the unemployment rate standing at 4.8 percent at the end of this year and 3.5 percent in 2023 and 2024.』

でもうちょっと先の見通しに関してはSEPで示している通り、と全体的に威勢が良い。


・コロ助の影響とその回復がステイツの皆さんに必ずしも一様にでているわけではない、のいつもの文言

雇用まで話が行った所でいつものスローガン(?)登場で、この順序も茲許お約束のようにこの構成ですな。

『The economic downturn has not fallen equally on all Americans, and those least able to shoulder the burden have been hardest hit. In particular, despite progress, joblessness continues to fall disproportionately on lower-wage workers in the service sector and on African Americans and Hispanics.』

ここはいつもの話。


・物価の「elevated」はかなり強い表現だそうですし(汗)、インフレ上昇リスクについての表現がかなり強い

『Inflation is elevated and will likely remain so in coming months before moderating.』

インフレーションがエレベーテットってのはFOMC声明文にもありましたが、語句の使い方からするとかなり強めの表現になっている、ということだそうです(人からの入れ知恵による)。

『As the economy continues to reopen and spending rebounds, we are seeing upward pressure on prices, particularly because supply bottlenecks in some sectors have limited how quickly production can respond in the near term.』

物価のアップワードプレッシャーが現在観測されています、と来まして、

『These bottleneck effects have been larger and longerlasting than anticipated, leading to upward revisions to participants inflation projections for this year.』

供給制約による物価上昇圧力が想定よりも強く、しかも影響が想定よりも長期間になってきたので、今年の物価見通しを引き上げました。

『While these supply effects are prominent for now, they will abate, and as they do inflation is expected to drop back toward our longer-run goal. The median inflation projection from FOMC participants falls from 4.2 percent this year to 2.2 percent next year.』

ただしこれらの一時的な要因が終了すれば来年には物価水準は今年の4.2%から2.2%まで減速すると見ています。とまあこれはSEPがそうなのでそうなんですが、一方でほぼ同じ分量(次の方が1行位長い)で次のパラグラフがあるのですが、こちらの話の掴みは先行きの物価上昇リスク。

『The process of reopening the economy is unprecedented, as was the shutdown at the onset of the pandemic. As the reopening continues, bottlenecks, hiring difficulties, and other constraints could again prove to be greater and longer-lasting than anticipated, posing upside risks to inflation.』

この説明、「経済の再開が続き、(半導体などの)供給制約、労働需給のひっ迫、その他の制約要因が想定よりも強く、しかも長期的に残る話になって来ると、これはインフレ上振れ待ったなしやで〜」とぶっこんできておりまして、表現的にもこれは上振れリスクをかなり警戒してまっせ、という感じでは無かろうかと思うんだがどうでしょうかね。

『Our framework for monetary policy emphasizes the importance of having well-anchored inflation expectations, both to foster price stability and to enhance our ability to promote our broad-based and inclusive maximum-employment goal. Indicators of longer-term inflation expectations appear broadly consistent with our longer-run inflation goal of 2 percent.』

ここで唐突にマンデートの話を始めまして、返す刀で、

『If sustained higher inflation were to become a serious concern, we would certainly respond and use our tools to assure that inflation runs at levels that are consistent with our goal.』

ということで、「If sustained higher inflation were to become a serious concern」ということで仮定法構文を使っているから、とりあえず今という話では無いのは分かりますが、。「ハイヤーインフレーションがシリアスなコンサーンになるような事が起きたら」って仮定法であっても結構強い説明になっておりますな。

ちなみにこの部分に相当する「望ましくない物価上振れには対処する」って辺りの表現、前回のオープニングリマークですと、

『If we saw signs that the path of inflation or longer-term inflation expectations were moving materially and persistently beyond levels consistent with our goal, we’d be prepared to adjust the stance of policy.』(7月FOMC後のオープニングリマーク部分より引用)

となっていまして、同じ仮定法過去構文による話なんですが、前回は「物価のパスや長期的なインフレ期待が顕著かつ持続的に我々のゴールを超えるような事が仮に起こったら」「我々は政策を適切に調整する準備がある」だったので、今回の「持続的な高インフレがシリアスなコンサーンになるような事が仮に起こったら」「我々は間違いなく(certainly)政策対応を行い、物価水準が2%の目標水準に整合的になるよう政策ツールを投入する」ってなっているんですから、これインフレ懸念に関する文言が前回7月対比でエライ勢いで強い言い方になってる、と思うのですがどうでしょうかね。

てな訳で何気にここはハイライト1号って感じだと思います(個人の感想です)今回のオープニングリマークの中では。


・先行きは引き続きコロナ次第で下方リスクがあるという話

『The path of the economy continues to depend on the course of the virus, and risks to the economic outlook remain. The Delta variant has led to significant increases in COVID-19 cases, resulting in significant hardship and loss, and slowing the economic recovery. Continued progress on vaccinations would help contain the virus and support a return to more normal economic conditions.』

ここは基本的に声明文の話と同じだし、なんとなれば前回のオープニングリマークとも同じ表現です。


・皆さん注目のテーパリングコーナーは来年の半ばくらいにテーパー完了の案とか踏み込んだのが出てしまうま

『The Fed’s policy actions have been guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people, along with our responsibilities to promote the stability of the financial system.』

とまたお経文言が出てきましたが、次はお待ちかねタンホイザな資産買入の話。

『Our asset purchases have been a critical tool. They helped preserve financial stability and market functioning early in the pandemic and since then have helped foster accommodative financial conditions to support to the economy.』

と、APPの効用を説明してから返す刀で、

『At our meeting that concluded earlier today, the Committee continued to discuss the progress made toward our goals since the Committee adopted its asset purchase guidance last December.』

議論してどうなった?というのはご案内の通り。

『Since then, the economy has made progress toward these goals. If progress continues broadly as expected, the Committee judges that a moderation in the pace of asset purchases may soon be warranted.』

声明文にもありました予告ホームランキタコレ。

『We also discussed the appropriate pace of tapering asset purchases once economic conditions satisfy the criterion laid out in the Committee’s guidance.』

予告ホームランに続いてまさかのテーパリングのペースについての話をするのは少々意外(踏み込んでるじゃん、と思ったという意味です)でしたが、その時期がなんと来年の半ばには終了の巻とか決め打ちキタコレなのよ。

『While no decisions were made, participants generally view that, so long as the recovery remains on track, a gradual tapering process that concludes around the middle of next year is likely to be appropriate.』

ちょwwwwwwwwwwwwwwwテラ早打ちwwwwwwwwwwwwwwww

ま、アタクシは来年の夏には終わらせておかんと色々とやりにくくなるだろ、というような事は申しておったと思いますが、その通りの話がなんとこのタイミングで出てきてアタシャ大歓喜だよという所ですが、まああれだけ雇用が強くて物価の高止まりリスクがあるんだったら、テーパリングはちゃっちゃと終わらせておかないと対応余地がすくなくなるわな、と思うのでこれはアタクシ的には順当なのですが、世の中的にはちょっと前のめり感あるのかな、とは思いましたし、それだからマクラで引用したロイターちゃんが「タカ派転換」とか書くんだろうなあと思いました。FEDにして見れば別に前からその説明しとるがな、ってなもんだと思ってるかも知れませんが。

『Even after our balance sheet stops expanding, our elevated holdings of longer-term securities will continue to support accommodative financial conditions.』

ぶちかました後に、そうは言ってもテーパリングをしているだけなのでFEDの国債保有がウジャウジャ、と言うのには変化がないよ、という何時もの言い訳をお為ごかしに入れているのがお茶目。


・例の「テーパーと利上げは別物」分離工作コーナーが次になります

『The timing and pace of the coming reduction in asset purchases will not be intended to carry a direct signal regarding the timing of interest rate liftoff, for which we have articulated a different and substantially more stringent test.』

いつもの分離工作。

『We continue to expect that it will be appropriate to maintain the current 0 to 1/4 percent target range for the federal funds rate until labor market conditions have reached levels consistent with the Committee’s assessment of maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time.』

ここは金利のガイダンス文言を読んでるだけなのですが、こうしてみるとガイダンス文言が長すぎですな。

『Half of FOMC participants forecast that these favorable economic conditions will be fulfilled by the end of next year; as a result, the median projection for the appropriate level of the federal funds rate lies slightly above the effective lower bound in 2022.』

ここでドットチャートに絡めての話になりますが、SEPのドットチャートの通り(昨日ネタにしたので下に書いたものはありまする)で来年末時点で利上げ着手開始して0.00-0.25%よりも上の政策金利水準を予想しているのが18人中9人なので、そういう話をしています。

『Participants generally expect a gradual pace of policy firming that would leave the level of the federal funds rate below estimates of its longer-run level through 2024.』

この「2024年末の時点でも概ね中立金利よりも低い水準で政策金利が維持されるという見通しをFOMCパーティシパンツは行っている」って話については、昨日もアタクシ書きましたが、経済物価見通し、特に物価見通し、しかも現状がマンデートを上振れてエレベーテッドしているうえに、先行きサガランチ会長リスクがそれなりに認識されている、という中では、あまりにも低すぎじゃねえの、と思うのですが、このドット自体が「いやそうは言っても2%に収斂されるのでヘーキヘーキ」のメインシナリオ一本を前提にピンポイントで2024年末の適正政策金利だせとか言う無理ゲーをしているので致し方ないのも分かります。

・・・・・・やっぱドットプロットはマジで廃止した方が良いと思う。

『Of course, these projections do not represent a Committee decision or plan, and no one knows with any certainty where the economy will be a year or more from now. More important than any forecast is the fact that policy will remain accommodative until we have achieved our maximum employment and price stability goals.』

このドットはあくまでもただの個人の感想ですの世界だからプランでもハウスビューでもないですよ、
といつものようにヘッジクローズ。


・最後のまとめはまあ別に普通の事を言ってるだけなので特にどうということもない

『To conclude, we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to support the economy for as long as it takes to complete the recovery. Thank you. I look forward to your questions.』

ということで昨日今日とFOMCネタでした。確かアタクシ日銀ヲチャー(ウォッチャーではない)を自称していた筈なのですが、本業(?)の方の日銀を放り出してFEDネタにすっかりかかっておりますが、だって日銀クッソ面白くないし、昭和温泉旅館は次々と建て増しされるし、総裁会見はポンコツが想定問答をやる気なく読んでるだけで覇気もへったくれも無いし、ということですっかりFEDばっかりですが、勿論週明けには日銀をちゃちゃっとネタにする所存でありまする。


(以下、昨日アップした声明文とSEPに関する駄文を掲載します)





2021/09/23

お題「寝起きでFOMCだがテーパー予告ホームランキタコレ」

ということで今日はちゃんと予告通りにFOMCネタを成敗しに起きましたよあっはっは。なおMPMは知らんがな。


〇声明文:コロナ再拡大に一言言及しましたがテーパー予告ホームランキタコレの巻

今回
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20210922a.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20210922a1.pdf

前回7月
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20210728a.htm
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20210728a1.pdf

声明文はまあ予想通りでしたが、一応コロナ再拡大の話が出てて、ついでにこの後ネタにしますがSEPでも成長見通しの方は足元下げている(ただし先は上げているので実質チャラみたいなもんですが)のがなるほど〜と思いました。テーパー予告ホームランはまあこう来るだろうと昨日申しあげた通りですが、こんな感じの表現での予告ホームランは昔からのFEDのお家芸であるからして、普通に予想できることなので別に威張る程の事もない。

では参ります。

・第1パラグラフ:コロナモードは継続中

『The Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum employment and price stability goals.』(今回)

『The Federal Reserve is committed to using its full range of tools to support the U.S. economy in this challenging time, thereby promoting its maximum employment and price stability goals.』(前回)

殆どお経の世界ですが、これが冒頭に来るのはコロナモードとの認識を示すものです。


・第2パラグラフ:直近でのコロナ再拡大に言及してますが別に下方になったコンポーネントは無い

『With progress on vaccinations and strong policy support, indicators of economic activity and employment have continued to strengthen.』(今回)
『With progress on vaccinations and strong policy support, indicators of economic activity and employment have continued to strengthen.』(前回)

という全体認識は7月と同じ。

『The sectors most adversely affected by the pandemic have improved in recent months, but the rise in COVID-19 cases has slowed their recovery.』(今回)
『The sectors most adversely affected by the pandemic have shown improvement but have not fully recovered.』(前回)

コロ助絡みのセクターに対する文言に関しては表現が強くなっているのですが、返す刀で今回は新型コロ助の拡大が回復を遅らせている、となっているのですが、よくよく見ますとコロ助ケースが遅らせているのは「their recovery」でして、theirというのはこれ文脈から言ってどう見てもThe sectors most adversely affected by the pandemicを指すと思われますので、ニュータイプのコロ助が登場してきたナリ、と言っても別にオーバーオールなリカバリーに悪影響なのではなくて、もともとコロ助アタックを食らっていたところの回復が遅れる、という局地戦である、ってな話になっているので、一読した時はおーと思うのですが、二読するとそこまで警戒している訳ではない、ということになりますな。

なお、会見はまだ見てない(オープニングリマークだけ印刷した)のですが、これは多分オープニングリマークではフニャフニャとした話しかせず、QAのオーラルで説明があるんチャウか?って感じを受けております(個人のヤマ勘です)。

んでもって次が物価。

『Inflation is elevated, largely reflecting transitory factors.』(今回)
『Inflation has risen, largely reflecting transitory factors.』(前回)

おっちゃんドメドメジャパニーズなのでこの辺のニュアンスは英語母国語話者じゃないとイマイチ分からんような気がしますが、現在完了形でインフレが上がってきた、という前回の表現は、これまでの期間にインフレが上昇しているのが継続して今もそうですよ、って意味合いの筈で、一方で今回は現在形を使って表現しているので、インフレに関してはさすがにここから更なる上昇って訳ではない、とは認識しているんでしょうが、水準としては高いがな、という認識だと思います。

最後が金融環境。

『Overall financial conditions remain accommodative, in part reflecting policy measures to support the economy and the flow of credit to U.S. households and businesses.』(今回)
『Overall financial conditions remain accommodative, in part reflecting policy measures to support the economy and the flow of credit to U.S. households and businesses.』(前回)

ここは順当に変更なしですね。


・第2パラグラフ:先行きの経済パスはコロナ次第の逃げ口上をいつまで使うのやら

『The path of the economy continues to depend on the course of the virus. Progress on vaccinations will likely continue to reduce the effects of the public health crisis on the economy, but risks to the economic outlook remain.』(今回)
『The path of the economy continues to depend on the course of the virus. Progress on vaccinations will likely continue to reduce the effects of the public health crisis on the economy, but risks to the economic outlook remain.』(前回)

去年の今頃なら兎も角、経済が再開してペントアップ需要ヒャッハーとかやっている状況なのですが、コロナモードなのをいいことにここの説明を逃げまくっているのはちょっと如何なものかと思うけどなー。


・第3パラグラフ:クッソ長いパラグラフですがテーパー予告ホームランが来ました!!!

3パラは政策のロンガーランゴール&ストラテジーや、各種ガイダンス文言に沿った話をしているので正直冗長化しているんジャマイカと思う。クソ長い割には既にご案内の政策ガイダンスが続くのは退屈ですな。

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)

このパラグラフの先頭にはいつもこの悪魔祓いの呪文みたいなのがある。

『With inflation having run persistently below this longer-run goal, the Committee will aim to achieve inflation moderately above 2 percent for some time so that inflation averages 2 percent over time and longer?term inflation expectations remain well anchored at 2 percent. The Committee expects to maintain an accommodative stance of monetary policy until these outcomes are achieved.』(今回)

『With inflation having run persistently below this longer-run goal, the Committee will aim to achieve inflation moderately above 2 percent for some time so that inflation averages 2 percent over time and longer?term inflation expectations remain well anchored at 2 percent. The Committee expects to maintain an accommodative stance of monetary policy until these outcomes are achieved. 』(前回)

これはロンガーランゴールあんどストラテジーから、って感じですな。

『The Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and expects it will be appropriate to maintain this target range until labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time.』(今回)

『The Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and expects it will be appropriate to maintain this target range until labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time.』(前回)

ここは金利ガイダンス部分。で、ここからがAPPの話になります!

『Last December, the Committee indicated that it would continue to increase its holdings of Treasury securities by at least $80 billion per month and of agency mortgage?backed securities by at least $40 billion per month until substantial further progress has been made toward its maximum employment and price stability goals.』(今回)

『Last December, the Committee indicated that it would continue to increase its holdings of Treasury securities by at least $80 billion per month and of agency mortgage?backed securities by at least $40 billion per month until substantial further progress has been made toward its maximum employment and price stability goals.』(前回)

でもってまずはAPPのガイダンス文言が来ましてからの・・・・・・・・

『Since then, the economy has made progress toward these goals. If progress continues broadly as expected, the Committee judges that a moderation in the pace of asset purchases may soon be warranted.』(今回)
『Since then, the economy has made progress toward these goals, and the Committee will continue to assess progress in coming meetings.』(前回)

予告ホームランキタコレ!!!(゚∀゚)!!!!!

ということでこの部分ですが、まあ普通に読めば「とんでもない不測の事態が起きなければ次回FOMC会合でテーパリングの着手を発表しますよ」ですし、次回FOMCが11月の頭ですから、12月にはテーパー開始しますよと入れるか、それとも11月の途中からテーパーするかはよくわからん(普通に考えればキリのいいところで12月ですが、初回の月末が12月末になるのを嫌がるなら11月中に開始して1回月末の様子を確認しに行く)ですけど、まあその違いはかなり些少という感じですわな。

『These asset purchases help foster smooth market functioning and accommodative financial conditions, thereby supporting the flow of credit to households and businesses.』(今回)
『These asset purchases help foster smooth market functioning and accommodative financial conditions, thereby supporting the flow of credit to households and businesses.』(前回)

APPの効用に関する文言はいつも通りです。


・第4パラグラフ:政策判断においては様々な要素を総合的に判断しますよ的な文言は全文一致

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

ここはいつも通り変更なし。


・第5パラグラフ:今回も全員一致で賛成ですね

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Mary C. Daly; Charles L. Evans; Randal K. Quarles; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; Richard H. Clarida; Mary C. Daly; Charles L. Evans; Randal K. Quarles; and Christopher J. Waller.』(前回)

全員一致で予告ホームランということですな。


〇インプリメンテーションノートの方ではONRRPの限度額を拡大

PDFバージョンだと声明文の後にそのまま出てきますが、HTML版の方だと声明文の最後の方にImplementation Note issued September 22, 2021ってのがあってそこのリンクを踏まないと出て参りません。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20210922a1.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20210728a1.htm(前回)

September 22, 2021
Implementation Note issued September 22, 2021
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

でもってこちらはダラダラと引用していると長くなりますので、あたくしが見つけた前回との変更点だけネタにします。

『As part of its policy decision, the Federal Open Market Committee voted to authorize and direct the Open Market Desk at the Federal Reserve Bank of New York, until instructed otherwise, to execute transactions in the System Open Market Account in accordance with the following domestic policy directive:』

から先の部分が所謂ディレクティブになりますが、この中の5ポツ目に変更が発生しています。

『・Conduct overnight reverse repurchase agreement operations at an offering rate of 0.05 percent and with a per-counterparty limit of $160 billion per day; the per-counterparty limit can be temporarily increased at the discretion of the Chair.』(今回)

『・Conduct overnight reverse repurchase agreement operations at an offering rate of 0.05 percent and with a per-counterparty limit of $80 billion per day; the per-counterparty limit can be temporarily increased at the discretion of the Chair.』(前回)

あんまりFF市場の実効FFレートがどうなっているかとかまで守備範囲に入れていないので(サーセン)、そんなに詳しくは無いのですが、ONRRPの応札限度額を80ビリオン→160ビリオンにニバーイニバーイしておりまして、ONRRPは資金吸収系のオペレーションになりますので、FF市場で資金運用圧力が強くて金利が下がり気味なので吸収を強化しましょって話だと愚考します。政策インプリケーション自体はありません。



〇SEP:ドットチャートはさすがにこの程度は上方修正するでしょうというかまあ穏健な上げ方でネーノ

なお、例によって今朝は答え(市場の反応)は全く見ていないのですが、今回のSEPに関してはドットチャートの上方修正がそんなに大したもんではない(この程度は当たり前のように上がるじゃろ)という感じですが、何せパウエル狸又議長はテーパリングで散々狸寝入りをしていて、急にぶっこみにいくような感じになって来た、というような感じでストラテジーを組んでるように見えるので、テーパー始まって暫くくらいまでは狸寝入りモードの時間帯って感じな気がするんだよなー(個人の妄想です)。

今回
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20210922.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20210922.htm

前回6月
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20210616.pdf
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20210616.htm

見るのはPDFバージョンで見ますが、引用などはHTML版の方から引っ張って参ります。


・経済物価見通しは足元のコロナ再拡大を受けて微修正な下方修正って感じですかね

Table 1. Economic projections of Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents, under their individual assumptions of projected appropriate monetary policy, September 2021

今回から見通し期間が2024年まで伸びています、ということで数値は左から2021、22、23、24、ロンガーランになります。例によって手抜きなのでメディアンしか見ません。

Change in real GDP 5.9 3.8 2.5 2.0 1.8
June projection   7.0 3.3 2.4 --- 1.8

成長率見通しは足元が下がりましたが2022年が上がっているので、まあトータルすると下がっている感じでしょうが、2024年も2.0%で潜在成長率並みの成長ですよってゆうてるんですから


Unemployment rate 4.8 3.8 3.5 3.5 4.0
June projection  4.5 3.8 3.5 --- 4.0

成長率の手前が下がったので失業率は手前が上がるの巻ですが先行きは同じですね。しかしこれだけ見ると2021年には自然失業率よりも低い水準になっているって話なので2021年には利上げしても良いんだよな〜(棒読み)。


PCE inflation  4.2 2.2 2.2 2.1 2.0
June projection 3.4 2.1 2.2 --- 2.0

Core PCE inflation 3.7 2.3 2.2 2.1 ---
June projection   3.0 2.1 2.1 --- ---

物価に関しては手前の成長見通し下がってるのに手前の盛大に上がっていて、その後下がって2%という話になっているのですが、ホンマカイナ感の漂う数値ですが、まあ一応こういう数字になっています。とは言いましても・・・・・・・・・・・

物価の所はポイントになると思うのでちったあ真面目に更に見ます。

Central Tendency(上下3人分を抜いたレンジ)

PCE inflation 4.0-4.3 2.0-2.5 2.0-2.3 2.0-2.2 2.0
June projection 3.1-3.5 1.9-2.3 2.0-2.2 ---- 2.0

Range(これは全員の見通しレンジ)

PCE inflation 3.4-4.4 1.7-3.0 1.9-2.4 2.0-2.3 2.0
June projection 3.0-3.9 1.6-2.5 1.9-2.3 ---- 2.0

とまあそんな感じで、特に来年の所ではインフレ高止まりリスクを見ているパーティシパントも多い、というのが読み取れそうな感じですな。


・ドットプロット:うーんこの程度は上がるもんじゃねえかというか猫被っている感じはする(個人の感想です)

なお、全然市場の反応を見ないで書いているので、このドットが市場でどう反応したのか知らないままで申しあげますと、いやまあこの位は最低限ドットが上がるじゃろと思うし、見通しの数字を前提にしたらこのペースの利上げじゃ遅すぎませんかねって気がしますが、まあそれはそれとして。

Figure 2. FOMC participants' assessments of appropriate monetary policy: Midpoint of target range or target level for the federal funds rate Number of participants with projected midpoint of target range or target level

2021年の利上げ予想
前回:0人→今回:0人

というのはそらそうよという話で、問題は22年と23年の数字かと思うんだが。

2022年の予想
利上げ無し:11人→9人
利上げ1回:5人→6人
利上げ2回:2人→3人

ということで、めでたく(かどうか知らんが)平均値取るとゼロ金利解除になるのですが、まあここで平均出しても意味無いので、これは「来年利上げ派と来年利上げせず派が綺麗に拮抗」と解釈するのが妥当でしょうかね、よーしらんけど。

2023年末の水準
0.00-0.25%:5人→1人
0.25-0.50%:2人→4人
0.50-0.75%:3人→3人
0.75-1.00%:3人→1人
1.00-1.25%:3人→6人
1.25-1.50%:0人→0人
1.50-1.65%:2人→3人

2022年利上げ無し、の9名が1.00%から下の分布で、2022年に利上げした人が上の分布になっていると思います、さすがに。

でもって、それを見まするに、22年利上げ無しで23年も利上げ無し、という人はさすがに絶滅危惧種にまで減ったので、22年か23年には利上げでダンディールって所でしょうけど、23年から利上げ着手するとしても、1回しか上げないのが4人で、2回から3回上がるのが合計4人ってのもオモロイですな。

あとオモロイのは、前回もそうなのですが、来年2回利上げする人は再来年の4回利上げを見てて、来年1回利上げの人は再来年の3回利上げを見ている、というのが中々不思議ちゃんでして、結構この背景は何なのと言うのは興味ありますね。

先にロンガーランを出しますが、今回ロンガーランは引き上げられず、というか1名謎に下げてきておりまして、ロンガーランが動かされるかという思惑も(タカ派希望的に)あったようにも思えますが、ここが変わっていないですし、前回から上がったといったってそらあーた6月対比だったら上がって当の然でしょ、って思うので、まあ別にハトとまで言うのもどうかと思うがタカではないわな、とは思いました(なおしつこく申し上げますが市場の反応をノーチェックなので全然違ってたらゴメンやで)。


ロンガーラン
2.00%:1人→1人
2.25%:4人→4人
2.25-2.50%:1人→1人
2.50%:8人→9人
2.75%:1人→0人
3.00%:2人→2人

・・・・・・なぜか一人ロンガーランを下げてますな、ナンノコッチャ。

2024年末の水準(今回初出)

0.50-0.75%:1人
0.75-1.00%:3人
1.00-1.25%:3人
1.25-1.50%:0人
1.50-1.75%:2人
1.75-2.00%:1人
2.00-2.25%:6人
2.25-2.50%:1人
2.50-2.75%:1人

こちらに関しては、まあ2%以上の所にドットを置いている人は、「2024年末の時点では概ね中立金利に近いところまでの利上げが進む、ただし中立金利まではあと少しだけ残っているかな〜」という話だと思うのですが、そのお方が8人と、22年中利上げ派のうち1名が脱落してますね(たぶん1.75-2.00のところ)。

いやあの経済物価見通しでそんなのんびり利上げしてて大丈夫か、と言う気はしますが、まあ先般来申しあげていますように、テーパリングを無事に進行させないと利上げも蜂の頭もないので、ここはまあ猫かぶりというか狸寝入りというか、どっとは穏当に出して行くってのは有るんジャマイカと邪推したりしております。

・・・・・ということで概ね何時もの時間でアップしてみました。会見等はこれから読むわと思ってて、朝起きたら雨降ってたので読み物が捗るとか思ってたらなんか素晴らしい秋晴れになってるじゃあーりませんか。まあ後続アップは期待しないで下さいwww






2021/09/22

お題「MPMとFOMCがあるのでプレビュー雑談世間話で勘弁」

うーんこの。
https://jp.reuters.com/article/usa-autos-safety-idJPKBN2GH1ZU
2021年9月22日4:38 午前UPDATED
米当局、タカタ製エアバッグ巡り3000万台を調査

・・・・・・・何と申しますか。

〇MPMプレビュー雑談話というか日銀ネタ雑談話

まあ無風なんでどうでもよいのですが、先般来泡沫候補だと思ってた某氏が元気に勢いを増していて金融政策ネタも発言しているみたいなのでつらつらと雑談を書いておく。

昨日は新コロオペがあった訳ですよ新コロオペ
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210921c.pdf
2021 年 9 月 21 日
日 本 銀 行
新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーションの実施結果

2.貸付予定総額

貸付予定総額 241,811億円
(参考)貸出残高(注) 780,146億円
(注)2021年9月22日時点の貸付残高の見込み。

へいへいそうだっかという感じですが、ついでに昨日は7月積み期間における貸出促進付利制度による当座預金残高の特別マクロ加算適用の残高も公表されていまして、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210921a.pdf
貸出促進付利制度のカテゴリー別残高(2021 年 7 月)

カテゴリーT 48,868 億円
カテゴリーU 653,846 億円
カテゴリーV 591,666 億円
(注)積み期間における平均残高ベース。

とまあそんな結果になっておりまして、何ちゅうかマイナス金利政策やってる側から特別マクロ加算を70兆円近く積み上げてしまう、とかいう有様になっていますが、特にこの貸出促進付利のカテゴリー制度わけに関しては「マイナス金利政策を深堀した時にここの適用範囲や適用金利を調整することによって、マイナス金利深堀の際に起きる金融機関への負担を一部軽減することができるので、マイナス金利深堀がやりやすくなる」とかいう謎の触れ込みで突っ込まれた制度変更になっていますよ。

・・・・・・そもそもコロナオペだって本来は「コロナ対応したらその分マクロ加算2倍」だったのを、それだと札が集まらないもんだから「特別付利」とか言い出して、そこから残高が物凄い勢いで積みあがって行ったのですが、今度はその付利が金融機関のマイナス金利政策への負担軽減、とかいう話になってしまっておりまして、お蔭で新型コロナオペに関しても延長するネタは何とかスト方面から特にこの夏の時分は出てたりしましたわな。何となれば当預特別付利の扱いがどうなるかという方がインパクトあるから。

#なお、今回はさすがに時期尚早なのと、海外の流れがソッチジャナイという所なので最近になって言う何とかストが減りましたが、実際問題としてはこの夏とかは何とかストさん暇なのか新コロオペ延長して付利を維持しないといけないからとっとと延長を決めろ、位の勢いでコメントする向きもありーので呆れて見ていた。


一方でまあこれ自体は結構な話ではあるのですが、
https://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_etf.htm
指数連動型上場投資信託受益権(ETF)および不動産投資法人投資口(J-REIT)の買入結果ならびにETFの貸付結果
最終更新日:2021年09月21日
日本銀行が実施した、ETFおよびJ-REITの買入結果ならびにETFの貸付結果については、以下のとおりです。2021年の買入および新規貸付結果(約定日ベース、毎営業日更新)

というのを見ればわかりますし見なくても分かりますように、ETFとリートはコロナオペで更に買入ペースを引き上げる(キリッ)と言ってて実際は全然買入をしていない訳で、もちろんこちとらETF買入とか今すぐ止めれとしか思わんし寧ろ売り方考えろやボケとしか思わんので、この行為自体は結構なのですが、ETFを無限に買いそうな勢いの話をしておいて全然買わないというのも何だかなあとは思ったりします。

ちなみに超どうでもよいのですが、このページってアタクシの記憶に間違いが無ければ(よって間違ってたら指摘してちょ)昔は買入(カテゴリーの(2) 設備投資および人材投資に積極的に取り組んでいる企業を支援するためのETF、を含めて)が無かった日は「最新更新日」の日付が変わっていなかったのですが、いつのまにやら買入も貸付もない日であっても「最新更新日」が直近の日付になっているような気がするのですよね。でもってもしこのアタクシの記憶に間違いが無ければ、この「毎営業日更新」にしてるのって、上記ページを見た時に「ああ最後の買入がいつですね」というのが一見すると分からない(ファイルを見れば分かりますけど)ようにしてるんとチャウカ????とかそういう事は気にしてしまうのがアタクシの悪い癖なのですが、このページ昔から毎営業日更新でしたっけ???????


・・・・・・・・ということで、何を申し上げたいかと言いますと、置物リフレ政策の政策そのものの誤魔化しもそうなんですけど、今般のコロナオペネタとかでも、「3本の鉛筆」とか出して量を盛大にアピールしたりして、アタクシを含め多分金利市場の中の人達のあちこちから突っ込みを受けたと思うのですが、「既存のオペとコロナ対策を勝手に合算している」「危機対応で出したドルオペの額をアピールするのは良いけど危機が交代したらドルオペ減るのに増えたのを政策としてアピールするのは如何なものか」など申しあげていたら、いつのまにやら量のアピールはしないわ、ETFはダマテンでテーパリングするわで、何ちゅうかこの一つ一つの政策が、手段も含めて全部その場しのぎでぶっこんで、当初言ってた話と全然違うネタに化けていたり、無限に買うような言い方をしてテーパリングしたりと、まあディスイズジャパニーズガバメントって事なのかもしれませんが、テーパリングするならテーパリングする、でちゃんと説明しているFEDとかと比較してあまりにも対応が誤魔化し過ぎてませんかねえ、と思うのよ。

でもってですね、この何か勝手に骨抜きにしてみたり、勝手に当初の説明と違う建屋が出来てみたり、というようなインチキ運営をしていると、世の中的に日銀の存在感が無い時はまあそれでも(基本的に市場参加者に対しては優しいことをしているので)あんまりブーブー言われるでもなく、平穏無事に過ごすことが出来るのですが、いざ今回の自民党総裁選で急にどこぞの候補のように「日銀には雇用のマンデートを」とそれは経済団体に言えやヴォケみたいな事を言い出して、日銀に対して色々と要求がでてくるようなステージになってきますと、「あれ?ETF買入って言ってることとやってることが全然違うじゃん」というような話が噴出すると、割とややこしい立場に追い込まれてしまうんジャマイカって思うのよね(個人の妄想です)。


まあつまりなんだ、物価目標2%がどうしようもない状態であり、そもそも論として置物政策が根本的にダメダメだった、という事を総括できないまま、その場をごまかす現場力は日本最高の頭脳集団だけのことはあって現場力でドンドンと色んな施策を打って応急措置は出来てしまうのですが、その結果「この施策はそもそも何を企図してやってるんでしたっけ」ということについて一貫した説明が出来ない状態になっているというのは悲しいし、外部に対するコミュニケーションポリシーとしてもう無茶苦茶なんですけど、幸か不幸かこれまでは日銀の金融政策に対する関心が無くなっておりましたのでセーフだったのですが、本当にこのままで済むのか、というのは非常にアレではあります。

さてここで、2013年3月の総裁副総裁就任記者会見における中曽副総裁の発言を引用しましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf
総裁・副総裁就任記者会見要旨
―― 2013年3月21日(木)
午後6時から約1時間45分

以下、上記URL先本文5ページ(PDFでも5枚目)の中曽副総裁の発言の途中から
引用いたしますが・・・・・・・・・・・

『このように、日本銀行は、デフレの克服に向けて多くの政策を実施してきましたが、現在、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、引き続きゼロ%近傍で推移しています。未だにデフレ克服に至っていない、結果が出ていないという事実は、重く受け止める必要があると思っています。その意味では、政策面ではさらなる工夫の余地があったのかもしれません。』

『「具体的にどういう点か」というご質問だったと思いますが、1 つは包括緩和のもとで資産の買入れが十分であったのかどうか、あるいは成長基盤強化ないし貸出増加支援のための資金供給以外に採る道はなかったのか、それ以外の政策はなかったのかということです。』

『また、申し上げたように、数多くの政策を実施してきたわけですが、その結果として、政策全体の枠組みや狙いなどが複雑で、分かり辛くなった面があったのではないかと思っています。』

『こういった点も踏まえて、今後の政策立案、運営、そして説明の仕方について、今申し上げた点を是非活かしていきたいと思います。』

・・・・・・これ8年半が経過してどこからどう見てもブーメランになっている訳でございまして、いやまあブーメラン投げた本人は退任しちゃいましたので投擲した人じゃない所に華麗にぶち込まれているのには微苦笑を禁じ得ませんが、結局8年半が経過してまさに2013年に指摘されていた「数多くの政策を実施してきたわけですが、その結果として、政策全体の枠組みや狙いなどが複雑で、分かり辛くなった面があった(by中曽さん)」というのがそのままお返しすることになった、即ち何も反省をしていないというのが良く分かる図になっておりますので、いや真面目な話、またぞろ日銀の政策に対する話が出てくるようになると、割とタダでは済まん可能性があるんでネーノ、と思ったりしますのですがどうでしょうかねえ。


というただのプレビュー雑談でした。今日は気候変動何とかオペとかいうクッソしょうもないオペの要綱がでるんですかねえ。日銀がやる事じゃないし、まあ世間体で何かしないといけないのは分かるのですが、やるなら官民コンソーシアム作って研究センターを金研に作るとか、金融機関向けセミナーを全国展開して意識の向上に努める、というような、まあ毒にも薬にもならないことをやっておけば良いものを、何か変なキノコでもキメたかのように、ただで無くさえ複雑怪奇な今のオペに更にオペを追加する、という後任の事を少しは考えてやれよという物件をぶっこむことになったのですが、年内には目鼻つけてないと格好がつきませんね。今日出るかどうかは分からんけど、今までですと検討指示の後は何か出るのが仕様ですので。



〇FOMCプレビュー雑談と言っても「テーパリング分離工作」は成功しているので・・・・・・

でまあ今晩はFOMCでして、日銀とかマジでどっちでも良いのですが(なおあまり煽ると突如変な反応をするのが日銀の仕様なので要注意)、FOMCについてはコンセンサスは出来ているっぽいのですが、今やテーパリング自体は年内どこから始まるにしてもダンディールで、注目は利上げですよね。

しかしまあFOMCのタイミングでOECDちゃんったらお茶目なんだからもう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-09-21/QZS10MDWLU6Y01
世界のインフレ急進が経済への目先のリスク−OECD最新見通し
William Horobin
2021年9月21日 19:04 JST

『OECDは報告書で「インフレリスクは目先、上振れ方向だ。消費者の繰り越し需要需要が予想より強かったり、供給不足の解消に時間がかかる場合は特にそうだ」と分析した。「中銀は緩和的な金融政策を維持するべきだが、目標を上回るインフレを容認する期間と度合いについて明瞭なガイダンスが必要だ」と論じた。』(上記URL先より、以下同様)

『OECDは20カ国・地域(G20)のインフレ率については2021年が3.7%、22年は3.9%と予想。米国の物価圧力は段階的に和らぐとみるものの、来年を通じてインフレ率は3%を上回る見通しとした。「インフレ率は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)前に見られた平均を上回る水準に落ち着く見込みだ。目標を下回るインフレ率が何年も続いた後では歓迎すべきだが、リスクもはらんでいる」と分析した。』

うーんこの。

『OECDは警告を発するには至らず、多くの中銀と同様に現在のインフレ加速は一時的なものに終わるだろうとの見方を示した。「供給への圧力は徐々に弱まるだろう。賃金上昇は引き続き緩やかでインフレ期待は依然として抑えられている」と指摘。一方で「持続的な供給不足によって高インフレが長期化すれば、インフレ期待の一段の変化はあり得る」と付け加えた。』

そら警告発したら色々とハレーション起きるから発しませんわな。順当順当。


とまあそんな背景ですが、今回は「テーパリングが年内の早い時期に打ち込まれるリスク」と「ドットチャートが幾分かで効かない上方修正になるリスク」辺りを気にしているんじゃないかと思うのですが、さてどうなるやらということで以下アタクシの個人の感想ですの話ですけどね(フラグ建築士)。

この前のウイリアムズとかの発言を真に受けておくと、今回は「11月FOMCで正式に決定するだよテーパリング」みたいな感じでの予告ホームランにとどめて(そもそもテーパーは「十分に事前にお伝えする」という仕切りになっている)、その代わり余計な思惑を呼ばないために、事実上は今回の予告ホームランでダンディールってのを強調する(まあそういうのは期間のリスクを取るだけなのであまり良いスタンスとは思えんが)って感じで、その強調も会見のQAではなく、すくなくともオープニングリマーク、できれば声明文の中で「顕著な改善はほぼ達成された」「よってテーパリングの決定を近いうちに行う事が適切」くらいぶっこんで来るんジャマイカって感じです。

逆に今回手ぶらだと市場がゴルディロックスヒャッハーとかおっぱじめてややこしい事になると思うので、まあテーパーはダンディールって市場は思ってるんだから別にここでそっちの慎重姿勢を見せる必要は無いんでネーノとは思います。というかべき論で言えば今回アナウンスして10月か11月にテーパー開始すれば9カ月かけても夏にはテーパー終わるんだから早めにした方が良いとは思うんですけどね(12月からテーパーだと恐らく6か月から8か月で終わらせると思ってます、根拠はただのヤマ勘)。


でもって難しいのはドットでして、これ地区連銀総裁連中が暴れ馬になってしまうと結局それはそのまま出てしまうのでありまして、まあさすがに前回よりは上方シフトするのは待ったなしとしても、執行部サイドとしては、せっかくテーパリングと利上げの分離工作に成功したんだから、テーパリングが無事に進行してメドが着くまでは猫を被っておいた方が得策だと考えていると思うの(個人の感想です)。

ただ一方であの欧州ですらドイツ様にケツ叩かれてインフレ懸念に関するご説明をしている、という図がある訳で、あんまり物価高なのに猫を被っていると、そのうちFED何をやってるんだボケという話になりかねないので、その辺まで勘案すると、べき論としてはとっととテーパー開始して、利上げの方は猫を被っておく、というバランスの方が良いと思うので、テーパーを引っ張る意味は無いと思います(思いっきり個人の感想です)。

ドットプロットに関してはどこかのタイミングで外せたような気もしたんですが、とにかくあのプロットというのは「政策の時間軸効果」を出すのには最適なツールなのですが、今のように先行きが半ば以上出たところ勝負でぶっこみにいかないと行けないという状況においては、3年先の政策なんぞ数字のピンポイントで示す方がノイズになってしまうので、本当はこれを引っ込めておいた方が良かったのですが、たぶん今から引っ込めると「利上げ準備をしているのを悟られないようにする為に引っ込めやがった」って言われるのに100ジンバブエ日記という感じでございますので、まあ事ここに至ると引くに引けない(次にドットチャートを引っ込めることが出来るのは利上げ開始してペースが決まってからでしょうね)ので、これはパウエルつうこんのいちげきという感じだと思います。

いずれにしましても、テーパリングはやりまっせと言いながら利上げの方では、市場が喜びすぎない程度に猫かぶりモード、というのが本命のイメージで、それならまあ市場もあれないでしょ、とは思っています(フラグ)。

まあ何ですな、パウエルおよび執行部って、基本的に市場の反応を見ながら発言のトーンを意図的に微調整しているように見えますので(個人の感想です)、総てを真に受けるのは禁物(嘘は言わないけど)でして、例えば今回のFOMCでは、声明文辺り、まあそれよりもドットチャートだと思いますが、紙で出て来るものが結構なホーキッシュシフトをした場合には、いつものパターンですけど沈静化のために会見でパウエルがダビッシュな話をする可能性が高いと思います。逆にドットチャートがほぼヨコみたいな弱い場合は会見でインフレ動向に注意とかいう感じで釘を刺してくると思いまして(個人の感想です)、まあバランスを取ろうとしながらテーパリングは事実上決定、みたいな感じのコミュニケーションを使ってくると思います(フラグ)。


ということで金融政策ウィークになりますが、今晩のFOMCは面白いと思うので、明日はいつもの時間にとりあえずFOMCネタを投下しようかと手ぐすね引いてまっておりますし、目覚ましは平日のままにしておきます。日銀は知らんがななので金曜にゆるゆると。

#と大口をたたいたので明日はガチで寝起きFOMCシリーズ参ります!







2021/09/21

お題「FOMC前にECBネタの駆け込みをしておく」

パスポート番号を取らないで座席販売するのかと一瞬勘違いするヘッドライン。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210921/k10013269191000.html
ANA ネットオークションでファーストクラスのシート販売
2021年9月21日 4時02分

グッズを販売する、ということのようですが、最初これ見て「え?座席転売?」と思ったし次の瞬間に「パスポート番号とか取らないで国際線の座席売るの??」と思うので、題名の付け方をもっと工夫した方が良い、と思ったのだがそう読み間違えるのアタクシだけですかそうですかorz


〇FOMC前なので駆け込みでECBネタの続きでラガルド会見の残りを

日本の金融政策決定会合??何でしたっけそれ??????

ということでまずはECBラガルド総裁会見から残りを少々。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2021/html/ecb.is210909~b2d882f724.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 9 September 2021

・PEPP継続/終了後のキャピタルキー問題

途中と最後の所でECBの国債買入に関するキャピタルキーの質問が2本ありましてですね。

『With the winding down of PEPP, a degree of flexibility the ECB has introduced into state bond buying, will that go away? This is particularly important for Greek bonds, as they are not yet investment grade. Does the Governing Council think that it should be pre-emptive, clearing out this uncertainty, this lack of flexibility in respect to Greek bonds, and avert unnecessary speculation? Thank you very much.』

APPに関しても基本的にフレキシビリティーとか言って微妙な買い方をしていますが、さらにPEPPは緊急プログラムということなので買入国債の構成という点ではキャピタルキーの扱いもガバガバにしている、という背景がある訳ですが、PEPPが終わった後その辺りどうなるのよという話で、その辺はPEPPの縮小とか始まる前に明確化(と言ってもこの質問者の意図はギリシャ国債の保有を継続するみたいな事前アナウンスをして市場の不安を払拭しろって言ってるっぽいですけど)するのは如何かな?という質問。

『Lagarde: Well, I think it is really too early and unnecessary at this stage to discuss, you know, longer-term issues related to PEPP, and the term of PEPP. As I said, it will be discussed at length, we will enter into a process of a technical review, in-depth analysis of the situation.』

今時点で長期的なPEPPの予定やらありかたについて議論するには時期尚早にも程があるし先行きの情勢が不透明にも程がある、と言って逃げを打ちました。

『And certainly the situation of Greece will be taken into account, and addressed specifically, but I think it’s premature for the moment to do so.』

当然ながらギリシャ国債の扱いについてもそれは含まれますが今はその話をするには早すぎ、と来ましたら、最後の方で関連質問が出るの巻。


『My first question is in regard to the self-imposed limits that the ECB has on its monetary policy and its asset purchase programmes, especially obviously the Asset Purchase Programme (APP). It’s true that the ECB sovereign bondholding is converging towards the capital key, but if the APP is to be increased, which seems likely once the PEPP expires, the ECB holdings will be getting closer to the issuer limit, to the 33 per cent limit on the outstanding debt of individual sovereign countries. Do you deem it necessary to increase the issuer limit in order to make ECB Quantitative Easing (QE) programmes sustainable within ECB rules?』

PEPPやってる陰に隠れていますが、元々やってるAPPの方もホイホイと増えている訳で、一部の国では買入上限の33%に近付いているケースがあります。この点についてはECBのルール変更などを行うことによってAPP買入が継続できるようにするとかそういう計画は無いの??

『And the second question is whether you had any update on the impact the pandemic is having on the weaker, or highly indebted southern European countries that are more reliant on ECB support, such as Italy and Spain? Thank you.』

次の質問は個別国の話では必ずしもない話ですが、コロナ対策で国債大増発をしている南欧諸国例えばイタリアやスペインではECBのサポートに益々依存しているように見えるけど最近の状況をどう見てますかって話ですな。


お答え。

『Lagarde: Well, on your first question, thank you very much, but those are issues that will be debated in December. So, it’s not a matter for me to debate the exact limits in any shape or form, or the capital keys.』

3月期限のPEPPの扱いは12月に議論します、と言ってましたがこの件も12月に議論します、と言ってて、何かその間の会合を完全に地蔵会合にしようという意思が見え見えで何ともかんとも。

『All I know is that we have a mandate, we have an objective, we have a target which is to be reached, and we will have to use all the instruments that we have available. And we will decide on what terms and conditions will apply at our next meeting, and we will adjust accordingly if necessary.』

うーんまるで答えになっていない。

『On your other point, you know, what I observe is that those nations that were most affected by the pandemic, which are largely countries from the south of Europe, are the ones that are benefiting from the highest volumes of loans and grants, under the NextGenerationEU. And we very much hope that, with the plans that they have submitted, which have been approved, with the loans and the grants that are already being disbursed and will continue to be so, if there is delivery in consideration, then they will be in a much better position to respond to the damage that was suffered. What we can observe though is that, in relation to tourism, in relation to hospitality services, there has been a significant increase in activity and probably more so than was expected earlier in our projections. Thank you very much.』

2番目の方の質問ですが、こちらに関してはパンデミックの影響が落ち着いてきて旅行や対面サービスが復活して来ているので特に南欧にとっては状況改善してまっせ、という話でこちらも誤魔化しモードになっております。

でですね、複数の会合に渡ってラガルド姐さんの質疑を聞いて(読んで)いますと何となく傾向が掴めるのですけれども(個人の感想なので勘違いしているかも知れませんが)、だいたいこの姉御は、委員会の中でコンセンサスが固まっていたりする話になると物凄い勢いで明確かつ明瞭に説明してくるんですけれども、そうじゃない話になったり、現時点では猫を被っていないとイカン、というような話題に関する質問になると、急に説明が「質問の本論を外して違う話を延々と行う」とか「今は議論する段階ではない(んなわけはないのだが)」とか、そういう感じで煙に巻いたり狸寝入りしたりする、という傾向がある(個人の感想です)ように見えるの。

でもってですね、このAPP調子に乗ってやってたらキャピタルキーだの1先辺りの限度額だのの問題に引っ掛かりそうになっている件っていうのは、まあ例によって例の如く特に南北対立問題の起きる話なので、コンセンサスも蜂の頭もない、という状態になっているんだろうなあ、というのは想像しました。



・インフレとインフレ期待に関して追加で

金曜にも冒頭に近いところ(3つ目の質問)でインフレネタ(しかもバイトマンの発言を引っ張って来る、という煽り成分の高い)質問とそれに対する物価が上がらん理由の大演説をネタにしましたが、その他2問ほど。

『The first question is about inflation, which was 3 per cent according to a flash estimate. Do you think the balance of risk for inflation has shifted and is now to the upside? , And how was this reflected by the discussion of the Governing Council? (後半割愛)』

『in relation to inflation. We say very clearly in the risk assessment paragraph: ‘If supply bottlenecks last longer, and feed through into higher than anticipated wage rises, price pressures could be more persistent.’ I don’t think we could be more clear than this sentence is.』

ちょwwwwww困った時のステートメント棒読み攻撃キタコレといった風情でして、ドイツのおじちゃんとかアップサイドリスクの話をしているので、ここをゴリゴリと質問されたらカナワンチ会長とばかりにステートメントにかいてある通りです(キリッ)で逃げを打ってますね。

別の質疑からになりますので、上記の質問の続きではありません、悪しからず。

『(前半割愛) And the second was, 5-year-5-yearforward inflation break-evens are at their highest since 2017, up more than 50 basis points since the beginning of the year, and way more than the shift in inflation break-evens in the US. How much does such a shift affect your perception of the ECB policy path going forward?』

市場のブレークイーブンで見た時のインフレ期待が上昇してきておりますが、今後の政策運営に対する影響はどのようなものがあるでしょうか、その程度はどんなもんで??と来ましたが、とにかく目先は地蔵モードにしておきたいラガルドさんが影響あるとかいう訳もなく、案の定のお察し回答になる。

『(前半割愛)The 5-year-5-year, 1.75 per cent number, which as you noted is 50 basis points higher than what it was, which is at the highest in a long time, is something that we pay attention to, but it’s not the only one. We look at all the forecasts, the market survey, the analyst survey, the forecasters numbers. We look at all of that, and we also look at what other institutions are producing, because we don’t want to be data slaves, we are data-dependent in our policy determination, but we want to have a look at a whole range of such data, to make sure that it’s not only directionally in the same vein, but that it’s also consistent., And we look, we do look at the 5-year-5-year, but it’s not the only one, I can assure you.』

予想通りの「総合的判断」という便利な逃げ口上を使っておりまして、BEIで見た5年後先5年の予想インフレ率も一つのファクターですが、その他にサーベイだのフォーキャスターの数字だの、いろいろな数字がありまして、ワタシらは個別の指標の特定の数字に反応するのではなくて総合判断、という話をしています。

しかしまあ何ですな、置物一派の皆様(そういやチラ見だけして読む価値がないなあと思っているジンバブエ日記が税込み2970円のマクラ(物理)と化しているんだが)におかれましては、インフレ2%目標に向けてオートパイロットみたいな簡単な政策でデフレ脱却するわ雇用問題は解決するわ財政問題も好転するわで万々歳とかいう話しをしていましたが、最近は主要中銀でそういう「インフレ目標設定して物価の数値通りにやっていけば良い簡単なお仕事」みたいな話は鳴りをひそめて結構結構と思ってるんですが、自民党総裁選の政策で変な事を言い出しているアホウがいるようで頭がクラクラしますな。マッタクモウ。

何故か最後に話が逸れてしまいましたが、その他幾つか質疑有りましたが、物価の話とPEPPというかAPP全般に関する話が目立ったかな、という感じでして、物価については「一時的要因」で押し切る感じですが、資産買入に関してはそのままホイホイ買ってよいのかという話は微妙なんでしょうなあ(ラガルドさんは買入したいんでしょうけれども)と思いました。


〇まーたECBのスポークスマン状態のシュナーベルさんがAPPに関する講演をしているのだが

ECBはシュナーベルとパネッタが主に出てきて話をする所に、レーンも最近は割と参戦が多くなってきた(というかパネッタが少し頻度減ってレーンの頻度が上がったかな?という個人の印象)かなという感じですけれども、シュナーベルセンセ出ずっぱりの図ですね。

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2021/html/ecb.sp210920~ae2c7412dc.en.html
SPEECH
Asset purchases: from crisis to recovery
Speech by Isabel Schnabel, Member of the Executive Board of the ECB, at the Annual Conference of Latvijas Banka on "Sustainable Economy in Times of Change"
Frankfurt am Main, 20 September 2021

一瞬「ラトビア中銀主催と思われるのに何でフランクフルト何だ」と思ったがよく考えてみればオンラインで参加するからこういう表示になるのかね。

でもって、時間が無いので手抜き考察になりますが、お題の字面を見ればわかりますように、危機モードでの資産買入政策から経済回復期での資産買入政策の変化、というような話になっていて、あたくしもざざっと流しただけですけど、例によって小見出しを見ればだいたいお察しの論旨構成になっているかと思われます。

Stabilising markets through asset purchases
Protecting the monetary policy stance through duration extraction
From portfolio rebalancing to signalling
Asset purchases as a commitment device
Conclusion

ということで、危機のときにぶっこんだ資産買入は市場の安定化、金融市場のストレスによる金融引き締まりに対応した政策になっていますが、危機が一段落して回復期に向かう、という時期になると資産買入はポートフォリオリバランス効果からシグナル効果、つまり緩和政策のコミットメントを示すためのツールになって来ますよ、というような構成になっていますわな。

最後のまとめだけ引用しますね。

『Let me conclude.』

どうぞ。

『In my remarks today I have taken stock of the changing role of asset purchases as we gradually transition from a period of crisis into the recovery phase. The pandemic has shown that asset purchases are an indispensable monetary policy instrument during times of market stress and economic downturns, when the room for interest rate cuts has largely been exhausted. After having calmed financial markets, our asset purchases have helped to bolster confidence and shore up the economy and the inflation outlook.』

今日の講演では資産買入のストックの役割が、危機時と経済回復期において役割を変えてきている、というお話をしました。特に名目金利下限制約のある中では我々の資産買入は不可避だし、その後の回復局面で資産買入は経済物価情勢の改善に寄与しました。

『As economic conditions begin to normalise and the inflation outlook improves, there is a gradual shift in the way asset purchases benefit the economy as the portfolio rebalancing channel makes way for the signalling channel. Asset purchases can increasingly serve as a powerful commitment device, reinforcing forward guidance and reducing uncertainty around the future course of monetary policy.』

でもってさっきの小見出し並べたのと同じ話になります。何ちゅうかそれはホンマカイナという感じなのですが、これは要するにPEPPのペースを縮小していく、という中において「PEPPの残高自体は減る訳でも無いので、金融緩和政策を継続するシグナルとしては同じです」と言いたいんでしょ。まあ虫の良い話だとは思うのですが、この屁理屈で押し通すのが最近の中銀仕草。

『Given the remaining uncertainty regarding the pandemic and the economic and inflation outlook, our asset purchases - both under the PEPP and the APP - will remain crucial in the time to come, paving the way out of the pandemic and towards reaching our inflation target.
Thank you.』

先行き不透明なのでAPPにしろPEPPにしろ買入をしたストックが経済にプラスの効果を出し続けまっせ(だから引き締めとかじゃないですよ)ってので締めていますが、その買入増やすときと減らす(正確には拡大を減らしているだけなので減ってないのですが)ときで往復の屁理屈を自由自在に操作するのやめーやって感じですけど、まあこういわないと正常化を引き締めの第一歩に直リンされてしまうので、無理矢理でもそう言ってしまうんでしょうね、という感じです。

では本日はそんなもんで勘弁。







2021/09/17

お題「ラガルド会見の物価の話とPEPPの今後の扱いの話の部分を確認してみました」

ほうほう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210916/k10013262881000.html
自民党総裁選 野田幹事長代行が立候補表明 “推薦人20人確保”
2021年9月16日 18時25分

菅→野田という総理大臣の並び、という熱い展開の可能性がカシュカリ総裁の毛髪程度は出てきたじゃないですかヤダー。


〇ラガルドはんの会見ネタをしぶとくやろうと思ってたらインタビューでてるじゃないですかー

・BBGのインタビューは何か微妙なのでパス

うーん。
https://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2021/html/ecb.in210916~5b06e18ebc.en.html
Interview with Bloomberg
Interview with Christine Lagarde, President of the ECB, conducted by David Rubenstein, Bloomberg, on 13 September
16 September 2021

というのが出ているのでしょーがないから目を泳がせてみたんですが、、最初のうちやたらコビットナインティーンという単語が質問する方にホイホイ出る、という展開になっておりまして、うーん今ECBに質問するのはそこじゃなくて「the lady isn’t tapering」(先日の会見でのお言葉)の辺りから話を展開して欲しいんですよねー中銀ヲタ的には、と思ったんですが、どうせブルームバーグのインタビューだからブルームバーグが記事に出すでしょと思うのでそれ見てからネタにするかどうか判断します、ってもう記事あるかなとは思うのですが、ブルームバーグはとにかくWeb版における個別記事へのアクセシビリティーが信じがたいほど悪く(キーワード検索で必要な記事を拾ってくれないというのが致命的)、そりゃまあタダで出してるんですからそんなもんに金かける必要が無い、ってのも事実だと思うので別にまあトサカに来るような事でもありません。

ちなみに、最初の方から延々とコロ助ネタなのですが、リモートワークによる生産性がどうのこうのとかそういう話をECB総裁に聞いてどうするんだよ、と最初の方に目を泳がせていて思ったのですが、何なんでしょうかねこのインタビュー、マジで謎。


〇という訳で相変わらず進行が遅くて面目ないのですがラガルド会見ネタ

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2021/html/ecb.is210909~b2d882f724.en.html

・インフレに関する質問に大演説をぶっかましているが最終的には「お賃金」が重要っぽいですよ

これは良い煽り質問(いや別に煽っているわけではないのですけど)。

『President Lagarde, some of your colleagues, including Jens Weidmann, have recently emphasised the upside risks to the inflation outlook and that the high inflation could prove more permanent than currently expected. Could you tell us whether this view is widely shared within the Governing Council, and what the discussion was like at this week’s meeting?』

『A question on your monetary stimulus. How much notice will you give markets before the PEPP comes to an end?』

まあ後半の方はさておきまして、前半の方は一昨日ネタにしたシュナーベルさんの「皆さま(特にドイツ)のインフレ懸念にお答えしましょう」講演みたいなのを行わざるを得ないという最近の流れを反映しておりますが、ここにバイトおじさんの名前をぶっこんできているのが良い煽り。

回答が何かクッソ長いです(全般的にWeb会見は質疑応答が長くなる傾向があるのだが)。

『Lagarde: Well, thank you for the first question, because I’m going to take advantage of that one to say a few words about inflation and how we conducted our discussion on inflation, because it is a case that in many countries in the euro area, people are seeing prices increase and they can feel it.』

さすがに欧州でも物価がホイホイと上昇している事に対して色々と言われている(からこそPEPPの手仕舞いくらいやっておかんとマズーってなもんなんでしょうけど)んですね、というのは分かりました。では説明。

『So we have to really go under the skin of inflation before we actually assess whether it is temporary, whether it is going to last. And that leads us to the conclusion of our inflation outlook, which, as you know, is 1.5 at the end of the projection horizon.』

何でテンポラリーなのか、というのと見通し期間のケツでは1.5%の物価見通しになっている背景についてご説明させて頂きます、だそうですが、これがめちゃんこ長い。

『So what do we have at the moment? We have essentially three factors that are driving prices up.』

今の物価上昇の3つのドライバーとな。

『The first set of factors has to do with the reopening of the economy. I mean, this is the entire dynamic. It went down massively, and prices by the way at the time also went down. The economy reopened and, from a supply point of view, from a demand point of view, of course, there is pressure on prices. You can see that in what we call the base effects, a lot has to do with energy prices, which constitute a large component of these base effects on inflation, And you can see that in the German value-added tax (VAT) impact, which obviously will continue to play out until the end of the year. You see that in the carbon tax that was decided also in Germany. So, those are the base effects, reopening of the economy related factors.』

これ3つのドライバーと言って説明している割には、1つの要因に色んなコンポーネントを突っ込んで説明しているのが謎説明でして、最初のは「経済の再開に関連するもの」という話なんですが、そこに需給関係の一時的な(ということになっている)バランスの崩れとかあるのはまだ良いんですが、更にそこにエネルギー価格の話は持って来るわ、ドイツのVAT引き上げ(確かにパンデミック対応でVAT下げたのを戻した、というのは経済がリオープニングしたから、ではあるのですが)による表面的な物価上昇とか、炭素税導入とか前年比のベース効果とか、いろんな要素をぶっこんできているのですよ。

『As part of those reopening-of-the-economy factors, I would emphasize the supply bottlenecks effect, and this is something that the corporates and the companies are telling us, or telling you. There are bottleneck effects and not just in the semiconductor business, but in all sorts of sectors. These sectors are more or less affected, depending on how much they rely on either raw materials, or equipment, and where they get their supply from. And this is impacting the durable and the non-durable goods. Now, how strong will that effect be, how long will it last, is something that obviously remains to be seen. We have put that particular item - if you remember the monetary policy statement that I read for you - we have put that in the inflation analysis, where we say that if those supply bottlenecks last longer than expected, then it will increase prices and will have an upside pressure. But we’re not certain, because typically what we have seen in previous situations of that nature is that when you have a bottleneck in your supply, you try to find alternatives to that supply. And as a result of that the supply bottleneck impact on inflation is reduced and eventually goes away. In the same vein, if it’s bottleneck inflation that applies without too much effect on the demand front, it’s not necessarily conducive to second-round effects on wages in particular. So, that’s the second one [set of inflationary factors], which is a subset of the reopening-of-the-economy consequences.』

2番目、と言ってるのがこれまたクソ長くて、しかも話の趣旨から段落分けしにくい、ときている引用者泣かせの説明になっております。こちらでは「I would emphasize the supply bottlenecks effect」ってあるように供給制約による物価上昇の話をしているのですが、なんかやたらの長広舌でして、途中から「if you remember the monetary policy statement that I read for you」とか言い出して、会見冒頭でのステートメントに戻って説明しております。

こちらのステートメントでは供給制約の物価上昇は基本的に長続きしないと見ているものの、想定以上に長期化するリスクがあるので注意しないと行けない、というのがあるのでそこの説明がああだこうだと行われて、最後にセカンドラウンドエフェクトが起こる(特に賃金)ことには注意しないといけません、という話になっております。

『The third one, which is quite interesting as well, especially when you disaggregate it, is the inflation that is related to services, because we have seen a reopening of the economy on the service front, in the most recent months. And when you analyse where the inflation is in that segment of services, you see that most of it is actually coming from what was subject to social distancing and what obviously has been reactivated most recently.』

感染症対応でソーシャルディスタンシングなどを強いられていたサービス業関連セクターにおいて物価上昇が起きております、というのが3つ目なのですが、2番も3番もそれ経済のリオープンに絡んでるじゃんという気はだいぶするので、この切り方が何かあんまりクリアカットになっていない、というのは多少気になる所ではございます。

『So, those are the three key drivers of inflation at the moment. But, as you can see, many of them are of a temporary nature, and will last for a period of time, and will then either fall out of the period of reference, or will fade out over the course of time.』

とまあ今の3つのファクターは概ね一時的な物でありますよね、と来ますが、

『One component that we are addressing, monitoring, and checking very attentively is the second-round effect, is the impact that price increases will have on wage negotiations, and that is what could actually fuel a more persistent and durable price increase and inflation going forward.』

物価のセカンドランドエフェクトが起きるかどうか、という点は非常に注意しておりまして、特にお賃金に関しては今後の賃金交渉の行方に注意しているということで、お賃金の話を更に続ける。

『On that wages front we are not seeing much by way of significant increase. We will be very attentive to the autumn negotiations that are typically taking place in some countries.』

いいですねー幾つかの国では秋の賃金交渉なんてあるんですか。こちとら(内務省検閲により削除されました)。

『But at this point in time, we don’t expect these wage increases and these wage negotiations to be very strong and we see probably a gradual and moderate [wage] increase as a result of that. So, that’s what I really wanted to try to explain to you in response to your question about inflation.』

ということなので、結局キーになるのはお賃金交渉なのですが、物価が上がったから生活給確保のためにお賃金あげやがれコノヤロー、となった場合に2つ前の引用部分にあるように「that is what could actually fuel a more persistent and durable price increase and inflation going forward」とお賃金上がる→じゃあ販売価格強気で設定できるじゃん→生活給確保のため(以下ループ)となるのはまあ普通にヤバいわな、ということなので、賃金動向(しかも極東のどこぞの島国と違って欧州は総労働側の交渉力が高いですからねえ)はさすがに注視しているみたいだし、そこが強くなって来るといよいよECBもケツに火が着くし、着いた火に追加燃料をくべて回るバイトおじさんとかが出てくるのでそらもうエライコッチャよ。

よってお賃金みてりゃいいんでしょ大まかな線では、というのが欧州見るときのポイントになるんでしょうね。

あとは質問の後半のPEPPターミネートする前に先出しはあるのかみたいな話ですが、こっちは

『Now, concerning PEPP, you know, that’s a discussion that we will address comprehensively at our December meeting. As the term of PEPP approaches, we need to obviously discuss the terms and conditions of how that term occurs, and you will hear me again on this matter, certainly at our December meeting.』

PEPPは来年3月期限ですが、その延長の可否も含め、12月の定例理事会(では今回と同様にスタッフエコノミックプロジェクションもリバイスされる)でその辺の討議してアナウンスするよ、と来まして、この辺は上手いなと思いますが、これで12月定例理事会までは今回決まったことを淡々とやっていきますよ、という戦術でとりあえず時間稼ぎができますね。

・・・・・・・よく考えたら2023年の見通しが1.5%の根拠については説明されていないですが、これは毎度申しあげている通り、うっかり見通しを2%にしてしまうと、「利上げの条件満たされてるじゃん」とゴリゴリやって来る怪しからん人たちが続出する(個人の妄想です)ので、ここは2%目標よりも明示的に低くしておく必要がある、という「やりたい政策が先にあって、見通しに関してはそれに忖度して鉛筆を舐める」な事情があるので、まあその辺の鉛筆舐め舐めの世界ではあります。

あとですね、物価の話しですけど説明が微妙に混乱しているということは、恐らくは(物凄い妄想ですけど)物価に関するビューは全然纏まっていなくて、まとまっていないもんだkら今回引用したように、あんまりクリアカットな説明ができていない(まあバイト親父の言動見りゃそらそうだと思うけど)んじゃないのかなーって思いました。



・基本的には次の経済物価見通しが出るまでは地蔵ですというのが強調されるの巻

ちょっと先に行きまして、「12月会合で」の話に追加ツッコミが入ったのでそちらを。

『President Lagarde, so when you discuss PEPP in December, and the economy will have returned, the economic outlook will have returned to pre-crisis levels, will that then be a sufficient condition for you to declare the crisis phase over? And then, what should we all expect from November, what are you gonna do during your October meeting?』

12月会合で状況の改善が確認できたらコロナフェーズは終了!とやるのでしょうか、ああそれから11月とか10月とかで状況の改善を見て何かするとかそういうのは無いのか?だそうです。


『Lagarde: Well, we will all get together around the table, and we will assess the situation, because not a single monetary policy Governing Council meeting goes without us looking at the situation, assessing the financing conditions, and being attentive to the effectiveness of our measures. So, don’t worry, I’m sure we’ll have plenty to discuss and to review. But, as I said, the important meeting at which we will discuss the terms and conditions of the PEPP, when it comes to its term, will be in December. 』

まあここは当然ちゃあ当然ですが、「12月までは地蔵です」とは答えないで、常に状況をみており、全ての選択肢は常にテーブルにある、という話をしますが、やはりそうは言っても12月が重要という話をしていまして、

『You know, at our December meeting, there will be two things. One is, it could well be that our forecast is actually delivered upon, so we have caught up with the two years and we are back to the pre-pandemic, 2019 situation, which doesn’t mean that we are back to , the growth trend that we had in 2019, we are still far away from that, in our forecast. And we will have new projections, which will give us a projection not for 2023, but for 2024. So, we will have more substance to chew on in order to discuss the terms and conditions of the PEPP term. Thank you.』

理由は12月にPEPPの期限終了の後の扱い(再継続するのかどうかも含めて)を決めるんだが、更に経済データが揃った段階で経済見通しをだすから、という説明を思いっきりしておりますので、結局の所「毎回検討する」とか言うのは言うけど、やっぱり12月までは地蔵です宣言ですよねこれ。

まあ基本かく乱要因になり得るのはお賃金じゃないの、という話に戻るような気がします。


#この辺で今朝は勘弁していただきとう存じます





2021/09/16

お題「昨日のFSR別冊ネタを引用紹介させて頂きます(平伏)/ECBが色々と喋っているようで」

あらそうですか。
https://www.asahi.com/articles/ASP9G6H52P9GUTFK00K.html
立憲、アベノミクスの検証開始 負の側面への指摘で総裁選に対抗
会員記事
2021年9月14日 19時54分

どうせコロナの新規感染拡大が落ち着いてきたもんで慌てておっぱじめたんだろそんなのもっと前からやれや、と思って記事を見たらもっと残念な記述がががが。

『会合には、アベノミクスに批判的な経済学者の金子勝・慶大名誉教授が出席。約1時間にわたり議論を交わした。』(上記URL先より)

・・・・もっとまともな学者でキチンと批判できるの幾らでも居るだろうに、よりによって芸人教授呼んで話をさせてどうすんだか、ということで内閣官房参与にこともあろうにヨーイチ先生をお招きしたガースーといい勝負の人物鑑定能力に全ワシが泣いた。

#またバックグラウンドでウィンドウズか何かのアップデートが回っているみたいでPCの調子が麗しくありませんわ

〇許諾も頂きましたので昨日の続きと言うか解説ポストをご紹介

ということで昨日エアリプ(?)をしましたら早速許諾いただきましたので、gjgbbnchさんの一連のツリーをご紹介します。ツイッターの直リン踏むと職場のポリシー的にアレという方もそれなりに多いと存じます(そもそもIEだと表示されないし)ので、ご覧になりたい方はURLから読み込んで頂きたく候。

https://twitter.com/gjgbbnch/status/1437742918622584837

でもってツイッターが見れない方のためにご本人から引用の許可もいただいたので、図表はまあ自分で見てちょという事で主要部分を引用させて頂きます。誠に恐縮でございます(完全に人のふんどしで大相撲という風情になっておりますが、滝汗)。

『疑問点はこの赤枠でOHRが急に改善(しかも業務粗利益要因で)した理由ですが、結論から先に言うとおそらく米債先物ですね(続)』

『FSR別冊の2020年度の銀行決算を拝見しますが、業務粗利益は資金利益と非資金利益に分けられますが、どうやら非資金利益が主因です。大手銀なんかは資金利益の寄与も大きくてコロナ融資の恩恵受けてましたが、地域銀行は資金利益寄与してないですね…』

『非資金利益の項目を見てみると、外国為替デリバティブ関係利益だけ改善してて、可能性として事業法人の為替リスクのヘッジ相手の取引増もありますが、上期は変わらないのに下期に増加していることと、「米金利上昇を受けたヘッジ関連損益の改善」とあるので、米債先物で多分当たりだと思います。』

『以上より、OHRは急激に改善しない性質なのに、2020年度に急に改善した理由は、外債ポートのヘッジの債先売りの収益が業務粗利益に入っちゃったからですね。FSRのOHRは国債等債券損益と投信解約損益除くベースなので片手落ちなのですが、まぁデータ集計でこれ除くのもめんどいでしょうからね(完)』(ここまで上記URL先gjgbbnchさんのツイッターから引用)

でもって昨日も貼りました(本家の解説を見ますと図表いりなので良く分かります)が、FSR別冊の銀行決算に関してはこちらをご覧くださいませ。

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb210728.pdf
金融システムレポート別冊シリーズ
2020年度の銀行・信用金庫決算

日 本 銀 行
金融機構局
2021 年 7 月


・・・・・・・ということで、OHRが改善したこと自体は慶賀すべき話なのですが、ホンマにこれ持続的な動きになり得るのか、というとちょっとよくわからんし、この支援金みたいなのがあるからと言って変な無理をしだすような動きだけは起きないで欲しいな、と思うのでありましたですし、まあ日銀の問題意識も分かるのですが、何らかの補助金みたいなの(特別付利ですからねえ)を出すということになると、補助金出す出さないの判定の際に、何らかの閾値を設けないといけなくて、どうやっても制度的なものの限界と申しますか、制度アービトラージみたいなものが発生する余地が出てしまい、それが別の所で変なハレーションを起こすリスクがある訳で(近年における極端な例を言えば・・・・リスクアセットの判断で格付けを使うのはまあ悪い訳ではないのですが、その制度のアービトラージ的な形でサブプライム住宅ローンの証券化AAAトランシェが魔法の低リスク高利回り商品扱いになってしまう、みたいな奴ね)、まあこの制度自体でそこまでトンチキな事は起きなさそうな気もするのですが、まあそういう種類の事が無い事を願うものであります。


〇ECBの高官喋り過ぎぃ〜

・レーン理事の「資産購入規模は政策スタンスの目安にならず」とは何事ぞ

一応ロイターさんのネット版は寝起きでチェックするのですが、(なおFOMCの結果をネタにするときなどは読まないです、先入観を持ちたくないから)このヘッドラインには腰が抜けそうになりますた。曰く、

https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-lane-idJPKBN2GB215
2021年9月16日2:57 午前
ECB政策スタンス、資産購入規模は目安にならず=レーン専務理事

ちょwwwwおまwwwwwwwwと思って記事を拝読。

『[フランクフルト 15日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のレーン専務理事兼主任エコノミストは15日、ECBの政策スタンスを推し量るには、資産買い入れの規模ではなく借り入れコストが最善の目安になるとの考えを示し、ECBは政策を引き締めつつあるとの見方を否定した。』(上記URL先より、以下同様)

ええええええええええ!!!!

『レーン氏はセミナーで「金融政策スタンスを資産買い入れ規模で推し量るのは望ましくない」と指摘。現行の措置は機能しているとし、緩和的な政策でコアインフレ上昇が支援されていることを喜ばしく思っていると語った。』

いやいやいや、「借り入れコストが目安」ってお前ら貸出金利の規制金利をしてるわけじゃないんだから、そこはお前らの政策による結果のほうであって、「結果的に借り入れコストが下がっているから我々の政策スタンスは緩和的」って何だよその結果オーライ理論。いやまあ何か言いたいことの趣旨はわかるんですけど(「PEPPのペース縮小は引き締めではない」って言いたいんでしょ)、レーンさんとは思えん豪快な屁理屈キタコレ!

と思ってECBのサイトに今日もお出掛けした訳ですが・・・・・・・・・

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/html/index.en.html
By date
Want to analyse our speeches?
Researchers who want to study the content of our speeches can now download all speeches in a single, easy-to-use dataset.

15 September 2021
Philip R. Lane: The ECB's monetary policy strategy review - IMFS Policy Webinar
Presentation by Philip R. Lane, Member of the Executive Board of the ECB, at the IMFS Policy Webinar

15 September 2021
Isabel Schnabel: The monetary policy non-puzzle in bond markets
Speech by Isabel Schnabel, Member of the Executive Board of the ECB, at the Bond Market Contact Group meeting

13 September 2021
Isabel Schnabel: New narratives on monetary policy - the spectre of inflation
Speech by Isabel Schnabel, Member of the Executive Board of the ECB, 148th Baden-Baden Entrepreneurs’ Talk
ENGLISHOTHER LANGUAGES (1) +

シュナーベルさん昨日ネタにした以外に更に喋ってるのか・・・・・・・・・


ちなみに余談ですが、さっきのトップページの中にSpeeches datasetって所へのリンクがあって、

https://www.ecb.europa.eu/press/key/html/downloads.en.html
Speeches dataset

『To assist researchers in the field of central bank communication, we offer a precompiled dataset containing the content of all speeches together with limited metadata.

We hope that by making this dataset freely available, we will stimulate natural language processing research on the impact of our speeches on the market and beyond.

Download all speeches (CSV file) last update: 04 August 2021』

という何か凄そうなものがあるんですが、まだ踏んだことは無いので使って便利だったという方がおいででしたら是非ご教授下さいませ、ってお前が先に踏めですかそうですねあっはっは。

・・・・・すいません話が逸れました。肝心のレーン専務理事の講演ちゃんの方は何故かスライドしか無くて、

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2021/html/ecb.sp210915_1~d38558c45a.en.pdf
The ECB’s monetary policy strategy review
IMFS Policy Webinar
Philip R. Lane
Member of the Executive Board
15 September 2021

ということで、お題でお分かりのように、金利ガイダンス文言の説明(スライドにリンクがあるのですが、こちらのリンク先はやはり先般ぶっこまれた金利ガイダンスとストラテジー関連のドキュメントになっているので、ロイターさんの記事での説明の文脈は良く分かりません。


でもって、何ぼ何でも「借り入れ金利は下がっているのだから政策スタンスは変わっていない」って政策スタンスが変わったからと言って翌日にいきなり借入金利上がる訳ねえだろ(政策金利を上げたわけではないのですから当たり前)という事で、ロイターさんの記事での表現が実際に行われていると仮定しますと、まあ無茶苦茶な理論にも程がある、ということになりますが、先ほども申し上げましたように、PEPPのペース縮小と全体的な政策スタンスについての分離工作を行いましょう、って趣旨でこの話をしたんだろうなーと思う訳ですよ。

先日ネタにしたサッチャー演説を引っ張って「私たちはテーパリングなんて一切していないんですからね!」と言ってたラガルド総裁もそうなんですけど、とりあえず「政策スタンスは変更していません」と言いながら資産買入の収拾に入っていく、というのが最近のトレンドになっておりますなーという感じでございますな。

FEDの場合はありゃどう見てもテーパリングを無事にさっさと終わらせておくまでは猫をかぶっているという雰囲気がヒシヒシと伝わって来るのですが(個人の霊感です)、ECBの場合はその辺どこまでどう考えているのかがイマイチワタクシ良く分かっていなくて(普段からレーンとシュナーベルとパネッタの講演を読み込みまくれば分かる気がしますがそこまで手が回らん)、その辺がイマイチ分からんですタイ。

つまりですね、昨日ネタにしたシュナーベルさんの講演のマクラ(というかお題)にもあったように、ドイツ様を中心とした方面が物価上昇に対して怒り心頭滅却しているので、あんまり何もしないのもヤバイので、とりあえずコロナ一時措置としてぶっこんでいるPEPPの拡大を止めて行く方向でお茶を濁していく、というだけの話なのか、そこから先の物価がサガランチ会長リスクまで見込んでいて、単に猫被っているだけなのか、というのがイマイチ良く分からんというお話しではありますが、まあこちらに関しても結局のところは「一時的です」と言っているのがそのまま行くのか、はたまた物価がサガランチ会長になってしまうのか、という結果次第だと思うので、やはり来年に向けて思惑が出るネタは物価なんでしょうなあ(特にECBの場合はFEDみたいに「そうは言いましても雇用がまだマンデート未達なんですよねー(鼻ホジホジ)」という言い逃れするのが理屈上面倒なだけに猶更)と思うのでありました。

と言いましても、これがまた物価がと言ったときに、一部の商品が上がったけど下がったーだけで喜んでいる場合ではなくて、いわゆるセカンドラウンドエフェクトが起きているかどうか、を判断するって話になるので、物価指標のヘッドラインだけ見てるとこれまた判断見誤る可能性があって、エコノミストでも何でもないアタクシ的には色々な解説を確認するとか、最終的には中銀様がどう見ているかを確認する作業でもせっせとやらんと分からんなー、と思うのでありました。

#なんか途中から話が逸れてしまって面目ない


・シュナーベルさんの昨日のネタはまあアレで終了しておきます

えーっとですね、昨日ネタにしたシュナーベルさんの講演ですが、改めてマクラの先を(アタクシなりに)読んでみたしてみたんですけど、説明自体は丁寧なんですけど、言ってること自体はラガルド総裁の会見とか、今般の政策決定における政策説明のステートメント(ラガルド会見の頭に説明している奴から新解釈が出ているという感じではない(個人の感想です)ので、まあパスして後でその後シュナーベルさんがぶっこんでいる講演を読んでみようかと思います(ネタにするとは言っていない)。


〇ラガルド会見の続きを少々

レーンさんの謎発言のリファレンス取りに行く(他にないか探しちまったぜ)のと、なんかのアップデートがバックグランドで回ってやがった(もう終わったようで只今快適に動いております)ので時間が無くなってしまうまなのですが、最初の質疑だけで終わっておりますので続きを少々。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2021/html/ecb.is210909~b2d882f724.en.html


・定義に関する質疑

2番目の質疑になりますが。

『Thank you for the opportunity, and nice to see you on Webex. President Lagarde, I have two questions. My first question is on financing conditions. For how long will the ECB preserve favourable financing conditions, to support the recovery? Also after the COVID crisis, in a sense, will favourable financing conditions end with the end of the Pandemic Emergency Purchase Programme?』

『And my second question is on PEPP. As the Coronavirus crisis enters a new phase as you have described, with the new Delta variant, but also a better economic outlook and a good pace of vaccinations, can you tell us a bit more how the Governing Council intends to judge and assess the end of the COVID crisis phase, given that PEPP will end when the COVID crisis phase is over? Thank you.』

こうやって「何を持ってそういう話になるの」的な質問大好きなのですが(アタクシは屁理屈捏ね太郎なので)最初の質問は「financing conditions」に関して、おんどれらはどの時点まで「favourable financing conditions」を続ける気なの??って話。PEPPはその名の通りパンデミックエマージェンシーパーチェースプログラムなのですが、その狙いは「favourable financing conditions」を作って維持する、って話だったのですが、んじゃあPEPP終わったら「favourable financing conditions」じゃなくてもエエノンカイナ(多分そうではない)と言う質問をしまして、この曖昧な文言の説明を求めるという作戦。

でもって2番目はPEPPの終了基準が「COVID crisis phase is over」なのですが、その定義は何なの?あんさんら感染症専門家でもないのにどうやって判断するの?って話でこれは何か以前も誰かに聞かれていた記憶がちょっとある。

では答え。

『Lagarde: Well, thank you very much, and it’s very nice to see you as well. This is a significant improvement from previous press conferences, so we’re probably heading in the right direction here. The next step will be to actually see each other with appropriate distance between us.』

最初に7月の会見よりも状況が良くなった、と挨拶のように述べた後、

『On the commitment for favourable financing conditions, I’ll remind you that that was decided at our Governing Council meeting in December, under the auspices of the PEPP. So PEPP is an emergency programme, very specifically designed for the circumstances that we have been facing, that we still face today, but that are currently clearly improving.』

PEPPに関しては緊急プログラムというのをやたら強調していまして、まあこの強調の仕方ですと、FEDのテーパリングとは話のレベルが違いますが、「政策スタンスの変更ではありません」と言いながら手じまいに掛ろうとしてて、ただ単純に手仕舞ってしまうとその先まで市場が織り込んで金利が上昇しやがるので、そういうタントラムを避けながら手仕舞うって事を考えていそうに思いましたがあくまでもアタクシの個人の感想です。

『And this commitment to the favourable financing conditions is one of the two parts of the joint assessment that we conduct to determine our pace of purchase.』

でもってフェーバラブルファイナンシングコンディションの話。

『So, we have a framework that is very clearly designed and that operates in relation to PEPP. The day when PEPP is over will presumably indicate that financing conditions are favourable, and that the economy will have recovered in such a way that the downward impact of the pandemic on our inflation outlook has been resorbed.』

『At that point in time the job is not finished, because we are still targeting our 2 per cent, which is now clear and straightforward, as a result of our strategy review. Symmetric 2 per cent, in the medium term, with a special focus resulting from the lower bound.』

『So, that will continue, and the driver of our work going forward after PEPP will indeed be the mandate that we have to maintain price stability, as measured by our target of 2 per cent inflation.』

うーんこの蒟蒻問答。結局の所「今はまだ目標達成に遠いから緩和を続けます」という話をしているのは分かるのですが、フェーバラブルファイナンシングコンディションをどうやって計測するのかという話に関してはフワフワになっておりますなこりゃ。結局のところはジャッジメンタルだ、って事なんでしょう。

『On your second question, which has to do with PEPP in general: What we have done today, with the Governing Council members, unanimously, is to calibrate our pace of purchases in order to continue to deliver on our goal of favourable financing conditions.』

PEPPの話になりましたが、ここでもPEPPのゴールは「in order to continue to deliver on our goal of favourable financing conditions」と説明していまして、まあ結局定量的なものではなくてあくまでもジャッジメンタルなフワッとした話。

『We have not discussed what comes next, and this is something for which we will prepare in the months to come, and I think there will be more interesting matters that will be debated in December, and of which, clearly, you will be informed in due course.』

何かフワフワした話でかわしておりまして、結局この辺の話は「総合的判断」を何だかんだと尤もらしいキーワードを使って尤もらしく説明してるんだろうな、というのは把握しました。

#今朝は時間の関係でこの辺で勘弁して頂きとう存じますです、はい




2021/09/15

お題「FSR別冊ネタ続き(読者様のご教授によります)/シュナーベルさんが「インフレに対する皆様の懸念に説明をしましょう」講演とな」

またこいつらか!
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210914/k10013257951000.html
維新 コロナ踏まえ国会議員給与3割削減など 各党に働きかけへ
2021年9月14日 4時46分

どうせ3割減ったからと言って活動に支障を来すわけでも無し、代々木方面の誰かさんみたいに政党助成金辞退してるならともかく、そっちは貰ってる訳だし、いずれこいつら議員が3割減らすんだから公務員も減らせとか言い出すに100ジンバブエドルという感じですが、そんなに「身を切る改革」が好きなら二重橋前に整列して皆さん揃って身を切って頂いても構わなくってよ。


〇昨日禿しく疑問に思っていた事への答えが!(ありがとうございます)

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb210910.htm/
地域金融強化に向けた取り組み
―地域金融機関の経営基盤強化と日本銀行の施策―
2021年9月10日
日本銀行金融機構局

昨日こちらをサラッと読ませていただいたわけですけれども、改善が進みにくい、とされている地域金融機関のOHRが2020年度に突如盛大に改善してる、という部分でアタクシこのように昨日書かせていただきましたんですよね。

(以下昨日の駄文より引用開始)
でもって「図表 3 OHR」というのが文章の下にあるのですが、これ見ると確かに2020年度の所でOHRが盛大に改善しているのですが、日銀が地域金融機関がどうのこうの言い出したら急に今まで悪化し続けていたOHRが突如改善する、とかいうのを見ると「政策効果」とか言う前にまず先に眉に唾つけて読みたくなってしまうのがアタクシの仕様になっております。

これ見ると、特に地域銀行の経費要因でガツンと下がっているのと、それよりも何よりも業務粗利益要因が突如従来の悪化寄与から好転寄与の方にドテンしているのが、このグラフを見る方としては如何にもアレでございまして、うーん何だこの好転は、と素直に喜べないのですが・・・・・・・・・(引用ここまで)

ということで、業務粗利益要因が突如好転している件について調べて頂いてツイッターで御解説して頂きました方がいらっしゃいまして、誠にありがたき幸せ。

・・・・・・・・ブログとかだと割と気にせずにリンクしちゃったりするのですが、ツイッターだと盛大にご紹介して良いのか良くないのかはご本人の許諾を頂かないと、と思いますので詳しくはご許諾をいただいてからご紹介しようと思いますが、どうも今回の地域金融機関のOHR改善のうち業務粗利益部分においては、前年比の改善状況で見ると非資金収益のうち「外国為替・デリバティブ」部分が結構な寄与をしているようです(と受け売り受け売り)。

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb210728.pdf
2020年度の銀行・信用金庫決算

実はこれ、URL見れば分かるように7月に出ているんですが、例によってどうせ文字化けするだろと思って斜め読みだけしてネタにしてなかったのですが、今コピペをしたらこちらの文字コードもANSIでフォローされている文字(文字化けしない)ということに今更気が付き、冷汗三斗という風情になっております、いやはや何か雑な事やってるなオイラ。

こちらの本文14ページのケツ(PDFだと16枚目)にこのような記載があります。『(4)非資金利益』って所です。

『非資金利益をみると、大手行では、役務取引等利益が、国内業務部門でのシンジケート・ローン等の増加や、国際業務部門での預貸業務関連の手数料収入等の積み上がりから、増加した。このほか、外国為替・デリバティブ関係等の利益が、米金利上昇を受けたヘッジ関連損益の改善等に伴い増加し、非資金利益全体では前年比+14.7%の増加となった。』

『地域銀行では、役務取引等利益や外国為替・デリバティブ関係等の利益が増加し、全体では前年比+9.8%の増加となった。』

「外国為替・デリバティブ関係等の利益が、米金利上昇を受けたヘッジ関連損益の改善等に伴い増加し」ってありますように、米債のヘッジで先物なり何なりを使っていて、そっちが米債金利上がって(2020年度は年度の頭が2020/4の頭ですからそらもうね)(゚д゚)ウマーとなった部分が効いているようですの。

・・・・・うーん。そうなりますと、アタクシが昨日引用した今回のOHR云々のレポートのまとめ部分の最後にあったあの記述もやっぱりこう何と申しますかアレですわな。また昨日の駄文を引用します。

(昨日の駄文より引用開始)
『特別当座預金制度が対象とする 3 年間は、多くの金融機関における中期経営計画の時間軸でもあり、相応の変化を生み出すことのできる期間と考えられる。本制度の 1 年目となる2020 年度については、地域銀行・信用金庫の多くが経営基盤強化に向けた取り組みを加速させた結果、OHR が大きく低下した13(前掲図表 3)。』

むむむ?ということでこの図表3の辺りを読むのですがその前にこの「おわりに」の部分を読み進めてみます。

『残り 2 年の期間についても、対象先金融機関が経営基盤強化に取り組むことで、10 年以上にわたって続いてきた OHR 悪化の流れを断ち切ることができれば、画期的なことと言える。』

ホンマカイナ、と思うのがアタクシの悪い所ですが、これまた後で図表3の辺りを読みましょう。

『日本銀行としては、本制度が地域における円滑な金融仲介機能の発揮と金融システムの安定確保に資するものとなるよう、今後も地域金融機関との対話を深めていく。』

一方的な自己満トークにならないようにご注意いただきたいものです。(引用ここまで)

何か日銀様が音頭を取って地域金融機関に取組みを促したら突如今まで改善が難しいとされていたOHRが改善、しかも経費の盛大な削減が要因ならまだ話は分かる(なお経費要因の改善もそれはそれである)のですが、2007年以降、今までほぼほぼOHRの悪化要因の方で寄与していた業務粗利益要因が突如OHRの好転要因に寄与する、とか話がうますぎると思った(しかもそもそも論としてOHRの改善は構造的に大変って同じレポートで解説してるんだし、当の日銀様が)んですよねー。何だかなー。


ということで、詳しい解説はツイッターで御解説頂きましたお方の所へ、って鍵アカウントじゃないからご紹介しても良いのかも知れないのですが、ブログだと割と躊躇なく紹介しちゃうんですけど、SNSってどどーんとご紹介して良いのかどうかってのを躊躇する、という謎ルールがアタクシの中にありますので、まあ頑張って探してちょということにとりあえずしておきます。いやもう本当にありがとうございました、とエアリプ(こちらからはツイッターじゃないのでエアリプというのも何ですが、笑い)致しますです、はい。

#それから温かい励ましのお言葉まで頂きまして誠に感謝です


〇ほうほう欧州でも特にドイツ様でインフレに対するイチャモンが出ているとな

https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

ECBのサイトを見たらシュナーベル姐さんの巨大サムネが登場していたので踏んでみたらこんな講演が出てきました、というかこれ昨日の朝出てたのは知ってたのですが(汗)、改めてトップページのサムネにある紹介文を見ると、

『While rising inflation understandably worries people, current inflation rates should be interpreted with caution, says Executive Board member Isabel Schnabel. Over the past two years, people have on average lost less purchasing power than on average over the last 20 years.』

ってあるので、やっぱりこれは踏まないと行けない、と思って踏んでみるとこんなものが出てきます。

https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2021/html/ecb.sp210913~031462fe79.en.html
SPEECH
New narratives on monetary policy - the spectre of inflation
Speech by Isabel Schnabel, Member of the Executive Board of the ECB, 148th Baden-Baden Entrepreneurs’ Talk
Frankfurt am Main, 13 September 2021

ラガルドはんの会見ネタが全然進まないのに食いつくわ、見たら量が長くてネタにするのに結構骨だわということで、(ノ∀`)アチャーって感じではあるのですが、今回は「While rising inflation understandably worries people, current inflation rates should be interpreted with caution」である、ってのをネタにするのが主眼ということで、物凄く手抜きでネタにしますです、はい。


よってマクラの方を主にネタにする、というシュナーベルさん的にはそっちじゃないよって言われそうではあるのですが、こちらは極東のローカル言語でネタにしているのでシュナーベルさんに見つかる訳でもないのでまるで気にせずに(笑)マクラの部分の味わいを感じたいと思います。という訳で冒頭から引用して参ります。


・講演本文はまあいつもの内容なのですがマクラの方が面白い(たぶん講演者には申し訳ないのだが)

この講演は最近の物価上昇に関する懸念にお答えします!って企画なのですが、今申し上げましたように、ユーロ圏でも遂にインフレアカンがな、という論説がのようです

『Sentiment in the euro area is brightening. Despite growing COVID-19 incidence numbers, consumers and firms are becoming more upbeat about the future. The European Commission’s economic sentiment indicator has improved markedly since the beginning of the year and was near record highs in August.』

ユーロ圏経済はコロ助からの回復が著しいでっせ、と言う話が最初にありますが、その次からがサムネ紹介文のところになります。

『At the same time, consumer prices are increasing at a faster pace, following years of very low inflation.』

キタコレ!

『In August, inflation in the euro area stood at 3%, significantly exceeding the 2% mark that the Governing Council of the European Central Bank (ECB) has defined as its new medium-term inflation target (Slide 2).』

8月のユーロ圏のインフレーションは中期的な目標としている数値をsignificantly exceedingしていると。

『In Germany, the inflation rate, as measured by the Harmonised Index of Consumer Prices (HICP), hit 3.4% in August - a level not seen in 13 years. And it is likely to continue growing until the end of the year.』

その中でもドイツ様の8月HICPベースの物価は過去13年間に見たことのない3.4%になっておりまして、年末まで上昇傾向が続くと見られます。


・世の中的な物価上昇による懸念が出てきててこんなのがありますよという話をしておる

『People are understandably worried about these developments. Higher inflation lowers the purchasing power and reduces wages and interest income in real terms - that is adjusted for inflation.』

ということですので、まあ特にドイツ様におかれましては、物価が上がって実質金利が下がるので緩和効果が高まりまっせ、じゃなくて実質所得が下がる話が世の中的には重要なポイントになっているようですね。

と思ったらその次に実質金利低下の話があるのですが、これまた預金金利が実質マイナス、って話をしていますね。まあ先にお断りしておきますが、当然ながら「そうは言いましてもプレマチュアーなタイトニングはアカンので今の政策運営は正しい」って説明を行っているので、この辺の記述はシュナーベルさんが懸念しているのではなくて、ドイツ様を始めとした各国の一般ピープルの指摘、という意味です。

『Real interest rates on savings deposits in Germany are now visibly negative after the recent increase in inflation (Slide 3). Negative real interest rates are nothing out of the ordinary per se. Both before and after the euro was introduced, there were longer periods of negative real interest rates.』

『The most recent spike in consumer prices, however, coincided with a phase of very low or even negative nominal interest rates, which compounds people’s worries. Indeed, since the ECB’s key interest rates were last lowered in September 2019, we have seen commercial banks increasingly passing negative nominal interest rates on to their customers.』

『Since then, the share of bank deposits of private households that are subject to negative rates has more than doubled in some euro area countries, although still only 9% of all deposits in these countries are affected (Slide 4). At 43%, the share of corporate deposits affected is already much higher.』

この辺のスライドですが、この講演の下の方にスライドへのリンクがあって、こちらになりますが、
https://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2021/html/ecb.sp210913_annex~88f2b52b3e.en.pdf

スライド4というのが表紙含めた4枚目のスライドのようですが、『Euro area banks increasingly pass negative nominal interest rates on to customers』ってのがあるのですが、上記の説明にあるように個人向けは9%ほどがマイナスレート適用になっていますが、法人向けは堂々の43%がマイナス金利適用になっている、というのが大変味わいが深いですし、まあそうなって来る中で物価が上がりだせばそら文句もでるわな、と思うのであります。


・ということなのでECBへの批判も出て来るんですねなるほどなるほど

でもってその次。

『These concerns affect us as central bankers directly - given that the ECB has a clear mandate to ensure price stability. It is therefore important to offer a factual explanation for the recent price increases and an assessment of future risks, especially in Germany where many supposed experts and the media are again rousing people’s fears without explaining the reasons behind the price movements (Slide 5).』

ってありまして、さっきのスライドの5枚目(表紙含む)を見ると『Inflation scare in the media』ってことで、ビルトとかシュビーゲルなど、アタクシも名前を何となく聞いた事のあるメディアでインフレ高進についての懸念だか怒りだか(大学時代の第2外国語がドイツ語なのですが)ドイツ語さっぱりワカランチ会長なので、何書いてるのかはよーわからんですけど、まあ色々と文句タラタラとなっているようで、そらECBにも矛先が向かう罠、ということでシュナーベル専務理事がこういう話をしないと、って事になってるじゃん良い傾向だわ、と思いつつ、欧米がそうやって物価が上がってアイヤーとか言ってるのに日本のポンコツ物価は何なんでしょと思うのですが、まあ物価が上がられるとこちとら別に給与の方が(ピー)なので(ピー)。

『Allusions are being made to conditions in the Weimar Republic. Comparisons are being drawn to the 1970s, when inflation in Germany was almost 8%. And there are warnings of a “meltdown” and a “runaway train” if interest rates remain low.』

このまま政策金利が低いままだと、1970年代のドイツでの8%の物価上昇のような事が、とかさすがにそこまで真面目に言う向きは居ないにしても、ワイマール時代(つまりレンテンマルク導入のきっかけになったハイパーインフレですわな)を仄めかす言説まで出て来る始末なんだそうで。

『In my remarks today, I would like to address these inflation fears.』

ということで、皆様のそのようなご懸念にお答えしましょう!ってのが今回のお話なのですが、まあお話自体は当然ながらいつも通りのECBのスタンスを説明しているんですが、マクラでこれだけ詳しく最近のインフレに対する世の中の懸念について触れる、っていうのは大変に味わいが深いと思いましたのでネタにしてみました。


・本編の構成は以下の通りということなので内容は当然ですがECBのいつもの説明ではあります

なお、マクラ部分はもうちょっと続きます。今回の講演本編の構成について言及していまして、

『I will start by providing an assessment of recent developments in consumer prices against the backdrop of the long phase of very low inflation and explain why inflation in the euro area, and also in Germany, is likely to ease noticeably next year.』

あくまでも足元の盛大なインフレは来年になるとドカンと下がって来ますよ、という説明があって、

『A premature monetary policy tightening in response to a temporary rise in inflation would choke the recovery and be most harmful to those who are already suffering from the current spike in inflation.』

その後に「一時的な物価上昇を受けたプレマチュアーな引き締めダメ!ゼッタイ!!」という話をする、との事です。でもって、

『Finally, I will explain why the higher inflation we are seeing now may actually be positive news. There are good reasons to assume that the current constellation of fiscal and monetary policy in the euro area may finally chart the path out of the low interest rate environment.』

そもそも今の高めのインフレは実はポジティブニュースだよ、という説明(これは藪蛇の悪寒がしますが)をして締める、という構成になっていますが、時間も無いので見出しだけ並べておきますね。ちょっと長めなので途中読んでるとめんどいかもです。

小見出しの構成
New monetary policy strategy as yardstick and compass
The new inflation target in an environment of rising inflation
Medium-term price development relevant for monetary policy
Avoid premature tightening of monetary policy
The pandemic as a way out of the low interest rate environment?
Longer-term supply bottlenecks could increase price pressure
Higher growth path through wide-reaching reforms and structural change
Optimism boosts demand
Concluding remarks

ということで、結構細かく説明しているので、ラガルドはんの会見ネタと合わせて成敗に励んでおかないと来週はFOMC様(幸か不幸か祝日前日の夜に結果が出るが、さすがに今回は朝一で更新するつもりですよ!)がありますので(なおMPMはどうせ無風だし気候変動オペの何かが出るかも知れんがシランガナなのでどうでもよい)、さっさと成敗しないといけませんね。というか来週シルバーウィークじゃん。年末とか期末に連休持って来るのマジで有難迷惑なんですけど、シルバーウィーク1か月後ろに送れないんですかねえ(無理)。






2021/09/14

お題「ラガルドの例のフレーズはサッチャー演説からでした(汗)/地域金融機関のOHRが盛大に改善したそうですの(FSR別冊)」

これは良い取り組みだと思ったら・・・・・・・・・
https://nordot.app/809979439294349312
岸田氏、人権問題で首相補佐官
河野、高市氏は支持要請
2021/9/13 12:40 (JST) コピーライト 一般社団法人共同通信社

『中国・新疆ウイグル自治区などの人権侵害に対応する人権問題担当の首相補佐官を新設すると表明。』(上記URL先より)

うんうん、その人権侵害への対処も大事だけど、名古屋入管での問題を始めとしたまさに自分の足元で起きてる問題に関してはどうなのかなー。

#投票まで時間が長いせいか全員言ってることが収斂してきてクソつまらんのだが総裁選

〇ECBラガルド総裁の会見のアタクシが引っ掛かったフレーズについて

昨日あたくし、ラガルド総裁の会見の一発目でこういう「the lady isn’t tapering」というのがあって、言いたいニュアンスはわからんでもないのだがどういう事なの?と思ってたフレーズがあった訳ですな。

『Lagarde: Well, thank you so much for your questions. I would preface my response to your first question by a quote, actually, in a way, which is, the lady isn’t tapering. (以下割愛、9月定例理事会後のラガルドさんの会見より)

でもってこの「the lady isn’t〜」ですが、マーガレット・サッチャーさんの有名なスピーチにあるとのことで、いやー教養ないわワシ、と思いつつ確認したら、なんとWikipediaまであるのね(英語版だけど)。

https://en.wikipedia.org/wiki/The_lady's_not_for_turning
The lady's not for turning
From Wikipedia, the free encyclopedia

『The phrase made reference to Thatcher's refusal to perform a "U-turn" in response to opposition to her liberalisation of the economy, which some commentators as well as her predecessor as Conservative leader (Ted Heath) had urged,[3] mainly because unemployment had risen to 2 million by the autumn of 1980 from 1.5 million the previous year and the economy was in recession,[4] exceeding 3 million by the time the recession ended in 1982.[5]』(上記URL先より)

ということで、言いたかったのは「PEPPの調整はテーパリングである訳がありません!!!」ってな事なんでしょうなと思いましたが、サッチャーさんの言葉を引っ張って来るとかラガルドはん大きく出たな(英語だからしょうがないのはあるかも知れんが英国の政治家の言葉を使って意見表明するのって英仏海峡隔てて交友関係が微妙な(婉曲表現)おフランス人としてどうなのよという気はせんでもないが)という感じですな。

BOEの偉い人のスピーチとかだとひとによってはふんだんに古典を引いて来たりしますし、欧州の人でもギリシャ神話とか引いてこられたりするので、もっとそういう教養的なことを若いうちに修めておけば良かった、と50になって後悔しても時すでにお寿司とはこの事でございますので、若い衆の皆様におかれましては(若い衆が読んでるか知らんが)新技術のキャッチアップだけではなく古典修養をしないといかんぞな、とか思うのでありました。

いやー質問をしてみるもんですわー、というかアタクシ年代的にはこの演説とかの頃には学生さんをやってた時期ですが、当時は英語ったって座学の勉強英語しかしてません時代でございましたから(いやまあ格調高い人とかだと英語の授業でこういうのも教材にするのかもしれないけど)不覚にも存じ上げませんでした。



〇ところでFSR別冊がでていましたので(地域金融機関のどうたらこうたら)

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb210910.htm/
地域金融強化に向けた取り組み
―地域金融機関の経営基盤強化と日本銀行の施策―
2021年9月10日
日本銀行金融機構局

『要旨』ってのが上記URL先にあるのですが、本文のサマリーみたいなもの。

『日本銀行は、2021年3月、「地域金融強化のための特別当座預金制度」の運用を開始した。本制度は、一定の経営基盤強化を実現した地域金融機関に対して特別付利を行うことで、金融機関の取り組みを後押しするものである。』

この「特別付利」に関しては、低率融資(をすると今だとマイナス金利になってしまうので特にそうなんですが)を行うよりも文句が出にくい制度なのは分かるのですが、それが故に濫発されるようになると、当座預金制度の中に変な歪みを作ることになってしまい、金利市場における参加者毎のイコールフィッティングが変な事になって、価格形成にも歪みをもたらすことになるので、制度の趣旨の話とは別に如何なものなのかと申し上げざるを得ません。

というかそもそもマイナス金利政策を実施しながら市場機能を残す、という事をするときに、マクロ加算や付利などについての制度が業態毎にズレを生じさせて、その結果として短期市場の市場機能を残そう、というそもそも論として市場に歪みを生じさせてその歪みを是正するための参加者の動きを「市場機能」と称している制度設計なのだから、こういうのが続々出てきてしまうのは制度の必然ではあるのですが、これって業態によって一方的に負担がかかるところと、そうじゃないところの差が生じる、という意味合いにおいて、日銀による恣意的な資源配分を起こしていることになる、ともいえる訳で(オペ先がオペ参加でメリットがある、程度の話まではどうこういうつもりはないけど)、この特別付利に関しても、またぞろ例によって期限が近くなったら「やっぱり延長」とか言い出してダラダラ延長して変な歪みを残し続けるのは止めて頂きたいものだと存じます。

と、昨日からしつこく申し上げている話は兎も角として、

『ここ10年、地域金融機関の経営効率を表すOHRは、悪化傾向が続いてきた。金融機関経営には様々な戦略・アプローチが考えられ得るが、本制度に参加する金融機関には、収益力強化と経費削減の両面から経営基盤を強化することで、将来にわたって地域金融サービスを持続的に提供していくことが期待されている。本稿では、本制度の背景にある考え方とともに、経営基盤強化に向けた地域金融機関の様々な取り組みを解説する。』

ということで本編があるのですが、

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb210910.pdf
地域金融強化に向けた取り組み
──地域金融機関の経営基盤強化と日本銀行の施策──
日 本 銀 行
金融機構局
2021 年 9 月

・頼むからこのエディターでFSR作ってくださいお願いします(超個人的都合)

FSR本編のアタクシ的に非常に困るのは、フォントがアタクシのテキストアップローダーで使っている文字コードのANSIに対応していないUnicodeのモノが続々とあって、引用しようとした場合に文字化けする漢字(しかも「金」とか「米」とか「長」とか「目」とかの頻出漢字)が多くて、泣きながら文字化け部分を直さないと行けない事なのですが、今回のFSR別冊は『1.はじめに』を見るとこのようになっていまして、

『地域金融サービスに対する地元の期待は年々高まっている。人口減少が進む地域経済の活性化支援、高齢化が進む地元企業経営者の事業承継支援など、金融機関に求められる業務分野は従来以上に多岐にわたるようになっている。加えて、ここ 1 年は、コロナ禍で本業が振るわない地元企業向けの資金繰り支援、金融・本業支援も急務となっている。また、コロナ後まで展望すると、生活様式の変化、デジタル化の加速、ESG/SDGs 対応の強化など、様々な変化の中で地域をどう支えていくかという課題にも直面している。いずれも、金融機関自身の頑健な経営基盤が前提とされるものである。』

何と無事にコピペが出来て大歓喜となりましたので、ちょっとだけネタにしてみます。


・いきなり結論をみるという手抜き読み

本文12ページ(PDF14枚目)の『5.おわりに』

『近年、金融機関の経営上の選択肢は増加する方向にある。非競争分野での業務共同化や店舗運営の柔軟化など、経費を抑制しつつ金融サービスを維持・拡充する手法が充実してきている。アライアンスの組成、グループ経営の高度化、デジタル技術の活用など、新たな可能性も拓かれている12。加えて、業務範囲・出資規制の緩和によって、事業領域が新たに広がることにもなる。地域金融機関には、こうした選択肢も一段と活用しながら、地域金融サービスを提供していくとともに、経営基盤を強化していくことが求められている。』

まあここはマクラ。

『特別当座預金制度が対象とする 3 年間は、多くの金融機関における中期経営計画の時間軸でもあり、相応の変化を生み出すことのできる期間と考えられる。本制度の 1 年目となる2020 年度については、地域銀行・信用金庫の多くが経営基盤強化に向けた取り組みを加速させた結果、OHR が大きく低下した13(前掲図表 3)。』

むむむ?ということでこの図表3の辺りを読むのですがその前にこの「おわりに」の部分を読み進めてみます。

『残り 2 年の期間についても、対象先金融機関が経営基盤強化に取り組むことで、10 年以上にわたって続いてきた OHR 悪化の流れを断ち切ることができれば、画期的なことと言える。』

ホンマカイナ、と思うのがアタクシの悪い所ですが、これまた後で図表3の辺りを読みましょう。

『日本銀行としては、本制度が地域における円滑な金融仲介機能の発揮と金融システムの安定確保に資するものとなるよう、今後も地域金融機関との対話を深めていく。』

一方的な自己満トークにならないようにご注意いただきたいものです。


・OHRが盛大に改善しているのは事実なのですが・・・・・・・・・・・・

『3.OHR からみた経営基盤の現状』という章に戻ります、本文6ページ、PDF6枚目。

『(1)経営基盤強化の指標としての OHR』って小見出しの所(同じページ)にさっき言及されていた図表3というのがある。

『特別当座預金制度では、経営基盤強化の度合を測る指標として、損益分岐点指標であるOHR を採用している。』

はい、オーバーヘッドレシオを使っておりますな。

『OHR は、業務粗利益に対する経費の比率として表され、収益力強化と経費削減のいずれか、あるいは両者の組み合わせによって改善させること(同指標の低下)ができる5。』

さいですな。

『経費削減という経営努力だけでなく、収益力強化という経営努力も評価することができるほか、金融機関の業容や規模によらず適用できることが、同指標の利点である6。』

でもって・・・・・・・・・・

『地域金融機関の OHR の推移を振り返ると、2000 年代半ば以降、悪化傾向(上昇傾向)が続いてきた(図表 3)。毎年のように経費削減が図られてきたものの(OHR の改善要因)、経費の削減以上に収益力が低下する金融機関が多くなっていた(OHR の悪化要因)。』

はい。

『こうした傾向がさらに長期化すると、リスクテイクに見合った自己資本の蓄積が難しくなることで、金融機関のストレス耐性が低下し、円滑な金融仲介機能の発揮に影響する可能性がある。厳しい経営環境の中でも地域金融サービスを提供し続けるためには、地域を支える金融機関自身の経営基盤が頑健であることが、これまで以上に重要となっている。』

でもって「図表 3 OHR」というのが文章の下にあるのですが、これ見ると確かに2020年度の所でOHRが盛大に改善しているのですが、日銀が地域金融機関がどうのこうの言い出したら急に今まで悪化し続けていたOHRが突如改善する、とかいうのを見ると「政策効果」とか言う前にまず先に眉に唾つけて読みたくなってしまうのがアタクシの仕様になっております。

これ見ると、特に地域銀行の経費要因でガツンと下がっているのと、それよりも何よりも業務粗利益要因が突如従来の悪化寄与から好転寄与の方にドテンしているのが、このグラフを見る方としては如何にもアレでございまして、うーん何だこの好転は、と素直に喜べないのですが・・・・・・・・・


という訳でそれ以降の部分を読んでみる。『(2)OHR の横断的な特徴』という小見出しで解説している。

『2000 年代半ば以降、業態平均でみた OHR の水準が切り上がるなか、金融機関間の OHRのばらつき──経営基盤の差異──が拡大した7。』

これは以前からFSRで指摘されていた事なのでサラサラ流します。

『2019 年度時点の OHR に応じて金融機関を 4 つのグループに分類すると、地域銀行・信用金庫とも、OHR が低位のグループと高位のグループの格差は 20%pt 近くに広がっている(図表 4)。また、OHR が業態平均を下回っている先は、各業態の 1/4 程度であり、OHR は悪化方向に分布する姿となっている。』

『こうしたOHR のばらつきは、@生産性の改善効果、Aコストの削減効果、B規模の経済効果の違いで説明することができる8。』

『生産性の改善効果』という小見出しが入る。

『OHR は、損益分岐点指標である一方、1 人当たり労働生産性と 1 人当たり経費とのバランスを示す指標でもある。次式から示唆されるとおり、OHR の高さは、1 人当たり経費に比べ、1 人当たり労働生産性が低い──あるいは、1 人当たり労働生産性に比べ、1 人当たり経費が割高である──ことを意味している。』

式は貼り付けスキルが無いので貼りません。

『職員 1 人当たりの業務粗利益、経費、人件費それぞれの分布をみると、地域銀行と信用金庫のいずれにおいても、経費のばらつきが相対的に小さく、とりわけ人件費はほぼ一様となっている(図表 5)。一方、業務粗利益のばらつきは相対的に大きい。分布の上位層と下位層を比べると、1 人当たり労働生産性の格差は 2 倍弱まで拡大しており、こうした労働生産性の差異が、OHR のばらつきを生み出す一因となっている。生産性の観点からは、経費に見合うかたちで生産性の改善を目指すことが、一金融機関の経営基盤の強化という観点だけでなく、質の高い金融サービスの提供という観点からも望ましいと言える。』

以下、『コストの削減効果』、『規模の経済効果』の説明がありますが、これいずれも上記と同様に一般的な説明であって、今回の変化を説明するものではありませんでしたので、次の小見出しに参ります。


・OHRを急に改善するのが難しいのに何で改善したのかが結局さっぱりワカランチ会長な件について

『(3)OHR の時系列的な特徴』ってのが次の小見出しになります。

『図表 9 は、2000 年代半ば以降における地域銀行それぞれの OHR の遷移パターンを 5 年前対比の遷移確率として図示したものである。遷移確率からは、改善パターン(表の左下の象限)と悪化パターン(表の右上の象限)が非対称であったことが読み取れる。すなわち、この間の OHR には、改善は相対的に小幅にしか──5 年で▲5%pt 程度──進まなかったのに対し、悪化は大幅に──5 年で+10%pt 程度──進む傾向がみられた。』

さっきの図表3でも何となくわかる。なお図表5は貼り付けスキルが無いので本文見てください。

『OHR のこれまでの遷移パターンは、短期間のうちに OHR を大幅に改善させることが容易ではないことを示唆している。』

のに何故2020年度に急に改善したの???って事を知りたいんだが、

『金融機関経営上の議論において、経営基盤強化が継続的な課題と位置付けられることが多くなっているのは、こうした OHR 遷移の特徴を踏まえ、経営基盤強化に継続的に取り組む必要性が広く共有されるようになったためと考えられる。また、ここ 1 年は、コロナ禍中にあって企業支援の重要性が増すなかでも、金融機関自身の経営基盤強化に向けた取り組みは変わらず続けられている。このような継続的な取り組みは、将来にわたって地域金融サービスを提供していくうえで欠かせないものと考えられる。』

と来まして次に『4.経営基盤強化に向けた取り組み』というのが出てきた。

『特別当座預金制度は、前述したような地域金融機関の経営環境と経営基盤の現状を踏まえて設計されたものである。金融機関経営には様々な戦略・アプローチが考えられ得るが、本制度に参加する金融機関には、地域経済の持続的な発展に貢献するとともに、OHR 要件か統合要件のいずれかによって経営基盤を強化することが求められている。OHR 要件の対象先として選定された金融機関であれば、各年度の OHR 要件を充足することで、特別付利を受けることができる(参考 1 を参照)。本節では、OHR 要件の対象先として選定された地域銀行と信用金庫が策定した、経営基盤強化に向けた取り組み方針──OHR の改善計画と計画達成のための施策──の特徴を紹介する。』

ほいほい。

『OHR の改善計画』

『OHR 要件──2022 年度の OHR が 2019 年度対比で 4%以上改善すること──の対象先として、地域銀行と信用金庫の多くが選定されている。これら対象先金融機関の OHR 改善計画を集計したものが図表 10 である。2022 年度までの改善計画を達成することで、業態平均の OHR は、改善率では 6%以上、絶対水準では 2010 年代半ばの水準まで改善することが見込まれている。また、改善計画の内訳をみると、収益力強化と経費削減の両面から、OHR がバランス良く改善している。金融機関ごとの計画をみても、制度上の要件である 4%の改善率を上回る改善を目指している先が少なくない。』

で?

『OHR 改善のための注力分野』

『OHR 改善計画を達成するために、金融機関は様々な施策を打ち出している10。』

ほうほう。

『このうち経費の面では、地域銀行・信用金庫とも、コストの削減策として、店舗網の再編や人件費の削減・抑制を挙げる先が多数を占めている(図表 11)。具体策をみると、隣接店舗を単に閉鎖するだけでなく、地元の金融ニーズに合致した店舗機能に特化させることで、コストの削減と地域金融サービスの維持・拡充との両立が図られている。隣接する僚店が相対的に多い地域銀行では、これまでも店舗形態の多様化が進められてきたが(図表 12)、今回の取り組みにより、多様化に向けた動きがさらに加速することが展望されている。このほか、業務改革や経費支出の管理強化を挙げる先や、地域銀行を中心に、グループ内外の連携強化を通じてコスト削減を目指す先もみられる。』

なるほど。

『業務粗利益の面では、業態ごとの注力分野の違いが比較的はっきりしている(図表 13)。』

キタコレ。

『地域銀行の多くは、法人向け貸出や法人役務など、法人営業を主な注力分野としている。』

ほほう。

『コロナショックを受けて、金融機関の取引先企業のうち低迷・再生期にある企業の割合や事業承継支援先の割合が上昇することが懸念されているなか、取引先企業に対する支援の姿勢を明確にするとともに、同分野での生産性の改善が企図されている(図表 14)11。また、経費面と同様に、グループ内外の連携強化を目指す先もみられる。』

それは分かるのだがそれで急にOHRが盛大に改善するもんなんでしょうか・・・・・・・・・

『一方の信用金庫は、貸出と有価証券運用の強化を主な注力分野としている。資金運用の採算を改善させることで、リスクテイク余力を引き上げ、取引先企業支援を強化していくことが企図されている。』

『このように、地域銀行と信用金庫の注力分野には違いがみられるものの、前述した店舗網の再編によって配置転換が可能となった人員を営業部門に集中的に投入することで、コストの削減と生産性の改善との両立を目指していくアプローチは共通している。』

だそうなんだが・・・・・・いやまあいいです。次の小見出しに進みましょう。

『取り組みスタンスの変化』

『前述した経営基盤強化策の達成に向けて、足もと、金融機関の取り組みスタンスが前傾化している。日本銀行金融機構局が 2021 年 7 月に実施したアンケートによると、特別当座預金制度の導入以降、取り組みスタンスを一段と積極化させた金融機関は全体の半数近くに上る(図表 15)。また、OHR を経営上の重要指標(KPI)として設定する金融機関が増加するなど、収益力と経費のバランスをより重視した経営が広がりをみせている(図表 16)。』

ほほう。

『特に信用金庫では、従来の貸出・預金残高を重視した経営から転換する先が多数みられる。このほか、本制度の導入を機に、OHR の改善目標をより踏み込んだ水準に設定した金融機関や、経営基盤強化の達成時期を前倒しする金融機関もみられる(図表 15)。』

OHR改善はワシが育てた、とまとめてさっきの「おわりに」に繋がるのですが、なんかこう話が美しすぎる纏まり方をしているのが・・・・・いえいえ何でもございませんわ良かったですねえという事で締めるアタクシでした。






2021/09/13

お題「日銀当座預金の昭和温泉旅館化(ナンジャソラ)/ラガルド会見ネタ続き:てーぱーではありません(キリッ)」

おお!これは企業の価格設定行動の強気化ですね(たぶん違う)。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210913/k10013256451000.html
建築用ガラス 相次ぎ値上げ 原材料価格の高止まりなど背景に
2021年9月13日 5時58分

『建築向けのガラス製品の価格をめぐっては、このほかにも日本板硝子が15%から35%、セントラル硝子は10%から40%、いずれも来月からの値上げを決めていて建築関連にも値上げの動きが広がっています。』(上記URL先より)

基調的な物価上昇が広がるね!やったね!(白目)


〇コールレートがゼロ近傍に上昇している件について(メモだけ)

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/mp210910.htm
無担保コールO/N物レート(9月10日<金>速報)
平均 -0.010%

今月の頭まで概ね▲0.036%レベルが無担保コールの平均値だったのですが、今月に入って徐々に上がって来まして、先週の月曜が▲0.018%でそこから▲0.014%→▲0.009%→▲0.006%と来まして金曜が▲0.010%ということで、背景には例によって例の如く色々と新しいものがぶち込まれていく特別付利制度の導入があって、次の積み期間を意識してその前から少し積んで置こうとのムーブから、調達サイドのレートが切りあがっている、ということのようだがその辺の機微は短資の人が詳しいでしょうからそっちに聞いて下さいよろしくお願いします(手抜き)。

じゃあコールが上がるとCPとか短国とか短い社債の金利が上がるかちゅうことになりますとこれがまた微妙な話で、こっちはこっちでお金がもらえるオペの担保としてのニーズがあるのでコールが上がったから金利が必ずしも上がる訳ではなくて、特にコロナオペに関しては「企業金融をコロナオペの担保適格」としている以上、ニースがある(ただまあセカンダリーベースの話をすれば社債の場合短いセカンダリーでそんなにロット拾えないのに対してCPならセカンダリーじゃなくてプライマリーでも玉が拾える(マイナス金利なら)のですからCPの方が使いやすいよね)ので、あんまり債券市場の価格に反映してくれないというのが困ったちゃんなのでありました、残念無念。

しかしまあ何ですな「特別何とか付利」をマイナス金利弊害対策として続々とぶっこんでしまって複雑怪奇にも程がある付利制度が出来るって、何とか特別控除だの時限的制度などを付加して行って複雑怪奇なものになってしまったどこぞの国の税制の変遷をみているようで、落涙を禁じ得ないのですが、そのうちあまりにも複雑になって「日銀当座預金士」じゃないと日銀当座預金の最効率コントロールが出来ません!とかいうオモシロ状態になってしまうのではないかと甚だ懸念する所でありまして、こういうのは極力簡素化して頂かないと、それこそ「日銀当座預金士」がギャグで済まなくなってしまい、つまりはそういう計算するだけで人的な資源を使わなければいけない、という社会的にみたら甚だ非効率的な事になる、という話しだと思うの。

いや普通にマイナス金利撤回すれば無くなるじゃん、とかついこの前までは思っていたのですが、オペへの低率金利適用ならまだしも、日銀当座預金付利という形でのインセンティブ付与という手段を何回も使っていると、この制度を今後も色々な制度の時に濫発していきそうな嫌な予感が物凄くするわけでして、そうやって日銀当座預金制度を複雑怪奇にしてしまうと、コール市場の価格形成において、その手の濫発されたオモシロ付利の状況をチェックしないと価格形成ができなくなってしまう、的な変な制度要因による歪みがずーっと残ってしまうと思うのよね。

日銀はマイナス金利政策をしている割にはマイナス金利貸出はしたがらないというオモシロ仕様になっているため、「低率適用貸出」によるインセンティブ設計をしない、ということで特別付利を使うのですけれども、これ将来正常化する段階でヘナチョコ特別付利が残っていると益々訳が分からないことになるので、真面目な話低率適用貸出に一本化してくれませんかねえ、と思います。

・・・・・とは言いましたが、地域金融機関向け特別付利というややこしいものを昨年ぶちあげてしまいまして、あれは従来の「資金供給オペにおけるマイナス金利適用ができないからマクロ加算の優遇と、一部の場合特別付利」って形と違って、純然たる補助金になる付利なので、この制度を作ったのは、政策的な意図とかそういうのはさておきましても、将来マイナス金利やゼロ金利政策などから脱却した後の世界において、当座預金制度を複雑怪奇なものにしてしまう端緒になる可能性があるわなーと甚だ遺憾に思うのでありました。

と、なんか話が逸れてしまいましたが、他市場に影響がそこまで無いからコールがどうのこうの自体はそれほど大問題にならない(コール市場的には大問題ですよ為念)のですが、日銀当座預金制度が運用面において複雑怪奇になってしまう、というのは金融政策の説明責任という文脈においても、話を難しくすることであって、あまり宜しい話ではないなーと足もとのコールレートの上昇状況を見て思ったのでうだうだと書いてみました。

ああそれからですな、あまりにも付利だのマクロ加算だのがややこしくなり過ぎまして、これは銀行の資金部でコールやってる人か短資でインターバンクやっている人じゃないと明快な詳しい説明を全部する事は難しい(アタクシもスクラッチから説明するの多分どこかに漏れや勘違いが出てちゃんと説明できないですわいやマジで)と思う、という状況自体がそもそも論としてあるべき姿から考えて異常だし、なんか今後も政策の雨漏りを塞ぐ中で更に日銀当預の特別付利と特別マクロ加算を追加してきそうなので、そろそろ悪態をついておかんと日銀ちゃん調子に乗ってドンドン当座預金制度を昭和温泉旅館にしてきそうなので申し上げましたです、としつこく繰り返しておくのでよろしく(誰に?)。



〇ラガルド総裁の会見ネタの続き

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/html/press_conference.en.html
Press conference
9 September 2021
14:30 CET - Frankfurt am Main, Germany

・金曜に時間が無いのですっ飛ばしましたが最初のポリシーステートメントの所の続きでリスクアセスメントから

金曜に飛ばしましたがやっぱり読みます。『Risk assessment』

『We see the risks to the economic outlook as broadly balanced. Economic activity could outperform our expectations if consumers become more confident and save less than currently expected. A faster improvement in the pandemic situation could also lead to a stronger expansion than currently envisaged. If supply bottlenecks last longer and feed through into higher than anticipated wage rises, price pressures could be more persistent. 』

『At the same time, the economic outlook could deteriorate if the pandemic worsens, which could delay the further reopening of the economy, or if supply shortages turn out to be more persistent than currently expected and hold back production.』

威勢の良い方が前半ですが、全体的にはパンデミックの今後次第って話でとりあえずお茶を濁しています。いずれにしましてもあっさり味仕立て。


・金融環境とマネタリー環境の所では企業や家計のデットオーバーハングに言及とな

『Financial and monetary conditions』が次。

『The recovery of growth and inflation still depends on favourable financing conditions for all sectors of the economy.』

この後の会見でも何回かこの主張がありまして、今に始まった事では無いのですが、ECBは「今の緩和的なファイナンシングコンディションが重要」というのを連呼していて、これがこの部分の最後で回収される、という伏線になっております。

『Market interest rates have eased over the summer, but reversed recently. Overall, financing conditions for the economy remain favourable.』

という状況なので、

『Bank lending rates for firms and households are at historically low levels. Lending to households is holding up, especially for house purchases. The somewhat slower growth of lending to firms is mainly due to the fact that firms are still well funded, because they borrowed heavily in the first wave of the pandemic. They have high cash holdings and are increasingly retaining earnings, which reduces the need for external funding. For larger firms, issuing bonds is an attractive alternative to bank loans. Solid bank balance sheets continue to ensure that sufficient credit is available.』

家計は住宅投資を中心に負債をホイホイと拡大しており、企業向け貸し出しの水準は高い、企業の借入意欲がそれほど強くないのですが、これは感染症拡大時に予備的な資金需要によって企業が借入を増やしたりキャッシュを保持したりした影響で企業の手元流動性が高いから(なので無問題)。金融機関のバランスシートは融資拡大を維持するのに十分な健全性を持っている。

と威勢の良い話をしておりますが、その次で

『However, many firms and households have taken on more debt during the pandemic. A deterioration in the economic outlook could threaten their financial health. This, in turn, would worsen the quality of banks’ balance sheets.』

企業も家計も借り入れが感染症前より拡大しており、経済が悪化した際にはこの借入の不良債権化による悪影響が起きるリスクがあるでよ、とデットオーバーハングに言及の巻。

『Policy support remains essential to prevent balance sheet strains and tightening financing conditions from reinforcing each other.』

この項目の最後はこれで、項目の最初に入れていた「今の緩和的なファンナンシングコンディションが回復のキー」というのに対して、これを維持するために政策サポートが必要である、と金融緩和措置の継続が重要という締め方をしております。まあこれ自体はECBとしては今に始まった説明では無いので特段のサプライズではないのですが、今回はPEPPのペース縮減というのをぶっこんでいるだけに・・・・・・・・・


・質疑応答の一発目から「臨時措置の縮小はテーパリングに非ず」と強調するラガルドはん

Q&Aに参りますが一発目から「テーパリングではない」発言をぶっこむのでありました。

『I had two questions. The first was on the pace, on the discussion around reducing asset purchases. Some of your Council members have suggested that they would like to see the programme, the Pandemic Emergency Purchasing Programme (PEPP) coming to an end soon. Would you characterise this, or did you characterise this internally, as a taper, or is it a turning point, or how would you characterise the move? 』

今回のPEPPのペース縮小は結局の所テーパリングとか転換点とかそういうことなんすか?

『And the second question was, why you feel confident enough to do this? Your 2023 outlook for inflation is 1.5 per cent, which is some way below your medium-term target. There also seems to be a lot of uncertainty in the global economy around Delta, around slowdown in China. So, why did you think reducing your stimulus was the correct move? Thank you.』

2023年の物価見通しが1.5%と2%よりも低い上に、先行きは感染症のリスクがあったり、中国経済のスローダウン懸念があるという状況において何で緩和を縮小するんすか?

というこれは仕込みじゃないかと思う位ラガルドさんが強調したいこと2点を聞いてくる最初の記者w

『Lagarde: Well, thank you so much for your questions. I would preface my response to your first question by a quote, actually, in a way, which is, the lady isn’t tapering.』

この「the lady isn’t tapering」って思いっきりヘッドラインというかニュースのキャッチに使われておりましたが、アタクシは海外に住んでたこと無いドメドメジャパニーズだしもちろん英語話者じゃないのでマジに訳すとどうなるの教えて英語の強い人!

ニュアンスとしては「テーパリングでは一切ございません(キリッ)」って感じなのかしら?

『Because what we are doing is recalibrating PEPP, which I’ll remind you is the Pandemic Emergency Purchase Programme, and we are recalibrating just as we did back in December and back in March. We are doing that on the basis of the framework, which is a joint assessment, so we look at the financing conditions, and we concluded that they remain favourable, and we do that on the basis on the inflation outlook.』

今回行ったことは「PEPPの適正額の再計算」ですよ、という言い方をしていて、状況が好転したのを受けて再計算したらもうちょい少なくてもおけーということになった、ってんですけど、まあそれがテーパリングじゃねえのという気もしますが、パンデミック特別プログラムの再計算であって、従来ベースのAPPとは別ですよ、って整理をしているんでしょうね。

『And as you rightly pointed out, our inflation outlook has been upgraded, and it has been the case for ’21, significantly, ’22, quite significantly, and to a lesser extent, ’23. But across the board, you have an improvement on the inflation numbers for the whole horizon that we look at. We also look at other indicators, and on those accounts as well, there has been a significant improvement of the inflation numbers, both for ’22 and ’23. So, on the basis of that joint assessment, and because we know that we need to keep favourable financing conditions, this is the commitment that we have and this is what we agreed in December. 』

中期的なインフレ見通しが1.5%なのに〜の質問に対するお答えコーナーですが、前の見通しよりもアップグレードされている、というのを強調しているのは、質問が何でそんな時期なのに緩和縮小したのって質問だからですね。

『That hasn’t varied. We believe that we can maintain those favourable financing conditions with a moderately lower pace of purchase, and, of course, the choice of words is relevant. It is moderately lower than what we have done in Q2 and Q3. Are we confident enough? 』

状況が良くなったのでPEPPのペースをやや落とす、というだけの話で、それによってファイナンシングコンディションが悪化するとかそういうことはなく、良好な状態が維持されると見ているからペースを落としました。でもってそれに対して我々の見通しですけど、と来まして、

『Well, you know, the September meeting is conducted in the light of our projections, and what we are seeing is clearly an improvement on many fronts. The output numbers are much higher. The inflation numbers have been upgraded as I’ve just indicated. The employment numbers have also improved and the unemployment situation is serious, of course, but more benign than was anticipated. So, on the basis of all that, and the success of the vaccination campaign, which we have all along said was critically important to determine the economic recovery, we believe that the euro area economy is rebounding. And that gives us the confidence to take the measure that we have taken, which, as I said, is a recalibration of our Pandemic Emergency Purchase Programme for the next three months.』

現在の経済物価状況が改善しており、生産や雇用も改善している、雇用の水準自体はまだだが、これも改善していくことが認められるし物価見通しは引き上げられました、という状況を勘案し、さらにワクチン接種が順調に進んでいるという重要なファクターも進展していることから、向こう3カ月のPEPPの再計算を実施しました。

という形になっていて、あくまでも緊急プログラム部分の調整である、という話をしております。

物価との整合性の話は「改善している」で済ませているのですが、これはまあゆうてECBの政策金利フォワードガイダンスの作り込み方のせいもあって、うっかり見通し期間のケツまで2%の物価見通しが維持されている、という見通しを出してしまうと、政策金利のフォワードガイダンスにおける利上げ開始条件を満たしてしまうってなってしまうので、ECBの場合、エコノミックプロジェクションで見通し期間ケツでの2.0%という数字は出しにくいという仕様になっています。

今回は緩和縮小じゃないから、と言ってペースダウンをしましたが、普通のAPPやTLTRO3に手を付けるという段階になると、同様に物価見通しとの整合性を問われると意外に説明に苦しむかも知れんな、という風には思いました。

などと書いてたらいつもの月曜日病で時間が無くなったので今日はこの辺で勘弁して下さい。





2021/09/10

お題「ECBである(一応昨日の会見は聞きました^^)」

またこれか。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021090901120&g=eco
45歳定年制導入を コロナ後の変革で―サントリー新浪氏
2021年09月09日21時13分

『サントリーホールディングスの新浪剛史社長は9日、経済同友会の夏季セミナーにオンラインで出席し、ウィズコロナの時代に必要な経済社会変革について「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が必要だ」と述べた。』(上記URL先より)

新浪さん62歳なんで、今すぐすべての職を引退して(今の財産もすべて社会福祉事業に寄贈して)アルバイト生活からスタートして見本示すとか、サントリーでいきなり導入して従業員の総スカン食らって取締役会で社長解任されてみたらどうでしょうかねえ。

・・・・などととオーバー45のジジイは捻くれるのですが、そもそも人口構成的にそういう制度が成り立たねえだろと思うんですけどねえ。


〇ECBもPEPPのペース縮小ですかそうですか:政策決定事項の公表文

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/html/press_conference.en.html
Press conference
9 September 2021
14:30 CET - Frankfurt am Main, Germany

概ねそうじゃろうなという下馬評だったようなのでサプライズとかではなく順当な結果ではありますが(で良いんですよね?)、ECBも「経済情勢が顕著に改善してきている」ので「緊急プログラムの拡大規模を落としても緩和的な金融環境は維持できる」という説明をしている訳でして、先行きにコロナの問題はあるにせよ、状況が改善して中期的な見通しも強くなっているのだから、コロナ金融プログラムの部分は減らせますよね、って話をするようになりましたな。

いやもうね、一方で日本とか一度始めると牛の涎でも限度があるぞと言いたくなるレベルで牛の涎の如くダラダラと政策の垂れ流しをするのを仕様にしておりますが、本邦では日銀政策委員への記者会見やら民間の何とかストのレポートとかでカジュアルに「コロナオペの延長」って話題に出るというこの情けないテイタラクは何なんでしょうかねえとしか申し上げようがありません。あーやだやだ。

という訳で決定事項の公表文から鑑賞。


・PEPPは縮小するけど他はそのまま維持ということで「PEPP分離工作」ですな

https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2021/html/ecb.mp210909~2c94b35639.en.html
PRESS RELEASE
Monetary policy decisions
9 September 2021

『Based on a joint assessment of financing conditions and the inflation outlook, the Governing Council judges that favourable financing conditions can be maintained with a moderately lower pace of net asset purchases under the pandemic emergency purchase programme (PEPP) than in the previous two quarters.』

最初にPEPPのペースをmoderately lowerするというお話が出てまして、理由は経済物価情勢、ファイナンシングコンディション、および先行き見通しが改善されたので、緊急対応であるPEPPについてペースダウンを行っても、必要なファイナンシングコンディションは維持されるとみられるのでモデレートリーローワーにしまっせ、という理屈ですな。

まあ何ですな、ECBネタで一々日銀に悪態つくのも何ですが、一方の日銀は4月の展望レポートで謎の勝負をしてきて中期的な経済物価見通しとその背景メカニズムについてやたら強気化したのですが、まさに死亡フラグのようにその後のパンデミックがアイヤーで結局コロナオペ延長の儀になっているのですが、謎の経済物価見通し引き上げを先にやってしまっているので、上記のECBみたいな説明もやりにくい、ってもう笑ってしまうしかありませんな。マッタクモウ。

そんな悪態はさて置きましてその先。

『The Governing Council also confirmed its other measures, namely the level of the key ECB interest rates, its forward guidance on their likely future evolution, its purchases under the asset purchase programme (APP), its reinvestment policies and its longer-term refinancing operations. Specifically:』

と来ましてその他の政策運営についての説明が入ります。以下の部分、文章としては綺麗な文章じゃなくなったかも知れないけど、こうやってきっちりと箇条書きにしてくれた方が読みやすいので、武骨になったかもしれんけどこのパターンの方が良いですねECBちゃん。

『Key ECB interest rates』

『The interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.00%, 0.25% and -0.50% respectively.』

政策金利は据え置き。

『In support of its symmetric two per cent inflation target and in line with its monetary policy strategy, the Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at their present or lower levels until it sees inflation reaching two per cent well ahead of the end of its projection horizon and durably for the rest of the projection horizon, and it judges that realised progress in underlying inflation is sufficiently advanced to be consistent with inflation stabilising at two per cent over the medium term. This may also imply a transitory period in which inflation is moderately above target.』

クッソ長いフォワードガイダンスも維持。

『Asset purchase programme (APP)』

『Net purchases under the APP will continue at a monthly pace of ユーロ20 billion. The Governing Council continues to expect monthly net asset purchases under the APP to run for as long as necessary to reinforce the accommodative impact of its policy rates, and to end shortly before it starts raising the key ECB interest rates.』

PEPPじゃない方の通常の資産買入に関しても変更なし。APPのガイダンス文言も維持。

『The Governing Council also intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the APP for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates, and in any case for as long as necessary to maintain favourable liquidity conditions and an ample degree of monetary accommodation.』

APP保有銘柄の償還に伴う再投資に関する文言も維持。

『Pandemic emergency purchase programme (PEPP)』

PEPPに関しては、

『The Governing Council will continue to conduct net asset purchases under the PEPP with a total envelope of ユーロ1,850 billion until at least the end of March 2022 and, in any case, until it judges that the coronavirus crisis phase is over.』

というのは別に変えて無い(1850ビリオンユーロは上限であって別に全部買うと言ってるわけではない)。

『Based on a joint assessment of financing conditions and the inflation outlook, the Governing Council judges that favourable financing conditions can be maintained with a moderately lower pace of net asset purchases under the PEPP than in the previous two quarters.』

冒頭に書かれていたのと同じ。

『The Governing Council will purchase flexibly according to market conditions and with a view to preventing a tightening of financing conditions that is inconsistent with countering the downward impact of the pandemic on the projected path of inflation. In addition, the flexibility of purchases over time, across asset classes and among jurisdictions will continue to support the smooth transmission of monetary policy.』

パンデミックの影響によってファイナンシングコンディションに悪化圧力が掛って好ましくない状況になりそうな場合は買入をフレキシブルに運営しますよ、ということで状況が悪化した時にはダマテンで買入ペースを上げる選択肢を残しております。もともとECBのPEPPでの買入に関しては声明文ベースではフニャフニャな表現しかしていないのでこれはまあこんなもんでしょう。あと買入銘柄の構成に関しても通常のAPPよりもフレキシブルになっている、というのは以前からそうなっておりますので変更なし。

『If favourable financing conditions can be maintained with asset purchase flows that do not exhaust the envelope over the net purchase horizon of the PEPP, the envelope need not be used in full. Equally, the envelope can be recalibrated if required to maintain favourable financing conditions to help counter the negative pandemic shock to the path of inflation.』

1850ビリオンユーロに関しては状況が良ければ全部枠を使い切らないし、状況が悪化して1850じゃ足りんとなったらそれは再度計算する余地はあるよ(さすがに拡大するときはECBの政策決定になるでしょうけど)といつものフニャ子フニャ夫な説明。

『The Governing Council will continue to reinvest the principal payments from maturing securities purchased under the PEPP until at least the end of 2023. In any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary policy stance.』

PEPPで購入した債券の再投資については、引き続き23年末までは継続、その後も償還がドデカホーンでその影響で金融引き締まりになるようだったら再投資を行うかもしれませんというのも従来通り。

『Refinancing operations』

LTRO関係。

『The Governing Council will continue to provide ample liquidity through its refinancing operations. In particular, the third series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III) remains an attractive source of funding for banks, supporting bank lending to firms and households.』

TLTRO3は継続しまっせ、で話を片付けてますな。

『The Governing Council stands ready to adjust all of its instruments, as appropriate, to ensure that inflation stabilises at its two per cent target over the medium term.

The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 14:30 CET today.』

必要な時には適切な手段を動員します云々もいつもの話。という訳でラガルドさんの会見ですが、QAはさすがにまだ(日本時間の9/10朝)には出ていないようですので冒頭の説明部分だけ。


〇ラガルド総裁会見:PEPPのペース縮小でラガルドさん今回は明快な話っぷりだった気がする(個人の感想です)

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2021/html/ecb.is210909~b2d882f724.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 9 September 2021

ECBの場合はややこしいのが「ステートメント」はこっちのお時間に出てくるのがステートメントで、さっきのは「決定事項のご連絡」になっているので、ステートメントでECBのサイトを拾いに行くと、漏れなく会見が付いてくるというのが新しいECBの仕様になっておりまする。

ちなみに一応やる気があるのでECBラガルドはんの会見をECB公式のようつべチャンネルで聞いておったのですが、説明終わった後何か徐々に視聴者数が減ってきて、30分ちょいしたら視聴者が5000人切っていたのには味わいがありましたが、言ってる私も最後は寝落ちしてたので人の事は言えないのでありました(汗)。

でもって文字起こしすると感想が違ってくるかも知れませんが、今回のラガルドさんの会見では、PEPPが一時的対応で、対応すべきパンデミックの影響はこれから減るぞ、だからペースをちょっとモデレートにするわ、というのに加え、足元の物価上昇はかくかくしかじかの理由で一時的で、中期的見通しは若干強くなったけど依然として2%より下だから利上げだのAPPの縮小などとてもとても、というロジックが明快だったせいか、前回の妥協の産物としか思えない金利ガイダンスの難解な文言に対するツッコミへの対応とはだいぶちがった印象を受けましたが、文字にすると違うのかもしれませんので、まあ聞いた印象ということで。


・経済はリバウンドしており更にその状況が進展している、という全体観

最初のご挨拶は飛ばして本題から。

『The rebound phase in the recovery of the euro area economy is increasingly advanced.』

総括判断はこれです。前回7月の会見でのステートメントと一々比較しているとこのネタが全然オワランチ会長になってしまうので控えますが、この総括判断に関する部分は前回「The recovery in the euro area economy is on track. 」だったので、言い方はかなり強気化していると思います(個人の感想です)。

『Output is expected to exceed its pre-pandemic level by the end of the year. With more than 70 per cent of European adults fully vaccinated, the economy has largely reopened, allowing consumers to spend more and companies to increase production. While rising immunity to the coronavirus means that the impact of the pandemic is now less severe, the global spread of the Delta variant could yet delay the full reopening of the economy.』

ユーロ圏では成人の70%がワクワクチンチンパワーを獲得しておりまして、その意味するところはパンデミックのインパクトが以前よりもシビアーじゃなくなりまっせ、というお話ですわな。ただ一方変異株の問題があるので経済のフルフルのリオープニングは遅れるかもね、という全体観。

『The current increase in inflation is expected to be largely temporary and underlying price pressures are building up only slowly. The inflation outlook in our new staff projections has been revised slightly upwards, but in the medium term inflation is foreseen to remain well below our two per cent target.』

物価に関しては今高いのはテンポラリーな価格上昇であって、今回はスタッフの経済見通しの改訂時期にあたるのですが、中期的な見通しが若干上方修正されたものの、2%の目標には届きませんですな、というお話です。

まあここに関しては金利のフォワードガイダンスの方で「期中の半ばくらいまでに2%以上になって、その後も見通し期間の最後まで2%が維持される」となると利上げ着手になってしまう、という諸葛孔明じゃなかったドイツ連銀の罠が仕込まれているので、実はECBの中期的な見通しって期間中に2%維持みたいなの出しにくいのよね。


『Financing conditions for firms, households and the public sector have remained favourable since our previous quarterly assessment in June. Favourable financing conditions are essential for the economy to continue its recovery and to offset the negative impact of the pandemic on inflation.』

ファイナンシングコンディションに関しては「remained favourable since our previous quarterly assessment in June」だそうです。


・決定事項の説明は引用だけしときます

ということで決定事項の説明になります。

『Based on a joint assessment of financing conditions and the inflation outlook, the Governing Council judges that favourable financing conditions can be maintained with a moderately lower pace of net asset purchases under the pandemic emergency purchase programme (PEPP) than in the previous two quarters.

We also confirmed our other measures, namely the level of the key ECB interest rates, our forward guidance on their likely future evolution, our purchases under the asset purchase programme (APP), our reinvestment policies and our longer-term refinancing operations, as detailed in the press release published at 13:45 today. We stand ready to adjust all of our instruments, as appropriate, to ensure that inflation stabilises at our two per cent target over the medium term.』

この辺はさっきのプレスリリース通り。

『I will now outline in more detail how we see the economy and inflation developing, and then talk about our assessment of financial and monetary conditions.』

ということで項目別の話になる。


・経済活動について

『Economic activity』

『The economy rebounded by 2.2 per cent in the second quarter of the year, which was more than expected.』

足もとの経済のリバウンドは予想より上振れ。

『 It is on track for strong growth in the third quarter. The recovery builds on the success of the vaccination campaigns in Europe, which have allowed a significant reopening of the economy.』

『With the lifting of restrictions, the services sector is benefiting from people returning to shops and restaurants and from the rebound in travel and tourism. Manufacturing is performing strongly, even though production continues to be held back by shortages of materials and equipment. The spread of the Delta variant has so far not required lockdown measures to be reimposed. But it could slow the recovery in global trade and the full reopening of the economy.』

ワクチンの普及でサービス業も含めてリバウンドしてまっせー、デルタ株は懸念だけど今の所これで以前のような強力ロックダウンみたいなのは起きなさそう、ただしデルタ株がアイヤーだと回復が遅れるよね。と来ました。

『Consumer spending is increasing, although consumers remain somewhat cautious in the light of the pandemic developments. The labour market is also improving rapidly, which holds out the prospect of higher incomes and greater spending. Unemployment is declining and the number of people in job retention schemes has fallen by about 28 million from the peak last year. The recovery in domestic and global demand is further boosting optimism among firms, which is supporting business investment.』

消費は拡大していますがパンデミックの状況を懸念する向きもあります。労働市場の回復は力強いっす。内外経済の回復によって需要が増えて企業の景況感は総じて強くて投資も活発ですよ。

『At the same time, there remains some way to go before the damage to the economy caused by the pandemic is overcome. There are still more than two million fewer people employed than before the pandemic, especially among the younger and lower skilled. The number of workers in job retention schemes also remains substantial.』

とは言え労働市場はパンデミック前の水準を回復しておらず、特に若年層と低スキル層の回復が弱くて、雇用維持スキームを受けている労働者の数も依然として多い、と雇用がまだ完全回復に遠いって話をしています。

『To support the recovery, ambitious, targeted and coordinated fiscal policy should continue to complement monetary policy. In particular, the Next Generation EU programme will help ensure a stronger and uniform recovery across euro area countries. It will also accelerate the green and digital transitions, support structural reforms and lift long-term growth.』

よって的を絞った財政政策が必要ですよ、と来てから毎度の我田引水でthe Next Generation EU programmeの必要性はともかくとして、DXとグリーンや構造改革がロングタームの成長に要りますね、ってな話をしております。

『We expect the economy to rebound firmly over the medium term. Our new staff projections foresee annual real GDP growth at 5.0 per cent in 2021, 4.6 per cent in 2022 and 2.1 per cent in 2023. Compared with our June staff projections, the outlook has improved for 2021 and is broadly unchanged for 2022 and 2023.』

中期的な見通しは引き上げになっています。強い見通しですよね。


・物価に関しては「中期的には2%に届いていない」攻撃

『Inflation』になります。

『Inflation increased to 3.0 per cent in August. We expect inflation to rise further this autumn but to decline next year.』

しばらく上昇するけど来年には下がって来るそうです。

『This temporary upswing in inflation mainly reflects the strong increase in oil prices since around the middle of last year, the reversal of the temporary VAT reduction in Germany, delayed summer sales in 2020 and cost pressures that stem from temporary shortages of materials and equipment.』

テンポラリーの要因は原油価格の上昇、昨年のドイツのVAT一時減税による物価低下の反動、昨年の夏にロックダウンされていたのでそのペントアップ、生産の材料や設備の一時的な供給不足によるコストプッシュ、ということで、

『In the course of 2022 these factors should ease or will fall out of the year-on-year inflation calculation.』

来年になるとその辺が剥落するという見立てですが・・・・・・


『Underlying inflation pressures have edged up.』

次のパラグラフでは、基調的な物価上昇圧力は若干拡大した、と来ました。

『As the economy recovers further, and supported by our monetary policy measures, we expect underlying inflation to rise over the medium term. This increase is expected to be only gradual, since it will take time for the economy to return to operating at full capacity, and therefore wages are expected to grow only moderately.』

『Measures of longer-term inflation expectations have continued to increase, but these remain some distance from our two per cent target.』

先々の見通しについては基調的な部分での物価上昇が続く、と威勢は良いのですが、金利ガイダンスとの整合性もあるのか、それともピュアにそうなのかは知らんですが、あくまでもonly gradualである、って話で、お賃金の上昇についてもonly moderatelyとのお告げです。長期のインフレ期待も上昇しているけど2%ターゲットにはまだまだ行きませんよねって説明。

『The new staff projections foresee annual inflation at 2.2 per cent in 2021, 1.7 per cent in 2022 and 1.5 per cent in 2023, being revised up compared with the previous projections in June. Inflation excluding food and energy price inflation is projected to average 1.3 per cent in 2021, 1.4 per cent in 2022 and 1.5 per cent in 2023, also being revised up from the June projections.』

ということで、物価の部分は先ほど申し上げた通り、うっかり見通し期間中全部を2%とかにするわけにはいかないので、上記のような見通しになっていますな。

以下。リスクマネジメント、ファイナンシャルあんどマネタリーコンディション、と続きますが時間も無いのでパスしまして、

『Conclusion』

『Summing up, the euro area economy is clearly rebounding. However, the speed of the recovery continues to depend on the course of the pandemic and progress with vaccinations. The current rise in inflation is expected to be largely temporary and underlying price pressures will build up only gradually. The slight improvement in the medium-term inflation outlook and the current level of financing conditions allow favourable financing conditions to be maintained with a moderately lower pace of net asset purchases under the PEPP.』

『Our policy measures, including our revised forward guidance on the key ECB interest rates, are key to helping the economy shift to a sustained recovery and, ultimately, to bringing inflation to our two per cent target.』

今回はまあ穏当に纏めたって感じでしょうか・・・・・・とか書いてたらなんか画面がリフレッシュされたなと思ったらQ&Aコーナーの部分まで出ていますね今の時点で・・・・・・・・・

#QAは週明けに成敗ということで





2021/09/09

お題「ウィリアムズ総裁は11月FOMCでテーパー開始発表の12月テーパー開始って感じのようですね」

あらまあそうですかそうですか。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210909/k10013250841000.html
愛知 クラスター発生の音楽フェス 東京や大阪などでも感染確認
2021年9月9日 0時04分

まあ・・・・・・・何と申しますかですな。


〇ウィリアムズ総裁が何か言ってるので確認確認

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPKBN2G4252
2021年9月9日5:07 午前
年内のテーパリング開始可能、労働指標を注視=NY連銀総裁

『[8日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は8日、国内経済の改善が続いた場合、連邦準備理事会(FRB)は年内にテーパリング(量的緩和の縮小)を開始することが適切になり得るという考えを示した。』(上記URL先より)

講演本文がありましたので確認してみましょう。
https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2021/wil210908
SPEECH
Ever Upward
September 08, 2021
John C. Williams, President and Chief Executive Officer
Remarks at St. Lawrence University (delivered via videoconference)As prepared for delivery

・挨拶のマクラから

挨拶のマクラなんでまあどうでもよいのですが、

『Good afternoon, everyone. Thank you to St. Lawrence University for hosting today's event. It's especially exciting to be here at the start of an academic year, and I hope you all have a safe and successful fall semester.』

秋学期の開始イベントでウィリアムズさんを呼んだんですね、いいなー豪華スピーカー。

『The motto for New York State is "Excelsior," meaning "ever upward." What better way to get the full New York experience than by spending time-even virtually-in the North Country. These visits around the Federal Reserve's Second District are one of the highlights of my job, and something I very much look forward to doing again in person when it's safe to do so.』

「田舎の3年より京の3日」みたいな慣用句がNYでもあるのか、なんかNYが自分から言うのってそれどうなのよという気はするんですけど。

でまあちょっと飛ばしてマクラのケツは、

『In my remarks this afternoon I'll share more about how what we are seeing in the incoming data relates to the economic picture nationally and to this region. I'll also highlight some of the unique inflation dynamics we are seeing. Finally, I'll explain what that means for monetary policy and the path forward.』

『Before I continue, I need to give the standard Fed disclaimer that the views I express today are mine alone and do not necessarily reflect those of the Federal Open Market Committee (FOMC) or others in the Federal Reserve System.』

とのことで次の小見出しが『Dual Mandate』なのですが、ここは学生向けにFEDのマンデートをご紹介しているの巻なのでほぼマクラみたいなもん。

『I know there are a lot of economics students in today's audience. I won't quiz you about the Federal Reserve, but one aspect of our work that you may be familiar with is the Fed's "dual mandate." These are the two goals set by Congress: maximum employment and price stability.』

『Given these goals, our focus is studying and understanding the wide range of developments that affect employment, unemployment, and inflation.』


・経済の話をするのに最初にGDPの数字が全体を見るのに便利、と言いながら話をするのはまあオモロイ

ということで『The Economic Outlook』という小見出しから話は実質的に始まる、

『So, what are these developments telling us about the current economic outlook?』

『I'll start by saying that the economy continues to grow at a strong rate.』

出オチの如く「経済はストロングレートで成長」来ました。

『The reopening of the economy means more jobs, more demand for products, and good momentum toward a full recovery. But, even with the strong pace of growth we are seeing, a full recovery from the pandemic will take quite some time to complete.』

フルリカバリーには「take quite some time to complete」と出オチの威勢のよさを中和する説明が次に来ましてですね、

『We're seeing this process of adjustment to rapidly changing circumstances reflected in the data showing a record number of job openings, supply bottlenecks in sectors such as autos, and sharp increases in prices for some goods and services that are in high demand.』

一方で「We're seeing this process of adjustment to rapidly changing circumstances」って説明していて、これは最近のいつも通りのFEDの説明になりますが、「テーパー利上げ分離論」な説明ですな、と思いながら次のパラに行く。

『One data point that is useful to look at to better understand these dynamics is gross domestic product, or GDP. Thanks to widespread vaccinations and robust fiscal support, we saw rapid growth in the first half of the year. Looking ahead to the remainder of the year, there are indications in the most recent data that the spread of the Delta variant is weighing on consumer spending and jobs, and the pace of growth appears to be slowing somewhat relative to the first half. Overall, I expect inflation-adjusted, or real, GDP to increase around six percent this year.』

ここでほほーと思ったのですが、概ね最近のFED高官の話って物価と雇用の話しばっかりフォーカスしてくるのですけれども、まあ冷静に考えれば当たり前なのですが、先にGDPの話を持ってきていて、しかも(相手が学生というものあるのかもしれませんんが)最初に「One data point that is useful to look at to better understand these dynamics is gross domestic product」というのが(よく考えれば経済の全体の話をするのにGDP使うの当たり前なのですが)最近のFED高官の説明の中ではちょっと違ったアプローチになっていてほほうと思いました。

まー確かにGDPを出すの当たり前なのと、相手が学生というのが要因だとは思いますし、経済の話をするときに他の人たちも成長率の話はもちろんしているのですが、こうやって目立つ形でフォーカスしてくるのがやや最近に無い傾向なので、もしかしたら「単月の経済指標で一々反応するんじゃなくて、経済全体の動きが拡大継続なんだからテーパーリングですがな」みたいな話をしたかったのかね、とか思いながら先に行く。


・雇用の話では案の定先日のアイヤーNFPは華麗にスルーの巻だがマンデート達成には距離がある発言

『Turning to employment, job gains have been strong in recent months, on balance-particularly in sectors that were especially hit hard at points during the pandemic, such as leisure and hospitality. This growth in demand translates into large numbers of people getting back to work. We've seen an average of 750,000 jobs added per month over the three months through August. And the unemployment rate continues to come down, and now stands at 5.2 percent.』

雇用の話になりました。この講演米国時間の昨日行われているので、当然ながらアイヤーなNFPだった金曜の雇用統計も加味されていますが、案の定と言う感じで「3か月平均で新規の75万のジョブクリエーションですわ」という感じでNFPがアイヤーの件は華麗にスルー。

『But I cannot stress enough that we still have a long way to go to get back to our maximum employment goal. For example, there are still over five million fewer jobs today than before the pandemic, and the unemployment rate is still far above the levels reached early last year.』

とは言っても最大雇用のゴールにはまだまだ距離がありまっせ、というのは利上げ分離論の一環でもある。

『A more nuanced picture appears when you look more closely at the employment story.』

次のパラグラフでは今次の雇用市場の従来にない特徴、という話ですのでこれは供給制約の話しですな。

『In typical recessions, the challenge is that there are not enough jobs available for the number of people seeking work. In today's job market, demand for labor is very high-we hear that from employers who are finding it hard to fill all their openings-and a lot of people are getting hired.』

『At the same time, people are leaving their jobs in large numbers, either to look for new work or exit the labor force altogether.』

雇用の需要はあるんだが労働市場から退出した人が戻ってきていないというお話からの、

『This cycle of hires and quits reflects the extraordinary nature of the pandemic, as workers and employers adapt to rapidly changing circumstances. These vacancies won't be filled instantly-it takes time for employers to find the right workers. But as demand for workers and progress on hiring remains strong, I am confident that we will continue to see meaningful job gains and continued progress toward maximum employment.』

ワクワクチンチンパワーによって社会行動が元に戻って来れば労働市場への再参加が拡大していって、望ましい労働需要と労働供給の拡大が進んで最大雇用に向かうでしょう、とまあこの辺は他の多くの連銀高官も説明していることでもありまする。

ということで、雇用の所は「まだマンデート達成には遠い」として、利上げ着手?またまた御冗談を(AA略)というニュアンスにしているので中立派(執行部だからまああんまり色は出さんのだが)。


・物価上昇は一時的、の理由がほとんど「コロナの影響による部分が大きいのでいずれ戻る」になっておりました

『The last aspect of the outlook that I'll speak about is inflation.』

物価キタコレで、物価に関しては「一時的」なのかどうかの話がポイントになりますわな。

『 Recent data show core inflation, which excludes volatile food and energy prices, running at about 3-1/2 percent, which is well above the Federal Reserve's longer-term 2 percent goal.』

それは皆知っている。

『Taking a closer look at the data, it's clear that this spike in inflation largely reflects the transitory effects of the rapid reopening of the economy, which is pushing supply and demand in extreme ways.』

「this spike in inflation largely reflects the transitory effects」来ました。

『As the economy gets through these unusual dynamics, I expect inflation to come back down to around 2 percent next year. Given the complexity of this topic, I'll go into this in more detail.』

詳しく語るそうですので見てみましょう。

『I find it helpful to view recent developments in terms of three categories.』

ほうほう3つのカテゴリーとな。

『The first is related to prices for goods and services that underwent huge declines during the pandemic but are now rebounding as the economy reopens. For example, in the first year of the pandemic, prices for airfare and lodging fell sharply as people cut back on travel. Since then, we've seen these rebound toward their pre-pandemic trends, pushing the inflation rate up.』

コロ助の直撃ナリのせいであばばばばーになったモノやサービスの価格が回復した件。

『One simple way to get a better read of inflation that is not overly influenced by these big swings in prices is to take the average inflation rate from the start of the pandemic. That calculation shows that core inflation has averaged 2-3/4 percent since February of last year.』

ということで、その影響を差っ引くためにパンデミックの前からの物価変化を見ますと、コアインフレは2.75%ほど上がっています・・・・・って結構上がってるじゃんと思いますが次のカテゴリーの話になる。

『But even that number is heavily influenced by the effects of the pandemic on the second category: used vehicles. Even though used cars and trucks are a small category, their soaring prices account for nearly half a percentage point of the inflation since the start of the pandemic.』

ほうほう、この2.75%に対して中古自動車や中古トラックが0.5%近くも寄与しているとな。

『This is the result of a large imbalance in supply and demand for cars and trucks related to the pandemic. Strong demand for vehicles is being driven by rental car companies, stimulus payments, and the needs of a remote workforce. At the same time, the supply of vehicles has been curbed by earlier production cutbacks and shortages of semiconductor chips. This confluence of events has caused prices for motor vehicles-especially used cars and trucks-to soar.』

パンデミックに関わる色んな要因(半導体の供給不足も含めた)でこの上昇は起きております、とのことで、まあこれはだから大きそうに見える上昇の特殊要因を外すと結局2%そこそこでっせ、と言いたいんでしょうな。

『But, the good news is that used cars are unlikely to continue to contribute to high inflation in the future. In fact, the market for used vehicles appears to have stabilized, and as supply and demand gradually come back into balance, I expect used car prices will start to move back down toward more normal levels.』

でもってその中古車価格のアヒャヒャヒャヒャな上昇は供給要因の方が改善していく中で徐々に落ち着いてきているのでいずれノーマルなレベルに落ち着いてくるでしょう、だそうな。

『The final category is underlying inflation.』

ということで3番目(2番目は中古車の話でした)に基調的な物価というまたこの置きの問題的な話を持ってきていますが、ウィリアムズはどういう置きをもってきたでしょうか。

『Various measures of longer-term inflation expectations are at levels consistent with our 2 percent long-run goal. At the same time, inflation has been reasonably tame in categories of services that are not as directly influenced by the pandemic-and likewise for measures of underlying inflation such as the trimmed-mean PCE inflation rate.』

パンデミックの直撃弾食らってない財やサービスの価格は概ね2%の物価目標に整合的に動いており、例えばPCE物価指数の刈込平均のような基調的インフレ指標を見ると、現状は2%の目標に整合的な水準でありますよ、という説明をしております。

まあここはジャクソンホールでのパウエルのおっちゃんも刈込平均出してきていましたけど、つまりは(ジャク穴でパウエルが言ったように)今の一部カテゴリーの盛大な物価上昇ムーブがほかの財やサービスに波及していくかどうか、ってのが注意すべき材料となると、刈込平均的な基調的物価を見る各種指標(と賃金指標)で変なことが起きていると、FEDのケツがムズムズしてくる、ということを意味する、という何時もの話になりますが、そこが確認できましたね。即ちここの結論ですが、

『After this year's spike in inflation related to the effects of the pandemic-and with inflation expectations and other measures of underlying inflation close to our 2 percent longer-run goal-I expect inflation pressures to moderate over time and for the inflation rate to come back to its underlying trend of around 2 percent next year.』

『It goes without saying that there is still a great deal of uncertainty about the inflation outlook, and I will be watching the data closely in the coming months.』

テンポラリーだと思うよ、という話はしておりますが、ただ最後の最後に1文インフレ上振れ警戒を入れておりまして、まあ順当は順当な説明ですし、特にタカではないが、ゆうて利上げその他諸々を引っ張って良いという感じでも(経済雇用物価の説明部分では)伝わりますな。


次の『North Country』は飛ばしまして最後の『The Fed's Policy Response』に参ります。


・11月FOMCでテーパー開始宣言して12月からテーパリングでしょうかね

『The Fed's Policy Response』ですな。

『This brings me to the Fed's policy response. In its December 2020 statement, the FOMC said it would continue asset purchases at the current pace until it sees substantial further progress toward our maximum employment and price stability goals.1』

はい。

『Given what I explained earlier, I think it's clear that we have made substantial further progress on achieving our inflation goal. There has also been very good progress toward maximum employment, but I will want to see more improvement before I am ready to declare the test of substantial further progress being met.』

ほうほう。ウィリアムズさんとしては「I will want to see more improvement before I am ready to declare the test of substantial further progress being met」だそうですが、9月のFOMCを飛ばすと次11月の頭まで飛んでしまうので(追加金融緩和ならともかくテーパーで臨時会合はやる訳ない(物価が突如ソイヤソイヤと上昇祭りでもしたら別だけどそれは無いでしょ半月やそこらで)テーパー開始がずれ込むんだよなー。

『Assuming the economy continues to improve as I anticipate, it could be appropriate to start reducing the pace of asset purchases this year. I will be carefully assessing the incoming data on the labor market and what it means for the economic outlook, as well as assessing risks such as the effects of the Delta variant.』

ってことで、ウィリアムズの言う年内ってのは11月FOMCでテーパリング開始を宣言して、12月から開始する(経済物価情勢が見込み通りで推移すれば)、というスケジュール感のようです。


『It is important to remember that even after the asset purchases end, the stance of monetary policy will continue to support a strong and full economic recovery and sustained attainment of 2 percent average inflation.』

これは例によって例の如くの利上げとテーパーの分離論。

『In particular, the FOMC has indicated that it will continue to hold the target range for the federal funds rate at its current level until the economy reaches conditions consistent with its assessments of maximum employment, and inflation has reached 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time. There is still a long way to go before reaching maximum employment, and over time it should become clearer whether we have reached 2 percent inflation on a sustainable basis.』

これもそうですが、何ちゅうかこの金融市場とかの状況見ていると利上げの慎重論をあまりにも強調しすぎるのもどうなのかと思うのですが、結局今回のテーパー(まだ始まるかどうかも確定してないですけどまあそれは兎も角として)に関しても途中まで無茶苦茶慎重論だったのに突如タカ派と中立派が特攻しだして雰囲気を変えに行くというプレイをしていたので、そういう意味ではこの利上げに関する今のやたら慎重かつ分離論ってえの、あんまり全部が全部額面通りに受けない方が吉のような気もしますが、まあテーパー始まって暫くは猫被ってるでしょうし、猫が虎になるのはテーパー終わりが見えてきたころになるんでしょうな、と取りあえず大予想をしておきます(個人の妄想です)。


〇ちょっとメモ置いておく

・NY連銀のページから

ウィリアムズの講演探してるついでにこんなのがあった。
https://www.newyorkfed.org/newsevents/news/research/2021/20210907
PRESS RELEASE
Labor Market Survey Shows Improvement in Expectations; Average Reservation Wage Increases Compared to a Year Ago
September 07, 2021

関連してこんなのもあるようで
https://www.newyorkfed.org/microeconomics/sce#/
Center for Microeconomic Data
SURVEY OF CONSUMER EXPECTATIONS


・景気ウォッチャーェ・・・・・・・・・・・・

https://www5.cao.go.jp/keizai3/2021/0908watcher/menu.html
令和3年8月調査(令和3年9月8日公表):景気ウォッチャー調査

https://www5.cao.go.jp/keizai3/2021/0908watcher/bassui.html
令和3年8月調査結果(抜粋):景気ウォッチャー調査

『今月の動き(8月)

8月の現状判断DI(季節調整値)は、前月差13.7ポイント低下の34.7となった。家計動向関連DIは、飲食関連等が低下したことから低下した。企業動向関連DIは、非製造業等が低下したことから低下した。雇用関連DIについては、低下した。

8月の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差4.7ポイント低下の43.7となった。家計動向関連DI、企業動向関連DI、雇用関連DIが低下した。

なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差13.4ポイント低下の34.3となり、先行き判断DIは前月差5.4ポイント低下の41.7となった。

今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、持ち直しに弱さがみられる。先行きについては、内外の感染症の動向に対する懸念が強まっているが、ワクチン接種の進展等による持ち直しの期待がみられる。」とまとめられる。』

うーむ・・・・・・・・・





2021/09/08

お題「ドル円の通貨オプション市場の動向分析とかいうのがあったのでちょっと鑑賞/その他メモ」

最近お元気そうでなにより(棒読み)
https://www.asahi.com/articles/ASP9701Q2P96UTFK020.html
自民・甘利氏「菅、二階の負のイメージが国民に定着」
自民党総裁選2021
中田絢子2021年9月7日 0時26分

えーっと、その負のイメージってのは安倍ちゃんの置き土産だと思いますし、安倍ちゃん時代にやらかしたのを碌すっぽ説明しないまま入院してそのままずっと有耶無耶にしている(しかも注目されないもんだから有耶無耶にしているのもスルーされる)というUR甘利先生お前が言うなとしか申し上げようがないんですが。


〇先般の国際コンファランスでのペーパーが出ていてお題は面白そうなのだが全文英文ェ・・・・・・(備忘メモ)

https://www.boj.or.jp/whatsnew/index.htm/
ニュース一覧

8/30(月)調査・研究 (論文)金融研究所DPS:中央銀行のバランスシートが持つ力
8/30(月)調査・研究 (論文)金融研究所DPS:家計のライフサイクルでみた金融政策の影響
8/30(月)調査・研究 (論文)金融研究所DPS:1960年代末における国際収支に対する認識と金融政策

ということで月末恒例の論文投下のお時間が先日あって、3番目の『1960年代末における国際収支に対する認識と金融政策』ってのがアタクシ大好きな歴史ものでして、これはこれで読もうと思ってるんですが力作なもんで読むほうも体力が必要という物件(でも面白いから興味のあるかたは是非、ネタにするにはちと重いのでネタにするかどうかは別なんですけど)です。

でもって上の2本、『中央銀行のバランスシートが持つ力 』とか『家計のライフサイクルでみた金融政策の影響』とかしれっとまたお洒落なお題が出てるじゃん、と思ってリンクを踏むと・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps21_e.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ(E-Series : 英語版)

上の2本どっちを踏んでもここにつきます、ああ英語版。

https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/21-E-10.html
The Power of Central Bank Balance Sheets
Athanasios Orphanides

https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/21-E-09.html
Monetary Policy over the Lifecycle
R. Anton Braun, Daisuke Ikeda

英語版かよと思いましたが、そら先般の国際コンファランスでのブツですからそうなるわな、と思いまして、エグゼクティブサマリーだけ見て本文はまだ全然読んでないのですが、面白そうだったらネタにするかもしれませんが、たぶんこれをネタにするよりもさっきの「1960年代末における国際収支に対する認識と金融政策」の方が面白そうなのでそっちをいずれネタにするかも知れません・・・・・・

という俺様備忘メモでした(さーせん)。


〇通貨オプションネタ好きやね〜日銀って

まあ半分雑談ネタなのですが。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/rev21j10.htm/
店頭デリバティブ取引データからみた通貨オプション市場:近年の取引動向の特徴
2021年9月7日
金融市場局 瀧塚寧孝、丸山凜途*

HTMLの方はサマリーだけですけれどもまず拝読しますと、

『要旨』

『通貨オプション取引は、事業法人や機関投資家等が、為替にかかるリスクヘッジやリスクテイクを行う手段のひとつであり、その取引や価格の動向は、こうした主体の相場観やリスク認識を映じていると考えられる。もっとも、通貨オプション取引に関する既存の統計は、公表の頻度が必ずしも高くなく、市場動向のよりきめ細かい把握という観点では一定の限界があった。』

ほうほう。

『そこで、本稿では、本邦で収集された店頭デリバティブ取引データを用いて、ドル/円の通貨オプション市場の取引動向を整理した。その結果、従来の統計では把握が難しかったオプション取引種類別の取引高や、権利行使価格の設定傾向、主要業態別の取引関係などが明らかとなった。』

ほっほーという所ですが、そういや最近そのネタが出なくなったのですが、金融政策決定会合の議事要旨を見ると毎回のように通貨オプション市場のリスクリバーサルがどうのこうのでスキューがどうのこうのという話をしている政策委員さんがいたりしまして、なんかよー知らんのですが、通貨オプション市場の話好きですよね日銀ちゃんって。

でもって本文はこちら。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/data/rev21j10.pdf
日銀レビュー
店頭デリバティブ取引データからみた通貨オプション市場:近年の取引動向の特徴

本文4ページの辺りから通貨オプション市場の市場全体観の話があるので鑑賞鑑賞。

『B 市場構造の全体観』って小見出し(本文4ページ、PDFの4枚目の左側の下の方になります)から。

『市場構造を把握する観点から、取引のほとんどを占めるヨーロピアン・オプションのみを対象として、2016 年から 2020 年の間の国内の主要業態間の取引関係をみると(図表 10)、本邦の事業法人や保険会社は、基本的に、銀行等の取引仲介者と取引を行っていることが確認できる。銀行等の取引仲介者は、顧客のニーズに応じ、通貨オプションの売り・買い両方向の取引機会を受動的に提供するマーケットメイカーとしての機能を果たしている。』

そうでしょうね。

『こうした主体は、その仲介取引の結果として生じる自己のポジションの偏りにかかる為替リスクを、インターバンク(銀行間)市場において、概ね中立となるよう調整(ヘッジ)している様子が窺われる9』

うんうん良く分かります。ここまでが全体を見た時の業態の役割(銀行がブローカーでありマーケットメーカでその他が客サイド、インターバンクが業者間市場)の話。では各業態はどうなんですかという話ですが、

『本邦事業法人は、取引規模が大きく、全体としてみれば、買い(ロング)と売り(ショート)を概ね同程度の規模で取引している。』

ほうほうそうなんですか、事業法人って個別で見れば片為替になると思ったんですがネットアウトすると同程度なのけ、と思ったら

『一般的に、本邦事業法人は、輸出入等にかかる為替リスクをヘッジする手段として、為替予約を利用することが多く、為替レートの水準次第では実際にヘッジ手段として活用できるかが不確実な通貨オプションを補助的な手段として位置付けていると言われている。』

なるほど。

『そうしたもとで、コール・プットのロングとショートを組み合わせ、ロング・ポジションの構築に伴って相手方に支払うプレミアムと、ショート・ポジションの構築に伴って相手方から受取るプレミアムをバランスさせることで、全体として取引に伴うコストを節約している10(図表11)。』

ああなるほど。そっちの意味での同規模なんですね。

『取引高を残存期間別にみると、市場全体と同様に、3 か月以内の取引割合が減少傾向にある(図表 12)』

ということですが、引用だけすると何なので上記URL先の図表12を見てちょという感じですが、減少傾向と言いましても〜3Mの取引シェアは依然として7割くらいあります。でもって市場全体と同様に、ってのは最初にすっ飛ばした本文3ページ目にありまして、

3ページ目の左側の上にある『@ 取引高の推移・主要な商品種類』を見ますと、

『取引高の推移をみると(図表 4)、コールとプットのいずれも足もとにかけて減少基調にあるほか、コールとプットの取引高に目立った偏りがみられなくなっている。この結果、コール取引高とプット取引高の差は、縮小してきている。また、取引高を満期日までの残存期間別にみると、3 か月以内の取引が大半を占めるなか、近年では、そうした取引の割合が減少傾向にある(図表 5)。』

『こうした動きは、近年、ドル/円の直物(スポット)市場の値幅(日中最高値と最安値の差、図表 6)やボラティリティが低下傾向を辿り、相場の方向感も出難い局面が増えているもとで、市場参加者のリスクヘッジのニーズが特に短期を中心として減退してきている可能性を示唆している。』

ってなっていまして、テナーの短い取引が減少気味なのはボラが下がった影響がある、ってのはそうだろうなあと何となくはイメージするわけですが、ヘッジニーズ云々もそうですけど、そもそもボラが低くてオプションプレミアムが出ないから、その分だけ事業会社の実需ポジションからくる影響が大きくなっていて、今引用した前半部分にある「コールとプットの取引高に目立った偏りがみられなくなっている」って現象が起きているようにも思えました。まあ上記の話の細かい計数を見て言ってる訳ではなくてイメージだけだし、だいたいからしてアタクシ通貨オプション市場は全然土地勘が無いので素人の愚感想なだけですが。


でもって事業会社(貿易収支+貿易外収支)と来れば次は資本収支のコーナーになる訳で、さっきの引用の続きに戻りますと、

『本邦保険会社は、銀行等のインターバンク市場参加者との取引において、プット(ドル売り・円買い)オプションを中心としてネットでロング超となっている。』

ここの表現が何ちゅうかかんちゅうかなので後程。

『一般的に、本邦保険会社は、外貨建て資産の保有に伴う為替リスク(円高が進んだ場合の円建て評価額の減少リスク)をヘッジするため、円高・ドル安進行時に価値が上がるプットを購入するニーズが強いと言われている。』

ほっほー。

『実際、ロング・ポジションの構築に伴って相手方に支払うプレミアムは、ショート・ポジションの構築11に伴って相手方から受取るプレミアムを幾分上回って推移している(図表 13)。』

しかし・・・・・・

『ただし、近年では、ドル/円の変動幅が縮小するなかで、こうしたプレミアムの支払超幅は縮小している。』

なるほど。

『この間、残存期間別には、3 か月以内の取引が市場全体と比べて少なめである一方、その取引割合が長い目で見れば減少傾向にあることは、市場全体の傾向と似た姿となっている(図表 14)。』

短いとプレミアム出んでしょうからね。

・・・・・・・となりますと、保険会社云々の前に引用しました市場全体の取引という部分に「取引高の推移をみると(図表 4)、コールとプットのいずれも足もとにかけて減少基調にあるほか、コールとプットの取引高に目立った偏りがみられなくなっている。」ってのがありましたが、業態別で見た場合、事業会社はコールとプットをほぼバランス(リバーサルみたいなポジション作るって話ですかね)する一方で、保険会社の場合は他通貨の対円でのプット単買いを使う事が多い、ってことですから、それ即ち資本取引系の取引シェアが落ちているということを示すんでしょうな、と思って次を見ますとまあそんな説明になっておりますです、はい。

『本邦の事業法人や保険会社などの顧客との取引の結果として、銀行等の取引仲介者にどのような影響12が生じたのかをみるため、銀行等以外のすべての主体のポジションの合計を、時系列で確認した(図表 15)。』

これですが、例によって図表貼り付けスキルは無いのとそもそも図表だけ取り出して貼って良い物かという問題がある(ような気がする)ので、例の如く本文を見てちょ、という感じなのですが、こちらはかなり一目瞭然という感じで傾向が出ていまして、保険会社のオプションポジションが減っている、という図になります。

というのは分かったのですが、ここの説明はイマイチ良く分からん。

『ネットポジション(ロング・ポジションとショート・ポジションの差)の推移をみると(折線)、スポット市場で大幅な円高化局面がみられた 2016 年中の平均は、顧客側がプットを中心にロング超(=銀行等は大幅なショート超)となった後、2017 年以降は、ドル/円の変動幅が縮小するなかで、一方向への偏りが大幅に縮小している。』

おじちゃん通貨オプション市場とかあんまり詳しくないのですが、「顧客側がプットを中心にロング超」って言われちゃうと、そのロングはデルタロングなのかガンマロングなのかよくわからんというか、外野がサラッと見るとデルタ方向の話かと思ってしまうのですが、図表15を見ますと2016年の状況って本邦保険会社が大幅に「ロング」ってなっていて、その時の状況が円高進行だし、その前の所での説明も、どう見てもこれ「円高リスクの為に他通貨(今回の集計はドル円なので米ドルですね)の対円プット買い」の話をしているので、ガンマロングの話をしていると思われます。

でまあオプションから見たらガンマの話も大事なのですが、外野からみるとスポット為替の動向がどうなるかってのが注目するネタになるので、ガンマロングの話は話として必要なのですが、「ロング・ポジションとショート・ポジションの差」みたいな言い方をされると、デルタの話なのかガンマの話なのか分からんというか、外野的にはデルタの話をしているように読んでしまうと思うのでして、(いやまあアタクシが馬鹿なのが良くない、と言われるとグウの音も出ないのですが)ここを一読した時に「なんでドル円の円高局面で実需筋が米ドルのロングを増やす必要あるねん、ヘッジしてるんとチャウの??」と読んでて「????」になってしまうまな訳でございますがな、と思いました。

たぶん2016年の場合、保険会社のネットのオプションポジションのガンマロング超が大きい、ということは、オプション市場においては対円で米ドルの売りポジションが顧客サイドにあって、業者はその逆、ということになると思うので、「ロング超」という図表を出されると外野の頭弱いアタクシは混乱してしまいました。

話を戻しまして、

『顧客業態別に内訳をみると(棒グラフ)、既述の本邦保険会社との取引から生じる銀行等のショート超幅が目立って縮小している。また、資産運用会社やヘッジファンド等を含む「その他」13との取引から生じる銀行等のロング超幅が、全体として幾分拡大している。』

『資産運用会社やヘッジファンド等は、近年、低ボラティリティ環境が続く中、ショート・ポジションの構築によるプレミアム受取を企図した戦略を拡大してきたと言われており、後者の点は、こうした指摘とも概ね整合的である。』

となっておりまして、まあ実際は最初からそうなのですが、どうもこうガンマロングのポジションをそのまま「ロングポジション」と言われてしまいますと、デルタの方のロングポジションとごちゃごちゃになってしまうので、ガンマロングとか書いて欲しいのですが、まあ確かにガンマロングと書かれるとまた別途の何じゃそれ問題が発生するのも分かるので書き方が難しいとは思うのですが、不肖このアタクシは債券と株式という現物あり(インデックスとか先物は現物ないけどバックに現物ありますから)のオプションなら門前の小僧で触った事はあるのですが、通貨のオプションの場合のこの手の用語のお作法を良く知らんので、これはこれで合ってるんだろうなあとは思うのですが、ガンマのロングを「ガンマ」を入れないでロングポジションと言い切られると混乱するわーと思いました(個人の感想です)、馬鹿でスイマセン。


『おわりに』ってのが最後にありまして、

『本稿では、本邦で収集された店頭デリバティブ取引データを用いて、従来の統計では把握が難しかったドル/円の通貨オプション市場の取引種類別の取引高、権利行使価格の設定傾向、主要業態別の取引関係などを整理した。』

『通貨オプション市場の取引動向は、為替のスポット市場の動向の影響を大きく受けるとともに、銀行等の取引仲介者のヘッジ取引を通じて、逆にスポット為替レートの動向やそのボラティリティにも影響を及ぼすものである。今後とも、店頭デリバティブ取引データも活用しながら、市場動向を丹念にモニタリングしていくことが重要である。』

とのことですが、引用時にすっ飛ばしてしまいましたが、本邦の米ドル/円のオプションでは、主にプレーンバニラのヨーロピアンオプションというシンプルなのが多くて、かつて大流行りしていたこともあった(ような気がする)バリアなどのあるエキゾチックオプションは全体のシェアからするとハナクソのような額しかない(本文3ページの図表7)ということで、まあその手の「突如デルタが発生するバリアもの」が少ないというのもドル円がウゴカンチ会長になるのに少しは効くのかな、なんて思ったりもしました、という小学生並みの感想で恐縮ですがそんな感じです。






2021/09/07

お題「小ネタメモ/若田部さん広島金懇会見がやはりアレ/片岡さん長崎金懇会見では引き続き具体策の無い緩和拡大論でした」

誤変換恐るべし。
https://www.the-miyanichi.co.jp/kennai/_56375.html
「感染者情報一覧表ねw」 新型コロナ資料 宮崎県HPで誤表記
2021年9月6日

『県がホームページ(HP)上で公表した新型コロナウイルス感染者情報の文書ファイルのタイトルが一時「感染者情報一覧表ねw」と誤表記されていたことが5日、分かった。職員が「new」と打ち込み、誤って一部を日本語変換した。「w」はインターネット用語で「笑い」を意味し、県は「そうした意図ではなかったが、不適切な表現で誤解を与えてしまった」としている。』(上記URL先より)

「職員が「new」と打ち込み、誤って一部を日本語変換した。」は嘘ではなさそうなだけに何という不幸なのでしょうと思いますが、そもそもnewとかやってるとnew(最新)とかnew(最新の最新)とかドンドン進化していくので使わないようにするのが吉www

〇小ネタ2つほど

・アニュアルレポートが出ているのですが・・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel210831b.htm/
2021年版英文年報「Annual Review 2021」の公表について
2021年8月31日
日本銀行
本日、2021年版英文年報「Annual Review 2021 (Fiscal 2020)」を公表しました(PDF版)。
なお、後日、HTML版を掲載する予定です。

https://www.boj.or.jp/en/about/activities/act/ar2021.htm/
Annual Review 2021
August 31, 2021
Bank of Japan

クッソどうでもいいのですが、
https://www.boj.or.jp/en/about/activities/act/data/ar2021-2.pdf

『About the Bank of Japan [PDF 2,600KB]』てのをクリックすると上記のURL先になるのですが、その中に『III. The Bank's Officers』ってのがあって、『Policy Board Members』ってのが本文11ページ(PDFの5枚目)にどどーんと記載されているんですけど、何か全員揃ってノーマスクで密の集合写真撮っててエエノンカイ、と思ってしまいました。


・山本謙三さん・・・・・・・・(^^)

https://president.jp/articles/-/49291?page=1
2021/08/30 10:00
「異次元緩和は机上の空論だった」それでも日銀が"失敗"を認めない本当の理由
「将来世代にツケを回すだけ」
PRESIDENT Online
山本 謙三
オフィス金融経済イニシアティブ代表、日本銀行元理事

『日銀の異次元緩和で日本経済はどう変わったのか。元日銀理事の山本謙三さんは「異次元緩和政策で2%物価目標を絶対視した結果、出口の見えない泥沼に陥った。財政赤字は拡大し、将来世代にツケを回し続けている」という――。』(上記URL先より)

ジャクソンホールではドン・コーンとアラン・ブラインダー両巨頭によるOBからの有難いお話シリーズがありましたが、なにせ黒ちゃん日銀の場合は過去を罵って華麗に登場しているだけにOBからの苦言言いましてもねーって感じだと思います。まあとは言え植田さんとか宮尾さんとかちょこちょこ金懇のコンファランスには登場してくるが如何せん世間的にも市場的も話題にならんのが惜しくて、結局OBの苦言がこういうパターンで登場。

まあ中身は読んでちょという感じですが、元理事の山謙さんの無慈悲な砲撃を鑑賞することができますですよ。

・・・・・あと月末月初は毎度のオモシロペーパーとかも日銀ちゃんから出ていたりしたたのですが、アタクシの生業もそれほどヒマではない場合があるのと、米国ネタで頭を捻っているうちに金懇2連発とかあったのでうっかりスルーしておりますのでその辺も成敗しないといけませんが、その前にメディアも市場も誰も相手にしないので不肖このアタクシが謹んでお相手仕りたく候な金懇記者会見ネタを成敗しておきます。



〇若田部副総裁記者会見続きというかおまけ:気候変動の話を聞いても時間の無駄という件

昨日読むべき質疑1本ですな、と申し上げたこれですけど、まあちょいとだけ続き。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210902a.pdf


・気候変動話を聞くのはこの質疑を見れば無駄だというのが分かりますな

こんな質問がありました。

『(問) 気候変動対応と物価の関係についてお伺いします。午前の講演で、中央銀行も気候変動問題への対応を行うことは可能で、それは使命からの逸脱ではないという趣旨のお話がありました。気候変動対応を進めていくと、長期的には、景気や物価の安定につながるということはイメージしやすいのですが、例えば、短期的に物価を下押ししたり、持ち上げたりという、そういう力が一時的に働くようなことはないのでしょうか。』

それな。

『もし仮に、今の状態で短期的に下押し圧力が強まるということがあれば、2%の物価目標の実現との両立ということと、やや矛盾する面もあると思うのですが、その辺の見方について教えてください。』

という質問なのですが、まあ仮定の話ですから受け答えのしようなんてなんぼでもあると思うのですが、ここで若田部副総裁の答弁を鑑賞しましょう。

『(答) 気候変動に対して、何か政策アクションをしたとしても、すぐに効果が出るかという意味では、中長期的な対応が迫られるということだと思いますが、』

実際の音声は見れません(基本的に金懇にカメラが入ってどうのこうのというのは無いので)ですので、実際に若田部さんがどう発言したのか、というのも気になるのですが、そもそもこの日本語が何だか意味わからんですな。

なお、会見「要旨」なので丸めている(総裁会見の音声付映像を見てから要旨を見ると発言の趣旨を損なわないようにしながら丸めたり、意味の取れる言い方にしている、という例がよく見られますので日銀の会見要旨は(FEDなんかのように)文字起こしではありません)こともあるのですが、これは多分会見要旨を作成した事務方(企画か政策委員会室か詳しくは知らんが)の職員のお方もさすがにワカランチ会長で根を上げてそのまま記載しやがりましたですな、と妄想をしました。

『おっしゃったように、確かに短期的においても、気候変動の、例えば物理的リスクや移行リスクが、物価や経済に下押し圧力になることは当然あり得ると思います。』

気候変動の物理的リスク???いやそんなこと聞いてないんだが。聞いているのは気候変動対応を推進することがデフレ圧力になるとか、変なコストプッシュみたいなインフレ圧力になるとかのリスクですがな。まあそういう意味では移行リスクの方はそうなんだが。

『私が日本銀行に来てから痛感することは、日本経済の成長率が全体として低位であることにも関わると思いますが、例えば、2018 年 7 月の豪雨や様々な自然災害が起きると──今回の 8 月の豪雨についてはまだ影響が明らかでありませんが──、やはりこれは経済に少なからぬ下押し圧力をもたらしてきたということです。』

広島金懇なのでご当地ネタに絡めようとする努力は認めるが質問はそっちじゃないんですけど。

『普通のマクロのモデルで考えても、需給ギャップの部分が、一時的に更に供給超過といいますか下押しされると、その限りにおいては物価に対して下押し圧力が働き得るということです。』

だからその話じゃないんですが。

『私も今起きている集中豪雨が気候変動によるものかどうかについて、確実に申し上げるだけの知見はありませんが、ただ、色々と起きている自然災害なり、物理的リスク、そしてこれから考えていかなくてはならない移行リスクが、需給ギャップあるいは予想インフレ率を通じて物価の安定に影響することは、十分考えられると思います。』

やっと移行リスクになったのだが、そもそもこれ若田部さん「移行リスク」の意味をちゃんと分かって話してるのかね????

『そのもとで 2%の「物価安定の目標」と両立するかは、今挙げた例では下押し圧力が働いてしまうので、むしろ、経済政策についてはより拡張的に運営すべきということになるかと思います。』

だから移行リスクの話をしろ移行リスクの話を。

『先ほど申し上げたように、日本経済は、低成長が続いていることの裏返しですが、自然災害や経済構造の転換には直接的にコストがかかるわけで、そうした被害があったときに、それに対していかに対応するかというときも、十分な余地、資源があるのとそうでないのとは違います。ですから、そうした資源や余地を十分に持っておくという意味でも、2%の「物価安定の目標」のもとでの金融緩和とは矛盾しない状況にあると思います。』

全然答えになっていない・・・・・・・

『基本的には、持続的な経済発展、あるいは災害に対して強靭な経済を作っていくという観点からは、日本銀行が行っている政策と気候変動対応は両立し得ると言えると思います。』

なお、最後のこの部分は無理矢理ヘッドラインにしていたベンダーがあったな。

・・・・・・とまあそういう回答なのですが、ここでランボー怒りの更問が炸裂したのはワロタ。ランボーのサラトイです。

『(問) 質問の趣旨ですが、自然災害そのもののリスクが物価にどう影響するかではなく、気候変動対応を進めることによって、物価にどういう影響があるかということだったのですが。 』

これはランボー怒りのサラトイwwwwwww

『(答) その点は、物理的リスクと移行リスクを減らすことにより──もちろん本当に減らすかどうかは問われますが──、物価については安定的になるとは思います。また金融システムについても安定化に資するということだと思います。ただ、その経路がどれぐらい時間がかかるかということについては、中長期的に時間がかかるものかもしれないと整理できると思います。』

この答えでお分かりのように、そもそも若田部さん何も分かってねえだろというのが明らかになりましたなあ(個人の感想です)という感じでございまして、質問する方もさすがに呆れたのか、更問の更問はございませんでしたとさ。

・・・・・・・いや普通に「気候変動対応を行うことがコストプッシュによる企業負担からの短期的な景気下押し圧力になる」とか「気候変動対応のコストが、移行にやや長い期間を掛けることによってコストプッシュからの物価上昇圧力になる」とか、その手の論点を軸に話をすれば良いだけだと思いますし、まあどうせこれからの話だから仮定の話になるので、そういう意味では適当に置きをおいてしまって話をすればエエヤン、と思うのですが、そもそも質問の趣旨を理解していないのか、はたまた政策委員会内部ではそこまで突っ込んだ話をしていないので知見が無いのか、回答したくないからアホウの振りをするという質疑応答における最終兵器を繰り出しているんだかよくわからんのですが、一事が万事この調子なので、金懇の方でも気候変動云々の部分を引用する気が起きなかったアタクシの気持ちが良く伝わるのではないか、と思いましてこの質疑を引用させて頂きましたとさ。


〇片岡審議委員記者会見:追加緩和の必要性が高まっているという認識なのに具体的な話はフニャフニャとな

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210903a.pdf

ちなみにこの会見要旨、悲しい事に6ページしかありませんで、若田部さんのさっきの会見は11ページありますのでほぼ半分しかありません。

おまけに最初の「今日はどうでしたか」というのとご当地(長崎県経済)質問があって、その質疑応答が3ページ目の上4分の3くらいまで使ってしまっているので、実質3ページしか質疑が無い、ということで、1人反対票を投じて追加緩和を主張しているんだからもっと質問して差し上げやがれコノヤローと思ったのですが・・・・・・・

片 岡 審 議 委 員 記者会見要 旨
―― 2021年9月2日(木)
午後2時30分から約20分
(長崎市・東京間オンライン開催)

ってありますのでこの金懇質疑応答って片岡さんが東京でいると思うのですが、質問する方は長崎から質問しているのかしら、となりますと、だとすると昨日の今日(前日に広島で金懇があった)で東京から来ている記者の方だと金懇会見終わってから新幹線ですかそうですかという所ですからそりゃしんどいわ、とは思いましたw

・もっと具体的な提案を出せというのを婉曲表現で示した質問に対しての説明

『(問) 午前の講演で、コミットメントの強化に関しまして、財政と金融の更なる連携が必要であると、そういうご趣旨の発言をされておられました。これは具体的に、政府・日銀の「共同声明」の見直しというものを指しておられるのか、財政・金融の連携の内容と狙いを含めてコミットメントに関する片岡委員の具体的なイメージにつきまして、もう少しご説明をお願い致します。』

結局のところ、ここでフワフワした話ばっかりしかしてないのが片岡さんの致命的に弱い所でございまして、ただの言うだけ番長というか「私言ってましたよね」ムーブというか、まあそういうものを感じますので(個人の感想です)具体策出せや具体策、というのは良く分かる。

『(答) 私自身は、現状の金融政策よりも更に一歩緩和を進めるべきだと、そういう観点のもと、具体的には長短金利操作における金利操作の更なる金利低下促すということ、その一方で、コミットメントの強化を通じて、2%の「物価安定の目標」に対する信認をより強めると、そういうことが重要であると申し上げてまいりました。』

でもってその具体策は何かと質問者は問うているんだと思うのですが、

『足許、先日のジャクソンホールにおける色々な金融政策に関する話題にも出ていますが、やはりECBやFRBの動きをみますと、金融政策に加えて財政政策との関わりというものが非常に重要になってきていると、こういう考え方がより浸透してきているのではないかと考えています。』

えーっとすいません、ちょっとあんまりその辺の話の突っ込んだ成果物アタクシまだ出しておりませんのでアレなんですが、今回のジャクソンホールでは片岡さんのいう文脈での「金融政策と財政政策」というお話、即ち金融財政で協力して吹かして高圧経済アプローチヒャッハー!という話をしている訳ではない(そういう話をしたかったらブラインダーやコーンを呼ばないですがな)と思うのですが、そこはジャク穴の他のペーパーをもうちょっと鑑賞してから申し上げたいので保留。

『そうした文脈の中で、ご質問の更なる連携について、具体的にはどのような連携ができると考えているのかということですが、』

具体策キタコレ!!!

『まず金融経済政策運営については、そもそも政府と日本銀行が十分な意思疎通を図ることが必要で、この点は日本銀行法にも明記されているとおりです。』

ん?普段十分な意思疎通図ってないの??

『具体的な点については、例えば、新型コロナウイルス感染症への対応で、現状、政府と日本銀行は連携しているわけで、こうした点についてももちろんですが、』

なんの連携してたっけ??コロナオペの事かいな。

『私自身は、感染症が落ち着いてからの日本経済を再び成長軌道に乗せて、低成長・低インフレ・低金利といった長年の課題を克服するうえでも、財政・金融政策、そして成長政策の連携を強化するとともに、それぞれが役割をしっかり果たしていくということが重要であると考えています。』

で、何をするの?

『この際、その具体的な財政政策や成長政策については、政府・国会の責任において適切に行われるものと承知していますが、私どもとしては、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するという政府との「共同声明」のもとで、目標達成に向けて、強力な金融緩和を行っていきたいと考えている次第です。』

全然答えになっていない・・・・・・・・・・

『「共同声明」全般に関しては、この場ではなかなか申し上げられないわけですが、少なくとも、私どもとしては、「共同声明」のもとで、金融政策の観点から「物価安定の目標」をできる限り早期に達成する必要があり、その役割をしっかり果たしていくと。他方で、政府においても、自らのご判断のもとで、財政政策や成長政策については適切に判断されるものと期待していますので、そうした両輪の協力というものを、よりお互いが意識しあって行っていくというのが、更なる連携といったところのイメージです。』

・・・・・・結局フワフワした話しかしないのであったという感じだし、共同声明をベースにすると中長期的な財政の健全性確保って話をしていると思うんだが・・・・・・・・・


・どうせ誰も読んでないでしょうから慈悲をもってその他の質疑も鑑賞して進ぜよう

さらに関連質疑。

『(問) 本日午前の講演でも、それから従前から審議委員がおっしゃっているように、長短金利操作の引き下げ等を含む緩和を更に進めるべきだということをおっしゃっていたと思うのですけれども、足許ワクチンが進んでいるとはいえ感染が日本でも拡がっていて、かつ日本の企業を成長させていた世界経済もやや少し減速懸念が出てきている中で、国内の緊急事態宣言も一応いつ終わるかわからないという状況で、それをする緊急度というか、必要性が足許で更に高まっているとお考えでしょうか。』

これ次に関連質問があって、次の質問の文脈からすると更問じゃない可能性がありますが、まあ次の質問の呼び水になっているという感じです。回答はそりゃそうなるという答えでして、

『(答) ご指摘のように、足許の経済動向、ないしは世界経済の動きというものをみていきますと、より思い切った政策をとっていく必然性というのは、私自身の中では増しているのではないかと思っています。』

と来るわな、そしてその次の質問が来ているということで、ここの質問の流れは美しい。

『(問) 今日の朝の講演の中で、今いくつかやりとりがありましたけれど、強力な金融緩和が必要であると従来のお考えをまた改めてご説明して頂いた中で、積極的に国債を買い入れると言及されています。例えば、積極的に国債を買い入れる部分ですけれども、量とかペースとか、何か定量的なイメージというか考え方がもしあれば教えて頂けますでしょうか。』

大変に婉曲に表現されていますが(2つ前質問も含めて)この質問は裏を返しますと「そんなに急ぐべきなら具体的提案をしろやこのボケナス」というのが婉曲表現の中に含まれてい、という大変に素敵な物件になっております。さてその回答。

『(答) 定量的なイメージは、当然、私自身は持っていますが、金融政策決定会合の場で議論することになっていますので、具体的なお話は差し控えさせて頂きたいと思います。』

ズコーって椅子から転げ落ちそうになりましたがwww

議事要旨百万回くらい読んでるけど、MPMで具体的な定量の数字を出して議論してるの見たことがまるっきり無い(最初の頃の15年国債金利云々だけですがな)のに、何が「具体的なお話は差し控えさせて頂きたいと思います」ってMPMで具体的な話をしているかのような物言いをするんでしょうかねえ片岡さん。

『そのうえで、いくつか申し上げますと、私自身、イールドカーブ・コントロールのもとで金利をより低くする、全体的に低くすることが望ましいと申し上げているわけですが、そのイメージはひとえには政策金利の起点となる一番年限の短い部分について、よりマイナス金利の深掘りも含めた対応を取っていくことに加えて、10 年債以降も含めて、より金利を低位に向かわしめると、そういう形の方策の一つとして国債買入れもあり得るということですので、そうした部分が望ましいと考えているとご理解頂ければと思います。』

具体的な数字出してくれないとそもそも検討もできないんでたたき台出してくれませんかねえ・・・・・・・・・

なお、最後の質疑は政策直接ネタとは別件バウアーなので割愛します。




2021/09/06

お題「雇用統計雑感/ガースー先生辞任ですかそうですか/若田部副総裁金懇会見の中身はスカスカでした」

なんぼなんでもこれはない(個人の感想です)
https://www.sankei.com/article/20210904-B5CAFPTAFVJIPCXMM7MBTPW2DM/
自民総裁選 安倍氏は高市氏を支持
2021/9/4 20:28
政治 政局 菅首相退陣

https://www.sankei.com/article/20210825-S7YINOLUI5OWVHG3FPRNYAZTBI/
高市早苗氏「総裁選に何が何でも立候補」 月刊正論で
2021/8/25 17:12
政治 政局

『「議員立法作業に取り組むたびに日本国憲法による制約に苦しんできた」と自身の経験を紹介し、憲法改正の必要性を訴えた。』

ちょっと待てお前は普段からどういう法律を作ろうとしてるんだよという話で、改憲論を唱える人の中でもここまで突き抜けたのは中々アレなのですが、まあ来年の参院選までにボロがボロボロでるので(個人の感想です)それまでよという辺りですかねえ。


〇雇用統計でお賃金に反応したという事はちゃんとパウエルの発言伝わってるじゃん

最初NFPのヘッドライン見ただけでまあいっかと寝てしまいましたもんで(汗)。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2Q53A6
2021年9月4日6:08 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、賃金上昇を材料視 雇用者数は大幅鈍化

『[ニューヨーク 3日 ロイター] - 米金融・債券市場では米債利回りが上昇。米雇用統計で賃金が予想以上に伸びたことが材料視された。』(上記URL先より、以下同様)

30年債 17時05分 1.9461% 前営業日終値 1.9070%
10年債 17時03分 1.3257% 前営業日終値 1.2940%
5年債 17時04分 0.7853% 前営業日終値 0.7760%
2年債 17時05分 0.2081% 前営業日終値 0.2130%

ほうほうそうですかそうですか。

『8月の非農業部門雇用者数は前月比23万5000人増と、市場予想の72万8000人増を大きく下回り、過去7カ月間で最も低い伸びにとどまった。』

と、最初これを見てアイヤーって思いましたが、

『一方、時間当たり賃金は前月比0.6%上昇し、予想の0.3%の2倍の伸びとなったほか、前年同月比では4.3%と、前月の4.0%から伸びが加速した。』

さあもりあがってまいりました!!!!!!!!!

『ウェルズ・ファーゴの金利ストラテジスト、ザカリー・グリフィス氏は「米連邦準備理事会(FRB)が期待するほどインフレ率は一過性に終わらないかもしれない」と指摘した。』

とまあそうなるわなと言う事で、先般のジャク穴でのパウエル講演でも、まあそれ以前に多くのFED高官もゆうとるのは「お賃金のスパイラル上昇ダメ!ゼッタイ!!」って話しでして、雇用者数じゃなくてお賃金の方に反応(と言ってもさすがに雇用者数がアレですから反応したという程金利は上がらんですけど、NFPが盛大に下振れしたのに金利が上がったんだから大したもんです)とは何だちゃんと「インフレが一時的じゃない可能性があるで」というパウエルのジャク穴講演伝わってるじゃん、とは思いましたがどうなんでしょうかね。

『インスペレックスのシニアトレーダー、デービッド・ペトロシネリ氏は「今回の雇用統計がテーパリングの流れを変えるとは考えにくい」とした上で、パウエル氏はより緩やかなアプローチを取る可能性があると予想した。』


どうなんでしょうかね。お賃金スパイラルのリスクがあったりするとなると、テーパリングだけはとっとと終わらせておかないとイカン、ってことになるような気がします(個人の感想です)けどね。まあ利上げ云々まではまだ時間はあると思うので、その間に景気の局面が変わっているかも知れないので何ともかんともですが、お賃金がホイホイ上がるという事になると、もうちょっとインフレが続くかもアカンがなメッセージを出さねばならんという話にもなりそうですが、まあ今って何だかんだ言ってインフレとか賃金とか、単月の指標だけ見ててもダマシが入りそうなものを相手にしているので、一々極端に決め打ち反応しない方がよいのかもしれませんな。

あと、ちなみにこれまた何度か申し上げていますが人間性がネチネチしているので再度申し上げますと、、昨年9月にぶっこんだロンガーランゴール&ストラテジーですが、ゴールの方は「2%&数字として決め打ちはできないけど概念としての最大雇用」なのはいいんですけど、ストラテジーの方は「雇用が強い中でも物価がアガランチ会長」というのを前提にした結果として、物価がアガランチ会長なのであれば、国民厚生的には高圧経済アプローチしておいた方がより多くの人の雇用が確保できるし、インフレ加速しなければ安定成長が続くし(゚д゚)ウマーである、というアプローチなのであって、インフレが勝手に加速しちゃうかもしれない、という状況のアプローチとは全然違うので、そもそもの前提条件が崩れているのにも関わらず、なんかその前からのペイシャントなアプローチをそのまま信じるってのも如何なものかと思いますので、上記の何とかさんの「より緩やかなアプローチでテーパー」ってのも、前提条件の変化に対して無頓着な気がします(個人の感想です)。


ちなみに、この前も書いた気がしますが、パウエルの「物価が一時的な理由を沢山並べていたので一時的と強調」とか典型的なテキストマイニング対策に騙されているにも程があって、一時的な理由の説明はいつも通りで、その後に1項目を除いてすべてに「でもこの点は要注意」ってのを一々入れていて、そのトーンが従来のパウエルの説明よりもトーンアップしている、というのを見ないとアカン奴だと思うのですが、アタクシの勝手な妄想の世界になりますけど、たぶん自動テキストマイニングで即座に反応するような連中が盛大に反応してしまうと、フラッシュクラッシュみたいなのが起きてしまうので、それだけは避けようとして、ジャク穴のような重要講演の場合、テキストマイニング対策をして初動で変なことが起きないように、ってのは気を使っているんだろうなーって最近は特に思います(個人の感想ですけど)。

まあテキストを色々な観点(というかこれまでの流れとかロジックとかを考えて、というか)で読めば「賃金指標には注意しないといかん」というのは明白なので、雇用統計でもNFPに引っ張られなかったという事でしょうけれども、要はフラッシュクラッシュみたいなのが起き無ければ、その後にメッセージ読み取った市場が解釈して行って動く分にはそこまでディスオーダリーな動きをする訳でもないので、ロボットだけ騙しておけばよいってなもんなのかね、などと思う今日この頃なのでありました。(かなり妄想寄りの個人の感想です、為念)


〇ところでガースー先生が御辞職されるとのことですが

さすがに本件の第一報を見た時は奇声を上げてしまったアタクシw
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210903/k10013240971000.html
菅首相「コロナ対策に専念」総裁選に立候補せず 記者団に表明
2021年9月3日 13時58分

『この中で菅総理大臣は「先ほど開かれた自民党役員会で私自身、新型コロナ対策に専念をしたいという思いの中で、自民党総裁選挙には出馬をしないことを申し上げた」と述べ、今月行われる自民党総裁選挙に立候補しないことを表明しました。』(上記URL先より)

もうちょっとマシな理由考えてくれよ・・・・・・

まあ何ですな、総てにおいて楽観シナリオというか「俺様の考えている事に都合の良い話」ばかりを信じて突き進み(なぜなら耳に痛い話をするとそれが事実であっても左遷される、とかになったらそら変人のワイでもよー言わんわ、となりますからねー)、現実にぶち当たった時にその場しのぎの対処をして、というムーブが延々と続いた結果がこのテイタラクなので、まあその状況として大変だったなあというのは分かるけど、それに対するアプローチもプロセスも滅茶苦茶で、器でもないのに総理総裁に手を挙げたことがそもそもの間違いという所ですな。

コロナ対応だって結局現場が何か頑張って帳尻を合わせにいっているだけだし、大体からして5月の時点でワクチンの供給スケジュールが遅れそうなのに、それを黙って自治体とか企業とかのケツ叩いておいて後からワクチン供給が遅れますとか邪悪にも程がありましたなあ、と思いますが、楽観の流れはGoToキャンペーンの辺りからずーっとあの調子なのでまあ良くこの程度で済んだわと日本の現場力に感心するのでありました。


・・・・・とまあそういう話はさておきまして、ガースー先生と言えば肝いり政策でありますところのカーボンニュートラル政策というのがありまして、日本銀行とかいう所におかれましては、先般物凄い勢いで気候変動対応何とかオペとかいうのを導入する(ただし具体策はこれから)というのを出して、物凄い勢いで忠犬の如くガースー先生に尻尾をふっておられたと記憶しておりますが(個人の偏見です)、肝心のガースー先生が失脚(これ真面目な話衆院選小選挙区落選の目まであるじゃろ神奈川2区民次第だけど)してしまいまして、さて全力で振った尻尾は何処に逝くってのがちょっとした見ものではあります。

まあ何がどうなるか分からんですけれども、マイナス金利とかそういうしょうもない政策に反対して下さるような枠組みになってくれると甚だアリガタヤですので、そういう展開を(あんまり期待してないけど)期待したいものだと存じます。

しかしまあ何ですな、取り巻きがアレの安倍ちゃんに次いで、引っ張って来ようとする人材が揃いも揃ってアレというガースーが続きましたが、日銀の審議委員人事とかもちったあマシになってくれませんかねえと思いますし、そうなってくれないとアタクシの本務(?)である日銀の審議委員講演とかを読まないで(読んでるけど)海外中銀の要人による講演とかペーパーばっかり読む人になってしまっていて、やっぱりそれはそれで悲しいので、是非とも「馬鹿が馬鹿を連れてきて馬鹿の巣窟になる」といううっかり部門トップに変なのを入れたが為に馬鹿の巣窟になってしまうという中途採用の多い企業でも時々散見される悪事例の循環を切って頂ければ幸いに存じます。


〇若田部副総裁金懇会見である

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk210902a.pdf

11ページもあるのにまるで読みどころがない、というすさまじく悲しい会見でして、最初の質問とその次のご当地質問で11ページのうち4.5ページを使っておりまして、その他の質疑が揃いも揃って気候変動対応ばっかり、ということで、そもそも気候変動対応とかに独自の知見がある訳でもないお方に聞くだけ時間の無駄じゃろ(むしろ大雨の被害がここ数年やたら食らう広島のご当地ネタの方がよっぽど質疑応答として読む意味がありました)という感じで、特に気候変動に関しては文字列としては埋まっているのですが、読んでて何一つこっちの心に訴えるものが無い(個人の感想です)という物件なので、お前らも質問するんじゃねえよと思いました。

という訳で少しは見れる質疑をピックアップしますとですね、


・コストプッシュ云々の質疑なのですがそもそも若田部先生の歴史認識が微妙に微妙

『(問) 物価で二点お伺いしたいのですが、午前の講演では、コストプッシュによる物価上昇について警戒感を示されている感じなのですが、副総裁は、先行きはエネルギーや資源価格の動向によって、物価が上振れする可能性も相応にあり得ると考えておられるのでしょうか。また、コストプッシュであっても、適合的にインフレ予想の引き上げを促す面はあると思うのですが、物価安定目標の実現という観点において、コストプッシュインフレ、これをどのようにとらえておられるのか、ご見解をお願い致します。』

今回の会見の中でまあ一番まともに読みたくなる質問であった。

『(答) 講演でも申し上げたのですが、持続的にインフレが起きるためには、コストプッシュ要因ではいかないだろうというのが私の趣旨です。』

そりゃそうなんですけどね。

『1960 年代後半から、よく言われる大インフレが起きましたが、あのときも、例えば「石油ショックが起きてインフレがひどくなった」との認識の人が多かったです。もっとも、大インフレそのものは、1960 年代後半の国内におけるマクロ経済政策の拡張的運営によって起きたもので、それにより短期のみならず中長期の予想インフレ率も上がったということでした。』

講演の方はめんどいから細かく突っ込みませんでしたが、「グレートインフレーション」ってむしろ海外(というか米国)の話でしょ60年代後半とかいう話だと、と思うのですが、
こんなのがありましてですね、
https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je12/h10_data05.html
内閣府ホーム > 経済財政政策 > 白書等(経済財政白書、世界経済の潮流等) > 平成24年度 年次経済財政報告 > 長期経済統計目次 > 物価

こちらの消費者物価指数を見ますと、1973年から2桁インフレになっていますが、ご案内の通りで田中角栄内閣による列島改造ブームが1972年(1972/07が田中内閣発足)からあって、その列島改造ブームでの不動産価格上昇が物価に波及した所に1973年10月の第4次中東戦争でからの第一次石油ショックが追い打ちをかけた、という格好だった筈なんですけど、というか日本に関しては1960年代後半の消費者物価って前年比5%程度で安定(ちなみに今見たら大インフレに見えますが当時でこの数字なら安定してたって部類になる筈)して推移しておった訳で、そもそも60年代後半から大インフレが起きた、という歴史認識が何だかなーという感じ(実は講演の方でもそういう話しでしたが他にネチネチツッコミをしてたのでそこまで手が回らなかった)ですな。

『ですから、今、足許で多少コストプッシュ的なことが起きているとしても、それがより広範に日本経済に拡がっていくためには、』

そもそも論としてCPIマイナスとかだし刈込平均取ったってほぼゼロ近傍なのですが・・・・・・・

『それこそ講演の冒頭で前向きな循環、良い循環という言い方をしたように、家計や企業に滞留、待機している資金が支出されていくという動きがないといけないと思います。』

????????

『コストプッシュだけでインフレが起きるとはみていないので、やはり日本国内の要因をきちんとみなくてはならない、というのが、私が申し上げたかったことです。』

って日本がコストプッシュでインフレになるという命題そのものが藁人形にも程があるんだが。

『もっとも、適合的期待を通じて予想インフレ率が上振れる可能性はないかと言われれば、そうかもしれないですが、』

ほうほう。

『その場合、みなくてはならないのは、短期の予想インフレ率というよりは、むしろ、中長期の予想インフレ率です。』

は?

『この部分は米国経済をみるところでも争点になっていますが、中長期の部分はかなり 2%前後でアンカーされているということであるならば、仮に、コストプッシュで、適合的期待によって短期の予想インフレ率が上がったとしても、それがそのまま持続的なインフレ率につながってくることはないだろうとみています。』

いやそういう話はどうでも良くて、日本の場合は2013年以降に一瞬コストプッシュ(円安やら消費増税便乗値上げなどを含む)で物価が上がったけど、その時に起きたのは物価上昇からの消費減退(消費増税駆け込みの反動もありましたが)だった、って論点の方が重要じゃろと思うのですが、

『もちろん、経済は色々なことが起こり得るので、例えば、石油ショックのようなことで、大幅に予想インフレ率が上がるようなことがあれば別ですが、そのようなことが今起きているとはみていない、とお考えください。』

と、日本の話をしてるんだか米国の話をしているんだも良く分からん座学のフワフワ話だけで終わる、という甚だ底の浅い説明をされただけに留まるのでありました。

まあ他の質疑はそうですねえ、1つくらいはネタにするのあるかも知れませんが、一事が万事この有様でして、なんか付け焼刃で勉強した話をお話しているだけ、ってのが行間から伝わって来る物件しか無いので、読む価値梨ということで本日はこの辺で勘弁させて頂きとう存じます。






2021/09/03

お題「若田部副総裁と片岡審議委員の金懇挨拶ネタでございます」

しまった。片岡さんの金懇が連続していたとは(ノ∀`)アチャーでしたが、まあ要するに黒ちゃんと雨宮さんの講演しか気にしてないってことでもあるんですけどね、あっはっは。


〇市場もメディアもスルーモードの若田部副総裁金懇続きである

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210901a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 広島県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 若田部 昌澄

・最初に「経済指標の解釈は慎重にしないと」って言ってたじゃないですか〜

昨日は最初の『2.経済の現状と展望』の『(1)経済情勢と回復メカニズム』の部分にネチネチとツッコミを入れてたら不覚にも時間が無くなってしまいましたがw、次の『(2)企業部門と家計部門の現状』を拝読するのですが、まあだいたい大本営発表の話をしている感じではあるのですが、微妙に説明の脇が甘い所があって、企業部門の最初の所で、

『まず、企業部門です(図表3)。企業の所得である収益は、対面型サービス業など一部に弱さがみられるものの、全体として改善しています。実際、『法人企業統計調査』でみた全規模全産業ベースの経常利益は、本年1〜3月には既に感染症拡大前の水準を上回っています。』

うんうん、そうですね。でまあああだこうだと話をしているのですが、まあ大本営発表なのですけどアタクシの話の都合上引用しますね、まあ見るべきものは無いのですけれどもw

『この背景には、世界経済が不均一性を伴いながらも総じて回復する中で、わが国の輸出と生産が着実に増加していることが指摘できます。ワクチン接種が進む米欧では、公衆衛生上の措置が段階的に解除されるもとで、これまで抑制されてきたサービス消費を含めて、経済活動の回復が鮮明になってきています。米欧経済の回復は、先行して回復した中国経済とともに、貿易を介して、世界経済全体にプラスの影響を及ぼしています。そうしたもとで、企業の支出である設備投資は、製造業の機械投資が牽引役となり持ち直しています。』

ほうほうそうですかそうですか。

『日本銀行の短観における企業の事業計画をみても、本年度は、設備投資のしっかりとした増加が計画されています。このように、企業部門では、海外経済の回復を背景とする外需の増加を起点に、収益から設備投資への前向きの循環が再び働き始めています。』

ということで、前向きの循環がワークしているそうなのでまあそれはそれで結構なのですが、あんさんさっき(昨日ネタにした部分)は、

『最初に、経済情勢についてお話します。まず、昨年来、内外経済は、感染症の影響等からきわめて大きな変動を経験しており、各種経済指標の解釈には従来以上に注意を要します2。』

と説明していたのですが、従来以上に注意を要して解釈したような形跡が残念ながらみられていない訳ですよwwwwww

いやまあ別に見立ては見立てで結構なのですが、「(内外経済の)各種経済指標の解釈には従来以上に注意を要します」のであれば、「企業部門では、海外経済の回復を背景とする外需の増加を起点に、収益から設備投資への前向きの循環が再び働き始めています。」という解釈をするのは時期尚早であって、もっと持続的なデータを見るために1年とは言わんけど2四半期とか3四半期とか見てからそういう判断をした方がエエンチャウノって話。

まあ何ですな、最初に賢しらに「まず、昨年来、内外経済は、感染症の影響等からきわめて大きな変動を経験しており、各種経済指標の解釈には従来以上に注意を要します。」とか言ってBOEベイリー総裁のマンションハウスでのスピーチをリファーしているのが、どこからどう見ても雉も鳴かずば撃たれまいにも程がある訳で、そういうならもっと慎重な判断が然るべきとなるのをすっかり失念して、「ボクこんなに勉強してるもんね」を出すのがアカンということですな、ナムナムナム。


・リファレンスが置物な上に文献じゃねえだろwwww

『続いて、家計部門です(図表4)。』

ということで家計部門の話。

『雇用・所得環境は、政策による下支えもあって大幅な悪化は回避されていますが、弱い動きが続いています。』

はい。

『就業者数は、感染症の影響から対面型サービス部門の非正規雇用を中心に減少したあと、足もとまで低めの水準が続いています。失業率も、このところ3%程度と、感染症拡大前に比べ高めの水準で推移しています。休業者を考慮した失業率は6%、さらに潜在労働力人口を考慮した失業率(未活用労働指標4)は 7.3%に上っております3。』

と、来ましてこの次。

『一方、賃金をみるときには、統計の性質に注意が必要です。』

ほほう。

『『毎月勤労統計調査』での賃金は、平均賃金なので雇用形態の構成が変化する影響を受けます。』

ほうほうほう。

『「量的・質的金融緩和」の開始以降、実質賃金が上がっていない、という意見がありますが、実態を正確に理解するには構成効果を考慮する必要があります。』

ほうほうそれでそれで??

『例えば、景気が回復すると、これまで雇用されていなかった賃金水準の低い新規労働者が雇用されますので、平均賃金には切り下げる力が働きます4。』

何じゃその理屈、と思ってこの脚注4というのを見ますと驚愕のリファレンスが!

『4 より正確には、実質賃金を計算するには、@雇用形態の変化と、A労働時間の変化を考慮しなければなりません。『賃金構造基本統計調査』は、正規社員と、非正規社員やパートなどの短時間労働者を区別しています。これによって、一人当たりの実質賃金により近いと考えられる実質時給を計算すると、「雇用期間の定めがない正規社員」の実質賃金は、2012 年から 2019 年にかけて 4.5%上昇し、「短時間労働者のうちの非正規社員」の実質賃金は同期間中に8%上昇したことが分かります(岩田規久男『「日本型格差社会」からの脱却』光文社新書、2021 年、192-193 頁)。ただし、この統計は年一回しか公表されないため、賃金動向をリアルタイムで追跡するには頻度が低いという欠点があります。』

>(岩田規久男『「日本型格差社会」からの脱却』光文社新書、2021 年、192-193 頁)

ちょwwwww置物が置物理論がワークしなかった事の言い訳だろそれ、しかも光文社新書かよという風情でありまして、いや申し訳ないんですがそういう内輪の言い訳表明本をリファーするんじゃなくて、もうちょっとちゃんとしたものをリファーしてくれませんかねえと思いますし、よくよく見ますと、上記脚注の説明で、「「雇用期間の定めがない正規社員」の実質賃金は、2012 年から 2019 年にかけて 4.5%上昇し」ってあるんですが、7年間で4.5%上昇ってそれ上昇したうちに入るのかよ!!!!という風情でございまして、実にこう残念な言い訳になっております。

何ちゅうかですね、今回の若田部さんの金懇スピーチって、こんな感じで大本営発表の中にちょこちょこと置物政策の言い訳説明をマゼマゼしているのがタチが悪い所でして、流して読んでいるとただの大本営発表垂れ流しなのですが、よくよく見るとこんな感じで途中途中に変なのがあるので注意して読まんとアカンという感じですな。

その後に『(3)先行きを見通すうえで重要な二つの「待機資金」と「予想」』というのがありますが、成長期待の所の説明で、「今回のコロナでそんなに落ちてない」というのをアピールしたのは良いんだが、そのせいで2013年以降に特に企業の成長期待が上がっていない、すなわち置物直線一気理論による「期待に直接働きかける政策」というのに明らかに失敗している、というのを図表で示してしまうという頭隠して尻丸出しと言った風情の話があるのは昨日引用した通りでございます。

んでもってその後が『(4)物価動向』となりますが、経済物価情勢と先行き見通しに関しては物価も含めて大本営発表で特段これというのはありません。


・物価の安定2%の意義は為替ですかそうですか

さて、その次が『3.中央銀行の今日的課題』という小見出しになっていて、今日的課題の前に2013年から大口を叩いている物価安定目標という課題を何とかしろやこのデクノボーとしか思えないお題になっているのが実にチャーミングなのですが、最初の小見出し『(1)気候変動問題への対応』に関して若田部さんが受け売り以外の識見を持っているとは思えませんのでそこは読むだけ時間の無駄ということで盛大に割愛します。

その次が『(2)物価の安定』との事ですが、今日的課題どころか2013年に堂々とぶち上げたあれは何だったのかと小一時間な話についての言い訳を拝読しようではありませんか。

『日本銀行の気候変動対応は中長期的な物価の安定の実現を目的としています。とはいえ、日本銀行はより喫緊の課題としての物価の安定の実現と、デフレ脱却をないがしろにしている訳ではありません。』

喫緊の課題だと思ってるんなら何でそっちの話を先に言わないんでしょうか????理解に苦しみますな。

『物価の安定は、先に述べた経済の好循環の実現に必要不可欠です。しかし、なぜ「物価安定の目標」が2%なのでしょうか。』

今さらお前何を説明しようとしているの??って感じでして、挨拶の尺稼ぎかよ!って言いたくなるのをグッと堪えて読みますとこれが中々のアレ。

『これについては、金利が下限に張り付いてしまわないための政策余地の確保や、物価統計の上方バイアスに加えて、2%目標がグローバル・スタンダードであることを理由として挙げてきました。』

で、何故か知らんが「グローバル・スタンダード」の説明を延々とおっぱじめる若田部さん。

『この最後の点を少し解説します。現在、変動相場制で資本移動の自由を許容する国・地域では、インフレ目標を採用する中央銀行が増えています。資本移動の自由を許容して自律的に金融政策を運営する場合、為替相場は変動せざるを得ません(図表 13)。しかし、金融政策の運営で各国の中央銀行が同じインフレ目標値を目指しているならば、結果として名目為替相場の変動は縮小すると考えられます20。』

為替市場対策、って思いっきり説明しちゃってますね。

『また、2020 年8月に米連邦準
備制度理事会(FRB)、2021 年3月には日本銀行、2021 年7月にはECBがそれぞれ金融政策の枠組みの見直し・点検を行いました。この結果、日米欧の中央銀行は、2%という目標値に対するコミットメントを再確認ないし強化し、中央銀行間で政策枠組みの収斂が一段と進みました。』

2%目標の収斂はともかく政策枠組みは全然収斂してないと思いますが。

『さらに、日米欧いずれの中央銀行も、低金利政策を続けており、各国・地域間での金利差は安定的に推移しています。これらの結果として、米ドル、ユーロ、円の為替相場の変動率は近年低下しています(図表 14)。』

ひたすら為替かよ。

『感染症の影響によっても、日本が辛うじてデフレに陥っていないのは、2%目標のもとで金融政策の積極的な緩和姿勢が揺らいでいないからとも考えられます。』

なんじゃその理屈は。米国様におかれましてはインフレ上振れが発生して一時的と一生懸命に説明して急速な緩和縮小の思惑が台頭することによる長期金利急上昇を避けようと努力している、というステージなのですが、「日本が辛うじてデフレに陥っていないのは、2%目標のもとで金融政策の積極的な緩和姿勢が揺らいでいないからとも考えられます」ってちょっと言ってることの意味がわからないんですけど。

『他方、ここから離れることは為替相場の不安定な動きにつながりうるので避けなければなりません。』

なんだ為替か。だったらIMF8条国から離脱してドルペッグでも何でもすれば良いじゃん。


・藁人形論法キタコレ

さて次もまた置物一派らしい藁人形論法が始まります。

『なお、当初インフレ目標はインフレ率を抑えるためのものであり、デフレからの脱却にはなじまないという解釈が流布していました。』

インフレ率を抑えるのには金融引き締めがジャンジャカできるけど、金融緩和の場合は将来からの力の前借りなので前借効果が逓減するとか、名目下限金利制約があるから、そこから先の金融緩和効果は逓減するし副作用も出て来るとか、そういう話はありましたな。

まあついでに申し上げれば、2013年に2年で2%でニバイニバーイというのをぶっこんでおられましたが、そういうのを出したからインフレ期待が急に上がるという訳では無かった、というのもありますよね。

『実際には、2000年代においても、インフレ目標を採用している中央銀行は、インフレの実績値が目標値を下回れば金融緩和政策を行っておりました。』

えーっと、それと「デフレの脱却」云々との関係は????

『さらに、感染症の影響でインフレ率の実績値が下がった時点でFRBが平均インフレ率目標を採用し、ECBが2%を上下に対称的なものとして再定義しました。』

それ別にデフレ脱却を企図したもんじゃないですし、大体からしてFRBの目標は平均インフレ目標ではないですし、さらにそもそも論を言えば、FRBのロンガーランゴール&ストラテジーの内容に関しては感染症以前から検討されていたものであって、「感染症の影響でインフレ率の実績値が下がった時点でFRBが平均インフレ率目標を採用し」ってのがいろんな意味で言ってることおかしいし、ECBのシンメトリーに関しても感染症以前のドラギ総裁時代から既にそういう説明になっていたものを、正式の定義に組み込んだだけであって、感染症どうのこうのは直接関係ねえだろ、というお話ですな。

しかも、(ここはまあご議論があると思いますがアタクシの個人の感想といたしまして)FRBは2020年9月に出したロンガーランゴール&ストラテジーに関しては、その前提として「物価が経済のスラック、なかんずく雇用のスラックに対しての反応が乏しく、完全雇用下とみられる水準であっても物価上昇圧力が掛かりにくい」というのを置いていて、現下ではその前提が変化している可能性がある、すくなくとも足元の数値では明らかに前提条件と異なる状態になっているけれども、一時的現象かも知れないので今後の状況をよく見ないといけませんね、って話をしていると見られる次第なんですけどねー。


『日本銀行は 2016 年9月からオーバーシュート型コミットメントを採用しています。このように、インフレ目標はインフレ率を引き上げるためにも利用されています。』

2016年9月以降日本のインフレ率上がりましたっけ??????????????


・米国が引き締めたからという理由だけで日本は引き締めませんって当たり前だろアホかお前は

『ただし、各国中央銀行の金融政策の枠組みが収斂しつつあることは、その時々に取るべき具体的な政策がどこでも同じになることを意味しません。仮に米国で、物価上昇率が目標の2%を超え、平均インフレ率目標も実現され、金融の引き締め局面に入ったとしても、それを理由として日本銀行が金融政策を調整することはありません。あくまで日本銀行の目標はわが国において2%の「物価安定の目標」を安定的に達成することです。』

なんでこういう説明をする必要があるのか理解に苦しむ。


・若田部さんはパラレルワールドかなんかにおられるのでしょうか???

更にこの先の話がもっとアレでした。

『現在はエネルギー・資源価格の上昇を受けて、わが国でも生鮮食品を除く消費者物価、いわゆるコアCPIが上昇しておりますが、日本銀行はコアCPIだけをみて政策を判断している訳ではありませんし、エネルギー・資源価格の上昇は一時的に終わるかもしれません。』

突如何を言い出してるんでしょうか?????

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2021年(令和3年)7月分 (2021年8月20日公表)

生鮮食品を除く総合

年平均(前年比 %)
2018年 2019年 2020年
 0.9  0.6  ▲0.2

月次(前年同月比 %)
2021年4月 5月 6月 7月
▲0.9 ▲0.6 ▲0.5 ▲0.2

・・・・・・前年同月比マイナスだしその前のベースの2020年も年平均マイナスなんですが。(ちゃんと見てないけど前月比で上がっているから上がっているとかなのかしら??)

『他方、エネルギー・資源価格が上昇すると交易条件が悪化して所得が国外に流出する点にも注意を払う必要があります。その場合、所得を維持するためには、マクロ経済政策を拡張的に運営するのが望ましくなります。一方、そうした政策は物価上昇率をさらに押し上げる可能性が生じますので、予想物価上昇率の動向に注意する必要があります。』

いやあのすいませんどこの国の話をしておいでなのでしょうか??????ここ日本ですよ日本。


『いずれにせよ、1960 年代後半からの大インフレの歴史が教えるように、国内需要の持続的な拡大がない限り、コストプッシュ要因だけで持続的なインフレになることはないというべきでしょう21。』

賃金と物価のスパイラル的な上昇が起きたということから、賃金動向およびインフレ予想の動向に注意を払う必要がある、とジャクソンホールでパウエルさんが言ってたのとだいぶ違う説明ですなあ。

『また、現状では2%の目標にはまだまだ距離がある状況です。』

あ、日本にいるのは理解しているのかwww

『さらに3月点検で確認したようにオーバーシュート型コミットメントには、これまでのデフレを「埋め合わせる戦略」の要素を含んでおり、その観点からは仮に一時的に2%に達したとしても物価のオーバーシュートを許容することになります。』

物価上昇率2%が見えてからそういう事は言えという話で、寝言は寝て言え以外の感想は無い。

『目先のコアCPIの動きをもとにして、時期尚早に緩和的な金融環境を引き締めないことが肝要です。』

結局最後は藁人形論法に戻るのであって、どこに日本の金融を引き締めろって奴がおるねんという感じで、緩和の副作用も考えたら適正な規模に緩和をとどめた方が効果と副作用の関係を考えたら適切だろ、という話をしているだけの話でしょ。

というのもありますが、この「緩和的な金融環境」なのですが、マイナス金利政策を取っているという時点で、金融仲介業に対しては引き締め的な政策になっている訳ですし、だいたいからして今の日本の資金構造からすると、民間部門は家計も企業もマクロ的に資金余剰で、政府部門が資金不足と言う中、ゼロ金利なら兎も角、マイナス金利にしちゃうと資金不足部門への所得移転、すなわち民間部門がマクロ的に引き締め、って話になりますので、本当の本当にマイナス金利政策が緩和的なのかよ、って議論はもっと起きて然るべきだと思うの。

もちろん、民間部門が資金余剰だからと言って高金利で政府部門から所得移転が起きると良いのかというとそれはまた別レベルの話で、ミクロ的に個別企業(家計でも良いけど)が債務を拡大して投資をすることによって需要が発生するので、債務負担を過剰に高めるような金利設定になるのは良くないのですけれども、名目金利の下限制約のある中で、限界的な水準まで金利が下がっている中で更に金利を引き下げることによる債務負担軽減効果からの投資拡大効果って何なのよ、とか何とかそういう話でしょ、と思うのですが、まあ当然ながら若田部さんがそういう話をするでもなく、このコーナーは終わるのでした。


なお、その次に『(3)金融システムの安定』ってのがあるけどただの棒読みだし、最後はご当地経済ネタなので割愛します。



〇片岡審議委員長崎金懇:話の筋は通っているんだが残念ながらその施策では物価が上がらんのだ

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210902a.pdf
わ が 国 の 経 済 ・ 物 価 情 勢 と 金 融 政 策
── 長崎県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
片岡 剛士

ちょっと時間が無いのでまずは簡単に参りまして会見ネタの時に続きやるかどうか検討します。


・経済情勢云々ではなくてあくまでも「物価」で追加緩和推しをする姿勢に変化はありません

経済物価情勢についての説明の『2. 経済・物価情勢』の中の『(3) 物価の現状と先行き』から参ります。その前の部分に関しては片岡さん別に悲観派ではなくて、言っていることは大本営とそこまで乖離がある訳ではありません。

なお、その点につきましては以前より一貫していまして、経済見通しが弱気だから追加緩和しろ、というのではなくて、物価が上がらないし、大本営の言うモメンタムは無いし、インフレ期待は笛吹けど上がらず、今のままではいつまで経っても上がらん、だから追加緩和しろ、というのが片岡さんの一貫した説明なので、このこと自体は片岡さんの通常運転であることをお断りさせて頂きます。

ということで参りますが最初は現状の話なので特に解釈が分かれる話ではない。

『続いて、物価情勢をみていきます。図表 10 左図に示した本年7月の消費者物価指数の実績値は、2020 年基準への改定に伴い携帯電話通信料の下押し寄与が拡大したことを主因に、生鮮食品を除く総合で前年比−0.2%、生鮮食品およびエネルギーを除く総合で前年比−0.6%となりました。もっとも、試算値ではありますが、携帯電話通信料に加え、エネルギー価格などの一時的な要因を除いた消費者物価の前年比では、新基準においても小幅のプラスで推移しています。図表 10 右図では消費者物価の基調的な変動を示す指標の動きをまとめています。物価の基調を示すこれらの指標は、昨年は緩やかに低下しましたが、足もとではやや改善して0%近傍での動きになっています。』

でもって問題は先行き見通し。

『物価の先行きについてですが、本年7月の展望レポートにおける政策委員見通しの中央値では、前掲図表5のとおり、2015 年基準で 2021 年度+0.6%、2022年度+0.9%、2023 年度+1.0%と、徐々に上昇率が高まっていく予想となっています。』

と紹介してから、

『もっとも、図表 11 で、物価の基調的な変動に影響するマクロ的な需給ギャップと中長期的な予想インフレ率をみますと、左図の需給ギャップは、ひと頃と比べて供給超過幅が縮小したものの、2021 年1〜3月時点で1%超の供給超過が続いています。』

まずは抜刀その1ですね。

『また、予想インフレ率は、右図のとおり、2019 年末から2020 年前半にかけて低下が続いた後、足もとでは横ばい圏内の動きです。』

抜刀その2来ました。

『このように、需給ギャップや予想インフレ率を通じた物価への下押し圧力は和らいではいるものの、2%の「物価安定の目標」に近づくべく、両者が伸びを強めているとは言えない状況です。』

左様ですの〜。

『足もとの国際商品市況の上昇や、感染症の収束に伴うペントアップ需要が一時的に物価を押し上げる可能性は十分あり得ますが、一時的な影響が2%の「物価安定の目標」の達成につながる動きとして結実するには、個人消費を含む内需が力強さを増し、それを踏まえた小売・サービス企業の価格設定スタンスがより積極的なものになること、言い換えれば需給ギャップが需要超過を強め、かつ予想インフレ率が2%近傍でアンカーされる状況になることが必要です。』

御説御尤も。

『見通し期間においてそうした変化を見通すのは困難であり、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていないというのが私の考えです。』

ということでいつも通りの安定の説明になっています。


・マイナス金利深堀りはともかく長期金利の低下は既にやったんでちゅけどねえ

んな訳で『3. 金融政策運営』ですけど、

『以上の経済・物価見通しを踏まえつつ、現在の金融政策の概要と最近の政策決定についてご説明します。そのうえで、金融政策運営に対する私の考えを述べたいと存じます。』

当然ながら『(1)金融政策の概要と最近の政策決定』はどうでも良くて、その次の『(2)金融政策運営に対する私自身の考え 』が大事なのですが、何せ片岡さん何故か他の置物一派からは梯子をはずされて、燃え盛る木造長屋の屋根の上で一人で置物組の纏を振り回している、という悲しい状態なので、何ぼお話をしてもメディアも市場もスルーするのが悲しいので最初から引用してみましょう。

『以上ご説明した金融政策のうち、私は、感染症への対応策や気候変動分野の新たな資金供給の導入については賛成しましたが、長短金利操作とコミットメントについては反対を続けました。資金繰り支援策や流動性供給だけではなく、2%の「物価安定の目標」を早期に達成し、日本経済が力強い成長軌道に復することを支援する政策が必要であると考えているためです。』

なるほど。

『感染症の拡大は、公衆衛生上の措置の強化や、家計・企業のマインドの悪化を通じて個人消費や企業の設備投資を縮小させ、さらに需給ギャップを供給超過方向に悪化させることを通じて、物価の低下圧力として作用すると考えられます。そして、物価上昇率が停滞する期間が長期化するほど、適合的な期待形成の度合いが強いわが国では、予想インフレ率が上昇しにくくなります。このように、需給ギャップと予想インフレ率の双方に悪化方向の圧力がかかることで、物価の停滞が助長されることになります。』

まあ感染症関係なくてその前から追加緩和主張してましたけどね。

『先に述べたように、ワクチン接種の進捗などに伴い、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで日本経済が回復基調を辿るというメインシナリオのもとでも、見通し期間において、2%の「物価安定の目標」に向けたモメンタムは維持されていないというのが私の考えです。』

はい。

『また、変異株の感染拡大などにより、感染症の影響が想定以上に長期化するリスクも十分にあり得ます。そうなれば、物価の停滞が長期化するリスクはより強まるでしょう。』

ですね〜。

『このような認識を前提とすると、私自身は、金融政策においては、長短金利操作とコミットメントに関して緩和を強化することが必要であると考えています。』

ほほう。

『長短金利操作に関しては、コロナ後を見据えた前向きな設備投資など成長投資を後押しする観点から、積極的に国債を買入れ、長短金利を引き下げることが適当です。金融緩和によって成長投資を後押しすることは、感染症の抑制と必ずしもトレードオフの関係にはないと考えています。』

それは分かるんだが、既にマイナス金利政策下において、コールレートは兎も角短国とか2年とかの金利がどマイナスになったり、10年の金利がどマイナスになったり20年の金利がゼロ近傍になったりしたし、短い所に関してはYCC導入後も結構な下げをやったことがありますし、10年もまた然り。

ということで、既にそれやって何か効果ありましたっけ???って実例がある訳ですし、マイナス金利を深掘りしたECBに関しても、それによって何か急速に効果が出たとも思えない実績しか出ていないという実例がある中、片岡さんの理屈自体は筋が通っているのですが、残念ながら手段の方に説得力が無いのでありまして、説得力のある手段を出して頂戴ね、と思うのであります。まさかとは思いますが「15年国債利回り0.2%未満」で円債村中心に爆笑の渦を巻き起こした平成の爆笑王事件がトラウマになって具体策を出していない、とは思いたくないのですが(棒読み)。

『また、コミットメントについては、財政・金融政策のさらなる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを物価目標と関連付け、具体的な条件下で行動することが約束されている強力な内容に修正することが適当と考えています。』

文案を出せ文案を。

『米国や欧州と比較してわが国の物価上昇率は低位に止まっていますが、産業構造の観点からみた国際商品市況の国内物価に波及する度合いは、日米欧で大きな差がないことが分かっています。そのため、米欧との実際の物価上昇率の違いは、予想インフレ率の上昇や需給ギャップの改善の度合いに差があるためと考えられます。』

ほっほー。

『より強力な金融緩和を行うことで予想インフレ率および需給ギャップの両面に働きかけることが、2%の「物価安定の目標」の達成・維持のための必要条件です。』

まあ問題はその働きかける具体的手段とその手段がもたらす波及効果について説得力のあるものを示して頂けるかどうか、って話ですなあっはっは。

#ということで甚だ簡単ですがまあ大本営発表の部分は引用しなくて良いかと思いまして・・・・・・・



2021/09/02

お題「若田部副総裁の広島金懇は政策インプリケーションは皆無だがツッコミどころはある(その1)」

お前のところの総裁に言えwww
https://bunshun.jp/articles/-/48318
河野太郎大臣パワハラ音声 官僚に怒鳴り声「日本語わかる奴、出せよ」
「週刊文春」編集部4時間前
source : 週刊文春 2021年9月9日号
genre : ニュース, 社会, 政治

このオッサン、時々こうやって部下に刺されている辺りに小物界の大物感が漂いますし、まあイキリぶち切れなのは今に始まった話では無いのですが、何でああ人気が高いことになっているのか、ということで目立てば人気が出てしまうっての何とかならんのかと思いますね。


〇若田部副総裁の広島金懇ですがネチネチ突っ込んでたらまさかの明日に続くになるの巻

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko210901a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 広島県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 若田部 昌澄


・指標の解釈に注意を要するのは分かるが脚注の説明が何ともかんとも

『2.経済の現状と展望』ですが、その頭の『(1)経済情勢と回復メカニズム』をみますと、

『最初に、経済情勢についてお話します。まず、昨年来、内外経済は、感染症の影響等からきわめて大きな変動を経験しており、各種経済指標の解釈には従来以上に注意を要します2。』

ってありまして、

『2 具体的には、@前年の経済活動や物価水準が大きく低下した反動から、今年の経済成長率や物価上昇率が計算上高くなること(ベース効果)や、A相対的に低賃金の労働者が失業することで、平均的な賃金が見かけ上上昇すること(構成効果)などには留意が必要です。こうした現象は、例えば次の講演にあるように、他国でも指摘されています。Bailey, A., 2021,"It's a Recovery, but Not as We Know It," speech given at the Mansion House, July 1,https://www.bankofengland.co.uk/speech/2021/july/andrew-bailey-speech-at-the-mansion-housefinancial-professional-services-event.』

ってあるのは結構なのですが、日本ってそもそも「物価上昇率が計算上高くなる」とか「平均的な賃金が見かけ上上昇する」とかいう現象起きてましたっけ????

という事でですね、まあ何ちゅうかのっけから「???」な金懇挨拶でありまして、政策インプリケーション云々以前の問題ですなあという感じなのですが、「こうした現象は〜他国でも指摘されています」って説明してるんじゃが日本で起きてるの??という感じですな。

しかもですね、脚注にあるような「統計の物価が実力以上に高めに出てしまう」「賃金の伸びが実力以上に高めに出てしまう」ので注意が必要ってえんだったら、日銀が威勢の良い勢いで展望レポートの見通しを強くしているのについても「注意が必要」って話になるので、これ自分で自分の首を絞めている説明になるんですけど分かってるのかなー若田部さん。

つまりですね、この脚注の話でリファーされているのってBOEのベイリー総裁の7/1の講演ですけど、何でこんな話をしているかというと、例えばブルームバーグさんの記事を見れば良く分かりますが、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-07-01/QVK4F6T0G1KZ01
英中銀総裁、「一時的な」インフレ高進に過剰反応すべきでない
Lizzy Burden
2021年7月1日 17:58 JST 更新日時 2021年7月1日 19:56 JST

ということで、英国とか米国とかに見られている「一時的な物価上振れ」の説明(=物価の上振れ状態の中でも緩和政策の縮小を留保する)のために行っている話なのですが、ご案内のようにジャパンにおかれましては別に物価が上振れている訳でもなく、ましてやお賃金ちゃんが盛大に上昇している訳でもない、という状況なのでありまして、何もわざわざ上記のような説明をする必要があるのかよ、と思う訳で、単に海外のリファーをして「ボク勉強してるよ凄いでしょ」ってアピールしたかっただけ何チャウかと小一時間問い詰めたいし、物価が上がってもいないのに「具体的には〜」って説明してもそれ日本で具体化してないんですけど何がどう具体的なのか更に小一時間問い詰めたくなりますね!!!!!!!!


なお、その後の説明ですが、

『そのことを念頭においてわが国の経済の現状をみると、感染症による下押し圧力から、家計部門を中心に引き続き厳しい状態にあります(図表1)。』

別に最初に断った話全然関係ないじゃん・・・・・・・・・・・

『物価変動の影響を除いた実質ベースの国内総生産(GDP)は、本年1〜3月に個人消費の減少を主因にマイナス成長となったあと、4〜6月もほぼ横ばい圏内にとどまり、依然として感染症拡大前の水準を下回っています。もっとも、経済全体としては、海外経済の堅調な回復を背景とした企業部門の前向きな動きに支えられて、持ち直し基調は維持されていると判断しています。』

『先行きは、ワクチン接種の進捗などに伴い、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、前向きな動きが企業部門から家計部門へと拡がり、経済の回復は明確になっていくと考えています。』

さっき「解釈には注意が必要」と仰せでしたが、そうであれば「海外経済の堅調な回復」につきましても「解釈には注意が必要」ではないかと思いますので、先行きについてその海外経済の堅調な回復とやらが持続的なのかどうかについてはより慎重に考えて見通しを立てないと行けなくて、そう簡単に「経済の回復は明確になっていく」と言い切れるんでしょうかねえ、ってな感じでいちゃもんをホイホイと付けられるわけでして、最初のお断りとその脚注は説明の補強どころかツッコミどころを提供する説明になっている、というのがもうねという感じです。

その続きの説明も何ちゅうかなのですが、この直後に、

『こうした見通しが実現するために重要なのは、前向きな循環メカニズムがしっかりと働くかどうかです。』

っていきなりズッコケてしまうんですけど、あーたつい直前に「前向きな動きが企業部門から家計部門へと拡がり、経済の回復は明確になっていくと考えています」って言っておいて、いきなり「こうした見通しが実現するために重要なのは、前向きな循環メカニズムがしっかりと働くかどうかです。」って話を戻すの??

『すなわち、内外需要の増加が企業や家計の所得の拡大につながり、それがさらなる支出の増加を促すかどうかです(図表2)。』

それに自信があるから「前向きな動きが企業部門から家計部門へと拡がり、経済の回復は明確になっていくと考えています。」なんでしょと言う風に思うのですが、この後の説明で先行きの話をしているのですけれども、その説明は素晴らしく出たとこ勝負という風情になっていて、「前向きな動きが企業部門から家計部門へと拡がり、経済の回復は明確になっていく」という堂々の見通しの根拠は何なんだよという感じがするんですよねー。


・なんかQQEで好循環が進んでいたような言い方になっておりますが・・・・・・・・

で、ここでお茶目な歴史改竄が始まる。

『振り返りますと、かつてのデフレ期には、消費や投資スタンスの後退による支出の先送りが所得の減少をもたらし、それがさらなる支出の減少につながるという悪循環が続きました。そうした悪循環には 2013 年の「量的・質的金融緩和」の導入によって終止符が打たれ、その後は、所得と支出の間で好循環が働く中で、曲がりなりにもデフレではない状況が実現してきました。』

2013年から所得と支出の好循環が働いているんだったらとっくの昔に物価安定目標達成してるだろオイコラという感じですが、ここでちょっと講演の先の方に飛びまして、講演本文6ページの頭に飛びます。『(二つの「予想」)』って所の冒頭部分になりますが、

『以上のように、待機資金が実際の支出に向かい、支出性向が高まるためには、企業や家計が将来の経済や物価について明るい予想を持つことが重要です(図表7)。この点、アンケート調査をみますと、企業の成長期待は、感染症という経済への大きな負のショックを経験した後も、はっきりと低下しているようには窺われません6。』

図表7というのはPDF版の22枚目に『二つの「予想」』としてありまして、その左側に『底堅さを維持する成長期待』ってえのがあるんですな。その成長期待ってのは『実質経済成長率の見通し(今後3年間)』ってありまして、『(注)1. 左図は、企業行動に関するアンケート調査(上場企業)ベース。』『(出所)内閣府』のようで、1つのアンケートだけで企業の成長期待を読むのかよ、という話はさておくにしましても・・・・・・・・

うんうん、確かに若田部大先生のご指摘通りで、前回のリーマンショックの時には実質経済成長率の見通しって急落していましたが、今回はまあ大して下がっていないのは事実なので、「企業の成長期待は、感染症という経済への大きな負のショックを経験した後も、はっきりと低下しているようには窺われません」というのはまさにその通りなのですね、まあそれは良いんですけど・・・・・・・・・

この図表7の左にある「実質経済成長率の見通し(今後3年間)」を見ますと、2013年以降に別に企業の実質経済成長率の見通しの数字が有意に上向きになったように全然見えないし、むしろ2012年をのリーマン後戻り高値を全然回復しないでじり安になっているように見える訳でございます。

とまあそのような状況になっておられる、という中、「そうした悪循環には 2013 年の「量的・質的金融緩和」の導入によって終止符が打たれ、その後は、所得と支出の間で好循環が働く中で、」という説明をするのは如何な物かと思う訳で、所得と支出の間で好循環が働いているのに何で企業の成長期待がじり安になっているでちゅかねえと小一時間問い詰めたい訳でございまして、何ちゅうか若田部先生曲がりなりにも大学の先生様でいらっしゃったんですから、ちゃんと説明の整合性がとれるようなリファレンスの使い方をして頂きたい、というかまあ歴史改竄した説明してるんだから、事実を並べてしまうとその時点でアイヤーとなるんですけれども、まあ何と申しますかねえという感じでございまする。


そして歴史改竄キタコレの話はさらに続くのですが、まあここは若田部センセだけじゃなくて日銀が完全にこういう改竄をするスタンスになっている(個人の印象です)ので若田部さんだけが悪い訳では無いのですけど(まあそれ言ったらさっきの部分もQQEの役割を無駄に強調する部分以外は日銀のインチキ説明に準拠しているとも言えますけど)、日銀の公式見解ベースにほぼ沿っていますが、完全にこのようなインチキ説明で歴史改竄が行われております。

ちょっと途中でアタクシが長広舌を振るってしまったので、話の流れがよみにくくなるといけないので次の部分を引用する前の所に再掲でその直前の文章も入れておきますとこうなります。

『そうした悪循環には 2013 年の「量的・質的金融緩和」の導入によって終止符が打たれ、その後は、所得と支出の間で好循環が働く中で、曲がりなりにもデフレではない状況が実現してきました。もっとも、昨年春以降は、感染症という新しいショックが経済活動の強い下押し要因となる中で、経済の好循環はいったん足踏みしました。以下では、企業部門、家計部門それぞれについて、所得と支出の現状を確認したあと、先行きの見通しの考え方をご説明します。』

・・・・・・・完全にコロナのせいにして誤魔化す歴史改竄キタコレという所でして、この間何回も「物価が全然目標に行かないし、経済は大して伸びて無いし、という状況なのだからマイナス金利の深掘りなどの追加金融緩和を行わざるを得ないんじゃネーノ」って話から市場金利がホイホイと下がったことがあった事からお分かりのように、色々と目くらましをしながら誤魔化して何とか問題を先送りしていた、というのがコロナ以前の日銀であり、日本であった訳ですが、上記のような説明ですと、あたかも「それまでは順調に行っていたのにコロナのせいでアカン事になった」というような感じになっておりまして、どう見ても歴史改竄です本当にありがとうございましたという所です。

まあその前にも「消費増税ガー」とか、てめえらの置物理論がワークしてないのを全部他の要因のせいにして天災なので仕方ないみたいな言い方をするのは置物先生とゆかいななかまたちの真骨頂という感じですが、案の定で黒田日銀、自分らが行ってきた政策の効果が大して出て無いから物価目標を全然達成できていなかった、という過去を全部コロナ感染症のせいにして誤魔化すという歴史改竄に出ましたなあ、というのが(前からそういう説明はちょこちょこしてましたが、ここまで露骨にいうのはたぶん初見)明らかになりましたですなあ。


・・・・・・いかんいかん、この金懇挨拶なんですけど、気候変動がどうのこうのの部分は雨宮さん辺りの説明を読むのは現世利益(日銀がぶっこんで来るであろう面白制度に乗っかって制度アービトラージウマーという不純な現世利益を含みます)的に熟読しておいた方が良いのでしょうが、若田部さんの話しなんぞ読んでも時間の無駄じゃろということで、その辺りすっ飛ばすと(すっ飛ばさなくてもそうですが)政策インプリケーションも無いし、しょうもないツッコミどころを探すだけの話しヨ、とか思っていたので下読み5回くらいした所で寝てしまい、今朝はスクラッチで書きだしたのですが、思いの外ネチネチとツッコんでしまいましたら時間が無くなるという悪事例が発生しましたので、会見ネタと共に続きは明日(とは言え見ての通りで政策ネタとかは無くてただの見世物小屋的なネタになってしまいますことは先にお断りしておきますねwww)だし、下書きする気力があったら下書きしておきますすいませんすいません。

ちなみに、どうでもよい話ですが、そういう意味ではここ数年はジンバブエ先生の金懇の時は必ず熱心に読んでから前夜に結構な夜なべ仕事をしていたので、やはりそういうのが必要(と言いつつジンバブエ日記があまりにも下らなさそうなのでわざわざ書店に走ったのに積読になっていますが)ですなあ、ジンバブエ金懇ネタは読者様の期待も高かったのでこっちもやる気が出ましたし、って感じですが、最近の金懇は政策インプリケーションじゃなくて成敗ばっかりなのも他国の中銀ネタと比較して何なのよ、と空しくなることも度々ではありまする。

#素直に読んで政策インプリケーションを読み解く方が突っ込み入れるよりも物理的な手間暇は掛らないんですよ、必要なのは考慮時間だから(突っ込み入れる場合作業時間が掛かる)

2021/09/01

お題「コーンさんのジャクソンホール講演のほかの部分から(目先の金融政策に関する話ではないので悪しからず)」

これはまた見事な茶番。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210901/k10013235761000.html
菅首相 今月中旬に解散 総裁選先送りの見方も 自民党幹部
2021年9月1日 5時13分

『菅総理大臣は、来週前半にも、二階幹事長を含め自民党の役員人事を行い、これにあわせて閣僚を交代させることも検討しています。党幹部の間では、人事のあと速やかに衆議院選挙を行うのが望ましいとして、菅総理大臣が、今月中旬に解散に踏み切り、総裁選挙を先送りするのではないかという見方も出ています。』(上記URL先より、以下同様)

「人事のあと速やかに衆議院選挙を行うのが望ましい」って「面子を変えて目くらましとご祝儀を狙ってみましたテヘペロ」ってそんな露骨な茶番をするんかい、と思いますが、まあ翼賛報道がよしなに人事の方をヨイショしてくれるんでしょうってことで。

・・・・・・・・まさかとは思いますが「明かりが見えてきた」ので総選挙する気なのか??


〇ジャクソンホールのドン・コーン講演の続きでも(目先の金融政策に対する話などのネタではありません)

https://www.kansascityfed.org/documents/8333/Jackson_Hole-Kohn.pdf
Building a More Stable Financial System: Unfinished Business
Remarks by Donald Kohn
Robert V Roosa Chair in International Economics, Brookings
At the Federal Reserve Bank of Kansas City symposium
August 27, 2021

昨日は『To preview, here are the main points I plan to make.』の1番目、「金融不均衡の拡大を放置しておくわけにはいけませんよとっとと対応しましょう」という所を鑑賞しましたが、その他を鑑賞するの巻ということで。

・金融規制に関しての考察ですな

『2. Dodd-Frank and Basel reforms have greatly improved the resilience of the banking system. Still, I have two linked recommendations for banks. First, fix the Supplementary Leverage Ratio and perhaps some other post GFC regulations so they don’t impede market making in Treasury securities and related repo; second, improve risk-based capital regulation by utilizing a countercyclical capital buffer that builds bank capital in good times and releases it aftershocks. 』

ここは普通に金融規制ネタですね。本文のほうは『Banking』という小見出しの部分になるのでございますが、ここで昨日ネタにした「金融不均衡の積み上がり、ダメ!ゼッタイ!!」の部分を思い出してみると、そこの小見出しがファイナンシャルインバランスとかそういうのではなくて、『Urgency』という小見出しになっていた訳でして、まあ2番目以降はドン・コーンの今のお仕事に絡むお話ということになります。

『Banks, bank holding companies, and their subsidiaries-including the major dealers-appear to be in good financial shape, judging from the Fed’s stress tests and from their performance in a real-life stress as covid set in.』

銀行、銀行持ち株会社、メジャーな市場のディーラーを含む金融グループ子会社はコロナストレスにあったにも関わらず財務状況は健全ですよ、と来まして次のパラグラフからは味わいのある考察が始まるのです。

・金融規制によって米国債および米国債レポ市場のマーケットメーク機能が損なわれないようにって指摘

『But some of the regulations that have yielded this welcome result have also constrained the major dealers from providing liquidity to Treasury and related repo markets when stress hits and holders of Treasuries need to convert them to cash.』

さっきの「2」のところを流してしまいましたが、2つのポイントがあるって言ってたうちの一つ目のマクラでして、今回はこれまでに定めた金融規制によって、コロナショックの市場ストレス時において、大手のディーラーが米国債市場およびレポ市場の流動性を提供することを妨げる結果となったよ、って話をしているのがさすがですな、と思います。

『Dysfunction in the Treasury market has the potential for considerable spillovers into the real economy-hence the massive purchases by the Federal Reserve last March when Treasury markets were misbehaving.』

米国債市場の機能不全は実体経済に大きなスピルオーバーを引き起こす潜在力をもっているので、FEDは国債市場があばばばばーの大爆発相場になった昨年3月に、米国債を物凄い勢いで購入することとなりました。

『In discussions with market participants, the Supplementary Leverage Ratio along with some aspects of the GSIB add ons to risk-based capital requirements were frequently cited as having the effect of limiting the willingness of dealers to stabilize the market.』

まあ何ですな、そもそもポストリーマンショックで金融規制作る時に、トレジャリーのレポまでガチガチに規制しようとか言い出したのおめーらじゃん、という感じなのですが、GSIBに対する補完的なレバレッジ規制とかぶっこんだら、市場ストレス時にプライマリーディーラーが規制のせいで市場流動性の供給ができなくなってしまいました、ってそれ入れる前からあちこちで指摘されてたやん、とは思うのですが、まあこうやって気が付くだけマシというか、もしかしたら実践派のコーンだからこそ言えたのもしれませんね。

『Moreover, the SLR constraint is being made increasingly salient by the Fed’s asset purchases; the Federal Reserve is forcing one type of asset into the system-deposits at the Federal Reserve--which is drawing the SLR ever more closely into bank capital planning, making the purchase of low-yield, low risk, Treasury securities potentially much more capital intensive and therefore less profitable.』

で、FEDの資産買入と来たら話が補完的レバレッジ規制の制約がFEDのアセットパーチェスによって更に突出したものになり、規制対策としてのトレジャリーのニーズを高めることによって、米国債の投資が儲からんものになってしまいました、と矛先がそっちに行くのがコーンおじちゃんっぽくて素敵。

『The Fed recognized this problem in exempting reserves and Treasuries from the SLR denominator at the height of market dysfunction, but this exemption expired in March.』

そういやそうだったわ、という感じですが、今ってレバレッジ規制の対象から一時的に米国債と連銀への当座預金を外してるんだった。来年の3月までの措置ですな。

『To increase dealer market making capacity, the SLR should be restored to a back stop function for risk-based capital--by exempting reserves or some other way--and other regulations also should be examined to see whether they could be adjusted to remove impediments to market making in Treasuries without reducing the resilience of the banking system. 』

『Of course, the hard part is in that last phrase and I imagine that’s what holding up the suggestions on SLR that in March the Federal Reserve promised were coming “soon”. 』

こういう指摘をする辺り、そこらの机上の空論学者とか、机上の空論振り回す当局何とかスト(ブランシャールみたいな連中)とは大いに違うコーンさんや!という感じですが、ストレス発生時における市場機能維持の観点から、レバレッジ規制の内容を見直して、マーケットメークに対する支障が起きないような仕組みを作っていく必要があると認識しており、これに対して(金融安定タスクフォースの議長ですから)の提案を近いうちにお出しできると考えております。というお話で、そんじょそこらの何でも規制すれば良いとか言い出す某IOSCOのような連中とは違うぜって思いました。


・カウンターシクリカルバッファーとかの補完的な資本積み上げを効果的にするための提案、のようです

『My second suggestion on banks-not part of Task Force report-- is for the Federal Reserve to move to more active use of the countercyclical capital buffer (CCyB).』

カウンターシクリカルキャピタルバッファー(訳語ありましたっけ?)についてのお話。

『It should be at a positive rate in a normal, standard risk environment, raised from that when leverage or liquidity transformation has reached more dangerous levels among borrowers or lenders and cut when stress events occur.』

はい。

『I’m drawing on my experience with the Bank of England, where we are putting the CCyB at two percent in standard risk environments and we cut it twice-once after Brexit referendum and again with covid.』

ほうほう。

『Strengthening risk-based capital requirements with a CCyB will provide assurance that easing the risk-insensitive SLR will not put the banking system at risk. My thinking on the CCyB has been reinforced by two recent observations.』

『First, the staff memo to the board on the adoption of the stress capital buffer (SCB) early this year characterized the SCB as pro-cyclical-that is calling for less capital protection as the economy improved. This is not an acceptable macroprudential outcome; the ability of the financial system to deliver services in bad times as well as good, will be enhanced when capital is built up in those good times so it can be safely drawn down when adverse developments hit. I wasn’t surprised by the staff’s characterization; the paper Nellie Liang and I wrote on the stress tests showed very limited countercyclicality in the stress capital buffer, and what there was came from the requirement to pre-fund 8 quarters of profit distribution, a requirement that has been considerably trimmed.6 That procyclicality needs to be turned into countercyclicality, and the CCyB seems the way to do it.』

ストレスキャピタルバッファー、とかの話になるとワタクシめバンキングの経営とかの方面の話になってくるので、甚だ遺憾なことにちょっと手触り感があまりないのでこの辺は詳しい人教えて下さいお願いしますの世界なのですが(超大汗)、ストレスキャピタルバッファーについてはカウンターシクリカルなものではないので望ましくないみたいな話をしているのは分かったのですが、それよりも突っ込んだ話になると、金融規制に関しては自分の所に直接降りかかって来る件しか詳しくはカバーしてないのでとりあえず貼るだけ貼っておいて誰かの解説をお願いしたい(いずれは勉強する機会あればとは思いますが、とにかく今の資本規制の話はややこしくて片手間に覚えられるもんではない)。

『Second is the issue of buffer usability-the willingness of banks to continue to lend if doing so might cause capital ratios to fall into their regulatory buffers, risking adverse market reactions, supervisory feedback, and restrictions on distributions. In a recent working paper, Berrospides and co-authors show that US banks that were at risk of having their capital fall into buffers reduced lending commitments to SMEs in the pandemic by more than banks with ample headroom over buffers, and buffer-constrained banks were more likely to terminate lending relationships.7 The beauty of CCyB is that when its released, that capital is no longer part of a buffer and can be drawn down to support lending without risking adverse feedbacks.8

こちらは「せっかくカウンターシクリカルバッファーを積ませているのに、ストレス時になった時にそのバッファー分を使わせるようにしなかったら意味ないので何か良い方法を考えないといけないよね」という話をしている、というのは何となく把握しました。

『In sum, exempting reserves from the denominator of the SLR and raising risk-based capital slightly on average over the cycle by adding a CCyB on top of the SCB would enhance the resilience of several key sectors of the US financial markets.』

ということで今までのまとめという事ですな。要はレバレッジ規制においてマーケットメーカーのマーケットメークを阻害しないような規制の見直しと、追加的な自己資本積み上げを行わせているCCyBなどの追加的自己資本を、ストレス時などに金融機関が積極的に活用するような仕組み作りをする(しないとただのブタ積み資本になってしまう)というお話で、これはまあ金融政策の現世利益とは関係ないネタなのですが、そんじょそこらの机上の空論系とは違う話をしているということでネタにするの巻でした。


・ノンバンクファイナンスの部分はファンドの類がもたらす金融不安定の話ですが論点が多め

残りの部分ですが、3番と4番があって、

『3. There’s much more to do in nonbank or market finance. This was the focus of our Task Force and we ended up with a 135-page report with dozens of recommendations. I’m going to focus on the Treasury market, but many aspects of market finance need urgent attention.』

とあるのですが、やってるとキリがなくなりそうなので以下はお題の部分だけ引用しようかと思いましたけれども、こちらはそもそもが「with a 135-page report with dozens of recommendations」を金融安定化タスクフォースが出した、っていう位なので論点が沢山あるのでちょっとだけ。説明パートの『Nonbank finance』って所ですが。

『Credit has increasingly shifted to nonbank channels, responding to innovation and to regulatory arbitrage as bank regulation tightened. But elements in nonbank finance share the leverage and maturity and liquidity transformation characteristics of banks, making them also vulnerable to runs and fire sales that tighten credit and amplify business cycles. In many respects, however, vulnerabilities in nonbank finance are harder to deal with than they are with banks. They are spread over many types of institutions and markets, subject to multiple regulators-and some parts are very lightly regulated if at all. Market-based finance is global, facilitating arbitrage across borders and necessitating a globally agreed approach to regulation. And rapid technological change produces a constantly evolving set of instruments and players.9』

最初の論点は銀行以外の形態によるクレジット供給と満期変換が拡大していること、という話で、銀行の資本規制がああだこうだとある中、ファンドやらその他諸々が投資や融資などの形でクレジット供給を行っている点についてですが、ファイナンスがどうのこうのと言う話になるとこの先はまーたトレジャリー市場の話になるのがコーンさんオモロイ感じですが、そこをちょっと割愛しますとその先に、

『The demand for liquifying Treasuries can come from many sources, as it did the March 2020 “dash for cash”.』

と来まして、昨年のコロナショックでの換金の動きの話になりまして、

『For example, several types of open-end funds faced very large redemptions in March, including both money market funds and corporate bond and loan funds. To meet those demands funds turned in part to selling the Treasuries they held for liquidity purposes. The scale of the redemptions is not surprising, and the financial stability risks from OEFs is one the Financial Policy Committee at the Bank of England has been highlighting for several years.』

ってな話で、オープンエンド型のファンドによる満期変換が、世の中換金モードになった時にファイヤーセール祭りを招くという金融市場の脆弱性、という話をしておりますが、この件でまたまたMMF規制の強化とかいう話になっているのはご案内の通り。


もうちょっと先に行くとこんな論点があります。

『Another source of demand for liquidity arose from initial margining at central counterparties in derivative and securities markets. Users cited a lack of transparency and predictability about margining methodologies as contributing to unexpected demands for cash during the “dash for cash”. And margins should be made less procyclical with more throughthe-cycle methodologies.』

デリバや証券市場の中央清算期間向けのイニシャルマージンの話もでておる。でもって結局この話、金融市場の流動性確保と言う話になるようで、

『To increase the supply of market liquidity, the regulators should take a hard look at the SLR and other regulations that might be impeding private market making, as I’ve already discussed. They should examine the costs and benefits of mandating central clearing for Treasuries and repos, which might free up dealer capital that would be available to be used for market making.11 And they need to gather and publish more complete data on market transactions to help both regulators and market participants better understand and anticipate market dynamics. 12』

と、市場の流動性を確保するために変な阻害要因になるような各種規制について、見直しを行って必要がない上にマーケットメイク機能を邪魔するものは改善しないと行けませんよね、というような話をしております。

でまあこの部分、更に話が続くのですが時間の関係上パスしますけど、この先は「そうは言いましても市場機能が不全になることはあるので、そういう時のためにFEDはスタンディングファシリティを設置しておくのが吉」という話から、先般ぶっこまれたレポファシリティの話しやら、ディスカウントウィンドウの在り方(ペナルティレートの適用に関してとか、スティグマによる利用回避問題に関してとか)についての話に発展する、という「ノンバンクファイナンス」という小見出しと関係あるんかいな、という話に発展していくのでありますがクッソ長いのでパスします。


・4番目のお題はお題だけ引用で勘弁

4番目ですが、

『4. Our regulatory processes and procedures need to adapt to provide more nimble, more transparent, more accountable responses to ever-evolving threats to financial stability. We must do a better job of spotting potential problems early and making concrete suggestions for dealing with them.』

ということで、規制に関わる人達は協力して有効な施策を考えて行きましょうってな話ですが、その纏めの所がちょっとお茶目で、

『Taken together, these reforms would embed financial stability firmly into agency decision making, would improve the quality of the analysis provided decisionmakers, and would facilitate holding the agencies accountable for the reasoning behind and the consequences of their decisions.』

まあ関係する皆で協力して行きましょうね見たいな話ですが、

『Agencies can take some steps in this direction without Congressional action, and as I noted at the outset, I believe that in this highly uncertain economic and financial environment it is imperative to escalate our attention to financial stability risks now.』

とあるのですが、この最後の「now」の部分にアンダーラインが引いてあるのが、さっき申し上げた「Urgency」と同じものを感じまして、

『We will have failed our public trust if the Kansas City Fed has an opportunity to focus Jackson Hole 2026 or 2031 on a financial crisis that we can now be taking steps to avoid.』

5年後や10年後にまた金融危機の教訓みたいなお題でジャクソンホールシンポジウムが行われないようにしましょう、っていう感じの締め方がまたwww


#ということでジャクソンホールネタなのに現世利益に関係してなくてすいませんでした