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2022/07/29

お題「雨宮副総裁岩手金懇はところどころに妖刀の煌めきがある気がする(願望込みの妄想です)」

おやおや株高債券高ですかアメリカン。

・・・・・・ていうか昨日ネタにしたオープニングリマークにあったじゃん「物価抑制の過程で経済が多少ソフトになるのはシャーナイ」っていうのが、と思う訳ですし、利上げペースを落とすっていうのは裏を返せば金利をドバーっと上げない代わりにそう簡単に利下げステージにも入らんって事なんですけどね。株がFEDのオーバーキル回避姿勢で好感するのは(その前リセッション相場やってたから)わかるし、短い所の金利が低下するのも(想定利上げパスがマイルドになるんだから)わかるんだが、長期債以上の部分ってこれ基本的に「景気をぶち殺して強引に物価を下げる訳でもない」ってことになるから本来スティープしないと変なんですけどね。

だいたいからして9月からランオフのペース倍速になるのにその件もすっかりトークに出てこないし、まあジャクソンホール辺りで何か出て来る可能性ってあると思うし(そのうち雑談ネタで書くつもりですが)、2年とかの金利は分かるんだが後ろの金利の挙動はナンジャソラという感じは否めません。


〇雨宮副総裁がこのタイミングの金懇ですかそうですか

新しい審議委員の2名様を除けば唯一ポンコツじゃないはずの雨宮さんなので真面目に読む。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220728a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 岩手県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 雨宮 正佳


・経済の話は直近の展望レポート(すいませんいつもの逐語比較やってませんね)と同じ

『日本銀行は、先週の金融政策決定会合において、2024 年度までの経済・物価見通しを「展望レポート」として取りまとめ、公表いたしました。本日は、その内容をご紹介しながら、わが国の経済・物価情勢についての日本銀行の見方と金融政策運営の考え方について、ご説明します』

ということで、『2.経済情勢』に入るが、最初の『(景気の現状)』はもう途中全部すっ飛ばして最後だけみておけば問題ないでしょ。

『このように、わが国経済は、感染症の影響が和らぐ中で、サービス部門を中心にようやく明るさが見え始めていますが、一方で、今申し上げたような供給制約により、製造業の生産活動は下押しされています。この点は、6月短観の企業の業況感でも、非製造業の改善、製造業の悪化という形で表れていました。』

あくまでも「供給制約で下押し」になっているので、これは「供給制約が解消に向かえば製造業の活動が活発化する」という先行き見通しのロジックになりますわな。

よって、次の『(景気の先行き)』の冒頭は、

『次に、景気の先行きについてです。わが国経済は、ウクライナ情勢等を受けた資源高による下押し圧力を受けますが、感染症の影響が和らぎ、供給制約も解消に向かう中で、回復していくと予想しています。』

とまあそういう話になっておりますが・・・・・・・・・・・・


・政策の話になると「賃金があんまり上がらないから2%定着しない、よって政策修正不要」なのに何故か・・・・・・・・・

いやまあこれ雨宮さんの講演だから、な訳ではなくてそもそも展望レポートがそうなっているのですけどね。

『こうした見通しについて、もう少し詳しくご説明します。まず、家計部門です(図表3)。』

ということで家計の話しなんですが、

『個人消費は、感染症拡大のもとでの行動制限や自粛などにより、所得に比べ著しく低迷しましたが、現在は、感染症の影響が和らぐもとで、外食や旅行などのサービス消費を中心に緩やかに増加しています。』

『先行きについては、物価上昇による下押し圧力を受けるものの、これまで蓄積した貯蓄にも支えられ、行動制限下で控えられてきた需要、いわゆるペントアップ需要が顕在化することから、引き続き増加するとみています。』

物価上昇による実質所得の伸び悩み(または低下)から家計が防衛的になってペントアップ需要が出ない、という話にはならないのがいつもの日銀クオリティですね。私だって実質所得(以下悲しくなって来るので割愛)。

『この間、雇用者所得は、経済活動の回復に伴う雇用者数や賃金の増加を反映して、緩やかに改善しており、この動きが今後も続くと見込まれます。来年度以降は、ペントアップ需要の顕在化ペースは鈍化していくとみていますが、こうした雇用者所得の改善が下支えとなり、個人消費は着実な増加を続けると考えています。』

それは良いんだが、毎度毎度日銀って「賃金が碌すっぽ伸びて無いから今の2%が安定して定着する訳ではない」って連呼してて、一方で上記のように経済の見通しのほうでは雇用者所得が上がるから経済は緩やかな成長軌道をたどる、って話をしておりまして、そらまあ屁理屈つければこの部分も説明できる(来年度になると物価の上昇率が鈍化するから、雇用者の実質ベースの所得は伸びる、って事だと思う)んですけど、なんつーかやっぱりご都合主義で説明している感がががが。

だいたいからして巻末の図表3(PDFで13枚目)を見ると実質雇用者所得直近でマイナスに下がってる(物価上がってるんだから当たり前だが)じゃんという感じなのと、毎度聞く強制貯蓄の話なんですが、これ貯蓄率とか(家計の貯蓄保有って本邦では(というかどこでもそうだけど)偏っているから、本当は世帯収入別に展開した貯蓄率とかをみないといかんのだと思うけど)の動きとか出してくれると説得力があるんですけどねえ(だったらお前調べろというツッコミは謹んで却下^^)とは思いました。

・・・・・で、この件に関してはさすがにご都合主義が過ぎるという認識があるのかどうかは知りませんが、この後個人消費の持続性がロバストかどうか、という点をリスクとして挙げているのですな。


・為替円安のデメリットの話をしないで円安のメリットの話をするとはさすが芸が細かい(褒めてない)

で、企業部門の方はさっきの通りで「供給制約が解消されれば(゚д゚)ウマーよ」という話になっておりますが、海外経済がガチリセッションにはならんにしても、拡大(または回復)ペースが一頓挫、となったらどないして言い訳しますねん、とは思うのですよね結局この見通しだと海外次第にしか読めない。

『続いて、企業部門です(図表4)。輸出は、海外経済の回復が続くもとで、供給制約の解消に伴い、自動車関連やデジタル関連を中心に増加していくとみています。企業収益については、法人企業統計の経常利益をみますと、2021年度は既往ピークを更新しました。』

『先行きについては、原材料コストの上昇が下押し圧力として作用しますが、内外需要の増加に加え、為替円安の影響もあって、業種・規模間のばらつきを伴いながらも、全体として高い水準で推移すると考えています。』

ここで為替円安って入れるのが不用意な感じはするんですよね、つまりさっきの家計の話では、

『(家計の)先行きについては、物価上昇による下押し圧力を受けるものの、これまで蓄積した貯蓄にも支えられ、行動制限下で控えられてきた需要、いわゆるペントアップ需要が顕在化することから、引き続き増加するとみています。』(再掲)

って為替円安による影響について、物価上昇とは書いてあるが、為替円安のデメリットには言及しないでメリットには言及する、というダブスタ感大爆発の印象をアタクシなんぞは真っ先に思ってしまう訳で、別にここに円安入れなくても良いじゃん、と思うのですが、これは黒ちゃんが円安怪しからん論に対して1ミクロンたりとも譲らない姿勢を示しているので、その流れでこういうバランスおかしくね??って書き方になるんだなー、と思いました。

『そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境による下支えに加え、供給制約の緩和もあって、増加傾向が明確になっていくとみています。実際、6月短観の設備投資計画をみても、2022 年度は、例年以上にしっかりと増加する計画となっています。企業は、人手不足対応の省力化投資だけでなく、デジタル化や脱炭素化といった分野での研究開発を含む設備投資についても、積極化させていくことが期待されます。』

ここはまあいつも通り。


・賃金が上がらないと行けない、という話をするのは良いんですがこれじゃあ物価上昇のデメリット強調じゃん

さて先に行きまして『(見通しを巡るリスク)』なんですけどね。

『こうした見通しを巡る不確実性はきわめて高く、当面は下振れリスクの方が大きいと考えています。リスク要因として、私自身は、次の2点をとくに意識しています。』

『第1は、個人消費の持続力です。』

展望レポートでの先行きリスク、に関しては当面の話と中長期の話が微妙にごっちゃになっているのでややこしいのですが、個人消費に関わるリスクとしては「感染症動向」「物価が高止まりする中で実質所得の減少が続くこと」「中長期的な成長期待が引きあがらない」というのがあります(すいませんネタにしてませんで)。

『先ほども申し上げたとおり、当面の個人消費は、実質所得面からの下押し圧力を受けながらも、ペントアップ需要に支えられて増加すると想定しています。しかし、ペントアップ需要が期待されるのは、とくに外食や旅行といったサービス消費ですので、その動向は、今後の感染状況に大きく左右されます。』

『また、ペントアップ需要は、その性格上、次第に勢いが衰えていくものですので、個人消費の増加が持続するためには、賃金の上昇が不可欠となります。』

『この点、ウクライナ情勢を巡る不確実性が高い中で、例えば、資源・穀物価格の高止まりが長期化した場合、賃金の上昇が物価の上昇に十分に追い付かず、個人消費を中心に経済が下振れるリスクがあります。』

ということで、これは展望レポートの中にも「資源・穀物価格の高止まりによる交易条件の悪化が長期化すれば、賃金の上昇が物価の上昇に追い付かず、経済が下振れるリスクがある」とあって、この部分を強調した、という形になっています。

・・・・・えーっとですね、なっていますのはいいんですけど、外生的な要因による物価上昇であっても、それがきっかけになって適合的な期待形成に変化が生じて、インフレ期待が引きあがることによって期待に働きかける、って話どこに行ってしまったのという事でありまして(まあ今に始まったことではないのですが)、だったら日銀は何をどうするとインフレ期待を引き上げられるのかという話になってしまう訳で、そもそも物価目標の設定自体間違えてねえか???って気がしてくるんですけどねえ。

でまあこの部分誠に申し訳ない展望レポートが全体的に同じじゃん、と思って逐語比較サボっていたので雨宮さんの講演の途中ですが急にお送りしますと、実は経済のリスク要因の記述の中で、いま雨宮さんが言及した部分ってしらっと重要な変更をしていることに改めて気が付き、しまったと大航海時代になっておるワイがおるんですよ。つまりですね・・・・・・・・・・・

『第2に、資源価格の動向である。(略)このため、資源高が長期化すれば、交易条件の悪化を通じて、経済が下振れるリスクがある。(略)』(4月展望レポート基本的見解6ページより)

『第2に、ウクライナ情勢の展開やそのもとでの資源・穀物価格の動向である。(略)このため、資源・穀物価格の高止まりによる交易条件の悪化が長期化すれば、賃金の上昇が物価の上昇に追い付かず、経済が下振れるリスクがある一方、(略)』(7月展望レポート基本的見解5、6ページより)

ってなってて、前回はあくまでもコストの話を中心に資源価格の高止まりのリスクの話をしていたんですが、今回って実質所得に関する記述が入ってきてるわけですな。まあその方がどう見ても現実に近いからこの変更自体は良いと思うのですけど、こういう話をするんだったら、円安のデメリットの話もしろや、と思うのですけど、これは黒ちゃんの虎の尾を踏むことになるので書けないので、黒ちゃんの気が付かないところから徐々に外堀を埋めている、などと考えるのは願望(超緩和政策をもう少しなんとかしろ緩和するのは良いから派なので)に基づくところの物凄く裏読みのし過ぎだとは思うんですけど(^^)、何気にしらっとぶっこんでたのね、と今更気が付くの巻でありました(さーせん)。


さて話を戻します。

『第2は、海外の経済・物価情勢です(図表6)。』

というのが2番目のリスクで、まあこれは「それはそうですね」としか言いようがない話になっておりますので割愛します。


・物価上昇の背景に為替円安をさすがに入れておるな

次が『3.物価情勢』である。

『次に、物価情勢に話を移します。生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、昨年の携帯電話通信料引き下げの影響の大部分が剥落した4月以降、2%程度で推移しています(図表7)。最近の物価上昇の主因は、ガソリン・灯油・電気代といったエネルギー価格と食料品価格の上昇です。この点、生鮮食品とエネルギーを除いたベースでみれば、6月の消費者物価の上昇率は+1.0%、エネルギーと食料品を除いたベースでみれば、+0.2%となっています。』

一生懸命低い事を強調ワロスwwwwww

『こうした物価動向を諸外国と比べますと、総合ベースでみて、米国は+9.1%、ユーロ圏は+8.6%となっています。米国は約 40 年ぶり、ユーロ圏では 1997 年の統計開始以降で最も高い上昇率を記録するなど、いずれも高インフレに見舞われています。これとの対比でみれば、わが国の物価上昇率は相対的に低いレベルにとどまっていると言えますが、物価上昇率は徐々に高まってきています。消費者物価の上昇率が2%を超えるのは、2008 年以来 14年ぶりのことです。』

で、その背景である。

『こうした物価上昇の背景をみますと、国際的な資源・穀物価格の上昇や為替円安により、輸入物価は上昇しています。』

さすがに認めざるを得ないからですけど、円安による輸入価格の上昇というのを入れてますねえ。

『また、そうしたもとで、企業によるコスト転嫁の動きが、供給制約の長期化による品不足の影響もあって、強まってきています。』

ほうほう。

『このため、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めていき、2022 年度は年度平均で+2.3%と、2%を上回る見通しです。』

という事ですが先行きは、

『もっとも、年明け以降は、原油等の資源価格がこの先も上がり続けるという仮定を置かなければ、エネルギー価格の押し上げ寄与は減衰し、さらにコスト転嫁の動きも徐々に一巡していくと予想しています。』

コスト転嫁の価格上昇がその後のセカンドラウンドエフェクトを起こさない、という置きになっているようなのですけれども、それで良いんでしょうか??????????????????

『この結果、2023 年度と 2024 年度の生鮮食品を除いた消費者物価の上昇率は、それぞれ+1.4%、+1.3%と、2022 年度から伸び率が低下する見込みです。』

ということなんですが、普通に考えて幅広い価格上昇(これまたネタにしてないけど一昨日日銀が公表した「基調的な物価」を見たらどっからどう見ても広範な物価上昇が起きてるでしょこれ)となってきたら、二次的効果起きねえか、って話なんだが、雨宮さんというか日銀の説明ではあくまでも「物価上昇は資源と食料品」ということなんですよね。うーんこの。


・ということで政策の話だが浜田大先生の「物価目標達成に向けては賃金は上がらない方が良い」とは何だったのか

ダイヤモンドがスットコドッコイな事にあの名言を有料会員限定記事にアーカイブしてしまったので見れないのが残念ですが、浜田宏一大先生のあの名言は何処に逝ったのでしょう。

『4.日本銀行の金融政策運営』の『(金融政策の基本的な考え方)』である。

『ここからは、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。

日本銀行は、「物価安定の目標」を持続的・安定的な形で実現することを目指して、金融政策を運営しています。ここで、「物価安定の目標」の実現とは、消費者物価の前年比が、エネルギーなどの外生的な輸入物価の上昇により、一時的に2%に到達することではなく、景気の変動などを均して平均的に2%になることです。そうした観点からは、一時的な変動要因を取り除いた各種のコア物価指標に加え、先行きの物価見通し、また、その背後にある需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率、賃金の動向などを総合的に点検し、物価上昇の持続性を判断していく必要があります。』

節子、それただの総合判断や、インフレ目標ちゃいますがな。

『大事なことは、経済が成長を続ける中で、賃金と物価がともに上昇し、人々の暮らし向きが改善するという好循環が実現できるかどうかです。』

浜田宏一wwwwwwwwwwwwww

というのはさておきまして、ちょっと飛ばしてYCCを継続しました云々の部分に入りますと・・・・・・・・・・


・しれっと「中短期の実質金利」という話をしてるんだが・・・・・・・・・・・・

『こうした認識を踏まえ、日本銀行は、先週の決定会合において、イールドカーブ・コントロールという金融政策の枠組みのもとで、従来の強力な金融緩和方針を継続することを決定しました。この政策により、わが国の長期金利は、海外からの金利上昇圧力が強い中にあっても、きわめて低い水準で推移しています。』

でもってここから先がだんだん話に村正の妖刀っぽさが出て来る。

『わが国の名目長期金利が低位で推移する一方、人々の予想物価上昇率は上昇しています。このため、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利は、このところ低下しているとみられます(図表9)。』

ほうほう。

『実質金利は、どの年限の名目金利から、どのような予想物価上昇率を差し引くかで様々な値を取り得る点には注意が必要ですが、短中期ゾーンの実質金利は総じて低下傾向にあり、金融緩和効果は従来よりも高まっていると考えられます。』

「中短期の実質金利が下がって金融緩和効果が高まっている」というのでしたら、そもそも何で10年のコントロールをする必要があるの?????という話でして、中短期の実質金利低下による(総括的検証とか点検とかでも中短期の金利の低下による経済への緩和効果が大きい、という結論になっておりますのでこれ自体はいつも通りなのですが)緩和効果を重視するんだったら、何も10年金利のピン止めとかしなくて良いんじゃないですかねー(棒読み)。

もちろんその直後に、

『それでも、今回の展望レポートが示すとおり、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的な形で実現できる見通しとはなっていないこと、さらには、先行きの賃金動向を巡って不確実性が高いことを踏まえますと、手を緩めることなく、金融緩和を継続する必要があると考えています。』

という説明を入れて、一瞬きらめく妖刀の光をさっと消すのはお手のもの、ではあるのですがこの妖刀ェ・・・・・・・


・・・・・そういやですね、話ちょっと逸れちゃうんですけど、最近の金利低下を受けて「0.25%へのアタックが遠くなった」という話は良いんですけど、「政策修正が遠のいた」って何とかストコメントが良くベンダーに出てきて、なんちゅうかそれ相場に熱くなりすぎ、って感じを思う訳です。何でかと言いますと、金利が下がっている時じゃないと、YCCの柔軟化って出来ない訳で、これはRBAの反省文の中でも「経済物価情勢が好転する中において、政策金利ガイダンスの達成が近くなる前にフォワードルッキングに3年ターゲットについて見直すべきだった」ってあるように、政策の柔軟化って近くなってからやったら市場が大暴れしてオーバーシュートする訳で、海外金利もさがっている今が本当は柔軟化のチャンスなんで、金利低下したの見て「修正が遠くなる」ってのはちょっと違くね??とここ数日のベンダーでの何とかストコメント見てて思いました。まあどうでもいいけど。


スイマセン脱線しました話戻します。


・賃金の話をしているのだがここでも妖刀の煌めきを感じるのは気のせいでしょうか

『(「物価安定の目標」の実現に向けた賃金上昇の重要性)』というおんどれらQQEの最初に一言も行ってなかっただろう(寧ろあの頃は「物価目標が達成出来たら皆さんの賃金も継続的に上がります」だったですからねー)という能書きが始まる。

『次に、「物価安定の目標」の実現に向けて、カギを握る先行きの賃金動向について、私どもの考え方をお話しします。』

リフレ政策バナーってのがあって(探せば出て来ると思うよ)、2%物価目標で社会が変わる。みたいな触れ込みだったのですが、今や社会が変わらないと2%は達成しません、とすっかり変わってしまっているんですがどのツラ下げて置物一派の皆さん政策委員やってるんですかねー。

『先ほど申し上げたとおり、当面は、行動制限下で積み上がった貯蓄とペントアップ需要が、個人消費の腰折れを防ぐバッファーの役割を果たしますが、ペントアップ需要が一巡した後も、個人消費が持続的に拡大していくためには、物価上昇率を上回る名目賃金の上昇が必要です。』

キタコレ。

『この点、今年度については、今春のベースアップが一般労働者の所定内給与に反映されていくほか、夏季賞与も、高水準の企業収益を背景に、製造業を中心に増加するとみられます(図表 10)。加えて、対面型サービス部門に多い非正規雇用の賃金も、外食や旅行におけるペントアップ需要の顕在化などに支えられて、徐々に上昇基調が明確になっていくと予想されます。』

『このように、今年度の賃金は上昇すると見込んでいますが、その上昇率が消費者物価の上昇率を上回るとは想定していません。』

そっすか。

『ただ、来年度以降については、経済の改善に伴い労働需給が引き締まっていくもとで、労使間の賃金交渉において、物価上昇率の高まりも勘案されると予想されることから、ベースアップも含めた賃金の更なる上昇が期待できると考えています。こうしたもとで、インフレ率の低下とも相俟って、賃金上昇率は、消費者物価の上昇率を上回っていく姿を想定しています。』

となっているのはまあ見込みなのか願望なのかはさておきまして、この説明している図表10(PDFの16枚目で最終ページになります)ってのがあるんですけど、「ベースアップと賃金上昇」って図が右の上段にあって、いやまあ確かに連合とかが出している賃金上昇って定昇込みの賃金上昇の話をしているのはその通りなので、22年度で定昇込みで+2.1%という威勢の良い数字になっているのですけど、マクロ的に見た場合、賃金上昇に定昇は含めないで話するだろ、という所でありますな。まあ図表10にありますように、+2.1%のうちベアが+0.6%しかないっていうこの有様な訳でございまして、マクロ的に賃金がどうのこうのの話になった時に、これじゃあ2%を上回るベアとかどっからそんなもんが出て来るんだ、という話になりますので、しれっと「定昇込みの賃金上昇」(連合謹製)を持ち出してきたんじゃネーノ、とか考えるとこれも村正の妖刀の煌めきがしないでもありません(願望込みの個人の妄想ですので念のため申し添えます^^)。


だいたいからして、「物価上昇を上回る賃金上昇が必要」という話にしたって、その「賃金上昇」が何で測るのかという問題がこれまたある訳で、それこそ定昇込みの連合のこの数字持ち出せば数字嵩上げ出来てしまうし、物価目標の全国CPIみたいに、何か定義されたものがある訳ではなくフワッとそういう話をしている、というのがそもそも論としてナンジャソラという所なんですよね。いや以前みたいに「賃金上昇もしないとね〜」くらいのフワフワした話の段階だったらそれでも良かったんですが、政策修正したくないせいなのか、この賃金上昇をアホのように前面に出して説明をおっぱじめてしまうと、じゃあ政策のメルクマールは何を見れば良いのでしょうか、ってな話になる訳で、何ちゅうか黒田日銀ちゃん、その場で自分のやりたい政策に対する後付け理屈を尤もらしく捻りだすのは天才としか言いようがないんですけど、あんまり後先考えないでその場の瞬発力で理屈を考えるもんだから、この賃金の話もだんだん話が大きくなってきて、そろそろ定義とかそっちの話になって来るんじゃないかと思うんですけど大丈夫ですかね????


でまあここで雨宮さんが「定昇込み賃金上昇」というマクロ的にはあんまり意味があるとは思えない数字を出してきたのが妖刀の煌めき、というお話なのですが、まあこれはアタクシが深読みをこじらせているだけという説もあるので話10分の1に聞いておいてくださいませ(^^)。

あとはまあ普通の話になって、この後はご当地経済の話になるので本日はここまでで勘弁。

『一般的に、賃金形成には、労働生産性や成長期待、労働組合の交渉力、最低賃金など様々な要因が影響しますが、マクロ経済政策である金融政策も、労働需給などに働きかけることを通じて影響を与えます。すなわち、日本銀行の金融緩和は、まず、資金調達コストの低下といった緩和的な金融環境を通じて、企業や家計の前向きな支出活動をサポートし、総需要を押し上げます。このことは、企業収益の増加に繋がるとともに、企業の労働需要の増加を通じて、労働需給の引き締まりをもたらし、ひいては賃金上昇にも貢献すると考えています。日本銀行としては、今後とも、金融緩和により経済活動をしっかりとサポートし、賃金上昇を伴う形で「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していきます。』

なお会見で出口の事について質問されてた件については週明けにでも。





2022/07/28

お題「FOMCである」

実は段々8月のジャクソンホールが楽しみになってきたんですが1か月先なんですよね。

〇声明文:景気の減速は認めたが他はあんまり変わっていない

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220727a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220615a.htm(前回)


・第1パラ:景気の現状認識を下方修正したけどマンデート絡みに関する見通しは同じ

『Recent indicators of spending and production have softened.』(今回)
『Overall economic activity appears to have picked up after edging down in the first quarter.』(前回)

1か月でこんなに変えるかーって感じはしますが(GDPも出たしIMFとかの見通しも下がってるしということなので変えること自体は不思議ではないけど)、「最近の消費と生産の指標は弱まった」と来ました。

これ後のオープニングリマークの方で出て来る(今朝間に合う努力はする)のですが、次回の予告ホームランに関して、さすがに懲りたのか「やたら強い物価と労働市場が変わらないでいると次回の利上げも75になるかもしれないけれども、今後労働市場と物価の落ち着いて来そうである、というエビデンスを確認したいです」としてまして、6月は同じような言い方をしながら「50か75になりますなー」って言い方だったので、まあ本質的に同じちゃあ同じではあるのですが、今回は経済活動の現状認識を引き下げているので、この現状認識との合わせ技で考えると、「9月のFOMCまでに物価が落ち着くそうな兆候が確認できたら利上げ幅は縮小したい」って思いの方が今回は強いんじゃないのかなーって思いました。オープニングリマークでも(ここから先が引き締め領域になるからなんでしょうけど)今後の利上げペースのスロー化について言及してますしね(あとで書きます)。

『Nonetheless, job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and broader price pressures.』(今回)

『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher energy prices, and broader price pressures.』(前回)

経済活動は前回対比でソフトになったって指標出てるけど物価と雇用の認識はあいからずのアッチチ状態でさらに物価の所に「Food」があがっておる、という話もぶっこまれておるので、マンデートに対する状況という意味ではアカンがね状態なのは継続しているし物価に関してはファクター上がっておる。


・第2パラ:もともとこのパラは先行きの話しだったんだが今やインフレ解説ですけど前回と認識同じ

『Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic hardship. The war and related events are creating additional upward pressure on inflation and are weighing on global economic activity. The Committee is highly attentive to inflation risks.』(今回)

『The invasion of Ukraine by Russia is causing tremendous human and economic hardship. The invasion and related events are creating additional upward pressure on inflation and are weighing on global economic activity. In addition, COVID-related lockdowns in China are likely to exacerbate supply chain disruptions. The Committee is highly attentive to inflation risks.』(前回)

前回との違いは「ロシアによるウクライナ侵攻」が「ロシアのウクライナに対する戦争」に表現が変わったことですが、これは何か政治的に言い方を変えたとかなのでFED的にはそれに合わせただけで、ウクライナ侵攻でさらに物価上昇圧力が、というのは同じ認識です(それ以外全文一致なので)。


・第3パラ:75bpの利上げで次回も利上げしまっせ&9月からバランスシート縮小ペース加速

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)

ここはいつも通り。

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 2-1/4 to 2-1/2 percent and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate. 』(今回)

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 1-1/2 to 1-3/4 percent and anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate.』(前回)

ここでは次回も利上げしまっせというのだけ掲載されているが、先ほど申し上げた通りでオープニングリマークの中では次回についての予告ホームランをさすがに懲りたというのもあるでしょうし、ラガルドがフォワードガイダンスやーめたって(というかあんなギリギリになって非正規ルート(曲がりなりにもFEDの場合は地区連銀総裁に喋らせているので正規ルートで75という数字を出していたけど、ECBの場合はもう露骨に事前リークでしたからね)で予告ホームラン引っくり返す中銀の話を誰が信じますねんという話ですけど)なりましたので、これ幸いとばかりに予告ホームランの精度を下げに来たんでしょうかね。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in May. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in May. The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回)

ここだけ見るとわかりにくいですが、インプリメンテーションノートに記載されてて、オープニングリマークでも言及されていますが、保有銘柄償還のうちUSTだと300億ドルをこえる償還分については再投資してたのを9月からは600億ドルに変更するので、バランスシートの縮小ペースを倍速にします。


・第4パラ:このパラは先行きどうしますかの話しなんですが最近は定型文と化しておる

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

ここは「状況に応じてあんじょうよーやっときますわ」という事を言ってるだけのコーナーになってしまいましたので特になし。


・第5パラ:今回は「as is expected」だったからジョージ総裁賛成に回ったようですな

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Esther L. George; Philip N. Jefferson; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Lisa D. Cook; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.

Voting against this action was Esther L. George, who preferred at this meeting to raise the target range for the federal funds rate by 0.5 percentage point to 1-1/4 percent to 1-1/2 percent. Patrick Harker voted as an alternate member at this meeting.』(前回)


〇インプリメンテーションノート:すべての金利を75利上げ、オペの限度額は同じでランオフを9月から加速

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220727a1.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20220615a1.htm(前回)

こちらは一々比較していると長くなってしまうのと時間食うのでURL先みて確認してちょ、という感じですが、当座預金付利金利(FEDの場合は所要準備にも付利している)2.4%、翌日物レポオペが2.5%、翌日物リバースレポ歩ぺが2.3%、貸出ファシリティにあたるプライマリークレジット金利が2.5%、というのは全部フルスライドで、1先辺りの限度額も同じです。

まあこれに関しては金利水準がゼロの時のままのコリドア幅を維持しているんですが、さすがに絶対金利水準上がったからコリドア拡大した方がエエンチャウノとは思うのですけどね。

でもって今回は、

『Starting in the calendar month of September, roll over at auction the amount of principal payments from the Federal Reserve's holdings of Treasury securities maturing in each calendar month that exceeds a cap of $60 billion per month. Redeem Treasury coupon securities up to this monthly cap and Treasury bills to the extent that coupon principal payments are less than the monthly cap.』(今回)

『Starting in the calendar month of September, reinvest into agency MBS the amount of principal payments from the Federal Reserve's holdings of agency debt and agency MBS received in each calendar month that exceeds a cap of $35 billion per month.』(今回)

国債とMBSのランオフに関して、月の削減限度額を従来の倍額にしまして、バランスシート縮小のペースを倍速にしました。



〇オープニングリマーク:ここから先は引き締め領域になるから物価が落ち着く傾向でたら75はやらないで済ませたいんでしょうな

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220727.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Statement
July 27, 2022

例によって時間もアレなので単純な説明部分はサラサラと参りましてアタクシが注目したところだけウダウダ書きます。


・最初はいつものご挨拶

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I are strongly committed to bringing inflation back down, and we are moving expeditiously to do so. We have both the tools we need and the resolve it will take to restore price stability on behalf of American families and businesses. The economy and the country have been through a lot over the past two-and-a-half years and have proved resilient. It is essential that we bring inflation down to our 2 percent goal if we are to have a sustained period of strong labor market conditions that benefit all. 』

これはまあいつものご挨拶です。


・引き続き「The labor market is extremely tight, and inflation is much too high.」なので利上げ&ランオフ加速

『From the standpoint of our Congressional mandate to promote maximum employment and price stability, the current picture is plain to see: The labor market is extremely tight, and inflation is much too high. Against this backdrop, today the FOMC raised its policy interest rate by 3/4 percentage point and anticipates that ongoing increases in the target range for the federal funds rate will be appropriate. In addition, we are continuing the process of significantly reducing the size of our balance sheet, and I will have more to say about today’s monetary policy actions after briefly reviewing economic developments.』

The labor market is extremely tight, and inflation is much too high.なのでこのような決定をしました、とここまではご挨拶のようなもんです。


・消費や投資がスローになって来たという現状認識だがその要因の1つに実質所得の低下も言及

『Recent indicators of spending and production have softened. Growth in consumer spending has slowed significantly, in part reflecting lower real disposable income and tighter financial conditions. Activity in the housing sector has weakened, in part reflecting higher mortgage rates. And after a strong increase in the first quarter, business fixed investment also looks to have declined in the second quarter. 』

消費支出がスローになっている理由の一部として、「lower real disposable income and tighter financial conditions」とあって、ファイナンシャルコンディションは利上げ効果になりますが、実質所得に関しては物価上昇であばばばばーって話ですな。物価上昇イクナイってアピールではありますけど、物価が落ち着いてくると実質所得が持ち直すというのも中々めんどいですね。


・労働市場がクッソ強くてアッチッチであるという話

『Despite these developments, the labor market has remained extremely tight, with the unemployment rate near a 50-year low, job vacancies near historical highs, and wage growth elevated. Over the past three months, employment rose by an average of 375,000 jobs per month, down from the average pace seen earlier in the year but still robust. Improvements in labor market conditions have been widespread, including for workers at the lower end of the wage distribution as well as for African Americans and Hispanics. Labor demand is very strong, while labor supply remains subdued with the labor force participation rate little changed since January. Overall, the continued strength of the labor market suggests that underlying aggregate demand remains solid』

これでもかとばかりに労働市場がアッチッチ状態であるという説明をしておられる。


・物価は経済が足元でスローダウンしているけど需要の強さが変わらんで供給制約続くので高止まっておるとな

『Inflation remains well above our longer-run goal of 2 percent. Over the 12 months ending in May, total PCE prices rose 6.3 percent; excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 4.7 percent. In June, the 12-month change in the Consumer Price Index came in above expectations at 9.1 percent, and the change in the core CPI was 5.9 percent.』

これは状況の記述ですね。

『Notwithstanding the recent slowdown in overall economic activity, aggregate demand appears to remain strong, supply constraints have been larger and longer lasting than anticipated, and price pressures are evident across a broad range of goods and services.』

最近の経済活動のスローダウンにも関わらず需給は相変わらずの状況である(ので物価が高止まりする)。

『Although prices for some commodities have turned down recently, the earlier surge in prices of crude oil and other commodities that resulted from Russia’s war on Ukraine has boosted prices for gasoline and food, creating additional upward pressure on inflation. 』

幾つかの商品価格が最近下がってきたんですが、ロシアのウクライナ戦争による影響で原油とかその他の関連コモディティ価格がまた上がっており物価への上昇圧力となっておる、と物価の現状に関しても厳しい(下がらん方で厳しい)認識になっておる。



・先行きの政策に関する部分が多分ポイントなんですけどね

ここから政策の話。

『The Fed’s monetary policy actions are guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. My colleagues and I are acutely aware that high inflation imposes significant hardship, especially on those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. We are highly attentive to the risks high inflation poses to both sides of our mandate, and we are strongly committed to returning inflation to our 2 percent objective. 』

もはや恒例になりましたが、インフレが特にその回避手段を持たない経済的な相対的に弱い人たちに対する厳しいものになるのを理解している(からインフレ退治は大正義)という話をマクラに置きまして、

『At today’s meeting the Committee raised the target range for the federal funds rate by 3/4 percentage point, bringing the target range to 2-1/4 to 2-1/2 percent. And we are continuing the process of significantly reducing the size of our balance sheet, which plays an important role in firming the stance of monetary policy.』

これは今回の決定事項。でもってここからが先の話になる。

『Over coming months, we will be looking for compelling evidence that inflation is moving down, consistent with inflation returning to 2 percent.』

このパラグラフの頭にある記述ですが、前回のオープニングリマークでもこの文言から始まりまたが、先ほど申し上げました通り、前回は経済活動が「ピックアップ」だったのですが、今回は「ソフト」なので、このインフレが下がるエビデンスを見たいって記述は同じでも、今回の方が先行き下がってくれませんかねえの思いは強くなる筈だと思った訳です、詳しく会見QA聞いてない(掛け流し状態なので)のでそこは会見見ないと分からんですけれども。

『We anticipate that ongoing increases in the target range for the federal funds rate will be appropriate; the pace of those increases will continue to depend on the incoming data and the evolving outlook for the economy.』

はい。

『Today’s increase in the target range is the second 75 basis point increase in as many meetings. While another unusually large increase could be appropriate at our next meeting, that is a decision that will depend on the data we get between now and then.』

次回も異例の幅の利上げが必要かどうかは今後のデータ見て決めます、として前回はこの部分で50か75、って書き方をしていましたが、さすがにちょっと懲りたのか数字を明示しなくなりました。

『We will continue to make our decisions meeting by meeting and communicate our thinking as clearly as possible.』

ここも前回と同様です。

『As the stance of monetary policy tightens further, it likely will become appropriate to slow the pace of increases while we assess how our cumulative policy adjustments are affecting the economy and inflation.』

で、ここが前回6月のオープニングリマークと違う所で、これはまあ中立金利と思しき水準に政策金利を今回到達させたから、ということでしょうけれども、こっから先政策金利を引き締めて行けば、利上げペースは鈍化させていけるでしょ、というのを入れておりまして、まあそれと声明文最初の「経済活動はここにきてソフトに」ってのを加えますと、理屈としては「our cumulative policy adjustments are affecting the economy and inflation.」によってインフレ落ち着いてきて(まだですけど)、そんなガリガリと引き締めせんでも済むんでネーノって願望がぶっこまれている、と思いましたが会見で何言ってるかは掛け流しおじさんなのでよー知らん。

『Our overarching focus is using our tools to bring demand into better balance with supply in order to bring inflation back down to our 2 percent goal and to keep longer-term inflation expectations well anchored.』

つーことで、このパラがポイントだと思うので前回の相当部分をのっけて置きます。

『Over coming months, we will be looking for compelling evidence that inflation is moving down, consistent with inflation returning to 2 percent. We anticipate that ongoing rate increases will be appropriate; the pace of those changes will continue to depend on the incoming data and the evolving outlook for the economy. Clearly, today’s 75 basis point increase is an unusually large one, and I do not expect moves of this size to be common. From the perspective of today, either a 50 basis point or a 75 basis point increase seems most likely at our next meeting. We will, however, make our decisions meeting by meeting, and we will continue to communicate our thinking as clearly as we can. Our overarching focus is using our tools to bring inflation back down to our 2 percent goal and to keep longer-term inflation expectations well anchored.』(前回)

ということでめんどいので一発引用しちゃいましたサーセン。


・物価抑制のプロセスの中で経済がトレンドよりも下がることがありまっせという言及が加わる

『Making appropriate monetary policy in this uncertain environment requires a recognition that the economy often evolves in unexpected ways. Inflation has obviously surprised to the upside over the past year, and further surprises could be in store. We therefore will need to be nimble in responding to incoming data and the evolving outlook. And we will strive to avoid adding uncertainty in what is already an extraordinarily challenging and uncertain time. We are highly attentive to inflation risks and determined to take the measures necessary to return inflation to our 2 percent longer-run goal. This process is likely to involve a period of belowtrend economic growth and some softening in labor market conditions, but such outcomes are likely necessary to restore price stability and to set the stage for achieving maximum employment and stable prices over the longer-run.』(今回)

こちらなんですけど、前回は、

『Making appropriate monetary policy in this uncertain environment requires a recognition that the economy often evolves in unexpected ways. Inflation has obviously surprised to the upside over the past year, and further surprises could be in store. We therefore will need to be nimble in responding to incoming data and the evolving outlook. And we will strive to avoid adding uncertainty in what is already an extraordinarily challenging and uncertain time. We are highly attentive to inflation risks and determined to take the measures necessary to restore price stability. The American economy is very strong and well positioned to handle tighter monetary policy.』(今回)

となっていて、「This process is likely to involve a period of belowtrend economic growth and some softening in labor market conditions, but such outcomes are likely necessary to restore price stability and to set the stage for achieving maximum employment and stable prices over the longer-run.」というのが加わっておりまして、引き締めステージにこれから入るからってのはあるんですけど、おーこれを明言したかーって思いました。


『To conclude, we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you. I look forward to your questions.』

最後はご挨拶。




2022/07/27

お題「決定会合記事要旨にガックリ/久々の読むに値する記者会見キタコレ」

いやまあこれは審議委員の先任順で機械的に決まるもんですけどね。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220726a.pdf
政策委員会議長の職務を代理する者の決定について
2022年7月26日
日本銀行政策委員会

『政策委員会は、本日、日本銀行法第16条第5項の規定に基づき、政策委員会議長 黒田東彦 委員に事故がある場合に議長の職務を代理する者および代理する場合の順位を以下のとおり定めた。

安 達 誠 司 委員 第三順位』

第二順位は雨宮さんでして、2名同時に何かあった場合、とか普通はそうならんようになっております筈ですけどぬ(同日に就任した方の場合年齢が上の人が上でしたっけか)。


〇6月会合議事要旨を見て失望とかそういうレベルを超えた悲しさを感じました

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2022/g220617.pdf

・おんどれらはちゃんと政策委員会に報告してるのかと小一時間問い詰めたい

普段一々見ないところから入るが。

『T.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要』

『1.最近の金融市場調節の運営実績』

『金融市場調節は、前回会合(4月 27、28 日)で決定された短期政策金利(− 0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、国債買入れを行った。また、前回会合で決定された連続指値オペの運営方針に従って、10 年物国債を対象とする固定利回り( 0.25%)方式による国債買入れ(指値オペ)を毎営業日実施した。』

この結果、今に至るまで10年366回(7月に新発が367で出る前の10年カレント)のカーブが歪んでしまい、金利が下がったら歪みが解消されるかと思ったら366回だけ無茶苦茶歪みが拡大してしまって今に至ってますけどね。

『更に、債券先物市場で強い売り圧力がみられる中、チーペスト銘柄の残存期間である7年ゾーンを対象とする連続指値オペも実施した。』

まあ実際にはチーペストの指値オペをオファーしたその日に先物201銭安などというのがつきまして、先物が現物債市場と無関係な値付けになってしまいまして、チーペストのSLF要件緩和を行ったこの会合以降になって、やっと現物債市場との連動が戻って来たという結果でして、この指値は一体全体何だったんだ、という話ですわな。

『そのもとで、10 年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。』

いやあのですね、10年カレント(最近だと10年366回)のところだけ突拍子もないレートがついていたり、10年は止まってるけど(直近超長期の逆襲が進撃していますけどこのMPMの時点では)超長期の方がビヨーンとイールド立っているんですけど、それをもってしても「イールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状」とはどういうことなのか、というかそもそもお前ら金融調節方針と整合的なイールドカーブってステートメントとかで示したことないじゃんとか思うのですが。

『前回会合で決定された資産買入れ方針に従って、ETFやJ−REIT、CP・社債等の買入れを実施した。また、企業等の資金繰り支援のための措置として、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ(コロナオペ)を実施した。 』

まあこれは良いとして、

『2.金融・為替市場動向』

『短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。翌日物金利のうち、無担保コールレートは、−0.045〜− 0.005%程度で 推移しているほか、GCレポレートは、−0.128〜− 0.083%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、横ばい圏内の動きとなっている。』

『わが国の株価(TOPIX)は、米欧株価に連れて下落する場面がみられたものの、為替円安による下支えもあって、前回会合時点から横ばい圏内の動きとなっている。』

ここまではさておきまして、

『長期金利( 10 年物国債金利)は、米国金利の動きや日本銀行の金融政策に対する思惑等を受けて上昇圧力が強まる局面もみられたが、長短金利操作のもとで、ゼロ%程度で推移している。』

たったこれだけかよ・・・・・・・・・・・

『為替相場をみると、米欧金利の上昇などを受けて、円の対ドル相場、円の対ユーロ相場ともに、円安が進行している。 』

前回会合(4月会合)で逆切れ毎日指値オペをぶっこんだ結果為替市場が飛んだという話は一切記述されず、海外金利の上昇のせいで円安が進行した、という説明をしているようにしか見えないのですけど・・・・・・・・・・・


と、これでおしマイケルなんですが、市場が通常の状況なら別に紋切り型でもいいんですけど、あれだけ無茶やったのに実績の説明がこれだけっていうの、10年後に議事録出ますし、まあ昔の議事録とか見ると(特に内外マーゲットの動いていた時代の議事録)事務方の説明とそれに対する政策委員の皆さんの質問とか中々緊迫感のあるものが鑑賞できるんで、まあ何ぼ何でも今回はちゃんとそういう緊迫感のあるものが10年後には見れるのではないかと期待しますが、そんなものを待たずしても、もう少しこの部分の記述だって色々と書くことはできると思うんですが(FOMCの議事要旨だって(確かに全体の量が違うからというのはあるけど)市場動向の報告の部分もっと色々な記述があるんですけど)。


いやあのですね、まあいつもここは定型文みたいなもんだから今回も定型文、ってことで書いたんでしょうな、ってのは分かるんですよ。分かるんですけど、市場の中の人の端くれとして思うのは、これだけの異例なオペを実施して市場の変な歪み(今でも10年366回の位置が無茶苦茶になっているし)やら滅茶苦茶なボラやら先物のヘッジ機能低下やら、というような市場機能に大きな問題が生じる、即ち市場を通じた資源の適正配分という経済にとって重要な機能をディスローケーションしてしまった状態になった本会合前の状況ってのは相当の異例な状態なんですけど、そういうのが全く見えてこない書き方してて良いんですかって話なんですよ。


・・・・・・まあアレです。ポンコツの皆さんがまともに議論してない、というのは主な意見を読んだ時点で想像はついたのですけれども、この部分の記述があまりにも定型文過ぎると、アタクシなんぞは「そもそも事務方が上に戦場の状況(ナンジャソラ)を報告してないんじゃないか」って疑惑を持ちたくなってしまう(日銀の事務方がそこまでドイヒーだとは思わないというか思いたくないんですけど)レベルな訳でして、こういうところで「事務方は債券市場の荒れた状況ついてきちんと報告(報告するのは市場の一種緊迫した状況であって別に善悪判断を報告しろという意味ではない)にして政策委員の皆さんに伝えている」ってのを対外的にアピールしないと、これって「日銀は組織ぐるみで市場の現状を理解しようとしていないし、政策委員がポンコツなのを良い事に事務方の関東軍の皆さんは上に状況伝えないで好き勝手やってる」という風に言われだすリスクもあるんじゃねえの、という位にアタクシは金融政策運営をする機関としての日銀の先行きを心配している(悪態つきまくっているがこれはマジで心配しているからこそである)のでありまして、まあポンコツがポンコツなのはそう簡単に治らんし、ポンコツ自体が一段上のポンコツから押し付けられた物件だから致し方ないのは分かるけど、何も組織そのものが一緒にレベル下げる必要は無いと思うのですよね。



・当然ながら金融経済情勢の検討の中で国債市場の大荒れぶりに対する考察などは無い

ポンコツの世間話もとい『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』に参ります。

こちらも記述に関しては概ねいつもの定型文に文字当てはめてるという四六駢儷体状態なのですが、まあそれ自体はシャーナイとしまして、じゃあ金融情勢の話どうなってますねんというところでございますが。

いっちゃん最初に海外金融市場の話があるんですけど。

『国際金融資本市場について、委員は、米欧におけるインフレ高進を受けた利上げペース加速への警戒感が強まる中、株価が大幅に下落するなど、やや不安定な動きとなっているとの見方を共有した。一人の委員は、各国のインフレ率が金融引締めによって実際に低下していけば、金融市場も次第に落ち着きを取り戻すと考えられるが、その道筋が明確になるまでは、ボラティリティの高い状況が続く可能性が高いとの見解を示した。』

まあさっきの事務方報告部分で、為替円安の要因について自分たちの金融政策が梃子でも動かんというゆるぎない姿勢(キリッ)を示した結果前回会合以降円安が進んだ、というのが無かったのでこうなるとは思いましたが、為替円安に対して自分らのスタンスがどうのこうのという話を一切していないんでしょうね、というのはよくわかりました。

でもってその後の記述ですが、海外に関しての話のあと、『以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』ってのがあって、その後に『2.金融面の動向』ってのがあるんですが、こちらはファイナンシャルコンディションの話をしているだけなのでありまして、

『わが国の金融環境について、委員は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にあるとの認識で一致した。複数の委員は、中小企業の一部を除けば、企業の資金繰りは落ち着いており、倒産件数も低水準で推移しているとの見方を示した。一人の委員は、金融環境は、非製造業では、感染症の影響が和らぐ中で、サービス業を中心に改善している一方、製造業では、資源高や中国の都市封鎖の影響などから、改善が一服していると指摘した。別の一人の委員は、中小企業を中心に、最近の原材料コストの上昇が先行きの資金繰りに与える影響を懸念する声が聞かれると述べた。 』

ということでファイナンシャルコンディションの話をしているだけなんですが、こんなノホホンとした話だけで国内金融市場の話はシランガナ、というのが大変に素晴らしくておじいちゃん卒倒しそうです、



・当たり前だが金融政策運営の部分でも碌な話は無い

『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』というのがあって、

『以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。』

とあるのですが、そもそもの金融経済情勢に関する認識とやらが上記の通りの中ですので、いつまで経っても国債市場の話しなんぞ出る訳がありません。まあ何でしたらご確認いただきたいのですが、記載があるのはこのコーナーの最後の方。

『長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、』

やっと出ました!

『委員は、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが形成されているとの認識を共有した。』

ゲロゲロ。

『そのうえで、委員は、最近の長期金利の上昇圧力に対する金融市場調節上の対応について議論した。』

で???

『一人の委員は、この間の市場の状況を踏まえ、チーペスト銘柄を対象とする連続指値オペを実施したことは適切であるとの見方を示した。』

これが主な意見にあった唯一のオペの話でしたね。

『複数の委員は、最近の国債買入れの増加は、金融市場調節方針の実現のために必要な措置であり、今後も、引き続き市場の状況に応じた国債買入れを実行すべきであると述べた。』

『ある委員は、海外からの金利上昇圧力は今後も続くとみられる中、金融市場調節方針を実現するため、指値オペの毎営業日実施を続けることが適当であると述べた。 』

・・・・・・国債市場の機能低下とか、それによるディスローケーション問題とか、まあどうせ誰も話をしていないだろうなあと思ったが案の定のこれでありまして、物凄く控えめに申し上げまして全員ちょっと義務教育からやり直してくれないかな〜って思ってしまいますが、そら決定会合が11時36分に終わるわ、という所でして、おんどれらは高級弁当食いに来ただけなのかと小一時間問い詰めたい案の定の残念至極な決定会合議事要旨でございました。



〇久々に鑑賞に値する記者会見を見ることが出来ておとーさんは嬉しいよ!!!!!!!!!

昨日は朝っぱらからあんなものを見せられてしまって大変に血圧に悪い展開でございましたが、夕方に出てきた昨日の会見要旨を見て血圧が下がって健康に非常に宜しい終わりよければすべてよし(議事要旨は全然良くないけど)という1日でしたな。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220726a.pdf
高田審議委員・田村審議委員就任記者会見要旨
―― 2022年7月25日(月)
午後5時から約45分


・高田さんと田村さんの冒頭の挨拶

この部分は保存用(って過去ログ整理してないっつーか誰か手伝ってくれ中々暇にならん)ですので長いけどまるまる引用。

『(問) 最初に質問をお二方にさせて頂きます。まず、審議委員就任にあたっての抱負についてお伺いします。導入から 9 年余りになる異次元の金融緩和が効果を発揮していくために、これまでのご自身の経験を踏まえて、政策運営上、どのような役割を発揮していきたいか、お聞かせください。』


高田さん

『(高田委員) 本日、辞令交付を受けまして、新たに審議委員になりました高田と申します。これからどうかよろしくお願いします。私自身は、今から 40 年前に大学を卒業して社会人になり、今年 40 年という節目に当たります。ちょうど 40 年前に銀行に入り、その後、証券会社、シンクタンクを経て、先日まで証券会社にいました。その間、多くの期間を、ディーリングルームを中心に市場業務や金融市場をみるアナリスト、それからストラテジスト、エコノミストとして従事してまいりました。同時に、日本銀行を中心とした中央銀行ウォッチャーとして、外部の目から日本銀行の動向をフォローしてきたわけです。』

『ちょうど今から 40 年程前になりますが、大学時代の頃から中央銀行の動きに注目してまいりまして、ある面で言いますと、中銀ウォッチャーとしての先駆け的な面があったのではないかと思います。』

『同時にその間、1970 年代以降の半世紀の状況は、世界が市場化していく、グローバル化していく、その中でも特に金融の拡大というものがあったわけで、その間私も実務家としてその流れを体験してきました。同時に、日本はバブル崩壊前後ということでもあるわけですが、そのバブル崩壊後の大きな苦境、それからストレス、そういうものにも金融機関の現場で立ち会ってまいりました。』

高田パイセンさすがです。

『そうした観点からしますと、この40 年にわたる歴史観を背景に仕事にあたっていきたいと思っていますし、特に、日本の場合はバブル崩壊以降のきわめてストレスがかかった状況にあった点を、歴史観としてみていきたいと思っています。単に目先のことだけではなく、そうした 40 年間の内外情勢、中でもとりわけ日本がかなり異例であったということを背景にした議論もさせて頂きたいと思っています。』

歴史観どころが超近視眼の政策運営について何とかしてやって下さい。

『ただ、あくまでも今申し上げた点は、外部のウォッチャーとしての立場であって、日本銀行の一員として、政策を担う立場というものは自ずとやはり大きく異なるわけです。』

まあそうですね。

『それだけに、身が引き締まると同時に、責任の重さというものを痛感しています。外部から 40 年見続けてきた経験・知識というものをバックに、今後、日本銀行の中での調査を踏まえ、また同僚と議論しつつ政策に臨んでいきたいと思っていますし、日本銀行に対する国民的な負託に沿うべく、全身全霊を傾けていきたいと思っています。そういう意味では、今申し上げたような日本の特異性というものが、この 9 年半に起きた効果にも大きな影響を与えていたという部分がやはりあったのではないかと、私も就任にあたって感じている次第です。』



田村さん

『(田村委員) 審議委員を拝命しました田村でございます。どうぞよろしくお願いします。足元、わが国の経済・金融を取り巻く環境が大きく変化している局面で、この審議委員という職を拝命しまして、その使命の重大さ、責任の重さを痛感しているところです。誠心誠意、その使命を果たすべく頑張ってまいりたいと考えています。』

「足元、わが国の経済・金融を取り巻く環境が大きく変化している局面」ってのをしれっと入れているのが結構お洒落でして、もちろん客観的に見てそうなんだからこういうのは全く不思議では無いのですが、何せ政策運営の方では2020年3月における情勢判断を基に示した「10年国債金利0%±0.25%」というのを、足元の経済金融環境の大きな変化があったにも関わらず金科玉条のように墨守して政策運営を行っている、という大変にアレな日銀の政策、というのがある訳で、この文言を挨拶の冒頭にぶっこんで来る、というのは狙ってやってるのか、単に枕詞として(実際にそうなんだから言うの当然なんですが)言ってるのか、という所まではご本人じゃないと分からん世界ではありますけど、この「足元、わが国の経済・金融を取り巻く環境が大きく変化している局面」という部分、読みようによっては政策運営のインプリケーションと言いますか、硬直的な今の金融政策運営に関して軽くジャブを放った(からと言って直ぐに政策見直しをぶっこんで来るかというとそれは別問題だと思いますけどね)可能性がありますな、と思いました(個人の感想です)。

『私は、前職のときに経済調査の仕事をしていた時期もありますが、その頃から日本銀行は日本最高レベルの調査・分析機能を有しているとずっと思っていまして、これからそういう人たちと一緒に仕事ができることをとても楽しみにしています。』

折角の機能も黒ちゃんの意に沿った屁理屈を製造いや何でもありません。

『私の職歴ですが、民間の銀行に 38 年余りいました。その中で、よく言われる金融は経済の黒子であるとか、経済の血液とも呼ばれていますけれども、実体経済を裏から支える重要な役割を持っていると考えています。銀行員生活の中で経営企画的な部署に 20 年間、それから個人ビジネスの現場に 9 年間、それから先ほども言いました経済調査に 6 年間携わっていました。』

『経済調査での 6 年間の中には、ロンドンに駐在していたこと、それから当時の経済企画庁に出向していた時期を含めています。』

ほほう。

『この 2000年前後の金融不安の時代を経営企画で過ごした経験は、金融システムの安定確保という意味で、日本銀行の責務に貢献できることもあろうかと考えていますし、』

これはご苦労察するに余りある。

『個人ビジネスの現場の経験は、消費者の視点で政策委員会の議論にインプットしていけるのではないかと考えています。』

「消費者の視点で政策委員会の議論にインプット」ってのもこれまたシレっとかましていて、今の政策には消費者の視点が足りないんでネーノって指摘をしているのか、単に枕詞なのかはこれまた謎ですけど、ちょいちょいとジャブを打っているのが田村さん流石です。

『これまでの金融実務家としての経験・考えを活かしながら、ただ一方で、今後、日本銀行審議委員として得られる様々な知見というものを、先入観を持つことなく謙虚に吸収して、時々の状況を丁寧にとらえながら、自らの意見・考えを述べていきたいと考えているところです。』



・YCCについて

次の質問である。というかこれ質問する方も何か充実感持ちながら質問しているっぽいのが行間から伝わるし、総裁会見要旨を作って悲しい心になった(かどうかは知らんが)事務方の中のお兄さんお姉さんもこの会見要旨を作ってニッコリしているでしょう(個人の妄想です)。

『(問) 一点目はお二人にそれぞれ伺いたいのですが、高田委員、田村委員ともに、市場あるいは銀行・金融部門と、金融政策の波及経路を確保するのに不可欠なセクターでのご見識がおありと思います。そういう見識を踏まえたうえで、今のYCCという政策の持続性またその副作用についての声が高まる中、その副作用をどう軽減していくのか、あるいは、やがてはこの政策の出口を模索しなければいけない局面が近々来るのか、その辺りについて伺いたいと思います。』

『二点目は、高田委員に是非伺いたい点ですけれども、6 月には長期金利が急騰しまして、日銀はYCCを維持するために、指値オペ等、様々な手段で国債を大量に購入しました。再び金利上昇圧力が高まった場合、日銀のこのYCCは市場の観点からみて持続可能なのでしょうか。例えば、10 年金利は0.25 でピン止めできたとしても、イールドカーブの他の年限に歪みが出るといった現象が起こりました。こういったことがまた起こる可能性、およびそういった歪みについてどのように解消できるのか、その辺りをお願いします。』


うーんこの総裁会見では絶対出ない丁寧ね質問(なぜなら黒ちゃんの会見で二点目のような丁寧な質問をしても「私はまったくそうはおもいません」で回答が終わるからなのですが)ですね。聞く方もまともな会見を期待してますよねこれって。


高田さん

『(高田委員) YCCに関しては、ちょうど昨年の 3 月に、点検で色々な確認をしていますけれども、その結果として、貸出金利や市場での調達コストの低下を通じて、緩和的な金融環境が実現できていると理解しています。同時に緩和的な金融環境を通じて、企業の収益の動向や労働市場の引き締まりといったマクロ的な改善もあり、その結果として、ある程度賃金が上昇したといった改善があると思っています。』

と穏当に入りまして、

『ただ一方で、これはYCCに限らないことだと思いますが、長期の低金利環境が続く中で、金融機関の利鞘の縮小や国債市場の機能度への課題があるという点も挙げられているのでないかと思います。』

国債市場の機能に関して何も議論していなかったポンコツの皆さんに是非0からご指導いただきたい。

『YCCについては、経済・物価へのプラス効果と、色々な面での金融市場への影響という、この両面を議論していく、その中で適切なイールドカーブ等がどのような状況になっているのかということを考えていくということだと思います。』

無茶苦茶当たり前の事なのだが読んでいて目から汗が出るのはどうしてでしょうか。

『昨年 3 月の点検の作業の中でも、この色々な議論を行い、シミュレーションもしながら、概ねゼロ%から 0.25%前後という間であれば持続的なのではないかとの議論になっていると理解しています。』

こ、これは・・・・・・・・・・・・・・・・

『ただ、今後、マーケットの動向というのは当然変化があるわけであり、』

田村さんに続いてキタコレ!!!!!

『私もちょうど本日就任したということでもありまして、先々の動向についてはあまり予断を持たず、今後の金融政策決定会合までに色々と考えたいと思っています。』

いやまあ勿論今すぐ見直せとかそういう話まで来るのは期待し過ぎであって、そこまで一足飛びに行かないのは合点承知の介ですけど、「0.25%決めたのは昨年の3月でそこからの変化も考えないと」というのをオブラートにくるみながらも言及している訳で、田村さんと共にこういう当たり前の話をしてくれるの待ってます。

『また、一般論としては、市場の動きに対しては様々なモニタリングを重ねていくことが基本中の基本であろうと思います。市場の動向に注目し、そこからのメッセージについて見極めていきたいと思っています。』



田村さん

『(田村委員) 日本銀行の大規模な金融緩和の効果については、今、高田委員からお話があったように、そのプラス効果で経済が 10 年前と比べれば大きく改善しているというのは、その通りだと考えています。』

ときましてからの、

『一般論として、どのような政策にも効果と副作用というものがあり、効果が政策目的にかなうということであれば、──もちろんその副作用に関して別途の対策が必要な場合もあるとは思いますけれども──基本的にはその政策は正当化されると考えています。』

しれっと副作用の対策が別途必要な場合もある、という言及。いや当たり前の話なんだが、とにかく当たり前の話が当たり前にできなくなっているのが黒田日銀の末期症状になっているんで、こういうのを見ると目から汗が止まらん。

『そして、効果はあったと思います。ただ、持続的に賃金の上昇を伴うかたちで、2%の「物価安定の目標」を達成するという好循環が実現しているかという点については、今まさにそれを目指しているところで、ひょっとするともうすぐのところに来ているのかもしれないと思います。』

これまたしらっと入れてきますね田村さん。

『従って、副作用にも注意しながら、その好循環が実現していくかをしっかりとみていく必要があると思っています。そして、そういう好循環が実現できれば、先ほどご質問にもあったような出口戦略が次にあるということで、政策金利の調整や拡大したバランスシートの縮小がポイントになると考えています。』

物凄く当たり前の話をしているんだが、黒田日銀の中期以降は言霊信仰でもあるのか、こういう当たり前の事をいうだけで言霊によって地獄に落とされるくらいの勢いで出口とかいうのが禁忌の言葉となっておりましたので、まあ端的に申し上げてこれまた当たり前の事を当たり前に言えなくなった黒田日銀の状態、というのを(別に田村さん狙っている訳ではなくて常識人として常識的な事を仰っている、という事だと思うのですけど)浮かび上がらせる、という流れになっております。

『けれども、そのやり方は、その時点における経済・物価の状況や金融情勢によって大きく左右されることになるとも思っています。』

んだんだ。

『出口戦略、あるいは金融の正常化と言われたりもしますが、それを達成できて初めて、大規模金融緩和という政策が成功・完結ということになると思いますので、』

感動した!!!!!!!!!!!!!(というか本来は当たり前の話しなんだが)

『今後、執行部からの説明も受けながら、その時々で適切と考える意見を述べていきたいと考えています。』

何ですかね、この「ベンダーに刺激的なヘッドラインを提供しない形で淡々と正論を述べる」ってのやっぱりメガバンクでトップマネジメントに携わる方ってのは凄いですな、と思いました(小学生並みの感想ですいません)。


で、出口と来たもんで高田さんが被せて来ました。

『(高田委員) 出口戦略については、私の先ほどの回答で言及がなかったため、付け加えたいと思います。今の時点でどうこういう状況ではないと思っていますが、一般論として、出口については常に考えておくべき論点だと思っています。』

全く持って当たり前ですが、何せ「考えることすら邪悪」という何かの変な信仰かよという黒田日銀以下同文。

『私自身もかつて議論したことがありましたし、これからも様々な議論を進める局面が出てくるかと思います。』

そもそも論としてさっきの田村さんの言葉のように「政策が成功するのは出口政策が完遂した時に真の成功と言える」のですから。「出口を考えるのが邪悪」という邪教の方々はそもそもがおかしいということであって、お二方におかれましては、ポンコツの人達を邪教から目覚めさせて頂きたいと願って切に止みません。

『二番目にご質問頂いた今後の金利の状況ですが、あまり仮定に基づいた議論を今の段階でするのは適切ではないと思っています。ただ、先ほどの議論と少し重なるところもありますけれども、昨年 3 月の点検の作業の中で、概ね±0.25%という変動幅の中であれば、市場機能をある程度保ちながら、一方でこれまでの政策的な効果を保てるということであったと思っています。そういう観点からは、持続性のある状況と考えてもいいのではないかと思っています。』

『ただ、将来のことについては、繰り返しにはなりますけれども、これから時間をかけながら、全身全霊を込めて、これまでの知見、これから得られる情報を踏まえつつ、改めて議論し、またその結果を金融政策決定会合に反映させていこうと思う次第です。』

持って回った言い方をしているが、0.25%について適正かどうか考えなきゃいかんよね、という問題意識があって、ただそれを露骨に言うと早速ヘッドラインのオモチャになってしまうし、変に騒ぎになると却って話がこじれる、という辺り高田さん考えてますね、って思いました(個人の妄想です)。


・物価目標&マイナス金利について

『(問) 二点、お二方にお伺いします。まず物価目標についてです。高田さんは、過去に 2%目標の達成は難しくて、これにこだわれば金融緩和がいつまでも続くのではないかと指摘されていたと思います。現在、消費者物価の上昇率は 2%を上回っていますが、日銀が目指す意味での賃金上昇を伴った物価目標の達成は可能とみているのでしょうか。みていない場合、これを見直す必要はあるのでしょうか。』

『もう一点ですけれども、マイナス金利についてです。田村さんは、日銀がマイナス金利を導入した 2016 年に全銀協の企画委員長に就任されていると思います。高田さんも、マイナス金利を含めた緩和の長期化が、金融機関の収益を圧迫しているのではと副作用を指摘しています。マイナス金利政策の導入から 6 年半が経った現在のマイナス金利の効果と、金融機関や市場に与えた影響をどう考えているのか、なるべく早く見直した方がいいのかを含めて教えてください。』


高田さん(無茶苦茶長い)

『(高田委員) まず、物価目標ということですが、確かに私もかつてエコノミストだった時に、なかなか 2%の「物価安定の目標」の達成は難しいのではないかというような議論をさせて頂いたことがありました。ただ、ちょうど本日から、日本銀行にこういうかたちで就任させて頂く状況の中で、色々な内外における知見、もしくは情報、色々な議論というものを踏まえながら、これから改めて実現性などを議論させて頂きたいと思っている次第です。』

『そういう意味では、これからは、かつての議論とは一線を画させて頂きながらも、当然のことながら日本銀行の使命というものが、2%の「物価安定の目標」を含めて、物価の安定を通じて日本経済の健全な発展に資するということでもありますので、その辺を議論させて頂きたいと思います。』

その辺の議論をする、とな。

『ただ、先ほど最初に申し上げたところからの議論に立ち返りますと、やはり物価がなかなか上がりにくいというのは、これまでの長い間、物価や賃金が上がりにくいことを前提にした考え方というか、空気というものが、社会全体に非常に長く根付いてしまったのではないかと思う次第です。ですから、その転換に予想以上に時間がかかってしまったということもあるのではないかと思います。』

『特に、日本の期待の形成は、多分に過去の履歴に支配される、いわゆる適合的期待形成というものです。私も長くエコノミストでいる中で、先ほど 40 年と申し上げましたけれども、バブル崩壊以降と言ってもいいのかもしれませんけれども、そういうストレスというものが、過去のトラウマのような感じとして存在し、そうした状況からの脱却に予想以上に時間を要してしまったという部分は、やはり大きかったのではないかと思っています。』

『ただ、そうは言っても、足元の状況を考えてまいりますと、物価が持続的に下落するという状況では次第になくなってきたという点もありますし、今年も含めてベースアップも連続でそれなりに実現してきています。また、色々な企業もしくは経済主体のスタンスも変わってきている部分もあると思いますので、そういう意味からしますと、やはり気長にというか、丹念にというか、持続性を持った対応をしながら、なんとか実現していくというのが正解なのではないかと思っているところです。』

早期達成の共同文書とは???という感じですが、まあここは無難に答えてますね。

『それから、二番目にご指摘頂きましたマイナス金利については、ちょうど 2016 年からの導入ということで、先ほど申しましたように、金融機関の収益に対する、やはり利鞘の縮小を通じた影響があるというのも現実ではないかと思います。』

『ただ、一方で、こうしたマイナス金利も含めた異次元の緩和、それから「量的・質的金融緩和」、そして様々な金利への対応というものが、かつての物価や経済環境にある程度の改善をなしてきたというのも、やはり事実なのではないかと思います。』

「ある程度の改善」ですかそうですか(・∀・)ニヤニヤ

『金融機関にとっては、信用コストが低下する部分も当然あったわけですし、ある程度前向きな動きが企業活動にも出てきたという部分もあるわけです。そういう面からしますと、もちろん一つの副作用というものはあるわけですけれども、先ほどの議論とも同様、バランスをもって両面を持ちながら議論していくこと、また、その両面をモニタリングしていくことが、やはり必要になってくるのではないかと思っています。そういう点も含めて、丹念に見極めていくことが必要ではないかと思う次第です。』

「丹念に見極めていくことが必要」ですねー。


田村さん

『(田村委員) まず一つ目の 2%の「物価安定の目標」についてですが、もともと 2%が設定されたのは、皆さんご存知の通り、統計上のバイアスや政策対応力の確保、グローバルスタンダードということです。』

からの、

『それはその通りでしょうけれども、一方で、高田委員からもお話がありましたように、わが国社会に根付く考え方や慣行が、2%の「物価安定の目標」と整合的なのかといったような議論もありますし、』

ほうほう。

『逆に、わが国が長く染み渡ったデフレから完全脱却するためには、もっと高い目標を、という議論もあると認識しています。』

なるほどこのバランス感覚よ。

『更に物価というものは、金融政策だけではなく、様々な要因で変動するものだと考えています。』

どさくさに紛れてマネタリーベース置物直線一気理論を粉砕しておられる。

『従って、日本銀行審議委員という立場になりましたので、何がベストなのか、執行部からの説明も受けながら、丁寧に謙虚に考えていきたいと考えています。』

でもって、

『先ほど、私の職務上の経験から個人取引部門を担当していた視点で、ということを申し上げましたけれども、例えば、物価に関して申し上げますと、やはり日本の消費者もしくは個人は、──欧米のことをそんなに知っているわけでもないですけれども──リスク回避的な行動というのが欧米より強いのではないか、それが物価があまり上がらないことにもつながっているのではないかと感じていました。』

『例えば、感染症が拡大したときに、米国では外食や旅行ができない代わりに、百貨店で耐久消費財を買うという動きが割と広がりましたけれども、日本ではそうはあまりならず、その分貯蓄がどんどん増えていくといったようなことになりました。』

『あるいは、物価が上昇してくるとなると、私が銀行で取引していたお客様は、老後の備えのために貯蓄していて、物価が上がるならもっと貯蓄しなければという動きも出てきました。』

『それから、よく言われますけれども、賃上げよりも雇用の安定を求める、そういった日本の特性なども、個人取引を担当していた身からは実感していますので、繰り返しになりますけれども、今後、執行部からの説明も受けながら、謙虚に考えていきたいと考えています。』

なるほど。でもってマイナス金利。

『二つ目のマイナス金利の効果については、全銀協の企画委員長をしていた頃から私の言っていることは変わっていないつもりですけれども、もちろん効果と副作用があって、そのバランスをしっかりとチェックして、政策を続けるのかを考えてほしいということを日本銀行に対して申し上げていました。それは、今でもその通りだと思っています。』

実に当たり前の話なのですが何故この当たり前の説明を読むと画面がにじんで見えてくるのでしょうか(;∀;)

『先ほど来、話が出ている通り、効果というのはやはり一定程度出ている一方で、マイナス金利がどこまで限界的に効果があるのか、そういったことも含めて、今後は日本銀行の立場として、しっかりみていきたいと考えています。』

露骨な言い方は回避してますけど(そらそうだ)まあいうことは確り言ってますね田村さん凄い。


以下は為替の話しとか経済見通しの話しとかになるのですが時間と量の関係上割愛します。


〇基調的なインフレ指標は後日

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/

時間が無いので後日書きます。





2022/07/26

お題「黒田総裁会見(その2)文字で見ると質問に全然回答してないのが良く分かるし政策は意地でも修正しないですな」

就任会見はベンダーのヘッドラインしか見てないけど無難な感じみたいですね
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220725a.htm/
審議委員の発令について
2022年7月25日
日本銀行政策委員会室

『次のとおり発令がありました。

高田 創
日本銀行政策委員会審議委員に任命する

田村 直樹
日本銀行政策委員会審議委員に任命する

令和4年7月24日
内閣』


〇昨日の続きで総裁会見ですが最近ヤケクソになってるのか質問に対して全然回答してないよね黒ちゃん

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220722a.pdf

・結局賃上げに必要なものが何なのかという話が全くわからない訳ですが

昨日は展望レポートのコアコア物価の話の質疑応答をネタにしましたが、説明がガバガバで真面目に説明する気あるんか、という内容になっておりましたが、「賃金上がらんと物価が持続的に上がらん」という確か昔は「物価目標が達成できると賃金も持続的に上がるようになる」と仰っていたのはどこに行ったのでしょうかという問題についても当たり前だが質問がでます。

昨日引用して(後半割愛)とした質疑ですけどね。

『(問)(前半割愛)そしてもう一点ですが、黒田総裁はかねて賃上げの重要性というのを強調してきていらっしゃいますけれども、賃上げの現状についてはどういうご認識なのか、更に、これから先もう一段の賃上げを促すためには、やはり日銀の金融緩和を続ける必要があると考えていらっしゃるかどうか、お願い致します。』

これは直球。

『(答)(前半割愛)賃上げの現状について、先ほど申し上げたように、確かにベアが連続して実現し、今年度の賃上げ率も 2%を少し上回る程度になり、夏のボーナスは大企業のデータですが 2 桁増と言われており、中小企業もほぼそれに倣ったようなかたちになっているということで、確かに賃金の上昇が進んでいることは事実です。』

『他方で今起こっている、この 2%程度の消費者物価の上昇に追い付いているかと言われると、まだ追い付いていないということですので、やはりもう一段の賃金の上昇というものが必要です。』

『それは冬のボーナスなのか、来年の春闘その他の賃上げの状況なのか、色々あり得ると思いますが、いずれにせよ、経済の持続的な成長のもとで、物価が 2%程度、持続的・安定的に上昇するというかたちになるためには、賃金のもう一段の上昇が必要であると思います。』

このおじさんって他の中銀トップの会見と比較すれば一目瞭然なのですが、物凄くかったるくてやる気なさそうにチンタラ喋るので、その時点で何かこう聞く気が起きないんで、ライブだと聞いてる方もああはいはいそうですかそうですか、って感じで聞く(のはアタクシだけかも知れませんが)のですが、こうやって文字にするととにかく説明が冗長なのが良く分かりますよね。これ文字起こししている事務方の人ってまあ若手なのか中堅なのか存じませんけど、やってて忸怩たるものあるだろうなって思いますよ。

などというのはさて置き、そもそも「もう一段の上昇が必要」ならば、2%の物価上昇が安定的に推移するのにどの程度の賃上げが必要なのか、という数値だって出している筈なのに、そういう数字は一言も言わないというのが真面目に答える気があるのかって話なんですが、どうせ具体的な数字を言うと賃金上昇がその数字に近くなった時に政策修正という話になるのを蛇蝎の如く嫌っているので数字を出さないんでしょうな、というのは把握しました。

それとですね、そもそも現在って2%を上回るヘッドラインの物価上昇を示している中で、「それは冬のボーナスなのか、来年の春闘その他の賃上げの状況なのか」とかノンビリと言ってるのも上級国民仕草っぽくて甚だ怪しからんのですけれども、じゃあそれまでは物価上昇に追いつかない賃金で生活しろって話かよというねじ込まれ方したら(なおその場合は「コロナによる買い控えや、その間の財政措置などによって貯蓄がある」って説明すると思う)どうするんですかねえって話だし、これ「冬のボーナスか来年の春闘か」って言ってるのはその間まで政策修正の話をしたくない、っていう気持ちが横溢してるからこういう話になるんですよね。

『そのためにも、やはり日本銀行として、引き続きしっかりと経済を支えるために金融緩和を続けていく必要があると思います。それによって経済が拡大し、企業収益が増え、そして労働需給がよりタイトになっていくという中で、もう一段の賃金上昇が実現していくということを期待しているわけです。』

今まで散々金融緩和をして賃金が上がらなかったのに、今回賃金が上がる根拠が何も示されていないんですが。


・まあここは見解分かれるかもしれないですけど

賃金でこの質問あって、アタクシ今回は会見の放送を見てたんですけどね。

『(問)(前半割愛)もう一点、先ほどから言われている賃金上昇ですけれども、行内でも中堅とか若い人にお伺いすると、日銀もやはり給料を上げてくれないとデフレマインドが払拭できないというような声を聞くのですけれども、その辺の総裁の気持ちというか、どのようにお考えかお伺いできればと思います。』

この質問の時、黒ちゃんなんか嘲笑みたいな感じ(というのは個人の感想です)の笑い方して反応してて、日頃から真面目に回答しないんでトサカに来ながら聞いてる身としては通常運転の300倍くらいはトサカに来ましたことをここにご報告させて頂きたい。回答はどうでもよいので割愛。



・そもそもお前らの政策は「期待に働きかける」政策じゃなかったのかと小一時間問い詰めたい

『(問) 一点伺います。先ほど、ノルム的な話もありましたけれども、日本のこのデフレ、長引いたデフレの中で培われたこの物価観みたいなものは、変化し始めていると思われているのか、それとも、やはりなかなか、こう、まだ脱却できていないようなところがあると受け止めていらっしゃるのか、その辺ご見解頂けますでしょうか。』

『(答) これはなかなか難しい問題なのですが、価格転嫁が少し進んでいることは事実ですけれども、それはあくまでも輸入物価の上昇を一部、消費者物価に転嫁しているだけです。やはり安定的・持続的に 2%が達成されるためには、全体の物価についてそういった考えが浸透し、特に、賃金の上昇が起こってこないと、完全に物価観が変わったとまでは言えないと思います。企業に価格転嫁を進めようという動きが出ているということは事実ですけれども、従来の非常に慎重な賃金・物価に対する考え方、ノルムというのが、完全に変わったとはみておりません。まだ、不十分だと思っています。』

この回答、QQE始めたばかりの時期にするならまあ分かるのだが、そもそも期待に直接働きかける政策をするのが今までと違うって触れ込みでおっぱじめた政策なのに、他人事感満載だし、だいたいからして賃金賃金というなら賃上げ率をフォワードガイダンスにして政策やればっていう話になりますがな。しかもきっかけは今回コストプッシュな訳でして、何だかなあって感じですよね。


・質疑応答では「物価上昇の原因は国際商品市況が主であって円安は従」という話になるんですね

これ面白かったというか何というかなのですが、

『(問) 輸入物価上昇について、総裁が先ほどおっしゃったように、国際商品市況による影響もありますけれども、直近の輸入物価統計でみた場合、円安による影響の占める割合も、どんどん大きくなっていて、そうなると今後、一部のエコノミストの間では、強いインフレが長引くのではないかという見方も出ています。』

前回展望レポート以降の動きをみれば、国際商品市況は(ドルベースで見て)トータルで横ばい圏内だと思いますが、ここの質問の指摘のように企業物価指数とかで見たら明らかに直近は円安寄与が大きくなっていますよね。

『そうなると、今後、消費者や企業の間で、負担と不満が強まることが想定されるのですが、もしそういった状況の中で、仮に日銀の金融政策の修正や変更によって、引締め方向に動いたら、消費者や企業にとって、具体的にどのようなリスクが想定されるのか、ご説明をお願いできますでしょうか。』

これ何でこういう質問の仕方をするのか(他の人も皆そうなんですけど記者の皆さんほぼ全員において)よく分からんのですが、「もしそういった状況の中で」以降の部分って「日銀が超緩和的な現行の金融政策を維持することによって円安傾向を助長するという場合、金融政策が国民厚生にマイナスに働くといった批判を招かないでしょうか」って聞かないのよ???と思ってしまうのですが、まあどうせそう聞くと「まったくそうはおもいません」って言うの分かってるから今回はこの方向でみんな聞いてる、というのは分かるんですが、そこは別の人達が聞いてるんだから手を変え品を変え、じゃないですけど両方の聞き方が出てきてほしいな、と思いました。

まあいいんですけど。

『(答) それは非常に簡単で、金融緩和の効果は、金利、アベイラビリティ、為替という三つのチャネル、特に金利が大きいわけです。』

えーとすいません、「マネタリーベースの拡大方針を続ける」っていうコミットメントというかフォワードガイダンスがあって、これは「中長期的にマネタリーベースの拡大が期待インフレの上昇に寄与する」ってことで入れている筈なんですけど、マネタリーベースで期待に働きかける効果はどこに行ってしまったのでしょうか?????????

『金利を上げれば企業の設備投資、その他に大きな影響が出てきます。』

総括的検証や点検などによりますと超長期ゾーンの金利が上がってもそんなに影響が出ないという話でしたが。

『従って、金融政策として為替をターゲットにしてやることはないということです。』

為替が金融政策のせいで日本経済にとって望ましくない弊害が出るときに、金融緩和度合いとの兼ね合いで調整する、という発想もない、という事のようですね。1ミリでも金利を上げると日本経済に大きな悪影響が出てボロボロになる、と仰せのようですが、だったら何で展望レポートでの現状認識が「わが国の景気は、資源価格上昇の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐもとで、持ち直している」という認識になってるんですかねえって話だし、そこまで言うなら追加緩和しろよと申しあげたくなるわけでございますな。

『なお、輸入物価の上昇については、確かに円安の影響も出ていますが、国際商品市況の上昇の影響の方が大きいわけです。』

相変わらずこれなのですが、直近3か月では円安寄与が出てきてますし、大体からして国際商品市況が横ばっているのに今回って目先2022年度の物価見通しを年度平均で+1.9%→+2.3%と大幅に上方修正しており、しかもこの間に国際商品市況はドル建てベースで見てそんなに上がっていない、という話なので、そもそもこの黒田さんの説明と展望レポートの話が一致していないんですよね。

・・・・・会見のその場だけ言い切って凌いでしまえばオッケーみたいなノリで想定問答作るの勘弁してほしいですマジで。

『国際商品市況の場合は、交易条件の悪化を通じて、必ず日本経済にマイナスになるわけです。一方、円安の場合は、輸入物価の上昇に影響するだけでなく、輸出物価にも影響しますので、交易条件は必ずしも悪化しないという違いがあることはご理解頂きたいと思います。』

これは一つの理屈ではあるが、現状で輸出のプラス寄与と輸入のマイナス寄与どっちが大きいのかという話を丸無視している時点で回答になっていない。


・3年金利よりも10年金利の方がコントロールしやすいという珍理論キタコレ!

『(問) 先ほど、イールドカーブ・コントロールにつきまして、金利を引き上げるつもりもレンジを変更するつもりも全くないと、経済をしっかり支えるとおっしゃいました。一方で、オーストラリアの中銀が、先月、いわゆるイールド・ターゲット政策、YCCを総括するレビューを公表しています。』

キタコレ!

『この中で、YCCの出口において、無秩序に市場の混乱を伴い中央銀行の評判を失墜させた、このように振り返っています。』

あれは実に素直でよろしい(ざっとしか読んでないけど)。

『このレビューをお読みになった所感と日銀の政策にどのような示唆があるとお考えになるかお聞かせください。』

wwwwwwww


さて黒ちゃん何と答えるかと言いますと・・・・・・・・・・

『(答) 私はそのレビューを直接全部読んだわけではないのですが、その話はよく聞いています。そのレビューについては、全体としてバランスのとれたレビューをしておられるようです。短期金利の引き下げの余地が限られている状況で、長めの金利を低下させて経済をサポートするという面で効果を発揮して、きわめて有効だったという評価もしており、そのうえで、昨年のイールド・ターゲット政策を廃止した前後に混乱が生じたということを認めているということです。』

金利の引き下げ余地のない中での緩和効果はあったが、経済物価情勢が改善していく中で、政策金利の引き上げ時期が来る前の段階でフォワードルッキングに3年ターゲットを廃止すべきだった、って話をしていたとしか読めない記述なのでございますが、まさかとは思いますが事務方の皆さん黒ちゃんにとって耳が痛い部分を報告してないんですかああああ???

『ご承知のように、オーストラリアの場合は、3 年金利ということで、経済あるいは物価の改善があって、市場参加者の短期の予想政策金利のパスが変化すると、ターゲットとする 3 年金利の変動に直結してしまうということがあって、そこで色々な混乱も生じたのではないかと思います。』

ほうほうそれでそれで????

『当方は 10 年金利を対象としていますので、そういった直結するようなものはありませんので、』

ちょwwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwwwwww

なるほど、じゃあ10年ターゲットよりも30年ターゲットの方が更に政策金利に直結しませんので、この金利のターゲット政策の方が簡単、ということになるんですねこれは斬新な理論wwwwwwwwwwwwwwwwww

そうか、実は片岡さんが就任後2回目のMPMで提案した15年金利0.2%未満、というのは実は時代の先を行く提案だったんじゃないですか、ってそんなことあるかーーーーーーい!!!!!

『そういった意味では変えるときに混乱が生ずるということはないと思います。』

あっはっは。

『いずれにせよ、どんなかたちであれ金融緩和政策を正常化していく過程では、欧米の中央銀行も市場に対する大きな影響が出ないように、慎重に進めていますので、私どもとしてもそういった欧米の経験は十分教訓として、将来、2%の「物価安定の目標」が達成できる、安定的・持続的に達成できるということで、YCCを修正していく、あるいは変えていくときに、当然参考にしたいと思っています。』


そーいやこのRBAの反省文ではさっき申し上げたように、「政策金利の引き上げが出来るようになる時期のだいぶ前の経済物価情勢が好転した時点で3年ターゲットを廃止なり何なりすべきでした」という話があるのですが、そういう意味では10年0.25%から離れて金利下がった(なお日銀に大量に吸い上げられてしまった前回回号の価格が無茶苦茶なことになってしまっている件はそのうちメモっておく)今こそ修正のチャンスって気はしますがねwwwwwwwww

それと関連してなんですが、海外金利が頭打ちとか、為替の円安が頭打ち(底打ち)とか、そういう状況なので日銀の10年0.25%の修正議論も起きにくくなってアタックもへるんでネーノって話は直近何とかストの皆様がよく話題にしておられるようですが、今回の展望レポートでの理屈を見てましても相変わらず「物価上昇は一時的」と言っている部分って日銀の政策動かさないロジックの弱点でありまして、物価上昇が一時的じゃなかった場合に、日銀としてはどこまで「いやそうではない今の上昇は一時的」で言い逃れが出来るのか、という辺りが一番の問題点なのであって、為替とか海外金利もそらまあネタとしてはあるけど、やっぱり本命は物価上昇が本当に一時的なのか、という話になると思うんですけど何故かそっちに話が行きませんよねーとは思います。金融市場の動きの方が派手で面白いからそっちをついネタにするのは分かるけど。



〇あとはFOMCまでラガルドはん・・・・・と思ったら時間ががががが

まあどうせ8月の中旬になるとネタが切れると思いますので(アカン)諸々の積み残しを来月はボチボチと成敗していく感じになろうかとは思いますが(すいませんすいません)、今回のラガルドさんの会見、その前の会合のあとシントラでのフォーラムでも0.25%って言っておいて直前にインチキリークで引っくり返すとか無茶苦茶やりやがって、とは思う訳で、こんな中銀のフォワードガイダンスとか信用できるかヴォケ、と思うのですが、「今後は会合ごとにデータディペンデント」とさすがに今回の醜態を反省したのか、予告ホームランはしませんという姿勢を出したのは(当たり前ちゃあ当たり前ですが)まあマシだったかなと思います。

そういう意味では下手な予告ホームランだしてその通りになっていないFEDちゃんも、いい加減にフォワードコミットメントについてやり方変えろよと思うのですが、まあ今回のFOMCでコミュニケーションを少し反省するのか、もしかしたらジャクソンホールの辺りでその辺少し見せて来るのか、いずれにしましても、「金利引き下げ余地の少ない中で、追加緩和効果を出すツールとしての存在」だったフォワードガイダンス政策というのは、明らかに今のステージでは有害なものになってしまっているので、ウッドワード流のガイダンス政策というのの在り方については見直しが入ってくる、ということになるんじゃないかなーというのが今年後半の趣味の金融政策ヲチの見どころになるな、とアタクシは勝手に思っておりますがどうなるやら。








2022/07/25

お題「黒田総裁会見ですが文字起こしを改めて見るとかなりのドイヒー答弁である」

いやーすいませんすいません。週末に更新するとかゆうとった訳ですが、
そっちに回す体力の方がカンバンになってしまいまして木曜の朝にFOMC
ネタぶっこむまでに頑張って成敗して参りますサーセン。

しかしまあ何ですな。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2Z32Z7
2022年7月23日2:03 午前2日前更新
ユーロ圏金融・債券市場=独2年債利回り大幅低下、低調なPMI受け利上げ観測後退

『ロンドン 22日 ロイター] - ユーロ圏金融・債券市場では独2年債利回りが低下し、下げ幅は2005年1月以来最大となる勢い。ユーロ圏総合購買担当者景気指数(PMI)の7月速報値が予想に反し節目の50を割り込んだことを受け、ユーロ圏利上げ観測が後退した。』(上記URL先より)

・・・・・・・なんかね、今回50上げたのって「下手して9月に上げそこなうとマイナス金利の解除を逸してしまう」ということからぶっこんだんじゃないか疑惑がありますな。超直前に謎のリークで引っくり返すとかいう無茶苦茶な事をして(だから決め打ちはイクナイし、ラガルドはんも「もう決め打ちしませんもんね」って会見で言ってたと思うけど)でも50上げたのはそのせいですかねえ、よー知らんけど。


あ、金曜日にしれっと調節年報でてましたな。
https://www.boj.or.jp/research/brp/mor/mor220722.htm/

こういうのは展望レポートとか海外金融政策とかで忙しいタイミングで出さないでいただきたいのですけれども、さては他のネタで忙しいドサクサに紛れて出すの狙ってただろ、と思う位にアタクシの心は汚れているので良い子の皆さんはそうならないようにしましょう。



〇順番が色々とハチャメチャですが黒ちゃんの会見から参りますか

しかし時間切るんだったら黒ちゃんの想定問答棒読みで全然違う所から話するのってマジで止めてくれないかなと思うし、今回も「次の予定があるから」とか言って会見切るのって、要するに市場との対話とか国民との対話とかしたくないんでしょと思う訳で、黒田さんが体力的にしんどいんだったら雨宮さんにバトンタッチしてでも会見はきちんと時間をかけておこなって欲しいし、そうじゃないならあのグダグダ答弁を何とかしろとしか申し上げようがありません。と月曜の朝から血圧をあげてエンジンを入れながら(ナンジャソラ)黒ちゃんの会見である。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220722a.pdf

しかしまあ幹事社が幹事社なだけに幹事社質問がクッソつまらなくて(最初の質問の前半とか馬鹿なんじゃなかろうかという質問で流石はあの社だわと思いました)質問だけ晒すわ。


・幹事社の質問がグダグダで時間の無駄にも程があるので猛省していただきたい

まあ幹事社の名前聞いた瞬間にダメかなと思ったのですが、幹事社の実質最初の質問がこれでズッコケたわ。

『(問) 先日のことですけれども、安倍元首相が銃撃されて亡くなられました。黒田総裁は 2013 年の春に就任されてから、異次元の金融緩和を導入して、アベノミクスを支えられてこられました。異次元緩和のいわば後ろ盾であった安倍元首相の逝去によって、異次元緩和に何らかの影響が生じる可能性があるのか、お考えをお聞かせください。』

『また、異次元緩和はまだ途上にありますけれども、日銀が目指す 2%の「物価安定の目標」に達していないのは何がネックになっているとお考えでしょうか。日本経済の成長に向けて、日銀の金融緩和がどのように役割を発揮していくかと合わせてお答えを願います。』

前半とか「影響はありません」以外の回答の仕様がねえだろ馬鹿としか言いようが無いし、後半もそもそもがヨイショ質問で、今聞くのは「現実の物価が2%を超えた状態が続いているけど」というのを前提にした質問から入る(入り方としては「なんで物価上昇率が来年度に鈍化すると考えているのか」でもよいし「インフレ期待も上がっているという認識を示しているのですが今後期待インフレが上昇して来たら目標達成になるんじゃないですか」でもよいし、「2%を超える物価の中で政府が物価高対策などを行っているがこれは日銀の物価安定目標達成の妨げにならないのか」でもよいのだが・・・・・・・・)だろうが、という感じで見てらんないので回答は割愛しますが、その次も幹事社だった筈なんだが。


『(問) 米国の利上げ加速観測から、円安ドル高が進んでいます。最近では、一時 1 ドル 140 円に迫る場面もありました。黒田総裁は前回の会見で「急速な円安は日本経済にとってマイナス」と述べられていましたが、この急速な円安が日本経済にもたらす影響をどのようにみていらっしゃいますでしょうか。』

せめて「海外諸国の中央銀行が軒並み金融緩和の解除や引き締めに向けた動きを加速している中、日本銀行が緩和姿勢を維持していることを一つの要因にして」って言えよこのスットコドッコイという感じでして、もうねって感じですわ。

ということでこの答弁はどうでもよい(マジでどうでも良い答弁しているだけでこりゃ黒ちゃん楽勝ですわという感じ)ので割愛。



・コアコア物価の上昇の勢いが前回対比で鈍化していることへの質疑応答だが黒ちゃん余計な説明で時間をクソ稼ぐの巻

あ、そういえばすいません金曜日にコアコアCPIの見通しについて「前回値」を書いてるのに「前回比」とかかいてしまいましたので再掲しますすいませんすいません。

コアコア物価の今回の見通しを前回と比較しますとこうですね。

2022年度:+1.3%(前回+0.9%)
2023年度:+1.4%(前回+1.2%)
2024年度:+1.5%(前回+1.5%)

ということで以下この件についての質問が幹事社の次にやってくる、ということで今回の会見も前半の選手(?)の皆さんは冴えておられます、実にすんばらしい!!


最近特にその動きが露骨なのですが、時間を切っているせいで、最初のうちの質問に対して想定問答の中から関連はしてないわけでもないのだが質問の趣旨を外した回答を延々として時間を稼ぐ(さすがに最後の方になるとグダグダ回答をしていると質問したいと言ってる人の質問を切ることになって後でややこしいことになるのは分かっているので最後の方は段々簡潔になってくるのがまた憎たらしいですが)の巻でして、幹事社の次の人達の質問が、「3月対比でコアコア指数の上昇の勢いが弱まっているのは何でですか」という、コアコア物価の見通しの鉛筆舐め舐めについて言外に指摘した(3月と同じ傾きで上昇することにすると24年度のコアコアCPIが2%近くになって「政策の修正」話になるから鉛筆を舐めたのが露骨に分かる恥ずかしい作品なのでこうなる)質問に対してこんな話が。


『(問) 物価の見通しについてお伺いします。今回の展望レポートでは、先ほど総裁がおっしゃられた生鮮食品とエネルギーを除くベースで、22 年度と 23年度の見通しが上昇、24 年度は横ばいとなりました。総裁は、かねて 2%の物価目標を安定的に実現するまでには時間を要するというふうにお考えを述べられていると思いますけれども、先般の短観をみても、企業の価格転嫁の動きというのは進んできているように思います。基調的な物価上昇の勢いについて、従来と比べて認識の変化などございますでしょうか。ご所見をお聞かせください。』

もうちょっと露骨に効いて欲しかったのですが、更にひどいのは黒ちゃんの答弁でして、

『(答) 今回の展望レポートで、除く生鮮食品ベースの消費者物価の中心的な見通しは、2022 年度は年度平均で+2.3%と上がっています。これは本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇に加えて、携帯電話通信料のマイナス寄与の剥落もあって、上昇率を高めていくと予想されることを踏まえたものです。もっとも年明け以降は、エネルギー価格の押し上げ寄与が減衰し、更にコスト転嫁の動きも徐々に一巡していくと予想しており、この結果、来年度の消費者物価の上昇率は+1.4%まで減速するという見通しになっています。』

質問者はコアコアの質問をしているのにコアCPIの説明をおっぱじめるの巻。そして・・・・・・

『このように、今回の展望レポートでは、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現する見通しとはなっていませんので、先ほど申し上げた通り、金融緩和を継続する必要があると考えています。』

誰もそんな事聞いてないのにこれだけは答えたい、って黒ちゃんの意地っ張りが良く分かりますが、そもそも(聞き方が間接話法なのもアレとは言え)、質問している方は別に政策見直しがどうのこうのと質問しているのではなく「基調的な物価上昇の勢い」が前回対比で弱まっている(24年度に向けた上昇の角度が小さくなっている)のを質問している訳で、政策修正の方向での質問でもないのにこういう回答をしているのは、黒ちゃんがちゃんと人の言う事聞いてないのか、脊髄反射で政策修正について聞かれたと思ったのか、聞かれもしない話を延々として時間を稼いでいるだけなのか、まあ何だか分からんけど酷い答弁ですわ。

『他方で、ご指摘のように、最近の色々なアンケート調査等をみましても、企業の今後の販売価格の見通しは上昇しており、様々な予想物価上昇率も、短期がかなり上昇するだけでなく、中長期も緩やかに上昇していますので、価格転嫁の動きが少し広がってきていることは事実だと思います。』

やっと質問の一部への回答があった、と思ったらその後がこれである。

『ただ、そのもとでも、今申し上げたように、年明け以降はエネルギー価格の押し上げ寄与が減衰し、その他の事情もあって、来年度の消費者物価の上昇率は+1.4%まで減速するという見通しになっており、2024 年度でも+1.3%くらいです。』

だからコアコアの勢いの話を聞いてるんですが・・・・・・・・・・・・いやここまでくるとこのジジイ、時間稼ぎしてるんだと思うんですけどもしかして質問されてることを理解しないで回答してるのかって言いたくなるレベルでマジで勘弁していただきたいんですけど、と思ったらやっと回答が始まるのです。

『鮮食品とエネルギーを除くベース、いわ
ゆるコアコアで言いますと、2022 年度は+1.3%、2023 年度が+1.4%、2024年度は+1.5%と、緩やかながら着実に上昇していくという見通しになっておりまして、その部分は、重ねて申し上げますと、やはり需給ギャップが改善し、潜在成長率を上回る成長が続くもとで、賃金も上昇していくということがあると思います。けれども、足元 2022 年度での除く生鮮食品ベースの+2.3%が、来年度以降も直ちに+2%程度の物価上昇率になるということには、まだなっていないということです。』

と、これで終わっているのだが質問した人は「価格転嫁の動きが進んだり、インフレ期待が上がったりというような認識の変化があるのにコアコアの先行き上昇見通しが3月対比で勢いが弱くなっているのはどういう事や」という質問なので、一切答えになっていないと思ったら、次の人が露骨な表現をして質問をしてくれたのはスマッシュヒットだし、黒ちゃんの会見ってもう露骨に質問しないと関係ない事を説明したり、質問の言葉尻を捕まえた回答をしたりするので、まあ聞く方もその辺対策せんといかんよね、とは思いました。


ということで次の人。

『(問) 今のご説明についての話になるのですけれども、物価の上昇につきましては、予想物価上昇率が中長期も上昇して、価格転嫁の動きが広がっていくとのご説明があったわけですけれども、今回の展望レポートをみますと、基調的な物価、コアコアの部分が、24 年度について前回展望レポートから据え置きになっており、必ずしも基調の改善が先行き強くなっていくという見通しにはなっていないと思います。』

何ならここで切った方が良かったかもしれないのですが、

『インフレ期待の上昇につれて、緩和効果、これも強まるはずなのですが、実際そのような説明と緩和効果の強まりとの整合的な筋合いがみえないのですけれども、この辺について総裁はどのようにお考えでしょうか。』

ご丁寧にここまで言って質問するのは露骨で大変に結構である。

『また、もう一点ですが、緩和効果の強まりにつきましては、円安という為替レートだけに偏っているのではないかという指摘もありますが、この点について総裁はどのようにお考えでしょうか。』

まあこれは余計じゃないの??自分で前段の質問で「期待インフレの上昇で緩和効果が高まるはずだが」って話をしていたので。


さて黒ちゃんの回答ですが、これがもう無茶苦茶な回答になっていまして、金曜の駄文で申しあげました「2022年度だけはピュアな見通しにしたけど先の見通しは鉛筆舐め舐めになっていて、ちゃんとした見通しと大本営発表が混在しているので通しで見ると意味不明な先行きパスの数字が出来上がっている」という推測を裏付けるような答弁になっていて泣ける。

『(答) まず、コアコアといいますか、趨勢的な物価上昇、アンダーライイングな物価を示す一つの指標と思われる生鮮食品・エネルギーを除いたベースでの物価が少しずつ上昇していくわけですが、ご指摘のように 2024 年度の+1.5%というのは 4 月の時の見通しと変わらないことは事実です。』

はいそうですね。で???

『ただ、そうはいっても、そこに至るプロセスとして、4 月の見通しより、ある程度価格の転嫁が進むであろうということは事実だと思います。』

??????????????????????????????????????

だったら何でコアコアの24年度の見通し数値が前回と変わらんの??????

『そういった価格の転嫁、物価上昇がある程度進んでいるからこそ、22 年度は生鮮食品を除いたベースで+2.3%という見通しになっているわけで、』

節子、質問はコアコアの話しや。

『その内容をみると、やはり何といっても国際商品市況の上昇を反映した輸入物価の上昇が大きいわけです。』

これまた酷い説明で、4月と7月を比較した時に「国際商品市況の上昇を反映した輸入物価の上昇」ってお前は何を言ってるんだという話でして、主要な国際商品市況(ドル建てベース)って基本的に横這い(CRB指数とか確か下がってた筈だし)で推移している訳で、輸入物価の上昇はどっからどうみたって円安進行による円ベースの物価上昇であって、契約ベースだとラグがあると思うのでそういう意味では今年春先からの円安進行がここにきて円ベースの輸入物価上昇に効いてきた、という話にしか見えないのですが、黒ちゃんそこは「円安のせい」というと自分で自分の首を締めるのは分かっているので冴えております(ということは質問に対して違う回答をしているのは分かっててやってるんだからタチが悪い訳ですけどね!)。

『一方で、交易条件の悪化を通じて国民の所得が海外に流出するということになりますので、景気の下押しになり、この輸入物価の上昇を反映した物価の上昇がそのまま続くということにはならないわけです。』

さてここで今回の展望レポートの成長率見通しの政策委員の皆様の中央値を確認してみましょう。

2022年度:+2.4%(前回比▲0.5%)
2023年度:+2.0%(前回比+0.1%)
2024年度:+1.3%(前回比+0.2%)

・・・・・・・22年度が下押しになっているので、22年度から23年度にかけてのアンダーライングの物価上昇の勢いが若干弱まってもそこは理屈として分からんでもないですが、23年度と24年度って前回対比では前年比成長率上方修正しているのに、何でアンダーライング(コアコア)の物価上昇の勢いが前回対比で盛大に弱まる理由がありませんね。そもそも基本的見解の鏡にも「前回の見通しと比べると、成長率については、2022 年度が、海外経済の減速や供給制約の強まりの影響などから下振れているが、その後は、その反動もあって幾分上振れている。」と書いてありましたから、この黒ちゃんの説明そもそもインチキだろという話。

『そういう意味では、一定程度の転嫁が進みつつある、あるいは予想物価上昇率が短期のものはかなり上がり、中長期のものも緩やかに上がりつつあるということは言えると思いますが、今のところ、それによってコアコアが 2%にすぐになるというような状況には、まだなっていない――2024 年度でも+1.5%程度――ほか、除く生鮮食品で+1.3%程度と見通しているわけです。』

ということで、さっきの質問と同じ話になっておりますが、結局のところ「政策修正したくない」という意思だけは強いので、そういう話を聞かれもしないのにするというプレイに出る黒ちゃん。まあ確かに前回と同じ角度(=年+0.3%)でコアコアが上がると2024年度のコアコアが+1.9%というどう見ても物価安定目標達成です本当にありがとうございました、という数字になってしまうから、経済見通しに変化が無くて足元の物価見通しを引き上げ、さらに予想インフレの動向についても上方修正しているのに、コアコア物価の上昇見通し、即ち基調的な物価上昇の勢いが前回対比弱くなる、という無茶苦茶な結果を出すことになっている訳ですな。

しかしまあ何ですな、今回のこの珍事案、元はと言えば4月時点での「22年度平均のコアCPI+1.9%」が露骨なまでに鉛筆舐めてしまったもんだから起きてる現象ではあるのですけど、物価が高止まりしない確信があるなら兎も角、4月の時点で既に海外が物価下がらんって頭抱えていた中だし、それに加えて毎日指値オペなんてやったら円安進むの明白な訳で、コア+1.9%なんて見通し通りに行くわけないじゃんっての4月の時点で露骨に明白だったのですから、7月の展望レポートで4月対比で大きな矛盾を出さないように4月の数字を作っておけば良いものを、お前ら絶対先の事とか何も考えてないだろ、と思ってしまうのでありました。


あ、すいません後半の質問の回答はこうでした。

『もう一点について、金融緩和の効果のチャネルとしては、従来点検でも申し上げているように、色々なチャネルがあるわけですが、一番大きいのは実質金利の低下でしょう。アベイラビリティという面もありますし、為替を通じたチャネルもあると思いますが、一番大きいのは実質金利の低下を通じた景気の刺激効果であると思っています。』

えーっとすいません。ということは物価の見通し上がってるし、予想インフレ率の現状認識も上がってだから金融緩和の刺激効果高まって来ますよねえ。何でそっちは見通しに反映しないんすかねえ。



・しかし展望レポートで「コアコア」を出した次の会合で突っ込まれ満載になるのがテラワロスwwwwwwwwww

次の人も前半はコアコアの質問www

『(問) コアコアについての関連質問です。生鮮食品・エネルギーを除く消費者物価指数でみてみますと、2022 年度、23 年度については見通し上方修正ということになっています。』

はい。

『これはつまり、日本経済の基礎体温が上がってきている、経済の好循環についてトンネルの先に光が見えてきたというご認識なのか、それとも、まだまだそこまではいっていないというご認識なのか、その辺りをまず教えてください。(後半割愛、というか後で)』

そっちからの角度で質問来ましたって感じで実に味わいがあります・

・・・・・・と申しますのは、そもそも展望レポートの物価見通しで「コアコア」とか出しだしたのはご案内の通り前回4月からの展望レポートでして、こちらは何でこんなの出したかと言えば(あくまでも個人の妄想ですが)、CPI見通しがあまりにも露骨に「物価上昇は一時的」連呼の物件となっており、当然ながらそうなるとお前ら物価安定目標やる気あんのか(=こんな推移するなら追加で物価が上がる施策を入れないのかよ)問題が生じてしまい、それはそれでまた困ってしまうので「基調的な物価は2%に向けて上がっていくんです(キリッ)」っての示そうと思って出した、としか心の濁ったアタクシには読み取れなかったわけですな。

然るに、前回のコアコア見通しが22年度から24年度にかけて年+0.3%ずつ上がっていって、見通し期間の終盤には+1.5%と「+2%にはやや距離はあるけど、全然ダメという数字ではない」というのを出してしまったが故に、今回の展望レポートで早速前回との整合性が問われる事態になっている訳でして、いやまあ別に鉛筆舐めするの全否定する訳じゃないんですけど(展望レポートは基本的見解部分が金融政策決定会合の議決事項になっていますので、そういう点では政策意図からの鉛筆舐め舐めが露骨に入る可能性があるのは基本的見解の部分となります)、鉛筆舐めるにしても後先の事を考えて舐めろと思う訳で、ここまで露骨に出来の悪い基本的見解は(前回も大概だったし、そのせいで今回こうなってるんですけど)中々見れないので関係各位の猛省(????)を促したいですな。

などと悪態を言ってる場合じゃなくて黒ちゃんの回答。

『(答) 最初のご質問については、確かに価格転嫁の動きがエネルギーや食料品を中心に広がってきていることは事実で、そういう意味では将来的な好循環のきっかけになり得るかもしれません。』

おいこら直前の質疑で「一方で、交易条件の悪化を通じて国民の所得が海外に流出するということになりますので、景気の下押しになり、この輸入物価の上昇を反映した物価の上昇がそのまま続くということにはならないわけです。」と言ってたのは何だったのかと。

『ただ、私どもがみている感じでは、先ほど来申し上げているように、国際商品市況が来年も再来年も上がり続けていくとは誰も考えていないわけです。そうしますと、その影響は 12 か月経つと、12 か月前と比較しますので、当然下がってくる、それは転嫁が十分できたとしても下がってくるわけです。』

そういうこと聞いてるんじゃなくて「コアコア物価が22年度、23年度と前回よりも上方修正されているということは経済の基調が強くなったという意味ですよね」って聞いてるんだが。

『その意味では、要するに企業収益が伸び、賃金が上昇するという中で、物価もそれに倣って上昇していくという好循環に今なっているかというと、まだなっていないと思います。(後半割愛)』



・賃金連呼の巻・・・・・をやろうと思ったら最初の方の質疑でついノリノリになって時間が無くなったので今回の謎答弁の白眉を

でまあこのコアコア物価ネタは結局回答になっていない回答の連発でして、この後今度は賃金上昇連呼大会が始まるのですが、うっかり前半でアタクシがノリノリになってしまって時間が無くなったので、今回の質疑応答の中でもっとも訳分らんかったのを鑑賞しましょう。

本文9ページから始まる質問の後半パートで、当該部分は本文10ページにあります。


『(問)(前半割愛)もう一つ同じような質問になりますが、黒田総裁は前回の会見で、金利を上げる、あるいは金融を引き締めると、更に景気に下押し圧力を加えることになってしまうとおっしゃっています。それは基本的にその通りだと思いますが、その影響は引締めの程度にもよると思いますし、緩和による様々な副作用も指摘されています。緩和をどの程度緩めると、今の日本経済にどれほどマイナスの影響を与えるのかといった具体的なシミュレーションをされているのか、教えて頂けますでしょうか。』

黒ちゃんの謎回答。

『(答)(前半割愛)二番目の金利の引き上げ云々については、点検でもかなり詳しく数字的なものを示しています。どのくらいの金利の引き上げが、どのくらい景気を下押しするかというのは、もちろん計算はできますが、あくまでも経済モデルで行う計算であり、今の時点で金利を引き上げたとき、どういったインパクトがあるかというのは、おそらくそのモデルで計算したものよりも、かなり大きなものになり得ると思います。』

??????????????????????????

いやーなんですかこれ????????じゃあその数字出してくださいよおおおおおお!!!!!

『私どもとしては、イールドカーブ・コントロールのもとで金利を引き上げるつもりは全くありませんし、±0.25%というレンジも変更するつもりは全くありません。』

完全に当初の話(均衡イールドカーブ論)がどっかに逝ってますね。

『今の時点では、やはり粘り強く金融緩和を続けて、先ほどより申し上げているように、コロナ感染症からの回復途上にある経済を支え、更に交易条件の悪化で国民所得が海外へ流失し、景気の下押し効果があり得るので、そういった二重の意味で、経済をしっかり支えて、企業収益、賃金・物価が緩やかに上昇していくという好循環を実現するためにも、金融緩和を持続していく必要があります。このことは、今回の決定会合でも委員皆が同意した点です。』

皆が同意してるのかよ使えねーカカシどもだな、と思ったところで本日はこれにて勘弁でありますが、しかし

>おそらくそのモデルで計算したものよりも、かなり大きなものになり得ると思います

ってのは何だかさっぱり意味が分からんですな。






2022/07/22

お題「BOJとECBが同時に来ましたのでちょっとばらばらと成敗になりそうです」

とまあそんな訳でございまして、まあさすがに今朝でカバーしきれないと思うので、今回は土日にも成敗する努力をします(更新自体は出来るだけやるようにはしたい、というかしないとFOMCになだれ込んでしまいますから)。


〇日銀政策変更なしは順当オブ順当だが展望レポートェ・・・・・・・・・・・

・政策は順当に「一切変更なし」でしたがコロナオペ延長しなかったのね

声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220721a.pdf

細かい話は後日行いますが、今回は9月に終了予定のコロナオペについて特段の判断をしめしませんでしたな。ということは期日通り終了ということなのか、9月の会合で駆け込みで延長を決めるのか、まあ良く分からんですけど、どうせコロナ第7波とか言ってるんだから延長しちまえばよかったのにとは思いました。あ、一応申し上げますと、あたしゃコロナオペとか止めちまえという人なので延長しないのは結構なんですけど、緩和政策継続で政策を1ミリも変えませんって言ってるんだから延長するのはやって置いた方が良いのではと思っただけです。

毎日指値オペも10年カレントについて継続だし、片岡さんという芸人は最後の最後まで何か具体性に欠ける反対だけして終わるし、と言っても片岡さんの場合は就任直後の反対の次の決定会合で満を持して無い頭を捻りに捻って2カ月間一生懸命考えた「15年国債利回り0.2%未満」という提案が金利市場の大爆笑を買ってしまって、あまりにも大爆笑を買ってしまったためにどうも片岡さんお気づきになった節があり(個人の妄想です)、満を持して投下したオリジナルな追加緩和提案が皆に嘲笑されてしまったのが余程のトラウマだったのか(個人の妄想です)その後、頑として具体的な話をしないで反対を貫く、ということで、残念ながら個別の金融政策手段に関する知見が甚だ欠如しているのではなかろうか、という残念な状況ながらも、パッションだけはある(なんもご自身の主張をしてこない安達、野口の両審議委員と比較して)ということで、典型的な(2文字伏字)な働き者でしたなあと感心しました。


で、まあ今回のツッコミどころは展望レポートなんですけどね。

展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2207a.pdf

毎度の前回比較とかは週末にボチボチ成敗しますけれども、


・「物価上昇は一時的、先行きの日本経済は緩やかながらも拡大基調」に変化なしとな

また前回比較を後日行いますけどざっくりと鏡(1ページの総括判断)を見ます。


『・日本経済の先行きを展望すると、見通し期間の中盤にかけては、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』

『・物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』

ということで、鏡の1ポツ2ポツが形成されています。ここにありますように、「経済見通しは変えていない」し、「物価見通しも変えていない」というのが(計数の話があってそれはそれで面白いのですがその話はあとで)基本線ですね。

つまりですね、「物価上昇が一時的なものに留まらなくなったらおんどりゃどうするつもりじゃ」という設問に対しては「一時的なものに留まります」という回答をしているという訳ですね。

でですよ、この見通しだと本年末にかけて上昇率高めるって言ってまして、これはこう言っておかないと10月の展望レポートの時点で「オイコラ物価が上がってるじゃねえか」となると申し開きが付かないので年末まで高い、ってことで次回の展望は凌ぐつもりだと思うのよね。


・・・・・という目先の対策はしているんですが、この結果2023年度の物価見通しとの整合性がかなり無茶苦茶になっていまして、


・物価見通しのパスのページに飛ぶのだがなんですかこの見通しは??????????????

基本的見解の9ページ『(参考)2022〜2024 年度の政策委員の大勢見通し』は皆様ご案内だと思いますけど・・・・・・・・・・・・・

除く生鮮のCPI見通しが、

2022年度:+2.3%(前回比+0.4%)
2023年度:+1.4%(前回比+0.3%)
2024年度:+1.3%(前回比+0.2%)

となっているのですが、この数値って展望レポートの決めによりますと「年度平均」の数値(期末値ではない)のでありまして、年末ごろまで上昇率を高めたコアCPIが、22年度平均で+2.3%程度、というのはまあだいぶ実態に近そうになってきた感じがするのでそれはまあ良しと致しまして、問題はこの23年度の「年度平均+1.4%」という数字ですな。

これが起きるためには、年度替わりのあたりで思いっきり断絶が発生でもしない限り、発射台がどっからどう見ても低く見積もったって+2.0%近辺としか思えないのに、年度で+1.4%まで下がるっていってるんですから、それ年後半から+1%割れ位までコアCPIが下がらんとその数字にならんと思うのですけれども、どういう物価パスを描くとこんな凄い断絶が発生するのかがさっぱり分からん。

いやまあ前回もこれ22年度平均が+1.9%で23年度平均が+1.1%だったので、そこも何だよこれって感じではあったのですが、『携帯電話通信料下落の影響が剥落する 2022 年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(4月展望レポートより)となっていまして、前回の展望の場合はそもそも今年の末まで物価上昇率が高まる、という見通しになっていなかったので、(この見通しパスも大概ですけど)まあそこまで訳分らんパスではなかったのですね。

とまあそういうことで、この23年度に急減速する理由って何ですか???ってのが「前年比効果が剥落する」だけで説明効くもんなのか、という点につきましてはアタクシ残念ながらエコノミストじゃないのでワカランチ会長にも程があるんですが、そんなに来年度の年度替わりでギャップダウンするもんなんですけ???????というのがよーわからんし、それが携帯電話通信料金のせいだったら、携帯電話通信料金の影響について、22年度は前年対比で何%の押し上げ寄与がありました、これが前年対比で0%計算になるとすれば23年度はこの分だけ押し下げ寄与があります、って明記して頂かないとさっぱり分からんというものです。


・ついでに年度平均で一気に+0.4%も引き上げた要因is何なのよという話もありまして

除く生鮮のCPI見通しですが、先ほど申し上げた通り、

2022年度:+2.3%(前回比+0.4%)

となっているのですが、さっきの引用と被りますが、4月の展望レポートでの見通しはこうなっていました。

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する 2022 年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(4月展望レポートより)

でですよ、4月の展望レポート書いてた時と国際商品市況を比較すると、物によって上げ下げありますが、達観してみれば概ね横這いとか原油みたいに小幅ながらも下がっているのがある訳ですよ。しかも日本国内においては燃料高対策お助け措置の効果によって、燃料価格上昇の影響は軽減されているんですよね。

となりますと、何でこの年度+0.4%も引き上げたのか、というのが謎オブ謎ということになりますが、今回の先行き見通し(目先の)を見ますとこうなっておる訳です。基本的にさっきの鏡と同じになるけどこっちは本文の方から引用してます。

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(7月展望レポート良い)

という記述になっているのですが、食料品とか耐久財の価格上昇で急に+0.4%も(しかも期末値ではなくて年度平均ですよ!)引き上げるってどういうことやとしか申し上げようがない訳でして、この3か月の間に食料品や耐久財がそんなに爆発的に上昇したかよ????という話の中、そういえば爆発的に動いているのが円相場ということになりますわな。

先般企業物価指数の公表があった時に、円ベースの輸入物価指数が盛大に上昇していることが巷で話題になっておりましたが、この+0.4%の多くの部分が実は円安だろと言いたくなるわけで、でもってその円安をもたらしているのは黒ちゃんの意地と趣味による現在の金融政策動きませんモードな訳でして、しかも円安による物価上昇は交易条件の悪化って話も(今回の会見でも)してたんですよね。

これまでの会見での説明だと、「円安のせいで物価が高騰して悪い物価上昇になっているのではないか」という問いに対して「ファクターは円安じゃなくて資源を始めとする国際商品市況の大幅な上昇」で済ませておりまして、円安はそんなに寄与しない(ワイはエコノミストじゃないから受け売りになるけど、まあ現実問題として原油価格上がる方が為替が動くより寄与度段違いみたいですからね)ので、円安進行は急激な物でなければ寧ろ国内経済には(輸出のプラス寄与を通じて)プラスになる、って理屈で通していたはずな訳ですよ。

という訳でして、「前回の+1.9%見通しが2%乗せを回避するために出した鉛筆舐め舐めのインチキ見通しでない」という前提のもとに今回の22年度+2.3%という数値を見た場合、円安でコストプッシュを起こしていますってのが裏にありませんかねえという割と日銀には不都合な話になりませんかねーウッシッシ、とか思うのでした。


では鏡に戻ります。


・前回からの比較ですが経済見通し結局下方修正してませんよね&コアコアCPIェ・・・・・・・・・

『・前回の見通しと比べると、成長率については、2022 年度が、海外経済の減速や供給制約の強まりの影響などから下振れているが、その後は、その反動もあって幾分上振れている。物価は、輸入物価の上昇やその価格転嫁の影響から、足もとを中心に上振れている。』

ということで、事前には「経済見通し下方修正」とか出てて、今後緩和を修正しない言い訳として「物価が一時的」を使いにくくなった時の用心をするのかなーって思ってたのですが、どうもそうならないようです。

しかしまあ何ですな、また見通し計数に戻りますが、

(参考)消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)

という例の「これがアンダーライングの物価です」ってコアコアの数値ですけど、

2022年度:+1.3%(前回比+0.9%)
2023年度:+1.4%(前回比+1.2%)
2024年度:+1.5%(前回比+1.5%)

ってなっていまして、これだと「基調的な物価の伸びの勢いが前回よりも低い」という謎現象が発生していて大草原不可避とはまさにこのことwwwwwwwwwwwwwwwwwww

前回のだと、なんかこう「目標達成に向けて着実な歩みを示している」感があるのですが、今回のだと全然上がる気がしないんですけど2%行くのは2030年かよ!!!!って感じですよねオマエナメトンノカ。


なんですかね、今回の展望って基本的な見方を変えていないくせに、計数の方(特に物価)を見ると何でこんなに変わるんだという変わり方だし、コアコアの勢いが急に下がったり、意味不明なものが大杉栄なわけでして、ピュアな予想と鉛筆舐め舐めがごちゃ混ぜになっているとしか申し上げようがない(前回は全編に渡って鉛筆舐め舐めでしたけど、笑)代物に出来上がっていまして、もうちょっとこう作品としてアタクシのような市井のチンピラでもいちゃもん付けれそうな粗末なものを出すのはご勘弁頂きたい、と斯様思うのでありました。



〇ECBですが50bp来ましたねー(メモだけザクザクとで詳しくは週末か最悪月曜日)

ECBのトップページ(英語版)
https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

を見ますと、

MONETARY POLICY
Our monetary policy statement at a glance

MONETARY POLICY 21 July 2022
Latest ECB press conference

の他に、ちゃっかりと

MONETARY POLICY 21 July 2022
Our commitment to price stability

EXPLAINER 21 July 2022
Why have we raised interest rates?

と解説しよう!ってページがあって、とりあえずこの辺は鑑賞物として面白そうですので、週末に読んでみたいと思います、ってか多分鑑賞物として面白いと思うので(まだ見てないけどアタクシのカン)皆様もどうっすか??

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/press_conference/html/index.en.html
Press conference
21 July 2022
14:45 CET - Frankfurt am Main, Germany

さすがに今回はぐうたらのアタクシも2145JSTからユーチューブのECBチャンネルでライブ聞きました(というより音源掛け流し状態なので聞きましたと威張る程聞いてないけど汗)が、QAもまあ早いうちにはアップされてくると思います。


声明文
https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.mp220721~53e5bdd317.en.html
PRESS RELEASE
Monetary policy decisions

21 July 2022

『Today, in line with the Governing Council’s strong commitment to its price stability mandate, the Governing Council took further key steps to make sure inflation returns to its 2% target over the medium term. The Governing Council decided to raise the three key ECB interest rates by 50 basis points and approved the Transmission Protection Instrument (TPI).』

50bpの利上げでマイナス金利政策解除&フラグメンテーション対策ツール(TPI)を入れましたよ

『The Governing Council judged that it is appropriate to take a larger first step on its policy rate normalisation path than signalled at its previous meeting. This decision is based on the Governing Council’s updated assessment of inflation risks and the reinforced support provided by the TPI for the effective transmission of monetary policy. It will support the return of inflation to the Governing Council’s medium-term target by strengthening the anchoring of inflation expectations and by ensuring that demand conditions adjust to deliver its inflation target in the medium term.』

前回会合では0.25%利上げから正常化着手すると言ったが今回何で50にしたかというと、インフレ(上振れ)のリスクに対する認識の変化と、TPIの導入によって政策の波及メカニズムがより堅確になると考えたからだよ。

『At the Governing Council’s upcoming meetings, further normalisation of interest rates will be appropriate. The frontloading today of the exit from negative interest rates allows the Governing Council to make a transition to a meeting-by-meeting approach to interest rate decisions. The Governing Council’s future policy rate path will continue to be data-dependent and will help to deliver on its 2% inflation target over the medium term. In the context of its policy normalisation, the Governing Council will evaluate options for remunerating excess liquidity holdings.』

そしてここで先行きの金利フォワードガイダンスを全部反故にする攻撃が出まして、先行きに関しては「今後の政策決定会合においてもさらなる政策金利の正常化が適切である」とは言ったものの、「The frontloading today of the exit from negative interest rates allows the Governing Council to make a transition to a meeting-by-meeting approach to interest rate decisions.」ってなんか物凄くカッコイイ言い方をしていますが、要するに「マイナス金利も解除しましたしこの先は出たとこ勝負で正常化路線参りますんでよろしく」という今までの決め打ちは何だったのかという話。

しかもその直後にも「The Governing Council’s future policy rate path will continue to be data-dependent」という必殺キーワード「データディペンデント」を使いまして、出たとこ勝負ですという話をするのですが、まあこの部分に関してはFEDよりも逃げ足が速いなと思う訳で「方向性としては物価目標達成のために金利の正常化路線を取ります」とは言ってるものの、先の事は分からんという話で、「make a transition to a meeting-by-meeting approach」とアプローチの転換(transition)を行ったと明言しているので、景気が怪しい時(既に怪しい説はありますがそれはさておき)に利上げを1回パスとかもやろうと思えばできる感じになりました。とは言いましても、今からそれを言い出すと市場金利が大喜びして低下して緩和効果が強まって物価がサガランチ会長になったら元も子もないので、まあそんなことは言わんわなと思ったらアタクシが会見聞き流している限りではその方向でのニュアンスは出してなかったように思えます。

『The Governing Council assessed that the establishment of the TPI is necessary to support the effective transmission of monetary policy. In particular, as the Governing Council continues normalising monetary policy, the TPI will ensure that the monetary policy stance is transmitted smoothly across all euro area countries. The singleness of the Governing Council’s monetary policy is a precondition for the ECB to be able to deliver on its price stability mandate.』

『The TPI will be an addition to the Governing Council’s toolkit and can be activated to counter unwarranted, disorderly market dynamics that pose a serious threat to the transmission of monetary policy across the euro area. The scale of TPI purchases depends on the severity of the risks facing policy transmission. Purchases are not restricted ex ante. By safeguarding the transmission mechanism, the TPI will allow the Governing Council to more effectively deliver on its price stability mandate.』

TPIは常設のファシリティになるのではなくて、個別国の国債金利がディオーダリーに怪しからん水準まで売り込まれた時にお助け措置として発動するもの、という感じの説明でして、

『In any event, the flexibility in reinvestments of redemptions coming due in the pandemic emergency purchase programme (PEPP) portfolio remains the first line of defence to counter risks to the transmission mechanism related to the pandemic.

The details of the TPI are described in a separate press release to be published at 15:45 CET.』

PEPPの償還再投資を柔軟に行う、の方が基本的な通常手段ですよ、と言ってて、TPIは抜かずの宝刀にしようとしてるんだろうなあーというのは伝わってきます。まあそうは言っても欧州クオリティなので抜くことになりそうな気もしますけど。


『Key ECB interest rates

The Governing Council decided to raise the three key ECB interest rates by 50 basis points. Accordingly, the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will be increased to 0.50%, 0.75% and 0.00% respectively, with effect from 27 July 2022.』

MRO金利が0.50%に引き上げ、常設ファシリティの金利も50bp引き上げなので、預金ファシリティの金利は0%となってめでたくマイナス金利政策の解除になりました。

『At the Governing Council’s upcoming meetings, further normalisation of interest rates will be appropriate. The frontloading today of the exit from negative interest rates allows the Governing Council to make a transition to a meeting-by-meeting approach to interest rate decisions. The Governing Council’s future policy rate path will continue to be data-dependent and will help to deliver on its 2% inflation target over the medium term.』

ここはさっき言ってたのと同じ。

『Asset purchase programme (APP) and pandemic emergency purchase programme (PEPP)

The Governing Council intends to continue reinvesting, in full, the principal payments from maturing securities purchased under the APP for an extended period of time past the date when it starts raising the key ECB interest rates and, in any case, for as long as necessary to maintain ample liquidity conditions and an appropriate monetary policy stance.』

APP(PEPPじゃない方の前からやってる国債買入)は今しばらくの間償還部分は全部再投資しますよ。

『As concerns the PEPP, the Governing Council intends to reinvest the principal payments from maturing securities purchased under the programme until at least the end of 2024. In any case, the future roll-off of the PEPP portfolio will be managed to avoid interference with the appropriate monetary policy stance.』

少なくとも2024年末まではPEPPで買った国債の償還再投資を行いますよ。

『Redemptions coming due in the PEPP portfolio are being reinvested flexibly, with a view to countering risks to the transmission mechanism related to the pandemic.』

その再投資の際、必ずしも同じ銘柄を買うのではなくて、フレキシブルにしますし、市場のフラグメンテーションを回避するために再投資を活用しますよ。

『Refinancing operations

The Governing Council will continue to monitor bank funding conditions and ensure that the maturing of operations under the third series of targeted longer-term refinancing operations (TLTRO III) does not hamper the smooth transmission of its monetary policy. The Governing Council will also regularly assess how targeted lending operations are contributing to its monetary policy stance.』

TLTRO3などのオペレーションに関してはまあいつも通りの表現ですな。


https://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2022/html/ecb.pr220721~973e6e7273.en.html
PRESS RELEASE
The Transmission Protection Instrument
21 July 2022

ちと時間が無くなってきたのでTPIに関しては流しちゃいますが、クッソ細かい業務細則みたいなのは今回出ないよ、と会見でラガルド姐さんが言ってて、基本的にどういう時に行うかとか、誰が発動の判断をするのか(Governing Counciですが、たぶんこれは通常会合も含まれるんじゃないかなと思ったがよくわからん)とか、ユーロ建ての域内国債なら対象だよとかそういう基本的な話があるという感じ。

こちらの説明文でも、PEPPの償還再投資とかOMTとかの既存ツールでもフラグメンテーションの対策しまっせ、と言ってまして、TPIが常設のファシリティになるのではなくて、火事場になった時に消化に表れて平時はゴロゴロと昼寝をしているというツールっぽいですね、アタクシの読み込みが間違ってたらゴメンやでですけど。

ということで本日は表面だけサラサラって感じになってすいませんすいません、同時に結果を出す中銀が悪い。







2022/07/21

お題「MPMは政策修正しない理由をどう言ってくるかを見たいです/ジョージ総裁講演ネタの続きですが完全に趣味のコーナーでサーセン」

ドラギさん・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/italy-politics-idJPKBN2OV1WY
2022年7月21日5:11 午前
伊内閣信任投票、連立3党がボイコット 政権崩壊の危機高まる

『[ローマ 20日 ロイター] - イタリア議会上院が20日に実施したドラギ内閣を巡る信任投票は賛成95、反対38で可決されたが、連立与党のうち右派の「同盟」および「フォルツァ・イタリア」、左派の「五つ星運動」の3党が投票をボイコットし、政権崩壊のリスクが一段と高まった。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですか、と思ったら・・・・・・・

『イタリア議会は14日、ドラギ内閣の物価高騰対策を巡る信任投票を実施し、賛成172、反対39で可決。ただ五つ星運動が投票をボイコットし、連立政権が崩壊のリスクに陥ったことを受け、ドラギ首相が同日、辞意を表明。マッタレッラ大統領はこれを拒否し、再考を促した。』

まあ何ですか、おんどれの何でも緩和政策のブーメランが飛んできたという面もありますなあと思いますし、最近すっかりだんまりに見えるバーナンキおじさんはさすが分かってらっしゃるって感じですね。


〇中銀祭りが始まりますが日銀プレビュー雑談

本日から日銀ECBが同時に来て(勘弁してくれ)来週はFOMCな訳ですが、この中で日銀だけ動かざること山の如しとなるのはさすがに衆目の一致するところ。しかも指値オペ入れ捲ってしまったので、政策修正すらできないという状態になっているのですが、今回は「政策修正をしない理屈」について注目しておこうかと思います。

・・・・・・と申しますのは、今の日銀って「足もとの物価の上昇は一時的で2%物価目標の達成は展望できません」という理屈を持ってCPIが2%だろうとも政策の修正をしない、ということになっておるわけでございますが、この言い訳がいつまでも続くかどうか、というのは今年度後半、秋から冬にかけて日銀というか黒田とかいう物体にとっては追い風の事案、すなわち世界的に景気がアイヤーとなって物価アガランチ会長なのが見えて来る、ということになれば「それ見たことか」とぶっこんで行けますけれども、その時点でまだ海外の物価は強いわ、景気はそこまで別に落ちる訳でもないわで、日本の物価もサガランチ会長、となってきた場合に、この「物価上昇は一時的」攻撃がだんだん使えなくなって来るので益々屁理屈が窮地に立ってくるわけです。

って「世界経済が失速すると日銀が助かる」とかいう時点で、日銀は何のために存在するのか、という存在意義が問われる話であって、世界の皆様が不幸になるのを祈っている中央銀行とか存在しない方が良いのではないか、と思ってしまいますけどまあそれは兎も角としまして、そろそろ日銀は政策修正を梃子でもしない理由に関して今回の展望レポート辺りから、「経済の先行きが怪しいので」という屁理屈成分を入れ込んでおかないと、秋口にかけて物価が日銀のお絵描き通りに下がる気配を示してこない場合に10月展望レポートに向けて理屈が苦しくなって来る筈なのですな。

なので、先般幾つかのメディアで今回の展望について「物価は上方修正(これはそもそも前回の展望の2022年度+1.9%という数字がおかしいから)、成長率は下方修正(上記の理屈のため布石を打っておく必要がある)」というのが見通し記事として出てきたと思うのですが、そこで支店長会議で上方修正が出るというのが面白いですね、というのをさくらレポートネタの時に申し上げましたが、たぶん大本営はさくらレポートの上方修正を丸無視して今回下方修正で出してくると思いますので(個人の妄想です)、そこのコンフリクトをどう言い訳するのか(たぶん質問しないと回答しないと思うけど)というのをみたいな〜って思います。


で、それはそれとしてこれは何ともお大事にとしか申し上げようがありませんけど。
https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2Z11EQ
2022年7月20日4:15 午後
片岡日銀審議委員、決定会合に電話会議で出席 コロナ濃厚接触で

『[東京 20日 ロイター] - 日銀は20日、片岡剛士審議委員が同日から開催している金融政策決定会合に電話会議で出席していると発表した。片岡委員が新型コロナウイルスの濃厚接触者となったため。』(上記URL先より)

濃厚接触であって罹患されたという話ではないようですので不幸中の幸いではございますが、いやはや最後の金融政策決定会合で電話出席になってしまわれるとは、何ちゅうか最後の最後まで「持ってない」お方でしたなと思いますけど、最後なんだから追加金融緩和についてもうちょっと具体的に「政策金利をこうしろ」とか「資産買入をこうしろ」という事について数字を挙げて頂きたいと思う訳でして、最後なんですから面白いものをぶっこんで頂きたいと存じます。

ああそれから鈴木審議委員も本日が最終(次は田村さんがSMBCから起用)となりますが、もうこの際有終の美(????)として今のこのヘッポコ政策に対して一発ぶっこんで頂くと大変にビューテホーな感じなのですが、それぶっこむと田村さんがやりにくくなるから最後もシャンシャン決定会合に参加されますかそうですか。


ということで、雑談その3としては今回どの位シャンシャン会合になるのかというのも大変に興味がありまして、何せ前回の決定会合が碌すっぽ議論してねえだろお前らやる気あんのか、という風情を大いに醸し出す終了時間と「主な意見」だった訳で、今回は展望レポートあるからまさか11時半って事はないと思います(議決事項が1本自動的に増えるのでその分時間が掛かる)が、やる気のない時間帯で結果が出るに100ジンバブエドルといった所で、この辺りは日銀のガバナンスがどうなっているのかと小一時間問い詰めたいネタであります。


・・・・・・・うーん今回日銀意地でも何も変えない(コロナオペの中小企業対策云々に関しては予定通り終了ではなくて延長するんでネーノと思っているが延長しなくてもそんなにインプリケーションはありません。ただし今後「経済の先行きが怪しいから政策の修正など以ての外」という屁理屈を繰り出してくる筈なので、その屁理屈を繰り出すときにコロナオペの全面廃止をしてしまうのは矛盾が発生する、という点を重視するアタクシ)と思いますので、そっちの面では無風おぶ無風だし、本当の見どころはその後の欧州米国のスタンスを受けて為替がどうなるか、という事になるので今回は日銀(単にこの日程は審議委員の任期切れのタイミングから逆算して設定しただけなのですが)欧州米国のMPCの前にMPM入れて、しかも次回が9月まで無い、ってのはラッキーでしたね(棒読み)というところです。




〇元々タカ派のジョージ総裁がランボー怒りの正論をぶっこんでいる件の続きでも

昨日の続きですけどね。
https://www.kansascityfed.org/Speeches/documents/8875/2022-George-MidAmericaLabor-07-11.pdf
Tightening Monetary Policy in a Tight Economy
Remarks by
Esther L. George
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Kansas City

本件自体は6月の75bp利上げ反対サイドに回ったお方の話、ということなので目先の現世利益はあんまり無いとは思うのですが、金融政策の正常化着手について早くから発言していた方が、足元の執行部の無節操な利上げペース拡大しかも毎回のFOMCで言ってることをその後平然と上書きしてしまう、という非常に雑なロジックで政策運営をしているのに怒ってランボー怒りの反対をぶっこんできた、というお方な訳でして、このような方の発言をノートしておくことというのは後々どっかで論点として浮上してくる可能性があるので、中銀観察を趣味とする人としては抑えておかないと行けないポイントになる話です。

という大義名分で昨日の続きですが、昨日すっ飛ばした経済と労働市場の状況についての部分をサラサラと確認(というかメモ)しておこうかと思いまして趣味のコーナーですいませんすいません。


『A Tight Economy』って小見出しの部分です。

『Strong demand for goods and services has been outpacing lagging supply for some time, resulting in a tight economy with prices rising as a consequence.』

全体観の部分ではさすがに米国当局の皆様揃って「供給制約のせい」よりも「財やサービスへの強い需要」をメインに持ってきております。そうじゃないと金融引き締め(中立までの利上げの「正常化」とは別のカテゴリーな)をする理由ないですから当たり前ちゃあ当たり前ですけど。

『To be sure, there have been a number of specific shocks, particularly to food and energy prices, that have contributed to the increase in inflation. Disruptions to the global market for crude oil arising from the war in Ukraine, along with a reduction in global refining capacity after the pandemic, have contributed to an almost 50 percent increase in the price of gasoline since the beginning of the year.Meanwhile, the war in Ukraine and poor growing conditions, including in the western portion of the Kansas City Fed’s region, have pushed up global food prices.』

また幾つかのショックも物価上昇に寄与しています。

『However, as you know, today’s high inflation story goes well beyond food and energy prices. Nearly every category tracked in the Fed’s preferred price index for goods and services has recorded increases in recent months, a proportion not seen since the early 1980s.』

ハウエバー、と来まして、色々なショックがあると言ってもそれだけじゃなくて最近数カ月ではブロードベースの物価があがっているわ1980年台初頭以来の出来事ですがな。

『When prices first started to move up in the spring of last year, the increases were most notable among goods. Pandemic spending patterns favored the purchase of home upgrades, including gym equipment and household appliances, over services such as restaurant meals and air travel. More recently, services prices have shown stronger growth, with airfares spiking and rents and housing costs also increasing robustly. 』

物価の上昇の最初は昨年の春からですけど、あの時はコロナ明けの挽回消費っぽい財の価格があがってたのですが、最近はサービス価格が盛大に上がっておりますし、航空運賃とか家賃とかも盛大にあがっております。

『The broad-based nature of inflation suggests that a tight economy is driving price pressures rather than individual supply disruptions and shocks.』

タイトな経済が価格を上昇させているという状態であって、一部の供給制約とか個別のショックとかによる価格上昇じゃないよ。

『Two main factors appear to be contributing to this tightness.』

ほうほう。

『First, as the economy reopened throughout 2021, demand for goods and services surged, supported by a tremendous amount of fiscal and monetary policy support. The federal government has provided about $6 trillion of fiscal stimulus since the start of the pandemic. Monetary policy was also very accommodative, as the Federal Reserve cut interest rates to zero and added over $4 trillion to its balance sheet.』

経済がリオープンした2021年全般に渡って財政政策と金融政策がガバガバだったからです。とちゃっかりと「なんで金融政策の正常化を躊躇してたのか」と言わんばかりの説明をぶっこむ辺りにもランボー怒りのスタンスが垣間見れて味わいが深い。

『A second factor that seems increasingly apparent is long-lasting damage to the supply side of the economy as a result of the pandemic. Even as inflation suggests that the economy is operating far above capacity, the level of real GDP remains 2-1/2 percent below its pre-pandemic trend, a sizable gap equal to almost a full year’s worth of growth.』

ほうほうそうですか、って感じですが、ここで「やっぱり供給制約が効いてるよね」という話になりまして、実質GDPが現状でパンデミック前のトレンドから2.5%ほど低い位置にいるのに、ほぼその位の需給ギャップが経済に発生しているからこんなインフレになっているんですよ、というご認識。

『One explanation for this dynamic is that that the pandemic has affected the long-run productive capacity of the economy by more than anticipated. The pandemic recession was different from most recessions in that the services sector was hit particularly hard. Productive capacity in services appears to have been eliminated quickly during the pandemic, and it has been slow to come back even as demand has returned, pushing up prices. 』

でもってこの供給制約に関しての1つの考察という事で示しているのが「パンデミックによる供給制約はパンデミックによる一時的なものに留まらず、長期化するんでネーノ」って話ですな。


で、次の小見出し『A Tight Labor Market』になだれ込むのでした。

『Another factor holding back supply has been the continuing effect of the pandemic on the labor market.』

さっきの所では供給制約が何で長続きするのか、という点について「サービスセクターの供給キャパシティの戻りに時間が掛かる」という話でしたが、アナザーファクターということで次の小見出しになだれ込みまして、労働市場がタイトですよという話をしております。

『Workers have never experienced a disruption quite like the economic shut down that occurred in March 2020. Within a matter of weeks, 20 million workers lost their jobs and the unemployment rate skyrocketed from historic lows to a post-Depression high. Now, two years later, although the unemployment rate is near its pre-pandemic level of 3-1/2 percent, much has changed.』

『For example, the labor market appears to be much tighter now than it was pre-pandemic. One way to see this is through the Kansas City Fed’s Labor Market Conditions Indicators (LMCI), which take into account a broader range of labor market measures than the unemployment rate alone. These indicators suggest that the labor market is considerably stronger and tighter than it was before the pandemic.2 Both constrained labor supply and exceptionally strong labor demand are shaping this outcome.』

パンデミックで史上最悪レベルで悪化した労働市場は回復してタイトになってますよ、という状況説明。

『The labor force participation rate is still more than 1 percentage point below its prepandemic level, primarily on account of lower participation among older workers, as most othe demographic groups have largely returned to pre-pandemic norms. Some of this decline could be related to early retirement, or perhaps just more persistent retirement, as workers who have left the workforce now appear less likely to return.』

その一方で労働供給が回復しませんよということで、その一因に人口動態や早期退職の動きなどを挙げています。

『On the other side, labor demand is historically strong. Currently, there are about two job openings per unemployed worker, the largest gap in over 20 years, and I hear regularly from my contacts on the difficulty of keeping positions filled.』

一方で労働需要の方はヒストリカリーストロングですよと。

『Some observers have noted that many of these job openings may be irrelevant in measuring the tightness of the labor market since some companies appear to be testing the market rather than actively recruiting employees. If this is true, vacancies could decline to more normal levels without a rise in unemployment.』

『While low recruiting intensity may be part of the story shaping today’s labor market, I am not convinced it is the only one. Sectors with a high number of reported vacancies, such as education and health, are also reporting very solid employment growth, suggesting robust hiring. At the same time, employment in these sectors is still below pre-pandemic levels, implying that many positions remain to be filled.』

でまあこの辺も労働市場の状況の説明なのですが、教育とか医療の分野を例に挙げて、求人需要はやたら多いと言いましても実はそのセクターの雇用者数がパンデミックの前のレベルよりも少ない、というような状況がありますよね、ってな話をしてます。これは求人数で労働市場の強さを見る件に関してのお話ですわな。

『Professional and business services is another sector with a very high number of job openings and a very solid pace of employment growth. Interestingly, job gains in this sector have recently been fueled by growth in temporary help services, perhaps suggesting that employers are finding it difficult to hire in a tight labor market and are substituting toward temps.』

『Another possibility is that businesses are increasingly turning to temp workers because they anticipate that the surge in demand that they are experiencing will be short-lived.』

『These different interpretations of the data underscore the high degree of uncertainty regarding where the labor market will ultimately settle. On the one hand, if labor demand eases and job openings fall, we should expect at least some rise in the unemployment rate.』

『On the other hand, labor supply could increase as pandemic effects wane and the participation rate of older workers rises. All else equal, with more labor supply, the tightness of the labor market could easewithout a substantial fall in labor demand. 』

ええい時間が無くなったので最後は手抜きになってしまいましたが、この辺りは今後労働需給がどう推移するかという話を色々と置きを置いて話をしているというコーナーでして、そのあと昨日ネタにした金融政策の話になります。


・・・・・・ということで、ジョージ総裁の場合は特に供給制約が「構造的なものになっている可能性がある」という部分を強調したお話になっているので、実際問題として考えたらこの人の方がやっぱりタカ派なのですが、そのタカ派の人が無節操な利上げペースのスイングに対して怒っておられる(しかも引き締め方向にスイングしているにも関わらず)というのが味わい深いわ〜と思った、という趣味のコーナーで恐縮至極でありました。







2022/07/20

お題「タカ派だった筈のカンザスシティ連銀ジョージ総裁が今の利上げコミュニケーションに大砲撃をしておる件について」

うーむ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220719/k10013726051000.html
東京都 新型コロナ 新たに1万1018人感染確認 8日連続で1万人超
2022年7月19日 18時20分

夏を前にして増えるって去年もそんな感じでしたっけ(そういやこの時期に2回目接種してクソ暑い中で副反応の熱が出て夏の熱発はキツイと思いました)。

〇タカ派のジョージ総裁も「性急すぎる利上げ」に警鐘とな

先般の75bpに反対したジョージ総裁。元々タカ派なのですが反対というプレイをぶっこんできましたけど、直近でもやっぱりコミュニケーションの問題を指摘していまして、意外に今のFEDってこの視点がないなあと思いながらFOMC前に鑑賞の企画でござる(また先週のネタですいません)。

https://www.kansascityfed.org/Speeches/documents/8875/2022-George-MidAmericaLabor-07-11.pdf
Tightening Monetary Policy in a Tight Economy
Remarks by
Esther L. George
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Kansas City

そんなに長くは無いのだが手抜きマンなので『Monetary Policy Considerations』というそのものずばりの小見出しから鑑賞してみます。

『A Tight Economy』
『A Tight Labor Market』

という小見出しがありまして、そこは手抜きですっ飛ばします、まあお察しの内容でございますので、だいたい皆さんご案内の通りの米国経済情勢を踏まえて、では『Monetary Policy Considerations』はどうなるか、という話が始まりますが。


・今の政策金利水準低すぎ問題に関しては同意なのですが

『The Federal Reserve’s monetary policy cannot, of course, reverse the supply shocks that have boosted inflation. It can, however,moderate the pace of demand growth to narrow imbalances in the economy and reduce price pressures.』

金融政策はサプライショックには対応できません需要をモデレートにすることはできますのでそっちから物価上昇圧力を緩和することはできますよ、と冒頭に入れて来まして、

『By doing so, its actions can also prevent high inflation from becoming embedded in price- and wage-setting behavior.』

FEDのアクションは賃金と物価のスパイラルを防ぐこともできまっせ、となりますが、現状認識としまして

『For many workers, recent wage increases have not kept pace with price inflation. Declining real, or inflationadjusted, wages are not sustainable and could lead workers and businesses to build high inflation into wage contracts, to the long-term detriment of the labor market.』

『Instead, experience has shown that low and stable inflation is most conducive to maintaining a strong labor market that benefits households, workers, and businesses. To promote sustainable growth, monetary policy must therefore take decisive steps to tighten financial conditions and bring inflation down.』

現状の賃金上昇では物価上昇に勝てていないので労働者は一段の賃金上昇を求めることになり、結果として労働市場における賃金の形成が持続可能ではなくなってしまいます。よって低めで安定したインフレーションの状態が最も建設的だよ、ということで、そのために金融引き締めをしてまっせ、ということですが。


・利上げペースに関するコミュニケーションがハチャメチャなのでそれ自体が不確実性になってるのイクナイ

『Since March, the policy rate has increased by 150 basis points, and the process of shrinking the Fed’s large balance sheet began last month. In response to these actions, and with expectations of further rate hikes, broader financial conditions have tightened, with sharp increases across a spectrum of interest rates. With the policy rate still relatively low and a $9 trillion dollar balance sheet in the early stages of shrinking, the case for continuing to remove policy accommodation is clear-cut. The speed at which interest rates should rise, however, is an open question.』

3月以降政策金利を150bp引き上げてFEDのバランスシートの縮小に着手して、この結果および先行きの政策パスの期待からファイナンシャルコンディションはタイト化しました。とは言いましても政策金利はまだ低いし、FEDのバランスシートは9兆ドルもあるので、緩和をリムーブするのは栗化カットに正しいのですが、利上げのスピードについてはオープンクエスチョンでっせ、と早速来ました。

『I’m certainly sympathetic to the view that interest rates need to increase rapidly, recognizing that current rates are out of sync with today’s economic landscape.』

今の金利水準は経済の怪しからん状況に対して低すぎなので早く上げろ、という見解に対しては同意するのですが、そうは言いましても・・・・・・・


『However, I am also mindful of how the rate of change in tightening policy can affect households, businesses, and financial markets particularly during a time of heightened uncertainty.』

『Policy changes transmit to the economy with a lag, and significant and abrupt changes can be unsettling to households and small businesses as they make necessary adjustments. It also has implications for the yield curve and traditional bank lending models, such as those prevalent among community banks.』

この辺は先日のFOMCで反対した理由として出したステートメントhttps://www.kansascityfed.org/News/documents/8855/George-Statement-FOMC-06-17-2022.pdfにあったのと同じ話でして、このステートメントに関してはアタクシの6月27日(エライ出遅れておりますが)に書いた駄文で拙訳をしております。その時と同じでして、政策金利の変更というのは、家計や企業、金融機関の貸出態度などにもラグを持って影響をあたえるものだし、特に地域金融機関の貸出には影響を与えます、とありまして、

『For these reasons, several considerations influence my own thinking about the appropriate path for policy.』

先般のステートメントの時にはこの先の部分が無かった(入れたらクソ長くなるからでしょうな、ステートメント自体は1枚紙でしたので)のですが、さてその理由とは何ぞやという話。

『First, communicating the path for interest rates is likely far more consequential than the speed with which we get there.』

最初からいきなり執行部に無慈悲な砲撃キタコレでありますが、「政策金利のパスに対するコミュニケーションは、政策金利の引き上げの速度なんかよりも物凄い勢いで重要なのではないでしょうか」と、コロコロと政策金利へのコミュニケーションを変えることに関して執行部を火の海にする勢いで砲撃を開始しました!!!

『Moving interest rates too fast raises the prospect of oversteering. It is notable that even before the March increase in the target range for the federal funds rate, Treasury yields had already moved up significantly and financial conditions were tightening, as expectations were building for significant adjustments in monetary policy. And indeed, the adjustment has been significant. This is already a historically swift pace of rate increases for households and businesses to adapt to, and more abrupt changes in interest rates could create strains, either in the economy or financial markets, that would undermine the Fed’s ability to deliver on the higher path of rates communicated.』

利上げ着手してからの利上げ速度が無茶苦茶早くて、市場でも今後の更なるタイト化を予想しているんですけど、これだけの急激なタイト化は企業などがその動きに合わせるのも難しくなるし、さらに金融市場に一段の利上げをコミュニケートするのが難しくなる、と来ましてこの次が首がもげるほど同意なんですけど、

『Along these lines, I find it remarkable that just four months after beginning to raise rates, there is growing discussion of recession risk, and some forecasts are predicting interest rate cuts as soon as next year. Such projections suggest to me that a rapid pace of rate increases brings about the risk of tightening policy more quickly than the economy and markets can adjust. 』

3月以来の利上げによって、「リセッション」が話題になり、来年の早い時期には利下げが開始される、というような見方が広まっていることは、速すぎる政策金利の引き上げペースに経済や市場がアジャストできなくなる、という示唆を与えている、と考えられます。

ということで、そもそも市場が「リセッション」だの「来年には利下げですよ(まあ来年じゃなくて再来年という方が普通かもしれんが)」とか言い出すのは、利上げペースが速すぎで経済が持たんと市場に言われているんだし、そもそもそれはFEDの先行き金融政策パスが無茶(無茶じゃない利上げだったらあっという間に利下げに転じる、という予想にならんわな)だと市場から言われてるんだからちったあ考えろやこのデコスケ、と執行部に砲撃している訳ですが、確かに市場がFEDの失敗を織り込んで価格推移しちゃうと、逆に長期金利とか上がらなくなる(と米国の場合は金融環境にモロに効くっしょ)ので、だんだん何のために利上げするんだかよくわからなくなってしまう訳でして、これはご指摘ご尤もとしか申し上げようがない。


・そもそも利上げの消費や住宅投資などに与える影響が従来と異なるのではなかろうかという論点

『Second, in addition to the oft-cited long and variable lags, the transmission of higher policy rates and the associated tightening in financial conditions to spending, employment, and inflation is subject to considerable uncertainty.』

金利引き上げと金融環境のタイト化が消費や雇用、そしてインフレに与える影響はそもそも長期的で可変のラグがある上に、顕著な不確実性がある、と来てそれは何ですねんという話なのですが、

『For example, the shift in spending away from services to housing and durable goods during the pandemic may make the economy more sensitive to higher interest rates.』

パンデミックの勘に住宅や耐久財などへの消費からの逃避が起きた訳ですが、このことは経済が金利の上昇に対して以前よりセンシティブになっている(戻ろうと思ったら金利が上がって結局住宅やら耐久財への投資が進まん、ということですかね)可能性。

『Another possibility is that the significant accumulation of liquid savings during the pandemic will dampen the effects of higher interest rates on spending and ultimately inflation.』

パンデミックの間に貯蓄が増大しましたが、これによって金利の上昇が消費そして究極的には物価に与える影響を弱める可能性がある(貯蓄が増えたので金利高で家計の利息収入が上がって消費のキャパシティが逆に増えてしまう、って意味だと思います)。

『Given this range of outcomes, it is unclear just how high rates will need to move in order to bring inflation down.』

そのような諸々の要因もあるので、バカスカ利上げしたからと言ってインフレが下がるのかというとその程度は不透明なんじゃネーノ。、

『These dynamics suggest it will be particularly important to observe how the economy is adapting to changes in monetary policy』

ということで、インフレが下がらんからバカスカ利上げするんじゃなくて、経済全体が利上げに耐えられているのか、というのを見ることが重要ではないか、というタカ派の筈の方とは思えないこの説明なのですが、言ってることは仰せ御尤もでして、今のFOMCというか執行部が、「インフレ退治大正義」の「政治的要求」に乗り過ぎてしまってタカ派もドン引き、という前のめり状態になっている、ということをこのジョージさんの説明は示唆しているように見えますがどうでしょうか(個人の感想です)。


・バランスシート正常化を行うことが重要で性急な利上げはそれを阻害する、という興味深い論点

『Finally, the pace of increases in the federal funds rate could have implications for balance sheet runoff.』

利上げのペースはバランスシートのランオフにもインプリケーションがある、とは何そ?

『The economy is in unfamiliar territory, with a combination of high inflation and tight labor markets not witnessed in decades.』

今の経済は今までにない「高インフレとタイトな労働市場」という組み合わせになっております(という話は前段でしているのですが本日は引用パスね)。

『Therefore, markets are understandably volatile as they grapple with the many unknowns surrounding the outlook for the economy and the path of policy.』

よって金融市場も今までにない経済に直面して、わけワカランチ会長な中で動く上に、先行きの経済見通しに加えて政策金利パスまで不確定要素になってボラタイルな動きになっております。という辺りで話の筋が読めて来ましたな。

『Limiting the extent to which uncertainty about the pace of interest rate adjustments contributes to this volatility could be important especially as balance sheet runoff gets underway.』

ということで、政策金利調整のパスについての不確実性を少なくするのは、今まさにバランスシートのランオフを行っている(さっきの方に「まだ初期段階」とありましたね)中では特に重要です、と来ました。

『Certainly, relative to the last time balance sheet reduction was initiated in 2017, market conditions are considerably more unsettled. To the extent that the current strains in the Treasury market can be attributed in part to heightened uncertainty about the path of policy rates, a steady path of rate increases, and predictably adjusting this path to incoming data, could improve market functioning and facilitate balance sheet runoff, especially as the pace of runoff accelerates later this year.3』

2017年にランオフ着手した時と比べて、米国の市場環境は大幅に不安定になっています(実際に最近の価格のすっ飛び方とかこれが世界最大の流動性を誇る米国国債市場かよ、って言いたくなりますのでご指摘ご尤もすぎる)。今の米国国債市場における緊張状態というのは、その要因の一部に政策金利パスの不透明感というのがあります。

従って着実な政策金利引き上げパスを示し、データによってパスを変更するにしても市場が予想可能な形での変更を行う(ってこれ明らかに前回の「直前になって突如75bp利上げを織り込ませに行って強引に75bp利上げを行った」というジョージ総裁ランボー怒りの反対票をぶっこんだ6月FOMCの決定に対するイカリソース状態を発しているのが良く分かりますな)ことによって、金融市場の機能を改善し、バランスシートのランオフを円滑に進めることができ、ひいては今年後半にはランオフの速度を上げることにも寄与するんじゃないでしょうか、と中々御尤もな説明をしております。

『Making significant progress in reducing the balance sheet over the coming years will be important in my view.』

ここからが最後のパラになりますが、何でさっきのような話をしたかというと、ジョージ総裁はバランスシートの正常化を重視しているからですね。

『After amassing more than $4.5 trillion in assets since early 2020, the Federal Reserve’s outsized presence in financial markets can distort the price of duration and artificially flattens the yield curve.』

これはどっかのポンコツ中銀に百回読ませたい、と思ったのですがよく考えたらポンコツはYCCやってるから「Federal Reserve’s outsized presence in financial markets can distort the price of duration and artificially flattens the yield curve」とか言っても「YCCやってるんですから当たり前ですが何か?」と言われるんでした残念無念。

『Unwinding the balance sheet should reduce this distortion and has the potential to steepen the yield curve, depending on the pace of increases in the funds rate.』

なんというイイハナシダナーの世界と泣きそうになりますが、バランスシートの正常化を進めることによって、米国債券市場におけるこのような「歪み」を減らしていくことができますし、それによってイールドカーブのスティープ化も進むでしょう、と来てからの、

『Raising short-term rates much faster than longer-term rates could further invert the yield curve and challenge traditional bank lending models as a consequence. To the extent an inverted yield curve has historically preceded recessions in the United States, such a scenario could pose yet another challenge to achieving a significant reduction in the balance sheet.』

(FEDの巨大なトレジャリー保有バランスシートを放置して)利上げを更にバカスカ行うことは、イールドカーブをインバートさせる結果に繋がり、それは伝統的な銀行の貸出モデルに対して悪影響を与えます、とかこれは全米のコミュニティバンクが泣いた!といったお話をしまして、しかもリセッション懸念とか起きるとバランスシートの正常化プロセスにも悪影響を与えるからイクナイ!となるほどすっかりスルー気味だけどバランスシートの正常化という大事な論点でも突っ込んできているのか、と色々と興味深い視点で突っ込んできているな、と思いました。

他の部分は時間もないしめんどいのでパスしますが、まあ興味のあるかたは全文をどぞ。









2022/07/19

お題「ブラード総裁7月0.75%利上げを支持するけど年末のFFは3.5%で十分にインフレ抑制可能との立場」

https://www.boj.or.jp/about/recruit/index.htm/
インターンシップの募集情報

インターンシップの募集情報
掲載日         件名
2022年 7月15日 インターンシップの募集について(総合職)
2022年 7月15日 インターンシップの募集について(特定職<業務分野特定タイプ>)
2022年 7月15日 インターンシップの募集について(特定職<専門分野特定タイプ・システムエンジニア>)

毎年お馴染みのこれである。総合職の金融政策に興味があるからと言って「9階のポンコツ」などとうっかり発言すると色々とヤバいと思うので(いわねーよ)その辺は注意しましょう(^^)。


〇日経新聞でインタビューしてた変態仮面の記事があっただよ(日経アジア)

https://asia.nikkei.com/Editor-s-Picks/Interview/St.-Louis-Fed-president-favors-75-basis-point-rate-hike
INTERVIEW
St. Louis Fed president favors 75 basis point rate hike
Jim Bullard sees inflation slowing in 2023, not in favor of raising by full 1%

『MASAHIRO OKOSHI, Nikkei Washington bureau chief and KOSUKE TAKAMI, Nikkei staff writer
July 14, 2022 23:58 JST』

この記事自体は無課金おじさんのアタクシでも全文読めるのですが、もしかしたら新規に訪問した人だから読めるとかそういう諸葛孔明の罠かあるのかも知れなくて(サイトの造り込みはCNBCに似てて、CNBCだと基本的にネットに乗せてるのはタダで全文読めます、でももっと高度な記事や高度な解説読みたい人は会員になりましょう、みたいなアレだった筈)、一見様だから無料、な記事をバカスカ引用する可能性があるので最初の方だけちょろっとやりますけど。(まあ最初の方ちょろっとなら勘弁してつかあさい)

なお、このNIKKEI ASIAですが、今申し上げましたようにCNBCとかその辺と同じような構成になっているので正直日経本紙のサイトよりもこっちの方が慣れてます(個人の感想です)。


『WASHINGTON -- St. Louis Federal Reserve president Jim Bullard says he will be in favor of raising the policy interest rate by 75 basis points at the Federal Open Market Committee (FOMC) to be held on July 26 and July 27.

The inflation rate for June in the U.S. surged by 9.1%, hitting a new 41-year high.

Bullard, in an interview with Nikkei on Wednesday, said that although inflation has not peaked, he expects it to slow down in 2023 -- and he does not support raising the policy interest rate by 100 basis points for now.

Edited excerpts of the interview follow.』

インフレはピークを打っていないとの見方だが7月100bp利上げは支持していない。とはどういう判じ物かという話ですが、これがまあ最初の方にちょっとあるのですな。詳しく読みたい方は上記URL先の「日経アジア」記事にご訪問ありたし。

ということで大変に恐縮ですがインタビュー(割と長い)の冒頭部分だけ引用させて頂きます。


・今年中に政策金利は中立水準またはそれ以上に引き上げ

『Q: The June headline consumer price index in the U.S. rose 9.1% on a year-on-year basis. And the core rose 5.9%. And the labor market is also very tight. 』

と質問というよりマクラですな。6月の経済指標が強かったですね、から始まる。

『A: I think it sounds like the CPI report came in hotter than expected, although I just barely saw the numbers. But it sounds like both headline and core were higher than what financial markets were expecting. I think this ratifies the Fed strategy of moving expeditiously to neutral and beyond neutral, as we move through this year.』

今年中に政策金利を中立またはそれ以上に引き上げていかなければいけないことがコンファームされましたな。

『I think we've mapped out a strategy that will contain inflation and move us back toward 2%, but we do have to move quickly, and we are moving quickly, faster than our tightening cycle in 1994, which I think is appropriate, because we have a lot more inflation than we had in 1994, and so I think that this shows that the Fed's got the right strategy here for the funds rate.』

ここでのポイントは1994年の利上げペースよりも早く引き締めを行うべき、という所でしょうか。まあ既にスピード自体はかなり速まっているのですが、ゆうてまだ中立金利に達している訳ではないですからぬ。


・今回75bp利上げして年末までにその後100bp上げれば十分でしょという考え

『Q: Is a 75 basis point rate hike appropriate, or do you have the option of a 100 basis point rate hike?』

75or100の質問になっとるな。

『A: So far, we've framed this mostly as 50 versus 75 at this meeting. I think 75 has a lot of virtue to it, because the long run neutral that the committee has, according to the Summary of Economic Projections, is actually about 2.5%.』

ここで変態仮面、しれっと「今回の会合ではそもそも50bp利上げか75bp利上げか、という話をしておるんだが」とぶっこんでおりまして、そもそも100というのが当初の話では全然考えて無かったという事をゲロっておられまして、ここで100を織り込ませに行くというプレイがでるようですと、基本的にはそれ執行部の先走りって感じなんでしょうかね。と思いましたがよくわかりませんこの辺は。

ただ、「SEPによれば中立金利は2.5%くらいでネーノ」(なおブラードさんはSEPのドットチャートでロンガーランのレートはだしていない人)と思うので、75利上げの方がエエンデネエノという話、

『If we made this move at this meeting, that would get us all the way till the long run neutral value. And obviously we've got more steps to take in meetings ahead, but we can assess as we go through the rest of this year.』

『I've said it would be a good idea to get to 3.5% this year, and that would put downward pressure on inflation. A lot of that's already been priced into markets, so we've already got the market pricing that we need.』

『I think we're on a good pace, for now.』

今回75に引き上げるとFF誘導金利が2.25%-2.50%になるので、概ね政策金利が中立金利に近いこ所になる。でもってあとは年内100bp引き上げて(7月が終わると残りは年3回)年末のFFが3.5%になる感じでよろしいのではないでしょうか。だそうですので、実はタカ派の方が市場のFF予想よりも穏当だったりします。

というか市場は「年末までに思いっきり上げるのでその結果リセッションになるで」相場をやっておるわけで、それはそれで何ちゅうか極端なムーブじゃないのと思う次第で、変態仮面の思し召し通りになるのも何かアレではあるけど、ただまあこんなもんでネーノって希ガス。


・年末4%は可能性としてあるけど「年末3%でも既にかなりアグレッシブ」と9月以降の利上げスローダウンを示唆

『Q: Do you think there is a possibility of the federal fund rate exceeding 4% by the end of this year?』

4%どころか「exceeding 4%」かよ!!!!!って感じですが。

『A: I suppose it's possible. I think that the 3.5% is already pretty aggressive. We're moving pretty quickly. And, like I say, a lot of the market pricing is already reflecting that.

If data came in, continued to come in, in an adverse way, for the committee, then we could consider doing more, as we go through the fall here. So, I'd say it's a possibility.』

このように「既に3.5%でもかなりアグレッシブ(the 3.5% is already pretty aggressive)」とゆうとる訳で、勿論データ次第では、ということですが、3.5%水準んに政策金利を上げてしまえば物価の沈静化は行くで、と思っているブラード変態仮面先生なので、「そらまあインフレが思いっきり上振れれば可能性はありますなあ」とは言ってるけど、この流れでの「可能性はある」はあんまりブラードさんの中では実現性が低いとみているように思えます。


・インフレはピークを打ったか

ちょっと途中をすっ飛ばしてこの質疑だけネタにしますね。

『Q: Do you think inflation has peaked?』

インフレはピークを打ちましたか??というど直球な質問。

『A: We've been looking for that for the last several months. It doesn't seem to have happened yet.』

と、まず出だしでピーク打ってない、と明言した後その理由についてこう説明しています。

『I mean, one of the problems in 2022 has been that instead of fading, inflation has been broadening out to more and more goods and services, and to factors that are, tend to be more persistent, such as rents. Rent price inflation has been on the rise. And those things tend to take a while to turn around.』

財だけではなくサービス価格も含めた広範な物価上昇が起きている事、レントの価格が上昇している事などの持続性のある上昇が起きており、今回のインフレはターンアラウンドするのにいましばらく時間が掛かるでしょう、ときました。

『I'm not sure exactly when we're going to peak here. But I do think that we are going to start a disinflationary process soon, again, partly because the supply factors are going to fade and because the Fed has switched policies rather abruptly here and started to put downward pressure on inflation, and because the market pricing is already reflecting the tighter Fed policy, even ahead of the actual moves by the committee.』

これはまだネタにしてないのですが。変態仮面先生、ここにある回答「I do think that we are going to start a disinflationary process soon.」って話もぶち込んでおりまして、

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2022/the-first-steps-toward-disinflation-us-little-rock
“The First Steps Toward Disinflation in the U.S.” (Presented in Little Rock, Ark.)
July 7, 2022
Presentation (PDF) | Press Release | Photos

こちらのパワーポイント紙芝居(のPDF)が割と勿体ぶってないので絵を見れば大体話の筋は読めるのですが、ディスインフレーションと言ってもデフレ復活みたいな意味ではなくて、インフレレジームから通常レジームに戻る、という説明ではあるのですが、供給制約などの一連の問題がピークアウトする中で、FEDがしっかりとFF金利を引き締め的(と言ってもブラード的には3.5%で十分なのであってそれ以上上げる必要も無かバイって感じのようでございますな。

PDFはURLがアホのように長いのでこの文字列にそのままリンク貼ると画面乱れると思うので下記URL先のリンクは文字列の途中までに入れます。
https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/files/pdfs/bullard/remarks/2022/jul/bullard-littlerockregionalchamber-07-jul-2022.pdf
The First Steps Toward Disinflation
in the U.S.
Power Up Little Rock: U.S. Economy and Monetary Policy
Little Rock Regional Chamber
July 7, 2022
Little Rock, Ark


ということで、「インフレはピークを打ったわけではない」けれども、「中立金利よりも1%程度の金利水準においておけば基本的には物価が落ち着いてくるはずだよ」ということで、インフレ成敗の為にガッツンガッツンに利上げしろと言ってる訳でもないですね。

前回(元々タカ派の)ジョージ総裁が「利上げペースを早い段階で変えてしまうのイクナイ!」と反対しましたが、これ100bp(さすがに何となく今回は75bpで行きそうには見えますけど)とか言い出したらブラードも反対に回ったりすると熱いな。


・早期に引き締めサイクルを早めているのでインフレはアンダーコントロールに戻ってボルカーショックのようなことにはならん

『Q: The core inflation figure is stronger than we expected. So, there is a little bit of worry that the high prices will continue for a while.』

コアCPIが強かったけど今後も物価が上がるという懸念についてどうでしょう?という質問のどこがツボにはまったのかブラード先生長めのご回答。

『A: I think this shows the fact that the Fed has been very aggressive during the second quarter here is warranted by this kind of data. We've done a lot of things to move to a tighter policy.』

政策の引き締めということでこれまで色々と実施したことが適切な措置であったことがこの物価推移で示された。ときやがりまして、

『We've ended our balance sheet expansion and started to allow passive runoff of the balance sheet. That runoff is going to be about twice as fast as it was the last time that we did balance sheet runoff.』

『Then we raised the policy rate in March and in May and in June, and by increasing amounts at those three meetings, to the point where we made a 75 basis point move in June, that's the first one since 1994. And, as of today, I would advocate 75 basis points again at the next meeting, so that would be unprecedented that we've gone with that large a move in two consecutive meetings.』

この辺は今までに実施した引き締めサイクル中の措置。

『But I think that's all appropriate, because we have to get downward pressure on inflation very rapidly. And I think if we front-load our policy, this will put downward pressure on inflation, and we'll be able to contain inflation much more quickly than we were able to in the 1970s.』

どこがどうフロントロードだったのかと小一時間問い詰めたいのですが、「我々がフロントロードに従来にない速さで金融引き締めを行わなかったら、物価はもっとエライコッチャになっていたでしょう」と仮定法過去形でご説明してて、いやお前らどうみてもビハインド・ザ・カーブでねえの思うのだが、謎の自画自賛により「今回の物価上昇は1970年台のようにはならない」だそうです。

『In the '70s, the inflation problem lingered on for 10 years and we had several recessions in the middle of the inflation problem. So, I think now we have more credibility, we're moving faster, we'll be able to bring inflation under control sooner and with less disruption to the economy than we had in the '70s.』

とまあそういうことなので、70年代のようにインフレの問題がずーっと続いて、仕方ないので金融引き締めしてリセッション、というのを繰り返すような事は無い、だそうです。まあホンマカイナという感じはしますけど。


・市場が織り込んでいる「リセッション」については懐疑的だよ

あと、変態仮面こんなのもあるのですが、これは動画でオシャベリしている動画サイトが貼ってありまして、さすがにこれまではちょっと見て無いのですが、説明書きの方は上記日経アジアの記事での内容とだいたい同じ(そら話してるタイミングほぼ同じなんだから当たり前だが)だと思われます。

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2022/bullard-policy-rate-increases-us-recession-predictions
Bullard Discusses Policy Rate Increases and His Views of U.S. Recession Predictions
July 15, 2022

下の方に動画のリンクがあると思うのですが(サムネ付き)、見た瞬間に1時間という表示に萎えたので、上記紹介文の頭のところだけ引用しますと、

『St. Louis Fed President Jim Bullard talked about his preferences for raising the policy rate and his views of recession predictions in remarks during a European Economics and Financial Centre virtual discussion.』

『Bullard said the U.S. economy continues to do very well and that the country has created about 2.7 million jobs in the first six months of the year, “an outstanding number even for a full year.”』

『Although financial markets have been predicting a U.S. recession next year, Bullard said he is “a little skeptical that we’ll get to a recession.” The U.S. economy is slowing, but it’s slowing to a trend pace of growth from a very rapid pace in 2021, he said.』

ということで、市場の見ている「米国リセッション相場」はんなこたあない、と仰せですな。


んな訳で今朝は変態仮面の鑑賞(何だか書いてて胡散臭さがw)でした。





2022/07/15

お題「ウォーラー理事が7月75bpが適切という話をしてたので講演を寝起きで鑑賞(ただし政策金利のパートのみ)」

あらあらまあまあ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220714/k10013717341000.html
新型コロナ 都の専門家「1週間後には経験のない爆発的な感染」
2022年7月14日 16時51分

・・・・・・なんかヤバいと言っているのは分かるのだが、「経験のない爆発的な感染」みたいな謎の定性的な表現が食傷モードでして、ボジョレーヌーボーの宣伝文句かよと思ってしまってどうもこう説得力が。

#と言って数字で出して外すとオオカミ少年って言われるから嫌なんでしょうけど


〇100の地均しぶっこみに行くのかと思ったら案外冷静モード(か?)

ほうほうこれはこれは
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-idJPL6N2YV0C3?il=0
2022年7月15日5:04 午前
WRAPUP 1-米FRBタカ派当局者2人、75bp利上げ支持 市場で100bp観測後退

『[14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のタカ派として知られるウォラー理事とセントルイス地区連銀のブラード総裁が14日、今月の会合で予想される利上げ幅について、75ベーシスポイント(bp)を支持すると表明した。これを受け、前日発表の6月の消費者物価指数(CPI)を反映して金融市場で台頭していた100bpの利上げ観測が後退した。』(上記URL先より)

7月にドカンと中立金利以上にぶち上げて「中立以上まで上げたのでここからは様子を見て調整していく」と言った方が理論的(というか何というか)にはスマート(フォワードルッキングっぽくなるから)に見えるような気がするんですが、まあそこまでヤンチャは出来ないというのと、もしかしてこの前のジョージさんの75反対もそうなんですけど、あまりにも行き当たりばったりにやるのイクナイというのとか、あとはリセッショントレードになって長期金利下がってしまうと、何のことない引き締め効果が出ない説もあるように思えますし、中途半端に利上げ幅を逐次投入みたいな拡大するのもねえという所でしょうか。


ということで変態仮面はさておきまして(日経のインタビューらしいから本紙に出てるんでネーノと思うが日経に課金しないおじさんなので見れないアタクシ)、ウォーラー理事の講演はFRBのサイトに載っているので早速見てみようではないですか。


https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20220714a.htm
July 14, 2022
Monetary Policy in a World of Conflicting Data
Governor Christopher J. Waller
At Rocky Mountain Economic Summit Global Interdependence Center, Victor, Idaho

なんかリゾート感溢れるエコノミックサミットだなオイ、と思いますが細かい事はキニシナイ。

・リセッションをしてでもインフレ抑制、という風味は出さないように話をしておる

最初のマクラの部分の途中から参ります。

『We must be focused on reducing inflation because, despite a lot of talk about recession lately, the evidence from the labor market indicates the economy is on track, while inflation continues to be far too high.』

とまあぶっこんでおりまして、労働市場から得られるエビデンスはインフレが怪しからん水準で高い状態が継続する中においても経済がオントラックで推移している事を示唆している、なので最近リセッショントークおおいけどワシらはインフレ抑制をするのが大正義、とまあそういう話をしております。

本編の方でも経済の話当然あるので、そっちでどんな話をしているのかというのは(寝起きで目を泳がせてから早速ネタとして食いついただけに)きちんと読み込めてなくて恐縮なのですが、この「物価安定のためにリセッションも辞さす、ではありませんよ間違えないで下さいね」という趣旨の話はFEDの皆さんだいたいその線で打ち込んで来る感じですよね。まあ実際にどうなるかは別問題として。


・インフレ成敗大正義の話については従来よりも若干トーンが上がっている感じはする

『It must be our focus because high inflation is the biggest challenge to sustaining our employment goal, and the greatest burden for individuals and families, especially lower- and moderate-income households that dedicate a larger share of their spending to necessities.』

これはいつもの「インフレは社会的弱者にとってより厳しいので是正しないと行けない」ですけど、今回ほほーと思ったのは「the greatest burden for individuals and families, especially lower- and moderate-income households that dedicate a larger share of their spending to necessities.」の中に今までだと基本的に「lower income households」に厳しいよねという言い方が主だった所に、ウォーラーさん「moderate income」な家計も加えていて、まあそんだけインフレの悪影響が広範囲に出ている、という認識をしめしているのですが、アタクシ米国事情に詳しいわけでもないっすからよー知らんですが、インフレ止められないFEDは地獄に落ちやがれみたいな風当たりが更に強くなっているのかなーってのを思いました。

『Inflation has to be our focus, every meeting and every day, because the spending and pricing decisions people and businesses make every day depend on their expectations of future inflation, which in turn depend on whether they believe the Fed is sufficiently committed to its inflation target.』

インフレ退治大正義、という話をこれでもかと行っておりますな、ナムナム。で次のパラがマクラ部分のラストで、これが終わると本編になります。

『So let me be clear: I am going to vote to set policy in a manner that will reduce inflation and achieve our price stability goal, and today I will explain why I don't see that progress conflicting with our maximum-employment goal. Let me start with my view of the labor market and inflation, then turn to the implications for monetary policy, and conclude with where I think the economy is headed.』

インフレ抑制を重視して政策決定をしておる(雇用は二の次)、という今のワイのスタンスの背景を説明しまっせ、というお話です。


でもって本編に入るのですが、小見出しを見ますとこんな構成になっています。

A Puzzle: Very Tight Labor Market but Declining GDP(ここの説明が割と長い)
Persistently High Inflation(上の小見出しほど長くなくてあっさり味)
The Path of Monetary Policy(そこそこ書いてある)
Evolution of the Economy(これはまとめっぽい感じ)

ということで、たぶん今回のキモというか、ウォーラー理事の見立てのバックグラウンドは最初の「A Puzzle: Very Tight Labor Market but Declining GDP」を見た方が良いようには思えるのですが、そこは毎度の如く現世利益重視の目先ネタに釣られクマーなアタクシですので(サーセン)、当然のように「The Path of Monetary Policy」に食いついて何とかお時間までにそこは読み終えようかと存じます。


・どうも今の物価はアンダーコントロールではない状態なのでコントロールをトリモロス必要があるようですね

『So, based on persistently high inflation and the very tight labor market that I have described, let's talk about the implications for monetary policy.』

スイマセンがこの「persistently high inflation and the very tight labor market」に関する前2個の小見出しのところまで今朝は読み切れると思えないのでご興味のある方は講演テキスト見てちょ、なのですが、いずれにしましても持続的な高インフレととってもタイトな労働市場、というのが現在の米国の経済なんだそうです。

『Since March, the FOMC has raised the federal funds rate three times for a cumulative 150 basis points. This is the fastest pace of tightening in close to 30 years. At our last meeting, we raised the policy rate by 75 basis points, which is a large move by historical standards.』

3月から1.5%利上げしましたよーという話で、直近では何と75bpという過去の標準以上の利上げをしましたが・・・・

『That size increase was not an over-reaction to one data point on inflation-it was primarily the response to a sequence of excessively high inflation readings since the beginning of the year. It was appropriate given the lack of progress on inflation and clearly signals the FOMC's commitment to get inflation under control as soon as possible.』

これは過剰反応ではない(キリッ)だそうですが、この75bpの利上げは「clearly signals the FOMC's commitment to get inflation under control as soon as possible」って言ってるので、今はアンダーコントロールじゃないって言ってる訳で中々素直でよろしい。


・今の引き締めサイクルはフロントロードで行っており皆様の信認を引き続き受けているという大本営臭の漂う説明

『The response of financial markets to the FOMC's policy actions and communications indicate to me that the Committee retains the credibility and the public confidence that is needed to make monetary policy effective.』

政策決定に対する金融市場の反応をみるとFOMCは金融政策が有効に機能するために必要な信認を維持している、ってホンマカイナ感が甚だするのですが、まあそういう事を仰せですわ。

『Longer-term interest rates have moved up to levels not far from those reflected in Committee members' estimates of the final destination for the federal funds rate in this tightening cycle, effectively implementing policy ahead of time.』

長期金利の推移は今回想定される今後の引き締めサイクルにおける最終的な金利よりもそんなに遠くない水準まで上昇しておる、とのご認識。

『The average rate for a 30-year conforming fixed rate home mortgage has increased by more than two percentage points since the end of 2021. While there is some slowdown in home sales, lenders and borrowers are still doing business at these rates, which indicates that they believe the FOMC's policy intentions are credible, as broadly reflected in the interest rate paths in the Summary of Economic Projections (SEP).』

そしてここでモーゲージ金利の話をして、この金利が上昇したので住宅市場の過熱がいくぶん沈静化しましたね、という認識をしれっと入れ込んでいるのも味わいがある。

『As I have said before, with inflation so high, there is a virtue in front-loading tightening so that policy moves as soon as is practical to a setting that restricts demand. Getting there sooner will bolster the public's confidence that we can get inflation down and it will preserve options for adjusting the pace of tightening later if needed.』

「there is a virtue in front-loading tightening」って仰せですがどう見てもビハインド・ザ・カーブな上にバックワードルッキングな引き締めに入っているようにしか見えませんが、まあそういう政策を取っているから皆様の信認と共に高インフレを抑制して行けますし、そのためには必要に応じて引き締めペースの調整をします、と来ました。そして75bp発言が次に来る。


・7月の利上げは75bpが適切キタコレ!

『With this view, it should not be surprising that looking toward the FOMC's next meeting July 26-27, and with the CPI data in hand, I support another 75-basis point increase, bringing the target range for the federal funds rate to 2-1/4 to 2-1/2 percent before August. 』

7月75bpでFF金利水準を2.25%〜2.50%にするのが適切である。と来ました。

『I judge that level is close to neutral, by which I mean a level that neither stimulates nor restricts demand, assuming that the economy is growing moderately (at its potential) and unemployment is roughly where it is now.』

これは(ネタにはしませんしそもそも読んでませんが)さっきのロイターさんの記事で触れられていた変態仮面の主張と同じで、要は今回中立金利まで引き上げればよかバイだし、それ以上上げてしまう必要もなかろう、って趣旨になりますな。

『However, my base case for July depends on incoming data.』

とは言いましてもハウエバーな訳ですけど、7月75bpでエエンデネエノというワシの主張は今後の経済指標でひっくり返るかもしれませんで、と留保は入れてるんですが、FOMCまで実質10日なのに「depends on incoming data」ってなんのデータやねんと思いますとちゃんと説明はあって、

『We have important data releases on retail sales and housing coming in before the July meeting.』

小売売上と住宅販売が重要なんですと。

『If that data come in materially stronger than expected it would make me lean towards a larger hike at the July meeting to the extent it shows demand is not slowing down fast enough to get inflation down.』

これらのデータが想定越えてビックリするほど強かった場合(materially stronger than expected)はもっと利上げの幅を拡大すべき(つまり100bp)と考えを改めるそうです。


・7月に中立金利に引き上げたあとの話ですが引き締め水準に持って行くのは順当として・・・・・・・・

『Based on what we know about inflation today, I expect that further increases in the target range will be needed to make monetary policy restrictive, but that will depend on economic data in the coming weeks and months. 』

7月以降の話ですね。その後は引き締め水準に持って行くのが適切だけど、その点については今後の指標次第。

『Between the end of July and the FOMC's September meeting, we will get two employment and CPI reports with data for July and August. I will be looking for signs that inflation has started its move down toward our 2 percent target on a sustained basis.』

9月FOMCまで2回の雇用統計とCPIがあるのでそこで物価が下がって来るかどうかをみたい。

『I anticipate a decline in inflation will come as actual and anticipated hikes by the FOMC cool demand for products and labor, which will help demand and supply come into a better balance. The decline in the rate of inflation will also be assisted by continued improvement in goods supply bottlenecks, which is occurring in some sectors, and an increase in labor force participation, which is still significantly lower than it was before the pandemic. I hope these supply recoveries happen, but my expectations for policy don't rely on it. I expect rate increases will continue after July at a pace that is dependent on the incoming data.』

実際のFEDの利上げと今後の金利パスへの予想によって、金利が引き締め的になることによって過剰需要が沈静化して、需給バランスが改善すること。それから相変わらず続いている供給のボトルネックが解消に向かうことによる供給制約の改善。を今後の物価上昇ペースの下げのファクターとして期待しているようです。

『After the July meeting, further increases will be restricting demand. Looking further in the future, I will need to see how the tightening this year is affecting the economy and bringing inflation down toward our 2 percent target.』

9月以降の利上げは需要を抑制する(=中立金利よりも高い水準になるから)ことになるので、今年のタイトニングによって経済に今後影響を与えて、物価2%目標に向けた落ち着きを取り戻すことに寄与するでしょう、と来まして、


・コアPCEが「significant moderation」するまでは利上げを継続すべき

『Based on my forecast for the economy, I expect monetary policy to be restrictive until there has been a sustained reduction in core personal consumption expenditure (PCE) inflation, which excludes food and energy. Food and energy prices tend to be volatile, so focusing on core PCE inflation is a good guide to inflation pressures in the near and medium term. 』

引き締め領域に入ったあとはコアPCEに注目します、だそうです。

『Importantly, as futures prices for commodities-food, energy, raw materials-have declined recently, I am expecting total PCE inflation to decline in coming months. But until I see a significant moderation in core prices, I support further rate hikes.』

最近は食品、エネルギー、素材などの先物価格が下がってきておりますので、総合のPCEは今後数か月で弱まることを想定していますが、「until I see a significant moderation in core prices, I support further rate hikes.」と来ましたのでやっぱりタカなのはタカ。


・今回75bp利上げで中立金利ですよというお話

『In talking about where monetary policy is headed, it is helpful to get a fix on where it is right now. I mentioned the concept of a "neutral" interest rate, and the belief that the federal funds rate will be close to neutral after another 75-basis point increase at the end of this month. But some would argue that monetary policy is actually further away from neutral, based on the fact that current inflation is so much higher than the federal funds rate.』

ワシは今回75bp利上げしたら政策金利水準は中立水準になる、と考えているけど、世の中の人の中には、「こんなに物価がクッソ高い状態なのだから実は中立金利ってもっと上にあって、今の政策金利水準って無茶苦茶緩和的なんじゃネーノ」という議論もございます、と来まして、

『In my view, that rests on a flawed idea of how monetary policy affects spending decisions. That's because spending decisions that require borrowing are based on an outlook that extends several years. This means taking into consideration longer-term real rates, which are tied to the expected path of policy and inflation over the next several years.』

その論は金融政策が消費態度に与える影響についての考察に欠点があります、ということで、借入コストとそのコストが向こう数年間の間どのように推移するか、という辺りの期待によって、消費態度に影響が出るのでありますからして、長期金利、即ち今後の政策金利期待パスによって影響される金利についても考慮に入れないと行けませんよ(=だから中立金利が2.25-2.50%よりも全然上にある、という論には与しませんよ)、との事。


・最後に今後の実質政策金利パスの話ですが2024年時点でも実質金利はプラスの領域で推移するのが望ましいっぽいですね

『As a result, I think that estimates of the real federal funds rate should be based on the expected policy rate one to one and a half years in the future.』

実質政策金利水準というのは、今の政策金利ではなくて、1年から1年半程度先の政策金利パスをベースに考えるべきものである、と私は考える。だそうです。

『Based on trading in inflation-indexed Treasury securities of different maturities (compared to nominal Treasury securities), investors see federal funds rates above expected inflation starting about six months from now and steepening thereafter.』

TIPS市場のいろんなBEIとか見ると、FF金利の実質金利は半年後くらいに期待インフレ率を上回り(=実質金利がプラスの領域に入り)その後はスティープしていきますという風になっておる。

『Primary securities dealers surveyed by the New York Fed likewise estimate the real federal funds rate will be a positive 0.7 percent in mid-2023 and 1 percent by mid-2024.

NY連銀の行うプライマリーディーラーサーベイ見ると、実質FF金利は2023年の半ばに+0.7%、2024年の半ばに+1%になるという予想になっておる。

『This gives me some confidence that tightening now anticipated by markets and expected by FOMC participants will be sufficient to reduce demand and inflation.』

これは今市場によって想定されている引き締めパスや、FOMCの中の人達が考えている引き締めパスは、需要を引き下げてインフレを鎮静化させるのに十分である、という幾分かのコンフィデンスを与えてくれる。ということでこのコーナーが終了しました。


・・・・・目先は75だけど結局その後もタイトニングはしますし、コアPCEが「significant moderation」するまでは利上げ継続って言ってるんですからまあ結局はタカなんですけど、どうせ脊髄反応だと目先の75の部分しか見ないことになってしまうので、まあここをちゃんと読んでみよう、という寝起きで気合で読む企画でありました。






2022/07/14

お題「声明文の緩和バイアスはどこに行く/良い振り返りになるわと思って久々に債券市場参加者会合を鑑賞」

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bostic-idJPKBN2OO1Q5
2022年7月14日4:23 午前
アトランタ連銀総裁、7月100bp利上げ検討に含み CPI受け

『[13日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は13日、6月の消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことを受けて、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で100ベーシスポイント(bp)の利上げを検討する可能性があるとの見方を示した。』(上記URL先より、以下同様)

100はナンジャソラと思ったら。

『米労働省が13日に発表した6月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比で9.1%上昇と5月の8.6%上昇から加速し、1981年11月以来40年超ぶりの大幅な伸びとなった。』

(ノ∀`)アチャー

FOMCまで2週間、前回の会合ではタカ派のジョージ総裁もお怒りになる「直前になって突如75bp利上げ織り込ませに行って75bp利上げ攻撃」というのをぶっこんできましたので、一応高官発言注意なんでしょうけど、ここで100bpなりガツンと上げて9月は小休止みたいな形にした方が綺麗は綺麗だとおもうんですけどやっぱり難しいかな〜。


〇支店長会議ネタの補足で総裁発言:声明文に相変わらず残っている「緩和バイアス」は何処に逝く???

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/siten2207.htm/

『1.わが国の景気は、新型コロナウイルス感染症や資源価格上昇の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している。先行きについては、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』

6月声明文(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220617a.pdf)の項番2と3の頭を繋いだものです。

『2.物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響が剥落するもとで、エネルギーや食料品の価格上昇を主因に、2%程度となっている。先行きについては、当面、エネルギーや食料品の価格上昇の影響により、2%程度で推移するとみられるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』

『この間、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率・賃金上昇率も高まっていくもとで、原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』

これまた同じく6月声明文の項番2と3の合体。

『3.リスク要因をみると、引き続き、内外の感染症の動向やその影響、今後のウクライナ情勢の展開、資源価格や海外経済の動向など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』

6月声明文の項番4と同じ。

『4.わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。』

ここだけ展望レポートですね。

『5.金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』

と、ガイダンス文言もいつも通りであります。


・・・・・・まあ何ですな、こちらの支店長会議の挨拶原稿に関しては、基本的に直近の声明文をベースにしていて、前打ちみたいな事が出るのってめったにない(福井総裁の時に1回あった記憶がある)ので、これはこれでどうせ変わらんのではあるのですが、先行きの金融政策運営に関するガイダンスの「緩和バイアス」をおまえいつまでつけとんねんという感じでありまして、この調子では7月にいきなりここが削除されるような展開も予想しにくいのですけれども、どっからどう見ても緩和バイアスとか要らねえだろという所なんですが、これまた連続指値だの毎日指値だのチーペスト指値だの、余計な事をぶっこんでしまったので、完全にこの無駄な緩和バイアス文言を外すタイミングを逸してしまった感があって、これまた7月会合の声明文で外す、ということになると「9月10月に向けて政策の修正の可能性が意識される」という話がぶちあがってくるのは必定、ということで弄れないんだろうなあとは思うのですが。

「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」というのと政策金利の「または、それを下回る水準」に関しては本来ならどこかで修正しておかなければいけなかったものだと思うのですが、こんなチキンゲーム状態になったら降りるに降りれないのでありまして、もうあとはドル円が円安に行かないことをひたすら祈る、ということなんでしょうけど、この人達YCC始めてからは、実はどっちにも金融政策を動かさないのが目標なのかという位に何もしていなくて、物価が下っぽい時も何もしなかったし、上がってきたらご覧の通りなのでして、「任期中を逃げ切る」だけ考えている無責任体制にも程がありますな。まあ勝手にすればって感じですが。



〇債券市場参加者会合がありましたなあ(6月の頭)

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220617a.pdf
「債券市場参加者会合」第 15 回議事要旨

『1.開催要領
(日時)銀行・証券等グループ 6月7日(火)15 時 45 分から
    バイサイドグループ 6月7日(火)17 時 30 分から
(形式)電話会議
(参加者)「債券市場サーベイ」等に参加する金融機関の実務担当者
(本行出席者)金融市場局長、金融市場局総務課長、同市場調節課長、同市場企画課長』

ということで6月の7日に実施された物件なので、まだ「チーペスト指値オペ」のような阿鼻叫喚が発生する前でございますが、前日の6日にあの例のきさらぎ会の黒ちゃん発言(ちなみに「家計の値上げ許容度の改善」とか「日本の家計が値上げを受け容れている」とかいう文言は相変わらず残っていて、まあ隠蔽しないのは結構なのですけれども、黒田さんが「撤回する」って言ったんだから何らかの形でその事をわかるようにしないと、誰も追求しないから良いようなものの、誰かにゴリゴリ言われたら「撤回といったのは口だけ」って言われるんじゃないかと心配で心配で)のあった時だったのですが、この発言が波紋を呼び出した頃から円安とか米国金利高とかが起きて、仕舞にはチーペスト指値オペになった、という時期です。

『3.参加者の意見
・上記説明の後、意見交換を実施した。会合参加者から聞かれた主な意見は以下のとおり。』

『最近の債券市場等についての見方』

温故知新じゃないですけど、6月の頭ってどうだったっけ???と思い出すにはちょうど良い素材です。

『・ 国際金融市場は、本年1月以降、米欧の金融政策スタンスの修正や、ウクライナ情勢の混迷、原油高・資源高によるインフレ圧力の高まり、市場参加者のリスク許容度の低下等を背景に、不安定な相場となった。

・ 長期金利は、海外金利の上昇や、海外勢を中心とする本邦金融政策スタンスの変更への思惑等から、イールドカーブ・コントロールのもとでの変動幅の上限である 0.25%まで上昇。臨時の国債買入れや連続指値オペもあり、長期金利は 0.25%付近の狭いレンジで推移しており、一旦、落ち着いた状態となっている。

・ 日本銀行の指値オペ等の国債買入れによって、長期金利はタイトなレンジでの推移が継続する一方、超長期ゾーンは、グローバルな金利先高観を背景に、金利が大きく上昇し、イールドカーブはスティープ化した。』

で、このスティープマックイーン状態が更に進んで(昨日はまたエライ勢いで巻き戻してましたが)しまったのが昨今の相場でありますな。


『債券市場の機能度・流動性についての見方』

ここを読んで落涙を禁じ得ないのはアタクシだけではないと思います。

『・ 長期金利がイールドカーブ・コントロールの上限付近で推移する中、10 年ゾーン近辺の市場機能度は低下しているが、金利をレンジ内でコントロールする政策であるため、ある程度やむを得ない。』

『・ 本年3月下旬には、投資家のリスク許容度が低下し、投資が手控えられたこと等から流動性が低下した。これにより、金利が上昇し値幅も増幅しやすくなるという悪循環に陥った。もっとも、足もとの流動性は、概ねそれ以前の水準まで回復している。』

『・債券市場の機能度は前回会合時の昨年 12 月から大きく変化しておらず、流動性は概ね新型コロナウイルス感染症拡大前の水準を維持している。』

いやーもうね。この時だからまだこういう余裕があったって感じな訳でして、そう考えるとあのチーペストの指値ってのは明らかに悪手だったなーってのが良く分かる訳ですよ。だってもう超長期と横綱全然関係ないですし、そもそもその横綱自体がもはや横綱審議委員会に品格と風格が無いと言われそうなほど板はスカスカだし(特に超長期ゾーンとの)相関性ないし、ヘッジに使えそうな感じもしないしで、まあエライコッチャになってしまいましたな。


『・ 海外市場の動きに連動して金利が上昇したことは、一定程度の市場機能度を示している。但し、イールドカーブの歪みや一部銘柄の極端な需給の逼迫といった事態が時折みられている点には、留意が必要。』

『・ 市場機能度・流動性の低下を感じている。ポートフォリオにおける銘柄入れ替えを相応の規模で行う際等には、市場の厚みを考慮して取引を行っている。』

こういうのをキチンと言ってくれる方(どこの誰かは知らんけど)は先見の明がありますわ。

『・ やや長い目でみると、債券相場の変動幅が抑えられており、超長期ゾーンの投資家層は多様性に乏しく厚みが減ってきている。』

まあその結果超長期ゾーンが今のような有様になっているのですが、もうちょっとズバッとぶっこんでいただけるとありがたかったなあとは思うのですが、何ちゅうか一旦落ち着いたので日銀安心したらきさらぎ会と海外金利上昇と円安が同時に来ることによってチーペスト指値とかいう無茶苦茶プレイで債券先物の機能をぶっ壊してしまった、という大反動があったという所ですか。


『市場調節運営等』

毎日指値オペはありましたが、まだチーペスト指値とか来る前の今にして思えばあれでも平和だった時代の話であることを割り引いて読んでくださいね!!!!!!!!

『・ 日本銀行による一連のオペレーションが機動的に行われた結果、本年4月以降、米欧市場と比べて本邦の債券市場ではボラティリティが抑制され、安定した投資環境が実現した。引き続き、柔軟かつ機動的なオペ運営を期待する。』

「安定した投資環境が実現した」ってちょっと上の方で「市場機能度・流動性の低下を感じている。ポートフォリオにおける銘柄入れ替えを相応の規模で行う際等には、市場の厚みを考慮して取引を行っている。」とか「やや長い目でみると、債券相場の変動幅が抑えられており、超長期ゾーンの投資家層は多様性に乏しく厚みが減ってきている。」とかいう意見をしてた方々からしたら喧嘩売っとるのかというご意見ですが、まあ結果論で言えばどっちに近かったのかはその後の市場を見れば一目瞭然。あくまでも結果論ですけどね。

『・ 今後、債券市場に大きなストレスがかかった場合であっても、流動性が維持され、市場機能が最大限発揮されるように配慮して頂きたい。』

ストレスがかかった時の市場機能維持、って意味あいは難しくて、金融危機みたいなストレスの時に「市場機能維持」の為に中銀がLLRっぽく「最後のカウンターパーティー」として登場(コロナの時のドルオペとかリーマンの時のCP社債買入とか)するのは、市場機能維持に繋がるのですが、平時における市場機能ってのは「市場参加者がそれぞれの考えで自由に売買する」ことによって発揮されるわけでして、そこに中央銀行が介入するのは等しく「市場機能の阻害要因」になる話でありまして、中央銀行の介入が許容できるのってのは、金融危機みたいな時におきるある種の「市場の失敗」みたいな時と、あとは短期政策金利の維持のための介入じゃなかろうかとしか思えない訳です。じゃあ長期の政策金利維持のための介入だったら良いじゃんという理屈になるが、それは「そもそも長期金利を政策金利として固定化するのは統制経済ではないか」という反論をさせていただきたいですな。

だいたいからして現状で起きる「ストレス」って別に金融ショックとか市場の失敗とかじゃなくて、自由市場に中銀が無理矢理介入しているからコンフリクトが起きているだけの話で、そういう意味ではストレスって何ぞやという話ではあるんですよね。いや別にこの意見を晒し上げるつもりで言ってる訳じゃないんですけど、金融危機時における極端なカウンターパーティーリスク意識の高まりなどから発生する「ストレス」とは違う話を「ストレス」と一括りにしてしまうのはあまり筋が宜しくないなあと思ってああだこうだ書いただけです。

まあこの意見、丸められすぎた結果意味が微妙な文章に仕上がっているだけの話で、たぶん「市場が大きく動いた時に無茶苦茶な買入とかしないで欲しい」って意味で言ったんじゃなかろうかとは思うのですが、発言をまるめるにしてももうちょっと趣旨が分かるように丸めて頂きたいと思いました。


『・ 本年3月末の相場急変時のように、レポ市場の需給が逼迫しているタイミングでは、国債補完供給のより柔軟な運用をお願いしたい。』

いや仰る通りですよね、ということで6月会合でSLFの改善が行われて結構結構。

『・ 債券市場において値動きが小さい状態が続き収益機会が減った結果、投資家の厚みが減っている。これまでもお願いしているように、流動性向上に向けて、超長期ゾーンの買入金額の減額など、市場の状況に応じた対応をお願いしたい。』

日銀の無理矢理買入攻撃で相対的に言えば買入サポートの弱い超長期がこの頃(20年が80bp割れで30年が100bpにちょい乗せで40年が110bpにちょい乗せ水準)から見ると盛大にブタ売られしてしまったのはご愛敬。



『今後の債券市場の見方・リスク』

よく考えたらこの点で話をするのって(発表者の名前が出ないから良いちゃあ良いのですけど)、意見が1か月くらいラグを持って公表されるから、当たったか外れたかが一目瞭然になってしまって、自信満々の方なら良いんですけど、あんまり考えないで発言したのが後で晒し物になるリスクが大ありジャンと思いました。

『・ 長期金利は、引き続き海外金利の影響を受けながら、当面はイールドカーブ・コントロールのもとでの変動幅の上限である 0.25%付近でもみ合う展開を想定している。』

うむ。

『・ 先行きのリスクとしては、新型コロナウイルス感染症の影響やウクライナ情勢、為替動向、それらの国内外の景気・物価への影響や金融政策の動向に注目している。』

おいこら日銀の声明文を読むなwwwww(わざと読んだだろー、って思っちゃいました)

『・ 今後、国債の銘柄間の需給格差が拡大したり、極端な場合、買入対象銘柄の市中残高が枯渇したりする可能性が懸念される。』

お!ズバリ当たりましたね!!!!!!!!!って皆が懸念している話なので順当な意見ではあるのですが。


・・・・・まあ今回は会合があってからの1か月に「きさらぎ会事件(そういやきさらぎ会って6月6日とかいうオーメンな日だったのね)」「チーペスト指値オペ」「債券先物ぶっ壊れ」などが起きて、超長期のカーブがあばばばばーとなっている、ということで大きく動いてしまったので、ご意見出された皆様には甚だ恐縮ではあるのですが、結果論としてちょうどよい過去の振り返り材料になったので、珍しく鑑賞会をさせていただきましたでございます。









2022/07/13

お題「ECB6月議事要旨は執行部が無理矢理押し切った感がありますな/企業物価指数ェ・・・・・・/さくらレポート上方修正かよ!」

ああ月曜に日銀支店長会議があったのをすっかり忘れてたわ(どうせ政策を梃子でも変更しないから何を見ても時間の無駄という認識である)。

〇とりあえずECB6月議事要旨の続きというか最後の所

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2022/html/ecb.mg220707~d5c3246061.en.html
Meeting of 8-9 June 2022
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank held in Amsterdam on Wednesday and Thursday, 8-9 June 2022
7 July 2022

今回は金融政策の論議の部分だけでもクッソ長くて(ECBの議事要旨はこの部分の長さが会合によって可変になっているので中々むずい)3回シリーズになってしまいましたサーセン。

・フレキシビリティの話が何故か知らんがフラグメンテーション対策の話に展開されるの巻

『Regarding other elements of communication, members agreed that the Governing Council needed to reiterate its readiness to adjust all of its instruments within its mandate, incorporating flexibility if warranted, to ensure that inflation stabilised at the 2% target over the medium term.』

必要ならば必要な手段を何でも取るというフレキシビリティーについて強調すべきだとのお話が始まります。

『Within the ECB’s mandate, under stressed conditions, flexibility would remain an element of monetary policy whenever threats to monetary policy transmission jeopardised the attainment of price stability. 』

この辺から話が変わっていきます。ストレス環境下において、金融政策のトランスミッションメカニズムがちゃんと行き渡らないようになるのはイクナイので、それに対応するためのフレキシビリティが大事、と来ました。

これはギリシャ危機およびそのついでに南欧諸国の対独スプレッドが拡大した時期などにも言われた理屈でありますが、この点は財政統合しない限り永遠に発生する問題ですし、まあそのフラグメンテーション対策をしないと金融政策の効果が域内の国によって異なって来ると政策運営できませんがな、というのは分かるのですけれども、フラグメンテーション対策をやってしまうと、結局は域内の国の中で財政運営がガバガバな国が市場による規律(というか暴力だけどさ)によって成敗されることによってガバガバが治る、というような市場機能が働かなくなる、という問題点isあるので、そらまあ北欧連合がグチグチと言うのはそらそうよという話になりますよね。ではどういう話になったのか確認しますと、

『Attention was drawn to the widening of sovereign spreads over recent months. In this context, the point was made that the establishment of an anti-fragmentation tool was not at odds with the need to contain inflation pressures. Indeed, addressing fragmentation could be regarded as necessary for putting the Governing Council in a better position to accelerate monetary policy normalisation if warranted by the inflation outlook.』

最近の対独スプレッドの拡大について議論されてますが、フラグメンテーションを放置すると政策正常化を進めていく際に宜しくない、ということらしい。アタクシなんぞは今回は緩和じゃないんだからほっとけばと思ってしまうけど(割と暴論)。

『Reference was made to the “separation principle”, which had been introduced by the ECB in the wake of the financial crisis to distinguish between non-standard measures aimed at safeguarding monetary policy transmission and instruments aimed at setting the appropriate policy stance for the euro area as a whole.』

という事で案の定リーマンショック時におけるフラグメンテーション対策の話になり、

『A call was made for work on a possible new anti-fragmentation tool to be accelerated and completed rapidly since the risk of fragmentation could intensify as the ECB advanced with its monetary policy normalisation.』

金融正常化を円滑に進めるためにもフラグメンテーション対策が必要である、ということで「フレキシビリティ」についての話はそっちなんかい!という話である。んじゃ次のパラグラフ。


・インフレ成敗が大正義であるというコミュニケーションを強調すべきであるというお話をまた出す

そろそろ纏めに近くなってきました

『Members agreed that communication had to emphasise that high inflation was a major challenge and that the Governing Council would make sure that inflation returned to its 2% target over the medium term.』

『The Governing Council would maintain optionality, data-dependence, gradualism and flexibility in the conduct of monetary policy, without hierarchy among these guiding principles.』

インフレ成敗が大正義ということで「optionality, data-dependence, gradualism and flexibility」の原則に基づいて(その原則がgradualismとそれ以外が相互矛盾してまっせというのはさておき)政策を行うべきである、という話がまた出てきたと思ったら、


・途中の書き方だとガイダンスには留保が居たっぽいが結局押し切ったのですが押し切ったのがその場だけかよ!!!

『Taking into account the foregoing discussion among the members, the President ascertained that all members were able to support the policy proposals put forward by Mr Lane, subject to including more explicit guidance with respect to the Governing Council’s September monetary policy meeting.』

ascertainedってのが確認するとか言う意味で、7月と9月の政策金利ガイダンスを含む今回の政策決定について全員の合意を得たそうである。まあ合意得た割には7月に50上げるべきとか7月9月で75(この前ホルツマンが125とか言ってたがアレはタカ派の外れ値おじさん(ただしドイツ様の鉄砲玉に使われている可能性があるので丸無視はできないのだが)なのでまあスルーするとして)とか割と好き勝手な意見が出ている訳でございまして、それらの好き勝手発言シリーズが出た後にこの議事要旨が出ている(出たのは先週木曜日)というのを勘案しますと、これわざわざこの部分をぶっこんで「ほーら7月の利上げは25bpだよー」ってのを再度強調(この前シントラでもラガルドさん25bpを強調してましたけど)したいのと、好き勝手言う他の人達に対して「おめえら6月会合の時に賛成したじゃねえかふざけるなこのクソボケ」というメッセージを送りたい、という風に勝手に解釈してしまいましたがどうなんでしょうかね。(なお、クソボケの皆さんに言わせれば「6月会合以降のデータを見たらより早い正常化プロセスが必要であると考えたのでその通りに発言しただけです」という事になるかと思いますが)

『Upon a proposal by the President, the Governing Council accordingly decided, on the basis of its updated assessment, to take further steps in normalising its monetary policy, while confirming that earlier decisions would remain in place, as set out in the ECB’s monetary policy press release.』

でまあ6月はスタッフのニュープロジェクションが出て来る時なので、この会合ではスタッフの見通しをベースにしまして、以前決めたように金融政策の正常化プロセスを開始するのが適切であるというのを確認したそうな。

『The members of the Governing Council subsequently finalised the monetary policy statement, which the President and the Vice-President would, as usual, deliver at the press conference following the Governing Council meeting.』

ということで声明文が最終決定しましたよ(ステートメントはリンクになっていてそこ見りゃわかるよ状態になっておりますのはBOJやFRBとの違いです)。


・・・・・・・ということで、まあ7月25利上げなんでしょうけれども、ここに来てユーロ安が来ているのも勘案すると、マイナス金利解除しておいた方がエエンデネエノとは思いますし、なんか議事要旨ベースだと割と異論なくまとまっているようですが、その後のメンバー国の皆さんのフリーダム発言見てると、なんかこの時もかなり強引に押し切った感が漂う訳で、こりゃ結構カオスだな、と思いました(個人の妄想です)。



〇ユーロ安と言えば円安ですが(無理矢理な展開)ここでジャパンの企業物価指数を見てみましょう

昨日盛大に話題になった企業物価指数。何せ最近は大本営発表度合いが著しい日銀ですが、さすがに経済統計の公表で大本営発表をする訳にはいかないので、そういう意味では日銀の情勢判断とか真面目に見る気は2ミリ位しか起きないし結局見ても「あーはいはい大本営の政策(を梃子でも動かさない)をサポートする情勢判断ね」と呆れてみておる今日この頃。


まずは日経ちゃんの記事(と言っても有料会員限定なので一見さんどすか〜の人が読める部分だけ)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB120GS0S2A710C2000000/
企業物価、6月9.2%上昇 民間予測上回る
経済
2022年7月12日 8:54 (2022年7月12日 10:21更新) [有料会員限定]

ほぼダブルデジットじゃないですかヤダー!

『日銀が12日発表した6月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は113.8と、前年同月比9.2%上昇した。前年の水準を上回るのは16カ月連続。ロシアによるウクライナ侵攻に伴う供給制約への懸念から、エネルギーなどの資源価格が高止まりしている。24年ぶりの円安も物価高に拍車をかけた。』(上記URL先より、有料会員じゃなくても見れる部分のみ引用)

>24年ぶりの円安も物価高に拍車をかけた
>24年ぶりの円安も物価高に拍車をかけた
>24年ぶりの円安も物価高に拍車をかけた

イイハナシダナー(全然良くないけど)


では本家を確認。
https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2206.pdf
企 業 物 価 指 数(2022年6月速報)

『国内企業物価指数は、前月比+0.7%(前年比+9.2%)。
輸出物価指数は、契約通貨ベースで前月比+0.1%、円ベースで同+2.7%(前年比+19.1%)。
輸入物価指数は、契約通貨ベースで前月比+0.8%、円ベースで同+4.1%(前年比+46.3%)。』

>輸入物価指数は・・・・円ベースで同+4.1%(前年比+46.3%)
>輸入物価指数は・・・・円ベースで同+4.1%(前年比+46.3%)
>輸入物価指数は・・・・円ベースで同+4.1%(前年比+46.3%)

まあ3月分と4月分もそれぞれ前年比+32.5%、+42.5%(遡及改訂後)なんですけど、まあ威勢よく上がるわ円安の影響はどう見てもあるわで、一方で大本営は連続指値オペ→毎日指値オペ→先物チーペスト指値オペ、とあっという間にルビコン川だか三途の川だか知らんですけど、堂々と越え捲ってしまったため、最早政策見直しを少しでも連想させるような事は何も出来ない、という金縛り状態になっておりまして、このまま物価高怪しからんモードが続くと、「金融緩和政策は続けて欲しいと言ったが円安政策をしろと言った覚えはないんだが」という流れになった時にどうなるんですかねー、ってな所ですな。


いやまあ勿論7月会合来週でそんなタイムイングでのどうこうはないのは確定だと思いますけど(個人の感想です)。日銀はオペで無茶やった関係上政策の柔軟化に関して一言たりとも情報発信ができない状態になっていいるので、そらまあ隙あらば円安という感じでしょうし、そうなったら「円安政策をしろと言った覚えはない」と梯子外されたら、その時に日銀を助けるものは誰もいない訳ですよ。

安倍ちゃんは良くも悪くも身内だけは大事にする(国政をつかさどる人間が身内重視って如何なものかという話はさておきまして)お方だったから加計の時とかおいおいおいって所まで守護してたのを見ればお分かりのように、日銀にとって最強の守護神となることが予想されていましたが、安倍ちゃん以外でそこまで突っ込んでくれるお方がいるとも思えんですから、そうなるとノーガード日銀あっという間に武蔵坊弁慶状態になってしまうし、だいたいからして日銀ってそういう時のこと考えてヘッジする発想ねえだろ(あったら今みたいな超一枚岩情報発信をしないでしょうし事ここに至ってはそれすると政策修正観測からオペが持たなくなるリスクが高くてとてもとても)と思うので、まあこれは9月会合に向けてどうなるのか、というのを生温かく見守っていきたいと存じますです、はい。



〇ところでさくらレポートなんだがこんなに威勢よく上方修正しちゃって良かったの?????

https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer220711.htm/(概要)
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer220711.pdf(全文)

まあ全文の各地域ごとの色々な報告のアネクをみるのが面白いのだがそれは皆さん全文を見てちょということで概要の方から参りますが。

『(1)各地域の景気の総括判断』を見ると盛大に上方修正してましてですね、

『各地域の景気の総括判断をみると、中国でのロックダウンもあって供給制約の影響がみられているものの、個人消費への感染症の影響が和らぐもとで、多くの地域で「緩やかに持ち直している」などとしている。』

はいいんですけど『各地域の景気の総括判断と前回との比較』を見ますと、北海道。東北、北陸、近畿、中国、四国、九州沖縄、の7地域で判断引き上げ、関東甲信越と東海という大物地域2地域は判断横ばいなのですが、下げの地域無しと来ました。(細かいのは今回めんどくさいから割愛します)

前回、前々回と比較するとどうなのかと言いますと、

前回4月:8地域で引き下げ、1地域横ばい
前々回1月:9地域で引き上げ

からの今回7地域引き上げ、2地域横ばい、という何かヘタクソディーラーみたいなドタバタを繰り返しておるのですが、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-07-07/REMJK6DWLU6801
日銀が22年度物価見通し引き上げ検討、成長率は下方修正へ−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2022年7月7日 10:52 JST

『日本銀行は資源・食料品価格の高騰や円安進行を背景に、2022年度の消費者物価(生鮮食品除くコアCPI)見通しを従来の1.9%から2%台に引き上げることを検討する可能性が大きい。同年度の経済成長率見通しは供給制約の影響で下方修正を検討する見通しだ。複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)

まあそもそも前回の展望レポートの2022年度1.9%ってのがおかしいだろ(低いだろ)という数字だったし、更におかしいだろと思ったのは2022年度とか一番不確実性の高いところなのに、4月展望レポートで皆さんが出していた物価見通しが上下2名除きで綺麗に1.8%〜2.0%とかクッソ狭い所に集中していて、お前らどんだけ大本営発表すれば気が済むんだという数字になっておりまして、主な意見とか議事要旨でも見られますので毎度悪態をついておりますが、このポンコツ共はシャンシャン要因の為に選ばれてるのかと小一時間問い詰めたくなるような数字が出ておりましたのですな。

でもって、

『下方修正を検討する22年度の実質国内総生産(GDP)は前年度比2.9%増を見込んでいた。中国のロックダウン(都市封鎖)に伴う供給制約の影響が、輸出や生産を中心に足元の景気の下振れ要因になっている。』

ということなのですが、いやまあ先行き見通しと現状判断は別物と言ってしまえばそうなのかもしれませんが、1月はさくらレポートで絶賛上方修正→展望レポートの成長率見通し上方修正、4月はさくらレポートで大ションボリーヌな下方修正→展望レポートの成長率見通し下方修正、という流れできていまして、今回はさくらレポートは威勢よく上方修正しているのに、展望レポートの方は成長率下方修正するんかいな、と思いますと中々の不自然感は否めないのですが、まあ何せ今や「政策に後付けで作られる展望レポート」という評価が確立する(してるのはアタクシの中だけですかそうですか)のではないかと言いたくなる大本営発表振りを示す展望レポートに対して、支店長会議の方が逆をぶっこむというのも中々味わいが深いものがあるなあ、と今回のさくらレポート、そこは何か面白いなあと思いました。









2022/07/12

お題「7月会合は無風なのだが将来のヘッジをこっそり打つのかどうかに注目/ECB6月議事要旨だが先行き利上げパスは悩んでる感じですかね」

大門先生が次点で落選、という残念な事実を知りましたが、一方でどこの誰とか申し上げるのは控えますが、そもそもお前国会議員としての責務を果たせるのかレベルにしか見えないような連中がぞろぞろと当選している訳で、その一方で大門先生のように(金融政策面でしかみたことないけど)政策に詳しくてきっちりとした意見を(そこらの保守政党の人より)持っておられる方が落選するのって・・・・・・・・・

いやまあ選挙結果だから仕方ないんですけど、ここでアタクシの妄想なのですが、大門先生赤旗(じゃなくてもいいけどどっか)の記者になっていただいて次回の金融政策決定会合後の記者会見で更問付きで質問してもらえませんかねえ。

名乗らないで馬鹿の質問をしてそこまで面白かった会見の空気を一気に壊したどこぞの馬鹿フリー記者(ちなみに元某新聞の人)が質問して良いんだったら、記者クラブ外(赤旗が入ってるのかは知らんです)であっても、今は議員じゃないんだから大門先生が厳しく質問しても良いですよね??次回の幹事社さん???

前半はここもと無慈悲に突っ込む皆様によるちゃんとした質疑をして、最後の20分くらい大門VS黒田の一本勝負とかいう構成を組んで頂きますと大変に充実した記者会見になろうかと思いますが机上の空論ですね(大門先生ならOKで他の馬鹿もと議員はダメ、という線引きができませんからぬー)はい。


しかし話は違いますが、東京地方区の都民ファースト、立憲の2人目に負けるどころか無所属出馬の乙武さんにも負けて落選の4番目って何やってるんだと思ったが、よく考えたらこの期間中百合子先生のお姿も話題も見たことが無かったですな。



〇7月会合は結果は無風になるの確実ですが今後に向けた備えという仄めかしがどこかに入るか否かを見たいです

来週がMPMな訳ですが、まあ今回も別に何もないでしょうという感じではあるものの、ゆうてここで引き続き政策修正1ミクロンも考えていない、という強硬な情報発信をしてしまいますと、円安ちゃんが進行してしまうのではなかろうか、というあばばばばーなアレが発生する訳ですな。

でもってまあ7月って欧米の方では利上げ第一弾だの第忘れた弾だのと正常化(欧州)や引き締め(米国)って感じで、まずはインフレファイターなスタンスを見せる(実際にやるかどうかはまた別なんだが、米国はやる気満々をみせているけど、欧州はおっかなびっくりなのでこれが逆にビハインド・ザ・カーブになってしまうような感じがします)となると、ジャクソンホールまで基本的には政策ネタが無くなるのですから、一気には行かないかもしれないけど、トレンドとして円安傾向、ってのは続くんじゃないですかねえ、個人の感想ですし何ならフラグになって欲しいですけど。

ただまあこれはまあこういう感じがメインシナリオだと思いますけど以下アタクシの雑感というか何というかで、別にこの読み筋が正しいともあんまり思いませんけど、雑多な事を考えて何となく読み筋の思考としてどんなのあるかなーというのをつらつら並べてみましたので、読み筋作りのたたき台にでもして頂ければ幸いです。


・・・・・・・・でですよ、この調子で9月会合迎えるとその前にドル円150円とかになっていたらどないしますねんってお話になるような気がしますが、安倍ちゃんの遭難というとんでもない突発事件が発生して、その直後に日銀がまさか先陣切って政策見直しとかする訳にもいかない(いやもちろん本来それとこれとは別もんだし、アベノミクスの問題点についての検証というのは冷静に実施してくれないと将来同じことをやらかしてしまうので、冷静に検証しないと行けないんですけど、まあ今そういう話をするのは残念ながら日本の風土としてタイミングが不適切にも程がある訳で、一段落してから、となるので7月会合はそのタイミングではない)でしょうから、今回って精々足元の物価見通しを上方修正するだけで終わるでしょうな。

でもって為替が140円だ(もう直ぐですけど)150円だとかになった日には、「日銀に金融緩和を頼んだが、国民生活が苦しくなるようなレベルの円安にするのは別問題」というような話になった時に、日銀は何と申し開きするねんとも思うわけで、黒ちゃんと一蓮托生している場合なのか、というのは益々高まってきたと思うのでありますが、今の所日銀は黒田さん以外からなんか「緩和政策は継続するけれども今の極端な緩和は、内外経済物価情勢の好転を考えれば、微修正の余地がある」という文脈での話が出てこない、という一種の異常事態になってまして、日銀もちゃんと物考えているアピールするんだったら誰かを鉄砲玉に立てて今のような事を言わせておかないと、また「ある日突如豹変」の定番となっているジャパニーズジャガーチェンジマネタリーポリシーをやらかしてしまうことになりそうですよね。


という訳で、まあそうそう7月に派手な事は日銀ちゃんもできないと思いますので、今回は展望レポートでの書き方とかの微妙なあたりに何か将来に向けた布石(または埋設地雷)を埋めておくのか、という辺りについて目を皿のようにして確認して見たいと思います。どうせ会見で「今まで通り」を連呼するのは最初から明らかで、会見で見直しだの点検だの言い出す訳が無いので、そこは一切期待していません。

でまあ従来ならそもそも何か布石を打っておくとかいうのすら考えなくても良くて、政策が持ちこたえるか為替辺りの圧力から大爆発するか、の一騎打ちという感じではあった(よって海外金利が日銀の今の政策の命数を握っていた)のですが、今回は物価高とかエネルギー価格上昇(直接的にはエネルギー価格が先に効きそうですが)からの批判の風当たりが黒田さんの所に直接来やすくなる(選挙中「岸田インフレ」って言ってたけどあれ「安倍黒田インフレ」って言ってた方がアピールしたんじゃないか説を持ってたアタクシ)、となった時、黒田翼賛体制になっている今の日銀だと体制ごとすっ飛ばされるリスクが更に高まっていると思うので、そういう意味では7月会合って表面的には無風会合になるのはまあ順当オブ順当ではあるのですが、今後日銀に直接あたるようになりそうな風に対してどう備えるのか、はたまたノーテンキに何もしないでのほほんとしているのか、というのを見る会合となったと思います。

異論は大いにあると思いますが、考え方のたたき台のご参考にでもなれば幸いです。



〇6月ECB会合議事要旨鑑賞の続きである

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2022/html/ecb.mg220707~d5c3246061.en.html
Meeting of 8-9 June 2022
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank held in Amsterdam on Wednesday and Thursday, 8-9 June 2022
7 July 2022


昨日の続きから参ります。ECBの議事要旨は構成とかは何となく固まった感があるのですが、議論のパートの造りがその時によって可変って感じがまだあって、いやまあ自由に議論したらそういう風になってもおかしくないから、きちっと無理矢理型にはめることも無いんでしょうね、よー知らんけど。

前回は「利上げの条件は満たされたと皆が認識したけど先にAPP拡大の終了をするのが先だよねじゃあ7/1以降のAPP拡大は無しね(ただし今回利上げの話もあったっぽい書き方)」、という所までの話を引用しました。今日はその続きです。


・利上げ予告ホームランとグラデュアリズムとフレキシビリティ

『Most members expressed support for the proposal to signal the Governing Council’s intention to increase the key ECB interest rates by 25 basis points at the July meeting.』

次回25bp上げ予告ホームランをする、という提案にMost membersが賛同。

『Starting the rate-hiking cycle with a step of this magnitude was seen as a “proportionate first step”, as indicated by Mr Lane in his introduction.』

ここはすいません前半のをちゃんと読んで来ると書かれてはおります。

『In this respect, different arguments were brought forward. First, this would be the first rate hike in 11 years, a step that needed to be prepared and explained carefully. Second, the start of the rate-hiking cycle had to be orderly, avoiding unnecessarily surprising the markets and inducing unwarranted volatility.
Third, adverse economic surprises in the near term could not be excluded, and it was thus prudent not to start more forcefully.』

利上げに関しての皆様の意見が色々と出た訳ですが、(1)11年ぶりの利上げなので十分に準備して説明もバッチリ行わないと行けない、(2)利上げの開始はオーダリーに行い、不必要なサプライズは避けるべき、(3)経済におけるネガティブサプライズ(要はウクライナ問題の不確実性)のリスクがあるので、利上げは慎重に行うべきであり、急いでオリャーとやるもんじゃない、と来ております。

いやまあ大体そういう話しとったやん、とは思いますが、この辺りは欧州市場の方が米国金利の上昇に影響されてるのかそうか知らんけど、物凄い先の利上げまで織り込みにいって金利上昇しているので、この手の「プルーデント」な正常化サイクルってのを強調するんでしょうな、とアタクシは思いました。

ただまあこれも良し悪しで、これを強調すると昨日引用していたように「グラデュアリズム」はわかるんだが、「データディペンデント」で「オプショナリティ」の話が引っ込む→インフレファイターの腰が弱く見える→インフレ期待のアンカーが外れる→あばばばばばばばばばばばー、となってしまいますので、匙加減はひじょーに難しいですね。まあフォワードガイダンスみたいなのを全部やめて「それはお前ら市場が考えること」と突き放すのが本来のあり方だし、昔の欧米中銀はそういうの突き放しプレイが普通だった(大昔の話しね)んですが、ウッドワード辺りからのフォワードガイダンスの呪縛が現在の欧米中銀におけるコミュニケーションを難しくしていると思うのね。

では次のパラグラフに入ります。

『A number of members expressed an initial preference for keeping the door open for a larger hike at the July meeting.』

7月に25bpじゃなくて50bpとかの引き上げの可能性もオープンにしておくべきではないかとのご意見が複数のメンバーから出ております(ちなみにこのA number ofですが、FEDの議事要旨だと数名程度の時にこういう表現になっているのですが、慣用表現だと「多い」意味だと思うので毎度悩ましいんですよ。おじちゃんドメドメザパニーズなのでこういう慣用表現されると毎度苦労します)。

『They remarked that the current signal should not be seen as an unconditional commitment, since the Governing Council needed to retain the discretion to adjust the size of the interest rate move in case new information available for the July meeting materially affected the medium-term inflation outlook.』

でもってこれを主張する人達の意見として「7月に25」とだしたら、それが無条件で実施されるコミットだと見られるけど、7月までの間に状況に変化があって見通し変更しようって時にどうすんだよ、という至極ごもっとな突っ込み。

次のパラです。

『Against this background, it was broadly agreed that the Governing Council should at this point be more specific about its expectations for the September meeting and, in particular, open the door to an increase in the key ECB interest rates by more than 25 basis points.』

そういう意見もありますが、結局今回のような公表形式になることは幅広く認められまして、9月以降の利上げに関して25bpよりも大幅となることについてもオープンだよ、というのを表現しました・

『A larger increment would be appropriate at the September meeting if the outlook for medium-term inflation had not improved by that time.』

中期的な物価見通しが改善(=物価見通しが下がる)しなかったら9月の利上げは25よりも大きくなるのが適切、としれっとぶっこんでおりまして、

『A rate hike by a larger increment would signal the Governing Council’s intention to move the deposit facility rate into positive territory, ending an eight-year period of negative rates.』

より高い利上げは預金ファシリティ金利をプラス圏(50上げだとゼロで75なら25だわさ)に引き上げて、8年間のマイナス金利政策を終了させるシグナルになりますな。

『At the same time, it was generally deemed important to maintain optionality and data-dependence, as it could not be excluded that incoming data in the period to September would materially affect the medium-term inflation outlook in either direction. The point was also made that an acceleration of the monetary policy normalisation process was conditional on market conditions remaining orderly.』

でもって同時にアグリーされました、ってあるのが何かといえば、またここでオプショナリティーとデータディペンデントのワードが登場してきまして、要は今後の経済物価データが出てくる中で政策をどうするかはその時次第、という話なんですけど、だったらお前らフォワードガイダンスとかすんなよ話がかえって混乱するだけじゃろ、とは思いますけど、長い緩和政策によって世界中で債券の中の人達の脳味噌がすっかり緩和シャブで溶解しておられますの(他人事のように言ってるがワシも大概に脳が溶けとるわ)で、コミュニケーションがよりややこしくなっているのは事実。


・中立金利とフォワードガイダンス

さて次のパラグラフ。

『Looking beyond September, members widely agreed that, on the basis of the current assessment, a gradual but sustained path of further interest rate increases would be appropriate, with the pace of adjustment depending on incoming data and developments in the medium-term inflation outlook.』

今の経済物価見通しであればグラデュアルで持続的な先行き利上げパスが適切。

『A comment was made that the neutral rate was unobservable and too vague a concept to guide actual policy measures. It was maintained that the achievement of a neutral stance would be revealed only over time as the Governing Council observed how the economy and the inflation outlook reacted to new shocks and to monetary policy normalisation. 』

で、ここで中立金利の話になりまして、じゃあ中立金利を意識して政策するったって結局その水準って後付けにならないと本当の事は分からんよね。だったら結局は経済と物価の見通しを考えながら正常化するんだけど、その時に経済の新たなショックにも対応できるようにしないとね、というコメントがあった、とございました。

『It was noted, in this respect, that it might be helpful for the ECB to communicate at some point on the rate path beyond September to avoid markets overshooting.』

という観点からしますと、どこかの時点で9月よりも先のレートパスを示すことによって、マーケットのオーバーシュートを防ぐのエエンデネエノ?という話になっているのだが、これを言い出すと結局フォワードコミットメントととられるので、「オプショナリティー」や「データディペンデント」で変更した時の市場に与えるショックが却ってでかくなるわけでして、まあアタクシはこういうのは示さないで市場が勝手に考えさせるようにした方が、市場の中のポジションが適当に散らばって、その結果状況変化におけるスタビライザーになると市場の中の人の経験的には思うのですが、それを理論だって実証できるほどの知見も脳味噌も数学の式を書く能力も英語でプレゼンする能力も無いので、まあ結局こういうところで村の皆さんにくだまいてるしか能は無いのですが、どうもこうフォワードコミットメントで市場を安定化させよう、っていうのは(いやその気持ちはよくわかるんですけど)中銀が隙あらばやりたがるプレイでして、ただこれをすると市場のポジションが常にフォワードコミットメント近辺に収斂されてしまうので、何かあった時に一気に動くことになるからフォワードコミットメント止めんさいと思うのでした(雑談スイマセン)。

で、このパラの最後は、

『It was remarked there were good reasons to move all three key ECB interest rates in parallel, at least for the initial step in July.』

ということで7月に25上げるときには各種金利(マージナルレンディングファシリティとデポジットファシリティ)もフルスライドで上げるのが適切と。


・基本的な部分は全員一致で今回の決定になっている

ここから先が決定こーなーになります。何の小見出しも入ってないけど。

『On the basis of the shared assessment and the above considerations, all members accepted the monetary policy proposal presented by Mr Lane in his introduction, subject to more explicit guidance being provided for the September meeting, as appropriate for taking further steps in normalising monetary policy.』

6月に出てきた物件については全員賛成です。

『It was confirmed that the conduct of monetary policy would continue to be guided by optionality, data-dependence, gradualism and flexibility.』

だったらフォワードコミットメント(以下同文)。では次のパラ。

『All members agreed that the decision on ending net purchases under the APP would pave the way for interest rate increases at the next two meetings, in line with the sequencing of monetary policy action enshrined in the ECB’s forward guidance. It was also seen as appropriate at this point in time to confirm that maturing holdings under the APP would continue to be reinvested for an extended period of time past the date when the Governing Council started raising the key ECB interest rates. Reinvestment was considered important for as long as necessary to maintain ample liquidity, thereby ensuring orderly money market conditions, and an appropriate monetary policy stance.』

『It was also agreed to confirm that the special interest rate period under TLTRO III would end on 23 June 2022, as announced previously.』

この辺りは決定事項の話なので流しますね。この部分はAPPに関する決定でこれも全員賛成。


・金利ガイダンスはどうも全員一致じゃなかったかもしれない

次のパラは金利のガイダンスについて。

『With regard to the path of the key ECB interest rates, members agreed that following the current meeting the Governing Council should communicate that the forward guidance conditions had been satisfied and announce, in line with its policy sequencing, its intention to raise the key ECB interest rates by 25 basis points at the July monetary policy meeting. 』

『Looking ahead, it was agreed that the Governing Council should announce that it expected to raise the key ECB interest rates again in September, with the calibration of this rate increase depending on the updated medium-term inflation outlook, indicating that if the medium-term outlook were to persist or deteriorate, a larger increment would be appropriate at the September meeting.』

7月の予告ホームランと9月以降の金利ガイダンスの話ですね。ただここを見るとAll members agreedってなってなくて、単にmembers agreedとかit was agreedってあって一部(方向がどっちだかわからんけど)反対もあったように読めない事もない。


で、ここから先はコミュニケーションポリシーの話が来て、フラグメンテーション対策の話が来る、という部分になるのですが、すいません時間の都合上この部分は明日で勘弁ゴメンチャイ。






2022/07/11

お題「ECB6月会合議事要旨(その1)グラデュアリズムの文言をどう扱うかという議論があったとな」

安倍ちゃんのご不幸につきまして謹んでお悔やみ申し上げます。

参院選は何か相変わらず知名度さえあれば当選みたいな結果が散見されるっての何だかなーと思うし、「知名度あって主張がないから集票と賛成マシーンに有効」とかいう扱いになるのドイヒーと思ったんですが、よく考えたら碌に知見もご披露してくれないで賛成マシーンになっている日本銀行政策委員会ってのがあることを思いだしましたorzorz


〇ECBの6月会合議事要旨なんぞを鑑賞の巻

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2022/html/ecb.mg220707~d5c3246061.en.html
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank held in Amsterdam on Wednesday and Thursday, 8-9 June 2022
7 July 2022

ECBの議事要旨はセクションがクソ長いんですよね。ということで金融政策決定に関する議論の所を鑑賞するのですがこれまた長い。

『Monetary policy decisions and communication』から。

・正常化の4つの原則のうち他と明らかに毛色の異なる「gradualism」に対するお話が始まる

『Members broadly agreed that the monetary policy normalisation process should continue to be guided by the four principles of optionality, data-dependence, gradualism and flexibility.』

金融政策正常化の4つの原則、ってんで何度か言われていますが、そもそも「optionality」「data-dependence」「gradualism」「flexibility」ってのは3番目の「gradualism」がどこをどう考えても他の3つと相いれない概念であって、状況に応じて(データディペンデント)あらゆる手段を用いて(オプショナリティ)、柔軟に(フレキシビリティ)に正常化をする、って言ってるのに、何で最初の時点で「徐々にやって行く」と決め打ちが出来るのかと小一時間問い詰めたい訳ですが、そらまあECBの人達もアホじゃないからこの「グラデュアリズム」ってのだけどう見ても異質な事は分かっているんでしょうけれども、「インフレファイターの姿勢を見せないとインフレ期待が上振れる」って問題と、「そうは言っても米国なんかと違って経済の腰が弱いのは明らかなのでエイヤーでやってしまうと経済があばばばばばーになるリスク」って問題との綱引きがある、というのが基本認識にあると思うの。

でもって、パウエルが「ニンブル」をバズワード化してるので、「うちんちは米国みたいにバリバリの闘いする訳ではないよ」という意味で「グラデュアリズム」っての入れてるんだろうなあ、というのまでは想像できるのですが、実際のインフレが上振れしてしまっているのにグラデュアリズムを強調するのもやっぱりアカン話ではないかと思いますし、真面目な話ECBこそ7月にマイナス金利解除して、その代わり「この後はマイナス金利解除による経済物価への影響を見極めていきます。物価が天井を打ったことを確認出来れば暫く政策は様子を見ながら、必要ならばグラデュアルに政策金利を調整します」みたいな形で、マイナス金利撤回だけ先にやるけどその後の連続利上げはいったん示唆しない、って形にした方がスマートに思えるんですけど、何故かそうじゃなくて今回0.25%だけ上げてマイナス金利は変わらんという話になるのはどういうことなんでしょうね???


・グラデュアリズムがほかの概念と矛盾する件について喧々諤々

『Different views, however, were expressed on the need for and the interpretation of gradualism, as well as on how in practice to reconcile gradualism with the need for data-dependence and optionality in an uncertain environment.』

「データディペンデントでオプショナリティが必要な中でのグラデュアリズムとは何ぞや」来ました。

『The view was put forward that the notion of gradualism could be misleading if it was interpreted as implying too slow or too rigid a pace of adjustment in the monetary policy stance. Such an interpretation would be inconsistent with the need for optionality and data-dependence.』

という訳で、そもそもグラデュアリズムってのが「政策修正の際に物凄く遅くにしか調整しないとか、ガチガチに決められたペースでしか修正しない」って解釈されてしまうと、オプショナリティとかデータディペンデントに反するんじゃないの」というブチカマシが政策議論のパートのほぼトップに出てくるのワロタ。

『In particular, it was necessary to avoid gradualism being seen as precluding interest rate steps in excess of 25 basis points.』

グラデュアリズムというのが0.25%利上げを超える幅の利上げを排除する、という風にみられたらイクナイ、と来ました。

『Ensuring price stability over the medium term might, depending on changes in the inflation outlook and prevailing risks and circumstances, require more forceful and front-loaded responses to signal the determination to protect price stability.』

中期的な物価安定のためには、インフレの見通しやリスクや環境変化に対して、より一層力強く、先制的に対応すべきである、というご指摘ですな。

『Moreover, it was argued that the principle of gradualism suggested responding early and in a forward-looking manner, which would then reduce the need for larger and more disruptive adjustments later.』

であるからして、「グラデュアリズム」の意味するところは、フォワードルッキングにいち早く行動することによって、結果として(インフレ上振れした後始末のために)より厳しい利上げなどの引き締めをしないように済ませる、ということである。との議論がされたそうな。


『A remark was made that the merits of gradualism depended on the nature of uncertainty and shocks.』

一方でこういう見解も、ということでグラデュアリズムのメリットとして、現状の経済が置かれている不確実性とショックに対応するものですよ、という見解が出て参りました、

『In the light of a long sequence of persistent upward inflation surprises and an increasing risk of an unanchoring of inflation expectations, the “Brainard principle”, i.e. that policymakers should act cautiously if there is uncertainty about the effects of monetary policy measures, no longer applied.』

長く続くインフレ圧力、そしてインフレ期待が上振れてしまうリスクがある中では、金融政策当局は、もし政策の効果に対して不確実性があるのなら慎重に行動せよ(ブレイナード原則というらしい)ということだ。

と、グラデュアリズムに対する話が行われている訳ですが更に次のパラグラフでもその話が続くのだ。


・別にグラデュアリズムは0.25%をチマチマ利上げしていくって話じゃないですよ

『There was agreement that gradualism should not necessarily be interpreted as slow action in small steps. Therefore, members felt that the sustained succession of rate increases over the coming quarters - as reflected in the rate path embedded in market expectations and the staff projections - could be characterised as gradual.』

さっきもありましたが、ここの件についてはThere was agreementなので皆さん一致したってことね。


・ということでどうも4原則からグラデュアリズムを外すかどうかって話をしてたようです(結局外してない)

『It was cautioned that dropping the notion of gradualism could be seen as a signal that the ECB intended to take abrupt action, which could undermine predictability and risked triggering disorderly market movements. Gradualism also was considered consistent with the medium-term orientation of the ECB’s monetary policy strategy and with the prevailing uncertainty on the growth outlook. This was deemed especially important in the face of supply shocks such as those faced by the euro area, and also since the euro area was more exposed to movements in energy prices than other currency areas.』

で、 「It was cautioned that dropping the notion of gradualism」ってありますので、これはグラデュアリズムの文言を外すべきなんじゃネーノという議論があったということでしょう。ただまあ今までこれ言ってたので急に外すとインフレファイターでウホウホ利上げマンだと解釈されてしまって市場があばばばばーになるのを回避したい、ということのようでして、なんですかこの日和見姿勢はという感じですが、まあそういう事のようです。

『Overall, members agreed to retain gradualism as one of the four guiding principles for the monetary policy normalisation process, on the understanding that this did not rule out interest rate steps in increments larger than 25 basis points if and when needed to protect price stability over the medium term.』

ということで「gradualism」の文言は目出度くそのままになりましたし、グラデュアリズムだからと言って別に25bpしか利上げしないって事でもないですよね、というのを確認したそうです。

『The point was also made that the principles of optionality and data-dependence seemed to be essentially equivalent and were especially important in the present circumstances. In any case it was emphasised that the notion of gradualism should not interfere with the Governing Council’s duty to do - at all times -what was needed to maintain price stability over the medium term.』

そういう論議を経て、「グラデュアリズム」は「オプショナリティ」や「データディペンデント」と相反する概念ではありません。という屁理屈がコンファームされたようですが、お前らの中ではその理屈で良いとしても、それ世間に向かってコミュニケーションするのやっぱ難しくね???????と思うし、現実にも市場は「グラデュアリズム」の解釈に困っている感があるので、やっぱり「7月にマイナス金利解除して様子見姿勢」にすれば、説明がスッキリする気がするんですけどね〜。ここで25に拘る理由がわからん。


・今後の正常化手順のお話

『A number of members recalled that in their view, the three forward guidance criteria for interest rates established in July 2021 had been satisfied for some time. At the same time, the need to safeguard the coherence and predictability of ECB policy was acknowledged, which suggested sticking to the sequence previously communicated.』

何人かのメンバーは金利政策のガイダンス条件を既に満たしている、という見解を示したものの、ここまでのコミュニケーションでは6月利上げという話は無かったので利上げせんでヨロシという見解。

『However, it was suggested that the implied “delay” in raising interest rates should, in principle, be offset by implementing a larger rate hike in July or by indicating more explicitly the possibility of a larger interest rate move later in the third quarter of 2022. At the same time, it was cautioned that in communicating policy intentions for future meetings, the Governing Council should avoid unduly constraining its optionality and data-dependence.』

でもって利上げについては行われなかったわけですが、一方で「利上げ判断が遅れるとその後、7月なりその先なりでもっと大幅利上げをしないと行けなくなるよね」ということもあるし、同時に先々の金融政策運営について(特に利上げ幅について、でしょうけど)決め打ちコミュニケーションを取るのは「オプショナリティ」や「データディペンデント」な運営を阻害する要因になる、という指摘も入っています。

『In any case, all members agreed that, at this point, on the basis of the latest staff projections and developments in measures of underlying inflation, the three forward guidance criteria were satisfied.』

で、声明文にもあった通りですが、「今回示されたスタッフの経済物価見通しをベースにすれば、利上げに関するフォワードガイダンスの条件は満たされた」で一致しました。

『The revised medium-term inflation outlook called for further, decisive steps towards monetary policy normalisation. In line with the agreed sequencing, the present meeting would be the appropriate moment to announce that net asset purchases under the APP would end as of 1 July 2022. This was the action opening the door to a first rate hike at the July meeting.』

ガイダンス条件は満たされたのですが、APPのテーパリングを7/1に終了するのが先で、それが7月会合の初回利上げの「オープニングドアー」だそうな。

『Looking ahead, members also agreed, overall, that it was appropriate to provide guidance on the Governing Council’s expectations regarding the path for the key policy rates to be decided at the July and September 2022 meetings.』

でもって7月と9月にも利上げというガイダンスを出すのが適切だ、という話になっていまして、ちょっとちょっとお兄さんという感じですが、さっきの所ではオプショナリティとデータディペンデントだから先行きの決め打ちをあんまりしない方がエエンデネエノとの指摘があったはずだが、ここでは概ね皆さん9月までの予告ホームランを入れるのに意見が一致する、ってえのも物凄いご都合主義という感じはします。と思ったら・・・・・・・・・

『However, some reservations were expressed about appearing to “lock in” any decisions still to be taken by the Governing Council beyond the very short term.』

ベリーショートタームを超えるタームでの将来の政策に関するロックインってどうなのよという留保付き意見が幾つか出たそうです、そりゃそうだ。

『It was underlined that forward guidance always needed to remain conditional on the outlook and prevailing circumstances. However, it was also recalled that the signalling of policy intentions one or two meetings ahead had been a feature of ECB communication in the past, such as through the references to “vigilance” or “strong vigilance”, or “(very) close monitoring” of inflation risks.』

フォワードガイダンス自体はそもそもコンディショナルでその時になったら変わるかもしれんものだし、政策のシグナル文言については昔のECBからよくやっていた事(上記のようにインフレリスクに対する文言などで示していましたな、懐かしい)だし、それはそれでエエンデネエノ。というのが強調されました。


・・・・・・・で次のパラグラフで「今回は7月に25bp引き上げるのが適切と示すべき」という話になってくるのでございますが、ちょっとあんまり時間もないのと、このミニッツ、1つのパラが基本的にクッソ長いので、1パラやりだすと時間を結構食ってしまうので、誠にいかんではございますが続きは明日という事で。







2022/07/08

お題「生活意識アンケートでも短期だけでなく5年の予想インフレがズンズングイグイ上昇ですよ!!!!」

大事なのは主君そのものではなく大名家の存続、ということですな。
https://jp.reuters.com/article/britain-politics-idJPKBN2OI13I?il=0
2022年7月7日9:52 午後
ジョンソン英首相が辞任表明、相次ぐ不祥事で引責 閣僚50人超離反

江戸時代ですら「主君の身持ちよろしからず」となったら家臣団が幕府と握って「主君病気につき任務に耐えがたし」とか言って主君の押し込めをして縁戚から次の主君を迎えていたというのに、どこぞの中央銀行は主君のあたおか政策をバンバン拡大していくんだから世話は無いですし、家臣の皆さんってお家お取り潰し(この場合は決済とか発券とか業務とかの必要な機能の部門だけ残して他の機能は財務省なり金融庁なり経済企画庁(昔で言う)なりに吸収ってことでそらまあ日銀そのものは残りますけどね)になるリスク考えてないのかねと思ってしまうんですけどねえ。大袈裟な話じゃないと思うんだけど。


〇インフレ期待が上がっておりますがこれでも物価上昇は一時的と言い張り続けるのでしょうか

https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2207.htm/
「生活意識に関するアンケート調査」(第90回<2022年6月調査>)の結果
2022年7月6日
日本銀行情報サービス局

昨日は何とヤフーニュースの経済トピックのトップにこのアンケート調査の結果の記事が出ていまして、地味(だけど全国に渡って結構細かいアンケートしてるので割と渾身の力作である)調査結果がこんなに話題になるとは、ってなもんでして、どんだけ物価に対する注目度高まってますねんという所ですが。

なお、コメントが相変わらず4桁あったので恐る恐るコメント欄を見ましたが、今回は上級国民黒田が悪いみたいな展開になっておりませんでしたので日銀としてもホッと一息といった所でございましょうなあっはっは。

引用は基本的に全文から行います。
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2207.pdf


・今回の調査期間にきさらぎ会のアレ要因が含まれていない点は結構ポイントである

今回の調査期間は、

『調査実施期間 :2022年5月6日(金)〜6月1日(水)』

となっておりますので、きさらぎ会のアレは影響していない、というのが絶妙に惜しい所でございますが(きさらぎ会のアレは6/6)、逆に言えばきさらぎ会で物価上昇ネタが悪目立ちする前の時点でどうだったのか、というのを見るのにちょうど良いタイミングでしたね。

もちろんこんなの狙ってやる話じゃなくて偶然なんですけど、そういう意味では今同じのを実施したらどうなるのか見てみたい(残念ながら次は3か月後ですが^^)って感じではあるのでございます。

基本的に『1.要 旨』からペコペコ拾って見て行きます。


・先行きの景況感が謎(でもないのか)に悪化してるのですよね

『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』から参ります。

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が増加し、「悪くなった」との回答が減少したことから、景況感D.I.は改善した。』

まあ経済活動(というか行動制限の緩和というか)に関しては分かる。

『先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が減少し、「悪くなる」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。』

これなんですけど『(図表1)景況感〔Q1、3、4〕』の『<1年後を現在と比べると>』とか、その下にある『<景況感D.I.の推移>』を見ると結構ビックリする動き(個人の感想です)で、この2四半期の間に先行きDIの方が結構強烈に下がっていて、一方で現状のDIの方はジリジリと上がっている、という図になっておりまする。まあコロナからの動きなので一概には言えないところはあるんだとおもうのですがこの乖離っぷりが結構豪快で、さてこれはどっちに収斂されるのでしょうかというのが非常に気になる所ではあります。

『なお、現在の景気水準については、「悪い」、「どちらかと言えば、悪い」との回答の合計は減少した。』

なのに先行き悪くなる、が半年前から見て2倍の比率に絶賛上昇してるんですよね。



・その要因が物価に関する報道(物価そのものではなく)とか海外の株安とかウクライナとかなら一時的で済むかもですが

『1-1-2. 景況判断の根拠』

『景況判断の根拠については、「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多く、次いで「マスコミ報道を通じて」、「勤め先や自分の店の経営状況から」といった回答が多かった。』

こちらもまた『(図表2)景況判断の根拠(2つまでの複数回答)〔Q2〕』を見ると吉なんですけど、今回は「マスコミ報道を通じて」がびよーんと上がっておりまして、一方で『自分や家族の収入の状況から』は若干ですけど引き続き減少しておりますな。

もしこれが物価上昇マジ卍状態だったら収入の状況から、の回答も増えて良さそうなもんだと勝手に解釈しますと、この時点では「物価が上がってます」の実際の上昇よりも雰囲気先行で何かどよーんとしている、という風に思う訳ですが、まあゆうて物価上昇の影響はこの調査時点よりも更に強まってきているので、9月調査の時にこの内訳がどうなるのか(基本的にそう順位は変わらんので個別項目の傾向)みたいですね。

あと、今回の景況判断の根拠の中の回答項目『商店街、繁華街などの混み具合をみて』の判断が減っているということで、基本的には別に商店街があばばばばーで景況感がアイヤーである、というような事ではないのは見て取れるんじゃないですかね。



・大した変化にはなっていませんけど暮らし向きDI(ここが報道ネタになっていましたが)

金利の話はどうでもよいので飛ばして5ページ目(PDFも同じく5枚目)の『1-2. 暮らし向き、消費意識』に飛びます。

『1-2-1. 現在の暮らし向き』

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりが出てきた」との回答が減少し、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

ということでニュースにはなっていましたが、じゃあ度肝を抜く程下がってますかというと「ゆとりがなくなってきた」がこの半年の間に40.0→41.7→43.2と推移するということで、そこまで強烈ではないのでございますが、ただまあその下にある図表『<暮らし向きD.I.の推移>』の長期時系列(とにかくこの調査は長期時系列のグラフを一杯掲載してくれているのが大変にありがたくて、どこぞの大本営部局と違って淡々と結果を見せてくれるのは大変によろしいと思います)を見ますと、もともとこのDIはリーマンショック級のプレイでも起きないとそう目立って下がらん指標になっているので、その点では昨年の6月調査でコロナ後のビーク(と言ってもコロナでそんなに落ちた訳でもないのですけど)を付けた後にじりじりと直近1年で悪化をしているのは宜しくない傾向ではありますな。



・収入支出のコーナーは絵に描いたような結果ですな

『1-2-2. 収入・支出』ですが、

『収入については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が減少したことから、現在の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。先行き(1年後)については、「増える」との回答が減少し、「減る」との回答が増加したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅が拡大した。』

先行きDIが悪化してるんですよねこの2四半期になってから。その前が改善傾向だったのですが、半年前にピーク打った形になっているのが何とも微妙なアレ。


『支出については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加し、「減った」との回答が減少したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が拡大した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が増加したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が縮小した。』

ここはそらそうよとしか申し上げようがない結果になっておりますが、長期時系列の『<支出D.I.の推移>』を見ますと、この4四半期で消費実績DIがびょーんと上昇しております。まあこれを「物価高による影響」と見るのか「挽回消費によるもの」とみるのかによってインプリケーションが正反対になりそうですが・・・・・・・・・・

『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「今後の物価の動向」との回答が最も多く、次いで「収入の増減」、「余暇・休暇の増減」といった回答が多かった。』

8ページになりますが、この『(図表7)今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視すること(複数回答)〔Q11(2)〕』を見ますと、もともと多い回答ではあるのですが、『今後の物価の動向』がこれまたドドーンと伸びてて60.0とかいう結構目ん玉引んむく数字が出ております。

いやまあアタクシも毎回見ているとは言え、手元でちゃんと数字を残しているとかそういう几帳面さは欠如しておりますので、記憶ベースの話になるのですが、個別の回答項目で6割の数字出るのって結構デカくねえかと思ったのですよ。

でもってこちらの図表7ちゃんですが、回答項目が、

(図表7)今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視すること(複数回答)〔Q11(2)〕

に対して、

今後の物価の動向
収入の増減
余暇・休暇の増減
興味のある商品・サービスの有無
貯蓄や株式、不動産など保有資産の増減
ローン返済の進捗状況
その他

という回答項目が用意されていて、最初の「今後の物価の動向」がびよーんと増えているのですが、これと並び立つ項目の「収入の増減」は若干減、その後のやや雑魚キャラ感のある項目でも「余暇・休暇の増減」は減ってるとかいう感じでして、辛うじて「興味のある商品・サービスの有無」の回答が増えているので、選択的な消費は消えないで残るかという風情は漂っていますが、いやー物価の動向6割来ましたかーって感じです。

でですよ、これ最初に申し上げた通りで、例のきさらぎ会のアレが出る前の話で、きさらぎ会のアレが出て以降は「物価上昇を容認していません」祭りになってしまって更に物価が悪目立ちしてしまったのですが、それ以前の時点で既に物価の動向に対する関心は目立つ形で高まるということになっている次第。


更に次の図表8の方の質問になりますが、

『商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで「安全性が高い」、「長く使える」、「信頼性が高い」、「機能が良い」といった回答が多かった。』

こちらはどういう回答項目かというと、

(図表8)今後1年間、商品やサービスを選ぶ際に特に重視すること(3つまでの複数回答)〔Q11(3)〕

に対して

価格が安い
安全性が高い
長く使える
信頼性が高い
機能が良い
-----------------ここに壁がある-------------
健康に良い
アフターサービスが充実している
環境や社会に配慮している
-----------------ここに壁がある-------------
デザインが良い
好奇心が刺激される
ブランドイメージが良い
今までにない新しいものである
流行のものである
この中にはない

というような感じで、上位5項目が毎度順位を競っている感じなのですけど、まあ大体「価格が安い」が上にきてしまうのは毎度の事なのですが、この「価格が安い」の回答が案の定ではあるが絶賛増加中でありまして、「長く使える」という貧乏項目(とか言ってるけど物持ちの良さではアタクシの貧乏性は自慢できる(して良いのかわからんけど)レベルにあると自負しているので別に馬鹿にしているわけではありませんよ為念)の数字がこれまたズンズングイグイ上昇となっておりまして、一方で「機能が良い」というエグゼクティブ感覚に溢れた項目の回答はヘロヘロとなっている、という辺り、もう典型的に絵に描いたような展開になっていて落涙を禁じ得ません。


・何気に雇用環境DIが悪化してるのよね

『1-2-3. 雇用環境』

『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「かなり感じる」との回答が増加したことから、雇用環境D.I.は悪化した。

(注)勤労者:会社員・公務員(会社役員を含む)およびパート・アルバイトなど。』

あらあらまあまあという感じで、これここもと2四半期に渡って悪化してるんですよね。水準自体は悪くないのですけど・・・・・・・・・



・どう見てもインフレ期待の上振れです本当にありがとうございました

さてメインイベントの『1-3. 物価に対する実感』である。

『1-3-1. 現在の物価』

『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)と回答した人の割合が8割台後半となった。

1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+8.1%(前回:+6.6%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。

(注1)「あなたが購入する物やサービスの価格全体」と定義。
(注2)『上がった』は「かなり上がった」と「少し上がった」の合計。』

まあこれは『(図表10)現在の物価に対する実感〔Q12、13〕』を見れば一目瞭然ですが、昨年12月調査では「かなり上がった」が16.6ポイントだったのに対して直近6月調査では30.6ポイントに急上昇しておりまして、そらそうよとしか申し上げようがない。


『1-3-2. 1年後の物価』

短期インフレ予想である。

『1年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台後半となった。

1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+8.3%(前回:+6.4%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。

(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

平均値の推移が12月調査から+5.5%→+6.4%→+8.3%と勢いよく上昇しておられます。


『1-3-3. 5年後の物価』

そして長期インフレ予想である。

『5年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が約8割となった。

これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+6.7%(前回:+5.1%)、中央値は+5.0%(前回:+3.0%)となった。

(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

何と!!!中央値までジャンプアップ!!!!!!!!!!!!!!!!!

ということで、平均値が+4.8%→+5.1%→+6.7%な上に、中央値が+3.0%→+3.0%→+5.0%とこれはもうエライコッチャで2%にアンカーどころか上振れしてねえか位の勢いになっている(もちろんこの水準をそのまま鵜呑みにしてはいけませんので念のため申し添えます)のですが、まあ以前が2%にインフレ期待がアンカーされていない状態、だとしても、直近でこれだけ上がっている(しばらく前までは中央値は+2.0%でした)し、先日ネタにしたように短観の企業の価格意識もズンズングイグイ上昇しておりまして、これはマイナス金利解除がどうのこうのとかいうポジトーを抜きにしても、バックワードルッキングの適合的期待形成によるインフレ期待の上昇が短期だけではなく中長期にも起きてませんでしょうか??と申し上げたくなるムーブなんじゃないですかねー。


・・・・・・さて短観とこの調査を受けまして、今月の展望レポートで物価とインフレ期待に対する言及がどうなるのか、まあどうせ日銀大本営は自分たちの意地と趣味でやってる政策を変えないという目的から逆算した大本営発表のアセスメントとかしないと思うのですが、だんだんその大本営発表も苦しくなって来るし、どうしようもなくなってからゴメンナサイするんだったら大本営解体論が出てもおかしくないと思うんですけど、そういう危機感って無いもんなんですかぬー。


・いやーこの部分の回答、きさらぎ会の前で良かったですねー(超棒読み)

16ページまでワープします。

『1-6. 日本銀行に関する認知度・信頼度等(注)原則6月・12月調査において実施。ただし2011年6月は実施していない。』

『1-6-1. 日本銀行の目的』

『日本銀行が「物価の安定」を目的としていることについては、「知っている」との回答が約3割となった。また、日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていることについては、「知っている」との回答が2割台前半となった。』

『日本銀行が、積極的な金融緩和を行っていることについては、「知っている」との回答が3割台前半となった。また、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を行っていることについては、「知っている」との回答が約2割となった。』

『日本銀行が、「金融システムの安定」を図ることを目的としていることについては、「知っている」との回答が2割台半ばとなった。』

概ね平常運転の回答です。



『1-6-2. 日本銀行に対する関心や認知度、評価』

『日本銀行に対する関心や認知度等について尋ねたところ、『日本銀行の活動に日頃から関心がある』(注1)と回答した人の割合は2割台半ば、『日本銀行は私たちの生活に関係がある』(注2)と回答した人の割合は7割台半ば、『日本銀行は私たちの生活に役立っている』(注3)と回答した人の割合は4割台半ばとなった。

(注1)『関心がある』は「関心がある」と「どちらかと言えば、関心がある」の合計。
(注2)『関係がある』は「関係がある」と「どちらかと言えば、関係がある」の合計。
(注3)『役立っている』は「役立っている」と「どちらかと言えば、役立っている」の合計。』

でまあこの回答、『(図表18)日本銀行に対する関心や認知度、評価』を見ていただきますと、さすがに指値オペがどうのこうのみたいな話もあったし円安もあったので「関心がある」が若干増えたかなという感じですが、あとはまあ平常運転の回答となっています。

よって、

『(3)日本銀行は私たちの生活に役立っている〔Q23(3)〕』

の回答も「役立っていない」が若干増えたとは言えこれまた平常運転になっておりまして、さらに、


『1-6-3. 日本銀行の外部に対する説明への評価』

『日本銀行の外部に対する説明への評価について尋ねたところ、『わかりにくい』(注)と回答した人の割合は5割台前半となった。

また、『わかりにくい』と回答した人にその理由を尋ねたところ、「日本銀行の説明や言葉が専門的で難しい」との回答が最も多く、次いで「日本銀行について基本的知識がない」、「金融や経済の仕組み自体がわかりにくい」といった回答が多かった。

(注)『わかりにくい』は「わかりにくい」と「どちらかと言えば、わかりにくい」の合計。』

と、この回答もほぼ平常運転で収まっております。


『1-6-4. 日本銀行の広報活動に関する評価』ですが、

『日本銀行に関する情報を得た情報源としてあてはまるものを尋ねたところ、「テレビ」との回答が最も多く、次いで「新聞、雑誌」、「インターネット・ニュースサイト」といった回答が多かった。

一方、「日本銀行に関する情報は見聞きしたことがない」と回答した人の割合は1割台半ばとなった。』

ここはちょっと面白かったです。『(図表20)日本銀行に関する情報を得た情報源(複数回答)〔Q24〕』を見ると、今回調査(前回は昨年12月)で前回対比「テレビ」と「インターネット・ニュースサイト」の数字が結構増えておりまして、さすがに指値オペだの0.25%防衛だのというのが話題になったんだなあと思います。なおきさらぎ会は何度も申し上げますがこの調査期間終了後の事案ですので念のため。

最後は銀行券の質問なのですがそれは飛ばしますのでその1つ手前の所までネタにします。


『1-6-5. 日本銀行への信頼度』

いやー実に惜しかった!!!!!!

『日本銀行への信頼度を尋ねたところ、『信頼している』(注1)と回答した人の割合は4割台半ばとなり、『信頼していない』(注2)と回答した人の割合は1割弱となった。

『信頼している』との回答の理由としては、「日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思うから」との回答が最も多かった。

『信頼していない』との回答の理由としては、「日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから」との回答が最も多かった。

(注1)『信頼している』は「信頼している」と「どちらかと言えば、信頼している」の合計。
(注2)『信頼していない』は「信頼していない」と「どちらかと言えば、信頼していない」の合計。』

こちら、惜しくも平常運転の結果しか出ておりませんで、きさらぎ会のアレの直後に調査したら物凄く面白い回答が見れたかもしれないので実に残念ですし、さらに惜しい事にこの調査項目、次回が12月調査なのですっかりきさらぎ会の事なんぞ忘却の彼方に飛んでいると思うので、これは実に惜しかったですねえとしか申し上げようがありませんが、別に情報サービス局がタイミング狙いすまして設定した訳ではありませんので、お間違えの無いようによろしくお願いします(何を?)。

と言ったところでやっぱりこのアンケートは面白いです。





2022/07/07

お題「FOMC6月議事要旨の議論のパートを珍しく逆順読みをしないでよんでみる」

今日は七夕ですね。

自分の趣味と意地であたおか政策を続ける老害総裁とそれを止めようともしないポンコツが全員滅亡してまともな政策が戻ってきますようにナムナム。

・・・・・こうですかわかりません(><;


〇6月FOMC議事要旨である

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20220615.htm

まあ例によって寝起きで読んでるのでアレですが、今回はいつもの手抜き読みではなくて『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』を真面目に語順通りに読んでみた(というか目を泳がせてみた)。ということで語順通りに参りますね。


・経済に関しては「タイト化したファイナンシャルコンディション」の役割を出している辺りに味わいがある

『In conjunction with this FOMC meeting, participants submitted their projections of the most likely outcomes for real GDP growth, the unemployment rate, and inflation for each year from 2022 through 2024 and over the longer run based on their individual assessments of appropriate monetary policy, including the path of the federal funds rate. The longer-run projections represented each participant's assessment of the rate to which each variable would be expected to converge, over time, under appropriate monetary policy and in the absence of further shocks to the economy. A Summary of Economic Projections (SEP) was released to the public following the conclusion of the meeting.』

これはSEPを作ったよ、という定型文体なので1パラは基本読まなくても無問題。次からが経済情勢のパートになる。まずは現状認識。

『In their discussion of current economic conditions, participants noted that overall economic activity appeared to have picked up after edging down in the first quarter. Job gains had been robust in recent months, and the unemployment rate had remained low. Inflation remained elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher energy prices, and broader price pressures. Participants recognized that the invasion of Ukraine by Russia was causing tremendous human and economic hardship for the Ukrainian people. Participants judged that the invasion and related events were creating additional upward pressure on inflation and were weighing on global economic activity. In addition, participants indicated that COVID-related lockdowns in China were likely to exacerbate supply chain disruptions. Against this background, participants stated that they were highly attentive to inflation risks.』

とは言いましても2パラ目というのもほぼ定型みたいなもんで、ここでは声明文で記載されていた経済情勢に関する話と概ね同じものを記載している格好です。では3パラですがこちらは先行き見通しなのでその辺からすこしネジを入れて読みだす。

『With regard to the economic outlook, participants noted that recent indicators suggested that real GDP growth was expanding in the current quarter, with consumption spending remaining strong. Participants generally judged that growth in business fixed investment appeared to be slowing, and activity in the housing sector appeared to be softening, in part as a result of a sharp rise in mortgage rates.』

今後の見通しについてですが、最近の指標によると実質GDPは4−6月期は(1−3月期の若干の減速から)拡大になっており、消費が強いっすね。ただ企業の固定資産投資と住宅セクターが弱くなってきてて、住宅の弱さはモーゲージ金利が急上昇したことも一因ですね。

『Correspondingly, participants indicated that they had revised down their projections of real GDP growth for this year, consistent with ongoing supply chain disruptions and tighter financial conditions.』

てな訳でSEPの本年GDP見通しについてはリバイスダウンしました。サプライチェーンの混乱と金融環境のタイト化を反映させました。

『Participants noted that the imbalance between supply and demand across a wide range of product markets was contributing to upward pressure on inflation. They saw an appropriate firming of monetary policy and associated tighter financial conditions as playing a central role in helping address this imbalance and in supporting the Federal Reserve's goals of maximum employment and price stability.』

需給バランスは幅広い財市場において起きており、これが物価の上昇圧力となっている。そんな訳で適切な金融引き締めと、それによって発生するファイナンシャルコンディションのタイト化が物価安定に対して寄与するでしょう。と来ておりまして、まあいつもの話しなんですけど、利上げ後の利下げまで織り込みに行って長期金利が下がられるとそーゆー意味ではFEDも困るでしょうなあ。


・自然体で物価が落ち着いていくには「over the next few years」だそうだよ

3パラの途中をぶつ切りして小見出しを入れるの巻ですが、

『An easing of supply bottlenecks, a further rise in labor force participation, and the waning effects of pandemic-related fiscal policy support were cited as additional factors that could help reduce the supply?demand imbalances in the economy and therefore lower inflation over the next few years.』

供給制約の解消、労働参加率の上昇(=レーバーフォースの拡大)、コロナ対策でぶっこんだ財政政策の効果が消えていくこと、は需給バランスの改善に寄与し、それによりましてインフレを引き下げるでしょう、という話をしているのですが、そのタイムスパンが「over the next few years」ってオメーその間に適合的期待形成でインフレ期待が上振れしたらどないすんねん、という議論は後の方にある(と思った)のでその時に。

『That said, the timing and magnitude of these effects were uncertain. Participants saw little evidence to date of a substantial improvement in supply constraints, and some of them judged that the economic effects of these constraints were likely to persist longer than they had previously anticipated. Participants stressed the need to adjust the stance of policy in response to incoming information regarding the evolution of these and other factors.』

ではその「over the next few years」ですが、上記の要因がいつ起きて、それがどのような影響を与えるかとかuncertainである、と来まして、その次には「供給制約の顕著な改善がおきている、というようなエビデンスは碌すっぽみられませんなあ」と悲しい話をして、さらにそのうちの数名(some of them)は供給制約の影響が以前考えていたよりも長く続きますなあ、と仰せ。

ということで今後も上記の要因やその他の要因などのデータを見ながら政策スタンスをアジャストしていく必要がありますよね、という話でした。


4パラ以降はしばらくセクター別の状況になる。


・家計は強いのだがやや減速の動きもありまっせみたいな感じですね

『In their discussion of the household sector, participants indicated that consumption spending had remained robust, in part reflecting strong balance sheets in the household sector and a tight labor market.』

家計部門は強くてその背景の一部には家計のバランスシートが強い事と、労働市場がタイトな事がありますよ。

『Several participants noted that household spending patterns appeared to be shifting away from goods to services.』

でもって消費は財からサービスにシフトしていると来まして次が味わいのある指摘。

『Several participants indicated that some of their contacts reported that the pace of consumer spending, though strong, was beginning to moderate. One reason cited for this moderation was that the purchasing power of households was being reduced by higher prices for food, energy, and other essentials.』

個人消費ですが、食料品、エネルギー、その他生活必需品の価格上昇によって購買力の低下が起きており、この影響で従来ロバストな強さだった個人消費がモデレートになってきている、という指摘が管内からのヒアリング等で観察されます、という数名の参加者の指摘が順当な指摘だがきちんと入れているのに味わいを感じます。

『Participants generally expected higher mortgage interest rates to contribute to further declines in home sales, and a couple of participants noted that housing activity in their Districts had begun to slow noticeably.』

モーゲージ金利上昇を受けた住宅市場のスローダウン、一部では顕著な動きになっていると。

『Against the backdrop of rising borrowing costs and higher gasoline and food prices, a couple of participants commented that consumer sentiment had dropped notably in June, according to the preliminary reading in the Michigan survey.』

借入コストと生活必需品価格の上昇によって消費者のセンチメントが落ちてきているんじゃネーノという指摘でこの部分終了。


・企業部門は供給制約問題の話のオンパレード

5パラめ。

『With respect to the business sector, participants observed that their contacts generally reported that sales remained strong, although some contacts indicated that sales had begun to slow and that they had become less optimistic about the outlook.』

企業セクターの所でも「依然として強いんだが減速の兆しがある」という表現ですね。でもってその後は・・・・・・・

『In many industries, the ability of firms to meet demand continued to be limited by labor shortages and supply chain bottlenecks. Firms relying on international sources for their inputs were seen as encountering particularly acute supply chain disruptions. Supply constraints, labor shortages, and rising input costs were also reportedly limiting energy and agricultural producers' ability to take advantage of the higher prices of their products by investing and expanding their production capacity.』

これでもかとばかりに供給制約の話をしてて、その中にはサプライチェーン問題以外にも労働供給不足た投入コストの上昇なども挙げてて、これらの動きによってエネルギーセクターや農業では新規の投資をしようという動きが起きにくくなっている、と供給制約のせいで供給能力の拡大が起きない問題という話をして、

『Similarly, a few participants noted that, in other sectors of the economy, their contacts reported that they were postponing investment or construction projects because of rising input and financing costs.』

エネルギーや農業セクター以外でも金利上昇によって新規の設備投資も手控えらえる動きがあります。

『With supply challenges still widespread, contacts continued to assess that supply constraints overall were significant, and many of them judged that these constraints were likely to persist for some time.』

という訳でまたサプライチェーンの問題に戻ってますが、全編これ供給制約問題のオンパレードでしたな。



・労働市場も強い話をしているのですが、砂漠の蜃気楼を見ているような指摘がちょこちょこ練り込まれる

6パラ目からは労働市場。

『Participants noted that the demand for labor continued to outstrip available supply across many parts of the economy. They observed that various indicators pointed to a very tight labor market. These indicators included an unemployment rate near a 50-year low, job vacancies at historical highs, and elevated nominal wage growth. Additionally, most business contacts had continued to report persistent wage pressures as well as difficulties in hiring and retaining workers. However, some contacts reported that, because of previous wage hikes, hiring and retention had improved and pressure for additional wage increases appeared to be receding.』

この辺は労働市場がどこからどう見ても非常に強くて、賃金上昇圧力も大変なこっちゃである、という話をしておりますが、最後の方には「some contacts reported that」と一部のアネクドータルな話としてではあるのですが、ここまでお賃金を上げたり待遇良くしたりしてきたんで、さすがに一段の賃金上昇圧力は以前よりマシになっている、という動きもある、と希望的観測なのかもしれんがそういう話。

・・・・・・まあこれ読んでて私もこの辺りまで来るとほほーと思う訳ですが、現状認識の部分でちょこちょこと「最近すこし物価上昇圧力に通じるものが改善してる部分もあるんじゃね」というのを入れておりまして、これがガチなのか砂漠で見た蜃気楼なのかはよくわからんですが、まあ蜃気楼であっても議事要旨に練り込んでみたい、というFEDのお気持ちは察しました(個人の妄想です)。

7パラ。

『Employment growth, while moderating somewhat from its pace earlier in the year, had remained robust. Several participants observed that labor force participation remained below its pre-pandemic level because of the unusually large number of retirements during the pandemic and judged that the labor force participation rate was unlikely to move up considerably in the near term. A couple of participants raised the possibility that tight labor markets would spur investment in automation by firms, boosting labor productivity.』

雇用の伸びはロバストだよ、という話をしてますが、ここでも最後に2名の参加者の指摘ですけど、雇用確保が大変なので自動化投資などが行われてきており、これが労働生産性の向上に寄与するんじゃないか、という話があったのがちょっとチャーミングでした。

8パラ。

『While labor markets were anticipated to remain tight in the near term, participants expected labor demand and supply to come into better balance over time, helping to ease upward pressure on wages and prices.』

労働市場の需給バランスはそのうち改善(需要超過が軽減)して賃金物価上昇圧力を緩和するでしょう、という願望から始まりまして、

『As in the case of product markets, they anticipated that an appropriate firming of monetary policy would play a central role in helping address imbalances in the labor market. 』

財市場においては金融政策の適切な引き締めが労働市場のインバランス解消に中心的な役割を果たすでしょう、ってホンマカイナという話が出てきました。

『With the tightness in labor markets anticipated to diminish over time, participants generally expected the unemployment rate to increase, as the median projection of the unemployment rate in the June SEP showed a gradual rise over the next few years, reaching 4.1 percent in 2024. In light of the very high level of job vacancies, a number of participants judged that the expected moderation in labor demand relative to supply might primarily affect vacancies and have a less significant effect on the unemployment rate.』

この辺は失業率の見通しとか求人倍率の話しとかの見通しです。


・インフレーションのところはあばばばばーで強いがなという話のオンパレード

9パラからが本命の物価である。

『Participants noted that inflation remained much too high and observed that it continued to run well above the Committee's longer-run 2 percent objective, with total PCE prices having risen 6.3 percent over the 12 months ending in April. They also observed that the 12-month change in the CPI in May came in above expectations.』

4月も5月も物価指標がクソ高くて遺憾の極みとな。

『Participants were concerned that the May CPI release indicated that inflation pressures had yet to show signs of abating, and a number of them saw it as solidifying the view that inflation would be more persistent than they had previously anticipated.』

5月CPIデータを見ますとインフレ圧力が弱まるサインすらでておらんのが実に怪しからんしこりゃインフレ圧力が従来予想よりも長引くわ、だそうです。

『They commented on the hardship caused by elevated inflation, with low- and moderate-income households especially affected. These households had to spend more of their budgets on essentials such as food, energy, and housing and were less able to bear the rapidly rising costs of these essentials. In that context, some participants noted that their contacts had reported that low- and moderate-income consumers were shifting purchases to lower-cost goods.』

所得が低かったりする人たちにインフレがまさしくハードヒット中だという話ですねここは。

『Participants also stressed that persistently high inflation would impede the achievement of maximum employment on a sustained basis.』

で、高インフレは最大雇用を安定的に達成する阻害要因になります、と来まして次のパラ。

『Participants judged that strong aggregate demand, together with supply constraints that had been larger and longer lasting than expected, continued to contribute to price pressures across a broad array of goods and services.』

超過需要が想定よりも大きくて色んな物価に上昇圧力がかかってあちゃーである。

『They noted that the surge in prices of oil and other commodities associated with Russia's invasion of Ukraine was boosting gasoline and food prices and putting additional upward pressure on inflation. Participants commented on the global nature of inflation pressures, and a few of them added that many foreign central banks were also firming the stance of monetary policy. Several participants judged that a shift in spending from goods to services was likely to be associated with less upward pressure on prices in the goods sector, but also an intensification of upward pressure on prices in the services sector.』

色々な面から物価上昇圧力あるで、という話をこれでもかと列挙してますな。ちょこちょこ砂漠の蜃気楼はあるけど、前の部分みたいな書き方じゃなくて、結局最後はインフレ圧力があばばばばーであるという話に持って行っておるのが、物価に関する記述の特色ですな(個人の感想です)。

『Participants had revised up their PCE inflation projections for 2022 in their June SEP submissions, largely in response to higher-than-expected inflation readings and the slower anticipated resolution of supply constraints. They expected that the appropriate firming of monetary policy and an eventual easing of supply and demand imbalances would bring inflation back down to levels roughly consistent with the Committee's longer-run objectives by 2024 and keep longer-term inflation expectations well anchored.』

ここはSEPの見通し引き上げたよ、というのと適切な引き締めで物価が2024年に向けて落ち着くし、長期のインフレ期待はその間アンカーされ続けるでしょう、と来ましたと思ったら次のパラでは、


・インフレ期待については多くの参加者が長期のインフレ期待上振れへの懸念を示すというキタコレ状態

『Participants observed that some measures of inflation expectations had moved up recently, including the staff index of common inflation expectations and the expectations of inflation over the next 5 to 10 years provided in the Michigan survey.』

11パラはインフレ期待の話です。最近一部の指標でインフレ期待の上昇が観測されますよ、と来ましてから、
『With respect to market-based measures, however, a few participants noted that medium-term measures of inflation compensation fell over the intermeeting period and longer-term measures were unchanged.』

市場のインフレ期待を見ると前回FOMCよりロンガータームのインフレ期待が下がっている、という指摘も入っているが、正直こういう時の市場のインフレ期待ってTIPSとかインフレスワップで見るんでしょうけれども、雰囲気でオーバーシュートするからあんまりあてにされても困るんですが、と思いました(個人の感想です)。

『While measures of longer-term inflation expectations derived from surveys of households, professional forecasters, and market participants were generally judged to be broadly consistent with the Committee's longer-run 2 percent inflation objective, many participants raised the concern that longer-run inflation expectations could be beginning to drift up to levels inconsistent with the 2 percent objective.』

マーケットとかプロフェッショナルフォーキャスター(要は何とかスト)によるインフレ期待はFEDマンデートの2%で長期の所アンカーされているのですが、と前置きがあるのですがその次にキタコレ(既にその手の話は出ているので別にサプライズとかではないが)なのは「many participants raised the concern that longer-run inflation expectations could be beginning to drift up to levels inconsistent with the 2 percent objective.」とインフレ期待が上振れて怪しからんことになる事への懸念が多くの参加者から出ていますってことですな。

『These participants noted that, if inflation expectations were to become unanchored, it would be more costly to bring inflation back down to the Committee's objective.』

上振れしたらさらに政策運営が難しくなるよ、というまあこれは当然の指摘。



・リスクについてはまあ普通の話である

次はリスクについて。

『In their discussion of risks, participants emphasized that they were highly attentive to inflation risks and were closely monitoring developments regarding both inflation and inflation expectations.』

まあリスクのいの一番はインフレの長期化とインフレ期待の上昇ですわな。

『Most agreed that risks to inflation were skewed to the upside and cited several such risks, including those associated with ongoing supply bottlenecks and rising energy and commodity prices. Participants judged that uncertainty about economic growth over the next couple of years was elevated.』

物価のリスクは上ですよ。

『In that context, a couple of them noted that GDP and gross domestic income had been giving conflicting signals recently regarding the pace of economic growth, making it challenging to determine the economy's underlying momentum.』

の次に2名の指摘として、経済成長ペースに国内の所得増加が合わなくなっているという指摘。

『Most participants assessed that the risks to the outlook for economic growth were skewed to the downside. Downside risks included the possibility that a further tightening in financial conditions would have a larger negative effect on economic activity than anticipated as well as the possibilities that the Russian invasion of Ukraine and the COVID-related lockdowns in China would have larger-than-expected effects on economic growth.』

経済のリスクはダウンサイド、理由はロシアと中国のロックダウン、とここは普通の話。


・政策についてはちょっと流し気味に駆け足で参ります

やっと政策の所に着いたわw

『In their consideration of the appropriate stance of monetary policy, participants concurred that the labor market was very tight, inflation was well above the Committee's 2 percent inflation objective, and the near-term inflation outlook had deteriorated since the time of the May meeting. Against this backdrop, almost all participants agreed that it was appropriate to raise the target range for the federal funds rate 75 basis points at this meeting.』

75bp引き上げの話な。

『One participant favored a 50 basis point increase in the target range at this meeting instead of 75 basis points.』

投票してない人も含めてジョージさんだけだったのが50bp主張したのは。

『All participants judged that it was appropriate to continue the process of reducing the size of the Federal Reserve's balance sheet, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that the Committee issued in May.』

バランスシート縮減は全員一致。

『In light of elevated inflation pressures and signs of deterioration in some measures of inflation expectations, all participants reaffirmed their strong commitment to returning inflation to the Committee's 2 percent objective. Participants observed that a return of inflation to the 2 percent objective was necessary for creating conditions conducive to a sustainably strong labor market over time.』

2%の目標についてストロングなコミットメントであることを強調すべしでこれまた一致。


『In discussing potential policy actions at upcoming meetings, participants continued to anticipate that ongoing increases in the target range for the federal funds rate would be appropriate to achieve the Committee's objectives. In particular, participants judged that an increase of 50 or 75 basis points would likely be appropriate at the next meeting.』

次回の利上げは50か75が適切である。

『Participants concurred that the economic outlook warranted moving to a restrictive stance of policy, and they recognized the possibility that an even more restrictive stance could be appropriate if elevated inflation pressures were to persist.』

政策スタンスは「緩和の縮小」ではなく「引き締め的」である必要があると。

『Participants noted that, with the federal funds rate expected to be near or above estimates of its longer-run level later this year, the Committee would then be well positioned to determine the appropriate pace of further policy firming and the extent to which economic developments warranted policy adjustments.』

年末のFF金利は「中立金利かもうちょっと高い水準」に居るのが適切との認識。

『They also remarked that the pace of rate increases and the extent of future policy tightening would depend on the incoming data and the evolving outlook for the economy.』

ただしそのペースは出たとこ勝負である。

『Many participants noted that the Committee's credibility with regard to bringing inflation back to the 2 percent objective, together with previous communications, had been helpful in shifting market expectations of future policy and had already contributed to a notable tightening of financial conditions that would likely help reduce inflation pressures by restraining aggregate demand.』

我々のスタンスを明確に示していることが物価の落ち着きに繋がる(キリッ)だそうです。負け犬のオーボエにしか聞こえんが(個人の感想です)。

『Participants recognized that ongoing policy firming would be appropriate if economic conditions evolved as expected.』

ということで今後も引き締め続けるよ!だそうです。

さてあと2パラ。なんか政策の所に来て急いでるんじゃねえの?というのは気のせいではありません(^^)。

『At the current juncture, with inflation remaining well above the Committee's objective, participants remarked that moving to a restrictive stance of policy was required to meet the Committee's legislative mandate to promote maximum employment and price stability.』

また「引き締め的なスタンスに向かうのが重要」の話がでててしつこいしつこい。

『In addition, such a stance would be appropriate from a risk management perspective because it would put the Committee in a better position to implement more restrictive policy if inflation came in higher than expected. Many participants judged that a significant risk now facing the Committee was that elevated inflation could become entrenched if the public began to question the resolve of the Committee to adjust the stance of policy as warranted. On this matter, participants stressed that appropriate firming of monetary policy, together with clear and effective communications, would be essential in restoring price stability.』

物価安定へのコミットとその達成手段がある、という点について懸念が生じると大変にエライコッチャになるのでそうならないようにしたい、とこれまた負け犬のオーボエ(以下同文)。

『Participants remarked that developments associated with Russia's invasion of Ukraine, the COVID-related lockdowns in China, and other factors restraining supply conditions would affect the inflation outlook and that it would likely take some time for inflation to move down to the Committee's 2 percent objective.』

最終パラはロシアのウクライナ侵攻と中国のロックダウンの物価への上昇圧力に関しての言及から始まり、

『Participants also judged that maintaining a strong labor market during the process of bringing inflation down to 2 percent would depend on many factors affecting demand and supply.』

過剰需要の解消を進める中でも労働市場が強い事を維持できるでしょう、と虫の良い見通しが言及され、

『Participants recognized that policy firming could slow the pace of economic growth for a time, but they saw the return of inflation to 2 percent as critical to achieving maximum employment on a sustained basis.』

最後にしれっと「金融引き締めは経済成長ペースを減速させますが、物価を2%に落ち着かせるのが大正義」という認識を示してしめております。

・・・・・・いやー何か政策の所の話は今後どうなるかよくわからん面が多々あるので今回は流し気味にしまして、本命は物価だろうと思って前半の方をせっせと読んだので政策の所流してしまいましたサーセン。

#生活意識アンケートも面白かったのだがさすがに時間がないので明日にでも






2022/07/06

お題「需給ギャップはマイナスで潜在成長率は上昇とな/デーリー総裁のちょっと前の講演を鑑賞の巻」

ちょっと前の記事ですが。
https://www.agrinews.co.jp/news/index/85061
2022年6月28日
猛暑で野菜全面安

『連日の猛暑からスーパーでの売れ行きが停滞し、野菜相場が全面安の展開だ。果菜、結球類は急な気温上昇と日照量の増加で、生育遅れが回復。先行産地と重なり、短期間で相場が急落した。日持ちの不安も加わって荷動きは鈍く、厳しい販売となっている。』

『首都圏のあるスーパーは、先週末の野菜売り上げが前年同期比7%減。他のスーパーも猛暑で週末は客足が減り、「平日は一段と落ち込む」とみる。』

でもって、猛暑効果として、

『高冷地産が本格化してきた結球類も似た傾向で、キャベツは65円と同17%安。「終盤産地の残量が例年よりも多い中、後続が順調に出てきて荷余り感が強い」(卸売会社)』(以上、上記URL先より)

とかなるほどと感心するのであった(当たり前じゃボケと言われそうですが、汗)。


〇需給ギャップマイナスのままですかそうですか

https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/index.htm/
需給ギャップと潜在成長率

毎度おなじみの日銀推計値なのですが、例によってエクセルの方から数字拾ってきます。

需給ギャップ(このシートの2021.1Qとあるのは暦年なので2021/01-2021/03となります)

左から、需給ギャップ、資本投入ギャップ、労働投入ギャップの順

2021.1Q  -1.44   -1.07 -0.38
2021.2Q  -1.52   -1.04 -0.48
2021.3Q  -1.46   -1.02 -0.45
2021.4Q  -1.47   -0.79 -0.68
2022.1Q  -1.21   -0.70 -0.51

うーんこのという感じで、この調子ですとまあ7月の会合でも(物価見通しは上方修正するとさすがに思いますけどどうせ上げるのは22年度だけっしょ)需給ギャップも依然としてマイナスであり金融緩和のサポートが必要だから(ここまでの理屈は是非はともかく通っている)10年金利0.25%が必要(という結論に必ずしもならないはずなのに何の点検もしないで毎度これになるのが怪しからん)、という何時もの理屈が炸裂するということになるんでしょうね。

まあちょっと今回ホッとしたのは潜在成長率で、

左から、潜在成長率、TFP、資本ストック、労働時間、就業者数

半年なのと前の数字の水準比較するので2017年度から取ってますが

2017.1 : 2017.2Q-2017.3Q  0.46   0.06 0.34 -0.42 0.48
2017.2 : 2017.4Q-2018.1Q  0.31   -0.02 0.36 -0.51 0.48
2018.1 : 2018.2Q-2018.3Q  0.18   -0.07 0.42 -0.61 0.45
2018.2 : 2018.4Q-2019.1Q  0.12   -0.09 0.44 -0.68 0.44
2019.1 : 2019.2Q-2019.3Q  0.07   -0.06 0.39 -0.66 0.40
2019.2 : 2019.4Q-2020.1Q  0.10   0.01 0.37 -0.61 0.33
2020.1 : 2020.2Q-2020.3Q  0.11   0.12 0.22 -0.55 0.32
2020.2 : 2020.4Q-2021.1Q  0.02   0.25 -0.04 -0.50 0.31
2021.1 : 2021.2Q-2021.3Q  0.06   0.39 -0.12 -0.47 0.26
2021.2 : 2021.4Q-2022.1Q  0.22   0.52 -0.09 -0.45 0.24

ということで、昨年度下期潜在成長率の推計値が上がっててだいたいTFPの上げで説明できるという結果になっていますな、だからどうしたと言われると困りますが、潜在成長率高い方が望ましい物価上昇とやらの実現には好ましいんじゃなかったっけ。というだけのメモでした。



〇SF連銀デーリー総裁の講演をネタにしてみました

ややタカ寄りではあるのですが、イエレンとウィリアムズを輩出しているSF連銀なので、だいたい現執行部の意向に近い所を出してくるのがSF連銀のよくあるパターンなので、まあ出たらチェックしておくのは損ではない、というのがSF連銀である(個人の感想です)。

URL長いのでハイパーリンクは途中の文字列までにしか掛けません(画面が乱れると思うので)が、一応ちゃんと当該ページに飛ぶようにセットしております(筈です)。
https://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/mary-c-daly/2022/june/policy-nimbleness-through-forward-guidance/
Policy Nimbleness Through Forward Guidance
Mary C. Daly, President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of San Francisco
Shadow Open Market Committee Conference
Chapman University
Orange, CA
June 24, 2022
1:00 PM PDT

おどりゃまた先々週のネタを出しやがってというツッコミは勘弁して頂きましてですね(汗)。


・題名が出オチにも程があるのですが・・・・・・からの雑談で中々本文に入らないアタクシ(すいません)

題名の『Policy Nimbleness Through Forward Guidance』っていうのがもう何だかねという感じで、だったらフォワードガイダンス出すの止めろやと思いますし、大体からして中央銀行が先行きの政策金利パスについて決め打ちコミュニケーションをするから、市場が思考停止状態になってしまって、市場金利の動向が毎度極端から極端に振れる、という結果になってしまう訳で、お願いだからもうドットチャートとか出すの止めてくれよと思うんですよね。そうすれば「中立金利はいくらくらいだろう」とかそういう辺りからちゃんと民間エコノミストが個別に考えて行って、そこから「だいたいこの程度金利を上げると少なくとも基調的な物価に下げ要因として働くんじゃないか」みたいな話になってきて、もうちょっとこう市場の見方がバラける結果、市場の期待が極端に右往左往しなくて済むようになると思うのですが、ちょっと誰かFEDに伝えてやって下せえ。

と書いてて急に思い出したのですが(本文に入れ本文に)、昨日引用したパウエルの会見の物価コーナーなんですが、あれ再度読んでて思ったのですけど、「インフレ期待」の事をやたら連呼していた、っての実は一つポイントになり得る話で、資源価格とかFED的にはどうしようもないし、そもそもFEDにしたって資源価格叩き落とすくらいの金融引き締めはやらない(景気が死ぬから)のですが、「期待」の方が落ち着いてくれれば何とかならんかね、というようなイメージなんじゃないかと思ったんですよ。

つまりですね、確かにインフレ退治大正義、という話を前面に打ち出してはいるのですが、これはこれでそういわないと政治的にもヤバいし、あんまりここでユルユルの話をすると「インフレ期待」に悪影響を与えることになってしまうので、ファイティングポーズはバッチリとるけど、そうは言っても別に資源価格叩き落とすために景気を殺しにいく、までの覚悟にはなってなくて、寧ろ威勢の良い事をいって金融環境が引き締まって効果が出た方が(゚д゚)ウマーって思ってるんでねえの、ってな気がしました。

よって、いきなり直近のように(英国でも無いのに)リセッション相場じゃーとなるのは薬が効きすぎなのか、市場が思考停止なので目先なんかストーリー組み立てれるものがあるとそっちにドカドカと動いてしまうのか、その合わせ技なのかはさっぱり分からんのですが、いや別にリセッションさせるまでインフレ退治するとは言って無さそうに思えたんですよね。

でもって本編に話を戻すと、デーリー総裁もそういう趣旨で話を進めていると思うのですよ。


・マクラの話は「インフレが生活弱者にハードヒットする」というエピソードだがその続きがある

冒頭、

『A few weeks ago, I met a young man with a warehouse job. He was worried. He shared that he had just called in sick to his employer. When I asked him if it was COVID, he told me no. He just couldn’t afford the gas that day and still manage to pay his rent.』

ってなもんで、社会的弱者にはインフレがハードヒットするからインフレ退治大正義、という話をするのはもう最近のFEDの仕様だし、下級国民の話などシランガナ感をおくびにも出さない、というのは政治的な風当たりの強さに比例するんでしょうな。ナムナム。

ということでいつもの話になるのですが、

『Now it would be of little consolation to him to learn that much of the inflation we see today is driven by supply chain bottlenecks or the ongoing war in Ukraine. Nor would he be relieved to learn that excess demand, supported by fiscal and monetary policy aid and a robust recovery, were to blame. All he and so many others want to know is, when will this end?』

どさくさに紛れて「インフレの要因の一部には超過需要があったがそれに金融財政政策も加担しておった」と入れ込んでいるのはチャーミング。

『So, let me start by saying here what I said to him: Bringing inflation down is the Federal Reserve’s number one priority right now. And we have the tools and the will to do it.』

といつもの話なのかと思いきや、

『But we actually want to do more than that. We want to bring inflation down without crippling growth and stalling the labor market.

Afterall that is the dual mandate. Our job is to ensure that Americans everywhere have opportunities to earn a living and the confidence that the living they earn will hold its value.

So today, I will talk about how we can achieve that. But first, let me remind you that the views I share are my own and do not necessarily reflect those of anyone else within the Federal Reserve System.』

ということで、雇用を守るのも重要ですよ成長を止めたり労働市場を落ち込ませることなく物価の抑制をするのがダイジダイジネーという話をしている訳でして、この講演自体は2週間前ではありますが、まあ前回のFOMC以降、オーバーキルでリセッション、というストーリーが金融市場方面で増えてきておりますので、ちょっと威勢の良い攻撃が行き過ぎたんでネーノという感じでトーン調整してきてねえか、とちょっと思いましたがちょっと思っただけなので良く分からんです(議会証言の時点では基本的にオープニングリマークに沿った冒頭説明をしてましたけどね)。



・ファイナンシャルコンディションを調整するための「ニンブル」とな

最初の『Evolving Risks』のところは、『To understand the path going forward, we first need to understand how we arrived here. So, let’s start there.』という文章から始まってて、ここまでの流れと現状認識の話(の中にさっきの超過需要に財政と金融が加担というのも入っている)をしてますが、めんどいのでそこはすっ飛ばして次の所に行きます。

『The Power of Communicating』という小見出しになります。

『The evolving landscape meant that monetary policy had to pivot. And it had to do so quickly.』

『To some of you, that may sound like a contradiction. Monetary policy is usually associated with gradual adjustments that transmit through the economy with long and variable lags. It is not typically associated with agility and speed.10』

引用を割愛したこれまでの状況を踏まえて金融政策をso quicklyに対応すべきであるという話をして、えーっと金融政策って基本ラグをもって経済に波及するのに何でクイックりーにやらにゃならんの、というツッコミがあると思うのですが、と来ましてからの、

『But just as the risks facing the economy have evolved, so has our policy approach, which can respond more nimbly now to incoming data than it could in the past.』

今の経済が直面しているリスク(については引用割愛しましたが要するにインフレーションがサガランチ会長なリスクです無茶苦茶ザックリと言うと)を考えた場合に、私たちは過去の政策アプローチよりも「more nimbly」に対応せんといかんがね、と仰せです。

『This evolution stems largely from an evolution in the Fed’s communication.』

ということで、コミュニケーションのパワーというこみだしの話になる。

『Today, the Federal Open Market Committee (FOMC) is transparent about its reaction function and expected outlook. This enables the committee to signal policy adjustments long before they are actually made. And these signals transmit increasingly rapidly into the behavior of financial markets and the economy.11』

なんちゅうか政策反応関数分かりやすい積りなのかよとツッコミを入れたくなるんですが、まあコミュニケーションによって金融市場に影響を与えております、ということで何を言い出すかといえば、

『For example, in the fall of last year, as incoming information confirmed that persistent and broad price pressures were forming, FOMC participants signaled that the future path of policy would likely be tighter. The December FOMC statement and the Summary of Economic Projections (SEP) moved sharply relative to previous releases, projecting an earlier date of liftoff and a faster pace of rate hikes than previously anticipated. At the same time, we communicated that the balance sheet would adjust accordingly.』

昨年のポリシーコミュニケーションの話をしておる。

『Following this forward guidance and prior to any actual movements in the funds rate, yields on Treasuries across all durations rose, and rates in other markets followed suit. Mortgage rates, for example, started an ascent that currently puts them at their highest levels in a decade.』

その結果によって米国債券市場では全年限に渡って金利が上昇し、モーゲージ金利も上昇し、これらの動きが波及効果
だしましたよ、だそうで・・・・・

『While adjustments in financial markets after FOMC communications are not unusual, the speed and magnitude of the movements during the past six months have been unprecedented, as the figure shows.』

ということで「図表1」があるのですが例によって例の如く図表を貼るスキルがないのでさっきのURL先を見てちょということですが、過去の利上げ局面におけるファイナンシャルコンディションのインデックスと今回とを比較しまして、最初の利上げからどのように金融環境がタイト化したのか、というのを示してて、今回は過去の利上げ局面よりも素早くファイナンシャルコンディションがタイト化しましたぞな、というのを示したグラフになっております。

『As financial conditions have tightened, some leading indicators of economic activity have softened, especially in interest-sensitive sectors, such as housing. And consumers have expressed caution more broadly, recognizing the impact of expected higher rates on their future borrowing prospects.12』

この結果、特に金利にセンシティブな経済活動について沈静化が起きましたよ。

『The fact that financial conditions and real activity are adjusting to expected monetary policy tightening, even when actual rates have not fully risen, means that long and variable lags may not be as long, or variable, as typically assumed.』

実際の利上げをする前であってもに、FEDの金融政策運営スタンスを受けて金融環境がタイト化することによって、引き締め効果が出てきますので、そういう意味では政策金利の調整が長時間のラグを伴って経済に影響する、ということではない(=実際の政策金利ではなくて市場金利による効果ってことじゃな)。

『And that supports policy nimbleness, allowing monetary policy to be tighter than the actual level of the Fed Funds rate would suggest.』

よって、我々がニンブルであるというスタンスを取るのが正当化されます、という説明で、ニンブルだよーとファイティングポーズを示すことによってファイナンシャルコンディションがタイト化して、実際の利上げの前に先に金融市場経由で効果がでるのが(゚д゚)ウマーだという話をしております。

『But guidance requires action. And here is how I see that work evolving.』

とは言え、ニンブルですのやるやる詐欺をしていると足元見透かされますので、結局は政策アクションするんですけどね!!!!!とこの部分を締めております。


・経済減速とのトレードオフについては「頑張って経済をコケないようにしますしボルカーショックは行いません」だそうです

次の小見出しが『From Risks to Realities』でして、

『Last week, the FOMC increased the funds rate by 75 basis points and signaled that further rate hikes of a similar magnitude are likely.13 This was the largest single meeting increase since 1994 and puts policy on an expeditious path to neutral by the end of the year. After that, I see additional tightening beyond neutral as the likely next step.』

『How much additional tightening will be required depends on a number of factors that fall outside of the Fed’s direct control, including the speed and magnitude of supply chain recovery, the duration of the war in Ukraine, and the willingness of individuals who have left the labor force to reenter.14』

『Just as 2021 required navigating a broad range of possible outcomes, policymaking now is also about managing risks. If supply continues to fall short and inflation remains high, we will need to do more. If conditions improve and supply bounces back, we can do less.』

この辺は今後の政策は状況次第だしサプライボトルネック続いてインフレが高いままだと引き締めはより強くしないといけませんし逆の場合は逆、という何時もの話です。

『Regardless of which path we take, there will likely be some slowing in the economy. That’s how monetary policy works. We remove accommodation or adjust rates into more restrictive territory, and growth slows and the labor market cools.』

『The question is: how much economic slowing are we likely to see? Here, history gives us some useful reference points.』

ということで、いずれにせよインフレ抑制をする中で経済減速は避けられないのですが、じゃあどのようになっていくのか、という話は過去の歴史から見ていくのが宜しい、という話で、以下ボルカーショックの話と、1990年台のインフレ抑制(年間3%利上げした時)の話をして、今回はボルカーショックみたいにはならんよ状況違うし、私らもそうならないようにしますよ、という話で締めるのですが、最後の最後の所で時間が足りなくなるという無計画おじさんのアタクシなので、まあ後は読んでくださいませ(一応明日時間があったら付け加えで書きますけど)。

とまあそういうことでですね、「リセッションだヒャッハー」という相場やってるのはFED当局者的にはアタマが痛い状況になってるんじゃないかなーって思うのですけどどうでしょうかねー。






2022/07/05

お題「10年新発新回号ですな(雑メモ)/FOMC会見の物価に関する質疑パート(ファイナル)」

さて10年新発の日ですかそうですか。

〇10年新回号の入札は手前と0.25%並びモードを回避できましたな(ただの備忘)

まあだいたいご案内の通りアタクシ基本的に大昔のディーラー上がりだから金利上がるとイヤッホイとなるし下がると淡々となるという仕様なのですが、まあこれは朗報(なのか?)

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N2YL12W
2022年7月4日3:28 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸で引け、米金利低下が追い風 長期金利は0.215%

『[東京 4日 ロイター] -
<15:10> 国債先物は続伸で引け、米金利低下が追い風 長期金利は0.215%

国債先物中心限月9月限は前営業日比6銭高の148円96銭と続伸して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同横ばいの0.215%。米金利低下に追随し、前場には2週間ぶりに0.205%まで低下する時間帯もあった。』(上記URL先より、以下同様)

何かアメリカン様があんなにヒャッホイと金利が下がる(何でISM一発でリセッションを見て2.8%とかまでぶっこみに行くのかも良く分からんがアメリカンマーケット)中なので寧ろ昨日って寄りこそあがっていたけど何ちゅうアガランチ会長という風情ではあったのですが。

『きょうの円債先物は、週末の米国市場で6月のISM製造業景気指数の悪化を受けて10年国債利回り(長期金利)が一時5週間ぶり水準となる2.7%台まで低下した流れから、買い先行でスタート。その後日銀が10年債のカレント3銘柄とチーペスト銘柄を対象に利回り0.25%で無制限に買い入れる指し値オペを通告したことも追い風となったが、買い一巡後はもみ合いで推移した。』

いや毎日指値オペやるっていってるじゃん何で指値オペが追い風になるねんとさすがにこれは余程書くことが無かったんだなとしか言いようがない市場コメント記事で、まあ大体こういうのが出ている時ってのは市場の中の人も市場の動きをナンジャソラと思っている時だから取材してもこんな事になってしまうんでしょうね、よー知らんけど。

『現物市場で10年物以外の新発国債利回りは総じて上昇。5年債は前営業日比0.5bp上昇の0.010%、20年債は同1.0bp上昇の0.880%、30年債は同2.5bp上昇の1.255%、40年債も同2.5bp上昇の1.355%。2年債はまだ出合いがみられていない。』

ということで、米債上がっているのにナンジャソラの金利上昇ではありますが、ゆうて10年カレントのところは0.215%となってて0.25%まで若干距離があるところで目出度く入札を迎えるので、一応10年と9年9か月の所にはキャリーロールダウンというものが存在する形になりまして、いやこれが新発新銘柄も既発も0.25%で入札迎えたら何のためにこの新銘柄は存在するのかとゆー極めて?????な事が起きる入札となりますので、まあ何か一応格好ついたじゃん、と思ったのでメモっておきました、というだけの話しです。だからどうしたと言われると困りますが、10年新回号の入札が既発のカレントと同レート、となったらどうなっていたのか、というのは見る機会がまだまだなさそうですね。



〇月曜の米国様はお休みなので(別に関係ないけど)虫干しネタでパウエル会見

そろそろ議事要旨もでるので慌てて虫干し。
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220615.pdf

質疑応答の後半はインフレに関しての様々な話がありまして、たぶんこれを読んだから次の利上げパスがどうのこうのとかいう話ではないかもしれないのですが、非常に結構な論点がいくつも出ているので成敗致したい。


・「物価」とは総合物価なのかコア物価なのか???

質疑応答の半ば過ぎ、19ページの質問から参ります。

『MICHAEL MCKEE. Thank you, Mr. Chairman. Michael McKee from Bloomberg Radio and Television. Are you targeting headline inflation now or core inflation? In other words, how far would you chase oil prices if they keep going up? If that’s going to be the component that drives expectations, would you risk recession for a headline rate if the core rate is holding steady or starting to go down?』

総合なのかコアなのか?と聞いたあと、こちらの方は「ヘッドラインのインフレを下げようとしたら経済をリセッションに陥らせるリスクは無いのか」と質問しているのがちょっと惜しい。

この件に関しては時々ご紹介してますが毎度おなじみ変態仮面ブラード大先生が、2011年に
https://files.stlouisfed.org/files/htdocs/publications/review/11/07/bullard.pdf
Measuring Inflation: The Core Is Rotten

っての出してて、セントルイス連銀の「ブラード総裁のお部屋(という名前ではないが)」の所を見ますと、
https://www.stlouisfed.org/from-the-president/key-policy-topics
Jim Bullard's Key Policy Topics

Measuring Inflation

President Bullard's View

Argues that headline inflation provides the most appropriate metric for measuring inflation in the U.S., and that traditional arguments in favor of core inflation are much weaker than commonly appreciated.

と言ってるのがありまして、どうせ聞くならそっちの論点で聞いて欲しいところではあるのですが、そらまあ現世利益の観点から米国で今注目されているのはインフレ退治大正義からのオーバーキルがありやナシやという話だからこう質問来るわな、とは思いました。


パウエルさんの回答。

『CHAIR POWELL. So the-we’re responsible for inflation in the law. And inflation means headline inflation.』

これは基本的に万国共通。あくまでも物価安定は「総合」で定義されます。国民厚生を高めることを目標にしているんですから(マンデートはそのための手段のメルクマール)消費バスケットに一番近い総合を使うのは当たり前。

『So that’s our ultimate goal. We, of course, like all central banks do, look very, very carefully at core inflation because it is-it’s a much better predictor, and it’s much-it’s a much better predictor of where inflation is going, and it’s also more relevant to our tools.』

コア指数を使うのはそれが物価の状況や先行きをより良く示す(総合は価格変動の大きいコンポーネントがあるから)からですし、これは万国共通ですよ、と原則論を説明してからの、

『As I mentioned, the parts that don’t go into core are mostly outside the scope of our tools, so we look at that. But it’s-the current situation is particularly difficult because of what I mentioned about expectations.』

『We can’t affect, really-I mean, the energy prices are set by global commodity prices. And most of food-not all of it, but most food prices are pretty heavily influenced by global commodity prices, too. Also other things. 』

『So we can’t really have much of an effect. But we have to be mindful of the potential effect on inflation expectations [coming] from headline [inflation readings].』

『So it’s a very difficult situation to be in, and we-again, we can’t do much about the difference between [headline and core inflation rates due to] the elements that make up headline that are not in core.』

うーんこの苦しい説明。

総合物価に関してはエネルギーとか食品とか商品市況とかワシらの政策で直接影響を与えることが出来ないものがあります、でもって現状で重要なのはヘッドラインのインフレーションが人々のインフレ期待にどのような影響を与えていくのか、という点についてでして、こちらの動向には非常に注意してみています、って話をして最後にまた「ワシらはコア指数に含まれない総合物価指数のコンポーネント(エネルギーと食品)に対してあまり政策で直接的に影響を与えることが出来ないので今は難しい局面」と締めてて、原則論の話をしたあとは「金融政策単体でエネルギーや食品価格を下げるの難しいですね」という泣きを入れて説明しておる、というかなーり苦しそうな説明。

まあ期待のことを言ってるのは、利上げというかインフレファイター姿勢をFRBが示すことで、インフレ期待が上に振れださない事を祈っております、って点があるのかなーとは思ったのですが、そこは明示的にここで言ってないのであくまでもアタクシの想像です。


更問はオマケ質問ですが一応。

『MICHAEL MCKEE. Could I just, as a follow-up, get a clarification on the SEP- When the members gave their forecasts, when were they inserted into the record? Were they revised after the CPI or Michigan numbers came out? In other words, does the SEP, as we have it now, reflect the same factors that led you to go to a 75 basis point move?』

『CHAIR POWELL. The SEP is of one piece. It reflects all of the economic readings. It also reflects the 75 basis point increase. This is important. So people had that in hand when they-when their SEPs were submitted. So it’s-in other words, it’s not in addition to what’s in the SEP. The SEP-everyone’s SEP reflects their thinking about this rate increase and what’s going forward.』

まあこれはオマケ質問でしたが、SEPの見通しに今回の75bp利上げは含まれているのか?ということで、これは各参加者が出す見通しの集計ですが、今回の利上げは含めて考えていますよというやり取りでした。



・ところで物価指標って遅行指標だと思うんだがそれ見て政策するの?????

次の質問(20ページ)ですけど。

『VICTORIA GUIDA. Hi, Victoria Guida from Politico. I wanted to ask about how you’re measuring progress, especially since you’ve now started front-loading rate hikes more.』

利上げ継続するとかもっと上げるとか言う判断に関して何を判断根拠にするのか、という質問でして、

『You’ve talked about how you want to see inflation coming down over a series of reports, and I guess I’m curious whether you think inflation data itself is a really good indicator or whether you might be concerned that it’s a lagging indicator or that it might send confusing signals given that, as you’ve talked about, there are sort of supply and demand aspects.』

『And I guess my question is, do you think that inflation will tell you-inflation data will tell you when you’ve gone to where you need to go, or do you just feel like maybe it’s better to overshoot than to undershoot?』

物価を見て判断、というような話を何度も聞いてますが、物価って政策の上げ下げを判断するのに指標として良いものなのか、遅行するもんじゃないのか、という所から話を起こしまして、物価の上げが沈静化するのを見たい、という話をする一方で、供給と需要の話をしたりもするので、話がやや複雑化してますよね、と指摘。

でもって、インフレーションのデータを使って判断すると引き締めのオーバーシュートになってしまうように思えるけどそれはアンダーシュートよりマシという判断なのですか??と結局はオーバーキル懸念につながる質問ではあるのですが、聞き方が「物価をみるというけどそもそも物価は遅行指標じゃね?」と聞くのは大変に結構である。

パウエルさんの回答。

『CHAIR POWELL. So I think the role that we can play-maybe the way to get at this is to say that the role that we can play is around demand, right? And we’ll be able to see-the areas that we can affect are those associated with excess demand, and we’ll be able to see our effect on, for example, job openings in real time. And that would tell us what’s-that would tell us about wages. Wages are not principally responsible for the inflation that we’re seeing, but, going forward, they would be very important, particularly in the service sector. Sorry, I’m not sure I’m getting to your question.』

我々の政策は供給サイドには影響を与えないが需要サイドの「excess demand」に起因される事象には影響を与えられますよ例えば雇用とか賃金とか、という話をして肝心の質問をお忘れのようです。

『VICTORIA GUIDA. My question is, is inflation data itself the best indicator for when you’re getting to where you need to go, or might it lead you to go too far?』

で、ご回答。

『CHAIR POWELL. There’s always a risk of going too far or going not far enough, and it’s going to be a very difficult judgment to make, or maybe not-maybe it’ll be really clear. But we’re-and we’re quite mindful of the dangers. But I will say, the worst mistake we could make would be to fail, which-it’s not an option. We have to restore price stability. We really do, because everything-it’s the bedrock of the economy.』

最初こそ「政策のオーバーシュートやアンダーシュートというのは常にリスクがありますし、そこを判断するのは難しいですが」と言ってますが、その後は物価目標の達成に失敗してはいけないなぜなら物価安定しないと結局経済にマイナスだから、という説明になっていまして、とにかく物価安定をするのが大事です話をして、その政策判断のインディケーターが物価だったらオメー政策やり過ぎにならんかという話は回避姿勢を取っています。

『If you don’t have price stability, the economy’s really not going to work the way it’s supposed to. It won’t work for people-their wages will be eaten up. So we want to get the job done. This inflation happened relatively recently. We don’t think that it’s affecting expectations in any kind of fundamental way. We don’t think that we’re seeing a wage-price spiral. We think that the public generally sees us as very likely to be successful in getting inflation down to 2 percent, and that’s critical. It’s absolutely key to the whole thing that we sustain that confidence. So that’s how we’re thinking about it.』

ということで、ちょっと前の所でもそうでしたが、ここでも説明しているのがインフレ期待のアンカーが外れる話でありまして、物価の急上昇が起きたのが最近なだけに、これが期待に波及するかどうか、という点で今は起きていなくて、賃金と物価のスパイラル現象みたいなのも起きていないけれども、今後このインフレ期待の動きと、動いた場合の経済への影響というのが非常に重要です、という話をしていて、そこの所がアンカーされるように維持するのが大事ですよ、って話をしている訳ですな。


・・・・・・などとこの物価に関する部分を読んでおりますと、やっぱり本命は雇用統計の賃金部分であって、何でISMの新規受注指数が50切ったからと言ってウヒャッハーとリセッション相場やるのやら、という感じは大幅にするんですけれども、まあそれはどうでもよいですねそうですね。


・粘着的なコンポーネントの値上がりについて

物価にフォーカスした質問としてはあとこれですかね。

『CHRISTOPHER RUGABER. Thank you. Chris Rugaber, Associated Press. You have talked about inflation a few times and mentioned oil prices, China lockdowns. But aside from rises in commodity prices such as gas prices, we’re also seeing stickier measures of inflation increasing, such as the Cleveland Fed’s median and trimmed mean CPIs. I mean, how persistent do you see those underlying measures of inflation, and how do you expect to?where do you see those going in the near future?』

クリーブランド連銀の刈込平均みたいなより粘着的な物価指標も上がってきているようだが今後の見通しは?

『CHAIR POWELL. So, as I mentioned, I think, in my opening statement, inflation has started-it started off in quite narrow, very directly pandemic-related areas, and it’s spread now broadly across the economy and into the services sector as well. It was really in the goods sector at the beginning. And, particularly, you’re seeing in travel now, if you’ve flown on a plane lately-planes are very full, and plane tickets are very expensive.』

最初は一部品目から始まった物価上昇ですが広がっている(そういや米国の航空券価格って直近で無茶苦茶あがってるとか聞いたような聞かなかったような)という話からの、

『Some of that will be passthrough of energy prices, but it’s-so you’re experiencing services inflation. Shelter inflation is high. So the question-and then you see the Cleveland measure going up, and many other measures are going up.』

サービスとか家賃とか、それこそ質問に遭ったクリーブランド連銀の指数とかいろんなものが上がっています。

『So it’s a time when we’re not seeing progress and we want to see progress, and that’s really another part of why we did what we did today and why the SEP looks like it does.』

『We see it as appropriate to get the policy rate up to restrictive levels, which would be, in the thinking of the Committee, somewhere in the range of 3 to 3-1/2 percent by year-end.』

『And then after that, you see what the rest of the SEP says. So I hope that’s responsive to your question』

物価上昇の持続性の見通しに関しての質問はスルーして、という感じでこれまあ要するに回答不能でもう分からんがなという感じなんじゃねえかと思いましたが、「このような事象が起きているからこそ、政策金利を引き締めレベル、今回のSEPで示されたのは3.0-3.5%レベルだが、そこまで年末には引き上げると見ているFOMC参加者が大勢ですよ」という政策金利を引き締め的にしまっせというお話で締めて回答を回避するの巻になっています。

ということで物価の説明見てるとそうはさすがに正面切っては言わないけど「いやーわからんわー」みたいな感じになっていますよね、って感じだし、わからんからこそインフレファイターポーズを見せてインフレ期待の上振れを抑えたい、って事なんじゃないかなーとは思いました。


・・・・・でまあ余談おぶ予断なんですけどね、そのインフレファイターポーズからのリセッション懸念で金利が下がってしまうっての政策金利がまだ1.50−1.75で中立金利よりも低い状況にいるのに、何ぼ何でも(市場は先読みをして動くとは言え)先読みのし過ぎじゃろと思うのでありまして、政策金利が3%近くになってからその話をするもんじゃねえのと思いますし、これでファイナンシャルコンディションが緩和されちゃったら何のためにファイティングポーズ取ってるのか訳分らんくなってしまって、いやーコミュニケーションムツカシネと思いますが、要は先の話を決め打ちしなければ良いだけのような気もするんけどぬー。

ということで議事要旨出る前に何とか駆け込みましたすいませんすいません。





2022/07/04

お題「短観だがどう見てもこれは物価目標達成にしか見えません/パウエルのFOMC会見虫干しネタの続き」

いやもう何なんですかこの蒸し暑さは(東京地方)

〇例によって短観私家版定点観測だがどう見ても物価目標達成です本当にありがとうございました(あと想定為替が変)

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2206.pdf

前回4月の時は真っ先に企業の物価、販売価格見通しをネタにして、「企業の物価、販売価格見通しが盛大に引きあがったよ!!!インフレ期待遂に来たヨ!!!!!!!!!!!!」という小見出しで書いたのですが、さて今回は・・・・・・・・・

・企業の価格設定行動はどう見ても物価目標達成です本当にありがとうございました

7ページ『7.企業の物価見通し』である。前回まず12月VS3月比較をしたのでそれに6月をアドオンしておく。

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 12月:1.2%→3月:2.1%→6月:2.9%
3年後 12月:1.7%→3月:2.7%→6月:3.5%
5年後 12月:2.3%→3月:3.2%→6月:4.0%

大 企 業 製 造 業
1年後 12月:1.1%→3月:1.9%→6月:2.7%
3年後 12月:0.7%→3月:1.8%→6月:2.5%
5年後 12月:0.8%→3月:1.7%→6月:2.5%


大 企 業 非製造業
1年後 12月:0.7%→3月:1.1%→6月:1.5%
3年後 12月:1.1%→3月:1.6%→6月:2.2%
5年後 12月:1.7%→3月:2.2%→6月:2.6%

えーっとですね、3月短観で投入コスをの上昇をモロに反映した製造業の価格設定行動キタコレでしたが、今回は非製造企業も確りと上がってきているのが良く分かるというのものでした。

日銀公式は「サービス価格が上がらん」とか言っておりますが、企業の価格設定行動を見たらこれどう見てもフォワードルッキングの指標としてサービス価格も上昇しますよ、と言ってるようなもんだと思うのですが、これが出てきても「一時的な物価上昇で物価目標達成ではない」って言い張れるんですかああああああああ?


でですね、これ前回も貼ったのですが、3月短観から集計ベースが変わっているので、昨年12月の短観で出てた数値と、3月短観で出てた「前回」の数値が若干(ほぼ同じですが)異なっていまして、一部のデータが非連続になる(ってほど非連続じゃないですが)ということで、コロナ前の2019年12月短観からの推移を作っておるので、それを今回も貼ってみます。


販売価格見通し 全規模合計 全 産 業

1年後 12月:0.6%→3月:0.2%→6月:-0.3%→9月:-0.2%→12月:-0.1%→3月:0.2%→6月:0.5%→9月:0.7%→12月:1.2%
3年後 12月:1.0%→3月:0.9%→6月:0.5%→9月:0.6%→12月:0.6%→3月:0.9%→6月:1.1%→9月:1.3%→12月:1.7%
5年後 12月:1.4%→3月:1.4%→6月:1.2%→9月:1.2%→12月:1.3%→3月:1.5%→6月:1.7%→9月:1.9%→12月:2.3%

大 企 業 製 造 業

1年後 12月:0.0%→3月:-0.3%→6月:-0.5%→9月:-0.4%→12月:-0.3%→3月:-0.1%→6月:0.2%→9月:0.5%→12月:1.1%
3年後 12月:-0.2%→3月:-0.3%→6月:-0.6%→9月:-0.5%→12月:-0.5%→3月:-0.3%→6月:-0.1%→9月:0.1%→12月:0.6%
5年後 12月:-0.3%→3月:-0.3%→6月:-0.5%→9月:-0.5%→12月:-0.6%→3月:-0.4%→6月:0.1%→9月:0.2%→12月:0.7%

大 企 業 非製造業

1年後 12月:0.4%→3月:0.1%→6月:0.0%→9月:0.1%→12月:0.3%→3月:0.2%→6月:0.4%→9月:0.5%→12月:0.7%
3年後 12月:0.8%→3月:0.7%→6月:0.7%→9月:0.8%→12月:0.6%→3月:0.9%→6月:1.0%→9月:1.1%→12月:1.2%
5年後 12月:1.0%→3月:1.0%→6月:1.1%→9月:1.3%→12月:1.1%→3月:1.3%→6月:1.4%→9月:1.6%→12月:1.7%


・企業の物価全般見通しもどう見ても物価目標達成ですががががががが

物価全般見通しも同じような感じで貼ります。

物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 12月:1.1%→3月:1.8%→6月:2.4%
3年後 12月:1.3%→3月:1.6%→6月:2.0%
5年後 12月:1.4%→3月:1.6%→6月:1.9%

中小企業 製 造 業
1年後 12月:1.5%→3月:2.2%→6月:2.8%
3年後 12月:1.5%→3月:1.9%→6月:2.3%
5年後 12月:1.6%→3月:1.9%→6月:2.2%


中小企業 非製造業
1年後 12月:1.3%→3月:2.0%→6月:2.5%
3年後 12月:1.4%→3月:1.8%→6月:2.2%
5年後 12月:1.5%→3月:1.8%→6月:2.0%

日銀様の言う「中小企業の物価見通しの方が実際の生活者を含めた一般の物価見通しに近い(キリッ)」理論を尊重して、毎度こちらは中小企業の方を出しておりますが、こちらも同様で、1年のような短期インフレ期待だけではなく、5年という長期インフレ期待も2%にバッチリ乗っておりますがこれでも言い訳するんですかねえ。


物価全般見通し 全規模合計 全 産 業

1年後 12月:0.8%→3月:0.5%→6月:0.3%→9月:0.3%→12月:0.3%→3月:0.4%→6月:0.6%→9月:0.7%→12月:1.1%
3年後 12月:1.0%→3月:0.8%→6月:0.7%→9月:0.6%→12月:0.7%→3月:0.8%→6月:0.9%→9月:1.0%→12月:1.2%
5年後 12月:1.1%→3月:1.0%→6月:0.9%→9月:0.8%→12月:0.9%→3月:1.0%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.3%

まあ何ですな、どこからどう見てもこれは物価目標達成しているような企業のマインドセットになっていまして、企業の予想インフレもこのように上がる中、何がどうテンポラリーなのか小一時間問い詰めたい。



・ということで鏡に参りますが業況判断DI「非製造業が3月に見込んでたほど悪くない」という結果ですな

では業況判断DI。

         (3月短観)      (6月短観)
         現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業   +14→+9      +9→+10 
製造業中堅企業  +3→+1       +0→▲3        
製造業中小企業  ▲4→▲5       ▲4→▲5

非製造業大企業  +9→+7       +13→+13
非製造業中堅企業 ▲2→▲3        +6→+1
非製造業中小企業 ▲6→▲10       ▲1→▲5

今回の場合、なんか知らんけど非製造業の業況判断DIが軒並み「3月の時に見ていたよりも全然いいじゃん」状態になっているのが味わい深いものがあって、これってさっきの価格と物価に関する結果を見て無理矢理話を結び付けますと、非製造業でも価格転嫁が進んできた結果、思っていたほど業績がコケ無かった、という話になると勝手に解釈しました。


・ところで何ですかこの想定為替レートは???????????

鏡の右上『(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(全規模・全産業)』なんですけど・・・・・・・・・

米ドル円
(円/ドル)
2022年6月調査
2022年度 118.96
上期 118.79
下期 119.12

ユーロ円
(円/ユーロ)
2022年6月調査
2022年度 131.60
上期 131.55
下期 131.65

?????????????何ですかこの為替レートは????????


・雇用判断DI:うーんここの数字は微妙

(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (3月短観)      (6月短観)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   ▲10→▲11     ▲10→▲13
製造業中堅企業  ▲19→▲18     ▲14→▲18
製造業中小企業  ▲21→▲23     ▲19→▲24

非製造業大企業   ▲18→▲21    ▲22→▲24
非製造業中堅企業  ▲25→▲28    ▲29→▲33
非製造業中小企業  ▲32→▲36    ▲33→▲35

今回は製造業に関しては「見込んでいたほど人員必要ナカッタデー」って話でして、逆に非製造業は前回見込みよりもタイト目に出ている、ということでさっきの総括判断で出ている傾向と同じような傾向になって出てきた、という感じですね。

絶対水準的には盛大にタイトはタイトなのですが、うーんこの数字は微妙。


・昨年3月短観より私家版チェック新項目にした需給判断等の部分だが今回は「若干改善だが横這い」ですなあ


国内需給判断
        (3月短観)      (6月短観)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   +1→+1       +2→+2
製造業中小企業 ▲12→▲12      ▲10→▲11

非製造業大企業  ▲9→▲9       ▲7→▲6
非製造業中小企業 ▲14→▲15     ▲11→▲12



海外需給判断
        (3月短観)      (6月短観)
        現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業  +8→+8        +9→+8
製造業中小企業 ▲3→▲3        ▲2→▲1

前回短観の時(4/5に書きました)に書いたのは以下の通り。

(ここから前回の駄文を引用)ということで、前回の短観ってやたらめったら強かった(私家版的に)印象が強かったのですが、この部分を見ると「横這い」感を強める物件でして、雇用もタイト化進みとは言え勢いはなくて、業況判断は前回未達ですがそうビックリするほど悪化している訳でもない、ということでこれは「横這い」という短観でした、ってえことなのかね。(引用ここまで)

需給判断のところ、前回より改善しているし前回の見通しよりも好転している(大した差ではないが)という感じではあるのですg、まあここは横ばいで上等って感じなのかね。よくわからん。



製商品在庫水準判断
      (3月短観)  (6月短観)
        現状      現状
製造業大企業  +6       +7
製造業中小企業 +11      +11


製商品流通在庫水準判断
      (3月短観)  (6月短観)
        現状      現状
製造業大企業  ▲2      ▲4
製造業中小企業 +4      +2


うーんこの横ばい感溢れる結果・・・・・・・・・・


・価格判断DIもインフレ期待や販売価格判断と同様に強いです

同じコーナー(これは短観概要の2ページ目にさっきの需給判断、在庫判断と共にのっている)でこっちはもう少し前からの私家版分析ネタ。

販売価格判断
        (3月短観)      (6月短観)
        現状→3月予測      現状→6月予測
製造業大企業  +24→+27       +34→+35
製造業中小企業 +23→+32       +35→+43

非製造業大企業  +13→+16      +19→+21
非製造業中小企業 +12→+20      +21→+27


仕入価格判断
        (3月短観)      (6月短観)
        現状→3月予測      現状→6月予測
製造業大企業  +58→+55      +65→+59
製造業中小企業 +70→+72      +79→+76

非製造業大企業  +35→+37     +43→+45
非製造業中小企業 +48→+55     +58→+60

販売価格判断、軒並み前回予想を上回っているのは、最初にネタにして企業の物価見通しの辺りの結果と整合的ですな。



・毎度おなじみ金融機関の業況判断DI

業況判断DI

        (3月短観)      (6月短観)
        現状→3月予測    現状→6月予測
銀行業     +26→+19     +25→+20 
協同組合金融業 +13→+3      +9→+4        
金融商品取引業 +0→+5       +3→+19
保険業     +22→+12    +22→+18
貸金業等     +4→+0      +38→+14

珍しく金融商品取引業が前回並みジャンと思ったら先行き見通しが謎の大本営発表なのと、貸金業等が謎に今回良いのはなんでですのん????


〇引き続き今更ジローネタですがFOMCのパウエル会見ネタで

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220615.pdf

・急にパターンを変化させたことに対する問いは多いのですがパウエルさん大演説で説明

最初の人に続いてこの人も質問してて、ただ「100ってのもアリエールなの?」と目先を変えて聞いてますね。

『JEANNA SMIALEK. Thanks for taking our questions. Jeanna Smialek with the New York Times. You-I guess I wonder if you could describe for us a little bit how you’re deciding how aggressive you need to be. So, obviously, 75 today. What did 75 achieve that 50 wouldn’t have, and why not just go for a full percentage point at some point?』

今回何で50じゃなくて75だったの??そのうち1%上げとかもあるの????

という質問に対して無茶苦茶大演説をしているパウエルさんですが、どっかの総裁とは違って別に関係のない想定問答を読んでるわけではないです。

『CHAIR POWELL. Sure. So if you take a step back, what we’re looking for is compelling evidence that inflationary pressures are abating and that inflation is moving back down. And we’d like to see that in the form of a series of declining monthly inflation readings- that’s what we’re looking for. And, by this point, we had actually been expecting to see clear signs of at least inflation flattening out and, ideally, beginning to decline. We’ve said that we’d be data dependent, focused on incoming data, highly attentive to inflation risks-the things that I mentioned to Howard moments ago.』

『So contrary to expectations, inflation again surprised to the upside. Indicators some indicators of inflation expectations have risen, and projections of [inflation] this year have moved up notably. So we thought that strong action was warranted at this meeting, and today we delivered that in the form of a 75 basis point rate hike, as I mentioned.』

この辺は「物価やインフレ期待が見通し通りに推移しなかったからです」という説明ですな(要約し過ぎ)。

『So the point of it, really, is this: We’ve been moving rates up expeditiously to more normal levels, and over the course of the seven months since we pivoted and began moving in this direction, we’ve seen financial conditions tighten, and appropriately so.』

『But the federal funds rate, even after this move, is at 1.6 percent. So, again, the Committee is moving rates up expeditiously to more normal levels, and we came to the view that we’d like to do a little more front-end loading on that.』

よって金融政策をタイト化しないといけません。今回利上げしてもまだ1.5-1.75%ですよね。

『So I think that the SEP gives you the levels that people think are appropriate at given points in time. This was really about the speed in which we would get there. So, as I mentioned, 75 basis points today-I said the next meeting could well be about a decision between 50 and 75. That would put us, at the end of the July meeting, in that range-in that more normal range, and that’s a desirable place to be, because you begin to have more optionality there about the speed with which you would proceed going forward.』

次回は50か75の利上げをしますよ。その後は状況次第。

『Just talking about the SEP for a second: What it really says is that Committee participants widely would like to see policy at a modestly restricted-restrictive level at the end of this year. And that’s six months from now, and so much data [can accrue] and so much can happen, so remember how highly uncertain this is. But so that is generally a range of 3 to 3-1/2 percent. That’s where people are, and that’s what they want to see, knowing what they know now and understanding that we need to be-we need to show resolve but also be flexible [in responding] to incoming data as we see it. If things are better, we don’t need to do that much, and if they’re not, then we either do that much or possibly even more.』

SEPで示されていますように、FOMCでは年末には引き締め的な水準まで金利を上げる意見が大勢です。とは言いましても今後どうしていくのかについては状況次第で、物価がより強ければ一段と強く利上げするし、弱くなって来ればそんなに利上げしないよ。

『But in any case, it will be very data dependent. Then you’re looking at next year, and what you’re seeing is, people see more-a bit more tightening and a range of maybe 3-1/2 to 4 percent. And that’s generally what people see as the appropriate path for getting inflation under control and starting back down and getting back down to 2 percent. So 75 basis points seemed like the right thing to do at this meeting, and that’s what we did. 』

「But in any case, it will be very data dependent.」ってただの出たとこ勝負ですな・・・・・・


・インフレ退治と経済について

これまた質疑応答多いのですが、短いのを選んでネタにしてみます。

『RACHEL SIEGEL. Hi, Chair Powell. Thank you for taking our questions. Rachel Siegel from the Washington Post. So the new projections show the unemployment rate ticking up through 2024. Is a higher unemployment rate necessary in order to combat inflation? And what is lost if the unemployment rate has to go up and people lose their jobs in order to control inflation? Thank you.』

そもそもSEPの見通しの失業率では物価がそんなに下がらんのではないでしょうか、もうちょっと失業率が上がるようにならんと物価下がらんように見えるがそれはそれで国民厚生的にどうなの??という質問ですな。

『CHAIR POWELL. So you’re right. In the SEP, we have unemployment going up to 4 point-the median is 4.1 percent-of course, [there is] a range of actual forecasts. And I would characterize that, if you were to get inflation down to, you know, on its way down to 2 percent and the unemployment rate went up to 4.1 percent, that’s still a historically low level.』

『We hadn’t seen-we hadn’t seen rates, unemployment rates below 4 percent until a couple years ago for-we’d seen it for, like, one year in the last 50. So the idea that-3.6 percent is historically low in the last century. So a 4.1 percent unemployment rate with inflation well on its way to 2 percent-I think that would be-I think that would be a successful outcome. So we’re not looking to have a higher unemployment rate. But I would say that I would certainly look at that as a successful outcome.』

この質問には答えが出来なかったようで、「このような感じになると思ってますよそんなに失業率上げんでも物価は収まりまっせ」というインチキ回答しかできなかったようで。

『RACHEL SIEGEL. Would that include people losing their jobs?』

で、オモロイのは「物価上昇対策で景気を締めたら職を失う人いるよね」問題について念押しされたときの反応で、謎の大演説が始まるのですよ。まあインフレ退治と雇用問題におけるFEDの風当たりの強さを感じますね。

『CHAIR POWELL. We’re not-again, we’re not, we don’t seek to put people out of work, of course. We never think, “Too many people are working, and fewer people need to have jobs.” But we also think that you really cannot have the kind of labor market we want without price stability.』

物価の安定をしないと今の良い雇用環境も長続きしない、理論で説明して、

『And we have to go back and establish price stability so we can have that kind of labor market, and that’s a labor market where workers are getting wage increases-maybe the workers at the lower end of the spectrum are getting the biggest wage increases, as they were before the pandemic-where participation is high, where there’s lots of job opportunities, where it’s just a really-I mean, the labor market we had before the pandemic was-that’s what we want to get back to. And you see disparities between various groups at historic lows. We’d love to get back to that place.』

返す刀で今の労働市場環境が大変結構であるという説明を延々と行い、

『But, to get there-it’s not going to happen with the levels of inflation we have. So we have to restore that, and it really is in service, in the medium and longer term, of the kind of labor market we want and hope to achieve.』

再度「良い労働環境を維持するには物価を落ち着かせないと行けない」で締めました。うーんこの。


もうちょっとだけ面白い項目があるのですが、今朝はショパンの事情でこの辺で勘弁して頂きたく存じます。





2022/07/01

お題「オペ紙は3月末から盛大にカーブ動いても変更なしですかそうですか/今さらFOMC会見ですがフォワードガイダンスに関する問答を」

おやおやまあまあ
https://jp.reuters.com/markets/bonds/us
米国債2年 利回り
US2YT=RR +2.945 -0.108
米国債5年 利回り
US5YT=RR +3.024 -0.129
米国債10年 利回り
US10YT=RR +2.987 -0.106

10年3割れですかそうですか。先の先まで読み過ぎなんとチャウのかと。


〇3月末から色々な状況に大きな変化があったと思いますがオペ紙不変ございましたかそうですか

毎度おなじみオペ紙
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220630c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2022年7〜9月)

〜1年:1500億円×1回
1〜3年:4750億円×4回
3〜5年:4750億円×4回
5〜10年:5000億円×4回
10〜25年:1250億円×2回
25年〜:500億円×2回
物価連動:600億円×1回
変動利付:300億円×(1/3)回

遠い昔みたいな3月末に出た4−6のオペ紙
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220331c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2022年4〜6月)

と比較しようと思ったらまるっきり同じということで、時節柄イールドカーブの形状もだいぶ変わって後ろの方は大甘の王子になっていると思うのですが、別に気にすることなくオペは増やさず、となりました。

いやまあオペ増やさんで結構なんですけど、ただまあイールドカーブの形状変わっているのにオペは変わらんのねー、ふーんそうなのねーって感じで、こうなってくると10年の毎日指値オペはそういう命令だから意味がわかるのだが、7年に連続指値オペってのの意味が良く分からんとしか言いようがなくて、7年の指値って「イールドカーブが10年だけへこんでいるんじゃイールドカーブ全体を見た時に「10年金利の上限は0.25%」が満たされていても、経済に効くのは別に10年金利だけじゃなくて、各年限の金利が色々な形で働くんだから、イールドカーブがある程度滑らかな形で形成されないといかんでしょ、という意思の表れ、という見方も当然あったと思います。

つまりですね、「10年0.25%(本当は「ゼロ%程度」だが)に整合的なイールドカーブ」を形成しよう、という一環でイールドカーブのピン止めが10年カレント3銘柄だけじゃ足りないから売り込まれやすい7年も入れました、というのなら、超長期のカーブとか、相変わらず隙あらばたわんでしまう7−10年ゾーンとか、こっちに対して何らかの意思表示が出ても今回っておかしくなかったわけですな。

然るに、まあまるで3月末とか言う毎日指値オペその他のルビコン川(または三途の川)を渡る前の紙と同じ(3月の月末前はヤケクソオペをしてましたけど)っすかそうっすかということで、おまえらイールドカーブのイメージないのね、っていうのが良く分かったのは良いのですが、そうなると7年に指値を入れにいった理由が全然整合性取れなくて、7年に指値入れたんだったら7−10年のカーブが上に凸になってるの何で容認するんだか訳分らない(寧ろ歪みを更に複雑化している)次第で、単にこいつら先物売りに対抗したかっただけで指値入れやがったなという話だし、そんなことしたら先物使えなくなってヘッジ手段1個無くなるので、それ国債の安定消化に中期的に禍根を残す、とか考えてやれよというのはある。

まあ日銀の場合はなんせインターバンクのマネーなら分かっている(さすがに今でも分かってるでしょと思うけど)のですが、債券市場どころかオープン市場ですら状況認識とか状況判断とかが怪しいので(個人の感想です)、ガチでそういうの考えずに7年指値打った可能性がありますね。


・・・・・・・・書いててイマイチ言ってることがまとまってないのに気が付きましたが(滝汗)。

えーっとですね、オペ紙なんですけど、基本的な日銀の輪番に対する建付けは「オペは将来の政策スタンスを示すものではない」ということになっていて、「オペはディレクティブに対して逸脱が大きい時に上げ下げを行う」というもんになっている筈なんですよね。なので「オペには意思はないですよ」という話になります。

しかしながら、既に毎日指値オペとか連続指値オペとかをぶっこんでしまっている状況にあって、その時点で「強力な意図」が出されているので、現在のオペって基本的に「意思がある」って見られてしまうのは仕方ないし、それもあって今回って3月末対比でのイールドカーブ動向の大きな変化を踏まえて、なんか方向性が出てくるのかな、というイメージ持ってた方もそれなりにいたんじゃないかなと思うのですよ。

ところが、今回は「割と何も考えていない」系のオペ紙が颯爽と登場してきた次第でして、YCCとか言って毎日指値オペのような過激な事をぶっこんでいる割には、肝心のイールドカーブ全体に対する考えというのが存在しない、というのが明白になった訳で、「均衡イールドカーブ」とは何だったのかと小一時間問い詰めたいし、「リバーサルレート」って考えはどこに行ったのかとも小一時間問い詰めたい所でありまする。


ま、「どうせ必要なら臨時輪番やるんだし一々オペ紙いじる必要ないじゃん」といった感じで事務方が考えたものがサクッと出てきた、ってなもんだと思うのですが、これは即ち「10年金利0.25%」以外の事に対して何の思想も持っていないという今の日銀政策委員会のポンコツぶりの証拠でもある(何か思想があるならその思想を反映したオペの上げ下げがある筈ですからね)、というのが判明した今回のオペ紙で、市場インプリケーションが特にあるわけではないですが、政策委員会がポンコツの集団であることを改めて確認できましたし、ポンコツが一枚岩になって黒田さんの言う事をヘイコラ聞いている、という状況ってこれひっくり返ると飛んでもない事に成り兼ねない(日銀の組織防衛もそうだし政策の連続性もそうだし)のですが、櫻井さんのような鉄砲玉はおらんのかね、と嘆いてしまう今日この頃と言った所であります。


〇のんびりと先月のFOMCの会見のQAをみるというとんでもないヒマ人企画

いや別に暇では無いのだがw
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220615.pdf

・おどりゃ50bp2回って言った他のに何で急に75bp上げるんじゃシゴウしたるぞ(とは言ってないけど)に対して

最初からこれ聞かれるわな当然。

『HOWARD SCHNEIDER. Thank you, Howard Schneider with Reuters. Two related questions, Chair Powell, did you feel you boxed yourself in with the language you used at the last press conference on 50 basis point hikes in June and July and would you please give us, as detailed a sense that you can, of what role you played in reshaping market expectations so quickly on Monday. 』

月曜になって急に75bp織り込ませにいったのはなんでじゃと質問です。

『CHAIR POWELL. So, as you know, we always aim to provide as much clarity as we can about our policy intentions subject to the inherent uncertainty in the economic outlook, because we think monetary policy is more effective when market participants understand how policy will evolve, when they understand our objective function, our reaction function.』

金融政策で何をやるかの反応関数が市場に理解されることによって政策のトランスミッションメカニズムが有効になります、って話は良いんだが、お前らその情報発信が「50×2で決め打ちしてたのにFOMCの直前になって75に変更と言い出した」ってムーブだからシゴウしたるぞ(とは言われてないけど)となる訳なんですが、

『And in the current,highly unusual circumstances with inflation well above our goal, we think it's helpful to provide even more clarity than usual, again subject to uncertainty in the outlook.』

先行き不透明な状況でインフレがマンデートを大幅に上回って推移する今の状況の中においては、「it's helpful to provide even more clarity than usual」とより透明性を高めるのが良い、と言ってるんだが、そもそも状況も見通しも不透明なのに何を透明にするんだよという話で、結果先の方の決め打ちをやってみたものの直前にひっくり返す、という結構強引なことをすることになった訳ですな。

まあSEPのドットチャートとか、フォワードガイダンスとか、緩和時代にやったものをそのままコミュニケーションで引き摺っている弊害がモロに出ている格好なんですけど、これECBも同じような問題を今抱えてて、今から9月の政策決定をどうするかとか、インフレがどうなるのか分からんこの状況下でコミットできないはずなのに、決め打ちやっちまっていて、その結果状況の変化が起きた時にも前のコミットに引き摺られて政策決定がビハインドになってしまう、ってのが起きているように思えます(個人の感想です)。

『So, and I think over the course of this year financial markets have responded and have generally shown that they understand the path we're laying out. Of course it remains data dependent, and so that's what we generally think about guidance and that's why we offer it.』

でもって市場は私たちの政策パスを理解して価格形成しているので金融政策効果が波及してる、って言ってるのだがだいぶインチキ説明になっとるな。

『And of course, when we offered that, when I offered that guidance at the last meeting, I did say that it was subject to the economy performing about in line with expectations.』

前回のFOMCでガイダンスを出しましたが、あの時に「これは経済が我々の見通し通りに推移した場合」と言いましたよね、と来ました。

いやまあ確かに前々からそういう言い方をしているんですけど、だったらガイダンスみたいな事は言わないで、「このように訳の分からない状況なので経済物価情勢、特に物価状況を見ながら適切に運営していきます」とだけ言って置けばよいのに、決め打ちみたいな事を言うもんだから話がややこしくなるんですよね。この部分はさすがにFEDは分かっていると思うんですが、フォワードガイダンス脳にマーケットが侵食されてしまっているのでこれを抜いて「先行きパスはお前らが合理的に考えろ」という本来あるべき(とアタクシはおもう)市場の価格形成をやらせようとすると碌でもないことが起きそうで踏み込めない、という感じなのでしょうか。

『I also said that if the economy performed, if data came in worse than expected, then we would consider moving even more aggressively.』

これまた「前言いましたよね」なのですが、前回のFOMCの時にも申し上げた通り、物価の状況が悪い(上振れ)だったらよりアグレッシブにやるよって言ったよね、と説明を始めておどりゃ何で急に75にしたんじゃシゴウしたるぞ〜の言い訳をしておる、という部分になります。

『So, we got the CPI data and also some data on inflation expectations late last week, and we thought for a while and we thought well this is the appropriate thing to do. So, then the question is, what do you do? And do you wait six weeks to do it at the next meeting? And I think the answer is that's not where we are with this. So, we decided we needed to go ahead and so we did. And that's really the, that's really how we made the decision. 』

直近のCPIデータや、いくつかのインフレ期待を示す指標が想定よりも高くなっており、これはアカンという事で50じゃなくて75にしたんです。という言い訳をしています。

・・・・・ということで理屈は通ってるんですが、だったらそもそも論として何で6月7月の利上げ幅はこれ、とか決め打ちを入れたんだよ馬鹿という話でありまして、まあさすがにここは反省して9月の利上げが幾らとか余計な事は言わないモードになっているのだけは評価したい(鉄砲玉に喋らせる分にはまあ別にね、と思うのですがFOMC後の会見とか議会証言みたいな所で偉い人がぶっこむのはちょっと)と思いますし、ECBもFEDが苦労してるの見てるんだから、今の時点で7月はともかく9月の決め打ちとかできないんだから、だったら喫緊の課題であるマイナス金利政策解除だけ7月にやっておいて、その後はインフレ次第で徐々にやるか急いでやらなければいけなくなるかは決まりますああでも今は徐々で大丈夫と思ってるよ、という風にしておいた方が利口だと思うんだけどねー。


まあ今回の75というのは食言やっちまった面ではコミュニケーションのやり方を考え直す機会になって頂きたいと思う次第。


関連して先の方に飛ぶんですけど、いつものニックさん。

『NICK TIMIRAOS. Thanks, Nick Timiraos. Chair Powell, you've said that you like your policy to work through expectations and now obviously this decision was something quite different from how you and almost all of your colleagues had set those expectations during the intermeeting period. And I know you just said that what changed was really the inflation data, the inflation expectations data,』

こちらも今回の75にジャガーチェンジした件についてでここまでは状況整理ですが・・・・・・・

『but I'm wondering on the inflation expectations data, was there something you saw that was unsettling enough to risk eroding the credibility of your verbal guidance by doing something so different from what you had socialized before? 』

状況に変化があったから変えるのは分かるんだが、それやってるとあんたらの口頭でのガイダンスに対する信認を無くしていくリスクがありませんかねえ?と当然のツッコミである。

回答がクッソ長い時点でまあ苦しいんだろうなと思う。今回は全般的に回答がクソ長い。

『CHAIR POWELL. So, if you look at a broad range of inflation expectations, so you've got the public, you've got surveys of the public and of experts and you've also got market based. And I think if you look across that broad range of data, what you see is that expectations are still in the place, very much in the place, where short-term inflation is going to be high, but comes down sharply over the next couple of years. And that's really where inflation expectations are and also, as you get away from this episode, they get back down close to 2 percent.』

インフレ期待がこのように推移したとか説明要らんがな。

『And so, this is really very important to us that that remain the case. And I think if you look for most measures, most of the time, that's what you see. If we even see a couple of indicators that bring that into question, we take that very seriously. We do not take this for granted, we take it very seriously. So the preliminary Michigan reading, it's a preliminary reading, it might be revised, nonetheless it was quite eye catching and we noticed that. We also noticed that the Index of Common Inflation Expectations at the Board has moved up after being pretty flat for a long time, so we're watching that and we're thinking this is something we need to take seriously. And that is one of the factors as I mentioned.』

でもって色んな指標の話を延々として、こんなにインフレ期待のデータにアップウォードリビジョンがあったんだから75にしたのは妥当である、という説明をしてて割と見苦しいですね今回の会見は。

『One of the factors in our deciding to move ahead with 75 basis points today was what we saw in inflation expectations. We're absolutely determined to keep them anchored at 2 percent. That was one of the reasons, the other was just the CPI rating.』

主要要因はインフレ期待だそうです。なんのこっちゃ。

『NICK TIMIRAOS. So if you saw a movement like that again, another tick up in inflation expectations, would that put a 75 or even 100 basis point increase in play at your next meeting?』

更問。インフレ期待が上がってきたら次に75とか100の利上げもアリエール、でエエノカ??

『CHAIR POWELL. We're going to, I'll just say, we're going to react to the incoming data and appropriately, I think. So I wouldn't want to put a number on what that might be. The main thing is to get rates up and then pretty soon we'll be in an area where we're I think, as you get closer to the end of the year, you're in a range where you've got restrictive policy, which is appropriate, 40-year highs in inflation, we think the policy is going to need to be restrictive, and we don't know how restrictive. So, I think that's how we'll take it.』

えーっと結局これは「インフレ期待がバシバシ上がったらよりアグレッシブな利上げも理屈の上ではあり得ますが、数字についてここで決め打ちする気はありません」という回答でして、そういう意味では今回50×2って言って置いてギリギリに騙し討ちの75に変更したことに関しては(ジョージ総裁のロジカルな反対もあったし)まあ反省してるんじゃねえのという感はワタシには受けたんですけど、どうなんでしょうかね????


という所で甚だ申し訳ありませんが時間が無くなってしまいまして、まああと少し会見からトピックを拾っておきます。