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2022/08/31

お題「中村審議委員福岡金懇記者会見ェ・・・・・・・・・・・・」

はいはいインフレインフレ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220830/k10013794421000.html
10月電気料金 大手電力10社 過去5年で最高水準に
2022年8月30日 19時29分

公共放送と思えない品の無いサムネがすげーwwwwww


〇中村審議委員福岡金懇は会見は話が何か噛み合っていないのがどうもね・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220826a.pdf
中 村 審 議 委 員 記者会見要 旨
―― 2022年8月25日(木)
午後2時30分から約35分
(福岡市・東京間オンライン開催)

最初の3ページ半が本日の所感とご当地質問が延々と繰り広げられるという展開になっておりまして、そこは飛ばして珍タゲ議論の質疑からなんですが・・・・・・・・

・この質問は引っ掛けなのかアレなのかの判断がつきかねるんだが

ということで4ページ目までいきなり飛んで(9ページしか無いのに)ご当地経済の質問から離れて最初の質問がこれである。

『(問) 二点あるのですけれども、一点目は講演の中で 2%の物価安定目標を持続的安定的に達成するためには賃金の上昇が必要であるということでしたが、持続的に賃金が上昇するには企業収益が好調である必要があると思います。そう考えた場合、足元海外経済が不透明な情勢となっていて、中国の減速に加えて米国でもリセッション懸念が市場で出ています。こうした海外のリスクが企業収益に悪影響を及ぼす可能性がある中、賃金が、来年日銀が期待したような流れで上がっていく可能性はどれくらいあるのか、そのあたりをお願いします。(後半割愛)』

何じゃこの質問wwwwwwww

えーっとですね、そもそも2%の物価安定目標が達成されるってのは、「景気のサイクルの中で平均して見れば年に2%程度の物価上昇が続く」ということを意味するのでありまして、そのような世界では当然「持続的に賃金が上昇する」という事象は起こるのですが、別にそれは「企業収益が好調である必要がある」訳ではありません。

これは企業収益云々ではなくて「ノルム」の変化が起きることによって達成される話であって、企業収益が好調な時しか賃金上がらないんだったらそれは景気の良い時だけ物価が上がるということなので、そもそもこれ質問の設定が根本的に認識間違っているんですよね。誰が質問してるのか知らないけどこれは引っ掛け質問で聞いているのじゃなかったらちょっとお前会見で質問するのに勉強足りないんじゃないのとしか申し上げようがない。

ただですな、これがまた回答を読みますとですね・・・・・・・

『(答) まず賃金の引き上げと海外経済との関係については、企業収益が増加することは当然大事なので、』

はまあいいんですけど、この先言ってることが飛びすぎていて結局何を言いたいのよ、という回答が延々と展開されて正直読むのに無茶苦茶苦労したし、これ「会見要旨」なので文字起こしする際に発言の趣旨が伝わるように&趣旨を曲げないようにしながら表現を分かりやすくするように事務方の方が頑張っていると思うのですが、この文章を読むと事務方が苦労したんだろうなあというのが想像できます(個人の妄想です)。

『ここが今の日本経済の状況からいくと、結構輸出によって製造業が救われてきていたという部分があったと思います。それが、米国のリセッション懸念、あと中国も低迷していて――この 4〜6 月期のGDPがマイナスにはならなかったけれども結構ギリギリのところだった――、海外経済がどんどんと成長をしていかなくなると、大きなインパクトが当然ながら日本にあると思います。』

なんでしょうなあ、まあ質問の中で「足元海外経済が不透明な情勢となっていて、中国の減速に加えて米国でもリセッション懸念が市場で出ています。こうした海外のリスクが企業収益に悪影響を及ぼす可能性がある中」ってのがあるから、それに丁寧に回答しているんだと思うのですが、

『ただ、今回、海外経済の中で米国については、景気が良すぎて賃金が上がりすぎて、このままではインフレ高進が収まらなくて、あとで大きな問題になることから、FRBが金利を上げて賃金を抑制しようとした。これは、景気が上がっているのを抑えようとしていることであり、要するに需要はあるということです。』

この説明が余計で、(説明したいのは分かるんだけど)話の流れからしたらもっと簡潔に(というかその前の部分も簡潔で良いと思うんだが)「海外のリセッション懸念が具現化すると国内企業の収益にも製造業中心に影響するので来年の賃上げに悪影響を与えるリスクはあると思うが、今の所その懸念は小さいと考えています」でいいんですよねー。

寧ろ中村さんには「私たちの考えている「物価安定の目標」というのは、只今ご質問にあったような前提、即ち企業収益が好調な中でしか実現しない物価上昇ではなく、景気の大きなサイクルの中においても安定的に2%程度の物価上昇が継続するという状態を示しております」とかそもそも論を言って欲しいんですけど、そういうそもそも論が出てこないのは残念無念。

余計な説明はなおも続く。

『中国はどうかというと、今金利を下げるとかいろいろ政府が支援をして逆に経済を浮揚させるための政策を打っています。』

『したがって、米国がとんでもないリセッションに入るかというと、そんなことはないだろうと思います。』

「懸念は少ない」位にとどめておいた方が良いと思います。というのはこの方の質問の後半にあったのですが、うっかり言い切り過ぎると後で逆ねじ食らわされるの巻、というのを実践しておられるので。

『景気が良いところに、インフレ――輸入の原材料が足を引っ張っているというのはありますけれども――や供給制約の問題もあるので、ここのところが片付いてくると、日本の輸出や製造業についてはプラスになってくるだろうと思います。中国はゼロトレランス政策を打っていますが、景気浮揚を一生懸命やろうということなので、世界経済全体で言うと全体として 3%ぐらいの成長が見込まれているという点はあまり大きくは変わらないのではないかなと思っています。ただ、よく注意をしながら見ていきたいと思います。(後半割愛)』

結局世界経済の質問の方への回答を延々と繰り広げるにとどまっております。まあ真面目に答えているのは分かるんですが。


・無駄な言いきりは揚げ足取られの元&日銀のインチキ整理による内外物価動向の要因分解

今の質問の後半。

『(問)(前半割愛)二点目ですが、2 月に講演で会見された際に、為替についてドル円 103円から 115 円とその当時の水準で安定していれば、日本経済にプラスであるということだったと思うのですけれども、今は 136 円と相当円安水準となっています。今の円ドル水準あるいは、最近の為替の動きについて、企業経営や日本経済にどのような影響を与えるのかお願いします。』

これはクソワロタwwwwwwwwww

でもって回答。

『(答)(前半割愛)それから、為替で 2 月に 115 円くらいまでだったら良いのではないかと、確かに私も言った記憶があります。今日は 136 円くらいになっていますので、その当時と比べると円安は進行していると思います。』

www

『この為替レートというのは、今年に入ってドルが急激に上がってきたわけです。7 月で 139 円くらい、8 月 2 日で 130 円くらいに一回なっているので、かなりボラティリティが高い状況になっています。これは、日本経済がどうかなったわけではなく、米国の金利引き上げによってドルが上がっています。』

『この引き上げを何でやったのかというと、経済、需要が強すぎるということから起きているわけです。』

『米国の需要が強いということですから、2 月に言った時の経済情勢と今とは、変わっているということです。』

なんちゅうかまあいいんですけど、米国のGDPって2四半期連続でゼロとかマイナスとかじゃなかったでしたっけ??

・・・・・ということですが、これは何でこういう説明を中村さんがおっぱじめているのか、というのがこれまた容易に想像できるのですが(個人の妄想ですけど)、昨日ネタにしましたように、ジャクソンホールで黒ちゃんは「日本の物価上昇は国際商品価格の上昇によるものだけです」とか言いきって帰って来たように、日銀の中でのインチキ整理によると、「米国などの物価上昇はディマンドプルだが日本の物価上昇はコストプッシュ」という整理になっている訳ですよ、どう見てもインチキ整理ですけどね。でもってそういう整理を散々インプットされているもんだから、中村さん「米国経済や需要が強すぎるので利上げ」というのを発言しまして、それ自体は仰せの通りではあっても、それ以前から続く需要超過に対応した利上げを実施した、というのが実態に即しているし、米国経済って足元では軽くスローになってきている訳でして、足もとの経済情勢の話をするのに、「米国は需要が強すぎるから利上げをしている」という話をするのはズレがあるので答えになっているようで答えになっていないんですよねー。

でもそれで答えになったことにしていまして、

『円安は輸出にとってみると良いし、輸入――たぶん米国からの輸入ではなく、他のところからの輸入なのかもしれませんが――のコストは高い。だから輸出入の両方でプラスもマイナスもかなり経済の関係は変わっているので影響はそれぞれ出ている。それについては、それぞれ経済のインパクトを把握しながら政策を打つということになると思いますが、これは金融政策の面では日本経済が変わっていなくて、米国経済が変わっているということなので、私どもとしては動けないというか、経済実態がおかしくならないようみていきたいと思います。』

??????????????

結局質問の「為替についてドル円 103円から 115 円とその当時の水準で安定していれば、日本経済にプラスであるということだったと思うのですけれども、今は 136 円と相当円安水準となっています。」がどうなんですか??の質問にはなんの回答にもなっていないですね。

まあ余計な言いきりはしない方が良い(もっとフワッと「安定的に推移するのが望ましい」とか言って置けばよかった話)ということですな、ナムナム。


・質問が幅広すぎて回答が狭くなってしまう例をご覧ください

次の質疑も何か一読して引っ掛かる(スムーズに読めない)のですが、書き物のネタにしながら読むと理由が分かる質疑なんですよねー。

『(問) 今日の午前中の挨拶の中で、物価は上がらないという日本に根付いた考え方や慣習に変化が起きつつあるように感じますと述べていらっしゃいますが、どのような場面でそのような実感をされていますか。

また、例えば厚労省の毎月勤労統計などを見ますと、賃金の伸びが物価の上昇率に追いつかなくて、実質賃金がマイナスの状況というのが続いていますけれども、こうした状況が続いても、今起きている考え方や慣習の変化の動きというのは、持続するとみていらっしゃいますでしょうか。

また、その持続するために、今、必要なことであったり、直接金融政策ではタッチしないにしても、日銀として賃上げの持続的な、賃上げの実現に向けて、どのような内容で取り組めるとお考えでしょうか。』

たぶんノルムと賃金について聞いているんだと思うんだがこんなに幅広に聞くなよ、と思ったら・・・・・・

『(答) 何が変わったかというと、消費者物価が 11 か月連続で上がっているということは、結構今までにないことであるほか、4 月から 4 か月連続で 2%台の上昇になっていることも近年はなかったという点で言うと、家計とか消費者の中でちょっと変わったのではないか。それから、市場占有率やブランド力が高いところや、食料品などの値上げを随分できたという点でも、変わっているなと思います。』

日銀様の説明によりますとそれはただのコストプッシュで別にノルムの変化じゃないって話だったと思うのですが、まあ普通の見方をすると変化起きてるかもね、って思う筈なので、こういう辺りにちょこちょこと日銀様の屁理屈ではない、客観的な見方が出てくるのが味わいありますな。

『ただ、そこだけでは家計の予算制約から、他の物価が下がりますし、これが過去、日本で起きてきたことですから、そこがちょっとずつ変わってきているのかもしれないと思っています。』

中村さん何故かその話をスルーするのですが、ついこの前(7月展望レポートの前)までの説明だと、コロナによる消費抑制とコロナ対策による財政支出によるいわゆる強制貯蓄によって、家計の余裕が出来ていることによって、値上げ許容度が高まっている可能性がある(というのをきさらぎ会で言ったら炎上した訳ですが)、って話だったのに、なぜか最近はその話を言わなくなったのがすげー謎なんですけれども、まあたぶんきさらぎの一件で炎上したから触れないことにしてるんでしょう。

『今回は、最低賃金も平均 3.3%上げることについては確かに労使間でかなりの議論があったことは承知していますが、その他、転職サイトの情報によれば、1割以上上がった人の割合が増えているなど、職業によって賃金の上がり方が大きくなっているという点も少し変わってきたのかなと思います。』

「職業によって賃金の上がり方が大きくなっている」のは事実としてそうなんですが、それを言い出すと「日銀は格差拡大を促進しているのか」とかあらぬ非難を受ける可能性があるので、マクロ的に2%の物価安定目標を目指す、って政策を実施する中で、ミクロの話をするのは諸刃の剣だと思います。まあ今回は質問が「具体例を」って言われているので仕方がない面があるんだけど、真面目に説明しようとして将来の墓穴を掘っている(さっきの為替での具体的な数字を入れてしまっていた件と同じ)気がしますけどねえ(個人の感想です)。

『また、例えばコンビニエンスストアとGMSのような大きなスーパーマーケットでいうと、コンビニエンスストアではGMSで買うよりも絶対に高いのですが、サービスに対価を払うという文化がちょっと変わってきたのかなと思います。昔コンビニができた頃は高いので、私もGMSで買っていましたが、便利なのがよいねとか、コロナなのであまり人がたくさんいない方がいいね、というところもあって、ちょっと雰囲気が変わったなという感じもしています。』

もはやここまで言わなくてもいいんじゃなかろうかというレベルの話までするのは真面目に答えようとしているだけどっかの黒田なにがしよりも1兆倍位良いのですけどねー、なんか惜しいなあ中村さん(謎のウエメセすいません^^)。

『それから、高齢者や女性の労働参加率が 2019 年くらいまで非常に増えてきました。それが 2022 年頃からはさらに労働参加率が増えてくるということはちょっと難しくなってきたかなと思っています。ただ、ニーズは非常にあるので、労働市場の逼迫度合いが従来よりもかなり出てくる。それは、九州でも今後出てくると思いますので、生産性を上げて、賃金の引き上げができるようにしないといけないなという経営者の危機感、これがかなり変わってきているように思います。今までは、安い賃金で、人を何とか採用ができてきたという部分で価格競争力を保とうとしていましたけれども、それができなくなって、現役世代の人たちの賃金が上がってくるというステージに今年から来年にかけて移ってくるのではないかと個人的に考えており、それで変わりつつあるかなと思います。経営者も、賃金を上げないといけないという危機感が出てきたという点で、従来と違うステージに来ているような気がしています。』

これで今の質問に対する回答が終了。ノルムの変化という話を思いっきりしていまして、それ以外の質問に回答してないから、なんか読んでて違和感があって読み直してみると「そもそも質疑応答が微妙に噛み合っていない」のがこの会見要旨を読みにくくしている(編集で頑張った結果でこれですからね)要因かなと思います。なお、これが黒ちゃんの会見のように最初から質問に対してまともに答えない、という超不誠実スタンスだと、読むほうも「ああまたまともに答えてないわ」と思いながらスラスラと読めるのですが、中村さんの場合真面目に回答しているのは回答しているのだが、質疑が微妙な所で噛み合っていないのが読みにくいんですな、なるほど(自分で納得してどうするワイwww)。


・フォワードガイダンスうんぬんの話だが「賃金紐付けフォワードガイダンス」はさすがに酷くねえか

『(問) フォワードガイダンスについてお伺いします。現在、政策金利に関しては、現在の金利水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しているとあります。現在の経済情勢を考えると、ここで利下げというのはなかなか考えづらいと思うのですが、この政策金利の下方バイアスを、例えば中立化に戻すようなことというのは考えていらっしゃるのでしょうか。』

これは考えていない、って答えさせるための質問なのでしょうけど、まんまと乗って余計な事を言ってしまうの巻が以下展開されます。

『(答) 現時点で言うと、なかなかまだそこまで考えられるようになっていないです。それは、私の挨拶でも申し上げたように、まだ残念ながら物価が輸入インフレの部分が強くて、日本で輸入したものが国内で売られる時に価格が上がる点で、今はエネルギーだったり食料だったりとかが多いと思います。』

これ黒ちゃんのジャクソンホールで示した話と同じなんだが、

『これが国内で生産・加工されて付加価値が国内で発生して、売られているものの物価が上がり始めていくと、継続的な物価上昇が安定的に発生するのではないかと思っていますが、残念ながらまだそこまで来ていません。』

えーーーーーーーー!!上がってるんじゃないのそっちもーーーーーって思うんだがどういう認識なんだ日銀。

『それは、実質賃金がマイナスになっていること、日本の場合には大体 4 月に正社員の賃上げが行われると、次に賃金が上がるのが翌年の 4 月になり、その間、賃上げ以上に物価が上がれば当然ながら実質賃金がマイナスになっていくということで、次の賃上げ――その前の 12 月のボーナスというのもありますけれども――が増えていくかどうかが非常に重要です。』

目先は強制貯蓄があるので物価上昇ヘーキヘーキ、と言ってたきさらぎ会までの説明は何処へ????????

『次の月次賃金が上昇するところが確認できないと、なかなかまだフォワードガイダンスを変えていくというところにはならないのではないかなと思っています。』

いやそのりくつはおかしい。

昨日も申し上げたのでなんですが、賃金って最遅行指標で、そんなもんの上昇待ってる前に物価の方が更に上がるだろと思いますし、そもそも政策の波及効果にラグのある金融政策運営を物価どころか最遅行指標の賃金に紐付けするってどこの世界にそういう議論があるんだよと(政策上手く行ってるかどうかの後付け確認のために使うならまあ分かるんだが・・・・)。


・別に質問者はインフレ目標を下げろと言ってるわけでは無いのですが・・・・・・・・

『(問)(前半割愛)二点目は、金融政策についてです。そうはいっても、足元これだけの円安というのは耐えられない、なかなか厳しいという中で、2%本当に物価上昇になるまで、今の金融政策を続けていくかどうかという議論があるかなと思うのですが、なぜ 2%でなければいけないのか、1%ではだめなのか、かつ出口のところをどうしたらよいかですとか、その辺りのお考えについて教えていただければなと思います。』

この回答が凄いんですが、まあこういう屁理屈で中村さんにインプットしてるんだろうなあ、というのが良く分かりますので引用しましょう。

『(答)(前半割愛)それから、金融政策で、この円安をどうするか、2%についてどうするのかというお話ですが、』

と、この時点で完全に質問の趣旨を取り違えている(質問する方ももう少し噛み砕いて質問しろよとは思うけど)。「2%に行くまで政策を変えない、というのはやり過ぎじゃないのか」(そもそもコアCPI2%行ってるんですけどね、笑)という質問なのであって、インフレ目標を下げろとは質問してないんですよねー。

『金融政策は各国経済のためにやっているわけであり、米国も欧州も賃金上昇に伴って物価が上がっている、止まりそうもないということで、賃金上昇を抑えるために景気を抑制しようとしています。』

え?????欧米(というか米国)って物価上昇が先にきて賃金上昇して、それが今物価上昇に再度フィードバックしてスパイラルになりかけてるからマズいって話をしているんですけど、何で賃金上昇が先に来ていることになってるんだよ・・・・・・・・・・・・

『日本は、不幸にも景気が良くなろうとしたところで、インフレがきましたので、また少し景気の改善スピードが落ちてしまったということで、』

ちょwwwwwwwwインフレ否定すんなwwwwwwwwww(言葉の使い方の問題であって言いたいことは分かるんだがもうちょっと考えて欲しい)

『ここで金融政策を欧米と同じように金利引き上げ競争に参入するのかというと、それはタイミングとして違うと私は思っています。隣の国が上げたから、うちも上げなければいけないかと言われれば、そんな必要はないし、自国の経済に対して金融政策はどうあるべきかということを考えるべきだと思います。』

そんな質問してないんですけど・・・・・・・・・

と、この辺りまで読んで分かりますように、この辺りの話って黒ちゃんの会見で質問に対して答えない時のレトリックというか詭弁のガイドラインみたいな回答になっているのがお分かりになるかと思います。まあ要するにこういう詭弁で誤魔化すしかないって状況にはなっているんですよ日銀ちゃん。

『2%をいつまで続けるのか、1%ではなぜだめなのかという点については、今、自分たちの実力は 1%でも大変だと、だから今の経済にあった目標で良いのではないかとなれば、今度は0.5%だねということになって、経済構造が今のグローバルな世界の中で、変わっていかなければいけないところから取り残されて、江戸時代のように鎖国をしているようなことになりかねません。私は世界の中で日本の経済が、今はグローバルにつながっていますので、その中で成長を続けていくということであれば、グローバル基準の 2%という物価安定目標に向かって、経済を変えていこうということが正しい方向ではないかなと思います。したがって、私は 1%ではだめだと考えています。』

と、全然関係ない回答を延々と繰り広げる、という結構見てらんない内容に成って来たなと思ったら最後の質疑にクソワロタのですけど・・・・・・・・・・・


・質疑が全然噛み合わないから助け船の依頼でも来たのかこれwwwwwww

上記の質疑応答の次に唐突にこれである。

『(問) M田支店長に伺います。昨日、岸田総理大臣が水際措置について緩和すると方針を表明されていまして、九州経済は観光に依存するところがかなり大きいと思うので、この受止めをちょっと詳しく伺わせて頂けないでしょうか。』

ご当地質問なのがさることながら、支店長ご指名で質問というレスキュースキームクソワロタwwwwwwwwwww

あ、レスキューなのかどうかは知らんですよ、個人の妄想ですからね!!!!!!!!!!!!!!!!!

なお会見はこの支店長への質疑にて終了しましたw





2022/08/30

お題「ジャクソンホールで面白そうな物件の私家版ガイド/中村審議委員福岡金懇続き(その2)」

最初マクラにしようと思ったが独立コーナーにしますね。

〇国内の内輪で内輪向けに話している分には「はいはい」で済まされますが・・・・・・・・(ジャクソンホール)

・頼むから内輪の話をジャクソンホールに行ってしないでくれ日本の恥だわ

これは日本の恥。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-27/RHAL50DWLU6801
黒田総裁、日銀は金融緩和策を維持する以外ない−ジャクソンホール
Matthew Boesler
2022年8月28日 6:28 JST

『日本銀行の黒田東彦総裁は27日、日本のインフレのほぼ全てが商品価格上昇によるものだとし、日銀は金融緩和策を維持する必要があるとの見解を示した。米カンザスシティー連銀主催のジャクソンホール(ワイオミング州)会合で発言した。』(上記URL先より、以下同様)

>日本のインフレのほぼ全てが商品価格上昇によるもの
>日本のインフレのほぼ全てが商品価格上昇によるもの
>日本のインフレのほぼ全てが商品価格上昇によるもの

うそはいってはいけませんよ。

『黒田総裁は賃金と物価が安定的かつ持続可能な形で上昇するまで、持続的な金融緩和を行う以外に選択肢はないと述べた。パネル討論会後の質疑応答で語った。』

今回のジャクソンホール、エコノミック寸ポジウムらしくって「お題に沿ったペーパーが出てそれに対してツッコミを入れる人が出てきて話が進む」みたいな感じで、中々ペーパーが全部大部なので、Handoutって書いてる要約とかチラ見開始していますが、明らかに今回のお題の中には「財政出し過ぎて金融緩和し過ぎちゃったよね」という反省の弁が大いにある訳でございまして、幸か不幸か元々の物価とインフレ期待が低かった日本はまだ海外に追いついて居ないのですが、こんなんどう見たって早晩追いつくだろとしか申し上げようがないのに、「海外で今起きていることが日本でも起きてしまわないか、ということを参考にさせていただきたい」くらい発言しろよ馬鹿かお前は世界の恥さらしにも程があるし、そりゃパネルディスカッションが欧州3人に韓国中銀総裁になるわなと思いました。


・この辺がおもろいんじゃなかろうかという私家版ガイド&読もうとする物件備忘録

ジャクソンホール正式式次第はご案内の通りですが。(長いのでサイトへのリンクは途中の文字列までに居れる)
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-policy-symposium-reassessing-constraints-on-the-economy-and-policy/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Reassessing Constraints on the Economy and Policy
THURSDAY, AUGUST 25, 2022
12:00 a.m. , US/Central
The Federal Reserve Bank of Kansas City hosts dozens of central bankers, policymakers, academics and economists at its annual economic policy symposium.

まあ全然ちゃんと読めている訳では無いのですが、ざらっとチラ見したところ、

Aug. 27, 2022

8:00 a.m.の部にある
『Reassessing Constraints on Policy: Fiscal Constraints

author:
Francesco Bianchi
Professor, Johns Hopkins University
discussant:
Ethan Ilzetzki
Associate Professor, London School of Economics』

とか、9:00 a.m.の部にある、

『Reassessing Constraints on Policy: Central Bank Balance Sheets

author:
Viral Acharya
Professor, New York University
discussant:
Wenxin Du
Associate Professor, University of Chicago』

って辺りが面白そうな気がしまして、ちなみに後者の方は

ペーパー(むっちゃ細かいのでちょっとアレですが)
https://www.kansascityfed.org/Jackson%20Hole/documents/9040/JH_Paper_Acharya.pdf
Liquidity Dependence:
Why Shrinking Central Bank Balance Sheets is an Uphill Task

ってのがエライ丁寧な技術論をやってて、オーサーをみますと、

Viral V Acharya (NYU Stern School of Business, CEPR, ECGI & NBER)
Rahul S Chauhan (University of Chicago Booth School of Business)
Raghuram Rajan (University of Chicago Booth School of Business and NBER)
Sascha Steffen (Frankfurt School of Finance & Management)

とラジャンの名前が燦然と輝いているので、たぶんこれは読むと面白いんじゃないかなと思います。ただまあクッソ長いので、代用品としてディスカッションペーパーの

Wenxin Du
University of Chicago Booth School of Business
Federal Reserve Bank of New York

さんによる、

そこそこあるペーパー
https://www.kansascityfed.org/Jackson%20Hole/documents/9042/JH_Remarks_Du.pdf
Discussion of “Liquidity Dependence: Why Shrinking Central Bank Balance Sheets Is an Uphill Task” by Acharya, Chauhan, Rajan, and Steffen (2022)

その紙芝居
https://www.kansascityfed.org/Jackson%20Hole/documents/9043/JH_Du_Discussion_Final_Handout.pdf

何かが面白いんじゃないかなって思うのでした。読むかどうかは気力体力次第。


・韓銀総裁がパネルに呼ばれるというのにうちの中央銀行と来たら・・・・・・・・

でまあこの土曜日(最終日)の最後は10:25 a.m.の部で、
『The Outlook for Policy Post-Pandemic』
ってお題のパネルですが、メンバー構成に謎の偏りがあるんですよねー。

panelist:
Francois Villeroy De Galhau  Governor, Banque de France
Thomas J. Jordan  Chairman of the Governing Board, Swiss National Bank
Chang Yong Rhee  Governor, Bank of Korea
Isabel Schnabel  Member of the Executive Board, European Central Bank

シュナーベルが出てるのに何でフランス中銀総裁も出てるんだよと思いましたし、もう一人がジョルダンでスイスじゃん何ちゅう偏りだよと思っておりましたが、そこに燦然と輝く韓国中銀の李総裁。

こちら4名ともちょっとしたスピーチを用意していまして(リンクは式次第にある)李総裁のをペーパーが

https://www.kansascityfed.org/Jackson%20Hole/documents/9046/S7.20220819_Speech_Rhee.pdf
Lessons From Unconventional Monetary Policy for Small Open Economies and Emerging Markets*
Douglas Laxton
Chang Yong Rhee

というお題で、「Small Open Economies and Emerging Markets」というお題なんですが、趣味的にはこれがおもしろいかなとは思うのでこれは読んでみて面白かったらネタにします。

まあ今回のジャクソンホールシンポジウムの流れで黒田さんがあんな発言をしてると、東洋の珍獣みたいな感じで場違いにも甚だしい訳ですが、この李総裁のスピーチの冒頭の脚注に謝辞があって、

『* We are grateful to Dr. Ahrang Lee and to Dr. Bada Han at the Bank of Korea for their substantive contributions and assistance in preparing this paper, and to Mr. Takuma Hisanaga at the MOF, Japan, for kindly providing the date that decomposes the main drivers of Japan’s public debt accumulation. The views in this paper do not necessarily represent the official views of the Bank of Korea or its Monetary Policy Board.』

日本の財務省からは日本の財政に関しての参考をもらったようなのですが、日銀には何の謝辞もなくて、まあ当たり前ではあるのですが、なんか世界の孤児っぽくて、それこそ黒ちゃん一人で金融緩和を吠えた挙句に相手にされないで「我が代表堂々と退席する」くらいやったら面白かったのに(不謹慎)。

というジャクソンホールでたぶん見ると面白そうな部分(個人の感想です)のご紹介でした。


〇中村審議委員の福岡金懇と会見だが今の日銀の中でどういうインプットが起きているのかが良く分かりますな

だいたいかこの金懇の感じですと、中村さんって基本的に真面目で勉強熱心っぽいし(個人の勝手な印象です)、日銀のトップで今出ているサムネを見ても何か人が良さそうには見えます。

・・・・・という方なので、今日銀で行われている議論、というよりも黒ちゃんの「政策を1ミリも変更しない」というただの意地によって継続されている現状の枠組みを継続するための屁理屈のくみ上げ方、というのを間近で見ている訳で、その屁理屈は中央銀行的な意味では色々と屁理屈を駆使して普通の金融政策になるように一生懸命理論体系を構築するのですが、それを中村さんのように悪く言えば外野ですけどよく見れば平明にフラットに見た場合、どういう風に見えるのか、というのを中村さんがフラットに咀嚼した結果、このような理屈が展開されるんだなーと思いました。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220825a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 福岡県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
中村 豊明

金融政策の話は金曜にネタにしましたが、もう一つのコーナーが中村さんの主張っぽいので敬意を表して鑑賞して見ます。『4.日本経済の持続的な成長に向けて』ってお題です。


・そもそも物価目標の実現は「インフレ期待を2%に引き上げる」んじゃなかったのかと

もうのっけから珍タゲである。

『2%の「物価安定の目標」の実現には、賃金の上昇などによる家計の可処分所得の持続的かつ安定的な増加が必要です。』

ちょwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwww

そら確かに賃金が上がらんで物価だけ上がったらどっかで実質所得の低下が起きて需要が落ちるんだから、物価が上がらなくなるというのはあるんだが、そもそも論として「ノルムに変化が生じれば」賃金も物価も上がるものというレジームになる、っていう話であって、インフレ期待の上昇によって価格設定行動や賃金設定行動に変化が生じる、って言う方が因果関係としては話が通ってませんかねえ、と思うのですよ。

賃金が上がるから物価が上がる、ってのは相関関係としては仰る通りなのですが、因果関係で考えた場合、一般賃金が先に上がって一般物価がその後に上がる、という現象ではなくて、あくまでも一般物価の上昇に一般賃金が追随する、という流れになるはずだし、現実問題として欧米各国だって最初は物価が上がって、その後賃金が一段高になってきてスパイラルを懸念している、ってステージでしょ。

ということは、足元の物価上昇がコストプッシュであろうとディマンドプルであろうと、いすれにしたってこのタイミングでインフレ期待を引き上げるような情報発信を日銀が行うことによって合理的期待形成によるインフレ期待の引き上げに着手しないと行けないのであって、賃金が上がらないから物価が上がらない、とか色々な期待をぶち壊す情報発信してるの馬鹿なんじゃないかと思うのですが、今のあたおか政策を続けたい黒田日銀、しかも半年後には最早野となれ山となれ、という無責任極まりないスタンスで臨んでおられる(個人の偏見です)人たちにとっては、インフレ期待の引きあがりによって政策の枠組み修正をしなければいけないことになるだけでも忌まわしい事なので、そんなことは起きない方が良いのですな。

・・・・しまった中村さんの金懇鑑賞の筈が悪態にwww

・「賃金からの好循環メカニズム」遂にキター!!!

で、いまの一節の続き。

『可処分所得の増加は、最終需要となる家計の消費支出の拡大を通じて企業の売上・利益の拡大につながります。そうして生まれた資金や借入などによるレバレッジを活用し、企業が付加価値を高める投資を行い、自社の製品・サービスや労働の価値を高め、それを販売価格に反映し、さらなる賃上げや投資の原資を獲得して成長するという好循環が形成されます(簡略化した構図は図表 10)。』

これはひどいwwwwwwwwwwwwwwwww

いやーあのですね、経済の動きというか物価の動きに対して一番遅行する賃金が起点になってメカニズムが回るという理屈はさすがに無茶苦茶にも程があるんですが、恐らくこれは今黒田日銀の中で弄している詭弁を中村さんが素直かつ平明に理解するとこうなる、って話なんですが、じゃ何で「賃金」という最遅行指標を循環メカニズムの起点にしているかと言いますと、賃金ならば(この後の会見でもでてましたけど)日本の場合常用雇用の賃金労働者の賃金改定が行われるのが概ね年1回で、しかも来年の4月とかになりますから、賃金をメルクマールにしている限り、黒田総裁の任期中にメルクマールがダイナミックに動くことはないので、逃げ切れるし後の事は野となれ山となれ、という下心のもと、「一番遅行するものが起点になる循環メカニズム」という理屈として明確におかしいものを持ち出しているんですが、中村さんは素直なので下心の方を察しないもんだから思いっきりフラットにこの屁理屈を前面にだしてしまう訳ですな、よきかなよきかな(よくない)。

何せ物価は先日の東京都区部CPIも上振れしたように、年末コア3%コアコア2%も全然夢じゃなくなってきたようなきがしないでもない(個人の感想です)状況な訳で、4月の展望レポートでコアCPIだけ出していると上昇するので分が悪いから、という下心によって出してきたコアコアがあっさり味でこちらも上昇となる中、日銀の方々は頭だけは良いので10月展望レポートの時に窮地に追い込まれる前に、コアコア指数から賃金に乗り換える、というのを実施したのが7月展望以降の賃金連呼なわけですな、ナムナム。

まあそういう訳で、詭弁のガイドラインに沿っている形で論破されそうになる(=コアコアも上がりだす)とその前に別の理屈(=賃金)を並べている、という今黒田日銀がやってるのは詭弁のガイドラインに綺麗に沿った流れである、というのは10ウン年(もっとか)中央銀行見物人をしていれば楽勝で気が付くのですけれども、中村さんの場合は財務畑であっても金融政策云々とかを研究するような必然性が無いので、詭弁のガイドラインを真に受けてそのまま説明しちゃうから、素直に「賃金上昇を起点とする前向きの循環メカニズム」というすさまじいものをぶっこんでしまうのであります。

これが恐らく雨宮さんのような劫を経た大狸(誉め言葉です!)になりますと、賃金からの前向き循環メカニズム、というのは流石に話が無茶苦茶なのでどんなにそれっぽい理屈をこねたとしても、絶対に寸止めする筈なんですがそこは平明かつ素直に日銀の今の屁理屈を真に受けると中村さんの説明のようになるわけですな、面白いおもしろい。

・・・・と申しますのは、さっきの中村さんの説明部分に「(簡略化した構図は図表 10)」ってことで、PDFの19枚目に図表10ってのがありますが、これはどうせ日銀の中でこういう図表使ってて、今後の金懇でもこの説明が出て来るんだろうなって感じの『企業活動と家計の可処分所得の好循環による国内経済の成長』ですけど、この謎の図をみると、巧みに「どこが起点なのかがわからない」という図になっておりまして、これは何でかと言えば、正面切って「賃金の上昇から始まる前向き循環メカニズム」と言ってしまうとさすがに記者会見で「最遅行するものが起点って馬鹿なんですか?」と突っ込まれて立ち往生しますから、そういう図表にはしていない、というのが日銀の屁理屈王としての王者の風格な訳ですね素晴らしい(全く褒めてない)。

でも政策枠組みの微修正すらしたくない、しかも理由は単なる黒ちゃんの意地、という事なので、起点を賃金にしておかないと政策見直さない理屈が通らなくなるので、そういう説明で誤魔化しているのを中村さんが見事に表にだしてしまった結果「賃金から始まる前向き循環メカニズム」という珍理論が登場する破目になった訳です、ざまあ。


話飛びますが、可処分所得云々であれば、スタートが財政であれば、財政による可処分所得のサポートからメカニズムが回りだし、最終的に賃金上昇にバトンタッチする、ということでその後自律的なサイクルに入る、って話は当然ながらある、というか米国で起きてるのって「過剰な財政出動によって需要がヒャッハー」となる中で馬鹿金融緩和を引っ張り過ぎたので自律的メカニズムどころかオーバーシュートが始まっている訳ですし、日本だってコロナうんぬんで大概に財政バンバカだしているんですから、起点が財政で可処分所得が拡大、って話もあるし、それこそ強制貯蓄だってあるんだから、別に賃金を起点にしないといけない理由はないと思うんですけどねえ、

・・・・・すいません私の能書きばっかり長くなってしまいました。


・この可処分所得なんだが名目なのか実質なのかが分からんので以下の説明が適正なのかが分からん

『しかし、家計の可処分所得を日米独で比較しますと、1990 年代前半以降、米国は3倍超、ドイツは2倍程度に増加していますが、日本はほとんど増加していません(図表 11)。』

ってあるんですが、これって名目ベースなの実質ベースなの???????????なんかよく分からんのですが。

『このような可処分所得の停滞を打破するために必要と考えております3つのダイナミズムについて、私自身の民間企業での経験も踏まえて私見をお話したいと思います。』

・・・・・とあるんだが以下書いてることは非常にフワフワした話をしていて、まあ前の金懇もそんな感じだったのですけれども、もうちょっと地に足のついた話をして欲しいなって思います。これは日銀の屁理屈とか全然関係ない世界ですけどね。


・雇用の構造的な話をするのは良いんだが全体的にフワフワした話しかしてないんだよなー

3つのダイナミズムってのは『(1)企業のダイナミズム』、『(2)雇用のダイナミズム』、『(3)家計金融資産のダイナミズム』ってのがあってそれぞれ長いのですが、(1)はめんどいから割愛しまして『(2)雇用のダイナミズム』から参りますか。

『2点目は、雇用のダイナミズムです。米欧では、感染症拡大以降、産業間や企業間で労働移動をはじめとする資源の再配分が進み、労働生産性の改善に寄与したとの分析が多くあります1。一方、日本では、これまでのところ資源再配分の動きは活発化していないように思われます。』

だってナントカ補償金出しまくってるじゃんおまけにおまいらだってコロナオペやってるんだぜ。

『日本銀行スタッフの分析1によると、産業間の資源再配分による実質労働生産性の押し上げ寄与は、感染症拡大以降もきわめて小さくなっています(図表14)。また、雇用者数に占める転職者数の割合は4%程度で、正規雇用者間では1%程度にとどまっています(図表15)。これに対して、米欧の転職者数の割合は、10〜20%程度となっています(図表16)。』

で?

『こうした転職などを通じた資源再配分の進捗状況と労働生産性の改善ペースの違いは、賃金上昇率の違いにもつながっている可能性があります。米国について、転職者と非転職者の賃金の推移をみますと、転職者の賃金とともに非転職者の賃金も上昇しています(図表17)。米欧でも、賃金上昇を求めて転職をしているのは従業員の一部ですが、従業員が他社に移るかもしれないという危機感が、経営者に生産性向上に向けた取り組みと従業員への処遇改善を促していると思われます。』

何か「思われます」じゃあ弱いんですけどねえ。

『また、個人の能力評価と賃金がリンクするジョブ型の雇用契約のもとで、労働者自身の能力強化により労働生産性が高まっている可能性もあり、非転職者の賃金にもその影響が及んでいるのではないかと考えています。』

ジョブ型出たな、という感じですが、これもジョブ型というバズワード使って話をしてるんですが、説明が「可能性もあり」「と考えています」ばっかで何かデータでも出してほしいんですがお話するなら。

『そして、転職などを通じた資源再配分が活発化していくうえでは、感染症による景気の落ち込みからの回復と、企業のダイナミズムの復活を通じた企業の成長とともに、積極的な挑戦を促すセーフティネットや持続可能かつ転職が不利とならない社会保障制度の整備など、制度面の改善も必要と思います。 』

じゃあ雇用調整何とか助成金とか出してる場合じゃなかったんじゃないですかねえ。

『従来、日本では「人への投資」を無形資産であるhuman capital(人財)への投資ではなく、labor cost(労務費)という費用として捉える傾向が強かったように思います。』

個人的感想ですがこの「人財」っての好きじゃないんだよなー。本当に人材を人財って思っている人はこういうバズワード使わないと思うんだよね(個人の偏見です)。

『来年度以降も今年度を上回る賃金上昇が継続するモメンタムを形成するには、米欧に比べて大きく後れを取っている「人への投資」の活性化は重要です(図表18)。』

インフレ期待が上がれば別に人財もへったくれもなく上がるでしょ。というかこの図表18の『企業の能力開発費の対GDP比』ってのは能力開発費をどういう集計しているのかの基準が本当に揃ってるのかとかそういうのが良く分からんのだが(日本企業は能力開発には金かけてると思うんですけどねえ)。

『雇用のダイナミズムが生まれ、企業による「人への投資」が活発化することで、各個人の付加価値創出力、ひいては企業の付加価値創出力が強化され、所得と物価の好循環が加速していくと期待しています。』

という全編に渡ってフワフワとした話が続いて、何ちゅうかもう少しこう具体的な話が欲しいんですよね。「勉強しました」ってのは良く分かるんですけど、そんな話じゃなくて、日立製作所さんでも電機メーカー全体の話しでも良いんですけど、折角日本を代表する大製造業の経営をやってらっしゃったんですから、メーカーにおける企業内教育というか訓練による戦力化の話しでもいいですし、なんかこうもうちょっと具体的な話をお聞かせできるキャリアを生かした話をして欲しかったな、と思います。


・「賃金が上がらないなら資産投資をすればいいじゃない」再び現る

次が小見出しの時点でアレな『(3)家計金融資産のダイナミズム』である。まあお察しの内容だが。

『3点目は、家計の金融資産のダイナミズムです。日本の家計が保有する金融資産は2,000兆円を超えるまでに増加していますが、その内訳の推移をみますと、株式等や投資信託の伸びは鈍い動きとなっています。バブル崩壊後の1992年3月末では日本のその保有比率は15%、米国は37%でしたが、2021年3月末ではそれぞれ15%、51%と一段と大きく差が開いています2(図表19)。こうした動きを反映して、日本の家計の配当収入は、1990年代前半と比べてほとんど増加していませんが、米国やドイツでは雇用者所得と配当収入が可処分所得の増加に寄与しています(再掲図表11)。』

政策金利をプラスにすると家計の可処分所得向上に寄与すると思いますよ(白目)。

『企業は、雇用や賃金を提供する場であるとともに、付加価値を創出するツールでもあります。日本の家計の可処分所得は、そのほとんどが雇用者所得ですが、勤労の機会は多くの場合は1人1社ですので、自身の勤務先以外の上場企業を含む多くの企業の成長の果実を獲得するためには、投資が必要です。』

いつものマリーアントワネットキタコレ!

『「長期・積立・リスク分散」による投資方針のもとでの余資による安定的な資産形成の動きが広がり、家計の金融資産にダイナミズムが生まれてくれば、』

そもそも「安定的な資産形成」という言葉と「金融資産にダイナミズムが生まれる」というのは何か語義が矛盾しているような気がして気持ちが悪い、いや言いたいことは分かるんだけどもうちょっと何とかならんの?

『日本でも可処分所得が厚みを増し、個人消費の活発化を通じて、マクロ的な需給ギャップが解消し、企業活動が更に積極化していくことが期待できます。』

「給与が上がらないなら投資で稼げばいいじゃない」理論って中村さん就任来ずーっと言ってますよね。おかげでマリーアントワネット中村とか評されるわけですが。

『すでに、NISA や iDeCo といった制度面のサポートもあり、若年層を中心に投資信託などへの関心が高まっているほか、政府の「新しい資本主義実現会議」も資産所得倍増プランを策定する方針を示していますので、こうした動きに弾みがつくと期待しています。』

よく考えたら資産所得倍増プランってのも凄いネーミングですな。

『以上のように、企業と雇用のダイナミズムが企業の成長を促進し、雇用と家計の金融資産のダイナミズムが家計の所得増加を促進することで、所得と物価の好循環が強化されていくと期待しています。そうした動きを粘り強く支えるために緩和的な金融環境を提供することで、国民生活の健全な発展につながる2%の「物価安定の目標」の実現に近づいていくものと考えています。』

資産価格で健全な発展、うーんナンジャソラではありますが、まあマリーアントワネット理論を盛大に唱えたいのはよくわかりました。



・・・・会見ネタやろうと思ってたのに時間が無くなってしまったすいませんすいません。相場もそろそろ面白展開になりそうですのに何も書かなかったし(滝汗)。







2022/08/29

お題「ジャクソンホールのパウエルさんは物価を下げるために金利をラピッドに上げまっせ宣言」

ほうほうそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-jacksonhole-powell-idJPKBN2PW17I
2022年8月26日11:44 午後
インフレ抑制まで金融引き締め必要、「痛み」伴っても=米FRB議長

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-jacksonhole-mester-idJPKBN2PW1GX
2022年8月27日1:42 午前
FRB、金利4%超に引き上げる必要=クリーブランド連銀総裁

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-jacksonhole-bostic-fox-idJPL6N3020DP
2022年8月27日1:42 午前
FRB議長、利上げによる雇用失速の可能性を伝達=アトランタ連銀総裁

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-jacksonhole-harker-idJPKBN2PW1K7
2022年8月27日2:27 午前
米引き締めで景気後退でも「小幅にとどまる」=フィラデルフィア連銀総裁


という訳でパウエル講演から参ります。


〇パウエル講演は全編に渡って「アクチュアルのインフレを下げるぞ下げるぞ下げるぞ」でありました

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20220826a.htm
August 26, 2022
Monetary Policy and Price Stability
Chair Jerome H. Powell
At “Reassessing Constraints on the Economy and Policy,” an economic policy symposium sponsored by the Federal Reserve Bank of Kansas City, Jackson Hole, Wyoming

まあゆうて長くはないので参りましょう。最初は挨拶。

『Thank you for the opportunity to speak here today.』

『At past Jackson Hole conferences, I have discussed broad topics such as the ever-changing structure of the economy and the challenges of conducting monetary policy under high uncertainty. Today, my remarks will be shorter, my focus narrower, and my message more direct.』

ド直球を投げ込みますよ宣言が挨拶に来ました!(まあ実際短いんですけど)。


・最初に物凄い勢いで2%物価安定目標の達成が全ての基礎でありそれを達成しないといけない!とぶっこむ

『The Federal Open Market Committee's (FOMC) overarching focus right now is to bring inflation back down to our 2 percent goal. Price stability is the responsibility of the Federal Reserve and serves as the bedrock of our economy. Without price stability, the economy does not work for anyone. In particular, without price stability, we will not achieve a sustained period of strong labor market conditions that benefit all. The burdens of high inflation fall heaviest on those who are least able to bear them.』

やたらめったら2%インフレが無いと何をやってもダメ、という話をぶっこんでおります。


・でもってそのためには多少のペインを伴うというヘッドラインになってたものが来ました

『Restoring price stability will take some time and requires using our tools forcefully to bring demand and supply into better balance. Reducing inflation is likely to require a sustained period of below-trend growth. Moreover, there will very likely be some softening of labor market conditions. While higher interest rates, slower growth, and softer labor market conditions will bring down inflation, they will also bring some pain to households and businesses. These are the unfortunate costs of reducing inflation. But a failure to restore price stability would mean far greater pain.』

散々2%物価へ落ち着かせることが大事、といった直後ですので、思いっきりこの講演の冒頭で大砲撃をぶっとばしていることになりますが、パウエルはん、「物価安定を確保するのには多少のお時間が掛かり、我々がもっている経済の需要と供給に対する力強いツールを使う必要がある」と最初に来て、これは要は経済が落ちますよって話だと思ったらそこから、「インフレーションを下げるには恐らくトレンド成長よりも低い状況を相当な期間続けることが必要」ときて、「更にその時には労働市場の弱まりも起こるでしょう」と来て、「高い金利、弱めの成長、弱めの労働市場によってインフレが落ち着くことができますので、この間に企業や家計には幾らかの痛みを伴う事もあるでしょう」と畳みかけ、最後に「これは不幸なインフレーションのコストですが、物価を落ち着かせることができないと更に莫大なペインがありますよ」と、まあこのパラグラフで盛大に弾幕をぶっ放した感じですな。うんうん。


・経済物価の話をしているが物価と雇用がマンデートを上振れしているという話を強調

と、出オチのようにぶっこんだあと経済物価情勢の話が始まる。

『The U.S. economy is clearly slowing from the historically high growth rates of 2021, which reflected the reopening of the economy following the pandemic recession. While the latest economic data have been mixed, in my view our economy continues to show strong underlying momentum.』

ここから経済物価情勢のアセスメントが普通に始まるのですが、米国経済は昨年の歴史的な高成長から見たら明確に減速してるけど、基調的なモメンタムは強いとのこと。

『The labor market is particularly strong, but it is clearly out of balance, with demand for workers substantially exceeding the supply of available workers.』

労働市場は特に強くて、明確にバランスを欠いている状態(もちろん供給不足に)。

『Inflation is running well above 2 percent, and high inflation has continued to spread through the economy.』

インフレは2%を思いっきり超えて推移しているし、高インフレは経済是隊に広がっている、というのを示したあと、

『While the lower inflation readings for July are welcome, a single month's improvement falls far short of what the Committee will need to see before we are confident that inflation is moving down.』

7月の物価上昇率が下がったのは結構なんですが単月の数字でだけでは物価が下がっていく確証を得られるわけはないです。


・政策金利の話はゴルディロックス火消しの意味もあるんでしょうがややキツめの言い方

早くも政策の話、確かに短いわ〜。

『We are moving our policy stance purposefully to a level that will be sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent.』

物価を2%に戻すために、「十分に引き締め的な」水準に利上げするってよ。

『At our most recent meeting in July, the FOMC raised the target range for the federal funds rate to 2.25 to 2.5 percent, which is in the Summary of Economic Projection's (SEP) range of estimates of where the federal funds rate is projected to settle in the longer run.』

『In current circumstances, with inflation running far above 2 percent and the labor market extremely tight, estimates of longer-run neutral are not a place to stop or pause.』

政策金利水準をロンガーランレートまで引き上げましたがこれがゴールじゃないよ。

『July's increase in the target range was the second 75 basis point increase in as many meetings, and I said then that another unusually large increase could be appropriate at our next meeting.』

ワタシは前回のFOMC会合後の会見で「次のFOMCでも「another unusually large increas」が必要だと申しあげました、とかぶっこんできましたが、

『We are now about halfway through the intermeeting period. Our decision at the September meeting will depend on the totality of the incoming data and the evolving outlook. At some point, as the stance of monetary policy tightens further, it likely will become appropriate to slow the pace of increases.』

とは言え9月まで時間はあるので、この間のデータを見て判断します。でもって政策金利を更に引き上げていくどこかのポイントで、利上げのペースを落とすのが適切ということになるでしょう。

って言い方で、75bp利上げを基本にしながら、的な威勢のよさを感じる言い方にしていますので、まあ最初の部分からそうですけど、7月FOMCのメッセージが市場にハトっぽくとらえられてゴルディロックスヒャッハーとなってしまっていた事に対して盛大に水をぶっかけて回っている、という感じでので順当と言えば順当。



・プレマチュアーな金融緩和転換ダメ!ゼッタイ!!!!!と市場の「引き締め後利下げ観測」を砲撃

さらに、

『Restoring price stability will likely require maintaining a restrictive policy stance for some time. The historical record cautions strongly against prematurely loosening policy. Committee participants' most recent individual projections from the June SEP showed the median federal funds rate running slightly below 4 percent through the end of 2023. Participants will update their projections at the September meeting.』

>The historical record cautions strongly against prematurely loosening policy.
>The historical record cautions strongly against prematurely loosening policy.
>The historical record cautions strongly against prematurely loosening policy.

馬鹿緩和を引っ張り過ぎるとこのような事になる、というのが目の前で示されているのに、日銀はコアCPIの年末3%が来るんじゃないかという勢いの中でも、10年0%を金輪際変更しない、という地獄絵図のようなことをしているのがさすがです。


・70年台から80年台のグレートインフレーションから教訓を得ております、ともう思いっきり「頑張ります」宣言である

『Our monetary policy deliberations and decisions build on what we have learned about inflation dynamics both from the high and volatile inflation of the 1970s and 1980s, and from the low and stable inflation of the past quarter-century. In particular, we are drawing on three important lessons.』

遂に70年台から80年台のグレートインフレーションから学ぶと言い出して、

『The first lesson is that central banks can and should take responsibility for delivering low and stable inflation. It may seem strange now that central bankers and others once needed convincing on these two fronts, but as former Chairman Ben Bernanke has shown, both propositions were widely questioned during the Great Inflation period.1』

グレートインフレーションからの教訓の話をする中でバーナンキが行った研究のリファーするの嫌味だろと思う位にはワタクシの心は汚れています。

『Today, we regard these questions as settled. Our responsibility to deliver price stability is unconditional.』

こんにちにおいては「中央銀行は何はともあれ無条件で物価安定を目指すべき」ということで決着はついた。(キリッ)

『It is true that the current high inflation is a global phenomenon, and that many economies around the world face inflation as high or higher than seen here in the United States. It is also true, in my view, that the current high inflation in the United States is the product of strong demand and constrained supply, and that the Fed's tools work principally on aggregate demand. None of this diminishes the Federal Reserve's responsibility to carry out our assigned task of achieving price stability. There is clearly a job to do in moderating demand to better align with supply. We are committed to doing that job.』

今日のグローバルなインフレは「超過需要と供給制約」によって起こされているのだが、金融政策によって「超過需要」の方を抑えて適正化することにとってインフレを抑制しないといけない、これは「clearly a job to do」である。

とまあ結局「金融政策をガーっと引き締めて需要を落としますよ」という宣言になるのでした。


・頑張ります宣言パート2はインフレ期待のアンカリングの話だがボルカーを引き合いに出す時点でタカ派ムードを出す気満々

さらに頑張ります宣言パート2だがこちらはインフレ期待のアンカリングの話。

『The second lesson is that the public's expectations about future inflation can play an important role in setting the path of inflation over time.』

インフレ期待キタコレ。

『Today, by many measures, longer-term inflation expectations appear to remain well anchored. That is broadly true of surveys of households, businesses, and forecasters, and of market-based measures as well. But that is not grounds for complacency, with inflation having run well above our goal for some time.』

今の所ロンガータームのインフレ期待は十分にアンカーされていると見られるが、物価が高止まって行くと必ずしもそのままではないかもしれん。

『If the public expects that inflation will remain low and stable over time, then, absent major shocks, it likely will. Unfortunately, the same is true of expectations of high and volatile inflation. During the 1970s, as inflation climbed, the anticipation of high inflation became entrenched in the economic decisionmaking of households and businesses. The more inflation rose, the more people came to expect it to remain high, and they built that belief into wage and pricing decisions.』

インフレが高くてボラタイルな状況が続くと、人々のインフレ期待が不安定化し、足元の物価上昇に応じて企業や家計の行動が振らされた、というのが70年台に起きたことだよ。

『As former Chairman Paul Volcker put it at the height of the Great Inflation in 1979, "Inflation feeds in part on itself, so part of the job of returning to a more stable and more productive economy must be to break the grip of inflationary expectations."2』

ボルカーキター!ですな。

・適合的期待形成の話もしておる

『One useful insight into how actual inflation may affect expectations about its future path is based in the concept of "rational inattention."3 When inflation is persistently high, households and businesses must pay close attention and incorporate inflation into their economic decisions.』

履歴効果、というか要するに適合的な期待形成がインフレ期待に起こんですよねー、という話。

『When inflation is low and stable, they are freer to focus their attention elsewhere. Former Chairman Alan Greenspan put it this way: "For all practical purposes, price stability means that expected changes in the average price level are small enough and gradual enough that they do not materially enter business and household financial decisions."4』

さらに「物価の安定とは?」という話の中でグリーンスパンが言ってた「物価の平均的な動きが十分に小さくて、十分にグラデュアルでって、企業活動や家計の金融を伴う決定を行う際に、物価上昇がさほどの影響を与えない程度であること」というのが「実際的な意味で言う物価の安定」である、というのを言い出しまして、高圧経済だのメイクアップストラテジーだの言ってた同じ口がこれを言うかって感じですけど。

『Of course, inflation has just about everyone's attention right now, which highlights a particular risk today: The longer the current bout of high inflation continues, the greater the chance that expectations of higher inflation will become entrenched.』

(グリーンスパンの定義から敷衍してみると)物価は現在世の中の大きな注目材料であり、リスク材料ですよ。そんな中で今の高インフレが続くとインフレ期待が引きあがてしまう可能性がより高まってりまうですよ、とこれまたキタコレでありますな。


・最後の教訓は「高インフレ放置ダメ!ゼッタイ!!」とバカスカ引き締めますよ宣言なのでした

『That brings me to the third lesson, which is that we must keep at it until the job is done.』

さらに3番目の教訓とは?

『History shows that the employment costs of bringing down inflation are likely to increase with delay, as high inflation becomes more entrenched in wage and price setting.』

高インフレ状態が賃金や価格の設定行動に定着して締まった場合、その後の雇用コストの低下(賃金上昇率の落ち着き)がインフレを押し下げるのためには時間的ラグが伴う、と来ました。

これまたどっかの中銀のご教訓になると思うんですが、珍タゲとかやってると賃金が上がるまでに物価がホイホイ上がるし、最後はスパイラルになるって事を意味するんだと思うんだが、目先の自分の任期終了まで何もしたくないというだけの理由で珍タゲを導入(しかもダマテン)しだしているどこぞのヘッポコ中銀からは「マクロ経済の調整」という機能を召し上げた方が良いんじゃないかとマジで思ってしまうんですけどね。

『The successful Volcker disinflation in the early 1980s followed multiple failed attempts to lower inflation over the previous 15 years. A lengthy period of very restrictive monetary policy was ultimately needed to stem the high inflation and start the process of getting inflation down to the low and stable levels that were the norm until the spring of last year. Our aim is to avoid that outcome by acting with resolve now.』

またボルカーを引き合いに出すというプレイ。高インフレ放置するとその後ボルカーくらいのガシガシ引き締めしないとノルムが適正な水準に戻らんよと。

ということで最後に・・・・・・・・・

『These lessons are guiding us as we use our tools to bring inflation down. We are taking forceful and rapid steps to moderate demand so that it comes into better alignment with supply, and to keep inflation expectations anchored. We will keep at it until we are confident the job is done.』

>We are taking forceful and rapid steps
>We are taking forceful and rapid steps
>We are taking forceful and rapid steps

はい来ました〜。

てな訳で全編に渡ってインフレ下げるぞインフレ下げるぞ、と言ってますが、いや中間目標3−4%くらいに置いてた方がエエンチャウのとアタクシは思っていましたのですが、そんな微温的な態度は採らん、というぶっこみをして来まして、金融市場のゴルディロックスヒャッハーに水を思い切りぶっかけてハリセンで引っ叩きたい、というのがあるからこんな言い方になったんじゃないの説は提唱しておきたいのですが、これはまた大層な大見得切りましたな、って感じではございます。


#ジャク穴の他のネタと中村審議委員ネタが結局できなくて誠に相済みません(土日にやらないのがアカンのですが、汗)







2022/08/26

お題「中村審議委員福岡金懇:日銀の今行っている藁人形論法と賃金ターゲット政策への転換を分かりやすく示していますwwwww」

さてジャクソンホールですがその前にしれっとなんか素材が来たので。

〇ある意味ではこういう風に話をしてくれるのは貴重な存在(無理矢理褒めてる)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko220825a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
福岡県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中村 豊明
2022年8月25日

でまあ中村さん、
https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_tnakamura.htm/
政策委員会審議委員:中村豊明(なかむらとよあき)

プロフィールのように財務にはお詳しいとお見受けしましたが、金融政策、となるとまあ事は別となりますので色々と勉強をしておられるなあーっていうのと、たぶん真面目というかお堅いんだろうなーとは過去2回の金懇挨拶を見て何となく妄想していた訳です(ちゃんと過去ログ整理しますね)。

でもって今回なのですが、会見のヘッドラインが某Bベンダーはんおまえちょっと悪意で編集してんじゃないの??って感じもするアレだったのでそれは今日の会見要旨を楽しみにして見たいのですが、まず今回見てて(ノ∀`)アチャーと思ったのは金融政策運営の説明部分でして、これが「パーフェクト藁人形論法」になっていまして、この藁人形論法はいつも黒ちゃんが会見で金融緩和の微調整すらしないときの藁人形論法に使われているのをより明確に記載している、というのが実に味わいがあります。

ということでいきなり本文3ページ(PDF4枚目)の『3.金融政策運営』を鑑賞しましょう。

『このような経済・物価情勢を踏まえて、当面の金融政策運営に関する基本的な考え方についてお話します。私は、現在の日本経済において強力な金融緩和を粘り強く続ける必要があると考えています。その主な理由は、以下の3点です。』

から華麗な藁人形論法が始まるんですけどね。

・金融政策を引き締めろと言ってるわけではなくて過剰な緩和の効用に対する副作用を考えろと言ってるんだが

『1点目は、日本経済は依然として感染症による落ち込みからの回復途上にあることです。日本の実質GDPは、輸出や個人消費を中心に持ち直してきているとはいえ、米国やユーロ圏と異なり、今なお感染症拡大前の 2019 年平均の水準を回復できていません(図表3)。労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップも、2020 年4〜6月期以降、一貫してマイナスです(図表4)。このように供給力に対して需要不足が続いている局面で、金融政策を引き締め方向に転換すると、景気の足を引っ張り、企業や家計の経済活動に大きな抑制圧力がかかると考えています。』

そもそも金融引き締めしろとは言ってないんだが、という話でまずこれが藁人形その1なんですが、次のところも中々凄い。

・えーっとすいません欧米の状況を日本が追いかけてると思いますが

『2点目は、日本が直面している物価上昇と米欧が直面している物価上昇では、その程度や広がりが大きく異なることです。』

ときまして、

『日米欧の物価の動きを比較しますと、消費者物価の総合指数の前年比が米欧では+8%超であるのに対し、日本では生鮮食品を除くベースで+2.4%と大きな開きがあります(図表5)。』

+2.4%なら物価目標ターゲット以上なんですけどねえ(鼻ホジホジ)

『その内訳を品目別分布でみますと、感染症による景気の落ち込みからいち早く回復した米欧では、サービスを含む幅広い品目で大きく上昇している一方、日本ではエネルギーや食料品など限られた品目の価格上昇の押し上げ寄与が大きいものの、サービスを含めた多くの品目の上昇幅は依然として小幅で、輸入インフレにとどまっています(図表6)。』

この点はお前は何を言ってるんだという感じはしますけど、そもそも論として、欧米でも今般の物価上昇の初期段階ではここで中村さんがおっしゃっているような現状認識を持ち出して「物価上昇は一時的」という説明をしていた訳ですが、その間に物価上昇のセカンドラウンドエフェクトが起き、金融政策の修正が後手に回り、物価上昇が止められなくなって困っている、という状況になっている訳です。

いやね、これが仮に欧米の物価上昇が沈静化できているんだったら、上記の説明って「強力な金融緩和を継続すべし」の理由になるんだが、欧米は中村さんの説明していたような段階において強力な金融緩和の正常化が遅れたために、望ましくないレベルのインフレになって止められなくなって困っているんだから、欧米の状況から学ぶんだったら、「10年金利0%」とかいう無茶苦茶な金融緩和政策については、緩和の度合いを修正することを考え、物価動向によっては金融政策の正常化に向けた検討も行う、ってしないと欧米の金融政策の失敗からの教訓何も得ないという事になりますよね。

・・・・・などと悪態をついておるわけですが、さきほどのプロフィールにもありましたように、中村さんの場合は金融政策の専門家とか金融の専門とかそーゆー訳ではないので、(以下勝手な妄想になりますが)要するにこの説明というのは、黒田日銀およびその茶坊主連中が中村さんにどういう屁理屈を吹き込んでいるのか、というのを如実に示す説明である、と思うとこの金懇(と今日出る会見)テキストは、中村さんに対してトサカに来ている場合ではなくて、中村さんに対して黒田日銀と茶坊主がどういうインプットをしているのかというのを見る素材として有能な訳ですなwwwww

という訳で有能な素材の続き。


・賃金ターゲットキタ――(゚∀゚)――!!

『こうした違いの原因には、賃金上昇率の違いがあると考えられます。』

キタコレ!

『米欧では感染症による景気の落ち込みからの回復で賃金に大幅な上昇圧力がかかりましたが、日本では経済の活動水準自体が回復途上にあるほか、後ほどお話する構造的な課題が賃金上昇を抑制しているために、賃金上昇は依然として小幅にとどまっています。』

この話は次に出て来るのでその先に参りますが、ここがまたどういうインプットをしているのかというのが如実に分かる藁人形論法ですwwwwwww


・どこのだれが中立金利以上まで金利上げろといってるんだよqqqqqqqqq

『このように、海外からの輸入品によるコスト・プッシュ要因で一部の価格が大幅に上昇している現在の状況では、総需要を抑制する金融政策ではなく、対象を絞った政策対応が効果的と考えています。』

>総需要を抑制する金融政策ではなく
>総需要を抑制する金融政策ではなく
>総需要を抑制する金融政策ではなく

wwwwwwwテラバロスwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

いやあのですね、金融政策で総需要抑制するのって、「中立金利」以上に政策金利が引きあがっていれば金融政策は需要抑制方向に効きますけど、今の金利水準を多少修正(マイナス金利をゼロにするとか)したところで、中立金利はもっと上でしょ????ってお話。

そらまあコロナ前みたいにCPIは0%台半ばが精々、先行きの物価見通しだって無茶苦茶願望込みの展望レポートで辛うじて先の方で1%台前半、というような状況だと、実質ベースに引き直した金利が実はそんなに低くないのでそう簡単に政策修正できません、ってのはまだ分かるんですけど、CPIが2%だなんだと言ってて、しかも(この金懇テキストでも認めてるんですが)インフレ期待に上昇の動きもみられる、という中な訳で、緩和のやり過ぎじゃないですか????って話を政策修正の人達は基本的に言ってるんですけど、何で急に「総需要を抑制」とか無茶苦茶利上げするような話を持ち出すのでございましょうかこれは見事な藁人形。

まあ大体からして「コストプッシュで一部の価格が上がっている」のに対して「政策対応」をしたら、それは個別価格の上昇に対応して財政出すって話だから、その財政を出すことによって一般物価が上がる話になるわけで、そうなると欧米の二の舞にならないようにするには、欧米で今まさに起きている教訓を踏まえると、現在の「死んでも変えない」レベルの政策枠組みの柔軟化が必要、となると思うのですけどねえ・・・・・・・・・・・


・完全に7月のMPM以来日銀は賃金ターゲットになった、という理解でよろしい訳ですね

『3点目は、2%の「物価安定の目標」は、持続的かつ安定的に達成される必要があることです。』

そうですね。

『生鮮食品を除く消費者物価は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めるものの、その後はエネルギー価格の押し上げ寄与が剥落していくと想定しており、現状では、「物価安定の目標」が持続的かつ安定的に達成できる状況にはないと考えています。』

はあそうですか。

『具体的な数値で申し上げますと、2023 年度以降は政策委員見通しの中央値で1%台前半までプラス幅が縮小するとみています(図表7)。』

はいはい大本営大本営。

『2%の「物価安定の目標」は国民生活の健全な発展を実現するために継続的に達成を確認していく指標、すなわちKPI(key performanceindicator)ですので、消費者物価上昇率(除く生鮮食品)は、エネルギー価格の上昇などにより一時的にでも2%に達すればよいというものではなく、持続的な賃金上昇を伴って安定的に2%になることが重要と考えています。』

ごめんワタシちょっと頭が悪いんでわからないのですが、KPIですので、とその後が論理的に繋がる必然性が全くよく分からないんですけど。

『一部の品目の価格上昇に押し上げられて全体の物価が2%上昇しても、家計の可処分所得が向上しなければ、予算制約のもとで他の製品・サービスなどへの支出の減少を通じて、物価全般の上昇が抑制され、経済活動が停滞し、結果的に賃金が抑制されて悪循環に陥りますので、まだ目標の実現は道半ばにあると考えています。』

ということで、KPIだから云々というのは意味がわからんですが、まあ何はともあれ物価目標の中に勝手に「持続的な賃金上昇を伴って」という文言が入って来ましたので、これはつまり賃金ターゲットの導入をダマテンで行っている、ということですわな。

でもって再三再四申し上げているように、これはどっからどうみても黒田日銀による中村さんへのインプットの成果物件として出てきている訳で、まあどうせこれ9月会合の会見とかでも「賃金ターゲットを導入したという理解でよろしいでしょうか」と聞くと、「賃金が上がるのが物価安定目標達成の条件と言ってるだけでターゲットとしている訳ではない」というんですよ間違いなく。

なぜなら、「賃金をターゲットにしている」とうっかり言明すると「達成手段も無いのに中央銀行が賃金ターゲットを設定するのはおかしい」と総ツッコミになるから統制経済でもしてない限り中銀がそんな事を言う訳がないので、日銀は公式には賃金ターゲットなんて言う訳は無いのですけれども(馬鹿だから言い出すかもしれないけど他の中銀から馬鹿扱いされて相手にされなくなると思う)、中村さんのこの説明、どっからどう見てもチンタゲになっていますし、ヘッドラインでしか確認できてませんが、会見で完全にチンタゲ発言をしていましたので、つまりは中の人である中村さんが客観的に見た場合「賃金ターゲットを採用している」という風に理解するしかない屁理屈を展開しながら政策の話をしている、ということがこれで良く分かるかと思います。

まあそういうことなので、9月会合では「中央銀行が事実上の賃金上昇目標を設定しているのか、そもそもそんなことして中央銀行として良いのか」という質疑をバンバンとぶつけて頂くのにちょうど良い素材がぶっこまれてきたな、とワクワクテカテカという感じでありまする。


・しかもこれだけ説明しておいて「ノルムの変化」に言及してるの結構支離滅裂なんですよねー

とまあそういうことで、政策を梃子でも変えない理由の説明が終わりましたが、その直後に何とこれである。

『以上の3点を中心に、現時点では現在の金融緩和を継続する必要があると考えていますが、世界的なインフレが進行する中、「物価は上がらない」という、日本に根付いた考え方や慣習に変化が起きつつあるようにも感じます。』

ちょwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwww

えーと、欧米の教訓を考えれば、そのようなノルムの変化が起きてきているのでしたらば、政策の修正についても考えていく段階にあると思うんですが・・・・・・・・・・・

『「物価は上がる」という、世界的にみれば一般的な経済環境では、労働生産性が向上するもとで、名目賃金はそれを上回るペースで上昇する必要がありますが、日本では、過去 30 年間は、物価がほとんど上がらなかったため、賃上げできなくても、後程ご説明しますが、自社の従業員が転職してしまうという状況にはなかなかなりませんでした(図表8)。』

以下何ちゅうか???????な話が続く。

『しかし、高齢者や女性の労働参加の拡大余地が狭まってきており、人手不足がますます深刻になる中で(図表9)、賃上げが人手確保に一段と重要な環境になりつつあり、生産性を高めて労働の対価を引き上げていくことが経営課題になってきました。』

何かこう因果関係を取り違えているような説明が延々と続くんだよなー。この辺読んでて全然腑に落ちない。

『このため、中小企業、大企業のいずれもが自社の製品やサービスの付加価値や魅力を高めながら販売価格も高めて賃上げの原資を稼ぐという、好循環を回していくことが期待されます。』

はあそうですか。

『連合の調査によると、2022 年度のベースアップと定期昇給を合わせた賃上げ率は+2.07%と中小企業を含めて前年度を上回り、また、先日示された今年の最低賃金も前年比+31 円(+3.3%)と過去最高の上昇となりました。』

賃金上昇でマクロ的な物価云々の話しをするのに定昇を混ぜるのおかしいでしょ。この前の雨宮さんの講演でもこの話しが在ったけど。

『夏季賞与についても、経団連による大手企業を対象とする夏季賞与アンケート調査によると、8%を超える増加となったようです。このように、人手不足感が続くもとで、経済活動全体の持ち直しを反映して賃上げの動きは広がりつつあります。こうした賃上げ率の上昇が、今年だけでなく、来年以降も持続していくことが必要ですので、冬季賞与と来年度の賃金改定はとても重要になると考えています。そのためには、一刻も早く感染症対策と経済活動の両立を実現して、感染症による落ち込みから経済を回復させることが必要です。そして、日本企業には、新型コロナ禍で激変した経営環境に適応する事業への変革を進めることが求められます。日本銀行としては、現在の金融緩和を通じて、そうした動きを粘り強く後押ししてまいりたいと考えています。』

と、腑に落ちない説明が続いていますな。


・そもそも「ノルム」即ち「期待インフレ」が上がれば賃金があがるんじゃなかったっけ????

さてここで基調的物価が出た時にネタにした日銀レビューを再掲しましょう。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j11.pdf
消費者物価コア指標とその特性ー景気変動との関係を中心に
2015年11月20日
調査統計局 川本卓司、中浜萌、法眼吉彦

本文6ページより、って先日引用したのの再掲だから皆様ご記憶に新しいと思いますが、イヤミったらしくまた引用。

『最頻値や加重中央値は、需給ギャップとの連動性は高くないため、景気の改善に加え、幅広い品目の価格上昇率を一様に高めるようなインフレ予想の上昇が重要となる。言い換えると、人々が物価は緩やかに上昇するのを当然視するようになり――所謂、物価の「ノルム」が持続的に高まり――、これが実際の賃金・価格交渉にしっかりと織り込まれていくことが重要であると考えられる。』

・・・・・どう見ても「チンタゲ」って珍タゲにも程がある話で、普通に「インフレ予想を引き上げる」方が話の筋としては通っていますよね。インフレ予想が引きあがった結果賃金上昇が定着する、という話なんですから、珍タゲをするのってやっぱりおかしいですよね。


ということで、本編の残りと会見は週明けなんですが週明けはジャクソンホール祭りをしないといけないんですよねー。







2022/08/25

お題「ジャクソンホール待ちなので7月FOMC議事要旨の「金融環境」に関するアセスメントを鑑賞してみるの巻」

ほうほうそうですかそうですか
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220824/k10013785011000.html
新型コロナ全数把握見直し 入国時の陰性証明も免除へ 岸田首相
2022年8月24日 14時58分

なにはともあれ何年たっても第ナントカ波が来るたびに一々対応がパンク状態になるのだけは勘弁してほしいと思うの。

〇ジャクソンホールのパウエル警戒ってナンジャソラ(米国市場様雑メモ)

ナンヤソラ
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N30038J
2022年8月25日5:10 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、FRB議長講演控え警戒感

『市場でFRBは9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%ポイント、もしくは0.75%ポイントの利上げを決定するとの観測が出る中、パウエル議長がジャクソンホールで行う講演はタカ派的なものになるとの見方が出ている。』(上記URL先より、以下同様)

ってジャク穴でパウエルが講演するの百万年前から分かってる話だし、7月のFOMCにしたって、「中立金利に達してこれからは引き締め的な領域に入るから、緩和を縮小するときほど威勢よく利上げしない」っての当たり前の話で、中立金利自体はもしかしたら2%かもしれないし3%かも知れないけど、いずれにしたって前回までは明らかに「緩和的な金利水準」だったのが7月に多分中立じゃネーノ水準にまで上げたんだから、ここから先の政策金利対応は今までの「緩和縮小」とは別の次元に入るんだよ、っての金融政策の理屈(理論、と普通は言うんでしょうがそもそも金融政策自体はアートだと思ってるアタクシにしてみれば理論なんてもんは砂上の楼閣)を把握していれば当たり前の話をしているだけだったんですよね。

しっかし7月終わりのFOMCからこの方ソイヤソイヤとゴルディロックス相場やってたの何なんだよと申しますか、足もとで何か今までの流れを覆すようなハードデータ出た訳でもないし、FEDの高官発言だっていつも通りだというのに、ジャク穴近くなったら急に3.1%水準まで売られるというのは流石に意味が分からなくてナンノコッチャ相場にも程があるわという感じですわな。

特段なんかハードデータで凄いのがあった訳ではない(欧州のインフレはまあ凄いっちゃあ凄いですけど米国の政策に関係ねえだろと思うし、寧ろ欧州の場合は完全にスタグフなので外需の減少要因の方がデカくねえかと思うし)中、予定通りに実施されるパウエル講演警戒とか言ってここまで売るなら何でお前らその前にあそこまで買ってるんだよというのがマジで分からんのですけど誰か教えてください是非お願いします(ジャンピング土下座)。

まあ何ですな、

『市場関係者は、財務省がこの日に実施した450億ドルの5年債入札が軟調だったことで国債に対する弱気姿勢が強まり、利回り上昇につながったと指摘。ジェフリーズはリサーチノートで「26日にジャクソンホールで行われる講演を前に、中期債の買いが控えられている」との見方を示した。』

というように入札が滑った事が要因なんでしょうけど、それにしても何だかなあ感が。

30年債 15時51分 3.3166% 前営業日終値 3.2560%
10年債 15時51分 3.1132% 前営業日終値 3.0540%
5年債 15時50分 3.2401% 前営業日終値 3.1810%
2年債 15時51分 3.4028% 前営業日終値 3.3350%

何でその前にあんなに買い上げてたんだと小一時間問い詰めたい。


〇普段あんまり読まないけど7月FOMC議事要旨でやたらとファイナンシャルコンディションの話をしてたので

7月FOMC議事要旨に戻ります。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20220727.htm

基本的にはここの連銀スタッフによるどうちゃらこうちゃらに関しては目を泳がす程度またはスルーなんですが、先日ネタにした議事要旨では「金融政策の正常化に向けたこれまでの取り組みで金融環境がタイト化することによって、過剰な需要にブレーキが掛かったり、インフレ期待の沈静化に寄与したりして、物価上昇を抑える効果が一部にあったよね」という話をやたら協調していましたので、じゃあそもそも7月FOMC時点での連銀スタッフのアセスメントはどうだったのか、というのをみようと思ったのが本ネタの始まりですな。


・記述は長いけど書いてあることは事実の羅列なのでサラサラ読めますが全体のまとめを先に

という訳で、柄にもなく『Staff Review of the Financial Situation』を確認してたんですが、7月FOMCの議事要旨の方では「今年に入ってからの利上げによる金融環境の引き締めの効果が徐々に実体経済に出ている」というような話があったんですが、じゃあスタッフによるアセスメントはどうなっているかというと「前回のFOMCから比較すると金融環境緩んでますが」という(事実そうなんだから仕方ないけど)説明がいろんな面から示されているのよ。

・・・・・ということでですな、一方で「金融環境引き締めの効果が実体経済に出てきてインフレ抑制に寄与するでしょう」って話をFOMCの参加者がしている、となりますと、どっからどう考えても7月FOMC以降に更にゴルディロックスヒャッハー相場になったのは怪しからんとFOMCの中の人たちが思うの当たり前にも程がある訳でして、まあだからこそ鉄砲玉に色々と言わせているし、ジョージ総裁はジョージ総裁でそういう軽薄ムーブに怒り心頭滅却している、というのが昨今の動きなんでしょうな、と思いました。

ただ、実体経済に繋がる部分の話を見ますと、クレジットアベイラビリティの面で、不動産関連とか、一部大企業を除いた企業部門とか、消費者ローンや自動車ローンなどの消費者向けローンのうち相対的にクレジットグレード低いもの(居住用住宅ローンではなく、という感じですね)などに関しては市場金利の低下にも拘わらずタイト化が進んできている、ということになっているので、まあそういう意味では「過剰需要の抑制」という文脈通りの展開になっている、というのがスタッフによるアセスメント。

つまりですな、このインプリケーションとしては、基本的に市場金利があんまり極端にゴルディロックスヒャッハーをおっぱじめない限りはまだ実体経済に効いている、って認識なんだろうなあとは想像できる次第でありますが、株価がホイホイ上がりだすと米国の場合は余計な消費がヒャッハーと増えるのが仕様というのが1万年前からの定説なので、ゴルディロックスも程々に、ってところなんじゃないでしょうかねえ、よー知らんけど。

となれば、株価がホイホイ上がるレベルのでの金利低下はそらまあ牽制するわなとやっぱり思うのでございましたですわ。


んな訳で以下は現象の説明で別に(FOMCの人じゃないから当たり前だけど)価値判断は無いので、ちと長いのですがサラサラと読めます。正直事実の羅列で長いという面があるので、英語すっ飛ばしてアタクシのヘボな日本語による要旨纏めを読んで頂いてもヨロシかなとは思います。

まあ一応アタクシとしては細かいのはすっ飛ばして大意とポイントは外していないつもりです、と大きく出ましたが、お前の言う事は当てにならんという方は英文ちゃんと確認してちょ。



・金融市場の金融環境は緩和だがクレジットスプレッド拡大と一般の借入についての金融環境は一部でタイト化

『Over the intermeeting period, nominal and real Treasury yields declined significantly, reportedly reflecting increased investor concerns about downside risks to the growth outlook as well as a decline in inflation compensation. 』

前回(6月)FOMC以降先行きの経済見通しの悪化を受けて市場ベースのインフレ期待は下がるわ、米国国債金利は名目はもちろん実質ベースでも下がるわ(=BEIの下げ以上に下げたって事でしょうな)、というのが真っ先に来ています。

『Sovereign yields in AFEs declined notably. The market-implied federal funds rate path for the next few meetings rose but moved down noticeably at longer horizons.』

AFEってのは「advanced foreign economies」なので海外の主要国の国債金利の事です。

『Broad equity price indexes were higher, on net, while credit spreads widened.』

株価は上がった。クレジットスプレッドは拡大した。

『Major foreign equity price indexes edged higher, on net, and the exchange value of the dollar continued to appreciate.』

海外の株価はちと上がった、ドルは高くなった。

『Amid the decline in Treasury yields, longer-term borrowing costs declined for households and businesses with higher credit ratings, and while credit availability remained generally available, it appeared to tighten for most businesses and some households.』

高い信用色のある企業や家計の借入コストは低下。借入のアベラビリティは全般アベイラブルだがど、多くの企業や一部の家計についてはタイト化していると。


・全般的なクレジット系の動向について

『Broad equity price indexes were higher over the intermeeting period, amid heightened volatility. Declines in interest rates likely supported stock prices over the period, while some positive earnings releases suggested to investors a less pessimistic corporate outlook. One-month option-implied volatility on the S&P 500 index?the VIX?decreased but remained significantly above its pre-pandemic levels. Yields on corporate bonds declined notably across the credit spectrum, but corporate bond spreads ended the period slightly wider. Spreads on municipal bonds widened slightly as yields declined by less than those of comparable-maturity Treasury securities.』

この辺は事実の羅列ですね。株価は上がったけどボラも上がった、株価の上昇には金利の低下と企業業績への楽観が背景にある、SP500のVIXは下がったがパンデミック前よりは高い。社債の金利はすべての信用力分類において盛大に低下したが、スプレッド自体は拡大した、地方債のスプレッドは若干拡大した。


・短期金融市場の動向について

以下も事実の羅列です。

『Conditions in short-term funding markets were stable since the previous FOMC meeting, with the June increase in the Federal Reserve's administered rates passing through promptly to overnight money markets. Secured overnight rates remained soft relative to the ON RRP offering rate, with the downward pressure on rates attributed to continuing declines in net Treasury bill issuance, elevated demand for collateral in the form of Treasury securities, and MMMFs maintaining very short portfolio maturities amid uncertainty about the near-term outlook for policy rate increases. Consistent with the downward pressure on repo rates, daily take-up in the ON RRP facility increased. 』

まあここは面白いのでちょっと細かく割って読みますが、市場金利に関して面白いのは、翌日物有担保取引市場と短期国債市場に関する部分でして、翌日物有担保市場と短期国債市場は、短期国債がネット発行減少になっていることによって政策金利の引き上げに追随はしているもののフルには追随してなくて、担保付翌日物金利もONRRPの金利よりも低い状態になっていて、その背景に担保繰りの問題と、MMFがポートの平均残存期間を(利上げ観測があるから)物凄く短くしているので、クッソ短いところには資金が滞留するようになっているようですな。でもってその結果としてONRRPのニーズが高まっていてビットが増えているそうな。

『Spreads on lower-rated short-term commercial paper (CP) narrowed modestly, on net. Bank core deposit rates moved up very little in response to the Federal Reserve's increase in administered rates following the June FOMC meeting, while MMMFs' net yields rose, reflecting the increases in short-term rates over recent months.

CPのスプレッドは若干縮小。預金金利は若干の上昇をしています。


・海外金融市場動向

『Investors' concerns about global economic growth intensified amid weaker-than-expected data on economic activity and uncertainty about the supply of natural gas from Russia to Europe. Sovereign yields and medium-term inflation compensation measures in major AFEs, most notably in the euro area, moved down, with yields largely reversing the sharp increase that occurred just before the June FOMC meeting.

ということで欧州の金融市場の話になります。欧州はエネルギー問題と経済指標の悪化で金利が下がるわ中期の市場でのインフレ期待は下がるわ、という話をしています。

『In the euro area, peripheral sovereign spreads were little changed following the widely anticipated announcement by the European Central Bank of its Transmission Protection Instrument that could be activated to counter disorderly conditions in euro-area bond markets. Major foreign equity price indexes were volatile but generally edged higher, on net, supported by declines in sovereign yields.

欧州の国債金利スプレッド(それほど拡大してないけどこれはTPIの導入云々の話しがあったおかげだとの認識)、海外株価の話をしてます。

『The dollar appreciated somewhat further against most currencies and particularly against the euro as yield differentials between the United States and the euro area widened. Most Latin American currencies depreciated against the dollar, in part reflecting the decline in global commodity prices.』

為替市場の話は海外のところ扱い、ってのが米国様っぽくていいですね。


・国内クレジット市場動向では実体経済に繋がる借入コストの全般的な上昇という認識

『In domestic credit markets, longer-term borrowing costs for households and businesses with higher credit ratings declined over the intermeeting period but borrowing costs for lower rated firms were higher, on net. The credit quality of businesses, municipalities, and households remained stable. Credit remained generally available, though credit availability appeared to tighten for most businesses and for some households.』

ここは基本的にさっきあった話と同じです。一部のアイヤーな家計と、ハイクレジット企業以外の多くの企業は別として、それ以外では借入コスト低下してるし、アベイラビリティ特に変化なし。


『Borrowing costs linked to shorter-term interest rates generally increased, largely as a result of expectations of tighter monetary policy. Bank interest rates for both commercial and industrial (C&I) and commercial real estate (CRE) loans increased in May and were close to pre-pandemic levels. Yields on institutional leveraged loans and newly issued commercial mortgage-backed securities (CMBS) increased amid financial market volatility and growing concerns about an economic slowdown. Small businesses that borrow on a regular basis faced notably higher borrowing costs in June. Interest rates on most existing credit card accounts and on auto loans continued to trend upward.』

金利が上がっている方々はこういう人だよってのがあります。短期金利連動の変動金利の人(当たり前)、多くの企業向け貸出、不動産関連貸出金利、レバローンの金利、新規発行のCMBS金利、小規模企業向けのローン金利、カードや自動車ローンに関連する借入などの金利は上がっている。

ということなので、まあこれらが過剰需要の減退に効果を出している、って事なんでしょうね。

『In contrast to many other borrowing rates, residential mortgage rates fell since the June FOMC meeting, in line with the drop in longer-term yields, but remained near their highest levels since 2010.』

なお住宅向けモーゲージ金利は低下。

『The credit quality of nonfinancial corporations remained strong with low volumes of defaults on corporate bonds in May and on leveraged loans in June. The volume of rating downgrades on speculative-grade credit in the corporate bond market was similar to that of upgrades in June, while for leveraged loans, the volume of downgrades exceeded the volume of upgrades in May and June. The credit quality for C&I and CRE loans on banks' books remained sound. 』

ここから貸出の質的悪化が起きてるかどうかのアセスメントになります。基本的に健全な状態が維持されているものの、

『However, respondents in the July Senior Loan Officer Opinion Survey on Bank Lending Practices (SLOOS) indicated increased concerns about credit quality in the near future as reasons for their expectation of a tightening in lending standards over the second half of 2022. Delinquency rates on CRE loans in CMBS declined in June, delinquency rates on small business loans were little changed, and the credit quality of municipal securities remained strong.』

銀行向けのローンサーベイの回答を見ると先行きクレジットの質が悪化することを懸念している向きが多い。

『The credit quality of households stayed solid. Residential mortgage delinquencies and the share of mortgages in forbearance trended down. Credit card and auto credit delinquency rates rose somewhat over the first quarter but remained subdued by recent historical standards.』

家計向けのクレジットの質は依然として良好、ときましてこの次は質ではなくて量の話になっていまして、

『Business loans at banks expanded at a rapid pace in May and June, despite higher interest rates and a moreuncertain economic outlook. C&I loans on banks' books continued to grow robustly, with the July SLOOS citing reasons of increased demand by customers to finance inventory and accounts receivable. However, issuance of both agency and non-agency CMBS slowed significantly in June. Credit appeared to be available to most small businesses, although the share of small firms reporting that it was difficult to obtain loans increased. Credit in the residential mortgage market remained widely available for borrowers with higher credit ratings but tight for households with low credit scores. Volumes of home-purchase mortgage originations declined in May and mortgage refinance volumes continued to fall. Consumer credit remained broadly available to households in April and May but respondents in the Federal Reserve Bank of New York's Survey of Consumer Expectations indicated that it was harder to get credit in recent months. That said, auto loans outstanding continued to grow at a robust pace in April and May but credit card balances moderated somewhat in May and June.』

めんどっちいので一気に引用しましたが、企業は5月6月と金利上昇にも関わらず借入増やしてて、金利上昇を見込んで先に借入コスト確定しておくとか、資金を事前にとっておくとか、そういう動きがあって、一方で中小企業に関してはサーベイ見ると借入のアベイラビリティが徐々に下がって来た、という回答が増えてきているそうです。でもってモーゲージ関連の金利は上昇していて、CMBSとかも低調のようです。消費者ローンに関してはアベイラビリティが低下しているそうです。


・ファイナンシャルスタビリティの話に移ります

『The staff provided an update on its assessment of the stability of the financial system and, on balance, characterized the vulnerabilities of the U.S. financial system as moderate, down from notable in January.』

金融システムへの脆弱性はどうですか、という話になりますが、基本的に問題視はしていませんね。

『Equity and corporate debt prices declined significantly since the last assessment, reflecting concerns over slower growth and lower risk appetite in corporate markets. Declining risk appetite has also led to sharp declines in the price of some digital assets.』

市場価格のボラの話が出てて、そこからデジタル金融資産の話が始まります。

・デジタル金融資産への懸念は「高すぎるボラティリティ」に起因する取り付け騒ぎとかそういうたぐいの事象なんですと

『The staff noted that digital assets tended to be volatile. The staff also highlighted the financial stability considerations associated with rapid growth in stablecoins, including their vulnerability to runs and the opacity of many aspects of their operations.』

今小見出しで書いた通り。この資産で取り付け的な事が起こるとそれは脆弱性だよね、だそうです。


・住宅価格は相変わらず上がっていますが

『Residential real estate prices continued to rise, and the staff noted that although valuations have been elevated, mortgage underwriting standards have been stronger than in previous house-price cycles. CRE prices continued to rise, and valuation pressures appeared to be increasing.』

住宅のバリュエーションが上がり続けている、という話ですが・・・・・・・

『The staff assessed that households were in a better position than in the mid-2000s to weather a downturn in house prices, noting that mortgage debt growth has significantly lagged growth in house prices, leaving households with substantial equity cushions. Moreover, for much of the past decade, most new mortgage debt had been added by borrowers with prime credit scores. 』

それが懸念みたいな話をするのか、と思えば住宅価格が上がってホームエクイティのクッションができているので、家計は今後の住宅価格の下落に対してもバランスシート的にリーマンショックの時よりもベターポジションにいる、といういかにもアメリカンなまとめになっているのはワロタ。あんまりこいつら反省してないな。


・企業のレバレッジは高い

『In addition, the staff assessed that business leverage was high, but businesses maintained ample cash on hand and their credit quality remained strong. Further, the ability of most firms to service their debt was at a historically high level, as measured by the interest coverage ratio.』

ICRとかで見ても企業のレバレッジはヒストリカルに高いレベル。


・金融セクターのレバレッジは低い

『The staff assessed that leverage in the financial sector remained moderate. Recent declines in bank capital ratios were due to higher volatility, interest rate increases, and loan growth, but the recently concluded stress tests suggested that participating banks could absorb losses from a severe recession without breaching regulatory minimums, and some banks were expected to increase their capital ratios later this year. Leverage at hedge funds and life insurance companies remained relatively high.』

一方で金融セクターのレバレッジは低いという話ですな。ヘッジファンドと生命保険会社のレバレッジは相対的に高いそうです。


・短期金融市場におけるMMFの脆弱性についての懸念が示されています

『Market liquidity had deteriorated in the oil and equities markets since January, but market functioning continued to be orderly.』

市場の流動性は原油と株式市場において年初来悪化しているが市場はオーダリーに機能している。

・・・・と来ましてこの次がMMFの話題になります。

『Yields offered by MMMFs were well above those offered by banks, and the staff noted that this yield differential would attract inflows to MMMFs. Noting the structural vulnerabilities associated with MMMFs, the staff highlighted the need to monitor the size and fragility of this sector and the progress of the Security and Exchange Commission's recently proposed reforms. The staff noted that open-end bond and loan mutual funds, which are also vulnerable to large-scale investor withdrawals, had experienced outflows as interest rates rose. These outflows had proceeded in an orderly manner.』

MMFについて、最近は利回りが魅力的になっているので、MMFへのインフローが起きており、この点逆回転が起きた時に脆弱性につながるのではないか、という指摘をしていまして、現状では動きはインフローにしろアウトフローにしろオーダリーなので良いとしても、動きが大きくなった時にはヤバいかもね、という話をしています。

これはこれでおーという話で、しかし毎度毎度この話をしてるんかいな、というのが米国MMFクオリティなんですけど、この脆弱性が積みあがっているという認識になると、短期金融市場に対して何か施策を打つ時の障害になるな、とは思いました。


ということで趣味のコーナー恐縮でした。





2022/08/24

お題「日銀謹製の基調的な物価動向を見れば需給ギャップは大幅改善だわ「ノルム」に変化の胎動が明らかになっているわなんですが」

最初マクラの積りで書きだしたら能書きジジイになってしまったのでコーナーにしておく。

〇ディスカウントウィンドウについて議論があったようで(米国)

うーんその解説は微妙
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-discountminutes-idJPKBN2PT1T8
2022年8月24日5:19 午前
米FRB公定歩合、2地区連銀が7月に1%引き上げ要請=議事要旨

『公定歩合はFOMCが設定するFF金利の誘導目標とは異なるが、連動して動く。公定歩合会合で見解が分かれたことは、数十年ぶりの高インフレに直面する中、どの程度積極的に利上げすべきかを巡る意見の相違の拡大を示唆している。』(上記URL先より)

これはですね、短期市場金利の変動幅をどの位に許容するのか、という問題で、常設ファシリティを金利の低い所(超過預金また当座預金付利金利)と高い所(公定歩合あるいは常設貸出ファシリティ金利)とのスプレッドをどこに置くか問題で、ゼロ金利みたいなことやってるときにどこの中銀もこのこりドアを縮小しちゃったんですよね(その前の平常運転パターンはECBで100bp幅だったし、そもそも米国はリザーブに付利してなかった、日本も白川さんの包括緩和の前は当座預金付利してなかった)。よってこれは一義的にはコリドアどうするの問題になります。

そらまあ上限金利上げるから金利上がりやすくなる面は無くは無いが、そもそも実効FFがこうだから市場金利がこうだ、ってのは余程エクストリームな事が起きてない限りそこまで長い方の金利に影響せんじゃろ、とは思うのですよね。

この公定歩合議事要旨うんちゃらは読んでないので後で見つけたら読んでネタになるならネタにします。


〇どう見ても物価目標達成です本当にありがとうございました(基調的な物価)

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

図表貼り付けスキルが無いのでグラフの方はURL先を踏んで確認して頂きたいのでございますが、どうですこの鎌首を上げたかのような上昇!!!!!!レッドスネークカモーン!だと直ぐ引っ込んでしまうのでレッドスネークじゃなくてこの場合は何といえばよいのでしょうか(ソウイウモンダイジャナイ)。


https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

『(1)刈込平均値・加重中央値・最頻値』

の美しさよ、という話で+1.8%ですよ+1.8%!!!いやー苦節10年遂にQQEが報われたようで誠に結構なのでございますが、なんかこれを見ても「物価は一時的」とか言って勝ったことにしないなんて黒田総裁ったらなんて謙虚なお方なんでしょうか(反語表現)。


『(2)上昇・下落品目比率』

一瞬「値下がり品目割合がとうとうゼロになったか」と思いましたが、右軸は最初値20の最大値80でしたwwww

・・・・・ということでデータをDLしてみましょういつものように。例によってエクセルに落としたものをヘロヘロと手作業で磔刑にしているものでありまする。

左から、刈込平均値、加重中央値、最頻値(前年比、%)

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2
Dec-21 0.9 0.1 0.3
Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7

今回は加重中央が下がってしまいましたが、ゆうて最頻値という計測開始以来苦節20年ゼロだの0.1だのという数字ばかりが並んでいたので、何ちゅうかこのレッドスネークに続いていままで頭出さなかったグリーンスネークまで頭出してきました的な(ソノタトエハオカシイ)ことになっておられます。改めて申すまでもありませんが、最頻値の+0.7%は本計測開始以来の最大値になっています。


左から、上昇品目比率(%)、下落品目比率(%)、上昇品目比率−下落品目比率(%ポイント)ですな。

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9
Dec-21 58.8 34.3 24.5
Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0
Jul-22 73.2 20.7 52.5


上昇品目数が7割越えっていうのは2カ月連続になりますが、これも計測開始以来では最大(6割台、というのはちょこちょこあった)だし、上昇ー下落の50ポイント越えも最大の数値になっています。


・・・・・・というこの現実がある訳ですが、これで未だに「一時的」とか言い張り続けるのってさすがに日銀どうなのかと思いますし、こんなのどっからどうみたって退任直前に物価目標の達成への目途が明確につきました!!!!っていって自分の花道を華麗に飾れるじゃんと思うのですが、何故か頑なに黒田日銀は政策を1ミリも変えようとせず、あまつさえ7月のMPMが終わったら全員が「賃金ガー」を連呼するという有様です。

まあこんなの話は簡単で、置物一派のトンチキ共は分かってない可能性が大いにありますけど、黒田さんはさすがに馬鹿じゃない筈なので、散々っぱら大風呂敷広げた今の政策を畳みに行く過程において、色々とやり過ぎてしまったことの収拾において血の池地獄みたいなのが起きる、という政策の帰結が分かってて、それを見たくないやりたくない、というベルリン包囲されてるのにプラハ奪還だーとか言い出すちょび髭伍長状態というヤケクソモードになっていることは想像に難くないとしか申し上げようがございません。

まあ何ですな、そもそも10%刈込平均が正しいのかどうか、というような話になるとこれまた別問題(本質的に言えば「国民厚生の最大化の為に金融政策を行っている」のだから、国民の消費支出をキチンとみていく指標は何か、ってのを常に点検しないと行けないのであって、特定の物価指標が常にメルクマール、ってのも本末転倒な訳ですよね)ではあるのですが・・・・・・・・・



〇ところで最頻値が動くという「山が動いた」状態の意味について日銀が既に良い解説をお出しになられております

さてさて、先ほどの基調的インフレ云々のページですが、結果の数字を見るだけはもったいないページになっておりまして、いつも同じですけど解説の方を改めて読んでみましょう。

『物価動向の分析にあたっては、現実に観測される消費者物価の動きから、様々な一時的要因の影響を取り除いた、基調的なインフレ率(いわゆる「コア指標」)がよく利用されています。その際には、特定のコア指標に依存するのではなく、様々なコア指標を総合的にみていくことによって、基調的な物価変動をより的確に把握することができると考えられます。』

そうですね。

『このため、日本銀行調査統計局では、毎月の全国消費者物価指数の公表に合わせて、上昇・下落品目比率、刈込平均値、最頻値、加重中央値を試算し、原則として、全国消費者物価指数の公表日の2営業日後の14時を目途に公表しています。』

ということで昨日も14時くらいに出ました(その瞬間見てたわけではないが)。

『それぞれのコア指標の作成方法やその特性などの詳細については、以下の日銀レビューをご参照ください。』

『川本・中浜・法眼(2015)「消費者物価コア指標とその特性 ―景気変動との関係を中心に― 」日銀レビュー・シリーズ、15-J-11』
『白塚(2015)「消費者物価コア指標のパフォーマンスについて」日銀レビュー・シリーズ、15-J-12』

・・・・・ということで日銀のサイトの方にはリンクがありますが、川本・中浜・法眼の三氏による日銀レビューの方を改めて確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j11.htm/
消費者物価コア指標とその特性
景気変動との関係を中心に
2015年11月20日
調査統計局 川本卓司、中浜萌、法眼吉彦

まずはエグゼクティブサマリーとなる『要旨』

『本稿では、現実に観測される消費者物価の動きから、様々な一時的要因の影響を取り除いた所謂「コア指標」を幾つか試算したうえで、それらと景気変動との関係を中心に考察する。具体的には、わが国の消費者物価を対象に、従来から利用してきた「除く生鮮食品」、「除く食料・エネルギー」、「刈込平均値」に加え、最近金融経済月報等で活用している「除く生鮮食品・エネルギー」、品目別価格変動分布において最も頻度の高い価格変化率である「最頻値」や、価格上昇率の高い順にウエイトを累積して50%近傍にある価格変化率である「加重中央値」といったコア指標の景気循環上の特性について分析する。』

はい。

『これらのコア指標と景気変動の関係をみると、除く生鮮食品・エネルギーをはじめ変動の大きな品目を予め控除したコア指標は、需給ギャップとの連動性が相対的に高い一方で、最頻値や加重中央値といった分布のシフトを表すコア指標は粘着的で、需給ギャップとの関係も弱めとなっている。』

つまり、刈込平均がズンズングイグイ上昇しているのは需給ギャップの改善を盛大に反映している、ということになりますが、「最頻値や加重中央値といった分布のシフトを表すコア指標は粘着的で、需給ギャップとの関係も弱めとなっている。」とはどんなお話なのでしょうか?????????

ということで本編を鑑賞しましょう。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j11.pdf
消費者物価コア指標とその特性
――景気変動との関係を中心に――
調査統計局 川本卓司、中浜萌、法眼吉彦
2015 年 11 月

最初の方は3つのコア指標はどんなもんですかって解説なので飛ばしまして、『各種コア指標と景気変動の関係』という小見出しの所から鑑賞しましょう!!!!

『実際に作成した各種コア指標をみると(図表5、6)、除く生鮮食品・エネルギーは、最頻値や加重中央値に比べ、景気変動に応じたアップダウンが大きくなっている。』

左様ですな。

『実際、除く生鮮食品・エネルギーと最頻値の前年比変化率の格差をみると(図表7)、需給ギャップと明確な正の相関を示しており、除く生鮮食品・エネルギーは、最頻値や加重中央値よりも、景気との連動性が高いことが確認できる。』

というのはサマリーにありましたが、どういう背景でそうなっているのか、という解説があって、これ勿論日銀ヲチャーの不肖このアタクシ出た時にも拝読いたしましたが、改めて読んでみると記憶のタンスの整理ができて大変に結構でした。

『これは、景気拡張局面において、@除く生鮮食品・エネルギーは、需給ギャップ改善の影響を受け易い一部品目の価格上昇に牽引され、品目別価格変動分布を上昇方向(右方向)に歪めるかたちで上昇する傾向がある一方、』

なるほど。

『A最頻値や加重中央値は、そうした品目が一部に限られている間はあまり影響を受けないこと、』

>そうした品目が一部に限られている間はあまり影響を受けない
>そうした品目が一部に限られている間はあまり影響を受けない
>そうした品目が一部に限られている間はあまり影響を受けない

ほっほーーーーーーーーーーーーー!!!!!

『すなわち、需給ギャップが改善しても、これらの指標で捕捉される分布全体のシフトには時間がかかることを示唆している。この点、品目別価格変動分布の歪度をみると(図表8)、需給ギャップの改善(悪化)に伴って、分布の上昇(下落)方向への歪みが大きくなるという明確な相関関係が観察され、除く生鮮食品・エネルギーの景気連動性の高さには、分布の「シフト」だけでなく分布の「歪み」が相応に寄与していることがわかる。』

説明頂いている内容自体は直感的にそうだよねって腑に落ちる話ですが、こうやって言語化して、レビューの方ではちゃんと分析結果も出ている(貼り付けスキル無いから皆さんは元のレビューを見てちょんまげ)のでして、アタクシのような無学直感人間としては大変にありがたいですよねこういう分析。地味かもしれないけどダイジダイジネー。

で、更にこの「需給ギャップに対する感応度」について分析したものがこの先にありますが、まあここは引用だけペタペタ貼っておきますね。

『各種コア指標と需給ギャップの関係について、さらに詳しく考察するため、インフレ予想を考慮した簡単なフィリップス曲線の推計を試みた。』

『具体的には、各種コア指標を対象に、需給ギャップに加え、インフレ予想としてバックワード・ルッキングな要素(過去の実績に引き摺られる慣性効果)とフォワード・ルッキングな要素(インフレ目標に影響を受ける中長期のインフレ予想)の双方を説明変数として取り込んだ、「ハイブリッド型フィリップス曲線」を推計した。』

ほうほう。

『推計結果をみると(図表9)、第1の変動の大きな品目を除いたコア指標の方が、品目別価格変動分布のシフトを表すコア指標よりも、総じて需給ギャップとの連動性は高めとなっている。』

さっきの話を補強する分析ということです。

『本稿で焦点を当てているコア指標についてみても、除く生鮮食品・エネルギーの需給ギャップにかかるパラメータ(計表中のα)は統計的に有意でサイズも大きめとなる一方、最頻値や加重中央値の同パラメータの有意性は低く、サイズも小さめであることがわかる7。』

『さらに、除く生鮮食品・エネルギーについて、@家賃、A公共料金(除く電気代・都市ガス代)、Bそれ以外の価格弾力的セクター(=除く生鮮食品・エネルギー・家賃・公共料金<除く電気代・都市ガス代>)に分けて同様のフィリップス曲線を推計してみると、@とAは需給ギャップに殆ど反応しない一方、Bの需給ギャップにかかるパラメータはかなり大きいことから、除く生鮮食品・エネルギーの景気との連動性の高さは、価格硬直的な家賃や公共料金以外の品目によってもたらされていることがわかる。』

うんうん。

『このようなコア指標間における需給ギャップに対する反応の違いは、為替レートや原油価格の変動、マクロ変数間の相互依存関係やラグ構造を考慮しても、なお頑健である。』

ということで、加重中央値や最頻値のような価格分布に基づくコア指標はは「需給ギャップに対する反応が小さい」と言う検証結果が示されておりまして、しかもその分析結果はロバストネスチェックをしてもロバストであるということが示されております、ということで以下このロバストネスチェックっぽい分析の話が続くのですがそこは長くなるので割愛します。

じゃあその「需給ギャップに対する反応が小さい」コア指標が茲許上がっており、しかも20年スケールで見た時に過去最大数値になっている、ということはどういう意味でしょうか????????


本文6ページ(PDFでも6ページ)の左側中段から引用します。

『最頻値や加重中央値は、このところ上昇しているとはいえ、2%を挟んで変動している米国や(図表 13)、ほぼ2%に達していたわが国の 1990年代初頭と比べても(前掲図表6)、なお低めの伸びとなっている。』

ほうほう。

『それでは、品目別価格変動分布が上昇方向(右方向)に一段とシフトし、最頻値や加重中央値がさらに上昇率を高めるためには、何が必要だろうか。』

このころは碌すっぽ上がっていなかったのでこのようなアジェンダセッティングで文章が構成されておりますが、なにせ足元では最頻値が+0.7%まで来ましたからねー。

『上記の分析結果が示すとおり、最頻値や加重中央値は、需給ギャップとの連動性は高くないため、景気の改善に加え、幅広い品目の価格上昇率を一様に高めるようなインフレ予想の上昇が重要となる。』

>幅広い品目の価格上昇率を一様に高めるようなインフレ予想の上昇
>幅広い品目の価格上昇率を一様に高めるようなインフレ予想の上昇
>幅広い品目の価格上昇率を一様に高めるようなインフレ予想の上昇

ほっほー!!!!!!!!!

『言い換えると、人々が物価は緩やかに上昇するのを当然視するようになり――所謂、物価の「ノルム」が持続的に高まり――、これが実際の賃金・価格交渉にしっかりと織り込まれていくことが重要であると考えられる。』

つまりノルムに変化が生じつつある、ということですわな現状は。そんな中だったらノルムの改善(国民厚生的に本当にそれが改善なのかどうか、2%でいいのかという点には議論の余地がありますが今回はその話には突っ込みません)」を進めるべく、日銀は「2%に行きます!」っていう話をすべきであって、今みたいに「物価上昇は一時的」を連呼したり「賃金が上がらないと物価は上がらない」とか言い出すのって折角の「ノルム改善の動き」に水を差すものにしか見えませんよね。


最後のまとめ『おわりに 』でも同様に、

『最近の動きをみても、最頻値や加重中央値の上昇ペースは、除く生鮮食品・エネルギーと比べやや緩慢となっており、これには需給ギャップの改善に対する感応度の違いが影響しているとみられる。先行きの最頻値や加重中央値が一段と上昇し、品目別価格変動分布が上昇方向(右方向)にシフトするためには、需給ギャップの改善に加え、インフレ予想ないし物価の「ノルム」がよりはっきりと高まっていく必要があると考えられる。』

と同じこと書いてますが、そもそも「インフレ期待に働きかける政策」を標榜してて、わざわざインフレ期待のために「マネタリーベースの前年対比拡大方針」というオーバーシュート型コミットメントというものも入れておられる日銀様な訳ですので、基調的な物価を折角このように出しているのであれば、インフレ期待、あるいはノルムの変化が起きつつある、という話をもっとしないといけないんじゃないでしょうかねー(・∀・)ニヤニヤ


ということで、なんか書いてるうちに「昔の見解をサルベージしてきて過去との矛盾をウリウリとツッコミ入れる謎企画」になってしまいましたとさorzorz











2022/08/23

お題「ECBシュナーベル理事の直近インタビューですがインフレ期待の走錨に対してかなりの危機感を示していますね」

まーこの時期だからMPMも蜂の頭も無いのでしょうがないですけど、
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N2ZY0SD
2022年8月22日3:23 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落で引け、長期金利0.215% 1カ月ぶり水準に上昇

ってまた10年0.25%の方に向かいだすと間違っても「YCCの柔軟化」とか言い出せないというのが誠に残念無念という感じですが、そもそも米国様はあんなに金利戻るならそもそも買い上げるなよ何考えてやってるんだよ(個人の愚痴です)。


しかしまあ何ですな、
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKBN2PS1N9
2022年8月23日4:58 午前
NY外為市場=ドル上昇、リスク回避で ユーロ「パリティ」割れ

リスク回避で日本円が買われることもなくなりましたなあ。


〇昨日の続きで踏んだり蹴ったりの欧州につきましてECBシュナーベル理事の最近インタビューの続き

https://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2022/html/ecb.in220818~a2a774e937.en.html
INTERVIEW
Interview with Reuters
Interview with Isabel Schnabel, Member of the Executive Board of the ECB, conducted by Balazs Koranyi and Frank Siebelt on 16 August 2022
18 August 2022

いわゆる一般的なアジェンダの場合質疑応答が長い(昨日引用した「成長」というのと「物価」という大括りの質問ね)のですが、他は短答になってて読みやすい(と思う)ので全部引用。昨日飛ばしたところで「経済物価見通しは???」と聞かれて経済見通しの方を延々とお話した回答の直後から以下全文参ります予定です、と思ったら思った以上に時間を食ってしまったので、最近の市場金利の上昇に関する質疑とTPIに関する質疑をパスしますすいません。


・先行きリセッションの見通しに関しては(空元気のような気もしますが)そんなに深刻な言い方をしていない

経済と物価の質問したら経済の回答しか出てこないの巻だったので、先に経済の質問の方でツッコミが来るの巻となりました。

『During the pandemic, the economy adapted quite well to the new realities. Do you see scope for a similarly quick adjustment?』

パンデミックに対して経済が「新たな現実」に適応しましたが、同じようにポストコロナで起きる(って要はコロナ前にサクッと戻ってくれるもんでしょうか?って質問ですな)でしょうか?

『We have learned that the economy is able to adapt. But the energy price shock is too big to be fully offset.』

エネルギー価格ショックがデカすぎてビフォーコロナになったとしてもコロナショックでアイヤーとなった部分は採り返せないんだよなー、だそうです。


で質問は今後のリセッションの見通しになるのですが、

『If there is a recession, how persistent is it going to be?』

リセッション来たらどの程度持続的になりますかねえ、の質問に対して、

『I do not see any indication of a prolonged, deep recession at the moment. It’s not even clear that there's going to be a technical recession in the euro area at all. I would just not rule it out.』

「I do not see any indication of a prolonged, deep recession at the moment.」たあ大きくでたなあという感じですが、しかし「テクニカルリセッション程度で済むかどうかについてもこれまたクリアではない」とヘッジはぶっこんでおります。

まあヘイヘイピッチャービビってるよ!!!という感じではあるのでしょうけれども、大きな落ち込みまでは見ていない、というのが現状のロジック構成になっているということが示されておりますので、そーしますとどどーんと来た場合(ドイツ様のアレはヤバイですからねー)はECBとしてはまた何かネタを繰り出さないと厳しくなるという感じではないかと妄想してみましたがどうでしょうかね(個人の妄想です)。


・「実際の物価動向がより政策判断におけるウェイトが高まる」というポイント

次の質疑は昨日引用したインフレの見御通しについての話ですが、昨日引用した中で最後時間もなくて流してしまった中によく考えてみたら大事なのがあったので再掲します。

質疑応答全部は再掲しませんが、応答の方の最後の方にこんなのがあったんですよね。

『Still, we have to be aware that any projection model will have a hard time dealing with fundamental structural shifts related to the pandemic, the war or the green transition. This speaks in favour of giving more weight to actual inflation outcomes in monetary policy decisions.』

最後に「This speaks in favour of giving more weight to actual inflation outcomes in monetary policy decisions.」ってあるじゃないですか。ここよく考えたら大事な話で、いままでって「そうは言っても先行き見通しがこうですから」みたいな言い方をしてたし、金融政策はフォワードルッキングにやるという話もあるから、見通しのところダイジダイジネーというはなしだったんですが、そもそも昨日引用しましたように、「パンデミック以降の特に最近は、物価の先行き見通しを読むのが極めてむつかしくなっている」という説明というか釈明を延々と繰り広げておった訳でして、そこに上記のような話も加わってきまして、要は「現実の物価推移に(悪く言えば)振り回されてしまう」政策運営をしょうがないから志向することになる、って話をしていますんで、まあ従来よりも「物価の先行き見通しがこうですので」の説明は減ることになるんだろうな、と思うのでありました。

まあこの点は米国も最近は「物価の先行きはワッカリマセーン」状態になってきつつある(いや勿論2%に向けて徐々に下がっていきます!という看板自体は下げてませんけど)訳でして、突如ここでどこかの中央銀行への悪態になりますが、未だに「物価上昇は一時的」とか言って2023年度の年度平均のコアCPIが+1.4%という来年になったらどんだけ物価上昇率が落ちますねんという政策から逆算した見通し数字(しかも展望レポート基本的見解の文章を見ると誰がどう見ても物価が先行き弱くなるような表現になっていない)を出して、その見通しがこうだからといってアクチュアルの物価上昇に目を背けているどこぞのポンコツはこういうのを見て何を思う???


・インフレがどこでいつピークを打ちますか?の問いに対して完全シランガナ回答で白旗モードとな!

この(昨日引用した物価見通しの全般的な質問)次にインフレに関するサラトイが5連発である。

『Where and when could inflation peak?』

「Where and when」なんですね、とちょっと面白かった。

『I would not exclude that, in the short run, inflation is going to increase further. But any projection is currently subject to high uncertainty. So it's very difficult to predict when inflation is going to peak.』

インフレはいつ、どこ(どいつとかそういう意味かい)でピーク打つと思われますか?という質問に対して、「any projection is currently subject to high uncertainty」と完全白旗モードとは悲しいが、変な回答して「また外しやがってコノヤロー」と言われるのには耐えられない、というのと、そもそも論としてECBは前回の時点でフォワードガイダンスを放棄しているので別に見通しを出す必要もない、というのもあって、このような正直は正直だがヤケクソ回答になっておる。


・足元の物価をより重視する金融政策運営というと格好良さそうだが「先行きが分からないからヤケクソで足元も見ます」でしたwwww

『What does it mean in practice that you should place greater emphasis on actual inflation in policy decisions?』

はい来ました。

『Inflation projections play a key role in our monetary policy decisions. But we should not ignore what is happening at the moment.』

「Inflation projections play a key role in our monetary policy decisions.(キリッ)」って言ってるけど、そもそもその予想がまるで当たらないんですよね。でも正面切って質問されると、さっきまで「物価の先行き予測ムツカシイよスタッフ一同頑張って予測の精度を高めるべく頑張ってるヨー」と説明してたのですが、さすがに「先行きが分からんのでヤケクソで足元を重視します」とは言えないのかなーと思いや・・・・・・

『We have seen that our models have not been particularly good in projecting the future path of inflation. Therefore, current inflation outcomes provide additional, useful information.』

あ、結局「先行きが分からんのでヤケクソで足元を重視します」って思いっきり言っておるwwwwwww


・インフレ予想のアンカーが外れるリスクの質問に対してそっちではなく更に深刻な回答をしておられます

『Would higher inflation readings mean you need to raise your projections?』

アクチュアルの物価がより高くなったらインフレ予想のアンカー外れて走錨をするんじゃないですか????

『There are different factors at work. Economic growth, of course, has an impact on the inflation projection. Still, even if we entered a recession, it’s quite unlikely that inflationary pressures will abate by themselves. What we're seeing is a supply-side shock that is slowing growth and at the same time raising price pressures. The growth slowdown is then probably not sufficient to dampen inflation even if it reduces the price pressures due to slowing demand.』

インフレ期待の話というよりはインフレ圧力の話をしているのですが、ここでも中々悲観的な話をしていまして、「仮にリセッションになったとしても、リセッション入りしただけではインフレ圧力が収まるかどうか不明である」(even if we entered a recession, it’s quite unlikely that inflationary pressures will abate by themselves)ってぶっこんできてまして、いやこれは深刻だわーって回答になっています。現在はサプライサイドの影響があって、これが景気減速圧力とインフレ上昇圧力を同時に掛けている、という状況なので、景気がスローダウンすることによって需要が減って物価上昇圧力を軽減することは軽減するけど、それだけでは今のインフレ圧力を適正に押し下げるには不十分、と来ています。


・ドイツの話

次はドイツの話。

『How will German government measures impact inflation?』

PPI前年同月比+37.2%ってどう見てもトイレットペーパー騒動です本当にありがとうございました。

『In Germany it's relatively likely that inflation is going to move up further because some government measures that were used to fight inflation are going to be reversed or new measures introduced. These include the end of the nine-euro public transport ticket and of the fuel rebates, as well as the introduction of the natural gas levy.』

インフレ対策の施策の巻き戻しがありますねドイツでは、という話ですが、なんかそういうチャチなレベルではない気が・・・・・・



・先行きの政策に関してはフォワードガイダンス止めたから決め打ちも示唆もしないというのは潔い

ここから政策コーナーになります。

『What are the implications of this assessment for the September policy meeting?』

9月の政策決定会合に向けたインプリケーションは何ぞや、とはロイター単独インタビューなので質問がド直球。

『Our monetary policy decisions are guided by the inflation outlook. We are currently seeing very high inflation rates. Our latest projected inflation numbers were also quite high and the factors driving inflation are not disappearing anytime soon.』

物価はヤバイと。しかしここでも往生際が悪く「Our monetary policy decisions are guided by the inflation outlook.」ってその見通し精度が怪しい話はスルーですね。

・・・・というのは兎も角として、ここで話の流れというのもあるけど、思いっきり政策決定は「guided by the inflation outlook」って言ってるのもチャーミングで、まあそれが定石ではあるのですが、ここまで来ると多少のリセッションとかシランガナで物価を下げるようにって話になるからこそ、政策は「物価見通しで決まりますから」ってぶっこんでいて、経済のアウトルックは何処にいったというか知らなかったことにしておられますな。

『This is why in July we embarked on monetary policy normalisation, which has just started and which is going to continue. In July we decided to raise rates by 50 basis points because we were concerned about the inflation outlook.』

7月に50上げたのは先行き物価見通しを反映したもの、ときて次に「フォワードガイダンスはもうヤラネーヨ」の確認が入ります。

『At the same time, we shifted to a meeting-by-meeting approach, which means that any decision is going to be taken on the basis of incoming data.』

出たとこ勝負宣言来ました、というか元々ガイダンス政策ってのは名目下限金利制約の中で追加緩和効果を捻りだそうとしてぶっこんできた苦肉の策な訳で、足もとのことですら不透明で、政策の方向性だってムツカシイ中でガイダンスをやるという方があたおかである。(FEDもドットプロット止めれば良いのに)

『If I look at the most recent data, I would say that the concerns we had in July have not been alleviated. In September, we're going to have an assessment of all the available data and we're going to have new staff projections.』

今の状況であれば7月に我々が懸念したことは全然軽減されてません、とだけは言ってるけど、9月に色々と状況見て考えますわ、だそうです。

『What would be your preference for September?』

9月は何をするのを好みますか???と食い下がる。

『It's not about preference, it's about what is appropriate to bring inflation down to 2% over the medium term. In July we decided on a 50 basis point hike in light of the inflation outlook. At the moment I do not think this outlook has changed fundamentally.』

無回答キタコレ。


・インフレ期待のアンカー云々を忘れた頃に質問し直したら走錨するリスクの高まりに言及キタコレだし結構深刻な回答をしておる

『Do you see a risk of inflation expectations getting de-anchored?』

手を変え品を替えの質問ですが、今度はインフレ期待の走錨について再度質問。

『Most measures of longer-term inflation expectations remain around 2%.』

ほほう、とおもったら早速その次がハウエバーである。

『However, a number of indicators are pointing towards an elevated risk of de-anchoring.』

幾つかの指標をみると走錨のリスク高まっていることを示唆、とはキタコレである。FEDすらそこまでは踏み込んでない(リスクがある、という認識はしてるけどここまでヤバそうな言い方ではない、という意味ね)。

『If you look at our household survey, the Consumer Expectations Survey, we can see that the median expectation of inflation three years ahead has edged up after having been anchored at 2% throughout the pandemic.』

ほうほう家計やら消費者期待のサーベイとかね。

『We also see an upward movement in the Survey of Professional Forecasters. This increase has been very gradual, but sustained.』

プロフェッショナルフォーキャスターのサーベイもじり高。

『And maybe most importantly, we see that the right tail of these distributions has shifted upwards, meaning that an increasing share of survey respondents expect inflation to be well above our target. This is sometimes seen as an early warning indicator of de-anchoring. I think it's very important that we take such signs seriously.』

で、特に重要なのは、これらの期待の分布の右側のテールが上方シフトしていることであって、これはサーベイの回答者の中で「インフレが2%よりも十分に高い状態になっていくという予想をしている人が増えている」ということであって、これは「This is sometimes seen as an early warning indicator of de-anchoring.」って結構深刻な言い方だし、締めも「I think it's very important that we take such signs seriously.」と言ってるわけでして、この辺り、米国ではインフレ期待の走錨に関してここまでシリアスな言い方はしていなくて、このシュナーベルさんの認識は結構重いな、って感じました。


ここで時間が無くなったので最近の市場金利上昇、TPI、フラグメンテーションに関する質疑は割愛しますサーセン。






2022/08/22

お題「色々とインフレネタが出てきてましたのでその辺で雑メモという所でありますサーセン」

おやおやまあまあ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220821/k10013781511000.html
岸田首相 “新型コロナに感染確認” 政府発表
2022年8月21日 18時59分

『岸田総理大臣は今月15日に公務を終えたあと、夏休みに入っていて、22日から公務に復帰する予定でしたが、今月30日まで療養し、早ければ翌31日から復帰することになるということです。』(上記URL先より)

夏休みに入っていない私に隙は無かった(イヤソウジャナイ)。


〇これ真面目な話「物価が上がって申し開きができなくなる」という意味不明現象おきねえか(全国CPI)

ほうほうそうですかそうですか。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)7月分(2022年8月19日公表)

『≪ポイント≫
 (1)  総合指数は2020年を100として102.3
    前年同月比は2.6%の上昇  
 (2)  生鮮食品を除く総合指数は102.2
    前年同月比は2.4%の上昇  
 (3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.6
    前年同月比は1.2%の上昇』

冊子形式の方を見ますと・・・・・・・

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf  
2020年基準 消 費 者 物価指数
全 国 2022年(令和4年)7月分

『◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として102.3
前年同月比は2.6%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は102.2
前年同月比は2.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は100.6
前年同月比は1.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇』

・・・・・・コアとコアコア指数どっちも前月比季節調整後の数値の伸び方が

『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』

ってのにあるんですが、

      4月  5月 6月  7月
コア     0.2  0.1  0.2  0.5
コアコア   0.2  0.1  0.2  0.5

って勢いよく加速しているように見えるのですけどど〜なんですかね。いやこれ年末のコアコア2%あるじゃネーノって感じなのですが、まあ日銀も馬鹿じゃないので(というか勉強は出来るので)以前「コアコアは低いから」とか言ってたのを段々フェードアウトしてきて、最近は「年内は上昇」って連呼しているのって、まあどっからど〜見てもこれ年末に向けてコアコアまで上がって来まして日銀がYCCの10年0.25%をやってる申し開きが付かなくなって来るので、その前に言い訳をしている、ということであります。

でまあそれはそれとして、10月の展望レポート、まさかこの調子のCPIが続いてるのに「2023年度の年度平均+1.4%」とか寝言を言う訳にもいかないので、上方修正必至なのですが、23年度の年度平均が+1.7だの+1.8だのと言う数字を出したら出したで「これを2%達成と言わないのはおかしい」という話が出るし、10月展望を出す時点でもCPI強くて、年末に向けて上がるって予想になっているのに、23年度のCPIが年平均で+1.4%ってどういう物価のパスを書いてるんだよという話にもなるので、益々「この物価見通しで何で10年0%(実際は上限0.25%ですが)なのか」ってツッコミに耐えられるのでしょうか?????

まあ本来はこういう数字が出てきてるんだから、日銀は「苦節10年、やっと我々の政策の効果が表れて参りました!!!」と声涙共に下る演説をして、黒ちゃんよくやったとの称賛の元勝ち逃げするのに何の問題もない筈なのですが、ついうっかり年初に謎のド突っ張りを黒ちゃんがおっぱじめてしまったので、引くに引けなくなるという事態になってしまっている訳で、まあお勉強が出来るけど馬鹿ってのはこういう事象を言うんだろうなー、と思うのでありました。

・・・・・・てな訳で再三再四申し上げている気がしますが、日銀って「ど本命の目標であるはずの物価上昇で追い詰められていく」という9年前には全く想像もできなかった(というか想像の真逆の)展開によって今後厳しい局面を迎えそうで、最初の日銀による苦しい屁理屈は10月展望レポートの所になりますし、しつこく申し上げてますが日銀が政策のソフトランディングする本当に最後の最後のチャンスは9月にYCCを柔軟化できるか、という所になると思うのですが、さっそく海外のインフレ圧力攻めが来てしまいまして、これがおっぱじまるとYCCの柔軟化ってやりにくくなる(金利が下がっている時なら余裕のよっちゃん大王イカで出来ても金利上昇圧力が掛かっているときは意地でも柔軟化ができない)のですよぬー。

全国CPIを受けて「基調的な物価」の集計も出てくるので楽しみに待ちたいと思います。


〇ドイツの物価指標で米金利上昇なのですかよー知らんけど

https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2ZV2TH
2022年8月20日6:10 午前
米金融・債券市場=10年債利回り3%に迫る、独PPI受けインフレ懸念

『[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米金融・債券市場では国債利回りが上昇し、10年債利回りは3%に迫った。ドイツの生産者物価指数(PPI)の伸びが過去最大となり、独連邦債利回りが急上昇したことに追随した。』(上記URL先より、以下同様)

ドイツ様のPPIで米国金利が上昇とな。

『ドイツ連邦統計庁が発表した7月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比37.2%、前月比5.3%上昇し、いずれも1949年の統計開始以来最大の伸びとなった。これを受け、 ユーロ圏金融・債券市場では独連邦債利回りが急上昇した。』

これはひどいw

『米10年債利回りは約10ベーシスポイント(bp)上昇の2.988%。一時は2.998%と、3%に迫った。』

なんでそう動くと一々ポツ1動きますねん、という感じですが、

『 この日はリッチモンド地区連銀のバーキン総裁が、FRBによるインフレ抑制に向けた取り組みが景気後退を引き起こす可能性があるものの、正常化への回帰が経済活動の「壊滅的な」落ち込みを伴う必要はないという認識を示した。 』

この辺りもインタビューの元記事を見に行ったりしないと行けないのですけど、ベンダーによってはヘッドラインの書き方がもうちょっと過激になっているのとかもあったような気がしないでもなくて、「物価抑制のためにはリセッションを辞さず」みたいな威勢の良いのもバーキンじゃなかったかも知れませんが出てたりしたと思うのですが、これって結局の所(先週末のFOMC議事要旨ネタで申し上げましたが)「金融引き締めの効果でファイナンシャルコンディションがタイト化することによって過度な需要の抑制につながる」って話を7月議事要旨の中で延々と書いてて、しかもその効果についての話が沢山の需要項目に出るわインフレ期待の所にも出るわ、となっていた訳ですね。

あれって要するに「ファイナンシャルコンディションがガバガバになるのダメ!ゼッタイ!!」っていうメッセージを市場に送っているのですが(とアタクシがおもっているだけかも知れませんけど以下それを前提にアタクシの妄想になりますが)、残念ながら市場ちゃんはそのメッセージ全然読んでくれないので、隙あらばゴルディロックスヒャッハーとやりやがるもんだから、一々「リセッションも辞さず」みたいなのを鉄砲玉に言わせてゴルディロックスヒャッハーを止めに掛かっている訳ですよ、と思うのですが、どうせ喉元過ぎればゴルディロックスというアメリカンドリーム相場なんでしょうなあと思うのでした。


〇ところでジャクソンホールシンポジウムの式次第マダ〜

カンザスシティ連銀のジャクソンホールシンポジウムコーナー(ここはずっと同じURLなのでこれブックマークしておくのお勧め)
https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/
JACKSON HOLE ECONOMIC SYMPOSIUM

右上の方に

『Jackson Hole Economic Symposium

The 2022 Economic Policy Symposium, "Reassessing Constraints on the Economy and Policy," will be held August 25-27.』

というのがあると思うのですが、この「ジャクソンホールエコノミックシンポジウム」がリンクになっていて、これを踏むと式次第に飛ぶはずなのですが、今時点(日本時間22日朝)踏みに行っても、

https://www.kansascityfed.org/research/jackson-hole-economic-symposium/macroeconomic-policy-in-an-uneven-economy/
Jackson Hole Economic Policy Symposium: Macroeconomic Policy in an Uneven Economy
FRIDAY, AUGUST 27, 2021
9:00 a.m. , US/Central

残念それは昨年の式次第だ・・・・・・・・・・

という有様です。いやまあ段取りしてるから誰が喋るのかとかの話は分かってると思うのですが、なぜに出し惜しみするんじゃろという所ではあります。ただまこれ昨年も出たのエライ直前(確か前日)だったので、別に狙っている訳ではないと思うのですが。

でもって今回はいつもの3日制に戻ったので、初日は多分ご挨拶で終わってしまうんじゃなかろうかということで、こっちの市場で反応出来るの来週になってから(たぶんパウエルの講演とかあったとしても26日の朝だと思うの)だとは思うのですがさてどうなるのやら。


〇例によって先入れ先出し方式(意味が違う)によって直近(と言っても先週木曜だけど)のECB高官発言でも

https://www.ecb.europa.eu/press/inter/date/2022/html/ecb.in220818~a2a774e937.en.html
INTERVIEW
Interview with Reuters
Interview with Isabel Schnabel, Member of the Executive Board of the ECB, conducted by Balazs Koranyi
and Frank Siebelt on 16 August 2022
18 August 2022

とりあえずパネッタとシュナーベルがだいたいスポークスマン&ウーマンで、その間にチョイチョイとレーンが何か言う、というのが確立されているので、要人発言はその3名のニュースを拾って置けば無問題である。

なお今朝は時間があんまり無いのでたぶん次回に続く。

・経済と物価について聞かれているのにしれっと経済の説明だけするという辺りに物価に困っているのが分かる

『Please give us your assessment of growth and inflation developments since your last policy meeting.』

最初から普通に直球ですね、前回MPC以降の成長とインフレのアセスメントについての質問です。

『The euro area economy is clearly slowing. Some of the downside risks that we identified in June are now materialising. Indicators like consumer or business confidence have declined further. The Purchasing Managers' Indices (PMIs) have dropped notably, not only in manufacturing but also in services.』

冒頭がいきなり「経済が明確にスローになってきていて、6月に我々が先行きのダウンサイドリスクとしてみていたものが顕在化している」ともう経済だめぽという話をしております。

『On the other hand, we had a relatively good second quarter, which shows that some pockets of resilience are supporting economic growth.』

と思ったら「we had a relatively good second quarter」ということで、なんか「some pockets of resilience」があるんですってよ。

『Where is this resilience?』

なんでしょうか?

『One source is pent-up demand, which shows up particularly in services; tourism has probably been especially strong. This is likely going to carry over into the third quarter but it may fade towards the end of the year.』

ペントアップ需要だそうです、旅行とかそういうの。でもこれ年末にかけてペントアップ特需は落ちる、という認識。

『We also have a very strong labour market. We see continued acute shortages of labour, historically low unemployment and a high number of vacancies. This probably implies that even if we enter a downturn, firms may be quite reluctant to shed workers on a broad scale. This will support household incomes.』

労働市場が強いので、経済が多少落ちても企業は雇用を維持すると見られるので家計もサポートや!

『And finally, we have fiscal policy, which tries to compensate, at least in part, for the decline in real household income.』

財政による物価上昇お助け措置があって家計の実質所得の下げを一部相殺するのも支えじゃ!

『Nevertheless, there is a strong indication that growth is going to slow and I would not rule out that we enter a technical recession, especially if energy supplies from Russia are disrupted further.』

と言ったものの、やっぱり経済は減速するという強い指標があるし、テクニカルリセッションが起きることも排除しません。特にロシア要因の深刻化の場合。

『Downside risks to economic growth have also increased due to additional supply-side shocks, caused by droughts or the low water levels in major rivers.』

おまけに弱り目に祟り目でライン川が干上がって河川での輸送ができなくなっているとかまで来ててアイヤー。

『But there is country heterogeneity. It seems that, out of the larger euro area countries, Germany is hit the hardest.』

で、国によってもこの辺の差があって、どうもドイツが一番食らっているようだ。


・・・・・と説明しているのですが、インフレの話は何処に逝った???という感じだし、よく考えてみれば上記の「経済をサポートする要因」の中にあるものだって、労働市場がストロングだの財政の支給があるだのって話は思いっきりそれインフレ要因じゃん、という要素について「経済をレジリアントに支える要素」って言ってしまってる、というのがこりゃ相当苦しいな、という風に思いました。



・インフレの説明のところで「ECBは物価見通しを間違えた批判」が強いんじゃないかと思わせる説明を見つけました

ちょっと質疑飛ばしてインフレについて

『Where do you see inflation going and what are the implications of the persistent overshooting of inflation above expectations?』

二つほど経済に関する関連質疑があったのですが飛ばしまして物価についての質問来ました。

『Headline inflation in the euro area increased again in July and now stands at 8.9%. Energy prices, particularly gas, and food prices are playing an important role. 』

ガスだの食糧だのというのが寄与しているけど・・・・・・・

『But it's much broader than that.』

それだけではなくブロードベースに上がっている。

『We see high and increasing inflation rates in services and for non-energy industrial goods. It's a broad-based development. If you look at any of our measures of underlying inflation, they are moving up further and stand at historical highs.』

サービスとかエネルギー以外の財など幅広くエライコッチャで上がっておる。

『These inflationary pressures are likely to be with us for some time; they won’t vanish quickly. Even with the ongoing monetary policy normalisation, it will take some time until inflation gets back to 2%.』

暫くこの調子だしそんな簡単にインフレ圧力がさがってくれないし、金融政策の正常化を図ったとしても物価は2%に下がるのに「it will take some time」だよ。

『But forecasting has proven quite hard in recent years and our staff are continuously working on improving the economic projections.』

先行き予想はこの数年無茶苦茶難しくなってきている事が明らかで、私たちのスタッフも見通しの精度を改善するように努力している、とここで入れてきたのは「インフレの見通しを間違って金融緩和政策を引っ張り過ぎた」という批判が強い事を意味しているんだと思いますよ。日銀も明日は我が身かもしれませんですねえ。

『There are some specific post-pandemic factors which we now try to take into account. For example, we have seen a relatively quick pass-through from energy prices and producer prices to consumer prices. We are also seeing an elevated level of refining margins.』

ポストパンデミックファクターが色々とあるのが最近分かってきている、と更に言い訳。

『Still, we have to be aware that any projection model will have a hard time dealing with fundamental structural shifts related to the pandemic, the war or the green transition. This speaks in favour of giving more weight to actual inflation outcomes in monetary policy decisions.』

ということで、なんか見通しの話をしている筈なのに、途中から「この数年は物価の先行き予測が難しくて、私たちも予測の精度を上げるべく改善してます」という勘弁してちょんまげ的な説明(にアタクシには読めた)がおっぱじまっているのが中々滋味の深いものを感じましたが、あたくしが勝手に感じているだけの可能性もありますので念のため申し添えます。

何もなければ続きは明日で勘弁してつかあさい。






2022/08/19

お題「FOMC議事要旨ネタその2」

最近FOMC絡みの債券市場の反応って2日目をみないとわからんという謎のプレイが続くアルね。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2ZU349?il=0
2022年8月19日5:39 午前
米金融・債券市場=利回り低下、FOMC議事要旨受け市場安堵

https://jp.reuters.com/article/idJPL4N2ZT3GA
2022年8月18日6:08 午前
UPDATE 1-米金融・債券市場=利回り上昇、インフレ懸念で FOMC議事要旨受け一時低下


〇7月FOMC議事要旨:これまでの利上げが効果を出してきて金融環境がタイト化したので・・・・の連発をどうみるか

・その前に最初マクラにするつもりだった市場の反応とやらを

https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2ZU349?il=0
2022年8月19日5:39 午前
米金融・債券市場=利回り低下、FOMC議事要旨受け市場安堵

『[ニューヨーク 18日 ロイター] - 米金融・債券市場では、米債利回りが小幅低下した。前日に発表された7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受け、連邦準備理事会(FRB)のインフレ対応姿勢がそれほど積極的ではないとの見方が一部で広がった。』(上記URL先より、以下同様)

はまあ分かる(正しいかどうかは知らん)のだが、

『 マニュライフ・インベストメント・マネジメントのグローバルマクロストラテジスト、エリック・セオレ氏は「市場は安堵した」と指摘。FRBは9月に0.50%ポイントの利上げを実施し、年内に0.25%ポイントの利上げを2回実施して、政策金利は3.50%に達すると予想し、その後は「当面3.50%を維持してすぐに利下げは行わないだろう」と述べた。』

まあこれはあり得る話というか、3.50に上げた後に物価が下がってくれないようなら25ずつ延々と上げていくのじゃねえかって思うけどそこはこの何とかストが物価をどう見ているかのビューを見せてくれないと整合性がある話かは分からんけど、

『指標10年債利回りは2.878%とわずかに低下。2年債利回りは約6ベーシスポイント(bp)低下の3.235%。』

年末に3.5%水準に上がって当分利下げは無いのに何で10年金利3%を普通に割って推移するんですか、というのは相変わらず訳分らん。

ということで謎にマクラ長くなったけど昨日の続き始めます。


・ということでFOMC議事要旨の経済物価情勢判断の所は「データディペンデント」なだけに鑑賞する必要がある

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20220727.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
July 26-27, 2022

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, July 26, 2022, at 10:30 a.m. and continued on Wednesday, July 27, 2022, at 9:00 a.m.1

本日は昨日飛ばした『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の経済物価情勢とリスク認識の部分をばばーっと成敗していきませう。なんせこの前のデーリー総裁の講演にありましたように「フォワードガイダンスはもうやめました」なのですから、政策のパートをみて先行き示唆が無い!とか今頃言ってる寝ぼけてんじゃないのという何とかストがいたようないなかったような気がしますが、決め打ちやらないとなると経済物価情勢の判断よりダイジダイジネーになりますし、何なら今日はそこまで間に合わないけど、スタッフのだしている認識とかもよりちゃんとチェックしていく必要があると思います(個人の感想です)。


・第1パラ:ここは毎回声明文の1パラにでているような話が示されるので流して吉

1パラは現状認識全体観。

『In their discussion of current economic conditions, participants noted that recent indicators of spending and production had softened. Nonetheless, job gains had been robust in recent months, and the unemployment rate had remained low. Inflation remained elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and broader price pressures. Participants recognized that Russia's war against Ukraine was causing tremendous human and economic hardship. Participants judged that the war and related events were creating additional upward pressure on inflation and were weighing on global economic activity. Against this background, participants stated that they were highly attentive to inflation risks.』

これだいたいステートメントに出てるものと同じなので流して次。


・第2パラ:「需要のスローダウンはワシが育てた」とのことですよ!!!!

2パラ目から需要項目の個別の話が始まります。

『With regard to current economic activity, participants noted that consumer expenditures, housing activity, business investment, and manufacturing production had all decelerated from the robust rates of growth seen in 2021.』

今の経済活動は色々な面(内訳は上に書いてある通り)で昨年に見られたソイヤソイヤという勢いからは落ちておる。

『The labor market, however, remained strong.』

と来てからのハウエバーなのですが、労働市場がそれに対して強いとな。

『Participants observed that indicators of spending and production suggested that the second quarter of this year had seen a broad-based softening in economic activity.』

直近の生産と消費の指標をみると2Qの経済活動がブロードベースに減速しておる、とみられる。。

『Many participants remarked that some of the slowing, particularly in the housing sector, reflected the emerging response of aggregate demand to the tightening of financial conditions associated with the ongoing firming of monetary policy.』

で、こっから金融政策の効果の自画自賛が始まるんだが、まずは住宅セクターが特にここもとスローになっているのは、ワシらが継続して金融の引き締め傾向を続けて金融環境がタイト化してきたことが背景にあるよ、って仰せ。

『The unwinding of the large-scale support to consumer spending provided by pandemic-related fiscal policy actions, the inflation-induced reduction in real disposable income, and the move down in the demand for some products from the elevated levels seen in earlier stages of the pandemic had also all led to slower growth in households' expenditures.』

家計消費の伸びが鈍化している背景には、コロナ対策の財政支出を絶賛アンワインドしていることや、物価上昇による可処分所得の減少や、コロナの反動特需の剥落などもあるよ。

『In addition, a deterioration in the foreign economic outlook and a strong dollar were contributing to a weakening of external demand.』

ああそれから海外経済の見通しが弱まったりドル高なのも国内需要が弱くなっていることの背景だよ、ということで、我々の金融政策ガーとはそんなに言ってるわけじゃないけど、金融を締めた効果で「過剰需要」が抑制されて来ています、ってな評価をしてますよね。

『Participants anticipated that U.S. real GDP would expand in the second half of the year, but many expected that growth in economic activity would be at a below-trend pace, as the period ahead would likely see the response of aggregate demand to tighter financial conditions become stronger and more broad based.』

でもって先行きの見通しに関しても、年後半の実質GDPは拡大するんだけど、トレンドレベルよりは弱い水準に留まりますが、これはよりタイトなファイナンシャルコンディションが、全体の需要に対して与える影響がより強くなって更にブロードベースに影響するようになりますんで、その結果として成長が拡大してもトレンド以下に留まるでしょう、ということで今回は金融政策の効果で経済のペースが好ましい感じになった、と思いっきり言っているのが中々興味深いというか露骨に直球投げてるじゃんという感じでして、

『Participants noted that a period of below-trend GDP growth would help reduce inflationary pressures and set the stage for the sustained achievement of the Committee's objectives of maximum employment and price stability.』

トレンドグロースよりも弱いペースの成長はインフレ圧力を和らげて、我々のマンデートが持続的に到達することを助ける、と思いっきり言ってこのパラを締めています。

ここから言えるのは、「中立金利に向けて金利を挙げて行った効果が徐々に需要面に出てるぜ」って話なので、そういう意味では今回金融政策の効果の度合いについてアセスメントしてるんですから、やはり今後も過激に上げていくっていう感じじゃなくて(ただし物価が全然下がらない中だと話は別の可能性も大あり名古屋は城で持つんですけど)、まあこうやってアセスメントしながら考えていく、ということになると思ったのでありまする。

でまあそれはそれとしまして、ここの最後の部分にあるように、そもそも「ビロートレンドの成長はインフレ圧力を軽減するのに効果がありそうですなあ」って話をしている以上、とんでもないリセッションにでもならん限り利下げって変化は当分ない、というのもこれまた読み取れるわけで、とりあえず来年になったら利下げ開始とか言ってる何とかストは全員廃業して頂きたいもんですわ(いや世界恐慌シナリオでもメインにおいてるなら理にかなってるけどさ)いやマジで。

というのとですね、ここの部分が毎度申し上げてて不思議ちゃんなんですが、この「ファイナンシャルコンディション」ちゃんですが、なんだかんだと直近では長い方の金利はアガランチ会長だし、株価とか猛然とソイヤソイヤと夏祭りになっておられる次第でして、ファイナンシャルコンディションが緩和してねえか足もと???と思う訳でして、そうなると物価下がらんじゃんという話になる。でもってその対策としてワシ思うに償還再投資の実施しないとかそういうチマチマしたランオフじゃなくて、ここはMBSとトレジャリーの売却をおっぱじめれば変に無理な利上げしなくても金融環境の引き締めに「こうかはばつぐんだ」だしFEDのバランスシートの正常化は進むし、一石二鳥以上の効果ありそうなんだが、今回の議事要旨昨日引用した部分でも今日の所でも何故かそういう方面の議論って出てこないのが不思議ちゃん。

ま、あたくし米国債券市場の中の人ではない(ただの外野でヘイヘイパウエルビビってるよーと野次を飛ばすだけ)ので良く分からんのですが、そもそも米国債券市場様の方がちょっと発言出ると直ぐに10毛強10毛甘を連発するトンチキ相場になっていて、実はFEDがセルオフとかやれないようなダメダメマーケットになっているので売れないとか(ボルカールールとかの影響もありそうだし)、そーゆーせいなのでしょうかね、だれか詳しい人教えてちょんまげ。

・・・・・すいません余計な話が長くなりました。


・第3パラ:金利上昇と物価上昇で家計の消費の伸びはスローダウン

家計の話です。

『In their discussion of the household sector, participants commented that they were seeing many signs in the data, and hearing reports from business contacts, of slower growth in consumer spending.』

データでもアネクドータルでも消費者支出の伸びがスローになっているのが見て取れるそうな。

『Although the aggregate balance sheet for the household sector was strong and the unemployment rate was low, consumer sentiment had deteriorated, and households were reportedly becoming more cautious in their expenditure decisions in light of uncertainty about the economic outlook and the reduction in purchasing power induced by price rises, particularly increases in the prices of essentials such as food, housing, and transportation.』

家計のバランスシート状況は良好で失業率も低いものの、家計は先行きの経済見通しの悪化や、生活必需物価をはじめとした物価上昇による可処分所得の低下を受けて消費により慎重になっている。

『Participants also observed that housing activity had weakened notably, reflecting the impact of higher mortgage interest rates and house prices on home affordability.』

さらに住宅市場からの影響もあるよ、って話でモーゲージ市場の金利上昇という要因も出てきましたな。しれっと自画自賛ですね。

『Participants anticipated that this slowdown in housing activity would continue and also expected higher borrowing costs to lead to a slowing in other interest-sensitive household expenditures, such as purchases of durable goods.』

住宅市場のスローダウンが続くので耐久財購入のような金利感応度の高い財の需要も落ちるでしょう。


・第4パラ:企業行動の減速の中にもしらっと金融環境のタイト化の影響というアセスメントがある

4パラは企業。

『With respect to the business sector, participants noted that investment spending had likely declined in the second quarter. In addition, business survey data and information received from contacts indicated that manufacturing orders and production had fallen in some Districts.』

企業の投資行動や製造業受注や生産などに減速の動きが。

『Heightened uncertainty, concerns about inflation, tighter financial conditions, and a cutback in consumer spending had led firms to downgrade economic prospects.』

企業の業況見通しが低下していて、要因として先行きの不透明感、インフレへの懸念、よりタイトになったファイナンシャルコンディション、個人消費が弱まっていること、などがあげられてまして、ここでも金融環境が登場するのがお洒落。

『Some participants noted that their contacts were reporting that businesses were in the process of reevaluating their capital expenditure plans, though a few participants stated that some contacts had reported a degree of short-term momentum in business activity arising from existing orders and from the implementation of expansion plans made before the tightening of financial conditions.』

ここからは地区連銀総裁からのアネクの話ですが、企業によっては投資計画の見直しなどもしていますよ、だそうです。

『A few participants indicated that some business contacts had assessed that demand and supply were beginning to come into better balance. Even so, contacts in many areas continued to report major supply chain disruptions and anticipated that these were likely to continue while also indicating that there were signs of improvement in supply conditions in some areas.』

一部からは需給バランスがより良くなってきたとの意見も出ているようですが、現状でもサプライチェーンボトルネックは相変わらずだし暫くは厳しい状況が続くとの見方が大勢。


・第5パラ:名目お賃金の伸びがピークアウトしてくるんじゃないかというサインが見られてないわけでもないとな

ここから労働市場の話。

『Participants observed that the labor market remained strong, with the unemployment rate very low, job vacancies and quits close to historically high levels, and an elevated rate of nominal wage growth.』

労働市場は相変わらず強いよ、って現状認識の中にしれっと「an elevated rate of nominal wage growth」とあるのがチャーミング。

『Many participants also noted, however, that there were some tentative signs of a softening outlook for the labor market: These signs included increases in weekly initial unemployment insurance claims, reductions in quit rates and vacancies, slower growth in payrolls than earlier in the year, and reports of cutbacks in hiring in some sectors. In addition, although nominal wage growth remained strong according to a wide range of measures, there were some signs of a leveling off or edging down.』

と来た後毎度のハウエバーから始まるのが、「there were some tentative signs of a softening」とみられる傾向がありますよ、ということでいろんな統計数字を挙げているのですが、ここで重要になるのはどう見てもこの最後、「there were some signs of a leveling off or edging down」でして、何がレベリングオフしたりエッジングダウンするサインが見られるかというと、「nominal wage growth」な訳でして、やっぱりここは見てますよねってな話。

『In some Districts, contacts had suggested that labor demand?supply imbalances might be diminishing, with firms being more successful in hiring and retaining workers and under less pressure to raise wages.』

一部では労働需給のひっ迫が緩和されてお賃金上昇プレッシャーも軽減されてきている。

『Some participants noted that the contribution that increases in labor supply could make to reducing labor market imbalances was likely limited, especially as the scope for labor force participation to pick up was constrained by the ongoing movement of the large baby-boom cohort into their retirement years, while others highlighted factors holding down participation that could wane in the future, such as continuing pandemic-related concerns.』

いやいやいやうちの地区まだ全然無理よ労働供給戻らんもん、という話をしておりますな。

『Participants observed that, in part because of tighter financial conditions and an associated moderation in the growth of aggregate demand, growth in employment would likely slow further in the period ahead. They noted that this development would help bring labor demand and supply into better balance, reducing upward pressures on nominal wage growth and aiding the return of inflation to 2 percent.』

で、ここでも金融環境のタイト化によって労働需給バランスの改善が進めば賃金上昇圧力が軽減されて物価2%への道が!って話があってまた金融環境か!!!とばかりに来るわけですよあっはっは。

『Several participants observed that the moderation in labor market conditions might well lag the slowdown in economic activity. Participants remarked that a moderation in labor market conditions would likely involve a decline in the number of job openings as well as a moderate increase in unemployment from the current very low rate. A couple of participants indicated that firms were keen to retain workers-a factor that could limit the increase in layoffs associated with a slowing labor market.』

この辺は今後の労働需給の動きってどうだろうね、って話であります。


・第6パラ:生産と消費のデータVS労働市場

『Participants noted that indicators of spending and production pointed to less underlying strength in economic activity than was suggested by indicators of labor market activity. With employment growth still strong, the weakening in spending data implied unusually large negative readings on labor productivity growth for the year so far.』

生産と消費のデータ弱めで、雇用は強いんだけど労働生産性の下げがアンユージュアルに大きいよ。

『Participants remarked that the strength of the labor market suggested that economic activity may be stronger than implied by the current GDP data, with several participants raising the possibility that the discrepancy might ultimately be resolved by GDP being revised upward. Several participants also observed, however, that the labor market might not be as tight as some indicators suggested, and they noted that data provided by the payroll processor ADP and employment as reported in the household survey both seemed to imply a softer labor market than that suggested by the still-robust growth in payroll employment as reported in the establishment survey.』

てな訳で、労働市場の強さと生産消費などの活動のギャップがあって、労働市場の強さが正しくてGDPは今後上方修正されるんじゃねえの派と、いやそうじゃなくて実際には労働市場が数字ほど強くないんんじゃない派に意見が分かれていますね、面白い。


・第7パラ:物価の話になるとこれがまた「全然下がらんし寧ろ上がってるわヤベーヤベー」になる

ここから暫く物価の話になります。

『Participants observed that inflation remained unacceptably high and was well above the Committee's longer-run goal of 2 percent.』

それは言われんでもわかっておる。

『In light of the high CPI reading for June, participants noted that PCE inflation was likely to have increased further in that month.』

CPIみた感じですと今度出るPCE物価指数も強かろう。

『Participants further observed that inflationary pressures were broad based, a pattern reflected in large one-month increases in the trimmed mean CPI and core CPI measures.』

『Participants remarked that, although recent declines in gasoline prices would likely help produce lower headline inflation rates in the short term, declines in the prices of oil and some other commodities could not be relied on as providing a basis for sustained lower inflation, as these prices could quickly rebound. 』

『Participants also noted that the high cost of living was an especially great burden on low- and middle-income households.』

物価ツヨイツヨイネーって話をしてます。エネ価格下がって一旦その分は落ち着くんだけどまたリバウンドあるで、とか結構な悲観的ですね。あといつもの「生活物資の価格上昇が中低所得者層を直撃」のコメントも。

『Participants agreed that there was little evidence to date that inflation pressures were subsiding.』

インフレ圧力が弱まっているような兆候はthere was little evidence to dateということでまるでないとのご認識。

『They judged that inflation would respond to monetary policy tightening and the associated moderation in economic activity with a delay and would likely stay uncomfortably high for some time.』

金融政策の効果で経済がモデレートしても物価に影響するのにはお時間が掛かるでしょう。

『Participants also observed that in some product categories, the rate of price increase could well pick up further in the short run, with sizable additional increases in residential rental expenses being especially likely.』

一部では「sizable additional increases in residential rental expenses」ということでお家賃などを中心に物凄い勢いで価格が上がっているカテゴリーがあるげな、とひたすらアイヤーアイヤーって話。


・・・・・さっきまでの金融政策効果による需要の適正化とは何だったのか(後から効くって言ってますけど)という感じで物価の話になると急にあばばばばーという話になる。


・第8パラ:外的なインフレファクターも色々とありますよねという話

次は供給制約の話からのインフレ圧力のファクターの話。

『Participants noted that supply bottlenecks were continuing to contribute to price pressures.』

はい。

『There were, however, some signs of gradual improvement in the supply situation-including improved availability of certain key materials, less upward pressure on input prices, and a decline in delivery times. Contacts reported that there were nevertheless substantial continuing challenges. Participants judged that it would take considerable time for supply constraints to be resolved, and a few suggested that full resolution of supply difficulties would take longer than they previously assessed.』

一部に改善の兆しはあるけけど供給制約問題は「take considerable time」だそうです南無阿弥陀仏。

『Several participants stressed that improvements in supply would be helpful but by themselves could not be relied on to resolve the supply and demand imbalances in the economy sufficiently rapidly. Participants emphasized that a slowing in aggregate demand would play an important role in reducing inflation pressures.』

数名の参加者はそもそも論として供給制約が緩和されたからと言っても物価上昇圧力が弱まる訳でもない、なぜなら需要によるインフレ圧力の面が強いから、だそうです。あちゃー。

『They expected that the appropriate firming of monetary policy and an eventual easing of supply and demand imbalances would bring inflation back down to levels consistent with the Committee's longer-run objective and keep longer-term inflation expectations well anchored.』

ということなので金融引き締めによって需要を抑えないといかんよね、となるようです。

『Participants discussed a number of factors likely to be helpful in bringing inflation back down to 2 percent.』

どんな要因があったら2%に物価が向かってくれるかという話がおっぱじまる。

『In addition to the Committee's ongoing policy firming and anchored longer-term inflation expectations, these included competitive pressures restraining price increases, the apparent absence of a wage-price spiral, the tightening of monetary policy abroad, and the impact of the appreciation of the dollar on import prices.』

インフレ期待がアンカーされて賃金スパイラル起きなくて、海外の金融政策が引き締められて、ドル高が輸入物価の押し下げをする、などがヘルプになるよね、って話をしていて、この中でお分かりのように、米国の物価2%のためには「the tightening of monetary policy abroad」も助けになる!と言ってる中で馬鹿緩和を継続している某主要国に関してFEDは何を思うのでしょうか???雑魚だからどうでもよいのかな????????

『However, they continued to view commodity price developments as a potential source of upward pressure on inflation』.

商品市況はインフレ圧力の地雷だよね、とまあ結局インフレ圧力が強いという話が続いたのでした。


・第9パラ:インフレ期待をアンカーし続けるには金融引き締め的なスタンス大事ねーだそうですよ

『Participants noted that expectations of inflation were an important influence on the behavior of actual inflation and stressed that moving to an appropriately restrictive stance of policy was essential for avoiding an unanchoring of inflation expectations.』

インフレ期待の話が来ました。「インフレ期待のアンカーを維持するためにも引き締め的な政策スタンスは大事」と来ておりますね。

『Such an unanchoring would make achieving the Committee's statutory objectives of maximum employment and price stability much more difficult.』

アンカー外れると戻すのが超大変でコストがかかるよ。

『In assessing the current state of inflation expectations, participants noted that recent readings on market-based measures of inflation compensation were consistent with longer-term inflation expectations remaining anchored near 2 percent. They judged that this behavior of longer-term inflation expectations was likely partly due to the actual and expected firming of monetary policy and also likely reflected downward revisions to the growth of aggregate demand expected in coming years. In addition, several participants assessed that the Committee's ongoing monetary policy tightening was helping alleviate concerns among market participants and wage and price setters that elevated inflation would become entrenched.』

マーケットベースのインフレ期待はアンカーされてるし、私らの引き締めファイティング姿勢がアンカーの源にもなっている、という話でして、なんというかヘイヘイピッチャービビってる!!!になるとまずいような気がするんだが大丈夫かFED。

『Several participants observed that recent readings on survey measures of inflation expectations were broadly consistent with the Committee's 2 percent longer-run inflation objective, although a few participants noted that household surveys were indicating increasing divergences in views about the likely longer-run rate of inflation.』

サーベイベースの方も落ち着いているけど、最近の結果を見るとちょっとインフレ期待が上振れてしている人が一部にいる、というばらつき方をしてきている(ので要注意)という指摘があります。


・第10パラ:リスク認識はまあ順当な中身

物価関連の話はさっきの所でおしまい。次はリスク認識。

『In their discussion of risks, participants emphasized that they were highly attentive to inflation risks and were closely monitoring developments regarding both inflation and inflation expectations. Uncertainty about the medium-term course of inflation remained high, and the balance of inflation risks remained skewed to the upside, with several participants highlighting the possibility of further supply shocks arising from commodity markets.』

『Participants saw the risks to the outlook for real GDP growth as primarily being to the downside. These downside risks included the possibility that the tightening in financial conditions would have a larger negative effect on economic activity than anticipated, that there would be further pandemic-related economic disruptions, or that geopolitical and global economic developments would lead to additional adverse economic or financial disturbances.』

リスクは物価にアップサイド、景気にダウンサイド。


・第11パラ:ファイナンシャルスタビリティの話ですが別にバブルがどうのという話ではないしここで唐突にデジタル金融ネタ

『Several of the participants who commented on issues related to financial stability noted that, on balance, asset valuations had eased from elevated levels in recent months.』

資産価格のバリュエーションの話しから来ました。ここ数か月少し下がったよね、だそうです。

『High levels of capital and liquidity overall in the banking system, healthy household balance sheets, and the adoption of stronger mortgage underwriting standards following the Global Financial Crisis were also cited among the factors that fostered financial stability in the current environment.』

ということで、資産価格の状況がバブル云々の話しではない部分が以下になる。

『Several participants noted that financial market liquidity had been low in some areas but that market functioning had, nonetheless, been orderly.』

市場機能の話をしている、そんなに安心できるのかは知らんけど安心してる。

『Several participants emphasized the importance of avoiding complacency when assessing financial vulnerabilities amid ever-changing economic and financial landscapes or the need to look at a broad range of possible outcomes, including scenarios involving elevated inflation and rising interest rates, when assessing financial vulnerabilities and stability.』

と、金融の脆弱性に関する話が来たと思ったら・・・・・・

『Some participants commented on the financial stability challenges posed by digital assets.』

なんとここでデジタルアセットの話が出てきた。

『They noted that these assets, including stablecoins, were subject to vulnerabilities-such as runs, fire sales, and excessive leverage-similar to those associated with more traditional assets.』

おまけにステーブルコインを含めたデジタル資産名指し。

『While the recent turmoil in digital asset markets had not spread to other asset classes, these participants saw digital assets' rising importance and growing interconnectedness with other segments of the financial system as underscoring the need to establish a robust supervisory and regulatory framework for this industry that would appropriately limit potential systemic risks. A few participants mentioned the need to strengthen the oversight and regulation of certain types of nonbank financial institutions.』

そう思うなら禁止しちゃえばいいじゃんと安易に考えるのですがそうじゃなくて規制の枠の中にいれようとしないといかんのではって話ですね。

『Several participants noted that capital at some of the largest banks had declined in recent quarters. These participants emphasized that it was important that the largest banks have strong capital positions and that appropriate settings of regulatory and supervisory tools can help deliver that outcome. A couple of these participants highlighted the potential role that usage of the countercyclical capital buffer could play in this context.』

で最後は金融機関の資本の話で締めてました。









2022/08/18

お題「FOMC議事要旨である(その1)」

という訳でFOMC議事要旨である。

〇7月FOMC議事要旨:どこに読み方の力点置くかで解釈が・・・・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20220727.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
July 26-27, 2022

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, July 26, 2022, at 10:30 a.m. and continued on Wednesday, July 27, 2022, at 9:00 a.m.1

今回は『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』を寝起きで(市場の反応を例によって見ないで)真面目に頭から語順で読んでみたのですが、真面目に頭から語順で読んだのは良いんだがネタにすると絶対時間が無くなるので駄文の方は政策に関わるところから行います(時間余ればさらにやりますけど)。

・・・・・・という訳で経済物価情勢諸々の話の部分も今回は流さずに読んだのですけど、そっち見て思ったネタは明日投下予定ですが、そうは言っても書かないと、と思いまして。

・経済物価情勢の部分は足元の減速を好意的に評価しているのと金融環境のタイト化を評価している

ということでございまして、前半の部分ではやたらめったら「足もとの減速は物価押し下げやタイトすぎる労働市場の緩和に貢献している」というのを入れてきていて、これは(さすがに最近ちょっとそのコメント減って来たけど)米国経済減速を受けて近いうちに政策はまた利下げだぜヒャッハー、というのを打ち消そうとしているな、って思いましたが、これはアタクシがそう思っただけで、読みようによっては「金融政策の効果が出てきて景気が減速して来ていることを評価している」という解釈からの「利上げ終了近いぜヒャッハー」とも読めてしまうのでどっちで反応するのかは市場次第。

あとですね、今回読んでてくどい位に「ファイナンシャルコンディションがタイトニングした効果が」というのが連発されています。これ自体はそらまあそうでしょうな、という話になるのですが、一方で足元においては、アメリカンの皆様が隙あらばゴルディロックスヒャッハーとやりたがり、長期の金利は下がる(大した下がり方ではない、と言ってしまえばそれまでですが)わ株式市場はウホウホ状態だわで、どっからどう見ても7月FOMCを起点にしたらファイナンシャルコンディションってユルユルになってるんじゃネーノと思う訳で、これをどう評価するのかという問題がある。

もしかして資産売却の話しでも出るかなーと思ったら今回バランスシート政策に関する言及は(すくなくともこのコーナーでは)少なく、というか全く出ておらず、金利の話とファイナンシャルコンディションの話はすれどもバランスシート政策の話はナッシングでして、いやまあ確かに7月FOMC時点でその話してないからランオフの倍速を9月からとかノンビリした決定をしてたんだな、とは思ったりするのですが、金融環境の状況変化を踏まえて(その間にインフレが思うように下がっていれば別に無問題扱いでしょうけどインフレが強いままだった時に)バランスシートのこと思い出さんのかなーって感じました。


では金融政策の部分になります。今回は上記URL先の第12パラグラフから16パラグラフになるのは構成上一緒なのですが、分量的に実は前半の経済物価に関する方が(ちゃんと文字数カウントした訳ではなくて毎回見てた時の印象ベースという根拠レスな根拠ですいませんが)重いので、そっちは明日ネタにしますけど、まあ見ておいて吉だとは思います。


・今回の利上げは地区連銀総裁全部も含めて賛成で中立金利に引きあがったとの認識を示す

12パラからが政策に関する議論になります。

『In their consideration of the appropriate stance of monetary policy, participants concurred that the labor market was very tight and that inflation was far above the Committee's 2 percent inflation objective. Participants noted that recent indicators of spending and production had softened, while, by contrast, job gains had been robust and the unemployment rate had remained low.』

ここは声明文の1パラで述べている現状認識の全体観みたいなのと一緒です。経済が若干減速しているけど労働市場がクッソ強いしインフレーションは怪しからん高水準ですよと。

『Against this backdrop, all participants agreed that it was appropriate to raise the target range for the federal funds rate 75 basis points at this meeting and to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that the Committee issued in May.』

こちら決定事項。参加者(投票した人以外の地区連銀総裁を含めて、という意味)が全員75利上げに賛成。

『Participants observed that, following this meeting's policy rate hike, the nominal federal funds rate would be within the range of their estimates of its longer-run neutral level.』

今回の利上げにより中立金利を思しき水準に政策金利が上がったよ!

『Even so, with inflation elevated and expected to remain so over the near term, some participants emphasized that the real federal funds rate would likely still be below shorter-run neutral levels after this meeting's policy rate hike.』

でも現状およびニアータームでみたら物価がクソ高いままとみられるから実質金利でみたらまだまだ低いでしょ。



・「経済データ次第では今後の利上げペースをゆっくり目にしたり利上げを停止することもあるでしょう」

13パラは今後の政策スタンス。

『In discussing potential policy actions at upcoming meetings, participants continued to anticipate that ongoing increases in the target range for the federal funds rate would be appropriate to achieve the Committee's objectives.』

今後も利上げが必要。

『With inflation remaining well above the Committee's objective, participants judged that moving to a restrictive stance of policy was required to meet the Committee's legislative mandate to promote maximum employment and price stability.』

マンデート達成のためには政策金利を引き締め的な水準に引き上げる必要がある。

『Participants concurred that the pace of policy rate increases and the extent of future policy tightening would depend on the implications of incoming information for the economic outlook and risks to the outlook.』

先行きの利上げペースについては状況次第、という書き方だけになっていて、決め打ちを避けようとしています、でまあこの先の記述に市場ちゃんがどの位食いついているのかは(マジでまだ)結果見て無いので分からんのですが、どうだったでしょうかね、

『Participants judged that, as the stance of monetary policy tightened further, it likely would become appropriate at some point to slow the pace of policy rate increases while assessing the effects of cumulative policy adjustments on economic activity and inflation.』

ここは「Participants judged that」から始まっているので大勢の見解となるんで特に食いつきが良さそうな部分でございますが、「金融政策スタンスの調整が累積的に与えてきている経済活動や物価への影響を観測していく中で、将来におけるいずれかのポイントにおいて、政策金利引き上げのペースを緩めることが適切と判断する時が来るかも知れませんな」って書かれています。

ただまあよく考えたらこの2会合75bpで上げてて、問題はこの「the pace of policy rate increases」が幾らなのかよくわからん(25ではさすがになさそうだが75ってのもちょっとやり過ぎ感があるんですよね)ので、これは「利上げペースの減速について強く(大勢の見解だから)示唆したぜヒャッハー」なのか、「今後もまだ75ペースで上げていくという話」なのかが掴みづらい。

『Some participants indicated that, once the policy rate had reached a sufficiently restrictive level, it likely would be appropriate to maintain that level for some time to ensure that inflation was firmly on a path back to 2 percent.』

数名(Some)の参加者は、十分に引き締め的な水準に金利を引き上げれば、その時点で利上げ停止することができるでしょうねーと仰せで、これも金利水準の話は(仮に実際はしてたとしても)乗っけないという技をかましてきましたFOMCのスタッフだか何だかの人たち。まあこれも「ある程度の金利上昇時点で利上げ停止を示唆する意見が出た」と読まれてヒャッハーのネタになっているかどうかはワカランチ会長。


・これまでの政策によってインフレ期待のアンカーと金融環境のタイトニングが発生して効果が出たとのことですが

14パラはこれまでの政策による効果の話。

『Participants concurred that, in expeditiously raising the policy rate, the Committee was acting with resolve to lower inflation to 2 percent and anchor inflation expectations at levels consistent with that longer-run goal.』

物価を2%に下げるのとインフレ期待をマンデートに適正な状態にアンカーさせるのダイジダイジネーという話から始まるこのパラグラフですが、

『Participants noted that the Committee's credibility with regard to bringing inflation back to the 2 percent objective, together with its forceful policy actions and communications, had already contributed to a notable tightening of financial conditions that would likely help reduce inflation pressures by restraining aggregate demand.』

FEDが2%目標に向けて物価を抑制する、という事に関するクレディビリティーによって、既に金融環境が顕著にタイトニングしており、これもアグリゲートディマンドを抑制(という議論は前半の部分でああでもないこうでもないと散々議論されてました)しております!!!!

ということですが、7月FOMC以降金融環境はルーズ化しておるように見えるのが何ともかんとも。

『Participants pointed to some evidence suggesting that policy actions and communications about the future path of the federal funds rate were starting to affect the economy, most visibly in interest-sensitive sectors.』

我々の政策行動とコミュニケーションにより、特に金利感応度の高いセクターにおいて経済への影響(=需要の減退)が見られています!と言ってるんですが7月FOMC以降の金融環境以下同文。

『Participants generally judged that the bulk of the effects on real activity had yet to be felt because of lags associated with the transmission of monetary policy, and that while a moderation in economic growth should support a return of inflation to 2 percent, the effects of policy firming on consumer prices were not yet apparent in the data.』

そんな訳でここまでの利上げがラグを持って経済に影響を与えている!という話をしていますので、まあこれは従来の政策が効いてるよアピールなんですが、政策が効いてるよアピールをしているのでこの先シャカリキになって利上げしてこないぜから隙あらばゴルディロックスの市場はどう反応したんでしょうか(マジでまだ見てない)。

『A number of participants posited that some of the effects of policy actions and communications were showing up more rapidly than had historically been the case, because the expeditious removal of policy accommodation and supporting communications already had led to a significant tightening of financial conditions.』

何人かの参加者は今般の利上げとそれに伴うコミュニケーションにより金融環境が「a significant tightening of financial conditions」となったので、政策効果は今回早くに出てくれたよね、としています。


・物価のリスク認識を踏まえた金融政策運営に関する話だがやっぱり中立まで上げた所でビビり入ってますねー

では15パラ。

『In light of elevated inflation and the upside risks to the outlook for inflation, participants remarked that moving to a restrictive stance of the policy rate in the near term would also be appropriate from a risk-management perspective because it would better position the Committee to raise the policy rate further, to appropriately restrictive levels, if inflation were to run higher than expected.』

物価は既に怪しからん高さな上にアップサイドリスクがある(というのは今日飛ばした前半にある)ので、リスクマネジメントの観点からも政策金利を早急に景気抑制的なレベル(中立金利よりも高くする)準備をしておくのダイジダイジネー。

『Participants judged that a significant risk facing the Committee was that elevated inflation could become entrenched if the public began to question the Committee's resolve to adjust the stance of policy sufficiently. If this risk materialized, it would complicate the task of returning inflation to 2 percent and could raise substantially the economic costs of doing so.』

物価が高とまってしまってFEDがちゃんと物価押し下げますよっていうのに人々が疑念をもったらインフレ期待がアンカーされなくなることになりそれは怪しからん事態になるよ、と威勢の良い事をParticipants judgedですから皆で言ってるんですけど返す刀で・・・・・・・・・・・

『Many participants remarked that, in view of the constantly changing nature of the economic environment and the existence of long and variable lags in monetary policy's effect on the economy, there was also a risk that the Committee could tighten the stance of policy by more than necessary to restore price stability.』

多くのMany participants参加者が「経済環境がホイホイと変化している現在、これまでの政策金利引き上げの影響もラグをもって今後出て来るだろうから、調子にのって政策金利上げてると上げ過ぎになるリスクがあるよね」とヘイヘイピッチャービビってるよビビってるよーが出ております。

まあゆうてこの場合って利上げペースがおっかなびっくりになり、その結果インフレが中々サガランチ会長になる、ということになりますので、これを持って(株は分かるけど)債券がヒャッハーして良いのかというとだいぶ別問題になる希ガス。

『These participants highlighted this risk as underscoring the importance of the Committee's data-dependent approach to judging the pace and magnitude of policy firming over coming quarters.』

なので良くデータを見てやって行きましょう決め打ちイクナイよね、とこの人たちは指摘して最後の16パラ。

・最終パラはイマイチ何のためにあるのか分からんが多分「物価が落ち着かない時に利下げに転じないよ」って宣言ですかね

『Participants reaffirmed their strong commitment to returning inflation to the Committee's 2 percent objective.』

こんなもんはただの呪文みたいなもんなのでどうでもよい、と思ったら以下も呪文でした。

『Participants agreed that a return of inflation to the 2 percent objective was necessary for sustaining a strong labor market. Participants remarked that it would likely take some time for inflation to move down to the Committee's objective.』

言われんでもわかっとるわ。

『Participants added that the course of inflation would be influenced by various nonmonetary factors, including developments associated with Russia's war against Ukraine and with supply chain disruptions.』

物価には金融政策で影響与えられない要因もあるんだよ、とかまあこのパラは基本何でこれ付けたんだというような話が並んでるな。

『Participants recognized that policy firming could slow the pace of economic growth, but they saw the return of inflation to 2 percent as critical to achieving maximum employment on a sustained basis.』

まあここだけは書いてる意味が分かるんですが、景気が多少減速するのは寧ろ物価の安定に重要で、物価の安定こそが経済の安定的成長に重要だからソコントコヨロシク。ということでして、物価が高止まりしたままの場合にはそう安易に利下げ方向にはならんよ、と念を押しただけのパラでした。







2022/08/17

お題「7月積み期間で都銀さんでマイナスチャージとな/国際コンファランスの模様がアップされてたので鑑賞」

この前の謎法案成立ですかそうですか
https://jp.reuters.com/article/usa-congress-inflation-biden-idJPKBN2PM1QO
2022年8月17日5:23 午前
米、インフレ抑制法成立 バイデン氏が署名 4300億ドル規模

先日このニュース出たときも思った訳ですが、インフレ抑制と言いながら財政で補助金だしたら結局それは財政支出拡大なんだからインフレ要因になると思うのでありまして、確かに目先は急に上がったものが下がるからインフレ抑制するかもしれないけど、他の幅広い財やサービスに対する需要にその補助金は化けてしまうから、1年くらいで見た場合には逆にインフレがサガランチ会長になるし、しかも特定品目じゃなくてブロードベースに広がるんじゃなかろうか、という疑問が全然解決できなくて昼寝もできない今日この頃なのですが、真面目にどっかの何とかストさん解説して頂けませんかアタクシ無学なんでさっぱり分からん。

4300億ドルの財政出すんでしょ?????それで何でインフレが抑制されるの?????煽りでも何でもなくマジで分からんわー。

なお、ジャパンの場合は別に「インフレ抑制」じゃなくて「燃料価格高騰で困ったへの補助金」って話だからその点では話の筋自体は通っておるのだが、全体としてインフレ対策みたいな言い方をしているのがアレ(個別価格の上昇対策ならわかるが一般物価の上昇を抑えるのに財政支出するのどう見てもやることが逆だろ)。


〇7月積み期間で都銀さんマイナス金利残高の適用ですかそうですか

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm/
業態別の日銀当座預金残高

いやーこれも出たての頃はかなりシャカリキになって確認してたんですが、当座預金の階層構造がミルフィーユになってしまって最早訳が分からなくなってしまうし、変な特別付利がワサワサと増えてしまった(当初は基礎残高だけでしたからね)ので、もはや何が何だか良く分からんというか、当初のように単純にマクロ加算とマイナス適用の使い方を見れば色々と楽しめた時代を過ぎてしまっておりますのでねー。

んじゃまあ何でこのメモ入れたかというと昨日ベンダーニュースで出てましたのをクリップしておきたいから、というかなりしょうもない理由ですけれども。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-16/RGMXI2DWX2PU01
みずほ銀が9000億円預け入れ、マイナス金利適用の日銀当座預金に
伊藤小巻、浦中大我
2022年8月16日 17:07 JST 更新日時 2022年8月16日 17:40 JST

・足元の短期金融市場の金利動向や見通しを踏まえて活用が適切と判断
・マーケットの環境次第では今後も数兆円規模で預け入れる可能性も

へーへーへーという感じですが、なんかわざわざ名乗り出る事もないのにとか思いながら拝読するのでありますけど、

『みずほフィナンシャルグループ傘下のみずほ銀行が、日本銀行に預けている当座預金のうち、マイナス金利が適用される「政策金利残高」に約9000億円を預け入れたことが16日、分かった。足元の短期金利の水準は日銀が適用するマイナス金利を下回って推移していることから、余剰資金をより効果的に運用するための手段として活用を決めた。』(上記URL先より)

人様の懐具合とか分からんのでアレなのですけれども、短国とかJGBの短いの(って書いたが短国は新発の3Mを入札で買えばまあ流動性あるはずだが、利付の短いのはそもそも一発4桁億円のロットでさばけるような流動性はない、日銀がガメてるから)の金利は一時期マクロ加算と特別付利が増えた時にマイナス10よりも金利上がったりした時期ありましたが、日銀当座預金のボーナスステージが落ちると普通にまたマイナス10より金利下がっちゃいますわな。

でまあクレジットリスクあるもんだったらマイナス10よりもマシな利回りの物件はあるとしましても、じゃあそのためにクレジットリスク取るのかという話はまた別の問題で、リスクキャピタルを配分しますか問題というのは単純に金利だけの話しじゃないのでしょうな。人様の懐具合の話だから知らんけど。


まあこういうムーブも反映してるのかどうかは知らんですけど(確かにアタクシも▲10を超えてマイナスになっている債券とかもはやシランガナの世界になるのでそんなに真面目に見てないんですけど)、短国についてはニーズが色々とあって、日銀の短国買入も足元では結構絞ってはいるのですが、これってマイナス金利政策云々関係なくニーズが昔より高くなっているというイメージがある(個人の感想です)ので、そういうところ暫く前の米国でのビルが足りなくて困るわーみたいなのがあった時(今でも足りんのでしたっけ?)の後を追っかけてきている感があるように思えます。まあとにかくコロナうんぬんで特別付利みたいなのアホみたいに増やしてしかも複雑にしてしまったので、その間見えにくかったニーズがコロナ関連のオペの期落ちで少し見えてきたのではないかという気もしますし、そうなってくるとこの辺の市場の需給分析とかもやる気が起きますので、そろそろおじいちゃんも疎開から帰ってちゃんと研究しておかないと新時代(マイナス金利が解除されるとは言ってない)に対応できなくなるな、とか何とか昨日のニュース見て思いましたよ(ねじり鉢巻き)。



〇虫干しネタと思ったらこの前の金懇コンファランスのまとめレポートが来てたので鑑賞

https://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps22.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2022年収録分

2022-J-8/経済
「中央銀行の迎える新たな局面とフロンティア」2022年国際コンファランスの模様
2022年 8月15日 [PDF 736KB]

ちなみに英文の方では
https://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps22_e.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ(E-Series : 英語版)
2022年収録分

2022-E-14/経済 関根敏隆、フランク・パッカー、米山俊一 個々人のトレンド・インフレ率
2022年 8月15日 [PDF 443KB]

というのが燦然と輝いているのですが、エグゼクティブサマリーを見た瞬間に読むのを諦めましたので、日本語で書いてある方を鑑賞することになりましたが、別にいちゃもんとかじゃなくて色々とおもしろいはなしをしてたんだなーって思いました。

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/22-J-08.pdf
「中央銀行の迎える新たな局面とフロンティア」
2022年国際コンファランスの模様
Discussion Paper No. 2022-J-8

『1. はじめに』から参りますが。

『日本銀行金融研究所は、5 月 25〜27 日に 2022 年国際コンファランスをオンライン形式で開催した 1。1983 年の初回以降、今年で 27 回目の開催となった本コンファランスでは、「中央銀行の迎える新たな局面とフロンティア(New Dimensions and Frontiers in Central Banking)」をテーマに設定し、幅広いトピックについて議論を行った。』

という話だし、5月の話であれば、しばらく前に言われていた「フィリップスカーブは死んだ」みたいな話とか「高圧経済ヒャッホー」みたいな話とか、そういうのに変化が起こる構造的な話でもしてるのかと思ったらお前らわざわざ世界から人集めて何の話してんねんという感ががががが。

『黒田東彦(日本銀行)の開会挨拶に続き、』

まあこれはさておき、

『ケネス・S・ロゴフ教授(ハーバード大学)が中央銀行の独立性が直面する諸問題を取り上げた前川講演を、』

「私の金融政策」とかプライムミニスターが言ってしまうような事案のあった国でこんなこと言うとはオッシャレーなのですが、前川講演英文版ならあるんだけどめんどいからよんでない。アタクシの趣味嗜好としてこういうおっちゃんの講演は生理的にイマイチでして、ドナルドコーンだのアランブラインダーだのマーヴィンキングだの、そういう方面の方の講演だと頑張って読もうと思う、という自分で作るエコーチェンバーみたいな趣味があるせいなんですけど。

『金融研究所海外顧問のカール・E・ウォルシュ(カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校)が高進するインフレ問題について基調講演を行った。』

キタコレ!

『論文報告セッションでは、ヘズス・フェルナンデズ=ヴィラヴェルデ(ペンシルバニア大学)、アレクサンダー・ルートヴィヒ(ゲーテ大学フランクフルト校)、池田大輔(日本銀行)、ルカ・フォルナーロ(CREI 兼ポンペウ・ファブラ大)が、経済的な格差、気候変動、デジタル通貨、経済のオートメーション化の 4 テーマを中央銀行の視点から検討した研究報告と討議を行った。』

何ちゅうかこの目の前で火事が起きてるのに「戸締り用心火の用心」とか言いながら練り歩いている感が・・・・・・

『若田部昌澄(日本銀行)を座長とする政策パネル討論では、ピエール=オリヴィエ・グランシャ(国際通貨基金)、ジェームス・ブラード(セントルイス連邦準備銀行)、フィリップ・R・レーン(欧州中央銀行)、ベンジャミン・E・ジョクノ(フィリピン中央銀行)がパネリストを務め、中央銀行が直面する課題を議論した。』

モデレートできたんかい。

『最後に、金融研究所海外顧問のアタナシオス・オルファニデス(マサチューセッツ工科大学)が全体総括を行った。 』

という式次第だったようです。


でもって黒ちゃんの挨拶は以前ネタにしたので飛ばして前川講演の紹介部分から。


・ロゴフ大先生の前川講演のご紹介部分だけでも満腹できる件について

『3. 前川講演:Institutional Innovation and Central Bank Independence 2.0(制度革新と中央銀行の独立性 2.0)』

「私の金融政策」とか「日銀は政府の子会社」とかプライムミニスターまたはエックスプライムミニスター(まあ同一人物ですが)が仰せになる国で中央銀行の独立性についての話をするとか、こりゃまた随分と空気を読まないおっちゃんですな、と思ったら・・・・・・・・・・・・

『ロゴフは、中央銀行の独立性は現代のインフレ・ターゲットを支える基盤となっている点を指摘し、』

最初から笑わせんな。

『近年、名目金利のゼロ制約により、その独立性が困難に直面していると論じた 3。』

ここの脚注にありますが、この辺のお話は実は英文テキストの方は既にでていまして、
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/22-E-09.pdf
Institutional Innovation and Central Bank Independence 2.0
Kenneth S. Rogoff
Discussion Paper No. 2022-E-9

なのですが、英文なので読んでなかったすいませんすいません。

『また、金融政策の有効性が低下し、中央銀行に対するポリティカル・エコノミー的な圧力が著しく高まっていると指摘した。』

>金融政策の有効性が低下し
>金融政策の有効性が低下し
>金融政策の有効性が低下し

中銀主催のコンファランスで言うとは空気読んでねーw

『これは、金融危機以降、財政政策がマクロ経済安定化の負担をはるかに多く担うようになったことが要因であると述べた。』

>金融危機以降、財政政策がマクロ経済安定化の負担をはるかに多く担うようになったことが要因である
>金融危機以降、財政政策がマクロ経済安定化の負担をはるかに多く担うようになったことが要因である
>金融危機以降、財政政策がマクロ経済安定化の負担をはるかに多く担うようになったことが要因である

えーっと、リーマンショック以降、市場安定化とか何とか言いながら中央銀行が財政っぽい事にドンドン踏み出していた時分には「財政政策は機動的に対処できない(=民主主義国家であれば財政は立法府の承認が必要だから)ので金融政策の領域が広がった」というような話で以前は持ち切りで、ロゴフはんがこの頃何を仰せになっていたのかとか全然覚えて無いのでまあ別に過去との整合性とかはいいんですけど、この論法ってつい暫く前までの「金融政策の役割が大きくなった」みたいな話とベクトルが全然チャウヤン、と思いまして、いやーいつの間に学者の世界ではそういう話になってるんだよと結構な謎。

『次に、世界的な低金利環境において金融政策の有効性を回復するためには、政策面でのイノベーションが必要であると指摘した。』

どんなイノベーションなのかと思ったら・・・・・・・・・・

『特に、マイナス金利政策を深掘りし有効に機能させるための法制度改革が最も効果的であると主張した。』

それを今頃いうかね???????と思ったがこの先が更にアレ。

『論点となるのは、保険会社や年金基金、銀行などの金融機関がマイナス金利下で有利子資産から現金へ資産を入れ替えるという裁定行動を制約することだと主張した。』

まあこの時点で碌な事を言わないのが想定されますが・・・・・・・・・

『この課題に対して、@紙幣を段階的に廃止する、A現金と電子通貨の交換比率を設定し、現金の価値がマイナス金利と整合的なレートで減価するように交換比率をコントロールする、という 2 つのアプローチを提案した。』

ばーーーーーーーーーーっかじゃねえのおおおおおおおおおお??????????????

いやあのですね、「紙幣を廃止します、理由はマイナス金利政策を実施して、しかもそのマイナス幅を大きくできるようにしたいからです」とか「CBDCを発行します、理由はマイナス金利政策を実施して、しかも以下同文」って銘打った政策が実際に法整備出来る訳ねえだろそんなの政治的に通る訳ねえだろ実現性考えろ馬鹿、って話だし、こういうオッチョコチョイの頭でっかち学者が「マイナス金利政策の為にもCBDC」とか言い出すと、CBDC導入そのものが「これは実は国家による合法的な収奪の準備」って受け止められることになって、寧ろデジタル化の阻害要因になるだろアホなんじゃないの?????

とまあ毎度このCBDCとか紙幣廃止の話をマイナス金利政策と関連して説明する脳天気学者の発言を見るたびに思うのですけど、いや真面目な話どこの世界に「マイナス金利政策をバンバンやれるようにしたいからCBDC入れましょう」って言ってOKする国民がいるんだよと小一時間問い詰めたいんですが。


更に話は続く。

『中央銀行の独立性を脅かす他の要因については、まず、近年のグローバリゼーションの後退を取り上げ、』

????????

『これまではグローバリゼーションが価格変動の伸縮性を高め、企業の独占力を低下させてきたため、中央銀行にとってインフレのコントロールが容易になる手助けとなっていたことを指摘した。』

何じゃその理屈さっぱり意味が分からん。グローバリゼーションによって価格が構造的に上がりにくくなった、という話は特についこの前(具体的にはFEDが高圧経済とか言ってた時分)に言われてたんだが。

『一方で、現在進行しているグローバル化の反転の動きは、今後、中央銀行による低インフレの実現をより困難にしていくだろうとの見立てを示した。』

?????????????インフレを下げる方はそんなに難しくないけど、デフレから脱却するのが難しい、って話じゃなかったの????????

『次に、デジタル通貨や暗号通貨の台頭は、中央銀行の政策手段の有効性を脅かすものであり、それえゆえ中央銀行の独立性に対するより大きなチャレンジになると強調した。』

そんなもん規制すりゃ良いだけやん。

『中央銀行の独立性は新たな時代に入ったとして、中央銀行が直面している政治的、技術的な環境変化に対応するためには、中央銀行もまた自らを革新していく必要があると述べた。』

だそうですが、いやまあ英文の方を真面目に読んだ方が良いのかもしれんが、なんか全体的にお前は何を言ってるんだ、などと斯界の大学者様にどっかの市井の無学なアタクシが申し上げるのも無礼千万なのですが、なんかよーわからん前川講演なのでありました。


・・・・・などとボロカス言いましたが、その次の部分を見てちょっとだけロゴフの言いたいことは分かったのだが。

『フロアとの質疑では、植田和男(共立女子大学兼東京大学)が、連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board、以下 Fed)の利上げ開始は、望ましい時期より少し遅れたのではないかと質問した。』

『ロゴフは、Fed を含む中央銀行は、利上げが景気後退をもたらし、その結果、再び金利のゼロ制約に直面するようなことになると、経済活動を浮揚させる十分な手段を持っていないため、利上げを躊躇したのかもしれないと返答した。金利引き上げを怖れずにすむよう、なんらかの政策手段を持つことが重要であると述べた。』

要するに「マイナス金利を大きく深掘りできるようになれば利上げもしやすくなる(あちゃーやっちまったと思ったらマイナス金利にすればよいので)」という主張でして、プラス金利とマイナス金利の効果をゼロ金利を境に非対称にならないようにするために現金廃止だのなんだのという話をしている、ということなのですが、現金通貨には現金通貨の社会的効用があるんだし、大体からして如何に現金無くして技術的にそうなっても、実際問題として名目金利のマイナス制約というか非対称って残るようにしか思えないんですけどね、直感的に思ってるだけですけど。


でまあ謎の質疑応答が続いていますが、最後の質疑応答には若干目を疑ったんですが。

『最後に、若田部昌澄は、究極的にはインフレ率は中央銀行がコントロールできるとしても、地政学的状況やグローバリゼーションの反転によって、中央銀行を取り巻く環境はデフレ的なものからインフレ的なものに向かっており、中央銀行はこれからの高インフレ時代に備えるべきなのかと質した。』

>中央銀行を取り巻く環境はデフレ的なものからインフレ的なものに向かっており、
>中央銀行はこれからの高インフレ時代に備えるべきなのかと質した

ちょwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwwwじゃあお前ら何で毎日指値オペだの10年金利0.25%絶対死守とかやってるんだよwwwwwww

『ロゴフはこれに同意したうえで、グローバリゼーションの反転により、インフレの抑制は簡単にはいかないかもしれないと指摘した。』

まあこのロゴフさんの回答も結構笑ってしまって、だったらマイナス金利政策の大いなる深掘りの為の整備が必要って何なんだよっておもいました、まる。




・ウォルシュの話の方がたぶんマシなんですよね

ちょっと時間がアレに成って来たけど明日はミニッツなのでもうちょっとだけ成敗。

『4. 基調講演:Inflation Surges and Monetary Policy(インフレの高進と金融政策)』

サラサラと引用だけしますね。

『ウォルシュは、主要国の中央銀行は、現在、インフレ高進への対応に遅れをとっており、1960〜70 年代の大インフレ期(Great Inflation)から得られた教訓を無視しているようだと述べた 4。』

これわwwwww

脚注にあるのは
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/22-E-12.html
Inflation Surges and Monetary Policy
Carl E. Walsh

本文は
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/22-E-12.pdf
Inflation Surges and Monetary Policy
Carl E. Walsh
Discussion Paper No. 2022-E-12

です。

『連邦公開市場委員会(Federal Open Market Committee: FOMC)の政策金利予測が、FOMC の経済予測とテイラー・ルールに基づいて計算される金利に比べて低すぎることを示し、最近の高インフレに対する Fed の政策対応の緩慢さを指摘した。』

都合のいい時に登場するテイラールールw

『人々が将来的に政策対応が行われると考え、長期期待インフレ率が Fed の目標にアンカーされている場合には、政策対応の遅れがもたらすコストはそれほど大きくないことをモデル分析で示したうえで、継続するインフレに対して適合的な期待形成が行われ、長期のインフレ予想のアンカーが外れてしまう場合には、強い引き締め政策が必要となり経済の変動を増大させてしまうことを強調した。』

はい。

『次に、1960〜70 年代の高インフレの 2 つの大きな背景を振り返り、現在のインフレ高進への含意を述べた。』

『1 つ目は外生的ショックの持続性を過小評価した点である。』

日銀wwwwwwwwwwwww

『不確実性があるもとでの政策に関する既存研究によれば、政策当局は外生的ショックが持続的であると考え、行動すべきところを、中央銀行はまたしても現在のインフレ高進を一時的なショックと見なしてしまったと主張した。』

どう見ても今の日銀です本当にありがとうございました。

『2 つ目の背景は政治的圧力である。』

にwwwwちwwwwぎwwwwんwwww

『広範で包括的な最大雇用を目標とし、柔軟な平均インフレ目標政策(Average Inflation Targeting: AIT)を用いるという最近の Fed の政策枠組みの変更は、透明性と説明責任を損ねてしまうことになってしまい、中央銀行の独立性に対して政治的圧力がかかる隙をもたらしてしまっていると主張した。』

物価が上がらなくなってきたら急に雇用雇用言い出した置物一派という人たちが居ましたな。

『Fed は 2021 年 12 月以降一貫して利上げを示唆しており、2%のインフレ目標も依然としてある程度は信頼されているかもしれないため、フォワード・ガイダンス効果は有効であり、今回の政策対応の遅れはさほど問題にはならなさそうであると前置きしたうえで、インフレ率がすぐに目標に戻らないようであれば、低インフレ環境を再度確立するために大きなコストを伴う景気後退が必要になるかもしれないと指摘した。』

いやー日本でも起きえるんですけどそういう議論をするだけで言霊によって祟りにあう位の勢いの黒田日銀聞いてます〜、って感じですな。

以下質疑応答があったり、その先の話とかもあるのですが、せっかくこういういい話を金研の国際コンファランスでやっているというのに、全く政策のスタンスに反映されてないとか、何のためにコンファランスやってるんだよと小一時間問い詰めたい気持ちになりました、というのが今日の落ちです落ちて無くてすいません。






2022/08/16

お題「夏休み超虫干し企画で7月展望レポートの物価見通しのガバガバロジックを鑑賞しながら物価上昇来たらどうすんだと思う」

NHKに晒し物にされるとはwww
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220815/k10013772571000.html
杉田総務政務官 “旧統一教会の信者だとは知らなかった”
2022年8月15日 20時52分

『杉田水脈総務政務官は、落選中の平成28年に、みずからのツイッターに「旧統一教会から支援や協力を得ることは何の問題もない」という趣旨の投稿をしていました。杉田政務官は15日開かれた就任会見で「政務官としての会見の場なので、落選中に行った個人的な投稿へのコメントは差し控えるが、旧統一教会ということを知ったうえで関係を持ったことは一切ない」と述べました。』

『かつて月刊誌で、LGBTと呼ばれる性的マイノリティーの人たちを「『生産性』がない」などと指摘したことについて「過去に多様性を否定したこともなく、性的マイノリティーの方を差別したこともない。岸田政権が目指す方向性と何ひとつずれている部分はない」と述べました。』(以上上記URL先より)

・・・・・・・岸田さん晒し物にして潰すつもりでわざと任命してるんじゃねえか????(比例の中国ブロックに安倍ちゃんが押し込んだ人だったハズだしこの人)


〇唐突ですが夏休み虫干し企画シリーズ「今更確認する7月展望レポート基本的見解」をお送りします(すいませんすいません)

もしかしたらFOMC議事要旨が何かのネタになるかもしれませんが、この調子だとジャクソンホールまで何も無いし、うっかりするとジャクソンホールでも何もない可能性もあるので、色々とかっ飛ばしていたものを虫干し企画。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2207a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2204a.pdf(前回)

鏡の部分だけ逐語比較したんですが、アタクシの方が中々休日にまとまった時間が取れないまま放置プレイをしていたら気が付けば雨宮さんが展望レポートベースの講演をやってしまったので更にネタにするタイミングを逸したというものですすいませんすいません。


・とは言いましても日銀にとって困ることが起きるとするとポイントは物価になるのですよね

あの後に出た雨宮さんの金懇然り、総裁会見での説明然りなのですが、とにかく「賃金が上がらないとダメです」の連呼をしておりまして、これは何でそういう説明をしているのかと言えば、そらまあ純粋に賃金上がらんと実質所得に下押し圧力がかかるので好循環が回らない、というピュアな理由がある訳ですが、心の濁ったアタクシに言わせますと日本の労働慣行上、常勤労働者の賃金改定って普通は年度の頭(から3か月以内程度)に実施されますので、つまりは「賃金の上昇も物価2%の後押しをしている」というような事を黒田さんの在任中は言わなくて済む、という逃げ切りの為の屁理屈を弄しているだけ、という訳であります。

さはさりながらですね、日銀ここから追い込まれるのって、もう直球ど真ん中で物価が上昇することによって「一時的」との言い訳がドンドン苦しくなって来る場合でございまして、この時に何でこんな極端な金融政策をしているのか??という話になるならまだマシですが、もっと直球に物価上昇に対して何もしないという批判にさらされたら日銀組織そのものに累がおよぶ話になる(発券とか決済とかそういう金融政策じゃない本来事業は別だけど)のだと思いますので、まあせいぜい物価ちゃんには頑張って頂きたい(なんのこっちゃ)でありますがそれは兎も角。



・そもそも基本的な見通しの文言と展望レポートの見通し数値に整合性が取れない件について前回と比較すると分かりやすい

『(2)物価の中心的な見通し』から鑑賞しましょう。

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(今回)

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する 2022 年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』(前回4月)

食料品と耐久財の価格上昇というのは、これ要するに円安ファクターだし、そもそも先般来幣駄文で申しあげておりますように、直近の企業物価指数は明らかに円安によって引っ張られていますし、まあ為替の方はとりあえず130円台で止まってはいるものの、こちらはずーっと影響してくる話でありますわな。

4月の説明ではエネ価格上昇で一時的に上がるけどエネ価格そのうち下がるから下がる、という意味では一応筋の通った説明になっていたのですが、今回の説明では上がって下がるのはエネ価格、というのは同じなんですが、その間に今申し上げました「食料品、耐久財などの価格上昇」というのが加わっている訳でして、こっちは別に下がる訳じゃないんだかrあ、本来はプラス幅の縮小が小さくならんとおかしい。

然るに、今回の展望レポートでの物価見通しを中央値で見ると、

22年度平均:+2.3%(←+1.9%)
23年度平均:+1.4%(←+1.1%)

でして、実は22年度→23年度の落ち幅が今回の方が大きい、という謎現象が発生しておりまして、まあこれで4月→7月の間に国際的なエネルギー価格が上昇してるんだったら話は分かるんですが、原油価格とか寧ろ下がってねえか位の感じになっていた(7月時点で既に)訳ですし、しかも食料品と耐久財については上昇幅を縮小するとも何とも書いてないのに何でこんなに劇的に落ちることになっているのか訳分らんですな。


『この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(今回)

『この間、変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率・賃金上昇率も高まっていくもとで、食料品を中心とした原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(前回4月)

でもってコアコアですけど、前回と違うのは「食料品を中心とした原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって」の文言が無くなっている事ですが、これって前段の食料品価格に反映されている話だし、現実問題として価格転嫁の動きが7月にかけて結構進んだ(今は夏休みだから落ち着いてるけど)のですから、そういう意味ではコアコアの推移って4月に考えていた事と同じように進んでいる筈なのに、

22年度平均:+1.3%(←+0.9%)
23年度平均:+1.4%(←+1.2%)

4月は22年度→23年度が+0.3%上がるという話だったのが、状況が上振れしていて、しかも前回の見通しに記載されていた「食料品の価格転嫁」が起きているのにコアコアの上昇角度が何故か弱くなる、って何をどうするとそういう判じ物になるのか、はっきり言ってシナリオと見通し数字に整合性が取れないんですよね。


・需給ギャップってそもそも幅のある概念だと思うのですけどね

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、小幅のマイナスとなっている。』(今回)

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、足もとではマイナス圏で推移しているが』(前回4月)

よく日銀が政策を変更しない理由にこの「需給ギャップは依然としてマイナス」ってのを使うのですが、そもそも需給ギャップってリアルタイムでピンポイントで分かるもんじゃなくて、経済のその後の結果を見たら後付けで分かるものであるはずだし、そういう点ではFEDとかだって需給ギャップを読み間違えた上に、結果から後付けでレビューしないで自分らの判断「これは一時的」に固執したからインフレ高騰を招いたんじゃネーノ、とか何とか思う訳ですな。

でまあそう考えた時に、需給ギャップを決め打ちして話を進めていく今の文脈ってこれで良いのか????というのもまたある訳でして、だいたいからして内閣府と日銀の推計も結構差がありますし(まあどっちもマイナスだって言ってるんだったからマイナスなんでしょうけど)、なんちゅうかこういう微妙な場面で需給ギャップという鉛筆舐め舐め成分の入る話から見通しを組み立てていくのってどうなのかなと無学なんで思ってしまいますです、はい。


・「値上げ許容度」の文言をひっそりと削除wwwwwwwwwwwwww

その続き。

『先行きの需給ギャップは、わが国経済が潜在成長率を上回る成長経路をたどるもとで、2022 年度後半頃にはプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大が続くと予想される。こうしたもとで、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み、賃金の上昇圧力は次第に強まっていくと考えられる。このことは、コスト面では人件費の上昇圧力をもたらすとともに、家計の購買力の増加に寄与するとみられる。』(今回)

『先行きは、わが国経済が潜在成長率を上回る成長経路をたどるもとで、2022年度後半頃には明確なプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大が続くと予想される。こうしたもとで、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み、賃金の上昇圧力は次第に強まっていくと考えられる。このことは、家計の値上げ許容度の改善に寄与するとともに、財・サービス需給の引き締まりと相俟って、物価上昇率の高まりにもつながっていくとみられる。』(前回4月)

今回は「財・サービス需給の引き締まりと相俟って」が抜けていて、一方で賃金の上昇に対して「コスト面では人件費の上昇圧力をもたらすとともに」とというのが入る、という何が何だか良く分からない変更が起きていますけれども、一番笑ったのは最後の部分で、「このこと(賃金上昇圧力の強まり)は、家計の値上げ許容度の改善に寄与するとともに」というのが「(賃金上昇圧力の高まりは)家計の購買力の増加に寄与するとみられる」と値上げ許容度という例の爆発炎上案件文言(なるほどここにあったのかw)をしれっと削除したのがチャーミングというものですwwwwwwww

まあそれはいいんですけど、ここの説明前回も含めてイマイチ謎なのは「女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み」というのはわかるし、その結果「賃金の上昇圧力は次第に強まっていくと考えられる。」ってのも分かるんですけど、その結果「家計の購買力の増加(値上げ許容度の改善、でも良いけど)」になるというのが、話としては分かるんだが、元々置物一派の皆様が説明していた話の方が話としては分かるんですよね。

つまりですね、リンク先が会員記事になっちゃったから引用できないけど、浜田宏一大先生などが言ってたのは「物価が上がる中でも当初は賃金があまり上がらない方が良くて、それによって企業の実質的な雇用コストが下がって、その結果雇用の数自体が増加するので、雇用の数自体が増加して労働者の総所得が増えることになり、それが景気を支えるから、その後賃金にも上昇圧力が掛かる」って説明をしてたわけですよ。でまあそっちの方が話としては分かる(ただし物価上昇から所得上昇までのラグに耐えられなかったから2014年の物価上昇は一時的に終わったんですが)のでして、そもそも労働参加ペースが高まった方が家計単位で見たら所得の伸びデカくね???って思ってしまうんだが何かここも引っ掛かる理屈だなーと思ってみている。

まあ何でこう言ってるかと言えば、「賃金が上がらないと物価が安定的に上がらないので政策変更をしません」という政策先にあり気で理屈付けるからであって、以前QQEに対する批判の中で「全然給料が上がらんじゃん」って言われてた時は「雇用が拡大しているので全体の労働者の総所得は増えているから効果が出ているじゃないですか」って日銀は説明していた訳で、まあご都合主義なだーって思ってしまいます。


・中長期的な予想物価の部分に日銀文学の粋を感じた件

『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、短期と比べるとペースは緩やかながら上昇している。短観の販売価格判断DIは、このところ、はっきりと上昇している。短観における企業の物価全般の見通しも、短期だけでなく中長期も含め、高水準となっている。』(今回)

『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、短期と比べるとペースは緩やかながら上昇している。企業の価格設定スタンスは、感染対策によるコスト上昇圧力が残っていることや最近の資源価格上昇を背景に積極化しており、先行き、財を中心に、コスト転嫁と価格引き上げの動きが拡がっていくとみられる。』(前回4月)

物価の現状認識のところはすっ飛ばしましたが、予想物価上昇率に関しては4月が「予想物価上昇率は、短期を中心に上昇している。」で今回が「予想物価上昇率は上昇している。」と短期だけではなく中長期も上昇している、という認識になっていますが、今回の展望レポートのイカサマ臭いところは、そうやって中長期についても予想物価上昇率の現状認識を変えているのにも関わらず、ここでは「短期と比べるとペースは緩やかながら上昇している」と同じ文言にしている所ですね。

これはどういうことかと言いますと、「中長期の予想物価上昇率が前回対比で上がってるのか上がってないのかを書かないようにして誤魔化している」という事でありまして、「短期と比べると」という文言を使えば、前回対比の予想物価上昇率の変化に対して言及しなくて済む訳ですよ。だって前回対比で短期の予想物価上昇率がどの程度上がったのは一言も書いてない(全体のはその前の現状認識部分で上昇と書いてるから上昇なんですけど)のですから、中長期の予想物価上昇率の水準変化について何ら言及することもなく、しかも短期に対して中長期の予想物価上昇率はそこまで高くないというのは明らかなのでその点でも別に上記の表現に嘘偽りは無いのですが、中長期の予想物価上昇率が上がっている筈なのに、それを一言も触れないで、しかも嘘は言っていない、という日銀文学の粋を凝縮したようなこの文章の作り、ヲチャーとしましては敬服せざるを得ません。いやマジで感動した。

何で書かないかと言えば話は簡単で、中長期の予想物価上昇率が上昇しているんだったら政策の一部修正をしないと緩和のやり過ぎ現象が生じるんじゃないですか(=YCCは経済物価金融情勢を鑑みた際に、金利を引き下げすぎるのも良くない、という屁理屈からスタートしているから)って突っ込まれたくないからに決まっているのですが、そんな為にこのような日銀文学の粋を極めるとか才能の無駄遣いにも程があるwwwww


・予想物価上昇率のファクターに適合的期待を入れてるのに何で上昇ペースが鈍化するんでちゅかねえ

『適合的予想形成の強いわが国では、現実の物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらし、企業の価格・賃金設定行動や労使間の賃金交渉の変化を通じて、賃金の上昇を伴う形で、物価の持続的な上昇につながっていくと考えられる。』(今回)

『こうした現実の物価上昇率の高まりは、適合的期待形成を通じて、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率のさらなる上昇につながり、ひいては、サービスも含めた価格上昇の拡がりと賃金上昇率の高まりをもたらすと考えられる。』(前回4月)

まあそれはいいんですけど、だったら何で足元の物価見通しをコアコアで上げてるのに、来年度以降のコアコアの伸びの勢いが前回対比鈍化するのか、全く整合性が取れないのですが、これもまたお察しの理由なので、実際にはこの適合的期待形成って文言外したいんでしょうけれども、なにせ今までQQEやってインフレ期待に働きかける、ってやってたことが空振りした言い訳に適合的期待形成をあれだけ散々使ったので、さすがに急にこれをひっこめるわけにはいかないのと、これ引っ込めると展望レポート基本的見解のこの辺りの文章構成が目立つ変わり方をしてしまいますので、引っ込める訳にもいかない(コロナのドサクサで削るまで完全に空文化しているのに削らなかった「80兆円」みたいなもんですなwwwwww)というところなのではないでしょうか。



・・・・・とまあそういう訳で夏休み企画をお送りしました(いやまあアタクシは夏休みじゃないんですけど)が、物価に関するロジック構成が相当にガバガバというか、あっちとこっちで整合性が取れないものになっておりまして、まあ物価が上がらなきゃ日銀セーフ(などと言いますと田村審議委員が激怒しそうですけど!)になるのですが、それこそ年末にコア3%コアコア2%とかになった時に、今のようなガバガバロジックのままで物価の話ししてたらそもそも説明が破綻すると思うので、面白いから物価上がれーと念じつつ(生活者的には困るんだが日銀の馬鹿政策が解除されれば私の仕事が改善するはずだ!!!!1)暑い夏を過ごしたいと思います。







2022/08/15

お題「引き続きFED高官発言の確認ですがタカ派ですらインフレファイトポーズがポーズっぽくなっている件について」

どうもこの方にはアレなアレしか感じないんですよね・・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220814/k10013769811000.html
山際経済再生相 “行動制限行わず 感染の収束に全力挙げる”
2022年8月14日 11時49分

『この中で、新型コロナ対策を担当する山際経済再生担当大臣は、新型コロナの感染拡大が続く中での行動制限の扱いについて、「政府としての方針を変えるつもりはなく、コロナ対策は行いながらも、社会経済活動を続けられる環境を整備する努力を続ける。感染の第7波の波がまだ収まっていない状況にあるので、この大波がきちんと収まる
ように最大限努力する」と述べました。』(上記URL先より)

・・・・・・何に全力を挙げるのかさっぱり分からんのだが。簡易検査キットと重症化しないようにする処方薬をバンバン生産する体制が整えて普通の流行性感冒扱いにするというならともかくなんだが「大波が収まるように」って収まって喜んでるとまた同じことの繰り返しじゃないですかねえ(個人の感想です)。


〇インフレとかインフレ期待とかでどこをどう見りゃよいのかというのがフワフワしているんですよね

https://jp.reuters.com/article/usa-congress-inflation-idJPKBN2PI1T0
2022年8月13日6:59 午前
米下院、「インフレ抑制法案」を可決 バイデン氏署名で成立へ

『[ワシントン 12日 ロイター] - 米下院は12日、4300億ドル規模の「インフレ抑制法案」を可決した。上院でも7日に可決されており、バイデン大統領の署名を経て近く成立する。11月8日の中間選挙を前にバイデン大統領への追い風となる。賛成220、反対207で可決された。気候変動対策、薬価引き下げ、一部の法人税引き上げなどが盛り込まれている。』(上記URL先より)

何か良く分からんのだが薬価引き下げの為に財政支出拡大したらそれインフレ要因にならんか(薬価が下がった分他の消費に金が回るから)という気がするんだが、まあ法案の内容知らんから良く分からんですけど。とにかくこんなのがぶっこまれる以上、中々微温的な対応が難しいところじゃないかと思うのですが・・・・・・・・・・


金曜の米国債券市場のロイターさんによる講釈
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2ZO3IQ
2022年8月13日6:08 午前
米金融・債券市場=長期債利回り低下、インフレ鈍化で利上げ減速か注目

『[ニューヨーク 12日 ロイター] - 米金融・債券市場では薄商いのなか、長期債利回りが低下した。市場ではインフレ鈍化が利上げペースの減速につながるか見極めようとする動きが続いている。』(上記URL先より、以下同様)

という話なんですが、利上げが効いてインフレ鈍化したというよりは先日のCPIって単にガソリン様の前月比下落が効いただけなんでネーノという気がするんで、何ちゅうかもう米国市場もノリで0.50だ0.75だ1.00だとかやってるから訳分らん。

『今週発表の7月の卸売物価指数(PPI)と消費者物価指数(CPI)が共に低下したことで、物価上昇の最悪期は脱した可能性があるとの見方が台頭。[nL4N2ZM3N4]ジャニー・モンゴメリー・スコット(フィラデルフィア)のチーフ債券ストラテジスト、ガイ・レバス氏は「実際に月ごとのインフレ率が安定すれば、必要な利上げの回数は減る」と指摘。ただ「利上げペースの減速につながるようなインフレ指標が少なくともあと1、2回発表されるまで、懐疑的な見方を維持する」と述べた。』

寧ろ利上げを慎重にやっていくと景気抑制効果が強くならない→政策金利は中立以上の状態が長続きする、という図表になってしまう気もするので何が何やらなのですが、インフレの水準を完全に無視するとグリンスパン時代の「コナンドラム」みたいな相場になってしまっていますわな。

『市場では9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で決定される利上げ幅が0.75%ポイントになるのか、0.50%ポイントになるのか見極めようとする動きが続いている。金利先物市場が織り込む確率は、0.50%ポイントが58%なのに対し、0.75%ポイントが42%。』

政治的に許されるなら、本当は25bpをあと1年半くらいチンタラ上げていってインフレがそのうち落ち着いてくれるのを待った方が安全運転っぽいのだが、これもアメリカンな人々に聞かないと何とも何ですけど、問題になるのは多分インフレ期待であって、それもBEIとかそういう市場の話しじゃなくて、世の中の「ノルム」がどうなっちゃっているのかという所ですが、こればっかりは外野だわアメリカンの友達とかいないわのドメドメ陰キャのアタクシには分かり兼ねる話なのですけど、マーケットトークとかベンダーコメントとかに「ノルム」がどうなっているのか、という考察が全然出てこないのが困るのでありまして、しょうがないからFEDの議事要旨とか要人発言見るしか無いのですが、この人たちも立場上「インフレ期待が2%のアンカーを外れている」というのを堂々と認めだすと、盛大な引き締めの必要性と、これまでの政策の失敗を認めることになるので、正面切ってこれを言い出すのはボルカー級じゃないと出来ない、というのがある訳ですな。

まあゆうて日本だってインフレ期待がどうのこうのの話って決定版となる数値が無くて、世の中全体の雰囲気で何となく語るしかないので、近年の市場におかれましては「何かよー分からんけどこーなんじゃないっすかねえ、ああ違ってたらポジションドテンしますわあっはっは」みたいな20世紀のトレーダー(アタクシも出だしは20世紀だったし昔からずーっと理論派じゃなくて感覚派なもんで)のような説明をすると馬鹿阿呆呼ばわりされてしまいがちですので、なんかそういうフワッとした概念の部分になると、「じゃあ実際今の世の中の予想インフレどうなってますねん」という話が中々出てきてくれないのが困りもんだなと。

その辺りFEDも困っているとは思うのですが、おそらくは「世間一般の予想インフレが足元は兎も角中長期的な行動を決める方の中長期的な予想インフレがそんなに動いていないんだったら、そんな過激な対応をする必要はない」し、そうじゃないなら過激に対応しないと行けないんですけど、そこの判断がつきかねる、というのが現状だと思うのですよ。でもって金融市場がバロメーターになってくれればよいのですけれども、金融市場は全然そのバロメーターになってくれてないのが現状なので、しょうがないから色々な発言が出るのですが・・・・・・・・・・・・

『リッチモンド地区連銀行のバーキン総裁はこの日、インフレ抑制に向け一段の利上げを実施したいとし、9月のFOMCでどの程度利上げすべきか見極めるため、今後入手される経済指標を注視すると述べた。』

『30年債 17時05分 3.1143% 前営業日終値 3.1590%
10年債 17時05分 2.8421% 前営業日終値 2.8880%
5年債 17時05分 2.9647% 前営業日終値 2.9880%
2年債 17時05分 3.2505% 前営業日終値 3.2290% 』

なんか余程決定的な経済指標でも出りゃ別ですけど、これはとりあえずジャクソンホールまで夏季休戦っすかね。ジャクソンホールで新しい話が出ないとさらに9月の指標大会までお待ちっすか。



〇「インフレと戦う」とは言ってるんですが中立金利に上がった所で多少腰の入り方がよわくなっている気がする(バーキン総裁)

という訳でバーキン総裁(タカ派)が何かゆうとるが。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-barkin-idJPKBN2PI18X
2022年8月12日11:48 午後
米インフレ2%回帰へ一段の利上げ必要、指標注視=リッチモンド連銀総裁

『[12日 ロイター] - 米リッチモンド地区連銀行のバーキン総裁は12日、インフレ抑制に向け一段の利上げを実施したいとし、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でどの程度利上げすべきか見極めるため、今後入手される経済指標を注視すると述べた。

バーキン総裁はCNBCに対し「インフレが抑制された状況の持続を確認することを望んでおり、それまでは金利を制限的な領域に移行させる必要がある」と指摘。7月にインフレが加速しなかったことは「歓迎」するとしながらも、利上げを停止する前にインフレが「一定期間」連邦準備理事会(FRB)の目標である2%で推移するか見極めたいとし、「制限的な領域に入るのはまだ先になる」と述べた。』(上記URL先より)

CNBCだから記事あるだろ無料で見れる領域に、と思ったら案の定ありました。アリガタヤアリガタヤなので海外旅行に行くときは宿のテレビでCNBCをみれる場合はいつもCNBCを見ておりましたが何せ最近は海外どころか国内旅行も・・・・・・・

URLが長いのでハイパーリンクは文字列の途中までの所で貼っております。
https://www.cnbc.com/2022/08/12/feds-barkin-says-rate-increases-need-to-continue-until-inflation-holds-at-2percent.html
FEDERAL RESERVE
Fed’s Barkin says rate increases need to continue until inflation holds at 2%
PUBLISHED FRI, AUG 12 202211:18 AM EDT
Jeff Cox

フルインタビュー、といっても4分弱ですが、上記URL先に行くと動画のリンクが貼ってあって、CNBCの「Squawk on the Street」コーナーの動画が見れます。以下引用部分は上記URL先よりとなります。

『KEY POINTS
・Richmond Fed President Thomas Barkin said Friday that more interest rate increases will be needed to tamp down inflation.』

そらそうよ。

『・Barkin said he wants to see inflation running around 2% “for a period of time.” The current level is far from that goal.』

これでは分からんがな、ということで記事を読む。

『Despite positive inflation data this week, Richmond Federal Reserve President Thomas Barkin said Friday that more interest rate increases will be needed to tamp down price pressures.』

『Releases this week showing that consumer and wholesale price increases softened in July were “very welcome,” Barkin told CNBC’s “Squawk on the Street” in a live interview.』

CPIとPPIの伸びがソフトになったのはベリーウェルカムだそうですが、

『“So we’re happy to see inflation start to move down,” he added. But he noted that, “I’d like to see a period of sustained inflation under control, and until we do that I think we’re just going to have to continue to move rates into restrictive territory.”』

ということで、まあ中銀の人間ならそれを言うわという話なんですが、結局の所「引き締め的な水準に金利を持って行くべき」という話はするんですよね。

『Headline consumer prices were flat in July while producer prices declined 0.5%, according to the Bureau of Labor Statistics.

However, that was just one-month’s data: CPI still was up 8.5% on a year-over-year basis, and the producer price index climbed 9.8%. Both numbers are still far above the Fed’s 2% long-run inflation objective, so Barkin said the central bank needs to keep pushing forward until it achieves its goal.』

一々そらそうよという解説が入りますが、

『“You’d like to see inflation running at our target, which is 2% at the PCE, and I’d like to see it running at our target for a period of time,” he said. The Fed uses as its preferred gauge the personal consumption expenditures price index; June headline PCE ran at a 6.8% annual rate while core excluding food and energy was at 4.8%.

Barkin’s comments reflect those of most Fed officials who have spoken recently about rates.』

『The central bank has hiked its benchmark borrowing rate 0.75 percentage point at each of its last two meetings. Markets are divided over whether the Fed will increase by three-quarters of a point in September or scale down to half a point, with traders tilting slightly toward the latter, according to CME Group data Friday morning.』

でまあ2%に下がるのをみたいでしょ私もです、とかいう話はまあ良いとしまして、どうしても市場としては2年後の政策金利がどうなるかの話しよりも9月の話の方が重要なので、結局話題はそっちになってしまうのですけれども、

『Whichever is the case, Barkin said acting aggressively now is important. He said his constituents are deeply concerned about inflation and want action from the Fed.』

『“Consumers really dislike inflation, and one message that I get loud and clear as I wander around my district is, ‘we don’t like inflation,’” he said.』

ということで、「アグレッシブにやります」とは言ってるんですけど、じゃあ景気との兼ね合いはどうなのとか、そっちの話って(さすがに2四半期連続で実質ベースのGDPがアレだった事もあるんでしょうけど)自分から説明しには誰も行かない、というのが今のFEDスタンス(質問されるとウニャウニャと回答はするけど)になっているようでして、結局「景気との絡みでどの程度までリストリクティブにするのか」というのが、FEDのメッセージから読み取れないし、まあFEDの方でもその点について全然回答を持っていなくて、出たとこ勝負なんだが足もと見られてしまうとインフレがトマランチ会長になるのでファイティングポーズ、っていうのがコミュニケーションをだいぶグダグダにしている原因だと思うの。

まあこれ、短時間のインタビューなので突っ込んだ話はそんなになかった(短いから一応聞いたよ)のですが、タカ派のバーキンさんでも「景気が減速してでも引き締めをぶっこむ」とは来てなくて、ただ「インフレファイトエイエイオー」とのシュプレヒコールだけはする、という辺りに、まあそこまで馬鹿利上げしないんじゃないかなというのを感じるのは感じるのでありました(個人の感想です)。


よーしゃべるオッサンの変態仮面ですが。先日言ってた「2022年末は3.75-4.00%」の記事がありました。
https://marketnews.com/mni-interview-bullard
"MNI INTERVIEW:Fed's Bullard-Rates Could Be 'Higher For Longer'"

こちらの記事なんですが、マーケットニュース社やるなてめえと思ったのは、記事を画像で貼っているようでございまして(念のためソースも見てみたけど多分これ画像貼ってる)、残念なことに記事が引用できない作りになっているという物件(もしかしたら課金すると引用できるのかも、とは思いましたがよー知らん)なのですけどね(ちなみに記事によってはそもそも全文読めないのものありますんでアレ)

インタビューの方はSpotifyのMNIのポッドキャストで見れるのですが、これまた見る気が起きないので、結局パスしましたけど、MNIの記事を見ますと、変態仮面先生は基調的な物価を見るのに「ダラス連銀の刈込平均PCE(https://www.dallasfed.org/research/pce)」を推奨しております。それが正しいのかどうかは知らんですけど、割と他のFED高官も言及することがある(最近は以前より見ない気がしますが)物件ではございますのでご参考に。


あと、何回か申し上げたとは思うのですが、利上げをそこまで頑張らなくても引き締め効果をだすためには、ランオフの大加速をするのが一番手っ取り早いと思うのですが、そっちの話が一切出ないで金利の話しばっかりしかしないのは、気が付いてないんだが逆に怪しいんだかがイマイチ良く分からんのですが、全く気がついてないわけないと思うんだけどな・・・・・・・うーむ。








2022/08/12

お題「だいたい米国CPI絡みの備忘メモですがその間にジャパンの企業物価指数が更に円安であじゃぱーになっておる」

なんかヤバそうなニュースの気がするんだが・・・・・・・
https://www.bbc.com/japanese/62501084
新種の「狼牙ヘニパウイルス」、中国東部で35人が感染 動物由来か
2022年8月11日

ウイルスの名前に目が釘付けになってしまって記事の内容が頭に入ってこない。


〇さてさて米国CPI関連の動きでもメモっておきましょう


・CPIの伸びは鈍化して炊いた赤飯(大嘘)空振りの巻(^^)

https://jp.reuters.com/article/usa-economy-inflation-idJPKBN2PG1BJ
2022年8月10日11:26 午後
米CPI、7月は前年比8.5%上昇 伸び鈍化 ガソリン価格下落

『[10日 ロイター] - 米労働省が10日に発表した7月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年同月比8.5%上昇と、伸びは約40年ぶりの伸びとなった6月の9.1%から鈍化した。ガソリン価格が約20%下落したことが背景にある。』(上記URL先より、以下同様)

ガソリンパワーすげええええええ。(ヘッドライン+9.5位になったら思い切り市場の事前の予想の逆だからおもしれええええ(完全に不謹慎)と思ったんですけどね)

『ガソリン価格の急落により上昇せず、過去2年間にわたってインフレ高進が続いていた中で、安堵すべき顕著な兆しとなった。ただ、米連邦準備理事会(FRB)が9月も大幅利上げを続けるべきかどうかを検討している中、基礎的インフレ圧力は依然高止まりしていることも示された。』

とまあこの記事はUSCPI出てから暫く後の記事だと思うのでいろんな面で書いてますけど、CPI出た時はゴルディロックスヒャッハーだった気がするんだがおじいちゃん眠くて半分寝てたからあんまり覚えてない。

『米金利先物市場では9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.75%ポイント利上げの観測が後退し、0.5%ポイント利上げ予想が高まった。』

そらそうよ、というかですね、この前のFOMCで会見での説明もそうなんですが、9月以降の利上げは「中立金利以上への引き上げ」なので本来だったらここから先の利上げはそこまで無茶苦茶急がなくても良い筈で(中立以下の状態を是正するのは急がないと中立にしない限り常に「緩和継続」だったから急ぐ必要がある、というのがまあ理屈の上での整理、実際は中立金利自体が幅のある概念だからそう簡単に割り切れませんけど)、何であんなに気合入れて利上げするぞ利上げするぞって言ってるかと申せば、これはアタクシの勝手な推量だけど外してない自信はあるんだけど、金融市場の方が何か面白シナリオを立ててゴルディロックス相場という流れになって、いやいやいやそれやられると個人消費がまた盛り上がっちゃうから基調的インフレがサガランチ会長になるんで勘弁島倉千代子、ってのがあって、冷やそうと思って言ってる面は多々あると思うの。

『7月の食品価格は前月比1.1%上昇。6月は1.0%上昇で、高止まりしている。変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は0.3%上昇と、10カ月ぶりに低い伸びとなった。6月は0.7%上昇していた。しかし、前年同月比は5.9%と、伸び率は6月と同じだった。』

結局コアの前年比が下がってないのよね・・・・・・・・・・

『家賃・帰属家賃は6月とほぼ同じペースで上昇。住宅費はコアCPIの約40%のウェートを占める。エネルギー関連を除くサービスは前年比5.5%上昇と、前月と同様の上昇ペースが続いた。』

しかもレントは上がってるし、サービスも上がっていて、まあヘッドラインのガソリンパワーで緩和されているけど別に下がったという程ではないよね、ということでしょうか・・・・・・・・・


・翌日になったら結局10年金利あがっとるんかいな

https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2ZM4CU
2022年8月11日6:11 午前
米金融・債券市場=利回り低下後に切り返す、FRB利上げ幅見極め

『[ニューヨーク 10日 ロイター] - 米金融・債券市場では、7月の米消費者物価指数(CPI)を受け、米債利回りが低下したものの、その後切り返し、序盤の下げの大半を取り戻した。投資家は連邦準備理事会(FRB)による9月の利上げ幅を見極めようとしている。』(上記URL先より、以下同様)

しかしまあ何ですな、

『米10年債利回りは一時2.67%に低下した後、2.79%に上昇。2年債利回りは一時3.08%を付けた後、3.22%まで切り返した。』

いくらバカンスシーズンだからと言っても何ちゅう値動きしますねん。

『30年債 17時05分 3.0375% 前営業日終値 3.0050%
10年債 17時04分 2.7846% 前営業日終値 2.7970%
5年債 17時05分 2.9267% 前営業日終値 2.9800%
2年債 17時05分 3.2203% 前営業日終値 3.2860% 』

ゆうてこの日は若干のツイストスティープで引けてますが、今朝起きて見ますと・・・・・・・・・

https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2ZN3GK
2022年8月12日5:08 午前
米金融・債券市場=利回り2週間超ぶり高水準、米追加利上げ視野

『[ニューヨーク 11日 ロイター] - 米金融・債券市場では、米債利回りが2週間超ぶりの高水準に上昇した。物価上昇圧力が弱まりつつあるにもかかわらず、なお高水準のインフレを抑制するために連邦準備理事会(FRB)が利上げに踏み切るとの見方が広がっている。』(上記URL先より、以下同様)

まあベンダーコメント額面通りに受けてああだこうだ言っても仕方ないのですが、さすがにこの題名とリードの部分は大草原不可避という感じでして、いや逆に10年2.6%台まで金利下がったのは何を織り込んでその水準まで下がったんじゃおどりゃちょっと説明してみんさい、って所ではございまして、別にこのコメントしている人が悪い訳では無いのですが、

『INGのパドレイク・ガーベイ氏は「インフレが鈍化し経済が減速したとしてもFRBは利上げする。なぜならインフレ率がなお8%台で高すぎるからだ」と述べた。』

ってのを見て茶を吹きそうになりました。お前らそんなの当たり前じゃんFOMCの会見でもパウエルずっとそういう説明してんじゃんという話で、これが逆にベンダーコメントに出ちゃうってのが米国債券市場のラリっぷりをよくあらわしておりますなあという感じなのですけど、アメリカンの皆様が勝手にラリハイになって阿片窟で白目向きながら裸踊りしているのは勝手にやって下さいとは思うのですが、そのラリハイ相場の流れ弾がこっちにも飛んできて円債も無駄なレンジ内値動きするのめんどくさいから勘弁して頂きたい所ではあります。

『財務省が実施した210億ドルの新発30年債入札は需要が軟調だった。最高落札利回りは3.106%と入札前取引の水準を1bp超上回った。応札倍率は2.31倍と4月以降で最低だった。 これを受け、30年債利回りは3.189%と7月21日以来の高水準となった。』

まあオークションの影響もあったかとは思料されますが。

『30年債 16時00分 3.1792% 前営業日終値 3.0420%
10年債 16時00分 2.8930% 前営業日終値 2.7810%
5年債 16時00分 3.0021% 前営業日終値 2.9220%
2年債 16時00分 3.2413% 前営業日終値 3.2140%』

ということで、結局日本の祝日跨いで戻ってきたら10年10甘、30年18甘、5年がだいたいヨコで2年が4強ということで、CPIが予想よりも弱いのにスティープするというお前ら何を織り込んでたんだよ相場になってしまいました。

なんですかねえ、FEDが過激に利上げして来年になったらリセッションで今度は利下げ、って織り込んでたって話を債券だけだったら後講釈できるんですけど、いっちゃん最初の頃のリセッション織り込み相場の時と違って、株式市場が最近はソイヤソイヤと上昇しておりましたので、もはや良く分からんアメリカン金融市場じゃわなと思いつつ、分からんものに関しては無理矢理理解するのを諦めて、「これは阿片窟でラリっている人達」と思って生温かく眺めつつ理解不能なのでこれは外生ランダム変数だと思うようにしている(と言いつつそこまで割り切れる事が出来ないのですけどね、実際はwww)のでありました、うーん米国債券市場ムツカシムツカシネー。



〇そらまあ水準が水準なのでこうなるのですが取り急ぎFED要人発言のニュースをメモっておく

エバンス総裁(雇用見るよりも物価を見てればよいという物価至上主義者である意味ピュアなインフレ目標論者)
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-evans-idJPKBN2PG1HR
2022年8月11日1:01 午前
FRB、来年末までに4%への利上げ想定=シカゴ連銀総裁

『[10日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のエバンス総裁は10日、アイオワ州デモインのドレイク大学で開かれたイベントで、7月の消費者物価指数(CPI)がインフレ加速を示さず、連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに着手して以来、インフレに関して初めて「ポジティブな」数値になったと述べた。』

『ただ、インフレ率はなお「受け入れがたいほど」高水準とし、FRBには引き続き利上げが必要で、政策金利を年末までに3.25%─3.5%、来年末までに3.75%─4%に引き上げる可能性があるとした。』(上記URL先より)

元の文章あるかいな、と思ってシカゴ連銀のサイトにいったらこれである。
https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2022/august-10-greater-des-moines-partnership
ast Updated: 08/10/22
Economic Update with the Chicago Fed
President Charles Evans will join the Greater Des Moines Partnership and Drake University for a moderated Q&A on the U.S. economy followed by an audience Q&A.

52分弱の動画でしたorzorz

まあこれ字幕が出てくるので内容は追えるには追えると思います(追ったとは言ってない)。ちなみにパネル(というかモデレーターの質問にエバンスが回答)が始まるの3分半くらいしてからで、31分くらいから客席からの質問にエバンスが回答するという質疑応答タイムがおっぱじまります。


超クソどうでもよいのですが、今年とか来年とか言うと一目で分かりにくいので、ベンダー様におかれましてはヘッドラインを書くときに22年末とか23年末って書いて欲しいんですよね。日銀の場合は年度で言うから22年度末って感じで。

でもって今年末が3.25−3.50でその後もチンタラと利上げが続く、ってこの見通しはまあ妥当なラインではないかとアタクシは思う(なにせここから先はそんなに過激に上げていく必要は今までと非対称なのだから)のでありまして、一気にクッソ利上げして23年になると利下げに転じる、とかいうのはまあFEDを馬鹿にしてるじゃろ、とは思うのですが、決め打ちコミュニケーションやり過ぎた弊害で、市場の期待を動かすために過激な言い方をしていったFEDも大概に悪いとは思いました、まる。



カシュカリ総裁(まえはハト派だったのに最近になって大タカ派に転向した坊主頭のおじちゃん)
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-kashkari-idJPKBN2PG1R5
2022年8月11日3:51 午前
FRBの勝利宣言程遠い、大幅利上げ想定=ミネアポリス連銀総裁

『[10日 ロイター] - 米ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は10日、米連邦準備理事会(FRB)がインフレに対応するために政策金利を年末までに3.9%、2023年末までに4.4%に引き上げる必要があると引き続き確信していると述べた。』

『10日に発表された7月の米消費者物価指数(CPI)で物価圧力の冷え込みが示されたことは「歓迎すべき」だが、FRBが「勝利宣言するには程遠い」状態であり、政策金利を現行の2.25%─2.5%からはるかに高い水準に引き上げる必要があると指摘。市場では来年早々の利下げが見込まれているものの「現実的ではない」とし、FRBはインフレ率が目標の2%に「十分近づいていると確信するまでは」利下げを行わないだろうとした。』(上記URL先より)

それっぽいのはこちら。
https://www.minneapolisfed.org/events/2022/neel-kashkari-at-aspen-economic-strategy-groups-2022-annual-meeting
Neel Kashkari at Aspen Economic Strategy Group’s 2022 Annual Meeting
August 10, 2022 | 1:00 - 2:00 p.m. CT
Neel Kashkari
President and Chief Executive Officer

これがまた1時間もある動画(ただし9分半くらいの所から始まる)のディスカッションで、サマーズとかブラックロックのCEOとかカーニーとかがでてるっぽい(ちゃんと見てない)とかだが自動生成の字幕とか出せないの勘弁して頂きたい(汗)。


デーリー総裁(基本的にSF連銀は執行部寄りなので鉄砲玉の可能性があると思いながら確認してます)
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-daly-inflation-idJPKBN2PH091
2022年8月11日2:47 午後
SF連銀総裁、9月は0.5%利上げが基本 0.75%も排除せず=FT

『[11日 ロイター] - 米サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は、連邦準備理事会(FRB)がインフレとの戦いで勝利宣言するのは時期尚早との見方を示した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が11日報じた。』

『総裁はFTとの10日のインタビューで、次回9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で3回連続となる0.75%ポイント利上げを行う可能性を排除しなかったものの、0.5%ポイントの引き上げが自身の「ベースライン」だと述べた。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですかそうですか。

『現行2.25─2.5%の政策金利については、今年末までに3.5%をわずかに下回る水準に引き上げるべきとの見方を維持した。』

ということですな。まあそれで物価が抑えられるのか問題があるのですが、いずれにせよ次のFOMCまでまだ時間があるので、指標見て一々きゃあきゃあ動く相場になるんでしょうかね、よー知らんけど。

これはSF連銀のサイト(直近のは探しやすいんですけどアーカイブ探すのがめんどいサイト)を見てもそれらしい者は無かったので、FTを読めって事なんでしょうけど、そんなもんに課金している訳がない(日経にも課金して無いのにFTに課金する訳が無い)アタクシなのでパスということで。


〇ところで米国CPIの陰に隠れているが日本の企業物価指数がアレ

これはアカン奴や・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2207.pdf
企 業 物 価 指 数(2022年7月速報)

『国内企業物価指数は、前月比+0.4%(前年比+8.6%)。夏季電力料金調整後では、前月比+0.3%。

輸出物価指数は、契約通貨ベースで前月比▲0.4%、円ベースで同+0.7%(前年比+19.1%)。
輸入物価指数は、契約通貨ベースで前月比+0.8%、円ベースで同+2.4%(前年比+48.0%)。』

これは大草原不可避wwwwwwwwwwwwwwwwwwww

どう見ても円安の寄与がドンドン拡大しています本当にありがとうございました、という話で、日銀は今の金融政策を継続しないと景気がコケるだの何だの言ってるけど、今の政策継続してたら円安が進行して結局景気がコケるんじゃないでしょうかねえwwww

というメモだけと今日はクリップばっかりでサーセン飛び石連休の谷間だから勘弁してつかあさい。







2020/08/10

お題「今さらのECBラガルド会見ですが白眉はフォワードガイダンスはもうありませんって言ったことだと思ってたので」

ほうほうこれは岸田さんもやりますなあ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/b4c5b720d211f44d0b48607d8a8e67085f02300e
河野太郎氏のデジタル相起用固まる
8/9(火) 19:18配信

ついったーでイキリまくるだけならまだしもエゴサかけてちょっとでも批判的な事を言ってるのを見ると大先生に対してリプをしている訳でもない人までわざわざ先制ブロックしまくっておられたあの河野太郎大先生をデジタル担当大臣ってこれボロをださせて潰そうとしてる(何ならデジタル庁もろとも)としか思えんのだが(河野先生様を1ミクロンも評価してないのでアタクシはそういう解釈しかできないのですいませんねえ)さてどうなるんでしょうね。

ブロック芸で分かるように人の話聞かないし、すぐイキリだすし、頭いいというかこの先生お勉強は物凄くできるんでしょうが、アタクシはこういう上司の下では1日持たない自信がある。


〇フォワードガイダンス政策のお葬式といえばECBのラガルド会見も放置プレイでしたので

まあ何ですな、今晩の米国CPIが上振れるのを楽しみにして赤飯炊いて準備でもしようか、ってなもんですが、どうせCPI出た後に要人発言出るかもしれないけど、来週からジャクソンホールまではあんまり発言も出ないだろうなーとかカレンダーの並びを見ながら思うアタクシ。

別に狙った訳ではなくて3中銀同時に決定が出たので優先順位後になってしまった訳ですし、まあ今更感もあるのでECBの記者会見は軽く米国CPI前のヒマネタ的に。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2022/html/ecb.is220721~51ef267c68.en.html
MONETARY POLICY STATEMENT
PRESS CONFERENCE
Christine Lagarde, President of the ECB,
Luis de Guindos, Vice-President of the ECB
Frankfurt am Main, 21 July 2022


・フォワードガイダンスはECBの方が先に「ゴメンチャイ」をしましたので私はこれを評価したい

冒頭の質問がこれだったんですけど、回答の方が前半後半の内容を一部ミックスしているので、纏めて引用します。

『My first question is on your forward guidance and what the frontloading means for September, because you previously have been guiding us and the market that September will see a 50 basis points hike unless there are clear signs of inflation going down.』

『The second question is on Italy. We are seeing yields rising with the political uncertainty at centre stage. What's your message to the market? Is the TPI big enough and bold enough to prevent a potential escalation of the situation?』

大演説がおっぱじまる、というかこの時の会見って「あなたさまの質問は私の説明の大変に結構な導入でございます」とか言い出して説明したいものは鬼のように説明する、というのが物凄く特徴的だった会見です。まあこれは今回の決定事項に関する質問だから順当な質問ちゃあ順当な質問だけど。


『Actually, your question helps me give you a bit of an insight of what happened during this really important Governing Council meeting.』

グッドクエスチョン!というのを丁寧に言うとこうなる。

『Governing Council members around the table made two important decisions.』

『The first one had to do with interest rate hikes by 50 basis points - and I will come back to forward guidance in a minute - and also decided to approve at unanimity, unanimity of the Governing Council, the Transmission Protection Instrument.』

利上げとTPIというどっかの国のソブリンがブタ売られした時のお助けプログラムを作るのを決定したよ。

『So let me come back to the interest rate hikes that we decided, and I will come back, as a result, to your forward guidance question.』

はい。

『We debated internally within the Governing Council about the pros and cons of sticking to the signalled 25 basis points of July, which entailed the other forward guidance that we gave in respect of September. The two of them were clearly a package. And having weighed the pros and cons we decided, on balance, that it was appropriate to take a larger step towards exiting from negative interest rates.』

ガイダンス通り7月と9月各25bpの利上げというセットで行くべきか検討しましたが、その結果マイナス金利政策の解除を速く行うべきだという結論に達しました。

『We did that on the basis of several indicators, several elements which we believe constituted a change relative to our June Amsterdam meeting. And I can come back to those four elements, because I think they're important. They all relate to a materialisation of inflation risks that we had flagged in Amsterdam, but which we have seen materialising in the meantime.』

6月の時にリスクだとは考えていたが顕現化しなかった顕著なインフレリスクが出てきた、という状況の変化があったからこのようにしました。と言ってるんだがさすがにこれは「またまた御冗談を(アスキーアート割愛)」の世界なんですけど、こういうしか体面の作りようがないのは分かる。

『I think the second important component that played a role in our decision was that the situation has changed in relation to transmission.』

ここからTPI導入の意義に関する回答になる。理屈は「域内でのソブリン利回りが極端に違うと、政策金利を波及ルートのスタートにしている金融政策の効果が域内の各法域によって異なってきて金融政策運営に支障を来す」という何時もの話で、これはもう財政統合してないからどうしようもないよね、ってことなんですけど、まあそういう話がうだうだと行われます。

『We had not implemented yet the flexible reinvestment under PEPP, and certainly we did not have at the time a transmission protection instrument. So these two elements combined - realisation of upside risk to inflation plus the presence and the operationality of the flexible reinvestment under PEPP, and, more importantly, the unanimous support of the Governing Council for the transmission protection instrument - led us to decide a larger-than-what-had-been-signalled rate hike on the occasion of this meeting. That is really what, if you want to go behind the curtain of the Governing Council debates, this is what took place.』

まだPEPPの柔軟適用って奴も本格的にやっていないのですが、そうは言ってもこのお助け措置をセーフティーネットで作っておかないとまた域内のソブリン利回り格差があじゃぱーになってあばばばばーなのでTPIを入れるよ。

『I would add that in relation to the rate hikes we had the debate, weighted the pros and cons, and at the end of the discussion all members of the Governing Council rallied to the consensus of 50 basis points.』

50bp利上げは全員一致だったのね。

『So it's a strong indication on both accounts in relation to the higher step that we are taking to exit from negative interest rates, and on the other front, which is making sure that our monetary policy stance is transmitted smoothly throughout the entire euro area.』

よって7月の決定のポイントは「マイナス金利解除」と「ユーロ圏のソブリンスプレッドの野放図な拡大阻止」ですよ。

『Now, the TPI is, obviously, an instrument that will help us deliver on our mandate of price stability, bringing inflation in the medium term back to 2%, and under that TPI all members of the euro area can be eligible; all of them. You will find in the press release later, after this press conference, the detail of the eligibility conditions, but all members of the euro area are eligible. The Governing Council, in its discretion, in its assessment will determine on the basis of the eligibility criteria, on the basis of the indicators that will signal or not unwarranted, disorderly market dynamics, whether or not a country is eligible and whether it activates the TPI. Voila.』

TPIについてはこの後の質疑でも当たり前ですがバシバシ質問が来たのですが、上記の「ソブリンスプレッドの野放図な拡大を阻止したい」という目的と、「アウトラインは本日このあとお出ししますが細かい話はまた後日」って仕組み面の話が延々と循環しておりましたです。


さらに次の人も同じことを聞くわな。

『I want to follow up on Italy. Given that right now there is a very clear reason behind market reaction, do you see any way for you to buy Italian debt in the foreseeable future, while arguing that market reaction was unwarranted, which would be the condition for the TPI?』

TPIの条件に付いて決まらんと債券市場はまだオラオラとやるんでネーノ。というのが最初の質問で次が、

『Then coming back to the September decision: Is this really now the interest rate decision for September? Is it really completely open now? Do you still envision a move of larger than 25 basis points?』

はい9月の質問、ということですが前半のTPIの方は「細かい話はこれからだよ精神はさっき言った通りだよ」で話が循環するので割愛しますが、後半の9月予告ホームランに関する話については・・・・・・・・・・

『(前半割愛)You wanted to come back to September. That's a good point. I think what I tried to explain in my first answer is that in June we have signalled - it's not exactly what I said, by the way, neither in my blog nor in my Sintra speech, just in case you are interested, and very scrupulous and scrutinise those documents.』

ECBブログで書いたのもコミュニケーション政策なのかよ!!ってまあそうだろうなとは思いましたけど、機関決定を経ないで書いているのにコミュニケーションと言われましても何とも微妙な感じはしますな。

『But at our Amsterdam June meeting we signalled our intention to increase by 25 basis points. And that was a signal - some degree of forward guidance to that signal - that was coupled with the signal that was given in relation to September.』

6月に「7月と9月に各25bp利上げ」という予告ホームランは「some degree of forward guidance to that signal」という扱いになっていますね。

『Given the decision that we are taking today, which is to increase - and remember Amsterdam, for those of you who have forgotten - was we intend to increase by 25 basis points, and at our September meeting the incremental increase will be possibly larger than 25.』

何その怪しい説明。前回は7月25bpで9月は25だけど25以上の可能性もあるよって言いましたよね、と確かに逝ったかもしれんがそうは市場取ってなかったゾ、というのをぶち込んで、

『And some of you have assumed that it might be 50.』

だから皆様のうちの幾分かは9月に50bpになるかも知れないって議論あったよね、という話をぶっこんでて、いやまあこちとら別に欧州のソブリン債市場の中の人でも何でもないから、その辺の知見は無いんですけど、7月25bp9月50bpだったら、普通に考えて7月に50上げる方がスマートであって、その障害になるのは6月にぶち上げた予告ホームランですよね、と思ったんだがまあその先に行きますと、

『But we decided to go for 50 basis points hike in July, and therefore, the combined forward guidance that existed for September is no longer applicable.』

ということで、フォワードガイダンスを反故にした事を会見でバッチリと認めているのだけは評価したい。まあその前に無駄な予告ホームランやりすぎで、しかもその予告ホームラン通りにやらないもんだから、今さらこの人たちのフォワードガイダンス誰が信じますねん、というのは勿論あるのですが、ここ10年か15年か20年かおじいちゃん忘れてしまった(10年前も20年前も「ちょっと前にあったこと」という時間軸での感覚しかないのが年寄りの証明)のですが、とにかく中央銀行が何でもかんでもガイダンスを出すのがノーマルみたいな感覚になってしまっているので、もっと前の時代はそんなもん中銀は出して無かったのでおじいちゃんは驚かないのですけれども、こうやって明示的に「フォワードガイダンスなどというものは今後やらん」という勢いで話をしないとミスコミュニケーションは立て直せない訳でして・・・・・・・

『I think if you go back to the monetary policy statement you see very clearly that from now on we will make our monetary policy decisions on a data-dependent basis, will operate month by month and step by step.』

「decisions on a data-dependent basis, will operate month by month and step by step」とかまだエエカッコシイになっているのはこれはしょうがない面はあるのですが、これはFEDも似たように言ってますけど、結局の所、「今後の金融政策は決め打ちできませんからその時その時に出たとこ勝負で適切と思われることをします、ガイダンスとかそんなもん出せるかボケ二度と期待するんじゃねえよ」と言っているのですけれども、当然ながら長年の間ガイダンス政策が出るのに慣れている市場ちゃんが直ぐにこの変化に対応できていないので、何ちゅうかナンジャソラとおじいちゃんとしては思ってしまうような市場展開になってしまうのよね、というのは個人の感想なのですが、とにもかくにも世界の潮流は「フォワードガイダンスのような決め打ち政策は当分ヤラネーヨ」という流れであるし、それに対して市場の方はクレクレクレクレ五月蠅いので、中央銀行としても何かそれっぽい事をついサービスしちゃってややこしいコミュニケーションが発生している、ということなんじゃないかなあと昨今の市場を見て思います。

『So what happens in September is going to depend on what data we have for September, but we are definitely on a normalisation path, in order to reach our medium-term objective of 2%. We will determine in September on the basis of the data that we receive - and this is an [ECB staff macroeconomic] projection exercise in September.』

緩和政策の正常化パスにいる、ということだけは申しあげられる、とか余計なこと言わなくても良いのですけど、言わないと多分ゴルディロックスヒャッハー相場になってインフレ押し上げ要因になるからというのと、いきなり市場に「じゃあお前ら勝手に判断して金利形成すればあ???」というだけの肝も座っていない、という辺りがあるんじゃないかと思います。

『 So on the basis of the data that we receive at the time of those projections, we will determine what step we take on the normalisation path that we are taking in order to deliver on our medium-term 2%. Now, that doesn't mean to say that we are changing the ultimate point of arrival. We are accelerating the exit, and we are following the path of normalisation that we have flagged.』

出口を今後も急ぎます、という事をいってるんですが、それだったらもっと「物価目標達成のために正常化を加速する」ってのを強力に言えば良いと思うのですが、欧州の場合は何せ経済の方がアレなので、そこもど直球でぶっこめないのが辛い所ですな。



〇ECBと言えばこんな味わいのあるページが

https://www.ecb.europa.eu/ecb/educational/explainers/tell-me-more/html/interest_rates.en.html
We have raised interest rates. What does that mean for you?
21 July 2022

スクロールしていきますと、

『What is the role of the ECB?
The ECB is the central bank for the euro. We do not set the interest rates that you pay on your loan or receive on your deposit. But we do influence them.』

というのがあって、高インフレに対して金利を引き上げるとこんな動きになります、というのがあって、伝説の置物理論のあの図、即ち

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズムー 「第一の矢」の考え方 ー
京都商工会議所における講演
日本銀行 副総裁
岩田規久男

の6ページ目の図(PDFの7枚目)

「量的・質的金融緩和」の波及経路

を思い出しまして、中々味わいの深いものを感じてしまいました。いやー早く消え去れよ置物金融政策。






2022/08/09

お題「直近のボウマン理事の講演は物価下げ下げ話をしてるがフォワードガイダンスに関する部分に味わいがあった」

ちょwwwwwww
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220808/k10013759121000.html
岸田内閣「支持」46% 内閣発足後最低に 「不支持」28%
2022年8月8日 19時01分

『政府が来月27日に安倍元総理大臣の「国葬」を行うことへの評価を聞いたところ、「評価する」が36%、「評価しない」が50%でした。』(上記URL先より)

ここまで評価するとしないの割合がしない方に傾いてるのは初めて見た気がします。


〇直近のボウマン理事と変態仮面の金融政策コメントを見るのだ(と言っても今日は9.5割がボウマンで5%だけ変態成分)

ボウマン理事
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20220806a.htm
August 06, 2022
Fighting Inflation in Challenging Times
Governor Michelle W. Bowman
At the 2022 CEO & Senior Management Summit sponsored by the Kansas Bankers Association, Colorado Springs, Colorado

最初の挨拶はかっ飛ばして2パラ目から参ります。

『I'll start with a recap of the decision from July's Federal Open Market Committee meeting and then move on to my thoughts about the current economic uncertainty and challenges that lie ahead.』

はい。

『The number one challenge, of course, is inflation, which continues to be much too high, and a heavy burden for households and businesses.』

既にご案内の通り、暫く前にもインフレケシカランの大合唱がFED要人から相次ぎまして、ボウマン理事も同様にこういう話をする次第。だいたいからして昨日までネタにしましたように、そもそもFOMC後の会見だって、高インフレケシカランってのだけは鮮明に主張している訳ですからして、このあたりは当たり前にも程があるのですけれども、笛吹けど10年USTは2.7%とかになっているのですよね。

利上げペースが落ちるからゴルディロックスっぽくヒャッハーしているんですけど、これはまあ元々のFEDのコミュニケーションが小出し小出しでやってた弊害にも程があって、もっと単純に「そもそも中立金利よりも低い政策金利は緩和的だし、それに加えてAPPのストック効果もあるから、このインフレに対しては金融政策を中立水準に戻すのは早急にやらないといけない」って話をもっと早くにしていれば、もうちょっと相場の形も違ってたという気がします。中立金利までの利上げと、中立金利からの利上げってのは経済に与える効果が理屈の上では非対称なのですから、そら話は違ってくるの当たり前なのですが、その当たり前の話をしただけで「ダビッシュ」扱いになってしまうのは、もうこの時点でコミュニケーション大失敗であって、FEDは9月までの時間の中でもうちょっとロジカルな説明をしないといけない(結局出たとこ勝負になるにしても、今の説明では全然アメリカン債券市場の皆さんに通じていないと思うのよ)と思うのでした。

よってこんなのがあっても市場は丸無視してたと思うのですが(単に雇用統計で動いてたけでしょ)先に進みます。

『As I'm sure you all already know, the Federal Open Market Committee decided last week to raise the federal funds rate by 75 basis points, to a range of 2-1/4 to 2-1/2 percent. I will share my reasoning for supporting this increase and why I support continued increases until inflation is on a consistent path to significantly decline. I will then touch on the current federal regulatory climate and the Fed's agenda for supervision.』

最後の規制関連の話はまあ今回はパスして政策の話しだけ読みますね。


・インフレの話をするのにPCEではなくCPIを持ち出すの巻

『Inflation continued to climb in June, reaching 9.1 percent as measured by the consumer price index. This is yet another concerningly high reading, and it set another 40-year record high despite the expectation of many forecasters that inflation had peaked earlier in the year. I have seen few, if any, concrete indications that support this expectation, and I will need to see unambiguous evidence of this decline before I incorporate an easing of inflation pressures into my outlook.』

ここで味わいがあるのが「ヘッドラインのCPI」を持ち出している件でして、これはFOMCの会見でも質問されていまして「おいどっち見るねん」というツッコミがバシバシと来てましたが、「総合的判断(キリッ)」とそもそもインフレーションターゲットじゃねえのかよというツッコミをしたくなるんですが、CPIを出しているのに滋味を感じました。

・過剰なインフレをもたらしているものには外部要因が多いという言い訳をするものの

『Many of the underlying causes of excessive inflation are the same as they have been over the past year or so-supply chain issues, including those related to China's COVID containment policies, constrained housing supply, the ongoing conflict in Ukraine, fiscal stimulus, and limitations on domestic energy production.』

基調的な「過剰な」インフレをもたらしているもはサプライチェーンとかコロナ対応の中国での抑制的な政策とか、住宅の供給制約とかウクライナとか景気刺激的な財政政策とか国内エネルギー生産の供給能力とかですよ、という現状認識ですが、しれっと財政の話が入っているのがチャーミング。


・その言い訳の後にまた「物価を2%に抑制するのが大正義」としつこいしつこい

『Regardless of the source of the inflationary pressure, the Federal Reserve has a duty to bring inflation down to our 2 percent target. This duty is mandated by Congress to carry out monetary policy that results in price stability-meaning low and stable inflation. We all understand why this is a critically important responsibility, especially in times of extreme inflation.』

「We all understand why this is a critically important responsibility, especially in times of extreme inflation.」とかエライ強い表現をして物価引下げ大正義と仰せですが、まあこれって負け犬のオーボエっぽく聞こえるんですけど、インフレ期待が上がってスパイラルになることを恐れているからFEDの高官が無茶苦茶この点を強調しているんじゃないかなあ(裏を返せば適合的期待形成によってインフレ期待のアンカリングが外れるリスクがデカい、と認識しているということであって、そらまあBEIとかだと一頃よりはましって評価だと思うのですが、結局一般の行動を決定するのは金融市場のBEIではなくて一般ピーポーのインフレ期待ですからぬ)って思うの。考えすぎかな??????

『Rising prices for food, housing, and energy negatively impact affordability for all Americans, but especially those with low or moderate incomes. For those workers who drive long distances to get to work, high inflation is especially concerning, requiring some to make tradeoffs between feeding their families and buying fuel to fill gas tanks. Some workers have seen their wages grow significantly over the past two years, but most have seen any gains in wages far outpaced by higher prices. Therefore, in my mind, it is absolutely critical that we continue to use our monetary policy tools until we are successful in returning inflation to our 2 percent goal.』

生活価格の上昇が中所得層以下のアメリカンピーポーにエライコッチャはいつもの話で、さらに高インフレはイクナイ、という説明をこれでもかと続ける。

『Businesses are also suffering from elevated inflation through rising and volatile prices for inputs and the need to price their own goods and services to cover costs without losing customers.』

企業も投入コストの増加およびコストのボラタイルな動きに対応するのが大変エライコッチャになっており、しかもこのコストを客を失わない程度に転嫁しないと行けないという必要もでておりますので企業にもイクナイ、と来てからの、

『This dynamic is evident in agriculture and what we are hearing directly from farmers and ranchers, who are dealing with added weather challenges and on-going drought.』

この動きは農業に対しても厳しくて、おまけに異常気象の影響まであります、とこれはどうせ最後の方に気候変動対応の話があるのでそこの伏線というのと、コロラドスプリングでのセミナーだから、農業地帯でもあるし農業従事者の話もしました、ってなもんでしょうが、企業だけではなく農業にも打撃だと。

『Prices for commodities have declined lately but are still at historically high levels. In contrast, prices for fertilizer and many crop inputs continue to rise. In some areas, high input costs and drought conditions are contributing to record early season cattle auction sales, as many ranchers choose to sell herds early to limit further outlays for input expenses.』

商品市況は下がって来たとは言えヒストリカルには高いレベルだし、肥料や飼料の価格は相変わらず上昇を続けており、農業や畜産業における投入コストは一段と上昇しており、コスト払えんから生産の抑制をしないといけない向きもありまっせ、ということで、どうもエネルギー価格が下がって来ればめでたしめでたし、という訳にはいかないんじゃなかろうか、という話をこうやってしているのですが、なんか知らんけどアメリカン金融市場はゴルディロックスになるんだよなー。


・来年も「顕著なインフレリスク」があるそうですよ

次のパラグラフに行きますと、来年も顕著なリスクということで、

『I see a significant risk of high inflation into next year for necessities including food, housing, fuel, and vehicles.』

生活必需品(に車が入ってるのがアメリカンって感じですね)のインフレは来年も顕著なリスクだそうです。これはアカン奴や・・・・・・・・・

『Rents have grown dramatically, and while home sales have slowed, the continued increasing price of single-family homes indicates to me that rents won't decline anytime in the near future. Recently, gasoline prices have moderated but are still roughly 80 percent higher than pre-pandemic levels due to constrained domestic supply and the disruption of world markets. And I see continued inflation risk from motor vehicle prices, as auto manufacturers struggle with supply chain problems that haven't improved significantly. Demand for cars continues to exceed supply, and retail used car prices are still very high, about 50 percent more than before the pandemic.』

これはその項目別の見通しだが要はヤバいと。

『The supply problems pushing up inflation seem likely to persist.』

供給制約に伴う問題も持続するでしょう、と更に残念なお告げ。

『Indications are that the conflict in Ukraine will continue, and that the effects of shipping disruptions of agriculture products and limits on energy supplies from Russia will continue to be a significant problem. Even with the recent agreement intended to facilitate Ukrainian grain exports, it is unclear whether supply pressures on global markets will ease as a result. An announced reduction in Russian natural gas supplies to Western Europe has driven European prices even higher, causing ripple effects on world energy markets and raising concerns about shortages this winter. 』

ここまでがウクライナ戦争による農産品とガスへの影響の話。

『China has eased some of its most stringent COVID containment measures but recently revived travel restrictions in some areas, and its approach to the pandemic remains an upside risk for inflation.』

これは中国の生産抑制とかによる影響。

『Despite a slowdown in sales of new and existing homes, inventories of homes for sale and rental vacancies remain low, supporting ongoing increases in housing costs.』

中古住宅の供給が弱いんだそうで、その影響でレントもあがるわな、という説明を細々行っております。


・雇用に関してですが「強い」でおしマイケル

今までの流れでお察しの通り、一々現象について細々説明しているので概ね斜め読みでおっけーなのがこの講演。

『On the other side of our dual mandate, maximum employment, we continue to see a tight labor market, though there are some emerging signs that would support expectations of loosening. Yesterday's job report showed continued significant growth in hiring with the unemployment rate finally returning to the pre-pandemic level of 3.5 percent. As I am sure you all know, the job market in Kansas is even stronger, with an unemployment rate of 2.4 percent in June. In our state, finding workers is a bigger problem in most communities than finding a job.』

要約:労働市場は現在とっても強い

『One aspect of the job market that has not recovered is labor force participation. Based on the pre-pandemic trend, there are nearly four million people who are still sitting out of a strong labor market.』

労働参加率だけまだもどってない。


・今年前半のGDPマイナスに関しては軽視しますよというとにかくインフレ退治宣言にきておられる

『In contrast to this labor market strength in Kansas and nationwide, output growth has slowed this year. Real gross domestic product, GDP, edged lower in the second quarter, following a larger decline in the first quarter.』

労働市場が強いけど生産の伸びが鈍化して来たよ。ということでGDPの話になります。

『My base case is for a pickup in growth during the second half of this year and for moderate growth in 2023. As we learned during the summer and fall of 2021, both GDP and jobs numbers are subject to significant revision, both in subsequent months and then again the next year. From my perspective, had we known at the time about the eventual large upward revisions in last year's employment data, we likely would have significantly accelerated our monetary policy actions.』

年後半以降の拡大を織り込んでいるんですが、昨年の例から行くと今年もGDPと雇用数に関しては後で遡及訂正行われるのとチャウの、という何だか良く分からん話をしておる。

『Going forward, we have to consider the possibility of these kinds of revisions when making real-time judgments as policymakers, which includes looking at other kinds of indicators instead of relying too heavily on the data. Taking all of that on board, while the data on economic activity are indeed lower and the view is murky, the evidence on inflation is absolutely clear, which brings me to the implications for monetary policy.』

何でそんな話をしたのかと思ったら、「the evidence on inflation is absolutely clear, which brings me to the implications for monetary policy」と目先出てきている成長率よりも高インフレという明白な現象に対応しないといかんぜよという話にしたかったようです。


・金融政策運営についてですが75bpバンバン利上げ支持って威勢良すぎじゃねえの??

『Based on current economic conditions and the outlook I just described, I supported the FOMC's decision last week to raise the federal funds rate another 75 basis points.』

それはさっきも聞いた。

『I also support the Committee's view that "ongoing increases" would be appropriate at coming meetings.』

そうですか。

『My view is that similarly-sized increases should be on the table until we see inflation declining in a consistent, meaningful, and lasting way.』

今後も75bpづつの利上げを支持ってあんたそれやり過ぎちゃうの??????と思うのだが何かエライ威勢が良い。で、この次の一文が読んでてほほーと思ったのですが、


・フォワードガイダンスは無くなったそうですよ!!!!!!!!!!!!!!

『On the subject of forward guidance, I am pleased to see that following the July meeting, the FOMC ended the practice of providing specific forward guidance in our post-meeting communications.』

7月のFOMCを持って「フォワードガイダンス」は無くなった、という説明を理事がしているんですから、つまり先行きの金利をどうするかの話をしているのは「ガイダンス」でもなんでもなくて、「その時点におけるあてずっぽうの予想でしかない」ということなんですね。

だったらこの前の会見でパウエル75bpとか言うなよなと思ったのですが、予告ホームランに市場が飼いならされてしまっているので、この「フォワードガイダンスは存在しない」というのと、先行きの政策金利についてベラベラとFED高官が喋るのは変わらん。というのについて、もっときちんと整理しないとミスコミュニケーションの温床になるようにしか思えない。


・2020年に出したフォワードガイダンスが失敗であったことを認めている!!!!!

『I believe that the overly specific forward guidance implemented at the December 2020 FOMC meeting requiring "substantial further progress" unnecessarily limited the Committee's actions in beginning the removal of accommodation later in 2021.』

2020年にうっかり利上げ開始のために「"substantial further progress"」が必要とかぶち上げてしまったことによって2021年の利上げ着手が遅れてしまってこんな事になってしまった、とぶっこむぶっこむ。

『In my view, that, combined with data revisions that were directly relevant to our decision making, led to a delay in taking action to address rising inflation.』

データの遡及上方修正があったのも着手が遅れた原因ではある、ということですが、まあ結局「きわめて顕著な進展」というのが足かせになりましたよね、ってなもんで、ウッドワード流のフォワードガイダンス政策に砲撃しているのは大変に結構な事だと思います。マジであれは低インフレのゴルディロックス的な時以外には害悪しかないとアタクシも思うので。

『It is helpful that the FOMC provided clear direction earlier this year that it was prepared to act quickly to tighten monetary policy. Since we have now taken actions to raise rates and finally reduce the Fed's balance sheet, we are following through on that commitment.』

でまあそれはそれとして今年の頭に軌道修正したのは評価しまして、


・でまあ結局は9月FOMCまでに出るデータを見たいという話になりますがオーバーキルに関しては・・・・・・・

『Looking ahead, the FOMC will be getting two months of data on inflation and another month on employment before our next meeting in September, and while I expect that ongoing rate increases will be appropriate, given the uncertainty in how those data and conditions will evolve, I will allow that information to guide my judgment on how big the increases will need to be.』

9月FOMCまでのデータを見て次のアクションを判断するよ。

『I do expect that the labor market will remain strong as we continue to increase interest rates and allow the balance sheet to run off, but there is a risk that our actions will slow job gains, or even reduce employment. Growth has softened, and perhaps this is an indication that our actions to tighten monetary policy are having the desired effect, with the ultimate goal of bringing demand and supply into greater balance.』

金融引き締めによって成長が落ちるリスクがあって、その結果労働市場がアイヤーってなるリスクありますよね。

『When considering the risks to the labor market, these risks must be viewed in the context of its current strength and with the understanding that our primary challenge is to get inflation under control.』

と来たのですが、今の労働市場の強さを鑑み、かつインフレをアンダーコントロールにするという我々の一番のチャレンジ(って言ってるという事はアンダーコントロールじゃないって認めてやがるな)との兼ね合いで考えるべきです、って言ってるので要は多少の成長減速はシランガナという事を言いたいんでしょ。

『In fact, the larger threat to the strong labor market is excessive inflation, which if allowed to continue could lead to a further economic softening, risking a prolonged period of economic weakness coupled with high inflation, like we experienced in the 1970s.』

『In any case, we must fulfill our commitment to lowering inflation, and I will remain steadfastly focused on this task.』

ということで、とにかく物価下げるぞ物価下げるぞ物価下げるぞとマントラを唱えているのは分かった。以下はLIBOR改革と気候変動対応とその他金融規制マターになるので割愛します。



・あんまり時間が無くなったのでちょろっとだけ変態仮面を

いつもの変態仮面である。
https://www.stlouisfed.org/from-the-president/video-appearances/2022/bullard-cnbc-2022-08-03
Bullard Discusses Inflation, Rate Increases and Economic Growth on CNBC
August 3, 2022

CNBCのインタビューだからそっちを見た方が吉(前編が4分10秒、後編が3分33秒)ですが、めんどいのでセントルイス連銀の説明を見る。

『During an appearance on CNBC, St. Louis Fed President Jim Bullard offered his perspective on inflation, the federal funds rate and the U.S. economy.』

はいはいそれで?

『While acknowledging that the U.S. had two quarters of negative growth in gross domestic product (GDP), Bullard said that with all the job growth in the first half of this year, it’s hard to say there was a recession. And he said he expects third-quarter GDP growth to be reasonably good.』

労働市場の強さを鑑みると直近のGDPの弱さをもってリセッションとは言えない。

『“I think we’ll get positive GDP growth in the second half” of the year, he said.』

年後半には成長軌道に戻るでしょう。

『On managing inflation, he reiterated his call to increase the federal funds rate to 3.75% to 4% by the end of the year.』

ということで、変態仮面は4.5とかそういう過激な話はしないで、3.75-4.00%が年末の着地点と言ってます。これ自体はこの前からこの数字で言ってるので従来通りの確認ではありますが、過激派の旗は降ろしましたよね。

『Bullard also reiterated the Fed’s commitment to returning inflation to 2% over time.

“I think we're going to have to see convincing evidence across the board-headline and other measures of core inflation all coming down convincingly-before we'll be able to feel like we're doing enough and we're doing a good job,” Bullard said.』

まあ別にここは大した話をしてなくて、労働市場を壊さずに物価を落ち着かせる事は可能だと思ってる、とかそういう話ですね。変態仮面特に変更なし、を確認しただけでした。










2022/08/08

お題「雇用統計メモ/新紙幣のパンフレットですと/FOMCパウエル会見ファイナル:答えにくい質問を今回は誤魔化しまくってますねえ」

齋藤理財局長のインタビュー、ロイターさんでもございました。

https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2PA09E
2022年8月4日1:35 午後
最大規模の借換国債、来年度も大きく変わらず=斎藤・財務省理財局長

説明している内容はURL先よんでちょという感じですが、(あたりまえだけど)ブルームバーグのインタビューと説明していることの大枠は同じですけど、記事のタイトルの付け方が違いなすなー、って興味深く思いましたです、はい。


〇まあゆうて10年3%になった訳でもないが備忘メモ

ほうほうそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2ZH46A
2022年8月6日6:11 午前
米金融・債券市場=利回り急伸、雇用統計好調で積極利上げ継続の観測

『[ニューヨーク 5日 ロイター] - 米金融・債券市場では国債利回りが急伸した。雇用統計が予想以上に好調だったことで、連邦準備理事会(FRB)はインフレ抑制に向け積極的な利上げを継続するとの観測が高まった。2年債から30年債にわたり、利回りは10─22ベーシスポイント(bp)上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

あらあらあらという感じですが、先週後半になった矢っとネタにしたパウエル会見(すいません)の話っぷりだって、「先行きの物価見通しは全く分からんからもう決め打ちできないの勘弁」と言いながら「インフレ抑制は大正義」という話はボンボンとしている訳で、そもそも10年の金利水準が足元とそんなに変わらんところまで下がるっての何なのよとは思うのですけど。

『FRBが9月の連邦公開市場委員会(FOMC)でも0.75%ポイントの利上げを実施するとの観測が織り込まれたことを背景に、2年債と10年債の利回り格差はマイナス45bpに拡大。長短の国債利回りが逆転する「逆イールド」の幅は2000年8月以来の水準に拡大した。』

これをどう解釈するか、ってどうせ勢いで動いてるだけなんで(偏見)あんまり真面目に解釈しても時間の無駄ではあるのですが、(1)FEDの早期利上げインフレ退治モードによってオーバーキルが発生する、というFEDを馬鹿にしているパティーンと考えるのが普通なんでしょうけれども、(2)金利引き上げが無茶苦茶良く効くのでFEDのインフレ鎮静化が早期に達成できる、よって後ろの金利は上がらん、ということかも知れませんが、いずれにせよ金利の引き上げがインフレに効く、という前提のもとに話が進んでいるのですが、そもそも論として構造的に物価がサガランチ会長になっていた場合はそういうもんじゃないんでネーノという気もこれまたする訳ですし、大体からしてパウエルが「物価の先行きは分からん」って言ってるの、金融引き締めで物価抑制、といういつものアレがあんまり効かないんじゃないか、というのを気にしている可能性があると思うのよね(個人の感想です)。

『 終盤の取引で10年債利回りは15bp上昇の2.8287%。週初からは18bp上昇。週間の上昇幅としては1カ月ぶり大きさとなった。 30年債利回りは約10bp上昇の3.0605%。一時は3.106%と、2週間ぶりの高水準を付けた。2年債利回りは20.7bp上昇の3.2442%。一時は3.25%と、2週間ぶりの高水準を付けた。週初からは34bp上昇。週間の上昇幅としては約2カ月ぶり大きさとなった。』

ということで、毎度不思議なんだが逆イールド起きるなら10年30年がインバートするもんじゃないんでしょうかと思うのですが、10年がベンチマークだからそっちが買われるとか、10年と30年だと期間が長い分の流動性リスクプレミアムが乗るとか、そういう後付けはできるんですけど、この10年と30年の順イールドを維持しながら手前との逆イールドが深くなる、って現象は良く分からんです誰か講釈プリーズ。

という雑メモでしたサーセン。


〇ついでに新紙幣のパンフレットのご案内

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel220805b.htm/
パンフレット『生まれ変わる日本銀行券』の作成について
2022年8月5日
日本銀行

『日本銀行では、2024年度上期を目途に発行を開始する予定の新しい日本銀行券(一万円、五千円、千円)に関するパンフレット(「生まれ変わる日本銀行券」)を作成しました。

本パンフレットでは、国民の皆さんが新しい日本銀行券を親しみをもって、安心してお使い頂けるよう、偽造防止技術やユニバーサルデザイン等のほか、改刷に関する情報を紹介しています。』

パンフレットは無断転載禁止ですが(まあワタクシの場合は画像を貼るスキルが無いのでそもそも能力が無いけど、汗)、こっちにあるよということで、

https://www.boj.or.jp/note_tfjgs/note/n_other/index.htm/
教材・広報資料

の『パンフレット』の中に、

生まれ変わる日本銀行券 新しい偽造防止技術とユニバーサルデザイン
パンフレット [PDF 1,325KB]  児童・生徒向け [PDF 1,736KB]

ってのがあって(直リンはしないよ)、そこにあるのでまあ見てちょという感じですが、むしろその直下にある『弐千円物語 [PDF 881KB]』というのが、勢いで出来たもののろくすっぽ使われず悲しい人生を送る悲劇の物語でも書いてあるのかたワクテカして開けたらそんなオモシロパンフレットでは無くて、リンクを踏むときのアタクシの心のときめきを返せええええええ!!!!!って思いました(ただの言いがかり)。

まあそれはそれとして二千円物語見て、そういや後ろに何か文字っぽいのがあったのを思い出したような気がしますが、「源氏物語」の「鈴虫」だったというのをこのパンフレットで知り、なるほど鈴虫のように儚い(以下割愛)とか思いましたけど、流通額が増えてます!ってあって????と思ったら直近の数字として出てたのが平成12年10月末現在、とあって全米が泣いた。


・・・・・なんかいつの間にか新紙幣じゃなくて2000円札の話になってしまいましたことを深くお詫びいたします(棒読み)。


あと、新紙幣出ても旧紙幣は有効ですので、「生まれ変わる」と言っても旧紙幣が死ぬわけではないんので、生まれ変わりはしないんだけどなーとちょっとだけ思いました、まる。



〇すっかりおそくなるわ何日もかけるわで恐縮ですがパウエル会見の成敗残りをば

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220727.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
July 27, 2022


・そもそも25や50じゃなくて75になる理由is何??

というような素朴な質問が意外に答えにくいのですがさて何と答える。

『CATARINA SARAIVA. Hi. Catarina Saraiva, Bloomberg News. I wanted to ask a little bit more about the 75 basis points versus 50 versus 25. Can you talk a little bit about what kind of goes into your thinking for making the decision on how much to raise rates? And just talking about a very large amount that you alluded to. Could that possibly be 100 basis points? And then kind of along those lines, is there any sort of weakness in the economy outside of inflation measures that would lead you to slow your hiking pace? 』

利上げ幅の根拠がよー分からんし、その根拠次第では今後100もあるって話だと思うけど如何??

『CHAIRI POWELL. So, I'm going to take that as a question about the next meeting and thereafter.』

あーこの時点で質問の本質的な部分から逃げてますね〜って感じでして、今回のパウエル会見はここまでの会見と明らかに違うなと思うのは、質問の意図を適当に誤魔化して答えるケースが散見される所でして、今まで見た中で思ったのは、原理原則に関する部分についての説明をしれっと誤魔化しに掛かっているな、というのが見て取れる、とアタクシ思った訳ですよ。

まあ何ですな、そもそもがインフレの見通し(利上げしてきゃそのうちサプライチェーンの回復も進んで来るから上昇率も下がって来るじゃろ)というのを大外ししてしまっていて、利上げ開始した辺りでは元々のインフレ見通しに沿って堂々説明してたから、それとの整合性が取れる説明ができなくて、整合性取ろうとすると「インフレ見通しを完全に間違えてインフレを上振れさせてしまいましてゴメンチャイ」と切腹ものの説明をおっぱじめることになるので、そういうのは正面切って言わない(物価がサプライズ、とはさすがに言ってますけど、あくまでもコロナとロシアが余計な要素、としていて、自分たちがインフレを甘く見ていたとは言わない)んですよね。

でまあ結局75にしたのって、「夏の2か月FOMCが飛ぶ前に中立金利には何とか引き上げておかないと」という危機感があって、そっから逆算すると中立金利に引き上げるために6月7月を75にしたってことで、中立に上げてから2カ月様子見をしている余裕がある(というか単にスケジュールの問題ですが)ので、中立と思われる金利まではどうしても上げたかったんでしょ、としか思えないこの上げ方と、「中立になったので」連呼な訳です。

とまあそういう訳ですからして、6月7月の75bp上げってのは「7月FOMCで中立金利に上げるために逆算で計算したらこうなった」というのが本音だと邪推しているのですが、そういう話に触れたくないもんだから、最初に「I'm going to take that as a question about the next meeting and thereafter.」と先の話をすることによって、過去突如利上げペースを大加速させた事の言い訳をしないで済まそう、とパウエル大先生が逃げを打った、とまあ読んだのですが邪推ですかそうですかすいませんすいません。


では続き。

『So, as I mentioned, we're going to be looking at all those things, activity, labor market, inflation. And we're going to be thinking about our policy stance and where does it really need to be? And I also mentioned that as this process, now that we're at neutral, as the process goes on, at some point, it will be appropriate to slow down. And we haven't made a decision when that point is, but intuitively that makes sense, right?』

でまあ市場ちゃんの方は「as the process goes on, at some point, it will be appropriate to slow down.」を見てヒャッハーヒャッハーしてた(基本的に今でもしてる)んですけど、これまでネタにした部分もそうですし、今回もそうなのですが、あくまでもそれは「インフレが明確に落ち着く動きが出てきたら「利上げペースをスローダウンさせる」だけの話で、利下げに転じるとかそういう話じゃないし、しかも先行きは出たとこ勝負って言ってるんだから、インフレーションの数字とその内訳をみるのと、先週末の雇用統計にある「賃金と物価のスパイラル」がありやナシやという話を見ないと何とも言えない話ですわな。米国債券市場ヒャッハーし過ぎじゃろ。

『We've been front-end loading these very large rate increases, and now we're getting closer to where we need to be.』

「We've been front-end loading these very large rate increases」って嘘こけやと思う訳で、フロントロードに動いてるんだったら最初から利上げペースを50とかでやってろやヴォケという感じでして、利上げ着手しても全然物価がサガランチ会長どころか一段のアゲアゲになっているので、これはとにかく早く中立金利に上げんといかんぜよ、となって7月のFOMCで中立に持って行くために慌ててあげたらこうなっただけの話しじゃろ、という所ですな。

『So that's how we're thinking about it. In terms of September, we're going to watch the data and the evolving outlook very carefully. And factor in everything and make a decision in September about what to do. I'm not really going to provide any specific guidance about what that might be. But I mentioned that we might do another unusually large rate increase, but that's not a decision that we've made at all. So we're going to be guided by the data. And I think you can still think of the destination as broadly in line with the June SEP. Because it's only six weeks old. And sometimes SEPs can get old really quick. I think this one I would say is probably the best guide we have as to where the Committee thinks it needs to get at the end of the year and then into next year. So I would point you to that』

でもって、言うの止めりゃいいのにとは思うんですが、ここまで散々予告ホームランしてきた手前急に引っ込められない、ということなんでしょうが、この中でも「we might do another unusually large rate increase」と75bpの利上げを予告するものの、その前後の文脈ってひたすら「これからの状況をみないと分からんしその時になってみないとわからん」というのをああでもないこうでもないと説明している訳でして、まああんまり余計な事を言わなきゃいいのに、
とは思うのです。

中立金利水準自体が幅のある概念で後付けじゃないと分からないので何ともなのですが、一応中立金利の所まで金利が上がると、今後の利上げは物価に対してより効く、という理屈上ではそういう話になる筈なので、本来は中立から先は利上げの速度は落としても良いんじゃないか、ってアタクシなんぞは思うのですが、まあ物価上昇率が更に上がるというようなことになると急いであげるんでしょうけどね。



・バランスシートのランオフと金融環境について

政策金利話に隠れてしまっているけど折角なので確認しておきます。

『JEAN YUNG. Thank you, Mr. Chairman. Jean Yung with Market News. I wanted to ask about the balance sheet reduction program. It's been working for a couple months now and in a different environment than the last time the Fed did it. What are you learning about how it's working and how markets are reacting? And is reaching the minimum level of reserves needed in the system still several years away at the current pace? 』

バランスシートのランオフについて今まで行った分のレビューと今後についての質問ですが。

『CHAIR POWELL. So we think it's working fine. As you know, we tapered up into it. And in September, we'll go to full strength. And the markets seem to have accepted it. By all assessments, the markets should be able to absorb this. And we expect that will be the case. So, I would say the plan is broadly on track. It's a little bit slow to get going because some of these trades don't settle for a bit of time. But it will be picking up steam. 』

概ね予定通りに進行しているがもっと加速した方が良いから9月から倍速にします。

『So I guess your second question was getting-- the process of getting back down to the new equilibrium will take a while. And that time, it's hard to be precise, but the model would suggest that it could be between two, two and a half years, that kind of thing. And this is a much faster pace than the last time. Balance sheet's much bigger than it was. But we look at this carefully and we thought that this was the sensible pace. And we have no reason to think that it's not. 』

ノーマルとみられるバランスシートになるには2年から2年半かかるのか・・・・・・・・・


というのを受けて、かどうか知らんが次の人の質問。

『BRIAN CHEUNG. Hi, Chairman Powell. Brian Cheung, Yahoo Finance. Looking at financial conditions, it seems like the tightening has slowed as of late with the 10 year coming down, 30 year fixed mortgage rates also going a bit sideways when we talk about a hot housing market still. Just wondering if you find financial conditions tight enough, especially as you continue to raise rates. 』

最近市場金利が下がっていて、相変わらず住宅市場はアッチッチ状態なんですが金融環境的にどうなのでしょうかねえ、という観点からの政策金利引き上げはどうよ?という割と嫌な質問。

『CHAIR POWELL. So, a big piece of that is inflation expectations. Break evens coming down. Which is a good thing. It's a good thing that markets do seem to have confidence in the Committee's commitment to getting inflation back down to 2 percent. So we'd like to see market based ratings of inflation expectations come down.』

こりゃまた凄い斜め上からの回答になっていて笑ったのですが、金融を引き締めよう、というスタンスによってインフレ期待の沈静化を狙っており、最近BEIが下がってきているのは大変良い傾向で、これこそが利上げの効果ですヒャッハー、と全然聞かれもしないことを回答していて、これもさっきと同じパターンで、聞かれて困るネタなので、今回は斜め上から回答していったん毒気を抜く、という作業をしているのが見て取れます。

『Broader financial conditions have tightened a good bit. The way this works is we set our policy and financial conditions react, and then financial conditions are what affects the economy.』

長期金利やモーゲージ金利が意図と反対に下がってませんか最近?という質問に対して「より広い金融環境は良い方向に若干引き締まっている(キリリッ)」と斜め上の回答をしておるのですな。これ「長期金利の低下は怪しからん」ともいえないのでもう誤魔化す方向で答えるしかないって事でしょう。

『And we don't control that second step.』

あーはいはい。

『We're just going to do what we think needs to be done. We're going to get our policy rate to a level where we're confident that inflation will be moving back down to 2 percent. Confident. So that's how we're going to take it. And of course, we'll be watching financial conditions to see that they are appropriately tight. And that they're having the effect that we would hope they're having, which is to see demand moderate and inflationary pressures recede and ultimately inflation come down. 』

完全に長期金利低下に関しての回答を逃げる、という技で返しておりますので、最近の長期金利の低下に関しては困っているんだろうな、というのが把握できました。


ということでパウエルネタはこんなもんで勘弁(リセッションの質疑応答は水掛け論に終始しているので敢えてネタにしませんでした)。








2022/08/05

お題「財務省理財局長BBGインタビュー/パウエル会見(その2)先行きは分からん政策の決め打ち出来ないが物価は2%にする!とな」

ひえーーーー
https://jp.reuters.com/article/health-monkeypox-usa-idJPKBN2PA20D
2022年8月5日5:01 午前
米、サル痘で緊急事態宣言 国内感染者6600人超

〇齋藤理財局長のブルームバーグインタビューとな

イイハナシダナー。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-04/RF03H7T0AFB401
ミスターJGBが国債市場の流動性向上策を検討、日銀出口見据え
伊藤純夫、Chikako Mogi、竹生悠子
2022年8月4日 9:00 JST

記事の方はそういうヘッドラインになっているので、個別の策はナンジャラホイというのがどうせ市場何とかストトークの中心になるんでしょ、と思いますけど、一問一答の方をみるとですね・・・・・・

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-04/RG0O32DWLU6801
厚みある国債市場へ、マーケットと積極対話−財務省理財局長一問一答
伊藤純夫、Chikako Mogi、竹生悠子
2022年8月4日 9:00 JST

こっちの「厚みある国債市場へ」という方がポイントで、流動性向上策というのはその中のツールの1つとしてのお話なんですが、どうせ一問一答精読しないで「流動性向上策」に飛びつくスットコドッコイの方が多くなると思うので折角だから一問一答を拝読致しますが、結構引用することになってしまう(と思う)のでブルームバーグさんには申し訳ないので、おまいらちゃんと上記URL先の記事を読んでアクセス増に寄与して下さいお願いします。

なのでしつこく再掲。以下「一問一答」の方のURL先から引用します。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-08-04/RG0O32DWLU6801
厚みある国債市場へ、マーケットと積極対話−財務省理財局長一問一答


・ポイントは「円滑な国債消化」ですからねー

『ー国債管理政策

「国債を発行して財政に必要な資金を確実に調達することが、われわれの使命であり、その上で、できるだけ低いコストで調達することが課題だ。どうやって低コストで調達するかは、市場とよく対話してと一般的には言われるが、市場との対話と一言で言っても簡単なことではない。』

そらそうよという話で、そらあーた何とか懇の議事要旨見てたらおまいら今時点のポジションに都合の良い話しかしとらんじゃろ、というのがゾロゾロと散見されるわけでございまして、そんなのを一々全部真に受けて反応するのが良いのかというと、それこそ中長期的な視点での国債の安定消化、という意味では逆になってしまうかも知れない(ニーズがあるからホイホイ増発して突如ニーズが無くなったからと言って今度は発行減額、とかやると償還構成に歪みが生じますから将来的な再調達の事まで考えたら償還年限をどう決めるのか、ってのは足元の市場だけ見てればよいというもんではないですからぬ。

『常に重要なマーケットの流動性、厚みをどうやって確保していくのか、われわれだけではなく、ディーラーや投資家の方々と意見交換しながら考えていきたい」』

記事のタイトルにもなっていますが、この「厚み」って重要な言葉で、アタクシが勝手に解釈すると、参加者というか投資家層というかの「多様性」ってダイジダイジネーという話だと思う訳ですよ。市場の規模が大きくて残高が大きいから市場の厚みがあるかというとさに非ずで、多様な属性の資金が入って来ると、それこそ何とかショックみたいな時に、「恒常的にこのカテゴリーの投資家が買ってくる」というのが物凄く重要なバッファーになってくれますし、規模が何ぼ大きくても投資家の種類が乏しいと、行動が一方方向になってしまうのであります。

でまあそういう意味では(規制する趣旨は大いに分かるので別に規制が悪い訳では無いのですけれども)どうしても規制がガチガチしてくると、それだけ投資家の行動様式が(規制対応の結果)一様になってしまう、というこれは金融安定化のコインの裏表みたいな話になってしまうのでシャーナイ面はあるのですが、どうしても一連の金融規制強化によって、預金金融機関の運用に対しての制約とかが強くなっていると思われますので、「厚み」を確保するのって昔よりも難しくなってるんじゃないかなーと思うんで、これも中々重いネタだと思いまする。


・ヘッドラインにならないようにしれっと砲弾を撃ち込んでいるのが手練れwww

『ー優先的に取り組むべき課題

「今の日銀の金融政策が未来永劫続くわけではない。タイミングは分からないが、日銀が日本国債の主たる買い手でなくなる時がいずれ来る。再び民間投資家が中心のマーケットになっていく時に備えて市場の流動性を高め、厚みを増すために、発行当局としてできることは何か、何が残っているのか総点検を行い、市場を整備していく必要がある」』

(;∀;)イイハナシダナー

『「私の理財局長としての任期は1年だと思っており、その間に国債市場が再び動く時への備えとしてのツールをきちんと整理したい。私がいる間に市場が動くかは保証の限りではないが、』

>その間に国債市場が再び動く時への備え
>私がいる間に市場が動くかは保証の限りではないが

どう見てもポスト黒田(またはその前)を意識しています本当にありがとうございました。

『これまで国債管理政策に長く関わってきた人間として準備を整えたい。部下には、検討作業に入るように指示している」』

まあ何ですな「投資家層の多様化」ってのをどうするのか、というのって既に出口政策が金利の方は完了(APPはまだ出口途上ですが)しているFEDのケース見ても、米国国債市場の流動性は世界1ぃ〜!ってやってたはずのあのUST市場があのジャイアントスイングな訳でございまして、いやまあ今まで経験してない状況だからジャイアントスイングするってえ面も勿論あるんですが、やっぱり過去と比較して流動性が無くて直ぐに値が飛んでしまう、という問題があるようで、USTの場合はバーナンキの時のテーパータントラムで一瞬板無し相場の大暴落ってのやって、FEDも色々な考察を行った紙とか講演とかあった訳ですが、本邦でもこの問題というのは大きいことになりそうですわなーと思います。

結局のところは「安定して買う人」ってのがある程度いるかいないかって価格形成におけるバッファーが全然違う(と体感的に思っているだけで別にちゃんとした調査をした訳ではない)と思うので、そういう層をどうやって今のクッソ金利の市場に呼べるのかとか、呼べなくても金利が復活した時にそういう層を取り込めるのか、って話じゃなかろうか、とは思うのですけど、とツールとあんまり関係のない方向に直ぐ話がいってしまうワイ。


・ここにBBGが付けた図表の意味is何??

ちょっと先に行きまして(途中見たければBBGの記事URL先へどうぞ^^)。

『−6月には日銀の緩和修正観測を背景に、海外投資家の国債売りが膨らんだ

「市場が不安定化したり、ボラティリティが過度に高い状況は望ましくない。市場の安定や市場機能の円滑な発揮が確保されるように日銀と十分に意見交換し、お互いに何ができるかを考えていく。日銀が行うオペレーションについて何か工夫の余地があるなら行ってもらいたいが、具体的にこれをやってほしいというものがあるわけではない」』

とあるのは良いんですが、その次に『国債購入は低金利実現に不可欠 YCC防衛で6月に急増』ってのがあって日銀の国債買入額についての表をくっつけてて、最初局長がこのタイトル部分言ったのかと思ったのですが、上記引用部分だと「市場機能の円滑な発揮」とかしれっと打ち込まれていて、この言葉があるのに「国債を無限に買って市場機能を殺してでも金利を上げるな」とは言わない筈なんですが、この図表が挿入されているのがイマイチ意味が分からん次第で、なぜこの図表が挿入されたのでしょうかねえ。しかもこの部分だけ唐突に図表が入ってるのよね・・・・・・・・・・



・海外投機筋の売り仕掛け云々

『ー国債発行が累増している中で、仕掛けられるリスクが高まっていないか

「国債価格が暴落しないようにできる限りのことをやるのは、国債発行当局であるわれわれの仕事。流動性を高め、市場の厚みを増すことで、投資家が買いやすいマーケットをつくってきたし、同じことを引き続きやるつもりだ」』

ここでも「流動性を高め、市場の厚みを増す」というのがキーワードになっている訳でございますが、なにせ日本銀行様におかれましてはマイナス金利政策とYCC政策によって市場参加者の追い出しを行うというプレイを長年にわたって継続しておられたわけでございますので(現実問題マイナス金利政策で日本のMMFが追い出されて事業閉鎖になりましたからぬ)、このキーワードってしれっと本石町方面への砲弾になっているのがオソロシス。

『「国債の発行量が増加しているということは、市場規模が拡大していることにもなる。より大きくなっている日本国債のマーケットに対して過去と同じくらいのインパクトを与えようと思うのであれば、より大きな量で売ることが必要になる。それだけのリスクをとって海外投資家が売ってくるのか、ということも考えた方がいい」』

仰る通りなんですが、日銀のアホウが国内円で運用する投資家をプレーンな金利市場から叩きだす(まあそれを「ポートフォリオリバランス効果」って言ってたんだが)というプレイをすることによって、日本国債市場における海外投資家(というか投機家というか)の存在感を相対的に上げてしまった面もこれまたあったりして、結局最初のキーワード「市場の厚み」に戻って来るんですよねー。

とまあそんなことウダウダ言ってるワタクシとしてもこれはー単純に割り切れない話だとは思うだが、こちらの話を見て転がらない論点をちょっとアタクシ転がしてみましたの巻です。



〇引き続きボチボチとFOMCパウエル会見を見ますが

昨日の続きですけどね(基本的にFEDの会見は最初の方で概ね重要な論点を記者の方々が網羅してくれるので非常にありがたいんですよね)。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220727.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
July 27, 2022


・コアかヘッドラインかという話もあるが「先行きの見通しは正直分からん」と言ってるパウエルはん

WSJのニックの質疑まで昨日やりましたがその先。

『JEANNA SMIALEK. Hi, Chair. Thanks for taking our questions. Jeanna Smialek, New York Times. You kind of alluded to this earlier, but I wonder in the event that you see several months of very weak headline inflation numbers because oil prices are coming down so much, but core inflation continues to be strong or even picks up, I wonder how you would think about that?』

最近はヘッドラインのインフレが石油価格の下げで下がって来たけどコアが上がっとるんだがどっちを見てインフレ動向判断すりゃええのかね。みたいな聞く方も分かってる癖にイケズな質問がぶち込まれる。

『CHAIR POWELL. So, it's hard to deal with hypotheticals. But I just would say this. We would look at both and we'd be asking ourselves are we confident that inflation is on a path down to 2 percent? That's really the question.』

『And we'll be making-- our policy stance will be set at a level, ultimately, at which we are confident that inflation is going to be moving down to 2 percent.

コアとヘッドラインの両方みながら2%に向かって進んでるかどうかを判断し、適切な政策運営をします、という話ですが・・・・・・

『So, it would depend on a lot of things. Of course, as I mentioned, core inflation is a better predictor of inflation going forward, headline inflation tends to be volatile. So, in ordinary times, you look through volatile moves in commodities. The problem with the current situation is that if you have a sustained period of supply shocks, those can actually start to undermine or to work on de-anchoring inflation expectations. 』

『The public doesn't distinguish between core and headline inflation in their thinking. So it's something we have to take into consideration in our policy making even though our tools don't really work on some aspects of this, which are the supply side issues. 』

昨日引用した部分でも「今はオーディナリーな時じゃないから難しい」というのを言ってましたが、こちらでも今はオーディナリーな時じゃないので、コアインフレが良いインディケーターとして機能しているかというとそうかもしれないけどそうじゃないかもしれないし、しかも現状で問題になっているのは通常時のようにインフレ期待がアンガーされている前提そのものもアレで、インフレ期待が上振れてしまうリスク、ってのがあるので・・・・という形で、結局これあーだこーだ言ってるけど「物価の先行き全然わからん」とバンザイしておられるようにしか読めないんですよねアタクシには。


・リセッションありやなしや問答

次の人はリセッションありなし問答を投下しました。

『STEVE LIESMAN. Steve Liesman, CNBC. Thanks for taking my question, Mr. Chairman. Earlier this week, the president said we are not going to be in a recession. So I have two questions off of that.』

バイデンさんが「我々はリセッションに向かっている訳ではない」(キリッ)と言った件について聞くわ。

『Do you share the President's confidence in not being in a recession,』

『and second, how would or would not a recession change policy? Is it a bright line, sir, where contraction of the economy would be a turning point in policy? Was there some amount of contraction of the economy the Committee would be willing to abide in its effort to reduce inflation? 』

1番目は「バイデンに同意ですか?」なのでどうでもよいが、インフレ退治のために政策やってる中で、リセッションになったら金融政策どっち方向に舵を取るのか?という質問。

パウエルはんの回答

『CHAIR POWELL. So, as I mentioned, we think it's necessary to have growth slowdown. And growth is going to be slowing down this year for a couple of reasons. One of which is that you're coming off of the very high growth of the reopening year of 2021. You're also seeing tighter monetary policy. And you should see some slowing. We actually think we need a period of growth below potential, in order to create some slack so that the supply side can catch up. We also think that there will be, in all likelihood, some softening in labor market conditions. And those are things that we expect, and we think that they're probably necessary if we were to have-- to get inflation. If we were to be able to get inflation back down on the path to 2 percent and ultimately get there.』

前半のどうでもよい質問の方にうだうだ答える。これはいつもの「答えに困っているのでとりあえず回答できるものを朗々と回答して何とか煙に巻こうスキーム」でありますが、そんなもんで許してくれる訳もなく、

『STEVE LIESMAN [INAUDIBLE] the question was whether you see a recession coming and how you might or might not change policy.』

2番目の質問に答えやがれと来ました。

『CHAIR POWELL. So, we're going to be-- again, we're going to be focused on getting inflation back down. And we-- as I've said on other occasions, price stability is really the bedrock of the economy. And nothing works in the economy without price stability. We can't have a strong labor market without price stability for an extended period of time. We all want to get back to the kind of labor market we had before the pandemic where differences between racial and gender differences and that kind of thing were at historic minimums, where participation was high, where inflation was low. We want to get back to that. But that's not happening. That's not going to happen without restoring price stability. So, that's something we see as something that we simply must do. And we think that we don't see it as a trade off with the employment mandate. We see it as a way to facilitate the sustained achievement of the employment mandate in the longer term.』

見事に「物価安定が全てに優先して重要です」話を延々と繰り返しておりまして、物価安定しないと安定成長しないと言った後に、物価安定の下でないと我々の目指すオールアメリカンがベネフィットする労働市場になりません(キリッ)と回答して、結局「物価高騰下でのリセッションの時におんどれはどういう政策スタンス取るんじゃい」という質問に一切回答しない、ということで、まあ何と申しますか利上げ着手した時あたりのハキハキした回答から、前回もその傾向がありましたが、もう今回って「先行き」に関する話をするのを明らかに逃げて回っている、というような質疑応答になっていますね。

でもって昨日引用した冒頭部分を踏まえると、アタクシがこれは勝手に妄想しているだけではあるんですけれども、「FEDは物価の先行き見通しに関して自信を完全に喪失している」って事だと思うんですよね。だからもうフォワードガイダンスじみた話はしたくない(できない)ので逃げ回ってるんだと思うの。


でもって字面だけ見てると何でこれがUST市場ヒャッハーになる(なった)のかが意味わからんけど、この辺りの逃げっぷりが「経済の先行きに自信を無くしている」という風にとらえられたのかなーとは何となく思いましたんですが、次の所でさらに追い打ちが掛かる。


・利上げのやりすぎとやらなさすぎのリスク認識についての話は(最初だけ見ると)確かに米国国債市場がヒャッハーしたくなるかも

『HOWARD SCHNEIDER. Howard Schneider with Reuters. Particularly in regard to expectations, it's been said the last few months that the risks of doing too little outweighed the risks of doing too much. Does that remain the bias? 』

利上げのやらなさすぎとやり過ぎのリスクについて、以前はやらなさ過ぎになった時の方が災厄が大きいって認識でしたが今の時点ではどうお考えですか?という諸葛孔明の罠のような質問。

『CHAIR POWELL. So, we're trying to do just the right amount, right? We're not trying to have a recession. And we don't think we have to.』

まあこれ自体は普通の見解ではあるのですが、リセッションも辞さずFF4.5%じゃーみたいな捉えられ方をしていた時期があっただけに、こういわれると腰砕けキタコレとヒャッハーしてしまいたくなるのは分かる。

『We think there's a path for us to be able to bring inflation down while sustaining a strong labor market. As I mentioned - along with --in all likelihood, some softening in labor market conditions. So that is-- that's what we're trying to achieve, and we continue to think that there's a path to that. 』

と、また強い労働市場を維持しながらインフレを押し下げていきまっせ、という話をおっぱじめる。

『We know that the path has clearly narrowed, really based on events that are outside of our control. And it may narrow further. So, I do think, as I said just now, that restoring price stability is just something that we have to do. There isn't an option to fail to do that. Because that is the thing that enables you to have a strong labor market over time. Without restoring price stability, you won't be able, over the mediumand longer term, to actually have a sustained period of very strong market conditions. So, of course we serve both sides of the dual mandate, but we actually see them as well aligned on this.』

結局「引き締めのやり過ぎとやらなさ過ぎのリスクはどっちか」というのに対する答えは回答しないままになっております。ただまあこの点は「その時の金利水準の発射台がどこにいるのか」によってもリスクが違う訳でございまして、以前は金利が超緩和的だったから緩和を引っ張るリスクの方が大きかったというのはあるし、そう答えてしまえばよいだけの気もするんですが、とにかく今回の会見の特徴として「先行きの話はできるだけしない(と言ってる割には9月の75bpだけは話してますが、それ以外方向性の話しとかターミナルレートの話しとか、出来るだけ逃げているのが読み取れると思うんですが)」ってのがあるんじゃなかろうかと(個人の感想です)。

全然回答しないので更問で追撃。

『HOWARD SCHNEIDER. As a follow on to that, given the uncertainty and that sort of paradoxical flow of data you've been getting, if you're going to make a mistake, would you rather make the mistake on doing too much, raising too much, than raising too little?』

wwwwww

お答え。

『CHAIR POWELL. We're trying not to make a mistake. Let me put it this way, we do see that there are two sided risks. There would be the risk of doing too much and imposing more of a downturn on the economy than was necessary, but the risk of doing too little and leaving the economy with this entrenched inflation, it only raises the cost. If you fail to deal with it in the near term, it only raises the cost of dealing with it later.』

ちょっと前に引用した部分で「インフレ退治が一番大事で物価安定しないと何も始まらない」と言ってたのと話は平仄があってて・・・・・・・・

『To the extent people start to see it as just part of their economic lives. They start to factor high inflation into their decisions, on a sustained basis. When that starts to really happen, and we don't think that's happened yet, but when that starts to happen, it just gets that much harder. And the pain will be that much greater. So I really do think that it's important that we address this now and get it done. 』

利上げが足りなくて高インフレを定着させてしまう方が後の対処が大変だしペインも大きい、と思いっきり言ってまして、政策金利が中立になったからバランスは変わりうる、などという微温的なことは言わずに、思いっきり「利上げ足りないリスクの方が利上げやり過ぎリスクよりもでかい」って言ってて、結論からしたら、これはやっぱり「物価を頑張って押し下げますよ」と言ってるのと同じですし、そういう意味では先日来急に大合唱になった連銀幹部の「インフレ抑制大正義」連呼もパウエルの説明と同じ趣旨である、ということになるかと思うので、市場の反応見て「これはちゃんと伝わってない」ということになって大合唱が開始された、と考えてもなんらおかしくはないな、と思いました。

つまり「先行きの物価動向はわからんし、もう予告ホームランもガイダンスもやりやくないけど、物価だけはとにかく抑え込みに行くよ」という事だと思ったんですけどどうですかねー。





2022/08/04

お題「FOMCパウエル会見を今更読み出しますが先行き見通しの自信がまるでないのは把握した」

これからそろそろ夏枯れ、と思ったらFEDの高官ちゃん昨晩と一昨晩で
おまいら何人喋ってますねんという風情です。

とは申しましてもどうせ再来週が空白ウィークになりそうですから、まあ
ジャク穴までに色んな論点を整理しておこうかということで第一弾は
パウエルの会見ちゃんである(1週間熟成ネタですいませんすいません)。


〇出遅れでスイマセンがFOMCパウエル会見

オープニングリマークまで当日の朝読んだというのにその後が遅いのですが、日本と両方同時ぶっこみになるのでこうなる。というか3極の中銀2週間くらいずらしてMPMやってくれませんかねえ(ただの自己都合)。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20220727.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
July 27, 2022


・最初「なんで100bpじゃないんですか議論しませんでしたの?」というジャブの応酬

てな訳でQAの一発目から参ります。

『RACHEL SIEGEL. Hi, Chair Powell. Thanks for taking our questions. Rachel Siegel from The Washington Post. I'm wondering if you can walk us through your thinking around the decision not to go for a full percentage point increase? We saw a ramp-up after the May CPI report came in hotter than usual. And then obviously the June figure did, too. Was there any discussion of a stronger hike at this meeting? Thank you.』

5月6月分のCPIが大変に強かったのですが100bp利上げって検討しなかったのけ?

『CHAIR POWELL. Sure. So, we did judge that a 75-basis point increase was the right magnitude in light of the data in the context of the ongoing increases in the policy rate that we've been making. I'd say that we wouldn't hesitate to make an even larger move than we did today if the Committee were to conclude that that were appropriate. That was not the case at this meeting. There was very broad support for the move that we made. You mentioned the June meeting. We had said many times that we were prepared to move more aggressively if inflation continued to disappoint. And that's why we did move to a more aggressive pace at the June meeting as we said we would do. At this meeting, we continued at that more aggressive pace as inflation has continued to disappoint in the form of the June CPI rating.』

必要と思ったときに100上げるのは躊躇しませんけど今回は75でおけ。という余裕の返しである。


・2番目の質問に対する大演説で色々な論点に言及するの巻

『COLBY SMITH. Thank you so much for taking our questions. Colby Smith with The Financial Times. As the Committee considers the policy path forward, how will it weigh the expected decline and headline inflation which might come as a result of the drop in commodity prices against the fact that we are likely to see some persistence in core readings in particular?』

『And given that potential tension and signs of any kind of activity weakening here, how has the Committee's thinking changed on how far into restrictive territory rates may need to go? 』

ジャブの次はド直球の質問でして、どっちも先行き政策パスの話しなんですけど、前半は「国際商品市況が下がって来る時にどのくらいコア物価の動きに影響するのか」という点で後半は「足もとで経済のテンションが下がってきているような指標も見られる中で引き締め的な金利にどの程度持って行くのか」という話ですけれども・・・・・・・・


・今回の政策金利は中立水準なので更に利上げが必要

『CHAIR POWELL. So, I guess I'd start by saying we've been saying we would move expeditiously to get to the range of neutral. And I think we've done that now. We're at 2.25 to 2.5 and that's right in the range of what we think is neutral.』

長広舌回答の冒頭に「今の政策金利は中立水準」を(オープニングリマークでも言ってましたが)ぶっこんできておりますが、これは「話の出発点はここですよ」なのであって、経済に対して中立な水準まで政策金利を上げてみたものの、ではその後物価がどう推移するか、ってのを見て、まあ普通に考えてここから急に2%に向けてさがってくれるわけもない(もしそうなら中立金利の推計がおかしいという話にはなりますけれども)ので、じゃあ目標達成に向けてどのくら引き締め的にすべきか、というのが9月に議論されることになる、って話ですよね。

『So, the question is how are we thinking about the path forward. So, one thing that hasn't changed-- won't change is that our focus is going to continue to be using our tools to bring demand back into better balance with supply in order to bring inflation back down. That will continue to be our overarching focus.』

我々の政策ツールを使って経済の需要と供給のバランス(というかインバランス)を調整していくのが今後の運営、という中で、金融政策で影響与えられるのは需要側だし、使うのが「我々のツール」なんだからそれは金融引き締め以外にあり得ない、という当たり前の回答をしていますし、(オープニングリマークにもありましたように)多少景気減速が見えているからといっても、「需要を下げる」為に利上げしているんですから、多少経済がコケたからと言ってホイホイと金融緩和に戻したら物価がサガランチ会長になってしまうんですから、土台の時点でアメリカンな債券市場の人たちの「23年になったら利下げに転じる」ってのは想定として無理があるという事ではありますな、

『We also said that we expect ongoing rate hikes will be appropriate. And that we'll make decisions meeting by meeting. 』

よって今後利上げはするけどその判断自体は出たとこ勝負だよ。


・何を判断のメルクマールにするのか、という問いの分は華麗にスウェイしていますが・・・・・・・・・

『So, what are we going to be looking at? We'll be looking at the incoming data as I mentioned, and that'll start with economic activity. Are we seeing the slowdown that we-- the slowdown in economic activity that we think we need? And there's some evidence that we are at this time. Of course, we'll be looking at labor market conditions. And we'll be asking whether we see the alignment between supply and demand getting better, getting closer.』

いろんな経済指標をみてまっせ、ですね。 次が問題の物価。

『Of course, we'll be looking closely at inflation. You mentioned headline and core. Our mandate is for headline, of course, it's not for core. But we look at core because core is actually a better indicator of headline. And of all inflation going forward. So, we'll be looking at both. And we'll be looking at those both really for what they're saying for the outlook rather than just simply for what they say. But we'll be asking. Do we see inflationary pressures declining? Do we see actual readings of inflation coming down? So in light of all that data, the question we'll be asking is whether the stance of policy we have is sufficiently restrictive to bring inflation back down to our 2 percent target? 』

『And it's also worth noting that these rate hikes have been large and they've come quickly.』

政策目標のマンデートはコアではなくてヘッドラインですが、コアはインディケーターとして重要なのでどっちも見てまっせ、ということですが、物価上昇圧力が下がって来るか、とか実際の物価が下がって来るか、とか、そういうのを見て政策金利の調整度合いが適切かを見て行きます、ということを言ってまして、これすなわち物価がサガランチ会長のままだと政策金利は引き上げられたあと維持されますよ、という話をしていると思うの。


・現在までの金融政策運営の効果は全部出てきている訳ではないがmoderately restrictive levelまでは金利上げるよ

というのが続きます。

『And it's likely that their full effect has not been felt by the economy.』

だったら利上げここで止めるのか、というとそれはさに非ずで、

『So, there's probably some additional tightening, significant additional tightening in the pipeline.』

つまり利上げ足りないって言ってるのね。

『So where are we going with this? I think the best-- I think the Committee broadly feels that we need to get policy to at least to a moderately restrictive level.』

少なくとも「moderately restrictive level」と言ってて、中立金利自体が幅のある概念であって一応2.5%は今までのFEDの考えに整合的な水準とは言え、ぶれを考慮すると「moderately restrictive level」ってのは3%よりは上じゃろ、というのは想定つくし、アタクシ的には年末3.5%の着地を見てるんじゃないかなあとは思っているのですがどうでしょうかね(低いかな〜)。

『And maybe the best datapoint for that would be what we wrote down in our SEP at the June meeting, so I think the median for the end of this year, the median would have been between 3 and a quarter and 3 and a half.』

と思ったら何のこたあないパウエルもSEP持ち出して3.25-3.50が年末の着地として適正と6月のSEPでは申しております、と来ました。


・そして性懲りもなく予告ホームラン(ただしヘッジクローズ付き)

『And then people wrote down 50 basis points higher than that for 2023. So that's-- even though that's now six weeks old, I guess, that's the most recent reading. Of course, we'll update that reading at the September meeting in eight weeks. So that's how we're thinking about it.』

9月FOMCまで8週間あるからその間のデータを見ます、とだけ言ってればよいようなもんだが、

『As I mentioned, as it relates to September, I said that another unusually large increase could be appropriate, but that's not a decision we're making now. It's one that we'll make based on the data we see. 』

「another unusually large increase 」ってunusually large increaseというのが50bpを上回る利上げを意味しているので、まーたこのオッサン75が適切、と仰せになってるのエエカゲンニセエ、とは思うのですけれども、一応その後に、「but that's not a decision we're making now. It's one that we'll make based on the data we see.」と言ってますね。

こういうの日本だと大変便利な「よー知らんけどな」というヘッジクローズがあって、このパウエルの説明も、but以下は「よーしらんけどな」と意訳が可能になっております。公式の会見でまさか「知らんけど」とか言いながら説明する人もいないので実は日本でも使えないけど便利なのが「よー知らんけどな」という味わいの深い日本語ということですな。

『And we're going to be making decisions meeting by meeting. We think it's time to just go to a meeting by meeting basis and not provide the kind of clear guidance that we had provided on the weighted neutral.』

で1ページ半ほどになる大演説が終わるのですが、ここの説明で何度も言ってるのが「meeting by meeting」だの「by meeting basis」だので、散々(勘定してないけど)連呼していまして、さすがのパウエルもここにきて「先行きどうなるか分からん状況における予告ホームランの弊害」について気が付いたんでしょうけれども、今まで散々予告ホームランやってたので、そう急に外すわけにもいかなくて、その代わりに「出たとこ勝負」なのを連呼しまくって予告ホームランを中和しようとしている、というのは分かりました。



・市場の来年利下げ観測についての所感を聞かれたらまさかの「来年の事など決め打ちできません」回答キタコレ

次の質疑です。

『NICK TIMIRAOS. Nick Timiraos, The Wall Street Journal. Chair Powell, you've said the policy works through influencing expectations and that policy needs to be at least moderately restrictive, which means you need financial conditions to stay tight. Future's market pricing currently implies you will raise rates this year along the lines of your June SEP, but then lower them a few months later next year. Are these expectations consistent with the need to keep financial conditions tight in order to moderate purchasing power and bring inflation back to 2 percent?』

今の説明(需要を抑制しようという金利引き上げ方向性)によると、(政策金利だけじゃなくて)金融環境をタイト化する、というのもあると思うが、という話から始まっているのですが、質問は市場の来年利下げ観測かつそれに沿ったプライシングへの評価を聞いてます。

ご回答

『CHAIR POWELL. So, I'm going to start by pointing out that it's very hard to say with any confidence in normal times - in normal times - what the economy's going to be doing in six or 12 months. And to try to predict what the appropriate monetary policy would respond-- of course, we do that in the SEP, but nonetheless, you've got to take any estimates of what rates will be next year with a grain of salt. Because there's so much uncertainty.』

ノーマルな時代だったとしても6か月とか12か月先の先行き予想をズバリピンポイントで言うわよ!とか出来ない上に、今の時代はノーマルではない(パンデミックの後遺症とかロシアウクライナ戦争とかがの従来と全然違うものがある、という意味でしょうな)ので来年の金利とか言われてもシランガナ、とか華麗にお答えしているんだが、じゃあおまら何で2年先の年末の金利水準をピンポイントでSEPに書かせるんだよと思うので、この回答いささか微妙で、狙っている(SEPの中での政策金利ドットチャートと無くすのを狙ってて、その為にこういった)のか狙ってないのか良く分からんけど、しらっと地雷発言ではある。

『These are not normal times. There's significantly more uncertainty now about the path ahead than I think there ordinarily is, and ordinarily it's quite high. So, again, I would-- the best data, the only datapoint I have for you really is the June SEP, Which I think is just the most recent thing the Committee's done. Since then, inflation has come in higher, economic activity has come in weaker than expected. 』

ああだこうだ言ってるけど、結局「こんな正常じゃない時代に先行きどうなるとか自信もって言えませんわ」と清々しいまでのシランガナ発言です。

『But at the same time, I would say that's probably the best estimate of where the Committee's thinking is still. Which is that we would get to a moderately restrictive level by the end of this year, by which I mean summer between 3 and 3 and a half percent, and that when the Committee sees further rate increases in 2023. As I mentioned, we'll update that of course at the September meeting. But that's really the best I can do on that. 』

じゃあ何で先行き利上げガーとか言うんだよ馬鹿、とツッコまれる前に自分で解説してますが、そうは言っても物価水準が高止まりしてるし、政策金利の水準はやっと中立になったばかりだし、そらもう利上げが適正なのはわかりまっせ、と締めています。何というヤケクソ回答。


更問が飛ぶ。

『NICK TIMIRAOS. You said inflation had been a little bit hotter than anticipated. Has your view of the terminal rate changed since June?』

たしかあんさん物価は予想よりもアチアチ状態だとゆうとったがターミナルレートは変わらんのか?と仕方がないので別の視点から突撃の巻ワロタ。


『CHAIR POWELL. So, I wouldn't say it was-- I think we didn't expect a good reading, but this one was even worse than expected, I would say. I don't talk about my own personal estimate of what the terminal rate would be.』

今度は「私は自分のパーソナルなターミナルレートが何ぼかという話はしません」で逃げる。

『I will write down that in-- it's going to evolve. Obviously, it has evolved over the course-- I think for all participants, it has evolved over the course of the year. As we learn how persistent inflation's going to be. And by the time of the September meeting, we will have seen two more CPI readings and two more labor market readings. And significant amount of readings about economic activity and perhaps geopolitical developments, who knows. It'll be a lot-- it's an eight-week intermeeting period. So I think we'll see quite a lot of data. And we'll make our decision at that meeting. Based on that data. 』

ということで逃げた後にああだこうだ言ってるのは要するに「データ出てから考えます」という超出たとこ勝負の話でありまして、まだ3問しか読んでませんけど、先行きに関しては一応「9月75bp」の予告は打ってるけど、今回に関しては「よー知らんけどな」「先行きは出たとこ勝負よ」「こんな複雑怪奇な情勢の中で先行き決め打ちとかできませーん」ってのが連呼されている訳でして、まあ先行きの事に関しては意見が分かれ捲っているのか、そもそも本当に先行きが読めないから何も言いたくないのか、その辺は分かり兼ねますが、見通しには全然自信がない、というのは良く分かりました。

続きは明日以降。




2022/08/03

お題「日米ともにここからは(ジャクソンホールを除けば)物価推移見た方がエエンチャウかと思うという雑ネタである」

いやー暑いわ蒸すわだし冷房を友にするとだるくなるしでいただけませんなあ、という小学生並みのことしか思い浮かばないワタクシorz

〇直近の物価関連みますと日本も次は市場アタック云々ではなく直球で物価に注目が集まるべきという雑談

・基調的な物価という奴を見るとどう見ても広範囲な価格上昇です本当にありがとうございました

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/

図表の方をみましても大概でございますが、データを拝読いたしますと・・・・・・

例によって左から順に刈込平均値、加重中央値、最頻値、になりますが

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2
Dec-21 0.9 0.1 0.3
Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5

加重中央値+0.5%きたあああああああああああ!!!!!!!!!!!

というのがどーゆーことかと言いますと、上記の先にリンクされてるエクセルをポチっとなとして出していたければ猫でも分かるのですが、2001年の本データ計測開始以来、過去の加重中央値って+0.2%までしかマックスでも行かず、一方でミニマムは2015年以降の数値で0.0%だったので、ざっとこの6年は+0.0〜+0.2で超安定していた数字なのですよね。

ところがですよ、この数値が4月に+0.3%、5月に+0.4%、6月に+0.5%と上昇している訳で、これをノルムが変わったと言わずに何という、とまあそういう世界で、物価の上昇が資源価格や食糧などの輸入価格で一時的に上がっているだけです(キリッ)って説明している場合じゃなくて、どうみたってこれ「2%物価安定目標に向けて、。ようやく山が動き出しました(というとおたかさんのフラグになってしまうのでイクナイ説とか言っても知ってるの年寄りだけですかそうですか)」って何なら日銀職員の皆様が「奉祝」の提灯ぶら下げて提灯行列して然るべき動きになりますわな。

さらにこれですよこれ。

左から、上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率、の順

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9
Dec-21 58.8 34.3 24.5
Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0

こちらにしても上昇品目比率71.3%ってのは2001年1月以来最大値で、5月の69.2が既往ピークを更新して今回更に更新となっていますし、上昇ー下落のポイントについても、49.0はやはり2001年1月以来の最大値、こちらは2016年の3月に45.5ポイントってのを付けてたことがありましたが、今回それを上回るポイントになって参りまして、どっからどう見ても広範な価格上昇が生じていますし、従来梃子でも動かなかった加重中央値が伸びているんですから、これはどっからどう見てもノルムに動きがある、という事を意味する訳ですな。

まあ何ですな、これ見ますと適合的期待形成の理屈は正しかったというか、フォワードルッキングな期待形成なんて最初からなかったんや!!!!というのも良く分かるし、つまりは日銀当座預金残高を10%増やすと予想インフレ率が0.44%ポイント上昇する、という理論はゴミオブゴミだったし、あんなもん信用して日銀副総裁とかに(以下の記述は内務省検閲により削除されました)。


・・・・・・しかしですよ、この調子ですとどう見たって「一時的」というの無理がないでしょうかね、と思ったのですが、そこは日本の最高レベルの頭脳を活用して屁理屈を捏ねることに日々研鑽を怠らない日銀様が先般の展望レポートで「本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと」に上昇幅を縮小する、という見通しをだして、年内物価が3%に仮に届こうとも「これは一時的」と年内までは言い張れる、という布石を先般の展望レポートでしておるわけでございます。

とは言いましても、これ実際問題として物価がサガランチ会長どころか上がってばっかりいる、という事象が生じますと、1年近く上昇してしかもここ20年来見てないような物価上昇が起きているのに本当に一時的なのか、という議論が沸き起こって来ますし(もしかしたら10月の展望レポートで目先の物価が高い、というのを先送りするかもしれないけど)、年内終わってから物価がサガランチ会長になれば「日銀の物価見通しはそもそもおかしい」というような話に発展していくわけですよ。

まあそんなこともあって今回の黒田さんの会見、雨宮さんの講演、主な意見と、「賃金が上がらないと物価があがりません」に軸足を移しだしているのですが、そもそも大遅行指標であるところの賃金を政策運営の羅針盤にするとかどっからどう見ても大失敗のリスクしかない、というのは分かっていると思うのですが(何ぼ何でも黒田さんや雨宮さんは分かってるでしょ、他のポンコツは知らんけど)、そこまでしないと誤魔化し切れない、ということでして・・・・・・・・・・・


・東京都区部の物価もでしたよね

先週末に出てた東京都区部CPIですが。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-07-28/RFPGSLT1UM0W01
東京コアCPIは2.3%上昇、エネルギー・食料の伸び拡大−7月
氏兼敬子
2022年7月29日 8:34 JST 更新日時 2022年7月29日 9:05 JST

『全国の物価の先行指標となる7月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比2.3%上昇した。エネルギーや食料品の価格上昇が続く中、伸び率は市場予想(2.2%)を上回り、消費税率の引き上げが影響した2014年12月(2.3%)以来の大きさとなった。総務省が29日発表した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで、この数値が

『1997年と2014年の消費増税の影響を除くと、コアCPIは1992年10月以来(2.3%上昇)の伸び率。』

ということですので、さっきの過去記録の外側にいってるわけでしてもうこれはキテマスという感じですし、これ賃金が上がらん上がらんって日銀連呼してるけど、普通に生活給の観点からしても賃金上げないとまずいんじゃないのって感じになっているような気がします(がアタクシの給与明細いやなんでもありません)けど、どうなんですかねえ、と思うのでした。


・・・・・・まあジャパンに関しては、欧米の政策云々がどうのこうのの前に、海外から1年くらい遅行していろんなものの物価が「動き出した」感が今回の加重中央値とかを見ると出てきている訳でして、10年0.25%へのアタックがどうのこうので欧米金利が下がったから政策修正の必要が無くなったとかそういうチンケな問題じゃなくて、もっと物価そのものがどうなのか、というような考察を何とかストの皆様からは頂戴したいのですが、なにせ昨日出てた日銀謹製の謎リサーチも、政策の本質と全然関係ない話で頭脳を使うという頭脳の無駄遣いをしておられておりますように、何ちゅうかお前らさあ肝心の物価とかその先の国民厚生の話しから政策について考えるって話をしないのおおおおお?????

などと書いていると「はいはいおじいちゃん喧嘩売ってないでお薬の時間ですよ」とか言われそうなのでまあ悪態はこの程度にしますけど、いや真面目な話日本の物価動向がどんどんマジモンになっているんじゃなかろうかっていう、超本命の話で日銀追い込まれたときに「賃金上昇ガー」で言い逃れができるのかいな、とは思ってしまうので9月の中央銀行熱い時期に向けて(その前のジャクソンホールもダドリーとかドン・コーンとかアラン・ブラインダーあたりがぶっかましてくれるのを楽しみにしたいですけど)日本の場合はもっと物価そのものの方が注目されて行って然るべきなんじゃないかな、とは思うのであります(個人の感想です)。





〇さてこっからFEDの高官発言拾いながらパウエル会見も見ていこうかと

人がパウエルのFOMC会見ネタすら消化できていない(いやすいません最近ちょっと生業も個人的にも貧乏暇なしおじさんなので中々落ち着いてねじり鉢巻きしにくいんですよゴメンチャイ夏休みシーズンに取り返すよう努めます(やるとは言っていない)ので勘弁)というのにこのニュースであるorzorz

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-idJPL6N2ZE0D3?il=0
2022年8月3日4:49 午前
WRAPUP 1-FRB当局者、物価高抑制へ引き続き「一致団結」

なんだよこの「一致団結」って、と思いながら記事を拝読。

『[2日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)の当局者3人は2日、経済活動にブレーキをかけ40年ぶりの物価高に歯止めをかける水準まで利上げを継続する方針を巡り、FRBが引き続き「断固として、完全に一致団結している」ことを示唆した。』(上記URL先より、以下同様)

というかですね、そもそも今のFEDの認識って今のインフレが供給要因による一時的なものというだけの話ではない、ということになっていて、超過需要要因があるから物価がアホほど上がる、よって超過需要を抑制しないと行けないので、金利は中立金利よりも上に上げて経済にリストリクティブにして、それによって超過需要を適正に減少させないと行けないし、その間には一時的に景気が弱くなることもあるけどそれは物価抑制のためにやむなし、って話な訳ですよねパウエル会見の頭のオープニングリマークその他諸々にあるように。

よって。中立に上げたから様子見、とかいうのはそらインフレが3%くらいだったら様子見してもいいかもしれんけど、今の水準を考えろ今の水準を、という話ですな。

『サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁は、インフレを抑制するためのFRBの取り組みは達成にはまだ程遠いという認識を示した。さらに、経済の弱体化を受けFRBが来年には利下げに転じるとの観測が市場で出ていることについて、自分自身はそのように考えていないとし、「利上げを実施し、その後はしばらくの間、適切と思われる水準に維持するというのが最も現実的な見通しだ」と述べた。』

そらそうよ、としか言いようがない話で、ちょっとこの人たちの発言を並べてかつパウエルの会見も精読してから改めて並べてご紹介しようとは思うのですが、おそらく「ここから先更にドンドンバシバシ利上げしていくことによって急速に物価をさげまっせー、お前らポール・ポルカーってしってるかヒャッハー」というようなスタンスは取らないんだと思いますが、その代わりに「中立金利よりも高めの金利を継続して行って物価上昇を抑えていく」というのはやるのであって、「無茶苦茶利上げするからオーバーキルになって、だから利下げに転じる」とかいう市場の見通しってFED的には無茶苦茶馬鹿にされているのと同義の見通しなんだから、そら不快感示すわな、と思います。

『クリーブランド地区連銀のメスター総裁も、インフレがまだピークに達しておらず、FRBはさらなる取り組みを行う必要があるという見解を示した。総裁は「インフレがまずピークに達し、低下していることを示す証拠が数カ月間持続する必要があり、われわれはまだそれを確認していない」と語った。』

最近はとにかくオーバーキルでリセッションになるからその後直ぐに利下げだヒャッハーみたいな謎理論が横行してますけど、まあそんなことより物価上昇の持続性の方を注目した方が良いんじゃないの、というとことで、「お前ら良いから物価をもっと見ろボケ今の水準幾らだと思ってるんだ馬鹿」とメスター総裁は仰せになっておられます。いやボケとか馬鹿とかは言ってないけど。

『シカゴ地区連銀のエバンス総裁は、インフレ情勢が改善しなければ、次回9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げが妥当な判断となるとしつつも、0.75%の利上げが視野に入ってくる可能性もあるという見解を示した。さらに、来年末までに政策金利を3.75─4%まで引き上げる必要があると考えているとしつつも、過度に急激なペースでの利上げには警鐘を鳴らした。』

エバンスって天正元年から(嘘)バリバリの「物価だけ見るのが正しい」派でして、雇用がどうのこうののネタの時は別にどうってことないのですが、この人はとにかく政策判断は物価動向に依存する、という方なので、物価水準が高杉晋作である以上、政策運営的には結果的にバリバリのタカ派になってしまう訳ですな、うんうん。(あたしゃ年末は3.5で十分だと思うけどね)


しかしまあ何ですな、

『FRB当局者3人のタカ派的な発言を受け、金融市場ではFRBが2023年前半に利下げを開始するとの見方が大きく後退。一方、9月の0.75%追加利上げ観測が高まった。』

ってなってるんだが、手前の利上げ幅が大きくなればオーバーキル懸念が高まるので、足もとの大幅な利上げ予想と、その後のオーバーキルによる利下げステージへの転換、というのがセットになるのは分かるんだが、2023年前半の利下げ(さすがにこの見方は馬鹿なんじゃないかと思うけどそれはともかくとして)の観測が後退するなら9月の利上げ幅の見通しが何で増えますねんという話で、米国債券市場ってこの金融緩和終了から引き締めへの局面において、毎度毎度「お前は何を言ってるんだ」というような整合性皆無の反応を示してくれるので、正直この市場の動きを見て後講釈で米国経済の先行きについて講釈するのは止めた方が良いんじゃない七、と思う次第であります。

ということで本日はただの前座になってしまいましたすいません(いつも前座ばっかりで真打ちがでてこないとかツッコまないように!!!!)








2022/08/02

お題「雨宮副総裁金懇会見:ここまで賃金ターゲットに傾斜して大丈夫かね/その他少々ネタメモ」

なんかまるでよくわからないんだが複雑な「支援策」のようですな・・・・・・・・
https://www.agrinews.co.jp/opinion/index/93296
2022年8月2日
肥料高騰支援策 制度詳細の説明丁寧に

(数日たつとアーカイブ化されて会員用記事になると思いますが、しっかし一読して制度使う時にどうしたら良いかがむっちゃ難しくねえかこれとオモタ)


〇雨宮副総裁岩手金懇の会見ですがここまで「賃金」に一点張りするのは政策の存立意義を脅かすと思うんですよね・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220729a.pdf
雨 宮 副 総 裁 記 者 会 見 要 旨
―― 2022年7月28日(木)
午後2時30分から約35分
(盛岡市・東京間オンライン開催)

最初の方はご当地経済の話しとか含めた質疑とか、シランガナというような質問で4ページほど費やしてしまっていましたが、4ページのケツから参ります。

・普通に普通の事を話しているだけだが黒田日銀では新鮮、というオソロシイ話である

『(問) 今の質問に関連しまして、基本的に今回のFRBの利上げについて、日銀の金融政策への影響というのはないと考えてよろしいのでしょうか。』

ちなみに今の質問って何かというと、直前の質問が『(問)昨日、FRBが 0.75%の利上げに踏み切りました。市場では急ピッチな利上げによって先行きの米国経済に減速懸念も広がっています。こうした見方に対して、雨宮副総裁はどのようなご所見でしょうか。併せて、米国の利上げによって景気は減速するけれども、肝心の物価が下がらないリスク、これについてのお考えもお願いします。』という何の意味があるのか全く分からない質問があって、そんなこと聞かれたってシランガナというか、FEDのメンバーに聞けよアホウという質問でがっかりでした。

でまあこの質問の回答ですが、

『(答) あるかないかという意味でお答えすると、両面あるのですけれども、直接の影響はないということです。』

ちゃんと「両面あるのですけれども」というのが当たり前で別に褒める話ではない(この前の高田さんと田村さんの就任記者会見も「おまえそんなに褒めちぎる程凄い事言ってるか??」というツッコミを各所から頂戴いたしましたけれども、そらあーた読むに堪えないもんばっかり特にこの2年くらい読んでるアタクシからしたら干天の慈雨にしかみえないわけですよ、雨量1ミリメートルでも)のですが、何せ黒田さんの無茶苦茶答弁がかつてのガースー官房長官もかくありやという状況になっておられますので、そらもう普通に喋るだけでうれしくなるわけです。

『それぞれの中央銀行は、それぞれの国の経済・物価情勢に即して、適切な政策運営を行っていくということが基本でありますので、FRBが何かの金融政策運営を行ったからといって、それが日本銀行の金融政策運営に直接結びつくということではないということです。』

黒ちゃんならここで話が終わる。

『ただし、先ほども申し上げましたが、FRBのこうした金融政策運営のもとで、米国経済や物価がどういう展開を辿るのかということは、世界経済のみならず日本経済にとっても色々な影響を及ぼすほか、FRBの金融政策運営自身、例えば、為替市場とか資産市場を通じて、様々な影響を及ぼしていくので、そうした影響については、よく慎重に注意深く点検してまいりたいと思っています。』

当たり前なんですけど、そもそもそういう「情勢の変化をよく見てそれに応じた政策をする」ことすらやらないで去年の3月に決めた10年0.25%を金科玉条にしてしまっているのがもうねという所で結局実行に移すわけでもないのでしたら幾らでも綺麗事は言える、と言ってしまえばそれまでですけど、

『ただ、そう申し上げたうえで最後に付け加えますと、短期的には、当然FRBの金融政策運営は、色々な影響を日本の経済あるいはマーケットに及ぼす可能性があるわけですけれども、やや長い目でみると、こうした政策運営が成功して、経済の安定とインフレの抑制が両立できるということは、日本経済にとって望ましい条件ですので、そうしたことが実現することを強く願っております。』



・どうでもよいのだが何でこの会見ってこの質問無駄に多いの?????????????????

この会見を通して読んで非常に違和感というか異様なものを感じたのは、FEDの利上げに対する質問が無駄に多くて、上記のような質問ならまだいいんですけど、さっき引用したのもそうだし、その後も

『二点目は、米国経済について先ほどもご回答がありましたけれども、先行きについては、いわゆるインフレ圧力を抑制する観点から、やはり景気後退、リセッションを免れないのではないかという見方と、そうはいっても減速というのでしょうか、ソフトランディングでとどまるという見方と、二通りありますけれども、現時点では雨宮副総裁はどのように米国経済の先行きをみていらっしゃいますでしょうか。』

ってな質問が合ったりして(この人前半は良い事聞いてるんだけどな)、いや確かに目の間でFEDの利上げがあったから話題にしたくなる気持ちは分かるんですが、今の日銀の政策とか、日本の物価見通しとか、お願いだからそういうこと聞いてくれませんか記者の皆さん???と結構マジで血圧の上がるテキスト(雨宮さんのせいではない理由で)ではありました。


・出口云々についての話

今悪態ついた質問の前半はまあこれは質問ポイント。

『(問) 二点お伺いしたいのですけれども、一点目は、先日、高田審議委員が就任会見に臨まれまして、金融緩和からの出口戦略については、常に考えておくべき論点だ、ということをおっしゃっていました。これまで黒田総裁が出口戦略にあたっては、大まかな道筋というのを国会等でもおっしゃっていますけれども、日銀としてより具体的な出口戦略をこれから議論して、公表していくというお考えはありますでしょうか。』

ただこの質問、なんか腰が砕けてるというかヨイショというかで、黒ちゃん会見では出口の話を聞かれると言霊信仰でもしているかのように全面否定するじゃん何でそっちの話を言わないの?????とは思いました。

まあそれはいいんですけど、せっかく雨宮さんに質問するんだったら「FRBのように、出口がまだ展望しにくい段階において、正常化を行う際の原則のようなものをこれから議論して示していく、というようなお考えは無いんでしょうか」という風にもうちょっときっちりと質問しろやとは思いました。

ちなみに出口の話を会見で先に言ったのは高田さんじゃなくて田村さんなんですけどね。何かそういう辺りも含めて緊張感のねえ会見だわと思ってこのテキストを読んでました。


雨宮さんの回答。

『(答) まず、一つ目の出口戦略についてお答えします。出口戦略については、我々はもうずっと前から、出口戦略を具体的に議論するのは時期尚早であるとお答えしています。』

で、この次だがワロタ。

『時期尚早ということの意味合いが時々誤解されることがあるのですけれども、これについては、日本銀行は全然出口戦略を考えていません、ということではありません。』

言霊信仰コメントって黒田総裁会見だけじゃなくて、主な意見とかでも普通に言霊信仰として「出口」とか「修正」というのは忌み言葉になっているとしか思えないので誤解でも何でもないと理解しているんですけどねえ。

『例えば、本当に 2%の「物価安定の目標」の実現が視野に入った時に、どういう格好で金融調節手段を組み合わせて出口にもっていくのかといったこと、金融政策手段の運用の仕方とか、あるいはその場合のコミュニケーションの仕方等については、これは常に検討しているわけです。』

なんという大嘘(個人の感想です)。

『しかし、具体的にそうした金融政策手段をどうやって組み合わせて使っていくのかというのは、その時の経済や物価情勢によって全く違うわけです。』

そんなこたあ当たり前だのクラッカーな訳ですけれども、FEDは正常化政策に関する方法について正常化のせの字があるかないか、ってくらいの時に公表する、という手法をしていた訳で、別にできない話じゃないですし、そもそも「物価目標を達成したらこういう事をして金融政策の正常化を行います」というだけでも、インフレ期待に働きかけることって出来るんじゃないですかねえと思う訳で、いまみたいに日銀(というか黒田さん)が積極的に「安定的に2%行きません物価目標達成しません」ってのを連呼してたら期待インフレが上がらんじゃん、という話ですわな。

閑話休題、日銀がそうやって年初くらいから「2%行きません」って連呼しまくっているのに、実際の物価上昇によって期待インフレ自体は中長期まで含めて足元で上昇傾向(サーベイベースの話ね)になっている訳でして、こういう結果を見せつけられますと「期待に直接働きかける金融政策」とは何だったのかということについて、深刻なレビューを行うべきであろう、とまあそのように思いますが如何かな??

『それは、今我々がやっているいくつかの金融緩和政策として、マイナス金利政策とか、それも含めたイールドカーブ・コントロールとか、いくつかの手段があるわけですが、それをどの順番でどのように使っていくかというのは、その時の物価の上がり方の強さですとか、あるいは経済との関係で決まってくるので、その段階にならないとどのように使っていくのが適切かといったことを具体的に示すことはできないし、示すことは適切ではないという考え方で時期尚早という言い方をしているわけです。』

要約:昭和温泉旅館政策になってしまったのでどこをどう解体工事すれば建屋全体が安全なのかがさっぱりわからない

・・・・・こうですね!!わかります!!!!

『時期尚早というのはそういう意味ですので、高田委員がおっしゃったように、出口のあり方の具体的なものは尚早だけれども、そのやり方や方法について常に考えておくということが必要だろうと思っています。』

必要だと思ってます、は良いんだけど全く持ってそういう話をしているように見えない、というのは如何なものでしょうか???


・ここまで「賃タゲ」論に傾斜して大丈夫なのかねと思うんだけど

ちょっと巻き戻って少し前にこんな問答があったんですけどね。

『(問) 今日の午前中の講演の中で、賃上げの重要性というところに触れられていたかと思うのですけれども、賃上げの今後の見方というか、今後の重要性について伺いたいです。』

『賃上げというのは進んでいるけれども今年度の物価上昇には追い付かない、というような見方もあったかと思うのですけれども、今後の物価の見通しとこの賃上げの重要性というところの考え方を改めてお願いします。』

そもそも論として賃金は経済に対する先行性って全然無くてバリバリの遅行指標おぶ遅行指標みたいなもんで、政策の波及効果にラグが長い金融政策を運営するのに賃金ガーっていうのおかしくね(先行き運営のメルクマールにするんじゃなくて、自分らの運営した結果の検証に賃金使う。ってんだったら分かるけど)と思うのですが、あまりにも連呼するもんだから、そっちのそもそも論の質問が中々出てこないのは残念です。

まあそれはそれとして雨宮さん大演説モード。

『(答) まず、今の景気情勢ということから申し上げますと、現在は新型コロナウイルス感染症の影響が和らぐにつれて、景気は回復しつつあると判断しています。その原動力の一つは、感染症のもとでの行動抑制と自粛によって抑えられていた消費、いわば蓄積した貯蓄が、消費のバッファーになっているということです。』

なんでこんな遠い所から話をしているのかと言えば、

『物価の上昇による実質所得の低下という意味では、今は物価の上昇が消費を抑える要因として働いているわけですけれども、今申し上げたようなペントアップ需要、あるいは蓄積された貯蓄が消費のバッファーとして働いて、消費の回復をサポートしているという状態にあると思います。しばらくこうした状態は続くだろうと思いますけれども、』

という話をしたかったようだ。

『来年以降を展望しますと、こうしたペントアップ需要というのは、いずれはだんだん収まっていくものです。従って、景気回復が続くためには、あるいは消費の回復が続くためには、やはり基本的には賃金が上昇していくことがどうしても必要な条件になってきます。』

ここも微妙に訳の分からん説明になっていて、そもそも日銀の見通しでは23年度になると物価上昇率がドカンと失速する、という見通しになっておりまして、寧ろそれによって持続的なコアコア物価が落ちずに維持される、みたいな図になっているように見える訳でして、賃金が大事賃金が大事、といってる割には、展望レポートで示している賃金の推移ってどの程度でお前ら置いてるの?????ってのもうちょっと詳しくディテール欲しいですよね、って思いました。

しかしまあ何ですな、

>景気回復が続くためには、(中略)基本的には賃金が上昇していくことがどうしても必要な条件になってきます。

って大きく出たなオイという感じでして、賃金の上昇なんて日銀の政策でコミットできないものを「必要な条件」とまで言ってしまって大丈夫なのかよ日銀は、と思う次第でして、雇用者の名目所得ろくすっぽ上がらない現象が延々と続いていて今更気が付いたかのようにこれ言い出すのただの後出しじゃんけんじゃなかったら馬鹿ということになるんですけど、ここまで大きくぶっこんで大丈夫なんでしょうかねえ、あとで自分たちの首を締めそうな気がするんだけど。

『そういう意味で、賃金が上昇するといったことが安定的な経済の拡大の重要な条件として浮かび上がってきているという問題意識で申し上げました。』

>重要な条件として浮かび上がってきている
>重要な条件として浮かび上がってきている
>重要な条件として浮かび上がってきている

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwwwww

賃金が上がらん問題って今に始まった事じゃないし、それこそ置物リフレ政策のオーソリティーでアベノミクスのブレインであるところの浜田宏一大先生も「名目賃金は寧ろ上がらない方が経済の回復に資する」という説明をしていた筈なんだが、今まで何やってたんだよって言われたらどう回答するんだ。

『ただ、今年度につきましては、どうしても足元、輸入物価の上昇、資源エネルギー価格の上昇が強く出ますので、今年度の段階で、賃金も上昇はし始めているのですけれども、賃金の上昇率が物価上昇率を上回るような、言い換えれば実質賃金の伸びがプラスになる状況が実現するには尚早かとみています。』

『ただし、来年以降になりますと、さすがにこのまま資源価格、エネルギー価格がどんどん上昇し続けるという極端な仮定を置かなければ、どこかで前年比という意味での上昇率の寄与は小さくなっていきますので、物価上昇率が落ち着いてくるとみられます。』

物価上昇が落ち着いたら賃金上昇も落ち着くんじゃないでしょうか?????というツッコミにはこのような回答を用意しています。さすがは大狸もとい雨宮さん。

『賃金についていうと、前年の物価上昇率を参考に交渉が行われるところもありますので、賃金が上昇していけば、来年にかけては実質賃金の伸びがプラスになるというような状況も期待できるのではないかと、』

でもそれだと再来年は来年物価が落ち着くんだから賃金上昇率弱くなりませんかねえ・・・・・・・・・・・・・・

『それが持続的な成長と、更にいえば、持続的な「物価安定の目標」の実現にも資すると評価をしているということであります。』

結局ね、これは「ノルムを変える」とか「期待を変える」という話をしないで済ませに行く(なぜなら期待が結局変わったのが前述のように日銀の政策ではなく勝手におきた外部要因による物価上昇から適合的期待形成であり、期待の話を前面に出すと自分等の政策の基本的な土台がおかしくなるから)ようにすると、上記のような謎説明になってしまう訳ですな、ナムナム。

『ただし、こう申し上げたうえで、資源エネルギー価格の先行きの動向ですとか、賃金交渉の行方といったことについては、まだまだ不確実性が大きい状況ですので、よく展開を見守っていきたいと考えています。』

だそうです。



さらにこの先の方の質疑で上記の説明に対するサラトイという中々結構なものがありまして、

『(問) 先ほど、当面の個人消費につきまして、行動制限で積み上がった貯蓄とペントアップ需要がバッファーになる、というふうな見解を示されました。どちらも一時的なものだと思うのですが、こうしたある種特殊要因といいますか、そうしたもののですね、今回、具体的には来春の賃上げといったものが不十分で終われば、物価目標の実現、持続的な物価上昇というか、もうしばらくは展望できない状況になってしまうのでしょうか、その辺のご見解をお願いします。』

そうですよねー。

『(答) まず、先ほども申し上げましたけれども、ご指摘の通り、今のようなペントアップ需要によって個人消費の回復が支えられているという状況は、──ペントアップ需要がとても大きい可能性がありますので、こうした状況はそれなりに続くとは思いますけれども、かといって経済運営がそうしたペントアップ需要の発現に依拠するわけにはいかないので──どこかでは必ず収まっていく筋合いのものですので、』

ほうほうそれでそれで??

『やはり安定的、持続的に経済が回復していくためには、賃金の上昇が伴うということが必須の条件だと思います。』

>安定的、持続的に経済が回復していくためには、賃金の上昇が伴うということが必須の条件
>安定的、持続的に経済が回復していくためには、賃金の上昇が伴うということが必須の条件
>安定的、持続的に経済が回復していくためには、賃金の上昇が伴うということが必須の条件

コーゾーカイカクってのはデフレ政策だったし経済縮小政策だったって勢いの話になるんだがそこまで言ってエエのん???

『更に言えば、2%の「物価安定の目標」は、我々がいつも申し上げていることですけれども、単に 2%という数字が実現できればいい、というものではないわけでして、あくまで経済活動が改善する中で賃金と物価の好循環がもたらされると、その中で 2%が実現されるということを目標としています。そういう状況が実現するためには、やはりしかるべき賃金の上昇ということが必須の条件になると考えています。』

>しかるべき賃金の上昇ということが必須の条件
>しかるべき賃金の上昇ということが必須の条件
>しかるべき賃金の上昇ということが必須の条件

なんかさ、ここまで言い切っちゃってるけどそれに金融政策が何の貢献するの???って話で、政府との共同文書によれば物価目標達成は日銀の責務、ってなってるけど、じゃあどうやって日銀が「然るべき賃金の上昇」を達成するのよ、となりますと、それは政府の仕事になるんじゃないですかねえ、という所まで話が発展する(しないんだけどさ)訳で、言い訳に事欠いて賃金賃金連呼しているのは分かるんですけど、これって言えばいう程金融政策の存在意義に疑問が高まる論点だと思うんだけどな〜、雨宮さんはスットコドッコイじゃないから分かってるはずなのに、何でこんなに中長期的に見て自分たちの首を締めそうな論点をアゲアゲにしちゃうんだろう・・・・・よくわからん。

まあ「主な意見」でも賃金のオンパレードになってて、なんかそういうキャンペーン期間中のようなのですが、このキャンペーンは(実際の物価が上がった途端に言わなくなった)「適合的期待形成」キャンペーンの時のような話と違って(・・・というのはこの場合期待形成が重要、という元々の政策のポイントは外していないからですが)、今回はそもそも論として物価上昇のメカニズムが「インフレ期待」から「賃金」にワープする、という政策の土台部分に関わる説明がカメレオンになってしまっている事には、大丈夫かオイという感想しか沸きません。




〇中身全然読んでないがナンジャコリャ

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/wp22j13.htm/
イールドカーブ・コントロールに関する特定期間選好仮説にもとづく考察

全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/data/wp22j13.pdf

HTMLの「要旨」を見た瞬間に読む気を無くしたんだが、ということで以下「要旨」から引用。。

『要旨』

『本稿では、Vayanos and Vila(2021)による標準的な特定期間選好仮説にもとづく金利の期間構造モデルを、イールドカーブ・コントロール(YCC)が分析可能となるよう拡張する。具体的には、中央銀行が特定年限の国債を選好し、その年限の国債需要の価格弾力性が目標年限の利回りに依存することをモデルに組み込む。』

何だか分からんがそんな分析することに何の意味があるの????

『本モデルでは、中央銀行が実施するYCCの厳格度合いは、その価格弾力性によって捉えられる。』

あっそう。

『本モデルをわが国にカリブレートした分析にもとづくと、十分に厳格なYCCは、国債買入れが限定的でも、利回り水準を目標範囲内に維持できるほか、短期金利の変化が国債利回りに与える影響を軽減させる。』

>十分に厳格なYCCは、国債買入れが限定的でも、利回り水準を目標範囲内に維持できる
>十分に厳格なYCCは、国債買入れが限定的でも、利回り水準を目標範囲内に維持できる
>十分に厳格なYCCは、国債買入れが限定的でも、利回り水準を目標範囲内に維持できる

・・・・・・・・・・は??????????????????????????????????

『YCCが実施されていない場合には、名目金利の実効下限制約の影響が弱まるのに伴い、国債需給の国債利回りへの影響はその制約による影響が小さい場合の通常の水準に回帰していく。』

まあそんなことどうでも良くて、そもそもYCCの理念として挙げられた均衡イールドカーブの算出方法とかそういうのを研究して頂きたいんですが、これはマジで何のためにやってるのかさっぱり意味が分からん。誰かこれが何の意味があるのか解説してくれませんかねえ。



〇カシュカリ大僧正ワロタ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-07-31/RFW7K7DWLU6801
FRBはインフレ率を2%に押し下げる「決意」−カシュカリ総裁
Eric Martin
2022年8月1日 2:29 JST 更新日時 2022年8月1日 8:31 JST

『米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は7月31日、2%の長期インフレ目標達成に向け、連邦準備制度が需要を減らすために必要な対応を行う決意だと述べる一方、目標の達成はなお遠い先との認識を示した。』

『カシュカリ総裁はCBSのインタビュー番組で、「われわれはインフレ率を押し下げる決意であり、必要な行動を取る。2%のインフレ率に戻る経済状況を実現するのは、ずっと遠い先だ。そこにたどり着かなくてはならない」と発言した。』

『同総裁は生計費の上昇加速について、より広範囲にわたり幾つかの分野だけに限られる状況ではなく、「物価を抑制し、元に戻すために連邦準備制度がこれほど切迫感を持って行動する」理由の説明になると語った。』(以上上記URL先より)

このおっちゃん、ご案内の通りついこの前までクッソハト派だったおっちゃんなのですが、何ですかこの威勢の良い物の言い方は、という感じでして、こういうのを見てると逆にフラグが立っている気がだいぶしてくる訳で、それはすなわち「2%への物価押し下げを早期かつ強引に行わない」(ロンガーランの2%は維持するので将来の姿は2%だけど)というアプローチをパウエルがジャクソンホール辺りで言い出すんじゃないか、というフラグですよ。

なお、この場合オーバーキル懸念が無くなるけど、近い将来に緩和に転ずる可能性もなくなるので、リスク性資産がどっちに転ぶのかはよくわからんですし、イールドカーブについても発射台次第なので良く分からんでございますけど、「中立からちょっと上程度の政策金利が数年(2年程度)続く」というシナリオになると思うので、まあ話はだいぶ変わって来ると思いまして、先に「私言いましたよね」って言いたいから書いて置きますが別に白井さゆり大先生ではありませんので後付けで自慢も言い訳もしません(^^)。








2022/08/01

お題「まるで賃金ターゲット政策でも始まったかのような「主な意見」だがちょいちょいカウンターアーギュメントもある(といいな)」

おやおやまあまあ
https://nordot.app/926383600249176064
安倍元首相国葬に反対53%
内閣支持12ポイント急落51%
2022/7/31 18:21 (JST)7/31 20:25 (JST)updated
@一般社団法人共同通信社


〇賃金賃金と連呼しているんですけどだったら金融政策の存在必要なんですかねえ

7月会合主な意見。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2022/opi220721.pdf

まあどうせ政策インプリケーションは無いのですが、皆さんが何を仰せになっているのか確認しましょう。


・経済の意見に関しては読む価値がないので割愛

『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』はよくもまあ通り一遍の事だけ書いてるわ、ってな内容なので皆様でご確認ください。ポンコツだから仕方ないけど。


・展望レポートで足元あんなに上方修正してるのに意見が5本しか出てこないとはさすがポンコツ

『(物価)』ってのを見ますが、これがまた酷くて、今回って展望レポート会合で、しかも22年度の物価見通しを+1.9→+2.3と年度平均で0.4%も上方修正するという結構な上方修正をしたというのに意見が5本しか出てないんですよね。

ちなみに前回6月会合では6本でこれまた政策委員の頭数よりも少ない訳で、いやお前ら今年度入ってからの物価動向って当初は国際商品市況だったかもしれないけど、展望レポートの現状認識だって資源価格に「食品」も加わっているし、「輸入物価の上昇」というのも加わっているし、直近の企業物価指数見たら円安がもろに効きだしてるじゃないの、と論点が色々と有る筈だし、あるからこそ足元の物価見通しを大きく引き上げた筈なんですよね。

然るに・・・・・・・・・

最初の意見。

『・生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、2%程度となっている。予想物価上昇率は上昇している。先行きの消費者物価は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。』

はいはい大本営大本営、なのはさておきまして、この意見、前半で予想物価上昇率が上昇している、って書いてて、しかも年末にかけて物価上昇率が高まるって言ってるわけで、その間の予想物価上昇率ってどうなるんですかねえとしか申し上げようがないのだが、そこは完全どスルーして下がる予想になっているのはまあいつもの大本営クオリティ。

次の人。

『・輸入価格上昇に伴い、足もとの物価は上昇しているが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、「物価安定の目標」の安定的な達成は難しい。』

そもそも需給ギャップは年度後半だか何だかからプラスの領域に入ってきて、予想インフレにかんしては今回の展望レポートによれば短期だけじゃなくて中長期の予想インフレも上がってきている、というのが認識だったと思うのですが、そういう状況が進めば物価目標の安定的な達成に進んでいくんじゃないですか、ってかそもそも展望レポートも「時間は掛かるが物価目標は安定的に達成する」だった筈で、片岡さんが言うなら分かるんですが他の人がこれ書いてたらさすがに笑うしかない。(ただ片岡さんだとこういうあっさりとした表現をしない気がするんで別の人の気がしますけど・・・・・・)。片岡さんなら言ってることは分かる。(合っているかどうかは兎も角)

その次。

『・消費者物価については、コモディティ価格が当面高水準で推移すると想定されることから、これまで企業が値上げを控えてきたものを含めて、幅広い財・サービスの価格に徐々に反映されると考えられる。』

じゃあ何で22年度平均+2.3%のコアCPIが23年度平均で+1.4%まで急落するの????????

4人目。

『・持続的な賃上げと付加価値向上が重要な経営課題となりつつあり、経済の回復が進むもとで、人的資本への投資や所得増加を目指す転職の活発化、スタートアップの成長が相俟って、賃金と物価の好循環が実現すると考えられる。』

悪いんだけど何でそうなるのかさっぱり理由の説明が無いんですけど。「持続的な賃上げと付加価値向上が重要な経営課題となりつつあり」ってのが端から意味が分からない。

5人目。

『・ 最近、様々な企業による値上げの動きがみられており、値上げに対する企業の従来の意識に変化が生じている可能性がある。』

と思ってるのに何で22年度平均+2.3%の以下同文。

・・・・・・でおしまい。いやあのですね、今回って物価見通し足もとで大きく引き上げていて、24年度の数字を無理矢理同じにするもんだから意味不明な数字になる(コアコアの推移が4月展望は毎年度上昇率が+0.3%ずつ強まっていく、という「基調的な物価は順調にあがります」って見通しだったのに、今回は毎年度の上昇率が+0.1%ずつしか強まらない、という前回対比でモメンタムが弱くなっている、という無茶苦茶な見通しになっているのですが、これは前回と同じ傾きで強くなっていくことにすると24年度のコアコアが平均で+1.9%になり、それはどう見ても目標達成なので政策の出口が、という事になってしまうので、無理矢理鉛筆を舐めたという実に見苦しい結論ありきのゴミ見通し)という物凄く訳の分からない事をしているのに、なんでしょうねえこれだけしかないんですよ。まあ片岡さんっぽいような気がするのだけは合ってる合ってないは兎も角として言ってることは分かるけど。

しかも書いてるのこんな大事な会合なのに5人だけとかもうお前ら豆腐の角に頭ぶつけて以下割愛。



・政策の話をしているのだが賃金賃金賃金賃金のオンパレードでだったら金融政策とは何なのかと

『U.金融政策運営に関する意見』というのがある。

最初の方はどうでもよいので割愛するが。

『・わが国経済は、感染症からの回復過程にある中で、資源高による海外への所得流出という下押し圧力を受けている。こうした状況では、金融緩和によって賃金上昇を促していくことで、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を目指していくことが適当である。』

以下の意見全部そうなんですが、金融緩和って「借入のコストやアベイラビリティを改善することによって、負債のコストを下げて、それによって投資を促す」というのが波及ルートなんですが、「金融緩和によって賃金上昇を促す」ってもはやお前は何をいっているのかという話で、金融緩和だったら1997年くらいからずーっとやってるだろその間賃金上がったのかよという話であって、もうこの時点で理屈が無理矢理にも程があると思うのですが、以下ポンコツの皆様によるガバガバガバナンスによって、物価安定目標達成のためには金融緩和で賃金を上げる、という金融政策の修正を絶対にしたくない、という黒田統領様の思し召しに沿って茶坊主の皆様がおつくりになられた屁理屈を、何のチェックもなく素通ししてオウム返しする九官鳥のくせに文章は書けるようなのでまあ文章をみてやろうじゃないの。

『・需給ギャップは2年以上マイナスであり、需要拡大と持続的な賃金上昇を後押しする現在の金融緩和を粘り強く継続すべきである。』

そもそも供給制約が経済の足枷になっている、って認識を展望レポートでしているのに需要拡大してどうするんだよという感じですが、ここでも持続的な賃金上昇、というのが出て来るのですな。

『・ 賃金上昇の実現可能性を高めつつ、「物価安定の目標」を実現するため、現在の金融緩和を継続することが適当である。』

現在の金融緩和じゃなくても緩和的な金融環境を維持すりゃいいんじゃないですかねえ、と思いますし、大体からしてマイナス金利政策とかやってるけど、マクロ的にみたら企業部門も家計部門も資金余剰なので、マイナス金利政策を維持する意味があるのか(別に高金利にしろとかそういう話ではない、と言っておかないと直ぐ藁人形論法する馬鹿がいるので一々断っておく)ねえ。

何ちゅうか賃金のオンパレードなんですが、そもそも賃金に対してのルートって金融政策を起点にした時にエライ迂遠なルートになる訳ですが、そういうのを重要重要重要って言ってる時点で金融政策って存在意義何なの???って話になるんじゃないですかねえ。もう酷くて見てらんない。


・賃金ターゲット政策みたいな話からやっと離れる

その次は賃金からやっと離れます。

『・2%の「物価安定の目標」は、持続的・安定的に達成すべきものであり、インフレ目標政策はインフレ見通しに基づく。このため、現実の物価上昇率だけでなく予想物価上昇率やそれらに基づく先行き見通しを見ながら政策を運営することが適切である。』

やっと従来のQQEの理屈に近いものが出てきたんですが、だから何なのというのは否めませんな。とは申しましても、こちらの意見は賃金賃金って軽薄に言ってる風潮に一石投じたものとして評価することにしておく。


・賃金ターゲット政策に対する問題提起

『・賃金上昇率に注目が集まる中では、政策運営に当たって、賃金動向を的確に把握する必要がある。』

これはイイシテキダナーって話ではありますが、先般の雨宮副総裁の岩手金懇でも「定昇込み賃金上昇率」とかマクロ的にそれ意味あるのかという怪しげなものが出て来たりしてましたが、そもそも賃金賃金言うんだったら、賃金の動向を何で見るのか、メルクマールも出さないで「賃金上昇ガー」とか言ってるの真面目に政策運営をするスタンスとは思えないんですが、まあそもそも「黒田総統様の意地と面目の為にYCCを1ミリたりとも柔軟化しないしマイナス金利を変更する位なら死んだ方がマシ」という政策スタンスが土台真面目じゃないので仕方ない訳です。いやーこの指摘はシンプルに今のインチキ政策運営を突いて居る。


・でも出来るだけメルクマールは作りたくないんですねわかります

次の意見がこれである。

『・「物価安定の目標」実現に必要な賃金の上昇を確認するにあたっては、全体の動きとともに、分布がどのように変化しているか等、統計などから多角的にみていくことが重要である。』

そもそもメルクマールが無いって指摘があるのに、一方で「総合判断」とかいうのが出ちゃうのが笑う訳で、まあこれは大本営方面の意見でしょうなというのは分かりますし、総合判断を言い訳にして「政策判断に後付け」の賃金判断をしよう、というのが露骨に表現されて実に分かりやすくてよろしい(よくないけど)。


・均衡イールドカーブとは何だったのか??

ということで賃金ターゲットから離れて金融政策変えません場無しが始まる。

『・サービス価格など物価の基調を規定する部分が上昇し、消費者物価上昇率が安定的に2%を超えることが視野に入っていないもとでは、現状の金融緩和を継続することが当然である。』

経済物価金融環境によって適切な規模の緩和をする、というYCC当初に言われていた均衡イールドカーブの話はどこへ??


『・足もとの物価上昇は来年度には一旦落ち着くとみられ、その後、見通し期間の後半にかけては、経済が回復を続けるもとで、物価上昇率は1%を超えて推移することが展望される。こうした中、2%の「物価安定の目標」のもとで、現在の金融緩和を粘り強く継続していく必要がある。』

そもそも基調的な物価上昇率が1%を越えて推移する中で10年0.25%って水準維持したらオーバーシュートしませんかねえ。

・・・・・・・というかですね、そもそも賃金なんて物価よりも遅行する指標なのに、それが上がらないとどうのこうのとか言って金融緩和継続するのってさすがにお前らおかしくね??????????


・片岡さんだけはぶれない

『・金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。』

問題は片岡さん、何をどうするとどういうルートで需給ギャップと予想インフレが上がってくれるか、という波及メカニズムと、それ以前の具体的な金融緩和策が(最初に出して満場の爆笑を食らった「15年の国債金利0.2%未満」以外)無かったことでございますな。


・なお今回お為ごかしのように国債市場の機能度に触れた意見が一つだけwww

『・名目金利が低位で推移するもとでの最近の予想物価上昇率の高まりは、実質金利の低下を通じて金融緩和効果を強めており、これは、企業の設備投資スタンスの積極化等にも繋がっているとみられる。この間、金利上昇圧力を抑制するための最近の国債買入れの増加が、国債市場の機能度に与える影響を注視する必要がある。』

そもそも国債市場の機能度について、どっからどう見ても6月会合で議論がでるべきだと思うのですが、今回たったこれだけ出てきましたね。

・・・・・・もうさ、これって6月会合で何も出て無くて市場方面から「ナメトンノカこのスットコドッコイ」っていう怒りの声が聞こえてきたような気がするから「チッ、うっせーな、反省してマース」って感じでちょっとだけ入れてやったわwwwというのが露骨すぎて草も生えませんが、まあこの人たちにとっては市場ってそんなもんでしょ。国債の安定消化をしないといけない発行当局の方との意識の差が天と地以上に広くて泣けるわ。

ということで調子よく悪態ついてしまって時間が無くなるというアカン事になったので今朝はこれで勘弁してつかあさい。なお意見はもうちょっとだけあるんだけどめんどいからパス。