トップページに戻る
月別インデックスに戻る

(各日付の最初にラベルを「221201」というような形式でつけていますので「URL+#日付(221201形式です)」で該当日の駄文に直リンできます)


2022/12/30

お題「日銀毎度おなじみのケツに火が点いたオペしてるんだが・・・・・・・」

共同通信これは無慈悲な砲撃過ぎる・・・・・・・・
https://nordot.app/981088274148425728
デフレ脱却「日銀に責任」 黒田氏、旧体制を痛烈批判
2022/12/29 コピーライト 一般社団法人共同通信社

『日銀の黒田東彦総裁が財務省を退官してアジア開発銀行(ADB)総裁を務めていた2007年、同省の聞き取り調査に応じ「根底的にデフレ、インフレは日銀の責任」と持論を語っていたことが29日分かった。00年に政府の反対を押し切ってゼロ金利政策を解除するなどした速水優総裁時代の政策運営には「ことごとく反対だった」と述べ、旧体制を痛烈に批判。当時、財務省幹部として日銀に対し、デフレと円高の悪循環を止めるための金融緩和を強く要求していたと明かした。聞き取り調査は、財務省が財政史を編さんする一環で実施。共同通信の情報公開請求に対して記録が開示された。』(上記URL先より)

最初ヘッドラインを見た時に記者向けにレクでもしたのかと思いましたが、そうじゃなくて情報公開請求で取得したんだったら(出てきて即座にニュースにしてるなら話は別だが)暫く温めておいてこのタイミングで弱っている黒田さんに追撃をぶっこんでいるようにしか見えませんなwwwwwwww

先日の会見ではナンジャソラなアレをしておりましたが、この砲撃は評価したいwwwwww


〇2日連続の中期指値に臨時輪番が前場だけではなくて後場にも実施というパニックオペキタコレ

まずはロイターさんの市況解説を読んでおきましょう。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N33J0M5
2022年12月29日3:19 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、2度の臨時オペ後も売り優勢の展開

『[東京 29日 ロイター] -
<15:10> 国債先物は続落で引け、2度の臨時オペ後も売り優勢の展開

国債先物中心限月3月限は前営業日比13銭安の145円53銭と続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同0.5bp上昇の0.455%。日銀による2度の臨時オペ実施にもかかわらず、売り優勢な展開が続いた。』(上記URL先より、以下同様)

臨時輪番キタコレ!となると横綱はいったんドスコイドスコイと怒涛のがぶり寄りをして相手方の売りの海関を押し返すのですが、あっという間に足は止まってしまい、その後はジリジリと押し返されるという感じの展開でしたな、ナムナム。

『日銀は前日に続き、中長期債を対象に臨時オペを通告。指し値オペも、長期債に加え2日連続で中期債を対象にオファーされた。午後には5─10年債を対象に本日2度目の臨時オペが通告された。』

・・・・・・・・あのですね、あんさんら先週政策決定した時にこんなポンチ絵だしてたじゃないですか。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221220h.pdf
イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の見直し

左の上の方には
わが国債券市場の機能度の低下→各年限間の金利の相対関係・現物と先物の裁定

などというものがあって、右の方に、
YCCの運用 より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していく

ってのがあるんですけど、もうこっちも連日言ってて呆れてしまいますけど、臨時輪番や何処の水準で入るのかの基準がさっぱり分からない他年限の指値オペってのが突如飛んでくるマーケットにおいてマーケットメイクできない状態になって、債券市場は入札(流動性供給含む)と輪番(指値を含む)でしかロットでの売買ができない市場になり、「より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していく」の真逆を絶賛推進中なのはどういう説明するつもりなんでしょうかね。

『しかし、マーケットの反応は限定的。オペの対象とならなかった超長期債は利回りが上昇し、対象となった中長期債も金利低下には至らず、新発債利回りは2年債、5年債ともに前日比横ばい、10年債が小幅上昇となっている。市場では「臨時オペも連発すると効果が薄らいでくる。マーケットは日銀はいずれマイナス金利解除やYCC(長短金利操作)の撤廃を行うと見込んでいるようだ。黒田東彦総裁は12月の政策修正は出口への一歩ではないとしているが、前回も突然の発表であったことから、市場参加者の多くは、黒田総裁の言葉を信じていないのではないか」(国内証券の債券セールス担当)との声が出ていた。』(上記URL先より)

そらそうよとしか言いようがないですわ。いつもの

いつものロイターさん提供のTRADEWEBさんですと、

TRADEWEB
    OFFER   BID   前日比  時間
2年   0.038  0.046    0   14:58
5年   0.234  0.24   -0.005  15:06
10年  0.438  0.449   -0.006  15:09
20年  1.313  1.326   0.049  15:08
30年  1.607  1.617   0.045  15:03
40年  1.845  1.862   0.053  15:10

ということで、今週に入って超長期の方の臨時輪番と指値が行われなくなりましたので、いつものパティーンで経済物価情勢を勘案してちゃんと価格形成をしようとする売りパワーは超長期に向かうのでありました。

・・・・・・ってさあ、確かに10年が50に張り付きだしたら徐々に超長期の方に売りエネルギーが出ざるを得ないから、そうなると10月〜政策変更前と同様にカーブの後ろは立ちやすくなる、ってのは皆さん読んでいたとは思うのですが、何ぼ何でも最初は10年の調整が行われるからふらっとするでしょという話だったのですが、この調子だと途中のフラットニングの時代あっという間に終わるじゃんというおそロシアなムーブとなっておりますコワイヨー。

ちなみに毎度おなじみ売買参考統計値で先物チーペから10年カレントの引値を確認しますと

長期国債 358 2030/03/20 0.460
長期国債 359 2030/06/20 0.480
長期国債 360 2030/09/20 0.495
長期国債 361 2030/12/20 0.510
長期国債 362 2031/03/20 0.515
長期国債 363 2031/06/20 0.520
長期国債 364 2031/09/20 0.515
長期国債 365 2031/12/20 0.500
長期国債 366 2032/03/20 0.435
長期国債 367 2032/06/20 0.448
長期国債 368 2032/09/20 0.445

なんでしょうかね、もしかして今回は「7年〜10年で0.50%をアカラサマに超える金利が出ないように」とでも思ってるんですかねえこの輪番乱れ打ち。


・ということで輪番のオファー内容を備忘メモ

まま、ご案内の通りのものを貼るのも恐縮ですが。

(国債買入以外のオファーは引用割愛しています)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of221229.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注4) 2022年12月30日 0.050
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注5) 2022年12月30日 0.045
国債買入(固定利回り方式)(残存期間1年超3年以下)(注6) 2022年12月30日 0.000
国債買入(固定利回り方式)(残存期間3年超5年以下)(注7) 2022年12月30日 0.000
国債買入(残存期間1年超3年以下) 1,000 2022年12月30日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 1,000 2022年12月30日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 1,000 2022年12月30日
----------------------ここまで午前オファー--------------------------------------
国債買入(残存期間5年超10年以下) 3,000 2022年12月30日

ということでございまして、最初の2つはいつもの10年カレント3兄弟とチーペストですが、中期指値のレートは

(注6) 固定利回較差の結果、2年利付国債443回の買入利回りは、0.030%となる。買入金額に制限を設けずオファー。
(注7) 固定利回較差の結果、5年利付国債154回の買入利回りは、0.240%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

となっていて、2年が3bpで5年が24bpなのでこれは水曜日(=前日)に実施した水準と同じで、超長期の指値が無くなった、というのは水曜日と同じです。

ただし、臨時輪番に関しては水曜日が「中期前半、中期後半で各1000億円、長期で3000億円」だったのが、出し渋りだか何だか知りませんが、昨日の場合は1000億円に減額と相成りました。何の判じ物かと思っていたら、オペぶっこんだ後横綱は土俵中央にドスコイドスコイと盛り返したものの、結局フニャフニャと押し返されてまあそうですねって感じの水準になってきましたわ(前場安値は切ってないけど)。

と思ったら5−10の臨時輪番のおかわりが来たのですが、これが3000億円でオファーされるという意味わからん(わかるけど)プレイでして、恐らく臨時輪番の都度長期3000億円も買ってたら今度はチーペストの需給も含めて先物適格ゾーンの流動性死亡するから減らそう、と思って減らしたら何のことは無い相場様の方が戻ってくれなかった、ということでランボー怒りのおかわりの方が何故か多い追加輪番になったんでしょうね。

・・・・・・とまあ普通に見てたらそういう想像が可能なアカラサマなことをやっておりまして、毎度毎度申しあげていますが、日銀の債券市場への介入って、「一手一手が悉くワンテンポ遅い」ので、結果的に市場に振り回されて右往左往している印象を無茶苦茶強く与えてしまいますな、と思います。

何でこんなに後追いオペばっかりやってるかと言えば、そらまあ市場局ももうちょっと落ち着けとは思いますけど、より本質的には「日銀が目指している「緩和的なイールドカーブ」が存在しない」からとしか思えませんですよね。つまりは均衡イールドカーブがどの辺にあるのかという(屁理屈でも良いから)バックグラウンドにある計算手法があって、それに対して年限ごとに緩和効果は違うって話をかつての点検だか総括的検証だかでしてましたので、その「各年限ごとの望ましい緩和度合い」と均衡イールドカーブにのっけて(金利を下げて)差し上げて、もちろんピンポイントのカーブである必要はない訳で、推計誤差を加味した幾分かのマージン、というのを考えれば「この辺を逸脱したらオペ追加」みたいな話になる筈なんですよね。

でまあ勿論そんなものが日銀にあるとは思えない、というかあったらこんなしょうもない後追いオペやってないのでありますので、結局のところやっているのは「とにかく10年0.50%はさすがに絶対国防圏なので何かして守って黒田総裁の任期まで持たせなきゃ」というムーブですよね。



〇期間2年の共通担保オペ固定0%1兆円とはこれまた豪気な大盤振る舞いキタコレですな

そして昨日の夕方、日銀ちゃんから珍ニュースが。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221229a.pdf
共通担保資金供給オペレーションの実施について
2022年 12月 29日
日本銀行 金融市場局

『日本銀行は、2023 年1月4日、次のとおり共通担保資金供給オペレーションを実施することとしましたので、
お知らせします。』

ということで

貸付利率:0.0%
貸付店:全店貸付
オファー金額:10,000 億円
期間:2023 年1月5日〜2025 年1月6日

って条件見て爆笑の発作を起こしてしまいました何ですかこれは・・・・・・・・・・・・・・

おまえらさあ、3か月ならともかく向こう2年間マイナス金利政策解除できないとでも思ってるの????って感じですし、こういうのあると後任が迷惑するだろボケ(1兆円くらいなら兎も角、今後これを乱発しだしたら後でこの余計なオペ残の積み上がりが短期金融市場における価格形成に悪さをするリスクがあるし、もっと問題になるのは仮にマイナス金利解除して日銀当座預金に10bp付利ってなったら赤字垂れ流し資産になるので、後任の政策運営の邪魔になる)という感じでございますが。

まあ何ですね、このオペは「お願いだから2年金利は上げないで下さい掴み金(と言っても担保食うし手前3か月はマイナスチャージ対比で10bp高いので真の掴み金かどうかは良く分からん面もあるが)差し出しますからお許し下さい」って泣きを入れているようにしか見えない(大幅に偏見のある個人のバイアス入り感想です)次第でございまして、いやおまえらそこまでして滅び行く黒田砦に殉じてどうするのって思いますし、いやまあその殉じる黒田砦に大義でもあるんだったら、そらまあ大義の為に殉じるのは美学なんですけど、机上の空論をもって白川さんたちを石持て追い出して行った政策がやっぱり机上の空論で、それを誤魔化し誤魔化ししながら無理な市場介入により彼方此方に糞を振りまいて、挙句の果てには自分の面目の為だけにYCC維持しようとしている黒田とか何の大義も正当性もない物体に対して義理立てして殉じるって、それ殉じる相手間違えてるゾとしか申しあげようが在りませんな。

どうせ仕事納めも仕事初めも普通に仕事しにいく予定のアタクシですが、こいつは新年早々このオペの応札状況を見る、という楽しみが発生しましたということで。


・ところでこのインプリケーションは????

というとまあアタクシは単に「なんかとにかく中短期の金利上昇を抑えないといけない」ということでやっているだけ、ということで、YCC柔軟化したらマイナス金利解除まで織り込みに行くとは思わなかったので慌てているだけだと思うんですよね。

・・・・・・ま。これは結局見直しの着手が遅すぎだったのが原因だと思われる所でして、どうせ見直しをするならば、4月とは言わないけど少なくとも夏場には出来たし、その時期に見直しをしていれば「マイナス金利政策はイールドカーブの起点を強力に低位に安定させるために必要」ってことで明確に分離出来たと思うのですが、正副総裁退任時期が近くなっての見直しですから、「次の体制ではどうなる」という話になってしまうし、しかも今回の決定が従来の話を引っくり返して行っているだけに、ロジックも蜂の頭もない無茶苦茶状態で、衆目の一致するのは「このまま今の継ぎはぎ政策(あるいは昭和温泉旅館政策)を続けるのはロジック的に耐えられない」ということだとさすがに思いますので、そうなれば新執行部はスクラッチで政策の枠組みを作り直し、となるとどうしても評判の悪いマイナス金利政策(財務省様は(゚д゚)ウマーかもしれんけど)もテーブルに上がるでしょ、と思えばそらこうなるわなという話。


でですね、以下は与太雑談なので話100分の1くらいでって感じですが・・・・・・・・・・・

・妄想リスクシナリオ:2015年→2016年との類似性

2015年の12月に「QQEを円滑に行うための補完措置」みたいな感じの措置をぶっこんだ、というのは懐かしい話になりますが、要はQQE拡大していく中で、2年くらいで達成するつもりだったからそんなに後先のこと考えて無かったら2年で達成できないもんだからドンドン政策に無理が生じたんですよね。

でもって2015年12月に「補完措置」を入れたのですが、これが更に政策の限界近し!っていう見方に火を注いでしまって、おまけに為替市場が怪しくなってきたりして、2016年1月末のMPMで黒田さん逆切れのマイナス金利政策導入ってのがあった訳ですな。

・・・・・・・・これは1月会合でランボー怒りの緩和強化あるで、とか書くと従来なら遂に頭がキタかと言われる所ですが、最早何をしでかすか分からん黒田さん、立つ鳥後を濁さずどころか糞尿まみれにして退任するなら緩和強化するとか、YCCはさらにレンジ拡大するけどマイナス金利強化で利下げするとか、頭のおかしそうな事をやりだしかねないくらいに手負いの猪感を出しているのが今週のオペ動向って感じなので、1月会合も何か単純に展望レポートの内容にツッコミを入れていればよいだけに留まらないリスクはありますね。


・YCC延命措置のはずが却って寿命を短くしている件

妄想その2としては、「今回の措置でYCC延命できます」って言う事で黒ちゃん超渋々(会見のアレ見りゃ喜んでYCC運営の見直しした訳ではないのはアカラサマ)に今回の措置を飲んだとしまして、1週間持たずにこのテイタラクになってしまった訳ですので、これは黒田さん「〇〇くん!これはどういうことだ!!YCC政策の持続性が高まると君が説明するから止むを得ず賛成したのにもう10年金利が0.5%になりそうではないか!!!!!」と怒り心頭滅却しておりまして、これによりオペ部隊は慌てて輪番乱発するわ2年共通担保とかいう無茶兵器ぶっこんで来るわ、という砲撃を行いだした、とまあ考えたりするのもこれまた楽しいのですが、この点も「補完措置」で延命しようとして却って寿命が短くなりマイナス金利導入に向かった時みたいで実に忌まわしいものを感じますね。


ただまあその時と違うのは、黒ちゃん退任はほぼ確定で時間の問題の中、単なる逆切れだけでとんでもない新機軸ぶっこみに行くのは普通のボードだったら「殿、ご乱心」と止めに行くと思うのですが、今の日銀のボードは黒田様のご意向を通すための賛成マシーンと化しているのが何ともはや・・・・・・・・・・



〇年末のご挨拶

ということで何かもう無茶苦茶な1年でしたが、今年は海外中銀ネタの方が多かったと思いますが、来年は本来の日銀ネタに戻り、マイナス金利が解除されようもんなら短期市場についての考察も(浦島太郎にも程があるのですが)行っていきたいですよね。アーニャもワクワク!!

来たる2023年が皆様にとって素敵な1年になりますように!

新年は普通に4日から通常営業いたします。来年もよろしくです。







2022/12/29

お題「他年限の指値キタコレ/どこのファシスタ大評議会かと小一時間問い詰めたい(主な意見)」

結局休みの筈が遠出しないもんだから毎日何かしら更新しているというのはさすがに中の人の今までのアレでも初事案となっておりますです。まあ無風の筈がアレになった日銀のせいですけどね!!!!!!!!!!!!!

〇指値入ったのだが基準は謎

ちなみに27日は臨時輪番も他年限指値も無かったのですが、昨日はと言えば、
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of221228.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注4) 2022年12月29日 0.041
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注5) 2022年12月29日 0.050
国債買入(固定利回り方式)(残存期間1年超3年以下)(注6) 2022年12月29日 0.000
国債買入(固定利回り方式)(残存期間3年超5年以下)(注7) 2022年12月29日 0.000
国債買入(残存期間1年超3年以下) 1,000 2022年12月29日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 1,000 2022年12月29日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 3,000 2022年12月29日

(補完供給は引用割愛)

注4と5は例の「まいにち指値オペ(チーペと10年カレント)なのでさておくとしまして、

(注6)固定利回較差の結果、2年利付国債443回の買入利回りは、0.030%となる。買入金額に制限を設けずオファー。
(注7)固定利回較差の結果、5年利付国債154回の買入利回りは、0.240%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

という事ですが、20日のMPM結果出た日の後場に実施した指値オペは

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of221220.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間1年超3年以下)(注10) 2022年12月21日 0.031
国債買入(固定利回り方式)(残存期間3年超5年以下)(注11) 2022年12月21日 0.030
国債買入(固定利回り方式)(残存期間10年超25年以下)(注12) 2022年12月21日 0.071

(注10)固定利回較差の結果、2年利付国債443回の買入利回りは、0.020%となる。買入金額に制限を設けずオファー。
(注11)固定利回較差の結果、5年利付国債154回の買入利回りは、0.170%となる。買入金額に制限を設けずオファー。
(注12)固定利回較差の結果、20年利付国債182回の買入利回りは、1.245%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

でございまして、2年は1bp金利上昇、5年は7bp金利上昇、そして何故か20年の指値は無し(ついでに言えば臨時輪番も20日の時は中期前半、後半で1000億円、長期3000億円、超長期前半1000億円だったんですが今回は超長期無し)という打ち方に。


・・・・・・・えーっとすいません、先週から今週にかけてなんですけど、5年ゾーンの「適正な緩和水準であるイール
カーブの水準」って何で7bpも上昇したんでしたっけ?????なんか経済物価情勢においてそれなりの事がありましたっけ???????????????あと20年指値入れなくなったのは何でなんですかしら????

とまあ疑問が絶えないわけですが、ロイターさんの市場記事で反応を確認。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N33I0PX
2022年12月28日3:18 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、臨時オペ対象外の超長期金利が上昇

『[東京 28日 ロイター] -
<15:10> 国債先物は続落で引け、臨時オペ対象外の超長期金利が上昇

国債先物中心限月3月限は前営業日比6銭安の145円66銭と続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同1.0bp低下の0.450%。臨時の日銀オペの対象とならなかった超長期金利が上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

なんですかねえ、月曜日の黒ちゃん講演(経団連)における市場のゆがみの説明の所で、特にカレント3銘柄とそれ以外(8-9年対比の逆イールドなど)を中心に話をしてたからですかねえ。超長期のことがまたスルーになったのって・・・・・・指値の発動基準がさっぱり分からん。

『日銀は午前に、中長期債を対象とした臨時の国債買い入れオペを通告したほか、長期債に加え中期債対象の指し値オペも通告した。オペを受けての反応は限定的で、中期金利は横ばいからやや低下にとどまったが、オペの対象とならなかった超長期債の金利は上昇した。』

となりますわなー。結果は例によって例の如く。

『TRADEWEB
      OFFER  BID    前日比 時間
2年    0.038  0.046   -0.114 15:00
5年    0.235  0.24   -0.005 15:09
10年    0.446  0.457   -0.006 15:06
20年    1.263  1.277   0.028 15:07
30年    1.56  1.571    0.03 15:10
40年    1.786  1.808   0.031 15:07』

ということで、売りのエネルギーが超長期の方に流れましたね、って結果のようですが、何はともあれこの他年限指値の投下基準が相変わらず良く分からんですよね。しかも水準も可変なのは確定ですので、これはマーケットメーカー受難の日々になりそうですので、「YCC退散」というお札を作って日々調伏を行う、などの行事が必要になるかもしれませんな、南無大師遍照金剛。


〇主な意見は上の意見が変わったら突如豹変という翼賛政治会かファシスタ大評議会かという物件である

もうさ、お前ら会合始まる時のTVカメラの時に「ドウチェ!ドウチェ!」って言いながら黒ちゃんのご登場をお待ちした方が「この会合は総裁が決めた事項を追認するだけの翼賛機関でガバナンス機能はありません」ってのを国民に広く知らしめることが出来るから強く推奨しておきますよ(あと2回しかないけど)。

今回
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2022/opi221220.pdf

前回
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2022/opi221028.pdf

前回から今回の正反対ムーブになる経済物価情勢の変化はあったでしょうか?????というのがまずは最初の見どころですね。

・お前ら体裁取り繕いたいのは分かるが何で展望レポートの時より意見の数が多いんだよ(経済情勢)

『T.金融経済情勢に関する意見』を見ると、今回は『(経済情勢)』の意見が前回6個ありまして、今回は9個、となっているので意見の数が増えていまして、その中には

『・賃上げにかなり前向きな政労使のスタンス、総じて好調な企業収益、お互いに支えあう傾向の強いわが国の労使関係などを踏まえると、高めの賃上げが実現する可能性が相応にある。』(今回)

『・労働組合に物価上昇を踏まえた賃上げを求める動きがみられるほか、労働需給が引き締まる中で企業側にも前向きに応じる姿勢がみられている。このことは、持続的な物価の押上げにつながり得る。』(今回)

などという賃上げネタで威勢の良い話をしているのが少し入ったんですが、それは賃上げを見てからじゃないと政策判断に繋がらんじゃろ、というのが今までのムーブであった筈なので別にこれがYCCの見直しに本来は繋がらないんですな。

さらに笑うのは先ほど申しあげました通り、前回は展望レポートの作成を行っている会合なので経済物価情勢の点検をより詳細に行わなければならん、という会合ですが、この次の物価も含めまして、なんということでしょう、意見の数が「経済情勢」で前回6つ→今回9つ、「物価情勢」で前回8つ→今回9つ、ということで、展望レポートでもない会合の方が意見が経済物価情勢に対する意見の数が増えています。

まあ何ですな、「今回って事実上の政策変更をしちゃってるからやっぱりバックグラウンドの話を入れないと格好がつかないよね」という九官鳥の皆様が九官鳥並みの知能を駆使した結果意見が増えた、ということに他ならない訳でして、お前ら展望レポートの時にもっと経済物価情勢の意見交換してろやというお話ではございます(個人の偏見です)。

もちろん「経済物価情勢の判断が年末に来て変わったので意見を交わしましょう」ってちゃんとしたムーブになっている可能性もカシュカリ総裁の頭髪程度の可能性はあるかもしれませんが、その割には内容がほぼ同じになっているので、経済物価情勢の判断によって今回なんかあった訳ではない、というのがこのファシスタ大評議会じゃなかった金融政策決定会合主な意見の示すところでありますな。


・物価に関してはそろそろ先行きの威勢の良い話が

(物価情勢)ですが、前回なかった指摘の中ではこれが今後また日銀の言い訳に使う可能は残っていますね。

『・消費者物価上昇率はコスト・プッシュ圧力の一巡後に2%を下回るとみている。その後再び2%に伸びを高め、それが継続するためには、名目賃金が十分に上昇し、サービスを中心とした消費者物価の粘着的な部分の伸びが高まることが必要である。』(今回)

で、本題の「物価上昇が定着するかも」意見ですが、前回は、

『・コスト・プッシュとはいえ、実際に川上から川下へ価格転嫁が拡がる中、物価が上がらないことを前提とした企業の行動原理が変わりつつある可能性がある。』(前回)
『・ディスインフレの世界が長年続いた後の物価上昇局面であり、また、グローバル化の逆回転等の構造的変化もあるため、過去の経験がそのまま当てはまらず、物価が大きく上振れするリスクも否定できない。』(前回)

でしたが、今回は

『・企業の価格転嫁の動きが広がっており、これが物価上昇率の底上げに寄与する可能性や、企業業績の底上げを通じて前向きな循環につながる可能性がある。』(今回)
『・財だけではなく、サービス価格も次第に上昇率を高めているほか、刈込平均値や加重中央値も伸び率を一段と高めており、物価上昇のモメンタムが強くなってきている可能性がある。』(今回)
『・わが国の消費者物価は、個別品目の価格上昇率の分布、及び、生鮮食品とエネルギーを除く指数の水準でみて、デフレ期以前の状態に近づきつつある。これはデフレに戻ることのない状況の実現に向けた動きと考えられる。』(今回)

という感じでちったあ強い話が出ていまして、この辺りは今回の事実上の政策変更の「次に来るもの」に向けた布石がそろそろ書かれてきましたなあ、という感もありますな。


・何ですかこの諸手を挙げて全員賛成のファシスタ大評議会は????????????

などとちょっと読んでみましたが、結局のところ事実上の政策変更に至った背景は「どこかから差し込まれたので大評議会としては偉大なる統領の仰せの通り賛成致します」以外の理由がわからんかった訳ですよね。『U.金融政策運営に関する意見』ですけど、途中からYCC見直し万歳音頭が延々と流れてきて頭がクラクラしてきた。

『・わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にある。ただし、債券市場の機能度が低下しており、こうした状態が続けば、企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼし、金融緩和の効果の波及を阻害する惧れがある。』(今回)

『・債券市場の機能度が低下する中で、投資家のセンチメントが慎重化し、社債金利のスプレッドは拡大している。発行金額・件数面を含めれば、社債の良好な発行環境は維持されているとみられるが、注意を要する状況にある。』(今回)

『・わが国経済の持続的成長には長期金利を低位で安定させることが必要であるが、市場機能への悪影響も懸念されるため、長期金利の変動幅を拡大させつつ長短金利操作を継続することが適当である。』(今回)

『・長期金利の変動幅の拡大は、債券市場の機能度改善を通じ、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた現行の金融緩和を、世界的インフレのもとでより持続可能にするための政策対応であり、金融緩和の方向性を変更するものではない。』(今回)

『・市場機能の低下への対応のため、長期金利の変動幅の拡大が必要である。その場合でも、インフレ予想の上昇もあって、実質金利の低下を通じた強力な緩和効果が続くことは変わらない。』(今回)

『・国債のイールドカーブ上、10 年債の価格形成に歪みが生じている。これによる悪影響を回避する観点では、長期金利の変動幅の拡大が必要と考えられる。ただし、これは金融緩和の出口に向けた変更ではなく、国債買入れを通じて現状の緩和姿勢は維持されるべきである。』(今回)

『・長期金利の変動幅の拡大は、イールドカーブ・コントロールの持続性強化に資する。また、イールドカーブを全体として低位に安定させるべく、全年限で国債購入額を増額したうえで、状況に応じて機動的な買入れを実施することも、金融緩和の持続性強化につながる。』(今回)

『・イールドカーブ・コントロールの運用見直しは市場機能の改善に資する。マーケットがどこに、どのように落ち着き、市場機能がどれだけ改善するのか、謙虚にみていくことが大切である。』(今回)

『・持続的な賃金上昇に必要な経済・賃金構造変革の動きを後押しするうえでは、金利水準を低く抑えることが重要であり、そのために、イールドカーブ・コントロールの持続性を強化することが必要である。』(今回)

・・・・・・・なんということでしょう、9名全員が急にこんな事を言い出しました。

ここで10月決定会合の主な意見を見てみましょう(URLは再掲)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2022/opi221028.pdf

一々引用しませんが、『U.金融政策運営に関する意見』の中には17個の意見がありますが(なので概ね2つだしているんですよね)、その中で債券市場について直接言及しているのは見ればお分かりになりますように、

『・債券市場の安定性確保は重要であり、引き続き、モニタリング等を通じて市場の状況をきめ細かく把握する必要がある。』(前回)

だけでして、何で突如今回このようなウシガエルの大合唱の如く耳障りな(なおこのウシガエルの皆様の個別ロジックに各種ガバガバーナ要素があるのですが、その話は既にしている件ばかりだし時間の無駄なので割愛しますね)大合唱になったのか、というこの間の飛躍がさっぱり分からない、という大変に素敵なものになっています。


まあ何ですな、7月の「主な意見」の時にも拙駄文のほうで、「こいつら急に賃金上昇ネタの大合唱が始まった」という話をしたと思いますが、今回もそんな感じでございまして、もうマジで要らんよこの政策委員(黒ちゃんと雨宮さんは首謀者だし田村さんはちゃんと言うべきことを言っているので除外対象にはなりません、なお高田さんは怪しいのだがまだ来たばかりなので執行猶予にしますが)という感じでして、やはりおんどれら(首謀者と人間様である田村さんと執行猶予の高田さんは除外して)年末年始は肥溜めにでも漬かってちょっと人間としての在り方というのを見直して頂きたいものだ、と切に思った次第です。

ただま無理矢理ポジっておくとすれば、この連中(除く田村さん)がファシスタ大評議会なので、戦況が悪化したかと思ったらあっという間に連合国に降伏してドウチェは放り出されてしまう、という方向でのジャガーチェンジも起きるというものですので、新体制になったら新体制の思し召しのままにまた全部諸手を挙げて追認するんだろうな、というのは良く把握できました。ガバナンスどうなってるんだ、とか言い出すとそもそも日銀当座預金がESG不適格になりかねませんので(超大嘘)藪蛇注意ということで(違)。





2022/12/28

お題「基調的な物価だけど最頻値スゲー/月曜の黒ちゃん経団連講演は敗北宣言みたいなもんじゃんこれ」

中尾さんこれはまた・・・・・・・・・
https://jp.reuters.com/article/interview-takehiko-nakao-idJPKBN2TB0AW
2022年12月27日5:36 午後
インタビュー:日銀実質利上げ、後任総裁の負担軽減効果あった=中尾・元財務官

『理由について中尾氏は「よくわからない」と述べた。一方で、「YCCは、人々の物価感を引き上げつつ金利を低く抑えることで実質金利を引き下げ、デフレの脱却、経済の刺激を図る効果よりも、円安など副作用の方が大きいため、いずれ修正が必要と考えていた」と指摘。今回日銀が長期金利目標引き上げによる実質的な利上げに踏み切ったことで、「来春就任する後任の総裁が、政策修正による住宅ローン・国債金利上昇などマーケットのショックの責任をすべて負担せずに済む効果があったのではないか」と解説した。』(上記URL先より)

いやその通りなんですが何ぼ何でも身も蓋もない・・・・・・・・・(いいぞもっとやれ)

〇基調的な物価はどう見ても「均衡が動いた」にしかみえませんけど

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

・・・・・・・・もはやあまりにも美しすぎて申し上げる言葉も見当たらないのですが、この状況でなんで物価が来年度に1%カツカツくらいに下がる(じゃないと展望レポートの見通しであるところの年平均+1.6%にならない)とか逆にどういう計算でそういうことになるのかがさっぱり分からんし、このままあたおか緩和続けたらビハインドになるんじゃないですかねえ(というのは一応今回の実質利上げの判断材料になっている気はするんだけどなあ、さすがに日銀だって黒田がアレだから本音言わないけど馬鹿じゃないので)。

ということでいつもの数字拾いをエクセルから。

いつものように左から刈込平均値、加重中央値、最頻値です。

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2
Dec-21 0.9 0.1 0.3
Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5

今回改めてビビったのはこの1年における「最頻値」の物凄い勢いでの上がりようで、なるほどそら最近食品以外でも何か値段変わってね??ってのが多くなったわと実感する一方で年功序列賃金ナニソレ(以下自粛)という自分の財布の話はさておきましても、いやこれ普通にエライ勢いで上がってるわけで、逆にこの状況から来年度物価が大きく下がるという絵が良く分からないんですけど。


上昇品目割合、下落品目割合、上昇ー下落の数値ですな。

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9
Dec-21 58.8 34.3 24.5
Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0
Jul-22 73.2 20.7 52.5
Aug-22 72.6 21.5 51.1
Sep-22 74.9 18.6 56.3
Oct-22 78.9 14.6 64.4
Nov-22 79.9 13.6 66.3

まあさすがに高原状態に達したという感じでしょうが、しかしよく考えたら上昇品目8割かよそりゃ財布も軽くなるわじゃなかったまあこれは普通に値上がりしてるわーってお話になりますよね。

・・・・・・・いや真面目な話、1月の展望レポートでどうせ2023年度物価見通し1%台(しかも2%寸止めよりはもうちょい低い水準)は死守(ナンジャソラ)すると思うのですが、年度通してのCPIの置きが無茶苦茶アクロバットになりそうですので、是非とも次回の展望レポートでは「足もとのコアCPI3%だという時に来年度の平均が1.7%(仮置き)となっていますが、年平均1.7%になるというパスはどうなっているのでしょうか、端的に四半期展開した時の数字はどうなるのでしょうか??」って誰か会見でぶっこんでいただきたいものです。

そう聞かれると絶対に回答不能(2023年度の帳尻を合わせに行くと今度は2024年度の数字がこれまたアクロバットな四半期展開を出さないと行けなくなるので)なのですが、この際の想定問答は「この数値は9名の委員による見解の大勢部分の中央値になるので、四半期展開のような形での内容を想定したものではありませんので回答致しかねます」となると思います(表現には工夫の余地があるが)wwwwwwww

てゆーか、1月の展望レポートで黒ちゃん最後の展望レポートなんだからここでまさかの「物価目標の達成が具体的に展望できるようになりましたので、緩和政策は状況を鑑みてまだ行いますが、マイナス金利政策と10年ターゲットは廃止します、苦節10年やっと光明が見えて参りました!!!」とか言い出さないかね、という位に今の日銀は何しでかすかわからん(12月の決定を全員一致とかいう恥ずかしげもない内容で出してきて10月議事要旨で体裁を整えるアリバイ作りすら放棄している時点でヤケクソになっているとしか思えないので)ので、まあワクワクは止まらないという感じですな(個人の妄想です)。


〇今回の経団連講演はドサクサに紛れてYCCの敗北宣言と白川ドクトリン回帰の話になっているのがチャーミング

・過去の経団連講演でのお題を並べるだけでもう泣けますねえ(棒読み)

ということで月曜の黒ちゃん講演ですが、毎度年末に行うこの経団連での講演、過去の題名を2013年から並べてみましょう。

なお、この辺から拾ってまいります。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_all/index.htm/
講演・挨拶等
年別一覧

2013年12月25日 黒田総裁【講演】「デフレ脱却の目指すもの」(日本経済団体連合会審議員会)
2014年12月25日 黒田総裁【講演】「『2%』への招待状」(日本経済団体連合会審議員会)
2015年12月24日 黒田総裁【講演】「転換点を迎えて」(日本経済団体連合会審議員会)
2016年12月26日 黒田総裁【講演】「世界経済の新たなフェーズと日本経済の課題」(日本経済団体連合会審議員会)
2017年12月26日 黒田総裁【講演】「人手不足を越えて:持続的経済成長への展望」(日本経済団体連合会審議員会)
2018年12月26日 黒田総裁【講演】「わが国の経済・物価情勢と今後の展望」(日本経済団体連合会審議員会)
2019年12月26日 黒田総裁【講演】「好循環の持続に向けて」(日本経済団体連合会審議員会)
2020年12月24日 黒田総裁【講演】「感染症への対応と中長期的な日本経済の課題:ポストコロナも見据えて」(日本経済団体連合会審議員会)
2021年12月23日 黒田総裁【講演】「金融政策と企業行動:金融政策の効果波及経路と日本企業の構造変化」(日本経済団体連合会審議員会)
2022年12月26日 黒田総裁【講演】「賃金上昇を伴う形での「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現に向けて」(日本経済団体連合会審議員会)

まあ何だ、何も申し上げることはありませんですなあっはっは。

講演は結局「賃金があがらないと物価目標は達成しません」という最近の日銀最後の言い訳の賃金推しの話ですが、今回の決定に関する説明も一応ありますのでそれを見ると具体的に「迂回作戦に負けてマジノ線を放棄しました」と言っているのが大変にチャーミングなのでその辺から参ります。


・10年カレント以外の金利が上昇したので0.25%を放棄しましたって言っちゃって大丈夫なの????

『2.最近の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策運営』の『(日本銀行の金融政策運営)』ですけど、ちょっと先の方になりますので、講演テキスト4ページ(PDFで5枚目)中段以降になりますが、今回の措置の背景について説明しております。

『本年春先以降、海外の金融資本市場のボラティリティが高まっており、わが国の市場もその影響を強く受けてきました。わが国の債券市場では、日本銀行のイールドカーブ・コントロールのもとで、10 年物国債金利は「ゼロ%±0.25%程度」の低水準で推移してきましたが、各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で、市場機能の低下がみられていました。』

ここまでは良いんですけど、

『例えば、期間 10 年の金利より8〜9年の金利の方が高い、あるいは、先物市場と現物市場の価格に乖離がみられる、といったことです。また、期間 10 年の国債金利についても、指値オペの対象としているカレント物は 0.25%以下となっていた一方で、残存期間 10 年の 20 年物国債はそれよりも高い金利で取引されていました(図表5)。』

ちょwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwww

しかも図表5というのが『国債の銘柄別イールドカーブ』って物件で、これはPDFの17枚目にありますので、まあそれを見てくださいって感じなのですが、カレント3銘柄だけ金利が飛んで低い、という昔の国債指標銘柄(債券村養老院の老人に聞くと30分くらい昔話が始まるので暇なときに聞くのがお勧め)を彷彿させる、あのクイックの端末の専用プリンターで打ち出した懐かしいイールドカーブみたいなのが出てて、不肖この養老院のジジイであるアタクシも歓喜の図がございます。

ということで、10年カレントを無視して経済物価為替情勢などを受けて価格形成されてしまっている他の国債金利に対しまして、

『ご存じのとおり、国債金利は社債や貸出などの金利の基準となるものです。こうした国債市場における歪みが、社債のスプレッドが拡大する形で調整されるといった現象もみられました。現在は、企業等を取り巻く金融環境は全体として緩和した状態が維持されていますが、これまで申し上げたような状態が続きますと、企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす惧れがあると考えました。』

ってよく考えたら(よく考えなくてもそうだけど)無茶苦茶な理屈で、他の年限の金利があがることによってスプレッド拡大が発生しているんだったら、10年カレントの金利上昇を容認しちゃうってのは「社債の発行スプレッド拡大を止めるために、ベースのレートを上げて解決する」って事に他ならなくて、それは確かに「スプレッド」は改善するのですが、ベースレートあがるんだから「発行レート」は変わらない訳で、これによって何で「企業の起債環境などが改善する」という話になるのかって話で、とってつけた理屈にしてもこの「社債レート」の話をするのは無理筋にも程があるとしか申しあげようがないですよね。市場機能の改善だけで通した方がまだ話がマシだったと思うんですけどね。

『そこで、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図る観点から、イールドカーブ・コントロールの運用面でいくつかの手段を講じることとしました。』

とまあそういう説明になっておりますが、これは完全に「10年カレント3銘柄だけ止めても無駄だったので戦線を後退させました」って説明になっていまして、市場機能論で話をするにしても明らかな敗北宣言になっております。

何故なら、そもそもYCCの10年コントロールの話に戻ると分かりやすいのですが、ここで2018年3月決定会合後における黒田総裁の定例記者会見を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk180312a.htm/
総裁記者会見要旨
2018年3月9日(金)午後3時半から約55分

上から3分の1辺りにこのような質疑応答があります。

『(問)2点お伺いします。1点は長期国債の買入れペースです。今、80兆円をめどとされていますが、実際には、国会答弁でおっしゃっていたのは50兆円程度だとお伺いしています。結構乖離があるところなので、市場関係者からはステルステーパリングだというような指摘もあります。乖離があること自体について、黒田総裁はどのようにご覧になっているのか、改めてお聞かせ下さい。(後半割愛)』

『(答)前段につきましては、2016年9月に現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みを決めた時に申し上げましたし、現在も申し上げていますが、金融政策の操作目標はかつてのような国債の買入れ額ではなく、現時点でいえば、短期金利が−0.1%、10年物国債金利がゼロ%程度という金利目標になっています。国債の買入れペースは、あくまでも「イールドカーブ・コントロール」の金利目標を達成するために、必要にして十分なことを行っているということです。概ね現状程度の買入れのペースをめどとしつつということであって、目標は2つの点の金利を設定することによって、適切なイールドカーブを実現することです。目標自体が今は金利になっているということです。』(この部分のみ直上URL先2018年3月9日総裁定例記者会見より引用)

>目標は2つの点の金利を設定することによって、適切なイールドカーブを実現することです。
>目標は2つの点の金利を設定することによって、適切なイールドカーブを実現することです。
>目標は2つの点の金利を設定することによって、適切なイールドカーブを実現することです。

はい。もともとYCCのキモは上記のように黒田総裁様御自らご説明されていた訳ですが、今回「市場で形成されているイールドカーブの形状に合わせて目標金利の許容変動幅を拡大した」ということですから、これはどこからどう見ても本来のYCCの趣旨と異なる訳で、筋論から言えば(この前も言ったけど)全年限に渡って指値オペをガンガン実施して短期▲0.1%、10年0%に整合的なカーブを「日銀が作り出す」必要があった訳ですな(当然そんなの現実問題として無理だから今回決壊したんですけど)、うんうん。

とまあそういう訳ですから「レンジ拡大は利上げ」と言ってた時の方が筋論としては正しかった(政策として正しいとは言ってない)訳で、いやはや何ともとしか申し上げようがない。


なお、ここで昨日の先物から10年カレントまでの終値を売買参考統計値の平均値単利で確認しましょう。

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

長期国債 358 2030/03/20 0.450
長期国債 359 2030/06/20 0.470
長期国債 360 2030/09/20 0.485
長期国債 361 2030/12/20 0.499
長期国債 362 2031/03/20 0.505
長期国債 363 2031/06/20 0.509
長期国債 364 2031/09/20 0.510
長期国債 365 2031/12/20 0.495
長期国債 366 2032/03/20 0.430
長期国債 367 2032/06/20 0.455
長期国債 368 2032/09/20 0.459

なんか焦げ臭いですねえ(極端じゃないけど)・・・・・・・・・


・歴史改変来ました

『3.わが国の労働市場と賃金形成の特徴』以下が「賃金が上がらないと物価が上がらない」という話ですが、物凄く歴史改変をしている説明を冒頭からしてて呆れた。

『ここからは、わが国の労働市場と賃金形成の特徴について、お話ししたいと思います。』

はい。

『日本銀行は 2013 年4月に、「物価安定の目標」の実現を目指して、「量的・質的金融緩和」という、現在まで続く大規模な金融緩和を開始しました。このことは、単に物価が上がりさえすればよいということではありません。この点は、9年前の本席でも、「価格の緩やかな上昇、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇といった形で、経済の好循環が実現し、定着することを目指している」と申し上げたとおりです。言い換えますと、売上・収益の増加や賃金の上昇によって裏打ちされることが、持続的・安定的な形で「物価安定の目標」を達成するうえで、きわめて重要であるということです。』

は???????ということで「9年前の本席」というのは2013年12月の事になりますが、確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko131225a.htm/
【講演】デフレ脱却の目指すもの
日本経済団体連合会審議員会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦
2013年12月25日

(以下暫く引用は直上URL先の2013年4月の黒田総裁講演からになります)

そもそもこれ、章立てが、

『1.はじめに
2.デフレの問題
3.「量的・質的金融緩和」の考え方―「期待」の抜本的転換
4.インフレ予想の引き上げ
5.おわりに』

ってなってて、賃金の話は全然メインじゃないですし、今回の講演で黒ちゃんがリファーした部分って、確かに切り取ればそう言っているのですが、そこの文章をパラフラフごと引用すると(ちなみに『3.「量的・質的金融緩和」の考え方―「期待」の抜本的転換』の最後の部分になります)、

『このように、期待への働きかけを重視する「量的・質的金融緩和」の効果波及ルートは、デフレ下で定着してしまった悪循環を、ちょうど逆回転させていくプロセスにほかなりません。日本銀行は、デフレ期待の払拭を起点として、価格の緩やかな上昇、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇といった形で、経済の好循環が実現し、定着することを目指しているのです。』

となっていて、今回講演で言ってる説明と全然違うんですよね。確かに切取り部分だけはご覧の通りで別に嘘八百な訳ではないのですが、この時の話の趣旨は明らかに「期待の転換」がキーになっており、賃金の上昇がどうのこうのとかそんなのはオマケの話になっておりますわな。

この章の一番最初の記述だってこうなっている訳ですよ。

『それでは、どのようにすれば、デフレから脱却できるのでしょうか。これに対する日本銀行の答えが、本年4月に導入した「量的・質的金融緩和」に他なりません。

先ほど申し上げたように、デフレ問題の本質は、「物価が上がらない」ことを前提に行動することが、企業や家計にとって合理的となっている点にあります。こうした「デフレ均衡」から抜け出すためには、「物価が緩やかに上昇する」ことを前提に行動する方が、より合理的な選択となるような経済環境に転換する必要があります。「合成の誤謬」によるデフレのもとでは、一社だけで価格や賃金の引き上げを実施することは不利益になりますが、多くの企業が同時に価格や賃金の引き上げを行えば、経済全体にプラスに働く訳ですから、政策当局としては、そのように人々のマインドセットを転換できるような大胆な政策を打ち出さなければなりません。要するに、「デフレ均衡」下のゲームのルールを打ち破る必要があるのです。』

・・・・・・・「賃金が上がらないと物価目標行かない」みたいな話、どこにも無いんですよねー。

なんなら調子にのって2014年12月のあの伝説の経団連での講演、

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/ko141225a.htm/
【講演】「2%」への招待状
日本経済団体連合会審議員会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦
2014年12月25日

を読みますと(以下暫くは直上のURL先の2014年12月25日黒田総裁講演より引用します)、

章立てはやっぱり

『1.はじめに
2.デフレ経済の姿
3.2%の「物価安定の目標」の実現と日本経済の転換
4.デフレ経済からの転換にあたって
5.おわりに』

となっていまして、まあこれは改めて読んで味噌という感じですが、『4.デフレ経済からの転換にあたって』のケツの方に、

『先ほど述べました通り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を安定的に実現することを目指しています。そして、その状況とは、企業や家計が2%の緩やかな物価上昇を前提に意思決定を行い、行動するようになることだと考えています。したがって、原油価格の動向やその予想物価上昇率への影響を評価していくうえでも、こうした観点からデフレマインドの転換がどのように進んでいくかを、注視していきたいと思います。』

とあったり、最後の『5.おわりに』の結語部分では、

『ここで強調しておきたいのは、企業がこのように「収益を使っていく」ことは、日本経済に好影響を及ぼすのはもちろんですが、その企業自身にとっても直接的なメリットをもたらすという点です。2%の「物価安定の目標」が実現すると考える人々にとっては、現在の実質金利は極めて低く、実物投資の採算は良いはずです。逆にデフレ脱却を信じない人にとっては、引き続き実質金利は高く、積極的な行動は抑制されます。デフレを脱却したあとは、こうした人々も参入してきますので、例えば人手の確保の競争は激しくなるでしょう。また、当然のことですが、2%の物価上昇が安定的に実現すれば、金融環境もやがて経済に中立的なものになっていきます。

要するに今の過渡期的な状況を利用するかどうかは、早い者勝ちの面があるということです。デフレのもとでの「縮小均衡」の経済と、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」の経済とでは、企業を取り巻く環境は全く異なります。企業経営のルールブックが変わるということです。進化論を唱えたダーウィンは、「生き残るのは、強い生き物ではなく、変化に対応できる生き物だ」と言ったと伝えられています。いち早く環境変化を先取りし、「拡大均衡」の経済に対応できた企業こそが競争の「勝者」となり、新しい時代における繁栄を享受できることになるのだと思います。』

という大変に威勢の良い話がございまして、いや本来はこっちだった筈だよねって事ですが、「2%の物価目標が実現に向かう頃には人材確保だってできなくなるんだよ(だから賃金も上がる)」という順番で話が進んでいたのに、いつの間にか「賃金が上がらないと物価が上がらない」となったのはこれ如何にって感じですね。


・どう見ても白川ドクトリンです本当にありがとうございました

では元の講演に戻りますが、まあああでもないこうでもないと話が『3.わが国の労働市場と賃金形成の特徴』の所から続くのですが、その結論というか次の小見出しへのリードは、

『そこで、今度は、企業の賃金設定行動について確認したいと思います。その前提として、まず、わが国の労働市場の構造を改めて整理します。』

ときまして、以下『(わが国の労働市場と賃金形成の特徴)』『(賃金の見通し)』という説明になっているのですが、構造問題を持ち出している時点で2013年12月や2014年12月の講演とは全然話が違っている事が明らかですよね、というのは上の方でだした講演でもチラ見すれば良く分かるかと思います。

もともと構造問題について白川日銀が言及すると置物一派が口汚く罵倒していたのはなんだったんでしょうかねえ・・・・・・・・・・


2022/12/27

お題「10月決定会合議事要旨は「12月決定に至る伏線が一切張られていない」のがみどころですよ」

イブニングの横綱朝5時時点での最終出会いが2:32クソワロタ
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night

限月:23年3月限
取引日:12/27
夜間取引

始値:145.94(12/26)(15:30)
高値:146.02(12/26)(17:06)
安値:145.90(12/27)(02:32)
現在値:145.91(12/27)(02:32)
前日比:+0.02
取引高:366

〇10月金融政策決定会合議事要旨ですがもはや体裁取り繕いすらしないのはある意味潔い

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2022/g221028.pdf
政策委員会金融政策決定会合議事要旨
(2022年10月27、28日開催分)

この議事要旨、日銀法の規定なので仕方ないのですが、次回決定会合での議決事項になっているので(今にして思えば議事要旨なんだから通常会合で議決したって良かったよね)、次のMPMの直後じゃないと出せないという仕切りになっております。当然ながらクソデメリットしかない建付けなのですが、一つだけ日銀事務方(゚д゚)ウマーなのは、「次回決定会合で何かあった時に議事要旨に伏線を張っておける」というのがありまして、何らかのチェンジがあった時っていうのは、必ずその後に出る議事要旨に「ああなるほどこういう問題意識があったのか」というのの匂わせがあったりするのよ。

これがFEDの場合だとFOMCの3週間後に議事要旨だすから、これが何か次回FOMCに向けた予告ホームランっぽい部分を出す、というようなコミュニケーションツール(要旨だから嘘にならない範囲内で当時の議論に関して適当に軽重を弄って出すのは(極めて筋悪だが)アリエールなのよ)として使っている面がありますが、先ほど申し上げたように日銀の場合はそもそも論として後出しになりますので、今までの場合だと「唐突な決定をしているように見えるが実は前回も問題意識が無い訳では無かった」というアリバイ工作にこの議事要旨を使う(個人の妄想です)というプレイが可能になっておりまして、まあその一環で何か書いてあった、というのは日銀見物ウン十ウン年の不肖このアタクシ何度も拝見しております。


ということで、今回の議事要旨の楽しみは、今回YCCの運営見直し(実質利上げ)に至ったロジックとなる「イールドカーブの歪み」に対する問題意識について、どの程度事務方が取り繕って作品に仕上げたか、という点にあったんですな(はいそこのアナタ性格が悪いとか言わないで)。


・・・・・・・・・全然12月に至るロジックが確認できない。

うーんこのという感じでして、そらまあ前回会合から今回会合の間の飛躍というか論理的整合性が皆無なのは皆さん指摘する通りだし、だからこそせめて若田部くらい反対しろやと思うのですが、なにせ置物界隈がツイッターなどで「今回の措置は利上げではない」って一番全力で主張してて、おまえらの主義主張は出世のための道具なのね、(その点で言えばジンバブエ先生なら反対したんじゃなかろうか位の狂信者感がありますな、ある意味褒めてるのですけど)という認識を持ったわけですけれども、うーんここからどうやって今回の飛躍になるのか、12月会合「主な意見」がある意味楽しみになって参りました。


とまあそういう事で話を終わりにしてしまうと出オチにも程があるので中身もちょっと読んでみますけれども、何がどうなって12月の結論に至ったかを10月議事要旨を見ても何も分からん、というのはさすがにヤケクソにも程があるわ、と思うのでありました。

・10月終わりのイールドカーブは調節方針と整合的なカーブだったのになぜ12月になって歪みが問題になるのでしょうか

『T.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要』という普段読み飛ばすところ。

『1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(9月 21、22 日)で決定された短期政策金利(− 0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、国債買入れを行った。また、前回会合で決定された連続指値オペの運営方針に従って、10 年物国債を対象とする固定利回り( 0.25%)方式による国債買入れ(指値オペ)を毎営業日実施した。このほか、チーペスト銘柄を対象とする指値オペを毎営業日実施した。そのもとで、10 年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。 』

まあこれは調節担当部署(報告するのは金融市場局長)としては「整合的じゃないです」って言ったらディレクティブ守れませんでしたサーセンって報告になるからこれはしょうがないのだが。

『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要 』でどういう議論になっているかを確認してみましょう。

『わが国の金融環境について、委員は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にあるとの認識で一致した。また、委員は、経済再開の動きや原材料コスト上昇の影響から企業の運転資金需要は増加しているが、全体として企業の資金繰りの改善傾向は変わっていないとの見方を共有した。ある委員は、外部資金の調達環境について、社債金利の上昇等はあるが、総じてみれば良好であるとの見方を述べた。別のある委員は、中小零細企業の一部など、構造的に厳しい事業環境に直面している企業の倒産・廃業の動向等は注視していく必要があると述べた。』

「ある委員は、外部資金の調達環境について、社債金利の上昇等はあるが」という物件以外に12月のジャガーチェンジのバックグラウンドになりそうな話は無いですね。

『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』でもYCCに関する議論があります。

『長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節上の様々な工夫により、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが形成されているとの認識を共有した。』

ほうほうそうですかそうですか。

『複数の委員は、米欧の長期金利の急激な上昇を背景に、わが国でも金利上昇圧力が強まっているものの、イールドカーブ・コントロールにより、長期金利の上昇は抑制されていると述べた。』

ほうほうそうですかそうですかそうですか。

『このうち一人の委員は、イールドカーブの上昇を抑制するために国債買入れを増額していることは、流動性の供給という量の面からも緩和効果を高めているとの認識を示した。』

どこかの置物一派ですねって感じだがイールドカーブの形状は問題にしていませんですなあ。

『もう一人の委員は、長期金利がレンジの上限に張り付いていることは市場機能にマイナスの影響を与える面もあるが、現在、長期金利が低位で推移していることのマクロ経済に及ぼす便益が大きいとの見方を示した。』

ちょwwwwwwwwwww

じゃあ何でこの人は12月の決定会合で諸手を挙げて賛成したんでしょうか。ちょっとこの委員誰だかはさっぱり分からないんだけど、一回ドラム缶で行く日本海溝片道クルージングツアーにでもご参加された方がよろしいんじゃないでしょうか。

『ある委員は、債券市場の安定性確保は重要であり、引き続き、モニタリング等を通じて市場の状況をきめ細かく把握する必要があると述べた。』

田村さんですねわかります。ということで最後にやっと出てきました、って感じですね。ちなみに「10月の主な意見」もご案内の通りですが、田村さんと思しき方のこの点の指摘だけが辛うじてYCC政策の副作用論として記載されていましたけれども、他の方々は大政翼賛会なのか何だか知らんが、そういうネタは一切なしでしたよね、まあ改めて読んで味噌。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2022/opi221028.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2022 年 10 月 27、28 日開催分)1

この中に「債券市場の安定性確保は重要であり、引き続き、モニタリング等を通じて市場の状況をきめ細かく把握する必要がある。」ってありまして、これが田村さん(ワンチャン高田さん)と思しき方なのですが、主な意見に記載された物件は議事要旨にも掲載しないといけない(だって参加した人が「これがワシの重要な意見じゃ」と言ってるんですから議事要旨に載せないといかんですからね)ので、ここに掲載されたという感じで、前後の文脈を見ても別にこの件で何らかの議論が戦わされた訳ではない、ということになります。


・さてここで10月決定会合前の国債市場を確認してみましょう

ここまで10月会合でイールドカーブの形状についてほぼ議論が無かったことについて申し上げましたが、そりゃまあ10月〜12月にかけての間にカーブが無茶苦茶歪んだのであれば12月になって変更、というのは話としてはアリエールではあるのですが、そもそも市場的に(いずれは持たなくなるっしょという思いはありながらも)唐突なタイミングだったのは、12月会合に向けてカーブが急に歪んだわけではないからなんですよね、ということで10月27、28日のちょっと前の状況を見ますね。

10月ってMPMの前週の金曜日に(他の要因もありましたがちょうど21日に公表された)全国CPI3%キタコレとか言いながらドル円が150えーんってなって(その後午後には151円とかだった訳ですが、その夜に為替介入攻撃がありました、ってな状況でしたわな。でもってその週明けの24日の引値の辺りって後ろの金利が大きく上がった時(先物は25銭高だったんですが翌日の流動性供給入札に向けて売り込んでいた次第)でして、アタクシの手元にあるノートを見ますと、各年限のカレントの引値(単利)が

10/24
40y15:1.885%
30y78:1.650%
20y182:1.245%
10y368:0.250%
先物チーペ:0.245%
5y154:0.125%
2y411:▲0.005%

ということで、7年10年がお洒落な形状になっていて、この日の売参のデータから適格ゾーンの売買参考統計値単利を取ると、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

(10/24の終値)
長期国債 357 2029/12/20 0.245
長期国債 358 2030/03/20 0.265
長期国債 359 2030/06/20 0.295
長期国債 360 2030/09/20 0.310
長期国債 361 2030/12/20 0.315
長期国債 362 2031/03/20 0.320
長期国債 363 2031/06/20 0.325
長期国債 364 2031/09/20 0.330
長期国債 365 2031/12/20 0.305
長期国債 366 2032/03/20 0.200
長期国債 367 2032/06/20 0.245
長期国債 368 2032/09/20 0.250

と、物凄い勢いで7年ー10年のイールドカーブが歪んでおりましたし、超長期の金利も高杉晋作な訳ですわ。まあこの日は感極まっていた風情があるので、MPMの1日目の前日10/26を同様に取ると、

10/26
40y15:1.765%
30y78:1.545%
20y182:1.190%
10y368:0.250%
先物チーペ:0.225%
5y154:0.090%
2y411:▲0.025%

長期国債 357 2029/12/20 0.225
長期国債 358 2030/03/20 0.250
長期国債 359 2030/06/20 0.275
長期国債 360 2030/09/20 0.290
長期国債 361 2030/12/20 0.295
長期国債 362 2031/03/20 0.300
長期国債 363 2031/06/20 0.305
長期国債 364 2031/09/20 0.310
長期国債 365 2031/12/20 0.285
長期国債 366 2032/03/20 0.200
長期国債 367 2032/06/20 0.245
長期国債 368 2032/09/20 0.250

ということで、既に10月の時点で散々イールドカーブ歪んでるはずなんですよね。しかも12月MPMに関しては、直前にあちこちから急に「新総裁になったら政策の見直し」だの「政府日銀の共同文書の見直し」だの報道が出たのでちょいと金利上がったのですが、MPM1日目の前日12/16だと、

12/16
40y15:1.680%
30y78:1.470%
20y182:1.135%
10y368:0.250%
先物チーペ:0.230%
5y154:0.125%
2y411:▲0.025%

長期国債 358 2030/03/20 0.230
長期国債 359 2030/06/20 0.250
長期国債 360 2030/09/20 0.270
長期国債 361 2030/12/20 0.285
長期国債 362 2031/03/20 0.295
長期国債 363 2031/06/20 0.299
長期国債 364 2031/09/20 0.300
長期国債 365 2031/12/20 0.290
長期国債 366 2032/03/20 0.185
長期国債 367 2032/06/20 0.235
長期国債 368 2032/09/20 0.250

ということでありまして、10月の金融政策決定会合において、政策委員の皆様が「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節上の様々な工夫により、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが形成されているとの認識を共有した。」と思いっきり「認識を共有」までしていた「金融市場調節方針と整合的なイールドカーブ」の形状につきまして、何がどう変わったのかという点につきましては、恐らく明日公表される「金融政策決定会合における主な意見(12月19・20日分)」におかれまして政策委員の皆様によります何らかのご意見が示されるものと大いに期待しておる次第でございますが(ハイパー棒読み)、10月に「金融市場調節方針と整合的なイールドカーブ」と認識されていたイールドカーブに対して、12月会合前の時点でそこまで大きな変化がなく(寧ろ超長期の金利は下がっておりますし)推移しておったのですが、なぜ12月の決定会合の声明文では「より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定した。」となったのか、という点について納得のいくご説明を頂きたいですね。

というのは、この部分がテキトー極まりないとなりますと、輪番の上げ下げにしろ、臨時輪番のオファーにしろ、他年限における指値オペにしろ、何の基準をもって判断しているのかがさっぱり分からんということに繋がりまして、それは何度も拙駄文で申し上げておりますように、ある時突然意味不明な基準によって日銀の市場介入が入ることに繋がりますので、マーケットメイクが出来ない、すなわち国債市場における流通市場の機能低下というか機能停止にまでつながる話であり、12月声明文にあった先ほどの部分の手前にある「日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、」というのは何をもって市場機能の改善を図るのかが全く意味不明、とまあそういうことになるからですね。


・・・・・などとツッコミを入れていますが、まあどうせ黒ちゃんの退任まで(副総裁と同時に退任するんでしょ)の間、YCCが持てばよいのでその間だけ弥縫策を練った、ってのが今回の決定に他ならなくて、そういう意味でこの決定について論理的にああだこうだとか考えるのが時間の無駄である、ということを今回の議事要旨は問わず語りに示しているものでありますので、つまりはこの妄想を敷衍しますと、今回の「前回議事要旨で何かの兆しがあったかのように頑張って編集することすらしていない」という事務方ムーブに関しては、事務方による(以下の妄想部分は割愛されました)。


#黒ちゃん経団連講演ですが、遂に賃金1点張りに開き直りやがったか、というのはあるのですが、惜しくも号泣講演ではありませんでした(当たり前だ)ので、とりあえず積読ネタにしておきますが年末までに投下の所存




2022/12/26

お題「総裁会見ネタをコンプリートさせておこうと思いまして」

イソジン吉村・・・・・・・・
https://news.yahoo.co.jp/articles/4bb9859a7b5ed00daacd58f35095869fc044b734
吉村知事「コロナに効く」から2年、うがい薬研究ひっそり終了…専門家「推奨できる結果なし」
12/25(日) 13:00配信

いやいやいや読売新聞、そこは「ひっそり終了」させないでちゃんと検証しろよお前ら仕事しろ。

・・・・・という訳で(どういう訳だ)金曜に総裁会見ネタ投下したあと「続きは週末」とか言ってたんですが、結局月曜になってしまいましたとりあえずこれだけ投下してちょっと休憩しますね(ワクワク相場や黒ちゃんの号泣講演でもあれば話は別)。


〇総裁会見質疑応答ネタの続き(今朝のドラめもんの方では便宜上ここを23日追加分の次に記載します)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221221a.pdf

金曜(追加分)の続きである。


まあだいたいさっきの辺りまで来ると残っている論点って「なぜ全員一致なのか」「フォワードガイダンスの利下げバイアスとの整合性は」「市場機能対応でレンジ拡大しているのに買入拡大したら市場機能を圧迫するんじゃないですか」位になる(うち前者2つは質問無し)かなと思う訳です。まあ強いて言えばこれも市場的には重要だけどあんまりメディア的には面白くない「今日の2年5年20年の指値水準の根拠はどっから出たんででしょうか」という話。

ということで次の質問は過去の説明との整合性を問うものですが、もう同じ回答をするしかないので黒ちゃんとにかく突っぱねる突っぱねる。


・過去との整合性に関するサラトイに説明しているんだが説明しているうちにボロが出ているところがある黒ちゃん

『(問)私も変動幅の拡大についてお伺いしたいんですけれども、先ほどの質問でもありましたけれども、総裁や幹部は今まで変動幅の拡大について、緩和効果を損なうとか、あるいは事実上の利上げであると発言をされていて、ご説明分かる部分もあるんですけれども、それが突然円滑化のためで全体を強化すると言われても、やはり市場としては、やっぱり唐突感や驚きがあると思いますし、』

市場としては、って言わなくて良いと思うの。この質問の人ずーっと市場とのコミュニケーションって言ってるけど、もっと端的に「一般の方々に向けて講演や国会などで言っていたことと説明が急に異なるのは、金融政策に対して、一般の方々が理解しにくいという印象を与えませんか」とかそんな感じで素朴に攻めた方が良いと思うの。

つーかですね、市場としては「どっかでこんなアホアホ政策は落とし前を求められるけど、黒ちゃんクソ意地張ってクソ粘りするからまあ今すぐは無理よのう」っていうことで、タイミング自体は想定よりも早かったけど、YCC10年ターゲットの性格上事前織り込ませるの不可能なので(直前に豪州中銀みたいにバンザイする手はある)タイミングが唐突なのは別にどうでもよいのよ。

それよりも屁理屈がいきなり正反対になってしまう方が「よくもまあ恥ずかしげもなく言うわ」というのがあるのと、「説明のロジックを突然全部引っくり返してしまうと政策の予見性が全くない」ので「そんな中銀に振らされる市場って市場機能無くなるよね」って話であって、こともあろうに「市場機能」を前面に出して修正するのはさすがに恥を知れと思うのですが、まあ昭和温泉旅館金融政策なので、恥も外聞もなく汚い修正をするしか無かったんですよぬー。

『これ結局修正の一歩なんじゃないかとか、あるいはこれからもあるんじゃないかと考える人たちも中にはいると思うんですけれども、』

普通にこれは「これからもある」ですわな。だって国防の支えとか言って10年0.25%のマジノ線引いたのが迂回されたら抵抗はしたけど最後は0.50%まで前線を後退させたわけで、じゃあCPIが2%、と言わなくても1%くらいは軽く定着しそうな(というのは割と衆目の一致する所だと思うのよね)経済状況の中で、10年金利が0.5%ってのどう見てもおかしいので、そらファンメタベースにすれば早けりゃ年末年始遅くとも次のMPMに向けてまた要塞迂回作戦始まるわなと思うのです。

『今までのコミュニケーションと、今後、もしそうではないというのであれば、どういうふうにそれを示すのかという、今までと今後のコミュニケーションのあり方について、マーケットとのコミュニケーションのあり方について、考えをお願いします。』

質問の筋自体は悪くないんだが、単純に「過去の説明との整合性はどうなっているのか」で攻めれば良いですし、逆に何で「レンジ拡大は事実上の利上げ」って最初に発言したの内田さんだと思うんですが、ああいう不用意な事を言ってしまったんでしょうかねえと。


・・・・・すいません質問に突っ込む予定では無かったのですが手が滑りました。黒ちゃんの回答。

『(答)それはですね、冒頭にも申し上げた通り、また公表文でも述べられている通り、イールドカーブの歪みを是正することによって企業金融に良くない影響が来ないように市場機能を改善することによって、金融緩和の効果がよりスムーズに企業金融を通じて経済全体に波及するということを考えて行ったわけであります。』

もう判で押したような回答だが、「そんなに言うなら他の年限の金利を押し下げに行くのが筋なんじゃないのか」という点については回答しないのが今回の日銀クオリティ。

『またそのタイミングについても、先ほど申し上げたように、春先から世界的な金融資本市場のボラティリティが高まっていたわけですけれども、それが一時低下したように見えたのに、またこのところ非常に高まってイールドカーブの歪みというのが非常に強くなってきているということを踏まえて、今回、イールドカーブ・コントロールの一部の手直しをしたということ。』

って説明なのですが、これまた「だったら何で4月とか7月にやらなかったのか」という話ですよね。あと更にツッコミを入れると、要するに「海外金利が低下した時にちょっと助かったんだけどまた海外金利が上昇してきたからもう耐えられなくなった」という説明なんですが、一方で海外主要国の中央銀行は金融引き締め領域に政策金利の引き上げを行い、この結果徐々に「適切な引き締め状態になってきた」という認識になり、今後は今年のガンガン引き締め強化モードの時のような盛大な金利上昇圧力ってのは海外からは来にくくなる(来ないとは言ってない)と思われる次第で、だったら我慢してれば良いじゃん、という話になるんですよねー。

『これはあくまでもイールドカーブ・コントロールがより良く安定的に機能するようにしたわけでありまして、』

って10→20程度、にした時も同じこと言って利上げしたんですけどね。

『何もいわゆる金利引き上げとか金融引締めとか、あるいはYCCの見直しとか、そういうことではなくて、むしろYCCがより良く機能するように市場機能の改善を図ったと、それは先ほど申し上げたようなタイミングをみて、まさに行ったということであります。』

もはやハチャメチャな説明をしているのですが、今回の決定のポンチ絵自体のお名前が、
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221220h.pdf
イールドカーブ・コントロール(YCC)の運用の見直し

ってなっているんだから、それはYCCの見直しだろと言いたくなるんですけど、どうせYCCの「運営」を見直しただけで、「枠組み」は見直してない、とか一休さんみたいな事をいうんでしょうね。ただまあこの辺りに関しては黒ちゃん「今回は差し込まれたから不本意だけど見直したけど、あとは任期まで絶対にこのままでいってやる」という強い意志を感じますねえ、と思いました。

とは言え、今回の事案で示されましたように、黒ちゃんの意思がどんだけ強くても、差し込まれてしまえば結局黒ちゃんと言えども最後まで突っぱねることは出来ない、という重要な知見を得ましたので、1月会合がおかわり催促になるかは知らんですけど、まあやりたくなりますよねーwwww


・黒田さんもしかして日本の金利上昇圧力は全てが海外金利要因と思ってるんじゃないか疑惑

次の人、前半の質問はどうでもよいので割愛しますが後半に対する黒ちゃんの回答が酷い。

『(問)(前半割愛)また、もう一点ですね、いったん、この上限金利というのを上げてしまいますと、マーケット、次のまた変動幅の拡大みたいなものを催促するようなかたちになりませんでしょうか。そして、YCCをやめるまで、これからマーケットのプレッシャーというのが続くのではないか、その可能性についての議論というのをなさったのかどうか、その辺りも教えて頂けますでしょうか。』

黒ちゃん、今回割愛した前半の質問でアホのように無駄な長広舌を振るう(この人これがあるのに会見時間を切るのが明らかに「不誠実」の印象を強くするから、アホのような長広舌振るわせるなら会見の時間を切るべきではないでしょ、と毎度思う)ので質問の意図を忘れたんじゃないか位斜め上の回答をしました。

『(答)(前半割愛)今回のような変動幅の拡大措置が一回あると、また市場が催促するのではないかという議論ですけれども、そういう可能性がないとは言えませんが、他方で、それはあくまでも、いわば内外の物価とか金融資本市場の動向によるものでありまして、』

まあこれは正しいんですけど、この先の説明がなんかおかしいんですよね。

『欧米の物価上昇率は、米国の場合は明確にピークアウトしていますし、欧州の場合はまだピークアウトしていませんけれども、それぞれの政府や中央銀行の見通しでは、来年において物価上昇率が下がっていくという見通しになっておりますので、そういう状況の中で、他国の中央銀行の金融政策についてコメントするのは差し控えますけれども、これまでのような調子でどんどんすごい勢いで金利が上がっていくとか、そういうことはちょっと考えにくいと思います。』

どうも黒ちゃんの脳内整理では日本の金利上昇圧力は全部海外金利との比較感、ということになっているようなのですが、物価が強くなってきて、しかも日銀の言う「一時的」じゃ済まない感じにならないか問題もちらちらと頭に浮かぶし、そもそも論として基調的な物価も上がってきて、2%行かなくても1%程度の物価上昇が定着するだけでも10年0.5%ってどう見てもサステイナブルじゃないんですけど、黒ちゃんとしては「すべては海外のせい」と思ってて国内要因無視してないか、とまあそういう風に思いました。

『いずれにせよ、市場が何か催促するということはいつでもあるのですけれども、そういう客観的な情勢があるかと言われると、そういう情勢はあまり考えられないと思っております。』

さすがにこの大本営発表は無いわ。日本の経済物価情勢対比でその金利水準が適正なのか、っての考えてないの???


・賃金動向を把握するのに何が必要かという問いに対して答えがないのはさすがに如何なものかと

次の質疑、後半は日銀のベアに関する悪態なんでどうでもいいから割愛しますが、

『(問)賃金動向でお伺いしたいんですけれども、先日、総裁、国会でも大企業だけではなくて、中小の正規のところを注目されているということでしたけれども、なかなか生産とか設備投資と違って、賃金動向に関しては把握するのが難しいと思うんですれども、その辺を今後どのようなデータを見て、どれぐらいのタイミングで判断できるのかというのを一点お伺いできればと思います。(後半割愛)』

って質問ですが、これはマーケットのエコノミストもイヤー難しいっすねと頭を抱える問題ですが、黒ちゃんの回答が何か酷くてデスネ、

『(答)まず賃金の動向については、もちろん様々な統計がありますので、そういうものも十分参考に致しますし、それから経団連にしても連合にしても、それぞれ、例えば春闘の決定状況をずっとフォローして発表していますし、それから夏のボーナスも良かったんですけれども、この冬のボーナスはかなり高い伸びになっていますし、そういうものも十分注視しておりますので、様々な統計データは十分把握して全体としての賃金の動向を見ていきたいと。ただ、賃金の伸び率だけで何か決まるわけではなくて、やはり需給ギャップとか予想物価上昇率とかそういったものも含めて物価に影響しますので、そういうものも見ながら、ただその場合に非常に重要な論点が賃金上昇率であるということはその通りだというふうに思います。(後半割愛)』

話がぐるぐると回った挙句に結局「非常に重要な論点が賃金上昇率であるということはその通りだというふうに思います。(キリリッ)」と締めてるんだが、だ・か・ら、質問している人はその「真の賃金上昇率とはどうやって計測するの???」って事を聞いているのですから、全然回答になっていないですよねこれ。

だったら最初から「色々な指標があるけれども、ご指摘のように「これを見れば一目瞭然」というのは残念ながら賃金に関しては現状の経済統計ではないのが事実なので、色々なデータを見ながら総合的に判断していくということになります」って回答すれば良いのですが、「賃金上昇率を的確に把握する方法」についての質問に「賃金上昇率は重要です(キリッ)」は流石におじいちゃん大丈夫って感じの回答。しかもこの回答って別に回答を誤魔化さないといけないような種類の質問じゃないのに何でこうなるんでしょ。まあやりたくもない政策をやらされたから心ここに在らずだったのかもしれませんけどね(個人の感想です)。


・前回との比較について質問されているのにこれまでの変化の説明をするのは・・・・・・・・・・

次の質疑。

『(問)これまでのお話も踏まえてなんですけれども、総裁、前回会合の後に、少し安定的な物価目標の実現までに近づいているという趣旨のご発言をされました。もちろん、まだ安定的な 2%が見えていないということであると思うんですけれども、前回会合からの色々な変化を踏まえたうえで、今その点についてどういうふうにご覧になっているのかというのが一点と、(後半は次に参ります)』

前回との変化、について聞くという割と罠な質問なのですが、

『(答)まず第一点ですけれども、年初に比べますと、具体的に企業収益が非常に引き続き高水準で続いていると。更にはボーナスがかなり高水準で夏冬と出てきたと。そして来年の春闘に向けて、労働側も使用者側も、足元の物価上昇も踏まえて賃金の交渉をするということを言っておられますので、そういうことを踏まえると少しずつそちらの方に向いていると。それから輸入物価の上昇の消費者物価への転嫁ですけれども、これも従来にないほど転嫁が進んでいると。そういうことで、賃金・物価に動意がみられるようになってきたというのは事実なのですね。(後半は次で)』

ということで、前回会合との差分について説明しているかというと「年初に比べますと」とかそういう回答になっていまして、つまり「経済物価情勢のファンダメンタルズ変化を踏まえて前回会合からの大きな変化(現状の変化でも見通しの変化でもいいけど)があったので、政策の手直しを行いました」という事は一切ない、という事実がここでアカラサマになるのでありました。あっはっは。


・見直しのおかわりは全否定する辺りに黒ちゃんの本音が見えております

『(問)(前半は先ほどの部分です)足元では、点検・検証について必要性がないということではあると思うんですけれども、ただ、安定的な 2%がみえてきたときには、それは別に否定するものではないという理解でよろしいのかどうか、お願いします。』

そら安定的に2%の物価目標が達成できたなら政策は成功なんだから出口ですよね、と思うのですが、黒ちゃん頑なにこの「見直しのおかわり」に関して全否定してまして、この辺りに今回の黒ちゃんが「差し込まれた」とアタクシが妄想する根拠がある訳ですな、ナムナム。

『(答)(前半は先ほどの部分です)ただ、今のところ、来年の 1 月の展望レポートで具体的に示すことになると思いますけれども、来年度、やはり今年度よりも物価上昇率は低下していくと。2%に達するというような状況ではまだないと。従って、賃金の上昇を伴って持続的・安定的に 2%が実現できるという状況にまだなりそうにないと。』

節子、だったら何で利上げしたん???

『ただ、物価についても、成長についても、上下双方向のリスクがありますので、その辺は十分注視して、随時政策をみていくということは必要だと思います。ただ、今のところ、このYCCにしても、大幅な金融緩和の政策にしても、それを直ちに見直すような状況にはなるようには思われないということであります。』

質問は「2%物価安定目標の達成が具体的に見えてきたら政策の見直しや点検の可能性は否定しないですよね」なのに、完全に質問の筋を外して回答(真面目な話質問の筋を外して回答した場合会見時間のカウントから差し引けと思うので、黒ちゃんは更生不能だけど次の総裁にはちゃんとした受け答えして欲しい)するの巻になっておりまして、もう絶対におかわりに対する言質は出さない、というお気持ちが旺盛に表れております。

つまりは、そもそも論として黒ちゃんは今回の措置は「やりたくなかったけれども差し込まれて渋々やることになった」という不本意極まりない結果だったというのがこの辺りから読み取れますね。


・「市場機能対応だから利上げではない」と「実質金利が下がっているから無問題」が混在するのだが・・・・・

ちょっと先に行きます。

『(問)二問お尋ねします。一つ目が同じような質問になってしまって恐縮なんですけれども、総裁、先ほど来、今回の措置についてプラスの効果を説明して頂いていますが、9 月の大阪での記者会見では、0.25%の幅をより広くしたら、明らかに金融緩和の効果を阻害するとおっしゃっていました。今回の上限の引き上げで、何か懸念される経済へのマイナスの影響はないというようなご認識でよろしいんでしょうか。(後半割愛)』

いや真面目な話、黒ちゃんと内田さん、何でこれ言っちゃったかねーと思いますが、

『(答)(後半の回答が最初にあったのでその部分割愛)それから、今回のYCCの運用の一部の見直しというのは、あくまでもこの市場機能の改善ということに焦点を当てたものでありまして、何か金融を引き締めようとか、そういうものでは全くないということは冒頭申し上げた通りであります。』

と、市場機能の話で押し通せばよいのですが、

『そうしたもとで、10 年債の金利が、本日のマーケットで 0.4%ぐらいまで、0.25%から0.4%ぐらいまで上昇しましたけれども、これがずっと続くかどうかも分かりませんし、それについてとやかく言うつもりはありませんが、国債の買入れも増額しますし、それから必要に応じて指値オペを 10 年物のみならず他の年限でも必要があればやるということにしておりますので、何かマイナスが出てくるということは、完全に防げるというふうに思っております。』

これは「金利が上昇したら市場介入します宣言」になってしまい、いやまあそういう建付けにしているのは事実なんですけど、市場機能の話と矛盾するんですよねー。まあそれは良いとしてその次、

『それから何よりも、春先から現在にかけての、いわゆる予想物価上昇率の上昇からいって、実質金利は春先よりも、また夏よりもずっと下がっていまして、金融緩和の効果というか力は、ものすごく増加しているということも背景としてあるということは言えます。』

この実質金利論を言い出すと、要は「均衡イールドカーブ論」になってくるわけでして、そうなると「経済物価情勢が好転したらあるべき長期金利水準は上昇して然るべき」って話になってしまって、YCCの10年50bpが適正か否かって議論になってしまいますので、どうみても藪蛇なんだが何でこの言い訳をするんでしょう。

『ただ、あくまでもこれは市場機能の改善ということ、それによってYCCの効果がよりスムーズに、安定的に企業金融を通じて経済にプラスの影響を及ぼすということを狙ったものでありますので、金利を何か引き上げようとか、引き締めようとか、そういうような意図は全くないということは、重ねて申し上げられます。』

だったら余計な事言わなきゃよいのに、とは思いました。


・最後の方の支離滅裂説明は何度読んでも分からん

最後から2番目、ということでほぼ終わりの質問なんですけど。

『(問)日銀の金融政策に対する姿勢と手段について伺います。今の経済環境ですとか物価情勢を踏まえると、緩和姿勢を継続するというのは理解できる部分も一部あるのかもしれませんけれども、例えば、イールドカーブ・コントロールという金利上昇を人為的に抑え込む手段ですとか、公表文に示されている通りですとか今まで総裁もおっしゃっている通りですけれども、市場機能を大きく低下させたり、あとベンチマーク機能みたいなところは結構壊れかけているのに近い状態にもあると思うんですけれども、今回、市場機能の改善を図る措置を講じられましたが、そもそも今のこのYCCが、局面によってこういう対応を導入せざるを得なくなるということは事前に想定できなかったのか。あと、今回の措置で一層深まったのかもしれませんけれども、今のような非常に深く関与する政策手段から脱却しようというお考えは、今のところないのか伺えればと思います。』

まあ「ないです」という回答なんですけど、

『(答)イールドカーブ・コントロールも量的・質的金融緩和も、当面の操作目標が違うだけで、実際のところは、ご承知のように長期金利を低位に持っていくということのためにやっていますので、』

マネタリーベース2倍2倍はどこに???

『その限りでマーケットの人と考えている金利とは違ってくるのは、量的・質的金融緩和であれ外国の量的緩和であれ、イールドカーブ・コントロールでも、皆同じなのです。』

???????????

『別にこのイールドカーブ・コントロールが特に大きく市場機能を阻害するというものではないと思います。』

???????????????????????????

『ただ、先ほど来申し上げているように、春先からの、ある意味で異常な金融資本市場のボラティリティの上昇が、わが国の国債市場にも影響を与え、それがいったん収まったかにみえたのに、また最近になって非常に強固な形でイールドカーブに影響を与え、それが先ほど来申し上げているような市場機能の低下ということをもたらしているために、これを是正しようということであります。』

もはや何を言ってるのかさっぱり分からんですが、まあ結局のところ黒ちゃんも「不本意ながら実施しました」ってことだから説明も支離滅裂にならざるを得ない、ということなんでしょうね・・・・・・・・・・・

ということで黒ちゃん会見はこれにて。









2022/12/23

2022/12/23(追加)

お題「黒田総裁会見の無残なお姿を文字起こしで笑いながら眺めるの巻」

ええすいません性格悪いですよそらこちとらこのクソジジイのせいで(以下自主規制)。

〇会見は最初から最後まで聞いていたが文字起こしにすると更に無残

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221221a.pdf
総裁記者会見
――2022年12月20日(火)午後3時半から約60分

・文字起こしに出ていないのだが政策変更してるのに時間切るの馬鹿にしてるの???

文字起こしには当然出てないのですが、ようつべ見てた方はご案内の通り、今回はかなり大事な変更しかも今までの説明完全放り出しプレイというのがあったのに、最初の時点で「1時間で終わり」と幹事社がお伝えしていて、説明責任だの市場との対話だのいうのがちゃんちゃらおかしい訳で、3時間でも4時間でも会見やってろや(まあやられるとこっちもエンドレスで聴くことになりますのでナントカ法の関係上22時前には終わって頂きたいのですけど)という訳ですよ。最初から時間切ってるの完全に「対話拒否」でしょあれマジで次の総裁になったら改善しないとダメだよ、と思いますけどね。

まあ黒ちゃんの場合はそれに輪をかけて「質問にまともに答えない上に延々と話をする」というゴミのような対応をするのが更に酷かったわけで、質問にまともに回答しないで延々と時間稼ぐとか端的にいってゴミ対応の5乗くらいの対応なのがまた酷いんですよね。

といういつもの悪態から始まりますが、まあ今回は見事に支離滅裂な説明だったのは、政策自体がもともと支離滅裂だったので仕方ないのですが、こういうのが全世界にようつべで放映されますとパウエルやラガルドと比較してのポンコツぶりが酷すぎますわなという感じでした。

・しかし最初の幹事社の質問が酷くてですね

『(問)幹事社からの質問は二問です。まず一点目ですが、日本銀行と政府が 2%の物価上昇目標を盛り込んだ共同声明を 2013 年 1 月に連名で発表し、黒田総裁が大規模な金融緩和策を始めてから来年で 10 年を迎えます。大規模緩和の効果と副作用について、総裁のご認識を改めて教えてください。また、日本銀行として、2%目標や政策運営に関する点検あるいは検証を実施するお考えがあるかどうかもお願いします。』

今回の幹事社は共同通信で、例の共同声明見直し砲を打ったのは共同通信なのですが、今回って実質的な政策変更だし、しかも今まで言ってたことと全然違うロジック持ち出して「YCCの見直し」を行い、だいたいからしてその前の時点でYCCのレンジ拡大は利上げである、って内田さんも黒田さんも言ってたのにも関わらず「今回は政策変更ではない」って言ってるの無茶苦茶な訳ですよ。

ということですから、幹事社たるもの、当然ながら今回の政策変更の正当性やロジックについて質問するのが筋なのに、自社の記事の宣伝みたいな「共同声明」とか言い出すし、しかも内容がまったくもってどうでもいい内容の質問になっていまして、こんな質問する位なら1時間弱(最初に黒田さんが延々と冒頭説明するからそもそも1時間の尺質疑応答があるわけではない)の貴重な時間他社に譲れやクソバカ通信社、と思いました。

挙句に2問目がこれよ。

『(問)二点目は、賃上げについてです。来年の春闘で、連合が求めるベア 3%程度、もしくは定期昇給分を含めて 5%程度の賃上げが実現した場合、日本銀行として出口に向けた議論が来年以降に可能になるとお考えになりますか。よろしくお願いします。』

だ・か・ら!!!!!!何で今回の事実上の政策変更についての質問しないんだよこのクソボケと思いましたが、これ以降はちゃんと今回の政策変更のロジックや正当性について聞く質問が出たので、(次が読売だったかな)ちゃんとした会見になりましたが、何なんだったのよという最初の部分で、この幹事社によるクソ質疑によって会見の質疑応答11.5ページ分(最初は黒ちゃんの説明なので)のうち1ページ分丸々浪費している格好でして、非常に怪しからん質疑応答でございましたので引用する価値無しということで次の読売新聞さんだったと思いますが、そこから始まるちゃんとした質疑を拝見しましょう。


・当然初手(幹事社のはゴミなのでカウント対象外)からドストレートな質問が来る(利上げじゃないのか問題)

今回は今までとあまりにも違ったロジックでの変更だったから、というのもあって質問する方も結構いい感じで(クソ幹事社は除く)従前との論理破綻について質問しています、イイハナシダナー。

『(問)お話のありましたYCCの運用見直しについてお尋ね致します。総裁は 9 月に大阪で開いた経済団体との懇談会後の記者会見で、YCCの変動許容幅の拡大は、金利の引き上げに当たるとのご認識を示されていました。他の日銀幹部の方も、過去に許容幅の拡大は事実上の利上げになり、日本経済にとって好ましくないとのご発言をされています。』

当然ながら辛辣な質問が開始されるのであった。

『先ほどのお話では市場機能の改善に向けた措置とのことですが、今回の許容幅拡大は事実上の利上げには当たらないのでしょうか。また、今回の措置は、YCCの撤廃といった将来の出口戦略について何か影響はするのでしょうか。お考えを伺えますでしょうか。』

火の玉ストレートキタコレという風情ですが黒ちゃん、もともとこのオッサン市場機能とか絶対興味ないくせに今回はとにかく市場機能で粘るのですけど、まあ今回はマジで回答に生気が無かったですので、本人としては超不本意だったんだろうなあというのはかなり明白ですが、まあ不本意ですとかやってられるかとか号泣とかしなかったのは褒めてつかわす。

『(答)まず今回の措置は、市場機能を改善することで、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融等を通じてより円滑に波及していくようにする趣旨で行うものでありまして、利上げではありません。』

パワハラじゃなくて愛情を込めた指導ということですねわかります。

『今回の措置により、国債金利の変動幅が広がるものの、企業金融等を通じてイールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、より円滑に波及していくというふうに考えております。』

んな訳あるかヴォケと言った感じですが、ベースレートの変動幅が広がったら企業金融だって当然の如く調達コストの変動幅広がるんですけどねえ。

『日本銀行としては、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることで、物価安定の目標の実現を目指していく考えであります。』

25bpが守れなくなったので撤退を行って50bpを設定して持久体制を構築しましょう、という趣旨でございますが、どう見ても全然防衛できなかった絶対国防圏です本当にありがとうございました。

『また、このイールドカーブ・コントロールの運用の一部の見直し、これはイールドカーブ・コントロールをやめるとか、あるいは出口というようなものでは全くありません。』

一応YCCの建付けは維持していますからね(棒読み)。

『公表文でも示しておりますように、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融などを通じてより円滑に波及していくようにする趣旨で行うものであって、』

それは先ほど申し上げた通りの詭弁。

『出口政策とか出口戦略の一歩とか、そういうものでは全くありません。』

そらまあ敗戦に向かってひた走りの時も別にそんな事言ってなかったのでこういうわな、しかし連続して言うのは相当に出口って話をしたくないんでしょうけれども、まあこう言っておいて1月には更にしれっと手のひら返しクルーもアリエールと思わせてしまう今回の君子豹変。

『経済・物価情勢を踏まえますと、これも最初に申し上げた通り、現在は経済をしっかりと支えて、賃金の上昇を伴うかたちで物価安定の目標を持続的・安定的に実現するために、金融緩和を継続することが適当であるというのが、政策委員会の一致した考えであります。』

だったら追加緩和するとかの方が良いんじゃないでしょうか(超棒読み)。


・金融市場のボラ上昇やら機能低下は前からおきてるじゃん問題&「点検」との整合性問題

次の質疑です。

『(問)長期金利の変動幅拡大について二点お願いします。一点目は、今回の公表文にも書いてある通り、春先以降の海外市場のボラが高まってという説明がございますけれども、国債市場のこういった機能低下は以前から生じていたんだと思いますけれども、なぜ今回このタイミングで変動幅の拡大を決められたのかというタイミングについてお聞かせください。』

そんなのどっかから黒ちゃんが差し込まれたからに決まってるじゃないですか分かってるのに聞くなんて大変に良い質問なのでもっとやれ。

『二点目は、海外市場のボラが高まって、機能低下が再び起きた場合に、この市場機能の改善に向けて変動幅っていうのは、どこまで拡大が可能だとお考えでしょうか。以前、去年の点検では、50bps を超える変動幅生じた場合、設備投資への影響といったことが指摘されていたと思いますけれども、この点についてもお考えをお聞かせください。』

この2点目がまた辛辣でして、昨年3月の「点検」の全文の中で
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k210319c.pdf
より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検
【背景説明】

ここの6ページのケツの方に『金利の変動が設備投資に及ぼす影響を分析したところ、長期金利(10 年物国債金利)の過去6か月の変動域が 50bps を超える場合を除けば、金融緩和が設備投資に影響を及ぼす度合いは、概ね不変であるとの結果が示された(補論3)。』(この部分だけ直上URL先の2021年3月における「点検」文書より引用)という何というか強引に持って行った感の非常につよい研究結果が出ています。

でもってこれがあるから0プラマイ25bp程度はOKということになったのですが、これを50にした場合、金利の変動許容幅が100bpになってしまいますので、今回変動可能幅を100bpにするのも変ですし、質問者の指摘のように6か月以内にこのレンジ拡大する、ってことになると「長期金利(10 年物国債金利)の過去6か月の変動域が50bps を超える場合」に該当するので、企業金融にプラスになるとかそういう説明すら不能になってまいります。


では黒ちゃん、どう回答したでしょうか。

『(答)この点は、特にロシアのウクライナ侵攻が始まって以降、』

いやこの説明聞いた瞬間に大声出して笑ったわ。おまえそれ2月の話で、その時のボラ上昇の時には25bpの指値明確化からの毎日指値オペとかぶっこんでたじゃん。

『非常にこの資源価格の高騰であるとか、各国のインフレの高進であるとか、そういう中で金融政策が大きく転換していったということなど、様々な要因から、春先からボラティリティが高まっていたことは事実ですけれども、』

その時に何故柔軟化をしなかったのか???

『それは一時的に収まったように見えたものの、』

夏に一度海外金利が下がった時の話ですね。

『最近また再びそれが強くなってきて、』

何で今回はぽっきりと折れたのかが結局説明になっていないのですが、それでも体裁は何とか誤魔化そうとするため以下のような説明が始まる。

『しかも冒頭も述べましたように、様々なイールドカーブ・コントロールのもとでの指値オペその他によって、10 年物の国債の金利が 0.25%に抑えられてきたわけですけれども、イールドカーブの形状がやや歪んだ形になって、それが将来、企業金融等にもマイナスの影響を与える恐れがあるということが認識されてきましたので、』

イールドカーブがゆがむと企業金融にマイナスとは何ぞという感じですし、そもそも歪んでいる要因はカレント3銘柄のせいなんですけどねー。

『このタイミングでその是正を図り、市場機能の改善を図ったということであります。』

はあそうですか。でもってレンジをこれ以上拡大するのは出来るのかという方の質問ですが、

『将来云々ということについては、何か具体的なことは申し上げるつもりはありませんが、全体として、これはある程度希望ですけれども、世界的な金融資本市場のボラティリティも、少しずつ低下し、安定していくのではないかというふうに期待をしています。』

泣きが入っております。

『もちろんウクライナ戦争の状況も全く不確実ですし、更には欧米の金利引き上げによる経済あるいは金融資本市場の影響というものの不確実なものもありますし、また最近では中国におけるゼロコロナ政策の転換以降、コロナ感染症の動向が非常に分かりにくくなっている、不確実だということもありますので、楽観はできませんけれども、更なる拡大といったようなことは必要ないし、今のところ考えていないということであります。』

まあ希望的観測でこういうわなと思いますが、これ以上のレンジ拡大は「点検」と矛盾しませんかという質問には回答せずじまいでした。


・質問は割とどうでもよいが回答がウケたので引用

次の質問は質問自体はイマイチだが回答を鑑賞しましょうって物件ですな。

『(問)今回のYCCの運用見直しが景気に与える影響についてお伺いしたいと思います。今日の段階で長期金利は上限の 0.5 の手前の 0.4%台まで既に上昇しておりまして、この金利上昇で企業の借入金利ですとか、個人の固定型の住宅ローン等に影響が広がるとも予想されます。市場機能改善という目的があるにしても、そういう悪影響も懸念されると思いますが、この点について総裁どのようにお考えか教えて頂けますでしょうか。』

それは屁理屈だけどさっきも説明してるように「悪影響はない」というのが回答になる筈ですが、回答の方が輪をかけて酷いのですよね、最初が凄くて、

『(答)まず第一に、短期の政策金利を−0.1%、10 年物国債の金利目標をゼロ%程度というYCCの基本は全く変わっておりません。そういう意味で、経済に対する刺激効果というか、経済成長を促進し、経済の拡大を図っていくという効果に基本的な変更はありません。』

ついに市場金利が上がっても下がっても経済に対する刺激効果は変わらない、というヤケクソ説明をおっぱじめています、というかこれ聞いてるときも変な声出して笑ったわアタシャ。

『また、こうしたYCCの運用の一部の手直しによって、企業金融への波及がよりスムーズに安定的に起こるということで、景気にはむしろプラスではないかというふうに思われます。』

まあこれは超越詭弁だけど、建付け上そういう説明になっているからまあこっちの方は良いんだが、最初の「目標同じなのでレンジ拡大しても影響はない」は無茶苦茶ですよね。でもってこの回答、更にボロをだしていて、

『またいずれにせよ、これは公表文等で申し上げていることではありませんけれども、ご承知のように年初の頃は物価上昇率 1%未満でしたか、その後ウクライナ戦争その他を経て国際的な商品市況が上昇し、また夏にかけて非常な円安が進んだということもあって、輸入物価が大幅に上昇し、消費者物価への転嫁ということで、足元、消費者物価の上昇率は 3.6%まできています。それよりも何よりも、物価上昇期待というか、予想物価上昇率自体も上がってきております。』

これは何の話かと言えば・・・・・・・・

『ということは、名目金利が同じでも実質金利はどんどん下がっていまして、実は景気拡大効果というか、景気刺激効果がより強まってきているわけです。』

って説明をしているのですが、この理屈はYCCの最初の時点では行っていた話ですけれども、途中から封印している「均衡イールドカーブ」の話にも繋がる話になるんですよね。

じゃあこの説明の何がアカンかと言いますと、これを言いだすと「じゃあインフレ期待上がってるならもっと調整できるじゃん」という話になってしまうことで、従来その話を全部封じ込めていたのと矛盾しちゃうんですよ。何で自分から言い出しちゃうのかね〜って思ってしまうのです。

『そうしたもとで、このイールドカーブの歪み、その 10 年のところを是正することが何かイールドカーブ・コントロール全体の効果を削ぐとかいうことは全くないというふうに考えています。』


・市場機能の向上を目的としながら国債買入を拡大することは何なんですか問題

この質問も大変に素晴らしい。

『(問)二点お願いします。今回、10 年金利の周りの、このバンドというか、拡大したんですけども、一方で国債の買入れの増額も決めました。そうなるとやはり、歪みを是正するために他の年限の国債の買入れを増やしたりということで、むしろイールドカーブ全体へのコントロールを強めるということなのか、その買入れ増額の背景について教えて頂きたいのが一点目です。』

これは大変に結構な質問です。

『また、今後、情勢次第だと思いますが、更に長期金利に上昇圧力がかかる場合には、またこの変動幅を拡大するという措置になるのか、あるいは景気の回復や日本のインフレ、賃金の上昇に伴う長期金利の上昇であれば、また違う措置ということもあり得るのか、その辺りについてお願いします。』

後半はもう手を変え品を変え来ますなw

さて黒ちゃんの回答、

『(答)今回の見直しは 10 年金利の変動幅を拡大するだけではなくて、国債買入れの大幅な増額、それから機動的な追加買入れおよび指値オペの実施ということによって、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すものでありまして、』

それは市場機能の向上と逆にならんか。

『これらの措置によって、より円滑にイールドカーブが形成されれば、各年限間の金利の相対関係あるいは現物と先物の裁定などの面で、市場機能は改善するということが期待されます。』

もう無茶苦茶ですな。まあ黒ちゃんも何か棒を呑んだような言い方でしたからヤケクソ説明なのは明らかですね。後半は、

『それから、YCCの長期の話については、先ほど来申し上げている通り、足元、物価上昇率は輸入物価の上昇を反映して上昇していますけれども、来年度に入りますと、それが減衰して、次第に物価上昇率は低下していくということで、2023 年度全体でみますと 2%にいかないという可能性が高いわけですので、そうしたもとでYCCないし現在の量的・質的金融緩和を見直すとか、そういうことは当面考えられないということだと思います。』

状況が想定よりも好転したらどうなんですか???という問いだが黒ちゃん兎に角おかわり催促されたくないから斜め上の回答をして誤魔化しているんですけど、そもそも「来年になったら物価上昇率が低下していく」という話をおっぱじめますと、その前の質疑で言ってた「実質金利」の考え方からしたら今利上げしたらダメじゃんって事になるのですが、もう話が支離滅裂ですね。


・・・・・・しらっとこれを金曜の引け位に追加しましたが、続きはたぶん週末に更新しますね。





お題「小細工をしている訳でもないのでしょうが結果的に小細工でボラを提供する輪番といういつものアレ(市場メモ)/事務連絡(夏休み)」

いやはやなんとも。

〇予告済の追加輪番ドバドバ実施するなら何で水曜の臨時輪番1000億なんだよ・・・・・・

昨日の債券市場ちゃんbyロイターさん。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N33C0N5
2022年12月22日3:20 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は急反発で引け、10年0.390%に低下 日銀オペ追い風

『[東京 22日 ロイター] -
<15:10> 国債先物は急反発で引け、10年0.390%に低下 日銀オペ追い風

国債先物中心限月3月限は前営業日比49銭高の146円25銭と急反発して取引を終えた。「日銀ショック」後の不安定な動きは続いているものの、日銀の国債買い入れオペなどが追い風となり、買い戻しが強まった。新発10年国債利回り(長期金利)は同9.0bp低下の0.390%。』
(上記URL先より)

ということではあるのですが、昨日の横綱の日中売買って
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 23年3月限
(これは今日のたぶん注文受付時間位になると昨日のデータやチャートは読めません、悪しからず)

取引日:2022/12/22
立会区分:日中取引
始値:146.28(12/22)(08:45)
高値:146.64(12/22)(12:30)
安値:146.15(12/22)(14:59)
現在値:146.25(12/22)(15:02)
前日比:+0.49
取引高:17,541

上に窓開けて寄って(ってイブニングの引けは20銭だったので言うほど窓開けてるわけでもないけど日中対比では結構な窓開け)壮絶な上髭引いて小幅の陰線で引けているという中々チャート的には見苦しい引け方になってて、輪番の結果が出た後場寄りに上にぶっとんで高値付けたあと後場はジリジリとお下がりになられて最後は陰線(引けの板寄せで最終出会いから9銭も上に飛ばすのも芸が細かい)という推移。

ロイターさんの記事に話を戻して
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N33C0N5

『日銀は午前、国債の買い入れを通告した。日銀は20日の決定会合終了後にきょうの国債買い入れ実施を予告しておりオペ通告自体は予定通りだったが、3─5年が6500億円、5─10年が6750億円と10─12月予定(3─5年が4750億円、5─10年が5500億円)を大きく上回った。』(同じくロイター記事より)

ということで輪番なのですが、もともと輪番自体は記事にあるように、
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221220e.pdf
長期国債買入れの買入金額の増額等について
2022年12月20日
日本銀行
金融市場局

『1.長期国債の買入れ(利回り・価格入札方式)の買入金額の増額等

(1)2023 年1〜3月の買入れ
2023 年1〜3月の買入金額は、「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2023 年1〜3月)」(2022 年 12 月 20 日)のとおり、月間買入金額が9兆円程度となるように増額します。1回当たりオファー金額は、オファーの都度、市場の動向等を踏まえて弾力的に運用します。

(2)2022 年 12 月末までの買入れ
「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2022 年 10〜12月)[一部変更]」(2022 年 11 月 29 日)で公表した長期国債の買入れについて、12 月 26 日には、予定している残存期間区分別の買入れを、(1)で示した 2023年1〜3月の1回当たりオファー金額と同程度の規模で実施します。また、12月 22 日には、市場の動向等を踏まえ、所要の買入れを実施します。』

ということで、じゃあ1−3の輪番予定額はというと、
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221220d.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2023年1〜3月)

で出ているので、26日に元々予定されていた輪番は1−3予定額ベースで実施する。というのが出てて、一方で昨日の追加輪番は年限と額が分からん状態でオファーされた次第ですけれども、これのオファーが、

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of221222.htm
国債買入(残存期間3年超5年以下) 6,500 2022年12月23日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 6,750 2022年12月23日
(他のオペの引用割愛)

となってて、いやまあ確かにそれは1−3買入予定レンジが、中期後半「5,000〜6,500」で長期が「5,750〜7,750」だから、中期が上限、長期がレンジの中央って数字なので、まあ追加輪番だから1−3の予定表に沿って、という話なんでしょうけれども、ここでその前日の臨時輪番オファー額を再度確認してみましょう。

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of221221.htm
国債買入(残存期間3年超5年以下) 1,000 2022年12月22日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 1,000 2022年12月22日

なんか随分と額が違って見えますね(少ないって昨日幣駄文で悪態ついたけど)。黒田奇襲実質利上げただし自分たちは利上げ出ないと屁理屈捏ね太郎の火曜日はどうだったかと言えば、後場にぶっこんだ追加の国債買入オペは

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of221220.htm

国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注7)2022年12月21日 0.250
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注8)2022年12月21日 0.270
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注9)2022年12月21日 0.265

これは政策決定の結果毎日やることになった50bpの10年とチーペスト指値、2本あるのは前のチーペストは先物終わってもその月中は指値買入するから。

国債買入(残存期間1年超3年以下) 1,000 2022年12月21日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 1,000 2022年12月21日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 3,000 2022年12月21日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,000 2022年12月21日

これが追加輪番で、

国債買入(固定利回り方式)(残存期間1年超3年以下)(注10) 2022年12月21日 0.031
国債買入(固定利回り方式)(残存期間3年超5年以下)(注11) 2022年12月21日 0.030
国債買入(固定利回り方式)(残存期間10年超25年以下)(注12) 2022年12月21日 0.071

これが2年5年20年の指値で謎水準で実施された物件。

ということで、決定会合の当日後場にダダ売られになってしまうの明白って時に一応長期は3000の臨時輪番打ったのに、翌日になったらあっさり味で利上げ前の1000に戻してしまって臨時輪番やってたのに、追加輪番のタイミングで急に人が変わったように盛大な買入にするとかナンジャソラって感じですわな。

いやまあ追加輪番の予告の書き方だと26日の輪番については1−3月ベースって書き方だから、10−12ベースでやるのかとかも分からんし、確かに事前予告の追加輪番だから、場中に突然飛んでくる臨時輪番とは意味合いが違うってのも仰せの通りなのですが、前日の臨時輪番があんまりやる気無さそうな臨時輪番をやっておいていきなりやる気満々のオペ実施とか、まーた輪番の打ち方がブレブレになっていてまして、20日の決定で出した声明文で示した問題意識、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k221220a.pdf
『債券市場では、各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で、市場機能が低下している。国債金利は、社債や貸出等の金利の基準となるものであり、こうした状態が続けば、企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす惧れがある。』

とは何だったのかと小一時間問い詰めたい、ってのをまさかMPMのこんな直後に実施するとは(どうせどっかでやる破目になるとは皆さん思っていたにせよ)「市場機能を回復する」に反するにも程があるわという話ではございますわよね。

まあいきなり10年が50bpまでニアピンするわ8年9年あたりと10年がフラットになるわで、このままでは黒ちゃん退任どころか年越し前にカーブがまた50bp迂回大作戦になりそうだ、ということで前日対比の大増額したんだと思うのだが、だったら水曜の臨時輪番をせめて3000で打っておけ(現に火曜日に5-10を3000で打ってるんだから)よという話で、一々「一歩遅れてオペが反応」するもんだから、結果的に市場が無駄に振り回されることになる訳でございますわ。


なお、ダラダラと横綱は土俵を割りながらも、10年は輪番結果がクソ強かったこともありソイヤソイヤと
盛り返して、さっきのロイターさん提供のTRADEWEB気配では、

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N33C0N5

『TRADEWEB
     OFFER  BID    前日比 時間
2年   -0.005  0     0.001 15:05
5年    0.209 0.215   -0.023 15:03
10年   0.382  0.392   -0.091 15:10
20年   1.194  1.202   -0.017 15:08
30年   1.528  1.536   -0.015 15:07
40年   1.749  1.765   -0.033 15:10』(上記URL先より)

となっておりまして、何この10年だけ戻る攻撃と思いましたが、まあ日銀ちゃんとしては10年の絶対国防圏(いくら鉄面皮の日銀と言えども0%±0.75%にレンジ拡大したら「0%程度」とは言えないと思うので、つまり0.5%は絶対国防圏、のはずだが・・・・・・・)を死守するために、いったん10年の水準を押し返すのが今回の眼目であった、ということなんでしょうかね、知らんけど。


なお、イブニングの横綱は後退しておられますナムナム。
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night

限月:23年3月限
取引日:12/23
始値:146.36(12/22)(15:30)
高値:146.39(12/22)(15:30)
安値:146.12(12/22)(22:31)
現在値:146.12(12/23)(05:54)
前日比:-0.13
取引高:6,263

とりあえず146円土俵を割るには至っておりませんが・・・・・・・・・・・・・・


〇という訳で事務連絡

はいどうも。アタクシも20日は無事と思ってまして、堂々の夏休み(どう見ても夏に取り損なって冬に取ってるだけなんですが細かいことはキニシナイ)に入った次第でございます。

後出しで言ってもシャーナイのだがもし「点検指示」を出すなら12月しか無かった、というのは点検指示出して結果が出るのが執行部交代じゃあ意味がないから点検指示だして1月の展望レポートと共に、という可能性はカシュカリ総裁の頭髪程度には可能性があるとおもってたからスタート日を今週の頭とか、MPM直後とかに置いてなかった(直後に置いたらカシュカリ総裁の毛髪事案が発生した場合に困りますからねえ)のですが、総裁人事も出るのどうせ来年だし、などと愚考した結果、夏休みに無事(かどうかは知らんが)に突入であるが、結局いつもの時間に起床しておる。

・・・・・・という訳で夏休みぐうたら精神で来週前半は(市場ネタ次第だしもし26日の黒ちゃん経団連講演で懺悔告解がおっぱじまったら大喜びで駄文書きするかもしれませんが)朝の更新が無かったからと言って死亡説を流さないで頂けると幸甚に存じます。とは言え積み残しネタがあるので手が空いてて更新できる環境に居た場合は更新するかもしれません(という無茶苦茶なまでの気まぐれジジイですいませんすいません)。

今週末はクリスマスですが、まあゆうて黒ちゃんによるクリスマスプレゼントも来ましたし(なお書き物を始めると積年の恨みつらみの方が先に来るので悪態しか出てこないが)皆様にも幸あれということで(^^)/







2022/12/22

お題「引き続き日銀MPMレビュー世間話など」

今年はカレンダーの並びから言って中銀イベントが早々に終わってクリスマスはマターリと迎えることが出来ると思っていた皆さん!!!!!!!!

・・・・・私もそうなんですけどね(涙)


〇おやおや早速第2防御線の前面に敵軍がやってまいりました(なおイブニングで横綱上昇)

こちらは俺様用の市場備忘メモでありますが。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N33B149
2022年12月21日3:29 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落、日銀ショック余波 長期金利0.48%に上昇

『[東京 21日 ロイター] -
<15:11> 国債先物は大幅続落、日銀ショック余波 長期金利0.48%に上昇

国債先物中心限月3月限は、前営業日比38銭安の145円76銭と大幅続落して取引を終えた。前日に続き、日銀の政策修正を巡る警戒感が相場を圧迫した。新発10年国債利回り(長期金利)は同7.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.480%と、2015年7月以来、約7年半ぶりの高水準をつけた。』(上記URL先より、以下同様)

結局昨日の引けからまた盛大に売られたか・・・・・・・・・・・

『きょうの国債先物は、朝方に買い戻しが入ったものの、一巡後は日銀による前日の政策修正サプライズを受けた警戒感があらためて意識された。午後には日銀が残存期間3─5年と5─10年の国債を対象に臨時オペをオファー。市場では「中長期金利が急上昇しているので抑制する狙い」(みずほ証券の鈴木優理恵マーケットアナリスト)と受け止められたが、売り優勢の流れを止めるには至らなかった。』

そらおめー臨時輪番の中期後半と長期どっちも1000億円なんだもん。月間買入大幅増額するとか任意のタイミングで他年限にも指値入れるとか大口叩いてたのに、何でまた昨日はレンジ拡大前と同じ規模間の臨時輪番になるのよって感じでして、いやまあ別にアタクシ通常輪番だけ増やせや論者で連続指値以外の指値も臨時輪番も余計だとはおもってるんですけど、前日あれだけ派手に他年限の指値打っておいて昨日はいつもの止める気あるんかい臨時輪番だけって、何ぼ何でもやってることの振幅が大きすぎで、発動基準が何が何だかさっぱり分からんですわな。

ということでロイターさん提供のいつものTRADEWEBだとこのようになっています。

     OFFER   BID   前日比  時間
2年   -0.023  -0.0   -0.024  15:09
5年   0.232   0.242  0.066  15:10
10年   0.473  0.482   0.061  15:11
20年   1.204  1.221   -0.002  15:10
30年   1.541  1.553   -0.012  15:11
40年   1.768  1.795   -0.004  15:11』

念のため売買参考統計値ちゃんをみますとですね。
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
公社債店頭売買参考統計値/格付マトリクス表

先物3限チーペスト以降の平均値単利を見ますと以下のようなテイタラクになっておりまして、

長期国債 358 2030/03/20 0.445
長期国債 359 2030/06/20 0.465
長期国債 360 2030/09/20 0.480
長期国債 361 2030/12/20 0.489
長期国債 362 2031/03/20 0.494
長期国債 363 2031/06/20 0.500
長期国債 364 2031/09/20 0.503
長期国債 365 2031/12/20 0.495
長期国債 366 2032/03/20 0.430
長期国債 367 2032/06/20 0.468
長期国債 368 2032/09/20 0.478

相変わらず10年366の歪み直ってない(これはカレント3銘柄の指値が「一番高い利回りが指値水準になるように前日引けからの利回り較差で買入を行う」という謎方式にしているため、366の引けが何ぼおかしくても、結局その引けをベースに無制限買入が入るから是正されないのであって、全銘柄同レート指値にすれば指値銘柄の変な歪みはマシになる(全銘柄同レートになるので解消されるわけではないのだが、実態として手前が売られてしまっている以上、366〜368が同レートになっている方がまだ形状としてマシという意味である)んじゃないかと思うのですが、これ是正しないのかねー)ですなあ、というのもあるんですが、まあそれはさておいて。

さっそく残存8年9年のゾーンが単利0.50%水準の引値になっておりまして、今のところ10年と逆イールドとは言っても以前ほどのマジノ線迂回状態ではないけれども、マジノ線正面攻撃軍団が0.50%砦に到達する前に既に8−9年戦線が0.50%ラインに来てしまっていまして、いやーMPM出てから1日半しか経っていないのに既にマジノ線迂回の風情がバンバンに出ている、という大変にあばばばばーな状況になっておられます。

だいたいからして足もとってクリスマスで休んでいる海外投資家筋の皆さまだっておいでだと思うので、この方々が戻って(なんかさすがにこの事態だと休み切り上げて戻って来そうですけど、ナムナム)「マジノ線突破できなくても周囲を全部突破してしまえば日銀は諦めてマジノ線を放棄する」という戦訓を糧にして早速第2マジノ線の迂回攻撃祭りを開始したらどうするんでしょうかねえって感じで、これは年末年始もワクワクが止まらない相場のようでございますな。

・・・とは言いましても、横綱がイブニングで怒涛のがぶり寄りをかましておられるようで
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through

長期国債先物
23年3月限 12/22
始値:145.82 (12/21)(15:30)
高値:146.35 (12/21)(22:43)
安値:145.81 (12/21)(15:30)
現在値:146.20 (12/22)(05:54)
前日比;+0.44
取引高:9,798

商い1万枚近くとは大盛況ですが、なんか怒涛の寄り身でまた昨日の日中引けから盛大に戻しておられまして、ボラ高杉晋作にも程があるんですけど、まーそうは言いましてもどうせアタック隊来るんでしょうけど、冷静に考えれば次のMPMまで1か月あるんですから、そんなに慌ててアタック隊せんでもええがなという話もありますし、まあ何かとアレな相場で。

ただまあ何ですな、超長期の金利について昨日は比較的落ち着いていました、って今までの売りパワーを一手に引き受けていた超長期に対する圧力が今まで抑えつけられてた年限に分散されただけの話ではありますが、超長期の金利がそんなに跳ねないで、結果的にベアフラットしていてくれれば、実は発行当局もニッコリという説もありまして、これは黒田の意地と面目の為に何て無駄な政策をしていたんだ、という話になったりするかもしれませんが、第二マジノ線陥落アタック(と称して実際にアタックするのは超長期)が始まると、結局前回のマジノ線陥落アタックと同じことで、10年への売り圧力が他年限に行くいつものアレになってしまいますので、10年が50に張り付いて戻ら無くなりだしたらまた同じことになるかもですね。うーん。


〇日銀声明文おまけ:フォワードガイダンスwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k221220a.pdf

昨日は項番2までで盛大に草を生やしておりまして、気が付いたらその後がまだ残っていたあるよろし。


・経済物価の現状と先行き見通しは

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k221220a.pdf(今回声明文)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2210a.pdf(10月展望レポート)

『3.わが国の景気は、資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している。』(今回)
『わが国の景気は、資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している。』(10月展望レポート)

現状判断の総括は同じと。

『海外経済は、回復ペースが鈍化している。輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は横ばいとなっている。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加している。』(今回)

『海外経済は、総じてみれば緩やかに回復しているが、先進国を中心に減速の動きがみられる。輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している。企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は横ばいとなっている。こうしたもとで、設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。』(10月展望レポート)

企業部門を需要項目別に見ますと、海外経済を引き下げ、輸出と生産は不変、企業収益と業況感は普遍、設備投資は引き上げ、となっています。

『雇用・所得環境は、全体として緩やかに改善している。個人消費は、感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『雇用・所得環境は、全体として緩やかに改善している。個人消費は、感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(10月展望レポート)

雇用、所得、個人消費、政府支出は不変です。

『わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、3%台半ばとなっている。また、予想物価上昇率は上昇している。』(今回)

『わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、3%程度となっている。また、予想物価上昇率は上昇している。』(10月展望レポート)

金融環境、物価の判断はインフレ期待も含めて同じ書き方なのに何で唐突にレンジ拡大したんでちゅかねえ・・・・・・


でもって先行きは項番4.

『4.先行きのわが国経済を展望すると、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。』(今回)
『わが国経済の先行きを展望すると、見通し期間の中盤にかけては、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(10月展望レポート)

声明文と展望なので書き方が異なるのですが、経済対策に関しては10月展望ではまだ見込みでしたが、今回は正式な国会提出前の段階とはいえ、予算案の骨格はできあがっているんだから先行き見通しに入れるもんなのかと思ったら入れないのね。

『その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『見通し期間の中盤以降は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくため、成長ペースは徐々に鈍化していく可能性が高い。』(10月展望レポート)

ただし以下は声明文なので、というのとそもそも展望レポートでの見通し期間は3年程度の期間ですが、声明文の見通し期間は足元から1年先程度までの期間を見ている、という体になっていた筈なのでここは実質的に前回の判断と一致と解釈すれば良いです。


『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。』(今回)
『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、本年末にかけて、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により上昇率を高めたあと、これらの押し上げ寄与の減衰に伴い、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。』(10月展望レポート)

はい。

『その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(今回)
『その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(10月展望レポート)

・・・・・・ということで事実上の政策変更しているのに情勢判断がほとんど変わっていないということで、だったらお前ら10月にやっておけよバカチンが、としか申し上げようがないのですが、この点について日銀に質問しても、おそらく想定問答集では「今回の措置はあくまでも市場機能度の改善を図るために行っているもので、これ以上の市場機能の悪化が起きると経済に悪影響を与えかねないために実施したものです。つまり足元の景気判断に変化があったからYCC運営の一部見直しを行ったわけではないので、この措置は政策変更にhはあたりません(キリッ)」って書いてあると思うのよ(個人の妄想です)。

まあほんと、こういう辺りの詭弁論理構成の出来の良さはさすが日本最高の頭脳だと感心してしまいます。


・フォワードガイダンスとの矛盾があほらしくて誰も突っ込まなかったがこれは「80兆円」と同じ運命ですねわかります

項番5のリスク要因は飛ばして項番6へ。

『6.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(今回)

『金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(10月展望レポート)

そもそもコアCPIが2%を盛大に超えているのだが何でMBの拡大方針止めないんですかねえと思いますし、それ以前に今更気が付いたが「実績値が」「安定的に」というこの文言構成って非常におかしくて、「実績値」というのは物価のデータ紐付けコミットメントになるのですが、そこに「安定的」というのを入れてしまうと、この部分で「政策委員会の主観的な判断」が介入することになるので、このコミットメントがデータ紐付けなのか、判断ベースなのかがわからないという問題点があるんですね。

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』(今回)

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』(10月展望レポート)

これわひどいwwwwwwwwwwwwwwwwww

いやあのですね、追加緩和措置については、ご強弁された通り「今回の措置は金融緩和政策の持続性を高めるため」としてしまえば、緩和政策を高める措置というのは「追加的な金融緩和措置」であるとかいう屁理屈を捏ねることは可能だと思うのですが、「政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。」ってのさすがに長期金利の許容レンジの拡大を声明文に謳っておいてこれは無いだろと思うんですけどねえ・・・・・・・・・・・・・・

ま、今回の日銀理論によると、「長期金利のディレクティブは0%程度のままだから政策金利は変更なし」ということだからって事でしょうけれども、これって例の80兆円文言と同じで、やる気もない嘘を書いてその場だけ誤魔化す、という実に汚い声明文の文言で、見苦しいったらありゃしないですね。



〇黒田総裁の会見はどうしたというツッコミがあろうかと思いますが(事務連絡)

ええすいません黒ちゃんの会見ネタ、ちょっと読み応えがある(内容はクソ)ので明日にでも、と思いますのに加えまして、不肖このアタクシもまさか今週後半から来週は平和にマターリ年末モードと思って連休をぶっこんでしまいまして、来週前半ちょっとお休みするかもしれません。

相場が滅茶苦茶面白かったり、黒ちゃんが26日の経団連講演で野々村号泣講演をおっぱじめる、などのオモシロ事案が発生した場合は浮上するかもしれませんが、まあそういうことで事前に事務連絡でございました。







2022/12/21

お題「黒田砦、意味不明だが壮絶に陥落の巻とかマジ受ける(決定会合レビュー)」

昨日の朝アタクシは「アタクシは黒ちゃんが会見で野々村号泣会見ばりに「今までの政策運営は間違っていましたー、もうしわけありませーん」と号泣するシーンを冥土の土産に一度は見たいのですけれども、どうせ号泣しないからアタクシの冥土行きもまだまだという事にしておいてください。」などと申し上げておりましたが、危うくアタクシの冥土送りが決まるかと無茶苦茶焦りましたが(大嘘)、会見での黒ちゃんは号泣してなかったのでセーフ(???)。


〇唐突にYCC柔軟化(しかもいきなりレンジ2倍)で金利急騰は買入拡大で抑えるとの事だが・・・・・・・

ご案内の決定内容。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k221220a.pdf
当面の金融政策運営について
2022年12月20日
日本銀行

・最初の背景説明がそもそも「今さら何を言ってるんだ」状態でクソウケル

ということで項番1。

『1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定した。』

まあ「緩和的な状態を維持しながら市場機能の円滑化を図り、YCCの延命を図るために柔軟化」というのは10年のレンジを10bp→10bpの2倍程度、に拡大した時からの常套文句なのでこれはこれでまあ良いとしましょう。次からが無茶苦茶。

『本年春先以降、海外の金融資本市場のボラティリティが高まっており、』

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwwww

えーっと、それに対してブチ切れ事案が発生した結果、4月の逆切れ25bp指値連発開始からのチーペスト指値に、イールドカーブじゃなくてカレント3点コントロール、になった次第でして、その結果として、

『わが国の市場もその影響を強く受けている。』

いやいやいやいや、あんたらが急に10年0.25%をどんな犠牲を払ってでも維持するって頑張ったから海外の引き締め姿勢の強まりによる影響が主に為替市場にドドーンと出た結果150円まで円安がすすんだんでしょうが何貰い事故みたいな言い方してるの盗っ人モーモーしいとはこのこと。

『債券市場では、各年限間の金利の相対関係や現物と先物の裁定などの面で、市場機能が低下している。』

そんな話は6月の決定会合前からやってたことだし、チーペストのSLF要件の緩和はしたけど、大して効かない(確かにやらなかったらもっと悲惨だったが)状態で9月限と12月限の次限月へのカレンダーロールって2回連続で波乱になりましたよね。今更言うの遅すぎにも程があって、これをいうなら9月会合、遅くとも10月会合での話であって、何を今さらにも程がありますよね。

『国債金利は、社債や貸出等の金利の基準となるものであり、こうした状態が続けば、企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす惧れがある。』

しかもこの謎理屈なのだが、そもそも日銀が無理矢理10年カレントをピン止めしたから、経済物価情勢のファンダメンタルズに沿って発生した売り圧力が他年限に飛び火して、その飛び火のせいでカーブ形状がおかしくなったり超長期のボラがクソ上がりした訳で、その結果としてスプレッドが安定的にならなくなったとか、10年カレントを馬鹿みたいに低くするから、その分実力ベースの金利上昇のコンペンセートする形でスプレッドが調整された(同じことは物価連動国債のカレント銘柄でもあって、カレントの計算上のBEIが1年前の銘柄対比でやたら低いんだが、表の10年が(この前までだと)10bp位期間が長い方が金利低いというアホアホ現象があったから)というように。「実力ベースの金利水準と、日銀が無理くり抑え込んだせいでおかしい値付けになっている国債市場の金利差が拡大した」のを反映したものともいえる。

まあ社債の場合は政策先行き不透明感によるものとか、その手の問題もあるので、上記の日銀の物言いが全部インチキとは言わないけど、まあかなりの部分日銀がへなちょこ政策でイールドカーブを無茶苦茶歪めたせいなのであって、言ってることが完全に放火魔の火消しみたいな世界ですね。

『日本銀行としては、今回の措置により、イールドカーブ・コントロールを起点とする金融緩和の効果が、企業金融などを通じて、より円滑に波及していくと考えており、』

そもそも企業が賃上げすると好循環、って話をするならYCCとは別件で今回変更のなかったマイナス金利政策なんて家計の利子収入やら年金運用(最終的にはこれも家計ですわな)の運用利回りの低下(短期的に時価が上がってトータルリターンが増える話よりも長期間の低金利、マイナス金利によって再投資利回りがガンガン悪化する方が長く見れば効くわな)やらを通じて、今の長期間にわたるマイナス金利政策を起点とする低金利政策が個人部門の所得を政府部門に移転させている訳で、どうせならマイナス金利の撤回を何故しなかったのかは(この理屈を繰り出すなら)理解に苦しみますな。

『この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることで、「物価安定の目標」の実現を目指していく考えである。』

ということなのですが、これはもちろん10を10の2倍程度に拡大(その後2020年3月の点検で0プラマイ25程度になった)した時にも同じ理屈を捏ねていましたが、当時はそうは言いましても物価水準も低かったし、世界的なインフレどころか「フィリップスカーブが死んだ」などというような話(今にして思えば幻覚でしたが)があったような時代でしたので、まあゆうて確かにレンジ拡大で延命という話にはなったし、その後のコロ助ショックとかもあったから金利上がるって話はしばらく飛んでいたのは仰せの通り。

然るに、今回っていうのは「イールドカーブの歪みの是正により緩和的な金融環境のトランスミッションメカニズムを円滑化する」という説明にはなっていますが、そもそもの歪みは「死守している10年カレント3銘柄の金利が他年限対比無茶苦茶な水準になってしまった」ということによって発生していて、この場合、本当に10年の0.25%死守が意味のある話なのであれば、他の年限に指値バンバンぶっこんで輪番バンバン拡大して「10年以外の金利を必死に押し下げる」のが筋の筈なんですが(やったら地獄なんてもんじゃないですけどね)、死守するはずの10年戦線を大幅に後退させて金利上昇を容認する、って解決法を取った訳で、これ今はクリスマスだヒャッハーと言ってシュトーレン食ったりローストビーフ食ったりしてお家でお休みされている方々が絶賛戦線復帰されてきますと、「なんだ10年以外の金利を売り込めば最終的に日銀は10年のレンジ拡大するじゃん」という認識の元、マジノ線を迂回してベルギー国境からなだれ込んでくるドイツ機甲師団ばりにまたYCCアタック(ただしマジノ線正面ではなくてマジノ線迂回による)をしてくる、ということになりそうですね。これはアーニャも新年からワクワクが止まりません。

まあ確かに何ぼマジノ線死守したって後方のセダンが陥落してたら何の意味もないのであって、そらまあ現実的にはこうするしかないのですが、現実と折り合う事を拒否し続けた挙句にこのサプライズタイミングでポッキリ折れたのは負けるにしてもかなりみっともなくて、こんなことになるならせめて10月の展望レポートで「物価目標達成に向けた動きが強まってきたので、緩和度合いを微調整します」と王道の説明をしながら自分たちの勝利宣言も出来た筈なんですけどねえ。10月会合からここの間に何がどう変化したんでちゅかねえ〜。



・全員一致とか今の審議委員(新任2名は辛うじて許さんでもない)と若田部某は全員そろって要らないので肥溜めで漬物にすべき

項番2も最初から何のギャグかという物件である。

『2.金融市場調節方針、資産買入れ方針については以下のとおりとする。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(全員一致)』

>(全員一致)
>(全員一致)
>(全員一致)

・・・・・・・・もうね、馬鹿かとアホウかと。

いやマジでついこの前お前ら展望レポート出して金融政策の維持を全員一致で決定したのに、この2カ月弱(前回は10月27−28日)の間に「全員一致」するまでの大変化が起きたかよという話ですわ。

せめて前回の展望レポート会合で「柔軟化」と言わなくても何らかの反対意思表示が審議委員から出る、というのであれば少しは話が分からんでもないし、なによりも今回何で若田部とか反対に回らないのお前何のためにリフレ派名乗ってるの(同じことは安達野口にも言えるが、先日の金懇で野口は執行部というか事務方の犬であることを高らかに宣言する情報発信をしていたので既に人間様ではなく犬あるいは置物あるいは自動賛成人形になっておる)かと小一時間問い詰めたい訳で、おどれらどのツラ下げて置物一派名乗っとるねんという話でもありますな。

前回はともかく、今回反対票出ないで決定、ってのは明らかに不自然であって、日銀の政策委員会がガバナンス機能を果たしていない、という事を示しているとしか申し上げようがないので、これがまた致命的に問題だと思います。まあ馬鹿政権が類は友を呼んで馬鹿ばかり送り込むからこうなったとは言え、見るも無残であり、とりあえず新任2名と黒ちゃん雨宮さんは勘弁するとして、他の政策委員は一生肥溜めの中に漬かって二度と出て来るなって感じですな。

その点、FOMCってのは立派なもんでして、今年6月に利上げ幅を直前になって(それまでの衆目の予想だったし、FRBの要人もそういう説明だった50bp利上げをひっくりかえすべく)強引に75bpの利上げをFOMC直前に織り込ませにいって、強引に75bp利上げを実施した際に、本来はバリバリのタカ派であるカンザスシティ連銀のジョージ総裁が「このようなサプライズ利上げはよくない」ということで50bpの利上げを主張して反対票を投じた、という事案がありましたように、一本筋の通った方がいらっしゃるわけでして、彼我の差を見ておりますと日本の情けなさに涙が止まりませんね。


・ところで国債買入拡大して他年限の指値オペも乱発しながら市場機能の為に利上げってのも無茶苦茶過ぎて凄いですね

項番2に入るまでで何でこんなに悪態をつけるんでしょこの政策はw

『@次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。』

でもってこれは当たり前のように会見でバッシバッシ突っ込まれていましたが、黒田さんや内田理事が会見や国会答弁などで「10年金利のプラマイ0.25%のレンジ拡大は事実上の利上げ」って言ってたのに今回は頑なに「利上げではない」と言い張っていて、はいはいおじいちゃんさっきは逆の話をしてたでしょってツッコミをされていましたが、会見の文字起こしは本日出るので、そこでまた色々と悪態がつけると思いますが、黒ちゃんのロジックによると、この「10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう」が変わっていないので利上げではない、という新手の屁理屈を繰り出してきました。

するってえと何だい、3%水準は0%〜10%のレンジで見たら0に近いから3%でもゼロ%程度って屁理屈でもいうって話かいって混ぜっ返したくなる所でございますが、結局の所これって年初に出た政策見直しに関するロイター砲に対して黒ちゃんが過剰に意地張って反応した無理が積もり積もって爆発したから今回従来の説明と矛盾するのを無茶苦茶な説明にもなっていない説明で体裁をなんとか取り繕わざるを得なかった、って話なんでしょうねえ、と思う訳で、人間謙虚に生きるべきで大言壮語すると後で死ぬこともある、という教訓ですな、と思うのでありました。

しかしまあ何ですな、

『A長短金利操作の運用

国債買入れ額を大幅に増額しつつ1、長期金利の変動幅を、従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大する。10 年物国債金利について 0.5%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。』

指値水準が変わっているのに利上げでない、と頑なに言い張るのはまあ「あーはいはいおじいちゃんよーくわかりましたから、おくすりのおじかんだからのんでちょうだいねー」で済ますとしまして、

『上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、各年限において、機動的に、買入れ額のさらなる増額や指値オペを実施する。』

というのが最早何をいってるのか分からない(いやわかるけど)話でして、「市場機能の低下が問題」と言っておきながら、市場統制を強める「輪番オペの拡大」「他年限の指値オペ(早速昨日実施していましたが)」の実施という施策を取っておりまして、こいつら市場機能を回復したいのか統制強化したいのかどっちだかさっぱり分からんのだが、お前ら自分たちでやってる事の意味わかってるのと小一時間問い詰めたい。


・昨日の指値の金利水準の意味が全然分からない件(ちょっとここでオペ話を挿入)

ちょっとオペ話挿入しますが、
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of221220.htm
オファー (12月20日<火>)

最早何が何だかわかりませんが、後場になって50bpのディレクティブ通りの指値を打ったのは順当なので別に良くて、その次の臨時輪番もサプライズ結果だった分の金利上昇をスムージングしたいというのはまあ分からんでもないのですけど、その後のが全く持って意味不明で、

(注10) 固定利回較差の結果、2年利付国債443回の買入利回りは、0.020%となる。買入金額に制限を設けずオファー。
(注11) 固定利回較差の結果、5年利付国債154回の買入利回りは、0.170%となる。買入金額に制限を設けずオファー。
(注12) 固定利回較差の結果、20年利付国債182回の買入利回りは、1.245%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

最初2年5年の指値がオファーされて、後から20年の指値が追加されたと思うのですが、7年の指値が0.50%になっているのに5年の指値が0.17%ってお前どんだけイールドカーブ歪んだ指値してるんだよって話でございまして、イールドカーブの歪みが問題だからYCCの10年金利レンジの拡大したって話は何処に逝ったんだよと小一時間問い詰めたい。

しかもですよ、このオファーって既に市場の5年金利水準が軽く0.2%を抜けている中でいきなりインザマネーの水準で指値ぶっこんできておりまして、指値水準が市場金利よりも若干なりとも高い水準ならまだしも、いきなりどインマネの指値ぶっこむとか市場機能を更におかしくするだけじゃんという話。

だいたいからして、この0.17%の根拠って何だよということでありまして、均衡イールドカーブの概念から考えて適切な水準である、とでも考えているんだったら均衡イールドカーブの考え方を整理して出してくれればこっちだって経済物価情勢から日銀の考える適切な緩和水準をのっけて日銀の意図する望ましいイールドカーブ構造を考えていけるのですが、そのような背景説明が一切ない、という中でいきなり7年の指値水準から見て全然違うだろって水準(1億歩譲って考えれば10年0.50%で0年▲0.10%なんだから5年はその間の直線一気理論で計算すれば0.20%になるので、0.20%とでも言ってくれればまだしも(7年の0.50%はバックストップ、と無理矢理整理する)、0.17%とかいう意味不明な刻みマジでわからんわ)が打ち込まれますと、いやこれからこの指値どういう運用するんだよという話だし、10年以外の2年5年20年にバカスカと根拠不明の指値しかもインマネ指値あり、が何時飛んでくるかわからん、って話になったら、益々マーケットメイクするのただのリスクになってしまうから、オファービットが超絶広くしないとやってられなくなるし、市場の流動性もっとひどい事になりませんかねえ、と思ってしまう訳で、まあ単に輪番増額するだけならスムージングで話はわからんでもない(臨時輪番頻発はアカンけど)ですが、こんな指値という最終兵器の飛び道具バンバンぶっこんでしまうのはそもそもの「市場機能の低下に対応した措置」とマッコウクジラで矛盾するんじゃないですかねー、とこれまた思うのでありました。


〇ということで時間がアレのため(すいません)続きは明日ですが記者会見は酷かったですね

まあ当然ながら今回の会見は最初から最後までじっくりと拝聴しましたが、政策変更しているのにいつもの時間で切ってしまう時点でお前コミュニケーションやる気あるんか、という話ですが、会見場に登場してきた黒ちゃんの顔色が最初かなりどす黒く見えまして(個人の印象です)、質疑応答の途中でも目が泳いでいましたし、まあ政策決定自体が今までの論理破綻を更に論理破綻させているから支離滅裂になっているのは順当ですけど、今回はその説明もあまり力強くなかったし、まあ黒ちゃん完全にレームダック状態じゃんと思わせる物件であったし、しかもその説明が論理破綻なんてもんじゃなくて、今日の文字起こしが今から楽しみであります。


・・・・・・・・・とまあそういう訳でして、続きは明日(とオペ具合みながら明日以降も、かもしれませんね)でお願いいたします。なんかもう思ってることをキーに打ち込んでいるだけでもドバドバといろんなのが出て来まして、あたまも整理しないといけないし、時間もないし、手は勝手に動くし、みたいな感じで誠に申し訳ございませんでありまする。










2022/12/20

お題「「政府が」見直しを検討するとなるとインパクトありますなあ(市場世間話)/ECB「先行き知らんがな」を連発の巻ですな」

ワロス
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221219/k10013928001000.html
ツイッター マスクCEO トップ辞任すべきかの投票 賛成多数に
2022年12月20日 5時14分

まあどうせ辞任しても何か別の傀儡を置いて継続するし、そもそもこいつが全株持ってるんだからこんなのやるだけ無駄なんですけど、そういえば否決されたら政治家辞めるといった住民投票で大阪都構想を否決されたのに(以下割愛)。

〇やっと日本要因で動くようになってまいりました(歓喜)!!!!

・共同通信砲で横綱148円明白に割りこむわ超長期はアレだわ5年は0.15接近だわ

というかですね、まあ先物の限月交代片付いた前後からそんな感じで、円債ちゃん段々海外離れって感じになっているのですけど。

例の共同通信砲
https://nordot.app/976741258768875520
2%物価上昇目標の見直し検討 政府日銀、初の共同声明改定へ
2022/12/17

先日来この手のネタが良く報道されるようになったのですが、何のかんの言いましても(1)そもそも黒ちゃん死んでも政策をいじる気が無いし、政策いじるくらいなら死んだ方がマシくらいの勢い、というのは人口に膾炙しているので黒ちゃん総裁のうちに何かが起きる訳が無い、(2)黒ちゃんの非科学的なただの本人の面目守るためだけ、というクソのような理由による政策スタンスすら翻意させることの出来ないポンコツ日銀が、黒ちゃん後にも自分の意思で政策スタンスをいじれるわけがない、とまあそういう次第でありますので、つまりは官邸様が何考えてるか(というのが次の総裁副総裁人事に出て来るのですが)、という次第でありますな、って感じの話って多分市場の中の人達何となくそうかなーとは思ってたと感じるのですが、文字化されることによって分かりやすくなった感isある。

ということで昨日の市況はいつものようにロイターさん(あざっす)。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N3390TB
2022年12月19日3:22 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、「アコード」修正観測で売り優勢

『[東京 19日 ロイター] -

<15:10> 国債先物は続落で引け、「アコード」修正観測で売り優勢

国債先物中心限月3月限は前営業日比12銭安の147円86銭と続落して取引を終えた。政府と日銀の共同声明(アコード)修正観測で売り優勢の展開となったが、後場は下げ渋った。新発10年債はまだ出合いがみられていない。』(上記URL先より、以下同様)

でまあ引用の順番飛ばすと

『現物市場で新発債利回りは上昇。2年債は前日比1.5bp上昇のマイナス0.010%、5年債は同2.0bp上昇の0.145%。20年債は同4.0bp上昇の1.175%、30年債と40年債は出合いが見られなかった。』

ってな感じで気配ちゃんは、

『TRADEWEB
    OFFER BID 前日比 時間
2年  -0.015 -0.009   0.01 15:05
5年  0.139  0.145  0.019 15:03
10年  0.248 0.256   0.005 15:00
20年  1.167 1.178   0.037 15:03
30年  1.513 1.522   0.042 15:12
40年  1.733 1.749   0.057 15:12』

ということで毎度おなじみの10年カレント3銘柄はさておいて後ろに売り圧力の巻ですが、5年もしれっと安値になっておられますな。これで5年も20bpとかまで行く世界になったらマジ受けるんですけどぬー。

という訳で記事引用の続きですが、

『共同通信は17日、岸田文雄政権が政府と日銀の共同声明を初めて改定する方針を固めたと報じた。ロイターも19日、岸田政権内の一部で政策協定の見直し論が浮上していることが分かったと報じている。』

ほうほうそうですかそうですか。

『市場では「円債市場の初期反応は売りだったが、アコード見直しがあるとしても来年4月以降の話であり、具体的な内容も決まっていない。松野博一官房長官も否定したことで後場は戻り歩調となった」』

別に晒し上げする気はないのですが、「来年後半に利下げに転じるかどうか」とかで金利がバカスカ動いておられる米国債券市場ってのがあるのですから、来年4月の話でどうのこうのっていうコメントを債券の何とかストが言うと大変にアレっぽくなってしまって残念なので、そこは「確定的な話ではないし」で寸止めしておけばいいのにって思いましたが、まあマイナス金利な上に、日銀が長期金利のペッグなんて始めているからタイミング重要ってのも分かる次第ではありまする。

本来は「次回だろうとその次だろうと変更されるんだったらどっちだって同じ」なのが長期金利の世界であり、そこのクソ細かいタイミングの読みによって泣いたり笑ったりするのは3か月金利とかそういうのやってる短期市場の人達なんで(ちなみにスワップ使いの人の場合、「変動金利」側のテナーが6か月だったりして、政策金利が動くときに思ってもみないPLのブレが発生することがあるので要注意ですなあと遠い目)、あんまり債券市場の人はそういうクソ細かいタイミングを本来は気にしないもんだったのですが、まあ何だかんだいってこの10年でそういうのも変わったなーと感慨深くこのコメントを見ただけで、別に何か含むところはないです。

・・・・・・・って書いたので引用記事の中には実はコメントした人の名前があったんですが、コメントした人の名前以降の部分を思い直して引用割愛しましたよ。

でもって官房長官が否定した云々ですが、

『松野官房長官は19日午前の記者会見で、政府と日銀の政策協定を改定する方針を固めたとの一部報道について、「そのような方針を固めた事実はない」と述べた[nL4N3390IV]。』

そら方針固めても今は公表せんわな、という感じでございますし、考えてないとかそういう文脈じゃなさそうなのでまあねって感じではありますが、政策云々の報道やら総裁人事を巡る観測報道などがここもとなんか物凄い勢いで出て来るし、見てきたかのような講談師の講談みたいな感じの報道やコメントなども出て来るという面白展開になっていますから、結果としてどうなるかはともかくとして、単純に黒ちゃんの路線がそのまま継承して無問題、って能天気な話にはならないですよね、という所までは理解した。


・そして指値オペwwww

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N33913Z
2022年12月19日3:57 午後
〔マーケットアイ〕金利:日銀の指し値オペ結果、1兆2737億円が応札・落札 カレント3銘柄

『東京 19日 ロイター] -

<15:52> 日銀の指し値オペ結果、1兆2737億円が応札・落札 カレント3銘柄

日銀が本日通告した固定利回り入札方式による国債買い入れ(指し値オペ)の結果は、366回・367回・368回債のカレント3銘柄に対し、1兆2737億円の応札・落札があった。357回債・358回債は応札・落札額ともにゼロだった。』(上記URL先より)

ということで、確か今月頭に新発10年が供給されていた筈なのですが、なんかもうバカスカと打ち込まれまくっておりまして、まあこの額自体は真面目に計算すれば良いのですけど計算してませんすいません。


・でもってそういえば今日は金融政策決定会合の結果が出る日なのですが

ということで本日は決定会合なのですが、そらまあ今日まかり間違って何か出たら別ですが、黒ちゃんの今までのアレから察するに、寧ろここで逆切れ緩和強化でもしかねないのが黒田クオリティ。さすがにそっちもないでしょうから現状維持で、今回は展望レポートもないので楽しみは会見がどうなるか、に尽きる訳です。

・・・・・・・・・とは言いましても、今回はこの共同文書ネタが出てしまったのでこっちに質問が集中するのは自明でありまして、その件については「見直しの必要はない」「この声明文は極めて基本的な原則を述べているのであり、軽々と変えるようなものではない」とでも言って置けばよいので楽勝楽勝。あとは質問をいかにして上手くもっていって黒ちゃんがキレるかどうかという所でっしゃろ、知らんけど。

本件が無かったら本当は質問して欲しかったのは、「来年度は物価上昇率が1%台半ばまで下がる」という見通しについての話でして、何でかと言えばこの見通しがあるからこそ今の政策を1ミリも変更しないという根拠になっているのですが、そもそも論として日銀はこの1年間物価見通しを悉く外して上方修正を連発していますし、その点展望レポートでも「物価のリスクは上方」となっているのですから、「物価見通しを毎回外し続けているのに先の政策をそのように断定的に言えるのは何故か、欧米各国の中央銀行だって経済物価の先行きが不透明だからと言ってフォワードガイダンス的な言い方をしないようになってきているのに、程度の差は小さいかもしれないけれども物価見通しを欧米中銀同様に外し続けている黒田総裁が何故先行きの政策について断定的に言えるのか、非常に違和感があるのだが断定的に言い切る理由は何なのか」というのをぶっこんでほしかったなあと。今日はそんな暇無さそうですけどねー。


なお、何回か申し上げておりますように、アタクシは黒ちゃんが会見で野々村号泣会見ばりに「今までの政策運営は間違っていましたー、もうしわけありませーん」と号泣するシーンを冥土の土産に一度は見たいのですけれども、どうせ号泣しないからアタクシの冥土行きもまだまだという事にしておいてください。


〇なんかFOMCとECB決定会合のネタが進みませんが(滝汗)

一応今日もネタのクリップクリップ

https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-kazimir-idJPKBN2T30OY
2022年12月19日8:22 午後10時間前更新
ECB、強力な政策対応あと半年必要=スロバキア中銀総裁

『[19日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのカジミール・スロバキア中央銀行総裁は19日、インフレ見通しを踏まえるとECBは強力な政策対応を継続し、金利が景気を減速させる「制約的」な領域に入り、そこに長くとどまる必要があるとの認識を示した。』

『「インフレ率について、現時点では2025年でも目標に回帰するとはわれわれは考えておらず、非常に強力に進めることを余儀なくされている。私もそれに完全に同意している」と述べた。「金利をどこまで上げるかは、現時点で明言できない。時間とインフレの推移によって分かるだろう」とした。』(以上上記URL先より)

https://jp.reuters.com/article/germany-inflation-idJPKBN2T31F5
2022年12月20日5:22 午前
ECB利上げ、効果出るのに2年 忍耐必要=独連銀総裁

『ナーゲル総裁は放送局N─TVのインタビューで、ECBが4回連続で利上げを実施したことはインフレに対応していることの証拠になると指摘。ただ、インフレ率は2024年まで大きく低下しないとの見方を示し、国民に対し「ある程度の忍耐を要請しなければならない」と述べた。』(上記URL先より)

https://jp.reuters.com/article/ecb-policy-deguindos-idJPKBN2T30GL
2022年12月19日5:54 午後
ECB利上げ停止時期は不明、中期物価安定目標に変更なし=副総裁

『[マドリード 19日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁は19日、高インフレ対応のためさらに金利を引き上げると述べた。「追加利上げはあるだろう。いつまでかは分からない。全く正直に言って分からない」と発言。ECBはインフレ率を中期目標の2%まで低下させることにコミットしているとした。「これまで講じた措置では不十分だ。追加の措置が必要だ」とも述べた。』(上記URL先より)

・・・・・・ということで昨晩はECBの高官発言祭りっぽかったですが、ECBは賢明にもフォワードガイダンスを撤廃しましたので、このように「シランガナ」という発言を堂々とぶっこめるようになっているので、FEDみたいにSEPで変なドットを出さなくて済むし、堂々と「先の事は分からんから分からん」と言えるというのはコミュニケーションが楽になったよね、とは思います(個人の感想です)。


いやこの点は本来米国も同じで、結局物価動向が読めなくて、そのファクターとして何が一番効いているのか(たぶん雇用情勢と賃金動向ではないかという気がしますがよくわからんよね)という部分の今後の動向次第で引き締めがどこまで続くか決まります、って話なので、実際問題としては真の意味での「データディペンデント」状態(ECBは中立金利からの引き締め具合が足りない気もせんでもないが)になっているし、まあそういうのは段々コンセンサスとして市民権得てきて、別にFEDがどう思ってるかとかそういう話じゃなくて、純粋に雇用と物価の読みで長期金利決まってきている感もあるので、そうなってくると政策動向云々はあくまでもリアクティブになってくると思うのよね、よー知らんけど。

そうなりますと、海外金利動向ってそこまでこう当局の意向でグニャグニャとなるのではなくて、あくまでもファンメタに沿った動きになる(ただし海外金融市場そうはいってもリセッションになると物価が高いままでも政策が日和見になってしまうと考えている向きが一定量いるんで、そのたびに一々水をぶっかけて回っているのが中銀要人発言な訳で)、と考えますと、日本の方がここからはネタ的には面白い(政策当局の意向次第だから何でもありなので)ということになるのかな^いやー楽しみですねーって感じです。


#なんかここもと世間話ばっかりですいませんちょっとまとまって書き物用意する時間があんまり無かったもんで(年末年始週は書き物用意して頑張る)






2022/12/19

お題「日銀政策見直しに関する怪しげな報道が増えて参りました/SEPだした直後に「もっと金利上がるかも」というのは流石に無節操」

ことしはカレンダーの並びが実にアレでアレですなorzorz

〇ここに来て謎の報道合戦になっているのはなんなんでしょうか

・共同通信が「政府との紙の見直し」話を報道とな

うーむこの。
https://nordot.app/976741258768875520
2%物価上昇目標の見直し検討 政府日銀、初の共同声明改定へ
2022/12/17

『岸田政権が、安定的な経済成長を実現するための政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めたことが17日、複数の政府関係者への取材で分かった。「できるだけ早期に実現する」としている2%の物価上昇目標の達成時期を見直すなどして金融政策の幅を広げる方向で検討する。』(上記URL先より、以下同様)

ということでキタコレなのですが、共同通信が打ってるんだし、MPM前に出て来る謎の「事情に詳しい何人かによれば」というのよりは言ってることにガチっぽいサムシングがあるような気がせんでもない。しかもこの記事、

『岸田文雄首相が来年4月9日に就任する次期日銀総裁と協議して決める。』

ということで、麿の時はそれでも麿が最終的に決めた体にはなっていたのに(だからこそ本当は2年で達成とかそんなこと書いてなかった、勝手に2年にしたのは黒ちゃん)今回は完全に棚上げかよというか、まあこれだと新総裁就任後に紙を決めるって話になるのかしら、何だかその辺の手続きは謎。

『黒田東彦総裁が目標達成を目指して10年近く進めてきた大規模な金融緩和の修正につながる可能性がある。 共同声明は安倍晋三元首相が主導し2013年公表。安倍政権の経済政策の柱である大規模な金融緩和を日銀が実行する根拠となった。』

とまあそういうことでありますが、いやまあどうなんでしょうねえという感じで、そもそも2%の早期達成は出来ないわ、財政健全化と成長力の強化は全然してないどころか後退してるとしか思えない紙で、完全に空文化してるじゃろと思うので、今更この空文をどう直すのか、という話ですけど。

元記事の方には「政府と日銀の共同声明と想定される改定内容」というのがお絵描きで貼ってありまして、お絵描きなのでぱちって来ると共同さんに申し訳ない(まあそれ以前に貼り付けスキルがないのでキニシナイキニシナイ)アルネと言ったところですが、のですが、骨子になっているのは2%物価目標を「出来るだけ早期に」→「中長期的に」する、というような書かれ方をしておりました。

しかし今しがた申し上げましたように、2%云々に関してはとっくの昔に事実上の柔軟化をしているのですけど、建付け上出来るだけ早くやろうとしているからYCCとかマイナス金利とかやってることになっているので、まあその建付けを排除して、寧ろ「実質ゼロ金利を長期的に実施するフォワードガイダンス」って結局昔に戻るのですが、そっちの方にしましょうってお話になるんですよね、とは思いますけどどうなんでしょう。

・・・・・でまあ報道だと2%目標の柔軟化、の話しばっかりが出て来るかとは思うのですが、実は中期的な財政健全化どうしますねんの方がよほど気になるのですけど、なんですかねえどっちも空文化するというしょうもない紙が出来上がって終了って感じになるに1万ジンバブエドルという感じですが。

とは申しましても、この黒ちゃん交代云々という話の中で、ここもと妄想記事何だか一部の方の願望記事なのか書かせ記事なのか訳分らん物件が飛び交っている感はあって、特に最近は日銀の政策見直し待ったなし報道がバッカンバッカンと出ております中で今日明日が決定会合でもございますので、明日の会見どうなるんでしょうかね。今年の頭はロイター記事に対して黒田さん謎のブチ切れを演じてしまい、その結果が「黒ちゃんのご機嫌を損ねないように指値オペをバンバンやるぞ」からの連続指値オペ毎日指値オペチーペスト指値おオペ、という発狂祭りになってしまったという流れになりましたが、今回は残り実質3か月で、決定会合の会見でどうせ質問が飛びまくることになるでしょうし、どうやって回答するのか大変見ものになってまいりました。



・ここもとまあごちゃごちゃと色々出ていますが金曜の夜には英語でロイターがこんなのを

金曜の夕方にだすな金曜の夕方に。
https://www.reuters.com/business/finance/kuroda-bows-out-bank-japans-rising-hawks-eye-end-unloved-yield-cap-2022-12-16/
As Kuroda bows out, Bank of Japan's rising hawks eye end to unloved yield cap
By Leika Kihara

いつものロイターの木原記者の記事なんですが、日本語版これでてましたっけ?????

『TOKYO, Dec 16 (Reuters) - As Haruhiko Kuroda's decade helming Japan's central bank nears an end, more of his senior colleagues are seeing a case to remove the bank's cap on bond yields, a key but problematic piece of his radical monetary stimulus.

The rare hawkish shift inside the Bank of Japan (BOJ) comes after years of heavy money printing failed to fire up anemic consumer demand and amid growing anger about the impact of ultra-low interest rates on bank lending margins and, more recently, the cost of living.』(上記URL先より、以下同様)

ってまあこっちはあちこち周辺の人達に聞いて回っているのと、おそらく市場関連の人から聞いているのを総合した話で別に新しいネタではないのですが、

『A dozen people familiar with the BOJ's thinking say debate over how to remove a controversial cap on bond yields, introduced in 2016 as part of the bank's yield curve control (YCC) programme, could gather pace next year, provided wages perk up and major economic risks remain contained.』

A dozen people(=1ダースの、ですな) familiar with the BOJ's thinking say、という表現はワロタ。

『While no detailed discussions of a policy change are under way yet, the preference of many within the BOJ is to completely remove the yield cap altogether, the sources said.』

まあホンマカイナという感じの観測記事ではございますが、これ以外にもああだこうだとニュースネタが飛んで来て参りまして、こういう時期になると「講釈師、見たかのようなウソをつき」が色々と飛び交うようになってきますのですが、そういう見てきたかのような講釈師の講談みたいなのをする何とかストとか結構いて、これがまたスレてない人が聞くとうっかり目を輝かせて聞いてしまう、ってのがありますな。アタクシは元々が業者のディーラー上がりだからその手のネタは全部話半分以下で聞くもんだと思ってますけど、そういうアタクシだって若いころに落合ノビーの本とかうっかり買って読みながら興奮する、というようなもんで、いやー今にして思えばこの人の本と上杉某の本を買ったのは実に黒歴史ではあるのですが、こういう「講釈師見たかのようなような以下自粛」何とかストはこういう時期になると生き生きとしてきますが、十中八九偽物なのでよいリトマス試験紙になるかと存じます。

・・・・すいません。話がそれてしまいました。

まあしかし何ですね、この辺りの話ですが、やはり先日ネタにした野口審議委員の金懇での挨拶もそうですが、それよりも例の会見は気になるところでして、お前リフレ派だった癖になに普通の話をしてるんだよ、というのが華麗にぶっこまれて来たわけでして、片岡某さんとかジンバブエ某さんとか、置物教の信徒として本来ここではもっと緩和万歳の話をする(何なら「せっかく良い状態になってきたのですから、ここでダメ押しに追加緩和政策を実施すべき」位いうのが本来の正しい(??)置物教のあるべき姿である)ことは言うまでもないのに、まるで雨宮副総裁辺りが言い出しそうな穏健なお話をおっぱじめまして、雨宮さんが妖術でも使って野口さんを乗っ取って喋ったんじゃないかというような発言がでたのはやっぱり色々と物議をかもすのは当然と言えば当然。

その後の田村さんですが、こちらは就任記者会見の時から経済物価状況が好転する中での政策見直しの必要性について田村さんの方からホイホイと説明をおっぱじめ、高田さんはその田村さんの説明の尻馬に乗ったに過ぎない、と思っていたらあのような会見になっていた訳でしたが、田村さんの方はある意味平常運転であって、野口さんがああいう発言する方が「新体制に向けた保身(どっちに転んでも対応できるように両にらみにしているといういわゆる一つの筒井順慶状態)」ということで、何ちゅうかこの沈没しようとする豪華客船置物号から脱出するネズミ感があって実にアレな姿、とか思うのでありました。


いずれにしましても、明日MPMがあって、あと実は楽しみにしているのは年末恒例の経団連講演が今年は26日に組んであるようでして、この年末講演は今回が最後(なおアタクシ的にはこのまま何もしないで後任に投げるというような無責任なことをするんだったら「exit or die」ということで出口まで責任取ってきちんと行うまでは総裁辞めるな位には黒ちゃんに対してムカついておりますので来年もやって良くってよなのですが)になりますので、最後に何か回顧みたいなのが出て来るのか、と言ったあたり、事務方がどういう作文をしてくるのか楽しみだったりします。


・・・・・・・ま、共同声明云々に関しては、そもそも正副総裁人事の審議自体が通常国会始まってからの話になると思われますし(元日に読売新聞がスクープ打つ可能性が鼻毛の先ほどあるんじゃないかと正月も臨戦態勢ではおりますが)、まさか明日の総裁会見が野々村号泣会見になるとは思えませんので、何ちゅうかこんなに先走っててエエンカイナという気は全力でします。



〇利上げについては助さん格さんもう良いでしょうなのだが印籠出しても直ぐ踊りだす市場がいるので・・・・・・・

・早速いろんな発言が出ておられるようで

メスターさん
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-mester-idJPL4N3363I9
2022年12月17日7:38 午前
UPDATE 1-FRB、見通し上回る水準まで金利引き上げる必要も=クリーブランド連銀総裁

『メスター総裁はこれについて、示された中央値を若干上回るとの見方を表明。「金利を制約的なスタンスまで引き上げ続ける必要がある」と述べた。その上で、FRBが利上げを終えても「インフレを持続的に低下させるために、かなりの期間にわたり金利を高水準い維持する必要がある」と語った。』(上記URL先より、以下同様)

それは「アテクシの見通しはSEPの中心的なドットよりも上にプロットされています」って事を言ってるだけなのではないかと思うのだが、何で主語が大きくなるんだメスターさん(って元発言みてないからそこはアレですけど)。

『インフレについては、物価上昇の鈍化を示すこのところの指標を歓迎するとしながらも、物価上昇圧力がピークを付けたと示すものではないと述べた。』

だそうで・・・・・・・・・・


デーリーさん
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-daly-idJPKBN2T01T6
2022年12月17日3:08 午前
米金利、24年にかけピーク水準にとどまる可能性=SF連銀総裁

『デイリー総裁は、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示されたFRB当局者による金利見通しに言及し、当局者の「誰もが23年は金利を据え置くという考えだ」と強調した。』(上記URL先より、以下同様)

まあドットがそうでしたからぬーというのと、基本外れ値人間は華麗にスルーで良いのは良いとは言え、前回9月のSEPでは「もうここから利上げしまいもんねー」と言ってたハイパーハト派が1名ブラードの反対サイドの態仮面として存在していたのですが、今回その人がいなくなって来年の政策金利予想の分布が無茶苦茶普通になってしまったのには正直ビックラこいたでありまして、この点はハト派と言えども物価の強さにはアイヤーって感じで見ているということなのではないかと思ったので、ちょっと面白い所だったと思ったのよね。

『FRBは過去数回の利上げサイクルで、平均11カ月間金利を据え置いている。デイリー総裁は「11カ月というのは出発点で、妥当と言える。しかしさらに必要となれば、より長期間据え置く用意がある」とし、FRBがどの程度の期間、金利を制約的な水準に維持するかはデータ次第という考えを示した。金融市場は現時点で、23年下期の利下げの可能性を織り込んでいる。』

まあ来年1−3まで利上げして、その後様子見なんでしょうし、その後は物価がおちついてくれるかどうか次第で、しかも今回のメインシナリオは金曜にも書きましたように、

PCE inflation     5.6  3.1  2.5  2.1  2.0
Core PCE inflation4   4.8  3.5  2.5  2.1

となっていますので、来年4−6にヘッドラインで4.5%近辺が見えてこないとFEDがソワソワしてくるんじゃなかろうか、という気がするんですよねー。どうなんでしょうかね。


ウィリアムズさん
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-williams-idJPL6N33609P
2022年12月17日12:33 午前
米金利、FRB当局者見通し超えて上昇も=NY連銀総裁

『[ニューヨーク 16日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は16日、連邦準備理事会(FRB)が来年、予想以上に政策金利を引き上げる可能性があるという見解を示した。また、米国が景気後退に陥るとは想定していないとも述べた。』(上記URL先より、以下同様)

「予想以上に引き上げる可能性」ってデーリーとウィリアムズのSF連銀前任現任コンビで同じこといってるんかいって感じですし、だいたいからしてSEP出してから何週間か経過しているのなら兎も角、おまえら前日前々日にSEP出しておいて何をゆうてますねんという感じで、その辺はナンジャソラではあるのですが、

『ウィリアムズ総裁はブルームバーグTVに対し、インフレを2%の目標に向け低下させるために「必要なことをしなければならない」とし、金融政策は制約的となる必要があると強調。来年のピーク金利が今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示された当局者の見通しである5.1%よりも「高くなる可能性がある」と語った。』

『さらに「インフレは依然極めて高く、米経済は金利上昇に対し非常に底堅く推移している」と指摘。同時に、FRBが政策金利を6%もしくは7%まで引き上げる必要があるという一部の市場の予想については自身の「ベースライン」シナリオではないと述べた。』

結局お前は何をゆうてますねんという話なのですが、これってデーリーもそうですけど、基本的には「市場金利がうっかり下がってしまうと引き締め効果が減殺されてしまうので、むしろ政策金利上げなくても市場金利が上がってくれる方が望ましいんだが」というFEDの中の人達の思いが込められている、ということだし、一方で市場は「そうそうお前らの都合よく行くかよバーカバーカ」とやってるって感じで、この辺の情報の出し方が味わいのある市場との攻防戦になっていますな、と思いましたです。

#ECB会見とかFED会見とか色々と成敗しないと行けないのですがその辺は準備中ですすいませんすいません






2022/12/16

お題「ECBとかFEDとかごちゃごちゃとメモを(ちょっと中銀ネタ追いつかなくて脳内ラジエーターがアレ状態)」

今年はカレンダーの並びのせいで中銀印ベントが無駄に集中しますな。

〇ECBはまあ順当な結果だが先行きのやる気満々を見せたっちゅうことですか

ほうほうふむふむ(ECBの場合はFEDほどの気合を入れないので答えを見てしまう人)
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N3353NB
2022年12月16日2:42 午前
ユーロ圏金融・債券市場=利回り急上昇、ECBが追加利上げ示唆

『[ロンドン 15日 ロイター] - ユーロ圏金融・債券市場では、欧州中央銀行(ECB)が予想通りに利上げを決定し、追加利上げが引き続き検討されるとの見解を示したことを受け、
国債利回りが急上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、

『ECBはこの日の理事会で政策金利の0.50%ポイント引き上げを決定。利上げ幅は過去2回の理事会の0.75%から縮小したものの、「まだ安定したペースでの大幅利上げが必要」と表明。同時に、来年3月からバランスシートを縮小する計画も明らかにした。』

インフレの水準がねえ。

『アリアンツ・グローバル・インベスターズのシニア債券スペシャリスト、マッシミリアーノ・マクシア氏は「ECBの金融引き締めの道のりがまだ長いことが明らかになった」とし、「ECBが2023年のインフレ予想を6.3%に上方修正すると同時に、景気後退は『短期で浅い』との見方を示したことで、国債の売りが触発された」と述べた。』

ということですが、ECBは最近「5分で読める今回の決定について」ばりのお絵描きを出してくれまして、これが毎回中々デザインに拘りがあるようでオモロイ(のだがアタクシのスキルではECBの絵を張り付けて来るスキルが無い)。


お絵描き解説12月版
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_december.en.html
Our monetary policy statement at a glance - December 2022

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_october.en.html
Our monetary policy statement at a glance - October 2022


最初の『What did we decide?』ですが、今回は利上げ幅75→50ですが、

『We raised interest rates again, by 0.5 percentage points

And we expect to raise them significantly further. By how much will depend on how we see the economy and inflation developing.』

利上げの階段上る君はまだシンデレラのようでして、ここの絵柄が変わっていないというのは「利上げ打ち止めまでにはまだお時間を頂戴します」というメッセージですな。

『We will also adjust our asset purchase programme

In March we will start to reduce the large amount of bonds we bought over the past few years as part of our asset purchase programme.』

3月からランオフを開始します、ってお絵描きになっていますが、10月の『We also adjusted some of our other instruments』の時と絵柄の雰囲気が似ている(個人の感想です)ので、「これは予定通りの話で別に今回突如ぶっこみにいったわけではないよ」という雰囲気を醸し出そうとしているのは気のせいでしょうか。


でもって今回アタクシ的にポイントで見たのは次の『What is going on in the economy?』でして、

『Inflation is far too high and will remain high for too long

While energy prices have fallen slightly, prices for food and many other goods and services are still going up, partly because of past problems with supply.』

10月と絵柄が似たようなもんですが、今回は3人の真ん中の人が上を見ている絵になっていて、「物価が高いよ」アピールがちょろっと入っているんですが、そんなことよりここの文章が10月だと、


『Inflation is far too high, and will stay high for a while

Prices are rising across the economy. Very high energy prices are still the main reason for this. Supply problems are getting better but are still driving up prices. The exchange rate has also pushed up inflation, by making imports more expensive.』(これは10月バージョンより引用)

となっていて、前回対比でサプライチェーンの影響は「past problems with supply.」であり現在進行のものではなくなりつつある、という認識を示していますし、為替レート(ユーロ高)への言及も無くなった(ドル下がりましたからね)のですが、一方でインフレの継続期間が「will stay high for a while」から「will remain high for too long」という表現になっていて、物価がアカンという事を更にきつい言い方になっているのでタカ派。


更にですね、次のお絵描きの方が

『The economy is going through a difficult period

This is mainly due to high inflation, the energy crisis and slower economic growth around the world. But any recession should be relatively short and shallow.』

ということで、この先リセッションが想定されますが、そのリセッションはshould be relatively short and shallowって文章では書いてあるものの、どう見ても暗い空と大雨です本当にありがとうございました。


前回が、

『The economy will weaken in the coming months...

This weakness will probably last for the rest of this year and into the first part of 2023. High inflation, problems with gas supplies and worries about the future mean that people are buying less and businesses are cutting production.』(これは10月バージョンより引用)

となっていて、お絵描きの方が窓から外見たらなんか暗雲が出て来ましたわよ何か心配ですわね奥様、って感じのイラストだったので、成長率はアカンのだがインフレはもっとアカン、って図になっているのですよね。

これっておそらく市場ちゃんの方で「経済リセッション入り待ったなしだから利上げ日和るじゃろ」という話になるのを意識して(というかまあ一部どういう話をするECB高官もいた気がしますが)、経済が多少コケてもインフレ退治が大正義、というのを(FED以上に)示したって解釈でエエンチャイマスかなと思いました。


次の絵が、

『New jobs are still being created

More people have jobs than ever before in the history of the euro. But this will probably change as the economy weakens.』

となっていますが、前回も

『… even though lots of people have jobs

Unemployment is still low and new jobs are being created. But as the economy weakens, this could change.』(これは10月バージョンより引用)

となっておりましたです。その次が若干体裁違うのですが、これはスタッフの中期見通しの定例見直しが実施されるのが今回の会合なので、先行きの話の最後の部分は体裁が変わって来る、というテクニカルな問題になります。


今回のマクロエコノミックプロジェクションは、

『How do we see the economy developing?

After a slowdown, we expect the economy to recover again in the coming years.

Projections for euro area economic growth in 2022 and the coming years
(projections from December 2022)


We expect inflation to remain high for quite some time but eventually come down towards our 2% target.

Projections for euro area inflation in 2022 and the coming years
(projections from December 2022)』

ということで、来年は0.5%成長を織り込んでおります。



・・・・・・・・でですね、これちょっと笑ったのですが、ECBのトップページにはいつものように(今時点だと)当該「5分で読める今回の金融政策決定」へのリンクがあるのですが、

https://www.ecb.europa.eu/home/html/index.en.html

『MONETARY POLICY 15 December 2022
Our monetary policy statement at a glance

What are the main points in our new monetary policy statement and what mattered to us in our decision? And how do we see the economy developing? Our visual statement explains this in short and easy-to-understand language.』

とあるのですが、ここにある絵が本編の暗い空でザーザー雨降りの絵と違いまして、「なんかちょっと暗めの雲も出てきたことだし傘を用意しておきましょうかしら」って感じの傘差しイラストになっておりまして、いやまあ確かに本編は「先行きの経済はザーザー降りの雨でござる」という意味であって、足元がザーザー降りとは言ってなくて、トップページにあるのは今のお天気、と言ってしまえば良いわけなので、別にそこのイラストに差があっても問題ないちゃあ問題ないのですが、しかしお先割と暗いザーザー降りの雨、って図を出してるのに、皆が見るトップページには景気の悪いイラストを載せないって細かい芸風には苦笑を禁じ得ませんでしたwwwwwww

ちなみに、この絵柄ですが、今回の説明ページの頭にも同じ絵がありますけど、この背景画に関しても細かい芸が仕込んであって、

今回のページ(再掲)
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_december.en.html

前回のページ(再掲)
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2022/html/mopo_statement_explained_october.en.html

目次のページ
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/html/index.en.html

と、いちいち背景画が違うので中々チャーミングです。



〇FEDネタの昨日の続きなんですけどね

ECBネタの続きは来週MPMまでの間にボチボチやっていく、ということで本日はまさかの「5分で読める金融政策決定内容」でお茶を濁すというインチキプレイをしてしまいましたが、いやまあ昨日のFEDに関しては結局昨日の答えは株安債券高だったのかーと思って、債券の方はホーキッシュに対する構えをしてた人が実は多かったってことなのかな(今回の内容はハトではないのは確かだが別に殊更にタカを強めている訳ではない、なおECBはイラストを真に受けるとタカ派度を引き上げている)とは思うのよね。


ということで、昨日はドットチャートだけ何とか成敗しましたが、今回のSEPって経済見通しの方にもメッセージがありまして、

PDF版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20221214.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20220921.pdf(前回)

HTML版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20221214.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20220921.htm(前回)

(引用はHTML版から行います)

例によって左から2022年、2023年、2024年、2025年、ロンガーラン(長期中立値)となっていますが、

Change in real GDP   0.5  0.5  1.6  1.8  1.8
September projection  0.2  1.2  1.7  1.8  1.8

Unemployment rate   3.7  4.6  4.6  4.5  4.0
September projection  3.8  4.4  4.4  4.3  4.0

PCE inflation     5.6  3.1  2.5  2.1  2.0
September projection  5.4  2.8  2.3  2.0  2.0

Core PCE inflation4   4.8  3.5  2.5  2.1
September projection   4.5  3.1  2.3  2.1

物価の方は昨日も書いたのですが、期せずして2023年の実質成長率見通しがECBとFRB共に+0.5%になりまして、ECBの方はイラストなんぞもぶっこんで分かりやすくなっていますが、FEDに関しても今回のSEPで示しているのは、多少リセッション懸念とか言われようともインフレ退治が大正義、というメッセージを出している、というのは共通していることかと思います。

まあゆうてECBの物価見通し2023年は堂々の6.3%で2024年にやっと3.4%って見通しになっておりますので、FEDが3.1まで下がるって見通しもホンマカイナ感はあるのですが、まあFEDにしてもECBにしても「2023年はカツカツのプラス成長になろうともインフレ抑制が大正義」というメッセージをぶっこむことによって、「へいへい中銀経済状況にビビってるよビビってるよ〜」という相手ベンチからの野次を封殺しましょう(誰が相手ベンチですねん)という意図をばばーんと打ち出した、ということは同じだし、何ならECBの方が厳しいメッセージ出してるようですね。

逆にFEDの場合、本当に2023年にPCEインフレ3%そこそこ、コアで3%台半ばまで都合よく落ちてくれるのか、って話ああって、何せここ2年くらい物価見通しを外しまくっているFEDちゃんなので、今回の決定の前提に「あんまり当たっていない物価見通し」がある、というのは覚えておかないと行けないんじゃないかな、って思うのでありました。


という訳で甚だ簡単ではございますがそんな所で。






2022/12/15

お題「例によって寝起きでFOMC成敗だが寝起きがアレ(早速言い訳)」

FOMCの事を色々と考えているうちに寝つきが悪いわFOMCの夢を見るわorzorz


〇声明文のトーンはほぼ変わらずで打ち止め感をここでは出していない

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20221214a.htm
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20221102a.htm

・第1パラグラフ:現状判断は全文一致

『Recent indicators point to modest growth in spending and production.』(今回)
『Recent indicators point to modest growth in spending and production.』(前回11月)

全文一致なので小分けにする必要もないのですが、それでは芸がないので総括判断、個別項目、インフレに分けますが見事に全文一致です。

『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(今回)
『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low.』(前回11月)

はい。

『Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and broader price pressures.』(今回)
『Inflation remains elevated, reflecting supply and demand imbalances related to the pandemic, higher food and energy prices, and broader price pressures.』(前回11月)

では2パラに。


・第2パラグラフ:ウクライナ戦争の影響は物価上昇圧力の部分でトーンダウン

『Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic hardship. The war and related events are contributing to upward pressure on inflation and are weighing on global economic activity. The Committee is highly attentive to inflation risks.』(今回)

『Russia's war against Ukraine is causing tremendous human and economic hardship. The war and related events are creating additional upward pressure on inflation and are weighing on global economic activity. The Committee is highly attentive to inflation risks.』(前回11月)

ゆうて物価に関してupward pressure on inflationなのは同じなのですが、従来はここがadditional upward pressureだったのがadditionalが無くなっておりまして、まあこれは国際商品市況の落ち着きと、それによる財価格の落ち着きを素直に反映させたものだと思われますが、これだけでは政策インプリケーションにはならないレベルかと思われます。何故なら問題は財価格の上昇から次のステージになっているから。


・第3パラグラフ:50bp引き上げは予想通りだが、先行きの利上げに関する文言に変更はないのでまだやるで感継続

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回11月)

ここはいつもの開経の偈みたいなもん。

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 4-1/4 to 4-1/2 percent.』(今回)
『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 3-3/4 to 4 percent.』(前回11月)

3.75-4.00→4.25-4.50なので50bpの利上げと衆目の予想と完全一致です。でまあ問題はその後で、

『The Committee anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate in order to attain a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time. 』(今回)

『The Committee anticipates that ongoing increases in the target range will be appropriate in order to attain a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time.』(前回11月)

ここの「おいどんまだまだ利上げな足り申さんでごわす」の文言が全然変更なくて、そろそろ打ち止め的なサムシングは無かったので、これは2023年利下げまであるで連中しょんぼり(と言ってもこの後SEPも謎の劇場なのですけど)の巻、と反応したのかどうかはガチで何も見てないので知らんけど、ここの文言を一切変更しないのは「あらあらそうですかそうですか」って感じではありますが、確かに次でやるSEP見ると、先日来アタクシが思ってた「あと2回は25×2で打ち止め」がハト派最右翼分類になっていますので、そらまあここから1%近く上げようというならまだここは変わらんですかね。

次回の利上げの際にここの文言をどうするかは注目しておく予定です。

『In determining the pace of future increases in the target range, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(今回)

『In determining the pace of future increases in the target range, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(前回11月)

先行きは継続的な金融引き締めの効果を見ながら政策効果にラグがあることも考えて運営しますよ、っていう例の文言についても同じ表現のままですね。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in May.』(今回)

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in the Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet that were issued in May.』(前回11月)

バランスシート縮小プランについては現在行っているプランをそのまま横に伸ばして展開しますよ。

『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回11月)

最後はいつもの言葉を唱えてパラを締めます。南無大師遍照金剛。


・第4パラグラフ:今後のスタンスはこのようなものを見ながらやっていきますのパートは毎度のように全文一致

ここの全文一致はもはや仕様と化していますのでここは面倒だから小分けしないで引用するから比較しといてちょ。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on public health, labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回11月)

特にここに変化はないですね、全文一致。


・第5パラグラフ:今回も全員一致で賛成です

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Esther L. George; Philip N. Jefferson; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lael Brainard; James Bullard; Susan M. Collins; Lisa D. Cook; Esther L. George; Philip N. Jefferson; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(前回11月)

ということですので、声明文単体で言えば打ち止め示唆に繋がる追加文言などが一切ない、というやる気元気井脇な内容となっておりました。


・インプリメンテーションノート:各種オペ等のレートはフルスライド引き上げ(コリドアの幅に変更なし)、オペ上限も同じ

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20221214a1.htm
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20221102a1.htm

声明文をPDFで出すと声明文の後におまけでついてきますが、HTMLの場合は声明文の下にリンクがあってそれを踏む格好。

一々イン用意しているとクッソ長くなってしまいますので、内容の引用は割愛しますが、内容自体は小見出しの通りです。



〇SEPのドットプロットは足もとの上限金利が高いじゃんだが2024年には利下げに転じるのでチャラあるいはノットタカ派か

真面目な話市場の反応見てないのと、今日はパウエルの落語をBGMにして書き物するというプレイを諦めている(寝起きがイマイチで脳味噌の勢いが足りない)ので、そっちにどう反応したかまでのトータルの話しなんですが・・・・・・・・・・・

PDF版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20221214.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20220921.pdf(前回)

HTML版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20221214.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20220921.htm(前回)


・即物的にドットチャート(正直25年は無視して)だが足もとの到達点が幣駄文の妄想対比強いけどやっぱり24年には利下げ着手

毎度のドットですが、点の数はアタクシが目検で行ったんですが自己再鑑はしているからあっているとは思います、と大口を叩いてますが違ってたらゴメンやでなので皆さんもレッツ確認。

今年の年末の金利、ってのは確定しているのでキニシナイで大問題その1の2023年年末のFF金利見通し

50bp利上げ:2名
----------------------政策金利5%の壁----------------------
75bp利上げ:10名
100bp利上げ:5名
125bp利上げ:2名

ということで、1−3月期のFOMC2回で25×2の利上げでその後横這い、とか書いたアタクシ特級フラグ建築士になってしまって甚だ遺憾なのですが、1−3の2回利上げで止めるなら50+25はわかるけど50+50やって利上げ停止ってのも何だかなーって感じですので、100bpの人はもうちょっと後まで利上げを引っ張る感じなのかな、と思いますが、アタクシが「政策金利5%の壁」を書きましたように、どうもこの人達、政策金利は5%より上には上げたいみたいです。

あと2023年のドットを見て面白かったのは、「もう今の金利水準から上げる必要ないもんね」という過激ハト派の人が前回は1名いたのですが、今回その過激ハト派が居なくなっていることもあります、

いずれにせよ、「5%以上には政策金利を上げたい」向きが多くて、これ中心値を取れば75bp利上げになるのですけれども、やや上方に振れるバイアスがあるって結果なので、この点はそれなりにタカっぽいですよね。ただし、これが24年末になるとだいぶ違いまして、

2024年末の政策金利水準は上は5.50-5.75(125利上げ派2名中1名がその後も金利据え置きという豪快なプロットをしている)から下は3.00-3.25(多分23年末4.75-5.00の人だと思うのですが、24年は175bpの利下げをするって計算になると思います)までクッソバラバラなのですが、一つ言えるのは(一部の変態を除けば)2024年には利下げに転じますよ。という話。

もちろんこれ自体は前からそういう感じだったとは思いますが、今回の利上げに関しては「到達点」と「継続期間」のいずえも重要(掛け算みたいな感じっすかね)なので、継続時間の方は目の子でそんなに変わらないというイメージで、こっちは少なくともタカではない。

ロンガーランについては微修正って感じで、3.00%の人が2名上方シフトした感じ(もしかしたら途中の玉突きでもう少し人がいるかもしれませんけど)で全体として動いた感は出ませんでした。


・なおその前提には「2023年の物価は3%前半レベルまで下がる」というのがある

うーんこの・・・・・・・・・

左から2022、2023、2024、2025、ロンガーランです

PCE inflation     5.6  3.1  2.5  2.1  2.0
September projection  5.4  2.8  2.3  2.0  2.0

Core PCE inflation4  4.8  3.5  2.5  2.1
September projection  4.5  3.1  2.3  2.1

23年末にはヘッドラインのPCEインフレが3.1%、コアが3.5%まで下がる、という前提になっているのでございますがはてさて・・・・・・・・・・



と言ったところで寝起きがアレだったため(ちょっと寝る前にワクワクし過ぎたわアカンですな)この辺で勘弁だが、一番エライステータスの「声明文」ではやる気元気井脇にも程がある書き方をしているので、実際にどこまでのやる気なのかはさておきまして、少なくともこの時点で打ち止め感をだすような「声明文」ではない、というのは覚えておいた方が宜しいかと思います。市場がどう反応したかはマジでまだ確認していないが、時間が押してきたので日銀短観も含め残りは明日で勘弁してつかあさい。







2022/12/14

お題「FOMC待ちにつき小ネタ雑談である」

ということで今月もあと半分ですな恐ろしい。

〇これはアリガタヤ(マクラの積りだったが小見出しつけました)なハマコー名言アーカイブ

ダイヤモンドがハマコーの「賃金が上がらない方が良い」という名言のインタビューをアーカイブ化してしまって大変に遺憾の極みだったのですが、ツイッターランドの方で別のハマコー発言が今でも見れることが紹介されておりまして感謝感激であります。今後はここを引用しますかしら。

https://toyokeizai.net/articles/-/12839?page=5
「白川総裁は誠実だったが、国民を苦しめた」
浜田宏一 イェール大学名誉教授独占インタビュー
山田 徹也 井下 健悟 : 東洋経済 記者 2013/02/08 6:00

『リフレ政策を通じて、物価上昇で実質賃金が低下し、企業収益が増えることで雇用拡大の余地が生まれる。』っていうのも百回は朗読したい言葉だが、よく見たらその前の、『金融政策が効くのは、賃金が動きにくいという硬直的な側面があるからだ。』ってのはどういう判じ物なのかと小一時間問い詰めたいのだが、賃金と物価のスパイラルが起きて高インフレが止まらなくなってしまったって事案はおじいちゃんが現役時代に発生してませんでしたっけというお話で、これでイェール大学が務まるって凄いなとしか申し上げようがない。

ということで、こちらご紹介頂きました方には感謝しかございません(なんかツイッターだと名前を出して感謝して良いのかどうか分からんのでお名前はださないんですが、いつも勉強させていただいております)ありがたい。


〇米国CPIキタコレは良いんだが

https://jp.reuters.com/article/usa-economy-inflation-idJPKBN2SX1B8
2022年12月13日11:36 午後
米CPI、11月は前年比+7.1%に鈍化 21年12月以降で最小

『[ワシントン 13日 ロイター] - 米労働省が13日発表した11月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前年比伸び率が7.1%と10月の7.7%から鈍化し、2021年12月以降で最小となった。伸びは2カ月連続で市場予想も下回り、米連邦準備理事会(FRB)が13─14日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を縮小する根拠となる可能性がある。』(上記URL先より、以下同様)

「2021年12月以降で最小となった。」って書くとなんかすごいんだが、結局YoYで+7.1%じゃ全然サガランチ会長だろというお話ではありますし、「米連邦準備理事会(FRB)が13─14日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を縮小する根拠となる可能性がある」もへったくれも、12月50bp、2月3月が各25bpで、そのときに物価上昇率の鈍化が続いていたら様子見になって暫く金利がステイになるし、その時にまた物価上昇が再加速してたらランボー怒りの利上げでしょ、としか言いようがないと思うんだが、まあ最近はCPI公表時にハチャメチャ動くのが定例の祭り会場と化しているので、何だかこれでヒャッハー10年3.5%だーってなるのもねーとは思いますが、まあ市場においては集団は力なので仕方がない。

『FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「インフレ動向は、多くのモノやサービスの価格の伸びが鈍化もしくはほぼ変わらないという転換点に達したように見えてきた」とし、「今回初めて、FRBがインフレとの戦いに勝利していると言うことができる」と述べた。』

ってさあ、まる1年間+7%以上のインフレ状態が続いてどこがどう「勝利している」という話になるのか、そらまあ良く知らん名前のチーフ何とかストともなると7%インフレでも別に生活に困る訳ではないからこんな暢気な事が言えるんでしょうなあと上級国民ムーブに感心するやら呆れるやらでございますな。

別にアタクシ米国のCPIとか詳しくないからそういうのはちゃんとした人が分析してくれるでしょうけれども、

『11月の物価の伸び鈍化は、ガソリンや医療費、中古車・トラックの価格下落を反映した。一方、食品と家賃は引き続き上昇した。』

って話で、ウクライナ戦争の国際商品市況とか、サプライチェーンがどうしたこうしたの供給制約問題が解消する中で下がっている財が寄与するのだけで喜んでる場合じゃなくて、レントがまだ上がっているとか、食品はどういう話なのかはよく分からんけど、これが一次産品の単なる季節要因(干ばつとか)ならそこまで気にしなくて良いかもしれんけど、食品に関わる流通コストとか人件費とかの方が要因になって上がっているんだったら(ノ∀`)アチャーな話な訳だし、そーゆー意味ではサービス価格ガーと言い張っている日銀大本営の言っている事はそれ自体は正しい(ただし大本営はそれを政策変更しないための言い訳の為に引っ張りだしているのがアカンという話ではある)ので、まあ結局は中身次第ってことなんでしょう。

ただまあ何ですな、中身次第もへったくれも、+7%台だし、大体からしてこの数字が昨年12月以来ってことは結局今年は1年間とんでもない高インフレが続きましたという話なので、それはインフレ期待の上振れリスクを高めているでしょうというのもありますわな。市場ちゃんってのは利上げ停止と来ると直ぐに利下げ開始がどうのこうのと言い出すので10年が3.5%になってしまう訳ですが、「インフレが高止まりして中々よー下がらんけど景気の方も怖いからそこまで利上げできず、その間インフレが下がるのもチンタラとなってしまいます」って感じになるのが来年のメインなんじゃないの????とは思ったりしてますが、何はともあれFOMCの結果待ちですね。


なお、FOMCについては皆様と同じように50bp利上げ、来年頭から2会合で50bpか精々75bpの利上げ(ワイは25×2の50と思ってるけど)していったん様子見。あとはその間の物価動向次第だけど、期待ほどインフレが下がってくれなければランボー怒りの再利上げになるし、引き締めがビハインドした効果があるのでそう簡単に物価が落ち着くとは思ってなくて(ただの動物的な勘で根拠はない)、下手したら再利上げ、順当ならチンタラと物価上昇が鈍化するにとどまり、再来年も中々簡単に正常化(中立金利に下げる方の)には行けないんじゃなかろうかっていう雑な見通しであります。あんまり深い根拠はないけど。



〇企業物価指数

https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2211.pdf
企業物価指数(2022年11月速報)

『国内企業物価指数は、前月比+0.6%(前年比+9.3%)。
輸出物価指数は、契約通貨ベースで前月比▲0.1%、円ベースで同▲1.9%(前年比+15.1%)。
輸入物価指数は、契約通貨ベースで前月比▲2.5%、円ベースで同▲5.1%(前年比+28.2%)。』

前年比の数字はもうアレなのでアレですが、前月比の数字がやっと円安がちょっと反転した成果出てるじゃんというのと契約通貨ベースで2か月連続で前月比下がっているので、国際商品市況だのサプライチェーンの供給制約だのという物件の影響が軽減してきましたね良かったねという感じのお話ではあります。

ただ、一方で国内企業物価指数自体は前月比の上昇率が9月の+1.0%から鈍化しているとは言え堂々の上昇が続いてて、1ページ目の下の方にグラフがありますが、2020年平均100に対して直近の数値が118.5ということなのでコスト2割高キタコレという大変にアレなお話だし、まだまだ川上の価格上昇が止まる感じでも無くて、何でしょうねえアタクシ物価上振れの方が気になるのですが、だいたい金融系の方々って寧ろ景気コケて物価下がるし構造的に物価上がらん論者の方が大幅に多い気がしまして(身の回り三尺位の印象論ですが)、さっきのハマコー大先生の名言集の中に「インフレが起きたときにちゃんと止められるか」というような名言がございましたが(さっきネタにした東洋経済のインタビュー記事ね)、割とその「日銀がビハインドする」というのについて何とかストとかでも気にする人少ないので、まあそういう意味ではアタクシは根っからの「ただのカン」だけでやってるひとなんだよなーって思いながらこの物価の数字を眺めるのでありました。

まーなんですな、川上の価格転嫁と川下への価格転嫁の波及ってまだまだ進む余地があるんじゃないかとは、別に自分で確固たる統計取ってるわけではないですけど、ひとの分析色々と読んだり、アネクドータルなサムシングでもそんな感じの話しか聞こえてこないので、つまりは本命オブ本命の「物価が上がっているのに日銀は何やってるんだこのボケナス」という王道コースで日銀が窮地に至る方が、市場機能がどうのこうのとかYCCアタックに耐えられなくなるとか、円安がバンバン進むとか、そういう市場発の圧力よりも普通の普通に物価からアイヤーってなるんでネーノ感はぬぐえませんな。



〇先物12月限取引終了して3月限が当限になりましたが

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_daytime

こちらの画面は随時リフレッシュされてしまいますので、国内市場の日中取引の寄り前何分かになると、本日の日中取引を反映した数字になっていまいますので昨日の日中取引分を貼っておきますけど。

22年12月限 12/13
寄付:148.89(12/13)(08:45)
高値:148.89(12/13)(08:45)
安値:148.71(12/13)(14:56)
終値:148.76(12/13)(15:02)
前日比:-0.03
売買高(枚数):1,481
清算価格:148.77(12/13)(15:02)

ときまして、最終建玉残高は

建玉残高:3,588(12/13)

と3588枚に収まったんですよ。まあそれはそれで良いのですけれども、前日12日の長国先物12月限の建玉残高って1万4000枚ほどございまして、昨日の12月限の売買高って、12日の夜間取引からの通算ベースでカレンダー取引を含めても日通しで5095枚しか取引がない(上記の1481は13日の日中売買枚数で、これに12日夜間の636枚とカレンダーの2978枚(12日夜間が2365枚で13日日中が613枚)を乗っけると5095枚になる筈ですアタクシの足し算引き算(検算はしましたが)間違えて無ければ)ので、全部の取引が転売買戻しだったとしてもそれだけだと最終建玉と整合性が取れん訳ですな。

まあ立会外の何らかの方法でガッチャンコして最後に未決済建玉を解消したということになるのですが、このガッチャンコがあるせいで12月限の建玉残高が実力ベースの残高と思しき数値に対して過大なものが残ってしまって、そのせいで事実上の限月交代の直前での建玉残高(たしか木曜の残高だったと思う)が12月限と3月限合わせると通常の中心限月の建玉残高(例えば昨日であれば3月限の建玉残高は上記URL先にあるように118,098枚)に対して何かすっごくお洒落な残高になっている(ベンダーのある方はレッツ確認)という状況になっていたりして、つまりは実際には昨日だけじゃなくてその前もそうだったんですけど、建玉残高の動きと売買高の整合性どうなってるのという現象が続きながら最終建玉残高は3588枚とまあ普通の残高の範囲内に収まる、というナンヤソラ状態になっておりまして、うーんこのという感じではございましたのですが、まあ12月限も終了しましたのでメモとして備忘しておきます。

あ、ウダウダ書きましたが結論としては「どうも限月最終前の当限の建玉残高は謎に過大になってしまっているので、当限の建玉残高だけでロール状況を判断しない方が良いと思われます」というお話ではあるのですけれども、なんかこういうの釈然としないよなーっては思いますです、はい。


〇そういやどうでもよいけどどうでもよくない話で日銀サイトのリニューアル

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221209c.htm/
日本銀行ウェブサイトのリニューアル
2022年12月9日
日本銀行

『日本銀行は、ウェブサイトをリニューアルする予定です。

今回のリニューアルでは、マルチデバイスでの視認性を高めたデザインに刷新するほか、サイト内検索の機能向上を図るなど、より使いやすいホームページに改善します。』

確かにスマホだとおじいちゃん字が読めない。

『(リニューアル予定日)
2023年1月1日(日)
同日、移行作業後に新しいサイトに切り替わる予定。』

ちょwwwwwwwwwww元日出勤wwwwwwwwwwwwwwwww(というか3が日無しかよ)



『(リニューアルのポイント)

1.デザイン刷新(マルチデバイスでの視認性向上)

2.見やすさと情報の選択しやすさを向上(メニュー数の削減、バナー等の削減)
「公表資料・広報活動」メニューを削減し、適切なメニューに分類替えすることで、アクセシビリティを改善。

3.検索機能の改善(日付降順をベースとした「あいまい検索」の導入)
画面イメージは別紙1参照。』

別紙1は下の方にありますが、
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221209c.htm/#betsu1
どすえ。


『なお、メニュー(公表資料・広報活動)の削減に伴い、一部のコンテンツのURLが変更されます。このため、コンテンツを「お気に入り」などに登録されている場合は、リニューアル後に変更していただく必要がありますので、お手数ですがよろしくお願いいたします(別紙2参照)。

今後も、日本銀行では、利用者の皆さまにとって、分かりやすく利便性の高いウェブサイトの作成を目指してまいります。』

きええええええええええええええええ!!!!!!!


しかもこの別紙2を見ますと、
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/rel221209c.htm/#betsu2

『URLが変更される主なコンテンツ

金融政策決定会合による決定事項に関する公表
(現在)https://www.boj.or.jp/announcements/release_YYYY/index.htm
(リニューアル後)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_YYYY/index.htm

国会出席情報
(現在)https://www.boj.or.jp/announcements/kokkai/index.htm
(リニューアル後)https://www.boj.or.jp/mopo/diet/kokkai/index.htm

講演・記者会見
(現在)https://www.boj.or.jp/announcements/press/index.htm
(リニューアル後)https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm

教えて!にちぎん
(現在)https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/index.htm
(リニューアル後)https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/index.htm

2010年以前のコンテンツを過去資料掲載用サイトに集約したもの

講演・記者会見
(リニューアル後)https://www2.boj.or.jp/archive/announcements/press/index.htm

広報誌「にちぎん」
(リニューアル後)https://www2.boj.or.jp/archive/announcements/koho_nichigin/backnumber/index.htm

にちぎんグランプリ
(リニューアル後)https://www2.boj.or.jp/archive/announcements/nichigin_gp/ngp_release/index.htm

その他公表資料
(リニューアル後)https://www2.boj.or.jp/archive/announcements/release_all/index.htm
(注)YYYYは西暦を示す。』

講演記者会見と決定会合の決定事項が変わるので我ほぼ直撃弾なんですけど・・・・・・・・・・・・・とほほ。(リニューアルするなと言ってるわけではないので念のため申し添えます^^)







2022/12/13

お題「今さらですが先日出ていた企業の価格設定行動に関する日銀レビューには味わいがある件について」

そういや先週来騒ぎになっているこれだが。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022120200829&g=eco
防衛費増額は国債で 「増税行うべきでない」―自民議連
2022年12月03日09時20分

・・・・・・軍事費を国債で賄いましょうって「日露戦争かよ!!!」としか言いようがない。


〇今さらですがドタバタしててネタに出来なかったので日銀レビューネタを(企業の価格設定行動)

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/rev22j17.htm/
短観からみた最近の企業の価格設定スタンス
2022年11月30日
調査統計局 池田周一郎、倉知善行、近藤卓司*、松田太一、八木智之
*現・総務人事局

紹介ページの『要旨』はあっさり味で、

『資源高や為替円安により原材料コストが大幅に上昇するもとで、企業がコスト上昇を販売価格に転嫁する動きに広がりがみられている。本稿では、短観の個票データを用いることで、こうした最近の企業の価格設定スタンスについて考察した。分析結果からは、今次局面では、販売価格判断を引き上げる動きが、販売価格の変更に従来慎重だった業態や企業にも広がっていることが確認された。また、多くの企業が大幅なコスト上昇に直面するもとで、競合他社も値上げを検討せざるを得ない状況にあることが、自社の販売価格判断に影響を及ぼしている可能性も示唆された。』

ということなのですが、こちらは日銀レビューなのでアタクシのようなあっぱらぱーでも分かるような親切内容となっております。って先月末にでた物件の話を今更ジローですいませんすいません。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/data/rev22j17.pdf
日銀レビュー
短観からみた最近の企業の価格設定スタンス
2022年11月30日

・サービス価格上昇の要因は現状ではまだ財価格からのコストプッシュだが・・・・・・・・

『はじめに』から。

『わが国の企業が直面する原材料等の仕入コストは、資源高や為替円安の進展を主因に、大幅に上昇している。こうしたもとで、企業がコスト上昇を販売価格に転嫁する動きは、企業間取引(B to B)から対消費者取引(B to C)へと広がってきており、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比もプラス幅が拡大している。』

とありますように、

『内訳をみると、財では、食料工業製品や日用品等に加えて、輸入比率が高く為替の影響を受けやすい耐久消費財でも大きく上昇している(図表 1)1, 2。サービスの上昇ペースは相対的に緩やかだが、それでもコストに占める材料費のウエイトが高い外食や家事関連(住居工事等)では、上昇率が高まっている。』

この説明は従来から行われていますので、これ自体新しい話ではないのですが(展望レポートとかでも説明されている)、この動きから生活給的な必要性に加えて(日本の場合は家計のウェルスよりも人口動態だと思うけど)労働参加率の上昇が進まなくなって労働需給がひっ迫となってからの賃金上昇がおこりますと、今度はサービス価格上昇の要因に「労働コスト」が加わって来ることになりますし、その頃には賃金上昇によって家計の値上げ耐久度が上がっているのですから、そういう流れがまさしく「循環メカニズム」だと思うのです。

でですね、こちらのレポートではまだそういう話には踏み込んでいないんですけど、非正規の賃金とか上昇している訳ですから、まあ実際には日銀の中でもその辺はちゃんと調査統計局辺りでは分析しているんじゃなかろうかとは思います(大本営企画局がどう扱うかは知らんが、ゆうて現企画局長も調査統計局でエコノミストとしてご活躍されていた方ですからぬー)、というのは妄想だけど当然見てるっしょ。

とまあそんな事ですので、

『本稿では、こうした現状を踏まえて、消費者物価と関連の強い消費関連業種を中心に、最近の企業の価格設定スタンスについて考察する。その際、企業の販売・仕入価格判断を継続して調査している日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)の個票データを用いている点が本稿の大きな特徴である3。』

これは12月短観(だけは年始前に出すのでありまして今年は明日公表だよ)が楽しみになって参りました、というか12月短観の絶賛集計中にこの紙が出るのが味わい深い。

『短観における消費関連業種の販売価格判断 DI は、消費者物価の該当する内訳(「小売」ならば消費者物価の「生鮮食品・エネルギーを除く財」)と概ね同方向で推移している(図表 2)4。そのため、短観の個票で当該業種の価格設定スタンスの特徴を分析することは、消費者物価変動の背景を考察するうえで、有益であると考えられる。』

ということで、「何でもかんでも一時的ということにして背景も顧慮せずに今の政策を死守する」というのはあくまでも黒ちゃんの趣味嗜好の世界であって、日銀のスタッフとしてはちゃんと消費者物価変動の背景を考察している、というのがこのように示されるわけで、結局は黒田が悪いよ黒田が、というお話ですね。



・仕入財価格上昇を転嫁する動きが幅広く拡大している件について

『最近の企業の価格設定スタンス』という小見出しに進みます。

『短観では、消費関連業種について、「小売」「宿泊・飲食サービス」「対個人サービス」の 3 業種の集計結果を企業規模別に公表している。本稿では、企業行動をより細かく把握するために、個票を用いて、消費関連業種を、より詳細な 26 業態に細分化して再集計した。うち企業数が多い 11 業態は大企業と中堅中小企業に分けて集計しているため、全体として消費関連業種を 37 の区分に再分類することとなる(以下、詳細集計)。』

ほうほう。

『具体的には小売は「百貨店」「スーパー」等、宿泊・飲食サービスは「居酒屋」「ホテル」等、対個人サービスは「娯楽」「スポーツ」等に再分類した5。この詳細集計をみることで、例えば「小売」の販売価格判断 DI が上昇した際、どのような業態で判断が引き上げられたのか把握することが可能となる。』

これはオモロイ(褒めてます)。

『上記の詳細集計の結果をみると、足もとでは、幅広い業態で販売価格判断 DI が大幅に上昇しており、直近の 2022 年 9 月短観では、すべての分類で DI がゼロ以上となっている(図表 3)。』

図表をこちらに磔刑にするスキルは無いので皆様におかれましてはちゃんと日銀レビューを読むように。

『前回、国際商品市況の高騰を主因に消費者物価上昇率が 2%を上回った 2007〜2008 年の局面では、DI が「下落」超となっていた業態がかなり存在していたことと比べると、今次局面では、値上げの動きが業態を問わず広がっていることが分かる。』

・・・・・・・!!!!!!!!!!!

この件自体は多くから指摘はありますが、短観個票データから取ってきてこういう結果が出ているというのは実に興味深いし、2007-2008年との比較で「全然違うがな」という話が出ているのも大変に結構なお話でして、大本営が(政策の一部手直しすら行おうとしないという目的の為に)物価上昇を一時的と連呼し続けている事に対して、いや今回はそんなに単純な話と違くね???ってぶっこんでいるのが大変に心が温まる話です。

さらに追い打ち追いガツオ。

『このように従来値上げに慎重だった先にも、販売価格引き上げの動きが広がっていることは、別の角度からも確認できる。』

ほうほう。

『短観の個票を使って、企業を「販売価格判断の変更に慎重な企業」と「その他の企業」に分割してみよう。』

これは面白そう。

『ここで、前者は、1991 年から感染症拡大前の 2019 年までの大半の期間において、販売価格判断を「もちあい」と答えた先であり、全企業の 2 割が分類されている6。』

あるほど。

『2 つの群について、販売価格判断 DI の推移をみると、「その他の企業」の DI は、過去、原材料コストの上昇等に応じて、循環的に推移している。』

なるほどなるほど。

『他方、「販売価格判断の変更に慎重な企業」の DI は、過去は原材料コストが上昇する局面でもほとんど変化がみられなかったが、今次局面では顕著に上昇している(図表 5)。』

キタコレ!!

『「販売価格判断の変更に慎重な企業」の中には、1990 年代初頭以来、今回30 年以上ぶりに販売価格判断を引き上げた先も少なくない(図表 6)。』

つまりノルムの変化。

『こうした傾向は、大幅な原材料コスト上昇に直面している財の分野で特に顕著であり、小売では、「販売価格判断の変更に慎重な企業」の販売価格判断 DI が大きめに上昇している(図表 7)。』

とは言いましても、本稿では基本的に「仕入財価格の上昇によって価格変化が起きました」という話にはなっておりますね。


・競合他社の動向がああだこうだというオブラートに包んでいますがこれまたインフレノルムに繋がるネタですの

次の小見出しが『競合他社の動向と企業の価格設定スタンス』でして、

『このように企業が価格転嫁を強めている最も大きな理由としては、足もとのコスト上昇が過去と比べて大きいことがあると考えられる。』

という文章から始まっておりまして、さっきの最後の部分と同様ですね。足もとに関して言えばあくまでもコストプッシュだ、という話にはなっているのですが、

『先行研究では、メニューコスト(メニューや値札を改定するための費用)の存在により、小幅のコスト変動は企業自身が吸収し、消費者物価には転嫁されにくい一方、コストプッシュが大きい場面では、企業の価格設定行動が変化しやすいとされている7。』

はい。

『また、個別の企業が、価格設定スタンスを変化させる際には、競合他社の行動も意識しているとみられる。』

『例えば、先行研究では、消費者が販売価格の動きをみて支出を変化させる傾向が強いもとでは、自社が値上げするとライバル企業に顧客が移ってしまうため、売上の減少幅が大きくなる――いわゆる屈折需要曲線に直面する――ことが予測されるため、コストが上昇しても、価格転嫁に躊躇しやすいとされている。こうした状況では、競合他社も同様の判断をすることが合理的となり、均衡では、全ての企業が価格を据え置くことが最適戦略となりやすい8。』

『しかし、多くの企業が販売価格を引き上げる状況では、値上げしてもライバル企業に顧客が移らないと予想されるため、自社も同様に値上げすることが合理的な選択に変わりうる。このように、各経済主体の最適行動が、関係する経済主体の行動に依存する状況において、全員が同様の行動をとることが最適となることは「戦略的補完性」と呼ばれる9。』

もりあがってまいりました!

『上記の短観個票データからは、わが国の小売業に属する企業の価格設定行動において、「戦略的補完性」が働いていることが示唆される。ここでは、この点を、前期における競合先の販売価格の設定状況と、そのもとでの当期の自社の価格転嫁状況の関係から考察する(図表 8)10。』

ということで分析があるけど、まあこっちは概ねお察しではないかと思います。なんかこの調子ですとまさかの全文引用になってしまいますが日銀レビューシリーズなのでセーフ。

『まず、前期における競合先の販売価格の設定状況を、「競合先の販売価格判断 DI」として計算する(図表 9 の横軸に相当)。具体的には、小売業に属する 10 業態(詳細集計ベース)について、企業ごとに、同一業態に属する自社以外の企業を競合先と定義し、DI を集計する。』

『次に、各企業を競合先の販売価格判断 DI の水準(20%のレンジ)ごとにグループ分けする。』

『そのうえで、当期の企業の価格転嫁状況について、自社の仕入価格が上昇した際に、販売価格も引き上げる確率(「販売価格判断の引き上げ確率」)を、「仕入価格判断を引き上げた企業のうち、販売価格判断も引き上げた企業の割合」として定量化する(図表 9 の縦軸に相当)。以

『上の作業を、1991〜2022 年の各調査において繰り返し、この期間における平均的な関係を図表 9 の実線で示す。』

図表9は見事に美しいグラフになっています。

『図表 9 をみると、競合他社の多くが販売価格判断を引き上げない状況(同 DI が 20%ポイント程度を下回る状況)では、自社の仕入価格が高まっても、企業は販売価格の引き上げに躊躇することが示されている。他方、競合他社の値上げが広がるにつれて、販売価格を引き上げることで、コスト転嫁を進める企業が非線形的に増加する関係性も窺える。』

しれっと「非線形的に」とか書いているのがチャーミングで、これってつまりは「閾値みたいなのがあってそこを越えるとノルムの変化が起こり得る」って話をしている訳でして、つまりは大本営みたいな(本来は期待に直接働きかけることによってインフレ動学に非線形的な変化を行うことを促すという理屈を捏ねていた筈なんですが最近は黒田総裁に阿るためにそういう話をすっかり忘れている)線形の話をしていたらアカンぜよというのが籠められていると読んだのは変な深読みのし過ぎですかそうですか。

『最近についても、こうした関係性がみられており、多くの企業がコスト上昇から価格転嫁を検討せざるを得ない状況に直面し、そうした状況が幅広い層において認識されているもとで、「戦略的補完性」を通じて、多くの企業が販売価格の引き上げを選択していることが示唆される。』

確かにコストプッシュが原因かも知らんけど、少なくともこれは「ノルム」の変化につながる話だし、思いっきりそういう指摘になっていますよね(露骨には言ってないけど)。

『企業へのヒアリング等からも、今次局面では、業界内でシェアの大きい先などが値上げを表明したあとに、他の企業もそれに追随する形で販売価格を改定する動きがみられるとも指摘されている。なお、こうした動きには、上記のとおり仕入価格の上昇が関係しており、自社の仕入コストが上昇しない状況になれば、競合他社の値上げ状況に関わらず、販売価格を引き上げる動きは限られることが示唆される(図表 10)。』

とまあそういう事なのですが、これが賃金上昇によって価格上昇への耐久度が上がっていき、一方で賃金上昇で労働コストが上昇するので価格転嫁の必要が、となればまさにインフレノルムの変化ですがな。


・結局最後まで引用してしまいましたサーセン

調子の乗って『おわりに』までネタにする。

『本稿では、最近の企業の価格設定スタンスについて、短観の個票から確認した。今次局面では、販売価格の変更に従来慎重だった業態や企業にも、値上げの動きが広がっていることが確認された。』

イイハナシダナー(アタクシの財布的には全然いい話じゃないんですけど)

『企業がコスト上昇を販売価格に転嫁する動きを強めている基本的な背景としては、「展望レポート」等で指摘されているように、@最近のコスト上昇が過去と比べても大きいことに加え、A足もとの景気局面が感染症による大幅な落ち込みからの回復過程にあることや、B一部の財では、グローバルな需要急拡大やサプライチェーン障害の影響もあって、製商品レベルでみた需給がタイトとなっていること(図表 11)などが挙げられる11。』

ここで思いっきりお洒落なのは、例の「個人セクターにおける値上げ許容度の高まり」というのを書かない所でして、あれはやっぱり今でもトラウマというかタブーというか、開けてはならない壺みたいな話になっておるわけですな、っていうのが分かりました。ま、賃金上昇の数字が出たらもう堂々と言っても良いんじゃないですかね。

・・・・・・・・まあ何ですな、あの時の「値上げ許容度」云々の何が間抜けだったかというと、そもそもあの話自体が円安と年度替わり以降の物価上昇に対する日銀への批判に対抗してああいう言い方しちまったのが悪かったわけで、普通に物価上昇の循環メカニズムから話をしていればもうちょっと別の話になった筈でござんすけど、すくなくともあの時点で家計の物価上昇許容度について言及しているんですから、ここで賃金がそれなりに上昇すれば、足元のバラマキと相まって企業サイドの価格引き上げが容易になる、って事でもあるとおもいますけどねー。

『本稿で指摘したように、こうした環境下で競合他社の多くが値上げに踏み切っていることも、「戦略的補完性」を通じて、企業が価格転嫁する傾向を強める方向に作用しているとみられる。引き続き、コストプッシュの状況など、上記の基本的な背景の動向や、企業の価格設定スタンスを注意深くモニタリングしていく必要がある。』

ということでまとまっていまして、賃金上昇によって家計の購買力が高まり価格上昇への耐久性(許容度というから物議を醸しだした訳で、耐久性とでも言って置けば政治的に問題にならんかったかも)が高まった場合における、企業の価格設定行動の変化とか、企業の労働コスト上昇の影響による価格設定行動の話とか、そういう話は今回スルー、と最初の方で申し上げた通りですが、@まだ賃金上昇は(非正規などで起きているので今後はかなり期待できるでしょうけど)顕著に実現していない、Aその話まで踏み込んで書くと政策修正と絡めて物議を醸しだすのは明白、ということもあって今回スルーしたんじゃないかと勝手に推測しておきます(個人の感想です)。


ということで、しばらく前にネタにした金研WPシリーズの吉田先生による「限界家賃指数の推計:消費者物価指数の改善に向けて」は金研の矜持が出た、って感じの読んでて面白い(誉め言葉)物件(ただし日銀スタッフじゃなくて吉田先生に鉄砲玉をやらせている)でしたが、この日銀レビューシリーズに関しては淡々とした説明にはなっているものの、勝手に行間を読みに行くと(そらまあバイアス掛かってるアタクシが行間読んでるからではあるけど)何気にインフレ動学の変化に関する話になっていて中々味わいが深い訳です。

とまあそういう物件が最近ちらちらと出てくるようになってきたり、先般の野口審議委員の金懇講演、というよりも記者会見でもしれっとインフレの変化についての可能性示唆とか出て来たりしてまして、いやまあちゃんと真面目にそういうの考えているんだとしたら結構な話なので、可及的速やかにあの邪魔くさいのを棚上げして頂けると誠に結構な話なんですが、と思いました。


〇高田審議委員の日経新聞インタビュー・・・・・・は結局無課金勢には無縁なのでネタにできないじゃないですか

日経さん見事すぎます。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB29ADP0Z21C22A1000000/
日銀・高田審議委員、緩和出口へ「道半ば」 一問一答
金融政策
2022年12月10日 0:00 [有料会員限定]

『日銀の高田創審議委員は日本経済新聞のインタビューで、2%の物価目標達成について「安定的に持続するかというとまだ難しい」と述べた。日銀が現在の大規模な金融緩和から出口に向かうには企業が設備投資や賃上げに前向きな意識を持つ必要があるが、「まだ道半ば」との認識を示した。一問一答は以下の通り。

――2%の物価目標達成は難しいと就任前に指摘していました。

「簡単ではないという意識はずっと持っている。消費者...

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』(上記URL先より)


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB092CT0Z01C22A2000000/
日銀・高田審議委員、長短金利操作「解除の局面にない」
金融政策
2022年12月10日 0:00 [有料会員限定]

『日銀の高田創審議委員は日本経済新聞とのインタビューで、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の解除について「残念ながらそういう局面になっていない」と述べた。2%の物価目標を持続的・安定的に達成できる状況にないとして大規模な金融緩和を粘り強く続ける必要があるとの考えを示した。

みずほ総合研究所や岡三証券でエコノミストだった高田氏は、大規模緩和の副作用に警鐘を鳴らしてきた。岸田文雄政権...

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』(上記URL先より)

ということで、無課金勢にはエッセンスすら出さんという気概が溢れてて、それはまあそれで各社のご判断になる(とは言ってもこれ実質的に輪番でやってる半公式意見表明の機会みたいな感じだから本当は公共性を鑑みて開放して欲しいんですけど)のでこっちもネタにしにくいのですが、まあ結論としては高田さんにおかれましては出世の為に債券ストラテジストとしての見識を捨てて悪魔教団に魂を売り渡したって感じで認識しておけば良さそうですな、というお話。

しかしまあ何ですな、置物一派の安達さん野口さんがすっかり執行部の犬になって転身を図っている(個人の感想です)のに、そういう意味では真面目だなって思うところでして、悪魔教団の教徒の振りして入ってしまえばこっちのモノという事にならないのが何ちゅうかかんちゅうかではありますので、基本的にはこのお方には期待をしないことにしておきます、はい。







2022/12/12

お題「中村審議委員記者会見(特に政策インプリケーションは無いのでヒマネタみたいなもんですが、汗)」

まあ何か相場様も微妙に微妙なのですが月曜日という事で中村審議委員の会見で勘弁してつかあさい。

なお、高田審議委員が日経新聞のインタビューとのことですが、あたくし誠に遺憾ながら日経無課金おじさんなので記事がみれませんし、そもそも有料記事勝手にホイホイ引用するのはアカンばいなのでパスします。(しかも土曜に掲載されると気が付いた時(正確に表現すると「知り合いから教えてもらった時ですw」には店売りの日経も夕刊になったり翌日になったりするから更に困る)

それはそれとして、殺生石のニュースを見て「きんもーっ☆」を思い出してしまうのはインターネット老人、というほどでもないですが中年以上と思われます。
https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/671352
那須の殺生石にイノシシ8頭死骸 九尾の狐伝説の地、有毒ガスか
12/9 19:00

え、思い出さないですかそうですか(今調べたら17年前のネタだったわもうそんな前なのか)。


〇誠実に答えようとしているのは分かるうだが中々解読するのがめんどい中村審議委員の記者会見である

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221208a.pdf
中村審議委員記者会見
――2022年12月7日(水)午後2時半から約35分
於 松本市


・ああでもないこうでもないと説明しながら結局どっちとも取れる説明・・・・・・なのかな???

『(問)
一点目ですが、他の審議委員の話で大変恐縮ですが、先般、弊社のインタビューで田村審議委員が「しかるべきタイミングで金融政策の枠組みや物価目標の在り方を含めて点検・検証を行うことが適当」という見解を示されました。大規模緩和を 10年続けても物価目標の実現も展望できていない中で、金融政策と物価目標の点検・検証を行う必要性について、中村委員はどのようにお考えでしょうか。(後半割愛)』

そもそも論として質問がおかしくて、田村審議委員は「大規模緩和を 10年続けても物価目標の実現も展望できていない中で、金融政策と物価目標の点検・検証を行う必要性について」述べたのとはチャウやろと思いますけどぬー。

というかですね、何とかストの方々がまあそのように皆さん分析しておられるからそうなのかも知れないのですけれども、「物価が上振れて政策がビハインドになる、しかも目の間でで欧州がまさにそれをやらかしておられる」のを懸念して緩和政策の緩和程度を調整すべき、って論で質問って来ないのは不思議なんですよぬ。

まあそれはそれとしてご回答。

『(答)
田村さんが言われたのは私も新聞情報で伺いまして、そのようなご発言をされているのは承知をしております。ただ、政策委員(注)は総裁・副総裁を含めて 9 人おりますので、それぞれの知見に基づいて意見を構成するということですので、色々な方々が発言されるというのは、その知見のもとに、見識のもとにされていますので、ひとつずつこれはどうだというコメントはするべきものではないなというふうに思いますので、その発言についてどうかというのは言えませんけれども、』

というのは原則論ですが、そこから先きちんと話すのは中村さん丁寧ちゃあ丁寧で。

『点検・検証の必要性ということについて言えば、今のタイミングはどうかなと。』

なんでしょうねえ、原則論としては「金融経済情勢や政策の効果などは毎回の会合で点検をおこなっておるものなので、殊更に点検、検証というのも違和感があるのですが」などと言ってすっとぼけるのがたぶん模範的な回答なんですが、ど正直にこういう言い方をするのは丁寧な態度です。

『私の今日の挨拶要旨の中でも申し上げておりますけれども、今のタイミングは残念ながら、サービス分野の物価上昇率というのが、日本のCPIを評価するうえで、生鮮とそれからエネルギーを除いた部分で考えれば、5 割を超えるウエイトになっていて、人件費がコストのかなりの部分を占めるという分野でありますが、ここの消費者物価の上昇率が 1%にまだいっていないと。』

この「粘着的な価格がゼロ近傍だから」理論っていうのは、先日中村さんの金懇挨拶をネタにした時にも申し上げたように、一時期この言い訳で逃げる気満々で結構この理論を聞いてたんですが、最近は基調的物価を見ればおわかりのように、加重中央値や最頻値の価格上昇がみられておりまして、この「スティッキーな価格が上がらんから政策変更必要なし」という理論って基本的に大本営引っ込め気味なんですよね(モロに大本営発表の説明だった野口審議委員の金懇でスティッキーな品目の価格がどうのこうのの話を回避していたのを見れば分かる通りです、理由はその辺の価格が上がってきてるからですわな)。

だいたいからして、

『ここがやはり日本の労働生産性が低いと言われている原因かなとも思うのですが、ここがちょっとまだ低いので、このタイミングで金融政策の変更をするというのは、さすがにちょっと時期尚早であろうというふうに私は思っております。』

という説明なんだが、金融政策はそもそも景気循環を均すことはするけど構造問題が要因で緩和継続とかいうのは流石に理屈として無茶苦茶なんじゃないでしょうかという話ですし、まあ実は上記質疑の質問後半もそこを聞かれています。


中村さん、ここまでの回答は「政策は梃子でも動きません」なのですが、ここから風向きが変わりまして、

『ただ、色々と変化が今起きておりますので、そういった面でそういう事態が来れば、非常に将来に期待が持てるようになってくれば、当然ながら、正常化に向けての議論が行えるということになりますので、そのときには、色々な点検作業ですとか議論が[金融]政策決定会合の場でされるだろうというふうに思いますが、今はまだそのデータが出てきてないので、まだ残念ながらその状況には至っていないというふうに判断しております。(後半割愛)』


ということで、最後の最後に「でも情勢次第ではアリエール」という話をしていまして、この辺りってのはさすがに3月(または4月)に退任してしまう人と、「その後」もやらなければいけない人の差が出てくるなと思います。

大本営バリバリの野口さんはもっとアカラサマに「情勢変化して物価目標達成が展望できるって話になったらそら修正だってあり」って話をしましたが、中村さんも何気にこのような説明を入れてるということで、「3月の後」を考えた場合にどうしますねん、というのを(3月以降がある)皆さんしれっと言及しているのは中々チャーミングだと思います。


・構造的に賃金が上がらんという構造問題に熱心なのは分かるが・・・・・・・・・・・

さっきの質問の後半です。

『(問)(前半割愛)
二点目なんですけれども、午前の講演で、日本の経済・賃金構造のままでは、生産性が高い分野に適材適所が進まず、賃金水準が停滞すると発言されました。日本では持続的な賃上げを実現するには相当の時間を要するのではないかという印象を持ったのですが、この金融政策運営でも重要な持続的な賃上げにつきまして、実現の時間軸について委員はどのようにお考えでしょうか。この二点をお願いします。』

そもそも論として生産性が高い分野に適材適所が進むようにするには、負債コストがクソ低いために収益力が低くても資金繰りが続いてしまう企業が続出する、というのは(全部の理由ではないけど)一部の理由になるでしょ。

『(答)(前半割愛)
それから、経済と賃金構造が今のままでは、物価は持続的には上がらないというようなお話を私はさせて頂きましたが、確かにこれは時間軸でいうと、かなり時間がかかるのかもしれません。』

話はここで終わりじゃないのと思うのですが、こっからが謎のクッソ長い演説が開始されます。

『ただ、今は経営者の世代が交代を始めていて、今までできなかったことをやはり変えないとだめだという、世界の経済の中での日本の立ち位置を考えると、構造改革をしなければいけないという経営者の判断が変わりつつあるということ。』

言わんとしていることは分からんでもないのだが、日本を代表するメーカーで経営者やってたんだから何ちゅうかもう少しご自身の出身業界なり関連する業界での具体的な話をして欲しいんですが、

『それから、同様に政府も「新しい資本主義」のもとで、「人への投資」を増やす、それで構造的な賃上げにつなぐのだと。これは中長期的な流れでありますけれども、そういったところに力を入れているということから致しますと、事態が変わっていくということは、当然ながら大きく期待をしていいのではないかというふうに思っております。』

なんかフワフワとした話なんですよねー。まあこういうと大変失礼な言い方になってしまいそうですけど、池〇彰(一部伏字)のお手軽本を読んで勉強した気になってしまって中二病的に大所高所からお話をしている感が無茶苦茶漂ってくるのはアタクシの気のせいだと信じたい。


・そもそも安定的な物価目標達成時には賃金上昇はアプリオリに行われるものである

大演説って言ってるくらいですから回答はまだ続くんですが、この説明部分については噛みつきたい。

『持続的な賃上げを行うためには、当然ながら企業の立場からすると、業績の向上が必要であります。それは従業員の立場からしても、自社の業況については十分に理解をしているわけですので、業績があまり強くない中で、強い賃上げ率を実現、もしそういうことが起きれば、きっと業績に悪影響が出るのではないかなという心配が当然ながら従業員には出てきますので、これは結局、賃上げがあった中でも貯蓄に回ってしまうと。これはボーナスだったら貯蓄に回る、基本給が上がれば消費に回るという問題ではなくて、将来どうなるのかということを考えているので、賃上げというのも業績の向上とともに実現しないと、なかなか経済全体には回っていかないだろうというのが、私の意見であります。』

色々と言ってることがおかしくて、そもそも論として物価安定目標が達成されている時っていうのは、安定的な物価上昇に見合う程度の賃金上昇は少なくとも起きていないとおかしいのであって、その場合は社会の規範(ノルム)が「賃金は年々ちょっとは上がるもの」という風になっているから物価安定目標が達成されている訳です。

それに、生活給の観点からして企業の業績がどうであろうとノルムが「賃金は上がるもの」の中では従業員が、「業績があまり強くない中で、強い賃上げ率を実現、もしそういうことが起きれば、きっと業績に悪影響が出るのではないかなという心配が当然ながら従業員には出てきますので、これは結局、賃上げがあった中でも貯蓄に回ってしまうと。」というような奴隷根性にはならんでしょ、というのもこれまたノルムの転換なのでありまして、ノルムの転換が必要とか言いながら政策修正を拒んでいる政策委員のノルムの転換を先に行った方がよろしいんじゃないでしょうか、と思いました。

『ですから、企業としては、賃上げができなければ、人材が流出してしまうのではないかという懸念があったり、優秀人材を取れないのではないかという懸念が強まりますので、従って、何とかして賃金を相応に上げたいと思っているのは、経営者の立場だと思います。』

凄いな従業員は奴隷根性で経営者は慈善的な神なのかよ!!!!!!!


・しかし話が長い上に何の話をしているのかが途中から訳分らなくなる

演説はさらに続く。

『それは昭和の時代、ではなくて平成の時代ですかね、ずっとコストカットで成功体験を持った人達が経営者であったわけですけど、今はそれは変わりつつありますので、賃上げそのものが昔は経営課題だと認識をしていましたけれども、今は賃金を抑制することで人材を獲得できないということの方が経営課題であるというふうな認識に変わってきていますから。』

平成の時代に日本を代表する製造業の経営陣に名を連ねてらっしゃったお方が他人事のように説明するんじゃなくて、折角日本を代表する製造業の経営陣だった経験からどういう意識転換が必要とかそういう話でもいいですし、最近の業界動向として雇用に関する考え方に変化があるのかないのかという話でも良いのですが、何ちゅうかもうちょっと経験を生かした考察をして頂きたいんですけど、延々と他人事のようにフワフワと話すんですよねー。


『そうすると経営課題としては、どうしたら賃上げができるのかと、どうしたら業績を改善できるのかと、こういうことが経営課題になってくるわけですので、事業のポートフォリオの見直しというのが、当然ながらあがってきます。』

と言い出してまさかの事業のポートフォリオの話しなんだが。

『昔は雇用を確保するために、低収益事業も維持するということでやってきたわけですけれども、それが 30 年間の低迷につながってきたように私は考えておりますが、今はその改革をしなければいけないということで、』

という話をしているんだが、不採算事業の廃止云々に関しては昨今の雇用情勢に対応した話じゃなくて、単に企業体力の低下によって不採算事業を抱えきれなくなったのと、資本市場から(調達をしている企業の場合)の効率化圧力が一昔前よりも厳しくなっているからであって、別に雇用確保のために賃上げの原資が必要だからこういう話をしている訳ではないと思うのだが、さっきまでの雇用確保に収益がーの話とこれはどういうつながりになるんでしょうか???????

『イノベーション力の不足なのかとか、低収益事業を抱えているからなのかとか、経営リソースが不足しているのか、今は技術開発の途上なのかといったことを常に分析・把握しながら、経営改革を行っていかなければいけないと。』

すごく・・・・・・・・・・評論家です。

『従って、時間のかかる問題もあるわけですね。けれども、もう既にやっているところもあるわけですので、日本全体で賃上げ率がどのくらいになるかっていうことは、その平均になりますから、』

え???????賃上げの話に戻っちゃうの???????????????????

『ちょっと私の立場ではいくらかというのは非常に難しいのでどのくらいかは申し上げられませんが、経営者はとにかく最善の努力をして、その結果で多分回答されるはずですから、それなりに努力をした結果というふうにみるしかないのではないかなと。』

ナンジャソラ。

『その結果がどうなのかというのは、その企業の置かれている収益力の問題だということで、それを時間がかかるかもしれないけれども、経営改革をしていくというふうにつながっていくと思いますので、将来にとっては明るい部分がいずれ出てくるはずだというふうに私は信じております。』

という訳でして、なんかまあ一生懸命に回答しているのは伝わるし、パッションのようなものは伝わるのでありますが、黒ちゃん会見とは別のパターンになっているんですけど、質問に対する回答が一体全体何を言いたいのかがまるでよくわからん、という面白作品に仕上がっておりまして、質問されたことをワザと外して延々と想定問答を朗読する黒田とかいう誠実さの欠片もない人に比べれば人間の出来は5億倍くらいは良いのですけど、遺憾ながら回答が何言ってるか分からんという中々お洒落な中村審議委員なのでありました。


まあ今までは「会見要旨」ということで日銀のスタッフが質疑応答として文章になるようにしながら回答の趣旨を生かして美しく文章を作って居まして、中村審議委員の会見が文字起こしパティーンになったのは今回が初出でございまして、もしかして今までもこのパターンだったのかと思うと、スタッフの皆様のご苦労がしのばれるというものでありますし、文字起こしにしたのは結構なスマッシュヒットだったんじゃないですかねえ、と思うのであります。



・ノルムの変化についてついていけてないですよねー

とまあそういうことでその他質疑あるんですがまあ比較的毒にも薬にもならない話が上記のように無駄に長く展開されているので、質問する方も面倒になったのかその後はあっさり味なんですが、この質疑は泣いた。

『(問)
二問ありまして、来年の春闘を含め、賃金上昇率が具体的にどういった状況になると政策修正の議論というのが可能になるのかというのが一つ目の質問で、二つ目の質問は、午前のご挨拶でもありましたけれども、粘り強く金融緩和を続けていくという場合に、緩和の領域内ですけれども、現在の金融政策の枠組みを微修正する必要性というのはあるのか、それとももうこれは緩和を粘り強く続けるというのは現行の枠組みのまま変更せず、このまま粘り強くやっていくというご趣旨なのか、この二点をお願い致します。』

2点というか一連の質問ですね。

『(答)
春闘の賃上げ率、5%とか 6%の要求が出ているというふうには理解をしておりますが、この賃上げ率がじゃあいくらになったらというのは、賃金が上がれば物価も上がるはずだという方程式のようなものがありますけれども、この賃上げが、普段平均賃金では、だいたい日本でいうと 1%から 1.5%くらいだと思いますけれども、この実力のときに、企業が例えば 5%上げたと。これは平均ではないですよ。どこかが上げて、実力を超えているというふうな場合に、その会社の従業員はどう思うかと、4 年分今回上げたなと。』

この理論が「ノルムの変化」を無視してるし、だいたいからして生活物価が実力で5%以上上がっているようなご時世の中で5%賃上げが起きたとしても、それは物価上昇の穴埋めである「生活給」分であって、それをもって「4−5年分上げた」とかはノルムの変化が仮に起きていないにしたって思わんじゃろ、とアタクシは考えるのですが、庶民じゃないから分からんのかな?????不思議な説明をしてくる。

『そうすると、この先、3 年とか 4 年はあまり賃上げはないかもしれないというふうに感じてしまうと、賃上げされた分が貯蓄に回るという可能性も結構強いので、』

うーんそういう話じゃないと思うんだよなー。

『やはり企業の構造とか賃金構造がどういうふうに変わっていくかっていうところまでをみないと、政策修正に向かうタイミングというのは、本当はわからないと思うんですね。』

完全に賃金とサービス価格だけで判断しようとしておる。

『ただ、それをどうやってみるか、300 万から 400万社ある企業に全部聞いて、どうですかという訳にはいきませんので、それが私は2%の物価安定の目標というものがあって、そこに近づいているのか、近づいていないのかと、』

テラ循環論法wwwwwwwwwwww

『それは輸入コストプッシュインフレではない部分でそれをよく判断する、それが私としては経済や賃金の構造が変わっているかどうかというバロメーターだと理解をしていますので、従って、その実態がどう変わっているかということをみて、政策修正に入るということだと思いますので、』

循環論法がもう1回循環しておられるw

『春闘の賃上げ率だけで政策修正かという、そういう単純な話では私はないのではないかというふうに思っています。』

いやそれだけ言ってくれればよいのだが前段が全部余計wwwwwwwwww

『それから、金融政策の緩和の枠組みを微修正するのか変更するのかと、それも経済や金融の実態がどう変わっているのかというのを色々なデータを見ながら判断をしていきますので、今は私としては変更する必要はないというか、変更すべきではないのではないかなというふうに考えております。』

とまあこんな感じのオモシロ問答でございました。月曜なのでこの辺で勘弁してちょ。








2022/12/09

お題「中村審議委員の金懇は結構我が道を行くスタイルになっておられました(その1)」

いやーん今日終わったら今年ガチで3週間しか残ってないじゃないヤダー。

〇中村審議委員金懇を鑑賞の巻

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko221207a1.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 長野県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──
日本銀行政策委員会審議委員
中村 豊明


・オリジナル感が強いのは好感が持てるのですがちょいちょいとですねえ・・・・・・・・・

ご案内の通り金懇は水曜に行われた訳ですが、HTMLバージョンが金曜の朝のこの時間になってもまだアップされていなくて、まあ色々とオリジナルな部分あるんでしょうなあと勝手に推測しておる(野口さんの金懇テキストはPDFとHTML同時公表)のですが、説明の所を見ると唸ってしまう部分が微妙にあるのよねー。

『2.内外経済情勢』の『(1)経済・物価の現状と展望』は普通に展望レポートに沿ったメインシナリオのお話(ただしあっさり味で短い)を示しておりますんですな。でもってその次に『(2)経済・物価のリスク要因』というのがありまして、

『こうした見通しを巡る不確実性として、私が特に注目するポイントを2点お話します。』

から始まりまして、

『1点目は、海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向です。』

とまあこのお題目自体は展望レポートの中でも示されている話なのですが、

『世界的なコロナ禍からの回復過程での需要急拡大に、供給制約やウクライナ侵攻の影響が加わり、大幅な物価上昇が続くもとで、各国中央銀行は経済の減速を覚悟して、高インフレ鎮圧のために急速な利上げを進めています。一方で、金融市場では、金融政策と財政政策の整合性を懸念する向きがあることに加え、金融引き締めの効果はラグを伴って出てくるため、その効果の見極めを巡って、神経質な動きがみられています。』

前半は良いんだが「一方で」以下の話、「金融政策と財政政策の整合性を懸念する向きがある」ってナンジャソラというか、それ日本で物価上げようとしてる日銀と物価下げようとしてる経済対策(なおマクロ的には財政大盤振る舞いしてるから物価が上がる模様だがそれはさておき)してる日本政府の話しなら分かるんだが、海外で「金融政策と財政政策の整合性を懸念する向きがある」って何のことじゃマジで分からんのだが教えてつかあさい。

『米国やユーロ圏では、今年に入り、既にそれぞれ3.75%、2.0%の大幅利上げを実施していますが、直近の消費者物価上昇率1は、それぞれ+7.7%、+10.0%と依然として目標を大きく上回っており、市場では更なる政策金利の引き上げが見込まれています。このため、累次の大幅利上げの影響の程度によっては、インフレ抑制と経済成長維持の両立が難しくなることが懸念されます。』

ちょっと手前で「各国中央銀行は経済の減速を覚悟して、高インフレ鎮圧のために急速な利上げを進めています。」って言っててここでは「インフレ抑制と経済成長維持の両立が難しくなることが懸念されます。」って言ってるの、まあ言いたいことはオーバーキルのリスクなんでしょうけれども、もうちょっとこう端的に書いてくれないとこれでは前言ってた事は何だったのって読後感しか受けないんですけどもうちょっと前後の繋がりを考えて頂きたいものです、って人の事言えた程整合性取れた文章かけてるんかお前といわれるとぐうの音もでないが。

『こうした懸念が高まる場合には、資産価格や為替相場の調整、新興国からの資本流出を通じて、国際金融資本市場が想定外にタイト化する可能性にも注意が必要です。』

うーん、なんか懸念している事は伝わるんだが、オーバーキルで国際金融市場からの資本の動きがどうのこうの、というよりも普通に欧米がオーバーキルして世界的なリセッション懸念って話の方がストレートな気がするし、だいたいからして新興国だって累次の経験から昔に比べれば突如大ショック資本流出でアギャーっての(クソ弱い国は仕方ないけど)そこまでひどくなるのかねというのがイマイチピンとこない。


『2点目は、地政学リスクや資源・穀物価格の動向です。』

え、その話今さらなの????

『ウクライナ情勢などの地政学的な要因を巡り、先行きの不確実性が極めて高い状況が続いていますので、資源・穀物価格の上昇・高止まりが長期化する場合には、内外経済が一段と下押しされることが懸念されます。』

むしろ海外のインフレに関してはホームメードインフレ状態になっているのが問題になっていると思う次第で、国際商品市況がどうのこうのって(もちろん楽観できないのは仰せの通りだが)うーんそこが重要なリスクかしらというと重要なのはわかるんだが・・・・・・うーん。

『資源輸入国でエネルギー自給率がOECD36か国中35位2と極めて低い日本では、資源価格上昇などによる交易損失の拡大が、大きく経済を下押ししています(図表4)。交易損失の影響が需要減少に現れるまでにラグを伴いますので、今後の資源・穀物価格の動向によっては、個人消費や設備投資が下振れするリスクがあります。』

どうもこれが言いたかったようだ。

『また、一部には、資源・穀物などの輸入価格上昇を主因とした10月の値上げ集中に続き、来年2・3月にも多くの値上げが予想されるとの指摘もあります。』

別に良いじゃん物価上昇させようとしてるんでしょ、と思ったら、

『物価上昇は家計の実質所得を下押しする要因となりますが、』

物価上昇が家計の実質所得を下押しするのはその通りなんだが、適合的な期待形成においてはプラスに働くんだし、もともと日銀は実際の物価上昇が適合的にインフレ予想を押し上げることによって期待インフレが引きあがるパスというのを物価目標達成に向けたパスとして宣伝していた訳ですから、ここで自らが物価上昇は実質所得下押し、というのを正面切って言う(下押ししない、とか嘘をつく必要はないのだが、何も殊更にこの点を言わなくても良いんじゃないの、という意味ですよ為念)のって、期待形成に働きかけるという日銀の話は何処に逝ったんだと小一時間問い詰めたい。

とは言え、

『下押しの程度は、名目賃金の伸び率によっても変わります。』

という話なので、ではここから名目賃金の上昇が上手くいかないと先行きのリスクになるよ、という話になるなら良く分かるのですが、この直後から急に謎に壮大なネタが練り込まれる。

『その意味で、後ほど改めて触れるように、今後、エネルギー自給率向上への取り組みと』

ちょっと待てなんじゃその話は。

『企業がどの程度賃上げを実施するかは極めて重要であり、私自身、エネルギー政策や来春の賃金改定動向を注視しています。』

賃金の話は良いんだが、ここで「エネルギー政策」が出て来るのって何ですのんという話で、あーたエネルギー政策いじったからと言って1年や2年でどうこうなる話じゃないでしょということで、何ちゅうか言いたいこととかその意味も勿論分かるのですが、中村さんのこのオリジナルっぽい説明部分、パーツパーツでは良い事言ってると思うのですが、通してみるといやなんか違くね??って感じや。時間軸が全然違う話を一緒くたにして論じてしまっていたりで、うーん何というかこのまあ・・・・・・・・・・でありまする。


・金融政策運営の話をしておるのだが政策維持の理由が何か直ぐにでもひっくり返りそうな理由ではある

『3.金融政策運営』のところに移ります。

『このような経済・物価情勢を踏まえて、当面の金融政策運営に関する基本的な考え方についてお話します。私は、主に以下の2点から、現在の日本経済においては金融緩和を粘り強く続ける必要があると考えています。』

でもってその理由なのですが、

『1点目は、日本経済は依然として感染症による落ち込みからの回復途上にあることです。』

という話になっていて、以下

『実質GDPは、前年 10〜12 月期以降3四半期連続のプラスでしたが、7〜9月期は一転前期比マイナスとなり、その水準は依然として2019 年平均を下回っています(図表5)。約 15 年間に亘るデフレ経済を経験した日本は、雇用・設備・債務の「3つの過剰」に苦しみ、「守りの意識」が強く、「低成長・低インフレ・低賃金上昇」の経済になりました。』

この辺りも何か微妙で、3つの過剰ってのはバブル崩壊以降の主に90年台の長期低迷の話で、寧ろ2000年台の途中からはその辺を解消して戻ってませんでしたっけとは思うけどまあいいです、

『日本では、こうした「守りの意識」から、コロナ禍による環境変化への対応が米欧に比べ遅れたことも、経済の回復が遅れている一因だと考えています。また、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップも、2020 年4〜6月期以降、一貫してマイナスです(図表6)。供給力に対して需要不足が続く局面での金融政策の引き締めは、企業や家計の経済活動に大きな抑制圧力をかけ、デフレ経済に戻しかねません。』

あのですね、YCC修正しろとかマイナス金利解除しろって言ってる人達って(一部のあたおかを除けば)別に「金融引き締めをしろ」って言ってるんじゃなくて「無用に過剰な金融緩和を適正規模の緩和政策に調整しろ」って言っているだけの話で、そもそもこの「金融政策の引き締めは」とか言ってる時点で思いっきり藁人形論法になっておりますので、まあがっかりですよこれは。

というのもあるんですが、需給ギャップって展望レポートでの見通しベースだって別に未来永劫マイナスな訳ではなくて、そこまで遠くない時点でプラテンする(としておかないと追加緩和しないと政策としての整合性がおかしくなる、というのもあるが)見通しになっているんで、需給ギャップを連呼してると意外に早い時点で自分の首を締めると思うんですけどね。


『2点目は、現在の物価上昇が賃金上昇を伴うものとなっていないということです。』

じゃあ賃金上がったら良いんじゃん、という話になりますな、だいたいからしてどこの世界に賃金上昇が先にきて物価上昇が後から来る経済があるんでしょうか??????????????????

『日本と米欧の物価の動きを比較しますと、米国では+4〜5%台、ユーロ圏では+3%台の時間当たりの賃金上昇となっている中、サービス価格も上昇し、エネルギーおよび食品を除いたベースの物価上昇率が、米国は10 月で+6.3%、ユーロ圏は 11 月で+5.0%と高い水準です。このため、賃金と物価のスパイラルを阻止するため、急速な利上げを継続しています。一方、日本では、生鮮食品およびエネルギーを除くベースの物価上昇率が 10 月は+2.5%まで上昇していますが、その内訳をみますと、ウェイトの5割超を占め、コストに占める賃金比率が高いサービスは上昇したものの、依然として+1%を下回っています。日本では、賃金と物価のスパイラルが懸念される状況からは遠いと考えています。』

だそうなんだが、サービス価格も上昇してるし、さっき自分でも言ってた政策効果波及のタイムラグも考えてみた方がエエンとチャイマスカねえ。

『感染症からの回復途上の中で企業の取り組みを後押しし、「国民経済の健全な発展」に必要な賃上げ環境を整備する観点からも、緩和的な金融政策の継続が必要と考えています。』

だからその緩和的な金融政策ってのは別にYCCやマイナス金利政策が必須なのか、という事を考えろと言ってるだけであって、すくなくとも金融市場で引き締め的な金融政策をしろとか言ってる人はいないと思うんですけど、もう完全にこういう藁人形論法でしか答えられないんだなーと思いました。


・次が中村審議委員のオリジナルバージョン部分なんですけどね

『4.日本の経済成長』という中々意欲的な見出しが次に入りまして、これが5ページ目の頭から10ページ目のケツのあたりまであり、最後にご当地経済の話が1ページ、ということですので、今回の中村さんの金懇挨拶のメインパートは実はこっちなんでしょう(中村さん的に言って)と思うのです。

『2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成し、そのもとで持続的な経済成長を実現するうえでは、経済成長とともに賃金も上昇していくことが重要です。しかし、日本経済は長期に亘り「低成長・低インフレ・低賃金上昇」に陥っており、こうした状態を実現したという状況には至っていません。』

さいですな。

『そこで、ここからは、米欧と異なる現状の日本の経済・賃金構造の課題についてお話した後、日本経済が再び力強く成長していくために私が必要と考えております、企業・雇用・家計金融資産の3つのダイナミズムについて、私自身の民間企業での経験も踏まえてお話したいと思います。』

ということなのですが、経営者やってたお方の経験も踏まえて、って話で以下の話が展開されるのはされるのですけれども、中村さんなり中村さんの業界でのこのような取り組みでこんな成長が遂げられた、というような話が残念ながら見受けられませんでして、なんかこう話がフワフワとしておられるようにしか申し訳ないのですが見受けられないんですよね。そのせいか(実は今日は時間がないので間に合わないのですが)記者会見の方でもこっちの部分に関する質疑応答がなかったように見受けられまして、甚だ残念な所であります。

・・・・・・と書いたのでお察しとは思うのですが、こちらの部分は基本ネタにしませんですが、興味のある方は是非最初に書いたURL先においでいただきご高説をご覧ください。


ちなみに、中村さん相変わらずこれ好きですねーっていうのが『(4)家計の金融資産のダイナミズムによる可処分所得の向上』というお話。

『持続的な日本経済の成長を実現するためには、企業・雇用の面からのダイナミズムに加え、経済成長とともに可処分所得も向上する家計の金融資産のダイナミズムも重要だと考えています。』

ということで、この話は就任直後から「給与が上がらないなら株式や投資信託を買えば良いじゃない」というマリーアントワネット理論として一部の日銀マニアを驚倒させた説明を、もうちょっとだけ洗練させた形で展開しているんですが、家計の金融資産が安全志向なのはそもそも成長期待が無いからなんですから、投資を促す制度を作ったとしても、一番大事なのは成長期待を国民が実感する事じゃないですかねえ、と思うんですけどぬー。

まあ内容についてはお察しのいつもの話しなんですけど、証券会社とか証券系シンクタンクとかの出身者ならともかく、メーカー出身の中村さん、何でこんなに家計の金融資産で株買わせるネタがお好きなのかってのが不思議ちゃんではあります。


・実は会見が非常に難解なのだ

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221208a.pdf
中村審議委員記者会見
――2022年12月7日(水)午後2時半から約35分
於 松本市

・・・・・・あのですね、こちらなんですけど多分斜め読みする分にはフンフンって感じかもしれないのですが、駄文のネタにしようとすると結構解読するのが大変な質疑応答でして、どう大変なのかは一度上記URL先の文章を根詰めて読んでみるとアタクシの言いたいことが伝わるかと存じます。


#本日はお家の事情でこの辺で勘弁





2022/12/08

お題「野口審議委員の会見に味わいがあったので結局その2を引っ張ってしまいました」

ナンジャコリャと思ったら事件の経緯がアレ過ぎてビビるなど
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221207/k10013916511000.html
「どちらが埼玉で有名なヤンキーか」で中学生大けが 11人逮捕
2022年12月7日 22時27分

〇野口審議委員会見ネタの続き〜大本営の本音がダダ漏れでおもろいので

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221202a.pdf
野口審議委員記者会見
――2022年12月1日(木)午後2時から約35分
於 秋田市

・何度読んでも味わいが深いのと話の都合上昨日の引用部分を再掲しますが

昨日引用した最後になったこの質疑ね。

『(問)

今の質問の確認みたいで大変恐縮ですけれども、賃上げが 3%を達成されたら直ちに金融政策転換ということにはならないというふうにおっしゃられてまして、つまりこれは春闘、来年の春闘が終わっても一年以上は、少なくとも状況をみる必要があって、2023 年中、年度中、これについては政策転換・修正がないというふうな意図でよろしいのかというのが一点目です。(後半割愛)』

この点、(今日会見議事録が出てきますけど)昨日の中村審議委員の会見では(ヘッドラインしか見てないけど「春闘で3%になったから直ぐに政策の見直しをするわけではない」みたいなのがありましたけど、なにせ元々は浜田大先生が「賃金はむしろ上がらない方が良い」位の話をしていたのに、いまや賃金ガーになり、しかもそれだけだと春闘で上ぶれしそうなので、今度は「賃金上昇の定着ガー」と言い出す、という有様な訳ですけれども、じゃあこれは本当の本当にゴールポストを動かしているのか、というと実は両にらみの展開になってきているんですよね。

『(答)

まず、具体的に 23 年か 24 年かということは、これは、要するにデータ・ディペンデントということになって、その時の経済状況次第であるということだと思います。』

データディペンデント、という時点で「賃金上がったのを1回見ただけでは不十分」と言ってるのに対する逃げ口上になっていて、賃金の持続的な上昇が、とか言いながらそうじゃなくてデータを総合的に判断しました、で君子豹変する言い訳をきっちりと用意する両建てテクをつかっているんですよね。

しかもこの理由が、

『これは各国の中央銀行の対応をみても、なかなかここまでの高インフレが続いている中で、いかにインフレを抑制していくかということで、今、各国中央銀行が利上げを進めていますが、そのペースというのは、市場が非常にいろんな予測をするわけですが、政策当局者の側としては、今、決め打ちでこうだということは、時期としても幅としても言えないというのが、これは致し方ないと。』

と、突如海外の話をおっぱじめておりますが、「先行き不透明だから決め打ちできない」と言ってるんですよね。

・・・・・・・でまあここで毎度思うのですが、日銀ってここまで散々物価見通しを大外ししてて、23年度になったら物価下がる、という見通しだってその下がる時期が展望レポートの毎に後ろに倒れている、ということで物価見通し外しまくっているんですよね、

一方で政策については「2023年度になると1%台に落ち込みますという見通しがあるので変えません!」と言ってるわけですけれども、そもそも直近で外しまくっている物価見通しをベースにして金融政策運営を金輪際変えません、というのが無理ゲーにもほどがある訳で、そういう点から言って上記の説明って、これは黒ちゃんが表舞台から去った後に「見通しに不確実性があるのでデータ見ながら慎重に運営していきます」っていう転向をする場合に備えた逃げ口上理屈なんですよね。

もちろん、「備えた逃げ口上」であって、本当に転向するかどうかはわかりませんが、いざとなった時に立ち往生しないように、今までの全ツッパリモードを基本としつつも、色々と大本営が両建てをちりばめだしているのを野口さんがそのままダダ漏らししている、というテイストな訳ですね。

ちなみに余談だけど、アタクシは個人的予想(あくまでも個人ですよ)としては、23年度になってもそう簡単に物価は下がらんし、下手したら1回大きめのインフレになってもおかしくない、と思ってる口なんですけど、一般的に経済分析している方々のお話だと日本の場合まだまだプロフェッショナルフォーキャスターの皆さんは物価上がらん方の話をするんで、その辺りが実は日銀のこの屁理屈を後押ししている面があると思います。もし日銀の物価予想がプロフェッショナルフォーキャスターと全然違う、って感じだとおそらくもっと強烈に解除アタック(ただし指値銘柄はマジノ線迂回の如く迂回する)になるんじゃないかと思うのよね、いやまあ中期ゾーンとか今でも大概に解除アタックっぽいけど。


『これだけ不確実性の高い世界経済の状況が続いていますので、その時その時に入ってくるデータに応じて決めていくしか手段がないということだと思います。』

『ですから、それは日本経済についても、状況はかなり欧米とは違うのですが、しかし何か金融政策を変えるということになりますと、』

ときまして、

『それはもちろん労働市場の状況とか賃上げの状況、これは非常に重要なデータですし、それから実際に物価の動き、今は 3%、3.5%[程度]あるいは今後もしかしたらもう少し上振れするかもしれませんが、それがやがて落ち着いてくるだろうというのがわれわれの見通しではありますけれども、』

と、一々長いんだが野口さんはしらっとここで重要な事を言ってて、

『その見通しが本当にそうなるかどうかというのは、やはりその後の経済状況、あるいはその状況を反映したデータというのを見て判断するしかないということですので、』

ということですが、現実問題として物価見通しは外しまくるも、今までの所はがっつりと「手前の上昇は一時的」で通そうとしていますので、これが外れる場合は・・・・・・・

『あるいは見通し以上に早まるという可能性ももちろんあるわけです。これは、各国中央銀行をみても、ターミナルレートが 3.5%[程度]、アメリカの場合ですね、それが、しかしその後 5%[程度]に跳ね上がるというのは、経済状況の中でそういうふうになっていったわけですので、私自身は、今現在のデータで見て、急に政策転換があるというふうには思ってはおりませんが、もし別のかなり異なったデータが今後現れた場合にはもちろん、そのテンポを前倒しするということは当然あり得るわけであり、それはあくまでもデータ次第だというふうに考えています。(後半割愛) 』

という話は、明らかにこれ、来年黒田さんの後(さすがに黒田さんの任期中にそこまでデータは揃わんじゃろという気はするんですが揃ったら任期中)になって、「物価上昇はやっぱり定着しませんわ、といってた見通しが外れました。見通し外れたのは遺憾ですが、日本経済のためにはこちらの方がよかったですねー(ニッコリ)」と大勝利宣言をすることのできる理屈も用意して、(別にするとは言ってない)両にらみしているんですよね。


以上、昨日の繰り返しでしたが、読みながら色々と今整理をしている段階なのですいません。


・では物価の基調とは何ぞや

ということで昨日間に合わなかった質問になります。今回の会見の質問はきちんと質疑がストーリーを踏んでいて、大変に良い質疑応答だったとおもいます。お蔭で大本営の発想がダダ漏れになったし。


『(問)

一点目は確認なんですが、この物価の基調とおっしゃる際は、これは消費者物価の例えばコアコアの話をされているのか、もうちょっと様々な指標を見ての概念ということなのかをちょっと確認させてください。

二点目は、賃金と物価の二次的な波及というか好循環のようなものが、なかなか今はっきり見えてるわけではないということだと思うんですが、そういったものが生まれる可能性というのは、例えば今年初めに比べてだいぶ高まってきているのか、一方で、物価の上昇は消費者には直接は悪い話で、消費が冷えてしまったり、海外経済の不確実性から賃金動向に不透明感が漂うとなれば、来年を展望した場合、この二次的な波及という可能性はむしろ低くなっているのか、その可能性をどうみてらっしゃるのかをお願いします。』

野口さんがちゃんと回答するから質問の方もちゃんとでき、ってのがあって、本来上記の話しとかこの話ってのを黒田総裁に説明してほしいんですが、黒田さんは完全に筋を外した回答によって蒟蒻問答に持ち込んでしまうという現代の世界各国の中央銀行トップの行う会見として最もと言って差し支えないくらいの不誠実低レベルな回答をするので、会見が酷いことになるんですよね、まああと3回見れば終わりだから我慢するけど二度と表に出てこないでほしいわ。次に出るときには大インフレ批判に立たされた時にコンコルド広場に引き出されて以下自粛って時まで結構です。

野口さんの回答ですが、

『(答)

まず、最初の物価の基調というのは、これはなかなか実際には難しいわけでありまして、それを色々な指標をわれわれも考えて、コア、コアコア、それから刈込平均値ですね。いくつか基調を、かなり近似するのではないかというふうに思われるような色々な指標を念頭に置いてはいるわけですが、これは、どれも完全ではありません。』

では日銀が毎月出している「基調的な物価」とは何なんのかという話ですが、今の日銀は「やりたい政策(現状維持ですが)に対して適合的な理屈を引っ張り出してくる」というのが業病のように定着しているので困ったもんです。

『完全ではないのですが、私の個人的な見方を言わせて頂きますと、』

ほほう。

『やはり一番コアにあるもの、物価のうちコアコア、コアか分からないのですが、基本的に最もコアになるのは何かというと、やはり賃金ではないかと。』

はい??????????????????

『つまり賃金、要するに賃金あるいはサービスを一番反映するサービス価格。』

でたーーーーーーーーーーーーーーーー。

『これは、私は何回もお話ししている通り、アメリカと日本と比較して一番大きな違いというのは、アメリカの場合、賃金は上がり、サービス[価格]も上がるわけです。しかし、日本はサービス[価格]が殆ど上がらない。だから賃金も上がらない。賃金が上がらないから、サービス[価格]も上がらない。』

これ「私は何回もお話している通り」って日銀が賃金連呼する前に行ってたかよって話だし、そもそも置物リフレ理論では一般物価の話はあっても、個別コンポーネントに分解してどうのこうのという話は無かった筈なんですよね。

ただね、この「サービス価格が上がらない」とか「粘着的な物価」という話は別に野口さんの専売特許な訳ではなくて、寧ろ最近の日銀の言い訳はこっち方面にシフトしかけていたんですよ。

どういう理屈かというと「財価格は経済状況に応じて(景気に応じて需要が変動するものなのだ)変動が大きい」一方で、「サービス価格は経済状況に対して粘着的(景気に応じて需要が変動する感応度が低い)」なので、結局の所サービス価格の部分が中心的にどこにいるのか、というのが全体の物価が中心としてどこにいるのか、というのを規定しますよ、っていう理屈でして、これを結構繰り出してた時間帯があったのは確かなんですよね。

『そういう状態であり、ここの部分がきちんと上がってこないと、おそらく持続的・安定的に[物価が]2%、毎年毎年 2%近傍で上がり続けるという世界には入っていかないということだと思います。』

この理屈は、賃金が何年間も続いて上昇するのを確認するまで云々、というよりははるかに説得的な説明になっている(個人の感想です)訳でして、野口さんの回答のこの先の部分で言及される先日の安達審議委員の講演でも粘着的物価コンポーネントの話がありましたが、サービス価格の物価上昇率の分布を品目で並べてどういう分布をしているから、って話は少なくとも日米で比較して出されると何となく「インフレ期待がこうなっている」ってのを観察するのに尤もらしい観測結果を与えるんですよ。

『では、そういう指標というのはあるのかというと、なかなか難しいのですが、例えば一つ、前回、安達[審議]委員が金[融経済]懇[談会]で言及されたと伺っておりますが、アメリカのFedの方でよく出ている粘着的CPI、スティッキーCPI、それからフレキシブルCPIという指標、これはアトランタ連銀のホームページに出ているようですが、これは、粘着的というのは当然、賃金が最も粘着的ですので、それを反映してサービス[価格]あるいは家賃、そういうものが一番粘着的な傾向を示すわけです。それに対して、石油やエネルギーというのが非常にフレキシブルに動くと。やはり、物価の基調に一番近いというのは、物価の中でも粘着的な部分であるということで、Fedではそういうものを公表しているわけです。そういう意味で言えば、こういった指標も、一つ参考になるのではないかというのが私の個人的な印象です。』

ただ大本営は最近この粘着的CPIの話を説明の前面にもってこなくなっていまして、そらもう理由は簡単で、例の基調的な物価(日銀謹製)で分かるように、今まで全然動いていなかった加重中央値とか最頻値とかが動き出しているという現象が既に発生しておりますので、この粘着的CPIの推移の話をおっぱじめてしまうと、「こんなに上がってるんだから緩和政策の緩和度合いを修正すべきなのではないか」という結論が導かれてしまうような流れになってしまって、自分で自分の首をしめるもんだから、今回の野口さんのようにわざわざ自分から言ってしまうってのは単に無邪気なんだと思うのですけれども、これが実は大本営の意図があって、さっきの「データディペンデント」の話と合わせて(わざわざ再掲した最初の伏線ここで回収)考えると、この「粘着的CPI」を政策を引っくり返すときには使ってくる可能性があるという諸葛孔明の石兵八陣のような埋伏地雷となっている訳です。

逆にこの数字が弱くなってきたら政策をいじらない口実にまた大々的に出て来るのでこれまた両にらみ。


『それから、もう一つですけれども、好循環が高まっているか否かということに関して言えば、私は、明らかに、以前の状況よりも、例えばコロナ前の状況と比較しても、かなり高まってきているのではないかと考えております。』

この部分について、まあこういう回答するの素直に経済物価見れば当たり前だし、全然変わっていないとか言い出す方があたおかレベルになるので、ここは野口さん素直に言ってますよね、ってことですが、この辺りだってもっと留保をつけた言い方をすることもできるのに、開口一番で出てくるのはこれですから、やっぱり賃金以外の部分だって本来は勝利宣言しておかしくない状況なんですよね。ひとえに国賊黒田が悪い。

『それは一つはコロナ前の状況で、例えばエネルギー価格とかそういったものが上がっていた時期もあったわけですが、あるいは、一定程度円安が進んでいった時期もあったわけですが、そういう時期でも実際に川下の段階、消費者物価の段階に転嫁されたかというと、殆どできなかった。つまり、それは企業が価格転嫁をしようとしても、なかなか、そうすると売れなくなってしまう。だから結局元に戻すしかない、ということが続いてきたということの表れであったと思います。』

『しかし、今回に関しては、確かに完全に価格転嫁は難しいということは経営者の方々はおっしゃるわけですが、しかし、色々なデータを見ていますと、実際に行われてきているわけです。』

そうなんですよ。この違いは大きいんですよね。でもこれを正面切って言うのは割と初見に近い気がする。

『だからこそ、食品を含めてこれだけ 3%を超えるぐらいのインフレが起きているわけであり、これは 3%ですから、企業物価の上昇に比べれば、まだまだ低いわけですけれども、今までの日本の状況から考えれば、相当程度の転嫁が行われてきている。』

『企業の販売価格の見込みというのを見ても、上げていく方向にあるというのは明らかですので、今後、価格転嫁が相応に進んでいくということは、かなり言えるのではないかというのが私の印象です。』

これはどう見てもノルムの変化です本当にありがとうございました。

『問題は、それに賃金、賃上げがついてこないと、これまた、同じことになってしまうわけです。賃金が上がらないということになりますと、これは当然、消費者がそんな値上げを受け入れられないということになって、また元の木阿弥になってしまうわけです。そこで、賃金、賃上げがきちんとついてくるのかどうか、これが一番大きな今の焦点であると、そういう意味で言えば、春闘に非常に注目しているわけであり、そこで 3%程度のベアが実現すれば、非常にこれは、われわれがかなり望んでいた展開に近づいて、少しずつ近づいていくという確証が得られるのではないかというふうに思います。』

って説明で、この辺の話普通にまともに説明してるじゃんって話なのですが、この理屈ですと別に賃金の上昇を何年待つという必要は無いんですよね。


・・・・・昨日引用した部分でもそうなんですが、説明の最初では「政策を1ミリも動かしません」という結論先にありきの話をしているのですが、細かくその内容を突っ込まれると「あれ??最初に言ってた話と違くね?????」という説明になっているんですよ今回の野口さんの説明って。

これをまあアタクシは大本営の本音ダダ漏れ、と称したのは、最早今の政策を絶対動かさないと息巻いているのは黒田さん(と多分若田部さん)だけであって、他の方々は「いやこれだけ情勢好転してるんだから別になんかあってもいいんじゃねえの」と濃淡有れども思ってて、黒田さんと若田部さんを厄介払いしたらすこし変えましょうとなっているんじゃなかろうか、とまあ解釈しましてこういう言い方にしてるのと、そもそも野口審議委員の今回の金懇テキストのHTML公開が同時、というあたり完全に大本営に取り込まれている感が強いので、その本音をだしている、という解釈な訳です。

ただまあこれが単に野口さんの感想として、という事なのかもしれませんのでそう決め打ちをしてもアレではあるのですけれども、そうは言っても置物一派で入っている筈の野口さんが普通に物価目標達成に向けて進展しているデータが色々とあるよね、という話をするのは、少なくとも黒ちゃんのように経済物価状況がどうなろうとも俺様の金融政策を見直すなんてするかコノヤロー、みたいな事ではない、というのが示されている訳で、政策見直しとかいう話になった時に反対に回るようなタイプではない、という票読みになるかと存じます。


最後の質疑はどうでもよいので割愛します。



〇中村審議委員の金懇、と思ったら時間切れなので明日成敗しますが

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/ko221207a.htm/

HTML版しかまだ出てないですな。今日は一か所だけ。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/data/ko221207a1.pdf

前半が政策の話で後半は中村さんが日本経済の成長力を挙げるための課題的な話があるんですよ。

PDFの6枚目『4.日本の経済成長』ですけど、

『2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成し、そのもとで持続的な経済成長を実現するうえでは、経済成長とともに賃金も上昇していくことが重要です。しかし、日本経済は長期に亘り「低成長・低インフレ・低賃金上昇」に陥っており、こうした状態を実現したという状況には至っていません。そこで、ここからは、米欧と異なる現状の日本の経済・賃金構造の課題についてお話した後、日本経済が再び力強く成長していくために私が必要と考えております、企業・雇用・家計金融資産の3つのダイナミズムについて、私自身の民間企業での経験も踏まえてお話したいと思います。』

と来てからの最初の小見出し『(1)日本の経済・賃金構造』以下を読んで泣いた。

『日本の経済・賃金構造において、私自身が変革の必要性を感じている主な特徴は、以下の3点です。』

ときまして、詳しい中身は時間が無いので割愛しますが、

『1点目は、日本社会では「守りの意識」が強すぎる、という点です。』
『2点目は、新陳代謝の低さです。』
『3点目は、環境変化への対応力の問題です。』

とあるんですが、とくにこの2点目、超低金利政策で企業の負債コストを極端に下げた状態を延々と継続することによって新陳代謝の低さを助長しているのはどこのだれでしょうか、って思わず声上げながら読んでしまいましたよアタクシ・・・・・・・・・


ということで本チャンは明日ですすいませんすいません。







2022/12/07

お題「大本営の本音がダダ漏れしているかもしれない(個人の妄想です)野口審議委員の金懇会見鑑賞」

さすがイナバウアーさん良い事をおっしゃる。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC064LN0W2A201C2000000/
NHK次期会長の稲葉氏 「公共性の使命」日銀に通ず
ネット・IT
2022年12月6日 20:41 (2022年12月7日 5:17更新) [有料会員限定]

ところで総裁様の意地と面目の為に政策を1ミリも動かさないという目的をもって、意味のわからない10年0.25%を無理矢理維持しようとしてひたすら無茶な市場介入を行っている日銀に「公共性の使命」ってあるんでしたっけ?????


〇野口審議委員の会見は中々の味わい過ぎて実は1日で終わらなくなってしまいましたサーセン

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk221202a.pdf

昨日つい金懇挨拶の方でハッスル(某証券ではない)してしまったのですが、よく考えたら今日は中村マリーアントワネット委員の金懇@長野もあらされるので、ヘロヘロと成敗して参る所存にてありまする。

質疑応答8ページあるのですが最初の2ページが冒頭質問にご当地質問になっておりますので、そこは全部かっ飛ばして2ページ目のケツから参ります。


・ゴールポストを次々と動かすのでしょうかという意味を籠めた質問ですね(春闘と政策見直し)

ということで実質最初の質問から参ります2ページ目のケツですね。

『(問)

午前の講演でも、賃金と物価の相乗的上昇が非常に重要だと述べられていて、以前の金融経済懇談会でも 3%程度の賃金上昇が必要だとおっしゃられたと思うんですけれども、次回の春闘が一つ節目、鍵になると思うんですけれども、ここで仮に3%程度の賃上げが確認されたとなると、人々の物価が上がらないというそのノルムというのが一つ転換したと言えるのか、すなわち今の金融緩和を見直す環境が整ったと言えるのかというのがまず一点目です。(後半割愛) 』

後半は政策見直しの手段の話でこっちも長いので結果この質疑大演説になってしまうのですが、やっていると時間がエライ掛かるので後半割愛しますね。

ところで、何でエライ時間が掛かるか、という問題ですが、野口さん黒ちゃんよりもまともだと思った点があって、もし黒ちゃんにこのような質問をすると、前段の部分は話を誤魔化す必要があるので、まず後段(割愛してますが)の部分、即ち金融緩和の見直しについて「今」の話を延々と繰り広げて質問の筋を外してしまって、賃金の話は仮定の話なのでシランガナ、で逃げちゃうはずなんですよ。

まあ慣れの問題というか世間ズレの問題というか悪人度の違いの問題というか、ってな感じだとは思うのですけれども、野口さんの場合は正面切って回答しているのは黒田さんよりマシだなと思いました、というか明らかに黒田さんの記者会見の質疑応答の態度が不誠実極まりないのですが、まああの不愉快な会見を見るのもあと3回だと思うと赤飯炊いて祝いたくなるわ。

あ、すいません引用引用。なんか大演説になっています。


・金懇挨拶テキストだけではなく会見でも完全にリフレ派語録ではなく大本営用語を使う野口さんですね

『(答)

まず、賃金、賃上げと物価の好循環というのは、私だけではありませんが、とりあえず、この 2%の物価安定の目標を達成する一つの重要な前提条件であると考えているということは再三、強調させて頂いた通りです。』

昨日も悪態をつきましたが、元々の置物一派の理論は

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズムー 「第一の矢」の考え方 ー
京都商工会議所における講演
日本銀行 副総裁 岩田規久男

にありますように、一丁目一番地が「インフレ期待の引き上げ」だった筈でして、リフレ派の先生なんだからせめて「賃金の上昇こそがインフレ期待を引き上げる大事な要素」とでも言ってインフレ期待の話をして欲しいんですが、「インフレ期待」とも言わずに大本営用語であらされるところの「ノルム」を使ってしまいまして、すっかりこのおっちゃん大本営に取り込まれてるわというのを再度確認した所で以下の大本営理論を拝読しましょう。


・好循環が実現できない理由がぐるぐると回っておられるがどうも人手不足が起点というつもりらしい大本営理論

しかしまあ何ですな、日銀の政策委員(総裁含む)の会見が過日始まった総裁定例会見の日銀によるユーチューブ中継開始によって「スタッフが発言要旨を取りまとめて作成したもの」から「普通に文字起こし」に替わった訳ですけれども、文字起こしになると色々とおもしろいですよね、というのが以下に出てきているので鑑賞鑑賞。

『逆に言いますと、なぜ好循環が実現できないか。』

ほう。

『本日のお話であったように、人手不足というのが非常に深刻であるというお話を多くの経営者、あるいは関係の方々から伺ったわけですが、これは当地だけではなくて全国的にも必ずそういう話を伺うわけですが、にもかかわらず賃上げというのはなかなか思うように実現されていない。』

ほうほうそうですか(サービス業中心に人手確保や人手の流出阻止のための待遇改善っていう動きが増えているというようなサーベイデータもあったと思うんですけどねえ)

『少なくとも 3%といった、これはあくまでも一つのめどでありますけれども、2%の物価上昇を実現するためには、少なくとも 3%程度の賃金上昇(注)が必要だろうと。これは、これまでの経験からそういうふうに言っているわけですが、残念ながら 3%の賃金上昇(注)というものが実現できない。』

ちなみに注記の部分は『(注)会見では「物価上昇」と発言しましたが、正しくは「賃金上昇」です。』ということで、まあ明らかな言い間違いはさすがに文字起こしと言えども直す(これはパウエルやラガルドの会見でもそういうのがあるので問題ないですわな)ようです。まあそれはそれとして、

人手不足が深刻なのに賃上げが進んでいない、というご認識のようですが・・・・・・・・・・・

『それは一つには、やはり物価のノルム、つまり企業がなかなか価格転嫁できない、つまり値上げができない、これだけ原材料価格が上がっても、少しずつ確かに足元では上がっているわけですが、なかなか完全に転嫁できているという話は残念ながら聞かれないわけです。』

そうっすか???という気はしますが、「人手不足でも賃金が上がらないのは価格転嫁が出来ないから」という理論になっているようです。

『そういう状況ですと、それは一方で言えば消費者にとってみれば、そんなに物価が上がっているのに、ますますこれが上がったら困るということかもしれませんが、』

ん?????

『ただ、他方で考えてみますと、これまでそういうかたちで物価が上げられなかったことが、賃上げができなかったことにつながっているということですので、』

ん????ん??????????

『この物価と賃金が共に上がらない状況というのを変えていく必要がある、』

結局この人は何を起点に好循環を達成しようとしているんでしょうか???????と思いますと・・・・・・・・・

『つまり、物価のノルムというのを変えていく必要があると。今、ようやくその芽が出てき始めたのではないかというのが、私の今日の話の一つの眼目であったわけです。』

だったら最初から「インフレ期待に働きかけることによって適切なレベルの程よい物価上昇を定着させる」という話をして、そのトリガーは何ですねんという話をすれば良いというか、それがそれこそ2013年に置物の示した風が吹けば桶屋が儲かる置物リフレフローチャートであり、当初考えていたトリガーがマネタリーベース直線一気理論だった筈なんですよね。


さてその続き。

『そういうふうに考えてみますと、仮に 3%、今回の春闘で定昇抜きで 3%のベアというのが実現されたということになりますと、これは大変喜ばしいことです。一つの前提条件はそこで満たされた、あるいは満たされつつあるかもしれないということは確かに言えるわけで、これは非常に喜ばしいことですが、』

賃金上昇を最初のトリガーにします、って話になっているようですが、そのベースになっているのが何なのか、というのが野口さんの説明だとわかりにくいですよね。まあ人手不足だと言いたいようですが、野口さんの理屈は基本的に大本営理論になってしまっているので、大本営理論を読み解くのにちょうど良い(黒田さんはそもそも質問の筋を外してどうでもいい話しかしないので大本営理論の根幹がよくわからんのよね)ですので中々結構な鑑賞素材となっております。


・「物価安定」の達成を確認するためには金融政策をフルスロットルで吹かしまくっていたらダメなんじゃないでしょうか

ということで句点で切っていきなり小見出しを変えてみましたがさっきの句点の続きだよ。

『ただ、これはあくまでも前提条件であり、この物価と賃金が共に同時に、緩やかに上昇していくという経路を十分に確認するという作業がその次に待っているわけです。』

ほうほう。

『一年程度で、それが一回程度限り実現されても、それで終わりではありません。』

ほうほうほう。

『物価が安定的・持続的に 2%を超えて、あるいは 2%前後で安定して上がっていくという状態というのは、一年間続いてもしょうがないわけであり、それがある程度持続的に続くということが確証できて初めて、政策の転換ということが視野に入ってくると考えますと、』

はいダウト〜。

本来ですね、物価安定が達成されているという状態は「景気の1サイクルの中で平均的に物価目標水準に近い所で物価上昇率が推移している」という状態な訳でして、そもそもフルスロットルで金融緩和をしている状態で安定推移しているのを見たら政策の転換って話が無茶苦茶な訳ですよね。

まあそれ以前の問題で、物価目標の水準に近い所まで上昇してそれがただの外部ショックによる一発芸じゃない、という状態が続く中で、金融政策をフルスロットルで緩和していたら、物価というのはそれ以上に上がってしまって、適正水準を抜けて今度は望ましくない物価上昇になってしまう筈だし、そもそもお前らの金融政策が強力な政策で効果がある、と思ってるんだったら、間違いなく1年間以上も2%物価の状態で金融政策をフルスロットルで緩和してたら物価は上放れる筈だし、そういう強力な政策やってたんとチャウのかと小一時間問い詰めたいし、何なら(黒ちゃんに聞いてもどうせ暖簾に腕押しなのでチョロそうな審議委員の金懇会見捕まえて)誰か会見で聞いてくれませんかねえ、と思う訳であります。

「委員は2%の物価上昇が定着するまで今の超強力な金融緩和政策を続けるべき、とのことですが、超強力な金融緩和政策をあまり長期間続けてしまうと2%の定着どころか望ましくない上振れが起きるリスクが高まると思うのですが、そうではないというのであれば今の金融政策は物価に対して効果が小さいと考えているのでしょうか」とか何とかwwwwww

しかもですね、野口審議委員は昨日ネタにしましたように、金懇の説明において欧米で現在起きている望ましくないインフレの上振れに関して「私自身は、今回の世界的な高インフレには、各国・地域がコロナ禍対応として行ってきた、きわめて拡張的・緩和的な財政・金融政策が影響していると考えています。」って説明している訳でして、それこそこれまではインフレノルムが低かったから欧米みたいな物価上振れ起きてないけど、基調的な物価にしろ短観の企業サーベイにしろ、インフレ期待って上がってるとしか思えないんだから、インフレ期待が上がった後にもう一周超強力金融緩和継続したら高インフレになりゃしませんかねえ、ってお話になるのが本来のインフレターゲットの発想なんじゃないですかねえ、と思う訳です。

まあ1年じゃ足りないとか言ってるのは、

『一つのきっかけとして 3%が達成されるということが非常に喜ばしいということは言えるわけですが、そのことによって直ちに政策転換ということにはおそらくならないであろう、もう少し時間はかかるのではないか、というのが私の見通しです。(後半割愛)』

ようは賃金賃金と7月の展望レポートの時から突如変なものを食ったように皆が言い出した(その理由は4月の展望レポートで示した「コアコア物価指数即ち基調的な物価は中々上がらないから2%達成とは言い難く政策の転換はしませんよ」という理屈がコアコア物価も上がってきて怪しくなってきたから、とりあえず来年の春闘まで時間稼ぎの出来る「賃金」に話をすり替えたのであって、そもそも大本営は方便で出してきただけなのに後付けで堅牢な屁理屈を俄か建築するというのが今の状態なのですよね)のですが、この言い訳の賞味期限が近づいてきて、しかも賃金は相応に上がりそうな状態、と来ていますので今度は「1回だけでは足りない」ととりあえずゴールポストを先に送って黒田さんの退任までは持たせようというムーブのための大本営理論な訳ですよ。

ただまあ大本営は何せ日本最高級の頭脳集団だけに、理論のすり替えがただのその場しのぎなのですが、その場しのぎのくせに尤もらしい小理屈を唱える(今回の好循環もそうですけど、均衡イールドカーブとかまさにその典型)ので、こっちもついうっかりその小理屈について考えてしまって目くらましに引っ掛かってしまう、というのがあるわけでして、どうせ今の「賃金の好循環」だって都合が悪くなったらそんな話してましたっけ状態になる、という今の日銀大本営しぐさについては念頭に置いて対峙(何を対峙するんだw)するのが良いと思いますよ。



・政策の修正に関する大本営もとい野口さんの考え方について鋭い切り返しキタコレ

『(問)

今の質問の確認みたいで大変恐縮ですけれども、賃上げが 3%を達成されたら直ちに金融政策転換ということにはならないというふうにおっしゃられてまして、つまりこれは春闘、来年の春闘が終わっても一年以上は、少なくとも状況をみる必要があって、2023 年中、年度中、これについては政策転換・修正がないというふうな意図でよろしいのかというのが一点目です。』

これは良い切り返し質問だ。

『もう一点ですが、講演の中で、長期金利の上昇を厳守したい、上限を厳守している理由として 2%の達成が展望できる状況にないというふうにおっしゃられたのですが、野口委員は、2%の物価目標を達成できる状況にならない限りは、ゼロ%での長期金利目標とか上下 0.25%の許容変動幅、これを拡大する必要はないと、そういうふうにお考えなのか、この二点をお願いします。』

これは良い切り返しで、回答の最初の部分から爆笑の発作を禁じ得ない。


・さっき「好循環の定着を確認するには1年では足りない」と言っていたのに・・・・・・・・・・・

『(答)

まず、具体的に 23 年か 24 年かということは、これは、要するにデータ・ディペンデントということになって、その時の経済状況次第であるということだと思います。』

ちょwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwwwwwww

何だよそのデータディペンデントって!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

『これは各国の中央銀行の対応をみても、なかなかここまでの高インフレが続いている中で、いかにインフレを抑制していくかということで、今、各国中央銀行が利上げを進めていますが、そのペースというのは、市場が非常にいろんな予測をするわけですが、政策当局者の側としては、今、決め打ちでこうだということは、時期としても幅としても言えないというのが、これは致し方ないと。』

『これだけ不確実性の高い世界経済の状況が続いていますので、その時その時に入ってくるデータに応じて決めていくしか手段がないということだと思います。』

他国の話はいいんですけど・・・・・・・・

『ですから、それは日本経済についても、状況はかなり欧米とは違うのですが、しかし何か金融政策を変えるということになりますと、それはもちろん労働市場の状況とか賃上げの状況、これは非常に重要なデータですし、それから実際に物価の動き、今は 3%、3.5%[程度]あるいは今後もしかしたらもう少し上振れするかもしれませんが、それがやがて落ち着いてくるだろうというのがわれわれの見通しではありますけれども、その見通しが本当にそうなるかどうかというのは、やはりその後の経済状況、あるいはその状況を反映したデータというのを見て判断するしかないということですので、』

おいこらお前さっき言ってた話は何なんだよwwwwwwwwwwwwwwwwwwww

『あるいは見通し以上に早まるという可能性ももちろんあるわけです。』

ということで、つまりこの説明、大本営様におかれましては、「好循環の定着を確認するには1年では足りない」とか言っているのはただの黒田総裁任期中の逃げ切りの為の方便というか、まあキツイ言い方をしてしまえば「その場しのぎの嘘八百」であることが判明した、というのが良く分かる部分だと思いますので、こうやってちゃんと説明をしてもらえればあっさり味で本音がバレる訳です。

でもってそういうのを誤魔化すために黒ちゃんの場合は定例記者会見で「聞かれたことに対して(どうでも良ければ別だがそれ以外の場合は)質問の筋を外して回答する」というのを繰り返しているんですね、というのが大変分かりやすく示された、という意味において今回の野口さんの会見って面白いなと思った訳ですよ。

さらに以下続き読みますね。

『これは、各国中央銀行をみても、ターミナルレートが 3.5%[程度]、アメリカの場合ですね、それが、しかしその後 5%[程度]に跳ね上がるというのは、経済状況の中でそういうふうになっていったわけですので、私自身は、今現在のデータで見て、急に政策転換があるというふうには思ってはおりませんが、もし別のかなり異なったデータが今後現れた場合にはもちろん、そのテンポを前倒しするということは当然あり得るわけであり、それはあくまでもデータ次第だというふうに考えています。 』

これは大草原不可避wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


・梃子でも変えないのは黒田さんのいる間だけですねわかります

さらに後半部分の回答になります。

『それから二番目の答えですが、これは長期金利の目標、現状で[変動幅±]0.25[%]というのを守っている。これを、2%[の物価安定の目標]を達成しない限り変えないのかということですけれども、』

だだだだだだだだーーーーーーーん(ドラム叩く音のつもり)

『これもデータ次第ということなのですが、』

wwwwwwwwww

『一つ言えることは、金融政策というのは、足元の数字だけではなくて、将来それをどういうふうな経路を辿っていくのかということの方がむしろ重要なわけです。それは現在をみても、実際、ヘッドラインも含めてあるいはコアCPIも 3%を超えているというような状況でありますが、だからといって、2%を超えているならじゃあ金融引締めは何でしないんだと、こういうような声も当然あるわけですけれども、』

お、藁人形来ましたね。

『これはわれわれとしては、物価の基調を考えると、まだ 2%を超えているような状況にはない、やがてこれは剥落していくだろうというふうにみておりますので、現状の金融緩和を続けるという判断になったわけです。』

ほうほうほうほう。

『もしこれが逆に基調が上がっていくということになりますと、これはある種プリエンプティブにやる可能性ももちろんあるわけです。』

えーっと、どっからどう見ても足元では基調的な物価として日銀が観測している物価もあがっていますし、短観の企業物価サーベイにしても一般的なインフレサーベイにしても上がっていますのでこれは・・・・・・・(ゴクリ)

『ですから、当然、今は 2%いっていないけれども、将来的に 2%を超えていくということが確実になれば、それは政策転換がその時点で行われても全く不思議ではないというふうに思います。これも一律にこうだからこう、という機械的な対応ではないということは申し上げておきたいと思います。』

ちょwwwwwwwww直前の質疑応答と全然違うじゃないのwwwwwwwwwwwwwww


・ここでお詫び

今回の会見、連係プレーなのか更問なのかはわからないのですが、この次に「じゃあ基調的な物価って何ですか」という質問が来る、という見事な流れをしめしているのですが、書いているうちについノリノリになってああだこうだとアタクシの愚感想を垂れ流してしまったので、なんと金懇会見1本なのに1日で終わらないという失態を演じることになってしまいました。マリーアントワネット金懇挨拶ネタとセットで明日続きをお送りします。


・ということでここまでのまとめ

今回の質疑応答、まあさっきの実質2つ目の部分はヘッドラインにも載っていましたが、これ最初の質疑からの落差が凄くて、しかも金懇挨拶の説明が大本営発表バリバリという物件に仕上がっていますので、まあこれって大本営の本音がダダ漏れ状態って解釈をしたくなる物件と相成っておられますが、本日の中村委員の金懇というか多分会見の方になるけど、こっちでどの程度ダダ漏れが発生するか、あと野口さんの金懇会見のようにうまく話をもっていけるか、というのはちょっと楽しみになって来ましたね(妄想と願望成分を多分に含めた個人の感想です)。






2022/12/06

お題「野口審議委員の金懇挨拶だがどう見ても大本営発表に丸乗りである」

これはもしやのワールドカップ効果(たぶん違う)
https://news.yahoo.co.jp/articles/da19e5ea2957df21de545ed2323cf331b32d3088
岸田内閣の支持率39%、5回連続の下落傾向に歯止め…読売世論調査
12/4(日) 22:00配信

なお、念のため申し上げますが結果は朝起きてから知りましたので、ワタクシが観戦したというデスノート観戦アノマリーは発動していない筈です。ワールドカップが終わったということはつまり岸田内閣の支持率はアレですかしらねえ。


〇野口審議委員の金懇挨拶と会見だがお前の口がそれを言うかという感想しか起きませんな

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/ko221201a.htm/
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
秋田県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 野口 旭
2022年12月1日

・ちなみにHTML版はエンバーゴの直後にでていました

挨拶要旨って基本的にはPDF版が先行して出て(その時間帯は上記のHTMLページは表題の後に本文が無くてPDF版へのリンクがはってあるだけ)、上記URL先に出て来るHTML版は後日、というのが仕様なのですが、一部の金懇挨拶の場合はエンバーゴと同時にHTMLバージョンが出て来る場合があります。

過去、だいたいへんちくりんな挨拶(ジンバブエ大先生など)とか、大本営と違う我が道の話をぶっこんでくる挨拶(片岡さんとか木内さんとか振り切れてる系)なんかですと、HTMLが出るのに時間が掛かるのですが、同時に出て来るというのはつまりそれだけ段取りが出来ている、ということでございまして、それはどういうことなのかというとまあお察しではあります。

ということで先週木曜日ですが、金懇挨拶がそういやあったわ(アタクシ金曜と勘違いしてた)ってなことで慌てて見に行ったらもうHTML版が出ている、という所で察してしまって、金曜はパウエル講演の内容からここまで何で反応するの米国債券市場という雑談の方が良かろうと切り替えてしまいましたが、まあそんな感じです。


・経済物価情勢の話と金融政策運営の話はただの大本営だがただの大本営であるという点に味わいがある

『2.経済・物価情勢』ってのがあって、『(1)内外経済情勢』とか『(2)物価情勢』とか、どこからどう見ても大本営発表になります。もちろん『3.金融政策』も同様で見るべきものはまあありません。

・・・・・・とは言え、この辺りで味わいがあったのは物価の話の中における説明の最後。

『ただし、もう少し長い目でみると、こうした川上から川下への価格転嫁の広がり自体もまた、「物価の基調」に影響を与えていく可能性があります。長くデフレが続いた日本ではこれまで、エネルギー等を除けば、企業は価格転嫁の実行にきわめて慎重でした。このところの価格転嫁の広がりは、物価が上がらないことを前提とした企業の行動原理が変わりつつあることを示している可能性があります(図表6)。こうした物価に対する考え方――いわば「物価のノルム」――が変化することは、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成するうえで重要なポイントになると考えられます。』

一見すると何の変哲もないいつもの大本営文脈だし、「物価のノルム」なんてのもすっかり大本営文脈なのですが、リフレ派であらされるところの野口審議委員がリフレ派の言葉じゃなくて大本営の言葉を使う、という所に「ああこの人取り込まれたのか学者ってチョロイな」と思わせる徴候のようなものが見えて取れるわけですわ。

すなわち、アタクシも鬼のようにしつこいので何度でも引用しますが例の置物フローチャート、あるいは置物式風が吹けば桶屋が儲かるQQEの波及メカニズムオリジナル版をみますと、

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf
「量的・質的金融緩和」のトランスミッション・メカニズム
ー 「第一の矢」の考え方 ー
京都商工会議所における講演
日本銀行 副総裁 岩田規久男

2013年8月28日に公表された例の桶屋が儲かるメカニズムですけど、何度も引用してるから既にご案内とは思いますが6ページの『「量的・質的金融緩和」の波及経路』にあるように、「物価のノルム」とかじゃなくてリフレ派が言ってたのは「インフレ期待」「予想インフレ率」に直接働きかけることによってどうのこうの、という話なのでありまして、「物価のノルム」ってのは本来リフレ派の文脈で言えば「期待インフレ」という話をすべき所なんですよね。

しかしながら、期待インフレに働きかける云々じゃなくて「ノルム」という一種の社会慣行のようなものを思わせる、より構造的なニュアンスの大本営用語に軽々と乗ってしまっているのがアレでして、まあ実際どうだろうとは思いますけど、恐らくジンバブエ先生とかだったら「これがまさに期待インフレの上昇であって期待に働きかける政策に時間が掛かったけど奏功しつつある」って説明をすると思われるのですが(あくまでも個人の想像だけど)、野口さん、すっかり大本営メソッドに取り込まれてしまっておりますなあという所でして、まあ日本の経済学者は使えねー(簡単に取り込まれるという意味では「使える」という説もあるけど、笑)ですわなー、ってこの大本営丸出し部分を見ておもいました。



・金融政策対応の理屈と各国のインフレの状況の説明の話に整合性が怪しげな件について

基本的に今の日銀のロジックって「パーツパーツの説明ではご尤もな説明をするのだが、全体を通してみると支離滅裂」というのがありますが、政策の部分と物価の部分の説明を見て笑ったのですよね今回は。


『3.金融政策』の『(4)世界的インフレによる新たな市場環境への対応』の途中からまず引用しますね。

『日本銀行がこのようにイールドカーブ・コントロールに基づいて10年物国債金利の上限を厳格に守り続けているのは、日本経済はまだ2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成する段階には至っていないと判断しているためです。』

ということですが、

『ドイツなど欧州各国では、過去1年の間にマイナス圏から2%超への長期金利の急激な上昇が生じましたが、仮に同様の動きが日本に生じていたとすれば、それが日本経済に悪影響を与えることは明らかです。そうした長期金利の大幅な上昇は、わが国経済への大きな下押し圧力となり、2%の「物価安定の目標」の達成をより困難なものとします。こうしたことから、私自身は、「物価安定の目標」の達成が確実に見通せない現状では、金融緩和を継続し、金利を低い水準に抑えることが重要であると考えています。』

ほうほうそうですかそうですか、ということなのですが、次の『4.世界的インフレと日本経済』というところではインフレに関しての情勢判断と要因の考察みたいなのがあるのよ。まず、インフレの要因となったものということで『(1)コロナ禍が生み出した世界的インフレ』ってのがあって、

『私自身は、今回の世界的な高インフレには、各国・地域がコロナ禍対応として行ってきた、きわめて拡張的・緩和的な財政・金融政策が影響していると考えています。』

以下説明があって、まとめに

『その意味では、各国が行ったコロナ禍対応の財政・金融政策は、コロナ禍による経済の落ち込み阻止と早期回復の実現という当初の目的を十分に果たしたと評価できます。他方で、コロナ禍以前には、長期に亘って低インフレ・低金利という状況が続いていただけに、低インフレを数十年ぶりの高インフレへと一変させるほどの力を持っていた財政・金融政策の効果を十分に予見することは難しかった面もあったのかもしれません1。』

ちなみに脚注にバーナンキの言葉を入れてるのが置物一派らしいですけど、まあこういう認識な訳よね。でもって、次の『(2)国・地域ごとに異なるインフレ動向と金融政策対応』って所で、

『以上のように、現在の世界的インフレは、基本的には、各国・地域がコロナ禍対応として行ってきた拡張的・緩和的な財政・金融政策が、結果的にそれぞれの経済における潜在的な供給能力を上回る過大な需要を生み出したことが影響していると考えることもできます。ただし、これはあくまでも世界的インフレの基本構図であり、各国・地域のおかれた状況は、個々に大きく異なります。』

と来てからの、

『というのは、脱コロナ禍局面でまず顕在化したのは、資源やエネルギーに生じた急激な価格上昇であったからです。そのため、日本や欧州各国のような資源やエネルギーの輸入国においては、インフレは需要主導というよりは、輸入財価格の上昇に伴うコスト・プッシュ型のインフレとして現れました。』

・・・・・・・あんさんさっき「そうした長期金利の大幅な上昇は、わが国経済への大きな下押し圧力となり、2%の「物価安定の目標」の達成をより困難なものとします。」と言ってるんだが、この説明だと「インフレは需要主導というよりは、輸入財価格の上昇に伴うコスト・プッシュ型のインフレ」なんだから長期金利の大幅な上昇云々関係ないじゃん、という話になるんですけどねえ。

まあそれに加えて、別にマイナス金利政策解除してYCC放棄したとしたって、日本の長期金利がそんなにバカスカ上がるかよって話もある訳で、金融引き締めに向かっている国の金利上昇を捕まえて「こんなに金利が上昇したら日本経済にマイナス」とか言うなら、そこまで上がらない程度の「修正」をすれば良いじゃんよ将来の変な金利上昇をさせないためにもガス抜きは必要なんですけどねえ、と思いました。



・どうも大本営は2%どころかビハインド・ザ・カーブによる欧米型インフレ爆発をお望みのようですな

でまあ話はその後も続くのですが、その次に米国と欧州&日本の差(ディマンドプルかコストプッシュか)の話をもうちょっとしているのですが、

『そうした相違にもかかわらず、海外の主要中央銀行は現在、ほぼ一様に金融引き締めペースを加速させています。それは、仮にインフレの原因が需要側ではなく供給側にあったとしても、現実のインフレがインフレ予想の上昇に結びつき、それがさらに名目賃金や物価に織り込まれるいわゆる二次的影響が生じた場合には、賃金と物価のスパイラル的上昇によってインフレの基調それ自体が上振れるリスクがあるためです。』

えーっと・・・・・・・・

『実際、ECBは、本年半ば以降、政策金利引き上げを加速させてきましたが、当局者が言及しているように、それは基本的にはこの二次的影響への予防措置と考えられます3。』

なんだそうです。


でまあそんな話をひとしきりしたあと、『(3)日本経済が持続的成長経路に復帰するための条件』ってのがあって、今の金融政策を続けるのが適切って話をしているんですけどね、その結論部分を読みますと、


『金融緩和の継続が必要なもう一つの理由は、賃金上昇と物価上昇との間には、前者が後者をもたらす経路と同時に、後者が前者をもたらす経路も存在するという点にあります。というのは、物価上昇が今後も続くであろうというインフレ予想が強まれば、労働の需要曲線と供給曲線もそれを織り込んで上方にシフトし、名目賃金が上昇すると考えられるからです。』

・・・・・・・・・・

『この点からは、賃金が一段と上昇するためには、長期に亘るデフレの間に強固に根付いた「物価は上がらないもの」という物価観の転換、すなわち「物価のノルム」の転換が必要です。これは物価の上昇が賃金の上昇をもたらすという意味で、インフレの二次的影響そのものです。』

えーっとすいません、物価がまだ上がっていない状態とか財政全然出してないとかいう状態なら分かるんだが、日本だって散々財政を出してきており、さらに現実の物価はコアCPI年末までに+4.0%に乗ろうという状況になっておる訳なんですけど、何故か野口さんの説明だと、

『重要なのは、高インフレによる二次的影響の抑制が必要な米欧とは異なり、インフレの基調が未だ低い日本では、インフレ予想の上昇が賃金上昇に結びつくという二次的影響こそが今まさに必要とされているという点にあります。私自身は、現行の金融緩和の継続はそのための最も基本的な要件であると考えています。』

そもそもインフレの基調が低いって何見て言ってるんだよという感じでして、刈込平均とか2%軽く超えてきてるんですけどという感じでして、しかも欧米各国が物価上昇をコストプッシュによる一時的現象とか言って政策がビハインドして今に至っているのに、それに対して何の考察もないってのどういうことなのという話ですよね。

とまあそういうことですので、どうも大本営におかれましては「政策はビハインドして物価が欧米型(欧州型っすかね)の上昇をしてしまえ」というスタンスになっておられるんじゃないか(思いっきり個人の邪推です)と言いたくなるようなアレっぷりのこのビハインド上等(しかも直前に米国欧州と金融緩和正常化や財政引き締めの立ち遅れで大インフレになっている例が目の前で展開されているのにも関わらず)というスタンスですが、そらまあ散々デフレだ何だと言われてイジメられていましたし、挙句の果てに馬鹿がボードに馬鹿ばかり送り込んで政策も馬鹿状態になってしまっているのですから、そら「国民がそうしろって言ってるんだからデフレじゃなくてインフレにしてやるわバーカバーカ」とか思いたくなるでしょうなあとも邪推かつ同情するところ大ではあるのですが、まあちょっとそうは言いましてもヤケクソにならんで欲しいわとは思うのでありました(完全な個人の邪推ですから話10分の1でこのパラグラフは読んでくださいね)。


しかしまあ何ですな、リフレ派の求めるインフレターゲットっていうのは、今の日銀大本営みたいな変な小理屈捏ねまわして、物価の現実的な水準と金融政策が整合していない(当初の「2年で達成」が未達になっても屁理屈捏ねて正当化したのもそうですし、今のように本来(別に引き締める必要は全くないけど)金融緩和の度合いを調整すべき局面になっても屁理屈捏ねて政策ステイを正当化するというプレイもそうですな)というような裁量的なものを極力排除することによって、インフレ目標達成に向けた期待への働きかけを行うし、そもそも日銀が裁量によって必要な緩和を渋ったから怪しからんとか言ってたわけなので、つまりは今の大本営に丸乗りしている野口先生って何やってるんだか、というようなお話になる、というのが今回の結論でした。


とまあそういう訳ですが、実は構成上で言えば今日のが前振りで、では大本営丸乗りおじさんの記者会見を見て味わいを感じて見ましょう、というのが続きの本編の積りでいたのですが、寒くてお布団から出るのに時間が掛かった上に(こら)つい悪態が長くなってしまってシリーズ的には前振りに近い話で終わってしまいました誠に申し訳でございません。

会見ネタは明日頑張るます。




2022/12/05

お題「田村審議委員、メディアインタビューデビュー戦でさっそくイイハナシダナーをぶっこんできました」

野口審議委員の金懇ネタをするつもりがもっと重要なのが先に来たのでこちらを。

〇田村審議委員がブルームバーグなどのインタビューに出たようですが非常に味わいがある

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-12-01/RM3Q6TT1UM0W01
物価見通し、上振れする確率高まっている−田村日銀委員一問一答
伊藤純夫、藤岡徹
2022年12月2日 0:00 JST

全部引用したい所ですがそれは流石に自粛してBBGさんの記事を見てちょんまげというところでございまして途中から。


・物価が上がるというお話

『−消費者物価の伸び

「資源価格の上昇と円安といったコストプッシュ要因と企業の価格設定行動の変化が相まって、消費者物価は上昇率を高めているが、先行きはコストプッシュ要因の押し上げ寄与のはく落に伴ってプラス幅を縮小していくとみている。ただし、減速ペースは緩やかなものにとどまり、比較的高めの上昇率が続く公算が大きい。来年度以降2%を下回る水準に低下するとみているが、これが上振れするサブシナリオの確率も高まっている」』(上記URL先ブルームバーグ記事より、以下同様)

つーか真面目な話2%下回る水準になるんかね、と思いますし、それこそ今年の6月だかに発言して物議を醸した「家計の値上げ許容度の高まり」があって賃金上がれば家計の値上げ許容度が持続的になるという話はねーのかね、と思ったり思わなかったり。

『「持続的な物価安定の目標の実現には賃金の動向がポイントになる。現状、高めの賃上げが実現される可能性が高まっている。理由は、総じて好調な企業収益や消費者物価の上昇、お互いに支え合う傾向の強いわが国の労使関係、労働市場の流動性の高まり、対面型サービス業を中心とした人手不足という要因があるためだ」』

仰せの通りですな。生活給の考え復活するでしょ普通に。

『「経済のグローバル化の逆回転や効率性重視から安定性重視への企業行動のシフト、気候変動への対応といった持続的に物価押し上げにつながる変化もある。当面、物価の動向は予断なく謙虚に見ていく必要がある」』

そういやこの前ネタにした時に完全に忘れてたんですが、ブレイナードがこの前講演やった時に、講演の最後のほうで「気候変動対応は構造的な物価押し上げ要因」ってのを露骨に言ってて、欧州は言い出しっぺだからあんまりそれ言わないけど、米国は物価押し上げ要因作りやがって的なのはどっかにあるんでしょうかねえ、ってのは思いました。

さらに、

『−賃金・物価の好循環

就任会見で賃金・物価の好循環がもうすぐかもしれないと発言したことについて「今の環境を見ると、あの時に思っていたよりも物価上昇率は高まっているし、それを受けた賃上げの機運も高まっているように感じている」』

イイハナシダナー。


・金融政策に関して

『−当面の金融政策運営

「大規模緩和の導入から10年で、日本経済はデフレではないという状況を実現し、成長あるいは雇用の観点からも大きく改善した。一方、物価はゼロインフレ・ノルム(社会規範)が強く、安定的・持続的に2%目標を達成するところまでは至っていない」

「現状は資源価格の上昇という外的ショックによって物価が上昇する一方で、コロナ禍での貯蓄やペントアップ需要が景気を下支えしている稀有な環境にある。足元は、わが国経済をしっかり支え、物価安定の目標を実現するため、金融緩和を継続することが適当だ」』

とは仰せのようですが、

『−金融政策の検証・点検

「目先は物価高が賃金や家計行動にどういう影響を与えるのか、この稀有な環境が物価と経済の好循環につながるのか、謙虚に予断なく見ていくべき局面だ。ただ、そもそも2%の物価安定の目標については、わが国の社会に根づく考え方や慣行と整合的なのかという議論もある」

「今後の物価や賃金、経済の動向を踏まえ、しかるべきタイミングで金融政策の枠組みや物価目標の在り方を含めて点検・検証を行うことが適当ではないかと考えている」』

ノルムがどうのこうのという話をしているものの、しれっと「そもそも2%の物価安定の目標については、わが国の社会に根づく考え方や慣行と整合的なのかという議論もある」とぶっこんでいるのがチャーミングで、それはノルムの変化を前提にしない話じゃん、と思いました。まあつまり2%定着させるってのは構造的な問題が発生しませんかねってえ話だったりして本音ダダ漏れワロタ。

『−タイミングと方向性

「しかるべきタイミングがいつかは、基本的に今後の物価や賃金、経済の動向次第であり、機械的にいつとか、こうなればという基準を定めることは困難だ。そうしたタイミングがもうすぐ来る可能性もあるし、もう少し先になる可能性もある」

「経済が稀有な環境にある中でこれから経済・物価や賃金がどのような動きを見せるのか、その状況次第で点検・検証をするべき局面が来る可能性があるということだ。点検・検証の結果によって金融緩和からの出口もあり得るし、金融政策の枠組みを見直す必要が出てくる可能性もある。あるいは、さらに粘り強く金融緩和を行っていくという結果になっていくかもしれない。点検・検証の結果次第で予断なく考えていく」』

しかしこれ毎回思うのだが、本来YCCの考え方っていうのは「金利を引き下げすぎた場合、増大する効果よりも増大する副作用が大きくなる場合がある」「均衡イールドカーブの水準は一定の幅をもっているが、経済物価金融情勢によって変化するものである」って話なんだから、「この1年で特に物価状況と為替市場という金融状況が非常に大きな動きをしたのだが、均衡イールドカーブに変化が起きているなら出口政策ではない意味での政策の調整が行われて然るべきではないか」って質問は出ないのかとは思うのですよね。

ちなみにこれ、日銀の想定問答集のようなものには当然回答が用意されていると思うのですが、恐らくは「この程度の動きでは均衡イールドカーブの位置に変化は生じませんよ」って話をすると思うので、「じゃあその算出過程を示していただけませんでしょうかねえ、なんならスタッフペーパーでも良いんですけど」って更問したいんですけどね。


・出口戦略をソフトランディングさせるの無理だと思います(債券市場に関しては)

『−出口戦略

「点検・検証の結果、金融政策の正常化が必要ということになれば、出口に向けた戦略や方針を金融政策決定会合で議論し、適切に情報発信をしていくことになろう。グローバルに歴史的な低金利が長年続いてきた中で、民間経済主体はさまざまな方法で収益の確保を図っており、ノンバンクを含めて思わぬところにリスクが蓄積されている可能性がある。また、債券市場の機能度、流動性の低下が指摘されており、経験のないような事象が顕在化するリスクも想定しておかなければならない」

「出口戦略を検討するにあたっては、市場にどのような影響を及ぼし得るのか、また市場参加者の備えが十分なのか確認を続けるとともに、適切なタイミングで出口戦略あるいはその前段階として出口の方向感や選択肢について、市場とコミュニケーションを取ることによって、市場参加者があらかじめ対応を検討し、備えておいてもらうことも金融市場の安定の観点から重要だと考えている」』

ということですが、そもそも債券市場サーベイ(まだネタにしてないけど)に示されるように機能度最低おぶ最低になっているのも酷いのですが、最近は日銀の政策に関しても「黒田がいるうちに政策を1ミリも動かさない、そこには理由も何もなく「黒田が変えたくないと思っているから」という背景しかない」というのがすっかりと人口に膾炙されてしまったせいで、経済物価見通しを背景に真面目に政策動向考えよう、って発想が完全に市場の方からもなくなっていまして(寧ろ外国人投資家(投機家?)の方がナイーブにファンメタに反応してるっしょういやマジで)、挙句の果てには誰とは言わないけど「財政拡大圧力があるから日銀のYCCは続くでしょう」みたいなジンバブエ見通しまで示す向きがあったような無かったようなという職業倫理あるんか的なのを見たような気がしたんだが気のせいだったらすいません。

今のYCC自体ですけど、なんかの拍子に海外金利が一段の低下をした時に日本の金利が連れて下がって0.10%に近いくらいの10年とかになってくれればそこで初めてレンジの拡大なり解除なりが可能になりますが、もうどっからどう見てもカレント3銘柄とチーペスト周りだけ無理矢理ピン止め政策(チーペ回りはまだ25まで言ってませんけどカレント3銘柄の引値はカーブから乖離すること乖離すること)になるような金利環境下では、柔軟化したらダダ売られ(ゆうて超長期は相対的に売られないと思いますけど)になるし、事前のコミュニケーションとか無理だし、だいたいからして、特にYCCの過激化が大いに進行した今年の3月以降の動きによって、市場の方は日銀が市場の機能度とか流動性とかをまったく無視して黒田総裁の意地と面目、つまりは日銀の面子>>>>>>>>>>>>>>>>>国債市場、という姿勢を鮮明にしている訳で、そーゆー仕打ちを受けてる市場なんかコミュニケーションしたって言う事聞きませんですわよ(そらまあ市場の人も大人だから面従腹背するんですけど)ってな感じですわな。

・・・・・てかもしかして日銀って何とかストとかのいう「日銀の政策への信認があるから10年カレント0.25%から叩き売られない」っていうのにある「信認」の意味勘違いしてるんじゃないかなとは思いますけどね。日銀の意地を守るために何でもする、というナントカに刃物な状態であることについて疑いは持たないという意味での信認であって、日銀のやっている行動自体が邪悪だという意味では信認完全に失ってますもん(あくまでも個人の感想です)。


いけませんついまた書いてて血圧を上昇させてしまいましたが(笑)、田村さんのおっしゃる「事前の情報発信」はまあ無理だと思いますよいやマジで。もう騙し討ちで抜き打ち解除する以外に出口は無い、という事態にまでなって来ちゃいましたよね残念な事に。


・フォワードガイダンス変えるのは黒ちゃん以降ですねわかります

『ーフォワードガイダンスの見直し

「感染症の抑制と経済活動の両立が進んでいるが、わが国経済は依然として、感染症の影響を受けている。先行きも経済の下振れをもたらすリスク要因として注意が必要な状況にあることは変わらない。フォワードガイダンスの取り扱いについては、その時々の経済・物価情勢を踏まえて毎回の決定会合で適切に判断し、しかるべきタイミングで行われるであろう点検・検証の結果なども踏まえて考えていく」』

ふーん。



・副作用問題の中で財政健全化の話をぶっこんでいるのは結構な過激派なんですよここ重要ポイントですよ

『−副作用対応

「大規模な金融緩和の主な副作用は、金融機関収益を圧迫し、金融仲介機能に悪影響を与える可能性と国債市場の機能度の低下がある。この点、現状では金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑に発揮されていると判断している。また、国債市場の機能度が低下している側面は否定できないが、国債補完供給の要件緩和などさまざまな手段が講じられている」』

まあこれはこれとして、問題は次。

『「この他、財政のモラルハザードもよく指摘されるが、財政については政府・国会において適切に運営されるべきものと理解している。』

>この他、財政のモラルハザードもよく指摘されるが
>この他、財政のモラルハザードもよく指摘されるが
>この他、財政のモラルハザードもよく指摘されるが

ひえーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!

比叡山案件キタコレという感じですが、まさにこれから年明けに通常国会が始まり、来年度の予算を議論しましょという話だし、補正予算の話もありましたし、ってなこのタイミングでドカーンと財政ネタをぶっこんでくるのって、戦闘力が雑魚レベルの日銀にとってみたら結構な蛮勇にも程があるお話なんですよねえ(個人の感想です)。

だってあーた財務省様から見たら人が予算案でヒーコラ言ってるときに何を祐天寺な話だし、政治に対してもまあ一定の嫌味になっていて、しかも時期が時期(これが予算終わって次の話も何もない夏ごろに言うならまだ穏当)なので、いやーこれはぶっこんだなあとは思いました。

ま、この記事「どういう質問で上記の文脈が出てきたのかがわからん」という最大の難点がありまして、これについても副作用に関する質問の中で財政規律との関係について真正面から質問されたら上記のように回答するしかないのでありますので、その可能性がある以上割り引いて読む必要はあるのですが、予算だ何だのタイミングで(一般論とは言え)財政もモラルハザードも指摘されるが、というイタコ芸を使っていますが財政規律について正面から言及するのは中々お茶目なムーブでありまする。

更に続きですが、

『また、本来市場から退出すべき企業を存続させ、経済の構造改革を遅らせたり、生産性に悪影響を及ぼしたりするといった指摘もあるが、この点は、市場原理の下で企業や金融機関などの経済主体に委ねられるべきものだ。あくまで金融は経済の黒子であり、大規模な金融緩和が、これらの事象をもたらした張本人というわけではないと考えている」』

張本人かは兎も角環境作ってるんだから戦犯でしょ、とおもったら返す刀で。

『「ただし、長期にわたる大規模な金融緩和が、発揮されるべき市場原理の効果を抑えてしまっている面は否めない。こうした点も含めて、政策運営にあたっては常に効果と副作用を比較衡量しながら、最も適切と考えられる政策を実施していく必要がある」』

「長期にわたる大規模な金融緩和が、発揮されるべき市場原理の効果を抑えてしまっている面は否めない。」って早速直前の発言を打ち消しに回っていまして、良い感じで本音ダダ漏れという実に良い会見でございます。


・これは田村さんが胆力でぶっこんできたのか別にささやきがあったのか

ということで以下田村さんに多少失礼な妄想を入れながらで誠に恐縮ですが。

田村さん、就任記者会見の起きは(昔から超有名だった)高田さんの発言の方が報道ヘッドラインを沸かせていましたけど、就任記者会見の時だって実は今の政策の副作用とか見直しとかいう話を先にしたの田村さんであって、高田さんは田村さんの発言を受けて「私もそう思っていました」みたいな感じだったので、最初の時点から田村さんの方がきっと武闘派だろうなあ、とか何とかアタクシおもっていた訳ですよ。

従いまして今回のインタビューに関しては田村さん胆力でぶっこんできたわとは思うのですけれども、それにしても財務省が予算やってるタイミングで財政規律の問題とかまで突っ込んで来るの中々の突撃振りでして、このあたり(インタビュー自体は当然事前に予定されていて準備してたでしょうから)何らかの調整の元で田村さんが戦車で突撃してきたのかとか、そういう妄想をすると中々味わいが出て来るインタビューでもあります。

明日ネタにしますが、野口審議委員の会見でも何かお前リフレ派の癖に何言ってるの感漂う話をしてて、なんじゃこのオッサンはとは思いますが、一方でやはり目標達成系の話がメインじゃないど出ているというのもありまして、これはひょっとしたらひょっとするのかもしれない、と思わせてくれるサムシングの徴候(とかなりヘッジ入れてますが)を感じるところであります。



・クソどうでもよいのだが朝日新聞は田村さんのインタビュー有料にしか載せないとな

https://www.asahi.com/articles/ASQD17F79QD1ULFA00R.html
大規模緩和「点検・検証を」 日銀・田村委員、物価目標も対象に
有料記事
徳島慎也 聞き手・徳島慎也2022年12月2日 0時01分

これなんですけど、記事の出だしが

『日本銀行の田村直樹審議委員(61)が1日までに、朝日新聞のインタビューに応じた。』(上記URL先)

ってありまして、最初こっちの方が「田村んのインタビュ出てるでー」って話になって見に行ったのですが、この記事のバージョンだと少しは内容が書かれてますけど、確か最初に見た時はもっとリードの部分短くて、インタビュー内容も含めてみたけりゃ金払え状態だったんですよね。

いやまあ営利企業だし、そもそもインターネット版とか無い時代は新聞本紙買わないと入手できなかったんだから別に有料記事にするなとは申しませんけど、おたくの新聞って黒田総裁の記者会見で偉い記者さんが散々黒田総裁に噛みついていたじゃないですか。

ということは、こういう政策の見直しに関する重要な発言って幅広く公開して世に知らしめるってのは朝日新聞さんとしての社会の木鐸という役割なんじゃないの、って思ってしまったんですよね。

これが物凄く苦労して取ったスクープ的な単独インタビューってんだったら思いっきり有料にするのは話が分かるんですけど、日銀の政策委員の大メディア向けのインタビューって基本的に輪番みたいなもんじゃんと思いますし、サムネ見たらどこからどう見てもBBGの記事と朝日の記事の田村さんのネクタイ同じなんですけど(共同なのか同日別々なのかはわからんけど常識的に考えたたら同日ですよね)。

ということで、総裁会見であれだけ威勢よく黒田批判をしてたのは、ただのエエカッコシイなのか権力批判する俺様カッコイイなのか存じませんけど、お願いですから日銀総裁記者会見を自己顕示の道具にしないでいただきたいものですわな。と今回の朝日新聞の措置を見て実に惜しい事だと思いました、






2022/12/02

お題「パウエル議長講演の続きですが何ですかこの米国債券市場の反応は・・・・・・・・・・(驚)というメモです」

いやー昨日のパウエル講演ネタ、全然市場の反応見ないで(マジ)書いてたから何か物凄い勢いで市場の反応と違う感想かいていましたわ。

・・・・・・ということでロイターを(世のため人の為(スペインの為にはならない)にW杯の途中経過とかが出て来そうなページを踏まないで)見てたら債券買い買いモードが更に来るという謎の展開っすね。うーんわからん。


〇少なくとも講演テキストは従来通りなんだが・・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20221130a.htm

労働市場の話の部分をネタにする、とか言ってましたが、今書きましたように昨日はベンダー何も見ないでいきなりパウエル講演を見に行って書いてたんで、市場の反応と全然違うような受け止めをしてたんで、その言い訳でも後で書きます。というか昨日野口審議委員の金懇が予定されてたの忘れた(2日と勘違いしてたんですけど、今日は会見要旨が出る方の日でした)わと思います。

・労働市場に関して

『In the labor market, demand for workers far exceeds the supply of available workers, and nominal wages have been growing at a pace well above what would be consistent with 2 percent inflation over time.3 Thus, another condition we are looking for is the restoration of balance between supply and demand in the labor market.』

労働市場の前のところが「一般サービスのインフレーション動向には労働市場動向が重要な要素」という締め方でここに入っていたんですが、労働市場に関しては労働需給の動向が需要という話をしております。

『Signs of elevated labor market tightness emerged suddenly in mid-2021. The unemployment rate at the time was much higher than the 3.5 percent that had prevailed without major signs of tightness before the pandemic. Employment was still millions below its level on the eve of the pandemic. Looking back, we can see that a significant and persistent labor supply shortfall opened up during the pandemic-a shortfall that appears unlikely to fully close anytime soon.』

でもってその次に労働需給についての話、となるのですが、ここでは「パンデミック以降の労働供給が落ちた後伸びなくなっていて、しかもこれが「a shortfall that appears unlikely to fully close anytime soon.」とモドランチ会長になっている、という話をしております。

次の所では実際の状況について説明しています、張っておくけどまあ流してOK。

『Comparing the current labor force with the Congressional Budget Office's pre-pandemic forecast of labor force growth reveals a current labor force shortfall of roughly 3-1/2 million people (figure 4, left panel).4 This shortfall reflects both lower-than-expected population growth and a lower labor force participation rate (figure 4, right panel). Participation dropped sharply at the onset of the pandemic because of many factors, including sickness, caregiving, and fear of infection. Many forecasters expected that participation would move back up fairly quickly as the pandemic faded. And for workers in their prime working years, it mostly has. Overall participation, however, remains well below pre-pandemic trends.』

戻らない要因は「パンデミック感染懸念」と「アーリーリタイアメント」だというのが次にあって、

『Some of the participation gap reflects workers who are still out of the labor force because they are sick with COVID-19 or continue to suffer lingering symptoms from previous COVID infections ("long COVID").5 But recent research by Fed economists finds that the participation gap is now mostly due to excess retirements-that is, retirements in excess of what would have been expected from population aging alone.6 These excess retirements might now account for more than 2 million of the 3?1/2 million shortfall in the labor force.7』

ここにあるように、「But recent research by Fed economists finds that the participation gap is now mostly due to excess retirements」という方が労働供給のギャップの原因とゆうとりまして、次のパラに行くんだが、

『What explains these excess retirements? Health issues have surely played a role, as COVID has posed a particularly large threat to the lives and health of the elderly.8 In addition, many older workers lost their jobs in the early stages of the pandemic, when layoffs were historically high. The cost of finding new employment may have appeared particularly large for these workers, given pandemic-related disruptions to the work environment and health concerns.9 Also, gains in the stock market and rising house prices in the first two years of the pandemic contributed to an increase in wealth that likely facilitated early retirement for some people.』

その中で幾つかの理由があるんですが、コロナで長患いしちゃったから今更出てこない、とかパンデミックの最中にレイオフされた高年齢層の失業者が今更仕事探すのメンドクセと労働市場から退出する、というのとか、まだコロナ懸念あるし求職するのはやめとこ、というのもあるでしょう、とかあるんですが、注目すべきはこの中の最後に書かれている要因ですよね。つまり、

「Also, gains in the stock market and rising house prices in the first two years of the pandemic contributed to an increase in wealth that likely facilitated early retirement for some people.」

ということでして、これ即ち株式や住宅市場がバブっていると家計のウェルスがあるから急いで求職する必要ないじゃん状態になり、そのため労働市場に人が戻ってこなくなり、結果として労働市場のひっ迫が全然収まらない、というご指摘な訳ですよ。

何でこの辺り丸無視してるんだ米国金融市場は、と思ってしまう訳ですが、即ち金融市場がヒャッハーしだすとインフレがトマランチ会長になるってお話をしているようなもんなんですけど、まあこの2日で米国金利がホイホイと下がって今頃ワシントンではパウエルのおっちゃんが頭を抱えているんじゃなかろうか、と妄想するんですよね。

『The data so far do not suggest that excess retirements are likely to unwind because of retirees returning to the labor force. Older workers are still retiring at higher rates, and retirees do not appear to be returning to the labor force in sufficient numbers to meaningfully reduce the total number of excess retirees.10』

でもって現状、このアーリーリタイヤメントの人達が戻ってきているようなデータは無いって言ってるんですよね。


なお、もう一つの労働供給足りん要因には「人口動態」の話がありまして、そのあとお賃金の話になりますが、人口動態の話は政策で同になる話でもないので飛ばして賃金ですけど、

『Wage growth, too, shows only tentative signs of returning to balance. Some measures of wage growth have ticked down recently (figure 6). But the declines are very modest so far relative to earlier increases and still leave wage growth well above levels consistent with 2 percent inflation over time. To be clear, strong wage growth is a good thing. But for wage growth to be sustainable, it needs to be consistent with 2 percent inflation.』

「shows only tentative signs of returning to balance」とは言ってますが、結局内容的には「2%に整合的な水準に落ち着かないとサステナブルじゃないんだけどなー」みたいな願望話でおわっています。


・・・・・・ということなんですが、以下昨日とか今朝の米債ちゃんみててひたすら唸っておったアタクシの愚感想垂れ流しなのでおヒマならお付き合いいただき、どうせ穴だらけのガバガバ感想なので突っ込んでいただいて相場シナリオの足しにでもしていただければと。



・米国市場の威勢の良い金利低下でさすがに訳分らんから愚感想


そもそもですね、会合毎に75bp利上げってかなり狂気の政策で、じゃあなんで狂気の政策をしなければいけなかったかと言えば、それこそこの前ネタにしたブラード総裁のプレゼンにもあったように、テイラールールとか修正テイラールールとかで出した政策金利の図ってのがあるけど、まあ結果的にFEDのやってることって利上げ着手がビハインドだったのを認めたが為に(トップはビハインドだと言ってないけど)髪振り乱して一気に利上げしないと行けなくなった、って事ですよね。

でまあやっと10月というか11月というかFOMCでやっと引き締めまで上げれたので、そこまで上げたら別に紙振り乱して狂気の幅の利上げを連発する必要はない訳ですよね。寧ろ様子見をしながらインフレが鎮静化するかどうか見ながらおっかなびっくり利上げしたりしなかったり、って話だと理解してたわけです。

なのでまあ50利上げして様子見するのでもおかしくは無いのですが、そうやって利上げペース落とすとオーバーキル懸念はなくなるけどインフレ抑制のペースは下がるんだから、株が上がるのと、政策金利動向に敏感な2年とかの金利が下がる(なお絶対水準)のは分かるんだが、インフレ自体は長期化する可能性却って高まるから後ろは買われにくくなるもんじゃネーノとか思ってるんだがさっき見たら米債10年3.5%台とか何がどうなっているんでしょうかねえって感じです。


昨日ネタにしたパウエルの落語ですが、自分たちも「物価見通し間違えてました」ってしれっとゲロっている訳でして、そういう意味では今後の金融政策に関してはマジのマジマジで「インフレ動向次第の出たとこ勝負」だと思うのよね。

つまりどういうことかと申しますと、勿論本来は経済物価見通しに対応してフォワードルッキングに政策を実施しないといけないんですけど、なにせこの1年半くらいFEDは物価見通しを盛大に外し続けている訳でして、そういう外し続けている見通しを基にして政策をやるのヤベーだろ、と並みの反省力がある中央銀行なら考えるでしょ、と思うのでございますよ。特に経済学者系じゃないパウエル議長ですから、そこは平気で割り切っているんじゃなかろうかと思うのよね。

ただまあ対外的な中で「ワシらの見通しが外れまくってるので仕方がないからここから先は出たとこ勝負で物価の後追いで政策やります」というのは恥ずかしいというのもあるし、だいたいからして信任問題、とか言われてしまいますから、そこまで身も蓋もない説明もできないので、まあお為ごかしに見通しみたいなのは出すんですよね。

(かなり妄想も入っていてるのにお付き合頂きまして恐縮ですが)そういう意味から言って、今回のパウエルでも特に物価の話の部分「先行きは非常に不確実」を連呼してたのは、正面切って「わからんから出たとこ勝負で勘弁」と言わない代わりの産物だとおもっておりまして、この人達は既に「先行きの特に物価見通しを当てに行くのは降参です」と白旗上げている筈でして、そーゆー人たちがとりあえず置きに行く物価見通しって「足もとで自分の考えている願望」なのか「妄想中の政策パスに整合的になるように逆算した数字」なのか「ニューケインジアンっぽく長期均衡するという結論から逆算した数字」なのか、という物件だとアタクシは割り切って最近の講演とか見てるんですよ。(引用するときに見通しの計数をあんまりネタにしてないのはそのせいです)


まあ何ですな、直近の経過から言えば11月頭のFOMCの部分で「利上げモードから様子見モード」って話を鮮明にしている筈なのに、たぶんその後に金融市場がヒャッハーしたので水ぶっかけてきたのを今度は真に受けて12月も75あるでとかいう話になり、その間にも変態仮面のような一部の過激派を除けば「来年は様子見モードだけどその時のインフレ次第ですよね」という話をしているのに、なぜか同じ話のパウエル講演で急にヒャッハーしだす、という謎展開なんですけど、なんでしょうねえ別に転換もしてないと思うのに今回のパウエル講演で転換みたいな事後諸葛亮何とかストコメントがうじゃうじゃとベンダー見てると出てきてて、???????感が拭えないあたくしでした。


という自分の頭の整理をしている垂れ流しにお付き合いいただきまして申し訳ないのですけれども、アタクシの考えも当然ながらツッコミどころ満載だし大穴も空きまくっている(そもそも市場のムーブと全然あってない時点で穴だらけなんだが)ので、読者の皆様におかれましては、ツッコミをして頂くことによって相場観構築のネタにしていただければ幸いです。


〇例によって時間が無くなったのですが気が向いてヒマだったら土日にでもネタにしたいネタメモ

・壊滅的な数字の債券市場サーベイ

https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond2211.pdf
債券市場サーベイ
<2022年11月調査>


・遂に10年新発0.25%入札だしマジかよと思ったのはベンダー調べの事前予想がもうちょっと安かった件

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20221201.htm
10年利付国債(第368回)の入札結果(令和4年12月1日入札)

・野口審議委員金懇はどうでもよいのだが会見で「賃金上昇必須」とか言ってて浜田大先生の言葉はどこにいったのかという件

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2022/ko221201a.htm/
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
秋田県金融経済懇談会における挨拶要旨

・企業の価格設定スタンスに関しての話を日銀レビューにまとめて見やすくお示しするという埋設地雷を設置中の件

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2022/rev22j17.htm/
短観からみた最近の企業の価格設定スタンス







2022/12/01

お題「パウエル議長講演は基本従来路線通りですが金融市場の先走りには随所で釘を差しますね」

12月ですよ12月。12月と言えば師走も同然。

〇パウエル議長の講演

とりあえず世の中注目の講演なので拝見しますわよ。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20221130a.htm
November 30, 2022
Inflation and the Labor Market
Chair Jerome H. Powell
At the Hutchins Center on Fiscal and Monetary Policy, Brookings Institution, Washington, D.C.

題名が直球ですね!!!!!でもってそんなに長くないので面倒になって最初から全部読んで見ましょう企画である。

・・・・・と言ってのほほんと書いていたのですが、よくよく見たらそこそこの長さがあったのと、アタクシがそんなに長くないと思ってノンビリと読んでいたので、物価の話→労働市場の話、ときて結論になるのですけど、途中で時間が足りないことに気が付きまして、今日は前半の物価の話と、まとめっぽい所で勘弁して頂きまして労働市場の話は明日にしますゴメンナサイゴメンナサイ(無計画人後でこれを書く)

・最初はいつもの「インフレ安定が一丁目一番地」

『Today I will offer a progress report on the Federal Open Market Committee's (FOMC) efforts to restore price stability to the U.S. economy for the benefit of the American people. The report must begin by acknowledging the reality that inflation remains far too high.』

出囃子と共に登場(落語じゃないのでんなこたあないが)して「どうも一席お笑いを」の直後がいきなり物価が高杉晋作であるという話をする訳ですが、まあゆうてここまでのFED高官の発言からすると、この部分は「金融環境がゴルディロックスヒャッハー的な緩和されるとこまりますけんのう」というものであって、インフレ死ね死ね団という感じではなくて単なる釘差しだろうなあと想像しながらその先を読む。

『My colleagues and I are acutely aware that high inflation is imposing significant hardship, straining budgets and shrinking what paychecks will buy. This is especially painful for those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. Price stability is the responsibility of the Federal Reserve and serves as the bedrock of our economy. Without price stability, the economy does not work for anyone. In particular, without price stability, we will not achieve a sustained period of strong labor market conditions that benefit all.』

この辺も通常運転の「高インフレ退治大正義」の話でしたので、1パラはいつもの「物価安定が大事」という話ですが、この話はつまり「物価が高杉晋作の場合に景気配慮で引き締めを緩めるわけではない」とっていつもの話っす。

ただまあ何ですな、最近の金融市場の場合は。「だからこそ政策金利上げても物価落ち着いてくる中で、米国経済は軽めのリセッションになるから、やっぱり長期金利って上がらんよね」って感じの受け止めをしていて、それってある種FEDの信認があるって話なのかな、って外野で見てるとそんな気がします。

もうちょっと前だと、「インフレ抑制やり過ぎて経済コケるから23年になると利下げよ」みたいな、FEDのオーバーキル見通しを基に長い所買われてたと思うのですが、最近はオーバーキルによるクラッシュじゃなくて、ソフトよりもちょっとハードなランディング、でこういう価格形成しているんですかねえ、とか何とか妄想してみた。


・10月のインフレ指標は喜ばしいサプライズだが単月の指標では判断できませんよ

『We currently estimate that 12-month personal consumption expenditures (PCE) inflation through October ran at 6.0 percent (figure 1).1 While October inflation data received so far showed a welcome surprise to the downside, these are a single month's data, which followed upside surprises over the previous two months. As figure 1 makes clear, down months in the data have often been followed by renewed increases. It will take substantially more evidence to give comfort that inflation is actually declining. By any standard, inflation remains much too high.』

こちらも最後に「By any standard, inflation remains much too high.」と今の物価水準が高い話を一々入れ込んでおりまして、アタクシ思うに「追加引き締めの拡大を抑えつつ様子見をするんだが、その間に市場が勝手に先を読んで大楽観相場になるのを如何にして回避するか」ってのがこれからのコミュニケーションの主眼(というかまあ今時点でそういうことなんでしょうけど)何だなと思いました。

で、ここでも「データは喜ぶべきサプライズ」としながらも、所詮は単月のデータだの、サプライズなデータって後から修正されるかもとか、色々と難癖をつけて市場を大喜びさせないようにしたいのは分かりました。


・物価の先行きは下がると思うんだがよくわからんがなと仰せ

『For purposes of this discussion, I will focus my comments on core PCE inflation, which omits the food and energy inflation components, which have been lower recently but are quite volatile. Our inflation goal is for total inflation, of course, as food and energy prices matter a great deal for household budgets. But core inflation often gives a more accurate indicator of where overall inflation is headed. Twelve-month core PCE inflation stands at 5.0 percent in our October estimate, approximately where it stood last December when policy tightening was in its early stages. Over 2022, core inflation rose a few tenths above 5 percent and fell a few tenths below, but it mainly moved sideways. So when will inflation come down?』

コアPCE物価の話をしますよ、と言ってますね。でもって今5%だのあるコアPCEは今後どうなるのでしょうかと。

『I could answer this question by pointing to the inflation forecasts of private-sector forecasters or of FOMC participants, which broadly show a significant decline over the next year. But forecasts have been predicting just such a decline for more than a year, while inflation has moved stubbornly sideways. The truth is that the path ahead for inflation remains highly uncertain. For now, let's put aside the forecasts and look instead to the macroeconomic conditions we think we need to see to bring inflation down to 2 percent over time.』

FOMC参加者と民間エコノミックフォーキャスターの見通しによると来年にはshow a significant declineだということです。って言ってから「But forecasts have been predicting just such a decline for more than a year, while inflation has moved stubbornly sideways.」と言っててますけど、最初の所で「forecasts of private-sector forecasters or of FOMC participants」と入れてたのは「ワシらも外しましたわ」って言ったつもりなのかな???

まあいずれにせよ「path ahead for inflation remains highly uncertain」だと。


・政策スタンスに関しては特に軟化も硬化もしないでいつもどおり

さっきのパラグラフのケツが、「let's put aside the forecasts and look instead to the macroeconomic conditions we think we need to see to bring inflation down to 2 percent over time」ということで、まあ先行きは不透明としましても、2%達成に何が必要でっかという話をしようじゃないか、と来まして次に展開されまして、

『For starters, we need to raise interest rates to a level that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent. There is considerable uncertainty about what rate will be sufficient, although there is no doubt that we have made substantial progress, raising our target range for the federal funds rate by 3.75 percentage points since March. As our last postmeeting statement indicates, we anticipate that ongoing increases will be appropriate. It seems to me likely that the ultimate level of rates will need to be somewhat higher than thought at the time of the September meeting and Summary of Economic Projections. I will return to policy at the end of my comments, but for now, I will simply say that we have more ground to cover.』

今回は(こちらのテキストの構成が割と綺麗に出来ているので)パラグラフをあえてぶつ切りにしないで、全部のパラを一発で引用していますが、ここが政策金利の話になりますわな。

でもってここでは「まだ利上げするよ」「顕著にインフレの鎮静化がみられるまでは引き締めゾーンの金利は維持するよ」「9月のSEPで出したドットプロットよりも来年の政策金利水準は上方シフトするよ」といういつもの話をしておりますね。

まあ今回だと直前の人たちの話しからして先行きの引き締めを緩やかにする的な話の方が期待にあったかもしれませんけど、タカ期待もハト期待もどっちも残念でしたって感じですよね。


・トレンドグロースよりも成長が低くなるのは物価抑制のために当然必要である

『We are tightening the stance of policy in order to slow growth in aggregate demand. Slowing demand growth should allow supply to catch up with demand and restore the balance that will yield stable prices over time. Restoring that balance is likely to require a sustained period of below-trend growth.』

その次に短いんですけどこのパラが入ってまして、内容は今小見出しに書いた通りなんですが、これをわざわざ強調するのは「景気配慮して引き締めの手を緩めるとかしませんよ」ってことを強調しているんですよね。


・と言ってからの経済状況の説明ですが

『Last year, the ongoing reopening of the economy boosted real gross domestic product (GDP) growth to a very strong 5.7 percent. This year, GDP was roughly flat through the first three quarters, and indicators point to modest growth this quarter, which seems likely to bring the year in with very modest growth overall. Several factors contributed to this slowing growth, including the waning effects of reopening and of pandemic fiscal support, the global implications of Russia's war against Ukraine, and our policy actions, which tightened financial conditions and are affecting economic activity, particularly in interest-sensitive sectors such as housing. We can say that demand growth has slowed, and we expect that this growth will need to remain at a slower pace for a sustained period.』

昨年の高成長からみたら成長減速してるよね、って話でその要因とか話をしていますが、先の話としてのいポイントはこの最後にある「We can say that demand growth has slowed, and we expect that this growth will need to remain at a slower pace for a sustained period.」ですね。つまりこれも「成長しなくなってきてるからと言っても物価がクソ高いうちは引き締めの手を緩めはしません」ってのが先行き政策に向けたメッセージ。


・「インフレが下がるかどうかについてはまだ明確な進展がみられていない」

『Despite the tighter policy and slower growth over the past year, we have not seen clear progress on slowing inflation. To assess what it will take to get inflation down, it is useful to break core inflation into three component categories: core goods inflation, housing services inflation, and inflation in core services other than housing (figure 2).』

ということでコア物価を財と住宅サービスとコアサービス除く住宅サービスのカテゴリーで見てみますと、ときまして


・3つのコンポーネントに見る物価の現状についての説明がおっぱじまります

まずは財の話。

『Core goods inflation has moved down from very high levels over the course of 2022, while housing services inflation has risen rapidly. Inflation in core services ex housing has fluctuated but shown no clear trend. I will discuss each of these items in turn.』

『Early in the pandemic, goods prices began rising rapidly, as abnormally strong demand was met by pandemic-hampered supply. Reports from businesses and many indicators suggest that supply chain issues are now easing. Both fuel and nonfuel import prices have fallen in recent months, and indicators of prices paid by manufacturers have moved down. While 12-month core goods inflation remains elevated at 4.6 percent, it has fallen nearly 3 percentage points from earlier in the year. It is far too early to declare goods inflation vanquished, but if current trends continue, goods prices should begin to exert downward pressure on overall inflation in coming months.』

ああだこうだ説明がありますが、結論は最後の所でして、「if current trends continue, goods prices should begin to exert downward pressure on overall inflation in coming months.」とあって、今の流れが続けば財価格はインフレ率を押し下げる方向に進むでしょう。だそうです。


次が住宅サービス。

『Housing services inflation measures the rise in the price of all rents and the rise in the rental-equivalent cost of owner-occupied housing. Unlike goods inflation, housing services inflation has continued to rise and now stands at 7.1 percent over the past 12 months. Housing inflation tends to lag other prices around inflation turning points, however, because of the slow rate at which the stock of rental leases turns over.2 The market rate on new leases is a timelier indicator of where overall housing inflation will go over the next year or so. Measures of 12-month inflation in new leases rose to nearly 20 percent during the pandemic but have been falling sharply since about midyear (figure 3).』

住宅サービスってレントと帰属家賃の話になるんですけど、こちらは基本的に物価トレンドに遅行して動くので相変わらず上がり続けているし、下がるにしても物価トレンドの低下が始まったあとに下がるとは思うんだが、という話をしておりまして、こちらは相変わらず上昇続けているし、先行き住宅や貸家の需給は引き続きタイトに推移するっぽいですね、という話をしていてそうホイホイとは下がってくれない見通し。

『As figure 3 shows, however, overall housing services inflation has continued to rise as existing leases turn over and jump in price to catch up with the higher level of rents for new leases. This is likely to continue well into next year. But as long as new lease inflation keeps falling, we would expect housing services inflation to begin falling sometime next year. Indeed, a decline in this inflation underlies most forecasts of declining inflation.』

とはいっても全体の物価上昇が落ち着いてきてくれれば来年のどっかで落ち着きだすでしょう、というお話をしてて、目先じゃなくて来年の話をしているから、ってのもあるとは思いますが、希望的観測(全体の見通しがそもそも希望的観測チックなので仕方ないんですが)な話が多いですね先の話になると。


最後が一般サービス。

『Finally, we come to core services other than housing. This spending category covers a wide range of services from health care and education to haircuts and hospitality. This is the largest of our three categories, constituting more than half of the core PCE index. Thus, this may be the most important category for understanding the future evolution of core inflation. Because wages make up the largest cost in delivering these services, the labor market holds the key to understanding inflation in this category.』

ここで「Thus, this may be the most important category for understanding the future evolution of core inflation. Because wages make up the largest cost in delivering these services, the labor market holds the key to understanding inflation in this category.」となってまして、一般サービスの価格は今後のインフレトレンドに対して重要な意味を持ちまして、賃金動向に起因するんですよねー、と来てからの労働市場の話になるのでして、なんだよ結局労働市場の話しかよ、と思って時間見たらなんと時間が足りなくなってしまいました。

ということで、全文読むとかいってましたけど労働市場の所は明日に回して結論までカットびますすいませんすいません。


・労働市場の話を盛大にかっ飛ばして(すいません明日やります)まとめの最後3パラグラフを鑑賞

『Let's sum up this review of economic conditions that we think we need to see to bring inflation down to 2 percent. Growth in economic activity has slowed to well below its longer-run trend, and this needs to be sustained. Bottlenecks in goods production are easing and goods price inflation appears to be easing as well, and this, too, must continue. Housing services inflation will probably keep rising well into next year, but if inflation on new leases continues to fall, we will likely see housing services inflation begin to fall later next year. Finally, the labor market, which is especially important for inflation in core services ex housing, shows only tentative signs of rebalancing, and wage growth remains well above levels that would be consistent with 2 percent inflation over time. Despite some promising developments, we have a long way to go in restoring price stability.』

ここを読んで思ったのですが、何のことはない概ねここで先行き見通しカバーできてるじゃんさっきからヒーコラ書いてたの何だよと静かに膝から崩れ落ちそうになりました。

ええ要するに来年は財のインフレは沈静化、住宅サービスはまだ強いけど全体が下がって来ると下がって来る、労働市場は過度に需給がタイトになっている状況の改善の兆しはみられるけど、賃金の伸びは高いし、結果として住宅を除く一般サービスの価格というコアインフレの重要な部分に関しては来年下がるよって自信ニキになるにはまだまだお時間かかりますわ、という見通しになっています。

『Returning to monetary policy, my FOMC colleagues and I are strongly committed to restoring price stability. After our November meeting, we noted that we anticipated that ongoing rate increases will be appropriate in order to attain a policy stance that is sufficiently restrictive to move inflation down to 2 percent over time.』

『Monetary policy affects the economy and inflation with uncertain lags, and the full effects of our rapid tightening so far are yet to be felt. Thus, it makes sense to moderate the pace of our rate increases as we approach the level of restraint that will be sufficient to bring inflation down. The time for moderating the pace of rate increases may come as soon as the December meeting. Given our progress in tightening policy, the timing of that moderation is far less significant than the questions of how much further we will need to raise rates to control inflation, and the length of time it will be necessary to hold policy at a restrictive level. It is likely that restoring price stability will require holding policy at a restrictive level for some time. History cautions strongly against prematurely loosening policy. We will stay the course until the job is done.』

今後も利上げしますよ、引き締め状況は引っ張りますよという話をしておりまして、最後のパラの後半、「Given our progress in tightening policy,」からの辺りは、従来の路線上ではあるんですけど、金融市場に対して「FEDはそもそも今後インフレが無事に落ち着いてくれるかどうかも微妙だという認識でいるのに、お前らインフレが落ち着いた後の話で盛り上がってるんじゃねえよ」って言いたい、というのは(前からそうですけど)一貫しているなと思いますし、最後の最後に「History cautions strongly against prematurely loosening policy. We will stay the course until the job is done.」で締めているのって、とにかく市場の先走りに対して釘を差しまくりたいという事なんでしょうね。と思いました(個人の感想です)