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2023/04/29

お題「決定会合レビュー(その1)」

まあ当然の如くカレンダー通りおじさんなのですが、大型連休中は海外中銀イベントもあるので成敗できるうちに成敗をしていかないと行けませんからねー。

〇「黒田路線を徐々に修正」とかいう虫のいいことを考えたら早速しっぺ返しざまあ味噌汁

さあもりあがってまいりました!!!!!!
https://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPL4N36V5FV
2023年4月29日6:45 午前
NY外為市場=ドル上昇、円は対ユーロで14年半ぶり安値

『[ニューヨーク 28日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、米連邦準備理事会(FRB)が来週の会合で利上げを決定する軌道から外れないとの見方が経済指標で裏付けられたことを受け、ドルが上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

黒田路線を徐々に修正とかいう虫のいいこと考えて(個人の想像です)絶好のYCC長期ターゲット修正(廃止)チャンスを見送ったチキンの植田日銀ですが、そのアクション受けて東京時間も何か円安ドル高になったなあとか思ってたら会見以降ジャパンの夜のお時間(と言ってもそんな遅くまで見て無かったのでガチ夜中時間の動きは知らんが)にドル円136えーんとかになってきてましたが、

『一方、日銀が金融政策の現状維持を全員一致で決めたこと受け円は全面安。対ユーロで150円台に乗せ、2008年9月以来の安値を更新したほか、対ドルで7週間ぶり安値を付けた。ユーロ/円は一時150.25円まで上昇。終盤の取引では1.5%高の150円。週初からは1.8%上昇した。ドル/円は1.7%高の136.235円。週間ベースでは1.6%上昇した。』

ということで、早速円安に振れまして、そもそも昨日は東京都区部のCPIがクッソ強くて、日銀様が相変わらず主張して止まないし今回も主張する「コスト転嫁の動きが一巡後には物価下押し」って本当にそうなるんかいなと思うムーブを示していましたが、円安ちゃんが進行して下さいますと、更に物価が上振れする要素にはなるわ、世間からの日銀批判は高まるコースになる(しかも黒ちゃんの時よりも物価上昇が更に顕在化しているんですから、黒ちゃんの時以上の批判を食らう未来しか見えないので更にワクワクが止まりません)ということで、昨日は現状維持な上に何とも中途半端なムーブで植田日銀初手から実に怪しからんと大変に虫の居所の悪かったアタクシもユーロ様とドル様の大健闘にもう朝からすっかりウッキウキになっております(ロクデナシ)。


まあアレです、これからボチボチレビューしていきますが、今回の決定を総じていえば・・・・・・

黒田の残した最大のガンである長期金利ターゲットを外す、という決断をこの大チャンスにしない、というチキンな選択をしたために、コミュニケーションが大変に訳が分からないことになってしまいました(そもそもは大地雷を残していった黒田のせいだが今回外さないのは同情の余地なし)。

というのと、

長期金利ターゲットを残したが為に、特にオーラルコミュニケーションにおいて、現状維持や緩和バイアスを前面に出さざるを得なくなった。

ってことでして、その結果日銀の統制の及ばない外国為替市場が実に素直に反応してしまって日銀を追い込みに行く流れが始まりましたなあ、という感想でございます。

でまあ何ですな、今回の絶好のチャンスで長期金利ターゲット外せないんですから、これはどこからどう見ても植田先生ったら夜のお遊びは威勢良くても政策判断の方はチキン(会見でも物価見通しにチキンな説明してて泣いたわ)ということでございますので、物価上振れという今の政策枠組みの中で一番困る(政策達成に近づくと追い込まれるとかナンノコッチャとしか言いようがないがそういう作りなのだから仕方ない)流れが出来るのが一番盛り上がる展開でありまして、かのヒラコー(平野耕太さん)の漫画「ヘルシング」のキメ台詞「小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」を植田先生に奉呈する日も近いとワクワクが止まらないというものでございます。

・・・・・などと祝日の朝(というか午前という方が近い時間ですけどね)からウッキウキで以下まずはレビューを気が向くところまで書こうかと思います。


〇声明文の政策部分に関して:謎のガイダンス文言変更と謎のレビュー着手公表

やはりこの声明文のガイダンスとレビュー着手公表は訳分らん。

今回の声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230428a.pdf

ガイダンス文言の比較のために前回の声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230310a.pdf


・経済物価金融情勢に機動的に対応するのに緩和バイアスとはどういう判じ物なのかと小一時間問い詰めたい

展望レポートも大概なのですが、今回は声明文のフォワードガイダンスも何が何だか訳の分からんコミュニケーションになってしまっている訳ですよ。

即ち、今回のガイダンス文言って。

『2.日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。

「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(今回)

となった訳でして、前回までのガイダンス文言はと言いますと、

『5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。

当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』(前回)

となっていました。

・・・・・でですね、こうやって比較すると見やすくなるわけですが、同じ2段落構成なのですが、前回までのは段落ごとに書いてあることが分かれていたので話として分かりやすい(内容の是非の話はしてないので為念)のですよね。つまり、前回までのガイダンスって前段が物価目標に関連した政策の枠組みおよびMB拡大のガイダンスという比較的長い期間の話をしていて、後段は当面の政策運営に関するガイダンスという前段よりも相対的に期間の短い話、という形になっていました。

然るに、今回って前段にも後段にも期間の長い話があると思えば当面の話があり、しかも方向性に関して前段の中で言ってることに繋がりがない部分がある、という割とトンデモナイ作文になっておりまして、これはコミュニケーションが非常に分かりにくくなったなという感じですわな。

今回のを再掲しますね。

『2.日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(今回)

まずね、この文章が1センテンスという時点でダメダメ文学(お前が言うなというツッコミは勘弁してつかあさい)な訳でして、そもそもこれ何を言ってるのが一見した時にまるでワケワカメなのですが、この文って主語が「日本銀行」で述語が「目指していく」となっているようでして、前回のガイダンスだと主語が「日本銀行は」で「緩和を継続する」「拡大方針を継続する」が述語だったために分かりやすかったわけですが、この時点でもう分かりにくい悪文になっているというのがお分かりになろうかと思います。

というような綴り方教室なお話もさることながら逐語読みしていきますと・・・・・・

『内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中』
→これは前回の「コロナ」云々を削除した代わりに入れたものかな、と思う訳ですよね。

『経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ』
→ここと次の部分および後段の記述が矛盾する訳で、「情勢に応じて機動的に対応する」のであれば、当然ながら下振れだけではなく上振れに対しても「機動的な対応」をする、という文言にしか読めませんし、そういう意味が無いのであればそもそもこの文言を無しにして、「不確実性が極めて高い中、粘り強く金融緩和を継続していく」という表現にすれば何の引っ掛かりも無いスッキリした文章になる訳ですよ。

つまり、ここの文言を挿入したことによって「上振れしたら政策の修正あるべし」という意味合いを入れているとしか読めない訳ですよね、然るに・・・・・・・・・・

『粘り強く金融緩和を継続していくことで、』
→これは継続する時間軸が何に紐ついているのかと言えば、まあ普通に読めば「内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中」という時間軸に読めるのですが・・・・・・・・・

『賃金の上昇を伴う形で、』
→ここがまた訳分らなくて、一応会見ではなんか説明してたんですが、これって「賃金が上昇しなかったらどんだけ物価が上がっても物価上昇抑制に動かない」と言ってるのでしたら頭おかしいというか人民虐殺中央銀行かよという話ですし、「賃金の上昇」というならその定義を示せという話で、何の数値が幾ら以上上がるのが適切なのかとかそういうのを出せとも思いますし、要するにお前ら賃金と物価のデュアルマンデートおっぱじめたんかいなという突っ込みもしたくなるし、そもそも論として中央銀行の決められない範疇の要素が大きい賃金の話をここに入れ込むというのは「できもしないことをステートメントで出来ると表明している」ようなもんでこの文言によって日銀は何をしたいんでしょうかねえ、って感じですわな。

『2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』
→この文言自体は前回と大きくは違わないようには見えますが、ただここにも謎要素は多いんですよ。

つまり、前回までの場合は「これを安定的に持続するために必要な時点まで」QQE+YCCを継続、とあったのですけれども、今回は「実現することを目指す」となっていますが、その実現のためにどの時点まで「粘り強く金融緩和を継続する」のかが訳分らなくなってるんですよね。

でもって更にアカンなと思ったのは、(これは会見で植田総裁が説明しててアタクシが途中から呆れてた件になりますが)この「2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現すること」の定義づけ、即ち達成基準が今回の植田さんの会見を持って非常にあいまいになったことなんですね。会見での説明になるから週明け会見の文字起こし見ながらまた追加しますけど、今回の会見での説明では「2025年度の物価見通しに自信が持てない状態(だから正常化着手は先の話です)」ってのを植田総裁連呼してたんですが、「自信」とかいう極めて主観的な言葉で物価目標の達成基準を説明するのって、学者にも似つかわないガバガバ定義でありまして、自信が無かったら一生物価目標達成と言わないのかという話だし、だいたいからして3年後の未来の物価水準を満々たる自信を持って予想できるとか、そんなの神か狂人以外におらんじゃろという話で、ここが無茶苦茶曖昧になったし、しかもその基準が「自信の有無」という主観的なものになった訳ですから、そらこの後の緩和バイアスも併せて読めば円安ドライブ掛かるわな、と思いました。


でもって後段落。

『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(今回)

『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。』
→これが残っているんだったら何で前段で重複しているのか、という話ですな。

まあちなみにこれはどうでもよいかも知れませんが、そもそも論として言えば「物価安定目標が安定的に実現」というのは「経済が中立の状態の時に物価上昇率が概ね2%である」という状態を指すわけなので、物価上昇率が2%になるまで大規模緩和を継続してたらそれダメだろという話なんですが、ここに関しては黒田さんの当初の説明では、QQE+YCCの枠組みを継続する中においての緩和度合いの調整はあり得るべし、だったんですよね、途中から死んでも変えないになっちゃいましたが。

まあここに関しては長めの期間を念頭においた2%と関連した文言で前回と同じなので良し(よくないけど)としますが、

『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』
→これも前回同様、それは良いんだが安定的に2%を超えるどころじゃない上がり方してるんだからこれもう達成って言うもんじゃないんですかねえ。

『引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』
→この文言を残しているのに、何で政策金利のガイダンスを外したのかが意味不明でして、これ残すなら当然政策金利のガイダンスも残して、前段の部分を「日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。」とでも書けばよかったわけでして、機動的だの賃金だの訳の分からん文言を練り込んで何をやりたいんだかさっぱり分からなくなってしまいましたね。



・レビュー開始は良いんだが何も決まってないもののレビュー開始を謳いあげる意味が全く分かりません

さてネチネチとガイダンスを見た後は今回の声明文の項番3.

『3.わが国経済がデフレに陥った 1990 年代後半以降、25 年間という長きにわたって、「物価の安定」の実現が課題となってきた。その間、様々な金融緩和策が実施されてきた。こうした金融緩和策は、わが国の経済・物価・金融の幅広い分野と、相互に関連し、影響を及ぼしてきた。このことを踏まえ、金融政策運営について、1年から1年半程度の時間をかけて、多角的にレビューを行うこととした。』(今回)

・・・・でもって本件、植田総裁の記者会見で当然「でもって何するの???何をスコープにして何を目的にするの???」って質問がバチクソ飛んでくるわけですよ。

ところが会見での説明だと「何も決まってません」というかなりガバガバな話になっていまして、会見のかなりの部分が「レビューで何するんですか?」「何も決まってません」の応酬という状況で、もしかしてこれは今回のガバガバ展望レポートとかワケワカメフォワードガイダンスから注意を逸らすためのデコイなのかと疑ってしまうほどのフワフワ物件。

えーっとすいません、これ何のためにアナウンスしたんですかという話で、こういうレビューを行います、とか、FEDみたいにFEDリッスンズやって皆さんの意見を聞きまっせみたいな大まかな行動計画でもあるなら兎も角、何も決まってないものを殊更に「レビュー開始します」とか言わなくても良い話で、しかも政策運営と関係ない世界でやるという触れ込みならば、ある程度行事とかの具体的なものを作ってから出せよとしか言いようがなくて、こういうのをインチキ目くらましという訳ですよ。


・・・・・・いや真面目な話、何でこんなガバガバな段階で「やります」とわざわざアナウンスしたのか、という話でありまして、緩和政策のありかたを再考するとか、2%達成のためのストラテジーを組みなおすとか、そういう話もないのにMPMでわざわざ決定せんでもそんなのは金研にでも地道にさせておけばいいでしょ、って話でございます。


〇まあ結局のところは「長期金利ターゲットがコミュニケーションの重大障害物」というのが重い足枷なんですけどね

レビュー開始の話しとか、声明文項番2の「機動的」とか、政策金利ガイダンスの下向きバイアス削除とか、そういうパーツを見ると「金融政策の修正もありうべし」という面は確かに今回の声明文にはある訳なんですよ。(展望レポートにもそういう要素はあるのですが、今朝(という時間じゃないけどもう)は時間制限が無いせいか何かチンタラやってしまいましてなかなか終わらんので展望レポートのレビューの前に一回切ってアップしますわ)

しかしながら、長期金利ターゲットという黒田のアホウが残したうんこタワーがあるために、うっかり修正あるべしというような事を示唆するだけで売り売りの売りが来るリスク、というのが極めて高まりますというのが今のYCC政策の最大のうんこポイントでありまして、どうしても現状維持や緩和方向に強めの発信を続けざるを得ない、という問題点がある訳です。

そういううんこタワーは早めに除去するのが吉だし、しかも昨日だったらうんこタワー除去してもそんなに金利が急騰するでも無し、という絶好の状況だったのですが、まあうんこタワーを前にビビってしまったのか、それとも「まだまだノンビリやっててヘーキヘーキ」と楽観しているのか、それともその合わせ技なのか知らんですけど、兎に角今回タワーを残してしまったのでこのようなコミュニケーションを取らざるを得なくなったというのはまあそこは話としては分からんでもない訳です。


しかしですね、足元でまさにMPM当日に出た東京都区部CPIが盛大に強い数字で、これ普通に考えて4月の全国CPIってコアが+3.7とか+3.8でコアコアが+4%乗せ待ったなし、というような数字になっていて、しかも中身も全体的にブロードベースの物価上昇を示している、という内容だった訳で、一方でどういうポンコツ予想なのか謎ですが2023年度コアCPIが年度平均で+1.8%という驚異の見通しを出してそれをベースに緩和継続先行きも追加緩和バイアスとか寝言を言ってるわけですが、そのまさにコアCPI+1.8%なんて数字が上方修正待ったなしの数字と来ている訳でして、そうなった時に何ぼ日銀が緩和バイアスとか言ったって6月なり7月なりまで無事に過ごせるんでしょうかねえ、と思ってたら冒頭に申し上げましたように円安がドドーンと進んで更に物価上振れリスクが高まる、という素敵な展開になって来たわけですね。

つまり、植田さんの場合は黒ちゃんと違って「物価上振れ」という本命中の本命の部分で追い込まれる話になる次第でして、まあ会見の話とか展望レポートの話しとかはこの後息抜きしてからまた書く(明日になるかもしれませんがその時はゴメンチャイ)予定ですが、今回って長期金利ターゲットの足枷があるからとは言え、結構現状維持バイアスというか黒田バイアスというか、そんなのを掛けた情報発信になってしまいましたので、理屈の上では物価が上振れしたので修正でーすとは言えますけど、お前4月に何言ってたんだこのボケと叩かれるでしょうし、そもそも論として長期金利ターゲットの修正が奇襲でしかできないので、6月に解除するにしたって直前までは現状維持バイアスをバリバリに掛けた情報発信しながらの奇襲攻撃になってしまい、更に嘘吐き度合いが高まる、ということになってしまいました。

まあその前に円安進んで物価がバンバン上振れして、世の中の批判が日銀にバンバン向かって(さっきも申し上げた通り、黒ちゃんの時よりも物価上昇率が高くなっているだけに批判度合いはもっと高くなるっしょ)植田先生一同がションベンチビってあばばばばーとなると大変に面白い展開になりますがどうなるのやら、などという性格の悪い事を黄金週間の初日でさわやかな好天の南関東で書いてるアタクシも碌なもんじゃねえなと思いますが、まあ円安進行して何かワクワクしてきた(超不謹慎)のでとりあえず声明文についてのツッコミを入れました。






2023/04/28

お題「世界的に政策待ちなのでMPMプレビュー最後の雑談(すいません)/FSRのマクロストレステストのお題が意味不明な件について」

いやー決定会合ですねえ決定会合。アーニャのワクワクも止まりませんね(違)。

〇色々と決定会合待ちになってしまっているので決定会合待ちプレビュー雑談(毎日それじゃんというツッコミは却下)

・とりあえず各紙と言ってもネットで無料で見れるもんだけ見て回るが・・・・・・

日経さん
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB27AC10X20C23A4000000/
植田日銀が初会合、修正か維持か 5つの注目ポイント
金融政策
2023年4月28日 5:00 [有料会員限定]

『日銀の植田和男総裁は28日、就任後初めての金融政策決定会合の2日目の議論に臨む。記者会見や国会答弁では現在の大規模な金融緩和政策の継続を繰り返し強調し、市場では政策の大枠は維持されるとの見方が強まっている。無風で終わるのか、初回から「植田カラー」を打ち出すのか。今会合の5つの注目ポイントを解説する。』

からの

『@長短金利操作の見直し

最大の焦点は金融緩和策の中核である長短金利操作(イールドカーブ・コントロ』(ここまで上記URL先日経記事より、以下は有料記事部分)

無課金のメリットは記事引用するときにうっかり有料記事をバカバカと引用しなくて済むことでして(負け惜しみ)この先に何書いてあるかはまあ日経本紙か有料会員さん読んでくださいませって所ですが、少なくともここの解説をみると日経さん「今回はたぶん(コロナ紐付けのガイダンス文言修正などのやらない方が頭おかしい施策を除き)維持されるようには見えるんだが最終的に何が飛び出してくるかについて下手に決め打ちしないというのを引き続き貫いておられますな。


読売さん
https://www.yomiuri.co.jp/

ちょwwwwww本日の決定会合の記事すらねえええええええええ(トップと経済みたんだが)

NHKさん
https://www3.nhk.or.jp/news/business.html

やはり昨日のでおしまいか。(恐らく定時のニュースの方では話題にすると思いますが、だいたい定時ニュースで取り上げたもんってその後に新着に出て来ると思うのでしょうけど、どうも5時台の定時では扱わなかったのかもですね、7時にはやるんじゃないのかとは思いますが、これだと普通にベタ扱いですかね)

ということで、日経さんが若干「ポイント解説」などというのをやっているようですが、これに関しても中身見てないのであてずっぽうになっちゃいますけど、あくまでも「こういうことになるのはこんな意味合い」みたいな説明で、抜きとかそういう話ではないようですが、まあ実際問題としては昨日のNHKさんとか今日の日経さんみたいに「こういう点はこういう意味合いがある」みたいな話をしてくれた方がよっぽど為になるお話でして、しょうもない抜き合戦みたいなのって社会的に見た意味はあるのかよ(いやまあこちとら相場が動くから意味はあるんだが)と思いますので、まあこれはこれでいい傾向じゃないかなとは思いました。

一応ロイターとブルームバーグのネット版も見ましたが、特に今日のMPMがどうのこうのというのは無し、ということになっておりまして、これはどう見てもパールハーバーチャンスタイムに見えてしまうのは正常化バイアスですかそうですかすいませんすいません。


・ということで正常化バイアスおじさんの見たいポイントを再度(自分用も兼ねて)整理しておく

まあゆうてポイントはYCCの長期金利ターゲットに関して今の運営をまだ続けるのか、それとも本日真珠湾攻撃を敢行して敵艦隊を撃滅(何を撃滅するんだかよくわからんが^^)するのかというお話が最初のポイントですよね。

これが別にごく普通の金利コントロール政策で、利上げに際しては事前に織り込ませに行って(どっかの誰かさんのように織り込ませに行ったらやり過ぎで巻き戻しに行くというあほをやるのもどうかと思うが)発表時点では材料出尽くし、位にソフトランディング出来るものなら良いのですが、ご案内の通り長期ターゲットという凶暴極まりない政策なので、この政策修正を実施するのって、後になればなるほど苦しくなって来るんですよね。

というある意味技術論を考えたら今回しかない訳ですよ。いやまあ米国が来週普通に25bp利上げしてデータディペンデントを繰り返して、この間何かまだ金融問題微妙だよね、って足元の延長線上のまま米国金融市場が推移すれば時間の猶予は出て来るかもしれませんが、後に述べますように日本の物価という本命オブ本命の方がその猶予を許さないリスクが高まって来るとアタクシは踏んでおりますので、6月解除というのは「追い込まれ解除」になってしまう残念なリスクがあり、それに対して今日解除してもそんな1日にして10年1%とか行くとか到底思えない状況なのですから、解除するには後のチャンスあるかもしれないけど最初の絶好のチャンスなんですよね、という戦術論。

解除をしても「長期金利の急激または大幅な上昇に対しては国債買入を拡大することによって対応します(ただし水準の話はあんまりしない)」とか「世界経済の先行き不透明感が拡大しており、現在の短期金利マイナスは、この不透明感の強いうちは維持する」とか(これはガイダンス文言の変更でもある)入れて緩和姿勢をアピールすればエエンチャイマスカ、ってのともう一つ戦術的にいうと今回長期だけ分離して外すメリットがありまして・・・・・・・・・・・・・・


というのはですね、本命の物価ちゃんの動向でして、またタイミングよろしく今朝東京都区部のCPI4月速報が出るので、3月全国のコアコアの驚異の強さと相まって今回強めのものが出てきますと、そもそも市場機能論とかそういう話から突き抜けまして、「そもそもこの物価状況の中で何でこんなに馬鹿みたいな緩和をしないといけないのか」というより本質的な論点が浮上してくる筈なのよ。

いやまあ勿論アタクシが物価強いんじゃね???というのが全然外れてて、日銀様の仰せのように、2023年度後半にはCPIが盛大に鈍化して前年同月+1%台の半ばくらいまでコケるならそうはならんのですが、ここもと来てる物価の指標ってどう見たって従来の延長線上での物価予想では書きにくい動きが展開されてるじゃないですか。

でまあ春闘に関しても既に第4次集計くらいまでは出てると思いましたし、4−6月期に掛けては(今日の東京都区部CPIが弱かったらこの話無駄になるんですけど、笑)年度替わりでまたお値段上昇でっせ攻撃とか来るようになると、本格的に「物価情勢から勘案してどうなのよ」問題というのが、昨年の12月にレンジ拡大した時だってあれ物価がもしかして強いんじゃね、という話でしたが、その時を遥かに上回る強さになっているんですから、YCCアタックとかちゃちな話じゃなくて、ガチにファンダメンタルズでこんな政策やっててエエノカ問題が更に盛り上がるとなると、6月までノンビリ待っている訳にはいかなくなるんじゃなかろうかと思うし、そのリスク考えたら早期解除なんだよなー、と思います。

むしろですね、今回何も変更しないままで突っ込んでいきますと、本命の物価の方の話から7月展望の時点でYCCとマイナス金利の同時解除みたいな方向に追い込まれる(政策が成功して解除するんだから「追い込まれる」ってのも馬鹿な表現だとは毎度申している通り)まであるだろ(個人の感想です)と思う次第でございまして、早めのガス抜きをしておいた方が良いと思うのよね。


・・・・・・・ま、でも日銀ってこういう時にチャンス逃してその後5年間大後悔時代を続ける、というのは黒ちゃんの2年目くらいの時にあった「勝ち逃げ」チャンスを逃してズブズブと戦線を拡大し、昨年の「勝ち逃げ」チャンスを自らその橋を焼き落として国債大買入馬鹿踊りを開始してしまう、というように、勝ち逃げの下手さ加減が半端ないのが日銀の伝統芸能と言っても過言ではない芸風になっておりますので、その芸風から察しますと今回YCCの長期をいじらないで後から面倒なことになって植田さん立ち往生、という図が見えてくるのが悲しいです。


〇実際問題としては展望レポートについてが今回は注目になるんでしょうね

先般来の国会答弁でもそうですが、基本的に植田さんは(本来の意味ではそれが正しいのでその説明で何ら問題は無いのだが)「先行きの経済物価見通しを基にフォワードルッキングで政策運営を行う」という主張をバンバン行っております。

つまりは何度も申し上げましたように、そうなりますと先行きの経済物価見通しを示す今回の展望レポートしかも2025年度の見通し追加、というのは非常に重要なものになるのですが、如何せん1月展望で「2023年度平均のコアCPIは+1.6%」とかいうポンコツ予測しか出せないという精度がマイナス何じゃないかという位のポンコツ見通ししか出してこない政策委員会の皆様に、ちゃんとした見通しが出せるのか、というお話であはあります。

しかしここで良く思い出して頂きたいのは、1月(だけじゃなくて実はその前もそうなんですが)の展望レポート、出て来る数字と本文記載にギャップがあるんですよね。

1月展望
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2301a.pdf

4ページから。

『(2)物価の中心的な見通し

物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、目先、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から高めの伸びとなったあと、そうした影響の減衰に加え、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果もあって、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果の反動もあって、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(以下暫く直上URL先の2023年1月展望レポートより引用)

とあって、基本的な話としては威勢の良い話になっているんですよね。でもってエネルギーのかく乱要因を除いたコアコアですが、

『この点、ガソリン・電気・都市ガス代などのエネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、2022年度に2%程度となったあと、2023 年度は1%台後半、2024 年度は1%台半ばとなっている。』

でもって、22年度の全国のコアコア物価指数の前年同月比を12か月分単純平均すると+2.17%になって、展望レポートの見通し22年度+2.1%なのでそれはそれで良いんですけど、ご案内のように2月が+3.5で3月が+3.8な訳で、今日の東京都区部見たらだいぶ予想しやすくなるのかもしれませんが、いずれにせよ発射台がバチクソ高めの所から始まり、しかも「その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果の反動もあって、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。」という見通しになっている訳で、そんな中でコアコア23年度幾らで出してくるんでしょうというのは大変に味わいがあります。

というかですね、そもそも論として1月展望の時点で、物価の見通しメカニズムの所で「価格転嫁の一巡とエネルギー価格の押し下げによって伸びが鈍化した後はまた徐々に上がっていく」という説明をしているのにも関わらず、コアコアの見通し2023年度+1.8%ってのも無茶苦茶低い数字でして、2022年度は前半1%近傍だったのが後半2%を超えてジャンジャン上がっているんだから、そもそも23年度の発射台が高い所にあるのに+1.8って数字自体も意味不明だったんですよね。

まあ1月はYCCの方でアタクシを含めアツくなっていたのでこっちまで冷静に見てる時間無かったというか見てイカッたもののその後が思いつきませんでしたが(汗)、さすがにこのコアコアの予想数字の部分に無理があるから余計なこと言わないで数字だけ出したんですねわかります、って感じで、中々こう苦渋の文章になっているのが今見ると伝わると思います。


だって物価の見通しのその先の部分でも、

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、ごく小幅のマイナスとなっている。先行きの需給ギャップは、わが国経済が潜在成長率を上回る成長経路をたどるもとで、2022 年度後半頃にはプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大が続くと予想される。』

需給ギャップに関してはこの前の日銀謹製の数字がちょいコケではあったものの、

『こうしたもとで、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み、賃金の上昇圧力は次第に強まっていくと考えられる。このことは、コスト面では人件費の上昇圧力をもたらすとともに、家計の購買力の増加に寄与するとみられる。』

お賃金上がりましたよね。

『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、短期と比べるとペースは緩やかながら上昇している。短観の販売価格判断DIは上昇している。短観における企業の物価全般の見通しも、短期だけでなく中長期も含め、高水準となっている。』

『適合的予想形成の強いわが国では、現実の物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらし、企業の価格・賃金設定行動や労使間の賃金交渉の変化を通じて、賃金の上昇を伴う形で、物価の持続的な上昇につながっていくと考えられる。』

現実の物価上昇率は一段と高まっているし、最頻値3%台だのコアコア3.8%だのエライことになっておりますけれども・・・・・・・・・・・・・

てな訳で、そもそも論として10月展望位からそこは明らかになっているのですが、物価上昇のメカニズムの記載と、出来上がりの見通しとなる物価水準の間にギャップがあって、そのギャップについては誰も公式には認めないですけど、黒田大総統様のご意向に沿った忖度を爆発させた結果このような無理のある数字を出していたと思われるわけですが、さて今回この数字をどう弄って来るのか。


まあアレです、匍匐前進で直していく、ということになると植田総裁7月の展望レポートの時点で「4月に出した物価見通しが低いのではないかという指摘がありましたが、その通りに7月に上方修正を余儀なくされました。このような見通しの精度では適切な金融政策運営が出来ないのではないでしょうか」とゴリゴリ突っ込まれて立ち往生になりますし、一気に直していく、となると今までの見通しは何だったのか残りのポンコツ(田村さんは例外なのでこの場合不適用)ちょっとお前ら説明しろやこの給料泥棒、とまあそういう話になりまして、どっち転んでも物凄く楽しい(ハイパー不謹慎)ので、YCC修正が無くてもこれで楽しめそうだなーと思うのでありました。


でもって先ほども申しあげているように「経済物価情勢の見通しをベースに金融政策を行う」しかも「物価安定目標を掲げている」と来ているんですから、(物価があっという間に失速すれば話はもちろん別ですがそうでなければ)物価が見通しより強い状態が続いていく中で、マイナス金利を維持していく必要があるのかというそっちまで話が進む、とまあ思う訳なんですけどどうなるやら。



〇話は変わってFSRって何で「国内金利上昇のマクロストレステスト」をしないのかなあ(棒読み)

はい
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr230421b.pdf(FSR概要)

ということで今日は「概要」の方になりますがスライドページの41ページ目。PDFの42枚目からが『マクロ・ストレステスト』になります。

スライド41ページ目。

『マクロ・ストレステスト(1)逆イールド・シナリオ

 米欧金利が大きく逆イールド化した状態が続くことを想定することで、金融機関のバランスシート変化の効果を検証

・逆イールド・シナリオでは、米国のFFレートは、6%台(FOMC見通しの信頼区間の上限)まで引き上げられ、そのまま1年高止まりした後、シミュレーション終期にかけて低下。このとき米国経済は、2023年度中に小幅なマイナス成長(FOMC見通しの信頼区間の下限)となり、その後1年はゼロ成長。
・ ダウンサイド・シナリオとして、逆イールド・シナリオとは別に、金融調整シナリオも想定。』


スライド42ページ目。

『マクロ・ストレステスト(2)バランスシート変化の影響

 金融機関のバランスシート変化は、海外金利上昇に対するストレス耐性の改善に寄与している。
・「リバランス後」の自己資本比率は、「リバランス前」に比べ、+0.5%ptほど上昇。海外預貸利鞘の改善(28頁)、

 有価証券利鞘と評価損益の改善(38頁)が、自己資本比率の上振れ要因。
・ ただし、シミュレーション期間中の有価証券利鞘は大きな逆鞘となる。
・ 多くの金融機関がリバランスを進めたものの、有価証券関連資金利益の減益によって、損失吸収力に低下圧力が働くことは避けられない。』


・・・・・・・あれ????マクロストレスシナリオこれでおしまいなの??????????????????


ということで、よくよく見ますと国内金利上昇のストレステストって無いんですねーーーーー、なんでなんでしょうかねえーーーーー。そもそもストレステストってフォワードルッキングに行うもので、ここまで散々政策金利が上がり散らかしている米国の短期政策金利が上がるシナリオをフォワードルッキングに検証する意味がボクちゃん頭悪いから良く分からないなーーーーー。

と思いました。




2023/04/27

お題「結局事前の決め打ち報道は出ないままでMPMっすな/FSRの鏡の部分を前回10月号と軽く対比してみる」

ほうほう資産所得の倍増とな。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2620H0W3A420C2000000/
「運用会社を抜本改革」岸田首相が指示 資産所得倍増へ
経済
2023年4月26日 20:12

運用会社の抜本改革とか時間のかかりそうなことをするよりも、マイナス金利とかいううんこ政策を止めてテイラールールで適正と推計される水準に政策金利を引き上げればあら不思議、金融資産の利息収入が一気に何万倍に増えるという魔法の手段があると思うのですけれどもどうでしょうかしら総理!!!!!!!!!!

・・・・・ただのポジトーですかそうですかすいませんすいません。

てか資産所得の倍増計画ってスローガンは美しいけど資産持ってない人から見たら思いっきり格差拡大政策になりゃしませんのかしら??????そらまあ金融屋さんとしては商売繁盛ネタにはなるんだけどさ。


〇今回は各報道機関とも絞り込めないという感じなんですかねえ

なんかもう昨日も植田総裁を国会に呼びつけててエエカゲンニセエヤと思いましたし、昨日はまたあの前ナントカさんという共同文書とかあの手の碌でもないものの元凶のお方の質問ということで見る価値ないと思ったら案の定ヘッドラインも碌に出てこなくて、月曜火曜の委員会質疑の方が見るものがあったわという結果でしたな(個人の感想です)。

まあそれはそれと致しまして、

日経電子版ちゃんのヘッドラインが中々味わいがあって、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB253JG0V20C23A4000000/
長短金利操作、市場は修正見送り観測 日銀27日から会合
金融政策
2023年4月26日 17:00 [有料会員限定]

早朝時点での金融政策ネタだとこれが一番新しい(昨日の夕方だけど)と思うのですが、記事は有料会員限定なのでリードの所しか読めませんけど。

『日銀は27日から2日間の日程で金融政策決定会合を開く。9日に就任した植田和男総裁が出席する初めての決定会合となる。国際通貨基金(IMF)は1月に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の見直しを日銀に促したが、市場は4月会合では現行の大規模緩和が維持されるとの見方が強い。従来の物価見通しの引き上げのほか、過去の金融政策の検証も議論になりそうだ。』(上記URL先より)

ということで、この先は読んでないから知らんけど、ここでは日経さんの見通しではなくて市場の見通しがこうなっている、という仕立てで書いていて、決め打ちを回避しているというのが面白いなと思いました。

ちなみに日経さんは昨日の朝には
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB231JP0T20C23A4000000/
日銀、先行き指針の見直し議論 コロナ関連の表現焦点
日銀ウオッチ
2023年4月26日 5:00 [有料会員限定]

『日銀の植田和男総裁は27?28日、就任後初めての金融政策決定会合に臨む。市場では大規模緩和の継続を予想する声が多いが、日銀内では政策金利を巡る「フォワードガイダンス(先行き指針)」の見直し論が浮上している。新型コロナウイルス感染症が収束に向かう中、表現ぶりをどう修正するかが目先の焦点になる。』(上記URL先より)

ということで金利のフォワードガイダンスの「コロナ紐付け文言」の修正という寧ろ今回実施無かったら頭おかしいんとチャウのかという一番無難なものをご紹介するにとどまっておりまして、結局日経さんは今回のMPMに関して事前に決め打ちとか抜きをしてこなかったという結果になったんでネーノって感じでございます。


読売さんに至っては、早朝に改めてネット版をチェックしましたがMPMのお話全然無くて、
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230424-OYT1T50360/
[植田日銀 始動]<番外編>大規模緩和 継続見通し…27、28日に決定会合
2023/04/25 05:00
日銀総裁交代[読者会員限定]

とはあるのですが、こちらはリード部分すらないので何が何だかわかりませんけど、結局何か決め打ちで報道している感じでも無いですわな。


さらに公共放送さんですけど、今朝こんなのが出て来ましてですね(出来立てホヤホヤ)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230427/k10014050461000.html
日銀 植田総裁 きょうから初の金融政策決定会合
2023年4月27日 5時33分

『日銀は27日から2日間、植田総裁のもとで初めてとなる金融政策決定会合を開きます。植田総裁は、今の枠組みで金融緩和を続ける方針を示していますが、物価の先行きや金融緩和の出口などについてどのような考え方を示すのかが焦点となります。』(上記URL先より、以下同様)

基本的には現状維持を見込む(そりゃそうだ)のですが、書きっぷりがこれまた「植田総裁が国会などでこういう説明してたもんねー」というような書き方でございまして、決め打ち報道はしてこない、という慎重なスタンスになっているように見えます。即ち、

『今回の会合に先立って植田総裁は、今週国会で、経済や物価の現状を踏まえ、短期金利と長期金利に操作目標を設ける今の枠組みで金融緩和を続けることが適当だという考えを示しています。』

『さらに物価の基調的な動きが2%に達すると見込まれれば、金融緩和策は正常化の方向に向かうという見解を示しましたが、まだ出口に向けた具体的な方法を示す段階ではないと述べています。』

というように、ひたすら「植田さんこう言ってるもんね」という話で、〜とみられています、とは書かないのが中々おもしろい。

記事はそこそこ長いし全部読めますのでまあお暇な方はご覧あれという感じですが、

『経済や物価の先行き、そして金融緩和の出口などについてどのような考え方を示すのか、最近の植田総裁の発言をもとに会合での注目点を整理しました。』

とあって、

『まず、当面の金融政策運営についてです。

植田総裁は、就任後の記者会見や国会での答弁で金融緩和を続ける姿勢を繰り返し示しています。

4月25日に開かれた衆議院の財務金融委員会では「経済、物価、金融情勢を鑑みて、現行のイールドカーブコントロールによる金融緩和を継続していくことが適当であると考えている」と述べ、今の枠組みで金融緩和を続けるべきだという認識を示しています。

市場の一部には、日銀が新体制のもとで、金融政策を修正するのではないかとの観測もありますが、これまでの植田総裁の発言を踏まえ、市場関係者の多くは今の枠組みで金融緩和を継続するとみています。』

ということで、こちらも日経さんと同様にまあ綺麗な言い方をすれば客観的な書き方に徹していまして、変に決め打ちをしないような書き方になっている点では揃ってるな、と思いました。

なお、ここまでの流れで分かるように、基本的に時事共同読売日経NHK、特に後者の3社の複数が決め打ちを打って来ればまあそうだろうなという風に思う、というのがアタクシの基本的なスタンスです。ロイターブルームバーグは時と場合により、朝日毎日産経はスルー。

でもって今回はアタクシの重点ウォッチ対象の日経読売NHK(NHKはそんなに先走って決め打ちはしてこないですけど)が今朝の時点で自社見解も出さない(別に出す必要は無いのだからそれは無問題であって別に出さないことにいちゃもん付けてるわけではありませんです為念)ので、これは「たぶん現状維持なんだと思うんだけどまさかもあり得るから今回は市場見解とか植田総裁の発言を出して説明して決め打ちは回避しておきますか」という感じなのかなーって思いましたがどうでしょうかね。

まあそのように申し上げているアタクシも、物価動向考えてべき論で言ったらこんなの今回YCC長期ターゲット撤廃(または形骸化)すべきだししなかったら植田日銀この後コミュニケーションで無茶苦茶苦労するぞと思いますけど、予想となると「さっぱり分からん」というお手上げモードだったりする訳です(汗)。とは言いましても今朝のウォッチ対象ウォッチ時点で全然気配が出ないのは怪しい、というのはありますので、なんか決め打ちしてみろと言われたら「YCCの長期ターゲット撤廃」に決め打ちしますけど。


ま、それもそうですが今回どのツラ下げて展望レポートを出してくるのか、という方が色々とおもしろいと思うので、そっちを楽しみにしながら明日の昼を待ちたいと思います。



〇先週出ているのに今更で恐縮ですがFSR関連を少々(詳しくは連休中に読もうかと思っている所存)

簡単なご説明
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr230421.htm

要旨(プレゼン紙芝居形式)
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr230421b.pdf

全文(この本文のフォントが日銀の他部局と違うもの使っていて、ワイの環境だとテキストに落とすと主要な漢字が文字化けしてしまうというアイヤーな設計でお蔭でFSRをネタにしにくい)
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr230421a.pdf


ということでHTMLバージョンの方から見ますけど。


『2023年4月号の問題意識

今回のレポートでは、次の2つの視点から、金融システムの潜在的な脆弱性と海外金利上昇局面における金融機関のバランスシート変化の効果を評価している。』

ということですが、

『第一に、世界的な金融環境の引き締まりが、わが国の金融システムに対するストレスとなっている。』

『海外金利の上昇は、金融機関が保有する有価証券の利鞘縮小や評価損拡大を通じて、自身の損失吸収力の低下要因になる。各種調達コストの上昇や世界経済の減速は、内外企業の財務悪化を通じて、金融機関が負う信用コストの増加要因になる。今年3月入り後は、米欧の金融部門を巡る不確実性が高まった。こうした環境変化が金融システムに及ぼす影響を的確に評価することが重要になっている。』

ほうほう。

『第二に、前回レポートで指摘したとおり、わが国では、円滑な金融仲介活動を背景に民間債務が増加している。』

『感染症拡大以降の民間債務の増加には、手元資金を厚めに確保しようとする、企業の慎重な資金繰りを反映した面がある。他方、金融機関の積極的な融資姿勢を反映した面もある。こうしたもとで、債務返済能力が相対的に低い債務者向けの、信用リスクが高い貸出が増えていないか、点検することが重要である。』

ほっほーという感じですが、ここで前回の問題意識を比較してみてみましょう。

昨年10月バージョン
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr221021.htm

『2022年10月号の問題意識』

今回のレポートでは、金融機関の内外貸出と有価証券投資に焦点を当てたうえで、次の2つの観点から分析し、わが国金融システムの潜在的な脆弱性を評価している。』

『第一に、追加的なストレスに対して金融機関が負う潜在的な信用リスクを点検する。』

『国内では、感染症の影響を受けた追加的な資金需要は総じて落ち着いている一方、企業の慎重な資金繰りが続いている。海外では、大手行が国際部門の強化に取り組むもとで、レバレッジの高い企業向けの貸出が増えている。最近のエネルギー・原材料価格の上昇や海外金利の上昇は、これら貸出先企業に対する追加的なストレスとして作用することが考えられる。』

『第二に、海外金利の上昇が金融機関の海外資金利益や有価証券評価損益へ及ぼす影響を点検する。』

『金融機関の多くは、有価証券投資を通じて収益力の改善を図ってきた。ここ数年は、円債のほか、外債や海外金利系投資信託の投資残高が増加している。こうした金融機関にとって、有価証券利息配当金の減少や益出し余力の低下は、自身の損失吸収力の低下要因として作用することが考えられる。』(この部分2022年10月号の展望レポートの概要説明となる直上URL先より)

ということで、金融機関ポートの金利リスクの話と信用リスクの話をする、というのは当たり前ちゃあ当たり前なのですが、今回はさすがに海外金利上昇やら直近の米欧金融機関アイヤー問題を受け、市場性リスクに関する話の方を先に持って行った、というのが一つの違いで、もう一つの違いは信用リスクに関して、前回は海外貸出の話を前面に出して説明していましたが、今回の説明ですと、海外貸出の問題もあるのですけど、それよりも国内貸出の話が前面に出ている感じなところが違いますな、と思われます。

まあこれはこの鏡の部分みたいな所での違いであって、本文中では従来より国内貸出に関してもああだこうだと分析したものが結構あるので、分析そのもののはどちらもガッツリと行っているのですが、問題意識としての見せ方に変化がありますね、ということであります。


でもって先ほどの紹介コーナーHTMLに戻りますが、最初の小見出し『わが国金融システムの安定性評価(要旨)』に関しては「いやーもやばいっすよやばいっすよ」とは書くわけがないのでここは残念だが順当な事しか書かれていないので華麗にパスするとしまして、次に参ります。

『金融循環の現状

金融循環の拡張局面は、民間債務の増加を主因に長期化しているものの、現在の金融活動に大きな不均衡は認められない。民間債務増加の一因である企業向け与信の拡大には、手元資金を厚めに確保しようとする、中小企業を中心とした慎重な資金繰りが反映されている(図表I-3)。企業向け与信が拡大した反面、企業向け純与信(企業向け与信-企業の現預金)がほとんど拡大していないことから示唆されるように、中小企業の多くは、借入資金を手元資金として確保した状態が続いている。』(今回)

前回と比較してみる、と言ってもまあ半年でこういうのは劇的に変わるもんでもないけど。

『金融循環の現状

金融循環を表す金融ギャップは、円滑な金融仲介活動を背景に緩やかながらも拡大方向にあり、拡張局面は既に10年近くに及んでいる(図表I-1)。ただし、今回の拡張局面はこれまでのところ、民間債務の増加(負債要因)が金融ギャップの拡大につながっているものの、実物投資の増加(資産要因)や資産価格の上昇(価格要因)による影響は限定的である。民間債務の累積と各種投資の活発化によるレバレッジの拡大が、資産価格の上昇を伴って進行するような、大きな金融不均衡は観察されない。』(前回)

もちろん「大きな不均衡は認められない」になるのですが・・・・・・・・・・

『ただし、増加した民間債務の中には、債務返済能力が相対的に低い債務者も一部みられる。マクロのLTI(貸出残高の対所得比率)に相当する「家計債務の対可処分所得比率」は、既往ピークを更新するなど上昇が続いている(図表I-4)。その過程では、DSR(年間返済額の対年収比率)の高い住宅ローン構成比が上昇している。また、不動産業向け貸出は、全国各地で空き家率が高まるなかでも増加している(図表I-5)。空き家率の上昇は、借家世帯が減少した地域だけでなく、増加した地域においても観察される(図表I-6)。こうした民間債務の動向には引き続き注意が必要である。』(今回)

『この10年における総与信の拡大の半分は、家計向け貸出と不動産業向け貸出の増加で説明できる。このうち大手行の不動産業向け貸出は、わが国不動産市場における投資採算が相対的に底堅さを維持するなか、海外投資家が高額取引を継続的に行っていることを背景に、不動産ファンド向けを中心に増加が続いている(図表I-2)。また、地域金融機関の不動産業向け貸出は、不動産賃貸業の固定資産投資に比例して増加が続いている(図表I-3)。不動産市場では、オフィス賃料が低下し始めているほか、賃貸業の財務レバレッジが拡大している。海外投資家や賃貸業者の投資行動について、注意深くみていく必要がある。』(前回)

ということでして、最初の「問題意識」の中での書きっぷりと平仄があっていますが、前回よりも今回の方が国内民間向け貸出の「貸出の質」に関してよろフォーカスが当たっていまして、まあだから警戒モードが上がってるとかそういう性急な結論に持って行くつもりはないですけど、民間債務拡大が続く中で、不動産(家計向けって結局は住宅ローンですからね)関連融資に関する点、特に賃貸住宅の動向に関する分析のトーンを引き上げている感はありますね。


次の小見出しは半年前と今回でちょっと温度差があります。

『国内企業のデフォルトと手元資金

これまでのところ、企業のデフォルトは低位に抑制されている(図表I-7)。最近のデフォルト動向は、手元資金の多寡に規定されるところが大きい。この点、利益率の低い企業ほど、総資産対比で借入債務が大きく、現預金などの手元資金が乏しくなっている(図表I-8)。特に零細企業は、グロスとネットの両面で財務レバレッジ(借入金/総資産)が高く、相対的に財務が脆弱である。実際、デフォルト率を企業規模別にみると、規模の小さい企業は緩やかに上昇し始めている。』(今回)

『長引くストレス下の国内企業財務

ストレス局面が長引くもとでも、多くの企業は厚めの流動性バッファーを確保しており、このことが、デフォルトを歴史的な低水準に抑制する一因となっている。もっとも、輸入物価上昇に伴う原材料調達コストの増分を販売価格へ転嫁することが難しい企業の中には、今後、デフォルト確率が相応に上昇し得る先がある。試算結果によると、(1)輸入依存度が高いために変動費が輸入物価に感応的である企業、(2)取引先との価格交渉力が低い企業、(3)感染症の影響を強く受けたために流動性バッファーが薄くなっている企業は、デフォルト確率が高まりやすい(図表I-4)。』(前回)

ということで、前回と今回の差としては「輸入コストの転嫁云々の話が書かれなくなった(そらその分物価に跳ねてきてるからマクロ的なイシューからは後退気味だわな)」のと。「企業のデフォルト率拡大傾向への言及」があることです。

この背景には、

『今後、実質無利子融資の元利返済が本格化すると、企業の債務コストが増加する。』(今回)

ということで、コロナ対策の大盤振る舞いによって問題の先送りをしてた分の顕在化、というイシューがあるということでございまして、

『その影響を試算したところ、実質無利子融資の元利返済を勘案した場合(図中の「返済あり」)でも、半数以上の企業が、感染症拡大以前の2019年度と同等か、それ以上の手元資金を確保できている(図表I-9)。ただし、手元資金が不足する企業群もある(図表I-10左図)。同企業のデフォルトリスクは、零細企業との取引の多い金融機関に集中し得る。他方、実質無利子融資を一括返済しても、高い手元資金比率を維持できる企業群もある(図表I-10右図)。実質無利子融資を繰上返済する企業が多くなった場合、企業向け貸出と法人預金が同時に減少することになる。』(今回)

という分析をしています。前回もこのゼロゼロ融資の返済問題に関しては分析されていまして、

『実質無利子融資などのコロナ関連融資は、感染症拡大下における企業の資金繰りを強力に支えてきた。同融資の多くは既に返済が始まっている。中小企業の財務をみると、感染症拡大以降に純債務が増加した中小企業は、それ以外の企業に比べ、債務償還年数が長期化する方向にある一方、手元資金比率が低く、追加的なストレスへの耐性が相対的に弱いという特徴がある(図表I-5、I-6)。ストレス局面が長引くなか、金融機関には引き続き、企業の営業キャッシュフローの改善を支援していくことが期待される。』(前回)

ということですが、前回はコロナモードの中なので結論が「ストレス局面が長引くなか、金融機関には引き続き、企業の営業キャッシュフローの改善を支援していくことが期待される。」だったのですが、FSR方面ではいち早くコロナモードの脱却を意識して、ここの文言を鏡の部分からはサックリと削除し、寧ろ正常化に伴って発生する「先送りしていた問題の顕在化」について既に警鐘を鳴らしている、という動きになっていまして、未だにコロナ感染症で政策金利ガーとかいうマネポウィングよりもフォワードルッキングな話をしているのが実に味わいがあるというものです。


海外貸出のリスクプロファイルの所はすっ飛ばして金利リスクに関する部分を見てみましょう。

『海外金利上昇に対する金融機関のストレス耐性

金融機関の有価証券投資にかかる外貨金利リスク量は、金利上昇が意識されるなか、大手行だけでなく、地域金融機関においても、減少傾向が鮮明になっている(図表I-17)。円貨金利リスク量も、これまでの増加トレンドから減少に転じている。海外金利が大きく逆イールド化した状態が続くことを想定したマクロ・ストレステストの結果からも、金融機関のバランスシート変化が、金利上昇リスクに対するストレス耐性の改善に寄与していることが確認される。』(今回)

ほうほうそれでそれで??

『もっとも、金融機関ごとにみると、外貨金利リスク量やその背景にあるリバランス行動のばらつきが大きくなっている。大きくリバランスした銀行は、もともと損失吸収力が高かった先である(図表I-18)。また、リバランス行動の違いによって、リスクプロファイルの変化も様々である(図表I-19)。大きくリバランスした銀行(図中の第3、第4分位)では、外貨金利リスクを売却損として確定したことで、有価証券利回りが改善し、逆鞘リスクが抑制されている。このうち、損失確定売りに合わせて益出しも行った銀行では評価益(益出し余力)が減少し、削減したポジションを復元しなかった銀行(例えば、第4分位の銀行)では収益機会が損なわれたものの、評価損リスクは軽減されている。この間、ポジションを維持した銀行(図中の第1、第2分位)の中には、金利上昇リスクが逆鞘や評価損として顕在化している先もみられる。評価損の拡大は、実現損と同様に、配賦資本や分配可能額の減少を通じて、銀行財務に影響を及ぼすことに注意が必要である。』(今回)

ということで、今次海外金利上昇局面において、ポートフォリオの含み損を処理しながらポートの利回り改善を行っている先と、そのままお抱えあそばされている先とがあって、元々含み損を処理できるだけの余力のある所はその余力を持ってポートの改善をしているけど、余力の無い人はスブスブと沈んでおられますな、というお話をしています。

この点は前回でもまあ指摘されているんですけど、

『海外金利上昇に対する金融機関のストレス耐性

このところ金融機関の有価証券ポートフォリオは評価損が拡大しており、先行きも、金利動向次第ではさらに拡大する可能性がある。外貨調達コストが上昇するなか、短期的に、外貨の運用利回りと調達利回りが逆鞘となる可能性もある。収益力強化を目的に外貨金利リスクテイクを進めてきた金融機関の中には、外貨利息配当金への収益依存度が高まっている先もあり、運用益の悪化に伴う損失吸収力の低下には注意が必要になっている。』(前回)

『マクロ・ストレステストの結果からは、海外市場金利が極端に逆イールド化するというストレス事象に対して、金融機関は全体として、相応のストレス耐性を備えていることが確認される。ただし、海外市場金利の極端な逆イールド化を想定すると、海外貸出利鞘は大きく縮小し、有価証券利鞘は逆鞘となる(図表I-9)。その場合、国際統一基準行は貸出関連と債券関連、国内基準行のうち銀行は債券関連と投資信託分配金、信用金庫は投資信託分配金の減益寄与がそれぞれ大きくなることが見込まれる(図表I-10)。また、収益バッファーを表す損益分岐点信用コスト率は全体として低下する(図表I-11)。』(前回)

からの

『金利上昇の初期段階では、債券評価損益が悪化することから、評価益による益出し余力が大きく低下し得る(図表I-10、I-12)。益出し余力の低下した金融機関は、追加的なリスクテイクが難しくなるため、収益力が低下しやすくなる。一部の金融機関において、金融仲介機能が低下することも考えられる。』(前回)

という話をしておりまして、こういう局面になるとポートの差が一段と開いてしまいますよ、という話であります。まあこれに関しましては昨年4月号のFSRでも有価証券の評価益バッファーの差がポートの改善余力の差になって、その結果差が広がる、というような話があったりしましたので、一段とその差は拡大してるんじゃなかろうか、とは思いました。

とまあそんなザックリ確認だけで本日は勘弁。




2023/04/26

お題「ドルオペ正常化の日にこれかよw/基調的な物価・・・・・・/火曜日も国会でしたが植田さん現状維持バイアスに踏み込んでましたね」

最初のは本当はマクラで書いてたら長くなったのでネタ扱いにしましたです。

〇金融機関問題で開始した「まいにちドルオペ」を目出度く終了の運びにした途端とは鬼である

https://jp.reuters.com/article/global-banks-first-republic-asset-sale-idJPL4N36S4HJ
2023年4月26日2:43 午前
ファースト・リパブリック銀、1000億ドル資産売却やバッドバンク検討

『[25日 ロイター] - 経営難に陥っている米中堅銀ファースト・リパブリック・バンクが、「バッドバンク(公的資金を使って金融機関の不良債権を買い取る資産管理会社)」の設立や資産売却など、事業再生に向けた選択肢を検討していることが分かった。関係筋が明らかにした。同銀の株価は25日、史上最安値を更新した。』(上記URL先より)

ちょwwwwなんちゅうタイミングで出るのよwwwwwww

欧米銀行あばばばばーを受けて
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230320a1.pdf
米ドル流動性供給を拡充するための中央銀行の協調行動

『カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行は、本日、米ドル・スワップ取極を通じた流動性供給を拡充するための協調行動を公表することとした。

スワップ取極を通じた米ドル資金供給の有効性を高めるため、現在米ドル資金供給を実施している中央銀行は、1 週間物の米ドル資金供給の頻度を週次から日次に引き上げることに合意した。これら日次の米ドル資金供給は、2023 年 3 月 20 日(月)から開始され、少なくとも 4 月末まで継続される。』

ってことで1wのドルオペを「まいにちドルオペ」にしたのですが、まさに昨日

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_h/mope230425a.pdf
2023 年 5 月以降の米ドル資金供給について

『米ドル資金調達環境の改善や、最近の米ドル資金供給における需要の低さに鑑み、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、スイス国民銀行はともに、米国連邦準備制度と協議のうえ、1 週間物の米ドル資金供給の実施頻度を日次から週 1 回に戻すこととした。この運用上の変更は、2023 年 5 月 1 日から適用され、1 週間物の米ドル資金供給は、公表済みの日程に従い実施する。』

ということで、目出度く当初予定通りに4月末で終了、と公表したその日にファーストリパブリックバンクのアイヤーネタとか出て来まして、別にまあ織り込み済みのネタだったら無問題なんですけど、

https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N36S4GH
2023年4月26日5:18 午前
米金融・債券市場=長期債中心に利回り低下、景気後退懸念など意識

・・・・・・うーむ。織り込み済みではないような気がする(預金流出までは織り込んでいた話で関係者云々が新ネタなのかしら)んだが、いずれにしても上記のような話を出したその日に元々怪しい扱いの銀行ではあるのですが、米国中堅銀行の(ノ∀`)アチャー話で同行株価が急落して米国債券市場がつええええええ、というのになっちゃうとか、他の中銀からしたらFEDは何やってるんだふざけるな馬鹿って感じではないかと思いました(小学生並みの感想)。

単にコンファレンスボードの方に反応してるだけかもしれないですけどね。


なお、SVBに関しては
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/bcreg20230425a.htm
April 25, 2023
Federal Reserve Board announces that the review of the supervision and regulation of Silicon Valley Bank, led by Vice Chair for Supervision Barr, will be released on Friday, April 28, at 11:00 a.m. ET
For release at 4:15 p.m. EDT

だそうで、SVBの監督結果についての公表を金曜の向こうの午前11時に行うそうな。



〇日銀謹製の「基調的なインフレ率」が更に強くなっておられますけれども・・・・・・・・・

当然の如く昨日は話題になっておりましたのでご案内の通りではありますが。

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

いつものように左から刈込平均値、加重中央値、最頻値
ダンダラが長くなるので2022-JANからにします。

Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5
Dec-22 3.1 1.4 1.6
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7

刈込平均は再加速しちゃうわ、最頻値が2%で止まるどころかぶち抜けて3%に接近するわですが、最頻値3%ってつまりは「商品アイテムを見た場合3%くらい値上がりしてるのが一番多いっす」というお話な訳でして、そらインフレ感も高まるわという話で、どこがどう一時的ということになるのか、もうちょっと真面目に検討して頂きたいと思いますな。

でもって日銀がそもそも「基調的なインフレを捕捉するための指標」として出している数字がこのようにバチクソ強くなっているのに、なにがどうなると「基調的な物価の上昇がまだです」って話になるのかさっぱり分からんですし、だったら何でこれまでこの指標を計算していたんですか、という話になりますよね。

ここもと毎日言ってますけど、このデータの事はスルーして物価の下振れがどうのこうのみたいな話を夜の帝王様は昨日も昨日とて国会でお話になっているのですが、政策の説明に都合の良い屁理屈を次々と繰り出してその話が説明上都合悪くなると新しい屁理屈を繰り出してくる、という黒田末期のクソ見苦しく、日銀の信認がドンドン毀損されるスタンスを継続するならまあ植田先生の場合は黒田末期の1年間を5年継続するという面白事態になりそうですな、さてどうなるのやら。

左から、上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率

Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0
Jul-22 73.2 20.7 52.5
Aug-22 72.6 21.5 51.1
Sep-22 74.9 18.6 56.3
Oct-22 78.9 14.6 64.4
Nov-22 79.9 13.6 66.3
Dec-22 81.2 11.7 69.5
Jan-23 80.3 12.6 67.6
Feb-23 81.0 11.7 69.3
Mar-23 82.6 10.0 72.6

相変わらず8割の品目が値上がりしておるし、上昇マイナス下落は70%をキープしてますし、コストプッシュによる価格上昇は一時的、とは何だったのかと小一時間問い詰めたい訳ですな。


〇企業向けサービス価格指数

https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cspi_release/sppi2303.pdf
企業向けサービス価格指数(2023年3月速報)

企業向けサービス価格指数(総平均)は、前年比+1.6%。
企業向けサービス価格指数(総平均<除く国際運輸>)は、前年比+1.5%。

ということで若干これは市場予想(とブルームバーグが集計してた数字)よりは低いには低いのですが、ゆうて前月比とか見ますと、3月速報前月比総平均で+0.7%、除く国際運輸で+0.6%でして、表の下にある「(指数推移)」というグラフを見ると相変わらずの右肩上がりとなっております。

サービスが上がらんから物価上昇の持続力ガーみたいな話とか、粘着的なサービス価格が上がらないから物価の基調は中々上がりません、という話もちょっと前には日銀様はしていたのですが、最近はその話もすっかり言わなくなって参りまして、まあいつものチェリーピッキング集団の面目躍如といった所ではあるのですが、全国CPIにしてもそうですけど、価格上昇が広範囲に広がっている状態な訳で、この状況の中で「この先2%割る」を連呼しながら国会で説明しているのは、どっからどう見てもこれ植田総裁の説明が危険な領域に踏み込みつつありまして、この調子だと黒田と変わらん説明をしないといけなくなるという状況に追い込まれるわけで、だったら何も植田先生じゃなくて良かったんですけど、となってしまいますわな。

いやまあ勿論YCCの長期金利ターゲットの特性として、事前織り込ませ一切不可能奇襲攻撃が必要、ということで煙幕を張っていて、実は金曜日に蓋を開けてみたら真珠湾攻撃で植田総裁大勝利ということだったらまあ良いんですけど、ただまあそうなるにしてもちょっと植田さんの説明が危険な領域に入ってきてるんじゃないかな、というのが昨日(もやりやがった)の国会答弁かと思う訳でして・・・・・・・・・・


〇植田総裁の国会答弁がさすがにこれはヤバそうな感じになってきたので二つ名や悪態の準備運動をしなければ(ソウジャナイ)

昨日の国会答弁。また呼び出しかよとは思ったのですが、質問は中々よろしかったようですな。

これね、ブルームバーグさんのヘッドラインはこうなっていますが、途中のヘッドラインとかもそうですし、記事の中での説明を見ても「ああこりゃ植田さん危ないわ」という答弁に見えたんですよね。

・現状維持バイアスの掛かり方が月曜対比でターボ掛かっておるのですが大丈夫なんでしょうか植田さん

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-25/RTN7NEDWRGG001
賃金や物価が想定以上なら適切対処、現在は緩和が適当−日銀総裁
伊藤純夫
2023年4月25日 10:51 JST 更新日時 2023年4月25日 12:42 JST

『日本銀行の植田和男総裁は25日、日銀は賃金上昇を伴う形で物価安定目標が持続的・安定的に実現するよう金融政策を運営するとし、「仮に賃金や物価が想定以上に上昇し、金融引き締めが必要となる場合には、金利の引き上げなどによって適切に対処していく」との考えを示した。衆院財務金融委員会で答弁した。』(上記URL先より、以下同様)

とあるのですが、ニュースヘッドラインで出て来る発言を見ていると、このブルームバーグのまとめじゃなくて、印象としては現状維持バイアスの強く掛かったような感じに見えたんですよね。すなわち(以下上記URL先の記事の書いてある順序を前後して引用しますので念のため)、

『今年度後半にかけて消費者物価のプラス幅が縮小していく見通しを踏まえれば、「物価上昇率が下がっていくところで物価に下押し圧力がかかってしまう。見通しよりもさらに下のインフレ率が実現するという由々しき事態になることを懸念している」と語った。』

って、ここで段落切るなよと思いますが、これはどういうことかというと、

『このため、現在の金融政策運営は「ここで正常化をしてしまってインフレ率が下の方に行ってしまうリスクの方を重くみて、金融緩和のスタンスを継続している」と説明した。』

という話で、思いっきり正常化そのものまで否定しているという話になっていて(最初記事見た時は引き締めってあったと思うんだが正常化になっていますな)ナンジャソラという位に威勢よく現状維持バイアスを掛けた説明になっているのですよね。

月曜の国会答弁だと(やり取りをちゃんと聞いたわけではないからアレなんですが)まだ出て来る言葉には「今の見通しだとそうですねー」みたいな感じだったのですが、こうバイアス掛けてしまうと、今週末アタクシの期待通りに(と言いつつもコリャダメか夜のギロッポンに帰れや(自主規制)という言葉が喉まで出かかってはいますがそこはぐっと我慢しまして)YCCの長期ターゲットを解除したとしますと、どっからどう見ても連休明けの国会で「国会軽視」って吊るし上げコース待ったなしの展開になるのが火を見るより明らかではなかろうか(個人の感想です)という感じの発言にエスカレーションしてますよね、と思う訳ですよ。

でもってYCCについても、まあこれ質問がこうだから言わされたという面はあるにしましても、

『現在のイールドカーブの形状については、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の運用見直しや海外金利の低下を受けて「総じてスムーズになっている」と指摘。「現行のイールドカーブコントロールによる金融緩和を継続していくことが適当」と述べた。国際通貨基金(IMF)が3月の対日経済審査後の声明文でYCCのさらなる柔軟化の検討を奨励したことへの見解を問われ答えた。』

質問自体がYCCを柔軟化しないんですか、という感じで直球投げられたんでこう答えるしかない、というのはありますし、逆に柔軟化というか長期金利ターゲットの撤廃なり形骸化なりを具体的に何も考えていないのであれば「政策のありかたに関しては常に毎回の会合で検討を行っています」みたいなフニャフニャ回答をしても実害が無い、ともいえるのでそれはそれで煙幕なのかという気もしないでもないんですけど、こういう完封スタイルで発言してからあ、あとになって「長期金利ターゲットの修正については政策運営上事前にお話しすることが出来ないと私言いましたよね」と言っても議員の皆様が怒り狂うのは必定だと思うんで、ちょっと植田さんその辺を甘く見過ぎなんじゃないかなという懸念が高まって参りました。

要するにすべての問題は外道の黒田が1月か3月にYCCの長期ターゲット外さなかったのが悪いのですけど、呪いについて理解しないままMPMを迎えてしまって見事に呪いに掛かる、ということで、植田さんったら、安倍ちゃんの後をやってあっという間にズタボロになったガースーのような流れになるんじゃなかろうかと懸念されます次第であります。華やかさが無いというのもガースーに似てるしw



・さらに気になる「今年度後半には2%前後」発言でいつの間にか説明を一部改変しだしている植田さん

ところで、なんかドサクサに紛れて昨日の国会では物価見通しの物言いを変えていたのが気になりましたのでそこに関しましても上記記事から引用しますね。

同じく上記URL先のブルームバーグさんの記事からですが、これはしれっと重要な事を勝手に話変更してるんですけど植田さんもあっという間に黒田10年の治世末期の政策先にありきつじつま合わせ(あってないのだが)のために詭弁学園インチキ集団と化してしまった日銀のカラーに染まって大変に嘆かわしいと思いました、というのがこちら。

『総裁は日銀の消費者物価見通しについて、コストプッシュ要因の影響の減衰とともに「今年度後半には2%前後、あるいは2%を下回るところに下がっていく」と説明。その上で、「もちろん私どもが見ているインフレ率の経路から、現実がどんどん上にずれてくるということであれば、現在のスタンスを正常化する方向にかじを取らざるを得ない」と述べた。』

>今年度後半には2%前後、あるいは2%を下回るところに下がっていく
>今年度後半には2%前後、あるいは2%を下回るところに下がっていく
>今年度後半には2%前後、あるいは2%を下回るところに下がっていく

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwいつの間に勝手に「2%前後」ってのが入ってるんだよおいふざけるな。

月曜の国会答弁に関しましては昨日ネタにしました通りですが、せっかくですので公共放送様のニュースページでどういう紹介になっていたのかを確認しますとこうでした。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230424/k10014047551000.html
日銀 植田総裁 “今年度後半には物価上昇率2%を下回る”
2023年4月24日 15時40分
(しつこいですがこれは月曜の方の国会答弁に関する記事です)

『この中で植田総裁は、物価上昇率の見通しについて「輸入物価が国内物価に転嫁されていく動きは、しばらく前に予想されていた以上の強さで進んでいる。ただ、私どもの見通しでは、そろそろピークを迎え今年度後半には2%を下回ると見込んでいる」と述べました。』(この部分は直上URL先の3/24での国会答弁に関するNHK記事より)

とありまして、これまでは一貫して1月の展望レポートで示された見通しについて話をしていたのですが、昨日の国会答弁では何とこの今年度後半に関して「2%前後」というのを何の断りもなくしらっと入れてきたのが実は大事なトピックでありまして、これですとあら不思議、週末の展望レポートで23年度平均の上方修正を織り込んだ数字の話になっているのでして、あれーーーーーーこれはおかしいぞーーーーーーー、と思うのがアタクシの仕様となっておりますな、うんうん。

とまあそんな訳で、何だか知らんが昨日の国会答弁は謎に踏み込んでいて、こんな所で踏み込んでも何の得もないだろうと思うのですよね。何でこうなってるのかなーとは思うのですが、なんか早くもこのおじさん、コミュニケーションポリシーが怪しいというか危うい感じがしてきましたな。


・当然こういう風に捉えられるのでまあ色々と危ないですよねーという実例があるので

今出した公共放送様の報道を見ますと、月曜の植田総裁の国会答弁に関してのニュースは先ほどご紹介した通り、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230424/k10014047551000.html
日銀 植田総裁 “今年度後半には物価上昇率2%を下回る”
2023年4月24日 15時40分

となっているのですが、昨日の植田総裁の国会答弁に関してのニュースはこうなっていまして、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230425/k10014048771000.html
日銀植田総裁 “イールドカーブコントロールで金融緩和 継続”
2023年4月25日 16時11分

となってまして、NHKが見ても昨日の国会答弁の方が金融政策現状維持バイアスの強く掛かったものになっている、というヘッドライン(記事内容もそうです)になっている訳でして、いやーこんなに踏み込んで話をしたら後で自分の首絞める可能性が高いのにまあ黒ちゃんの生霊でも乗り移ったんだか威勢の良い(政策変更しないんだから威勢が悪いんですけど)説明しちゃってこりゃヤバいわーと就任1か月もしないうちに危うさが滲みでてきておるなあと心配になってまいりました。


これで4月の展望で中途半端な物価見通しを出して現状維持して、7月にまた上方修正に追い込まれでもしたら物価の方から追い込まれる(本来は目標達成に近づくのだから「追い込まれる」というのが本末転倒なのですが・・・・)ことになるし、物価見通しをこう毎度毎度下方向に外して後から修正、ってのが続くと日銀の信認問題になってくるし、だいたいからして世間様が日銀批判をまたするようになると思うんですが、なんかもう大丈夫ですかねえとしか申しあげようがないですな。


・そういえばオマケみたいなアレですが

さっき引用してた植田さんの機能の国会答弁、話の流れの都合上再掲になりますけど。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-25/RTN7NEDWRGG001
賃金や物価が想定以上なら適切対処、現在は緩和が適当−日銀総裁
伊藤純夫
2023年4月25日 10:51 JST 更新日時 2023年4月25日 12:42 JST

『金融政策の発動から物価に影響が及ぶまでに、例えば半年後、1年後、1年半後というように「かなりの時間がかかる」と指摘。また、植田総裁は、日銀が金融緩和を続けている理由について問われ「金融緩和政策をやめて金融引き締めに転じると、物価に下押し圧力がかかり、今の見通しよりさらに下のインフレ率が実現するというゆゆしき事態となるのを懸念し、現在は緩和政策を継続している」と説明しました。』(直上URL先より)

の部分ですけど、

>金融緩和政策をやめて金融引き締めに転じると、物価に下押し圧力がかかり、今の見通しよりさらに下のインフレ率が実現する

これはパウエルもラガルドも憤死待ったなしですねwwwwwwwwwwwwwwwwwww

何ちゅうかさ、自分の答弁の中で政策発動から物価に影響が及ぶのにラグがある、って言ってるのに今の見通しよりさらに下のインフレっていうのどのタイムスパンで話をしてるのかまるでよくわからんのですけど、と思いました、まる。





2023/04/25

お題「決定会合待ちということで植田総裁の国会での答弁ですが読みようによっては妖刀の香りもする次第(という説法)」

ということで何か同じような雑談ばっかりで申し訳ありませんもうちょっとまとまった話を下準備したいんですけどアタクシにも生業というのがあります関係上・・・・・・・・(滝汗)

〇今度は総裁の国会答弁だがヘッドライン的には政策動かんとなっているのですが・・・・・・・・

昨日は植田総裁が重要な4月展望レポートを前にまたまた国会に呼び出されていたのですが、頼むから時期というのを考えて欲しいし、そういうことばっかりやってるからてめえらの党は補選で全廃するんだよバーカバーカと思ってしまいました(個人の感想です、あとこのバーカバーカはこの後で半分だけ撤回しますのでよろしくお願いいたします)。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-24/RTLIAHDWLU6A01
YCC正常化、1年半先などの物価2%の確度が重要−日銀総裁
伊藤純夫
2023年4月24日 12:18 JST 更新日時 2023年4月24日 13:50 JST

→正常化の具体策言える段階にない、中途半端な情報発信は市場かく乱
→現在は金融緩和を継続するスタンス、年度後半には物価が2%下回る

中々この記事は鬼で誰の質問に対して答えたのか書かれていないのですが、まあそういう党のお方のご質問だったりするんですけどね。

でまあこちらの国会答弁に関しては、ヘッドラインは各ベンダー共に政策動かんというトーンになっておりまして、まあそれを受けてるのか受けてないのか知らんけど(というのは横綱はプラスだったけど先週のバッドオークションを引きずっているらしい超長期は弱かったから強いのか弱いのか分からん相場だった、物国が何故かここの所地味な世界で怒涛の逆襲をしてるのも謎な相場なんでございますがさっぱりワケワカメ)、昨日の横綱は朝方こそ米国様の金利上昇と産経記事(安倍ちゃんの治世の時にも抜けなかった産経が今のこのご時世で抜ける訳ないので正直ノーケアーでしたし、その認識は今でも変わらんし、そもそも産経は安倍ちゃんと置物教のプロパガンダ機関だが報道機関とは思ってないので読む価値がないというのは個人の感想)の話しだったのか下で始まりましたが、その後は横綱巻き戻して結局下髭ほとんどない陽線を引いて終了という流れだったので、多分後付け講釈的には植田総裁発言で政策修正期待後退、となっていると思いました。

ということで記事の方を拝読しますが、ブルームバーグさん中々良い感じでポイントを書いてて、これよくよく見ますとヘッドライン的には「政策動かん」なのですがよく見ると怪しげな香りも漂うというというのが分かる作りになっています。

では以下上記BBG記事から引用しながらです。

『日本銀行の植田和男総裁は24日、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の正常化が必要になる基調的な物価動向について、1年半先などの物価見通しが2%前後になり、その確度が高まることが重要との見解を示した。衆院決算行政監視委員会第1分科会で答弁した。』
(上記URL先BBG記事より、以下同様)

でまあベンダーに出てた時のヘッドラインもインターネット版と同様に「YCC正常化、1年半先などの物価2%の確度が重要−日銀総裁」だったのですが、アタクシはこのヘッドラインを見た瞬間に「確度とか言ってるけどそもそもお前ら偉大なる黒田将軍様への忖度だか本当にただのポンコツなんだかよく知らんけど物価予想外しまくってるのに確度も蜂の頭もあるかよこのクソボケ」と思わず画面に向かって悪態をついてしまった訳ですが・・・・・・・・・・・

『植田氏は、「簡単に申し上げれば、半年先、一年先、一年半先の私どもの物価の見通しがかなり強いものになってくる。2%前後になってくる。しかもそれについての見通しの確度が高まったと認識できる時と漠然と考えている」と語った。総裁候補として臨んだ2月の国会での所信聴取で、YCC政策の正常化には基調的な物価見通しの改善が必要との認識を示していた。』

これは他のベンダーで見た流れですと、質問した人が「所信表明の場で基調的な物価が強まると言ってたけどその定義や如何」という感じで聞いてたみたいで、まあその質問は良い質問なのでバーカバーカは半分だけ撤回するんだが、そういうのはもっと早くに聞いて頂かないとこんなMPM直前じゃあねえと思うのと、もっと贅沢を言えば、「昨年の4月に当時の黒田総裁は生鮮食品・エネルギーを除く総合物価指数が基調的な物価動向を示す指標ということで説明していたが」というのも混ぜ込んで頂ければなお良かったなと思うのよ惜しいなあその辺大門先生だったら絶対に逃さないのに。

でですよ。「現時点での」日銀の見通しというのは1月展望レポート(とそこから認識の変更の無かった3月決定会合)をベースにしているので、2023年度の平均でコアCPIが+1.6%という珍予想になっているので、確かに「半年先、一年先、一年半先の私どもの物価の見通しがかなり強いものになってくる。2%前後になってくる。」とは言い難い訳ですよね、年度平均+1.6%ならどう見たって半年後は2%からだいぶ下にならんと計算合わないですから。

でね、何が怪しいかと言いますと、この記事中だと最後の部分にいったん飛びますと、

『物価見通しに関しては、今年度後半には2%を下回るとした上で、「その見通しに沿って金融緩和を継続するというスタンスだ」と改めて表明。物価の基調が2%に届く見通しになってくれば「緩和については正常化の方向に向かう」とし、「そこの判断に誤りがないように、物価の見通しについて一段と精査をして努力していきたい」と語った。』

とある訳ですよ。つまり「その見通しに沿って金融緩和を継続するというスタンスだ」と改めて表明、というのは1月の展望レポートの見通しの話を前提にしたお話であり、返す刀で「そこの判断に誤りがないように、物価の見通しについて一段と精査をして努力していきたい」ということで、そこというのは正常化の判断をどうするか、って話ですが、「物価の見通しについて一段と精査をして努力していきたい」と言ってるというのは、これは(と、ここから正常化バイアス入り説法モードが全開になるので話半分で聞いて下さいね)4月の展望レポートで精査をした結果、物価の基調が1月時点の見通しよりも全然強いですぅ〜テヘペロってなったら1月見通しを軸にして説明していたものとは違う結果になって然るべき、という話になるので、これはそういう正常化バイアス入り説法モードで読みますと何とあら不思議ホーキッシュな説明に見えてしまうというエッシャーの騙し絵みたいな話になる訳です(説法中なので話半分で聞いて下さい改めて為念)。


しかも記事の途中にありますように植田総裁は明確に、

『その上で、YCCの正常化の手法については「その時の経済の状況やインフレ率の上がり方の速さなどさまざまな条件に依存する」とし、現在は具体的なやり方を申し上げる段階にはないと説明。』

はさて置きまして、

『長期金利コントロールは、中途半端な情報発信をすると市場に大きなかく乱が発生すると述べ、「それを避ける意味で、ギリギリまでなかなか発表できない面があることは理解してほしい」とした。』

と思いっきり発言していまして(記事の方でも最初にしれっと書かれていますよね)、これって結局の所抜き打ちで実施しますと言ってるようなもんで、つまりは事前に何かそれを匂わせるアクションをしないと言ってるんですから、予告ホームランどころか示唆すらしないで解除しますって話でして、それって例えば今回の展望レポートで物価見通し何も上方修正しないなら別ですが、それなりに上方修正をした、となると当然「次の会合かその次の展望レポートで長期金利ターゲットの解除があるのでは」ということになってしまいますので、「ギリギリまでなかなか発表できない」というのと矛盾してしまうわけですな(説法)。となりますと、やっぱりこれ4月長期金利ターゲット解除じゃん、と説法モードに入った場合には説法が出来てしまう訳ですな(しつこいですが話は半分で聞いて下さいね!)。

と、気が付いたらまた説法になっていますが、それはさておきましてもこの一連の植田さんの説明は、YCCの修正においては副作用論での対応ではなくて、経済物価情勢(その中でも恐らくは物価情勢)の判断をベースにする(ので長期金利ターゲットの撤廃においては均衡イールドカーブ的な話が復活するかもしれないけど、あの理屈自体がかなり融通無碍に使える理屈なだけに植田さんはそういうインチキは使いたがらないかもしれません)と考えますと、実は4月展望でやらなければ次が7月まで飛んでしまう事になってしまいます。もちろん長期金利ガチガチターゲットに関しては切り離した形の技術論(市場のボラが多少上がっても無問題みたいな)で解除する可能性もあって、どっちで来るのかは正直良く分からないのでございますが、長期金利ターゲットの修正(撤廃ないし形骸化)をYCCの修正の一環とするのであれば、6月解除というのは筋悪になりそうですな、とは思いました。

それはこの記事の本文ではなく脚注部分となる『他の発言』の所にも『・あくまで物価の基調で金融政策を判断』とあるので、この物価の基調とは何ぞやとなると、黒田さん的に言えば元々はコアコア物価の動向だったし、植田さんの言い方だと1年半先くらいまでの確度の高い物価見通し、ということになります。

でもってですね、そもそも論として今回の展望レポートって2025年度までの物価見通しを出すわけですけれども、1年半までの物価見通しであれば、どっからどう見てもコアCPIで+2%近辺に行ってるだろというのがあって、それなら長期ターゲット解除どころか正常化ジャン!となるんですがさてどうなるのやら、今週金曜日が楽しみになって参りました。

・・・・・・とまあ説法全開になっておりますが、何もしないならしないで展望レポートの内容をネチネチとツッコミ入れながら駄文が書けるしどっちにしてもネタが多そうな展開でアーニャもワクワクですな・


〇共同通信展望レポートネタの報道の次に政策ネタですが

共同通信さん
https://www.47news.jp/9241347.html
日銀、政策修正の是非議論 植田総裁、27日から初会合
2023年04月24日 共同通信

『日銀の植田和男総裁は27、28日に就任後初となる金融政策決定会合に臨む。短期金利をマイナス0.1%、長期金利を0%程度とする大規模な金融緩和策の大枠は維持するとみられる。市場機能の低下が指摘される中、「0.5%程度」とする長期金利の上限を撤廃したり、引き上げたりする必要があるかどうか、慎重に議論する。大規模緩和策の点検、検証の開始を決める可能性もある。』(上記URL先より)

こちらの共同さんのニュースは引け後かつ16時ちょい前という本日の締め作業で忙しいお時間にぶっこまれたせいもあって完全に市場的にはどスルーだったように見えましたが、この記事何気に「「0.5%程度」とする長期金利の上限を撤廃したり、引き上げたりする必要があるかどうか、慎重に議論する。」って書かれてて、おいこらちょっと待てお前ら長期金利ガチガチターゲットの撤廃ないし形骸化を検討してるのかよ(さっきの説法モードはどこへ逝ったのかとか聞いてはいけません)という記事になっていまして、ありゃりゃりゃやって感じでございます。


・・・・・・えーっと、日経電子版は見たけど特にないな今の所(見落としてたらすまん)という感じですが、まあ12月のレンジ拡大がそうであったように、何も無さそうなタイミング(12月は年末だったし痛恨の休暇を取っていた方も多かったかと存じますな、まあこんなこともあろうかモードで念のためMPMを外して夏休みを取ったアタクシ大勝利でしたが(自画自賛))でぶっこんで来るのがYCCの長期ターゲットな訳でありますので(10→20くらい、の時に事前に時事通信砲が出たらあれだけ売られた訳ですからそらそうよですよね)、4月やらないと後になればなるほど「さすがに今回はやるのでは」ってのが増えてくる一方になって捌きに困ると思うんですけどね。


〇そういやクソどうでもよいのですが若田部さんは早稲田大学にご復帰されたようで何よりです

https://w-rdb.waseda.jp/html/100003541_ja.html
早稲田大学研究者データベース
Waseda University Researchers Database

ワカタベ マサズミ
若田部 昌澄
所属
政治経済学術院 政治経済学部
職名
教授

・・・・・・心なしかマクロ経済学や金融論に関する授業がないような気がしますがキニシナイ!

なお、今朝ほど日経電子版(無課金なので細かいニュースはみれないのですが)を金融政策ネタをチェックしようと思って見に行ったら、日経電子版オンラインセミナーというバナーをうっかりクリックしてしまったアタクシがその場で木彫りの熊状態になってしまった件についてはアタクシの自動忖度機能により割愛させて頂きます。

#うーむなんかもっと書くべきネタがあった気がするのだがおじいちゃん朝になると記憶から抜けてしまうので下準備しないといかんよね






2023/04/24

お題「CPIを見ていますと市場機能とかそういう話を超えたレベルでマイナス金利してる場合なんですかねえ/という中でロイターからも現状維持報道」

急に気温が上がったり下がったりで市場機能に問題がありますな(違)。

〇全国CPIキタコレ

はい全国CPI
https://jp.reuters.com/article/idJPL4N36N4YI
2023年4月21日8:54 午前
全国コアCPI、3月は+3.1%で伸び率変わらず 食料品が下支え

日本の場合は前年同月比の推移がヘッドラインになるというけいこうがあるので、(前年同月比伸び率が)前月比横ばい、って記事になる訳ですが、よく考えてみますとこのヘッドラインもどうなのよという話でしてですね・・・・・・・・・

https://www.stat.go.jp/data/cpi/index.html
消費者物価指数(CPI)

こちらの「更新情報」の3月全国CPIを見ますと

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)3月分(2023年4月21日公表)

『≪ポイント≫
 (1)  総合指数は2020年を100として104.4
    前年同月比は3.2%の上昇  
 (2)  生鮮食品を除く総合指数は104.1
    前年同月比は3.1%の上昇  
 (3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は103.2
    前年同月比は3.8%の上昇』

確かに「前年同月比の伸び率」は変わらんのですが、

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数

報道資料のPDF資料のほうにありますように、

『1 2023年(令和5年)3月分

◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として104.4
前年同月比は3.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.1
前年同月比は3.1%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は103.2
前年同月比は3.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇』

ということで「前月比」はまたも上昇してるんですよね。しかも1ページ下段の『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』をみますと、2月がエネルギー価格関連の政府の施策で前月比押し下げましたけど、それ以外って前月比で見たCPIの総合とコアはずーっとプラスを推移していて、コアコアなんてプラスの数字がじりじりとあがっているわけですよ。

ここでコアコアの数値の前月比推移を確認しますと、

生鮮食品及びエネルギーを除く総合
前月比(%)

2022/03:+0.2
2022/04:+0.2
2022/05:+0.2
2022/06:+0.2
2022/07:+0.4
2022/08:+0.3
2022/09:+0.3
2022/10:+0.3
2022/11:+0.3
2022/12:+0.2
2023/01:+0.4
2023/02:+0.4
2023/03:+0.5

でもって前年同月比が昨年9月以降で、+1.8→+2.5→+2.8→+3.0→+3.2→+3.5→+3.8と見事な上昇っぷりを示しておられる次第な訳です。

既にご案内のように東京都区部の4月速報値は

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
東京都区部 2023年(令和5年)3月分(中旬速報値)

『◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として104.4
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.0
前年同月比は3.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は103.2
前年同月比は3.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇』

こちらは4月前半の東京都区部速報値ですが、季節調整済みでコアコアが前月比+0.4%と相変わらず上昇しておられるわけでございます。


・・・・・・さてここで日銀様における1月展望レポートの物価見通しをしつこく確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2301a.pdf

消費者物価指数(除く生鮮食品)
2023 年度:+1.6 〜 +1.8 <+1.6>
2024 年度:+1.8 〜 +1.9 <+1.8>

消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)
2023 年度:+1.7 〜 +1.9 <+1.8>
2024 年度:+1.5 〜 +1.8 <+1.6>

・・・・・・・・いやあのですね、1月に出した2023年度の予想が思いっきり外れるの明らかな訳で、何故か良く分からないけど2025年度の予想ばっかりベンダーのニュースネタになるの意味わからなくて、4月の展望レポートで一番大事なの2023年度の予想で、いままでどれだけ外しまくっていたか、しかも今回また下の方でだした挙句に、7月展望出す頃にまた上方修正、とかやりだしたら、そもそも日銀の経済分析能力に対する信認問題(というか現実問題として今の時点で信認問題としてもっと叩かれるべきですけど)としてフルボッコにならないとおかしいですし、学者で唯一総裁の玉として適任な植田先生のもとでも物価見通しがこのテイタラク、ということであればもう日本の経済学者はギロッポンで寿司でも食って世の中に出てくんな、とまあそういう話になる筈(なのだがメディアが暴れないとアタクシが言ったって結局ただのゴミダメのゴミがうるせえ程度なんですけど、トホホ)。


しかしまあ何ですな、ヘッドラインにしてもコアにしても2月が政府のアレのせいで-0.7%とかになっている以外は上昇しておるわけで、この調子だと2月に落ちた分については4月か5月には挽回しちゃいますよねーというような流れでありますし、コアコアの前月比に関してはなんせ昨年3月がまだマイナスだったのが直近で+3.8%ですよもう凄いですね。


まあこんなにコアコアが強いのですが、そもそもコアコアの数字見通し数字に関して参考計数として上記のように公表するようになったのって昨年4月の展望レポートからだったのですが、この時の説明を確認してみましょう。


https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2022/kk220502a.htm
総裁記者会見要旨
2022年4月28日(木)午後3時半から約60分

以下は上記URL先の総裁会見要旨にある黒田総裁の発言を引用しますけどね。

冒頭の展望レポートの中での説明の物価の説明から。しつこく申し上げますが2022年4月ですよ。

『次に、物価の現状ですが、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影響がみられるものの、エネルギー価格などの上昇を反映して、0%台後半となっています。また、予想物価上昇率は、短期を中心に上昇しています。先行きについては、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する2022年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めますが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想しています。この間、変動の大きいエネルギーも除いた消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、食料品を中心とした原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していくとみています。』

2022年4月の時点でも物価が上がってきてたわけですが(全国の前年同月比が総合+2.5、コア+2.1、コアコア+0.8)、この物価上昇はコストプッシュだから政策には関係ないのだ、という説明から。

『今回の展望レポートにおける政策委員見通しの中央値をみますと、消費者物価の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する2022年度には、いったん2%程度まで上昇率を高めますが、その後は、1%強までプラス幅を縮小すると予想しています。このように2%程度の上昇率が持続しないのは、第一に、海外中銀や国際機関と同様、原油等の資源価格が見通し期間を通じて上昇を続けるとは想定しておらず、そのもとでガソリンや電気代等のエネルギー価格の物価押し上げ寄与は先行き減衰していくと見込んでいるためです。第二に、資源輸入国であるわが国にとっては、最近の資源価格の上昇は、海外への所得流出につながるため、経済にマイナスに作用し、ひいては基調的な物価上昇率に対しても下押し圧力をもたらすと考えられます。こうした物価見通しを踏まえますと、企業収益や賃金・雇用が増加する好循環の中で、2%の「物価安定の目標」を安定的に実現するまでには、なお時間を要すると思われます。従って、経済を下支えし、基調的な物価上昇率を引き上げていく観点から、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適当だと考えています。』

>最近の資源価格の上昇は(中略)、ひいては基調的な物価上昇率に対しても下押し圧力をもたらすと考えられます。

ほうほう基調的な物価上昇率に下押し圧力ですかー(棒読み)


ドル円が130円とかになっててますし物価も上昇してますが政策は修正しないんですかという問いに対して。

『先ほどご説明しました通り、わが国の経済は、感染症からの回復途上にあるうえ、最近は、ウクライナ情勢に伴う資源価格上昇による下押し圧力も受けています。また、当面の物価上昇は、エネルギー価格の上昇が主因であり、持続性に乏しいと考えています。こうした経済・物価情勢を踏まえますと、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を目指す観点から、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、経済活動をしっかりと支えていく必要があると考えています。』

>当面の物価上昇は、エネルギー価格の上昇が主因であり、持続性に乏しいと考えています。

持続性に乏しいと考えていましたねー(棒読み)


「コアコア物価は基調的な物価を見るために出しました」というお話。

『二点目はそれに関連するわけですが、エネルギー価格は大きく変動していますので、それを除いたところでみた趨勢という意味では、今回お示しした生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価指数で、2022年度は+0.9%、2023年度が+1.2%、2024年度が+1.5%ということで、確かに基調としての消費者物価指数が緩やかに上昇していくという見通しであることは事実です。けれども、1.5%でも2%にはまだ届いていませんし、除く生鮮食品の物価上昇率で言いますと、2024年度でも1.1%という見通しであり、今のところ、こういう見通しの通りであれば、金融緩和の出口を早急に探るということにはなっていないと思います。そういう意味では、粘り強く金融緩和政策を続けていく必要があると考えています。』

コアコア物価指数は「基調としての消費者物価指数」と思いっきり昨年の黒田さんは仰せになっていまして、でもってその肝心のコアコア物価指数は今申し上げたような有様な訳ですよね。でもってその数値が2%どころか3%に乗っているんですけど、これで基調的な物価は上がっていない、とかいうのって、結局の所分析者としては最もやってはいけない「自分の結果に都合の良い数字をチェリーピッキングする」って奴なのですが、長年置物リフレ一派を見ていれば分かると思いますが、かのマネタリーベース置物直線一気理論などがその典型ですが、置物とか洋一とかあの辺の一派って自分の主張に都合の良いデータを都合の良い期間で取ってきて相関係数幾ら、とかやるのが得意技になっておりますけれども、黒田10年の間に日銀完全にチェリーピッキングの毒に染まってしまったと思いますと実に嘆かわしいお話ですな。


「コアコア物価上昇はエネルギーによるコストプッシュ要素が低い」というお話。

『ただ、今回の展望レポートでもお示しした通り、生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価指数の状況をみますと、まさにエネルギー価格の上昇、コストプッシュによる上昇の影響ではなく、基本的な経済の回復、デフレギャップが縮小からプラスに転化する、消費や設備投資が伸びていくという中で、基礎的な物価上昇率が緩やかに高まっていくことを示しています。』

いやーこれだけの勢いでコアコア推しをしてたのがわずか1年前なんですよねー。



〇ということでそもそも論として市場機能とかそれ以前の問題で物価がこれで何で政策修正しないんでしょうかねえ

まあそういう事になる筈なんですよね。2023年度の数字って何故かあんまりネタにならんのですが、23年度ってどこからどう考えても年度平均で2%超えでしょという状況な訳でして、そうなってくると2年連続でコアCPIの前年比+2%超という話になってくるわけですし、そうなった場合ってテイラールールでも修正テイラールールでもいいんでしょうけれども、リフレ派大好きの世界標準政策テイラールール使ってパラメーターどう置いたって適正金利ってマイナスどころか2%とかそういう水準になる筈なんですけどねえ・・・・・・・・・

という話でありまして、市場機能がどうのこうのとかいう話をすっ飛ばして、「物価がこの状況なのにそもそもマイナス金利とかやってて良いのか」という話になって来るのって時間が後ろに行けば行くほどそうなる可能性は高まるとしか思えないんですよねー。

でまあそうなった場合って別にその「投機家がYCCアタック」みたいなしょうもないタブロイド紙みたいな話じゃなくて、経済物価情勢と政策の乖離、ということで普通に金利上昇圧力が出て来るし、まあそれを抑えるには結局日銀が馬鹿買いをしないといけなくなるし、この前の指値オペとSLFみたいな闇金みたいなプレイもするようになるんでしょうなあ、と思いますと、まあ今回何もしないとかべき論ではあり得んという話になるんですが・・・・・・・・



〇ロイターさんやたら詳しい観測記事だがこの通りで日銀来るなら植田総裁は夜のギロッポンにお帰りになられることをお勧めします

https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2WI0H2
2023年4月21日5:19 午後
日銀、次回決定会合で金融政策現状維持の見通し=関係筋

いままで出てきた「観測記事」の中ではやたらと詳しい記事ですなさすが木原記者、と思ってしまいましたが、以下上記ロイターさんの記事から引用します。

・追加緩和バイアス残すのかよアホじゃないの????

『27日からの決定会合は植田総裁下で初の決定会合になる。金融政策のフォワードガイダンス(先行き指針)について、「新型コロナウイルスの影響を注視する」としてきた部分を削除することの是非を議論する見通し。ただ、この文言を修正する場合でも、政策金利について「現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」として将来的な引き下げ余地を示してきた箇所は維持するなど、金融緩和を継続する方針を強調するとみられる。』

ええええええええ!!!!!!!!

2%達成に時間が掛かり過ぎて緩和が長期化してアカン奴なんですし、今はまさに基調的な物価まで強くなっているんですから、政策金利に引き下げ余地があるんだったら即刻追加金融緩和を行って物価上昇の勢いを更に強くするのが筋じゃないんでしょうか、やる気もないのに追加緩和バイアスを文言として入れる、というようなインチキばっかりやってるからダメなんですよ植田先生それでも斯界の最高の学者なんですか。

『決定会合では「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)も議論する。今回から予測が追加される2025年度について、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しは前年度比プラス1%台後半になる公算が大きい。』

四半期展開を是非拝見したいですね。

『しかし、早期の政策修正論は現時点で日銀の一部にとどまる。植田総裁は12日の記者会見で、物価高への対応が遅れるリスクよりも「時期尚早に金融緩和を終了して2%のインフレ目標が未達になるリスクに日銀はより注意を払うべきだ」と述べている。』

2年間連続で2%超えだわ足もと3%超えだわ、という状態で既に物価高への対応が遅れているように見えますし、その結果が不動産辺りに思いっきり出てて(今日ネタにする時間がないが)金融システムレポートで指摘が出ていたと思いますが。

『日銀では、持続的な賃上げへの期待感が「確信」に変わる前に、拙速に金融政策を修正すれば人々のマインドを冷やしてしまい、賃金上昇が消費支出につながり企業の値上げにつながるという、日銀が目指す好循環に悪影響を及ぼしかねないとの指摘も出ている。』

何ちゅうかこの理屈やってると一生マイナス金利とYCCやりそうですわな。


・・・・・・とまあこういう記事ではあるのですが、これってもう「今の緩和政策を修正するのが恐ろしいから何もできない」という黒ちゃんバイアスの掛かりまくっている状況を示している感じがする訳ですが、これをやりだすと最終がどういう結末になるのか(例えば不動産バブルの発生と崩壊とか)というのも考えつつ、植田先生はそこまでアホウじゃないという方に期待したいとは思いますけど、4月に本当に何も出来ずに黒田路線の継続だったら何のために出てきたんだという感じですな。


ただまあアレなのですけど、毎度の話しですがYCCの長期ターゲットに関しては騙し討ちをしないといけ無いという事を考えると、YCC長期ターゲットの騙し討ちを絶対に悟られないように殊更に黒田路線の継続という話を外向けにしている、という可能性もありおりのありでございます、というのが実に話をややこしくしておりまして、そこそろ植田先生への悪態文言とか二つ名とかを考えようと思いつつも、引き続きこの「全然動きません情報発信」は煙幕なんじゃなかろうか説を唱えておきますですわアタクシ。


ちゃんとこの反応見て無かったからアレですが、さすがに連日この手のニュースが出ているのであんまり反応してなかったとは思うのですが、ただまあロイターさんの記事ですが、時事→共同→ブルームバーグ→ロイター、って感じで段々内容が詳しくなってきているなーって思いました(ので逆に怪しいという諸葛孔明の罠である可能性がプンプンするにはするんですよねー、まあ当たるも八卦当たらぬも八卦)。



#あとFSRが出ていましたがこれは連休でゆっくりと読む(と言ってたら日米金融政策でそれどころじゃなくなるかもですが)








2023/04/21

お題「さくらレポート「各地域から見た景気の現状」/ボウマン理事FEDリッスンズで労働市場の構造的課題に言及」

いやーあと1週間になりましたねー決定会合まで。

・・・・とワクワクしているのですが、無風予想の方が多いのでワクワクしているのが挙動不審おじさんと化している希ガスorzorzorz

〇さくらレポートの簡単お纏め部分を見ると「賃金が上がります」って話に見えるんだけどなー

はい、すいません正常化脳ですんで。

さくらレポートの表だけ
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer230420.htm

さくらレポート全文(量多い)
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer230420.pdf

お手軽まとめ「各地域からみた景気の現状(2023年4月支店長会議における報告)」
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera230420.htm
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rera230420.pdf

ということでございますが、当初このお手軽まとめって「支店長会議における報告が別途出るようになる」というので情報追加だヤッホーと楽しみにしてたら、単にさくらレポートの紹介ページにあった解説がこっちにシフトしただけだし、「地域の視点」が無くなってしまったし、総裁挨拶(まああの総裁挨拶自体が声明文の抜粋みたいなことしか書かれなくなってしまったのでどっちでもいいっちゃいい物件になっていましたが)の公表も無くなってしまってちょっとつまらん。

まあアレです、さくらレポートの全文の細かい部分って本文の『U.地域別金融経済概況』から始まる部分でして、各支店が地元企業からのヒアリングを行った結果として上がっている特徴的なのか典型的なのか知らんけど、まあそういうのを上げてまして、これが景気ウォッチャー調査のアンケート結果の個別の声みたいなのにも通じる物件なんですよね。しかも日銀の場合はアンケートではなくて個別ヒアリングで上げているというのが一段レベル高い。

ということで日銀の各支店って地元企業からのヒアリングとか物凄い勢いでやっていますし、質も高いので、何かこの辺りのライブ感のある経済のアネクについての話をもっと色々と(たぶんもっと物凄い色々なアネクが上がっていると思うのですよ)あると更にオモロイのではというか、もっとたくさん表に出てこないの勿体ないと思うんですよねー(地元のメディアでは支店長が管内の経済について会見したりしてるのが拾えるでそれをせっせと集めて回るだけでも面白い気がするのだが中々そういうマメさがないアタクシ)。

などと言いながらお手軽まとめちゃんをみるわけですが。

・総括判断はほぼ横ばい

以下『各地域からみた景気の現状(2023年4月支店長会議における報告)』のHTMLバージョンから引用します。

『今回の支店長会議における報告を総括すると、資源高の影響などを受けつつも、供給制約や感染症の影響が和らぐもとで、いずれの地域でも景気は持ち直している。前回の支店長会議開催時点(2023年1月)と比較すると、全9地域中1地域で総括判断を引き上げ、1地域で引き下げている(参考参照)。』

うーん横這い。詳しくは(参考)の「各地域の景気の総括判断と前回との比較」にあるように、

北海道:緩やかに持ち直している→緩やかに持ち直している

東北:緩やかに持ち直している→一部に弱さがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している

北陸:持ち直している→持ち直している

関東甲信越:感染抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している →資源高の影響などを受けつつも、感染症の影響が和らぐもとで、持ち直している

東海:横ばいで推移している→緩やかに持ち直している

近畿:感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している→一部に弱めの動きがみられるものの、感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している

中国:緩やかに持ち直している→緩やかに持ち直している

四国:緩やかに持ち直している→緩やかに持ち直している

九州・沖縄:持ち直している→持ち直している

となっていて、総括判断の上げ下げという意味では東北下げ東海上げなのですが、よく見ると近畿で「一部に弱めの動きがみられるものの」と入っており、関東甲信越では「資源高の影響などを受けつつも」と入っていて、近畿と関東甲信越はヘッジ文言が入る形で事実上判断弱めている(総括判断となる最後の文言が同じなので判断横ばい扱いになるけど)という感じで、東海は引き上げなので3大都市圏で逆行の動きがあるんですね、と思いました。背景はナンナンジャロというのはもしかしたら本文精読すると見えて来るのかも知れませんがそこまで読んでないですすいません。

・・・・・・と、総括判断を見るとそんなに威勢が良いわけでもないのですが。


・説明の所を見ていると賃金が今後上がりそうな話がちりばめられているのだ

総括判断の次は需要項目別、そっちの話は本文の方に詳しく書いてあるのだが今日はパスで総括的なお話が以下記載されています。

『需要項目等別にみると(注)、』

ということで始まり始まり。

『公共投資については、国土強靱化関連の工事が継続的に発注されるもとで、横ばい圏内で推移しているとの報告があった。』

『設備投資については、コスト高などを受けて計画を先送りする動きがみられるとの指摘もあったが、デジタル化・省力化投資や環境対応投資、物流施設などの建設投資を進める動きが多く報告された。』

こりゃまた春から景気がいい。

『個人消費(インバウンド需要を含む)については、物価上昇が続くもと、飲食料品等での買い上げ点数の減少や低価格商品への需要シフトなど、生活防衛意識の強まりを示す事例が報告されたが、感染症の影響が和らぐもとで、サービス分野を中心に売上が増加しているとの報告が多かった。』

こらまた威勢の良い話で。

『具体的には、感染状況の落ち着きや感染症の「5類」移行の決定などを背景に、外食では、家族連れ客等の増加に加え、これまで落ち込んでいた宴会需要についても持ち直しの動きが報告された。』

ほうほう宴会需要。

『また、宿泊・旅行では、全国旅行支援が引き続き後押しとなる中、国内旅行需要が回復基調にあるほか、』

寧ろ全国旅行支援のせいで値段が上がっていくに行けない人がここにおりますが何かorz

『インバウンド需要についても、客数・単価の両面から売上増加に貢献しているとの指摘があった。』

インバウンド様キタコレ!!!!!ときましてここからですよ。

『ただし、人手不足の影響から、需要を取りこぼしているとの指摘は少なくなかった。』

はい人手不足。

『先行きについても、人手不足により施設稼働率を引き上げづらい状況が続くもとで、インバウンド需要などの更なる回復に十分に応えられないことを懸念する声が紹介された。』

とまあそういうことですので個人消費関連というか宿泊旅行関連は雇用情勢が逼迫しているということですな。


『住宅投資については、住宅価格の上昇に伴う顧客の購買意欲の低下を背景に、弱めの動きとなっているとの報告があった。』

そらまあね。

『輸出・生産については、海外経済の回復ペース鈍化の影響から、一部の半導体等電子部品や素材、資本財などにおける生産調整を指摘する声が紹介されたが、供給制約の影響が和らぐもとで総じてみると横ばい圏内で推移しているとの報告があった。ただし、自動車関連を中心に半導体の調達環境は引き続き不安定との報告もあった。』

ふむふむ。


『雇用面をみると、経済活動の改善が続くもとで人員の拡充に取り組んでいるものの、対面型サービス業を中心に、採用難や離職の増加から人員を充足できず、人手不足感は強まっているとの指摘が多かった。』

雇用キタコレですが、

『賃金については、コスト高などによる収益面の厳しさから賃上げに慎重な声も紹介されたが、人手不足感の高まりや物価上昇を受けて、中小企業においても、ベアを久方ぶりに実施するなど、賃上げの動きが広がっているとの報告が多かった。また、域内の大企業等が大幅な賃上げに動いていることや、パート等の賃金上昇に伴い正社員との給与差が縮小することも、こうした動きを後押ししているとの指摘があった。』

ということで締めになっていますが、話のトーンとしては「雇用情勢が逼迫していますね」というのが結構前面にでているように見えますし、それは即ちお賃金が上がって循環する前向きの循環の動きがみられるようになって参りました、という美しいストーリーを組み立てる材料になっておりますわな、と思う訳ですよ。


・・・・・とまあそんなことを考えまするに、まあ少なくとも今回の展望レポートの流れとしては「物価上昇と賃金上昇の循環」みたいなのは起き始めている、という評価になってしかるべきだし、その動きに持続性があるかどうかもう少し見極めたいから緩和的な政策を維持する、とかそういう理屈になって来ると思いますし、今まで見たいに頑なに「物価上昇は定着しません」一辺倒ではなくなるんじゃなかろうか、とまあそういうのを思う次第であります。

そうなると本来はそーゆー話を展望レポートやら総裁会見やらに詰め込んで、世の中の皆さんの気分を盛り上げていくというのをやりたいのですが邪魔なのがYCCの長期金利ガチガチターゲット(以下いつもと同文の為割愛します^^)。



〇労働市場の逼迫に関してFEDは金融市場が見ているよりも構造的な問題に関しての懸念が強いんじゃないかというお話

5月FOMCで打ち止め宣言を出すのか出さないのか、が焦点という理解で良いのかしら、とは思うのですがFEDちゃんからボウマン理事のお話を拾ってみる。

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bowman-idJPKBN2WH1QX
2023年4月21日4:49 午前
ボウマン理事「インフレ抑制に注力」、金利の道筋巡り言及せず

『[20日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のボウマン理事は20日、FRBは経済成長と所得拡大を支援するため、インフレ抑制に注力しているという認識を示した。また、労働市場の堅調な状況によって、人材を見つけることが困難になっていると述べた。適切な金利の道筋を巡る自身の見解については具体的に言及しなかった。』(上記URL先より)

ダラス連銀主催で実施された「フェドリッスンズ」という地方公聴会みたいな奴にボウマン理事が出席したようです。このフェドリッスンズは当初はロンガーランの政策ストラテジーの枠組み見直しに向けて皆様の声を聴く、みたいな感じで始まった物件ですが、引き続き地方公聴会っぽくやっているようで何よりです。

こちらでのボウマン理事のご挨拶は
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20230420a.htm
April 20, 2023
Brief Remarks
Governor Michelle W. Bowman
At the Fed Listens Event hosted by the Federal Reserve Bank of Dallas, Odessa, Texas

お題に『Brief Remarks』ってあるように簡単なご挨拶なのですが、ご挨拶の2パラ目から。

・基本的には労働市場の動向を見ておくべきなんでしょうな

『It is a simple fact that what the Fed does in Washington has a significant impact on how families and businesses spend, borrow and plan for the future. That is exactly why we need to learn about the experiences of people in Odessa, Midland and other communities in the Permian Basin.』

この辺りまでは1パラから続くご挨拶文言の流れですが、この先から政策話になりまして、

『Lately, as you know, the Fed has been focused on lowering inflation, which is essential if we want to support a growing economy and rising incomes. We want to hear how inflation, along with the higher interest rates needed to bring inflation down, is affecting you and your communities.』

高インフレ退治にフォーカスしてますよ、と来まして、

『These conversations provide important context to the economic data that we consider, and they help guide our thinking about how we can best achieve stability and support for the economic well-being of all Americans.』

次のパラグラフに行きますと、

『One of the important issues we will talk about today is workforce development, which in every community depends on effective partnerships with the private sector.』

高インフレ退治に関する話をしてから「本日のお話の重要な部分はワークフォースの動向です」と来てまして、労働市場の動向、たぶん賃金の部分がインフレに効くし、賃金動向は究極的には労働需給で決まるし、その労働需給に関して、構造的に供給サイドの方が弱いことがあるので、労働市場の供給サイドを示すところの「workforce」の状況をどないかせんとイカン、という話に帰着するんでしょうな、と思いました。


・労働市場に関しては構造的な問題が起きているのではという意識が金融市場よりもずっと強そうなFEDということですな

つまり、

『For many years, this region has been challenged to find qualified workers in certain industries. But now, the challenge of finding willing and qualified workers stretches far beyond just those requiring specific skills training. Our strong labor market has made it extremely difficult for growing businesses to find workers, which, if not addressed, could eventually undermine a strong economy. 』

もはやここまで来るとFEDの範疇をぶち抜いてしまっている訳ですが、現在の米国経済の問題として、十分なスキルの労働者が確保できていない、という点があって、これが米国経済のサステイナブルな強さに対する阻害要因、ということで供給制約の問題を如何にせん、ってお話がきましてからの、

『I am very interested to learn about the different strategies and approaches being used in this region to provide workers with the skills they need to fill these jobs, and what additional considerations might be helpful in your efforts to improve workforce development.』

どうやって必要なスキルのあるワークフォースを確保できるのか、という点に興味がある、と金融政策現世利益からは話が外れて行きますが、そういう話になり次のパラに行きますと、

『Another issue we will focus on today is education. As a mother of two middle school students during the depths of the pandemic, I am particularly interested in understanding how your communities have managed and continue to manage Kindergarten through 12th grade education after the disruptions many places experienced as a result of the pandemic school closures.』

パンデミックによって対面授業などの機会の無かった学校教育に関しても今回お話をしたい、と来ました。

『Student performance suffers during even brief periods of instruction disruption. So even in places where school closures may have been limited, there may continue to be lasting effects on attendance and student performance. Where schools were permitted to remain open, we know that teacher and support staff shortages were, and continue to be, a significant challenge for many school districts. I look forward to hearing your views and experiences during our time together.

Thank you, again, for the invitation to be here today, and I look forward to our discussions.』

学校が登校不可状態になり、その後は参加可能となったとは言え影響が残っています、というのに問題意識を当てた話をする、ってフェドリッスンズのテーマにしてはだいぶ金融政策の斜め上の方のような気もしますが、レーバーフォースの問題と教育の問題って、教育の充実がスキルのあるワークフォースを生み出す、という流れがあることを勘案しますと、FEDは現在のレーバーフォース不足の問題について、より構造的な問題になるという見通しをもっているんだろうなあというのも把握した次第でして、まあ結局労働市場がタイトなままで賃金が上がりやすい、と来れば物価は中々下がらんだろうし、経済がそう簡単にリセッション入りするかよとも思う訳で、FEDの持ってる労働市場の構造問題の問題意識って結構根の深い構造問題に起因する、って考えているのは把握しました。

そう考えると、まあ確かに既に金融政策がリストリクティブだから利上げ一旦停止して様子見するのはそらそうなるでしょうなとは思いますが、5月FOMCでそうなるのか、というと労働市場の数字がクッソ強いままの物しか得られない(恐らく5月頭のFOMCでは直後に出る雇用指標の内容は頭に入った状態で政策決定になるとは思うのですが)のであれば、そう簡単に打ち止め宣言も出しにくいような気がしますし、金融市場は利下げヒャッハーとやってはいるのですが、労働需給のひっ迫がより根の深い構造要因に起因するものであれば、米国経済はかつての低インフレ雇用安定状態から、ステージがそもそも変化するのかもしれない、といような辺りをFEDが思っているなら、打ち止めはすれどもそう簡単にホイホイと利下げに転じるのも微妙じゃないかな、と思ったんですけどどうでしょうかね。


〇別件でメスター総裁講演メモ

あと時間が無いのでオマケ扱いになってしまいますが。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-mester-idJPKBN2WH1KQ
2023年4月21日2:14 午前
FRBにはまだ利上げ余地、引き締めは終盤=クリーブランド連銀総裁

講演本チャンはこちら。
https://www.clevelandfed.org/collections/speeches/2023/sp-20230420-progress-and-prudence
Progress and Prudence: An Update on the Economy and Monetary Policy
Loretta J. Mester
President and Chief Executive Officer
04.20.2023 12:20 PM EDT In Person The Akron Roundtable Signature Series

時間が無いのでハイパー手抜きで『Monetary Policy and the Outlook』って小見出しの所だけ引用します。

『So, what are the implications for monetary policy? We have moved interest rates up significantly over the past year and it is yielding progress. Yet demand is still outpacing supply in both product and labor markets and inflation remains too high. In order to put inflation on a sustained downward trajectory to 2 percent, I anticipate that monetary policy will need to move somewhat further into restrictive territory this year, with the fed funds rate moving above 5 percent and the real fed funds rate staying in positive territory for some time. Precisely how much higher the federal funds rate will need to go from here and for how long policy will need to remain restrictive will depend on economic and financial developments.』

5%よりも高くFF上げるのが適切ですとよ。

『With tighter financial conditions, I expect that demand in product and labor markets will continue to moderate and inflation will continue to move down. Output growth will likely be well below trend this year and pick up a bit next year. I expect that employment growth will continue to slow and the unemployment rate, which is very low, will begin to rise, to about 4-1/2 to 4-3/4 percent by the end of the year. I expect to see meaningful improvement in inflation this year, with inflation moving down to about 3-3/4 percent this year, continuing to improve next year, and reaching our 2 percent goal in 2025.』

なお、ファイナンシャルコンディションのタイト化が需要の押し下げからのインフレ押し下げに効果があるでしょう、という見立て成分が入っている、というのも示されておりますので念のため、って感じで、この部分がモロに金融政策という小見出しの部分でした。




2023/04/20

お題「引き続きBBGが4月会合に向けた観測報道とな/唐突ですが金研40周年サイトなどのご紹介」

ほうほうそうですかそうですか
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N36M3NV
2023年4月20日5:12 午前
米金融・債券市場=利回り一時4週間ぶり高水準、英インフレ指標で

『[ニューヨーク 19日 ロイター] - 米金融・債券市場では、10年国債の利回りが一時4週間ぶりの高水準を付けた。英国の3月消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことを受け、世界的に利回りが上昇した。英は西欧で唯一、3月に2桁のインフレを記録した国となった。』(上記URL先より)

何かアルゴだかAIだかピュー太くんのご指令だか知らんけど、確かに昨日の夕方って英国のCPI出たら米国2年がダダ売られしてたようですが、いやおまえ何だよそれと思ってしまう訳です。てか英国ってのは仁和元年からこの方ずーっと他の国の物価が弱くても堂々のインフレ上振れ国じゃん何で一々反応するねんと思うのですが、シンギュラリティよりも低能アルゴの方が喫緊の社会問題(個人の偏見です)だわ、などと1カイ2ヤリなトレーダーからの叩き上げ職人(自称)おじいちゃんのワイは思うのでありました。


〇今回はブラックアウト前にポロポロと記事が出てきますな

昨日までは時事通信→共同通信と来ておりまして、昨日はブルームバーグが出してきました。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-19/RTCPEPT0AFB401
4月決定会合でのYCC修正、日銀内で慎重な意見広がる−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2023年4月19日 18:52 JST

出たな謎の「関係者」という感じですが、昨日ネタにした時事と共同の記事に関しても時事が「17日までにわかった」で共同が「18日までにわかった」というような感じで書いていて、BBGの毎度おなじみ関係者(今回は複数の関係者)への取材で、というのが出て来る、という形で五月雨式に出て来る上に、日経とか読売は(確認の漏れがあったらゴメンチャイですけど)記事出てこない、という上に時期的にはまだブラックアウトのギリギリでも何でもないタイミングとなりますと、これは何か周辺取材してまわったただの観測記事っぽく見えてきましたな。

さて記事を拝読。

『日本銀行が来週開く金融政策決定会合では、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策を修正することへの慎重な意見が行内に広がっている。米欧の金融不安に伴う海外経済の不確実性の高まりや、市場機能の改善についてなお見極めが必要との認識が背景にある。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)

市場機能の改善の見極めが必要なほど改善が足りないなら追加措置をした方がいいんじゃないでしょうかねえ(鼻ホジホジ)。

・・・・・・ということで関係者取材とされるものの内容が続きますが、当然ながらこういう記事なのでBBGに「でもってどこがソースなの」とか聞いてもそんなのは答えてくれないでしょうが、続く部分を見ると「事情に詳しい関係者」がそこら辺の何とかストに適当に聞いて回った系の場合よりは書きっぷりがちょっと「中の人から聞きました」系になっている(これ毎回の記事をキチンとスクラップして比較とかすればいいんでしょうけどアタクシとてそこまで暇じゃない上にスクラップを置く場所が無いので何となく過去読んだ記事との比較イメージみたいな話なんで全然アレなんですけど。

『複数の関係者によると、足元では米シリコンバレー銀行の経営破綻に端を発した米欧の金融不安を背景に海外経済の不確実性が増しており、副作用への対応でもYCC政策を修正するリスクは大きいとの見方が日銀内で多い。持続的・安定的な2%の物価目標が達成されていない中で、金融緩和の持続性を高める観点から、YCC政策の修正はどこかのタイミングで想定されるものの、修正ありきではないという。日銀は市場の動向や経済・物価情勢などを会合直前まで見極めた上で、対応の是非を判断する。』

というのも、何気にここにあるように「YCC修正は考えられる」ってのがしれっと出ていたり、まあ記事のヘッドラインでも「お前ら検討課題になってたんかい!!」って感じでありまして、記事の内容からしますとまあやらない気満々という情報発信になっているのですが、何だよやっぱりやるという選択肢あるじゃん、とも思いました。

てかさ、修正ありきではない、とか言ってるけどお前らそもそも論として物価目標達成する気があるんだったらどっかで修正になるんだろという感じで、こいつら政策変えるの面倒だから物価目標何て達成しなくていい(だいたい物価が上がったとか言って文句垂れる輩もいるし)ってなもんですねわかりますわかります。公僕としての気概は皆無なんですね。

『関係者によると、米欧の金融不安でイールドカーブが低下し、ゆがみが改善されていることもあり、市場機能に急いで対応しなければならない状況ではないと日銀はみている。新年度に入って間もないこともあり、社債の発行状況などについてもうしばらく見極めが必要との声もあるという。』

次にYCCの10年ターゲット外すのは市場機能じゃないと思う(市場機能で外すのって結局の所市場に追い込まれた結果として外すことになるので日銀にとっては大敗北って話になる)し、退任後突如黒ちゃん物価目標達成の展望が見えてきたとか植田さんの手柄を横取りする気満々で来ているんだから、市場機能の改善はおまけで、普通に「経済物価情勢の好転を踏まえて長期金利の変動があるい程度大きくなっても問題ない」で外して、「ただし緩和的な政策を続けるのは変わらないので、ファンダメンタルズを無視したような長期金利の上昇に対しては長期国債の買入を積極的に実施することによって対応します」とか何とか言って、その積極的な実施を徐々にフェードアウトしていけば事足りると思うのよね。

だいたいからして上記の理屈だと一生YCC解除できないじゃろという話でもありまして、まあ何はともあれ今回の展望レポートで何が出て来るのかというのが楽しみですよね。


でもってなんかこういうパラパラっとした感じで「何か中の方から聞こえて来るんですけど」みたいなのが出てくるのですが、出て来る話の筋が必ずしも一致しないで適当に出て来るし、日経読売あたりが追随しないで、マーケットベンダーしか追っかけてこないところを見ると、これ自体は所謂「書かせ記事」ではないかとアタクシは判断しましたけれども、さて実際の所はメディアの中の人だって口割る訳ないのでさっぱり分からんですただの当て推量。


『関係者によると、4月会合ではフォワードガイダンス(政策指針)の取り扱いが議論される可能性もある。指針を変更したとしても、日銀が緩和的な政策を継続する姿勢に変わりはないことを示す必要があるという。新型コロナウイルス感染症の影響が和らぎ、経済活動が再開している中で、感染症の影響を前提とした部分の削除と金融緩和の継続にどのようにコミットするかがポイントになりそうだ。』

そういえばこの件、日経だかどこかの記事見たらアタクシ実は世の中のコンセンサス勘違いしてたのかと結構ビビっているのですが、感染症紐付けのフォワードガイダンスって今回100%の確率で見直すし、フォワードガイダンスの中にある政策金利の下方バイアスも当然の如く(こっちは100%とまでは言わないですけど、就任会見やその後の国会答弁などでも「躊躇なく追加緩和」という発言が一切でていないのでアタクシ的には自信があるのですが)見直しをする、と思ってたんですけど、日経だか何だかの記事だとガイダンス文言に関しても手付けないという見方の方が一般的だったんですか???マジでそれはアタクシコンセンサス完全に勘違いしておりました(恥)。

これも「議論される可能性がある」ってあって、いやお前連休明けにはコロナの扱いをさげるって話をして、インバウンド様はバンバンと千客万来して高級ブランド品が円安でオイチイですって近隣諸国のお金持ちの皆様がお買い求めになっておられるという今日この頃で、いまさら感染症の影響で経済が下向きリスクだから下方バイアスとかお前は何を言ってるんだとしか思えないのですが、さすがにこのガイダンスを直さなかったらその瞬間から植田大先生におかれましては本石町にいるよりも夜のギロッポンで夜の帝王でもやってたらよろしいんじゃなかろうか、とか言いたくなるのをどう堪えるかが大変になりそうですワタクシ。


・・・・・・・などと申し上げましたが、こういう「4月なんもせんもんねー」という情報が出る、しかも今回の場合はブラックアウト前の狙いすました記事とかじゃなくて、なんとなく中の方から五月雨式に出て来るポロリ、という感じになっております。一般的に考えますと素直に「4月は黒ちゃん継承かあ」となるのが普通なのですが、黒田のおじさんが残した聳え立つうんこの塔であらされますところの10年金利ガチガチターゲット政策はとにかく奇襲大作戦で行わないといけないので、こういう「やらないもんねーの示唆が何となく中の方からポロリ」というのが五月雨式に出て来ると、逆に却って怪しくて、作戦意図を秘匿するために偽情報をだす、しかもホンンマモンのリークみたいな感じで出してしまうと使われたメディアに迷惑かけるから五月雨式ポロリ作戦を使っている、とか何とかまあそんな妄想になるんですけど、これはYCCの長期金利ガチガチターゲットを維持する間は永遠に続くネタなので、まあしょうがないですな。



〇金研が40周年企画で色々なものを出しているので宣伝してみるの巻

金研ホームページのトップはこちら
https://www.imes.boj.or.jp/index.html


・40周年とは関係ないですが今年の金研コンファランスは

上の方にあるタブのうち「Conferences・研究会」ってのをポチっとなとしますと、

https://www.imes.boj.or.jp/conference.html

ということで、

2023 BOJ-IMES Conference:
Old and New Challenges for Monetary Policy
May 31 - June 1, 2023
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
Please note that attendance at the conference is invitation only.
Outline (English 578KB] / Japanese[733KB])

ということで日本語版の予定表をみてみますと、
https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2023/conf_outlineJ.pdf
2023 年国際コンファランス
「金融政策の古典的な課題と新たな展望」

開催概要(予定)
―― コンファランスへの参加は招待者限りとさせて頂きます。

2023 年 5 月 31 日(水)、6 月 1 日(木)
前川講演
講演者: Maurice Obstfeld(カリフォルニア大学バークレー校)

基調講演
講演者: Athanasios Orphanides(マサチューセッツ工科大学)

論文報告
報告者 1: Michael McMahon(オックスフォード大学)
“Policymakers' Uncertainty”

報告者 2: Raphael Schoenle(ブランダイス大学)
“Greater Than the Sum of the Parts: Aggregate vs. Aggregated Inflation Expectations”

報告者 3: Michael Weber(シカゴ大学)
“The Expected, Perceived, and Realized Inflation of U.S. Households before and during the COVID19 Pandemic”

報告者 4: TBA(日本銀行)

政策パネル
モデレーター・パネリスト: 中央銀行関係者等

という式次第になっていまして、論文報告の2番と3番のそれぞれのお題「“Greater Than the Sum of the Parts: Aggregate vs. Aggregated Inflation Expectations”」とか「“The Expected, Perceived, and Realized Inflation of U.S. Households before and during the COVID19 Pandemic”」の辺りの字面から勝手に妄想すると、やはり「ポストコロナではコロナ前とは構造が違ってねえか」みたいな問題意識がお題になっていますよね、と思ったのですがそういう理解でよろしゅおすかしら。

つまりコロナ前に言われていたフィリップスカーブが死んだとか高圧経済アプローチイイネみたいな構造的なディスインフレーションを前提にした話(メイクアップストラテジーとかアベレージインフレーションターゲットとかが政策の手段としてもてはやされたというお話)から金融政策のアプローチは変わって然るべき、というような話でありますと、まあ金研別にイヤミ言う意図でわざわざぶっこんでいるのではなく、ごく平明に考えてそういう構造的な事を考えないといかんのだろ、と考えてこういう論点でコンファランス組んでるとは思うのですけど、これって結局最後までビフォーコロナ脳のままで金融政策アプローチしてた黒ちゃんに対する巧みなdisりになっているのが中々味わい深いと思いました。



・金研40周年記念コーナーも盛りだくさんですが

今年のコンファランスの話はさて置きまして、まあこれは植田さんの寄稿もあるから一時話題になってましたっけかどうかすっかり覚えておりませんが、さっきの金研HPのタイトルロゴ(というか何というか)の直下に「金研40周年」というボタンがありまして、そこを踏みに行くとこのようなものが。

https://www.imes.boj.or.jp/40year.html
金融研究所設立40周年特集:金研のこれまでとこれから

一番最初に5分43秒もあるビデオ挨拶があるのですが、アタクシの脳が画像認識と音声認識を拒否しておるようなのでその辺はぶっ飛ばしますが、そこの寄稿文ってののトップが植田先生。

「4. 寄稿文」ってところの筆頭が

『金融研究所40年を振り返って:
マクロ経済・金融政策分析の観点から共立女子大学教授・東京大学名誉教授 植田和男』

ってなっていまして、まあ別に今の金融政策とは関係ない話が並んでおるのですが、その中で

『2番目には、新日銀法の下で1998年からは金融政策関連の議論が政策委員会主導で進められるようになり、金融研究所で金融政策周りのテーマを正面から取り上げることがやや難しくなったと想像される。』

というのがありまして、植田さんまさかの総裁になられましたが、植田さんこれから金研で政策周りのテーマを正面からもっと扱うようにしていってもらいたいものでして、期待するところ大でありますが、はてさてどうなるのやら。

でもってその後の記述も読みようによっては味わいがあって、

『しかし、1990年代以降ニューケインジアン経済学がかなり定着し、金融政策についてもインフレ・ターゲティングおよびそれを達成するためのテイラー・ルール等へ収束していく中で、マクロ経済学は、分析手法は精緻化したものの、画期的な新展開は残念ながら発生していない。中央銀行というマクロ経済現象に本質的にかかわる組織としてはなかなか難しい状態に置かれているわけである。』

ほうほう。

『以上のような背景を踏まえつつ金融研究所には新たな発展を期待したい。もちろん、それがどのような形となるかは、日本銀行全体のなかでの役割分担を踏まえつつ、新しい世代が決めていくことである。1990年代半ば以降の動きの延長線上を進むことになるのかもしれない。』

そこは植田さんが決めていく、ということに図らずもなってしまいましたな

『ただ、マクロや金融政策の分野では、容易ではないが本質的な発展が必要とされていることも事実である。』

ってのが最後のまとめのパラグラフになるんですけど、

『景気循環、金融危機のような現象の背後では、「マクロ的な市場の失敗」が発生していると考えられる。』

ほう。

『例えば、経済主体の行動や予想形成には合理性からの乖離がしばしば観察されるが、これが経済全体に広がり、増幅され、資産価格やマクロ経済のboom-bust cycleにつながる等である。』

ほうほう。

『また、すでに30年近くの経験蓄積があるデフレ、低インフレ下での金利のゼロ金利制約は、ある種の市場の失敗ないし限界である。』

ほうほうほう。

『関連した分析の量は多いが、まだ本質的な発展にはつながっていないと見るべきだろう。金融研究所からの新しい動きに期待したい。』

とまあそういう事なんですが、金研の位置づけがどうなっていくのか、というのも今後注目しようかなとは思っている訳でして、何故かといえば黒ちゃん10年の治世ってどこからどうみましても「政策先にありき」だったし、その政策の背景となる理論が何せ「マネタリーベース直線一気置物理論」だったり「風が吹けば桶屋が儲かる金融政策波及置物メカニズム」だった訳で、ただしい意味での「エビデンスに基づく金融政策」を思いっきり踏みにじってて、こういうリサーチ的な分野は「政策の屁理屈の帳尻を合わせるための小道具」扱いにされていたとしか見えない割と悲しい冬の時代が続いていたと思います(あくまでも個人の妄想ですけれども)けれども、植田さんこの辺りの扱いがどうするのか、ってのダイジダイジネーと思うという事です。

ちょっと脱線しますけど、黒田10年の治世の中で円債だってもう経済指標とか経済分析とかで動くというのもほとんどなくなり、短観の数字よりオペ紙みたいな世界に成り下がっておる訳で、これも「政策先にありき」の弊害おぶ弊害にしか見えないのですが、たぶん正常化ってのは利上げがどうのこうのとかもあるんですが、そもそも論としての金融政策のアプローチの正常化、というのも大事なんじゃないでしょうか、などと青臭い事を申し上げておきます。


・対談大丈夫かと心配して読んだらただの「聞き手」だったので安心しましたwwwww

40周年ページの下の方に「7. 金研設立40周年記念対談」ってのがあるんですよ。このうち最初の金研設立40周年記念対談 「マネーシステムの歴史を語る」ってのが(第1回から第3回とあって全部通すと都合9ページになるのですが、CBDCの話とかをするのであれば、まず前提となっている通貨制度の基本的な部分を分かってないと話にならんというか、わかってないで変なアイデアで変な事言われましても困るんですよねーという世界なので、まあ週末の読み物の1つとして(と言っても対談形式なのでサラサラと読めます)如何ですかとお勧めしておきます。


というのはただのマクラなのですが、もう一つの対談がまさかの

金研設立40周年記念対談
中央銀行におけるリサーチ

カール・E・ウォルシュ カリフォルニア大学サンタ・クルーズ校特別名誉教授
アタナシオス・オルファニデス MIT スローン スクール オブ マネジメント教授
若田部昌澄 日本銀行 副総裁

ちょwwwwおまwwwww対談大丈夫かよ、と恐る恐る3回シリーズの対談を見に行きましたが、まあ見に行けば分かるように対談してるの2名で1名は聞き手というかモデレーターみたいなもんでした、ああホッとしたわwwwww


でもってアタナシオス・オルファニデスさんは最初の所でご紹介した今年の金研国際コンファランスで、「基調講演 講演者: Athanasios Orphanides(マサチューセッツ工科大学)」となっておられますですな。


そのほか、金研HPってこれ結構読みでがありますので、GWのお供に如何でしょうか、と別に金研の回し者でも何でもないのですがネタにしてみるの巻でありまして、まあ正直黒田時代の金研って置物理論とかいうルイセンコ圧政下において精彩が中々出しずらかったのですが、植田体制になりましたので、今後は金研はもっと脚光を浴びてしかるべきだと思ってますのでそんな思いも込めてネタにした次第でございますわ。




2023/04/19

お題「展望レポートニュースだが建付けは守ってほしい/黒田先生がなんと物価目標達成近いと仰せで/植田さん国会はつまらん質疑乙でした」

世耕先生これはまた非常に趣のあるご発言でまさしくにちg((内務省検閲により削除されました)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230418/k10014042101000.html
世耕参院幹事長「仲間内で人事こそ不公正」学術会議の会員選考
2023年4月18日 16時10分

〇展望レポートの物価見通し数値は9人の政策委員の集合体だったのではないでしょうか(棒読み)

アタクシ昨日気が付いてなかったでして恐縮ですが時事通信(のヤフーニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6824ba06cc0382014c166eb3cf1a2d8af5d645f7
「1%台後半」軸に検討 25年度物価見通し 27日から植田総裁初の決定会合・日銀
4/18(火) 7:12配信

『日銀が28日に公表する「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中で、新たに示す2025年度の物価上昇率見通しについて、前年度比1%台後半を軸に検討に入ることが17日、分かった。』(上記URL先より、以下同様)

あれー、おかしいなー、何で「前年度比1%台後半を軸に検討に入る」ってことになるのかなー。政策委員の皆様が個別にビューを持ち寄って数字出してくるのが物価見通しの数字だという建付けになっている(基本的な見解のバックグラウンドにある背景説明は日銀スタッフ謹製で決定会合議決マターじゃないからそっちのメカニズムで最終検討してるなら分かりますけど)。

『今回初めて示す25年度見通しについては、1%台後半を軸に正副総裁を含む9人の政策委員が検討を進める。先行きの物価上昇に楽観的な委員が過半を占めれば、見通しが2%台となる可能性も残されている。ただ、欧米の金融不安や世界経済の減速など先行きは不確実で、日銀内では2%台実現に確信を持つには至らないとの見方が多い。』

あれー、9人の皆様が全員で数字の調整でもされてるんですかー(棒読み)そんなことしないって建付けになってるんじゃないですかー。全体をまとめる執行部が皆さんの見解を見てその観点から事務局案について考える、っていうんだったら話はわかるんですけど、この書き方だと9人が独立して検討してるんだか、それとも皆様が黒田様のご意向に合わせて談合でもしてるのかの区別がつきませんねー(棒読み)。

・・・・あ、総裁は黒田様じゃなかったわwwww

まあ何ですな、いずれにしましても、「先行きの物価上昇に楽観的な委員が過半を占めれば、見通しが2%台となる可能性も残されている。ただ、欧米の金融不安や世界経済の減速など先行きは不確実で、日銀内では2%台実現に確信を持つには至らないとの見方が多い。」って報道されている辺りがもう思いっきり「政策が先にあって見通しをそこから逆算している黒田残滓」の香りがプンプン漂っている話で、まず見通しとして「2%程度で推移するのがメインです」から「そうはいっても足元では主要国経済の物価抑制が行き過ぎてリセッション的になるリスクや、欧米金融機関の問題が未知数であり、この辺りの状況を確認しないと正常化路線に舵を切れない」ってちゃんと説明すれば良い訳でありまして、とにかく「政策として2%達成としたくないから鉛筆舐めて2025年度という先の数字を弄って調整しよう」というスタンスでは黒田日銀とやってることは何ら変わらん訳ですし、大体からして植田さんが帰国した直後でこれから再度検討すると思われるタイミングでいきなりこんなのが出ちゃう辺りが事務方の植田さん軽視なんじゃないのって思ってしまいますな。


などと言ってたら共同も昨日の夕方ヘッドライン打ってましたが、

https://nordot.app/1020990618421379072
日銀、25年度物価見通し2%付近で検討
2023/04/18
コピーライト 一般社団法人共同通信社

『日銀が27、28日に開く金融政策決定会合で、2025年度の消費者物価の上昇率見通しを前年度比2%近くとする案を軸に検討していることが18日、分かった。植田和男総裁就任から3年程度で、物価上昇目標の達成が視野に入ると見込む。』(上記URL先より)

17日に分かった、と出たと思ったら18日に分かったとか中々ヤヤコシイでございますが、まあこちらに関しましても同じく、先行きの経済物価見通しの背景となる話についてはそら事務局案を元に検討(最近は無いけどたまに論客の政策委員が基本的見解の表記に対して反対することがあります)する、ってのは話が分かるのですが、最後の数字はあれ建付けとして「9名の政策委員がそれぞれ各人の見通し数値を出してそれを集計したもの」ということになっているのですから、例えば上方修正や下方修正というような方向性であれば、それは基本的見解における記述の話だから、そらまあ「検討している」でも良いんですが、「見通しの数値」に関して「検討している」と平然とこのように時事と共同という日銀報道においては一定のステータスがある、とアタクシが勝手に認定しているニュースワイヤーが報道してくる、という時点で如何なものかという話な訳ですよ。

いやあのですね、細けえことにネチネチ言うなとかカマトトとか言われるとは思うのですけど、こういう「制度上の建付け」を平然と無かったことにしてしまうような情報発信が日銀の方からメディア向けに出ている、というのは明らかに黒田体制によって「そもそも日銀は何をしているのか」というような基本的な精神を失うようになっているんじゃないか、と悲しい訳でして、まあ黒田の時は明らかに「政策から逆算して数字出しただろ」というのはあったのですが、植田さんになったのできちんと本来の原理原則に戻って、見通しをベース、つまりエビデンスを基にした政策を実施して頂きたい訳なんですけど、なんか日銀の中の方々(のエライ人)が黒田脳になってるんじゃないの、とまあそういう風に思って悲しくなった昨日の「見通しの数値が出てしまう報道」でありました。



〇まあそれはそれとして殊更に25年度の数字の話がフライングした事の背景を妄想すると・・・・・・

いやまあこんなの話は簡単で、日銀の黒歴史と言われても文句の言えない1月展望レポートの「2023年度平均の全国コアCPI+1.6%」というイカサマ数値をしれっと上方修正するにあたって、2%に乗っているんだからこれは安定的2%じゃないのか、とかそもそも1月の+1.6という不自然な数字の背景は何だったのか、とかそういうワチャワチャとしたものが出て来ると、黒田に忖度して数字を作るとは怪しからんとかそういう話に立ち戻ってしまう訳ですよ。

然るに、2025年度の見通しに関しては黒田様の治世の間にだしていなかった数値になりますので、こっちに注目を集めることによって、黒田様に忖度して「政策から逆算して見通しをゆがめていたのが正常化した」という現象について話を有耶無耶にしましょうという如何にも茶坊主の考え付きそうな小芝居プレイによって2025年度見通しをフレームアップしている、ということなんでしょうねえ、まあ大変悪意に解釈してますけど。


しかしまあ何ですな、今までは日銀って展望レポートの物価見通しの値について「個別の見通しに関しては9名の政策委員の皆様がそれぞれ独自に見通しをだしており」「見通し数値として出しているものは、この9名の出した数値から機械的に中央値や大勢見通しレンジをだしている」という建付けになっているので、例えば1月のあの摩訶不思議な物価見通しを出されても「これはどういう経路を辿るとこのような年度平均になるのか、四半期展開を出せ」というように詰め寄ったとしても、日銀は「これは特定の経路があってこの数字になっている訳ではなくて、あくまでも9人の政策委員の算術平均なので、見通し中央値に沿った一定のシナリオがある訳ではないので四半期展開とかそういうものは無い」という回答をする筈なんですが(そうじゃないと逃げようがない)、今回の時事や共同の報道で図らずも「なんだちゃんと一本四半期展開なり月次展開なりのシナリオがあるじゃん」という事が判明したように思われますので、是非だれか記者会見でこの時事共同の報道をベースに「この見落としの四半期展開は無いのですか」と聞くとか「9人の見通しの算術平均の筈なのに何で具体的な数値が事前に報道されるのでしょうか総裁のご見解をお伺いしたい」とか植田さんにぶっこんでいただけると大変にありがたく存じます|д゚)


てな余談はさておきまして、まあ要するに「早期正常化観測が盛り上がられても困るので2%達成が視野に入りましたみたいな見通しを出したくない」という事だと思うのですが、毎度申し上げておりますように、こんなのYCCの長期金利ガチガチターゲットさえなければ別に強めの物価見通しを出したと同時に「足もとの海外経済情勢と海外金融機関問題が極めて不透明でうっかりするとエライコッチャになるから今正常化に舵はきれませんがな」で話を済ませられる訳だし、2025年度の見通しなんてものをコロコロ上げたり下げたりして政策へのメッセージ出すのはかなり見苦しくなる訳ですので、そういう意味でも早期の長期金利ガチガチターゲットの廃止または形骸化がもとめられますな、という何時もの辻説法に戻るのでありました。

つまり、25年度の話はあくまでも「正常化路線はまだ始まらないよ」のメッセージにはなるけど、YCCの枠組みを手直しする、という緩和政策路線継続の中でのマイナーチェンジ(というには大きいチェンジですけど)をする事の妨げには本来ならない、ってもし早期に何かやって来た場合はそういう屁理屈を展開してくると思います。


〇黒田さんって置物とは人間の出来が違うと信じていたのですがどうも間違いだったようです

3月決定会合時には黒ちゃん、このように仰せでしたのは記憶に新しいところです。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230313a.pdf

『(本文3ページより)そういったことを踏まえますと、われわれが 10 年間期待しつつ、努力してきた 2%の物価安定目標が賃金の上昇を伴うかたちで達成されるというものが、少し近づいてきたというふうには思います。』

『(本文6ページより)先ほど来申し上げている通り、2023 年度半ばにかけて物価上昇率はむしろ低下していって 2%を割る可能性が高いわけですし、その後徐々に上昇していくのではないかというふうに考えております。従って、まだ今の時点で 2023 年とか 24 年の段階で出口になるとかならないとかいうのは適切でないというふうに思います。』(この2か所は直上URL先3月決定会合後の黒田総裁定例会見より)


・・・・・さて昨日ですが、このヘッドラインを某ツイッターで知った時に危うく暴れる所でした。アーアブナイアブナイ。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN180PW0Y3A410C2000000/
黒田前日銀総裁、物価目標達成に自信 コロンビア大講演
金融政策
2023年4月18日 10:36

『【ニューヨーク=竹内弘文】黒田東彦・前日銀総裁は17日、米コロンビア大学で講演し、2%の物価目標について「近く達成できる」との見解を示した。10年に及ぶ総裁任期中の異次元緩和では目標達成に至らなかったが、労働市場の需給逼迫から人々のデフレ心理に変化の兆しがあると説いた。』(こちらは直上URL先より)

>2%の物価目標について「近く達成できる」との見解を示した
>2%の物価目標について「近く達成できる」との見解を示した
>2%の物価目標について「近く達成できる」との見解を示した

・・・・・・・・・・お前は岩田規久男の生霊でも乗り移ってるのかという位の無茶苦茶発言が登場した訳でして、近く達成できるなら何で政策の出口を展望しなかったのかという話だし、それ以前の問題として3月の決定会合後の会見で「2023 年とか 24 年の段階で出口になるとかならないとかいうのは適切でないというふうに思います」とか言ってたのに1か月でいきなり豹変するような見通しの変化って何でそんなものが起きるんですかと思いますし、そんなにドラスティックな変化がおきているんだったら、臨時会合でも何でも開いて政策枠組みの見直しを決定しないと、政策がビハインドになってしまうんじゃないですか大変だー(棒読み)といったお話でございます。


何ちゅう無責任な発言って感じでして、いやお前さあ、1月展望レポートであんな恥ずかしい物価見通しを一生懸命出した調査統計局(は展望レポートの背景説明やスタッフ見通しを分担する訳で)とか企画局(展望レポートの基本的見解にある主なメカニズムとかの話の執行部案を作る担当ですな)とかの面目が見事に丸潰れですよねえという話。

退任して1年くらいたって「植田日銀はよーやっとる」という意味でこういう話をするなら分かるけど、自分は好き勝手に馬鹿緩和政策を自分の意地で継続した挙句に維持のために無茶苦茶な上乗せ措置までぶっこんで置いて、それを解きほぐすところから開始しないといけない植田日銀に対して早くもこの能天気発言をするとか、お前は岩田規久男の生霊かと小一時間問い詰めたいし、愛読してた漫画の「ギャンブルレーサー(著:田中誠)」で出てきた名文句(迷文句?)の「ゴキブリにも劣る人間のクズ」というワードがこの記事を見ながら頭に降臨して参りましたわマッタクモウ。


まあしかし黒田のヤローからも「物価目標が近く達成」とか出てしまうと、こりゃもうYCCの長期ターゲット撤廃(または形骸化)とかいうようなチャチな話じゃなくて、マイナス金利解除とか政策金利のプラス化とか低金利政策そのものからの脱却とか、次々と威勢の良い話になってくるわけでございますが、まあ黒田としては「植田の成功はワシが育てた」として手柄を自分の物にしようというための布石を打ちだしたに過ぎなくて、物の言い方自体はどうせ口が滑ったとかそういう話になるんでしょうけれども、そもそも論として昨年の4月くらいからこういう威勢の良い話をしてればもっと早くに物価目標達成の機運が高まっていたと思うのですが、何せ黒田のアホウが自分の政策の出口をやりたくない一心で昨年1年間ずーと物価目標行かない音頭を踊り続けていた訳で、そういう点からもYCCの長期金利ガチガチターゲット政策はゴミ、としか申し上げようがない訳ですな。

なお、この見解ですが、上記の日経記事を拝読しますと、

『一方で、足元では状況に変化が出てきたとも主張した。賃上げの進展に加え、中長期でも労働需給が引き締まっていく点を説明し「マインドセットは急速に変わりつつある」と述べた。伊藤氏から「10年間にわたるデフレとの戦いが大団円を迎えようとしていると楽観しているか」と問われた黒田氏は「その通り」と力強く応えた。』(こちらも直上URL先日経新聞電子版記事より)

とありまして、タカ&トシに黒田という能天気が悪魔合体したような組み合わせであることに更に落涙を禁じ得ないというか、コロンビアとかイェールとか日本にとっての社会悪にしか見えなくなってしまっている今日この頃ではございますわ、トホホ。


〇植田総裁国会に呼び出されたもののしょうもない質問しか無かったようですね

まあそもそも論としてここまでの流れから言って植田さん余計な言質は一切与えないと思っていましたので、ヘッドラインしか正直みてませんでしたが、ロイターさんの記事を見るとそもそも質問の方が箸にも棒にも掛かっていないことが判明しました。


質疑その1
https://jp.reuters.com/article/idJPL4N36L1OY
2023年4月18日3:45 午後
金融緩和の継続で物価目標の達成に近づいていく=植田日銀総裁

『[東京 18日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は18日、衆院財務金融委員会で、物価や賃金上昇の点で「良い芽が少しずつ出始めていると思う」と述べ、時間はかかると思うが「金融緩和の継続で物価目標の達成に近づいていく」と述べた。2013年に策定した政府・日銀の共同声明の考え方は適切で「直ちに見直す必要はない」と改めて明言した。

前原誠司委員(国民民主党・無所属クラブ)の質問に答えた。

植田総裁は、政府と日銀は様々な場で意見交換しており、適切な政策の分担なども「十分議論していくつもりだ」と話した。政府の働き方改革について、女性や高齢者の労働参加が進み、生産年齢人口が減少する中でも雇用の大幅な増加が実現するなど「経済の成長力の強化に寄与してきた」と述べた。』(上記URL先より、ってかすいません全文引用で)

前原と言えばそもそもこのアホウが日銀と政府の文章みたいなのを最初に作らせた張本人で、このアホウの残した負の遺産たるや世界遺産級であることは忘れずに伝えていきたいのだが、今回は何の話の為に呼んだんだ・・・・・・・・・・・・


質疑その2
https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2WF03R
2023年4月18日11:35 午前
日銀の国債買い入れは、財政資金調達のためではない=植田総裁

『[東京 18日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は18日の衆院財務金融委員会で、日銀の国債買い入れは物価目標達成が目的で、財政資金調達のためではないと述べた。道下大樹委員(立憲)への答弁。

道下委員は防衛費の抜本的な増強に伴い防衛費に充てられる国債を日銀が買い入れることになるのではと質問した。植田総裁は、「買い入れる国債に具体的な使途は明示されていない」と答えた。

与党内の一部で議論されている国債の償還ルール見直しの影響について、「一般論として市場金利は国債需給だけでなく経済や物価など様々な要素で決まるため、ルール見直しの影響をあらかじめ想定するのは難しい」とした。』(上記URL先より、これもすいません全文引用で)

そもそも質問の筋すらダメダメという質疑で、お前らもうすっこんでていいから大門先生を呼んで植田VS大門1時間一本勝負生中継付き、というのをやってくれたらとりあえず円債村の村民が大喜びして視聴すると思うのだが、問題は円債村自体が黒田のせいで焼き払われてしまっているので想定視聴者が3ケタ行かないのではないかという説がある(それは言い過ぎ)事ですね!!!!!!!!!!orzorzorz








2023/04/18

お題「再び植田総裁G20会見見ながらの雑感(または説法)/CBDC実証実験に関する決済機構局謹製中間報告書が出てたよ」

ほうほうそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-manufacturing-idJPL6N36K0AR
2023年4月18日12:14 午前
NY州製造業業況指数、4月は10.80 予想を大きく上回る

『[ワシントン 17日 ロイター] - ニューヨーク連銀が17日に発表した4月のニューヨーク州製造業業況指数は35.4ポイント上昇し、10.8となった。エコノミスト予想のマイナス18.0を大きく上回った。新規受注と出荷が急増した。』(上記URL先より)

何か予想以上は良いんだがどんだけブレてるんだよと思いました。

〇G20終了後の会見、というのがまた出た訳だが(メモね)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230417a.pdf
植田総裁記者会見(4月13日)
――G20終了後の鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言
―― 於・ワシントンDC
2023年4月13日(木)
午後9時00分から約51分間(現地時間)

何だか良く分からないのですが13日の現地時間で午後5時過ぎに会見があってそのあとまた会見があったようです。(昨日ネタにしたのは5時過ぎバージョン)

『【問】総裁にお伺いしたいのは、金融政策について、今回G20の中ではどのように説明されたのか、教えて頂ければと思います。』


『【答】金融政策についてどういう説明をしたのかというご質問だったと思いますが、基本的には次のような説明を致しました。現状は、消費者物価指数のインフレ率が、除く生鮮でみて 3%程度であるわけですけれども、今年度の後半に向けて 2%以下に下がる見通しであると。下がっていく理由としては、輸入物価のインフレ率が落ち着いていくことが大きいわけですけれども、その見通しを前提としますと、2%のインフレ目標を持続的・安定的に達成するためには、現在の金融緩和を維持するという姿勢であるというふうに説明致しました。』

昨日ネタにした午後5時バージョンでは冒頭発言として、

『【冒頭発言】(前半は欧米金融システムに関連するお話なので割愛)そのうえで、私からは、日本の消費者物価の動きについて若干コメント致しました。日本の消費者物価指数は、コスト高を背景に 3%程度の上昇率となっていますけれども、今年度半ばにかけて 2%を下回る水準に低下していくとみているというふうに説明致しました。そうしたことですので、日本銀行は物価安定の目標の持続的・安定的な実現を目指して金融緩和を継続するというふうに申し上げたところでございます。取りあえず私からは以上です。』(こちらは同日の現地時間午後5時過ぎに行われた会見での植田総裁の冒頭発言)

とありましたが、現地時間午後9時バージョンの方が分かりやすくなっていて(正常化バイアスのあるアタクシの目から見た場合、ですのでお間違えの無いようにお願い致します^^)、午後9時版では思いっきり「その見通しを前提としますと」とゆうとるわけですよね。

然るに、2023年度平均のコアCPIが+1.6%という1月展望の見通しってどこからどう見ても大外れのコンコンチキになっているのが現時点でも明白(どうみたって今年度平均+2%超えるでしょ)な訳でございますし、まさか植田総裁とあろうお方がそんな「政策から逆算した大本営物価見通し」を容認する訳もないでしょ(容認したら4月29日から楽しい悪態祭りが5年間続く予定です)と考えますと、まあやっぱりこの説明は奇襲をした時の伏線を今から張っている、となる訳です。

・・・・・・・などという正常化バイアスはおきましてもうちょっとフラットに考えましても、そもそも論として毎回の金融政策決定会合においては、「次回決定会合までの調節方針」しか決定していませんし、政策のフォワードガイダンスに関しましても、足元では明確なカレンダーベースのコミットメントを行っておりません。あくまでも「これこれこういう状態が続いている場合」とか「今時点での先行き見通しをベースにした場合」とかいうような前提付きのガイダンスであってコミットメントではないのですから、そもそも次回金融政策決定会合で何をする、というのをこの時点で明示することは本来は出来ないのでありまして、そういうのを平然と黒ちゃんがやってて政策委員会によるガバナンスとはなんななのかという状態にしてしまっていた方がおかしいのですが、なにせ黒ちゃん時代が長かったのですっかりそっちが当たり前みたいになっていました次第で、本来は植田総裁の言うように、「あくまでも現時点」の話ししかできないのが今の政策の建付けになる訳です。

なので、まあ何も匂わせないのは当たり前ちゃあ当たり前で、何も匂わせないから怪しいですとかいうアタクシも大概なのですけどね!!!!!!!

まあアレです、6月MPMまでの間に10年50bp維持するのにまたスーパー馬鹿買いをしないといけないとか、日銀の「買うだけ買いまくって挙句の果てに発行量以上購入するだけしておいて突如ショートスクイーズを掛けるという人非人プレイ」を回避するためにカレント3銘柄だけ完全にスルーして他の所(デリバや横綱を含む)で売り大会が発生する、というような事案が発生しない、という自信があるのであれば、別に4月MPMは政策見直し無し(まあさすがに金利ガイダンスの追加引き下げバイアスとコロナ紐付け文言は変更すると思いますが、それはほぼ100%皆やると思ってるでしょうからやってもノーサプライズだしそれ単体で見たら売り要因にならないと思うの)でもエエンデネエノとは思いますが、問題はそこまでの間に金利上昇圧力が再度来ないとは言い切れない点でして、いやアタクシも正直4月にYCCの長期ターゲットの撤廃なり形骸化(プラマイ100にしても1%まではよー売られんでしょ、と思っていますがどうっすかね)なりをするのって就任一発目だから中々のファイターだとは思うのですが、YCCの長期ターゲットは後に行けば行くほどいじりにくくなるリスクが出て来るので、まあ外せるときに外すんだったら4月はセカンドベストの選択だと思うのよね。


・・・・・あとですね、いやまあ普通に予想したら今年度の年度平均コアCPIって平均+2.0%越えないとおかしいじゃろという話ではあるのですが、その想定を出してYCCの長期ターゲットいじらない、というのも中々厳しいものがあるんじゃネーノと思います(まあそれが厳しいからと言って+1.8とか+1.9というようなウソツキ見通しを出し兼ねないのが恐ろしいのですが)。まあ勿論+2%越えの数字を出すと「正常化キタコレ」モードになってマイナス金利解除の思惑、となってしまい兼ねませんが、そちらに関しては「海外経済が想定以上に落ち込むかもしれない」「欧米金融機関問題が依然としてリスク」と言って「短期金利に関してはまだ見直すのは時期尚早」というのを強調して対処するんじゃなかろうかと思われるのですよ。

唐突にさっきの会見に戻りますと、

『【問】植田総裁には、世界経済についてIMFは、やはり金融システム不安がリセッションにつながりかねないとかなり強いトーンで警戒感を出しました。そうした世界経済を巡るリスクを踏まえて、日本経済、回復のシナリオは維持できるのか、賃金ようやく上がってきたところに悪影響を及ぼしかねない可能性もあると思うんですが、その辺りについてお考えをお聞かせください。』

『【答】IMFの見通しでも、金融システムの問題がかなり厳しくなって世界経済が大幅に減速ないし不調になるというようなリスク・シナリオとしてとらえられているんだと思います。そのうえで、日本経済にとってはということであれば、日本銀行としても、世界経済がある程度減速するということは念頭に置いて見通しを立てていますけれども、厳しい不況になるというところまでがベースラインの見通しではない、むしろある程度下がっていった後、インフレ率が落ち着くとともに、また世界経済も回復していくであろうという辺りをベースの見通しに置いておりまして、そのもとでは、賃金も引き続き上がっていく可能性があるというようなふうに考えております。』

というやり取りをしておりまして、まあこの辺りの「海外経済のベースラインシナリオからの下振れリスクがあるので、まだ正常化プロセスに着手するのには状況の見極めが必要」とか何とか言ってくるんじゃないかな、って伏線を張っている(まあ聞かれたから答えていると言われればそれまでですが、笑)とは思うのですね。


と、現状では最早大穴予想にも程がある(ちゃんとした何とかスト予想で4月YCC撤廃ないし形骸化をメインに置いてるの1社いるのは認識しているけど他に居ましたっけ???)のでただの辻説法状態になっておりますけれども、まあ植田総裁の発言が出るたびに令和の辻説法師として説法に励むのでありますが、確か今日は衆院の財務金融委員会に植田総裁呼ばれているようですね。いやまあ統一地方選挙やってるから呼びたいのはわかるんだけど、着任直後で来週末に展望レポートって重要なものがあるんだからそんなタイミングで植田総裁の貴重な時間を使わせるなよヴォケと思ってしまいます。



〇CBDCネタで決済機構局から報告書が出ていますね

https://www.boj.or.jp/paym/digital/dig230417a.pdf
中央銀行デジタル通貨に関する実証実験
「概念実証フェーズ 2」結果報告書
日本銀行決済機構局
2023 年 4 月

ということですが、技術的な話になるとアタクシの手に負えませんのでそういう話ではなくて最初の方の概念的なお話を読んでみるのでありました。

『1 目的』ってところから引用しますね。

『日本銀行決済機構局は、2021 年 4 月から 2022 年 3 月までの間、「概念実証フェーズ 1」を実施し、中央銀行デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)システムの基盤となる「CBDC 台帳」に関して、いくつかの設計パターンを用いて実験環境を構築し、CBDC の基本機能を的確に実行することができるかを検証した1。』

『フェーズ 1 に続き、2022 年 4 月から 2023 年 3 月に実施した「概念実証フェーズ 2」では、フェーズ 1 で検証した CBDC 台帳を中心とする基本機能に、技術的な課題を早めに確認しておくことが望ましいと考えられるいくつかの周辺機能を付加した上で、処理性能や技術的な実現可能性を検証した。この他、データモデルやデータベースに関して、フェーズ 1 では扱わなかった新たな技術の活用可能性を検討した。』

でもってこの技術の活用可能性の話が次の小見出しの所で出てきます。

『わが国で CBDC を導入するかどうかは、現時点では決定しておらず、今後の国民的な議論の中で決まってくる。日本銀行としては、こうした議論に資する観点からも、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、引き続き技術的な実証実験を含め準備しておくことが重要だと考えている。』

とまあそんな話が冒頭にあって、その次に『2 検証スコープ』というのがあって、これを見るとアタクシ程度の知能でもうっすらと話の状況が見えるような気がする(見えているとは言っていない)。

『フェーズ 2 では、CBDC の周辺機能を 3 つのブロックに分けて検証した。これらの機能は、仮に社会実装する場合に採用することを前提としている訳ではないが、今後の判断に資するよう、技術的な課題を早めに確認しておくことが望ましいと考えられる(図表 1 参照)』

ということでこの図表1なんですけどね、

『図表 1 フェーズ 2 で検証した周辺機能』は上記のように3つの大項目(中項目?)がありまして、アタクシが特に注目したのは(元々CBDCの話が出るたびにアタクシこの話をしていたというのは読者の皆様ご記憶にあればあると思いますが)最初の項目の『経済的な設計』です。

この『経済的な設計』には()として、(金融システムの安定確保のためのセーフガード)とあって、内訳項目としまして、

・保有額に対する制限
・取引額・取引回数に対する制限
・上限超過時やユーザ属性に応じたスウィング機能(上限超過分や送金受領分を銀行預金等に自動受入)の適用
・保有額に対する利息の適用

というのがあります、先に本文の方に進みますと、

『すなわち、経済的な設計の周辺機能は、銀行預金から CBDC への急激なシフトを招かないようにするための、各種セーフガードについて取り上げた。』

とあります。実際問題として日本でもペイオフ解禁になるという時期においては(当時は現在とは日本の金融システムに対する頑健性の認識が異なっていたこともありまして)大きな資金を抱えている主体の皆様におかれましては取引銀行の分散化というか拡大やら、短期運用を行う投資信託などへの関心が高かった時代、というのがあったようでございまして(全貌を詳細に分かっている訳ではないアタクシであっても)当時のイメージがあると、CBDCがホイホイとリテールで使えるようになったら、銀行預金から大々的にシフトするわな、という感覚を持つんだと思ったのですが、CBDCの話の当初はあまりその点について大々的に話題にされることが無かったという記憶がある訳ですよ。

ただ、実際に制度設計していく段階で、CBDCを全面的に展開してしまいますと、いわゆる「通貨発行の二重構造を崩して良いのか」という話になって行きましたようで、上記のような点を考慮した設計を考えるという話になってきましたし、まあ海外のCBDCにおいても基本的に通貨発行の二重構造というか銀行による預金通貨を使った信用創造自体は残す方向になっているのは結構結構という感じですな。

あと、CBDCを幅広くリテールに開放してしまった場合に、クロスボーダーでの利用もOKOKにすると、いきなり皆さんが米ドル使いになってしまって国の通貨がどっかに逝ってしまう、みたいな事もあるんじゃないかなとかまあ色々と思ったりするわけでして、そんなこんなでまあ設計においてはCBDCが通貨から全部置き換わるみたいな話にはならない方向ですね、と改めて確認しましたし、最初の項目がこれなのを見てちょっとホッとしました。

『決済の利便性向上』の項目には

・ユーザによる送金指図の予約
・ユーザの依頼による一括送金、逆引送金

ってのがありますな(送金指図の予約っていわゆる総合振込みたいな奴で、逆引送金って日本でいう口座振替契約に基づく自動引き落としみたいなのをイメージしましたがそれでエエノカシラ??)。

『仲介機関間・外部システムとの連携』の項目には

・1ユーザへの複数口座の提供
・上記を前提とした場合の、保有額、取引額・取引回数に対するユーザ単位での制限
・外部システムとの接続方法

複数の金融機関と取引をしている人が1行としかCBDC使えないとなるとややこしい事になりますもんね。とは思いましたがなるほどその連携となるとこれがまたヤヤコシヤですな。

本文の方には、

『決済の利便性向上のための周辺機能は、ユーザの利便性向上に繋がるようないくつかの機能を取り上げた。仲介機関間の連携やCBDC システムと外部システムとの連携のための機能は、1 ユーザへの複数口座の提供や、既存の外部システムとの連携を想定した場合に必要となる接続方法について検証を行った。』

でまあその後を見ますと、

『この他、フェーズ1では検証しなかった新しい技術として、変動額面方式トークンやNoSQLデータベースの活用可能性についても検討を行った(図表 2 参照)。』

と、急に素人のアタクシには何を言ってるのかワケワカメな高度な話がおっぱじまる訳でして、

『図表 2 フェーズ 2 で検討した新たな技術』の所から急にお経(失礼)が展開されます。

『変動額面方式のトークン型台帳』

・フェーズ1では、価値(額面)が固定され必要に応じ両替を行う固定額面方式を検証
・フェーズ2では、価値(額面)が変動し必要に応じトークンの統合・分割を行う変動額面方式を検討

つい「変動額面」と聞くと「いざとなったら資産接収」という方に妄想が飛んでしまうのは預金封鎖新円切替え脳ですねわかります(たぶん全然違う話をしている)。

『NoSQLデータベース』

・フェーズ1以降、伝統的なリレーショナルデータベース(RDB)を利用
・フェーズ2では、RDB以外のデータベースとして普及が進むNoSQL(Not only SQL)データベースの活用余地も検討

はいすいませんアタクシまるで知識ありません(威張って言う事ではない)。


でまあこの先になると日本語で書いてあるので字面は追えるにも関わらず、何を言ってるのかさっぱり分からん文章が続きますのでギブアップする訳ですが(無知)、ちょっと先に行きますと『3 検証結果』というのがありまして、そこで結果の報告がございますが、まあフェーズ2も無事に終わってフェーズ3の実証実験段階にはいってるんですから検証は出来たということでしょう(てきとう)というエエカゲンな話をしまして以下は皆さんご覧になってちょんまげという安直にも程があるまとめ方をするのでした。


・・・・・・で話を終わらせるのも手抜きが過ぎるので検証結果の解説をすっ飛ばして、『3.1.3 社会実装する場合の課題』の小見出しを引用しておきます(後日の俺様備忘用も兼ねて)。

『拡張性

仮に周辺機能の社会実装をする場合には、フェーズ 1 で想定したとおり、秒間数万〜十万件といった大規模高頻度処理への対応や、膨大な口座情報管理を可能とするような性能拡張性が必要となる。』

でまあ性能の話をしている部分は何か大変そうだなというのは把握しましたが、

『実験環境用システムの性能拡張について、取引指図の処理を実行するアプリケーション(AP)サーバに関しては、同じサーバを複数配置して負荷分散および並列処理を行うクローニング(インスタンスの複製)が考えられる。』

『また、指図の処理結果を記録・保持するデータベース(DB)サーバに関しては、まずはスケールアップが考えられるが、スケールアップはサーバのハードウェアのスペックに限界があるため、より拡張性を考慮すれば、水平分割(シャーディング)により負荷を低減させることが対応の方向性となる(図表 12 参照)。』

うむ。

『すなわち、処理実行のためのアプリロジックを実装する AP サーバは、指図をサーバごとに独立に処理するように構成できるため、台数を単純に増やすことにより一定の性能拡張が可能となる。一方、膨大な数のレコードを管理する必要がある DB サーバは、水平分割を行うことで各シャードのデータ量やアクセス量を抑制し、これにより処理性能を確保することが考えられる。なお、水平分割を行う際には、複数のサーバ間で整合性のとれた処理を実現する必要があるほか、サーバ内部に保持するデータ量やアクセス量に偏りが出ないよう、定期的なチューニングが必要になるなど、システム運行上の課題がある。』

『周辺機能の追加や改修を想定した場合の機能拡張性については、今回の設計ではオーケストレーションシステムに改修の影響が集中するため、当該部分の処理のモジュール化(開発・改修効率向上に繋がる処理の部品化)を検討することが重要である。』

個別の処理自体は人海戦術(人じゃないから人海じゃないけど)で対処することが出来るが、元データの管理をどうするのか問題と、そのデータの同一性、連続性を維持しないと行けない問題があるという事のようですな、よー知らんけど。


『信頼性

高い可用性の実現に向けては、障害耐性を高めるため、システムの冗長化や、災害対策のための DR(Disaster Recovery)サイトの準備などが重要となる。パターン 2 の場合には、仮に中央銀行システムに障害が起きても、仲介機関システムだけで完結する処理への影響は限定的となる一方、障害発生箇所の数は多くなる可能性がある。』

『また、複数仲介機関による口座の提供とユーザ単位での各種制限を想定する場合には、残高情報等を一元的に集約するシステムで障害が発生すると、送金元や送金先の仲介機関だけでなく、当該ユーザの口座を保有する他の仲介機関まで影響が広がる可能性がある。』

確かに複数金融機関跨ぎのCBDC利用を管理する、となると障害がおこった時にエライことになりますな。

『このため、前述のように口座数に上限を設け口座毎に各種制限をかけていくことで、残高情報等の合算を不要にする制度面からのアプローチを含め、対応方法を検討していく余地がある。』

なるほど。

『社会実装する場合に必要なセキュリティ施策は、フェーズ 1 と同様である。すなわち、各サーバやシステム間ネットワークといった CBDC システムの構成要素ごとに施策を講じる必要がある。求めるセキュリティの水準を高めるほど、施策の導入・運用コストが上昇し、処理性能も劣化するというトレードオフの関係に留意しつつ、適切なバランスを検討していくことが重要である。』

まあこの位なら言ってることの意味はわかります(^^)。

でまあこの辺の問題を突破するために、というのが『3.2 新たな技術の活用可能性』ということでフェーズ2で新たに検討されていった項目とかそういう話のようですな。なお最後に『4 結論』ってのがあるのですが、たぶんその前の時点で論点の説明は終わっていて、結論は寧ろ今後の予定についてのお知らせになっておりますな。


ということで、まあ目先の現世利益とは全然関係ないのですが、そうは申しましても節々では確認をしておいた方がエエンデネエノ的な意味合いも籠めましてネタにさせていただきましたです、全然理解が浅いので申し訳ないのでございますけど、はい。






2023/04/17

お題「G20会合後の植田総裁発言を素直に読むと動かなさそうに見えるのだが強引に解釈してみる/生活意識アンケート」

これは巧みな林檎のステマ(全然違う)
https://www.cnn.co.jp/travel/35202656.html
プロポーカー選手、エアタグで紛失荷物を追跡 生放送で航空会社批判
2023.04.15 Sat posted at 18:00 JST

10年以上前、ヒースローを乗換空港にしたらお約束のように「人間がマドリードなのに荷物がヒースローの刑」を食らって(荷物は翌朝着いたし仕事じゃないのでセーフ)以来乗換では使わんことにしている(ちなみに荷物には「ターミナル1に急いで運べ」というシールが貼ってたのだが、ワイの乗り継ぎ便はターミナル2だったというアホっぷり)のですが、近年更に無茶苦茶になっているそうですなナムナム。

まあコロナ以来海外ってなんでしたっけ状態でこの円安なので縁なき衆生ではあるが。


〇G7の会見を見ると4月奇襲はなさそうに見えるのですがなさそうに見えるのが逆に怪しい(正常化バイアス入り^^)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230414a.pdf
植田総裁記者会見(4月12日)
――G7終了後の鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 G7議長国記者会見における総裁発言
―― 於・ワシントンDC
2023年4月12日(水)
午後5時48分から約27分間(現地時間)

とまあそういうことで会見のヘッドライン自体は木曜に流れていたので今更ジローではあるのですが、話の都合から先の方の質疑(思いっきりヘッドラインになっていた奴)を見る。


・確かに日銀の物価見通しが確かである、というのであれば仰せの通りではあるのですが・・・・・・・・・・・・・・

この質疑ね。

『【問】植田総裁にお伺いします。先ほど、消費者物価についてのご説明がありましたけれども、欧米がビハインド・ザ・カーブに陥った結果、足元のインフレとか金融不安を招いたという指摘があります。足元、先ほどご紹介頂いた通り、日本でも 3%の物価の伸びが記録されて基調的な物価も上昇する中で、日本も金融引き締めに遅れてビハインド・ザ・カーブに陥るというリスクをどの程度みていらっしゃるのか、お聞かせください。』

回答の方が思いっきりヘッドラインになっていましたが、なるほどこういう文脈の質問だったのか、というお話ではあるのですが、

『【答】インフレ率が 2%を上回ってビハインド・ザ・カーブというふうにおっしゃいましたが、そういうことになるリスクをどうみているかというご質問だったと思いますが、もちろん将来は不確実ですので、そういうことが絶対起こらないというふうに言い切れるとは思っておりません。ただ、現在の経済情勢を前提としますと、2%をインフレ率がずっと上回ってそれが大きな問題を引き起こすというリスクと、2%を下回ってしまって物価目標の達成が遠のいてしまう、それによるいろいろなコスト、両方を比較した場合にやはり後者の問題に焦点を当てた金融政策を行うのが適切であるというふうに、今のところ考えています。』

という回答だったんですね、でまあここを字面通りに読めば「こりゃYCCの修正すらしねえんじゃネーノ」とか「4月に何か起こることはありませんねえ」というお話になる訳ですよね。上がるリスクよりも下がるリスクの方が大きいです、という話をしておいでです。

・・・・だが少しこの説明にも諸葛孔明の罠が控えておりまして、というのは正常化バイアスを持ってよんでおる不肖このアタクシのバイアスかかりんぐなアレによるものですので、そこは割り引いて読んで頂ければとは思うのですが、冒頭の部分で植田総裁はこのように説明している訳ですよ。


『【冒頭発言】(前半は欧米金融システムに関連するお話なので割愛)そのうえで、私からは、日本の消費者物価の動きについて若干コメント致しました。日本の消費者物価指数は、コスト高を背景に 3%程度の上昇率となっていますけれども、今年度半ばにかけて 2%を下回る水準に低下していくとみているというふうに説明致しました。そうしたことですので、日本銀行は物価安定の目標の持続的・安定的な実現を目指して金融緩和を継続するというふうに申し上げたところでございます。取りあえず私からは以上です。』

となっているのですが、この「今年度半ばにかけて 2%を下回る水準に低下していくとみている」というのは日銀公式発表であるところの「1月展望レポート」の見通しであり、3月決定会合の声明文でもその見通しには変化なし、ということで記述されているものですよね。

でもってですね、そもそも論としてこの「今年度半ばにかけて 2%を下回る水準に低下していくとみている」という見通し自体がおかしくねえか、というのは普通に民間の皆様計算されていると容易に指摘できるらしい話で、そんなに物価に強気じゃない人でも1月展望レポートで示されている「2023年度平均+1.6%」になるとは到底思えない状態(平均ですよ平均)になっている訳でございますよ足もとは。

だいたいからしてこの1月展望の見通しが当時の時点でも既に「低すぎだろ」という指摘は結構あったはずだし、どう見ても黒田総裁に忖度した数字を出しただろ、としか思えない物件がでておるわけでございますが、植田総裁にしましても、現在の日銀公式の見通しが基本的に1月展望レポートをベースにしたものである以上、如何にその数字が前任の大総裁に忖度した茶坊主ムーブの数値であろうとも、まさか植田さんが着任早々「あの数字は過小なので」とか言い出すわけにもいかないでしょうから、そうなると茶坊主ムーブの「2023年度平均+1.6%」というあり得ない数字を前提に話をせざるを得ない(しかも3月会合も黒田総裁が実施しているので3月会合で見通し修正などがある訳でもなかったし)のである訳です。


だいたいからして1月展望の物価見通しってこうなんですよ。
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2301a.pdf(1月展望基本的見解)

こちらの10ページにありますが、

コアCPI:22年度着地見込み+3.0%→23年度見込み+1.6%→24年度見込み+1.8%
コアコアCPI:22年度着地見込み+2.1%→23年度見込み+1.8%→24年度見込み+1.6%

真面目な話、どういうアクロバットな四半期展開をするんだよ特にコアCPIって感じでして、3月の東京都区部のCPIがコアで+3.2%、コアコアで+3.4%な訳でして、23年度の全国コアの平均が+1.6%になるのってどういう四半期展開するとそうなるのかというか日銀だって月次見通し出してるだろうに、どういうアクロバットな推移をするとこういう結果になるのかさっぱり意味が分からないという物件で。こんなの黒田様に対する忖度爆発しないと出ないだろという数字にしかアタクシには見えない訳ですよ。


・・・・・・・つまりですね、来週金曜の展望レポートに向けてどういうまとめをしているのかは存じませんけど、まあゆうて今って少なくともスタッフ見通しは出来上がってる頃なんだろうと推測されるわけですが、植田さんさすがにこの1月展望の数字じゃおかしいだろという指摘をしていると妄想されるわけでございまして、そうなった場合って冒頭発言の「今年度半ばにかけて 2%を下回る水準に低下していくとみている」ってのが変われば話も変わるでしょ、という事なんですよね。

そしてしつこく申し上げておりますように、YCCの長期金利ガチガチターゲットだけは「事前に織り込ませることができない」どころか「奇襲攻撃じゃないと市場に追い込まれてしまう」という実に残念な性質がありますので、こういうノホホンとした説明で煙幕を張っておくのが吉、というのもありまして、そんなこんなを踏まえると、最初に引用した方の質疑を文字通り素直に読んでてエエノンカイナ、とまあこのように思う訳です。寧ろ怪しいんじゃないかとか思ってしまう位ですが、まあ怪しいんじゃないか、と思うのはどこからどう見ても正常化バイアス成分が含まれておりますのでその点ご留意して用法容量はお間違えの無いようによろしくおねがいするます。



〇生活意識調査アンケート見ますと普通にインフレ期待が上振れしているようにしか見えんのだが

https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2304.htm(概要)
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2304.pdf(全文)

引用は基本的に全文から行います。

・さすがに住宅ローン金利がどうのこうのの報道が効いたようで

質問項目の『1-1-3. 金利水準』(4ページ)から参ります。

『金利水準についての見方は、「金利が低すぎる」との回答が減少し、「金利が高すぎる」との回答が増加したことから、金利水準D.I.はマイナス幅が縮小した。』

『(図表4)金利水準についての見方〔Q5〕』を見ますと、なんかエライ今回回答が動いていまして、いや大して金利動いてないやん、と思ったのですが、よくよく考えてみたら住宅ローン金利ガーとかいう報道が物凄い勢いであったんだと思う訳なんですけど、低金利で円安が進んで物価高になっている、という報道が出ればどうせこの逆の回答になる訳で、まあメディアは何でもかんでも「大変だー」の面をセンセーショナルに報道するんじゃねえよと思う訳ですが。


・暮らし向き関連のDIは軒並み悪化と

質問項目の『1-2-1. 現在の暮らし向き』(5ぺージ)から。

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

一方で『1-2-2. 収入・支出』の収入を見ると、

『収入については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加し、「減った」との回答が減少したことから、現在の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。先行き(1年後)については、「増える」との回答が増加し、「減る」との回答が減少したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。』

と収入は改善していますが、支出の方はと言いますと・・・・・・・・・

『支出については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加し、「減った」との回答が減少したことから、現在の支出D.I.はプラス幅が拡大した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が増加し、「減らす」との回答が減少したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が縮小した。』

ということで付属する図表の『(図表5)現在の暮らし向き〔Q6〕』『(図表7)支 出〔Q9、11(1)〕』を見るとじっと我の財布を眺めるの巻となる次第なのでございますですわナムナム。

支出の内訳ですが

『1年前と比べて、支出を増やしたものについては、「食料品」との回答が最も多く、次いで「日用品(洗剤、雑貨等)」、「家電」が多かった。』

となっていて、『(図表8)1年前と比べて支出(金額)を増やしたもの(3つまでの複数回答)〔Q21(1)〕』で「食料品」と「日用品(洗剤、雑貨等)」が思いっきり増えているのはさもありなんという感じでございまする。

『1年前と比べて、支出を減らしたものについては、「外食」との回答が最も多く、次いで「衣服、履物類」、「旅行」が多かった。』

となっているのですが、『(図表9)1年前と比べて支出(金額)を減らしたもの(3 つまでの複数回答)〔Q22(1)〕 』を見ると順位はさておき、「減らしたもの」として挙げられる率がグイグイ上昇しているのが「衣服、履物類」でして、まあ何かそうだよねと思う一方で大物支出の「旅行」は割合としてはグイグイ減ってて、旅行ナントカ支援恐るべしと思いました。


『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「今後の物価の動向」との回答が最も多く、次いで「収入の増減」、「余暇・休暇の増減」といった回答が多かった。

商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで「安全性が高い」、「長く使える」、「信頼性が高い」、「機能が良い」といった回答が多かった。』

一時期この重視項目がデフレ感の低いもの(安全性とか信頼性)が良い感じになってたこともありましたが・・・・・・orz


・収入DIは改善しているのだが雇用環境DIは悪化

11ページの『1-2-3. 雇用環境』です。

『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が減少し、「かなり感じる」との回答が増加したことから、雇用環境D.I.は悪化した。

(注)勤労者:会社員・公務員(会社役員を含む)およびパート・アルバイトなど』

ありゃま・・・・・・・・・・って『(図表12)1年後を見た勤め先での雇用・処遇についての不安(勤労者)〔Q20<うち勤労者>〕』の下にある『<雇用環境D.I.の推移>』を見ればお分かりになるかとは思うのですけれども、雇用環境DIってこの2四半期悪化してて、しかも今回ってちょっと悪化幅が大きくなっているんですよね。うーんこれは。


・物価に関してはこれインフレ期待上に抜けてるんじゃないか位の勢いですな(まあ統計の癖あるけどさ)

でもって本文12ページからはみんな大好き『1-3. 物価に対する実感』です。

まずは『1-3-1. 現在の物価』から。

『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)と回答した人の割合が9割台半ばとなった。

1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+14.6%(前回:+12.1%)、中央値は+10.0%(前回:+10.0%)となった。

(注1)「あなたが購入する物やサービスの価格全体」と定義。(注2)『上がった』は「かなり上がった」と「少し上がった」の合計』

ちょwwwwwwww+15%wwwwwwwwwwwwww

しかもこの『(図表13)現在の物価に対する実感〔Q12、13〕』における「かなり上がった」のグングンズイズイ上昇ぶりがもうエライコッチャでございます。


さらにみんな大好き『1-3-2. 1年後の物価』に参りますと、

『1年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台半ばとなった。

1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+11.1%(前回:+9.7%)、中央値は+10.0%(前回:+10.0%)となった。(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

はいダブルディジット来ました〜。日銀の「2023年度半ばになると2%を割り込んでいく」という黒田忖度茶坊主ムーブ爆発の物価見通しとの差分の大きさに泣けるわwwwwwww

でもって茶坊主ムーブと言えども無視しにくい『1-3-3. 5年後の物価』ですが、

『5年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が7割台半ばとなった。これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+8.1%(前回:+7.5%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。

(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

年平均+8.1%wwwwwwwwwwwwww

いやそれはお前何ぼ何でもという数字で、5年間8%複利ってワイドフィーバーかよという世界なので何ぼ何でもそれは無い無いとは思いますが、この平均値がバンバカあがっていまして、これ賃金が右肩上がりになるという期待が起きなかったらエライコッチャや無いのと思ってしまいます。


・日銀の政策に関する認知度コーナーですが今回は半年に1回のアレが無いんだよなーーーーーーーーーー

18ページからは『1-6. 日本銀行の金融政策に関する認知度』のコーナーなのですが・・・・・・・・

『日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていることについては、「知っている」との回答が2割台後半となった。積極的な金融緩和を行っていることについては、「知っている」との回答が3割台前半となった。

「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を行っていることについては、「知っている」との回答が1割台後半となった。』

というものなのですが、これ6月と12月調査の場合が本チャンでして、今回の質問項目はどうなっているかと言いますと(質問と回答だけを淡々と並べたコーナーが最後にありまして)、

『Q28〜30は日本銀行の金融政策に関する質問です。

Q28.日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていることをご存知ですか。
Q29.上記目標の実現のため、日本銀行が積極的な金融緩和を行っていることをご存知ですか。
Q30.具体的には、現在、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を行っていることをご存知ですか。』

ですが、本チャンパティーンとなる直近12月のこの部分を見ますと、
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2301.pdf

『Q21.次の(1)〜(4)の項目は、日本銀行の2つの目的のうち「物価の安定」について述べたものです。
もっともあてはまると思われる番号に1つずつ○を付けて下さい。
(1) 日本銀行は、「物価の安定」をその目的の一つとしていることをご存知ですか。
(2)日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていることをご存知ですか。
(3)上記目標の実現のため、日本銀行が積極的な金融緩和を行っていることをご存知ですか。
(4)具体的には、現在、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を行っていることをご存知ですか。


Q22.日本銀行は、「金融システムの安定」をもう一つの目的としていることをご存知ですか。

Q23.日本銀行について、以下の(1)〜(5)の項目のそれぞれに対し、あなたの考えにもっともあてはまると
思われる番号に1つずつ○を付けて下さい。

(1) 日本銀行の活動に日頃から関心を持たれていますか。
(2) 日本銀行は私たちの生活に関係があると思いますか。
(3) 日本銀行は私たちの生活に役立っていると思いますか。
(4) 日本銀行の外部に対する説明はわかりやすいと思いますか。
Q23-a.((4)で4または5『わかりにくい』と答えた方へ)わかりにくいと思われる理由は何ですか。【2つまでの複数回答】
(5) 日本銀行を信頼していますか。
Q23-b.((5)で((5)で1または2『信頼している』と答えた方へ)信頼している理由は何ですか。【2つまでの複数回答】
Q23-c.((5)で4または5『信頼していない』と答えた方へ)信頼していない理由は何ですか。【2つまでの複数回答】』

24は日銀の広報活動で25はお札の状況なので割愛しますが、このアンケートの3月版欲しかったですね〜(・∀・)ニヤニヤ







2023/04/14

お題「FOMC議事要旨と総裁衆院会見ネタの積み残しの成敗をさせていただきますです」

国会にずっと出ない人を除名していませんでしたっけこの前・・・・・・
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/432387?display=1
自民党議員の無断欠席相次ぎ…身内から苦言「出席するのが基本」 委員会ストップも
国内
TBSテレビ
2023年4月13日(木) 15:10

『自民党 盛山正仁 国対副委員長

「事務所に電話しても電話も通じないというようなことがございまして、きのうは、例えば某委員会では委員会がストップするというような事態もございまして、ぜひとも委員会に出席するのが基本である、本会議も基本である」

このように苦言を呈したのは、自民党・国会対策委員会の盛山筆頭副委員長で、委員会や理事会に代理を立てずに欠席や遅刻をする議員が相次いでいると指摘。このために議事進行が止まったり、開催が遅れたりしているとして改善を求めました。』(上記URL先より)

こちらの盛山国会対策副委員長とか参院の末松予算委員長(も自民)とか国会運営に関してまともなことを言ってくれる人がいるだけマシなんですよね、というか当たり前の指摘が出て来るだけでもウルトラ高評価したくなってしまうテイタラク。


〇昨日途中で終わってしまった(しかも肝心なところの前)FOMC3月議事要旨の続き

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20230322.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
March 21-22, 2023

ということで昨日は金融政策の話の手前までで終わるというアカンタレでしたので汗をかきかき続きに参ります。ひきつづきパーティシパントの議論部分です。

・25bp利上げは投票権の無い地区連銀総裁も含めて全員一致

『In their consideration of appropriate monetary policy actions at this meeting, participants concurred that inflation remained well above the Committee's longer-run goal of 2 percent and that the recent data on inflation provided few signs that inflation pressures were abating at a pace sufficient to return inflation to 2 percent over time.』

今回の金融政策決定においては、ということで話がおっぱじまりますが、当たり前ですけど25bp利上げしているので、状況については物価が中々サガランチ、という話になっていて、「recent data on inflation provided few signs」と物価上昇がターゲットに向かって落ち着いていくというというサインが碌すっぽ表れてない、とトサカモード(かどうかは知らんが)であります。

『Participants also noted that recent developments in the banking sector would likely result in tighter credit conditions for households and businesses and weigh on economic activity, hiring, and inflation, though the extent of these effects was highly uncertain.』

とは言え最近の銀行セクターを巡るあばばばばーによってクレジットコンディションのタイト化が起きるので、それによって経済活動の抑制要因になって、雇用や物価の過熱を抑えることが想定されますな、ゆうてどの程度になるかは知らんけどな、と皆さんで確認しまして、

『Against this backdrop, all participants agreed that it was appropriate to raise the target range for the federal funds rate 25 basis points to 4-3/4 to 5 percent.』

ステートメントで出ていたようにFOMCの票決も全員賛成でしたが、投票権の無い人も含めた「all participants」が25bp利上げで一致。

『All participants also agreed that it was appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings, as described in its previously announced Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet.』

バランスシートの縮小に関しても従来通りのペースで行う事を「All participants」が同意。


・金融あばばばばーが無かったら50bp利上げが適切だったと表明した人が出た件でパラグラフ1個作ってますね

次のパラグラフは上記小見出しのようなお話になりましてですな、

『Some participants noted that given persistently high inflation and the strength of the recent economic data, they would have considered a 50 basis point increase in the target range to have been appropriate at this meeting in the absence of the recent developments in the banking sector.』

銀行アイヤーなかりせば50が適切だと考えておりましただって物価がサガランチ会長な上に経済データ強いじゃん、と表明したのが「Some participants」ときまして次がいつものハウエバー、

『However, due to the potential for banking-sector developments to tighten financial conditions and to weigh on economic activity and inflation, they judged it prudent to increase the target range by a smaller increment at this meeting.』

銀行アイヤーの進展によっては金融環境悪化からの経済下押しがあるんですからまあここは慎重に25上げの方が良かろう、というスタンスを示した。ということですからして、つまりはこの問題がただの一発屋で終わってしまう場合(ってのがあるのかどうかは知らんけど)にはこのパーティシパントの皆さんは利上げ継続侍ということになりますな、うんうん。

『These participants noted that doing so would also allow the Committee time to better assess the effects of banking-sector developments on credit conditions and the economy as the Committee moved toward a sufficiently restrictive stance of monetary policy.』

って書いたらアタクシがいうまでもなくそのように書かれていました。でもってここなんですがこれで一本の独立したパラグラフになっているのはど〜ゆ〜ことかと考えますと、つまりは利下げヒャッハーなどと直ぐに浮かれる金融市場に対して「お前らそこまで先走るんじゃねえよ」というためにわざわざ「SVBのアホウが居なければ利上げは50だった、ということを皆様も思い出して頂きたい」って拡声器を使って放送している訳でして、まあ一方で米国金融市場は親(?)の心子知らずといった風情でヒャッハーとするのが大変に味わい深い所であります。


・とは言いましても先行きの金融政策運営の所では「金融アイヤー問題で利上げ到達点下がったんでねえの」との表現が

次のパラグラフは先行きの金融運営政策。

『In discussing the policy outlook, participants observed that inflation remained much too high and that the labor market remained tight; as a result, they anticipated that some additional policy firming may be appropriate to attain a sufficiently restrictive policy stance to return inflation to 2 percent over time.』

でまあ先行きの金融政策運営でもここのところまではいつものファイティング弁慶状態なのですが、

『Many participants noted that the likely effects of recent banking-sector developments on economic activity and inflation had led them to lower their assessments of the federal funds rate target range that would be sufficiently restrictive compared with assessments based solely on the recent economic data.』

銀行アイヤー問題が乗っかった事によりまして、「適切な引き締め水準」の金利水準については、足元のクソ強い経済指標だけで考える適正な利上げ着地点よりも低くなったでしょう、と多くの参加者がノートした、という話になっていて、まあここ読むとやはりヒャッハーとなってしまうわなーと思ったりするのだ。

『In determining the extent of future increases in the target range, participants judged that it would be appropriate to take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』

このパラの最後の所はいつもの表現です。


・基本的にはやはり金融セクター混乱の影響がどの位になるかを注目している感じ

次のパラも先行きの金融政策運営でもうちょっとフワッとした話。

『In light of the highly uncertain economic outlook, participants underscored the importance of closely monitoring incoming information and assessing the implications for future monetary policy decisions.』

先行き不透明だから今後のデータを見て行きましょう、っていつもの呪文ですな。

『Participants noted that it would be particularly important to review incoming information regarding changes in credit conditions and credit flows as well as broader changes in financial conditions and to assess the implications for economic activity, labor markets, and inflation.』

今後のデータですがクレジットコンディションとかクレジットフローとか全体の金融環境とかを注意深く見ます、ってのは要は金融セクターあばばばばーの進展をみたいって話ですわな。

『Several participants emphasized the need to retain flexibility and optionality in determining the appropriate stance of monetary policy given the highly uncertain economic outlook.』

先行き訳分らんから政策はフレキシビリティ持つのダイジネーというのが数名から出ています、でこのパラはおしまいでまあここでは金融アイヤーの影響の広がり具合を確認しましょう位ですかね、話としては。


・先行きリスクバランスを見ると上振れの方に字数を多く割いているという微妙なバランス構成

そして先行きの金融政策の運営に関して最後のパラグラフではリスクマネジメント的な考えで、というとだいたい引き締めの方向の調整を遅らせる話になるのですが、まあ今回もそうですわな。

『Participants emphasized a number of risk-management considerations related to the conduct of monetary policy.』

はい。

『Some participants observed that downside risks to growth and upside risks to unemployment had increased because of the risk that banking-sector developments could lead to further tightening of credit conditions and weigh on economic activity.』

『Some participants also noted that, with inflation still well above the Committee's longer-run goal and the recent economic data remaining strong, upside risks to the inflation outlook remained a key factor shaping the policy outlook, and that maintaining a restrictive policy stance until inflation is clearly on a downward path toward 2 percent would be appropriate from a risk-management perspective.』

『Several participants noted the importance of longer-term inflation expectations remaining anchored and remarked that the longer inflation remained elevated, the greater the risk of inflation expectations becoming unanchored.』

この次に結論が来て、その結論自体は「上向き下向きのリスクがあるんだからデータを良く点検していきましょう」というほなあんじょうようやっときますわな結論項になるのですが、この前の部分の両論併記の部分、しれっと下振れリスク1(金融アイヤーの波及)に対して上振れリスク2(そもそも景気が強くて物価が下がらん、というのと中長期のインフレ期待が上振れてしまうリスク、というの)で並んでいるのがこれまたお茶目でして、何気にリスクマネジメントの部分を見ると上振れリスクの方が多くスペースを割いているのですよね。

『Participants generally agreed on the importance of closely monitoring incoming information and its implications for the economic outlook, and that they were prepared to adjust their views on the appropriate stance of monetary policy in response to the incoming data and emerging risks to the economic outlook.』

以下が『Committee Policy Actions』になるのですが、今回の「先行き金融政策運営」の造りをみると、結局は銀行セクターあばばばばー問題がどの程度物価下押しに効いてくるのか、という程度がFOMCの時点では読めない(そりゃそうだ)ので、政策行動としては慎重にならざるを得ませんけれども、もし銀行セクターあばばばばーがそれほどでもなく、貸出態度とかその辺もそんなに悪化しないのなら(という辺りが微妙ですよね、と思いますけど)、その場合は皆さんそもそも今回は50上げるべきであったとの意見すらあったという事を思い出して頂きたいし、物価(どうでも良いが何で仏花ってそ誤変換したんだ今^^)と雇用はクッソ強くてインフレが中々サガランチ会長であることに留意して頂きたい、ってな感じになっておりますので、これだと物価上昇の鈍化が明確に示されるような展開にでもなってこない限りは「利上げ打ち止め」というのもできない(すなわち5月頭のFOMCでは判断材料が足りないので利上げ打ち止め宣言に至らない)んじゃなかろうかと思いますので、そう勘案すると直ぐに盛り上がる傾向のある年内利下げいやっほおおおおおおお!というのも何かちょっと先走りにも程があるような気がしますが個人の感想なのでそこらのご判断は自己責任で一丁よろしゅうおねがいするます。



〇総裁副総裁就任会見ネタの続きです(スイマセン遅くなりまして)

ということで続き、と言っても多分一番重要な辺りは水曜にネタにした辺りだとアタクシは思うのでありますが、あとは「今の政策の副作用問題」が論点かなと思いますのでその辺とその他を少々。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230411a.pdf


7ページになります。質問の後半から参りますね。

『(問)(前半割愛)もう一つは長期金利操作とETFの買入れについてです。総裁、所信表明でイールドカーブ・コントロールについて様々な副作用を生じさせているという面は否定できない、ETFについては大量に買ったものを今後どういうふうにしていくのかは大問題とおっしゃっています。現在導入している以上、すぐに出口を探すのは難しいと思うのですが、いずれの政策も導入したこと自体適切だったのでしょうか。総裁のご見解をお聞かせください。』

『(植田総裁)(前半割愛)それから後半ですけれども、金利操作、ETFの購入ですか、これについておっしゃるように副作用、私はある、あるいはあったかというふうに考えてございます。』

まあ副作用が無かったらそもそも毒にも薬にもならん政策ですからね。

『そのうえで、そういう副作用のあるような政策をそもそも導入したことは良かったのかどうかというご質問だったと思いますけれども、その点については、おそらく、それぞれ導入した時点で私はボードメンバーではなかったのであれですけれども、効果と副作用について十分考慮し、議論されたうえで導入されたのだと思います。』

という言い方をしていまして、まあこれは普通に読めばごく穏当に「日銀は常にその時点での最適な政策を実施しようと努力してきました」って見解を表明していると取れますし、まあ普通はそう読むもんだと思いますけれども、アタクシのように性格に難のある人間が斜め後ろから読みますと、じゃあマネタリーベース置物一気理論のようなその時点でもあちこちから疑問を呈されていた政策を政治力と勢いでぶっこんだ場合はどうなのか、という話でして、この「効果と副作用について十分考慮し、議論されたうえで導入されたのだと思います」というのが「お宅のお坊ちゃんピアノがお上手になりましたなあ(はんなり)」みたいなぶぶ漬け話法に見えてしまうのはアタクシの心が汚れているからですねそうですね。

『ですので、たまたま副作用が目立っているからというだけで、それの導入がまずかったという結論にはならないのかなと思います。』

つまり十分に考慮しないで議論も碌にしないで導入された結果案の定ダメだったというものはまずかったといういみですねわかります(ぶぶ漬け脳)。

『やはりネットで経済にどういう効果があったのか、それから副作用のコストが仮に測れたとして、引き算してお釣りが残るかどうかというのが、評価の基準になるかなと思います。』

ま、それの計算もずーっと黒田様の為に忖度した鉛筆舐め舐めいや何でもありません。

『インフレ率という面で言えば、時間はかかったけれども、デフレの状態から若干プラスのインフレ率、足元ヘッドラインは非常に高いわけですが、そこまで来たという、そういうプラスはやはりあったかなというふうに考えております。』

ほうほう。

『そのうえで、副作用をどう考えるのかというような重い問題でありますが、繰り返しですが、だから直ちにまずい判断だったということにはならないかなと思っております。』

という回答でしたが、じゃあ副作用対応の政策見直しはあるのか、という問題に関して別の方が質問をしていまして、本文9ページに飛びます。


『(問)総裁にお尋ねします。先ほどYCC政策には副作用があるという話をされましたけれども、副作用対応としてYCCを修正する場合なんですが、いずれの措置も金融緩和の度合いを弱めることになると思います。副作用対応とはいえ、現在のような海外発の金融不安がくすぶっている中では、YCCの修正というのは慎重であるべきなのか。また一方で、副作用対応ということならば、経済・金融・物価情勢と切り離して考えることは可能なのか、その辺について総裁のお考えをお願いします。』

これ「金融緩和の度合いを弱める」辺りから趣旨が訳分らなくなっておりまして、効能よりも副作用の方が目立つので政策を修正する、という触れ込みで実施する政策の修正って、効能を強化して副作用を軽減する、ということなので、理屈の上では金融緩和の度合いは弱めなくて寧ろ強める、という理屈になるんですよ、あくまでも理屈だけど。

ですから、例えば昨年12月のYCCのバンド拡大ってのは、まあどっからどう見ても過去との説明の整合性がおかしくなっていて、利上げなのに利上げじゃないみたいな事になってしまったのですが、あれ日銀の理屈で言えば今申し上げたような屁理屈になるんですよね。

ということですから、そもそもこの質問で「いずれの措置も金融緩和の度合いを弱めることになると思います」とアプリオリに決めて質問するのは宜しくなくて、もし聞くならバンド拡大に焦点を絞って、例えばバンドの再拡大のようなことをすると副作用対策であっても金利上昇することによる緩和効果の縮小ということになるかと思います、みたいな言い方にしないと話の趣旨が途中で良く分からなくなるんですよね。

別に植田さんが回答でこういったから尻馬に乗っているという訳でも無くて、ようつべちゃんねるで聞いててワタシも「????」だったのでクドクドと無駄なツッコミをしてみました次第。


『(植田総裁)ご質問の趣旨を完全に理解したかどうかなんですが、基本的にはYCCを大幅に修正するかどうかというのは、経済・物価・金融に関する情勢が基調的にどういうことかということで決めていくのが正しいかなと思います。』

ここで「大幅に」ってわざわざ言ってるのも植田さん無茶苦茶周到で、何をもって大幅に修正というのかは玉虫色のまま軽微な修正(まあ10年目標の廃止は軽微じゃないけど、笑)はできるように言ってますな。

『そのもとで、YCCのメリットとそれから副作用を比較衡量して決めていくということであるべきなのかなというふうに思っております。』

ということなのですが、つまりは副作用対策を前面に出して政策の変更を行う、というのはそこそこのハードルがあって、「説明に耐えられるような副作用」を示さないとイカンってことになります。まあその「説明に耐えられるような」のレベルがどの程度なのかはムツカシイのですが、12月の場合は社債発行企業が発行に支障を来している、という大義名分がありましたので、その手の「放置していると経済活動に悪影響を与える」という話になってしまうのかなと思う訳で、市場機能だけだと材料として厳しいのかなー(市場機能が悪化することによって(社債発行の例のような)具体的な弊害がこのように、ってのを見せられないと、ってイメージです)とは思われるところでございます。

とは言え、YCCの長期金利ターゲットだけはコミュニケーション上の阻害(うっかり丁寧に説明するとその瞬間に売り売りの売りになるので事後的にしか丁寧に説明できないというクソな枠組み、他の例えばマイナス金利なら解除を事前に織り込ませにいける)なので、これはこれでどうするかという話になりますが・・・・・・


・「解きほぐす」のであれば真っ先にやるべきことは一つしかありませんよね

これは良い質疑でしたよね、12ページ。

『(問)植田新総裁にお聞きしたいと思います。これまでの長い大規模な金融緩和で、政策自体も複雑化、そして分かりにくくなっていて、様々な副作用についてもご指摘されています。市場では、イールドカーブ・コントロールについて、新体制のもと早期に政策修正するのではないかなどの見方など、いろんな観測が出ているんですが、そんな中、今後、日本の中央銀行の市場との対話という観点で、一番重要なこと、心掛けたいことはありますでしょうか。また、これまでの日本銀行と変えていきたい部分などありましたら、ご教示頂けますでしょうか。』

これ修正しますかっていうような露骨な質問にしないで一般的な方向に持って行って回答しやすくしているのが質問者上手だなと感心しました。


『(植田総裁)いろいろ難しいことを、いろんな面でやっているというのが現在の政策だと思いますので、必然的に分かりにくいというところはあるかと思います。どこをどう変えたらというのは難しいですけれども、一つ一つ、いっぺんに全部というわけにはいかないかもしれませんが、解きほぐすように分かりやすい説明を、抽象的な言い方で恐縮ですが、心掛けていけたらなというふうに思っております。』

ということですよね。まあそこまで植田さんに強い意図があるかどうかはともかくとして「説明を阻害している」のがアタクシが35回くらい申し上げておりますようにYCCの厳密な長期金利ターゲットなので、まずはこの部分を何とかしないと「解きほぐす」もへったくれも無い訳でございまして、そういうのも勘案するとやっぱりYCCの長期ターゲットって早いうちに何とか処置しないと話が先にいつまで経っても進まない、ということになるんじゃないか、まあ正常化バイアス(またの名を正常化願望)がアタクシには掛かっておりますからそう読んでしまう、というのはありますけれども、アタクシはそのようにこのやり取りを解釈しました。だから4月なのか6月なのか7月なのかは全く読めない(読ませるような言質を一切与えない)んですけどね。


・まあ結局は外的ショックよ

幾つか黒ちゃん時代に物価が上がらなかった理由についての質疑がありましたが、その中でこれをピックアップしてみました、11ページのケツから12ページになります。

『(問)植田新総裁にお聞き致します。緩和継続ということをお話しなさっていましたけれども、改めて黒田総裁のこの 10 年についてお伺いします。黒田総裁、2%の物価目標を掲げて、この間、大規模緩和を打ち出し、それを 10 年続けていきました。植田新総裁からみて、この 10 年というのをどのように評価しているのか、お聞かせください。また、この 10 年でETFですとか国債というのが、日銀の保有、かなり増えてきています。この辺りの課題認識ですとか、また今後どのような対応をしていくのか、よろしくお願い致します。』

ということで、

『(植田総裁)ひょっとしたら私が黒田総裁が就任された時期に仮に、やや危険なことを申し上げますが、総裁であったら決断できなかったかもしれないような思い切ったことをされた、決断をされて実行されたというふうに評価しております。それは、その時期、10 年前の総裁として、一つの判断だったと思います。』

・・・・・・・(^^)

『その結果は、これはもう今日、話がいくつか出ましたように、一方で残念ながらいくつかの外的なマイナスのショックがあったりしたこと、あるいはそれまでそこに至るまでの過程でのデフレやゼロインフレの経験が足を引っ張ったことなどがありまして、完全に 2%の目標を達成する、しかも当初の 2 年でということは無理で、10 年経ってもという結果ではあるわけですが。』

ノルム云々よりも外的ショック、の方をこのテーマでの質疑では強調していた感じはありますね。気のせいかもしれないですが(汗)。

『それでも、デフレでない状況を作り出して、私どもにバトンタッチして頂いたということは、非常にありがたいことだというふうに思っております。従いまして、そのバトンを受け取って、先ほどどなたかのご質問にありましたように、この 5 年間にできれば目標に到達するというようなことに全力を挙げたいと思いますし、その際に、思い切ったことをやったことに伴う副作用についても、配慮しながら様々な政策措置を取っていきたいというふうに考えてございます。』

まあこの辺は無難に流しております。


・出口が悪のような論調にしれっと砲撃をする氷見野さん

氷見野さんこれは良く言った。8ページになります。

『(氷見野副総裁)仮に出口を迎えられる状態になったときに、金融システムへの影響をどう考えるかというご趣旨かと思いますが、そのときの状況も様々考えられますので、一概には言えないわけでありますけれども、基本的には、低金利がずっと続いていくということは、金融機関にとっては利鞘を守ることが難しくなるという面があります。他方、金利が上がっていく局面では、債券ポートフォリオに含み損が出るといったようなことも考えられるわけですけれども、では、両方でプラスとマイナスがあったうえで、』

この先が実に結構な話、というかメディアもそうだし黒ちゃんがあまりにも出口について否定的な情報発信をしまくってたのが良くない訳で、氷見野さんがいかに仰る通りなんですよね本来は。

『最終的には出口を迎えられるということは、経済にとっても、国民にとっても、金融機関にとっても、総体的にはプラスだというふうに思いますけれども、』

いや全く仰る通りです。なんでこの論点にならないのかという話っすよね。

『移行過程をどうマネージするかということになると思います。そこにつきましては、金融機関、地銀含め、一定の頑健性を有しておりますし、また日銀の側でも、例えば金融政策決定会合では、金融機構局が金融システムの状態をきちんと報告することにしておりますし、また金融庁とも連携してリスク管理の向上については促してきておるわけでありますので、十分、金融システムの健全性と両立するかたちで適切な出口を辿っていくということは可能だというふうに考えております。』

そらそうよという話ですが、移行過程が過激なものになって米国のチョンボみたいな事にならないためにどうするのかというと、一昨日引用しましたように「2%達成したのに急に気が付いて急に出口を始めるのではよくない」という植田さんの話になるんですよね。


とまあそんな感じでしょうか。あと面白かったのは「躊躇なく追加緩和」という声明文のガイダンスにも書いてあるはずの文言が一切なかったことですよね。いやまあ当然なんだけどさ。







2023/04/13

お題「FOMC議事要旨(その1):途中まで読んだ感じだと銀行セクター問題は「大きな不確実性のおかわり」扱いになってるかなあと」

あちゃーそうでした今日はFOMC議事要旨があるのでした・・・・・・・・・・・

〇その前に明日詳しく読みますが生活意識アンケートがエライことになっておりますがというメモ

https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2304.htm(HTML)
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2304.pdf(PDF)
「生活意識に関するアンケート調査」(第93回<2023年3月調査>)の結果

いやこれですね、暮らし向きのDIとか物価のDIとか見るとエライコッチャというか、これってもしかしてインフレ期待が既に上に振れ過ぎてるんじゃネーノ(とかいうとすかさずインフレスワップや物国のBEIを持ち出してくるのが今までの屁理屈日銀でしたがさてこれからはどうなるか)と思いますし、大体からして生活品の物価が上がって何かエライことになってますがな(まあこういうのはエライコッチャの方にバイアスが掛かった回答が多くなるので誇張されるというのもあると思うけど)というのが多くて、これ真面目な話この「物価高アカンですねん」が日銀批判につながるような流れになると植田先生初手からいきなりの難局という感じですよね。

とは思いましたが、この3か月色々あり過ぎて前回の生活意識見ながらワイって何を考えてたっけというのも思い出しながら明日詳しく参りたいと思います(植田総裁就任会見の続きも含めまして)。


〇よく考えたらFOMC議事要旨の日だったので寝起き(なお天気さえよければ朝からお外はさわやか)で鑑賞(その1)

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20230322.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
March 21-22, 2023

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, March 21, 2023, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, March 22, 2023, at 9:00 a.m.1

という事で行けるところまで参ります。

・当たり前だが冒頭にいきなり金融問題が出る

のっけから『Recent Developments in the Banking Sector』というお題で話がおっぱじまる訳ですが、逆にそういう地合いで良く利上げぶっこんだなと思ってしまう(ラガルドはんの露払いがあったにせよ)とは改めて思ってしまいますね。

『Before turning to other agenda items, the Chair asked the Vice Chair for Supervision to provide an update on recent developments in the banking sector.』

パウエルさんとバーさん(婆さんではない)は足元の銀行セクターについてのアップデートを行った。

『The Vice Chair for Supervision described the developments, including those at Silicon Valley Bank, Signature Bank, and Credit Suisse. He also described actions taken by the Federal Reserve and other regulatory agencies in response.』

状況報告をしました、はわかったが。

『He noted that the U.S. banking system is sound and resilient.』

お、おぅ・・・・・って感じですが、「我らステイツの銀行システムは健全で頑健である(キリッ)」だそうです。( ー`дー´)キリッなのか棒読みなのかはよくわからんけどw

『He also noted that he will be leading a review of the supervision and regulation of Silicon Valley Bank, and that the Federal Reserve System will apply what is learned from the review to strengthen its supervisory and regulatory practices as appropriate.』

ということで、結局の所「SVBとシグネチャーバンクはまあアレはアレよ」という話で納めているのですけれども、そもそも論としてわざわざこういうのを冒頭に持ってきている、というのはアレはアレですで済まないサムシング(別にどこかが連鎖するとかそういう話ではなくて、米国の銀行システムがこの時点で「健全で頑健であるからヘーキヘーキ」と言ってるのはまあ( ー`дー´)キリッではなくて棒読みなんだろうなーと思われる何か)があるからこそこういう部分をドドーンとぶっこんだんでしょ、とは思いましたが、この議事要旨自体(個人の感想です、の世界になるのですが)FOMC後の金融経済情勢を見て、ここに掲載する内容に関して(議論してない事とかウソとかは書けないけど)書き方の濃淡を調整するようにしているんじゃなかろうか、というのは何回も見てみたので、あくまでも個人の感想ですではあるのですが、この短い部分で締めたことは、この後に出て来る地区連銀総裁たちの議論パートでの話とは別に、FED公式としては「このように( ー`дー´)キリッと締まる話でございますよ」というアッピールをしているのかな、とか色々と考えてしまいました。

たぶんここの記述がクソ長くなると「ああ結構あばばばばーだったのね」という解釈になると思うので、ああでもないこうでもないが長ければ素直に「ああこりゃ金融システム警戒だよね」となるのですが、短くしているのは、ガチで大丈夫なのか、それとも警戒モードであることを表に出したくないから( ー`дー´)キリッとやっているのか、というのは判断がムツカシイ所であります。


・そんな次第なのでスタッフによります金融市場動向の部分も続けて鑑賞する

この次の小見出しが『Developments in Financial Markets and Open Market Operations』で、その次の小見出しは『Staff Review of the Economic Situation』、『Staff Review of the Financial Situation』となってて次の小見出しが『Staff Economic Outlook』という並びになります(そこから先はパーティシパントの議論部分)。

この小見出しの並びを1月と比較しますと1月は、
Developments in Financial Markets and Open Market Operations
Staff Review of the Economic Situation
Staff Review of the Financial Situation
Staff Economic Outlook
という並びになっていますので、一応そこから先は平常運転の体になっています(小見出しだけ見ると)。

金融市場動向に関するスタッフ報告とか普段は大体すっ飛ばしますが、ここでどういう熱量で報告があったかの一旦くらいは見れると思ったのでこの小見出しをちょっと読んでみますね。

『The manager turned first to a review of U.S. financial market developments over the intermeeting period.』

ほいな。

『Early in the period, firmer-than-expected data and policy communications pushed interest rates higher and equity prices lower. Developments in the banking sector later in the period were met with sharp reductions in Treasury yields, particularly at shorter tenors. Treasury market liquidity was poor and implied volatility was high, but the market remained functional amid substantial trading activity. Higher Treasury market volatility contributed to wider spreads for household and business borrowing.』

SVB問題など以降に関する市場の状況は「sharp reductions in Treasury yields, particularly at shorter tenors.」が発生して、「 Treasury market liquidity was poor and implied volatility was high, 」という状況になったものの、「the market remained functional amid substantial trading activity」でありまっせ、という説明になっています。

でもってここでですね、実際問題としては当の然なのだがどこかの極東の中銀と比較してちゃんと報告されているな、というのが上記引用部分の最終文にある訳で、「Higher Treasury market volatility contributed to wider spreads for household and business borrowing.」という認識を示しています。ハチャメチャ買入によって市場の流動性を下げてなんかあった時のボラをクッソ上げてしまったどこかの中央銀行は爪の垢を煎じて飲めというところではありまする。

続いて次のパラグラフですが、

『Financial conditions tightened considerably over the intermeeting period as a whole.』

ファイナンシャルコンディションは「tightened considerably」と来ました。そりゃそうだ。

『Market contacts observed that the recent developments in the banking system will likely result in a pullback in bank lending, which would not be reflected in most common financial conditions indexes. Following the banking-sector developments, equity prices for large U.S. banks underperformed the broad market; equity prices for U.S. regional banks generally underperformed by relatively more.』

てな訳ですが、ここで市場ヒアリングから得た話、として今の金融あばばばばーの状況が今後銀行セクターによる貸出態度の悪化として表れて、一般的なファイナンシャルコンディションを示すインデックスの悪化という形で表れるのはこれからですよ、というのを掲載しているものあたしゃほほうと思った次第でして、この部分の記述をみておりますと、とりあえず金融機関の資金繰り問題などに関する急性疾患の手当ては出来たとしても、後になって実体経済に影響与えるんじゃなかろうか、というような問題意識をもっています、というFEDからのメッセージを示しているのではないかとか思ってしまいました。

なお、このコーナーまだ先はあるのですが途中を飛ばして、この先に「今次オペレーション動向について」の報告がありますので、3月のアイヤーの時に何起きてたかの備忘録をみておくバイということでパラグラフ2つ飛ばします。


・この間のオペレーション推移について

『The manager turned next to a discussion of operations and money markets.』

ということで。

『Federal funds volumes fell sharply for a few days late in the period as Federal Home Loan Banks (FHLBs) sought to maintain liquidity in order to meet increased demand for advances by member banks.』

FF市場においてはFHLBが系統機関(という訳使ってエエノカね)の流動性確保需要に対応するために資金放出を数日程度控えた影響で市場の取引高が急減しました。

『Money market rates remained broadly stable, and secured and unsecured money market rates, including the effective fed funds rate, traded well within the target range.』

とは言え短期金融市場の金利は概ね安定していて、無担保およびレポ金利、実効FF金利もターゲットレンジの中で十分に取引されていました。

『Use of U.S. dollar liquidity swap lines with foreign central banks had been minimal, indicating that market participants did not face significant difficulties in obtaining dollar funding from private sources.』

ドル資金スワップの利用は限定的なものに留まりました、背景として米国金融市場においてはドル資金流動性の調達に対して特に大きな問題が生じなかったことを意味します。

『Borrowing from the new Bank Term Funding Program had been small relative to discount window borrowing, which had increased to record levels.』

銀行特別お助け1年物資金貸出プログラムに関しては、通常のディスカウントウィンドウ方式の連銀貸出と比べて取扱高は大きくありませんでしたが、そもそも連銀貸出の方が過去のレコードハイレベルでしたわ。

『Use of the overnight reverse repurchase agreement (ON RRP) facility fell, especially for money market mutual funds (MMFs), as the supply of short-term securities at attractive rates increased.』

ONRRPに関しては短期市場金利が上昇したことで、MMFの運用資金がONRRPよりも高金利かつ優良銘柄の短期証券への投資に向かったのでONRRPの残高が減りましたとのことですね。

・・・・・・これ余談になりますけど、日銀がアホほど国債買っている現状を鑑みますと、今はマイナス金利だから全然気にしなくて良いのですけど、真面目に金利操作するという段に日本がなった場合、そもそも安全資産が不足した状態のままで超過準備抱えてスタートするので、当座預金付利だけでは市場全体の流動性を不胎化できない可能性があって、短国を大増発するか、RRPみたいな日銀当座預金の外側にある短期運用資金の吸収手段を作った方がエエンデネエノ的な話が起きるかもしれないな、とは思ったのですが、と言って短期金融市場の資金運用が何でもかんでもONRRPに回ってしまうのもあまり健康的な姿とは言い難い気がするし、中々難しい話だなと思うのでありました。まあどのくらい先の話になるか知らんけど。

『By unanimous vote, the Committee ratified the Desk's domestic transactions over the intermeeting period. There were no intervention operations in foreign currencies for the System's account during the intermeeting period.』

まあここ否認されることは無いのですけど、FEDの場合は必ず「前回FOMC以降の公開市場操作に対する批准」を行うのでありました。

・労働市場はクソ強くインフレは思ったよりもサガランチ会長

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』ですが、いつもの逆順読みではなくて労働市場、物価、金融情勢あばばばばーの件に関するパラグラフの所から参ります、というかその先の政策の話の部分まで届かないうちに時間が切れそうになっている役立たずおじさんのワイ。

『Participants agreed that the labor market remained very tight.』

からおっぱじまるパラから参ります。

『Job gains had picked up to a robust pace in January and February, and the unemployment rate remained low. Participants noted some signs of improvement in the imbalances between demand and supply in the labor market, including further declines in the quits rate as well as an increase in the overall labor force participation rate and the return of the prime-age participation rate to pre-pandemic levels.』

労働市場はクソ強いけど 労働需給の(タイト状態からの)「some signs of improvement」がありまっせとの指摘ですが、このインプルーブメントは労働参加が拡大した、という方(需要側ではなくて供給側)の改善ですね。

『Furthermore, participants observed that wage growth appeared to be slowing gradually amid this apparent easing in labor demand and increase in labor supply.』

この間、お賃金についても「appeared to be slowing gradually」とのお話なのですが、ここでいつものハウエバーが登場します。

『However, participants assessed that labor demand continued to substantially exceed labor supply, and several participants pointed out that wage growth was still well above the rates that would be consistent over the longer run with the 2 percent inflation objective, given current estimates of trend productivity growth.』

改善の兆候があると言っても労働市場タイト杉内俊哉ということのようですね。

『Participants expected that, under appropriate monetary policy, supply and demand conditions in the labor market will come into better balance over time, easing upward pressures on wages and prices.』

ということですので、適切な金融政策が必要ですな、ということで労働市場の話の所からは(順当ではありますが)今の引き締め状態ダイジダイジネーという話になる。

じゃあインフレはというのが次のパラ。

『With inflation still well above the Committee's longer-run goal of 2 percent, participants agreed that inflation was unacceptably high.』

そら(25bp引き上げてるんだから)そう(インフレの高さは怪しからんという現状認識)よ。

『Participants commented that recent inflation data indicated slower-than-expected progress on disinflation.』

最近の指標をみると物価が期待していたほどにはサガランチ会長であると仰せです。

『In particular, they noted that revisions to the price data had indicated less disinflation at the end of last year than had been previously reported and that inflation was still quite elevated. Participants noted that, on a 12-month basis, core goods price inflation declined as supply chains continued to improve, but the pace of the decline had slowed, highlighting the still uncertain nature of the disinflationary process.』

財価格下がっている、という話ではあるのですが、ここでの指摘を見ますと「思ったほど財価格のインフレ鎮静化が進んでいない」という話になっておりまして、最近のFED要人の説明って基本的に「コアサービスセクターの価格がやたら強いままで、背景に賃金が強いままなのがある」って方面の説明で来ている感じがあるのですが(個人の感想です)、こちらでは財価格に関しても期待ほどの調整が来ないって言っているのはちょっと「ほー」とおもいました。

『Participants expected that housing services inflation would likely begin to slow in coming months, reflecting continued smaller increases, or potentially declines, in rents on new leases. Regarding prices for core services excluding housing, participants agreed that there was little evidence pointing to disinflation in this component. Participants generally judged that some more easing in labor market tightness and slowing in nominal wage growth would be necessary for sustained disinflation.』

こちらはサービス価格、住宅に関しては住宅価格の落ち着きで落ち着くでしょう、コアサービスに関しては直近の要人時発言などであった通りのさっき申し上げた話です。

『Additionally, participants observed that indicators of short-term inflation expectations from surveys of households and businesses had come down further, while longer-term inflation expectations remained well anchored.』

インフレ期待はアンカーされている(ホンマカイナとは思うけどどういうことでここは一貫している)。

『Participants also discussed the potential effect on inflation of the developments in the banking sector.』

ここで金融機関アイヤー問題のインフレ期待への影響というお題が出るものの、

『They noted that a tightening of credit conditions was likely to weigh on aggregate demand, which in turn could help reduce inflationary pressures. However, participants observed that the size of such an effect was highly uncertain.』

クレジットコンディションの悪化が起きて需要に影響するとなんか有るかも知れませんね、よー知らんけど、という感じのフワッとした話になっていますね。


・アウトルックに対するリスクという文脈での金融機関アイヤーの扱い

次のパラは先行きリスクの話でまずは金融機関問題の影響について。

『Participants generally observed that the recent developments in the banking sector had further increased the already-high level of uncertainty associated with their outlooks for economic activity, the labor market, and inflation.』

・・・・・・なのですが、ここでまたほほーと思ったのは、この問題に関しての第一声が「もともと高かった不確実性が上がったよね」という話になっていて、この影響が需要をさげるだのインフレをさげるだのの話になる一歩手前のレベルの評価になっていた点ですな。まあ確かに問題が波及しないで金融規制も明日から急に強化される話でも無かったら、そらまあ対して影響もなく終わる、という話もなくはないのですけど。

『Participants saw risks to economic activity as weighted to the downside.』

そらそうよ。

『As a source of downside risk to activity, they noted the possibility that banks would reduce the supply of credit by more than expected, which could restrain economic activity significantly.

ということで、銀行アイヤーの話の不確実性、という話があるのですが・・・・・・

『Participants mentioned potential intensification of Russia's war against Ukraine as an additional source of downside risk to the economic outlook.』

あらまロシアのウクライナ侵攻ネタになってしまった。

『Participants generally saw risks to inflation as weighted to the upside, though they also recognized some downside risks to inflation.』

挙句に経済見落としのリスクの話は終わってて物価の話になっとる。

『As a source of upside risk to inflation, participants cited the possibility of more-persistent-than-anticipated price pressures, due to, for example, surprisingly resilient labor demand. As a source of downside risk to inflation, participants noted that if banks reduce the supply of credit by more than expected, the likely restraint on economic activity and hiring could put additional downward pressure on inflation.』

ということで、金融セクターの問題は「不確実性がさらに高まりますなー」という感じのあっさり味対応になっておりますが、この先に金融政策運営に関する議論の話があって、ではそこではという扱いなのか、というのをやらんと今日の話が締まらない気がするのですが、アタクシにも生業というものがあるために時間の制約というものがございまして(←謎のエラソウな言い方ですいませんただの開き直りです)お時間が足りなくなってしまいましたので、誠に申し訳ございませんがここで今朝は勘弁してつかあさい。









2023/04/12

お題「正副総裁就任記者会見ネタでござる(その1)」

月曜日ですね、アタクシ自宅のPC起動して日銀ようつべチャンネルに繋いだらちょうど「幹事社からの質問は2問です」で、ああ最初のご挨拶聞き逃したかと思ったら何のことは無いちょうどそこからだったんですね、というのを会見文字起こしを見て知りました(^^)。

ということで本日は就任記者会見から少々。(さて過去ログ整理はGWに頑張る(と言ってもあれ根気が中々続かないんですよぬー)


〇全編を通じてなのですがやはり「どうとでも解釈できる大変に良く練り込まれた回答」だと思いました

って昨日も書きましたが、結局アタクシ最初から最後までガッツリ通しで聞いていまして(なお皿を流しにもっていくなどの作業で根詰めて聞いてない時間isある)まあ思いましたけど、全編に渡ってこれはまあどっちとも取れるわな、と思うのでありました、ってのを引用の前に先にアタクシの個人の感想ですになるけど、読み筋としてこんな感じというのにお付き合いくださいませ。

・他の手段は兎も角YCCの長期金利ガチガチターゲットだけは奇襲攻撃の騙し討ちでぶっこむしかないので・・・・・・

まあアレです。この会見、字面を普通に読みますと確かに緩和継続長期化っぽい話の方が多いので、ごくごく素直に読むと「YCC政策を含む今の枠組みが直ぐに変更されることは無い」って読んでしまうのまあ普通の反応かも知れないなあとは思いましたが・・・・・・・

そもそもですね、YCCの長期ターゲット(しかもガチガチ指値オペ付だし何なら発行量以上に日銀が買ってしまうというよく考えたら日銀によるショートスクイーズ機能までおまけについている)って、解除されるという思惑が一定レベルを上回った場合、怒涛の売り圧力にさらされてしまう訳でして、それが起きてたのが年末のレンジ拡大から3月の日銀による強引なショート締め上げ作戦+欧米金融機関アイヤーの神風以前の段階だった訳ですよね。

これ即ち「今の緩和政策の枠組みの中で、他の手段は別なのですが、長期金利ガチガチターゲット政策だけは仄めかしを入れて事前織り込ませをさせることが不可能」ということを意味する訳でして、つまりは仮に4月会合でYCCの長期金利ターゲットに何らかの手を加える(ワイは次の手段は素直に撤廃だと思ってますが、何らかの形で形骸化(いきなり2年まで短期化するとか)に打って出る可能性もありそうですよね)場合、例えば月曜の会見でそんなものを仄めかそうものならそらもうエライ勢いで10年叩き料理の図になってしまう訳でして、オペが持たなくなるし、国債買入が馬鹿みたいに増えてしまう訳ですよね。


という背景は皆様におかれましても先刻ご承知のお話なんですけど、これ即ち「YCCの長期ターゲットに関しては、奇襲攻撃で解除(または形骸化)するしかないので、重要なのは解除した後の背景説明をきちんと行う事」となるんですよね。まあどこからどう見てもこんなの黒ちゃんの残した大地雷でだからこそ1月に解除しておけば良かったのにとは思いますが時既にお寿司なのでそれは言うまい。

でまあ仄めかしが無いにしましても、どっかの黒ちゃんみたいに国会で「マイナス金利とかそんなもんやる訳ないじゃないですかヤダー」と言ったその2週間後にマイナス金利導入。という訳にも行かないので、要はYCCの長期ターゲットを外した時に使えそうなロジック(意地悪く言えば「言い訳、あるいは屁理屈」)をどの程度ちりばめてらっしゃいますか、というのを見ていくわけですよ。

・・・・・・となりますと、当然ながら読み方にバイアスがかかっている(あまり極端なバイアスは入れないようにしますけど)という自覚を持ちながら以下書くことになりますので、あらかじめその点はご理解いただきまして以下の鑑賞会にお付き合いいただければ幸いです。



・内田副総裁が一発目に「緩和を継続していく」と言っているのだが

最初のご挨拶で「これから金融政策で何をやっていく」という部分の説明は三者三様でしたが、内田さんの部分ってこれ知人と答え合わせ(?)をしたら成程綺麗に解釈が分かれるんだなと思いました。

植田さんと氷見野さんはその部分そんなに踏み込んでいなくて、

『(植田さん)こうした経験を生かして、物価の安定の達成というミッションの総仕上げに向けて、理論・実務の両面で、尽力してまいりたいと思っております。』(1ページ目を一部引用)

『(氷見野さん)金融政策につきましては、賃金上昇を伴うかたちで物価安定の目標を持続的・安定的に実現すること、金融緩和が政府や経済界の取り組みとも相まって、経済の好循環につながっていくこと、そうしたことを目指したいと考えております』(1ページ目のケツから2ページ目の頭を一部引用)

と、まあ毒にも薬にもならない言い方をしておりましたが、内田さんのはちょっと踏み込んでいまして、

『(内田さん)今、日本銀行が直面している課題は、いかに工夫を凝らして、効果的に金融緩和を継続していくかということだと思います。』(2ページ目を一部引用)、

>いかに工夫を凝らして、効果的に金融緩和を継続していくか
>いかに工夫を凝らして、効果的に金融緩和を継続していくか
>いかに工夫を凝らして、効果的に金融緩和を継続していくか

ここの文言ですけれども、「金融緩和を継続していく」に力点を置いて読みますと「ああなるほどYCCの枠組みを継続して行こうということですね」と解釈できる、というかまあ素直に読みますとそういう読み方になるのですが、ここで「いかに工夫を凝らして、効果的に」の方に力点を置いて読みますと、「金融緩和政策は継続するけれども工夫の結果YCCとは別物の枠組みを行うことだってアリだし、工夫を凝らすってのはそういうことじゃん」と読めるわけですよこれがまた。

でまあアタクシなんぞはそもそもが正常化バイアス掛かっているから、この内田さんの言葉(この後の文言も含めて)を聞いた時に「おーおーこれは10年ターゲット解除の時の理屈を用意してきたなー」という解釈をするという次第で、いやこの部分の解釈は人様と答え合わせしたら綺麗に両端の答えになりますが、よく考えてみればこれまさにどっちとも取れる(YCC枠組み変更、はややヒネクレた解釈だけどさ)言い方だと思いました。完全にこれは第一印象次第ですよね。

ただまあ何ですな、アタクシがこのYCC枠組み手直しバイアスで解釈したのは内田さんの上記の部分の次にもありまして、上記の部分に続きまして、

『(内田さん、直上引用部分の続き)技術的な部分については、これまで日本銀行が蓄積してきた経験と知識によって十分対応できると考えています。』

というのは国会でも説明していまして、この次の部分も国会で説明していた話ですけど、

『より大事なことは、正確な情勢判断を行い、それに応じて慎重にタイミングを選びながら、的確な政策を行っていくことだと思っています。』

はい。つまりこれは情勢判断の結果、的確な政策がYCCの枠組みの一部手直しであったとしても情勢判断を行い10年金利ターゲットをガチガチに運営するのは最適解ではない、となったら外すのもやぶさかではない、とまあそういう風に解釈した訳ですなアタシャ。

でもってこの部分も「慎重にタイミングを選びながら」という所に注目して読めば「タイミングを慎重に選ぶんだからそう簡単にYCCの解除は無いじゃん」と読むことも勿論できるので、そういう点でも内田さんのこの説明、無茶苦茶繊細な作りになっていて、慎重に云々を入れることによって解除バイアスっぽく見せないようにしているし、逆の言い方をすれば、慎重なスタンスであることを示しながらも、情勢の変化によって柔軟な対応を出来るヘッジを残している、という風に反対方向でも読めるというかなりの芸術作品に仕上がっております(個人の感想です)。

『今後、経済・物価・金融面の状況変化に応じて最もふさわしい政策を考え、実施できるよう、スタッフの力を結集し、他のボードメンバーの方々と議論を尽くしてまいりたいというふうに思います。』

>経済・物価・金融面の状況変化に応じて最もふさわしい政策を考え
>経済・物価・金融面の状況変化に応じて最もふさわしい政策を考え
>経済・物価・金融面の状況変化に応じて最もふさわしい政策を考え

経済物価金融情勢の状況が変化したら最適政策は変わる、という説明でして、黒ちゃん時代のように何が何でも10年0%が正しい、というのとは違くね???とまあ思った次第な訳です。


ところで話が若干斜め上に逝ってしまいますが、ここで問題なのはさっきありました「正確な情勢判断を行い」の所でありまして、昨年は経済物価見通し(特に物価見通し)をどれだけ外したんだってくらいのテイタラクが起きていた訳でして、性格の悪いアタクシなんぞは「黒ちゃんの政策志向に忖度したらこんな見通しになってしまいました」って悪態ついてますが、そもそも論として日銀スタッフによる経済物価(特に物価)見通しがガチで過小評価にも程がある、という能力不足要因による物価見通しだったりすると、これはまたヤバイヨヤバイヨという話になる訳でして、なにせ(あとでネタにしますけど)植田さん「物価目標達成の判断においてはフォワードルッキングで政策対応を行う」って話をしている訳でして、そもそものスタッフ物価見通しがガチのポンコツだったらフォワードルッキングでやったら爆発炎上大惨事になってしまうかもしれませんので、植田日銀においては調査統計局ダイジダイジネーと思うのでありました。



・植田総裁のこの部分をどう解釈するのかというのも味わいがある

物価目標達成のために何が大事なのか?という質問で3ページの真ん中からになります。

『(植田総裁)それでは私から、まず、物価安定実現のための総仕上げを行うために大事なことは何かというご質問ですが、現在の金融緩和が非常に強力なものであるということは間違いないと思いますので、経済・物価・金融情勢を丹念に、そして的確に把握し、これまでもそうだったと思いますが、今後一段と努力して把握し、基調的な物価の動き、インフレ率とわれわれよく言ったりしますが、これが本当に安定的・持続的に 2%に達する情勢かどうかというのを見極めて、適切なタイミングで正常化に行くのであれば行かないといけないですし、それはなかなか難しいということであれば、副作用に配慮しつつ、より持続的な金融緩和の枠組みが何かということを探っていく、その辺の判断をきちんと行うということだと考えております。』(3ページより、回答の途中までを引用)

この後は点検に関する質問の回答になりますのでこのあとネタにします。

でですね、この部分なんですけど、後の方で(さっきも言ったように)フォワードルッキングで正常化をする、という話もしていましたので、

>これが本当に安定的・持続的に 2%に達する情勢かどうかというのを見極めて、適切なタイミングで正常化に行くのであれば行かないといけないですし、

ということなので、物価が堅調に推移すると見込まれる中であれば、の話ですけど、その時はいつまでもマイナス金利を引っ張るというのは無いですし、何なら更に利上げだってしてておかしくない訳ですね。

そして、

>それはなかなか難しいということであれば、副作用に配慮しつつ、より持続的な金融緩和の枠組みが何かということを探っていく、

と言ってるのですから、緩和政策を継続するにしても、あちこちに過大な負荷の掛かる今の長期金利ターゲットはやはり見直して然るべき、という話もしている。

・・・・・・とまあアタクシなんぞは解釈して(バイアスを自称30%くらいは入れているのはご勘弁ください^^)この部分を呼んだわけですが、まあここについては後半の部分を「YCCの枠組みを雨宮さん方式で温泉旅館増築で凌いでいきましょう」という解釈をするのも当然ながら可能だと思いますので、そう読み取る場合は「当面の政策維持バイアスのある説明だし、現状欧米金融機関アイヤー問題がいつ再点火するか分からん情勢で解除に向けて動くとかあり得んじゃろ」という解釈をするというのもこれまた自然な話だと思います。

つまり非常に巧みに出来た両にらみ文言、ということが言えるかと思います、まさに諸葛孔明の罠。


・「点検」は政策決定と切り離した別世界で実施

先ほど引用した植田総裁の回答ですが、続きは「ところで点検みたいな事をしないの」って内容でしたので、それを受けて説明されておられます。

『(植田さん)それも含めまして、点検のような作業についてどういうふうに考えているのかというのが後半のご質問だったと思いますけれども、点検は、ある意味では毎回の決定会合で、決定会合と決定会合の間で行ったうえで決定会合での判断が下されるということでありますけれども、』

そらそうよ。

『もう少し力の入った、あるいは長い目でみた点検を行うべきかどうかという論点はあるかと思います。』

この時点で植田さん「点検」をやる気満々なのは分かった。そらまあそうでしょうね。

『そういうことが必要という場合には、あるいは行うという場合には、少し長い目でみて、私も先ほど申し上げましたように、強力な緩和、ある意味では 20 何年続いておりますので、それ全体を総合的に評価して、今後どういうふうに歩むべきかというような観点からの点検や検証があってもいいのかなとは思っておりますが、この点は政策委員会で議論して決めていきたいというふうに考えております。』

とありまして、ここで「20何年の点検」というのをぶっこんできているのがチャーミングでありまして、これは明らかに「点検指示」などが「政策変更の予告ホームラン」にならないようにするというのを意識していますよね。

まあ何ですな、そもそも最近の「点検」って明らかに「政策変更(あるいは維持)するための小道具」扱いになっていて、まあそういうのはフリップ芸とか小芝居ダイスキーおじさんであらされる所の某前副総裁(ポンポコリンじゃない方)の芸風だったのですが、植田さんしれっと「もう少し力の入った、あるいは長い目でみた点検」と仰っていまして、政策の小道具には使わん、というスタンスを明確にしている訳でございますな。

ということで、点検云々に関しては(まだメディアがどうとるか次第の面はあるけど)普通に債券村の村民の皆さんが月曜の植田さんの話を聞いたら「ああ点検は政策変更に直結する話じゃなくなったよね」と解釈すると思うのですがどうでしょうかね。


・YCCは適切とのことだがあくまでも「現状」なんだよなー

何ちゅうかさ、そもそも論としてYCCの長期コントロールって事前仄めかしが不可能な枠組みなんだから、こういう質問をすること自体がコミュニケーションの阻害要因になるんで、こういう露骨な質問するなよこのスットコドッコイ、と思いながら苦々しく聞いておったのですが。

4ページ。これは質問から引用。

『(問)異次元緩和を支えている長短金利操作、YCCについて伺います。国会でもご答弁されていますけれども、その効能、必要性、副作用について、どのようにお考えでしょうか。もう一点ですね、市場ではこのYCCについて、早い段階で修正することもあり得るのではといった観測もあります。どのような状況になれば修正といったことが選択肢に上がるのか、お話できる範囲でこのお考えについて伺えますでしょうか。お三方に伺います。』

だからさあ、YCCの長期ターゲットってのは変更について事前仄めかしが出来ない仕組み(ターゲット金利下げる方なら出来るけど)なんだから、こういう質問をするのがそもそも愚問にも程があってそういわれたらこう回答するしかないでしょ。

『(植田総裁)まず私から、長短金利操作についてということだと思いますが、市場機能への影響という意味では、日本銀行は昨年来、国債の補完供給の制度を柔軟に運用しているということ、あるいは昨年 12 月に長期金利の変動幅を拡大したような措置、更にここのところ一か月くらいですかね、先ほどお話に出ましたような金融システムに対するストレスの問題の結果もあって、海外金利が低下したという中で、イールドカーブの形状は総じて前よりもスムーズになってきているという認識でおります。こうしたこれまでの措置の効果とか、市場の動向については、今後も見極めていく必要があるというふうに考えています。ただそのうえでイールドカーブ・コントロールは、市場機能に配慮しつつ、現状では経済にとって最も適切と考えられるイールドカーブの形成を実現するための仕組みです。現状の経済・物価・金融情勢にかんがみると、現行のYCCを継続するということが適当であるというふうに考えております。』

そら適当じゃないんだったら今にでも臨時会合やって解除しないと行けませんし、建付け上YCCの解除は奇襲攻撃で対処せざるを得ないんだからこれ以外の回答はできないんですよね。でもこう言ってしまうとこの「現状」というののタイムホライズンってどうなんでしょうかね、とか考える中においてYCC継続キタコレという解釈になってしまうわな、と思うのでありました。

でもってここで面白かったのが氷見野さんで、

『(氷見野副総裁)私からは特に付け加える点はございません。』

これは斬新。まあこれを何と解釈するのかってのはこれまた色々な読み方が出来ると思うのですが、YCC修正バイアス掛かった脳味噌で解釈する場合、「植田総裁に上乗せして現状維持発言を加えることによって市場に現状維持バイアスを強く与える結果になると今後早め(4月か6月か7月かは別にしても)にYCC解除するときにミスコミュニケーションとか言われることになってよくないから完全スルーパスでお茶を濁した」と解釈する訳ですよ。

ええまあバイアスあるから解釈が強引と言われたらそうなんですけどね!!!!!!!

でもって内田さんなのですが、この内田さんの説明も中々味わいがあって、

『(内田副総裁)16 年にYCCを導入したんですけれども、そのときの議論も思い出して頂くと、YCCは金融緩和によって、経済・物価を刺激する効果と、一方で金融仲介機能への影響、この両者のバランスを取って最も適切な金利水準にしていく、そこにコントロールしていくという趣旨で導入したものです。』

はい、つまり「経済物価情勢に応じた適正な規模(緩和のやり過ぎも不足も良くない)の金融緩和を行います」という「均衡イールドカーブに対して相応程度にイールドカーブが下方シフトした状態が最適な緩和規模」という当初の触れ込みを説明しているわけでして、これは裏を返せば経済物価情勢が好転すれば均衡イールドカーブは概念上上方にシフトするのですから、適正な緩和水準に見合う長期金利ターゲットの水準も上方シフトする可能性がありますよ、って話でもありますし、そもそもYCCおっぱじめた時はそうだった筈(それが壊れたのはトランプショックからの海外金利上昇によって国内金利がちょっと上がったらクソビビリ(しかもその前に中期輪番を何を考えたのかスキップして市場を壊すという意味不明プレイをしていた)によって10年金利のインマネ指値オペを打ったのがガチガチターゲットの始まり)なのでして、この内田さんの理屈を敷衍すると、2021年3月に点検の結果適正と認められた「0%プラマイ0.25%」は2021年3月からここまでの経済物価情勢の変化によって見直されて然るべき、というお洒落な話になるんですよね。

ということでまあアタクシはこっちの方を注目しましたんですが、当然ですが正常化バイアスがかかって解釈しております、というのは何度でも繰り返し申し上げておきますのでよろしゅうに。

『このことが良好な金融環境を通じて、経済・物価を押し上げる効果があったというふうに思っています。一方でデメリットとしては当然ですが、コントロールをしているわけですから、そのことに伴って市場機能が低下をするということがあるわけであり、これが特に目立ったのが昨年後半からであったということだろうというふうに思います。特に副作用につきましては、SLF等々これまで何度か対応してきましたし、[昨年]12 月に対応したところですので、今はその状況を見極めていくというフェーズにあるというふうに思っておりますし、YCCという仕組みは今申し上げたような趣旨で導入したものですので、総裁からも申し上げた通り、現状においてはこの枠組みの中で緩和を続けていくということが適切なのではないかというふうに思っています。』

まあ皆さん当然と思っているからあまりこの点話題にならんのかもしれませんが、実は全編を通じて「必要なら躊躇なく追加緩和」の緩和バイアスが3名から一度も発現されなかったのでありまして、あとは「市場機能」に関しても実はこの質疑の部分しかまとまった言及が無くて、まあここでは露骨にきかれているから仕方ないので回答してるんですけど、他の所で言及しに行かない、というのはこれまたYCC修正仄めかしにならないような配慮、とアタクシなんぞは読んでしまっている訳です、まあそれで正解なのかは知らんけど。


・「現状」は「当面」ではない

この人の次の質問への答えがこれまた味わいがある。5ページ目。

『(問)植田新総裁にお尋ねします。まず確認なんですけれども、総裁、先ほど前任の黒田さんの大規模金融緩和を強力とおっしゃっていましたけれども、当面の間は現行の大規模緩和路線を維持されるというお考えなんでしょうか、というのをまず確認させてください。(後半割愛)』

『(植田総裁)前半のところについては、前体制からの大規模緩和を現状では継続するというお答えになるかと思います。(後半割愛)』

これ記者の皆さまがこの後の深追いしなかったのは賢明と思います。深追いすると話がややこしくなりそうでございますが、上記のように「現状」は「当面」ではないんですよ。まあさっきの愚問もこれによって浄化されて結果オーライ感がありますね。

・・・・ええ勿論正常化バイアス付きの読みになっているのは認めますがね(^^)。


・正常化はフォワードルッキングで行う、というのをわざわざ自分から言及しているのは多分最重要ポイント

などとネタにしておりましたら気が付けばまだ16ページ中5ページじゃんという事にあばばばばーとなっておる訳ですが、例によって時間がなくなってきましたので(昨晩やっとけ説については申し訳ないと回答します、笑)、大変重要な受け答えの部分を引用しましょう。13ページ目なのですが、

『(植田総裁)これは、ここまでもう既に今日議論になりましたYCCの市場機能に与えるマイナスの影響、あるいはマイナス金利政策の金融機関収益に与える影響等を、全て今後も注視していくということかなと思います。』

と、ここは副作用論に関する説明ですが、この次に重要な話がある。

『もう一つ、ここまでそれほど今日出てこなかったところと致しましては、急に持続的・安定的に 2%になるということに気づいて、急に政策を正常化するということになると、非常に大きな調整をしないといけないですし、それに応じて市場・経済も大きな調整を迫られるということがあるかと思いますので、なるべくそういうことがないように、前もって的確な判断ができるようにしていかないといけないということかなと思います。』

ということで、フォワードルッキングで正常化を行う(2%安定達成を見極めてからマイナス金利をノコノコ解除していると政策がビハインド・ザ・カーブになって欧米のテイタラクと同じように金融システムへの影響などが起きてもおかしくないのだから当たり前だのくらっかー)という話をしているのが重要なのですけれども、更にもっと重要なのは

>もう一つ、ここまでそれほど今日出てこなかったところと致しましては

ということで、この論点を植田総裁が「聞かれもしないのに自分から説明している」ということでありまして、アタクシも正座しながら聞いてた、というのはオーバーで見は入れながら聞いてましたが、文字起こしを改めて見ますとこの重要ポイントを「わざわざ自分から質問されないのに説明していた」というのを再認識しまして(何となく質問の文脈から踏み込んでるな感はあったけどそこまで鮮明に聞いてなかったなあと今更ながらに反省していますけど)、これは大変な事ですよ皆さん、と正常化バイアス入りなので本当に大変な事なのかどうかは皆様のご解釈にお任せしますが、まあアタクシは大事だよと思いました、と申し上げておきます。


会見の残りの部分に関しては明日続きを行う所存であります。







2023/04/11

お題「植田日銀始動で長期輪番増額ねえ/新総裁副総裁会見第一印象/黒ちゃん退任会見」

えーっとすいません、昨日は老眼のせいで自分の手控えに5−10とあったのを何を間違えたか3−5と読んでしまって輪番の話の所でおまぬけをしてしまいました誠に申し訳ございません。

〇別に10年の指値が当たるような雰囲気でもないのに輪番増額すんなよ・・・・・・・

昨日の輪番オファー
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of230410.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,250 2023年4月11日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 6,750 2023年4月11日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,500 2023年4月11日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2023年4月11日

1−3:前回4/5が4250で同額
5−10:前回3/29が5750で1000増額して6750
10−25:前回4/5が2500に増額したがその額を維持して2500
25−40:前回3/20が1000に増額したがその額を維持して1000

ということで、なんと5-10の輪番を増額してたんですが、先週金曜の引けって10年370回で0.455%だし、ここもと指値オペは全く当たってないし、何でこんな所で10年の輪番を増額するのかさっぱり分からんというオペをぶっこんできました。

いやまあ確かにそら少しは先物下がってスタートしてましたけど、別に50銭や60銭下がるような板でもなくて、何にビビって10年の輪番を増額したのか甚だ意味不明、と申しますかそれ以前の問題として、意味の分からん水準(これがまあ先週末の時点で10年カレントが0.50%水準で指値も入ってしまいましたなあ状態なら長期輪番増額しそうだな、って思われるけど)で輪番の増額とかされますと、益々「オペが不確実性の源泉」になってしまう訳でございまして、いやマジでお前ら何やってるんだよと小一時間問い詰めたい訳です。大体からして昨日は植田総裁以下の就任会見待ちでそんなに盛大に動けねえだろと。

・・・・・・・ということで、まあこれはマーケットの状況に応じて長期輪番を増額したというよりは、何か他の事を勘ぐらざるを得なくなるわけです。即ち、(1)植田総裁就任会見を前に10年0.50%の指値オペがヒットすると会見で話題にされて面倒なことになるから長期輪番を増額してヒットさせないようにしました、という茶坊主忖度オペ、(2)実は4月会合でYCCの手直しをする気満々なので、その前に指値ヒットしまくり金利上がりまくりになると、折角の手直しがやりにくくなるから金利を上げないようにしたい、という煙幕カモフラージュオペ、というようなヘナチョコな理由があるんじゃなかろうか、とまあ考える訳ですよねこれがまた。

実は単に(3)ビビりなので10年0.50%行かないように打っただけ、という単なるビビりの可能性も(12月にレンジ拡大した後にパニックになったのかお前というようなオペの乱打をしていたのを見ると可能性は否定できない)あって、単なるビビりでこの増額やってると、いよいよ本格的にYCCが自分の重みで自爆コースになってしまって、日銀が自爆してもワイの知った事ではないのですが、満を持して登場した植田さんを事務方のビビりで潰したくはないですし、だいたいからして日銀が自爆するとこっちは返り血を大量に浴びて感染症などの恐れもありますので勘弁して頂きたい所であります。

いやーマジでさっぱり分からん何で昨日長期輪番増額したの???????????

という雑談メモでした。


〇植田さん、氷見野さん、内田さん就任会見

キッシーにあってくるとかいうクソイベントのせいで会見開始が1915になってしまいましたので、謹んで日銀ユーチューブチャンネルで見てたんですが、視聴者数が2000人そこそこしか居なくて我号泣の巻でした。まあベンダー提供の方から見てる人の方が多いと思うのですが、日銀公式が2000では悲しいのでいやなんでもありません。

今だとトップページの新着に
『 4/10(月) 広報活動 総裁・副総裁就任記者会見(4月10日)動画の配信』
ってのがあって、そこのリンクを踏みに行くとようつべの日銀ユーチューブチャンネル公式にリダイレクトされますので、まあそこを見てたわけなんですが(なお幹事社からの最初の質問スタートの所から見ていた)。

いずれにせよ今日文字起こしが出て来ると思いますので、それを読むとまた印象が違う可能性があるんですよね、というのは黒ちゃんの会見で痛感した(ちなみにパウエルやラガルドの会見は見た通りの印象の文字列が並ぶイメージ)のでして、日本語って結構コミュニケーションとしてはムツカシイ言葉だなと思う訳です。つまりですね、黒ちゃんの会見だと、よほど身を入れて聞いてないとどうしても「記者は何で同じことばかり聞くんだよ」という印象を受けると思うのですが、文字起こしをみると質問に対して黒ちゃんがまるっきり真面目に答えていないというのが良く分かって、これだと質疑応答が平行線になるわな、というのが分かると思うのよね、この点に関しては植田さん凄くこう「如何にして正確性を損ねずに噛み砕いて説明するか」というのを念頭に入れて(入れていても難しくなる場合もあるが)説明しようという姿勢だったし、内容もそんな感じでしたな、と思いますのでそこは期待通り。

でもって肝心のいまのグロテスク昭和温泉旅館と成り下がっておられます黒田観光ホテル別館の指値パラダイス劇場付き、という政策をどうするのか問題に関しては、今回の説明は「聞く人がどういう聞き方をしているかによって解釈が正反対になってもおかしくない」という割とすさまじい超玉虫色会見だったと思うのですよ。

と申しますのは、政策の見直し云々について、現時点では今の政策は適切、と言っているし、工夫を凝らして金融緩和を以下に続けるかが大事(というのは内田副総裁の発現でしたが)と言ってるし、欧米金融機関のアレもある中でYCCの見直しはそう直ぐには始まらずゆっくりとしたプロセスになるんじゃネーノ、という見方をしようと思えば出来ますし、一方で例えば内田さん、そもそものYCCが「適切な緩和規模を維持するため(やり過ぎても足りなくても良くない)という考えで始めている」と言っているので、これを持ち出すとYCCのスタートの時の話に戻って、そうなると出口が見えてきたときにはYCCの誘導目標金利に変化があってもおかしくない、という話は当然のように導かれるので、経済物価情勢勘案したらYCCの今のガチガチの運用は柔軟化されるんじゃないの、と思う事も可能な訳です。

そのほかにも植田総裁が「正常化などの際に急激な変化をするのダメ!ゼッタイ!!!」という話をしているので、そうなるとなんか正常化を急がない、って話に取れるんですが、一方で「正常化の際に急激な変化をしないためにもフォワードルッキングで対処」という話もしてて、フォワードルッキングで漸進的に対処するなら第一歩は早くなるんじゃないの、という解釈も可能、というように、見事なまでに両にらみの説明を行っていて、ここから先の政策に関して何一つコミットしない(のが当然なのでそれは別に悪い事とは思わないです為念)で、どっちでも取れる説明しかしてないから、このさき4月の会合で極端に言えばYCCの更なる強化も可能だし、YCCの撤廃(あるいはそのようなもの)も可能だし、様子見も可能、というような感じでの説明だったと思うのですが、まあワイは当然ながらポジショントーク込みで「よしこれなら4月の解除も可能な理屈をちりばめているな」と読んでしまう訳ですが、まあどうなるかは神と総裁副総裁のお三方の味噌汁という所でございましょうな。

どうせ今日から植田さんサミットに行くのでこの間は日銀政策ネタで何か進展がある訳でもないし、臨時会合の実施の可能性もこれでゼロ(28日にMPMあるのに帰国後臨時MPMやるのは福井俊彦クラスのインチキおじさんじゃないと出来ませんですわ)になりましたので、月末をお楽しみにってことでしょうね。


・・・・・・と考えますとこれまた昨日の長期輪番増額の意味は何なんでしょうね、という話になりますが今朝はもう一つのオモシロ素材を見ながら笑って進ぜよう企画である。


〇黒ちゃん最後の会見で何か物価目標達成しているかのような話を連発してるのは何なんですか一体全体

昨日はわざわざPCの前で正座して晩飯食いながら就任記者会見を聞いていましたが、こちらはそもそも聞く耳を持たなかったのでヘッドラインだけ見てたわけですが。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230410a.pdf
黒田総裁退任記者会見
――2023年4月7日(金)午後3時半から約60分

・日銀の知的面における退廃についての指摘がありましたが回答はさもありなんという物体でした

2ページ(PDFの枚数も同じ)になります。

『(問)(前半割愛)二つ目は、シンクタンクとしての日銀の機能についてです。先ほどもそうでしたが、総裁は、この 10 年物価目標達成のためにご尽力されてきたと思います。この会見の場でも、度々目標達成のために金融緩和の意義や、維持を強調する発言を繰り返されてきました。ただそうした姿勢が、日銀内で緩和に慎重だったり、反対したりする意見を出しにくい環境を作ったのではないかという指摘もあります。この点について総裁の見解をお聞かせください。』

これって婉曲的な言い方をしているけど、要は日銀の出してくる特に政策絡みの出し物がしょうもない忖度提灯物件ばっかりになり下がってしまったことや、金懇や総裁講演の内容のレベルがドンドン落ちていったこと、そして金融政策決定会合でまともない議論ができていないこと(最近のうんことしか言いようがない議事要旨を見ていると、まだ木内ジンバブエ罵倒合戦という大喜利状態の方がマシだったんんじゃなかろうかというレベルまで愚劣なものになっておりますからねえ)などについて質問しておりますが、

『(答)まず二番目の点で申しますと、私が何か言ったことによっていろんな意見が出にくくなったということは全くありませんでした。』

凄い面の皮だと思います。そしていつもの「全くありませんでした」という人の指摘に聞く耳持たず、という黒ちゃんを象徴するフレーズが会見2発目の質疑応答の冒頭で飛び出すわけですよ。

普通さあ、こういう時って組織のトップとしては「色々な意見を取り上げていこうと努力しておりまして、様々な意見を参考にしていった積りですが」みたいな言い方をポーズでもしろよと思うのですが、

『様々な意見が出て、様々な議論を行い、そして金融政策決定会合において、そのときそのときの経済・物価・金融情勢に合わせて最適の政策を選択するということは、日本銀行のスタッフ全体がサポートしてくれるし、』

という説明してるんですが、これよく見ると「スタッフ全体がサポートしてくれる」という言い方をしているのって、結局の所「俺様の考え通りにスタッフ全体が動いてる」ってのを問わず語りに表明している訳でして、黒田さんってまあ会見でお分かりのように鋼のディベート力はあるので、それが権力をバックにぶっこんでくるとそら皆さん委縮して総裁に忖度しかしなくなるわな、と思うのでありました(個人の感想です)。

『そのもとでこそ、こういった金融政策が行われ、先ほど申し上げたように経済・物価の押し上げ効果を着実に発揮し、経済全体を大きく改善したということに変わりはないと思います。(後半割愛)』

改善した理由が本当に金融政策なのか、ということはお手盛りじゃなくてちゃんと分析して欲しいし、大きく改善したのに何で10年たっても2%達成してないのかの意味が解りませんね。


・色々とツッコミネタがあって笑える質疑応答

4ページに飛びます。

『(問)総裁、本当にどうもお疲れ様でした。質問は二点あります。この 10 年間の金融緩和で、お話ありましたように、雇用が伸びて株高にもつながっています。ただ一方では、物価 2%目標については、任期中の達成というのは道半ばになってしまい、潜在成長率も伸び悩んでいるといった状況があります。一点目は、なぜ物価安定目標が達成できず、更に成長が伸び悩んだのか、実際何が一番大きい要因だったとお考えでしょうか。(後半割愛)』

『(答)まず第一点につきましては、先ほど来申し上げているように、15 年続きのデフレの中で、いわゆる物価・賃金が上がらないという慣行、考え方、ノルムというものが根強くあったということが非常に大きかったというふうに考えておりますが、』

だからこそ「まずは1%を目指し、それが達成できたら2%に向けて進んでいく」という最初の白川さんのドクトリンがあったんですし、これを言い訳にしちゃうと「じゃあ何で2年で達成できると大見得を切ったのか」という話になるし、「2年で達成できないとなったら、そもそもが2年で達成するつもりで実施した政策(マイナス金利までの政策)はスクラッチ(YCCをアドオンするのではなくてスクラッチで導入する)で見直さないといけなかったのではないか」、という話になるんですけどね。

『今やそれも変容しつつあるということで、2%の物価安定目標を安定的・持続的に達成できる時期が近づいているというふうに思っております。』

おいwwwwwwwwwwお前何を言ってるんだよだったらYCCの手直ししないとダメだろwwwwwwwww

2%達成の時期が近づいて来ているんだったらこんな極端な緩和を続けてたら政策がビハインドして安定2%どころか上抜けするんだろ何やってるんだよしかも欧米がそれで今困ってる訳で、物価は止まらんわ、急に引き締めたらALMが信じ堅い下手くそな中堅銀行が飛んで金融機関が大騒ぎになるわっての起きてるんだが、日本でも急速な引き締めになるだろ政策がビハインドしたらwwwwwwww

と思いました。そして成長力が上がらなかったことについては最強の検証不能言い訳で強弁するのでした。

『潜在成長率については、ご承知のように、長期の潜在成長率というものは、基本的には人口の増加率と技術進歩率というもので普通は説明されるわけですね。』

で???

『人口の増加率はずっとマイナスで、これは続いていまして、潜在成長率が一時上がったものの、その後若干下がって 15年のデフレ期とそれほど変わってないってことは事実なんですけども、』

この次に最強の強弁が来る。

『これは現在のような、この過去 10 年のような金融緩和を続けなければ、総括的検証その他でも示されているように、デフレが続いて、実際の成長率も更に低下し、そのもとで投資も十分行われず、当然技術進歩ももっと低かったということで、現在のような潜在成長率よりもっと下がっていたと思われますので、現在の金融政策が潜在成長率を上げられなかったということはなくて、むしろもっと下がるものが、より下がらなくて済んだということであると。』


ここで日銀謹製の
https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/index.htm
需給ギャップと潜在成長率

を見てみましょう。

年度半期      潜在成長率
FY, semi-annual  Potential growth rate
           前年比、%
            y/y % chg.
2008.2 : 2008.4Q-2009.1Q  0.15
2009.1 : 2009.2Q-2009.3Q  -0.09
2009.2 : 2009.4Q-2010.1Q  -0.33
2010.1 : 2010.2Q-2010.3Q  -0.27
2010.2 : 2010.4Q-2011.1Q  0.01
2011.1 : 2011.2Q-2011.3Q  0.02
2011.2 : 2011.4Q-2012.1Q  0.25
2012.1 : 2012.2Q-2012.3Q  0.72
2012.2 : 2012.4Q-2013.1Q  0.85
2013.1 : 2013.2Q-2013.3Q  0.90
2013.2 : 2013.4Q-2014.1Q  0.99
2014.1 : 2014.2Q-2014.3Q  1.04
2014.2 : 2014.4Q-2015.1Q  0.95
2015.1 : 2015.2Q-2015.3Q  0.89
2015.2 : 2015.4Q-2016.1Q  0.84
2016.1 : 2016.2Q-2016.3Q  0.70
2016.2 : 2016.4Q-2017.1Q  0.59
2017.1 : 2017.2Q-2017.3Q  0.52
2017.2 : 2017.4Q-2018.1Q  0.37
2018.1 : 2018.2Q-2018.3Q  0.24
2018.2 : 2018.4Q-2019.1Q  0.18
2019.1 : 2019.2Q-2019.3Q  0.12
2019.2 : 2019.4Q-2020.1Q  0.10
2020.1 : 2020.2Q-2020.3Q  0.10
2020.2 : 2020.4Q-2021.1Q  0.03
2021.1 : 2021.2Q-2021.3Q  0.02
2021.2 : 2021.4Q-2022.1Q  0.11
2022.1 : 2022.2Q-2022.3Q  0.18
2022.2 : 2022.4Q      0.27

えーっと、金融政策の経済に対する影響のラグが半年から1年としますと、まさしく2014年度上半期(2014/04-2014/09)前後をピークにして黒田さんの御代では潜在成長率下がっていますし、その前の白川さんの時はリーマンショック(と東日本大震災)でコケた分を立て直して推移していた、という事になっておりまして、これで「私の政策なかりせばもっと酷かった」ってのは幾らなんでも話が強引すぎやしませんかねえ。

まあそもそも論として金融政策でトレンドグロースを高めよう(単に成長を促進する話じゃなくて潜在成長率の話だよ)というのが土台無理筋の話であって、これは結局の所アベノミクスとか言ってた3本の柱のうち最も肝心な日本経済の成長力強化というお仕事に関して、そういう仕事をすると当然ながらコンフリクトは起きる(スクラップあんどビルドなんだから当たり前だし、それこそ昭和脳のアタクシとかだとエネルギー革命の時の大争議とかそういうのはうっすらと知っているのでそれはもうガチでやろうとすると大変な事になる訳ですが)のですが、安倍ちゃんって本質はただの八方美人でチヤホヤされたいチキンなお坊ちゃんだったからそういうのは絶対にやろうとしないで折角金融緩和で稼いだ時間を無駄にした結果がこのトレンドグロースのテイタラクな訳ですよね。

・・・・・・という話には黒ちゃんも当然の如く触れないので、

『ただ、いずれにせよ、長期的な潜在成長率というのは、短期的な金融政策による需要の支えというものとはちょっと違った次元で、さっき申し上げたような、長期的に設備投資とか技術投資がどのくらい行われるかということに関係し、それに金融政策も影響ありますけれども、直接的な影響というものはむしろそのときそのときの成長率には影響しますけど、中長期的な潜在成長率というのは、もうちょっと次元の違う話だと思っています。ただ、それにも影響があったことは事実で、むしろプラスの影響があったというふうにみております。(後半割愛)』

と言ってますが、実はこの質問後半がこの「政府はちゃんと成長戦略やってたか」という問いでして・・・・・・


・政府の無策を糾弾しないで金融緩和にドンドンのめり込んで行くのはダメでしょ

さっきの後半ですけどね。

『(さっきの質問の続き)二点目に関しては、政府との共同声明で、政府による役割も書かれていてですね、成長に向けた取り組みをする必要があったわけですが、この政府による取り組みが果たして十分だったかどうか、この点についてどうお考えでしょうか。』

上記の黒ちゃんの理屈からしたら当然「不足でした」と言わないにしても「十分では無かったかもしれません」とでも言えばよいのに、安倍ちゃんを否定することになるもんだから言わないのがもうねという所でして、

『(さっきの回答の続き)それから共同声明につきましては、常に申し上げている通り、あくまでも政府と日本銀行が共同声明に沿ってそれぞれの分担をすると。日本銀行は、金融政策の緩和を通じて 2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現すると。政府は、財政政策については機動的な財政運営を行い、中長期的に財政の持続可能性を高める努力をすると。そしてもう一つの政府の役割としては、様々な規制緩和その他を通じて、いわゆる成長戦略というのでしょうか、潜在成長率を上げていく努力をするということだったと思います。』

『いずれも政府も日本銀行もそれぞれ必要な政策は実施してきたわけですし、そのもとで経済・物価は着実に改善して、デフレでない状況を実現できたという意味では、共同声明の考え方は適切であったと思いますけれども、将来のことは私から申し上げるのは適切ではないと思います。』

必要な政策を実施してるのに何で潜在成長率が下がり続けたんだよ・・・・・・・・・・・・・・・


・期待に働らきかけるというのはインフレ期待に働きかけることであって市場の金利期待の話しじゃなかったはずですが

この質疑応答は参りましたね。6ページから7ページに掛けて。

『(問)10 年間お疲れ様でした。本当にありがとうございました。総裁がご就任されて最初の頃の記者会見の要旨等を読んでいますと、期待に働きかけるというのが異次元緩和当初の大きな政策の柱だったと思いますが、一方で総裁は期待に働きかけるっていうのは別に非伝統的政策だろうと伝統的政策だろうと、政策の有効な手段の一つという発言されていました。非伝統的金融政策を 10 年間やられて、その期待への働きかけということを考えた場合、伝統的な政策のもとでやるときと、非伝統的な政策でやるもとで、一体どういう難しさとか違いがあるのか、その辺りを是非お願いします。』

まさかの斜め上の回答が来るのですが・・・・・・・・・・・

『(答)まず量的・質的金融緩和は、ご承知のように量・質の両面で思い切った金融緩和を行うことで名目金利を相当下げるということがまず非常に重要な要素としてあって、他方で 2%の物価安定目標に対して明確なコミットメントをすることによって予想物価上昇率を引き上げるということで、両者相まって、実質金利が大幅に下がるということを狙いとしていたわけであります。』

期待に働きかけるのが一丁目一番地だった筈ですが。

『そういった意味では、名目金利の引き下げについては思った通りの効果がありましたし、予想物価上昇率についてもずっとゼロ近傍であったものがポジティブなレンジにはなっていましたので、特に最近は予想物価上昇率がかなり上がってきていますので、実質金利が更に下がっているということで、期待に働きかける云々というのが、意味がなかったとか効果がなかったとは言わないのですけども、一番大きな要素はやはり、量的・質的金融緩和で名目金利を思い切って下げるということが非常に重要な要素だったと思います。』

ここから珍理論が始まる。

『ちなみに、伝統的金融政策というのは、政策金利、典型的には公定歩合、そして政府短期証券とか手形の割引とかをやるということですので、要するに直接的にはもう翌日物(注)、超短期の金利にしか直接的な影響はないのです。』

で、

『しかし、その金利が経済活動に直接大きな影響を与えるということはまずないです。』

は??(つーかそれならマイナス金利解除しろよボケナス)

『実際に経済活動に影響を与えるのは、短期、中期あるいは長期の金利が与えるので、そのためには、中央銀行は要するにインフレが収まるまで例えば金利であれば上げるよということをコミットすることによって、期待に働きかけて、』

コミットメントはフォワードガイダンスっていう非伝統的手段とかいうのはさて置きまして、

『そしてご承知のように金利の[期間]構造というものは、中長期の金利というのは短期の金利の期待で決まってくるわけですから、当然、中長期の金利を下げる、あるいはインフレを防止するために上げるというためには、公定歩合を上げて、短期証券のオペをやったからそれでいいっていうのではなくて、そういうことを引き続きやるということで市場の期待に働きかけて、市場が短期でも中期でも長期でも、そういう金利をインフレ対策のために上げていく、逆であれば下げていくということによって、経済とか物価に影響を与えるってことですから、』

からの、

『ある意味で言うと、伝統的金融政策の方がより期待に働きかける要素が大きくて、逆に言うと、ある意味で難しいわけです。』

そもそも「期待に働きかける」の意味を完全に取り違えて説明していまして、期待に働きかけるというのは将来の金利予想に働きかけてるのではなくて、インフレ期待に直接働きかける、という意味でお前ら最初にぶっこんできた訳で、完全にこの「期待に働きかける」の意味を市場金利に置き換えて説明している珍理論になっているんですけど・・・・・・・・・・・

『非伝統的[金融政策]、これは米国も日本も欧州もそうですけども、長期国債、長期金利に直接影響を与えるというかたちでやりますので、もちろん期待に働きかけるという意味は先ほど申し上げた予想物価上昇率に働きかけることによって実質金利を下げるという意味がありますので、重要ではあるのですけども、金利自身は直接、長期金利もコントロールするというのが非伝統的[金融政策]。というのは、短期金利もこれ以上下げられないという状況で非伝統的金融政策に移っているわけですから、だからその意味では伝統的なのは期待に働きかける必要はなくて、非伝統的[金融政策]が期待に働きかけなければいけないということではむしろなくて、伝統的金融政策の方がより期待に依存するところは大きかったということだと。それでうまくできたのは、やはりまさに伝統、何百年の伝統があって、経験値があって、こういうふうに公定歩合を動かし、こういうふうにオペをやれば、中長期の金利も上がってインフレを退治できる、あるいは下がって不況を退治できるという経験値があったのです。そういう意味では、純粋に期待に依存する要素というのはむしろ非伝統的金融政策の方が少なくて、伝統的金融政策の方が大きかった。ただ、その経験値を生かして、かなりうまくやってこられたのです。ただ非伝統的[金融政策]は、まさにこれ以上政策金利が下げられないという状況に初めて直面した状況で、初めて非伝統的金融政策というのをやった、経験値がないところで、理論的に考えてやったというところが違うのかなと思います。』

とまあ延々と説明しているのですが、この人わざと誤魔化しているんだと思うのですけど、当初言ってた「インフレ期待に直接働きかけて期待インフレ率を引き上げる」ことに失敗した件について説明をもとめられているのに、中長期金利の形成に関する説明で完全に誤魔化して、その結果「非伝統的政策は長期金利を直接操作しに行こうとするので伝統的政策の方が期待に働きかける政策である」という珍理論を繰り出す格好になっているということですな。いやーこの強弁力は凄いというか最後まで黒田節だわ。


・節子、それは目標達成っていうんや

さて最後の締めは前に戻って5ページから6ページの答弁。

『(問)物価の件で一点お伺いしたいんですけども、以前から 23 年度の半ばにかけて 2%を下回るという見方をずっとされていると思うんですけど、足元言われました、物価が上がって、それが賃金に影響して、今度、賃金が物価に影響するセカンドラウンド・エフェクトも期待できるかと思うんですけど、また、サービス価格も最近結構上がっているようなんですけど、想定したように物価が下がっていかないリスクを現状ではどのようにご覧になっているかお伺いしたいんです。』

下がって行かないリスク、ってのも良く考えたら面白いイヤミですがw

『(答)この点は、足元の様々なデータをみましても、考え方は変わっておりません。一時4.2%に達した物価上昇率も今、3.1[%]か何かになっていますし、更に下がっていくと思います。これは、そもそも 3〜4%の物価上昇率になったのは、大半の原因が、輸入物価の上昇が価格転嫁で消費者物価の上昇になってきたわけですが、輸入物価の上昇率は、もうどんどん落ちていまして、その面からいって消費者物価の上昇率を引き下げる方向に向かうと。更に、政府が導入した大規模なエネルギー補助金というものが、消費者物価の引き下げに効いてくるということで、今年度、2023 年度の半ば頃までには 2%を割るという見込み、これは今も変わっておりません。』

はいそうですか。

『その後、後半で若干リバウンドするのではないかとみているのは、この賃金の上昇率が、ベアだけでも 2%台、そして定昇も入れると 3%台という 30 年ぶりの上昇になっていますので、これは当然、賃金が上がったもののコスト転嫁というかたちで物価にも影響してまいりますので、今年度の後半からまたリバウンドしていくと。』

ほうほう。

『そしてその後については、先ほど申し上げたように 2024 年度の賃金上昇というものが、今のところは比較的順調に上昇するというふうにみていますけど、それはまだ来年の話ですので、来年の状況をみてみないとわからないと思いますけれども。』

ほうほうほう。

『そういう意味では、いったん 2%を割るということは、ほぼ確実だと思いますけれども、それが、恒常的に 2%を割るような状況にまた戻ってしまうというものではないというふうに考えております。』

>恒常的に 2%を割るような状況にまた戻ってしまうというものではないというふうに考えております
>恒常的に 2%を割るような状況にまた戻ってしまうというものではないというふうに考えております
>恒常的に 2%を割るような状況にまた戻ってしまうというものではないというふうに考えております

・・・・・・・節子、それは物価安定目標達成って言うんやwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww





2023/04/10

お題「植田体制発足ですなという雑談/メスター総裁の講演をもうちょっと細かくよんでみる(金曜の続き)」

ほうほう雇用統計。
https://jp.reuters.com/article/us-dbt-idJPKBN2W40QR
2023年4月8日4:06 午前
米債券市場で利回り上昇、堅調な米雇用統計で追加利上げ観測

『[ニューヨーク 7日 ロイター] - 米金融・債券市場では、米債利回りが上昇した。堅調な米雇用統計を受け、米連邦準備理事会(FRB)が5月に追加利上げするとの見方が強まった。米労働省が7日発表した3月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は23万6000人増と市場予想を下回ったものの、堅調なペースを維持した。失業率は2月の3.6%から3.5%に低下し、労働市場の逼迫を示した。』(上記URL先より、以下同様)

まあ「データディペンデント」って言ってるからデータ出るたびにホイホイとブレてしまうのはしゃーないんですけど、本命の雇用と価格以外(ISMとか)でも一々ホイホイとブレてしまうのがメリケンクオリティ。

『2年物利回りは17.2ベーシスポイント(bp)上昇の3.993%。』

しかし2年債17甘って毎度毎度凄いですな、という小学生並みの感想しかでてこない米国債券市場オソロシス。


〇さあ植田総裁一発目の輪番オペですよ(たぶんなにもない)

えーっと、本日は輪番の日な訳ですが、黒ちゃん交代して忖度しないと行けない人もいなくなった、というよりもそもそも量的緩和政策の効果に懐疑的(念のため申し上げますがだから急速に量を引いて無問題と植田さんが思っているとは考えにくくて、そこは慎重にやってみて多少減らしても平気かどうかを見てから徐々にご判断、って話になると思うのでそんなに期待はしていませんけど)な総裁様がお越しになった訳で、指値だの臨時輪番だの、はては5年の長期共担だの12月以降無茶苦茶やりやがりましたオペレーションですが、黒ちゃんの時と同じ調子でやっていると新総裁様の邪魔をする結果になるのは火を見るより明らか。

・・・・・・・・ということで実は今日の輪番で何やって来るのか、というのは割と楽しみだったりする訳でございまして、今日は長期以外の全年限の輪番予定日になっておりまして、しかも足元では8日に30年の入札前に10−25輪番を増やすという暴挙をやりやがって以降(入札が強かったですね要因は勿論あるしそっちの方が効いてるにしても結果的には火をつけてしまった格好ですからぬー)超長期に盛大にブルフラットが発生しておりまして、えーっと超長期の輪番このままで良いんでしたっけ状態になっているのが中々味わいがあります。

しかし、まあ世の中アタクシの考えるような事は皆様考える訳でございまして、今日輪番を前回実施対比削減すると、早速「植田総裁就任で輪番を減らした」というネタになる(だからこそ5日に超長期の輪番増額したのは3手先の読みすら出来ないプレイになるのですけど)のがこれまた火を見るより明らかだったりするので、まあ何か今回は変な事言われたくないから前回対比同額でオペ打ってくると思う(フラグ建築)のですがどうでしょうかね。

まあ何ですな、そもそも論としてYCCの中でもどうせ物価目標何ぞ達成しねえわ、と思われているうちは輪番減らしても無問題、という世界が続いたのですが、現実問題として物価目標達成が視野に入ってきて、それに対抗して市場への介入を強めてしまっている現在の時点では、毎回の輪番オペの運営やら、臨時輪番の有無、(最近やってないけど)他年限指値オペの水準や、長期共担オペの実施有無などが思いっきり「政策意図」になってしまっており、これ即ち金融市場局が大日本帝国昭和陸軍状態になっているとも言えますし、単なる政策委員会の職務放棄ともいえるのですが、とにかく市場にバシバシ介入してしまうと只のオペの上げ下げ(正直超長期の馬鹿フラットを見てると普通に超長期の輪番減らしてくれとしか思えんが)が無駄に意味のあることになってしまっている、というのが現状なのでして、経済物価情勢として2%達成に向けた動きが現実感を持って言われる状況の中でのYCCの長期コントロールの維持はやればやるほど政策委員会の空洞化に繋がる話(まあ金融市場局の方がポンコツ政策委員会よりも334倍はマシなので政策委員会が空洞化した方がエエンデネエノという説もあるがそれはひとまず措く)なので、まあ何はともあれ色々なものの阻害要因でしかないYCCの長期コントロールはちょっと外す方向でお願いしたいものですな。


〇植田さん就任記者会見

ちっ
https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

植田さんの着任が9日なので着任が正式に確定する前に「就任記者会見」の予定を出せないという仕切りなのはまあ分かるんだが、そこは就任確定したらの停止条件付で良いから予定表だしてくれないかなー(だってメディアの方にはこういう予定ですが、ってブリーフィングしてるんでしょ)と思うのでありました。

まあ就任会見でどういう話をするのか分かりませんが、黒田後半から晩年バージョンのように質問しても全然違う回答ばかりをするから、質問している側が同じ質問ばっかりしているように見える、というお互いに不幸(まあ黒田一人が幸福になるんだが)な会見にならないで済む事は期待したいですが、初手からYCCの見直しとか共同声明の見直し(YCCはすると思うけど共同声明は別に見直す必要ないでしょ正直言って)に関して質問されてどう回答するのかが見もの。

植田総裁もご案内の通りで、YCCの長期ターゲットの変更というのは、本来は(RBAの反省文にあったように)物価目標達成に向けた時間軸が長くなくて良くなった時点、即ち物価目標達成が本格的に意識される前かつ超強力緩和の超を外しても良さそうな程度に経済物価情勢が好転した時点(という判断がくそ難しい訳ですが)で外しておかないと行けなかったのですね。

然るに、日銀の場合は黒田の意地というのも思いっきりあるのですが、そもそも論としてYCCをぶち込むときに「均衡イールドカーブ(ちなみに金曜にネタにした通りで実は2021年の点検の時も均衡イールドカーブの話を持ち出していた)」の理屈をベースにして「緩和はやり過ぎても良くないので、2%物価目標の早期達成のために、経済物価情勢に対して適正な規模の緩和を実施する」と言ってたのですけれども、その一方でYCC政策について「経済物価情勢が改善すると緩和度合いが強まる」という説明もしてて、端から話が矛盾してたので、適切なタイミング(本来なら去年の4月会合、遅くても去年の7月会合百歩譲って10月会合)での調整をしそこなって今の惨状に至るという状態になっておられる次第。

ってことくらいは植田総裁のことだから先刻ご承知の介だと思われますので、どの程度すっとぼけて来るかによって逆に4月解除に対する真剣度合いが測られるんじゃなかろうか、とまあそのように思っておるわけですな(個人の感想です)。何せYCC解除って事前に織り込ませにいったら(RBAのようにMPM待たずして調節の方がバンザイしてしまえば別ですが)皆さんが一旦は指値のあるうちに売りに行ってしまうの確定なので、絶対にそれはできないんですから、今日うっかり解除を示唆なんて死んでも出来ないし、だいたいからして4月に匂わせて6月解除なってやってたらオペレーションが持たないか市場が崩壊するかのどっちかということで(ワンチャンあるとすれば欧米がガチ金融危機になってそれどころではない状態になる時ですが)まあ今日はとにかくその辺に関しては「今後行われる毎回の金融政策決定会合の中で議論されるものであって、この場でとやかく先の事について説明はできませんが、現状では現在決定されている政策を継続して運営することが適切です」とか何とか言って「いまいまの時点で別に変更しませんが何か???(4月に変更しないとは言ってない)」以外回答のしようが無いかと思います。


まあそんな訳ですので今日の会見って内容自体は真面目に見ててもそんなに楽しい話は飛んでこないと思うのですが、黒田のクソ会見対比で「聞かれたことにちゃんと正面から回答する(正面から聞かれてもそれは建付け上政策委員会で議論するものなので回答できません、というのも含めて)」という姿を見せて頂きたい訳で、不誠実極まりない回答を繰り返して記者会見を酷いものにしてしまった黒田の負の遺産を今回是非一掃して欲しいものです。


〇黒ちゃん退任会見は今日文字起こしがでるんでしょうね

なお金曜日には黒田退任会見とかいう物体があったようなのですが、当然の如くアタクシはあの不誠実極まりない態度で聞かれたことに全然回答しないでヘラヘラしている声とツラなんぞ金輪際見たくないし、二度と世の中に出て来るな以外の感想は無いし、別にねぎらう気も一切なくて清々したわ以外の感想は起きないので、ヘッドラインをちらちらと眺めるにとどまったのですが、なんか最後まで珍問答を繰り広げていたみたいなので、もしかしたら明日はお笑いスペクタクルが作れるのじゃないかと今から会見文字起こしを楽しみにしております。

ヘッドラインメモっていただけだから正確なのかどうか責任は一切持てないのですが、ヘッドラインの中でアタクシが一番呆れたのは「2%一旦割るがその後2%割りっぱなしという訳ではない」という物価見通しの説明部分でして、これ実際にどういう言い方しているのかはよくわからないのですが、「2%を一旦割るけど2%割りっぱなしではない」というのだったらそれはどこからどう見ても2%物価目標達成っていうんじゃないでしょうかこの爺さん遂に退任で(自粛)てしまったのかと思ってしまいましたが、なんかその他次から次へと珍問答が展開されていたみたいで、この前のMPMでの記者会見で謎の提灯ヨイショモードで「お疲れさまでした、10年間のご感想は」の連発だったのは何だったのかという中々味わいのある会見になったようで何よりです。


〇メスターとかブラードとかタカコースの人がどの程度強硬姿勢かをみておく企画(の続きだがブラードの時間が無くなってしまうま)

・クリーブランド連銀メスター総裁の続き

金曜日にメスターさんの講演(短い)を寝起きでインスタント読みしましたが、雇用統計も出たことだし、物価とファイナンシャルスタビリティ以外の所もよんでみましょうず。

https://www.clevelandfed.org/collections/speeches/2023/sp-20230404-diligent-judicious-return-price-stability
A Diligent and Judicious Return to Price Stability
Loretta J. Mester
President and Chief Executive Officer
04.04.2023 6:45 PM EDT In Person Money Marketeers of New York University, Inc., New York, NY

基本的に今って「トレンドグロースよりも下の方がインフレ鈍化に寄与する」という話をしているので、成長の話の所ってまあ端折っても良かろうということで、問題の労働市場と物価の話を読んでみる。

『Labor Markets』から参ります。

『Employment growth has slowed over the past year, firms report that it is somewhat easier to find workers now, and the rate at which people are quitting their jobs is moving down, which is usually is a sign of a moderating labor market.』

昨年の労働市場における指標は通常であれば今後の労働市場の需給緩和を示すものなのですが・・・・・・

『Nonetheless, overall labor market conditions remain strong, with demand for workers outpacing supply. Payroll job gains averaged over 400 thousand per month in January and February, a pickup from the average monthly gain in the fourth quarter of last year. The unemployment rate remains a very low 3.6 percent, near where it has been for much of the past year. The number of job openings has varied from month to month. They are down from their level a year ago, but the ratio of openings per unemployed worker has been running between 1.7 to 1.9 over the six months that ended in February, compared with 1.2 in the six months before the pandemic started.』

労働市場の状況は相変わらず強いままで推移しております。

『Recent gains in prime-age labor force participation may be helping to ease the imbalance between labor demand and supply. But this imbalance has put upward pressure on wages, and because labor costs constitute a significant share of a business’s expenses, especially in the service sector, this imbalance has also contributed to high inflation.』

最近プレライムエイジワーカーの労働参加率が上がってきてて労働市場の需給緩和が期待されますけど、とにかく賃金の上昇圧力が凄くてアカンタレだし、それが企業のコスト増からの物価上昇圧力になっておる。

『Since workers’ wage gains generally have not kept up with inflation, many workers are not better off in real terms. By some measures, wage pressures are beginning to ease, but wages are still growing at an annual rate of about 4-1/2 to 5 percent. This is well above the level consistent with 2 percent inflation given current estimates of trend productivity growth.』

今の賃金上昇ペースは2%インフレ目標に対して高杉晋作と仰せです。

『Indeed, for wage growth at this pace to be consistent with price stability, trend productivity growth would need to be 2-1/2 to 3 percent, instead of the current estimates of 1 to 1-1/2 percent.』

そもそも今の賃金上昇ペースが物価安定と整合的になるにはトレンドの生産性増加が2.5-3%無いとダメで、今の推計値は1-1.5%ですよ(だから賃金高すぎ)。

『 We have not seen any evidence that trend productivity growth is rising; in fact, productivity growth has declined over the past year. So, workers are still falling behind in their purchasing power and will continue to do so until we get the economy on a sustained path back to price stability.』

別に直近で生産性が向上している訳でもないし、ということで、メスター総裁のポイントはやはり賃金の動向ということになっておりますので、要はそこらへん見ておくのが一番タカ派の皆様の動向が読めるってことでしょうな。


次が物価で『Inflation』の小見出し。

『Several factors contributed to the sharp rise in inflation that began in the spring of 2021 in the U.S. These factors include the pandemic and how households, businesses, and monetary and fiscal policymakers responded to it, and Russia’s war against Ukraine, which led to sharp increases in food and commodity prices. Imbalances arose between strong demand and constrained supply, and these led to significant upward pressures on prices in an environment of accommodative monetary and fiscal policy.』

この辺は物価上昇の様々なファクターはこれでしたね、という振り返り。

『Inflation remains too high and too stubborn. The February PCE inflation data showed some improvement, but recall that, in January, the data were a bit stronger than analysts expected. So while the level of inflation is lower than it was last summer, in February, the year-over-year measures of both total PCE inflation and core PCE inflation were in the 4-1/2 to 5 percent range, which is well above our 2 percent goal. The story is the same with other measures of underlying inflation, such as the median and trimmed-mean PCE inflation rates, which exclude components with the most extreme movements each month. Measured year-over-year, both of these measures are between 4-1/2 and 6 percent and have shown little to no improvement since their peaks last August.1』

前おきクッソ長げえよと思いながら読んでますが、これは直近でも物価が高いわアカンですわという話ね。

『The disaggregated data show that the inflation stubbornness is due mainly to the prices of services.』

次に来てやっとネタが出てきたが、インフレがやたら粘着的なのは主にサービス価格のせいだ、という認識を示しているので、まあ財価格よりもサービス価格の推移を米国に関しては見て桶、という話でしょうね。

『Goods inflation has been moving down over time, although it remains considerably above where it was before the pandemic. Shelter price inflation has not improved but the slowdown in housing activity and the deceleration in rents in new leases will eventually show up in the inflation statistics.』

『Inflation in core services excluding shelter has not improved either. It tends to be sticky, is correlated with wage inflation, and is a much larger share of the overall index than goods or housing, since consumers spend a larger share of their income on these services.』

財とかシェルターのインフレは落ち着いてきたんだがサービスが兎に角下がらんし粘着的だと。

『For much of the pre-pandemic expansion, core goods inflation was slightly negative, on average, and falling goods prices were pulling inflation down. By the end of that expansion, inflation was nearing our target. In January 2020, PCE inflation had reached 1.8 percent and core inflation had risen to 1.7 percent. That reading reflected 0.75 percent deflation in core goods prices and 2.5 percent inflation in core services prices. That is very different from today. 』

『Since the current period of high inflation started in the spring of 2021, core goods prices have been rising, and through last September, inflation in core goods exceeded inflation in core services. To achieve our longer-run goal of 2 percent inflation, we will need to see continued sustained disinflation in both components.』

パンデミック前と今とを比較して物価の状況がどうのこうのと言ってるんですが、認識として「今のインフレはパンデミック前とスタンダードが変わっている」という話になっておりますな。でもって結局のところコアの財とコアのサービスと、どっちも落ち着いてくれんとアカンがね、という認識なので、財価格が落ち着いているうちは良いのですが、なんかの拍子に(この前のOPEC減産みたいなイベントで)財価格がホイホイと上がりだすとコリャダメだという話になりそうですね少なくともメスターとかの物価上昇アカンじゃろ派としては。

『My expectation is that with tighter financial conditions, demand in product and labor markets will continue to moderate. Output growth will likely be well below trend this year and pick up a bit next year. Employment growth will slow, with the unemployment rate rising to 4-1/2 to 4-3/4 percent by the end of the year. So far, high inflation has not unanchored medium- and longer-term inflation expectations, which remain at levels reasonably consistent with our 2 percent inflation goal. The continued anchoring of inflation expectations is an important factor underpinning my outlook that we will see a meaningful improvement in inflation this year, with inflation moving down to about 3-3/4 percent this year, continuing to improve next year, and reaching our 2 percent goal in 2025.』

『In my modal projection, to put inflation on a sustained downward trajectory to 2 percent and to keep inflation expectations anchored, monetary policy moves somewhat further into restrictive territory this year, with the fed funds rate moving above 5 percent and the real fed funds rate staying in positive territory for some time.』

この辺から金曜にネタにした金融政策ネタに被って来るのですが、要するに5%以上の政策金利水準を少なくとも今年は維持すべき、という話をしてて、金曜にネタにしたように金融問題での需要押し下げ期待があるので、実際にはここでバリバリと言ってるほどタカなのかというと微妙なのですが、すくなくとも金融機関アイヤー問題なかりせば金利上げろ上げろと仰せになっている、というのが分かる部分ですね。

『My forecast is similar to the modal forecasts of FOMC participants released two weeks ago, although I see somewhat more persistent inflation pressures than the median forecast among participants.』

で、インフレ見通しの最後のパラですが、メスターさん自分で「私はFOMC参加者の中心的な見通し対比で高インフレがより持続的とみています」と堂々のインフレ警戒というかインフレタカ派であると言い切っておりまして、これもまあこの後の金融政策(金曜にネタにした)との合わせ技で考えると「私の言ってるのは基本的にFOMCの中心よりもタカ派方向に寄っておりますのでヨロシク」と一々断っている、という割と親切設計になっていて、そーゆー意味では兎に角タカタカ話をぶっこんでしまおう、という一辺倒でもないなあと思う訳でして、やはり金融機関問題を受けた若干の日和見成分が入っているんだろうなあと思いました。穿ち過ぎかもしれないけど。

『Of course, I also recognize that there is heightened uncertainty around the outlook and, in such an environment, it will be particularly important to continue to collect and assess the whole panoply of incoming information, not only official government statistics but also regional information gathered from our business, labor market, and community contacts; a variety of surveys on economic and banking conditions; and higher-frequency data such as credit card spending.』

『All of this information can help us determine not only where the economy has been but where it is going, which is important when setting appropriate monetary policy since it affects the economy with a lag. 』

『The FOMC likes to say that its policy decisions are “data dependent.” It would be wrong to interpret this phrase as saying that we will react to one or two data points. Instead, I view “data dependent” as shorthand for saying that incoming economic information informs my economic outlook and my assessment of risks, which, in turn, inform my view of appropriate monetary policy. (You can see why we needed shorthand!)』

最後の部分は「先行きの不確実性が強いよね」という話から、政策の効果が発現するのにラグがあるから、出て来るデータを見ながら政策効果の発現度合いを確認して、それによって政策を考えていく、というのがデータディペンデントであって、別に雇用と物価の足もとの数字を受けてホイホイ反応しているわけではないですよ、という話をしているのだが、どう見ても市場は足元の数字を見てホイホイ反応してるし、大体からしてオメーらだって足元の数字を受けてホイホイと変な決め打ちしてコミュニケーション失敗してるだろ、とは思いました。


あ、時間が無くなったのでブラードのネタはパス。
https://www.stlouisfed.org/news-releases/2023/04/06/bullard-presents-financial-stress-and-the-economy
St. Louis Fed’s Bullard Presents “Financial Stress and the Economy”
April 06, 2023






2023/04/07

お題「就任即臨時会合ではなくて総理と会談ですかそうですか/メスターさんも金融アイヤーには配慮とな」

ありゃこれだと10日即臨時会合YCC撤廃は無いですねwww

https://jp.reuters.com/article/idJPL4N36923Z
2023年4月6日6:45 午後
岸田首相と植田日銀新総裁、10日に初面会 連携を確認へ=関係筋

#それはそれとして今日は我がPCの機嫌が悪い(バックグランドでウィンドウズだと思われるアップデートが回ってしまってクソ重いんだと思うけど)ので簡単に参らざるを得ませんですサーセン(古いのまだ使ってるんで・・・・・)


〇別に就任即臨時会合が無いのはどうでもよいのだがこの会談は早速植田さんの真価を問われますな

https://jp.reuters.com/article/idJPL4N36923Z
2023年4月6日6:45 午後
岸田首相と植田日銀新総裁、10日に初面会 連携を確認へ=関係筋

『[東京 6日 ロイター] - 岸田文雄首相が植田和男日銀新総裁と10日に官邸で面会する方向で調整に入った。複数の政府関係者が明らかにした。

日銀の黒田東彦総裁は8日で任期満了となり、植田氏が9日に日銀総裁に就任する。10日に辞令が交付され、その席で現行の金融緩和策を当面維持する方針や政府と日銀の緊密な連携を確認するとみられる。』(上記URL先より)

>現行の金融緩和策を当面維持する方針や
>現行の金融緩和策を当面維持する方針や
>現行の金融緩和策を当面維持する方針や

・・・・・・・・???????????????

えーっとですね、黒ちゃんがガバナスをグチャグチャにしちゃったからこういう話がカジュアルに「政府関係者」から出ちゃうんですけど、あくまでも金融政策は毎回の金融政策決定会合において経済物価情勢やら何やらについて検討を行い、先行きの見通しに沿って決定するものですし、その上総裁と言えども政策委員会では9名の委員の中の1名に過ぎないですし、大体からして就任前に政策委員会(決定会合じゃなくても)に参加している訳でもないのに「現行の金融緩和策を当面維持する方針」とか勝手に首相と確認することは出来ない訳ですよね本来は。黒田の場合はとにかく安倍ちゃんガースーがポンコツばかりを政策委員会に送り込んで、黒田翼賛体制を作り上げるというがなバンス破壊行動を行ったので黒ちゃんが先行きコミットを勝手にするという事態になりましたけれども、少なくともその前はそういう所は過去の総裁は自制してましたから。

ということなので、まあ早速ここで「勝手に植田さんが総理にコミットしてくるか否か」で真価が問われるという事態になりそうで、いやー最初からなにさせますねん岸田さんアホチャウかと思うのですよね。

まあ何ですな、どうせこの会談の有無と関係なく10日の夕方とかに就任記者会見があると思うのですが、当然ですが記者の皆様におかれましては「総理との会談で現行の金融緩和策を当面維持する方針を確認してきたのでしょうか」と質問して頂かないと日銀記者クラブの存在意義無いですし、確認したと回答したら(なお植田さん「先行きの金融政策運営についてはその時の状況に応じて適切な金融政策を行うし、その際には政策委員会の全員が討議して行うという事につきます」って感じの回答を当然のようにすると思いますが間違って「確認してきました」とか回答したら)「先行きの金融政策に関して総裁が勝手にコミットすることは出来ない筈ですがそれは何の権限で確認してきたのでしょうか」とぶっこみにいくのは当の然というか、それすら聞けなかったらお前らの記者会見要らんわというお話になりますので月曜日が早速面白くなって参りましたな。

ま、これは岸田さんじゃなくてこの話を(元のニュースは共同通信が最初に打ってたと記憶しておりますが)報道機関にホイホイと流している「政府関係者」の勇み足というか日銀ガバナンスに関する知識の欠如によるもんだと思うのですが、金融政策の方針について確認できねえよ馬鹿と思う訳で、いやー前途多難ですな植田先生と思いますし、こういう風潮を作ったのは黒田なので本当にこれが残した負の遺産は飛んでもないと思うのでありました。



〇タカ派姐さんのメスターさん利上げを支持するも金融システムの安定性の重要性を力説するの巻

昨日ヘッドラインだけネタにしたメスターさんですけど、まあこの人が日和ってきたらタカ派ションボリーヌというインディケーターとしては使えますので、さてどうなんでしょと思ったのですが、何か市場的にはいつものタカ派とみているみたいなんですけど、ちょっとこれ日和気味なんじゃネーノと思ったんですけどね・・・・・・・・・

https://www.clevelandfed.org/collections/speeches/2023/sp-20230404-diligent-judicious-return-price-stability
A Diligent and Judicious Return to Price Stability
Loretta J. Mester
President and Chief Executive Officer
04.04.2023 6:45 PM EDT In Person Money Marketeers of New York University, Inc., New York, NY


・おんどれは何でそう思ったのかというと構成が・・・・・・・・・

この講演、小見出しの並びが最初のごあいさつの後に、

Economic Growth
Labor Markets
Inflation
Monetary Policy
Financial Stability

って並んでて、いやまあSVB問題の直後ですから金融システムの話をするのは順当ちゃあ順当なのですけれども、その頭の部分が

『Let me conclude by noting that this is standard operating procedure for monetary policy: evaluating the implications of economic and financial developments for the economic outlook and adjusting the monetary policy path if needed. This is different from using monetary policy to address the stresses in the banking or financial system instead of pursuing our monetary policy goals.』

とありまして、金融政策と金融安定では割り当てをする政策が違うよ、ということで利上げ路線を支持している説明ではあるのですが、

『In fact, both price stability and financial stability are important for a healthy economy, and I do not see a tradeoff between the two. Well-formulated and well-communicated monetary policy that achieves our dual-mandate goals of maximum employment and price stability supports financial stability by allowing households, firms, and financial institutions to make better investment, saving, borrowing, and lending decisions.』

物価安定と金融安定の政策対応がコンフリクトしません(キリッ)って説明してる(I do not see a tradeoff between the two.)のですけれども、

『A healthy financial system provides valuable credit, risk-management, payment, and liquidity services to households and businesses in support of a sound economy. An unstable financial system can propagate adverse macroeconomic shocks over broad economic sectors and over time to the detriment of macroeconomic stability.』

金融システムが不安定の状態の場合は経済のマクロ的な安定に対してマイナスですよ、という話を同時にしておる訳でして、これって結局のところ金融機関アイヤーの問題が続いていたり、いつ火を噴くか分からん的な状況(例えば中小金融機関の資金ポジションが預金流出でアカンですバイみたいな感じが続いている状態)においては、この問題に対処しないとアカンですよというステータスにある、ということだからやっぱり金融政策で無茶は出来ませんという話に帰結するハズなんですよね。

『Because a safe, sound, and resilient banking system is of first-order importance to our economy, it is vital that we effectively use our microprudential tools of regulation and supervision and our macroprudential tools, including stress tests, to keep the banking system safe, sound, and resilient.』

でもって健全で頑健な金融システムは重要ですが、そこに対してはワシらはマクロプルーデンスのツールを使って対応していくんですよ、という話をして、

『Doing so has the benefit of allowing monetary policy to remain focused on bringing inflation back down to 2 percent in a timely way. This is a very important duty because returning to price stability is necessary for the long-run health of the labor market, the overall economy, and the stability of the financial system.』

てな訳で、マクロプルーデンスのツールを有効に活用して健全な金融システムを維持することによって、マネタリーポリシーはインフレ安定化にフォーカスした適切な運営ができまっせ(キリッ)という形でこの講演の最後(相変わらずケツから逆読みするアタクシですが)を締めているんですよね。

・・・・・でまあですな、それはそれで良いんですけど、現実問題として今の時点でSVBがアイヤーとなって、当面の大延焼は防げている(なおスイス方面で盛大な貰い火がありましたが)という状況ではあるのですが、ゆうてこの金融機関問題、中小金融機関の資金ポジションは依然としてアキレス腱状態になっているというステータスであるとなれば、マクプルで対処してどうのこうのではなくて、現状ってまだ火消しモードというステータスになっている筈なのよ。

そうしますと、上記の部分では「マクプルツールを上手く使って健全な金融システムを維持することによって金融政策は物価安定にフォーカスできる」という話をしているのですから、裏を返して言えば金融システムが不安定だったり先行きに見え見えの地雷があってそれを回避する行動をしないといけないというようなステータスの時には、金融政策は物価安定化以外に金融システム安定化への配慮が必要、という事になる訳でして、メスターさんまあ「サウンドでレジリアント」は連呼しているものの、じゃあ何も気にしなくて良いのかというと、わざわざ最後に「Let me conclude by noting that this is standard operating procedure for monetary policy: evaluating the implications of economic and financial developments for the economic outlook and adjusting the monetary policy path if needed.」って言ってるんだから、足元の金融政策運営ではまだ金融システムへの目配りが必要、という話をしているのと同じ、という風にアタクシは読んだわけですね。

とまあそういう事なので「ヘイヘイピッチャービビってる♪♪♪」って感じなんでネーノと思いましたし、まあだいたい利上げ志向の強い方であるメスター姉貴がこのように仰せということは、5月利上げはかなり微妙なんだろうなあという感じですかねえ。

もちろん、今月まだ時間があって、その間に金融システム不安心理一掃だぜヒャッハーとなった場合は話が違ってくるかもしれませんけどよくわからんですなこの調子だとまだ(雇用統計見ないと何ともかんとも)。


・でもってその前段にある金融政策の話を見る

『Monetary Policy』って小見出しに戻る。

『In making its monetary policy decisions, the FOMC is always guided by its strong commitment to achieving its statutory goals of price stability and maximum employment. The FOMC has come an appreciable way in bringing policy from a very accommodative stance to a restrictive one.』

この辺はまあご挨拶みたいなもんですのでいいんですけど。

『We have taken actions to address the stresses that emerged last month in the banking system. Our decision in March to raise the fed funds rate by another 25 basis points reflected the persistence in underlying inflation and the need to move policy into a sufficiently restrictive stance to return inflation to 2 percent over time.』

3月の利上げはインフレ鎮静化の為に実施したものですよ。

『Precisely how much higher the federal funds rate will need to go from here and for how long policy will need to remain restrictive will depend on how much inflation and inflation expectations are moving down, and that will depend on how much demand is slowing, supply challenges are being resolved, and price pressures are easing.』

どこまで利上げするか、引き締めをどの程度維持するか、というのは物価がマンデート水準に向かって落ち着いていくために必要な経済の減速が達成できるか次第です。

『The FOMC indicated in its March statement that it anticipates that some additional policy firming may be appropriate. In determining the extent of future increases in the target range, the FOMC will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』

ここは3月ステートメントにおいて「今後も多少の追加利上げが必要」と言ったことの説明ですね。

『Even before the recent stresses, banks had begun to tighten their credit standards. Credit has become less available as interest rates have risen. This is the typical way in which monetary policy tightening transmits to the broader economy.』

『The recent tensions in the banking system could well result in banks further tightening their credit standards, and households and businesses may become more cautious in their spending.』

『Directionally, we know that credit conditions are likely going to be somewhat tighter, and we will be assessing the magnitude and duration of these effects on the economic outlook to help us calibrate the appropriate path of monetary policy going forward.』

でもってこの金融政策部分の締めが上記の話(つまりこの講演自体全体の文章は実はそうでもなかった)になるのでありますが、元々今回のSVB問題などが無かった時点で、利上げ効果によってクレジットスタンダードのタイト化が起きてきて、その結果としてインフレ抑制効果が出てきた、という評価をしておりまして、その上で、「The recent tensions in the banking system could well result in banks further tightening their credit standards, and households and businesses may become more cautious in their spending.」すなわち、「最近の金融システムに対するテンションは金融機関のクレジットスタンダードを一段とタイト化させることになるでしょうし、そうなれば企業や家計の支出がより一層警戒的になって来るでしょう(つまりインフレ沈静化の効果を持つ)」と思いっきり言っている訳ですな。

そして現時点でも既に「we know that credit conditions are likely going to be somewhat tighter」とのことですので、クレジットスタンダードが幾分かタイト化しているという状況が観察されている、という認識を示していまして、今後この推移をみて行きます、って説明でこの「金融政策」のパートを締めて、その後がさっきのファイナンシャルスタビリティの小見出しになります。

ということになりますと、まあ普通にこれ「金融機関アイヤーが完全に払しょくされたら話は別かもしれんが、潜在的に警戒感が残っているうちは引き締め効果がアドオンされた格好になる」っていうのを思いっきり表明していることになりますので、なるほどこりゃメスター姉貴ちとビビってるな、というのが私の中の結論になる訳です。

ただし、利下げでどうのこうのという話は一切ない訳ですし、そもそもインフレ抑制の利上げに関して金融安定化の観点からちょっと日和るわけですから、その意味ではもしかしたら引き締め足りないままで走る可能性もある訳ですので、その早期利下げヒャッハーというのはさすがにちょっとどうなのかとは思うのですが、利上げに関してはやるやるとは言いながらも相応に慎重なスタンスになるんでしょうね、とは思いましたがどうでしょうかね。





2023/04/06

お題「輪番超長期増額かよ/需給ギャップまさかのそこそこ悪化しかも労働需給ギャップマイ転ですが・・・・・・(からの雑談)」

いやー黒ちゃん任期までのカウントダウンですよ皆さんもいっしょに「ラースト!スリー!!」でございますわよ(神宮球場脳)。

〇輪番は当然ヨコと思ったら何で超長期増額しますねん

・超長期前半増額とはこれはまた何と申しますか

昨日のオペオファー
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of230405.htm
(輪番を引用)
国債買入(残存期間1年以下) 1,500 2023年4月6日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,250 2023年4月6日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 5,000 2023年4月6日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,500 2023年4月6日

ということで、

1−3年:レンジ3500-6500、前回(3/20)4250で今回4250
3−5年:レンジ4250-7250、前回(3/29)5000で今回5000
10-25年:レンジ1000-5000、前回(3/29)2000で今回2500

となりやがりまして、超長期輪番ここで増額ってナンジャソラという感じでして、翌日(つまり今日)30年入札あって事前に調整が入っている中で、輪番増やしてカウンターパンチとか何でそういうことをしますねんと申しますか、マーケットフレンドリーさが無いにも程がある相変わらずの調節クオリティを出してきておりまして、まあレッツゴー三匹(というか二匹)を無茶苦茶な水準まで指値買い上げ入れながらSLF絞って、ショートを殲滅したいのは分かるんだが、台所のゴキブリ退治するのに火炎放射器ぶっ放すような事をしてそこら中に面倒を撒くのと本質的なスタンスが変わらんよなーと思いながらオペのオファーを眺めるのでありました。

まあ期末期初の所で超長期の金利が上がったのと、前日の10年入札が滑ってチビったんでしょうけど、そもそもその前の金利低下がナンジャソラ状態だった訳ですし、相場のリズムを一々介入で壊すの止めてもらえませんかねえ、って感じですが(個人の感想です)、YCCとはそういうものだと言ってしまえばそらまあその通りって事なので、そもそもYCCで10年金利を止めようとするのが間違いで、今まで上手くいってたように見えるのは(色々な方がご指摘されておられる通りで)物価目標達成が1ミクロンも視野に入っていなかったから、即ちYCC政策が本来の目的達成(10年の金利を止めるのは手段であって目的は物価目標2%を出来るだけ早期かつ無理のない形で達成すること)に全くワークしていなかったということなのですから、YCCの長期金利ターゲットはまるで無意味にも程がある(短期の政策金利は話は別、マイナス金利は要らんと思うけど)ということなのでYCCの長期ターゲットは要らんのよねー。といつもの愚痴になるのでした。


・指値から367が除外されたので玉川カルテットではなくてレッツゴー三匹のままと

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of230405.htm
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注4) 2023年4月6日 0.030
国債買入(固定利回り方式)(残存期間5年超10年以下)(注5) 2023年4月6日 0.200

(注4) 固定利回較差の結果、10年利付国債370回の買入利回りは、0.500%となる。買入金額に制限を設けずオファー。
(注5) 固定利回較差の結果、10年利付国債359回の買入利回りは、0.500%となる。買入金額に制限を設けずオファー。

指値オペなんですが、結局いつもの「引値から全部同じ利回り較差で購入」となりまして、これ見るとどの銘柄が指値対象なのか書いてないんですけど、落札結果の方を見ると

落札結果
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba230405.htm
(注7) カレント3銘柄が対象。

カレント3銘柄対象、となっていますので、レッツゴー三匹なのにメンバーが交代になりまして、368-370の3銘柄対象になった(まあその前の時点でニュースワイヤーがニュースにしてますので周知の話ですけど)という事でございました。

しかしこの「利回り較差固定」って何とかならんのと思う訳で、今だって2つの年限で指値やってるし、他年限指値オペだってやることあるんだから、カレント3銘柄のオペだって対象銘柄3本立てて引け対比の利回り較差を変えた形でオペ打つの物理的に可能じゃろと思うのですが、なぜこの方式に拘っているのかの意味がまったく分からない訳で、引値が歪んでいたらその引値を是とするバランスでの買入を行うっていう結果になるのに「調節方針と整合的なイールドカーブ」もへったくれもないのですが、もしかしたら今この方式を変更するのは「謝ったら負け」とでも思ってるんでしょうかねえ。

まあ何ですな、狂ったように打ってた長期共担オペの事を皆さん(私も、ですが笑)すっかり忘却の彼方に逝ってしまったように、指値オペの命運も間もなく終わるので、今更ここで指値方式の見直しをしても指摘され損だからこれで行きます、ってんだったらなるほどと思う訳だが(筋論としてそれはイクナイと思うけど)、これでまた指値ヒットしだした時に368とか369とかを0.50%から遠い利回りで買入するの????ってのは大いに疑問を提唱し続けたいと思うのでありました。


と、指値方式を見直さない(まあこの件はそもそも1月会合や3月会合でも何か見直せよという巷の声がある中で全然話題にもされなかったっぽい時点で、黒田っち並みの意地張りプレイをする今の金融市場局の意地張りプレイが通るんだろうなあとは思ってたけどさ)話ばっかりになっておりますが、それはそうと367が指値から外れるの巻となりまして、とにかくショートを成敗してやろうということで367の指値を継続して締め上げSLFのカテゴリーから外さないかもしれませんのでいざ覚悟、とぶっこんだのですが、ショートが成敗できたからシメシメとばかりに外してきた、という動きになりましたな。

いやまあ指値オペとかそもそも怪しからんので指値対象から外れるのは結果としては結構なんですが、「指値オペから外さないかもしれないしSLFの締め上げを続けるかもしれない」とか恫喝して買戻しをさせるとか、何ちゅうかこのYCC末期にはこういうことになるのかねという話なのかもしれませんが、「日銀はオペを使って無茶苦茶強引な市場介入をしてくるし、ルールを決めたのにコロっと手のひら返しをしてくる」という横暴プレイが昨年12月のレンジ拡大以来継続しておりまして、お蔭で市場の流動性は低下したまんまだわ、値動きはチョッピーなまま(そらどこから日銀が変な玉打ち込んでくるかわからない市場でマーケットメイクをシャープにするのは無理だわさ)だし、投資家サイドから見たら売買コストとか大口執行コストとか高いまんまだし、結局誰得にも程がある市場になってしまいまして、これを解消するにはやっぱり只の短期金利コントロールに戻して、日銀の介入を極力減らすようにしていかないと、円の国際化(最近あまり聞かれなくなったなあそういえば)みたいな事もできない(当局の胸先三寸で突如ルールが変わる自国でもない市場に誰が長期投資すると思いますか??)んですけどねえ、とまあそのように思う今日この頃でございました。

いやーとにかくこの過剰介入いい加減にして欲しいのだがYCCの建付けがそもそもクソなので、オペがどうのこうの言ってはいますが、3センチメートルほどはオペにも同情の余地はあるとは思いますよ。悪いのはポンコツ政策委員会。



〇需給ギャップェ・・・・・・・・・・・(しかし何でこのタイミングでマイナス幅拡大するねん)

https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/index.htm
需給ギャップと潜在成長率

PDFの方は長期時系列なのでエクセルから。

例によって左から、需給ギャップ、資本投入ギャップ、労働投入ギャップですが・・・・・・

2021.4Q   -1.54  -0.86 -0.68
2022.1Q   -0.98  -0.65 -0.33
2022.2Q   -0.71  -0.81 0.10
2022.3Q   -0.08  -0.17 0.09
2022.4Q   -0.43  -0.24 -0.18

とまあそういう事で、今回は労働投入ギャップがプラスからマイ転して全四半期対比0.27%も悪化しやがったことから需給ギャッププラテンどころか横這いも出来ずにどよよーんと下がってしまうという結果に。

いや何ちゅうかそうなのかよとは思う(計算過程が良く分からんので)のですが、そもそも需給ギャップ自体推計値で幅がある物件というのもありますが、需給ギャップに関しては展望レポートにおいて、

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2301a.pdf(1月展望レポート基本的見解)

4ページ(PDF4枚目)
『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、ごく小幅のマイナスとなっている。』

5ページ
『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、短期と比べるとペースは緩やかながら上昇している。』

とありまして、物価上昇率を規定する主たる要因、ということになっておりますのですが、これがまた今年の1月展望レポートなので思いっきり直近に出ている見通しで

4ページの最後から5ページに掛けて
『先行きの需給ギャップは、わが国経済が潜在成長率を上回る成長経路をたどるもとで、2022 年度後半頃にはプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大が続くと予想される。』

って見通し盛大に外してるじゃん追加緩和しないと行けないじゃないですか(棒読み)という記述があり、

『こうしたもとで、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み、賃金の上昇圧力は次第に強まっていくと考えられる。このことは、コスト面では人件費の上昇圧力をもたらすとともに、家計の購買力の増加に寄与するとみられる。』

ってあるのですが、労働需給ギャップが思いっきり昨年10−12月期でマイナス方向に振れてしまっているという結果になっている訳で、これと春の賃金改定の強さの整合性is何??という話はさておくと、なんとこの需給ギャップを見ると前回の展望レポートで示したメカニズムが崩壊してるじゃんという話になり、まさかの追加緩和ですかそうですか(ハイパー棒読み)という話に。


・・・・・・なのですが、ここでYCCの長期金利ってそもそも何でしたっけという話に立ち戻りますと、2021年3月会合の時に示された屁理屈一大叙事詩もとい『より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検【背景説明】』を拝読しますとこうなっておるのですな。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2021/k210319c.pdf(2021年3月の「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検【背景説明】」)

5ページ(PDF6枚目)

『(4)年限別にみた金利低下の経済・物価への影響』

『実質金利の低下が、経済・物価に影響をもたらす度合いは、金利の年限によって異なる。2016 年の「総括的検証」では、実質金利1単位の低下が需給ギャップに与える影響について、「均衡イールドカーブ4」の概念を用いて分析を行い、短中期ゾーンの金利の効果が相対的に大きく、年限が長くなるにつれて小さくなるとの結果を得た。』

とありまして、

『今回、その後の経済・金融情勢の変化を踏まえたうえで、同じ手法を用いて確認したところ、そうした傾向が変わっていないことが示された(図表7(1))。』

ということですが、改めてこの図表7というのを見ますと(と言っても貼り付けスキルは無いので上記URL先から見に行ってちょという話になるのだが)、図表7ってのはPDFの37枚目、本文ページ36ページにあるのですけれども、そこの上半分が『金利低下の経済・物価への影響』という物件なんですよね。

・・・・・はい、見に行きましたでしょうか???

よく見ると(よく見なくてもそうだけど)10年金利低下の需給ギャップに与える影響って殆どカスでして、総括的検証(YCCぶっこんだとき)からこの方「超長期金利の低下の需給ギャップへの影響は屁」という話を聞いておりまして、それがまあ(直近を除く)基本的に超長期金利の介入をあまり行わないようにする(新規発行対比のフローベースの輪番実施額を相対的に抑制する)意味でしたし、下半分にある「(2)金利低下に対する消費者マインドの反応」の所による謎分析によりますと20年金利が低下すると全くの謎なのですが消費者マインドが低下することになっている(だったら何で住宅ローン金利ガーとかいう話が出るのかという気がするが)ので、寧ろ超長期金利の低下を促すのはイクナイ、という分析になっておりましたね。

となりますと、そもそも論としてこの「年限別の金利変化が需給ギャップに及ぼす影響」の観点で言えば、10年金利に関しては多少の金利変動が起きたからと言って需給ギャップに極端な悪影響を及ぼすものではない、というのは実はYCCぶっこんだ当初からそういうことになっていて、かつグラフを見ると分かりますように、総括的検証をぶっこんだとき対比でみても2021年における「10年金利低下が与える需給ギャップの押し下げ効果」って下がっているんですよね。

って日銀の屁理屈を掘り返してお前は何を言いたいのか、という事になる訳ですが・・・・・・

その1:そもそもYCC導入した時点から本来の理屈では10年金利がそこそこ動いても問題ない筈だった

ということでして、トランプ相場で金利上昇圧力が掛かった時に謎の中期輪番スキップをして相場を壊して迎えた10年入札の翌日の前場引け後(後場寄り前)にインマネ指値オペを入れるというビビりプレイをして急にYCCの10年レンジが0.10%になってしまった訳なのですが、本来の理屈であれば多少のブレが起きても需給ギャップへの影響という意味では無問題だし、2016年時点の分析よりも2021年時点の分析では更にその無問題さが増していた。

その2:需給ギャップに10年金利の影響はそれほど大きくないのだから話は分離可能(個人の感想です)

その1はまあほぼ客観的にそういうことでしたよね(そもそも最初の時点では0.10%なんてガチガチのイメージでのトークじゃなかった)という話だが、こちらは個人の感想ですになるので悪しからずご了承いただきたいのですが、何はともあれ、需給ギャップの話は主に中短期金利の部分(さっきの図表7をご覧あれ)という話なので、短期金利をがっちりアンカー(マイナスである必要はないと思うけどまあそこはさておき)しておけば10年って多少上がったって問題ない(そもそも今YCCの長期外したって1%の全然手前で止まるイメージしかないんだがそれは個人の感想なので人によって見解は違うと思う)という理屈になるので、やはりYCCの長期コントロールは要らんよねという話になる訳ですな。

って思いっきり個人の感想ですの世界なんだが、そもそも論として先般の金利上昇局面で示されたように、10年カレントの金利を無理くり抑えに行くと、金利上昇圧力のパワーが他年限に回ってしまうので、それが超長期ならまあ図表7の理屈上さほど大きな問題にはならないけど、中期に回ってしまう、という事象が先般の金利上昇時には思いっきり発生してた(ので2年長期共担だの5年長期共担だのという無茶プレイをする破目になった)訳でして、今後物価目標達成に向けて進展していく(ということになっている)中において、10年を無理くり抑えることによって「需給ギャップにより影響の大きい」中短期の金利に無駄な上昇圧力を与えないためにも、海外がこの状態で金利がそこまで跳ねる心配の無い時に、無用な10年金利コントロールは止めて桶(RBAだって「インフレ目標達成が現実的になるまえに我がYCCを解除すべきだった」とレビューしてるんだし)と思うのですよねーーーーーー。

ということで、その2はアタクシの屁理屈成分がかなり混入しているのですが、一応日銀の屁理屈をベースに組み立てた屁理屈でありまして、つまりは需給ギャップの話と「10年コントロール」の話は屁理屈を捏ねれば分離可能という思考実験をさせていただきました、ということであります。

あ、屁理屈捏ねてたら時間が無くなったので本日はこれにて勘弁。メスターが何かひよっているかのようなヘッドラインがあった気がするのだが読んでる暇は無かった。






2023/04/05

お題「指値オペの方式このままだとまた同じことの繰り返しにならんかね/短観は雇用も強いままですね(短観その2)」

この時期は外が明るくなる時間が目に見えて早くなっていくのですが、不肖このアタクシ根が原始人なので外が明るいと書き物にも元気が出るということですので、4−6に解除ということでよろしくお願いします。

〇10年新回号来ましたが指値オペの方式は今こそ工夫しておくべきではないかと

しかしまあ何ですな、金利が上がって来ると急に元気になって市場雑談を始めるという辺りにもうアタクシも大概にアレだなあと我ながら思うのでありました。

例によってロイターさんから(いつもすんません)
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N36715Q
2023年4月4日3:22 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続落で引け、長期金利0.415% 弱めの10年債入札が重し

『[東京 4日 ロイター] -

<15:12> 国債先物は続落で引け、長期金利0.415% 弱めの10年債入札が重し

国債先物中心限月6月限は前営業日比23銭安の147円48銭と4営業日続落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同5.0ベーシスポイント(bp)上昇の0.415%。10年債入札が弱めの結果となり、相場の重しとなった。

国債先物は、前日の米国市場での金利低下を受けて反発して寄り付いたが、買い一巡後は本日の10年債入札への警戒感からマイナス圏に沈んだ。午後は、同入札が「弱めの結果」(国内証券、国内銀行)との受け止められたことから下げ幅を拡大し、軟調に推移した。』(上記URL先より、以下同様)

ということでしたが10年入札滑ってアイヤーという感じでしたけど、新回号になって引けが早速0.470%って何だよそれという感じでありまして、

『   OFFER   BID   前日比 時間
2年  -0.034  -0.026   0.01 15:06
5年   0.137  0.145   0.026 15:00
10年  0.399  0.407   0.03  15:03
20年  1.092  1.105   0.034 15:04
30年  1.34   1.353   0.048 15:11
40年  1.552   1.57   0.069 15:10』

とまあそういう展開で先月の上げは何だったのかというか海外金利追随上げじゃなかったのかよとゆー風情ではあるのですが、何が何やらという感じですな。まあ昨日は久々に日中の横綱が2万枚超えとかいう大商いしてたので売買自体が結構あったんでしょうけど。

備忘の為に10年入札結果を貼っておきますね。
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20230404.htm
10年利付国債(第370回)の入札結果

6.価格競争入札について
(1)応募額     8兆2,886億円
(2)募入決定額   2兆1,962億円
(3)募入最低価格  100円30銭
(募入最高利回り)(0.468%)
(4)募入最低価格における案分比率 80.3317%
(5)募入平均価格  100円41銭
(募入平均利回り)(0.456%)

ベンダー集計の足切り予想が38銭くらいでしたので1毛弱流れという結果になりまして、そらまあアイヤーって感じではありましたが、これ落札結果出て下がって戻ったのでこれは戻るのかと思ったらその後ズブズブと横綱が下がって行ったのが反発力無しの介というか、弱い落札見ても買いが入らんのかよとは思いましたが、まあ絶対水準がここでは踏み以外の買いが入らんということなんですかねえ、よくわかりません。


でまあ売参見ますとですね。
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
公社債店頭売買参考統計値/格付マトリクス表

長期国債 362 2031/03/20 0.372
長期国債 363 2031/06/20 0.395
長期国債 364 2031/09/20 0.405
長期国債 365 2031/12/20 0.410
長期国債 366 2032/03/20 0.400
長期国債 367 2032/06/20 0.384
長期国債 368 2032/09/20 0.350
長期国債 369 2032/12/20 0.410
長期国債 370 2033/03/20 0.470

ここもとの神風によりまして空売りの人が踏んだこともあって368とかキチガイみたいな引値から随分修正されたとはいえ、手前から見るとカーブって指値ゾーンの所が突如陥没している状態になっておりまして、まあ相変わらずのイールドカーブな訳ですよ。最盛期?に陥没してた所からはかなり浚渫されたとはいえ、そうは言いましてもこのカーブ形状。

でですね、今日は米国が金利下がって戻ってるから無事のような気がするんですけど、昨日の引けベースで10年カレントが0.50%まであと3毛しかないじゃないですか。そうなりますとまた何かの拍子に指値が刺さってしまうゾーンに成り兼ねないのですが、「引け対比の利回り較差全部同じ方式」の買入ってのをすると、今の時点で上記のように不自然なイールドカーブになっているのをまた買入によって容認するというか強化する事をおっぱじめてしまう事になってしまい、そうなると神風パワーでやっと変なショートが減った(日銀保有残高で367とか368がやっと発行残高以下になってきた)のに、再度同じことのやり直しになってしまうと思うのよね。

日銀アタック云々って直ぐに何とかストは言いますし、まあそういう売りの方が目立つからそういう話になるんですけど、イールドカーブがグチャグチャになっていることによって金利の居所が訳分らなくなって、この辺の年限のいろんなもの(社債とか地方債とか)の価格形成が円滑に行かない、というのがそもそも昨年12月時点でYCCのレンジ拡大をしたときの問題意識だった筈で、その問題意識があるのに、このヘナチョコ引値、つまり10年(正確には9年11か月ですけど)の利回りと9.5年の利回りが12bpも違うのに、その変な状態なのを容認する方式の買い方を継続するのって、それは12月時点で問題視されたイールドカーブの歪みを日銀が自ら買入を行うことによって強化している、という訳でして、いや真面目な話何でこの買い方が政策委員会で問題視されないのかが意味わからんのよね。

だってさ、ディレクティブには
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230310a.pdf(3月会合声明文)

『A長短金利操作の運用

長期金利の変動幅を「±0.5%程度」とし、10 年物国債金利について 0.5%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペを実施する。』

「10 年物国債金利について 0.5%の利回りでの指値オペを」実施する、と書いてあって、しかも「上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため」に国債買入を実施する、とある訳で、上記の金融調節方針って、「短期▲10bp、10年0bpだけど指値の水準は10年50bp」なのですから、スプラインとかそういう高級なものじゃなくて単純に直線一気理論で計算したって、0年から10年の間が60bpなんだから1年辺り6bpが「上記の金融調節方針と整合的な指値オペの水準」じゃないんですか、という話であって、このままだと半年で12bpもロールダウンした指値をまたやり直すことになってしまうんで、大体からしてこの指値方式がディレクティブに対して正当なのか(まあもっとひどい時は369と手前が30bpとか違いましたが)という話は無かったのかよ政策委員会のガバナンスどうなってるんだという話ですわな。

てな訳で、まあ幸いにして今日は3甘水準までぶっ叩きにいくような展開にならない(そもそも輪番もあるし)となるのかどうかは知りませんが(フラグ立てたくないので誤魔化す^^)、レッツゴー三匹(367がまだ指値に入るのかもしれませんのでその場合は玉川カルテット)の指値方法を今のうちに考えて頂きたいものですわ。まあ全部出来上がり0.50%で買うのが一番普通だと思うのですが、何なら3か月で2毛くらい段差付けてもいいですし、それ以前の問題として「発行量以上に買入をする」というの止めなさいと思う訳で、前にも35回くらい書きましたが、日銀がホイホイと発行量以上に買入を行ってからおもむろにSLFを使わせなくするとか、普通の投機筋がそれやったら悪質なスクイーズ行為で下手したら永久追放もの(商品先物だったら普通に永久追放されるっしょ)なのをやっていること自体がおかしい訳でして、その手の諸々を何も手当てしないでこのまま進んでしまうと、海外動向次第によってはまた同じ悲喜劇が発生するだけの事になるので、指値オペの運営に関しては市場局の裁量範囲内(そもそもあの買い方が裁量範囲外なんじゃないのというツッコミはさっき書いた通りですのですがそういう問題もあるんだし)で、このヘナチョコイールドカーブの形成を促すような方式から変更可能じゃろ、と思うので変更してくださいこのままだと同じ見苦しいものを見る破目に成り兼ねませんのでよろしゅうお願いするます。


〇レッツゴー2匹の日銀保有はさらに減りましたが

https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/index.htm
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

のレッツゴー三匹日銀保有残高と前回公表日(3/20基準)対比(手元のエクセルで計算させてみた)。

367 75,804 ▲ 3,160
368 85,176 ▲ 863
369 74,625   0

ふむふむなるほどという感じで、減額措置とか再売却のエンドとかで買戻しが進んだようなのですが、これ逆に言えば売り直しの余地がまた出来てしまっているというお話にもなりますので、だからこそヘナチョコ引値での買入するの止めなさいと思うのですよアタクシとしては。まあ指値の買入見直しに関しては本来金利がクッソ低いうちにやって欲しかったのですが、そもそも金利がクソ低かったのも日銀によるSLFと指値使ったショートスクイーズなんで、その間に変更しにくい、というのも(日銀が自らショートスクイーズをすることの是非は別問題として)話として分かるんですけど、ここから10年カレントが2毛3毛甘くなってからだと、指値見直しの前に指値が刺さりだしちゃうので時既にお寿司の可能性もあったりするのがアレなんですが、いずれにしましても、引値利回り較差同較差方式がめちゃめちゃな値動きを呼んでしまった、という事を踏まえて運営を見直して頂きたいものです。くり返しになっちゃいましたが。

でまあ何ですな、ここ数年気にしなくなっていましたが、さすがに昨年度の国債買入額が史上最大とかそういうのを見ますと、そろそろ初心??に帰って日銀保有国債の買入を全部停止した場合に銀行券ルールに対してどうなるとか、超過準備がどの程度減ってくれるのかとか、はたまた償還再投資をどの位行うと日銀のバランスシートがどの位正常化に向かってくれるのか、とかそういうのの計算でもしようかという事で、何ちゅうかコロナ以降から直近1年のドイヒー政策によってどうなったのか、というのを真面目に見直してこの辺りのウォッチも正常運転に戻していかないとアカンナーと思うので営業毎旬報告(ちなみに中間決算と期末決算の時は毎旬出るのが1日程遅くなりますのと、確か期末の時だけだったと思うのですが、日銀保有国債の保有簿価に関してアモチアキュムが行われて評価替えがあって数字が結構動く筈)が出たら色々と面白計算でもしてやろうかと思います(やりだすと夜なべになるのでアレなんですが)。



〇短観私家版チェックの続き

スイマセン昨日は段取り悪かったもんで。
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2303.pdf


・雇用判断DI

        (12月短観)      (3月短観)
        現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業   ▲14→▲15     ▲14→▲14
製造業中堅企業  ▲20→▲22     ▲21→▲23
製造業中小企業  ▲24→▲27     ▲24→▲26

非製造業大企業   ▲28→▲30    ▲33→▲33
非製造業中堅企業  ▲35→▲37    ▲39→▲42
非製造業中小企業  ▲41→▲44    ▲43→▲46

ここの数字が相変わらず無茶苦茶強くて、まあ今回に関しては製造業の業況判断DIが「前回期待してたよりもアカン奴」に対して非製造業の業況判断DIが「前回期待以上だぜヒャッハー」なので雇用判断DIの雇用逼迫の数字の推移もそれに整合的な感じになっていますけど、ゆうて製造業の場合業況判断DIが前回の数値よりも下がっているのにも関わらず、雇用判断DIは横ばいまたは若干の逼迫方向で推移しておりまして、とにかく雇用判断の所の強さというのと、昨日真っ先にネタにした企業の価格設定および全般的な物価に関する見方の強さ、というのが今回の短観の強い所なんじゃなかろうか、とはアタクシ的には思ったのですがどうでしょうかね。


・需給判断関係

国内需給判断
        (12月短観)      (3月短観)
        現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業   0→▲2        ▲4→▲5
製造業中小企業 ▲12→▲12      ▲14→▲15

非製造業大企業  ▲7→▲7       ▲5→▲6
非製造業中小企業 ▲9→▲12      ▲9→▲11


海外需給判断
        (12月短観)      (3月短観)
        現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業  +3→+2         0→▲3
製造業中小企業 ▲6→▲8        ▲9→▲9


製商品在庫水準判断
      (12月短観)  (3月短観)
        現状      現状
製造業大企業  +16      +18
製造業中小企業 +14      +16


製商品流通在庫水準判断
      (12月短観)  (3月短観)
        現状      現状
製造業大企業  +3      +8
製造業中小企業 +9      +11

こちらは業況判断DIの動向に整合的(需給判断DIが悪化して在庫水準が上がっている)な結果になっていますが、昨年6月の短観では製商品流通在庫水準判断の製造業大企業が堂々のマイナス数値だったので、足元で+8まで上がってるのはうーんこのという感じはするんですが、値上げムーブによって流通在庫が増えているとかそういう面はどうなのかとか、そういう話になって来ますと日銀の支店からのアネクは来ているでしょうなあとは思うのですが、この辺りの背景に関するアネクドータルな話を差し支えの無い範囲で聞きたいなと思ったり思わなかったり。


という所でございます。







2023/04/04

お題「末初通過してGCとかは落ち着いたようで(メモ)/短観私家版チェック(その1)」

「フィンランド化」が死語になるのか・・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230403/k10014028191000.html
フィンランドが4日にNATO加盟へ 全加盟国の承認手続きが完了
2023年4月3日 21時05分

〇昨日ボケててすっかり書き忘れたが末初抜けてとりあえず元のレートになったようで

https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

     T+0翌日物 T/N  トム1w
2023/3/29  -0.191   -0.331  -0.414
2023/3/30  -0.328   -1.205  -0.639
2023/3/31  -0.150   -0.118  -0.144
2023/4/3   -0.130   -0.137  -0.141

とまあそういうことで、31日の時点では末のGC資金出しニーズは終了したようで当日スタート翌日物のレートが末初コールが

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/md230331.htm
無担保コールO/N物レート(3月31日<金>確報)

平均 -0.030%
最高 0.001%
最低 -0.087%

と期末モードだったのですが、GC下がりだす前の時点ではGCレート▲10bp近辺だったので、まだやや低いものの、期末モードは1日前のT/Nの所で終わるの巻ですが、これの影響が一番出てたの短国アウトライトで、金曜はアウトライトT+1だから売参ベースで見ますと、

https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html
公社債店頭売買参考統計値/格付マトリクス表

テキトーに3Mカレント辺りまでの引値をドバーっと見ますと、

国庫短期証券1112 2023/04/10 -0.150 -0.255
国庫短期証券1131 2023/04/10 -0.150 -0.255
国庫短期証券1132 2023/04/17 -0.150 -0.255
国庫短期証券1074 2023/04/20 -0.150 -0.255
国庫短期証券1134 2023/04/24 -0.150 -0.255
国庫短期証券1135 2023/05/08 -0.150 -0.255
国庫短期証券1119 2023/05/10 -0.150 -0.255
国庫短期証券1136 2023/05/15 -0.150 -0.255
国庫短期証券1080 2023/05/22 -0.150 -0.255
国庫短期証券1138 2023/05/22 -0.150 -0.255
国庫短期証券1140 2023/05/29 -0.150 -0.255
国庫短期証券1141 2023/06/05 -0.150 -0.255
国庫短期証券1125 2023/06/12 -0.150 -0.270
国庫短期証券1142 2023/06/12 -0.150 -0.270
国庫短期証券1144 2023/06/19 -0.150 -0.270
国庫短期証券1088 2023/06/20 -0.150 -0.270
国庫短期証券1146 2023/06/26 -0.150 -0.270
国庫短期証券1147 2023/07/03 -0.250 -0.270
国庫短期証券1130 2023/07/10 -0.160 -0.280
国庫短期証券1148 2023/07/10 -0.160 -0.190
国庫短期証券1150 2023/07/18 -0.160 -0.190

左が3/31の引値利回り単利で(4/3公表分)、右が3/30の引値ということで、末渡しを抜けたらとりあえず引値は無茶苦茶強かった銘柄中心にクソ甘くなる(ただし1147は需給の影響だか何だかしらんけど1銘柄だけ突出して強い)ということになりまして、まあ期末らしいっちゃあ期末らしいのですが、そもそも論として市場に国債が不足している訳で、その背景には日銀の国債馬鹿買入とか長期共担とかでバカスカ担保吸い上げるとか、まあそういうのもある訳ですし、YCC修正思惑で国債保有を絞っている結果として限界的な部分で需給が変わった時にレートが急変する、まあ要するに市場の厚みが無いのですけど、そういうような現象もあるんじゃろうなあと思いますがどうなんでしょうかね。

なにはともあれ、この「市場の厚み」ってのダイジダイジネーであって、様々な投資家が様々な形で入ってくれることによって、ある投資主体が「お家の事情モード」の時にも他の主体が普通に売買することによって市場における流動性の枯渇が回避できるんですけど、特にGC短国に関してはマイナス金利のせいで「レートどうでもいいけどリスクフリー資産」というニーズの人の存在感大き過ぎなのと、どうしてもGCに関しては色々と面倒なアレがあって、中々短期の資金運用としての使い勝手が、大規模にバカスカ売買やってる人達以外にとっては面倒だし、金利がこの状態だから経費倒れになってしまうので参入しにくいとか、まあ様々な点から、残高だけはクソデカイのだが市場の参加者が限定的なので何かの拍子に物凄い一方方向になってしまう、というのはGCレポ市場開闢以来中々変化しないな〜と思うのでありました。

本来はこのGC市場をコールに代わるリスクフリー市場の主力商品に、というのはGC開闢以来ずーっとお話としてはあるんですが、国債決済期間短縮した時に振り落としが起きて、その際に国債決済クリアリング参加で振り落としが起きてしまって、確かにまあ証券決済の期間短縮化も大事なのですが、そっちを急いだ結果としてこの金利状況で費用掛けて対応できません組を華麗に振り落としてしまっているうちに大規模緩和からのマイナス金利になってしまい、GC市場を資金運用として使おうって向きが中々出てこない(マイナス金利解除したタイミングでGCレートが相応に魅力的な水準ならワンチャンあると思うけど、金利水準がゼロ金利に毛が生えた程度だと事務コストとシステム対応問題のハードルが高い)のでして、このGC市場の厚みを拡大する(多様な参加者を呼び込む)というのは金利正常化における課題の一つだと思うんですよね、と滅茶苦茶局地的な話をしてしまいましたすいませんすいません。


〇いつもの短観私家版チェック(12月短観ってワシ私家版チェックしてたっけ、汗)

短観概要
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2303.pdf


・粘着的なサービス価格も上昇するようにしか見えませんが・・・・・・・・・・

日銀ちゃん、昨年の頭辺りからの「2%達成しません」の言い訳(よく考えたら2%目標と言ってるのに達成しないを連呼する時点で期待の形成の逆をやってるんだから馬鹿なんじゃないかと思うのだが・・・・)に使っていたのは「コアコア物価が重要」⇒「賃金が上がらないとダメ」⇒「財価格が上がっても粘着性の強いサービス価格が上がらないとダメ&賃金が2年以上上昇しないとダメ」という話でして、賃金が2年以上云々は、じゃあ最初の「2年程度で達成」というのは何だったのかという話になるんですが、(というか誰か退任会見で「賃金が持続的に上がらないと2%達成とは言えないと最近はご説明のようでございますが、それではそもそもなぜこの政策を開始した時点で「2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成する」と言ったのでしょうか??」って聞いて欲しいんですけど黒田に)、さてその非製造業ちゃんの価格判断なんですけどね。


販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 12月:1.2%→3月:2.1%→6月:2.9%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.3%
3年後 12月:1.7%→3月:2.7%→6月:3.5%→9月:3.8%→12月:3.8%→3月:4.0%
5年後 12月:2.3%→3月:3.2%→6月:4.0%→9月:4.2%→12月:4.3%→3月:4.6%

大 企 業 製 造 業
1年後 12月:1.1%→3月:1.9%→6月:2.7%→9月:3.2%→12月:3.0%→3月:2.9%
3年後 12月:0.7%→3月:1.8%→6月:2.5%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.2%
5年後 12月:0.8%→3月:1.7%→6月:2.5%→9月:3.2%→12月:3.1%→3月:3.5%


大 企 業 非製造業
1年後 12月:0.7%→3月:1.1%→6月:1.5%→9月:1.9%→12月:2.1%→3月:2.4%
3年後 12月:1.1%→3月:1.6%→6月:2.2%→9月:2.4%→12月:2.6%→3月:3.0%
5年後 12月:1.7%→3月:2.2%→6月:2.6%→9月:2.8%→12月:2.9%→3月:3.4%

はい、企業の価格設定の見通しを見ますと、財(製造業)の手前に関しては落ち着きが見られますけど、サービス(非製造業)に関してはズンズングイグイ上昇しておりまして、しかも足元ではこの上昇が加速しているようにしか見えません。

しかも、製造業にしたって手前の数字は下げていますが先の数字は上げになっていまして、ここを見るとどこをどう見てもインフレノルムが更に定着への道という図になっておりますけれども、これをもってしても粘着的な価格が上がらんとかそういう言い訳を続ける予定なんでしょうかねえ日銀さん。

というかですね、短観ってこれ物凄い労力掛けて(なんせ全国津々浦々の1万社近くからアンケート取ってるんですから)やってますし、回答率無茶苦茶高いのですから、これだけ調査して上記のような結果が出ているのに、黒田始皇帝様のご機嫌を損ねたらダメという宦官ムーブで折角の調査を台無しにしないで欲しいと思うんですよね。



・企業の物価全般見通しも順調にあがっております(全体もそうですがこちらは中小企業を)

物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 12月:1.1%→3月:1.8%→6月:2.4%→9月:2.6%→12月:2.7%→3月:2.8%
3年後 12月:1.3%→3月:1.6%→6月:2.0%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.3%
5年後 12月:1.4%→3月:1.6%→6月:1.9%→9月:2.0%→12月:2.0%→3月:2.1%

中小企業 製 造 業
1年後 12月:1.5%→3月:2.2%→6月:2.8%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.2%
3年後 12月:1.5%→3月:1.9%→6月:2.3%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.5%
5年後 12月:1.6%→3月:1.9%→6月:2.2%→9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.3%

中小企業 非製造業
1年後 12月:1.3%→3月:2.0%→6月:2.5%→9月:2.7%→12月:2.8%→3月:3.0%
3年後 12月:1.4%→3月:1.8%→6月:2.2%→9月:2.3%→12月:2.2%→3月:2.3%
5年後 12月:1.5%→3月:1.8%→6月:2.0%→9月:2.2%→12月:2.7%→3月:2.8%

はい、ジジイのラップバトル(ってネタがマニア過ぎて分かりませんねすいません)の如く何度でも言うのでありますが・・・・・・・・・・

日銀はかつて、この短観の企業物価見通しが中々上がらないことを理由に「インフレ期待の引き上げに失敗している」と批判されたときに、「そもそも大企業は市場のエコノミストなどの見解や、金融市場の期待インフレなどに影響されやすい、一般個人などの社会全般の人たちの期待インフレに近いのは中小企業の期待インフレである」という説明をおっぱじめまして、置物緩和政策が不発ではありません、というのを言い訳していました。

ところが、その後中小企業の期待インフレが下がったのを見ても追加緩和政策を打たず、昨年からは中小企業の期待インフレがバンバン上昇していたし(昨年の3月短観、つまりウクライナ戦争がおっぱじまったばかりの時期の調査でいきなり2%にジャンプアップしましたよね)大企業含む価格判断も上がりだしましたけど、政策を意地でも微修正すらしない、という始皇帝黒田あるいは胡亥黒田のご意向に沿って丸無視を決めこむ、という何のために膨大な入費掛けてこの調査やってるんだよというようなプレイをしております。

でまあ最近はこの短観の企業物価アンケートの話すら極力触れないようにしているという見苦しいムーブを続けているのですが、とにかく今回の短観を見ると企業の価格設定や物価見通しが十分に強く推移する中で、なにがどうなると今年度半ばから物価の伸び率が急減するのか、(ついでに言えば月末に出ていた東京都区部CPIだって昨日ネタにしたように十分に強い内容が続いていて、物価の伸びが大失速する、という理由を説明する方が難しくないですか????と思うのだが)黒田様に阿った物価見通しをいつまでお前ら出す積りだよこのスットコドッコイがという風に思う訳ですが、今月末の展望レポートがとにかく今から楽しみでありまして、展望レポートでの鮫島伝次郎ムーブが起きるか起きないか楽しみにしたいです(陰湿)。


・業況判断DIですが製造業が「期待外れ」の連発で非製造業は「期待以上」とな

         (12月短観)      (3月短観)
         現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業   +7→+6       +1→+3 
製造業中堅企業  +1→▲2       ▲5→▲4        
製造業中小企業  ▲2→▲5       ▲6→▲4

非製造業大企業  +19→+11     +20→+15
非製造業中堅企業 +11→+6      +14→+8
非製造業中小企業 +6→▲1       +8→+3

製造業が12月短観時点で期待していた先行き見通しをまるで達成できていなくて、非製造業は12月時点よりも悉く強くなっている、という形になっているのが中々お洒落。非製造業の先行きはまだ今回対比低く出ているのですが、これは基本的に強い時にはありがちな傾向で、これが逆に上向き予想になっているとバブルを心配しないといけないというのが基本仕様なので、まあ非製造業が強い訳でして、サービス価格ガーとかいう言い訳はそろそろ通用しない(多分最後は日銀「帰属家賃が上がらんので物価が上がらん」と言い出して「家賃が上昇すべきとか庶民イジメにも程がある」とメディアに叩かれるに100ペリカと思ったがよく考えたらもう黒田はいなくなるのでありました)のですがどうしましょうかねえ。


・・・・・・・などと書いてたら時間が無いのに気が付きまして、残り一部明日に回します(すいません)けど、

・販売価格判断
        (12月短観)      (3月短観)
        現状→3月予測      現状→6月予測
製造業大企業  +41→+34       +37→+34
製造業中小企業 +38→+41       +37→+42

非製造業大企業  +28→+28      +29→+27
非製造業中小企業 +26→+30      +27→+34

さっきの販売価格の中長期見通しも相まって考えると、なんか別に価格転嫁の動きって循環物色じゃないけど循環的に続いていますよね、という風に思ってしまうのですが。


・仕入価格判断
        (12月短観)      (3月短観)
        現状→3月予測      現状→6月予測
製造業大企業  +66→+56      +60→+52
製造業中小企業 +76→+70      +72→+69

非製造業大企業  +53→+49     +48→+44
非製造業中小企業 +60→+61     +60→+62

何気に製造業中心に仕入価格判断下がり気味で、輸入価格の問題と電力等のコストの問題あるのかなとは思ったけど、こっちはこれでも販売価格はちゃっかり強気なのは、賃金の問題とかもあるでしょうけどまあ悪い話じゃないよねと思いましたです。







2023/04/03

お題「オペ紙は上下にレンジ拡大という配慮?プレイ/東京都区部CPI/FOMC会見から(ファイナル)」

期初ですな、我社会人??年目と思うと最早何が何だかわかりません(><;

〇オペ紙はレンジというのが意味なくなる規模のレンジ拡大とかもうね

・上下にレンジ拡大、という実に日銀らしい姑息な技を使ってまいりました

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230331c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2023年4〜6月)

-1年:1500、1回、(これまでと同じ)
1-3年:3500-6500(4250-5750、4回)直近買入額4250
3-5年:4250-7250(5000-6500、4回)直近買入額5000
5-10年:4750-8750(5750-7750、4回)直近買入額5750
10-25年:1000-5000(2000-4000、4回)直近買入額2000
25年-:500-3500(1000-3000、3回)直近買入額1000
物国:600億円、1回、(これまでと同じ)
変国:300億円、4月のみ実施(これまでと同じだが5月償還なのにやる意味あるのか??)

ということですが、今回は直近の買入額が全年限下限になっていたので、下限を拡大するかと思ったら案の定上限も拡大する、といういつもの日銀の姑息プレイが出まして、これは何でやってるのかというのは皆様ご案内の通りで、「下限を引き下げ」だけヘッドラインにされるとYCC見直しの思惑とか言われるのが好ましくない、ということなのですが、そもそも12月の数字自体が10年レンジ拡大を受けて上にサバ読んで作ってるレンジなのにその上限を更に上げて上から下までのレンジを2倍位の幅にする(超長期はもっとひどいが)とかもうレンジの意味がないものを出してくるんじゃないよ、という感じではありますな。

まあ何と申しますか、金利も下がったし買入減らしても良いとは思ってるんでしょうけれども、こういう所の姑息さが何とも日銀らしくて涙がちょちょ切れてしまいますというかこの買入に関してもYCC見直しと共に見直してもうちょっとこう市場への介入度を下げていくようにしていかないといつまで経っても市場が正常化への道を辿ってくれないとは思うのですよね。まあ一応今週いっぱいまでは黒田の目が黒いから「植田体制に向けて国債買入減額へ」とかそういうのをニュースにされてしまうと、老害からボコボコにされるから大人しくしてるって事なんでしょうけど。

まあアレです。レンジを堂々と下方シフトさせないで(どうせ金利急騰したら臨時輪番打てば良いだけ、というのは既に12月以降で散々やっている訳ですし)こうやって上下に拡大というのに出て来る時点で金融市場局様の「察して下さい」という涙目な雰囲気は良く分かるのですが、政策というのはもっと正々堂々と進めていくべきものなんじゃないですかねえとは思うのですけど姑息なのが日銀クオリティと言ってしまえばまあそうかなとも思うのでありました。

ちなみに今月の輪番1発目は5日で、これは黒ちゃんの目が黒いうちなので、5日の輪番を前回と同額で打ってきて10日の輪番から減額とかして来たらマジで受けるんですけど、金利がこれだけ下がってるのに輪番減額でこんなに配慮(姑息を連発するのもかわいそうになって来たので言い方を変えてみた)するのって何なんでしょうねという感じで、コロナの前には何だかんだ言って堂々と買入を減らしまくっていたあの頃に比べて何がどう変化したのでしょうかねえというお話でもあります。


・雑談ついでにYCC修正のタイミングについて愚考してみますが

まあこの配慮プレイなんですけど、さっきは黒ちゃんの逆鱗にどうのこうのみたいな話をしましたけれども、もうちょっと真面目に考えますと「YCC修正への思惑が現実的な話なのかどうか」っていう面もある訳でして、うっかり輪番のレンジを下方にだけ拡大とかした日には、さっそく「植田日銀になったらあっさりとYCC見直し(または解除)」という話自体は現実的だし、先般の国会答弁で内田副総裁が思いっきり言っていたように「YCC修正は事前織り込ませができない」ということもありますので、これは逆に言えば「YCC修正を織り込ませるような動きをするのはダメ!ゼッタイ!!」というお話になる訳ですな、うんうん。

堂々と輪番減らしてた時代って、まあゆうて「YCCには無理あるんじゃね」というのはあるにしましても、物価は全然アガランチ会長なので政策の出口とかそういうのが一切現実感無かった時でしたので堂々と減らしても別に変な思惑が台頭する心配もなかったので堂々と削減できた訳でして、今回このような配慮をしたのは、裏を返せば「YCCの修正または解除が現実的に近いからオペで変な動きをしにくい」という事で、そう考えますと、実は5日と10日の輪番が減額されない方が却って怪しいという読み筋を提唱しておきます。

恐らくこういう配慮をしているということは、それこそさっき書いた「5日同額、10日減額」とかは露骨にYCC見直しますよのメッセージになってしまいますので、まあそういうのはやらんで、今月減額するなら5日の輪番から減額、というかそもそも3月の最後の輪番をレンジの下限以下で実施して誰も困る人いなかったのだから、そこでやっておけば良かったと思うのですよね。なんか4月になって期も変わったことだし改めて売り直し、って感じの横綱の値動き見てますと。

まあいずれにしても、今月これで輪番減らすとは思うのですが、減らさなかったら逆に怪しいと思った方がエエンチャウノとは考えましたです、はい。


〇東京都区部CPIも強いですの

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-t.html
2020年基準 消費者物価指数 東京都区部 2023年(令和5年)3月分(中旬速報値)
2023年3月31日公表

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消費者物価指数
東京都区部 2023年(令和5年)3月分(中旬速報値)

◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として104.4
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.0
前年同月比は3.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は103.2
前年同月比は3.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇

・・・・・・ということで、1ページ目の『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』を見ますと、コアコアの季節調整済前月比ってずーっと前月比プラス0.4%だの0.5%だので推移しておりまして、これ見ますと普通に「持続的な物価上昇感覚」ってなるよねと思うのであります。何か一応ヘッドラインやコアが前年同月比の伸び率が鈍化したという方が何故かベンダーヘッドラインになっておりましたが、コアコアは伸び率高めてますし、前月比も今申し上げたように上がっている訳でして、いや真面目な話日銀去年の今頃「コアコアが大事ですから!」って言ってたじゃんアの話は何処に逝ったのと思いますし、なんでこれで黒ちゃんが勝利宣言をしないのかが全く持って意味わからんのですよね。

こういう時はちゃんと調査統計局が「基調的な物価は着実に上昇している」という話をしていただきたいところなんですが、何せ黒田日銀の末期においては「政策を変更しない」というのを党是として、そこから経済物価の現状認識と先行き見通しを作っていたとしか思えないような状況でしたけれども、植田総裁になった途端にこれが急にひっくり返って「物価の基調も強まってきたので、今のままだと適切な緩和を超えた規模の緩和になっていて良くない」とか言い出しかねないのですが、まあ今月の展望レポート、その前に本日は短観がありますが、久しぶりに短観もかなり真面目に注目されてきてもおかしくないなと思うのでありました。


〇パウエルFOMC会見ネタをあと少々

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20230322.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
March 22, 2023

すっかり引っ張って月跨いでしまってすいませんすいません。

・財政支出とインフレに関する質疑に政治的に余計な摩擦をだしたくないというのを感じる

質疑応答ですが、ちょっとこのシリコンバレー銀行方面を避けてネタにしております(そっちはまだプルーデンス方面の読み込みがアタクシ足りないので読み込んでから別途やります)。

『EDWARD LAWRENCE. Thank you Mr. Chairman. Edward Lawrence from FOX Business. Inflation has been rather sticky, so do you need help from the fiscal side to get inflation down faster? 』

まあこれは「そんなことは考えてない」って回答をさせる質問ですよね。

『CHAIR POWELL. We don't assume that. We don't give advice to the fiscal authorities and we assume that, we take fiscal policy as it comes to our front door. Stick it in our model along with a million other things, and we have responsibility for price stability. The Federal Reserve has responsibility for that. And nothing's going to change that. So, and we will get inflation down to 2 percent in time. 』

というのが前座(インフレ抑制のために財政当局に何か助力をお願いすることはないっす、と言わせる)で、

『EDWARD LAWRENCE. And if I can follow on that, but they're working, the spending that's happened is working against what you are doing, right? So it's prolonging inflation.』

質問はどうみてもこれが本命ですね、財政バカスカ出てるからいんふれちょうきかしてるんでネーノと。

『CHAIR POWELL. You have to look at the impulse from spending, because spending was of course tremendously high during the pandemic and then as the pandemic programs rolled off, spending actually came down, so the sort of fiscal impulse is actually not what's driving inflation right now. It was at the beginning perhaps, part of what was driving inflation, but that's not really the story now. 』

ここはパウエルさん、財政当局に気を使った回答をしていて、「一部にはそういう面もあるかもしれませんけれども、それ自体がストーリーとは言えません」ということで、バイデンがバカスカ財政出すからインフレが下がらん、というネタに対しては回答を回避していまして、この辺政治的にSVBの問題もあるから変に政治方面を刺激したくない、という思いがあるんじゃないかと感じましたがどうでしょうかね。


・利上げサイクルのケツについて

『CHRIS RUGABER. Thank you, Chris Rugaber at Associated Press. The SEP suggests one more rate hike as does the change in the language in the statement, in which suggests that you're perhaps nearing the end of a cycle of rate hikes. Do you feel though that if inflation remains high, you'll be able to resume additional hikes as needed or have you somewhat tied your hands here with these signals about rate hikes coming to an end? Thank you.』

SEPやステートメントを見ると利上げサイクルの終了近いようですが物価が下がらなくても利上げサイクルは終了ってことですか、とこれもまあ挑発系の質問ですね。

『CHAIR POWELL. No, absolutely not. No, if we need to raise hike, raise rates higher, we will. I think for now though as I’ve mentioned we see the likelihood of credit tightening. We know that can have an effect on the macroeconomy, on demand, on labor market, on inflation, and we're going to be watching to see what that is. And we'll also be watching what's happening with inflation and in the labor market. So, we'll be watching all those things and of course we will eventually get to tight enough policy to bring inflation down to 2 percent. We'll find ourselves at that place. 』

あくまでも見通しは今の話で将来状況が変わって物価の引き下げにもっと必要な事があればやりますよ、という話をしていまして、結局の所「この先さっぱり分からんのだが物価が下がらんようなら金融引き締めは頑張らないわけにもいきません」という話になると思うのですよね。

ということなので結局は物価なんですけど、その中でもアホのようにタイトなままの労働市場の問題があるので、そっちが緩和されないと中々物価が下がりにくくて、よって引き締めが続くということになりそうなので、雇用指標も物価並みに重要な話になってきている感じはしますね(個人の感想です)。


・QEなのかどうかという質疑

『KYLE CAMPBELL. Hi Chair Powell, thanks for taking the question. Kyle Campbell with American Banker. I have a couple questions about the balance sheet. First of all, I'm curious at what point the financial supports that the Fed is extending through the discount window and through its enhanced lending facility, might be at odds with the objective of reducing the balance sheet. And I'm also curious what your thoughts are on the, not just the availability of reserves but the distribution of them throughout the banking system and at what point you might be concerned about it being scarce for certain banks. 』

ちょっと前にアタクシも雑談で書いたのですが、今次の銀行アイヤー対応において予備的資金需要が高まった結果として、連銀貸出やら連銀貸出の別バージョンの1年物貸出に関して、残高がどどーんと増えたことを増えた当初にQEだヒャッハーとか言ってた(まあ最近は連銀貸出が減ったのを受けて危機回避ヒャッハーと言ってるのだから世話はないが)件に関する質問ですね。

回答は当然の回答ではあるのですが、その辺の整理がちゃんとできていない人は読んでおいた方が良いネタです。

『CHAIR POWELL. So people think of QE and QT in different ways, so let me be clear about how I'm thinking about these recent developments.』

『So the recent liquidity provision that has increased the size of our balance sheet, but the intent and the effects of it are very different from what we, from when we expand our balance sheet through purchases of longer term securities.』

LSAPにおけるバランスシート拡大と、今回のバランスシート拡大の意味は違うよ、ということで、まあごく基本的な説明をしているのですが、混同する方は読んで味噌という話です。

『Large scale purchases of long-term securities are really meant to alter the stance of policy by pushing down, pushing up the price and down the rates, longer term rates, which supports demand through channels we understand fairly well.』

こちらがLSAP。

『The balance sheet expansion is really temporary lending to banks to meet those special liquidity demands created by the recent tensions, it's not intended to directly alter the stance of monetary policy.』

こちらが今次のバランスシート拡大。

『We do believe that it's working, it's having its intended effect of bolstering confidence in the banking system and thereby forestalling what otherwise have been an abrupt and outsized tightening in financial conditions. So that's working.』

『In terms of the distribution of reserves, we don't see ourselves as running into reserve shortages, we think that our program of allowing our balance sheet to run off predictably and passively is working. And of course we're always prepared to change that if that changes, but we don't see any evidence that that's changed. 』

ということで、ランオフは(インフレ対策の一環なので)これはこれでやりますし、連銀貸出減ったからといってタイトニングじゃないよという話で、まあ基本ちゃあ基本なのですが、良い質疑応答でありました。


#まあこの辺で会見ネタは終わりという事で