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2023/05/31

お題「国会でまた植田さん説明してるんだが説明が微妙にブレてないか?/今さらですがウォーラー理事のタカ的な先週の講演から」

あらまあもう5月終わりですかorzorz

〇総裁の国会答弁があったり三者会合があったりした訳ですが

・植田さんの説明ってブレブレで見てらんないのと報道のトーンがどんどん植田さんに冷たくなってきている気がする件について

https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2XL031
2023年5月30日11:20 午前
物価見通し、今年度後半や来年度以降「かなり不確実」=日銀総裁

『[東京 30日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は30日、参院財政金融委員会で、今年度前半に比べれば今年度後半、来年度以降の物価見通しは「かなり不確実なものだ」と指摘。賃金が継続的に上昇していく中での持続的・安定的な2%物価目標の達成には「まだ間がある」とし、粘り強く金融緩和を続けていく方針を示した。』(上記URL先より、以下同様)

って物価見通しが不確実なのに何であんな決め打ち説明してそれを根拠に2%達成してないから政策を1ミリも修正しませんし拙速に修正したら物価目標行かなくなるんだから修正しませんとかやる気が全くない言い方になるんでしょうかね、と思ったらこの有様である。

『植田総裁は物価上昇率について「23年度半ば以降にかけてかなりはっきり下がっていく」と話した。日銀はいったん上昇率が縮小した後、賃金上昇などで再び上昇率が高まっていくとの見通しを置いていると説明した。』

「かなり不確実」なのに「23年度半ば以降にかけてかなりはっきり下がっていく」になるんだよお前説明が全然整合性取れてねえわという話でありまして、年同後半以降の動きがどうなるか非常に分かりにくいので現状は政策の修正はしないで状況を見ていく、とかいう説明するんだったら話はまだ理解できるのですが「先行きがかなり不確実」なのに何で「23年度半ば以降にかけてかなりはっきり下がっていく」とか言い出すその理屈が学者とは思えない奇天烈理論でお父ちゃんは情けないよ。

まあここの部分も「23年度”半ば以降にかけて”」とか言い出すし、「2%を割り込む」って言わなくなっているし、ドンドン説明が怪しくなっている訳でして、まあこれって年度後半2%割れという説明が怪しくなってきた(電力料金の上げとガソリン等の負担緩和策の縮小だけでも随分上昇しちゃうでしょう、なおそれは普通の皆様はほぼ確実に起きることとして物価見通しを立てていた筈なのですが、何故か日銀様に置かれましては4月展望で電力料金値上げを考慮に入れないなどのお手盛り見通しを立てておられるのはご案内の通り)のと、4月展望レポートのMPM会見で言ってた「25年度の見通しに自信がないから2%達成ではありません」という最早無茶苦茶としか言いようがない説明を遂に2025年度どころか今年の見通しにまで持ち出してくるという姑息なプレイになってきまして、益々この人たちの武蔵坊弁慶立ち往生シナリオが見えてきた感が強いっす。

てかですね、これ日経もこんな感じの記事だったと思うのですが、メディアと致しましても、植田さんの説明が「結局お前は何を言いたいんだ&ついこの前説明してた事と話のトーンが違くね??」という状況になってきているのにイラっとしてきているんだろうなあ(個人の希望的観測です)という風情が報道のトーンから滲みでてきているように見えるのがチャーミングで、ロイターさんが今回「かなり不確実」のヘッドライン書いておいて「かなりはっきりと下がっていく」をきっちり記事にしている辺りに、植田さんったら就任時あんなに朝野を挙げて好意的だったという資産があったのに、早くも食い潰してしまってるんじゃないかと思う訳で、この調子でやってるとメディアの植田さんに対する対応が一段と悪化して植田日銀今後のコミュニケーションが益々難しくなりそうですが、まあ植田さんの自業自得にも程があるのでざまあ味噌汁以外の感想はありません。


・早くも三者会合でヘイヘイピッチャービビってるよビビってるよ!!!

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230530-OYT1T50183/
円安で財務省・金融庁・日銀が3者会合…140円台水準について、財務官「変動幅が重要だ」
2023/05/30 20:39

『財務省と金融庁、日本銀行は30日、金融市場の動向について幹部が意見交換する3者会合を財務省内で開いた。足元で1ドル=140円台まで円安が進んでおり、為替の動向について話し合ったとみられる。』(上記URL先より、以下同様)

あらそうですか、というかこのヘッドライン出るまでのドル円ちゃんって東京の午後からなんかホイホイとドル高になってきて140円90銭近くまでドル高ちゃんになってて、まあそれもナンジャソラって思いながら見てたら三者会合やるんでよろしくニキーのヘッドラインが出たら140円台前半に押し戻されてましたな(その後はあんまり真面目に見てないので知らん)。

『財務省の神田真人財務官は会合後、記者団に対し、「為替相場は過度な変動は好ましくない。必要があれば適切に対応していく考えは変わらない」と強調した。140円台の水準については「特定の相場のレベルに着目しておらず、変動幅が重要だ」と指摘した。』

変動のスピードではなく幅とおっしゃいますかという所ですが、何はともあれ早速140円に乗ってヘイヘイピッチャービビってるというのが出てしまった訳ですが、そんなこと言ったって植田大先生様が「政策の修正はしません」ってすたんすだし、なんなら今の物価上昇は国民の負担になっているというのに物価目標達成してないから緩和を続けるし修正なんて以ての外という事で、日銀様の目標達成のために国民は〇ねと言わんばかりの珍説明をおっぱじめるんですから、そんな中で円安に進むなという方が無理難題なお話でもある訳でして(と言って実際問題YCCの長期ターゲット修正したら円安止まるのかというとこれまたムツカシイ問題な気もするんだがそれはさておきまして)何ちゅうかこの就任1発目の決定会合で黒田路線の継承をしたら1か月で早速為替市場の動きに対して泣きが入るとか黒ちゃんよりも残念な展開になってきておりまして、甚だ遺憾の極みですがこいつらが泡吹くのはオモロイからもっと泡吹けバーカバーカとも思ってしまう面がありまして、まあ円安(ドル高というより円安)傾向が強まる中で政策を漫然と秋口まで引っ張れるんでしょうかねえというのも意識されてまいりましたな、と個人の感想としては思います。



〇オペ紙などが出てたのでメモ

・何で四半期末の日に四半期末跨ぎで輪番やるんだよ・・・・・・・

うーんこの。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230530c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定
(2023年4〜6月)[一部変更]

回数は前回と同じで、レンジも弄っていない(もともとクッソワイドなレンジですし)のですが、今回のオペ日程みてげげーと思ったのは主要年限の買入を行うのが殆ど金曜日に集中していることですな。何か週末に材料があった時にポジション調整が金曜までできませんなとか思いましたし、2週の金曜って先物当限取引最終日の2営業日前になるから限月交代ありそうだし、なんですかねえとは思ったのですが、一番アレなのは30日に輪番ぶっこんでいることですな。

いやあのですね、30日って四半期末で、30日に輪番オファーしたら受渡が四半期末を跨ぐじゃんという話で、これ以前も半期末の所で半期末跨ぎで輪番ぶっこみやがって、日銀の国債買入額の集計とかするのに面倒だったことがあるのですが、バランスシートの関係上四半期末跨ぎで未約定決済を増やしたくない人とかも世の中居るでしょうから、どうしてもそこじゃないと日程的に無理ってんだったらそらまあ仕方ないのですけれども、別に日程に余裕があるなら四半期とか半期とか(もっと言えば月末もアレなんですが)の末跨ぎの輪番ってのはちょっとどうなのとは思うんですけどね。


・チーペストの補完供給措置とかのいつものは限月交代に伴い9月限方面に拡大

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230530e.pdf
チーペスト銘柄等にかかる国債補完供給の要件緩和措置について

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230530d.pdf
チーペスト銘柄等の連続指値オペの実施について

こちらは先物当限が月内に9月限に移行するのでそれに対応して従来通りの措置、ということですな。まあしかしこのチーペスト(と10年もそうですけど)の指値オペって「明らかに応札が見込まれない場合」はオペ実施しなくても良い事になっている筈なんですが、相変わらず何も考えずにオファーが毎日実施されていますなあと不思議ちゃんに思うのでありました。


〇これまた先週水曜の講演で思いっきり出遅れていますがウォーラー理事の講演

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20230524a.htm
May 24, 2023
Hike, Skip, or Pause?
Governor Christopher J. Waller

At the 2023 Santa Barbara County Economic Summit, University of California, Santa Barbara Economic Forecast Project, Santa Barbara, California (via webcast)

小見出しが
『A Very Tight Labor Market』
『Inflation Is Stubbornly High』
『Uncertainty about Credit Conditions』
『Implications for Monetary Policy』

ということでまあ大体その辺でお察し説はありますが、まずは手抜きなので金融政策のインプリケーションの所から拝読。

・経済物価指標単体で見たら6月利上げは適切とな

『Let me turn to the implications for monetary policy. There is a lot of discussion about the next step for policy. There are three options: hike, skip, or pause. Let me outline reasons why each of these options may be appropriate.』

スキップとポーズは別扱いなのね(題名もそうなっていましたが)。

『One might lean toward hiking by focusing on the economic data and interpreting it to suggest that inflation and economic activity are not consistent with significant and ongoing progress toward the FOMC's 2 percent inflation goal.』

物価がクソ高くて経済見通しから考えても先行き2%に下がるという見込みになっていないから利上げ継続すべき、という意見に対して・・・・・・・・・・・

『Based solely on the data we have in hand as of today, we are not making much progress on inflation. If one doesn't believe the incoming data will be much better, one could advocate for another 25-basis-point hike as the appropriate action in June.』

なるほど経済物価状況のデータを見ると全然物価が落ち着く感じになっていないから、経済物価データだけでみたら6月の利上げは適正ですよ、って思いっきり言ってるんですね。でもってこの後はソウジャナイの話になる訳で、


・銀行あばばばばーの影響によるクレジットコンディションを見極めてそんなに問題拡大してなかったら7月利上げとな

『Alternatively, one might view the current and incoming data as supporting a hike in June but believe that caution is warranted because there is a high level of uncertainty about how credit conditions are evolving.』

一方で、足元には「high level of uncertainty about how credit conditions are evolving」があるので注意が必要である、ということを考えなければいけません、と来まして、

『Another hike combined with an abrupt and unexpected tightening of credit conditions may push the economy down in a rapid and undesirable manner. This possibility is the downside risk of an additional rate hike in the current environment.』

ということで以下ご案内の話しかとは思いますが俺様備忘用に鑑賞していきますと、6月利上げしてそれによって想定を越えるようなクレジットコンディションのタイト化が起こって景気を大きく下押ししたらアカンじゃろ、という話をしておりまして、

『If one is sufficiently worried about this downside risk, then prudent risk management would suggest skipping a hike at the June meeting but leaning toward hiking in July based on the incoming inflation data. 』

『There is a little over a month between the June and July FOMC meetings, and during that time we will learn more about how credit conditions are evolving.』

『Over four months will have passed between the Silicon Valley Bank failure and the July meeting. By then we will have a much clearer idea about credit conditions. 』

6月はスキップ(ポーズではない)して7月のFOMCまでに環境がどう変化するのかを見るのが吉、という話で、SVB飛んでから4か月とかになるしもうちょっと判断付くでしょう、という説明ですわな。

『If banking conditions do not appear to have tightened excessively, then hiking in July could well be the appropriate policy.』

で、銀行セクターの状況がそこまでタイト化しないんだったら7月利上げが適切、という条件付き予告ホームランをぶっこんでおりますわな。


・6月利上げの含みも残しつつそもそも6月は「1回パス」であって「利上げ停止じゃない」そうですな

『Lastly, one might want to pause hikes at the June meeting, meaning that the target range is at its terminal rate, if the current stance of policy is thought to be enough to bring inflation down over time.』

最近は政策金利が十分に高くなっているということで「ポーズ」を主張する向きもありますな、と来まして・・・・・・・・・

『Between policy lags and possible tightening credit conditions, the current stance of monetary policy may be seen, at that point, as sufficiently restrictive to move us toward the dual mandate. From this viewpoint, the policy rate is high enough and we simply need to hold it there to bring inflation down toward our 2 percent target.』

政策のラグとかも考えた場合、今の金利水準は2%達成に向けて十分な水準まで既に上がっているんじゃないか、という観点からしたら確かに物価が2%に向けて下がっていくまで今の水準で「ポーズ」するというのはアリエール、とはいうのですが、

『I do not expect the data coming in over the next couple of months will make it clear that we have reached the terminal rate. And I do not support stopping rate hikes unless we get clear evidence that inflation is moving down towards our 2 percent objective.』

今後1、2カ月のデータを見ても恐らくは政策金利が十分に引き締め的であると確信できるようなデータにはならないと考えているし、物価がもっと明白に2%に向けてさがっていくようではないと、私は「ポーズ」には賛同しませんな、と来ましたわ。

『But whether we should hike or skip at the June meeting will depend on how the data come in over the next three weeks.』

ということなのでそもそもが「引き上げ」か「1回パス」であって「一旦停止」じゃないそうです。でもってどっちなのかは今後3週間のデータ次第と。

『We will get additional labor market data, with some information about wages, and additional inflation numbers in the next few weeks that will continue to shape my view on where we stand relative to the FOMC's dual mandate. During this time, I'll also be reviewing data on credit conditions to evaluate how much potential tightening is coming from the banking sector.』

この間に経済データとクレジットコンディションを見極めていきます、とした後最後がこれである。

『Fighting inflation continues to be my priority. We worked very hard over the past year to quickly raise the target range for the federal funds rate from near zero to about 5 percent. While we are seeing some tentative signs of cooling in the labor market, I am determined to continue to use our policy tools as needed to appropriately bring inflation down to 2 percent.』

ということでインフレファイターをアピっているのでそらまあ先週後半米債反応するわな(債務上限とか他の諸々もあったと思うけど)というお話ではありました。






2023/05/30

お題「金研国際コンファランスのお題は構造変化への対応的なものになっていますね/FOMC5月議事要旨から

ワロリンチョwwwwwww
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230529/k10014082171000.html
岸田首相長男の翔太郎秘書官 来月1日付け交代へ 事実上の更迭
2023年5月29日 19時15分

『岸田総理大臣は、長男の翔太郎秘書官について、去年、総理大臣公邸の公的なスペースで親戚と写真撮影するなど、不適切な行動をとった責任を取らせたいとして、来月1日付けで交代させることを明らかにしました。事実上の更迭となります。』(上記URL先より)

某ガースーの息子よりは程度がマシというか程度が低いアレだった気もしますが、地元で地道に足を棒にして活動するところから始めるしか無いんちゃいますかね。

で、個人的ショパンの事情でちょっとここもと時間が取れなくて色々と渋滞しちゃってるのに植田ちゃんはアタクシにしょうもない燃料を投下するもんだからアレでしたが、ショパンの事情は成敗出来てきたので鉢巻き捻じり直してまいりたいと存じます(汗)。


〇金研初夏の国際コンファランスが31日から開催です(ただし参加者以外非公開)

https://www.imes.boj.or.jp/en/conference/2023confsppa.html
023 BOJ-IMES Conference:
Old and New Challenges for Monetary Policy
May 31 - June 1, 2023
Institute for Monetary and Economic Studies, Bank of Japan
- Program -

ということで先週木曜に式次第が出ていましたな、式次第引用します(ってこれ金研の日本語
ページの筈なのだが何故英語)

しかしこのコンファランス、お題が既に「Old and New Challenges for Monetary Policy」となって
おりまして、まさに先般公共放送Eテレちゃんで山口廣秀元副総裁が「変化の時代の金融政策」って
思いっきり(黒田とも植田ともいわなかったけど)黒田路線をそのまま延長してる植田路線に対して
物言い申しますってやってるわけでして、チェンジも気にせずオールドチャレンジだけ必死こいて
やってる日銀本体に対する金研のイヤミだったら感動しますが、一番恐ろしい妄想は現在の黒田
路線継承、というか黒田路線よりも悪くなっている部分がある(特に物価目標に関する達成の
基準がどんどん曖昧になっていて、物価目標が何のためにあったのかというのがハチャメチャに
なっておる辺りなど)というスチャラカ路線を爆走している植田さんが、そーゆー自己認識一切なく、
「俺様は新時代の金融政策運営を始めている(キリリッ)」とか認識してたりしたとしたら更に
ドイヒーなお話ではある。

#まあ植田さんの4月のあのアレとかそういうのの前に段取りは終わっているでしょうけど

式次第。

31日初日が明日の水曜なのですが、9時から開会のご挨拶が植田総裁からありますね。

Wednesday, May 31, 2023
9:00 Opening Remarks
Speaker:
Kazuo Ueda, Bank of Japan

9:20
Mayekawa Lecture: Perspectives on r and r*
Chairperson: Chang Yong Rhee, Bank of Korea
Lecturer: Maurice Obstfeld, University of California, Berkeley

前川講演はRスターの話しか。

10:30
Coffee Break

11:00
Session 1: The Expected, Perceived, and Realized Inflation of U.S. Households before and during the COVID19 Pandemic
Chairperson: Masaaki Kaizuka, Bank of Japan
Paper Presenter: Michael Weber, The University of Chicago
Discussant: Meredith Beechey Osterholm, Reserve Bank of Australia

12:05
Lunch

13:25
Keynote Speech: The Forward Guidance Trap
Chairperson: Peter KaZimir, Narodna banka Slovenska
Speaker: Athanasios Orphanides, Massachusetts Institute of Technology

ちょwwwwwwフォワードガイダンストラップとかガイダンスを益々意味不明な代物にしてグダグダにしている
日銀に対する砲撃になりそうなキーノートスピーチ。

14:15
Break

14:20
Session 2: Greater Than the Sum of Its Parts: Aggregate vs. Aggregated Inflation Expectations
Chairperson: Peter KaZimir, Narodna banka Slovenska
Paper Presenter: Raphael Schoenle, Brandeis University
Discussant: Hajime Tomura, Waseda University

ワセダユニバーシィティから別にあの方が御登壇するような事はありませんねそら無理ですもん。

15:25
Coffee Break

15:45
Session 3: Policymakers' Uncertainty
Chairperson: Tao Zhang, Bank for International Settlements
Paper Presenter: Michael McMahon, University of Oxford
Discussant: Mototsugu Shintani, The University of Tokyo

16:50
Break

16:55
Session 4: Seasonal Cycles and Synchronization of Price Changes in Japan
Chairperson: Tao Zhang, Bank for International Settlements
Paper Presenter: Nao Sudo, Bank of Japan
Discussant: Mark Wynne, Federal Reserve Bank of Dallas

須藤さんのペーパーを基に物価の話があるんだ。

18:00

18:10
Buffet Dinner

ここまで見て今更気が付いたんですが、今回はオンラインじゃなくてちゃんとビュッフェの懇親会があるんですね。

で2日目。

Thursday, June 1, 2023

9:00
Policy Panel Discussion: Part A
Moderator: Athanasios Orphanides, Massachusetts Institute of Technology
Panelists: David Altig, Federal Reserve Bank of Atlanta
Andrew Bailey, Bank of England
Felipe Medalla, Bangko Sentral ng Pilipinas
Olli Rehn, Bank of Finland
Frank Smets, European Central Bank
Kazuo Ueda, Bank of Japan

これはまたベイリーとかレーンじゃない方のレーン(失礼な紹介方法)とか植田総裁とかのパネルですか。


10:30
Coffee Break

11:00
Policy Panel Discussion: Part B
Moderator: Markus Brunnermeier, Princeton University
Panelists: Aino Bunge, Sveriges Riksbank
Adam Glapinski, Narodowy Bank Polski
Pierre-Olivier Gourinchas, International Monetary Fund
Pablo Hernandez de Cos, Banco de Espana
Ryozo Himino, Bank of Japan

ここれ氷見野さん登場。

12:30
Adjournment

という式次第ですが、これ多分なんですけどインフレの所とかインフレ期待の所とか「構造変化」に関する論点ってきっと出て来る流れだし、キーノートスピーチの「フォワードガイダンストラップ」とかだって題名からして「従来の延長線上で物価のダイナミズムを考えて政策運営をし、更にガイダンス政策を使っていたことによって、構造変化が起きている事に気が付くのが遅れてしまい、ガイダンスがあることが却って政策のミスを誘発した」って話の構成になるのは大体読み筋だと思うのよね(とか偉そうに言ってますが違ったらゴメンよ)。

いいぞ金研もっとやれ、という感じですが、先般来ちょこちょこ出ているペーパーとかもそうなんですが、そもそも論として物価のダイナミズムが従来の延長線上でカバーできない部分が増えてきていませんか、って状況ですよって話はスタッフペーパーとか金研リサーチから出ている訳であって、そら勿論構造変化の中だからそうロバストな定量的分析というわけにはいかないのは当たり前なんだが、こういう構造変化しているような時の間違いが一番致命的な訳で、せっかくああいう研究もあるのに定性的にも全然そういう構造変化の可能性を丸無視したような見通し説明ばっかりしてるのあれ何なのと思う訳ですよ。

ともうしますのは、相場だって同じで大体長生きしているジジイは(自分で言うのも何ですが)構造変化が起きた時に「従来の延長線上」で相場張って致命傷負って退場することなく、構造変化に野生の勘なのか精緻な分析なのかは人によりけり(勿論幸運と野生の勘だけですアタクシは)ですけど、まあ何回か起きてる構造変化を乗り切らないと生き残らんわけでして、相場ちゃんですらそうなんですから、金融政策なんてもっとその構造変化への注意って大事じゃないのかよと思う訳です。

ま、金研だってこういうお題でコンファランスする位ですから、当然植田さんアホじゃない筈なのでそういうの考えている筈と信じたいんですけど、まあその辺は6月7月会合で政策変更すればめでたしめでたし、変更しなければ秋を迎えられずに物価か円安でボロクソに批判されて泣きながら政策見直しへの道、となるんでしょうなあと冷ややかに眺めております。





〇引き続き5月FOMC議事要旨から(すいません)

さっき申し上げたショパンの事情によりましてFOMC議事要旨とかウォーラー理事講演とか重要なネタが途中だったりかっ飛ばしているので6月政策祭りの前に追いつかねばならぬ。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20230503.htm(HTML)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20230503.pdf(PDF)
Minutes of the Federal Open Market Committee
May 2-3, 2023

引き続き逆順読み恐縮至極ですが、5月頭時点での現状認識の議論(を5月半ばに編集が入っているのだが)に関して確認しておくのは何かの役に立つとは思いますのでメモって参ります。


・リスク認識の記述を見るとFEDってこれ5月FOMC時点よりも経済物価に対して強気化してるだろうと思いました

『Participants noted that risks associated with the recent banking stress had led them to raise their already high assessment of uncertainty around their economic outlooks.』

5月頭の時点ではこのように銀行問題の影響がデカプリオという話が随所にありまして、じゃあこれがこの後どういう認識に変化していくのか、という辺りは(6月の利上げは無いんでしょうけど)7月以降の利上げするのかそのまま様子見地蔵に徹するのかの判断材料として重要なんでしょうな、とは思うのよね。

『Participants judged that risks to the outlook for economic activity were weighted to the downside, al-though a few noted the risks were two sided.』

経済活動のリスクに対しては、多くの人はダウンサイドリスクっていってるけど数名(a few)は上下あるで、と表明した、って記載のこの辺りとかは何かこういかにもって感じで、この議事要旨出したタイミングを勘案すると、5月半ば位までのアップデートを念頭に置いて編集してねえかって思っちゃいます(あんまり素直な読み方ではない)。

『In discussing sources of downside risk to economic activity, participants referenced the possibility that the cumulative tightening of monetary policy could affect economic activity more than expected, and that further strains in the banking sector could prove more substantial than anticipated. Some participants also noted concerns that the statutory limit on federal debt might not be raised in a timely manner, threatening significant disruptions to the financial system and tighter financial conditions that weaken the economy.』

ダウンサイドリスクは「利上げの継続的な効果が思ったよりデカプリオの場合」「銀行セクターの更なる(further)制約が思ったよりデカプリオの場合」とあって「連邦政府債務上限問題で混乱が起きた場合」というのが一部の参加者から指摘、となっているのですが、銀行セクター云々ってしれっと「further」strainsってなっていまして、これよく見たら足もとで利上げ云々はよー分からんけど、銀行セクターと債務上限問題ってそんなに効きがデカいかというとそうでもなさそう、ということでダウンサイドリスク思ったほどでもなかったですねテヘペロとかそういう変化がアリエールというお話だったりするのがチャーミングだとアタクシは思いましたがどうでしょうか。


続いてインフレのリスクになりますが、

『Regarding risks to inflation, participants cited the possibility that price pressures could prove more persistent than anticipated because of, for example, stronger-than-expected consumer spending and a tight labor market, especially if the effect of bank stress on economic activity proved modest.』

インフレのリスクの部分に関しては、のっけから上振れリスクの話が出てきますし、しれっとここに「especially if the effect of bank stress on economic activity proved modest」と「特に銀行問題の進展が大したことなくて経済への下押し圧力がモデストなものに留まるとなった場合に」上ブレリスクアイヤーですね、みたいな話になっているのが大変にオシャンティーな訳でして、こちらの議事要旨出すときって近年のFEDはFOMC以降直近までの状況も鑑みて出し方を工夫している面が多々ありますので(個人の感想です)、バンクストレスが〜という条件を付けながら物価の上振れリスク(その要因はこれでもかと威勢の良いのを並べている)を出しているのは、やはり6月の利上げは打ち止めにしても、7月以降は分からんぜよ的な面を出そうとしている可能性はあるな、と思いました。

これ5月FOMC出た瞬間は「ああこれはいったん打ち止めですよただし年内利下げとかせんからなーって言いたいんだろうなあ」というトーンの方が強かったと思われますが、銀行問題が徐々に落ち着くにつれ、やっぱ物価がサガランチ会長になる方への意識の方が強くなってきました、って言いたいんとチャイマスカと思ったんですけどアタクシ。

とは言えこのあとはいつものハウエバーである。

『However, a few participants cited the possibility that further tightening of credit conditions could slow household spending and reduce business investment and hiring, all of which would support the ongoing rebalancing of supply and demand in product and labor markets and reduce inflation pressures.』

数名(a few)の参加者は、クレジットコンディションの更なるタイト化によって物価上昇圧力が軽減されるんじゃありませんかねえ、と指摘していますね。


・物価は上振れ(下がらない)を警戒、しれっと銀行問題がそんなに物価下押ししないとかいうのが入る

1個手前が物価の話。

『Participants agreed that inflation was unacceptably high.』

まあ物価の所はこうなるわな。

『They commented that data through March indicated that declines in inflation, particularly for measures of core inflation, had been slower than they had expected.』

3月以降のデータを見るとコア物価が見込みほどサガランチ会長である、ということをコメント、ということですが、最初にあるようにこれは一部じゃなくてFOMC参加者の総意(Participants agreedからのThey commentedだから)として示されておりますな。

『Participants observed that al-though core goods inflation had moderated since the middle of last year, it had decelerated less rapidly than expected in recent months, despite reports from several business contacts of supply chain constraints continuing to ease.』

『Additionally, participants emphasized that core nonhousing services inflation had shown few signs of slowing in the past few months. 』

財にしろコアサービスにしろ、財インフレは思ったほど下がらんしコアサービスは相変わらず強いし、との認識ですね。

『Some participants remarked that a further easing in labor market conditions would be needed to help bring down inflation in this component. 』

労働市場の緩和がもっと必要という意見が数名から出ています。

『Regarding housing services inflation, participants observed that soft readings on rents for leases signed by new tenants were starting to feed into measured inflation. They expected that this process would continue and would help lead to a decline in housing services inflation over this year. 』

レントの価格がやや落ち着いて来ていて、これが継続してくれれば住宅関連のインフレは沈静化しませんかねえ、という認識を皆さん示している、というのがしれっとここに入っています。

『In discussing the likely effects on inflation of recent banking-sector developments, several participants remarked that tighter credit conditions may not put much downward pressure on inflation in part because lower credit availability could restrain aggregate supply as well as aggregate demand.』

また別の話で、銀行アイヤー問題はそんなに物価に下押し圧力にならんのとチャイマスカという話がありますねえ。

『Several participants noted that longer-term measures of inflation expectations from surveys of households and businesses remained well anchored. Participants emphasized that with appropriate firming of monetary policy, well-anchored longer-term inflation expectations would support a return of inflation to the Committee's 2 percent longer-run goal.』

物価の最後はインフレ期待の話ですな。まあ基本的に上ぶれというか下がらんのを警戒しているのは当然ちゃあ当然。


・労働市場に関しては今後における需給の緩和を結構期待した書き方になっていますね

もう一個前の労働市場まで読んでおきますね。

『Participants noted that the labor market remained very tight, with robust payroll gains in March and an unemployment rate near historically low levels.』

労働市場もクッソ強いという認識から始まりますが、

『Nevertheless, they noted some signs that the imbalance of supply and demand in the labor market was easing, with prime-age labor force participation returning to its pre-pandemic level and further reductions in the rates of job openings and quits. In addition, some participants noted that their District contacts reported less difficulty in hiring, lower turnover rates, and some layoffs.』

こちらに関しては「労働需給が緩和するサインが見られる」という話が並んでおりますね。

『Participants anticipated that employment growth would likely slow further, reflecting a moderation in aggregate demand coming partly from tighter credit conditions. 』

また、クレジットコンディションのタイト化も寄与して経済の需要が緩和されると労働需要の伸びも緩和されるんじゃなかろうかという指摘もありまして、こっちは労働需給緩和期待の話が割と目につきますので、その点では今週末の雇用統計に注目というか、ややその辺緩和されましたですなあ的な指標が出るんですかねえ。

『Participants remarked that al-though nominal wage growth appeared to be slowing gradually, it was still running at a pace that, given current estimates of trend productivity growth, was well above what would be consistent over the longer run with the Committee's 2 percent inflation objective.』

一方でおちんぎんの伸びに関しては相変わらず強すぎ怪しからんとの認識。

『Participants generally anticipated that under appropriate monetary policy, imbalances in the labor market would gradually diminish, easing pressures on wages and prices.』

適正な金融政策によって今後この辺は改善、とかいうのはタダの呪文なのでどうでもよいですな。

ということで、労働市場に関しては需給緩和を結構当てにしている書き方になっているので、雇用指標がうっかり強かったりすると(ノ∀`)アチャーって話(さすがにこれを出した翌週末の雇用統計がクソ強いってのは無いような気もしますけど)になるって話かと思いました。

といった所でしょうか。




2023/05/29

お題「植田総裁の先週木曜のインタビューはコミュニケーション上の悪手じゃね?/東京CPIとか5月FOMC議事要旨とか」

めでたしめでたし(かどうか知らんが)
https://jp.reuters.com/article/usa-debt-idJPKBN2XJ015
2023年5月28日11:53 午前
米債務上限引き上げ基本合意、31日に議会で採決へ


〇植田総裁の共同インタビューは日銀公式に(異例になるけど)出した方がエエンチャウノという雑談

植田総裁の先週木曜日だかのインタビューなんですが、金曜日の感じですと各社とも自分の質問した話を中心に書いているっぽいので、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-25/RV7CR2T1UM0W01
政策変更、賃金よりも持続・安定的な2%見込めるかで判断−日銀総裁
伊藤純夫、藤岡徹
2023年5月25日 21:00 JST

日経ちゃんもうちょっと良い見出しがあって、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB254QA0V20C23A5000000/
日銀総裁「物価高、国民に大きな負担」  金融緩和は継続
金融政策
2023年5月25日 21:00 [有料会員限定]

ってのがありましたが、こんな感じで各社から出てくるヘッドラインが少しずつ違う、というのはこれコミュニケーションとして如何なものだったのかと思う訳ですよこれがまた。

先々週の内外情勢調査会の講演に関しても結局この人は何を言いたいんだというのが伝わりにくい謎講演な上に、何か初心者向けに説明しているようで説明していないというしょうもない感じが非常にアカンかったのは幣駄文でも申し上げた通りでございますが、今回の共同インタビューに関して言えば、やはり同様でキーとなるメッセージがどこにあるのかが訳分らん状態になっているんですよね〜。そのため報道各社としては自社として関心のある項目を質問するのですが、植田さんが両論併記的に説明するもんだから、報道のトーンが各社基本的にバラバラで、何で共同インタビューをしているのにこんなに統一性の無い話になってしまうの、と思う訳です。

しかしまあなんですなさっきの日経、見出しから再掲しますけど。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB254QA0V20C23A5000000/
日銀総裁「物価高、国民に大きな負担」  金融緩和は継続
金融政策
2023年5月25日 21:00 [有料会員限定]

『日銀の植田和男総裁は25日、日本経済新聞などのインタビューで歴史的な物価高が「国民全員にはかなり大きな負担になっている」との見方を示した。半面、政府・日銀が掲げる物価安定目標には「持続的・安定的(な達成)には届いていない」として、大規模な金融緩和を継続する姿勢を強調した。』(上記URL先より)

確かに植田さんの話を総合するとこういう話になるんでしょうけれども、これだけ見ますと、植田日銀って「今の物価高は国民にかなり大きなペインになっている」→「でもまだ物価目標に達していないので更に金融緩和を続けます」って言ってるわけですから、それはつまり「日銀様の目標達成のためには今以上に国民に対して大きなペインを与えます」という日銀の目標達成を至上とする国民不在の独善主義を主張している、ということですから、植田さんって本来の日銀の在り方を盛大に逸脱した事を思いっきり言ってるにほかならず、こんなの聞き手が日銀記者クラブ(でしょどうせ)の皆さんだからスルーしてくれるけど、社会部の記者が混じったら「日本銀行が政策を行う本来の意味を取り違えており、日銀法違反にも相当するご説明にしか聞こえないのだが今一度確認させて頂きたい」とかぶっこまれても文句の言えない日銀内輪ロジックを盛大に展開しているんですよね今回の植田さんって。


えーっとですね、25日にインタビューってこれ何時から予定してたのか知らんですけど、内外情勢調査会の講演が19日にあって、25日に共同インタビューなのですから、一連の情報発信という事なのであれば、どっちも酷いクオリティで、植田さんの化けの皮が剥がれてるのか執行部の振り付けが絶望的に下手くそなのか分かりませんけど、キーメッセージが全然伝わってこないわけですよこの一連の情報発信。黒ちゃんの時は説明は雑だし態度は尊大にも程がありましたけど、「現在の政策を梃子でも変えない」というのだけは明確に伝わっておりましたが、植田さんの場合は既に物価が上振れ状態になっているのがだんだん長くなっており、黒田さんの言ってた賃金も強そうという状況にもなっているのに物価目標達成の判断についての説明が一貫していない(基準が訳分らん)し、金融政策に関しても何をどうしたいのか、はたまた死んでも動かしたくないのか、というのも訳分らんし、じゃあ出たとこ勝負なのかというと「現状維持」という話だけはする(その割には現状維持をどこまでやるのかが訳分らん)ということで、まあ見事に意味不明状態になっておる訳です。

もしかしたらこのインタビュー、19日の内外情勢調査会の講演がアレだったから設定したんじゃネーノとも思った(まあその辺は報道各社の中の人がお詳しいと思いますが口外して良い事かどうかというのがあるので敢えてアタクシも調査はしておりません、念のため申し添えます)くらいでして、19日の講演がコミュニケーション的にイマイチだったし、ちょっとここはフォローアップ入れて見るかと思ってやったにしたって、「現時点での物価高は国民に大きな負担だが物価目標はまだ達成出来ていないので緩和継続」とかいう日銀法違反丸出し行為が総裁コメントとして出てしまうようなインタビューを実施して更に何をやりたいんだという話になって来ますし、大体からしてこれ事と次第によっては社会部登場のネタになるじゃろアホの子なの???と思う訳です。


ということで、まあ異例中の異例になっちゃうけどこれ各社とのやり取りについて日銀からHPに公開して話の流れを見てもらうようにした方がエエンチャウノ位に今回の共同インタビューにはやばみしか感じませんでした。勿論日銀そんなことする発想は無いと思いますけど・・・・・・・・・・・・



〇東京都区部CPIの総合とコアが前月比マイナスですよ日銀助かりましたね

毎度おなじみのこれである
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消費者物価指数
東京都区部 2023年(令和5年)5月分(中旬速報値)
※全国結果に先立ち、先行指標として東京都区部(中旬時点)のみの結果を速報として公表するものです。

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として105.1
前年同月比は3.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の下落

(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.7
前年同月比は3.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の下落

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.4
前年同月比は3.9%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇』

おおおおお!前月比が下落になりましたよやったね日銀ちゃん!!!!!!!!!

『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』

を見ますと、前月比で年初来、

総合:+0.7⇒-0.6⇒+0.3⇒+0.5⇒-0.1
コア:+0.5⇒-0.7⇒+0.2⇒+0.5⇒-0.1

となっていまして、2月のデカいマイナスは政府の電力ガス等の補助金効果ちゃんなのでまあさておくとしまして、4月の前月比+0.5%水準というデカいプラスのあと前月比マイナスに転じていますので、4月の年次改訂効果が一巡してこれは日銀の思惑通り、と言いたいところではありますが、

コアコア:+0.5⇒+0.3⇒+0.4⇒+0.6⇒+0.2

うーんこのという所で、伸びが鈍化してきたのですがプラスはプラスですねえという風情を示しておりますし、なんか最近生活実感的には月半ばくらいから物の値段(ゆうて近所のスーパーでの値札の話だが)がお上がりになっておられる気がしまして(個人の感想です)甚だ遺憾の極みにも程がある上に、よく考えたら電力料金の引き上げが認可されたんだったわあばばばばーとか、そーゆーのもあるのでどうなるやらとは思いますが、まあ総合とコアが前月比マイナスなのは(特殊要因除きで)昨年度来無かったので、これは日銀もニッコリという所でしょうか、よー知らんけど。

というかですね、物価が伸びなくて日銀がニッコリとか書いてる時点で何かおかしいわけで、だったらそもそも何でこんなハチャメチャな金融緩和をしなけりゃならんのかという話になるんですし、何なら物価上昇継続のモメンタムが損なわれそうになるんだったら追加緩和しろや位の話でもあったりするんですけどねえ。と思いました、まる。


〇植田さんと山口さんの記事で思わず飛ばしてしまった5月FOMC議事要旨ネタの続き

うい。
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20230503.htm(HTML)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20230503.pdf(PDF)
Minutes of the Federal Open Market Committee
May 2-3, 2023

木曜にとりあえず『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の「先行きの金融政策運営に関する議論」部分を引用しましたが、手抜き読みの本領でそこの部分から逆順で読んでまいります。


・5月は利上げしたけど今後はバンキングあばばばばばーの影響が期待(?)されるので・・・・・・・

その前は「今回の政策決定」に関するパラです。

『In their consideration of appropriate monetary policy actions at this meeting, participants concurred that inflation remained substantially elevated relative to the Committee's longer-run goal of 2 percent. Economic activity had expanded at a modest pace in the first quarter. The labor market continued to be tight, with robust job gains in recent months, and the unemployment rate remained low.』

足もとの物価と経済と雇用情勢に関しては物凄い勢いの良い話をしていて、これで何でいったん打ち止めになるのやら、という感じなのですが、

『Participants also noted that recent developments in the banking sector would likely result in tighter credit conditions for households and businesses, which would weigh on economic activity, hiring, and inflation.』

結局の所これ(バンキングセクターあばばばばーからのクレジットタイト化)である。だがその程度についてはハウエバーが登場する。

『However, the extent of these effects remained uncertain.』

あっそう。

『Against this backdrop, all participants agreed that it was appropriate to raise the target range for the federal funds rate 25 basis points to 5 percent to 5-1/4 percent. All participants agreed that it was also appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings, as described in its previously announced Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet.』

このような背景の元、全員が25bpの利上げと現在と同じペースでのバランスシート縮小を支持した、ということで木曜にネタにした先行きの話になるのですが、割とキーになっているのが「クレジットコンディション」であるという話でして、クレジットコンディションがそこそこタイト化することが物価安定に資する、というなんかまあ言ってることは分かるんだが何か理屈としてはどうなのかよとも思う点がキーなので、結局はこのクレジットコンデションのタイト化が足りなくて物価の伸び鈍化が思うように行かないと、どないかせんといかんという話になるんとチャイマスカ、というのがアタクシの個人の見解です。


・ファイナンシャルスタビリティーの件は銀行の話をしつつ何気にそれ以外の脆弱性の指摘があります

逆順ヘナチョコ読みで恐縮ですがその前は現状認識の部分になります。でもってファイナンシャルスタビリティの話ですが、このパラグラフ、ざっと見で字数的にこの議論パートの中で最大の容量になっていますので重要重要。

『In their discussion of financial stability, various participants commented on recent developments in the banking sector.』

当たり前だが銀行アイヤーの件である。

『These participants noted that the banking system was sound and resilient, that actions taken by the Federal Reserve in coordination with other government agencies had served to calm conditions in that sector, but that stresses remained.』

健全で頑健だけどストレスは掛かっている状態、とインフレ抑制したい向きにはある意味で(゚д゚)ウマーな展開のようです。

『A number of participants noted that the banking sector was well capitalized overall, and that the most significant issues in the banking system appeared to be limited to a small number of banks with poor risk-management practices or substantial exposure to specific vulnerabilities. These vulnerabilities included significant unrealized losses on assets resulting from rising interest rates, heavy reliance on uninsured deposits, or strained profitability amid higher funding costs.』

問題は一部の金融機関に絞られている、という認識と共に、じゃあどういうのがあるのかという例が示されていまして、「significant unrealized losses on assets resulting from rising interest rates」「heavy reliance on uninsured deposits」「strained profitability amid higher funding costs」なんですと。

『Some participants additionally noted that, because of weak fundamentals for CRE such as high vacancy rates in the office segment, high exposure to such assets was a vulnerability for some banks.』

ここはキナ臭い話をしていて、空室率が高くなっているオフィス向け商業用不動産のようなものを対象とするエクスポージャーが多い銀行って追加的にアレになって来るんじゃなかろうかという指摘が入り、

『Participants also commented on the susceptibility of some nonbank financial institutions to runs or instability. These included money market funds, which had recently experienced large cash inflows; hedge funds, which tend to use substantial leverage and may hold concentrated positions in some assets with low or zero margin; thinly capitalized nonbank mortgage servicers; and digital asset entities.』

その他の脆弱性、という事でこれまたいくつも例が出てきてて、「money market funds, which had recently experienced large cash inflows」、「hedge funds, which tend to use substantial leverage and may hold concentrated positions in some assets with low or zero margin」、「thinly capitalized nonbank mortgage servicers」,「digital asset entities」等も脆弱性があるアルネとか言われとる、またMMFかよとか思うのだが。

『Many participants mentioned that it is essential that the debt limit be raised in a timely manner to avoid the risk of severely adverse dislocations in the financial system and the broader economy.』

ここで話は政府債務上限問題になったので一般的な話になったな、と思ったらこの次の部分に円債村が泣いた。


・金融安定のためにも米国債市場の機能がきちんと市場機能を発揮することが大事である、とな

『A few participants noted the importance of orderly functioning of the market for U.S. Treasury securities or stressed the importance of the appropriate authorities continuing to address issues related to the resilience of the market. A number of participants emphasized that the Federal Reserve should maintain readiness to use its liquidity tools, as well as its microprudential and macroprudential regulatory and supervisory tools, to mitigate future financial stability risks.』

何と最後の締めは政府債務上限問題からのこの「米国市場機能ダイジダイジネー」である。そらまあ日本の場合は債務上限問題がどうしたこうしたで機能停止みたいな事が起きないから関係ないかもしれんけど、何といういい話をしているんだと感涙に咽んでおりましたら、ふと見たら時間がない事に気が付きましたので今朝はこれにて勘弁頂きたく存じます。




2023/05/26

お題「植田総裁共同インタビューとな/山口廣秀元副総裁、現行の金融政策枠組みに物申すの巻」

140円ワッショイ140円ワッショイ140円ワッショイ!
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-25/RV8AL6DWRGG001
円が下落、対ドル140円台−昨年11月以来の安値
テソ由美
2023年5月26日 4:18 JST

昨年11月以来・・・・・・・・・・・・ゴクリ

#しかも今日は東京都区部CPIワッショイですわ

〇植田総裁が共同インタビューにご登場したようだが早速ガイダンスに賃金入れたのは何だったんだ状態

日経ちゃんですが
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB257KU0V20C23A5000000/
植田総裁、物価目標「簡単に変えるべきでない」一問一答
金融政策
2023年5月26日 5:00 [有料会員限定]

日経無課金おじさんという市場の中の人かお前とツッコミを浴びせ倒されそうなアタクシなので中身は全然見えませんが、この題名『植田総裁、物価目標「簡単に変えるべきでない」一問一答』というのは意外に味わいのある題名をチョイスしたじゃんと日経を褒めて遣わす(謎のウエメセ)がその理由は本日の別記事にて。

でまあ無課金勢は泣きながらこちらを見ることになる。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-25/RV7CR2T1UM0W01
政策変更、賃金よりも持続・安定的な2%見込めるかで判断−日銀総裁
伊藤純夫、藤岡徹
2023年5月25日 21:00 JST

ちょwwwwwwww賃金賃金言ってたのに春闘の結果が強そうだからまたゴールポストを移動させましたですかそうですか、と思いながら上記URL先の記事を鑑賞するのだ。

『日本銀行の植田和男総裁は25日、金融政策運営で重視しているのは賃金よりも物価上昇だと述べ、政策変更はあくまでも持続的・安定的な物価2%の達成が見込めるかで判断する考えを示した。4月の就任後初めて、ブルームバーグなどとの共同インタビューに応じた。』(上記URL先のブルームバーグ記事より、以下同様)

まあこれをどう解釈するのかというのが微妙で「ゴールポストを動かしてまた解除から逃げた」とアタクシは既に植田さんの発言を悪意に解釈するように設定が変更されておりますので真っ先にそっちの解釈をする訳ですが、マクラに書いたようにドル円ワッショイとかやっている昨今、衆目の一致するところとして、140円超えてドンドン円安になるのって誰得円安にも程があるとされており、円安牽制の為に「来年の賃金までまたねえよ」という発言をしたのかも知れず。

『総裁は物価の基調を判断する上で賃金は重要な要素としつつも、「賃金そのものを目標にしているわけではない。政策判断のポイントは持続的・安定的な2%に達することが見込まれるかどうかだ」と説明。』

だったら何でお前らフォワードガイダンスに賃金とか入れたんだよヴォケという感じですけどね。

『2%を下回る水準でも政策変更する可能性を問われ、「コンマ幾つの差がものすごい重要というよりは、物価上昇率が持続的・安定的かどうかの判断の方が重要になる」と語った。』

あのー今日東京都区部のCPI出るんですけど2%を突き抜けて高いんですけどねえ。

『今回の総裁発言は一定の賃金上昇が目標達成や政策変更のための前提条件ではないことを示唆している。政策判断のタイミングをより柔軟に考えていく余地を残した格好だ。』

ブルームバーグさんは素直に解釈した模様です。まあアタクシは春闘が強かったのを受けてゴールポスト動かして、物価の「見通し」とかいう鉛筆舐め舐めで何とでもなるものにゴールポストを動かしたんだと思いましたが。

途中を飛ばしましてガイダンスに何で書いたかというのも聞かれたようですね。

『総裁は指針で賃金上昇に言及したことに関しては、「持続的・安定的な2%の物価上昇という状態では、当然賃金も上がっているはずであり、今回明示的に書いた」と説明した。』

じゃあ書く必要ないじゃん、としか言いようがない。

『日銀は生鮮食品を除く消費者物価上昇率が輸入物価の鈍化などを背景に2023年度半ばにかけて2%を下回る水準に鈍化するとみている。その後は再びプラス幅を拡大していくと見込むが、総裁は「自信がない。もう少し丁寧にみたいという判断が続いている」と指摘。基調的な物価を規定する需給ギャップやインフレ期待の動き次第で「ボトムが早まったり、遅くなったりということだと思う」と語った。』

そもそも2023年度半ばに2%下回るってのに無茶苦茶自信ニキな根拠が分からん、てかまあ根拠は分かるんだけどその推計、輸入物価の下落が従来の物価上がらん物価時代のように広範に物価押し下げに働くってのをそのまま使ってるだろと思う訳で、構造に変化が起きている可能性を丸無視してるのはさすがに舐め腐っているとしか思えません。

『現在のコストプッシュに伴う物価の上昇が、賃金やインフレ期待の上昇を伴う二次的な波及につながるかが重要との認識も示した。その上で、持続的な物価上昇や二次的な波及が生じるには、「ある程度、総需要の強さも必要だと思う」と述べた。』

いや普通に二次的波及起きてね???

・・・・・・・とまあそういうことで、日経に課金するともうちょっと詳しいのが読めそうな気がするので読めないのが残念ではありますが、何ちゅうかまあアタクシはやる気の無さの方を感じてしまいました。



〇山口元副総裁(廣秀さんの方)、黒田路線の継承に対して釘を差す

一昨日「こんなんあります」と申しあげた奴ですが、こちらは解説をのっけてくれているのでアリガタヤ。

https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/483581.html
山口廣秀「変化の時代の金融政策」
2023年05月24日 (水)
日興リサーチセンター 理事長 山口 廣秀


『◯日興リサーチセンターの山口です。今日は、「変化の時代の金融政策」と題してお話したいと思います。』

この題名に関しては番組表に掲載されていましたので、なんか味わいがあるだろうと思ったら案の定のっけからこれである。

『最初にお話の要旨ですが、まず、この20年の日本経済と金融政策を振り返ります。そのあと、世界経済とともに日本経済にも変化の波が押し寄せてきており、そうした下で金融政策に求められる新しい対応についてお話します。』

変化の中で新しい対応が必要ではないか、ということで黒田路線の単純な継承ダメ!!!ゼッタイ!!!!!と来ておりましてこの先が楽しみになるというものです(^^)。


・金融緩和一本足ではだめですよという極めて当たり前の指摘だが無慈悲な砲撃

過去20年の話が『1.この20年の日本経済』、『2.この20年の金融政策』という小見出しで説明されていますが、ここを引用していると全文引用になりそうなのでかっ飛ばしまして、『3.変化の時代の金融政策』というキタコレな小見出しの部分から参ります。

『3.変化の時代の金融政策』

『〇長期に亘る金融緩和から明らかになったことは、主に2つです。』

さて・・・・・・・・・

『1つは、大規模な量的緩和や超低金利をもってしても、日本の経済力の引き上げや物価の安定的な上昇を実現することはできなかったということです。』

然り。

『この点は、規制の大胆な見直しなどによって産業の新陳代謝を促進し、経済の潜在力を高めるような実効性ある政府の施策が同時に必要だったということです。』

さいですな。ということでしらっと金融緩和一本足打法の政策もディスっているし、これ何なら今の隙あらば財政支出打法もディスっている気が・・・・・・・・・・

『もともと金融緩和は、将来の需要の前倒しを図るもので、長く続けると将来の需要が減少し、かえって景気を下押しすることになりかねません。こうした金融緩和のマイナス面も景気低迷につながったのではないかと考えています。』

誠に仰る通りですが、こういうのがNHKテレビ(Eテレだけど)で堂々と言えるようになったのはイイハナシダナー。


『2つは、サプライズを伴うような超金融緩和を打ち出しても、人々のインフレ心理を作り出すことはできなかったということです。』

これは黒田方面に無慈悲な砲撃。

『そもそも人々の物価についての見方は、現実の物価の動きや経済の先行き見通しなどによって形成されるものであり、金融緩和だけで人々の心理を変えることは困難だったという訳です。』

黒田や置物に砲撃を重ねております。


・これからの金融政策についてとオブラートを掛けてますがこれは黒田路線継続に警鐘を鳴らしていますね

『〇次に、これからの金融政策について考えたいと思います。現在の金融政策の枠組みは、主として3つから成り立っています。』

ということですが、ここで植田日銀の、と言わないのは武士の情けって奴ですねわかります。

上記記事URL先にはこの直後にプレゼン紙芝居がありまして、放送用のフリップで画像だから貼れなくてアレなのですが、そこから引用すると、フリップちゃんの方には

『1.2%インフレの達成を目標に 異次元緩和を継続
2.インフレ目標の達成は 2%を上回る物価上昇が安定的に実現したかどうかで判断
 ・先行きの経済見通し(フォワード・ルッキング)に基づく政策運営は行わない
3.金融市場の発するシグナルを重視しない
 ・10年国債金利をおおむねゼロ%に固定化することで経済に関する金融市場のシグナルを封じている』

とか1はともかく2と3が無慈悲な砲撃です。では山口さんの解説部分を鑑賞しましょう。

『1つは、2%インフレの達成を目標に、異次元緩和を継続すること。2つは、インフレ目標の達成は、2%を上回る物価上昇が安定的に実現したかどうかで判断すること。その意味でフォワード・ルッキングな、つまり先行きの経済見通しに基づく政策運営は行わないこと。3つは、金融市場の発するシグナルを重視しない政策であること。10年国債金利を概ねゼロ%に固定化することで、経済に関する金融市場のシグナルを封じています。』

と来まして返す刀で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『〇論点は、こうした政策枠組みを今後とも続けていってよいのかどうかです。』

>こうした政策枠組みを今後とも続けていってよいのかどうかです
>こうした政策枠組みを今後とも続けていってよいのかどうかです
>こうした政策枠組みを今後とも続けていってよいのかどうかです

抜刀斎キタコレ!!!!!!!!!!

しかしここで山口さんの慈悲が見られるのは、さっき指摘しましたようにここまでに「植田」という言葉を使っていないことでして(まあ何なら黒田という言葉も使ってないけど)これは即ち政策がクソでも植田は先代からクソを渡されたばかりなので、今後政策枠組みを変えていけばいいんだよ、というノアの箱舟を出している訳ですな(ってこれアタクシの勝手な妄想ですから念のため申し添えます^^)・

ということで山口抜刀斎の解説である。

『足許、世界情勢は非常に大きな変化に見舞われています。米中対立やロシアのウクライナ侵攻に端を発して世界経済のブロック化は急速に進行しています。さらに先進国の労働力人口は、伸び悩んでいます。これらに伴い世界の供給力は低下し、世界はインフレの時代に変わりつつあるようにみえます。』

構造変化の指摘キタコレ。

『また、最近米国や欧州で起きている金融システム不安は、長期に亘る大規模な金融緩和の副作用による面があります。不動産や株式などの資産バブルが、この先さらにはじけていくとすると、金融システム問題は、グローバルに広がっていく惧れもあります。』

うむ。

『このような世界情勢は、日本にも様々な形で影響を及ぼしています。』

『もちろん、現在の異次元緩和の枠組みを直ちに変えるのは、現実的ではありません。』

という風に助け舟は用意されておりまして、つまりは黒田路線を修正していけ、って話なんだが、植田さんになってから寧ろ説明が恣意的になったし、ロジックが無茶苦茶になって来たように見えますし、コミュニケーションも何か支離滅裂になっているし、何をやりたいんだ日銀、となっている訳ですけどまあその辺はさておきまして、

『ただ、2%のインフレ目標については、長期的な目標として堅持することは必要ですが、金融政策の枠組みとしては、物価だけでなく、景気、資産価格、金融システムなどを総合的に評価しながら運営することが重要です。』

!!!!!!!!!!!!!!

・・・・・・ということで、日経電子版で黒田さんのインタビュー記事の見出し(植田総裁、物価目標「簡単に変えるべきでない」一問一答)を付けた方に置かれましては、この山口廣秀さんの水曜の番組での発言を意識したのかなと思ってしまいました、というのがまあ「味わいがある」という話の伏線回収です。

植田さん、2%に関する部分をどう説明したのかは興味がありますが、少なくても就任以来のスタンスは黒田さんの時以上に2%安定的達成に固執しているように情報発信からは読み取れると思うのですが・・・・・・・・・


でもってこの次にまたフリップと思われるものが出て来まして、

『変化の時代における金融政策の対応

1.柔軟性と機動性
 ・インフレ率だけではなく 経済金融情勢全般の変化に応じた弾力的な金融政策運営が重要
2.先行きの経済見通し(フォワード・ルッキング)に基づく対応
 ・インフレ目標の達成についても 先行き見通しに基づいてみていくことが必要
3.金融市場の発するシグナルへの謙虚な態度
 ・市場金利の変動は 多様な市場参加者の経済観のあらわれであり 貴重な情報源』

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

『そもそも金融政策は、財政政策とは異なり、経済金融の変化に応じて柔軟かつ機動的に運営するのが持ち味です。これまでの異次元緩和は、厳格なインフレ目標にこだわるあまり、そうした持ち味の発揮を抑制し過ぎた感があります。』

植田さん、更に幻覚に拘っているようにしか見えない。

『世界情勢の変化とその波及の可能性を踏まえた弾力的な金融政策運営こそが、変化の時代には相応しいと考えます。』

ごもっともすぎる。

『現在の政策枠組みの中で、今一つ気になるのが、インフレ目標の達成については、先行き見通しに基づいて判断はしないという点です。』

まあある意味先行き見通しで説明しているんだがそもそもの見通しがインチキ臭いですから、山口さんから言わせればこういう評価になるんですねわかります。

『金融政策の効果が実体経済面にあらわれるには相応のタイムラグが必要です。実際の物価が2%を上回ってから緩和の修正に動くとなれば、インフレ率が予想以上に上振れし、それを抑えることがかなり難しくなるかもしれません。』

んだんだ。

『世界の物価情勢が構造的に変わりつつあり、日本もその埒外にないとすれば、インフレ率の先行き見通しを踏まえて、早めに政策の手直しに動くことも視野に入れておくべきだと思います。』

しかし植田総裁は「コストプッシュの物価上昇は一時的」を唱え続けている!

『最後に3点目になりますが、現在は長短金利操作の下で、本来金利に反映されるべき市場参加者の経済に関する見方が封じ込まれています。市場金利の変動は、多様な市場参加者の平均的な経済観のあらわれです。とくに経済の先行きが読みにくくなればなるほど、日銀にとっても貴重な情報源となり得るものです。変化の激しい時代こそ、日銀は市場の知恵を借りるべく、それが発するシグナルに謙虚に耳を傾けるべきではないかと考えます。』

円債村が泣いた、と言いたいがそもそも村民が居るのかどうかが怪しい。


・ということでまとめ

『◯以上、「変化の時代の金融政策」ということでお話してきました。端的に云えば、金融政策の運営に当っては、3つの点が重要です。』

さっきのフリップにもどりまして、

『1つは、柔軟性と機動性、2つは、フォワード・ルッキングな、つまり先行き経済見通しに基づく対応、3つは、金融市場の発するシグナルへの謙虚な態度です。これら3つのことが、これからの変化の時代には強く求められると思います。その意味で、デフレ克服に邁進してきた中央銀行の政策運営は、いずれ転換を迫られるとみています。』

ということで剣豪キタコレの巻というのが出た所でちょうど植田さんの共同インタビューとか中々チャーミングなタイミングでしたので一緒にネタにさせていただきました。





2023/05/25

お題「5月FOMC議事要旨だがこれは6月は利上げ見送り予告ホームラン(三振?)ですなあ」

という訳で
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20230503.htm(HTML)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20230503.pdf(PDF)
Minutes of the Federal Open Market Committee
May 2-3, 2023

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, May 2, 2023, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, May 3, 2023, at 9:00 a.m.1

紙に出して読むときはPDFなんですが、ペタペタ貼り付けるのはHTMLが便利なのでそっちから引用します。


・先行きの金融政策運営に関しての部分では盛大な出オチが観察されます(^^)

例によって例の如くお手軽手抜き読みをするわけですが、さすがにパラグラフごとの逆順読みは読むのにむりがあるというのを最近思う次第でして(滝汗)、今回は「今後の金融政策運営について」というのを論じている部分から読んでいきますね。

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の10パラグラフ目から参ります。

『In discussing the policy outlook, participants generally agreed that in light of the lagged effects of cumulative tightening in monetary policy and the potential effects on the economy of a further tightening in credit conditions, the extent to which additional increases in the target range may be appropriate after this meeting had become less certain.』

どう見ても出オチです本当にありがとうございました。今後の追加利上げの必要性については「had become less certain」ということで、別に利下げするとはいってないが、少なくとも6月は様子見をしてくる、と宣言してるようなもんですね(個人の感想です)。

『Participants agreed that it would be important to closely monitor incoming information and assess the implications for monetary policy. In determining the extent to which additional policy firming may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, various participants noted specific factors that should bear on future decisions on policy actions.』

でまあ先行き判断においてはデータを見て行きましょうって話ですが、 そのデータ見ていく際にどのような要因に注意していくのか、って話が書かれているんですけど、あくまでもファクターの話で何か特別な指標の話がある訳ではないので若干フニャフニャ感は否めません。

『One such factor was the degree and timing with which cumulative policy tightening restrained economic activity and reduced inflation, with some participants commenting that they saw evidence that the past years' tightening was beginning to have its intended effect.』

『Another factor was the degree to which tighter credit conditions for households and businesses resulting from events in the banking sector would weigh on activity and reduce inflation, which participants agreed was very uncertain. 』

『Additional factors included the progress toward returning inflation to the Committee's longer-run goal of 2 percent, and the pace at which labor market conditions softened and economic growth slowed.』

うーむ、ここは「だから何なの??」って気がしてしまったんだが、累積的な金利引き上げによる金利効果と、足もとでの利上げの副産物(というか何というか)としての金融環境のタイト化の進展を見て行きたい、ということを仰せのようですが、そんなの別に殊更ここで書かなくても、と思ってしまうんですけどね。


・リスクマネジメントの観点からの今後の運営についてという所でFED文学が散見されます(気がします)

次のパラグラフに入ります。

『Participants also discussed several risk-management considerations that could bear on future policy decisions.』

植田さんも言ってるリスクマネジメントアプローチな。

『A few assessed that there were upside risks to economic growth. However, almost all participants commented that downside risks to growth and upside risks to unemployment had increased because of the possibility that banking-sector developments could lead to further tightening of credit conditions and weigh on economic activity.』

こういう表現してくるの従来あんまり見なかったんですが、 経済の見通しに関して「A few」なパーティシパントは経済のアップサイドリスクについて指摘しました、と入れた後に返す刀でハウエバー、と来るのはまあ良くあるパターンなのですが、その後のハウエバーな人達の人数を「almost all」って対比させてぶっこんできているのですよね。

いやまあアタクシも毎回の議事要旨を全部覚えている訳ではない(というか読んだら忘れる程度にはアホの子なので)もしかしたら以前もこういう表現あったかもしれないですけど、この書き方は最初の「A few」を出汁にしながら後半の意見が殆どでっせ、というのを強調しようという書きっぷりになっていると思うのです。

即ち、FED的には「バンキングセクターのアイヤー状態の進展による経済下押し、失業率上昇のリスクの方を大きく見ている」とここで宣伝している訳でして、ここからも6月利上げはさすがにねえな、という予告空振りの風情を漂わせているというものであります(個人の感想です)。

じゃあFEDは遂にハト転したのかというとさに非ずでして、この直後に物価に関するリスク、というのがありまして、

『Almost all participants stated that, with inflation still well above the Committee's longer-run goal and the labor market remaining tight, upside risks to the inflation outlook remained a key factor shaping the policy outlook.』

『A few participants noted that they also saw some downside risks to inflation.』

となっていて、インフレのリスクに関してはさっきの「Almost all」VS「A few」表現を再度使っていて、インフレのリスクはアップサイド、となっておりまして、いやじゃあお前ら政策どっちにしますねんというツッコミをしたくなるのですが、この部分に関しては「銀行セクターのあばばばばーがあるので様子見」という話だけしていると、隙あらばゴルディロックス相場をやりたがる金融市場が利下げわっしょいとかおっぱじめられても困る、とかなんとかそういう辺りで釘を差しておく、ということなのかと思いました(個人の感想です)。



・お題が「今後どの程度の追加引き締めが必要か」というパラグラフを入れて利下げヒャッハーを叩き潰すんですねわかります

次のパラグラフに参ります。

『Taking into account these various considerations, participants discussed their views on the extent to which further policy firming after the current meeting may be appropriate.』

今度は「今後どの程度の追加引き締めが必要か」というお題での議論ですね。

『Participants generally expressed uncertainty about how much more policy tightening may be appropriate.』

と思ったら「わからん」というのが大勢のご意見www

『Many participants focused on the need to retain optionality after this meeting.』

今回の会合の後の政策運営については「オプショナリティー」を保持すべきであると多くの人が指摘。

『Some participants commented that, based on their expectations that progress in returning inflation to 2 percent could continue to be unacceptably slow, additional policy firming would likely be warranted at future meetings.』

今の物価の下げが全然弱いので追加引き締めが今後の会合で必要と考える人が複数名(Some)います。

『Several participants noted that if the economy evolved along the lines of their current outlooks, then further policy firming after this meeting may not be necessary.

経済見通しがインラインで進んで行けば追加利上げが必要だという人も数名(Severa)いますな。

『In light of the prominent risks to the Committee's objectives with respect to both maximum employment and price stability, participants generally noted the importance of closely monitoring incoming information and its implications for the economic outlook.』


とは言いましても結論の所では「結局は今後の指標を注意深く見ていくわけですよ」という話になっていますので、まあ現実問題としてFED全般の中では「いったん様子見」に傾いているんだと思うのですが、こうやって利上げが必要という一部のコメントをのっけた構成をすることによって、利下げ期待のようなものが起きないようにというメッセージを出しているんだと思いますよ。


・エライしつこく「年内利下げとかしねーよ馬鹿」というメッセージをぶっこんできている議事要旨

『Participants discussed the importance and various aspects of clearly explaining monetary policy actions and strategy.』

何かさっきのパラグラフで十分メッセージになっているような気がするんですが、アメリカン債券市場もかなりの単細胞生物なので、しつこく念をおしておこう、ってなことなのかなと思いました。「クリアリーに金融政策行動とストラテジーの説明をするのが重要ですよ」というお題で話が始まる。

『All participants reaffirmed their strong commitment to returning inflation to the Committee's 2 percent objective over time and remained highly attentive to inflation risks.』

ここは思いっきり「All participants」になっていますが、2%物価目標に向けて物価をさげまっせというのと、インフレーションのリスクについて非常に強く警戒している、というのを奉名刺まして、

『A few participants commented that recent monetary policy actions and communications had helped keep inflation expectations well anchored, which they saw as important for the attainment of the Committee's goals.

こちらは何人かの(A few)意見になりますが、最近のコミュニケーションはインフレ期待をアンカーさせるのに役立っている、というホンマカインという意見がありまして、

『Participants emphasized the importance of communicating to the public the data-dependent approach of policymakers, and the vast majority of participants commented that the adjusted language in the postmeeting statement was helpful in that respect.』

でもって「データディペンデントアプローチをしている」ということを示すのが需要、と来たのですが最後に・・・・・・・・・

『Some participants stressed that it was crucial to communicate that the language in the postmeeting statement should not be interpreted as signaling either that decreases in the target range are likely this year or that further increases in the target range had been ruled out.』

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwという感じなのですが、数名(Some)のパーティシパントにおいては、FOMCの声明文が「年内の利下げや、今後の利上げを排除するように捉えられるのはダメ!!ゼッタイ!!!!」と表明した、ってのでこのコーナーを締めているのですが、さっきまで読んできましたように「利下げという選択肢は無い」というのを表現中に何度も示しているのにも関わらず、最後の最後でもう露骨にこういう書き方をするんですから、年内利下げヒャッハーという動きに対しては相当ムカついている、というのが良く分かるこの辺りの書きっぷりではございました。

#その他はまあ明日以降にでも





2023/05/24

お題「物価動向という本丸がだいぶ焦げてきた植田日銀城ですが・・・・・」

ほうほうこれはこれは
https://www.nhk.jp/timetable/130/tv/20230524/daily/afternoon/

Eテレの今日の昼の1250-1300の10分番組「視点・論点」ってところをクリックしますと小窓が出て来まして・・・・・・・・・・・・・

視点・論点 変化の時代の金融政策
[Eテレ] 2023年05月24日 午後0:50 ~ 午後1:00 (10分)

「変化の時代の金融政策」山口 廣秀(日興リサーチセンター 理事長)

出演者ほか
【出演】日興リサーチセンター 理事長…山口廣秀
詳細
【出演】日興リサーチセンター理事長…山口廣秀

山口さんが登場して「変化の時代の」という題名で金融政策の話をする、という時点で思いっきり深い味わいを感じるのですが、10分解説番組みたいなのでお時間とテレビのある方はどうでしょうか。


〇基調的なインフレがどこからどう見ても2%達成どころかぶち抜けている件について

皆さま既にご案内のこれでありますが。
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標


この前ちょっと手抜きして(というのと長くなるから、というのがあって)2022年分から引用しましたけど、やっぱりこれは2021年分から引用するのが味わいが深い事を再認識致しましてちょっと縦にダンダラになりますが引用しますね。

左からいつものように「刈込平均」「加重中央値」「最頻値」になります。

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2
Dec-21 0.9 0.1 0.3
Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5
Dec-22 3.1 1.4 1.6
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8

でまあこの間何がありましたっけ、と考えますと、21年の秋口くらいまでは相も変わらず基調的な物価がアガランチ会長だった訳ですが、22年にかけて物価がホイホイと上昇しだし、2022年の年初にはロイターが「政策の柔軟化検討してるっぽいぜ」報道を行ってひと騒動になりましたが、その後の決定会合で寧ろ黒ちゃん逆切れしたかのように全否定したあと、どんどん市場介入が増えて行ったというのが2022年でした。

2022年4月の展望レポートでは、4月全国ベースですとこの時、ヘッドラインの前年同月比が+2.5%、コアの前年同月比が+2.1%、コアコアの前年同月比が+0.8%だったこともあってか、突如この回の展望から「コアコア指数」の見通しとかを出すようになり、これを称して「コアコアが物価の基調を良くとらえている」という説明をしていました。

しかしその後、2022年7月の全国ベースでコアコアが前年同月比+1.2%まで上昇したのですが、7月の展望レポート会合の辺りから突然何か変なもんでも食ったのかというような勢いで政策委員の皆様が「賃金上昇が必要」を連呼しだしまして、その後2022年10月全国のコアコアは+2.5%になっているというご時世でしたが、最早10月展望の時はコアコアの話を碌にしなくなってきましたし、当たり前でございますがその間に刈込平均やら最頻値とかも上がってきているので、もはやこの数字、出してはいるものの日銀はノーコメント地蔵と化しておられる、という大変に香ばしい状態になっておられる次第であります。

しかしですね、あんたらこれ出して「基調的な物価を判断するためのうーたらこーたら」と言って
白塚さんまで動員して、

『それぞれのコア指標の作成方法やその特性などの詳細については、以下の日銀レビューをご参照ください。

・川本・中浜・法眼(2015)「消費者物価コア指標とその特性 - 景気変動との関係を中心に -」日銀レビュー・シリーズ、15-J-11
・白塚(2015)「消費者物価コア指標のパフォーマンスについて」日銀レビュー・シリーズ、15-J-12』

とか書かせている(リンクはめんどいから貼らんのでさっきのURL先に行ってちょんまげ)訳でして、都合が悪くなると引っ込めるなら引っ込めるにしたって、何でこの計測方法が適切じゃなくなってきたのか、ということをキチンと説明して頂かないと行けないんですが、まあこうやってダラダラと出しているところを見ると、実際は基調的物価強いという認識があるものの、そうはいっても政策の方がアレだからこの数字を話題にはしないようにしておかないとサラリーマン的に以下自主規制って事なんですね宮仕えは辛いっすねえという所です。


しかしまあ何ですな、

上昇品目比率%、下落品目比率%、差分

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9
Dec-21 58.8 34.3 24.5
Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0
Jul-22 73.2 20.7 52.5
Aug-22 72.6 21.5 51.1
Sep-22 74.9 18.6 56.3
Oct-22 78.9 14.6 64.4
Nov-22 79.9 13.6 66.3
Dec-22 81.2 11.7 69.5
Jan-23 80.3 12.6 67.6
Feb-23 81.0 11.7 69.3
Mar-23 82.6 10.0 72.6
Apr-23 84.3 9.2 75.1

2年前と比較すると隔世の感がありますね。まあこれ自体が金融政策ドリブンじゃなくてどう見たってアフターコロナと地政学リスクと為替円安のせいで、何のために金融政策があるのか(単に資産バブル作ってるだけではないか説大有りですけど)という話でもあうる訳ですけどぬー。


〇昨日ご紹介した日銀のスタッフペーパーの続きを少々

昨日ご紹介したこれですが
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2023/data/wp23j05.pdf
消費者物価への非線形なコストパススルー:閾値モデルによるアプローチ

アタクシ分析項を華麗にかっ飛ばしてしまったんですけど、改めて見たらこれアホの子のワイでも読める親切設計になっているという素敵な事実に気が付きましたので、まあ既にご案内になられたかたも多いかもしれませんが、分析項の辺りを拝読しようず。


『2.推計手法とデータ 』って小見出しの

・推計の留意点

『本稿の推計モデルについて、以下の2つの留意点を挙げる。』

『第1に、パススルーと閾値の水準は推計期間を通じて一定と仮定している。すなわち、パススルーに関する構造変化が推計期間内に起きていないと仮定している。』

ふむふむ。

『本稿の実証分析では、推計期間を約 30 年間としているが、もちろんその間に構造変化が起きている可能性は考えられる。この点、大谷ほか(2003)、塩路ほか(2007)、塩路・内野(2009)、Hara et al. (2015)は、わが国における消費者物価上昇率へのパススルーに構造変化が生じた可能性を指摘している。もっとも、パススルーの非線形性と構造変化の両方をモデルに組み込むと、サンプル数の自由度が十分に確保できないため、本稿ではパススルーの非線形性のみに注目することとし、モデルの構造については通期一定と仮定した。』

なるほど。

『第2の留意点は、本稿のモデルはインフレ率の慣性を考慮していないことである。Forbes et al. (2022)などの先行研究において、インフレ率の慣性を勘案するために、説明変数に消費者物価上昇率のラグ項を含めることがある。一方、本稿では、Colavecchio and Rubene (2020)などの文献に倣って、(1)式の右辺に????のラグを含めていない。』

『すなわち、現在のインフレ率が、過去のインフレ率の実績から明示的には影響を受けない定式化になっている。そのため、インフレ率の慣性を勘案しているモデルと比べると、本稿のモデルの予測値は、コストプッシュ圧力が強まる局面で上昇スピードが速く、コストプッシュ圧力が弱まる局面では低下スピードが速い傾向にあると考えられる。』

なるほど。

『消費者物価上昇率に対するコスト変数の変動のパススルーが非線形になり得る理論的仮説としては、企業の価格改定に伴うメニューコストの存在が考えられる(Ball and Mankiw, 1994)4。コストの変動が小幅な場合は、価格改定によって得られる利益がメニューコストを下回るため、企業は販売価格を据え置く。吸収できないほどの大幅なコストプッシュショックが発生した場合にのみ、企業は値上げに動くと考えられる。』

これはよく聞きますね。とまあそういう点を留意しながら分析結果を見る訳ですが、


・推計の前提

まずは前提となるデータ。『2−2. データ 』って小見出しです。

『本節では、推計に使用したデータを説明する。インフレ率については、消費者物価(除く生鮮食品)と同(除く生鮮食品・エネルギー)の2種類を用いる(前掲図表 1)5。また、消費者物価を構成する個別品目ごとにパススルーの非線形性を検証する際には、総務省が公表する財・サービス分類などを参考に分類した 19 個別品目の価格指数を用いる6。』

『賃金については、「きまって支給する給与指数(事業所規模 30 人以上、全産業)」を「総実労働時間指数」で割った平均時給の前年比を使用する。』

ほほう。

『これらの変数に加え、企業物価および為替(ドル円レート)の前年比と、実体経済のスラックの代理変数として失業率を用いる。図表 3 では、これらの変数を図示している7。』

図表3はPDFの17枚目にあります。


推計期間は以下の通り。

『推計期間は、パラメータの変化を分析するため、1976 年第1四半期から 1999 年第4四半期までと、1991 年第1四半期から 2019 年第4四半期までの2期間とした。』

ほう。

『前者の期間については、安定的な推計結果を得るため、消費者物価と企業物価の上昇率が大幅に上昇した第一次石油ショックの時期を除き、推計期間を1976年からとした。また、後者の期間については、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行するなかで、データの変動が相応に大きくなった期間を除き、推計期間を 2019 年までとした。』

ほうほう。


・でもって推計結果だが直近で物価見通しを1年以上盛大に下に外し続けている理由がここでアカラサマに大公開時代

『3.推計結果』の『3−1.ベースラインの結果 』って小見出しです。

『まず、被説明変数に消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比を、説明変数に企業物価、為替、賃金それぞれの前年比の3変数を用いたベースラインの推計結果を示す。また、(1)式の非線形モデルの推計結果と、(1)式からパススルーの非線形性を捉えている右辺第3項を除いた線形モデルの結果を比較する。』

『図表 4 は、ベースラインの推計結果である8。非線形モデルでは、企業物価や為替、賃金の変動のいずれについても非線形性を表す係数がプラスかつ5%水準で統計的に有意となった。すなわち、コストの上昇率が閾値を上回ると、パススルーは閾値を下回った場合と比べて大きくなる。』

>コストの上昇率が閾値を上回ると、パススルーは閾値を下回った場合と比べて大きくなる
>コストの上昇率が閾値を上回ると、パススルーは閾値を下回った場合と比べて大きくなる
>コストの上昇率が閾値を上回ると、パススルーは閾値を下回った場合と比べて大きくなる

『また、線形モデルの結果と係数の大きさを比較すると、線形モデルの係数は、非線形モデルの線形部分(「閾値未満」)の係数よりも大きく、「閾値未満」と「閾値以上」のパススルーの和(「閾値超過時パススルー」)よりも小さくなっている。』

『これは、非線形性があるにもかかわらず、線形モデルを推計してパススルーを計測しようとすると、閾値を上(下)回った場合は過小(大)評価となることを示唆している。すなわち、コストプッシュ圧力が大きい局面では、線形モデルを用いた予測はインフレ率の将来パスを過小評価してしまう可能性がある。』

>コストプッシュ圧力が大きい局面では、線形モデルを用いた予測はインフレ率の将来パスを過小評価してしまう可能性がある
>コストプッシュ圧力が大きい局面では、線形モデルを用いた予測はインフレ率の将来パスを過小評価してしまう可能性がある
>コストプッシュ圧力が大きい局面では、線形モデルを用いた予測はインフレ率の将来パスを過小評価してしまう可能性がある

(;∀;)イイシテキダナー

いやね、この分析自体は引用した頭の所にあるように限界があるから、そのまま定量モデルにぶっこむにはより研究が必要になるんでしょうけれども、それにしたって(直感的に考えたってそういう行動を企業が取りそうなものだし)この非線形、つまり「コストの上昇率が閾値を上回ると、パススルーは閾値を下回った場合と比べて大きくなる」ってのを別に定量じゃなくたって定性的にそうだと思われるんだから物価見通しってもうちょい上にならんの。とかそういう話にならないのが宝の持ち腐れではありますな。


・大昔と比べて見た場合の非線形の効果の差に関して

『次に、非線形モデルについて2つの推計期間のパススルーを比較する。1991〜2019年における賃金変動のパススルーは 1976〜1999 年よりも低下している一方、為替変動からのパススルーは幾分高まっている傾向にある。企業物価からのパススルーは、概ね横ばい圏内となっている9。』

ほうほう。

『また、1991〜2019 年の定数項――コスト変数等が推計期間における平均的な上昇率となる場合の消費者物価上昇率を示している――は、1976〜1999 年と比べて低下している。これは、「値札を変えない」という価格設定行動のノルムが、インフレ率の水準の低下に伴って定着したことを捉えているとも解釈できる。』

なるほど〜。でもってここでは推測されてませんけど賃金に関しては恒常的に上がる事が無くなったのが効いてるのかもしれませんね、とか思いました。素人考えですけど。


・そして閾値である

『図表 5 は、各説明変数の動きと併せて、1991〜2019 年の期間で推計された閾値を示している。推計された????はそれぞれ、企業物価が 0.8、為替が 1.5、賃金が 1.2 である10。』

で、ここの脚注10を見ると、一応「賃金が持続的に上昇するかどうか見なきゃ」という言い訳に使える部分がありましてですね・

『10 賃金が推計された閾値を上回っている期間は、主に 1990 年代前半に限られている。2.1 節で述べたとおり、本稿のモデルは推計期間中の経済構造が一定と仮定しているが、1990 年代前半以降に経済構造が変化している可能性もある。そのため、仮に賃金が推計された閾値を今後上回っても、1990 年代前半当時と同様の賃金パススルーが発現するかは幅をもってみる必要がある。』

とありまして、要は賃金上昇がこの1年の一過性のものだったら販売価格に対して非線形でドドーンと跳ねさせなくてもエエンデネエノという発想になって企業が価格設定を行う、という可能性を指摘しているんですな。

まあそれはそうかもではあるのですが、基本的に賃金にはそれなりの下方硬直性がありますし、更に考えれば近年は労働供給の不足あるいはミスマッチも問題になっておりまして、企業サイドとしても上げた賃金下げるちゅう訳にもイカンガーと思われますので、まあゆうて今回の賃金上昇分の価格転嫁はそれなりにホイホイと発生すると思うのですけれどもさてどうなるやら。

なお。現在ではこの推計された閾値との関係がど〜なっているかという話になりますと、

『2022 年第4四半期において、企業物価と為替の変動は推計された閾値を上回って推移しており、これらの非線形なパススルーが足もとの消費者物価上昇率に寄与していることを示している。』

今年の1-3月期で既に閾値越えとな。ただしお賃金に関しては、

『他方、賃金の変動は、2022 年第4四半期までにおいて推計された閾値を下回っており、消費者物価上昇率に対する押し上げ効果は限定的である。』

ということですが、ご案内のようにお賃金が年度改定でホイホイと上昇しているという今日この頃の中でありますので、これはもうアレですわなアレ、というお話になろうかと思います。


・・・・・・・・・さてどのツラ下げて7月展望レポートの2023年度物価見通しを出すんでちゅかねー。


・あとはこの非線形モデルが使えまっせという説明と頑健性チェックです

『3−2.モデル比較』って小見出しは折角乗りかかった船なので勢いで引用します。

『図表 6 の上図は、1991〜2019 年の期間で推計された非線形モデルを用いて、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比の要因分解を行った結果である。アウト・オブ・サンプル期間である 2020〜2022 年のインフレ率については、2019 年第4四半期までの実績データを用いて推計した非線形モデルを用いて外挿した。』

『結果をみると、閾値を超えた場合の非線形なパススルーが、世界金融危機前の国際商品市況の高騰や量的・質的金融緩和導入後の為替円安による物価の押し上げ効果を捉えている。』

!!!!

『なお、国際商品市況の上昇や為替円安による非線形な物価の押し上げ効果の継続期間は、1〜2年程度となっている。賃金については、1990 年代前半にその堅調な伸びが持続的に物価の押し上げ圧力となっていたことがわかる。』

ほうほうほう。

『一方、2000 年代以降は、賃金の緩慢な伸びが総じて物価の下押し圧力となっていた。』

ほほう。

『すなわち、企業物価と為替の変動の非線形なパススルーは一過性である一方、賃金変動はそれ自体に高い慣性がみられることから、賃金上昇の非線形なパススルーは持続的な傾向がある。』

ということだそうです。

『図表 6 の下図は、線形モデルに基づく要因分解の結果である。非線形モデルの線形部分の寄与と比較すると、線形モデルの企業物価と為替の寄与は大きいものの、2008〜2009 年や 2013〜2014 年における消費者物価上昇率の上昇を非線形モデルほど捉えられていない。』

なるほど。

『また、2022 年入り後の予測値を2つのモデルで比較すると、非線形モデルの予測値は非線形部分の上昇寄与を背景に、消費者物価上昇率の上昇を相応に捉えているのに対し、線形モデルでは実績値と大きな乖離が生じている。』

『次に、データへのフィットと予測精度について、非線形モデルと線形モデルのパフォーマンスを比較する。データへのフィットを評価する指標は AIC を、アウト・オブ・サンプルの予測精度を評価する指標は RMSE を用いる。図表 7 で結果をみると、非線形モデルは線形モデルよりも、データへのフィットと予測精度の両方で優れていることが示されている11。』

『なお、予測精度の評価にあたって、一時的な政策要因等を取り除いたベースで評価する方が望ましいと考えられる。消費者物価上昇率(除く生鮮食品・エネルギー)から、教育無償化政策、旅行支援策、携帯電話通信料の影響を除いた日本銀行スタッフによる試算値を用いた場合の推計結果も併せて示しており、このインフレ率についても同様の結果が得られている。』

とまあそういう結果になっていまして、ここから賃金の上昇が企業のコスト増加として出てくれば、一段とインフレが非線形に上がる可能性がありまっせ、という話を思いっきりしていますし、その上植田日銀の政策変更しませんという頑なな黒田路線継承スタンス(のように講演や声明文で言っている、まあその裏で英文の発出文書とか、展望レポートハイライトのポンチ絵とか怪しげなものも出していますけど)が一段の円安を招く可能性も鑑みますと、物価ってもっと上がるんじゃネーノというか政策変えたくないからと言って過小評価するのも無理があり過ぎではないか、という話になるかと思われます。



そんな訳ですので、これ7月展望レポートでどのツラ下げて見通しを出すのかが楽しみですし、7月展望の時点でも2022年度+1.9だとか寝言は寝て言えというような数字(寝言ついでに「手前が上がるので23年度はその裏が出て下がる、とか言い出して23年度を+1.8とか+1.9とかにしてくるのが日銀のインチキクオリティですちなみに)を出してくるのかはわかりませんが、いずれにしましても7月の展望レポートでは色々なものの落とし前を付けるか、あるいは夏場に植田日銀爆発炎上するかの分かれ道、という感じになって来たんじゃないかと思いますがどうでしょうかね。





2023/05/23

お題「金曜の植田講演で失望してたらなんかオラワクワクするスタッフペーパーが出てきたゾ」

これは不動産の短期譲渡所得に対する高率課税復活待ったなしですかねえ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230522/k10014074621000.html
選手村マンション 転売問題で新制限 1名義で2戸まで 東京都
2023年5月22日 11時51分

まあ昭和脳のアタクシには懐かしい古き悪しき時代を思い出させますが。


〇植田総裁が土鳩丸出し講演を行った週明けに非常にまともなスタッフペーパーが打ち込まれるの巻とは

昨日はこんなのが夕方に出て参りました。
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2023/wp23j05.htm
消費者物価への非線形なコストパススルー:閾値モデルによるアプローチ
2023年5月22日
佐々木貴俊*1
山本弘樹*2
中島上智*3

でもってまあ日銀スタッフ謹製ペーパー見慣れておられる方からしますとご案内かもしれませんが、ファーストオーサー(で良いんですよね?)の中島氏は元々日銀でこの手のスタッフペーパーに良くお名前を連ねていらっしゃったわけですが、現在は一橋大学に移られたんですかな。

*1日本銀行企画局 
*2日本銀行企画局 
*3一橋大学経済研究所および日本銀行企画局 
(メールアドレスは外しておきました。まあ今時こんなところからデータ取ってスパム送信もないと思いますが)

では本文に入る前にエグゼクティブサマリーを拝読しようではありませんか(HTMLね)。


・スタッフ研究とは言えこういうきちんとした考察があるのに何で公式の物価見通しや植田発言はああなるんでしょうかねえ

『要旨』

『本稿では、企業のコスト上昇による消費者物価上昇率への影響(パススルー)に、コスト上昇の大きさに応じた非線形性が存在するかを検証する。』

ノンリニアに企業の価格設定行動の変化が起きる、というお話でありまして、これこそがまさにFRBのジェファーソン副議長(だけじゃないけど)の先般の講演にもあった「構造変化の可能性」な訳ですが、ご案内のように金曜日の植田総裁の内外情勢調査会での講演はあくまでも従来の延長線上の話ししかしないで、その結果としてハト派、と言っても何か随分と薄汚ねえ土鳩じゃねえかという感じのダメダメ講演を行っておりまして、植田さんの評価を一部地方では大暴落させておりましたが、すかさずその週明けにこのようなビューテホーなスタッフペーパーが世に問われる、というのは相変わらず日銀のコミュニケーションがワケワカメでございます。

いやですね、餅のロンですけどこちらのペーパーは、

『本稿の作成にあたり、Luiggi Donayre氏、Benjamin Wong氏、代田豊一郎氏、30th SNDE Annual Symposiumでのセミナー参加者、および日本銀行スタッフから有益なコメントを頂戴した。また、平田篤己氏には分析の補助をして頂いた。記して感謝の意を表したい。もちろん、本稿のあり得べき誤りは、全て筆者たち個人に属する。なお、本稿に示される内容や意見は、筆者たち個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。』

となっているのであくまでもスタッフおよび外部(って言っても中島さんの場合は純然たる外部って感じはしませんけどね)の研究者による紙ではございますが、このペーパー、さっきも引用しましたけど再掲すると、

消費者物価への非線形なコストパススルー:閾値モデルによるアプローチ
2023年5月22日
佐々木貴俊*1
山本弘樹*2
中島上智*3

*1日本銀行企画局 
*2日本銀行企画局 
*3一橋大学経済研究所および日本銀行企画局 

金融研究所でも調査統計局じゃなくて企画局なんですよねーーーーーーーーーーーー。ハーコリャコリャ。


・・・・・・いやまあアレですよ。先般来ちょこまかネタにしてるし話題にもなっていますが、最近って正本としてはやたらハト(下手したら黒田よりもハト)な話を植田さんがぶっかましている訳ですが、その一方で、

「主な意見の英語版」(主な意見はそもそ日本語で出されているものなので英語版は政策委員が書いたものではない筈)
「声明文の英語版」(英語版は決定会合議決事項ではない)
「展望レポートハイライト」(日銀のホームページによるコミュニケーション(教えて!にちぎん!みたいな物件)は情報サービス局の所管、そらまあこちらは展望レポート基本的見解という決定会合議決事項をポンチ絵に落としているので企画局が絡んで居ると思うけどこの絵についても別に金融政策決定会合で議決するものではない筈)

という政策決定プロセスを微妙に回避している所で物価目標が達成しそうな絵が出て見たり、「粘り強く」の訳語をしらっと変更してみたり、というような怪しげな情報がチョロチョロと出てくるわけなのですよね。

でもって今回のこれである。しかもスタッフペーパーだが書いているのは企画局のスタッフなのである、ということでエグゼクティブサマリーの先を読んでみる。

『具体的には、コストの上昇率がある一定の閾値を超えるとパススルーの度合いが大きくなるかを、わが国のデータを用いて実証分析する。』

これは無茶苦茶興味深い。

『主な実証結果は以下の3点である。』

へいらっしゃい!

『(1)企業物価や為替、賃金の上昇率がそれぞれの閾値を超えた場合、消費者物価上昇率へのパススルーの度合いは大きくなる。』

つまり企業の価格設定行動が閾値を超えると急に積極化する、ということですな。

『(2)このようなパススルーの非線形性を勘案したモデルは、データへのフィットおよび予測精度が従来の線形モデルよりも優れており、線形モデルから得られたパススルーの度合いは、閾値を上(下)回った場合に過小(大)評価であることが示唆される。』

>線形モデルから得られたパススルーの度合いは、閾値を上(下)回った場合に過小(大)評価であることが示唆される
>線形モデルから得られたパススルーの度合いは、閾値を上(下)回った場合に過小(大)評価であることが示唆される
>線形モデルから得られたパススルーの度合いは、閾値を上(下)回った場合に過小(大)評価であることが示唆される

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

はい、今の日銀の物価見通しが過小評価になっている可能性が示唆されている訳ですな。

『(3)企業物価と為替の変動の非線形なパススルーは一過性であることが多い一方、賃金変動はそれ自体に高い慣性がみられることから、賃金上昇の非線形なパススルーは持続的な傾向がある。』

これはつまり「企業物価とか為替のコスト上昇は一時的かも知れんけど賃金によるコスト上昇は一時的なもんじゃない」というお話でして、一方で植田日銀は「今の物価上昇はコストプッシュで一時的なので年度後半になったら剥落する」というのを念仏のように唱えているわけですけれども、どっからどう見てもこの説明ですと、今年度の賃金改定によるコストプッシュ部分は剥落しません、ってんだから既に今の物価見通しに対して見事な砲撃になっている、ということですな。

なお、ここの最後ですが、

『これらの結果は、今後の消費者物価の動向を考えるうえで、賃金上昇の非線形的なパススルーの発現が重要な論点の一つであることを示唆している。』

という締めを行って何となくこの「賃金上昇のコストプッシュは持続的」の部分を解毒して今後の企業の価格設定行動のパススルーを見極めていきましょう、みたいになっていますが、あの「今の物価上昇はコストプッシュによる一時的なもの」の強調によってまるでやる気のない話をしている中で、スタッフレベルだから勿論これが即座に政策に反映する訳ではない、という建付けはあるとは言いましても、少なくとも内部ではこのように「物価動向が従来の延長線上ではなくてノンリニアに変化する可能性があります」というまとまった考察が行われている訳でありまして、そういう考察があるのに何ですかあの植田総裁の内外情勢調査会の講演は、というお話になる訳ですな、うんうん。


とまあそういう訳で、植田日銀になってからコミュニケーションって政策決定プロセスを経て出てきている物件と、それ以外の物件で出しているニュアンスが真逆なものがチョイチョイと出て来る、の今回は第4弾(最初が声明文で次が主な意見でその次が展望ハイライトな)という状況な訳ですよ。

こういうのを見せられますと、もともとYCCの長期金利ターゲットが事前織り込み示唆出来ない、という手かせ足かせがあるという問題点があることを鑑みますと、6月とか7月にYCCの長期金利ターゲットだけ騙し討ちしてくるんじゃ無かろうかという思惑が払拭できないというか、「私言いましたよね」のアリバイでこういうのを出してるんじゃないか、と邪推の1つもしたくなる訳でして、これはまあ黒田のアホウがYCCの長期ターゲット外さないで逃げてしまった負の遺産なので植田さんの貰い事故な面はあるにせよ、こういう謎コミュニケーションになってしまうのを6月7月を経て更に続けてたら、コミュニケーション無茶苦茶になりそうだし、そもそも物価情勢や円安が植田さんを許してくれないリスクが高まると思うのです(なお何とかスト軍団は何故かそっちには楽観的なので、一般的に外野から見てると物凄い先送りって感じの話しか見えないと思うの)けどどうなんでしょうかね。


では本編に参ります、と言っても不肖このアタクシ、算数に関してはハクション大魔王並みの知能しか持ち合わせておりませんのでデータ分析という肝心の部分は全部かっ飛ばして序論と考察部分と結論しか読まないので興味のある方は途中の分析項もご覧あそばせあれです。


・ということで本文に参りますね

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2023/data/wp23j05.pdf
消費者物価への非線形なコストパススルー:閾値モデルによるアプローチ

佐々木貴俊*
山本弘樹*
中島上智**
(さっきと同じくメールアドレスの引用は割愛します)
* 企画局
** 一橋大学経済研究所および日本銀行企画局

最初に「要旨」がありますがこれは今しがた引用した紹介ページにあるものと同じエクゼクティブサマリーですので飛ばしまして、PDFの3枚目から始まる序論部分から参りましょうず。


・冒頭から(;∀;)イイハナシダナーのオンパレードで金曜に発生したやり場のない(あるけど)思いがだいぶ晴れた希ガス

『1.はじめに』ということで。

『わが国では 2022 年に、国際商品市況の高騰や為替円安等を背景に、企業は急激かつ大幅なコスト上昇に直面し、その多くが値上げに踏み切った。その結果、消費者物価の前年比は 1980 年代前半並みに達し、約 40 年振りのインフレ率を記録した(図表1)。』

はい。

『原油価格や為替といった企業のコスト変数と消費者物価の関係については、これまでに多くの研究が蓄積されており、その定量的な分析を行う際には、コスト変数の変化率と消費者物価の上昇率の間に線形な関係を仮定することが多い(例えば、Campa and Goldberg, 2005)。』

ほうほうなるほどなるほど線形な関係を仮定とな。

『もっとも、最近の企業の価格設定行動を踏まえると、企業のコスト上昇によるインフレ率への影響(パススルー)には、コスト上昇の大きさに応じた非線形性が存在する可能性が考えられる。』

キターーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

『例えば、ある程度までのコスト上昇であれば、企業は値上げをせずに様子見する一方、それを超えた大幅なコスト上昇になると、値上げに踏み切るといったことが考えられる。この場合、コスト上昇の大きさがある閾値を超えると、そのインフレ率へのパススルーの度合いは非線形的に大きくなる。』

なるほどそうなりますね。


『このようにインフレ率へのパススルーが非線形である場合、従来の線形なモデルを用いると、コスト変数が急激かつ大幅に上昇する局面では、インフレ率へのパススルーを過小評価してしまう可能性がある。』

盛り上がって参りました!!!!!!!!

『近年のグローバルなインフレ率の高まりを背景として、インフレ率の非線形な決定メカニズムは金融政策運営の観点から重要な論点の一つと指摘されるなど、学術的にも政策実務的にも注目が集まっている(Taylor,2000; BIS, 2022; Borio et al., 2023; Gopinath, 2023)。』

>インフレ率の非線形な決定メカニズムは金融政策運営の観点から重要な論点の一つと指摘される
>インフレ率の非線形な決定メカニズムは金融政策運営の観点から重要な論点の一つと指摘される
>インフレ率の非線形な決定メカニズムは金融政策運営の観点から重要な論点の一つと指摘される

先行事例だったから止むを得ない部分はあったにせよ、FRBが大規模金融緩和の正常化着手の遅れによって急激かつ大幅な引き締めをせざるを得なくなった要因の1つにこの「ノンリニアな変化」の可能性を軽視あるいは無視していたことがあると思われるわけでして、まさに「金融政策運営の観点から重要な論点の一つと指摘される」というのに金曜日の植田講演ときたらこういう話が一切盛り込まれていない、というお前本当に日本を代表する金融政策関連の学者なのかと小一時間問い詰めたくなるような物件が出ておりましたので、もう昨日アタクシはこの「はじめに」のここまで読み進めて目から汗が出て文字が見えなくなりそうになりましたよ(というのは話を盛ってますサーセン)。


ということでこの辺が前置きの前置きでして、ここからは先行研究事例の紹介になります。

『先行研究では、パススルーの非線形性を勘案するため、「閾値モデル」を用いたパススルーの推計が行われている1。』

ここで脚注があるので脚注の1番に飛びますが、

『1 パススルーの実証分析では、閾値モデルのほかに、状態(レジーム)の変化を伴う時系列モデルも利用されている。例えば、Shintani et al. (2013)は、パラメータの値が緩やかに遷移する平滑推移(smooth transition)モデルを用いて、米国の物価に対する為替のパススルーが、過去のインフレ率の実績に依存して変化することを示している。』

というのもあるそうですが本論に戻りまして、

『例えば、Colavecchio and Rubene (2020)は、為替の変動が推計期間における1標準偏差を超えた場合にインフレ率へのパススルーが上昇する回帰モデルを考案し、ユーロ圏で為替変動のパススルーに非線形性があることを示している。また、Caselli and Roitman (2019)は、新興国における為替変動のインフレ率へのパススルーは、その変動が大きいほど上昇することを報告している。同様に、Ben Cheikh et al. (2018)は、欧州で為替変動のパススルーが景気拡大局面において上昇することを指摘している。』

『わが国については八木ほか(2022)が、原材料コストと為替の変動のパススルーは、川上コストと為替の変動が大きい局面や景気拡大局面で上昇する傾向があることを報告している。』

八木さんの2022ってのは日銀のWPシリーズの昨年9月の「コストプッシュ圧力の消費者物価へのパススルー 」(https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/wp22j16.htm)だと思います。なお2022年のWPシリーズの一覧は下記URL先にありまして、中島さんのお名前ホイホイ出てるのが見て取れるかと。https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2022/index.htm


・複数コスト変数での非線形を考慮した考察というのが今回の分析の新しさだそうです

ということで先行研究のご紹介の続きですけど。

『先行研究の多くでは、単一のコスト変数のみについて非線形性を勘案したうえでパススルーの推計を行っている。』

なるほど。

『もっとも、複数のコスト変数にそれぞれパススルーの非線形性が存在する可能性が考えられ、仮にそうであるにもかかわらず勘案しないのであれば、パススルーの推計値にバイアスが生じてしまう。』

そらそうですね。

『また、先行研究の殆どにおいて、閾値を先験的に設定して推計を行っている。例えば、前述のとおり Colavecchio and Rubene (2020)は、為替変動のパススルーの非線形性に関する閾値を為替変動の1標準偏差に設定している。もっとも、閾値の有無やその水準は先験的には明らかではない。』

ってな訳で・・・・・・・・・・

『そこで、本稿では、インフレ率への非線形なパススルーをより的確に推計するために、複数のコスト変数のパススルーに非線形性がある閾値モデルを考案して、閾値を未知のパラメータとして扱い、閾値も含めてパススルーを推計する方法を提案する。』

こういう素晴らしいし先駆的なんじゃないかと思われるリサーチがあるのに何であんなアホの極みみたいな政策先にありきの物価見通しとその情報発信になるのか、全く持って宝の持ち腐れである(全くの推計の世界な訳じゃなくてちゃんとロバストネスチェックだってあるんですよペーパーで出しているだけに)。

『そのうえで、わが国のデータを用いて、様々なコスト変数(企業物価、為替、賃金)の消費者物価上昇率へのパススルーに非線形性が存在するかを検証する。本稿の主な実証結果は、以下の3点である。』

ということで主なインプリケーションは以下の通りになります、おまいら正座して待機しなさい(人のフンドシで偉そうなアタクシ)。


・コストの変数に企業物価と為替と賃金をあげていますね

結論その1.

『第1に、消費者物価上昇率に対する企業物価や為替、賃金の変動のパススルーには非線形性が存在し、それらの上昇率が閾値を上回った場合のパススルーの度合いは、閾値を下回った場合と比べて大きく、その差は統計的に有意である。』

キタコレ。企業物価と為替と賃金と来ているのが当然ではあるのだがチャーミング。

『これは、コスト上昇が急激かつ大幅な局面では、コストの変動幅の拡大だけでなくパススルーの上昇も通じて、インフレ率を非線形的に押し上げ得ることを示唆している。』

とまあこういう考察結果が出る前であっても、当然このような問題は(先行研究事例があるわ金融政策運営上の世界的な注目点の一つになっているのだから)把握されている筈で、そらまあ定量的にどうのこうのとは中々出せないにしても、定性的に上記のような事が考えられる、ってのを勘案したらこの1年以上物価見通し外しまくるってのはもうちょっとマシなことになったんじゃないでしょうか、と思うのですが、まさかとは思いますが日銀のスタッフ様におかれましては、黒ちゃんが意地でも政策の微修正すら許さん(昨年12月に一度折れましたが)というスタンスで居るために、このような点を丸無視して見通しを作った、などということがあったのではないか疑惑にはどう回答するのかな、って思いまする、



・思いっきり「急激な価格上昇局面で物価見通しを過小評価する可能性」について言及

結論その2.

『第2に、インフレ率への非線形なパススルーを勘案したモデルは、データへのフィットおよび予測精度が線形モデルよりも優れている。それゆえに、線形モデルから得られたパススルーの度合いは、非線形モデルにおける閾値を上(下)回った場合、過小(大)評価であることが示唆される。』

というのはさっきのエクゼクティブサマリーにもありましたが、本文の方にはもう一言ございまして、

『また、コスト上昇が急激かつ大幅な局面では、線形モデルを用いた予測はインフレ率の将来パスを過小評価してしまう可能性があることに注意が必要である。』

(;∀;)イイハナシダナー


・「今の価格上昇はコストプッシュで一時的」を金曜日も連呼していた植田大先生これはぐうの音も出ませんね!!!!

結論1と2でも中々いい感じのパンチ力がありますが、結論3のパンチ力が中々の大きさでアタクシ感涙が止まりません。

『第3に、本稿で推計した非線形モデルを用いて消費者物価の前年比を要因分解すると、企業物価と為替の変動の非線形なパススルーは一過性であることが多い一方、賃金変動はそれ自体に高い慣性がみられることから、賃金上昇の非線形なパススルーは持続的な傾向がある。』

ということで、こちらはエグゼクティブサマリーにもありましたけど、つまりは「今の物価上昇はコストプッシュで一時的」をひたすら連呼している日銀公式に対して無慈悲な砲撃になっている訳ですが更に本文では以下の説明が続きます。

『こうした点を最近の消費者物価の動向に照らし合わせると、』

これは無慈悲な砲撃w

『2022 年に企業物価と為替の変動の非線形なパススルーが生じ、賃金上昇が今後加速すれば、賃金の非線形的なパススルーの発現が、物価動向を考えるうえで重要な論点の一つであることが示唆される。』

つまりですね、来年の賃金とか待たなくても、価格上昇に関しては「コストプッシュによる一時的」だけじゃすまされない状態になっていく、というか賃金上がってるんだから既にそうなっている、という話ですな!!!!!!!!!!!


『本稿の構成は以下のとおりである。次節では、非線形なパススルーの推計手法とデータを説明する。第3節では、消費者物価上昇率への非線形なパススルーに関する実証結果を示す。最終節は結語である。』


でもって例によって途中はかっ飛ばして結論項に飛びます(すいませんすいません)。


・結論項では金曜日の内外情勢調査会での植田講演の説明を続々と無効になるモンスターカードが切られていて実に爽快である

本文11ページ、PDFの13枚目に飛びまして、『4.おわりに』です。序論と被るところもありますが折角なのでこの部分も引用しますね。

『本稿では、コスト変数の上昇率がある一定の閾値を超えると、インフレ率へのパススルーの度合いが大きくなるという非線形性の有無を実証的に検証した。主な実証結果は、以下の3点である。』

『第1に、消費者物価上昇率に対する企業物価や為替、賃金の変動のパススルーには非線形性が存在し、それらの上昇率が閾値を上回った場合のパススルーの度合いは、閾値を下回った場合と比べて大きく、その差は統計的に有意である。』

>その差は統計的に有意である
>その差は統計的に有意である
>その差は統計的に有意である

『第2に、インフレ率への非線形なパススルーを勘案したモデルは、データへのフィットおよび予測精度が線形モデルよりも優れている。それゆえに、線形モデルから得られたパススルーの度合いは、非線形モデルでの閾値を上(下)回った場合、過小(大)評価であることが示唆される。』

先ほどと同じですな。

『第3に、本稿で推計した非線形モデルを用いて消費者物価の前年比を要因分解すると、企業物価と為替の変動の非線形なパススルーは一過性であることが多い一方、賃金変動はそれ自体に高い慣性がみられることから、賃金上昇の非線形なパススルーは持続的な傾向がある。』

ということで、

『これらの結果は、日本銀行の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成には、賃金の上昇が重要な要素の一つであることを示唆している。』

ってな提灯っぽいこと書いてますが、ここであえて書かれて無いんだと思いますが、そもそも賃金上昇による価格上昇は一過性のものではない、ということになりますので、それ即ち今般の賃金上昇が物価に跳ねるとそれは一過性の物価上昇ではない、って話になりますがなという事でもありまして、何も来年の賃金までノロノロと待っている場合ではないし、コスト上昇がノンリニアに物価に跳ねる可能性も勘案したら、そんなにゆっくりと判断している時間的余裕もなくて、金曜日の内外情勢調査会で説明していたようなノホホンとしたスタンスでマイナス金利だの10年0%だのという超越緩和を継続していたら、政策の修正が後手に回ってしまうリスクを盛大に内包した状態である、というのを示唆しているとしか思えない訳です。

なお、今後の研究課題というのが最後にあるんですがこれもまたチャーミングというか無慈悲な砲撃というかでして、

『最後に、今後の研究課題を3点挙げたい。』

『第1に、本稿ではコスト上昇のパススルーの非線形性に着目したが、隣接する議論として、フィリップス曲線はフラット化したのか、需給ギャップが大幅に改善すれば非線形的にインフレ率を押し上げ得るのか、等の問いは重要な論点であると考えられる(Hooper et al., 2020)。』

内外情勢調査会での説明を無効にしていくモンスターカードが次々とドローされております!

『この点について、Forbes et al. (2022)は、フィリップス曲線の非線形性について実証分析を行っている。本稿の推計はインフレ予想を説明変数に含めていない等、フィリップス曲線の推計とは異なるため、これらの問いは今後の研究課題としたい。』

じゃあこの間にインフレ予想が上がったら(現に上がっているという認識を展望レポートでは示している)もっと物価上昇が定着するじゃないですかヤダー。


『第2に、物価と賃金が相乗的に上昇する理論的なメカニズムや実証研究は発展途上であり、今後の研究成果が期待される(Lorenzoni and Werning, 2023)。』

まあこれは良いとしてこの次(まさに最後)がまた結果的に凄いぶっこみになっておりまして・・・・・・・・・・・・


『第3に、本稿のモデルは推計期間中に構造変化がないと仮定しているほか、インフレ率の慣性を勘案していない。』

これは無慈悲な砲撃で内外情勢調査会講演が火の海になっております。何せ金曜の内外情勢調査会講演って最近の欧米中銀界隈で言われている構造変化の可能性とかそういうのを丸無視して「コストプッシュだから以下同文」を繰り返して物価見通し外し続けるんですからねーwww

『2022 年入り後の今次局面では、過去の資源高局面等と比べても、販売価格の変更に従来慎重だった業態や企業にも値上げの動きが広がるなど、企業の価格設定スタンスは、本稿の推計期間で観察された姿よりも幾分積極化している可能性がある(池田ほか, 2022)。』

火の海に追い打ちをかけるスタイルですこれは凄い。

『また、物価と賃金が高めの伸びを続ける場合、インフレ予想の上昇を通じて、企業の価格・賃金設定行動が徐々に変化していく可能性が考えられる。』

止めにツァーリ・ボンバーが投下されています、ってかこういう考察をスタッフ(しかも企画局)で行っているのに何であんな従来からのリニアな物価見通しを漫然と出して1年以上下方に外し続けた挙句、今回も誰が見てもクソ低い物価見通しを平気で出してきてその過小評価物価見通しをベースに「丁寧な説明」とやらを行っているのか、ちょっと植田総裁の頭の中がどうなっているのか拝見させて頂きたいんですが・・・・・・・・

『これらを勘案できる理論・実証モデルの構築は有用であると考えられ、今後の課題である。』


というのが結論でした。いや普通こういう論点って出るだろという話(分析能力が皆無なので分析できませんがワイ)でありまして、未だに「コストプッシュなので一時的、23年度後半には2%割れ」とか言ってるのがおかしいというのを改めて示すという見事なフレンドリーファイヤーで金曜日のクソ講演でやさぐれた心がかなり癒されるペーパーでしたとさ。




2023/05/22

お題「植田さんの講演初回、いやーこれは酷いわ」

いやーこの物価を見ている筈なのにこれですかーーーーー、という講演でしたな。

〇植田総裁のあじゃぱー講演の前に全国CPIのメモ

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)4月分(2023年5月19日公表)

(1) 総合指数は2020年を100として105.1
  前年同月比は3.5%の上昇  
(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.8
  前年同月比は3.4%の上昇  
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.0
  前年同月比は4.1%の上昇

でまあ一応コアコアが事前予想+4.2で+4.1だからとかそういう話もあるんですけど、

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数
全国 2023年(令和5年)4月分

◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として105.1
前年同月比は3.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.6%の上昇
(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.8
前年同月比は3.4%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇
(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.0
前年同月比は4.1%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇

最近は『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』を真っ先に見るようになった今日この頃なのですが・・・・・・・・・・・・

前月比で見ますとですね、

   総合  コア  コアコア
4月:+0.3  +0.2  +0.2  
5月:+0.2  +0.2  +0.2
6月:+0.2  +0.2  +0.2
7月:+0.4  +0.4  +0.4
8月:+0.3  +0.4  +0.3
9月:+0.4  +0.4  +0.3
10月:+0.4  +0.4  +0.3
11月:+0.4  +0.4  +0.3
12月:+0.3  +0.4  +0.2
1月:+0.4  +0.3  +0.4
2月:-0.6  -0.7  +0.4
3月:+0.3  +0.3  +0.5
4月:+0.6  +0.5  +0.5

という次第で、前月比の上昇って勢い加速しているんですよねどっからどう見ても。ヘッドラインもそうですし、電力ガス高騰対策の影響のないコアコア見たら3月4月と前月比+0.5と上げの勢いが着実に強まっている訳で、コアコアって日銀様に置かれましては基調的な物価としていた筈なんですよねー。勢い加速しているように見えますけど何でこれで2023年度平均が+2.5%になるのかまるで分らんですね。

なお、電力ガス高騰対策様による押し下げですが、こちらは現数値を見ればもう一発ロンでありまして、


   総合   コア  コアコア
1月:104.7  104.3  102.2
2月:104.0  103.6  102.6
3月:104.4  104.1  103.2
4月:105.1  104.8  104.0

コアコアはオマケでして問題2月に対策で下がってくれた総合とコアですが、2月に電力ガス高騰対策で下がった分を4月で取り返して結局高騰対策で下げても他の物価が上がって打った対策の分は空しく消滅している、という大変にあじゃぱーな結果になっている訳ですな、うんうん。

あのですね、まあこれが高い所から下がってきてってムーブが起きてるなら年後半には下がって2%割れるんですよとかいう世迷い言も世迷い言に聞こえないかもしれませんけど、どっからどうみても物価上昇の勢いが加速してるわ(細かい品目の話はパスしますが)幅広い物価上昇になっているわ、という状態の中でまーた円安とかになる訳ですが、何をどうすると年度頭の+3.4%から始まるコア物価が2023年度平均で+1.8%になるのかちょっと物価パスについて月次展開で説明してくれませんかねえ、と思うのですが、内外情勢調査会での植田総裁はそんな説明は一切なく、いや本当に真面目に説明する気あるのかこのスットコドッコイとしか申し上げようがない講演が(だいたい嫌な予感はしてたのですけど)展開されましたので、ではまあご案内とは思いますがどうスットコドッコイだったのかをかいつまんで鑑賞して行きましょう。


〇植田総裁デビュー戦の政策説明の講演だがこんな説明なら黒田の方がマシなんじゃないかレベルの講演に泣いた

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230519a1.pdf
金融政策の基本的な考え方と
経済・物価情勢の今後の展望
―― 内外情勢調査会における講演 ――

という訳でスットコドッコイ講演ですが、念のため申し上げますと、「YCCの長期金利ターゲットの変更が事前に織り込ませるどころかカシュカリ総裁の頭髪ほども気配を出すわけにいかないので、こうやってガバガバな説明をしながらYCC早期解除の煙幕を張っている」という可能性は中曽元副総裁の頭髪程度の可能性があるので、まあそれでしたらアアソウデスカという講演ではあるのでございますが、それにしても紙(髪ではない)に残る講演でこんなクオリティの物を出しちゃダメでしょと思いました。

いやー植田先生にはがっかりというか、これなら「何をやりたい」だけはハッキリしてたし、それに対するケツ持ちは絶対に行う、ってスタンスが明確だった黒田の方がマシだったんじゃないか位の勢いになっていまして、全く持って見てらんないという感じでありますが始まり始まり・・・・・・・・・・・・・・・


・説明のロジックがガバガバなのに論理的に判断とはこれ如何に

『1.はじめに』ということで最初から読むのだが。

『日本銀行の植田でございます。本日は、内外情勢調査会でお話しする機会を頂きまして、誠にありがとうございます。』

『本席は、私にとって、日本銀行総裁に就任してから初めての講演となります。これから5年間、総裁の職務を果たしていくにあたり、私が心掛けたいと思っていることの1つに、「論理的に判断し、できるだけ分かりやすく説明すること」があります。』

>論理的に判断し、できるだけ分かりやすく説明すること
>論理的に判断し、できるだけ分かりやすく説明すること
>論理的に判断し、できるだけ分かりやすく説明すること

・・・・・・・という講演にはまるでなっていないんですよね。ああそうですか「心がける(やるとは言ってない」」ということですかそうですかwww

『本日お話しする金融政策は、金融市場や広く人々の行動に働きかけることを通じて、効果を発揮するものです。そのためには、政策運営に関する考え方や、政策判断の背景について、理解を得ることが大切です。経済は様々な要素が複雑に絡み合って動いているものですし、金融政策には専門的・技術的な側面がありますので、一つひとつ解きほぐしながら、丁寧な説明に努めてまいります。』

丁寧な説明ったって口調が丁寧なだけで肝心の説明がガバガバなんですけどね、まあ努めてまいります(やるとは言っていない)でしたねqqq


・時期を逸しているようにしか思えないのに時期を逃さず的確に判断するとは何事ぞ

更に続く。

『私自身、50 年近く経済学という学問を研究してきました。学者の立場では、現実に起こっていることの一部分に焦点を当てて、その部分に特化して理論を組み立てていきます。』

『一方、中央銀行の政策担当者としては、実際の複雑な経済に直面し、時機を逃さず的確に判断していくことが求められますので、両者の視点は自ずと異なります。』

>時機を逃さず的確に判断していくことが求められます
>時機を逃さず的確に判断していくことが求められます
>時機を逃さず的確に判断していくことが求められます

あれー、欧米特に米国が金融緩和政策を引っ張り過ぎたのを目の前で見てるのに、その必要があるのか全く理論的な説明の無い「マイナス金利政策」「10年0%」「10年金利の上限0.5%」をアホみたいに固執しているのって時期を逃してませんかねえCPIの前月比上昇加速しているんですけどねえ・・・・・・・・・・


・政策現場における知見を全然生かしていないで物価見通し外しまくっている日銀の言葉とも思えませんね

そして更に世迷い言は続き、

『しかし、経済理論は、経済現象を理解するうえでの有益な視座を提供してくれますし、逆に、政策現場における知見が新たな理論を構築するきっかけになることもあります。』

と、クッソ立派な事を仰せなのですが、以下にありますように今回の植田総裁の説明はフィリップスカーブを使って説明していまして、まさしく今インフレに関して日本が追いかけている形になっている先行者の欧米諸国においては、「そもそも経済の構造変化が生じており、従来の延長線上の考えでは適切な対応が出来ない(まさにそれによってインフレ対処が遅れて強烈な引き締めが必要になったのが米国)のではないか」という事で、それはつまり過去からのリニアな延長で物事を考えることになるフィリップスカーブの話とは違うアプローチになってきていますが、まあそういう事こそが「政策現場における知見が新たな理論を構築するきっかけ」なんですよねー。

少なくとも、この1年以上の期間に渡って日銀は物価見通しを盛大に外し続けているので、まあこんな立派な説明をするんだったら、なぜ日銀は物価見通しを外し続けたのか、ということをキチンと説明して、外し続けた理由の部分を是正した場合に、金融政策運営は如何にあるべきか、という判断にも変化が起きて然るべきですよね。何で従来の屁理屈の延長線上で屁理屈捏ねてて物価見通し外しまくっている事への考察が無いのかな〜www


『経済理論と政策の実践は、まさに相互に関連し合いながら発展するものであり、私としては理論的な根拠を踏まえつつ、責任をもって金融政策の実践を行ってまいりたいと考えています。』

物価が2023年度後半に伸び率を威勢良く縮小して年度平均で+1.8%になるというののどこに理論的根拠があるのか小一時間問い詰めたい。


・そもそも理論的根拠のベースがマネタリーベース直線一気の置物理論を引き継いでいる時点でダメですこの人

という訳で「はじめに」というのの最後を見るとここでまたアタクシ(゚д゚)こんな顔になってしまうのでありんす。

『本日は、その第一歩として、日本銀行の金融政策の基本的な考え方について、これまでの政策運営の歩みも含めてお話しします。そのうえで、先月末に公表した展望レポートの内容にも触れながら、現在の金融政策運営についてもお話ししたいと思います。』

>日本銀行の金融政策の基本的な考え方について、これまでの政策運営の歩みも含めてお話しします

え???

>これまでの政策運営の歩みも含めて
>これまでの政策運営の歩みも含めて
>これまでの政策運営の歩みも含めて

えーっとすいません、「これまでの政策運営の歩みも含めて」ってなりますと、あの岩田規久男大先生様が提唱されました、「日銀当座預金が10%増えると予想インフレ率が0.44%上昇する」という世界標準()のマネタリーベース直線一気理論に基づいて金融政策を実施して、それが当たり前のように不発のでヤケのヤンパチでマイナス金利入れたら金利が下がり過ぎて弊害が出てそれを誤魔化して時間稼ぎするために実施したYCC政策、という恥ずかしい政策の説明をする、って話ですし、そもそもそういう説明だということは、つまりは黒田路線の延長線上でやりますよという話をしている、ということになりますな。

あーあーあーあー、ダメダコリャ。

まあ何ですな、黒田日銀の政策運営における最大の問題点、「政策運営におけるコミットメントが強すぎ(長期金利をペッグするというのは強すぎるコミットメントですな)るため、いざ政策の目標達成が視野に入って来ると、いわゆる時間的不適合の問題が発生する」ってのは黒田末期にずっとやってたわけでして、まずはそういうのを是正してから話を始めろよと思うのに、このエテ公は黒田の延長線上で政策やる宣言しちまったわと思いますし、退任の時にしれっと黒ちゃんは物価目標達成が近づいたとか賃金の伸びが良いとか退任と同時に急に物価目標行きそう発言をコロっと行っている事を考えたら、黒田よりもこのエテ公の方が物価判断後退してる(しかもその間に物価は上記のようにますます強いというのに)ということで、まあどうしようもない講演である、というのがイントロの時点で判明しましたので、まあ後は批判的に眺めて進みましょということです。


・金融政策の波及メカニズムの話が「低金利が長期化してしまった場合の需要喚起効果に疑問がある」のをすっかりスルー

次のコーナー『2.金融政策の基本的な考え方』ですが、最初のゴミみたいな向上は飛ばして次の小見出しに進む。『(金融政策の波及メカニズム)』って小見出しだが。

『最初に、金融政策が物価に影響を及ぼすメカニズムからお話しします。本日は、少し単純化していますが、2つの主要なメカニズムに絞ってご説明したいと思います(図表1)。』

図表1を見た瞬間に萎える訳ですが。

『1つ目のメカニズムは、金利と経済の関係です。』

低金利政策を超長期化した結果その関係が弱まる、即ち金融緩和をやっても実体経済の需要を喚起する力に乏しくなっている、というのが良く言われている話だと思うのですが、植田大先生、そんな話は一切行わずに金利のある世界における金利の上げ下げの話をおっぱじめて見てらんない。

『金融政策の出発点は金利です。日本銀行は、金利を上げ下げすることで、経済に対して影響を及ぼします。』

もうこの出オチよ。

『例えば、金利を引き下げますと、企業が設備投資を行ったり、家計が住宅を購入したりする際の借り入れ金利が低下し、需要を刺激します。これにより、雇用が生まれ、経済活動が活発化することになります。反対に、金利の引き上げは、需要を減らし、経済活動や雇用を抑制する方向に働きます。』

それが効けばこんなに苦労しなかったんじゃないですか今更何寝言言ってるんだよこいつはwwwwwwwww


・そして出てきたフィリップスカーブなのだが基本的にフィリップスカーブは政策を恣意的に説明する道具として使われますのよね

『2つ目のメカニズムは、経済と物価の関係です。』

でもってのっけからこれである。

『物価は、経済全体の財やサービスの需要と供給のバランス、すなわち「需給ギャップ」によって決まってくると考えられています。』

だそうなんだが、物価目標が安定的にアンカーされている状況の時って「経済のギャップが中立的な時に物価が目標値近辺に居る」ってのが定義的にはそうなっているのでありまして、需給ギャップをずーっとプラスにしてどうのこうのみたいな説明も何だかなと思うのですし、結局インフレ期待の方が大事という話になりますよねそれって、と思うのだが、

『経済が活発化し、需要が高まれば、物価上昇率は高まりやすくなります。反対に、経済が落ち込み、需要不足となれば、物価上昇率は低下することになります。こうした物価上昇率と需給ギャップとの関係は、経済学では「フィリップス曲線」と呼ばれるものです。ニュージーランド出身の経済学者フィリップスが 1950 年代後半に、名目賃金上昇率と失業率の関係を見出したことが始まりとなり、それ以降、物価と経済の関係を示す重要な枠組みとなってきました。』

ということでフィリップスカーブの話という最もガバガバな世界に入っていきます。


・特に米国辺りでは経済の基礎的条件に変化が生じていて従来の延長線上では役に立たないという話になっているのにこれである

『このフィリップス曲線の位置や形状が分かれば、どのように金融政策を行うべきかが明らかになります。仮に物価上昇率が目標の値より高ければ、金融引き締めを行うことで、逆に低ければ金融緩和をすることで、需給ギャップを物価目標に対応する水準に調整していけば良いということになります。シンプルですが、これが金融政策の最も基本となる考え方です。』

あれ??物価上昇率目標の値より高くなかったでしたっけ??????という疑問にはこの次の屁理屈が説明として用意されます。

『もちろん、現実の金融政策はここまで簡単ではありません。その理由の一つは、フィリップス曲線の位置が変化したり、物価が同曲線から一時的に乖離して推移することがあるためです(図表2)。』

図表貼り付け能力が無いので図表は講演PDFのケツにあるからそれを読んでちょという話ですが、何故かこの説明ではフィリップスカーブの形状自体は変わらない、ということでこれ即ち経済の基礎的な面について従来の延長線上でしか物事を考えていません、という屁理屈展開が行われる宣言になっておりますね。ジェファーソン副議長の爪の垢で煎じて飲めとしか申し上げようがありません。


・ここで突如丁寧な説明をしているのだが元々ガバガバな話の枝葉の所で妙に丁寧な言い方をして丁寧さを演出ですね

ここで突如こんな話をおっぱじめる植田さんは「わかりやすい説明」「丁寧な説明」の猿芝居を始めます。

『この要因について、ここでは「予想物価上昇率」と「一時的な供給ショック」の2つを取り上げてみたいと思います。』

『まず、「予想物価上昇率」は、文字どおり、先行きの物価上昇率に関する人々の予想を意味しています。』

『企業などが財やサービスの価格を設定する際には、その時点の需給に加えて、先行きの物価の予想も考慮すると考えられます。』

『例えば、ラーメンの価格を設定する場合には、先々の原材料価格やアルバイトの賃金の見通しを立てたうえで、適切な利益率を上乗せして価格を決めます。頻繁に価格を変えると顧客が判断に困るため、価格改定の頻度はそれほど多くはありません。』

『したがって、先行き、原材料価格やアルバイトの賃金が上昇すると予想すれば、その分、あらかじめ高めの価格設定が行われることになります。』

???????????????

ラーメン屋からしたらナンジャソラという価格設定行動でして、中途半端に具体例を出した結果説明がガバガバになる典型ですな、丁寧な説明をしているって本人は思っているんだろうが。

『言い換えますと、予想物価上昇率が高まると、現在の需給環境が同じであっても、物価上昇率は高まります。反対の場合も同様です。』

具体例は余計。

『これを先ほどのフィリップス曲線の図に引き直しますと、予想物価上昇率の変化はフィリップス曲線自体を上下にシフトさせることになります。』

でもってさっき申し上げたように、図表2ではパラレルシフトしか想定していない図になっています。


・いまだに今の物価上昇を「一時的な供給ショック」だと思ってるのか・・・・・・・・・・

いやまあそうじゃないと2023年度平均+1.8%などという面白数値は出てこないですからね。

『もう一つの要因の「一時的な供給ショック」はどうでしょうか。』

ということなのですが、今申し上げましたように・・・・・・・・・

『典型的な例は、昨年みられたようなウクライナ情勢に伴う供給不安を背景とした原油価格の急激な上昇です。』

それだけじゃないけど、米国や欧州は「一時的な供給ショック」に留まりませんでしたよね。さて何と説明するんでしょうか。

『原油のような国際商品市況は日本国内の需給ギャップの状況とは関係なく決まります。』

で???

『もっとも、原油は、エネルギー源や原材料として幅広く使用されていますので、原油価格が上昇すれば、ガソリン価格はもとより、さまざまな財の価格や外食などのサービスの価格も上がります。』

それでそれで????

『こうした動きが持続的ではなく一時的であれば、実際の物価上昇率が需給ギャップで説明できる以上に一旦高まりますが、その後、そうした影響が一巡するにつれ、再び元のフィリップス曲線の上に戻ってくると考えられます。』

はい完全に考えが従来の延長線上でしか考えていません。

『もちろん、供給ショックによって予想物価上昇率が高まれば、先程のフィリップス曲線の上方シフトにつながる可能性もありますので、二つの要因は関連していると言えます。こうした形での物価上昇は、供給ショックの「二次的波及」と呼ばれています。』

なお、何故か二次的波及は起きていないことになっているのですが、確かに米国みたいに今般の高インフレの先行者だと二次的波及の初動を見誤るのも(基本的には政策判断ミスにも程があるので切腹モノとは言え)あり得るとは思うのですが、既に先行者が居る中で全く持ってそんな物価上昇ではありませんと言い張れる根拠はわかりませんな。

『以上が基本的な枠組みの話となります。』

『そこで、ここからは、過去 25 年の歴史の中で、物価を巡って具体的にどのようなことが生じ、日本銀行がどのような対応をしてきたのかについて、ここまでお話ししてきたフィリップス曲線の枠組みを使いながら、お話ししていきたいと思います。』

ということで話が始まりまして、『(バブル崩壊以降の「2つの課題」)』、『(「2つの課題」を克服する手段としての非伝統的金融政策)』、『(過去 25 年の金融政策運営に関する多角的なレビュー)』というカッスい中身の説明がおっぱじまりますが、中身がカッスいので基本全部飛ばしますが、口を開けて呆れたのがこの辺。


・フィリップス曲線の推計を行う際の期間の取り方が恣意的にも程がある

講演PDFだと17枚目に『(図表4)フィリップス曲線の変化(デフレ期まで)』ってのがあるんだが、この期間の比較が、『デフレ前(1983〜1997年)』『デフレ期(1998〜2012年)』になっていまして、何だよその2012年までデフレ期って、と思う訳ですが、更にドイヒーなのは18枚目の『(図表6)フィリップス曲線の変化(QQE導入後)』って奴でして、『デフレ期(1998〜2012年)』『量的・質的金融緩和期(コロナ前)(2013〜2019年)』ということで、金融政策のタイムラグの話しとかを完全無視した切り分けを行っていて、しかも黒田緩和前は1998年から延々と期間を切り取ることによって恣意的にフィリップスカーブが下方になるように見せている、というしょうもない説明を途中でしてるんですよね。

ここで直近の展望レポート全体版を見てみますと分かるのですが、

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2304b.pdf
経済・物価情勢の展望
2023 年 4 月

PDFの35枚目に『(物価を取り巻く環境) 』ってのがあって、『図表40:CPIと需給ギャップ』、『図表41:販売価格判断』、『図表42:予想物価上昇率@各種調査』 なんてのがございますが、黒田前の期間だってリーマンショックあり震災ありと色んな要因があり、必ずしもそう話は単純ではないんですよね。

ただまあアレです、PDFの36枚目に『図表46:フィリップス曲線』ってのがあって、そこを見ると、
A:1983/1Q〜2013/1Q
y = 0.38x + 0.6
B:1983/1Q〜1995/4Q
y = 0.22x + 1.6
C:1996/1Q〜2013/1Q
y = 0.24x - 0.1
というのがありまして、ああなるほどこれをそのまま流用してるのね、というのが見て取れると思います。まあいずれにせよ期間が恣意的にも程がありますけどね。


・景気をけん引しているのはペントアップ需要一点張りとはこれいかに

まあその辺はぶっ飛ばして『3.経済・物価情勢の展望と金融政策運営』に入るよ時間もアレですし。

『(経済・物価情勢の展望)

わが国の景気は持ち直しています(図表8)。現在、景気を牽引しているのは、ペントアップ需要、つまり、感染症のもとで抑制されてきた需要が顕在化していることです。』

この一点張りかよという感じですが、なんかそういう話らしい。だから先行きちゃんと「好循環」にバトンタッチするかが不透明なんですと。まあ先に行きまして物価なんだが。


・「年度半ばにかけてコアCPIは2%を下回る水準になる」そうですよ

『そこで次に、物価についてお話しします。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から+3.4%となっています(図表9)。ピークとなった1月の4%程度の水準からプラス幅が縮小しているのは、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げが主因です。』

『先行きは、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰し、今年度半ばにかけて2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくとみています。』

これまさかとは思うのだが10月がたぶん前年比効果が出て瞬間的にプラス幅が縮小するとみられるんだが(今の所のコンセンサスだと)、それを捕まえてこういう話をしてるんじゃないかしらwww

『実際、輸入物価の前年比は、足もとではマイナスに転じています。』

って言ってるんだが、輸入物価の前年比がマイナスに転じているのにCPIの前月比上昇率が寧ろ拡大していることについてはスルーですかそうですか。

『物価上昇率が2%を下回った後は、需給ギャップが改善し、企業の価格・賃金設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、振れを伴いながらも再びプラス幅を緩やかに拡大していくというのが中心的な見通しですが、この見通しを巡る不確実性はきわめて大きいと考えています。』

そもそも物価上昇率が2%下回ってきたら予想物価上昇率もさg春じゃろ、という話ですけどね。まあ以下世迷い言が続くが金融政策に行く。


・金融政策に関するしょうもないQAが全然論理的じゃない件に関して

『(当面の金融政策運営とその考え方)』である。

『さて、先月末の金融政策決定会合では、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」というこれまでの金融緩和を続けることを決定しました。この考え方について、しばしば寄せられるご質問にお答えする形で、ご説明したいと思います。』

ここからが酷い茶番劇。

『@なぜ、物価上昇率が目標の2%を超えているのに金融緩和を続けるのか』

『昨年来、よく寄せられるご質問は、消費者物価上昇率が2%を上回っているのに、どうして日本銀行は金融緩和を続けるのか、というものです。』

『これに対しては、日本銀行が、「物価の安定」について、持続的・安定的な形で実現したいと考えているから、ということがお答えになります。』

お答えになっていませんが。

『現在、物価が3%を超えて上昇している主な理由は、需要の強さではなく、海外に由来するコスト・プッシュ要因です。これを先ほどご説明したフィリップス曲線の考え方に即して言うと、一時的な上方への乖離だと解釈できます(図表 12)。』

一時的だから、の根拠は何でしょうか????日銀さんそう言いながらこの1年以上物価見通し外してませんか??????

『コスト・プッシュによる物価上昇は、実質所得や収益の下押し要因となるため、家計や企業に負担をもたらすものですが、これを抑制しようとして金融引き締めを行うと、経済や雇用環境を悪化させてしまいます。』

そうはいってもコストプッシュの物価上昇がセカンドラウンドエフェクトを出して来たら引き締めしないと「通貨価値の維持」が出来ないんじゃないでしょうか??????????

『この結果、家計や企業に別の形で負担が生じるほか、コスト・プッシュ要因が減衰したあとは、一段と低いインフレ率がもたらされます。日本銀行は、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現していくことを目指しています。そのために、金融緩和の継続により経済活動をサポートすることが必要となります。』

ということで、高インフレになった時の国民厚生はシランガナだそうです。


『Aその物価の基調はどのように判断するのか』

という質問だがこの回答、丁寧に説明しているようで何の説明もしていないので呆れ果てて草も生えませんwwwwwww

『第2のご質問は、その「物価の基調」というのはどのように判断するのか、というものです。』

『例えば、短期的な変動が大きい品目を除いたり、一定の統計的な処理を行ったりして、物価のトレンドを把握しやすくする指標を作成することがあります。ただ、現在のように幅広い品目が輸入物価上昇の影響を受けて変動するような状況では、そうした影響を除去しきることはできないのが実情です。』

『政策当局者も経済学者も大変頭を悩ませていますが、残念ながら、これだけをみれば基調を判断できるという「理想的な指標」というものは存在しません。やはり、これらの指標をそれぞれの特性を踏まえながらみるほか、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金上昇率といった物価を形成する要因などの点検も行い、さらには企業に対するヒアリング情報なども勘案しながら総合的に判断することが求められます。』

全然答えになっていませんでした、まる。


『Bベアは大きく上昇し、物価上昇率も2%に近づいていく見通しなのであれば、目標達成の可能性が高まっていると言えないのか』

『今年のベアの大幅な上昇が追い風であることは疑いありません。また、展望レポートでも、基調的な物価上昇率は、2025 年度にかけて2%に近づいていく姿を示しています。そこで第3のご質問は、そうであれば目標達成の可能性が高まっているのではないか、というものです。』

当然以前に比べれば高まっているでしょ、と思ったらそういう事すら言わないのが植田クオリティ。

『賃上げの動きについては、中小企業への広がりも含め、今後も継続し、定着していくかを見極めていくことが必要です。また、基調的な物価上昇率は、「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていく見通しですが、それにはなお時間がかかるとみています。』

『加えて、この見通しは、需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率が高まっていくということが前提です。2%の「物価安定の目標」を実現していくためには、予想物価上昇率が高まり、フィリップス曲線が上方にシフトしていくことが必要です(図表 13)。』

あれれ???ずーっと日銀は「予想物価上昇率は高まっている」って展望レポートで出してますよね(さっきの4月展望全文の『図表42:予想物価上昇率@各種調査』にもありますわよ)〜〜〜wwwwwwwwwwww

というかですね、これフィリップスカーブで説明を始めちゃったのは明らかに墓穴で、これ次回以降の会見やら何やらで毎回のように「では今のフィリップスカーブの形状はどうなっているでしょうか」ってぶっこまれてそのたびごとに説明しなきゃいけなくなって、絶対に説明で立ち往生するに10万白川ほど張っておきますかしらwwwwwwwww

『日本銀行は、賃金と物価がともに上昇する好循環の中で、こうした状況となることを目指しています。展望レポートでは、徐々にそうした姿に近づいていくとの見通しを示している訳ですが、先ほど申し上げたとおり、経済の見通しは当面、海外経済を中心に下振れリスクの方が大きいなど、物価見通しの不確実性は大きい状況です。このため、現時点では2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況には至っていないと判断しています。』

とまあ恐ろしい事に、近づいているの一言もないとかどういう現状認識してるんだこいつら・・・・・・・・・・・・


最後の副作用は最早物価状況の方がアレになっていてそういうレベルの話を超えていると思うのだが、副作用論については無駄に長広舌を振るっていまして馬鹿馬鹿しいので割愛。


・そして白眉は最後の日銀法の精神丸無視の「リスクバランスアプローチ」である

ええええええええ!!!!!あの「主な意見」の日銀法違反で罷免相当とかアタクシが評価したの植田さんの意見だったのかよおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!

・・・・・と悲しくなりました。途中飛ばして『(先行きの政策運営の考え方)』の最後ね。

『この点、金融政策運営にあたって、経済に不確実性があることを前提として、先行きの様々な経済の経路ごとに社会厚生を考慮することが重要という考え方があります。これは、かつて米国FRBの議長を務めたグリーンスパン氏が提唱したことでも知られる、リスクマネジメント・アプローチと呼ばれる考え方です。』

>先行きの様々な経済の経路ごとに社会厚生を考慮することが重要

と仰せなのですが・・・・・・・・

『これをわが国の現状に引き直しますと、拙速な政策転換を行うことで、ようやくみえてきた2%達成の「芽」を摘んでしまうことになった場合のコストはきわめて大きいと考えられます。逆方向の、政策転換が遅れて2%を超える物価上昇率が持続してしまうリスクもありますが、こうした2%の定着を十分に見極めるまで基調的なインフレ率の上昇を「待つことのコスト」は、前者に比べれば大きくないと思われます。』

あああの罷免相当意見は植田さんでしたか、こりゃ罷免相当だわという感じでして、物価が上振れて推移することの社会厚生と、2%に行かない程度で1%〜2%程度のインフレで推移して2%には届いていない、って状態の社会厚生と、どっちの方が社会厚生上のリスクが高いのか、という話を完全に無視して、単純に「2%」のみが重要、というような発想にならないとこのような発言は出来ない訳でございます。

つまり、物価目標数値の2%なんちゅうのは別に日銀法に書かれている話でもないし、万代不易の真実なのかどうかも良く分からん話であり、日銀が物価安定目標を追求するのは、それが社会厚生を最大化するという最終目標に達するための手段なのに、なぜか本来の目的ではある社会厚生の考察はすっ飛ばして2%に固執するというアプローチをしているのですから、これは黒田よりも酷い(まあ黒ちゃんの場合は幸か不幸か物価がそこまで上がらなかったので単に試される機会が来る前に逃げ切っただけとも言えるが)という事を申し上げておきます。


これが6月か7月のYCC電撃解除の煙幕の可能性は先ほども申し上げた通り、中曽元副総裁の頭髪ほどの可能性はあるのですが、それにしても煙幕張るにしたってこんなに大胆にガバガバ説明をする必要はないのであって、あの展望レポートハイライトの絵とか謎の英文とかは何なのかと小一時間問い詰めたいですな。まあいずれにしても酷いわという講演で初手から自爆になっている植田さんなのでありましたとさ。





2023/05/19

お題「円安更新の中でCPI公表っすね/シカゴ連銀の新総裁はエバンスのスタンスも跡目相続しているようです」

〇さあさあ円安来ちゃいましたねえ&今日は全国CPI&植田総裁講演らしいですが

・植田日銀以来のドル高水準を遂に抜きに来ましたなあというタイミングで全国CPIですね

ふむふむ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230518/k10014071801000.html
円相場 1ドル=138円台まで値下がり 約5か月ぶり
2023年5月19日 4時38分

『18日のニューヨーク外国為替市場ではアメリカで金融引き締めが長期化するとの見方を背景に円安が進み、円相場はおよそ5か月ぶりに1ドル=138円台まで値下がりしました。18日のニューヨーク外国為替市場では円安が進み、円相場は一時、1ドル138円台後半まで値下がりしました。』(上記URL先より、以下同様)

とまあそういう訳で、4月MPMの後に付けたドル円のドル高値(その後FOMCが利上げ打ち止めモードでさようならとなった訳ですが)をとうとうお抜けになって5/2の138円ちょい手前って水準を明確におぬけになってきたようでございますな、というか8円台後半までやってたんかい!

『この日、発表された失業保険の新規申請件数が市場予想を下回り、アメリカの雇用情勢が堅調なことが確認されたことや、FRB=連邦準備制度理事会の幹部が来月開く会合で追加の利上げを行う可能性を示唆する発言をしたと伝えられたことから、アメリカの金融引き締めが長期化するとの見方が広がりました。』

『市場関係者は「FRBの複数の幹部が金融引き締めに積極的な姿勢を示す中、当面は円を買う材料が見当たらず、円安がどこまで進むのか見通せない状況だ」と話しています。』

まあここ抜けると直近高値更新だから基本的には加速してもおかしくない(加速するとは言ってない)ので140円台とかになって参りますと、これはあの黒ちゃんですら怒られが発生したと言われる水準になって参りまして、いまや円安と言えば物価高と言われる中、株価が上昇しているからと言ってキッシーがノホホンとしていられる場合なのかという辺りが見ものになって参りますな、



でもって今日は4月全国CPIで、コアコアのエコノミスト予想中央値がブルームバーグさんによりますと+4.2%(前年同月比)という大変に素敵な数値になっておられるわけでございますけれども、そもそも論としてコアコア+4.2%が発射台で今年度の平均が+2.5%になる、とかいう面白予想を出している日銀の展望レポートは何処に逝くのか、為替円安によってまた輸入価格に跳ねて来ませんかしらとかそういうのが円の直近安値更新と同じタイミングで出て来るのが、どの程度政治的イッシューになるんですかねーという辺りは気になりますが、まあ足元では株価が強いから直ぐには反応しないんじゃないかなとは思うのでありました。残念無念。

でもってオマケというか何というかですが、展望レポートの仕切りって基本的に「個別要因に関するものについて現時点で確定していないものは織り込まない」というのがあって、例えば政府の経済対策が〇兆えーんとかあっても、構想の段階では織り込まないし、国会審議中の場合も成立確実状態になるまでは織り込まないんですよ。という所でお察しかとは思うのですけれども、6月分の家庭用電気価格の引き上げが先般認可された分って、7月の展望レポートに堂々とぶっこめる訳でして、コアCPIの見通し数字を引き上げて2023年度平均を2%に載せたとしても、「これは先般の家庭用電力料金の引き上げを加味したものですので物価に対する見方が大きく変わったというようなものではありません(キリッ)」と言ってお茶を濁す、という言い訳が出て来ると見るのが本来なら順当になります。

とは言いましても、昨日ネタにした「展望レポートハイライト」のあのイラストの変わりっぷりでは、あたかも2%物価目標達成は順風満帆に川を進んで行けば(ちなみにあのイラスト、川の上流が山の方になっているのが更に芸が細かくて、あれは足元の高い物価を意味していると読み取りましたが如何でしょうか)ゴールに到達する、という絵になっていて、あれだけ見ると7月展望れいきなり君子豹変騙し討ちで「2%達成が視野に入って来ました」とか言い出す(この場合は恐ろしい事にマイナス金利の解除までするのが政策ロジックとしては順当となってしまいます)可能性もありまして、さてこの辺どうなんでしょうかね、とまあ色々と謎は尽きません。


・えーっと本日は植田総裁の講演がありますが何で5月っていつも金懇が手薄なのよ勘弁してほしい

なお、そんな状況ではありますが、本日内外情勢調査会で植田さんが講演をするということで、総裁就任後一発目の本格的なものが出て来そうではありますな。

内外情勢調査会(時事通信のやってるやつ)
https://naijyo.or.jp/

を見ますと植田さんの講演が本日行われる(ちなみに日銀の「公表予定」だと予定に入っていないのがアレなんですが、そもそもこの内外情勢調査会のHPにある植田さんのサムネのリンク先が会員ログインしないと入れない物件になっているのでアレ)ようですな、昨日どっかのベンダーでヘッドライン打ってて引け後にやるようですが、金曜の引け後にそういう重いものを打ち込まないで頂きたいものですけど、さて直近での「主な意見の中にある謎の英語改変問題」とか「展望レポートハイライトの物価2%達成に向けた絵の差し替え問題」などを受けてどういう態度を取るのやら、と思いますよね〜。


・・・・・・・とは言いましても、恐らく今回の講演でもバチクソに現状維持バイアスをバリバリと掛けた講演を行ってしまいそうな悪寒しか無くて、おまけに金曜の東京引け後にそんなのやるのかよと思うとゲンナリしてしまいますが、まあ残念ながら順当に考えるとそういうことになるんでしょうねーって思います(フラグではありません)。


でまあそういう事で本日は植田さんの講演のようですが、これは5月6月の仕様ではあるのですけれども、日銀ってこの時期の対外講演が基本的に少ない傾向があって、

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・挨拶等

こちらの『今後の講演・挨拶等の予定』が相変わらず空白なんですね。内外情勢調査会に関しては何か時事通信のさっきのページで式次第とかお題とか見たくても会員じゃないと見えないという一見さんお断りっクスの物件なので、日銀も気を使って載せてないだけだとは思うのですが、そうじゃない日銀主催の金懇とかに関してはこちらに予定がぶっこまれる筈なんですよ。

昨年の講演一覧
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2022/index.htm
講演・挨拶等 2022年

昨年の場合は4月会合がいつものように連休直前、6月会合が16-17日、7月会合が20-21日に実施されまして、この間に金懇やら講演はこのような感じで行われていました。

2022年 7月28日 雨宮副総裁 【挨拶】「最近の金融経済情勢と金融政策運営」(岩手県金融経済懇談会)
2022年 7月11日 黒田総裁 【挨拶】(2022年7月 支店長会議)
2022年 6月24日 黒田総裁(雨宮副総裁代読) 【挨拶】(全国信用金庫大会)
2022年 6月 6日 黒田総裁 【講演】「金融政策の考え方─「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現に向けて─」(きさらぎ会)
2022年 6月 2日 安達審議委員 【挨拶】「わが国の経済・物価情勢と金融政策」(札幌市金融経済懇談会)
2022年 6月 1日 若田部副総裁 【挨拶】「最近の金融経済情勢と金融政策運営」(岡山県金融経済懇談会)
2022年 5月25日 黒田総裁 【挨拶】(日本銀行金融研究所主催2022年国際コンファランス)
2022年 5月13日 黒田総裁 【講演】「経済・物価見通しと金融政策運営」(内外情勢調査会)

内外情勢調査会が本日、というのは昨年とほぼ同日程になっていますが、これを見る感じですと6月の頭には金懇があって、このタイミングで審議委員のお話がある、という事が想定されるので、現時点で講演、挨拶等の予定の方にまだ日程が出ていない、というのはまあアリな話ではございますけれども、

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

こちらは既に6/9の公表予定まで出てて、ロジの事考えたら6月の頭にある金懇自体は既に予定は有る筈だとは思うので、今日は金曜だからそろそろ審議委員の金懇日程出してほしいと思うのと、上記の日程見ればわかりますように、基本的に展望レポートが出るとその内容の説明を金懇で副総裁辺りがやってくれるという仕様があるんですけど、毎度そうなんですが何故か4月展望の後ってあんまり情報発信が無いんですよね。

まあこれ自体は黒ちゃんの頃からこうだから前例踏襲って話としてとらえるのが妥当ではあるのでしょうけれども、コミュニケーションというか説明を重視しよう、って言ってた植田日銀だと思ったのですが、植田さん初回の決定に関しての説明が無いじゃんというのは甚だ遺憾だし、他のポンコツもとい審議委員の皆様は何を思ってあの大本営鉛筆舐め舐め展望レポートに賛成をしたのか、という辺りを速く聞きたいんでちょっと説明重視するなら金懇増やすとか、金懇がめんどいなら証券アナリスト協会とか日経センターとかその手の講演できないもんかね、とまあそんなことを思うのであります。

なお、物凄い陰謀論を唱えると、声明文やら展望レポートやら植田さんの会見やらで示されているハイパー現状維持スタンスというのは全てYCCの長期ターゲットを電撃解除するためのカモフラージュで、ただ完全に騙したということになるとそれはそれで問題になりそうだから、英文のフォワードガイダンスや英文の主な意見、そして先日の「展望レポートハイライト」などで仄めかしは入れておいて「私言いましたよね」のアリバイを目立たないように目立たないように作っている、というハイパー陰謀論はあり得ない訳でもない、というか植田さんの本性が今のアレだと何だよそれって思いのアタクシのただの最後の願望ではあるんですが「あれは長期金利ターゲット解除の為にこう言わないといけませんでしたテヘペロ」となってくれる日が来ないかなというアタクシの妄想が勝手に申し上げているだけということでありまする。


〇ちょっと前の物件ですがエバンスの跡目相続をしたシカゴ連銀グールズビー総裁のスタンスを確認しておく

https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2023/april-11-economic-club-chicago
A speech presented by Austan D. Goolsbee, president and chief executive officer, Federal Reserve Bank of Chicago, on April 11, 2023, at the Economic Club of Chicago Forum Luncheon, in Chicago, IL.

PDFバージョンはこちらになります(引用はHTMLから)
https://www.chicagofed.org/-/media/publications/speeches/2023/04-11-23-economic-club-chicago.pdf
Monetary Policy in Moments of Financial Uncertainty
Austan D. Goolsbee
Economic Club of Chicago
Forum Luncheon
Chicago, IL
April 11, 2023

1月に総裁に就任して2発目の講演になりますな。

・のっけからサマリーがある親切設計

こちら最初が『Introduction』なのですが、イントロダクションはガチのイントロなので飛ばして無問題でして、その次の小見出しが『Summary』という中々の親切設計おじさんですありがてえありがてえ。

『The law assigns the Fed two monetary policy goals: maximum employment and stable prices. When inflation gets too high, as it has been lately, the Fed fights it with the main tool it has-cooling the economy through tighter financial conditions. That’s why the Fed has increased the federal funds rate so aggressively-almost 5 full percentage points over the past year.』

ここはまあただの挨拶みたいなもん。物価マンデートがあるから経済減速させるために利上げしました、って話ですが、雇用の話しないで物価の話をバーンと最初にするのがシカゴ連銀(前任のエバンスは雇用の話は碌にしないで物価の話をしてたイメージの強い人)ですな。

『It takes time for policy moves to work their way through the economy, and it’s hard to know how long that might take and how much is enough. So that’s why we say that central banks need to be “data dependent”-to watch how things go and adjust policy accordingly.』

データディペンデントが次にどどーんと出て来るのですが、この部分が実はこの先を見ると若干キナ臭くて、やはり物価重視のシカゴだけの事はあるわと思ってしまう面があるんですよ。まあ先に行きますと、、

『Well, the data in late 2022 and early 2023 were surprisingly strong. Spending held up; job growth was remarkable. Inflation did not come down enough. Based on these data alone, you would think the Fed would be pushing more aggressive policy moves than we were a few months ago.』

経済データはクッソ強かったので数か月前の皆様はもっとアグレッシブにFEDがタイトニングするって思ってましたよね、ときましてまあ講演のお題でもある(しつこく申し上げるとこの講演4/11と1か月前なので金融あばばばばーの状態が違いますからそこは補正して読んでくださいね) Moments of Financial Uncertaintyへの言及になる。

『But if you look at the Summary of Economic Projections (SEP) made by the Federal Reserve Governors and Reserve Bank presidents in mid-March,2 the expectations of where rates are headed for the rest of this year moved only slightly from the previous projections made in December,3 and many private sector estimates have them going down.』

SEPのドットチャートに言及して・・・・・・・

『Of course, that’s because these latest projections include an early assessment of the new big hairy elephant in the room-the fact that two significant banks failed in a high-tech version of an old-fashioned bank run and triggered broader financial market turmoil.』

はい来ました金融機関のあじゃぱーで金融市場がアイヤーってなった件が要因となってクソ強い経済指標対比でそこまでアグレッシブに引き締めしませんでした話。

『To restore calm, the Federal Deposit Insurance Corporation (FDIC), Treasury, and the Fed stepped in to guarantee all deposits at these banks, not just those below the FDIC cap, and also created a new lending facility and enhanced the existing discount window?all to help prevent further runs on the system.4』

この辺はそういう処置をしましたって話なので気にしなくて良くて次。

『Today, I want to explain why I think that at moments like this, of financial stress, the right monetary approach calls for prudence and patience-for assessing the potential impact of financial stress on the real economy.』

で、4/11の講演時点でグールズビー総裁は「at moments like this, of financial stress, the right monetary approach calls for prudence and patience」と表明しております。つまりは利上げするにしても慎重に対処しましょうとなるのですが、その前提には「at moments like this, of financial stress,」というのがあるのがポイントになります。

しかもグールズビーさんはファイナンシャルストレスがあるからと言って何でもユルユルにすれば良いというもんではない、とぶっこんできていて、この人は物価重視派のシカゴ連銀の流れを受け継いでいて、スタンスとしてはエバンスと変わらんですな、というのが見えます。即ちこの先で、、

『I don’t say that because I believe we should stop prioritizing the fight against inflation if markets get upset. That’s a perspective I call “financial dominance”-that financial issues should dominate monetary policy concerns. Some people believe that should drive Fed actions. I absolutely do not. Congress gave us a job: maximize employment and stabilize prices. They didn’t say to always keep financial markets happy or make sure investors don’t lose any money.』

わざわざこういう話を言及しています。こういう話ってどういう話かというと、「“financial dominance”」とか割とキツイ言い方してますけど、金融ストレスがあるからと言って、物価抑制に必要な引き締めをしないなんてのはあり得ず、仮にそんなスタンスに成ったらそれは「ファインシャルドミナンス」って言うんだよ、と結構なインフレファイターぶりを4月11日の時点だというのに発揮してて、ただまあ実際には「慎重に行動するのが正しいスタンス」とは言ってるので、別にシバキアゲに行こうという訳ではないです。

とは言いましても、この部分の最後のところ、「Congress gave us a job: maximize employment and stabilize prices. They didn’t say to always keep financial markets happy or make sure investors don’t lose any money.」ってのも割と刺激的でして、「別に金融市場を喜ばせるために金融政策やってるんじゃねえよあくまでもデュアルマンデート達成のためにやってるんじゃヴォケ」とエバンスの跡目としてはエバンスよりもものの言い方がきついわ、と思うのでありまする。

『The reason to include financial conditions in our monetary policy discussion is that history has taught us that moments of financial stress, even if they don’t escalate into crises, can mean tighter credit conditions. These can have a material impact on the real economy in a way that the Fed absolutely needs to take into account when setting policy.』

上記のようにきついのをぶっかましたあとは一転して「ファイナンシャルストレスの状況って、たとえそれが金融危機までエスカレートしなかった場合であっても、クレジットコンディションのタイト化を通じて経済には顕著な下押し圧力をかけまっせ」という穏当なお話をおっぱじめているのが中々チャーミング。

まあこういう風に言っていますし、先般ヘッドラインだけネタにしたベンダーとのインタビューとかでも「とりあえず現状維持」という色合いの濃い内容のコメントをしていたようなので、「金融市場のゴルディロックスヒャッハーには五寸釘を差しつつも、金融環境のストレスが高い状況においては政策は基本様子見か引き締めのおかわりをするにしてもむっちゃ慎重にやりまっせ、という感じかと思われます。

つまりですね、しつこいですけどこれ4/11時点での説明になるので、金融不安が後退してきたばあい、物価上昇が思ったほど落ち着いてくれないとこの人普通にガシガシ利上げとか言い出しそうですね。

『Now, in today’s environment, there is no conflict between our current monetary policy and these tighter credit conditions, especially if they are part of strengthening the financial system; they can work in tandem to help cool inflation. But we also have to recognize that this combination could hit some sectors or regions in a way that looks different than if monetary policy was acting on its own.』

現状認識としては(物価状況を基にした)金融政策引き締めスタンスは現状のファイナンシャルストレスとのコンフリクトは起きていない(そうっすか??という気もするけど)ので無問題、という認識になっておりまして、まあ物価が高いうちはシカゴ連銀は結果としてタカ派っぽくなる、という伝統芸をグールズビー総裁も跡目相続したようですね。


以下、

Potential credit crunch has real implications
Accounting for potential headwinds and today’s data dependence
Supervisory tools as the first line of defense
Unusual circumstances
Conclusion

と続きますので、ハイパー手抜きおじさんのアタクシ『Conclusion』を引用しますね。

『At the end of the day, the best central bankers are data dependent and the Fed’s job is to be more paranoid than anyone else. In lucky times we might not need to follow too many data series to decide where inflation, unemployment, and GDP are headed. In unluckier, more interesting times like the one we are in right now, with wild shocks including a pandemic and wars and cryptocurrencies and financial stress, it means digging into loads of new information to glean where the economy is headed in order to set appropriate monetary policy.』

グールズビー総裁がこの部分で「構造変化」(昨日ネタにしたジェファーソン副総裁の講演にあるような「経済の基礎的構造に大きな変化が生じている」という話ね)まで示しているのかはこの書き方だとどっちとも取れるので何とも言えないですけれども、少なくともこの説明は「現在米国経済が置かれている状況は従来の延長線上にあるものではない」ということで「In unluckier, more interesting times like the one we are in right now,」と言っておりますね。

『The Fed must use everything in its toolkit to maximize employment and stabilize prices. Sure, it’s harder in an unpredictable world full of pandemics and digital currencies and social-media-fueled bank runs. But we will do it. We’re from Chicago. We get the job done no matter what the conditions. There is no bad weather, only bad clothing. So remember: Financial stresses come and go. The Fed’s mandate is forever.』

締め文句が「Financial stresses come and go. The Fed’s mandate is forever.」となっていますので、金融ストレスに対応して慎重になるのは大事だけど、だからと言って物価上昇を放置プレイしてはいけない、というような感じですので、1か月経過して金融機関のあばばばばー問題がだいぶ解決に向かいつつある現状で何を思うのか、というとやっぱり4月の時よりはシバキっぽくなってきている可能性はありますな、とは思いますので、物価動向次第ではありますが、こちらの方からは物価が下がらんと引き締めおかわり音頭が効かれることになるかと思います。




2023/05/18

お題「展望レポートハイライトの2%物価目標に向けた絵と説明に味わいの深い大変化が発生している件について」

ひょえー
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230517/k10014070491000.html
インフルエンザ 宮崎の高校で491人集団感染 学校は休校
2023年5月17日 19時36分

『宮崎市によりますと、市内の高校で今月9日から発熱やせき、のどの痛みなどの症状を訴える生徒が出始め、16日までに生徒476人、職員15人の合わせて491人がインフルエンザに感染したことが分かったということです。これまで重症化した患者はいませんが、高校では15日から今月22日まで休校することを決めています。』(上記URL先より、以下同様)

とのことだが、

『高校では先週末に体育祭が行われ、練習なども含めて集団で行動する機会が増えていたということです。宮崎市の清山市長は17日、定例の記者会見で「体調不良の場合は学校に行かないなど個別の感染対策を取り、室内の換気やマスクの着用を徹底してほしい」と注意を呼びかけました。』

ってこれ換気やマスクというよりは「体育祭の練習だから体調悪いけど行かなきゃ」モードになってたのが原因なんジャマイカと素人目に見えて仕方がないので、体調悪いなと思った時は外出しないのを徹底するのがダイジダイジネーと思いました(小学生並みの感想)ので今後も世のため人の為にワシの行動指針にしようと思いました(ポジショントーク)。


〇日銀の展望レポートのECB真似っ子ポンチ絵だが2%物価目標のイラストが・・・・・・・

何のために始めたかびっくりするほど意味不明な展望レポートハイライトというECBの「マネタリーポリシー アット ア グランス」の真似っ子企画。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/index.htm
展望レポート・ハイライト

まあこういう茶番も数が揃ってくるとそれなりに楽しめるのですが・・・・・・・・・

今回4月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202304.htm

前回1月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202301.htm

前々回10月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202210.htm


・小見出しその1の絵柄がアフターコロナになっている件

最初の小見出しが『日本経済は緩やかに回復していく』なのですよね。でもってこの絵なんですけど、(絵を貼って良いのか問題もある上に、そもそもアタクシに図表を貼るスキルが無い(お前はこのテキストサイト何年やってるんだというツッコミは却下)ので、まあ上記のURL先をポチポチと見直して頂ければと思うのですが。

前回と前々回ってこの『日本経済は緩やかに回復していく』のイラストって同じ(厳密に見るとどうなのかはさて置き)ような作りになっていましたが、今回イラストがだいぶ変わって、カフェでお茶しているのが1名から2名になるわ、スーツケース持って観光している人の絵はあるわ、乳母車押しながら夫婦で買い物している人はいるわ、ということでアフターコロナっぽくなっておるわけですなこれが。

でまあこの絵柄、昨年4月の展望の時の絵柄(過去のハイライトのページにリンクがありますわ)に絵が戻ったという感じでして、ただその時の絵と違うのは、昨年4月は工場とか港とか船の絵がありまして、その後もイラストの中に工場の絵が毎度入っていたのですが、今回はそれが全部ナッシングになっているので、つまりは外需じゃなくて内需主導、製造業よりも国内の消費関連での回復に、インバウンド様の上積みを期待してる、ってことでしょうな。


・小見出しその2は物価の説明なのですが色々と味わいがある件について

次の小見出しが『物価は減速したあと再び緩やかに上昇していく』なのですが、これまでは車が走っている道路があって、昨年の7月以降ってずーっと「坂の上みたいなところから道が平地に向かっている」という絵になっていた(まあ見てちょんまげ)で推移してたのですが、今回は何を言いたいのかまるで意味の分からない謎の絵になっています。何なんでしょうこの絵は。

なお、解説コメントの方では、

『消費者物価の前年比は、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が低下し、今年度半ばにかけて減速します。その後は、経済が改善し、賃金上昇率も高まるもとで、再び緩やかに上昇していきます。』(今回4月)

『消費者物価の前年比は、目先、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から高めの伸びとなったあと、来年度半ばにかけて減速します。その後は、経済が改善し、賃金上昇率も高まるもとで、再び緩やかに上昇していきます。』(前回1月)

『消費者物価の前年比は、本年末にかけてエネルギーや、食料品、耐久財などの価格上昇から上昇率を高めたあと、来年度半ばにかけて減速します。その後は、経済が改善し、賃金上昇率も高まるもとで、再び緩やかに上昇していきます。』(前々回10月)

『消費者物価の前年比は、本年末にかけてエネルギー価格、食料品、耐久財などの上昇からいったん上昇率が高まりますが、その後は減速します。エネルギー価格を除いてみると、消費者物価の前年比は、緩やかに上昇していきます。』(ついでにその前の昨年7月)

という推移をしていますが、これを見ると大変に味わいがありまして、昨年7月の時点では「エネルギー価格を除いてみると、消費者物価の前年比は〜」とコアコア物価の推移について言及していたのですが、これはまだコアコアへの物価上昇波及が遅れていた時期だったので、コアコアについて言及することによって「まあ上がっていく(という図にしておかないと追加緩和する方が整合的になってしまうのでそういう図にする)のですがコアコアがまだまだ低いですもんね」という感じの話しだったのが、コアコア物価への波及も見えてきた10月からはコアコアの話を前面から引っ込める、という姑息プレイに打って出ている訳ですよ。

でもってですね、前年10月までは「一時的な価格上昇の影響によって物価が一時的に上がりますよ」の説明の中で「食料品」という文言が入っていたのですが、食料品価格の上昇がトマランチ会長であるのは皆さまご案内の通りで、相変わらずスーパーの食品売り場では値札の付け替えが行われるのを見て白目になる今日この頃ですが、そうやってホイホイと、というよりむしろ昨年末近くから加速してるんでネーノな「食料品」についての文言を削除してきています。まあこれはこれで日銀の言い訳では「輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響」という言葉で包含している、という説明をするんでしょうが、明示的に食料品とか言わなくなったのって、これにうっかり言及すると食料品価格の上昇でトサカに来ている家計の皆様からの批判を食らう可能性がある、というのに小賢くも気が付いておられるからだと思います。

しかしですな、今回の謎のイラストを見ると、物価水準が下がる(車が丘の上からいったん平地に降りるような絵だったのがそういう「下げ」を想定させるデザインが無くなっている)という事についても、今までみたいに「丘の上から下がっていきまっせ」という図になっていないというのはこれ即ち、4月の展望レポートでは年度後半に物価上昇率が下がりますという説明をしているけど、実はそんなに下がると思っていない、というのを5月のこの段階で既に認識していて、このままでは7月展望において上方修正待ったなし、と思っているから「明確に物価が下がるようなイメージのイラストを今回ばっさり差し替えた」という行動に出たんじゃなかろうか、などという妄想が沸いて出て来る味わいの深い物件になっておりますわ。


・3つ目の不確実性はパンデミックとウクライナをイメージするイラストが外れました

3つ目の小見出しは『海外の経済・物価動向など不確実性は高く、市場動向に注意』となっていますが、これは前回1月、前々回10月も同じく「海外の経済・物価動向など不確実性は高く、市場動向に注意」となっていましたが、こちらは昨年4月以降「パンデミック(注射器とウィルスの形をイメージした絵)」「ロシアのウクライナ侵攻(ウクライナ国旗)」「海外の金融市場(地球のイメージとローソク足チャートのイメージ)」という3点セットで推移してたのですが、今回パンデミック外したのは分かる(というか遅いわって感じですけど)のですけれども、なんか知らんけどウクライナ国旗外してるのは何でなのとは思います。うーん何なんでしょ。



・4つ目の「金融緩和を推進する」の2%物価目標に向けた絵と説明文が大幅改変されたのが今回のハイライト

そして4つ目の小見出しは『強力な金融緩和を継続する』でして、この小見出し自体は(やってることが同じなだけに)変わらないのです。ですが説明文とイラストに変化がありまして、

『日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していきます。』(今回4月)

これが前回までは昨年4月以降判で押したように、

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を目指しています。また、感染症からの回復を支援するため、資金繰り支援と金融市場の安定に努めていきます。』(前回1月、ちなみに昨年4月以降全てこの表現)

となっておりました。この日本語ちゃんは政策のフォワードガイダンスに関連する記載であるというのは分かると思いますが、(ああちなみにこれ1〜4って一応展望レポート基本的見解の大項目に平仄合わせてて、4番目は金融政策運営に関する部分相当なのでそっちを見た方が綺麗かもしれませんが長いので声明文のフォワードガイダンスの方を使います)じゃあ声明文を確認してみようず、ということで、前回1月のガイダンスは3月のガイダンスと同じですから3月ので代用しますと、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230428a.pdf
4月声明文

『2.日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。

「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(この部分だけ直上URL先4月声明文)

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230310a.pdf
3月声明文

『5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。

当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』(この部分だけ直上URL先3月声明文)

ということでして、従来はフォワードガイダンスをそのまま出すというよりも、もっとシンプルに(再掲しますと)「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を目指しています。また、感染症からの回復を支援するため、資金繰り支援と金融市場の安定に努めていきます。」とあって、小見出しの方の「強力な金融緩和を継続する」で言わせてた、という感じだったのですが、今回は急にフォワードガイダンスの第1パラグラフを全部コピペする、という手段に出たんですね。


・・・・・・・・だったら何で第二段落で何度も主張している政策現状維持バイアスについても触れないのか、というのも謎なんですが、これは英語版というのが前回1月から出てまして(不覚にもこれに気が付いたのは今回ですサーセン)、そちらを見ますとですね。


展望レポートハイライト、今回4月の英語版
https://www.boj.or.jp/en/mopo/outlook/highlight/ten202304.htm

展望レポートハイライト、前回1月の英語版
https://www.boj.or.jp/en/mopo/outlook/highlight/ten202301.htm
(これ英語版の比較も最初からやる説はあるのだがさすがに時間がアレなのでパス)

案の定ですが、例の英語版声明文と同じでして、声明文におけるガイダンスの英語版の第一段落がそのまま掲載されているので、

『With extremely high uncertainties surrounding economies and financial markets at home and abroad, the Bank will patiently continue with monetary easing while nimbly responding to developments in economic activity and prices as well as financial conditions. By doing so, it will aim to achieve the price stability target of 2 percent in a sustainable and stable manner, accompanied by wage increases.』(今回4月の英語版)

と例の「patiently」とか「nimbly」とかの怪しい語句がある訳ですなはーこりゃこりゃ。


でですね、さらに今回ひょえーと思ったのはイラストでして、これはまあ過去のをポチポチ見ながらご確認頂きたいのですが、最初の頃は2%ってのが空の上にある太陽みたいな感じで「2%」ってなってたのが、その後昨年7月からは先の方にある上向きの丘に向かって進んでいくと到達するカンバンというか何というかなものが「2%」になったんですね。でまあ1月までそうなっていたのですが・・・・・・・・

何とですね、今回の2%は川に浮かんでいるヨットがそのまま流れていくとその先に「2%」ってゴール板があるようなイラストになっていまして、これってどう見ても「順調に進んで2%達成します」になってるし、しかも別に川じたいもその先を頑張って漕いで行かないと登れないみたいな図になってなくて、普通にヨットで流れて行けばゴール板ですよ、という絵になっていて、おいこら物価目標そんなに簡単に達成できるのかよ(まあ既に上振れ超過してますけど、笑)という図にいきなり大きな変化が起きております。


・・・・・・・あのさ、これって何7月の展望レポートで物価見通し上方修正しますよ宣言なのかよと言いたくなるような絵柄の豹変でして、どういう風の吹き回しなのか小一時間問い詰めたい所ではございますし、なんかこう言う謎コミュニケーションするんじゃなくてちゃんと直球勝負をするのが植田日銀なんじゃなかったんだけ???と益々植田日銀何を言いたいのかやりたいのかの説明がワケワカメになって参りました、というのがこの「ハイライト」の白眉でございましたとさ。






2023/05/17

お題「グールズビー(シカゴ)総裁とジェファーソン副議長発言も「動かんもんね」ですよねこれ」

昨日の駄文で某氏につきまして、「岩田規久男先生(ナイーブな机上の空論)と伊藤隆俊先生(時流を追いかける)の悪い所を煮詰めて練り上げた」との個人の感想を申し上げましたが、「練り上げた」の後に「ところから10回劣化コピーを行った」を付け加えるのを忘却しておりまして、岩田先生と伊藤先生には大変失礼いたしました(平伏)。


〇やっぱりFEDちゃんは「当分どっちも動かないもんねー」なんですかねえ

・シカゴ連銀グールズビー総裁からも「動かん」情報発信が来てます

シカゴ連銀はエバンス総裁から暫く前にこちらの方に交代しております(というかエバンス前総裁って直近2年ほどの近影がエライゲッソリした感じになっておられたので、ただの加齢なら良いのですが、なんか調子でも悪くなられたのかとはちょっと心配してるんでございますが)。

https://www.chicagofed.org/utilities/about-us/office-of-the-president/office-of-the-president-home
Office of the President
Austan Goolsbee

前任からは当然の如く若返りましたが前任よりも頭髪は減少しておりますけど、シカゴ連銀って基本的にシカゴだけの事はあって、インフレ目標に関してはどっちかというと厳格な方で、雇用どうちゃらとか金融不均衡どうちゃらとかいう話はオマケっぽくて、物価が弱い時代はエバンス総裁ってハト派最右翼チックに言われてた事もありましたが、物価が上がりだしたらタカ派分類になったのはご案内の通り(ということで基本的にタカハト分類ってのもあんまり良い分類ではないのよね)です。経済に対してはあんまりバイアスがかかってなくて、物価重視だったと思うのですけどね。

でもってですね、シカゴ連銀中々の親切設計になっていまして、上記URL先の「Speaking Engagements」ってタブに「総裁の過去のスピーチ集」が転がっておりまして、総裁の着任前後ってこちとら日銀ちゃんネタの方がバタバタして新任の地区連銀総裁のデビュー戦とかのチェックがお留守になっていましたので、古いネタになると思いますが、4月の金融問題と政策に関するスピーチの方とかは面白そうなので今度ネタにしようかと思います。

グールズビー総裁のスピーチ集
https://www.chicagofed.org/utilities/about-us/office-of-the-president/office-of-the-president-speaking

これから読む(さっき1分間目を泳がせました)のはこちら。
https://www.chicagofed.org/publications/speeches/2023/april-11-economic-club-chicago
Last Updated: 03/31/23
Economic Club of Chicago Forum
A speech presented by Austan D. Goolsbee, president and chief executive officer, Federal Reserve Bank of Chicago, on April 11, 2023, at the Economic Club of Chicago Forum Luncheon, in Chicago, IL.
(何でラストアップデートが3/31で4/11のスピーチなんだかイマイチ謎だが)


でもってグールズビー総裁直近発言はこの記事である。思いっきりさっき拾ったのだが。
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-goolsbee-bloomberg-idJPKBN2X71QZ
2023年5月17日5:24 午前
FRBの次の一手や利下げの議論は「時期尚早」=シカゴ連銀総裁

『[16日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は16日、利下げを議論するのは時期尚早であり、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で米連邦準備理事会(FRB)の次の一手がどうあるべきかを判断するのも早計だと述べた。ブルームバーグテレビのインタビューで語った。同総裁は経済活動がやや鈍化し始めているとしながらも、十分に抑制的になったかどうかはまだ分からないとし、できる限り多くのデータを得る必要があると述べた。』(上記URL先より)

ということで、例によって例の如くBBGのサブスクライバーでしたらインタビューの動画が見れると思いますのでそれ見てちょ(直感的にこれは多分長くない物件と見た)という感じですが、まあ直近出てきている地区連銀総裁の発言の傾向をニュースヘッドラインだけで見るのは若干リスクがあるのですけどまあそこは目をつぶって総括しますと、FED的には5%台というキリのいい所まで短期金利をぶち上げて、インフレファイヤーもさすがにここから2段ロケット3段ロケットにはよーならんじゃろと思うし、中堅地銀のアイヤーで金融機関も締めに掛かっているし、モーゲージもアレだし、ということで、基本的には「引き締めの効果出てきてると思われるのでキリのいい水準だしここらで様子見ますか」という感じなんじゃなかろうかと推察されますな(個人の感想です)。

なお、グールズビー総裁ですが、さっきURLだけ貼ったスピーチちゃんでは金融問題は金融問題だが高インフレの対処はそれはそれで必要(もちろん金融問題が実体経済にマイナスの影響を与える、というのにも言及してるけど)とか仰せでして、シカゴ連銀だけに物価重視はやっぱり伝統芸能を継承するのかなー、とは思いました。

いずれにしましても、FEDってここから先インフレロケット再点火で前月比のインフレがホイホイ上がるような事になってきたら「5%でも足りんのかー」と言いながらチマチマと0.25%利上げして止めて様子見て、というのをやりそうだけど、たぶん認識として既に引き締め的だし、金融政策は後付けで効いてくるっての把握してる上に元々ビハインドで利上げしたという認識あるからビハインドの取返しに利上げし過ぎている可能性だって認識していると思うので、この先は慎重にやっていくし、逆に利下げもおいそれと直ぐにやってくるとも思えないんですよねー、とは思うのですが、何ちゅうか直ぐに「次の一手は利上げか利下げか」で右往左往しちゃう謎のデジタル思考は何とかならんのか米債市場、とは思うのでありまする。



〇ジェファーソン副議長の金融政策に関するお話(ただし先週金曜日)

https://www.federalreserve.gov/aboutthefed/bios/board/jefferson.htm
Philip N. Jefferson

こちらのBioを見ますとかつてはFRBのエコノミストもしていたようですな。でもって直近の副議長のお話はこちら。

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/jefferson20230512a.htm
May 12, 2023
On the Assessment of Current Monetary Policy
Governor Philip N. Jefferson
At the "How to Get Back on Track: A Policy Conference," Hoover Institution, Stanford, California

『Good afternoon, everyone. Thank you to the organizers for inviting me to speak. It is a pleasure to be here. I welcome hearing diverse views on how to best conduct monetary policy, and this conference is certainly providing an invigorating debate on that topic.』

この辺はご挨拶。

『Before I begin, I want to address quickly some news from this morning. I am deeply honored by the trust President Biden and Vice President Harris have shown me with the nomination to be the next Vice Chair of the Board. I am humbled by this extraordinary opportunity and thankful to my colleagues, friends, and family for their support.』

ということで12日に副議長にノミネートされましたってことでこれはブレイナードの後任ですね。

『Turning back to the conference, as I join this debate, let me remind you that the views I will express today are my own and are not necessarily those of my colleagues in the Federal Reserve System.』

いつものヘッジクローズ、ということでお話が始まりますが。最初が『Introduction』である。

『The title of the conference "How to Get Back on Track: A Policy Conference" is potent. Its intent and ambiguity are striking. First, the title presupposes that U.S. monetary policy is currently on the wrong track. Second, the webpage for this conference advances a puzzling definition of the phrase "on track." How so? According to the Hoover webpage, "A key goal of the conference is to examine how to get back on track and, thereby, how to reduce the inflation rate without slowing down economic growth" (emphasis added).1』

このコンファレンスのお題に関して一言述べている訳ですが、そのコンファレンスのご案内ページはこちらになります。

https://www.hoover.org/events/how-get-back-track-policy-conference
Hoover Institution

EVENTS
How To Get Back On Track: A Policy Conference
The Hoover Institution hosts How To Get Back On Track: A Policy Conference on Friday, May 12, 2023.
Friday, May 12, 2023 Hoover Institution, Stanford University
Research Team: Economic Policy Working Group

でもってこのご案内ページのお題というか能書きは、

『Our theme this year, "How to Get Back on Track," follows up on last year’s “How Monetary Policy Got Behind the Curve.” A key goal of the conference is to examine how to get back on track and, thereby, how to reduce the inflation rate without slowing down economic growth. The policy issue is largely international, with special discussions of Asia, Europe, and Latin America. This is a policy-oriented conference consisting of formal presentations, policy panels, and indepth discussions. The conference builds on previous Hoover monetary policy conferences going back fifteen years, from the 2008 conference up to the 2022 conference. Read about our 15-year milestone here. Background papers will be provided in advance of the conference.』(この部分のみ直上URL先のスタンフォード大学フーバーインスティテューションのサイト先より引用)

昨年のお題が「“How Monetary Policy Got Behind the Curve.”」で今年のお題が上記にあるように、「昨年のお題のフォローアップで"How to Get Back on Track,"ですよ」と来てて中々イヤミったらしいというか痛烈というかなお題ですが、「A key goal of the conference is to examine〜」からの部分にジェファーソン副総裁言及してまして、「こういうお題をぶっこまれるというのは、つまりはFEDの政策がまだ正しい軌道に戻れていないという事を意味しますわなー」とのお話、即ちこれって「引き締め政策はまだまだ継続しないとあかんじゃろということでございますね」ってな話をしている訳ですよね。

ということで講演の方に戻りまして、

『As this audience knows, there are macroeconomic models that permit disinflation with no slowdown in economic growth, but the assumptions underlying these models are very strong.2 It's not clear, at least to me, why such a strict metric would be used to assess real-world monetary policymaking.』

でもって、「どのようにして正しい軌道に戻すか」問題において、経済のスローダウンをもたらさずにそれが出来るかというと、そら幾つかのマクロ経済モデルでは可能という話をしますが、そんな当てにならんモデルには依拠できません少なくとも私には、という事を言ってまして、これまた景気下押し上等という話をしている訳で、年後半にマイルドリセッションになるから利下げ開始だヒャッハーとなる金融市場に対して「多少の経済減速でホイホイ利下げしねえよ」という話をしている、というかFEDの高官って最近はほぼ全員がこの説明をしているのに、金融市場では何で相変わらずマイルドリセッションになるから年内利下げ開始だぜヒャッハーと隙あらばなるのかがアタクシにはイマイチ理解に苦しむのでございますわ。

『Third, the definition of "on track" in the title contrasts with more commonplace definitions such as "achieving or doing what is necessary or expected," as offered by a standard reference such as the Merriam-Webster dictionary.3』

このオッサン、客注に『3. See the definition for "track" at https://www.merriam-webster.com/dictionary/on%20track. 』とか乗っけてて中々オモロイ人ですな。確かにそこの最後に「Phrases on track: achieving or doing what is necessary or expected」ってありますわ(バナー広告がアホほどついてるので辞書サイト見に行くのお勧めしませんのでリンクはしません)。

『My view is that this commonplace definition provides a more practical lens through which to assess real-world policymaking.』

『Against this semantic backdrop, I will begin my remarks with my perspective on the current inflation and economic situation. Then, I will consider credit conditions in response to the recent bank stress events. Next, I will offer some normative thoughts about strategic monetary policymaking in highly uncertain environments. Finally, I will argue that if you are willing to widen your lens to include a more commonplace definition, then it is possible to conclude that current monetary policy is, in fact, "on track."』

ということでお話が始まるのだが、手抜き読みなので物価の話と労働市場の話を後回しにして結論から先に読むという手抜き放題である。。

・手抜きで金融政策運営の話しから読むけど最初に「経済の基礎的な部分に変化が起きている」点を認識しているのは偉い偉い(頭ナデナデ)

『Monetary Policymaking and Current Uncertainties』というそのものズバリの小見出しから参りますと、最初から良い事が書いてある。

『The pandemic aftermath, geopolitical instability, and banking-sector stress have contributed to a highly uncertain economic environment. Additionally, the numerous post-pandemic "surprises" in inflation, employment, and economic growth suggest that the underlying structure of the U.S. economy may be in flux. More simply, the data-generating process for the post-pandemic U.S. macroeconomy is less clear.』

パンデミックの影響だの地政学問題の変化だの最近の銀行問題だのがある上に、そもそも論としてポストパンデミックになってからインフレや雇用や経済やらに、従来と違った「サプライズ」が起きています。とそもそも論として経済や雇用、物価を規定する経済の構造的要因に変化が生じている可能性がある(ので先行きの決め打ちが従来に増して非常にムツカシイ)というお話をしておりまして、相変わらず従来の延長線上での話ししかしないで物価見通しを1年間以上延々と外し続けている日本銀行とかいう所はジェファーソン副総裁の爪の垢を煎じて飲んで頂きたい。

『Due to the proximity of the pandemic and its unprecedented disruptions of economic and social activity, there are currently insufficient post-pandemic data to identify the parameters and stable relationships that characterize the possible new structure of the economy. Given this observation, what is a reasonable monetary policymaking strategy? The answer to this question is likely to be different for each monetary policymaker.』

構造の変化により過去のデータが必ずしも当てにならなくなり、一方でポストパンデミックの時代のデータ蓄積はまだ進んでいないのだから、今の時点で「リーズナブルな金融政策のストラテジーは何そや?」と聞かれたら、回答が人によって異なるのはそらもう当たり前だのクラッカーよ、と仰せでこの人かなり謙虚というか平明に物を見れる人じゃんと感心する訳で、どっかの夜の帝王は余っている頭髪とジェファーソン副総裁の爪の垢を交換したらどうでしょうかねえ。


・金融政策のストラテジーは人によって回答が異なると言った後にジェファーソン副総裁の見解キタコレ

次のパラに行く。

『I want to share with you a few strategic principles that are important to me.』

キタコレ。

『First, policymakers should be ready to react to a wide range of economic conditions with respect to inflation, unemployment, economic growth, and financial stability.』

つまり決めうちはしませんよということですな。

『The unprecedented pandemic shock is a good reminder that under extraordinary circumstances it will be difficult to formulate precise forecasts in real time.』

>it will be difficult to formulate precise forecasts in real time
>it will be difficult to formulate precise forecasts in real time
>it will be difficult to formulate precise forecasts in real time

おーい黒田に植田ー、聞いてるかー??

『Our dual mandate from the Congress is especially helpful here. It provides the foundation for all our policy decisions.』

ということでまるで決め打ちをしていない(という見せ方をしている)のは把握した。

『Second, policymakers should clearly communicate monetary policy decisions to the public.』

ちょwwwww日銀の事とか眼中にないでしょうけどこれは日銀に対する無慈悲な砲撃wwwwwwwwwwww

『Our commitment to transparency should be evident to the public, and monetary policy should be conducted in a way that anchors longer-term inflation expectations.』

でもって次は、

『Third-and this is where I am revealing my passion for econometrics-policymakers should continuously update their priors about how the economy works as new data become available. In other words, it is appropriate to change one's perspective as new facts emerge. In this sense, I am in favor of a Bayesian approach to information processing.』

「最も大事なのは新しいデータが入手出来たら常にアップデートを行っていく、言い換えれば新た事実が発生すれば、それに対応して見通しを変えていくということです」だそうですよ本石町のポンコツの皆さん聞いてますか〜。


『While these principles do not constitute a complete monetary policymaking framework, I think they are useful when thinking about features of such frameworks.』

それだけで完璧な金融政策運営ができるかというとそうでもないですけど、しかしこれらの原則を持って行くことは重要でありますよ、と来たもんでして、ジェファーソン副議長、少なくとも「ポストパンデミックで構造変化が起きているから、従来のモデルで考えても上手くいかないかもしれないので、当面はとにかく出たとこ勝負で頑張りますぜ」という良く言えば謙虚で臨機応変、悪く言えばモデル無しでフニャフニャという感じですので、まあそういう事だぞと思ってFEDの出方を考えた方が良いんじゃないかと思いますがどうでしょうか。

なお金融政策のコーナーはここでおしまいで次がまとめになります。


・まとめをみるとやっぱり「いったん利上げ打ち止めして引き締めの効果がどの位出て来るかを確認したい」ですよね

次の見出しは『Conclusion』です。

『By way of concluding, I would like to return to the question of whether current monetary policy is "on track" but allow for the wider defining lens of "achieving or doing what is necessary or expected." The national unemployment rate was 3.6 percent in March 2022 when the current monetary policy tightening cycle began.』

ほうほうそれでそれで??という感じですが昨年の3月からの変化という意味で経済を見ますと、ということで。

『Today, after 500 basis points of tightening of the policy rate, the national unemployment rate stands at a near-record low of 3.4 percent. At its recent peak, total PCE inflation was 7 percent in June 2022. Currently, it is 4.2 percent in March 2023.』

昨年の利上げ開始時点から見たら政策金利5%引き上げましたが、失業率はその時の3.6%から今は3.4%で、インフレは6月に7%まで上がって足もとは4.2%でっせ。

『Is inflation still too high? Yes.』

インフレーションはtoo highだそうですそらそうよ。

『Has the current disinflation been uneven and slower than any of us would like? Yes.』

最近の物価落ち着きはスローで一様ではない(これはすっ飛ばした物価の話の中にありまして、サービス価格のインフレとか財価格のインフレとかそういうののグラフがあります。PDF版だと見れるのと講演URLの下の方にここクリックすると見れるでーというのがある)かというとその通りだそうな。

『But my reading of this evidence is that we are "doing what is necessary or expected" of us. Furthermore, monetary policy affects the economy and inflation with long and varied lags, and the full effects of our rapid tightening are still likely ahead of us.』

でもって金融政策がラグ持って効く上に今回の引き締めサイクルはクッソ早くて一気に引き上げたので、その効果がこれからやっぱり出て来るんじゃなかろうか、と思っていて、高いとは言え以前より下がったインフレ率と、一部のカテゴリーに限られていてまだイマイチの下げ方となっている物価構成品目の動向は、「必要な引き締めを行った」というエビデンスになるんじゃなかろうか、と言ってますから、まあやっぱりジェファーソン副議長も「利上げはいったんここで打ち止めて様子をみましょう」スタンスですよ、って話をしていますね。

『We are balancing the directives of the dual mandate given to us by the U.S. Congress. This is not an easy task in these uncertain times, but I can assure you that I and my colleagues on the FOMC take it quite seriously and with great humility. It is in this sense that I believe that we are well "on track."』

デュアルマンデートのバランス取るのムツカシねーという話もしてまして、それはそうだよなというか、米国だってこういう議論の出る中で「賃金ターゲットを連想させるようなフォワードガイダンス文言を入れた」という日銀のズレっぷりには涙無くして見られないという感じでございまして、まあ控えめに申し上げてポンコツの皆様におかれましては可及的速やかに天寿(以下自主規制)。






2023/05/16

お題「はい4月企業物価指数上振れ〜/経済財政諮問会議から小ネタ/FED高官発言キタコレだが「利上げも利下げもしませんわ」ですかね」

これはデューク東郷が出て来る案件じゃないですかヤダー
https://jp.reuters.com/article/usa-debt-adeyemo-idJPKBN2X61FN
2023年5月16日2:33 午前
米財務次官、1兆ドルプラチナコイン案を否定 債務上限問題巡り

(ゴルゴ13シリーズ、2014年11月「最終通貨の攻防」をご覧ください(^^))

・・・・・まあしかし何ですな、本件は出来レースとか茶番劇とか言われるかもしれませんけれども、こういう歯止めの装置を制度上置いておくことによって野放図な財政支出を回避できるわけですから、ワイはこの制度に関しては一つのチェック機能として必要だと思いますが、このような抑止制度もないのに60年ルールを撤廃すれば財源が出て来る、というような会計操作で財源が発生するような言説が横行するどこかの極東の国ですが、60年ルールはグローバルスタンダードじゃないとか言ってるのに米国やEUでは財政上限の歯止めがあるのをスルーしてるのって真正のクズなんじゃないかとアタクシは思いますね(個人の感想です)。


〇4月企業物価指数も事前予想対比上振れですし前月比上昇が続きますね

https://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi2304.pdf
企業物価指数(2023年4月速報)

国内企業物価指数は、前月比+0.2%(前年比+5.8%)。
輸出物価指数は、契約通貨ベースで前月比+0.2%、円ベースで同+0.2%(前年比+1.8%)。
輸入物価指数は、契約通貨ベースで前月比▲2.0%、円ベースで同▲2.3%(前年比▲2.9%)。

となっていまして、表の下に原数値(2020年平均=100とした)の系列がグラフになっているのでそっちがビジュアル的に分かりやすいのですが、輸入物価指数自体は昨年9月をピークに高値からは下げている(2月だけ前月比プラスでしたが)のですけれども、そうやって下がっている側から国内企業物価指数の方はホイホイと上昇を続けていて、ブルームバーグさん集計のエコノミスト予想平均だと、今月の予想は前月比横ばいという見通しだったのですが、結局前月比で+0.2%上昇となっていますし、3月分が遡及修正されていて前月比+0.0%→+0.1%となっていて、相変わらず前月比でプラスが続く(2月は政府のアレの影響で前月比マイナスになったけどそれ以外の月は前月比プラス(たまに横這い)が続いています)、いやー企業物価下がらんねえという状況になっておる訳でございます。

話は脇にそれますが、米国の物価指標って何で前月比の方が前面に出て来るのかと最近まで少々不思議に思っていたのですが、足元ジャパンでもインフレが気になるようになってくる状況になりまして、そうなるとインフレの動向を示すのって原数値の推移ですから、前月比で上向いてるか下向いてるかって方が気になるんだ、というのに改めて気が付く今日この頃でして、まあそんなのもあるので最近は物価指標見ると前月比と現数値を先に気にしてその後前年同月比を見るって感じになってきまして、やっとメリケン並みになってきたじゃんと歓喜するアタクシなのでした、とどうでもいいネタすいません。

2ページ目に『(前月比で上昇・下落した主な類別・品目)』というのがあるのでこれもまた面白いですよね、というかまあアタクシも元々がディーリング上がりなのでこういう経済統計は結果見てうひゃーと反応するしか能が無かったのでこういうのの長期時系列を見ている人じゃないと今の状況がどうなのか、という切り口で説明できない訳で、アタクシはそういう蓄積は無いのでパスしますけど、一番上に『電力・都市ガス・水道、 0.10 %、 事業用電力、工業用水』とあって、家庭向け以外はコスト上昇の転嫁してるんだったな、と改めて思うのでありました。



でまあ今週金曜には4月全国CPIが出る訳ですが、ブルームバーグさん集計のエコノミスト予想見ましたら、総合が+3.5%、コアが+3.4%、コアコアが+4.2%という予想になっておられるようでして、コアコア+4.2%の発射台で何がどうなると年度平均でコアコアが+2.5%になるのか小一時間問い詰めたい所ではありますし、年後半に掛けて下がって2%割ることによって年度平均が何故か+1.8%になるということになっているコアCPIにしたって、

https://www.asahi.com/articles/ASR5H4T4TR5HUTFK003.html
家庭向けの電気料金、6月値上げへ 消費者庁が容認の意向を表明
有料記事
岩沢志気 寺田実穂子2023年5月15日 14時48分

『大手電力7社が申請している家庭向け規制料金の値上げについて、6月1日からの値上げを政府が認める方向で調整に入った。経済産業省と協議してきた消費者庁が15日、値上げを容認する意向を表明。これを受け、政府は16日に開く関係閣僚会議で決定し、値上げ幅も示す見通しだ。』(上記URL先より)

河野太郎とかいうツイッターでわざわざエゴサーチまでして批判的な言説を探して、メンションも飛ばしてこない人間までも先制ブロックして回るという典型的な小心者のパワハラ暴君のせいで値上げ幅圧縮することになるらしいので、逆に言えばこれ燃料費が落ち着いてきても値下げが直ぐに出来なくなってしまうということになりまして、これまたコアCPIを支える要因になりそうですなあというような今日この頃。


まあそんな訳で今や市場機能云々とかいう副作用の話ではなくて、物価が目標対比上振れする中で一時的とか言って超ウルトラ緩和をそのままにしていていいのか問題、というより本質的な問題にこれから植田日銀が直面すると思いますとメシが美味すぎてドンブリメシ3杯は物価ネタで行けるわという大変に素敵な状況になりそうですね。7月展望レポートで上方修正してどのツラ下げて説明するのか、今からそれしか楽しみが無い、つまり7月末まで楽しみが無いという大変にオモンナイ状態ではあるのでございますが、まあ物価見ながら「ヘイヘイピッチャービビッテルヨー」って野次を飛ばすのが今後の娯楽になろうかと存じます。



〇経済財政諮問会議がネタになっていたようですが

https://jp.reuters.com/article/idJPL4N37C0JI
2023年5月15日11:06 午前
岸田首相、構造的賃上げ「最重要課題として取り組む」=諮問会議

構造的に経済成長すれば構造的に賃金が上がると思う訳で、物価2%目標を達成したら経済が良くなるという幻想の次は賃金が上がったら経済が良くなる幻想かよお前らいい加減にしろと思う訳ですよ。

『[東京 15日 ロイター] - 政府は15日午前に開いた経済財政諮問会議で、金融政策・物価等に関する集中審議を行い、政府側はデフレ脱却には物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか関連指標をきめ細かくみることが必要との論点を示した。岸田文雄首相は、先行きの不確実性が高まる中で政府と日銀との連携が重要だとし、政府としては構造的な賃上げを最重要課題として取り組んでいく考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

だから日銀が賃金に対する構造問題に対して何が出来るんだよという話でありまして、黒田緩和の10年が示したことは「金融政策が出来ることって今まで思われたほど凄くなかった」「マクロ経済に物凄い効果を出せると思われていたのは単に経済の環境が良かったからだけでした」ってご教訓だったんじゃないのとしか思えないのですが、相変わらず日銀との連携がとか言ってる時点でコイツら真面目にやる気がないのか、途方もない馬鹿で未だに金融政策万能主義でいるのかどちらなのかが良く分からんですな。


でまあ話題になってたのは清滝先生。

『日銀の政策については清滝信宏委員が、物価上昇率が1─2%程度に定着すれば量的・質的緩和を解除すべきと主張し、1990年代末以降のトラウマのために政策判断が遅れてはいけないとの考えを示した。』

ということでですな、昨日の経済財政諮問会議に関しては各委員の紙芝居が同日に公表されていまして、

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0515/agenda.html
第6回会議資料:会議結果 令和5年

清滝先生の資料はこちら
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0515/shiryo_04.pdf
成長と安定のためのマクロ経済運営
2023年5月15日
清滝信宏

清滝先生の紙芝居は箇条書きなので引用も簡単ということで引用すると、表紙の次の紙芝居が

『量的・質的金融緩和の目的:デフレを止める

過去10年間にデフレを止めて、1−2%程度のインフレを達成するのに一定程度の効果があった

1−2%のインフレを維持するのは、活発な財・労働市場と効果的な金融政策のために重要

しかし現在、世界全体でインフレが進行しており、欧米では政策金利の急上昇にもかかわらず、2%を超えるインフレが数年続くと予想される

日本でも、円安と輸入物価の急騰から、目標値を超えるインフレが続いている

→ 年金と預金に頼る老齢世帯の生活が苦しくなっている』

その次の紙芝居が

『量的・質的金融緩和の問題点

長短金利差やリスクプレミアムが小さくなりすぎる

不動産等の資産価格が高くなりすぎる

→ 新規企業の参入や若い世帯の住宅取得が難しくなる → 生産性や総生産の成長が停滞する

1%以下の金利でなければ採算が取れないような投資をいくらしても、経済は成長しない

長期金利を低く抑える政策も長く続けると、一方的な投機にさらされ国が損をする』

でもって最後の紙芝居が

『インフレ率が1−2%程度に定着すれば、量的・質的緩和は解除するのが望ましい

金融政策の判断は日銀が責任をもつべきだが、1990年代末以降のデフレのトラウマのために、政策判断が遅れてはいけない

過去30年間、日本の労働生産性の上昇は他国に比べて低かった → 実質賃金と非貿易財価格の上昇が他国より低くなる(バラッサ・サムエルソン効果)→デフレになりやすい傾向があった

他国と同程度の労働生産性の上昇を維持することで、デフレになりにくくなる
生産性向上に最も効果的なのは無形資産の蓄積と技術進歩』

というのでおしマイケルなのですが、何だ植田先生25年間のレビュー清滝先生がやってくれたじゃんヤダーという感じですけど流石は清滝先生、と思いましたが、まあ日銀ちゃんは4月の決定会合で示した日本語での説明を文字通りに解釈しますと、「物価上昇が続いて国民の生活が苦しくなっても知らんもんねー」ということになっておりまして、国民の怒りの声が爆発して日銀批判が相応に高まって行かないと政策をいじる気はないというスタンスをお示しになられておりますので、残念ながら清滝先生のいうような話にはならんでしょうな。


さて話は変わりまして同じ経済財政諮問会議ですが、金融政策の話をさせるとナイーブな机上の空論を常にかっ飛ばし、しかも別に思想がある訳でもなさそうで、その時々で時流に乗ったネタを金融政策の話に織り込んでいく、という意味では岩田規久男先生(ナイーブな机上の空論)と伊藤隆俊先生(時流を追いかける)の悪い所を煮詰めて練り上げたとしか思えないのになぜか東大の教授になっている渡辺努先生のプレゼンをみたらこんなのがありました。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0515/shiryo_05.pdf
消費者の物価・賃金予想と企業の価格転嫁
渡辺 努
2023年5月15日

紙芝居の4枚目(PDFの5枚目)に『日銀のフォワードガイダンス (2023年4月28日)』というお題があってですね、

『・物価との対比で賃金の改善が遅れている現状にあって、FGに賃金への言及が追加されたことは適切。』

とある時点で、ああこの先生がこういうんだからやっぱりガイダンスに賃金の言及を入れたのは間違いだな、というのが非常に良く分かって実に結構な訳なのですが、その後に書いていることもアホチャウかという話で、だいたいからしてどこの世界に最遅行指標の賃金を目標にして、しかも金融政策自体が実体経済に与える効果に相当のタイムラグがある、という特性をもつ政策運営のメルクマールにするんだよ馬鹿なんじゃないかこいつはというか何で東大はこんなのを教授にしてるんだよだから日本の大学は世界のリーグテーブルからドンドン落ちていくんだよとしか言いようがない(ちなみにこの人CBDCについて「CBDCが出来ればマイナス金利の深掘りの自由度が高まり金融政策の自由度が高まる」とか思いっきり言い出して、いやいやそんな事言い出したらCBDCは政府による民間資産接収の手段じゃんという話になって誰もCBDC使わんわ馬鹿なんじゃないかというかCBDCの関連ビジネスにとってもマイナスな発言を平気でする程度には机上の空論ナイーブおじさんなんですよね)次第でございますが、まあこれによって4月のフォワードガイダンスに賃金の文言を入れたのは間違いだというのが証明されて誠に結構ではございました(白目)。

とにかくこのおじさん、金融政策の事を喋るなよとしか申し上げようがない訳で、物価の話だけして引き籠ってろと(最近はその物価の話にしたってこのおじさん物価上振れの警告とか全然していなかったという時点で何か怪しくなってきてるけど)。

という与太雑談でした。


しかしまあ何ですな、この調子で物価が高止まりして植田総裁が火だるまになるんだったら黒田緩和とかアベノミクスとかリフレ派とかついでに渡辺先生みたいなのも全部まとめて地獄の火の中に投げ込まれてしまえば、中長期的に言えば日本の為にはプラスになるのかもしれませんし、そこまでの壮大なお覚悟をもって植田総裁が黒田緩和をそのまま引っ張りますという自己犠牲を行っているのであれば、そらもうアタクシとしても植田神社でも建立するのにはやぶさかではありませんでございますわ。おほほのほ。



〇地区連銀総裁のお喋りタイム始まりましたねえ(なおFOMC会見QAネタがまだなんだが)

・バーキン総裁

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-barkin-idJPL6N37C0EC?il=0
2023年5月16日5:03 午前
米インフレ、安定的な低下を確信できず=リッチモンド連銀総裁

『[15日 ロイター] - 米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は15日、連邦準備理事会(FRB)が今後利上げを行うか決定するに当たりデータに依存したアプローチに移行することに抵抗はないと述べた。ただ、インフレが安定的に低下しているとまだ確信できていないとした。』(上記URL先より、以下同様)

これはソースが以下にあるようにロイターのインタビューなので原文に当たれるかどうかが怪しいのですが、「今後利上げを行うか決定するに当たりデータに依存したアプローチに移行する」というのは要するに次回の利上げ決め打ちは行わないですよ、というFOMC声明文などで示されたお話になろうかと思います。

『バーキン総裁はロイターのインタビューに対し、6月13─14日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)までに発表される経済指標は多く、銀行の信用問題や連邦債務上限を巡る不確実性が存在していることなどを踏まえ、同FOMCで利上げを支持するか判断を保留していると述べた。また、需要は緩やかになっているように見えるとしながらも、インフレ率をFRBを目標とする2%戻すには、需要が一段と鎮静化する必要があるとの考えを示した。』

ということで、銀行の信用問題が完全回復して、それこそ金融市場がヒャッハーとやっていて、しかも物価が思ったほど下がらん、となると6月再利上げもあるかも、って事なんでしょうけれども、少なくともこの字面を見た感じだと6月は様子見地蔵になりそうな感じを受けましたがどうでしょうかねえ(個人の感想です)。


・ボスティック総裁

https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bostic-rates-idJPKBN2X61KY?il=0
2023年5月16日4:18 午前
もし今日がFOMCなら金利据え置きに投票=アトランタ連銀総裁

『[15日 ロイター] - ボスティック米アトランタ地区連銀総裁は15日、ブルームバーグテレビに対し、もし今日、金融政策の投票が行われるとしたら、金利据え置きに投票すると述べた。一方、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までには多くの経済指標が発表されるとし、利上げに関しては何も排除せず、その可能性を常に視野に入れておく必要があるとした。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほうそうですかそうですかというところですが、こちらもBBGTVなのでブルームバーグサブスクライブしてないと見れないかしらーって感じですし、文字起こしはなさそうですなナムナム。

『ボスティック氏は、企業は以前より価格決定力を失い、雇用も容易になっていると感じているとし、これらは米連邦準備理事会(FRB)の利上げが功を奏している証拠だとの認識を示した。』

と、割とど真ん中で据え置き賛成の背景を説明しているのかと思いきや、

『融資条件は予想通り厳しくなっており、金融機関は流動性リスクの上昇を受けてより慎重姿勢に傾いているとも指摘。ただ、これまでのところクレジットクランチには陥っていないとした。その上で、年末までにインフレ率が3%台後半になるとの予想も示した。』

ってな話でございまして、やはり金融環境というか融資環境の引き締まりの方がポイントになっているっぽいのでありますが、ただまあさっきのバーキンさんよりはボスティックさんの方が米国金融機関問題の影響を結構強めに感じているようには見えます。この言い方ですと米国の銀行アイヤーがだいじょぶますこわくない、とアーニャに頭をなでなでされましても、ゆうて厳しくなった融資条件が急に緩和する訳でもないので、(流動性リスクの方は軽減されるにしても)この日本語記事だけでどうこう言うのも即断にも程がありますが、まあ基本的にボスティックさんの方が足元の状況をより引き締め的と判断している感じですね。

『ボスティック氏はこの日、CNBCに対し、インフレ率が市場参加者が考えているほど急速に低下するとは思えないとして、年内の利下げは想定しておらず、逆に「上げる必要がある」との見方を示していた。』

ということなので、ゆうてインフレがマンデートに向かってバンバン下がるのか、というとそれはチャイますとなっていて、何でしょうねえあの利下げ織り込みまくりの2年債利回りとかあれで良いのか問題があるのですけれども、地区連銀の皆さん、というかFED全体だと思うのですが、「利上げはまあこれ以上やらんけど物価が明確に下がりだすまでは今の水準で放置プレイですわよ」というのが割としっかりとしたスタンスになっているので、追加利上げなし、ただし5%超えの今のFFはかなり引っ張る、と考えるのが一番素直な気がするんですが、なんかこう米国何とかストの皆さんってアクロバットな予想するの好きですよね。


あとはこの間ジェファーソン理事の金融政策に関するスピーチとか
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/jefferson20230512a.htm
May 12, 2023
On the Assessment of Current Monetary Policy
Governor Philip N. Jefferson
At the "How to Get Back on Track: A Policy Conference," Hoover Institution, Stanford, California

いつもの変態仮面ブラード先生の2部作とか
https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2023/the-monetary-fiscal-policy-mix-and-central-bank-strategy
The Monetary-Fiscal Policy Mix and Central Bank Strategy
May 12, 2023

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/speeches-and-presentations/2023/recent-policy-rate-increase-outlook-for-us-economy
Bullard Discusses Recent Policy Rate Increase, Outlook for U.S. Economy in Fireside Chat
May 5, 2023
(こちらは講演形式じゃなくてパネルディスカッションみたいなやつで「vimeoドットコム(敢えてカタカナ表記しました)」というサイトに繋がるようです(中身は見てない))

というのがあったりしますので、色々と確認はしますけど、まあ基本的に「今の政策金利のままで様子見」が暫く続くんじゃないかという感じのする情報発信が来てますし、その一方で米国債券市場の2年債利回りに見られるような「利下げの方の早期正常化」についても否定する、という基本的に否定する、というような感じで割と統一されている感はありますよね、と思いました。







2023/05/15

お題「植田日銀は「正本ではない」ものを使って闇コミュニケーションしようとしてますなあ困ったもんだ」

唐突に思い出しましたが
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-idJPKBN2X5047
2023年5月14日5:50 午後
ディスインフレ見込めるが「保証ない」=セントルイス連銀総裁

最近では高インフレ抑制のをするののディスインフレって言ってますが、そういや日本でもドッジ・ラインの時ってディスインフレという言い方をしてたんでしたっけ、というのを急に思い出しました。ソースが大昔に読んだ小説吉田学校に書いてあった気がするレベルなのでアレですが。


〇金曜急いでやったのでもうちょっと丁寧に&声明文にも正常化バイアスを連想させる単語が・・・・・・・・

金曜の続きで関連するネタになるのですが。

木曜の「主な意見」を受けてBBGさんが見事な記事を出していた、というのを金曜日にネタにしましたがそれとその関連です。


・金曜にご紹介したのの再掲ですが金曜日ちょっと時間が無かったので再度もうちょっと私家版解説を入れる

これは再掲。
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-05-11/ueda-s-boj-subtly-changes-english-translation-in-new-era-signal
Ueda’s BOJ Subtly Changes English Translation in New Era Signal
BOJ is now ‘patiently’ easing instead of ‘persistently’ easing Change signals Ueda’s intent to communicate with global market
ByToru Fujioka
2023年5月11日 11:38 JST

でまあくり返しになっちゃいますが金曜月曜効果でワイの頭がリセットされているので
話を蒸し返しますと、この記事ってのは(ちなみに解説部分も興味深い考察がありますので
全文読める方は全文読むのをご推奨しておく)、

4月会合主な意見
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230428.pdf(和文、こちらが正本)
https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230428.pdf(英文、本来はただのご参考文書)

3月会合主な意見
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230310.pdf(和文、こちらが正本)
https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230310.pdf(英文、本来はただのご参考文書)

で使われている日本語「金融緩和を粘り強く続ける」に関して

3月
『・ 経済・物価見通しを踏まえると、「物価安定の目標」の達成まで金融緩和を粘り強く続けることが必要である。』

『・ Given the outlook for economic activity and prices, the Bank needs to persistently continue with monetary easing toward achieving the price stability target.』(3月会合主な意見の日本語と英語より)

4月
『・感染症の影響は低下したとはいえ、内外経済や金融市場を巡る不確実性はきわめて高く、「粘り強く緩和を続ける」、「必要に応じて追加緩和措置を講じる」という姿勢は不変であると強調すべきである。』

『・ Although the impact of COVID-19 has lessened, there are extremely high uncertainties surrounding economies and financial markets at home and abroad. The Bank should emphasize that there is no change in its stance of patiently continuing with monetary easing and taking additional easing measures if necessary.』(4月会合主な意見の日本語と英語より)

ということで、3月の「粘り強く」が「persistently」だったのに対して4月の「粘り強く」が「patiently」に訳語が変わっているというダマテンにも程がある変化を英文の方で勝手にぶっこんでいる(しか粘り強く」の訳語は全部置き換わっている)という代物で、いや待てお前日本語の方で書いてある意見の訳語を勝手に前と違うのにするのアリなのかよという話でして、この「主な意見」の「英文版」の扱いになするプロセス良く分からんので何ともかんともではあるのですが、基本的に各委員の皆様は「日本語版」で出す(文字数制限あるし)という決まりになっている、という所までは表に出ているのでまあそうじゃろうなあというのは分かっているのですけれども、英文版ってのを出しているとは聞いておりませんがなというお話。

明らかに(BBGさんの記事でも指摘されていますけど)persistentlyだと「バンバン永続的に緩和ぶっこむぜヒャッハー」というニュアンスがこの単語からは伝わりますが、一方のpatientlyってのは「何かそろそろマズイかも知れないけど我慢我慢」って感じのニュアンスになるのでエライ違いです。当然こんなの誤訳する訳がないので、当然この間にはメッセージが籠められていまして、日本語のコミュニケーションだと現在の政策をクソ粘りしますよという姿勢に全然変化がないような説明に終始しているのに、英文の方だけ勝手にニュアンスの異なる単語入れてメッセージを出しているという二枚舌説明をおっぱじめているということですね。

ということで、日本語の方の表現に変化があって英文の表現が変化しているなら別に問題は無いのですが、今回は日本語は同じなのに英文だけ変える、しかも正本は日本語で英文はただの参考資料の筈なのに、正本が変わらずに参考資料の方だけ変える、というのはこれは大変なことであって、またも日銀スタッフが関東軍と化して政策委員の多く(少なくとも1名は有能がいると見られるが多勢に無勢とはこのこと)がポンコツ無能なのを良い事に好き勝手やっているのではないか疑惑を持たれるような大問題でもありますので、この単語差し替えになった背景とその決定プロセスにつきましてはきちんと公開して頂きたい訳でございますし、まあアタクシのような無力者が債券村の隅っこでクダ巻いててもアレなんで次回の決定会合の会見時に誰かツッコんで頂きましたらありがたいのですが(^^)。



・ということでよくよく声明文を見直すとなんですかこの「nimbly」は何ですかという話

4月声明文ですが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230428a.pdf(和文、こちらが正本)
https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230428a.pdf(英文、本来はただの参考文書)

とにかくこの会合の声明文で問題になるのはガイダンス文言の所でして、

『2.日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(4月声明文和文)

『2. With extremely high uncertainties surrounding economies and financial markets at home and abroad, the Bank will patiently continue with monetary easing while nimbly responding to developments in economic activity and prices as well as financial conditions. By doing so, it will aim to achieve the price stability target of 2 percent in a sustainable and stable manner, accompanied by wage increases.』(4月声明文英文、本来はただの参考文書)

こちらが前段になっていますが、あまりにも日本語が汚いので(お前が言うなお前がというツッコミの声が聞こえた気がするけど幻聴ですねそうですね)英文はさすがに2文に分かれていますね。

『With extremely high uncertainties surrounding economies and financial markets at home and abroad, the Bank will patiently continue with monetary easing while nimbly responding to developments in economic activity and prices as well as financial conditions.』(4月声明文英文、本来はただの参考文書)

国内および世界の経済と金融市場がエクストリームリーに高いアンサータンな状態であるので、日本銀行は「patiently」に金融緩和政策を継続します。なお、経済状況や物価状況、金融環境にも同様に、それらの進展に対して「nimbly」に対応いたします。

って書いてて、そもそものpatientlyは声明文の方にある、というのは金曜に申し上げましたが、あの例の「機動的に対応しつつ」という謎の単語(あとの方で緩和バイアスを掛けた文言をバカスカ入れることによって「機動的」の意味を打ち消しているという謎単語ですよね)の英訳が、まさかの「nimble」になっている訳でして、これもまたエライコッチャというお話。

だってですね、「nimble」ってそれまで中銀ワールドでは使われていなかった言葉で、パウエルが金融緩和の正常化から利上げの中で使うようになってポピュラーになった単語なのでありまして、この単語を見たら普通は「パウエルの利上げ」を連想する単語じゃないですか。でもって日銀の皆様が当然ながらこの単語を不用意に使う訳ではなく(日銀だったら通常こういう時は「a timely mannar」とかそういう言葉を使う)、狙って使っている訳でして、これって海外向けに勝手に「超緩和政策の出口も展望してますがな」というメッセージを送りつけているのに等しい単語の使い方をしておる訳ですよ、まさに二枚舌外交。


・建付けというのは大事にしていただきたいのと何で海外向けにそういうメッセージ出すの?????

ということでございますが、黒ちゃんの時も以前「声明文の英文ではこのように書いていましてニュアンスはこうです」という発言をうっかりしてしまった事案もあるのですが、その後はさすがにそれはマズイと思ったのか英文の方に関して何か触れるということは黒ちゃんなくなりまして、まあ英文の方で日本語の正本以外のニュアンスが出る、ってことは無くなっていた筈(まあそもそも黒ちゃん梃子でも政策変えないんだから「変えません」って頑ななニュアンスしか出さないわけだし)なので、こちらも(何でもかんでも確認するの大変だから)ついうっかり植田日銀になっても当然その辺は同じかとノーマークだった(実は決定会合の時にこのガイダンスのニュアンスが意味わからんと思って英文を見たんだがこの時に注意不足でそこまで気が付かなかった、というか英文も咄嗟に読むとなんじゃこりゃ構文になっているのでそこまで頭が回りませんでしたすいません)のですけれども、こんな姑息な手段をぶっこんで来るということになりますと、こっちも対抗して英文を全部読むとかそういう「日銀文学英語版」の世界に入らないといけなくなって参りましたので、次回からは精進して声明文出た時に英文比較も時間の許す限りやっていかねば、と決意を新たにしたんですが週末はぐうたらして何もその後調べませんでした笑。

ただですね、再三再四申し上げておりますように、金融政策決定会合で議決されていますのは基本的に「声明文日本語版」と展望の会合では「展望レポート基本的見解日本語版」になりますので、英文の方で勝手にニュアンスを入れるというのは明らかに邪道。しかも、まあ日本語が分かりにくい表現で英語の方がすっきりと書いてあるからニュアンスが分かりやすい、というような意味での「ニュアンスの違い」というのは今までは時々散見されてはいましたが、今回の酷いのは「同じ日本語の単語の訳語が従来「主な意見」で使っていた単語から勝手に変わっている」という話でして、いやお前それは無いだろうよと思う訳でして、もし「粘り強く」の意味が実は黒田さんと夜の帝王では違う、というのであれば、「粘り強く」ではなくて別の表現を使うべきだったとしか申し上げようがこざいませんな。


・・・・・とまあそういうことで、建付けというのは大事にしてくれないとこっちは日本語に無い意図があるかどうか英文を見に行くという余計なお仕事が発生してしまいますし、しかも英文の方は決定事項じゃないんだから勝手に幕僚どもが決めることが出来るという関東軍状態になっているのガバナンスはどうなっているんだ問題が相変わらずあるというか黒田さんの時よりもガバナンス無茶苦茶になってないかという世界になっております(まあそれを制御できないポンコツボードもポンコツなんだが)し、いやー何か植田日銀前途多難だわ、と債券市場ちゃんの方は金利が下がっているので見た目前途平穏に見えますが、そう思うのでありまする。


あとですね、アホなんじゃないかと思うのは、「何で海外投資家向けメッセージで勝手に緩和出口志向のメッセージ出しますのやら」というお話でして、ついこの前海外投機筋による10年ターゲット外れるんじゃなかろうか売り攻撃に対してランボー怒りのSLF大締め上げとかいう悪徳高利貸しプレイをやって売り方殲滅したばっかりなのに、何で海外投資家向け「だけ」またも出口志向のニュアンスがバッチリと入っているメッセージを出しているのかと思う訳ですよ。

だってさ、出口クルーってなった時ってじゃあ国内は売りたたけるかというと、基本的にリアルマネーの投資家ってのは「空売り」はしない(ベンチマーク対比でアンダーウェイトにするのは出来るけど出来て「非保有」までであって、ショートセールは基本的に投資勘定では出来ないですからね。明示的にショートセールするっていうファンドみたいなものじゃない限りやらんわな)ので、10年カレントだけ売るって訳にも行かんと思うのですよ、、寧ろ海外の方が無茶やってくるんですから海外向けこそYCC長期金利ターゲット解除の際には騙し討ちをしないと行けない筈なのに、何で今回こういうメッセージの出し方をしているのかは何のマゾヒストプレイなのかと小一時間問い詰めて行きたい所ではあります。

足もと海外金利が上がらんから良いようなものの、7月展望に掛けてどっからどう見たって物価見通しの上方修正待ったなしだし、この「年度後半には物価は2%割れて上昇幅縮小するんです」という説明に無理があるという流れになった際、あるいはまたまたドル円が140円台に乗せて行って輸入物価のコストプッシュが起きるような場合、そして食料品なんかが特にそうですが価格転嫁のリターンマッチが行われる際に、今回の英文で出した緩和出口バイアスとも取れる情報発信が改めて注目されて、日銀の首を締めるんだろうなあと思うとワクワクテカテカが止まらないので、まあどうせ今月の国内からの材料は今週末の全国CPIと月末(でしたっけ)の東京都区部CPI位しかなさそうなので、海外の状況をマターリと眺める、ということで海外ネタの追いつきをしていかないといけませんですなという次第でありまする。


ま、いずれにしましても「姑息」という言葉が一番よくあてはまる感の強いコミュニケーションしてくるじゃん何だよ植田さん正統派で正々堂々のコミュニケーションするんじゃ無かったのかよ、とかなり失望の念は否めません。





2023/05/12

お題「植田日銀のコミュニケーションが初手から無茶苦茶になっている件について(4月主な意見とブルームバーグさんのご指摘と)」

いやーしかし期待してたんですが植田日銀、黒田の時よりもコミュニケーションが複雑骨折になってしまって、一応ワンチャン偽装工作の可能性をまだ信じたいけど喉の先まで夜の帝王はギロッポンにでもお帰りなさいああそれからおどれは大学から未来永劫出て来るなと言いかかっているアタクシガイル。

〇4月会合主な意見だが物価の所だけマシな話をしてるのに前後は何でそんなに無茶苦茶なん????

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230428.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2023 年 4 月 27、28 日開催分)1

・物価に関する議論はまあ普通というか寧ろ強めの話が多いのに何であの見通しになるんでしょう展望レポート

『T.金融経済情勢に関する意見』ですがお話の都合上『(物価)』から入ります。さすがに意見は8つ入っていますね。我思うに執行部は大本営見通しを出すから重複を避けて誰か1人とかになるとかもあるので9つ無くてもそれはまあねとは思うけど、やっぱり9つあって欲しいなとは思います。

それはそれとしまして全部並べて鑑賞。

『・ 消費者物価上昇率は、既往の輸入価格上昇の転嫁により、当面は2%を超えて推移するものの、価格転嫁が一巡する中で、今年度半ばにかけて2%を下回るとみている。』

はいはい大本営大本営。

『・ マクロ的な需給ギャップが改善し、予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、2%の「物価安定の目標」に近づいていくとみているが、時間はかかるほか、先行きの不確実性も大きい。』

「「物価安定の目標」に近づいていく」って辺り、大本営よりもやや威勢が良いけど時間が掛かるとかそういうのはまあホンマカイナとアタクシ個人的には思いますが、まあこれ自体は一般的にもそういう認識だからそんなに変な話でもないですわな。

『・ 消費者物価の今後の展望について、家計の節約志向の高まりや低調な実質賃金などから、先行き、2%をかなり下回る水準まで低下し、そのまま2%に戻らなくなるというシナリオにも注意しておく必要がある。』

まあそういう考えも一理あるけど、最初の最初の時点で賃金が起点になって物価が上がる訳ないんだから、それ言い出したらどうやって物価目標達成するんだよとは思いますけどまあこれはこれで一つの見解。

『・ 消費者物価は、既往の資源・原材料価格上昇がタイムラグを伴って転嫁される動きが継続していることに加えて、人手不足による人件費上昇や海外のインフレの影響もあって、当面、上昇を続けると考えられる。』

あらお強い。

『・ 企業による販売価格引き上げの背景は、原材料価格の転嫁から、輸送費や電気代、さらには人件費の転嫁へと広がりをみせている。』

こりゃまたお強い。

『・ 先行きの物価について、財価格は、輸入物価が低下していることを受けて今年度半ば以降伸び率が低下するとみている。一方、サービス価格は、賃金上昇などを背景に今後伸び率が高まる可能性がある。』

あーらお強い。

『・ ベアによる恒常的な所得上昇は、コスト・プッシュ要因に比べて消費者物価をより持続的に押し上げるほか、一時的な所得上昇に比べて消費性向の押し上げ効果が高いため、賃金と物価の持続的な好循環に繋がりやすい。』

なんということでしょう、こんな強いご意見がありますわ心強いですわお嬢様。

『・ 想定以上のベアが実現したのは、労働市場の流動化の進展や人手不足の影響もさることながら、昨年来の海外発の大幅な価格ショックを背景に、企業の物価や賃金に対する「ノルム」の転換に向けた動きがみられていることが大きい。』

まあ!ノルムの転換ですってよ!!!!なんて威勢の良いお話なんでしょう!!!!!!!!!!!!!


・・・・・・・ということでご意見が8本出ているのですが、どこからどう見てもエライ威勢の良いご意見がズラズラと並んでいるのに、何で2023年度平均(年度末値じゃないよ平均値だよ)のコアCPIの見通しの中央値が前回1月の+1.6%から今回+1.8%にしか上昇しないのか、ちょっとドテカボチャのカボチャ頭を叩き割って中身を見てみたくなりますわな。

いやあのですね、1月の時の+1.6%も大概に低いだろというのは衆目の一致するところでしたが、まだあの時点では「物価上昇に追いつく賃金引き上げの動きが広範になるかどうかの見極めができない」という偉大な言い訳があったんですが、4月展望の時点では既に賃金動向は見えていた訳で、主な意見でも上記のように賃金の広範な上昇に対する指摘があるし、大体からして1月展望の時と比べて物価どんだけ強くなってますねんという話でしたわな。

でもってですね、+1.8%とかいう見通しならそれに沿った「主な意見」が出て来るならまだコミュニケーションとして整合性というのものがあって、その後上方修正になったら「いやあの時はまだ弱いと思っていましたテヘペロ」というコミュニケーションになるんですが、「主な意見」の方では物価に対してエライ威勢の良い意見がズラズラと出てて、これで7月に上方修正した時に「私言いましたよね」をするためにこういうの出してるんだったらもうコミュニケーション無茶苦茶だし、そもそも論として元々のこれらのコミュニケーションツールの建付けと違う事やってないか、とそっちの方でもトサカに来るわけですよ(物価に関する今回の「主な意見」はなんかやっとまともな会話を見たわ、とは思いましたが)、

一昨日ネタにしましたように、本来内容がそんなに変わる筈の無い3月の「主な意見」と3月会合「議事要旨」の雇用所得情勢に関する議論部分のトーンが全然違う、というのが初手なんですが、今回の主な意見と展望レポートの物価見通しの中央値の間にあるこの違和感に関しましても、いやお前同じ会合から出てきているプロダクトなのに何でこんなに内容に差が出て来るんだよという話でして、黒ちゃん時代の忖度ムーブとは違った宦官ムーブとでも申しましょうか、本来の建付けをなんか壊してないかというコミュニケーションが起きているような懸念がありまして(思いっきり個人の感想なので杞憂であることを期待していますけど)、大丈夫かよ植田日銀のコミュニケーションは、と思うのでありました。


ああくり返しになりますが、この(物価)のパートだけは意見らしい意見(個人的に賛同するものもそうでないものもいずれも話としての筋は通っている一つの意見として)が並んでるなあ、とホッとしたのですけど・・・・・・・・



・賃金の話のゴールポストが遂に「構造問題」になってしまっている件について

その前の部分の『(経済情勢)』なんですけどね。

『・ わが国経済は、既往の資源高の影響などを受けつつも、持ち直している。先行きは、ペントアップ需要の顕在化や高めの賃金上昇等が消費を下支えすることが期待される。また、積極的な設備投資の継続も見込まれる。わが国経済の先行きにとっては、こうした動きがどれだけ強くみられるかが重要である。』

『・ 国内経済は全体として底堅く推移している。企業の設備投資意欲は維持されているが、足もと個人消費は低めの伸びとなっている。この背景には、労働力不足によるボトルネックも影響していると考えられる。』

『・ 先行きのわが国経済について、海外経済の減速の影響を注視している。特に、米国における金融引き締めなどの影響および、中国における雇用・所得環境や不動産市場における調整の可能性などに注目している。』

最初の3本はまあそれぞれ意見として言わんとすることは分かりますし、普通の話をしているんですけど、その次の辺りから様子が怪しくなってきましてですね、

『・企業の構造改革が進み、家計の将来への期待が高まれば、コロナ下で高まった貯蓄率は平時に戻り、個人消費の持続的な押し上げが期待される。』

き、きぎょうのこうぞうかいかく??????

と言ってる割にはコロナ下で高まった貯蓄率が元に戻るとかエライショートタームの話をしていて、イマイチこの「企業の構造改革が進み」の意味が分からないのですが、ただ言ってることが「構造改革」という辺りにキナ臭さを感じましたらその次がこれまたドイヒー。

『・ 足もと、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁や、企業による賃上げの進展がみられるものの、これが物価・賃金・需要の間の持続的な好循環に繋がっていくためには、転職市場のさらなる活発化、企業の事業改善・再編・ビジネスモデルの転換をはじめとして、経済に幅広い構造的な変化が生まれていくことが重要である。』

・・・・・・遂に金融政策を変えない言い訳に構造問題まで持ち出してきましたが、こんなこと言ってたら一生異次元緩和が正常化できないんですけど頭大丈夫ですか???????

で、その後賃金では二つコメントがあってこの二つはまあ普通の見解なんですけど、

『・ 春季労使交渉は好調であるが、問題は来年以降も定着していくかどうかであり、物価対比で十分な賃金上昇が続くか、それが個人消費を支えていけるか、注視していきたい。』

『・ 人手不足が強まる中、来年も高い賃上げが期待できる。』

しらっと強い意見もありますね、と思いながら見ますがこれまた最後の意見が凄くて、

『・今年の賃上げ率には一時的な増加という面もあるとみられる。原材料高への対応として、価格転嫁が有力な選択肢として加わりつつあるが、物価上昇に負けない賃上げを持続するためには、長年の課題である事業・賃金構造の改革による企業の国際競争力と稼ぐ力の強化が必要であり、労働市場改革への企業の対応や構造改革の動向に注目している。』

もともと何が何でも2%達成!だったしハマコー大先生なんぞは「実質賃金が下がることによって雇用の総数が増えるのが重要」とか言ってたのが置物と黒田の理論でしたわな。

それがまあ賃上げが重要になる、になったのですが、賃上げが重要→継続的な賃上げが重要→構造改革が重要、とドンドンゴールポストを動かしてしまいまして、しかも3月会合の主な意見の「経済情勢」のパートでは賃金上昇に構造改革が必要、みたいな話をしているの(大昔からそればっかり言ってる人が1名いて多分マリーアントワネット中村さんだと思うのですが、まあその人と思われる)コレしか無かったのよね。

3月会合主な意見
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230310.pdf

『・持続的な賃上げの実現には、従業員のエンゲージメントを高めるような職務に応じた賃金カーブへの改革や、コア事業を強化するポートフォリオ改革、労働の高付加価値化や高生産性事業への労働力のシフトが重要であり、まずは労使交渉による賃金構造の変化に注目している。また、中小企業の賃上げ率向上には、適正な価格転嫁と持続的な付加価値向上が重要である。』(3月会合主な意見で唯一あった「継続的な賃上げに構造改革」の意見)

まあ3月まではこの人くらいしか構造改革みたいな話をしている人がいなかったんですが、高めの賃金上昇が実現したのが確認できた途端に「継続的な賃金の上昇には構造改革が必要」とか言い出すのって明らかにこれゴールポストに弾が飛んできたからゴールポスト動かしだしているムーブな訳でして、お前らふざけるなとしか申し上げようがないお話になっている訳ですよ、何なのこいつら。



・遂に堂々の日銀法抵触疑惑の意見まで出て来るとは思いませんでした

さらにひどいのが『U.金融政策運営に関する意見』にありまして、ワイも血圧上昇不可避。、

『・ 先行きの物価上昇率の低下が見込まれ、海外経済の不確実性の高まりもみられる中では、現在の金融緩和を継続すべきである。』

まあワイはそうは思わないけどこれはこれで一つの見識。

『・ 2%の「物価安定の目標」の持続的達成のためには、賃金上昇を伴う形で実現する必要がある。今年の春季労使交渉では想定以上の賃上げが進む見通しであるが、名目賃金上昇率が物価対比でみて十分に高まるよう、金融緩和を通じて賃上げのモメンタムをしっかりと支え続けることが必要である。』

「金融緩和を通じて賃上げのモメンタムをしっかりと支え続けることが必要」って遂にお前ら賃金上昇率ターゲット政策おっぱじめたの??馬鹿なの????と思いましたが、そんなチャチな話をぶっ飛ばすのが次の意見、と言いたい所ですが比較対象とするために次の次の意見を先に引用してから参りますね。

『・高い物価上昇率が続く可能性にも当面注意していく必要があるが、2%をかなり下回ったまま戻らなくなるシナリオの方が、中期的にはより重要と思われる。効果と副作用の両面に目配りしつつ、粘り強く金融緩和を続けていくべきである。』

確かに「2%を”かなり”下回ったまま戻らなくなる」と言われますと、そらまあ0%近傍になったまま戻らなくなるのも望ましくないとかそういわれてしまいますし、「効果と副作用の両面に目配り」とか、お話はバランス取っていますし、金融緩和とは言ってるけど別に今の枠組みのままかというとそこも敢えて触れていないので、まあ別にこれはこれで一つの見識だと思うんですよね。ところがその1つ前にあるこの意見。

『・物価見通しは幾分上振れているが、「2%を超えるインフレ率が持続してしまうリスク」より、「拙速な金融緩和の修正によって2%実現の機会を逸してしまうリスク」の方がずっと大きい。』

・・・・・・・・・これは酷い。

引き締め、とかいうなら兎も角金融緩和の修正まで否定しているのナンジャコリャという感じですし、「2%実現の機会を逸してしまう」と言ってじゃあ今の展望の見通し(では定義上2%達成していないことになりますよね)のように向こう3年間平均で1.5%以上物価上昇率が継続する場合でも、「2%達成は実現できていない」という話になっているようですが、それに対して4%だのなんだのという物価上昇率が継続する場合とを比較して、どちらが国民厚生的に適切な状態なのか、という考察が一切なく、完全にこの人の意見って「2%目標が至上であり国民厚生は二の次」理論になっていますわなということで、まずは日銀法を写経してその後読経して出直してこいとしか申し上げようがないですよね。だって「2%に届かない程度の物価上昇の方がインフレが上振れて持続的に推移するよりもリスクが大きい」って認識で政策運営をしようとしてるんですから、これって完全に手段と目的を取り違えた議論。

いやまあ何ですかね、「拙速な金融緩和の修正」とか若田部前副総裁が言いそうなフレーズなんで、もしかしたら政策委員会の誰かが若田部さんの跡目を襲名したのか、若田部さんの生霊が誰かに乗り移ったのかもしれないとは思われますが、誰なんでしょうねこの不見識見解。

つーかですよ、この人のこの理屈だと、物価の上振れが続いて国民から怨嗟の声が出まくるって政治からケツを叩かれるまで日銀は何もしませんもんねー宣言をしているのに等しい訳でして、普通にこんなの日銀の役割放棄で、こんなの罷免(できないけど)相当じゃんと思いました。どうなってるんだよ植田日銀。


あとですね、これも何だよと思ったんですけど、5つほど飛ばしました先にある意見でしてね。

『・超低金利が経済主体の行動様式に組み込まれている状況下、金利の急変動は避ける必要があり、物価や賃金の動向を謙虚に見つめ、早すぎず遅すぎず対応することが必要である。』

「物価や賃金の動向を謙虚に見つめ、早すぎず遅すぎず対応することが必要である」というのは分かるんだが、「超低金利が経済主体の行動様式に組み込まれている状況下、金利の急変動は避ける必要があり」って発想はあんまり宜しくなくて、必要ならやることはやる、ってしないと「急変動を避けよう」となってビハインドが更にビハインドになる方がよほど問題になるので、「急変動を避けたい」というのは発想として筋は悪いと思うんだよな。

だいたいからして「急変動は避けるべき」ってのそらまあ政策当局が必要もないのに殊更に急変動を作る必要はないけど、そもそもが市場経済のダイナミズムの中で変動というのは怒り得るもんなのでありますから、あまりそういう発想をしていると経済の活力を殺すことにならなかね、とも思ったりします。


それから上記の次の次にある意見。

『・足もと、イールドカーブの歪みの解消が進んでおり、イールドカーブ・コントロールの運用を見直す必要はないと考える。』

これは3月議事要旨のネタの時も同じような意見があったのでその時の悪態の繰り返しになるのですが、物価目標の達成が見えてきたらYCCの長期金利ターゲット政策は必ず市場のゆがみを招くものなので、寧ろ解消が進んでいる時じゃないと運用の見直しが出来ない、というのを相変わらず理解できないアホウがおるようで、いや何ちゅうか政策委員会って馬鹿の見本市なのか(一部例外はある模様だが)と思ってしまうこの主な意見。


・・・・・とまあ悪態ばっかり言ってても何なのでその次に掃き溜めに鶴と申しますか地獄で仏と申しますかな意見があるのでご紹介しましょう。

『・国債金利の指標金利としての機能度など、市場機能は、依然低いままとの声が多い。イールドカーブ・コントロールは、円滑な金融を阻害している面も大きいと感じており、今後の債券市場サーベイ結果に注目している。』

イイシテキダナーということで、おまいら次の債券市場サーベイ頑張れ(何を??)よと。


あと、レビューに関してのこの意見は思いっきり茶を吹いてしまいましたです面白かったです。

『・今後も効果的に金融緩和を継続していくうえでもレビューは有益であるが、客観的で納得性のあるものとするため、特定の政策変更を念頭に置かずに、多角的に行うべきである。』

>客観的で納得性のあるものとするため、特定の政策変更を念頭に置かずに

ちょwwwwwwwwwwwwおまwwwwwwwwwwwwww

これじゃあまるで今までの「検証」が主観的で納得性が無い上に特定の政策変更(または政策維持)を念頭に置いて実施してたみたいじゃないですかワロリンチョwwwwwwwwwwwwwwwwww

ということででこの意見ですが、最初アタクシが見た瞬間は、この意見って天然で出てて「黒田雨宮時代の検証が出来レース検証だったというのを天然でゲロったもの」かと思ったのですが、冷静に考えて見るとこれはいわゆる一つのぶぶ漬け話法で黒田雨宮の検証は出来レースだったと当てこすっているのではないか、ということに気が付いて更にクソ笑いました。


とまあそんな感じで。



〇これはまたエライモンに気が付きましたなさすがは海外メディア

ブルームバーグの英語ニュース(なんかジャパンタイムスにもあった気がしますけど)でこんなのが。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-05-11/ueda-s-boj-subtly-changes-english-translation-in-new-era-signal
Ueda’s BOJ Subtly Changes English Translation in New Era Signal
BOJ is now ‘patiently’ easing instead of ‘persistently’ easing Change signals Ueda’s intent to communicate with global market
ByToru Fujioka
2023年5月11日 11:38 JST

こちらなんですけど、普通に見に行くとちょっとすると画面の下の方に

『Create an account and unlock 1 bonus article.

Register to read more on Bloomberg.com』

ということで、そもそもブルームバーグプロフェッショナルとかそういうのの人じゃない場合は多分登録して1記事しか見れないっぽい(試してないから知らん)のですが、一応最初の部分だけはサブスクライブナウをしなくてもテキスト引用可能ですわな。

『The Bank of Japan has adopted a new word in English to describe its stance of continuing with large-scale monetary easing, adding to the list of changes the bank has made since Governor Kazuo Ueda took the helm.

At Ueda’s first policy meeting last month, board members discussed “patiently” maintaining easing, according to a summary of opinions released by the central bank Thursday.』(上記URL先記事より、以下の部分は会員限定記事)

でまあネット版は会員記事になりますので(ブルームバーグの英文版の方ではこのプレイが存在するのですよね)記事内容の詳しいご紹介は避けますが、要するに主な意見の英文版、

https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230428.pdf
Summary of Opinions at the Monetary Policy Meeting1,2
on April 27 and 28, 2023



https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230310.pdf
Summary of Opinions at the Monetary Policy Meeting1,2
on March 9 and 10, 2023

の中で言及されている「金融緩和を粘り強く継続すべき」に対する英訳において、その粘り強くだのなんだのという辺りの形容詞が、3月だと

『・ 経済・物価見通しを踏まえると、「物価安定の目標」の達成まで金融緩和を粘り強く続けることが必要である。』

『・ Given the outlook for economic activity and prices, the Bank needs to persistently continue with monetary easing toward achieving the price stability target.』(3月会合主な意見の日本語と英語より)

とかいう風になっているのですが、4月の主な意見の場合、おなじ「粘り強く」の訳語が

『・感染症の影響は低下したとはいえ、内外経済や金融市場を巡る不確実性はきわめて高く、「粘り強く緩和を続ける」、「必要に応じて追加緩和措置を講じる」という姿勢は不変であると強調すべきである。』

『・ Although the impact of COVID-19 has lessened, there are extremely high uncertainties surrounding economies and financial markets at home and abroad. The Bank should emphasize that there is no change in its stance of patiently continuing with monetary easing and taking additional easing measures if necessary.』(4月会合主な意見の日本語と英語より)

ということで、あら不思議、日本語の「粘り強く」の訳語が「persistently」から「patiently」になっていまして、英語の単語のニュアンスとしてこれだいぶニュアンス違うんだがどういう事やねんという話と共に、過去日銀の政策委員スタッフをやっておられて今は民間エコノミストになってらっしゃる有識者のコメントでこの意味するところは何でしょうかという解説なんかもあったりするという記事になっておられます(ほらほら読みたくなって来たでしょ〜、と言っても別に回し者ではありませんけど人のフンドシをネタにしてるからそこはもう宣伝しないとね!)。


恐らくですね、この背景には声明文英語版の

https://www.boj.or.jp/en/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230428a.pdf
4月声明文英語版

のガイダンスの英文(これまた悪文)

『2. With extremely high uncertainties surrounding economies and financial markets at home and abroad, the Bank will patiently continue with monetary easing while nimbly responding to developments in economic activity and prices as well as financial conditions. By doing so, it will aim to achieve the price stability target of 2 percent in a sustainable and stable manner, accompanied by wage increases.

The Bank will continue with Quantitative and Qualitative Monetary Easing (QQE) with Yield Curve Control, aiming to achieve the price stability target, as long as it is necessary for maintaining that target in a stable manner. It will continue expanding the monetary base until the year-on-year rate of increase in the observed consumer price index (CPI, all items less fresh food) exceeds 2 percent and stays above the target in a stable manner. The Bank will continue to maintain stability of financing, mainly of firms, and financial markets, and will not hesitate to take additional easing measures if necessary.』

のガイダンス前段部分、「the Bank will patiently continue」を受けてのもの(3月までのガイダンスには粘り強く緩和というのは無かったのでそもそも対応する言葉が無い)だとは思うのですが、確かにこれはなんですのん、というお話でございまして、何ちゅうかやっぱり植田日銀のコミュニケーションはおかしいというか複雑骨折のひどさが目に余る、という感じでして、いやー初手でこれだけやらかすと後大変だそとは思います。

まあ全てがYCCの長期ターゲット早期解除を気取られないための偽装工作である、という期待だけは捨てないで生きていくので、これも偽装工作の一環で話が無茶苦茶になっているだけ、という風に信じたいですけどね。





2023/05/11

お題「しつこく3月会合議事要旨ネタをほりほりします(その2)」

https://www.asahi.com/articles/ASR5B5SNNR5BUTIL030.html
「教員になったら奨学金の返済免除」政府に提言へ 自民特命委
久永隆一 高浜行人2023年5月10日 17時47分

『自民党の「令和の教育人材確保に関する特命委員会」は10日、教員として一定期間勤務した場合、大学などに在学中に借りた奨学金の返済を免除・軽減する仕組みの創設などを盛り込んだ提言案をまとめた。』(上記URL先より、以下同様)

あれ??ワイが高校生の時(当然ながら昭和時代である)の先生で「奨学金の返済免除の為までの期間は先生をやってその後はまた別の仕事するぞー」って言ってた先生が(ちなその先生は文学部出身で良い先生でした)いた筈なんだが、と思ったら、

『奨学金の返済免除を巡っては、旧日本育英会(現・日本学生支援機構)が奨学金事業を実施していた時代に、教育や研究の職に携わる人を対象とした同様の返済免除制度があったが、廃止されている。』

とあっていつの間にか廃止されてたんだという事を今更知りました(無知)どこの馬鹿だよこの制度廃止したのは・・・・・・・・・・

まあしかし公教育充実させたいならこの際奨学金減免とかよりもレベルアップして師範学校の復活をだな(極論)。


〇3月議事要旨ネタの続きで恐縮ですが

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2023/g230310.pdf
政策委員会金融政策決定会合議事要旨
(2023年3月9、10日開催分)

(ご参考)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230310.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2023 年 3 月 9、10 日開催分)

『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の頭で時間切れになったのでその続きを。


・わざわざ後付け感を出すような細工をしたのはこれは「察しろ」という意味なのでしょうか

昨日はこの部分で時間切れの巻になったのですが(汗)、

『以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。』

『先行きの金融政策運営の基本的な考え方について、委員は、経済・物価情勢を踏まえると、現行の金融緩和を継続することにより、賃金の上昇を伴う形で「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成することが重要であるとの見解で一致した。』

というのの次の部分について能書きを述べましたが、もう一度昨日ここ読んでいて何かが引っ掛かったんでちょっと確認してみたんですよ、ウルトラクソどうでもよいのかもしれませんけど。

えーっとですね、何に引っ掛かったかというとこの「賃金の上昇を伴う形で」の表現でして、なんかどこかに引っ掛かるものがある、と思って過去の議事要旨を確認しますと、そもそもこの賃金の上昇を伴う云々、というのは10月会合議事要旨(なので12月会合で内容について承認されたもの)になるんですけど・・・・・・・・・・

10月議事要旨
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2022/g221028.pdf
本文16ページ

『委員は、先行きの金融政策運営の基本的な考え方について議論を行った。委員は、現行の金融緩和を継続することにより、賃金の上昇を伴うかたちで「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成することが重要であるとの見解で一致した。』(10月会合議事要旨)


12月議事要旨
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2022/g221220.pdf
本文11ページ

『委員は、先行きの金融政策運営の基本的な考え方について議論を行った。委員は、現行の金融緩和を継続することにより、賃金の上昇を伴うかたちで「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成することが重要であるとの見解で一致した。』(12月会合議事要旨)

1月議事要旨
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2023/g230118.pdf
本文17ページ

『先行きの金融政策運営の基本的な考え方について、委員は、経済・物価情勢を踏まえると、イールドカーブ・コントロールの運用も含め、現行の金融緩和を継続することにより、賃金の上昇を伴うかたちで「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成することが重要であるとの見解で一致した。』(1月会合議事要旨)

とまあこうなっていまして、従来はこれ『賃金の上昇を伴う「かたち」で』だったのですが、今回いきなり表記が漢字表記になったんですね。

これ実際の正本はPDF形式のものが紙になっているとかそういう体裁だと思うので、出来上がりのデザイン上改行位置を調整するとかで漢字とひらがな表記を変化させる、というような事はあると思いますが、本件に関しては常にひらがな表記だったものが漢字表記に3月議事要旨で突如変化しております。

そこで思い出すのが4月会合声明文な訳でして、
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230428a.pdf
4月会合声明文

例のガイダンス文言の部分って、

『日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(4月声明文項番2より)

となっていまして、これ声明文の表記が「賃金の上昇を伴う形で」になったもんだから、議事要旨の方も直しやがった(議事要旨は4月決定会合での承認事項になるので声明文の表記に併せに行くというプレイ)んじゃなかろうか、とまあこういうハイパー重箱の隅なんですが、昨日ネタにしましたように、そもそも論として今回公表された3月議事要旨の『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要 』における「雇用・所得環境」の議論部分が主な意見とまるでトーンが違う、という辺りも併せて考えますと、なんかしょうもない小細工の香りがプンプンと漂ってくる次第なのであります。

いやね、4月の議事要旨で4月声明文と表記を揃えるのは全く不思議じゃないのですけど、3月の議事要旨の時点で4月声明文のフォワードガイダンスの表記にそろえてきている、って明らかにアレがソレじゃないですか、と思う次第ですが、もちろん日銀の中の方々におかれましては超優秀な皆様でございますので、そういうのは当然ながら先刻ご承知の介だと思うんですよね。そう考えますと、この「3月会合の議事要旨なのに何故か4月声明文を先取りした表記変更が行われている」というのは何らかのメッセージ性を感じざるを得ません次第でございまして(かなり妄想が入っているのではないかというツッコミは甘んじて受けます)、そのメッセージとは何ぞやというと、昨日ネタにした「雇用所得環境が実はクッソ明るいんですよ」というメッセージでありまして、雇用所得がクッソ強いというのは正しく今のフォワードガイダンスのど真ん中の話でありますので後はお察し、というメッセージをこっそり入れたんじゃネーノとかまあ思ってしまいました。


・・・・・・・漢字とひらがなの変化でこれだけ妄想するというのもかなり強引と言われてしまうとぐうの音も出ないのでありますが(滝汗)、まあ何か物凄く引っ掛かったのでクッソしょうもない考察(妄想)をしてしまいましたということです。


・昨日ネタにした部分の後は実は「主な意見」のオンパレードになります

ということで朝っぱらからワイの考察(妄想寄り)にお付き合いいただいて誠に恐縮ですが、昨日も申し上げましたがその次の、

『複数の委員は、「物価安定の目標」の実現に向けて良い兆しがみられるなど、環境は変化しつつあるとの見方を示した。この点に関し、一人の委員は、2%の「物価安定の目標」と整合的な物価と賃金の好循環が始まったと考えるにはまだ距離があると述べた。』

最初の複数の委員の話って複数出てた感じのような威勢のよさは主な意見では感じられませんでしたが、その次のとかもまあそれっぽい意見があって、以下延々と続くいろんな意見は、基本的に「主な意見」と一対一対応みたいな感じで「これがこれ」みたいな紐付けが可能になっています。

引用しようかと思いましたが引用するまでもないので割愛して次に行きますと、


・まあこの時点では3月10日でしたからYCCの話が多くなるのはやむを得ず

『長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節上の様々な工夫により、金融市場調節方針に沿って、長期金利はゼロ%程度で推移しているとの認識を共有した。』

というお話になっております。以下ああでもないこうでもないと話があるのですが、ふと素朴な疑問なのですが、0%程度の場合は±0.5%だというのに何で消費者物価指数の2025年度+1.6%は2%程度にならないのでしょうか、いやどうでもいいですけど。

『何人かの委員は、現在は、市場機能改善のために講じてきた様々な措置の効果を見極める段階であると述べた。』

とにもかくにも今回の一連のアレで酷かったのはこの理屈で、市場対応でレンジ拡大したの12月な訳で、それ以降3月10日会合まで2カ月半ほどやっている訳ですよ。それこそ何とかショックの時の市場対応措置で2カ月もの間「各種の効果を見極める段階」とか寝言を言ってたらその間に爆発大炎上待ったなしな訳でして、そらもちろん今般のと何とかショックを一緒くたにする必要もないんですけど、それにしても延々と「現在は効果を見極める段階」地蔵を繰り返すっていうのはさすがに如何なものかと思いました。

『複数の委員は、イールドカーブの形状をみると、歪みは引き続き観察されているものの、共通担保資金供給オペや国債補完供給の運用面の工夫などもあって、ひと頃に比べれば総じてスムーズとなっているとの認識を示した。』

?????

『また、ある委員は、一部のカレント銘柄を含むイールドカーブの歪みに言及し、市場機能に配慮した調節運営の重要性を指摘したうえで、今後、利回りが円滑に形成されていくかどうかを含め、市場の動向については注視していく必要があるとの見解を示した。』

まあ無茶苦茶な腕力プレイと海外金融機関あばばばばーに伴う神風によって「円滑化」はできましたが。


・・・・・でもってクソワロタのはこの部分、といってもこれ主な意見でもあったんで事実上の再掲ですが。

『一人の委員は、イールドカーブ・コントロールの運用見直しの市場機能への効果を見極めるにはまだ時間が必要であるが、消費者物価上昇率が実際に低下し、それを受けて市場の金利見通しが落ち着いてくれば、イールドカーブの歪みも是正されていくとの見方を示した。』

ちょwwwwおまwwwwwwwww

えーっとすいません、物価安定目標達成のためにYCCやってるんであって、その物価安定目標が達成されるような状況になればYCC解除待ったなしなんだから、そうなったらその時点でのファンメタに沿ってイールドカーブが形成される筈で、長期金利ターゲットの水準がそれに対してクソ低いんだから、ターゲット部分とそれ以外のイールドカーブに歪みが出るの当たり前田のクラッカーなんですけど。

なぜかこのおじさん(だかおばさんだか知らんけど)「物価上昇率が下がってきたらイールドカーブの歪みが是正されてくる」っていやそれ本末転倒にも程がある議論で、寧ろ物価情勢が物価目標達成に向かって確信度を高める段階ではカーブが歪むの当たり前なんだから、「カーブの歪みが是正されていく」のってそれ逆に望ましくない方向なんだぞ、と小一時間問い詰めたい訳です。

まあ何ですな、その位あの時点(寧ろ1月の時の方がもっとだったかな〜ってところですが)では金利上昇に対して頭に血が上っておられた、ということを意味するな、と1名の意見とは言え思いましたし、そらまあ頭に血が上っていたからこそあんな悪徳高利貸しも裸足で逃げ出すSLFの運営変更というか最早ただのターゲット殺戮祭りになったんですねー、と改めて認識するのでありました。

以下はサラサラと。

『そのうえで、多くの委員は、イールドカーブの長期ゾーンにおいて市場機能が低下した状態が続いているほか、社債市場では、発行スプレッドの拡大は一服しているものの、国債市場の機能度の低下の影響は残っており、引き続き注視が必要であるとの認識を共有した。』

『複数の委員は、ベースレートである国債金利に歪みがみられると、社債の発行時や購入時における利回りの目線が定まりにくくなると指摘した。この点について、ある委員は、イールドカーブの歪みは十分に是正されたとは言い難いものの、現時点では、企業金融面への影響は限定的であるとの見方を示した。この間、一人の委員は、今後のマーケットの状況、経済、物価や賃金の動向を、謙虚かつ真摯にみていき、必要な場合には、社債市場やスワップ市場を含めた市場機能の改善を図り、金融緩和の効果が実体経済に持続的・効果的に伝わるようにすることが必要であると述べた。』

最後のやつ、社債市場やスワップ市場を含めた市場機能の改善を図り、っておんどれが介入するから市場機能がおかしくなるのであって、介入やめればいいんですよ。短期金利だけ決めてりゃいいんですよ、と思いました。


・ではなぜ声明文のガイダンスに賃金が言及されたのかと小一時間問い詰めたい

まあ令和臨調とか色々とありましたんで次のコーナーが、

『また、委員は、2%の「物価安定の目標」についてコメントした。』

なんですけど、こういう指摘があったんですよねー。

『また、ある委員は、物価上昇率ではなく賃金上昇率を目標にすべきという意見が聞かれることがあると指摘したうえで、実質賃金は、中長期的には、金融政策ではコントロールできない労働生産性の伸びによって決定されるため、金融政策の目標とするのは難しいのではないか、との見解を示した。』

というのがあってその次に・・・・・・・・


・唐突に出て来る「高い物価と高い賃金」話

『この点に関連して、ある委員は、賃金上昇率と物価上昇率がそれぞれプラスで安定的に保たれれば、その伸び率は高い水準でも良いのかという問題提起を行った。』

この部分が唐突過ぎて意味が分からなかったです。大体からして「物価2%に届きませんが」って話をしていることになっている訳で、これじゃあ物価が2%超えて推移している時のような議論だと思うんですけど、
これは何の判じ物なのかがさっぱり意味不明。

『これに対し、複数の委員は、一般に物価上昇率が高いと、その変動も大きくなるというのが歴史的な経験であると指摘したうえで、物価の変動を意識せずに企業や人々が経済行動を行えるような安定的な基盤を提供するという物価安定の理念を踏まえると、賃金上昇率と物価上昇率が安定的に保たれれば伸び率が高くても良い、ということにはならないのではないか、との見方を示した。 』

だったら足もとの物価もダメじゃんという話になるような気がするんだが、この話の脈絡が良く分からなかったですね。何か怪しい。









2023/05/10

お題「総裁定例記者会見(その3)/主な意見と仕上がりのトーンが違うとしか思えない3月会合議事要旨」

ほうほうそうですかそうですか。
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-leaders-poll-idJPKBN2X01I5
2023年5月10日2:56 午前
パウエルFRB議長への国民の信頼度、歴代最低水準に=世論調査

『[9日 ロイター] - 調査会社ギャラップが9日に発表した世論調査によると、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の政策対応に対する米国民の信頼度は、歴代FRB議長の中で最低に落ち込んだ。この調査は、4月3日─25日に米国の成人1013人を対象に行われた。誤差はプラスマイナス4%ポイント。

パウエル氏に「大いに」または「まずまずの」信頼を寄せているとの回答は36%にとどまり、グリーンスパン氏がFRB議長だった2001年にギャラップが年次調査を開始して以来、最も低い数値となった。』(上記URL先より)

ナムナム・・・・・・・・・


〇しつこく植田総裁定例記者会見(その3)

すいませんすいません。
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230501a.pdf
総裁記者会見
――2023年4月28日(金)午後3時30分から約60分

・結局7月10月の展望レポートで上方修正したら話は全部違ってくるということなんですよねこれ

ヘッドラインにもなってた質疑(7ページ)になりますが。

『(問)物価見通しについて、一点お願いします。先ほど総裁は、今後物価の方が少し下がっていって、また上がっていくかどうか、そこの確度というところが担保できないってお話がありました。どうしても物価が上がってくる際には、賃上げといったものが重要になってくると思うのですけれども、そうなると例えば来年の春闘とかそういったものを重視して今後やっぱり考えなきゃいけない、ある程度の期間、見極めには時間が必要だとお考えでしょうか。』

この質問はロジカルに詰めて行ってるので良い質問である。

『(答)来年の春闘は、おっしゃったように非常に重要な要素かと思います。ただ、厳密にそこまで待たないと判断ができないかということでは必ずしもないと思います。例えば、来年の春闘のベースとして今年の物価動向が一つ影響するでしょうし、今年の企業収益も影響するというふうに考えられます。』

その通りなんだが、だったら今年の春闘のベースだってそれまでの物価動向とか企業収益も影響してるんじゃなかろうかという話になりまして、ひたすら「おちんぎんがー」と言い続けて判断を拒否していた黒田日銀とは何だったのかという議論になるのですがそれはさておきまして、

『そういう来年の賃上げの程度につながるような今年のいろいろな経済変数の動きをみていく中で、これは大丈夫だというふうに思って、持続的に 2%が達成されそうだという判断に至るケースも十分あり、可能性としてはあり得るというふうに考えてございます。』

とまあこんな感じでしれっと「今はこう思っているので絶賛現状維持バイアスですが、先の事はその時の状況に応じて変わり得ますよ見通し対比上振れたら」という話はバンバンとぶち込んでいるのですが、その間に現状維持バイアス発言もバンバン入れて中和する、ということで、時間軸を変えて現状維持の話と先行き状況が変化したら別だよんという話を混ぜてるから話がややこしくなる。

しかも、皆様ご案内のように物価見通しに関しては2023年度平均のコアCPIが+1.8%とかいうウソのように低い数字を出している訳で、これが7月→10月と進むにつれて上方修正待ったなし(足元で食品をはじめとして価格転嫁の動きがまだ延々と続いている状況を考えたら)という物件を出しているのであります。

つまり、植田大先生はチキンとかそういうことで単にやる気が無くて初手から5年間逃げ切り狙ってるとか途中で伝家の宝刀体調不良を持ち出すとかいうのかも知れませんけど、そうじゃないと信じたいという思いを込めて予想しますと(なのでバイアスあるよヨロシク)、こうやって「今はこうなのでバリバリの現状維持バイアス(ここから小声になる)だけど将来の状況が上振れたらその時はその時」という今回の説明は、どっからどう見ても物価見通し上方修正待ったなしで、黒田時代のアホのように低い忖度宦官ムーブの展望レポートについても(政策と同様に)ソフトランディングさせるための過程という4月展望が7月10月と現実に即したものに戻していく過程、と考えればやっぱり7月展望で政策変更って話になるんだよなー、とポジショントークバリバリの気がしますがそう思いました。

なお、そう思いましたの理由がもう一つ月曜に出ているので後程それを。


・ちょっと感動した質疑(国債市場の市場の厚みが足りないという指摘をする政策委員様が降臨した件)

先に断っておくが植田さんに感動したのではないw

『(問)二点お伺いしたいんですけれども、先ほどからYCCの副作用と効果について注意深くみていかれるということですが、そのYCCについて、植田総裁、この間も、今イールドカーブがスムーズになってっていう発言をおっしゃっていて、やはりそこは副作用というのは世界的に金利上昇圧力が強くなったときに出やすいとは思うんですけど、そのYCCの副作用が顕現化してこない限り、はっきりしてこない限りは、特に前もって、そこについて手当てをする必要はないとお考えなのかどうか、それがまず一点です。(後半割愛)』

これ聞いた時は一瞬何かと思ったけど文章にして読み直すと中々の罠質問ジャンと思いましたが、それこそこの点ってRBAのYCC反省文の中で思いっきり述べられていた「目標達成が視野に入る前に3年金利ターゲットは廃止しておくべきだった」を踏まえての質問ですね。

でまあその質問に感動した訳ではなくて次の植田総裁の回答の中の一か所に感動したのでしてですね・・・・・・・

『(答)前半は、YCCの副作用についてのご質問ですが、おっしゃるように 3 月以降、海外金利の低下に伴う国内金利の基調がやや低下方向に行ったということが、副作用の軽減に役に立ったということは確かかと思います。そのほか、12 月の変動幅の拡大とかSLFの柔軟な運用、こういうこともスムーズなイールドカーブの形成には役に立っているというふうに考えてございます。』

SLFの柔軟な運用って「はいはいお貸出ししますよー」ってホイホイと貸出をしまくった挙句に突如鬼の形相になって「オラオラ返しやがれ返せないなら貸し賃上げるぞペナルティー取るぞ返せないなら腎臓でも売れや(とは言ってないが)」と鬼畜の所業をすることですかしら??????

というのはさて置きまして、

『ただ、それでも、今日も会合でも指摘がありましたけれども、例えば国債市場の厚みのような指標をいろいろみていますと、まだ問題のあるところも残っているということですので、副作用が全くなくなったわけではもちろんないということは前提に、注意深く検討していきたいというふうに思ってございます。(後半割愛)』

>今日も会合でも指摘がありましたけれども、例えば国債市場の厚みのような指標をいろいろみていますと、
>今日も会合でも指摘がありましたけれども、例えば国債市場の厚みのような指標をいろいろみていますと、
>今日も会合でも指摘がありましたけれども、例えば国債市場の厚みのような指標をいろいろみていますと、

・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

感動した!!!!!この指摘の部分ってダイジダイジネーな話なのよ。

つまりですな、空売り征伐で無理矢理こいた上に海外金利が下がったから見た目イールドカーブの形状が綺麗になっただけで市場機能の回復とか言われても困るところで、国債市場はちゃんと投資家の売買執行が捌けるような状況になっていなければ市場が機能しているとは言わない訳でして、イールドカーブは綺麗になりましたが、じゃあ様々な投資家が国債市場で売買を何の制約もなく出来ているかという話ってのはまた別問題だしそっちの方が大事、ということをちゃんと指摘して頂いている政策委員の方がいらっしゃることには落涙を禁じ得ませんでしたので、なんか月曜に全員役立たず呼ばわりしましたが、この問題提起をされた1名だか2名だか存じませんが、そちらの方には役立たず呼ばわりゴメンチャイと謝罪させて頂きとう存じますわ(平伏)。


ええすいません単に感動したというだけで植田さんの説明自体に残念ながら政策インプリケーションは今の時点ではなさそうなのですが(寧ろ副作用論よりも普通に物価見通しベースでの政策変更の可能性が高そうな説明が多いから)、まあこんな質疑がありましたということで、地獄に仏(植田さんではない)とはまさにこの事でありますな。


・ガイダンスの政策金利引き下げバイアス削除問題

これはどこまで行っても蒟蒻問答でしたが、ここにもそこそこツッコミが来てたのは記者の皆様GJである。ちなみに最初に引用するのはさっきの質疑の後半部分です。ちなみに「ガイダンス」で文字列検索すると最初にヒットするのはこの9ページの質疑になります。

『(問)(前半割愛)あと、植田総裁というのは、フォワードガイダンスを考え出された方として知られているわけですけれども、今回、その金利のガイダンスをなくすことによって、なぜそれがより良い判断なのか、金利のガイダンスを残すことによって、更に透明性が確保されるという見方もあるとは思うんですけれども、その点についてお考えをお願いします。』

不肖このアタクシが言うとブーメランになるがこの記者さん持って回った言い方をするから(ワシの頭にブーメランが突き刺さりながら)、文字にするとなるほどと思うけど初見(初聞?)だと聞いててちょっと難しかったです。

『(答)(前半割愛)それから、金利のガイダンス、今日取ってしまったところですけれども、これについては、そのパラグラフといいますか、パラグラフになってなかったかもしれませんが、コロナ感染症に紐付けたという書き方になっていて、最初に申し上げましたように、そこがそろそろ整理していい時期に来ているということで、全体を大まかにはカットさせて頂いたうえで、新たに、一番最初のところに、これまでのような金融緩和を粘り強く続けるという文言を入れまして、その中で読み込むというふうに整理させて頂いたというつもりでございます。』

って誤魔化してるけど、コロナ前だって「政策金利の下方バイアス」のガイダンス文言はあったので、その政策金利下方バイアス取った理由はなんですねんという話なのですけど・・・・・・・・・・

先の方に行きますね。

『(問)(前半割愛)二点目について、フォワードガイダンスで金利のところ、現在またはそれを下回る水準を想定するというガイダンスは今回取り除いたんですが、金利のターゲットを修正してもなお、緩和的な金融環境を維持することは不可能ではないと思うんですけれども、例えば十分な量を出しているですとか、短期金利はしっかり 0[%]に抑えていれば、10 年金利ターゲットがなくても緩和的なのではないかといった説があるんですけれども、この金利のガイダンスがないというのは、すなわち金利を修正する余地が残されているのか、この金利のガイダンスと新しく整理したガイダンスの関係と、それが今後の金利の水準の判断に与える影響について、関係性をお願いします。』

ときましたら、

『(答)(前半割愛)それから、フォワードガイダンスで、金利の水準に関するものが明示的になくなったではないかと。そうすると金利を引き上げるということも、それが金融緩和的な状況にとどまるのであれば含まれるのかというご質問だと思いますけれども、』

と来るからおーどう回答するんだよと思ったら、

『現状では、今出てきました基調的なインフレ動向が、安定的に 2%に達するという見通しが実現するまでは、長短金利のイールドカーブ・コントロールですね、これを続けるというコミットメントをしておりますので、その枠の中でできることをやっていくということになるかと思います。』

「現状では」で逃げた辺りがキナ臭いと言えばキナ臭いし、まあこういう形で現状維持バイアスアピールをするというのも怪しい訳ですよ。さらに金利ガイダンスに関する質疑があって、かなり後の方になりますが、

『(問)政策金利の想定の文言が外れた点についてちょっと再度お伺いしたいんですけれども、整理されたということで、この文言を見比べると、現在の 2%の持続的・安定的実現までというような、あくまで金融緩和について状況に対しての反応、対応ということで、以前の政策金利についてそれを下回る水準で推移することを想定しているというのは状況に紐づかないわけですけれども、この文言を外すことでより柔軟性を確保した、状況に対しての柔軟性を確保したという理解でよろしいんでしょうか。』

より明確に突っ込んできましたがこの回答はですね、

『(答)一応機動的にという文言もございますし、ある種、柔軟性を確保ということではありますけれども、物価安定に向けて粘り強い金融緩和を続けていくという基本姿勢と整合的な意味での機動性を考えているということでございます。』

忍法煙に巻く攻撃で逃げました。

・・・・・・ということで、現状維持バイアスをバリバリと入れながらも微妙だなと思う会見ではあったのですが、この微妙なアレが更にアレになっているのは3月議事要旨の公表を見てですね、ということで次の小見出しに続くのである。


〇3月決定会合議事要旨における雇用所得環境に関する委員の議論パートのトーンが主な意見と明らかに違うんですが・・・・・・・

黒ちゃん最後のお見送り議事要旨(なお副総裁はこの時点ではまだ雨宮若田部)。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2023/g230310.pdf
政策委員会金融政策決定会合議事要旨
(2023年3月9、10日開催分)

これなんですけど、まあヘッドラインも出てたし最初チラ見した時点で「あれれ???」という違和感があって、何でじゃろと思ったら何という事でしょう、黒ちゃんのいらっしゃるうちに出されていた主な意見と全体のトーンが違うじゃないですなナンジャコリャ。

3月決定会合「主な意見」はこちら。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi230310.pdf
金融政策決定会合における主な意見(2023 年 3 月 9、10 日開催分)

まあお好きな方は是非並べて読み比べて頂きたいのですが、そこで話を終わりにしていまうとアタクシの駄文のネタになりませんので以下つらつらと参りますね。


・経済物価情勢の雇用所得のパートの書きっぷりが明らかに「主な意見」とトーンが異なるんですが

ということで議事要旨の本文10ページ目、PDFの12枚目の辺りからになります。以下くどくなってしまいますが引用元を(議事要旨)(主な意見)として引用部分『』の後ろにいれておきますね。


『雇用・所得環境について、委員は、全体として緩やかに改善しているとの見方で一致した。』(議事要旨)

というのはさておきまして、さっそく次。

『多くの委員は、今年の春季労使交渉における賃上げの動きは、大企業だけではなく中小企業にも広がっているとみられると指摘した。』(議事要旨)

・・・・・おいこらちょっと待て、主な意見の方にある『T.金融経済情勢に関する意見』を見ると、雇用とか賃金に関する部分はこの中の前半小見出し(経済情勢)のケツの方に並べられているのだが、それを見ますと、

『・ 消費の弱さの背景には、家計の名目所得の伸びが物価上昇率に届いていないことがあり、何かの支出が増えれば他の支出を切り詰めざるを得ないというのが実情と考えられる。名目所得の上昇により実質所得が上昇するかどうかが重要であるが、今年の労使間の賃金交渉の結果だけでなく、その後の賃上げの広がりと持続性も確認したい。』(主な意見)

『・ 持続的な賃上げの実現には、従業員のエンゲージメントを高めるような職務に応じた賃金カーブへの改革や、コア事業を強化するポートフォリオ改革、労働の高付加価値化や高生産性事業への労働力のシフトが重要であり、まずは労使交渉による賃金構造の変化に注目している。また、中小企業の賃上げ率向上には、適正な価格転嫁と持続的な付加価値向上が重要である。』(主な意見)

『・中小企業を含め、高めの賃上げが実現する可能性が相応にある。前回会合時点と比べ、その可能性は高まっている。』(主な意見)

『・「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現に向けた一歩として、今春の労使間の賃金交渉の結果は重要である。この点、前向きな企業の賃金・価格設定行動がみられているだけに、想定以上の賃金上昇率につながる可能性がある。』(主な意見)

という風になっていまして、これ見た時は「相変わらず賃金の上昇を見極めたい音頭かよ」と思ったのですが、何で議事要旨では『多くの委員は、今年の春季労使交渉における賃上げの動きは、大企業だけではなく中小企業にも広がっているとみられると指摘した。』っていきなり威勢の良い表現になるんですかさっぱり良く分からないんですけどどういうことですかこれは???????????

とまあこの時点で結構腰が抜けたのですが、議事要旨の続きを読みますと・・・・・・・・・・・・・

『一人の委員は、労働需給の逼迫を背景に、一部の企業の賃上げが、その競合相手や周辺地域の企業の賃上げにもつながっていくといった動きもみられてきていると述べた。』(議事要旨)

『また、複数の委員は、前向きな企業の賃金設定行動がみられているだけに、中小企業を含め、高めの賃上げが実現する可能性が高まっているとの見解を示した。』(議事要旨)

『複数の委員は、先行き、これまで労働供給の増加を支えてきた女性や高齢者の労働参加の増加ペースは鈍化していくと見込まれており、これが、労働市場の需給の引き締まりやそれに伴う賃金上昇圧力につながる可能性もあるとの見方を示した。』(議事要旨)

おいこらちょっと待て、主な意見に全然出て無かったのに何でこんなに議事要旨で威勢の良い話がポンポン出ていることになってるんだよという話でありまして、いやまあ言ってもいないことを書いてる訳は無いので、こういう意見もあったんでしょうけれども、政策委員が自分の主な意見として出したものには無いネタが、物価目標達成の中で最近一番重要なファクター扱いされている賃金(と雇用)の部分でバカスカと出て来るってこれバランスおかしくねえか、とまあ思う訳ですよ。

なお、議事要旨のこの先は

『他方、何人かの委員は、地方の中小企業では賃上げそのものが難しいという声も聞かれていると述べたうえで、労使交渉の結果だけでなく、その後の賃上げの広がりと持続性について見極めていく必要があるという認識を示した。』(議事要旨)

という様子見地蔵モードのコメントもあるが、むしろこっちの方が主な意見の字面を読んだときの印象に近かったんですけど、完全にこっちがオマケ扱いになっているのどういうことなんだよと小一時間問い詰めたい。

『この間、ある委員は、持続的な賃上げの実現には、従業員のエンゲージメントを高めるような職務に応じた賃金カーブへの改革や、コア事業を強化するポートフォリオ改革、労働の高付加価値化や高生産性事業への労働力のシフトが重要であるとの見方を示した。この委員は、中小企業の賃上げ率向上には、適正な価格転嫁と持続的な付加価値向上が重要であると付け加えた。』(議事要旨)

というのはさっきの主な意見にあった奴で、たぶんいつものマリーアントワネット審議委員様だと思われます。


・物価面で2月都区部のプラス幅縮小のコメントがワロタ

同じく議事要旨10ページの下の方から始まる物価情勢に関する議論パートですが、

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品、耐久財などの価格上昇により、4%程度となっているとの評価で一致した。ある委員は、2月の東京都区部の消費者物価は、予想通り、プラス幅がしっかりと縮小したと述べた。予想物価上昇率について、委員は、上昇しているとの見方で一致した。 』(議事要旨)

この東京都区部云々っての主な意見には掲載が無くて(そりゃそんなの載せるよりも言いたいことあるでしょとは思うのでそれ自体は変じゃないですけど)、わざわざこっちに載っているのも怪しくて、これを見ると当然のことながら4月会合2日の朝にエンバーゴになったあの激強の4月東京都区部CPIというのを連想せざるを得ない訳ですよ。何かこういうの出ているのもキナ臭いなあと思いますですが、しかし「しっかりとプラス幅が縮小した」ってなんか下がって喜んでいるような表現になっているのは禿げ上がる程笑えるのでございますが、お前ら消費者物価指数のプラス幅拡大するために金融緩和やってるのとチャウのかと小一時間問い詰めたい。

なお、物価面の話になるとこの部分はさておきまして、その先の見通しに関する話とかは、実は何人かが主な意見にある意見で一致してたのね、というような気付きはありますが、割と「主な意見」で羅列されていることを並べている感じになっていますのでそこはかっ飛ばします。


・政策運営の話の冒頭でいきなりカマシが入る

金融面の動向部分をさらにかっ飛ばして本文12ページ(PDF14枚目)の「V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要 」に飛びますが、ここもまたハーコリャコリャって感じでして、

『先行きの金融政策運営の基本的な考え方について、委員は、経済・物価情勢を踏まえると、現行の金融緩和を継続することにより、賃金の上昇を伴う形で「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成することが重要であるとの見解で一致した。』(議事要旨)

はさて置きましてその次。

『複数の委員は、「物価安定の目標」の実現に向けて良い兆しがみられるなど、環境は変化しつつあるとの見方を示した。』(議事要旨)

ほほう・・・・・・・・・

ここなんですけど、ちょっとクソ長くなって申し訳ないのだが正確を期するために「主な意見」の『U.金融政策運営に関する意見』を全部引用し直すよ。

『・ 経済・物価見通しを踏まえると、「物価安定の目標」の達成まで金融緩和を粘り強く続けることが必要である。

・2%の「物価安定の目標」の達成を十分に見通せるようになるまでは、イールドカーブ・コントロールを含めた現状の金融緩和の継続が必要である。

・イールドカーブの歪みなどの副作用もあるだけに、効果と副作用とのバランスの検証も含め、市場の機能度を予断なく見極めていく必要があるが、現在は大規模緩和を粘り強く続けていくべき局面である。

・ イールドカーブ・コントロールの運用見直しの市場機能への効果を見極めるにはまだ時間が必要であるが、消費者物価上昇率が実際に低下し、それを受けて市場の金利見通しが落ち着いてくれば、イールドカーブの歪みも是正されていくものとみている。

・イールドカーブの形状は、共通担保オペや国債補完供給の運用面の工夫などもあって、ひと頃に比べれば総じてスムーズとなっているが、今後も、各種措置の影響を含め、市場の動向を注意深くみていくべきである。

・ 12 月の会合以降、数々の措置を講じ、一定の効果が出てきた面はあるが、市場機能の根本的な改善には至っていない。今後のマーケットの状況、経済、物価や賃金の動向を、謙虚かつ真摯にみていき、必要な場合には、社債市場やスワップ市場を含めた市場機能の改善を図り、金融緩和の効果が実体経済に持続的・効果的に伝わるようにすることが必要である。

・ 社債市場では発行スプレッドの拡大は一服しているが、国債市場の機能度低下の影響は引き続き残っており、注視が必要である。

・「物価安定の目標」の達成には、日本銀行が2%の目標を堅持しつつ、その達成にコミットすることによって、予想物価上昇率を目標にアンカーすることが重要である。

・ 足もとの物価高を受けて緩和の見直しを求める声もあるが、現在は「物価安定の目標」の実現に向けて良い方向に環境が変化しつつある状況であり、政策転換が遅れるリスクよりも、拙速な政策転換によって目標達成の機会を逃すリスクの方を重視すべきである。

・ 2%の「物価安定の目標」へのコミットメントを堅持することがきわめて重要である。目標についての議論を始めると、「物価安定の目標」の実現の可能性が増しているにもかかわらず、金融政策運営に関する無用な憶測を招く惧れがある。同様に、共同声明についても改定の必要性はないと考えている。

・わが国経済にとっては、経済成長とともに賃金も増加する経済・賃金構造への改革が重要である。実現に時間がかかっているからといって物価目標を引き下げて金融緩和を見直すと、必要な改革が先送りになるリスクがある。

・ わが国経済には好循環の兆しはみられるものの、金融政策の修正は、金融市場や幅広い経済主体に影響を与えるものであることから、慎重に検討・議論する必要がある。

・ 持続的な賃金上昇に必要な供給サイドの改革が進み、好循環への期待が確信に変わるよう、粘り強く金融緩和を継続し企業の改革の動きを支える必要がある。』(主な意見、長くてすいませんがこのパートの全部がこれです)

ということで長々と引用して恐縮なのですが、このトーンとさっきの議事要旨の、

『複数の委員は、「物価安定の目標」の実現に向けて良い兆しがみられるなど、環境は変化しつつあるとの見方を示した。』(議事要旨、再掲です)

との温度差が無茶苦茶あって、何なんだよと冒頭から思いました、と書いてたら例によって夜なべで下書きをしなかったのがたたって時間が無くなってしまいましたので中途半端なところで明日に続くで申し訳ないのでございますが、とりあえず一番強烈にトーンが違う場所に関しては網羅したと思っております。

いやー何なんでしょうね、同じ会合に関するもので何でトーン変えて出すとかいうしょうもない小細工するんだよと思うのですが、インチキをするにしましてももう少しやり方を考えて頂きたいと思いますし、まあこういう小細工をしている、ということはつまりは7月10月の展望のタイミングでドドーンと上方修正した物価目標達成だぜヒャッハーとか言い出す布石を小賢しく打ったんじゃないの??????と思いたくなるわけですよアタシャ。まあ個人の感想ですになりますけどね。







2023/05/09

お題「明治〜第二次大戦後の日銀BSデータという面白いペーパー出てました/植田総裁会見(その2)」

なんちゅうかこういうの考える頭を真っ当に使えば、と思うのだが、
https://www.agrinews.co.jp/society/index/154662
2023年5月9日
ふるさと納税返礼品も標的 「値引き」のわな、詐欺サイト乱立 提供農家に“迷惑”
日本農業新聞

まあ政策の屁理屈の粋を尽くした最末期黒田日銀というのがあってですねえ・・・・・


〇え えらいことや・・・・・・・せ 戦争じゃ・・・・・・・・(画像割愛)

https://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps23.htm
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2023年収録分

『日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ(DPS)は、金融研究所スタッフおよび外部研究者による研究成果をとりまとめたもので、学界、研究機関等、関連する方々から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。ただし、論文の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本銀行あるいは金融研究所の公式見解を示すものではありません。』

今回の新着はこれである。
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/23-J-04.html
明治期から戦後復興期までの日本銀行バランスシート:データの整理とその変遷
小池良司

この歴史物シリーズってだいたい何を見ても面白いのですが、今回のはエグゼクティブサマリーが記載されている上記URL先をみただけでコーヒー吹いた(褒めてる)。

『本稿は、明治期から戦後復興期までの日本銀行バランスシート(日銀BS)の変動を概観している。』

まあ題名の時点でそうなのだがこの掴みでもうアーニャのワクワクは止まらない。

『その特長は、(1)主要項目別の動きを時代ごとの背景要因と照らし合わせながら、名目値と対GNP比の両面から検証したこと、(2)年次計数を用いた先行研究に対し、半期値や月次値を各種の歴史資料から作成し、より高い精度で再検証を試みたことの2点である。』

本文の方もサラッと拝見しましたが、アーカイブ駆使して面白いです。

『分析の結果、日銀の総資産は平時には対名目GNP比10〜15%水準で推移していたが戦争時には19〜48%に上昇していたこと、各種の金融危機では最大16%水準の上昇に止まっており戦争時の高さが際立っていること、銀行券は日銀草創期と太平洋戦争期を除けば8〜11%で安定推移していることなどが確認された。』

>日銀の総資産は平時には対名目GNP比10〜15%水準で推移していたが戦争時には19〜48%に上昇していたこと
>日銀の総資産は平時には対名目GNP比10〜15%水準で推移していたが戦争時には19〜48%に上昇していたこと
>日銀の総資産は平時には対名目GNP比10〜15%水準で推移していたが戦争時には19〜48%に上昇していたこと

さて、ここで日銀の総資産と名目GDPを確認してみましょう。

国民経済計算
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html
国民経済計算(GDP統計)

主要統計データ(※実質の実額は2015暦年連鎖価格)

『四半期GDP実額 2022年10-12月期
実質※546.7兆円
名目 560.6兆円

年次GDP実額 2022暦年
実質※545.8兆円
名目 556.4兆円』(この部分のみ直上URL先の内閣府HP)

若干基準日が違いますが直近の日銀ちゃん。
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2023/ac230430.htm
営業毎旬報告(令和5年4月30日現在)

『合計 740,072,639,807』(この部分のみ直上URL先の日銀営業毎旬報告より)

合計の単位は千円ですのでどう見ても740兆円です本当にありがとうございました。


・・・・・・・とまあそういうことで、小見出しの「え えらいことや・・・・・・・せ 戦争じゃ・・・・・・・・(画像割愛)」のSNSで良く使われるいつもの煽り画像になる訳ですな、いやはや何とも。

サマリーの続きに戻ります。

『また、月次値は、金融恐慌や関東大震災、金解禁や新円切り替えなど金融経済制度の急変時における短期的な変化を詳細に捉えており、外生ショックやイベントの影響を識別するといった各種の歴史研究に有用な情報を提供するものであることが確認された。』

てなお話でして、サマリーもさることながら本文を見るともっと色々とおもしろいので読んで味噌なのである。


https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/23-J-04.pdf
明治期から戦後復興期までの日本銀行バランスシート:データの整理とその変遷
小池良司
Discussion Paper No. 2023-J-4

3ページ目がエグゼクティブサマリーでして、そこには上記HTMLページと同じ記載があるのですが、その最後の脚注に、

『本稿の作成に当たっては、鎮目雅人教授(早稲田大学)ならびに日本銀行金融研究所スタッフから有益なコメントを頂いた。ここに記して感謝したい。ただし、本稿に示されている意見は、筆者個人に属し、日本銀行の公式見解を示すものではない。また、ありうべき誤りはすべて筆者個人に属する。』

という毎度の謝辞兼ディスクレーマーがあるのですが、鎮目先生この辺にもご登場でして、(https://www.imes.boj.or.jp/jp/newsletter/nl202301J2.html 金研設立40周年記念対談「マネーシステムの歴史を語る」)もともと日銀のお方だったりしますのですが、金融史(金融学説史ではない)の査読論文も数々お出しになってますし、だいたい日銀の歴史物の時には謝辞の中に鎮目先生について言及されるもんでご尊名だけは前からずっと拝んでおるアタクシだったりします。


ちょっとだけ本文の『1.はじめに』を鑑賞しますけど、まあご興味持たれたら是非全文をお読みください。ついでにさっきのHTMLの方に過去の時系列データがエクセル形式で提供されているのもポイントが高い。


『1.はじめに』

『本稿では、明治期から戦後復興期までの日本銀行バランスシート(以下、日銀BS)について、これまで利用されてこなかった半期値(1882?1955 年)および月次値(1897?1955 年)を総資産と主な内訳項目について各種の歴史資料から作成することを試みている。』

ということで途中をすっ飛ばして・・・・・・・・

『今から 70?140 年前の日銀 BS と現代のそれとは、その定義や中央銀行制度、さらには金本位制といった金融経済制度の違いなどから、単純な比較は困難である。』

そらそうですな、と思ったのだが、1955年が70年前(68年前だけど丸めりゃ70年前)という事実を見て、ちょっとちょっとお兄さんお兄さん戦後ってどんだけ遠くなったん!とビビりました(昭和脳)。

『また、明治期から戦後復興期にかけては幾度も大きな経済変動や社会動乱などが生じてきた。例えば日本銀行の創立、日清・日露戦争、金本位制への復帰や離脱、昭和金融恐慌、太平洋戦争、戦後復興などである。こうした背景に鑑みると、明治期から戦後復興期と現代の日銀 BS には大きな隔たりがある。』

『しかし、連続した時系列データを検証することは、それぞれの時代の政治的・経済的な背景が日銀 BS に与えた影響などを研究するうえで一定の意義がある。』

『また、イベントスタディのような短期的な変化を把握するために、半期・月次で整備されたBS 計数は、これまで発掘されていなかった貴重な情報の発見提供に繋がりうる。』

計数大公開してエクセルで出してくれたのアリガタヤであります。

『以下、2 節では日銀 BS に関する主な先行研究を概観する。3 節では新データセットの生成に用いた資料と計数について説明する。4 節では、明治期から戦後復興期までの主な時期ごとに日銀 BS の推移とその背景を概観する。また、全期を通じた展望から得られた発見点や、現代の日銀 BS との相違点を確認した結果を紹介する。5 節で結びを述べる。』

ということで、興味を持たれましたら是非ご覧ください、ザックリ斜め読みしただけでも面白かった(個人の感想です)。



〇植田総裁定例記者会見ネタの続きですが展望2回でソフトランディング工作中という説を提唱しながら鑑賞

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230501a.pdf
総裁記者会見
――2023年4月28日(金)午後3時30分から約60分


・レビューの位置づけが結局意味不明というか煙に巻きまくっていて煙幕の向こうが良く分からん件

レビューに関する質問は以下割愛とか言ってましたが一つ。昨日引用したの2番目の人でしたがその次の人からの問で。

『(問)(前半割愛)二点目は、このレビューを実施する必要性、目的ですね。なぜこの段階でレビューを実施すると発表されたのか、なぜ実施する必要があるのか、伺えますでしょうか。』

おそらく裏の目的として「政府との共同文書の見直し論を封印しておく」というのがあると思われまして、そうだからこそ(表向き)何も決まっていないフニャフニャ状態なのに「やります(キリッ)」と言ってしまい、しかも時間稼ぎの為に1年から1年半とか抜かしやがる(そもそも「非伝統的政策は最初は効いたけど時間の経過と共に効果が逓減していって、副作用が徐々に顕在化しましたよね」の1行コメントで済むものを何で1年やら1年半書ける必要があるのか、って話ですしおすし)ということなんでしょうが・・・・・・・・・・・

『(答)(前半割愛)二番目のご質問、必要性ということだったと思いますが、絶対必要というわけでは必ずしもないですが、特に目先の政策変更に結びつけて何かやるというわけではございませんので。ただ、非伝統的金融政策という言葉で言えば、それも 25 年間になってきている。先ほどのご質問でお答えしましたように、基調的インフレ率は徐々に上昇し始めていて、上昇を続けていて、安定的な 2%の可能性も出てはきているという中で、それはうまくいったとき、あるいはうまくいかなかったとき、少しロングレンジの話になりますが、そういうところをにらんで用意をしておこうというタイミングかなというふうに思った次第でございます。』

「安定的な 2%の可能性も出てはきているという中で、」とか言い出して、「少しロングレンジの話になりますが、」とか言ってそこを中和しながらも「そういうところをにらんで用意をしておこうというタイミングかな」とか言ってまして、今回の植田さんの説明って物価のパスの話になるとエライ勢いで政策維持に強いバイアスの掛かった説明をしているのですが、こうやって言葉の端々に出口を展望する話がしれっと入り込んでいる部分があって、ただまあそれが「YCC解除の仄めかし」にならないようにゴテゴテと変な修飾語をデコレーションすることによって煙には巻いているのですが、説明としては「言語明瞭意味不明瞭」なグダグダ感溢れる物件になってしまって書いてて血圧が上がるんですが、そうは言ってもこれやっぱりYCC解除を近い所で展望しているが故の偽装工作なんじゃないかな説はやっぱりあるんじゃないかとも思ったりします。

と申しますのも、今日ネタにしている時間があるか怪しいのですが、昨日でてきてた3月会合という黒ちゃん最後の会合の議事要旨の出来栄えが何かエライ勢いで物価が上振れそうな意見並んでいるし、植田さんの今回の説明って昨日引用した部分にもありますように「今の見通しはこうです」というのを物価に関して妙に決め打ちしているし、これって逆に7月展望(なんと7月末)で再度の上方修正を行ってYCC解除(ってすると下手したら理屈上はマイナス金利の解除まであり得る、まあそんな根性あったら4月にYCCの長期ターゲット解除してたとは思うのでそれは無いと思うけど)って話が普通にアリエールなんとチャイマスカということになる訳ですよ。とにかく市場機能とかそんな話じゃなくて経済物価情勢にフォーカスする正統派(?)スタイルで。

従って次の人のこの質問には、

『(問)このレビューについて、私もお伺いします。レビューに 1 年から 1 年半程度の時間をかけるということですが、その間は政策変更をしないということになるんでしょうか。(後半割愛)』

『(答)先ほどもちょっと話しかけたのですが、このレビューを実施している 1 年から 1 年半の間、政策変更がないのかどうかというのが前半のご質問だと思いますけれども、それはそうではなくて、その時々に必要な政策変更、1 年半の間であってもですね、それは毎回の[金融]政策決定会合で議論して必要があれば実行していくというスタンスです。』

という回答になるのですが、何故かこれに余計なものがついているのが植田さんの仕様でして、

『例えば、現在は基調的なインフレ率が持続的・安定的に 2[%]には達していないという判断ですが、これが 1 年半の間に変わる可能性はゼロではないわけで、そうすれば当然それに伴って政策変更はあり得るということになるかと思います。(後半割愛)』

ってしらっと入れてるし、そもそも論として直前の質疑で「先ほどのご質問でお答えしましたように、基調的インフレ率は徐々に上昇し始めていて、上昇を続けていて、安定的な 2%の可能性も出てはきているという中で、」とかシレっと説明してたわけですから、そらもう普通に政策変更ありうべし、という話じゃないですか、ってな所ですね。

しかしながらここでも植田さんは「現在は基調的なインフレ率が持続的・安定的に 2[%]には達していないという判断ですが、これが 1 年半の間に変わる可能性はゼロではないわけで、」ということで「変わる可能性はゼロではないわけで」みたいなエライ慎重な言い方をしていまして、まあこういう辺りで兎に角「政策変更ありうべしと読み取られない言い方」を物凄い勢いで工夫しているのが伝わるんですよね。

でも、本来の意味での物価の現状判断と見通しの説明を見ると、普通の普通に2%達成が近いって認識を示しまくっていて、ただし展望の出来上がりの数字とか、政策絡みの説明とか、物価の見通しパスを数字で出す、というような段になるとやたら先行き弱気な言葉を出してくる、ということになっているんですね。

この辺り、植田先生たるお方が自分の言ってる説明の整合性が怪しいことくらい合点承知の介でやっていると考えた場合には、やっぱりこれって黒田のアホウが残した「長期金利ターゲット政策」という「目標が達成に向かって進展するという喜ばしい日に悲劇が起こる時間的不整合政策」のせいできちんと説明できない、って話だし、黒田のアホウが無茶苦茶やりやがったものをソフトランディング(本来はこんなの切断処理すれば問題ないと言いたいのだが、安倍ちゃん残滓のカス共がカスの癖に声だけはデカいので切断処理した時の政治的フリクションのリスクがあるので切断処理できないからソフトランディング)させるために、展望レポート2回使って見通しを黒田忖度モードから脱却させましょう、ということをしていくための時間稼ぎをしている、と解釈する方が妥当だと思いませんか???と説法に余念のないアタクシ。

いやまあ心底こういう経済物価見通しなんだったらナンジャソラなんですけどね!!!


・緩和解除の事を黒田時代には引き締め引き締めと藁人形論法するもんだから質問も大変ですよね

ちょっと先に行きますね。

『(問)(前半割愛)二点目は金融政策の運営についてです。物価の基調は先ほど来総裁からもご説明ある通り、緩和を始められた 10 年前とは状況が大きく異なっていると思います。総裁、今の緩和について非常に強力な金融緩和と再三おっしゃられています。副作用も大きいこの緩和ですね、引き締めとはいかないまでも、通常の緩和に戻していく道を探る必要はないんでしょうか。これが二点目です。』

ねー。

『(答)(前半割愛)それから基調的なインフレ率が、私どもの主張では 2[%]に届かない中でも少し上がってきているという中で、実行している政策に副作用があるだろう、これを考えて、もう少し正常化の方向を考えるべきではないか、あるいは考えているのかというご質問だと思いますけれども、』

あ、植田さんも藁人形論法だ。別に正常化の方向を考えろじゃなくて、質問は「緩和政策の度合いを減らす」なのに「正常化」と言ってますね。

『基本的なお答えとしては最初に申し上げた通り、もう少し基調的なインフレ率が安心して 2[%]というふうにいえるまでには時間がかかりそうである。ですので、現行の金融緩和を継続するというのが基本でございます。』

しかしこの「基調的なインフレ率が安心して 2[%]というふうにいえるまでには時間がかかりそうである」っての判断基準が最早ワケワカメでして、こういうのって本来グローバルスタンダード()とか言われてたインフレーションターゲッティングと全然違う裁量バキバキ政策じゃんとしか思えませんでして、植田日銀の今後の問題って「物価目標達成」の定義があまりにも恣意的になり過ぎていて、将来コミュニケーションどうやって立て直すの、という点が一つ上げられるんじゃないかなと思ってます。

だってさ、数値とかあるならともかく「基調的なインフレが安心して2です」って言いきったらいきなりそこでYCC解除どころか正常化にまですっ飛んでしまう訳でして、何ですかねえその政策変数の恣意性は、って思うのでありますがさて・・・・・・・・・

『ただし、副作用もところどころに出ていることも認めざるを得ませんので、これに関しては注意深く分析を続けつつ、現在何かを考えているというわけではございませんが、政策の効果と副作用のバランスは間違えないように常に注意深く分析し、できる限り情報発信もしていきたいというふうに思っております。』

ここですが、分析して情報発信する、とは言ってるけど必要であれば対処みたいな話をしないのが面白くて、勿論例によって例の如く、政策修正の仄めかしすら出来ないから偽装工作の一環としてそういう用語は使わない、というのが最大の理由だとは思うのですが、植田さんとしては副作用対応云々ではなくて、基本的に王道である所の「経済物価情勢」で政策の見直しをしていく、というのが基本線なんだろうなあとアタクシはこの言い方を聞いて(見て)思ったんですけどどうでしょうかね。



・YCCのレンジの妥当性に関してもしれっと原則論を述べてはいるのよね

『(問)今回、総裁就任後初の決定会合ということで、前総裁の政策を現状維持として引き継がれました。改めてですけれども、イールドカーブ・コントロールについて、日銀といいますか、中央銀行として明示されている長期金利の誘導目標ゼロ%程度と、許容変動幅が±0.5%程度だと思うんですけれども、その妥当性についてご説明頂ければと思います。(後半割愛)』

これ何が凄いってそもそも0%プラマイ0.25%って2021年(2022年ではない)3月の決定会合の時点で経済物価情勢を鑑みるとこの水準が適正。ということで再確認と25bpの明確化が行われたわけでして、その時点から物価どれだけ上がってるのよという話なんですよね。まあ時間の関係もあるからアレなんでしょうけど、質問するなら「2021年3月に確認した際に0%プラマイ0.25%としましてその後拡大しましたが、当時と今では物価情勢に大きな違いがあると思いますが、今でも0%が適切とされる理由はなんでしょうか」ってド直球投げると面白いと思います。つまりプラマイの方じゃなくて0の方の妥当性ねwww


『(答)YCCにどういう意味があるか、あるいは妥当かどうかというのが前半のご質問だと思いますけれども、短期金利がゼロないし若干マイナスになっているという中で、暫く前までは基調的インフレ率も非常に低いというわけですので、更なる金融緩和が必要であるという中で、考え出された政策であるということだと思います。』

何かこの時点で色々と怪しさ爆発の回答をしておりまして、この件に関しては誤魔化す気が満々なのですが、

『名目の長期金利をある程度以上、上がらないようにするという政策でございます。これはご質問の中に含まれてないかもしれませんけれども、基調が弱い間はあんまり[緩和]効果が強くなくて、例えばインフレ率の基調が少し上がってきますと、インフレ期待も上がってきて、そうしますと名目金利を抑えていることが名目金利−インフレ期待の実質金利を下げるという効果を持ってきまして、経済の緩和効果は強まる。』

ただ、誤魔化しおじさんに成り切れないようで、わざわざこういう「物価上がったら緩和効果高まる」話をしてしまう辺りは黒ちゃんもやってはいたが、現実に物価が上がっているだの2%の達成に関して以前よりは状況が良くなっているだの言いながら説明すると、普通に「じゃあ0%の妥当性は?」となってしまうのでかなりこの辺は危険な回答でもあります。

『ただし、同時にそういう局面に至ると副作用も出てくるというような政策であるかと思います。ですので、昨年来そういう局面にあると思いますが、効果と副作用を、繰り返しになりますが、綿密に分析しつつ見守っていきたいというふうに思ってございます。(後半割愛)』

最後立て直し(??)てインチキ回答に戻していますが、これ結局質問にあった「水準の妥当性」については一切回答しないで逃げているのが面白くて、これが黒ちゃんだったら「0%が正しい(キリッ)」って水準の妥当性を強く主張してくるであろうことは疑いなしという感じです。

つまりですね、これを「今回の決定会合は展望レポート2回使ってソフトランディングさせる作戦なのだがYCCの建付け上作戦意図は最後の最後まで秘匿しないといけないから説明が全部偽装工作になる理論」というバイアスを掛けて読みますと、植田さんったらお茶目なんだから後で自分が困らないように0%という水準に言及しないで誤魔化すんですねハーコリャコリャ、という解釈になる訳ですな、まあ強引な解釈と笑いたければ笑ってくだせえwww


・ひええええ時間がない

すいません今日終わらせるつもりだったしさっき書いたように3月議事要旨も意外なオモシロ面があったのですが、明日はその辺まとめてちゃんと成敗したいと思います・・・・・・・・・・(月初3営業日なのに暦は8日とかいうヘッポコ日程で生業が忙しくなるのが悪いよ、と言い訳言い訳)










2023/05/08

お題「雇用統計ワロリンチョ(メモ)/植田総裁会見だがやたら物価見通しを決め打ちするのは逆に妖しい気もしないでもない(その1)」

いやーあっはっは。4日の日に更新(したのはネタがFOMCなので今回は今日の駄文の下にのっけておきますわ)したのですが、その後潜行してしまったら浮上する気力を失って月曜に至る。

次の祝日は7月17日ですわよ〜(祝日もうちょっと分散できんもんなのか)。

〇だからおまいら決め打ちはするなと(米国債券市場メモ)

この雇用統計の反応はクソワロタ。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N3723SY
2023年5月6日6:11 午前
米金融・債券市場=利回り上昇、堅調な雇用統計受け

『5日 ロイター] - 米金融・債券市場では、米債利回りが上昇した。堅調な米雇用統計を受けた。2年債利回りは19.7ベーシスポイント(bp)上昇の3.924%。10年債利回りは9.6bp上昇の3.448%。30年債利回りは4.1bp上昇の3.763%。』(上記URL先より、以下同様)

ちょwwwwwおまwwwwwww2年債利回りwwwwwwwwww

『米労働省が5日発表した4月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は25万3000人増加で、エコノミストの予想(18万人増)を大幅に上回った。失業率は53年ぶりの低水準となる3.4%に改善した。労働市場が強さを維持していることが示され、米連邦準備理事会(FRB)は当面、利上げを継続する可能性がある。』

ということで、

30年債 17時05分 3.7500%   前営業日終値 3.7220%
10年債 17時05分 3.4351%   前営業日終値 3.3520%
 5年債 17時05分 3.4104%   前営業日終値 3.2760%
 2年債 17時05分 3.9181%   前営業日終値 3.7270%

うーんこのという感じですが、そもそも論として足もとのFFが5.00−5.25%なのに何で2年債3.727%でしたねんお前らどんだけ勢いよく利下げ織り込んでますねんとは思う訳でございますがそれはさて置きましても、4日の寝起き(とその後の午前中)で見た部分(よってQA部分無し)の所でも、確かに現状維持バイアスは強くなったけど、とにかく「先行き不透明だからデータディペンデントでござる」って言ってるわけで、データ次第ではコロっと変わるかも知れない(雇用統計一発だけでは変わらないと思うけど)のですから、そもそもお前ら勢いよく金利下げ過ぎって感じではありましたが、とにかく決め打ち芸が出ないんですからデータで一々反応する相場になりそうではありますな。あとは連銀幹部の発言次第ですかねえ。

#会見QAは明日以降ボチボチ成敗


〇話は日銀に戻って植田総裁の28日の会見ネタという出遅れ感満載の件から

一方でこちらは現状維持決め打ちおじさんおばさんの集団という役立たずの皆様の総帥による法話。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230501a.pdf
総裁記者会見
――2023年4月28日(金)午後3時30分から約60分

・会見の態度と説明の姿勢は結構でも中身はうんこ会見で長期ターゲット解除の偽装工作の可能性は微かに期待しておく

終盤の黒ちゃんの会見ってそもそもが想定問答丸読みな上に、質問の筋を外して回答するし、態度はクッソ偉そうだし、「そのようには思ってません」ってお前の感想聞きにきてるんじゃねえよというようなオンパレードではありましたが、まあご案内の通りで、植田総裁になったら当然の如く「客観的な経済物価情勢の認識と確固たる政策理論によって裏打ちされた金融政策」を実施するのかと思いきや、会見の内容は「現状維持をしますので現状維持をします」という事を黒田よりも丁寧に説明しただけで、その場ではソフトかつ何となく説得力のある語り口にホッとしながら見ていましたが、終わってから「はてこの人何の説明してたっけ」と思って徐々にトサカに来まして、文字起こしを見ると更に血圧が上がる、という割とハイコンテクストな作品がデビュー戦から出てしまいました。


そんなハイコンテクスト会見だったから、ご案内のように円安が進行しやがりまして、せっかく入国規制の緩和が行われても海外旅行いけねえじゃん(治安もアレとかの外務省海外渡航情報も出ちゃうし)というのはまあどうでもよいのですが、輸入物価高とか円建てで見た資源価格のあじゃぱーとかになってしまった外国為替市場が一番素直に反応してて、そらまあああいう説明を会見でしたら素直に読めば円売りになるわなと思いましたが、FOMCで戻してくれて植田日銀ラッキーじゃん実に怪しからんと思いました。

ということですが、50回は言ってると思いますが、そもそも論としてYCCの長期ターゲットという糞政策があるので、現状維持バイアスを掛けた説明をせざるを得ない、というのがありまして、その一方で声明文(日銀的に言えば声明文=展望レポート基本的見解>会見、の筈です)には「機動的」などという文言があったり、金利の政策ガイダンス文言をバッサリ削除してみたりと、一応YCC解除に向けた布石を打ったりもしていまして、この辺りの妖しさ(布石打つだけでは「仄めかし」になってしまうので、布石打ちながら「躊躇なく追加緩和」という意味不明な日本語になってしまうという悪文三昧を演じているのですが)を考えた場合には、この現状維持バイアスの強調というのは、「次回決定会合が6月中旬だし、7月展望会合は何と7月末になるので、次回あるいは7月展望でYCCの一部修正をしようと思った場合には、足元で現状維持を強調しないとそこまで持たない可能性がある」という事の裏返しだったりする可能性は、ECBのデギンドス副総裁の毛髪程度(カシュカリ総裁級ではないという事ですわ奥様)は存在すると思われます(個人の感想です)。

・・・・・・・まあ結局1月か3月の会合でYCC撤廃しなかった黒田が全て悪いのですが、初手でこんなに黒田チックな説明(丁寧な説明をしていたが内容は黒田の生霊であって学者としての学識は感じませんでしたな)をする破目になったのは、YCCの長期ターゲットのせいでもあるのですが、まあ初手でこの印象を与えてしまったので、円債村の村民の一部の声でしか無いとは思いますが、まあここから円安に振れて物価が全然下がらなくて日銀が轟轟たる非難を浴びて立ち往生すりゃいいんだよバーカバーカと思ってしまうアタクシがおる訳でして、こりゃ黒ちゃんの時よりもハネムーン期間が大幅に短そうで今後総裁の2323頭がガースー並みのバーコードに変化するのを楽しみにしたいと思う所であります(ロクデナシ)。

と総評だけ先に行いましたがコンテンツをボチボチと。


・そもそもこんな状況で極端な緩和をしていてビハインドにならないのか問題の回答

早速幹事社に質問されているのが当然だが良い質問でありまして、

『(問)植田総裁、本日の金融政策決定会合の内容についてご説明をお願いします。

併せて幹事社からの質問二問をお伝えさせて頂きます。(前半割愛)二点目は、物価の更なる上振れリスクについてです。今年の春闘では、事前予想を上回る賃上げの動きが相次ぎ、企業がコスト上昇を価格転嫁する動きも続いています。物価が目標とする 2%を超えて想定より上振れしていくリスクについてどのように考えていらっしゃるか、政策対応が後手に回ってしまう恐れはないのか、お考えをお聞かせ頂けたらと思います。』

まあ元々黒田時代の最後も「物価が上がってきてYCC維持が困難になる中でキチガイ買入を断行するわ、発狂したとしか思えない5年共担オペを実施するわ」というコンテクストだったので、まあ結局は物価上昇が起点なのでしたけど、植田さんの時代になって足もとの物価は3%だ4%だという数字になっているのに、いつまでも「一時的」でやってて大丈夫かお前という話に発展しているので、益々話は本丸に向かっておる訳です。

植田さんの説明でそのビハインド云々の話の部分を抜粋しますと、

『(答)(途中割愛)以上のように、現在、内外の経済や金融市場を巡る不確実性はきわめて高い状況にあります。また、消費者物価の基調的な上昇率は、見通し期間終盤にかけて、物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくとみられますが、それには時間がかかるとみられます。こうした経済・物価情勢のもとで金融政策運営を考えますと、引き締めが遅れて 2%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引き締めで 2%を実現できなくなるリスクの方が大きく、基調的なインフレ率の上昇を待つことのコストは大きくないというふうに判断しております。(以下割愛)』

だそうだが、そもそも論として「2%を超えるインフレ率が持続する」というのは現に今起こっている状態でありますし、「基調的なインフレ率の上昇を待つことのコストは大きくない」って言ってるけどお前ら自分で出している基調的なインフレの指標が3%近くじゃねえかよという話な訳でして、ここから更に「物価上昇を待つ」というのはどういう事やという話ですな。

まあしかしアレです。これは原則的にそうだからそうと言ってしまえば身も蓋もないのですが、この説明って「こうした経済・物価情勢のもとで金融政策運営を考えますと」となっているのでありまして、肝心の経済物価情勢の見通しは外しっぱなしで推移している訳ですから、これって経済物価情勢を読み間違えてましたテヘペロと言ってしまえばそれまでで、まあ本来であればこんな大本営発表(特に物価見通し)にも程がある忖度嘘八百な見通しに全員一致で賛成している政策委員全員リアル切腹相当だと思いますが、調査統計局をイケニエール書記官にすることによって誤魔化しでもしそうなこの「あくまでも皆さんで決めた見通しがこうなのでこういう政策やりますんで」という物言いがある訳で、いつまでもあると思うな上の庇護という落首でも別館に貼り付けたくなるような植田総裁の説明もこれまた気になるところでございます。

前任のおっちゃんは「物価は上がらんのじゃ」と力強く仰せで、まあその点では黒ちゃんのストロングウィルによって忖度物価見通しが出て屁理屈を駆使したゴールポストの移動大会が実施されていたんだろうなあと妄想させるところがあって、良くも悪くも黒ちゃんがケツ持ちって感じのストロングな説明をしていたのですが、植田総裁の説明って(原理原則論的に言えばこの説明の方が正統派ではあるのですけれども)以下の会見説明の中においても、総てが「こうした経済・物価情勢のもとで金融政策運営を考えますと」というどこか他人事な状況説明になっておりまして、これって物価高放置批判が高まってから見通し変更、となった際にイケニエール書記官事案が発生するとか、皆揃って巻き添えとかになりそうでして、黒ちゃんのときはゆうて最後どうしようもなくなったら(無くなかったけど)黒ちゃんが一手に責任を引き受ければ話はそれでおしマイケルで済んだと思うのですが、植田さんのこの説明だと思いっきり皆さん巻き添えになりそうで、絶対にケツ持ちだけはやってくれそうな黒ちゃんからのキャラ変が著しいのでありまして、まあ政策に関連する各部局の皆様におかれましては、今後イケニエール書記官にならないようにご注意を頂きたいものだ、とまあ斯様に思ってしまう所でありまする(個人の感想です)。



・物価見通しに関しての質問では今回の展望の説明をやたら決め打ち的に説明します

次の質問の前半になりますが。

『(問)二問お伺いします。一点目は展望レポートにつきましてですけど、23 年度の物価は上振れリスクの大きい 1.8%、24 年度については 2.0%という見通しということで、2 年間 2%に近い見通しということが今回示されたんだと思いますけれども、2%の物価目標の達成というのは一段と近づいた、もしくは視野に入ってきたというようなお考えでしょうか。先ほど、拙速な引き締めで 2%実現できないリスクが大きいとおっしゃいましたけれども、そのリスクというのは徐々に小さくなってきたというご認識でしょうか。これが一点目です。(後半割愛)』

物価見通しについての質問ですが、植田総裁やたらとこの回答が決め打ちチックになっているんですよね。

『(答)一点目ですけれども、この委員方の見通しの表ではもう一つ明らかではないのですけれども、前々から繰り返し申し上げている通り、足元インフレ率はかなり高いところにございます。』

だったらさっきの説明にあった「引き締めが遅れて 2%を超えるインフレ率が持続するリスク」がまさにあるんじゃないか、という話になるのですが、

『もう数か月そういう状態が続くかもしれませんが、その後は、はっきりと低下に転じて、今年度の後半には 2%を下回るところにいくというふうに考えてございます。』

先行き不透明とか他のコンテクストでは言ってるのですが、物価見通しに関してだけは謎のクリアカットな説明になっております。でもってこの物価見通しが黒田時代の最後の1年間外しまくっているというのにこのクリアカットな説明を初手から植田さんがしているのが意味不明にも程があって、植田さんだってそもそも日銀の物価見通しがこの1年間外れっぱなしなのを分かっている筈だし、足元の物価には上ぶれリスクの方が高いってのは今回の展望レポートで9人中7人が示している訳なのですよね。

然るに、ここでの説明のように「その後は、はっきりと低下に転じて、今年度の後半には 2%を下回るところにいくというふうに考えてございます。」とか物凄い勢いで決め打ち説明をしているのってやっぱり不自然な説明なのですが、これは先ほどから申し上げておりますように(1)殊更に政策の現状維持バイアスを強調する必要があるので物価が先行き2%割るという話を断言調で言わないと行けない、というのがあり、そう考えるとYCC修正に関しての偽装工作とみられる節がこれまたある訳ですな。ただまあ実はそうじゃなくて(2)今さら物価見通しを変えると「今までは何だったんだ」とイケニエール書記官案件不可避となるのを恐れた宦官趙高が宦官ムーブによって二世皇帝胡亥様に対して物価の実情についてお伝えしていない、とかいうような大変に恐ろしい可能性もあったりするのが否定できなかったりするのもおそロシアであります。どうなんでしょうかね。

『そのうえで、そこからもう一回上がってくるという見通しを多くの委員が置いてございます。』

そもそもそんな器用なムーブをするもんかよ、と思いますよね。でもって

『ただ、下がっていくところまではある程度の確度でみえているのですが、』

ということで、まあ会見初回だから最初のうちだけは正座して聞いてて、途中からあほくさくなったので鼻毛の手入れをしながら聞いておった訳ですが、この辺りの物価の説明を聞いてて何か「あれれれ??」と思い出したのは正直な所です。

いやさ、23年度物価の上振れリスクを9人中7人(つまりその中には正副総裁が最低でも1名はいる筈)が見ているのに、「その後は、はっきりと低下に転じて、今年度の後半には 2%を下回るところにいく」&「下がっていくところまではある程度の確度でみえているのですが」って堂々と説明しちゃえるのおかしくないですか????とやっぱり思いますし、そこらのインチキおじさんなら兎も角、植田先生とあろうお方がこの粗雑な説明するの何なの??????と思ってしまう訳ですよ。

『下がっていった後、反転してまた上がってくるというところには、様々な前提が必要で、それが本当に今後満たされていくかどうかという点につきましては、先ほど申し上げたような点も含めて、不確実性が高いという判断を多くの方がお持ちかと思います。』

ごめん、23年度見通し7人上振れリスクなんですけど。

『従って、ならしてみると 2[%]に近い数字が、あるいは 2[%]も入っていますが、続いているんだけれども、もう少し辛抱して粘り強く金融緩和を続けたいというのが正直な気持ちでございます。』

今回日和ったのって単なるチキンなのではないかと思いますし、前半質問部分の最後の部分で、

『そのうえで、私はまだ第一回目の決定会合ですが、昨年度までの決定会合での議論の雰囲気を、これまでの議事要旨とか、あるいは今日、委員方から伺った話から類推しますと、だいぶ前にみていたよりは持続的・安定的な 2%の物価達成の希望はそこそこ持てるような、見通せるようになっているという状態ではないですけれども、ある程度可能性は出てきているということも、複数の委員がおっしゃっていたように思います。(後半割愛)』

とかしらっと言ってる辺りもこれまたナンジャソラな話でして、時々こういう地雷系発言が入っていながらコンテクストの基調が「現状維持バイアス」っていう非常に難解なコミュニケーションになっている訳です。

まあ黒ちゃんの時は「おれは政策絶対変えない」という意味でコミュニケーションは分かりやすかったし、そこを起点にして見通しも政策の細部も決まっててた、と考えれば、難解になったのはYCC見直しの可能性が実はあるということからだ、という風にアタクシとしては考えたいという思いっきり願望トークになっておりますけれども、まあこんな感じで物価見通しに関する質疑は中々見どころがありましたが・・・・・・・・・・・


・レビュー云々は完全にデコイと化してましたしお前らデコイに引っ掛かり過ぎ

レビューに関しては上記質疑をした幹事社の次の所のお方が質問して植田さん回答してたんですけどね。

『(問)(前半割愛、というか今しがた引用した部分です)二点目ですけれども、多角的なレビューですけれども、今後の金融政策について、どういう点を生かしていきたいとか、そういうお考えが今ございましたら、お伺いできればと思います。』

に関する回答が、

『(答)(前半は同様に直上引用した奴です)それからレビューにつきましては、抽象的な表現で申し訳ないのですけれども、何か特定のある将来の時点でこういう政策を打ちたい、あるいはこういうふうに政策を変更したいというようなことを念頭に置いてレビューをするというよりは、将来の政策運営、いろんな可能性を念頭に置いて、現時点で少し長めの時間をかけて過去を振り返っておこうということでございます。ですので、政策運営の全く役に立たないというわけではございませんが、どういう種類の政策運営につながるのかということは現時点では決まっておりません。』

という時点で(内々には何かスコープがあるにしても)レビュー自体が「何も決まっていないのに実施するというアナウンスだけぶち上げた」というかなりの謎プレイになっていて、まあ植田日銀初回の目玉商品はこれ(ただし中身は無い)というスローガンをぶち込んだ、というものなんでしょうけれども、狙っていたのかどうかは兎も角としまして、今回の会見って半分以上がこの「今時点では何も決めていません」しか回答の返ってこないレビューに関する質疑になっていまして、物価見通しや物価見通しと金融政策に関する質問が霞んでしまったなあ、というのが正直なところです。

ということで、まあ結局レビューは今回の完全なデコイになってしまいまして、どう見ても忖度後付け見通しです本当にありがとうございましたという展望レポート物価見通しに関するツッコミを華麗に回避するという役割を演じることになってしまいましたので、レビューに関する質疑はこれだけ引用してあとはシランガナスタイルで。


・・・・・・・・あ、時間がない、ということでもうちょっと総裁会見のネタをやりますが、ECBもスルーしてますし色々と成敗して行かないと(どうせFEDの高官がまたぞろFOMC終わって雇用統計出てるからああでもないこうでもないと言い出すし)いけませんなすいませんすいません金曜土曜日曜と潜航艇状態でこちら方面に全然浮上しなかったもんでゴメンチャイ。



2023/05/04

お題「例によって寝起きでFOMCである(声明文比較)」

とりあえず声明文比較した所でアップします。会見冒頭部分とかやるやると言っていつものようにやっていない日銀会合ネタはボチボチと。

〇市場はどう反応したのか中々興味がある(まだ見てない)ですが結果そのものは順当かと

声明文PDF(インプリメンテーションノート付)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20230503a1.pdf(今回)
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/monetary20230322a1.pdf(前回3月)

声明文HTML
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230503a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230322a.htm(前回3月)

引用は(PDFを紙に打ち出して人力目検差分チェックをするという原始人のワイなので)PDFから行っています。

・第1パラグラフ:足元景気判断の文言は引きあがっておりますな

1パラもだいぶシンプルになってきているのですが、このシンプルな1パラの表現変化はほほうと思いました。

『Economic activity expanded at a modest pace in the first quarter. 』(今回)
『Recent indicators point to modest growth in spending and production.』(前回3月)

まず冒頭の文章ですが、前回が「最近の経済指標はモデストな生産と消費の増加を示しています」という表現だったのに対して、今回は「第1四半期の経済活動はモデストなペースで拡大しています」となりまして、前回が(SVBがアイヤーとかやってる渦中だったのもありますが)経済全体の現状判断に関しての表現が控えめというか間接話法っぽかったのに対して、今回は思いっきり「Economic activity expanded at a modest pace」となって、モデストペースではあるものの、拡大の文言をバッチリ使ってきまして、ここを見ると経済への自信は強まっている表現なのよね。

ただ、この後の政策に関する文言の方が多分注目されるから、ここって読み終わった後には忘却の彼方に逝ってる可能性がありますのもアレなんですが、まあ多分こっちはそんなに言われない(会見でどういうかはまだ見てないのでそこは無視してゆうとりますワイ)と思うのでやたらメモっておきますね。

『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated.』(今回)
『Job gains have picked up in recent months and are running at a robust pace; the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated.』(前回3月)

ジョブゲインの所で「最近数か月ピックアップしている」という文言が抜けてますが、状況としてはロバストであることは変わらんので雇用と物価に関する判断は基本同じだと思って問題ないと思います。


・第2パラグラフ:クレジットコンディションはタイト化したがその影響についてはこれから見極めるとな

『The U.S. banking system is sound and resilient.』(今回)
『The U.S. banking system is sound and resilient.』(前回3月)

前回からの金融あばばばばーを受けた話が2パラ目の内容の冒頭に今回もぶっこまれています。そらそうだ。

『Tighter credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain.』(今回)
『Recent developments are likely to result in tighter credit conditions for households and businesses and to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects is uncertain.』(前回3月)

ここは芸がクッソ細かいわと思いましたが、前回はまあ始まったばかりでしたから「最近の動きをみますとクレジットコンディションのタイト化が起こって、そいつが経済活動や物価に下押し圧力を与えると思います。その程度がどの位になるのかは良くワカランチ会長ですバイ」ということでしたが、今回は「クレジットコンディションのタイト化が起きましたが」とクレジットコンディションのタイト化は起きている、という認識になっているのでが、このタイト化が経済物価にどの程度下押し効果を出すのか、という話に関しては相変わらずの「アンサータン」になっています。

ということなので、先行きの下押しリスクに関してはまだ「下押しするでしょう」の決め打ちにはなっていないのが、往生際が悪いのか、それとも1パラにあるように現実問題として足もとの経済の確りさが見えてきたのを受けて、「まあゆうて大して下押ししないかもしれませんなあ」となりだしているのかはこれまた会見みたらなんか出ているかもしれませんね。

『The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(今回)
『The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(前回3月)

でもっていつもの文言が入って終わりなのですが、先行き経済物価見通しの話のこのパラグラフは前回も今回も結局よー分からんので出たとこ勝負じゃヴォケという話しか書いておりませんな。


・第3パラグラフ:25bp利上げ、先行き追加引き締めについては決め打ちを停止したけど一応まだバイアスは追加利上げで利上げ停止もあり的な

さてこれを市場ちゃんはどう解釈したか。明確な形で「引き上げ予告は出さなくなった」ので打ち止めを評価するのかもしれませんが、ゆうてステートメントに書いてあるのは先行きインフレ下がらんかったらまだ追加引き締めの余地はあるって話になるので、まあ結局の所物価、というよりも物価が下がらん元凶であるおちんぎんであり、そのバックにある労働市場のスーパータイト状態ということになるかとは思いますが。

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回3月)

これは第3パラグラフの開経偈みたいなもんでいつも通り。

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 5 to 5-1/4 percent.』(今回)
『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 4-3/4 to 5 percent.』(前回3月)

大方の予想通り(ですよね?)25bpの利上げです。

『The Committee will closely monitor incoming information and assess the implications for monetary policy.』(今回)
『The Committee will closely monitor incoming information and assess the implications for monetary policy.』(前回3月)

ここは良いとして問題はその次。

『In determining the extent to which additional policy firming may be appropriate to return inflation to 2 percent over
time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments. 』(今回)

『The Committee anticipates that some additional policy firming may be appropriate in order to attain a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time. In determining the extent of future increases in the target range, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(前回3月)

今回は思いっきり「The Committee anticipates that some additional policy firming may be appropriate〜」の分がバッサリと削除されまして、その代わりの文章としては「In determining the extent to which additional policy firming may be appropriate〜」となったので、前回までは「今後幾分かの追加的金融引き締めが適切なんじゃなかろうかと判断しております」だったのから見ますと。追加引き締め決め打ち文言が綺麗に削除された形になっています。今回の表現は「追加的な金融引き締めの程度をどの程度にするのかを判断するにあたっては〜」となっています。

よって別に打ち止め感を出している訳ではないし、何なら「追加的な引き締めの程度がどの位かって言ってるんだからまだ追加引き締めするって言ってるよ」という話ではあるのですが、ただまあ「追加引き締めが適切」という明確な形での決め打ち文言は削除されたんですから、まあこれは「今後の状況次第ではここで打ち止めして様子見モードもありうべし」と解釈されることになるので、ゴルディロックス大好きお兄さんお姉さんは年後半の利下げガーとかいうのかな、何とも良く分からんですが、結局はデータ見ながら後出し対応って感じになるんでしょうな。


以下は資産買入の話になりますが、ランオフのペースについては変化ないです。インプリメンテーションノートの方を見ても今回は単純にすべての金利を25bpフルスライドとしてます。何ちゅうかこの金利水準の中ではコリドア狭すぎのような気がするのは前々から思ってるんですが。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(今回)
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(前回3月)

3パラの締めもいつもの通りです。

『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回3月)


・第4パラグラフ:先行きの政策については状況に応じて判断しますよという当たり前文言部分は全文一致です

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee’s goals. The Committee’s assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee’s goals. The Committee’s assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回3月)

全文一致なので手抜きでパラ一括引用しますた。


・第5パラグラフ:全員一致です

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Lorie K. Logan;
and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(前回3月)

今回も全員一致でした。


・インプリメンテーションノート

PDF版の場合は声明文の「アタッチメント」として出ているので印刷すると声明文とインプリメンテーションノートが出てくるのですが、HTML版の場合はリンクが声明文の下にはってあります。

Decisions Regarding Monetary Policy Implementation
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230503a1.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230503a1.htm(前回3月)

こちらは一々引用していると無駄に長くなるのでまあ見てちょという感じですが、ディレクティブその他に記載されている内容は、レートについては全部フルスライドの25bp引き上げ、各種ファシリティのうち利用上限があるもの(ONRRPとか)の1社あたりの利用上限にも変化なし、国債とMBSの保有額削減ペースにも変化なし、となっていました。何ならご確認下せえ。


(追記分)お題「FOMCオープニングリマークは声明文よりも利上げ停止テイスト(と思われますが)」

ということで会見は音声の方も聞いたのですが、QA絡みは文字起こしが出てからということで、まずはオープニングリマークを拝見します。

〇オープニングリマークは声明文よりも利上げ停止テイストって感じですな

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20230503.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
May 3, 2023

基本的にはFOMCで出て来るものに関しての重みは、ある意味当たり前なんですが、声明文>>オープニングリマーク>>>>>>>>>会見なんですが、これはまあ後からまとめて見ている外野と、実際にライブで対応している人の温度差なので仕方ないのですけれども、声明文で出したものを会見で中和されてしまうと、中和の方にどうしても注目が入ってしまう、というのがあるのですよね。

でまあ市場の反応の答え合わせはさっき見たんですけど、そこまで為替を戻すまでの「利上げ停止決め打ち」では無い作りになっているのが声明文ですので、マーケットが利上げ停止決め打ちにちょっと寄り過ぎてるような気はしました。もちろん今後の政策自体は出たとこ勝負なので、米銀問題、雇用情勢、賃金情勢という辺り見ないといかんのですけどね。


・最初はご挨拶くらいのもんですが米銀問題の進展についてコメント

『CHAIR POWELL. Good afternoon. Before discussing today’s meeting, let me comment briefly on recent developments in the banking sector.』

ということで現状のお話をしていますが、まあこれ自体は先行きの政策に何かインプリケーションがある話でもないので引用だけします。

『Conditions in that sector have broadly improved since early March, and the U.S banking system is sound and resilient. We will continue to monitor conditions in this sector. We are committed to learning the right lessons from this episode and will work to prevent events like these from happening again. As a first step in that process, last week we released Vice Chair for Supervision Barr’s Review of the Federal Reserve’s Supervision and Regulation of Silicon Valley Bank. The review’s findings underscore the need to address our rules and supervisory practices to make for a stronger and more resilient banking system, and I am confident that we will do so.』

次に行きますね。


・25bp上げました、の話もいつもと同じような話

『From the perspective of monetary policy, our focus remains squarely on our dual mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. My colleagues and I understand the hardship that high inflation is causing, and we remain strongly committed to bringing inflation back down to our 2 percent goal. Price stability is the responsibility of the Federal Reserve. Without price stability, the economy does not work for anyone. In particular, without price stability, we will not achieve a sustained period of strong labor market conditions that benefit all. 』

と、いつもの物価安定ダイジダイジネーの決まり文句が来てその次が今回の決定事項について。

『Today, the FOMC raised its policy interest rate by 1/4 percentage point. Since early last year, we have raised interest rates by a total of 5 percentage points in order to attain a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to return inflation to 2 percent over time. We are also continuing to reduce our securities holdings. Looking ahead, we will take a data-dependent approach in determining the extent to which additional policy firming may be appropriate. I will have more to say about today’s monetary policy actions after briefly reviewing economic developments.』

25bp引き上げましたよというのと、今後もデータディペンデントアプローチしますよというのがあります。でもってこの先が経済物価情勢の認識になります。


・声明文ではフワッと引き上げになっていた経済の現状認識、数字的にはそんなに威勢が良くない

さっきネタにしましたように、声明文の方では1パラにある経済の現状認識について「エコノミックアクティビティはエクスパンド」というのを使って来ました。ペースがモデストなのは同じなんですけど。

『The U.S. economy slowed significantly last year, with real GDP rising at a below-trend pace of 0.9 percent. The pace of economic growth in the first quarter of this year continued to be modest, at 1.1 percent, despite a pickup in consumer spending. Activity in the housing sector remains weak, largely reflecting higher mortgage rates. Higher interest rates and slower output growth also appear to be weighing on business fixed investment』

ということでですね、経済成長に関しては「モデスト」であって、「despite a pickup in consumer spending」の中で1.1%(なのでビロートレンド)の成長だ、という言い方をしてまして、確かによくよく考えたらステートメントで書いてあるのは「経済がエクスパンドじゃなくて「経済活動」がエクスパンド」というFEDも最近文学の粋を極めていますなあと感心してしまいますが、まあそういう事のようです。


・労働市場の認識は相変わらずタイトとなっていますが形容詞が少し穏やかになりました

『The labor market remains very tight.』

から始まるパラなんですけど、これ3月FOMC後のオープニングリマーク(https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20230322.pdf)と比較しますと、

『Yet the labor market remains extremely tight. J』(前回3月)

となっていまして、「エクストリームリー」とかいうバチクソ強い言葉から「ベリータイト」という普通の強い言葉に変わっていますので、少し労働市場のタイトさが緩和されつつあるんじゃネーノ的なアレがありまして、この辺りも利上げ打ち止めにとりあえず向いているんじゃなかろうななサムシングを感じる物件です。

『Over the first three months of the year, job gains averaged 345 thousand jobs per month. The unemployment rate remained very low in March, at 3.5 percent.』

そのため、次にこのような表現が入ります。

『Even so, there are some signs that supply and demand in the labor market are coming back into better balance.』

キタコレということでして、労働市場の需給がよりベターバランスになるサインということは、これ即ちインフレを相変わらずサガランチ会長にしてやがるおちんぎんパワーが緩和されるという話なので、これも物価沈静化に向けた見通しを強めているというメッセージである。

『The labor force participation rate has moved up in recent months, particularly for individuals aged 25 to 54 years. Nominal wage growth has shown some signs of easing, and job vacancies have declined so far this year.』

と思ったらおちんぎんについても「some signs of easing」ですってよ奥様。

『But overall, labor demand still substantially exceeds the supply of available workers.』

ということで労働市場の現状に関してインフレ抑制効果が出てくれそうなんでネーノみたいな記述になっているので、まあこの人達利上げ停止で様子見地蔵って感じになるんでしょうなあと。


・インフレは相変わらず強いですなという話

次のパラはインフレに関してですが、

『Inflation remains well above our longer-run goal of 2 percent. Over the 12 months ending in March, total PCE prices rose 4.2 percent; excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 4.6 percent. Inflation has moderated somewhat since the middle of last year. Nonetheless, inflation pressures continue to run high and the process of getting inflation back down to 2 percent has a long way to go. Despite elevated inflation, longer-term inflation expectations appear to remain well anchored, as reflected in a broad range of surveys of households, businesses, and forecasters, as well as measures from financial markets. 』

まあ普通に強い話です。


・政策スタンスの話は先行きの向かい風がありまっせというのを連呼しているので基本的に利上げ停止に寄った説明ですね

ここから政策スタンスの話になるが最初のパラはいつもの決意表明

『The Fed’s monetary policy actions are guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. My colleagues and I are acutely aware that high inflation imposes significant hardship as it erodes purchasing power, especially for those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. We are highly attentive to the risks that high inflation poses to both sides of our mandate, and we are strongly committed to returning inflation to our 2 percent objective.』

2%目標まで物価を持って行くのが大正義、なぜなら〜というのはいつも通りです。

『At today’s meeting the Committee raised the target range for the federal funds rate by 1/4 percentage point, bringing the target range to 5 to 5-1/4 percent. And we are continuing the process of significantly reducing our securities holdings.』

これは今回の決定事項。

『With today’s action, we have raised interest rates by 5 percentage points in a little more than a year. We are seeing the effects of our policy tightening on demand in the most interestrate-sensitive sectors of the economy, particularly housing and investment. It will take time, however, for the full effects of monetary restraint to be realized, especially on inflation.』

でもって「この1年ちょいで政策金利を5%引き上げましたがな」という話をして、引き締めの効果が物価に出て来るまでは多少お時間が掛かりますなという説明を入れています。これは利上げ打ち止めの想定が早期利下げ想定に進むといういつもの市場ちゃんに対しての釘差し的なサムシングを感じました。

ただ、この先の話になりますと・・・・・・・・・

『In addition, the economy is likely to face further headwinds from tighter credit conditions.』

クレジットコンディションのタイト化による今後の経済への更なる向かい風キター!

『Credit conditions had already been tightening over the past year or so in response to our policy actions and a softer economic outlook. But the strains that emerged in the banking sector in early March appear to be resulting in even tighter credit conditions for households and businesses. In turn, these tighter credit conditions are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain.』

ということで、声明文でもありましたが、クレジットコンディションのタイト化の影響はこれから出て来るんジャマイカという話をしていますので、これは政策金利打ち止めっぽく打ち出しています。でもって次のパラグラフも、

『In light of these uncertain headwinds, along with the monetary policy restraint we have put in place,』

と、先行きの金融政策スタンスに関しての言及がここから始まりますが、その前提としての「In light of〜」にアンサータンな向かい風、それからここまで実施してきた金融引き締めの効果がラグ持って発現するでしょうというのを入れていますので、その後に続く文章が、

『our future policy actions will depend on how events unfold.』

とありますが、基本的に下押しネタを「In light of〜」しているんですから、決め打ちはしていないとは言っても、この場合は「先行き利上げ決め打ちはもうヤラネーヨ」という話をしておる、とまあそういう読みになりますわな。

そしてそこから、

『In determining the extent to which additional policy firming may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』

という声明文にあった先行き政策運営のスタンス文言と同じものが出て来るので、まあこれって「追加の政策引き締めの程度は」とは言ってますが、前段にあるものが下振れリスクの話を2パラグラフに渡って打っているのですから、これはまあ単に決め打ちをしていない(思いの外物価が下がらんとか景気が下押ししないとかだったら利上げも可能なようにしている)というだけで、基本的には政策据え置きってことでっせ、ってお伝えしたいんでしょうね。

ただしこの話自体はまさにその物価だの賃金だのの動向次第でコロっと引き締めおかわりバイアスに化けることもあるので、それこそ出たとこ勝負の世界って話になるからポジションが一方方向に傾きすぎるのもどうかとは思います。

『We will make that determination meeting by meeting, based on the totality of incoming data and their implications for the outlook for economic activity and inflation. And we are prepared to do more if greater monetary policy restraint is warranted. 』

でもってここの最後の所でも「greater monetary policy restraint is warranted.」であれば引き締めのおかわりを用意しております、とは言ってまして、そりゃ「より引き締めが必要なら引き締めをする」って言ってみれば当たり前だの進次郎構文ではあるのですが、わざわざ言うってのは基本線として政策金利据え置きのパスが念頭にあって、そのメインパスじゃないときに・・・・って印象を与えるように書いてるんだろうなあ、と思いましたがどうでしょうか。

『We remain committed to bringing inflation back down to our 2 percent goal and to keep longer-term inflation expectations well anchored. Reducing inflation is likely to require a period of below-trend growth and some softening of labor market conditions. Restoring price stability is essential to set the stage for achieving maximum employment and stable prices over the longer run.』

オープニングリマークのまとめに入って来ます。引き続きなんですけど、ビロートレンドの成長が続かないと物価が思う所にさがりませんぜ、というのを言ってます(だからそもそも実質成長が2%とかになったらFEDは困るという事実がありますが)。

『To conclude, we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you. I look forward to your questions. 』

最後のパラはいつものご挨拶です。QAはQA出てからボチボチ成敗します。とりあえず午前の部はこんなところで(午後の部があるとは言ってませんので宜しゅう)。










2023/05/02

お題「引き続きMPMレビュー(その3)と参ります」

昨日の横綱は前日夜間の取引高の方が日中取引高より大きいという結果になっておりまして(どっちも1万2000枚近辺)MPM直後だったからということもあるのは分かるのだがちと泣けました。

〇展望レポート基本的見解の見通しと全文の「BOX」について

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2304a.pdf(基本的見解)

昨日も見ましたし皆さんすっかりおなじみの今回の見通し数値ですけどね。

コアCPI

2023年度:+1.7 〜 +2.0<+1.8>  前回+1.6 〜 +1.8<+1.6>
2024年度:+1.8 〜 +2.1<+2.0>  前回+1.8 〜 +1.9<+1.8>
2025年度:+1.6 〜 +1.9<+1.6>

コアコアCPI

2023年度:+2.5 〜 +2.7<+2.5>  前回+1.7 〜 +1.9<+1.8>
2024年度:+1.5 〜 +1.8<+1.7>  前回+1.5 〜 +1.8<+1.6>
2025年度:+1.8 〜 +2.0<+1.8>

四半期展開すると相当無理のある見通し(発射台がコア3%半ば、コアコア4%だから)になりそうなのは兎も角として、今回の見通し数字での妖しさとして光るのは、(1)2023年度コアの見通しが+1.8%と7月にも上方修正しないといけなくなりそうな低さであること、(2)2025年度コアの見通しが+1.6%と微妙に2%から下にしておいて、プロットをみたら明らかに「下振れリスク」じゃないのに下振れリスクにしていること、の2点です。

これですけど、ごく素直に読みますと、(1)は2023年度後半に物価上昇率の伸びが2%台を下回って推移する、という見通しなので素直に反映させた事、2023年度のコアCPIが年度平均で2%超えの数字を出してしまうと、「2022年度から3年連続で年度平均2%以上の物価で推移しているのに目標達成じゃない、というのはあまりにもおかしくないか」というツッコミに耐えられない、というようなことで+1.8%にしました、という話で、結局の所現状維持バイアスがあるためにこういう数字を作ったという話になっているので、現状維持バイアス、と読むのが素直ということになります。

同様に(2)は、プロットを見れば2.0%〜1.8%に政策委員の4名(執行部は議案に反対でもしない限り外れ値をプロットしには行かないですし、リフレ派が上をプロットする訳が無いので、田村さん高田さん中川さん中村さんの可能性が出てきまして、なんか独裁者が去った後のプラハの春的なサムシングを感じないでもない)が入っているのに1.6%のプロットを並べて中央値を+1.6%にもって行った事、さらに下向き▼が3人しか居なくてバランスが5人いるのになぜか展望レポートの書き方が「下振れリスク高い」と書くという割と強引な事をして、とにかくこれも「何でこの状況で2%達成と言えないのか」とぶっこまれるのを如何にして回避するか、という事に血道を上げた結果の作品ですので、これまた現状維持バイアス、と読むのが素直ですね。


しかしですな、こうの2点において不自然さ丸出しのものを出してくる、というのは裏を返して言いますと、7月に早速物価見通し上方修正に追い込まれた場合には、今度は2%が展望出来ない、という言い訳がしにくい、即ちYCCの解除(どころか下手したらマイナス金利の解除)に打って出る余地も残している、という解釈が可能になる訳でして、これがもし今回の展望レポートで2023年度の年度平均+2%乗せで見通しを出して来たら、7月も見通しをそのまま維持で走れると思われまして、それすなわち7月には見通しの変更がありませんので4月の政策を維持するのが適切、とすんなり行けるのですが、展望レポートの本命中の本命であらされる所の物価見通しを昨年4月の展望から毎度引き上げていまして、7月もやりましたら手前の物価見通し6打席連続上方修正とかいう三冠王もビックリという記録になってしまう訳なのですが、そうなっているのに政策の修正が無い、というのも逆に変な話ですよね。とまあそういう裏読みも可能な訳です。

7月(前倒ししたら6月)に政策修正をするときの言い訳カードとして展望レポートを使うには、4月の時点であまり上方修正しないで置いた方が7月に上方修正の余地が生まれる、というかなりヤケクソな読み筋ではありますが、まあ提唱しておきます、と申しますのは・・・・・・・・・



・展望レポートの「全文」のBOXにプラハの春を感じました

プラハの春って結末はワルシャワ条約機構軍に蹂躙されてしまったんですけどね!!!!!!

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2304b.pdf(展望レポート・全文)

展望レポート全文では最後の所に「BOX」ってお名前のコラムみたいなのがあって、以前のさくらレポートにあった「地域の視点」コーナーみたいに、その時々におけるタイムリーなトピックについて1ページから2ページくらいでまとめたのがあって、これが割と味わいがあるんですよね。

あ、その前に言うの忘れましたが、展望レポート全文というのは本文12ページ(PDFでは14枚目)の脚注にありますように、

『4月 27、28 日開催の政策委員会・金融政策決定会合で決定された「基本的見解」について、その背景を説明するためのものである。』

とありまして、ここを見ればわかるように、MPM当日に公表される「基本的見解」の部分はその記述内容も含めて金融政策決定会合の議決案件になりますが、背景説明となる部分に関しては基本的にこれは調査統計局による作品になりますが、このディテールに関しては政策委員会のあずかり知らぬ案件、という建付けになります(もちろん基本的見解を作るためのベースになりますから議決はしないけどインプットの材料にはなりますが)。

ということですので、展望レポート基本的見解が政策ラインによります「政策忖度レポート」になってしまっている場合において、王様の耳はロバの耳という井戸として作用する場合もあり、作用しない場合もあり、ということでこの辺りは日銀全体がどの程度チャウシャスク状態になっているのかとか、その時のスタッフというよりももうちょっと上の方の気合の入り方によりますが、まあ味わいを感じながら見る訳です。


で、今回のBOXですが・・・・・・・・・

4月展望レポートのBOXの小見出し集
(BOX1)春季労使交渉の動向
(BOX2)賃金と物価の連関性:過去の経験と先行きの論点
(BOX3)人手不足と設備投資

となっています。これ前回や前々回と比較しますと、

2023年1月展望レポートのBOXの小見出し集
(BOX1)最近のインバウンド需要
(BOX2)労働需給の現状と先行き
(BOX3)労働市場の二重構造と賃金の先行き

2022年10月展望レポートのBOXの小見出し集
(BOX1)海外経済の減速とそれが日本経済に及ぼす影響
(BOX2)新型コロナウイルス感染症と個人消費の最近の関係
(BOX3)企業の価格設定スタンスの動向

とまあこのような感じだったのですが、今回ってどこからどう見ても「賃金上がります、物価上がります」というのを真正面から取り上げた内容になっておりまして、しかも内容が結構威勢良いのですよ。

面白いので今回のBOXをかいつまんでご紹介しますね。まずは『(BOX1)春季労使交渉の動向』です。本文42ページ、PDFの44枚目位になります。

大企業の春闘のレビューの後の「中小企業」に関する考察部分がかなり威勢が良くてデスネ。

『労働組合の組織率が低い中小企業については、4月以降、賃金交渉を行う先が少なくないこともあって、現時点では、賃金改定の全容は判明していない。』

はい。

『大企業との対比で、中小企業は企業収益の改善ペースが鈍く、このことは、中小企業の賃金上昇率を抑制する方向に作用する可能性がある(図表 B1-2)。』

とはよく言われる話なのですが・・・・・・・・・

『一方で、中小企業では、正社員の賃金が労働需給の引き締まりに反応する度合いが大企業よりも強い傾向にある19。』

こ、これは・・・・・・・・・・・・

『この点、中小企業では、欠員率が目立って上昇しており、人手不足感が一段と深刻化している様子が窺われる(図表 B1-3)。こうした傾向は、感染症の影響が和らぐもとで需要が増加している対面型サービス等で顕著になっている(図表 B1-4)。労働需給の引き締まりは、これらの業種を中心に、中小企業の賃金を押し上げる方向に作用すると考えられる。』

と、威勢の良い話になってこのコラムの結語は、

『賃金交渉の結果は、夏場にかけて実際の給与に反映されることになる(図表 B1-5)。中小企業における賃金改定の動向等に不確実性は残るが、本年の所定内給与は、伸び率が明確に拡大する可能性が高く、個人消費を下支えすると考えられる。』

どう見ても強気です本当にありがとうございました。


そして雇用の話の次に来るのが『(BOX2)賃金と物価の連関性:過去の経験と先行きの論点 』である。本文44ページから。

まずマクラに、

『わが国では、2000 年代以降、賃金と物価の伸び率が低下し、いずれもゼロ%近傍で推移してきた(図表 B2-1)20。そのもとで、物価(賃金)が上昇しても、賃金(物価)が有意には反応しない状況が続いてきた(図表 B2-2)。賃金・物価が上がりにくいことを前提とした人々の考え方や慣行が社会に根付くもとで、何らかのショックで賃金・物価が上昇しても、それは一時的なショックとして受け止められ、賃金・物価が相互に連関して緩やかに上昇率を高めていくメカニズムが働きにくくなっていたと考えられる。』

という話をしたあとから本チャンが始まりますが、

『もっとも、足もとでは、こうした両者の関係に変化の兆しがみられている。』

キタコレ!

『BOX1で触れたとおり、本年の春季労使交渉では、既往の物価上昇を賃金に反映させる動きが明確に確認されている。』

ということで、こちらBOX1からの2連続コンボとなっている、というのが前回までのBOX対比での勢いの違いというものでありまする。

『物価上昇の賃金への反映度合いを捉えるための一つのベンチマークとして、長期時系列データをもとにシンプルな賃金改定率(ベースアップ率)関数を推計すると、本年は、この推計値を大きく上回る形で賃上げが実現している(図表 B2-3)。このことは、少なくとも本年については、物価上昇を賃金に反映する傾向が、過去対比でみて強まったことを示唆している。また、一部サービス業等では、賃金上昇を転嫁する形で価格を引き上げる動きもみられ始めている。』

イイハナシダナー(なおワイのおちんぎんはいや何でもありません)。

『物価の先行きを考えるうえでは、景気の改善が続くもとで、物価から賃金への波及と賃金から物価への波及という循環が続き、賃金・物価が適度に連関を高めていくかどうか、丁寧に見極めていく必要がある。』

ということで、さすがにこちらは先行きを見て行きましょう、という話になるのですが、ここで暫く鳴りをひそめていた「粘着性の高いサービス価格」の話があります。ウダウダ説明している部分を一部すっ飛ばして先に行きますとこんな記述があります。

『加えて、現在生じつつある賃金から物価への波及が広がるか、確認していく必要がある。その際の一つのポイントは、1990 年代末以降、マクロの需給環境への感応度が大きく低下するなど粘着性が高まり、その変化率はゼロ%近傍にとどまってきたサービス価格が、持続的に上昇していくかである(図表 B2-4)。』

はい来ました。この話って昨年の秋口くらいまでは割と講演とかでも「景気相関の強い財価格が上昇するだけではダメダメで粘着性の高いサービス価格が上がる必要があるアルネ」という話をしておったのですが、企業向けサービスとか一般サービスとかの価格が強含みだしたらすっかり言及しなくなったのですが、展望レポートのBOXにひっそりと、しかし堂々の貫禄で登場してまいりました。

『産業連関表に示された投入・産出構造を前提に、消費者物価を構成する品目のコスト構造を計算すると、財では、中間投入コストのウエイトが高い一方、サービスや公共料金は賃金のウエイトが高い(図表 B2-5)22。』

『賃金上昇に伴う所得改善に支えられて個人消費の増加が続いていくもとで、こうした賃金上昇に伴うコスト上昇圧力が、サービス業を中心に、販売価格に反映されていくか、注視していく必要がある。』

と結ばれていますが、どう見ても反映の動きおきてるじゃろ・・・・・・・・・

とまあそういう2連コンボで物価が上がるネタをぶっこんで、最後のBOXは『(BOX3)人手不足と設備投資』ということで設備投資の話になっていますが、人員が足りない、というのが話の前提にあるので、これもBOX1で示された賃金上昇圧力につながるお話ですね、とまあそんな話に相成る次第でございます。



・・・・・・・ということでですね、展望レポート本文のBOXがここ2回ほど毒にも薬にもならない話題で、黒田政権下における「物言えば唇寒し」感を漂わせる物件だったのに対して、スターリン批判は始まっていませんけれども、なんとなくそんな感じの論説が復活してるじゃん、と思いまして大変結構結構、とか思ったりする訳ですな。



〇現状維持バイアスの強い発信をしているのですが必ずしもそうじゃない面もあるということですよ(個人の感想です)

えーっとあんまり時間がなさそうなので植田さんの会見ネタはさわりの部分だけになって明日の夕方にでもまた続きをやろうかと企んでおります(やるとは言ってない、なおFOMCレビューは寝起きでちゃんとやります)でもって先に私家版MPMまとめっぽくなってきますけれども、まあ今回のコミュニケーションはクッソ複雑骨折してて訳が分からんとしか申し上げようがないんですよ。何でYCCの長期ターゲット外してすっきりした形に組み替えなかったのかと実に残念ではありますがそれはさておきまして。

声明文の稀代の悪文としか申し上げようがないフォワードガイダンスにしたって、現状維持及び追加緩和バイアスが強い(粘り強く緩和継続とか躊躇なく追加緩和とかね)のを維持するなら何も「機動的に」って言葉を入れる必要はないし、政策金利の現状維持から下方へのバイアス文言を削除する必要はない訳ですよ。

そして展望レポートのコアCPI見通しが不自然な低さと言っても差し支えない数字を出してきている(特に手前の部分)のも、現状維持バイアスの強調ではあるのですが、逆にどこかのタイミングでバサッと上方修正してしまうために低めに出している、という可能性だって否定できない(普通そんなあほなことはしないのだが、長期金利ターゲットという黒田の残した大地雷があるのでこれに自分から手を付けるのは奇襲攻撃をしないといけないから)訳ですな。

さらに展望レポート全文のBOXが、スターリンが飛んだら活発な言論が戻って来ました的なサムシングを感じさせる(個人の偏った感想です)威勢の良い物価上昇音頭の笛の音が聞こえて来る、というムーブとなりまして、そんなこんなで次回の展望レポートをスコープにして政策修正とか、夏は飛ばすけど秋の展望レポートで正常化着手までセットでぶっこみに行くとか、何かそういう構想はあるんジャマイカという妄想が起きるような材料も転がっている、というのが今回のMPMの「アカラサマに出さないコミュニケーション」なのかなって思う訳でございます(正常化バイアスの掛かった個人の妄想ですのでその辺はよろしくご理解の上用法容量を守ってお使いください)。

でもってこれからおっぱじめると時間が明らかになくなるので明日どっかの時間でやる所存ではあるのですが、植田総裁の会見における冒頭説明でも引っ掛かっているのがありまして、


〇植田総裁記者会見は明日やります(ただし夕方以降とかなので実質明後日みたいなもん)

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230501a.pdf

冒頭説明の中における金融政策現状維持バイアスのある説明部分を引用しますと、

『以上のように、現在、内外の経済や金融市場を巡る不確実性はきわめて高い状況にあります。また、消費者物価の基調的な上昇率は、見通し期間終盤にかけて、物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくとみられますが、それには時間がかかるとみられます。こうした経済・物価情勢のもとで金融政策運営を考えますと、引き締めが遅れて 2%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引き締めで 2%を実現できなくなるリスクの方が大きく、基調的なインフレ率の上昇を待つことのコストは大きくないというふうに判断しております。』

『従って、金融政策運営の基本方針としては、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴うかたちで 2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指していく方針です。』

という説明をしていまして、現状維持バイアスの理屈自体は「そうは言ったって物価が2%超えてガシガシ上がるの定着せんじゃろ」というのが理由になっているのですが、肝心の日本銀行はこの1年以上の間、物価見通しをひたすら下に外し続け、展望レポート出すたびに上方修正に追い込まれている訳ですよ。

ということではですね、「こうした経済・物価情勢のもとで金融政策運営を考えますと」という話の前提になっている物価情勢を日銀は1年以上に渡って見誤っていまして、特に酷いのは昨年4月から公表された参考計数のコアコア物価の近いタームの外し方が半端ない(何せ昨年4月の時点では2022年度コアコア+0.9%、2023年度コアコア+1.2%でしたからね)のですが、このコアコアって何で公表したかと言えば「基調を見るのにこっちの方が分かりやすいから」ですからもうねというお話。

そんなポンコツ見通しをベースに政策のリスクマネジメントとか言われましてもヘソが茶を沸かすのですが、まあこれも「・・・・・・と見ていましたがその後の情勢の推移によって判断変わりました」となるために殊更にこういう説明をしているのかも、とか謎の裏読みをしたくなるのもYCC長期ターゲットの弊害なのでありますが、まあそもそも今回のベースとなる見通しがあちこちで上方修正待ったなしなのに、これをベースにした説明に終始している、というのが逆に妖しい香りがせんでもないな、とも思ったりする(つまり植田さんのチキンは芝居という話ね)のでもありました。


ということで会見のネタはすいません連休中に(滝汗)。







2023/05/01

お題「MPMレビュー(その2)展望レポートの計数と鏡がこれまた色々と謎な件」

いやー土曜日午前からノリノリで書いてたんですが息抜きを始めたらそのまま息が抜けてしまって気が付けば月曜の朝に至りまして、別にセルフメーデーやった訳じゃなくてただのぐうたらですすいませんすいません。

お仕事の気合を入れるために今日の音楽は「聞け万国の労働者」で(ソウジャナイ)。


〇展望レポートは「今回は現状維持だって言ったら現状維持なんじゃ」という強い主張が伝わる見通し数字ですわ

という事で展望レポートになりますけど、土日にちょっとしかやらなかったので内容の細かいのは明日か連休中(ECBはちょっとアレなんですがFOMCはちゃんと寝起き更新する予定で今のところ計画しておる)にでもとなりまして、今日は鏡と数字の所を主に。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2304a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2301a.pdf(前回)

・成長率見通しは特に2023年度の見通しとリスクバランスの書き方が本文中の表現の平仄が謎としか言いようがない

例によって例の如く9ページ(PDFも9枚目)の数字の部分から参りましょう。

『(参考)2022〜2024 年度の政策委員の大勢見通し』(なお2022年度は実績値なので割愛)

実質GDP

2023年度:+1.1 〜 +1.5<+1.4>  前回+1.5 〜 +1.9<+1.7>
2024年度:+1.0 〜 +1.3<+1.2>  前回+0.9 〜 +1.3<+1.1>
2025年度:+1.0 〜 +1.1<+1.0>

鏡の部分を見ますとこうなっています。

『日本経済の先行きを展望すると、今年度半ば頃にかけては、既往の資源高や海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかに回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、見通し期間終盤にかけて、成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い。』(「概要」から)

そもそも論として長期予想をする場合なんですけど、一般的なDSGEを組み込んだモデルにすると「長期的には潜在成長率に収斂する」という図になりますので、そういう意味では相変わらずなのですけれども、潜在成長率が1%行くか行かないか、という中でそっちに収斂されますよ、という毎度おなじみの見通しになっています。

でですね、今回の見通しってこの数字ってこれそうなの感は若干ありまして、2022年度の成長率に関しては、個人消費が物価上昇による実質所得の低下と、コロナ後の挽回消費が出遅れている要因があって1月見通しからは着地が下振れしました、って話なのは分かるんですけど・・・・・・・・・

『2024 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2022 年度と2023 年度は、個人消費を中心に下振れているが、2024 年度は概ね不変である。』(「概要」から)

となっているのですが、個人消費下振れの要因になっている実質所得の低下に関しては今年度に関しては賃金上昇である程度相殺される話だし、コロナ後の挽回消費はここから出て来るでしょうというのもありますよね。

まあそこから海外主要国の金融引き締めによる押し下げを差し引くのは分かるのですが、これよく見たら2022年度の実績値が大きく下がったうえに2023年度の見通しも大きめに下がっているって、経済にエライ弱気な見通しの数字になってませんかと思う訳ですし、だいたいからして個人消費の見通しに関して本文の『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し(1)経済の中心的な見通し』の記述を見ると、

『家計部門をみると、雇用面では、経済活動の改善を背景に、正規・非正規ともに雇用が増加していくとみられる。加えて、労働需給の引き締まりや物価上昇を反映して賃金上昇率も高まることから、雇用者所得は増加を続けると予想される。こうしたもとで、個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、行動制限下で積み上がってきた貯蓄にも支えられたペントアップ需要の顕在化を主因に、緩やかな増加を続けるとみられる。政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策や全国旅行支援なども、個人消費を下支えすると考えられる。』(本文2ページから)

この文章、個人消費の結論が「緩やかな増加」に留まっているのですが、その周りにある見通しの背景となる文章を見ますとどっからどうみてもクッソ強いコンポーネントが並んでいまして、これで何で(22年度は実績値だからしゃーないけど)23年度の数字が「個人消費を中心に」下振れとなるのかが良く分からんですな。海外減速が見込まれるので先行き強くならない、というのなら話は分かるんだが。

まあアレです、個人消費が物価高に押されて伸びない、という見通しを出すのはまあそれはそれで意味が通るのでそういう話なのかもしれませんが、だったら少なくとも今の「マイナス金利に10年金利0%」という緩和は過大だって話にならないんですかということですよね。結局今回だって現状維持バイアスを強く掛けた情報発信をすることによって円安が加速(まあ今日の東京時間でどうなるかは知らんけど)して物価が上がる→個人消費下押し圧力、ということをしてるんですから世話は無いですよね。


・・・・・でもって12ページの『政策委員の経済・物価見通しとリスク評価』のプロットだと全員の票が分かるので、これを見るとまたかなりの味わいがある(物価でも味わいがあるが経済の方でも味わいが)のですが、2023年度の成長率見通しって、よくよく見ると、

1.5%=4票(上振れ1、下振れ3)
1.4%=1票(中立1)
1.3%=2票(中立1、下振れ1)
1.1%=1票(中立1)
1.0%=1票(上振れ1)

となっていまして、実は票の中で一番多いのは1.5%なのですが、中央値を取るというマジックにより1.4%に下がっているというのがあります。更に鏡(概要)の説明だと、

『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2023 年度は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。』(「概要」部分より)

となっているのですが、実は「下振れ」を見通しリスクに入れている人って1.4%よりも上の札を入れた人が殆どになっていて、プロットでだしたものと、出てきている文章のニュアンスが違っているんですよね。

でもってプロットの細かい所は中々注目されませんから、2023年度見通しに関しては数字の+1.4という前回対比▲0.3の数字と「下振れリスクが大きい」というのに目が行ってしまい、つまりは金融政策に関しては現状維持バイアスを強く示すような書き方になっているのですが、今までウダウダ申し上げましたように、2023年度の見通しをさげた主因にされている個人消費の先行きに関して背景をみれば強い話ばっかりだし、成長の下振れリスクと言ってるけど、上の数字出してる人が下振れリスクと言ってるだけで、上振れリスクも2名いる訳で、「下振れリスクの方が大きい」と書くほど下振れリスクが大きいような状況かよ、というようなお話な訳です(まあどうせリスクは海外下振れっていう話をするんでしょうけれども)。


でですね、展望レポート基本的見解って基本的にこれ決定会合議決事項で、まあ中の細かい所までごちゃごちゃと話をするのかはさて置いても、最初の鏡(概要)の部分に関してはちゃんと議論をしている筈なので、まあこの「今年度の経済は下振れリスクの方が大きい」ってのはそういう決めだったんでしょうけれども、実はこの後に出て来る物価見通しの下振れ強調も含めまして、「政策維持バイアスを掛けるために鉛筆舐めてませんかね」というのが非常にこうツッコミを入れたくなる所存な訳ですよ。という事で物価見通しに参ります。


・物価見通しも色々とおかしいんですが・・・・・・

まずは全体像。

コアCPI

2023年度:+1.7 〜 +2.0<+1.8>  前回+1.6 〜 +1.8<+1.6>
2024年度:+1.8 〜 +2.1<+2.0>  前回+1.8 〜 +1.9<+1.8>
2025年度:+1.6 〜 +1.9<+1.6>

コアコアCPI

2023年度:+2.5 〜 +2.7<+2.5>  前回+1.7 〜 +1.9<+1.8>
2024年度:+1.5 〜 +1.8<+1.7>  前回+1.5 〜 +1.8<+1.6>
2025年度:+1.8 〜 +2.0<+1.8>


・(その1)コアCPIの四半期展開出してくれませんかねえ

コアCPI

2023年度:+1.7 〜 +2.0<+1.8>  前回+1.6 〜 +1.8<+1.6>
2024年度:+1.8 〜 +2.1<+2.0>  前回+1.8 〜 +1.9<+1.8>
2025年度:+1.6 〜 +1.9<+1.6>


ご案内のように
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
東京都区部 2023年(令和5年)4月分(中旬速報値)

◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として105.1
前年同月比は3.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.8
前年同月比は3.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.5%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.1
前年同月比は3.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.6%の上昇

(この部分直上URL先の4/28公表東京都区部4月消費者物価指数より)

という今回もまた驚異の上振れ数値が公表されておりまして、どっからどう見ても4月の全国CPIってコア3%台半ばくらい、コアコア4%乗せくらいからスタートすると思うのですが、何をどうすると年度平均でコアが1.8%で収まるのかが訳分らんのでありまして、これって年度後半に相当の落ち込みを見ないと+1.8とかに成らんと思うのだが、どういう四半期展開になるのかと小一時間問い詰めたいし、24年度+2.0は良いんだけど、23年度+1.8%にするための四半期展開を考えたら、24年度の発射台が低くなる筈で、その低い発射台から始まって24年度2%とすると、今度は25年度の+1.6ってどういう四半期展開になるんだ・・・・・・・・・・

ということでですね、こんなんどっからどう見たって23年度年度平均+2.0%以上で出しておかないと見通しを四半期に展開だしたら滅茶苦茶アクロバットな推移しないとこの数字にならんじゃろと思うのですけれども、どうせ日銀に聞いてもこれは「各政策委員の中央値を取ったもので一本の見通しに沿ったものではありませんから四半期展開のようなものは存在しません」っていう説明になるんでしょうが、それにしても足もとのCPIを起点にして四半期展開を考えるとかなりのアクロバット推移が必要になります。


・(その2)エネルギー寄与だけで「年度平均▲0.7%」の押し下げとは????

コアCPI
2023年度:+1.7 〜 +2.0<+1.8>
コアコアCPI
2023年度:+2.5 〜 +2.7<+2.5>

2023年度の見通し、コアとコアコアで今回0.7%ポイントも差がついているのですが、コアとコアコアの差って「消費者物価指数(除く生鮮食品)」と「消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)」なのですから、明らかにエネルギーの寄与分だけでの差分になる訳です。

でですね、エネルギーだけで瞬間芸ではなくて「年度平均で」0.7%も押し下げるってどういう下げをするとそんだけ下がるのかという話でありまして、確かに3月全国(https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf)を見ますとコアとコアコアの差って0.7%ポイントあるのですが、年度を通してずーっとこの寄与で行く、という見通しなのは資源価格の相当な下げでも見てるのか(政府のエネルギー価格高騰補助政策を織り込むにしても、現時点で決まっていない部分まで織り込む、というのはお作法に無い)とか、色々とこの前提に無理があるようにしか見えませんし、大体からして2月CPIから前年度効果剥落するじゃろと思う訳で、何でこんなに差を出しているのかが訳分らんですよね。


・(その3)2025年度見通しにも違和感がありますが

コアCPI
2025年度:+1.6 〜 +1.9<+1.6>

鏡の方を見ますと、

『リスクバランスをみると、(途中割愛)物価の見通しについては、2023 年度は上振れリスクの方が大きいが、2025 年度は下振れリスクの方が大きい。』

となっています。12ページで内訳をみますと

2.0%=1票(中立1)
1.9%=1票(中立1)
1.8%=2票(中立1、上振れ1)
1.6%=4票(中立2、下振れ2)
1.4%=1票(下振れ1)

となっていまして、これ確かに中央値マジックで+1.6%になっているのですが、1.8-2.0%に4人の票が入っていて、しかもこの人達のリスク認識中立から上振れになっておりまして、1.4%下振れとかいうだったら追加緩和提案しろやヴォケというような変態票のお蔭で目出度く??+1.6になっているのですが、これ一歩違えば2025年度+1.8で出てきても全くおかしくなかったという見通しになっております。

しかもリスクバランスが上記のように「下振れリスクの方が大きい」ということですが、そもそも2025年度のプロットを見れば「中立」の圧勝状態な訳で、中立の方が多いだろうという話もありますし、中央値の1.6%が全体の見通しの算術平均よりも下に位置しているのに、中央値マジックで低めの数字をだしておいて、更に「下振れリスク」が大きい、というのもこれまたプロットされているものと表現の間に謎の違和感がある訳ですよ。

でまあ何度も背景についての個人の感想ですは書いたから以下皆まで言わなくてもお分かりだとは思いますが、ここでも「政策変更を連想させる表現を出さないようにするために可能な限り表現を盛る(経済物価が悪い方に盛るんですが)」というプレイをしておりまして、ナンジャコリャという違和感が見れば見るほど高まる、という物件に仕上がっています。


〇つまりは「現状維持バイアスを強調したい」というのが今回の決定会合であるということですが植田よお前もかという感じですね

・・・・・・てなわけで、今回「現状維持バイアスをやたら強調している」というのが声明文における謎のガイダンス変更や、不自然な出来上がりになっている展望レポートで示されたということです。

いやー植田総裁になったらちゃんと「エビデンスに基づいた金融政策」に方向転換して「経済物価情勢の見通しをベースにして金融政策運営を行う」というのを全力で期待してたので、このアカラサマな「政策を現状維持するからそれに沿った展望レポートを作る」というプレイを見て、何だ植田も所詮こんなもんかやっぱり夜の帝王だっただけにただの俗物かよという失望感が強くて、いやまあYCCの長期ターゲット云々のチキンもがっかりとは言え、それ自体はまあチキンだから仕方ないよね後でションベンチビっても知らねえよという感じなんですが、展望レポートが政策忖度あるいは追随型になっているのが変わらん、というのがもう泣けてくるわと思いました。まあプロットの方が少しだけマシになったような気がせんでもないのだけはちょっと明るい兆候カモしれません。