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2023/07/31

ということで、以下本日はクッソ長いダンダラになって恐縮ですがお送りします。

しかしまあ何ですな、植田日銀って立ち上がり慎重に入ったと言えば聞こえが良いですが、初回いきなり連続四球を出して三番森友四番頓宮五番ラオウを迎えて自滅コースかと思ったのですが、とりあえず森友哉を抑えることに成功しましたなと言った風情でございまして(ナンジャソラ)、何はともあれまずは一息ですが、まだ頓宮とラオウが待ってますからね〜っと。


2023/07/29(土曜日臨時更新)

お題「ラストチャンスに間に合った正常化への第一歩の第一歩!!!!!」

はい、ご案内の通りですので本日は月曜まで待ってられませんのでウッキウキで土曜日から更新させて頂きますし、さっきから手のひらをクルクルし過ぎて手首がもげそうでございますわよいやー良かったよかった。


〇YCCの柔軟化となっているがどう見てもYCC撤廃の前段階です本当にありがとうございました

今回の声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230728a.pdf

・柔軟化に至った判断についての説明だが重大なポイントは「不確実性の内容の変化」

項番1は柔軟化しました、ということでその点と判断に至った流れみたいなのを説明しています。

『1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長短金利操作の運用を柔軟化することを決定した。』

と決定した事を示した後、

『わが国の物価情勢を展望すると、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、』

とあるので次はお察しの通りで「金融緩和の継続ダイジダイジネー」となる訳でして、

『「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。』

もうそんなに必要ないんとチャイマスカ、という気もしますが、まあこれは相変わらずこういう思想なので致し方なし。

『そうした中、経済・物価を巡る不確実性がきわめて高いことに鑑みると、』

さて、この「経済・物価を巡る不確実性がきわめて高いことに鑑みると」なのですが、4月以降の植田総裁による情報発信においては、この不確実性が極めて高いというのは「下振れリスクが極めて高い」とほぼ同義の使い方をしていた(ようにしか見えない使い方をしていた)訳でして、この「不確実性が極めて高い」というのは政策修正をしないための言い訳としてワークしていたんですね。

ですから、これまでの植田総裁の文脈で言えば上記文言に続くのは「現状維持」だった筈なんですが、今回は皆様ご案内の通り、

『長短金利操作の運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応していくことで、』

ということで、「上のリスク」というのが出てきました。これに関しては後で展望レポート基本的見解を詳しく見ていく(今回からやっと詳しく見ていく気になってくれる展望レポートに戻ってきた感が強いので本日は後程ノリノリで追加バージョンをぶっこむ所存)のですが、今回の展望レポートって見通しの数字は何だかなーというのはあるのですが、特に本文中に記載されている経済の色々なパーツにおける状況の好転をこれでもかと記載していまして、特に物価に関する上振れの部分は目立つようになっていまして、この「物価の上振れ」がしらっと「不確実性」に練り込まれてきたんですね。

ということはどういうことかと申しますと、少なくともMPM前の時点で植田総裁が言ってた「不確実性がきわめて高い」と今後日銀が情報発信する際に言ってくるであろう「不確実性がきわめて高い」は文言は同じなのですが言っている内容が違う、という日銀文学の粋を極めた言葉のマジックショーが展開されているのですよ、これは結構見事なイリュージョンですわ。

『この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることが適当である。長短金利操作、資産買入れ方針については以下のとおりとする。』



・プラマイ50はあっさり味でかつての80兆円化してしまいますねこれは

『長短金利操作、資産買入れ方針については以下のとおりとする。』ってことで出ていますが、これはまあ出た瞬間になんだなんだとなってしまう日銀独特のインチキ文学になっているので、それはまあ市場も混乱するわな。


『(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)

@次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする(全員一致)。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。』

ここは同じなので日銀的に言うと今回の措置は「金融政策は変更していない」という扱いになる訳ですな。

『A長短金利操作の運用(賛成8反対1)(注)

長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。』

プラマイ50を変えないで「より柔軟に運用」って何をするのかと思えば・・・・・・・・・

『10 年物国債金利について 1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する1。』

ということで「毎日指値オペ」のオペ金利が0.5%から1%になったという事ですので、これはつまり0.5%水準では厳格に止めませんよという意味ですね。

・・・・・・日経の例のスクープが出た時は毎日指値を100bpまで一気に戦線後退させるとはちょっと思っていなくて、寧ろ徐々に指値の水準を上げる、みたいな遅滞戦闘を行いながらの退却戦を実施するのかと思っていたのですが、戦線を50キロ思い切って下げるみたいなプレイをしてくるのは思ったよりもやるじゃん、と思う訳ですわ。

『上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。』

ということですが、毎日指値オペという強力な陣地を前線から一気に50キロメートル退却させて、その途中では遅滞戦闘を機動的に行う、という風になっておりますが、そうなると50で強力に止めに行くことないよね、と思ったら早速後場10年50陣地を突破しましたが別に自然体で対応していたので、まあ常識的に考えたら50に押し返しに突如大部隊(臨時輪番)を入れるとかそういうのを月曜にやってくるとは思えません。まあオペ部隊はオペ部隊で今まで散々暴虐行為を行っているのでいきなり月曜に変な事するかもしれませんけど、会見での総裁の説明とか(これは月曜に要旨が出るから火曜にネタにします)聞いてると、投機筋軍団が無理矢理突破しに行く場合は強力な機甲師団や航空兵力を投入して機動防御を行うけど、普段は従来の国債買入を継続してあとは市場が経済物価のファンダメンタルズに沿って価格形成すれば無問題、というスタンスで、ただし1%の所に玉門関があって、その先の西域旅行はダメ!ゼッタイ!!ってなもんになっている、というお前はもうちょっと真面目に説明しろと言われそうなイメージ図を書いてみました。

つまり50bpはお飾りではあるのですが、「80兆円」を形骸化した時と同じで、最初の時点でいきなりこれを削除してしまうと、円債以外の市場の皆様にとってみると「50bpが無くなった!」ということで大騒ぎになるので目晦ましをしましょうってなもんで、これまた日銀のよくやる手法。80兆円に関しても時間の経過と共に風化して、最後はコロナショックのどさくさに紛れて削除していましたが、これも実際の10年金利が0.5%を超えた水準で推移(乱高下されると困るけど安定的に金利が形成されるならば、というのが前提ですが)していく中で、だんだん0.5%の意味もなくなって来るので、あってもなくても同じって風化していくのを待って行く、という感じになるんじゃないでしょうか、と思いました。


長期国債以外の買入にも変化はないですが、折角なので一応引用しますね。

『(2)資産買入れ方針(全員一致)

長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

@ETFおよびJ−REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。

ACP等は、約2兆円の残高を維持する。社債等は、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へと徐々に戻していく。ただし、社債等の買入れ残高の調整は、社債の発行環境に十分配慮して進めることとする。』

ここは変化なく、決定会合後に出ていたCP社債買入に関するオペ紙でも著変は見られなかったです。


・わざわざ「行くとは思わないけど1%に指すよ」と書いているのはお茶吹きそうになりました

(再掲)『10 年物国債金利について 1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する1。』の脚注が、

『1 現在の金利情勢のもとでは応札は見込まれないと考えられるが、当分の間、毎営業日、実施する。』

ってありまして、従来の0.5%の毎日指値オペが「明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。」(6月決定会合声明文より)となっていた割には明らかに応札が見込めないのに毎日指値オペを打つ、というプレイを演じていたのですが、やっぱりあれはやってて恥ずかしかったので、今回こういう文言をいれたんだろうなあ、と思いました。


あと、中村審議委員の反対というのもあるのですがそれは後に回しまして項番2の背景説明っぽい部分に入ります。


・YCC導入当初のロジックへの回帰と「将来発生するリスクのある副作用のプリエンティブな対応」

項番2はもうちょっと大きな背景説明になっています。

『2.海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』

この「不確実性は極めて高い」ですが、よく見ますとここにしれっと「企業の賃金・価格設定行動」というのがあります。これは展望レポート基本的見解の鏡(概要)や本文にも記載されていますが、この企業行動に関して言えばどこからどう見ても「物価の上振れ要因」としての性質が強いものでございます。

ついでに言えば海外の経済動向にしたって、(これまた後でやりますが)前回の展望レポートでの海外リスク要因として示していた欧米金融機関問題に関する記述をバッサリ削除していまして、4月の時よりは下振れ要因減っていますし、実はこの「不確実性は極めて高い」が示す内容が変化しているというのは先ほども申し上げた通りです。

でもって大事なのは次の2パラですね。

『わが国の物価は、4月の展望レポートの見通しを上回って推移しており、本年の春季労使交渉などを背景に、賃金上昇率は高まっている。企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが窺われ、予想物価上昇率も再び上昇する動きがみられる。』

展望レポートの先行き2024年度以降の数字はそんなに変わっていませんが、この説明にある内容もそうですし、展望レポート基本的見解の中の記述を見ても分かりますが、定性的にみたらエライ今回強気化しているんですよ。まあその前も展望レポートの本文は割と強い事書いてあったんですが、今回は特にもうキレッキレのツエツエバエ状態でそらもう大変なもんですわよ奥様ってなもんです。

とまあそういう状況を背景にした次の説明ダイジダイジネーと私は思うのですが、

『今後も上振れ方向の動きが続く場合には、実質金利の低下によって金融緩和効果が強まる一方、長期金利の上限を厳格に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場におけるボラティリティに影響が生じるおそれがある。長短金利操作の運用の柔軟化によって、こうした動きを和らげることが期待される。』

つまりどういうことかというと、「経済物価情勢が一段と好転してきた場合に、経済物価のファンメタに沿った金利上昇圧力が高まり、その結果市場が上限金利に貼りついてしまうような状況になると、そこでさまざまな副作用が出てきますよ」という話です。

この考えは元々YCC導入した時の「均衡イールドカーブ」論にかなり近い(必ずしも一致しない)ものがありまして、YCCの元の発想は「均衡イールドカーブに対して実際のイールドカーブが下方シフト(金利低下)していれば金融緩和効果が得られるが、下方シフトしすぎると金融緩和効果の拡大効果が逓減する中で副作用が徐々に拡大してくるので、下げ過ぎれば良いってもんじゃない」という話に通じている訳でございますわよ。

すなわち、経済物価情勢が上振れて推移すれば均衡イールドカーブが上方シフトするので、同じ金利水準であれば金融緩和効果が高まる一方で副作用の拡大の方が大きくなるリスクが発生する。よって従来の水準で有無を言わせず金利を抑えつける問題が発生する「前に」先回りして抑えつけ水準を引き上げておきましょう、って話ですよね。

ということでさっき訳の分からん陣地の例えをしましたが、「経済物価情勢が上振れた場合に備えて事前に予防的な対応で金利防衛ラインを下げました」ということですので、これは植田さんが就任当初に言っていた「フォワードルッキングに対応」というのにも通じていまして、おやおや植田総裁が植田先生に戻ってきたのかな、と思わせるロジックになっているんですよね。

でまあ総裁会見でも説明ありましたが、こういうロジックで来るのであれば、普通は月曜に「昨日の10年の引けで0.5%突破したから臨時輪番や指値入れるぞい」とはならない筈(ただし金融市場局も昨年12月以降のこの世のものとは思えない狂気の買入や掟破りのSLFスクイーズなどの華麗な実績があるだけに油断はできませんけどね)となりますわな。

『一方、グローバルな金融環境のタイト化が海外経済に及ぼす影響を含め、わが国経済・物価の下振れリスクも高い。下振れリスクが顕在化した場合には、長短金利操作の枠組みのもとで、長期金利が低下することで、緩和効果が維持されることになる。』

まあこれはとって付けたような言い訳で、下振れがガチで気になるんだったらそもそも拡大は不要なのでありまして、ただまあこういってバランス取っておかないと変に読まれるからこれはこうなるかなと。


・ところでオーバーシュート型コミットメントって何で「達成しました」にしないのよ

項番3はいつものガイダンス文言

『日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』

『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』

いやあのですね、別にMBを今から積極的に減らせとかそこまで言うつもりは無いんですけど、今回の展望レポートで遂に「今年度後半に物価上昇率が2%を割って鈍化する」ってのも外して今年度見通しを+2.5%にしたんですから、これはどっからどう見ても昨年度から始まって2年間もコアCPIが+2%を超えて推移している状態なんですよね。

であれば「コミットメント」に関しては「達成」ということにして頂かないと、今後日銀が出すコミットメントも達成しているのに達成していないことにしちゃうんじゃないの、ってな認識になってしまって、将来におけるコミットメント政策の有効性を低下させると思うんですよ。

今の調子で国債買入をしていると「結果的に」MBが拡大するとは思うのですが(暫くちゃんと計算してなかったけど政策がやっとまともな方向に行きだしているのでこういうの真面目に計算を再開しますよ)、それと「コミットメント」は別問題なんだよなー、と思うのでした。



〇さてこの決定植田さんは「主演男優賞のアカデミー賞役者」なのか「主君押込を食らった殿様」なのか・・・・・????

・直前までのハトハト情報発信と一切整合性が取れないのですが・・・・・・・・・・・

今回の決定はアタクシとしては(月曜から馬鹿買入して一気に台無しになるリスクがあるのでまだ決め打ちは出来ませんが)手を打つのが遅かったとはいえ、最後ギリギリで発車間際の列車に乗れて、これで列車はまともな方向に向かっていくでしょう、ということで高評価するのにやぶさかではないので、日銀に対して昨日というか一昨日までの悪態からテノヒラクルーとなっておるのは言うまでもありません(なお月曜のオペで再度クルーするかもしれません)


ここで問題になるのは植田さんでして、5月19日の衝撃の内外情勢調査会講演以降のやたらめったらハト派バイアスを掛けた情報発信と今回のYCC柔軟化の落差が激しすぎて、どうなっちゃってるのよというのがあります。

植田さんは元々はYCCにもマイナス金利にも否定寄りの主張をしていた訳ですので、ここまでのハトハト植田はあくまでも「長期金利ターゲットの変更を事前に織り込ますのができないというか危険」というのを重々承知の上(植田さんそこは分かっている筈)で、偽装工作としてハト派を演じることによって、7月の政策修正に事前に過度な盛り上がりを起こさせない、というのを狙ってたとするならアカデミー賞主演男優賞にもほどがある訳で、これは名優植田先生ということで、べつに前の悪態を撤回はしない(だって演技とは言えあの発言はあり得んもん)ですけど、名優の見事なパフォーマンスに踊らされちゃいましてテペヘロってなもんでありますので、手のひらはしっかりクルーして今後の正常化論議の進展に期待したい訳ですな。

しかしながら、5月の内外情勢以降のハトハト情報発信がガチ、ということになりますとこれはまた全然話が違ってくるわけで、その前に神田財務官が物凄い勢いで「基調的な物価」とか思いっきり金融政策がらみの発言をぶっこんできている上に、7月頭の内田副総裁による日経新聞等のインタビュー、ときますと、これはどう見ても「令和の主君押込」という面白事案が発生し、植田総裁は床の間に棚上げになって木彫りの熊だか博多人形だか何だか知りませんけど、前代未聞の就任3か月で置物総裁という恐ろしい事案に発展している、という大層なおそロシア事案な訳ですよ。


・総裁会見でスタンス豹変の質疑は無かった(と思う)

不肖このアタクシ、総裁会見さすがに今回はちゃんと聞いていたのですが、途中ちょっとそれどころじゃなくて見てない部分があるのですが、恐らく「5月19日以降のお前の講演と話が違うじゃないか」という質問ってなかったと思うのよね。よって植田総裁の口からはその点に関する言及が残念ながら無かったように見受けられます。ってまあ主君押込を認めるでも、いままでのは嘘だったぴょーんでも問題になるから聞かれたら逃げるのかもしれませんが。

でまあその代わりに会見での植田総裁の様子を見ようと思いまして、「本人の意に沿わない決定をしている」という顔をしているかどうかをみようと思ったんですよね。

・・・・・・・・・・・・うーん判断がムツカシイ、と思ったのは会見の最初の辺りでは6月会見の時以上にカンペをペラペラめくりながら口を開けばなんかアワアワというかたどたどしい感じでの説明になっていて、またまた精彩を欠く感じになっていてこれは主君押込からの座敷牢からお送りする記者会見かと思っていたのですが、中盤以降は結構立て直してきた感がありまして、カンペペラペラもあまりなくて、ご自身の言葉で説明しておられる、という感じでシャキッとしていまして、なんか就任前の颯爽とした姿とまでは行かないですが、でも植田先生らしい感じになっていました。(個人の感想です)

とまあそんな状況だったので、こりゃどっちだか判断付かんという感じですね・・・・・・・・・・


・中村審議委員の「何だテメエ聞いてねえぞ」的なランボー怒りの反対が入ったのは何だったのかと

『A長短金利操作の運用(賛成8反対1)(注)』

『注)賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員。反対:中村委員。中村委員は、長短金利操作の運用の柔軟化については賛成であるが、法人企業統計等で企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましいとして反対した。』

中村審議委員がランボー怒りの反対をぶっこんでいます。これがまた味わいがあって、今回なんせ6月のハトハト決定に対してオセロひっくり返ったようにひっくり返っている訳で、たぶんもともと修正すべき派とお見受けされる田村審議委員はさておき、それ以外のポンコツ連中からしたら何で今回いきなり君子豹変ジャガーチェンジするんだよどうなってるんだよという話になる訳で、まあポンコツだから仕方ないと言ってしまえばそれまでですが、何をもって中村さんと田村さん以外はあっさり賛成してるんだよと思う訳ですよ。

でですね、この中村さんの「聞いてねえよテメエ」という反対が入るっていうことはですよ、これ植田さんが偽装工作を「敵を騙すにはまず味方から」で中村さんも引っ掛かっていたのかもしれないですし、そうじゃなくて突然の主君押込に賛成できるかコノヤローとぶっこんできたのか、まあこの反対というのも何か唐突感がありますな。

しかしですね、反対するのはまあ骨があって良いんですけど、「法人企業統計等で企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで行う方が望ましい」って全然理由になってないというか、いやそうじゃなくてインフレ期待の上昇をもっと確認するとか、経済情勢をもっと確認するとか、そういう話だろと思うのですが、なぜこの理由は「企業の稼ぐ力」とかエライ狭い話になっているのかということで、まあ何せ中村さんは「給与が増えないなら投資信託を買えば良いじゃないか」のマリーアントワネット理論を堂々とぶっこんでこられるという結構なオモシロおじさんですので、まあ平常運転ちゃあ平常運転なんですが、せめてもう少しマシな反対理由をだしてほしかったです。


ということで、植田さんが今まで行ってたのは偽装工作のうそぴょーんだったのか、足元で令和の主君押込事案が発生して事実上の座敷牢送りになっているのかは、まあどうせ展望の後なので総裁か副総裁の講演はありますし、8月末にはジャクソンホールだってあるし、まあどこかでその片鱗を探る機会はあるかなとは思いました。


あとで展望レポートシリーズを投下します。とりあえずはここで一段落。


〇猫ダマシの輪番レンジ拡大クソワロタ(こちらは月曜の朝に書いたのですが構成上土曜の中に入れますね)

決定会合の結果出た瞬間謎に乱高下したのって、「0%なんだけどぷらまい0.5%なんだけど1.0%」という訳の分からん日銀文学政策決定に加えて、ヘッドラインで「中長期国債の買入レンジを拡大」ってのが出てたからなんですけど・・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230728b.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定
(2023年7〜9月)[一部変更]

・・・・・・・確かに「レンジ拡大」しているのですが、よくよく見ると拡大した中期後半、長期に関しては

中期後半:4250-7250→4500-7500
長期:4750-8750→4500-9000

ということで、上下に250億円だけ増やした、というこれはどう見ても猫ダマシです本当にありがとうございました、という内容でして、まあこれも「中長期国債の買入レンジを拡大」とヘッドラインを打たせようという良く言えば激変緩和措置、悪く言えば小手先の小細工が仕込まれていまして、まあ何ちゅうか笑いました。

ちな前回は
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230630c.pdf
です。



お題「決定会合レビュー:基本的見解の記載が無茶苦茶つよいんですよねー」

ということで一休みして第2弾。

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2307a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2304a.pdf(前回4月)

〇見通し数字は手前だけ物価を上げるという無理矢理スキームですが・・・・・・・・

まずは10pの『(参考)2023〜2025 年度の政策委員の大勢見通し』ですが・・・・・・・

実質GDP
2023年度:(前回)+1.1 〜 +1.5<+1.4>⇒(今回)+1.2 〜 +1.5<+1.3>
2024年度:(前回)+1.0 〜 +1.3<+1.2>⇒(今回)+1.0 〜 +1.3<+1.2>
2025年度:(前回)+1.0 〜 +1.1<+1.0>⇒(今回)+1.0 〜 +1.2<+1.0>

中心地を見ると変わらんのですが、一応全体の分布をみると気持ち程度上方シフトになっているのですが、鏡の説明を見るとこの2025年度に相当する部分の表現が大きく変わっているのですよね。

コアCPI
2023年度:(前回)+1.7 〜 +2.0<+1.8>⇒(今回)+2.4 〜 +2.7<+2.5>
2024年度:(前回)+1.8 〜 +2.1<+2.0>⇒(今回)+1.8 〜 +2.2<+1.9>
2025年度:(前回)+1.6 〜 +1.9<+1.6>⇒(今回)+1.6 〜 +2.0<+1.6>

24年度を1.8にしてこなくて「ほぼ2%」の1.9に置いてきたのは少々意外(完全に政策逆算発想ですけどね!!)でしたし、25年度の見通しも実は2%の人がいますので、全体的に内容は強めなんですけど、中心値マジックによってこんな感じになっている、というのはあると思います。

しかも24年度って1.8と1.9で5人いるから1.9ではあるものの、その次のプロットって2.0をすっ飛ばして2.1と2.2が各2名になっているし、この4名のうち3名が上振れアリ、ってしているので、数字上出ている1.9よりも結構強い内訳で、これは実質2.0と言ってもおかしくないんですよね。

コアコアCPI
2023年度:(前回)+2.5 〜 +2.7<+2.5>⇒(今回)+3.1 〜 +3.3<+3.2>
2024年度:(前回)+1.5 〜 +1.8<+1.7>⇒(今回)+1.5 〜 +2.0<+1.7>
2025年度:(前回)+1.8 〜 +2.0<+1.8>⇒(今回)+1.8 〜 +2.2<+1.8>

このコアコアの数字が結構な謎でして、手前を上げて先行きを前回対比横這いで置いたらこうなった、という感じなんでしょうけれども、元々コアコアって何で出すようになったかというと「こっちの方がより基調を表す」とか何とか言って(実際には2022年春の段階でコアCPIがバンバン上がってしまって、コアCPIだけ見通しに入れてると「2%達成で出口」という話になるので、その時点で上がっていなかったコアコアを持ち出して目くらまししたら1年でブーメランになるという身から出た錆にも程がある流れなんですけどね)入れてきたコアコアの年度別展開、さすがに2023年度⇒2024年度で1.5%ポイントも伸び率が下がってしまうのって、どういう理由だよという話になってしまいますよね。

まあこれを無理矢理こじつければ、前回対比で2023年度の物価見通しを引き上げたのは全て一時的なコストプッシュ要因なので、これは2024年度に全部剥落する、だから1.5もさがるんですよ、ということになりますわな。

ということはですね、2023年度の上方修正がコストプッシュ以外の要因もある、ということになってくれば、あるいは今後コストプッシュだけで説明できない物価上昇が来る、ということになりますと、2024年度、2025年度の上方修正待ったなし、ということになりますし、そもそも2023年度ってコストプッシュだけじゃない物価上昇あるだろという事を考えますと、これは早くも10月展望での上方修正が見えてきましたな、というイメージを持ちましたがどうでしょうか???


〇鏡(概要)部分を見るとそんなに派手な上方修正に見えないのですが・・・・・・・・

では1ページに戻って<概要>といういわゆる「鏡」の部分。1ポツから順に行きます。

1ポツは経済の見通し

『日本経済の先行きを展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『日本経済の先行きを展望すると、今年度半ば頃にかけては、既往の資源高や海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかに回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、見通し期間終盤にかけて、成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い。』(前回4月)

こちらは「今年度半ば頃にかけて」「その後」という分け方になっていたものが、「当面」「その後」になっています。この説明ですが、まず手前の部分では「既往の資源高(による下押し圧力)」という表現を削除しております。また回復を「続ける」になったのは、後でご紹介しますが現状判断を「回復」に引き上げた影響です。

でもって「その後」なのですが、今回なんとしれっと「見通し期間終盤にかけて、成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い」という如何にも先行きの自信がありませんわという表現を鏡の方だけバッサリ削除しているんですよね。あとで出てきますが、本文の方ではこの表現が残っていて、なんでこっちだけ削除したのか割と意味不明、単に威勢良く見せようということなのかとは思うのですが。


2ポツ目は物価の見通し

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小したあと、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(今回)

『物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとで、今年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の価格・賃金設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、振れを伴いながらも、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(前回4月)

「振れを伴いながらも」という変なヘッジクローズが削除された以外って書いてあること同じなんですけれども、物価に関しては本文の方を見るとエライ勢いで上振れの可能性を挙げているのが分かると思います。


3ポツ目は前回との比較

『前回の見通しと比べると、成長率については概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁が想定を上回って進んでいることなどから、2023 年度は大幅に上振れているが、2024 年度と2025 年度は概ね不変である。』(今回)

『2024 年度までの見通しを前回の見通しと比べると、成長率については、2022 年度と2023 年度は、個人消費を中心に下振れているが、2024 年度は概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比については、賃金の上振れなどから、2023 年度、2024年度ともに幾分上振れている。』(前回4月)

まあここは前回と比較する意味あんまり無いのですが、「既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁が想定を上回って進んでいることなど」で0.7%ポイントも引き上げとは恥ずかしいってねもんです。


4ポツ目はリスク要因

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回)
『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(前回4月)

今回ウクライナが外れた一方で「企業の賃金・価格設定行動」というモロに物価上振れ要因がでてきまして、リスク要因の「不確実性はきわめて高い」にしれっと物価上昇リスク要因が混ぜ混ぜされているというのが特徴ですな。

5ポツ目はリスクバランス

『 リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2023 年度は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2023 年度と2024 年度は上振れリスクの方が大きい。』(今回)
『リスクバランスをみると、経済の見通しについては、2023 年度は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2023 年度は上振れリスクの方が大きいが、2025 年度は下振れリスクの方が大きい。』(前回4月)

これ謎なのは何で2025年度の物価のリスクについて書いてないのって所です。見た感じバランスだと思うのですが、バランスならバランスって書いた方が変な憶測を招かないと思うんですが。



〇現状認識部分がいろんなところで引き上げになっていて強すぎワロリンチョ

2pの『1.わが国の経済・物価の現状 』に参ります。

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、既往の資源高の影響などを受けつつも、持ち直している。』(前回4月)

ヘッジクローズが無くなったうえに「持ち直し」→「回復」なので上方修正です。

『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。』(前回4月)

同じですね。

『企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は緩やかに改善している。』(今回)
『企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は横ばいとなっている。』(前回4月)

業況感(は短観連動ですが)が上方修正です。

『こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加している。』(今回)
『こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加している。』(前回4月)

同じですな。

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。』(今回)
『雇用・所得環境は、全体として緩やかに改善している。』(前回4月)

雇用・所得環境について「全体として」というヘッジクローズが無くなったので上方修正。

『個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は緩やかに増加している。』(今回)
『個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかに増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(前回4月)

個人消費の所に「着実に」増加していると「着実に」が加わっているのでこれまた上方修正。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。』(前回4月)

金融環境もゴテゴテとしたヘッジクローズが全部なくなり上方修正。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、再び上昇の動きがみられている。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは3%程度となっている。予想物価上昇率は、上昇したあと、このところ横ばいとなっている。』(前回4月)

でもって予想物価上昇率の上昇について言及、とまあ上方修正のオンパレードとなっています。


〇先行き経済見通し「当面」はやたらめったら上方修正

『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し 』の『(1)経済の中心的な見通し』に参ります。

『当面のわが国経済を展望すると、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果などにも支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる』(今回)
『わが国経済の先行きを展望すると、今年度半ば頃にかけては、既往の資源高や海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果などにも支えられて、緩やかに回復していくとみられる。』(前回4月)

ここは先ほど鏡の所でも触れた通りで期間が「当面」「その先」という切り方に変更になっています。でもって書いてあることは前回と今回、まあ基本言ってること変わらないですね。この後が部門別の見通しになります。


・家計部門

『家計部門をみると、経済活動の回復を背景に、雇用が増加していくとみられる。加えて、労働需給の引き締まりや物価上昇を背景に昨年を大幅に上回る結果となった今年の春季労使交渉の結果が徐々に反映されていくことで、一人当たり名目賃金の上昇率も高まっていくことから、雇用者所得は増加を続けると予想される。』(今回)

『家計部門をみると、雇用面では、経済活動の改善を背景に、正規・非正規ともに雇用が増加していくとみられる。加えて、労働需給の引き締まりや物価上昇を反映して賃金上昇率も高まることから、雇用者所得は増加を続けると予想される。』(前回4月)

今回は「労働需給の引き締まりや物価上昇を背景に昨年を大幅に上回る結果となった今年の春季労使交渉の結果が徐々に反映されていくことで、一人当たり名目賃金の上昇率も高まっていくことから」と前回よりも雇用者所得の増加に関する背景説明の部分がエライ強くなっております。


『こうしたもとで、個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、行動制限下で積み上がってきた貯蓄にも支えられたペントアップ需要の顕在化に加え、賃金上昇率の高まりなどを背景としたマインドの改善などに支えられて、緩やかな増加を続けるとみられる。政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策なども、個人消費を下支えすると考えられる。』(今回)

『こうしたもとで、個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、行動制限下で積み上がってきた貯蓄にも支えられたペントアップ需要の顕在化を主因に、緩やかな増加を続けるとみられる。政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策や全国旅行支援なども、個人消費を下支えすると考えられる。』(前回4月)

個人消費についても増加していく根拠として示している部分に「賃金上昇率の高まりなどを背景としたマインドの改善など」というのが入って来まして、これまた賃金上昇ネタでメカニズムが強くなっている、という威勢の良い話になっています。


・企業部門

『企業部門をみると、輸出や生産は、世界的なインフレ圧力や各国中央銀行の利上げの影響などによる海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、供給制約の影響が和らぐことなどから、横ばい圏内で推移するとみられる。』(今回)
『企業部門をみると、輸出や生産は、世界的なインフレ圧力や各国中央銀行の利上げの影響などによる海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、供給制約の影響が和らぐことなどから、横ばい圏内で推移するとみられる。』(前回4月)

『この間、サービス輸出であるインバウンド需要は、増加を続けると予想される。』(今回)
『この間、サービス輸出であるインバウンド需要は、増加を続けると予想される。』(前回4月)

輸出・生産・インバウンドは前回と変わらず。


『企業収益は、経済活動の回復が続くなか、既往の原材料コスト高の影響の減衰や価格転嫁の進展もあって、全体として高水準を維持すると予想される。』(今回)
『企業収益は、既往の原材料コスト高が下押し圧力として作用するものの、経済活動の改善が続くもとで、業種・規模間のばらつきを伴いつつ、全体として高水準を維持すると予想される。』(前回4月)

今回企業収益に「コストプッシュの減衰」「価格転嫁の進展」ってのが入っていて、おまけに「業種・規模間のばらつきを伴いつつ」というヘッジクローズも抜けていて、企業収益の先行き見通しも事実上強くなっているんですよね。

『そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境による下支えに加え、供給制約の影響の緩和もあって、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資を含め、増加を続けると考えられる。』(今回)
『そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境による下支えに加え、供給制約の影響の緩和もあって、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資を含め、増加を続けると考えられる。』(前回4月)

設備投資のこの部分は同じですな。


〇先行き見通し「その先」はあまり変わりません

『その先のわが国経済を展望すると、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、見通し期間終盤にかけて、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくもとで、経済対策の効果の減衰もあって、成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い。』(今回)

『今年度後半以降は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、
わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。ただし、見通し期間終盤にかけて、ペントアップ需要の顕在化による押し上げ圧力が和らいでいくもとで、経済対策の効果の減衰もあって、成長ペースは次第に鈍化していく可能性が高い。』(前回4月)

鏡の所で申しあげました通りで、何故かこっちは「成長ペースは次第に鈍化」云々が残っていて、鏡の方ではカットされているんですよね、割と謎。以下は先ほどと同じで部門別になります。

・家計部門:「雇用者所得の増加」がより前面にでた・・・・・・・のかな??

『家計部門をみると、雇用は増加を続けるが、これまで女性や高齢者の労働参加が相応に進んできたなかで、追加的な労働供給が見込みにくくなってくるため、その増加ペースは徐々に緩やかになっていくと考えられる。もっとも、このことは、景気回復の過程で、労働需給の引き締まりを強める方向に作用する。そのもとで、賃金上昇率は、物価上昇も反映する形で基調的に高まっていくとみられ、雇用者所得は増加を続けると予想される。』(今回)

『家計部門をみると、雇用は増加を続けるが、これまで女性や高齢者の労働参加が相応に進んできたなかで、追加的な労働供給が見込みにくくなってくるため、その増加ペースは徐々に緩やかになっていくと考えられる。もっとも、このことは、景気回復の過程で、労働需給の引き締まりを強める方向に作用する。そのもとで、賃金上昇率は、物価上昇も反映する形で基調的に高まっていくとみられ、雇用者所得は増加を続けると予想される。』(前回4月)

ここは前回と変わらないですね。本来ならここも強くなると思うのですが、まあここを強くしてしまうとそれこそ2%達成で出口政策って話になるからおいそれと強く出来ないというのは分かりますけど。

『個人消費は、ペントアップ需要の顕在化ペースの鈍化や政府の各種施策による下支え効果の減衰によってペースを鈍化させつつも、雇用者所得の増加に支えられて、増加を続けると考えられる。』(今回)
『個人消費は、雇用者所得の増加に支えられて、ペントアップ需要の顕在化ペースの鈍化や政府の各種施策による下支え効果の減衰によってペースを鈍化させつつも、増加を続けると考えられる。』(前回4月)

これ、確かにまあ主語と述語は前回も今回も同じなのですが、語順をいじっているので、今回の方が「雇用者所得の増加に支えれられて(個人消費は)増加を続ける」ってのがスッキリと読みやすくなったように思えます。


・企業部門:全文一致ですね

『企業部門をみると、海外経済が持ち直していくもとで、輸出や生産は増加基調に復していくと考えられる。インバウンド需要も増加を続けると予想される。企業収益は、内外需要が増加し、原材料コスト高による下押し圧力も引き続き和らいでいくことから、改善基調をたどるとみられる。そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境にも支えられて、増加を続けると考えられる。』(今回)

『企業部門をみると、海外経済が持ち直していくもとで、輸出や生産は増加基調に復していくと考えられる。インバウンド需要も増加を続けると予想される。企業収益は、内外需要が増加し、原材料コスト高による下押し圧力も徐々に和らぐことから、改善基調をたどるとみられる。そうしたもとで、設備投資は、緩和的な金融環境にも支えられて、増加を続けると考えられる。』(前回4月)


『見通し期間終盤にかけては、資本ストックの蓄積に伴う循環的な調整圧力を受けるものの、人手不足対応の投資に加え、脱炭素化関連など、景気循環とは独立した投資が着実に増加していくとみられる。』(今回)

『見通し期間終盤にかけては、資本ストックの蓄積に伴う循環的な調整圧力を受けるものの、人手不足対応の投資に加え、脱炭素化関連など、景気循環とは独立した投資が着実に増加していくとみられる。』(前回4月)

ということでこちらは全文一致です。


・公共投資・政府支出:大型案件要因が加わっています

『この間、公共投資は、大型案件の影響もあって、当面、緩やかな増加を続けるとみられる。その後は、そうした影響は徐々に剥落するものの、国土強靱化関連の支出が続くもとで、横ばい圏内で推移すると想定している。政府消費については、感染症関連の支出動向を映じて、いったん減少したあと、医療・介護費の趨勢的な増加を反映し、次第に増加していくと想定している。』(今回)

『この間、公共投資は、国土強靱化関連の支出が続くもとで、見通し期間を通じて横ばい圏内で推移すると想定している。政府消費については、感染症関連の支出動向を映じて、いったん減少したあと、医療・介護費の趨勢的な増加を反映し、次第に増加していくと想定している。』(前回4月)

大型案件要因が加わった以外は特に変化はないです。


・金融環境・潜在成長率は全文一致

『以上の見通しの背景にある金融環境についてみると、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、金融環境は緩和的な状態が続き、民間需要の増加を後押ししていくと想定している2。すなわち、銀行借入やCP・社債発行といった外部資金の調達環境は、先行きも緩和的な状態が維持され、そのもとで、企業の資金繰りも、景気回復の進展に伴い改善傾向をたどるとみられる。』(今回)

『以上の見通しの背景にある金融環境についてみると、日本銀行が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を推進するもとで、金融環境は緩和的な状態が続き、民間需要の増加を後押ししていくと想定している2。すなわち、銀行借入やCP・社債発行といった外部資金の調達環境は、先行きも緩和的な状態が維持され、そのもとで、企業の資金繰りも、景気回復の進展に伴い改善傾向をたどるとみられる。』(前回4月)


『潜在成長率は、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる3。政府による各種の施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(今回)
『潜在成長率は、デジタル化や人的資本投資の進展による生産性の上昇、設備投資の増加による資本ストックの伸びの高まりなどを背景に、緩やかに上昇していくとみられる3。政府による各種の施策や緩和的な金融環境は、こうした動きを後押しすると考えられる。』(前回4月)

全文一致です。


〇物価見通し:上振れ方面の要素が大変に強くなっています

『(2)物価の中心的な見通し 』になります。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小したあと、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、昨年以降、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から上昇してきたが、足もとは、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などにより、プラス幅を縮小している。先行きについては、国際商品市況がひと頃に比べて下落し、輸入物価の前年比もプラス幅を縮小しているもとで、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰していくため、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、今年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していく可能性が高い。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の価格・賃金設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、振れを伴いながらも、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。』(前回4月)

これ、なにがチャーミングと言いまして、文章量の減りっぷりであります。前回と比較してどんだけシンプルになってますねんという話なのですが、まあ要するに今までは2%達成に時間が掛かる(から政策は修正しない)という言い訳のためにどんだけ文言を費やしてきたのか、という話ですよこれは。

でまあこのようにスッキリしてきたというのは、つまりは政策の方で申し上げたように、今回の「YCC柔軟化」が事実上のYCC撤廃に向けた前段階(いきなり撤廃すると他市場が荒れるリスクがあるので)だから、今までと違って物価上がらん連呼をしなくても良くなった(YCC撤廃すれば次は短期金利になり、こっちは織り込ませようとしても変な市場攻撃みたいなのはないのですから無問題という話になるから)のですな。それによって今まで無理して説明していた部分を剥落させてスッキリとなると上記引用の今回分になる訳よ(個人の感想です)。


『こうした見通しを前回の展望レポートにおける見通しと比較すると、2023年度は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁が想定を上回って進んでいることなどから、大幅に上振れている。』(今回)

こちらに該当する記述は4月にはありません。鏡の方では4月分も記載がありましたな。

『消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、原油価格や政府による経済対策に関する前提にも依存する。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品)の見通しは、原油価格や政府による経済対策に関する前提にも依存する。』(前回4月)

以下の部分は今回も特に変更は無い(あったら24年度や25年度の見通しがもっと変わる)ですな。

『原油価格については、先物市場の動向などを参考に、見通し期間終盤にかけて緩やかに低下していく前提としている。政府による電気・ガス代の負担緩和策は、今年度の前半を中心に、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比を押し下げる方向に作用する一方、2024 年度については、その反動から、前年比を押し上げる方向に作用するとみられる。この点、エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比の見通しは、2023 年度に3%程度となったあと、2024 年度と2025 年度は1%台後半となっている。』(今回)

『原油価格については、先物市場の動向などを参考に、見通し期間終盤にかけて緩やかに低下していく前提としている。政府によるガソリン・電気・ガス代の負担緩和策は、今年度の前半を中心に、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比を押し下げる方向に作用する一方、2024 年度については、その反動から、前年比を押し上げる方向に作用するとみられる。この点、エネルギー価格の変動の直接的な影響を受けない消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比の見通しは、2023年度に2%台半ばとなったあと、2024年度と 2025 年度は1%台後半となっている。』(前回4月)


・需給ギャップについて

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、小幅のマイナスとなっている。先行きの需給ギャップは、上記の経済の見通しのもとで、今年度半ば頃にはプラスに転じ、見通し期間終盤にかけて、徐々にペースを鈍化させつつもプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。』(今回)

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、小幅のマイナスとなっている。先行きの需給ギャップは、上記の経済の見通しのもとで、今年度半ば頃にはプラスに転じ、見通し期間終盤にかけて、徐々にペースを鈍化させつつもプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。』(前回4月)

こちらは前回と変化なし。

『こうしたもとで、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み、賃金の上昇圧力は強まっていくと考えられる。このことは、コスト面では人件費の上昇圧力をもたらすとともに、家計の購買力の増加に寄与するとみられる』(今回)
『こうしたもとで、女性や高齢者による労働参加の増加ペースの鈍化もあって、労働需給の引き締まりは進み、賃金の上昇圧力は強まっていくと考えられる。このことは、コスト面では人件費の上昇圧力をもたらすとともに、家計の購買力の増加に寄与するとみられる。』(前回4月)

ということで労働需給ギャップに関しても記述は同じです。


・期待インフレ率について

『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、再び上昇の動きがみられている。』(今回)
『次に、中長期的な予想物価上昇率をみると、緩やかに上昇したあと、このところ横ばいとなっている。』(前回4月)

上方修正キタコレ!ですが、

『短観の販売価格判断DIは高水準となっている。短観における企業の物価全般の見通しも、短期だけでなく中長期も含め、高水準となっている。』(今回)
『短観の販売価格判断DIは高水準となっている。短観における企業の物価全般の見通しも、短期だけでなく中長期も含め、高水準となっている。』(前回4月)

短観から見られる企業の期待インフレに関しての記述は変わらんですな。

『また、今年の春季労使交渉は、ベースアップを含め、昨年を大きく上回る賃金上昇率となった。』(今回)
『また、今年の春季労使交渉について、連合の途中集計結果をみると、ベースアップを含め、昨年を大きく上回る賃金上昇率となっている。』(前回4月)

賃金の結果がよろしゅうございました、というのは上方になる話ですが。

『適合的予想形成の強いわが国において、これまでの物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらしてきており、企業の賃金・価格設定行動には変化の兆しがみられている。』(今回)
『適合的予想形成の強いわが国において、これまでの物価上昇率の高まりは、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇をもたらしてきている。』(前回4月)

ここでパワーワード「企業の賃金・価格設定行動には変化の兆しがみられている。」が来ました!!!!


『先行きについては、現実の物価上昇率がプラス幅を縮小していくなかでも、需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動や労使間の賃金交渉が変化していくもと、見通し期間終盤にかけて予想物価上昇率が緩やかに上昇していくことで、賃金の上昇を伴う形で、物価の持続的な上昇につながっていくと考えられる。』(今回)

『先行きについては、今年度半ばにかけて、現実の物価上昇率がプラス幅を縮小していくなかでも、需給ギャップが改善し、企業の価格・賃金設定行動や労使間の賃金交渉が変化していくもと、見通し期間終盤にかけて予想物価上昇率が再び緩やかに上昇していくことで、賃金の上昇を伴う形で、物価の持続的な上昇につながっていくと考えられる。』(前回4月)

概ね先行きで言ってることは同じですな。


以下リスク要因と金融政策運営の話になりますが、ここで一旦おきまして続きは明日にでも。

朝のドラめもん

2023/07/31

お題「展望レポート基本的見解鑑賞会(続き)」

いやー昨日更新するって大口叩いてたのですがちょっと更新する時間を取れずに。

ということでまずは展望レポートの続きから。


〇展望レポート基本的見解:リスク要因では物価の上振れリスク成分が増加

『3.経済・物価のリスク要因 』の『(1)経済のリスク要因 』から参ります。

・海外経済物価情勢では欧米金融機関問題削除、中国懸念を下向き拡大

『第1に、海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向である。米欧の物価上昇率はひと頃に比べれば低下しているものの、依然として世界的にインフレ圧力が続いている。そのもとで、各国中央銀行は利上げを継続している。この点、中心的な見通しでは、各国のインフレ率は徐々に低下し、海外経済は、ペースは緩やかながらも成長を続けると想定している。もっとも、先進国を中心に、賃金上昇を介してインフレ率が高止まりするリスクへの警戒感は高い状態が続いている。』(今回)

『第1に、海外の経済・物価情勢と国際金融資本市場の動向である。米欧の物価上昇率はひと頃に比べれば低下しているものの、依然として世界的にインフレ圧力が続いている。そのもとで、各国中央銀行は利上げを継続している。この点、中心的な見通しでは、各国のインフレ率は徐々に低下し、海外経済は、ペースは緩やかながらも成長を続けると想定している。もっとも、先進国を中心に、賃金上昇を介してインフレ率が高止まりするリスクへの警戒感は高い状態が続いている。』(前回4月)

海外経済のリスクに関する記述の最初の部分は不変なのですが、よく考えて見ると米国って直前のFOMCのステートメントで示されているように基本的にソフトランディングの確信度上がっている筈なんですよね。

『また、国際金融資本市場では、インフレ抑制と経済成長の維持が両立できるかが懸念されている。利上げの影響が続くもと、資産価格の調整や為替市場の変動、金融機関の貸出姿勢の変化、新興国からの資本流出などを通じて、グローバルな金融環境が一段とタイト化し、ひいては海外経済が下振れるリスクもある。』(今回)

『こうしたもと、国際金融資本市場では、インフレ抑制と経済成長の維持が両立できるかが懸念されている。また、米欧の一部金融機関を巡る問題の影響などにより、市場のリスクセンチメントが悪化する局面もみられた。利上げが続くもと、資産価格の調整や為替市場の変動、金融機関の貸出姿勢の変化、新興国からの資本流出などを通じて、グローバルな金融環境が一段とタイト化し、ひいては海外経済が下振れるリスクもある。』(前回4月)

今回はさすがに欧米金融機関問題は割愛されました。

『これらのリスクを念頭に置いて、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回)
『これらのリスクを念頭に置いて、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(前回4月)

というのは良いとしまして、

『この間、中国経済については、労働市場や不動産市場における調整圧力が残るなか、先行きの持ち直しペースを巡る不確実性が高い。』(今回)
『この間、経済活動の再開が急ピッチで進む中国については、ペントアップ需要の顕在化ペースを巡って、上下に不確実性が高い。』(前回4月)

中国経済については下方リスクの認識を高めていますね。


・資源・穀物価格動向ではしれっと交易条件の改善予想が練り込まれる

『第2に、ウクライナ情勢の展開やそのもとでの資源・穀物価格の動向である。ウクライナ情勢の帰趨次第では、ユーロ圏を中心に海外経済への下押し圧力が高まる可能性がある。また、資源・穀物価格は、昨年半ば頃をピークに総じて下落しているものの、先行きは、ウクライナ情勢を始めとする地政学的な要因や気候変動問題への各国の対応の影響など、不確実性はきわめて高い。』(今回)

『第2に、ウクライナ情勢の展開やそのもとでの資源・穀物価格の動向である。ウクライナ情勢の帰趨次第では、ユーロ圏を中心に海外経済への下押し圧力が高まる可能性がある。また、資源・穀物価格は、昨年半ば頃をピークに総じて下落しているものの、先行きは、ウクライナ情勢を始めとする地政学的な要因や気候変動問題への各国の対応の影響など、不確実性はきわめて高い。』(前回4月)

前回と変わらずですな。

『エネルギーや小麦など資源・穀物の輸入国であるわが国にとって、供給要因による資源・穀物価格の上昇は、海外需要の拡大や輸出の増加を伴わないため、輸入コストの増加を通じた経済への下押しの影響が大きくなる。中心的な見通しでは、交易条件は改善していくと想定しているが、仮に交易条件が再び悪化する場合には、企業収益や家計の実質所得を圧迫し、企業や家計の支出行動の慎重化を通じて、設備投資や個人消費が下振れるリスクがある。一方、資源・穀物価格が下落基調を強めれば、経済が上振れる可能性もある。』(今回)

『エネルギーや小麦など資源・穀物の輸入国であるわが国にとって、供給要因による資源・穀物価格の上昇は、海外需要の拡大や輸出の増加を伴わないため、輸入コストの増加を通じた経済への下押しの影響が大きくなる。こうした交易条件の悪化は、企業収益や家計の実質所得を圧迫するため、企業や家計の支出行動の慎重化を通じて、設備投資や個人消費が下振れるリスクがある。一方、資源・穀物価格が下落基調を強めれば、経済が上振れる可能性もある。』(前回4月)

今回は「中心的な見通しでは、交易条件は改善していくと想定しているが、仮に交易条件が再び悪化する場合には、」としらっと表現が変わっていて、こちらでは下振れ要因である交易条件の悪化に関する蓋然性の表現を緩和している、つまり下振れリスクをさげているんですな。


・中長期的な成長期待の中に「労働市場改革の進展」が入る

『第3に、やや長い目でみたリスク要因として、企業や家計の中長期的な成長期待がある。感染症の経験や人手不足の強まりを背景としたデジタル化の動き、脱炭素化に向けた取り組みや労働市場改革の進展などは、わが国の経済構造や人々の働き方を変化させるとみられる。さらに、地政学的リスクの高まりを背景に、これまで世界経済の成長を支えてきたグローバル化の潮流に変化が生じる可能性もある。』(今回)

『第3に、やや長い目でみたリスク要因として、企業や家計の中長期的な成長期待がある。感染症の経験や人手不足の強まりを背景としたデジタル化の動き、脱炭素化に向けた取り組みの進展などは、わが国の経済構造や人々の働き方を変化させるとみられる。さらに、地政学的リスクの高まりを背景に、これまで世界経済の成長を支えてきたグローバル化の潮流に変化が生じる可能性もある。』(前回4月)

今回はこの構造変化に関する記述の中に「労働市場改革の進展」というのが入っていまして、これは何の判じ物かとは思う(働き方改革的なものはとっくの昔から色々と進んでいる)のですが、このタイミングで突っ込んできたのは「賃金が上がっていく構造への変化」なんですかねえ、何か謎ですけど、まあここに挙げられている例は構造改革で潜在成長率の押し上げって話になると思うので基本ポジティブだと思う。

『そうした変化への企業や家計の対応次第では、中長期的な成長期待や潜在成長率、マクロ的な需給ギャップなどに上下双方向に影響が及ぶ可能性がある。』(今回)『
そうした変化への企業や家計の対応次第では、中長期的な成長期待や潜在成長率、マクロ的な需給ギャップなどに上下双方向に影響が及ぶ可能性がある。』(前回4月)

結論は同じです。では続いて物価の話。『以上の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶと考えられる。このほか、物価固有のリスク要因としては、以下の2つに注意が必要である。』から始まる部分です。

〇物価のリスク要因は上振れネタを混ぜ込んできています

『第1に、企業の賃金・価格設定行動を巡っては、上下双方向に不確実性が高い。』(今回)
『第1に、企業の価格・賃金設定行動を巡っては、上下双方向に不確実性が高い。』(前回4月)

へいへい。

『今次物価上昇局面では、景気が回復基調をたどるなか、原材料コスト高を背景に、多くの企業が、競合他社の動向も眺めつつ値上げを進めてきており、そうした動きは、引き続き広まっている。今後の原材料コストの上昇圧力や企業の予想物価上昇率の動向次第では、価格転嫁が想定以上に続き、物価が上振れる可能性がある。』(今回)

『今次物価上昇局面では、原材料コスト高を背景に、多くの企業が、競合他社の動向も眺めつつ値上げを進めてきた。今後の原材料コストの上昇圧力や企業の予想物価上昇率の動向次第では、価格転嫁が想定以上に続き、物価が上振れる可能性がある。』(前回4月)

前回対比ではまず「景気が回復基調をたどるなか」というのが入っているのが特徴的でして、これって行われている値上げがコストプッシュだけではなく、実はディマンドプル要因の可能性もある(景気が回復しているのだから需要は増えるので)というようなヘッジクローズというか何というか、私たちは物価上昇の全部が全部コストプッシュ、とは言い切れない可能性があると思ってますよ、的な意味合いが籠っていて、この一言はまあ本当に一言なんですけど意味するところはそれなりにあるんじゃないかなと思いました。

また、こっちは分かりやすいんですけど、第1文の最後に「そうした動きは、引き続き広まっている」と広範な物価上昇が起きていることも認めていまして、リスク認識の話の中でしれっと上方向の要素を強めにしているんですよね。


『また、労働需給が引き締まるもと、人材確保などを意識し、企業の賃金設定行動がより前傾化する可能性がある。そのもとで、想定以上に、賃金に物価動向を反映させる動きとともに、物価に賃金動向を反映させる動きも広がることで、マクロ的な需給ギャップの変動以上に、賃金と物価が上振れる可能性がある。』(今回)

『また、労働需給が引き締まるもと、人材確保などを意識し、企業の賃金設定行動がより前傾化する可能性がある。そのもとで、想定以上に、賃金に物価動向を反映させる動きとともに、物価に賃金動向を反映させる動きも広がることで、賃金と物価が上振れる可能性がある。』(前回4月)

ここでも今回賃金と物価の上振れの可能性の中に「マクロ的な需給ギャップの変動以上に」というのを明示的に加えまして、つまりは需給ギャップでみる以上の賃金と物価の上振れの可能性がありますよということで、中長期的な物価を規定する、ということになっている予想物価上昇率と需給ギャップに加えて、需給ギャップ以上のサムシングエルス成分を物価上振れの可能性に入れ込んでいまして、この点でも上振れの要素が強くなっているという事です。

『一方で、資源・穀物価格が総じて下落するなか、適合的予想形成のメカニズムを通じて、中長期的な予想物価上昇率が低下し、企業の価格設定行動に影響が及ぶ可能性がある。また、今年の春季労使交渉では昨年を大きく上回る賃金上昇率となったものの、物価や賃金が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く残り続ける場合、来年以降は賃上げの動きが想定ほど強まらず、物価も下振れる可能性がある。』(今回)

『一方で、資源・穀物価格が総じて下落するなか、適合的予想形成のメカニズムを通じて、中長期の予想物価上昇率が低下し、企業の価格設定行動に影響が及ぶ可能性がある。また、今年の春季労使交渉では昨年を大きく上回る賃金上昇率が実現する見込みにあるとはいえ、物価や賃金が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く残り続ける場合、来年以降は賃上げの動きが想定ほど強まらず、物価も下振れる可能性がある。』(前回4月)

下振れの表現は基本同じ(労使交渉の結果を踏まえた表現とかの変更程度)ですが、そもそもここで言及している「適合的予想形成」で言えば物価の実績値が上振れをしているんだし、予想物価上昇率は再度上昇しだしているという認識なんだし、企業の価格や賃金の設定行動にも変化の兆しがみられる、って認識しているんだし書いてあることは同じだけどこの逆の進展が起きていますよね、という感じです。



〇第一の柱による点検:ついに「2023年度後半にかけて2%を下回る」が消えました

『4.金融政策運営』である。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小したあと、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。消費者物価の基調的な上昇率は、時間はかかるものの、マクロ的な需給ギャップの改善や、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率の高まりなどを背景に、見通し期間終盤にかけて「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、消費者物価の前年比は、現在、2%を上回って推移しているが、今年度半ばにかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと予想される。消費者物価の基調的な上昇率は、時間はかかるものの、マクロ的な需給ギャップの改善や、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率の高まりなどを背景に、見通し期間終盤にかけて「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。』(前回4月)

はい、今回「今年度半ばにかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していくと予想される。」がガッツリと削除されましたですねー。

しかしまあ何ですな、最初の方(土曜日に書いた方)でも申し上げましたが、今年度後半にかけて2%を割り込むのではないんだったら、2年連続でコアCPIの実績値は2%越えなんですからMB拡大のコミットメントは要らんだろという話だし、大体からして2%割り込むかどうかわからん上にその後上昇していく、っていう見通しになっているんだったら、それは物価安定目標達成じゃないの、ってなもんなのですが、まあこの言い訳もだんだん無理が出てきたとは言え、さすがに今回そこまで君子ジャガーチェンジできるものではない、というのは分かるのでこんなもんちゃあこんなもんですな。


〇第二の柱による点検:ウクライナ外れて企業の賃金価格設定行動が入りどう見ても上方シフトです

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検する。リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(前回4月)

小見出しで申し上げた通りです。「不確実性はきわめて高い」という表現は同じですが、その中にある要素から下振れを1本削って物価の上振れを1本入れている訳で、「不確実性」の意味するところがしれっと変化している、という日銀文学の粋を極めた部分ですね、土曜日に書いた所でも申し上げましたが。


『リスクバランスは、経済の見通しについては、2023年度は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2023 年度と 2024 年度は上振れリスクの方が大きい。』(今回)
『リスクバランスは、経済の見通しについては、2023 年度は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、2023 年度は上振れリスクの方が大きいが、2025 年度は下振れリスクの方が大きい。』(前回4月)

前回の展望会合の時に植田総裁は2025年度の物価下振れリスクガーとか言って言い訳をしていたことを鑑みると2025年度の物価のリスクバランスって重要(はっきり言って2025年度とか鉛筆舐め舐めの世界だから本来は重要じゃないんだけど、鉛筆舐め舐めだからこそ恣意的にいじれる訳で、政策でなにやりたいかの逆算が出やすいというものでありますよね、邪道オブ邪道ですけど)なので、ここに関して上振れとも下振れともバランスとも書かないのは不自然。

まあプロット見れば普通はバランスと読むと思うのですが、これは前回の展望会合での植田さんの説明(というか言い訳屁理屈)で2025年度の見通しの話がフレームアップされてしまったので、下手にバランスとか表現を前進させたのを掲載するとまずいんだろうなあ。という辺りはいつもの日銀の考えそうな小細工ですな。


『金融面について、引き続き資産市場や金融機関の与信活動には過熱感はみられていない。わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。先行き、グローバルな金融環境のタイト化の影響などには注意が必要であるが、内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、わが国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有している。』(今回)

『金融面について、引き続き資産市場や金融機関の与信活動には過熱感はみられていない。わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。先行き、最近の米欧の一部金融機関を巡る問題の影響を含め、グローバルな金融環境のタイト化の影響などには注意が必要であるが、内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、わが国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえると、全体として相応の頑健性を有している。』(前回4月)

金融システムの話ですが、こちらは前の方でもあったのと同じで欧米金融機関問題の記述が削除された以外に変化はないですな、まああったら泡吹きますが。

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、低金利や人口減少、企業部門の貯蓄超過などによる金融機関収益への下押しが長期化した場合、金融仲介が停滞方向に向かうリスクがある。一方、こうした環境のもとでは、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もある。現時点では、これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要がある。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、低金利や人口減少、企業部門の貯蓄超過などによる金融機関収益への下押しが長期化した場合、金融仲介が停滞方向に向かうリスクがある。一方、こうした環境のもとでは、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もある。現時点では、これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要がある5。』(前回4月)

こっちは同じです。日銀のアホのような資産買入で将来の金融不均衡の種をまくわ肥料はやるわという状態になっている話は華麗にスルーですねいつものことですが。


〇政策ガイダンスやコミットメント文言は不変です

声明文と同じですけどね。

『金融政策運営については、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(今回)

『金融政策運営については、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(前回4月)

『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(今回)

『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(前回4月)




ではまあそんな所でございまして、立ち上がりあっという間に自滅するかと思いきや、ギリギリの所で踏みとどまりましたけど、自滅するかと思ったのが植田さんのお芝居なのかどうか、は10年後にならないと分からないのかな、と思いますとあと10年老骨に鞭打って頑張るインセンティブが沸いてきましたがどう見ても老害ジジイです本当にありがとうございましたorzorz










2023/07/28

お題「手のひらを思いっきり引っくり返す日になるのか(MPM当日の日経スクープ記事登場で雑感走り書き)」

日経がずーっと静かなのが不気味で、まあ日経さんは月初に内田副総裁のインタビューでポジションを取ってしまった面もあるので、そこからドテンは入れにくいし、かといって修正の決め打ちはできないし、ということだったのかと思っていましたが・・・・・・・・・


〇日経朝刊「0.5%を残しながら指値オペの柔軟運用で上限突破容認案」をスクープ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB266VX0W3A720C2000000/
日銀、金利操作を柔軟運用 上限0.5%超え容認案
日経スクープ
2023年7月28日 2:00 (2023年7月28日 2:10更新) [有料会員限定]

『【この記事のポイント】
・28日の決定会合で金利操作の修正案を議論
・市場動向に応じ0.5%超えを容認する案が浮上
・柔軟な政策運営で市場のゆがみ和らげる狙い』(上記URL先より、以下同様)

というのがありまして、

『日銀は28日に開く金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正案を議論する。長期金利の操作の上限は0.5%のまま据え置くものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認する案が浮上している。国債の大量購入...

この記事は有料会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

残り1051文字』

ということで残り1051文字は課金の皆さんまたは駅売りの日経などでご購入して下さいなということでありまして、出来立てホヤホヤの課金記事なのであんまり内容をこちらでダラダラと書くのもアレでございますからお前ら日経に今日は課金して桶ってなもんですけど、(あ、してないのワイだけですかそうですか)・・・・・・・・・・・


・なかなかの謎な柔軟化だが長期国債の買入を馬鹿みたいに増やさないのであれば良い話だが・・・・・・・

上記無課金部分にありますように、「長期金利の操作の上限は0.5%のまま据え置くものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認する案が浮上している。」ということでありまして、ホワットドューユーミーンバイ「一定程度越えることも容認」って話ですが、これはつまり昨年来キチガイのように実施していた「連続指値オペ」「毎日指値オペ」を廃止します、ってことになる、というのは分かったが、運営どうするのかは謎が多い訳で。


・発動基準は「市場の過度な変動」なのか「金利水準」なのか

日経記事にある「市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認」という文字列ですが、これをオペ運営の意味として翻訳すると・・・・・・・・・・

「市場動向に応じて」
→というのは基本的に市場の動きがマイルドなまま自然体で金利が上がる分には容認しますよ、ってな趣旨でして、つまりそういう状況なら別にそこに指値ドカンとぶっこんで自然な流れを止めることはしないよ、という意味に解釈ができるものです。これが連日ポツ1金利がドカンドカンと上昇するとかになると登場ってなもんでしょうか、なおその基準は謎としか言いようがないですが。


「一定程度」
→さっきのは市場の金利上昇の「スピード」を問題にする表現でしたが、こちらは市場の金利上昇の「水準」を問題にする表現になっております。こっちは真面目な話どの程度の水準を容認するのか、ってのがムツカシイ話であって、恐らくは(最近発動していないけど)他年限指値の時のような「その時によって指値の水準は一定じゃないよ攻撃」になるんだとは思うのですが、なにせ発動基準となる関数が全く分からん状態でやられてもどうなるのやら、とは思いますね。


〇ここで均衡イールドカーブの登場が待たれますな(棒読み)

今申し上げた「一定程度の上振れは容認」とのことですが、この「水準」の基準になり得るものと言えばYCC導入時に言ってた「均衡イールドカーブ」の考え方くらいしか思い浮かばん訳ですよ。

もちろんですが均衡金利水準ってのが幅のある概念となっている所に加え、それが長期金利になると益々幅がある訳ですし、その長期均衡金利水準から適切な幅の緩和度合いというのが幾らかってのも幅のある話で、まあそういう意味ではフニャフニャにも程があるのですが、それでも理屈の上ではそういう発想になる筈です。

従いまして、ずーっとすっとぼけて出していない「均衡イールドカーブ」というのを日銀が出すと、(もちろんピンポイントでは出せるもんじゃなくてバンドになる)そこにあまり接近すると介入が入るかもね、くらいなイメージは沸くんですよね。

・・・・・・と書いてみましたが、これは別の罠があって「長期の均衡イールドカーブはこれだ」とか言って出した日には2%物価目標達成したら長期金利水準は少なくともここまでは電車道で上昇する、ってのを日銀がオーソライズする形になってしまいますので、まあそれはそれでマズいというお話。

よく考えてみたら均衡イールドカーブってやっぱり駄目な概念でしたね・・・・・・・・・・・



〇「0.5%」は「80兆円」と同じ運命をたどるのか?????

しかしまあ何ですな、これ市場機能の回復で国債買入も過度に増やさないようにして自然に形成される動きに任せましょ、ってな話なのは結構なのですが、上昇の容認がどの程度なのか、過度な変動がどの程度なのかの基準がワケワカメではありますけど、まあ方向としてこんなのユルユルにしていく方向なんだろうな、というのは何となく思う(のだが日銀は本質的にビビりの集まりなので金利がちょっと上がったらビビってまた馬鹿買入しそうなのが懸念材料)のですよ。

・・・・・・・となるとワタクシたちが思いつくのは「0.5%が80兆円と同じ運命になる」という事実上の形骸化(9月か10月にしれっと0.5%を外す)コースというものになる訳でございますが、しかしそれって何ちゅうかそこまでして何でのこしておかないといけないスキームなんだよという話で見苦しいったらありゃしない。

まあここに関しては「YCCを続ける」って植田総裁が連呼してしまったので、完全に形骸化したとしても枠組みを残すというしょうもない体面上の問題なんじゃないかなとは妄想できるのですが、ここの「0.5%」の重みがどうなるのかも謎ですよね。



〇オーバーシュート型コミットメントは今年度物価見通しが2.5%とかなら撤廃されるべきですがさて・・・・・・・・・・

幣駄文では何度か申し上げておりますが、マネタリーベース拡大方針のオーバーシュート型コミットメントは声明文の中にも記載されておりますように、『マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(これは6月声明文の項番5から抜粋引用)となっているわけです。

本来これは「実績値」なので昨年度のコアCPIが2%どころかそれを盛大に上回って推移している時点でこのコミットメントの前提条件は達成されているので、達成されたとしてMB拡大の方針は引っ込める(金利操作のための買入等の結果としてMBが拡大することはあっても、MB拡大のために買入をすることはない、という意味ですね)のが筋だった訳ですよ。

まあ百歩譲ってこの前までは「2023年度半ばからはコアCPI上昇率が2%を割り込む」ということになっていたので、先で割り込むのが明らかなので安定的に超えたとは言い難い、という無理矢理なこじつけをぶちこむことも出来たでしょうけれども、今回の見通しで2023年度平均が報道のように+2.5%などになる、となりますと恐らく2年連続でコアCPIが2%を越える上昇になる訳で、そうなってしまうと「マネタリーベースのオーバーシュート型コミットメントは達成された」とさすがに言わざるを得ない筈なんですよね。

もしこれを引っ込めない、となると「コミットメント」に対する日銀の信認問題になる訳でして、この点は今回の会合でどうなるのか、というのを物凄く気にしてみております。楽しみだな〜。


〇この流れで国債買入を減らせるかは重要ポイントですね

とまあそういうわけで何だか蓋を開けてみないと良く分からないスクープ(日経が満を持してぶっこんでいるのですからまあ似たようなもんが出るんでしょ、とはさすがに思いますが)が出ましたが、これアタクシが思いまするに一番大事なポイントは、

今回柔軟化措置を取った結果国債買入が増えるのか減るのか

じゃないかと思うんですよね。はっきり言って増えるんだったら後で更に日銀の運営が苦しくなるだけだし、減らすのがどっからどうみても望ましいですけど、その時に債券市場がおとなしくオーダリーな金利上昇をしてくれるか、というとそんな訳はどう見たってないというのが難しい所です。


ただですね、ここで救いになりそうなのは、「時期が7月末」ということでありまして、これ即ちどういうことかと言いますと、まあ今年度のどの時期かは知らんけど何ぼ何でも植田総裁になったんんだし政策修正の方向になるでしょ、という風に普通の人は思うので、そうなると国内債のポートって普通軽めになっている筈なんですよ今年度のスタート段階では。

ただ、そうは言ってもポートすっからかんにしていると利息ちゃんが入ってこない訳で、スッカラカンを長期間継続すると餓死してしまうというのが一般的な債券ポートの悲しい性でありまして、ここで政策無修正0回答、と来たらさすがに次が最速で9月下旬なんですから、そらまあポート再構築をしないといかんよね、という向きが増えて来る筈だったんですよ(個人の感想です)。

つまりですね、出口方向政策修正着手って債券ポート界隈の動向的に言えば、今回やっておく(本来なら4月の方がさらによかったけど)のと、10月とか1月みたいな後の方にやるのとで比べれば、早めにやった方が怪我人がすくなくて済む、というのもありますし、けが人が少ないというのはつまり金利が上がったら買い目線で待ち構えている人が今の方が多い、ということもありまして、そんなこんなでまあ柔軟化するなら早い方が良かったと思われる(個人の感想です)ので、そこまで初期段階から日銀が馬鹿買いしなくても良いんじゃないかな、という気はせんでも無い所ではあります。

まあ投機筋の指値狙いの現物ショート、ってのをどう対処するのか(またSLF締めるのかと思うとゲンナリしますが)とかいうのも気になるのですが、何はともあれ日銀が馬鹿買いをしないで推移できるのか、というのは中々難しそうな気がしますがお手並み拝見。



〇「政策修正」なのか「オペレーション運営の柔軟化」なのかもよくわからん上に中途半端リスクが気になる

いやーなぞですねーーーーーーー。植田総裁どう説明するんでしょ、というのもありますし、事前に散々報道していた人達の半分は「騙しやがってコノヤロー」となっていると思いますので、会見での説明を待ちたいと思うのでした。

すいません急に話が飛んできて頭の整理もイマイチで書いていて恐縮ですが、私もこれはさすがに戦闘態勢(何の?)に入らないとという感じですので本日は本当に雑感メモになってしまいましたなんか書こうとしていたことは全部飛んでしましましたな笑。


まあアレです、今日植田さんが豹変してびしっと決めてくれて「国会での所信聴取の時の植田先生」に戻ってくれたらもう4月会合以降の悪態に関しては焼き土下座ということで手のひらクルーが出来ることを期待したいんです。

ただ、これ何かひじょーーーーーーに意味がわからんというか中途半端な「オペレーション柔軟化」になって運営面で爆発炎上して事態がもっと悪化する、という地獄絵図の可能性も否定できないのが恐ろしい所ではあります・・・・・・・・・・・・

とまあそんな所でただの走り書き状態で大変恐縮至極でした。







2023/07/27

お題「寝起きでFOMCですがその前におまけつき」

〇色々とダメだろこの植田総裁の発言・・・・・・・・・・・・

昨日の夕方こんなのが報道されてたのでこれについてひとこと。
https://jp.reuters.com/article/boj-policy-idJPKBN2Z60I3
2023年7月26日4:24 午後
引き続き企業に緩和的な金融環境維持─日銀総裁=内閣府幹部

『[東京 26日 ロイター] - 内閣府幹部によると、日銀の植田和男総裁は26日の月例経済報告関係閣僚会議で、引き続き企業にとって緩和的金融環境を維持していくと述べた。』(上記URL先より)

・・・・・・オイコラちょっと待て、27日から金融政策決定会合があるのに何でお前は金融政策の決め打ち発言をするんだ大体からしてブラックアウト期間で、国会答弁とか例外はあるけど、こんなところで勝手に翌日からの決定会合の結果を公表するなよ馬鹿としか言いようがないし、だいたい貴様の一存で決めるんじゃねえんだぞとしか申し上げようがない。

さらに残念なのはこの「企業に緩和的な金融環境維持」って話でして、なんだかんだ言って物価高で生活が圧迫されてどうのこうの、って話がある中で「企業に緩和的な」って切り取られたら政治的にヤバイ発言をしちゃダメだろという話でして、そらもう投資信託5千万円以上ネタに合わせ技で夜の豪遊ネタが蒸し返されて「上級国民の日銀総裁様は国民生活に対する意識は全くなくて不適切」って言われたらどうするんだよ大丈夫かこのガバガバ状態は、というお話でして、いやまあ植田さんじゃなくて内閣府幹部によるコメントだから正確にどういっているのか問題はあるにせよ、それにしたってちょっとガバガバ過ぎませんか植田総裁、と思うのでメモをしておきますね。

などとトサカに来ててもアレですので以下いつもの寝起きでFOMCレビューっす。


〇FOMC声明文:衆目の一致する通りの25bp利上げで先行きスタンスは出たとこ勝負を継続

一応今日は読むべきものが少ないので会見を掛け流しにしていますが掛け流しだとただのBGMにしかならないという残念なことに気が付いたわorzorzorz

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230726a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230614a.htm(前回6月)

あ、オマケなんですけどパウエル兄さんの会見を掛け流ししてたらパウエル兄さん「我々は賃金インフレーションのターゲッティングをしている訳ではない」みたいな発言をしておりまして、(28分くらいからの質疑応答で28分45秒あたりにありますわ)法律家(パウエル兄さん)の方が経済学者(中銀総裁に出世した途端に今まで言ってた正論を全部引っ込めたどこかの誰かさん)よりもどっからどう見ても普通の金融政策論を述べている訳でして、誠に落涙を禁じ得ない今日この頃である、と思ってしまいました。


・第1パラグラフ:現状認識がしらっと引き上げ

『Recent indicators suggest that economic activity has been expanding at a moderate pace.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity has continued to expand at a modest pace.』(前回6月)

前々回の5月が「Economic activity expanded at a modest pace in the first quarter.」と1Qの成長はモデストとなっていて、前回もモデストですが今回は完了時制を用いて「モデレート」って言ってて、書いてあること自体は別に力強い成長って話ではないにしましても、モデストよりもモデレートの方がエライので上方修正になっていますね。

『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated.』(今回)
『Job gains have been robust in recent months, and the unemployment rate has remained low. Inflation remains elevated.』(前回6月)

ここは同じです。


・第2パラグラフ:こちらは全文一致

『The U.S. banking system is sound and resilient.』(今回)
『The U.S. banking system is sound and resilient.』(前回6月)

この文言はまだ外れていませんで、まあこれが外れないというのは金融機関の問題というのは金融システムをどうにかするようなものは無いにしても個別の問題銀行がちょっとねえみたいなのが残っている、ということを示しているんだと思いますがどうでしょうかね。

『Tighter credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(今回)
『Tighter credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(前回6月)

よりタイトになったクレジットコンディションがどうしたこうしたという話は同じですね。


・第3パラグラフ:25bp利上げでスタンス自体は「今後の追加引き締めも検討しながら出たとこ勝負」を継続

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回6月)

これはいつもの開経偈。

『In support of these goals, the Committee decided to raise the target range for the federal funds rate to 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(今回)
『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5 to 5-1/4 percent.』(前回6月)

25bp利上げ。

『The Committee will continue to assess additional information and its implications for monetary policy. 』(今回)

『Holding the target range steady at this meeting allows the Committee to assess additional information and its implications for monetary policy.』(前回6月)

先行きの政策運営に関するスタンスの話の部分ですが、「will continue to assess additional information云々」の部分に関しては、前回も「to assess additional information〜」ってあって、この「先行きの情報を見ながら出てとこ勝負」ってのは同じなんですが、前回利上げ止めて「FF目標金利を据え置きすることによって私たちは先行きの情報を見てアセスメントをすることが出来ます」って言っておいて、今回は利上げしておいて同じ文言を堂々と使うというのは中々の大草原不可避なんですがwwwwwwwwwwwwwwwまあそれはそれとして、先行きの情報を見ながらアセスメントしていきまっせ、というスタンスを最初の文で示しています。

『In determining the extent of additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(今回)

『In determining the extent of additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(前回6月)

でもってその次の文の部分ですが、前回に引き続き「In determining the extent of additional policy firming」という書き出しになっていまして、以下の文章も同じですので、あくまでもこの先に関しても今の時点では「追加の利上げが必要かどうか」という前提を示していまして、まあこれは入れておかないと利上げ打ち止めでこれから引き下げだヒャッハーと隙あらばゴルディロックスのアメリカン金融市場が勝手にファイナンシャルコンディションをユルユルにしやがるので、とりあえず水をぶっかけるスタンスというのを見せておかないとアカンじゃろ、という事なんでしょうね。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(今回)
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(前回6月)

ランオフに関しては変化有りません。

『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回6月)

これは第3パラグラフの最初にある文言の対句みたいなもんです。いつも通り。


・第4パラグラフ:こちらも全文一致

基本的に第3パラグラフで先行きの方向性を示しているし、ガイダンス方式はしていないんだから4パラいるのか問題がある気がするんですけどね。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回6月)

まあここは全文一致を確認するだけでヨロシアル。


・第5パラグラフ:今回も全員一致

全員一致ですね。

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(前回6月)


ということで、基本線はいじらずですが、いじってしまう訳にもいかんでしょうからまあこんなもんでしょうかね。市場がどう反応したのか今回もガチで全然見てないからアレですし、会見は掛け流しだったから碌に頭にはいっていない(お前は何のために掛け流しをしたのかと言われるとぐうの音も出ない)のでアレですけど。


・インプリメンテーションノート:各種ファシリティやオペの金利はフルスライド、応札限度額には変化なし

HTML版の場合は最後にリンクがあってそちらを踏みに行きますと、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230726a1.htm
Implementation Note issued July 26, 2023

前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20230614a1.htm
Implementation Note issued June 14, 2023

になります。これは一々前回比較を引用して行うほどのもんでもないので、『Decisions Regarding Monetary Policy Implementation』以下の文言確認してみましたが、今回も全てのファシリティやオペの金利はフルスライドで25bp引き上げ、ONRPPなどのオペに関する1社あたりの応札限度に関しても変更は起きていません。



〇会見に関してはオープニングリマーク・・・・・は時間の関係でQAと共に週末か来週初にでも(日銀次第)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20230726.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference Opening Statement
July 26, 2023

こちらなんですけど、一応一読(目を泳がせる程度)はしたのですが、今回に関しては何かこう「声明文に書いてあることを若干詳しく説明した」ってな風情の内容で(個人の感想です)、今申し上げたように声明文の方が「この先も出たとこ勝負だよ!」のままで維持されているので、かなり淡々としたあっさり味っぽくて、会見とセットで見た方が良いかもしれません、という尤もらしい言い訳をしていますが、まあ単純にアタクシの時間の問題で今朝はここで勘弁していただきとうございます。







2023/07/26

お題「時事通信から事前観測(お漏らし成分少な目)/物価は強いんだよなー/23年越しのブーメラン」

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through

長期国債先物

限月:23年9月限
取引日:07/26
始値;148.17(07/25)(15:30)
高値:148.23(07/25)(16:43)
安値:148.06(07/25)(22:24)
現在値:148.15(07/26)(05:00)
前日比:-0.04
取引高:4,740

いやー月曜なんてロイターブルームバーグ砲があったからというのはあったけど、金曜の夜間取引の売買枚数の方が月曜の日中取引の売買枚数を上回るというもはやどこの市場だよという状況だったのですが、今日はやっと真の意味での材料待ち様子見地蔵相場になりましたかしらねえ(フラグ)。


〇時事通信からも事前報道が出ていますがお漏らし成分をはやや少なめに構成されています

昨日は時事通信がぶっこんできておりますが、こちらは「関係者は語る」形式の詠み人知らずのイタコ芸方式ではなくて、当社としてはこんな感じで見ております、ってな形式になっているのですけどね。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023072400867&g=eco
利操作修正の是非議論 慎重論も根強く―27日から日銀会合
2023年07月25日11時03分

時事ドットコムニュースだと昨日の昼の配信なのですが、さっきちょっとこのニュースを拾いに行ったらもう少し前のタイムスタンプでのスマホ用とかヤフーニュースとかあったので、もうちょっと早かったのかもしれません。

『日銀は27、28両日、金融政策決定会合を開く。物価の上振れを受け、大規模金融緩和の一環として導入している長期金利操作の見直しの是非を議論する。ただ、債券市場の金利形成がゆがむといった副作用は和らいでいる。日銀内では拙速な政策修正に慎重論も根強く、現在の緩和策は維持される可能性が高い。』(上記URL先より、以下同様)

「関係者によると」の文言がある記事ばかり見せられて、お漏らしお漏らしとか毎日言いながら血圧をあげる訳ですが、なにせこちとらジジイだからうっかり咳やクシャミして(以下の表現は削除されました)。

でもまあ時事通信も「現状維持」で読んでいますね。

なお、月曜のブルームバーグ砲と同様にお漏らしの方向が展望レポートの方に向かっているようでして、いやあの日銀さん何でそういうのを事前に一々お漏らししたがるの何かの変態プレイですかと小一時間問い詰めたくなるのですが、まあそういう事で展望の数字については、

『会合では3カ月ごとに公表している景気予測「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」もまとめる。消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)の見通しについては、2023年度を前年度比2%台半ば(前回4月時点は1.8%)に上方修正する見通し。24年度(同2.0%)、25年度(同1.6%)は小幅の見直しにとどまる公算が大きい。』

ここで面白いのは月曜のブルームバーグでもこちらの時事でも、24年度と25年度の「小幅の見直し」の方向性が書いていないという所でして、この平仄の合い方ってどっからどう見てもどっかのソースからのお漏らしで、しかも全然関係ない市井のチンピラゴロツキの意見とちゃうやろと思ってしまう訳でして、まあお漏らし成分はこちらにありましたということで。

しかしまあ何ですな、展望レポートの数字ですら事前にお漏らしして市場に織り込ませたいとか、お前ら自分たちの経済物価情勢分析と先行き見通しにどんだけ自信が無いのやらという話で、昨日も申し上げましたがこんなの決定会合の後に堂々と説明する時間があるんだから、しょうもないお漏らしとかしないで会見で2時間でも3時間でもたっぷり時間かけて説明すりゃいいんじゃないでしょうかとは思うのですけれども、何でこう正々堂々とやらないでコソコソと空き巣狙いみたいな姑息なコミュニケーションに走るんですかねえ最近の日銀さんは。

まあしかし、

『こうした物価動向を踏まえ、会合ではマイナス金利解除など利上げは見送られる方向だが、「プラスマイナス0.5%程度」まで容認している長期金利変動幅の拡大などの是非が討議される見込みだ。』

討議されるだけまあマシかと思いますが、何せ一昨日までタカが12連敗しておりまして昨晩やっと一矢を報いる、というタカ派も意気消沈という流れの中でちゃんと討議になるんかいなというのも懸念されます、てかマジで討議するような雰囲気になるんですか正副総裁と某1名(誰だかは今さら申すまでもない)を除くと文鎮か木彫りの熊にも劣るウスラポンコツが5体置いてあるだけなんですけれどもねえ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



〇基調的なインフレとか全国CPIとか(遅くなってすいません)

・全国CPIは季節調整済み前月比が総合、コアで再加速

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数
全国 2023年(令和5年)6月分

◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として105.2
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は105.0
前年同月比は3.3%の上昇 前月比(季節調整値)は0.4%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.4
前年同月比は4.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇

とまあそういうことで、相変わらず前年同月比の方でまた上昇みたいな話とかコアコアが4.3から4.2になったという話の方が多いのですが、やっぱりこういう物価上昇モードの時は原数値の推移、即ち前月対比の方が先行きの勢い見るのに大事じゃないのかなと毎度思うのですな。

ということで
表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)
を見ますと、

1月から順に
総合の前月比: 0.4→ -0.6→ 0.3→ 0.6→ 0.0→ 0.2
コアの前月比: 0.3→ -0.7→ 0.3→ 0.5→ 0.0→ 0.4
コアコアの前月比: 0.4→ 0.4→ 0.5→ 0.5→ 0.3→ 0.2

ということで、月次で0.2とか全然キープしている訳で、それは年率換算すると2%を楽勝で越えます本当にありがとうございましたという流れが続いているのに、年後半から物価が下がるとは何なのかというか、3か月前に+1.8で出した見通しが+2.5まで上がるってのは、よほど物凄い経済か物価固有かは兎も角情報ショックがあったという事を意味する訳ですが、この前月比推移をみているとどこにもそんなショックが無いのに、何で日銀ちゃんは4月と7月で物価見通しをとんでもない上方修正するんでしょうかねえ。まさかとは思うのですが4月に出した+1.8は政策修正しないために作ったウソツキ数値だったんでしょうかねえ。もしまかり間違ってウソツキ数値だったらそれは見通しの間違いというよりももはや自己正当化の不正工作なんですから厳正な処分が必要じゃないですかねえ、と思うのでまさか+2%台後半は出してこないんじゃないかと思ったけどさてどうなるのやら。

しかしこの原数値になる「表1 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の指数及び前年同月比」をみますと、「2020年=100」であるからしてつまり諸式5%上昇しておるというおそロシアな事実が判明する訳でして、諸式5%上昇していく中でワイの給与(ここで床に吸い込まれる)。


・基調的なインフレ率も相変わらずだし

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

いつものエクセルからDLしますが。

刈込平均値、加重中央値、最頻値は以下の通り

Jan-22 0.8 0.2 0.3
Feb-22 1.0 0.1 0.3
Mar-22 1.1 0.2 0.3
Apr-22 1.4 0.3 0.4
May-22 1.5 0.4 0.5
Jun-22 1.6 0.5 0.5
Jul-22 1.8 0.3 0.7
Aug-22 1.9 0.5 0.8
Sep-22 2.0 0.5 0.9
Oct-22 2.7 1.1 1.3
Nov-22 2.9 1.2 1.5
Dec-22 3.1 1.4 1.6
Jan-23 3.1 1.1 1.6
Feb-23 2.7 0.8 2.1
Mar-23 2.9 1.0 2.7
Apr-23 3.0 1.2 2.8
May-23 3.1 1.4 2.9
Jun-23 3.0 1.4 2.9

最頻値が2%を一瞬にして通過して3%近い所に飛んで定着していますし、加重中央値だって全然下がってこないし、刈込平均はもう3四半期3%近辺で落ち着いていますし、こういう状況で基調的物価がまだ2%目標に行っていないとかいう根拠がまるで分らないのですが、植田大先生様は共立女子大でも教鞭をとっていたのですから、今日びの学生さんにも分かるような説明するのお得意でございましょうし、あたくしのような老いぼれ爺さんにももっとよくわかるご説明を頂けるものだと楽しみにしています。

上昇品目下落品目は・・・・・・・・・

Jan-22 61.5 31.0 30.5
Feb-22 64.0 28.9 35.1
Mar-22 63.2 29.7 33.5
Apr-22 68.8 24.9 43.9
May-22 69.2 24.5 44.6
Jun-22 71.3 22.2 49.0
Jul-22 73.2 20.7 52.5
Aug-22 72.6 21.5 51.1
Sep-22 74.9 18.6 56.3
Oct-22 78.9 14.6 64.4
Nov-22 79.9 13.6 66.3
Dec-22 81.2 11.7 69.5
Jan-23 80.3 12.6 67.6
Feb-23 81.0 11.7 69.3
Mar-23 82.6 10.0 72.6
Apr-23 84.3 9.2 75.1
May-23 84.9 8.8 76.1
Jun-23 85.1 9.2 75.9

例によって左から、上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率ですが、物価上昇品目8割以上というのがずーっと続いている訳で、こういう状況下で極端な金融緩和を継続して物価に上昇圧力をさらにかけよう(定義上物価目標達成のためにやっているんだから物価引き上げ効果がある筈ですよね今の金融緩和は)という政策を継続していていいんでしょうかねえというお話であったりもします。


〇閑話休題:2000年10月の「物価の安定」についての考え方

さてここで時代は遡って2000年にこのような物件がありました

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2000/k001013a.htm
「物価の安定」についての考え方
2000年10月13日
日本銀行

ちなみにこちらトップページから探す場合は「ホーム>金融政策>金融政策に関する決定事項等>金融政策に関する決定事項等 2000年>「物価の安定」についての考え方」で探してください。

全文というのがあって上記URL先にリンクがあるんですけどね
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2000/data/k001013a.pdf
「物価の安定」についての考え方
2000年10月
日本銀行

今見ても一々ご尤もと思う事が多い(何故か知らんがアタクシの環境で開けると微妙なオモシロフォントで出てしまうがテキストに落とすのは可能なので無問題)のですが、本文6ページ、PDF8枚目の辺りでも引用してみましょう。『(2)「物価の安定」が求められる理由』って所です。

『(2)「物価の安定」が求められる理由

このように、今日では、「物価の安定」は国民生活の安定にとって重要であると同時に、持続的な経済成長を確保するための不可欠の前提条件であると考えられている。その具体的な理由としては以下の3点が挙げられる。』

ほうほう。

『@ 相対価格のシグナル機能の発揮』

ほほう

『一般物価が安定している場合には、個々の財やサービスの価格の変化がそのまま相対価格の変化を意味することになる。そのような状況の下では、家計や企業をはじめさまざまな経済主体にとっては、自らの意思決定にとって不可欠の情報である相対価格の変化を正確に認識することが容易になる。この結果、合理的な意思決定を通じて資源の配分が最も効率的に行われることになる。』

『逆に、一般物価の安定が損なわれ、インフレやデフレが生じると、家計や企業は、個々の価格の変化が消費者のニーズの変化など、特定の財・サービスに固有の条件の変化を反映したものか、それとも一般物価という「尺度」自体の歪みによるものかを判断することが難しくなってしまう。この結果、経済全体としての効率的な資源配分が損なわれ、潜在的な成長力を最大限に発揮することができなくなる。』

資源の効率配分、という観点が真っ先に来まして、この次にも似たような論点があるんですよね。然るに今は金融市場に狂気の沙汰としか言いようのない介入をしていて、どっからどうみても資源配分を歪めまくっているのですが。これを本当に是とできるのでしょうか、ってなもんですな。

『A 将来の経済計算を行う際の不確実性の低下』

これは万古不易みたいに言われますね。

『家計や企業といった経済主体は、先行きを見通した上で、生産や投資、消費や貯蓄の計画を立てたり、販売価格や賃金などを決めていかなければならない。インフレやデフレが生じると、将来の物価に関する不確実性が大きくなるため、経済主体は将来に向けて合理的な経済計算を行っていくことが難しくなる。また、不確実性の対価としての「プレミアム」が要求されるようになる結果、長期金利はその分上昇し、投資活動が抑制される。このような不確実性のプレミアムが広範に要求されるようになると、経済の潜在的な成長力は低下する。』

これちなみに誤読する向きが居ると困るから付け加えますと「インフレでもデフレでもない」というのは「高インフレでもデフレでもない」という意味で、一定のプラスのインフレが適正ではなかろうか、って前提でこの話が進んでいますのですわよ。なんせこの25年から30年くらい前にはガチの大インフレとかあった訳ですから「インフレ」の語感も今とは違う。


『B 所得分配への意図しない影響の回避』

やはり資源の効率的な分配というのにフォーカスが置かれますよね。何でも財政金融政策でお注射チューというのではありませんですわ。

『預金のように元本や金利が名目金額で固定されている金融資産を保有する場合、予期しないインフレが生じると、資産の元本や受取り金利が目減りしてしまい、債権者は損失を被ることになる。逆に名目金額で固定されている金融債務を有する場合、予期しないインフレが生じると、債務の実質価値が軽減されることになり、債務者は利益を享受することになる。同様の事態は賃金をはじめ名目金額で契約が結ばれている場合にも生じる。』

『一方、予期しないデフレが生じると、インフレ下で起こる事態とは逆方向の影響が生じる。』

『もちろん、すべての契約が物価変動率に連動する形で結ばれている場合は、物価変動の影響から遮断され得るが、すべての取引をそうした契約の対象とすることは難しい。この結果、物価の変動によって所得分配にも予期しない影響が生じる。そうした状況が続くと、市場経済や社会的公正に対する国民の信頼が低下し、中長期的には経済成長にも悪影響が及ぶことが懸念される。』


などというのがあったりしまして、まあ全部やってるとクソ長いので決定会合前の息抜きにご鑑賞くださいってなもんなんですけど、最後の方に『5.経済・物価見通しの公表』というのがあるのよ。当時は金融経済月報は出していたのですが(逆に今はそっちを出していない)展望レポートみたいなのは無かったんですね。

でもってそのコーナーの最後の方になるのですが本文23ページ(PDF25枚目)

『以上のような留意点を踏まえつつも、日本銀行としては、金融政策運営の透明性の向上という観点から、政策委員会としての「経済・物価の将来展望とリスク評価」の公表を開始するとともに、この中で、物価上昇率や経済成長率についての「政策委員の見通し」を参考として示していくことが適当であるとの結論に至った。』

これが今の展望レポートに繋がります。

『前述した通り、日本銀行政策委員会は従来から毎月、経済金融情勢に関する「基本的見解」を公表しており、そこでも先行きの見通しに触れているが、』

これはかつての「金融経済月報」です。

『今後公表を開始する「経済・物価の将来展望とリスク評価」(以下、「展望」)は、「基本的見解」とは以下の2点で異なる。第1は、対象とする期間の違いである。「基本的見解」の見通しは、先行き数か月という比較的短い期間を想定しているのに対し、「展望」はそれよりも長めの期間のリスクを念頭に置いている。第2は、そうした期間の違いを反映し、「基本的見解」は蓋然性の高い見通しに焦点を合わせているのに対し、「展望」は蓋然性は低くても潜在的な影響が大きいリスクも対象とすることである。』

という理念で始まっていますし、第一の柱第二の柱ってのもそういう理念で点検している筈なのですが、現在実施している政策を何も考えずに継続した場合のリスク、に関しまして足もとのイールドカーブだのの話に止めて、「蓋然性は低くても潜在的な影響が大きいリスク」を丸無視しようとする植田先生のスタンスは如何な物なのかと思う訳です。

『 今後、日本銀行の公表する見通しが、金融政策運営の透明性向上という所期の目的に役立つためには、これらの見通しの持つ限界や制約、金融政策運営上の位置付けなどが正確に理解されることが不可欠の前提条件となる。』

最近金融政策の反応関数がさっぱり訳分らないんですよね〜。

『日本銀行としては、見通しの公表に当たり、見通しの数値自体と言うより、物価の安定やこれを通じた持続的な経済の発展という観点から経済・金融が直面するリスクを評価し、これを公表していくことを通じて、金融政策運営の透明性向上を図ることに力点を置く方針である。』

えーっとすいません、特に植田総裁は完全に「物価見通しの数字にこじつけて政策動かない説明をしている」状態になっているようにしか見えないのですが、どうなっているんでしょうか・・・・・・・・・・・・・・・


〇何でこんな閑話休題を出したのかと言えば2000年10月というのでお察しの方も多いでしょうが・・・・・・・・

さてこの『「物価の安定」についての考え方』が決定されたときの決定会合の議事録を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2000/index.htm
議事録一覧 2000年

(10Mほどありますのでご注意下さい)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2000/gjrk001013a.pdf
2000年10月13日開催:議事録

昔のバージョンなので画像で張り付けられていてテキストに落とすためにはもしかしたらなんかツールがあるのかもしれませんがそんな高級なものを持ち合わせていないので手打ちになってしまうんで、本日は何ページの何行目をみてくんなまし、という説明でお許し下さい。


まずは1ページ目(PDFの枚数と本文のページ数が一致しています)を見ますと参加者のお名前が並んでおりまして、なんか審議委員の所の下から二番目に「植田和男」なんてのがありますね(ちなみに内田副総裁は当時企画室調査役ですね)。

『「物価の安定」についての考え方』に関する議事については割と早めの所ででていまして、12ページにある「議題4」からなのですが、最初は増渕理事(以下肩書は当時の肩書ね)と白川審議役が説明して、そこから政策委員の意見表明の部分になるんですな。

藤原副議長、田谷審議委員と来まして、植田審議委員の意見が本文19ページの頭のあたりから始まっているのでございますが、植田審議委員の発言の9行目の辺りに、

『見通しを数値化して公表していく中で、数値が独り歩きしないように我々で努力することが重要と思う』

とかいう文字列があって、そういう話をしていたご本人が思いっきり物価見通し数値を駆使して政策の正当化の説明をしているのを見て落涙を禁じ得ないというものです。

まあこちらに関しては閑話休題ネタではありますが、何というブーメランと思いながら引っ張り出してくる驚異の23年前のネタということで是非こういう昔のも逆に面白いと思うので見ていくのをお勧めして参りたいと思いますので、またなんか探してご紹介したいと思います。






2023/07/25

お題「金曜日の訂正/23年度+2.5%で目標達成の定義問われますよね/新たな屁理屈の悪寒(野口さん金懇会見)」

確かに事前の観測記事ってFEDでも出るけど「謎の関係者」がお漏らしする体での記事が出るのって日銀だけでして、とりあえず関係者が中の人なんだったらそんな取材受けてる暇があったら物価見通しの精度を上げたり金融市場に関する知見を高めたりやるべきことは沢山あると思いますわ。

連日の「謎の関係者」報道で市場のボラが馬鹿みたいに上がって鉄火場金融市場にして何も良い事はありませんし大体からしてすべては決定会合で決める筈なのに「謎の関係者」の事前報道で方向性が決まってしまうんってそれガバナンスが何もきいてない関東軍状態ですわ。

・・・・・・と思うのですけど植田さんになってからガバガバが酷くなってますね。まあ夜の帝王だからガバガバなのは仕方ないと言ってしまえばそれまでですがwww


〇昨日の訂正:実は金曜のヘッドライン合戦はロイター英語版の方が先でした

昨日ネタにした金曜の殆ど同時なロイターおよびブルームバーグからのイタコ報道記事合戦ですけれども、関係各位からご指摘を頂きましたので訂正します(過去ログは今晩にでも訂正しておきます)。

えーっとですね、実はロイター英語版の方がちょっと早くて金曜の16時25分にヘッドラインが出て、ブルームバーグのヘッドラインが出たのが16時35分ということでしたが、ブルームバーグのヘッドラインの方で一気に反応したので、アタクシもブルームバーグが先だと思ってしまいましたすいませんすいません。ここにお詫びして訂正いたします。


・・・・・・で土曜日に読売が記事だしたまではネタにしましたが、その後日経は別に本件に追随して何か打っているかというと打っていないので、イタコ度合いが足りないのか、そもそもYCCの長期金利ターゲットというのが政策修正なり撤廃なりをする際に騙し討ちをしないといけない、という性質があるので、そーゆー意味からしたら事前の決め打ちって実はただのサイコロバクチであって、政策反応関数から類推する、という通常の意味での分析が一切役にややないので、そんなサイコロバクチに参加して当たってもしょうがないし外れたら馬鹿を見る、ということで参加してないんだったらまあそれは見識だなと思いながら日経の沈黙を見ている(無課金勢の見れる電子版さっきみたけどとりあえず何も報道は無いようですね今の所)。




〇23年度物価見通し2.5%に上げる報道のようですが物価目標達成の定義とは

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-24/RYAIZLT0AFB401
日銀、23年度物価見通しを2.5%程度に大幅上方修正の公算大−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2023年7月24日 18:06 JST 更新日時 2023年7月24日 18:53 JST

→24・25年度は小幅修正の可能性、持続・安定的2%実現は展望できず
→景気の総括判断を1年ぶり引き上げへ、個人消費や設備投資など反映

ということのようでまた関係者かよってなもんですが、何で日銀は決定会合の結果で堂々と公表しないでこうやって謎の関係者を使ってメディアにイタコ芸やらせるんでしょうかねえ(まあイタコ芸なのかこたつ記事なのかは知らんけど)と思いますし、この日銀の手法は「セコい」以外の何物でもないとアタクシは思う訳で、あれだけアホみたいに優秀な人員を張って全国の支店網も使ってコストを掛けて経済物価情勢の現状と先行きの見通しを分析しているんだったら、公式発表の時に堂々と自信を持って正式発表すれば良いと思うのですが、なんでこうやってメディアの口を使って裏口入学みたいな事をするんだかと思うし、どうせそう言って正面からいちゃもん付けると日銀の事だからメディアが勝手に書いてるって言って逃げるんでしょうけど、メディアだって何の材料もない所からは書けない訳で、その「関係者」とやらが材料ださなきゃ良いだけじゃんとか思うのですけどねえ。マッタクモウ。

てな悪態はさておきまして。

『日本銀行は今週の金融政策決定会合で議論する新たな消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の見通しについて、2023年度を従来の前年比1.8%上昇から2.5%程度上昇へ大幅に上方修正する公算が大きい。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』(上記URL先より、以下同様)

いやー先月の終わりからずーっと「日銀の事だからどうせ23年度は+2.3%までしか上げないで、24年度を+1.8%に下げて25年度を+1.6%に据え置き」と大予想をぶち上げておりましたけれども、この大予想が外れる流れになったかということですが、逆に+2.5%なんかにしたら(それでもコンセンサスビューのレンジで言えば下限ですけど)物価目標達成の定義からして話に無理が出てこないかという事になる筈なんですけど。

『企業による積極的な価格転嫁を背景に足元のコアCPIが3%台と日銀の想定よりも上振れていることを反映する。』

企業の価格転嫁が想定以上だという言い訳のようですが、そもそも論として4月展望の時点で日銀の2023年度の物価見通しが狂気じみたレベルでおかしかったわけで、その点についての責任問題というのはどうなっているのか、外すにしても理由の分かる外し方なら止むを得ませんが、明らかに恣意的に無茶苦茶な見通しを出した場合は責任の所在を明確化してしかるべき措置を取るべきだと思いますわ。

『もっとも、海外経済や来年の賃上げの動向など先行き不確実性が大きい状況に変化はなく、24、25年度については現在の2.0%、1.6%から小幅の修正にとどまる見通しだ。』

上か下か書いてねえ・・・・・・・・・・・・・・wwwww

『このため、持続的・安定的な2%の物価目標の実現を展望できる見通しにはならず、』

ということなのですが、仮に24年度の+2.0%を修正するにしたって、うっかり上方修正したら実績分と合わせて3年連続で2%を超過した状態になってしまいますし、小幅の修正ってことで+1.9%とかでしたらそれは2%と変わらんだろ(だからアタクシの予想は24年度+1.8%でそれはマクロ分析でもミクロの積み上げでも無くてただの政策逆算見通しになるのですが、まあ+1.8で出してくることには割と自信満々ですし出てきたら口を極めて罵って差し上げますわ)という話になる筈なんですよね。

3年間に渡って2%行けるという話なのにそれを「物価目標の実現を展望できない」というのは最早何を言いたいのかさっぱり分からない次第でして、達成したかどうかの判断をもう少し見たいとかいうレベルならまだしも「実現が展望できない」ってどういう話だよという訳ですな。

でまあこの前も申し上げましたが「オーバーシュート型コミットメント」って物価の「実績値」が安定的に2%超えるまで継続なんですけど、これまた実績値はとっくの昔にずーっと2%を超えているし、そうは言ってもこれまでの話だと「半年くらいしたら2%割れるのが見え見えだからまだダメ」で理由としてやや無理気味でも理屈は通っていましたが、23年度平均+2.5%となりますとほぼ丸々2年物価の実績値が+2%越えとかいう状況になる訳で、もはやオーバーシュート型コミットメントは要らないという話になる筈なので、23年度の物価見通しを降参して+2.5%まで上げて来るんだったら、オーバーシュート型コミットメントとの関係についても確認したい所ですね。

まあブルームバーグの記事に在りますように、この「見通しにはならず」は以下の部分のマクラになっておりまして、

『日銀は大規模な金融緩和政策の維持を決める可能性が大きい。複数の関係者によると、市場機能や金融仲介機能などの副作用にYCCの修正で対応する必要性も現時点で乏しいと日銀はみている。』

そもそも市場機能って市場機能してないわ機能してるのは輪番だけじゃマジでお前ら状況分かっているのか(分かっていてとぼけているなら極悪人だから更生の余地がありますが分かっていないとなると無能なアホウなので更生の余地が無いのが悲しい)という話は昨日もしたので割愛。

でもって何気に笑うのは、記事のヘッドラインにもありますように

『一方、足元で底堅く推移している個人消費や堅調な設備投資計画などを踏まえ、1年ぶりに景気の総括判断の引き上げを検討する。現在は「既往の資源高の影響などを受けつつも、持ち直している」としているが、「回復」などに表現を強める可能性がある。政府は月例経済報告で景気について「緩やかに回復している」との判断を示している。』

ということで、なんと景気判断を引き上げる次第で、景気判断を引き上げて物価の判断引き上げ、しかも足元の物価がゼロとか1とかじゃなくて3という2%目標から見たら上ブレした状態だというのに、マイナス金利とか10年0%とかいう狂気の政策を維持しようという理論が1ミリも理解できない次第で、せめてYCCの長期ターゲットの修正くらいしろよと思う訳ですし、物価も景気も判断引き上げて物価が3%なのに政策何も動かさないんだったらいつ動かすんだよいうことでして、この人たちの政策反応関数が益々意味不明になってきますよね。どうなんでしょ。


ということで、展望レポートの数字がそんなに強めにでるんだったら益々YCC修正すらしないのは政策反応関数が訳分らなくなってしまう、というまさか黒ちゃんの時の方がマシだったと思うような事が起きるとは思わなくて悲しいし、金融政策論やマクロに関しては日本最高の学者でこれかよとおもいまするに、日本の経済学とは何なのかと悲しい思い(まあワイは経済学部出てないけど)になるのでした。



〇野口審議委員の先月20日位にやってた金懇の会見だが政策修正をしない屁理屈の想定が出来るのが笑えます

いやー1か月まですわすいませんすいません
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230623a.pdf
野口審議委員記者会見
――2023年6月22日(木)午後2時から約30分
於 那覇市

・物価上昇局面においては物価上昇が先行するものではないでしょうか

この会見録、6ページ半あるのですが、ご当地質問の回答で1ページ半使った挙句に次の質問が多角的レビューとかいう企画局謹製のお手盛り茶番レビューの話で、そこまでで2ページと3分の1が費やされるという不毛の会見なのですが、この次の質疑が中々アレでして、

『(問)二点お伺いします。一点目なんですけれども、午前の講演でですね、金融緩和継続を通じて、賃上げのモメンタムをより強固なものとすることが最も重要と、そのように発言されました。モメンタムの強まりを確認するにはですね、様々な要素があると思うのですが、野口委員は、来年の春闘、これを確認することが、やっぱり最低限必要とお考えなのか、ということが一点目です。(後半割愛) 』

どこで賃上げのモメンタムが強くなったと判断しますか、という質問ですね、まあこれはある意味助け舟みたいな質問ですね!!!!!!!!

『(答)まず最初の賃上げのモメンタムというものをどういうふうにとらえるか、ということでありますけれども、』

ということで上記URL先のPDFの3枚目の中ごろから回答が始まるのですが、謎にクッソ長くてナンジャコリャと思いながら読んで見る訳です。

『今春闘に関しては 30 年ぶりの賃上げということが実現されまして、これが重要なのは、一回で終わってはならない、これが継続的に続くということが 2%の物価安定目標を安定的・持続的に達成するための非常に重要な条件になるということをお話ししたわけであります。』

そんな時期まで見ている間今の超極端な金融緩和度合いを継続していて良いのか、という問題が大いにあるし、まあ政策修正しろよと言っている向きだって(一部の外れ値人間を除き)別に引き締め水準まで緩和修正しろって話じゃないので、この話は「緩和的な政策の継続」の理屈にはなっても「今の水準の緩和を継続」の理屈には本来なり得ないんですけど、まあ日銀の屁理屈はこれが今の狂気じみたレベルの緩和継続の理由になっておりますね。

『そういう意味で、来年、これを更に上回るということが、できれば望まれる、というふうに私は考えております。』

これが今の規模の緩和を続ける理由にはならないがまあ話としては言いたいことはわかるのですが、

『というのはですね、今年 30 年ぶりというふうに、賃上げが確かに実現されたのですが、基本的なベースアップでみますと、まだ 2%をやや上回る程度であるということでありまして。これでもですね、これまでは春闘で、少なくともベアだけでみますとせいぜい 0%台という状況であったわけで、非常に、なかなか難しい状況で、賃金と物価の好循環の実現という、そういう大きな目標からすればですね、非常にまだ距離が遠いなという状況だったのが、相当近づいたということは事実であります。』

文字起こしで見ると辛いものがあるなwwwwwwwwwwwwwwwwww

まあ言いたいことは「やっと単年度あがっただけだよ。今までよりはだいぶマシだけどさ」ということだというのは把握した。

『しかしながら、そうはいっても、物価目標 2%でありますから、これを持続的に達成する、名目賃金が 2%上昇するというだけでは、やはりこれは実質的には、実質賃金としては全然上昇しないということになりますので、やはり 2%を上回るような、物価目標を上回るような名目賃金の上昇というのが必要であるというふうに、個人的には考えています。』

ここがお前は何を言ってるんだという話なのだが、実質賃金があがってないんじゃイクナイって話をしだすと、足元おまえ3%の物価上昇、コアコアだったら4%上昇という水準を放置しているのは何なんだという話だし、そもそも論として安定局面ならともかく、物価上昇局面においては賃金の上げの方が後から来るし下方硬直性の問題があるから物価上昇に追いつかないのって経済学徒でもないワイだってそういうもんだと理解しているんですけど。

でもって賃金が上がるためにとか言って、物価水準が既に物価目標を大きく上回った状態になっている中で今の極端な金融緩和を継続して、目論見通りに「物価上昇を上回る賃金上昇」が起きたら、それは賃金と物価のスパイラルという欧米が頭を抱える誰得物価上昇で社会厚生の損失になる筈なんですけど、この人は何を言ってるんでしょうか???????

もし物価安定目標2%に対して整合的な賃金上昇が、というのであれば実質賃金云々というのは物価が安定して2%程度に居る時の状態で話をすべきでして、それだったら2%をやや上回る程度、というのはそれなりに整合的な賃金上昇だと思うのですが、「非常にまだ距離が遠い」ってどういう賃金上昇を念頭に置いているのでしょうかこれでも学者なのかよと思うのだがまあ総裁も学者のうちは光ってたけど今はただのクソジジイ化している(7月会合で実は真の姿を見せてくれる、というのにはワンチャン期待していない訳でもないのでクソジジイとかあんまり言わないようにしてますけどw)し、お前ら学校で教えていたのは何だったのかと小一時間問い詰めたい。



・物価で説明がつかなくなってきたので遂に政策維持の屁理屈に賃金を本格的に使いだす悪寒のする下り

さらにこの回答は続くのですが、この辺りの説明は今後日銀が使う屁理屈を暗示していると思ったのはあたくしだけでしょうか。

『私の午前の講演でもお話ししましたように、実は日本の労働生産性の上昇率というのは決して見劣りをしていない。時間当たりでみますと、アメリカを上回っていると。1%を超えているわけですから。本来ならこのぐらいの実質賃金上昇が実現されてしかるべきであるということを考えますとですね、やはり 3%、あるいはそれを上回るぐらいの賃上げというのがなければ、実質賃金が 1%を上回って上昇するという経済には至っていきませんので、』

ということで物価目標達成に整合的な賃金上昇は3%以上、という小理屈を繰り出してきました。

『やはり今年 1 年ではだめで、むしろこれを上回るぐらいの賃上げというものが、来春闘で実現されるということが非常に重要であるというふうに私は考えております。』

この小理屈を今週末の決定会合後の記者会見であのウスラトンカチが繰り出してくるに1万変態仮面といった所でございますので、是非会見で物価目標達成の定義と賃金の関係についてご質問頂ければ幸甚であります。

『それは本当に実現可能なのかどうかと、これはなかなか、やはり難しい問題が、いろんなリスクがあるというのは事実でありまして、』

というのはわかったのだが、

『特に海外経済の状況、特に海外では高インフレの抑制のために金融の引き締めを続けている国が多いわけでありまして、これが徐々にやはり効いてき始めているということで、海外経済は来年にかけておそらく減速していくであろうという基本的な見通しを持っておりますので。その中で、いかに内需の拡大によって日本経済全体の回復基調を維持するかというのが非常に重要な課題になっているというふうに私は思いますので、やはりその点が今後、私自身が注目するポイントであります。(以下割愛)』

賃金が上昇する云々の話の所では労働生産性の伸びが1%を超えている云々というのを持ち出しているのですから、内生的な話をしているのかと思ったら先行き賃金の伸びが期待ほど行かないリスクに関して何でこの人は海外経済という外生要因を持ち出しているんでしょうか?????????????????????

とは思うのですが、これまた日銀の屁理屈「先行き下振れリスクが大きいから今の馬鹿緩和を継続します」というのに繋がっている訳でありまして、賃金の話をして賃金上昇に関しては来年を見たい、という話で完結すれば良いものを、何故か海外経済ガーを持ち出してくる辺り、日銀執行部の屁理屈の消化がイマイチ足りない、ということが良く分かる質疑応答でした。


まあこれだけ見れば十分ですこの人の会見。





2023/07/24

お題「金曜の引け後からまたも事前報道合戦になっておられます」

〇金曜の引け後から見苦しい事前報道合戦かよどこの未開国の中銀だよ

出たのはブルームバーグの方が速かったのですがその直ぐ後にロイターも同じような報道をしたもんんだからエライコッチャになったのはご案内の通り。

・金曜の引け後にまたもブルームバーグのいつもの「関係者」記事が出た訳だが

ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-21/RY49W3DWX2PS01
日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2023年7月21日 16:35 JST 更新日時 2023年7月21日 18:11 JST

→市場機能に大きな問題生じていないとの見方は変わらず−関係者
→報道を受けて21日夕の日本国債相場は上昇、円安・株高も進む

ということで、このヘッドライン出て、その後ロイターも同じような記事を出したもんだから横綱は大暴れして電車道だわ為替はぶっ飛ぶわでエライことに。

『日本銀行は現時点でイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の副作用に緊急に対応する必要性は乏しいとみている。今月に開く金融政決定会合では見直しの是非が議論の対象になるとみられるという。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』

『関係者によると、イールドカーブ(利回り曲線)の形状に目立ったゆがみは見られず、債券市場の機能に大きな問題は生じていないとの見方は変わっていない。高水準の賃上げ実現など日本経済に前向きな動きが見られる中、YCC修正で金融緩和の持続性を一段と高める必要性も薄く、政策正常化の第一歩と誤解されるリスクを懸念する声もある。』(上記URL先より、以下同様)

相変わらず出所不明の「関係者」記事という日高砲の悪しき伝統を引きつぐブルームバーグのこの品の無い記事とか思う訳ですが、

『関係者によると、日銀は来年の賃上げが鍵を握るとみており、金融緩和の継続によって経済を下支えすることが非常に重要と判断している。企業の積極的な価格転嫁や人手不足などを背景に賃金と物価の好循環への期待は強まっているが、持続的・安定的な2%の物価目標の実現に自信が持てない状況に大きな変化はないという。』

その金融緩和の継続に無理をしないようにするためにはYCCの長期金利コントロールってのが大きな弊害になっているんですけど、どうも単純に金利が上がらないから政策修正不要とかそういう思想で凝り固まっているんですかねえ、というかそもそもこの「関係者」って誰だよという話ではあるんですけど。

とか何とか言ってたらロイターさんも同じ趣旨の記事を突っ込んでて、今回は2社で同じような話をしているので、これはどっかでお漏らしでもあったのか、とまあそういう風に思ってしますが、これブルームバーグさんにしてもロイターさんにしても実はトラップがあって、最初の引用部分をよく見ると、

『今月に開く金融政決定会合では見直しの是非が議論の対象になるとみられるという。』

って書いてあって、「見直しの是非について議論する」ってことになっていますし、あくまでもこの記事は「副作用対策では不要」という話をしているのですから、副作用対策じゃない文脈での修正(経済物価金融情勢を鑑みた修正)の話を必ずしも排除してはいないのですが、まあヘッドラインといい主要な書き方と言い、如何にも「政策修正がありませんバイアス」が強いように見える記事となっております。


・ロイターもシンクロして似たような記事が出て来るとなるとこれはこたつ記事ではなかろうと

https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2Z10GF
2023年7月21日4:53 午後
日銀、金融政策維持の公算 YCC変動幅据え置きの可能性=関係筋

『[東京 21日 ロイター] - 日銀は27―28日に開く金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決める公算だ。イールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みも維持し、10年金利の変動幅も上下0.5%で据え置かれる可能性が高い。』(上記URL先より、以下同様)

というのがBBGの直後に出たもんだから両者ともになんかのソースなりお漏らしなり情報工作なりがあったでのはないのではないかという話になりますわな。

『ただ、市場の歪みなど新たな問題が生じた場合などは、効果と副作用を比較し、YCC修正の是非を最終判断する。』

寧ろお前らの報道でクソみたいなボラが出て市場が混乱しとるわw

『2024年度、25年度の消費者物価上昇率の見通しは前回4月と大きく変わらない可能性が高い。』

だそうです、ということですが記事を見ますと、

『日銀の動向に詳しい複数の関係筋によると、日銀では賃金上昇を伴う2%物価目標の持続的・安定的な達成に向け、賃金と物価がともに上昇する好循環の兆しが出てきているとの声が目立っている。その半面、海外経済や賃金上昇の持続性への不確実性から目標達成への確信は深まっていない。日銀は金融緩和を粘り続けることで経済を支えていく方針とみられる。』

とまあ大体背景として言ってることがBBGと一緒な訳で、ああそうですかってなもんですが、しかしこいつら債券市場のアベイラビリティとか分かってないよなと思うのは、

『YCCを巡っては、10年金利が上限の0.5%に迫っているものの、日銀ではイールドカーブは滑らかで問題ないとの声が出ている。社債発行も支障なく進んでおり、現時点で市場機能面で大きな問題は生じていないとの声が目立つ。』

って言ってるんですが、入札で落札して輪番に放り込む人からしたら市場は機能しているのかもしれませんけれども、そうじゃなくて普通にトレーディングじゃなくて債券ポートを運営して、イールドカーブの戦略とか割高割安を取りに行く、みたいな運営をある程度のロットでやろうと思っても全然出来ないというか売買コストがエライ掛かる状態で、ちょっとしたフローであっという間に値段が飛んでしまうという状況は前よりもさらにひどい(7−10年とか殆どの銘柄日銀が8割とか持ってるんだぜ)状態になっている訳で、「現時点で市場機能面で大きな問題は生じていないとの声が目立つ」とか言ってるのがもう不見識極まりなくて、まあそんな状況ですからこの人たちの言う「市場機能」なんて本当に市場の事を分かろうとしていないというのが明白でして、寧ろ市場機能に関してだったら財務省理財局の方が真剣に考えているだろうなあと思うのですよね。

とは言えこの記事に関してもさっきのブルームバーグと同じくでしらっとこんなこと書いてあって、

『ただ、日銀は来週にかけて、引き続き債券市場や為替市場の動向を注視する方針だ。市場の歪みなど新たな問題が生じた場合には、YCCの運用を見直した場合の効果と副作用を比較・検討した上でYCC修正の是非を判断するとみられる。』

などというヘッジはあるのですが、記事の見出しからして「政策修正なし決め打ち記事っぽく見えるように書いている」というのは2社同様になっているんですな。


ちなみにロイターさん、実は英語版の方が速かったのかそれとも日本語版はアップデート記事拾っちゃっているのか知らんですけど、英語版の方が時間が速くてほぼブルームバーグと同時に近い感じなんですよね。

https://www.reuters.com/markets/asia/boj-leaning-towards-keeping-yield-control-steady-next-week-sources-2023-07-21/
Bank of Japan leaning towards keeping yield control steady next week, sources say
By Leika Kihara and Takahiko Wada
July 21, 20234:39 PM GMT+9Updated 2 days ago

『TOKYO, July 21 (Reuters) - The Bank of Japan is leaning towards keeping its yield control policy unchanged at next week's meeting, five sources familiar with its thinking said, as policymakers prefer to scrutinise more data to ensure wages and inflation keep rising.』(上記URL先より、以下同様)

5人のソースって誰だよという感じですが、まあまあ同時にこういうニュースがぶっこまれるということは、金曜の午後に何かがあったんでしょうねえという所ではあるのですな、うんうん。なおロイター英語版ではこの冒頭の次にすかさず、

『But there is no consensus within the central bank on how soon it should start phasing out stimulus, which could make next week's decision a close call.』

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwwwww何がクロースコールやとは思いました。以下はまあ記事の砲でも見てちょんまげ。


・しかもロイターさん前場はこれだったんですよね

https://jp.reuters.com/article/idJPL4N3943BE
2023年7月18日11:29 午後
訂正(18日配信記事)持続的・安定的な物価2%達成には「まだ距離」=植田日銀総裁

これ日付は元記事になって読みにくいいのですが、実際は金曜のお昼ごろ(記事検索掛けると「2023年 7月 21日 12:14 JST」などというのが見える)に訂正記事入っていて、

『(18日配信記事で、第2段落の植田総裁の発言の中で「認識がまだまだある」とした部分を「認識がこれまである」に訂正します)』(上記URL先より)

って日銀公式の会見録出てから訂正かよと思う訳ですが、今更訂正したのは何でですねんというお話でもありまして、植田総裁のインドでの会見記事で折角順調に進んでいた円安修正が元の木阿弥になりそうな流れだったのでロイターさんがゴメンチャイしたのかと思いまして、あらあら今さら何をしているのよとか思った次第。

『植田総裁は「持続的・安定的な2%のインフレ達成というところにまだ距離がある、との認識がこれまである(訂正)」と言及した。「その認識のもとでは、金融仲介機能や市場機能に配慮しつつ、イールドカーブ・コントロール(YCC)のもとで、粘り強く、金融緩和を続けていくということをしてきた」とも語った』

話のニュアンスがだいぶ変わってしまいますねえという所ですが、そもそもこんな余計な言い方をして説明をするウスラトンカチが根本的にコミュニケーションポリシー的になっていないのですが、まあ何はともあれその当日じゃなくて日銀の会見録出てからノコノコ訂正記事だすってのも何か変だなと思っていたのですが、これは方向性としては「政策変更ありません強調記事の訂正記事」なのでこの流れだけ見ると昼と引け後でドテンしているという迷走ぶりに泣いた。



・当然為替は飛ぶわ横綱はフライデーナイトフィーバーを始めるわ

横綱暴れすぎィ!
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through

長期国債先物

限月:23年9月限
取引日:07/24

始値:147.79(07/21)(15:30)
高値:148.74(07/21)(17:39)

とありますように、東京午後5時39分に15時引けの147.78からほぼ1円上にぶっ飛んでエライコッチャでございますがな。

安値:147.73(07/21)(16:08)
現在値:148.39(07/22)(06:00)
前日比:+0.61
取引高:23,681

出来高イブニングなのに2万3681枚wwwwwwwww


こちらはNY市場サマリーになりますが為替ちゃん
https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2Z11OQ
2023年7月22日6:06 午前
NY外為市場=円が対ドルで下落、日銀が現状維持との思惑で

『[ニューヨーク 21日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、円が対ドルで下落した。日銀が27―28日に開く金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を決める公算というロイターのニュースに反応した。』(上記URL先より、以下同様)

自画自賛キタコレ。

『ドル/円は一時、7月10日以来の高値となる141.95円を付けた後、終盤は1.24%高の141.81円。週間では2.22%高と、昨年10月以来の高い伸びを記録する勢い。』

元の木阿弥・・・・・・・・・・・

『報道によると、財務省の神田真人財務官は21日、為替市場で円安が進んでいることに関連して、緊張感を持って注視している、過度な変動は望ましくないという観点からあらゆる手段を排除せず検討していく、などと述べた。』

というのがありまして、さらには・・・・・・


・神田財務官激おこぷんぷん丸キタコレ

https://jp.reuters.com/article/idJPKBN2Z10OP
2023年7月21日7:40 午後
金融政策修正の可能性巡り、市場に様々な期待や憶測=神田財務官

『[東京 21日 ロイター] - 財務省の神田真人財務官は21日、最近の物価や賃金の動向について「企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが出てきている」との見方を示し、「足元のマーケットでは金融政策に関し何らかの修正がある可能性を巡り、様々な期待や憶測が広がっている」と指摘した。』(上記URL先より、以下同様)

改めて「企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが出てきている」を示したのかw

『神田財務官はロイターの取材に対し、日銀の金融政策決定会合が27─28日に控える中で、金融政策について自身の立場でコメントすることは差し控えると述べた。その上で、植田和男総裁が説明している通り「毎回の決定会合において日銀が物価等の前提や見通しをきちんとチェックした上で(政策を)判断されるものと承知している」と語った。』

この「毎回の決定会合において日銀が物価等の前提や見通しをきちんとチェックした上で(政策を)判断されるものと承知している」って普通の言葉なんですけど、大写しサムネと並べられるとなんか意味深なアレを。

『報道によると、これより前、神田財務官は、為替市場で円安が進んでいることに関連して、緊張感を持って注視している、過度な変動は望ましくないという観点からあらゆる手段を排除せず検討していく、などと述べた。』

とまあそういうことで神田財務官激おこだわそりゃと思いました。


・と思ったら読売新聞の土曜朝刊がこれである

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230721-OYT1T50363/
長期金利上限 議論へ…日銀決定会合 大規模緩和は継続
2023/07/22 05:00
[読者会員限定]

ということで記事の中身は全然掲載されていませんのですが、こちとら土曜に朝刊を買いにお出掛けしまして、読売新聞(私が査収したのは13版)朝刊を査収して参りました。

まあ有料記事なので細々と引用するのは控えますけど、こちらの記事も決まったとかそういう話ではないのですけれども、冒頭の書き方が記事表題の通りで27、28日の決定会合で「利回り上限について見直しを議論することが21日分かった」というような書き方になっていまして、これは火消しキタコレといった風情で何だよこのお漏らし合戦はというお話でございます。


〇ということでどこの未開国家の中央銀行なんだよと小一時間問い詰めたい

植田総裁になったら金融政策に関するもろもろが真っ当なものになる。そんなふうに考えていた時期が俺にもありました(アスキーアート略、ってか今時「そんなふうに考えていた時期が俺にもありました」あんまり使わないような気がするので検索してくらはい)。

ってなもんでして、黒田さんの時よりも1億倍位酷いじゃないですかこの事前報道しかも前のを引っくり返す事前お漏らしっぽいのが次から次へと出る訳で、さすがにここまで来ると酷いとかいうレベルを超えて最近はこの報道見ても乾いた笑いしか出なくなっている今日この頃。

まあこれ植田日銀のコミュニケーションに大幅な問題があるとしか思えないし、YCCの長期コントロールがあるからコミュニケーションを難しくしているという点もあるので、コミュニケーションを立て直したかったら即刻YCCを止める(または物凄く形骸化する)しかないと思うんです。

まーマジで今回は何が飛び出すか(といって修正するか何もしないかの2択ですけど)ですけど、何もしないと為替がぶっとんで関係各位からの怒られが発生する、というのが火をみるより明らか、となった以上はちょっと完全無回答という訳にもいかないとおもうんですがさてどうなるやら。


今週もワケワカメな理不尽相場に振り回されそうですのでCPIとかあった気がしますが今朝はこの雑談でご勘弁ください、というか毎日日銀報道ネタばっかりじゃないのよ頭クラクラするわ。






2023/07/21

お題「植田総裁は息を吐くようにヘッドラインリスクを振りまくのが把握できました/経済財政諮問会議ェ・・・・・・」

これは神田財務官も憤怒の展開ですね(個人の妄想です)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB20CMR0Q3A720C2000000/
円、対ドルで一時140円台に下落 1週間ぶり円安水準
グローバルマーケット
2023年7月20日 23:11 [有料会員限定]

『20日のニューヨーク外国為替市場で円が対ドルで下落し、一時1ドル=140円台を付けた。140円台は12日以来およそ1週間ぶり。20日発表された米経済指標が雇用市場の底堅さを示し、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続を意識したドル買いが幅広い通貨に対して広がった。』(上記URL先より、というか以下会員限定記事)

〇植田総裁の会見録がやっと出たのですがこの質疑応答は酷すぎる

昨日の引け後にやっと出た訳ですが
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230720a.pdf
植田総裁記者会見(7月18日)
――G20終了後の鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田総裁 共同記者会見における総裁発言
2023年7月20日
日本銀行

―― 於・ガンディーナガル(インド)
2023年7月18日(火)
午後6時51分から約20分間(現地時間)

基本的には国際金融市場でよほどネタがない限りは会見って無風の筈なのですが、何故かあんなにあじゃぱーになったのはこの質疑応答のせいなのはご案内の通り。2ページ目になります。

『【問】続いて、植田総裁に一問伺います。G20の場ではあるんですけれども、7 月の政策決定会合が近いということで、これについて是非お考えをお聞かせください。7 月の政策決定会合に向けて、市場でのYCC修正観測によりまして、週明けの東京市場ではイールドカーブに歪みが生じる兆しがありました。総裁は以前からコストとベネフィットを衡量してYCCを修正するかどうか決めるというふうにおっしゃっていましたが、足元の状況を考慮しますと、修正する必要はないとお考えでしょうか。ご見解をお聞かせください。』

ちょwwwwwwwwww自制しろwwwwwwwwwwwww

とまあ普通は思うのですが、確かに総裁がこんなサービス発言するなら質問する方は勇躍して質問しますし、これ聞いた記者さんどこの方だか存じませんが、G20会見でしかも主要テーマが(議長総括ざざっと斜め読みした限りだと)別にインフレがどうのこうのという話は無いというこのご時世で、まさかの市場の材料になるネタを引き出したんだからスマッシュヒット(なのかラッキーパンチなのかはさておき)にも程があるわ。


・そもそもこの質問の回答は実質一言で終わりの筈である

でですね、この質問に対しての回答って本来は、

(10人いたら15人はこう答えるだろうという回答)「次回だけではなく毎回の金融政策決定会合においては、私を含む9名の政策委員で、その時の経済物価情勢や先行き見通しなどを慎重に検討し、その時点で最も適切と思われる金融政策方針を決定する、ということに尽きます」

以外に何の回答するんだよ(既に金融政策の方向性があって次回のアクションを織り込ませたい時は別の回答もあり得るけど)という話でありまして、他に何の回答があるんだよと思う訳ですよ。

でまあ植田総裁の回答なんですけど、通しでまずは引用しますけどね。

『【答】ちょっと長くなるかもしれませんが、これまでの私どもの考え方をもう一度申し上げたいと思いますけれども、まず、基本に、持続的・安定的な 2%のインフレの達成というところにまだ距離があるという認識がこれまであって、そういう認識のもとでは、金融仲介機能とか市場機能に配慮しつつ、イールドカーブ・コントロールのもとで粘り強く金融緩和を続けていくということをしてきたわけでございますけれども、そういう姿勢、もちろん最初の前提のところは毎回の決定会合でチェックするわけですし、見通しが変わるところでも一応、改めてきちんとチェックするわけですが、それの前提が変わらない限り、全体のストーリーは不変であるということは申し上げたいと思います。』

・・・・・・・・いやちょっと勘弁して下さい何ですかこの回答は。


・冒頭から事実上の切り取ってください宣言して回答するとかもう馬鹿かとアホかと

まずですね、冒頭の「ちょっと長くなるかもしれませんが」というのがダメダメな訳で、次回の決定会合に関しての質問については回答はシンプルなものしかあり得ない(基本「そんなものは決まっていない」でごく稀に「次回の予告ホームラン」だがどっちもシンプルになる)のであって、「ちょっと長くなるかもしれませんが」と言ってる時点で「どうぞお切り取り下さい」と言っているようなもんで全く持って話にならんというか、わざわざ自分からヘッドラインリスクを作り出しに行っていて初手からいきなり論外である。

でもって次の「基本に、持続的・安定的な 2%のインフレの達成というところにまだ距離があるという認識がこれまであって」というのもこれまた情報発信としてあまり良くないんですよね。と申しますのは、「まだ距離がある」と言ってしまうと「しばらくの間は政策を維持(または追加緩和ですけどまあそれは無いとして)する」って意味合いを強くするわけですよ。これは即ち7月会合もそうですし、数回先の決定会合まで何もしないと言っている意味合いが強くなるわけです。

だからこの「距離がある」の切り取りに思いっきり反応するのは当たり前で、まあそもそもこれまでの云々とか言う必要もないのですが、いうのであれば昨日も悪態つきましたように「2%の物価安定目標の達成に向けてこれまで大規模な金融緩和を行っていました」というだけの説明にすべきであって、「距離がある」とかいう言葉を使ってしまうよりフォワードコミットメントに近くなるからアカンのですよ。

まあついでだから今回の発言では出てこないですが、このジジイがいう「拙速な政策変更はダメ」という言い方に関しても「拙速」という言葉が「早い対応は間違っている」という価値判断の含まれる用語な訳で、拙速じゃなくて単に「早すぎる」というように価値判断の含まれない言葉を使ってほしい訳ですけれども、とにかくこのジジイ、言葉の使い方が丁寧なように見えて甚だ雑でして、本人は「黒田より丁寧な説明している俺様カッコイイ」と自分に酔ってるんじゃないかと思われるのですが、アタクシから見ますと息を吐くように不規則発言をするヘッドラインリスク大魔王にしか見えない訳ですよ。


・なんで「副作用」といわないで限定列挙するんでしょうこの人は

・・・・などとつい毎度の如く朝から血圧をあげてしまった訳ですので落ち着いて次を見ますと、「そういう認識のもとでは、金融仲介機能とか市場機能に配慮しつつ、」などと仰せなのですが、そもそも「金融仲介機能とか市場機能」ってナンジャソラという感じでして、まあこれは12月会合の時に社債市場がどうのこうのというのを謎の言い訳に使ってレンジ拡大を行った事を踏まえて言ってるんでしょうけれども、金融仲介機能ってのが何を言ってるのかという話だし、「金融仲介機能とか市場機能」とかそもそもそのように限定して言及する必要はない訳で、こんなの普通に「政策の副作用にも配慮しつつ」と一般的な言い方をすれば良いだけですよね。何で副作用を金融仲介機能と市場機能に限定列挙するのかが意味わからん。

というかですね、そもそも論として政策の副作用ってのは目の前にある市場機能とか金融仲介機能(ナンジャソラ)とかだけが問題なのではなくて、将来発生し得る大きなコスト(LSAPの行き過ぎによる財政従属とか、それに伴うソブリン信用力の悪化リスクとか、出口局面での市場変動の問題とか、過大な金融緩和の継続によるビハインドの結果生じる諸問題とか)に問題がないかどうか、というのが重要であり、それって第二の柱の点検のテーマでもあるんですよね、まあ連中そんな点検してないけど。


・「毎回の会合で点検する」だけで良いのに余計な事言い過ぎ

でもってまあそんなこと言った挙句にその後に「そういう姿勢、もちろん最初の前提のところは毎回の決定会合でチェックするわけですし、見通しが変わるところでも一応、改めてきちんとチェックするわけですが、それの前提が変わらない限り、全体のストーリーは不変であるということは申し上げたいと思います。」と言ってる訳ですが、なんかここでもチェックするのは「一応」とか言ってやるきのなさそうな言い方をするし、挙句に「全体のストーリーは不変であることは申し上げたい」と基本的にこの人政策修正したくないんだろうなあという言い方をしている訳ですよね。

「チェックはします」が何か嫌々やっている言い方っぽくて、「全体のストーリーは不変」のところは(キリッ)って感じな訳ですから、そらこれは政策修正しない決め打ちと読みたくなる向きの方が多かろうと思ってしまう訳でして、逆に植田さん決め打ちしない発言をしているつもりだったら、もうちょっとこの政策修正することに対する否定的なニュアンスを醸し出すような日本語の言葉使いを考え直して頂かないと、この調子だと「植田発言に騙された」とお怒りになる方々を増やしていく効果しかないと思うのですよね。

まあとにかく余計な事を言い過ぎなのであって、「丁寧な説明」と「余計な不規則発言」は違うんだと申しあげたい訳で届けこの悪態じゃなかった建設的な提言、と思うアタクシですがまあ野良日銀ヲチャーなので所詮は蟷螂の斧ですなナムナム。


全然推奨しないけど、上記の植田発言の感じで説明するんだったら「これまで2%物価目標の安定的な達成に向けて大規模な金融緩和政策を実施してきました。今後も毎回の金融政策決定会合で現状と先行きについて点検します。このとき特段の変化がないのであれば現行の政策を継続することになると思われます」位にしておけよと思う訳でして(これでも余計だと思うけど)、まあとにかくこの人が飛んでもないヘッドラインリスクの塊であるという事が良く分かりましたので、次回以降の金融政策決定会合では決定会合もさることながら、会見でのヘッドラインリスクというのものに注意すべき(と言っても引け後の会見だから注意したからじゃあ何なのというのが悲しいのだが)だし、さらに注意すべきは「ベンダーの切り取りによるリスク」である、ということになろうかと思います。


まあ何ですな、こんなニュースワイヤー的にオイチイ回答をしてくれるんだったら、会見で質問する方も、「御差し支えなければ詳しく教えていただきたいのですが」とか内心舌を出しながら丁寧に質問して植田総裁が鼻高々に「詳しい説明」をおっぱじめる、という流れが確立されていきそうなのでありまして、これは次回会合あたりで流れを断ち切らないとぜーーーーーーーったいマズい流れ(ベンダーとガンマロングの人はオイチイ流れ)になるじゃんと思うわ訳で、ちょっとこれは先行き非常にアレになりそうでオラワクワクして来ただ!!!!!!(ガンマロングだとは言ってないので念のため申し添えます^^)という感じになりました。

やー来週金曜楽しみですね(白目)。



〇経済財政諮問会議クソワロタ

この記事、ブルームバーグさんしょーもないプレイするなよと思ったのは、本件の英文記事の方を14時57分くらいに打ってきて、横綱の引け直前に紛らわしいヘッドライン打つなよと思ったんですがまあそれはさておき。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-20/RY2SPUT1UM0W01
23年度消費者物価2.6%、日銀の2%目標上回る見通し−内閣府試算
萩原ゆき
2023年7月20日 14:53 JST 更新日時 2023年7月20日 18:02 JST

→1月閣議決定の政府経済見通しから上方修正−22年度実績は3.2%
→23年度実質GDP成長率は1.3%、名目は約30年ぶり高水準

『内閣府は20日に公表した日本経済の年央試算で、2023年度の消費者物価(総合CPI)を2.6%程度とし、当初の政府経済見通しから大幅に上方修正した。22年度実績も3%台に乗り、日本銀行が掲げる物価目標2%を2年連続で上回る見通しを示した。』(上記URL先より、以下同様)

下の方に前回比較??があったのですが、そちらを見ますと、総合CPIの見通しってのが23年度で政府の当初見通し+1.7%を+2.6%への上方修正(いずれも物価上昇緩和策込み)になっていて、まあ2%台後半というのはコンセンサスビュー(+2.5〜+3.0くらいでしたっけ)なのでそらそうよという感じですが、

『今年度の消費者物価は1月に閣議決定された政府見通しの1.7%から引き上げられた。24年度は1.9%を見込んでいる。試算は政府によるエネルギー関連の激変緩和措置の影響が含まれている。想定寄与度0.5%ポイントを加算すると23年度は3.1%程度、差し引くと24年度は1.4%程度になる。』

ちょっと待て24年度の見通しが事実上の+1.4なら物価目標達成にならないじゃないかという話なのですが、逆にこれ23年度が事実上+3.1で24年度が+1.4ってどういう落ち方になりますねんと思うのですが。

『22年度実績も3.2%と、昨年の年央試算(2.6%)から引き上げられた。21年度実績は0.1%だった。』

寧ろ2年連続で事実上3%超えということになってしまう方がどうなのって感じではあります。

『今回の内閣府の試算は、政府が足元のインフレ圧力を強めに見込んでいることを示している。一方で、日銀は消費者物価の先行きについて、今年度半ばにかけてプラス幅を縮小していくとみており、政府・日銀間の物価見通しのずれが明確になった。』

ということでありまして、まあ展望レポートで「23年度半ばからプラス幅縮小」の見通しを撤回するのかしないのか、撤回した場合の次の屁理屈がどうなるのか、という辺りが楽しみになって参りました。

#本日はショパンの事情でまた雑感メモで恐縮至極でございました週末は来週に向けて色々インプットしないとですな





2023/07/20

お題「G20の総裁発言でガッツリ反応しちゃいましたねすいませんということで以下色々と心配だなあという個人の感想です」

今朝調べの時点ですが・・・・・・・・

https://www.boj.or.jp/

今回のG7およびG20(ガッツリ反応したのは何故か内容がなさそうに見えるG20の方だったというのがアレですが)会見っていつもの基本は無風の会見と違って金融市場にそこそこのインパクトを与えた(すいません昨日は「これ一発で円安にはならんじゃろ」とか書いたら物凄い死亡フラグを立ててしまいました申し訳ない)んだからなるはやで会見要旨出してくれませんかねえ・・・・・

ま、財務省の方からも出ていないので、内容の確認とかに時間が掛かっているのかもしれないのですが、今回のは結果的にインパクトあったので機動的な対応を頂きたいものでありましたですたい。

https://www.mof.go.jp/

〇おいこらちょっと待てあの会見でガッツリ反応しちゃうのかよ

いやー140円行ってなくて良かったですねーーーーーー(棒読み)

https://www.bloomberg.co.jp/quote/JPY:CUR
ドル/円JPY:CUR

『139.70JPY』(こちらはリアルタイムで更新されている物件なので見に行くと数字が違いますが)

『始値
138.83
安値 - 高値 レンジ(日)
138.77 - 139.99
前日終値
138.83』

とまあそういうことで、東京の昼くらいからドル円139円台に来てワロスワロスとか思っていたら欧米タイムになったら9円80銭とかになってましたが、140円カツカツまで戻ってしまうまという展開になっておりまして、折角内田副総裁と神田財務官がせっせと円安の流れを牽制して回ってきたのが台無しになるという実に香ばしい展開で、「物価の基調」にまで言及するというかなりのビーンボールを放ってまで、「政策の修正全くなしという決め打ちダメ!ゼッタイ!!」とぶっこんできた神田財務官におかれましては、140円台に戻ろうもんなら憤怒待ったなしと思われる(個人の妄想です)所でして、いや植田さんちょっともう少し発言するにしてもものの言い方というのを考えてくれと言ったところでしょう。

目を債券に転じますとイブニングで横綱は148円は寸止めで止まっていますがどすこいどすこい。

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報

長期国債先物
限月:23年9月限
取引日:07/20
始値:147.81(07/19)(15:30)
高値:147.99(07/19)(18:44)
安値:147.74(07/19)(23:14)
現在値:147.91(07/20)(05:11)
前日比:+0.10
取引高:11,965

最近はイブニングが活況で昨日なんかうっかりしたら日中売買高がイブニング売買高に負けるんじゃないかという勢いでした(結局勝っていたが)けど、円債ちゃんこの反応でありました昨日の朝もっときちんと見ないといけませんね反省反省。


しかしまあ何ですな。
https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N3951AN
2023年7月19日3:19 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸で引け、長期金利0.46%に低下 政策修正観測が後退

『 [東京 19日 ロイター] -

<15:10> 国債先物は続伸で引け、長期金利0.46%に低下 政策修正観測が後退

国債先物中心限月9月限は前営業日比45銭高の147円81銭と大幅続伸して取引を終えた。今月の日銀会合での政策修正に対する警戒感が後退した。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.0ベーシスポイント(bp)低下の0.460%。』(上記URL先より、以下同様)

超長期が巻き戻された方が目立ったちゃあ目立ったのですが。

『きょうの国債先物は、日本時間の昨晩に海外で記者会見した日銀の植田和男総裁が「持続的・安定的な2%のインフレ達成というところにまだ距離がある」などと述べたのをきっかけに、7月27─28日開催の決定会合で政策修正が行われるのではとの市場の思惑が後退し、寄り付きから買い戻し優勢の堅調な展開が続いた。』

昨日の駄文で申し上げた通り、この植田さんの発言は「これまではまだ距離があるという認識の元で大規模金融緩和を継続してきた」という言い方だったように(ロイターさんの記事でもそうですが)他の同ネタの記事を合わせて見るとまあそんな趣旨に見えるんですけど、ああいう切り取られ方をする発言をすること自体が脇がガバガバで、脇がガバガバなのは夜のギロッポンだけにしておけと小一時間問い詰めたい所でありまする。

『三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「発言前後の文脈が分からないので植田総裁の意図を判断しきれないが、結果的に『火消し』の効果を発揮し、過去1週間続いた日銀アタック・トレードの逆回転が起こった」との見方を示した。』

こちらでも指摘在りますけど、「前後の文脈が正式なものが出てないから分からん」というのが問題でございまして、だから最初のマクラの所で「会見要旨はよ出せえや」と悪態をついていた訳でして、まあ毒にも薬にもならない一般論とか、今回のG20の説明みたいな議長総括を見れば内容は分かるわというような会見だったら急がなくても良い(議長総括は物凄い勢いで財務省がアップしましたし)のですけど、今回は結構問題になった会見なんでね〜。

しかしまあ何ですな、日銀アタックトレードって何とかストはエライ熱心にその言い方するけど、いうほどアタックみたいなのあるのけという話で、むしろ10年の国債現物はアタックすると日銀のほぼ掟破りのショートスクイーズ攻撃を食らうから10年国債現物という強力トーチカ拠点以外の所で売りが出るんじゃなかろうかと思うんですけど、とにかくこの「市場VS日銀」みたいな話は問題を矮小化するから程々にして欲しいわ。

    OFFER  BID   前日比 時間
2年   -0.05 -0.038  -0.002 15:03
5年   0.107 0.115   -0.015 15:00
10年  0.457  0.467  -0.013 15:07
20年  1.096  1.11  -0.035  15:07
30年  1.384  1.397  -0.033  15:07
40年  1.546  1.555  -0.034  15:03

ということでイマイチこれだと分かりにくいけどまあブルフラットの巻と。


〇これはコミュニケーション相当に注意してやらないと7月会合から先のグダグダが酷い事になると思うの


・YCCの修正は技術論なのか物価対応なのか

まずですね、先々週に出てた内田副総裁の日経等のインタビューでの説明だと、内田さんの説明ってYCCを技術論で修正する、というのはアリですよってメッセージ出していたと思うんですよね。

然るに今回植田さんの説明(正確なのが出ていないのが困りものなんですが)って従来と同様の文脈で説明しているんですが、植田さんの場合はYCCの修正に関しても「物価2%目標達成への自信度」を軸にして説明していて、その結果として展望レポートで出て来る2024年度の物価とか2025年度の物価とかがポイントになる、ってメッセージを出していると思うんですよね。

まず兎に角なんですけど、この部分で内田副総裁と植田総裁の意思疎通どうなってるんじゃという感じがする訳でして、ヒラのチンピラ政策委員が言うならまだしも、バリバリ執行部の2トップの説明の時点でYCC修正ありやなしやを考えるのにあたって基準が違ってくるのはマジ勘弁という所ですな。


まあアレです。YCCってのはそもそも金利市場に介入することによって効果を出す政策なんですから、市場機能が悪化したから副作用で技術的に修正、というのは筋論としては変な話で、だったら最初からYCCするなよという話になるから、まあ植田さんが言ってる方が筋論としては分があると思うの。

しかしですね、植田さんの物価を前面に出した理屈だと、YCCの修正の時ってのは寧ろ政策金利を中立まで早く引き上げないとマズイ時期まで引っ張るという話になるので、それはヤバいでしょということもありますし、仮に技術的修正でYCCの長期ターゲットの修正を実施したとしても、植田さんの物価で勝負説明をだされながら修正を実施しますと、修正即マイナス金利解除から利上げを見に行って、市場が追い込みを始めるというリスクはかなり高いから、物価で勝負すんなやと正直思うのです。


さらにですよ、YCCのもっと本義に立ち返ってみますと・・・・・・・・・・

そもそもYCCの触れ込みは「金利が下がり過ぎると金利の低下は効果よりも副作用の方が強くなる」というのが前提にあった訳ですな。当時の日銀の説明ですと、「均衡イールドカーブ」という「均衡政策金利」をイールドカーブ全体に引き伸ばした概念があって、その均衡イールドカーブに対して適切な程度のイールドカーブ押し下げを行って、それによって金融緩和の効果と副作用を比較衡量した際に最適となるであろうイールドカーブを形成するのがYCC、とまあそういう説明になっている筈なんですよね。

そうなりますと、YCCの本義に立ち返った際に、2021年3月会合での

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2021/k210319b.pdf
より効果的で持続的な金融緩和:政策面での対応
(参考)より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検

で決めた「10年0%」という水準っていうのはあくまでも2021年3月時点における経済物価金融情勢を踏まえて適切と決められた数値な訳でして、そらまあそもそも均衡イールドカーブ自体がかなり幅のある概念なので。経済物価情勢が多少動いた程度でこの「10年0%」を変更する必要もない(多少の動きを反映してやりだすとコロコロ変えないと行けなくなる)のは分かるのですが、2021年3月から比較して物価情勢が呆れるほど大きく変わっているのに、10年0%を維持し続けている、という方が本来のYCC導入時の意義を破っているということになるんですよね。

まあとにかく黒田日銀(というよりは屁理屈の魔術師のあのお方)はQQEを最初にぶっこんだときは置物フローチャートに見られるような中身は兎も角として理屈としては(机上の空論ですけど)通していたんですけど、2年で2%が出来なくなりそうになり、QQEが行き詰ってしまってからというもの、「政策の上乗せ措置を取るたびに何か屁理屈を捻りだしてくる」というのを連続させまして、まあその屁理屈をちゃんとその後も使っていりゃあまだしもなのですが、政策をやっているうちにいつの間にか当初の触れ込みであった理屈を無かったことにしてまるで別の説明をおっぱじめる、という碌でもないことをしていた訳ですよ、ええ。

でもって植田さんは初手の時点でこの「屁理屈の昭和温泉旅館」の解体作業を開始すればよかったのに、「屁理屈昭和温泉旅館は是である」という所からスタートした挙句に「先行き見通しの不確実性」とかいう屁理屈というか最早それはお前の感想だろと言いたくなるようなポエム言い訳の上乗せ措置を取る、という昭和温泉旅館も裸足で逃げ出すんじゃないかという屁理屈の空中回廊を建て増ししてしまっているので目も当てられない。


・G20会合記者会見で植田さん7月どっちに転んでも説明が苦しくなる決定打を打ちましたね

とまあそんな訳ですが、いや正直ワシも7月政策修正するのかしないのかとか全然わからんわ(べき論で言えば「名誉ある修正」のラストチャンスなので今やらないと今後の政策運営が目も当てられないグダグダになるという不幸が待っていると思うのですがそれは兎も角として)という話なんですけど。

昨日も7月どうするという大予想(になっていないけど)をしましたが、本人の意思はどうあれ、このままでは「内田さん神田さんのYCC修正だってなくは無いんだよ〜」を否定して、5月の内外情勢調査会以来の植田ハトハト音頭を踊った、という扱いになっているわけで、これがまだ今回の情報発信が無くて7月会合でジャガーチェンジするなり、先行き情勢が好転して行けば何時とは決め打ちできないし時間が掛かるかもしれないけど、いずれはYCCとかマイナス金利を解除する方向になりますよーみたいな言い方をする(アタクシ的には現時点ではこの「政策は修正しないけど慎重なリップサービスはする」がありそうかなと思ってはいるけど自信は1ミリも無い)なりした場合に、もう明白に「G7G20の時の発言は何だったのか」「黒田総裁のサプライズ狙い運営が良いと思っているのか」と攻め立てられてしまうのでありまして、植田さん(も内田さんもそうだけど)余計な事を喋り過ぎだと思うのよね。

現状維持で何も無しの無回答の場合は、植田さんの首尾一貫さはキープされるのですが、この場合はその前の内田さんや(MPMとは関係ないけど)神田さんやらの発言は何だったのかという話になりますし、それより怖いのは円安。

もともとムツカシイ所にきて、植田さんが余計な事(2%目標の達成にはまだ距離がある)を言ってしまったために、コミュニケーションが難しくなったなあという所でして、この立て直しも急務だと思うのですが、危機感あるのかね〜って思ってしまうのですよ、いろんな点で。



えーっとすいませんただの雑談だけになってしまいましたが、他のネタを成敗するほどの時間的な余裕がないのですいませんすいません本日はただの雑感で勘弁してつかあさい。


・・・・・・でまあ思うんですけど、神田財務官と内田副総裁は連携できているのは今回の一連の流れで良く伝わってきたのですが、植田総裁がぶち壊しにかかる発言を不用意にしてしまう、というのを見ますと、政策の説明という意味でのコミュニケーション(ワシら向け)も心配ですけど、もっと心配なのは植田さんちゃんと要所との連携が出来ているのかよという点ですよね。

いやまあ独立性ってのはあるからそら別に隷属しろとかそういう話ではないのですが、こんなにぎくしゃくしたのが平場に思いっきり出てしまうってのはさすがに危ない気がします。何で就任3か月ちょいでこんなグダグダになるんだよと泣けますよね。







2023/07/19

お題「G7G20での植田総裁発言報道から/今さらですが野口審議委員の沖縄金懇を見てみました」

この暑さはなんですのん・・・・・・・・・

〇植田総裁の発言とかいうのが報道されてますが内田副総裁発言からの流れに掉さしてますなあ

G20とかG7にご出席中の植田総裁、そもそも日曜に発言してたネタを昨日拾うの失念していまして、その辺から参りたいと思うのですが・・・・・・・・・・・

・そもそもおまいら市場機能を重要視する気があるなら発狂買入とかしてねえだろ

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-16/RXRJM7T1UM0W01
利回り曲線のゆがみ緩和、市場機能認識大きく変わらず−日銀総裁
横山恵利香、青木勝
2023年7月16日 18:02 JST 更新日時 2023年7月16日 19:03 JST

『・G7で米経済と世界経済は「非常に不確実性強い」との指摘−植田氏
・揺るぎないG7のウクライナ支援確認、為替の議論なし−鈴木財務相』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、

『日本銀行の植田和男総裁は16日、債券市場では全般的に流動性低下などの機能度低下はある程度見られる一方、イールドカーブ(利回り曲線)のゆがみは「かなり緩和されてきている」との認識を示した。インドで開かれた主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の終了後、記者会見した。』

ってのは良いんだが、日曜の会見が今朝の時点で会見の方が出てこないとはどういうことやお前内容がどうでもいい一般論だったら兎も角金融政策決定会合近くの会見で金融政策の話になっとるんだからとっとと出せやとは思いました(まあ財務省も出していないんですけど財務省の方には議長総括が掲載されていますし、まあ大臣会見事態に緊急性のある話は無かったようなので)。

『総裁は自身の市場機能についての認識に関して、4月や6月の金融政策決定会合後の記者会見で話した
内容と「大きくは変わっていない」とも語った。』

そもそも論として市場機能のことを重要だと思ってるんだったら国債買入をもっと減らせと思いますし、3月だから黒ちゃんの時とは言え、「発行額以上に国債を買い入れる」「挙句にショートスクイーズを日銀が自ら仕掛けて相場を壊す」というような事をしている日銀に市場機能とか言われてもお前は何を言ってるんだという話ですわな。

しかしまあ何ですな、

『G7会議での世界経済を巡る議論に関しては、米国経済や世界経済は今年入り思ったほど減速していないものの、先行きは「非常に不確実性が強い」とみられていると説明。』

はい来ました兎に角「不確実性」っていっておけば良いという植田ハトハト節。

『最大の決定要素の一つとして、依然として粘着的なコアインフレ率の今後の推移を挙げた上で、「それに伴って中央銀行がどういう対応を取るかという点が一番大きい」と述べた。』

あのですね、アメリカンのコアインフレ率(日本のCPIでいうコアコアに相当)の推移がどうのこうの言ってる暇があったらテメエの国のコアコアインフレ率の推移をみて今の馬鹿緩和をしている意味はあるのかという自問自答をして欲しいんですけどねえ。


・・・・・・まあどういうやり取りからこういう話になったのかが会見要旨出てこないので良く分からんのでありますが(さすがに今日は出ると思うのですが)この人達「市場機能論」では政策修正をしてこないというのはほぼほぼ自明(言い訳に使う事はあっても市場機能はトリガーにならない、という意味なので表面上市場機能を言い訳にする可能性は大有りですけど)でして、奇しくも神田財務官がイヤガラセのように「基調的な物価動向」について言及するという思いっきり異例のぶっこみをしておりますように、YCCの副作用対応っていうのは市場機能云々じゃなくて円安進行の場合に発動されるというのが先日の内田副総裁インタビューからの一連の流れで見え見えになってしまいましたんで、まあ市場機能とかイールドカーブの歪みとか今の体制における日銀に対して講釈垂れても一切響かないということなんですよねーーーーー。

とまあそでは良いんですけど、先行きは「非常に不確実性が強い」とか言ってこれは内田副総裁のインタビュー以降に出てきました政策修正に関する流れからみたらそれに掉さす話をしていまして、何ちゅうかこの人たちのコミュニケーションはどうなってるんでしょうねと思った訳ですよ。そしたら昨日も会見やってたようで・・・・・


・これ本人は7月会合の決め打ちをしていないつもりなんでしょうけれども発言のやり方が下手くそ

まずはロイターさん
https://jp.reuters.com/article/idJPL4N3943BE
2023年7月18日11:29 午後
持続的・安定的な物価2%達成には「まだ距離」=植田日銀総裁

ちょwwwwwwおまwwwwwwwwww

『[18日 ロイター] - 植田和男日銀総裁は18日、持続的・安定的な物価2%目標達成には「まだ距離がある」との認識を示した。インドで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議終了後、記者団の質問に答えた。』(上記URL先より、以下同様)

おいこらちょっと待て、これから展望レポートの四半期更新版を作って見通しについて議論する、しかも10日後の話を何でお前は決め打ちしているんだよ、と思ったらまあ決め打ちをしている訳ではないみたい(最終的には会見要旨をみたいですけど)ようですけどね。

『植田総裁は「基本的に、持続的・安定的な2%のインフレ達成というところにまだ距離がある、との認識がまだまだある」と言及した。「その認識のもとでは、金融仲介機能や市場機能に配慮しつつ、イールドカーブ・コントロール(YCC)のもとで、粘り強く、金融緩和を続けていくということをしてきた」とも語った。』

これは23年度+2.3%、24年度+1.8%のアタクシの大予言が当たるフラグ来ましたねwww

『そのうえで総裁は「そういう姿勢、もちろん最初の前提のところは、毎回の決定会合でチェックする」と指摘。「見通しが変わる、こういうのも改めてきちんとチェックするわけだが、前提が変わらない限り、全体のストーリーが不変であることは申し上げられる」と述べた。』

>「そういう姿勢、もちろん最初の前提のところは、毎回の決定会合でチェックする」
>「そういう姿勢、もちろん最初の前提のところは、毎回の決定会合でチェックする」
>「そういう姿勢、もちろん最初の前提のところは、毎回の決定会合でチェックする」

ズゴーって感じな訳でして、だったらそんなに力強く最初に「2%達成にはまだ距離があるとの認識」とか言うなよと思うのですよ。だったら最初から「まもなく行われる決定会合では経済物価情勢の展望について四半期ごとの見直し作業を行い展望レポートとして出しますのでその時にお示ししたい」とか何とか決め打ちしないで話をすればよいものを、何でわざわざ『持続的・安定的な物価2%達成には「まだ距離」=植田日銀総裁』って書かれるような物の言い方するんだよという話だし、これで展望レポートの物価が23年度2%越え、24年度もカツカツ2%となった時に、『持続的・安定的な物価2%達成には「まだ距離」=植田日銀総裁』との整合性を問われてまたぞろ先行きの不確実性ガーで逃げざるを得なくなると思うんですけど、何でこんなところで勝負しちゃうんですかねえ植田さんは。


ブルームバーグさんは「2%に距離」を見出しにしていませんね
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-18/RXZDMBT1UM0W01
物価目標との距離不変なら、緩和継続姿勢も変わらず−植田日銀総裁
伊藤純夫
2023年7月18日 23:28 JST

まあこちらの見出しの方が穏当というか、ロイターさんの方はちょっと切り取り感満載という感じでございましたけれども、そもそも総裁の会見やインタビューでの公式発言は「どこを切り取られても変な解釈をされない」ように作成する(まあかつての置物一派みたいに切り取った挙句に無理筋の曲解をして麿を罵倒しているあたおか集団もいるので油断も隙も無いのですが植田さんの場合はそれ以前の問題)もんだろと思う訳で、植田さんは発言が不安定すぎてみてらんないというか事務方何やってるんだよしっかりしろよという話ではありますな。ということで記事を拝読。

『日本銀行の植田和男総裁は18日、日銀が目指す持続的・安定的な2%の物価目標までに距離があるとの認識に変化がなければ、粘り強く金融緩和を続ける姿勢も変わらないとの見解を示した。インドで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の終了後に記者会見した。』(上記URL先より、以下同様)

まあ基本的にG20後の会見とかだとそんなに話をする時間も無いので記事自体は同じようなことになるわなとは思うのですが、

『植田総裁は、物価目標実現には距離があるとの認識を踏まえて、「金融仲介機能や市場機能に配慮しつつ、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策の下で粘り強く金融緩和を続けてきた」と説明。その上で、目標との距離や見通しを毎回の金融政策決定会合できちんとチェックし、「その前提が変わらない限り全体のストーリーは不変だ」と語った。』

さっきのロイターさんの方にもありましたが、「粘り強く金融緩和を続けてきた」と今までの話をして、それでもって「目標との距離や見通しを毎回の金融政策決定会合できちんとチェック」すると言っているので、まあ一応先の事を決め打ちした訳ではない、というのが2本読んで冷静になると分かる訳ですな。

・・・・・・・とは言いましても、そもそも論として16日のG7の会見の方で思いっきりこの人世界経済の「先行きは「非常に不確実性が強い」」って話をしちゃっている訳でして、それを踏まえますとまあチェックするとか言ってるけど、「その前提が変わらない限り全体のストーリーは不変だ」の方に力点があるだろという連想になる訳で、やっぱりハトハトモード(ただし10日後の会合で点検をしますよとは言っている)という感じに見えますわな。


とまあそんな流れになっておりまして、内田副総裁→神田財務官と円安進行牽制モードをぶっこんでいるのに対して台無しな事をしている感が強い植田総裁な訳ですが(まあ足元は米国の金利低下でドル安だからこれ一発で円安再開とはならんし決定会合前でもありますしおすし)、これ植田総裁が自分の発言をどう認識しているのかは知らんけど、内田副総裁の発言との温度差がありませんか、というような報道のされ方をしている時点でコミュニケーション大丈夫かってなもんですし、ロイターさんのヘッドラインにあるような切り取られ方をしてしまう時点でものの言い方をもっと慎重に行うべきだと思うの。

2%達成には距離があるとの認識の元で云々、とか言わなくったって、例えばの話「物価安定目標の達成に向けて粘り強く金融緩和を続けて来ました」と言えば良いだけのことで、何でそこで距離があるとかそういう事を言ってしまって、その「距離がある」発言が現状の認識なのか、展望レポートに向けた話なのか、過去の話なのかというのが全文を読まないと判然としない(と言いつつ会見要旨みたらそれでも判然としなかったら泣く)発言するんだよ全く困ったもんだという所で、サービス発言とかしなくて良いんですよここは夜のお店じゃないんですよ場所間違えないで下さいね、と植田総裁には申しあげたい所ではありまする。


・・・・・・・しかしまあこの調子だと決定会合で何かしてもしなくてもコミュニケーションが更にカオスになりそうですなあと思う次第でありますが、一応インプリケーションとしては、本人としては7月会合に関して決め打ちしたつもりがない(後者の方ではそんな感じはする)のでしょうけど、世界経済の不確実性について強く言及するなど、いつものハトハト節になっているので、まあ政策修正観測に対して否定的なニュアンスを出した、と読むのが順当という結果になると思いますし、もし植田さんがソウジャナイというのであれば、まあ普通にコミュニケーション(というか想定問答)がアカンって話ですな、ナムナム。



〇まあさすがにネタにしないのも何なので野口審議委員の沖縄貴金懇ネタである

しかし1か月前の金懇を今頃ネタにするとは野良日銀ヲチャーの風上(風上とか風下とかいう人数がいるのかというツッコミは無しで)にもおけませんなアタクシ。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230622a.htm
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
沖縄県金融経済懇談会における挨拶要旨

日本銀行政策委員会審議委員 野口 旭
2023年6月22日

基本的にまあどうでもいいので流すんですけどね。

・物価認識に関して

まずは『2.経済・物価情勢』の『(2)物価情勢』なんですけどね。

『次に国内の物価情勢です。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、昨年4月に2%を超え、同9月に3%、同12月には4%に達しました(図表6)。このインフレの発端となったのは、世界的にコロナ禍に伴う落ち込みから回復する過程で生じたエネルギー価格の急騰です。昨春以降はさらに、ウクライナ情勢等を受けた国際商品市況の一段の高騰や、世界的な高インフレや金利上昇のもとでの為替円安の進行等から、輸入財価格の全般的な上昇が生じました。それらの影響は当初はもっぱら企業物価の上昇として現れていましたが、昨夏以降は小売段階での価格転嫁も進展し始め、食料品等を中心に値上げの波は急速に拡大しました(図表7)。』

ということで外生的な財価格の上昇という認識。

『この消費者物価の前年比は、政府の支援策によるエネルギー価格の低下もあり、本年1月にピークの4.2%を付けて以降は3%台に低下しています。他方で、企業の価格設定スタンスにも変化が窺われることから、食料品等の値上げの動きは今後もしばらくは継続し、当面は財価格の寄与を中心とした2%超の物価上昇が続くと見込まれます。とはいえ、この輸入価格上昇の影響は川上から川下への価格転嫁が一巡する中で次第に剥落していくため、生鮮食品を除く消費者物価の前年比も本年度半ばにかけては2%を下回っていくと考えられます。』

あくまでも財価格のショックが一巡すれば下がるという話。

『この一旦低下した消費者物価前年比が再び2%に向けて伸びていき、それが維持されるためには、「物価の基調」が高まっていくことが重要です。後述のように、今後についてはとりわけ、名目賃金およびサービス価格の動向に注目しています。』

物価の基調が高まっていくことが重要、という話をしているんですね。

『本年の春季労使交渉では、約30年ぶりの賃上げが実現されましたが、それはこの点で画期的な意味を持っています。この結果は、世界的インフレという外生的な要因を契機としたものではありますが、これまでの粘り強い金融緩和による労働需給の改善が、ようやく物価と賃金の相乗的上昇として結実しつつある現れである可能性があります。』

ということでですね、この説明って「金融緩和の効果がやっと出てきました」っていう勝利宣言に通じる話ですよ。


・ノルムの変化に関して結構言及しているんですよね

でまあ金融政策の話があるのですがここは突如クソ面白くもなくなるので全部割愛しまして、次の見出し『4.物価と賃金の好循環を目指して』というのに参りますが、こちらの小見出しが、

(1) なぜ賃金上昇を伴う物価安定が必要なのか
(2)ようやく実現し始めた名目賃金上昇
(3)ビッグ・プッシュを契機とした物価・賃金のノルム転換
(4)持続的な賃金上昇への展望

という小見出しの構成になっている訳ですな。まあこういうのが置物一派の方から出ているんですから本来ならもっとネタになっても良かった(とお前が言うなですねそうですね)のかも知れないのですが、何せこの間に5月の植田総裁の内外情勢調査会から始まる一連の特急スーパーハト号発言が連発しておった訳で、完全にそっちに食われて霞んでいましたなという感じだし、そもそも置物一派なのでオワッテルというのもあったかと。

まあ最初の方ははどうでも良いのですが、『(3)ビッグ・プッシュを契機とした物価・賃金のノルム転換』のところは割と、というかかなりポジポジな物価認識を示しているんですよね〜。ということで引用しますね。

『日本ではこれまで、労働需給の相応の改善にもかかわらず、名目賃金の十分な上昇は実現していませんでした。仮に名目賃金が市場メカニズムを通じて決まるのであれば、労働需要としての求人が労働供給としての求職に対して拡大し、両者の比率である求人倍率が上昇すれば、名目賃金は上昇する傾向を持つはずです。実際、米国では求人倍率と名目賃金上昇率との間には明確な相関関係が見出せます。ところが、デフレに突入した1990年代末以降の日本では、求人倍率と名目賃金上昇率との間にこうした明確な相関関係は見出せません。日本銀行が量的・質的金融緩和を開始した2013年以降を含む2010年代に限定しても、有効求人倍率はコロナ禍直前までほぼ一方的に上昇し続けたにもかかわらず、名目賃金の上昇はごくわずかに留まっていました(図表15)。』

この辺は前置き。

『こうした状況がこれまで続いてきた背後には様々な要因が存在していたと考えられますが、おそらくそのうちの最も重要な一つは、物価や賃金に対する企業や家計の規範的通念としての「物価・賃金のゼロノルム」です。日本では、1990年代末から続いていた「物価が持続的に下落する」という意味でのデフレが金融緩和政策を通じて克服された後にも、賃金上昇を伴う形での物価安定目標が実現しない状況が続いてきました。それは、それまでの長い経済停滞を通じて価格引き上げが販売減少に直結する事例が拡大した結果、「賃金コストの抑制を通じた販売価格の維持」が優先されるようになってきたためと考えられます5。その結果として企業や家計に根付いたのが、物価・賃金のゼロノルム、すなわち「物価も賃金も上がらないことを常態とする通念」であったと考えられます。』

今までは「ゼロノルム」だったけれども・・・・・・・・・・

『あまりにも強固であったこの物価・賃金のゼロノルムも、足許では、世界的インフレ下での輸入財価格の高騰という外生的なショックが「ビッグ・プッシュ」となり、ようやく転換しつつあるように見えます。それは何よりも、これまでとは大きく異なり、輸入原材料等の価格転嫁が小売段階まで広範に行われ、それによって1980年代以来の消費者物価上昇が実際に生じてきたという事実が示しています。もちろんこのこと自体は、基本的にはコスト・プッシュによる物価上昇であり、物価の基調の上昇に直結するものではありません。しかし、その動きが賃金コスト部分を含む価格転嫁にまで波及し、それによってさらに賃金上昇が誘発される場合には、物価の基調を押し上げることになります(図表16)。』

外生的要因によって物価が上がることによってノルムに変化が生じてきているのではないか、という話で、これ自体は元々インフレ期待を引き上げるための1つの可能性として日銀が言ってた筈のことなんですよね。

『これまで賃上げがなかなか実現されなかった一因は、賃上げの価格転嫁が困難な中で、とりわけ離職可能性の低い正規雇用者の賃上げが抑制されてきた点にあると考えることができます6。しかし、これまでの粘り強い金融緩和を通じた労働需給の改善は、離職抑制のための賃上げのような「外圧効果」や同僚間の公平性確保のための賃上げのような「内圧効果」といった形で、正規雇用者の賃上げ圧力をより高めつつありました7。今回のビッグ・プッシュはその点では、今年の賃金交渉の中で、文字通り「決定的な一押し」となった可能性があります。』

最後の話は何か我田引水の臭みが強くていただけないのですが、最後の「今回のビッグ・プッシュはその点では、今年の賃金交渉の中で、文字通り「決定的な一押し」となった可能性があります。」というのは中々威勢の良いお話でありますわ。

よって最後の小見出し『(4)持続的な賃金上昇への展望』を見ますと、

『今最も重要なのは、金融緩和の継続を通じて、ようやく芽生えつつあるこの賃上げのモメンタムをより強固なものとし、趨勢的なトレンドとして定着させることです。それが実現されたあかつきには、日本経済から失われて久しい物価と賃金の好循環のもとでの経済成長を取り戻すことができるはずです。日本銀行による粘り強い金融緩和の究極の目的は、まさしく日本経済をそのような姿に蘇らせることにあります。』

緩和のやり過ぎによって却ってそのモメンタムが壊れてしまう(行き過ぎて弊害が出て来るとか)という話が無いのがアレですが、とにかくこの人達「政策」の話になると飛んでもないポンコツ話になってしまうのは仕様です。

『他方で、日本経済が今後も成長し、人々の実質所得が確実に増加し続けていくためには、技術進歩を通じた労働生産性の上昇が必要不可欠です。それは、基本的には研究開発や事業・生産プロセスの改善といった個々の民間企業の努力によるものです。金融政策は、緩和的な金融環境の提供を通じて、もっぱらその後押しを図っています8。』

別に引き締めろとは思わないけど超緩和によって「民間企業の努力」を怠っている向きを温存しているんじゃないでしょうか、という反省は無いのかねお前さん方。

『ここで留意すべきは、日本企業がその点の努力を怠ってきたわけでは決してない、という事実です。というのは、少なくとも2010年代の日本経済では、人口減少や労働時間減少が続くことで確かに一国全体の経済成長率という点では緩やかなものに留まってはいても、労働時間当たりのGDP成長率という点では米国をも上回っていたからです(図表17)。』

この手の説明を白川時代の日銀がすると口を極めて罵っていた置物一派とは思えませんね。

『こうした状況は、日本経済が生産性の上昇を伴いつつ、着実な成長を続ける可能性は十分にあるということを示唆しています。問題はむしろ、長きにわたるデフレと低すぎるインフレを通じて物価・賃金のゼロノルムが根付いてしまい、物価と賃金の好循環の実現に至らなかったという点にあります。日本銀行としては、当面、そのノルムが変わりつつあるのか否かを慎重に見極めていく必要があると考えています。』

とまあ悪態ついたけど、結論の所は「ノルムの変化を見極めたい」なので、少なくとも「下振れリスク」とか「不確実性が高い」を連呼しながら「物価が上振れるリスクは小さい」とかアホウな事を言いきってしまう総裁よりは結論がまともになっているのがエッシャーのだまし絵みたいな構図になっててウケました。

会見はまた今度。






2023/07/18

お題「決定会合に向けていろんなネタが出すぎ問題/多角的レビューがどうのこうの」

最近のこの時期の気象が無茶苦茶過ぎていかんでしょう。

〇まだ2週間あるのにMPMプレビュー雑談をせざるを得ない(神田さんの発言など)

とりあえず木曜から金曜にかけて色々出るのやめなさいって・・・・・・・

・神田財務官、しれっと物価動向に言及するの巻

というのが木曜の引け後にあった訳でして、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-13/RXQ5GCT0AFB401
投機的な円売りポジション、急速な巻き戻しと市場は見ている−財務官
占部絵美
2023年7月13日 17:17 JST

この中での神田さんの発言、

『神田財務官は、「ファッションだった円キャリートレードの勢いも弱まっている」との見方も紹介した。』(上記URL先より、以下同様)

という「ファッションだった円キャリートレード」というパワーワードをぶっこんでいるのもお洒落なのですが、それよりもこの次ですよ。

『その背景として、今年の春闘での高い賃上げや企業の積極的な価格転嫁の動きなど、「企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが出ており、インフレ基調が変わりつつあるのではないか」と説明。米国の消費者物価指数(CPI)などインフレ状況も注視されていると述べた。』

>インフレ基調が変わりつつあるのではないか
>インフレ基調が変わりつつあるのではないか
>インフレ基調が変わりつつあるのではないか

こwwwれwwwわwww

とまあそんなわけで、しらっと神田財務官が日本のインフレ状況というのに言及している訳でございまして、しかも物価強いですよという話になっております。

ご案内の通り、前週金曜の朝(というか木曜の夜中らしいが)はご案内の通りで内田副総裁の日経やロイターへのインタビューってのがあって、植田さんが6月記者会見やECBのフォーラムで連呼していた下振れリスクがあるから政策は修正すらしませんってのの連呼とは説明のトーンが違う(植田さんもあの人説明するときにああでもないこうでもないという人なので、まあ一応政策修正への含みも発言の中であるにはあるんで、その点で言えば内田さんが全然違う発言をしている訳ではないが、説明するときの強調ポイントが全然違う訳でしたからね)のが出てから1週間で今度は足元で一番ヤバいよヤバいよだった為替問題に絡めてまさかの「インフレ基調」に言及の巻となった訳で、これはもうねという所に加えまして・・・・・・・・・・・・・・


・読売新聞などが展望レポートでの物価見通し上方修正見通しを報じるの巻

読売の記事、と言いたいがヘッドライン以外有料記事
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230714-OYT1T50054/
物価見通し引き上げ公算 今年度2%台に…日銀7月会合
2023/07/14 05:00

読売の記事を報じた他のベンダーの記事(ちょっと見つからなかったのでアレですが)によりますと、24年度も2%台になる、というような内容になっていたっぽいんですよね。

でもってですよ、何でお前ら23年度の見通しの方をヘッドラインにするんだよ馬鹿という話で、そもそも論として23年度の見通しが2%台に引き上げられるのは当たり前で、7月展望でも1.8%とか出したら寧ろそっちの方が大ニュースになるので23年度見通し2%超はニュース価値がなくて、重要なのは24年度も2%台でキープするとか、25年度の見通しをどう置くのかという話な訳ですよ、まあさすがに記事書いている日銀担当の記者の方々はその辺分かっていると思うのですが、どうせデスクが分かってねえんだろうなあと思ったりします。


何せ24年度も2%台だとすると、それはどこからどう見たって物価が2%以上で推移すること3年(22年度含め)という話になるので、これを物価安定目標達成と言わずして何というのかという話だし、まあ屁理屈捏ねてまだ緩和が必要というのにしたって、明らかに緩和効き過ぎリスクを気にしないと行けないような状況になっているのですから、最低でも政策の修正に着手しないと欧米(というか欧州かな)の二の舞になってしまいますがなというお話な訳ですよね。


とか何とか言っているうちに日経も追随してきまして、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB140C80U3A710C2000000/
日銀、物価見通し引き上げの公算 23年度2%台も
金融政策
2023年7月14日 9:38 [有料会員限定]

これまたいつものように有料会員記事なんだが、日経も「23年度2%台」をヘッドラインにしちゃうのまるでダメダメでして、「23年度および24年度が共に2%台」だと意味が大きくなるんだと小一時間問い詰めたい訳で、読売だとちょっとまあシャーナイかなと思ってしまうのだが、日経ってお前ら専門家を名乗ってるんだから23年度2%台とか素人丸出しの見出しを出すんじゃねえよクソ高い代金取って(アタクシは課金してないからどうでもいいけど)その程度しか書けないとか何やってるんだよと思いました。

というかだな、

『日銀は27?28日の金融政策決定会合後に示す消費者物価指数(生鮮食品を除く=コアCPI)の前年度比上昇率の見通しを前回(4月)から上方修正する見通しだ。足元でコアCPIは3%を超えて推移し、企業がコスト高を価格に転嫁する動きが続く。2023年度は政府・日銀が目標とする2%を上回る可能性がある。』(上記URL先より)

「2023年度は・・・・2%を上回る可能性がある」って23年度を2%割れの見通しで出したら(自粛)レベルの頭のおかしい見通しになるんだから「可能性がある」じゃねえよお前何書いてるんだって話ですけどね。2.5%より上の見通し出してくる、ってんだったらまだニュースの意味がある。


その点ブルームバーグさんはちゃんとわかっておられる。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-07-14/RXRMF4T0AFB401
日銀の24年度物価見通し、2%近傍となる公算大きい−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2023年7月14日 18:20 JST

また例の怪しげな「関係者」なのですが、この「小幅の引き下げの可能性」の有無がかなり問題になるのでありますが、記事を見ますと、

『日本銀行は今月開く金融政策決定会合で、2023年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)見通しを2%台に上方修正する可能性が高い。24年度は現在の2%から大きく変わらず、小幅の引き下げが検討される可能性もある。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』

『関係者によると、企業による価格転嫁の勢いが予想以上に強いことが、日銀が現在は1.8%としている23年度見通しの引き上げを検討する重要な要因となっている。上振れ幅が大きくなれば、24年度は反動が出やすく、下方修正も視野に入るという。』(以上上記URL先より、以下同様)

とまあどっちつかずの書きっぷりになっているので、これはタイムスタンプ的にもお分かりのように、とりあえず政策修正ネタで債券市場ちゃんが反応しているもんだからイッチョカミして書いてみるかって感じのするテイストであんまり感心はしないのですが、ただまあ「24年度の物価見通し」をヘッドラインにしたのは有能。

ただまあこの記事も(そう書くと日銀に喧嘩売りまくりだから仕方ないのかもしれないけど)「日銀が現在は1.8%としている23年度見通しの引き上げを検討する重要な要因」は「企業による価格転嫁の勢いが予想以上に強いこと」ってしているけど、正確には「もともと政策に忖度してあり得ないクソ低い目標を出して来たのが7月の見通し引き上げの重要な要因」なんで火力が足りない。

まあその分は、

『ブルームバーグが今月実施した調査では、民間調査機関は2.6%と見込んでおり、日銀の見通しを大きく上回っている。市場では、現行の金融緩和の持続可能性を高めるための政策修正の思惑も広がりつつある。』

と書いているのに加え、

『植田和男総裁は先月、ポルトガルのシントラで開催された欧州中央銀行(ECB)フォーラムで、24年の物価上昇が確信できれば、「政策を変更する良い理由となる可能性はある」と語った。この発言を受けて、日銀が7月の展望リポートで示す24年度の見通しに市場の注目が集まっている。』

というのを記載しているのがポイントが高くて、いやこれよこれという話になる訳です。


・見通しの23年度平均を2%台にした場合24年度の見通しが重要になってくる件に関して改めて

さて、ここで植田総裁一発目の定例記者会見、4月会合での説明を再度確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230501a.pdf
総裁記者会見
――2023年4月28日(金)午後3時30分から約60分

10ページになりますな。

『(問)二点あるんですけれども、総裁のおっしゃる物価の基調といった場合、もちろん様々な手法をみると思うんですけれども、そこがまだ 2[%]に至らないという判断をされる場合の根拠というか、これはいろいろなものを全体としてみてまだ 2[%]に行かないということなのか、少し具体的にご説明して頂ければと。その基調の定義というところをお願いします。(後半割愛)』

しかしこの答え、今にしてみると丁寧な説明というよりも冗長な説明ですよね。

『(答)前半ですけれども、非常に単純なお答えがなくて申し訳ないんですけれども、例えばヘッドラインの消費者物価指数から、欧米でよくやられますように、全ての食品とエネルギーを除いてしまった部分の物価指数、これをみていれば基調的な物価が分かるということであれば、それ一本みていればある程度分かるということで、非常に分かりやすいんですけれども、現在は日本だけでなくて、欧米でもそういう操作をした後の物価指数についてもかなり一時的な部分があって、もうちょっといろいろ考えないと基調的なところが分からないなっていう点で、皆さん苦労されていると思います。』

ここまで前置き。

『ということで、これだけみれば大丈夫だという物価指数あるいは指標はなかなかないわけですが、一つの、どこかでこうした質問にお答えしたんですが、考え方としては、いずれにせよ半年先、1 年先、2 年先の物価見通しをわれわれが出すときには、一時的なところは少しずつ取っていって、長く続くところを取り出していくという操作をしますので、そこにかなりの程度基調的な物価見通しに関する判断は表れている。』

はい結局の所これも24年度が中心の話になりますな。

『そこを判断する際に、私あるいは他の人も申し上げていますように、GDPギャップだとか賃金上昇率あるいはインフレ期待、こういうものの動向をみながら将来を予想していくという操作をするわけで、その結果として出てくる将来の見通しは、かなり基調的なものに近い。そのうえで最初の方にあったご質問とも関係してきますけれども、かなり 2%にそれも近くなってきているんではないかということですが、そこは少し先のインフレ率見通しについては、自分たちで出しておいてこう言うのも恐縮ですけれども、まだちょっと自信の度合いが少し低いので、そこは割り引いてみたいというような判断も含めての、基調的なインフレ動向に対するわれわれの判断でございます。(後半割愛)』

と、今にして思えばこの時も自信がないだのなんだの抜かしておった訳ですが、まあこの説明だと24年度も2%台で出してきたときは逆に物価安定目標達成とは何なんのか、って突っ込まれたときに何て答えるんでしょうなあとおもいってしまいますよね・・・・・・・・・・・


いやーしかしまあその後の報道各社インタビューの時も思いましたし、6月会合の定例会見の時も思いましたけれども、植田さんって本人の中では「丁寧に説明する俺様って前任の黒田とは違ってちゃんと説明しててカッコイイ!」と思っているのかも知れませんけど、こうやって余計な事をああでもないこうでもないと言ってしまうので、後になってから自分の発言が巨大ブーメランになって自分の首を締める、というのを初手から盛大にやっている感じがありますな。

ということで、これ即ち7月の展望で24年度(23年度はもう2%割れとか出すのはあり得ない)の物価見通し数値を前回の+2.0%以上で出してしまいますと、どう見ても政策修正です本当にありがとうございましたって話になってしまいますが、はてさてどうするんでしょうかねえという事になる訳です。

なのでアタクシはこの前から大予想と称して「23年度+2.3%、24年度+1.8%、25年度+1.6%」を主張しておる訳ですがwwwこの時の発言との整合性についてぜーーーーったい突っ込まれるのは分かっているからクソみたいな屁理屈をかんがえているんでしょうけどどうなるんでしょうかねえ・・・・・・・・・・



・ロイター英語砲も出ておられました

https://www.reuters.com/business/finance/boj-bind-price-pressures-heighten-case-early-policy-tweak-2023-07-14/
Analysis: Bank of Japan in a bind as price pressures heighten case for early policy tweak
By Leika Kihara
July 14, 20232:42 PM GMT+9

また木原砲しかも英語かという所ですが、『Summary』ってのがあるから手抜きでそれだけ引用しますね。

『・First test to come in July as price forecasts seen upgraded
・BOJ brainstormed idea of July YCC tweak, no decision - sources
・Any tweak will likely be minor fine-tuning of YCC - sources
・No consensus within BOJ on how soon it can tweak YCC
・Early policy shift would contradict Ueda's dovish message』

まあ記事自体は「結局7月に修正するのかしないのかはクローズコールですがな」という感じでまとまっておりまして、ただ足元では日銀から物価の強さや賃金の強さに関する情報発信が続いていて、植田総裁のハト派的なメッセージとは異なっていますな、という感じの話に仕上がっていると思いました。決め打ちはしていないと思います。


〇でまあそんな訳で3週間前から延々といろんなものが飛び出すMPMなのですが・・・・・・・・・・・

・外堀は埋められるわ織り込ませるわで何もしない場合

木曜の神田財務官の発言って「為替市場への配慮をしろや日銀このスットコドッコイ」と言わんばかりのメッセージにどうしても見えてしまいますし、これが単独ならまだしも、ご案内の通りその前週には内田副総裁の例のインタビューがあった訳でして、流れとしては政策修正を匂わせるようなものになっておりまして、5月の内外情勢調査会、報道各社共同インタビュー、6月会合後の会見にECBフォーラムと立て続けに植田さんの出したメッセージが基本的にハト派全開で、まあそれもあるから円売りへの安心感たるやという流れに対して明確に牽制する流れになっておりますわな。

ただまあこれでドル安になったからと言って安心して政策なんもしないで、会見ではいつもの植田ハトハト音頭が展開された場合、当然ながら「話が違うじゃないか」ということになってしまいますので、そらもう阿鼻叫喚の巷になってしまって為替とか債券とかリアル北斗の拳状態になりそうに思えますし、面白そう(完全に不謹慎)なのでそれも有りっちゃあ有りかなという感想。

ただまあそうなると内田さんのインタビューは何だったのかという話になる(市場に無駄なボラを振りまいただけの話になる)ので、内田さんに対する批判も出て来そうですなと思う訳ですよこれがまた。

いやまあ市場が勝手に反応した、とか内田さんなら言いそうなんですけど、副総裁がそれをいってしまうといろんな意味で台無しなのですよね・・・・・・・・・・・・・・・・


・政策修正をすると植田さんの信認が無くなって中二階に棚上げ状態のお飾りさん扱いになるんですよね

そうは言いましてもじゃあ政策修正をするのか、って話になるとこれまたややこしい所があって、ご案内の通り6月会見でもあの調子だわECBフォーラムでもあの調子だわの情報発信をしておいて、いきなり豹変するというのがまずナンジャソラ状態な訳ですよ。しかも6月の末にそういう話をしておいてのいきなりジャガーチェンジするにしたって言い訳というのが無いじゃんという話ですよね。

でまあこれが完全なる不意打ちでやるならある意味救いようがあるのですが、さらに今回の場合救いようがないのは、「内田副総裁のインタビュー記事から流れが変わっている」ということでありまして、実際にどうなのかはともかくとして、こんなの外野席から見てたら「宮廷クーデター」にしか見えない訳ですよいやマジで。

でまあさっきの木原さんのロイター記事にありますように、

「Early policy shift would contradict Ueda's dovish message」

な訳でして、政策修正したら特に5月以降言ってた植田さんのメッセージは何だったのだという話になるし、しかも流れが変わったのがプロパーの内田副総裁の発言以降、ということになりますと、なんだ植田総裁ってお飾りだったのねこの人の話を聞いててもしょうがないわ、というところまで極端に言えば行きかねないんですよ。これ7月修正したら修正したで「6月までのお前の話は何だったんだ」って話にならないとおかしい(さすがに記者の皆様にはハッスルして頂かないと困りますわ、なおゼロ回答でもハッスルしてもらわないと困りますけど)のでして、そこをきちんと捌かないと就任3か月にして残り4年9カ月を前代未聞の置物総裁として過ごすという別の意味で後世に名を残すレジェンドになってしまいますよね、と思うのです。

そう考えますと植田さん、政策修正ってするのかね・・・・・とは思うのですけどさてどうなるのやら。


・政策修正しないけどなんか変なリップサービスをする可能性もあるんだよなー

まあゼロ回答だとまたも円安進行という政策当局的な阿鼻叫喚になるので、そういう意味ではまあ普通に「政策修正しないけど修正の可能性はあるんですよ感を出す情報発信をする」というのがやってきそうな気もするんですよね。

ただまあそうなると次のMPMまで1か月以上ある中で何かの拍子にまたぞろ金利上昇圧力が掛ってしまうと日銀のオペの方で大祖国戦争をおっぱじめなければいけなくなるので、それはそれでどうよというか夏休み休めなくなるわ勘弁して下さい(違)という感じになりそうですな。


とまあそんな訳で、何をするにしてもおもしろくなってまいりました!!!!!という風情ですな。


〇なるほど多角的レビューの世界に植田さんを棚上げすれば良いんですね!!!!!!!(悪)

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpreview.pdf
金融政策の多角的レビューの実施方針について

『日本銀行は、金融政策の多角的レビュー1について、以下の要領で進めていく方針です。

1.分析の実施方針
レビューでは、過去 25 年間に実施してきた各種の非伝統的金融政策手段の効果について、それぞれの時点における経済・物価情勢との相互関係の中で理解するとともに、副作用を含めて金融市場や金融システムに及ぼした影響についても分析する方針です。

その背景として、1990 年代以降の経済のグローバル化やわが国の少子高齢化といった様々な環境変化が企業や家計の行動や賃金・物価形成メカニズムなどに及ぼした影響、およびその金融政策への含意などについても理解を深める予定です。

より具体的な分析のテーマについては、レビューを進める中で柔軟に考えていく方針です。』

とあるんだが、そもそもお前らいつも政策の点検してその点検の結果を受けて次の政策を考えていく、というPDCAサイクルみたいなの回している筈だろという話なのですが・・・・・・・・・


『(3)ワークショップの開催等

・ 第1回ワークショップは、本年 12 月頃に開催予定。金融政策や金融システム、金融市場等を討議する予定。

―― 同時期に開催される東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局第 10 回共催コンファレンスでは、多角的レビューの視点を意識し、国際経済環境の変化の物価への影響についても討議する予定。

・ 第2回ワークショップは、来年5月頃に開催予定。それまでに分析を行った案件について、包括的に討議する予定。

―― 同時期に日本銀行金融研究所が開催する 2024 年国際コンファランスでは、多角的レビューに関する海外識者との討議の場とすることを検討。』

ってあるんだけど、新しい政策の枠組みを決めるとか言うならそら時間が掛かるの分かるんだけど、別にこれ自体政策の枠組みを決めるものでも何でもないという触れ込みになっていた筈なのに、何でこんなに時間かかるんでしょうかねえ。通常から自分たちの政策のレビューは行っている筈なんですから、それを過去分含めてどばーっと出してパブコメ募集すりゃいいじゃんよ何で12月とか来年5月なんだよ舐めてんのかと小一時間問い詰めたい。


しかもこのレビュー、実際の政策と関係ないと言っている割にはよくよくみますと、

『<本件照会先>
日本銀行企画局』

ってなっていまして、金融研究所じゃないのかよという話で位置づけがワケワカメにも程があるんですが、まあこれを植田さんの玩具としてあてがって差し上げて中二階に放り込むのか座敷牢に幽閉するのか知らんですけど、なんか植田さん政策決定から棚上げですかそうですか、という物凄くブラックな連想をしてしまいましたよアタシャ(あくまでも妄想にかなり寄った個人の感想ですので念のため申し添えます)。






2023/07/14

お題「変態仮面ブラード総裁ご退任とな/積み最終で現先4兆ねえ/安達審議委員のコミットメント珍解釈キタコレ」

なんと!!!!
https://jp.reuters.com/article/usa-fed-bullard-idJPKBN2YT1UG
2023年7月14日4:55 午前
米セントルイス連銀総裁が辞任、パデュー大学ビジネススクールの学部長に

ということでそんな話から。

〇変態仮面ブラード総裁辞任とな(15年在任)

上記のニュースを見て慌ててセントルイス連銀のサイトを見に行くアタクシ。

https://www.stlouisfed.org/news-releases/2023/07/13/st-louis-fed-president-jim-bullard-announces-he-is-stepping-down
St. Louis Fed President Jim Bullard Announces He Is Stepping Down
July 13, 2023

『ST. LOUIS - James Bullard, president and chief executive officer of the Federal Reserve Bank of St. Louis, today announced that he will be leaving the Bank effective Aug. 14, 2023, to become the inaugural dean of the Mitchell E. Daniels, Jr. School of Business at Purdue University, effective Aug. 15, 2023.』
なるほどこれでパデューと読むのか。

『Bullard stepped down from his position as president and CEO today but will remain available to the Bank’s leadership in an advisory capacity until Aug. 14 to help ensure a smooth transition. He has recused himself from his monetary policy role on the Federal Reserve’s Federal Open Market Committee and other related duties and has ceased all public speaking.』

言われて見りゃ最近変態仮面静かだったなと思う。
https://www.stlouisfed.org/fomcspeak
FOMC Speak
A repository of speeches, testimony, interviews and commentary by FOMC participants

の「最近の発言」見ても1ページ目に変態仮面先生が載っていない。

『“It has been both a privilege and an honor to be part of the St. Louis Fed for the last 33 years, including serving as its president for the last 15 years,” Bullard said.』

15年間総裁だったのね。アタクシの駄文とも共にあるって感じですなあ(遠い目)。

『“This is an outstanding organization with staff in every area of the Bank bringing their passion, integrity and a deep sense of purpose to our mission of promoting a healthy economy and financial stability. The Bank is well-positioned for ongoing success and impact. I am also grateful to have worked alongside such dedicated and inspiring colleagues across the Federal Reserve System and for the opportunity to have worked for the many outstanding directors who have served on the St. Louis Fed board. It’s been an honor to serve this great institution.”』

と、セントルイス連銀の中の人たちに謝辞を述べて、

『Jim McKelvey, chair of the St. Louis Fed’s board of directors, commended Bullard (62) for his years of service to the Federal Reserve System. “Jim Bullard has brought his scholarly expertise and often prescient views to the policy table as the Fed navigated several remarkable economic issues during his 15 years as St. Louis Fed president: the Great Recession, the zero lower bound, high unemployment, the COVID pandemic and the current high inflation,”』

良くも悪くも「often prescient views to the policy table as the Fed navigated several remarkable economic issues」だったのはその通りでしたな。セントルイス連銀のサイトにあるブラード総裁のコーナーみたいなのがあって、

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/key-policy-topics
Jim Bullard's Key Policy Topics

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/research-papers
Jim Bullard's Research Papers

この辺りがお勧めなのですが、プレジデント変わっちゃうから「from-the-president」じゃなくなってしまいますので、リンク先はいずれ変わるのかなと思います。

『 McKelvey said. “His commitment to outreach and transparency has been unwavering. Bullard also built a strong management team, and we’re confident in the Bank’s ongoing performance and service to the Eighth Federal Reserve District during this transition.”』

組織の長としても優秀でした、とジム・マッケルビー(と読むのかしら)セントルイス連銀のボードメンバーが仰せになっております。

『In accordance with the Federal Reserve Act and confirmed today by the St. Louis Fed board of directors, the Bank’s first vice president and chief operating officer, Kathleen O’Neill Paese, assumed the duties of interim president and CEO, effective immediately. McKelvey called O’Neill Paese an outstanding leader both at the Bank and across the Fed System. “The board of directors has complete confidence in O’Neill Paese and the Bank’s management team during this interim period,” he said.』

筆頭副総裁でCOOのキャサリン・オニール・パッセ(と読むのかしら)さんが総裁を代行するそうな。

『As board chair, McKelvey and the Bank’s deputy chair, Carolyn Chism Hardy, will lead a search committee composed of the six Bank directors who are not affiliated with regulated banks or financial institutions (Class B and Class C directors), including:

James M. McKelvey, Jr., founder and CEO, Invisibly, Inc., St. Louis. McKelvey chairs the Bank’s head office board and will also serve as the search committee chair.

Carolyn Chism Hardy, president and CEO, Chism Hardy Investments LLC, Bartlett, Tenn. Chism Hardy is the deputy chair of the Bank’s head office board and will serve as the vice chair of the search committee.

Lal Karsanbhai, president and CEO, Emerson Electric Co., St. Louis
R. Andrew Clyde, president and CEO, Murphy USA, El Dorado, Ark.
Penny Pennington, managing partner, Edward Jones, St. Louis
Michael Ugwueke, president and CEO, Methodist Le Bonheur Healthcare, Memphis, Tenn.』

この辺は人事のお話。

『The committee will retain a national executive search firm to assist in a search process that is robust, transparent, fair and inclusive. “We have our work cut out for us,” said McKelvey. “Bullard combines economic scholarship with management savvy. His ability to clearly communicate economic policy is a rare gift. Replacing such a special talent will require a special process, so we will be conducting an open, public search for our next great leader.” More information about the search process will be available soon on the St. Louis Fed’s website.』

でもって変態仮面のように先駆的な業績を出しましょうっていうようなお話で締め。


でまあ今でこそタカ派ゴリゴリの変態仮面という形になっていますが、ブラードさんは基本的に経済物価情勢の認識においてタカだハトだという人でも何でもなくて、デュアルマンデートの中で物価の方に力点をかなり置いて居る人で、さっきの

https://www.stlouisfed.org/from-the-president/key-policy-topics
Jim Bullard's Key Policy Topics

の中にある『Unemployment Targeting』を展開してみると、

『President Bullard's View

Cites research suggesting that "putting more weight" on unemployment when making monetary policy may be counterproductive.』

金融政策を決定するにあたって雇用に対して「より多くのウェイトを置く」のは生産的ではないのではないか、ということで、ゴリゴリなのはタカ派なのではなくて物価重視派でして、だからこそ現状ではゴリゴリのタカ派に見える、ということなんですよね。本来タカ派だのハト派だのというのは先行きの見通しが強気か弱気か、ということなのだと思うわけでして(よって植田さんは超ハト派になる)そういう分類じゃないんですよね本来は。

でまあアタクシは変態仮面先生のペーパーで最初に唸ったのが「複数均衡論」の話をした物件でして、『Permanent Zero Nominal Interest Rates』の所を展開すると出て来るんですけど、

https://files.stlouisfed.org/files/htdocs/publications/review/10/09/Bullard.pdf
Seven Faces of “The Peril”

10年以上前なのかと思う訳ですが、まあこれは面白かったのでネタにしたのはよく覚えていますが、上記のURL先だと文字とか図表とか細かくて読みにくいと思いますのでこっちを見るのがお勧め。

https://www.stlouisfed.org/-/media/project/frbstl/stlouisfed/Files/PDFs/Bullard/remarks/SevenFacesFinalJul28.pdf
Seven Faces of "The Peril"
James Bullard
Preprint
Federal Reserve Bank of St. Louis Review
September-October Issue

本件は何日かに分けて2010年の8月にアタクシ駄文を書いたんですが、まあ今だって精進足りないのに13年前当時の英語読みあんど金融政策論点への理解とか門前の小僧にもなっているか、という世界の話なのですが、こちら(http://www.doramemon7743.sakura.ne.jp/seisakuforeigntop.html)に海外金融政策過去ログ集(何で最近のを作ってないんだこの馬鹿と言われるとジャンピング土下座するしかないのですが)があったりするのでそういや無い頭で読んで色々と勉強になったという覚えがあるので、そーーーゆーーーー点からもブラードさんには勉強させられましたなと今更ながらに思いますので感謝したいところではございまする。

ということで、だからどうしたと言われるとぐうの音も出ないのですが、まあ思う所はあったので極東の片隅から謝辞のつもりで書くという完全に個人の趣味ですいませんすいませんすいません。



〇先日の即日とトモネの買現先に続きまして積み最終跨ぎのトモネ現先しかも4兆円って何ぞ

昨日のオペのワケワカメなのはこれでしたな(当該オペだけ引用)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of230713.htm
国債買現先(注4) 40,000 2023年7月14日 2023年7月18日

朝っぱらから何やってますねんというトムスタートの買現先しかも4兆円でして、今回は積み最終日が土曜日になるので最終跨ぎになってしまうという現先をぶっこんできやがりました。

https://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_m.htm
コール市場関連統計(毎営業日)

を見ますと、月曜日に即日O/NとT/Nの買現先をぶっこんだ結果として、

10日:-0.021%
11日:-0.026%
12日:-0.019%

となって13日は

13日:-0.009%

でして、東京レポレートT/Nの方は
https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

2023/7/7:-0.064
2023/7/10:-0.087
2023/7/11:-0.086
2023/7/12:-0.066
2023/7/13:-0.083

10日に実施した買現先で一旦−6.5bp水準から−8.5bp水準に金利が低下したものの、その後12日にはまた−6.5bp水準に上昇、ということでそれを受けたんだか何だか知らんけど、買現先を実施。


結果はというと(本件の結果のみ引用)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba230713.htm
国債買現先(7月14日スタート分) 71,350 40,003 -0.100 -0.094 34.6

あらあら7兆円も札があったのねという風情ですが、まあレート自体は最低応札レート近辺ですからそこを狙って札が入ったという面はあるのかなとは思いましたがこの辺はマイナス金利水準になってからこの方、コールとかレポの世界って「資金の運用」というよりも「マイナスチャージの押し付け合い」と「マクロ加算残高の余裕枠の活用」の世界になってしまって中々難しい所ではあります。


・・・・・・・でまあ難しいのは良いんですけど、4兆円も積み最終の所で急にオペ打ってくるってのは、今と昔は違いますと言われるとそうなのかもしれませんけど、やっぱり昔から見ていた人的に申し上げますと、「積み最終で何ちゅうドタバタをやってますの」ってなもんでございまして、先週金曜に急にオファーアナウンスの入った現先2本立てと言い、なんかもうちょっと計画的にできんのかよ、と外野で言ってる分には気楽に言えるわボケと言われそうではありますが、でもまあ何か出たとこ勝負なドタバタっぽい印象を受けてしまう「積み最終対策オペ」ではありましたのでメモっておきます。



〇クッソどうでも良いのですが安達審議委員の鹿児島金懇会見だがそもそも政策の枠組みわかってないんじゃないの???

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230622a.pdf
安達審議委員記者会見
――2023年6月21日(水)午後2時00分から約30分
於 鹿児島市

・物価次第では場合によってはメインシナリオを変えるんですってよ

『(問)二点質問があるんですけれども、一点目が物価についてです。今、物価、挨拶要旨の方でも、上振れと下振れ両方のリスクがあるということでしたけれども、上振れの側面が足元、結構強いんじゃないかなと思います。一応、日銀のコミュニケーションとしては、今年度半ばに 2%を割ってくるということですけれども、この時期が後ろ倒れている可能性っていうのは、足元の上振れであるのでしょうかっていうのが一点目です。(後半割愛)』

この質問、ある意味親切なのは「年後半下がらないのは上振れ」という言い方なのですが、何故か安達さんは、

『(答)まず、最初のご質問ですけれども、われわれが今メインシナリオとして考えている、この先ですね、一時的にインフレ率が低下するという根拠は、これは輸入物価の下落が既に、昨年 9 月からもう始まっておりますけども、この影響が消費者物価、特に財の部分に影響を及ぼすのが今後であるからだろうということです。』

から始まりまして、

『輸入物価から消費者物価の財に波及するタイムラグというのがありますので、これは大体私は9 か月ぐらいだと思っているんですけども、そうすると統計的には、今年のこれから出る 7 月以降の、私はデータに反映されてくる可能性が高いんじゃないかなというふうに考えています。』

とごたくを並べた挙句に、

『現時点でまだ、4 月とか 5 月の数字ですから(引用者追記:この会見は6/22実施なのでこの説明は問題ありませんのでお間違えの無いように)、今の状況の発表されている統計では、まだ、上がっててもおかしくないというふうに考えていますので、』

ほう。

『特に夏場以降の財価格の動向というのに非常に注目しているといいますか、一つのチェックポイントだと思います。』

おや????

『もし仮にそこでですね、下がらないようなことがあると、これは、われわれのメインシナリオとしては修正をしなければならない可能性というのが出てくるというふうに思いますけれども、そこにつきましてはまだ先の話でありますので、現状はまだ、夏場にかけて下がってくるというシナリオを維持しているということです。(後半割愛)』

>メインシナリオとしては修正をしなければならない可能性というのが出てくる
>メインシナリオとしては修正をしなければならない可能性というのが出てくる
>メインシナリオとしては修正をしなければならない可能性というのが出てくる

ちょwwwwwwwwwwwww

https://www.stat.go.jp/data/kouhyou/e-stat_cpi.xml
統計結果の公表情報【消費者物価指数】

東京都区部(中旬速報値)

2023年7月分
公表日:  2023年 7月 28日 8時 30分

・・・・・・・おや??金融政策決定会合の2日目に東京都区部の7月CPIが公表されますねえ。

まあどうせいざとなったら「東京の7月速報だけでは判断できない」とか言い出すんでしょうけれども、「メインシナリオの修正」となったらそれは政策の根本的な変更(修正どころの騒ぎではない)という話に繋がるんですけれども、言ってることの意味わかってるのかなあこのオッサン・・・・・・・・・・・・


・オーバーシュート型コミットメントはMB増加のコミットメントです

この質問に対する回答が壊滅的で泣いた。

『(問)(前半割愛)あと二点目が、予想インフレがやっぱり上昇してきているんだけれども、まだまだ足りないのかもしれないという点において、オーバーシュート[型]コミットメントの果たしている役割というのが一定程度あると思うんですが、一方で金利を主眼とした政策でありながら、量にコミットするオーバーシュート[型]コミットメントがあるというのは、IMF等からもコミュニケーション上分かりづらいのではないかという指摘がありますが、このオーバーシュート[型]コミットメントの位置付けですとか役割を、現在のYCCという政策とその機能を踏まえたうえでどう判断されているか、お願い致します。』

『(答)(前半割愛)二番目にフォワードガイダンスの話なんですけれども、』

何か初手から微妙に怪しい回答ですが、

『今の状況ですと、YCCをどうするかということに多分紐付いているんじゃないかと思います。』

節子、それはオーバーシュート型コミットメントの話しちゃうで。

『現状、誘導水準が 10 年物国債利回りでゼロ[%]、変動幅を付けているという状況ですけども、それを変更するなり解除するなりのタイミングというのにオーバーシュート[型]コミットメントというのが紐付けられているのかな、というふうに考えています。』

やべえwwwwwww全然理解していないwwwwwwwwww

以下まあごたくが続くので一応引用してあげますが、

『確かにコミュニケーション上は非常に難しい問題があるのは事実なんですけども、今回の場合、一番恐れているのは、拙速な変更をしてしまって、もう一回再デフレということになってしまうと、これは例えば、皆さんの予想形成に関しても非常に大きなマイナスになりますので、なるべく失敗のリスクを回避するという意味でのオーバーシュート[型]コミットメントですから、必ずしも量に今、紐付けられているわけではないというふうに考えています。』

オーバーシュート型コミットメントが量に紐付けられていないという珍解釈が発生しましたが、ここで念のため直近MPMのステートメントを引用しておきましょう。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230616a.pdf
当面の金融政策運営について

『5.日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。

「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』

どこからどう見てもオーバーシュート型コミットメントは「マネタリーベースについては」としか書いていませんけれどもおっちゃん何を祐天寺という感じでありまして、ちょっとロジック無茶苦茶とかいう以前の問題で、勝手に政策の枠組み変えないでほしいんですけど、どういうポンポコリン集団なのよ政策委員会って・・・・・・・・・

ということで呆れ果ててものも言えないので以下ネタにする価値もないということでこの人の金懇ネタ解散!






2023/07/13

お題「生活意識アンケートは本来の意味では日銀大勝利にも程がある内容なのですが」

ほほう
https://jp.reuters.com/article/usa-economy-inflation-idJPKBN2YS146
2023年7月12日10:40 午後
米CPI、6月は+3.0%に鈍化 約2年ぶりの小幅な伸び

前年比は兎も角前月比どうなんですねんと思ったら、

『CPIは前月比で0.2%上昇。5月は0.1%上昇だった。市場予想は0.3%上昇。』

『変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年比4.8%上昇と前月の5.3%から鈍化し、21年10月以来の小幅な伸びにとどまった。前月比でも0.2%上昇と、21年8月以来の低い伸びとなった。また、前月比での伸びが0.4%を下回ったのは過去6カ月で初めて。』(上記URL先より)

ほうほうなるほどなるほど。


〇生活意識アンケートは物価安定目標達成に向けた明るい結果なので本来なら日銀大勝利なのですけどねえ

概要
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki2307.htm
「生活意識に関するアンケート調査」(第94回<2023年6月調査>)の結果

全文
https://www.boj.or.jp/research/o_survey/data/ishiki2307.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第94回<2023年6月調査>)の結果

全文から引用します。


・調査期間は若干前なんですよね(集計上しょうが無いけど)

『調査実施期間 :2023年5月11日(木)〜6月6日(火)』とありまして、直近の株高円安とかは反映していないですけど、まあこれは物価とかの方になるのでそこは良いとしまして、


・どう見てもマインド好転です本当にありがとうございました

『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』から。

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が増加し、「悪くなった」との回答が減少したことから、景況感D.I.は改善した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が増加し、「悪くなる」との回答が減少したことから、景況感D.I.は改善した。』

とありますが、その下の『(図表1)景況感〔Q1、4〕』と『<景況感D.I.の推移>』を見ると何処からどう見ても著しい改善傾向を示しておるわけでございまして、これはどう見ても天気晴朗マインド好転です本当にカムサハムニダといった所でございましてですね、先行き不確実性を連呼している植田総裁との差があまりにも顕著じゃないですかとまあそういう話になる訳ですし、むしろ折角こんなにマインドが好転しているのに、植田総裁が不確実性だの下振れリスクだの言いまくることによって期待形成に悪影響与えるという国賊プレイをしているんじゃないでしょうかこの貧乏神、という感覚すら湧いて出て来るこの出オチのようなすんばらしい内容。


『現在の景気水準は、『良い』(注1)との回答が増加し、『悪い』(注2)との回答が減少した。
(注1)『良い』は「良い」と「どちらかと言えば、良い」の合計。
(注2)『悪い』は「悪い」と「どちらかと言えば、悪い」の合計。』

でもってこちらに関しても、

『(図表2)現在の景気水準〔Q3〕』を見ると(例によってハリツケにするスキルは無いからPDFの方を見に行ってちょんまげ)2023/3→2023/6で明らかに回答がジャンプアップして良くなっているんですよね。こんな状態でマイナス金利だの10年0%だの継続しないと行けない意味って何なんですかねえ(寧ろ過熱して短命に終わらせないようにするのが大事なんじゃないですかと思うし、直近内田副総裁発言なども受けて円安株高傾向が止まっているように見えるのはその意味では結構至極なお話だとアタクシは思う)。


・どう見ても前向きの循環メカニズムです本当にありがとうございました

次の『1-1-2. 景況判断の根拠』も結構な結果で、

『景況判断の根拠については、「自分や家族の収入の状況から」との回答が最も多く、次いで「マスコミ報道を通じて」、「勤め先や自分の店の経営状況から」といった回答が多かった。』

ということなんですけど、まあこの回答の上位分布ってだいたい毎回同じなのですが注目はその構成割合でして(複数回答可なので合計は100にならない)、『自分や家族の収入の状況から』と『勤め先や自分の店の経営状況から』が回答割合を着実に増加させていまして、これはどう見ても所得の前向き循環メカニズムです本当に(以下同文)。



・景況感は良くても暮らし向きはアレなんですけどね!!!!!!!

ちょっと飛んで『1-2. 暮らし向き、消費意識』です。

『1-2-1. 現在の暮らし向き』

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

あじゃぱー。

『(図表5)現在の暮らし向き〔Q6〕』をみましても着々と「ゆとりがなくなってきた」が増えていますし、『<暮らし向きD.I.の推移>』の長期時系列を目の子で見ますと、まあどう見てもこれ異次元緩和開始時点よりも下に行っててかなりアカン数字になっている訳ですので、これはつまり物価上振れが長期化すると今は名目所得のプラスで支えられていても、だんだんアカンタレになってくる、つまりは植田総裁の言いまくっている「拙速な政策修正による2%達成できないリスクは物価上昇が上振れ長期化するリスクよりも遥かに大きい」というのは現状認識に問題がありゃしませんかという話になるのではないかと思いますが如何でしょうかねえ。


『1-2-2. 収入・支出』

『収入については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が減少したことから、現在の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。先行き(1年後)については、「増える」との回答が増加し、「減る」との回答が減少したことから、1年後の収入D.I.はマイナス幅が縮小した。』

『支出については、1年前と比べた現在の支出D.I.は、引き続き高水準となった。先行き(1年後)は、「減らす」との回答が減少したことから、1年後の支出D.I.はマイナス幅が縮小した。』

『今後1年間の支出を考えるにあたって特に重視することは、「今後の物価の動向」との回答が最も多く、次いで「収入の増減」、「余暇・休暇の増減」といった回答が多かった。

商品やサービスを選ぶ際に特に重視することは、「価格が安い」との回答が最も多く、次いで「長く使える」、「安全性が高い」、「信頼性が高い」といった回答が多かった。』

まあこのあたりは順当。


・雇用関連のマインドも改善していますわよ!

『1-2-3. 雇用環境』

『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「あまり感じない」との回答が増加し、「かなり感じる」との回答が減少したことから、雇用環境D.I.は改善した。

(注)勤労者:会社員・公務員(会社役員を含む)およびパート・アルバイトなど。』

結構結構。


・問題の物価ちゃんですが物価実感もインフレ期待高止まりしたままですね当たり前だけど

『1-3. 物価に対する実感』(ちなみにここで本文10ページ、PDFも同様)という本命に参ります。

『1-3-1. 現在の物価』

『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)と回答した人の割合が9割台半ばとなった。』

むしろ「下がった」とか「かなり下がった」とか回答している1%割れの人の脳味噌がどうなっているのかを調べたい。

『1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+14.7%(前回:+14.6%)、中央値は+10.0%(前回:+10.0%)となった。

(注1)「あなたが購入する物やサービスの価格全体」と定義。
(注2)『上がった』は「かなり上がった」と「少し上がった」の合計。』

でもって『(図表11)現在の物価に対する実感〔Q12、13〕』を見るとかなりビビるのは「上がった」の合計自体そこまで大きく変化している訳ではない(大きく増えようがない水準だと言ってしまえばそれまでだけど)のですけれども、内訳の「かなり上がった」が直近3四半期の間にバカスカ増えていることであります。まあそうですよねとは思いますけど。

なので『<1年前に比べ現在の物価は何%程度変化したと思うか>』も平均値が+12.1%→+14.6%→+14.7%と推移してて、なんかダブルデジットの数字になったから感覚がマヒしかかっておりますが、よく考えたら前回の+12.1→+14.6で+2.5もジャンプアップしてたんだなという状況で、それが今回も継続している訳でして、植田総裁様の「2023年度半ば以降は物価上昇率が2%を切ってくる」という発言がどこの異世界から話をしているんだという数字になっているのがハゲしくワロエますな。


『1-3-2. 1年後の物価』

『1年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が8割台後半となった。

1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+10.5%(前回:+11.1%)、中央値は+10.0%(前回:+10.0%)となった。

(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

こちらは『(図表12)1年後の物価に対する見方〔Q14、15〕』を見ますと「1年後は上がる」が全体ではそんなに変わらないのですが、さすがに「かなり上がる」が減っているのですけれども、そもそも論として現状評価が前年比2桁上げなんですから、願望込みという世界もあるでしょいう感じはしますけどね。


ただですね、問題なのは『1-3-3. 5年後の物価』のほうでして、

『5年後の物価については、『上がる』(注)と回答した人の割合が7割台後半となった。

これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+7.5%(前回:+8.1%)、中央値は+5.0%(前回:+5.0%)となった。

(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

いやお前ら年に7.5%上がったら5年で4割近く上がるんだぞ四則演算できてるのか(前回の8.1も大概でしたな)と小一時間問い詰めたくなりますが、

『(図表13)5年後の物価に対する見方〔Q16、17〕』を見ると「かなり上がる」がじりじりと増えている次第でありまして、こちらを見ると寧ろ中長期の期待インフレに上振れリスクが出てきてるんじゃないかという結果に見えてしまう訳で、短期のインフレ期待がやや下がる(水準はクッソ高いけど)中で中長期のインフレ期待はむしろじり高、という感じですから、これは物価安定目標達成に向けた証拠として物凄いサポートになっている筈なんですよね。

『<5年後の物価は現在と比べ毎年 平均何%程度変化すると思うか>』を見ますと平均値が+7.6→+8.1%→+7.5%と推移してて、数字自体は下がっているのですが、というか前回の+8.1がご愛敬だったとしましても、ただまあ定性的な内訳の方では「かなり上がる」が増えているのは基本的にはインフレ期待の強化が進んでいるという話になると思うので、これは本来ならば日銀大勝利宣言をしても良い位の話ですよね、と思いました。


・今回から面白項目が追加されていますね(物価が上がると思う根拠)

『1-3-5. 5年後の物価が上昇すると考える理由』というのは今回新設項目ですね。

『5年後の物価について『上がる』(注)と答えた人(7割台後半)に、その理由を尋ねたところ、「最近物価が上がっているから」との回答が最も多く、次いで「中長期的に物価は上がるものだから」といった回答が多かった。

(注)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

>中長期的に物価は上がるものだから

wwwwwwwwwww

これ巻末の方に『3.アンケート調査結果の詳細』ってのがあって、どういう質問しているかというのがわかるのですけど、

『Q16-a.(Q16で1または2『上がる』と答えた方へ)
その理由は何ですか。【複数回答】

1 最近物価が上がっているから 79.8
2 現在の物価は低すぎるから 6.5
3 中長期的に物価は上がるものだから 35.1
4 長い目で見て、景気が良くなると思うから 10.6
5 その他 6.7』

なので、なんかまあちょっと今回の回答だけで云々しにくいですし、項目が何ちゅうかまあそらこういう項目になるのかも知れんけど如何にもアレなチョイスにも思えますので、まあこれは判断しないでおきます。


先の方にこんなのも新設されていました。

『1-5-2. 5年後の暮らし向き

5年後の暮らし向きについては、「あまり変わらない」との回答が過半を占め、「良くなる」との回答が1割未満、「悪くなる」との回答が3割台後半となった。』

まあこれも初回なので判断保留。



・日銀批判はまだ盛り上がりだしてはいないようですよ逃げ切りのチャンスチャンス!!!!!!!!!!

年に2回実施する項目『1-6. 日本銀行に関する認知度・信頼度等』に参ります。

『1-6-1. 日本銀行の目的』ってのは日銀的には大事ですがこちとらシランガナの精神でかっ飛ばしまして、

『1-6-2. 日本銀行に対する関心や認知度、評価

日本銀行に対する関心や認知度等について尋ねたところ、『日本銀行の活動に日頃から関心がある』(注1)と回答した人の割合は2割台後半、『日本銀行は私たちの生活に関係がある』(注2)と回答した人の割合は7割台半ば、『日本銀行は私たちの生活に役立っている』(注3)と回答した人の割合は4割台半ばとなった。

(注1)『関心がある』は「関心がある」と「どちらかと言えば、関心がある」の合計。
(注2)『関係がある』は「関係がある」と「どちらかと言えば、関係がある」の合計。
(注3)『役立っている』は「役立っている」と「どちらかと言えば、役立っている」の合計。』

『(図表21)日本銀行に対する関心や認知度、評価』の『(3)日本銀行は私たちの生活に役立っている〔Q23(3)〕』を見ますと何という事でしょう!!「役立っている」が半年前の42.8%から持ち直して44.6%になっています!!!!!!!!!

とまあそういうことですが、これ調査期間が最初に申し上げたように直近の円安あばばばばー前の段階、というのはどの位影響するのかはよくわからんですけど、まあ円安で物価高加速みたいな論調にまだそこまでなっていないという状態でもありますので、ちゃんと日銀にポジティブな結果になったのは日銀大勝利という所ですな。


ただまあ何ですな、これ裏を返すとやっぱり為替がドンドン円安に進んでいくようなプレイ、即ち5月の内外情勢調査会以降の植田総裁の政策修正する気がカシュカリ総裁の頭髪程度しかない、というような極端なやる気無し情報発信というのは軌道修正しておかないと円安で日銀が死亡することになりかねないということでもありますので、内田副総裁の日経&ロイターインタビューもその辺り植田さんが政策修正の可能性毛頭なしに振り切った情報発信をしたのを修正に掛かった(トーン修正したからと言って政策修正するかどうかは謎だが)って感じがするのはまあ順当な話だったのかな、とも思ってしまう訳ですけど、夜討ち朝駆けみたいなタイミングでぶち込んで来るんじゃなくて金懇とかでそういうのはやって欲しかったですw



・黒ちゃんから植田さんに代わって信頼度アップとはこれはこれは(実は黒ちゃん末期がアレでただの持ち直し)

『1-6-5. 日本銀行への信頼度』というのが先の方にあってだな(ちなみに24ページ)、

『日本銀行への信頼度を尋ねたところ、『信頼している』(注1)と回答した人の割合は4割台前半となり、『信頼していない』(注2)と回答した人の割合は約1割となった。

『信頼している』との回答の理由としては、「日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思うから」との回答が最も多かった。

『信頼していない』との回答の理由としては、「日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから」との回答が最も多かった。

(注1)『信頼している』は「信頼している」と「どちらかと言えば、信頼している」の合計。
(注2)『信頼していない』は「信頼していない」と「どちらかと言えば、信頼していない」の合計。』

ということですが、『(図表24)日本銀行への信頼度』を見て行きますと、『(1)日本銀行を信頼している〔Q23(5)〕』の『信頼している』 という回答が、昨年6月→昨年12月→今年6月、の推移で45.4%→39.3%→43.3%となっていまして、昨年の同時期程ではないですけど持ち直しを示した格好になっています。

昨年12月調査というと物価高、円安批判があったり、その前の「家計の値上げ許容度」発言があったりという黒ちゃん末期に末期症状を呈していた時期で、ここでガクンと下がった(長期時系列を見ても昨年12月調査が顕著に下がっている)のですが、とりあえず植田総裁になって黒ちゃんの末期症状から立て直しが出来ましたじゃあーーーーーーーりませんかやったね日銀大勝利!!!!という結果になっております。


でもって物価高批判とか家計の値上げ許容度(しっかしあの時にツトム先生は真っ先に日銀が勝手にやったワシは悪くないと言って逃げたんだが、もうちょっと日銀を擁護してやれよと思いましたけど、まあそういう人間性なんでしょうなと思いまして、あんなのが日銀総裁候補の一角とか言う人は物事を考えてから口を開けと思いましたわよ)発言問題とかがもろに効いてたんだろうなあと思うのは、『(3)日本銀行を信頼していない理由(2つまでの複数回答)〔Q23-c〕』のところでして、「日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから」、この推移が46.2%→57.6%→46.2%と推移していて、前回12月調査が突出しているんですよね。やはり黒ちゃんの末期は完全に末期症状を呈していて、任期切れの時間切れでなんとか逃げ切れたという感じだったというのが分かりやすく示されていると思いました(個人の感想です)。

ただですね、同じ『(3)日本銀行を信頼していない理由(2つまでの複数回答)〔Q23-c〕』の項目の2番目にある「中立の立場で政策が行われていると思わないから」が地道に上昇を続けておりまして、黒ちゃんの時にこの回答が高めに出てくるのはある意味まあそういうもんだろという感じなのですが、植田総裁に代わってからも「中立の立場で政策が行われていると思わないから」の回答が増えている、というのは気になりましたというか皆さん良く分かってるじゃん!!!!!とおもいましたとさwwwwwwwwwwwww



まあ総じていえばこの結果、普通の普通に「物価目標達成への確信度が高まる」という結果なので、本来なら日銀は狂喜乱舞して日銀通りを「奉祝物価目標達成」の幟を先頭に提灯行列して練り歩いても何らおかしくないのでございますが、何をトチ狂ったか植田総裁が思いっきり威勢の悪い話をしているのがね〜〜









2023/07/12

お題「現金出納に関する新しいのが出てますな/今さらジローで安達さんの金懇だが理屈と政策がマッチしてないんじゃなかろうか」

結果的に日銀が一番困るであろう円安進行の阻止には成功したようですが・・・・・・・
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB110NV0R10C23A7000000/
円高加速140円台、日銀の金利操作修正を警戒
マーケットα
2023年7月11日 13:29 [有料会員限定]

『金融市場で日銀が今月にも長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の修正に踏み切るとの観測が高まっている。11日の外国為替市場では一時1ドル=140円台前半と、約1カ月ぶりの円高・ドル安水準をつけた。政策修正で日本の金利が上昇(債券価格は下落)し、円買いが進むとの思惑があるためだ。国内で賃金や物価の上昇を示す統計が相次ぐなど、市場は日銀が「動く理由」に先回りして反応している。』(上記URL先より、というか以下有料会員記事)

いやーこれで7月会合で現状維持の上に会見でやる気無し無しとかをやらかすと物凄い反動が起きそうで今からワクワクテカテカが止まらないwwwww


〇現金流通の円滑化というよりはこれは現金取り扱いの簡素化というか何というかですかね

https://www.boj.or.jp/paym/torihiki/tori230711a.htm
「日本銀行の当座預金取引の相手方に関する選定基準(取引の拠点にかかる基準)の特則
(現金関連取引専用当座勘定)」の制定等について
2023年7月11日
日本銀行

ほうほう。

『日本銀行は、本日、現金流通の一層の円滑化に資する観点から、「現金関連取引専用当座勘定」の開設を可能とすることとし、下記の1.から4.までに掲げる諸規程を制定または一部改正しましたので、お知らせします。』

ということで、CBDCの研究に余念がないから現金なんぞはシランガナ、という訳でもないのが日銀のエライところだとアタクシは思うの。

『当座預金取引先は、当座勘定を開設していない日本銀行本支店に「現金関連取引専用当座勘定」を開設し、当該日本銀行本支店の業務区域内に拠点を設置することなく、業務区域外から日銀ネット等を通じて現金関連取引(現金の入金および払戻ならびにこれらに関して日本銀行が特に認める取引)を行うことが可能となります。この場合、現金の入金および払戻については、他者への委託が可能です。』

別に現金だけ扱う当座預金取引先が新設されるという話ではなくて、既存の当座預金取引先において、自行の本支店が無い地域を管轄する日銀の本支店での現金出納が可能になる、という話ですが、『この場合、現金の入金および払戻については、他者への委託が可能です。』とあるので、これは出納を受託している業者が業務を集約しやすいという点を重視したのかしら、とか思ってしまったのですけれども、何分にも不肖このアタクシ、金貸しの手先をしていた時代は現金出納は自行でやるものという風潮だったのでこの辺の事情は詳しくない。(←と書いてみたのですが、規定を見ると現金関連取引専用口座を設置する日銀の本支店に「営業所等」があることになっているように読めるので、営業所の無い所の本支店で現金出納用の口座を作って業務委託先に事務やってもらうという話でも無いような気がしましたがどうなのかしら)

『なお、実施日は、本年7月25日とすることといたします。』

ということだからまあ事前にニーズがあって準備万端してたんでしょうし、ニーズのある側も準備が進んでいるんでしょうな、とは思いました。

ちなみに
(制定する規程)
1.「日本銀行の当座預金取引の相手方に関する選定基準(取引の拠点にかかる基準)の特則(現金関連取引専用当座勘定)」別紙1 [PDF 91KB]
2.「現金関連取引専用当座勘定にかかる「当座勘定規定」の特則」別紙2 [PDF 110KB]

とあるので見てみますと、

https://www.boj.or.jp/paym/torihiki/data/tori230711a1.pdf
日本銀行の当座預金取引の相手方に関する選定基準
(取引の拠点にかかる基準)の特則(現金関連取引専用当座勘定)

『1. 趣旨

日本銀行の当座預金取引の相手方である金融機関等(以下「取引先金融機関等」という。)が、勘定店(「日本銀行の当座預金取引の相手方に関する選定基準(取引の拠点にかかる基準)」(以下「本則」という。)に定める勘定店をいう。以下同じ。)に当座勘定(以下「現金関連取引専用当座勘定」という。)を開設し、その業務区域外に有する特定の営業所等(本則に定める営業所等をいう。以下同じ。)との間で現金の入金および払戻しならびにこれらに関して日本銀行が特に認める取引(以下「現金関連取引」という。)を行う場合の条件については、本則の定めにかかわらず、この特則の定めるところによる。』

ということでさっき()で書いた話になるのですが、つまりはフルスペック当座預金勘定の他に、現金関連取引限定の当座預金勘定を作ることによって、そもそもフルスペック当座預金勘定の必要のない支店の業務をお互いに簡素化できるってお話ですかしら。

『2. 対象金融機関等

次の(1)および(2)の要件を満たす取引先金融機関等のうち、勘定店の業務区域外に有する特定の営業所等を現金関連取引を行うための拠点(以下「現金関連取引拠点」という。)として、当該勘定店との間で現金関連取引専用当座勘定を開設し、現金関連取引を行うことを願い出た者とする。』

ってありまして、これは広域に店舗展開している場合において、現金出納業務のために日銀のあちこちの支店に当座預金勘定口座を作っていないといけない状況から、現金関連取引専用当座勘定を開設することによって、当座預金勘定口座をあちこちの日銀の支店に作らんでもヨロシ、という事になるとか、あるいは広域に店舗展開している中で、日銀の支店跨ぎでどっかの母店がフルスペックの当座預金勘定を使って現金出納を行っているのを、現金用の当座預金口座を開設することによって従来当座預金口座を用意して居なかった日銀支店で現金出納が可能になる、という話になるんでしょうな、と思いましたが違ってたらご指摘プリーズ。

『(1)当座勘定取引について日本銀行金融ネットワークシステムを利用している先を有すること。

(2)日本銀行が特に認める場合を除き、勘定店に当座勘定を開設していないこと、または勘定店に開設している当座勘定を廃止したい旨の申出を行っていること。』

(2)は業務簡略化という話になるんでしょうな。

この次に『3. 要件』があって、次には別紙2の『現金関連取引専用当座勘定にかかる「当座勘定規定」の特則』というのがあるのですが、これに関しては思いっきり事務的な話になるので、個人的には興味がありますがネタとしては読者の皆さまに興味あるかというとアレなので割愛します。



〇クソすっかり忘れていました(訳でもない)しどうでもよい説があるが安達審議委員の鹿児島金懇ネタ続き

まあ米国CPI待ちで様子見ですしwww

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230621a.htm
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230621a1.pdf

引用はHTMLの方から行います。

・やっぱり読み直しても言ってることの意味が不明にも程があるので再掲

思わず前回どこまでネタにしたのか忘れて過去ログをみてしまいましたがw、しかしこれは何回見ても安達さんの行ってる意味がさっぱり分からんので再掲。

『(2)物価情勢』の『わが国の物価を巡る状況』なんですけど、

『この間、予想物価上昇率に目を転じてみると、経済主体によって区々ですが、緩やかに上昇した後、横ばいとなっています(図表6)。このうち家計の予想をみますと、先行きも物価の上昇が続くとみているようです。』

まあここまでは分かる。

『例えば、日本銀行が4月に公表した「生活意識に関するアンケート調査」(第93回<2023年3月調査>)によれば、1年後の物価の見方に関する項目で、回答者の85.7%が「上がる」と回答1しています。』

これも事実だからその通り。

『なお、1年前と比べた現在の物価の見方に関する項目では、回答者の94.5%が「上がった」と回答2しており、』

これも事実。

『先行きの物価上昇の勢いは、これまでよりは若干落ち着くとの見方になっています(図表7)。』

???????????

本文の方を見ると図表7『家計の物価に対する実感・予想』ってのがあって、そこには生活意識アンケートのここ2年弱の結果が出ているのですが、グラフの右側に『1年後の物価を現在と比べると』というのがあって、足元ずーっと「かなり上がる」が増えていて、確かに「かなり上がる」と「上がる」の予想をしている人の割合が同じくらいで推移しているのですが、ゆうて85.7%の人が「今後もかなり上がる」になっていて何で「これまでよりは若干落ち着く」になるのやらと思ったのですが、今回ネタの続きをやろうと思っていてまじまじと見直したら気が付きました。

というのはこの集計、左に『現在の物価を1年前と比べると 』の項目があって、これはご案内の通りでここ数四半期の間、「上がった」と回答する人がバカスカ増えていて、しかも「かなり上がった」がバカスカ増えているんですよ。

でもってグラフに補記されているのを見ると、

「現在の物価を1年前と比べると」の方に「「上がった」94.5% 」ってのがあって、
「1年後の物価を現在と比べると」の方に「「上がる」85.7%」ってのがあるんですよ・・・・・・

でもってやっと気が付いたのですが、これ「1年前と比較して物価が上がったと回答した人が94.5%もいるのに、1年後の物価は現在と比べると上がると回答している人が85.7%と少ないから」『先行きの物価上昇の勢いは、これまでよりは若干落ち着くとの見方になっています(図表7)。』という何をどう読むとそういう分析になるのかマジでさっぱり意味が分からないポンポコリン分析をしている、という事に気が付きました。日銀の審議委員ってのはポンポコリンしか就任してはいけないという決まりでもあるのかと小一時間問い詰めたい(良い方の外れ値は言うまでもありませんがあのお方オンリーです)。


・物価上昇ペースが急すぎるのは良くないという理屈は何気に円安阻止のための政策修正に道を開く理屈ではないかと・・・・・・・

とまあそのポンポコリン分析の次に実はこんな言及がある。

『こうしたわが国の物価を巡る状況は、長きに亘ってデフレを経験したわが国にとっては、デフレ脱却に向けた動きとしての側面があります。』

まあこれはノルムに関する話で、6月会合主な意見を持ち出すまでもなく、安達さんもこの物価のノルム変化に関する可能性の指摘はこちらの金懇で行っていますので、これはこれで良いとしまして、

『一方で、物価上昇のペースが速過ぎれば、実質所得の下押し圧力など、経済に押し下げ方向の影響を与え得るという側面もあります。』

ほほう。

『後述の金融政策運営を考えるにあたっては、物価を巡るこのような状況変化がもたらす様々な側面を含めて、丁寧に経済・物価情勢を評価して参りたいと思います。』

という説明になっていまして、これって少なくとも円安誘導するような政策を止めないと「物価上昇のペースが速すぎるデメリットの顕在化」を防げない、という話になるんじゃないですかねえ、と思う訳でして、まあポンポコリンだし2日連続だし置物残党だしということでスルーされまくっている金懇ですけれども、こういう表現をしているというのは、先般の内田副総裁のインタビューと合わせ技で考えますと、(公式に円安対応で政策修正、というと為替操作国になってしまいますので絶対にそういう体では言わないですけれども)事実上の円安進行阻止を主眼とした長期金利ターゲットの形骸化(バンドをプラマイ100に拡大とか)ってのワンチャンのワン位あってもおかしくない、とまあそのように読み取ることも可能(あくまでも個人の感想です)という話になりませんかねーーーーーーって思うのです。


・粘着的な物価という屁理屈は実は昨年の秋口から使われだしているんですけどね

次のコーナーが『わが国の物価の先行き』でしてですね、

『物価の上振れ・下振れリスクについて具体的にお話しする前に、私が物価変動を考察する際に有益と考える切り口についてご紹介させてください。』

と言ってるんですけど、この理屈って別に安達さんオリジナルという話じゃなくて、既に昨年の秋口の時点で「コアコア指数」での説明が破綻を来して(って物価目標達成しているとしか思えない状況になったのを「破綻」ってのもアホな話だが)しまい、昨年の7月の展望レポートで「賃金ガー」を突如連呼しだしたことの上乗せ措置としまして、「粘着的な品目の価格推移」というのを持ち出して説明する、という風潮がしれっと始まっていたんですよねーーーーー。

でまあご案内の通りで賃金に関しても既に「今回の賃金上昇が一過性のもので継続的な賃金上昇になるかどうかは不確実性ガー」という説明が徐々に破綻をきたしている(しつこいのだが何で好ましい方向に進んでいるのに「説明が破綻」になるのか。今の日銀はあたおかとしか言いようがない)のが見えているので、今後はこの「粘着的な物価」を前面に出して言い訳をするというステージに入るんでしょうな、と読みました。まあ以下既にご案内の方はご案内と思いますが、今後この屁理屈が前面に出て来るので確認のために引用しますね。

『消費者物価を分析する方法は種々あるところですが、私は、品目の価格の改定頻度に着目して、物価を「粘着的な(sticky)消費者物価」と「伸縮的な(flexible)消費者物価」に分けて動向をみることが有益であると考えています。』

そんな事安達さん昔から言ってましたっけwwwwwwwwwww

『「粘着的な消費者物価」は価格の改定頻度が比較的低い項目でみた物価を指し、実際にわが国の消費者物価指数で分類してみますと、サービス価格が多く含まれます。一方、「伸縮的な消費者物価」は価格の改定頻度が比較的高い項目でみた物価を指し、財価格が多く含まれます(図表8)。』

はい来ました財とサービス。

『まず、「粘着的な消費者物価」は、中長期の予想物価上昇率、および、賃金やそれに影響を与えるとみられる企業の中長期的な成長期待(あるいは需要見通し)にも影響を受けると考えられます。このうち、賃金についてみると、今春の労使交渉での賃金上昇率は過去平均や事前予想を大きく上回る見込みとなっています。これは先行き物価の上昇要因になり得ます。ただし、先行きの物価動向を考える観点では、賃金上昇が今回の単年度で終わるのか、あるいは、来年度以降も持続するのかという点が重要です。この点、これまで労働供給を支えてきた女性や高齢者の追加的な労働参加が見込みにくくなるもとで、労働需給の一段の引き締まりを受けて、企業は労働力確保のために賃上げを継続する可能性が考えられます。

「粘着的な消費者物価」は、日本がデフレに陥る前の1980年代半ばから1990年代前半には、消費者物価指数を相当程度押し上げていたと考えられます。一方、足もとでは、消費者物価における「粘着的な消費者物価」の押し上げ寄与度はまだ大きくないとみています。ただし、今春の労使交渉の結果をきっかけに、サービス価格が多く含まれる「粘着的な消費者物価」による押し上げ寄与度が先行き高まる展開も想定されます。その際は、先ほど申し上げたように、賃金の持続的な上昇が鍵となります。先行き、企業による賃上げが、これまで価格上昇が小幅だったサービス価格の上昇にどの程度波及していくのかについて注目しております(図表9)。』

この説明、図表8が『財・サービス別の消費者物価』で図表9が『賃金とサービス価格の推移』なんですけど、この屁理屈に説得力を持たせるためには、コアサービス価格の物価上昇率の分布を日米比較して、日本はこのサービス価格の上昇がゼロ近辺の品目が多かったのに対して、米国では2%のインフレ期待がアンカーされているだけに、2%近辺の品目が多い、という図表を出す(実際そうですので)というのをしないと話に説得力が出て来ませんので、説明が弱い。赤点再履修を命ずる。

『次に、「伸縮的な消費者物価」については、景気循環あるいは需給ギャップの影響を受け易いほか、商品市況等を映じた原材料価格の影響も受け易い傾向があります。後者の要因もあって、「伸縮的な消費者物価」は、過去、輸入物価の動きに時差を伴って連動する傾向がみられてきました。日本銀行が公表している企業物価指数で輸入物価をみると、昨年9月のピーク以降、原材料価格の低下などから、低下の動きが続いています。こうした輸入物価の下落は、先ほど申し上げた過去の傾向によれば、時差を伴って「伸縮的な消費者物価」の伸びを縮小させていくと考えられます。実際、生産者物価でみると、需要段階別の川上から川下へと輸入物価の下落が波及しつつあります(図表10)。先行きを展望すると、こうした生産者物価の下落は、基本的には、いずれ消費者物価へと波及することが想定されます。』

たぶんこれって今の日銀の公式インチキ見解の「2023年度半ばから物価上昇率が鈍化して2%割れになる」というのを正当化するためにこの話を後半にもっていって、『先行きを展望すると、こうした生産者物価の下落は、基本的には、いずれ消費者物価へと波及することが想定されます。』としているんですけれども、それよりも問題なのは2%物価安定目標が達成できるか否かという話なのですから、本来メインでお話をすべきなのはスティッキーな価格の方なんですよねーーーーー。何でこういう順番で説明するんだか。


と思ったらこの項の結論が、

『以上を踏まえて、先ほど申し上げました日本銀行の先行きの物価見通しのメインシナリオを、「粘着的な消費者物価」と「伸縮的な消費者物価」の枠組みで解釈すると、賃金上昇とともに「粘着的な消費者物価」が徐々に上昇していくものの、当面は、輸入物価の下落が「伸縮的な消費者物価」の下落に波及する動きが本格化することで、物価全体の伸び率が押し下げられることを見込んでいると言えると思います。』

という説明になっているのですが、スティッキーな物価が2%にアンカーされていないから物価目標の達成はまだまだ、って話に持って行ってないのがこの人の謎な所でして、スティッキーな物価上昇が確実に見込めるという説明をするんだったら、本来は物価目標の達成が展望できるという話だし、その間の足もとにおける財価格の落ちに関しては、財価格上昇と同じくネグることが出来る、という理屈になっていないとおかしいのですよね。

つまりですね、安達さんのこの説明だと物価目標2%に向けての進展は確実に起こっている、という見通しになっていないとおかしくて、そうなると金融政策アクションに関してだって別の話になるんじゃないですかねえと思うのですが、何故か政策は思いっきり大本営になっているのが謎ですよねーーーーー。


・米国の逆イールド云々ですけれども絶対水準を考えてから物を言えと小一時間問い詰めたい

その後に『わが国の物価の上振れリスク』、『わが国の物価の下振れリスク』ってのがあって、ああだこうだ書いているのですが、次の金融政策の所で物価は先行き下振れリスクの方が大きい、という話をしていますのでああそうですかという感じなのですが、下振れリスクの中でこんな記載がありました。

『米国では、インフレ率が昨年後半にピークアウトし、徐々に落ち着きを見せつつある中で、市場では、今次利上げサイクルは最終局面に差し掛かり、金利は今後低下局面に移り、経済の大きな落ち込みも回避できる、という見方が相応に拡がっているように思われます。』

まあこの見解自体は金懇自体が6月21日の作品だから致し方ないとしまして問題はその次。

『しかし、米国において、短期金利が長期金利を上回った「逆イールド」状態となっていることは、先行きの景気後退のシグナルであるとの見方も引き続き排除できないと感じています。』

ま、さすがに「排除できないと感じています」とか逃げ打ってますけど、今の短期金利の水準を見てから物を言えという話でございまして、そもそも論として金融政策がきちんとワークして中長期的には政策金利水準が中立金利近辺に収斂する筈、というDSGEっぽい理屈を持ち出せば、足元中立金利と思われる水準よりも2%から2.5%は高いとみられる短期金利に対して、長期金利が逆イールドになるのってそこまで変な話じゃない訳でして、先行きの景気後退のシグナル云々とかいうのは短期金利が2.5%で長期金利が2%割れみたいな時はまあ市場が大懸念しているって事だと思いますけど、普通にインフレ抑制に成功しながらマドルスルー程度で落着したとしても、長期金利は短期金利の足し算(というか定積分というか)理論からしたら逆イールド全然おかしくないんですけど。


なお、金融政策云々に関してはあまりみるところもないのですが・・・・・・・・・・

・物価目標達成に関しては随分威勢が良かったのですが先行きリスクが下という理屈で政策修正すらしないと仰せですけど・・・・・・

『3.金融政策運営』の『基本的な考え方』ですけど、

『昨年来、物価上昇等を受けて、日本銀行は金融政策の修正を図るべきタイミングに来ているとの声が聞かれます。たしかに、物価が勢いを伴って上昇し、予想物価上昇率も緩やかに高まってきたこと等を踏まえると、「デフレマインド」あるいは「物価は上がらない」という物価観に変化が生じつつあると私は考えています。その意味で、以前と比較すれば、「物価安定の目標」の実現に近づきつつあると思われますが、これまでお話しした物価のメインシナリオは大きな不確実性を伴っており、まだ金融政策の修正に踏み切るのは時期尚早と考えられます。』

『既に述べましたように、日本銀行は、メインシナリオとして、消費者物価の前年比は、一旦プラス幅を縮小した後、「物価安定の目標」に向けて再びプラス幅を拡大していくとみています。金融政策の修正の適否の判断という意味では、メインシナリオのもとでは、先行き消費者物価のプラス幅が一旦下がった後に再び上昇する局面において、持続的・安定的な上昇の実現に向かっていくかの判断が重要になります。しかし、これまで申し上げてきたとおり、先行きの物価には、大きな不確実性のもとで、上振れ・下振れリスクが存在し、長い目でみた場合、下振れリスクの方が大きいように思います。金融政策の修正の適否は、そうしたリスクも慎重に考慮に入れる必要があります。』

という話なんですけど、この人下振れリスクが大きいって話の部分の最初(話が戻って恐縮ですが『わが国の物価の下振れリスク』を見ますね)で、

『次に、物価の下振れリスクについてお話しします。物価の下振れリスクとしては、先行き一旦の低下が予想される「伸縮的な消費者物価」の上昇率が、想定通りに再び上昇しない可能性が考えられます。このリスクは、国内から生じる要因というよりも、海外から生じる要因による可能性が高いと考えています。』

ということで下振れリスクが外生要因だという話をしているんですけど、上振れリスクの方は(これまた話が戻って恐縮ですが『わが国の物価の上振れリスク』にさらに戻りますね)、

『物価の上振れリスクとしては、「粘着的な消費者物価」の上昇が続く一方で、「伸縮的な消費者物価」の上昇率が、メインシナリオと異なり、下がらないリスクが想定されます。』

『先ほど、「伸縮的な消費者物価」は輸入物価の動きに時差を伴って連動する傾向がみられるという話をしましたが、これはあくまでも過去にそのような関係があったことに基づいた考えです。一方で、先ほど、わが国の物価を巡る状況のパートでお話ししたとおり、「生活意識に関するアンケート調査」の結果などをみますと、家計において、これまで定着していた「物価は上がらない」という物価観が変化する時期に来ている可能性もあります。これを、企業の立場からみると、過去のデフレ期に定着した価格設定行動を変える時期が来ているように映るかも
知れません。』

ってなっていて、物価の上振れリスクは内生的なリスク、下振れリスクは外生的なリスク、ということになっている訳でして、いやそうだったら何で外生的なリスクの方を優先するのって話なんですけど、そういう意味でも何か今の大本営の屁理屈ってどんどん破綻をきたしているようにしか思えませんね。

という所で20日も前の金懇ネタですいませんすいません。







2023/07/11

お題「早速の金利上昇ワロリンチョ/さくらレポート強いわ/その他備忘メモ」

https://jp.reuters.com/article/china-usa-yellen-npr-idJPKBN2YQ1IZ
2023年7月11日4:57 午前
米中双方が「関係の安定化望む」、財務長官 訪中後

『[ワシントン 10日 ロイター] - イエレン米財務長官は10日、米中両国が「率直さ」と「敬意」をもって経済関係を安定化させたいと考えていると明らかにした。』(上記URL先より)

そらそうよというか、わざわざこういわないと行けないってのが何ともかんとも。


あ、昨日の書き物で途中から手が滑って「インタビュー」と書くべきところを「会見」と書いてしまっていたのですが、皆様先刻ご承知の介だと思いますが会見って書いたのはインタビューの間違いです伏してお詫び申し上げます。


〇早速長期輪番増額に追い込まれている日銀ワロリンチョとしか申し上げようがない

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N38W0VR
2023年7月10日3:16 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続落で引け、「日銀アタック」再開か

まあ報道サイドからしたら「日銀アタック」って話にした方が話題的にウケを取るからこういう表現になるのですけど、海外投機筋って日銀の無茶苦茶強引な現物債レポ締め上げスクイーズという普通の投資家がやったら永久追放食らっても文句言えないレベルのプレイ(まさに非理法権天の世界ではありました)で懲りてるから10年カレント叩き売りとか別にしている訳でも無くて、昨日は中期から超長期から横綱(横綱も横綱だけ叩かれているのではなくてちゃんと周辺の現物もついて行ってカーブ上チーペだけクソ売られということでもない)まで、まあ超長期の20年が一番アレでしたが、まあフツーに売られてて「日銀アタック」とかそういう感じじゃなかったのですよね。何でも海外投機筋対日銀みたいに話を矮小化するの勘弁して頂きたいものなのでいつも引用して基本的にリスペクトしているんだけどこの見出しは猛省を促したい。

まあ普通にこれは米国様の金利が上昇(今日は10年4%割れで戻って来たけど)したのと、ごくごく普通に内田副総裁のインタビューでYCCの早期修正の可能性に含みを持たせた情報発信あったし、金曜の国内指標だって強かったし、さくらレポートでは企業の賃金や価格の設定行動が強気化して(あるいは渋々だったりヤケクソ気味だったりするけど)価格引き上げ、賃金引き上げの動きが広範にみられている、という報告が上がっているとか、普通に2%物価目標の達成(そもそも現実の物価が2%上回って1年経過しているんだし)が視野に入ったって言えるようなモノが色々と出ている訳でして、まあ記事中の何とかスト(武士の情けで引用はしないが)とかも何でそういう論点の話をしないで投機筋のアタックがって話をするの(だからロイターさんがそういう見出しを付ける)んだかと思ってしまいましたでございます。しょーもねー。

でまあ結果としては、

『TRADEWEB
     OFFER   BID   前日比 時間
2年   -0.039  -0.028   0.01 15:10
5年    0.12   0.128  0.028 15:09
10年   0.46   0.469   0.028 15:06
20年   1.078   1.088  0.061 15:08
30年   1.319   1.331  0.051 15:05
40年   1.463   1.471  0.048 15:07』(上記URL先より)

という訳で10年新発0.465%とかあらあらあと3毛5糸ですわよヤダーってなもんでございますな、ナムナム。

しかしまあ何ですな、先月終わりのECBフォーラムで植田総裁が超場違いにハト派発言を連発して、やる気ナッシングモードを横溢させて帰って来まして、7月四半期始まったし新発債が新回号になりますわ、という流れで10年と30年(は流れたけど)入札を実施して、30年入札の翌日の朝に内田副総裁のインタビュー記事が出てから横綱1円下げとかエゲツナイ相場展開にも程がある訳で、せめてこのインタビューを10年と30年の入札前に出してほしかったわと思う訳でございまして、プライマリーディーラーの皆様におかれましては痛惜の念を禁じ得ません。

でまあ何度か話をしてますけど、日銀ってこういうタイミングに無茶苦茶無頓着で、一番ひどかったのは今でも覚えていますが2009年12月1日の10年入札の日の前場引け直後(午前11時1分だったと自分の過去の駄文に書いてあったわ)に「本日臨時会合を行います」というのをアナウンスしてくるというのを昔やらかした(なお状況的には追加緩和しかあり得ない時)のがあって、入札に向けてPDが見合いのショート作ったのを全部上に持っていかれるというプレイをしていた訳ですが、(その時のアタクシの怒りの駄文がこちらですw→http://www.doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon0912.html#091202)しかしこの時もアタクシ『「市場との対話」とか言ってるけどそんなものよりも「政治との対話」の方が重要なんでしょ、という認識になってしまった次第でございまして、まあ政策委員会の皆さまに置かれましては、当面「市場との対話」という文言を口にしない方が無難であると思われますのでご忠告させて頂きます。』(2009年12月2日に書いた幣駄文より)って言ってて、この手の日銀の絶望的なセンスの無さ(とアタクシの悪態)は14年経っても1ミクロンも変化していない、というのが分かって大変に落涙を禁じ得ない所でありまする。

まあアレですな、内田さんとしては自分のインタビューでこんなに円債市場が動くとは思っていなかったのでしょうなとは拝察する次第ではあるんですけど、あの説明だとYCC修正をマイナス金利と切り離して行う気が満々にしか見えなくて、そうなると7月ワンチャンあるでという話になりますし、まあ市場がこうなってしまいますと、ここから2週間ちょいの展開次第ではあるものの、7月無回答だと市場が倍返しで荒れそう(かと言って会見で9月ワンチャンとか言い出したらその間の10年50bp防衛戦どうするの問題がある)でいずれにせよ面白い事になってまいりました(不謹慎)。


しかしまあ何ですな。

昨日の輪番オファー(通常の方だけ)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of230710.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,250 2023年7月11日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 6,750 2023年7月11日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2023年7月11日
国債買入(残存期間25年超) 1,000 2023年7月11日

ということで5−10を1000億円増額したのですが、結局あんまり債券市場はそれで反発したという訳でもなく推移しておりましたけど、まあしかし初期段階で5−10を早速増額とかしてる訳で、この人達輪番減額する方はやたら渋るくせに金利がちょっと上がるとすぐ増額するもんだから、どんどん市場のアベイラビリティ無くなって行くんですけど物価目標達成する気があるんだったら今の政策の出口というのが発生するんだからちょっとは先の事考えた輪番の運営しろよと思う訳で、その点で言えば黒ちゃんの時ですら輪番って隙あらば減額している時代があって、ちゃんと出口を見据えているんだな(肝心の物価が上がらなかった訳ですが)というのがあったのに、寧ろ物価目標の達成が展望できるんじゃなかろうかというこの期に及んで金利下がっても碌に輪番減額しないのにすぐに輪番増額の方はするのマジで勘弁してほしいですわな。


〇ここで植田総裁の6月金融政策決定会合後にあったある発言を蒸し返してみましょう

6月決定会合の時ですけどね
https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk230619a.pdf
総裁記者会見
――2023年6月16日(金)午後3時30分から約60分

この時はあんまり現実味のない質疑だったのですけどね・・・・・・・・・・・・・・・

8ページの頭の質問になります。

『(問)先ほどの質問とも関連するんですが、二点あるんですが、一点目は、海外情勢次第ではまた長期金利が上昇して、市場機能への強い悪影響が及ぶ可能性がありますが、その場合は、また更なる変動幅の拡大というのが選択肢になり得るのか。こうした動きは、利上げ的な効果で経済を冷やす可能性もあると思うんですけれども、そういったものを考慮に入れたうえでも、オプションになるのかというのが一点目です。(後半割愛)』

これに対して植田総裁、このように仰せだったんですよね。

『(答)先ほどお話ししたことと前半はかなり重なりますけれども、足元YCCにまつわる副作用は、やや落ち着いているわけですけれども、これは国内でのインフレ期待上昇あるいは海外金利の上昇等が大きくありますと、また副作用が目立ってくるという可能性は当然否定できないわけで、そのときにどうするかということですけれども、今、前もってお答えはなかなかできないですけれども、繰り返しになりますが、その時点でのYCCを続けるということの効果がどれくらいで、まさにそのときの副作用がどれくらいか、これを比較しつつどうするかを決めるということになるのかなと思います。(後半割愛)』

でまあこれを見た(聴いた)時に結構のけぞりまして、何ですかこれは「金利上昇攻撃が次に来た場合にはYCC修正もあります宣言」ですかとのけぞった訳ですが、何せこの会見の時もご案内のように「不確実性」を連呼して梃子でも動かんという姿勢を明確にした会見を実施していたので、この発言によってイブニングセッションの横綱が叩き料理になるような事もなく平穏無事に推移していましたし、まあ会見のトーンがとにかく政策修正すらしませんよモードだったのでこの時この答弁がそれほどネタにはならなかったんですよね(というかワシこれネタにしたっけ、笑)。

然るに、内田副総裁の読みようによっては早期のYCC修正(短期マイナス金利の見直しは強く否定するのとセット販売)を匂わせる、と言われてもまあ文句は言えない(内田さんがどういう意図であれあれは匂わせと言われても文句が言えないので匂わせたつもりが無いんだったらチョンボ)発言が決定会合のちょうど3週間前に出る、からの金利上昇でYCCの長期ターゲット水準が見えて来る、という状況になりますと、植田総裁の6月会合での上記発言が俄然脚光を浴びる訳でして、これだって情勢の変化によっては長期ターゲットの見直しはアリエールって話をしているのに他ならない(よく考えたらそら当たり前ではあるけどさ)のでございまして、ご案内のようにこの時の会見でも、

『(答)まず、YCCについてでございますけれども、(中間割愛)一つの決定会合から次の決定会合の間に、様々な新しいデータや情報が入ってきますので、それに基づいて、前回とは違った結果になるということも含めて、ある程度のサプライズが発生するということも、他の政策でもそうですけれども、やむを得ないのかなというふうに思ってございます。(後半割愛)』(同じく直上URL先の2023/6/16定例会見での植田総裁の発言、4ページ目より引用)

という風に仰せでして、まああの会見でも兎に角「不確実性」の連呼によってやる気ナッシング(挙句にポルトガルまでノコノコ出かけてやる気ナッシングの上塗りをしてくる)は言ってるんですけど。チョイチョイとこういうトラップも仕掛けてある(そこで思い出すのは4月に「nimble」と書いた声明文のガイダンスとか、5月に出した如何にも2%達成に順風満帆な展望レポートハイライトのイラストとか、6月声明文で年度後半の物価上昇率低下の表現の「highly likely」からhighlyを削除したとか、ですかねーーーー)ということで、諸々のブービートラップがここで誘爆を始めるわなという話。植田さんや内田さんの真意がどこにあるのかは分からんですけどね。

いやはや何ともという感じではございますが、さてどうなるのやら・・・・・・・・・・・



〇さくらレポートは前回の「別冊」同様に企業の賃金・価格設定行動の上昇方向への変化がこれでもかと示される

https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer230710.htm
地域経済報告―さくらレポート―(2023年7月)*

全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer230710.pdf

ダイジェスト付きご紹介ページ
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rera230710.htm
各地域からみた景気の現状(2023年7月支店長会議における報告)

ダイジェスト付きご紹介ページの方からとりあえず引用しますね。

『今回の支店長会議における報告を総括すると、既往の資源高の影響などを受けつつも、すべての地域で、景気は持ち直し、ないし、緩やかに回復している。前回の支店長会議開催時点(2023年4月)と比較すると、全9地域中3地域で総括判断を引き上げている(参考参照)。』

でもってこの総括判断に関してですが、今回は企業の賃金と価格行動に関するアネクを真面目に見ようということで、全文を結構真面目に熟読して(ってお前何年さくらレポート見てるんだと叱責を受けそうですが政策が変わるかどうかという時期になって急に熟読する辺りがアタクシの即物的な所ですすいませんすいません)みたら、総括判断と管内企業の見方の間に微妙な差分があるなと思いました。もちろん地域経済の総括判断は企業部門だけ見ても片手落ちですよというのは分かるんだけど。

『需要項目等別にみると(注)、公共投資については、全国的に国土強靱化関連工事の発注が続いているほか、一部地域では大型案件の影響から増加しているとの報告があった。』

まあこれはさておきやたらめったら威勢が良いのはこの先です。

『設備投資は、コスト高などから計画を先送り・減額する動きがみられるとの指摘もあったが、多くの地域から、人手不足感の強まりに対応した省力化・デジタル化投資、EV関連を含めた環境対応投資、商業施設や宿泊施設の改修・新設、物流施設の建設などを進める動きが報告された。』

これは威勢が良い。

『個人消費(インバウンド需要を含む)は、多くの地域から、感染症の5類移行等を背景に、外食や旅行などのサービス消費を中心にペントアップ需要が顕在化していることが報告された(9地域中5地域で個人消費の判断を引き上げ)。』

ヒャッハー!インバウンド様からバンバンぼったくって行きましょう(なのでインバウンド様向け消費税即時還付とかあんな奴隷根性のサービス即刻止めて欲しいわ、空港でやれ空港で)。

『具体的には、人流の増加に伴い、これまで低調であった大人数の会食を含め、外食が増加していることや、宿泊・旅行でも、全国旅行支援の効果が縮小する中にあっても、国内旅行需要が堅調に推移しているほか、インバウンド需要も着実に増加していることが多く報告された。』

週末の東京駅とかちょっとしたカオスなのは実地検分して確認した。

『このほか、百貨店等における高額品消費の好調が続いていることや、供給制約の緩和から自動車販売が増加していることなどの報告もあった。』

こらまた威勢の良い事で。

『ただし、多くの地域から、物価上昇による消費者の生活防衛意識の強まりを懸念する声が紹介された。』

そらそうよ、という事でして、二極化というのを使って適切なのかはわからんけど、こういう感じの時ってメリハリ消費だの何だの言って生活商品の一部にしわ寄せが来る、ってのはまあ何回か見た光景でありますな。

『住宅投資については、住宅価格の上昇に伴う顧客の購買意欲の低下を背景に、弱めの動きとなっているとの報告があった。』

『輸出・生産については、海外経済の回復ペースが鈍化するもとで、電子部品や素材、資本財などにおける生産調整が報告された一方、自動車関連の生産は、車載向け半導体の調達環境の改善から緩やかに持ち直しているとの報告もあり、全体としてみると横ばい圏内との判断が多かった。』

ほうほうそうですか。


で、ここからが雇用とか所得の話になるんですけど・・・・・・・・・・・・

『雇用面については、経済活動の改善で労働需給が引き締まるもとで、企業の人手不足感は一段と強まっているという指摘が多かった。』

この前のさくらレポート別冊の通りである。

『こうしたもとで、賃金は、コスト高などによる収益面の厳しさから賃上げに慎重な声も紹介されたが、人手不足感の強まりなどを映じた大企業による大幅な賃上げの動きやパート等の賃金上昇を受けて、地場の中小企業等でも近年にない積極的な賃上げの動きが広がっていることが多く報告された。』

(;∀;)イイハナシダナー

『この間、企業の販売価格設定スタンスについては、原材料費や光熱費の転嫁を積極的に進めているとの報告に加え、先行きの賃上げを睨んで販売価格引き上げを模索する動きがみられ始めているとの報告があった。』

>先行きの賃上げを睨んで販売価格引き上げを模索する動きがみられ始めている
>先行きの賃上げを睨んで販売価格引き上げを模索する動きがみられ始めている
>先行きの賃上げを睨んで販売価格引き上げを模索する動きがみられ始めている

どう見てもノルムの変化です本当にありがとうございました。


とまあそんな感じで威勢の良い話が連呼されておりますが、ここで全文をちらっと。

さくらレポート全文(再掲)
https://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer230710.pdf


本文4ページ(PDFの6枚目)の『(3)企業等の主な声(トピック別)※』の『@個人消費関連(インバウンド需要を含む)』の後半の『【価格設定】』を見ますと・・・・・・・・・

『・ 人手不足に伴う提供客室数の減少とコスト増に対応するため、宿泊価格を需要期の冬場に前年から約 15%引き上げ、その後の端境期でも価格を維持している(札幌[宿泊])。

・ AIを活用したダイナミックプライシングを導入。AIが設定する価格は、当初は強気にも感じたが、インバウンドなどの需要増加を的確に捉えており、売上の拡大に寄与している(本店[宿泊])。

・ 原材料費の上昇分に加え、アルバイトの時給引き上げ分を主力商品の価格に転嫁。感染症の影響が緩和するもとで外食需要が高まっており、価格転嫁に対する来店客のネガティブな反応は特段みられていない(名古屋[飲食])。』

(;∀;)イイハナシダナー(いち消費者としては頭がクラクラするけど)

『・ 食品の小売向け価格の設定では、光熱費等の転嫁を進めていくが、原材料価格が落ち着いてきており、昨年後半ほどの値上げ幅にはならない見込み(本店[食料品])。

・ 食材費の上昇を受けて、加盟する飲食店の多くで再値上げを予定。ただし、客離れのリスクが高いため、大幅な値上げには慎重(福岡[経済団体])。

・ 原材料価格や光熱費の高騰を受け、値上げを実施。ただし、顧客離れを防ぐため商品ごとの値上げ幅にメリハリをつけ、主力商品の値ごろ感は維持。価格は当面据え置く方針で、今後の値上げは顧客反応などを慎重に見極める(横浜[飲食])。

・ 日用品の値上げを進めているほか、光熱費高騰や先行き一段の人件費上昇の可能性を踏まえ特売も縮小しているが、アプリ会員向けクーポン等のターゲットを絞った販促強化などにより、客数を維持できている(本店[ドラッグストア])。』

慎重な向きもありますが結局値上げしてるじゃん、というのが並んで終わりになっております。ちなみに後の方には地域別に細かく同じような感じで出てて、その中にはちょっといかんですバイ(別に福岡支店ではない)という声もあったりするのですが、全体観の部分では上記のように価格設定は基本的に威勢の良い話が並んでいる、というのが中々味わいがあります。

本文5ページ(PDFの7枚目)には『C雇用・所得』ってのがある訳でして、

『・ コロナ禍で運転手の退職が増加した中、新型コロナの5類移行に伴い、貸切バスや高速バス需要が回復して人手不足感が強まっている(福島[運輸])。

・ 客足が回復する中、店舗スタッフの不足感が強まっており、アルバイトアプリを活用し、短時間や短期間での単発アルバイトの募集を積極化(名古屋[飲食])。』

ほうほう。

『・ スマホの販売鈍化を受けて関連部品の需要が低迷し、工場稼働率が大幅に低下。このため、時間外勤務が減少したほか、新規求人数を削減している(仙台[電気機械])。』

これはしょんぼりですが・・・・・・・

『・ 県内に拠点のある大企業の賃上げが相次いでいることを受け、これまで賃上げに慎重だった地場中小企業でも賃上げの動きが広がっており、集計先の平均賃上げ幅は1万円超えと 30 年振りの水準となった(長崎[経済団体])。』

何という威勢の良い話でしょう!

『・ 人手不足による納期遅れが懸念される中、採用競争力の強化を目的とした販売価格の引き上げが取引先から認められたため、大幅な賃上げを予定(金沢[金属製品])。』

何と素晴らしい取引先の皆様!

『・ 世の中の賃上げ機運が高まる中、今年度は定期昇給を含め数%程度の賃上げを実施。賃上げ継続の可否は、今後の収益状況を見極めて判断する(本店[飲食])。』

しかしこの景気の良い話、よく見たら金融の文字がないじゃないですかヤダー。

『・ 同業他社が大幅な賃上げを行っている中、当社としても人材確保の観点から賃上げに踏み切りたいとの思いは持っているが、電気料金などの高騰が収益を圧迫しており、実現できる状況にはない(高松[スーパー])。』

これはしょんぼり。


とまあそんな感じで、基本的に植田日銀が勝負している「企業の価格設定」と「企業の賃金設定」に関しては概ね威勢の良い話が続いておりまして、何でこの状況下でマイナス金利だの10年0%だのという無茶苦茶金利を設定しているのか意味が分からんというものでありますな、うんうん。



ちなみに『参考計表』ってのが本文の後にあって、PDFだと45枚目以降になってて、まあ本職のエコノミストだったらちゃんとこの計数を毎回追いかけるもんだと思いますが、ニワカのワシは(目を泳がせることはあっても)まじまじと読んだことはほぼ無かったので面白いじゃんと思いながらみておりました。

でもってですね『(図表 14) 地域別業況判断DI』ってのがPDFの59枚目位にあるんですけど、これ見ると基本的に近畿以西の西日本(特に九州沖縄)って現状業況判断DIが+10越え(九州沖縄は何と3四半期連続で現状DIが+10越え)になっていて、総括判断の文言(中国「持ち直している」四国「緩やかに持ち直している」九州沖縄「緩やかに回復している」)と現状の業況判断DIとの温度差が大きくないか(DIの強さに対して総括判断文言が弱気という意味)と思いましたです。まあオマケと言えばオマケですけど。


〇そういや昨日は現先オペ2本立て攻撃がありましたな

実際には金曜日の引け後にアナウンスあったんですが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230707a.pdf
国債買現先オペの実施について

日本銀行は、2023 年 7 月 10 日に次のとおり国債の売戻条件付買入(国債買現先オペ)を実施することとしましたので、お知らせします。

2023 年 7 月 10 日 (即日スタート) 2023 年 7 月 11 日 オファー時に通知
2023 年 7 月 11 日 (翌日スタート) 2023 年 7 月 12 日 オファー時に通知

最初これ見た時10日と11日に即日現先やるのかと勘違いして、昨日は9時20分に即日オーバーナイト、30分にトモネをやってナンノコッチャと思いましたがそれはワシの勘違い(汗)。

落札結果 (7月10日<月>)(当該オペのみ引用)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba230710.htm
国債買現先・即日 10,471 10,001 -0.100 -0.100 95.5
国債買現先(7月11日スタート分) 50,000 20,003 -0.100 -0.092 9.1

即日の方は1兆打って-0.10%一本値で札割れカツカツ、トモネの方は2兆打って5兆きっちりの応札でしたが、

https://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_m.htm
コール市場関連統計(毎営業日)

https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/trr/index.html
東京レポ・レート

コールの平均値が
7/10:-0.021%
7/7:-0.012%
7/6:-0.016%
7/5:-0.032%
7/4:-0.060%
7/3:-0.071%

で先週後半からコールレート上がったのと、

TKRRのトモネが(作成の都合上コールと体裁違ってスイマセン)
2023/7/3:-0.081
2023/7/4:-0.077
2023/7/5:-0.077
2023/7/6:-0.074
2023/7/7:-0.064
2023/7/10:-0.087

なので、まあ確かに7/7の時点ではちょっと足もと上がっているというのはあったんですけど、以前もコールがこんな感じの時に別に現先やってなかったし、TKRRが−6.4bpで何か不具合あるんでしたっけという気はするのだが、まあコールとかレポとか下げたかったんでしょうねえと思ったがイマイチ良く分からなかったので詳しい人誰かこの辺教えてジェネラル!!!!


〇これは後で読む(俺様備忘メモ)

https://www.boj.or.jp/intl_finance/meeting/group/gro230710a.htm
金融安定理事会による市中協議文書「オープンエンド型ファンドにおける流動性ミスマッチがもたらす構造的脆弱性への対応:FSBによる2017年の政策提言の改正」の公表について

『金融安定理事会(FSB)は、7月5日、「オープンエンド型ファンドにおける流動性ミスマッチがもたらす構造的脆弱性への対応:FSBによる2017年の政策提言の改正」(原題:Addressing Structural Vulnerabilities from Liquidity Mismatch in Open-Ended Funds - Revisions to the FSB's 2017 Policy Recommendations)と題する市中協議文書を公表しました。』

『FSBは2020年3月の市場混乱でオープンエンド型ファンドにおける流動性管理上の課題が明確になったことを受けて、2017年に公表した「資産運用業の活動から生じる構造的な脆弱性に対応する政策提言」<金融庁ウェブサイトにリンク>の有効性について評価を行い、政策提言の見直し作業を実施しました。本市中協議文書は、当該作業結果を受けて公表されたものです。』

『今回公表された市中協議文書では、オープンエンド型ファンドの流動性管理を強化する観点から、投資家によるファンドの解約時に生じる流動性コストを投資家に負担させる「流動性管理ツール(Liquidity Management Tools)」の一段の活用余地等が示されています。』

『なお、証券監督者国際機構(IOSCO)も、併せて、市中協議文書「希釈化防止のための流動性管理ツール:『集団投資スキームの流動性リスク管理に関する提言』の有効な実施のためのガイダンス [PDF]」 (原題:Anti-dilution Liquidity Management Tools - Guidance for Effective Implementation of the Recommendations for Liquidity Risk Management for Collective Investment Schemes)<IOSCOウェブサイトにリンク>を公表しております。』

『詳細につきましては、以下をご覧ください。』

とまあこういう話なんですが、この話ってゴリゴリと詰めるとそもそもオープンエンド型ファンドの存在がとかいう話になるし、それを更にゴリゴリと突き詰めれば「広く多くの資金を集めて運用する」という金融業そのものの話になるので、一部のトンチキがやらかしたからという事で何でもかんでも規制すりゃ良いってもんじゃないと思うので、氷見野副総裁のご活躍を期待する分野になるかなとは思うのであります。





2023/07/10

お題「内田副総裁のインタビュー(日経と共同)ですが何か混乱を招きに行っただけのような気がします・・・・・・」

近年この時期のクソ暑さが酷い気がします。またはスーパー豪雨とか。

〇内田副総裁のインタビューはコミュニケーションを更に混乱させてしまいましたな

いやー日経無課金おじさんのアタクシ、そもそも寝起きの段階でロイターは見るけど日経をみる習慣が無いもんで(良い子は真似をしてはいけません)不覚にも仕事始めてから慌てて日経の本紙を確保しましたわよあばばばばー。

・7月YCC修正あるんじゃなかろうかという解釈になった市場ちゃんということでファイナルアンサー??

金曜の横綱(立ち合い始まる前にこのデータは今日のに置き換わります)
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 23年9月限

取引日:2023/07/07
立会区分:日中取引
始値:148.30(07/07)(08:45)
高値:148.36(07/07)(08:52)
安値:148.08(07/07)(13:10)
現在値:148.12(07/07)(15:02)
前日比:-0.45
取引高:23,547

まあ45銭安ですわ奥様、とおもったら夜間では

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night

長期国債先物

23年9月限 夜間取引
07/10
始値:148.10(07/07)(15:30)
高値:148.11(07/07)(15:32)
安値:147.77(07/07)(22:10)
現在値:147.78(07/08)(06:00)
前日比:-0.34
取引高:13,124

と内田副総裁のインタビュー出てから79銭も下がっておられる横綱様。

まあ米国債券市場ちゃんの金利がホイホイ上昇して(週末は短い方下がって長いのが上がってますけど)10年4%とかやってる、というのもあるとは思うのですが、一方で為替ちゃんの方が、

https://jp.reuters.com/markets/currencies

USD
1 USD = 142.0700 JPY

とか仰せ。まあ金曜の相場では最初債券市場しか反応していなかったので、内田さんネタなのか単純に米国の長期金利上昇に反応していたのかは謎ではありましたが、そうは言っても円が妙にしっかりしてるなと思ったら金曜の午後から円高になっていて、これ株安で円高とかいう話にはなっていたのですけど、横綱も土俵を割ってワロリンチョという感じでしたので、効いてない訳ないでしょうなあ。

ということで日経の記事なんですけど、これがまた無課金勢だと良く分からんので、申し訳ない本紙を読みながら書きますよ、というか日銀もこういう重要なインタビューの時には期間限定でも良いから一般に広くアクセスが可能な方法をお願いできないもんですかねえ。結局大メディアの商売の片棒担いでるんじゃんよと言いたくなってしまいますわ(まあ日経に課金しない変態なのが悪いと言われればぐうの音も出ないんですが)、

日経様の記事自体はこの辺(7/7金曜日朝刊)

たぶん1面に対応するのがこっち
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB30ACH0Q3A630C2000000/
日銀内田副総裁、金利操作修正は「バランスとって判断」
金融政策
2023年7月7日 0:00 [有料会員限定]

『日銀の内田真一副総裁は日本経済新聞とのインタビューで、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正について「金融仲介や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」と述べた。当面は「YCCを続けていく」と強調した。』

『内田氏のインタビューは3月の副総裁就任後初めて。金融緩和を続ける考えを説明したうえで、政策修正に踏み切る場合に重(以下会員限定記事)』(上記URL先より)

詳細は10面にありまして、

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB067S30W3A700C2000000/
物価高・賃上げ、緩和出口へ瀬踏み 内田日銀副総裁
経済
2023年7月7日 0:00 [有料会員限定]

『日銀が10年間続けてきた異次元緩和の出口が近づきつつある。内田真一副総裁は就任後初めて応じた日本経済新聞のインタビューで、足元の賃金・物価情勢について「デフレ期に定着していた企業行動にようやく変化の兆しが出てきた」と手応えを示した。大規模緩和を維持した上で金融正常化のタイミングを瀬踏みする構えだが、足元で進む円安が政策修正への圧力となる可能性もある。』

『内田氏は現時点での異次元緩和の見直しは否定し(以下会員限定記事)』(上記URL先より)


・長期金利ターゲットを修正する気が無いのであればそもそもこんな話を始めるのが盛大なミスコミュニケーション

とまあそういうことですが、10面の方が詳しく説明していて、YCCに関しては日経さんが『微妙な含みを持たせたのは、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の運用だ。』(7/7金曜日経新聞朝刊10面より)という評価をしていまして、そこで上記URLにもある「金融仲介や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」という趣旨の発言を引き合いに出しております。

・・・・・・・・・でですね、まあ日経さんにもこのように書かれる次第ですし、10面の記事の方にもありますように、現時点での物価情勢の評価について色々とポジティブな発言をしております。

わざわざこういうのを言い出す、というからには何か伝えたいことがある筈、と考えるのが普通なのは言うまでもありませんですけれども、物価情勢に対してポジティブな評価をして、YCCに関して「金融仲介や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」という発言をした、ということになりますと、これをわざわざ言うというのは、まあ受け取る側にしてみたら「あれ??植田総裁の発言と違って7月Yに長期金利ターゲットの見直しが念頭にあるんかいな?????」となってしまうのはまあ当たり前ですよね。

だって植田総裁のあのやる気一切ナッシングっぽい言い方を額面通り真に受けますと、7月どころか延々と「先行き物価が下がると思う(ちなみに先日も書いたけどオーバーシュート型コミットメントって見通しベースじゃなくて実績値なので本来はもう解除されてないとおかしいんですよ、蛇足だけど)」「2025年度に向けての見通しに確信が持てない」とかいう謎の発言を続けて政策修正する気ありません、って話になる訳なんですよね。

まあここで問題なのは毎度皆さんご指摘のようにそもそも長期金利ターゲットの変更は事前に織り込ませることが出来ないので完全に真に受けることができない点でございますので、7月会合で急に植田さんがジャガーチェンジして長期金利ターゲットを解除または骨抜きのバンド拡大(プラマイ100とか)をする、という無茶ぶりをした挙句に「長期金利ターゲットはその性質上事前に示唆できないんですゴメンチョ」というのはアリなんですけど、債券市場の人は兎も角として、他の市場の人がそこまで微妙な機微を全部理解しているかというとそうでもないですし、大体からして債券市場の人だって黒ちゃん雨宮さんなら兎も角、植田先生ともあろうお方がイカサマコミュニケーションをする訳ないですよね、って思いもあったりする訳でございまして、やはりこのインタビュー無しの状態で債券市場の中の人たちでも「7月解除はシナリオに置いてるけど別にそれに満振りしている訳ではない、無かったらなかったでその時はその時」みたいな状態だと思いますので、いざ修正となりますと、まあ普通に「今までのコミュニケーションは何だったんだよこのハゲ」という話にはなってしまうと思うのよね。

・・・・・・とまあそんなこんなを考えると、なんとなくそれっぽいコミュニケーションをしておいて「露骨に示唆はしなかったけれども考えると修正ありって予想も可能だよね」という情報発信をすることによって、7月政策修正時の「騙しやがってコノヤロー」というハレーションを緩和しよう、というまあ日銀らしい姑息さが溢れ出た情報発信なんじゃないですかねえ、とこのように考えるのが一つの読み筋。

ちなみに、この記事の無料部分だけでもわかりますように、内田副総裁は「YCC維持」という趣旨の説明をしているので、10年ターゲットに関して完全撤廃というのは7月にやるとしてもなくて、バンドの大幅な拡大(ワンチャン短期化)ということになって、長期ターゲットの本当の撤廃は先の話ということにするんでしょうね。

しかしまあ何ですな、これレンジ拡大するのは結構なのですが、相変わらずアホのように長期国債の買入をバカスカ継続している現状で、レンジ拡大したら本来は市場の価格形成に委ねていくということになるから買入を減らすのが筋というものなんですけど、この人達レンジ拡大すると同時に買入の増額をしてきそうな程度にはガンギマリ状態になっているので、YCCの10年バンド拡大→長期国債買入更に拡大→金利アガランチ会長、とかいう恐ろしい事も起きそうで今から頭がくらくらして参ります(熱中症ではありません)。


とまあそんな感じで7月修正やるのかよ(正直7月やらないで円安ぶっ飛んで追い込まれる方が面白い(超不謹慎)のでそっちを期待していたアタクシ)という話をしてみましたが、逆に言いますとこんな思わせ振りの記者会見をぶっこんでおいて「7月ゼロ回答でーす」ってやったら今度は「この会見は一体全体なんだったのか」という話になりますし、既に7月あるかもしれませんよねモードで為替も債券も反応しだしておるわけでございますが、これがドテン倍返しになって反動が来るわけで、余計な会見したせいで一段のぶっ飛びになってしまう、って事になったらどうするんだよというお話でもありますが、もしかしたら「7月だけじゃなくてYCC修正については思惑を残しておかないと円安が進行するからこういうコミュニケーションをしておこう」という事なのかもしれませんけど、まあ市場の片隅でおこぼれ拾って拾い屋稼業うん十うん年のアタクシから見ますと危険な賭けに見えてしまいますね(7月修正する気が端からないのに為替対策でこういうコミュニケーションをした、というケースですと)。

つーことで、まあこの記事自体確かに7月に何かするとか何かしないとかいう話はしていないのですが、わざわざこの時期にこんなコミュニケーションをすること自体が市場にノイズを盛大に撒いている訳でして、もう植田日銀のコミュニケーションってダメダメ過ぎで困りますわ早く辞任してくれませんかねえ。



・マイナス金利の解除が「需要抑制」ってそらまた無茶苦茶なガンギマリ理論だがこれは長期先行解除に道を開くもの

上記無料部分に書いてない部分だからアレというか、重要なんだから無料部分でチラ見せだけでもしとけよと思ったのは10面の中にあるマイナス金利解除の部分。

『特にマイナス金利政策の解除派「0.1%の利上げ」だとし、「もし解除するなら実体経済面の需要抑制で物価上昇を防ぐのが適切と判断したということ」』(7/7日本経済新聞朝刊10面の内田副総裁インタビュー記事より)

とか何とか仰せで、だからまだ距離があるという事を言っているのですけど、マイナス金利をゼロ金利にするのが「0.1%の利上げ」なのはそらその通りなのですが、「実体経済面の需要抑制で物価上昇を防ぐのが適切と判断」しないとマイナス金利解除しないって言う事なんですが、マイナス金利をゼロ金利にすると需要抑制効果があるって均衡金利(均衡イールドカーブですらない)を貴方幾らだと思っているのかと小一時間問い詰めたい訳で、さすがにこの理屈はちょっと屁理屈にしても無茶苦茶過ぎます。

だいたいからしてですね、短期政策金利を0.1%利上げしたら「実体経済の需要抑制」になるんだったら。そもそも今のマイナス金利って緩和でも何でもなくて中立金利近辺にいるって事になるじゃんという話だし、現時点からたったの0.1%政策金利上げるだけで需要抑制になるんだったら長期金利の25→50って無茶苦茶な需要抑制効果があるって話だし、だいたいからして0.1%上げるだけで需要抑制になるんだったら物価目標の早期達成のためにもっと短期政策金利引き下げないとおかしくね?????????????

とまあさすがにこの屁理屈は何ぼ何でも無茶苦茶過ぎますので、7月の会見で是非だれか「マイナス金利をゼロ金利にするというたった0.1%の金利引き上げで経済に需要抑制効果が出るかのような説明を内田副総裁がしておられましたが、そうであれば実は今の政策は強力な金融緩和になっていないという事を意味すると思いますが、現在の中立金利水準と短期政策金利水準の関係について分かりやすくご解説頂けますでしょうか」って聞いて下さいお願いします、という話。

まあアレです、最近の植田総裁の説明ロジックだと、YCCの長期解除とマイナス金利解除とうっかりしたら正常化開始までが全部セットになってしまう、という感じ(だって物価で勝負してるんだもん)になっていて、それはそれでヤバいので、というのと、もしかして7月(じゃないかもしれないけど)にYCCの長期ターゲットの形骸化みたいな事をやる時に、マイナス金利解除を市場が催促しに行くのを防止しよう、という意図があると思えばこのガンギマリ理論も言いたいことはわかる(マイナス解除はただの「緩和の修正」であって「引き締め」の訳が無いのだから理屈は無茶苦茶なあたおか理論であることには変わりないが)というものであります。

そーゆー辺りを勘案しますと、植田総裁があまりにも「修正はまるで無し」「YCC修正するのは物価2%達成に先行きも含めて自信満々になった時」という理屈、即ちYCC解除とマイナス金利解除がほぼ同時で、しかもそれは物価目標達成と紐つき、即ち金融政策が緩和から少なくとも中立に向かうという完全なる出口政策となってしまう、という理屈を言いすぎたので、内田副総裁が修正に入って、YCCの長期金利→マイナス解除という説明に直した、って感じではないかとアタクシは思いました。

ただ、内田さんの説明もさっきからガンギマリと申し上げていますように、マイナス金利の解除観測を盛り上がらせないために無茶な理屈を言ってて、本来ならマイナス金利の解除は「緩和の一部手直し」という形で緩和を続けながらマイナス金利解除が出来るはずなのに、「需要の抑制」とか言い出しているので、物価抑制のための利上げがマイナス金利解除だとすると、その際のマイナス金利解除ってその先バシバシ利上げしないと行けない状況とセットになってしまいまして、それは多分政策として大失敗の巻になってしまうので、この「0.1%の利上げが需要抑制」という無茶苦茶な説明はどっかの時点で無かったことになるに1万パウエルと言った所でアタクシは考えております(いくら何でも内田さんですからこの「0.1%利上げが需要抑制」ってのの無茶苦茶なことくらい分かってて言っていると思いますからねー)、はい。



・実は共同通信でもインタビューを受けていた内田副総裁でした

日経の方がインパクトあって共同通信食われた格好ですが

https://www.47news.jp/9554764.html
2023年07月07日 共同通信
利上げ「慌ててしない」 日銀の内田副総裁

『日銀の内田真一副総裁(60)は6日までに共同通信の単独インタビューに応じ「慌てて利上げをしていく環境には全くない」と述べ、現行の大規模な金融緩和策を継続する方針を示した。現在は物価上昇率を2%で安定させる目標の実現が見通せないとして、金融引き締めに転じれば「2%を実現できなくなってしまうリスクの方がはるかに大きい」と語った。』(上記URL先より、以下同様)

あくまでも「利上げをしていく環境には全くない」のであって、YCC修正に関しては別に全否定していない、というのは共通な訳でして、そらまあ「含みを持たせた」と思う罠。

『内田氏は日銀の企画局長や企画担当理事として金融政策運営に深く関わり、3月20日に副総裁に就任した。副総裁として報道機関のインタビューに応じたのは初めて。』

ってこれ日経も同時に「副総裁として報道機関のインタビューに応じたのは初めて」って言ってますし、この前の植田さんの各社の合同インタビューじゃなくてどっちも単独みたいでして、これ別に日銀から何も言ってないとは思うのですが、結果的に共同と日経が同時に「うちが最初の単独インタビュー」って言って記事だしたことになるので、ハンドリングとしてどうだったのかなという気はします。共同にしろ日経にしろいい気分じゃないでしょこれ。

『日銀は賃金と物価がそろって上昇する好循環の実現を目指している。内田氏は経済の現状について、コスト上昇分を価格に転嫁する動きや、春闘で大幅な賃上げ回答が相次いだことを挙げ「企業の賃金・価格設定行動には変化の兆しが出てきた」と指摘した。』

だそうですな。(ちなみに最初にみたのはロイターさんの転電でしたが共同通信の方から確認しました)

どうも一問一答もあるっぽいのですが、
https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/243959
内田副総裁の主な発言
2023/7/7 0:04(最終更新: 2023/7/7 0:11)

うーんこの会員記事、ということですが、何で新潟日報を選んだかと言いますと新潟日報はこんな記事があったので思わす新潟日報をチョイスしたということえあります。前もご紹介したとは思いますが再掲(^^)。

https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/174894
日銀次期副総裁・内田真一元新潟支店長、中枢歩んだエース「新潟のポテンシャルは高い」と評価も
2023/2/11 12:00

サムネ(2010年時点の内田さん)にご注目下さい(^^)。


まあいずれにしましてもこの感じですとMPMに向けて変な情報戦みたいなのがおっぱじまりそうで、植田日銀はそういうのは無くて正々堂々とやるもんだと期待していたので甚だ残念だし遺憾の極みではあります、ああ・・・・・・・・・




2023/07/07

お題「FOMC議事要旨鑑賞会(その2)」

七夕ですな。来年の今ごろは世の中どうなっているのでしょうか・・・・・・・・・・

〇6月FOMC議事要旨(続き)

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20230614.htm

昨日は毎度の寝起きインスタント読みで政策に関する部分を読んだわけですが、あれで米国長期金利が上昇(今朝も上昇しているみたいですが)するのってナンノコッチャというか別の要因のような気がするんですけれども、ベンダーみていると「FOMC議事要旨で」みたいになってて多少の??感はありんす。

まあしかしあの「6月利上げを行わないで引き締め政策の累積的な効果の波及を確認する」という話なんですけど、昨日もちらっと申し上げましたが、波及を確認するのにスキップ、なんだったら普通は7月に利上げの話をその後あんなにぶち込むのはおかしいでしょと思う訳で、あっという間にジャガーチェンジしたのって何が背景だったんでしょうかねえというのはどっかで知りたいです。

では『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』を政策判断の話の前の所(昨日引用しなかった所)まで参ります。

最初のパラグラフはSEPのある会合の定例前置きでSEPを作ったぞなという話なのでパスしてその次から参ります、といっても2パラは基本的に声明文に書いてある現状認識の話をそのままのっけているだけですので読み飛ばし推奨。

『In their discussion of current economic conditions, participants noted that economic activity had continued to expand at a modest pace. Nonetheless, job gains had been robust in recent months, and the unemployment rate had remained low. Inflation remained elevated. Participants agreed that the U.S. banking system was sound and resilient. They commented that tighter credit conditions for households and businesses were likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. However, participants agreed that the extent of these effects remained uncertain. Against this background, participants concurred that they remained highly attentive to inflation risks.』

次が見通しの話。

『In assessing the economic outlook, most participants noted that real GDP growth had been resilient in recent quarters. Participants generally judged that growth would be subdued over the remainder of this year. They assessed that the cumulative tightening of monetary policy over the past year had contributed significantly to more restrictive financial conditions and lower demand in the most interest rate sensitive sectors of the economy, especially housing and business investment.』

先行きの話しですけど、年後半にかけて米国経済は顕著にスローダウンするでしょう、何でなら金融引き締めの効果が出てきて金融環境が引き締め的になっており、それによって金利感応度の高いセクター、特に住宅と企業の投資が抑制されるから、という見通しになっていて、これ自体はずーっとこの話になっておる。


・金融引き締めの効果が全部出てくるのはいつなんでしょうという話

『Participants also acknowledged uncertainty about the lags with which monetary policy affects the economy and discussed the extent to which the full effects of monetary tightening on the economy had been realized.』

金融引き締めが経済に効果だす時間的ラグやどの程度効果を出すのかってのが不確実ですなあ、という議論。

『While total inflation had moderated over the past year, core inflation had not shown a sustained easing since the beginning of the year. With inflation well above the Committee's longer-run 2 percent objective, participants expected that a period of below-trend growth in real GDP and some softening in labor market conditions would be needed to bring aggregate supply and aggregate demand into better balance and reduce inflationary pressures sufficiently to return inflation to 2 percent over time.』

でもって現時点(6月時点)での話は、総合物価はちょっとモデレートになって来たものの、コアインフレが碌すっぽ軟化する気配がないですわ、という評価なので、物価が2%を大きく上回っている状況においては、経済の需給バランスを修正するためにもトレンド成長よりも低い水準の成長をある程度継続しないとインフレ圧力が収まらんのとチャイマスカ、と予想している、というまあこれもずーっと言ってますがそういう話をしておりました。

次のパラグラフからは個別の需要項目の話になります。


・銀行セクターの話を真っ先に持ってきているのでやはりこの時点では気がかりだったということですかねえ

需要項目の話になるんですが最初は需要項目とはちと違う銀行セクターの話になっているのはまあそういうことかなと。

『Participants generally noted that banking stresses had receded and conditions in the banking sector were much improved since early March.』

3月頭からは改善しているよ。

『Participants generally continued to judge that a tightening in credit conditions spurred by banking-sector stress earlier in the year would likely weigh further on economic activity, but the extent remained uncertain.』

でまあここの話になると実際のアメリカンじゃないと分かりにくい面があるので何なのですが、3月以来の銀行のストレスによるクレジットコンディションのタイト化が今後も含め経済に下押し影響を与えてくれるでしょう、その程度は良く分からんのだが、という話になっているこの部分、この銀行ストレスの悪影響を過小評価しているのか過大評価しているのかってのは正直ワシ分からんのですけど、この点に関するFEDのアセスメントと、実際どうなのよというのの差分はアタクシの直感は重要なんじゃないかと実は思っている、思っているだけでだから何か調べるとかしないのがぐうたらさんなのですが。

『Several participants mentioned that credit conditions had not appeared to have tightened significantly beyond what would be expected in response to the monetary policy actions taken since early last year.』

何人か(Several)は利上げによってもクレジットコンディションってそんなにタイト化してねえんじゃねえの(バンキングストレスではなさそう)という指摘をしているようで。

『Some participants judged that it was still too early to assess with confidence the eventual effects of tighter bank credit conditions on economic activity and noted that it would be important to monitor closely the potential effects of banking-sector developments on credit conditions and economic activity.』

何人か(Some)は銀行のクレジットコンディションのタイト化の経済に与える影響について判定するのは時期尚早との見解、ということで何か分かったような分からんような話でこのパートは終わるのでした。


・家計に関しては強いのと家計のウェルスに関する指摘があるのがほほーという感じ

次のパラグラフは家計。

『In their discussion of the household sector, participants generally noted that consumer spending so far this year had been stronger than expected.』

今の所までの家計消費は想定よりも強かったよと。

『Several participants noted that aggregate household wealth remained high, as equity and home prices had not declined much from their recent highs.』

という全体の話の後に最初に来るのが「家計の資産」の話なのはちょっとおーと思いましたが、こちらでは何人か(Several)が家計の試算が高いって話をしてて、住宅価格も株価もゆうて高値からそこまで下がってないですよね、というのがありまして、これ即ち資産価格がヒャッハーしていると家計のウェルス拡大から家計の消費が強いままで留まるというアメリカン資産価格連動型家計消費というメリケン仕様の話を家計の所の最初に持ってきているということでして、つまりは金融引き締め打ち止めからの中立に向けて緩和期待、とかいうので資産価格がヒャッハーしてしまうと、肝心のインフレ抑制どころかインフレ加速装置になってしまうのでイクナイ!という事を主張している、とアタクシは読み取った次第でして、まあそういうのもあるから結局7月FOMCに向けて利上げ情報発信をしないと行けなくなったという面は多々ありそうですよね。

『A few participants mentioned that while, overall, the household sector still retained much of the excess savings it had accumulated during the pandemic, there were signs that consumers were facing increasingly tighter budget constraints, given high inflation and, especially for low-income households, depleted savings.』

数名(A few)からは相変わらず家計の超過貯蓄がしこたまあるんんだが、という話をしながらも、特に低所得者の家計においては高インフレによる支出の制約が出てきているサインが見られるとご指摘になっています。


・企業部門はまちまちなんですけど何気に金融引き締めがそこまで効いてねえんじゃネーノ的な記述になっているのね

次が企業部門。

『Regarding the business sector, various participants said that reports from their contacts were mixed, with some pointing to softening economic conditions and others indicating greater-than-expected strength.』

この「various participants」っての最近使うようになっててナンジャソラと思ってたんですが、こういう文章の中で使われると何となく合点がいきますな。こちらではFOMCパーティシパントの皆様が接している企業経営者からのアネクドータルで最近どうよという件についてのお答えの話になっているのですが、強弱まちまちの回答が集まっておられるようで(まちまちだからvarious)。

『Many participants noted that developments in the banking sector appeared to have had only a modest effect so far on credit availability for firms.』

ここでまた銀行セクターの影響の話が出てきますが、企業のクレジットのアベイラビリティにはそんなに影響は出てないですな、という話になっておる。

『Some participants remarked that the effect of high interest rates on the housing sector appeared to be bottoming out, with home sales, builder sentiment, and new construction all having improved a little since the start of the year.』

さらに住宅セクターの話がここに混ぜられていまして、なんとここの記述も「高金利の悪影響は底打ちしてきてて、住宅販売や建設業者のセンチメント、新規住宅着工などの指標が全て年初以降改善している」という威勢の良い話になっておりまして、この説明なのに何で(昨日引用したように)引き締めの効果を見極めるために利上げをいったん止める、という結論になるんじゃろ、という気はします。

まあ記述順で最初にあったバンキングセクターのことを気にしていた、ということなんでしょうかね、よくわからん。


・GDPは強いのにGDIは弱いという件

次はそんな話をしています。

『In their discussion of economic activity, several participants pointed out that recent GDP readings had been stronger than expected earlier in the year, while gross domestic income (GDI) readings had been weak.』

国内の総所得は弱いんだが国内総生産は年初想定よりも強い、という評価です。

『Of those who noted the discrepancy between GDP and GDI, most suggested that economic momentum may not be as strong as indicated by the GDP readings. In discussing that possibility, a couple of these participants also cited the recent subdued growth in aggregate hours worked.』

この点について指摘した多くのパーティシパントは、GDPで示されているほどに経済のトレンドは強くないということをこれは示しますなあ、という話をしておりまして、この可能性について議論する中で、2名のパーティシパントは最近の総労働時間の伸びが弱い事を指摘しています。

ま、この点も気にしているってことですか。


・労働市場はクッソタイトなのですがアネクドータルではそのバランスの改善があるけど賃金が強いんだよなーと

次は労働市場。

『Participants noted that labor market conditions remained very tight, with robust payroll gains and the unemployment rate still near historically low levels.』

労働市場はクッソ強い。

『Nevertheless, they noted some signs that supply and demand in the labor market were coming into better balance, with the prime-age labor force participation rate moving up in recent months and further reductions in rates of job openings and quits, and declines in average weekly hours.』

とは言いましても、労働市場の需給バランスがcoming into better balanceになってきているsome signsがありまっせ、とのご指摘であります。

『A couple of participants conveyed that they heard at a recent Fed Listens event that, in various parts of the country, the lack of affordable housing in the area was preventing some lower-income workers from relocating to accept jobs.』

この辺からアネクドータルな話になるのですが、最初に2名の指摘としまして、最近のFEDリッスンズイベント(まだやってるのか中々偉いじゃん)での話として、アフォーダブルな住宅、ってまあこの場合レントの話だと思いますのでお家賃が、と書くべきな気もしますけど、お家賃の制約によって仕事に就こうと思っても適当な所にお引越しできない、というような事例が低所得者の中では起きているというのがアメリカンのあちこちの個所であったで、という話をしております、へーへーへー。

『Similarly, a few participants noted that their District contacts reported less difficulty in hiring and retaining workers, lower turnover rates, and some layoffs.』

数名(a few)からは、自分の地区での話として、採用とか従業員の確保(転職防止)などが以前より大変じゃなくなったという話を聞かれておりまして、離職も減ってきているし一部ではレイオフの話も聞かれている、とのお話が。

と、こういうアネクが出てきたのですが、ここからお賃金の話になってまた強い話になる。

『Some participants pointed out that payroll gains had remained robust but noted that some other measures of employment-such as those based on the Bureau of Labor Statistics' household survey, the Quarterly Census of Employment and Wages, or the Board staff's measure of private employment using data from the payroll processing firm ADP-suggested that job growth may have been weaker than indicated by payroll employment. 』

お賃金が相変わらず強い、という話で、どの位強いかというと雇用の伸びと比較しても強いという状況。

『Participants anticipated that employment growth would likely slow further, consistent with their projections of below-trend economic growth.』

今後経済がトレンド成長を下回る水準に減速するとみているのと同様に雇用の伸びも更にスローダウンすると見ているのですが、

『Participants noted that nominal wage growth had shown signs of easing but observed that it was still running at a pace that, given current estimates of trend productivity growth, was above what would be consistent over the longer run with the Committee's 2 percent inflation objective. Participants expected supply and demand conditions in the labor market to come into better balance over time, easing pressures on wages and prices.』

名目賃金の伸びに関しては幾分かの緩和の兆候も見られるのですが、相変わらずトレンド生産性の上昇を上回ってアゲアゲになっており、勿論ですが2%インフレ目標に整合的な伸び以上に伸びている、という評価になっております。ただ先行きに関しては経済の需給バランスが緩和される中で賃金や価格の上昇圧力も緩和されるでしょう、という見立てで締めています。



・物価は怪しからん強さという話が連発するあばばばばー状態

次は物価。

『Participants agreed that inflation was unacceptably high and noted that the data, including the CPI for May, indicated that declines in inflation had been slower than they had expected.』

インフレはunacceptably highで、5月のCPIは強い上に、インフレの低下が期待ほどでもない、と散々な言われよう。

『Participants observed that although core goods inflation had moderated since the middle of last year, it had slowed less rapidly than expected in recent months, despite data and reports from business contacts indicating that supply chain constraints had continued to ease.』

コアの財インフレに関しても思ったほど下がっていなくて、しかも問題となっていた筈のサプライチェーンの制約に関しては改善が続いているというのに、とインフレサガランチ会長にお悩みのようです。

『Some participants noted the recent moderation in housing services inflation and expected this trend to continue. However, a few participants pointed to upside risks to the outlook for housing services inflation associated with near-record low inventories of homes for sale, solid housing demand, and less-than-expected deceleration recently in measures of rents for leases signed by new tenants. Additionally, some participants remarked that core nonhousing services inflation had shown few signs of slowing in the past few months.』

サービス価格のインフレに関しては住宅関連(まあ要するにレント)が緩和されていて今後も緩和しそうだという話ですが、その後のハウエバー以降は中々住宅関連も下がらんでしょという指摘があって、その後に住宅関連以外のコアサービス価格が下がって来る気配なしの介、という指摘をしております。

『Several participants noted that longer-term measures of inflation expectations from surveys of households and businesses remained well anchored. Participants emphasized that, with appropriate firming of monetary policy, well-anchored longer-term inflation expectations would support a return of inflation to the Committee's 2 percent longer-run goal over time.』

インフレ期待に関しては長期はアンカーされている(されてない、って言い出したら大変な引き締めをしないといけなくなるからそらこういう話になりますが)という話で、金融引き締めとアンカーされてるインフレ期待によって2%の目標に向かて下がっていくサポートになるでしょう、と締めていますがまあ何というかな感じですな。


・やたらめったら「これまでの金融引き締め効果と銀行セクターの問題による影響の不確実性」を主張していますね

最後(じゃなくてその先が政策アクションの話になる)は「不確実性」の話。

『Participants generally noted a high degree of uncertainty regarding the cumulative effects on the economy from both already-enacted monetary policy tightening and the potential additional tightening in credit conditions stemming from recent banking-sector developments.』

なんの不確実性かと思えば「これまで実施した金融引き締めと、銀行セクターの動向によって今後追加的にタイトニングになるであろうクレジットコンディションのタイト化が経済に与える影響」のことでした。

『Participants noted that the full effects of monetary tightening had likely yet to be observed, though several highlighted the possibility that much of the effect of past monetary policy tightening may have already been realized.』

まだその効果のすべては観測されていない、という話なのですが、一方で何人か(several)はその影響っても大体実現してるんじゃネーノ、という指摘もあるのでここの何人かはタカ派ですね。

『Regarding downside risks to economic activity, participants noted the possibility that the cumulative and rapid tightening of monetary policy would eventually affect economic activity more than expected, and that the additional effects of the tightening of bank credit conditions could prove more substantial than anticipated.』

先行きの経済下押しリスクに関しても今の「これまで実施した金融引き締めと、銀行セクターの動向によって今後追加的にタイトニングになるであろうクレジットコンディションのタイト化が経済に与える影響」が想定よりも大きかったらより下押しになるリスク、という話でエライ警戒してましたな(無駄に警戒している感があるが)という風情。

『Regarding risks to inflation, with inflation remaining well above the Committee's longer-run goal, some participants mentioned the possibility that longer-term inflation expectations could become unanchored, particularly in light of stronger-than-expected consumer demand and a still-tight labor market.』

『Several participants cited the possibility of delayed effects of tighter credit conditions potentially contributing to a slowdown in economic activity that reduces inflationary pressures.』

インフレに関する潜在的なリスクに関しては強弱まちまちで、インフレ期待が上にぶれるリスクの指摘と、金融環境の引き締めが想定以上に強く下押しとなるリスクについての指摘があります。


ということで以下が昨日引用した政策アクションの話になりますので本日はここで。







2023/07/06

お題「輪番減らさんし1Q需給ギャップは碌に改善しないで・・・・・・/6月FOMC議事要旨(その1)」

何かですね、どうもこのポンポコリンの金懇とかネタにするモチベーションが沸かんのでありまして、他のネタがつい優先されてしまう訳ですが、そう考えますとジンバブエ大先生の場合は前夜にねじり鉢巻きして夜なべしてまで大ネタにしてたんんですからやはり逸材であったことは言うまでもありません(ソウジャナイ)。


〇相変わらず「修正しない」ようなネタばかりが出て来る日銀ちゃんですが・・・・・・・・

・輪番減額しないでフラットニングして30年入札とな

昨日の輪番オファー(指値除く輪番のみ引用)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of230705.htm
国債買入(残存期間1年以下) 1,500 2023年7月6日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 4,250 2023年7月6日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,500 2023年7月6日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 2,000 2023年7月6日

主要年限全て減額無しで、10-25とか相変わらず2000も買入しやがってこんだけ金利下がってるのにまだ減らさんのかという感じですが、まあオペ紙の時点で減らさないオーラは漲っておりましたので減らさんだろうなというのはありましたにせよですね・・・・・・・・・

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba230705.htm
国債買入(残存期間1年以下) 6,255 1,504 0.004 0.006 58.8
国債買入(残存期間1年超3年以下) 12,439 4,251 0.003 0.004 41.0
国債買入(残存期間3年超5年以下) 9,962 4,508 0.001 0.003 23.0
国債買入(残存期間10年超25年以下) 4,628 2,004 -0.007 -0.004 21.0

長い方の輪番が流れて後場一段フラットニング、とかやっている訳ですが、黒ちゃんのときですらコロナ前は基本的に輪番って隙あらば減らそうとしていたのに(一時減らし過ぎて保有国債残高が減少するんじゃネーノ水準まで行きましたが)黒ちゃん末期の馬鹿買いをそのまま引き継いで、防衛戦している訳でもないのにろくすっぽ減額しやがらないという全く持って何を考えているのやらというムーブになっておりまして、この過大な買入が市場参加者を離散させてマーケットのアベイラビリティを壊している(つまりQQEも大概に問題だが問題の本質はLSAPにある)次第だし、大体からしてお前らMBのオーバーシュート型コミットメントってのは「マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。」ってなってるけど、コアCPIの実績値って

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数
全国 2023年(令和5年)5月分

「表1 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の指数及び前年同月比」

の表の中にある期間全期間にわたって2%超えてるんで、本来ならオーバーシュート型コミットメントはもう終わりの筈なんですけど何でこんなに買入するんですか、ってなもんなんですけどねえ。

植田さんが審議委員の時のトラウマは分かるんだが、1年以上に渡ってコアCPIが2%超えをしているのに、当たってもいないポンコツお手盛り物価見込みという恣意的にも程があるものをを根拠にして2%行ってないって言って「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで」を勝手に捻じ曲げているのって、結局の所植田さんが審議委員だった時の真逆をこれまた極端な形でやっているに過ぎない訳で、どうしてお前らはそう極端なことしかできないのかと小一時間問い詰めたい訳ですな。


・需給ギャップェ・・・・・・・・・・・

何ちゅうかホンマカイナという数字が今回も出て参りましたが。

https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/index.htm
需給ギャップと潜在成長率

まあ何か知らんけどこっちのグラフ見ていると短観加重平均DIの水準に対して直近の需給ギャップってなんでこんなに低い推計値になるんじゃと思ってしまうグラフが登場しておりますが。

https://www.boj.or.jp/research/research_data/gap/gap.pdf
需給ギャップと潜在成長率

エクセルちゃんを見ますと直近3四半期で

    需給ギャップ 資本投入ギャップ 労働投入ギャップ
2022.3Q  -0.14     -0.18     0.04
2022.4Q  -0.37     -0.26     -0.11
2023.1Q  -0.34     -0.46     0.12

ということで昨年4Qから今年の1Qって碌すっぽ改善していない結果になっておりまして、これは益々日銀ちゃんの動かない屁理屈になるわと思う所でございます。


まあしかし何ですな、ここがYCC長期金利ターゲットの運営上の大問題ですけど、長期ターゲット解除しようという状況になると突然緩和姿勢の堅持をしないと行けないので、実は今回の輪番の動かんモードに関しても7月解除を見据えてその前には寧ろ政策修正なんぞ死んでもしないという気概を見せる必要がある、という事なのかも知れませんというのが非常に困る訳で、こいつらやる気がないのか偽装工作なのかが結局7月MPMになってみないと分からんですわな、コマッタモンデ。




〇寝起きでFOMC議事要旨

HTML
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20230614.htm

PDF
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20230614.pdf

寝起きといいつつ上記の駄文を書いていたのでスタートが遅くてすいません。でまあいつものようにインスタント読みおじさんなので『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の政策アクションと政策先行きに関わる部分から読むというその前の前提部分読めよと言われそうな安直読みで。

ということで11〜14パラグラフになります。

・6月利上げの理由についての説明なのですがこの理屈なら6月利上げ7月据え置きの方がロジカルな気がする

『In their consideration of appropriate monetary policy actions at this meeting, participants concurred that while inflation had moderated since the middle of 2022, it remained well above the Committee's longer-run goal of 2 percent. Economic activity had continued to expand at a modest pace. The labor market remained very tight, with robust job gains in recent months and the unemployment rate still low, but there were some signs that supply and demand in the labor market were coming into better balance. The economy was facing headwinds from tighter credit conditions, including higher interest rates, for households and businesses, which would likely weigh on economic activity, hiring, and inflation, al-though the extent of these effect remained uncertain.』

今回の会合における適切な金融政策アクションについて、ということで話がおっぱじまるのですが、あーでもないこーでもないと色々と解説があって、その辺りはこの前の10パラまでの所でああだこうだと認識が示されております(目は泳がせた)。でまあその10パラまでの話のまとめが上記の部分って感じですな。

どないな状況かというと物価は落ち着きの動きもみられているような感じもせんでもないけど水準は目標対比クッソ高い、経済はモデストに拡大してて労働市場はクソ強い、ただ強すぎ状態が徐々にバランスしていくようなサインも見られる、クレジットコンディションがタイト化しているので今後の経済には向かい風が吹いて物価にとってもアゲンスト(目標達成にとってはフォロー)となるでしょう、よー知らんけどな、という感じですな、

『Against this backdrop, and in consideration of the significant cumulative tightening in the stance of monetary policy and the lags with which policy affects economic activity and inflation, almost all participants judged it appropriate or acceptable to maintain the target range for the federal funds rate at 5 to 5-1/4 percent at this meeting.』

「almost all participants」がここまでの引き締め効果が出てきたしこれからもラグをもって効果出て来ることを勘案して今回は据え置きが適切と決定した、ってのはまあ良いんですけど、それだったら6月据え置き7月利上げってのもナンジャソラ感はぬぐえませんな、どういう理屈が展開されるのでしょうか乞うご期待。

『Most of these participants observed that leaving the target range unchanged at this meeting would allow them more time to assess the economy's progress toward the Committee's goals of maximum employment and price stability.』

今回の据え置きで「more time to assess the economy's progress」になるのは分かるんだが、次回会合まで1か月で、その次の会合まで2か月なんだったら6月も利上げして7月据え置いた方がロジカルなんですけどねえ。

『Some participants indicated that they favored raising the target range for the federal funds rate 25 basis points at this meeting or that they could have supported such a proposal. The participants favoring a 25 basis point increase noted that the labor market remained very tight, momentum in economic activity had been stronger than earlier anticipated, and there were few clear signs that inflation was on a path to return to the Committee's 2 percent objective over time.』

「Some participants」は25bpの利上げを好んだそうでして、労働市場がクッソ強いし経済が見込んでいたよりも強いし、物価が2%に向けて落ち着いていくというサインも大して出ていない今の段階なら利上げりた方が良いんでネーノと主張。

『All participants agreed that it was appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings, as described in its previously announced Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet.』

バランスシートのランオフ継続は全員が賛成。


・先行きスタンスの話ですけどまあ結局はスタートが大幅ビハインドから始まった引き締めサイクルなのでロジックが微妙に苦しい

次のパラグラフからは先行きの金融政策スタンスの話です。

『In discussing the policy outlook, all participants continued to anticipate that, with inflation still well above the Committee's 2 percent goal and the labor market remaining very tight, maintaining a restrictive stance for monetary policy would be appropriate to achieve the Committee's objectives.』

物価がクッソ高くて労働市場がクッソタイトな状況においては、先行きも引き締め的な金融政策スタンスの維持が必要、という事に関しては「all participants」ということで全員が一致。

『Almost all participants noted that in their economic projections that they judged that additional increases in the target federal funds rate during 2023 would be appropriate.』

まあSEPのドットプロットがそうですからそうなんですが、「Almost all participants」は年内の追加利上げが必要、という意見になっておる。だったら6月据え置き7月利上げよりも6月利上げ7月据え置きで9月までは様子見の方が実践的に見えるんですけど何なんですかね(まあ市場が6月据え置きを織り込んでしまい、7月は逆に利上げを見せておかないと金融環境が無駄に緩和されて困るから、といのは分かるんですがチグハグというかギクシャク感は否めない)。

『Most participants observed that uncertainty about the outlook for the economy and inflation remained elevated and that additional information would be valuable for considering the appropriate stance of monetary policy.』

先行き分からんからデータ見て判断、という出たとこ勝負の話。

『Many also noted that, after rapidly tightening the stance of monetary policy last year, the Committee had slowed the pace of tightening and that a further moderation in the pace of policy firming was appropriate in order to provide additional time to observe the effects of cumulative tightening and assess their implications for policy. 』

急激な引き締めの後利上げペースを緩やかにしたのは「additional time to observe the effects of cumulative tightening and assess their implications for policy」と偉そうに言っているのですが、単に政策が思いっくそビハインドしてしまったために「rapidly tightening the stance of monetary policy last year」になっただけで、ビハインドしたために色々と無理をしてしまった、という事だけの話なのですが、まあ世の中物は言いようということですな、ガハハハハハ。

『Participants agreed that their policy decisions at every meeting would continue to be based on the totality of incoming information and its implications for the economic outlook as well as the balance of risks. They also emphasized the importance of communicating to the public their data-dependent approach.』

『Most participants observed that postmeeting communications, including the SEP, would help clarify their assessment regarding the stance of monetary policy that is likely to be appropriate to bring inflation down to 2 percent over time.』

先行きの政策は出たとこ勝負。ただしコミュニケーションは物価2%まで落ち着かせることが大正義、というのを貫かないといけませんなあ、という話になっております。


・リスク認識の所ですが最初にアップサイドリスクの話があるんですがダウンサイドリスクをぶぶ漬け話法付きで結構紹介していますね

次のパラグラフです、

『Participants also discussed several risk-management considerations that could bear on future policy decisions.』

ほうほうリスクマネジメントコンシダレーションとな。

『Almost all participants stated that, with inflation still well above the Committee's longer-run goal and the labor market remaining tight, upside risks to the inflation outlook or the possibility that persistently high inflation might cause inflation expectations to become unanchored remained key factors shaping the policy outlook.』

「Almost all participants」は物価のアップサイドリスクと物価水準が高いままのせいで起こるインフレ期待の上方シフトが重要なリスクである、と仰せです。どっかの中央銀行のスットコドッコイに爪の垢でも煎じて飲ませたいですね。

『Even though economic activity had been resilient recently and that the labor market remained strong, some participants commented that there continued to be downside risks to economic growth and upside risks to unemployment.』

「some participants」は経済成長のダウンサイドと失業率の上昇リスクを指摘している、のは良いんですけど何でこれわざわざその前の所に「Even though economic activity had been resilient recently and that the labor market remained strong」って入れてるんだよ編集者のイヤミかよとおもってしまう程度にアタクシの性格は悪い。

『Despite the receding of the stresses in the banking sector, some participants commented that it would be important to monitor whether developments in the banking sector lead to further tightening of credit conditions and weigh on economic activity.』

これまた頭に「Despite the receding of the stresses in the banking sector」とイヤミったらしく(個人の感想です)入っているのですが、「some participants」は金融機関のストレスから来る金融環境のタイト化をリスクと指摘。

『Some participants noted concerns about the potential risks stemming from weakness in commercial real estate.』

でもって最後のは余計なイヤミ文言無しのストレートで「Some participants」が商業用不動産市況の弱さからくるリスクについて指摘した、と書いてリスク認識の話はおしまいでして、人数が全然違うのですけど、下振れの話を指摘した件を幾つも紹介しているのは微妙な両建て感が漂うなあと個人の感想ですが思いました。


・最後は債務上限問題に絡む短期市場のテクニカルなお話でした

最後のパラグラフになります。

『A number of participants observed that the resolution of the federal government debt limit had removed one source of significant uncertainty for the economic outlook.』

おーーーーーー。債務上限問題かー。

『A few participants noted that there could be some upward pressure on money market rates in the near term as the Treasury issued more bills to meet expenditures and return the balance in the TGA to the Treasury's preferred level. Those participants observed that upward pressure on money market rates relative to the rate offered on the ON RRP facility could lead to a decline in usage of the facility.』

債務上限問題に関連してビルの発行が一時的に増える問題に関してマネーマーケット金利への影響の話をしているんですが、まあ確かに一時的にそれは影響あるんですけど、この辺りの話って所詮はテンポラリーな話で、別にそれによって破壊的な短期金利の上昇とか機能不全が起きる話では無かったらそこまで気にしなくて良いと思うのdすけどね。


・・・・・・・ということで、結局のところ6月停止、7月再利上げという猫の目調整になってしまう意味については合理的な説明がないまま議事要旨は終わってしまっていますし、そもそもここのパートに関してもその前段も併せて割とあっさり味に仕立てているなあという感じをアタクシは受けましたでございます、はい。





2023/07/05

お題「短観私家版チェック:まあ強いと思いますけど企業の物価の所を見て鬼の首を取ったように・・・・・・・」

あらあらまあまあ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230704/k10014118201000.html
ヘルパンギーナ 過去10年で最多 子どもに広がる感染症流行続く
2023年7月4日 18時38分

お大事に・・・・・・・・・

〇出遅れましたが短観私家版チェックです

ちなみに短観ちゃんというのは
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/zenyo/2021/all2306.htm
全国企業短期経済観測調査(短観)(2023年6月調査全容)

というのがあって、こっちでは物凄く細かく見れるので、真の達人はこれを分析するのでありますが、頭も弱いし数字にも弱いし生業は何だかんだとあるというアタクシは中々こっちのデータをまじまじと見て分析するとかできませんわ。

ということでいつものこれである。
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2306.pdf(今回)
短観(概要)―2023年6月― 
 第197回  全国企業短期経済観測調査  

前回はこちら
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2303.pdf(前回)


・企業の販売価格見通し:これは日銀ちゃん「様子見地蔵」の良い言い訳ができましたな

今回大体最初に話題になったのは「企業の物価見通し」なのですが、日銀ちゃんが延々と力強く「2%達成しません」を連呼して「年度後半から物価は2%割り込む」とインフレ期待の定着を削ぐ発言を繰り返した効果がやっと表れたようで(棒読み)、企業の販売価格見通しがようやく下がりましたね!!!!!!!やったね!!!!!!!

こちらは前回書いたものに今回分をのっけてみますね。

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 12月:1.2%→3月:2.1%→6月:2.9%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.3%→6月:3.0%
3年後 12月:1.7%→3月:2.7%→6月:3.5%→9月:3.8%→12月:3.8%→3月:4.0%→6月:3.8%
5年後 12月:2.3%→3月:3.2%→6月:4.0%→9月:4.2%→12月:4.3%→3月:4.6%→6月:4.4%

大 企 業 製 造 業
1年後 12月:1.1%→3月:1.9%→6月:2.7%→9月:3.2%→12月:3.0%→3月:2.9%→6月:2.5%
3年後 12月:0.7%→3月:1.8%→6月:2.5%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.2%→6月:2.8%
5年後 12月:0.8%→3月:1.7%→6月:2.5%→9月:3.2%→12月:3.1%→3月:3.5%→6月:3.0%


大 企 業 非製造業
1年後 12月:0.7%→3月:1.1%→6月:1.5%→9月:1.9%→12月:2.1%→3月:2.4%→6月:2.1%
3年後 12月:1.1%→3月:1.6%→6月:2.2%→9月:2.4%→12月:2.6%→3月:3.0%→6月:2.8%
5年後 12月:1.7%→3月:2.2%→6月:2.6%→9月:2.8%→12月:2.9%→3月:3.4%→6月:3.2%

・・・・・・いやまあこういうの何とかストとかベンダーとかそうなんですが、「前回から下がった」ってのを強調するんですけど、こんなのどっからどう見たって水準そのものは高いままなんでして、こういのは普通「ノルムの変化」って言わないんですかねえと思う訳ですけど、どうせ経済学者なのに自分に都合の良いデータをチェリーピッキングする夜の帝王植田日銀総裁様におかれましては、「前回対比で企業の価格設定行動に下げ傾向がみられる!やっぱり年度後半は物価上昇率が2%割れの流れだ!!!」とか言い出して7月展望の物価見通しで2024年度を2%割れの数値で出してくるに100ラジャンといった所ですな。


・企業の物価全般見通しも順調にあがっております(全体もそうですがこちらは中小企業を)

物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 12月:1.1%→3月:1.8%→6月:2.4%→9月:2.6%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:2.6%
3年後 12月:1.3%→3月:1.6%→6月:2.0%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.2%
5年後 12月:1.4%→3月:1.6%→6月:1.9%→9月:2.0%→12月:2.0%→3月:2.1%→6月:2.1%

中小企業 製 造 業
1年後 12月:1.5%→3月:2.2%→6月:2.8%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.2%→6月:2.9%
3年後 12月:1.5%→3月:1.9%→6月:2.3%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.4%
5年後 12月:1.6%→3月:1.9%→6月:2.2%→9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.3%→6月:2.3%

中小企業 非製造業
1年後 12月:1.3%→3月:2.0%→6月:2.5%→9月:2.7%→12月:2.8%→3月:3.0%→6月:2.8%
3年後 12月:1.4%→3月:1.8%→6月:2.2%→9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%
5年後 12月:1.5%→3月:1.8%→6月:2.0%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%

(自分用備忘:中小企業非製造業12月と3月に前回転記間違いありますた)

えーっとですな、これ見ますと確かに前回よりも下がっているのですが、ゆうて長期の部分の期待インフレは全然変わっていませんし、5年後のところは下がっていませんし、これは単純に手前で物価や価格が引きあがっている分で下駄をはいているから下駄分が下がっただけの話で、全体的に物価上昇を見るムーブは定着、ってことになっていると思うのですが、まあどうせ屁理屈植田のことですから鬼の首を取ったように手前の見通しが下がったのをネタにするんだと思います。

ちなみに前回3月短観の時にアタクシこのような事をかいておりまして(もうちょっと悪態は長かったのですが)、

(4月4日に書いたアタクシの駄文より)
でまあ最近はこの短観の企業物価アンケートの話すら極力触れないようにしているという見苦しいムーブを続けているのですが、とにかく今回の短観を見ると企業の価格設定や物価見通しが十分に強く推移する中で、なにがどうなると今年度半ばから物価の伸び率が急減するのか、(ついでに言えば月末に出ていた東京都区部CPIだって昨日ネタにしたように十分に強い内容が続いていて、物価の伸びが大失速する、という理由を説明する方が難しくないですか????と思うのだが)黒田様に阿った物価見通しをいつまでお前ら出す積りだよこのスットコドッコイがという風に思う訳ですが、今月末の展望レポートがとにかく今から楽しみでありまして、展望レポートでの鮫島伝次郎ムーブが起きるか起きないか楽しみにしたいです(陰湿)。
(ここまで3月短観の企業物価見通しを見て書いた悪態)

いやーしかしこの時は植田先生に期待してたから、当然のように4月の展望レポートで今までの忖度物価見通し(あれが忖度のインチキじゃなくて真面目に分析した結果だったら救いようが無いレベルの無能)は治るものだと思っていたら、どっからどう見ても強いネタが1月短観以降バンバン出ているのにもかかわらず、寧ろ黒ちゃんの時よりも強化されたインチキになっていた、という実績がありますので、何かこの短観を受けて鬼の首を取ったように物価上昇率が下がるという見通しの裏付けにして、益々意味の分からないポンポコリンな見通しが出て来るんだろうなあと思います。



・業況判断DI:前回は「製造業が「期待外れ」の連発で非製造業は「期待以上」」だったのですが今回はつえええええええ

         (3月短観)      (6月短観)
         現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業   +1→+3       +5→+9 
製造業中堅企業  ▲5→▲4        0→+2        
製造業中小企業  ▲6→▲4       ▲5→▲1

非製造業大企業  +20→+15     +23→+20
非製造業中堅企業 +14→+8      +17→+12
非製造業中小企業 +8→+3       +11→+7

前回はこんな事書きました。

(4月4日に書いたアタクシの駄文より)
製造業が12月短観時点で期待していた先行き見通しをまるで達成できていなくて、非製造業は12月時点よりも悉く強くなっている、という形になっているのが中々お洒落。非製造業の先行きはまだ今回対比低く出ているのですが、これは基本的に強い時にはありがちな傾向で、これが逆に上向き予想になっているとバブルを心配しないといけないというのが基本仕様なので、まあ非製造業が強い訳でして、サービス価格ガーとかいう言い訳はそろそろ通用しない(多分最後は日銀「帰属家賃が上がらんので物価が上がらん」と言い出して「家賃が上昇すべきとか庶民イジメにも程がある」とメディアに叩かれるに100ペリカと思ったがよく考えたらもう黒田はいなくなるのでありました)のですがどうしましょうかねえ。
(ここまで3月短観の業況判断を見て書いた駄文)

今回ってアタクシ的にすごいのが2ポイントあって、製造業中小以外の全カテゴリーで「前回の予想以上の数字が出ている」というのがあるのと、製造業の先行き見通しが「現状から改善」になっている事です。上でもかいてますけれども、短観のこの辺の数字だけはダラダラと見続けている不肖このアタクシの経験値分析もどきによりますと、基本的に現状判断がそこそこ強い場合は先行きの見通しが控えめに出て来る、というのが短観業況判断DIの仕様になっていまして(今回の非製造業を見ればお分かりになるかと)製造業ちゃんの方が3月短観で「前回対比期待外れ」だったのに対して先行きはちょっと改善してくれないかな〜って感じになっていたものが、6月短観ではそれ以上に改善して(除く中小)先行きも行けるじゃん!!ってなってるのはかなりの改善だな、と思いましたがどうでございましょうかしら。



・販売価格判断
        (3月短観)       (6月短観)
        現状→6月予測      現状→9月予測
製造業大企業  +37→+34       +34→+29
製造業中小企業 +37→+42       +36→+32

非製造業大企業  +29→+27      +28→+25
非製造業中小企業 +27→+34      +27→+30

まあアレです、ここもさっき申し上げたように年度代わりのところで結構価格改定起きてた感は強いので、いったん落ち着いている訳ですが、よく見たら非製造業大企業とか予測対比上振れだし、これが価格転嫁の落ち着きを示す物なのかというとどうなんでしょうね。寧ろ国内で価格転嫁が循環しだしているんじゃないかとは思うんですけど
さてどうなのやら。


・仕入価格判断
        (3月短観)       (6月短観)
        現状→6月予測      現状→9月予測
製造業大企業  +60→+52      +52→+44
製造業中小企業 +72→+69      +66→+58

非製造業大企業  +48→+44     +44→+42
非製造業中小企業 +60→+62     +57→+57

前回こんなこと書きました。

(4月4日に書いたアタクシの駄文より)
何気に製造業中心に仕入価格判断下がり気味で、輸入価格の問題と電力等のコストの問題あるのかなとは思ったけど、こっちはこれでも販売価格はちゃっかり強気なのは、賃金の問題とかもあるでしょうけどまあ悪い話じゃないよねと思いましたです。
(ここまで3月短観の仕入価格判断を見て書いた駄文)

製造業の仕入価格判断が下がっているのに対して非製造業の仕入価格判断ってあんまり下がっていなくて、まあ短観の先行き数値自体がそこまで当てになるか問題はありますけど、この調子だと仕入価格判断(もさっきの販売価格判断もそうですけど)製造業の価格上昇よりも非製造業の価格上昇の方が強くなって来るような傾向を示している内容になっていると思う訳で、これって「コストプッシュによる価格転嫁が一巡したら物価上昇は収まってしまって2%割れてしまいますわオホホホホホ」という話とは違って、セカンドラウンドエフェクトからの内生的物価上昇サイクルにバトンタッチしてませんかねという話になりませんですかね。

もちろん、このサイクルを大事にしたいから金融緩和を継続、という理屈は分かるのですが、何もその際にマイナス金利だのYCCだのLSAPだのというようなデフレ対応のキチガイ金融緩和を継続する必要ってどこにあるんですか??????という話を問いたいのですが、なんかもう今の植田日銀の理屈だと、YCC解除がマイナス金利解除から政策金利を中立水準(またはそれ以上)に引き上げる一連の流れというような感じの説明になっておりまして、いやそうじゃなくて「緩和の程度を修正」って選択肢は無いのでしょうか何で極端から極端に振れる話(しかも目の前で欧米がそれやって泡吹いているのが見えてるのに)をするのか、まあ植田さんはじめとしてあのポンコツどもの脳がどういう構造になっているのかちょっと見せて頂きたいと思います。

でまあ田村さん(もしかしたらロイターインタビューの塩梅だと氷見野さんも)はその中で「YCCは分離してとっとと解除すべき」ということで、YCC解除と金融政策のノーマライゼーションというか中立化に関して明確な分離案を唱えているのですけれども、植田さんの理屈だとノーマライゼーションまでが一体になってしまっているので、マイナス金利とYCCを引っ張るだけ引っ張って、急速な円安や全然下がらん物価による特に中間所得層以下の預貯金の毀損や実質所得の低下によって日銀が怨嗟の的になって植田総裁の頭髪が全部抜け落ちた挙句に急に全部解除で一気に利上げ、みたいな無茶苦茶政策が発生する流れになる訳で、もうちょっとまともな落としどころを考えろやとは思うのでした。まさか5年間何もしないで逃げ切る気なのか植田のヤローは。


・・・・・おっとつい興奮して悪態が、いかんいかん(あんまりいかんと思ってない)。



・そこで問題は想定為替レートですわ奥様

『 (参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(全規模・全産業)』ってのがありますわな。

(3月短観)       
ドル円:上期 131.81 下期 131.62
ユロ円:上期 138.34 下期 138.23

(6月短観)
ドル円:上期 132.60 下期 132.27
ユロ円:上期 140.28 下期 139.95

・・・・・・・なんか今の水準と合っていない気がしますし、これで7月現状維持音頭で「物価の上振れの場合のリスクの方が小さい音頭」を踊りだして秋に向けて為替が更に円安になったら色々な前提が変わってしまうという楽しい(楽しくないけど)事態になりまして、植田総裁の頭髪以下同文。



・雇用判断DI・・・・・は相変わらずの強さ

        (3月短観)      (6月短観)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   ▲14→▲14     ▲13→▲15
製造業中堅企業  ▲21→▲23     ▲21→▲24
製造業中小企業  ▲24→▲26     ▲21→▲26

非製造業大企業   ▲33→▲33    ▲34→▲34
非製造業中堅企業  ▲39→▲42    ▲38→▲42
非製造業中小企業  ▲43→▲46    ▲43→▲48

前回もこの数字業況判断DIが製造業で「期待外れ」モードだったのに強いですなあとか書いたんですが、雇用判断の方は水準が相変わらず強いという感じですが、今回は概ね前回のコピーみたいな感じになっているので(年度替わり要因一巡の影響もあるのかもしれませんが)まあ強いのは変わらん、という感じですかしら、
よー知らんけど。


・需給判断の所が謎なんですよね

国内需給判断
        (3月短観)      (6月短観)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   ▲4→▲5        ▲9→▲7
製造業中小企業 ▲14→▲15      ▲18→▲16

非製造業大企業  ▲5→▲6        ▲5→▲6
非製造業中小企業 ▲9→▲112      ▲9→▲11


海外需給判断
        (3月短観)      (6月短観)
        現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業   0→0         ▲6→▲3
製造業中小企業 ▲9→▲9       ▲13→▲4


需給判断のDIを見るとこれ前回対比で悪化していて、業況判断との整合性が取れていないのですよね。まあ無理矢理解釈すると価格改定によって業況は良くなっているんだけど価格改定で需要はちょっと悪化、でもこの程度なら価格改定の方で業況的には全然楽勝で打ち返しておりますわガハハハハってなもんなのかね。よーわからん。


製商品在庫水準判断
      (3月短観)  (6月短観)
        現状      現状
製造業大企業  +18      +20
製造業中小企業 +16      +18


製商品流通在庫水準判断
      (3月短観)  (6月短観)
        現状      現状
製造業大企業  +8      +10
製造業中小企業 +11     +14


在庫水準に関してもこれ前回短観でも上昇(製品も流通在庫も)していたんですけど、今回も上昇しております。これをですね「需要が落ちている中で在庫が増えているのでアカン」とみればそうなんですけど、ややアクロバットかもしれないけど「インフレノルムになって来ると、多少在庫を持っていても陳腐化しない限りにおいて在庫価値が上昇する訳だから在庫持ってても無問題」というムーブになってくる、とかそういう感じなのかというアクロバット解釈をしてみるのも一興。


・設備投資計画がつえええええええええええええ

皆さまご案内の通りかと思いますがアタクシの備忘メモなので。

13ページの『▽設備投資額(含む土地投資額)の足取り』ですが、グラフをサイトに磔刑にするスキルは(長年やってて)全くございませんので(いやまあ画像貼り付けすりゃ良さそうなのは分かるけど無暗にそういうことはしないというのがアタクシの仕様なので)グラフを見てちょんまげというかんじですが、これがまたつええの何のということで、つえーつえー言ってるとツェツェバエが飛んでくるんじゃないか(来ません)という勢いの強さでありますな。いやーこの勢いは来とる。


ということで、全般的には強いのとインフレノルムの定着っぽいサムシングが見られるように思いましたが、どうせ何のかんの理屈を捏ねてこの短観を見通しの大幅修正や政策修正につなげるようなことはしない、に1万ドラクマといった所でございますな、うんうん。


本日はこの辺で勘弁。






2023/07/04

お題「本日は短観私家版分析の日ですが予定を変更して日銀OBの方と氷見野さんの情報発信をネタにしますです」

何ちゅうかですね、こういう事故って昭和ではちょくちょく起きてた印象が残っているのですが、昭和に逆行中なんですかねえ。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230703/k10014117031000.html
東京 新橋の飲食店で爆発 3人重傷「午前中からガスのにおい」
2023年7月3日 22時46分

〇山口廣秀さんと山本謙三さんがYCCの早期修正を説くの巻

・山口廣秀さんダイヤモンドインタビュー記事

https://diamond.jp/articles/-/325428
日銀は無駄球を打ち過ぎた」元副総裁の山口廣秀氏が語る異次元緩和と物価上昇
山口廣秀・日銀元副総裁、日興リサーチセンター理事長インタビュー(前編)

ダイヤモンド編集部 竹田孝洋:編集委員
政策・マーケット 政策・マーケットラボ
2023.7.3 5:00 有料会員限定

ということえ有料会員限定になっているので中身は会員じゃないと読めませんけど、公開されている部分を見ますと、その次のページは会員じゃないと見れません、って所のページの見出しが、「次のページ 現在の物価上昇は一時的なものではない、輸入インフレから国内のインフレへ」と日銀が外しまくっている物価見通しにバシッと苦言を呈している訳でございますな。

でもってこちら前編があれば後編があるということでして、

https://diamond.jp/articles/-/325527
「日銀はYCC早期廃止を」日銀元副総裁の山口廣秀氏が語る金融政策修正のタイミング
山口廣秀・日銀元副総裁、日興リサーチセンター理事長インタビュー(後編)

ダイヤモンド編集部 竹田孝洋:編集委員
政策・マーケット 政策・マーケットラボ
2023.7.4 5:00 有料会員限定

となっておりまして(後編はさっき公開されたようで)、こちらはもう題名が「日銀はYCC早期廃止を」とそのものズバリですけど、『大きくなる日銀が動かないリスク』という小見出しの所が仰せ御尤もでありましてですな、

『――日本銀行の新執行部が目指すべき金融政策は?』

『新総裁就任後の2回の政策決定会合を見ると、非常に慎重だと受け止めています。過去25年の政策や物価についてのレビューをしつつ、来年の春闘に向けて賃上げが続き、そうした中で物価が上昇していくのかどうかを見極めていきたいという姿勢なので、政策面ではなかなか動きが出にくいのではないかとみています。』(直上URL先ダイヤモンドオンライン記事より、以下同様)

たぶん「他の条件が足元と変わらなければ」日銀は様子見地蔵を続けそうですからねえ。

『しかし、世界の構造変化が日本にも及んできていることを考えると、日銀としても柔軟性と機動性を持って動き出す、「動く政策」が求められるでしょう。現状、政策的に対応しないことに伴うリスクはないのかしっかり検証すべきではないでしょうか。』

『早めに動いて物価が安定的に上昇する芽をつぶしてしまっては元も子もないという考えも分からないわけではありません。しかし、情勢変化に合わせて早い段階で手を打つことは重要です。動かないリスクは大きくなっています。』

『予想インフレ率が現状よりさらに上昇してくると、それを制御するために強力な政策対応が必要になるかもしれません。』

ということで、植田さんが連呼している「拙速に政策修正するリスクの方が、政策対応が遅れて物価が上振れるリスクよりもはるかに大きい」というおじいちゃんそれは2000年台の話しですよ2020年台の今は違うんですよと申しあげたくなるリスク認識に対して「待つことのリスクは時間が経過するほど大きくなるのではないか」という不肖このアタクシですら思ってしまう事に関してバシッと来ておりますな。


・・・・・・・・えー実は昨日ダイヤモンドオンラインにこちらが出ておりますということで、ダイヤモンドオンラインが当然の如く無課金(日経ですら無課金のワイがダイヤモンドに課金する訳が無い)なので、書店に行って大枚税込み850円也をはたいて本誌を査収してまいりまして記事内容全文を拝読しておりますが、こちら有料会員向けのオンライン記事なのでここで記事内容の紹介は控えさせて頂きますが、中々に手厳しい論調ですなと思いました。


・山本謙三さんはもっとそもそもの「2%目標を金科玉条の物として固執するのはイクナイ」論である

https://www.kyinitiative.jp/column_opinion/2023/07/03/post2353/
物価目標2%へのこだわりは「マクナマラの誤謬」
2023.07.03

小見出しだけ引用しますけどね

『市場機能低下の軽視=全体像を見失っている』

『1.米国:平均物価目標2%の失策

平均物価目標2%が招いたFRBの「失策」
FRBに平均物価2%を目指す覚悟はあるか?』

『2.ボルカー、ラジャンの警鐘:低インフレを過度におびえてはならない

物価の安定は「0%」:ボルカー元FRB議長
ラジャン元インド準備銀行総裁:低インフレをおびえるべきではない』

『3.日銀は早期に金融の正常化に着手を

FRB「平均物価目標2%」以上に高い
日銀の物価目標半永久的な2%達成の可否を短期間で見極められるか
政策変更を先送りするほど、市場機能の低下が進む』

ということでだいたい内容はお察しできるかと存じますが、詳しくは上記URL先へどうぞということなのですが、こちらのヤマケンさんの論評見て思ったのは、やはり先般のラジャンのアレって著者がラジャンだけに中央銀行業界(?)に与える影響ってのは想像以上に大きかったんだなーと思う次第なので、改めてURLはっておきますね。

https://www.imf.org/en/Publications/fandd/issues/2023/03/Central-Banks-less-is-more-raghuram-rajan
FOR CENTRAL BANKS, LESS IS MORE
RAGHURAM RAJAN
MARCH 2023

IMF日本語版によります邦訳
https://www.imf.org/ja/Publications/fandd/issues/2023/03/Central-Banks-less-is-more-raghuram-rajan
過ぎたるは及ばざるが如し
ラグラム・ラジャン
2023年3月

先般もこちらでネタにしましたように、ECBのフォーラムでIMF筆頭副専務理事のゴピナート氏が非伝統緩和政策の位置づけの見直しが必要というような話をしていましたし、ラジャンのこの論考は重みがあったんだなと改めて思いますし、賢明なる植田先生がラジャンのこのお話の意味するところを分からない訳がない(あと氷見野さんと内田さんと田村さんは分かると思いますけどね、その他の5台設置されている賛成マシーンポンポコリンは知らん)のでありまして、はてさて7月MPM、何もしないで物価見通しだけはインチキ変更をして(先日も申し上げましたが、7月に出て来る物価見通しの中央値は「23年度+2.3%、24年度+1.8%、25年度+1.6%」と予想していて結構自信がありますわよ)お茶を濁しているだけで良いのでしょうか。とまあそんな話になるかと言いますとどうかは知らんけど。


あと、ヤマケンさんの話にもありますが、「平均物価ターゲット」って価格水準目標と同様に一時流行した話ではあるのですけど、かつてドナルド・コーン副議長が「そういうのは机上の空論」とマッコウクジラで唐竹割りしておりましたが、結局ドン・コーンは正しかったということが示されている事ももっと注目されるべき(中央銀行業界では実は注目されているんでしょうけど)だと思いますです、はい。



〇氷見野副総裁のロイターインタビューがあったのを失念してましたすいませんすいません

金曜日に出ていたんですけどね。

https://jp.reuters.com/article/bankofjapan-himino-idJPKBN2YF171
2023年6月30日12:18 午前
インタビュー:物価高、人手不足など新たな要素の見極めが大事=氷見野日銀副総裁
和田崇彦 木原麗花

『[東京 30日 ロイター] - 日銀の氷見野良三副総裁はロイターのインタビューで、物価高の要因として足元は輸入物価上昇を背景とする価格転嫁が主流だとした上で「人手不足や需要の強さ、企業の価格設定行動の変化といったものの兆しがみられる」と指摘、これらの新しい要素がどれくらいの比率で物価高に効いているのかを見極めることが大事だと語った。現状では金融緩和を続けていくのが「とるべき道だ」との考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

まあこれわざとこういう書き方していると思うのですが、「金融緩和を続ける」というのと「YCC+QQE+マイナス金利を続ける」っての一対一対応じゃないので、本当はライターの皆様におかれましては必ず「現在の」なのか「広義の」なのかを分かるように掻いて欲しいんですけど、リードの部分で書いてしまうとその後読んでもらえずPV稼げない問題があるのは合点承知の介なんでまあね。

『氷見野副総裁が報道機関の単独インタビューに応じるのは3月の就任以来、初めて。』

はい。

『日銀は消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の対前年比伸び率について「今年度半ばにかけてプラス幅を縮小していく」としているが、7月の金融政策決定会合ではこのシナリオを修正するかが焦点の1つ。氷見野副総裁は物価について「これから出てくるデータをよく見極めていきたい」とし、今後発表されるCPIや日銀短観に加え、地域の企業経営者などの声を聞く機会となる日銀支店長会議なども参考にしたいと話した。』

ということで、植田さんの黒ちゃんの生霊が憑依しているのではないかと思う位に頑なに「下振れリスクが大きい」「待つリスクは小さい」の連呼とは一味違うテイストがありますな。

『日銀は4月以降、金融政策の先行きについて「内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していく」としている。』

あの声明文英語版の思わせぶりは何だったのかと小一時間問い詰めたいですよね。とおもったら氷見野さん、

『物価に影響を及ぼす為替や長期金利の変動が大きくなった場合、「機動的な対応」を取ることになるのかとの質問に氷見野副総裁は「市場のもたらすメッセージは注意深く読み解いていかなければならない」と述べつつも、政策対応は「経済・物価・金融情勢全体のメインシナリオとリスクシナリオの両方を考えて総合的に判断していくことになる」と話した。』

うーん謎。一問一答もありまして、

https://jp.reuters.com/article/boj-himino-interview-idJPKBN2YF175
2023年6月30日12:18 午前
氷見野日銀副総裁インタビューの一問一答
ロイター編集

『――物価の現状や先行きについて。

「最近の消費者物価指数を見てみると、割と強めに出ている。生活実感としても、食品が特に上がっているという印象だったのが、最近は身の回りの色々なものに広がっていると感じている人が多いのではないか」

「基本的には輸入物価の上昇の転嫁が時間を掛けて広がっていると受け止めている。では本当に他の要因がないかと言われれば、人手不足や需要の強さ、企業の価格設定行動の変化といったものの兆しがみられる。輸入物価の上昇の転嫁の部分と、そうした新しい要素とがどれくらいの比率で効いているのかを見極めていくことが大事だ」

「価格転嫁中心の物価上昇だという見方を見直すところまでは行っていないが、これから出てくるデータをよく見極めていきたい」』(上記URL先ロイター記事より、以下同様)

「価格転嫁中心の物価上昇だという見方を見直すところまでは行っていないが、これから出てくるデータをよく見極めていきたい」とか割と含みを持たせていると見るべきなのかどうなのか。


『――今年度半ばにかけてコアCPIの伸び率が縮小するとの見方は変わらないか。

「輸入物価だけ(による上昇)ではないが、私自身は他の要素の影響度合いをきちんと見極められる状態にはまだ至っていない」』

これも植田さんの口から出ると、一生見極める気が無いようにしか聞こえない(見えない)のですけれども、氷見野さんの場合どっちなんでしょうかねえ・・・・・・・・・・

『――2%物価目標の持続的・安定的な達成に近づいているか。

「民間のエコノミストの予測の中心値を見ると、足元は日銀より強いが、先行きについてはどんどん下がっていって1%になって戻らない、というのがコンセンサスとなっている。輸入価格上昇の転嫁の要素と、それ以外の人手不足などの要素がどれくらいなのかを見極めていくことが大事になってくる」』

これさあ、ESPフォーキャストっていうポンコツ何とかストの集計だけど、正直あんなもん見てポジション取ったり事業計画立ててねえろ(何か言われたときのエクスキューズ用には使えるが)という話だし、日銀にしてもポンコツ何とかスト(そういや某元日銀審議委員が同様に物価見通し外しまくっているのに相変わらず物価がクッソ下がる話を都区部CPI見てドヤ顔で出してて笑ったが)にしても、従来のコロナ前の時の延長線上で物事考えているからそういう見通しになるのであって、その「コロナ前の延長線上」での考えに穴があった、というのを欧米がまさにやってしまってその収拾に追われているのに、相変わらず何とかストの皆さんは従来の延長線上で(確かに数理モデル回して予想すると従来の延長で計算することになってしまうんだけど、そこに鉛筆舐め舐めするのがプロとしての経験値であり付加価値なんじゃないかと思うんですけどねえ)考えておられるので、まあ日銀公式もこういう話をする訳です。

あとですね、このESPフォーキャストを持ち出すのは(まあ直ぐにお分かりだとは思うのですが)日銀の物価見通しが外れまくっている事の言い訳に使っているという毎度おなじみチェリーピッキング手法な訳でして、別に隣の車が信号無視したら自分も信号無視して良いという言い訳にはならん筈なのですが、「民間エコノミストだってこういう予想なんだから我々の予想が間違っていて無能とか言われる筋合いはない」という無能の隠れ蓑として説明をしているというのが日銀いつもの浅ましい言い訳クオリティで見苦しいからこの説明マジで止めた方が良いと思うんですけどね。「我々はこういう風に分析した結果としてこういう見通しをしている」とバシッと言えばいいのに「民間エコノミストガー」とか言い出すのが実に情けない。


でまあ少しすっ飛ばして、

『――当面は今の緩和を粘り強く続ける姿勢か。

「もちろん経済・物価・金融情勢を見ながら機動的に判断していくわけだが、現在の状態では金融緩和を続けていくというのがとるべき道だと考えている」』

うーんこれはどういうこと、という感じですけど、「機動的に判断していくわけだが」と言いながら「金融緩和を続けていく」というのはどっちなんですかという所で、これ本来でしたら「今おっしゃられた金融緩和というのは今の政策枠組みなのかそれとも広い意味で緩和的な金融環境を維持するという意味なのか」ってサラトイして詰めて欲しいんですよね。その時に明示的に「現在の枠組み」というのか、それとも(当然ながら現在の枠組み以外でもあり、とは言わない筈なので)「枠組み云々については現時点で何か申し上げることは無い」と逃げるかによってスタンスがもうちょっと見えて来るんですよねーーーーーー。


ちょっと順序戻りますけど、その前の所で、

『――金融政策運営に当たり、日銀は「経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応」としている。物価に影響を及ぼす為替や長期金利の変動が大きくなった場合、機動的な対応を取ることになるのか。

「市場のもたらすメッセージは注意深く読み解いていかなければならない。市場の変動が経済に与える影響はしっかり分析していかなければならない。その上でどう政策をやっていくかということなると、経済・物価・金融情勢全体のメインシナリオとリスクシナリオの両方を考えて総合的に判断していくことになる」』

と禅問答が行われて、その流れで上記の話になっていまして、氷見野さんの説明って全体的に植田さんのスーパー動かんモードとはちょっと違うニュアンスは感じられない事もないし、氷見野さんの理屈だとYCCの長期だけ外してマイナス金利は維持する、という形で対処するのもあり(植田さんの理屈だと恐らくYCC解除とマイナス金利撤廃がほぼ同時くらいに来るようなタイミングまでYCCを引っ張ることになるのでだいぶニュアンスが異なる)ということで、うーんまあ副総裁だからそんなにやんちゃな事は言えないというのも勘案すると、その中でも割と柔軟性のある発言じゃないかなーと思うのでありました、



ってスイマセン何時もの短観私家版チェックとかポンポコリンの金懇ネタとか全部飛ばしてしまいました。





2023/07/03

お題「都区部CPI/オペ紙変化なしかよ/今さらですが安達審議委員鹿児島金懇(その1)」

ECBのパネルなんですけど、総てのイベントに関する録画の小分け版が、
https://www.ecb.europa.eu/pub/conferences/html/20230626_ecb_forum_on_central_banking.en.html
ECB Forum on Central Banking 2023

の中に動画埋め込みで入っていまして、ポリシーパネルちゃんはモチのロンで上記URL先の埋め込みから行けるのですが、ようつべのECBチャンネルですと、

https://www.youtube.com/watch?v=3GEqcoNbXj0
ECB Forum on Central Banking - Policy Panel
(例によって直リンはしません)

となります。案の定動画時間1時間25分11秒ありました。


〇6月東京都区部CPIは市場事前予想よりは強くないけど結局前月比はプラスなんだよなー

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-t.html
2020年基準 消費者物価指数 東京都区部 2023年(令和5年)6月分(中旬速報値)
2023年6月30日公表

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消費者物価指数
東京都区部 2023年(令和5年)6月分(中旬速報値)

◎ 概 況
(1) 総合指数は2020年を100として105.0
前年同月比は3.1%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇

(2) 生鮮食品を除く総合指数は104.8
前年同月比は3.2%の上昇 前月比(季節調整値)は0.3%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は104.3
前年同月比は3.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇

まあ前年比では総合で3.3%くらいの上昇予想だったようなので、市場予想よりは強くないって話ではあるのですが、上記にあるように季節調整前月比は6月も上昇しているし、よく見たら総合って2020年基準から既に5%も上昇している訳でそりゃ財布が以下自粛になるわなと思いました。

『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』

っての見たって、コアコアはこれ何か月連続だっけという前月比プラスが延々と続いていますし、コアだって何げに前月比+0.3%単純に12倍すれば+3.6%なんですけどねーというお数字でいらっしゃいまして、挙句にここに7月になるとこの前電力料金がど〜したこ〜したというお葉書が来たものが反映されるわけでありますから、2023年度平均コアCPI+1.7%、コアコアCPI+2.5%とは一体全体何のギャグなのかという事を小一時間問い詰めたくなって参ります。

[総合指数の前年同月比に寄与した主な内訳]
10大費目 中分類、前年同月比(寄与度) 品 目、前年同月比(寄与度)

『上昇』のうち10大項目『食料』の内訳は毎度見ていてアイヤーとなりますな。

調理食品 9.7%(0.34) ・・・・・ すし(弁当)9.6%(0.03) など
外食 6.2%(0.33) ・・・・・ ハンバーガー(外食)17.0%(0.05) など
菓子類 10.7%(0.23) ・・・・・ アイスクリーム 12.5%(0.04) など
乳卵類 17.4%(0.20) ・・・・・ 鶏卵 33.2%(0.07) など
穀類 8.4%(0.15) ・・・・・ あんパン 12.0%(0.04) など
油脂・調味料 12.8%(0.14) ・・・・・ 食用油 21.5%(0.03) など
生鮮魚介 11.9%(0.14) ・・・・・ さけ 31.9%(0.06) など
飲料 8.5%(0.12) ・・・・・ 炭酸飲料 18.9%(0.03) など
肉類 4.9%(0.11) ・・・・・ 豚肉(国産品)7.9%(0.04) など

まあ何と申しますか、最近はパンチドランカーとなっていて値段変わっててもああそうですか位の感じになっていて、これがノルムの変化というものなのか(なんか違う気がする)という風情の今日この頃ですが、電力に加えて円安がラグをもって効いてくる筈なので、まあそんな事を考えると短観の想定為替レートも気になるところではありますな。


〇減額しねえのかよ・・・・・・・・・・・・・(オペ紙)

何ちゅうやる気の無さ(ある意味ある気があるんだが)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230630c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2023年7〜9月)
Quarterly Schedule of Outright Purchases of Japanese Government Bonds
(Competitive Auction Method) (July-September 2023)
2023年6月30日
日本銀行金融市場局

ー1年:1500(月1回)
1−3年:3500-6500(月4回)
3−5年:4250-7250(月4回)
5−10年:4750-8750(月4回)
10−25年:1000-5000(月2回)
25年−:500-3500(月2回)
変動利付:発行全銘柄が満期償還しました
物価連動:600(月1回)


前回はこちら、というか3月末に出した4−6の予定表はずーっとこのままでしたが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230530c.pdf(6月予定表)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230331c.pdf(4月予定表)

ー1年:1500(月1回)
1−3年:3500-6500(月4回)
3−5年:4250-7250(月4回)
5−10年:4750-8750(月4回)
10−25年:1000-5000(月2回)
25年−:500-3500(月2回)
変動利付:300(3か月に1回)
物価連動:600(月1回)

とまあそういう訳で、次の四半期もバカスカ買う気満々なのかよいい加減にしろこのスットコドッコイと思う訳でして、金利水準も変わっているのに3月末に出したのと同じ数字で漫然と出し続けて市場の流動性を枯渇させるのがにちぎんのお仕事になっているのですが、こういう馬鹿みたいな買い方をしていると、政策の出口の時に反動が大きくんなるんだから、減らせるときには減らしておけよという話で、少なくともコロナ前の黒田日銀だって買入のペースをホイホイ減らして、うっかりしたら国債保有残高減少って状況まで持って行ってた時期があった訳でして、植田日銀が如何に何も考えていないのか、日本最高の経済学者は物を考える知能が無いのか、と小一時間問い詰めたくなりますな。

まあ一応7月電撃解除のカモフラージュである可能性はバーナンキの頭髪程度には期待している、というか従来の黒田日銀だったら金利が下がってきたら買入ってカジュアルに減らすのが仕様になっていたので、この謎の柔軟性の無さは逆にカモフラージュを疑いたくなる気もなくは無いが、ただまあこんだけやっておいて7月騙し討ち解除したらそれはそれで「何だこの嘘吐き」ということにもなるので、まあ4月に「異次元緩和は物価上昇に一定の効果を発揮しましたが、極端な金融緩和は継続するために無理をすることになって却って緩和政策の持続性を困難にするので」とか何とか黒ちゃんをソフトにディスってYCC解除しておけば良かったのにね、という甚だ
残念な後知恵になる訳でございます。

ま、一応レンジ同じでも買入の減額は可能ですから・・・・・・・(震え声)。


〇どうせ読む価値も無いのでサボっておりました先月のポンコツ金懇ネタ2本あるのでボチボチ見ていきましょう


・安達審議委員鹿児島金懇

だいたいですね、2日連続で金懇やるとか明らかにこんなの無理筋な話でして、審議委員による金懇って基本的に年に2回のペースですから、正副総裁除きで6人いたら毎月実施するというのが筋というもんで、そうすることによって前回決定会合、あるいは前回展望レポートから直近までの情勢のアップデートと、そのアップデートを踏まえた審議委員の見解をしることによって、政策運営のリアクション・ファンクションについても理解していきます、って話だろと思う訳ですよ。

然るに、今回とか連日開催ということで、これは「どうせこの2名はリフレ残党だからバラバラに発言されて都度ネタにされるよりも、まとめて片付けてしまった方が安全」それに翌週にはECBフォーラムあるし直ぐにそっちに注目行くわウッシッシ」という事なのはまあ楽勝で想像できる、というか楽勝で想像できるくらいにここまで露骨なのもかなり強烈だなと思う訳で、そもそも論として日銀の事務方がこの2名に何も期待していない(賛成マシーンとしての期待はあるとおもうが)というのが透けて見えるどころか丸出しになってるというケースも珍しいですし、そんなのに付き合わされる地元政財界金融界の偉い人達カワイソスと思いますけれども、まあそういう場合は行く支店というのも以下割愛。


というのはさて置きまして

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230621a.htm
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
鹿児島県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 安達 誠司
2023年6月21日

10日も熟成させてしまったもんだからHTML版がとっくの昔に出ていて、テキストに引用するのはHTMLからの方が楽なのでHTMLバージョンから引用します。

PDFはこちら
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko230621a1.pdf

・植田さんってもしかしたらリフレ派にも梯子外されだしてるんじゃないですかねえ

『2.経済・物価情勢』の『(2)物価情勢』ですけどね。

『わが国の物価を巡る状況』ってところですけどね。

『次に、物価情勢について、足もとおよび先行きの順にお話しします。

まず、足もとの物価ですが、直近4月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合(コア)が前年比+3.4%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)が同+4.1%となっています(図表5)。このうちコアは、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、直近ピークである1月の前年比+4.2%からプラス幅が縮小しています。一方、コアコアの前年比は、既往の輸入物価上昇に伴う原材料価格等の上昇分を販売価格に転嫁する動きなどを背景に、プラス幅が拡大しています。こうした物価上昇は、私自身がこれまで考えていたよりも速いペースであるとの印象を持っています。』

>私自身がこれまで考えていたよりも速いペースであるとの印象を持っています

おやおや。物価上昇ペースが速いとか言ってますね。まあ日銀大本営の物価見通しがあたおかだからというのもあるのですが、置物一派までこんな事言い出してるのって、世間の風向きによってはうっかりしたら真っ先に梯子外しに掛かるかもしれませんな。


・どこをどう読むとそういうインプリケーションになるのか全くもって意味が分からんのだが

話は続くんですけど、

『この間、予想物価上昇率に目を転じてみると、経済主体によって区々ですが、緩やかに上昇した後、横ばいとなっています(図表6)。このうち家計の予想をみますと、先行きも物価の上昇が続くとみているようです。例えば、日本銀行が4月に公表した「生活意識に関するアンケート調査」(第93回<2023年3月調査>)によれば、1年後の物価の見方に関する項目で、回答者の85.7%が「上がる」と回答1しています。なお、1年前と比べた現在の物価の見方に関する項目では、回答者の94.5%が「上がった」と回答2しており、先行きの物価上昇の勢いは、これまでよりは若干落ち着くとの見方になっています(図表7)。』

『1内訳は「かなり上がる」が33.1%、「少し上がる」が52.6%。
 2内訳は「かなり上がった」が62.8%、「少し上がった」が31.7%。』

?????????

「1年前と比べた現在の物価の見方に関する項目では、回答者の94.5%が「上がった」と回答2しており、」「先行きの物価上昇の勢いは、これまでよりは若干落ち着くとの見方になっています(図表7)。」

って前半と後半の間に論理的な必然性が無いように見えるので図表7を本文の方から真面目に見てみたんですが、そっちも「家計の物価に対する実感・予想」って題名で、「現在の物価を1年前と比べると 」「1年後の物価を現在と比べると」というのが並んでして、1年後の物価について「上がる」はずーっと85%くらいいるし、「かなり上がる」がグラフ見るとジリジリと増えているのに、何で「先行きの物価上昇の勢いは、これまでよりは若干落ち着くとの見方」になるのかさっぱり分からないんですけど。

いやあのですね、例えば1年後の物価の見通しで「上がる」がだいぶ減ってるとか、(別途項目にある)具体的に何%程度上昇すると思うか、の回答が1年とか5年で数値分布として低下している、というようなものを出してくれれば確かに「先行きの物価上昇の勢いは、これまでよりは若干落ち着くとの見方になっています」ってなると思うんですよね。

しかしながら安達大先生、「1年前と比較して上がったと回答した人が無茶苦茶増えた(図表7を見ればわかります)ことが「先行きの物価上昇の勢いは、これまでよりは若干落ち着くとの見方」とい結論を導き出せるのか、もしかしたら安達大先生、1年前と比較して物価が上がったと思った人が多いので、達成感が出た、みたいな謎理論を展開していて、その結論が「先行きの物価上昇の勢いは、これまでよりは若干落ち着くとの見方になっています」となる、とかちょっとどうなっているんだよこの理屈、とのっけから呆れ果ててしまう訳で、なるほどこれではECBフォーラムの直前にもう一人とセット販売でどさくさに紛れて出さないとヤバいわ、と企画局だか政策委員会室だかの慧眼に恐れ入ってしまう次第です。


まあアレですよ、この先の部分で「粘着的な物価」という昨年の今ごろかもうちょっと後(秋になる前)くらいですかねえ、昨年4月に展望出した時に「コアコアが上がらないから基調的な物価は2%行ってない」という屁理屈を出したら早速雲行きが怪しくなってきたので、新しい言い訳として、7月展望から「賃金」の連呼とともに、しらっとこの「粘着的な物価」というお話をおっぱじめだしたんですけれども、この次のコーナーの物価の先行きの所で、思いっきりこの大本営謹製屁理屈の「粘着的な物価」の話を安達さんおっぱじめておりまして、貴方民間のエコノミストの時に粘着的な物価って話をしたことありましたっけってことでまあ実に香ばしいのでございますけれども、そんなのを含めて考えまするに、「予想物価上昇率が上がっている訳ではない」という大本営の屁理屈に沿った事をネタにしようとしたら、結論先にありきで雑に拾った素材で雑な論考をしてしまいました、ってな話なのかなあ(あくまでも個人の妄想です)という所で。



・物価上昇のペースが速すぎると経済に押し下げってお前置物理論何処に逝ったんだよ

という訳で続き。

『こうしたわが国の物価を巡る状況は、長きに亘ってデフレを経験したわが国にとっては、デフレ脱却に向けた動きとしての側面があります。一方で、物価上昇のペースが速過ぎれば、実質所得の下押し圧力など、経済に押し下げ方向の影響を与え得るという側面もあります。後述の金融政策運営を考えるにあたっては、物価を巡るこのような状況変化がもたらす様々な側面を含めて、丁寧に経済・物価情勢を評価して参りたいと思います。』

は?????って感じですが、経済に下押し圧力が掛かるんだったら少なくとも円安ドライブ掛けるような政策スタンスを排除しろよと思うのだが、さっきの微妙な梯子外しテイストと言い、この辺りも微妙な梯子外しテイストがあって、梯子外しテイストと大本営の九官鳥という中々の謎バランスが発生しているのが安達さんの金懇挨拶ですな、というお話ではあります。


・・・・・・・しまった始まったばかりなのに時間が足りない(月曜は月曜だから起動が遅くてどうも事前段取りが足りないとこうなってしまうのですすいませんすいませんすいません)ので明日はバッチリとスカポン金懇ネタを片付けて行こうと思います(スライディング土下座)。