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2023/12/29

お題「植田総裁NHKインタビューは3月か4月って感じでの話になっていますよね」

1月のカレンダーを見てあまりの日程の詰まり方に頭がくらくらしてきましたorz

〇植田総裁NHKインタビューQ&A

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231227/k10014301251000.html
【Q&Aで詳しく】日銀 植田総裁 単独インタビュー
2023年12月27日 19時25分

折角なので読んでみようじゃないですか。というか他の新聞社が書くと有料記事になってしまうのですがここはさすが公共放送ということでありがてえありがてえ。


・おーし今後はアイキャッチ発言して「真意じゃない」って言わない宣言だな

『Q.今月7日の「チャレンジング発言」や、少し前には、新聞社のインタビューに対しての発言で市場が大きく反応することもありましたが、ご自身の発言の真意が伝わらないと感じることもありましたか?』

『A.政策的な意図を強く込めたものではなかったのですが、反応を見て、市場がどういうことを思っているのか、欲しがってるのかなというのは非常によくわかった気がしました。』(上記URL先より、以下同様)

何かこうエラソーなんですよね。大先生だからシャーナイのかもしれませんが、就任当初だかその辺りに共立女子大で「授業が分かりにくいといつも言われていた」と自虐ネタで説明してたけど、根本的にはこの辺りのエラソースタンスが悪かったんじゃないのとは思いましたですわおほほほほほ(個人の偏見です)。

ま、ここまで大口叩いて今度やらかしたらタイーホでしょタイーホ。


・物価上昇がペインという話をすると展望レポートの見通しとバッティングするんですよねーーーー

当然の質問である。

『Q.物価や金融政策のことをうかがいます。日本は物価高といわれる状況が2年ほど続いています。家計の負担が増しているという声も多くある中で、日銀がどうして金融緩和を続けているかという点についてご説明いただけますか。』

『A.ここ8か月、9か月、非常に苦労して説明してきた点です。』

ほう。

『おっしゃるように1年半くらい、インフレ率は日本銀行の目標としている2%を大幅に上回って推移していて、国民に大きな負担をかけたことは大きな問題だと認識してます。』

ほうほう。

『ただ、その主要な原因だった輸入物価上昇の価格転嫁はすでに峠を越えていて、インフレ率自体もピークを越えつつあると私ども認識しています。』

そりゃいいんだがお前ら2024年度だから来年4月から再来年3月までのCPI見通しを年度平均で+2.8%で10月に出さなかったっけという話で、峠を越えてもそのまま猛吹雪吹き晒しの尾根道を歩かされるようなもんなんだが、そっちは大きな問題にならんのかと小一時間問い詰めたい。

『そのなかで、私どもが目指しているのは、賃金と物価が好循環しつつ、緩やかな2%くらいのインフレが持続していく姿です。これが実現していくかどうかについては、まだもうひとつ自信が持てない。』

上に振れてるのを何とかしろという話なのに。

『確度は高くないということで、金融緩和を維持しております。』

ってことだが、金融緩和は物価を上げようって政策で2024年度も+2.8%の物価上昇見通しになっていて、しかも「インフレ率は日本銀行の目標としている2%を大幅に上回って推移していて、国民に大きな負担をかけたことは大きな問題だと認識」しているんだったら何で緩和継続になるの????

いやね、これが2024年度の見通しが+1.5%なんですここから物価は急速に伸びを失うんです、という見通し出してるなら上の説明でも意味はわかるんですが、今の物価が問題だと思っていて、しかも24年度の見通しが2%を大幅に上回って推移するままなのに何で緩和継続するのという話になる訳ですわ。


さらに質問。

『Q.2%にこだわったことで物価上昇への政策対応が遅れてしまっているという認識や葛藤はありませんか?』

早くこの2%にアホみたいに拘る政策止めろやって話で、FEDって基本的にそんなにすぐに利下げとかアタシャ思ってないのですが、あるとしたら「物価2%目標とか言ってるけどまあ別に2.5%だって良いじゃないのそもそも物価統計だって必ずしもすべてを捉えているわけでもないんだし」とか言ってアメリカンらしくアバウトのうちに物価の適正水準を2%より多少上も全然問題ないでっせーとダマテンで物価水準上げちゃうっていうことになると引き締めの撤収が早まる(ただし名目中立金利が上がるので着地点は上がる)んですよね。

『A.今のところ賃金物価の好循環が回り始めてはいるところですが、2%で持続的・安定的にうまく着地するかは確信が持てない状況です。』

ほうほうそうですかそうですか。

『また、2%をオーバーしてどんどん際限なく上がっていくというリスクも高くないと見ています。

焦っているという気持ちはないです。』

とか言ってるのだが、2%をオーバーしているの現実だし、どんどん上がらないにしたって2%越えが見通しの期間も含めれば3年も継続することは問題ではないのかと小一時間問い詰めたい。



・はっきりとした賃上げとは何ぞや

って小見出しにもなっています。

『Q.政策変更の転換のタイミングについて、市場では来年前半にもマイナス金利解除を含む変更があるのではないかという見方がかなり多くなっています。総裁は経団連での講演で政策変更の条件として「はっきりとした賃上げ」と挙げられていましたが、「はっきりとした」ということばを使った意図はなんでしょうか?』

なるほどなるほど。

『A.定量的にここというめどがあるわけではないですが、大ざっぱにいうと、ことしの春と同じか、それを少し上回るくらいの賃上げが決定されると望ましいなという思いはあります。』

はい来ました定量的な目途。

『ただ、賃上げがそうした状況になったかどうかを判断するのに、ひとつひとつの何か特定のデータとかイベントを決め打ちして、そこで判断するというつもりはないです。

当然いろんなデータを見ますし、それに加えてマクロの労働需給の状況とか、あるいはまだデータに現れていない、さまざまな特に中小企業などに関するヒアリングの状況をあわせて判断していければなと賃金のところは考えています。』

と逃げは打ってるけどこんなんもう大手企業の出たら確定じゃんということで、


・基本的にこの言い方はもう3月4月に判断可能という話ですわな

流れるようにこの質問になるのが美しい、てかもう総裁定例会見って1社の質疑応答を延々とやらせて、当番制にして、その代わり質問が下手くそな会社は2度目は無し、という方がエエンチャウノ(超暴論)って思ってしまうわwwwwwwwww

『Q.3月になれば春闘の結果が大企業を中心に出てきます。一方で、中小企業になると4月以降になりますが、そのくらいにデータがそろう可能性があるということでしょうか?』

『A.中小企業が全部そろうのはかなり遅くなると思いますが、もちろんそれを全部待ってから判断するという考え方もあるかもしれません。

けれども、完全に中小企業の賃金データが出たり決定がなされていたりしていなくても、他の中小企業に関する指標ですね、例えば収益が好調である、あるいはそのバックにあるマクロの消費とか投資が、総需要が好調で、これがうまく好循環を生み出すであろうと、そういうことがあればある程度前もっての判断ができるかと思います。』

まあこれは夏まで待たないですよということだし、逆に3月4月が駄目だという話になると夏になるというのもかなり考えにくくなりますね。


・そしてNHKのこの物凄い勢いでの念押しが凄い

『Q.賃金動向の見極めについて、大企業は来年3月ぐらいにわかってきますが、中小企業については、相当慎重にかつ時間をかけてみないとわからないという指摘もありますが。』

『A.賃金のデータを最後まで見ようとすると確認できるのは相当先になります。

ただ、例えば大企業が強かった。

中小企業の賃金データはまだ出ていない状況であっても、中小企業まわりの賃金を決めるような要素、企業収益とかが非常に強く、賃金が期待できるという情勢であれば1つの大きな判断材料になると思います。』

さっきので回答になっていると思いますが、物凄い勢いで念押しをしておりまして、これはもう3月4月の決定会合で判断を先送りするのは許さん、というNHKさんの意気込みが伝わってきますので、まあそこでやらなきゃこれ次のアメリカの利上げサイクルか円安再度の進行(って不幸の香りしかしないが)か物価高に怒った国民が日銀吊るし首ムーブになるかというイベントまでお待ちください、ってなりますね、いやーな予感が漂うけど。

しかしNHK更に念押しするのこええええええええ

『Q.3月の集中回答日は中小企業含めたポイントになるということですね。

A.先ほども言いましたが、特定のイベントで何か全部決まるというわけではないですが、それも含めて大事なイベントはきちんと情報を確認していきたいと思っています。

Q.データを慎重に見ていくということですね。

A.そうですね。

本当に喜ばしい望ましい変化が起こりつつあるのかどうかを見極めていきたいとうことですね。』

これ滅茶苦茶キツイ詰められ方なんで、3月4月の時点で「まだ材料がそろいませんなー」とかノホホンと問題の先送りをするのを許さんって意味なの植田さん分かって回答しているですかねえ。知らんぞマジで。



・でもって1月は無いと

さらにNHKの容赦ない質問は続く。

『Q.「次回・1月の会合までには材料が少ない」と会見でおっしゃっていました。少しスタンスを長めにといいますか、ある程度しっかり見たいという思いもあるんでしょうか?』

『A.そうした可能性もありますし、全然わかりませんが、例えば1月の支店長会議ですごい楽観的な見方を支店長が示される。

そこからかなりの情報が得られるいう可能性もゼロではないと思います。

いまのところそんなに高いとは思っていませんが。』

だいたい現時点でどんなのが来るのかのアウトラインは分かってるでしょ、って思う訳で、それも踏まえて考えたらこう言っておいて1月に「支店長会議で〜」とか言い出すのかなりの冒険になると思うんですけどね。

てか大体からして1月やるき満々だったらもっと前傾姿勢出して地均ししないと1月って営業日少ないんであっという間にMPM来るでという話。



・3月4月と散々詰められたんですがこの質疑が怪しさ満点で

『Q.何をもって2%の好循環の達成となるのか。どんなデータが集まるのがポイントとなるのでしょうか?』

という質問に対して、

『A.賃金と物価の好循環と言っている中で、賃金が上がって物価も上がって、また賃金が上がってというのを何回見れば十分かというのは前もって決めようがない話ではあると思います。』

ちょっとまて何回も見るのか、ということでまあこれ自体は前も言ってましたけどね。

『ただ少なくとも1回、ことし賃金が大きく上がりました。

来年どうなるかを見たいと先ほどから言っています。

同時に好循環ですから、ここまで上がってきた賃金が物価に波及するかどうかというところは、もう少し丁寧に見たいです。』

この理屈だと「賃金が上がったのは見たから物価が上がるのを見たいので様子見地蔵」とかいう最悪のハトハトムーブの余地は思いっきり残してあるわけでして、これ言い出すと一生マイナス金利になってしまうんですから、この馬鹿理屈マジで止めろと思うのですけど、これ言っちゃう辺りが危ないので、話がどっちの方に軸足を置いていくか、というのを注意する必要があります、といってもどうせこの人達は政策変えるときには突如変なもんでも食ったかのような君子ジャガーチェンジムーブをしてくるんですけどね。

『特に賃金から物価ですからサービス価格ですね。

当面どこに注目してるかということで整理すると、来年の春の賃金改定、それからここまでの賃金の動きがサービス価格にどう反映されていくか、この2点になるかと思います。』

でもって、この理屈を前面に押し出すと来年3月4月で判断できない、ということになってしまうので、最後にこういう説明を付けているのがこれまた話のややこしい所でして、「ここまでの賃金の動きがサービス価格にどう反映されていくか」がポイントならば、それは「賃金が上がって物価も上がって、また賃金が上がってというのを何回見れば十分か」も糞も結局1回しか見てねえじゃんという話で、何かもう説明が結構インチキだらけなんですよね。

まあよく言えば「どうとでも動けるようにフリーハンドを確保した」ということになるんですが、ハトハトチキンおじさんの手に掛かるとああでもないこうでもないと言って政策を変更したくないでござると言い続ける理由になってしまうのが何ともかんとも。


・この理屈だと「マイナス金利解除で打ち止め」とは言いにくいですね

マイナス金利解除に関する質疑ですが連続引用しますね。

『Q.マイナス金利の解除となれば2007年以来の利上げという歴史的な転換点となります。来年にその時期が来る可能性は高いのでしょうか?』

『A.それは結論的にはゼロではないと思いますが、私ども経済物価情勢が好転して、賃金・物価の好循環が見通せる状況になることが来年であることを期待はしています。

ただ、さっき申し上げたような、少なくとも、とりあえず2つくらいの判断ポイントがありますし、それに関する不確実性もそこそこあると思いますので、丁寧に確認していきたいと思っております。』

『Q.確認できた際には、その時がくるということですね。

A.それはそうですね。』

『Q.仮に金融政策を転換することになれば、いま行っているさまざまな政策をまとめて変えることになるのでしょうか?

A.一部現状のままでいくという部分もあるかもしれませんが、それも含めて全体を見直すという作業はしたいと思っています。』

とまあそういうことなので、これですと「マイナス金利打ち止め」とはしにくい形になりまして、アタクシがこの前以来申し上げていた「マイナス金利だけ分離して解除」というのはやらなさそうですね。この場合マイナス金利解除が遅れるという大変に遺憾なムーブなのですけど、一方で解除した時にそこで打ち止めという理屈になりにくいんですよね、なぜならこれ2%物価目標達成の判断とマイナス金利解除がリンクした形になっているから。

まあどうせ解除の時に次の利上げの話しとか先ですよヤダーとは言うんでしょうけど、解除時に使うロジックはどっからどう見ても正常化第一歩なので、そら先の話の思惑も出るわって感じじゃないでしょうか。まあアタクシがマイナス金利解除分離論を唱えてたのは、マイナス金利解除を正常化の第一歩にしてしまうと解除と同時に先の利上げを織り込みに行く相場になってしまうので、長期金利大幅上昇の可能性もあるんで、それを避けたいんだったらマイナス金利だけ先行解除して2%判断とは切り離した方がやりやすいんじゃネーノという話なんですね。

然るに、植田総裁の説明するこの理屈でのマイナス金利解除って基本的に大勝利宣言と共にマイナスの解除になるから、必然的に先の政策中立化への先取りがセットになるんで、逆にお前そんなに自信満々なのかよ、とは思ってしまうところでもあるのです、はい。




〇輪番はまあ1月にどの位のオファーになるか次第ではありますが

水曜のオペ紙ですと、

0-1年:1500×1(同じ)
1-3年:3000-6500×4(3500-6500×4)
3-5年:3500-7500×4(4000-7500×4)
5-10年:4000-9000×4(4500-7500×4)
10-25年:1000-5000×3(1000-5000×4)
25-40年:500-3500×2(500-3500×3)
物価連動:600×1(同じ)

ということでしたが、でまあ輪番を適当に置くとどうなるかという話ですが、

直近の買入額と回数ですと、除く1年の年間買入ってこうなるんですよ。

-1y   1,500×1=1,500
1y-3y 3,750×4=15,000
3y-5y 4,250×4=17,000
5y-10y 4,750×4=19,000
10y-25y 1,500×4=6,000
25y-   750×3=2,250
JGBI   600×1=600

除-1yの月買入:59,850
年額換算:718,200


とりあえず中期と長期を250減らして、超長期は回数減った分減らすという攻撃にしてみましょう

-1y   1,500×1=1,500
1y-3y 3,500×4=14,000
3y-5y 4,000×4=16,000
5y-10y 4,500×4=18,000
10y-25y 1,500×3=4,500
25y-   750×2=1,500
JGBI   600×1=600

除-1yの月買入:54,600
年額換算:655,200

12月20日分の保有残高からアタクシが計算した(ので違ってたらゴメンよ)の保有国債償還が、2024年暦年:703,808億円、2025年暦年:710,970億円と、概ね70兆円の償還がある計算になっているようなので、まあ普通に考えたら今回のテーブルを見ると、年間買入を1年未満除くベースで70兆円割りますよ宣言だと思うので、これはオーバーシュート型コミットメントの事実上の骨抜き攻撃(まあコロナ後の時も思いっきりそれをやる勢いでしたけど)ということですわな。

とは言いましても、思い切って全部下限にしたとしてもですね、

-1y   1,500×1=1,500
1y-3y 3,000×4=12,000
3y-5y 3,500×4=14,000
5y-10y 4,000×4=16,000
10y-25y 1,000×3=3,000
25y-   500×2=1,000
JGBI   600×1=600

除-1yの月買入:46,600
年額換算:559,200

って年額56兆も買うのかよエエカゲンニセエという買入な訳でして、前途遼遠とはまさにこのこと・・・・・・・


〇お正月読書室(全然仕事と関係ない本)

・「ゲーセン戦記 ミカド店長が見たアーゲー度ゲームの半世紀」(著:池田稔、聞き手・構成:ナカガワヒロユキ)中公新書クラレ

ええすいません全然仕事と関係ないんですけど。高田馬場と池袋でゲーセンを3店舗展開しているゲーセンミカドの経営者兼店長の池田氏によるアーケードゲームの歴史を氏のアーケードゲーム業界での歴史とともに振り返り、ゲーセン業界の今後についての考察もある、というどう見てもここで紹介する本じゃありません本当にありがとうごいましたという書籍です。

ちなみに高田馬場駅の早稲田口出て早稲田通りを山手線の外側に出てすぐのところにある「ゲーセンミカド・ナツゲーミュージアムin白鳥会館」の2Fには声優の大山のぶ代さんが別荘に置いてプレイを楽しんでいたアルカノイドの筐体が設置されています(プレイ可能というまさに動態保存です)置いてあるゲームは時々入れ替えなどもありますが12月の頭にはあることを確認しております(^^)。

ISBN978-4-12-150797-6 C1276 ¥860E

〇年末のご挨拶

とまあそんな訳で何か去年の今ごろは黒田退任で来年は!!!とか言ってたのに延長戦1年となりましたが、来年終わってみたらまた延長戦だったぜとならないようにして頂きたいものです。

皆様良いお年をお迎えください。新年はいつもどおり4日に参ります。





2023/12/28

お題「主な意見にオペ紙に植田総裁NHKインタビュー」

材料を同日に出すなと思う訳ですが(ただのポジトー)、昨日出てきた順序で参りますかしらってなもんです。


〇主な意見:あのハトハト講演で勝負あったと思ったが結局延長戦でも大敗北と

・市場の反応見ると1月解除示唆を期待してたのか

昨日の横綱相撲
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 24年3月限

取引日 2023/12/27
立会区分 日中取引
始値 146.43(12/27)(08:45)
高値 146.84(12/27)(14:55)
安値 146.42(12/27)(08:45)
現在値 146.83(12/27)(15:02)
前日比 +0.35
取引高 13,126

今週は月曜から売買高が1万枚割れでこのまま金曜までどうするんだよとおもっておりましたが、昨日は主な意見が出てから怒涛のがぶり寄りが出て電車道で146.45レベルから146.65レベルへと20銭くらいの寄り切りプレイが行われまして、まあその後は高値圏で推移っていう奴でしたけど、なんだかんだ言って月曜火曜よりは取引があり(後場になってから生体反応が弱くなっていましたが)まして終わってみれば1万3千枚とか今週の売買にしては活況(普段なら閑散ですがw)になったのでありました。

ということでその原因は主な意見だったのですが、主な意見で早期マイナス解除示唆がクルーという話に期待する向き多かったのかとも思うけど、1月でも4月でもそれ長期金利にそこまで影響する話なんけ???というのがアレ。

1月マイナス金利解除のあと4月に第1回利上げ(出口開始)とかそういうイメージだったらそら1月と4月の差は大きいんですけど、1月解除にしたって(このワイだって1月解除の時に長期金利が跳ねないように「出口政策との分離」という理屈を考えてみたように)出口と直結しない形のマイナス解除だったらそれ1月でも4月でも同じじゃんという話にはなると思うんですよね(なお短期回りにとっては天と地くらい違うけど)。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi231219.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2023 年 12月 18、19 日開催分)1

まあ今回はお物価の話と金融政策の話ですわな読む個所は


・物価は11個の意見があるのですが政策の所との編集のやり方が中々芸が細かい

『(物価)』である。

『・ 基調的な物価上昇率が「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、少しずつ高まってきている。』

『・ 既往の輸入物価上昇の価格転嫁の影響が徐々に和らいでいる一方、サービス価格等は、人件費上昇なども背景に、緩やかに上昇幅を拡大する方向にある。』

とまあ最初は威勢が良いというほどでもないけれども、ポジティブ方向の話をしていまして、まあ元々大本営の本来の見通しがこんな感じなので、ここは大本営コーナー。

『・ 海外における消費者物価の上昇率が低下してきている中、わが国でも、財価格を中心とする物価上昇率の鈍化が次第に明確になっている。この点を踏まえると、わが国の先行きの消費者物価の上昇率も、一旦減速する可能性が高まっている。』

次にこのようなこれも大本営的ですが、ちょっと弱めの話があるのですが、

『・ 短観等をみると、中長期的なインフレ予想が緩やかに上昇傾向にある中、政府のサポートも奏功し、中小企業の価格設定スタンスにも変化がみられていることが窺われる。』

というように、物価の所って掴みの部分が結構前向きっぽく出ています。これは後段に出て来る金融政策のパートの編集とは対照的でして、後段のパートではハトハト意見をこれでもかと最初から張り手突っ張りの如くぶちかましていくスタイルで来ておりまして、なんですかねえこの編集の差は、と思ってしまいました。

『・ 「物価安定の目標」の実現には、来年度以降も賃上げが継続して行われることが重要であるため、中小企業を中心とした企業の賃上げ動向について注視する必要がある。』

中小企業の賃上げまで待っていたら欧米型ビハインドになってしまい兼ねませんけど、ってこれまた中村さんでしょ。こんなこと言ってたら一生実現できないですし、実現できたと思ったときにはあっという間に上にビヨーンと悪性インフレですわよ。

『・ 賃金と物価の好循環の進展をみるうえで、コスト上昇を生産性向上で吸収することが製造業対比で難しいサービス業において、賃上げによる人件費上昇の価格転嫁が進んでいくかに注目している。』

『・ 賃金からサービス価格への転嫁については、企業からは引き続き難しいという声が多く聞かれる。統計上も、上昇が目立つのは宿泊費くらいで、消費者物価全体へのサービスの寄与は1%程度にとどまる。』

この「サービス価格」は次に何か屁理屈捏ねるときのネタとして既にブルペンで肩を作っておりますな。

『・ 価格設定を巡る制度や慣行が賃金と物価の好循環の強まりを妨げていないか注意が必要である。』

そんなの金融政策の話しじゃねえよ。

『・ 賃上げによるコスト上昇は企業努力で吸収すべきとの思想が根強い中、賃上げの価格転嫁には顧客満足度向上が必要である。そのためには、能力開発や人材・研究開発投資が重要となる。』

いやだから賃上げが普通になるノルムを形成しようとしているのに何で「賃上げの価格転嫁には顧客満足度向上が必要である」って賃上げが普通じゃないノルムを前提にした話をしているんだよお前は何を言ってるんだ、と思いました。

『・ 賃上げのモメンタムは昨年を上回っている。また、人件費を物価に転嫁する動きが広がっており、粘着的なサービス価格も、高い伸びが続いている。この背景には、わが国企業の賃金・価格設定行動の変化がある。』

さっきのサービス価格の話とこの話、同じ経済の話をしているのに別の結論になっているのは何なのかというのが謎でして、見通しで意見が分かれるとか、現状判断にある背景についての推測部分で何か考え方に相違がある、というのは分かるのですが、サービス価格について、という事実問題で委員の間で言ってることが違うってのどういう事なんでしょうか結構謎。

『・ 輸入物価上昇の影響は和らいでいくと見込まれるが、その賃金と物価の好循環への波及が連続的に生じ出しているほか、世の中の空気の変化から賃上げへのベクトルが揃い、来年の賃金上昇率は今年を上回る蓋然性が高い。「物価安定の目標」実現が視野に入ってきたと考えるが、今年度下期はその最終的な見極めの重要な局面である。』

最後に超威勢の良い意見が出ましたな!!!!!!


・・・・・・でまあ思ったんですけど、この物価のパート見てても「制度や慣行が」とか「価格転嫁には顧客満足が必要」とか、そもそも金融政策と関係ないやんとか、ノルムを変えようとしているのになんで企業努力の方に話がいってしまうの、というように、チョコチョコと問題設定がおかしくないでしょうか、って意見があるのがアタマイタイわけでして、この人達は物価安定目標達成した時の経済社会のイメージをどう持っているのか、というのがバラバラなんじゃなかろうか、でもってバラバラだったらいつまで経っても話がまとまらんわ、とまあ思いました。



・政策のパートは前半にハトハトチームを固めておりましてハト派の印象をつよめる

まあ会見のマイナス回答、碌でもない出来だった月曜の経団連におけるハトハトタコ踊りを経ての主な意見なので別に期待していなかったのですが、昨日の先物の動きを見ると期待があったのね、と思ってしまいました。

『U.金融政策運営に関する意見』は9人しかいないのに何と意見が14個も出ています。

『・ 現時点では、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には、なお至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。』

はいはい大本営。

『・ マイナス金利やイールドカーブ・コントロールの枠組みの解除を検討するためには、賃金と物価の好循環を確認し、これをベースに、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになる必要がある。』

って言ってるんだが、この場合は「好循環の確認」と「2%の確認」を実は分けているので、表現を見るとやる気無さそうに見えるんだが、「好循環」を確認したらマイナス金利やYCCのガワは解除できるというような話にも読めるのでどっちなんでしょと思いました。

『・ 賃金と物価の好循環を通じて2%目標を実現するためには、名目賃金の上昇モメンタムが一段と強まっていくことが必要である。このため、金融緩和の継続を通じて賃上げのモメンタムを支えることが重要である。』

しかしさっきの意見、この先の意見の並びによってどのどっちとも読めるモードが中和されているんですよね。でまあこの意見は相変わらずでありますが、そもそも金融緩和を継続すると何で賃上げのモメンタムが支えられるのかよくわかりませんね。金融緩和なんて何時からやってましたっけ。

『・ 物価への強い上昇圧力が落ち着きつつある環境を踏まえると、現行のイールドカーブ・コントロールのもとで、賃金や物価動向を見極めることが重要である。』

はいはいやる気無しやる気無し。

『・ これまで賃金上昇率が物価上昇率に追いついてこなかったことを考えると、来春の賃上げが予想よりかなり上振れたとしても、そのために、基調的な物価上昇率が2%を大きく上回ってしまうリスクは小さい。現在、慌てて利上げしないと、ビハインド・ザ・カーブになってしまう状況にはなく、少なくとも来春の賃金交渉の動向を見てから判断しても遅くはない。』

色々と言ってることの意味がわからんのだが、マイナス金利を解除しただけで何で金融引き締めになるのかという話だし、「ビハインドになる状況にないけど来春の賃金交渉を見て」とかそれ普通にビハインドになる可能性を意識してるだろお前という話でして、ビハインドになる状況に無いとか言いきっておいて3か月後には判断ってお前さあって感じですわな。


『・ 前回会合でのイールドカーブ・コントロールの柔軟化により、イールドカーブが歪む状況が生じにくくなっている。このため、インフレの基調が過度に強まる状況にならない限り、賃金と物価の好循環を通じた2%目標の実現の見極めは十分な余裕を持って行うことができる。』

最早何を言ってるのかよく分からん意見で、市場金利なんて経済物価情勢の後付けに過ぎないものを捕まえて目標実現の見極めは十分に余裕をもって行うことができるとか理由にするのアホなのかと思いましたが、よくよく見ればこの意見、「インフレの基調が過度に強まる状況にならない限り、賃金と物価の好循環を通じた2%目標の実現の見極めは十分な余裕を持って行うことができる」って「インフレがここから上がらなければインフレを心配しなくていい」ってまるで意味の無い循環論法しているだけじゃねえかという事に気が付いたんだが誰ですかこの頭の悪そうな意見だしたのは??????

『・ 人手不足がドライバーとなり、経済構造の変化の芽が生まれている。千載一遇のチャンスを逃がさぬよう変革の後押しに集中し、当面は現状の金融緩和継続が適当である。』

言いたいことは分かるんだがこの論法だと金融政策はそういう時にしか効かないって話になるんだが。

『・ 物価が過度に上振れて、急激な金融引き締めが必要となるリスクは小さいが、そのリスクが顕在化した場合のコストは甚大である。』

で、ここからがまあフォワードルッキングに物価を考えている人たちの意見、即ちハトハトジジイじゃない意見になりますね、仰せ御尤もですし、上記のように「リスクが顕在化した場合のコストは甚大」なことに対してどのように対処するのか、というのが「金融政策運営第二の柱による点検」であって、これは金融政策運営の根幹部分での論点をぶっこんでいるので実は重い話なんですよね。


でもって今回の白眉。

『・ 2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現の確度は更に高まってきており、金融正常化のタイミングは近づいている。拙速はよくないが、「巧遅は拙速に如かず」という言葉もある。物価高が消費の基調を壊し、物価安定目標の実現を損なうリスクを避けるためにも、タイミングを逃さず金融正常化を図るべきである。』

>「巧遅は拙速に如かず」
>「巧遅は拙速に如かず」
>「巧遅は拙速に如かず」

・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

これはまあ田村さんか氷見野さんか、という感じですが、こういうのがスパッと出て来る教養をアタクシも持ちたいものでして、悪態用語なら立て板にションベンの如くホイホイ出て来るのですが、何せ教養の方はお察しの通りでございますので弟子入りさせてくださいお願いします。

ということですが、氷見野さんだったらこれ結構強烈ですよね・・・・・・・・・・


この後にはもうちょい先の話もあって、

『・ 将来の出口を見据え、イールドカーブ・コントロールやマイナス金利政策について、効果と副作用を見極めたうえでその在り方を議論する必要がある。』

とか

『・ 当面は個人消費など国内需要を注視すべきと考えるが、経済・物価情勢が改善傾向にあることを踏まえると、今後、イールドカーブ・コントロールや長期国債以外の資産買入れの取り扱いについて、市場への影響にも配慮しつつ検討すべきである。』

とかあったりします。


でもって今回の白眉に次ぐのがこれでして・・・・・・・・・

『・ フォワード・ガイダンスにいう「安定的に持続するために必要な時点まで」との条件とは、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に一定の修正を行っても「目標」の実現が見通せる場合には当該修正を許容する趣旨と考えられる。こうした条件の実現がその後の金利パスまでを含意するものではない。』

これが妖刀の香りがしますよね。ガイダンスの当該部分は何かといえば、「「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。」という話です。

本来YCC導入時のコンセプトでは、均衡イールドカーブというのがあって、それに対して適切なレベルでの金融緩和がおこなれるように現実のイールドカーブを推移させるように促す、というのがあった訳ですよ。

でまあその考え方からすると、経済物価情勢、なかんずく物価情勢がYCC導入当初対比大幅に改善していれば、名目の均衡イールドカーブは当然ながら上方にシフトしている筈で、そこから適切な緩和レベルを加味した望ましいイールドカーブの水準も上方シフトするので、誘導水準が引きあがってもいいじゃないかけいざいだもの、という話になる訳だし、そうなったからと言ってYCCのコンセプトが無くなる訳ではない。という理屈は大いに成り立つ、というか当初そういう触れ込みだったので、これは「マイナス金利解除が出口に直結しない」というのをマイナス金利政策のプロコン比較に触れることなく説明する手法なんですよね。

ということでこの人の説明はマイナス金利解除をにらんで、それが先行きの「正常化開始」とは異なるYCCの調整という話に持ち込もうとしている動き、ということになります。


『・ 今後の賃金・物価動向との関連を意識しながら、出口のタイミングやその後の適切な利上げのペース等について、引き続き議論を深めていくことが重要である。』

思いっきり出口おじさんキタコレ。

『・ 日本銀行は、多額の国債を保有し、市場の金利リスク量の多くを抱えるだけに、中央銀行のバランスシートや収益変化のメカニズムを情報発信することは、出口での政策運営能力への信認維持の観点からも重要である。』

これ植田さん辺りなのかもしれませんが、先日も申し上げましたように、そもそも論として政府サイドが赤字国債発行しまくりのハチャメチャ放漫財政をぶっこんで来たら中央銀行の政策運営能力なんちゅうものは消え去ってしまって今日はベネズエラ明日はジンバブエということになる訳でした、この「中央銀行財務の観点」ってのは、最も大事な財政規律の問題から目を逸らす藁人形論法に近いものがあって、これを声高に日銀が言うのは、本質的な問題を考えなくさせてしまうという意味で害になり得る論点だと思うのですけどね。



〇オペ紙はご案内の通りで細かい話は明日(総裁インタビューがあるので)

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231227c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2024年1〜3月)

0-1年:1500×1(同じ)
1-3年:3000-6500×4(3500-6500×4)
3-5年:3500-7500×4(4000-7500×4)
5-10年:4000-9000×4(4500-7500×4)
10-25年:1000-5000×3(1000-5000×4)
25-40年:500-3500×2(500-3500×3)
物価連動:600×1(同じ)

主要年限は長期までが下限だけ引き下げ、超長期は・・・・・と思ったら回数減ってるじゃんということで、まあ減らしますご挨拶来ましたねという所でして、これは年初のオファーが楽しみになって参りました。

でまあこれが出たと思ったら昨晩NHKが出た訳でしてですね、



〇今回の植田総裁の単独インタビューはNHKでした

新聞だと元日に出すと完璧なスクープになる(1日は夕刊の設定が無くて2日は新聞休刊日だから)ので、ぶっこんでくるなら元日だなとか思ってたのですが、NHKだと元日に出す意味がないのでなるほど御用納めの前日に入れて来るのねという話。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231227/k10014301591000.html
日銀 植田総裁 単独インタビュー 金融政策の転換は?
2023年12月27日 19時23分

『日銀の植田総裁がNHKの単独インタビューに応じました。』(上記URL先より、以下同様)

キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

『日銀は、賃金の上昇を伴った2%の物価安定目標が達成できるという見通しが立てば金融政策を転換する方針ですが、植田総裁は、今後の政策判断のポイントとして来年の春闘での賃上げの動向とこれまでの賃金上昇の物価への波及という2点をあげた上で、来年の春闘では中小企業の賃上げの結果が出そろわなくても関連するデータをふまえて前もって判断することは可能だという考えを示しました。』

ほうほう。

『日銀の植田総裁は26日、明治時代にしゅんこうされた日銀本店の「本館」でNHKの単独インタビューに応じました。』

ちょwwwww本館の1階ってお使いで行ったことあるけど廊下とかホールは冬クッソ寒かった記憶しかないんですが今は改善されているのけ???

でまあ26日のインタビューなので出来立てホヤホヤレベルですね。

『チャレンジング発言の反応など市場との対話

日銀がいまの金融緩和策を転換するタイミングについて市場にさまざまな観測が広がる中、植田総裁が今月7日に国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると思っている」と発言したことやことし9月に新聞社のインタビューに対して、年内に判断できる材料が出そろう可能性があると示唆したと伝わったことで為替や長期金利が大きく変動する場面がありました。自身の発言の真意が伝わらないと感じることがあったかという質問に対し植田総裁は、「政策的な意図を強く込めたものではなかったが、市場がどういうことを思っているのか、欲しがっているのかというのは非常によく分かった気がした」と述べました。』

>市場がどういうことを思っているのか、欲しがっているのかというのは非常によく分かった気がした
>市場がどういうことを思っているのか、欲しがっているのかというのは非常によく分かった気がした
>市場がどういうことを思っているのか、欲しがっているのかというのは非常によく分かった気がした

なんですかね、黒ちゃんの場合は「市場はワシの言う事を聞け」みたいな感じであれはあれでトサカに来るのですが、ハトハトジジイの場合はこの前の経団連の講演もそうなんですが、何かこう一々エラソーに上から目線で物事語ってるなっていうのが出てしまうのは結構宜しくないとおもうんですよね、まあジジイを矯正するのは無理かもしれませんけど、そもそも欲しがってるも糞もお前が言ってることをアホみたいにブラしているから混乱がおきるんだよってことなんだが、このジジイの言い草だと右往左往している市場が馬鹿の集団(いやまあ馬鹿の集団なのはその通りなんですけど)って小馬鹿にしているみたいに取れてしまうんだよなーーーーーー。


『政策を転換するタイミング 賃金動向見極めのタイミングは

金融政策を転換するタイミングや条件についても聞きました。

仮に日銀が来年、マイナス金利政策を解除することになれば2007年2月以来、およそ17年ぶりの利上げとなりますが、市場には、日銀が来年の前半にその判断を行うのではないかという見方が多くあります。』

前半どころかもはや1月か4月かの2つの予想しかない気がするが。

『植田総裁は、今月19日の会見で、次回・来月の会合に向けては、日銀支店長会議を通じた地域経済の情報などを分析して金融政策を判断するとした上で、新しいデータはそれほど多くないとも述べています。

これについて長めのスタンスでデータをはっきりみたいという思いがあるのかと尋ねると、植田総裁は「例えば1月の日銀支店長会議ですごい楽観的な見方が示され、そこからかなりの情報が得られるいう可能性もゼロではないと思う。いまのところそんなに可能性が高いとは思っていない」と述べました。』

うーんこれは1月はちょっと厳しいですね。

『来年の春闘では3月中旬の集中回答日に向けて大企業の賃上げ状況が見えてくる一方、中小企業の賃上げの動向が見えるのはさらに時間がたってからとなります。』

ということで、

『政策を判断する上で中小企業の賃上げのデータをどのタイミングで見極めるのかという点について植田総裁は、「中小企業のデータが全部そろうのはかなり遅くなると思う。それを全部待ってから判断するという考え方もあるかもしれないが、完全に中小企業の賃金データが出たり決定がなされたりしていなくても他の中小企業の指標で、例えば収益が好調である。あるいはそのバックにあるマクロの消費とか投資が好調でこれがうまく好循環を生み出すであろうということがあればある程度、前もっての判断ができるかと思う」と述べました。』

7月(うっかりすると9月)まで引っ張るという選択肢はない、と読み取りました。

『また、「中小企業の賃金のデータを最後まで見ようとすると確認できるのは相当先になる。中小企業の賃金データがまだ出ていない状況であっても中小企業まわりの賃金を決めるような要素、企業収益などが非常に強く、賃金が期待できるという情勢であれば1つの大きな判断材料になる」と述べ、中小企業の賃上げの結果が出そろわなくても関連するデータをふまえて前もって判断することは可能だという考えを示しました。』

つまり4月ですねわかります。

『その上で来年の春闘で3月の集中回答日が中小企業を含めた判断のポイントとなるのかという質問に対しては、「特定のイベントで何か決まるということではないが、それも含めて大事なイベントはきちんと情報を確認していきたい」と述べました。』

これはどう見ても4月、もしかしたら散々織り込ませておいて3月にマイナス解除(実施は4/16から)というのもアリエールかなという感じ(何故かというと4月会合で5月積み期間スタートでマイナス解除をすると実質1週間しか日数が無いのでスケジュールがタイトなのよ)ですわな。


Q&Aはこちらになりますので、こちら明日続きをするかもしれません。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231227/k10014301251000.html
【Q&Aで詳しく】日銀 植田総裁 単独インタビュー
2023年12月27日 19時25分

ポイントになるのはマイナス金利解除がその後の短期金利引き上げを見据えたものになるのか、単純にテクニカル調整で済ませてしまってマイナス金利解除は物価目標達成判断とはあまり関係がないような建付けにするのか、という所でして、今回のインタビュー一読した限りでは残念ながらそこまではちょっと見えにくかったかなと思いましたが、まあ今日はどういう反応になるのやら(オペ紙の方が効くかしらw)。








2023/12/27

お題「植田総裁経団連講演(その2)」

そういえば植田総裁の講演で「メニューコスト」の話と「シグナリング効果」の話につきまして標準的なマクロ経済学の考え方から見たら珍説なんでネーノ、ということで引用した宮尾先生たちの日銀WP、その後も鑑賞してたんですけど、よくよく見ましたら、

『*本稿は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局による第二回共催コンファレンス「90 年代の長期低迷は我々に何をもたらしたか――浮かび上がった日本経済の課題・新たに生じた課題――」(2007 年 11 月)の報告論文である。論文の作成過程、および本稿の草稿に対して、植田和男教授(東京大学)、塩路悦朗教授(一橋大学)、山本勲准教授(慶應義塾大学)、黒田祥子准教授(一橋大学)から貴重なコメントを頂いた。』

などという脚注があったのを見て植田先生なんちゅうもんをお読みになったのですか月曜日の経団連で、と思ってしまいましたが・・・・・・・・・


〇年末進行なのでひきつづき経団連の植田講演を拝読する(その2)

その2っつーかさすがに今日で打ち止めですがw
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231225a1.pdf
賃金と物価:過去・現在・そして将来
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──
日本銀行総裁 植田 和男

昨日は「そもそも書いていることが標準的なマクロ経済学の考え方から見て珍説にあたる部分が思いっきり存在するのですが植田先生ともあろうお方がこんな原稿を読んでよろしかったのでしょうか」という講演の政策インプリケーションも蜂の頭も無いお話をしました次第な訳ですが。


・そもそもマクロ経済学の考え方から見て珍説みたいな話をするというのは・・・・・・・・・

昨日はまあベンダーのニュースフラッシュとかで出て来るのを見てた(いやまあいつも見てますけど)のですが、ザックリ見ていると「マイナス金利解除に向けての意欲」みたいな評価が結構多かった気がして、えーーーーーーーーーとあたしゃ違和感を受けたんですよね。

と申しますのは・・・・・・・・・

もともとですね、黒ちゃんの最後の1年って、黒田緩和の勝利宣言をして出口に着手すればよさそうなもんを、何を恐れていらっしゃったのか存じませんが(ってまあ黒ちゃん馬鹿じゃないから自分のやった緩和の積み上げが天に聳えるうんこタワーとなってしまっている事くらいは分かっていて、黒ちゃんが自分でそのうんこタワーの撤収をするのが怖いから逃げ切って後任に投げようとしたんだと邪推しておりますが)、とにかく政策を変更しない屁理屈を次から次へと繰り出してゴールポストを変えていったじゃないですか。

ということで植田さんになったらちったあマシになるのかと思いきや、黒田路線の継承と言わんばかりに「賃金と物価の好循環」とかそもそも好循環するのかどうかも怪しいものまで繰り出して来て説明するようになっていて、まあ要はこの人達筋悪屁理屈の昭和温泉旅館状態になっている訳ですよ。でもってその筋悪屁理屈の至った一つの境地(なんかこれからもっとすごい境地が現れるかもしれませんが)として、とうとう「標準的なマクロ経済学の考え方からしたら珍説の類の話をマクロ経済学の第一人者に語らせる」という境地に達している訳ですな今回の経団連講演って。

でですよ、今までも「政策を変更したくないでござる」ということで屁理屈の昭和温泉旅館を構築していた訳ですから、今回このように珍説の垂れ流しも辞さない、という講演をぶっこんでいるのは、その根底には「政策を変更したくないでござる」というのがあるとしか思えない訳でありますよ。

だってさ、この前の氷見野さんの金懇ってどっからどうみても「ちょっと政策修正に踏み出すべきなんじゃネーノ」って話が基本線にある訳ですが、その氷見野さんの金懇講演テキストって基本的にアホみたいな屁理屈とか、強引な詭弁とかそういうのは一切なくて、非常にこう心に染み入るような論旨がちゃんとしているテキストだった訳ですよ。

つまりですね、経済物価(というか物価)情勢から考えたらどっからどう見たって(別に引き締めしろとかそういうんじゃなくて)マイナス金利政策みたいな無茶苦茶なレベルの金融緩和の度合いは調整されて然るべきな訳で、そっちの方が無理のない話であるからこそ、政策修正(引き締めではない)してもエエンデネエノかという氷見野さんの講演は内容に無理がない訳でして、一方でどうみたって無理のある今の政策の継続、という方に軸足を置こうとすると必然的に無理のある内容で説明をしないといけなくなる、ということでありまして、まあ書いてあることに無理のある部分の多い話をしている、というのは結局のところ、植田総裁の今回の講演で早期のマイナス金利解除を期待するのはちょっと難しいんじゃネーノ、ということな訳ですな、異論はあると思いますが。


・とは言えこの人たちに今や政策反応関数は存在しないので・・・・・・・・・・

とまあそういう事なので、先週の金融政策決定会合後に不死鳥のように甦って色々な皆様を絶望させたハトハトジジイ記者会見に加えまして、月曜の講演での「賃金ターゲット主張」という流れは、こりゃまあどう見ても1月マイナス解除とか無理で、3月は事前に完全に織り込ませてノーイベントという状態にしないとできないので来年度のハトハトジジイ劇場をお楽しみくださいというお話になる訳ですな。

・・・・・とは言いましてもこの人達、今の時点でこのポンポコリンの皆様に政策反応関数とか言うものは存在しないというのが明らかでありまして、ちょっとこう官邸様の方から「あー植田さんちょっとデフレ完全脱却宣言するからマイナス金利政策解除してくれませんかねえ」と言われますと直立不動で「イエッサー」となって臨時会合をおっぱじめても不思議ではない(それは大げさですが)というのが行動原理になっておりますので、1月第1週にどこからともなく植田さんや内田さん(氷見野さんはマイナス解除推進にしか見えないので氷見野さんよりは他の2名が言った方がインパクトはある)の特別インタビューみたいなのが出て来るとかゆーのは大有りなのが頭痛い所なんですけどね(そういう点からするといいからとっとと1月にマイナス解除して余計な出動待機状態を解除させて欲しいわという所ですが)



・・・・・・・・すいません前座のアタクシのポエムが長くなってしまいましたでは講演に関して今日は悪態と政策インプリケーションが何かありましたっけというお話でも。


まあ過去の話とかは昨日ネタにした標準的なマクロ経済学の考え方からすると珍説に属する話を堂々と『マクロ経済学では、企業の価格改定のコストをメニューコストと呼びます。』から始まる部分で「マクロ経済学では」と言いながら珍説を唱えるという海原雄山も激怒必至という部分くらいが読みどころなので結局先の方になります。


・賃上げをする気が満々の経団連に行ってあんさんなにゆうてますのやら

『3.現在:賃金・物価情勢の変化と政策運営の考え方』の小見出し『(先行きの注目点)』というところになりますが、これが本文6ページ(PDFだと7枚目、以下同様に本文のページの1ページ繰り下げ)のケツの辺りからになります。

『このように低インフレ環境から脱し、「物価安定の目標」が実現していく確度は、少しずつ高まってきていますが、現時点では、なお十分に高いわけではないことも申し上げなければなりません。内外の経済・物価情勢を巡る不確実性はきわめて高いため、今後、企業の賃金・価格設定行動がどう変化していくか、確認していく必要があります。』

・・・・・(゚д゚)

経団連で「今後、企業の・・・・・」って言っちゃうの何かもう凄くてですね、まあどういう口調で話をしたのかよっても違ってくると思うのですが、賃金上げる気満々なのを既に表明している経団連の前でこれはちょっと失礼の世界じゃないの、と思う訳ですし、この言い方、悪くとらえると「お前らが賃金と価格を上げれば物価目標達成できるんだからやれや」と言っているという話。

まあその話をコロナ以前の時にするなら、現実問題として賃金は上がらんわ物価は上がらんわという状況なので企業の皆さんのケツを叩く、ってのは話は分からんではないのですが、現実問題として賃金既に引き上げを行い、来年度も上げる気満々と表明している人たちにこの従来型の言い方をしているのは失礼というか、日銀がマイナス金利政策解除などを渋っているのをまるで企業のせいにしているかのような責任転嫁っぽく読めてしまうんですよねーアタクシには。

『賃金設定面では、来年の春季労使交渉で、はっきりとした賃上げが続くかが、重要なポイントとなります。』

だから上げるっていってるじゃん経団連。

『最近の賃金を巡る環境を確認しますと、労働需給は、昨年との対比でみても、引き締まっています(図表8)。賃上げの原資となる企業収益も、経済活動の改善に加え、価格転嫁の進展や為替円安もあって、増加しています。この間、労働分配率は、足もと低下しているように窺えます(図表9)。』

挙句に労働分配率が低下しているとか、「賃金の引き上げが足りません」と経団連相手にぶっこむとはいい根性しとるやないけワレ。

『企業収益を維持するためには、原材料価格の転嫁が必要ですが、そのことによる物価上昇は、家計からみれば負担の増加となります。景気が内需主導で持続的に回復し、賃金と物価の好循環が強まっていくためには、企業収益の増加が家計所得の向上につながることが不可欠です。』

賃上げ表明をしている経団連にもっと賃金を上げろとでも言いたいのかしら。


・価格設定って企業の重要な経営戦略なんですからあんまり経団連相手に滔々と述べるような話じゃないと思うの

賃金設定と来たので次は価格設定。

『このため、価格設定面では、賃金や間接費など原材料以外のコストの上昇も含め、企業が販売価格に反映していけるのか、という点がポイントとなります。』

あらまあウエメセウエメセ。

『賃金上昇をある程度販売価格に反映することができなければ、賃金と物価の好循環は長続きしません。』

「ある程度」しか反映しなかったら企業収益がスクイーズされてしまうんですけど、と思いましたが、よくよく考えて見るとさっきの部分で「労働分配率が下がっている」って指摘していたので、これはつまり労働分配率を上げろとでも言いたいのかしら。

『この点、最近、コストに占める労務費の比率が高いサービスの価格が徐々にプラス幅を拡大していることは、注目すべき材料です。ただし、企業からの声を伺いますと、労務費上昇の販売価格への転嫁は容易ではないとの見方が、なお多いとの印象も持っています(図表10)。政府は、先日、労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を策定されましたが、この価格設定行動への影響にも注目しています。』

ということでこのコーナーは終わるのですが、そもそも好循環するには生産性が伸びないと持続的じゃ無いんじゃなかろうかと思うのですが、その話は一切触れないんですよね〜。


・欧米のような悪循環は起きないと言い切れる根拠がまるでわからんのだが

次の小見出しが『(金融政策運営の考え方)』です。本文7ページのケツの辺りからです。

『続いて、今申し上げた賃金・物価情勢のもとでの金融政策運営の考え方について、ごく簡単に申し上げます。これまで、日本銀行は、効果と副作用のバランスを取りつつ、粘り強く金融緩和を継続してきました。こうした対応は、米欧の中央銀行が、物価上昇率の急速な高まりに対応するため、大幅な利上げを進めてきた対応と対照的にみえるかと思います。』

ってのがマクラで以下始まるのだが。

『米欧の中央銀行と日本銀行との政策対応の違いの背景にある最大の要素は物価と賃金を巡る状況の違いです。』

からの、

『米欧でも、物価が上がり始めた当初は、コロナ後の経済活動再開に伴う摩擦的なものとの判断から、静観していました。』

日本も同じじゃん。

『もっとも、その後、2%の物価上昇率と概ね整合的に動いていた賃金に一段の上昇圧力がかかるもとで、賃金・物価がスパイラル的に高まるリスクを警戒し、大幅な利上げに踏み切りました。』

という説明をして、返す刀で

『これに対して、わが国では、本日強調させて頂きましたように、賃金・物価が「動かない」状況が続いてきました。こうした状況から転換し、賃金上昇を伴う形で、物価が持続的・安定的に上昇するために、日本銀行は金融緩和を粘り強く継続しているところです。』

って言ってるんだが、それなら欧米みたいな悪循環が発生するリスクだって相応にある筈であるのにそれは丸無視しておりまして、

『もっとも、今後、賃金と物価の好循環が強まり、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現する確度が十分高まれば、わが国でも、金融政策の変更を検討していくことになります。』

などと言ってるんですが、物価目標の実現する確度が十分高まれば、という完全なるビハインド上等スタンスで金融緩和をしているのであれば、確度が十分高まったとか言ってる頃には好循環じゃなくて欧米タイプの悪循環になるリスクだって出て来るだろうに何で日本だけ起きないって確信しているのかというのがまるで訳分らん。

『内外の経済や金融市場を巡る不確実性を踏まえますと、その時期が「いつ」になるのか決め打ちは出来ませんが、経済情勢や企業の賃金・価格設定行動をしっかりと点検し、適切に判断していきたいと考えています。』

ってお膳立てこれだけ揃った12月に次回への含みでも残すなら兎も角、会見で完全にマイナス回答をぶっこんでくる時点で適切に判断できるとは到底思えないのが頭痛い所ですね。


・例の資源配分云々の話

さて次の章『4.将来:物価安定と企業・経済』ですけれども、昨日ネタにしたシグナリング云々の所の続きがこれまた謎。小見出し『(資源配分等への影響)』で本文9ページになります。

『本日ご説明しましたように、わが国が陥った低インフレ環境の大きな特徴は、賃金・価格設定行動において現状維持のバイアスが強くかかり、多くの品目で価格が据え置かれるようになったことでした。このことは、個々の商品の間の相対価格が変化しにくくなり、市場の価格発見機能が働きにくくなったことを意味します。結果として、資源配分が非効率的となり、経済全体でみた生産性を損なっていた惧れもあります。』

ここが標準的なマクロ経済学の考え方から見て珍説である(だいたいからしてゼロインフレ下でも個別品目の価格上昇下落は起きていた、というのが昨日引用しました宮尾ら(2008)にも示されているので、ここの「多くの品目で価格が据え置かれるようになったことでした」という言い方自体も検証されるべきなんですよね、まあ深くは突っ込まないけど)ということですが、この次もそうですよね。

『賃金についても、同様です。厳しい時代に、ベアを凍結し、賞与を削減することを通じて、雇用を守ったことの意義は大きかったと思います。しかし、厳しさが和らいだ後も賃金の上がりにくい状況が続けば、労働の配置や賃金制度が固定化されてしまいます。毎年賃金が上がるような状況になれば、柔軟な賃金設定を通じて、より効率的な労働力の配置につながる可能性があります。』

これ賃金に引き直した方が直感的にわかりやすくて、全体の賃金が動きにくい方が、個別企業にとっては賃金の引き上げによって人材確保をすることがやりやすくなるでしょ、ということで、この説明って相当ちゃんと検証をしないと行けない事をガバガバに雰囲気だけで書いてるとかいう日銀にあるまじきことをしているよね、という話ですよね。



・お前が言うなお前が

最後にまたえらそーに『(企業行動への影響)』という小見出しが本文10ページからおっぱじまるのですが、その最後の締めがこれである。

『もちろん、賃金・物価が「動く」世界に移行することは、企業の皆様方にとって、新たな挑戦でもあります。人材確保にせよ、価格・商品戦略にせよ、ヒトやモノへの新たな投資を含めこれまでとは異なる対応が必要となるかもしれません。企業の皆様方が、賃金と物価の好循環が実現する世界で生じうるメリットを最大限活用し、前向きの動きを強めていくことを、強く期待しております。』

屁理屈捏ねながら「動かない」日銀に言われたくはないわ、とか思った心ある経営者の方々もいらっしゃったのではないでしょうか・・・・・・・・・・


・ここで2014年の経団連講演と比較しますとですね・・・・・・・・・・・

さて、懐かしの2014年の経団連講演ですけど、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2014/ko141225a.htm
【講演】「2%」への招待状
日本経済団体連合会審議員会における講演
日本銀行総裁 黒田 東彦
2014年12月25日

この講演、覚えている方は覚えていると思いますしそうじゃないかたはざざっと見て頂ければという感じですが、「2%が達成された世界では企業の積極的な行動が生き残りを決める、現状維持ダメダメネー」という話をしていたりするんですけど、この時の黒ちゃんの講演テキストって最後の最後にこういう一節がちゃんと入っているんですよね。

『ご清聴ありがとうございました。また、企業経営者の皆様にとって、言わずもがななことを申し上げた点ご容赦ください。どうか、良いお年をお迎えください。』(直上URL先の2014年12月25日黒田日銀総裁(当時)の経団連での講演)

ちゃんと「企業経営者の皆様にとって、言わずもがななことを申し上げた点ご容赦ください」ってのを入れているんですけど、今回何かえらそーな話をしている上にこういうのもないのかーと思いまして、まあもうちょっと物を考えて講演テキスト作れや、と思いましたという事でアタクシの方も締めようかと思いますです、はい。








2023/12/26

お題「輪番減らしましたな/ちょっと今回の経団連講演はヤバい意味でおかしいわ(その1)」

そらそうよ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231226/k10014299331000.html
日本のドル建てGDP 去年 世界全体に占める割合が過去最低に
2023年12月26日 4時50分

『2022年の日本のドル建てのGDP=国内総生産が世界全体に占める割合は4.2%と、統計が比較可能な1980年以降で最も低くなりました。円安で、ドルに換算した場合のGDPが目減りしたことが影響しました。』(上記URL先より)

ほ、ほら、「1980年以降」だから・・・・・・

〇輪番減額したけど全然反応しなかったということは

(輪番だけ引用)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of231225.htm
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,250 2023年12月26日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,750 2023年12月26日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,500 2023年12月26日
国債買入(残存期間25年超) 750 2023年12月26日
国債買入(物価連動債) 600 2023年12月26日

ということで、中期後半が4500→4250で長期が5250→4750に減額なのですが、ゆうて長期の4750って元々結構見慣れた数字な訳で、お前らどんだけここまで買いすぎてたんだという話でもあるのですが、お蔭さまをもちまして昨日は輪番アナウンスがあっても反応しないどころか前場引けにかけて謎の踏み上げ状態(その分は後場下げましたが)になっておりまして、これはつまり輪番の減らし方が足りないよという話という訳ですな南無三。

あとやたら結構皆さんオーバーシュート型コミットメントとの整合性で輪番が減らせないんじゃないかというのを気にしますが、そもそもオーバーシュート型コミットメントって「マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。」ということで「見通し」でも何でもなくて「実績値」に紐が付いているコミットメントなのですよね。

となりますと、つまりなこのコミットメントを盾にした説明を前面に出すのは、そもそも条件達成されているんだからコミットメントは空文ではないでしょうか、っていう伏魔殿を開けた洪太尉状態になって話がややこしくなるの筈なので、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。」というのと同じく、基本は伏魔殿の中に封印しておくものになるんですよね。そもそもコロナオペの前後で無茶苦茶なぶれをしたんだし。

もちろんこんな文言邪魔だから取っ払っていただきたいものですが、注目のハトハトジジイのハトハト音頭によりますと「政策修正をしたくないでござる」ということのようですので、じゃあ来月(来年)はどうなるのやら・・・・・・・・・・



〇この原稿を作ったのは誰だ!(ガラッ)←海原雄山の画像貼り付け割愛(^^)

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231225a1.pdf
賃金と物価:過去・現在・そして将来
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──
日本銀行総裁 植田 和男


・もう題名の時点でダメでしょこれ

題名を見た瞬間にもう内容はお察しと思いましたよ。だって「賃金と物価:過去・現在・そして将来」ってもう完全に「ワレワレハチンギンターゲットセイサクヲヤッテイル」って金属音が鳴り響いてくるわけでして、ついこの前氷見野副総裁が言ってた「実際の経済で全てが青信号になることはない」というのを全力で否定に掛かっている訳でして、これはもうハトハトジジイVS氷見野様のバトル勃発としか申し上げようがない、なお言うまでもありませんがハトハトジジイ滅亡祈念。

まあ要するにこの講演は「賃金ターゲット宣言」な訳でして、中央銀行としてアホなのかと思ってしまうのですが、更にヤバいのは・・・・・・・・


・しかし真のヤバさはそこれはなく・・・・・・・・・

えーっとですね、まあこの講演読んでてなんか違和感覚えながら読んでいたのですが、アタクシも何せ無学なもんで調べたり学問のある人に聞いたりしてアホながら俄か勉強して分かったのですが・・・・

今回って屁理屈の域を超えて、標準的なマクロ経済の考え方からみたら珍説の世界に入った説明を堂々としている部分がある、というのが衝撃的なんですよね。

つまりですね、屁理屈でも何でも理屈が成立しているなら兎も角、それ以前の問題という箇所が散見されるという無茶苦茶な説明になっていまして、そこらのインチキ経済評論家が詭弁を駆使しして夕刊フジとか日刊ゲンダイ辺りにゴミを振りまいているなら兎も角、日本の経済学で金融論の中で最高の学者であると目されている植田先生がこんなダメダメ説明してるとなりますと、日本の経済学という学問への信頼問題にもなるんじゃねえかレベルだと思うのですよね、と無学なアタクシがいうのも僭越ではあるのですが、アタクシは突発性海原雄山になって「この原稿を作ったのは誰だ!(ガラッ)」となる訳でございますよええ。


んじゃまあ本日はその辺参ります

・価格が安定しているとメニューコストが高いって話なんだが・・・・・

『2.過去:低インフレ環境にかかる事実整理と背景』の『(低インフレ環境の定着)』という小見出しの終わりの方になるんですが本文4ページ(PDFだと5枚目になります、以下本文とPDFの関係は同じです)の上段の方になります。

『マクロ経済学では、企業の価格改定のコストをメニューコストと呼びます。メニューコストの語源は、価格改定時に「値札」を変えるコストということですが、実際に値上げを行うにあたっては、顧客への説明・交渉など様々なコストが生じます。』

で???

『わが国では、価格の据え置きが長期化し値上げのノウハウが喪失されるなどする中で、このメニューコストが著しく大きくなってしまい、本格的に価格が動かなくなった面もあるかもしれません。』

と、いう話をしているのですが、例えば日銀からですけど、思いっきりこれ書いている人がその後審議委員になった宮尾先生だったり、この前まで企画局長だった中村康治さん(現在金融機構局長)だったりするのですが、このような解説のペーパーが2008年に出ていましてですね、

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2008/data/wp08j02.pdf
日本銀行ワーキングペーパーシリーズ
物価変動のコスト
――概念整理と計測――
宮尾 龍蔵 中村 康治 代田 豊一郎

「メニュー」でテキスト検索すると引っ掛かって来ますけど、本文8ページ(PDF9枚目)のケツのところからメニュー・コストの説明がありましてですね、

『2.3 メニュー・コスト

メニュー・コストとは、価格変更の際に必要となる費用のことである。これは、実際に値札や価格表の改定に必要な物理的な費用のほかに、価格変更のための交渉費用など間接的な費用も含む比喩的な概念である。もし、持続的なインフレ(あるいはデフレ)が発生した場合、民間経済主体は、インフレ(あるいはデフレ)が進行するにつれて、価格改定を行う必要に迫られる。このため、民間経済主体は、メニュー・コストを払いつづけることになる。こうしたコストは、仮に持続的な価格変動が無ければ払う必要のない費用であるので、持続的なインフレ(あるいはデフレ)の社会的コストとして考えることが出来る。』

でまあ以下続くのですが、

『こうした観点からすれば、最適な状態はインフレ率がゼロのケースである。

では、そうしたメニュー・コストは、実際にはどの程度の大きさであろうか。Levy et al. [1997] は、米国スーパーマーケットチェーンのミクロデータを用いて計測を行っている。彼らによれば、メニュー・コストは、総売上の 0.7%、1回の価格変更について 52 セントのコストがかかるとの結果を得ている。また、単なる値札の付け替えコストだけではなく、価格変更に関連する意思決定に関連する間接費用まで含めてメニュー・コストを計測したものに Zbaracki et al.[2004]がある。彼らの研究によれば、価格書換えのためのコストに間接費用も加えたコストは総売上の 1.22%に相当し、Levy et al. [1997]よりもはるかに大きいコストが存在することが示されている。』

『先述の通り、こうしたコストは、物価変動が無ければ支払う必要が無いコストである。したがって、この観点からは、インフレ率ゼロが最適な状態と言える。ただし、マクロ全体でのインフレ率がゼロであったとしても、個別品目については、個別の需要ショック、価格ショックが常に発生しているため、価格変更を行う必要があり、メニュー・コストを支払う機会は発生しうる。実際、ゼロ・インフレ期においても、個別品目の価格改定は頻繁に行われていることが確認されている(才田・肥後[2007])。』

『こうした点を考慮すると、「ゼロ・インフレであれば、メニュー・コスト分だけコストが削減できる」と考えるのは単純すぎることになる。厳密には、価格変更の原因が何であるかによって、メニュー・コストを物価変動のコストと考えるかどうかが決まるということになる。』

『例えば、個別企業に加わるショックが供給ショック(実質限界費用の変化など)である場合には、メニュー・コストを支払って発生する相対価格変動はむしろ望ましいことになる。このように厳密には、ミクロ的な価格変更の原因が何であるかによって、コストに対する評価も変わりえる23。』(以上の部分直上URL先の2008年日銀WP(宮尾、中村、代田)より引用)

・・・・・とまあこういう説明をしている訳でして、植田総裁のこの講演においては上記のような先行研究も何もすっ飛ばして「物価が安定しているとメニューを書き換えるのが大変でメニューコストが高い」という話をしておりまして、何かちゃんとしたマクロ経済学の考え方からしたら結構な珍説の類になるんじゃないかと思うんですよね、まあアタクシもこういうのパッとわからないから詳しい人になんか違和感あるんだがと聞いている程度の無学人間(このペーパーは日銀のWP漁れば何か出て来るだろ理論で探して来ました)なのですが。



・価格のシグナリング機能に関する本講演の説明も珍説のように見えますな

でまあ今引用した宮尾、中村、代田のペーパーの引用部分の次にちょうどお誂え向きに相対価格の変化に関する説明もあるので、植田講演のツッコミどころがこの先にもあるのですが、順番を前後して本文9ページまでワープします。

『4.将来:物価安定と企業・経済』という章の小見出し『(資源配分等への影響)』の部分になります。

『本日ご説明しましたように、わが国が陥った低インフレ環境の大きな特徴は、賃金・価格設定行動において現状維持のバイアスが強くかかり、多くの品目で価格が据え置かれるようになったことでした。』

問題はこの次。

『このことは、個々の商品の間の相対価格が変化しにくくなり、市場の価格発見機能が働きにくくなったことを意味します。結果として、資源配分が非効率的となり、経済全体でみた生産性を損なっていた惧れもあります。』(ここは12/25植田講演より引用です)

となっているのですが、先ほど引用しました宮尾らによるペーパーの本文9ページ以降を読みますと以下のような説明がありますので引用しますね。

(以下宮尾、中村、代田「物価変動のコスト」(2008)より引用)

『2.4 相対価格に対する歪み

(1)相対価格に対する歪みの概念整理

古典派の世界では、経済の需給状況に合わせて価格がスムーズに調整され、効率的な資源配分が達成されることが想定されている。こうした世界では、持続的なインフレ(デフレ)が生じた場合、価格水準のみが調整される一方、個別財同士の相対価格は変化しないため、最適な資源配分が達成される(古典派の2分法)。』

『しかしながら、「メニュー・コスト」等の存在によって、ある企業は価格調整を行う一方で、別の企業が価格調整を行わない場合、ある企業の財に対する需要が増加する一方、別の企業の財に対する需要は減少する24。』

『この場合、価格の硬直性が無ければ達成されたであろうベストの資源配分は達成されず、歪んだ資源配分が実現されることになる。したがって、マクロのインフレ率(デフレ率)がゼロであれば、そうした歪みを生じさせず、全ての価格変化=相対価格の変化となり、価格のシグナリング機能が最大限に発揮されることになる。』

ということで伝統的な考え方からすると全く逆の説明になっているんですよ植田さんの今回の講演。さらにこの章の続きを引用しますと、

『近年のニューケインジアンの分析の枠組みでは、上記のような「硬直的な価格変更」を時間依存型の価格設定行動に単純化した上で、経済モデルを構築し、金融政策の効果を分析するという手法が広く用いられている25。』

『この場合、インフレ率がゼロであれば、価格粘着性に由来する上記の資源配分の歪みは無くなり、望ましい資源配分が実現されることになる26。しかし、インフレ率(デフレ率)がゼロから乖離した場合には、その乖離の程度に応じて資源配分のロスが生じることになる。』(以上ここまでの部分前述URL先の宮尾、中村、代田(2008)より引用)

このペーパーではこの部分が(1)となっていることから分かりますように「(2)データによる確認」、「(3)相対価格変動のコストの計測」というのがありますがその辺は全部かっ飛ばしますけど、まあこの2か所だけでもナンジャコリャという話をしているのですが、何せ不肖このアタクシ経済学なんちゅうのは高校の政経の授業以降まともにやっていない(そもそも高校の政経の授業がまともかというツッコミもあるが)ので、今回は書きながらせっせと読み直して調べ直して消してとかやってたら、この2か所だけになってしまいましたので、まあ年末進行ですから明日に続く、で勘弁してつかあさいという所です。


・でまあ明日に続くんですが他にもナンジャソラな話が多いんですよね

今日ネタにした部分ってのは明らかに伝統的な考え方からすると珍説の世界に入っている話を堂々とあの植田先生が行っている、というかなり衝撃の講演でして、まあ「政策を変更したくないでござる」ということで屁理屈に屁理屈を上塗りして行った結果、ついに伝統的なマクロ経済学の考え方からした珍説としか言いようがない説明をおっぱじめるに至った、ということでまさか植田先生のご本意ではない、とさすがにそこは望みをもっていたいのですが、いやあのこういう「珍説」を中央銀行総裁が堂々と披露してしまう、ってのはさすがにマズイと思うんですが、誰ですかこの講演を書いた人と確認した人とゴーサインだした人は、ってな話でして、酷い話にも程があるし、植田先生だってこんなの蛮勇振るって「こんなの読めるか馬鹿」と言って勧進帳状態で講演やった方がマシなんじゃないか、と思いました。

ということでですね、政策先にありきで経済物価見通しが出て来るとか、そういう問題がチャチに見えてしまう位の衝撃的な知的退廃を見てしまいまして、これは悲しい年末年始を迎えることになりそうです。



2023/12/25

お題「全国CPIメモ/今日は経団連講演と輪番ですな/10月会合議事要旨をまあしょうがないので見て差し上げましたw」

ゲル先生キタコレ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA18CK60Y3A211C2000000/
石破茂氏、本来の資本主義に戻す 「金利のある世界」必要
吉野直也のAngle
2023年12月24日 5:00

『自民党の石破茂元幹事長は24日配信のラジオNIKKEIのポッドキャスト番組に出演しました。自身が目指す経済政策について「本来の資本主義に戻す」と述べました。財政や金融政策の正常化の重要性を訴えました。社会保障をはじめ政策に取り組む際は「必ず財源(の確保)とセットだ」と強調し「その議論がどこかにいってしまったのは自民党のあるべき姿だと思わない」と話しました。

石破氏のインタビュー詳細はPodcastで配信中です。』

『石破氏の発言ポイント

・政策は「財源とセットで」
・岸田首相をどこまで支えるか「最後まで責任負う」
・企業活動が変化「労働分配率を正常に」
・減税「わかりやすく説明する努力を」
・「おかしい」と言えない組織に永続性はない
・増税「きちんと使ってくれるという安心感が政府にあるか」
・次の総裁トップ「『わーい』というほどおめでたくない」
・政治改革、小選挙区制が先走り「反省、検証を」
・年末に「こういう体制をつくる」と言えばぜんぜん違う』(以上上記URL先より)

(;∀;)イイハナシダナー(聴いてないけど)


〇全国CPIはいつも通り東京都区部よりも前月比が若干上に出ますな

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.html
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)11月分(2023年12月22日公表)

≪ポイント≫
 (1)  総合指数は2020年を100として106.9
    前年同月比は2.8%の上昇  
 (2)  生鮮食品を除く総合指数は106.4
    前年同月比は2.5%の上昇  
 (3)  生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.9
    前年同月比は3.8%の上昇  

ということで全体の資料を見る訳ですが、

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消費者物価指数
全国 2023年(令和5年)11月分

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として106.9
前年同月比は2.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の下落

(2) 生鮮食品を除く総合指数は106.4
前年同月比は2.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.9
前年同月比は3.8%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇』

原数値ベースでみるとコアの数値自体は106.4で前月と同じ数字になっているのですが、季節調整が入りますと前月比上昇になるのですな。

でまあいつもの『表2 総合、生鮮食品を除く総合、生鮮食品及びエネルギーを除く総合の前月比(季節調整値)』の数字はめんどいので貼らないのですが、一応見たところ伸び率鈍化、にはなっているものの、これ結局持続するのかという話はもうちょっと見て見ないと分からん話だし、足元では輸送コストとかの上昇の話しやら、肥料飼料価格の1月からの引き上げやら、まあコストの上がる話もこれまた発生しているように見えますし、どうなんでしょうかねーと。

この前出てた東京都区部を再掲すると、

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/kubu.pdf
2020年基準 消費者物価指数
東京都区部 2023年(令和5年)11月分(中旬速報値)
※全国結果に先立ち、先行指標として東京都区部(中旬時点)のみの結果を速報として公表するものです

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として106.5
前年同月比は2.6%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の下落

(2) 生鮮食品を除く総合指数は106.0
前年同月比は2.3%の上昇 前月と同水準(季節調整値)

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.7
前年同月比は3.6%の上昇 前月と同水準(季節調整値)』

だったので、割とこう最近毎度なんですが、前月比の数値って基本的に全国の方が強めに出て来るのってこれ月後半にかけて値上げしてる動きがあるんじゃねーって指摘があったと思うの。

まあ何ですな、いずれにしましても「今年度後半になって前年比ベースの物価上昇率は2%を下回る」とか言ってたポンコツ予想が大外れしていたというのは明らかでして、お前らいいからPDCAサイクルのCってのを出してちょっと次の展望レポートの背景説明の方で良いから出してくれませんかねえという話で、PDCAサイクルも回せないような中央銀行がハトハトジジイのハトハトキャラだけで政策決めるとか端的に言ってどこの未開国家だよという話ですが、まあ黒田体制になって大政翼賛会組織に成り下がったのが全て悪いので結局大本を辿れば(以下自主規制)。


〇経団連でのハトハトジジイの落語があるでよ

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

今後の講演・挨拶等の予定
2023年12月25日 植田総裁 日本経済団体連合会審議員会における講演

ということで皆様ご案内の通り、つい先日経団連会長が金融政策正常化を促す発言をされた訳ですが、その経団連様にどのツラ下げてハトハト音頭の高座をおっぱじめるのやら、という楽しい講演がありまして、これがまあ変わらずのハトハト音頭なら年内の営業は終了しました新春のお漏らしワンチャンをお楽しみにという話ではございます。

なにせこのジジイ、9月の例もあるので油断も隙も無いというか、だったら発言内容というか説明のロジックを右に左に盛大にブレさせるの止めろとしか言いようがないのですが、とにかくロジックも糞もない今の日銀なので、実際に講演が飛び出すまで何が出るか分からん、というのもあって先週急に謎の売り直しみたいな動きもあったんだろうなあと思いますと、ここでハトハト音頭が出ても、変な地均しみたいなのが出ても、何かとりあえず先物様とかはブレるのかしらとか思ってしまうので、まだ延長戦になるのかよ(うんざり)という感じですな。


まあ金曜日と言えば流動性供給入札15.5-39年が流れて、3MTDBは平均がクソ強くなるという何かもう象徴的な相場でございましたが、今日の落語を受けて流動性のクッソ低い中でまた一勝負発生するのかよと思うとゲッソリという感じです。そういや今日は年内最後の輪番もあるし(さすがに減額だと思うし何なら全部減額しても問題ない筈なんだが)。


〇10月会合議事要旨

しょーがないので見て見るw
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2023/g231031.pdf
政策委員会
金融政策決定会合
議事要旨
(2023年10月30、31日開催分)


・中央銀行の財務云々の話で一切「財政政策が適切に行われないと全てが台無し」の指摘が無いのは財政従属の証拠ですね!!!1

今回は何か知らんけど『U.金融政策の多角的レビューに関する執行部からの報告および委員会の検討の概要』とかいうコーナーがありまして、

『1.執行部からの報告

金融政策の「多角的レビュー」の一環として、中央銀行の財務と金融政策運営に関する基本的な考え方を整理した調査論文を作成している。

同論文では、@中央銀行のバランスシートと収益構造、A中央銀行のバランスシートの拡大と縮小が収益等に与えるメカニズム、B中央銀行の財務を巡る議論、C海外中央 銀行の最近の状況についてレビューしたうえで、D中央銀行の財務と金融政策運営に関する基本的な考え方を整理する。』

『具体的には、中央銀行の財務と金融政策運営に関する基本的な考え方は、次のように整理することができる。』

『・ 管理通貨制度のもとで、通貨の信認は、中央銀行の保有資産や財務の健全性によって直接的に担保されるものではなく、適切な金融政策運営により「物価の安定」を図ることを通じて確保される。』

財政政策が適切じゃなかったらやっぱりダメだし、何なら財政従属をしている状態になったらその時に財政政策が暴走しだしたら通貨の信認はジンバブエなんですけど、そういう話はぶっこんでこないというのが今の日銀の腰が弱いというか根性がないというか現実逃避にも程がある所だし、そういう話をぶっこめない時点でお前ら既に財政従属しているだろうと小一時間問い詰めたい。

『そうした前提のもとで、中央銀行は、やや長い目でみれば、通常、収益が確保できる仕組みとなっているほか、自身で支払決済手段を提供することができる。したがって、一時的に赤字または債務超過となっても、政策運営能力に支障を生じない。』

自国通貨が信認されているなら政策運営能力に支障を生じない、ってよくよく考えたらほぼ意味の無い結論でありまして、自国通貨が例え法定通貨であっても、国民が誰も使わなくなったらその時点で政策運営能力はないし、自国通貨が法定通貨として無制限にワークするのであれば、そりゃ通貨発行権があるんだからその天下の大権が政策運営能力を担保してくれるでしょ、ってなもんです。

『ただし、いくら赤字や債務超過になっても問題ないということではない。中央銀行の財務リスクが着目されて金融政策を巡る無用の混乱が生じる場合、そのことが信認の低下に繋がるリスクがある。』

結局循環論法なんですよね。

『このため、財務の健全性を確保することは重要である。』

よって重要なのは財務の健全性ではなくて政府債務を含めた話であって、マネープリンティングで財政賄うとか言い出すようなアホウが国会どころか馬鹿メディアとかにも転がっているような現状でこんな暢気な話をしている場合ではないのですが、政府に対して差し込みを一言も書けない時点で財政従属以下同文。

『同論文は、年内に対外公表することを展望しているほか、12 月に予定している「多角的レビュー」に関する第1回ワークショップにおいて、有識者との意見交換を行っていく考えである。 』

でまあこの前リリースされていましたけどね。

次に『2.委員会の検討』というのがあるのだが、じゃあ何の検討をしていたのか、ポンコツのポンコツ議論を確認しましょう。

『委員は、執行部からの報告を踏まえ、中央銀行の財務と金融政策運営に関する基本的な考え方等について議論した。』

『中央銀行の財務と金融政策運営の関係について、委員は、執行部の整理した基本的な考え方のもとで、引き続き、財務の健全性にも留意しつつ、適切な政策運営に努めていくことが適当であるとの認識を共有した。』

ただのお経。

『そのうえで、何人かの委員は、先行き日本銀行の収益が一時的に下押しされる可能性はあるが、そのことは、日本銀行が物価安定実現のために適切な金融政策を行っていくうえで制約にならないことを、対外的に分かりやすく説明していくことが重要であるとの見方を示した。』

『複数の委員は、中央銀行には通貨発行益が発生することや自身で支払決済手段を提供できることなど、中央銀行の財務と民間金融機関・事業会社の財務との間では違いがある点についても、丁寧に説明していくべきであるとの見解を述べた。』

えーっとすいません、見解とか書かれているけどもしかして単にスタッフペーパーの輪読をしているだけじゃないですかあ????????

『このうちの一人の委員は、米欧等の中央銀行では、金利引き上げによって収益や資本が減少しているが、そのことが金融政策運営に影響を及ぼしていないと付け加えた。また、この委員は、大規模金融緩和の政策評価は、中央銀行の収益への影響だけでなく、経済・物価全体への効果を踏まえてなされるものであると指摘した。』

じゃあその効果と副作用はどうなってるんだよオイこのポンコツ説明してみろや。

『複数の委員は、中央銀行の財務リスクが着目されて金融政策を巡る無用の混乱が生じることを避ける観点からも、こうした基本的な考え方をこの段階で取り纏めて公表していくことは、非常に重要であるとの見方を示した。』

『別の複数の委員は、先行きの適切なタイミングで、より具体的な説明を行っていくことも考えられるのではないかと指摘した。 』

・・・・・・でこのコーナー終わってるんだが、おまいら誰も「適切な財政運営が行われない状況になってしまった場合に大問題が発生する」って一番根本の話をしないのかよヴォケとしか言いようがない訳で、誰もその指摘をしていないならポンコツにも程があるのでちょっとお前らイカロスの羽貸してやるからその窓からちょっと大空に飛翔してみたらって話だし、まさかとは思うが指摘があったけど書いてないとかだったら財政従属ここに極まれり、ということでいやこの部分は結構トサカに来る話ではありました。


・物価に関する話はあんまり読んでもしょうがないので割愛

『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』というのがありまして、『2.経済・物価情勢の展望』というのがあって物価の話が延々と繰り広げられているのですが、話の内容が基本的にポンコツなので全部飛ばして次に行きます。

『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に飛びますわよ。


・マイナス金利政策の分離論と一体論

『先行きの金融政策運営の基本的な考え方について、委員は、現時点では、賃金の上昇を伴う形での「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を十分な確度をもって見通せる状況には、なお至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく必要があるとの見解で一致した。』

そもそもこの「賃金の上昇を伴う形での「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現」という賃金ターゲットをいつまでやってるんだこの馬鹿共はという感想しかないが、そもそも悪い循環が起きるか何も起きないかの二択の方が確からしいのに、何でこいつら好循環するのがアプリオリみたいな説明するんでちゅかねえ。

『複数の委員は、賃金と物価の好循環を通じた「物価安定の目標」の実現にはまだ距離があるため、金融緩和の継続を通じて賃上げの動きを支え続けることが重要であり、イールドカーブ・コントロールの枠組みは維持すべきとの認識を示した。』

この人達は「枠組みは維持」といってるのですが、

『別の一人の委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組みやマイナス金利は、少なくとも、「物価安定の目標」を安定的に持続するために必要な時点まで継続する方針であり、その判断には、今後の賃上げ動向をはじめ、賃金と物価の好循環を、双方向からしっかりと確認していく必要があると指摘した。』

この人はマイナス金利も一体で説明していますね。

・・・・・でさあ、毎度書いてるけど物価安定の目標って2%の物価上昇率が達成されることなんですけど、その際の適正な金利水準が幾らかって考えたら、マイナス金利政策をそこまで維持してたらお前ら達成しましたハイ短期政策金利200bp引き上げね、とかできると思ってるの馬鹿じゃないのというお話でして、寧ろ金融緩和とかいう後押しが無くても2%物価上昇が進むような環境作りたかったら徐々に緩和度合いを下げていくもんだろと思う訳だし、ちゃんとそれに近い話をしている真っ当な委員もいるのですが、たぶんこの真っ当な意見が超少数派というのがポンコツ委員会のポンコツたる所以な訳です。

『この間、一人の委員は、最近の物価指標や春季労使交渉に向けた経営者の発言等を踏まえれば、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現の確度は、従来と比べ一段と高まっていると考えられ、最大限の金融緩和から、少しずつ調整していくことが必要との見方を示した。』

いやー全く仰せの通りですが、これ言ってるのが「一人の委員」ってのが絶望先生になってしまいますわよ南無三。


・YCC再柔軟化に関する糞理屈はどうでもよいのだがその後の部分を見ますとこれまた良い指摘がほんの少しだけ

この次が10月に決定されたYCC再柔軟化の件で、それを実施するに至ったしょうもない屁理屈のオンパレードは既にご案内の話でクッソどうでも良いので割愛しまして、その先の話の部分を読んでみましょう。

『委員は、今回の措置の情報発信についても議論を行った。何人かの委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組みのもとで、粘り強く金融緩和を継続していく方針であることを強調していく必要があるとの認識を示した。』

ああそうですか「粘り強く」じゃなくて「往生際悪く」の間違いだと思いますがまあいいですwww

『このうちの一人の委員は、市場において無用の憶測を生じさせないためには、日本銀行の政策判断は、経済・物価の見通しに基づいて行っていることを対外的にしっかりと説明することが重要と指摘した。』

物価見通しを盛大に外しまくっているのですが、なぜ物価見通しを盛大に外しまくっているのに金融政策はYCCの微修正しか実施しないんでちゅかねえ、というかこれ金曜にネタにしたハトハトジジイの会見でも出てたけど、まさかとは思うがこの委員ってハトハトジジイなのかよと思いました、お前は外しまくっている物価見通しを基に政策を実施しててマズいと思わんのか。

『この委員は、日本銀行が市場金利の変動を追認する形で政策を決定していると受け止められ、投機的な取引を助長することは避ける必要があると付け加えた。』

まあ追認しているんですけどね!!!

『この間、一人の委員は、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せるかは今後の賃金動向等の見極め次第ではあるが、今回の対応案や7月の柔軟化が、出口へ繋がりうる点を強く否定するべきではないと述べた。』

しらっと素晴らしい意見があるというのに、

『これに対して、ある委員は、今回の措置に、イールドカーブ・コントロールやマイナス金利の撤廃に向けた準備という意図はない点は、明確に示す必要があると述べた。』

あーあーあー

『別の一人の委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組みにおいて、予想物価上昇率の上昇に応じてその運用を調整していくことは、将来のスムーズな移行に資するものであるが、それは結果論であり、昨年 12 月以降の対応はあくまで枠組みの中で緩和を続けるための措置であると述べた。』

>それは結果論であり
>それは結果論であり
>それは結果論であり

お前は何を言ってるんだという話で、ついさっき他の誰か知らんけど「日本銀行の政策判断は、経済・物価の見通しに基づいて行っている」って話をしていたというのに思いっきりこの結果オーライという話をしているのは実際には今の日銀の政策判断がちゃんとした意味での経済物価見通しに基づいていないことを思いっきり示しています。

というかですね、この「結果論」っての10月会合主な意見では記載が無かったのですよね。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2023/opi231031.pdf

これをわざわざ掲載した意図is何?????って感じですが、これは「そもそも我々は金融政策を雰囲気でやっている」というのを知らしめようとしたとかそういうことでやんすか?????????

『別のある委員は、低金利が続いてきただけに、将来の出口を念頭に、「金利の存在する世界」への準備に向けた市場への情報発信を進めることが重要であると述べた。また、この委員は、出口に向けた予見可能性を示す観点から、日本銀行の政策への考え方について丁寧にコミュニケーションしていくべきであると付け加えた。 』

主な意見でもありました。しかしどう見ても直近やっていることは「丁寧なコミュニケーション」の正反対な訳でして、さて本日の経団連でのハトハト亭ヨルノテイオー師匠はどんな高座をしてくれるのでしょうか・・・・・・・







2023/12/22

お題「引き続き植田総裁会見をヘロヘロと鑑賞でござるの巻」

そういやですね
https://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps23_e.htm
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ(E-Series : 英語版)
2023年収録分

直近出た物件で、『人々は為替レートと輸出の関係に関する認識をどのように形成したのか?1920年代の日本の経験/為替レート、金本位制、輸出、輸入』というのがあって、英文ペーパーなんですがこれ日本語版ってありましたっけ(探し方が悪かったので見つからなかったのか英文が先行で出たのか)というところなのですが、アブストラクトと最後の図表みたら日本語で読みたい文献ですなあと思ったのですよ。

アブストラクトはこちら
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/english/23-E-08.html
How Do People Form the Perception of a Link between Foreign Exchange Rates and Exports? The Experience of Japan in the 1920s
Mariko Hatase

資料つき全文はこちら
https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/english/23-E-08.pdf


〇ハトハトジジイのハトハト踊り鑑賞の続き

昨日はとにかくクソ目立った所を拾いましたが、もう少々ハトハト踊りの鑑賞を行いたいと思う訳です。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231220a.pdf
総裁記者会見
――2023年12月19日(火)午後3時30分から約60分

・昨日ネタにした「声明文の変化に気が付かなかった」発言に絡む全体の辺りから行きましょか

あんまりヘッドラインネタにはならなかったんですが、昨日ネタにしましたハトハトジジイ会見における「ちょっと気付かなかったんですが」発言ってあれ無茶苦茶ヤバイ発言でして、声明文って過去の議事録を適当に拾って適当に読むだけでも分かるのですが、あれちゃんと文言を練った上で時には「ここの表現がどうなのか」という議論をやっているものなのであって、これを「気が付かなかった」とかいうのは、ガチで気が付いていないんだったら重大な職務怠慢で日銀総裁というか政策委員会委員としての適格性に重大な疑義がもたれるような発言だし、咄嗟に出た言い訳にしたって言葉遣いが完全にダメ、というまあとんでもないものだし、他の政策委員に対しても失礼な話だし、まあ滅茶苦茶な話なんですよね。

でもってあの「気が付かなかった」云々は何なのかという話を質疑の全体を通して再確認してみましょう。

『(問)一点目はですね、先ほどの総裁の冒頭のご説明でも、物価安定目標の確度が少しずつ高まっているという、そういう表現されましたけども、11 月の名古屋の講演でもですね、確度が少しずつ高まっているとおっしゃいましたけど、11 月から現時点において、その後入ってきたデータとか情報を含めて、距離感がどのぐらい縮まっているのか、その辺の認識を教えてください。』

この類の質問が何度も今回出ていました。まあ何で何度も出たのかと言えば皆様もご案内の通りではありますが、この回答に見られますように「マイナス回答」が連発していたというのが今回の会見では際立っていましたので「話が違うじゃないか」となっている、というのもあると思います。

つまりですね、この質問した記者さんのおっしゃるように、「確度が少しづつ高まっている」というような前向き発言をして、さらに例のチャレンジングとかのように、物価目標達成に向けた前向きな見方を強めつつある、という情報発信が続いた後に、今回の決定会合ではいきなり戦線大後退みたいな発言になってしまっているのが、まあ記者の皆様もそうですけど、我々だって訳分らん訳で、訳分らんからあんなに踏み上げ(と思ったら昨日と昨晩で今後はちょっと先物下がっていますが)の巻になっているわけですよ。

でもって質問の後半は昨日引用した声明文文言の問題。

『もう一つはですね、ちょっとこれ確認なんですけど、本日の声明文で、物価の先行きについて、総裁もご説明されましたけども、消費者物価の基調的な上昇率について、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率が高まるもとで、物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくってところで、10 月にはですね、見通し期間終盤にかけてっていう文言が入ってましたけども、この文言が抜けたということなんですけども、これは見通し終盤ってことですから、25 年度を待たずにも物価安定目標の基調的な物価上昇率が高まっていくと、そういうふうにみていらっしゃるのか、ご確認をお願いします。』

ということで本日は回答の頭から引用します。

『(答)関連するご質問ですので、両方合わせてお答えしてみたいと思いますけれども、ここのところのデータをみて、物価に関する見方はどう変化したかというご質問だと思いますけれども、私どもは時々使っています表現で、「第一の力」とか「第二の力」っていうのがありますけれども、「第一の力」の方をみますと、様々な指標等から、ようやくピークアウトしつつあるかなという感じがみえるかと思います。例えば食料品等の価格の落ち着きであります。これに対して「第二の力」の方ですけれども、これはサービス価格が緩やかに上昇しているということ等から判断しまして、少しずつ上昇が継続しているというふうにみています。』

そもそもこの「第一の力」「第二の力」って意味不明概念にも程があって、マクロ経済学的にロバストな概念を使っている訳でもないし定義もあいまいだし、というものなんですが、植田総裁学者なのにこういうインチキ概念で説明するの恥ずかしくないんでしょうかと思ってしまいますわ。

『この点、第二のご質問ですけれども、私どもの表現ぶりが、見通し期間終盤にかけて高まっていくというふうに前、書いていたところが抜けているというご指摘ですが、ちょっと気付かなかったんですが、そこについては特に見方を変えたということではなくて、非常に大まかに言えば、これまでの見方に沿って上がってきている、「第二の力」のところですが、というふうに考えています。ただ、物価安定目標を十分な確度を持って見通せる状態にはまだ至っていないという最初に申し上げた判断に、現状ではあります。』

昨日引用した最初の方の質疑でもそうなのですが、とにかく今回の質疑応答はひたすら「物価安定目標を十分な確度を持って見通せる状態にはまだ至っていない」の連発なんですよね。ですからまあ植田さんの説明を真に受けるとすれば、残念ながら声明文の文言削除は何の意味もありません、という結論に達してしまう訳です。


・「ゴールポストまた動かすのか」とか質問されているの巻

この直後の質疑。これも「うっかり言ってしまった」だけを昨日ネタにしましたが、全文読んで見ますとまあ見事な全否定モードになっておりまして、

『(問)先ほどの基調的な物価上昇率がですね、2%に向けて徐々に上昇する確度が高まっていると、そうおっしゃったわけですけれども、そうであれば、かねがね総裁が指摘しておられる物価目標実現に向けた判断の閾値みたいな部分ですね、そこに向けて差し掛かっているのか、そうした状況がみえてきているのか、総裁がみえている風景みたいなものを教えて頂ければと思います。これが一点目です。』

『二点目なんですけども、先ほどご説明があった賃金から物価への波及についてです。来年の賃上げの上にですね、一段と高いハードルが設定されているようにも思うのですが、』

こういう質問をされている時点でもお察しだし、まあ債券市場(夜間取引の先物)も思いっきり会見で反応していた訳ですが、とにかく今回の会見って「政策修正全否定コース」の説明に終始していたのがドイヒーな訳でして、これがまだ「物価目標達成に向けて次第に機は熟しているように見えますが、まだこれこれの理由によってマイナス金利の見直しなどは行わない」位の説明にとどめておけばいいものを、「物価目標達成を十分な確度で見通せる状態ではない」という否定の連呼で入って来たんですよね、いやそこまで否定する理由ってあるのか???????って思うんだけど。

でまあそんな回答が続くから質問する方も「またこの人達ハードルを動かしてるんじゃないの」ってイヤミを入れたくなりますわな。

『来年の賃上げの見極めと、賃金から物価への波及の見極めにはタイムラグがあるのでしょうか。来年の賃上げに確証が持てた段階でも、それが物価に反映されるかは、更に見極めが必要とお考えなのか、総裁のご所見をお願い致します。』

ということで、おまらまた何か言い出してゴールポスト動かす気なのかと聞かれまして、

『(答)これも関連する二つのご質問だと思いますが、うっかり前回閾値と申し上げたんですけれども、』

昨日もネタにした奴ですが、「うっかり」って何だよという感じですが、これつまり「閾値とかいう言葉使ってしまったから何かに紐付けて説明しなくなると行けなくなったので失敗でした」っていう事を端的に口ポロリしたと思うのですが、だとすると植田さんもまあ誤魔化す気満々な人である、ということなのでもう氷見野総裁でお願いしたいわと思いました。

『それとの関係で、現在高まった確度がどれくらいかというご質問が最初のご質問の一部だと思いますけれども、感覚的なものでしかないですけれども、確度は少し上がってきているけれども、閾値に達するまでにはもう少しデータや様々な情報をみたいなというところでございます。』

どういうデータですかねえ、というと、

『その際、何をみたいかという点になりますと、先ほど申し上げたことと重なってしまいますけれども、賃金のこれからの動き、あるいはこれまでの賃金の動き、あるいは今後の賃金の動きの価格への波及ということに基本的にはなるかと思います。』

この前の氷見野さんの金懇では「総合判断」だったのに植田さん完全にこの説明だと賃金の連呼で賃金ターゲットでもやってるのかという説明になっていますね。

いや賃金ばっかり思いっきり見ますよ、だったらそれはそれで主張を一貫してくれないと、こう言いながら別の場所では総合判断みたいなことを言い出すのがもう酷いんだよな。

『それぞれについてデータや情報が連続的に入ってくるものですので、どこまでみれば十分だ、どこまでみないと不十分だ、ということはなかなか前もっては言いにくいかなというふうに思います。』

ひたすら逃げの一手でした。


・結局この人たちの判断基準が全然明確じゃないのが毎回サプライズになる元凶でしょ

さて、上記のようにやたら「賃金と物価」の話しばかりをしている植田さんですが、じゃあ賃金ターゲットしていますとでも言えば良いんですが、

『(問)先ほど来総裁が、政策変更の条件、その前提として持続的・安定的な物価上昇の実現可能性を判断するのに企業業績ですとか労働需給、物価から賃金への波及、賃金から物価への波及、特にサービス価格と様々なデータについてご紹介されましたが、この中で、他のものでもいいんですけれども、総裁が今の段階で丹念にみたい、逆に言うと、なかなか確度があんまり高くない、現時点ではですね、それなので時間をかけてみたいというデータ・情報は何でしょうか。』

って質問が(このほかにももう1回)飛んでいるんですよね。

回答の方は

『(答)これは、今ご指摘頂いたデータ全部というふうに、更にそれ以外のデータも含めてですね、お答えせざるを得ないかなと思います。毎日データが発表される毎に、私なりにそれまでの見方と突き合わせて分析をしているところでございます。』

って言ってるんですが、じゃあ何でこういう質問が出たのかというと、これまた昨日ネタにした部分になりますが、会見質疑の最初の方で植田さんこういう説明してたんですよね。

『(問)幹事社からの質問は二問です。賃金上昇を伴った 2%の物価上昇の持続的・安定的な達成、賃金と物価の好循環への距離感について、総裁のお考えをお教えください。達成に向けた確度は高まっていますでしょうか。』

『(答)最近発表されました 12 月短観等、各種統計から賃金を巡る環境をみますと、労働需給が一段と引き締まる方向にあることや、企業収益の改善が継続していることが確認されます。また、来年の春季労使交渉に向けた動きをみると、労働組合からは今年を上回る賃上げを要求する方針が示されているほか、大企業を中心に、一部の経営者から賃上げについて前向きな発言もみられています。また、物価情勢をみますと、既往の輸入物価上昇の価格転嫁の影響が徐々に和らいでいる一方で、サービス価格等は、人件費上昇なども背景に、緩やかに上昇幅を拡大する方向にあります。もっとも、ヒアリング情報によると、先行きの経済情勢に対する不確実性が高いこともありまして、現時点で、来年の賃上げについて、方針を固めきれていない先も多くなっています。また、価格設定面においても、中小企業を中心に、人件費や間接費の上昇の販売価格への転嫁については容易でないとの声も聞かれています。こうした点を踏まえますと、基調的な物価上昇率が、2025 年度にかけて物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まってきているとは思いますが、先行き、賃金と物価の好循環が強まっていくか、なお見極めていく必要があると判断しています。』

でしたわな。


ということで、最初の部分ではやたらといろんなもんをだして「総合的に判断しています」って説明をしている(その結果ゼロ回答でした、というのは昨日申し上げた話ですね)ので、さっきのような質問が飛んでくるわけですが、今しがた引用した植田総裁の発言を再掲すると、

『それとの関係で、現在高まった確度がどれくらいかというご質問が最初のご質問の一部だと思いますけれども、感覚的なものでしかないですけれども、確度は少し上がってきているけれども、閾値に達するまでにはもう少しデータや様々な情報をみたいなというところでございます。』

『その際、何をみたいかという点になりますと、先ほど申し上げたことと重なってしまいますけれども、賃金のこれからの動き、あるいはこれまでの賃金の動き、あるいは今後の賃金の動きの価格への波及ということに基本的にはなるかと思います。』(再掲)

ってなってて、賃金と物価の話しかしていない、という状態になっておりまして、この人達真面目に分析しているのかというのが疑わしくなるわけですよ、だって同じ「物価安定目標判断の見極め」に関する質問で何でこんなに極端に違う回答が出てくるわけなの???????って話ですよね。



まあ黒田末期からそうなのですが、とにかく植田さんになってから更にこのロジックの欠如っぷりが酷くて、正直この人たちの行動を理詰めで解釈できないというヲチャーも憤怒する展開になっておる訳で、いやもうお前ら何見て判断してるんだという説明すら一貫してできないのかと小一時間問い詰めたい訳です。




・それはひょっとしてギャグで言っているのか?????(煽り用画像の貼り付けは割愛)

こんな質疑がありました。

『(問)(前半割愛)二点目なんですけれども、緩和の修正、つまり金融緩和の度合いを少し落としていくときというのは、政策変更については市場にサプライズがあってはならないという見方があります。総裁もそのようにお考えなのか、そうだとすれば現行のフォワードガイダンスを市場へのメッセージの伝え方としてどう位置付けているのか、こちらもあまり有効なものではないのか、どのような市場とのコミュニケーションがサプライズを起こすため望ましいのか、そこをお願いします。』

最後の「起こすため」はご愛嬌だと思いますが。

『(答)(後半割愛)それから、政策修正に関するサプライズについてどう考えるかという二番目のご質問ですが、これはいつもお答えしている通りですけれども、政策変更、政策修正は、毎回の決定会合で議論して決まるものですので、1 回の決定会合からその次の決定会合までに新しい情報がたくさん入ってくれば、それはその次の決定会合で政策修正や政策変更があり得るということですし、それは前の会合では必ずしも予想できなかったものということになりがちですので、サプライズは必ずしも避けられないということに一般論としてなるかと思います。』

ほうほう。

『ただし、新しい情報をどういうふうに使って政策判断をしていくのかという基本的な考え方については、常日頃からできる範囲で丁寧にご説明する、している、しようと努めているつもりですので、それをお使い頂いて、皆さま方の方で予想して頂くということは、完全にはできないにしても、ある程度できるのかなというふうに思っております。』

・・・・・・・・・・・・・・・それはひょっとしてギャグで言ってるのか???????????????

まあ真面目にそう思って言ってるんだったらちょっと今からそこのドラム缶に乗ってマリアナ海溝探検の旅に行ってきてくれませんかねえ。



・カシュカリ総裁の頭髪程度にこうご期待の主な意見

『(問)先ほど 2%目標の達成に向けた閾値が少しずつ高まっているというお話でしたけれども、実際に今回のMPMでマイナス金利の解除に向けた議論がどの程度なされたのかどうかというのをお伺いできれば幸いです。10 月会合で出口に向けた情報発信が重要との見方が主な意見でありましたけれども、今回の会合でもそういったディスカッションがあったのでしょうか。』

『(答)一般論として、今後の金融政策運営に関していろいろな議論がございましたが、具体的なところについては、もうすぐ出ます主な意見をご覧頂ければと思います。』

wwwwwwwwwwwwwさてどうなるのやら。

まあ何ですな、まだ月曜の経団連でひっくり返るという9月会合無回答からの10月YCC再柔軟化という強引な流れの可能性はない訳ではない(さすがに年始1週目の3連休明け直後までに何もなかったら何も無いでしょうけど)のですが、もしかしてもしかして、氷見野さんの金懇→年末の植田さん経団連→年始にどっかのメディアでインタビュー、みたいなホップステップジャンプみたいな地均しを考えていたんだったらまだワンチャンあるで、と無い気力を振り絞るのは良いんですが、あんまり振り絞って抜け殻になっても困るのでそこはまあ月曜の朝10時くらいから気力を振り絞ろうかと思いますwww

まあ植田総裁の国会答弁のせいで予定が狂ってホップ(大分金懇)ステップ(国会)玉砕(MPM)になっているのが悲しい訳ですが、さてさてどうなるのでしょうか。


・・・・・・てかここまで綺麗におぜん立て揃っていたのに何でマイナス解除の予告ホームランを打たなかったのか、ってのがマジでよく分からんです相変わらず。







2023/12/21

お題「「サプライズ」はマイナス解除の全否定の方でした/総裁記者会見より」

あーここでもこんな解説があったわ
https://news.ntv.co.jp/category/economy/8ec22f133b7e4da787ebf48c50ccb87e
【解説】日銀・政策維持の背景は…政治混乱の影響は? マイナス金利解除はいつ?
日本テレビ放送網
2023年12月19日 16:57

『一方で、1月にマイナス金利解除をして、もし、銀行が変動の住宅ローンの金利を引き上げた場合、実際に借りている人の金利があがるのが来年6月ごろになると見られます。政府の経済対策の定額減税と時期がかぶって効果を減らしてしまうのではないかと。政府の政策との整合性は問われます。』(上記URL先より)

あのさあ、住宅ローン借りてる人の金利よりも金融緩和で不動産価格が上昇して若い世代を中心にした一次取得者の住宅取得が以下同文ってのもあるし、大体からして預金金利が上がったら大幅預金超過の個人セクターにも恩恵があるという面の話がねえとか、どういうポンコツ解説をしているんだと思うんだが、まさかとは思うがこの「マイナス金利解除すると住宅ローン金利ガー話」って実は日銀大本営がメディア向けにこっそりと大宣伝してるんじゃないか疑惑を(昨日の日経と言い)大メディアでこの説明が横行するのを見ると思ってしまう訳ですよ。何といったって今の大本営、政策を変更しない理由付けのためには猫の手でも借りてきて屁理屈を構築するのが仕様になっていますから(個人の妄想です)。


〇サプライズはマイナス金利解除ではなくてマイナス金利解除全否定の方だったという悪態

昨日の債券相場ちゃんorz
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/LQFKUY372BKCLJUEOPMFBIB4RI-2023-12-20/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅続伸で引け、長期金利0.55% 約5カ月ぶり低水準
ロイター編集
2023年12月20日午後 3:18 GMT+9

『国債先物中心限月3月限は前営業日83銭高の147円02銭と大幅続伸して取引を終えた。一定の警戒感があった日銀金融政策決定会合と総裁会見が無風通過し、買い戻しが優勢だった。現物市場の新発10年国債利回り(長期金利)は同9.0ベーシスポイント(bp)低下の0.550%と、7月末以来約5カ月ぶり低水準を付けた。』(上記URL先より、以下同様)

ということで先週金曜日の引けが0.705%だった10年カレントが0.550%ですわよ奥様。

『きょうの国債先物は、夜間取引で大幅高となった流れを引き継ぎ、1日を通じて、買い優勢の堅調な展開が続いた。前日の日銀会合と植田和男総裁の会見が無風で通過したとの受け止めから、買い戻しの動きが広がった。』

この「無風」ってのは表現としてどうなのかと思う訳ですよ。だって「無風」だったら相場は大きな反応はしない筈で、「サプライズ」だからこそ相場は大きな反応をするんですよね。

『また財務省が実施した「残存期間5年超15.5年以下」の流動性供給入札は「無難からしっかりめの結果」(国内証券)となり、相場の追加的なサポートとなった。』

というのとまあある程度想定されていたかもですが超長期発行が減額になる話とかその辺の話もあったかもしれませんが、まあ基本的には火曜日のゼロ回答声明文に加え、植田総裁がまたハトハトジジイにクラスチェンジというか退化しやがった、という「サプライズ」が発生したということですよこんなの。

なので、今回の決定会合捕まえて「サプライズのマイナス金利解除などの動きが無かった」とかいうのは残念ながら市場を見ていませんねという話でありまして、これだけ債券市場の踏み上げの動きになったのは、円債市場でマイナス金利解除(予告ホームランなり強めの示唆なりを含む)がどれだけ期待されていて、皆が待っていたのか、ということを示すものでありまして、ここまで盛大に市場の期待の逆をサプライズでぶっこんでしまいますと、まあ日銀のコミュニケーションに対する不信は更に高まってしまっている訳ですよ、何とかストの方面は知らんけど、相場がこう動いたってことは実際にポジションを持って相場に対峙していた人達からみたら日銀の行ったことはサプライズだった、って話なんですからねーーーーー。


パウエルジジイの今回のコミュニケーションというか会見一発目のあれ(一昨日ネタにしましたようにあれ会見後半で少しトーン下げて説明してたみたいですけど完全に時既にお寿司状態でしたよね)も大概にドイヒーコミュニケーションでしたが、まあそうはいっても市場の利下げ織り込みの背中を押す方向で、まあ時期の問題がアホたれとは言え、方向性はここまでのコミュニケーションと同じだから市場もノリノリで乗ってしまった訳ですけど、日銀の場合はそれこそ経団連も銀行業界も日商も金融施策正常化オッケーモードで、おまけに市場も構えていた、という絶好のおぜん立てができているこのタイミングでゼロ回答した挙句に会見でハトハトジジイがマイナス回答をする、というこの日銀の感度の悪さったら呆れて物も言えませんわな(言ってるけど)。


ということでハトハトジジイのハトハト踊りでも鑑賞しますか胸糞悪いけど。


〇トサカに来ながらも仕方がないのでハトハト会見を眺めるの巻

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231220a.pdf
総裁記者会見
――2023年12月19日(火)午後3時30分から約60分

・最初の質疑で完全に勝負ありましたよね

最初、と言っても最初は総裁による説明なのでその次の幹事社質問からです。

『(問)幹事社からの質問は二問です。賃金上昇を伴った 2%の物価上昇の持続的・安定的な達成、賃金と物価の好循環への距離感について、総裁のお考えをお教えください。達成に向けた確度は高まっていますでしょうか。』

と聞いたのですが、最初からいきなりマイナス金利の話をしないで、1月会合に向けて何らかの含みを持たせる発言が出来るような質問を持ってきたのは幹事社優秀。

でもってその回答ですが、

『(答)最近発表されました 12 月短観等、各種統計から賃金を巡る環境をみますと、労働需給が一段と引き締まる方向にあることや、企業収益の改善が継続していることが確認されます。また、来年の春季労使交渉に向けた動きをみると、労働組合からは今年を上回る賃上げを要求する方針が示されているほか、大企業を中心に、一部の経営者から賃上げについて前向きな発言もみられています。また、物価情勢をみますと、既往の輸入物価上昇の価格転嫁の影響が徐々に和らいでいる一方で、サービス価格等は、人件費上昇なども背景に、緩やかに上昇幅を拡大する方向にあります。』

と、ここまでは威勢のいい言葉が並んでいる、と言いたいのですがこの時点でなんかもう棒読み感の漂う口調だった(日銀公式ユーチューブでアーカイブ見てちょ)のでいやーな予感はしましたが、

『もっとも、ヒアリング情報によると、先行きの経済情勢に対する不確実性が高いこともありまして、現時点で、来年の賃上げについて、方針を固めきれていない先も多くなっています。また、価格設定面においても、中小企業を中心に、人件費や間接費の上昇の販売価格への転嫁については容易でないとの声も聞かれています。』

あっ・・・・・・・(察し)

『こうした点を踏まえますと、基調的な物価上昇率が、2025 年度にかけて物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まってきているとは思いますが、先行き、賃金と物価の好循環が強まっていくか、なお見極めていく必要があると判断しています。』

はい1月会合に向けた前向きな含みが一切ありません、、

幹事社次の質問でマイナス金利の話をしておりますが、

『(問)質問の二点目です。金融市場では、日本銀行が来年にもマイナス金利政策の解除やイールドカーブ・コントロールの撤廃観測が高まっていますけれども、安定的な物価上昇の達成見通しを判断するうえで、どのようなデータや情報を重視して政策変更を検討するのか、改めて総裁のお考えをお聞かせください。』

『(答)繰り返しになりますが、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現を見通すうえでは、賃金と物価の好循環が強まっていくか確認することが重要と考えています。物価から賃金への波及の面では、例えば、労使交渉を含めた賃金の動向、その前提となる労働需給や企業収益動向などを確認していきます。賃金から物価への波及の面では、企業の価格設定スタンスや様々な物価指数の動向、特にサービス価格の動向等をみていきたいと考えています。いずれの側面についても、データだけでなくヒアリング情報を含め、丹念に点検していくつもりです。』

この質疑、質問の頭がマイナス金利解除なのに途中から物価安定目標達成判断に関する質問になっているのが話をややこしくしていて、マイナス金利解除と物価安定目標達成判断を切り離して実施する、という選択肢を考えない質問になっているから、回答する方は物価安定目標判断だけの話をするもんだから、この質疑応答で与えられる印象って更に「1月マイナス解除を全否定」に聞こえてしまうんですよね。

ということでこれ聞いた所でアタクシは真面目に聴くために装着していたヘッドセットを外してヘッドライン見物に切り替えたのでありました。途中ちょっとだけ聞き直しましたが昨日申し上げたように。


・次に登場した1月会合に向けた前向き発言用の助け舟も撃墜されるの巻

次の質疑(の前半だけ)

『(問)二点お願いします。先ほどおっしゃったように好循環の見極めという、なお時間が必要というお考えでしたけれども、その確度を上げていくためには、もちろん春闘での賃上げが重要だと思うんですけれども、その確度に関しては、例えば年始には賀詞交歓会などがあって企業が前向きな発言があったりとかすると思うんですけども、それだけではなくて、やはり春闘における企業側の回答っていうのをもってその確度を高める、確認する必要があるかどうか。これが一点目です。(後半割愛)』

これはまあどっからどう見ても「全部のデータがそろわなくたって判断できるんじゃないか」と質問することによって1月会合に向けた前向き発言を引き出そうというある意味助け舟が航行してきた訳ですが・・・・・・・・・・・

『(答)一点目ですけれども、先ほど申し上げましたように、今後の賃金動向とか賃金の物価への波及とか、データだけでなくてヒアリングも重視していくという姿勢でございます。そういうことですので、どの時点のどのデータ、あるいはどういうイベントをもって十分だ十分でないということを、それだけで決定してしまうということではなくて、いつも申し上げていることで恐縮ですけれども、総合判断にならざるを得ないということかなと思います。(後半割愛)』

この回答、前の流れが前のめり系の回答だと別の見え方をする可能性はまああるんですけど、冒頭からの流れが1月会合に向けた何らかの含みを一切出さないという流れになっているので、これも結局は1月会合に向けた前向き発言引き出しのための助け舟を見事に撃沈させたという回答になっております。


・チャレンジング発言の真意の言い訳が乳幼児かというゴミ説明でクソジジイいい加減にしろ以外の感想が無い

まあ昨日も言いましたけどトサカに来るので再掲みたいなもんw

ちなみにちょっとだけやる気だすかと思ってヘッドセット装着し直した瞬間がこの質問でホットコーヒー吹いたわ。

『(問)二問お尋ねします。先日ですね、国会答弁で総裁は今後の取り組みについて所見を問われ、年末から来年にかけて一段とチャレンジングであると答弁されました。市場の一部はマイナス金利の早期解除の意気込みと受け止めました。この発言に金融政策の早期正常化を示唆する意図はあったのか、確認ですが教えてください。(後半割愛)』

でもってこの言い訳。

『(答)一点目ですけれども、二週間前ですかね、国会でその時のやり取りとしては、今後の仕事の取り組み姿勢一般について問われましたので、二年目にかかるところですので、一段と気を引き締めてというつもりで、先ほど引用して頂いた発言を致しました。金融政策については、同じ委員とのやり取りの中で粘り強く金融緩和を継続するというふうに述べたところです。(後半割愛)』

凄まじい破壊力の言い訳の上に更に「粘り強く金融緩和を継続するというふうに述べたところです」とまで言って完全否定をする、というこれまたマイナス金利解除に向けた意気込みがマイナスであるという事を堂々と表明する発言をした訳ですわ。

最初からその積りなら余計なこと言うなこのジジイとしか言いようがない訳だし、実はその積りだったけれども今回はショパンの事情で羽交い絞めにされたんだったらもうちょっと言いようがあるだろうと思う訳で、こう発言が極端にブレてしまいますと、もしかしたら「おい婆さんや、朝めしはまだかいのう」状態なのかと言いたくなってしまうレベルなんですけど勘弁して貰えますかねえ、というお話。まあ朝めしはまだかいのう状態ではないのは見れば分かるので、言葉に対する感覚に絶望的な欠点があるんだと思うのですが、だったら変な事しゃべらせないためにも表に出るときはつば九郎みたいにフリップに言葉書いて説明すれば不規則発言しなくて済むんじゃないですかねえ(白目)。


・このジジイもう発言はフリップ芸の方が良いんじゃないかというもう一つの事例

この質疑はまあ内容自体は今までと同じなんですけどね。

『(問)先ほどの基調的な物価上昇率がですね、2%に向けて徐々に上昇する確度が高まっていると、そうおっしゃったわけですけれども、そうであれば、かねがね総裁が指摘しておられる物価目標実現に向けた判断の閾値みたいな部分ですね、そこに向けて差し掛かっているのか、そうした状況がみえてきているのか、総裁がみえている風景みたいなものを教えて頂ければと思います。これが一点目です。(後半割愛)』

『(答)これも関連する二つのご質問だと思いますが、うっかり前回閾値と申し上げたんですけれども、それとの関係で、現在高まった確度がどれくらいかというご質問が最初のご質問の一部だと思いますけれども、感覚的なものでしかないですけれども、確度は少し上がってきているけれども、閾値に達するまでにはもう少しデータや様々な情報をみたいなというところでございます。(以下割愛)』

>うっかり前回閾値と申し上げたんですけれども
>うっかり前回閾値と申し上げたんですけれども
>うっかり前回閾値と申し上げたんですけれども

つば九郎でもドアラでもハリーホーク(は田村審議委員の方が似合いますかそうですか)でもいいのですが、総裁には会見や国会答弁の際には着ぐるみを着せて、フリップ芸で会話をさせた方がよろしいんじゃないでしょうかwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww


・実質金利の話を持ち出すなら何でマイナス金利解除が物価目標達成判断と1対1対応になるんでちゅかねえ

これはフーンとおもいましたけど。

『(問)不確実性が高い中で、もしマイナス金利解除という政策変更が来年以降、もし行われたとしても緩和環境というのは維持されていくべきかどうかというのの、現時点でのお考えをお伺いできますでしょうか。』

まあモロに実質金利の観点での質問ですが。

『(答)それについては先ほどお答えした質問とかなり重なるところがあると思いますが、出口のときに今使っているいろんな政策手段をどういう順序でどういうスピードで修正していくかということについて、現状まだ具体的にこうであるという発信ができる状態にありませんので、確固たることは申し上げられないですけれども、マイナス金利、仮に解除した直後ということだけをみますと、今−0.1%ですが、これが少し上がるということですから、そこだけをみますと実質金利のようなものを考えていますと、インフレ期待はそこそこプラスで大きい値をとっていますので、実質金利はマイナスということで緩和の状態は維持されるということだと思いますが、それはどの程度の期間そうなのかということは当然金利の上昇スピードに依存しますし、現時点でどれくらいであるということは申し上げにくいというふうに取りあえず言わざるを得ません。』

そもそも政策金利の方はお前が決めるんだから何じゃその後半の説明はという話ですが、これを言い出すんだと、2%達成判断と切り離して「緩和度合いの調整」という理屈(なんならそこにリバーサルサーとの考えを持ち出せばなお結構)でマイナス金利解除可能だし、そもそもYCCの柔軟化の中でも「実質金利マイナスで依然として緩和的」って言ってるんだから、マイナス金利だって調整できるはずなんですよね。これを言ってるのになぜかマイナス金利解除を親の敵みたいな扱いにするの意味不明にも程がある。


・声明文の基調的物価見通しの所に関する質問という良問に対する愚答キタコレ

『(問)(前半割愛)もう一つはですね、ちょっとこれ確認なんですけど、本日の声明文で、物価の先行きについて、総裁もご説明されましたけども、消費者物価の基調的な上昇率について、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率が高まるもとで、物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくってところで、10 月にはですね、見通し期間終盤にかけてっていう文言が入ってましたけども、この文言が抜けたということなんですけども、これは見通し終盤ってことですから、25 年度を待たずにも物価安定目標の基調的な物価上昇率が高まっていくと、そういうふうにみていらっしゃるのか、ご確認をお願いします。』

これ当然聞きますよね、良い質問です。

・・・・・・・しかしそこに驚愕の回答が!

『(答)(前半割愛)この点、第二のご質問ですけれども、私どもの表現ぶりが、見通し期間終盤にかけて高まっていくというふうに前、書いていたところが抜けているというご指摘ですが、ちょっと気付かなかったんですが、そこについては特に見方を変えたということではなくて、非常に大まかに言えば、これまでの見方に沿って上がってきている、「第二の力」のところですが、というふうに考えています。ただ、物価安定目標を十分な確度を持って見通せる状態にはまだ至っていないという最初に申し上げた判断に、現状ではあります。』

>書いていたところが抜けているというご指摘ですが、ちょっと気付かなかったんですが
>書いていたところが抜けているというご指摘ですが、ちょっと気付かなかったんですが
>書いていたところが抜けているというご指摘ですが、ちょっと気付かなかったんですが

・・・・・・・・オイコラてめえ馬鹿にしてるのか、というふざけた回答なのですが、これガチで言ってるんじゃなかろうか疑惑がありまして、事務方と総裁のコミュニケーション大丈夫なのかと思ってしまいましたよどうなってるんだよこれ。

でまあその後に「そこについては特に見方を変えたということではなくて」ってありまして、その言葉を真に受けて考察しますと、展望レポートって向こう3年間程度の見通しを書いているのに対しまして、中間評価にあたる途中の決定会合で示されている見通しってのは、厳密な定義は無い筈なのですが、大まかにいって向こう半年とか1年程度の期間を考えて作成している、というしきりだった筈なんですよね。なので、今回は時期の明示を行うのではなく、定性的に基調的な物価が上がっていくという表現にしただけ、ということ、という整理になっているんじゃねえのかという所ですかね。もうちょっとこうワーディングに気を使えよとは思うけど。


ということで今朝はこの辺で勘弁。





2023/12/20

お題「9月会合パティーンという可能性はまだワンチャンあるものの・・・・・・・・」

先生!FEDの前に日銀に対して指摘をお願いします!!!!

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-19/S5X952DWLU6800
FOMCのコミュニケーション、「かなり」問題がある−エラリアン氏
Carter Johnson、Jonathan Ferro
2023年12月20日 3:33 JST

まあ日銀のことなど知るかアホといわれますかそうですかorzorz


〇いやもうコミュニケーション無茶苦茶だろこいつら・・・・・・・・・・

・貫禄のゼロ回答どころか会見でマイナス回答までしやがったので債先は上がるわ円安だわ

昨日の決定会合はご案内の通りの貫禄のゼロ回答、どころか記者会見でまたまたハトハトジジイが復活してしまい寧ろマイナス回答かよ!!!!!という世界になりましたので・・・・・・・・・・・

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報

長期国債先物
限月:24年3月限
取引日:12/20

始値:146.17(12/19)(15:30)
高値:146.88(12/19)(18:35)
安値:146.06(12/19)(15:36)
現在値:146.76(12/20)(05:04)
前日比:+0.57
取引高:13,890

とまあそういうことでハトハトジジイに戻ったクソジジイのハトハト踊りのせいでこの有様となってしまいました。為替市場ちゃんの方はと言えば

https://www.bloomberg.co.jp/quote/JPY:CUR
JPY:CUR 143.94JPY
(朝5時ごろの数字です)

こちらはハトハト踊りのあとロンドン市場が本格的におっぱじまったあたりで144円半ばを超えて円安が進行して「この際円安バンバン進行して日銀がまたションベンちびる展開になった方が面白いので円安カモーン」と喜んでいたのですが(おいおい)、アメリカン金利の方が下がってしまったので戻ったのかいな、という感じですか知らんけど。

まあアレですよ、これからのテーマは「ドル安に負けない円安」を祈念して日銀が円安を招く疫病神で保身のために社会厚生を考えないインチキ野郎であるということが人口に膾炙していき世論が日銀批判に向かわんとまあこりゃ駄目だコイツラ、という風に思いましたわ、ちゃんちゃん。


・しかしこの言い訳は酷かった(「チャレンジング」の言い訳)

昨日の会見、まあ正直最初ちょっと聞いてから聞く気を失ってヘッドラインだけ追っていたのですが、そうはいってもちょっと聞くか、とか思ったところがちょうど「チャレンジング」発言の意味は何だったのかという質問でした。

なんせNHKが事前に
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231217/k10014288361000.html
総裁の“チャレンジング”発言受けた日銀の決定会合の焦点は
2023年12月17日 13時00分

特集の見出しがこれな訳ですが、当日はこんな速報をながしていましてですね。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231219/k10014291361000.html
【詳細】日銀 植田総裁会見 チャレンジング意味は? 緩和は維持
2023年12月19日 17時05分

『日銀は、19日まで開いた金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を維持することを決めました。市場では、日銀が早期に金融政策の正常化に向けて動くのではないかという観測も出ていましたが、いまの金融緩和策を粘り強く続ける必要があると判断しました。

午後3時半から行われた植田総裁の会見の様子を詳しくお伝えします。』(上記URL先より、以下同様)

でまあ詳しくお伝えしたのが時間順に下から始まる(速報方式なので)のですが、何気に今朝見たら「目次」とかあって、

『目次

注目 今後の物価の見通しは…

注目 チャレンジングの意味は…』

というのにはクソ笑いました。いいぞNHK、

『注目 チャレンジングの意味は…

植田総裁は、今月7日に国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言した意図を問われたのに対して、「国会でのやり取りとしては今後の仕事の取り組み一般について問われたので2年目にかかるところなので一段と気を引き締めてというつもりで発言した。金融政策については同じ委員とのやりとりの中で粘り強く金融緩和を継続すると述べたところだ」と述べ、早期の金融政策の修正を意図した発言ではないことを明らかにしました。』

おいこらふざけるな小学生でもそんな言い訳しねえぞいい加減にしろ。

・・・・・ということで参議院の会議録みようと思ったのですが、これがまた使えねえことに参議院まだ7日の財政金融委員会の会議録をアップしてやがらないのですが、例えばブルームバーグの記事を見ますとですね、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-07/S59QO5DWX2PS01
金融政策運営、年末から来年かけ一段とチャレンジングに-日銀総裁
伊藤純夫
2023年12月7日 10:12 JST 更新日時 2023年12月7日 13:17 JST

『植田総裁は4月の就任以降の金融政策運営は、さまざまな不確実性が高い状況の下で「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と語った。その上で、「丁寧な説明、適切な政策に努めていきたい」と語った。』(この部分直上URL先ブルームバーグの12/7記事より)

って言ってて、どこがどう「仕事一般の話」なのか、「2年目に入るから気を引き締める」とか言ってたのかという話な訳ですし、こんな回答をしたとかいう説明のようだが質問した議員の先生のご感想をお伺いしたい所ではありますな。

いやさ、マジでお前舐めてんのかこのクソジジイという話で、やる気あるならある、ないならないで話は首尾一貫して説明しろと思いますし、勿論状況が変化したらそらやるやらないに変化が生じる可能性もあるんだが、例えばFEDだったら今は雇用が基本的に問題ないので「物価」を軸にしていう事がハト転したりするんですけど、軸に「物価」があるのは明確なんですが、日銀の場合はそもそも論としてその「軸」すらない(だって物価を軸にしたら「2%行ってない」というのが普通に詭弁なんだもん)ので、言ってることが支離滅裂で、そのたびにこっちはアホのように振り回されるわけで単なる迷惑集団以外の何物でもない日銀大本営に天罰が下ることを願って止まないところでありますな全くもう。


でまあ会見に関しては会見録が本日でるので明日に続く、ではあるのですが、折角市場が織り込んで待っていたのにゼロ回答どころか会見でハトハトジジイ音頭が炸裂してタコ踊りをおっぱじめるというマイナス回答をぶっこんできやがった訳で、その結果債券も為替も飛んでしまい、これでまたマイナス金利解除を織り込ませに行くのは大変だし、何度も申し上げておりますように制度問題が絡むのでマイナス金利解除はYCCの柔軟化措置と違ってサプライズでぶっこむことができないものなのですから、お前らマジで何考えてるんだよ、というお話ではあります。


・9月パティーンというのはワンチャンあるけど1月を逃しますと・・・・・・・・・

まあそもそも論としてマイナス金利解除するのを「テクニカル調整」で誤魔化して正常化と分離して別の物、として扱った方がマイナス解除後の連続利上げとかそういう話になりにくいのでどう見ても「ゆっくりやる」というんだったらマイナス金利は別物扱いにすればいいものを何故かこいつら分離しやがらないのが頭クラクラ来ますけどまあそれは兎も角。

今回ですけど、9月会合のゼロ回答→会合終わってから何故か急にYCCの再柔軟化っぽい話になる→10月会合で謎の再柔軟化、という訳の分からん流れがついこの前起こりましたが、このアホウどもはもしかするとその再来をやる、という可能性はまあワンチャンのワン位はあるかもしれないんですよね。やる意味は分からんけど。

即ち、1月にマイナス金利解除しなかったら3月なんて期末にできる訳はなく(事前に織り込ませれば可能性なくもないけどマイナス金利を解除するには実務上の準備が必要なので通常の匂わせだけでは厳しいものがある)、4月展望でワンチャンがあるけど、その後は6月7月は日本の政治日程上無理がありそうだし、9月以降は米国が引き締めサイクルの終了に入って来るのはまあ確実じゃろ、という話ですので、今回のチャンスを見送ったのでかなりのナローパスになってしまったというお話になりますわな。

でまあ9月パティーンで今回も来週の経団連講演から突如変なもんでも食ったかのようにマイナス回答の裏をおっぱじめる、というナローパスを重機持ち出して広げる大作戦、というのは考えられなくもないのですが、いやそれ10月にやった強引な手法をまたやったらもう日銀のコミュニケーション完全に崩壊するぞ(現時点で完全に崩壊しているんですけど)という話で、まあ端的に言ってお前ら悪い事いわないからちょっと西方浄土にでも旅立ってこいというコミュニケーションになる訳で、カオスなんてもんじゃねえぞというお話ですぞな。

でまあ今までと違いまして今回って米国の引き締めサイクル終了と引き締めからの正常化が半年あるいは9か月後には見えているというタイミングになっていて、残り時間も少ないというのに何ノンビリやってるんだよと思うのですが、こちらのハトハトジジイはさっきのNHKの記事にありますように「焦って政策変更は不適切」とか抜かしやがって状況の変化に対応してねえのはお前だこのハゲという話で、さすがにこれはもう「コリャダメだ」という声と共に音楽「盆回り」が脳内に流れるの巻となってしまいました、南無三。



・そういえば決定会合終わってすかさず出ていた日経様解説の珍理論ですが

そこらの三流タブロイドが書くなら分かるが天下の日経がこれはないわwwwwwww

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD18DAP0Y3A211C2000000/
日銀、住宅ローンへの影響配慮か マイナス金利解除巡り
2023年12月19日 12:55 [会員限定記事]

・・・・・・・まあ記事の方は例によって会員限定記事なんですが、「住宅ローンへの影響配慮」ってこれ一生政策金利上げない言い訳に使えるというすさまじいもので、記事のタイムスタンプ見ればお分かりのように決定会合結果出たあと割と早く(記者会見より前)に出ていたのですよね。

いやあのですね、住宅ローンへの影響配慮って言いますけど、不必要に過剰な金融緩和を行うことによって資産価格市場のバブル的高騰を引き起こすっての30年前のジャパンでやった話でして、資産価格市場のバブル的高騰が起きるというのはつまりは「これから住宅を取得しようという若い世代」に対しては住宅取得が困難になるという事になる訳でして、変動金利の住宅ローン金利が上がって云々という話と、不動産価格が高騰して住宅の一次取得者の住宅取得が不当に困難になる話と、どっちのほうが社会厚生として重要なのか、というのをちょっと考えてからこの話をしろよという事でありまして、そんじょそこらのイエローペーパーなら兎も角、天下の日本経済新聞様が言うに事欠いてこれを言い出すのかと思いましたし、うっかりすると日銀が利上げを渋る理屈に今度はこの「住宅ローンの影響ガー」とか言い出すんじゃなかろうかと心配になって参りました。

なんてったって「住宅ローンへの影響配慮」って言い出したら未来永劫政策金利上げない言い訳に使えるという万能言い訳にも程があるだけに恐ろしいわ、と思いました、まあ余談ですけど。



〇さて気を取り直して声明文比較でもしてみましょうではないか

ということでまあ悪態の方は今朝はこの辺にしておきまして、声明文の経済物価の話しとか変更の無かったガイダンス文言の話しとかをしましょう。

今回声明文
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k231219a.pdf

10月展望レポート基本的見解
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2310a.pdf

10月声明文(ちょっとだけ使うかも)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k231031a.pdf

9月声明文(ちょっとだけ使う)
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/k230922a.pdf

・政策に変更はないので項番2の現状判断から

項番2は前回展望基本的見解の『1.わが国の経済・物価の現状 』の中間レビューになりますので、ここと比較するのが適切です。

『2.わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(10月展望)

『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。』(10月展望)

ここまで前回と同じですがこの次からちょっと変わる。

『企業収益や業況感は改善している。こうしたもとで、設備投資は緩やかな増加傾向にある。』(今回)

『企業収益は全体として高水準で推移しており、業況感は緩やかに改善している。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加している。』(10月展望)

企業収益の「高水準で推移」が抜けてて、一方で「改善」になっているという上がってるんだか下がってるんだか訳の分からん表現になっております。でもって設備投資に関しては「増加している」が「増加傾向にある」と言い方が奥歯にものの挟まった表現になっていてこれは下方修正されていることを意味する筈です。

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかな増加を続けている。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は緩やかに増加している。』(10月展望)

消費の増加から「着実に」が抜けていて、これまた微妙なのですが、まあこれは「着実に」というポジティブ文言を外しているのだから基本的に下方修正の筈で、公共投資は見ればお分かりのようにこちらも下方修正。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(10月展望)

これは同じ。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは3%程度となっている。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは 2%台後半となっている。』(10月展望)

ここですけど「ひと頃に比べればプラス幅縮小」なのはまあそうなんですが、前回よりも数字が上がっているのに同じように「ひと頃に比べればプラス幅縮小」しか書いていないのインチキだろという感じですが、何せ物価に関しては「2%になっていない」という話の連呼なだけに、上がったという話かきたくないんでしょw

『予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(今回)
『予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。』(10月展望)

ということでここは同じなんだが、しらっと経済の現状認識はさがっているんですよね。


・項番3の基調的物価見通しの所だけ辛うじて光明が・・・・・

項番3の前半は展望の『2.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『(1)経済の中心的な見通し』に該当します。

『3.先行きのわが国経済を展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済を展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果などにも支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。』(10月展望)

今回はしらっと「緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果など」が抜けていて「緩和的な金融政策」が抜けたとはこれは!!!と一瞬喜びたくなるのですが、9月声明文の項番3を見ますと。

『先行きのわが国経済を展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。』(9月声明文)

となっておりまして、単にこれは尺の問題(展望はご案内の通り長尺文章なので)だったりするんですよ残念無念。

『その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(今回)

『その後は、ペントアップ需要や経済対策の効果は和らいでいくものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが経済全体で徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。』(10月展望)

ペントアップ需要や云々は基本的に尺の問題で、言ってることに変化はないです。


物価に関しては展望の『(2)物価の中心的な見通し 』と比較します。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が残ることなどから、2%を上回る水準で推移するとみられる。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、来年度にかけて、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が残るもとで、このところの原油価格上昇の影響等もあって、2%を上回る水準で推移するとみられる。20』(10月展望)

まあ同じですな(違うのは尺の問題)。

『その後は、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。』(今回)
『25 年度については、これらの影響の剥落から、前年比のプラス幅は縮小すると予想される。』(10月展望)

ここも同じ。

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。』(今回)

『この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、見通し期間終盤にかけて「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくと考えられる。』(10月展望)

『消費者物価の基調的な上昇率は、見通し期間終盤にかけて、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていくとみているが、その際には賃金と物価の好循環が強まっていく必要がある。』(10月声明文)

ここが「お??」って感じでして、10月声明文の「好循環」云々が抜けている部分も話題になっていたと思うのですが、そっちはあまり強い意味は無いと思うのよ。というのは好循環云々ってのはその直後の「日本銀行としては、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていく方針である。」に掛かっていると思うので。

それよりは今回おおーと思ったのはその前の「見通し期間終盤にかけて」の文言削除の方で、これは「基調的な物価の見通しが引きあがっている」ということを意味する筈で、意味しなかったらおかしいわという話(前回は声明文と展望の両方に書いてあるものが抜けているので)になりますので、まあ一応物価面に関してはこっそりと上方修正をしている部分がある、という話になりますし、この基調的物価云々って2%達成判断に関連するものなので、まあここは「ほほー」と思いました。(9月声明文には基調的物価云々の表現がないです、声明文見てご確認あれ)


・リスク要因、フォワードガイダンスは不変

項番4に関してですが、こちらは展望の場合は「鏡」に該当する<概要>になります。

『4.リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(今回)

『リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(10月展望)

『4.リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。』(9月声明文)

ついでに9月声明文も出しましたが同じですな。


項番5はガイダンス文言、ご案内のように不変。

『5.日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(今回)

『3.日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。』(10月声明文)

さっきの項番3の所での賃金云々が抜けた、と一部で話題になっていた件ですが、残念ながらガイダンスのこっちの文言が変わっていない以上、項番3の表現は賃金との好循環云々の部分には変化はない、と解釈するのが妥当だと思われます。

『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(今回)

『「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。』(10月展望)

とまあそんな感じですな。「見通し期間の終盤」文言が抜けただけしか楽しみ(??)が無かったわw





2023/12/19

お題「お漏らしも無かったみたいですが再度雑談/1年短国・・・・・/パウエル会見基本的に歯切れが悪いですね」

もりあがってまいりました!!!!!
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231219/k10014292091000.html
安倍派と二階派にきょうにも強制捜査 東京地検特捜部
2023年12月19日 1時33分

『自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部が、安倍派と二階派の2つの派閥側について、19日にも政治資金規正法違反の疑いで強制捜査に乗り出す方針を固めたことが関係者への取材でわかりました。安倍派と二階派では、パーティー収入の一部を収支報告書に記載しない運用が組織的に行われていた疑いがあり、特捜部が実態解明を進めるものとみられます。』(上記URL先より)


〇よし今日はお漏らしは無いな(と思うのだが見落としてたらゴメンやで)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB188S30Y3A211C2000000/
日銀、物価・賃上げの持続力見極め 午後に植田総裁会見
金融政策
2023年12月19日 5:00 [会員限定記事]

『日銀は19日の金融政策決定会合で賃上げや物価の持続力を見極める。市場でマイナス金利政策を早期に解除するとの観測がくすぶるなか、日銀は経済の実態や先行きを分析して金融政策を修正する必要があるかを議論する。植田和男総裁は午後に記者会見して決定内容を説明する。

市場では早期に金融政策を正常化するとの観測が広がる。氷見野良三副総裁は6日の講演で、金融緩和からの出口が家計や企業へ与える影響を前向きに評価し...』(上記URL先より、以下の部分は会員記事)

ということでお漏らしは発生していない模様で、これはジジイのアタクシもニッコリの展開でございますが(ナンジャソラ)、しかしこの記事とか他の記事(一々引用しませんけど)で引っ掛かるのは「マイナス金利解除」と「正常化」を一体にしている事でして、これはどこの記事見ても必ずその書き方になっている訳ですよ。うーん不思議。

いやまあ勿論マイナス金利解除しないとそもそも正常化以前の問題だから、確かに将来の正常化に向けて最初に何とかしないと邪魔なだけなのですけれども、アタクシ再三再四申し上げておりますように、このタイミングでのマイナス金利解除は「今後の金利引き上げ即ち金融政策の中立化に向けた動きとは全く分離した別の問題」として実施する、としか思えません。なぜなら中立化に向けた動きをするというのは2%物価安定目標が達成できましたって判断によって開始する(本当はそれだとビハインドになるのでフォワードルッキングに達成が展望できたら着手するもんなんだがビハインドして社会厚生が悪化しても問題ないと思っているあたおか集団なのでシャーナイ)のであって、それと一緒くたにされますとそらマイナス金利解除もないわなとなりますぞな。

ま、元々内田副総裁が理事時代に「マイナス金利解除は引き締め」という無茶苦茶な屁理屈を繰り出してきた(物価情勢が良くなった時に「緩和のやり過ぎを調整する」のは引き締めでも何でもない筈なのに、偉大なる黒田大将軍様の忠実な下僕として編み出した屁理屈)のが今になって響いていて、マイナス金利解除を金利引き上げ(正常化)と切り離しにくくなってしまっているので、どうも世の中皆さん揃いも揃って「賃金の上昇が確認できないのでマイナス金利解除はまだ」とか言ってる次第ですが、まあそんなの分離する屁理屈くらい日本最高の屁理屈製造装置であらされる所の日銀大本営が何か考えるでしょうw

まあ今回どう見ても最大のチャンス(ただし今回は解除に向けた準備の執行部指示みたいな形なので結果は「現状維持」になると思うけど)だし、寧ろこのタイミング逃したら次の景気サイクルまで待つのか、物価がガチで下がらなくなって日銀がリアル焼き討ちに遭って政策委員会以下金融政策機能を全部お取り潰しにされるまで何も出来なくなり兼ねません(ゆうて今までは欧米が金融引き締めガリガリモードだったから余裕があった、今回は状況が変化してきている)ので、まあこれを逃す手はない筈なのですが、さてどうなりますやらという感じですな。

いずれにしましても本日昼ですな、


〇そういえば1年短国の足切りがやっと100円

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20231218.htm
国庫短期証券(第1202回)の入札結果

3.発行日 令和5年12月20日
4.償還期限 令和6年12月20日
5.価格競争入札について

(1)応募額   10兆5,855億円
(2)募入決定額 2兆9,794億5,000万円
(3)募入最低価格 100円00銭0厘
(募入最高利回り)(0.0000%)
(4)募入最低価格における案分比率 95.8863%
(5)募入平均価格 100円00銭4厘
(募入平均利回り)(-0.0039%)

ということでやっと1年短国の足切りが100円なのですが、ゆうてマイナス金利解除を碌すっぽ織り込んでおりませんで、金曜の3Mは、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20231215.htm
国庫短期証券(第1201回)の入札結果

3.発行日 令和5年12月18日
4.償還期限 令和6年3月25日
5.価格競争入札について
(1)応募額   14兆19億1,000万円
(2)募入決定額  4兆5,471億6,000万円
(3)募入最低価格 100円04銭3厘5毛
(募入最高利回り)(-0.1619%)
(4)募入最低価格における案分比率 44.8368%
(5)募入平均価格 100円04銭6厘3毛
(募入平均利回り)(-0.1723%)

ちなみにこれ前週の3Mよりレート低かったりするんですけど、まあ見事にマイナス金利解除とは何なのか(確かにまあ2月積み期間から解除だと前半1か月と3分の2がマイナス金利だけどさ)という世界になっているのですが、そもそも論として「マイナス金利だと買えない人がいる」という絶対水準の閾値というのが存在していますので、ゼロ金利を境にして発生する需要の段差が影響しているのか、はたまた短い所の国債が(昔と違って各種規制要因でニーズが高いことも相まって)単純に恒常的な需給逼迫状態になっているのか、というのが判然としないのですが、まあいずれにしましてもマイナス金利ってこういう所でも問題が起こるなあと思うのですよ。

・・・・・・・と申しますのは不肖このアタクシ、福井の俊ちゃんが量的緩和政策を解除するときにも何の因果か短国とか見てましたけど、あの時は量的緩和解除が確実じゃん、となった辺りからターム物の金利ってちゃんと上昇しまして、3Mの短国の利回りとかも上昇したんですよね(ちょっと先走り上昇だったのでその後また下がったのはご愛嬌でしたが)。

然るに今回はマイナス金利とかいう世の摂理に反する政策をしているもんだから、プラスとマイナスの間に存在する不連続な閾値というのものが悪さをしてしまい、金利が自然に上昇してくれない訳ですよこれがまた。つまりはマイナス金利政策というのはその政策そのものに不連続な要素を抱えているから、市場が織り込むとかがやりにくいというのが非常によろしくない政策でありまして、まあそんなことからもとっととマイナス金利政策なんぞは止めやがれという何時もの話で締めるのでした、ちゃんちゃん。



〇ハトハトジジイ2世のハトハトタコ踊りに対する必死の火消しが展開されているようでw

グールズビーおじちゃんはCBSに出た後CNBCにも出演とな

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/TZBL52FOAVPTBJYTPGR54EJZ2Y-2023-12-18/
FRB議長発言受けた市場の反応に「やや困惑」=シカゴ連銀総裁
ロイター編集
2023年12月19日午前 12:24 GMT+9

『[18日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は18日、先週のパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の発言を受けて、金融市場でFRBが早期かつ迅速に利下げに踏み切るとの見方が急速に高まったことは、連邦公開市場委員会(FOMC)の機能とは相反するものと述べた。』(上記URL先より、以下同様)

ちょwwwwwwwww

『CNBCとのインタビューで、金融市場の反応についてパウエル議長の発言自体の問題ではなく、発言の受け手の問題であり、金融市場の反応に「やや困惑している」とした。その上で、「FOMCがどのように機能しているのかについて、やや混乱があるようだ。われわれは将来について推論的に具体的な政策を議論することはない」と述べた。』

しかしまあ何と申しますか、

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/PE4F5HLYYNKZ3DXWOPRIBJAQR4-2023-12-18/
米利下げ時期、市場はFRBより「やや先走り」─クリーブランド連銀総裁=FT
ロイター編集
2023年12月18日午後 11:30 GMT+9

『[18日 ロイター] - 米クリーブランド地区連銀のメスター総裁は、利下げ時期について金融市場は連邦準備理事会(FRB)より「やや先走りしている」との見方を示した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が18日に報じた。』

『FTとのインタビューで「次の段階はいつ利下げが行われるかではない。たとえ市場がそう見込んでいるとしてもだ。インフレ率が持続可能かつタイムリーに2%に戻る道を確実に進むために、金融政策がどれくらいの期間、制約的であり続ける必要があるかということだ」と指摘。「市場はやや先走りしている。市場は『すぐに正常化する』という最後の部分に飛びついたが、私にはそうは見えない」と述べた。』(上記URL先より)

ということでまあ次々と地区連銀総裁から火消し(グールズビーは実質2日連続みたいなもん)が来ているのですが、まあ「ハトハトジジイ2世が勝手に金融市場を煽る発言するからこうなったのであってハトハトジジイは座敷牢にでも入れておけ」とは言えないでしょうからこういう発言になるのでしょうけれども、実際問題としてこの地区連銀総裁の皆様にしたって市場の反応に関してはパウエルの発言が煽ったのか脇が甘かったのかはともかくとして、適切では無かったと思っているでしょうから、これ今後のFOMCが別の意味で面白くなりそうな気がするんですが気のせいですか知らねえ。

いやまあドットチャートのはるか先を行くヒャッハー振りを受けてここまで連発であちこちから火消しが飛んでくるのも中々見ませんので、これはパウエルやっちまったなという所ではないかとwwwww


〇そのハトハトジジイ2世の会見ネタの続きをちょいと

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20231213.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
December 13, 2023

最初に威勢のいいハトハト音頭を踊ってしまったハトハトジジイ2世ですが、なんかその後の質疑って文字の方をみるとイマイチ精彩を欠くんですよね。その後の質疑で結構同じようなやりとりがあるんですが全体的に長めなのでそんなに長くない一連のものを紹介しますと例えばこんな感じ。

『JEANNA SMIALEK. Jeanna Smialek, New York Times. Thanks for taking our questions. In the SEP from today, growth is notably below potential in 2024. If growth were to surprise us again in the way that it has for years now by being stronger than expected next year, would it still be possible to cut rates, or put another way, is below-trend growth necessary to cut rates, or would continued progress on inflation alone be sufficient?』

SEPの見通しで24年の実質成長率のメディアンが1.4%と出ていまして、それって中立水準からクソ低いんだが、それは利下げの理由になるのか、って質問をしているのですが、

『CHAIR POWELL. So we'll look at the totality of the data. Growth is one thing. So is inflation. So is labor market data. So we'd look at the -- as we make decisions about policy changes going forward, we're going to look at all those things and particularly as they affect the outlook. So it's ultimately all about the outlook and the balance of risk as well. So that's what we'd be looking for. If we have stronger growth, you know, that'll be good for people. That'll be good for the labor market. It might actually mean that it takes a little longer to get inflation down to 2 percent. We will get it down to 2 percent, but you know, if we see stronger growth, we will set policy according to what we actually see, and so, that's how I would answer.』

何か物凄いクソ長い回答をしていて、政策金利の判断に関しては色々なものを参考にしますのであくまでもトータリティーで判断します、って回答をしているんですが、当然これは質問とかみ合っていないので、

『JEANNA SMIALEK. I guess the question I'm asking, if you don't mind a quick followup, I guess the question I'm asking is, is above-trend growth itself a problem?』

って思いっきり問い直し(更問ですらない)をされているんですよ。

『CHAIR POWELL. It's only a problem in so -- it's not, itself, a problem. It's only a problem insofar as it makes it more difficult for us to achieve our goals. And, you know, if you have growth that's robust what that will mean is probably we'll keep the labor market very strong. It probably will place some upward pressure on inflation. That could mean that it takes longer to get to 2 percent inflation. That could mean we need to keep rates higher for longer. It could even mean ultimately that we would need to hike again. It just is -- it's the way our policy works.』

回答としては物価高騰状態においては成長がトレンド成長率を下回って推移するのは問題ではない、という話になるのですが、その説明の中でもわざわざ「成長が強くてロバストなら皆さんにとって良い事ではあるけれども、それがインフレを過度に押し上げるのは良くないです」とかわざわざ余計な説明を入れて話をややこしくしております。

でまあこの質疑は12ページから13ページ(PDFのページ数も同じ)の辺りになるのですが、この前の質疑でも(それ長いので採用しないでこちらを採用しましたが)こんな感じで、質問と回答が謎にかみ合っていない感じのする質疑が並んでいて、ナンジャソラというのが正直な印象だったりします。うーん。


何か全般的に歯切れ悪いな、という質疑でしたがこれはワロタ

『MICHAEL MCKEE. Michael McKee from Bloomberg Television and Radio. Mr. Chairman, you were, by your own admission, behind the curve in starting to raise rates to fight inflation, and you said earlier, again, the full effects of our tightening cycle have not yet been felt. How will you decide when to cut rates, and how will you ensure you're not behind the curve there? 』

wwwwwww

『CHAIR POWELL. So we're aware of the risk that we would hang on too long. We know that that's a risk, and we're very focused on not making that mistake. And we do regard the two, you know, we've come back into a better balance between the risk of overdoing it and the risk of underdoing it. Not only that, we were able to focus hard on the price stability mandate, and we're getting back to the point where -- which is what you do when you're very far from one of them, one of the two mandates, you're getting now back to the point where both mandates are important, and they're more in balance too.』

『So I think we'll be very much keeping that in mind as we make policy going forward. And the things we'll be looking at, I've already described. You know, we're obviously looking hard at what's happening with demand, and what we see, we see the same thing other people see, which is a strong economy, which really put up quite a performance in 2023. We see good evidence and good reason to believe that growth will come in lower next year. And you see what the forecasts are.』

『I think the median participant wrote down 1.4 percent growth, but you know, we'll have to see. It's very hard to predict. We'll also be looking to see progress on inflation, and you know, the labor market remaining strong, but ideally without seeing the kind of large increase in unemployment that happens sometimes. 』

質問の方は要するに「おんどれはインフレ高進に対してビハインドして失敗しやがったが、今度は引き締めからの転換もビハインドするんじゃねえか」とぶっこんでいるのですが、それに対しての説明がクドクドとああでもないこうでもないと言っているんですが、結局「状況をよくよく判断して対処します」以外の話をしていない、というのがもう残念だし、本来もっとシンプルに回答できるものを(さっきの質疑もそうだけど)クドクドと回答しているなあ、という印象をアタクシは受けました。

更問が来て、

『MICHAEL MCKEE. To follow up, when you begin the cutting cycle, will it be essentially run the same way you do it now with raising rates, where you basically do trial and error, cut and see what happens, or will you tie it to some particular measure of progress?』

『CHAIR POWELL. We haven't typically tried to articulate, with one exception, really specific target levels, which was if you -- some of you will remember the thresholds that we used in, I guess, 2013. The answer is, these are things that we haven't, you know, really worked out yet. We're sort of just at the beginning of that discussion. 』

まあここでも「We're sort of just at the beginning of that discussion.」とは言っているのですが、最初の方で言ってたよりはちょっとこのディスカッション、に関する言い方をトーンダウンさせているように見えますけど、まあ会見冒頭にぶっこんでしまった方がインパクトデカいですし、フォワードルッキングに引き締め縮小という話になればやはり利下げ前倒しを想定しちゃいたくなるからそらまあ市場はそう動くわなという感じですかねえ、この辺はリアルタイムで会見見ながら市場の動き見てないと何とも言えませんのですいません。

いずれにしましても、転換点だから仕方ないのはあるにせよ、今回はまあパウエルさん歯切れが悪いというか、一々言ってることがクドクド状態だな、と思いました(個人の感想です)。





2023/12/18

お題「とりあえず今朝までは変なの出てないな(MPM)/FED要人の火消しと会見冒頭部分とハトハト踊りに関して」

まあ最初から隠す気満々でしたってのはやべえわな
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231217/k10014290691000.html
政治資金問題 安倍派の所属議員秘書が新たな説明
2023年12月17日 18時56分

『自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部の任意の事情聴取に対し、安倍派の所属議員の一部の秘書が「当初は政治資金収支報告書にキックバック分を収入として記載していたが、派閥側から指示されたため、記載しないようになった」などと説明していることが、関係者への取材で新たにわかりました。安倍派ではパーティー収入の一部を裏金化する運用が組織的に行われていた疑いがあり、特捜部が詳しい経緯について調べを進めているものとみられます。』(上記URL先より)

ナムナム・・・・・・・


〇とりあえずまあマイナス解除の明確な予告ぐらいするじゃろということにしておきますね(フラグ)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB264T30W3A021C2000000/
日銀、緩和出口へ布石打つか 物価と賃金の好循環見極め
日銀決定会合5つのポイント
金融政策
2023年12月17日 5:00 [会員限定記事]

ということで日曜の日経電子版のお告げですが、

『日銀は18?19日に金融政策決定会合を開く。米利上げが事実上終わり、円安基調が転機にさしかかるなか、物価と賃金上昇の好循環は持続力が試される局面に入る。市場ではマイナス金利政策の早期解除への思惑もくすぶる。日銀は何を議論し、どんな結論を出すのか。5つのポイントから読み解く。

@マイナス金利解除はあるか?
最大の焦点は日銀が2016年1月に導入を決めたマイナス金利政策を解除するかどうかだ。長短金利...

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』(上記URL先より)

ということで会員記事なので日経無課金勢だしこれ時間が電子版だと紙のほうに出ているのかが怪しい(紙に出す奴だともう少しタイムスタンプが早い気が)のですが、まあマイナス金利とかいうクソのような政策は止められるときに止めないとと思うので、こんなの物価と景気の好循環の見極めとか要らんじゃろと思いますし、だいたいからして金利の急騰がいやなら「今後の利上げとマイナス解除は関係ない」って屁理屈ぶっこんだ方が金利上がりにくくなるのですから、物価目標達成とは関係なくマイナスだけ解除するんじゃネーノと思いますし、各種準備もあるので今回は執行部への具体的な施策の検討指示、まあこれじゃろ。

とおもうのですが記事のほうは何と書いてあるのでしょうかねえ。まあこのタイミングでマイナス金利解除できなかったらもう日銀政策委員会の皆さん全員居る意味ないからそこの窓から全員身投げでもなんでもしやがれとしか思えませんがさてどうなるのやら。


〇ハトハトジジイ2世現ると思ったら早速の火消しがはいっておる(もののアメリカン債券市場はヒャッハーと)

案の定でありシカゴとアトランタとニューヨークの副議長から火消し。

シカゴ連銀
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-17/S5TKQVDWLU6800
シカゴ連銀総裁、インフレとの闘い「終わっていない」−勝利宣言はまだ
Catarina Saraiva
2023年12月18日 2:43 JST

『グールズビー氏はCBSとのインタビューで、「2023年に多くの進展を遂げてきたが、なお注意しておこう。まだ終わっていない」と発言。「従って、データが今後の金利動向を左右することになる」と述べた。「インフレを目標まで引き下げなくてはならない」と同氏は指摘。その軌道上にあることを確信するまで、それを先取りするような発言は「皮算用だ」と語った。』(上記URL先より)

そらそうよという感じですが、金曜も当然ながら火消し作業は行われていまして、

アトランタ連銀
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/OWKL5SN5UVP3ZB3UX6EWTD7U4E-2023-12-15/
米利下げ、差し迫っていない 毅然とした対応必要=アトランタ連銀総裁
ロイター編集
2023年12月16日午前 8:02 GMT+9

『[15日 ロイター] - 米アトランタ地区連銀のボスティック総裁は15日、インフレ率がまだ連邦準備理事会(FRB)の2%目標を上回っているため、FRBはインフレとの戦いに勝利したと確信するまで「高金利長期化を厭わずに快適に感じる必要がある」との考えを示した。また「何かを求めているわけでも、何か差し迫ったことが起こることを期待しているわけでもない」とした。』

『ラジオ番組「マーケットプレース」のインタビューで「われわれはまだ2%には到達しておらず、そこに到達するために必要なことをしなければならないという事実に毅然と集中しなければならない」と述べた。』(以上上記URL先より)

そらそうよという感じです。

でもってハトハトといえばこちらも割とハト親父のウィリアムズ
https://jp.reuters.com/economy/federal-reserve-board/JFYZ5CB3DJJCDC6KXVONCT3PBA-2023-12-15/
NY連銀総裁、利下げ観測けん制 「語るのは時期尚早」
Michael S. Derby
2023年12月16日午前 12:34 GMT+9

『[ニューヨーク 15日 ロイター] - 米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は15日、連邦準備理事会(FRB)の利下げについて語るのは時期尚早と述べ、市場で高まっている利下げ観測をけん制した。FRBは引き続き、インフレ率の2%回帰に向け金融政策が正しい道筋をたどっているか否かに焦点を当てていると述べた。』(上記URL先より、以下同様)

はい火消し来ました。

『ウィリアムズ総裁はCNBCのインタビューに対し「現時点では、われわれは実際に利下げについて話し合っていない」とし、利下げについて推測するのは「時期尚早」と語った。』

そらそうだろうよ。

『金融政策の変化を反映し、全体的な金融情勢は依然としてタイトであるとも指摘。金融政策はピークかその近くにあるとの見方を繰り返し、経済については「基本シナリオはかなり良好だ。インフレ率は下がり、経済は好調を維持し、失業率は低い」と述べた。』

でもってですね、

『一方、「この1年で学んだことの一つは、データは意外な方向に動く可能性があるということだ」とし、金利が上昇する可能性はまだ否定できないとの警告も発した。インフレ率の低下が停滞したり、一段上昇に転じた場合には対応する準備が必要と述べた。』

まあこれですよね。どっち転ぶかわからんから「データディペンデント」を繰り返していて、しかもまあ見通しが結構当たらんというのを続けているわけですから、こういう(すくなくても表面上だけでも)ハンブルな姿勢でいかんんと死亡フラグになるじゃろうよと思うのですけどね。

しかしどうでもよいのですが、

『ウィリアムズ総裁の発言を受け、市場で出ていた来年の利下げ観測が後退。短期金融市場では最初の利下げは来年3月に実施されるとの見方は変わっていないが、その確率は約65%に低下した。発言前は75%だった。』

ってのどうせ政策金利先物かなんかの数字なんでしょうけれども、そもそもこういうのは本来実際のキャッシュ金利の期間構造を見て判断するのが適切だとは思うのですが、そもそもアメリカン短期金利の1Mとか3Mとかいう金利がなんぼかとか全然詳しくないので知らんけど、デリバとキャッシュの価格形成って(本来は裁定するはずですが)必ずしもイコールにならないのは昔のユーロ円金先見てたので、まあどうなのよとは思うのですよねこれがまた。

まあ日本の短期金利も動くようになりますと久々に昔取った杵柄の世界になるんですけど、昔だったらデリバよりも3Mのキャッシュの金利が一番先行きの金融政策の織り込みを表していた(OISとか参加者が超限定的で市場全体の動きとは言い難いものがあった)のですが、最近の短国は需給要因でアホみたいに低い金利がついてしまうので、これがリファレンスになるのか、とかこれから楽しみですなと思います。

なんか話がそれてしまいましたな。ハトハトジジイ2世のハトハトジジイ踊りを鑑賞するんでした。


〇ハトハトジジイ2世のハトハト音頭のタコ踊りを鑑賞するんでしたな

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20231213.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
December 13, 2023


・オープニングリマークは基本的に声明文の線に沿っているので別にハトハト音頭を踊っているわけではない

まあQAで動いたようなんですけど、まずはオープニングリマークは読んでおかないと、ということですがまあネタがQAらしいので駆け足で。

『CHAIR POWELL. Good afternoon. My colleagues and I remain squarely focused on our dual mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. As we approach the end of the year, it is natural to look back on the progress that has been made toward our dual mandate objectives. Inflation has eased from its highs, and this has come without a significant increase in unemployment. That is very good news. But inflation is still too high, ongoing progress in bringing it down is not assured, and the path forward is uncertain. As we look ahead to next year, I want to assure the American people that we are fully committed to returning inflation to our 2 percent goal. Restoring price stability is essential to achieve a sustained period of strong labor market conditions that benefit all.』

まず最初に「たいして失業の拡大などもしないでインフレの鎮静化が進んでいる」と自画自賛しています。

『Since early last year, the FOMC has significantly tightened the stance of monetary policy. We have raised our policy interest rate by 5-1/4 percentage points and have continued to reduce our securities holdings at a brisk pace. Our actions have moved our policy rate well into restrictive territory, meaning that tight policy is putting downward pressure on economic activity and inflation, and the full effects of our tightening likely have not yet been felt.』

でまあここまで引き締めしましたよという話をして、

『Today, we decided to leave our policy interest rate unchanged and to continue to reduce our securities holdings. Given how far we have come, along with the uncertainties and risks that we face, the Committee is proceeding carefully. We will make decisions about the extent of any additional policy firming and how long policy will remain restrictive based on the totality of the incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. I will have more to say about monetary policy after briefly reviewing economic developments. 』

あくまでも冒頭部分では「We will make decisions about the extent of any additional policy firming and how long policy will remain restrictive based on the totality of the incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.」なわけでして、別に利下げするとかそういう話をしているわけではなく、これは声明文にもある通りであくまでも「追加の引き締めが必要かどうかを判断する」という話自体は変えていない(SEPで示したドットチャートでは誰も利上げのおかわりはしていませんけど)のですよね。

『Recent indicators suggest that growth of economic activity has slowed substantially from the outsized pace seen in the third quarter. Even so, GDP is on track to expand around 2-1/2 percent for the year as a whole, bolstered by strong consumer demand as well as improving supply conditions. After picking up somewhat over the summer, activity in the housing sector has flattened out and remains well below the levels of a year ago, largely reflecting higher mortgage rates. Higher interest rates also appear to be weighing on business fixed investment. In our Summary of Economic Projections, Committee participants revised up their assessments of GDP growth this year but expect growth to cool, with the median projection falling to 1.4 percent next year』

7-9月期にアホほど強かった成長率はここもと大きく減速していますけど、年で見れば2.5%成長を維持しますでしょうというお話で、来年の見通しが1.4%の成長(なので潜在成長よりも弱い)をみていまっせと。

『The labor market remains tight, but supply and demand conditions continue to come into better balance. Over the past three months, payroll job gains averaged 204 thousand jobs per month, a strong pace that is nevertheless below that seen earlier in the year. The unemployment rate remains low, at 3.7 percent. Strong job creation has been accompanied by an increase in the supply of workers: The labor force participation rate has moved up since last year, particularly for individuals aged 25 to 54 years, and immigration has returned to pre-pandemic levels. Nominal wage growth appears to be easing, and job vacancies have declined. Although the jobsto-workers gap has narrowed, labor demand still exceeds the supply of available workers. FOMC participants expect the rebalancing in the labor market to continue, easing upward pressures on inflation. The median unemployment rate projection in the SEP rises somewhat from 3.8 percent at the end of this year to 4.1 percent at the end of next year.』

労働市場に関してのお話ですが、こちらは以前よりは過熱度が低下してきたということで、その要因としては労働参加率が上がっていること、プライム世代の労働参加と外国人労働者が戻ってきたことをあげています。

『Inflation has eased over the past year but remains above our longer-run goal of 2 percent. Based on the Consumer Price Index and other data, we estimate that total PCE prices rose 2.6 percent over the 12 months ending in November; and that, excluding the volatile food and energy categories, core PCE prices rose 3.1 percent. The lower inflation readings over the past several months are welcome, but we will need to see further evidence to build confidence that inflation is moving down sustainably toward our goal. Longer-term inflation expectations appear to remain well anchored, as reflected in a broad range of surveys of households, businesses, and forecasters, as well as measures from financial markets. As is evident from the SEP, we anticipate that the process of getting inflation all the way to 2 percent will take some time. The median projection in the SEP is 2.8 percent this year, falls to 2.4 percent next year, and reaches 2percent in 2026.』

物価に関してですが、下がったとは言ってますがあくまでも「we will need to see further evidence to build confidence that inflation is moving down sustainably toward our goal.」ではあるので、これ物価が順調に2.5%割れとかになってくれればそらまあ自信ニキという話なんでしょうけど、そうなるかどうかってよくわからんというか、そもそもこんなに資産市場を煽ってしまうと隙あらばアメリカンドリーム消費をするアメリカーノの皆様が落ち着いていられるんでしょうかねえ。

ということで金融政策に入りますが、

『The Fed’s monetary policy actions are guided by our mandate to promote maximum employment and stable prices for the American people. My colleagues and I are acutely aware that high inflation imposes significant hardship as it erodes purchasing power, especially for those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation. We are highly attentive to the risks that high inflation poses to both sides of our mandate, and we are strongly committed to returning inflation to our 2 percent objective』

まずは毎度おなじみの「高インフレが経済的な弱者にとって厳しいでござるというのはよく理解しておりますですわ」というお話ですね。まあ日銀の場合はこの前氷見野さんが詳しく金懇でその話をしてくれましたが、ほかのポンコツはその話も碌にしない、というあたりがもう能天気で泣けますよね。

『As I noted earlier, since early last year, we have raised our policy rate by 5-1/4 percentage points, and we have decreased our securities holdings by more than $1 trillion. Our restrictive stance of monetary policy is putting downward pressure on economic activity and inflation. The Committee decided at today’s meeting to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent and to continue the process of significantly reducing our securities holdings. 』

金利は現状維持、保有資産の削減は従来と同じペースで行うことを決定、なのですが、隙あらば「我々の金融引き締め政策が物価の落ち着きに効果を発揮した」をいうのを入れてくるのはいつものクオリティ。

『While we believe that our policy rate is likely at or near its peak for this tightening cycle, the economy has surprised forecasters in many ways since the pandemic, and ongoing progress toward our 2 percent inflation objective is not assured. We are prepared to tighten policy further if appropriate. We are committed to achieving a stance of monetary policy that is sufficiently restrictive to bring inflation sustainably down to 2 percent over time, and to keeping policy restrictive until we are confident that inflation is on a path to that objective.』

ここでもあくまでも「We are prepared to tighten policy further if appropriate.」と言ってまして、背景はちょうど上で引用した記事にありますように、15日金曜日にウィリアムズが「この1年で学んだことの一つは、データは意外な方向に動く可能性があるということだ」って言ってましたけど、このオープニングリマークで「the economy has surprised forecasters in many ways since the pandemic」と言っていることと平仄があってるな、と思いました。

要するに今の経済物価状況はいままでの時代と違うので、過去の延長線上で決め打ちはできないという話で、サプライズの動きがあるかもしれない、というかそればっかりだったし、という話をしているわけで、逆にこういうオープニングリマーク(と声明文)なのになんで会見QAがハトハトジジイ2世になっていたのやらという感じでパウエル意味わからんですな。

『In our SEP, FOMC participants wrote down their individual assessments of an appropriate path for the federal funds rate based on what each participant judges to be the most likely scenario going forward. While participants do not view it as likely to be appropriate to raise interest rates further, neither do they want to take the possibility off the table. If the economy evolves as projected, the median participant projects that the appropriate level of the federal funds rate will be 4.6 percent at the end of 2024, 3.6 percent at the end of 2025, and 2.9 percent at the end of 2026, still above the median longer-term rate. These projections are not a Committee decision or plan; if the economy does not evolve as projected, the path for policy will adjust as appropriate to foster our maximum employment and price stability goals.』

ここでSEPのドットチャートの話がでておりますが、ここでもご丁寧に「While participants do not view it as likely to be appropriate to raise interest rates further, neither do they want to take the possibility off the table.」ということで、見通しで利上げがないからと言って利上げの選択肢を捨てているわけではない、って言ってるんですよね。

『In light of the uncertainties and risks, and how far we have come, the Committee is proceeding carefully. We will continue to make our decisions meeting by meeting, based on the totality of incoming data and their implications for the outlook for economic activity and inflation as well as the balance of risks. In determining the extent of any additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』

先行きは不確実だしリスクがあるから今後も委員会は慎重に政策運営を行いますわ、という話をしているわけでして、まあいつもの今後のデータ見ながら考えます云々の話をしております。ここでもこのパラグラフの後半は「In determining the extent of any additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.」なのですが、これは声明文にある表現を引っ張ってきています。

『We remain committed to bringing inflation back down to our 2 percent goal and to keeping longer-term inflation expectations well anchored. Restoring price stability is essential to set the stage for achieving maximum employment and stable prices over the longer run.』

『To conclude, we understand that our actions affect communities, families, and businesses across the country. Everything we do is in service to our public mission. We at the Fed will do everything we can to achieve our maximum employment and price stability goals. Thank you. I look forward to your questions.』

ということで、締めの部分はいつも通りでして、このようにオープニングリマーク部分までは別にハトハトジジイ2世でもなんでもないんですよね。

でまああくまでもFEDの建付けって声明文>>オープニングリマーク>>会見QAのはずなのですが、まあ世の中会見QAが一番反応しやすいので反応しちゃうのはわかるんですけど、なんかここまでを見ていると別にハトハトジジイ2世でも何でもないんですよね・・・・・・・


・QAなんですがその一発目で「利上げはおしマイケル」発言が出る訳でして

ということでQAに入るが見事に出オチですかそうですか。

『CHRIS RUGABER. Thank you, Chris Rugaber, Associated Press. I wanted to ask, how should we interpret the addition of the word "any" before additional firming in the statement. I mean does that mean that you're pretty much done with rate hikes, and the Committee has shifted away from a tightening bias and toward a more neutral stance? Thank you. 』

今回声明文に「今後の追加利上げに関しては状況をみながら判断」の文言に「any」をいれた件についての質問が一発目という大変に結構な質問ですが、

『CHAIR POWELL. So, specifically on “any,” we do say that in determining the extent of any additional policy firming that may be appropriate. So any additional policy firming, that sentence. So we added the word “any” as an acknowledgement that we believe that we are likely at or near the peak rate for this cycle. Participants didn’t write down additional hikes that we believe are likely, so that’s what we wrote down. But participants also didn’t want to take the possibility of further hikes off the table. So that’s really what we were thinking』

ここで「we believe that we are likely at or near the peak rate for this cycle」と来ましたが.まあこのニアーピークは良いとしまして、続いて「Participants didn’t write down additional hikes」ってまあドットプロットが仰る通り来年末の時点での政策金利は1名を除いて全員今より低い水準なのですから、まあこれもそういう話(とは言っても実はあのドットって年末値だから「もうちょっと上げてから下げる」という人がいても良かったのですが居なかったというのはここでゲロリマスしてしまいました)ではありますな。ただ、追加利上げの可能性を消したくないから記載は残したので、メインが利上げじゃないという意味でanyを付けました、と来まして問題の質疑(ですよね)。



『STEVE LIESMAN. Mr. Chairman -- oh, my microphone. Sorry. Steve Liesman, CNBC. Happy holidays, Mr. Chairman. Fed governor Chris Waller said that if inflation continues to fall, then the Fed in the next several months could be cutting interest rates. I wonder if you could comment on whether you agree with Fed Governor Waller on that, that the Fed would become more restrictive if it didn't cut rates if inflation fell. Thank you, sir.』

ウォーラーが「インフレが引き続き下がれば今後数か月(next several months)の間にFEDは利下げに転じることができるでしょう」って言った件についての質問ですが、

『CHAIR POWELL. So, of course, I don't comment on any other officials, even those who work at the fed. But I'll try to answer your question more broadly.』

ということでジジイの能書き開始。

『So the way we're looking at it is really this. When we started out, right, we said the first question is how fast to move, and we moved very fast. The second question is, you know, really, how high to raise the policy rate, and that's really the question that we're still on here. We're very focused on that. As I mentioned, people generally think that we're at or near that and think it's not likely that we will hike, although they don't take that possibility off the table.』

またも「政策金利はピークでこれ以上の利上げは基本的に無いです」攻撃。一々言わんでもよいのに一々言うのはハトハトジジイ2世ではありますし、年末だから気分もノリノリで大勝利宣言して景気づけしたかったのかもしれませんが、なんですかこの威勢の良さ(ハト方向に)は。

『So that's -- when you get to that question, and that's your answer, there's a natural -- naturally it begins to be the next question, which is when it will become appropriate to begin dialing back the amount of policy restraint that's in place.』

てな訳で、堂々と「次の我々の課題は今ある金融引き締めをどこで巻き戻すかである」とぶっこむのでありました。これはハトハト音頭。

『So that's really the next question, and that's what people are thinking about and talking about. And I would just say this, we are seeing, you know, strong growth that appears to be moderating, We're seeing a labor market that is coming back into balance by so many measures, and we're seeing inflation making real progress. These are the things we've been wanting to see.』

経済物価情勢が思う壺にはまってきてご機嫌なようです。

『We can't know -- we still have a ways to go. No one is declaring victory. That would be premature, and we can't be guaranteed of this progress. So, we're moving carefully in making that assessment of whether we need to do more or not.』

一応こうやって「でもその話をするのは時期尚早だしそもそも大勝利宣言をするのはまだ早い」というのでありますけれども返す刀で、

『And that's really the question that we're on, but of course, the other question, the question of when will it become appropriate to begin dialing back the amount of policy restraint in place, that begins to come into view, and is clearly a topic of discussion out in the world and also a discussion for us at our meeting today. 』

「that begins to come into view」と来まして、「clearly a topic of discussion out in the world and also a discussion for us at our meeting today」って思いっきり言いやがっておりまして、いやそれはドットプロットを見たらそうなるのは分かるんだが、何もこんなに威勢よくハトハト踊りをしなくてもとは思われる訳ですよ。


これにはスティーブもニッコリ(かどうか知らんが)で、

『STEVE LIESMAN. Can you give some color as to the nature of that discussion today. Thank you.』

と来ましてからの、

『CHAIR POWELL. Sure. So it comes up in this way today. Everybody wrote down an SEP forecast.』

ってあって、ドットプロットでこういうの出ていますもんね、ということではあるんですけど、そのドットを見ると一部の変態は除くと毎回25の利下げで考えて7月開始が一番早くて中間取ると9月になる、というものなのですから、まあハトハトジジイ2世さっきのはちょっと何ぼ何でも威勢が良すぎた(ドットプロット的には利下げ着手3月なんてのは無い訳で、ネクストセベラルマンスの利下げ云々を全力で肯定するのやり過ぎじゃネーノ)とは思う訳ですけど、

『So many people mentioned what their rate forecast was, and there was no back and forth, no attempt to sort of reach agreement, like this is what I wrote down, this is what I think, that kind of thing. And a preliminary kind of discussion like that, not everybody did that, but many people did.』

多くの人間が利下げ時期に関する議論をした、という話までぶっこんだらそら3月利下げとかヒャッホウしたくなるのですが、何ちゅうか何でこんなに煽る必要があった(もし煽る気が無くて言ってたらそれは間抜けにも程がある)のでちゅかねえ。

『And then, and I would say there's a general expectation that this will be a topic for us looking ahead. That's really what happened in today's meeting. I can't do the head count for you in real time, but that's generally what happened today.』

いやもう出オチ会見という感じですな。以下は明日の朝刊に何も出なかったら明日に続くということで勘弁。





2023/12/15

お題「FEDとか円債雑談/ECBのポンチ絵を見るとFEDの文書ベースよりも正常化が近そうに見えるんだが」

なるほど会見でパウエルがハトハトジジイになったのか・・・・・・・・・

〇会見に関しては週末真面目に読むので勘弁ですが・・・・・・・・

おやおやまあまあ
https://jp.reuters.com/markets/bonds/
債券利回り

米国債10年 利回り
US10YT=XX
+3.925 -0.109

あらあら4%割れ(って昨日の東京時間でも割ってましたけど)ですかそうですかってなもんですが、まだちゃんと読み切れていないのでネタにするのは週明けにでもしようか(とか言ってると日銀ちゃんがやってくるのですが)とは思いますが、会見がハトハトジジイだったということでまあこの有様ですわ。

・・・・・・・いやまあ別にハトハトジジイの目論見通りに順調に物価が2%に向けて落ち着いて来ればエエンですけど、そうじゃない場合どうしますねんという説はだいぶあるのですが、年末に向けてアメリカーノの皆様がヒャッハーヒャッハーとやっているのはまあ何ちゅうかもう勢いですな勢い、知らんけど。

ただまあ声明文とSEP見ますと、声明文ってそこまで大きな転換をしている訳でもなくて、それもどうかと思うんだが利上げのおかわりの可能性まで残しているという作品になっておりまして、でもってSEPの方では来年の秋口からの利下げ、という話になっている訳で、それとハトハトジジイ2世の説明って整合性取れとるんかい、というのは何だか謎なところはありますけどまあ読んでみないと何とも。

FEDのコミュニケーションの中で毎度どうかと思うのはこの「会見と公式発出文書のトーンを調整する」というプレイでして、まあここからは年末ということもありますので、来年に向けて気分よくアメリカンヒャッハー相場をやっているんでしょうけれども、ホンマカイナ感はぬぐえませんな。


〇いやもう何なのこのアホみたいに動く先物(円債ちゃん)

昨日の債券先物(と言っても前日の日中足が見れるのは寄り前までです)
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555

取引日:2023/12/14
立会区分:日中取引
始値:146.34(12/14)(08:45)
高値:146.51(12/14)(09:59)
安値:145.65(12/14)(13:43)
現在値:146.01(12/14)(15:02)
前日比:+0.21
取引高:37,772

米債ヒャッハーを受けて上で始まったんですが、超長期入札がクッソ流れてあばばばばーと売られたものの戻って(146.35くらい→146.05くらい→ホイホイ戻って146.30くらい)というあたりまだ分かるのですが、13時半前に146.20レベルから何かバカスカさありだして1343に当日安値の145.65レベルまで下がるという動き。

でもってこの間何か材料でもあったかと思って必死こいてベンダー探したけど何も無かったみたいだし、昨日は為替市場も何かもうシッチャカメッチャカに動いていたし、何か大きなポジションクローズでも起きてるのかも知れませんなとは思いましたが、超長期入札というイベント終わったあと一段落した、と思ったらそこから引けにかけての動きがまあ派手でございまして、見てて乗り物酔いする風情でございました。

売買高は3万7千もあるので大商いは大商いなのですが、とにかく先物謎の急落以降は板がスカスカな状態が続いていて(だから値動きが激しくなるのですが)まあマーケットの流動性ってどんどんなくなっておるわというのを益々痛感した次第なので、とっととマイナス金利の撤廃をアナウンスして輪番も徐々に減らせやと思いました(今週水曜に関してはMPM直前のタイミングで輪番をへらすのは変な政策メッセージに見えてしまうリスクがあるので減額しない、というのはワイは理解できたので別に今週減らさなかったことに関してはそこまで文句を言う気はない)。

しかしアメリカが利下げって言ったって別にアメリカの景気が腰折れして金融緩和をしないといけないってわけじゃなくて、単に引き締めを正常化しようかという話をしているだけの状態なのに、何も日本の長期金利が一緒になって下がらんでもエエジャロそもそも金融政策のステージ全然違うじゃろとは思うのですが、まあ市場ちゃんがそういう仕様になっているので仕方ないですけど、いずれにしましてもMPMの後は(どういう決定をするにしても)輪番減額のボーナスステージ突入しているので輪番減らせやと思うのでありました、まる。


〇ECBはまたもポンチ絵を最初に見ますが先行きの政策は触れなくて良いのがお得感満載

いつものポンチ絵(URLが長いのでハイパーリンクは途中の文字列までで掛けておきます、下も同じ)
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2023/html/mopo_statement_explained_december.en.html
Our monetary policy statement at a glance - December 2023

10月のポンチ絵
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2023/html/mopo_statement_explained_october.en.html
Our monetary policy statement at a glance - October 2023

最初が『What did we decide?』でして、

『We kept our key interest rates unchanged

Our past interest rate hikes are having a strong effect on the economy and are helping to push down inflation. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(今回)

『We kept our key interest rates unchanged

Our past interest rate hikes are already helping push inflation down. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(前回10月)

前回と比べますと利上げの効果に関して「having a strong effect on the economy」とかぶっこんできておりまして、利上げの効果が景気にもストロングエフェクトというのですから、まあ前回と比較して利上げおかわりの可能性は減る(というかまあ無くなったということでしょうけど)ということでどうせ説明あったんでしょうな、と思います。

でもってイラストは例によって貼る能力がないのでURL先見に行ってちょという話になりますが、前回と同じイラストになっていまして、あくまでも横這いということで先行き利下げチックな絵柄になっていません。

これはまあ賢明な作戦でありまして、まあ昨年来ECBはフォワードコミットメントに類することは言わねーよということで、当然ながら(元々出していないけど)ドットチャートのようなものを出さないという作戦にしているので、もうちょい先には物価が落ち着いて利下げも、という話があったとしても現時点でそんな先の話まで見せなくても良いというのがある訳ですな。

一方でFEDの場合はドットチャートを出してしまっているので、長期緩和をコミットするような時とには便利なのですが、今みたいに「3年後には長期均衡水準に向かって経済物価が推移するでしょう」みたいな見通しを出していると、どうしても「先行きの政策を中立に戻す」というメッセージを出さざるを得ない状態にるので、足元の政策が中立なら良いんですけど、どっちかにバイアス掛かっている状態の時に「将来は中立スタンス」ってのが過度に注目されてしまいますと、せっかくの緩和なり引き締めなりの効果が相殺されてしまうという問題点があるので、まあ利上げだ何だと言い出したあたりでしらっとフォワードガイダンスを全部無くしたECBは作戦勝ちでしたな、と改めて思うのでありました。


でもって次が今回だけおまけがあって、

『We will gradually bring our asset purchases to an end

From the middle of next year, we intend to gradually reduce the amount of assets we bought under the pandemic emergency purchase programme.』(今回)

これはPEPP終了のお知らせですね。


次が『What is going on in the economy?』なのですが・・・・・・・・

『The economy is weak and will only gradually recover

Many companies are still working off their past orders. Higher interest rates are cooling economic activity, especially in construction and manufacturing.』(今回)

『The economy is weak and will remain so until the end of the year

Less demand from outside the euro area and higher interest rates are cooling the economy. But with lower inflation, higher incomes and a pick-up in exports, the economy should recover.』(前回10月)

前回はインフレの方が先にあったのですが今回は経済の方が先になっています。

でもってイラストの方が前回って暗い背景があって左に地球と下向き矢印、右にECBの建物らしきものと上向き矢印、という図になっていたのですが、今回は何か工場っぽいのがあって、最初何の絵なのか分かりにくかったのですが、どうも棚にある商品らしきものが少ない、というのが「Higher interest rates are cooling economic activity, especially in construction and manufacturing.」ということの説明っぽい(前半の「Many companies are still working off their past orders.」も含まれていそうですが)のですが、上向きとか下向きとか、青色の濃淡(濃くすると暗い感じになる)とか、工場の人が頭抱えてたり喜んでいたり、とかそういう感じのビジュアル的に一目瞭然な絵柄じゃなくなっている辺り、ちょっとECBは経済に関してよくわからんモードになっているんじゃなかろうか、という印象を受けました(個人の感想です)。会見で何言ってるのかは週末見るw

あとですね、今回は金利が上がった事の効果に関するイラストが前回まであったんですが無くなっておりまして、その代わりにここの中で先ほどあるように「Higher interest rates are cooling economic activity」とあるだけで、金利上昇の効果の強調ニキが無くなったのもほうほうそうですかそうですかって感じですね。


次がインフレ

『Inflation fell again but will go up for a short time

It will come down again next year, but more slowly. This is in part because government measures that had helped keep prices in check are ending. Higher wages are also keeping prices up.』(今回)


『Inflation has dropped markedly but is still too high

Prices for goods and services are no longer rising as much. In the coming months, inflation should come down further. But new conflicts and tensions in parts of the world have made the future more uncertain.』(前回10月)

イラストの方はインフレの見通しを紙飛行機の軌道みたいなので示しているんですが、見通しは謎に器用な見通し(まあ文章の通りですけど)ですけど、前回のイラストでは空にあった注意印(△に!の印ね)があったのですが、今回外されているので、インフレは消毒だヒャッハー状態ではなくなったというのを絵の方で示しています。

小見出しの方でも「still too high」と言ってるのが外されているので、インフレに関しては普通に成敗モード完了という感じでしょう。


『Lots of people are in work

New jobs are still being created. But as the economy cools, firms are seeking fewer new workers.』(今回)

『Many people are in jobs

Unemployment stands at its lowest level since the start of the euro. But fewer new jobs are being created, including in services.』(前回10月)

イラストが今回は職安みたいな風情のイラストになっているのは多少気になりました(^^)。

でもって先ほど申し上げたように、今回は前回あった、

『Higher interest rates are making borrowing more expensive

As a result, fewer people are planning to buy a house. Businesses have cut back on new investments. And banks have made it more difficult to get loans.』(前回10月)

が無くなっています。PEPP終了のイラストを入れたのでイラスト枚数を同じにするために外したのか、はたまた金利上昇で云々の話をしなくてよくなったのか、というのはさすがにイントロダクトリーリマークをみないと分からんかな、と思いました。

総じて見たら寧ろFEDよりも先行きの利下げ早くねえかって絵になっているのですが、まあそこはハトハトジジイの会見のせいという感じですね、ラガルド姐さんの会見はまだチラ見すらしておりませんのですいません。






2023/12/14

お題「寝起きでFOMC/業況判断とか雇用判断とか物価関連がバチクソ強い日銀短観」

ええもちろん短観は昨晩夜なべをして書きましたですわよ。

〇FOMC声明文:物価が期待通り下がって来ましたって感じですか

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20231213a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20231101a.htm(前回11月)

ま、11月というか10月末というかですけど。

・第1パラグラフ:直球で景気の減速と物価の落ち着き傾向に言及も水準はまだ高いと

『Recent indicators suggest that growth of economic activity has slowed from its strong pace in the third quarter.』(今回)
『Recent indicators suggest that economic activity expanded at a strong pace in the third quarter.』(前回11月)

はい、ということで今回は総括判断を下げました。

『Job gains have moderated since earlier in the year but remain strong, and the unemployment rate has remained low.』(今回)
『Job gains have moderated since earlier in the year but remain strong, and the unemployment rate has remained low.』(前回11月)

雇用の判断は同じです。

『Inflation has eased over the past year but remains elevated.』(今回)
『Inflation remains elevated.』(前回11月)

インフレに関しては水準の「remains elevated」は残していますが「Inflation has eased over the past year」と物価落ち着きだしてきてますぜへっへっへと来ました。まあ順当ちゃあ順当な流れ。


・第2パラグラフ:金融システムや金融環境に関する文言は不変

『The U.S. banking system is sound and resilient.』(今回)
『The U.S. banking system is sound and resilient.』(前回11月)

アタクシは寧ろこの文言を何時外すかを見ています。ここがサウンドやレジリアントじゃなかったらエライコッチャでございますが、そうじゃなくて「そんなの言うまでもない」と言い出す日の方を見たいって感じですね。

『Tighter financial and credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(今回)

『Tighter financial and credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(前回11月)

このパラには「The Committee remains highly attentive to inflation risks」ってのもあって、これ自体は変わっていないんですよね、でまあこの後の声明文でも微妙にまだ引き締めのおかわりの可能性を残しているという声明文仕立てですが、ゆうてこれまた後でネタにしますがSEPで引き締めのおかわり勢が居ないとゆーのもありますので、まあここはとりあえずオマジナイで残っている感じじゃないでしょうか。


・第3パラグラフ:前回から変化したのは単語一つですけど

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(今回)
『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回11月)

3パラの頭はいつもの奴。

『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(今回)
『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(前回11月)

前回同様の据え置きなので文言も同じになりますな。

『The Committee will continue to assess additional information and its implications for monetary policy.』(今回)
『The Committee will continue to assess additional information and its implications for monetary policy.』(前回11月)

この先は出たとこ勝負です文言も同じ。

『In determining the extent of any additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(今回)

『In determining the extent of additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(前回11月)

なんちゅう文学表現という感じですが、今回は今までの「In determining the extent of additional policy firming」のadditional policy firmingの頭に「any」を入れるとかいうドメドメジャパニーズのワタクシ泣かせの文学表現キタコレとなる訳ですが、まあこれは要するに「物価が2%に戻るための適切な追加的な金融引き締めの程度を判断するにあたっては(追加引き締めするとは言っていない)」って意味で良いんですよね。

まあドットチャート見てもメインシナリオ通りなら利上げしないし年後半には利下げ開始、ってなっているのですからこの辺の「引き締めのおかわり文言」は金融市場が早期利下げヒャッハーからの金融環境の余計な緩和で引き締め効果を削ぐのを防ぐためのオマジナイ文言って所でしょう。オマジナイが効くのかどうかは知らんけど。

以下は資産買入の話になりますがこっちはいつも通り変わらず。

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(今回)

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(前回11月)

同じですね、ちなみにインプリメンテーションノートも確認しましたがバランスシート縮小ペースに関しても変化はありませんでした。

『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回11月)

これは締めの護符みたいなもん。


・第4パラグラフ:毎度おなじみの全文一致

先行きの金融政策に関してフォワードコミットメントをしなくなっているので当たり前なんですが、4パラはごく当たり前のことを書いているだけパラグラフになってしまいました、めんどいのでたんに貼るだけ。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回11月)

一応これ貼りながら再確認してますがやはり全文一致である。


・第5パラグラフ:全員一致で賛成ですね

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Adriana D. Kugler; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Adriana D. Kugler; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(前回11月)


・ディレクティブは不変です(当たり前ですが)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20231213a1.htm
Implementation Note issued December 13, 2023
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

前回はこちら
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20231101a1.htm

一々比較しませんけれども、各種ファシリティの適用金利、ONRRP等の個別利用限度額などには変更は加えられていません。


〇SEP:ドットですが来年の利下げは1回弱くらい9月よりも利下げ回数が増えたけど結局3回くらいじゃネーノ

PDF版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20231213.pdf

HTML版
https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcprojtabl20231213.htm

引用は引用のしやすさによりHTML版から参ります。例によって手抜きなので基本的にメディアンしか見ない。

・経済物価見通しは実質ベースでは強くなっているということで物価高抑制のこうかはばつぐんだという事けえのう

左から2023、2024、2025、2026、Longer run

Change in real GDP  2.6  1.4  1.8  1.9  1.8
September projection 2.1  1.5  1.8  1.8  1.8

中々お茶目なのは「growth of economic activity has slowed from its strong pace in the third quarter」と声明文にあるのに2023年の着地見通しは9月よりも0.5%も強い事ですが、この後出てくるように物価見通しの方で2023年の着地見通しが9月よりも0.5%弱くなっているので、なんですかこれは名目は同じで実質が物価の分だけ改善という事ですか(そんな単純な話ではないのは重々承知していますが)と笑ってしまいました。

これ多少の出入りはあるけど結局の所見通しはそんなに変わっていなくて、来年までは金融引き締めの効果が出るので成長ペースは落ちるけど、再来年からは巡航軌道のペースになるという事ですな。


・雇用市場の見通しは横ばい、来年からは巡航速度

Unemployment rate   3.8  4.1  4.1  4.1  4.1
September projection 3.8  4.1  4.1  4.0  4.0

まあ全体ちゃんとみたら少し違うかもしれませんが手抜きなのでメディアンだけで判断すればストロングな雇用って感じですが、ゆうてこちらは来年には巡航軌道になると仰せです。


・物価見通しは順調に下げ、リスクバランスもアップサイドリスクが減る

PCE inflation    2.8  2.4  2.1  2.0  2.0
September projection 3.3  2.5  2.2  2.0  2.0

物価に関してはより無理のない見通しになってきまして、まあこれは自信ニキにも程があるという感じでございましょう。

HTML版の方がこれは見やすくて、ちょっと先の方に行くと「不確実性」と「リスク認識」に関する集計表がありまして、

Risks to PCE inflation
Number of participants
            Weighted to Downside  Broadly Balanced  Weighted to Upside
December projections       0          12          7
September projections       0          5          14

となっていまして、物価のアップサイドリスクを見る人も減っている、という訳で益々物価抑制大勝利に向けて自信ニキという風情が強まって参りましたので、この辺り(と次のドットチャート)を見ますと、まあ声明文にある「追加利上げのおかわりだってないわけじゃないよ」文言はまあオマジナイ文言ですわな、という評価になると思います。まあこれをハトというならハトなのかもしれませんけど、あたくしには単に「物価沈静に自信ニキ」という解釈なんですけどね。



・でもってドットチャートですがこれは秋口からの利下げ着手って感じですね

今回はなんせ2023年末の着地が9月の時点で利上げ無しVS1回利上げで割れていたので判別がしにくいのですが、

2024年の利下げ回数見通し

利上げ:0人
据え置き:2人(2人いるのか・・・・・)
1回:1人
2回:5人
3回:6人
4回:4人
5回:0人
6回:1人

ということで、ざっくり3回弱って感じで、毎回の会合で利下げしだすとなると9月から利下げって感じになるのでまあそんなもんかいな(4回だと実は7月からの利下げになるので2か月違うのよね)とは思いました。なんか無難っぽいですよね。

前回との対比が難しくてアレなのですが、前回って目の子でざっくり2回強って感じでしたので、今回の方が物価の見通し下がっている分だけ利下げも1回弱前倒しになったかなという所ではないかと思いますが、まあ3月から利下げ開始(つまり7回)とかいう予想してた人はゴールデンゲートブリッジから紐無しバンジージャンプをすることをお勧めしたいわw


・ロンガーランは多少出入りあるけどこれは横ばいでしょ

2.25-2.50:3人→3人
2.50:8人→8人
2.50-2.75:2人→1人
2.75:0人→1人
2.75-3.00:1人→1人
3.00:1人→1人
3.25:1人→0人
3.50:1人→2人
3.75:2人→1人

微妙に上の方が出たり入ったりしていますが、まあこれ横這いという評価でエエンチャウノかと思います。

なお会見には手を付けられなかったので明日で勘弁。


以下昨晩の夜なべ物件となります(日銀短観)

〇短観ですが普通に業況感強いし雇用も強いしインフレ期待は高止まり

https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2312.pdf
短 観(概要)―2023年12月― 
 第199回  全国企業短期経済観測調査

・業況判断DI:今回は非製造業だけではなくて製造業もバチクソに強いという非常につよつよ結果

         (9月短観)      (12月短観)
         現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業   +9→+10      +12→+8 
製造業中堅企業  0→+2        +5→+4        
製造業中小企業  ▲5→0        +1→▲1

非製造業大企業  +27→+21     +30→+24
非製造業中堅企業 +19→+14     +20→+14
非製造業中小企業 +12→+8      +12→+14

前回はこんなことを書きました。

(10月3日の9月短観を受けて書いた駄文より)
でまあ今回ですが、製造業に関しては前回の先行きDIが大企業だけしか達成できていないのですが、一方で先行き見通しの方は今回も上向きになっているのですな。まあそれよりも非製造業強すぎワロリンチョという感じですよね〜。
(ここまで引用)

今回はなんせ業況判断の「達成」状況が全部超過達成だわ、前回よりもみんな強いわ、製造業中小企業がプラテンしているわ、ということで兎に角強いとしか言いようがありません。


・企業の販売価格見通しは高止まりですなあ・・・・・・・・・

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 3月:2.1%→6月:2.9%→9月:3.1%→12月:3.2%→3月:3.3%→6月:3.0%→9月:2.8%→12月:2.6%
3年後 3月:2.7%→6月:3.5%→9月:3.8%→12月:3.8%→3月:4.0%→6月:3.8%→9月:3.8%→12月:3.7%
5年後 3月:3.2%→6月:4.0%→9月:4.2%→12月:4.3%→3月:4.6%→6月:4.4%→9月:4.4%→12月:4.4%

大 企 業 製 造 業
1年後 3月:1.9%→6月:2.7%→9月:3.2%→12月:3.0%→3月:2.9%→6月:2.5%→9月:2.4%→12月:2.2%
3年後 3月:1.8%→6月:2.5%→9月:3.1%→12月:3.0%→3月:3.2%→6月:2.8%→9月:2.9%→12月:2.8%
5年後 3月:1.7%→6月:2.5%→9月:3.2%→12月:3.1%→3月:3.5%→6月:3.0%→9月:3.1%→12月:3.0%


大 企 業 非製造業
1年後 3月:1.1%→6月:1.5%→9月:1.9%→12月:2.1%→3月:2.4%→6月:2.1%→9月:2.2%→12月:2.0%
3年後 3月:1.6%→6月:2.2%→9月:2.4%→12月:2.6%→3月:3.0%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.7%
5年後 3月:2.2%→6月:2.6%→9月:2.8%→12月:2.9%→3月:3.4%→6月:3.2%→9月:3.4%→12月:3.2%

(10月3日の9(10月3日の9月短観を受けて書いた駄文より)
こちらはまあ前回書いたことは割愛しますが、9月会合の主な意見とか何か流れに変化ある感じですけれども、企業の販売価格は水準的には全然高止まりな訳でして、こりゃ強いわとしか申し上げようがないですし・・・・・・・・・(ここまで引用)

ということで今回もちょっとは下がった部分があるとはいえこれは高止まりですわな。

・企業の物価全般見通しも高止まり〜(全体もそうですがこちらは中小企業を)

物価全般見通し 全規模合計 全 産 業
1年後 3月:1.8%→6月:2.4%→9月:2.6%→12月:2.7%→3月:2.8%→6月:2.6%→9月:2.5%→12月:2.4%
3年後 3月:1.6%→6月:2.0%→9月:2.1%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.2%→9月:2.2%→12月:2.2%
5年後 3月:1.6%→6月:1.9%→9月:2.0%→12月:2.0%→3月:2.1%→6月:2.1%→9月:2.1%→12月:2.1%

中小企業 製 造 業
1年後 3月:2.2%→6月:2.8%→9月:3.0%→12月:3.1%→3月:3.2%→6月:2.9%→9月:2.8%→12月:2.7%
3年後 3月:1.9%→6月:2.3%→9月:2.5%→12月:2.5%→3月:2.5%→6月:2.4%→9月:2.4%→12月:2.4%
5年後 3月:1.9%→6月:2.2%→9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.3%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%

中小企業 非製造業
1年後 3月:2.0%→6月:2.5%→9月:2.7%→12月:2.8%→3月:3.0%→6月:2.8%→9月:2.8%→12月:2.6%
3年後 3月:1.8%→6月:2.2%→9月:2.3%→12月:2.4%→3月:2.5%→6月:2.4%→9月:2.5%→12月:2.4%
5年後 3月:1.8%→6月:2.0%→9月:2.2%→12月:2.2%→3月:2.3%→6月:2.3%→9月:2.3%→12月:2.3%

(10月3日の9月短観を受けて書いた駄文より)
まあアレですよね、報道ネタ的には全規模合計全産業という要するにオーバーオールの数字が下がり傾向になっているのをネタにするのかもしれませんけれども、こんなのどっから見ても「高止まり」にしか見えませんよねということで、こちらもまあ普通は「インフレ期待がしっかりしている」という風に読んで、期待インフレも2%の定着傾向が認められます我々の大勝利、と言えばいい筈なのですが、黒田の亡霊に憑りつかれているので何故かこれでも大勝利宣言にならないというのが意味不明ちゃんな日銀なのでありました。
(ここまで引用)

まあこちらも前回と同じくですけど、ちょっとっ下がったかもしれないですけど、よくよく見れば5年の見通しとか全然変わっていないですし、全然下がる気配なし、ということでむしろこの状況で2%達成宣言が出ないのが不思議、というのは今回も変わらないですな。

・販売価格判断
        (9月短観)         (12月短観)
        現状→12月予測      現状→3月予測
製造業大企業  +32→+26      +26→+20
製造業中小企業 +30→+30       +26→+28

非製造業大企業  +27→+26      +26→+28
非製造業中小企業 +27→+29      +25→+29


・仕入価格判断
        (9月短観)        (12月短観)
        現状→12月予測      現状→3月予測
製造業大企業  +48→+42      +43→+38
製造業中小企業 +61→+57      +56→+53

非製造業大企業  +43→+42     +41→+44
非製造業中小企業 +58→+56     +54→+55

前回は高止まり、と書いたのですが、こちらの価格判断はやや落ち着きモードになっておりますな。


・雇用判断DI・・・・・・は前回強いと書いた以上に強い!

        (9月短観)        (12月短観)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業   ▲15→▲16     ▲16→▲17
製造業中堅企業  ▲22→▲25     ▲22→▲26
製造業中小企業  ▲21→▲26     ▲23→▲29

非製造業大企業   ▲36→▲37    ▲37→▲38
非製造業中堅企業  ▲42→▲45    ▲45→▲48
非製造業中小企業  ▲44→▲50    ▲47→▲52

(10月3日の9月短観を受けて書いた駄文より)
いやーーーーこの雇用判断DIの強さは何ですかという感じで、この強さならおちんぎんだって強いんじゃないでしょうか、と思います(なおワイ以下自主規制)けれども、のうのうと来年の春闘を見てもまだ分からないから来年の夏にならんと分からんとか言ってる場合じゃないのではなかろうか、と思う次第でありまする。
(ここまで引用)

でまあ今回はその強かった前回短観よりも強いという展開で、やっぱりこの雇用の強さで賃金がどうのこうのとケチつけてる場合でもねえだろという感じはします。強いですよね。


・需給判断と在庫判断

国内需給判断
        (9月短観)         (12月短観)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業   ▲9→▲7        ▲9→▲8
製造業中小企業 ▲21→▲20      ▲20→▲20

非製造業大企業  ▲4→▲4        ▲3→▲4
非製造業中小企業 ▲10→▲11      ▲10→▲11


海外需給判断
        (9月短観)       (12月短観)
        現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業  ▲10→▲8        ▲12→▲10
製造業中小企業 ▲15→▲15      ▲17→▲17

(10月3日の9月短観を受けて書いた駄文より)
この需給判断に関しては絶対水準見ても多分しょうがなくて。前回対比で見ることになるんですけど、業況判断とか良いのに対して毎度この需給判断って妙に弱めに出て来るという物件になっていまして、(前回もナンジャコラと思いながら書いていた覚えがある)この数字ってあんまりあてにならないのかなあとか思ったり思わなかったり。
(ここまで引用)

うーん、ここの数字ほぼ同じでこれはあんまり見てもしゃーないかな(次回からパスすると思います)。



製商品在庫水準判断
      (6月短観) (9月短観)  (12月短観)
        現状     現状      現状
製造業大企業  +20    +21      +21
製造業中小企業 +18    +19      +17


製商品流通在庫水準判断
        (6月短観)  (9月短観)  (12月短観)
          現状      現状      現状
製造業大企業  +10    +14      +13

(10月3日の9月短観を受けて書いた駄文より)
でもって在庫水準なんですけど、前回の短観の時に『「インフレノルムになって来ると、多少在庫を持っていても陳腐化しない限りにおいて在庫価値が上昇する訳だから在庫持ってても無問題」というムーブになってくる、とかそういう感じなのかというアクロバット解釈をしてみるのも一興。』などと書いたのでございますけれども、もしかしてこの想像そんなにズレてないんじゃないかな、という気がしてきました・・・・・・
(ここまで引用)

うーむなんかそうですよね。インフレノルムになると在庫って(陳腐化しない限りにおいて)在庫価格が上昇するのであんまり問題にならないという認識なのではないかと。





2023/12/13

お題「中央銀行の財務に関するスタッフペーパーが出てきましたな」

しかしまあ何ですな、ガースーさんも安倍ちゃんの尻拭いしているうちに死に体になった訳ですしキッシーも結局安倍ちゃんの負の遺産顕在化でこの有様な訳で、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231213/k10014286231000.html
岸田首相 あす閣僚4人を交代へ 後任は安倍派以外で人選
2023年12月13日 5時18分

日銀がまさしく『「何かをやって失敗すると個人が厳しく責任を問われるが、何もしなかったために失敗しても誰のせいなのかはっきりしない」とか、「何かをやって成功してもそれほど報いられないが、何かをやって失敗すると厳しく責められる」といった、非対称なインセンティブ構造』(氷見野副総裁の言葉を拝借したが氷見野さん別に日銀を差していた訳ではない)状態になるのもかくありなん(別に擁護する気はない)という事ですね分かりますし、そら黒ちゃんいまのうちに「私の履歴書」書いておかないと、そのうち「最大級戦犯の弁明書」としか言われなくなりますもんねー(・∀・)ニヤニヤ


〇多角的レビューのワークショップの資料が気が付かないうちにでておりますな

昨日こんなのが出たのよ。
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2023/ron231212a.htm
中央銀行の財務と金融政策運営

本文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2023/data/ron231212a.pdf
多角的レビューシリーズ
2023 年 12 月
中央銀行の財務と金融政策運営

知らん間に「Broad Perspective Review」なんてロゴも出来てたのかと思いましたがそれはともかく。

まあこのペーパーを紹介しようかと思って、じゃあ多角的レビューの先般のワークショップのお品書きでも見てやるか、と思ったら何と、

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr231206a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」
2023年12月6日
日本銀行

こちらに当日のお品書きがあったのですけれども、上記の日付が12月6日になっていますので、これ実は先週既に当日配布資料ってアップされていたのですねきっと、不覚にも気が付きませんで誠に申し訳ございません(土下座)。

ということで当日の資料(というかポンチ絵というか)が以下の通り。

第1セッション:金融市場
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr231206a.pdf
過去25年間の本邦金融市場の振り返り
――金融政策が市場機能度に与えた影響を中心に―― [PDF 1,682KB]
報告者
前橋 昂平  日本銀行金融市場局総務課企画役
北村 冨行  日本銀行金融市場局総務課長

第2セッション:金融システム
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr231206b.pdf
低金利環境下における金融機関のリスクテイク行動[PDF 1,047KB]
報告者
稲場 広記  日本銀行金融機構局金融システム調査課企画役
平形 尚久  日本銀行金融機構局金融システム調査課長

第3セッション:日本銀行のバランスシート
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr231206c.pdf
中央銀行の財務と金融政策運営[PDF 743KB]
報告者
吉村 玄   日本銀行企画局企画調整課企画役
土川 顕   日本銀行企画局企画調整課長

第4セッション:非伝統的金融政策
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/data/bpr231206d.pdf
非伝統的金融政策の効果と副作用[PDF 1,197KB]
報告者
山本 弘樹  日本銀行企画局政策調査課企画役
開発 壮平  日本銀行企画局政策調査課長

でまあ今回出ましたペーパーは上記の3番目のお題の「日本銀行のバランスシート」のプレゼン資料のバックグラウンドペーパーとなるもの、という物件になりますな、うんうん。


ということでURL再掲してまずはサマリーを拝読。

https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2023/ron231212a.htm
中央銀行の財務と金融政策運営
2023年12月12日
日本銀行企画局

『要旨』ですな。

『日本銀行は、1990年代後半以降、ゼロ金利制約に直面するもとで、様々な非伝統的な金融政策を実施してきた。主要な海外中央銀行においても、グローバル金融危機の発生以降、大規模な資産買入れなどを実施してきた。こうした大規模なバランスシートの拡大を伴う非伝統的な金融政策は、その引き締め局面で、中央銀行の財務に影響をもたらし得るとして、そのことと金融政策運営能力、ひいては通貨の信認を関連付けた議論がみられている。』

そらそうよ。でまあ日銀の理屈ですが、

『中央銀行は、買い入れた国債等から利息収入を得る一方、負債である当座預金(所要準備)と銀行券については金利が付されない収益構造となっている。このため、通常、安定的に収益(通貨発行益)をあげることができる。』

この説明をすると自分の首が締まるから言わないのかもしれないけど、この理屈からすればいわゆる「銀行券ルール」って極めて妥当で、銀行券見合いで国債を購入する分には国債の受け取り利子がシニョリッジになります、という話だし、逆にそれ以上に国債を購入した場合、当座預金を減少させなければいけない局面になった時に、保有国債を中途売却する必要が発生するので損失が出ますよ、という話になるんですよね。要は事実上の長期負債でコストがゼロの物に対する見合いの金融資産を長期保有するって話だわさ。

『中央銀行が非伝統的な金融政策を実施するもとで国債の買入れ等によってバランスシートを拡大すると、資産側では国債等が、負債側では当座預金(超過準備)が増加する。超過準備に対する利息の支払いが生じるが、買い入れる国債の利回りは、通常、超過準備への付利金利を上回るため、保有国債等の増加に応じて、利息収入等も増え、全体の収益が増加する。』

『他方、金融政策が引き締め方向に向かい、バランスシートが縮小していく局面では、資産側では国債が、負債側では超過準備が減少していくことが想定される。』

と書いているのに、なぜかここで国債売却の話をしないのがチャーミングなんですよね。即ちこの文章の続きでは、

『その際、中央銀行が付利金利を引き上げると、支払利息が増加し、収益を下押しする。もっとも、その後は、超過準備が減少するにつれて支払利息は減少する。さらに、保有国債が利回りの高い国債に順次入れ替わっていくため、受取利息が増加することが見込まれる。』

ので、

『こうした過程で、一時的に赤字が発生する可能性はあるが、その場合でも、通常、いずれは収益が回復していく。』

だと言ってるんだが、そもそも論として「保有国債が利回りの高い国債に順次入れ替わっていく」ってのをアプリオリに設定しているのがこの「中央銀行のバランスシート論」のペテンな所でありまして、馬鹿政府が放漫馬鹿財政を実施して、ジンバブエかベネズエラかアルゼンチンか、というような所業をした場合に何が起こるかというと、保有国債の償還再投資なんてノンビリした事をやっている余裕は無い訳で、保有国債の売りオペレーションをしないといけなくなる事態が生じますがな。

だいたいからしてリフレ派大好きな高橋財政の時だってインフレが高進しだした時に(当時は高橋蔵相で日銀は深井総裁の頃になるかと)日銀が国債の売りオペレーションをしてインフレ高進を止めようとした(んだが中々大変だったですわな)という事例がある訳ですがな。

まあ国債の売りオペしないにしたって、同様にバランスシートの縮小を急がなければいけない事態になった場合には、保有国債の償還再投資なんてやってる場合じゃないというケースだってある訳で、この理屈で説明するためにはもう一つ重要な条件があるんですよね。まあ後でそれに関連するネタが出てきますので話の続きを拝見しましょう。

『バランスシートの縮小局面において、収益が変動する程度は、(1)バランスシートの規模、(2)保有国債の満期償還時に再投資する規模、(3)短期金利・長期金利の推移、(4)銀行券発行残高の動向などによって大きく異なってくる。』

売却という言葉が無いのが先ほど来申し上げているようにチャーミングなわけですが、こういうの言霊信仰の逆パターンで「全電源喪失はあり得ない」とかいうのを思い出すので、やはりちゃんと「インフレが高進して国債を売却しないと行けない事態になった場合」というのを出せやヴォケと思うのでした。まあ後でそこはやんわりと書かれているけど。

『中央銀行の収益や資本の減少については、管理通貨制度のもとでは、「金融政策運営にどのような影響を与えるのか、与えないのか」という視点から検討することが重要である。この点、金融政策運営に「悪影響を及ぼす」という見方と、「悪影響を及ぼさない」という見方があり、その理論的背景についても、様々な立場が存在する。』

結局はこんなの信認の問題で、アメリカン経済学の一番悪いところは、アメリカンって大正義USAの中の人だからシャーナイのかもしれないけど、「米ドルはいついかなる時でも無制限に通用する」ってのを前提に置いた話を堂々と展開することでありまして、経済学がアメリカン経済学に毒されているせいで、自国通貨がそもそも通用しなくなる、という事態を何故か丸無視して話を進めるスットコドッコイ学者が日本でも散見されるのが残念なところです。

『この間、主要な海外中央銀行では、最近のインフレ対応から、急速かつ大幅な金融引き締めを進めており、収益や資本が減少している。こうした中、対外的な説明において、一時的に赤字や債務超過となっても政策運営能力に支障は生じない点を強調している。』

『また、現在は収益が減少しているが、これまでのバランスシート拡大局面では収益は増加していたという事実にも言及しつつ、大規模緩和の政策評価にあたっては、経済全体へのプラス効果に焦点を当ててなされるべきであるといった考え方を示している。』

『そのうえで、これらの中央銀行では、政策運営能力への疑念や中央銀行の信認低下などの悪影響を回避する観点から、引き続き、資本の重要性を踏まえ、時間をかけて自己資本の回復を図っていく方針にある。こうしたもとで、各国・地域ともに、適切な金融政策運営を通じて通貨の信認を確保するという点で、特段の支障は生じていない。』

という話ですが、ここで日銀の腰の弱い所は「これらの国では財政運営において一定の健全性を保つ努力を行っており、財政運営への信認が高いことも中央銀行の信認を後押ししている」というような事を表の所に堂々と書けない辺りでございますが、まあアベノミクスとかいう邪宗門の門徒があちこちにいるので書けないといったところでしょうなあナムナム。

『以上を踏まえると、中央銀行の財務と金融政策運営との関係については、次のように整理できる。』

ほうほうそれでそれで???

『管理通貨制度のもとで、通貨の信認は、中央銀行の保有資産や財務の健全性によって直接的に担保されるものではなく、適切な金融政策運営により「物価の安定」を図ることを通じて確保される。』

うーん財政運営の話が無いですなあ(まあ話の流れからして書かないのは順当だが)。

『そうした前提のもとで、中央銀行は、やや長い目でみれば、通常、収益が確保できる仕組みとなっているほか、自身で支払決済手段を提供することができる。したがって、一時的に赤字または債務超過となっても、政策運営能力に支障を生じない。』

でまあここからが奥歯にものの挟まった言い方になるのですが、

『ただし、いくら赤字や債務超過になっても問題ないということではない。』

『中央銀行の財務リスクが着目されて金融政策を巡る無用の混乱が生じる場合、そのことが信認の低下につながるリスクがある。このため、財務の健全性を確保することは重要である。』

『日本銀行としては、引き続き、財務の健全性にも留意しつつ、適切な政策運営に努めていくことが適当であると考えている。』

あっそう、という感じですが、ここで本文の方を拝読してみましょう。


https://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2023/data/ron231212a.pdf
多角的レビューシリーズ
2023 年 12 月
中央銀行の財務と金融政策運営
日本銀行企画局

まずは分かりやすい所で順序が逆になりますが『BOX4 過去に中央銀行が債務超過となった事例』というのを拝見。PDFの36枚目、ページでは35ページになります。


『過去に中央銀行が債務超過となった例をみると、自国通貨高による外貨準備の評価損が直接の原因の場合には、インフレ率への影響は小さい。』

そらそうだ。

『一方、金融危機への対応や準財政政策的な貸付の実施などにより中央銀行の収益獲得力が劣化しているケースでは、過剰流動性を吸収するために発行する中銀手形などへの利払いを、中銀自身の収入で賄うことができず、不足分を当座預金の増額により補填する必要や、収益の悪化を懸念して、過剰流動性の吸収を断念する事態が生じた。結果、十分な金融引き締めを実施できず、インフレを抑制することができなかった。このことが、当該中央銀行への信認を失墜させ、さらにインフレが高進するという悪循環に陥った。』

物凄く奥歯にものの言い方をしていますが、要はインフレ抑制のために政策実施しようとしたんだけど過剰流動性の吸収が出来なくて失敗するような時には死亡確定ということですな。

で、さらに奥歯にものが挟まっているのが

『(インフレの一段の高進がみられなかったケース) 』
『(インフレが高進したケース) 』

という形になっているのですが、文章の説明がないのか、という点ですがこれは実は本文の中でしらっと説明が入っていまして、本文の方ですと、『4.中央銀行の財務を巡る議論 』という所、PDF20枚目、本文19ページになります、

ここで今のBOX4に相当する部分がありまして、この章の6段落目、PDF22枚目、本文21ページの中段以降になります。

『なお、過去に中央銀行が債務超過となった事例を振り返ると、インフレの一段の高進がみられなかった事例とインフレが高進した事例の双方が存在する(BOX4参照)。』

『インフレの一段の高進がみられなかった事例としては、1970 年代の旧西ドイツのドイツ連邦銀行において、自国通貨高により保有外貨資産に多額の評価損が発生したことから、債務超過となった事例等が挙げられる。旧西ドイツの例では、1980 年代に自国通貨高が一服し、債務超過を解消したこともあり、インフレ率への影響は小さかった。』

はい。

『他方、インフレが高進したケースとしては、1980-90 年代のフィリピンやジャマイカなどの中央銀行の事例が挙げられる。』

はい来ました。

『こうした事例では、金融危機時の民間金融機関向け融資の不良債権化などにより収益力が低下する一方で、財政拡張等によるインフレを抑制するための資金吸収オペに高い金利を支払う姿が常態化した。』

>財政拡張等によるインフレを抑制するための資金吸収オペ
>財政拡張等によるインフレを抑制するための資金吸収オペ
>財政拡張等によるインフレを抑制するための資金吸収オペ
>財政拡張等によるインフレを抑制するための資金吸収オペ
>財政拡張等によるインフレを抑制するための資金吸収オペ

このしらっと書いていることが一番大事なのですが、日銀はなぜこれをもっと言わないんでしょうかねえ先進国中最悪の財政状況だというのに。

『中央銀行にとっては金利負担による赤字が、債務超過拡大の要因となるだけでなく、マネーの増加圧力にもなり、インフレ抑制に支障を来たす結果となった。』

はい死亡スパイラル。

『これらは、経済・金融危機といった極端な環境のもとで生じたかなり特殊な事例であるが、中央銀行財務の毀損が金融政策運営能力に影響を及ぼすメカニズムを示唆している。 』

「経済・金融危機といった極端な環境のもとで生じたかなり特殊な事例」と言ってるのだが、日本の財政状況ってどうなっていましたっけ????????????????

という話でありまして、結局の所一国の担税力を極度に上回るような放漫財政やってたら中銀の財務も糞もなくインフレ爆発して大変なことになりまっせ、という話を中央銀行の財務ガーって言われたら言い返さないといけないのですが、ただ今それを言い返すと「お前が財政ファイナンスやってるのが悪い」という話になってぐぬぬとなって終わってしまうので言えません、というのがあるのはまあその通りという非常に悲しい現実が待っていたりするのでありますが南無阿弥陀仏。

とまあそういうことでして、本件って日本の状況(最悪の財政状況)を無視して話せばこういうことになるんですけど日本は前提条件が結構際どいというのがあるのでまあアレですわ、と思うのでした。(そもそも日本はバランスシート縮小時において元がデカすぎるので償還再投資している余裕があるのかよというのもあるし)





2023/12/12

お題「やはり相変わらずしょうもないコミュニケーションをする日銀なのでしたorz」

ほほう
https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/qa/2023/12/11/36497.html
2023年12月11日
経済 アメリカ
知の巨人の警告 緩和マネーと急速利上げの副作用は世界に

「知の巨人」とか言いながら全然知の巨人でもなんでもないインチキ野郎が出て来るのをよく見ます(のですっかりこの「知の巨人」って言葉が嫌いになってしまった)けど、さすがは公共放送だけのことはあって出てくるのはラジャンなのでした。

〇ロイターに続いてブルームバーグもクッソしょうもない火消し記事来ました

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-11/S5HJJ3T0AFB400
マイナス金利解除、日銀は今月急ぐ必要ほとんどないとの認識−関係者
伊藤純夫、藤岡徹
2023年12月11日 16:40 JST 更新日時 2023年12月11日 17:28 JST

まずは記事を拝読しますけど、

『→日銀は賃金と物価の好循環実現に向けた確証得られていない−関係者
→経済・物価情勢や市場動向などを直前まで見極めた上で決定−関係者』(上記URL先より、以下同様)

ってな訳で記事がおっぱじまりますが、まあこの場合の「関係者」に関してはそこらの何とかストとか日銀OBの人から聞くような与太話ではないでしょうという所でありまして(と申しますのもこれがまあ某別の記者だったらホンマモンの与太記事の可能性を否定できませんけど、まあ普通に考えて決定会合1週間前のタイミングでちゃんとしてないソースからの取材で記事を書くなんてリスクが高すぎて普通はやらん筈ですから、というのが根拠ですわ)、そう考えますと週末のロイターに続き、ということでまーた裏口コミュニケーションをおっぱじめやがったか日銀しょーもねーという話で、まるでこの体質変わっていないのに「丁寧な説明」とか聞いてヘソが茶を沸かすレベルのお話ではあるのですが、ではまあこの「裏口火消し」を拝読しようじゃないですか。

『日本銀行は、賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていないため、マイナス金利やイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識だ。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。』

ほうほうそれでそれで??

『これは、日銀が18、19日に開く金融政策決定会合では、金融政策の正常化が見送られる可能性が高いことを示している。関係者によると、賃金の堅調な伸びがデータで確認されるまで待つコストはそれほど高くないとみているという。』

そもそも「賃金の堅調な伸びがデータで確認される」ってのは物価目標達成の確認の話であって、マイナス金利解除はそれを待たなくてもできる話だし、大体からしてまあこれはあたくしの大予想の世界だから話半分で聞いて頂ければとは思いますが、もしマイナス金利解除するにしても、それは「物価目標達成の判断とは別」でやってくる筈なんですよ、つまり「いったんマイナス金利とかいう異例の部分は解除しましたが、だからと言って物価目標達成が見えたとかそういう状況じゃないから政策金利の引き上げはまた物価目標達成への進展を見極めていく必要がある」とか何とか言ってとりあえず先々の事を考えると一番邪魔なマイナス金利だけ分離して解除すると思うのよね。

これロイターさんの記事でも「消費が弱いから」とかいう理由が出てましたけど、正常化の時ってマイナス金利だけじゃなくて解さなければいけない事が山のようにある訳で、物価目標を達成しましたバンジャーイと言ってすべての物を同時に元に戻すのは実務的に無茶があるし、物価目標達成しているのに時間かけて解していたら政策が大幅なビハインドになってしまうのですから、そら経済判断と分離してマイナス金利解除するじゃろ、とまあそういう話になると思うので、上記の理由付けがそもそもインチキなのよね。

いやまあ本当に2%達成するまでマイナス金利も解除しないし10年金利も0%って覚悟があったら凄いけど、それはさすがに無茶である、ってのは氷見野副総裁の金懇で明らかに示されている訳ですし、段階的に解していく中でまず最初にこれがあると何も出来ないマイナス金利を外すのって順序として極めて妥当だと思うのですけどね。



ま、それ以前の問題としてこの説明がペテンなのは「マイナス金利やイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどない」って話でして、そらお前来週いきなりマイナス金利解除されても(特に短期金融市場の)実務が大混乱するわという話であります。

と申しますのは、単に金利がある世界において政策金利の上げ下げをする、というのと違いまして、マイナス金利政策導入によって(思い出すのも忌まわしいですが)色々な制度の変更が生じた訳でして、通常の金利の上げ下げと違ってマイナス金利解除というのは「制度変更」みたいなもんになる訳です。マクロ加算とか補完当座預金とか日銀当預のマイナスチャージとかそういう制度の問題もあるし、マイナス金利政策によって始まったような取引や、逆にマイナス金利政策によって事実上無くなった取引などもありますし、しかもこのマイナス金利の間に金融を巡る規制にも変化が生じている(大口信用供与規制とか流動性規制とかMMF規制とかその他諸々)ので、どういう感じで戻していくのか、とか恐らくマイナス導入時以上に対応が大変なんじゃネーノと思う訳ですよ。

とまあそういうのが長期金利ターゲットの上限いじりと本質的に話が違う事ですし、さすがに日銀もそんなのは先刻ご承知の介ですから、そもそも論として(なので長期金利の方なら別に今月サプライズでいじれると思いますが)マイナス金利をプラスの領域(0にうぶ毛が生えた程度でもプラスはプラス)にした場合の件については通常の政策変更と必ずしも同様には出来ない、というのもあって、マイナス金利解除するんだったら今月の会合で明示的に「次回解除するから皆さんで準備していきましょう」ってのが出て、1月に目出度く解除が決定される、という段取りにする事になると思うのよね。いやまあ多分もうちょっと早くから明示的に予告ホームランしてくれるなら12月もあったかも知れないのと、あとはまあ1/16の積み期間からマイナス終了、という決定の仕方ならまあ一応ありかもしれないけど、年末年始跨ぎなので準備日数が少なすぎるのが難点ですな。

まあそんな訳で、12月電撃マイナス金利解除ってのはさすがにちょっと蛮勇なので、12月予告1月解除(で即日なのか2月16日の積み期間からなのか)あたりがまあ実務的に妥当なんじゃないですかねえとそんな風に思うのでありまして、だからそもそも「12月にマイナス金利解除などは急ぐ必要はない」ってのはマイナス解除するにしたって当たり前の事を実は言っているのでありまして、これはひどいレトリック鷺じゃネーノと思ってしまいました。


とは言いましても、記事のちょっと先にあるように、

『ブルーバーグによる報道後、外国為替市場では円が対ドルで一時1%安の146円46銭まで下落した。大阪取引所の夜間取引で日経平均先物は上げ幅を拡大し、一時3万2920円を付けた。日経平均の11日の通常取引終値は3万2791円80銭だった。』

債券先物に関しては
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through

限月:24年3月限
取引日:12/12
始値:144.88(12/11)(15:30)
高値:145.31(12/11)(16:49)
安値:144.88(12/11)(15:30)
現在値:145.15(12/12)(05:01)
前日比:+0.24
取引高:9,361

ということでニュース出た瞬間145.30レベルまでぶっ飛んでしまいまして上がった分半分近くは戻したものの24銭高とかになりやがるの巻となっていまして南無阿弥陀仏というところですな。

ちなみに限月交代の方はと言えば売買高は昨日完全に逆転でしたし、結局昨日引け時点の建玉残高が3月限184,957枚なので建玉もほぼ移行した感じ(当限に3.4兆も残っているのですがまあどうせ両建てが結構あるでしょうし最終日水曜だからまだ日数あるし)ではありますな。

なんせドル円ちゃんの方がドイヒーで145円台前半だったのにいきなり146円台半ばまで飛ばされてしまいまして、いやさあお前ら火消しして円安持って行ったらダメじゃん何やってるんだよアホなのかと小一時間問い詰めたい展開になっていてもうアホかと馬鹿かとと思いました。


しかしまあ何ですな、さっきの引用部分と前後しますけど

『金融政策運営を巡っては、植田和男総裁が7日の国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことなどを受けて、市場で早期の正常化観測が急速に強まっている。関係者によると、植田総裁の発言は単なる一般的な見解に過ぎず、差し迫った政策変更を示唆するものではないという。』

ということで、何故かこの記事では氷見野副総裁の金懇をスルーしているのが気になるのでありまして、植田総裁の国会答弁もそらまあ目立つんですけれども、内容的に言ったら氷見野副総裁の大分金懇での説明と記者会見の説明が、明らかに今までの大本営インチキロジックと一線を画したものになっており、でもってその氷見野さんの説明の方が仰せ御尤もにも程がある話ではある内容になっている訳で、質疑応答形式の国会答弁よりも背景説明を含めて確りとおこなれている氷見野副総裁、しかも公式な対外情報発信の初回という記念すべき場面であの金懇を打ち込んだ、という事の方が事態としては重いと思うんですよね。

ま、火消しする方としてもまさが氷見野副総裁のあのロジックを頭ごなしに否定するわけにもいかないので、Q&Aで話をしている国会答弁の方を「一般論ですから」で説明する程度で火消しをするしかないというところなのと、そもそも先週水曜の氷見野さんの金懇自体がその瞬間(ワイはちなみに金懇テキスト出た直後から一人でクソ盛り上がっていましてリアル知人にはエライコッチャヤデーって話をしてたんですけどぬーと後出しじゃんけん)に全然反応しなかったからメディア的には植田ショックになるのかもしれませんけど、そもそも植田発言で、という扱いになるのがワイ的にはやや不満のある所ですけどね、


〇先般の追記ですが氷見野さんの金懇講演って(意図しているかはさて置き)中々良いイヤミがある(受け売りですサーセン)

氷見野さんの金懇と言えば結構この部分を話題にしている人多かったのですが、ネタにしている時に飛ばしてしまったのはワイつうこんのいちげきなので今さらですし何番煎じですけど書きますね。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231206a1.pdf

本文7ページ(PDFの8枚目)の中段からちょっと下の辺りですけど

『また、会社によっては、「何かをやって失敗すると個人が厳しく責任を問われるが、何もしなかったために失敗しても誰のせいなのかはっきりしない」とか、「何かをやって成功してもそれほど報いられないが、何かをやって失敗すると厳しく責められる」といった、非対称なインセンティブ構造がある場合もあるかもしれません。』

ってのがあるのですが、これよくよく見ますとその前の部分(本文6ページのケツ)から引用しますと・・・・・・・・・

『1998 年の金融危機の後、ゼロインフレやデフレの時代が続くなかで、個別の品目の値段もどんどん動きにくくなっていったことがわかります。1994 年と 2007 年はともに平均値としてのインフレ率はゼロ近傍でほぼ同じですが、変動品目比率は8割強から6割弱にまで落ちています 2。』

『他方、2%以上のインフレの時代には、大半の品目が毎年値段が変わるようになっていく、という風にいえそうです。足もとでは、デフレ前の時期並みに値段が変わる状態に戻っています。』

『また、日本銀行のスタッフの最近の論文 3によれば、国内からの仕入れ価格の動きに近いと思われる「企業物価」についても、海外からの仕入れ価格を左右する「為替」についても、そして人件費に相当する「賃金」についても、それぞれの上昇率が一定水準を超えた場合には、消費者物価上昇率に反映される度合いが急に高くなる、とのことです。』

とまあ主に企業の価格設定行動に関する話をしていまして、この続きが

『これは、仕入れ価格や賃金の上昇率が一定水準以下であれば我慢して、できるだけ価格改定を避けるが、自社なり取引先がどうにも我慢できなくなったら改定する、という行動パターンのように見えます。』

『長年行ってこなかった価格改定を行おうとすれば、タイミングや値上げ幅の判断のために、データの収集や分析も行わなければなりませんし、社内の調整、取引先との交渉も必要です。こうしたコストに加え、顧客や競争相手が想定外の反応を示すリスクも伴います。』

と来てからのさっきの文章になる訳ですな、この先が企業の積極的な行動が促される、という文脈で書いているというのは分かるのですが、しかしさっきのを再掲して見ますと、この文章の流れから、

『また、会社によっては、「何かをやって失敗すると個人が厳しく責任を問われるが、何もしなかったために失敗しても誰のせいなのかはっきりしない」とか、「何かをやって成功してもそれほど報いられないが、何かをやって失敗すると厳しく責められる」といった、非対称なインセンティブ構造がある場合もあるかもしれません。』

って来るの冷静に考えると唐突感があって、まあこれは多くの人が指摘してたんで今更アタクシが言うの2番どころか100番煎じの色さえ出てないお茶状態で恐縮ですが、この「会社によっては」を「日銀」に置き換えると大本営に対する強烈なイヤミになっているのがすげえええええ、というお話でして、以下も「プラスの物価の世界で企業の積極的な行動が促される」という話になっているのですが、

『価格設定を巡るコストやリスク、インセンティブの構造に内在する非対称性を前提とすると、販売価格を維持しつつ、コストカットに取り組む、あるいは取引先にコストカットを求める、という作戦には魅力があります。他方、価格設定戦略を変える、付加価値の高いセグメントに進出する、などに取り組むには覚悟と勇気が必要になります。』

「金融政策運営を巡るコストやリスク、インセンティブの構造に内在する非対称性を前提とすると、現状政策を維持しつつ時間稼ぎの弥縫策に取り組む」とか読み替えて見たり、「他方、金融政策運営を変える」とか読み替えて見たりするとどう見ても大本営への無慈悲な砲撃です本当にありがとうございました。

『しかし、世の中全体で賃金と物価の循環が回りだすと、何かをすることのハードルが下がり、何もしないことのリスクが高くなり、どこかで両者の関係が逆転すると、これまでに起きなかったような変化が起きる、という見方もできるのではないか、という気がします。』

どう見ても金融政策運営の話しです(イヤソウジャナイケド)本当にありがとうございました(^^)。

ということで本日は雑談ばっかりでさーせんでした(本日も、じゃないのかというツッコミは聞こえなかったことにする)





2023/12/11

お題「決定会合プレビュー雑談というか何というか/氷見野副総裁の金懇会見は非常に良い内容である」

ほうほうこれはこれは

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-10/S5FAGAT0G1KW00
岸田首相、松野・西村・萩生田・高木氏を交代へ−報道
三浦和美
2023年12月10日 9:23 JST

『岸田文雄首相は、自民党・安倍派の政治資金パーティーを巡る問題で、裏金を受け取った疑いが浮上した松野博一官房長官、西村康稔経済産業相、萩生田光一党政調会長、高木毅党国会対策委員長を交代させる意向を固めた。複数の政権幹部が明らかにしたとして、朝日新聞朝刊が10日に報じた。』

『報道によると、世耕弘成党参議院幹事長の交代も検討する。近く事実上の内閣改造・党役員人事に踏み切る見通しで、政権の要職から安倍派幹部が一掃される情勢となった。首相は当初、捜査当局の動きを踏まえて対応する考えだったが、世論の批判が高まっていることを受け、疑惑を抱えた松野氏ら安倍派幹部を早期に交代せざるを得ないと判断したという。』(上記URL先より)


〇火消し報道が出たようですが雇用統計の米債様のほうが強かったか

金曜の夜にこんなん出てたんですよ。
https://www.reuters.com/markets/asia/softening-consumption-may-delay-bojs-exit-easy-policy-2023-12-08/
Softening consumption may delay BOJ's exit from easy policy
By Leika Kihara
December 8, 20236:45 PM GMT+9

毎度おなじみロイター木原記者の署名記事。結構くそ長いのでまあ全文は読んでみてちょという感じですが。

『TOKYO, Dec 8 (Reuters) - Recent weakness in consumption has emerged as a fresh source of concern for Bank of Japan policymakers who are eyeing an exit from negative interest rates, three sources familiar with its thinking said, suggesting market expectations of an imminent rate hike may be over-blown.』(上記URL先より、以下同様)

ということで消費が弱くなってきているので日銀はマイナス金利の解除を遅らせるんじゃねえのか、というのを「three sources familiar with its thinking」がゆうとるそうなんですけど、まあ冷静に考えてみて足元の消費の弱さって実質賃金のせいすなわち物価が無駄に上がっているせいなんだから、マイナス金利解除して円安に歯止め掛けたほうが(かかるかかからんかは別にして、少なくともマイナス金利続けるぞーといいまくるよりは円安になりにくくなるじゃろ)利口なわけで、そもそもこの話って説明のスタート時点で話に無理がありますので、まあこのソースがどこだか知らんけど火消しのために出させるにしてはロジックの作りが粗雑にもほどがある、赤点再履修。

ちょっと飛ばしまして先に行くと、

『But Ueda's remark, which came in response to a lawmaker's question on the challenges he has faced since becoming governor in April, was taken out of context by markets and was not meant to signal an imminent policy shift, the sources said on condition of anonymity as they were not authorised to speak publicly.』

『"There was no intention to signal anything about the timing of a policy change," which remains up in the air, one of the sources said, a view echoed by two other sources.』

えーっとつまり植田総裁の国会答弁は別に政策変更のタイミングを示唆するものではない、といっているんですが、だったらそもそもなんで「年末」という言葉が入ったのよという話ですし(いやアタクシ含めて市場の中で本気で12月にマイナス解除あると思っている人はほぼいない(ポジション持たないで無責任にしゃべっている人は除きますので念のため申し添えます)筈で、1月解除に向けて12月に何らかの予告があるんじゃろ、が想定だと思うんですよね。

でまあさっくりと先に行きますと、

『But the timing remains highly uncertain given Japan's fragile economy. Some BOJ policymakers are worried about recent signs of flagging consumption, as wages have yet to increase enough to offset the rising cost of living, the sources say.』

だからその「the rising cost of living」があるので足元の物価を下げないといけない、って氷見野さんは明示的に金懇で言ってたわけですから、マイナス金利を継続する理由にはならん(緩和的な金融政策を継続する理由にはなる)ので、火消しにしてももうちょっとましな言い訳考えたらどうなのとは思いますが、どうせこの2年近くの日銀は毎度毎度適当にその場しのぎの理屈を作るんですけど、その理屈を毎度毎度反故にして政策の修正を実施→修正した時に市場が走るの嫌だからハト的なことを言うしばらくしてみるとその辺の話も結局なかったことになっている、というのの繰り返しをしているわけでして、政策修正の際も直前まで火消するけど全然そんな話がなかったかのように火消が行われた挙句に当日の朝になると日経新聞にお漏らしが出る、とかいう見るに堪えないインチキコミュニケーションをしているので、そもそも日銀のこの手の理屈をまともに取り合って考えるのは時間の無駄としか言いようがない、というのが海外の主要中銀と日銀の大いなる違いなわけですよ、困ったもんだ。


ということで火消ちゃんが行われたのですが、結局のところ・・・・・・・

https://jp.reuters.com/markets/us/KF5KZR3P75I77KDIHDG5FPWJU4-2023-12-08/
NY市場サマリー(8日)S&P・ナスダック22年初以来の高値、利回り急上昇
ロイター編集
2023年12月9日午前 7:36 GMT+9

『<債券> 米債利回りが急上昇した。11月の米雇用者数の伸びが予想を上回ったことを受け、米連邦準備理事会(FRB)が早ければ3月にも利下げに踏み切るとの観測が後退した。』(上記URL先より、以下同様)

ちょwwwwwまじかよwwwwwwそもそも3月利下げとか見てた連中がいるのかよどんだけ利下げ大好きなんだよアメリカンって頭に虫でも湧いてるのかよwwwwwwwwww

というのに正直びっくりしたのだが、

『CMEグループのフェドウオッチによると、今回の米雇用統計を受けて、来年3月に0.25%ポイントの利下げが決定される確率が前日の65%から46%に低下した。』

ワシはクソジジイなのでかろうじて日本の金利先物がちゃんと動いていた時代知ってるけど、洋の東西を問わず金利先物ってアホみたいに値動きするもので、キャッシュの利回りから考えてそれはないだろという値段が平気で着く、というのを今ここで思い出しましたwww

『指標10年債利回りは12ベーシスポイント(bp)上昇の4.245%。一時4.278%と4日以来の高水準を付けた。1日の上昇幅としては10月17日以降で最大となる見込み。2年債利回りは15bp上昇の4.727%。一時11月28日以来の高水準となる4.740%まで上昇した。1日の上昇幅としては6月29日以降で最大となる見込み。』

クソワロタwwww

とまあそういうわけでイブニングの債券先物ちゃんですが、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報

限月:23年12月限
取引日:12/11
始値:145.77(12/08)(15:30)
高値:145.98(12/08)(16:08)
安値:145.48(12/08)(23:21)
現在値:145.50(12/09)(05:53)
前日比:-0.29
取引高:6,126
建玉残高:57,302(12/08)

限月:24年3月限
取引日:12/11
始値:144.99(12/08)(15:30)
高値:145.16(12/08)(15:56)
安値:144.64(12/08)(23:21)
現在値:144.70(12/09)(06:00)
前日比:-0.29
取引高:9,467
建玉残高:161,769(12/08)

まあ常識的に考えて今日限月交代する(最終日を2日後に控えて夜間の時点で逆転しているのに日中再逆転はさすがに)かという状況なので両方の限月について貼っておきましたが、まあ要するに29銭安になっておられるというなっておられるということで、あんまり火消関係なかったですね残念という風情になっております。

ま、そもそも12月にマイナス解除はさすがに無茶だろ(実務的な面からも)という話だし、どうせマイナス解除するにしたって正常化と切り離した説明をしてくるというのが最近のパターンですから、その点からいえば消費がどうのこうのとかいう経済見通しの話とは別ロジックで解除をぶっこんでくるはずですよ、と思いますけどどうですかしら。


でもって今朝の日経電子版ですが、
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB047CT0U3A201C2000000/
日銀、緩和出口へ地ならし課題 慣れぬ対話に危うさも
経済
2023年12月11日 5:00 [会員限定記事]

例によって5時のスタンプで出てきましたが、

『日銀は18-19日に金融政策決定会合を開く。市場ではマイナス金利政策の解除観測も浮上するが、緩和方向のこれまでの政策変更と違い17年ぶりの利上げを意味し経済全体に影響が及ぶ。日銀はサプライズ路線から丁寧に地ならしを進める対話重視にかじを切ろうとしているが、不慣れな対話が市場の過剰反応を招く危うさもはらむ。』(上記URL先より)

ということですが、「丁寧な対話」って昨年の概ね頭以降って日銀は言ってるロジックをコロコロと変化させて、2%物価目標達成のゴールポストを動かしまくっている訳で、その時点で「丁寧な対話」とか寝言を言う資格は無いのであって、丁寧な対話したかったら今まで無茶苦茶なゴールポスト動かしをしてた連中はそろって腹掻っ捌いて以下自主規制あるいは自己批判と総括をしてから出直してこいという感じですな。

例によって日経無課金おじさんなので中身の記事はよくわからんのですが、朝一時点だと電子版のトップがこの記事で、

https://www.nikkei.com/

を見るとリードの部分に

『・18〜19日に金融政策決定会合開く
・「時期に振れたことで臆測を招いた」
・「事前予告」するとの見方も市場で浮上・・・・』
(日経電子版トップの上記記事紹介部分のリード、引用の中黒は実際には黒い四角形です)

となっていますね。




〇氷見野副総裁の金懇会見もこれまた実にいい感じでの説明をしています

いやこのお方凄いとは聞いていましたが本当に凄いですね。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231207a.pdf
氷見野副総裁記者会見
――2023年12月6日(水)午後2時30分から約30分
於 大分市

『(問)金懇での挨拶でですね、副総裁、「賃金と物価の好循環を良く見極めて、出口や進め方を適切に判断する」とおっしゃいましたが、その出口を判断できる時期を具体的にどうお考えなのか、好循環の実現を見通せるには来年の春闘が重要なポイントとなりますけども、連合が 5%以上の高い要求水準を掲げて、更に大企業の一部ではですね、積極的な賃上げを既に表明している企業もありますけども、この 3 月中旬の集中回答まで待つ必要があるのか、また、3 月の中旬の集中回答を状況をみてから判断するのか、または中小企業というのはその後になりますから、中小企業の状況が判明するのは、そうすると 4 月以降になるのか、その辺のタイミングについてですね、伺えないでしょうか。(後半割愛)』

ということで質問するほうは今までの日銀大本営の賃金の話に完全に引き摺られた質問をしているのですけど、氷見野さんの回答は水際立っておりましてですね、

『(答)タイミングと進め方について、ご質問頂きました。まずタイミングですけれども、結局、物価安定の目標を持続的・安定的に実現できると見通せるかどうか、ということになるわけですが、』

これソフトに説明しているけど質問に対して春闘の話しかしない質問者に対して「お前は何を言ってるんだ」って結構バッサリと斬っているんですよね、斬られている方はたぶん気が付いてないと思いますが。

『その見通すにあたってどういう要素が大事かということになりますと、今お話があったように賃金と物価の好循環の状況というものをよくみていく必要があると、それをみていくうえで、いろいろ考慮し得るポイントというのについては、今日いくつかご紹介させて頂いたわけですけれども、』

というのは直後にこう言っているので斬られたのに気が付かない斬り方をしていますわ。まあ聞いている記者さんもわざと斬られるような質問をしている、という可能性はある(だって春闘一点張りで判断というのは少なくとも氷見野さんの金懇テキストを読んだ瞬間に「ない」のが明確なので、普通こういう間抜けな質問はせんわな、と思うので)ので、そこは何とも。

『それに加えて、消費ですとか設備投資の状況、あるいは海外の経済の見通し、様々なものをみながら判断していく必要があります。』

と言っているわけで、そもそも春闘一点張りではないわけですよ初手の時点から。さらに、

『ただ、いろんなものをみていくといったときに、全部青信号が灯るということも実際の経済ではないわけですし、全部赤信号という状態もないわけで、実際には経済の動きの中でいろんなシグナルが混じって観察される中で、どこかで判断していく必要があるということだというふうに思います。』

とまあそういう説明をしているのがこれまたソフトな語り口の中で日銀大本営のインチキロジックを撃破している面がありまして、と申しますのは大本営の説明だと「すべてにおいて確信が持てないと物価目標達成とは言えないし、それまでは出口なんてもってのほか」という政策変更をしたくないからアホの極みのような説明をしているのですが、そういうアホの極みのようなことは現実にはあり得ん、と思いっきり喝破しておられるわけで、これいわゆる「にっこり笑って人を斬る」ってパティーンなわけで氷見野さんすげえ、と思いました。

『ですので、どこの段階でとか、これをみてからとか、何か予めスケジュールを決めてというよりは、何が起こっているかというのを本当に虚心坦懐にみていくということを続けるということではないかというふうに思います。(後半割愛)』



この質疑も頭いいわ、と思いました。

『(問)質問は二点でして、一点目は、今の質問に関連するんですけども、好循環というお言葉、今日の挨拶でもありました。これからそこを見極めていくといったお話ですけども、今の時点でですね、統計のお話もいろいろご説明頂いてるんですけども、既に好循環は起きているという認識なのでしょうか。』

『もう一つはですね、マイナス金利の解除について、マイナス金利といいますか、正常化に関して、した場合の影響の試算をお示しになられてますけども、実際そのマイナス金利が続くことの副作用というか、マイナス面についてはどのようにお考えでしょうか。』

『(答)好循環が起きているのかということについては、ゼロではもちろんないと思います。少しずつ起きているということではあると思いますし、今後それが更に強くなっていくことを期待しているわけですが、では現在の進み方の状況をこの程度まで来てると、何合目まで来てると言えるだけの自信があれば、今日申し上げたのですが、そこまでの判断ができていないので、いろんなことをみながら、こういうことを考えておりますということをご紹介させて頂きました。』

これってつまり「何合目という自信が有ったら政策の調整します」って言ってるようなもんでございますからぬー。

『あと、出口の影響について、非常に狭い範囲の金利の受け払いの変化に着目して、多少その他のこともお話ししたわけですが、影響はそれだけにとどまるわけではなくて、おっしゃる通り、ある意味いわゆる副作用と言われてるものが、今度は逆に出口を経れば副作用が小っちゃくなっていくというようなこともあるだろうというところは、併せてみていく必要があることだろうというふうに思います。』

これもまた出口で起きる話ばかりして変更を先送りするの良くない!って話だし、

『そうした副作用の面とかについては多角的レビューの中で、実は一昨日のワークショップでも、例えば金融市場の機能に与える影響ですとか、金融機関行動に与える影響とか、副作用も含めて、議論を行ったわけですけれども、ワークショップの議論の結果も踏まえて、ブラッシュアップしたうえで、私どもなりの効果と副作用両面の見方というのは、お示ししていきたいというふうに考えております。』

おーーーーー。



・これまたわざと斬られに行ってるのかという質問を綺麗に斬る説明

『(問)二点ありまして、一点目は午前の挨拶の中で、企業の価格・賃金設定行動に変化があるかどうかというところで、氷見野さんは 4 段階まで示されたんですけれども、4段階は植田総裁もおっしゃってないことで、新しい要素かと思うんですけれども、』

ここは後で抜刀が飛んできます。

『氷見野さんは物価目標を達成するかどうかの見極めの際には、この第 1 段階から第 4段階まできちんと変わってきてるってことまで見極めないと、物価目標達成という判断はできないとお考えなのか。そうした場合に、来年の春闘集中回答日過ぎてもやはり見極めには時間を要するということなのか、この点が一点目です。』

前半だけ見るといやお前金懇テキストどう読むとそういう質問になるんだよと思いますが、後半を見ますと、

『二点目は、同じく挨拶の中ですけれども、先ほど言及ありましたけれども、結構かなりのパートを出口戦略を取ったときの家計・企業・金融機関の影響の説明に割いてるわけなんですけれども、これはむしろ出口戦略を取るタイミングが近いので、この読み手の方には心の準備をしてくださいという意味で、氷見野副総裁としてはこの説明を入れたのか、この辺の真意はどこなのか、以上、二点お願い致します。』

ということで両サイドの質問をしていますので、これ前半はわざと斬られに行ってますねw

でもって回答ですが前半が、

『(答)まず、一つ目の企業行動の変化の 4 段階ということですが、何か新しいことを言ったかというと実はそうではありません。』

はい。

『植田総裁の大阪や名古屋での講演を読んで頂くと、いくつかまとめて話しておられるんですが、詳しく読んで区分していくと同じことになると思いますので、はっきり言って正直言い方が変わってるだけで、中身はそんな変わってるというふうには自分では考えておりません。』

さよです。

でもって氷見野さん明快にこのような説明をするんですが、

『これはもう四つの条件を決めてハードルを上げたのかというご質問だったと思いますが、これは起きてることをなるべくうまく理解していくための道具として申し上げたわけで、さっきも申しましたが、全部青信号がつかないとって言ってると、そんなことというのは世の中は起きませんので、よく理解したうえで判断していくと、ですので何か春闘をみても、何か第 4 段階が確認できるまでは何もすべきでないとか、そういう主張をする意図は全くありません。(後半割愛)』

ということで、思いっきり手前での政策調整も可能という話をしておりますわな。後半に関してはモロに「準備してるだろうなゴルァ」なのかどうかの質問ということもあって話を逸らして(たぶん意図的に)回答しているので割愛します。


・今の金融緩和という対応は「ギリギリで一番マシな対応」

この質疑もよろしゅうございましたな。

『(問)私からも二点お願いします。まずですね、足元の物価高についてです。先ほど、氷見野さんのお話の中でも、地元の企業の方も物価高で原材料高に困ってらっしゃるという声もあったと思うんですけど、やっぱり国会でも、なかなか日銀の金融緩和的な姿勢もあって、円安が進んで、物価高が進んでるんじゃないか、という声も出ておりました。そのことに対する受け止めと、あと、今日の地元の企業さんとの懇談の中で、そういったご意見はなかったか。物価高に対するもう少し具体的な声などがあればお願いします。(後半割愛)』

という質問に対しまして、

『(答)まず、懇談会で物価高についてお話があったかということですけれども、輸入物価、原材料価格の上昇で経営に影響があるというお話とか、あるいはその物価高が、個人消費にどういう影響が出ていくのか、気にしているといったお話とか、そうしたお話が出ておりました。』

そらそうよ。

『そのうえで、足元、物価高なのになぜ緩和しているのか、というところは、おっしゃる通りいろんな方がなぜだろうというふうに思っておられる問題ではないかというふうに思いますし、』

これを正面切って言わないのが大本営な訳ですから氷見野さんの説明は非常に良い、というか本来の真っ当さな訳で、今朝の日経によれば日銀様は今後丁寧な説明でどうのこうのとか抜かしているようですが、まずは氷見野さんの爪の垢を煎じて飲むところから始めないと。

『私どもも足元の物価高、特に食料品とか日用品とかは、全体の上昇よりも更に大きいということがありますので、家計とか、あるいは中小企業の方とか、影響が大きいということは十分認識しているつもりであります。』

大本営発表だとそういう話は無かったことになるのがこれまでの仕様ですよね。

『そのうえで、なぜそういった中で緩和を続けているのかということなんですけれども、』

ときまして、

『私どもの分析では、足元の物価高は輸入物価の上昇の影響の波及という面が大きいというふうに考えておりまして、その輸入物価の上昇についてはかなり落ち着いたということで徐々にその影響が出て、輸入物価が原因となっているような物価高というのは落ち着いていくだろうと。』

と、ここまで説明した上に氷見野さんはわざわざこういう断りも入れていてポイントが高いんです。

『だろう、だろう、と申し上げて、なかなかそうならないので、ちょっと申し訳ないんですけれども、』

大本営の九官鳥しか能がないポンコツ政策委員はこういうの言わないですからね。

『火曜日に出ました東京都区部の 11 月の速報でみますと(注)、(引用者追記:これは月曜日です)少し輸入物価の影響というものが、減衰してきたようなしるしがみえてきたような感じも致します。』

と来てから金懇挨拶にもあった、

『ですので、足元の物価高を何とかしたいということと、経済の緩やかな回復を守っていきたいということと、来年の賃上げがきちんと行われるような環境を整えていきたいということと、もう一度デフレに戻ってしまうことは避けたいということをいくつか悩んだうえで、』

『金融政策というのは効果が完全に出るまでは 1 年以上かかるといったようなこともありますので、現時点では粘り強い緩和を続けていくことが、そういったいろいろなところを考えたうえで、ギリギリ一番良い対応ではないかと思って、こういうことを行ってきたわけであります。(後半割愛)』

なお、最後も「行ってきた」と完了形の表現になっているのもお洒落ですけど、まあいずれにしましても別に余裕ぶっかまして大規模緩和のマイナス金利やってるという訳ではない、という説明をしていまして、その植田ショックが何とかとかいうよりも、氷見野さんのこの丁寧な説明を読んで考えろという話だし、そういう意味では別にロイター木原さんに悪態つくつもりではないですが、消費がどうのこうのだから判断が先送りとかそういう単純な話をしている訳ではない、というのは伝わるんじゃないかと思うのですよね、氷見野さんの丁寧な情報発信を見ますと。





2023/12/08

お題「突如の差し込み連発でもりあがってまいりました!!!!(自分の中で盛り上がり過ぎて只の世間話ですさーせん)」

円高キタコレでして勢い良すぎるのもどうかとは思いますが、150とかいう数字に対して足元の数字のほうがだいぶ安心感がでるのですがやはり実家のような安心感のある数字はもっと円高かなーと思ってみたり(個人の妄想です)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB077HB0X01C23A2000000/
円一時1ドル141円台 荒い値動き、足元は143円台
グローバルマーケット
2023年12月7日 16:33 (2023年12月8日 4:11更新) [会員限定記事]

『7日午後のニューヨーク外国為替市場で対ドルの円相場が瞬間的に急騰し、一時1ドル=141円台後半まで上昇した。8月以来4カ月ぶりの円高・ドル安水準を付けた。その後はすぐ143円台まで戻した。日銀の植田和男総裁の発言などを受けて政策修正を意識した円買い・ドル売りが膨らむなか、円は不安定な値動きをみせている。』(上記URL先より)

ということですが、ご覧の通りのネタだというのにイブニングの債券先物と来たら

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_day_through
先物価格情報 日通し

23年12月限 12/08
146.11 (12/08) (05:09) +0.19
円高だから債券買ってるのかも知れないけど円が上がっとる理由が理由なんですがなんでホイホイ上昇するのよ・・・・・・・(まだ引けてないけど)


〇1日遅れて氷見野副総裁金懇に反応(?)+植田総裁半期報告でぶっこむ+30年国債入札ェ・・・・・・・・・

ということで昨日の市況byロイターさん
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/6RPGNC7ARBJKZNYXPMWZDYQIXA-2023-12-07/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅反落、長期金利0.75% 30年債入札不調で売り優勢
植竹知子
2023年12月7日午後 3:21 GMT+9

『[東京 7日 ロイター] - <15:11> 国債先物は大幅反落、長期金利0.75% 30年債入札不調で売り優勢

国債先物中心限月12月限は、前営業日比98銭安の145円92銭と大幅反落して取引を終えた。30年利付国債入札が不調な結果となったことが嫌気され、軟調な展開となった。現物市場の新発10年国債利回り(長期金利)は同10.5ベーシスポイント(bp)上昇の0.750%と1週間ぶり高水準をつけた。朝方には0.630%に低下した場面もあり、1日の変動幅は約1年ぶりの大きさだった。』(上記URL先より、以下同様)

いやー良く動きましたな

『きょうの国債先物は、前日の米国市場で国債が買われた流れから続伸して寄り付いたが、買い一巡後は30年債入札を控えた警戒感からマイナス圏に沈んだ。午後は、同入札が不調な結果に終わったことが嫌気されて一段の売り圧力がかかり、軟調な展開が続いた。アジア時間の取引で米10年国債利回りが上昇したことも追加の売り材料となった。』

とまあそういう解説になっていますが、寄り付き直後位にいきなり謎に20銭くらい値をぶっ飛ばして

(例によって寄付きの注文始まるくらいの時間になると今日の日中足に更新されてしまいます悪しからず)
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 23年12月限

取引日:2023/12/07
立会区分:日中取引
始値:147.17(12/07)(08:45)
高値:147.18(12/07)(08:45)
安値:145.85(12/07)(14:26)
現在値:145.92(12/07)(15:02)
前日比:-0.98
取引高:39,165

寄った直後にドドーンと下がってその後9時半くらいから下がってぱっとせんまま前場引けを迎えて30年長期入札の結果を受けてズルっと下がった後は引けにかけて一段安って感じでしたな。朝の寄った直後にどどーんと下がったのも訳分らんでしたが何なんすかアレは。


・・・・・・・いや何ですかね、まあ植田さんの昨日の国会半期報告での答弁を受けて合わせ技一本、と言ってしまえばそれまで何ですけど、氷見野さんの金懇でサクッと反応しなかったのは訳が分からずじまいという感じではございましたですバイ。

でまあ国会半期報告ですが、こちらは10時くらいからバンバンとヘッドラインが出ていましたが、その中でも特におーーーーというのはこれですかね

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-07/S59QO5DWX2PS01
金融政策運営、年末から来年かけ一段とチャレンジングに-日銀総裁
伊藤純夫
2023年12月7日 10:12 JST 更新日時 2023年12月7日 13:17 JST

『日本銀行の植田和男総裁は7日、年末から来年にかけて一段と慎重な金融政策運営が求められるとの認識を示した。参院財政金融委員会で答弁した。植田総裁は4月の就任以降の金融政策運営は、さまざまな不確実性が高い状況の下で「チャレンジングな状況が続いているが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と語った。その上で、「丁寧な説明、適切な政策に努めていきたい」と語った。』(上記URL先より、以下同様)

「来年に向けて」とかならそこまでではないのですが、さすがにこの「年末から」ってのはぶっこみにも程がある発言で、こんなの今月の会合もライブに近いという意識が頭の中にあるから言ってるんでしょうなあ、ってなもんや三度笠なわけでございまして、これはどう見てもキタコレです本当にありがとうございましたという風情。

記事の方に他の発言として、

『他の発言

・国民からの批判的な意見増えている、インフレ・円安を反映
・物価上昇が個人消費の足を引っ張っていることは重々承知
・当座預金付利使う場合の利上げ、マイナス0.1%を例えばゼロや0.1%に引き上げる』

って最後のはまあどうでもよいのですが、上の二つと言い、一昨日の氷見野さんによる「「今後、インフレ率は下がっていくが、下がりすぎない」という微妙なラインが実現しなければなりません。」というのも含めて、ようやっと寝言みたいな物価の説明から社会厚生を意識したら足元の物価が高いのは別に良い話ではないという認識を続けて示してくれたわけですな。

日経ちゃんは思いっきり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB071J30X01C23A2000000/
日銀総裁、年末から来年「一段とチャレンジング」
金融政策
2023年12月7日 13:18 (2023年12月7日 18:21更新)

『日銀の植田和男総裁は7日の参院財政金融委員会で、現在の金融緩和策の運営をめぐり「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と述べた。市場ではマイナス金利政策の解除観測がくすぶっており、地ならしを意識した発言と受け止められた。』(上記URL先より)

と地均しキタコレという報道で来まして、いやーーーーーーーーー何か急に強引に盛り上がって参りましたという感じですが、今回少しだけマシなのは、これが地均しなのかどうかは結果を見ないと分からんですけれども、いずれにしても「正式なルートから出ている」ことでして、従来のようにどっかの報道機関を通じて変な記事が出る、という形ではなくて、氷見野副総裁の金懇、植田総裁の半期報告、というちゃんとしたパブリックの場でこういうのが出ているのは結構なことですので、まあ決定会合2日目の朝にどっかの新聞にお漏らしなどが出ないようにして頂きたいもんだと切に願って止まないところではございます。


でもって30年入札

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20231207.htm

6.価格競争入札について
(1)応募額   1兆9,126億円
(2)募入決定額   7,311億円
(3)募入最低価格  102円35銭
 (募入最高利回り)(1.681%)
(4)募入最低価格における案分比率 14.0000%
(5)募入平均価格  103円55銭
 (募入平均利回り)(1.623%)

テール120銭wwwwwww

まあ何ですな、短期のマイナス金利を実質ゼロ(多分0〜10だと思うけど)にするというんだったら何も別に30年の方が馬鹿売られしなくても良いのですが、なんせつい先日まで欧米金利低下を受けてホイホイと長い所まで堂々の買われ方をしていたのでその反動ってのと、そもそも材料の出だしの頃はテナーが長いものはリスク量が多いんだから買いの手が止まりやすくなるってことで大甘になった(ベンダー集計ベースの足切り予想がそもそもアベレージより上だった筈)ということですかねえ、知らんけど。


とまあそんな訳で昨日はエライコッチャでございましたが、しかしまあ決定会合まで1週間半、ってところで来やがりましたなあ、という結果でありましたけど、返す返すも水曜の金懇テキストで反応しないどころか欧米長期金利ヒャッハーの方に盛大に反応(まあ水曜って一応寄りからは下がっていたんですけど前日比で見ればアゲアゲ相場)したのは何だったのよという納得のいかない感を残しながら本日を迎えるのでありました。



〇じゃあMPMプレビュー雑談

まあ何ですな、こんなに盛り上げておいて12月完全に何もなくて「まいなすきんりかいじょってなーにー」とか会見で言い出したらそれはそれで凄いことが起きそうですが、いやーこんなに盛り上げると3月4月まで引っ張るの却って市場にストレスをためる(精神的にも売買手口的にも)ようには思えるんですがさてどうなるんだか。

でですね、じゃあプレビュー雑談してみますと、12月マイナス金利解除だって今日以降も重機をバンバン持ち込んで盛大に地均しをするなら一応再来週の火曜日まで日が無いこともないからワンチャンなのはそうなんですけど、ここはアタクシの大予想、というより大妄想と言った方が適切だと思うので妄想と言っておきますが、ミーの妄想では「短期政策金利をプラス圏で誘導する際に適切な手法について次回金融政策決定会合までに検討をして政策委員会・金融政策決定会合で報告するように執行部に指示」で来るんじゃないですかねえ、と思ってしまいました次第でありますわ。まあ妄想ですけど。

まあこの場合、1月会合までの長期金利も気になるところですけど、こっちはマイナス解除即正常化開始じゃないよというようなメッセージを出す(まあ実体的にそうなのかというと当然違うんだけど時間稼ぎのためには言わざるを得なかろうよ)ことによって長期ゾーンのブタ売られはしないように、でもまあ強引に止めにはかからない、位の感じで行くんでネーノとか妄想は更に膨らむのでありました。

でもって準備万端整った所で1月に満を持してマイナスは解除という話になって、じゃあその後の話はというと暫くありませんがな何をゆうとるウサギさん、と日銀が言う中で物価情勢とか賃金情勢を見てそのうちまた普通に日銀が追い込まれていくんでしょうなあという感じですが、虫が良すぎますかねえ(笑)。


とまあそういう訳でアタクシ第一妄想としては「12月は短期をプラス金利にした場合の適切な短期市場金利の誘導方法の点検を執行部に指示」で置いておきますが、100バーナンキとかいうと碌な事にならないので、100白川くらいにしておこうかと思います。


〇GX国債の買入話を入れるついでに差し込み文言が入るとは

ほうほうこれは
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231207b.pdf
クライメート・トランジション利付国庫債券の国債売買等のオペ等や担保受入れにおける取扱いについて
2023 年 12 月 7 日
日本銀行

というのが出てきて、まあ書いてあることは順当なのですが、同時に輪番にもGX国債が入るという話が出て来まして、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231207a.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について

『日本銀行は、長期国債等の買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2023 年 12 月 7 日より適用)。

── 四半期の買入予定は、3、6、9、12 月末に公表する「長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定」により別途お知らせします。』

『1.長期国債の買入れ(利回り・価格入札方式)(注)

(1)買入対象国債
利付国債(2年債、5年債、10 年債、20 年債、30 年債、40 年債、クライメート・トランジション利付国庫債券、変動利付債、物価連動債)

買入れに際しては、隣接銘柄と比べた流通利回りの違いや市中残存額、レポ市場における需給などを踏まえ、対象銘柄を選定する。』


前回の決定会合では連続指値オペを事実上封印したのですが、この時のリリースですと、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231031c.pdf
当面の長期国債等の買入れの運営について

『(1)買入対象国債

利付国債(2年債、5年債、10 年債、20 年債、30 年債、40 年債、変動利付債、物価連動債)』

とだけありまして、「買入に際しては〜」の文言が今回新たしく差し込みになりました。

まあ何ですな、元々この差し込みになる部分に相当する検討はやってて、輪番の際に年限的には含まれていても買入除外になる銘柄、というのは存在していたので、実務上急に何かが変わるという事ではないようには思えますけれども、この文言を明確に入れたのは、国債買入によって個別銘柄の需給を極端に歪めてしまい、市場における価格裁定機能を壊すのはもうしません、という宣言を行ったという精神的な意味じゃないの、とまあアタクシは思った訳です(アタクシが思っただけなので当たるも八卦当たらぬも八卦ですのでよろしく)。

つまりこれも一種の「正常化に向けた準備の一環」と思えばGX国債出たのをうまい事使ってしれっとメッセージを送ってきた、とも捉えられない事もないということでありますけど、まあ単純にGX国債の流通利回りがあまりにもヘナチョコ利回りになっている場合(日銀は買う側なので利回りが極端に低い場合、になると思いますが)に日銀によってGX国債バブルみたいな変な事が起きないようにするために、明示的に文言を入れた、ということなのかも知れませんのですが、なんせ今回はタイミングがタイミングでこの文言差し込みだったのでおーと思ってしまいました。

GX国債市場も今後育成を図る、という話であれば、いきなり日銀が馬鹿買入をしてしまって価格形成がシッチャカメッチャカになってしまうとGX国債市場の形成とかそういうのがパーになってしまうリスクが多分にあると思いますので、買入するなとは言わない(買い入れ対象外だとそれはそれで今の日銀頼みの市場環境だとアレですし)のですが、馬鹿買入をして折角の市場をいきなりぶち壊すのだけはとにかく勘弁して頂きたいと切に願って止みません。

・・・・・・・氷見野さんの会見という大事なネタがあるのですが、ちょっと本日は時間が足りなさそうなので週末に出るかもしれないニュースとかも待ちながら週明けにでも(ワンチャン週末書くかもしれないけどちょっと厳しいかな)と存じます。

しかしまあ何ですな、こうなるとその前の審議委員の金懇(と野口さんの講演)は何だったのかという話になるのですが、まあ中村さんは時期尚早とか言ってまた反対しそうですけど、安達さんとか完全に梯子を外されてこの前の高田さんパターンじゃんどうするんだよと楽しみになってまいりましたな。

ということでスイマセン今朝はざっくり雑談でどうもすいませんでした。







2023/12/07

お題「氷見野副総裁の金懇デビュー戦は結構強烈なぶち込みをしているように見えるんだけどなあ・・・・・・・・・・」

とりあえず欧米金利低下祭りの方に目が行ってるのが大きいとは思うのですけれどもこれは大事だと思いまっせ(個人の感想です)。

・・・・・という話の前にメモメモ

〇多角化レビューのスタッフによるポンチ絵が先行公開されたようですな

昨日の夕方でしたっけしれっとこんなのが出てました。

https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr231206a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関するワークショップ
第1回「非伝統的金融政策の効果と副作用」
2023年12月6日
日本銀行

日時
2023年12月4日(月)

場所
日本銀行本店9階大会議室A

・・・・てなもんで以下式次第があって、その式次第に日銀スタッフによる分析というののポンチ絵が出ている、という物件でありますな。中身に関してどうのこうのという話はまたいずれどこかで、とは思いますけど、だいたい後ろのセッションに行くにつれて分析のお手盛り感が満艦飾になってくる、ということで流石企画局といった風情を醸しだしているんじゃなかろうか、とまあそんな事だけ書いておきます。

それより今朝は氷見野さんの金懇ですよ金懇。


〇氷見野副総裁の大分金懇はソフトな語り口ですが内容はどう見ても出口議論というハードボイルド

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231206a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大分県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 氷見野 良三


・掴みがソフトだし氷見野さんのいでたちもソフトなんですが

最初はまあマクラなんですけど、このマクラが他の方々の金懇対比で際立っていますよね。

普通は大体飛ばすのですが今回は『1.はじめに』から参ります。

『みなさま、本日はお忙しい中お見えいただきありがとうございます。また、日ごろから日本銀行と大分支店の業務にご支援を賜り、どうもありがとうございます。』

『現在、日本銀行は、新しい日本銀行券の発行の準備を進めております。大分の偉人・福沢諭吉先生には、1984 年 11 月から 40 年近くに亘り日本の通貨の顔を務めていただいてきましたが、来年7月前半を目途に、渋沢栄一さんにバトンタッチしていただくことになります。もっとも、今のお札は新しいお札が出たあとも引き続き使えるわけですので、福沢先生にはバトンタッチのあとも並走を続けていただくことになります。』

改刷をしても旧券は使えますって話。

『福沢先生には、バブル経済、バブルの崩壊、金融危機、デフレ、リーマン・ショック、震災、「デフレではないがデフレから脱却したとまではいえない」時代、そしてコロナ禍とコロナ禍からの回復まで、日本経済を見守ってきていただきました。』

しれっとコロナ前の状況を「デフレではない」とか言ってるのもチャーミング。

『日本銀行は、現在、デフレ以降の時代の金融政策の効果と副作用について「多角的レビュー」を進めておりますが、おおむね福沢一万円札の時代の後半について分析を行うことになります。福沢先生の言葉に、「自由の気風は唯多事争論の間にありて存するものと知るべし」(「文明論之概略」)というのがありますが、私どもからも私どもなりの分析をお示しして「多事争論」のきっかけとし、内外の幅広い方々からご批判や提言を頂戴できればと考えております。』

・・・・・・ということで、ちと早いですが「冬休み子供電話相談室」の先生のような風情を醸し出す(個人の感想です)この表現の時点で癒されるのですが、癒しの宿のようなホッとした語りをしながら結構なぶっこみをしておるというこれは氷見野さんかなりの切れ者、という話が始まるのでした。


・物価に関する表現が今までの能天気な政策委員やらもう一人の副総裁などと全然違うところからおっぱじまるのだ

『2.経済・物価の現状と先行き』の最初の所はさておきまして、その次の小見出し『(日本の物価の先行き――ミクロの企業ヒアリングから)』からもうニッコリ笑ってバッサバサと抜刀斎という感じでして、田村審議委員の抜刀スタイルとは違って気が付いたら斬られている感がしますな(個人の感想です)。

では参ります。

『では、先行きはどうなるかですが、物価についての当面の大きなポイントは、足もとの物価高が落ち着いていくかどうかです。』

2%に行くために賃金や物価の好循環ガーと政策正常化先送りのためにナントカの一つ覚えで話をする大本営の九官鳥の皆様とは言っている事がこの時点で違います。ああそういやネタにするの忘れてましたが東京都区部のCPIってあれ市場予想より伸び率鈍化とか言ってるけど、普通に「底堅さを確認」と評価するのが妥当だと思うし、少なくとも年度後半は物価上昇が鈍化するとかいう日銀の政策逆算見通しのようにはならんじゃろという結果だったのではないかと思いますがね、よー知らんけど。

まあ何はともあれ、「足もとの物価高が落ち着いていくかどうかがポイント」というぶっこみを入れた後ですな、

『日本の消費者物価の上昇率の推移と見通しを、生鮮食品の値動きの影響だけ除いたものと、ガソリン代や電気・ガス料金なども除いたものの両方についてお示ししました(図表2)。家計簿の構成により近いガソリン、電気・ガス込みの方で見ますと、昨年度の実績も本年度・来年度の見通しも3%程度で、「物価安定の目標」である2%を上回っています。』

うんうん。

『食料品など生活必需品の値上がり率は3%よりもさらに高く、多くの家計にとっての負担の実感はむしろそちらに近いと考えられます。これは大変重い事柄です。』

>これは大変重い事柄です
>これは大変重い事柄です
>これは大変重い事柄です

金融政策が社会厚生を引き上げるために行われるもの、というごくごく当たり前の観点から指摘している話だし、実際の物価動向の話には碌すっぽ触れずに賃金ガーを繰り返す他のポンポコリンとは言う事が段違いに素晴らしいでございます。


でもって・・・・・・・・

『他方、最近までは「賃金も物価も両方上がらないのが当たり前」といった状態が続いていたわけで、そこからの脱却に長年努めてきたのに、足もとの物価高が落ち着いた後にまた昔の状態に逆戻りしてしまうことも避けたいと考えています。』

とまあこういう風に言えば、ああなるほどと世の中も得心がいくはずなのに、特に黒田末期以降の物価上昇局面における日銀の説明は物価指数が上がって来ると別の話を持ち出し、その別の話も達成されだすと今度は別の話を持ち出し、という屁理屈の上塗りを延々と重ねていたんですよね。


さてその次、

『日本銀行は、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指しているわけですが、そのためには、「今後、インフレ率は下がっていくが、下がりすぎない」という微妙なラインが実現しなければなりません。「足もとの物価高は何とかしたいが、経済の緩やかな回復は守りたいし、賃金が上昇しやすい環境も整えたい。先行きデフレ的な世界に戻ることも避けたい」ということで、ここが私どもにとって一番悩みの深いところです。』

そう、これを何で今までの日銀はちゃんと説明しなかったのかという話ですよね。まあ偉大なる領導者の黒田大将軍が引くに引けなくなってしまったのでその路線でグチャグチャになっているんですけどね。



・企業の価格設定行動の変化に関しても分かりやすく説明

悩みが深い所でその続き。

『こうした課題にどう対応するかを考えるためには内外の色々な要因を見ていかなければなりませんが、ここでは、企業がどのように価格や賃金を決めているのか、という点に着目して考えてみたいと思います。』

ほう。

『企業による賃金・価格設定行動の変化についても、色々な視点で捉えることが可能ですが、試みに4つの段階に分けて考えてみたいと思います(図表3)。』

既にここで例のインチキ説明「第一の力」「第二の力」とは異なるものが期待されます。

『第1段階は、輸入価格の上昇分を販売価格に反映する段階です。』
『第2段階は、物価の上昇分を賃金に反映する段階です。』
『第3段階は、賃上げに伴うコスト増を価格に反映する段階です。』
『第4段階は、価格戦略に多様性が生まれ、「良い商品を安く」に加えて「魅力ある商品を相応しい価格で」にも
取り組みやすくなり、生産性の向上のための選択肢も広がる段階です。』

ほうほうほう。

『こう申しますと、「お客様に魅力を感じてもらえる商品を開発して、それを相応しい価格で売るために努力する、なんて、そもそも当たり前のことで、第1段階から第3段階までとは関係なく、誰だって昔から取り組んでいるよ」と思われる方も多いかと思います。』

うむ。

『その通りだろうと思いますが、ここでは「より幅広い企業の背中をさらにその方向に押すような環境が生まれてくるかどうか」という問題を考えてみたいと思いますので、今しばらくご辛抱願えればと存じます。』

つまりこれは「ノルム」の話ですが、ノルムとか言葉使わなくてもこうやって説明できるってのは本当に頭のいい人なんだな、って思う訳ですよ。使う表現の言葉に困るとついついバズワードに頼る自分も反省したい。

『輸入物価は最近では前年同月比で 10%以上のマイナスが続いていますので、第1段階、すなわち、輸入物価の転嫁の段階だけであれば、いずれ昔の世界に戻ってしまうのだろうと思います。』

この部分、しらっとこれで流していますけど、足元の物価情勢で言えば輸入物価がこれだけの勢いで鈍化しているのに物価統計に出て来る物価の方がさほど鈍化していないというのはこれはすごい事ですわな。、

『他方、第2段階の賃上げと第3段階の人件費の転嫁がともに進む好循環が始まれば、持続性が出てきます。』

はい。

『しかし、「物価上昇の分、賃金が上がる」というだけでは、私たちの暮らしは実質では良くなりません。』

んだんだ。

『好循環をきっかけに、第4段階、すなわち価格戦略の多様化・高付加価値化・生産性向上の段階が始まり、その成果が分配されてこそ、暮らしが良くなっていくと考えられます。』

ですわなーーーーー。何かインフレ目標2%で世界が変わる、みたいなバナー作って宣伝してたリフレ派とかいうポンポコリンの皆様はいかがお過ごしでしょうかねえ。

で、どさくさに紛れて氷見野さんお洒落な説明しているんですよねこの直後に。つまり・・・・・・・・・・・

『第1段階は、輸入インフレとか、私どもが「第1の力」と呼んでいるものに対応し、第2段階と第3段階がホームメード・インフレとか「第2の力」と呼ばれるものと対応します 1。』

ほうほうほうほうほう。

『第4段階は、付加価値向上に見合った値付けであれば、必ずしもインフレに対応するわけではありません。』

!!!!!!!!

つまり今の大本営の説明する第一の力第二の力での話は社会厚生的に意味のある話をしているとは限らんといってるようなもんで、まあ如何にあの第一の力第二の力の説明が胡散臭いかというのが示されております。


でもってこの先が、

『色々な企業からお話をお聞きすると、現状、いずれの段階もまだら模様のように見えます。』

ということで、「ノルムの変化はまだら模様」という話をしている、と解釈すればよろしいかと思います。この部分の説明もこれまた平易に詳しくあるのですが先を急ぎたいので次に参ります。話としては「色々な段階にある企業がいまして人それぞれという状況ですね」が結論です。



・ミクロではまだら模様だがマクロでみれば・・・・・・・・・・・・・・

さてそのように「ミクロではまだら模様」と来た後の次の小見出しが『(物価上昇と価格設定行動の関係――マクロの分析から)』です。

『さて、こうしたミクロの情報は、転換期に何が起こっているのかを理解するためには不可欠ですが、それだけで全体像を評価できるわけではありません。福沢先生も、「天下の形勢は一事一物に就きて臆断す可きものに非ず」として、「スタチスチク」、すなわち統計の重要性を強調しています(「文明論之概略」)。定量的な統計データで見てみるとどうでしょうか。』

と来て開口一番氷見野抜刀斎が抜刀。

『一言でいうと、変化は着実に進んでいるように窺われます。』

はい来ましたよ明るい現状認識。

『名目賃金と消費者物価指数の動きの相互関係を分析すると、物価が上がれば賃金が上がる、という第2段階の関係も、賃金が上がれば物価が上がる、という第3段階の関係も、1990 年代前半にははっきり見られたのに、2010 年代にはそれが観察できなくなっていました(図表4)。』

労働市場の問題は小泉の「改革」のデフレ的な部分の悪影響も結構どころじゃなくあると思うのよね。個人的な体感的感想だけど。

『しかし、直近時点では、物価から賃金への波及は統計的にも確認できるようになっていますし、統計的な確度には不十分な部分はあるものの、賃金から物価への波及も幾分戻ってきているように見える、という結果が出ています。』

キターーーーーーーーー!!!!!!

『先ほど申しました通り、賃金と物価の好循環は、デフレ的な世界に戻ってしまうかどうかを左右する要ですので、これは良い方向のしるしといえると思います。』

とまあ威勢のいい話がでたのに畳みかけてさらに、

『この分析は、物価全体、賃金全体の動きを見たものですが、もう少し内訳まで立ち入って見てみるとどうでしょうか。』

からの、

『家計が買うものには、ガソリンのように頻繁に値札が動くものもあれば、42 年間1個 10 円のままだったお菓子もあったわけですが、それらを品目カテゴリーごとに「過去1年間にほとんど価格が変わらなかった品目」と、「ある程度(±0.5%超)価格が動いた品目」に分けて、価格が動いた品目の比率を見てみます(図表5)。』

『50%だと、半分の品目は1年間ほとんど価格が変わらなかった、ということですし、90%ですと、大半の品目の価格が変わった、ということになります。』

『1998 年の金融危機の後、ゼロインフレやデフレの時代が続くなかで、個別の品目の値段もどんどん動きにくくなっていったことがわかります。1994 年と 2007 年はともに平均値としてのインフレ率はゼロ近傍でほぼ同じですが、変動品目比率は8割強から6割弱にまで落ちています 2。』

何という平明な説明。

『他方、2%以上のインフレの時代には、大半の品目が毎年値段が変わるようになっていく、という風にいえそうです。足もとでは、デフレ前の時期並みに値段が変わる状態に戻っています。』

>足もとでは、デフレ前の時期並みに値段が変わる状態に戻っています
>足もとでは、デフレ前の時期並みに値段が変わる状態に戻っています
>足もとでは、デフレ前の時期並みに値段が変わる状態に戻っています

ノルムの変化、とか小難しいバズワード使わないでこうやって説明するのは本当に頭が良いですよね氷見野さん。


・さらにこの前出てたスタッフペーパーも登場

『また、日本銀行のスタッフの最近の論文 3によれば、国内からの仕入れ価格の動きに近いと思われる「企業物価」についても、海外からの仕入れ価格を左右する「為替」についても、そして人件費に相当する「賃金」についても、それぞれの上昇率が一定水準を超えた場合には、消費者物価上昇率に反映される度合いが急に高くなる、とのことです。』

でもって脚注が『3 佐々木貴俊、山本弘樹、中島上智「消費者物価への非線形なコストパススルー:閾値モデルによるアプローチ」日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、2023 年5月』となっていますが、物件はこちら(https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2023/wp23j05.htm)で、出た時にはちょっと話題になった奴ですね、ちなみに9月の高田審議委員の金懇でもこのペーパーはリファーされています。

でもってその先に説明があるのですがそこは(説明の最後の方が若干強引感あるのもございますので)飛ばしまして、結論の所まで飛びます。

『この論文では、非線形の変化が起きるその臨界点の水準まで推計しています(図表6)。水準の推計自体は相当幅を持ってみる必要があると思いますが、こうした臨界点の先の世界に入ると、価格変更のコストやリスク、インセンティブの非対称性の壁を崩しやすくなる、と解釈することもできそうな気がします。物価上昇率0%の世界はこの世界と大きな距離があるが、2%の世界はこの世界にかなり近い、といえないでしょうか。物価上昇率0%の世界は、値段が変わらない世界ではなくて、値段を変えられない世界という面があるのではないでしょうか。』

ブラードの複数均衡論みたいな話ですな。

『今年の春頃、戦略コンサル業界の方から、「従来はコストカット戦略の相談が中心だったが、最近はプライシング戦略の相談が来るようになった」というお話を聞いたことがあります。企業の方は昔からプライシングにも心を砕いてこられたはずだと思いますが、価格をなかなか上げられない実情を踏まえると、戦略の中心はコストカットにならざるを得なかった、ということではないかと思います。』

『もちろん、コストカットも、プライシングも、より付加価値の高い領域を目指すことも、より低コストで作れる商品で勝負することも、いずれも大切な戦略ですが、価格設定をめぐる制約から必要以上に各企業のプロダクト・ポートフォリオに一方向のバイアスがかかってしまうとすれば、国全体としての産業構造の高度化には必ずしもプラスに働かないのではないか、という気もいたします。』

この辺はマクロ的な合成の誤謬がゼロインフレ均衡の中で起きていた、的な論点にも通じますな。

『他方、価格は上げられない、という前提が変わり、多様な価格戦略を試みやすい環境になると、新たな高付加価値製品の開発など、創意工夫を凝らす余地が広がっていくのではないか、ひいては企業の生産性上昇につながるきっかけにもなるのではないか、先ほど申し上げた第4段階が進みやすくなるのではないか、と考えます。』

つまり第4段階は金融政策の出る幕じゃないんですよね。



・どう見ても「出口に向けて備えをしてるでしょうね皆さん」です本当にありがとうございました

そして実質最後の小見出しになる『3.日本銀行の金融政策運営』です。最初の『(粘り強い緩和の継続)』はまあ単なる公式見解なのでどうでもよくて、問題はその次の小見出し『(将来出口を迎えた場合に何が起こるのか)』である。


もう小見出しからして不穏ですけれども・・・・・・・・・・・

『では、仮にいよいよ賃金と物価の好循環が強まり、「物価安定の目標」も持続的・安定的に達成できる、と見通せるようになったら、何が起こるのでしょうか。よく聞かれるのは、そこで却って色々な問題が起こるのではないか、という疑問です。』

まずそもそも何ですけど、ここで氷見野さんしらっと大事なことを言及してて、それは「「物価安定の目標」も持続的・安定的に達成できる、と見通せるようになったら、」ということ。大本営およびその九官鳥の言い方って基本的に「物価安定目標が達成できるようになったら解除」であってバックワードルッキング(というかビハインドザカーブだが)なのに対して、氷見野さんのこの説明はどう見てもフォワードルッキング。

まあよく考えたら当たり前で、物価目標達成しました状態の時にマイナス金利だ10年金利0%だやってたらインフレが上振れるわって話なんだから、その前から徐々にフォワードルッキングに緩和の程度を調整するのが筋なんですが、ってのアタクシも再三再四申し上げておりますが、氷見野さんのこのフォワードルッキング的、しかもフォワードルッキングとかそういう言葉を使わないでぶっこむのはさすがとしか言いようがない。

『すなわち、「出口を迎えられるような経済状況になること自体は、長年目指してきたことであり、全体としては良い変化といえるとしても、そうなれば、これまでの大規模な金融緩和を徐々に修正していくことになるだろう。その際に生じるのは、金融政策の変更で通常想定されるような消費や投資への影響だけなのか。徹底した金融緩和をきわめて長期間続けてきただけに、国民生活や企業経営、金融機関に追加的なストレスをかけてしまうのではないか」という疑問です。』

ということですが・・・・・・・・・・・

『仮に出口を迎えると、家計や企業や金融機関には何が起きるのでしょうか。これは、様々な角度から考えてみる必要のある問題です。』

ときまして、途中の説明をちょっとこれまた端折って考察部分に参りますとこうなるのです。

『今年の経済財政白書には、これまでの金利変化が各経済主体にとっての受取利子率、支払利子率、そして金利収支にどのような影響を与えてきたかの分析があります(図表8)。金利収支は、それぞれの主体の運用資産額に受取利子率をかけたものと、借入金等の残高に支払利子率を掛けたものの差になります。』

からの、

『家計についてみると、預金金利などがまず下がりましたが、住宅ローン金利なども後を追いかけて下がってきました。ただ、家計は全体としてみれば借入額よりも預金等の保有額の方が多いので、金利収支は金利のある時代に比べれば兆円単位で悪くなった、という姿です。』

キタコレ!!!

『逆に、これから金利のある時代に戻っていく場合には、貯蓄超過主体である家計部門は、総じてみれば収支が改善するのではないか、と見ることができそうです。もっともこれは預金金利が上がるスピードと住宅ローン金利が上がるスピードの違いにも左右されますし、個別の家計ごとに影響も異なってきます。』

マクロでみれば家計にプラスと。

『次に、企業セクターについてみると、これまで借金を減らして手元資金を積み上げてきたこともあり、企業セクター全体としては足もとの金利収支は黒字となっています。これから金利が上昇するとしても、金利収支への影響は、借入が多く手元資金が少なかった時代に想定されたであろうよりは限定的なものとなるかもしれません。もちろん借り入れの多い企業もあれば運用資産の多い企業もありますので、個別には影響は様々と思われます。』

マクロでみれば企業に大きなマイナスになる訳ではないとな。


・金融機関向けに「オイコラ準備しやがれ」メッセージ来てます!!!

そしてその次が金融機関なのですが、

『最後に、金融機関についてみると、金利低下局面の中で利鞘が縮小を続け、金利収支はピークの半分以下になってしまいました。金利が上がっていく局面では単純にこれが逆転して利鞘が拡大する、とはいえないでしょうし、保有している長期の債券などに含み損が出るのではないか、とか、一部の借り手は金利を払えなくなって貸し倒れが生じるのではないか、といったことも気になります。』

でもってこの次が重要ですわよ。

『ただ、金融機関にとっては、保有債券を入れ替えて運用利回りを高める道も開けるわけですし、出口局面では経済の改善に伴い企業の投資も活発化しているとすれば、貸出の需要も増え、預金と貸出の間での利鞘もとりやすくなるだろうと思われます。』

『すなわち、短期的には一定のストレスもありうるが、低金利が続く環境に比べれば銀行経営はずっと成り立ちやすくなると思います。』

と来てからの。

『移行過程をうまくマネージできるよう、適切なリスク管理が必要ですが、金融システム全体としては移行過程のストレスを乗り切れるだけの頑健性を有している、という風に見ております 4』

>移行過程をうまくマネージできるよう、適切なリスク管理が必要ですが
>移行過程をうまくマネージできるよう、適切なリスク管理が必要ですが
>移行過程をうまくマネージできるよう、適切なリスク管理が必要ですが

お前らちゃんと準備してるんだろうなオイ、というのをソフトな説明でバッサリと抜刀するというこの凄みよ。


・それに言うほど影響大きいのかというと小さいのかもしれないということでこのコーナーが締まる

そして最後ですが、

『なお、以上はいずれも名目金利だけに着目した議論ですが、出口の環境では予想物価上昇率も高くなっているとすれば、実質金利の上昇は名目金利の上昇よりも小さい可能性があり、この点を考慮すると家計や企業への影響はここで議論したものと異なってきうると考えられます。』

と、これまた「出口でエライ事になるみたいな話は大袈裟」というぶっこみを入れている訳で、こんなのどう見ても出口やる気満々以外の何物でもない訳ですが、ソフトな書き方(と多分口調)でマスキングしているので債券市場ちゃんの方もあんまり反応した感じが無いのですが、今回の氷見野さん、結構重いことを言っていると思うので、債券市場ちゃんろくすっぽ反応していないように見えるのはちょっとアタクシ的には??????ではあります。

『いずれにせよ、金融政策の側でも、様々な経済主体の側でも、変化をうまく乗り切るために注意深く対応の工夫を行っていく必要があるわけですが、なかでも私どもの方で一番気を付けなければならないのは、賃金と物価の好循環の状況を良く見極めて、出口のタイミングや進め方を適切に判断することだろうと思います。そこを間違わなければ、賃金と物価の好循環が強まっていくこと自体のメリットは幅広い家計と企業に及ぶだろうと考えられますので、出口を良い結果につなげることは十分可能だろうと考えます。』

どう見てもやる気満々です本当にありがとうございました。(最後の『4.おわりに』は割愛します)






2023/12/06

お題「債券市場サーベイ特別版を拝読しながら雑感/中村審議委員会見ェ・・・・・・・・・・」

ひえーーーーーーーー
https://jp.reuters.com/markets/bonds/
米国債10年 利回り
US10YT=XX
+4.190 -0.096

しかしまあ米国10年4.1%まで戻っているのにドル円と来たら碌に戻らんではないかどういう事やオイ。

外国為替
米ドル/日本円 147.2200 +0.01%

〇そういえば債券市場サーベイ特別版がありましたが

さーせん他のネタやってておりましたが。
https://www.boj.or.jp/paym/bond/bond_list/bond2311b.pdf
債券市場サーベイ・特別調査
<2023年11月調査>
回答期間:2023年10月23日〜11月10日
調査対象先数:70先
(「調査対象先数」は、国債売買オペ対象先のうち調査協力を得られた先、および大手機関投資家<生命保険会社、損害保険会社、投資信託委託会社等>)

ということで実施されたのですが趣旨はですね、

『・ 日本銀行は、本年4月の金融政策決定会合において、「金融政策の多角的レビュー」を実施することを公表し、本年7月には実施方針を公表したところです。実施方針では、レビューを進めていくうえで、多様な知見を取り入れつつ、客観性や透明性を高める観点から、「既存の調査・サーベイ等の活用」が掲げられ、「債券市場サーベイ」も活用することとしております。』

ほうほうそうですかそうですか。

『・ 本調査は、過去25年間に実施してきた各種の非伝統的金融政策手段について、主として債券市場(国債市場)に与えた影響(副作用を含む)について、以下の局面ごとに明らかにすることを目的としております。』

というのは良いのだが、

『局面T: 1990年代後半〜2013年4月(量的・質的金融緩和<QQE>導入前)
局面U: 2013年4月〜2016年1月(QQE導入後)
局面V: 2016年1月〜2016年9月(マイナス金利導入後)
局面W: 2016年9月〜2021年12月(イールドカーブ・コントロール導入後)
局面X: 2022年〜(足もと)』

って分け方をしているのですが、局面1だって色々とあったんだぞ、とジジイのアタクシは言いたいのでありまして、短期政策金利が0.5%近傍になり低め誘導してから以降の局面だっていろんなのがあるし、所謂運用部ショックの時だってあれ運用部ショックって言われているけどその背景には東証の債券先物のシステム変更によってそれまで圧倒的なヘッジ機能を有していた長期国債先物取引の流動性が極端に落ちてしまって、その結果マーケットメイクがしにくくなっていた所にちょっとした事件が起きたら一気に相場が壊れた、ということで「市場のヘッジ機能の大事さ」というのが示された、とかそういう方面での話って重要なのよね、と思うのですけど、これじゃあ単純に「25年レビュー」じゃなくて「QQE2以降のレビュー」じゃねえかよと思いました。

まあゆうてワシもジジイと言ってもタテホショックの時は直接その場にいた訳ではない(安岡力也の「ホタテマン」のせいで「タテホショック」の言葉だけはインパクトあったというしょうもない記憶はあるが)ので真の古老の皆様には全然及ぶものではありませんけどね。

でまあタテホショックはさておきまして、97年の金融危機とかそういう話はさておくにしても(ちなみに流動性云々の観点で言えばこの時期にJBネットが導入されて一般債の登録制度が電子化されたのだがちょうどこの移行時と金融危機がぶつかって一般債の流動性がこれまた極端に低下したのも懐かしい思い出)、せめて俊ちゃんの量的緩和政策の所くらいは切り分けた方が良かった気がするのですが、回答者が絶滅危惧種ですがワシントン条約で保護されることもなく整理対象になっているので回答できませんですかそうですかorzorz

なお、この期間の割り方のチャーミングなところは局面4と局面5の切り分けで、極端な市場介入をしたのは昨年12月以降(いやその前からまいにちさしねおぺとかしてましたが)ですよって自ら言っているようなもんというのもこれまたポイント高いですw


でまあ機能度判断なのですが、

『【問1】 貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度について、1990年代後半以降の25年間を振り返った際に、各局面(T〜X)ごとにどのように評価しているか選択してください。その際、債券市場サーベイと同様に、長期国債の流通市場を念頭に、市場流動性に関する各種指標等を総合的に勘案して、ご回答ください。』

短期市場サーベイというのがあるから、というのもあるかもしれんけど短期市場の話もそれはそれで聞いて欲しかったですねえ。

機能度判断DI(総合判断)
局面T:62
局面U:5 
局面V:-48 
局面W:-71
局面X:-60

となっていますな。でもって

『【問2】 問1において、「低い」、「やや低い」を選択した局面について、その要因と考えられるものを、最大3つまで選択してください』

細かいのをアレするとめんどくさいので数字は引用しませんがこんなのごく普通に日銀のせい、という回答しか出てこないという結果ですが、まあこれは金融市場局市場整備グループ(が問合せ先になっているのでアンケートを実施したのはこの部署というのが分かりますな)の回答項目のセレクションがどっからどうみても「日銀の金融政策のせいですとどうぞご回答ください」っていういわゆるツッコミ待ち状態で大変に結構な回答項目の選定で大変に良い味をだしております。

でまあだいたいこの問1と問2でニュースベンダー的には話は終わってしまうのかもしれませんけど、問3以降も味わいがあります。

『【問3】 債券市場の機能度を測る尺度としては、問1でお尋ねした、主として市場流動性の観点からの尺度のほか、デリバティブ市場を含めた商品間の相対価格(ネットベーシス、銘柄間スプレッド等)の観点も有用と考えられます。この相対価格の観点からみた債券市場の機能度について、各局面をどのように評価しているか選択ください。』

これさっきアタクシが言ってたヘッジ機能の話に通じるんですけど、じつはこの部分って日銀がアホのように市場介入する前の時点ではさっきの債券先物の値付けルール(注意気配とか特別注意気配とか覚えているのは20世紀からの生き残りですのでワシントン条約で保護して下さいお願いします)の変更みたいに、制度の変更時の制度設計であんまりものを考えないで設計をするといきなり壊れる、みたいなアホウな事が起きるので、まあ確かにそれ自体は金融政策の多角化レビューとは全然関係ないかもしれないのですが、できればこういう点に関しては当局とか取引所とか中央決済機関とかそういう所では知見を共有していくようにして頂きたいものであります。

なおいうまでもありませんが、

機能度判断DI(相対価格面)
局面T:59
局面U:13 
局面V:-40 
局面W:-66
局面X:-63 

そらそうよという回答ですが、本当はこれ債券市場の状況が極端に悪化しだしたのってQQE2以降だったりするのでありまして、先に短国市場がおかしくなりだして(付利が10bpあるのに短国がどマイナスまで下がってしまったりした)だんだん長い所もおかしくなった(国債買入を50兆円から80兆円に拡大したので市場への圧が強くなった)とか、その辺の流れもあるんですよねーとか思ったりはするのです(ワシの過去の駄文整理しないと)。

次の『【問4】 問3において、「低い」、「やや低い」を選択した局面について、その要因と考えられるものを、最大3つまで選択してください。』はさっきのダチョウ倶楽部メソッドが再び展開されているので割愛w


次のコーナーが

『2.債券市場の機能度が低い局面で生じた問題や市場構造の変化』

ということですが、

『【問5】 問1または問3において、「低い」、「やや低い」を選択した局面について、市場機能の低さに起因して生じた、主に資金調達主体からみた具体的なデメリットと考えられるものを、全て選択してください(複数回答可)。デメリットが特にない場合は、空欄で構いません。また、選択した項目について、流動性面、相対価格面のいずれの機能度低下によってもたらされたかもご回答ください。』

ということで項目が

『流動性プレミアムの拡大による債券発行コストの上昇』
『国債発行の円滑消化への懸念』
『非金融民間部門の資金調達環境悪化』
『その他』

ってあるのですが、これ最初の部分は昨年12月も「デメリット」として示されたのですが、ゴリゴリ考えると難しい問題がある訳で、そもそも論として昨年の終わりごろっていうのは10年の金利を無理くり抑えている結果としてイールドカーブが10年の所で抉れている、という無茶苦茶な事が起きた訳でして、この時って本来あるべきイールドカーブと対比した時のスプレッドって本当に拡大してましたっけとは思うので、問題は「債券発行コストの上昇」というよりは「経済物価情勢から導き出されるリスクフリーレートの位置が過度な日銀の市場介入によって分からなくなってしまった」ということなんですよね、という話になるのですが、まあそれ言い出すと回答項目の1番目と3番目根は同じになるという説がありますな。

市場の流動性が無くなることによって価格変動が大きくなり、おまけに市場のヘッジ機能がないことによってその変動が更に大きくなりやすい、と来るとボラの極端な上昇によって市場のリスク許容度が低下して、その結果国債発行の円滑消化への懸念、という話になる(というか今でもそうですけど)ので、まあこれは1番とは違う観点の話になるな、と思う次第でございますので、おそらくこの設問のポイントとなり得るのは「日銀による極端な量の国債買入による市場流動性の低下」と「特定の金利への過度な介入による国債市場の価格発見機能の低下」に集約されるのかねとは思いました。

『【問6】 問1または問3において、「低い」、「やや低い」を選択した局面で生じたと考えられる、市場構造の変化(日本銀行以外の市場参加者の取引減少)を全て選択してください(複数回答可)。また、選択した項目が、債券市場の機能度低下にどの程度の影響を与えたか、についてもご回答ください。』

まあアレです、「金利水準の低下」というのと「市場流動性の低下」というのの2つの要因に分解できるんじゃなかろうか、ってな感じですなこの辺は。


最後のコーナーが『3.貴行(庫・社)におけるリソース配分の変化』とかいう首筋が寒くなる項目でして、

『【問7】 貴行(庫・社)における、円貨債券取引に関連したリソース面(人材面・システム面・資本配賦面)での変化や先行きの見通しについてお聞かせください。』

『【問8】 2013年(QQE導入)以前と現時点における円貨債券取引部門(フロント)の人員数(兼務の扱いや回答基準時点含め、概数で結構です)をご記入ください』

とかいうワシントン条約で保護されていない絶滅危惧種としては涙なしで見られない項目があって締まるのでした、南無三。



〇まあ日銀は完全に「どっちでもいける」モードにしているなあということで(中村審議委員会見ネタ)

中村審議委員の金懇に関してはもう数行読むだけでツッコミどころが満載で何をどうしたらよいのか悩むのですが、会見の方も何ちゅうかこれがまたご本人が色々と考えているなあというのは伝わるのですが、何でそういう方向に振り切ってしまうのよという感じでして唸ってしまう物件に仕上がっております。

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231201a.pdf
中村審議委員記者会見
――2023年11月30日(木)午後2時30分から約50分
於 神戸市


でまあ何かゴリゴリとツッコミを入れだすと結構な隙だらけの会見なのですが、やってるときりがねえわという感じですので多少見ますけどね。

・そもそもノルムの変化を狙っているのですから・・・・・・・・・・

『(問)(前半割愛)もう一つは、先ほどのお話にもちょっとかかりますけども、政策転換することのリスクについてどのようにお考えかというところですね。拙速に動くことによって、2%が遠のいてしまうリスクと、物価が上がり過ぎてしまうリスクですね。そのリスク、要はどちらを今ですね重きを置いて取り組むべきかというところを、中村さんのお考えをお聞かせ頂ければと思います。』

そもそもこの「拙速」というのに価値判断が入っているのでこの言葉を使うのが気に食わないですがまあさておきまして。ちなみに前半の質疑がこれまた回答が無駄に長くて何をどう突っ込んだらよいのかというような感じの質疑応答に仕上がっているのですが面倒なので今日はパスです。

『(答)(前半割愛)それから、政策転換のリスク、拙速にやることとやらないことのどっちのリスクを重く考えているかということだと思いますけど。拙速に、ちょっと早めに政策修正を過去した時もありましたけども、やはり今回 30 年ぶりぐらいのチャンスがやってきてますんで、これを逃すと次はまたずっと先になるかもしれませんから、このチャンスはしっかりと離さないように慎重に対応すべきだなと思っておりますので、拙速に対応するよりも慎重にやった方が私は良いというふうに思います。』

というのは大本営も言っている話なので、この辺は大本営の代弁だと思って(大本営の代弁と打ったら誤変換が生じて思わず爆笑の発作が起きたのですが誤変換の内容はお察しください)読むとヨロシアル。

『アメリカやヨーロッパは、ピークの物価の上昇率っていうのは 9.6%とか 10.1%(注 2)にまで行ったわけですが、あちらは賃金の上昇率も 5%とか 6%に自然になる経済構造であったり、社会の構造であったり、賃金の構造になってるわけですね。』

別に自然になる訳ではなくてインフレを止めなかったからなったんですがまあここは「賃金が上がりやすい構造」と言っていると思って読み流しましょう。

『ところが日本の場合には、そういう構造になってませんので、やはり企業が、最近は海外の経済環境も少しスローになっていますので、ちょっと慎重な面も持っておられるところもありますから、やはり今、政策修正に対する意思決定をするっていうタイミングではないなというふうに思います。従いまして、慎重にやったほうがまだ良いと。』

ということで、ノルムの変化を見極めたい、ということになる訳ですね言ってることは。

『日本は、この局面で一番高い物価上昇率っていうのは 4.2%ですから、やはりなかなか、その 4.2%が賃金に反映しても、やはりベアですと 2%程度ですので、アメリカやヨーロッパのように高い賃金に跳ね返って、それが物価にまた跳ね返っていくっていうスパイラルにはちょっと日本の場合はまだ構造的になってないと。[米欧と]全部同じようになれば良いかっていうと、なかなか社会慣行が違いますので、そうならなくて良いとは思いますが、やはり物価から賃金、賃金から物価、またそれが賃金へっていうふうに、緩やかに物価と賃金が常に上昇していくという好循環ができるようにすれば、そのときには当然ながら政策修正というのは当然起こり得る、起こるような話だと思います。今はまだ慎重な方が良いと思います。』

これね、言ってることの理屈は分かるんですけど、欧米と同じようなことになると、そもそも欧米並みの物価上昇が発生した時に日本の経済構造が耐えられるのか問題があって、欧米並みまで一足飛びにノルムが変化するのって本当に社会厚生を向上させるという本来の金融政策の目的に合致するんですか、という問題とかあると思うのに、そこはアプリオリに欧米並みが望ましい、ってするのどうなのよと思うのよね。さらに・・・・・・・・


・そもそも欧米並みのノルムになった時点でマイナス金利にYCCをするというのは(途中に面白発言アリ)

この質疑の直後にこんな質問がありまして、

『(問)一点目は、タイミングはなかなか政策修正は読みづらいということですが、やっぱり企業の稼ぐ力を見極めるということであれば、場合によっては、来年中も政策修正ができないという可能性もあるのか、市場はもう 4 月にもという見方が強いので、その辺もしお話になれる点があればという点と、順序なんですけれども、YCCそのものの修正はまだ早いということで反対されたので、マイナス金利の解除というのは、その更に先なのかなという気もするんですが、それぞれの景気への影響ですとかどういう順番で政策を修正していくべきか、現時点でお考えがあればお願いします。』

という質問だったのですが、回答の方がちょっと質問とかみ合っていない感じはしましたけど、回答自体はちょうどさっきの質疑の後半(つまり今引用した部分)の続きみたいになっているので丁度良いから引用します。


『(答)政策修正が来年もないのではないかとか、確かに世間では 4 月じゃないかとかおっしゃっているのは、メディアの情報を読みますと、皆さんが結構おっしゃってるなというのは分かります。それがいつなのかっていうのは、やはり企業がどれほど持続的に賃金を上げられるように、稼ぐ力が強くなってるんだろうかというところが大事なので、そこを確認というか、その持続可能性を見込めるような確認を、私としてはしたいというふうに考えておりますので、いつなのかっていうのはですね、なかなか難しいなと。』

そらまあさっきの流れからしてこう言いますわな。なおこの次に何と申したら

『早く来ると良いなと思いますけど、やはり若い人たちって日本の場合には就職が 4 月で始まりますので、その社会に出るタイミングが 4 月だから、結構 4 月っていうことを皆さんおっしゃるのかもしれないんですけども、』

大本営の代弁をしている分にはあまり変な発言にならないのですが、脱線しだすと何か凄い事を言い出すのが中村さんの仕様になっておりまして、この「やはり若い人たちって日本の場合には就職が 4 月で始まりますので、その社会に出るタイミングが 4 月だから、結構 4 月っていうことを皆さんおっしゃるのかもしれないんですけども」ってなんでそういう考えになるのかまるで意味が分からんのですが・・・・・・・・・・・・

『期待からすれば、若い人が社会に入るんだからその頃に向かってできると良いなっていう期待は分かりますけども、』

そんな発想で金融政策変更のタイミング予想するというのは斬新にも程があるのですが、中村さん何でそういう発想になったのかマジで訳分らんのですが何ちゅうかこの本格派のアレを感じざるを得ません・・・・・・・・・・・

『それと結果はちょっとピッタリと合うとは思いませんので、いつになるかっていうのは、構造の改革が進んで持続可能性が見込めるようになるという時をよく把握したいというふうに思いますんで、今いつかと申し上げるのはちょっと難しいなというふうに思います。』

あー脱線から元の線路に戻りましたね。

『それから、YCCとマイナス金利についてどう考えているのかということだと思いますが、物価目標が見通せるまでは、YCCの枠組みとマイナス金利の組み合わせは維持するっていうことになると思います。』

という話なんですが、物価目標達成の時にマイナス金利とYCC継続してたらその時点での適正な金融政策って政策金利がどんなに低く見積もっても2%近い所にあるだろという話な訳で、じゃあ達成宣言と同時に一気に利上げするのかよ、と考えれば本来はフォワードルッキングで達成に近くなってきたと見られるところで「緩和レベルの修正」をすべきじゃないの、という話になるというのは再三再四申し上げている通り。

でもって中村さんの説明ですとここにさらに「構造の変化」まで入って来るので、そうなると欧米並みに物価があがるような構造になっているのまで確認しているのにマイナス金利にYCCやってるんですから、それは欧米以上の悲惨な物価上昇を招くことに繋がるんじゃないですか、という話になるんですよね。まあ大本営も完全にその辺のことを意図的に誤魔化しているんですよね。

『その時の状況によって、どういうふうに判断するかというのは、その時々で判断をするということになると思います。短期金利は景気への影響はすぐ表れますので、それを考えると今は金融緩和の修正にはもう少し時間がかかるというふうに私は申し上げております。』

>短期金利は景気への影響はすぐ表れますので
>短期金利は景気への影響はすぐ表れますので
>短期金利は景気への影響はすぐ表れますので

ちょいちょい中村さん変な事を言うのですが、金融政策の波及ラグってご存知ですか???????????

『それを進めるうえでYCCの枠組みがいるということですので、どういうふうに判断していくかっていうのは、景気それから企業の稼ぐ力がどれほど進展するかということにかかってますので、今はどちらも大事だというふうに考えております。』

とまあそういうことですので、何か大本営の代弁をしながらも中村オリジナル成分が入ってさらに訳の分からん状態になっていますなあ、とは思いました。なお他にもツッコミどころ満載なのですが気が向いたら成敗しますね。





2023/12/05

お題「日経のキャンペーンに時事も参戦してましたね/輪番減額とな/安達審議委員金懇ネタだが会見の方から先に」

ほうほう
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/104266.html

いやーこれは岩田解説委員の解説を是非お願いしたい、と思ったらもうNHK辞められておられましたかこれは惜しいですね!!!!!!

〇すっかり見落としておりましたのですが何気に日経のキャンペーンに時事も参戦と

日経のサイトで「マイナス金利」で記事を検索するとホイホイと記事が引っ掛かってくるのですが、こちとら日経無課金で新聞朝読んでる暇がないので、目立つところにおいてないと気が付かない(さすがにキナ臭い、というほどでもないけど若干の焦げ臭さは感じるので寝起きで巡回するサイトに日経新聞のトップページも入れている今日この頃)のですが、先週末連発記事打ってたんですね。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK261H50W3A121C2000000/
機熟すマイナス金利解除 ベア3%が好循環の条件
論説主幹 原田 亮介
原田 亮介
2023年12月3日 13:30 [会員限定記事]

『マイナス金利解除の機が熟してきた。2%物価目標は3年連続の達成が見込まれ、次の春季労使交渉(春闘)の賃上げ率も、30年ぶりとなった今春並みとの見方がある。利上げならば17年ぶりだが、かつてのようにすぐに金融緩和に逆戻りしないか、日本経済の基礎体力が試される。』(上記URL先より、以下会員記事)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB011LW0R01C23A2000000/
植田日銀は三たび動くのか 12月会合はいつも鬼門
金融PLUS 金融グループ次長 石川潤
金融PLUS
2023年12月3日 5:00 [会員限定記事]

『街にジングルベルが鳴り響く。クリスマスの飾り付けもきらびやかだ。浮き立つ心はクリスマスのプレゼントや正月のお節の準備に向かいがち。だが、日銀を長くウオッチしてきた市場参加者であれば、そんな浮かれ気分にはまだなれないかもしれない。日銀は18-19日に今年最後の金融政策決定会合を開く。12月会合は日銀が何度もサプライズを引き起こしてきたいわば「鬼門」だ。』(上記URL先より、以下会員記事)

そういや昨年は夏休みの日程を12月MPM終わってから、年末年始に掛らないように、という日程で組むという「かもしれない運転」によって夏休み連休中に政策変更というのを回避することができました。「だろう運転」ではなく「かもしれない運転」が大事なのを痛感しましたwww

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB299Q50Z21C23A1000000/
マイナス金利解除は近いのか 記者が聞いた「足音」
異次元緩和 近づく出口 番外編
金融政策
2023年12月2日 5:00 [会員限定記事]

『日銀の異次元緩和が転機を迎えています。今年4月に就任した植田和男総裁はすでに2回にわたって政策を修正し、これまで強く抑えつけてきた長期金利の上昇を容認する姿勢に転じました。金融市場では、次はいよいよマイナス金利政策の解除に動くとの観測が強まっています。』(上記URL先より、以下会員記事)

こちらはその前からやってた三部作(三部目は日銀の記事ではなくて利上げしたら貸出金利がどうのこうのみたいな記事とお見受けした(中身は無課金なので見てない)ので割愛しましたけれども)でネタにしたシリーズの最終回の最終回ですね。


・・・・・・ということで、大きな扱いではないと思うのですが(大きな扱いだったら昨日の朝の債券市場あんなにアゲアゲしていないわ)ここもとずーーーーっと地味に日経がマイナス金利政策解除がワンチャンあるできゃんぺーん(さすがに12月決め打ちみたいな大胆なのではないけど方向性としてこれだと1月にあってもおかしくないような書きっぷり)を打っておる次第ですが、他紙が別に追随しなくて日経は何一人で勝負してるんだ、とまあ思っておった訳ですが、先週末しらっと時事通信もこのムーブに参戦してきたようですね。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2023120100892&g=eco
日銀、マイナス金利解除を模索 年明け以降、重要局面―春闘で賃上げ見極め
2023年12月02日07時07分

土曜の朝に打っているので、新聞社向け速報とかではないですし、まあこちらも「年明け以降」とあるので別に12月会合でどうのこうのという話ではありません(ので反応もしませんわ、という事もあろうかと思いますが)な。

『日銀がマイナス金利政策の解除を模索し始めた。日銀は来年の春闘の賃上げ状況を見極める構えで、2%の物価目標の持続的実現に確信を持てるかが焦点となる。来年利上げに踏み切れば、2007年以来17年ぶり。異例の大規模金融緩和に終止符を打ち、正常化にかじを切るのか。日銀は年明け以降、重要局面を迎える。』(上記URL先より)


でまあ時事通信さんはマイナス金利解除について「2%の物価目標の持続的実現に確信を持てるか」としているのですが、これは再三再四申し上げておりますが、2%物価目標の達成と直接紐を付けないでマイナス金利だけ先行解除してその後の利上げを2%物価目標の持続的実現に対応する形にする、というのが正常化の作戦としても妥当なんじゃないかと思うし、日銀もそっちの方向になってるんじゃネーノ、という風に何となく思うんですよね、ただの妄想ではありますけれども。

と申しますのは、本当の本当に物価2%が達成されているという状況において政策金利がマイナスだゼロだというのは緩和のやり過ぎで、折角達成した物価2%が安定的に推移せずに今度は上にぶっ放れてしまう、という事に成り兼ねませんので、その前から徐々に金利を付けて行った方がより物価安定がサステナブルになる筈ですから、本来は2%目標達成時には既に政策金利水準は2%とは言わないけど少なくともゼロやマイナスはマズイと思うんですよね。

いやまあ金融政策が実は物価に対して碌すっぽ聞いていない、というのであれば物価2%を達成した時にマイナス金利でも無害なんでしょうけど、それだったらそもそも金融政策自体が要らんという話っすから、金融政策が有効なんだったら2%物価達成しないとマイナス金利を解除しないというのはあり得ない話なんですよね本来は・・・・・・・

ですので、理屈からしたらマイナス金利は分離して解除になる筈ですが、まああの人達理屈も糞もないからな〜〜ってことで。


〇おやおや輪番減額ですかそうですか

多角的レビューのワークショップ第一回というイベントが行われる側でしらっと輪番減額w

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of231204.htm
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2023年12月5日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,500 2023年12月5日
国債買入(残存期間10年超25年以下) 1,500 2023年12月5日
国債買入(残存期間25年超) 750 2023年12月5日

月末のオペ紙で輪番のレンジ一切弄ってこなくて100バーナンキをスッてしまった(大嘘)訳でございますが、10−25の輪番を従来の2000億円から1500億円に減額してきました。

まあ10−25の2000ってのはまだ減額の刑を食らっていなかった年限(これで中期後半を削れば主要年限各1回+5−10はおかわりのもう1回減額したことになる)でしたのですが、オペ紙ではレンジを特にいじらずにやる気のないような空気を出しつつ、米国長期金利がヒャッハーと低下して戻ってきて円債市場も先物ワッショイとなっているタイミングで超長期前半の減額なので、なんだちゃんとやる気あるじゃんとちょっとホッとしました。

25年超のサプライズ減額の時はナンジャソラという感じでしたが、まあ昨日のはその後先物はズルズル下がったりしましたし、超長期は弱かったとはいえ、別に相場を崩すほどのことにはならなかったと思うので(よー知らんけど)、まあ減額はこんな感じでやりゃよろしいんじゃないですかもうバンバン減らせよというお話ではありまする。

これね、オーバーシュート型コミットメントとの整合性でどうのこうの、っていう指摘はあるのですけれども、そもそも出口のでの字もなかった時代でも長期国債の買い入れ額が年間でマイナスになるんじゃないか位の勢いまで買入ペースを落とした時もありますし、それに加えてオーバーシュート型コミットメントってそもそもが「マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。」であって、このコミットメントは物価目標の達成判断とは直接関係なく「実績値」の話なので、すなわち「オーバーシュート型コミットメント」を盾にしようとすると却って藪蛇になるというのが今の物価の「実績値」の推移なのですから、賢明なる日銀がオーバーシュート型コミットメントがあるから国債の買入をこの程度にするとかそういう藪蛇待ったなしのプレイをする訳が無い、とまあ長年のイカサマ説明を見ているアタクシにはそう思える次第。

いやこれで昨日輪番同額だったらああやっぱり輪番減らす気ないのかと思いましたが、目立つオペ紙ではフェイントをかけて、金利が下がり、しかも多角的レビューのワークショップがあるような世間の目がオペに向かない(と言ってもワークショップの概要は後日紙が出て来るだけだ昨日ヘッドラインが出る
ようなものではないですけど)ところですかさず減額とはやるなお主、と思いましたです。


〇審議委員の金懇ネタなどが色々とある訳ですが順不同で安達審議委員の何故か会見の方から参ります

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2023/kk231130a.pdf
安達審議委員記者会見
――2023年11月29日(水)午後2時00分から約30分
於 松山市

まあどうせ安達さんの金懇原稿とか見てもしょうがないと思うので会見の方から先に参ります。金懇原稿の方はそうはいっても自分用備忘のために後程。


・実質金利でどうのこうのという屁理屈を持ち出しているのだが肝心の数字が分からんのはドイヒー

講演の方を先に読め、って言われそうな質疑から参ります。

『(問)午前の講演でですね、長期金利が 1%を大きく上回る上昇をした場合、実質金利の上昇を通じて金融緩和の効果を低下させてしまうと、そういうお話をされたんですが、これ実質長期金利のお話だと思うんですけども、講演の資料をみるとですね、予想物価上昇率、中長期の部分なんですが、1%前半ぐらいにだんだん収斂しているような感じに見えます。やはりそういう意味では緩和効果という観点からですね、長期金利はやっぱり 1%前半ぐらい、その辺りが一つの緩和効果というか実質長期金利がプラスかマイナスになる分岐点になり得るのかどうか、その辺ちょっと実質長期金利どのように考えてるのかということも含めてお願いします。』

なるほど実質長期金利の話をしたのか、というのは良いんだが、そもそも論として「長期金利が 1%を大きく上回る上昇をした場合、実質金利の上昇を通じて金融緩和の効果を低下させてしまう」というこの「大きく上回る」っての具体的にどの位の話なのか、ということをまあ質問者は聞いています。

『(答)足元も含めてですね、長期金利の動きというのは日々変動してますので、こちらから何かその水準を具体的に申し上げるといろいろ影響ありますので具体的には申し上げませんけれども、』

いやお前ら長期金利ターゲット政策しているんだから具体的に申し上げろよ・・・・・・・・・・・

『より長い視点でみるとマクロ経済的に、やはりその実質金利が、今マイナスというのが非常に経済をサポートしてると思いますので、現状やはりプラスの領域に入ってくるというのは、ちょっとまだ時期としてはですね、悪影響の方が大きいのかなというふうに考えています。』

だからその水準が1%前半位なのかどうか、というのを聞いているんだが完全に話の筋を外して回答しております。

・・・・・・・・・いやあのですね、長期金利ターゲットやっているんだからその水準が幾らってのあるでしょという話だし、どこまで上がるのは緩和的か、ってのが分かっていないと今回事実上10年金利の上限撤廃したんだから、どこまでの上昇を容認できるのかもわからないし、だいたいからして若しこの実質長期金利がゼロになる名目金利の水準が仮に1.1%だの1.2%だのだと思っているなら、10月のMPMで賛成票を投じるなよなという話でもありまして、いやちょっとこの答えはやる気がないにも程があると思いました。


・マイナス金利先行解除論については審議委員レベルではまだ浸透していないようですなwwwww

次の質疑はマイナス金利解除に関して。

『(問)金融政策、特にマイナス金利政策について伺います。午前のご挨拶の方で賃金と物価の好循環はまだ十分に達成したと言える段階にはないっていうことだったんですけれども、マイナス金利の解除について、いつ頃どういった条件が整えば判断できると安達委員は考えてらっしゃるでしょうか。』

からの、

『(答)一つは、非常に定性的な言い方で申し訳ないんですけども、賃金と物価の好循環というのをずっと繰り返し申し上げておりまして、基本的にはですね、それが実現するという状況になるまでは、やはりなかなかベースとしてのマイナス金利の解除っていうのは難しいのかなというのは、個人的な考えです。』

ということなんだが、これはさっきも別のネタで申し上げたように、そんな時点までマイナス金利を引っ張るのは相当のビハインドになるので、欧米と同じような失敗になって金利をガシガシあげる(または思いっきりの国債売却みたいなキツイ引き締め)をしないと行けなくなるんで良くないと思うんだよな〜。

『だから今のところそこまでまだ行ってないのと、あとやはり来年の春闘を中心とした来年度の賃上げについてのいろんな情報がポツポツ入ってきてはいるんですけども、大企業は割と前向きだという印象があるんですけども、中小企業はですね、やはり今年度並みの賃上げをするかどうかということに対しては、かなり厳しいという声がございますので、そういう面ではいつ頃それを解除するかというような話というのは、まだちょっとできるような状況ではないかなというふうに思ってます。』

あと、ここで気になったのは「中小企業の賃上げ」というワードでして、これ中小企業までみないと判断できない、ということにしておけば「好循環の判断」を7月会合までは楽勝で先送りできることになりまして、如何にも大本営が考えそうな決断先送りの手法ですわwwwwという感じですね。



・マイナス金利と長期金利のどっちが先か問題に関する安達さんの説明

先の方の質疑に行きますけど、

『(問)マイナス金利に関連して質問があります。午前の挨拶の中で、YCCの運用柔軟化に関して物価の上振れリスクに配慮するという、リスクマネジメントの観点が重要との説明がありましたが、この考え方というのはこのマイナス金利にも適用できるんでしょうか。つまり 2%の物価目標の達成には距離があるということで出口政策の議論とは切り離したうえでですね、リスクマネジメントの観点でマイナス金利を解除すると、このような考え方についてご見解を伺えればと思います。』

思いっきりこれはマイナス金利先行解除論に関する直球質問ですが、

『(答)多分YCCで一つ目標としていた 10 年物の国債利回りと、政策金利であるマイナス金利の部分とは、ちょっと性格が違うのかなというふうに思っています。』

ということで説明があるのです。この安達さんの言及自体は誠に仰せの通り。ではその内容ですが、

『一つはリスクマネジメントということで 10 年物の国債の利回りの変動をより柔軟化してきたわけなんですけど、これはリスクマネジメントの一つとしてやはりイールドカーブが歪むということの副作用が、あまり二、三年前は意識していなかったんですけれども、意外と大きいということで、』

ほうほう。

『それがしかも企業の資金調達に影響を及ぼすという、そういうことが去年の後半くらいからだんだん分かってきましたので、それに対して一応措置をする必要がでてきたというのが主なポイントだと思います。』

久々に聞いたわその理屈(昨年12月に使われた理屈ですね)。

『長期金利は、結局その時の物価とか見通しとかにも影響を受けて動きますので、あまり現状のインフレ率とかけ離れた、当時、10 年債利回りをもう思いっきりゼロに固定する、ゼロ近傍に固定するっていうのは、その現状のインフレ率との兼ね合いではやや不整合といいますか、』

何かこの辺で安達さんが真人間になっておられる!!!!!!

『言ってみればものすごいデフレの時に行われた政策を、ものすごいデフレでない時にも同じように適用していたっていうところの副作用みたいなのが出てきていましたので、』

おおおおおおおお!!!普通の事を言ってるじゃないですかあああああ。東京に雪でも降るんじゃないか???

『それをより物価が上振れた時のために柔軟化しましたと言って、その向こう側というかその先には、企業の資金調達がイールドカーブが歪むことによって支障を来すということがありましたのでやったわけですね。』

最後の所はしょうもない理屈になっている気もしますが、「ものすごいデフレの時に行われた政策を、ものすごいデフレでない時にも同じように適用していたっていうところの副作用」ってのは大変に良いお話でして、それは別に長期金利だけじゃなくて短期政策金利だって同じじゃないか、って話になるかと思うとならないのが惜しい所でしてwwwwww

『ただマイナス金利の解除っていうのはそれとちょっと性格は違っていて、ここはマイナスにしてること自体は一応非伝統的というか通常とは違うんですけども、政策金利として短期金利を操作するっていうのは、それはオーソドックスな金融政策の一面もありますので、そこは多分非常に根幹ではないかなというふうに思ってますので、私は一応区別はしてます。』

だそうなんだが、そもそも2%物価安定目標が達成した世界において適正な短期名目金利水運が幾らなのか、ということを考えた場合、金融政策の波及ラグまで含めて考えれば、2%物価目標達成が確認できるまで政策金利を「物凄いデフレの時の水準」に置いておく必要はないんじゃないか、という話になる筈で、それって別に長期も短期もないでしょと思うのです。

まあこの「マイナス金利の方は政策金利なので理論」は昨年内田理事(当時)が何かで発言してたりして(国会とか)ましたので、安達さんはこの内田さんの理屈を使って説明しているようなのですが、なにせ日銀大本営はホイホイとイカサマ理屈を繰り出して過去の理屈を無かったことにするのが得意技でありまして、この前も高田審議委員が金懇で政策修正を思いっきり否定したと思ったら実はその前日には植田総裁が読売新聞の例のインタビューを受けていた、というような事案もあったりする次第でして、審議委員の皆様におかれましては(きちんとビューをもっておられる田村さん以外)大本営の九官鳥をやっていましても大本営は九官鳥の梯子を平然と外してくるというのをずーっと(新体制以降ですけど)得意技にしているので、まあ申し訳ないけどこの辺の説明は話半分で斜に構えて聞いておけば良いのだと思いますです、はい。







2023/12/04

お題「1日のパウエルスピーチは別にハトハトしている訳でもないと思うのだが・・・・・」

まだ2営業日なのですが「よっか!」と言われると何かエライ時間が経過した気がするのは認知が適当だからですかそうですかorz

#そーーーーいや今日は多角的レビューのワークショップですねえ

〇パウエルちゃんの講演ですがこれでヒャッハーするもんなんかという気はややする

いやだからアメリカン債券市場はFEDのアクションをどういう織り込みの仕方をしているのかというのが反応を見ても謎で謎で。ま、隙あらば金融引き締め終了からの金利低下でファイナンシャルコンディションやっほいをしたいのだけは分かるんだが・・・・・・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20231201a.htm
December 01, 2023
Opening Remarks
Chair Jerome H. Powell
At a Fireside Chat at Spelman College, Atlanta, Georgia

最初の3パラグラフはご挨拶とマクラなのでかっ飛ばして、4パラ目から経済物価情勢というか雇用と物価の話になります。

・雇用の話では「軟着陸に自信満々」を示しています

『To begin with our maximum employment goal, I am glad to say that, by many measures, conditions in the labor market are very strong.』

労働市場が強いのですが、まあここをハトと読むのであれば「労働市場が強い」という事に対して「I am glad to say」と言っていて、労働市場の需給がひっ迫していて強すぎ問題、というような話になっていない、というのは気になるところって事でしょうかね。

『A couple of years ago, as the pandemic receded and the economy reopened, the number of job openings grew to greatly exceed the supply of people available to work, leaving a widespread shortage of workers. Today, labor market conditions remain very strong, and the economy is returning to a better balance between the demand for and supply of workers.』

同じく労働市場の需給が改善(供給不足から)していることがプラス評価されていまして、

『The pace at which the economy is creating new jobs remains strong, and has been slowing toward a more sustainable level.』

経済の現状のペースが雇用を大コケさせるでもなく、労働需給がベターなバランスになるということを作っている、とかもう軟着陸する気満々の説明ですな。

『That gradual slowing has come in part due to the efforts of the Fed to slow the growth of the economy to help reduce inflation.』

この一部に(in part)はFEDによるインフレを抑制するための経済の減速を促す政策の効果があります、ってまあこれは手前味噌説明ですが、同じ手前味噌でも黒田とゆかいな仲間たちは全て自分たちの金融政策の手柄にする&都合の悪い事は言及しない、となっているのでありまして、まあ普通な中央銀行って良いなあと思うのでありました。

『After declining sharply during the pandemic, the supply of workers has bounced back, as people have come back into the labor force and as immigration has returned to pre-pandemic levels. Partly because of that labor force growth, the unemployment rate has edged up over the second half of the year, though it remains historically low at 3.9 percent. The increase in participation has been particularly strong among women in the prime working ages of 25 to 54, which surged to an all-time high earlier this year, and which remains well above pre-pandemic levels.』

この辺は労働市場の現状の各種指標を使った説明。

『Wage growth remains high but has been gradually moving toward levels that would be more consistent with 2 percent price inflation over time, and real wages are growing again as inflation declines.』

最後の所は賃金で、賃金の伸びは高いけど徐々に2%インフレに整合的な水準に低下してきている、というのはまあよろしいんですけど、最後に非常に味わいが深かったのが「real wages are growing again as inflation declines」という所でありまして、見ればお分かりのように「実質賃金はインフレの低下によって再び上昇している」って説明をしておりまして、インフレが上振れている状態で「賃金と物価の好循環」とか言って実質賃金が上がらないのがどうのこうのとかいってる日銀が如何に詭弁を弄しているのかというのがよくわかる話ではありますな、ナムナム。


・物価に関してですがその話の行きつくところは政策の地蔵宣言

『As for price stability, the Federal Open Market Committee (FOMC) has a longer-run goal of 2 percent inflation.2 After running below 2 percent for over a decade, inflation increased sharply in 2021, in the United States and in many other countries around the world.』

ということで次のパラからが物価の話ですが、

『High inflation imposes a significant hardship on all households and is especially painful for those least able to meet the higher costs of essentials like food, housing, and transportation.』

足もとでインフレ鎮静化政策をしているのですから当たり前ちゃあ当たり前ですが「高インフレが家計に負担を与えて、しかも生活必需品の支出割合の多い家計に対してはペインフルである」ってのをちゃんと説明しておりまして、一方のどこかの馬鹿中銀は物価が上振れして就中生活関連価格の上振れも続く中で「2%達成が見通せない」とか言ってるの、これ日本のメディアが置物とかヨーイチとかああいう物体を重宝するような能無しの集まりだからスルーされていますけど、メディアにまともなリテラシーがあったら日銀ちゃんとっくの昔にぬっころがされてるだろと思うのですよね。まあそれはそれとしまして、

『Beginning in early 2022, we reacted forcefully, raising our policy interest rate and decreasing the size of our balance sheet to help slow the economy and bring down inflation. Inflation has declined to 3 percent over the 12 months ending in October, but after factoring out energy and food prices, which tend to be volatile, what we call "core" inflation is still 3.5 percent, well above our 2 percent objective.』

昨年の頭から我々は金融政策の引き締めを行いまして物価が落ち着いてきましたよ、と自画自賛していますが、さはさりながら「 "core" inflation is still 3.5 percent, well above our 2 percent objective」でこのパラグラフを締めていまして、物価水準はまだ高い、と言っている訳ですな。

でもって次のパラフラフが今後の話になりまして、

『Over the six months ending in October, core inflation ran at an annual rate of 2.5 percent, and while the lower inflation readings of the past few months are welcome, that progress must continue if we are to reach our 2 percent objective.』

まずは「マンデート達成のためには今の状況が今後も続く必要がある」ということを言いまして、

『High inflation initially emerged from a collision between very strong demand and pandemic-constrained supply. The normalization of supply and demand conditions has played a critical role in the disinflation so far, as has the substantial tightening of monetary policy and overall financial conditions over the past two years.3』

インフレ鎮静化の過程の話が始まりまして、パンデミックで発生した需給バランスの変化によってインフレが起きて、過去2年間においてはまずその供給が改善したこと、そして金融引き締めによる効果でインフレが鎮静化してきました、と説明しておりまして、

『The strong actions we have taken have moved our policy rate well into restrictive territory, meaning that tight monetary policy is putting downward pressure on economic activity and inflation.』

金融引き締めによって経済と物価に下押し圧力をかけてまっせ、と来ましてこの先が今後の政策に関してまあ大事っぽい部分でして、

『Monetary policy is thought to affect economic conditions with a lag, and the full effects of our tightening have likely not yet been felt.』

引き締め効果がまだ全部出たかどうかはよくわからん(=今のままだと更に引き締め効果が経済に出て来るかも)からの、

『The forcefulness of our response to inflation also helped maintain the Fed's hard-won credibility, ensuring that the public's expectations of future inflation remain well-anchored.』

我々のインフレへの強力な対応はインフレ抑制に対する我々の信頼性を維持するのに役立ち、それは世の中のインフレ期待を強力にアンカーさせることにも役立っている、とここでも自賛モードになっておりますが、その次は、

『Having come so far so quickly, the FOMC is moving forward carefully, as the risks of under- and over-tightening are becoming more balanced.4』

ここまで急激にやってきましたが、FEDはこの先に関してはケアフリーに行動しております。というのも引き締めの不足も引き締めのやり過ぎもどっちもリスクとしてバランスしているからです。

・・・・・・と来てますので、基本的にこれってただの地蔵宣言であって、これで来年の利下げが更に前倒しだぜヒャッハーとかなるのは如何なものかとは思うのですよね・・・・・・・・・・・・


・「利下げの話を今からするのは時期尚早」とは言ってるんですけどねえ

さらに次のパラグラフに参ります。この辺からまとめに入っていまして、

『As the demand- and supply-related effects of the pandemic continue to unwind, uncertainty about the outlook for the economy is unusually elevated. Like most forecasters, my colleagues and I anticipate that growth in spending and output will slow over the next year, as the effects of the pandemic and the reopening fade and as restrictive monetary policy weighs on aggregate demand.5 』

ここは「来年は経済が鈍化すると予想している」というお話でして、

『The FOMC is strongly committed to bringing inflation down to 2 percent over time, and to keeping policy restrictive until we are confident that inflation is on a path to that objective. 』

2%になるパスが確信できるまでは引き締めを継続する、からの、

『It would be premature to conclude with confidence that we have achieved a sufficiently restrictive stance, or to speculate on when policy might ease. We are prepared to tighten policy further if it becomes appropriate to do so.』

ここで思いっきり「我々が十分な自信をもって既に引き締めを達成している、とか何時から金融引き締めの緩和が始まるか、などと考えるのは時期尚早である」と言って、もし必要なら追加引き締めのおかわりもあるでよ、と入れて来まして、ここで利下げヒャッハーの金融市場に水をぶっかけている筈なのですが、あんまり水が効いておられないようでニャンとも。


でまあ最後はまとめになりまして、

『We are making decisions meeting by meeting, based on the totality of the incoming data and their implications for the outlook for economic activity and inflation, as well as the balance of risks.』

これはまあいつもの「毎回の会合で判断する」ではありますな。

『That is an overview of what my colleagues and I at the Fed are trying to accomplish.』

ここから最後のパラグラフになります。

『The bottom line, if you are a student, is that we have made considerable progress in reducing high inflation while maintaining a strong labor market, with a lot of opportunity for new graduates. The unemployment rate has risen a bit, but it is still very low by historical standards, and by many measures it is a great time to start your career.』

現状は労働市場もよろしいので皆様のキャリアを開始するのに良い時期です(キリッ)とは微笑ましい。

『You will face challenging decisions soon about what professions to enter, and what companies and institutions to work for. Some of you will become entrepreneurs. You have already made one really good decision, and that is coming to Spelman. Whatever opportunities and challenges emerge, education will continue to be a key to success. Higher education is an investment, and not just of money. You are investing your time and great effort to gain knowledge and skills that are preparing you for successful careers. Your success will make for a stronger economy. For our part, at the Fed we are doing our best to foster an economy that gives you the best opportunity to succeed. With that, I will hand it back to you, President Gayle.』

最後は学生へのはなむけの言葉で締めております。



〇しかしこのパウちゃん発言に関してもロイターとブルームバーグで報道に温度差がありましてですね・・・・・・・・・・

ロイター
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GJXTNOCIXFKS3M2XER6TONFYC4-2023-12-01/
利上げ過不足リスクは「均衡」、軟着陸の大枠整う=FRB議長
ロイター編集
2023年12月2日午前 8:18 GMT+9

『[アトランタ 1日 ロイター] - パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は1日、利上げが行き過ぎ必要以上に景気を減速させるリスクと、インフレ抑制のために十分な利上げを実施しないリスクは「より均衡している」と述べた。その上で、FRBが今後の金融政策決定において慎重であることを改めて確認した。』(上記URL先より、以下同様)

ということでロイターはハト方向の見出しをつけますなあという感じでして、

『スペルマン大学(ジョージア州アトランタ)での講演原稿で、パウエル議長は「われわれの引き締めの効果はまだ十分に現れていない。インフレに対するわれわれの強力な対応は、FRBの信頼性を維持し、将来のインフレ期待を安定的に保った。これほど速くここまで来たのだから、引き締めの過不足リスクが均衡している状況下で、(米連邦公開市場委員会(FOMC)は)慎重に前進する」と言及。FRBが今後、一段の利上げを実施する必要があるかは「データが教えてくれるだろう」と語った。』

というような説明ではございますが、この前の地区連銀総裁やら理事やらの発言の報道もそうですが、足元ロイターって結構ハトフィルターがかかった書き方してるなーという一方で、


ブルームバーグ
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-12-01/S4ZWGOT0G1KW01
パウエル議長、FRBは「慎重に」行動−追加引き締めの選択肢維持
Steve Matthews
2023年12月2日 1:12 JST 更新日時 2023年12月2日 2:26 JST

→金融緩和の時期を臆測するのは時期尚早−パウエル議長
→適切な場合は追加引き締めの用意がある−アトランタで講演

という感じでの書き出しになっていて、記事のリードでも

『米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1日、22年ぶり高水準にある借り入れコストに関して連邦公開市場委員会(FOMC)は慎重に行動するが、追加利上げの選択肢も維持すると述べた。米金融市場で広がる2024年前半の利下げ観測を押し返した格好だ。』(上記URL先より)

ということで来てまして、ここもとロイターとブルームバーグで明らかに温度差がある調理をしている、というのが中々興味深いところではあります。どうしてこういう違いになっているんでしょうか、詳しい方いましたら是非是非教えてくらはい。


・・・・・・・審議委員の金懇???そういやそんなのありましたなあ(どうでもよい扱いにも程がある人)







2023/12/01

お題「米債連動大暴れ相場とかオペ紙などの市場雑談メモ/中村審議委員金懇に逸材登場の香りが・・・・・orz」

これはこれは前原先生
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA3035E0Q3A131C2000000/
前原誠司氏が国民民主を離党 新党結成、維新と協力視野
政治
2023年11月30日 13:15 (2023年11月30日 17:15更新) [会員限定記事]

日銀にしょうもない共同声明入れさせるきっかけをつくったのもこの人ですが、まあ白眉は「希望の党」を巡る一連のアレでして、とにかくこの人昔から政治的なカンが致命的に悪くて、勝負にいくと見事なまでに凶の目を引くという特技があって(個人の感想です)これは(以下自主規制)。

〇市場メモとか輪番オペ紙とか少々メモを

・ただのアメリカン長期金利連動でしたが謎の相場でしたな

昨日の相場はマジで訳が分からなかったので、以下のロイター後講釈引用は別に何か揶揄とかでも何でもなくて、いや本当に謎相場でしたね、というお話のために引用しますので念のため申し添えます。

まあ大体先物の日中足と米国10年国債の時間外取引の日中足が似たような形状で推移してた(最後の方は必ずしもそうじゃなかったかもですが特に前場から後場先物が前日比安まで叩き落ちるとき)ので、アメリカン長期金利連動だったということなんでしょうけれども、そもそもアメリカン長期金利も何でああいう挙動なのか訳分らんという感じで、なんかもうひたすら謎の相場ちゃんでした。ということで自分の備忘用にロイターさんの市況記事を置いておく。


前場引け時点
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/VLIKUFJVOBJRNG73L7XKLGECCY-2023-11-30/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利一時0.635% 2カ月半ぶりの低水準
ロイター編集
2023年11月30日午前 11:28 GMT+9

『[東京 30日 ロイター] - <11:22> 国債先物は続伸、長期金利一時0.635% 2カ月半ぶりの低水準 

国債先物中心限月12月限は前営業日比18銭高の146円80銭と続伸して前場の取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は一時0.635%と9月8日以来2カ月半ぶりの水準まで低下した後、同2.5bp低下の0.650%。米金利の低下を受けて、先物は堅調に推移した。現物市場では超長期ゾーンを中心に金利低下圧力がかかった。前日の米金利が低下した流れを引き継ぎ、円債は朝方から買いが先行。また時間外取引の米10年債利回りが一時4.24%付近まで低下したことも、円金利の低下圧力となった。月末で年金勢による年限長期化の動きが活発化しているとみられ、現物市場では超長期ゾーンを中心に金利低下圧力がかかった。』(上記URL先より)

大引け時点
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/G5CJFTJD6RLILMDMJNDVITVRYU-2023-11-30/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落、長期金利0.670% 年限長期化の買い一巡
ロイター編集
2023年11月30日午後 3:20 GMT+9

『[東京 30日 ロイター] - <15:16> 国債先物は反落、長期金利0.670% 年限長期化の買い一巡

国債先物中心限月12月限は前営業日比16銭安の146円46銭と反落して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は一時0.635%と9月8日以来2カ月半ぶりの水準まで低下した後、同0.5bp低下の0.670%。2年債入札結果が弱いと受け止められたことや年金勢による年限長期化の買いが一巡したことから、現物市場で金利上昇圧力が強まった。その流れが波及し、先物も弱含みに転じた。米金利低下が波及し、国債先物も買いが先行して始まった。月末で年金勢による年限長期化の動きが活発化し、現物市場では超長期ゾーンを中心に金利低下圧力がかかった。』(上記URL先より)

いやもう何なんですかという相場で、昨日の債券先物ちゃんの日中高安って84銭もありがやがりまして、日中売買高も40207枚(カレンダー分は別で)とか大商い(というかここのところ連日エライ大商い)とかなっていまして、いや何だったのわけわからんというか月末営業日にこういう値動きするんじゃねえよ疲れるわと思いました(小学生並みの感想)。



・オペ紙ですが輪番レンジ変更なしかよと思ったが社債の上限が減りましたね

レンジ上下とも拡大に100バーナンキとか言ってたような気がするが100インドネシアルピアくらいで勘弁して下さいアイヤー。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231130c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定
(2023年10〜12月)[一部変更]

ー1年:1500(月1回)
1−3年:3500-6500(月4回)
3−5年:4000-7500(月4回)
5−10年:4500-9000(月4回)
10−25年:1000-5000(月2回)
25年−:500-3500(月2回)
物価連動:600(月1回)

・・・・・・・・前月から今回も変わらん(実は再柔軟化の前からも変わっていない説があるが)ということになりますので、これ輪番減額余地が年限によってはあまりないという事になるんだが、だったら先週と先々週の減額は何だったのか、しかもサプライズまでやっての減額とか思い切った事をしていたのは一体全体何の判じ物ったのかと謎しかないプレイでして、どういうロジックでやっているのかと小一時間問い詰めたいのですが、まあそもそも金融政策運営における物価目標達成の定義をコロコロ変えるようなプレイをしている政策の下でのオペ部隊なのですから、そらまあ政策が極めて高度過ぎて下々のワイに理解できないのにオペのロジックが分かる訳が無いのでありまして、高度な理論なんでしょうねきっと。

なお、
『―― 2024年1〜3月分の公表は、2023年12月27日17時を予定。』
とのことですので、これは27日が御用納めですかそうですかという風情ですね!!!!!

でまあ今回ここは「ほほー」と思った訳ですが
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr231130e.pdf
社債等買入における一発行体当りの買入残高の上限について

『日本銀行は、社債等買入について、「コマーシャル・ペーパーおよび社債等買入基本要領」附則4.の一発行体当りの買入残高の上限を、次のとおり定めることとしました。』

期間:2024 年1月から3月まで
買入残高の上限:1,500 億円
総発行残高に占める買入残高の割合:30%

前回が
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2023/mpr230831d.pdf
にあるように、「2,000 億円、30%」でした

ということで今回上限引き下げということになりまして、じゃあこれがどの位影響するのかという辺りは社債市場に詳しい有識者のコメントを待ちたい(アタクシ社債の需給云々できっちりとしたコメントできるほどの知見は無いのでスイマセン)のですが、輪番の再減額の示唆は抑える代わりに今回は社債買入の方で政策の正常化に向けた地味な取り組みをしましたよ、って事だと思うので、まあ輪番レンジ変更なしでしたが、こっちがあったのでそれはそれで評価って思いましたがどうでございましょうかしら。


〇これは久々の逸材現る(珍獣観察的に)・・・・・・・・・・・・

さて、本日は予定を変更しまして中村審議委員の金懇から多少なりとも参ろうかと存じます。

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko231130a.htm
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/data/ko231130a1.pdf
【挨拶】
わが国の経済・物価情勢と金融政策
兵庫県金融経済懇談会における挨拶要旨
日本銀行政策委員会審議委員 中村 豊明
2023年11月30日

ということで以下引用はHTMLから行いますが、中村審議委員いつの間にか大いなる成長を遂げて方向性はだいぶ違うのですが、かのジンバブエ大先生を彷彿とさせる逸材への道を歩んでおられるようでアタマがクラクラとしてまいりました。ちょっと余りの衝撃に今朝の時点で全部消化しきっていないのですが、とりあえず第一報ということで参ろうかと存じます。

最初の『1.はじめに』はただのご挨拶で、『2.内外経済情勢』の所はまあ経済物価情勢の話を普通にしているのですが、その次のパートが逸材なんですよ・・・・・・・・・・・


・文章構成がそもそも日本語として繋がっていないように見えるのだが・・・・・・・・・・

『3.金融政策運営』になりますが、このマクラ部分にある、

『足もとの経済・物価情勢を踏まえ、当面の金融政策運営に関する私自身の考えについてお話します。消費者物価(除く生鮮食品)の前年同月比は9月に+2.8%と13か月ぶりに3%を下回りましたが、以下の通り、2%の「物価安定の目標」のもとで、当面は現在の金融緩和を粘り強く続ける必要があると考えています。』

というのはさておきまして、この次がマジで訳分らん。

『(1)金融政策運営と日本経済の課題』という小見出しなんだが、ここ2段落あるんですけど、まずは一段落目を通しで読んで味噌。

『日本銀行の金融政策の理念は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することです。物価と賃金が連動し易い米欧では、物価と賃金の上昇が長年続いていますが、過度な物価上昇は経済のコストであることはもちろん、労働生産性の向上を伴わない賃金の過度な上昇は持続的ではありません。こうした面を踏まえ、2%の物価上昇が目標とされているように思います。これは、物価と賃金が連動して上昇する経済・賃金構造を前提とし、行き過ぎたインフレ率を鎮静化することを念頭に置いた目標です。今次局面では、ピーク時のインフレ率が米国で+9.1%1、ユーロ圏で+10.6%2となりましたが(図表2再掲)、まさにこうした事態に対応する目標ということです。日本の場合は状況が異なります。日本では、1990年代後半以降、物価と賃金が殆ど上昇しなかったことで(図表4)、企業のイノベーションが阻害され、アジア主要国との高度専門人財3の賃金水準が逆転する等(図表5)、経済は長い停滞に陥りました。2%の「物価安定の目標」の達成状況は、この停滞を脱するために必要な「経済成長とともに物価も賃金も上昇する経済・賃金構造への変革」の進捗を測る基準でもあると考えています。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(゚д゚)

いやマジでこの文章何なのという世界で、事実関係の認識云々の前にこれ文章として書いてこういうものになるのかという話で、頭に浮かんだことを口述筆記したのがそのまま講演原稿になっているとかじゃないとこういう文章にならんと思うんだがいやマジで(お前の駄文はどうだとか言われそうですが笑)。

ちょっと読んでみましょう(ということなので以下上記第一段落の再掲)

『日本銀行の金融政策の理念は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することです。』

これはそうですが、

『物価と賃金が連動し易い米欧では、物価と賃金の上昇が長年続いていますが、』

何故ここでワープするの??

『過度な物価上昇は経済のコストであることはもちろん、労働生産性の向上を伴わない賃金の過度な上昇は持続的ではありません。』

それはそうなんだがその次とのつながりがこれまた謎で、

『こうした面を踏まえ、2%の物価上昇が目標とされているように思います。』

という話をしているんだが、そもそも論としてデュアルマンデートを取っている米国をさておいて、通常のインフレーションターゲッティングのフレームワークの中では賃金というのは物価上昇を決める変数の一つなのであって、別に労働生産性の向上を伴った賃金の上昇を促すためにインフレ目標を設定している訳でも何でもないので、事実認識としてお前は何を言ってるんだの世界。

それに米国だって別に賃金には何かターゲットを置いているわけではなく、あくまでもマンデートは「雇用」が望ましい状況で安定的に推移することな訳ですから、労働生産性の向上とか賃金の向上とかそういうのは別に踏まえてねえだろとしか言いようがない。

『これは、物価と賃金が連動して上昇する経済・賃金構造を前提とし、行き過ぎたインフレ率を鎮静化することを念頭に置いた目標です。』

最早言ってることが無茶苦茶で、賃金と物価の上昇スパイラルを起こすのも良くないんだから、「物価と賃金が連動して上昇する経済・賃金構造を前提とし」ってのは今のてめえらの言ってる好循環に絡めたいからそう言ってるんでしょうけれども、その後の「行き過ぎたインフレ率を鎮静化することを念頭に置いた目標」ってのも何言ってるんだという話で、コロナ前まで高圧経済とか、コロナ後も平均物価目標とか言ってて、「行き過ぎたインフレ率を鎮静化することを念頭に置いた」のはつい最近の事だろという話で、この人はいったいこの話をどういう時間軸で説明しているのかが謎としか申し上げようがない。

『今次局面では、ピーク時のインフレ率が米国で+9.1%1、ユーロ圏で+10.6%2となりましたが(図表2再掲)、まさにこうした事態に対応する目標ということです。』

そもそもフォワードルッキングに対応できずにインフレを上振れさせている時点でインフレ目標政策を1回失敗してて、今はその収拾をしているんですから、この説明から得られるインプリケーションは日本もフォワードルッキングで金融緩和政策からの脱却を検討すべき、となる筈なんですが。

『日本の場合は状況が異なります。』

どう異なるのかとなったら、

『日本では、1990年代後半以降、物価と賃金が殆ど上昇しなかったことで(図表4)、企業のイノベーションが阻害され、アジア主要国との高度専門人財3の賃金水準が逆転する等(図表5)、経済は長い停滞に陥りました。』

急に全然違う時間軸の話になる・・・・・・・・・

『2%の「物価安定の目標」の達成状況は、この停滞を脱するために必要な「経済成長とともに物価も賃金も上昇する経済・賃金構造への変革」の進捗を測る基準でもあると考えています。』

なんかもう説明が無茶苦茶過ぎて何が何やらという感じですが、では次の段落に参ります。はいこちら。

『人口増加に伴って成長した日本は、人口減少に伴い経済が停滞を始める「成長の罠」に嵌り、環境変化への対応が遅れました。例えば、多くの企業では終身雇用慣行のもとで、「良いものを安く大量に」提供する効率重視の大量生産モデルが維持され、人口減少社会に適応した付加価値重視の事業モデルへの転換が遅れました。そして、不況の度にオイルショック時の成功体験から、事業継続・雇用維持を優先しコストカットや投資抑制が徹底され、業績改善が図られました(図表6、図表7)。これは、賃上げを抑制しても雇用を守れば、従業員は会社のために働き続けてくれるという「従業員の善意に依存した経営」だったと思います。この間、「稼ぐ力」を強化する「選択と集中」・事業ポートフォリオ改革(M&A・事業売却等)の先送りに加え、イノベーション創出のカギとなる人財投資や研究開発投資の抑制等、「守りの経営」が徹底されました。この結果、環境変化への対応が遅れ、賃金の停滞や成長期待の低下を招き、従業員エンゲージメントや労働の質が低下し、一人当たり労働生産性がOECD38か国中29位4に低迷する等(図表8)、日本は世界の成長スピードから遅れ、「低成長・低インフレ・低賃金上昇」の「低温経済」に陥り、デフレマインドが形成されたと考えています。』

なんかもうむちゃくちゃなんですけど。

『人口増加に伴って成長した日本は、人口減少に伴い経済が停滞を始める「成長の罠」に嵌り、環境変化への対応が遅れました。』

って言ってるんだが人口動態だけで成長の話をする時点でお前は何を言ってるんだという話だし、

『例えば、多くの企業では終身雇用慣行のもとで、「良いものを安く大量に」提供する効率重視の大量生産モデルが維持され、人口減少社会に適応した付加価値重視の事業モデルへの転換が遅れました。』

ってのもエライまた単純な話で、いやそういう話かよってなもんでして、例えばよく言われていたのは日本企業は生産するアイテムが多すぎな上に付加価値をつけようとして更にアイテム増えすぎたので効率が悪化したって白物家電とか自動車とかで言われてたりしたような話はどこ行ったんだということなんですが、何ですかこのエライ雑な割り切り方はという所です、

まあ何ですな、こういうのって経済雑誌みたいなのとかに出て来る底のあっさーーーーい評論とかでよく見られる雑な断定による説明に通じるものがありまして、まあ別の例えをすると仕事引退したシニアが暇なのでインターネット見ているうちに「ネットde真実」に目覚めてしまって変な陰謀論に嵌ってネトウヨになってみたりとんでもない差別主義者になってみたりリフ(以下割愛)とかいうような痛々しい事例を彷彿とさせる次第でして、何か中村さん当初の時点から「給料が上がらないなら株や投資信託を買えば良いじゃないか」というマリーアントワネット理論を提唱したりしていたのでその素質は十二分にあったのですが、スクスクと悪い方向にお勉強が進んで、すっかり逸材レベルに成長してしまったではあーりませんかという悲しい状況が読めてしまう訳ですな。

だいたいですね、

『そして、不況の度にオイルショック時の成功体験から、事業継続・雇用維持を優先しコストカットや投資抑制が徹底され、業績改善が図られました(図表6、図表7)。これは、賃上げを抑制しても雇用を守れば、従業員は会社のために働き続けてくれるという「従業員の善意に依存した経営」だったと思います。』

って言ってるんですが、第一次石油ショックの時は物価の高騰に対して労働者側が大幅な賃上げを要求した結果、賃金と物価のスパイラルが起きて狂乱物価と呼ばれる事態が生じた(アタクシもこの時期は世の中に存在していたので全く記憶がない訳でははい)んだし、以前もちょっとご紹介したと思いますが、名著「平成バブルの研究(村松・奥野編、2002)」にあるようにその後のいわゆる労使協調路線や雇用慣行が国民的レベルで定着するのは1980年前後(同書上巻17p)であり、この辺の説明も相当に雑というかお茶の間通俗経済評論家レベルなんですよね。

この後日本経済は1980年台に空前の成長を遂げたんですから、まあ以下の説明も全然当を得ていないというか、時間軸がおかしい説明が延々と続いているのですが、まあこういうのツッコミどころの文献探してくるのめんどいので(平成バブルの研究は座右の銘なのですぐにホイホイ出て来る^^)まあ安達審議委員の金懇ネタと共に来週ボチボチとネタにしようかと思います。

しかしこれはジンバブエ先生とは方向性が異なるのだが、逸材としか言いようがない上に、現在進行形で逸材振りが成長しているというのが末頼もしい(珍獣観察的に)ことになってまいりましたなorzorzorz