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2024/02/29

お題「CPIとかその他雑談メモ/US利下げに関しては定量判断より定性判断なんでしょうな」

閏年って366日あるけど利付債券の利金って(特殊利金を除いて)普通に半年利金で来るから日数1日分損するのが悩みの種(クソ細かい人)

〇市場雑談とか昨日貼り忘れた全国CPIとか

・全国CPI

https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
2020年基準 消 費 者 物価指数
全 国 2024年(令和6年)1月分

『◎ 概 況

(1) 総合指数は2020年を100として106.9
前年同月比は2.2%の上昇 前月と同水準(季節調整値)

(2) 生鮮食品を除く総合指数は106.4
前年同月比は2.0%の上昇 前月比(季節調整値)は0.1%の上昇

(3) 生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は105.8
前年同月比は3.5%の上昇 前月比(季節調整値)は0.2%の上昇』

とまあそういうことで、市場事前予想よりも強かったけど外国パック旅行をいきなり4年分一気に乗せて修正してくるとか言う総務省真面目にやる気あるんかというプレイをしてきたわと思いましたが、まあとは言え。原数値を遡及修正すると物価スライドで決まるものはどうするんだという話があってエライ事になるので、結局こうなったんだろうなあというのは分からんでもない。

でまあ原数値見るの大好きおじさんのアタクシとしては原数値をみるのですけれども、手抜きで昨年9月から

総合:106.2→107.1→106.9→106.8→106.9

ってな感じで推移してますが、昨年はなんせ3月⇒4月で104.4→105.1というムーブがあったあと、9月⇒10月で上記のように106.2→107.1ということで、半期代わりの所で原数値跳ねたよな〜と思うのですが、さて今年の4月はどんな価格改定が起きるのか、ちゅうのは注目したいのだが他人事のように注目していられるような前向きの循環が起きていないワシは戦々恐々としておる次第orz

コア:105.7→106.4→106.4→106.4→106.4

実はコアって4か月前月比横這いなんですよね。でもって2月は昨年の2月の数値が特殊要因でクソ低いので106.4で計算すると前年同月比が+2.7とか+2.8とかいう数字になってしまうのですが、そこまでは行かないんでネーノというのが一般的な見通しだと思いますので、前月比ベースで言えば2月分って下がると見られますな、うんうん。

コアコア:105.4→105.8→105.9→105.9→105.8

コアと同じなんですが昨年10月の所で上がったあとは横ばいというか一進一退というかな感じの原数値になっています。まあ季節調整入れた前月比をみますと、

総合:0.2→0.7→0.0→0.1→0.0
コア:0.1→0.4→0.1→0.2→0.1
コアコア:0.2→0.2→0.2→0.2→0.2

何か季節調整ベースだとコアコアってエライ良い感じで上がっているように見えるのですけれども、これはどういうからくりになっているの教えてエロイ人!!

なお、注釈に
注)季節調整値は、毎年12月結果公表時に、過去に遡って改定している。
ってあるので季節調整値は全然違う推移なのかしらとは思うのだが。


・GX国債ェ・・・・・・・・・

いつもの
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/files/2024/S240229.pdf

中期国債 165(5) 2028/12/20 0.3:平均値複利=0.346 平均値単利=0.345 前日比変わらず
GX中期国債1(5) 2028/12/20 0.3:平均値複利=0.346 平均値単利=0.345 前日比7銭安

長期国債 373 2033/12/20 0.6:平均値複利=0.692 平均値単利=0.695 前日比5銭安
GX長期国債1 2033/12/20 0.7:平均値複利=0.676 平均値単利=0.675 前日比13銭安

ということで5年GXとかグリーンプレミアムどこ行ったというお話ではございますが、これはまあこの事象のメモだけクリップしておきます。まあどっかで講釈してくれる人がいると思いますのでアタクシはとりあえず日銀公表の月末残高を見てから再度ネタにしようかとは思いますです。


・なお今日は高田審議委員の金懇だが

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

『今後の講演・挨拶等の予定』を見ますと、

2024年 2月29日  高田審議委員  滋賀県金融経済懇談会における挨拶
2024年 3月 5日  植田総裁    FIN/SUM(フィンサム)2024における挨拶
2024年 3月 7日  中川審議委員  島根県金融経済懇談会における挨拶

とありまして、本日は高田審議委員の金懇挨拶と会見がありますが、ここまでの高田さんって毒にも薬にもならないことでは一応自分のご見解を開陳しておられるのですが、一部の限界集落方面(ワシらの事や)から期待されていた債券市場の重要性(はっきり言ってPDがジャンキーになってて市場機能もへったくれもないという悲惨なテイタラク、なおジャンキーにしたのは日銀)とかそういう話はカシュカリ総裁の頭髪ほども出てこないで、YOUは何しに日銀へ???ってなもんな訳ですが、まあアヤツリ人形であればあったで人形遣いの意思というのが見える金懇挨拶になると結構ですなと思うので正座して待機しようと思います。

でまあそれはそれで良いんですけど、何で普段当日になっても正副総裁の金懇挨拶のタイミング出さない秘密主義を取っているのに今回のどうでもいい総裁挨拶(まあこの挨拶明らかにどうでも良い挨拶の筈です)に関しては日程を事前公表するんでしょうか????????あんたらどういう基準で日程の公開をしているんだよという話で、正副総裁の講演日程に関してまあ出せよとは言ってますが、このように出したり出さなかったりするというような不可思議な事をするのは、こっちとしては無駄に背景とか考えなきゃいけなくなるから、出したり出さなかったりするならそもそもどういう基準で事前公表するのかを示せよという話なんですけど。


・そういや市場が全然反応してない(ように見えた)から良いんだけど何ですかこの国会答弁は

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-28/S9JL7IT1UM0W00
2%物価目標実現、現時点で十分な確度持っていない-清水日銀理事
伊藤純夫
2024年2月28日 11:16 JST 更新日時 2024年2月28日 15:44 JST

→物価目標の安定的・持続的達成が見通せれば大規模緩和の見直し検討
→総裁のインフレ発言、現状と展望リポートの見通しを説明したもの

『日本銀行の清水誠一理事は28日、2%の物価安定目標の実現について、現時点では十分な確度は持っていないとの見解を示した。衆院予算委員会第一分科会で答弁した。』

『清水氏は金融政策運営に関して、物価目標の安定的・持続的な達成が見通せる状況になれば現在の大規模金融緩和の見直しを検討するとし、「現時点ではまだそうした見通しが実現するような十分な確度は持っていない」と語った。見直しを検討する際には「賃金の動向もきちんと確認してまいりたい」とも述べた。』(上記URL先より)

えーっとすいません、物価目標実現の確度がどうなった、という情勢判断をするのは政策委員会の皆様即ち正副総裁と審議委員が合議して行うものであって、理事の分際で何で「現時点」での情勢判断を言えるんですかああああああああ??????とおもいました、まる。

いやあのね、個人的見解を記者向けに話すとかだったらそれは別に理事が今あがってきているデータを見て私はこのように思える、って話で話をするのは全然ありだとおもうのですが、この文脈だと「国会」という場所で思いっきり情勢判断を決定する権限の無い人が「現時点での情勢判断について日本銀行の見解として説明」したように読めてしまうのよね。

いやまあ国会中継みてないから実際にはこれを清水理事としての見解という事で述べているならまあそれはそれでアリだと思いますけど、国会に日銀の中の人として招致されて本来政策委員会で決定すべき話を決定されてもいないのに理事がしちゃうのはどう見ても越権です本当にありがとうございましたという話なので、こういうのは報道する方もどういう文脈で説明しているか詳しく教えてほしいもんですな、と思いました。

あくまでも「1月決定会合において情勢判断を行った結果としては」十分な角度を持っていない、と答弁すべきなんじゃなかろうかと思いますし、こんなの「実現の確度に関しては毎回の金融政策決定会合で政策委員が討議を行いますが、前回1月会合の時点では十分な確度は持っていない」って話をするだけのもんでしょ、ということ。

つまりですね、基本的に前回会合以降のアップデートってのは今の日銀ってやらないで説明をしているんですが、これって政策変更の直前とかに国会答弁をした時に(マイナス金利導入とハロウィン緩和が典型ですが)結果的に国会で嘘八百を言ってたのか、っていうことで、「情勢判断がある日突然不連続に飛ぶ」と言われるし、国会だって「国会でウソ言ってたのか」と詰められることになるわけですよ(現に大門先生には散々詰められた)。

なので金懇挨拶の日程をもっとバラシて「いち審議委員としての情勢判断アップデート」の機会を増やす(何なら金懇を今の倍くらいにするとか)ようにして、国会などでは政策委員以外は「前回はこうでした、次回については今後のデータを見ながら政策委員の皆さんが検討を行います」で通すようにしないと筋が通らんことになるので改善しろやと思うのですがどうですかねえ。


〇地蔵モードなので一々地蔵の確認をしなくても良いと言えばそれまでですがFED高官の地蔵発言

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-28/S9KUNUT0G1KW00
NY連銀ウィリアムズ総裁、2%目標の達成には「まだ長い道のり」
Alex Harris
2024年2月29日 3:24 JST

→道のりはスムーズなものとならない、市場予想上回ったCPIに言及
→PCE価格指数は今年が約2−2.25%、2025年に2%との予想も示す

どうでも良いんですがサムネのウィリアムズはんのご尊顔、SF連銀総裁時代の宣材写真(?)やNY連銀のトップページの宣材写真(?)の若々しいさわやかな印象が強いので、なんかこうやっぱり激務で結構苦労してるんだな〜と思いました。

『米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は28日、インフレとの闘いには「まだ長い道のり」があると述べた。利下げ開始時期に関する新たな手掛かりは示さなかった。』

『総裁はまた、1月の米消費者物価指数(CPI)が市場予想より強い内容だったことについて、インフレ率を当局目標の2%に戻す取り組みを続ける中、その道のりがスムーズなものとはならないことを示す兆候との認識を示した。』

『ニューヨーク州ガーデンシティーでの講演でウィリアムズ氏は「持続的な2%インフレ目標に向けては、まだ長い道のりがある」と発言した。講演内容は準備原稿に基づく。』(以上上記URL先より)

https://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2024/wil240228
There and Back Again
February 28, 2024
John C. Williams, President and Chief Executive Officer
Remarks at Long Island Association Regional Economic Briefing, Garden City, New York
As prepared for delivery

小見出しが
Introduction
Falling Inflation, Low Unemployment
A Strong, More Balanced Labor Market
The Return Trip of Inflation
Monetary Policy and the Economic Outlook
Conclusion

とあるのでこれは思いっきり金融政策の所に釣られてみますけど。

『Monetary Policy and the Economic Outlook』

『In summary, the economy is strong, imbalances are diminishing, and inflation has come down but remains above our 2 percent longer-run target.』

これについては当然ですが前の部分にありますが今日は時間無いのでパスというか多分ネタにしないけどw

『What does that mean for monetary policy?』

はい。

『Over the past two years, the FOMC has put in place a restrictive stance of monetary policy with the aim of bringing inflation back to 2 percent on a sustained basis. Given the progress we have seen, the risks to achieving our maximum employment and price stability goals are moving into better balance.』

ベターバランスになってきたのは分かるがでどうなの??

『At its January meeting, the FOMC kept the target range for the federal funds rate unchanged at 5-1/4 to 5-1/2 percent. In announcing that decision, the Committee said it “does not expect it will be appropriate to reduce the target range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent.”4』

利下げするのに「greater confidence」が必要というお気持ちの話になった事についてどうだと仰せで??

『Taking into account the effects of restrictive monetary policy, I expect GDP growth to slow to about 1-1/2 percent this year, and the unemployment rate to rise modestly, peaking at around 4 percent.』

『I expect inflation to continue its return journey to 2 percent, although there will likely be bumps along the way, as we saw in the most recent Consumer Price Index data. To be specific, I expect PCE inflation to be around 2 to 2-1/4 percent this year and 2 percent next year.』

『The risks to this forecast are two-sided. Inflation may surprise on the upside, or consumer strength-a major driver of the robust growth we saw in 2023-may fade more quickly than I anticipate.』

でもってどう仰せかと言いますと、確かにブルームバーグはんのご指摘の通りで、そもそも論としてこの人グレーターコンフィデンスとは何ぞやという話もしれっと回避しておるわけでして、これは前回のFOMC会見ネタでのパウちゃんの発言でもその傾向が結構強く見れたと思うのですが、「何らかの定量的なスレッショルドを用いた判断を全力で回避する」という姿勢が出ているなあと思う訳でして(個人の感想です)まあこれは訳の分からん時代だからこの方が判断の姿勢として正しいんじゃないかなと思うのですが(個人の感想です)、定量的なスレッショルドとかを出すと後で自分の首を絞める(足枷になる)可能性があるので、こんな訳の分からん転換期はもう定性判断のお気持ちですよお気持ち、という気概が感じられました。ウィリアムズってイエレン子飼いのエコノミストではあるんですけどね。


あとですね、最近の高官発言だと大体ここを追って置けば良さそうなのが、

https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/waller20240222a.htm
February 22, 2024
What’s the Rush?
Governor Christopher J. Waller
At the Finding Forward Speaker Series, University of St. Thomas, Opus College of Business, Minneapolis, MN


https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/jefferson20240222a.htm
February 22, 2024
Is This Time Different? Recent Monetary Policy Cycles in Retrospect
Vice Chair Philip N. Jefferson
At the Peterson Institute for International Economics, Washington, D.C.

先週木曜のウォーラーとジェファーソンみておけば良さそうに思えますが、時間もないので本日はパスだし、どうせ明日は高田さんの金懇大会になると思いますのでネタにしないかも知れないと思いながら備忘で貼っておきます。






2024/02/28

お題「GXとか2年とかの雑談/1月FOMC議事要旨は見事に先行き金融政策への示唆が無い」

ほうほうなるほどなるほど
https://www.agrinews.co.jp/farming/index/216975
2024年2月28日
赤信号は害虫も共通? 好ましくない色と認識か 京都府や東大など実証
営農技術

『害虫にも赤色は停止信号──。京都府や東京大学などの研究グループが、アザミウマ類などの防虫ネットについて、こうした研究成果をまとめた。作物をネットで覆った実験では、赤よりも白や黒のネットを選ぶ害虫が多かった。担当者は「害虫は赤色を認識しづらいと考えられてきたが、赤を好ましくない色と感じているのではないか」と話す。』(上記URL先より)

我等が歩武の先頭に〜、掲げられたる赤旗を〜♪

・・・・・こうですねわかります(全然違う)


〇5年GX国債1回は無難に通過した模様で何より

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20240227.htm
5年クライメート・トランジション利付国債(第1回)の入札結果

本日、5年クライメート・トランジション利付国債(第1回)の入札について、下記のように募入の決定を行いました。

   記

1.名称及び記号 クライメート・トランジション利付国庫債券(5年)(第1回)
2.発行根拠法律及びその条項 
脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)第7条第1項及び特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項

3.表面利率  年0.3パーセント
4.発行日   令和6年2月28日
5.償還期限  令和10年12月20日
6.応募額   2兆7,145億円
7.募入決定額  7,998億円
8.応募者利回り  0.339%
(募入最高利回り)
9.発行価格   額面金額100円につき99円81銭
10.募入最高利回りにおける案分比率 94.0540%

募入最高利回りが空欄なのはイールドダッチ方式の入札だからですが、今回は入札時点でのベンダー調査ベースの予想足切り(発行)レートが0.350%でネーノって話だったので、若干強い結果でしたし、まあグリーンのプレミアムちゃんとついた状態で落着。

・・・・・・・なのは良いんですけど、まあそもそも論として5年ってこの日銀ちゃんがマイナス金利解除するかしないか状態の中で水準的にどうよというのもある訳ですが、まあいずれにしましても無事に滑り出して何よりではあります。あとはこれがちゃんとセカンダリーの流動性があるのか問題という話になりますが、なんせかつて承継国債というのがあって、国鉄清算事業団承継国債だか何だか正式名称忘れるくらいの昔の話しでしたが、国債だというのに表の国債対比ディスカウントとかにされる(当時の輪番の対象には当然の如くなっていない)お洒落な債券がありましたというかマーケットメイクさせられてましたがw承継国債みたいに流動性皆無なので普通国債対比ディスカウントになると悲しいので(まあ悲しいったってそうなったらそうなったで致し方ないのだが)輪番対象にすると今度は輪番に入れられすぎると海外からネタにされそうですし、国策とは言えなんかもう大変ですなあ(棒読み)という次第ではあります。



〇2年金利がやっと動いてきた訳だが

オラ、だんだん昔の感覚が蘇ってきたきがするゾ!(たぶん気のせいなので年寄りの冷や水には注意)

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/47O4RUV3Q5K4JOZ27EAIOQBK5M-2024-02-27/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は反落で引け、10年金利横ばい・2年金利は13年ぶり高水準
ロイター編集
2024年2月27日午後 4:01 GMT+9

『[東京 27日 ロイター] - <15:30> 国債先物は反落で引け、10年金利横ばい・2年金利は13年ぶり高水準

国債先物中心限月3月限は前営業日7銭安の146円47銭と小反落して取引を終えた。日銀の早期政策修正観測や米金利上昇が売り手掛かりとなった。新発10年国債利回り(長期金利)は同横ばいの0.685%だったが、同2年債利回りは約13年ぶりの高水準に上昇した。』(上記URL先より、以下同様)

2年金利にやっと真面目に波及してきましたかそうですかという風情ですが、まあなんせ明日は2年新発の入札があるので、単にその前に水準訂正しているだけ説が無いわけでも無いのですが、汗。

『きょうの円債先物は、米金利上昇に加えて、1月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を上回って日銀の早期政策正常化観測をやや高めたことが材料となり、朝から売り優勢の展開が続いた。』

ということなのですが、そこまで2%に乗ってるか乗ってないかで大騒ぎするようなもんじゃないでしょと思う訳で、名目ゼロ制約、ってのがあるから物価が0%の上か下かというのを重視する、というのは理屈の上ではアリエール話だと思うのですが、2%って別にそういう名目制約的な意味でのマジックナンバーじゃあない筈なんですが、なんせ肝心の日銀がついこの前(10月)までの展望レポートでの情報発信では「2%」をエライ勢いでマジックナンバーのように使っていて、見通しの数字が2%じゃない事とか、目先の物価見通しの中で2%を割り込む割り込まないとかを強調したりしてたので、無駄に2%が重要なスレッショルドみたいになっている、という不健全な状態になっているんですよね。

まあこの点に関しては、1月の展望を出した時に「実は10月の見通し通りに経済物価情勢が推移すればそれは2%達成みたいなもんですわ、今まではこの見通し通りにいくかどうかの確度が低くてしょんぼりしてただけですわガハハ」という驚愕の説明をおっぱじめておりますので、別に1月全国コアCPIが+2.0%に届いてないから政策修正を躊躇する、ということは考えられないし、これまた再三再四申し上げておりますように、アタクシの見立てによりますと(というか日銀のあのポンチ絵における2%の扱いの推移をみれば分かるように)、そもそも論として今の大本営は政策に対して情勢判断を後付けしてくるのであって、情勢が極端に変化(何とかショック的なやつね)しない限り、政策の方向性が出たらそっちに寄せた情勢判断をぶっこんでくるだけのことであって、こんなの1.8だろうがそれで一々反応するとも思えないのですが。

そんな悪態は兎も角としまして、

TRADEWEB
    OFFER   BID   前日比 時間
2年   0.157  0.176   0.014 15:31
5年   0.341  0.35   0.004 15:32
10年  0.685  0.694   0.007 15:32
20年  1.421  1.432   0.011 15:32
30年  1.683  1.697   0.015 15:31
40年  1.891  1.902   0.012 15:31

ということで10年以下のところで見れば思いっきり2年が大甘の皇子だったということですな。

・・・・・・・・やはりマイナス金利とかいうケッタイなものがあるので、名目ゼロ制約というものが債券流通の時にも発生するし、担保ニーズがどのくらいあるのか(これは長期共担を含む各種オペが足を引っ張って要研究の世界)とかいう問題もあって、短国の方は中々こう素直に織り込みに行かない状況で、昨日の売参(一々URL出さんけどいつもの所です)を見るとカレント3Mの1215(6/3償還)は▲10.0bpと毎度おなじみの利回りになってる次第で、この辺が俊ちゃんの時の量的緩和解除とは違う(量的緩和解除の時は3Mの短国においては先行きの利上げを早々に織り込んでしまってその後実際に解除されたときには短国金利ピークアウトしてたという面白事案が発生していました)ところなんで、まあ結局短期のビルの所は実際にマイナス金利解除が出てから反応するのかよいやーそれはどうなのよ、などと思いながら眺めておりますが、こちらは金曜日に3M1216回の入札があって、売参のWI見ると▲9.9bpになっておりますな、うんうん。

まあそんな人はいないと思いますが、これ3Mから国債イールドカーブを引くとなんか短期の所が碌すっぽマイナス金利解除を織り込んでいない水準になっているので、短い所から中期に向かってがかなりのヘナチョコカーブになりそうですよね・・・・・・・・・


〇まあどうせ暫くは地蔵モードなのは把握しましたがFEDネタ少々アップデート

ということで議事要旨ネタだからアップデートじゃないんですが(汗)。

1月FOMC議事要旨ってとりあえずのインスタント読みだけしましたが、今回ってパーティシパンツの議論パートを見てもわざとやってるんじゃないかと思う位に先行きの示唆を出さないというのをやってるんですよね。

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20240131.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
January 30-31, 2024

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, January 30, 2024, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, January 31, 2024, at 9:00 a.m.1

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』のうち、この前寝起きでやった「今回の政策とこの先の政策」部分以外を物凄い勢いで成敗しておこうかと思います。

最初のパラグラフ2本部分は思いっきり声明文に反映されているので全部かっ飛ばして3パラ目から参ります。

『In their discussion of inflation, participants observed that inflation had eased over the past year but remained above the Committee's 2 percent inflation objective. They remained concerned that elevated inflation continued to harm households, especially those with limited means to absorb higher prices. While the inflation data had indicated significant disinflation in the second half of last year, participants observed that they would be carefully assessing incoming data in judging whether inflation was moving down sustainably toward 2 percent.』

ゆうとることが「インフレは昨年を通じて緩和されてきている」「インフレは経済的弱者に厳しい状況を強いている」「昨年後半は顕著なインフレ抑制が進んだがこの先これが持続するかは要経過観察」となっていて、これじゃあまあ先行きの政策に関するヒントは無いのと同じになっている訳ですな、いやまあ「早期利下げが無さそう」という意味でのヒントはあるにはありますけどね。

引き続きインフレの話をしているんだが、

『Participants noted improvements in both headline and core inflation and discussed the underlying components of these series.』

総合とコアのインフレのコンポーネント見ながら基調的なインフレはどうよという議論をしました、と書いてあって、

『Al-though total PCE inflation in December remained above the Committee's 2 percent objective on a 12-month basis, on a 6-month basis, total PCE inflation was near 2 percent at an annual rate, and core PCE inflation was just below 2 percent.』

『Participants judged that some of the recent improvement in inflation reflected idiosyncratic movements in a few series. Nevertheless, they viewed that there had been significant progress recently on inflation returning to the Committee's longer-run goal.』

うーんなんかフワフワした話しかしてない。

『Many participants indicated that they expected core nonhousing services inflation to gradually decline further as the labor market continued to move into better balance and wage growth moderated further. Various participants noted that housing services inflation was likely to fall further as the deceleration in rents on new leases continued to pass through to measures of such inflation. 』

『While many participants pointed to disinflationary pressures associated with improvements in aggregate supply-such as increases in the labor force or better productivity growth-a couple of participants judged that the downward pressure on core goods prices from the normalization of supply chains was likely to moderate.』

この辺はインフレダイナミクスのコンポーネントの話になっていますが、サービス価格の動向について、非住宅サービスと住宅サービスに分けながらサービス価格動向を注目しているのと、財価格に関しては供給制約(サプライチェーンと労働供給)の影響を見ながら考えていまっせ、という事を示してはいますが、これらに関しても何かこう先行きこうなるでしょうという決め打ちの話は無くて、現状に関する考察に話が大体とどまっていまして、この辺からも特に先行きの金融政策をこうするぜ、という示唆というかお気持ちが伝わってこないなあと思いました、個人の感想ですけど。

さらにしつこくインフレ期待の話が次に来る。

『Participants observed that longer-term inflation expectations had remained well anchored at a level consistent with the Committee's 2 percent inflation objective.』

まあここは「アンカーされてない」だとエライコッチャなのでこうなるんですけど。

『Measures of near-term inflation expectations had also declined recently, in some cases to within their ranges in the years before the pandemic. Some participants pointed to reports from contacts that firms could not as easily pass on price increases to consumers or were making less frequent price adjustments than they had in recent years.』

ちょっと面白いなと思ったのは最後のところでして、、数名の参加者は管内の企業からのアネクとして聞いておるが、ということで「消費者向けの価格へのコスト転嫁が以前のようにホイホイとできなくなってきている。あるいは過去数年よりも価格改定(要は値上げ)頻度を下げている」というのがありまして、これはまあインフレ期待の沈静化が進んでいるアネクですよっていう話をしていますので、まあ普通に考えて余程の事がない限り再利上げ復活はねえなあこういうトーンだと、とは思いました。、


需要項目別で家計と企業の話がありますがここは思い切り流しますね。

『In their discussion of the household sector, participants observed that consumer spending had been stronger than expected, supported by low unemployment and solid income growth.』

家計支出は想定よりも強いそうな。

『A number of participants judged that consumption growth was likely to moderate this year, as growth in labor income was expected to slow and pandemic-related excess savings were expected to diminish. In addition, some participants noted signs that the finances of some households-especially those in the low- and moderate-income categories-were increasingly coming under pressure, which these participants saw as a downside risk to the outlook for consumption. In particular, they pointed to increased usage of credit card revolving balances and buy-now-pay-later services, as well as increased delinquency rates for some types of consumer loans.』

でまあここ読んででアイヤーと思うのは後半の「low- and moderate-income categories」の皆様が苦しくなっているという部分でして、この方々がローン負担など増えてたり、buy-now-pay-later servicesのご利用は計画的になのが増えてたりとかそういうのがあるようだという辺りですかね。

『The reports of business contacts cited by participants varied across industries and Districts.』

企業部門は強弱まちまち。

『In a few Districts, contacts reported that the pace of economic activity was steady or solid, while in several others, contacts expressed increased optimism about the economic outlook and prospects for investment.』

地域ごとにばらつきがあるようです。

『District reports from manufacturers were mixed, as some contacts saw increased activity, whereas others saw subdued or weakening activity. A couple of participants noted that al-though soft commodity prices and elevated borrowing costs had contributed to a decline in farm incomes recently, agricultural land values remained resilient, and delinquencies on farm loans continued to be low. A few participants remarked that financing and credit conditions were particularly challenging for small businesses.』

最後の所のスモールビジネスの方々のファイナンスがチャレンジングになっているというのがほほうと思いました。


でもって労働市場。

『Participants noted that the labor market remained tight, but demand and supply in that market had continued to come into better balance.』

ここに関しても1月FOMC以降に多くの要人から指摘されている通りの認識ですわな。

『Payroll growth had remained strong in the last few months of 2023 but had slowed from its pace seen a year ago, while the unemployment rate remained low. Participants also observed that the ratio of job openings to unemployed workers had declined over the past year but still remained somewhat above its pre-pandemic level.』

『Consistent with a reduction in labor market tightness, business contacts in several Districts reported an easing in wage pressures or an increased ability to hire and retain workers.』

労働需給のひっ迫が緩和されてきており、おちんぎんののびにも反映されてきているところもあるようです。

『Participants mentioned several developments that had boosted labor supply last year, including higher labor force participation, immigration, and an improved job-matching process; however, a few participants judged that further increases in labor supply may be limited, pointing, for instance, to the decline in labor force participation in December. While labor market conditions were generally seen as strong, several participants noted that recent job gains were concentrated in a few sectors, which, in their view, pointed to downside risks to the outlook for employment.』

でまあ労働市場の今後の需給とかの見通しに関しては結局ああだこうだ出ているけど決め打ちした判断に至るような書き方にはなっていない、というのが特徴的で、これまた先行きの政策示唆無し無しモード。


将来の不確実性に関しては次にあって、

『Participants discussed the uncertainty surrounding the economic outlook.』

『As an upside risk to both inflation and economic activity, participants noted that momentum in aggregate demand may be stronger than currently assessed, especially in light of surprisingly resilient consumer spending last year. Furthermore, several participants mentioned the risk that financial conditions were or could become less restrictive than appropriate, which could add undue momentum to aggregate demand and cause progress on inflation to stall. Participants also noted some other sources of upside risks to inflation, including possible disruptions to supply chains from geopolitical developments, a potential rebound in core goods prices as the effects of supply-side improvements dissipate, or the possibility that wage growth remains elevated.』

『Downside risks to inflation and economic activity noted by participants included geopolitical risks that could result in a material pullback in demand, possible negative spillovers from lower growth in some foreign economies, the risk that financial conditions could remain restrictive for too long, or the possibility that a weakening of household balance sheets could contribute to a greater-than-expected deceleration in consumption.』

文字量見ればどっからどう見てもアップサイド警戒ですな。

『A few participants mentioned the possibility that economic activity could surprise to the upside and inflation to the downside because of more-favorable-than-expected supply-side developments.』

物価はアップサイドだけど経済はダウンサイドチャイマスカというご意見もありますね。

でまあここですが、しらっとお洒落認識が挿入されていまして「financial conditions were or could become less restrictive than appropriate, which could add undue momentum to aggregate demand and cause progress on inflation to stall. 」ということで、金融市場がワシらが地蔵じゃゆうとるのに早期利下げヒャッハーと言ってゴルディロックスヒャッハー相場をやりやがると、それが経済をブーストしてインフレ沈静化を止めてしまうリスクがあるでよ、という奴ですな、まあ最近チョイチョイ要人発言出てて来ていますけどここでも記載されるの巻。


政策に行く前の最後がファイナンシャルスタビリティーでして、

『In the discussion of financial stability, participants observed that risks to the banking system had receded notably since last spring, though they noted vulnerabilities at some banks that they assessed warranted monitoring.』

全体ではなくて個別行で問題があるのがあるのでモニタリングダイジダイジネーという指摘がなされています。

『These participants noted potential risks for some banks associated with increased funding costs, significant reliance on uninsured deposits, unrealized losses on assets resulting from the rise in longer-term interest rates, or high CRE exposures.』

長短ミスマッチやってって短期があがったりリファイできなくてアイヤーって話お前ら何回やっとるねんと思うし、そのせいで毎度毎度グローバル規制強化するの止めてくれませんかねえと思いますが。

『Participants judged that liquidity in the financial system remained more than ample and discussed the importance of considering liquidity conditions as the Federal Reserve's balance sheet continues to normalize. While participants noted that they were not seeing any signs of liquidity pressures at banks, several participants noted that, as a matter of prudent contingency planning, banks should continue to improve their readiness to use the Federal Reserve's discount window, and that the Federal Reserve should continue to improve the operational efficiency of the window. In addition, some participants commented on the difficulties associated with banks relying on some forms of private wholesale funding during times of stress. A few participants remarked on the importance of measures aimed at increasing the resilience of the Treasury market.』

これ話のぶつ切りようが難しくて切れなかったのですが、バランスシート縮小に伴ってファンディングの市場に変調が起きるとマズくねえかという指摘に対してファシリティあるからエエヤンとかそういう話で色々な話をしてまして、まあこれは次回のバランスシートどうしますねん話の前振りになっていますね。

『A few participants noted cyber risks and the importance of firms being able to recover from cyber events.』

『A few participants also commented on the financial condition of low- and moderate-income households who have exhausted their savings, as well as the importance of monitoring data on rising delinquencies on credit cards and autos.』

最後の2つはまた別の話でサイバーリスクの話と、低所得者が貯金使い果たしてアイヤーという話でした。


ということで長々と引用しましたがまあ実は「先行きのインプリケーションは地蔵」と書けば1行コメントで終わるという説があるのですが、ゆうて確認は必要なので確認しました、ということですサーセン。





2024/02/27

お題「割と刺激的なお題の日銀レビューシリーズキタコレ/ECB議事要旨見ると地蔵長そうに見えるけど・・・・・」

ほうほうほう
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240227/k10014371701000.html
スウェーデン NATO加盟決定 32か国へ拡大 安全保障一段と強化
2024年2月27日 5時15分

しかし世界地図を覚えた最初が昭和オブ昭和なので、「スウェーデンの加盟をハンガリーが承認した」という文字列にワルシャワ条約機構かと思ってしまう・・・・ことはさすがに無いけどしみじみと隔世の感というのを受けますな。


〇このタイミングでこんな日銀レビューが出て来やがりました(賃金と物価の好循環)

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/rev24j02.htm
賃金・物価の相互連関を巡る最近の状況について
2024年2月26日
調査統計局 尾崎達哉、神保真宏、八木智之、吉井彬人

題名が滅茶苦茶キナ臭いんですが担当は調査統計局ちゃんなのね。

上記HTMLページにある「要旨」の方ですが、

『要旨

足もと、消費者物価指数を構成する多くの品目では、既往の輸入物価の大幅な変動の影響を受けている。このため、賃金・物価の相互連関に由来する物価上昇圧力を識別することは、容易ではない。』

『本稿では、複数のアプローチを用いて、賃金と物価の相互連関がどの程度働いているのか、定量的な評価を試みた。』

ほうほうそれでそれで??

『消費者物価を構成する各品目のコスト構造に基づく分析や、時系列モデルを用いた分析を行った結果、賃金上昇を販売価格に反映させる動きが、徐々に広がっていることが示唆された。』

それは言われんでもわかっとるのだが徐々に、の評価はどうなんでしょう、と思うのですが、

『賃金と物価の相互連関の状況を確認していくうえでは、今後とも、本稿のアプローチに限らず、様々な角度から定量的な分析を行うとともに、ヒアリング等による定性的な調査も丹念に行っていくことが重要である。』

ちょwwwwwwww結論ねえのかよwwwwwwwwww

と思って本文を見る訳ですよ。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2024/data/rev24j02.pdf
日銀レビュー
賃金・物価の相互連関を巡る最近の状況について

日銀レビューシリーズなのでアタクシのような素人さんでも読めるという親切設計になっておられる物件ではあります。最初のエグゼクティブサマリーはさっきと同じなので割愛しまして、本文に行くのですが、これが前振り部分が丁寧ちゃあ丁寧で、まあこの分析は留保付きにならざるを得ない部分があるからミスリード避けるためにも説明してるんだろうなあと思うのですが、めんどっちいのでその辺をかっ飛ばして2ページ目の左側のケツ辺りまでワープします。

『これらの点は、今次局面のように、輸入物価の上昇を起点に、きわめて広範な品目で物価が大きく上昇する局面において、輸入物価に起因する動きを取り除いて、基調的な物価動向を捉えることの難しさを示しているといえる。』

その割にはついこの前まで植田日銀は「2%は遠い」という情報発信を行い、あまつさえ展望レポートハイライトとか言うポンチ絵では昨年4月まではドンドン近くなっていた「2%」がドンドン遠くなっていくという説明をしておりましたが、えーっとあれは何ですか基調的な物価の見通しについての決め打ちじゃなかったでしたっけという話で、そもそも分からんなら最初から分からんと説明してほしいもんだ、と思いました。

『以下では、こうした点も踏まえ、各品目のコスト構造に着目するアプローチと、時系列モデルを用いた計量分析によるアプローチを通じて、最近の企業行動の変化を把握することを試みる。』

でまあ結局の所、基調的な変化を云々というのは企業行動の分析に他ならない、というお話ではあるのですが、次の小見出しが『分析@:コスト構造に関する情報の活用』になります。そして手抜きなので結論項に飛びますと、

『まず、品目別に、「コストに占める輸入比率」に着目すると、輸入比率が高い品目では、既往の輸入物価の上昇と低下の影響を強く受けている一方、輸入比率が低い品目では、こうした影響は限られる。輸入比率が低い品目の推移をみると、これまで横ばい圏内の動きが続いていたが、足もとにかけて緩やかに上昇しており、輸入物価の影響を受けにくい品目でも、企業の価格設定行動が変化しつつある可能性が示唆される(図表 5)。』

キタコレ。

『次に、「コストに占める人件費比率」に着目すると、この比率が高い品目には、サービスのなかでも、輸入物価を起点としたコストプッシュ圧力などの影響を受けにくいものが多く含まれる。人件費比率が高い品目の推移をみると、相対的に上昇ペースは限定的ながら、足もとにかけて緩やかに上昇している。こうした動きは、人件費比率が高い品目において、賃金が上昇し、それを販売価格に転嫁する動きが徐々に広がっていることを示唆している。』

ホレキタ好循環。


とまあそういう明るい話がありましたが、次の項は『分析A:時系列モデルの活用』でごじゃりますが、こちらはもうのっけから出オチのようにぶっこまれておりましてですね、

『時系列モデルを用いて分析しても、企業の賃金・価格設定行動には変化の動きがみられている。』

いきなりのブチカマシキタコレだし次の小見出しが『(賃金・物価の相互連関)』である。

『計量的な手法(時変 VAR)を用いて賃金と物価の相互連関をマクロ的に評価すると、わが国では、長きにわたり、物価(賃金)が上昇しても、賃金(物価)が反応しない状態が続いていたが、足もとにかけて状況が変化しつつある可能性が示唆される(図表 6)。』

もりあがってまいりました!!!!!!

『まず、物価から賃金への波及について、足もとの弾性値は、安定的な物価上昇が実現していた1990 年代前半の水準には届いていないものの、統計的に有意に上昇している。2023 年の春季労使交渉において、既往の物価上昇等を受けた賃上げの動きが広がったことが反映されているとみられる。』

ほほー

『次に、賃金から物価への波及については、賃金と物価がゼロ%近傍で推移していた 2010 年代頃と比べて、弾性値自体は上昇しているが、現時点では有意な変化は観察されない。』

ありゃま。

『ただし、企業ヒアリングや IR 情報において、人件費の上昇を値上げの理由に挙げる企業が徐々に増加するなど、企業行動に変化の動きもみられている5。』

ほうほうほう、ということで、

『以下では、賃金・物価の相互連関に由来する物価上昇圧力を把握するべく、時系列モデルを用いて、2 つのステップで定量分析を試みる。』

となりまして、(変動率別のCPI)(CPIの変動要因)というのがあるんですが、前半の「変動率別のCPI」の結論部分はと言いますと、

『各品目の動きとインパルス応答の結果を合わせてみると、財が多く含まれる高変動品目は、賃金等の影響を受けにくい一方、輸入物価のような外生的なコストプッシュ圧力によって大きく変動する傾向がある。中変動品目は、需給ギャップを中心に、賃金や輸入物価の影響も受けることが分かる。サービスが多く含まれる低変動品目は、賃金の影響を強く受けている。』

という何となく直感的にそうじゃねえかと思うのと整合的な結果になりまして、

『このため、賃金を物価に反映させる動きを評価するうえでは、低変動品目の動きを注視することも有益と考えられる。』

からの、

『同品目は、賃金と物価の相互連関がみられていた 1990 年代までは高めの伸び率となっていたが、その後は、長期間にわたってゼロ%近傍の推移が続いていた。足もとにかけては、賃金が徐々に伸びを高めるなかで、緩やかに上昇し始めている。』

はい来ました。

『この間、高変動品目は、輸入物価上昇を受けて大きく上昇したあと、足もとにかけて伸び率が低下しており、既往のコストプッシュ圧力が減衰していることが窺える。』

まあそういうことなんですが、ゆうて既往のコストプッシュが減衰してこのCPIなんですよねという話な訳ですから、つまりは物価2%目標達成がかなり現実になってるちゅうことっすかな、と思ってしまう次第ですな(個人の感想です)。

後半の「CPIの変動要因」も結論部分を拾ってまいりますと、

『分析結果をみると、今次局面で消費者物価の伸び率を大きく押し上げてきた輸入物価要因の寄与が足もとにかけて縮小している一方、賃金要因の寄与が、緩やかではあるが、徐々に拡大しつつあることが分かる。また、景気が緩やかに回復するもとで、国内需給要因のプラス幅も拡大している10。』

最後の最後に「景気が緩やかに回復するもとで、国内需給要因のプラス幅も拡大している」と「物価上昇はワシ(金融政策)が育てた」攻撃が出ているのはチャーミングwww

でもって総合的には、

『ここで、2 つのアプローチで作成した消費者物価の低変動品目と賃金要因の推移を改めて確認してみよう(図表 11)。』

からの、

『図表には、計量的な手法で計算した、サービス価格のトレンドの動きも掲載している11。それぞれ、従来から賃金と似たような推移をたどってきたが、最近では、賃金と相まって上昇し始めている。』

ときまして、

『このことは、長らく続いてきた、賃金や物価が上がりにくい状況が徐々に変化してきている可能性を示唆している。』

!!!!

『先行き、賃金と物価の連関が強まり、基調的な物価上昇率が高まっていくか、注視していく必要がある。その際、消費者物価の変動要因の分析結果を踏まえると、景気の緩やかな回復が続き、国内需給要因のプラス基調が続くことも、物価上昇率を高める方向に作用すると考えられる。』

と、思いっきり最後に大本営なテイストが出ているのが笑ってしまいましたwwwwwwwwww


ということで最後は結論コーナーでして、『おわりに 』の前半の能書きは飛ばして後半の段落を引用しますが、

『以上も踏まえると、賃金と物価の関係や、その影響を受けうる物価の基調を評価していくためには、多角的な分析が不可欠である。本稿で示したアプローチに限らず、様々な角度から定量的な分析を行うだけでなく、ヒアリング等の定性的な調査も丹念に行い、賃金・物価の相互連関に由来する物価上昇圧力を丁寧に見極めていくことが重要である12。』

ということで、最初に引用したエグゼクティブサマリーにあたるHTML部分の結論と同じく微妙に日和った言い方になっているのですが、途中経過を見ると今ご紹介したように普通にキタコレな分析結果を示している、という物件に仕上がっております。

まあこういう政策の方向性が変わるか変わらんか(いやまあ変わるんですけど問題はその変わり方)とかいう時期なのでメタ読み大好きおじさんとなってメタ読みしますけれども、最後の結論部分やエグゼクティブサマリーではフワッとした言い方しかしていないけど、よくよく中身を見て見ると威勢のいいことを言っている、というのは、これはメタ読み系の読みですと「これは政策修正を意識しているからスタッフペーパーの結論項にあまり刺激的な事を書かないようにして、読む人が読めば分かるように中身の部分で示している」という感じでメタ読みする訳ですよ、あくまでも個人の感想ではありますが・・・・・・・・・・・・

さてどうなるのやら。


〇ECB議事要旨ネタの続きである

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2024/html/ecb.mg240222~1af5fcd5f9.en.html
Meeting of 24-25 January 2024
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 24-25 January 2024
22 February 2024

昨日の続きをホイホイとですが、最後の『Monetary policy decisions and communication』に関しては昨日ネタにした2パラグラフで事実上話は終わっているので、その前のコーナーになりますところの『Monetary policy stance and policy considerations』を読んでみます。まあこちらは「今後のスタンス」の話でして、昨日ネタにした今回の決定部分の前振りの面もありますが。


『Turning to the monetary policy stance, members assessed the incoming data since the last Governing Council meeting in accordance with the three main elements that the Governing Council had communicated in 2023 to be important in shaping its reaction function.』

従来より我々がゆうとる金融政策反応関数に即して前回会合以降最近のデータを考察しますとこうなる、ということでどうなったかと言えば、

『These elements were (i) the implications of the incoming economic and financial data for the inflation outlook, (ii) the dynamics of underlying inflation, and (iii) the strength of monetary policy transmission.』

でまあ見る要素はなんですのというのが3つあって、(1)最近取得した経済や金融のデータがインフレーションの見通しにどういうインプリケーションがあるのか、(2)基調的なインフレ動学の状況、(3)金融政策の波及の強さ、だそうな。

『Overall, members saw the latest developments in economic activity and inflation as being consistent with the current monetary policy stance. There had been further progress on all three elements of the reaction function, which gave grounds to be confident that monetary policy was working.』

足元の経済物価状況は現在の我々の金融政策スタンスと整合的で、金融引き締め政策の波及がワークしていることによって前回以降更なる進展がみられました、ということで状況が良くなっているというのは認定しておるわけですな。


『Starting with the inflation outlook, data releases issued since the previous meeting suggested that disinflation was broadly proceeding as envisaged, or even at a slightly faster pace than previously expected.』

物価に関して言えば、インフレ鎮静化の動きは幅広くワークしており、想定通り一部では想定以上に進展している、とまあ威勢のいい話から始まっております。

『It was argued that, on the basis of current information and updated assumptions, and in particular lower energy prices, the new staff projections due in March were likely to show a downward revision to inflation for 2024.』

足元までの状況を勘案すると3月会合でリバイスされるスタッフの2024年物価見通しは下方修正されることになるでしょう。

『However, it was underlined that the important question from a policy perspective was the extent to which the news on near-term inflation would be translated into changes in the medium-term inflation outlook.』

直上の所で「2024年の見通し」とあるのはここで回収される話のようで、足もとで物価沈静化の圧力がしっかりワークしているけれども、じゃあこれが中期的に続くか、というのはまだ分からんという話をしてまして、

『While the incoming information had broadly confirmed the previous assessment of the medium-term inflation outlook, it would be premature to draw any firm conclusions in this regard, as a more complete evaluation was needed when the March projections were available.』

中期的なインフレ鎮静化を決め打ちするのは時期尚早とな。

『While inflation had been decreasing faster than expected, this could partly be attributed to one-off factors and energy price developments that might easily reverse. For an assessment of the medium-term inflation outlook, a wide range of variables needed to be considered, in particular the extent to which disinflation would lead to lower wage claims.』

ワンオフ要因で下がっている部分があるので、というのが理由のようでして、最後は「要はお賃金がちゃんとアホな伸びを示さなくなるのダイジダイジネー」という話のようです。

次のパラに参りますが、

『For the new staff projections, the prevailing market expectations regarding interest rates were also important as conditioning assumptions. Market expectations were currently significantly lower than those underlying the December projections. Since the lower path for interest rates currently expected by markets was in part an endogenous reaction to lower inflation, the extent to which lower nominal rates would translate into higher growth and inflation in the future needed to be carefully assessed. This should include looking at how the expected path of real rates would change in the projections with new assumptions.』

昨日ネタにした「今回の政策決定に関する議論」でも出ていましたが、「金融市場が示している経済物価見通しがECBの考えている見通しよりも顕著に弱い、即ち想定よりも市場によって金融が緩和的になっているので、それが成長やインフレを加速させる要因になり得ることにも注意が必要」というお話で、これってFEDも最近ゆうとったような気がしますけど、この点を踏まえて金融政策スタンスをどうしますか、ってのが出て来るというのがチャーミングでありますな、うんうん。

『Members noted that measures of underlying inflation had passed their peak, having fallen since the summer, and HICP inflation excluding energy and food had been weaker than predicted in recent data releases. Momentum had also come down in those measures of underlying inflation that remained relatively high, including services inflation and domestic inflation.』

そういうのぶっこんだ後に今度は基調的な物価に関しての話になりますが、基調的な物価は既にピークを越えましたんでここからは下がりまっせ、とまあ物価に関しては基本威勢のいい(というか何というか)話に終始しているんですよね基本。

『 Yet, wage growth had remained strong, with only limited indications of a turnaround thus far. Moreover, unit labour costs had risen sharply, in part reflecting weak productivity growth, and it remained to be seen whether they would grow as slowly as foreseen in the projections, which were predicated on a recovery in productivity growth together with moderating wage growth. 』

とは言えおちんぎんの方がまだ強すぎですよと。

『Further uncertainty pertained to how much the contribution of unit profits to domestic inflation would continue to decline as projected, with firms absorbing higher labour costs rather than passing them on to consumers.』

でまあ今後そのお高めのお賃金がそのまま販売価格にパススルーされるのか、生産性上昇で吸収されるのか、という塩梅に関しては不確実性がありますなあ、というお話でした。


『Turning to the assessment of monetary policy transmission, members noted that there was solid evidence that monetary policy was being transmitted to financial markets, financing conditions and credit conditions, with the impact most likely having been stronger than expected. However, uncertainty remained about the timing of the peak impact, as well as the ultimate overall effect of monetary policy tightening on the real economy and inflation.』

金融政策の波及メカニズムに関しては特に問題ないとの認識。

『All in all, members signalled that continuity, caution and patience were still needed, since the disinflationary process remained fragile and letting up too early could undo some of the progress made.』

でもって結論としては、足もとでの状況好転が継続するかを今後も見てきますよ、インフレ鎮静の動き自体はロバストではなくフラジャイルなので様子見様子見と様子見地蔵宣言来てます。

『While the initial inflation shock had largely reversed, the task that lay ahead was the reversal of second-round effects, which might prove to be more stubborn. At the same time, members expressed increased confidence that inflation would be brought back towards the 2% inflation target in a timely manner.』

『The point was made that, for the first time in many meetings, the risks to reaching the inflation target were seen as broadly balanced or at least becoming more even. At the same time, the view was also expressed that, after several years of significantly overshooting the inflation target, the costs of another overshooting were likely higher than the costs of undershooting.』

数年間物価が上振れした後という現状ではインフレが下がり過ぎるコストよりも上がり過ぎるコストの方が大きい、とかしれっとぶっこんでいるのがお茶目ですね。

でもってこのコーナー最後のパラですが、

『In this context, members underlined the fact that the ECB’s inflation target was symmetric, implying the need to avoid both an undershooting and an overshooting, unless policy rates were close to the effective lower bound.』

「インフレターゲットはシンメトリック」ってのが持ち出されていまして、その意味は政策金利がゼロ制約になっている時以外であれば基本的にインフレのオーバーシュートもアンダーシュートもよろしくない、とか言い出してまして、

『At the same time, there was likely to be some volatility in inflation on the path to achieving the 2% target, and new shocks could materialise. Even if the projections foresaw a temporary period of inflation below 2%, as long as such a deviation was neither large nor persistent, the policy conclusion, in keeping with the ECB’s medium-term orientation, was that the Governing Council did not necessarily have to act.』

何でシンメトリックターゲットとか言い出したのかと思ったら、結論はここにあって、「たとえ目先のインフレが2%割れの見通しになったとしても、それが一時的ではあってその先にはまた2%を大きく上回る状況が見通せる状態であれば、金融政策の変更(つまりは利下げ)を行う必要はありません」とぶっこんでおります。

『However, it was recalled that, since the ECB’s monetary policy strategy did not prescribe an average inflation target, the Governing Council should not aim at any such undershooting and all persistent deviations from the inflation target in either direction required a policy response.』

ハウエバーときてから、ECBのインフレ目標は「平均物価目標ではない」と仰せですな。これは何ですかと言うと、ついこの前まで上にオーバーシュートしてたんだから暫くの期間アンダーシュートしたら平均物価目標的に見たら丁度チャラジャン、的なアプローチは採らんがな、ということでブランシャールも涙目とか思うのですが、どうせ当のブランシャールは大昔にドヤ顔で平均物価目標の話をしてドン・コーンに講演でバチクソ言われてたとか無かったことになっているに1万ドラギ俊彦。

ということでして、まあ何かこの言い方だと市場が期待するほど利下げ早くに行われない可能性って結構あるんじゃネーノとか思ったんだがまあ個人の感想です悪しからず。





2024/02/26

お題「植田総裁の国会答弁から足元のコミュニケーションの再確認/短国3mとかECBとか」

ガラス瓶なんて消費地でリサイクルできるのに何を言ってるんだ
https://www.yomiuri.co.jp/world/20240223-OYT1T50112/
人気の日本酒がEUで「禁輸」危機…30年以降に瓶の再利用義務化、政府が除外目指し外交攻勢
2024/02/24 05:00

『【ブリュッセル=酒井圭吾】欧州連合(EU)が2030年以降、域内への日本酒輸出を禁止する検討を進めている。EUが瓶や缶の再利用や再資源化を義務づける現状の規制案では、現地で瓶を洗って再利用するのが難しい日本酒は禁輸対象となる。規制案は3月にも成立する見通しで、輸出に力を注ぐ日本政府は対象から外すよう外交攻勢をかけている。』(上記URL先より、以下同様)

再利用するための輸送で使う余計なエネルギーの方が無駄なんじゃネーノと思いながらよくよく記事の後半を見たら、

『ウイスキーなどの蒸留酒やワインは地元メーカーへの打撃が大きいとして義務を免除されたが、輸入品の日本酒は規制対象のままだ。』

これじゃただの非関税障壁にしか見えないのですが、これは「またEUか!」案件っすかしら・・・・・・・


〇さすがにこれは為替よりも株の値動きに冷やしをいれようとしているんだと良いんですけど

どう見ても盛大なフラグです本当にありがとうございました
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH2240V0S4A220C2000000/
株最高値、今回はバブルにあらず 89年と違う企業と個人
編集委員 鈴木 亮
2024年2月25日 5:00 [会員限定記事]

『日経平均株価が22日、1989年に付けた過去最高値の3万8915円を上回った。過熱感を心配する声もあるが、89年当時と今を比べると、あらゆる状況が違っており、今の株高は実績に裏付けられた、堅実な上昇だ。日経平均の過去最高値到達は、まだまだ通過点とみていい。』(上記URL先より)

いやーもうこれは笑ってしまうしかないですよね。というか足元の値動きの軽さが如何にもなアレ(ワイ89年はそんなに詳しくないけどITバブルの値動きは株式部に居たから思いっきり体感してましたからね〜)なんですけどねえ。

とまあそんな状況を反映して、だと大変に結構なのですが日銀の情報発信が「マイナス金利政策解除のために緩和姿勢強調」だけではない言い方になってきたような気がするのは気のせいでしょうかどうでしょうか。


https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-22/S98C0VDWRGG000
デフレでなくインフレ状態、消費者物価は右上がり続く−日銀総裁
青木勝
2024年2月22日 13:31 JST 更新日時 2024年2月22日 15:02 JST

昨日の国会で植田さん、思いっきり上記の発言して債券市場ちゃんは上げを消しておりましたが、ゆうて株式指数ちゃんは瞬間下がったものの引けにかけてホイホイと上昇しておりまして、うーんこのという感じなのですが、まあ株の方の何とかストコメントとかベンダーとかに出ているの見ておりましても、ワイ的に冷静かつ理知的だと思っている人ですから、「日銀が金融緩和姿勢を堅持しているから株の買いに安心感」みたいなコメントをしているのが見られるわけでして、まあ今の説明の感じだと、「実は日銀はマイナス金利解除の為に猫をかぶっている可能性がある」ってのを読み取らない人の方が多かろうと思うのよ。

だってさ、今まで散々このハトハトジジイのいう事が急にコロッと変わって煮え湯を(就任1年たってないのに)何回も食らっている筈なのに、金利系の何とかストの中でも未だに日銀の表現を表面通り読んでいる能天気な皆さん大杉栄という状況なわけですからまあ株式市場が日銀の今言ってることを表面的にしか読まないのはある意味不可避な訳ですよ。

てな訳で植田さんももう少し露骨な表現をしないと株式市場が勢い込んでしまってミニバブル(ミニで済めばいいんですけど)とそのすっ転びをやってしまうといろいろとマズーというのに気が付いてこういう話をしているなら結構なことだと思います。

ということで記事を拝読しますが。

『→賃金上昇を反映する形でサービス価格の緩やかな上昇続いている
→政策決定時に見る基調的な物価上昇率は「高まっていくと判断」

日本銀行の植田和男総裁は22日、足元の物価動向について、デフレではなくインフレの状態にあるとの見解を示した。衆院予算委員会で答弁した。』(上記URL先より、以下同様)

ということで「インフレの状態」と踏み込んだのは植田さんになって初じゃないかな。

『植田総裁は東京都区部の1月の消費者物価が1年8カ月ぶりに2%台を割り込んだことに関し、輸入物価高を価格転嫁する動きの鈍化や政府の物価高対策の影響とし、「賃金上昇を反映する形でサービス価格が緩やかに上昇する姿は続いている」と指摘。その上で「去年までと同じような右上がりの動きが続くと一応、予想している。そういう意味でデフレではなくインフレの状態にある」と語った。』

なるほどなるほど。

『政策決定の際には基調的な物価上昇率を見て判断するとし、「徐々に高まりつつある、高まっていくと判断している」と説明。労働需給が引き締まる下で企業の賃金設定行動も従来より積極的な動きが見られているとし、「雇用・賃金が増加する中で、物価も緩やかに上昇するという好循環が強まっていく」との認識を示した。』

まあホンマカイナというのはさておき、今までとにかく慎重さが目立っていた植田さんの答弁が完全にこっち側になっているわけでして、まあやっとハトハトジジイから本来の植田先生になってきたと思う、というか思いたい。

『1月の金融政策決定会合以降、植田総裁や内田真一副総裁から正常化への地ならしと取れる発言が相次ぎ、市場では3月か4月の会合で政策変更に踏み切るとの観測が広がっている。総裁が今後も基調的物価が上昇し、賃金・物価の好循環が強まっていくとの見通しを示したことで、早期の正常化観測を後押ししそうだ。』

つまりはマイナス金利解除だけで終わるものではない、ということですよね〜〜

『植田総裁の発言を受けて、外国為替市場では日銀の政策修正が近いことが意識され、円を買い戻す動きが出ており、一時対ドルで前日比0.1%高の150円23銭とこの日の高値を付けた。』

ということなのですが、そもそも政策修正はたぶん3月遅れても4月(逆にそこで出来なかったらバブル発生と崩壊待ったなしという地獄)じゃないのよと思うのですけど、まあ日銀の場合は途中をすっ飛ばしていきなりジャガーチェンジする、というのに皆さん慣れていない模様で、未だ半信半疑なんですけねえとは思うけど、そらまあ日銀今まであの調子でやっていたのが急に180度方向転換ですから普通の他の中銀ではやらんので見慣れない、というのは分かるにはわかります。


まあ何ですな、その辺を意識しているのか意識していないのか、というのが植田さんの場合よく分からんわけで、そもそも昨年12月の「チャレンジング発言」だって結果から見たら不規則発言でやってしまいましたなあというパティーンだったという事だと思われますので(個人の感想です)、その文脈から考えたら実はこの回のもハプニングの不規則発言かもしれませんが、いずれにしましても月末から月初にかけてポンコツカカシが2本ほど金懇講演をするようで、どうせこのカカシは大本営の操り人形ですの(あくまでも個人の感想です)で、大本営が何を言おうとしているのか、をよみとるにはちょうど良いと思います。


〇先日確か日経も記事にしていましたが言ってることが衣の下に鎧だった俊ちゃんと一緒の件

現時点で言ってる日銀のキーワードってそもそも2006年の福井の俊ちゃんが総裁の時の量的緩和解除とレトリックが一緒ですよね、という話は弊駄文でも行っておりますが、先日は日経新聞さんがその辺を記事にしてたような気がしますが、なんせ日経無課金なもんで本紙を個別に買うなりして記事を切り抜き保存(物理)でもしないとすぐにどっかに行ってしまう、というのが悩みの種。

でまあもしかしたらこの前の再掲あるいは日経さんの二番煎じになってしまうかもですが、このレトリックってもうこの講演でも見れば一発よ、というのが量的緩和解除直後に実施した俊ちゃんの講演にあるので、それを折角なので後のことも考えてクリップしておきます。

https://www2.boj.or.jp/archive/announcements/press/koen_2006/ko0603d.htm
金融政策運営の新たな枠組み
----物価安定のもとでの持続的成長の実現に向けて----
日本商工会議所会員総会における福井総裁講演要旨
2006年3月16日
日本銀行

まあ冒頭のマクラの部分に、

『日本銀行の福井です。経済界の第一線でご活躍されている皆様の前でお話する機会を頂き、大変嬉しく存じます。

日本銀行は、先日の政策委員会・金融政策決定会合において、2001年3月以来5年間にわたって続けてきた量的緩和政策の枠組みを変更し、短期金利を金融市場調節の操作目標とする金融政策に移行しました。あわせて、「物価の安定」についての明確化を含め、金融政策運営の新たな枠組みを導入しました。

本日は、最近数年間の金融経済情勢を振り返りつつ、量的緩和政策の枠組み変更に至った背景についてお話するとともに、今後の金融政策運営についてご説明したいと思います。』

とあって思いっきり量的緩和解除直後のお話(解除したのは3/9です)なのですけど、この『4.量的緩和政策の枠組み変更の背景』の3パラグラフ目から読めばよいのよ。

『ここで強調しておきたいことは、量的緩和政策の解除は金融の引き締めではないということです。』

今回も強調していますね、強調のし過ぎで株や為替がちょっとあかんたれな感じなので冷やし玉入れてきているようでそこは何よりですが。

『先程述べたとおり、量的緩和政策の効果は既に短期金利をゼロ%とする金利政策の効果と同じになっています。』

これは逆の話になっていますが、「YCCの枠組みを変更してもYCCは量的緩和の一環だから実はそんなに変わらない」と言ってるのと相似形ですよ。でまあこの部分の続きが、

『解除後の金融市場調節方針はコールレートを「概ねゼロ%」で推移するよう促すというものですから、経済や物価に対する刺激効果という点では、非連続的な変化を伴うものではありません。』

「非連続的な変化を伴うものではありません」に関してはこの量的緩和解除の声明文の中でも同じことが言及されていた、というのは先日ネタにした通りですな。なおご確認されたい方は(https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2006/k060309.htm)をご覧あれ。

『短期金利がゼロ%であることの効果は、経済や物価の状況が好転する中で、これまでも次第に強まってきましたが、現在の金融市場調節方針が維持される間は、この先さらに強まっていくと考えられます。』

この理屈も言ってますよね。まあこれ自体はもうちょっと前から言ってますけど。

『後ほど述べますように、今後の金利水準は経済・物価の展開や金融情勢次第ではありますが、現在私どもが考えているように、経済がバランスのとれた持続的な成長過程を辿る中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持できる可能性が高いと考えています。』

思いっきり一緒な訳ですが、じゃあ実際に福井さんがやったことは物価が今よりも全然低い水準にあるのにこの後1年間(正確には10か月)で2回の利上げを実施したわけですよ。

『日本銀行としては、金融緩和を継続することによって、引き続き日本経済をしっかりとサポートしていきたいと思います。』


でまあなんでこんなに言ってることが似るか、といえばその背景にはこういうのがある、とアタクシは読んでいるわけでして、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2006/g060309.htm
金融政策決定会合議事要旨
(2006年3月8、9日開催分) *
2006年 4月14日
日本銀行

でもってこの『開催要領』を見ますと、

『執行部からの報告者)

理事 平野英治
理事 白川方明
理事 山本 晃
理事(企画局長) 山口廣秀
企画局企画役 内田眞一(8日、9日9:00?11:50、12:00?14:07)
金融市場局長 中曽 宏
調査統計局長 早川英男
調査統計局参事役 門間一夫
国際局長 堀井昭成』

>企画局企画役 内田眞一
>企画局企画役 内田眞一
>企画局企画役 内田眞一

ってあるわけでして、この時の日銀は課制度ではなかったので、内田さんが「企画局企画役」という肩書になっていますが、今でいう政策企画課長の立場にいたわけですな、うんうん。

とまあそういうことでありまして、福井さんの量的緩和解除の時に政策企画課長という事で携わっていた内田さんが副総裁でどどーんと鎮座まします中で同じ表現を使っている、という時点でこれはお察しください案件である、とアタクシは普通に考えてしまうのですが、どうもお察ししてくれない人の方が圧倒的に多くて、今だって「経済物価情勢(まあ物価でしょうけれども)で異なるが今の見通しを是とすれば」という条件付きだし、そもそも論として日銀の物価見通しがポンコツ(構造変化が起きている可能性があるので同情の余地はカシュカリの頭髪程度はあるが)で足元の動向を外しまくっているんですから、その時点でこんなの字面をそのまま信用したらダメっての普通考えませんかねえ、と思うのですが、まあ債券の何とかストでも字面をそのまま単純に読んじゃう人が散見されるのは残念なところではあります。

とまあそういう読み筋(あくまでも個人の感想ですしまあその辺は皆様自己責任で考えていただければと存じますが)に立って「こんなの日銀が猫被っているだけだし、何ならわざと2006年の時と同じような表現をしているだけこれは内田副総裁によるヒントが提示されているという意味で親切設計」ということでよろしくお願いする(誰に何をお願いするんだよw)ところではあるのですが、はてさてどうなるのか。


あとちなみにですね、そういえば内田さんのこの前の講演、よくよく見たらここを綺麗にアタクシも読み飛ばしていたんですけど、

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/ko240208a.htm
【挨拶】最近の金融経済情勢と金融政策運営
奈良県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 内田 眞一
2024年2月8日

こちらの『4.日本銀行の金融政策運営』の小見出し『政策金利』って所なんですけど、

『まず、マイナス金利については、解除するとしてどのように短期の政策金利を設定するかという論点があります。マイナス金利の導入前には、日本銀行の当座預金取引先の超過準備に0.1%の金利を付利し、取引先でない金融機関との裁定取引が行われる結果、短期金融市場では、無担保コールレートが0〜から0.1%の範囲で推移していました。仮にこの状態に戻すとすれば、現在の無担保コールレートは-0.1〜から0%ですので、0.1%の利上げということになります。この点は、主として短期金融市場の機能をどう維持するかという論点です。』

からこの話、『経済との関係でより重要なのは、その後の短期金利のパスです。』とつながるもんで、ついうっかりこの「より重要なのは」に引っ張られて前段のこの部分を読み流しておりまして、アタクシもこの先の政策金利パスの事ばかり読んでおったりしていましたが、ここの部分ってマイナス解除後の当座預金付利の構造に関してしらっと、

「マイナス金利の導入前には、日本銀行の当座預金取引先の超過準備に0.1%の金利を付利し、取引先でない金融機関との裁定取引が行われる結果、短期金融市場では、無担保コールレートが0〜から0.1%の範囲で推移していました。」

からの

「仮にこの状態に戻すとすれば、」

って思いっきり大ヒントを入れている訳でして、これ見たら普通に事実上の一層構造になる、というのを示唆してるじゃん全力で、と思う訳で、こりゃすんつれいしましたという所ではございました。

まあ何ですな、所要準備に付利するか付利しないかという点についてなのですが、本来は準備預金制度不適用先との差が出来るのも何だしそもそも分けるのめんどくねえか問題もある(と言っても所要準備自体は法定だかから必ず計算するんで手間は同じちゃあ同じかもではある)ので、所要準備も付利してもいいんじゃねえのという気もしますが、日本って当座預金は付利しないというのが法令上あって、ただまあ日銀の場合はそもそも普通銀行と同じ法令適用されるわけじゃないのでエエジャンという気もしますが、建前上当座預金は非付利というのを残すために所要準備は非付利にしてそれ以外は例外措置(例外の方が規模巨大なのはシャレということで)になるのかなとか思ったりもしたのですが、その辺の法令的な話は日銀の中の人(の法務的な人)が詳しいかなとは思います。まあ現状ではマクロ的に大差ないとは言え個別行レベルでは預金量の多い少ないの差はあるので。



〇3MTDB入札はやっとマイナス10bpよりも金利上昇しましたな

木曜は3Mがあったわけですが。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240222.htm
国庫短期証券(第1215回)の入札結果

1.名称及び記号 国庫短期証券(第1215回)
2.発行根拠法律及びその条項

財政法(昭和22年法律第34号)第7条第1項、
財政融資資金法(昭和26年法律第100号)第9条第1項並びに特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第83条第1項、第94条第2項、同条第4項、第95条第1項、第136条第1項及び第137条第1項

3.発行日    令和6年2月26日
4.償還期限   令和6年6月3日

5.価格競争入札について
(1)応募額        10兆6,688億円
(2)募入決定額     4兆6,931億7,000万円

(3)募入最低価格   100円02銭6厘5毛
(募入最高利回り)(-0.0986%)

(4)募入最低価格における案分比率 68.4150%
   
(5)募入平均価格   100円03銭0厘1毛
(募入平均利回り)(-0.1120%)

・・・・・・・ということで、足きりが▲9.86bpになったのですが、毎度おなじみ売買参考統計値をみますと、(https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/files/2024/S240226.pdf)、TDB1215回の引けは▲0.099%ということで▲9.9bpですので、足切りに近いほうが引けになっておりますので、▲10bpより(かすかにだけど)金利が高くなりましたな。

とはいってもまあ金利水準うーむという感じですけれども、まあマイナス金利状態なのでなかなかこの辺はムツカシヤなところではありますな。


〇ECBのこの前の定例理事会の議事要旨も出たので今さらECBのポンチ絵なども含めて

先週末にこんなのでてましたわね〜〜

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2024/html/ecb.mg240222~1af5fcd5f9.en.html
Meeting of 24-25 January 2024
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 24-25 January 2024
22 February 2024

ということですが、そもそも1月は日銀まさかのジャガーチェンジ攻撃があったので、ECBどころの騒ぎでは無かったということもあってついついかっ飛ばしてたのがこちら。

https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2024/html/mopo_statement_explained_january.en.html
Our monetary policy statement at a glance - January 2024

ということですいませんすいませんポンチ絵をまずは

こちらが12月
https://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/visual-mps/2023/html/mopo_statement_explained_december.en.html

最初のポンチ絵は

『We kept our key interest rates unchanged』(1月)
『We kept our key interest rates unchanged』(12月)

なんですが、芸が細かいというか何というかで、12月(と10月)は階段三段登ってその先が平らなのが今回は二段登ってその先が平ら、という違いになっていまして、これは金利据え置きが3回目になったから絵を変えたんですかねえよくわからんです。

『Our past interest rate hikes are helping to push inflation down. Future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(1月)
『Our past interest rate hikes are having a strong effect on the economy and are helping to push down inflation. Our future decisions will depend on how we see the economy and inflation developing.』(12月)

「rate hikes are having a strong effect on the economy」が削られたのはもう経済は下押ししなくて良いですがなみたいなお気持ちの表れですかねえ・

次のポンチ絵は1月はインフレですが12月はAPPの話があって、経済についても経済の話が先にあるので1月の方に合わせて比較しますが、

『Overall, inflation is still on its way down』(1月)
『Inflation fell again but will go up for a short time』(12月)

『Prices for food, goods and services are no longer rising as much as before. Energy prices are falling, but now more slowly.』(1月)
『It will come down again next year, but more slowly. This is in part because government measures that had helped keep prices in check are ending. Higher wages are also keeping prices up.』(12月)

絵柄もそうなんですが、どう見てもこれインフレ鎮静化に関しては大丈夫きっと下がるの決め打ち感が強くなっています。

次は

『The economy is weak at the moment』(1月)
『The economy is weak and will only gradually recover』(12月)

『Over time, we expect it to gradually recover. But regional conflicts and their effects on trade have made the future more uncertain.』(1月)
『Many companies are still working off their past orders. Higher interest rates are cooling economic activity, especially in construction and manufacturing.』(12月)

12月は判じ物のようなイラスト(たぶんconstruction and manufacturingを示しているんだと思うけど)になっていましたが、1月は「今は世界の天気が宜しくなくてこの先暫く天気宜しくないが明後日位には天気が良くなって来るでしょう」という天気予報を示したスマホという絵で、まあこれはメッセージ分かりやすい。

でもってその次に同じく経済のイラストがあって、これは前回に対応するものがないのですが、

『The current weakness is being felt across the economy』(1月)
『Industrial firms have again cut their production and retailers have seen their sales decline further.』(1月)

となっています。

『Many people are in jobs』(1月)
『Lots of people are in work』(12月)

『Unemployment is again at its lowest level since the start of the euro. More people are looking for jobs and finding them. But fewer firms are advertising vacancies.』(1月)
『New jobs are still being created. But as the economy cools, firms are seeking fewer new workers.』(12月)

と労働市場に関してはトーンが明るくなっていまして、イラスト枚数の関係上12月には割愛されてた

『People and businesses are rethinking their plans because borrowing is expensive』(1月)

についても、これは10月の

『Higher interest rates are making borrowing more expensive』(12月)

とまあ同じという感じですな。

でまあこれ見ますと12月会合の時よりも全般的に「決め打ち」トーンが強くなっておりまして、物価の沈静化には自信があるけど経済はちょっと暫く停滞しそうですね、というのが基本線だと思うのですけれども、じゃあ議事要旨の方で政策の話を何してたのか、という点ですな。

でもって

https://www.ecb.europa.eu/press/accounts/2024/html/ecb.mg240222~1af5fcd5f9.en.html
Meeting of 24-25 January 2024
Account of the monetary policy meeting of the Governing Council of the European Central Bank held in Frankfurt am Main on Wednesday and Thursday, 24-25 January 2024
22 February 2024

の『Monetary policy stance and policy considerations』と『Monetary policy decisions and communication』を読んでからその前の経済物価部門を見れば良いのですが、時間がアレとなって参りましたので、『Monetary policy decisions and communication』の部分で先行き政策の話もあるので本日は後者のコーナーの頭2パラグラフを引用しておきまして後は明日にでも(汗)。

『Against this background, all members agreed with the proposal by Mr Lane to maintain the three key ECB interest rates at their current levels.』

政策は据え置き。

『It was affirmed that further progress needed to be made in the disinflationary process before the Governing Council could be sufficiently confident that inflation was set to hit the ECB’s target in a timely manner and in a sustainable way.』

でもって物価目標に向けてインフレが鎮静化していく、とうことに関する自信ニキはまだなくてこの先のデータを見ていく必要がある、というののもメンバー間で確認されました。

『At the present juncture it was regarded as important for monetary policy to stay the course and for the Governing Council to proceed with a steady hand. At the same time, members underlined the fact that monetary policy remained data-dependent. It was reiterated that, based on its current assessment, the Governing Council considered the key ECB interest rates to be at levels that, if maintained for a sufficiently long duration, would make a substantial contribution to returning inflation to the medium-term target in a timely manner.』

『Future decisions would ensure that policy rates would be set at sufficiently restrictive levels for as long as necessary.』

あんまりぶつ切りにするのもと思って読んでると切りにくい文章構成だが、現状の金融政策を継続してインフレ沈静化に努めまっせ今後もデータディペンデントでっせということで、先行きの政策は一切決め打ちしないというのは把握した。でもって次のパラだが、

『There was broad consensus among members that it was premature to discuss rate cuts at the present meeting and members widely referred to risk management considerations to support this view.』

全員が「今利下げの話をする局面ではない早すぎにも程がある」とのコンセンサスキタコレ。

『The risk of cutting policy rates too early was still seen as outweighing that of cutting rates too late.』

挙句に「早すぎる利下げのリスクの方が利下げが遅れるリスクよりも大きい」とまでゆうとる。

『Having to reverse course, in the event that economic activity picked up more strongly than expected, wage growth accelerated or renewed inflationary pressures emerged, could entail high reputational costs.』

利下げ早まってインフレ上がろうもんならもうヤバいっすワシらのレピュテーションとはこれまた正直で宜しい。

『The point was also made that the risk of an inadvertent overtightening of monetary policy was mitigated by the fact that financial markets were already pricing in a number of rate cuts in 2024, contributing to a loosening of both financial and financing conditions.』

FEDってここまで露骨には今までの所出てこないですけれども、ECBは中々ここの点が露骨で、「利下げ着手が遅れるリスクに関しては、そもそも市場の方が勝手に早期利下げを織り込みにいっているので、金融環境がその分緩和されているんですから、それによって利下げ遅れのリスクが軽減されてますがなガハハ」とぶっこんでいるのがチャーミング。

『However, it was also argued that such a loosening might be premature and could possibly derail or delay a timely return of inflation to target.』

さらに「このような金融環境の緩和は早まったものだし、インフレが着地するのを遅らせてしまうんじゃねえの」という議論もしてやがりますな。

『In any case, members agreed that following a data-dependent rather than a calendar-based approach was important, in line with the elements of the reaction function that the Governing Council had communicated in 2023.』

でもって結局データディペンデント、という名前の出たとこ勝負が有効です、とさっきもあんたら言ってたやん、という話に落着するのでありました。

続きは明日にでも。






2024/02/22

お題「3M入札とか6M交付税借入メモ/1月FOMC議事要旨は「まだ利下げせえへんでー」だけは分かった」

今さらジローだが来週金曜日って3月なのかよ(ジジイのいつもの感想)

〇3M入札とか交付税特別会計借入の補足とか

・3M入札ちゃんですが

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240215.htm
国庫短期証券(第1215回)の発行予定額等

1. 入札予定日 令和6年2月22日
2. 発行予定日 令和6年2月26日
3. 償還予定日 令和6年6月3日
4. 発行予定額 額面金額で5兆8,000億円程度

てな訳で3Mですが3Mと俗称されますがジャパンの3Mビルは13週間物で出て来るので今回の3Mは足が6月に掛かるというどう見ても最後のO/Nはプラス金利です本当にありがとうございましたという物件。

とは言いましても足元に現実問題として▲10のチャージがあるんですから売買参考統計値の昨日の引けベースでは▲11.5となっておりまして、まあ入札結果見てみないとそういう引値になるよねというのもあるし、まあそういうムーブがどの位あるのかは知らんけど、ポートの平均残存短期化しながら国債というものは持って起きたいとなると、発行時点で基本的に物凄い勢いでロットをそろえられるなかで一番短い国債、と来ていますからこれはもうパパもママもニッコリというものなので、いろんな大人の事情が入るとかもありそうで結果がどうなるかは楽しみにしています。

まあ一部のマニアしか楽しみにしないと思いますが(^^)


・交付税特別会計借入の補足

昨日6M交付税特別会計に関してとかいう債券だけやってると可視範囲にあるのか微妙な物件について門前の小僧がお経を読んだわけですが、読者様からご教授賜りましたので少し補足をば(本当に本当にありがとうございます勉強になりました(平伏))

特会向け貸出に関しては日銀適格担保になりまして、その際の手続きとかに関してもそんなに難しいものではないので、短国が担保などへのニーズという上乗せニーズがありますよね、というのと基本的には同じことになるので、その点から見るとまあ短国対比で金利がじぇんじぇん高いというのはやはりメリットとなりますわな。

とは言いましても、この6M交付税借入ですけれども、

2/1入札分の結果
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result240201.htm

2/20入札分の結果
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result240220.htm

応札額に注目しますと、44兆2,674億円⇒29兆2,685億円(借入予定額はどちらも同じで1.25兆円)と応札が減っておりまして、足切り(0.000%)での按分比率も2.8216%⇒4.3484%となっていまして、まあ要するに0%での札は着実に減っているので(と言っても予定額対比で莫大ですけど)、次回以降の交付税6Mって地味に注目して差し上げろ下さいよろしくお願いしますというお話でした。

次回の交付税借入6Mは2/27に入札でごじゃる(9/4足で1.25兆円予定)。


〇毎度の如く寝起きで1月FOMC議事要旨(おまけに寝坊気味ですので手抜きバージョンですアイヤー)

https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20240131.htm
Minutes of the Federal Open Market Committee
January 30-31, 2024

A joint meeting of the Federal Open Market Committee and the Board of Governors of the Federal Reserve System was held in the offices of the Board of Governors on Tuesday, January 30, 2024, at 10:00 a.m. and continued on Wednesday, January 31, 2024, at 9:00 a.m.1

・・・・・・でもっていつもの逆順読みをしたのですが、政策の先行きに関して言えばそこまで意見が割れている感じではなくて、「政策金利は既にピークに達している」「この先の方向性は引き締め政策をいつ減らしていくか」「でも今じゃないよね」というのはまあコンセンサスおぶコンセンサスって感じではあろうかと思うのですが。

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の11パラグラフ以降からとりあえず今朝は参ります。まずは今回会合での政策判断について。

『In their consideration of appropriate monetary policy actions at this meeting, participants noted that recent indicators suggested that economic activity had been expanding at a solid pace. Job gains had moderated since early last year but remained strong, and the unemployment rate had remained low. Inflation had eased over the past year but remained elevated. Participants also noted that the risks to achieving the Committee's employment and inflation goals were moving into better balance and that the Committee remained highly attentive to inflation risks. Participants continued to be resolute in their commitment to bring inflation down to the Committee's 2 percent objective.』

基本ここの話は声明文に反映される内容を書いているのでそんなに必死こいて読まなくても吉、なので11パラからとか言ってるくせに飛ばしまして次(^^)。

『In light of current economic conditions and their implications for the outlook for economic activity and inflation, as well as the balance of risks, all participants judged it appropriate to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent at this meeting. All participants also judged it appropriate to continue the process of reducing the Federal Reserve's securities holdings, as described in the previously announced Plans for Reducing the Size of the Federal Reserve's Balance Sheet.』

このパラは今回の決定内容についての話でここもパスでも良いんですけど(おい)見るべき所としては今回も「All participants(membersではなくparticipantsな)」が賛成してますよという所くらいですか。

『Participants viewed maintaining the current stance of policy as appropriate given the incoming data, which indicated that inflation had continued to move toward the Committee's 2 percent objective and that demand and supply in the labor market had continued to move into better balance.』

『Participants commented that maintaining the target range for the federal funds rate at this meeting would promote further progress toward the Committee's goals and allow participants to gather additional information to evaluate this progress.』

この13パラからぶつ切りを開始しますが、まあゆうてここでは「データ見た所経済物価のバランスが好転してきているのが確認できたし、今の調子だともう少し状況を見ていく時間的余裕がありますよね」とかいう話になっておりますので、様子見地蔵の巻というのがリコンファームされているだけというお話。では次に行く。


14パラからが先行きの金融政策なのでハイパー手抜きの場合はここから見るあるよろし。

『In discussing the policy outlook, participants judged that the policy rate was likely at its peak for this tightening cycle.』

ということで引き締めサイクルのピークに来たとの事です、まあ今の時点になってみますと「言われんでも分かっとるわ」ってなもんでしょうけど。

『They pointed to the decline in inflation seen during 2023 and to growing signs of demand and supply coming into better balance in product and labor markets as informing that view.』

経済のバランスが良くなっていくというムーブが見られますなあ昨年のインフレ低下とその間の経済データを見ますと、という景気の良いお話。

『Participants generally noted that they did not expect it would be appropriate to reduce the target range for the federal funds rate until they had gained greater confidence that inflation was moving sustainably toward 2 percent.』

とは言えgreater confidenceが無いと利下げに着手しませんがな、ということで、

『Many participants remarked that the Committee's past policy actions and ongoing improvements in supply conditions were working together to move supply and demand into better balance. 』

供給制約の改善とワシの引き締め政策が経済物価のベターバランスを育てた。

『Participants noted that the future path of the policy rate would depend on incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks. 』

『Several participants emphasized the importance of continuing to communicate clearly about the Committee's data-dependent approach.』

先行きはデータディペンデントという名前の出たとこ勝負というのがこれでもかと言われてこのパラは終了。


次のパラは「リスクマネジメントアプローチ」ですな。

『In discussing risk-management considerations that could bear on the policy outlook, participants remarked that while the risks to achieving the Committee's employment and inflation goals were moving into better balance, they remained highly attentive to inflation risks.』

インフレリスクにハイリーアテンティブなんですって最初に来まして、、

『In particular, they saw upside risks to inflation as having diminished but noted that inflation was still above the Committee's longer-run goal.』

アップサイドリスクは減ってきているが、そうはいってもインフレ率自体が引き続き2%ゴールを上回っていることを特筆すべきと来まして、

『Some participants noted the risk that progress toward price stability could stall, particularly if aggregate demand strengthened or supply-side healing slowed more than expected.』

Some participantsは「物価安定に向けた動きが止まること」ということですので要は物価上昇率が鈍化してくれなくなってしまうリスクを指摘しました、と物価がサガランチ会長になるリスクを指摘しておりますわな。これ先日今更ジローでネタにしたパウちゃんの会見でもパウちゃんわざわざ自分から言ってましたね。

『Participants highlighted the uncertainty associated with how long a restrictive monetary policy stance would need to be maintained.』

続きまして引き締め的な金融政策スタンスがどの程度の期間維持されるべきなのかという議論(水準を上げるという話は最早無い訳ですな)が来まして、

『Most participants noted the risks of moving too quickly to ease the stance of policy and emphasized the importance of carefully assessing incoming data in judging whether inflation is moving down sustainably to 2 percent.』

『A couple of participants, however, pointed to downside risks to the economy associated with maintaining an overly restrictive stance for too long.』

「moving too quickly」がMost participantsで「overly restrictive stance for too long」が2名(A couple of)というのを並べて、まあどう見ても地蔵モードです本当にありがとうございました、とお伝えしたい模様。


でもって次のパラグラフですが、バランスシート運営に関する議論になっています。

『Participants observed that the continuing process of reducing the size of the Federal Reserve's balance sheet was an important part of the Committee's overall approach to achieving its macroeconomic objectives and that balance sheet runoff had so far proceeded smoothly.』

どういう話をしているかと言いますと、

『In light of ongoing reductions in usage of the ON RRP facility, many participants suggested that it would be appropriate to begin in-depth discussions of balance sheet issues at the Committee's next meeting to guide an eventual decision to slow the pace of runoff.』

次回のFOMCでランオフペースのスローダウンに関して詳細に議論して、その結果として何らかの先行き運営の示唆をするということのようですな。

『Some participants remarked that, given the uncertainty surrounding estimates of the ample level of reserves, slowing the pace of runoff could help smooth the transition to that level of reserves or could allow the Committee to continue balance sheet runoff for longer. 』

『In addition, a few participants noted that the process of balance sheet runoff could continue for some time even after the Committee begins to reduce the target range for the federal funds rate.』

まあアタクシ不勉強でFEDが何考えているのかイマイチ良く分かっていないのでアレですが(ちょっと勉強しないと)、ゆうてONRRPと当座預金付利で一生懸命クソ狭いコリドーを作っている、という今の状態ってあんまり健全な状態だとはアタシャ思わない訳で、FED的に健全なのは大昔のECBみたいに常設ファシリティを政策金利水準の上下50bp位の所でサンドイッチにしている状態であとの日々の細かいのはシランガナ状態だと思う訳でして(盛大に個人の感想です、なお日本の場合は日々の資金需給のブレが準備預金水準対比でデカすぎなので細かい調節が必要だったという世界ね)まあFEDがどういうあるべき姿をみているのかにもよりますけど、これはほぼ短期金融市場のデザインに依存する話になるので、まあ楽しみに待ちながら背景の勉強をしないと、と思うのでありました。


ということで結局甚だ簡単モードになってしまいましたすいませんすいません。







2024/02/21

お題「輪番その他メモと虫干しネタでご勘弁くださいませということで」

マクラのネタが日本農業新聞に偏っているのは気のせいです(^^)
https://www.agrinews.co.jp/opinion/index/215544
2024年2月21日
[論説]アフリカ豚熱の阻止 旅行者の意識啓発が鍵

『家畜伝染病のアフリカ豚熱への危機感が高まっている。日本への直行便が多い韓国の釜山広域市周辺では、同病に感染したイノシシの確認が相次ぐ。有効な治療法やワクチンはなく感染した豚はほぼ死ぬ。国内に侵入すれば影響は甚大だ。対策を徹底し、旅行客の意識を啓発しよう。』

『韓国・釜山の金海国際空港からは北海道や千葉、大阪、愛知、愛媛、福岡各空港への直行便が行き交う。感染したイノシシは金海空港から10キロ以内で見つかっている。』(上記URL先より)

皆様におかれましても春の行楽シーズンも近いので心掛けて頂きたいものです(平伏)


〇輪番とかまあその辺の雑談メモ

・グリーンプレミアム3bpで輪番をお迎えとな

なんであれグリーニアムとかいう悪霊みたいな名前になっているのか謎(語感的に縁起がよくない気がするという言霊信仰のアニミズムですすいませんすいません)ですが、まあGXだってなんでXなのかという話だし、それ言い出したら何で「無担保コール翌日物加重平均金利」がなんで「トナー」とかいう事務機器の消耗品みたいな名前になったのかわからんとか書き出すと「はいはいおじいちゃん満洲の話はさっきもしてましたわよお薬の時間ですよ」と言われるのでその辺にしておきますが。

いつものように売参で確認しますが
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

昨日の引け(21日発表分)は10年373回の平均値単利が0.729%で複利が0.725%になっていまして、GX10年1回債が単利0.694%で複利も(カレントクーポンなので)0.694%となっておりますな、うんうん。

とまあそういうことですので、プレミアムが複利ベースで3.1bpの状態で本日は5−10を対象にする輪番が実施されるわけです。

この債券、ご案内のように発行時のプレミアムが0.5bp程度で入札となった(しかもダッチだから全員このコスト)ので、綺麗にヘッジができていればプレミアム拡大の分だけ(゚д゚)ウマーという状況だし、単純にモチキラーですと発行時利回りが0.740%なので相場上昇でも(゚д゚)ウマーという状態になっておられるわけですが、さてこれが輪番にどういう入り方になるかという話ですけど、どうせ売参対比の利回り較差になるんでしょうから、これはまあGX国債の趣旨とかそういうのを丸無視すれば入れやすい輪番という恐ろしい話が初回から発生するのですな、ナムナム。

まあさすがにポートに入れた筈のものが即座に出て来るとかいうのは何ぼ何でもないとは思いますし、投資家ニーズに対応することを考えたら今からそんなにホイホイと在庫整理の売りを出すってのも何でしょうなとは思うのですが、いきなり今回の輪番で新発1回が輪番にドバドバ入ってきたら(入ったら月末の計数公表した時点でバレます)折角ここまで関係各位がご苦労されて発行にまでこぎつけ、しかも世界初という輝かしい記録まで付いているGX国債の発行が台無しになってしまう国辱もののプレイになる(とワイは思うが思わん人は思わんかもしれませんので思想の問題ではある)ので、関係各位におかれましては節度あるムーブというのを考えて頂きたいなあとは思うんですけどそういう認識は変ですかねえ?

ちなみにですね、そもそも論として黒田のQQE始める前って長期国債買入の建前は「成長通貨の供給」だったので「市場価格の形成に影響を与えないために新発債近くの国債は購入しない(運営上は直近発行2銘柄は買入対象外)」だったのですが、黒田のQQEから「買入で金利にも影響を与えるということを意図して新発債も買う」という仕切りに変更になった訳ですよ。もう11年も前の話になるけど。

まあいずれにしても銘柄明細は来月頭に出ますので。



・そういや交付税特別会計借入6Mっていつまで0%一本値でやるのかな???

昨日の交付税特別会計借入結果
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/2402.htm
令和6年(2024年)2月の入札情報

(3)借入金

昨日の交付税特別会計の落札結果
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/kariire/kari-result240220.htm
交付税及び譲与税配付金特別会計の借入金の入札結果

本日、借入金の入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.借入根拠法律及びその条項
特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)附則第4条第1項

2.借入日          令和6年2月29日
3.償還期限         令和6年8月30日
4.償還方法      令和6年8月30日に一括償還

5.借入利率競争入札について  
(1)応募額         29兆2,685億円
(2)募入決定額      1兆2,490億600万円
(3)募入最高利率        0.000%
(4)募入最高利率における案分比率  4.3484%
(5)募入平均利率        0.000%

これ制度上(債券じゃなくて借入なので)マイナス金利にならないのでマイナス金利状況下におけるある種の人気商品ではあるのですが、と言って貸出金なのでいわゆる有価証券じゃないから有価証券以外の投資ってことになる(特別会計向けの貸出になる)のでゆうて買える業態と買えない業態があるってもんですが、相変わらずお洒落な応札倍率で0%一本値で決着しとるな。

でまあこちらなんですが、確かに表(??)の6MTDBは依然としてマイナス金利の気配で推移しているから、国債金利とのエコノミカリーな意味での裁定で言えば確かにウハウハ利回りなんですけど、国債はホイホイと転売できるし担保にもホイホイ使えるし証拠金にもホイホイ使える訳で、その辺の使い勝手のプレミアムちゅうのもある訳だし、うーん0%か〜と素朴に思ってしまいました。

なお2/1にも交付税特会の6Mがあったのですが、まあこの時点では1月MPMは終わっていましたけれども内田副総裁の金懇はまだでしたし、そもそも短国って1年カレントだけやっとプラスに浮いたのが今週月曜日、というテイタラクですので、順当に0で別にふーんと思っていただけなのですが、そこから20日ほど経過してちょっとさすがにマイナス金利解除が具体的に視野に入る(んじゃないかと思われる)中で6Mの交付税特会ってまだ金利上がらんのか〜とは思いました。いやまあ短国と裁定すると考えたら6Mカレント(TDB1211)の売参って▲0.104%だから大楽勝でお得なレートには見えてしまうのもよくわかりますし、「国債という物」と同様に「交付税特別会計向け貸出金という物」に関しても主計部門や経営部門的な面でお得感のあるプレミアムがあれば多少金利が低くてもそのお得を拾いにいく向きはあるでしょうから、まあよくわからんですけどねー。


〇しつこくパウちゃんのFOMC会見(さすがにその5で打ち止めの予定)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240131.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
January 31, 2024

・足もとようやっと話題になってきた感もありますがインフレの動きのリスクをどう見ているのかという話

労働市場がノーマルになっている、という認識を示した話を昨日はネタにしましたが、ではマンデートの一方というか普通に重要な方の物価ってどうでしゃろという話なんですけどね。

14ページに戻るんですが、

『CHRISTOPHER RUGABER. Hi, Chris Rugaber at Associated Press. Thank you. I wanted to follow up on Rich’s question. It sounded like you suggested that you’re not worried about faster growth so much-so wanted to see if you’re seeing anything that suggests that inflation could reaccelerate from here. And it sounds like you’re saying you’re not worried that solid growth from here on out poses any risk to inflation. Thank you.』

ここでリファーされているリッチミラーさんの質疑は労働市場についての話で(月曜にネタにしました)労働市場は最早過熱という状況ではない、完全にノーマルかというとそこまでではないけれども、まあノーマルと言ってよい、という説明をしていて、だからこそ今後労働市場の一段の軟化が無くても物価目標に向かって物価上昇は沈静化していく、というお話をぶっこんでいました。

でもってここで登場した質問は「するってえと何かい?インフレの再加速は基本懸念してねえってことかい?」とぶっこまれているのですが、これに対する答えは何故か上振れのリスクの話がおっぱじまるんですよね。

以下パウちゃんの答え。

『CHAIR POWELL. No, I think that that is a risk-the risk that inflation would, would reaccelerate.』

初手から全否定で「物価再加速はリスク」とぶちかます。

『I think the, the greater risk is that it would-that it would stabilize at a level meaningfully above 2 percent.』

挙句にパウちゃん「えにりすくオブいんふれーしょん」とか聞かれたのでここぞとばかりにぶっこんでいるのですけども、「the greater risk」として言っているのが「it would stabilize at a level meaningfully above 2 percent」という回答でして、これはパウちゃんわざわざ挿入してきたって感じの流れですから、結構重要な話なんですよね、知らんけど。

しかもその「物価が思ったようにサガランチ会長になった挙句に2%よりもだいぶ上の所で安定してしまうまなリスク」については、

『That’s, that’s, to me, more likely.』

と言っていますがな、ということで回答の続きですけど、

『Of course, if-if inflation were to surprise by moving back up, that would-we would have to respond to that, and that would-that would be a surprise at this point. 』

インフレが仮に再加速するような事があれば(仮定法過去形)それに対応(再利上げ)するのですが、

『But I have to tell you, that’s why we keep our options open here and why we’re not, you know, rushing. 』

そんなこともあるので「I have to tell you」なんだがワシらはそのことも勘案してレートをキープするし急いで行動しませんよ、って言ってるわけで、こういう説明あったのに何か3月利下げの織り込みを剥がすの随分時間がかかったもんだなという風には思うのでした。

『So I, I think both of those are risks, but I think the more likely risk is the one that I mentioned, which is, you’ve had six good months-very good months?but what, what’s really going to “shake out” here? You know, where-what will-when we look back, what will we see? Will, will inflation have dipped and then come back up? Are the last six months flattered by factors that are?that are one-off factors that won’t repeat themselves? 』

この6か月の物価沈静化に関しても大きなファクターがワンオフのものなので実はダマシじゃないか、というのを見極める必要がありまっせ。

『We don’t think so. We don’t-you know, that’s not what we think, but that’s the question we are asking. We have to ask [that], and we want to get comfort on that. 』

騙しではない、という認識なんですけど、そうは言ってもまだその点は確認が必要です、とゆうとる訳ですよ。でもって更問。

『CHRISTOPHER RUGABER. And just one quick follow-up-Governor Waller had mentioned the revisions that are coming on February 9th for the CPI data. Is that something you’re watching as well? And if, if we see those revisions fairly minor, is that going to give you more confidence where things are going?

CHAIR POWELL. We’ll just have to see. Yeah. We’ll?we look at those. Last year was a?was a, a surprise.』

これはこの前ちょろっとネタにしましたけどウォーラー理事がCPIの年次改訂で前年のCPIが遡及改定されて上振れするとかいう事がアリエールなので注意しないといかんよね、の件の質疑でした。


でですな、なんでこのネタかというとちょうどBBGにこんな記事があってですね、
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-20/S95J86DWX2PS00
米連邦準備制度の次の動き、利下げではなく利上げも−市場で臆測浮上
Liz Capo McCormick、Ye Xie
2024年2月21日 3:35 JST
→市場は1年以内の利上げ可能性を幾らか織り込み−オプション分析
→海運運賃を上昇が金融当局の政策に影響するリスク−ピムコ

『米経済を連邦準備制度がどうかじ取りするのかと、投資家は考えを巡らせ始めている。着実な利下げの進行がほぼ確実な様子だったがわずか数週間で様変わりし、いまや利上げが必要になるのではないかとの議論すら浮上している。』(上記URL先より、以下はまあ記事見てちょんまげ)

ほうほうそうですか、ってなもんですが、まあ利上げは兎も角としてパウちゃん会見で「グレーターリスクだし発生する可能性はインフレ再加速よりもライクリーなものとして「物価が下がらんで落ち着いてしまうリスク」がある」って思いっきりゆうとる訳でして、こんだけリスク気にしているのにそんなにホイホイ利下げ着手するのかいなという話になりますよね、いやまあ利下げしておいてインフレ再加速したら「いやーすまんすまんちょっと早かったわ利上げするから許してちょ」で済めばよいのですが、どこからどう見てもそんな事になったら市中引き回しの上打ち首獄門余の者終生遠島を申し付けるになるのは火を見るより明らかなんですから、まあ何ちゅうかその前のアメリカン金融市場ちょっとはしゃぎすぎだったんじゃないですかね、とまあそういう話になるんでしょうな。

なおアメリカン利下げが遅れるのは日銀の正常化に対してはボーナスステージになるんですけど、ボーナスステージの期間があると思うと余裕ぶっかましていつものハトハトチキンジジイに回帰するリスクもあるので中々このバランスというのは難しいなあと思ったりもしました、余談ですけど。





2024/02/20

お題「1年短国がやっとプラスに/引き続きパウちゃん会見ですいません(その4)」

ほうほうほう
https://www.agrinews.co.jp/economy/index/214560
2024年2月16日
「農協マヨネーズ」誕生 3月1日から販売 全農
ビジネス

『JA全農とJA全農たまごは、農場指定の「農協たまご」を原料に使った「農協マヨネーズ」を開発した。化学調味料は使わず、国産のひまわり油や蜂蜜、藻塩を加えて仕上げた。3月1日からAコープ店舗や量販店で販売する。』(上記URL先より)

・・・・・・このサムネを見て「空耳アワー」を思い出す人は何人いるかしら

〇1Y短国プラス金利キタコレですがまあ・・・・・・・・

ということで昨日申し上げていた1年短国の落札結果はご案内の通りですが、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240219.htm
国庫短期証券(第1214回)の入札結果

3.発行日   令和6年2月20日
4.償還期限  令和7年2月20日

5.価格競争入札について
(1)応募額       8兆1,865億円
(2)募入決定額     2兆8,362億8,000万円
(3)募入最低価格    99円95銭3厘
   (募入最高利回り)(0.0468%)
(4)募入最低価格における案分比率 98.6666%
(5)募入平均価格    99円98銭7厘
   (募入平均利回り)(0.0129%)

ということでプラスもプラス、しかもテールが1年債だというのに3銭4厘も流れるとかいう中々お茶目な結果になりやがりまして、これはマイナス金利解除織り込みの・・・・と言いたい所ではありますが、マイナス金利解除後にコールが0に近い方で張り付くというムーブになってやっとこの金利正当化できるじゃろという話で、(アタクシはそんな遅いペースになるとは思わないですが)年に1回利上げとかいうペースだというのを勘案しましても、その金利でエエノンカイというのはあるのですが、何せ今がマイナス金利政策の中ですので、短期でプラスの出る国債、となるとまあどうしても今の時点では貴重品(ここからマイナス解除を何処のくらいマジで織り込むのかによって貴重度はこの先変わると思うけど)なのでしゃーないのかな、とか思ったり思わなかったり。

でもって毎度の売参ちゃんを見ますと、
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

月曜の引け(20日発表って奴)ですと、1214の1年カレントが平均値単利で+3.0bpになっていて、堂々のプラス利回りなのは結構(平均と足切りの間に入れてきたか、という感じですが)なのですが、1個手前の先月の1年短国であらされるところの短国1207は前日と同じく▲4.0bpの引けになっていまして、いやお前需給なのは分かるんだが何じゃその引けの段差はという感じでして、短国のカーブでフォワードレートを引くと物凄い謎の金融政策織り込みが出て来ることになってこれは苦笑を禁じ得ないといった所です。

まあアレです、こういうのも結局マイナス金利政策の影響って奴が出てて、金利のある世界になり、何なら先行きの政策金利だって動くこともある、という世界になってくれば、短国もイールドカーブ、というかフォワード金利の足し算がレート形成に表れて来ると思うというか思いたいのですが、まだまだ正常化への道は長いですな。

ちなみに前にも書きましたが福井の俊ちゃんの量的緩和解除の時は、マイナス金利とかいう邪魔なものは無かったので、俊ちゃん織り込ませ隊による織り込ませによって量的緩和解除の前の確か2月の前半だったかに3M短国利回りとかもガッツリ上昇した(その時の過去ログ当たれば多分水準も書いてると思うけど)りしまして、金利先高感を短国の世界でもちゃんと市場が教えてくれる、という真っ当な市場でしたので、徐々に戻っていただけレバと思います。


・・・・・・ところでですね、今回の1年短国ですが。

(再掲)
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240219.htm
国庫短期証券(第1214回)の入札結果

本日実施した国庫短期証券(第1214回)の価格競争入札及び国債市場特別参加者・第T非価格競争入札について、下記のように募入の決定を行いました。



1.名称及び記号  国庫短期証券(第1214回)
2.発行根拠法律及びその条項
財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律(平成24年法律第101号)
第3条第1項並びに脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)
第7条第1項及び特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項

>脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)
>脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)
>脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)

!!!!!!

えーっとですな
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/2402.htm
入札カレンダー:令和6年2月

ここの表の「詳細」または「価格競争入札等」って所を見ると上記のように発行根拠法が記載されているのですけれども、上記の「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)」が発行根拠法になっている銘柄って今月と先月の新発債をポチポチあたってみたのですが、このR5-32の法令が発行根拠として該当するのは

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/offer20240214.htm
10年クライメート・トランジション利付国債(第1回)の入札発行(令和6年2月14日入札)

1.名称及び記号  クライメート・トランジション利付国庫債券(10年)(第1回)
2.発行根拠法律及びその条項
脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(令和5年法律第32号)第7条第1項
及び特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)第46条第1項

ということで、10年GXに続いて2発目となっている訳ですな。つまりこの国債を買っても投資宣言・・・・・というのはただのギャグですそんな資金使途混じっていたらラベル付きませんし投資宣言できませんわよ悪しからず、という所ですかそうですかw

ま、ゆうて10年GX出た入札が行われたのって、そもそもが資金繰り債確定の3Mと既発分の流動性供給入札ですので、本日出て来る20年国債の「詳細」が入札の正式アナウンスのタイミングで出てくるので発行根拠法を確認しておこっと、という感じではございますな、ただのヒマネタですけどwwwwwwwwwww


〇そういえば当座預金付利階層構造ネタの補足

まあ補足って程でもないのですが、所要準備の何倍部分までとその先で当座預金付利の階層構造を作るってよく考えたら日銀の先駆者であらされたもののとっくの昔に撤収なされたスイス中銀様がマイナス金利政策の時にそれをやってたのですが、まあ昨日アタクシ書いていて何なのですが、冷静に考えますと日銀の場合はそもそも当座預金取引先に「準備預金制度適用外の人」というのが居ますので、じゃあこの人達はどうなりますねん、という話もあったりしますわな。

準備預金制度適用外の人がいるから謎の「前年に当座預金残高を積み上げて日銀の国債買入拡大(既にあの時点でかなり買入の持続性が危ぶまれていた)にご協力した分に対する基礎残高と、それに掛け目掛けたマクロ加算残高という上乗せ措置」という形の物件を作ったら余資は全部運用するのが原則の他人勘定のみがミソッカスになってしまいました、というのがありましたが、プラス金利において所要準備預金(これは昔からずっと0だった)を超える部分に所要準備の何倍かで0金利にするってのも何だか変な感じもする(マイナス金利時代の裏表みたいになってしまう)ので、結局のところ面倒だから超過準備全部付利の方が楽(そもそもそれなら下らん社会的経済的なコストを掛けた管理をしなくて良くなるし)じゃなかろうか、という風にやっぱり思うのですよね、というのを補足しようかと思いまする。

まあアレですよ、ここから正常化していくにあたっては、過去白川時代から積み上げて来て、その積み上げを更にグロテスク昭和温泉旅館の極みにしていまった黒田時代という流れをリバースしていく事になりますので、この手の変な階層構造とかはじゃんじゃん無くしていく方向、というのがどう見ても順当な話になるんでネーノってなもんでごじゃいますな、うんうん。昨日も申し上げましたが「階層構造作って市場取引を活性化させる」とかいうのはマイナス金利政策導入を極端なストレス(実質的な金融機関向け騙し討ち課税状態)を回避しながら実効的な市場金利をマイナスにしながら行ったら偶々こうなった、って話だし、そもそもが市場金利というのは先行きの政策金利動向の読み筋を反映して動く(翌日物と言えども近い将来の政策金利変更が見込まれる中では本来は参加者が準備預金積み進捗の調整を行うことによって需給が変わって来る)もので、付利の階層構造間の裁定が云々ってのそれ本来の意味での市場でも何でもないですから、とまあそのように存じます(思いっきり個人の感想です)。


〇中銀シリーズはいろんな人の発言が出ているものの引き続き暇ネタ状態でパウちゃん会見(その4)

まあこのネタで引っ張るの今日くらいまでにしようかとは思いますけど。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240131.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
January 31, 2024

政策の転換点を模索する時間帯、ということもあってか質疑も割と面白かったんですよね。

・労働市場は「ほぼノーマルに戻っている」という認識

12ページの最後の方からになりますが。

『RICH MILLER. Thank you-sorry. Thanks for taking the question, Mr. Chairman. You mentioned earlier we’re not seeking a weaker labor market, I think you, you said. Can you talk a little bit more about that? Do you-do you think the labor market now is back to quote, unquote, “normal” and that the-we can achieve the inflation target without wage gains coming back down to what they were pre-pandemic? Even with today’s ECI levels, they were still above those pre-pandemic levels.』

ここから労働市場が弱くなっていくことを求めている訳ではない、と前の方の質疑で話をしてたのですけれども、その発言を受けて「じゃあ労働市場ってノーマルな状態(=過熱ではない)という認識でござんすか」と聞いてみたところ、

『CHAIR POWELL. I, I think the labor market by many measures is at or nearing normal-but not totally back to normal.』

まあこの辺の「ノーマル」みたいな言い方ってホワットドューユーミーンバイノーマルってなものなのでフワフワした話になりますが、でもまあゆうてここでは過熱とは言ってないですよね。ここはふーんと思いました。

『And you pointed to one or more of them. So I think, you know, job openings are not quite back to where they were. Wages-wage increases, rather, are not quite back to where they-to where they would need to be in the longer run. I, I would look at it this way, though. The, the economy is broadly normalizing, and so is the labor market. And that process will probably take some time. So wage setting is something that happens-it’s, it’s-you know, probably will take a couple of years to get all the way back. And that’s okay. That’s okay. But we do see-you saw today’s ECI reading-you know, the evidence is that, that wage increases are still at a healthy level-very healthy level-but they’re gradually moving back to levels that would be more associated-given, given assumptions about productivity, are more typically associated with 2 percent inflation. It’s, it’s an ongoing process-a healthy one-and, and, you know, I think we’re, we’re moving in the right direction.』

話の流れで段落切りにくい文章なので結局分けませんでしたが、賃金の伸びが段々落ち着いてきている、ただまあこのプロセスには時間がかかる(2年くらい)のだが、状況はノーマルに向かって望ましい方向に進んでいる、ということで、以前のように労働市場の過熱を冷やさんといかんぜよ、というトーンからはだいぶ変わっている(そらまあ変わってないと利下げ展望しませんけど)ということでございますな。まあホンマカイナというのはあるんですけど。

つまり労働市場が弱くならなくても物価目標の達成は進むんですね、という更問が来て、

『RICH MILLER. So that process can continue without a weakening of the labor market, basically, you’re saying?』

こんなの一言でも良いだろうに何故かパウちゃん演説をおっぱじめる。

『CHAIR POWELL. I think the, the labor market is-it-I don’t know if I’d-it’s rebalancing.』

なるほどリバランス中ね。

『Clearly, that the-there was a fairly severe imbalance between demand for workers and supply at the beginning of the pandemic. So we lost several million workers at the beginning of the pandemic from people dropping out of the labor force. And then when the economy reopened-you remember 2021-you had a severe labor shortage, and it was just-it was everywhere-panic on the part of businesses-couldn’t, couldn’t find people. So, what’s happened is-we expected labor-the labor supply-labor market to come back quickly, and it didn’t. And 2022 was a disappointing year, and, you know, we were kind of thinking, “Well, maybe we won’t get it back.” And then 2023, we did, as you know-so labor force participation came back strongly in ’23, and so did immigration. Immigration came to a halt during the pandemic.』

パンデミック以降の労働市場、というよりも労働供給の状況についてああでもないこうでもないと説明をおっぱじめるパウちゃん。

『So-and so those two forces have significantly lowered the temperature in the labor market to what is still a very strong labor market. It’s still a good labor market for wages and for finding a job, but it’s getting back into balance, and that’s what we want to see. And, you know, one great way to look at that is what’s happening with, with wage increases. And you see it now across the, the major things that we-that we track. It isn’t every quarter, but, overall, there’s a clear trend-still at high levels, but back down to where-what would be consistent with, with where we were before the pandemic and with 2 percent inflation.』

何かやたら長広舌を振るってるのは何でですねんという感じで、別に煙に巻こうとしている訳でもないのにこれですかってなもんですけど、しらっとこの間の説明で労働供給の制約になっていたのが「感染症の影響」というのはまあいいんですけど「移民」ってのをサクッと入れてきていて、いやーパウちゃんってばまたトランプが聞いたら怒り出しそうなことをという感じですな。



・3月利下げ無しを明示的に言った箇所

17ページに飛びます。

『EDWARD LAWRENCE. Edward Lawrence from Fox Business. Thank you, Mr. Chairman, for taking this. So, as I’ve-as I’ve heard from some District Fed presidents, is it, in your view, a little premature to think that rate cuts are right around the corner? And then when we do see that first rate cut, is that-should we interpret that as the beginning of a rate-cut cycle, or is it a one-off?』

利下げが近いと考えるのは他の地区連銀高官が言ってるように現時点ではやや時期尚早とお考えですか?というのと、利下げが行われたとしてそれは連続的な利下げの開始なのか一発下げて見ただけ、になるのかどっちですかの問いに対して、

『CHAIR POWELL. So I’ll point you to that language on your first question. We, we included that language in the statement to signal clearly that-with strong growth, strong labor market, inflation coming down-the Committee intends to move carefully as we consider when to begin to dial back the restrictive stance that we have in place.』

で??

『So if you take that to the current context-current context, we’re going to be data dependent.』

ちょwwwww結局データディペンデントかよ。

『We’re going to be looking at this meeting by meeting.』

おまけにミーティングバイミーティングもw

『Based on the meeting today, I would tell you that I don’t think it’s likely that the Committee will reach a level of confidence by the time of the March meeting to identify March as the time to do that. But that’s, that’s to be seen. So I wouldn’t call-you know, when you say-when you ask me about “in the near term,” I’m hearing that as March. I would say I don’t think that’s-that’s, that’s probably not the most likely case or what we would call the base case. And your second question is?』

どう見ても3月利下げ完全否定でしたなこれ。

『EDWARD LAWRENCE. On, on the-is this the start of a-when we see a cut, is it the start of a cutting cycle, or is it-could it just be a one-off?』

でもって2番目の方ですが

『CHAIR POWELL. You know, that’s going to depend on the data. The whole thing is, this is going to depend on the data.』

まあそりゃそうなんだが、こちらも「データによりけり」ということで、この会見の前の方でもあったのですが、結局の所「転換点に居る状況だと先の決め打ちなんてできねえよ無理無理無理」という話をしておるわけで、フォワードコミットメントとは遠い世界に今はいる、というのが(日本もやっとそうなって来ましたが)のであって、その意味からもドットチャートなんて出すの止めちまえとしか思えませんな。まああんなの出すからこうやって聞かれるわけですよ。

『We’re going to be looking at the economic data as it affects the outlook and the balance of risks. And we’re going to make our decisions based on that. And it could wind up-you know, we’ll, we’ll have another SEP at the March meeting, and, and people will write down what they think. But, in the end, it’s really going to depend on how the economy evolves.』

『We talked about, there are risks that would cause us to go slower-forexample, stronger inflation-more, more persistent inflation. There are risks that would cause us to-if they happen-that would cause us to go faster or-and sooner. And that would be a weakening in the labor market or, for that matter, very, very persuasive lower inflation. Those are the kinds of things. So we’re just-we’re just going to be reacting to the data. That’s the-that’s really the only way we can do this.』

ああだこうだ言ってるけど結局はWe’re going to be looking at the economic dataであり、we’re just going to be reacting to the dataである、という話しかしていません次第で、政策ガイダンスだしてどうのこうのというのはあれはグレートモデレーションだったから、あるいは緩和効果を出すための時間軸効果狙い、以外の時には上手くいかん、っつーことなんじゃなですかね、よー知らんけど。

#ということで本日はこの辺でご勘弁






2024/02/19

お題「月曜なので何か色々と小ネタの雑談でござる(と言いつつ当座預金の階層構造ネタの草案を書いてみた)」

ただでなくさえ日数少ないのに何で祝日2回もありますねん(しかも動かすの無理な祝日なのでどうしようもない)。ということで3月4月に向けてまだ1か月とか2か月半とかお時間があるのが波乱要因としか申し上げようがないのですが・・・・・・・・・・


〇株式市場がなんか金融相場チックになってねえかと思うので日銀は情報発信を再考すべき

えーっとですね、
https://jp.reuters.com/economy/bank-of-japan/BX6GZM5WBVKBTIYYOJVBKIWCRI-2024-02-16/
マイナス金利解除しても、緩和環境は当面続く可能性高い=日銀総裁
和田崇彦
2024年2月16日午後 12:14 GMT+9

『[東京 16日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は16日、衆院財務金融委員会で、物価目標の持続的・安定的な実現を見通せる状況になれば、マイナス金利を含むさまざまな大規模緩和政策の継続の是非を検討していくことになるが「現時点での経済・物価見通しを前提にすると、先行きマイナス金利の解除等を実施したとしても、緩和的な金融環境は当面続く可能性が高い」と改めて述べた。』(上記URL先より)

これなんですけどね、最近の株式市場ちゃんって、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-15/S8X1XWT0AFB400
日本株続伸、日経平均最高値に迫る場面−米軟着陸期待で景気敏感買い
Winnie Hsu、佐野日出之
2024年2月16日 7:59 JST 更新日時 2024年2月16日 15:46 JST

『16日の東京株式相場は続伸。日経平均株価は上げ幅が一時700円を超え、1989年12月に付けた史上最高値に接近した。米国で景気の軟着陸期待や年後半の利下げ観測を背景にS&P500種株価指数が再び最高値を更新し、投資家心理が上向いた。石油や商社など資源関連や鉄鋼など素材関連、金融など景気敏感セクターの上げが目立ち、不動産やサービスなど内需株も高い。』(上記URL先より)

ということでまあ金曜の場合は終盤伸びきらなかったのであんまり最終的には後講釈で出てこなかったんですけど、茲許の株式市場ってこの日銀による「マイナス金利解除しても緩和的な環境が続く」が出て来るとホイホイと指数が上がる、という金融相場チックな動きをしているお姿をよく拝見するわけですよ。

まあ何と申しますか、アタクシ弊駄文で再三再四申し上げておりますように、この物言いって別にホンマモンのコミットメントをしているわけでも何でもないし、何なら2%物価目標達成という状況で短期政策金利が0%台なら全部超緩和政策なわけですから、これは別に利上げしないというコミットメントをしているわけでもないし、と思うのですが、まあ中央銀行が先のことを決め打ちしてくれる世界にどっぷり浸かってしまっているとやっぱりこうなっちゃうんですよね〜。

でまあアレです。為替市場の円安もアレなんですけど、株式市場ちゃんの方が金融相場モードになってしまうとこれは不味いわけで、そのあと日銀が正常化を行おうとした途端にそのリバーサルが来る、という動きになった場合に、もとはといえばその前に金融相場でホイホイとかち上げていた方が悪いのですけれども、世の中というのは日銀が利上げをしたから株式市場が暴落した、というような話にされてしまうわけなのですよこれが世の常。

ということでですね、日銀の情報発信も「緩和政策が続く」ってアピールをするのさすがに大概にしておいた方が良いんじゃないのと思うわけで、「経済物価情勢を見ながらその時点で適切な政策を毎回の会合で点検する、ということに尽きます」っていう風に連呼しておかないと、これ外形的には日銀が金融緩和アピールをして円安と株高を煽っているように見えてしまう(さすがに日銀もアホではないので煽ろうとは思っていないはず)のですよね。

ということでまあ心配になってきたのでここらで「私言いましたよね」をしておくんだが、いやまじめな話もうあんまり変なアピールしないで淡々とマイナス金利解除から2%物価目標に整合的な政策金利水準への移行を図っていった方がエエンチャウノとしか申し上げようがないんですよね〜。


ま、日銀もアホじゃないので、というのは日曜の日経の記事辺りにも表れておるようで

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB157A10V10C24A2000000/
日銀、GDP連続減でも揺るがず 追加利上げも視界に
日銀ウオッチ
2024年2月18日 5:00 [会員限定記事]

『日銀がマイナス金利解除へ向けた発信を本格化している。国内総生産(GDP)は2四半期連続のマイナス成長となったが、解除後も緩和的な金融環境を続ける方針を示したことで政府内には容認論が広がる。解除に向けたハードルは下がる一方、日銀の発信を「ハト的」とみた市場が円売りに動き、再び円安が金融政策に影を落としつつある。』(上記URL先より)

例によって日経無課金おじさんなので記事の内容はわからんですが、追加利上げも視界に、って入っているところを見ると、足元で株式市場が金融相場っぽくなっているのはさすがに牽制しておかないと、と思っているなら結構結構。たぶん為替の方はゆうてアメリカンがこれ以上ひきしめをするわけではないですからともかく、株式市場って金融相場チックに火が点くと結構なやばい奴になるのはジャパニーズクオリティなのでそっちの方がやばいと思いますです、はい。



〇3MTDB入札ちゃんはなかなか金利上がりまへんなあ&今日は1Y入札

いつものように売参を見ながらつらつらと
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240216.htm
国庫短期証券(第1213回)の入札結果

3.発行日     令和6年2月19日
4.償還期限   令和6年5月27日

5.価格競争入札について

(1)応募額     12兆6,726億8,000万円
(2)募入決定額   4兆6,941億7,000万円
(3)募入最低価格   100円02銭9厘5毛
  (募入最高利回り)  (-0.1098%)
(4)募入最低価格における案分比率  84.6566%
(5)募入平均価格   100円03銭1厘1毛
(募入平均利回り)    (-0.1157%)

ということで、▲11.57bp/▲10.98bpとなったわけですが、前週の3Mが▲12.22bp/▲11.09bpなので若干金利が上昇しているのですが、そもそも足が毎週1週間後ろに倒れているわけで、3月か4月にマイナス金利解除してたら5/27なんてもうどっからどう見てもその時のファンディングコストプラスじゃろ、と考えると織り込みな足り申さんバイというところではあるのですが短国なのでシャーナイ(ナンジャソラ)。

でもって金曜日の1213の売参見ますと▲11.6bpということで普通にアベレージ水準だし、何なら1個前の1212の売参は▲11.5bpになっていて何じゃらほいという感じではありますが、まあなかなか金利上がらんですなあという感じです。結局はマイナス金利やってるからTDBの短いところでも結局日銀当座預金マイナスチャージ水準の▲10bpのところで(くそ長いのは別だけど)ニーズが出てきちゃうのかねーとか思いながら。


でもって本日は1YTDBの入札があるわけでございましてですね、

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_auct/auct20240209b.htm
国庫短期証券(第1214回)の発行予定額等

1. 入札予定日 令和6年2月19日
2. 発行予定日 令和6年2月20日
3. 償還予定日 令和7年2月20日
4. 発行予定額 額面金額で3兆5,000億円程度

ということですが、こちらは木曜引けの売参が▲2.5bpだったのですが、金曜引けの売参が▲0.5bpまで金利が上がっておりまして、12月の1YTB(足きりが0.0bpまで上昇した)に引き続きのゼロ水準を見に行きますかってなもんですが(ちなみに1月はあの展望レポートの出てくる前だったので普通に▲5bp水準だったんですけどね)、まあ冷静に考えましてその後の利上げも展望とかいうのにゼロ金利のところで需要が非連続で出てくるのかよ〜うへ〜〜ってなもんでありますが、まあどうなりますのやら話のネタ的に注目をしたいところではあります。


〇バーナンキ・ブランシャールって組み合わせをリファーしながらの渾身(かどうか知らんが)のペーパー来ました

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24e01.htm
何が感染症拡大後の高インフレをもたらしたのか?
――バーナンキ・ブランシャールモデルの日本経済への適用――

単にこの「バーナンキ・ブランシャール」という文字列見て反応しているだけではありますが、執筆陣が豪華、というのも釣られる要因になっております。

2024年2月16日
中村康治*1
中野将吾*2
長田充弘*3
山本弘樹*4

全文掲載は、英語のみとなっております。

*1日本銀行金融機構局
*2日本銀行企画局
*3日本銀行企画局
*4日本銀行企画局
(メールアドレス実際には出ているのですが一応SPAM除けのために載せません)

中村さんはこの前までの企画局長ですし、その他の皆様皆様企画局キタコレということで要旨だけ拝読。

『要旨

新型コロナウイルス感染症の拡大以来、多くの国が高インフレに見舞われている。わが国のインフレ率も、他国に比べるとその水準は低いものの、例外ではない。』

ほうほう。

『本稿では、Bernanke and Blanchard (2023)が提案した賃金・物価モデルを用いることで、』

へーへーへー。

いやね、もちろんバーナンキはんもブランシャールはんも極めて著名なお方ではあるんですけど、ブランシャールと言えばプライスレベルターゲット(前年比2%、ではなくてどっかの時点から起算して毎年2%物価上昇となる物価指数の水準を目標にすべき、という理屈なのでメイクアップストラテジーなどもその応用版みたいなもんですわな)を提唱して当時のFRB副議長のドン・コーンに「そんなことしたら前年対比のインフレ率のターゲットがころころ変わってかえってインフレ期待がアンカーされなくなるだろアホなのか」と、アホなのかとは言ってないけどほぼそのくらいの勢いでこき下ろされていたお方ですし、バーナンキはまあ麿の事さんざん言ってたけど結局何やったんでしたっけってなもんで、まあドン・コーンとかアラン・ブラインダーとかそういう系譜から見たらたぶんお前は何を言ってるんだ系になるじゃなかろうか、と思うアタクシなので何とまあというところではあります。

『わが国において、財市場や労働市場に起因するショックが直接的・間接的な経路を通じてインフレ率と名目賃金上昇率に及ぼす影響を分析する。同モデルを日本経済に適用するにあたっては、わが国労働市場の二重構造を勘案するために若干の修正を加えており、実際のデータをよく説明できることを確認している。』

ふーん。まあこれ本文が英文なので何ともアレなのですが。

『本分析の主要な結果は、以下の3点にまとめられる。』

『第一に、感染症拡大後に日本が経験した高インフレは、労働市場の引き締まりによるものではなく、その大部分が、エネルギーや食料品価格の高騰等の財市場特有のショックによって説明される。意外なことに、同様の傾向は、Bernanke-Blanchard論文における米国の結果でも――労働市場の構造や企業の価格・賃金設定行動は日米で大きく異なるにもかかわらず――確認されている。』

うーん。いやまあそれはそうなんですけど、構造的に労働需給が引き締まるようになっている素地があって、ガソリン充満状態になっているところにイグニッション点けたのが財価格ショックなんでネーノというか、内田副総裁の先日の金懇講演って思いっきり「大規模金融緩和政策で労働市場の需給fが強い状態になっていたからこそ、今回の外的ショックの物価上昇が一過性のもので終わらない可能性が出てきた」ってドヤ顔(かどうか知らんが)で説明していたような気がするので、これはしれっとチャレンジャーな話をしてますなあという風に思ったんだがどうなんでしょ。

『第二に、この間のわが国におけるインフレ率が米国に比べて低いことは、基調的な物価上昇率についての感染症拡大以前の初期条件の違いや、感染症拡大後の労働需給の引き締まり度合いの違いによって説明できる。』

『最後に、モデルからは、わが国において、労働市場の引き締まりがインフレ率に与える影響が、米国と比べて相対的に弱いことも確認される。』

ということで、労働市場の引き締まりがまだ足り申さんと言ってるのか、それとも労働市場の引き締まりが米国ほどではないのでインフレが米国のように上振れするリスクは対米国で見た場合に相対的に低い、というインプリケーションを出したいのかはよく分からんです。

なお英文は読んでもワシの場合は破綻の泡吹きジジイになるだけなのでURLだけ貼っておく

https://www.boj.or.jp/en/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24e01.pdf
What Caused the Pandemic-Era Inflation?:
Application of the Bernanke-Blanchard Model to Japan

Koji Nakamura*
Shogo Nakano**
Mitsuhiro Osada**
Hiroki Yamamoto**


〇マイナス金利解除後の当座預金構造について妄想してみる(とりあえずドラフト)

まあ何ですな、金利の中の人達はご案内の通り、マイナス金利解除後に当座預金がどうなるか、という話がありまして、何も付利をしないと市場の金利って0に張り付いてしまって固まってしまいます、というのがあって、まあそれはそれでいかんじゃろというのがあります。

ちなみにこの場合はGCレートが微かなプラスで推移し、よほど利上げ観測が出てこない限り短国は0以上にはよーならん(今のマイナス付利より低い3Mの構造と同じ理屈)とという話になり、資金繰り要因でコールを取る人、が発生するのかも怪しいですけどそういう人がいたら同じく微かなプラス(事務経費賄えるくらいの運用利回り)になるんでしょうな。

ということでまあ超過準備に付利をするでしょう、ってのは誰でも想像がつくのですが、なんせですね、15日の確報ベースで見ますと、

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jd240215.htm
日銀当座預金増減要因と金融調節 (2月15日<木>分)

当座預金残高(2/15確報)5,409,900
準備預金残高(2/15確報)4,741,100
超過準備(2/15確報)  4,741,100
非準預先残高(2/15確報) 668,800

とまあそんな数字になっておられるわけでした、所要準備が13.1兆円(13.05だけど)で超過準備が474.1兆円、あと準備預金非適用先の残高が66.9兆円あるわけですので、まあ本来なら超過準備全部に0.1%なら0.1%で付利するのが一番スッキリした形なんですけれども(ちなみにFEDの場合は所要準備にも付利していて当座預金全額付利)、まあ金額がデカすぎますわな、というのは無い訳ではない。

ちなみにこの時に皆が当座預金に置いてしまって運用しないから市場機能ガーという論点は無くはないのですが、GCレポで調達する人が世の中にいるのと、マイナス金利で鳴りをひそめていた(というかマイナスなので運用できなかった)MRF16兆円弱がコールに戻ってきて、勿論全部じゃないのですけれども、こちらの信金繰りの部分も出て来る、という図がありますし、元々からいる日銀当座預金制度の外側にいる人達の資金運用ニーズがあるので、この人たちがコールなり何なりで運用してくるのは変わらん、という図がある訳ですな。

なのでまあ超過準備全部に付利すりゃ良いじゃんと思いますが、まあそれでは日銀の払いが多すぎやしませんか、というのであれば、何かよくわからんけど「超過準備のうち所要準備の3倍までの残高に関しては付利をしない(3倍は今思いついた数字)」という方式にすれば、日銀の付利の払いがちったあ減るというのはありますわな。

いやまあそれって経済的に言ったら準備預金率の引き上げみたいな事ゆうてませんかとツッコミをされそうですが、まあそれ以上に超過準備を積めば付利されますから攻撃で勘弁して頂くとして、これなら限界的な部分では常に超過準備付利金利水準よりも低い金利での調達ニーズと、高い金利での運用ニーズが発生することになるので、コールは10bpよりも下(だけど10に近い所)で基本は推移することになるんでネーノって話になりますわな。


これですね、逆をやりますとどうなるか、つまり付利をするのは一定水準(例えば所要準備の10倍までは付利するけどそれ以上は付利しない)まで、ということにしますと、限界的な部分で常に0金利以上であれば運用するニーズが発生してしまいますので、これはコールなどのレートが0に張り付いてしまう格好になって、たぶんこれをすると市場がシュリンクするだろうなあって思うのですよ。何でかと言えば今の市場もどきってこれ「マイナス金利の押し付け合い」によって成立している市場もどきですので、マイナス金利だけなくして限界的な部分の付利をゼロにしてしまいますと、押し付け合いをする人がいなくなるだけの話で、つまりはコールをマイナスで運用する人いなくなってしまいますから、市場シュリンクするじゃろという話。


あとですね、今の階層構造ってのがどうなるのかというと、まあ基本的にこの階層構造っていうのは「マイナス金利政策を騙し討ちで打ち込んだものの、その前の時点で超過準備に10bpの付利をすることによってQQE政策におけるMB拡大(長期国債買入拡大)を円滑に回してきた(付利が無かったらそもそも超過準備積むインセンティブが起きない)手前、いきなり明日からマイナス10bpのペナルティ金利というのは信義に悖る、というのがあって(これが基礎残高の意味)、超過準備の全部をマイナスチャージすると金融機関に対するとんでもない収益吸い上げ要因になって、それこそ金融緩和しているのに金融機関引き締め状態になってしまうので、超過準備の限界的な部分だけマイナスチャージすることによって、マイナスチャージの押し付け合いという現象によって市場金利をマイナスにする事が出来るのと、事実上の金融機関課税の額を減らすことができる、というのを狙って作っているのでこういう階層構造になっている訳です。

でもって3層構造のうち基礎残高は固定、マクロ加算残高と政策金利残高ってのは片方を決めると必然的にもう片方が決まる格好で、マクロ加算の方を決めて限界的な部分になる政策金利残高がだいたいシステム全体でネットアウトすると5兆円になるように調整している、という形なのすが、まずどう見ても基礎残高っての要らない訳で、限界的な部分には付利する形にしないとマイナスチャージの押し付け合いが無くなってしまうので市場金利が0に張り付いてしまう、と考えると、この3層は事実上1層になるしかないという話ですわな。まあさきほどのように「所要準備の何倍部分までは付利しない」という階層が出来るかもしれませんのですが、まあ元々の意味での3層構造は崩すでしょ。と思うのです。



さらにですね、これ途中の部分で階層金利をつけたらどうなるのよ、というのもあるかもしれませんが、まあ普通にそれって筋の悪い話で、何で筋が悪いのかと言えば、はっきり言ってそれ何のエコノミカリーな根拠もないものなのに、そんなもんおっぱじまったら各銀行の資金部門の皆さんはこの階層の残高とかの管理を無駄にさせられることになる訳ですな。ただでなくさえ今だってマイナスチャージ食らう話だから仕方ないけど、参加者の皆さんって自行の当座預金残高の積数計算してマイナスチャージとの間でどういう状況なのかとかマイナスチャージこの位になりそうとか、そういうのを行内の関係各位に報告したりしているんじゃねえのと思うのですが、変な階層つけられたら同じような不毛な作業を全国津々浦々の金融機関の資金部門でやるようになるとか端的に言ってそんなの社会的に無駄な作業になるんで、まあ段階金利とかそういうアホなことはダメ!ゼッタイ!!!!と思うのですが日銀って変に頭いいから何か賢そうなこと考えかねないのが懸念ではありまする。

マイナス金利政策を実施して、金融機関への過度な実質課税にならないようにして、かつその前の時点までQQE政策に協力をして超過準備の積み上げをしていた金融機関に対しての信義も守る、ということでぶっこんだのがこの3層構造(実は所要準備0付利があったので4層構造だったんですけどね)な訳でして、そういう事情が無くなれば当然3層構造とかアホみたいに管理がめんどくさいことしなくて良かろうというのがボトムラインにある、ということですな、うんうん。


https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/index.htm
業態別の日銀当座預金残高

こちらのエクセルちゃんを出しまして、右のタブの方を見ますと・・・・・・・・・・・

(参考)付利の対象となる当座預金残高(当月16日〜翌月15日の平均残高、適用金利別)1

ってのがあるんですけれども、いっちゃん下に『補完当座預金制度適用先合計』があるのですが、 (数字は脚注です)

『当座預金残高2,8』の内訳は

"プラス金利 適用残高3"
"ゼロ金利 適用残高4"
"マイナス金利 適用残高5"

になっているのですが、このゼロ金利適用残高が、

"上限値のうちオペ2階部分
"上限値のうちMRF受託残高
"上限値のうちマクロ加算残高枠増額措置分
"上限値のうちマクロ加算残高枠圧縮措置分(控除)

ってあって最早カオスなのはご案内の通りですが、オペ2階部分とかの奨励金状態になっている(そういうのに使うなよという話だが)どうしますのんというのはありますけれども、まあこれだけは高率付利をする形にするのかね、とは思うのですけれども、なんちゃら支援オペって基本的に0.1%の4年固定とかで貸しているので、利上げしたら別に要らねえじゃん説は無くはない訳でございまして(というかあのオペいつまでやる積りなの長期固定金利方式)、まあ0金利だとちょっとまだという感じですけれども、25bpになったら要らんじゃろという気はしますけどどうなんでしょうかね。(MRF特則はマイナスチャージ無くなれば必然的になくなるでしょう)

そもそもこれもマイナス金利で日銀の貸出が出来ないので残高積みたいために行っていた措置になるので、別に利上げして元々の貸出だが大サービスレートになったら要らねんじゃないかとかそんな気はせんでもない、というお話ですな。

何かもう付利の所の基本的なデザインの他に、補完当座預金付利制度を使って変な奨励金みたいな制度を後付けでゴテゴテとつけてしまったので、ここもまためんどっちいのと、そもそも25bpになったら実はこまけえこたあいいんだよという事になりそうな部分もあって面倒ですな、まあ昭和温泉旅館の増築におかれましてはちったあ後先の事を考えろという話ですが、後先の事を考えられないから昭和温泉旅館になるということですわ、あっはっは。

あ、ちなみにコール市場残高
https://www.boj.or.jp/statistics/market/short/call/index.htm

その他とも計
          有担保   無担保
2024年 1月     29,366   149,610

ですがDD除くなので全体はワカランチ会長。





2024/02/16

お題「GDP実質マイナスかよ(雑感)/FOMC会見ネタ今更ですがその3ということで」

なんすかこの米債連動状態は(とほほ)

〇GDPがどうしたこうした備忘メモ

皆様ご案内の通りですが
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-15/S8VPRCT0AFB400
日本経済は3期連続のマイナス成長も、1−3月も低迷続くとの見方
氏兼敬子、藤岡徹
2024年2月15日 15:23 JST

→10−12月の一時的押し上げ要因剥落、自動車大手の出荷停止の影響も
→マイナス金利解除は4月か3月、次の利上げはしばらく先に−新家氏

いやー民間エコノミスト予想でマイナスっていましたっけ状態でしたからアイヤーって感じなのですけどね。

『日本経済は1−3月期も低迷が続き、3四半期連続でマイナス成長の可能性があるとの見方がエコノミストの一部から出ている。 金融政策正常化のタイミングを探る日本銀行にとって悩みの種となりそうだ。』

『内閣府が15日発表した昨年10−12月の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率0.4%減と市場予想に反し減少した。物価高で個人消費の低迷が続いたのが主因で、知的財産権使用料の受け取りという押し上げ要因がなければ、マイナス幅はより大きかったとの指摘が多い。1−3月のGDP速報値は5月に公表される。』(上記URL先より)

とのことですが、マイナス金利解除には何ら影響しないでしょうし、まあその先に関しては様子をちらちら伺いながらにしても、(色々と考え抜いた結果を月曜の駄文に垂れ流そうかとは思っていますが)マイナス金利解除だけだと割と運営がめんどいこともあるし、まあ0.25%くらいはサクッと利上げするのにそんなに問題かよ、というのはありますな。

またもメタ読みの世界になって恐縮ですが、そもも今回のGDPって名目は上がっておる訳でして、実質下がった背景には2%マンデートを越える物価上昇があるのは明白でして、上記記事にも「物価が高杉晋作なので消費がアイヤー」というのがありますように、そもそもがコストプッシュ物価上昇パワーが効いちゃっている(ので賃金があがらんとアカン、というのが日銀様の理屈な訳よね)のですし、もしこれを見て緩和政策をもっとやらんとアカンというスタンスを明確にしてしまいますと一段の円安進行でまたも誰得コストプッシュの上塗りになってしまう訳ですわ。

まあそれにですね、なにせこの人達は「2%物価目標」に対する見方を示した「展望レポートのハイライト」のイラストで、「順風を受けて進むヨットの行く先に2%のゴールが見える」→「峠の先の山の頂上に双眼鏡で見ると2%のゴールが見える」→「果樹農家の若夫婦が双葉を植えて将来2%の実が成る姿を想像している」→「広場に巨大な2%オブジェが登場」というどっからどう見ても(最後だけ)脈絡の無いものを3か月おきに平然と出してくるのが大本営クオリティな訳ですよ。

つまりですね、大本営からしたら「何の政策を志向するのか」というのが最初にあって、経済物価情勢の判断なんちゅうのはその後付けで出している、ということとしか思えないわけですよね、あの前からの流れと全く脈絡の無い「2%巨大オブジェ」が出て来るとか、いやその間に何か革命的な事でも起きているんだったら話は別ですけど、その間にあったことってまあ大体従来の想定通りだった(そもそも展望レポートの見通しだって10月と3月概ね同じなんですからね)訳で、まあどんだけ経済物価情勢後付けで政策やってるのよ、というお話。

つまりですね、記事の続きを見ますと、

『1月の金融政策決定会合以降、日銀から政策変更への地ならしとも取れる情報発信が相次いだ。今回のGDPは3月か4月の会合でマイナス金利の解除などの正常化に踏み切るとの市場の観測に冷や水を浴びせた格好だ。日銀は景気が緩やかな回復を続けるとの見方を示してきたが、正常化に向けてより慎重な判断を迫られそうだ。』(上記URL先記事より)

エコノミストだったら当然そういう話になるんですけど、大本営はエコノミストではない、というのをよく考えて頂きたい訳ですよ。どうせ今回のGDPだって「名目ベースではプラス成長を続けており、物価が2%に向けて落ち着く過程で実質GDPも改善されて行く、何ならここからは昨年並みまたはそれ以上の賃金上昇と政府の支援策によって家計の実質所得も改善するので日本の未来は明るいぜよ(キリッ)」って屁理屈かましてきて平然とスルーすると思いますがね。

まあこれまでは「不確実性ガー」とか言って海外がなんとかかんとかとか言って政策修正を渋る言い訳にしていた時期もありましたが、政策の方が先にあって経済物価情勢の話は後付けの膏薬である、と思ってしまえばまあ極めて話はわかりやすい訳でして、繰り返しますがワシらが対話している大本営とかいう相手はエコノミストではないんですよ、という認識で掛からないとアカンじゃろという身も蓋もない雑感なのでありました。

・・・・・・ってまあよく考えたら酷い話ではあるのですが、そもそもQQE自体が政治まみれ案件で、それを早期に穏便に撤収すればよいものを政治まみれ案件だったから体面上撤収しないで昭和温泉旅館にしちまっているから、この昭和温泉旅館の撤去に関してもエコノミカリーにどうとかいう話よりも、まずはどうやって穏便に撤去するか、ということから入らざるを得ない、というのはあるのでその点では大本営に同情の余地はあるのですが、まあゆうて導入および昭和温泉旅館絶賛増築をした時の大本営の人達が持ち上がって大本営におられるようですので、身から出た何とやらという奴なんですけどね!!!!!


〇まあぼちぼちとFOMC会見とかいう暇ネタを(ヒマでもないんだが)

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240131.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
January 31, 2024

・経済情勢の解像度をリアルタイムデータで上げるよりも枯れた技術を活用しましょうという話

こちらは本文10ページ目になるんですけどね。

『RACHEL SIEGEL. Hi, Chair Powell. Rachel Siegel from the Washington Post. Thanks for taking our questions. So, over the past few years, there have been all these real-time indicators that helped us gain a sharper understanding of where the economy was, like OpenTable data or office attendance. You’ve talked about vacancies in the past. And I’m wondering, at the start of this year, what might be on that dashboard for you that’s giving you the clearest picture of the economy-including on rents-if you could touch on that.

CHAIR POWELL. Including?

RACHEL SIEGEL. Rent. Rent costs』

経済物価状況をよりクリアに把握する経済データってどんなのがあって今どのウォッチリストには何が入っていますか?という質問で、質問している中で最近出てきたリアルタイムデータ使った指標何かもあるよね、という事で聞いているのですが回答の流れが味わいがあります。

『CHAIR POWELL. Yeah. Well, so we’re not-you know, it’s not the pandemic, so we can actually rely on more, more traditional forms.』

いきなり一発目でこれ。パンデミックの時は過去との断絶みたいな感じになっていたけど、今はトラディショナルな形で分析行けまっせ、という話をしておりまして、これは何とかリアルタイムデータとかドヤ顔でやってる人たち涙目という感じですが(それは言い過ぎw)、

『People are working. They’re getting wages, and, and the economy has largely reopened and is broadly normalizing, as you see. So I wouldn’t say we’re looking at that, that sort of more innovative data as much.』

別に最近のイノベーティブなデータを見ないとは言わないけど、人々の経済活動が正常な状態に戻っているのですから、従来見ていたような伝統的な経済データを見れば良くて、そんなにいわゆる革新的なデータに頼る必要はありません、とぶっこんでおります。やっぱりリアルタイムデータの皆様涙目と。

・・・・・というのもあるんですけど、これ結局のところ「経済の状況の解像度を兎に角上げて行く」というのよりも重要なのは「経済物価状況の先行きを出来るだけ正しく判断して、適切な金融政策運営をする」ってのが中央銀行の本来のお仕事であって、経済の状況の把握はそのための手段なのですから、その解像度を上げるのが悪いとは言わないけど、血道を上げて取り組むものか、という問題と、そもそもその手法で本当に解像度が上がるのかという問題がある訳で、だったら従来の「枯れた技術」を用いて判断するという話になる、って話に通じているんじゃないのかなと思うんですよ。パウエルはそこまで詳しく話をしていないけど。

なおこの「枯れた技術を活用する」っての大事な話で、つい最新技術を駆使したくなるのが人間の性なのですが、安定稼働をする枯れた技術で運営しないとイカンものってのは沢山あるんですよね・・・・・・・・

なんですかね、日銀でもその傾向があるんですけど、最近ってリアルタイムデータを活用して云々ってやたら流行っているし、あれって多分分析する方としては色々と面白いと思うんですよね。でまあそれを研究するなとまでは思わないし、それでよりよい分析が出来ればいい話ではあるんですけど、こういうデータいじりって面白いからついそっちにのめり込んでしまって気が付いたらそっちにリソースを全振りしてしまうような弊害が起きやすいんだよなーって毎度思うんですよアタクシ。ってのがあってまあメタ読みし過ぎかもしれませんが、この部分面白かったなと思いました。まあパウちゃんはリーガルの方なのでデータを突き詰める方に興味ないというのもあるのかもしれませんけどね。


さてその枯れた技術論の次にパウちゃんの回答は続くのですが、

『You know, you point to rents. So, of course, we follow the, the components of inflation very carefully. Which would be: Goods inflation-I talked about that a little bit; you mentioned housing inflation. So the question is, when will these lower market rents find their way into measured rents, as measured, measured in PCE inflation?』

『And we think that’s coming, and we know it’s coming. It’s just a question of when and, and how big it’ll be. So-but that’s in, in everyone’s forecast, I would say. So that will-that will help. But at the same time, we think goods inflation will probably-it’s been giving a lot of disinflation to the effort-and probably that declines over time, but it may well have some, some more time to run. You know, these-the supply chains are not perfectly back to where they were. In addition, it takes time for the, the healing process to get into prices. So there may be still a tailwind. We’ll find out with, with that. So we look at the things that relate to our mandate very carefully, and-as you would imagine.』

後半はインフレーション動向をどうやって見ていくか、という話からいつの間にやら財のインフレの現状認識の話になっておりまして、まあ最初の質問の「経済をクリアに見るための最新手法物を含めた経済指標ってあるのかね」の回答はさっきの部分だという事だと思います。

でまあこちらは延々と財のインフレの動向についての話をしていまして、依然として供給制約の問題が一部に残存しているのでそれがインフレ鎮静化の足を引っ張っているという認識を示しているのはほほうと思いました。

で更問ですがこれは別の質問でして。

『RACHEL SIEGEL. I guess, just as a quick follow-up-do you feel comfortable at this point saying the economy has reached a soft landing, or is that part of looking for more confidence?』

ソフトランディングへの見通しや如何?ときました。

『CHAIR POWELL. No, I wouldn’t?I wouldn’t say we’ve achieved that. And I, I think we have-we have a ways to go. Inflation is still-you know, core inflation is still well above target on a 12-month basis. Twelve months is our, our target, certainly. I’m encouraged, and we’re encouraged by the progress. But, you know, we’re, we’re not-we’re not declaring victory at all at this point. We think we have a ways to go.』

まあここは想定通りで「今の状況はエンカレッジングだがまだ先の道のりはありまっせ」でした。



・中立金利の話

本文11ページ(つまり今の質疑の次)になります。

『STEVE LIESMAN. Thank you, Mr. Chairman. You’ve said that you would know the neutral rate by its works.』

ほうほう中立金利。

『So I’m wondering what you could tell me-how do you believe the neutral rate is working or telling you right now that growth is stronger?』

『In other words, how much is the economy really being restrained right now by the current funds rate? And how much restraint does it really need, additionally, if inflation is still coming down?』

今の(名目)中立金利に対して政策金利がどの程度引き締め的(上方乖離)しているのか、また物価を2%マンデートに沈静化させるためにはどの程度の引き締めが必要なのか、という点どのようにお考えか、というまたこんなのシランガナな質問ではあるのだが、そもそも中立金利の話をしだしているのはFEDなので(ロンガーランの政策金利をSEPで堂々と出しているのどう見ても今となっては自分の首を絞める方向にしか作用しないし、そういう意味でセントルイスの変態仮面ブラード総裁って「ワシはロンガーランの政策金利なんてもんは明示的に出さんし出せん」と言い張ってずーっとSEPのドットチャートでロンガーランだけ出していなかった(ので変態仮面いた時のドット計算すると合計が合わないんですよ)のはさすが変態仮面という所なんですけどね。

パウちゃんの回答。

『CHAIR POWELL. So it’s-I think you, you do see in the interest-sensitive parts of the economy-you do see, for example, housing. You see the effects. You do. Your, your second question, though, really, I think, is important, and that is, a lot of this has come through-a lot of the disinflationary process has come through the healing of supply chains and also of the labor market. So you’ve seen the-you know, that other set of factors is really different from other cycles and has brought that working with tighter, tighter policy, which has enabled the supply side to recover-I think is that, that mixture has been behind what has enabled this. So, no-we really do think that we’re having an effect broadly across the economy. I would point to the interest-sensitive parts of the economy as well as spending, generally. But it’s a-it’s a joint story. It’s a complicated story.』

そりゃまあこれはうにゃうにゃとナマクラ回答するしかないのですけど、「金利に敏感なセクターの動向に金融環境が引き締め的かどうかというのは良く出て来る」し、「その他消費など経済全体にも出て来るでしょう」し、「まあゆうて読み解くのは複雑です」とかナマクラ回答をするのですが、そんなのでは当然更問が飛んでくるわけで。

『STEVE LIESMAN. But, but how much restraint are you actually imparting to the economy, would you say, relative to the neutral rate?』

思いっきり「お前こっちの聞いてることに答えてないだろ」状態のリピートwww

『CHAIR POWELL. It’s-so I think it’s, it’s-of course, you know that it’s not something you can identify with any precision.』

まあ結局そういう回答になるわな。

『But if you-a standard approach would be to take the nominal rate-5.3 percent, let’s say-and subtract sort of a, a forward measure of inflation. If you do that-and there are many, many ways to calculate the neutral rate?but that’s one I like to do. And, you know, you’re going to get to something that is materially above mainstream estimates of neutrality-of the neutral rate-you will.』

『And-but at the same time, you look at the economy, and you say, “This is an economy that grew 3.1 percent last year.” And, and you say, “What does that tell you about the neutral rate?” What’s happening, though, is, the supply side has been recovering in the middle of this. So that, that won’t go on forever. So a lot of the growth we’re seeing is not-is-it isn’t just a tug of war between, between interest rates and demand.』

『You’re getting, you know, more activity because of the-of labor market healing and supply chains healing. So I think the question is, when that peters out, I think the, the, you know, the, the restriction will show up probably more, more sharply.』

ああだこうだとムニャムニャ説明していますけど、結局のところは「実際の経済の状況をみて金融が引き締め的なのかは判断できるでしょ」「ただどの位なのか、と言われると今次局面で言えばパンデミックや地政学問題などの影響があったり残存したりしているからクリアカットに分かるもんでもない」というような話をしております。

まあ何ですな、これって要は「中立金利がこの水準だからそれとの対比で金融政策を運営していきます」っていうような従来型というかついこの前までのインフレーションターゲッティング政策におけるアプローチとは結論は同じであっても背景となる思想は違うのであって、いわゆる中立金利をクリアカットに計測してというような分析的と言えば分析的なアプローチなのではなくて、状況見ながら判断していきますっぽい総合的判断で柔軟なアプローチともただの出たとこ勝負のアプローチとも言えますが、そういう方向に今の中銀のトレンドがあるんでしょうなあ、とまたも壮大な事を妄想してしまいました、という雑談でした。





2024/02/15

お題「現先オペ実施とかメモ/ウォーラーが利上げガイダンスの問題点を指摘しているので裏を返せばハト思考」

ほほう。
https://www.agrinews.co.jp/news/index/214328
2024年2月15日
「エッグショック」で需要減、輸入定着 鶏卵急落 生産抑制へ

『高騰していた鶏卵の卸売価格が急落している。「エッグショック」と呼ばれた昨年の供給減で加工業務需要が縮小。輸入品に流れた需要も戻り切っていない。一方で生産は順調で需給が緩和した。業界は生産抑制を呼びかけ、相場の浮揚を探る。国の補填(ほてん)事業も約2年ぶりに発動されたが、飼料価格の高止まりが鶏卵経営の負担になっている。』(上記URL先より、以下同様)

供給制約で品出しが出来ない時に値上がっていざ供給制約が緩和されると値下がりな上に投入コスト(飼料価格)が高止まりとは踏んだり蹴ったり。

『鶏卵の建値となるJA全農たまごの2月のM級基準値(東京、14日時点)は1キロ183円で高かった前年同月比で4割強下回る。昨年は鳥インフルエンザ感染拡大による供給減少や、ウクライナ侵攻に伴う飼料代の値上がりで生産抑制が広がり、品薄高となった。ピークの4、5月は350円に達していた。』

『例年、鶏卵相場は需要期を過ぎた年始に価格を下げた後、上向く傾向だが、今年はその動きが鈍い。スーパーの店頭価格も、卸売価格ほどではないが下げ基調とみられる。』

確かに・・・・・・(一頃はガチの品薄でしたからね)


〇またも現先オペキタコレなど(備忘メモ)

備忘メモですサーセン。

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of240214.htm
国債買現先(注4) 25,000 2024年2月15日 2024年2月16日

(注4) 応札レート(期間利回り)は、-0.10%を下限とします。

昨日もトモネの国債買現先がオファーされました。ここもとGCが強めに推移しているからということですが、まあマイナス金利解除後の当座預金付利運営を考えたムーブとかもあるような話もあったりなかったりするみたいですが、この当預付利運営に関してはちょっと週明けにでも色々と妄想したのを少し投下しようかと思っているのですが、なんせアタクシの脳内妄想で作成するものなのでまあ異論は大いにありそうな話になると思うの。

でもって落札結果ですが、

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba240214.htm
国債買現先(2月15日スタート分) 36,750 25,003 -0.100  -0.090 5.3

ということで今回は平均が▲9.0bpになって、下限金利の▲10bpの按分が極薄になったのは少し市場っぽさの戻る萌芽という感じでして、いつまでもあると思うなお助けオペということで、いやまあお助けはお助けで行われるにしても、毎度毎度応札下限金利でかっつりとファンディングがついてしまう、ってことになると寝転がる参加者が増えてそれこそ市場機能が復活しない訳でして、まあ今回は応札が1.1兆円多いせいでもあるのですが、こうやって少しはオペの金利の方が市場実勢レートに近くなってこないとアカンヤロとは思うのでありました。

まあしかし日銀のオペ運営ってのもこれがまた大昔リーマンショックがあった後に発生したカウンターパーティーリスク意識からのオープン金利高止まり時代(GCレポ金利がロンバート金利に張り付いてしまってオープン市場の金利が軒並み高止まりしてCPの金利とかも大きく上昇してしまい、短期金融市場が引き締まりまくった時)ではオープン市場の金利がクソ高止まりしているのにコールが誘導目標範囲内だからとオープン市場放置プレイをした(結局やり過ぎの結果CP社債の買入をせざるを得ない状況に追い込まれた)もんですが、今回はまあ確かにマイナス金利政策をやっているから金利があんまり浮上するのは怪しからんというのは分かるのですが、国債買現先が毎度毎度下限金利になってしまうという形で(市場の厚みがないからまあその点の同情の余地はあるんだげど)どうしてそう両極端になってしまうのよ、とは毎度思うのでありまする、はい。



・GX国債

GXの分のプレミアムが何ぼなのかという話でやってましたが。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/resul20240214.htm
10年クライメート・トランジション利付国債(第1回)の入札結果

3.表面利率   年0.7パーセント
4.発行日   令和6年2月15日
5.償還期限  令和15年12月20日
6.応募額   2兆3,212億円
7.募入決定額  7,995億円
8.応募者利回り(募入最高利回り)  0.740%
9.発行価格   額面金額100円につき99円62銭
10.募入最高利回りにおける案分比率 67.7966%

10年カレントのクーポン違いの同残存なのですが、前日までのWIの気配だとなんか知らんけどGXプレミアムが5bpも6bpもつく勢いだったのですが、いざ入札をしてみたらプレミアム1bp行くか行かないかという結果になって、プレミアム0とかマイナスには止めビットが入るでしょうからそう考えると割とションボリーヌな入札でしたが、売参見ますと(引用割愛しますが)複利2bp位のGXプレミアムで決着したようです。

でまあこのGXプレミアムとは何ぞやという話ですが、正直良く分からんのでコメントはしませんw只のメモだけ。


〇ウォーラーが政策ガイダンス設定でガチガチにやるのイクナイと指摘だが裏を返せばハト思考でもある

パウちゃんの会見ネタの続きをやろうと思っていたアタクシにこれは絶好の釣り糸が垂らされました!!!!

これわwwwwwwwwww
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-14/S8UWUMT1UM0W00
FOMC、20年ガイダンスは柔軟性欠く−ウォラーFRB理事らの論文
Craig Torres
2024年2月15日 4:11 JST

『米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事とジェーン・イーリグ上級政策顧問は、新型コロナウイルス禍の時期に当局が示した政策ガイダンスについて、急速なインフレ高進に迅速に対応するための柔軟性が不十分だった可能性があると指摘した。』(上記URL先より、以下同様)

まあどう見ても仰る通りなのですが。

『ウォラー、イーリグ両氏は、14日にFRBのウェブサイトに掲載された新たな研究リポートで、政策金利の先行きに影響を与えることを目的とした2020年9月と12月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合の声明での文言に注目した。』

これ本当は9月にロンガーランストラテジーのモディファイもしていて、そっちっていまだに変わっていないのでそれに関しても論評しないのかと思うのですが、何せそっちは今でも生きている上に、当時自分の書いた書き物を読み直すと、アベレージインフレーションターゲット的な考え方は入れているのですが、使い方によって何とでもなる装置にはなっていたんですよね。

ただまあメイクアップストラテジーの方が前面に出てしまってダビッシュという事になった訳ですし実際の運営が「物価はどうせ上がらん」を前提にして金利上げないガイダンスを入れてしまった、という方を今回批判しているようですね、うんうん。

この時に黒ちゃんや雨宮さんが大喜びで「我々のオーバーシュート型コミットメントはまさに今回FEDが示したメイクアップストラテジーと同じであり、つまりはメイクアップストラテジーはワシが育てた」とか吹聴していたのが昨日のように思い出されるわけですが、結局このメイクアップストラテジー的なものに引っ張られてFEDは引き締めの着手が遅れたからアホみたいに金利を引き上げないと行けなくなった、という話になっている訳ですので、「ワシが育てた」とか今となってはギャグにしかならん、という大変に香ばしいお話でもあります。

まあ何ですな、うっかり「ワシが育てた」とか言わんほうが良いという教訓を得ることができる訳ですが、如何せんこうやって昔のネタをほじくり返して悪態つく人もマニアか変態と決まっていますので麿みたいに誠実に後になってからもちゃんと整合性を気にする人じゃないと堪えないというのが残念なところですわアヒャヒャのヒャ。

あ、ちなみに2020年ジャクソンホールでの講演とロンガーランストラテジーのモディファイにつきましては拙駄文の2020年8月28日で愚考をしておりまする、過去ログはこちら→
https://doramemon7743.sakura.ne.jp/doramemon2008.html#200828

でもって記事の続き。

『20年9月のFOMC会合の声明では、「委員会が判断する最大限の雇用水準と労働市場の環境が整合的になるまで、またインフレが2%に上昇し、一定期間2%を適度に超える軌道に乗るまで」、ゼロ−0.25%というフェデラルファンド(FF)金利誘導目標のレンジを維持することが
適切になるとの予想を示した。

イーリグ、ウォラー両氏は「引き締め政策のプロセス開始さえも、最大限の雇用に向けた一段と顕著な進展を前提としたことで、FOMCは最適な期間よりも長くゼロ金利維持に拘束されてしまった」と指摘した。』

ほうほうなるほどストラテジーよりもガイダンスの設定を間違えたという思想なのかね??とか思いつつ本チャンを見ますとこんなのがありました。URLクソ長いので表示乱れ防止のために途中の文字列までしか当該URL先のハイパーリンク貼りませんですわ。

https://www.federalreserve.gov/econres/notes/feds-notes/the-federal-reserves-responses-to-the-post-covid-period-of-high-inflation-20240214.html
FEDS Notes
February 14, 2024

The Federal Reserve’s responses to the post-Covid period of high inflation
Jane Ihrig and Chris Waller1

今回槍玉に上がっているのは記事にあるように金利ガイダンスのことのようでして、第三パラグラフから参ります。

『As the FOMC planned for the time when the economy had healed enough to start removing accommodation, it knew the importance of clear and early communications. As a result, in September and December 2020, respectively, the FOMC laid out guidance for raising the federal funds rate off the zero lower bound and for tapering asset purchases.』

でもって2020年9月と12月に出したガイダンスとはナンダッタノカというと、

『The liftoff statement said that the Committee expected to maintain the target range at the effective lower bound until "labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time."4 』

でまあこの「on track to moderately exceed 2 percent for some time」がメイクアップストラテジー的な言い方でしたなと思う訳ですよ。

『The balance sheet guidance noted that the Fed would keep buying $120 billion per month in securities "until substantial further progress has been made toward the Committee's maximum employment and price stability goals."5』

とまあここはテーパリングガイダンスの説明という事実の紹介でして、その次のパラが解説になっていまして、

『A fair question is, what did these words mean? And, in particular, what did the phrases "substantial further progress" for tapering and "for some time" for liftoff mean?』

what do these words mean?とかwhat do you mean by〜?とかいうのは気が付けばコロコロと言ってることが変化する日銀の使う言葉に対しても積極的に問いかけたい質問ですな(隙あらば日銀に悪態おじさん)。

『In large part, the interpretation hinged on how the Committee anticipated the economy would recover from the pandemic.』

その時の経済見通しに紐付けされたものですよと。

『Looking across forecasts at the time by Committee participants and the private sector, no one expected substantial progress toward both our goals to happen very soon. At the end of 2020, the economy had begun to recover, but COVID was bad and getting worse, vaccines were just arriving, and no one knew how soon schools would reopen and people would get back to work. In November and December 2020, the unemployment rate was 6.7 percent and inflation seemed to be in check: 12-month personal consumption expenditures inflation was declining, and core inflation, which excludes volatile energy and food prices, was more or less steady at 1.5 percent. The Summary of Economic Projections (SEP) by FOMC participants in December 2020 had the unemployment rate moving down to 4.2 percent at the end of 2022 and inflation moving up to 2 percent only in 2023.6 Only one participant had liftoff occurring by the end of 2022.』

この辺は言い訳じみていますが、2020年の段階で物凄い早い段階で「substantial progress toward both our goals」が来るとは皆さんも我々も思っていなかった(からあのようなガイダンスを出すことになってしまった)とのことを以下クドクドと書いておりますね。2020年末のSEPでは「Only one participant had liftoff occurring by the end of 2022」だったと。で次のパラに参りますと、

『Based on this SEP, the FOMC participants generally did not expect the economy to recover quickly. And, looking at the Federal Reserve Bank of New York's Survey of Primary Dealers in January 2021, the median respondent thought tapering of asset purchases would start in the first quarter of 2022 and liftoff wouldn't occur until the end of 2023 or later.』

言い訳が長いわwwwwwwでは次のパラ。

『To move forward, policymakers had to evaluate "substantial further progress" and "for some time." The phrases, admittedly, are not concrete in their meaning. 』

『The Committee did not define how much above 2 percent is moderate and how long some value of elevated inflation should be tolerated.』

『In addition, for assessing progress on the health of the labor market, different policymakers prefer different measures that may not provide the exact same signal.』

ガイダンス作っては見たものの、そのスレッショルドは別にFOMCで定義してなかったと。

『On top of this, the data used to measure progress in the labor market can revise substantially and reshape the evaluation of the strength of this market quite quickly. For example, a key input-payroll data-in the latter half of 2021 painted a picture of a slowing labor market. But revised data over several subsequent months revealed that the slowdown never happened. Instead, job gains were quite robust. In particular, initial reports of job creation between August and December 2021 were a cumulative 1.4 million, but by February 2022 that number was revised up to nearly 2.9 million.』

なんかやたら当時の状況の説明が長いのが言い訳じみてアレですが、2021年後半にはかなり強い労働指標が出たのだがその後数か月間遡及改定でそこまで強くないんじゃないのみたいな数字が出て来たりもしてたんですが、2022年2月の年次改訂で雇用者数の増加が結構でかいことが判明したと来まして次のパラグラフ。

『Early in 2021, inflation broke loose. Most of the suspected contributors to this surge in inflation appeared to be temporary: supply-chain bottlenecks that previous experiences suggested would ease soon, a surge in demand for goods, and the second and third Economic Impact Payment checks sent to households. Reflecting this view, the April 2021 FOMC statement pinned the rise in inflation on "transitory factors."7 Meanwhile the labor market and other data related to economic activity suggested a healthy economy. In the June 2021 SEP, seven participants had liftoff in 2022 and only five participants projected liftoff after 2023.8 Thus, after observing high inflation for only three months, many FOMC participants were moving in a hawkish direction and were considering tapering sooner and pulling liftoff forward.9』

でもってインフレに関してもまあ当時の説明がクッソ多いんだが、こちらは当初の上昇を供給要因による一時的なものであると断定し過ぎたってまあそういう話をしています。

ってまあ引用してたんですけど経過説明がアホのように長いので初動の所だけにしてすっ飛ばして結論項に飛びますわ、まあ経過説明自体は途中経過の整理によろしいのですが、この調子でネタにしていると時間が全然足りなくなるということに気が付いただけなんですけどね、ということでまあ途中は上記URL先を斜め読みすれば大体追えると思います、論考部分はあんまり無くて事実関係の整理なので。


・・・・・・スイマセン手抜きで、後ろの方に飛びますけど。

『With policy now restrictive, we can ask, knowing what we know now, should the FOMC have started removing accommodation differently? To be clear, by asking this question, the intent is not to criticize the decisions of the Committee; rather, it is to assess these policy strategies should central banks be confronted with a similar crisis in the future.』

今後の教訓にもするために「他の方法は無かったのか」と問いたいということでして、

『One question to ask is whether the guidance issued was too "constraining"; in other words, did it allow enough flexibility for the FOMC to begin raising the policy rate when it was appropriate to do so?』

ガイダンスの「柔軟性」に関してが最初の話。

『Recall, the Committee had decided that raising the policy rate would not begin until the tapering of asset purchases had finished. But to finish, tapering must start-for a given pace of tapering, the longer it takes to start tapering, the longer it will be before the policy rate can be raised. Of course, one can keep the liftoff date fixed and simply taper at a much faster rate, including the possibility of a hard stop of asset purchases. But concerns about financial market functioning, including the ability of markets to absorb the purchases the Fed stops making, typically limit the speed of tapering, particularly given the amount of asset purchases we were making at the time ($120 billion per month).』

テーパリングが進むまで利上げしないというのがあって、しかもテーパリング自体がそう強引にバシバシできるものでもなかったと。

『Given the tapering criteria and subsequent data, the FOMC ultimately had to pivot hard to accelerate the tapering pace. In fact, unlike the normalization timeline after the financial crisis, the Committee completed the tapering of purchases just a few days before it lifted off.』

まあその後テーパリング加速しましたが、利上げの数日前にやっとテーパリングプロセスが終わったという有様。

『If, however, it had less restrictive tapering criteria and had started tapering sooner, the Committee could have had more flexibility on when to begin raising rates.』

テーパリング着手やペースをもっと早くすれば利上げが速く出来たという話になるのだが、

『So one might argue that requiring substantial further progress toward maximum employment to even begin the process of tightening policy locked the Committee into holding the policy rate at the zero lower bound longer than was optimal.24』

利下げ余地がない中でのリフトオフだから判断が遅れてしまう、というのはまあ話としては分かる。

『A possible takeaway is that a less restrictive tapering criteria would have allowed more flexibility to taper "sooner and gradually," as opposed to the relatively "later and faster" approach that occurred.』

テーパリングプロセス自体をもうちょっと柔軟にいじれなかったのかという話について。

『Experience has shown that markets need time to adjust to a shift from accommodation to tightening, which was surely a factor in how FOMC statements framed the criteria for key policy actions during the recovery from the GFC and the pandemic. So when issuing such criteria, one should be careful to use language that allows the Committee the flexibility it needs to respond to changing economic and financial conditions.』

市場は政策転換のために慣れる時間が必要、というのが経験則にあるんですよねと。

『Now let's turn to the liftoff criteria: "labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time."』

でもって利上げに関するガイダンス文言に関しての検討ですが、

『This criteria was also quite restrictive, and one might argue that it required the economy to be in a situation where our dual mandate had been achieved. Was this the correct criteria- For example, in December 2012, the FOMC, following closely from the Evans rule, pledged that the target range would remain at the effective lower bound "at least as long as the unemployment rate remains above 6 1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored."25』

『This criteria was considered very dovish policy guidance at a time when the economy was in a slow, grinding recovery. Had the Committee instead adopted this Evans rule in late 2020, the liftoff criteria would have been met in the spring of 2021. This alternative language gives some idea of how restrictive the 2020 guidance was for liftoff, which, recall, was not implemented until March 2022. A lesson is that perhaps more flexibility should be considered in future liftoff criteria.』

でまあこの金利ガイダンス文言の方は思いっきり「ガイダンスが極めて利上げに対する抑止力の強いもの」で経済の回復がゆっくり徐々に、という中では大変にダビッシュなものに捉えられました、という説明をしておりまして、これが思いっきり、「A lesson is that perhaps more flexibility should be considered in future liftoff criteria.」ということで、金利ガイダンスの「labor market conditions have reached levels consistent with the Committee's assessments of maximum employment and inflation has risen to 2 percent and is on track to moderately exceed 2 percent for some time.」がやり過ぎだった、というのが結論のようですな。まあそりゃそうだとしか言いようがないけど。

『On top of the liftoff criteria, there is an implication of the expected path of tightening once rates began to rise. For example, most Taylor rules at the end of 2021 suggested the policy rate should be well above zero and close to its neutral value. Consequently, if the rules that use the current state of the economy are specifying that policy should be at neutral and actual policy is at zero, then the policy rate needs to rise quickly. So it should not have been a surprise that the policy rate rose fast in 2022. Rate hikes needed to be larger and more frequent than the 2015-18 tightening pace to get back to neutral. Looking back, should the Committee have signaled a steeper rate path once the liftoff criteria had been met? Perhaps another lesson is that giving forward guidance about liftoff should also include forward guidance about the possible path of the policy rate after liftoff.』

一々説明がクソ長いんだが、利上げ着手が遅れてて、そもそも2021年末の時点で多くのテイラールール的アプローチで計算された適正金利が既に0を大きく上回る状況にあったわけだし、今の時点ではその適正金利はやっぱり高水準にあるんだからそら利上げペース早くなりますねん、だそうです。

でもってこの結論は如何なものかと思うのだが、うぉーらーたちは「Perhaps another lesson is that giving forward guidance about liftoff should also include forward guidance about the possible path of the policy rate after liftoff」ということで、利上げ着手のガイダンスにはその後の金利パスのガイダンスも含めた方がエエンチャウノという話をしているんだが、いやそれ実務上無理だろと私は思います。

まあ何はともあれ最後になりますが、

『Overall, the FOMC's response to tightening after the COVID pandemic was not textbook.It involved much faster tightening of policy than had been seen in more than 30 years.』

いずれにしましても今回の対応は教科書に載っているようなものではありませんでした。過去30年でこんな勢いの利上げしてませんもん、からの

『From this experience it should not be a surprise that when looking back, there are lessons to be learned. But policymakers' actions have coincided with stable financial markets, a strong labor market, and inflation moving down from its peak.』

まあ最後はしょうもない心構えで締めていますが、今回の経験からはもっと学ぶべき、という事を仰せでございますわな。

まあ何ですな、これはウォーラーさん的には引き締めの反対でも同じことが言える、ということで、引き締めから中立に戻す段階においてもあまりガイダンス的なものに固執しないでフォワードルッキングにやれ、って主張で持って行きそうなので、まあそういう意味ではハトハトおじさんらしい論考という裏返し思考になりますけど、そうとも言えるんじゃないかと思いました。







2024/02/14

お題「米CPIで市場など雑談/今更ネタのFOMC会見(その2)」

まあこれ自体が巧妙なトランプネガキャンなのかもしれないけど・・・・・・・
https://www.cnn.co.jp/usa/35215139.html
トランプ氏再選なら米国はNATO離脱、元側近らが警告
2024.02.13 Tue posted at 07:39 JST

「メイクアメリカグレートアゲインとはモンロー主義のことなんだよ!」
「な!なんだってー!!」(ネタ用画像割愛)

こうですか、わかりません><


〇マクラにしようと思ったが長くなったのでドル円150円乗せだぜヒャッハーからの雑感

もりあがってまいりました!!!!!
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-13/S7OO1FT0AFB400
円が対ドルで150円台後半に下落、米CPI発表後−介入警戒感高まる
酒井大輔
2024年2月13日 22:43 JST 更新日時 2024年2月14日 1:42 JST

『13日の外国為替市場で円相場が約3カ月ぶりに1ドル=150円台に下落した。1月の米消費者物価指数(CPI)上昇率が総合・コアとも市場予想を上回り、円売り・ドル買いに弾みが付いた。』(上記URL先より)

ゆうてこんなん投機的な動きでも何でもないから介入するの大義名分に無理があると思いますけどねえ。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-13/S8SQW1T0G1KW00
米CPI、コア指数が8カ月ぶり大幅上昇−利下げ期待に冷や水
Augusta Saraiva
2024年2月13日 22:34 JST 更新日時 2024年2月14日 1:18 JST

→1月のコアCPIは前月比0.4%上昇−市場予想0.3%上昇
→前年同月比では3.9%上昇−市場予想3.7%上昇

『1月の米消費者物価指数(CPI)は市場予想を上回る伸びを示した。インフレ鈍化が続くとの期待に冷や水を浴びせる格好となり、連邦公開市場委員会(FOMC)による利下げが遅れる可能性が高まった。』(上記URL先より)

しかしまあアメリカン金利上昇の方が横綱にダメージデカいのか(内田さんの金懇への反応が何故かハト派扱いになっているから、というのはあるけど)内田さんの金懇でろくすっぽ動かなかった横綱がアメリカン金利に押されて見事に土俵(大台)を割っておられるのはナンナンデスカ。

横綱
https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night
先物価格情報

限月 4年3月限
取引日 02/14 
夜間取引

始値 146.31(02/13)(15:30) 
高値 146.41(02/13)(22:30)
安値 145.87(02/14)(06:00)
現在値 145.87(02/14)(06:00)
前日比 -0.44
取引高 13,372

何だよアメリカン金利連動じゃねえかどういう事や円債に大和魂は無いのかとか意味不明な悪態をつきたくなりますが、まあアメリカン金利>>>>日銀の政策、って何じゃそらという展開なのでありました。


まあ何ですな、確かにここまでベンダーとかに出て来るジャパンの金利の何とかストの皆様のおコメント様などを拝読すると、内田副総裁の金懇挨拶リファーしながら、「ゆっくり利上げ」とか、例の「市場の織り込みが2年間で政策金利が0.5%までしか上がらん」に注目している人が大変多い訳ですが、よくよく考えて欲しいのですが、そもそも論として昨日もネタにしましたように、8月の千葉金懇と比較してみた場合、内田さん中の人が変わったんじゃないかという位に言ってることが変わっている、という事実をよく考えて頂きたい訳です。

これはまあコミュニケーションの不連続とか悪態をつくネタにしていますが、もうちょっとお洒落に解釈しますと、「近い将来の事ならはっきりとした事は言えるのだが、半年とか1年とかのスパンになった場合、政策運営も含めはっきりとしたガイダンスを出すようなことは無理ですよ、だっていろんなことの転換点でこれまでの延長線上にならないことが多々あるんですもん」というお話な訳です。

でもってこの点ってまあ日銀がご都合主義でホイホイと逃げを打っている、という面もありますが、ただまあこの点についてはグローバルに見ても、ECBは利上げ開始局面になった所でフォワードガイダンス的なものを声明文から外しましたし、FEDだってこの前からネタにしてて今日もちょっと続きをやる予定の先日のパウエルの会見でやはり先行きのコミットメントとか、あるいはルールベースに則った政策運営というのは今の状況では実践的ではない、という説明をしている訳なんですよ。

そんな状況の中、日銀だけが2年先の政策金利とかいうような長距離ガイダンスを出せる訳がないのでありまして、(そもそも日銀の場合は2%に中長期インフレ期待がアンカーされていない状態(されている状態ならこの政策金利水準はあり得ないから)という話になっているので中立金利水準に向けてどうのこうのの中立金利水準ですら皆目不明な訳ですし)今の時点でそんな思いっきり先まで政策金利がどうなるとか、正直考えるだけ無駄な話だと思うのよね。

じゃあ何で内田さんあんなこと言ってるかと言えば、以下はアタクシの妄想当て推量ですけどたぶん間違ってない自信はあって、「単にマイナス金利解除を円滑に進めるために先の金利パスについて強気の事言って債券市場が荒れないようにしたい」ってだけの話だし、なんせ内田さんは今回の金懇のように君子豹変ジャガーチェンジの北極星みたいなポジションにある訳で、今回の内田さんの金懇から確実なインプリケーションは3月か4月に利上げ、その場合次の会合で連続利上げとかはしません、というだけの話じゃないの、と思うので、お前らちょっと楽観し過ぎという話。

だいたいですな、福井の俊ちゃんの時の量的緩和解除からの利上げだって(もっと上げる前にリーマンショックで頓挫しましたが)3月解除、7月0.25%、翌年2月0.50%だった訳ですが、その時とベースの物価状況が全然違うし、インフレ期待だって少なくともゼロ近傍ではないでしょ状態になっているのですから、そういう中で俊彦並みの利上げペースだって本来はクッソ遅いのであって、今回のように円安に振れてしまうとか、その円安のせいでまた円安コストプッシュアゲインとかになってしまうとかなった場合や、そもそも論として物価の方が見込みほどサガランチ会長だった場合には、もうちょっと金利って上がって然るべき、という風に思うのですが、長らくの金融緩和ですっかりそのあたりマヒしている感があるなあとか思うのでした。

え??お前は金利が上がると急に元気に市場雑談をするって???いやまあそうなんですけど(自爆)



〇超今更ですがFOMC会見録より(その2)

すっかり内田さんの金懇で(自分だけで)大盛り上がりしたのでFINAL版になっていますが。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240131.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
January 31, 2024

今さら何をネタにしてますねん、と言われそうですが(いやまあそれはそうなんですけど)改めて読みますと結構いい論点について話が行われていまして、これこれまでもそうですが先行きの金融政策運営に関する論点も転がっている割と良い会見だったと思うので、今さらジロー感が酷いですがネタにします(半月遅れェ・・・・・・・)

ちなみに前回は2/8にネタにしましたが、WSJのNICK TIMIRAOS記者とのやりとりで、テイラールールのようなルールベースをリファレンスにしながら金融引き締め度合いを調整しないのか、即ち物価が下がってきているんだったら金融引き締めが自然とやり過ぎになる筈だがその辺りはテイラールールなり何なりのアプローチで考えないのか、というお話をしてました。

でまあその続きをボチボチと成敗してまいりますどうせ日銀ネタも(実は大ネタについて思考なうだが考えまとまらんのでもう少し考えてから)暫く打ち止めだと思いますから。


・政策転換期のコミュニケーションだが結局は「唐突に物価の表現が変わるニキ」になりそうですね

次の人質問ですけどね(会見録では7ページ目から)

『HOWARD SCHNEIDER. Hi. Thanks, Chair Powell. I’d like you to, to key in on the use of the word in, in the statement that inflation still “remains elevated.” You’ve pledged to cut rates before inflation reached 2 percent. So that implies that there’s some sort of intermediate step here on, on inflation and that a, a cut would be consequent with a change in the statement language that inflation “remains elevated.” What’s the step-down from there?』

ステートメントにおける物価の現状認識の文言ってのはこの後変わっていくもんでしょ??だって2%になった、って言う前に利下げに着手する(グレーターコンフィデンスですからね)んだから、と政策転換期のコミュニケーションについて聞かれるの巻。

『CHAIR POWELL. Yeah, I, I don’t know that we’ve worked out the particulars-statement language and that kind of thing. I would just say, if you look at-you know, look at where, where 12-month inflation is, and it’s, you know, it’s still well above-core is 2.9 percent,for example-12-month-which is way down from where it was. Very, very positive development-very fast decline-and, and, you know, the, the case is likely that it will continue to come down. So, so that’s where-that’s where it is. But we’re, you know, we’re wanting to see, you know, more data.』

良い状況だがまだデータが足り申さん、ということなんですが、これは結局の所物価の現状認識に関するステートメント文言は利下げ着手まで動かなさい積り満々というのが見て取れますね。


・更問は物価ではなく雇用面についてだがFEDは労働市場に自信満々の模様

更問。

『HOWARD SCHNEIDER. So, if I-if I could follow up on that, the statement allows that you want greater confidence on inflation falling before you cut, but it doesn’t mention the other side of the mandate-a slide in employment. Would a slide in employment also bring you to the point of, of cutting rates?』

物価のグレーターコンフィデンスは結局「お気持ち」なのが明白なので言っても埒があかないとばかりに「じゃあ雇用が弱まったら利下げするのか」と聞かれると、

『CHAIR POWELL. Yes. So let me say that we’re not looking for that. That’s not something we’re looking for. But, yes, if you think about, you know-in, in the base case, the economy is performing well-the labor market remains strong. If we saw an unexpected weakening in, in-certainly in the labor market, that would certainly weigh on cutting sooner.』

ベースラインシナリオでは景気が強いのでそういうケースは見ていないけれども、望ましくない雇用の弱まりが生じたら利下げを早急に着手します。とまあこれは普通に認めていますが、こういうのは中央銀行話法なんですけど、こういう風に素直に認めるってのはつまり労働市場に自信満々だからこう言える、っていうのはあるので、FEDは結構雇用に自信満々なんだな、というのは分かりました。

『Absolutely. And if we saw inflation being stickier or higher or those sorts of things-would argue for moving later. In the base case, though, where, where the economy is healthy and we have, you know, we have ongoing growth-solid growth-we have a strong labor market-we have inflation coming down-that’s what people are writing their SEP [submissions] around. And in that case, what we’re saying is, based on that, we think we can and should take advantage of that and, and be careful as we approach that question of when to begin to dial back restriction』

ここで笑ってしまいましたが、わざわざ聞かれもしないのに、「if we saw inflation being stickier or higher or those sorts of things-would argue for moving later」と利下げ着手が遅れる方の話をしているのは、ぞの前の会見での自分の不用意な言い方で債券市場がヒャッハーとなってしまった事に関して相当反省した結果として、利下げ着手の話をするときには聞かれていなくても必ず利下げが遅れる話もして話のバランスを取る、という風にしているんだと思って草が生えましたwww


・グレーターコンフィデンスのスレッショルドについて

次の人、会見録9ページ目になります。

『CLAIRE JONES. Claire Jones, Financial Times. Just to circle back to the “greater confidence” aspect of the statement, there’s been a lot of unanimity in recent meetings. I’m just wondering, going forward, when it comes to all needing greater confidence, is there unanimity or, at least, consensus among FOMC members about what the threshold for that greater confidence is? 』

『And if not, could you maybe tell us a little bit about the discussion today on, you know, what the variations between FOMC members was on what constitutes enough confidence to cut rates and also if there was any variation on how quickly that “greater confidence” threshold could be reached? Thank you』

日銀の突如やってきた「確度」と同じようにこの「グレーターコンフィデンス」って思いっきり「お気持ち」の話になっていまして、じゃあお前らこのお気持ちはどこをスレッショルドにして変化するんだよ、と聞く方は絶対聞きたい質問ですが・・・・・・・・・

『CHAIR POWELL. So we’re not-we’re not really at that stage. You know, we’re-we’re-there was no proposal to cut rates.』

クソワロタのは初手に「だれも利下げの提案(というかお話というか)をしていません」と言ってることで、これもさっきの「聞かれもしないのに利下げが遅れる話をする」と同じで前回の失敗に相当懲りたんだなと読んでて茶を吹きそうになりました。

『Some people did, you know, talk about their view of the rate path. I would point you to the [December 2023] SEP as, as, you know, as good evidence of where people are, although it is-it is [now] one [FOMC meeting] cycle later.』

『So, you know, we’re not-we’re not at a place of, of really working out those kinds of details, because we weren’t actively considering, you know, a-moving, moving the federal funds rate down.』

これファイナル版になると―と補足が多くなる、というのは1個前のバージョンにメモ書きしたの見ながらこれを書いているので思うのでした。というのはさておきウソは言えないから金利パスの話はあったよ、でも先の話だよ、という言い方をしていますね。火を付けないように気をつかいますのうw

『I will say, there is a-there is a wide disparity-a healthy disparity-of views, and you see that in public, public statements, in the minutes, and the transcripts when they’re released every five years. So we do have a healthy set of differences, and I think that’s actually essential for making good policy. We’re also able to reach agreement, generally, because we listen to each other-we, we compromise. And even though not everybody loves what we do, they’re able to-for the most part-able to join in. To me, that’s a well-functioning public institution.』

金融政策の話でcompromiseせんでもエエジャロと思いましたがそれはそれとしまして、意見に関しては健全なる形で幅の広い相違点がありますので、という説明をしまして、これは即ち「何かのスレッショルドがあってそれを見たら全員がグレーターコンフィデンスになる、というような事はない」という説明になっております。でまあ意見の相違は議事要旨でみてちょんまげ、という話をしているのですが、まあある日突然前の月の決定会合で言ってたことから一気に飛躍して確度が高まったから解除じゃ解除、というような中原三原則の時から全然変わらぬ状況の日銀に比べれば全然マシな話をしています。

というコミュニケーションの話もありますが、ここでもう一つ言えるのは、例のテイラールール云々のお話と同様に、何らかのリファレンスを用いてルールベースっぽい政策アプローチをする、というちょっと極端な言いかたになるかもしれませんが、ついこの前(コロナ前)までの金融政策アプローチからはかなり離れたものになっている、まあ政策の転換期だし、そもそも経済物価の構造に変化が起きている可能性があるというか高いんだから従来型のアプローチでは上手くいかない(というかそれやってインフレ止め損なったんですから)ということで、金融政策のアプローチ自体がルールベースに比較的寄っていたグレートモデレーションの時代から転換しているんだな、というような壮大な事も
ちょっと思ってしまったりしました。

続きはまたボチボチと。






2024/02/13

お題「だいたい内田副総裁金懇スペシャル大増量企画ですが一部関連雑談あり」

ほえ????
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0194Y0R00C24A2000000/
マイナス金利解除、政府に容認意見 脱デフレと切り分け
経済
2024年2月13日 5:00 [会員限定記事]

『政府内にマイナス金利解除を容認する考えが広がってきた。解除しても緩和的な環境は続くとして認める考え方だ。マイナス金利解除は金融政策が正常化に向かう一方で、日本経済がデフレ脱却に近づいたことを意味する。』(上記URL先より、なお記事全文は会員限定なので読みたい方は日経に課金して下さい、ワシはしないけど)

いやそれ去年の夏くらいの記事なんとチャウのかという感じですが、まあこうやって鉦や太鼓を鳴らして雰囲気を盛り上げようというしょうもないムーブも起きている訳でして、こうなると益々3月の方が順当なんじゃなかろうか、と思う今日のこの頃ではありますが、今朝はそんな流れを確定させた内田副総裁金懇スペシャルということでお送りします。

が、その前に木曜の6M短国に続いての金曜日3M短国入札につきまして。

〇3M短国とか国債買現先とか

・3M入札

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240209.htm
国庫短期証券(第1212回)の入札結果

3.発行日  令和6年2月13日
4.償還期限  令和6年5月20日
5.価格競争入札について
(1)応募額     13兆2,726億9,000万円
(2)募入決定額   4兆7,163億6,000万円
(3)募入最低価格  100円02銭9厘5毛
(募入最高利回り)  (-0.1109%)
(4)募入最低価格における案分比率 11.0529%   
(5)募入平均価格  100円03銭2厘5毛
(募入平均利回り)  (-0.1222%)

ということで▲12.22bp/▲11.09bpとなって、前日のWI時点での売参が▲14.0bpだったのに対して水準調整が行われたわけでして、そらまあ3月か4月にマイナス金利解除だとしますと、4月に解除したとしても一番遅くてマイナス解除適用って5/16(次の積み期間開始)でしょと思えば足が5/20だけに少しは敬意を示したってことですかよく分からんですけど。

でまあ金曜引けベースの売参は▲12.0bpになっていたので、平均落札の方に寄せた引け値になっておりますが、まあそれはそれとしまして、

オファー (2月9日<金>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of240209.htm

国債買現先(注4) 30,000 2024年2月13日 2024年2月14日
(注4) 応札レート(期間利回り)は、-0.10%を下限とします。

ということでトモネ買現3兆円のオファーがありました。先週も3M短国入札日に入札後にGCレートが上がって翌日になって即日買現とトムスタート積み最終まで資金供給というエンドのターム物をぶっこんできましたが、今回は月曜を待たずにトモネで打ってきました。まあこっちの方が綺麗は綺麗(一々対応するのか問題はあるがコール平均をプラスにしたくないとかあんまりGCをあげたくないというのがあるのはわからんでもない)ですわな。また今回はトモネだけだったので月曜ほどの過保護感はないですわなw

落札結果 (2月9日<金>)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba240209.htm

国債買現先(2月13日スタート分) 36,350 30,005  -0.100 -0.096 74.5

うーむ相変わらずこの金利かよという感じではありますが、まあ3M短国入札のたびにこれだとなんかそれもそれでなんだかねーという感じはせんでもないが、GCもゆうて市場参加者のバラエティ差がないからなー。


〇金懇日程の「田村さん飛ばし」を無駄にメタ読みしてみる(雑談)

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
講演・記者会見・談話

これ実は先週木曜だかにアップデートされてたんですけどね。

今後の講演・挨拶等の予定

日程        講演者等   講演内容等
2024年2月29日 高田審議委員  滋賀県金融経済懇談会における挨拶
2024年3月7日 中川審議委員  島根県金融経済懇談会における挨拶

ということでですね、高田さん金懇の次が中川さんになりました。

まあ相変わらずのやる気あんのか日程(1月展望を受けた説明は内田さんがした訳ですし、3月会合前に立て続けに審議委員が2名連続で金懇やる必要あるんかいな他の日に分散しろよ、と思うのですが)ではありますが、昨年のように「2名の審議委員が2日連続で金懇を実施」というコミュニケーション的にそれはどうなのかというのから若干マシにはなりました。

というのはさて置きまして、今回の日程表を見ますと、本来田村さんの番が先になってくると思われるのに、高田さん中川さんという大本営伝言マシーンというか九官鳥というか棒読み芸人というか、まあ大本営の仰せの通りでありますイエッサーという役立たずの金懇が3月会合の前にぶっこまれているじゃないですか。

これをメタ読みしますと、高田さん中川さんを3月マイナス金利解除とYCCの枠組みの全面見直しまたは撤廃の前の露払いに持って行ってて、田村さんの金懇はマイナス金利の解除後に持って行くことによりまして、田村さんには「その先」の話をしてもらおう、という事でまあ以前から3月か4月解除がスコープにありましたわよ、というような感じだったんですかねえというメタ読み雑談という与太話の類です。

田村さんの場合、元々一番の正常化推進論者であることは皆さんが知っているので、多少タカ派な事を言っても市場が「田村さんの正論キタコレ」と言いながらも、「田村さんのこの良い意見が大本営に届くのかねえ」という感じで見てしまうので、他の人が「その先」の話をするよりも市場の反応がマイルドになる(大本営発表じゃないから)と思うのですよ。でまあそこまで考えて田村さんの金懇を後ろに倒しているんだったらやっぱり解除は3月じゃん3月、というメタ読みになりますが、まあこれは与太話の類ということで話半分以下で聞いておいてください投資は自己責任でw


では本題の内田副総裁金懇ネタに参ります。

〇内田副総裁奈良金懇の超現世利益部分以外のネタをまずはまいりましょうず

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240208a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 奈良県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一

・全力でかっ飛ばしていましたので経済認識のところからちゃんと読みますが結局賃金推しですわ

『2.経済情勢』からまいります。最初の能登半島地震に関する部分は割愛しましてその次から。

『図表1をご覧ください。わが国経済は、緩やかに回復しています。先行きは、今年度 1.8%のあと、24 年度が 1.2%、25 年度が 1.0%と、潜在成長率を上回る成長を予想しております。』

『図表2をご覧ください。企業収益は、大企業・中小企業ともに最高益の水準にあります。そのもとで、今年度の設備投資計画は、人手不足への対応や、脱炭素、デジタル関連などを中心に、前年比 12%の増加が見込まれています。』

『図表3をご覧ください。この間、海外経済は回復ペースが鈍化していますが、先行きは、国・地域ごとのばらつきを伴いつつも、緩やかに成長していく見通しです。』

『米国では、景気の大幅な減速を伴うことなくインフレ率が3%程度まで低下し、市場ではいわゆる「ソフトランディング・シナリオ」が優勢になっています。目標の2%まで低下するにはまだ時間がかかるので警戒は怠れませんが、景気とインフレのトレードオフは緩和され、政策の自由度はやや高まっているように思います。』

『中国経済は、労働市場や不動産市場などに調整圧力を抱えていますが、金融・財政政策の発動余地は大きいので、これらを使って、調整を進めつつ、安定成長を実現していけるか、注目されます。』

欧州はスルーですかそうですかw

『図表4をご覧ください。家計部門では、名目賃金の上昇を主因に、雇用者所得が増加していますが、物価上昇に追いついていません。個人消費は、感染症下で抑制されてきた需要(いわゆるペントアップ需要)に支えられて、赤い線の旅行や外食などの「サービス」が増加しています。』

まあ皆がペントアップすると意地でもペントアップしないヒネクレモノなんでよくわかりませんけど、世の中はペントアップしているんですよね(まあそれだけじゃ困るから都会に行って状況見たりはしてますけどね)。

『一方で、値上がり幅が大きかった食料品や日用品では、低価格商品へのシフトなど生活防衛的な動きがみられ、これらを含む緑色の「非耐久財」は減少しています。』

『青色の全体としての個人消費は、現状、増加のペースは緩やかであり、先行きは、ペントアップ需要が
次第に減衰していくことも踏まえますと、賃上げによる所得の改善が重要なカギになります。』

そして結局は賃上げ推し賃上げ推しとなって金曜日にネタにした物価と賃金の話、金融政策の話に飛ぶのでありまして、経済のパートが無茶苦茶あっさり味になっていて、物価と賃金の話が金曜ネタにしたうにばっちり入れ込んである、ということなんで、まあ要するにこの人たち(もともとそんなに景気を懸念してないというのはあるでしょうけど)経済状況がどうのこうのだから政策ガーみたいないつものパティーンになっていない、というのが特徴的なのよこれ。

つまりどういうことかといいますと、米国経済ガーとか中国の不動産ガーとかそういう話は少なくとも「2%物価目標達成が見通せた」という判断、すなわちマイナス金利解除(とYCCの撤廃あるいは骨抜きするもガワだけ残すかは不明ですが、まあガワ残さないんじゃないですかねえというのが金曜にネタにした説明の部分を見た印象)における条件となりまして、まあ景気に対して特段ケチ臭いことを言ってないのはそういうことだぞという話っすな。


・しかしよく考えたらこの理屈も変な話だよな(2%アンカーされてないから云々)

金曜にネタにした金融政策運営の部分、とりあえず思ったのですけどね、例の利上げ急がない云々の背景説明に関する部分ですけどさあ。

『ここでどちらが正しいかを論じるつもりはなく、あくまで今後の経済・物価情勢次第である、と繰り返させて頂いたうえで、わが国の状況を欧米のアナロジーで考えることには少し無理があります。』

政策金利のお話のここからの部分なんですけどね。

『図表 11 をご覧ください。米国や欧州では、22 年に利上げを開始した時点で、インフレ率は8%を超え、「物価は中長期的には2%程度で推移していくものだ」という人々の信認が維持できなくなる惧れが大きくなっていました。現在のわが国のインフレ率の状況はこれとは大きく異なります。また、「中長期的な予想インフレ率」が2%でアンカーされている欧米とは異なり、わが国では、まだ2%に向けて上昇していく過程にある、という違いもあります。』

これを言い出しますと、「そもそも期待インフレがまだ2%になっていないのに正常化着手をしたらいけないんじゃないの??」といわれたときにどういう回答をするんでしょうか、というお話ではあるんですよ。

『そのことは、予想インフレ率を押し上げるために、また、予想インフレ率が再び下がってしまうリスクも意識しながら、緩和的な政策を行う必要があることを意味します。』

でまあ以下続いていましたけど、今日ネタにするようにこの講演(金懇挨拶)の後ろの方では、思いっきり「外的ショックと労働市場の供給構造変化が起きた時に金融緩和があったから物価が上がってそれが定着しそう」という話をしているんですが、「インフレ期待が2%になっていないのに出口着手するのがおかしい」というツッコミに対して「緩和的だから大丈夫なのです」という理屈で返すのであれば、「そもそも論としてマイナス金利政策とか長期金利ペッグ政策というような極端な金融緩和じゃなくてもよかったんじゃないか」という話ですよね。

でまあ実は長期金利のペッグ政策はしらっとこの1年間柔軟化していたわけですけれども、基本的に「副作用発生の事前対応」だった訳ですよ。でもって長期金利ペッグを柔軟化しても緩和的なので問題ない、という理屈で来たのですが、これマイナス金利も結局は言ってることが同じでして、実はマイナス金利政策も別にそこまでやる必要があったのか、ということは本来はちゃんと検証すべき問題なのですよね。まあどうせ今の日銀大本営がそもそもマイナス金利入れた張本人たちなので自己否定しない、というのが悲しいんですけどね。


・掴みがエンドロールみたいなお話なのだがここで半年前に内田さんが示した認識と比較してみましょう

という悪態はさておきまして、内田さんの金懇挨拶の最終コーナーにまいります。小見出しが『5.日本経済の転換点にあって』ですけど。

『さて、日本経済は、デフレ経済からの脱却に向けて、大きな転換点にあります。以下では、現在生じている変化を、90 年代以降の日本経済の歴史の中に位置づけてお話しし、その変化の中における企業経営のあり方について、考えてみたいと思います。僭越な申しようもあるかと思いますが、論点をシャープにするため、お許しください。』

というまあ思いっきり威勢のいい話ではありますし、なんかこう長編のゲームをクリアした時のエンドロールみたいな感じのお話になっているのはいいんですけど、このおじさん、わずか半年前はこういう話をしてたんですよね。

昨年8月の(全然出口やる気なしなしで7月の柔軟化直後にこれかよだった)千葉金懇ですけど
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230802a.htm

『それが今、輸入物価の上昇がきっかけとはいえ、企業がよりフォワードルッキングに価格戦略を練ったり、人手不足のもとで、「賃金を上げないと人材を採れなくなる」という、いわば「早い者勝ち」の獲得競争が始まったりしています。こうした考え方や行動は、本来、経済に備わっているものであり、経済のダイナミズムを支えるものですが、これが、バブル崩壊とデフレのもとで弱まっていました。多くの経営者の方と接してきて、「こうしたデフレ期の企業行動は、変えるべきだし、環境が許せば変えたい」というのが実感なのではないか、と感じます。現状はまだ「兆し」の段階ですが、ようやく日本経済が変わるチャンスが来ているかもしれないのですから、粘り強く金融緩和を続けることで、こうした「変化の兆し」を大切に育てていくべきです。』((この箇所だけ直上URL先2023年8月2日千葉金懇での内田副総裁挨拶より)

・・・・いやあのですね、半年前が「”まだ「兆し」の段階”ですが、ようやく日本経済が変わるチャンスが”来ているかもしれない”」って認識だったのに、わずか半年で堂々の「転換点にあります」っていくら経済が生き物だからといっても、何ぼ何でも半年前対比でおっちゃん現状認識を激しくぶっ飛ばしすぎじゃなかろうか、と思うわけでして、しかも昨年12月の決定会合があの有様だった訳でして、お前らコミュニケーションの飛び方が酷すぎるわとしか申し上げようがない。

まあこの背景としては、長期金利目標とかいうアホンダラ政策をしている関係上、政策転換につながるような認識について徐々にそれを示すわけにいかず(示すと市場金利が目標から逸走してしまうので)、ある時点で突如強引に地ならしをしないといけない(しかも騙し騙し)というのはあるんだが、その建付けをうくったのもおめーらで、この政策ってそもそも時間的不整合の問題があるのにそこを正面から向き合わないで誤魔化しながら来ているからこういう邪道オブ邪道のコミュニケーションになるんですが、まあYCC撤廃したらそういう阿呆なことは止めていただきたいわけですよ。まああの展望レポートダイジェストのポンチ絵における「2%」のイラストを見れば如何に不連続なコミュニケーションをしていたか、というのがよくわかるわけですからね。


あ、すいません前置き部分であたくしの悪態がががが。

・量的金融緩和の量が行き詰ってしまってヤケクソでマイナス金利をしたら有害ほぼ無益でYCCにした筈なんだが

小見出しが『(日本経済の低迷とデフレ)』『(大規模な金融緩和)』となるのだが、もうこれが回想シーンっぽくて笑うしかないんですけど、マイナス金利と大規模量的緩和に関してこのような説明をしております。

『(大規模な金融緩和)』のところからまいりますね。

『これに対する根本的な解決策が「成長力の強化」であることは自明です。しかし、その成果が出るまでには時間がかかります。そこに 2011 年の東日本大震災が重なり、いわゆる「6重苦」といわれる状況になりました。』

って言ってるんだが、まあこれは日銀のマターじゃないから言われても困る話かもしれないけど、そもそも論として日本経済って「成長力の強化」してなかったんちゃいますかねえという話で、成果が出るも糞もやっていないんだから成果も出ないじゃんという話。

『この状況で、日本銀行として、できることをぎりぎりまで模索した結果が、13 年の「量的・質的金融緩和」にはじまる大規模緩和でした。潜在成長率と予想インフレ率がともに低い状況では、経済に中立的な金利はきわめて低くなりますので、十分な金融緩和の効果を得るには、金利を大きく引き下げる必要があります。何らかの方法で、金利の「ゼロ%の壁」を乗り越えなければならず、短期金利をマイナスにするか、中長期の金利を押し下げるか、どちらかが必要でした。そして結局、この両方を導入することになります。もちろん、これらは副作用を伴うものであり、「やらなくて済むなら、やらない方が良いこと」ですが、「ではどうするのか」という宿題は残ったはずです。』

とか何とか言ってるんですが、そもそも最初は「インフレ期待を引き上げるために、それを裏打ちするためにマネタリーベースの大規模な拡大を行う」ってのがQQEのコンセプトで、その量的拡大が次第に無理気味になる中で、政策の限界とか言われるようになったところで「補完措置」とかいうのやったら逆に政策の限界を露呈した、とか言われてしまい、黒ちゃんブチ切れてマイナス金利をぶっこんだわけですよね。

でもってマイナス金利ぶっこんだら長期とか超長期の金利が極端に下がりすぎて、金利低下の効果よりも弊害の方が大きいわアホかということになって、それをごまかすためにYCCを導入して「長期国債買入残高年間80兆円拡大」というQQE(正確にはQQE2)の文言を空文化して、政策の延命を図ったのがYCCなわけですよ。

ということで、マイナス金利までは確かに「金利を押し下げる」ためにやっていたんですけど、その後のYCCって「均衡イールドカーブに対して適正な規模の金融緩和」を狙っていた政策であって、どこまでも金利を下げようとしていたわけではないんですよね。

・・・・ってな話もここに来てちゃっかり歴史改変しているのがなんともはやという感じなんですけれども、こうやって話を有耶無耶にしているのは、各政策の導入時における屁理屈を総合するとキメラの怪物というか昭和温泉旅館になってしまうので、もうこのどさくさに紛れて過去の理屈をなかったことにして、今までの緩和政策全部を「長期金利および短期金利の押し下げによって金融緩和をする」にしてしまおうという目論見に他ならないのですな。

ではどうするのか、ってそんなの別に普通に実質ゼロ金利政策を続けてればよかった、というだけの話だと思いますけどね。まあ確かに「やってみて上手くいかなかった」という結果を出したからこそそう言える、という面があるのはモチのロンなので、その点からいえば「全然所期の効果をあげなかったけれども、効果がなかったという重要な知見を得るために必要な政策だった」とはいえるのですが、結局その「効果がなかったという重要な知見」に目を背けるために、やれQQE2だ補完措置だマイナス金利だYCCだと昭和温泉旅館攻撃で誤魔化しを図ったのが中央銀行として取るべき態度だったのか、という事こそが検証されるべき問題だと思うのよね。

つまりですね、内田さんもさすがに上記の続きでこのように言ってるんだけど、

『さらに、海外では、リーマンショック後に、米国が量的緩和(QE)を導入し、多くの国が非伝統的政策を行いました。私自身は、中央銀行界全体として、どこまで非伝統的な政策を行うべきであったかは、歴史的に問われるべき問題だと思っていますが、個々の中央銀行としてはそれを前提に考えるしかありません。こうした内外の情勢を前提とした場合に、日本銀行として、非伝統的なことはしない、という選択肢はなかったと思っています。もちろん、個々の手段が、効果と副作用を比較して適切だったかは、虚心坦懐に評価していきたいと思います。』

まあ別に「やってみた」までは有りだったと思うのですが、問題は今申し上げたように、その政策が所期の効果を発揮しなかった(そもそもマネタリーベース直線一気理論も政策波及効果の置物フローチャートも机上の空論で大間違いのコンコンチキだったのだから当たり前の結果ではあったけど)時に、潔く撤収の判断を下すのではなく、筋悪屁理屈で筋悪政策の上塗りを行って行ってしまったことの方が問われるべき話だったと思うの。

まあその背景に黒田緩和が安部ちゃんのアベノミクスと一体化して、安部ちゃんが「私の金融緩和」とかお前は何を言ってるんだ状態になっていた、という金融政策が政治従属してしまったという現代先進国国家にあるまじき事態になっていた、という異常性は指摘できるわけなのですが、それこそ「虚心坦懐に評価していきたい」んだったら本来はこの点を評価しないといけないんですよね。まあそれやりだすといろいろと問題が生じて、ニコライ・エジョフみたいな事案(検索すれば判るわよ)になるのかもしれませんけどね。


・人口動態の変化による労働供給構造の変化を無かったことにして金融緩和効果にするとな

次の小見出しが『(人手不足とグローバルなインフレ)』になっていて、小見出しだけ見ると人口動態の変化の中で外的ショックが起きたのでインフレ定着になってきた、という話に読めるのですが、なぜか中の文章はというと、

『図表 13 をご覧ください。量的・質的金融緩和や、その後のマイナス金利、イールドカーブ・コントロールのもとで、実質金利は短期・長期ともに大幅なマイナスで推移し、自然利子率がいくら低いとはいえ、相当に緩和的な状況を作り出しました。その結果、需要不足は解消し、失業率は大きく低下しました。労働供給面では、女性と高齢者の労働参加率が高まることで対応し、雇用は大幅に増えました。その後、次第にこうした労働供給の余地は狭まっていき、コロナ禍前の 17〜18 年には、人手不足が問題になりました。』

からの、

『このように、金融緩和によって経済に強い刺激を与えて、需要を増やし、労働需給がタイトな状態にすることで、企業などの行動を促すことは、この間の大規模緩和の狙いそのものです。』

と言ってるんだが、その間の労働力人口の人口動態変化とかの構造要因の方が大きかったんじゃありませんかねえ、という話を一切見なかったことにする辺りも屁理屈クオリティでして、とにかく黒田緩和は所期の効果を発揮したということに歴史改変をしようというお話のようで、まあそこは内田さん当事者バイアスが掛かっているからお気持ちはわかるんだが、こういう「ほかにあったはずの重要なファクターを言わない」ってのはまあ巧妙ですよね、と思ってしまいます。

『こうした戦略は、一般に「ハイプレッシャー・エコノミー戦略」と呼ばれます。日本銀行は、大規模緩和のかなり早い段階から、「デフレ経済から脱却していく過程では、人手確保の競争は激しくなるはずであり、環境変化を先取りした企業が優位性を確保できる」という趣旨のことを発信していました。実現するのに時間がかかってしまいましたので、企業の皆さんにとって参考にするには、少し早すぎたかもしれませんが、大きな流れとして、そのようになりました。』

実現するのに時間がかかったのは金融緩和効果よりも別のファクター(構造要因)によって人手不足問題が生じたんじゃないんですかねえ(人口動態の他に働き方改革もあるかしら)というお話なんですよね本来は。

『実際に、人手不足への対応は、企業変革や生産性向上のドライバーとなりうるものであり、省人化投資を行ったり、お金にならない非効率なあるいは過剰なサービスをやめる、といった動きが広がっていきました。その後、コロナ禍で見えづらくなりましたが、底流としては、こうした動きは継続していたと思います。』

何ちゅうかまあ強引に金融緩和政策による高圧経済が効いて、という話になっているのがもうねと思いますが、この項の最後がコストプッシュのお話でして、

『コロナ禍からの回復過程では、世界的なインフレが生じ、わが国にもコストプッシュ型の物価高をもたらしています。これはもちろん望ましくないことですが、人手不足の素地があるもとで、昨年春の賃上げにつながりました。現在のタイトな労働市場は、こうした背景を持つものですから、容易に変わるものではありません。企業は、そのことを前提に、価格戦略を含めて、経営を行う必要があります。』

ということで、まあ途中の理屈は胡散臭いのですけれども、結論部分を見ると「賃金と物価が上昇する構造が定着してくると思います」って話をしているんですから、これまたどう見ても大勝利宣言でして、まさにエンドロールの回想シーンっぽい感じになっておりまして、ここまで言ってるのに出口着手しない訳がないですわな、というお話。


・成長力の強化の成果が出るのに時間がかかって云々とか言ってたがここでポロリがあるでよ

次の小見出しが、『(人手不足経済のもとでの企業経営)』で何かまあ説教っぽいのはさておきまして、最初のところでちょっとワロタ。

『私は、ここにようやく、わが国経済の「成長力の強化」という根本的な問題を解決する糸口が見えてきたと思っています。人手不足は、個々の企業にとっては困ったことだと思いますが、同時に、チャンスでもあります。賃金を継続的に上げていける収益モデルを作れるかどうか、そして働く人に選ばれる企業になれるかどうか、「働く人の眼」を基準に、個々の企業の変革と新陳代謝が進みます。』

ほうほうなるほど良いことは言ってるんだが、これ冒頭で「私は、ここにようやく、わが国経済の「成長力の強化」という根本的な問題を解決する糸口が見えてきたと思っています。」って言ってるのがチャーミングでして、さっきあんさん「これに対する根本的な解決策が「成長力の強化」であることは自明です。しかし、その成果が出るまでには時間がかかります。そこに 2011 年の東日本大震災が重なり、いわゆる「6重苦」といわれる状況になりました。」って話をしてたんだが、結局日本はずーーーーっと「成長力の強化」が出来てなかっただけの事じゃん、というのをポロリっているのはちょっと笑ってしまいました。

この先の部分はまあ思いっきり説教っぽいのでパスしますね。


・デフレ期のノルムがどうしたこうしたのところでこの前の経団連植田講演を微妙に訂正している希ガスw

次の小見出しが『』なんですけどね。

『この間、デフレからの転換に際して、経営戦略の障害になってきたのが、「賃金・物価は上がらない、変わらない」という社会的な慣行・ノルムです。』

『企業の皆さんは、デフレのノルムのもとでは、「良い物を作って価格を上げる」という方向に向かいにくかった、と口を揃えます。ただ、このノルムが、経済にどのような経路で悪影響を及ぼしたのかは、必ずしも自明ではありません。経済学の目から見れば、全体のインフレ率がどうであれ、個々の商品の相対価格を変えることは可能なはずです。』

これわwwwww

アタクシも粘着質だから何回かネタにしましたけど、年末に植田総裁が経団連の講演でデフレ期のノルムということでメニューコストの話を持ち出して植田さん説明してたじゃないですか

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko231225a.htm

『低インフレ環境の定着』ってところの途中になりますけど、

『マクロ経済学では、企業の価格改定のコストをメニューコストと呼びます。メニューコストの語源は、価格改定時に「値札」を変えるコストということですが、実際に値上げを行うにあたっては、顧客への説明・交渉など様々なコストが生じます。わが国では、価格の据え置きが長期化し値上げのノウハウが喪失されるなどする中で、このメニューコストが著しく大きくなってしまい、本格的に価格が動かなくなった面もあるかもしれません。』

ってのがあって、

『資源配分等への影響』のところでは、

『本日ご説明しましたように、わが国が陥った低インフレ環境の大きな特徴は、賃金・価格設定行動において現状維持のバイアスが強くかかり、多くの品目で価格が据え置かれるようになったことでした。このことは、個々の商品の間の相対価格が変化しにくくなり、市場の価格発見機能が働きにくくなったことを意味します。結果として、資源配分が非効率的となり、経済全体でみた生産性を損なっていた惧れもあります。』(以上直近2か所部分は直上URL先の2023/12/25植田総裁経団連講演より)

ってありまして、この話って標準的な経済学の考え方のどっちかというと逆の話をしていますよね、ってのを12/26と12/27にネタにした訳ですわな。

でもって今回の内田さん、しらっと

『ただ、このノルムが、経済にどのような経路で悪影響を及ぼしたのかは、必ずしも自明ではありません。経済学の目から見れば、全体のインフレ率がどうであれ、個々の商品の相対価格を変えることは可能なはずです。』(再掲)

って話をしていて、12/25の植田総裁講演であたくしがツッコミを入れた珍説部分をしらっと訂正しているのが大変にチャーミングでございました。アタクシのイヤミ聞こえたのかしらと自意識過剰になりたくなりますが、まあこの部分はアタクシですら???と思って日銀の過去の論文見てなるほどと思いながらツッコミを入れたくらいですから、普通にちゃんと経済学の訓練受けている人から総ツッコミを食らったんだろうなあと思ったり思わなかったりする訳です。

まあアレです。別の角度から考えますと、12/25の経団連講演の時点では12月会合で政策修正思惑に対してのゼロどころかマイナス回答で消火弾投下したら消火どころかケガ人まで出たような情報発信だったのですが、まあそういうタイミングの講演だから無理筋の話をしないといけない(客観的に出口が意識できないようなタイミングでは王道の話をできるのだが、出口が近くなると時間的不整合が発生するので情報発信が無理筋になるか政策が持たなくなるかのどっちかが発生する)ということでもあった、ともいえるわけですが、その植田さんの珍論の類を今回しらっと修正している訳ですよ。これもまた「出口を決断したが故に無理筋な説明をしなくて済むようになった」という事が背景にあると思うと話が繋がるわけです。

とまあそういう辺りも含めて、今回の内田さんの金懇挨拶って一気に出口に舵を切ったな、というのが言えるんだと思います。


・デフレ期のノルムの話ですが変にマクロ経済がどうのこうのと言わないで説明するのがいい感じですし気合入ってますよね

でまこの小見出しの途中飛ばしてちょっと先に入るんですけどね。

『私は、デフレ期のノルムというものは、「賃金や物価が上がらない」という現象に代表させて語られているけれども、その背後にある経済的・社会的・政治的な構造も含んだ複合的なものとして捉える必要があると考えています。』

ほう。

『すなわち、過当競争と慢性的な需要不足、労働需給の弱さと雇用への不安、さらには「それでも何とかやっていけるようにしていた」各種のセーフティ・ネットなどです。』

ほうほう。

『中でも、「賃金を上げなくても人を雇えたこと」が決定的だったのではないかと思っています。』

ほうほうほう。

『この 10 年、デフレではない状況になったにもかかわらず、このノルムをなかなか解消できなかったのは、労働供給面の対応余地が残っていた中で、これが絞られ、本当の「人手不足経済」が実現するまでに、時間がかかったからだと思います。』

ということで、まあこういう話をしだすとさっきの「労働需給の引き締まりはワシが育てた」の物言いじゃなくなって謙虚に構造問題の変化と読める言い方になっているのがお洒落な訳でして、「今の政策を変更しないバイアス」の方はなくなったのでそっちの関連の屁理屈は言わなくなって素直な話をしていますが、「黒田緩和は正しかったバイアス」の方はまだ残っているんだよね、というのが見て取れるんじゃないかと思います(個人の感想です)。


『その意味では、現在、海外発のコストプッシュがきっかけとはいえ、実際に賃金が上がり、今度こそ、日本経済が変わる素地が整ってきたと感じます。』

労働需給の改善は人口動態のおかげだし、物価を動かす最初の石転がしは海外の力でしたけど、それも踏まえながらこの気合の入ったお言葉よ。

『デフレ期の考え方や慣行から脱却し、賃金と物価が上がる経済、そしてそれが可能なビジネスモデルを企業が工夫し、それに成功した企業が働く人から選ばれることで、全体としても成長力が高まる経済、が実現できるチャンスが巡ってきています。』

気合入っとる入っとるw

『この変化の動きをしっかりと支え、定着させていけるように、金融政策の運営においても、安定した、緩和的な金融環境を維持していきたいと思います。「金利のある世界」は、日本銀行が金利を上げることで実現するものではありません。経済と物価の状況が改善し、金利を上げることがふさわしい状況を実現してはじめて可能になるものです。』

ということで『5.日本経済の転換点にあって』という壮大な小見出しのコーナーは締まるのでした。気合入ってますな〜


あと、最後のご当地経済の話は基本割愛なのですが、図表15『奈良県の経済』の左のグラフ『人口と一人当たり県内総生産』を見ますと、奈良県の人口減少ェ・・・・・と思ってしまいましたorzorz


〇内田さん会見では「金懇テキストに書いている通りですよ」を繰り返すも随所に勝利宣言のエンドロールが

https://www.boj.or.jp/about/press/kaiken_2024/kk240209a.pdf
内田副総裁記者会見
――2024年2月8日(木)午後2時30分から約35分
於 奈良市

・ホワットドューユーミーンバイ「にどんどん利上げをしていくようなパス」に対して

幹事社の定例質問の次に早速これが来る、そりゃそうですよね。

『(問)午前中の講演でですね、マイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくいというような趣旨のお話がありました。一応確認ですけれど、これはマイナス金利を解除した後、追加利上げというのは当分の間はやらずに、暫く政策変更しないというような趣旨なのか、あるいは 0.25[%]とか0.50[%]のような、きわめて小幅の利上げというのは、それほど時間を置かずにやるということは排除していないのか、その辺りをお願いします。』

0.50%は極めて小幅ちゃうやろと思いましたがそれはさておき。

『(答)今日のですね、いろいろなことを書かせて頂いたというか、読ませて頂いたわけですけれども、現時点でお話できることというのを、皆さんが関心を持っておられることを話せる範囲でお話しするということで書かせて頂いたので、全体としてですね、あまり追加できることは多くはないということなので、この通り読んで頂ければというふうに思いますが、』

ということで、まあ確かに今回は金懇テキストの方が気合入ってますわという感じの内容でございましたので「読んで味噌」なのは分かるんですけど、この次の説明が中々味わいがあって、

『今の点について一点だけ敷衍しますと、二度ほど強調していますが、マイナス金利を解除した後のパスというものは、今後のですね、経済・物価情勢次第であるということを繰り返し強調させて頂いています。』

既に話が「マイナス金利解除」は前提になっているのが大変に味わいがある訳でして、いやーなんすか今まで全然そういう説明で来なかったのに急におまいら何を食ったんだという感じですな、まあ黒田岩田の悪霊がやっと除霊されたと思えばよいのかもしれませんけれども。

『これは当たり前のことですけれども、大きな考え方としてはですね、金利というものは、2%の前後でCPIが推移するように適切な水準に持っていく、そうなるために、経済と物価を見極めていくということになりますので、当然そこにインプットされる経済・物価情勢次第ということになります。そのうえでここに書いてあるように、今の見通しを前提とすれば、書いた通りですけれども、緩和的な金融環境が維持されることになるだろうというふうに書いたわけです。』

『同時に、このことはですね、この後、金融市場における、例えば予想物価上昇率がどれだけのペースで 2%に向かっていくのかとか、大きな流れで言えばですね、賃金を含めてですけれども、物価のダイナミズムがどう変わっていくのかとか、そういったことによって左右されるというふうに思いますので、現時点でそれ以上のことを申し上げるのはですね、良くないと思いますし、却って不正確だと思いますので、そのように理解して頂ければというふうに思います。』

逆に現時点で完全にマイナス金利解除を前提にした話をしているのが凄くて、ご案内の通り黒田末期からつい最近に至るまで、何の言霊信仰があるのやらという感じで、マイナス金利解除後の話をすることさえ蛇蝎の如く忌み嫌っていた大本営が突如この有様な訳でして、このトーンですと4月会合まで引っ張る方が却って疲れるから3月にやれ(3月にやったとしても多分4/16から適用だし)ってなもんですな。はーこりゃこりゃ。


なお、次の質疑でも聞かれていましてね。

『(問)今の質問にちょっと関連しまして、例えば、過去、2006 年から[0]7 年にかけての利上げ局面で、06 年の 3 月に量的緩和を解除しまして、7 月に 0.25%利上げで、更に07 年の 2 月に 0.25%利上げしています。このペースは、「どんどん利上げ」に相当すると思いますか、というのが一点です。(後半割愛)』

イイシツモンダナー

『(答)前者についてはですね、第一のご質問に答えたことにほぼ尽きているというふうに思います。当然、経済・物価情勢が 2006 年とは違いますので、そういう中でですね、ペースというのは決まってくると思いますので、当時と比べるという発想はそもそもあまりしたことがないので何とも言えません。今後の経済・物価情勢次第であるというふうに申し上げたいと思います。(後半割愛)』

と言ってますが、金曜にネタにしましたように、「緩和的な環境が続く」だの「不連続な変化は避けられる」だのって福井の俊ちゃんが量的金融緩和を解除した2006年と同じことを言っている(まあ中銀が大規模緩和からの巻き戻しを行う際の常套文句ではあるが)のでして、意識してない訳が無いのでこれはオトボケであるに1万福井俊彦。

・市場の政策金利織り込みのグラフを出した意味は??

どんどん利上げに関連してこんな質問も出ました。

『(問)(前半割愛)もう一つ、ちょっと細かいんですが、講演で使われた図表 9 のところに、政策金利の市場予想をお使いになっています。この中でざっくり言うとですね、大体 1 年で25bps くらいだと思うのですけれども、もちろんその経済と物価によってその金利のパスは決まっていくということなんですけれども、今の現時点ではこの市場の見方について、内田副総裁ご自身は特に違和感をお持ちでないという理解でよいのでしょうか、どうでしょうか。』

ま、この図表見て「日銀は2年間で50bpまでの利上げを想定してるんじゃないか、だから金利は上がらんぜよ」と飛びついた向きはいたように見えますが。

『(答)二点目については先ほどの一番最初の質問に戻りたいと思いますが、それは経済・物価情勢次第ですので、それについて評価することは差し控えたいというふうに思います。今は市場はこうだということを出しただけであって、これを endorse するつもりもないですし、違うというつもりもないです。(後半割愛)』

まあでもミスリードなのかわざとミスリードするように入れたのか、って感じでしたよね。


・ビハインドに陥るリスクについての質問が多かったのは興味深かった

今回遂にマイナス金利解除だの2%達成が視野に入るだの、となってみますと、よくよく考えてみたらそりゃ一気に2%は無いにしたって、0%台の金利って超越緩和的な状況な訳で、それを放置していると政策がビハインドしないか???って疑問が来るのは理の当然な訳ですが、今回その手の質問が多かった(同じ人なのか別の人なのかはわからんけど)のが中々味わいがあります。

『(問)(前半割愛)あともう一つは、8 月の懇談会の時におっしゃっていたリスクマネジメント・アプローチについてなんですけれども、当時はビハインド・ザ・カーブに陥るリスクよりも拙速な緩和修正による下方リスクの方が大きいという話をされていたかと思います。今回、現時点でのリスクアプローチについての認識をお伺いできれば幸いです。』

そら急にこんなにジャガーチェンジするんですから言われるわな。

『(答)(前半割愛)後者ですけれども、展望レポートの記述の中で、今回、リスクバランスはですね、読み上げますが、「経済・物価のいずれの見通しについても、概ね上下にバランスしている」という評価をしている、ただし、「もっとも、物価については、長期にわたる低成長やデフレの経験などから賃金・物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が社会に定着していることを踏まえると、賃金と物価の好循環が強まっていくか注視していくことが重要である」というふうに記述しています。』

『ただ読み上げただけですけれども。そのように考えていまして、当然ですね、見通しと上下のバランスを踏まえて、適切な金融政策をやっているというふうに考えていますので、現時点においてですね、ビハインド・ザ・カーブに陥っているということはないというふうに思っています。』

いや質問は現時点でビハインドかという話ではなくて、ビハインドになるリスクってのを考えた結果アプローチが変わっているのかという事だと思うんだが。と思ったら後の方で関連した質問がありました。

『(問)先ほどの質問のお答えで、リスクバランス的にはビハインド・ザ・カーブに陥るとは思っていないということで理解したんですけれども、先日公表されました 1 月の決定会合の「主な意見」で、現状の政策を続けると今ある副作用が続くことになると。その副作用が与える影響に関して、どれくらい時間的猶予があるのかですとか、その辺のバランスはどのようにみられてますでしょうか。』

ビハインドというよりも副作用論で質問されていますが、

『(答)当然なんですけれども、今、多角的レビューというところで全般的な見直しをしていますけれども、毎回のMPMでもそこは議論しながらやっているわけです。というか正確に申し上げると、この間のYCCの運営なり、それから短期金利のところを含めてですけれども、効果と副作用のバランスが最も良いところということで毎回毎回、決定しているということなので、1 月の決定会合についてはですね、今のやり方が最も良いというふうに、副作用を含めて判断したということになります。そのことはこれからのですね、決定会合においても同じ状況になりますので、当然、副作用も含めて毎回判断していくということになると思います。』

見事に無回答キタコレですね。後の方で同じ人なのか別の人なのかは不明ですが、上記の質問を副作用論ではなくて真正面からビハインドで聞いているのがありまして、

『(問)ビハインド・ザ・カーブのリスク、先行きのリスクについてお伺いしたいんですけれども、現時点ではまだそこに陥っていないということですが、しっかり賃金の動向を確認していきたいということも講演でおっしゃっていますけれども、日銀は今、しっかりとじっくりと賃金と物価の好循環を確認できる時間的余裕はあるのでしょうか。それがまず一つです。(後半割愛)』

回答はこちら。

『(答)(前半割愛)一点目は何でしたか。』

『(問)ビハインド・ザ・カーブに先行き陥るリスクですね。じっくり、しっかりと好循環を見極められる時間的余裕があるのか。』

『(答)これもですね、皆さんもそうであるように私も一応言葉は気を付けながら表現は選んでいるつもりなので、しっかりと確認していくというつもりでいます。そこにですね、違う意味をいろいろ言っていくとですね、言い換えていくと、そのことにまた意味を見出してしまう人も出てくると思いますので避けたいというふうに思います。この通り読んで頂ければと思います。』

何という回答、と思ったのですが、まあ要するに「今時点で物価と賃金のスパイラルで上に抜けてしまうリスクは考えていない」のだが「結局は出たとこ勝負なので必ずしも決め打ちしない」というお話で、そらまあそうだなという話です。

でまあここでしらっとチャーミングなのは「そこにですね、違う意味をいろいろ言っていくとですね、言い換えていくと、そのことにまた意味を見出してしまう人も出てくると思いますので避けたいというふうに思います。」という部分でして、これは一々余計なキャッチーな言葉を出して金融市場にクッソ余計なノイズを出す植田さんに対する結構痛烈な砲撃になっていまして、これは結構笑ってしまいました。


・エンドロール回想シーン状態の第5章に関する質問に生き生きと(かどうか知らんが)回答する内田さんの巻

こんな質問がありましてね。

『(問)副総裁に伺いたいのですが、今日挨拶の中で、「日本経済が変わる素地が整ってきた」というふうに表現されていまして、今焦点になっている春闘の賃上げの状況も含めてですね、この意味合い、今日の「素地が整ってきた」という意味合いをもう少しご説明ください。』

キタコレ!

『そのうえで、副総裁自身、賃金・物価の好循環の達成とですね、政策転換のタイミングが近づいてきているというふうに捉えていらっしゃるのか。もし足りない部分があるとすれば、どの部分なのかを教えてください。』

これは良い質問。回答が思いっきり大演説になっていますから、まあ今回の金懇ですが現世利益部門よりも勝利のエンドロール部分と言える第5章が内田さん言いたかったこと、というお話ではありますな・

『(答)今日、主にそこを論じたつもりでいますので、付け加えることがどれだけ多いかはよくわかりませんけれども、』

と言いつつこの先が長い、刮目して待て。

『結局ですね、去年確かに春、賃上げが大方の予想よりは強い賃上げが行われたということかと思います。』

じゃあ何でその後延々と「2%が遠くなるポンチ絵」を出していたんだよオイコラと思う訳ですがその先を読みますと、

『これのきっかけになったのはグローバルなインフレ、そのことが日本の物価を押し上げた、これは好ましくないことですけれども、それがきっかけになったのも事実ですが、何回かこの中に書いてある通り、もしそれが人手不足の経済、あるいは労働市場ないし他のものも含めて、ある種需要超過の状況がですね、いろんな意味でつくられてきている経済っていうことをですね、方向としてですけれどもあくまで、前提としていなければ、おそらく単にインフレで終わった可能性が高いというふうに思います。』

『これが、労働需給がタイトな中において行われた結果として、賃上げに向かったということですので、確かにきっかけはグローバルなインフレだったかもしれないけれども、今起きていることというのはもう少し構造的なものだというふうに判断しているということです。』

こうやってフラットに発言していると、金融緩和政策で労働需給のタイトさを育てた、という図々しい話をしないんですよね。しかも「もう少し構造的なもの」と言ってるわけで、金融緩和って循環的な調整をするもので構造調整をするもんじゃないのですから、金懇ネタの方で言ってた「労働需給の変化はワシが育てた」ってのは話を盛り過ぎにも程があるのは自分でもわかっているんですな内田さんw

『このことをですね、一つのドライバーとして、これは言い方は難しいんですけれども、人手不足というのはもちろん個々には困ったことなので、これがいいんだという言い方は難しいのですけれども、違う言い方をすれば、労働需給がタイトで失業の心配が比較的少ないという状況のもとでですね、賃金は上がりやすい状態になっているわけであって、このことをきっかけに、働く人から選ばれる企業が残っていくというかたちがみえてきているわけです。』

ほう。

『そのことをできるだけ摩擦の少ないかたちで実現していくことができるのであれば、日本経済にとっては賃金と物価がともに上がるという、これは 80 年代の日本では当たり前だったので、ものすごく違うことが起こるというより、デフレ期に起こったことを戻すということではあるのですけれども、そこに戻っていく素地がようやく整ってきたというふうに思っています。』

どうですかこの気合の入りよう。どう見ても勝利宣言です本当にありがとうございました。

『マクロ的にみる限りは、今年の賃上げは、去年よりも良い状況がいくつか揃っている。具体的には、良いって言ってはいけないかもしれませんが、高い、強い可能性がある情報が揃っている。一つは、人手不足は今年の方が厳しい、企業収益は過去最高である、労使双方から比較的強い声が聞こえている、こういったことを踏まえるとですね、物価も暦年ベースでは去年の方が高いわけですが、そういった様々なことを踏まえると、好循環、あるいは、少なくとも物価から賃金という方向については、ある程度、なんと言いますか、期待が持てるし、本当に期待したいというふうに思います。その状況は整ってきているというふうに思っています。』

強い(確信)

『ただ、そのことを確認して、逆方向も含めて確認したうえで、いわゆる好循環を確認したうえで、2%を見通せるようになったというふうに判断するかどうか、というふうに向かっていくということですので、当然ですけれども、春季労使交渉の状況というのは、重要なファクターの一つになるというふうに思っています。それでお答えしたことになりましたか。』

あまりにも大演説になったのでもう一つの質問の事をすっかり忘れているのがお茶目です内田さんwww


『(問)その好循環とですね、その先というかそれと同時の政策転換というのが、徐々にですね、近づいてきているというご認識であるか。ちょっと足りない部分が今あるとすればどういうところか。』

『(答)それはまさに時間の経過とともにですね、総裁が何度も申し上げているように、2%の実現を見通せる確度は少しずつ高まってきているというふうに判断しています。そのうえで、賃金と物価を確認していくということですし、何を具体的に確認していくのかは今日書いたつもりですから。もちろん、経済全体を判断するということなので、ここに書いたことだけをみていくわけではありませんけれども、賃金と物価というのが、きわめて重要なファクターであり、その中にあって春闘というタイミングで賃金の部分が確認できるということはですね、これは重要なイベントであろうというふうに思っています。』

とまあそういうことなので、春闘の状況を確認したうえで3月会合で解除、って話になるんじゃないですかねえ、とアタクシは願望込みで思うのですがさてどうなんでしょうかね。

今朝は何かクソ長くなったのでこの辺で勘弁。




2024/02/09

お題「内田副総裁金懇講演、アタクシ的には想定以上に踏み込んでいたと思うのだが何故その反応・・・・」

〇内田副総裁奈良金懇挨拶:もう完全にマイナス金利解除前提だし解除も単発じゃないですよねー

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240208a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 奈良県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一


ということでアタクシそういや昨日の朝の時点で内田さんの金懇に対しまして、

(昨日の朝書いたフラグ立てもとい内田さん金懇大予想)「物価目標達成への見通しがつくことへの確度が高まっている」からの「見通しがついたと判断出来たらマイナス金利解除を含めた今の政策の修正をするのはやぶさかではない」からの「とは言え依然として日本は物価があがりにくいノルムなどが残存しており、2%物価目標達成までの間には時間があり、その間ゆっくりと政策の見直しを行っていく余裕がある」ってな感じでお話をして、マイナス金利はまあ解除するけどその後の利上げのお代わりとかシランガナ先の話じゃ先の話、ってな路線で話をするんジャマイカというのに1万麿と言った所でありまする。

などと予想したんですけど、期待は寧ろいい方に裏切られた感が強くて、「見通しついたらマイナス解除もやぶさかではない」どころか今回の金懇って既に「マイナス金利解除後にどういう運営をしていこうと考えているかのご説明」モードになっていましたし、「物価目標達成までの間には時間がある」と来るかと思えばそこも結構な勢いで達成への自信ニキな説明だったですね。

まあ「その後の政策の見直しがゆっくり」というのは順当にその話をしたのですけれども、ベースラインで行っている経済物価(特に物価)への認識がアタクシが思った以上に強い訳ですし、そもそもが話の前提がマイナス金利解除、という話をしている時点でやる気満々な訳でして、これって「マイナス金利解除というヘビーな問題を無事に通過させるために利上げおかわりの部分でオブラートに包んでケーキ生地で巻いて生クリームでトッピングして鋭鋒を隠している」以外のナニモンでも無くて、その後の利上げの話がクッソ慎重なのはもう早期マイナス解除やる気満々じゃん、ということかと思いました、はい。


・市場の反応もメモっておくけど

とは言えこの反応は日銀アタマイタイんじゃねーのと思ったんですけどね。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240209/k10014353001000.html
NY市場 一時149円台半ばまで値下がり 日銀副総裁の発言で
2024年2月9日 4時20分

『8日のニューヨーク外国為替市場では、日銀の内田副総裁がマイナス金利を解除する場合でも緩和的な金融環境を維持するという見通しを示したことを受けて円安が進み、円相場は一時、およそ2か月半ぶりに1ドル=149円台半ばまで値下がりしました。』

『8日のニューヨーク外国為替市場では円安が進み、円相場は一時、およそ2か月半ぶりに1ドル=149円台半ばまで値下がりしました。』

『日銀の内田副総裁が8日、マイナス金利を解除する場合でも緩和的な金融環境を維持するという見通しを示したことを受けて、日米の金利差が意識されて円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まりました。』(以上上記URL先より)

いやさあ、お前ら日銀のマイナス金利解除でどんな金利パス想定してたんだよ状況からしてミーティングバイミイーティングで欧米みたいに利上げするとか全然そういう訳ないだろそもそもお前ら円債の金利どうなってるのか見てるのかよテメエらの首の上に乗っかているのは乾燥ヘチマかと小一時間問い詰めたいのですが、まあお前らヘッドラインしか見てねえな、ってな感じだと思いました、まる。


ゆうて横綱も昨日は内田金懇挨拶受けて怒涛の電車道の押し相撲だったので人の事は言えないんですけど、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 24年3月限

取引日  2024/02/08
立会区分 日中取引
始値  146.20(02/08)(08:45)
高値  146.56(02/08)(14:49)
安値  146.13(02/08)(09:09)
現在値 146.56(02/08)(15:02)
前日比 +0.11
取引高 25,343

日中足を見ますと講演エンバーゴのタイミング(1030)で146.22レベル→146.46レベルという横綱怒涛の寄り切りと言った風情を示しておりまして、最初はそんなにハトハトジジイの発言でもしたのかと思ったらザックリ見ただけでも「何だよ普通にマイナス金利解除宣言ジャン」と思ったので?????ではあったのですが、冷静に考えますと昨日はイブニングで謎の下げで20銭ちょいの下げから始まっていたので、そもそも論として内田さんの講演に何の期待をしてたかよくわからんけど、またアホウ海外投機筋が意味不明売りをかまして自爆したんかい、とは思ってしまいましたが、株ちゃんと為替ちゃんがあの有様なのお前らなあ・・・・と思いました。

なお、昨晩のイブニングでまた土俵が戻っているのですが、これは内田さん講演の解釈が改めて行われたためなのか、単純にアメリカン金利が上昇したからだけなのか、というのは意味が分からんので解釈保留しますw


あとは短国6M
https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240208.htm
国庫短期証券(第1211回)の入札結果

5.価格競争入札について
(1)応募額    11兆1,697億円
(2)募入決定額   3兆2,878億7,000万円
(3)募入最低価格  100円04銭4厘
(募入最高利回り)(-0.0882%)
(4)募入最低価格における案分比率  58.5829%
(5)募入平均価格  100円05銭2厘
(募入平均利回り)(-0.1042%)

こちらなんですけど、売買参考統計値ベース
https://market.jsda.or.jp/shijyo/saiken/baibai/baisanchi/index.html

で見た時の1211回の前日の引け(短国の場合はゼロクーポンなので入札アナウンス時点で銘柄の概要が確定している関係上WI取引時点で1211回の売参、というのができる)が▲0.140%(平均値単利)になっている所で入札をやったのですが、さすがに6mと言えば足が8月の13日になりますので、内田さんの講演を受けてでしょう平均▲0.1042%の足切り▲0.0882%まで金利が上昇しました。と言っても何かまだそんなマイナスかよって所ですが、まあマイナス金利のもとではどうしてもビルの需要強くなるのでこの辺は中々金利観を綺麗に反映しない市場になってしまうなとは思いました。なお昨日の引けの売参は▲0.104%と平均落札価格の所になっています。


スイマセン俺様備忘メモが長くなってしまいましたが内田さん金懇講演ネタ参ります。


〇内田副総裁金懇挨拶(物価情勢):これはどう見てもキテマスキテマスです本当にありがとうございました

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2024/data/ko240208a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 奈良県金融経済懇談会における挨拶 ──
日本銀行副総裁 内田 眞一

今朝はまあ時間の関係上ちゃちゃっと読みますので(会見要旨が今日出ますから週明けにちゃちゃっと以外も含めて更にネタにする所存)まずは経済物価情勢のど本命『3.賃金・物価情勢』から参ります。まずは小見出し『(物価の現状と見通し)』になります。

・何かこの金懇挨拶要旨モノホンのアンチョコっぽくてチャーミングですよね

この部分、最初の書き方が、

『図表5をご覧ください。そこで、賃金と物価についてです。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、昨年 12 月は 2.3%となりました。内訳をみますと、』

って感じで始まりますし、その前の所でもそんな感じの掴みなんですけど、前回の8月千葉金懇の時には

https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/ko230802a.htm

『まず、個人消費は、新型コロナの感染症法上の位置付けの変更もあってペントアップ需要が顕在化しており、宿泊・飲食などサービス消費を中心に、緩やかなペースで着実に増加しています(図表2)。インバウンド需要の回復も、これら対面型サービス業の追い風になっています。』(この部分だけ直上URL先の内田副総裁8月2日千葉金懇より引用)

って感じで、図表のリファーをわざわざ口語形式で行っているのは今回初でして、中の人が変わったのかと思いましたし、何なら田村さんが内田さんの着ぐるみを着用して(大嘘)

てな余談はさておき、最初のところは実は単なる1月展望レポートの数字の説明なのでそこはかっ飛ばしまして、その次からですわよ奥様。


・第一のナントカ使うの混乱するからやめえや

『(賃金と物価の好循環)』という小見出しですが、

『こうした見通しが実現するためには、物価から賃金、賃金から物価の双方向で、好循環が強まっていく必要があります。まず、第 1 の方向、すなわち、物価上昇に応じた賃上げが実現するか、という点ですが、マクロ的な環境の面では、昨年よりも強い材料が増えています。』

ちょwwwおまwwwwwまた変な概念だしたのかよwwwwwwww

と一瞬草を生やしましたが、よくよく見たら単に「物価→賃金」と「賃金→物価」の話をしているだけなのですが、この第一のナントカって言い出すとまた標準的なマクロ経済学のアプローチから考えて何か変じゃねえかというのを煙に巻きながらドロンと説明する怪しいコンセプチュアルなレトリックかとおもってしまうじゃないですかヤダー。単に「物価から賃金」「賃金から物価」って言えば良いと思います。

でまあその草生えた件はさておきますと、既にここで「マクロ的な環境の面では、昨年よりも強い材料が増えています」とかエライ勢いで威勢のいい発言が出て参りました。

『図表6をご覧ください。先ほど申し上げた通り企業収益は高水準にあるほか、人手不足は厳しさを増しています。物価上昇率の反映という意味では、春の労使交渉の時点で参照できるのは、暦年ベースの消費者物価上昇率ですが、これは 22 年は 2.5%、23 年は 3.2%と今回の方が高くなっています。』

ときまして、アネクドータルな面では

『先月開催した日本銀行の支店長会議でも、「賃上げ実施の機運は、昨年より早い時期から高まってきている」という報告が相次ぎました。ただ、「具体的な賃上げ幅は、同業他社の状況等も踏まえながら決める」とする先も多く、不確実性が残っています。各地域の企業の皆様の声は、会議と同時に公表した『さくらレポート』にまとめてあります。引き続き、全国の本支店・事務所のネットワークを通じて情報を集めていきたいと思います。また、春季労使交渉の動向は、この先順次、数字の形でも明らかになってきます。これらの点を含めて賃上げの動向をしっかりと確認していきたいと思います。』

と留保付きっぽいですけれども、それにしても春闘で確認とかもう普通に強いですし、次の「賃金から物価」の方ですが、


・賃金から物価の話がこれまたツエツエバエな訳ですよ

『第2の方向は、賃金の上昇が販売価格に反映されていくか、という点です。図表7をご覧ください。企業の販売価格の見通しは、1年後は、原材料コストが低下に転じるもとで低下していますが、5年後は、高めの水準を続けています。』

というのを捕まえてこの次が何というかこの力強い解釈、何か微妙に強引な解釈という気もしますが、

『企業は、この先も人件費などの上昇が続くことを織り込みながら、販売価格を設定していこうとしているようにみえます。』

ちょwwwなんすかこの解釈はwwwww今までそんなこと一回も言ってなかったのにwwwwww

『先ほどご説明した消費者物価指数においても、このところサービス価格は緩やかに上昇しています。』

黒田緩和のクソ粘り中に物価の基調が上がらんネタで使われてたおものの、その後サービス価格が上がりだしたらすっかり言わなくなったサービス価格の話がここに来てバンバンと前面に出てきているのは何というご都合主義と思いますが、まあそういうことですよそういうことw

『一方で、企業からは、「原材料費とは異なり、人件費の販売価格への転嫁は難しい」という声が聞かれています。そうした厳しい状況にある企業が多いのは事実だと思います。』

えーっと1月の支店長会議の報告みたいなのではそこが結構クローズアップされていた報告になっていたように見受けられましたが・・・・・・・・・・・・

『ただ、高水準の企業収益や労働分配率のデータからは、少なくともマクロ的には、ある程度の転嫁が行われていることが示唆されます。』

キタコレ!

これどういうことかというと、人件費の販売価格の転嫁が出来ていないのであれば、直近で人件費を上げているんだから企業収益がスクイーズされていないとおかしいのだが、企業収益の水準にしろ、労働分配の状況にしろ、人件費上がった分がまともに企業収益のマイナスになっている、というのと逆の現象がマクロデータ的には見える、という話ですね。内田さんもその点説明しています。

『労働分配率は、このところ中小企業を含めて、低下しています。もし企業が、昨年春の賃上げ分を全く価格に転嫁できていないのであれば、収益は縮小し、労働分配率は上昇したはずです。この点は、企業ごとのばらつきが大きい可能性もあり、企業間における適正な価格転嫁の重要性を示していると思います。』

ということでつまりは企業には賃上げ原資が昨年以上にありまっせ、という威勢のいい話ですわな。


・ということなので賃金から物価の方も何か物凄い勢いで「行ってることになっている」モードワロスワロス

てな訳ですので、

『この第2の方向には、春季労使交渉のようなメルクマールになるイベントはありませんが、サービス価格を中心とする物価の動向や、それを支える個人消費の動向などから、総合的に判断していきます。』

だそうですが、

『また、支店長の報告では、価格転嫁ができている業種・企業ほど、賃上げに積極的である、という印象を持ちました。これは当たり前のことのようですが、第 1 と第2の方向の成否が表裏の関係にあることを示しています。そうした観点も持ちながら、この2つを並行して点検していきたいと思います。』

これどっからどう見てもエライ強気化しておりまして、いやまあ今までの大本営発表がおかしくて正常になった、と言ってしまえばそれまで何ですが、ついこの前までは全然この循環の進みが遅くてもうずーっと見て行きそうな勢いで話をしてたのはナンダッタノカ、という話になりますが、ここで皆さん思い出して頂きたいのは「展望レポートダイジェスト」な訳ですよ。

まあ今更直リンするまでもないですけど

1月ポンチ絵
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm

10月ポンチ絵
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202310.htm

ご案内もクソも水曜日に悪態書いたばっかりですけど、「農家の若夫婦が将来大きく成長して2%の果実がたわわに実る姿を夢見ながら苗木どころか双葉を植えました」からわずか3カ月後には「広場に巨大オブジェ”2%”が堂々と鎮座する世界」にワープするとか、おまえ竹だって3か月で大木にはならんじゃろお前らの所にはどんな果物があるんだちょっと説明してみろや、という勢いで君子ジャガーチェンジするのが「中原三原則」で中原伸之さんに喝破された日銀の毎度おなじみのスタンス豹変な訳でして、まあ急にここにきて物価の前向き循環の話がアホほど強くなってきまして、じゃあ12月のハトハトチキン会見はナンダッタノカと小一時間問い詰めたいというか、解除後にこの調子でジャガーチェンジされるとヤバい奴にも程があるので、こういう大ワープ式スタンスジャガーチェンジはマジでこれを最後にして欲しいものですな。


〇内田副総裁金懇挨拶金融政策パート:マイナス金利解除が前提クソワロタと利上げパスに関して雑感

ということでメインイベントパート2の『4.日本銀行の金融政策運営』に参ります。

『次に、日本銀行の金融政策運営についてお話しします。図表8をご覧ください。この2年ほどの間、消費者物価は、日本銀行が目標とする2%を超えて推移していますが、これは主として海外からのコストプッシュを原因とするもので、望ましい姿ではありません。日本銀行は、賃金の上昇を伴う形で、2%の目標を持続的・安定的に実現することを目指しています。そのために現在は、短期の政策金利を−0.1%とし、イールドカーブ・コントロールという枠組みで長期金利を低位に押し下げる、大規模な金融緩和を続けています。』

本来のターゲッティングって良い物価上昇も悪い物価上昇もないだろと思うんですけどね。良い悪いじゃなくて、物価上昇の背景が何らかのショックなどによる一時的なもので持続性が無い、と判断されるものなら政策で対処する必要はないし、背景が持続的なものである蓋然性が高い場合は何らかの政策対応を検討する、ってのが本来の話で、望ましい姿かどうかということで判断するもんじゃない筈なんですけどねえ。

ま、そういう掴みから入っておりますのですが、さてこの先ですな。

『先ほどご説明した見通しでは、消費者物価は、25 年度にかけて、「除く生鮮食品」「除く生鮮食品・エネルギー」のどちらで見ても、概ね2%となる姿になっており、その前提として、緩やかな景気回復が続き、賃金と物価の好循環が強まることを想定しています。すなわち、賃金上昇を伴う望ましい形で2%の目標を実現する姿となっています。先行きの不確実性はなお高いですが、こうした見通しが実現する確度は、少しずつ高まっています。』

望ましい姿云々で押し通しますなあwww

『この先、様々なデータや情報を丹念に点検し、賃金と物価の好循環を確認していきます。そして、それをベースに、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになれば、こうした大規模な金融緩和は役割を果たしたことになり、その修正を検討することになると考えています。』

>こうした大規模な金融緩和は役割を果たしたことになり
>こうした大規模な金融緩和は役割を果たしたことになり
>こうした大規模な金融緩和は役割を果たしたことになり

キタコレ!!!!!!!!!

『なお、これまで 10年以上にわたって大規模な緩和を続けてきましたので、政策修正のタイミングがいつになるにせよ、その前後で、金融市場に不連続な動きを生じさせることがないよう、コミュニケーション、オペレーションの両面で工夫していく必要があると考えています。』

達成見通せるになったの唐突にも程があってコミュニケーションが全力で不連続なことになっているのは展望レポートハイライトの絵を見れば誰でもわかると思うのですが、こうやって堂々と「不連続では無い」と言い切るのが大本営の面の皮と心臓の毛の状況をよく表しております、

『そうした観点から、個々の政策を修正する場合の基本的な考え方について、可能な範囲で説明していくことは重要だと思います。以下では、この間、エコノミストや記者の皆さんから、よく問われる論点について、現時点で申し上げられることをお話ししたいと思います』


はい来ました、ということで金利の話ですが、


・政策金利の話は既にマイナス金利解除が前提ですからこの勢いなら3月だし遅くても4月ですね

『まず、マイナス金利については、解除するとしてどのように短期の政策金利を設定するかという論点があります。マイナス金利の導入前には、日本銀行の当座預金取引先の超過準備に 0.1%の金利を付利し、取引先でない金融機関との裁定取引が行われる結果、短期金融市場では、無担保コールレートが 0〜0.1%の範囲で推移していました。仮にこの状態に戻すとすれば、現在の無担保コールレートは−0.1〜0%ですので、0.1%の利上げということになります。この点は、主として短期金融市場の機能をどう維持するかという論点です。』

ちょwwwおまwwwwww初手からマイナス金利解除前提wwwwwwww

ということなのと、これ超過準備に全部付利(まあそうしないと短期市場金利がゼロに下がってしまうので当たり前なんですけど)の方向で行くんだな&多分今あるインセンティブ付利に関してはインセンティブのっけた形で継続して、基礎残高のおかわり付利とマクロ加算残高のマイナスチャージ除外は全部超過準備付利の形で一本化(当然マイナス金利チャージも一本化)するんでしょうな、とおもいました。


・先行きのパスですがホワットドューユーミーンバイ「どんどん利上げをしない」????

『経済との関係でより重要なのは、その後の短期金利のパスです。』

完全に話がもうマイナス金利よりもその先の話になっている、というのはチャーミング。

『基本的な考え方としては、経済・物価の現状と見通しを点検し、「消費者物価が、目標である2%の前後で推移するように、適切な金利水準にする」ということになります。』

で??

『これに基づく実際のパスは、もちろん、今後の経済・物価情勢次第ということになりますが、先ほどご説明した見通しを前提にすれば、仮にマイナス金利を解除しても、その後にどんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになると思います。』

というのに反応してたようですけどここを過大評価するのはアカンヤロと思います、後述しますね。

『図表9をご覧ください。現在、市場においては、きわめて緩やかなパスが想定されています。私どもの経済・物価見通しは、政策金利の前提について、こうした市場の織り込みを参考に作成していますが、それでも物価が2%を大きく上回っていく見通しにはなっていません。また、図表 10 にありますとおり、現在、わが国の実質金利は大幅なマイナスであり、金融環境はきわめて緩和的です。この状況が大きく変化することは想定されていません。』

展望レポート作成時の先行き政策金利パスを金融市場が現在織り込んでいるパスとしている、という展望レポートの建付けをうまい具合に活用した説明さすが屁理屈王だけのことはあると思いましたが、ここもうっかりすると今の市場の織り込み(図表見れば2年後の政策金利が0.5%とかいうハトハトパス)にお墨付きを与えたかのような印象を受けて株とか為替とか反応したかもしれませんけど、別にそういう話じゃないんだよな〜。


・「欧米パターンのインフレ高騰を受けて泡吹いて引き締めるようなことはしませんよ」しか言ってませんよね

そもそも論として「どんどん利上げしない」とぶっこんだ背景が次にある訳よ。

『一方で、「2%のインフレ率を前提にすれば、仮に実質ベースの自然利子率がゼロ%としても、中立的な名目金利は2%になるはずだ」あるいは、それをベースに「テイラールールなどの簡易な方法で、あるべき政策金利を計算すると、もっと高い数字になる」といった見方が、特に海外の市場関係者やエコノミストなどからは、よく聞かれます。』

からの、

『ここでどちらが正しいかを論じるつもりはなく、あくまで今後の経済・物価情勢次第である、と繰り返させて頂いたうえで、わが国の状況を欧米のアナロジーで考えることには少し無理があります。図表 11 をご覧ください。』

ということで、以下要するに「欧米みたいな会合毎に泡吹いて引き締めしないといけない状況には無いんだからマイナス解除したら次の会合で利上げとかする訳ねえだろ馬鹿海外投機筋はそのヘチマ脳でちょっと考えろやヴォケ」というのを礼儀正しく説明しております。

『米国や欧州では、22 年に利上げを開始した時点で、インフレ率は8%を超え「物価は中長期的には2%程度で推移していくものだ」という人々の信認が維持できなくなる惧れが大きくなっていました。現在のわが国のインフレ率の状況はこれとは大きく異なります。』

『また、「中長期的な予想インフレ率」が2%でアンカーされている欧米とは異なり、わが国では、まだ2%に向けて上昇していく過程にある、という違いもあります。『そのことは、予想インフレ率を押し上げるために、また、予想インフレ率が再び下がってしまうリスクも意識しながら、緩和的な政策を行う必要があることを意味します。』

『日本の金融市場では、こうした欧米とは異なる物価のダイナミクスや、予想インフレ率が2%にアンカーされていないこと、およびそれらに伴う不確実性などが意識されている面があるかと思います。』

アホウ海外投機筋は日本良く知らないで債券売り込んでんじゃねえよ馬鹿、と言いたいのが良く分かります。

『逆に言えば、この先、わが国の物価のダイナミクスが変わっていくとして──後ほど詳しく申し上げますように、私どもはそれを目指しています──、そのスピード等によっては、市場の見方が変化していくことも考えられます。さらに言えば、わが国の物価のダイナミクスを変えていくために、その過程では緩和的な金融環境を維持していくことになるだろう、という言い方もできると思います。』

ということですがここで、福井の俊ちゃんの時を思い出しますと、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2006/k060309.htm

『当面の金融政策運営の考え方』を見ますと、

『量的緩和政策の経済・物価に対する効果は、現在、短期金利がゼロであることによる効果が中心になっているため、今回の措置により非連続的な変化が生じるものではない。』

『先行きの金融政策運営としては、無担保コールレートを概ねゼロ%とする期間を経た後、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に調整を行うことになる。この場合、前述のようなリスクが抑制されるのであれば、すなわち、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと考えている。』(この部分のみ直上URL先2006年3月9日金融政策決定会合(量的緩和解除)声明文より)

になっているのをまあ皆様思い出していただきたい、って感じですなw


・国債買入に関しては「何らかの市場介入はするけどどうするかあんまり決めれてない」ですねわかります

その次が『(イールドカーブ・コントロールと ETF 等の買入れ)』ですが、こちらはちょっとツッコミどころもあるのですが、今日は時間が無くなってしまったので(すいません)とりあえずベタベタ引用しますけど。

『次に、イールドカーブ・コントロールの見直しについてです。この枠組みは、もともと国債買入れによる「量的緩和(QE)」の一類型であり、廃止したらそれで終わりというものではありません。イールドカーブ・コントロールの枠組みを廃止するにせよ、何らかの形で残すにせよ、その後の国債買入れをどうしていくのか、その過程で、いかに市場の安定を保っていくのかは、考えなければなりません。その意味で、イールドカーブ・コントロールとその後の国債買入れの運営は連続的なものです。』

『現在は、「金利」を基準に、買入れの「量」が内生的に決まる仕組みですが、この枠組みを廃止あるいは変更する場合、どのような形で国債買入れのやり方を示していくのが良いのか、その時点の市場の状況を踏まえ、その先の展開も予測しながら、考えます。』

『当然のことながら、見直すのであれば、その方向性は、市場の自由な金利形成をより尊重していく方向になりますが、その前後で不連続な形で、買入れ額が大きく変わったり、金利が急激に上昇するといったことがないよう、丁寧に対応したいと思います。』

まあ要するに長期金利の急騰は怪しからんけど市場介入自体は漸減の方向、という基本コンセプトしか出て無くてさっきの金利の話しとはだいぶ具体感が違いますね。


・ETFはまあ予想通りですね

『また、日本銀行は、大規模緩和の一環として、ETF と J-REIT の買入れを行っていますが、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになり、大規模緩和を修正する時には、この買入れもやめるのが自然です。この点、3年前の 21 年3月には、買入れの方針を転換し、市場が不安定化した時にメリハリをつけて買い入れることとしましたが、それ以降、買入れ金額は小さくなり、昨年は、ETF は 2100 億円、J-REIT はゼロでした。仮に終了して、市場の価格形成に完全に委ねることとしても、市況等への影響は大きくないと思います。もとより、すでに保有している残高の扱いは別の問題です。非常に大きな規模ですので、時間をかけて検討していく必要があると思っています。』

ま、ここは順当、ということで今朝はこの辺で勘弁して頂きとう存じます。



2024/02/08

お題「今日の大ネタを前にのうのうとFOMC会見ネタでも(その1)」

〇という訳で本日は内田副総裁の奈良金懇でございますな

って別にただのメモですけど、

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm
今後の講演・挨拶等の予定

をみましても結局今朝の時点までお知らせは無くて、

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm
公表予定

まあこっちは金曜更新だからどうせ追加無いとおもったら追加が無いんですけど、いやあのさあコミュニケーションをちゃんとやりたい、ってんだったらこういう重要な講演があることを当日までダマテン(全部がダマテンならまだ一貫しているけど量産型雑魚審議委員の場合は4週間前には大公開って何だよそれって話ですわな)で行うわけだし、まあ当たり前ですけどこれ金懇の式次第的に日程決まっている話だし、会見あるんだからプレスには連絡しているわけだし、(なおエンバーゴ掛っていたらプレスは連絡があっても会があるとは言えませんわな)なんちゅうか変な所で秘密主義みたいになっているのは、あんまりよくないと思うんですけどねえ。いや別にFEDみたいに話し放題にしなくても良いとは思いますが、ECBだって何のかんの言ってシュナーベルとかデギンドスとかレーン(くりくり頭の坊ちゃん顔の方のレーン)とかに色々とスピーチをさせている訳でして、もうちょっと公開講演の場を増やして欲しいんですよね〜。


なお、アタクシ勝手に大予想(大フラグ建築)をしますと、今日の内田さん、「物価目標達成への見通しがつくことへの確度が高まっている」からの「見通しがついたと判断出来たらマイナス金利解除を含めた今の政策の修正をするのはやぶさかではない」からの「とは言え依然として日本は物価があがりにくいノルムなどが残存しており、2%物価目標達成までの間には時間があり、その間ゆっくりと政策の見直しを行っていく余裕がある」ってな感じでお話をして、マイナス金利はまあ解除するけどその後の利上げのお代わりとかシランガナ先の話じゃ先の話、ってな路線で話をするんジャマイカというのに1万麿と言った所でありまする。

まあ何にせよ楽しみですけど、まかり間違ってここでハトハトジジイの台無し情報発信をした場合、阿鼻叫喚の円安になって日銀がハイパーシバかれモードになって寧ろ政策正常化とその先のスピードが速まることが期待されますので、何だったら失望スピーチで円安大爆裂でも良くってよ、とは思いますが、あの「ついこの前まで物凄く遠くにあった筈の2%が広場の中央の大オブジェになっている」展望レポートインチキポンチ絵をみますに、そんなことはないっしょさすがに、とは思いますがいつものフラグ建築になるかならぬかさあさあお立合いお立合い。


〇FED高官喋り過ぎですネタが大渋滞しています(備忘メモリンク集)

日銀が喋らなさ過ぎならFEDよおまいら喋り過ぎwwwwwww

新任の理事さんです
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/RHL5IMJ46FJGDEDKDPAPIJ3I54-2024-02-07/
インフレには「楽観的」、利下げ前に確信必要=クーグラーFRB理事
ロイター編集
2024年2月8日午前 2:16 GMT+9

『[ワシントン 7日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)のクーグラー理事は7日、インフレ率が低下し続けることを「楽観視」しているとしながらも、政策立案者は金利を引き下げる前に、それが事実であることをより確信する必要があると付け加えた。』(上記URL先より)

当然講演テキストがあります
https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kugler20240207a.htm
February 07, 2024
The Outlook for the Economy and Monetary Policy
Governor Adriana D. Kugler
At the Brookings Institution, Washington, D.C

今回デビュー戦だからちゃんと読んでおきたいのですけど、どうでもよいのだがこのひとはクーグラーって読むのか、クグラーだと思ってた。後日(というかこの週末)読んでおく。


コリンズお姐さま
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-07/S8HVLNDWLU6800
ボストン連銀総裁、利下げは「年内」の可能性高い−さらに証拠必要
アンスティー・クリストファー
2024年2月8日 2:49 JST

『ボストン連銀のコリンズ総裁は、利下げに踏み切る前に、インフレ率が金融当局の目標とする2%に着実に近づきつつあることを示すさらなる証拠が必要がとの考えを示し、利下げ時期は「年内」の可能性が高いとした。』(上記URL先より)

「年内」ってそらそうだろうよ・・・・・・・・でもって本チャンはこちらです。
https://www.bostonfed.org/news-and-events/speeches/2024/economys-performance-and-outlook-and-implications-for-policy.aspx
The Economy’s Performance and Outlook, and Implications for Policy
By Susan M. Collins
February 7, 2024
Federal Reserve Bank of Boston
Remarks to the Boston Economic Club


バーキンのおいちゃん
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-07/S8HZO0DWX2PS00
リッチモンド連銀総裁、FRBの辛抱強いアプローチを「強く支持」
Steve Matthews
2024年2月8日 3:54 JST

『米リッチモンド連銀のバーキン総裁は、米金融当局が緩和政策の開始時期を判断する上で取っている辛抱強いスタンスを「強く支持する」と述べた。バーキン氏は7日、エコノミック・クラブ・オブ・ワシントンのイベントで「到達するべきところに至るために辛抱強い姿勢でいることを強く支持する」と発言。「現時点でのトレードオフはバランスが良くなりつつあり、インフレに関する取り組みを続ける方がなお有利だ」と話した。』(上記URL先より)

これまだ本チャンがでてませんねえ、だいたいここを見てるとそのうちあっぷされるんじゃまいかと
https://www.richmondfed.org/press_room/speeches/thomas_i_barkin


大僧正お前は何回でてくりゃ気が済むんだwwww
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-07/S8HNQMDWLU6800
カシュカリ総裁、今年2−3回の利下げが適切−追加の物価データ必要
Catarina Saraiva
2024年2月7日 23:30 JST

今度はCNBCで喋ったみたいですね。


・・・・・・まあいずれの話も3月にいきなり利下げ着手はねえわ、という話は共通してて、じゃあ5月(というかほぼ4月末みたいなもんですが)にやるのかという話になると、あんまり急いでいる感じはないですけど、さすがに3か月も先の話なので決め打ちしませんよ、ってなことなんじゃないかとは思うんですけどね。


〇今さらのFOMC会見ですが3月利下げをひたすら否定だけでは勿体ないのです(その1)

初手からその1とか書いてシリーズものにする気が満々なのですがまあ色々とあるんでね。

https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240131.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
January 31, 2024

いつもだとオープニングリマークを先にネタにするんですが、まあ時間も経ってしまったし、問答の方が面白そうなのでそっちから中心に成敗して行こうかなと思うのでした。


・開口一番質問される「グレーターコンフィデンス」

そらそうよ。

『JEANNA SMIALEK. I'm Jeanna Smialek from the New York Times. Thanks for taking our questions. Obviously in the statement and just in your remarks there, you note that you don't want to cut interest rates without greater confidence that inflation is coming down fully. I wonder, what do you need to see at this point to gain that confidence? And as you make those decisions, how are you weighing recent strong growth in consumer spending data against the sort of solid inflation progress you've been seeing? 』

『CHAIR POWELL. Sorry, say that last part again.』

『JEANNA SMIALEK. How are you weighing the growth data and consumption data, which have been surprisingly strong against inflation data?』

前半の質問、「what do you need to see at this point to gain that confidence? 」はそらそうよという質問ですがな、ということで回答を見ますと、


『CHAIR POWELL. Okay. So, what are we looking for to get greater confidence? Let me say that we have confidence.』

どうなるとグレーターコンフィデンスになるかというのを説明する(キリッ)ときたので期待しますと、

『We're looking for greater confidence that inflation is moving sustainably down to 2 percent. Implicitly, we do have confidence and it has been increasing, but we want to get greater confidence.』

初手から循環話法するなやwww

『What do we want to see?』

話はここから始まるw

『We want to see more good data. It's not that we're looking for better data. We're looking at continuation of the good data that we've been seeing, and a good example is inflation.』

今の流れが続く、というデータをもっと欲しいんです、とか何かどっかの国の中銀のおちんぎんみたいな話をしているのは笑えますけど。

『So we have six months of good inflation data. The question really is, that six months of good inflation data, is it sending us a true signal that we are, in fact, on a path, a sustainable path down to 2 percent inflation? That's the question. 』

『And the answer will come from some more data that's also good data. It's not that the six-month data isn't low enough. It is. It's a question of, can we take that with confidence that we're moving sustainably down to 2 percent? That's really what we're thinking about. 』

ここ6か月のインフレ鎮静化の流れはイイハナシダナーだけどまだまだ足り申さん、だそうなのだが、じゃあ結局何がどうなったらグレーターコンフィデンスになるのか、って話は結局何らかのスレッショルドがある訳ではなく、何か今でも考えてますわ状態というお気持ちの世界になっててワロタ。

『In terms of growth, we've had strong growth. I mean, if you take a step back, we've had strong growth, very strong growth last year, going right into the fourth quarter. And yet, we've had a very strong labor market, and we've had inflation coming down. 』

『So I think, whereas a year ago, we were thinking that we needed to see some softening in economic activity, that hasn't been the case. So, I think we look at stronger growth. We don't look at it as a problem. I think, at this point, we want to see strong growth. We want to see a strong labor market. We're not looking for a weaker labor market. We're looking for inflation to continue to come down, as it has been coming down for the last six months』

まあお気持ちとかからかってみましたが、どっかの2%オモシロイラストで説明する中銀とは違いまして、パウエルの場合の説明はまあちゃんとしておるのはちゃんとしておるわけですな。

昨年の頭の時点ではインフレ抑制のためには経済の減速と労働需給の緩和が必要、という認識でいたのだが、現状では経済が強く、労働市場も強い、という状況でインフレは目だたく下がっておる訳で、何も我々はインフレが落ち着くんであれば経済をわざわざ弱くしたり労働市場をわざわざ冷やす必要はない訳で、とは言え当初の見込みと嬉しい誤算方向ではあるが違う流れですので、もうちょっとデータをみたいですなあ、というようなニュアンスの説明で、まあそれなら言ってることはそうですかね、と思う説明になっているのですな。

じゃあグレーターコンフィデンスの閾値は何かという回答には成ってないんですけどね!!!!!


更問。

『JEANNA SMIALEK. And I'm sorry, if I could just follow up very quickly, that when you say that you want to make sure that it's a true signal, is there anything that you're seeing in the data that makes you doubt that it's a true signal at this stage? 』

まだホンモノのインフレ抑制成功かどうかと判断致しかねるのはどの辺のデータをもってそういうの?

『CHAIR POWELL. No, I would say, it seems to be the likely case that we will achieve that confidence, but we have to achieve it, and we haven't yet. And so, I mean, it's a good story. We have six months of good inflation.』

『But you can, and you know this, you can look behind those numbers, and you can see that a lot of it's been coming from goods inflation, for example, and goods inflation running significantly negative. It's a reasonable assumption that over time, goods inflation will flatten out, probably approximate zero. That would mean the services sectors would have to contribute more. 』

『So in other words, what we care about is the aggregate number, not so much the composition. But we just need to see more. That's where we are as a Committee. We need to see more evidence that sort of confirms what we think we're seeing, and that gives us confidence that we're on a path to, a sustainable path down to 2 percent inflation. 』

ここでパウエルさん、状況自体は別にダマシとかそういう訳ではないのだが、足元では財のインフレがマイナス推移していることから、これがいずれ戻って来る過程において、まだ高いサービス価格のインフレがもうちょっと下がらないと物価が期待通り落ち着いてくれませんな、という説明をしておりますですな、はい。



・これは良い質疑です(テイラールール的なアプローチに対するパウエルの見解)

その次がニックなんですけどね。

『NICK TIMIRAOS. Nick Timiraos, The Wall Street Journal. Chair Powell, it seems to me you raised rates rapidly over the last two years for two reasons. One was the risk of a wage price spiral. Two, there were risks of inflation expectations becoming unanchored.』

急速な利上げの背景は賃金物価のスパイラルとインフレ期待上振れを懸念した、と説明してたけど、

『This morning's ECI report for the fourth quarter shows private sector payroll growth running at a sub-4-percent pace. Inflation expectations are very close to where they were before the inflation emergency of the last three years. And given that you appear to have substantially cut off these two tail risks, and that you've judged here today current policy as well into restrictive territory, what good reason is there to keep policy rates above 5 percent? Are you really going to learn more waiting six weeks versus three months from now that you have avoided those two risks?』

文章の切り処がないので続けて引用しましたが、直近のデータを見ると賃金上昇率は沈静化してきており、インフレ期待もインフレアイヤーモードの前の水準、つまり十分にアンカーされている水準で落ち着いている、という状況にあっていて、急速な利上げの背景にあったリスクはなくなってきているように見受けられますが、何でそんな状況下でまだ5%の政策金利やっとるんじゃいワレ、という質問ですな。

『CHAIR POWELL. So, as you know, almost every participant on the committee does believe that it will be appropriate to reduce rates, and partly for the reasons that you say.』

我々もこの前のSEPにあるように政策金利を下げるのがこの先では適切になると考えているし、理由はニックの今言った通りでもあります、と来まして、

『We feel like inflation is coming down. Growth has been strong. The labor market is strong. What we're trying to do is identify a place where we're really confident about inflation getting back down to 2 percent so that we can then begin the process of dialing back the restrictive level. 』

『So, overall, I think people do believe, and as you know, the median participant wrote down three rate cuts this year. But I think to get to that place where we feel comfortable starting the process, we need some confirmation that inflation is, in fact, coming down sustainably to 2 percent. 』

とは言えまだグレーターコンフィデンスに至っていないから、今は利下げ着手する時期ではない、ということです、という回答になりまして更にニックは、

『NICK TIMIRAOS. If I could ask differently, if you hold rates high as inflation moderates, as it has been, target rates will exceed the prescriptions of the Taylor Rule experience. What would be the reasoning for holding rates higher than the levels recommended by those rules in the current instance? 』

今度はテイラールール的なアプローチからのツッコミをしていますね。インフレ落ち着いていく中でテイラールール的なアプローチをすれば利下げが適当になるんでネーノというような迫り方ですが、この回答が中々オモロイ。

『CHAIR POWELL. Well, look, I think, as you know, we consult the range of Taylor rules and non-Taylor kind of rules. We consult them regularly. They're in our Teal Book, and they're in all the materials that we look at. 』

テイラールールやそれ系のアプローチでの考察もしております、と来てからの、

『But, you know, I don't think we've ever been at a place where we were setting policy by them. And depending on the rule, it will tell you different things. There are many different formulations.

まずはルールベースアプローチにはその状況に本当にあっているのか問題があるわなと指摘して、

『Another way to think about it is, implicitly, in theory, of course, real rates go up if holding all else equal as inflation comes down. But that doesn't mean we can mechanically adjust policy as real rates -- sorry, as inflation comes down. It doesn't mean that at all. 』

『Because, for one thing, we look at more than just the fed funds rate. We look at, broadly, financial conditions. But in addition, we don't know with great confidence where the neutral rate of interest is at any given time. But that also doesn't mean that we wait around to see, you know, the economy turn down, because that would be too late. 』

実質金利的な考え方からすれば物価が下がったら政策金利据え置きで引き締め度合い高まるのは仰せの通りですが、実際には政策金利じゃなくて全般的な金融環境が経済に対して影響を与えるのだから、そこを広く見て行かないといけませんよね。という話をしておりまして、

『So we're really in a risk management mode of managing the risk, as I mentioned in my opening remarks, managing the risk that we move too soon and move too late. And I think to move, which is where almost everyone on the Committee is in favor of moving rates down this year. 』

『But the timing of that is going to be linked to our gaining confidence that inflation is on a sustainable path down to 2 percent.』

でもってその場合のアプローチってのはリスクマネジメントアプローチで状況見ながら判断だよね、という説明になっているのですが、この話しって突き詰めていくとルールベースの政策アプローチというものに正面から大砲撃を掛けていることにもなっておりまして、これは金融政策運営アプローチとか考え方に関しての再定義につながっていく話になるなあ、とアタクシ思って結構ここで「おおおおお」と思ったんですけれども認識それでよろしゅございますでしょうか???何せワイは学が無いのでよー分からんのよ(滝汗)

ということで明日か来週か知らんが続きます。





2024/02/07

お題「実質賃金が読売の1面ネタとな/展望レポートポンチ絵が酷すぎる件について/その他米国とか日銀ネタ」

〇おちんぎんェ・・・・・・・・・

最初これ軽くマクラの積りだったんですが折角だと思って引用してたら本ネタ扱いになってしまいますたwまあ皆様ご案内の毎勤ですが。

おちんぎんェ・・・・・・・・・
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240206/k10014348661000.html
去年の実質賃金 前年比2.5%減 給与増も物価上昇に追いつかず
2024年2月6日 8時39分

『去年1年間の働く人1人当たりの実質賃金は前の年と比べて2.5%減少しました。現金給与の総額は増えたものの物価上昇に追いつかず、実質賃金は2年連続でマイナスとなりました。』(上記URL先より、以下同様)

おいつくもおいつかんもそもそも(以下爆発音の為聴取不能)。

『厚生労働省は従業員5人以上の事業所3万あまりを対象に「毎月勤労統計調査」を行っていて、6日、去年1年分の速報値を公表しました。それによりますと、基本給や残業代、ボーナスなどを合わせた働く人1人当たりの現金給与の総額は月の平均で32万9859円となり、前の年に比べて1.2%増え、3年連続でプラスになりました。』

1.2%ですかそうですか・・・・・・・・

『内訳では、フルタイムが43万6849円、パートタイムが10万4570円で、いずれも統計を取り始めた平成5年以降最も高くなりました。しかし、物価の上昇率が3.8%と42年ぶりの高い水準となり、物価変動を反映した実質賃金は前の年に比べ2.5%減少しました。実質賃金が前の年を下回るのは2年連続です。』

南無三。


でまあそれはそれとして、今朝の読売ってこのネタを1面(もしかしたらトップ??)にしているようなんですよね。

https://www.yomiuri.co.jp/shimen/
朝刊記事
読売新聞(東京本社版)の朝刊に掲載された主な記事の一覧です。主要ニュースのチェックにお役立てください。

ってのがあって、紙面ビューアーってのがあるにはあるけど無課金勢のワイは見れんですが、『一面』のところの記事の並びで先頭に来ているのが、

『実質賃金 2年連続減 昨年2.5%減 物価高に届かず 消費支出2.6%減 節約志向浮き彫り05:00 会員限定』(上記URL先より)

になっておりますのでこれはキタコレという感じですな。


・・・・・でまあ日銀様の言うように「第一の力」とやらが減衰してもう外生コストプッシュ型の物価上昇が置きにくくなりました、とかいうのなら兎も角、今でもチョイチョイとニュースになりますが昨日だって、

https://www.chunichi.co.jp/article/849648
「かっぱえびせん」値上げ カルビー68品、3〜10%
2024年2月6日 17時46分 (2月6日 18時06分更新)

『カルビーは6日、「かっぱえびせん」や「じゃがりこサラダ」など計68品を6月1日納品分から3〜10%程度値上げすると発表した。エネルギーや原材料の価格上昇が理由としている。かっぱえびせんとじゃがりこの値上げは昨年6月以来。』(上記URL先より)

ってな感じでして、今言ってる「第一の力が落ちてきて第二の力にバトンタッチ」ってのは単に第一第二が揃って値上げブーストを掛けに来るだけという話なのかとゆー気もしますし、もしそうなったってのが判明すると「ゆっくり正常化」とかやってる場合じゃなくなるんですが、そんなにのんびりしてて大丈夫なんでしょうかねえ。

なおこの商品の場合メーカーの言う店頭想定価格が実際の小売りでの実売価格と乖離している気がするので元々が小売りの方で薄利販売してるのかなとは思いましたが、薄利販売だと益々卸価格上昇が効くわなという話ですかね、よー知らんけど。


〇展望レポートハイライトが何のギャグかと思われる物件に仕上がっている件について

いやーなんですかこれは(憤怒)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202401.htm
展望レポート・ハイライト(2024年1月)
経済・物価情勢の展望

前回10月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202310.htm

前々回7月
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202307.htm


・経済の見通しのイラストに背景になるコンポーネントがさっぱり分からない件について

最初のイラストからもうアレでしてですね、

『日本経済は緩やかな回復を続ける』(今回1月)
『日本経済は緩やかな回復を続ける』(前回10月)
『日本経済は緩やかな回復を続ける』(前々回7月)

『日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(今回1月)
『日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(前回10月)
『日本経済は、海外経済の回復の鈍さにより下押しされますが、消費の増加などに支えられて、緩やかな回復を続けていきます。』(前々回7月)

ということで書いてあることは同じなんですけど、7月のイラストではビーチリゾート(海水浴場)とか旅行(キャリーバックを引いている人)とか外食(表のテーブルでお茶してる人)とかがいるのですが、10月のイラストは秋の紅葉観光っぽいもの(京都のつもりか?)のイラストになったんですが、今回のイラストはもはや何が何だかわからない絵になっております。


・物価のトレンドのぐるぐるコイル巻きという意味不明イラストは前回と同じですね

『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まる』(今回1月)
『物価のトレンドは2%目標に向けて徐々に高まるが、賃金と物価の好循環が必要』(前回10月)
『物価は減速したあと再び緩やかに上昇していく』(前々回7月)

『消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていきます。こうしたシナリオが実現する可能性は、引き続き、少しずつ高まっています。』(今回1月)

『消費者物価の基調的な上昇率は、2%の「物価安定の目標」に向けて徐々に高まっていきますが、それには賃金と物価の好循環が強まっていく必要があります』(前回10月)

『消費者物価の前年比は、これまでの輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が弱まることで減速したあと、経済が改善し、賃金上昇率も高まるもとで、再び緩やかに上昇していきます。』(前々回7月)

前々回は(まあ若干意味不明ですが)方向性が分かっているイラストだったのですが、前回から謎のコイルみたいな謎イメージのイラストになって今回も同じ絵ですね。相変わらず好循環が6回転しないと2%に行かないという絵になっていますな。


・不確実性のイラストですがECBだって何だかんだ毎回工夫してるのに何であんたら一律に同じものなの

前回10月はこの不確実性のイラストが4番目になっています。

『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(今回1月)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(前回10月)
『日本経済・物価を巡る不確実性は高い』(前々回7月)

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(今回1月)

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前回10月)

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(前々回7月)

こちらはなんかもう意味があるのかという毎回同じ絵と同じ文章になっています。外部環境は色々と変わっているんだから、要因だって軽重が変わったり新しいのが出たり前のが引っ込んだりする、というのがまるで記載されていませんね。


・物価のイラストが遂に頭沸いたのかと申し上げたくなるアカン奴になっている・・・・・・・・・

こちら前回10月はこの「2%の見通し」イラストが3番目でございますな。

『強力な金融緩和を継続する』(今回1月)
『強力な金融緩和を継続する』(前回10月)
『強力な金融緩和を継続する』(前々回7月)

『海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、日本経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い状況です。また、金融・為替市場の動向と日本経済・物価への影響にも十分注意を払う必要があります。』(今回1月)

『日本銀行は、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指しています。粘り強く金融緩和を継続することで、経済活動を支え、賃金が上昇しやすい環境を整えていきます。』(前回10月)

『賃金の上昇を伴う形での、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せていないため、粘り強く金融緩和を継続していきます』(前々回7月)

でまあこのイラストですけど、イラストに関して言えばやはり昨年4月のも一緒に見ると意味不明感が増すのですがwww
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202304.htm

昨年4月:帆を張ったヨットが順風を受けて川を下りながらその先に「2%」がある
昨年7月:山道をあるいていく人のかなり先の方にある高峰の頂に「2%」があるんですが、望遠鏡で見ないとよく見えない状況
昨年10月:耕作をしている人たちと植えた双葉に水をやっている人がいまして、その双葉が樹になると「2%」の実を結ぶ

ということでどんどん2%が遠くになっていく、というとんでもない進展になっておったりするわけですが、

今回1月:なんか2%とかいうオブジェがどどーんとあるんだがもはや何が何だか意味が分からないイラストェ・・・・・・

ということでですね、なんと申しますかもう例えようもない状況なのですが、パニックが行き着いた結果突然全裸になって踊りだす中年男性なのか、はたまた情緒不安定で急にハイになってはしゃぎだす危ない人とか、それともこのイラストだけ中の人が急に粛清されていなくなったとか、もうとにかくこのイラストの変化は頭沸いてるとしか思えませんこんなんでコミュニケーションやる気あんのかと小一時間問い詰めたい。

・・・・・・・いやもうこのしょうもないイラスト止めろやとしか申しあげようがない。


〇内田副総裁の奈良金懇は明日のようですな

https://jp.reuters.com/business/UVK34QLBZFJZXMBICZB4NEP5YA-2024-02-06/
内田副総裁、8日に奈良で講演と記者会見=日銀
和田崇彦
2024年2月6日午前 11:32 GMT+9

『[東京 6日 ロイター] - 日銀は6日、内田真一副総裁が8日に奈良市に出張し、金融経済懇談会に出席して記者会見に臨むと発表した。懇談会は午前10時半からで、冒頭に内田副総裁が挨拶する。記者会見は午後2時半から予定されている。政策修正のタイミングや具体的な進め方について、内田副総裁がどう語るのかが焦点になる。』(上記URL先より)

ということで相変わらず2日前にやっと公表とかやっているのですが、

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm

今後の講演・挨拶等の予定
2024年 2月29日 高田審議委員 滋賀県金融経済懇談会における挨拶

って相変わらず日銀のHPの方には出ていないということで、まあこりゃ当日まで出てこないなという世界になっておりますのですが、なんで審議委員は事前(これ確か先週金曜には出てたと思う)出るのに副総裁の金懇は事前に出さんのじゃという話でして、そもそも以前は副総裁や総裁の講演予定だって事前に出てたぞなという話で、まあこの意味わからんですよねという話。

雑魚はよいから真打の日程を出せ真打の、というところではありますが、まあいずれにしても内田さんの金懇挨拶と会見はさすがに注目というか、地均し第何弾になるのかどうかってえのは楽しみですな。


でまあそれはそれとしまして、
https://www.boj.or.jp/about/press/koen_2023/index.htm
講演・挨拶等 2023年

こちらを見ますと、審議委員の金懇って植田日銀になってからの順序って(敬称略)、

安達→野口→田村→中村→高田→中川→野口→安達→中村、という順番(途中に野口さんの別の講演あり)

で来てますが、安達さん野口さん、田村さん中村さん、高田さん中川さん、が近い日に金懇をしているセット販売みたいな感じになっている、と思ったら今回は中村さんの後が(って中村さんの金懇も11月の末だったので結構日が空いているのですけど)田村さんではなくて高田さんになっているということで、先日もちょいと申し上げた通りで、田村さんの場合はマイナス金利解除や正常化に関して積極的、というのはまあ人口に膾炙しているってえのがありますので、その田村さんが正論をいつものようにぶっこんでも、大本営が翻意してくれないと田村さんだけでは多数決をひっくり返すってのにもならんがな、という悲しい現実があるのですが、高田さん(と中川さんと安達さん)は初手から大本営賛成マシーンとして機能しているので、大本営が地均しをしたい、というのであれば格好の九官鳥な訳ですのでそう考えますと・・・・・・・・・・

いやまあその辺は明日の金懇を見ながら考えて参りましょうです。




〇ところで多角的レビューの意見募集ですわよ奥様

すいません雪降ってて忘れました(違)
https://www.boj.or.jp/mopo/outline/bpreview/bpr240205a.htm
「金融政策の多角的レビュー」に関する意見募集の実施について
2024年2月5日
日本銀行

『日本銀行は、「金融政策の多角的レビュー」における意見交換等の取り組みの一環として、「金融政策の多角的レビュー」に関する意見募集を実施致します。』

ということだそうですが、

『レビューでは、過去25年間に実施してきた各種の非伝統的金融政策手段の効果について、それぞれの時点における経済・物価情勢との相互関係の中で理解するとともに、副作用を含めて金融市場や金融システムに及ぼした影響についても分析する方針です。』

『こうしたもと、例えば、昨年12月には第1回ワークショップを開催し、個別テーマについての分析を報告しました。このほか、各種分析・報告についても、金融政策の多角的レビュー専用ウェブサイトに順次掲載します。これらの日本銀行の分析・報告をご参照いただきつつ、ご意見がありましたら、下記の意見提出方法によりご提出いただきますようお願い致します。日本銀行では、いただいたご意見も踏まえて「金融政策の多角的レビュー」を進めてまいりたいと考えております。』

ということですが、

『なお、ご提出いただいた意見に対して、個別の回答は致しかねますので、あらかじめご了承願います。』

まあ個別の回答を個別にしないのはシャーナイにしても、

『意見提出様式(下記項目を明記してください)

氏名<必須項目>(企業・団体の場合は、企業・団体名、部署名および担当者名)
連絡先<必須項目>(電話番号または電子メールアドレス)
年代(20歳代、30歳代等)
意見<必須項目>(2,000字を超える場合には、500字以内の意見要旨も必ず記載して下さい)』

過去の書き物をバシバシ切り貼りして出そうと思ったら意見要旨がいるんですねアイヤーと思ったが、1900字くらいのものを何本か送ればよいのかしら(悪)。

『意見提出上の注意

・ご意見は、日本語に限ります。電話でのご意見はお受けしませんのでご了承願います。
・ご登録・ご提出いただいた個人情報については、ご提出いただいた意見の内容に不明な点があった場合等の連絡・確認に利用する場合があります。日本銀行は、意見提出ページでご登録いただいた個人情報および郵送でご提出いただいた個人情報について、日本銀行ホームページで収集した情報の取り扱い(プライバシーポリシー)に準じ、厳格に取り扱います。
・ご意見の内容は、「金融政策の多角的レビュー」の一環として、特定の個人を識別できないようにして公表することがあります(氏名等の公表について本人の同意を得た場合を除く)。』

って感じですと、出された意見に対してお答えします、みたいな資料が公表されるという感じ(パブコメみたいな感じのイメージね)にはならないのかよと思ったわけですけど、何でしょうねえこれ意見集めるだけ集めて「貴重なご意見ありがとうございました」で済ませると却って感じ悪いというかヘイトを呼んでしまうんジャマイカと心配になってしまうんですけど大丈夫かいなと。

まあ折角ですのでこれは奮ってご参加すれば良いんですよね(^^)。


とまあそんなこんなで日銀界隈もネタが色々とありますが、放置プレしているわけにもいかないのでアメリカン金融政策に関しまして。


〇またFED高官が喋っておられるのだが(今日は備忘メモだけ)

カシュカリ大僧正
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-06/S8G6EAT1UM0W00
ミネアポリス連銀総裁、インフレの責務「まだ完了していない」
Catarina Saraiva
2024年2月7日 4:25 JST

『米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は最近のインフレ率低下を評価した上で、米金融当局はまだ目標に達していないとの考えを示した。カシュカリ氏は6日、ミネソタ州マンケートでのイベントで「過去6−9カ月に驚くべきことが起こった。インフレ率が非常に急速に低下した」と発言。「まだ最終地点には達していないが、インフレに関して大きな進展を遂げた」と述べた。』

『「こうした状況が続くと想定するなら、インフレは当局の2%目標に下がる軌道上を進んでいる」とし、3カ月および6カ月のインフレ指標は「基本的に」2%だと指摘した。ただ「責務が完了したとはまだ言いたくない」と付け加えた。』(以上上記URL先より))

大僧正のエッセイ昨日ネタにしたんでまあそこから追加する話も無いとは思いますが、本件はイベントの動画がミネアポリス連銀にアップされてますね。URLがクソ長いので途中までの文字列でハイパーリンク貼ってますが。

https://www.minneapolisfed.org/speeches/2024/neel-kashkari-at-the-national-bureau-of-economic-research-summer-institute
Neel Kashkari Q&A at Greater Mankato Growth event
February 6, 2024 | 12:05 - 1:00 p.m. CT
Neel Kashkari
President and CEO

『Speech
(YouTube)

Minneapolis Fed President Neel Kashkari participates in a Q&A hosted by the Greater Mankato Growth initiative in Mankato, Minnesota. The Q&A will be moderated by Greater Mankato Growth’s Executive Vice President Andy Wilke.』



メスターさん(サムネの写真が妙にカジュアルですが多分ジャクソンホール)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-06/S8G1XKT0G1KW00
クリーブランド連銀総裁、FRBは「今年中に」利下げの確信得るはずだ
Catarina Saraiva、Mark Niquette
2024年2月7日 2:41 JST

『米クリーブランド連銀のメスター総裁は、景気が想定通りに進展すれば「今年中に」連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げに踏み切る確信を得られると述べ、自分は利下げ開始を急いでいないことを示唆した。』

『同氏は6日、オハイオ州コロンバスでのイベントで、「インフレが持続可能かつタイムリーな形で2%に戻る道筋を進んでいる十分な証拠がないまま、金利をあまりに早期にあるいはあまりに急速に引き下げるのは間違いとなろう」と発言。「景気が想定通りに進展すれば、今年中にそうした確信が得られる。そして利下げを開始することが可能になる」と述べた。発言内容は事前テキストに基づく。』(以上上記URL先より)

さてはお前ら取材にいってねえなという所ですが、その事前テキストというのはこちらになります。ゆうて目を3秒泳がせてから、この小ネタが多い今日この頃では寝起きで読んでネタに仕上げるのどう見ても無理と断念しました、積読が溜まるわ溜まるわorz

https://www.clevelandfed.org/collections/speeches/2024/sp-20240206-views-on-the-economy-and-monetary-policy
SPEECH
Views on the Economy and Monetary Policy: In a Good Place and Ensuring We Reach an Even Better One
Loretta J. Mester
President and Chief Executive Officer
02.06.2024 12:00 PM EST In Person Ohio Bankers League, Economic Summit, Columbus, OH

小見出しの『Monetary Policy』の2パラから4パラの前半までちょっと引用しますが、

『In making its monetary policy decisions, the FOMC is always guided by its strong commitment to achieving its congressionally mandated goals of price stability and maximum employment. When we began this tightening cycle, inflation was far above our goal and labor markets were strong. So it was clear we needed to focus on the price stability part of our mandate. Now, with inflation moving closer to our goal, we need to balance the risks to achieving both sides of our dual mandate when determining the appropriate stance of policy.』

今般の引き締めは物価が明らかにマンデートを上回ってからの開始だったからガシガシと引き締めを実施するのは誰が見ても当たり前田のクラッカーだったので話はややこしくなかったが、現在は物価が2%に向けて落ち着こうとしているという目標に向けて進行中というタイミングでの引き締め離脱になるので両サイドのリスクを考えないと行けないよ。

『It would be a mistake to move rates down too soon or too quickly without sufficient evidence that inflation was on a sustainable and timely path back to 2 percent. Doing so would undermine all of the good work that has gone into getting inflation to this point.』

『On the other hand, if year-ahead inflation expectations continue to decline, maintaining the current level of the nominal fed funds rate for too long would effectively be a tightening in our policy stance, which would pose an increasing risk to the maximum employment part of our mandate.』

なので、早すぎる利下げはインフレ再燃して今までの引き締めを台無しにするリスクがあるし、かといって利下げ判断が遅すぎると景気を壊してしまいます。ときまして次のパラの前半まで簡単に引用しますが。

『Risk management will be the hallmark of monetary policy decisions going forward. Our job is to calibrate monetary policy to the evolving outlook and risks around the outlook so that inflation returns sustainably to our 2 percent goal and labor markets remain healthy.』

なので「リスクマネジメント」が重要ですよという話をしているんですね。なので別にガシガシのインフレタカ派の話をしている訳でもないけれども、まあゆうて3月利下げはこの発想からはどこをどう叩いてもあり得ないということになりますわな、という結論です。


〇でもって肝心のFOMCネタなのですが時間がねえええええ

さーせんFOMC会見ネタなんて今だったら事前に作れるだろと言われるとぐうの音も出ないのでございますが・・・・・・・・・・

FOMCの記者会見なんですけど、オープニングリマークはさておいて(ネタにすると1回分になるのでどうしようか思案投げ首)今回はQ&Aが中々の秀逸なものになっていまして(いやまあいつも秀逸なんですけど)、昨日ネタにしたカシュカリ大僧正の中立金利の話しとか、今日ネタにしているメスターのリスクマネジメントアプローチの話しとか、そういう重要な論点で色々と大事な問答が行われているなあということで、これは単純に「3月利下げを否定」(まあそれもしていますが)というネタにとどめてしまうのはもったいない、と思うネタになっている訳でございますよこれがまた。

ということでネタにしていくわけですがその間に内田副総裁奈良金懇が入ってしまいますので、ちょっとアレかもしれませんが今日変なネタが飛んでこなければ明日から何回かのネタにしたいな、とは思っている所です、というしょうもない予告編というか自分を縛るフォワードガイダンスということで、どっかの中銀のその気もない空文フォワードガイダンスにならないように注意しようと思いますwww






2024/02/06

お題「国債買現先オペ雑感/FED高官続々と3月利下げを否定してきますねえ・・・・・・・」

昨日は南関東で雪の上に雷もありましたが、そこで「冬の稲妻」と言いつつ歌い出すと昭和老人会会員認定されますので注意しましょう同士。

新しいトップページは、https://doramemon7743.sakura.ne.jp/ となります。(こちらのページは、https://doramemon7743.sakura.ne.jp/today.html です)気が向いたらブックマークの変更をしておいてくださいませ(httpsになってwwwが抜けます)。


〇GCレポレート上昇対応で国債買現先が入りましたが・・・・・・・

昨日のオペオファー(買現先のみ)
https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of240205.htm
国債買現先・即日(注4) 50,000 2024年2月5日 2024年2月6日
国債買現先(注5) 40,000 2024年2月6日 2024年2月16日

(注4) 応札レート(期間利回り)は、-0.10%を下限とします。
(注5) 応札レート(期間利回り)は、-0.10%を下限とします。

ということで朝一発目が確か9時だったと思うのですが、即日オペが5兆円、その後トムスタートで積み最終までをカバーする16日エンドで4兆円が9時20分にオファーされました。

うーんこんなに打つ必要あるのかいな、と思いながら見ておりましたが、結果はこの通り。

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba240205.htm
国債買現先・即日       49,736 49,736  -0.100 -0.099
国債買現先(2月6日スタート分)31,100 31,100  -0.100 -0.093

うーん何だかなーという感じでした。

えーっとですね、即日の5兆は札ギリギリだったので、まあこれは需要をキチンと見てオペを打ったんで良いかな(ただし後でちょっと書く)とは思ったのですが、翌日オペの方がいただけませんわな。

・・・・・と申しますのはですね、まあ即日の方は今日の資金繰りの世界なんである程度必要な額を打っておく、というのはいいんですけど、トムスタートってこんなに札割れするまで打つ必要は本来ない話で、いやこれが足元で何とかショックが起きて信用不安でもあるならそらまあアホほどオペ打って良いんですけど、別にそういうショックが起きているわけではなくて、マクロ的には資金が無茶苦茶余った状態になっているなかの話だから、こういうのは別に札割れするほど打つ必要なくて、それこそ市場で何とかしろ、できなきゃ貸出ファシリティ用意してんだからそっちに行け、という話なんですよね。いやまあ即日の札が5兆ある状態だから打つなとは言わないけど、打つならもっと少なくて良いし、それで落札金利がクッソ高かったら更におかわりするとかトムスタートなんだからやりようはある筈。


なんでそういう話をするかと言いますと、これ落札結果を見れば分かるように、殆ど下限レート(つまりオペに応札した人大勝利レート)になっちゃっている訳で、結果的にこれお助けオペになってしまっているのですが、何かあると毎回こういう「潤沢な供給」によって結果としては「お助けオペまで待った方がお得感満載」という状況を作ることは、市場参加者の中にいわゆる「寝転がり」をするインセンティブを生じさせることになってしまうんですよ(寝転がりの本来の意味はインターバンクの資金担当してた人か本石町日記先生に聞いて下さい)。

でまあそういう寝転がりをするプレーヤーが増えますと、市場がちゃんと機能しなくなって来るというのが更によろしくない話でして、まあ今のマイナス負担の押し付け合いって状態がちゃんとした市場と言えるのか、という問題があるのですが、それはそうとしてマイナス金利が解消されて多少なりともプラスの金利の世界に入った場合、短期金融市場はファンディングと資金運用のための市場としてまともに復活して行かないといけないわけでして、即日の方はまだしも、トムスタートで積み最終跨ぎエンドで札割れする規模の買現先とか市場を甘やかすだけの話で、まあキツイ言い方すればこういうの市場が薬物中毒患者みたいにしてしまう訳ですよ。

話としては若干違いますけど、輪番と国債補完供給の関係も輪番のやり過ぎで変な事になった例で、元はと言えばこっちは輪番のやり過ぎを政策でやったことのケツ拭きだからまあ政策委員会というか黒田が悪いんですけど、輪番で市場叩き壊してどうしようも無くなったので補完供給を拡充したら補完供給を使って指値にぶっこむアホウ(というかそれに加担するアホウというか)か現れた訳ですが、あれも一種のオペ狙いの寝転がりが極端に行きついたプレイでもある訳でして、まあ金利引き上げるだけが正常化なだけじゃなくて、この手のまあ綺麗に言えばマーケットフレンドリーな一群のオペレーションを出来るだけ無くして、というのが課題なんですが、何せ大体マイナス金利以降が特に日銀碌な事をしていない(まあ黒田就任以降は常に碌な事はしていなかったが)ので、積みあがった薬物中毒はそらもうエライコッチャだという事ではあるかと思います。


しかし即日の5兆に関しても、まあ需要分のオペ打ったのはいいんですけど、落札レートが下限になっているのは如何なものかという感じでして、しつこく言いますけど別に金融システムに問題が生じている訳ではないんだから、本来ならお前らロンバートでも使ってファイナンスしろよという話(国債買現先に入れる札があるなら適格担保はあるわな)な所なのに、預金ファシリティ金利まで下がった所でファンディング出来てしまう結果、というのを出してしまうと、こっちもこっちで寝転がりを誘発する話になりますので、どうなのかねーとは思いながら昨日のオペ結果を眺めるアタクシなのでした。

まあまあ更にそれ以前の問題で、昨日も(というか昔から)申し上げているようにGC市場が市場規模に対して参加者数が少なすぎるので市場としての多様性に欠けるというそもそもの構造問題とか、マイナス金利政策状態だから純粋な資金運用プレーヤーが入ってこない(マイナスチャージ回避の資金放出、ならあるけど状態)ので短期市場の厚みがないとか、そういう構造要因とマイナス金利とかいう政策要因がある訳で、そんなことも考えだすと何ちゅうか市場の方が正常化していくのは中々前途遼遠じゃなあとも思いましたですわ、はい。

・・・・・ま、異論もあると思いますけど太古のプラス金利時代の遺物で絶滅危惧種の珍獣の戯言ということで老人と珍獣は大事にしてやってくださいよろしくお願いします(土下座)。


〇なんかもう意地でも3月利下げしないという気概を感じる高官発言が続きますのう

ほうほうそうですかそうですか
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-05/S8DSAVDWLU6900
米2年債利回りが一時10bp上昇、3月利下げの確率は10%まで低下
James Hirai、Constantine Courcoulas
2024年2月5日 21:21 JST

『2年物米国債利回りは一時10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、1カ月ぶりの高水準の4.46%となった。議長は4日夜(日本時間5日午前)に放送されたCBSニュースの番組「60ミニッツ」で、金融当局として3月以降まで利下げに踏み切るのを待つ公算が大きいと語った。3月に0.25ポイント利下げが実施される確率はほぼ10%まで低下した。』

『わずか4週間前までは、3月の利下げが投資家の間ではほぼ確実視されていたが、パウエル議長はインフレ率が2%の物価目標に持続的に鈍化する道筋にあることを確認するため、経済データをさらに目にしたい意向をあらためて表明した。昨年12月のインフレ率は3.4%とわずかに加速した。』(上記URL先より)

CBSの方はチェックしてないのでアレですが、パウエルちゃんの番組のお時間が東京時間で市場が反応してたのでああそうですかって事でなんとなくは把握しておりましたが念のため記事をはっておきますだわさ。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-05/S8CW65T1UM0W00
FRBは拙速な利下げに伴う危険性を懸念−パウエル議長がTV出演
Craig Torres
2024年2月5日 9:10 JST 更新日時 2024年2月5日 13:20 JST

→3月利下げの公算は小さい−CBS「60ミニッツ」インタビュー
→当局者の24年政策金利見通し「劇的な」変更はないとの認識表明

『パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は4日夜(日本時間5日午前)に放送されたCBSニュースの番組「60ミニッツ」で、金融当局として3月以降まで利下げに踏み切るのを待つ公算が大きいと語った。当局が将来的に利下げする場合の論拠について、一般の米国民に説明するものだ。』

『議長はその中で、インフレ率が2%の物価目標に持続的に鈍化する道筋にあることを確認するため、経済データをさらに目にしたい意向をあらためて表明した。パウエル議長のインタビューは1日に収録。CBSが発言録を公表した。』(以上上記URL先より)

ということでして、CBSの方はこちらですな。
https://www.cbsnews.com/news/jerome-powell-interest-rates-inflation-timing-60-minutes/
60 MINUTES OVERTIME
Federal Reserve Chair Jerome Powell discusses interest rate cut timeline, what the Fed is waiting to see
By Scott Pelley, Aliza Chasan, Henry Schuster, Sarah Turcotte
February 4, 2024 / 7:00 PM EST / CBS News


でまあこちらは(すいませんよく考えたらECBネタも手がついてなくてFOMC会見もこれからでありますが)まあどうせFOMC会見とそんなに大差ないでしょと即断して飛ばしますけど。


でもってグールズビー総裁
https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/GCAYNBIJORKA7NW527ROZIR6I4-2024-02-05/
米経済、インフレ低下続く限り過度な懸念不要=シカゴ連銀総裁
ロイター編集
2024年2月6日午前 3:27 GMT+9

『[5日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は5日、インフレ率が目標とする2%に向けて低下する傾向が続く限り、連邦準備理事会(FRB)はこのところの予想を上回る経済成長と雇用の伸びを過度に懸念する必要はないとの考えを示した。』(上記URL先より、以下同様)

ほうほう。

『グールズビー総裁はブルームバーグTVのインタビューに対し「インフレ率が低下する中でも、雇用と経済成長の好調さが維持されれば、1990年代半ばから後半にかけて見られたような時期に入りつつある可能性が考えられる」と指摘。』

節子、それはテックバブルの発生やwww

という感じですがこのおっさんよー喋る人だわと思ってシカゴ連銀のサイト見に行ったら、

https://www.chicagofed.org/utilities/about-us/office-of-the-president/office-of-the-president-media-appearances

Media interviews from the last three months for President Austan Goolsbee, sharing his views on monetary policy, the economy and other issues.

「総裁のお部屋」みたいなコーナーがあるのは大体どこの地区連銀でもそうなので驚かないのですけれども、メディアでこんなにしゃべりましたというののリストをご丁寧に並べているのは中々珍しい上になんですかこの頻度はオッサン暇なんか、と思いましたwwwwwwww



あとカシュカリ大僧正
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-05/S8DW78DWRGG000
カシュカリ総裁、利下げ待つ「時間できた」−中立金利上昇の可能性指摘
Catarina Saraiva
2024年2月5日 23:41 JST

→引き締め過ぎが回復を頓挫させるリスク低下−ミネアポリス連銀総裁
→政策、低い中立金利環境での想定ほど引き締まっていない可能性も

『米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、連邦公開市場委員会(FOMC)には利下げに動く前に経済データを精査する時間があると指摘。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)を経て経済が変化したとの認識を示した。』(上記URL先より、以下同様)

へいへいそうだっか。

『5日にミネアポリス連銀のウェブサイトに掲載された寄稿文で、カシュカリ総裁は「少なくともパンデミック後の回復期に、中立に相当する政策スタンスの水準が上昇したということはあり得る」と記述。「それによりFOMCとしてはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き下げ始める前に、今後発表される経済データを精査する時間ができた。引き締め過ぎの政策が景気回復を頓挫させるリスクは低下している」と述べた。カシュカリ総裁は、今年のFOMC会合で投票権を有していない。』

とまあそういう話なのですが、こちらは記事の通りでサイトにあって(今ならトップページにサムネがある)、

https://www.minneapolisfed.org/article/2024/policy-has-tightened-a-lot-how-tight-is-it
Policy Has Tightened a Lot.
How Tight Is It?
February 5, 2024

AUTHOR
Neel Kashkari
President and CEO

中立金利がどうのこうのという話は上記の図表並べた後の最後の6つのパラグラフの所にありまして、

『The concept of a neutral stance of monetary policy is critical to assessing where policy is now and what pressure it is having on the economy. While we cannot directly observe neutral, economists have models to estimate it, which are imperfect even under normal economic circumstances.』

中立金利を推計するためには実際の経済がどうなっているかを見る必要があって、

『Our various workhorse models for the economy have struggled to explain and forecast the pandemic and post-pandemic periods given the extraordinary changes and disruptions the economy has experienced. So I also look to measures of economic activity for signals to try to evaluate the stance of policy.』

どのようなものを見るかというのは特にパンデミック後は(余計なファクターが色々あるので)ムツカシヤですが、という関連の話は前段にあるんですけどそれはさておき大僧正はこんなのを見てると、

『To assess if monetary policy is tight, I start by looking at what are traditionally the more interest-rate-sensitive sectors of the economy for signs of weakness.』

金利感応度の高い経済セクターの動向を見るんだそうです。

『Start with housing: While home sales are down relative to the pre-pandemic period, overall residential investment was flat in real terms in 2023. Construction employment has not fallen during our tightening cycle and instead continues to climb to all-time highs. While home price growth has slowed, prices have not fallen and are quite high by historical measures, contributing to record household wealth. Even the stock prices of homebuilders are near all-time highs.』

最初に見るのは住宅だけど住宅市場は強いですよねーだそうです。

『Private nonresidential investment was up 4.1 percent in 2023, and consumption of durable goods was up 6.1 percent. And with the backdrop of low unemployment noted above, consumers continue to surprise with robust spending.』

民間の住宅以外の投資、耐久財消費も見るそうでこれもまた強いと。

『These data lead me to question how much downward pressure monetary policy is currently placing on demand.』

こぎゃんふとかデータを見てると利下げする必要があるのかというのが疑問になるバイ、だそうです。

『But the data are not unambiguously positive, and there are some signs of economic weakness that I take seriously, such as auto loan and credit card delinquencies increasing from very low levels and continued weakness in the office sector of commercial real estate.』

返す刀でCREが駄目バイという話。

『This constellation of data suggests to me that the current stance of monetary policy, which, again, includes the current level and expected paths of the federal funds rate and balance sheet, may not be as tight as we would have assumed given the low neutral rate environment that existed before the pandemic. 』

つーことで記事にあった中立金利云々の話。

『It is possible, at least during the post-pandemic recovery period, that the policy stance that represents neutral has increased.』

エライアバウトな判断法な気もしますが、まあそもそも論として中立金利ってそんなに精緻に計算する意味もないし、変に精緻に計算しても却って有害な話になるので、今が引き締め的か緩和的か、って感じのざっくりとした概念で考えるのがまあ吉だよね、と考えると大僧正のアプローチは中々こうプラクティカルでいいんじゃないでしょうかとも思えますね。

『The implication of this is that, I believe, it gives the FOMC time to assess upcoming economic data before starting to lower the federal funds rate, with less risk that too-tight policy is going to derail the economic recovery.』

ってのが結論でして、まあ要するに3月に利下げとかそんな慌てるような時間帯じゃない、というお話でして、いやまあ市場ちゃんが3月利下げを煽るので皆で揃って火消しタイム、という所でしょうね。

#はい、肝心のFOMC会見ネタは(きっと今日は大したネタがない筈なので)明日にでも^^



2024/02/05

お題「市場雑談(GCレート上昇を受けて)/ボウマンとグールズビーが早速ご発言とな」

〇相変わらず市場の厚みという意味での流動性がアレというのがわかる金曜日

・何か知らんけどGCレートが上昇して2年とかが甘いんですけど

https://jp.reuters.com/markets/japan/funds/RPHZHJ2POVKGLDS33QODZC5654-2024-02-02/
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は続伸、長期金利0.66% 米金利低下や無難な日銀オペで
ロイター編集
2024年2月2日午後 3:19 GMT+9

『[東京 2日 ロイター] - <15:14> 国債先物は続伸、長期金利0.66% 米金利低下や無難な日銀オペで

国債先物中心限月3月限は前営業日比30銭高の146円94銭と続伸して取引を終えた。新発10年国債利回り(長期金利)は同3.0bp低下の0.660%と1月23日以来1週間半ぶりの水準に低下した。前日の米金利低下や中長期債対象の日銀オペ結果が総じて無難となったことから、先物は堅調に推移した。』(上記URL先より、以下同様)

ということでございますが、

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 24年3月限

金曜の取引って後場謎の急落とその後の怒涛の戻しというイミフな動きがありまして、しかも流動性供給入札の結果受けてという訳でも無くて、安値付けた13:13の直前に思いっきり下げてその後ホイホイと戻りだす、とか何かフローでもあったと考えないと説明できない謎ムーブはあるわ(しかも最近いつもそうですが引け前も謎の上へ下への大騒ぎするんだよなー)引けではこんな有様。

『現物市場で新発国債利回りは超長期ゾーンを中心に低下した。5年債は同0.5bp低下の0.275%、20年債は同4.0bp低下の1.450%、30年債は同4.5bp低下の1.740%、40年債は同5.0bp低下の1.975%。一方、2年債は同1.5bp上昇の0.095%。』

>2年債は同1.5bp上昇の0.095%

ということでして、トレードウェブさんによりますと

『TRADEWEB
    OFFER  BID   前日比 時間
2年  0.086  0.097   0.01 15:04
5年  0.267  0.276  -0.008 15:06
10年  0.654  0.664  -0.033 15:08
20年  1.444  1.456  -0.044 15:09
30年  1.74  1.752  -0.043 15:07
40年  1.976  1.989  -0.043 15:05』

となってて2年だけ甘(BBさんの引値とかだと2年5年のツイストっぷりはもうちょっと目立つんですけどね)なんですよね。

ちょwwwwおまwwww何してますねんという話ですが、金曜はいつもの短国3Mの入札があった訳ですが、その後GCレポレートが上昇して短期ゾーンの雰囲気が悪くなったのが要因っちゅうことのようでございますわな。

ちなみに3MTDBの入札はまあそんなもんかいなと思ったのですが。

https://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul20240202.htm
国庫短期証券(第1210回)の入札結果
令和6年2月2日
財務省

5.価格競争入札について
(1)応募額    13兆1,203億円
(2)募入決定額   4兆5,314億2,000万円
(3)募入最低価格  100円03銭6厘0毛
(募入最高利回り)(-0.1340%)
(4)募入最低価格における案分比率   43.0931%
(5)募入平均価格  100円03銭8厘7毛
(募入平均利回り)(-0.1440%)

前週が▲0.1544%/▲0.1437%でその前の週(はMPMの前)が▲0.1872%/▲0.1723%でしたので、まあ足元少しづつ金利上がっている(と言いましても年末年始の所で短国レートクッソ低かったのでその反動という話はあるのですがそれはさておき)のではありますが、足が5/13に置かれていても涼しい顔して▲15bpとかやってる(引けも▲15bpだった筈)訳ですな。

ただまあGC上がるというのは短国発行償還要因で需給の偏在が生じたんでしょうな、という話なんですけど(個人の妄想です)。今は短国そんなに日銀が持っていないので、短国償還と発行の日に、償還する短国の銘柄をロールしない投資家が出てしまって、でもってその時にGC市場に出て来る金が少ない、ということになりますと、マクロ的に資金が余っていても偏在によってGCレポレートが上昇してしまう、という話はアリエールということなんですかしらねえ知らんけど。

まあ元々GCレポ市場は金利があった世界から再三再四百万回は申し上げたと思うのですが、取引規模対比で参加者の層が薄い(限られた参加者しか参戦しない)ので、まあ要は大人の打ち合いみたいな市場になっていて、コドモの人達はそもそもあんまり参戦出来ないという市場というのは前からずーーーーーーっと申し上げている次第なのですが、何せ銘柄後決めGCT+0とかそんなもん事務回すためのコストがこの糞低金利(というか今はマイナスなのでそもそもが論外)で払えませんがな問題があって、ハードルが高いわけなのよ、うんうん。

でまあそもそもが今の短期の短い所ってマイナス金利とマクロ加算残高(と基礎残高)を使った「マイナス金利の押し付け合い」をやっている上に、そもそも(特に資金取引においては)金利のマイナスとプラスというのはその間に不連続なものがあって、その点で需要がエライ屈曲するので、一応この前の25年レビューでも「市場機能が維持されて云々」とか日銀ドヤ顔で説明していた(かどうかは放映をちゃんと見てないから知らんが、そもそも放映も別にドヤ顔じゃなくて紙芝居写しますよねサーセン)ようですが、もとよりこれは市場というのとはちょっと違いますがなお兄さんお兄さんという話。

・・・・・・・ってなんか書いているうちに話がドンドン逸れているような気がしますが、まあとにかく2年で2%はまるまる11年やりそうな勢いだし、マイナス金利だってもう8年とか9年とか(衝撃の余り記憶喪失になっているワイ)やっている中で、市場参加者の多様性って更に無くなっているんですよ。

でもって追い打ちをかけるように流動性規制のような規制の強化によって市場参加者のニーズが偏りやすくなっていると思われるわけでして、ま、そもそもがそこまで市場が見てないから、ということなのかも知れませんけれども、3月なり4月なりにマイナス金利政策が終了するというような感じになってきたときって、福井の俊ちゃんの時にはちゃんと3MTBの金利がその前から上昇したり(上昇のし過ぎで2月の頭辺りにピークつけてその後下がっちゃったのはご愛嬌)しておりまして、何らかの織り込みが起きるもんなんですが、何せこのマイナス金利というのが上述のようにマイナスとプラスの間で運用あるいは債券投資需要の曲線に断層を作る位の勢いで不連続にしやがりますので、少なくともTDBの市場見ても短期市場の政策織り込みってまるで表れてこないという、市場のシグナリング機能はどこに行ったという事になる訳でして、まあマイナス金利はこういう現象を見ても罪が深いから今すぐ解除しろだし、とっとと短期政策金利1%と言いたいがまあ他の国ではゼロローワーバウンド扱いされる0.5%で勘弁するから上げると市場も随分とちゃんとしたものに戻ってくれるわなと思った金曜日の夕方なのでした・


しかしまあ横綱反復横跳びし過ぎですw

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_daytime
先物価格情報

長期国債先物 日中取引
限月   24年3月限
取引日  02/02
始値  146.82(02/02)(08:45)
高値  146.98(02/02)(14:46)
安値  146.65(02/02)(13:13)
現在値 146.94(02/02)(15:02)
前日比 +0.30
取引高 23,520

からの

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/future_night

長期国債先物  夜間取引
限月   24年3月限
取引日  02/05
始値   146.94(02/02)(15:30)
高値   146.95(02/02)(15:30)
安値   146.43(02/03)(03:15)
現在値  146.48(02/03)(05:53)  
前日比  -0.46
取引高  15,884

まあ雇用統計様だから仕方ないとは言え、こう連日反復横跳びせんでも・・・・・・・・

ああそれから金曜の輪番メモおいておかないと

https://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of240202.htm
国債買入(残存期間1年以下) 1,500 2024年2月5日
国債買入(残存期間1年超3年以下) 3,750 2024年2月5日
国債買入(残存期間3年超5年以下) 4,250 2024年2月5日
国債買入(残存期間5年超10年以下) 4,750 2024年2月5日

案の定華麗に同額でした。基本的に減らせやとは思いますが、ゆうてここでオペまでが地均しに加担してホイホイ盛り上げるのって1か月早いわと思いますし、それ以前の問題としてオペで政策シグナルを出すのは基本的に筋悪というのがアタクシの基本的な思想なので、まあこの調子でマイナス金利解除までは輪番減らさん(解除観測がゼロになって金利がホイホイ下がったら減らせるけど)って感じになるでしょうな、という読み筋に自信ニキとなりました。


と、ここまで書いてて基礎残高とマクロ加算とマイナス金利適用って組み合わせの方がよっぽど凶悪な日銀による市場関与と言えば市場関与ですな、って思いましたwww(まあ元々短期の場合は政策金利誘導という市場関与が所与だから自分で書いてて思いつくまで気が付かなかったけどw)。



〇人がFOMC会見ネタを始める前に早速の高官発言ェ・・・・・・・・・・・・・

すいませんすいませんアタクシの手が遅くて。
https://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20240131.pdf
Transcript of Chair Powell’s Press Conference
January 31, 2024
PRELIMINARY

ということで毎度のFOMC会見読みがあるというのに日銀とぶつかって日銀ちゃんの方がチマチマとネタが今回あったのでそっちを先にしてたら早速高官発言が。


ボウマンさん記事
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-02-02/S8914JT1UM0W00
ボウマンFRB理事、利下げ検討「まだその段階に達していない」
Craig Torres
2024年2月3日 7:04 JST 更新日時 2024年2月3日 11:09 JST

→インフレが持続的に2%に向かえばいずれ利下げ適切に−ボウマン氏
→ただ、「重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」

『米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事は政策金利が現行水準のままでインフレ率は
さらに低下するとの見方を示すと同時に、まだ利下げを検討すべき時期ではないと述べた。』

『インフレ鈍化を示す最近の指標については「勇気づけられる」とし、物価上昇率が持続的に目標とする2%に向かった場合、「金融政策が過度に景気抑制的になるのを防ぐため、いずれ政策金利を徐々に引き下げることが適切になるだろう」と述べた。』

『しかし、経済はまだその状態には達しておらず、「重要なインフレ上振れリスクが多く残っている」と同氏は指摘。地政学的状況がサプライチェーンを停滞させる恐れや、金融状況の緩和継続が需要を押し上げるリスク、労働市場の逼迫(ひっぱく)が引き続きサービス価格上昇につながる可能性を例に挙げた。』(以上上記URL先より)

ということですが、ボウマンさんの講演こちらに乗っていましてですね、


https://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bowman20240202a.htm
February 02, 2024
The Future of Banking
Governor Michelle W. Bowman
At the 157th Assembly for Bank Directors, Southwestern Graduate School of Banking, Maui, Hawaii

何かお題とチャウヤンという感じですが、お話の本論に入る前のマクラの部分で金融政策とか経済物価見通しについて話をしていましてですね、

『Before I delve into the "future" of banking, I want to spend a moment on the "present" of monetary policy and the economy.』

の後から始まるパラグラフで4パラに渡って説明しているのですけれども、経済物価の話の次にある2本のパラグラフが中心でして、

『Considering these developments, I voted to maintain the policy rate at its current level while we continue to monitor the incoming data and assess the implications for the inflation and economic outlook. My baseline outlook is that inflation will decline further with the policy rate held at the current level. Should the incoming data continue to indicate that inflation is moving sustainably toward our 2 percent goal, it will eventually become appropriate to gradually lower our policy rate to prevent monetary policy from becoming overly restrictive. In my view, we are not yet at that point. And a number of important upside inflation risks remain.』

まあ何ですかね、そんなにやる気満々でもないけど、じゃあ別に利下げ検討する気が無いかというとそうでもなくて、ハト派扱いのボウマンさんなので、ハト派の鋭鋒は今回抑えていますが、これはまあ3月利上げヒャッハーで盛り上がられると困る(現時点では)というFEDのなかでの認識ということなんでしょうね。まあ事と次第によっては3月に利下げの話をおっぱじめられる可能性はあるけど、米国って経済強いんでしょ???

『These include risks from geopolitical conditions, including the prominent risk of spillovers from geopolitical conflicts and the extent to which food and energy markets and supply chains remain exposed to these influences. There is also the risk that continued easing in financial conditions could add momentum to demand, stalling any further progress in lowering inflation, or even causing inflation to reaccelerate. Finally, there is a risk that continued labor market tightness could lead to persistently high core services inflation. Today's labor market data, which indicated a pickup in wage inflation in recent months, suggests ongoing elevated wage growth as some businesses continue to report above-average wage increases to compensate for inflation.』

でまあ不確実だから決め打ちできない、という話が次のパラにあるのですが、この中でしらっと、「There is also the risk that continued easing in financial conditions could add momentum to demand, stalling any further progress in lowering inflation, or even causing inflation to reaccelerate.」ってあって、利下げだゴルディロックスだヒャッハーとなって金融市場が盛り上がるのはリスク、って言ってるのがお洒落です。

という程度で簡単に。


あとシカゴのグールズビー総裁も

https://jp.reuters.com/economy/federal-reserve-board/YRTGGEEVWRKBZGTPH6CCZ4R5L4-2024-02-04/
米利下げ時期、今後「数週から数カ月」のデータもとに判断=シカゴ連銀総裁
ロイター編集
2024年2月4日午後 5:03 GMT+9

『[2日 ロイター] - 米シカゴ地区連銀のグールズビー総裁は2日、米連邦準備理事会(FRB)が利下げ時期の判断材料にする経済データはまだ「数週間から数カ月」分あるとの見解を示した。米PBSのインタビューで語った。』

『また、FRBはインフレ率を目標の2%に戻すだろうが、上昇が本格化する前の水準に戻すことは考えていないとし、「物価を数年前の水準に戻そうとするなら、景気を悪化させなければならない」と語った。』(上記URL先より、以下同じ)

ほうほうほう。

『2日発表された1月の雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが35万3000人だったことについては、「息をのむような数字だ」と発言。労働市場の基調はデータが示唆するほど強くないかもしれないが、「われわれが目標に向かっていると安心するにはインフレと雇用に関してこれまでのような進展が続くことが必要だ」と述べた。』

こちらは残念ながらシカゴ連銀の方には見当たらなかったのでまあこれはこれでメモという事で。(会見ネタは明日から真面目に成敗しますさーせん)




2024/02/02

お題「1月会合主な意見ネタの続きと雑感」

何かアメリカン金利が低下すると政策修正地均しで下がった分の横綱がきっちり戻すという大変にお洒落な相場になっておられますので、もうこの際アメリカン金利の低下のドサクサに紛れて来週にでも臨時会合やってマイナス金利解除したらどうでしょうか(大嘘)。

今ならマイナス金利解除しても長期金利が急騰しませんわよwwww


〇政策の部分ではどう見てもやる気満々だった1月主な意見の物価部分も確認

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240123.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 1 月 22、23 日開催分)

さすがに今回のは真面目に見ないとという事なので昨日(と言いつつまあ昨日の分を書いてたのは一昨日の夜ですが)の続きということで恐縮至極。

でもって金融政策というかマイナス解除の判断に関しては基本的に「お気持ち」によって決定しますよ、ってえのは既に展望レポートと会見で示されている訳なので物価に関しては「お気持ち」を正当化するための後付け理屈になってしまう(それも本末転倒だがw)のでしょうけれども、「お気持ち」を通すにもさすがに情勢判断を無理筋おぶ無理筋で通すのはアレですから物価情勢に関する意見も見るべきではございます。

てな訳で『(物価)』のパートですが。

『・賃金と物価の好循環が強まり、基調的な物価上昇率が2%に向けて徐々に高まっていくという見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている。』

はいはい大本営大本営。

『・既往の輸入物価上昇の価格転嫁に伴う物価上昇圧力は、明確に和らいできている。』

ということになっているんですけど、ニュース見ていると今月もまた食品価格の値上げ、ってのがホイホイ出ているように見えまして、この「財価格上昇は収まる」ってのホンマカイナというのはどうもアタクシ????だったりします。

『・ 財価格の上昇率が今後もさらに下がっていく一方、サービス価格の上昇率は、春季労使交渉での賃上げに支えられて上がっていくとみられる。このため、全体として消費者物価は、どちらの影響が強く出るかによって変動しつつも、当面概ね2%前後で推移していくだろう。』

これ財価格が思ったほど下がらんかったら物価が高止まりするって話にもなるんだが。

『・ サービス価格の上昇を踏まえると、賃金上昇に伴う物価上昇圧力は高まりつつあるとみられるが、2%の「物価安定の目標」の達成が十分な確度をもって見通せる状況にまでは至っていない。』

まあこの辺も結論から持ってきた妙な理屈ではありますけどね。賃金上昇による物価上昇圧力って普通によからぬスパイラルの方に振れるリスクがあるじゃろと。

『・今春の労使間の賃金交渉の結果が、昨春の実績を上回る可能性が出てきており、賃金と物価の好循環の実現の機運が高まっている。』

ということでまあ結局のところ春闘の状況がある程度出てきた時点で好循環だの何だの言って政策修正に踏み切る感じになるんでようなあという話。

てかさ、そもそも論として物価上昇率がじゃじゃーんと鈍化してこない限り、物価上昇を上回る賃金上昇ってそう簡単な話じゃない訳で、ただまあこの春に関して言えば昨年の賃金上昇を抑制的にして労働分配が結果的に下がったけど、物価がまだ強いからこりゃ賃金上げないとアカンじゃろという感じで上昇余地があるのかも知れませんけど、それって持続的に大きな賃金上昇を期待できる話じゃないのですから(起きたらスパイラル)まあ言い訳に春闘使って逃げ切るのは今年がチャンスって事になりますわな。

『・ 前回会合以降のデータ等をみると、@中小企業も含めて賃上げに期待が持てる、A人件費上昇を受けてサービス価格も高い伸びを続けている、ことから賃金と物価の好循環実現の確度は更に着実に高まったと捉えられる。』

マジかそれ前回の会合の時点でもわかってなかったっけと思いますけど、まあこうやって物価のパートの方でも機運高まるネタの方が多いし、さっきの「十分な確度をもって見通せる状況にまでは至っていない」さんだって「状況までには至っていない」ということで遠いとかそういう感じの話しじゃないし、その前のマクラでは「高まりつつあると見られるが」と言っている訳ですから、さすがにちょっと前までの「2%物価目標達成までには距離がある」というような話はどっかに飛んでるという事になろうかと思います。

『・ 賃金上昇分の転嫁には一部課題が残るものの、価格転嫁は一般的との受け止めが拡がっているほか、本年の賃金上昇率は昨年を上回る蓋然性が高い。不確実性はあるものの、「物価安定の目標」の実現が見通せる状況になってきた。』

見通せる状況になってきたとは大きく出ましたな、イイハナシダナー。

『・ 大手企業の賃上げ率が高まり、取引先企業による賃金の価格転嫁が認められやすくなれば、需要増加とともに物価も上昇する経済の順回転が生まれると期待される。このため、本年のベースアップの水準に注目している。』

この「人件費も上がっていますんでちょっと販売価格上げますね」ってまあBtoCでは全然普通に通じる状況ではネーノとは思いますが、問題はBtoBですよね、ってな話がこの前の支店長会議の報告の所でもありましたが、2年連続でこれならさすがに転嫁できるじゃろというか転嫁できなかったら死ぬだろという話ではありますが、この話を言い出すと無限に「見通せない」状況になってしまうのでこの話を言うのもほどほどに、とは思うのでありました。


でですね、この物価のパートの意見が8個で、昨日ネタにしましたように金融政策に関する意見が15個あるという次第で、元々金融政策に関する意見は物価の意見よりも多めに推移しておりますけれども、金融政策のパートに対して物価のパートがあっさり味かつ基本的に物価来てます来てますって話しかない訳でして、まあやはりこの「主な意見」は「マイナス金利解除に向けた地ならし」という内容になっていますよね、というお話。

また、12月会合主な意見ってこの前12月会合議事要旨出た後にネタにしたように、何かお前主な意見対比で議事要旨強く(=マイナス解除などに対する前のめり感強く)ねえかって物件に仕上がっていたじゃないですか。

でもって今回の主な意見はまあごくごく普通に「Majiで物価目標達成が視野に入る5秒前」(はい元ネタが古すぎますねすいませんすいません)という物件に仕上がっている訳でして、つまりはまあごにょごにょと大人の事情が働いたと思わせてしまう12月の時と違ってもう手綱を放ってそれイケー状態になっておる、というのが今回の主な意見に出ているとなれば、まあ勢いで3月解除あるでと思いますし、間延びしてしまうとまた勢いがなくなってしまう訳で、4月ならともかく6月7月に修正を先送りするのは却って困難になる(その場合は先送りではなくて修正できずにあばばばばーの可能性の方が高い)んじゃないですかねえ、という話になるのでありました。

まあ何ですな、12月会合であれだけ政策修正期待を焼き払ってぺんぺん草も生えない状態にしちまったので、今回の地均し路線復活ってかなり無理矢理感はあるのですが、(アメリカン金利のお蔭のような気がしますが)長期金利大して跳ねてないし、まあ今のところ大本営的な着眼点から言えば順調に推移という事じゃなかろうか、という気はします。



でまあ折角なのでついでに経済情勢の認識に関しても引用だけはしておきましょう。経済のパートは6個で物価より少ない、ということですので、余程の変な何とかショックでも起きれば勿論話は別なのですが、この意見数の少なさすなわち政策イシューとしての注目度の低さは、まあ経済状況を見て政策修正がどうのこうの、という話にはならん(経済情勢気にしてませんとは正面切って言えないからお為ごかしに何か後付けはするでしょうけど)ということでありますわな。

『・わが国経済は、緩やかに回復しており、先行きも緩やかな回復を続けるとみられる。ただし、経済・物価の不確実性は、引き続き、きわめて高い。』

そんなの何時だって将来は不確実泡という感じですがはいはい大本営大本営ではあります。

『・ 能登半島地震が経済に及ぼす影響については、丹念に調査・分析していく必要がある。』

経済もそうですが物価もなんですよね・・・・・・・

『・ 国内経済は、全体として底堅く、緩やかな回復を続けている。企業からは、収益が改善するもと、人手不足に対する危機感、賃上げについての前向きな声が以前にも増して聞かれるほか、資材価格上昇により先延ばししていた設備投資計画を再開する動きもみられる。』

これは威勢の良い話。

『・ わが国経済の現状は、海外経済に不確実性の高さがあるもとで、輸出や設備投資における幾分の弱さから冴えないものの、海外経済が回復すれば、回復基調を強めていくと思われる。』

と思ったらFEDは現状認識引き上げてましたね。

『・物価が上昇する中でも、雇用・所得環境は緩やかに改善しているほか、政府による物価対策など諸施策の効果もあって、消費者のセンチメントは今のところ維持されている。』

うーーーーーーん(じっと財布を見る)

『・ 日本経済は、効率重視モデルから付加価値重視モデルへの転換が遅れ、低付加価値構造から抜け出せていない。新たな輸出産業の育成や、中堅企業・比較的規模の大きな中小企業の成長やスタートアップの躍進が重要である。』

これは毎度の中村審議委員。言ってることは分かるのですが金融政策の話しかと言われますとチガウソウジャナイなんだよなーーーーーーー。


〇今日は輪番ですなあ

今日は中期前半、中期後半、長期の主力3ゾーンの輪番があって、昨日入札した10年は結果発表後に横綱怒涛のがぶり寄りでまたまた10年金利70割れとかナンジャソラ相場になっておられますので、まあ金利が下がっている時には隙あらば減額、みたいな積極的減額スタンスを取っていれば減額可能ではありますわな。

しかしながらご案内の通りでそもそも今の輪番ちゃんの運営が別に隙あらば減額とかそういうやる気のあるスタンスではないのは明白ですし、また地均しおっぱじめている中で、そうは言ってもYCCやっていてかなりの骨抜きにはなったとは言え長期金利0%目標にしているだけに、足元で長期金利が政策修正を織り込みに行った結果として馬鹿上がりされても困る、というのがある訳ですな。

そう考えますと、甚だ遺憾の極みではあるのですが、まあここから3月か4月か知らんけど、政策修正が入るまでは輪番減らしてこないかなという予感はします。ってこれがまあYCCの弊害でして、本来ふつーーーーの金利政策であれば寧ろ地均ししながら過大な輪番は減らしていって、政策修正時点では織り込み済みでノーイベント、とするのが利上げの時の(中銀の立場的に)望ましいパティーンな訳ですが(なお先日のFEDの場合はそんなこと言ってる余裕のない物価上昇だったのでああなりましたが)、YCCを看板上やっているし、何で残しているのか意味わからんけどオーバーシュート型コミットメントとか要らんもん残しているので、政策修正ノーサプライズ攻撃というのをするのにも中々難しい舵取り(本来そんな梶取りをするということ自体が中銀の傲慢で市場に任せりゃいいんですけど現実問題舵取りをせざるを得ないのは分かる)必要だし、まあ地均し中とはいえ次の会合まで1カ月半もあるので、あまりガンガン期待が先走ると3月まで持たないってのもあるでしょうな(3月まで持たない、のですから4月にやるとなったら更に持たない)。


〇ところで副総裁級の金懇はどうなっとりますねん

https://www.boj.or.jp/about/press/index.htm

今後の講演・挨拶等の予定

を見ても相変わらず空欄。

https://www.boj.or.jp/about/calendar/index.htm

公表予定

を見ても相変わらず何も無し(何かどっかのベンダーが自動賛成雑魚審議委員の金懇が2月のケツの方にどうのこうのとかいう報道をしてた気がするがニュース記事を拾えなかったので割愛だしそもそも雑魚なのでどうでもよい訳ですが大本営の鉄砲玉として話をするならまあ意味はあるので一応チェックはしますけどね)。


うーんこれはという感じですが、いいからお前らこの重要な時期に総裁副総裁の金懇日程非開示とかするんじゃねえよ何考えてるんだヴォケというお話ではあるんですけどねえ。


ああそれから多分再来週くらいになるんじゃないかと思うのですが、皆さん大好きなこれが公表されますよねーーーーー

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/index.htm
展望レポート・ハイライト

7月、10月と会合を追うごとにドンドン2%が遠くになってしまうという大変に面白い絵をだしていたこのポンチ絵、何がすごいって先般もネタにしましたように、植田総裁様のご説明によりますと10月展望レポートで示していた「2024年度、2025年度のコアコアCPI見通しは年度平均で+1.9%、というのは物価目標達成のお姿であって、ただそこに本当に至れるのかという確度が低かったのが今回少し上がったんですよ」というご説明になっていた訳ですね。

然るに、
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/highlight/ten202310.htm

にありますように、2%に行くための循環はイラストによりますと渦巻6回転ですし、2%の大木が育って実がなるための植物は今の時点で双葉である、とかいうもう植田さん在任中には2%行きませんねえ位のポンコツイラストをだしてきておったのが10月展望レポート、ということでございました。

さてこちらなんですけど、今回どうせ再来週のどこか辺りでポンチ絵炸裂すると思うのですが、どのツラ下げてしょうもない絵を繰り出してくるのか、というのを今から手ぐすね引いて待ち構えておりますので、公表予定日はよ出せや(「公表予定」の方は基本的に金曜日に更新される筈なので今日のタイミングでわかるんじゃなかろうかと楽しみにしております)という話ですな、(・∀・)ニヤニヤ。

〇何か面白そうなペーパーがありますね

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/wp24j02.htm
インフレの国際連動性と日本の物価変動

全文はこちら
https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2024/data/wp24j02.pdf

こちらは日本銀行ワーキングペーパーシリーズなのですが、「多角的レビューシリーズ」扱いになっていますね。面白そうなのだがまだ1ミリも読めてないので面白そうですねとだけご紹介しておきます(自分用備忘も兼ねて)





2024/02/01

お題「モードは引き締め終了方向だが時期未定なFOMC声明文/地均しキタコレの1月会合主な意見」

今月は「3月に向けてのオモシロ月間」ということになりそうですな。これはアーニャもワクワクというものです。

〇FOMC声明文:引き締め終了からの正常化モード入りは宣言したがスタートは慎重という書き方

まあ毎度のことなのですが別にFOMCだからと言って3時4時に起きる訳でもないし、だいたいからして冬は寒いわ暗いわで起きても起動するのに暖機運転が必要というポンコツムーブ(逆に夏なら早起きできる)なので起きてから今日もまた結果(市場の動き)を一切見ないで取り急ぎ声明文比較だけするの巻ですが・・・・・・・

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240131a.htm(今回)
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20231213a.htm(前回)

・第1パラグラフ:経済の現状判断を引き上げてきましたね

『Recent indicators suggest that economic activity has been expanding at a solid pace.』(今回)
『Recent indicators suggest that growth of economic activity has slowed from its strong pace in the third quarter. 』(前回)

ということで開口一番経済の現状判断を引き上げ。まあ前回の言い方も「7-9月が強かったけどスローでしたね」という言い方で別にトレンドとしてスローという話でも無かったので別にまあ目を引ん?く程の変化ではないのですが、これはまあネタ的な言い方をすればソフトランディングあるいはノーランディングに対して自信ニキ一段と高まる、ということになると思います。

『Job gains have moderated since early last year but remain strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation has eased over the past year but remains elevated.』(今回)

『Job gains have moderated since earlier in the year but remain strong, and the unemployment rate has remained low. Inflation has eased over the past year but remains elevated.』(前回)

でもってデュアルマンデートのジョブの話とインフレーションの話はどちらも前回の現状認識と全文一致となっています。


・第2パラグラフ(前回までの第3パラグラフを一部含む):文章構成を大幅に変更しました詳細は以下の通り

ということで詳細は以下の通りって何だよという話ですが、今回従来の2パラの構成を大きく変えて来ました。次の3パラもなんですけどね。

ガラッと変えてきたので一旦全文を並べますけど、

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run. The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are moving into better balance. The economic outlook is uncertain, and the Committee remains highly attentive to inflation risks.』(今回)

『The U.S. banking system is sound and resilient. Tighter financial and credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation. The extent of these effects remains uncertain. The Committee remains highly attentive to inflation risks.』(前回)

まずはUSバンキングシステムがどうのこうのという表現が削除されました。これは昨年発生したシリコンバレー銀行があばばばばーになって一時期金融システムがアイヤーとか言ってたモードが完全解消(まあとっくの昔に解消してたとは思うのですがこうやって声明文的にも)したという宣言ですな。

でもって今回「よりタイトな金融環境によって(過度な)経済活動の抑制が行われてインフレが沈静化しますのん」という表現を削除しまして、その代わりに「雇用と物価のマンデート達成に向けたリスクはベターなバランスに現在進行形で進んでおりまっせ」という表現に切り替えておりまして、これをゴルディロックスヒャッハーフィルターを掛けて読みますと、足元で利下げ期待とソフトランディング期待で金融環境がゆるーくなっている事に関してそこまでFEDは目くじら立てませんでっせとお墨付きキタコレでゴルディロックスキタコレ、という読み方も出来そう(なぜなら今までは「金融環境がタイトだからこそ物価が沈静化する」って言ってたので想定外の金融環境ガバガバモードはアカンという話になってしまうので)ですね、市場がそういう反応したのか全然見てないけど(ガチ)。

でもって最初の「The Committee seeks to achieve〜」は従来3パラの冒頭にあった表現でして、これを2パラの頭に持ってきていますが、話の構成上、というのもありますけど、USバンキングシステム云々の話終了、というのを強調するのにも使ったのかなという感じです。

いずれにしましても、今回入った「The Committee judges that the risks to achieving its employment and inflation goals are moving into better balance.」と今回抜けた「Tighter financial and credit conditions for households and businesses are likely to weigh on economic activity, hiring, and inflation.」というのは、「よりタイトな金融環境でデュアルマンデートの達成を目指します」というのを抜いて、現状の進展にFOMCの皆さんもニッコリ、という認識をしめしたということですので、方向性としては今後正常化(どっかの国と違って正常化が意味するのは利下げですわな)というのが明確に示されたということでしょう。まあ元々そういう話ではありましたが、今回は声明文で思いっきり書いたというのが前回との大違いということですわな。


・第3パラグラフ:正常化(利下げ)の方向性を思いっきり示す形で文章構成の変更が行われる

ということで従来3パラ冒頭にあった決まり文句、

『The Committee seeks to achieve maximum employment and inflation at the rate of 2 percent over the longer run.』(前回)

は今回2パラに移動しましたのでその次から比較しますけどね。

『In support of its goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(今回)
『In support of these goals, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 5-1/4 to 5-1/2 percent.』(前回)

政策金利据え置き、はさておきまして。

『In considering any adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will carefully assess incoming data, the evolving outlook, and the balance of risks.』(今回)

『The Committee will continue to assess additional information and its implications for monetary policy.』(前回)

まあこの部分の時点で「In considering any adjustments to the target range for the federal funds rate」と言ってるわけですがその次が全力方向転換。

『The Committee does not expect it will be appropriate to reduce the target range until it has gained greater confidence that inflation is moving sustainably toward 2 percent. 』(今回)

『In determining the extent of any additional policy firming that may be appropriate to return inflation to 2 percent over time, the Committee will take into account the cumulative tightening of monetary policy, the lags with which monetary policy affects economic activity and inflation, and economic and financial developments.』(前回)

そらまあ2パラで現在進行形で「ムービングイントゥーベターバランス」っていってるんだかそらそうよという話ではあるのですが、前回までは「2%達成に必要な追加利上げが必要かどうかをかくかくしかじかの要素を見て点検する」っていうことで追加引き締めの話が前提に書かれていたのですが、今回は利下げ方向の正常化着手、を前提にした話になっていますわな。まあ12月のSEPのドットプロット通り、と言ってしまえばそれまで何ですけれども、FEDの場合何気に便利なのは1月になると投票権を持つ地区連銀総裁が入れ替えになるので、そのタイミングにぶつけると何となく違和感が少なくなる、ってのもあるかもしれませんね、意識しているかどうかは知らんけど。

でまあ方向性が「any additional policy firming」から「reduce the target range」に変わったのですが、まあゆうてその時期に関してはカイジの利根川幸雄状態で「今回まだその時と場所の指定はしていない」ってことではありますが、こうなるとまあどうせ会見でも質問攻めにあっているでしょうけれども(いつもだと真面目に会見の掛け流ししながら書いているのですがちょっと今日はヒアリングサボっているもんで・・・)じゃあお前その「インフレーションが安定的に2%に動いていくためのgreater confidence」とは何ぞやというgreater confidenceに関する話でああでもないこうでもない、という話になるでしょうし、どうせその流れで今月はFED高官がネタを提供してくれると思うと楽しみ楽しみ。

まあ既にそれ自体は市場ちゃんが織り込みまくって寧ろ3月利下げがどうのこうのとかいう状態になっていますので、方向性の表現の転換自体は重要ではあるものの、市場追認ちゃあ市場追認だし、そもそもSEPの話と声明文の表現がおめーあってねえだろという話でもあったので、まあこれは1か月遅れで表現が追いついたということでしょうな。

ただこれって本来はステートメントをちゃんと12月に変えろよという話でもあるのですけどね・・・・・


でもってその後は資産買入の話ですが、こちらは今回特にペースを弄るとかそういう事は無くて、

『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(今回)
『In addition, the Committee will continue reducing its holdings of Treasury securities and agency debt and agency mortgage-backed securities, as described in its previously announced plans.』(前回)

となっていましたし、インプリメンテーションノートに記載されているディレクティブに関しても前回からの変更は特になかったと思います・

『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(今回)
『The Committee is strongly committed to returning inflation to its 2 percent objective.』(前回)

最後のキメ文句も同じ。


・第4パラグラフ:こちらは全文一致

4パラは全文一致です。フォワードコミットメントとかしない状態だとここはまあ基本的に毒にも薬にもならない話しか掲載されませんわな。

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(今回)

『In assessing the appropriate stance of monetary policy, the Committee will continue to monitor the implications of incoming information for the economic outlook. The Committee would be prepared to adjust the stance of monetary policy as appropriate if risks emerge that could impede the attainment of the Committee's goals. The Committee's assessments will take into account a wide range of information, including readings on labor market conditions, inflation pressures and inflation expectations, and financial and international developments.』(前回)

全文一致全文一致(4パラにきて力が尽きているので手抜きをしている訳ではありません(棒読み))


・第5パラグラフ:1月なので投票権を持つ地区連銀の入れ替えが行われます

前回と同じく全員一致です。

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Thomas I. Barkin; Michael S. Barr; Raphael W. Bostic; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Mary C. Daly; Philip N. Jefferson; Adriana D. Kugler; Loretta J. Mester; and Christopher J. Waller.』(今回)

『Voting for the monetary policy action were Jerome H. Powell, Chair; John C. Williams, Vice Chair; Michael S. Barr; Michelle W. Bowman; Lisa D. Cook; Austan D. Goolsbee; Patrick Harker; Philip N. Jefferson; Neel Kashkari; Adriana D. Kugler; Lorie K. Logan; and Christopher J. Waller.』(前回)

今年はバーキン(リッチモンド)、ボスティック(アトランタ)、デーリー(サンフランシスコ)、メスター(クリーブランド)が投票権ということで。


・ディレクティブには変更ありません(一々比較しませんけど)

https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20240131a1.htm
Implementation Note issued January 31, 2024
Decisions Regarding Monetary Policy Implementation

こちらは前回と特段変更はないです、政策金利変更なしで資産買入に関しても前回踏襲だから当たり前ですが。

なお前回はこちら。
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20231213a1.htm

という所で時間も無いので以下は昨晩夜なべして書いた日銀1月主な意見をご笑覧下さいませ。


〇FOMCもありましたが地ならしキタコレの主な意見も重要なので・・・・・

ということで参ります。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2024/opi240123.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2024 年 1 月 22、23 日開催分)

・どう見ても地均し第2弾(または第3弾)です本当にありがとうございました

まあ昨日はこれ見て横綱が一時146円割れってたりしましたので同じご感想だったとは思いますが、普通にどう見てもマイナス解除に向けた地均しです本当にありがとうございました。ということですし、これはなんか懐かしの福井俊彦時代の地均しを思い出す流れですが、俊ちゃんのころのログはちゃんと整理しているので(すいませんすっかりさぼっておりまして)まあ自分でも見直さないと、と思う今日この頃。

MPMの展望レポート+総裁会見あーんど本件と来ていますし、何なら12月会合議事要旨だってあれなんであの議事要旨であのハトハトジジイだったんだ、って話になるのですから、それも含めれば地均し第三弾とも言えますわな。まあ12月の場合は氷見野副総裁の金懇はありましたけど、結局のところ植田さんの国会答弁、という言ってみればあんまり台本通りでもなささそうな「年末はチャレンジング」が大いなる火炎放射になったのですが、今回は展望レポート基本的見解、想定問答がばっちり用意されている総裁会見ということで、事前にちゃんと段取りが組めるものだし、政策委員会の総意として出しているもので行われているので、12月よりも地均しを行っている物の格が違うわけですよ格が。

・・・・とまあそういうわけですので、逆にこれだけの「本命物件」を使って地均し煽っておいて3月4月に知りませんでしたでは済まされない(そもそも12月のせいで日銀のコミュニケーションは信用できないとなっているのにこれ以上信認落としたらアカンヤロ)というものでありますからして、こんなのどう見たって3月か4月(別に3月だって普通にあるし何なら俊ちゃんの量的緩和解除だって3月だったんですよね)って話じゃろ、とは思うのですが、これはまああくまでも個人の感想ですだし、そもそもこの人たち12月のような梯子外しが起きるリスクはあるのですけど、まあさすがにねえ、とは思うのでした(しつこいけど個人の感想ですからね!!!)

ということで内容にまいりますが。


はっきり言ってもはやこの人たちの政策判断は「確度」という「お気持ち」問題なので最初に政策のところを見る、という逆順読みをしましょうず。(実はその後「物価」を読むときには力尽きているんですサーセンwww)

『U.金融政策運営に関する意見』からまいります。

・慎重派のようにも見えるがマイナス金利解除の暁には政策の枠組みが見直されるという話

最初から結構キタコレなんですよね今回は。

『・現時点では、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には、なお至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。この先、賃金と物価の好循環を確認し、目標の実現が見通せる状況に至れば、マイナス金利を含む大規模金融緩和策の継続の是非を検討していくことになると考えている。』

これ、前半では慎重に見えますけど、そもそもが「この先、賃金と物価の好循環を確認し、目標の実現が見通せる状況に至れば、」という前提が「目標達成したら」じゃなくて「実現が見通せる状況」でして、すでにMPM後の総裁会見において、今の展望レポートの見通し、2024年度2025年度のコアコア+1.9%は事実上2%達成なのだが、そうはいってもこの見通しの確度が高くないから様子見地蔵ですよ、っていう話をしているわけでして、問題は「確度」という「お気持ち」なのでまあそもそもハードルが高いわけでもない、というのがある上に、なんてったってこのご意見、しらっと「マイナス金利を含む大規模金融緩和策の継続の是非を検討していくことになると考えている。」とありますわな。

この部分、そういや12月議事要旨にもありましたけど、これは「目標の実現を見通せる状況ならば」「大規模な金融緩和策の継続の是非を検討」なのですから、マイナス金利政策解除の時点で現状のQQE+YCCの枠組みそのものを見直していく、という話をしているわけですよ。

まあそうはいっても30日に出たオペ紙でもお分かりのように、枠組み見直すからと言っていきなり長期国債買入の量がドカンと減る、というようなことは(やるべきじゃろ、とはあたしゃ思いますけど)例の「極端な不連続性は起きない」から勘案してそんなに買入は減らさんじゃろとは思われるので、そういう意味で日銀の長期国債市場への介入は残るんで、実態はそんなに変わらん(下手したら初回の25への利上げまで変わらんか知れんわとは覚悟はしているのですが)、よってたつ理屈が変わるというのは昨日も申し上げた通りです。


・その先にも最初と同様に「マイナス解除は枠組み全体の見直しにつながる」話がありますね

次の意見ですが、

『・2%の「物価安定の目標」を実現するためには、賃金が2%を明確に上回る状況が継続するとともに、賃金と物価の好循環が一段と強まっていくことが必要である。』

賃金上昇2%どころじゃないんですけどねえ。でまあ好循環一段と強まる、ってのは要は春闘見ればという話ですけど、そもそも論として足元で好循環してないのに「一段と強まる」ってなんのこっちゃとは思うのですが、まあこの人もしらっと足元で賃金と物価の好循環が起こっていること自体はゲロっているわけですわな。しかしこの「好循環一段と強まる」ってじゃあ何なのよという具体的な何かを出すべきとは思いますけどね。


でもって3番目の意見がこれよこれ。

『・今春の賃金改定は過去対比高めの水準で着地する蓋然性が高まっているほか、経済・物価情勢が全体として改善傾向にあることを踏まえると、マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満されつつあると考えられる。』

普通に威勢のいい話をしているのですが、さらに注目なのはこの人も最初の人と同様に「マイナス金利解除を含めた政策修正」って言っていまして、これ結局のところマイナス金利解除には今のYCC+QQEの枠組みを見直す(枠組みが見直されても長期国債の馬鹿買入は減らないというリスクはあるけど)のもセット、すなわちマイナス金利政策だけの選考解除ってアプローチは採らんという話ですな。


・どう見てもやる気満々です本当にありがとうございました

4番目。5番目の意見に行きますよ。

『 ・2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現の確からしさについて、具体的な経済指標を確認することで見極めていく段階に入ったと考えられる。』

ちょwwwwwおまwwwwwwテラ予告ホームランwwwwwww

『・ 能登半島地震の影響を今後1〜2か月程度フォローし、マクロ経済への影響を確認できれば、金融正常化が可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い。』

1〜2か月って2月はMPMなくて3月のMPMは3月後半になるんですからこんなのどう見たって3月にはもう思いっきり可能性ありまっせとぶっこんでいるようなもんですがな。


・慎重派ですらこれである

6番目の意見ですけど、

『・2%の「物価安定の目標」の実現が十分な確度をもって見通せる状況ではないものの、物価安定目標の達成が現実味を帯びてもきているため、出口についての議論を本格化させていくことが必要である。』

誰か知らんけどまあこれは慎重なリフレ系の方(とくれば野口さんが一番アリエール)のような気がしますけど、慎重な物言いをしていても「議論を本格化」ですよこれはもうキタコレですわ。


・不連続云々ですがこれ誰なんでしょうかねえ

7番目の意見は総裁会見のバズワードになった「不連続」が含まれているという時点で「おー」という意見になるのですけれども、

『・ 政策変更のタイミングがどうなるにせよ、その前後で市場に不連続な動きを生じさせないよう、コミュニケーション、オペレーションの両面で工夫する必要がある。こうした観点からも、現段階から、マイナス金利やイールドカーブ・コントロールの枠組みの解除についての基本的な考え方を、各時点で可能な範囲で少しずつ、対外説明していくことは、有益である。』

まあこのお方の場合は植田さんが会見で言ってた「政策運営の不連続性」ではなくて、あくまでも市場のムーブが不連続にならないように。という話になっているので、その点ではちょっと違うんですけど、ただしこの植田さんの使ってた「不連続」を使ったのには興味があります。

でまあこの人に至っては地均しどころかマイナス解除時の政策説明の話までしておりまして、いやお前ら12月の主な意見は何だったのかという話で、軸がもともと早期解除である氷見野さん、田村さん以外の皆様におかれましては、どんだけぶれてるというかもはや情緒不安定状態なのかと小一時間経過観察をしたくなるレベルのアレっぷりに爆笑の発作を禁じ得ない。


・マイナス金利解除してもガシガシ利上げとかバカスカ輪番削減ではないというのは理解した(つもりです)

8番目の意見ですが。

『・現時点での経済・物価見通しを前提とすると、先行きマイナス金利の解除等を実施したとしても、緩和的な金融環境は維持される可能性が高い。』

要は物価がバカスカ上がるとか、3%近辺で碌すっぽサガランチ会長とかだったら別ですけど、大本営の今の見通し的にはインフレはスパークしないし賃金と物価も悪循環スパイラルはしないって言ってるんだだから、そらまあそうなるよね、というご意見ではあります。

9番目の意見も8番目と似たような指摘でして、

『・出口以降の金利パスについてあらかじめ見極めることは難しく、その時々の経済・物価・金融情勢に応じて考えていかざるを得ない。』

まあそりゃそうですよね。


・副作用対応は今回あまりその話を公式は触れていなかったのですが・・・・・・

10番目の意見は「おや??」と思いました。

『・ どのような順番で政策変更を進めていくかはその時の経済・物価・金融情勢次第だが、副作用の大きいものから修正していくのが基本である。』

まあワイも仰せご尤もとは思いますが、たぶん今度マイナス金利解除するときって、総裁会見でもここでも書かれているように、「2%物価安定目標達成が確度をもって見通せるとき」になる(すなわちほぼ大勝利宣言に近い、なお本当の大勝利宣言は物価目標達成宣言ですけどね)わけでして、YCC長期金利上限の柔軟化とは違って「副作用対応」は表に出てこないので、実際にはこの順番であっても、表向きそういう言い方にはならないんじゃないかな、とは思います。

あとですね、この理屈を持ち出すと輪番削減とプラス圏内への利上げ(0.25%、0.50%って短期政策金利を持っていく)を比較すると輪番削減のほうが先に来てしまうことになるんですけど、将来の政策糊代のことを考えた場合、なにせ欧米に政策金利の引き下げ余地がどどーんとある中であれば、日銀もちゃっちゃと短期金利引き下げの糊代を作りたくなる、と思うんですけど(まあここは完全にアタクシの感想ですの世界ですので為念ということでヨロです)、この理屈だとマイナス解除後の利上げが遅れそうな悪寒がせんでもなかったりします。

ま、この辺はムツカシアルネというか決め打ちできるようなもんでもないし、そんなことよりもまずは四の五の言わずにマイナス金利解除しろという話で、マイナス解除すれば道は開かれん、の世界だと思っているワイがいる。


・マイナス解除するんだったらオーバーシュート型コミットメントはそもそも論として要らんだろ

11番目の意見ですけどね。

『・従来のきわめて強い金融緩和からの調整を検討していく重要な局面である。その際、イールドカーブ・コントロールやマイナス金利政策の在り方を議論するほか、オーバーシュート型コミットメントの検討も必要である。』

とのことなんですが、そもそも論として、オーバーシュート型コミットメントは「アクチュアルの物価2%が安定的に継続したら用済廃棄」という建付けなので、本来であればとっくの昔にコミットメントそのものが消えてなくなっていないとおかしい話で、そこをクソ粘りするために「確度」とかそういうのをひねり出している面もあるわけで、少なくとも今回の主な意見まで含めた大勢見解であれば、マイナス解除は「物価安定目標達成を十分な確度をもって見落とせる」時なのですから、それはどこからどう見てもオーバーシュート型コミットメントの前提条件をクリアした状態になりますわな。


・リスク性資産といえばほかにあるんですよね〜

12番目の意見はETFとJ-REITの買入に関してですが、

『・ETFとJ−REITの買入れについては、大規模緩和の一環として実施してきたものであり、2%目標の持続的・安定的な実現が見通せるようになれば、買入れをやめるのが自然である。2021 年3月の買入れ方針の転換以降、買入れ額は非常に小さくなっており、買入れをやめても市況等への影響は大きくないと考えられる。』

何ならアメリカン株式市場が強いうちだったら売っても平気なんじゃないか(ただしETFだけね)くらいの勢いですな。ところでリスク性資産といえば他にもありますがその話はなかったのかな??????


・稼ぐ力おじさんはやっぱり慎重ですねえ

13番目の意見(ってとっくの昔に政策委員の頭数を超えているのがチャーミング)ですけどね、

『・賃金上昇を伴う物価上昇を持続的なものにするには、コア事業強化による企業の稼ぐ力の向上と顧客満足度の向上のための人材価値を高める経営が必要で あ り 、 それらの進捗に注目したデータに基づいた判断が重要である。』

稼ぐ力おじさんといえば中村審議委員なわけですが、あの中村審議委員ですら「進捗に注目したデータに基づいた判断」と言ってるわけでして、時期尚早と切って捨てるだけではないんですよね。まあこれだとそもそものハードルが高いからマイナス解除の時は反対しそうには見えますけど、なんせほかの人たちが情緒不安定かというような勢いで政策見直し上等と言っているので、ゆうて8対1になるっしょという感じですなはーこりゃこりゃ。


・物価目標達成と直リンしてマイナス解除とかを考えるのは危険ですよねという論点

14番目の意見ですがこの視点は重要。

『・経済・物価情勢に応じて、金融正常化の道のりをゆっくりと進めていくためには、金融正常化の第一歩であるマイナス金利の解除に、適切なタイミングで踏み切る必要がある。判断が遅れた場合、2%目標の実現を損なうリスクや急激な金融引き締めが必要となるリスクがある。』

これ田村さんっぽいですね。いやまさに仰せの通りなわけで、あんまり引っ張りまくってそれこそ2%達成宣言と同時に解除だったら、それは物価が2%なんですからトレンドグロースが実質ゼロ成長であったとしたって、ごくごく単純に中立の名目政策金利は2%を下回りはせんじゃろという話になってしまうので、それこそマイナス解除の判断を後に引っ張れば引っ張るほど、解除後にガシガシ利上げしなきゃいけなくなる(のでもっと早くにマイナス解除しろやヴォケというのはあるけどそれはさておき)というお話で当たり前だがきわめて重要。


・これはご尤もですが故事成語おじさんは誰なんでしょうか

15番目の意見になりますが、

『・海外の金融政策転換で政策の自由度が低下することもあり得る。現在は千載一遇の状況にあり、現行の政策を継続した場合、海外を中心とする次の回復局面まで副作用が継続する点も考慮に入れた政策判断が必要である。』

いやまあ千載一遇くらいだったら故事成語とは言わんという説はありますが(汗)、なんかエモいですねこういう言い方をされますと。(というか朝になって冷静に読むとただの四字熟語だろ思いましたが、夜死にそうになって書くとこんな戯言を書くというサンプルで残しておきますわ笑)

というのはともかくとして、締めもこのように早期マイナス解除を促す話をしていまして、まあこりゃカジュアルに3月か4月ジャネーノって感じに思えてしまいますし、何なら3月でも何らおかしくはないんでネーノとも思いましたが、そこはアタクシが思っているだけでただの痴人の夢だったらゴメンチャイでありまする。

ということで本来は物価も、というところですが15個の意見をこまごまネタにしてたら力尽きそうになったので、あとは今朝(書いてるのは昨日の夜です)のFOMCに集中集中ということでご勘弁いただけると幸いです。