雨宮正佳副総裁

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雨宮さんの略歴(日銀Webより)

昭和54年3月 東京大学経済学部卒業
昭和54年4月 日本銀行入行
平成10年4月 企画室企画第2課長
平成10年7月 金融市場局金融市場課長
平成11年5月 企画室企画第1課長
平成13年4月 企画室参事役
平成14年6月 考査局参事役
平成16年7月 政策委員会室審議役(組織運営調整)
平成18年4月 企画局長
平成22年6月 日本銀行理事
平成24年5月 日本銀行理事 大阪支店長嘱託
平成25年3月 日本銀行理事 大阪支店長嘱託を解く
平成26年6月 日本銀行理事(再任)

(前職:日本銀行理事)

詳しくはこちら→https://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/dg_amamiya.htm/

2021/12/10「徳島金懇会見の質問はコロナオペばかりでしたがCP 社債買入分離でコロナ措置終了の可能性は無くはなさそう」
2021/12/09「徳島金懇挨拶では雨宮さんらしき覇気が今回もありませんでした」

2021/12/10

〇雨宮副総裁記者会見ですが

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211209a.pdf
―― 2021年12月8日(水)
午後2時30分から約25分
(徳島市・東京間オンライン開催)


・しっかしこの会見質疑盛り上がらないことおびただしい

普段は冒頭挨拶部分に相当する最初の質疑はスルーするんですが、なんと今回の雨宮さんの金懇会見、7ページあるのですが、冒頭挨拶と最初の「ご当地経済質疑」でまるまる3ページ使ってしまってそれ以外の質疑が4ページしかない、という事で、現時点で日銀の政策について何か聞いて意味のある打ち返しが期待できるのが雨宮さんしか居ない(鈴木さんは良い話をしてくれるんですが如何せん他のヒラ審議委員(とあと一人の副総裁)がボンクラ揃いのため幾ら良い事を言っても遠吠えにしかなっていないのが惜しい所)のですから、もうちょっと質疑があって然るべき、とは思うのですよね。

しかしながら、まあ会見の方もこの調子というのは、まるで覇気のなさそうな金懇挨拶で今回再確認できましたように、足元の日銀様からは「とにかく大過泣く過ごして色々な問題を先送りしておこう」という感じで、余計な波風立てずにというムーブになっている、というのがそこはかとなく伝わって参りますので(個人の感想です)、まあそういうこっちゃぞ、って所になるんでしょうかね。

ま、大過なく過ごしたからと言ってその先に何か良い事があるかと言いますと別に何もない訳なのですが、元々マイナス金利ぶっこむ前の「補完的措置」が最初の問題先送りの術で、その時に政策の限界とか散々言われたら逆切れしてマイナス金利政策を導入したら、単なる量的緩和よりも政策の寿命が短くなり、その後は延命に次ぐ延命を各種の屁理屈を繰り出しながら粘っているだけの話しなんですが、この問題先送り力には感心せざるを得ませんなwwwwwww

と、話が毎度のように脱線転覆しておりますが、雨宮さんの会見で日銀の紙に残る質疑応答、というMPM以外の唯一の政策インプリケーション引き出してくる場ともいえる場でこの盛り上がらない質疑応答、という時点で、まあ質問する記者さんんの方でも日銀の方から何か主体的、能動的に何かやっていこうというテーマもなければパッションもない、という状況になっているんだなー、とは思いました、

まあそれはそれとして今回の会見要旨、最初の所でおおおお!!と思いました。



・何と対面で金懇やったのか!

という事でありまして、会見要旨の冒頭には「オンライン開催」とあるからそうですねーまたテレビ会議でございますよねーとか思っていたら・・・・・・・・

『(問) 本日の金融経済懇談会に出席されて、出席者からどのような意見や要望が出されたかという点と、懇談会で聞かれた意見を踏まえて、徳島経済の現状に対する認識と先行きの展望についてどのようにお考えかという点を教えて頂ければと思います。』

『(答) 私ども日本銀行が各地域で行っている懇談会ですが、コロナ禍の影響で、オンライン形式での開催を長い間余儀なくされてまいりましたが、今回徳島県には直接訪問することがかないまして、私にとっても大変久しぶりにこういう形で、対面形式で開催させて頂くことができました。やはり直接顔を合わせてお話しをさせて頂くと、地方経済の雰囲気や温度感がはっきりと感じられ、改めて、その有り難みを実感したところです。』

おおおお!!!!雨宮さん出張したのか!!!!!それは何よりでございました。折角徳島でやってるのに何か会見を東京とオンライン開催するのも何か妙ですけれども(一部がオンラインだったんでしょうけれどもそれならそう書いてもらった方が有難いんですけどねえ)。


・引用ついでに冒頭の雨宮さんの発言から雨宮さん安定の芸の細かさを確認

冒頭の雨宮さんのああだこうだという本日のご感想の話の先の方に参ります。(あまりにもネタがないので^^)

『ただ、先行きについては、各種部材の供給制約あるいは物流の混乱、更に原材料価格上昇による生産活動や企業収益への影響に対する警戒を強めておられるということのほか、やはりなんといっても、新型コロナウイルス感染症の動向や、今現在では、変異株の影響についても大変不透明感が強く、見通しが立てにくい状況にあるという認識が多く示されたように思います。』

ほうほう。

『こうした経済情勢に関する認識については、私どもの支店や事務所の認識と軌を一にするものかと思いました。』

金懇挨拶の時って「もっとも、私ども日本銀行の中心的なシナリオとしては、来年にかけて、わが国の景気の回復傾向が次第に明確になってくると予想しています。そのように考える理由は、3点あります。」って威勢のいいこと言ってたじゃん、と思って良く読み直してみると「こうした経済情勢に関する認識については、私どもの”支店や事務所の”認識と軌を一にするものかと思いました。」であって「私どもの」(=日銀公式)と言ってないのが雨宮さんさすがの芸の細かさ、と妙な事に感心してしまいました。


・何ちゅうかこの調子では物価安定目標の達成には無理があるわなと思った部分

更に雨宮さんの冒頭発言を引用します。

『また、多くの方がおっしゃったのは、原材料価格が上昇する中で、賃金を引き上げていくためにも、販売価格を引き上げる必要があるので、そうした企業の生産、収益、賃金、物価の好循環をもたらせるように、2%の物価上昇を目指した政策を継続してほしいとの声も聞かれたところです。』

うーんこのという感じでして、そもそも好循環をもたらすべき主体って企業なんですが、その企業の方々の言ってる感じが雨宮さんが説明するような感じですと、なんか突発性いかりや長介になってコリャダメダと言いたくなる感じのアレでございまして、前向きの循環メカニズムを企業サイドが主体的に回して行こうという気が無くて、天から2%物価安定目標の結果が降って来るとワシらも賃金上げれるんですが・・・・・みたいな感じでお話をされている、という企業マインドに悲しさを感じましたです、ナムナム。


・「デジタル化」と「DX」って若干話が違う気がするんだが

同じく雨宮さんの冒頭発言、今引用した前にこういうのがあって、

『ただこうした大変厳しい情勢の中でも、行政や金融界、経済界におかれては、様々な形での支援策を講じておられ、現在の状況という点について申せば、地元企業への資金繰り支援や、雇用維持の取り組みが進められていますし、中長期的な課題として、これは大変色々と示唆に富むご意見を頂いたのですが、DXの推進やSDGsを意識した対応といったことを強化しているとのお話を伺いました。』

てなのがあって、SDGsの話とかもあったのですがそっちはまあ良いとしましてDXの話が冒頭発言の後の方で出て来ましてですね、

『やや長い目で、展望ということで、本日伺った意見や、私どもの事務所・支店の調査も踏まえて申し上げますと、徳島県経済が持続的な発展を図るためには、人口減少あるいは少子高齢化といった構造的な問題に加えて、デジタル化という、これは以前からの課題ですが、感染症の拡大により更に浮き彫りになった課題に対処していきながら、地域の魅力や活力を向上させていくということが重要となると思います。』

ほうほう。

『この点、当地においては、様々な取り組みがなされていて、国内屈指のブロードバンド環境が早くから整備され幅広く活用されていますし、環境負荷の少ない街づくりですとか、LEDを中心とした産業振興の取り組みが継続的に行われています。』

うーむ。

DXってデジタルトランスフォーメーション(いまだに何でXなのかがワカランチ会長のアタクシだが慣れというのは恐ろしいもので最近は違和感なく使っておるな)ってことで、ビジネスのあり方とかそっちの方まで踏み込んだお話だと思うのですが、(まあ我々も人の事はあんまり言えないという説がオオアリクイなのですが)どうも省力化投資や人員確保難対策のデジタル投資と話がごっちゃになっているような希ガス。いやまあそこは定義の問題ちゃあ定義の問題ではあるんですが、日銀最近はDXをバズワードによく使うようになったので(もうちょっと前は「デジタル化の進展」みたいな言い方してた)そこは切り分けておかないと、なんか話がフワフワとしてしまうように思えます。


・コロナオペ関連の質疑で最初は決定時期だがどう見ても1月じゃろ

という訳でその次にもご当地質疑が続いた後、会見要旨3ページ目の最終行になって政策関連の質疑が登場する。

『(問) コロナ対応の資金繰り支援策の延長の是非について伺います。コロナの感染状況は、オミクロン株を含めて不透明感が引き続き強い一方で、支援策の延長の是非の決定が遅くなると金融機関の実務面の負担が大きいといった指摘もございます。今後、金融政策決定会合は、12 月、来年 1 月、3 月とありますけれども、延長の是非について決定するのはいつ頃が望ましいのか、特定の月日をお答えするのは難しいということは承知のうえですが、この支援策の趣旨ですとか、資金繰りの状況を踏まえて、副総裁は大枠でどのようにお考えを整理していらっしゃるのか、お聞かせください。』

雨宮さんのお答え。

『(答) ご指摘の「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム(特別プログラム)」につきましては、基本的な考え方としては、こうした緊急措置あるいは臨時措置については、制度を始めるときも終了するときも、あるいは場合によっては再開するときも、情勢次第で臨機応変に対応するということが大事だと思います。』

謝ると死ぬ病に罹患していて一旦始めた政策をダラダラと続けている割にはエライ威勢の良いお話でよろしゅおすなあ(はんなり)。

『従って、そこのポイントは情勢次第という、情勢の判断が大事になってくるわけです。』

ほうほう。

『今はご指摘の通り、色々不確実性が非常に高い時期ではありますが、そうはいっても、制度の予見可能性や安定運営という観点からは、3 月末に終了する措置について、ぎりぎりまで判断を先送りすることは適当ではないでしょうから、12 月か 1 月には判断をするということが基本になるかと思っています。』

12月の時点で「続けません」という結果を出すとは思えず、もし12月に出すならば「継続します」しか出てこないと思いますし、12月に特に判断が無い場合は、1月となりますが、だからと言って1月の時点でもやっぱり継続となる可能性は多分にある(というかダラダラと継続するのが黒田日銀クオリティと諦観しているから)ので、12月に何も出ないからと言って赤飯焚いてお祝いするのは時期尚早でしょうなw


・CP社債買入だけ分離(と言っても所詮はコロナ対応でマシマシにしたぶんだけでしょうけど)は引き続きワンチャン期待

『(問) 先ほどの日銀のコロナ対応策の延長の是非についてですけれども、今日の午前中の講演の中で、コロナ対策について、資金繰りの支援と、主に大企業のCP・社債の部分での支援策の二つで成り立っていて、特に大企業の方については、CP・社債の発行環境はきわめて良好であるというご認識を示されていたと思います。』

イイヨイイヨー。

『今、おっしゃったように臨機応変に対応することが重要ということとなると、二つの主な構成要素のうち、大企業については資金調達環境が良好になっているので、必ずしも二つまとめてどうこうということではなく、それぞれ個別に色々と判断していく可能性はあるのか、今日のご講演の中でもそういった可能性が示されているのかどうか、という点についてお伺いします。』

さっきの答弁を踏まえて、という聞き方が大変に良い質問であります。

『(答) 全体として、「特別プログラム」の来年の 4 月以降の扱いについては、今ご指摘のあった点も含めて、まだ取り扱いを決めているわけではありませんので、基本的には 12 月短観なども含めて──別にそれだけではないですが、それも含めて──、今後の企業金融あるいは金融仲介機能全般の動向を丁寧に点検したうえで、適切に判断していきたいと思っています。』

講演の方でも12月短観ってありましたし、まあそれ踏まえて判断するのに短観直後のMPMでは早すぎるから、これは12月には判断を何も出さず、質問されたら今出ているデータやこれからのデータなども踏まえまして対応を検討する、という説明をするための布石を打っている、と見ました。

『本日の講演では、一種の特徴点をいくつか切り出してご説明しましたが、全体として金融環境をみると、大企業については、今ご指摘のあった通り、CP・社債市場は良好な環境ですし、貸出市場をみても、むしろ借入れは大企業については返済モードになっています。一方、中小企業については、総じてみれば改善していますが、対面型サービス業などに一部には厳しさが残っているということです。個人に目を転じると、個人事業主については中小と同様一部に厳しさは残っていますが、住宅ローン市場は安定しています。こうした金融環境全体を更に点検しながら、政策のあり方については検討していきたいと思っています。』

まあこう説明しているので、分離してCP社債の買入マシマシ分だけ元に戻す可能性に期待しながら年越しを迎えたい(12月MPMで何も出ないと思いっきり決め打ちするアタクシ)。


・買入のし過ぎで市場機能を損ねているようにしか思えんのだが・・・・・・・・・

次も(というかこの会見の政策関連質疑パート、1つだけオミクロンの影響の質問があるのだがあとは全部コロナオペ関連の質疑という盛り上がらない事夥しい会見だった訳ですが)コロナオペの質疑なのですが、

『(問) コロナ対応は、昨年来、財政と金融の協調で民間部門の資金繰りを支援し、効果を発揮してきました。岸田政権のもとで打ち出された経済対策では、企業の資金繰り支援策の延長が盛り込まれましたけれども、日銀としては、金融緩和の継続で経済を下支えしていくということがコロナ対応として重要なのでしょうか。コロナ特別プログラムが来年 4 月以降も引き続き重要な役割を果たしていくとお考えでしょうか。この点についてお聞かせください。』

雨宮さんの答え。

『(答) 政策としては両方とも重要だと思います。大きく言いますと、金融緩和については、私どもはコロナ対応だけに限定せずに、まず基本的な日本経済の改善、具体的には、2%の「物価安定の目標」ということですが、そうした物価上昇や賃金の上昇、企業活動の改善がうまく好循環になるような経済を目指して金融緩和を行っているという部分があり、この金融緩和の継続で、経済を下支えするという政策は、コロナ禍でも効果があると思います。』

物価目標全然達成してないんですが・・・・・・・・・・

『それと並び、コロナ禍での緊急対応として私どもがよく申し上げているのは、企業金融の支援措置、円貨・外貨の大量の資金供給、そして、ETF・J―REITのオペレーションで、それぞれ金融仲介機能や市場の安定を維持するという政策を行っていますので、それぞれが重要な役割を果たしていると思っています。』

どう見てもCP社債市場の価格発見機能いやもう知らんわ。


・コロナオペとマネタリーベースなのだが80兆円落ちても「一時的な増減」で済むとは何事ぞ、の件

本件は前々から指摘されている件ですが、さて雨宮さん今回はどう答える?という質疑がございまして、

『(問) 引き続きコロナ対応で恐縮ですが、コロナオペは現在残高が 80 兆円程度に膨らんでおりまして、いずれかの段階で終了した場合、期日の到来とともに、マネタリーベースの大きな減少も予想されます。マネタリーベースの拡大方針を継続するとしているオーバーシュート型コミットメントとの関係を含めて、コロナオペの残高減少が日銀の金融緩和姿勢と効果に与える影響、そしてオペ終了を議論するにあたって、こうした残高減少というのは、今後、政策対応について考慮すべき事柄なのかどうか、この点についてご見解をお願いします。』

なお、この質問をしている記者さんもそうでしょうけれども、まあこうやって80兆円落ちたらどうなるんだと申しあげているアタクシも恐らく共通しているのは「MBに大した効果が無いんでしょ」と言わせたいという所だったりするんでしょうけどね!!!!!!!!!!!!!!!!

『(答) まず、ご指摘の通り、コロナオペは大きな残高になっていますので、どこかでこれを収めるとすれば、マネタリーベースは減少する可能性はあると思います。ただし、オーバーシュート型コミットメントは、ベースマネーの残高がトレンドとして伸びていくことを想定しています。そうした考え方に基づくコミットメントとの関係がどうなるかということは議論にはなると思いますし、色々な議論が出るかもしれませんが、基本的にはこのオーバーシュート型コミットメントは、今、私どもが行っている金融緩和政策の大きな柱の一つですから、そのもとで考えていくということになろうかと思います。』

何じゃこの蒟蒻問答という感じでして、ちょっとニュアンスとして違うのは「トレンドとして増やすというオペレーションをしている(国債買入などで)ので無問題ですキリリッ」っていう言い方を直接的にしていない事でして、何を言ってるんだかよくわからんヌエのような発言をしているのは若干引っ掛からないでも無いのですが、置物残滓がいる間にMBの話を全部引き上げてしまう、というのはたぶんできないと思うんですよねー。いやまあオーバーシュート型コミットメントをしらっと外したら感心する(一方で置物残滓に呆れる)という流れになりますが・・・・・・・・・・・・・・・


#今朝はこの辺りでご勘弁賜りたく



2021/12/09

〇雨宮副総裁の金懇ですが今回も「雨宮さんが主張したいことが見えてこない」という悲しくも無覇気講演の模様です

今回の金懇は徳島。(HTML版は後日)
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211208a.htm/
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211208a1.pdf
【挨拶】
最近の金融経済情勢と金融政策運営
徳島県金融経済懇談会における挨拶
日本銀行副総裁 雨宮 正佳
2021年12月8日

・うーんこの覇気無し講演

何かこの前もそういう話をした気がするんですが、今回の雨宮さんの金懇挨拶も「サラサラと流してみました」という感じでして、従来雨宮さんの講演って、その内容の是非はさて置いても大体「今回はこの点について伝えよう」という意思というか覇気というか、そういうパッションが見られたんですけど(個人の感想です)なんかもう今回の金懇挨拶、とにかくサラサラと流して事勿れって印象しか受けなくて、最近の日銀っぽくてまあそういう事やぞ、という風に思いました(個人の感想です9.

・・・・・・・と書くとそこで話が終わってしまうのですが(おい)。そうも言ってられないのでしょうがないから本文をちょっとだけ鑑賞。


・まあ日銀公式の説明だからこうなるのは分かるのだが金融と財政のポリシーミックスの説明が雑なんじゃないでしょうか

『2.経済情勢』の『(中心的なシナリオ)』の途中から。

『もっとも、私ども日本銀行の中心的なシナリオとしては、来年にかけて、わが国の景気の回復傾向が次第に明確になってくると予想しています。そのように考える理由は、3点あります。』

『第1に、供給制約の影響は一時的であり、そのもとで企業部門の前向きな循環は維持されると予想されることです(図表2)。輸出や生産は、このところ弱い動きとなっていますが、これは、あくまでも、部品不足という供給サイドの問題に起因しています。』

そうなの?

『海外経済は、先進国を中心に力強い回復を続けており、企業が直面している需要自体は、デジタル関連を中心に堅調です。このため、部品の供給が再開されれば、輸出や生産は、再びしっかりと増加していくと考えるのが自然です。実際、今回のサプライチェーン障害の直接の原因となっていた東南アジアの感染状況は改善傾向にあり、現地の工場では生産再開の動きが進んでいます。』

サプライチェーンの復旧が進んでいるのは分かるが、再開されたら輸出や生産が再び確り増加していくのは需要が維持されないとそうならん気が。

『今後は、需要を満たすための挽回生産に加えて、大きく取り崩された在庫の復元に向けた動きも、先行きの生産活動を押し上げていくことが期待されます。こうしたもとで、既に感染拡大前の水準を回復している企業収益は、先行き一段と増加していくことが見込まれます。』

ほうほうそうですかそうですか。

『また、企業の設備投資も、デジタル化や脱炭素化に向けた取り組みもあって、積極化していくと考えられます。』

脱炭素下で設備投資積極化でヒャッハーって説明はあんまり使わない方が良いんじゃないかと思うんですが。脱炭素のためにトランジションが起こる中ではこれまで行われた設備投資が行われなくなる部分だってある訳で、片面だけ捉えて話をするのはちょっと。


『第2は、個人消費が、長らく続いてきた厳しい局面を脱し、ようやく持ち直しつつあることです(図表3)。ワクチン接種率が米欧を超える水準まで上昇し、感染者数も減少する中、10 月からは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった公衆衛生上の措置が解除されています。こうしたもとで、景気ウォッチャー調査や携帯電話の位置情報など、速報性に優れたデータによれば、個人消費は、飲食や宿泊などの対面型サービスも含め、10 月以降、回復に向かっています。』

で?

『この間、雇用者所得は、正規雇用の増加や人手不足感の強い業種の賃金上昇を反映して、増加に転じています。』

ワイの(ここで床に穴が開いて吸い込まれる)。

『また、感染症下で消費活動が制約された結果として、家計部門全体でみれば、かなりの額の貯蓄が蓄積しています。こうした所得や貯蓄が、これまで抑制されてきた対面型サービス等を中心に消費支出に向かっていけば、消費関連企業の売上の増加とそこで働く人々の賃金上昇をもたらし、これがさらなる消費の増加を後押ししていく、という前向きな循環に繋がっていくと期待されます。』

なんちゅう希望的観測。一方で先日鈴木審議委員は金懇で『(将来不安による個人消費の弱さ)』という小見出しをつけて色々と説明をしておりまして、どっからどうみても鈴木さんの指摘の方がメイクセンスする訳でございますが、そらまあ上級国民の皆さんから見たら前向きな循環に繋がるのかもしれませんが、例の10万円支給ですらあのテイタラクを見て「よーしパパ将来不安も無いからコロナで控えた分バンバン消費するぞー」となるとは上級じゃない国民の不肖このアタクシなどには到底思えないのですが、まあ日銀公式がこのような能天気な見通しなので雨宮さんの説明も能天気になるという訳ですな、って見通しを議決したの雨宮さんたちですけど。

というのは前置きでして、次のが何かもう雑な「ポリシーミックス」過ぎてどう突っ込んでいいのかわからないレベルのノーガード。

『第3は、先月に策定された政府の経済対策の効果です。具体的にどの程度経済を押し上げるかについては、今後、補正予算の内容なども見極めながら精査していくことになりますが、金融政策と財政政策の相乗効果、いわゆる「ポリシーミックス」の観点から、次のようなことが言えます。』

『すなわち、日本銀行は、現在、長短金利の水準が低位で安定的に推移するよう、強力な金融緩和政策を推進しています。こうした状況において、政府が財政支出を拡大しても、基本的に金利の上昇は抑制されますので、景気の刺激効果は大きくなります。今回の経済対策についても、このような効果が働いて、景気を下支えすることが期待されます。』

・・・・・・・・・・・・・・・・いやちょっと待て何ですかその説明?????????????


・パーツパーツは正しいのだが整合性がアレというのが日銀公式にも垣間見れますよね(物価見通しの部分から)

でまあ話の方はこんな感じで何か覇気が無く流しているだけの講演なのですが、ここで『3.物価情勢』でジャパンの物価が上がりにくい理由の説明を見てみましょう。

『わが国の消費者物価の弱さの理由を探ってみると、そもそも、需要の回復が、個人消費を中心に、米欧よりも遅れていることのほか、わが国特有の構造的要因も作用していることが分かります。』

といういつもの説明ですけどね、

『まず、わが国の企業は、米国などと異なり、感染拡大時にも、雇用調整助成金等も活用しながら、正規雇用者を中心に労働力を企業内に維持し続けました。』

とあって、その後が

『このため、日本企業には、需要が回復しても、速やかに製品やサービスの供給を増やす余地が残っています。(以下割愛)』

なので供給制約による物価上昇圧力が欧米対比弱い、という話をしているのはいつもの話しなんですけど、よくよく考えてみますと、おっちゃんちょっと前の方で「こうした所得や貯蓄が、これまで抑制されてきた対面型サービス等を中心に消費支出に向かっていけば、消費関連企業の売上の増加とそこで働く人々の賃金上昇をもたらし、これがさらなる消費の増加を後押ししていく、という前向きな循環に繋がっていくと期待されます。」とバラ色の話をしておった訳ですが、ここでは「わが国の企業は、米国などと異なり、感染拡大時にも、雇用調整助成金等も活用しながら、正規雇用者を中心に労働力を企業内に維持し続けました。」ってある訳で、そういう状況からの売上増加が何でそうホイホイと賃金上昇に繋がって前向きな循環に繋がるのか、という辺りがどう見ても整合性取れないと思うのですが如何でございましょうかしら????


・CP社債とコロナオペ分離ワンチャンあるか???

サラサラと流されているので雨宮さんの講演なのに碌すっぽネタにしない(会見を期待します)のですが、最後に『4.企業を取り巻く金融環境と日本銀行の金融政策運営』の『(金融環境)』の途中から。

『こうした日本銀行の対応に加え、政府の資金繰り支援や金融機関の取り組みも相俟って、企業の資金調達環境は、全体として緩和的な状態が維持されています(図表9)。大企業の有力な資金調達手段であるCPや社債の市場では、短観のCP発行環境判断等にみられるように、発行環境はきわめて良好です。貸出市場では、銀行の貸出残高の増加ペースは鈍化していますが、これは、大企業を中心に感染拡大後に予備的に確保した借入金の返済が進んでいるためであり、企業の資金繰りの落ち着きを示す動きだと考えています。』

大企業の資金繰り環境は良好と。

『一方、中小企業を取り巻く金融環境にも、改善傾向が窺えますが、一部では、資金繰りに厳しさが残っています(図表 10)。とくに、感染症の影響を強く受ける対面型サービスの中小企業は、資金繰りの改善が遅れており、短観の資金繰り判断の指標は、全産業と異なり、なおマイナスとなっています。これは、資金繰りが「苦しい」と答える企業の割合が、「楽である」と答える企業の割合を、上回っていることを意味します。』

本来は一部の話なのでマクロ政策で対応するんけ?というのはあるが、まあ中小企業に関しては一部で良くないと。

『こうしたもとで、企業からみた金融機関の貸出態度は、大企業・中小企業向けともに積極的であり、民間金融機関は、本年3月末に無利子・無担保融資の新規申込みが終了した後も、貸出運営などを通じて、取引先企業の資金繰り支援を行っていると認識しています。』

金融機関の貸出態度が積極的であり金融環境を支えているとな。

『以上のように、企業を取り巻く金融環境は、対面型サービス業など一部の中小企業になお厳しさが残っていますが、全体としては改善しています。日本銀行の特別プログラムの期限は、来年3月末となっていますが、その後の対応については、12 月短観等を含め、企業金融の動向等を点検したうえで、適切に判断していきたいと考えています。』

ということで、12月短観を見るって言ってるんだから短観直後にいきなり結論とは行かないでしょうとなって、これはコロナ緊急対応に関しては1月会合をお待ちください(その次は3月になるからピンポイントでそこしか無いですね)という話だし、この説明だとCP社債買入の縮小(といってもどうせ緊急措置で拡大と期限延長をした分を戻す程度しかしないと思うけど、完全撤廃してくれたら日銀北門前か常盤橋公園で提灯行列して差し上げるわ)はワンチャンあるかもしれないな、と期待に腹(誤字ではない)を膨らませるアタクシなのでありました。

#時間もないのでこの辺で勘弁