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福井俊彦総裁

2004年上期分の見出し

2004/09/13「ちょいと個人の心情が出すぎではないかという記者会見」
2004/09/07「記者会見コメントの補足」
2004/09/06「総裁記者会見、ビハインド・ザ・カーブの具体的リスクに言及」
2004/09/03「大阪経済4団体共催懇談会における総裁挨拶を読む」
2004/08/13「定例記者会見における『金融政策の今後』」
2004/08/12「定例記者会見における2段階解除論に関る質疑(話の展開の都合上、前半部分は山口前副総裁の時事通信インタビューネタです)」
2004/07/27「しつこく福井総裁講演その3」
2004/07/26「福井総裁講演その2」
2004/07/23「講演:金融サービスの高度化―経済の将来を切り開く(7月22日)より」
2004/07/15「思わず本音の出る総裁定例記者会見(7月13日)」
2004/06/29「吊るし上げ大会あるいは喧嘩状態の記者会見」
2004/06/28「またやってしまった火付け会見(金融政策決定会合後の記者会見)」
2004/06/17「金融政策決定会合後の総裁記者会見(6月15日)」
2004/05/24「総裁記者会見の続き」
2004/05/21「情報発信蟻地獄」
2004/05/14「気が付けば出口政策論議」
2004/05/06「総裁定例記者会見(2004/04/28)を読む」
2004/04/14「総裁定例記者会見(2004/04/09)から一点だけ」
2004/04/07「通貨及び金融の調節に関する報告書(その2)」
2004/04/06「通貨及び金融の調節に関する報告書(2004/03/23衆議院財務金融委員会)」
2004/04/02「総裁の入行式挨拶に見る『機動的な日銀』」






2004/09/13

お題「総裁記者会見」

PC新機種導入はいいのですが、データ移行が全然できないので本日ははなはだ簡単に(言い訳)。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0409b.htm

○大阪の講演と金融経済月報について

先日ご紹介した大阪での講演(正確には挨拶)では景気に関して比較的強気ともとれる内容でして、木曜の金融経済月報9月分は8月に示された強気の景気認識を引き続き継続という内容になっておりました。冒頭ではその点に関して質問が。

『(問)本日の金融政策決定会合の結果について、総裁より趣旨を伺いたい。また関連して、先日、総裁は大阪で強気な景気認識を示されたわけだが、本日公表された「金融経済月報・基本的見解」を踏まえて、その認識に変わりはないのか伺いたい。 』

大阪で・・・・以降の部分に関する答えはこんな感じ。

『大阪で強気な見通しを述べたというご指摘については、特に強気、弱気というバイアスをかけて申し上げたつもりはない。ただ、日本経済の回復の基本的なメカニズムは、当面出てきている経済指標の強さ、弱さが入り乱れている中であっても、損なわれていない。そういう判断については強気だということを申し上げたわけである。』

んなら大阪の挨拶はいったい全体なんだったのよと申し上げたい所ではありますが、これを日和見と見るべきか日銀公式見解と総裁の個人的心情の乖離が生じつつあると見るのかは判断に苦しむところではあります。あたくしとしては「大阪の強気トーンは総裁の個人的心情を強く反映しており、金融経済月報が日銀の公式見解であって今回は日銀総裁という機関としての発言」という印象を持っております。

ま、確かに金融経済月報に関しても判断を後退させている訳ではないのでこちらも強気継続といえば強気継続なのですが、何せここの所毎度毎度のごとく景気判断を上方修正し続けていたので判断が前進しないというのも「ほほう」と思ってしまう訳ですな。


○景気認識に関して更なる突込み

『(問)市場では景気減速感が出てきたのではないかとの認識があり、また電子部品等で在庫調整などの動きがあって、長期金利も低下傾向にある。日銀と市場の景気認識には非常にギャップがあるような気がするが如何か。 』

『(答)先日、大阪でも同じようなご質問があって、既にお答えしたことでもあるが、市場の判断と私どもの認識とにそんなにギャップがあるとは思っていない。(中間割愛)我々は個々の指標に反応することによって皆様に判断をお示しするのではなく、まとめて、分析した結果としてご報告しているが、最終的な判断にそれほど大きな差はないであろうと思う。 』

『昨年の夏の終わり以降の、いわばポジティブ・サプライズの連続というような──つまり指標が出る度に良い方向に皆が驚くような──時期は過ぎて、次第に経済が巡航速度に向かって収斂していく過程になると、刻々と出てくる指標は、引き続き良い方向で驚くものと、意外に期待を裏切るというようなものが入り乱れて、綾なすように出てくる局面に変わってきていることは事実である。(以下略)』

ということで「景気は巡航速度に向かう段階」だということになっているようです。しかしIT関連の在庫調整問題の質問に関する答えの部分はやや日和見の香りが。

『今、ご質問の中にあった電気機械、IT関連で一種の在庫調整の動きが始まっている点については、景気のサイクルをある意味で決定づける重要な動きだと我々も認識している。ITのサイクルがどのように変わるか、転換点がいつか、もしサイクルに変調をきたしたらどれくらいのマグニチュードで、どれくらいの期間それが続くのかというようなことは、非常に大事な課題である。』

という事で、物価に関するユニット・レーバー・コストとともに景気循環に関する電子関連の在庫調整動向にも注目ということでしょうか。この答えの続きはこんな感じです。

『現在、世界的にIT関連の在庫調整が始まったと我々はみているが、(中間割愛)今回は比較的早めに調整に入っている、(割愛)従って、在庫調整に共通の性格として、企業が早めに調整すれば、調整の深度が浅く早く終わる可能性があり、IT関連の調整についても同じだと思う。しかし、過去の経験則では、IT関連の調整は動いていくうちにやや強めに振れるという性格を持っている。従って、その点について楽観視ばかりするのではなくて、調整が予想以上に大きくなる可能性も一部念頭に置きながら、今後の推移を見ていきたいと思っている。 』

どうも答弁の傾向として、前半は「福井俊彦としての意見」が出てくるのですが、後半になると「日銀総裁としての意見」になってきているように思えます。まぁ順序が逆だと印象が全然違うわけでして、この順序ならまぁ後半の方が後に印象として残るので問題ないといえば無いのですが、そもそも「総裁記者会見」で個人的心情をそう吐露していいのかという話はありますわな。


○CPIに関連して

今回の会見は質問が厳選されているというか直球ストレートというか。

『(問)CPIについてだが、先程、総裁がお話になられたように、CPIがマイナス基調を続けている状況に変わりがない。今後もプラス要因として原油高がある一方で、マイナス要因として米の豊作等が影響してくる。そういった状況を見て、市場ではCPIがプラスになる時期というのは遠のいたのではないか、量的緩和政策からの出口というのは遠のいたのではないのかといった見方が出ているが、どうお考えか。』

『(答)私どもは、以前から「出口」という言葉は嫌いだと散々申し上げているのであるが、出口政策はそんなに至近距離で考えていない、かなり遠い先の話である、CPIが安定的にプラスになるまでにまだ相当な時間的距離がある、という点は、私の記者会見でも他の項目に比べて、より安定的に同じ表現で申し上げてきたと思う。今も同様の心境でいるということで、私どもには一切振れがない。』

ここでもまた最初に福井俊彦さん個人の心情が出てくるのが大変に笑える訳ですが(^^)、CPIのプラス転換はまだまだ先ということのようですな。

『米や原油の要因とか、確かにCPIにおけるその時々の指標に振れをもたらす要因というのはあるわけであるが、私どもはより基調的に生産性の上昇とか、景気回復の中にあっても企業所得が雇用者所得に循環するスピードが、今回は世界共通の現象として遅いとか、そういうベーシックな要素をもとに判断している。家計所得の面にも好循環は波及していくという基本的判断は変えていないが、なかなか波及速度は目先目立って急速に上がるわけではないという従来の予想もそのまま維持している。今回も同様である。』

という事で、引き続き雇用者所得に関して注目が必要だという事には変化は無いようです。もうちょっと同じ話をしているのですが以下割愛。


○サービスフレーズというか心情吐露というか

金曜の時事通信社提供の時事メインコラム「金融観測」は日銀総裁に絡んで2本ほど大変に面白いのだがそりゃ日銀総裁が怒らんかね〜って内容のものがでておりまして、そこで触れている話なので2番煎じもいいところなのですが。

今回の会見は某才媛局アナのおねいさんがプロ野球談義をするためにやってきたせいなのかもしれませんが(^^)、サービスフレーズが乱発されていて実に微笑ましいというか笑えるというか。

・景気認識に関連して

『我々も、心の中では出てくる指標に対してある意味で一喜一憂しながら、しかし冷静にそれを分析して最終的に持っている判断をお示ししている。』

一喜一憂しているらしいです。どうせCPI時間軸なのにねぇ。

・現在の金融政策に関連して

『私どもは、以前から「出口」という言葉は嫌いだと散々申し上げているのであるが(さっきも引用しましたが)』

はあはあそうですか。どうも「出口政策論議で中短期金利の上昇のトリガーを引いた」と去年は散々な言われようでしたが、いまでもそれが不満だと。

『私どもは量的緩和政策から早く脱却したいという気持ちはあっても、実際にはここは我慢強く、構造調整の面でも循環的な景気を長持ちさせる意味でも、粘り強く頑張り通したいという気持ちでいる。人間なのでなるべく早く卒業したいという気持ちはあるが、それはうんと抑えて我慢するということである。』

セントラルバンカーとして現在の量的緩和政策が極めて不本意な政策だというのは良く判りますが、あなた何でもそこまで言わんでもよかろうにって気がするのですが。


○おまけ

世間的にはプロ野球問題の質疑応答が翌日の新聞やニュース番組なんかで取り上げられまして、「別に関係の無いことにそこまで丁寧に話するのか」と思いましたが、何せ質問したのが「最前列に座った美貌のテレビ局女子アナ」(時事メイン記事による)だったという事でして、なるほどそうだったのねと激しく笑えました。個人的には経済関連の書籍に顔をだしたりして硬派のイメージで売り出している筈の某女子アナウンサー様にそんなイロモノ質問をさせる某テレビ局のセンスを疑いますな。これでイロモノ評価になっちゃわないのかね。

質疑応答内容に関してはあちこちに出てますのでまぁご存知だと思いますが、日銀Webでもごらんくださいませ。

ではでは。

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2004/09/07

お題「昨日の続きというか補足」

久々の日銀総裁講演&記者会見について、あたくし昨日のドラめもんで「まぁ気になるのは長期金利が低い現状のどさくさに紛れて発言したのではないかとも思える『量的緩和政策の長期化リスクに関する具体的な言及』ですな。」と申し上げましたが、この点について指摘を頂きましたので。

2段階解除論とか時間軸の強化という話が盛り上がっていた以前から既に量的緩和のCPI時間軸に関して何度か「CPI一点張りの現在の時間軸政策はリスクがある」という言及は行なっております。

『30兆円を超える流動性の供給というのは、ずっと先のいわゆる皆さんの用語で言えばエグジット(出口)──私はあまりエグジットとは言わないがエグジットという皆さんの言葉を借りて言えば──の時点での負担が増すということは、おそらく共通に認識されていることだろうと思っている。』(4月9日記者会見)

『金融政策は、特定の経済指標をターゲットにして、そこにあまりに機械的に結びつけると、機動性を損なうという意味でリスクを伴うということは一般論としてある。(中間省略)この点について、CPIが安定的にゼロ%になるまでの間に、今の金融政策のフレームワークの修正に時間がかかり過ぎるリスクというものはごく僅か含んでいるであろうと、厳密に議論すればおっしゃる通りだ。』(6月15日記者会見)



とりあえず記者会見から適当に拾ったのはこんな感じ。講演でも日銀の政策はデフレ脱却を最優先にしているためにリスクを取っているという話を折にふれて行なっています。ただ、今まではどちらかというと単純に「時間軸というのは日銀もリスクを取っているのです(だから日銀はデフレ脱却に頑張っています)」という感じだったのですが、先日の大阪での講演(正しくは挨拶)と記者会見では総裁本人も「やや理屈っぽい話」と言いながら、

『これは、自然利子率の上昇に少し遅れて我々の金利の操作が始まるということであり、いわゆるビハインド・ザ・カーブの金融政策が少し長くなるということである。こうした文脈で、最終的には、自然利子率の上昇幅に見合った金利の要調整幅が、早く金利調整に入った場合に比べて大きくなるという、やや理屈っぽい話を申し上げた。』

と発言して、その続きで

『結果として、そうでない場合に比べて調整幅が多少大きくなるとしても、それは程度問題である。我々が市場の金利形成に働きかけていく際に市場調節上の負担が少し重くなる、あるいは市場調節に当たって考えなければいけない方程式が少し複雑になるという面で、余計に知恵がいるということだと思う。時間が余計かかれば困難が増す。一方、時間がかかれば、我々がさぼらない限り、勉強の時間があると思っている。』

とやや煙に巻くような感もありますが、どさくさに紛れて「(ビハインド・ザ・カーブの、という意味でしょうな)時間が余計かかれば(自然利子率まで追いつかせるための市場調節の)困難が増す。」としれっと発言しておりますな。



まぁ今まで一般論として「日銀がリスクを取っている」と言っている意味とここで話をした事は全く同じ意味、というか日銀が基本的に景気に遅行する傾向がある(そうですな。よー知らんのだが)CPIに対して時間軸を設定しているという事がどういうリスクを孕んでいるのかという点への具体的な説明をしたのが上記の先日の講演&記者会見という事でございます。

実際に講演やら会見の場にいればまたニュアンスも違って伝わるのかもしれませんが、日銀のWebに「挨拶要旨」「記者会見要旨」として出ている文書を追っかけて見るというのもまた意味があるかと勝手に思っております。当然ながら日銀のWebにアップされた文書ってのは当然ながら日銀の事務方(企画部門なんでしょうか?)が作成するものですから、これは(厳密には違いますが)公的文書というか発言者の公式見解という扱いにしても宜しいって訳ですから、不規則発言ではない意見表明のウォッチになるのかなという訳で。

で、その場の雰囲気はよく分りませんが、日銀のWebから出てきた文書を見ていると、どうも先日のコメントは「出口政策を意識した発言」であり「ビハインド・ザ・カーブのリスクが大きくなるリスクを意識した発言」であり、今までの発言よりやや突っ込んだ印象を与えるものでした。あたくしの勝手な印象なのかも知れませんが。

冒頭でも申し上げましたが、債券相場が大いに反発して少々長期金利がぶれても安全ゾーンにいるドサクサに紛れて、今までも懸念していた事について今のうちに言ってしまおうという意図があったと考えるのは穿ちすぎですかな。


以前「量的緩和政策の出口論」が総裁の口から堂々と出るようになる前に中原審議委員が量的緩和の2段階解除論とか時間軸の強化というか実質延長みたいな話をして話題を盛り上げ(たかどーかは知らんが)たという事がございましたが、(堂々と出口論の話が出てきたのは5月13日の講演でした)今回は山口副総裁が時事通信インタビューで現状の金融政策について論じる中で金融政策のビハインド・ザ・カーブのリスクに関しても大いに指摘した後かつ債券市場が戻り高値って時にこの話という事でして、中々タイミングは宜しいのかと思いますな。

まぁあんまり示し合わせているようには思えませんが(中原さんの時は斥候部隊を中原さんがやったような感も無くは無いですけど)、まぁ色々と考えますわな〜って感じでした。

では。

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2004/09/06

お題「総裁記者会見」

先週末にご紹介した日銀総裁挨拶の後に行なわれた記者会見ですが、久々の講演(挨拶だが面倒なので講演と書いてしまいます)&記者会見という事で色々と突っ込みを受けております。で、今回は強気弱気の双方が都合よく引用できそうな部分がありまして、情報ベンダーによって別々の方向の発言が報じられていたのが笑えました。ちなみに債券相場が上がりそうな発言を報じていたのは日経クイック。おまいら「景気回復で金利上昇」キャンペーンをやっていたんちゃうんかいと小一時間問い詰めたくなるところではありますが(^^)。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0409a.htm

○「債券買い材料か」と思わせた質疑について

日経クイックに総裁発言として「長期金利低下は時間軸の効果」というようなヘッドラインがでた(らしい)のですが、幸か不幸か先日の講演&記者会見時は10年入札直後だったのでこちらへの注目度が低かったので相場は反応しませんでした(が、講演も記者会見も中々見どころあると思いますよ)。

長期金利に関する見方に対しての質疑でこんな発言が。

『基本的に、長期金利は、日本経済の先行きや物価情勢についての市場参加者の判断をもとに形成される。(以下同じ事を言っているので省略)』

『おそらく今は、米中経済、日本経済について、次から次へと予想よりも良い指標が出るというポジティブ・サプライズの期間が過ぎて、異なったニュアンスの指標が入り乱れて出てくる時期になっている。市場参加者がこうした状況に反応している中で、日本銀行が繰り返し申し上げている、量的緩和政策は当面は揺るぎがない、といういわゆる「時間軸効果」が、結果としてより強く市況の面に出ているのではないかと思っている。』

ここの部分を捕まえて日経クイックは「長期金利低下は時間軸の効果」とヘッドラインを打ったようですな。まぁ確かにそうは言ってますが、これは「昨今の長期金利低下が時間軸の意図したものだ」という話をしているのではなく、時間軸効果に対する一般的なお話ですな。まぁ強気派としては飛びつきたくなる発言ですが。

『米国についていえば、FRBが8月の利上げの際に公表したステートメントで、resumeという英語を使って、「景気回復ペースは、先行き再び高まる」と表現していた。その表現に沿った強めの指標が出てくる局面があれば、相場形成の仕方もある程度変化してくるだろう。』

『市場は、こうして一進一退を繰り返しながら、実勢を探っていくと考えられる。日本経済についても、今後どういった指標が出るかによって、長期金利は多少のアップダウンをしていくだろう。しかし、ベースには、日本銀行の量的緩和政策堅持という時間軸効果がしっかり効いていくだろう。』

長期金利上昇容認と取られるとマズイという判断が働いて最後に予防線を張った発言になっているのですが、予防線を下手に張ると余計な報道をされてしまうので、まぁムツカシイですわな。今回はあまり材料扱いされなかったですが。


○ビハインド・ザ・カーブのリスクに関する発言

金曜のドラめもんで申し上げましたが、量的緩和の出口に関してこれだけ堂々と話をし、またビハインド・ザ・カーブのリスクに対して具体的に言及した(今までは単に「ビハインド・ザ・カーブは覚悟してるからどっからでも掛かってきなさい」的な発言しかしてませんでしたので結構大胆な発言ではあったのですが)講演の部分に対して当然のように質問が出ました。

質問が長いのですが、ポイントを的確に衝いているので改行入れながら引用します。

『先の懇談会において、総裁は、潜在成長率が上がっていく過程でゼロ金利を続けていくと、最後には調整幅が大きくなるという意味で、将来の金利調整に困難さが加わるという趣旨のご発言をされた。また、物価と景気が乖離している要因として、3点を挙げられた。』

『1つ目は、過剰設備・過剰雇用の解消により資源がより効率的に活用されていること、2つ目は、ITを中心に技術革新が浸透していること、3つ目は景気循環であった。総裁は、1つ目と2つ目の要因がかなり影響していると認識されているとお見受けする。』

『仮に、そうした要因により潜在成長率が上がっている場合は、物価はずっと上昇せずに潜在成長率が上がり続けることになる。物価が上昇しないもとで日銀は量的緩和を続けていくと予想される。この先、潜在成長率が高まる中でゼロ金利を続け、その結果として調整しなければならない幅が非常に大きくなった場合に、日銀としてどのような対応をされるのか、教えて頂きたい。』

誰が質問したのか存じませんが大変に素晴らしいです。総裁の答えも長いのですが、これまた全文引用してしまいます。

『過去の過剰設備、過剰雇用が解消し、規制緩和等で資源を有効に活用できるようになり、イノベーションによって付加価値をつける能力が上がる。これは明らかに、潜在成長率を押し上げる要因、すなわち生産性を構造的に押し上げる要因となる、ということはおっしゃる通りである。日本経済において、このように潜在成長率を構造的に押し上げていく力が働き始めていると思う。その場合、潜在成長率に見合って経済をバランスさせていくため、金利水準が自然に高くなる。学者の方々は、これを自然利子率が上がると言っている。自然利子率が上がれば現実の金利も上昇するというのが普通の姿である。 』

『しかし、潜在成長率が上がるかたちで景気回復をしても、グローバル経済の下で、従来に比べると物価の上昇テンポが少し遅れることがある。この場合、デフレ脱却という最終目標実現のために、短期の金利水準を低く抑えて少し長く時間軸効果を効かせ、最終的に問題の解決を図るということがあり得る。これは、自然利子率の上昇に少し遅れて我々の金利の操作が始まるということであり、いわゆるビハインド・ザ・カーブの金融政策が少し長くなるということである。こうした文脈で、最終的には、自然利子率の上昇幅に見合った金利の要調整幅が、早く金利調整に入った場合に比べて大きくなるという、やや理屈っぽい話を申し上げた。』

『どれくらい最後の調整の困難度合いが増すかというのは、質的な問題ではなく、あくまで量的な程度の問題ということである。といっても、経済の潜在成長率が上がり、現実の景気回復が進むもとで、いつまでたっても、同じような生産性の上昇が続き、賃金や物価の上昇がいつまでたっても追いつかないという経済を想定しているわけではない。時間的距離というものにも、ある相対観を持って見ていく必要がある。結果として、そうでない場合に比べて調整幅が多少大きくなるとしても、それは程度問題である。我々が市場の金利形成に働きかけていく際に市場調節上の負担が少し重くなる、あるいは市場調節に当たって考えなければいけない方程式が少し複雑になるという面で、余計に知恵がいるということだと思う。時間が余計かかれば困難が増す。一方、時間がかかれば、我々がさぼらない限り、勉強の時間があると思っている。難しい仕事ではあるが、きちんと対応するつもりである。不良債権問題に苦しむという後ろ向きの問題ではなく、将来展望のある明るい話なので、しっかり勉強していきたい。』

とりあえず「講演での言及はあくまでも一般論としてのものであり、日銀は金融引締めが遅れるというビハインド・ザ・カーブのリスクは承知の上で、将来発生する困難への対処を考えていっている」と読めますので、講演での言及を見て「時間軸が短くなった」と言うのはさすがに無理がありますな。まぁ「潜在成長率は上がるのに消費者物価は全然上がらない」という事に関してはナーバスになっているというのは伝わってきますが。


○資産価格に関して

まぁ今の所まるで上がってこない資産価格ですが、こんな質問も。

『資産価格について一点お伺いしたい。現在、銀行の貸出は未だ前年比マイナスとなっているほか、一般企業も、潤沢なキャッシュフローを使ったり、社債やCPを発行してまで、不動産投資に振り向けることは想定し難い状況にある。しかしながら、以前、総裁が言われていたように、景気が回復すればするほど金融緩和の効果は増すと考えられる。バブル時にも金利は上げたが、流動性はジャブジャブであった。現在も、ゼロ金利であって流動性がこれだけ潤沢にある。その状況で、消費者物価指数が、日本銀行がコミットメントしている条件に達しないまま、株や不動産などの資産価格だけが上昇してきた場合、どのように対応されるのか。またその可能性についてどうお考えになるか伺いたい。』

この点も重要な論点ですが、とりあえず総裁はさらりと回答。

『先程の懇談会の場でも、消費者物価指数の変化率に絞ってコミットしているという意味で、日本銀行は少しリスクを冒していると率直に申し上げた。それは、資産価格の動き、特に、不動産価格等が一般の物価指数に先駆けて大きく変化する可能性、そういうリスクをいくらか孕んでいるという意味で申し上げたものである。毎回の記者会見では、実体経済と物価ということで政策運営をご説明しているが、資産価格の動きについても、過去の経験を踏まえてきめ細かくフォローしている。また、それに対し、どのような資金がついているかもフォローしている。我々が取っているリスクがどれだけ大きなものになりつつあるのか、もしくはそうはなっていないのかについて、極力正確に掴む努力をしている。今までのところ、そのリスクが大きくなって経済政策全体の根底を塗り替えなければならないという状況には、まだなっていないと思っている。』

「資産価格が上昇する気配も無いのにそんな話はしませんよ」ってなもんですな。さすがにかつての資産価格バブルに関しては猛烈に反省しているようですので、資産価格動向はきちんとウォッチはしているようですが、現実になった場合にどう動く(あるいは手を拱いている)かは不明としか言いようがありません(が、何か理屈をつけて動くのではないかと思うのですが・・・・・・・)な。


○景気認識について

景気の認識に関しては講演内容と同じでして、強引に要約すると「昨今出ている景気指標は1−3月期に出てきた高成長の反動」となります。総裁は「非常に重要な話」と言ってますので敬意を表して一部だけ引用します。

『今年4-6月期の成長率が、多くの方の予想よりも少し低めに出たことを眺めて、今後の経済をどうみるか、金融政策との関連でどうみるかというご質問だが、この点は、非常に重要な話だと思う。』
(途中を思いっきり割愛しまして)
『従って、今年4-6月期の表面的な数字は、昨年10-12月期、今年1-3月期の高成長の反動もあってやや減速したが、均してみれば、今の動きは、将来の持続的な成長軌道への復帰に繋がる回復過程を辿りつつあると判断している。』

と言ってます。基本認識に関しては割愛してしまった部分で、

『景気の動きを形付けているメカニズムからみた場合、輸出は引き続き堅調で、設備投資や生産も増加を続けている。家計部門にも、少なくとも雇用の面で好影響が及んできている。個人所得の裏付けはまだしっかりしていないが、個人消費も強めの動きを続けていて、全体として前向きの循環メカニズムが明確化するかたちで動き続けていると思っている。』

と言ってます。相変わらずダム論というか「前向きの循環メカニズム」に関しては自信満々の巻と言った所ですな。

また、原油価格上昇に関しては、講演では言ってませんでしたが、記者会見では例によって『基本的には世界経済の順調な拡大に伴う需要の増加が背景となっている。』という言及をしておりますが、『その一方で、供給面は、過不足が測定し難く、さらに地政学的リスク等も絡んで、不確実性を伴っている。需要の強さに加え、供給面でも大きな不確実性を伴っているという両面から、原油価格は、高値圏で推移しているというだけではなくて、先行きが読み難いところがあり、心配の種になっている。』とコメントしております。

まぁ要するに「どうなるかさっぱり判らん」というコメントを延々と続けておりまして、原油価格上昇に関しては日銀も今後の行く末やら経済への影響やらに関しては測りかねているというのが正直な所なんでしょうね。


○ということでまとめて見ると

景気に関して引き続き強気なのは分りますが、金融政策の出口に関してのコメントは踏み込んでいるようで踏み込んでいない発言ですし、長期金利の現状についても一般論(言葉尻だけ見ると金利低下が政策効果と言っているように見えるが)しか言ってませんので、実を言うとどっちとも取れる内容ではあります。

まぁ気になるのは長期金利が低い現状のどさくさに紛れて発言したのではないかとも思える「量的緩和政策の長期化リスクに関する具体的な言及」ですな。この手の発言を長期金利が上昇している時に行なうと思いっきり相場に燃料投下モードになってしまい、もう阿鼻叫喚の火災が発生してしまう所でして、債券相場が堅調なうちに言及したのは珍しくも賢明であったかと思います(^^)。

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2004/09/03

お題「久々に福井総裁の講演」

政策の季節がやってまいりました(^^)。

昨日は大阪経済4団体共催懇談会において福井総裁が挨拶を行いまして、その後記者会見も行なわれました。景気減速を想像させる経済指標が立て続けに出て、債券市場の居場所が大きく変わった後なのでそのあたりに関しての意見も聞きたいと言った所でございますな。記者会見要旨は例によって本日にならないとリリースされませんが、挨拶要旨は出ておりますので読んでみることと致します。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0409a.htm


○景気に関しては依然として強気

『こうした世界経済(引用者注:堅調な世界経済)のもと、冒頭申し上げたように、日本経済は、回復を続けています。本年4〜6月のGDP成長率の速報値は、昨年10〜12月、今年1〜3月の高成長の反動もあって年率+1.7%に減速しましたが、均してみれば将来の持続的な成長軌道への復帰に繋がる回復過程を辿りつつあると評価しています。』

『景気回復のメカニズムの面でも、輸出の伸長とともに、生産と企業収益の拡大が設備投資の増加に繋がる前向きの循環が働いており、最近では、雇用者数の改善傾向もはっきりしてきています。先行きは、所得面にも好影響が波及し、このところやや強めの動きが続いている個人消費が緩やかに回復することにより、前向きの循環メカニズムが明確化していくとみています。』

お得意の「前向きの循環メカニズム」であります。8月に出た経済指標は見事なまでに景気減速を示唆させる内容が連発してましたが、前2四半期の高成長から巡航速度になったという認識ということのようです。


○景気と物価に関して

挨拶の冒頭で総裁はこのように指摘しております。引用の都合上段落を分けます。

『わが国経済は、海外諸国と同様、2001年以降やや深い調整局面を経験しましたが、昨年の夏頃からは世界経済が拡大を続けるもとで、明確な回復過程に入りました。実質GDP成長率でみますと、ユーロエリアはもちろん、昨年10〜12月と本年1〜3月は米国も上回る高成長となりました。』

ということですが、この要因に関しては、

『この後ご説明するように、こうした高成長の大きな牽引力は、海外経済の回復であり輸出の増加であったことは事実ですが、そうした外部環境の好転だけで実現され得るものではなく、わが国固有の回復の基盤が整備されてきたことも大きな背景にあったと思われます。日本経済の回復のスピードが速かったことも興味深いのですが、こうした景気の回復が小幅とは言え物価の下落基調が続くもとで実現していることも興味深い点です。本日は、このような点も意識しながら、お話をしたいと思います。』

わが国固有の回復の基盤云々というは前向きの循環メカニズムにもつながる議論でして、経済の構造改革の成果だという論理のようです。あたくしは全くそうは思いませんが(民間部門の問題点を政府部門に付け替えた事によって問題が表面上解決しただけに過ぎないから)、それはそれとして、先日ご紹介した山口前副総裁の時事通信社インタビューでも「物価の小幅下落の中で景気が回復している」という点についての指摘がありましたが、ここでも同じ点についての指摘があります。

一般物価が小幅下落する中で景気が回復基調にあるという認識に立ちますと従来の「デフレは極めて僅かなものであっても景気に対して害悪」というリフレ派を中心とした現在のまぁ一般的な認識が本当に正しいのかという事にもなる訳でして(あたくし的には一般消費者物価が問題なのではなく、というか物価統計は技術革新分を価格引き下げに織り込むので、経済成長よりも技術革新の速度が速ければ統計上の物価上昇は抑制されるのではないかな〜などとシロート考えながら思う訳で。問題は信用創造が実質土地本位制の中で不動産価格が下落した所だと思いますが。)、このあたりは(本当に景気が回復するのであれば)今後議論になるでしょうな。

『以上申し述べた企業や金融機関による調整の努力(注:該当部分の引用は省略しております)を一つの背景として、景気は回復を続けています。そうした中で、物価面では、原油高の影響もあって、国内企業物価は素材や中間財等を中心に上昇しています。ただ、消費者の手に渡る製品やサービスの価格である消費者物価は引続き小幅の下落基調にあります。』

『これは、基本的には、生産性の向上や人件費の抑制を通じた、企業部門でのコスト引下げが背景にあります。従って、この先物価情勢を判断していく上でのポイントは、生産性や賃金の状況に変化が生じるかどうかという点です。現在の生産性の向上の背後には、3つの要因があるのではないかと考えています。』

長いので一旦ここで段落分けますが、今後の景気動向という意味で日銀が注目するのは企業の生産性と労働分配の動向と言うことで、最近はよく「ユニットレーバーコスト」という術語が聞かれるようになっております。金融政策は消費者物価一点張りなので物価動向のチェックは重要ですが、この点については今後大いに注目すべきだと思います。

『第一の要因は、過剰設備・過剰雇用等の調整に向けた企業の取組みや労働市場を含む様々な分野での規制緩和等によって、資源がより効率的に活用されるようになっていることですし、第二の要因はITを中心に技術革新が進展していることです。第三の要因は、景気回復期に一般にみられることですが、人や設備の稼働率が上昇し、生産性が高まるという要因です。』

『このうち、最初の2つは、日本経済の潜在的な生産能力を高めるような構造的な変化をもたらし得るものであるのに対し、3つ目は循環的な要素であるという違いはありますが、いずれの要素も何がしか影響を与えていることは間違いないと思います。ともあれ、こうした景気と物価の動きの乖離は、程度の差こそあれ各国が経験してきた問題です。これをどのように理解するかは、エコノミストや中央銀行にとっての大きな課題ですが、この先景気回復が続いていった場合に生産性の上昇が鈍ってくるのか、それとも規制緩和やITの効果で生産性の上昇が続くのか、また、生産性の向上に見合う賃金の上昇が見られるのか、注目していきたいと思います。』

目先の問題として原油高に関してもコメントしてますが、原油高当初言っていた「原油高は需要増という面もある」というのんびりした発言はさすがに影をひそめまして(^^)、企業業績への悪影響を懸念ってコメントになっています。


○量的緩和の出口に関してのコメント

まぁ債券相場が強気モードの時なので別に深く突っ込みを受けないのですが・・・・

『勿論将来の課題としては、日本銀行当座預金を操作目標とする政策から短期金利を操作目標とする通常の金融政策へ、いずれ復帰していかなければなりません。当然のことながら、そうしたプロセスは2つの面から成り立ちます。金融機関は、所要準備として、法律等により約6兆円の当座預金を日本銀行に保有する義務がありますが、現在は、日本銀行の潤沢な資金供給を通じて、これを大幅に上回る30〜35兆円の当座預金を保有しています。こうした潤沢な資金供給は、金融機関の流動性調達に対する不安感を払拭することを通じて、金融市場の安定、ひいてはデフレ・スパイラルの防止に大きく貢献したと判断しています。』

『将来、短期金利を操作目標とする政策レジームに戻っていく局面では、この日銀当座預金残高の圧縮が必要となります。他方、現在の金融緩和効果の大きな源泉である時間軸効果については、実質的にほぼゼロ%となっている短期金利をどのようなテンポで引き上げるかということが最も重要な点です。こうした対応を具体的にどのような手順や方法で実現していくのか、その際に、日本銀行の金融政策についての考え方をどのように明らかにしていくのが適当か、これらの点は私どもにとっても重要な課題です。』

『どのような対応を取れば円滑な移行が実現できるのか、経済金融情勢等をしっかり踏まえながら、十分に検討していきたいと思っています。』

結局「考えて無い訳ではないが時期尚早」というように読めますが(^^)、この出口に関するコメントに関しては恐らく記者会見でも突っ込みがあったと思うので、記者会見要旨のリリースを待ちたいと思います。まぁこういう話を日銀総裁がしても別に市場が反応しなくなったと言うのは、日銀としては良いことなんでしょうな。

引用ばっかりで甚だ簡単でしたが本日はこんな所で。

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2004/08/13

○日銀総裁定例記者会見

火曜日の金融政策決定会合後に行なわれた日銀総裁記者会見、昨日のドラめもんでも一部ご紹介しましたが、質疑に関しては債券相場が戻った事もあって(笑)、甚だ平和なものが多くなっておりました。郵政民営化とかメガバンク統合問題の話とか地下金庫の公開の話などという話題が多かったのですが、量的緩和の今後に関する質疑が2つありました。うち1つは昨日ご紹介いたしましたが、もう1つの質疑を。

『(問)昨年10月に、量的緩和政策継続のコミットメント明確化ということで3つの条件を言われていたかと思うが、そのことに関して伺いたい。1番目と2番目の条件というのはCPIの数字で言われているということで、はっきりされているかと思うが、3番目の条件は、1番目と2番目の条件を満たしても金融経済情勢に鑑みて政策の継続が必要な場合には政策の変更を行わないということかと思う。3番目の条件で言われている金融経済情勢といった場合、様々な要因が含まれてくるため明確化することは難しいと思うのだが、そうした要因の中で、金融システムの安定の度合いとか、不良債権処理の具合とか、インターバンク市場の機能の回復とか、そのようなものについての考え方をできれば伺いたい。』

そー言われても答えに困る質問ですなって感じですが。

『(答)おっしゃるとおり1番目、2番目の条件については生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比変化率について、1番目の条件はその時点において安定的にゼロ%以上、2番目の条件は将来の見通しがゼロ%以上ということであるので、ある意味で数字的に非常に明確で把握しやすい条件である。3番目は、何か特定の事柄を予め念頭においているとか、それに対して我々として内々何か基準を持っているとか、そういう性格のものではない。』

まーそう答えますな。 長いから答えの続きは改行いれます。

『経済・物価情勢、これは内外の情勢と言ったほうが良いと思うが、そういう常に動く背景のもとに、1番目および2番目の数字の姿を置いた場合、つまり同じ現実のCPIの動き、同じ数字の将来のCPIの見通しというものも、内外経済というバックグラウンドを差し替えてみると全然違って見えることがないかということである。つまり、お芝居をご覧になって、同じ舞台衣装、同じメイクアップの俳優がいる場合でも、背景・舞台装置が違うと、全然違ったストーリーに見えるものである。次に喜劇を演ずる役者なのか悲劇を演ずる役者なのか、そこのところは随分違った姿になるわけである。』

『従って、我々は同じ数字を見る場合にも、その時点およびその時点以降想定される内外経済情勢というものを一応バックに置いてみて、本当にこの足許の物価の動き、将来の我々の予想、これがどういう雰囲気のものなのかということをしっかり確認したい。非常に抽象的なものの言い方だが、そういうことになると思う。経済が生き物である以上そうした点検作業は欠かせないことであり、これは、ただ数字面だけで金融政策を変更しうるというふうにはどなたもお考えにならないのと全く同じことである。』

つーことで、福井総裁からは「総合判断の重要性」のアピールが最近目立つようになっております。中央銀行としては極めて当然の事なのですが、どうもそれ以前に「超強気の景気判断」を連発したり、調査統計局方面から甚だ強気の話が染み出して(微妙な表現でアレですが)いるとの話があったり、金融庁と日銀が「金融機関経営は金利上昇リスクに備えているのか」と言ってみたりして「金利上昇ムード」を作ってしまったことからの軌道修正という面もあるのではないかと思います。

で、例によって例の如く、債券相場もまぁいい水準まで戻っているような気もするのですが、そんな中でも「金融政策の変更が遅れる」かのような情報発信をするセンスは如何なものかという感じですが、中短期ゾーンの利回りが急落前の水準に戻っていない(特に2年は売り物勝ち)ところを見ると、日銀の思ったように市場は動いていないという事なのかもしれませんな(^^)。長期債の世界は日銀の意図どおりに金利が順調低下してますが、2年債あたりの世界では「また発言のブレか!」って感じでまだ半信半疑なのかもしれませんな。よーわからんが。

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2004/08/12

お題「山口前副総裁の示唆〜いわゆる2段階解除論に関連して」

「法的拘束力は認めるが、信頼関係が損なわれているので仮処分申請は認めない」ってぇ事はこの国では「法の正義」よりは「やった者勝ち」だという認識で宜しいと言う事な訳ですか。もしくは「力が法」なのかも知れませんな(-_-メ)。

という話はさておきまして、日銀総裁の記者会見も含めまして先日の山口前副総裁の時事通信社インタビューのお話を含めて表題のお話。


○量的緩和政策の出口イメージ

まぁ別に近い話とは思っていないのですが、量的緩和政策の「出口」のイメージとしてあたくしが考えているのは、(1)資金供給オペを絞りながら当座預金残高を減らしていき、(2)所要準備まで当座預金残高が減少した後の無担保コール翌日物金利は(暫定的にゼロ%近傍にするかもしれないが)0.10とか0.15%あたりにして、ロンバード金利で一時的な上昇を抑える。という感じですな。

で、この量的緩和政策の「出口」に関連しては「量的緩和政策の解除」と「無担保コール翌日物金利の誘導目標金利の引き上げ」がセットになるのかならないのかという話があるようです。で、どうも「量的緩和政策の解除の後はゼロ金利政策の期間が入る」という2段階解除論の方が優勢らしい訳です。

先日日経新聞社主催のセミナーで挨拶した福井総裁が時の質疑応答で総裁が「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」という発言をしたのが実は話題になっていたそうで、これを捕まえて「2段階解除論を前面否定したので量的緩和が終了したら短期金利がドカンと上がる」という話になったのも債券相場下落の後付け理由の一つになっていたらしいのですな。


○山口前副総裁の指摘

時事メインの記事によりますと、山口前副総裁のインタビューでこんな質疑があったようです。全文は時事通信社発行の「金融財政」をご覧下さい(と、毎回言っておかないと^^)。

(問)時間軸のコミットメントは「量的緩和の枠組み」に対するもので当座預金残高目標は除外される。物価が下がり気味でも持続的成長によって大きな変化が表れそうな局面では、残高目標の引き下げは行なえるのではないか。

(答)もちろん技術的には可能だ。だが、その政策運営にはほとんど意味はないと思う。当座預金残高を減らし始める、つまり「出口政策」と開始する事は、最終的に金利機能を復活させる事が目標になる。それに至るまでどれくらい時間をかけるのかは重要な判断になるが、結局は30何兆円という当座預金残高を5−6兆円に着実に減らしてゼロ金利という短期市場の状態をプラス金利のゾーンに持っていくことになるのだと思う。

金利機能の復活という事になりますとやはりゼロ金利だと都合が悪いと思う訳ですな。で、2段階解除論に関してもこんな質疑をしています。

(問)解除方法をめぐっては、まず当座預金残高を減らしてゼロ金利状態とし、そして様子を見て金利をプラスにする「二段階解除論」なる説もある。

(答)それは技術的には可能だろう。ただ、基本を言えば、それは「量」の供給自体にどれ位の効果があったかという点の理解にかかっている。私たちが量的緩和を開始した時点では、そこはやってみないと分らない部分で、だからこそ踏み切ったのだが、結果ははっきり出たように思う。日銀は4月の「展望リポート」で量的緩和の効果を強調しているが、良く読みとゼロ金利か低金利の効果だ。つまり現在でも金融緩和の核心は「ゼロ金利プラス時間軸」にあり、そうすると「二段階」は技術的にはともかく論理的には説明が難しい。

(答えの続き)ここで大事なことは、当座預金残高を当初5兆円弱から30数兆円に増やしてきた量的緩和政策そのものの景気押上げ効果、物価押上げ効果というものが本当はどれぐらいあったのか、ということだ。仮にほとんど効果がなかったのだと考えられるならば、比較的短期間に過剰流動性を回収してかまわないことにある。一方、かなりの効果があると認められるならば、徐々にしか吸収オペレーションはできないはずだ。この点、日銀にはぜひ過去3年以上にわたる量的緩和政策のレビューをきちんとやってほしい。

(問)量的緩和の効果はほとんどなく、解除は比較的簡単なのでは

(答)3年余りの経験を見た後では、私の考えもそれに近い。だが、30数兆円は大きな額だし、この吸収をいざ始める時は金融市場の反応を確かめる必要があろう。現実的には、何回かのステップに分けて、足場を踏み固めながら解除せざるを得ないのではないか。実際にどれぐらい時間をかけて、どのような手段で過剰流動性を吸収するのかは、日銀もまだ十分には詰めていないだろう。言わずもがなだか、「出口政策」のあり方は、そのときの経済・物価情勢によって左右去れると考えるのが常識であり、かなりスピードアップしないと間に合わない事もありえるわけで、今の時点では十分に議論しきれない。


長々と引用(記事を転記したので手が疲れた^^送り仮名などの違いは勘弁してちょ)致しましたが、「まず量的緩和の効果」というか「過剰準備になっている過剰部分を上げ下げ(実際には下げてないが)する事に意味があったのか」という点の検証が必要という指摘は仰せの通りであります。

ただ、「量的緩和の強化」と称して実施した「当座預金残高目標の引き上げ」を「政策の変更」としていただけに今更「あれは意味が殆ど無かったので実は茶番でした」とは言いにくいという説は大有りでしてまさに諸刃の剣(^^)。量的緩和政策の本質が「ゼロ金利+時間軸」であるという話は以前須田審議委員もどこぞの講演でお話しておりましたが、量的緩和政策の終了において「量的緩和は終了しますが金利はゼロにします」という話になりますと(時間軸をどうするという問題はありますが)政策としての一貫性はどうなってるの?という話になる訳です。


どうも量的緩和が終了してゼロ金利政策が解除された場合に、前回のゼロ金利解除のイメージから短期金利がいきなり0.25%くらい上昇するというイメージを債券市場関係者は持っているのではないかという風に思うのですが、短期金融市場が見事に破壊されて3年もたっているので「金利機能の復活」をするのも慎重になっていくと思う訳ですよ。その為に、「ゼロ金利解除後の短期金利は0.15%位」ってイメージを最近のあたくしは持っているのですが、実は少数派の意見のようですな。

長期金利のことまで考えますと、本当はいきなり0.25%くらいまで引き上げて「打ち止め感」を出した方がイールドカーブ全体への影響が逆に小さいという話もあるのですが・・・・・・。


量的緩和解除によって財政赤字を反映した長期金利の上昇が起きるという問題についても山口さんコメントしてますが、そちらはまたいずれ。



○福井総裁の「いわゆる合体発言」に関して

前の方で申し上げた「市場の話題になった福井さんの合体発言」でございますが、もともと日銀は「量と金利はコインの裏表の関係」だという認識でおりまして(現象的にもその通りなのですが)、福井さんもその趣旨で「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」といった趣旨の発言をしたのではないかと。要するに2段階解除論がどうのこうのという話ではなく、あくまでも一般論ですな。

その点に関しての記者会見(http://www.boj.or.jp/press/04/kk0408a.htm)での質疑はこうなっております(コピペは楽だ^^)。

(問)(前半部分割愛)もう1点は、いつも出口政策について伺うと、「あまりにも時期尚早だ」と一蹴されるのだが、最近の都内での講演の質疑応答で、総裁は「量を減らすということと金利を引き上げていくという2つの側面を合体して考える」という発言をされて、市場でも非常に話題になった。市場のほうからも、もっと具体的に話を聞きたいという声も上がっているので、もう少しわかり易い言葉で講演の時のご指摘をご説明頂きたい。

(答)(前半部分割愛)2番目のご質問についてだが、この前、私が金融システムについて講演をしたときにお尋ねがあったので、米国との比較で、一言言葉を付け加えさせて頂いたわけである。米国の連銀の場合には、今は低い金利をこれから経済と見合った正常な金利にもっていく、そういうステップを踏み始めたということだが、日本の場合は、エグジット(出口)と言ってもまだその時期はあくまで見えていないという前提だ。しかし、仮にそういう時点に来た場合にも、米国との違いというのは、単に金利水準の調整ということだけではなくて、量的緩和という領域にかなり深入りをしているので、非常に過大に供給している流動性をどう吸収するかという部分と金利の問題とを、頭の中で常にこの両側面を考えながら、連銀に比べるとより難しい工夫をしながらやっていく必要がありそうだ、という極めて当然のことを申し上げたつもりである。「合体して」という言葉に引っかかったという人もおられるが、もともと金利と量とを分離して考えるのがおかしい。今はゼロ金利になっているから量だけを考えていて良いわけだが、将来のことを考えた場合、金利と量を分解して考えるということは論理的におかしいのではないかと思う。

長くなってしまいましたが、要は最後の部分な訳でして、これは「量と金利はコインの裏表の関係にある」というお話。従いまして、いわゆる2段階解除論を肯定したわけでも否定したわけでもないというのが真意ではないかと推測します。だいたい先ほど山口前副総裁が指摘しているように、いざ「出口政策」となった時の経済状況次第でそのあたりは変化しうる物でして、時間軸効果が「ビハインド・ザ・カーブ」を認めている事も考えますと、場合によっては出口直後に結構頑張って引締めしないと行けないかもしれないですし、逆に景気はイマイチで一般物価が上昇するかもしれません
し、まーあまりその辺にナーバスになるのも如何なものかとは思います。

ただ、あたくしは純理論的に「量的緩和後のゼロ金利」は論理が破綻しているので、それをやるなら「低金利」にしておけばよいと思っているだけな訳ですな。


#どうも分ったようなわからんような話で恐縮です。

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2004/07/27

お題「しつこく総裁講演に絡むあたくし」

ご存知のように債券市場が閑古鳥大合唱ですので、しつこくも本日もまた先日の日銀総裁講演の続き。何と申しますかこの講演「福井先生の金融ゼミ」って感じなのですが、ゼミの行なわれている場所が日本経済研究センター主催の会。そこで為される講演を仔細に見ていると現実離れしたお話が満載状態なのは如何なものかと思う訳ですな。

昨日は企業金融の話に突っ込んだのですが、本日はその続きに突っ込みつつちょいと別の話も交えながら。

○金融機関が事業会社にリスクヘッジ手段を提供するそうですが

『また企業活動は日常的に、為替リスクや市場リスク、さらには取引相手の信用リスクなど、様々なリスクにさらされており、これらに対するヘッジ手段の提供といった面でも、金融機関の貢献が重要となっています。』

既にこの時点で突っ込みが入る所なのですが後述します。

『しかも今後は、企業の活動が一層多様化するのに伴って、リスクヘッジのニーズも多様化し、事業の性格に応じた特別仕立の(カスタマイズされた)リスクヘッジも求められるようになるものと予想されます。』

事業活動が多様化するので色々なリスクヘッジをしないといけないという理屈は一見尤もらしいのですが、そもそもコントロール不可能なリスクを取るような事業に打って出る時点で入口が間違っている訳ですな。まぁ普通新規事業やら事業分野の拡大やらをする時に、その事業が失敗して会社がいきなりお陀仏さんになるような大勝負をするのは余程乾坤一擲大勝負をしないといけない人でして、そもそもそう言う方がヘッジがどうのこうのなんぞ考える余裕も無い訳ですな。

『金融理論とITの発達は、複雑なリスクでも計量化を可能にしてきましたが、それでも、個別のヘッジニーズに応えるのは容易ではありません。特別仕立の度合いが強いほど、リスクの受け手を探すことが困難化するからです。しかし金融機関は、顧客の特別なリスクについても、標準的なリスクに分解・加工できるところは極力そうした上で、自己勘定の中で相殺・吸収するとか、はみ出すリスクを市場で再ヘッジする、といった能力を有しています。とくにリスクの加工や再ヘッジの過程では、保険機能の活用も含め、専門知識を有する多様な金融機関の間での分業が威力を発揮すると思われます。』

もしかしてこの後半は最近流行の「天候デリバティブ」を意識してお話をしているのかと。まぁ本質的に「お天気保険」なのを最新の金融技術を駆使したようになっている訳で、実際に何か色々と理論はあります。98年だったか99年だったか忘れましたが、海外のその手のデリバティブ雑誌に「Risk」とかいうのがありまして、理論的背景を大特集しておりました。正直数学の出来ない理学士のあたくしにはお経よりも難しかったのですが、「ふーん」と思った覚えが。

話は脱線しますが、大体「新しい金融理論」と言っているのは数年前に米国で実証済みのお話(金融政策論のように米国で提唱されているものを日本で核兵器実験の如く実験するような実証未済の場合もありますが)でして、それを日本に持ち込んでどうのこうのという姿をみていると、アイテーバブル時代にベンチャー三銃士だのカリスマだの言われていたどこぞの禿が提唱していた「タイムマシン経営」と同工異曲ですの〜と思ってしまう訳です。関係ない話ですが。

金融理論で複雑なリスクを計量化可能というお話。確かに理屈の上で計算することはできる訳ですが、昨年の債券市場集団自殺相場に見られるように、モジュールでリスクの計量は出来ても、それで損失を本当に回避できるかと言うとそれは全く別の問題でして、大体皆が同じモジュールを使っていたら何かが起きた時には全員でスパイラル的に集団自殺をする事になり、大体そういう時に最大損失が発生するように世の中というのは上手くできている訳です。

金融理論の落とし穴というのがありまして、基本的に金融理論、特に保険というかオプションというのは確率統計の世界ですので、最大の落とし穴「異常値」に対応できない訳です(色々と異常値に対応するような理論もあるのかもしれませんが)が、大体碌でもない損失が発生するのはこの「異常値」が発生するような時。金融理論の限界もご承知の上でお話しているのであればまぁ無問題なのですがね。

ま、それ以前の問題に戻りますと、企業の事業リスクなんて「最新の金融理論」と無関係な所で色々と発生する訳でして、そっちのヘッジということであれば「株主代表訴訟保険」みたいな世界で、実は精々大数の法則程度の世界で済んでしまう話だったりする訳です。というか先ほども申し上げたように、事業展開においてそんなに訳の判らないリスクが発生するようなものに手を出すべきではないと思うのですが。


○机上の話は美しいのですが

どうも最近の日銀(だけでなくて金融庁もそうなのですが)は何でもかんでも「最新の金融理論的手法」を持ち出すと何でも計量的な分析が可能であって、とにかく小難しい理論を持ち出して美しく分析をしたくなるという傾向にあるようです。今回の日銀総裁の講演を粘着状態でいちゃもんつけてますが、昔からその傾向はあった(副総裁時代に「営業局」を廃止したり)日銀総裁が益々「机上で考えた事をそのまま実行」みたいな動きに拍車を掛けてきているのを非常に懸念しているっつー事であります。

どうも「まず頭で考えた結論ありき」から思考が始まっているのではないかと思うのは、この後に「家計部門への金融機関の貢献」というようなお話の中で随所に展開されているのですよ先生。

『まず、家計の資金運用ニーズに着目すると、家計のリスク選好は、環境の変化に実に敏感に反応していることが見てとれます。例えば、銀行券発行残高の動きを見ますと、ペイオフ部分解禁のあった2002年4月には前年比16%もの高い伸びを示していましたが、信用不安の後退につれて最近では1%台の伸びに止まっています。その一方で、個人の株式投資意欲は企業業績の改善につれて高まっており、2003年度の個人の株式売買シェアは、非居住者に次いで2割強まで上昇しています。』

確かに統計はそうだと申しておりますが、例えば個人の株式売買シェアが2割強って言ってもそれは証券自己なみに売買するひとがわんさかいる事が寄与しているのではないかと思わず突っ込みたくなる訳です。

『従来は、個人にとって臨時かつ短期間の資金ニーズが生じた場合、定期預金の解約や金融資産の売却によって資金手当てを行うケースが多かったように思います。これには、日本の消費者金融がまだ十分には機能していないことも影響している可能性があります。確かに、銀行と消費者金融会社のローン金利の間には大きな開きがあり、このことは充足されていない個人の借入ニーズが存在することを示唆しています。』

企業金融でもそうなのですが、この手の話は何度もされており、時々思い出したように「充足されていないニーズ」とやらで商売しようと打って出る人たちがいるのですが、散々テレビで宣伝しているにも関らず相変わらず業績絶賛低迷中のキャッシュ○ンだのモ○ットだのを見ておりますとお判りのように、正直言って中間層の借り入れというものは存在し無い訳ですな。

精々クレジットカードのキャッシングや銀行のカードローン。そもそも総合当座貸越という便利なものもある訳で、それこそ定期預金を解約しないといけないような臨時資金のニーズでわざわざ手間隙かけて金貸しの門をくぐるほど暇な人はいないと思いますが。

なお、この部分に関しては昨日の時事メインコラム「金融観測」で「日銀の危ない個人金融観=庶民は借金で犬を買うべし?」というお題で鋭く突っ込んでおられますので是非そちらをご覧下さい。つーか勝手に参考にしているという説もありますが、スイマセン。


まーそんな感じで一事が万事「本当にこのお方実態をわかって話をしているのか」と激しく不安に駈られる訳ですよ。別にお育ち良くておエリート様で箸より重いもの持った事がなくても良いのですが、せめて現場で何が起きているのかを少しでも理解してから各種政策を推進していただかないと。結果として現実から遊離した有害無益な政策になってしまうか、あるいは現実とのギャップを埋めるために現場に無茶苦茶な負担が掛かるかと、どちらにしても碌でもない事が起きるわけですな。激しく懸念されるものであります。

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2004/07/26

お題「引き続き福井総裁の講演」

本題の前に金曜の債券市場。いきなり現物中期債というか中短期ゾーンのスワップに売り(払い)が出て相場下落。まーある程度下落する事もあろうかと思いますが、いきなり直近発行の5年38回債が安値更新をしてしまいましてちと驚きでした。何でも日経新聞1面の囲み記事で先日の日銀総裁講演が取り上げられて、どこをどう読むとそうなるのかサッパリ判らないのですが「量的緩和の出口政策を検討していることを示唆」などというお話だったようです。

超長期国債の入札がまぁほぼ無難に終了し、日本株が相変わらず弱体商状だというのにいきなり売りがご登場って事ですので、まぁ常識的に考えるとまたも新聞記事に踊らされて偉い人から「大丈夫か」の鶴の一声でもあったのかという感じであります。日経新聞も「景気回復で金利上昇」という「甘いささやき」がお好きなようで(-_-メ)、困ったものです。

それはそれとして福井日銀総裁の講演。お題は「金融サービスの高度化――経済の将来を切り開く」という奴ですので、金融政策の出口がどうのこうのというのは本題ではありませんでして、銀行経営に関するお話が本題。ご存知のように日本銀行は「銀行の銀行」でありまして、銀行の元締めとして銀行の現状をご認識していただきたいのですが、今に始まった事ではないのですけど兎に角現状認識が恐ろしくステレオタイプな状態であります。

別に福井さん個人が銀行経営の現状に関して紋切り型の事しか判っていないならば「アフォじゃの〜♪」と言って笑っていればよいのですが、何せ「銀行の元締めの親分」なので、トップのトップがこの調子では銀行監督行政がまともに回るとは思えないわけでして、激しく懸念される所でございます。


○担保を取ることと担保に依存する事は別ですが

金融機関のあり方として「効率的な信用供給」というのを挙げつつこのようなお話をしております。

『信用供給面では、新たな事業が求める高度で多様な資金調達ニーズに十分応え得るよう、金融機関側の工夫が不断に求められています。現に金融機関は、不動産担保への偏重を見直しながら、事業の将来キャッシュフローの評価を基本に、担保に依存しない与信を広げようとしています。』

「担保に依存する貸出」という言い方にはど〜も引っ掛かる訳でございます。現実に貸出をするための原資は銀行の場合は預金。預金というのはご存知のように元利払いを保証しているものでございまして、預かってきた預金に利子をつけて(最近は碌に付いていないようですが)お支払する為に貸出金に対して保全措置を取るのは預金者様に対して当然為すべき事ではないかと思う訳です。

まぁ確かに1980年代後半には「とりあえず金借りて株か不動産でも買いますか」状態でしたんで、あたくしが金貸しの手先だった頃にこの時代の貸出稟議書を見ますと「担保がありゃー金を貸す」という見ていて実に馬鹿馬鹿しい案件があちこちに転がっていた訳であります。これは確かに「担保に依存した貸出」って奴でしょう。

しかし、あたくしが金貸しの現場に立っていた時には既に不動産も株もバブル崩壊モードでして、曲がりなりにも事業の将来採算性がどうのこうのとか言う事は気にして貸出をしていた(ただし絶賛担保割れという話が多い訳ですが)訳でして、その貸出金の回収見込みについてやたらと五月蝿くなったために担保をビシバシ徴求しましょって話になっていた訳です。

確かに「担保が無いと入口時点で門前払い」というのも如何なものかとは思うのですが、元利金の支払を保証して調達した資金の運用として貸出を行なっているのですから、福井総裁が常々いうような「無担保貸出は有担保貸出よりも立派な貸出である」という論理には全くついていけないというか、融資の現場というのを理解しているのかこの人は?って感を強くする訳ですな。

『今後とも、こうした動きを推し進めていくためには、企業の取り組む新しい事業の内容に即し、キャッシュフローの評価方法を進歩させていく必要があります。また不動産担保に代えて、売掛債権や知的財産権など有形無形の価値を信用補完に活用していくことも重要になってくるものと予想されます。』

前半のキャッシュフローの評価方法の進歩というのは全く意味不明。不動産以外の担保を取りやすくする制度(というか法令というか)上の措置は推進していただきたいですが、あまり何でもかんでも担保に取れるようになると一般債権者の取り分がどんどん侵害されるので、両刃の剣でもあります。しかし冒頭の「新しい事業が求める高度で多様な資金調達ニーズ」っていうのも意味不明でして、別に新しい分野で事業をやるから高度な資金調達をする必要がある訳でもないでしょうに。というか「高度で多様な資金調達」って何よ??


○高度な資金調達の実例?

で、その続きとして証券市場の重要性について言及している訳ですが、

『また、資本市場調達が容易な大企業向けでは、証券業務の役割も重要です。例えば、最近、内外証券会社が、グローバルに活躍する本邦企業の公募転換社債を引受け、これを株価オプションと普通社債に分解し、内外の多様な投資家に転売する動きが見られます。今後、金融機関には、企業と投資家をともに満足させる高度な信用仲介が、一層必要とされるものと考えます。』

要するにCBリパッケージ。CBは債券+株式オプションの合成商品なので、それをばらして組替えるというのはまぁ裁定取引みたいなものなんですけど、このCBリパッケージというのはあたくしが債券部門の小僧だった頃から既にあった商品ですのでもう10年はあったでしょ。株価オプション部分(普通は激安お買い得オプションになる筈なのですが)は証券会社が自己ポジションで持つものと認識していましたが、国内店頭でも今は株式店頭デリバティブが解禁(1998年に解禁)になってますので、もしかしてオプションを買う人もいるのかも知れませんな、よー知らんけど。

既に「最近」と言っている時点で頭痛がするのですが、非常に単純な裁定取引を捕まえて「高度な信用仲介」呼ばわりされても激しく困るのでありまして、前段で言っていた「高度で多様な資金調達」というのがこの程度の基本的なお話(しかも全然メインの資金調達ではないのですが)をネタにしておられるとなると、恐ろしく情けないと思う訳であります。


○現実無視はなお続く

そんな話はまだ続くのですが、その流れで「企業と金融機関の今後はこうあるべきです」というようなお話になってくる訳で、これもまた福井さん何度か言及しているお話になります。

『わが国の企業と金融機関の長期にわたる緊密な関係については、企業金融の一つのモデルとして世界的にも注目されてきました。しかし今後は、互いにある明確な時間的距離を意識しながら建設的に提案し合い、チェックし合う、より時代の要請に沿った関係に修正していく必要があります。』

『このような新たな関係の下では、金融機関が企業の業況を肌理細かくレビューし、業況が変化した場合に機動的に信用供与の条件変更を行い、それを契機に企業側も業況改善への取り組みを加速する、結果として互いに時代の流れに沿って進むことができるといった、双方がメリットを享受できるようになるものと考えられます。』

機動的に信用供与の条件変更を行なったら「貸し渋り」だの「零細企業イジメ」だのと言われるのですが、そちらの方への認識はどうなっているのかと小一時間問い詰めたくなる訳です。市場で値段がつくようなモノじゃないんですから。それに業況が悪化してリスクが大きくなったからと言って信用供与の条件を厳しくしていったら相手方の負担が増加しるのですから益々業況が悪化する訳ですが。

『また、そのための工夫としては、信用供与の段階で契約継続条件(コブナンツ)をより明確化しておくことが有効であろうと思われます。また、例えば貸し手に将来の新株予約権を付けるといった技法により、債務(デット)と資本(エクイティ)を使い分けることも一案か、と思われます。』

非公開会社の新株予約権に一体全体何の価値があるのかと。大体世の中の企業というのが株式公開企業ならびに公開する気満々の会社だけではないんですが、何なんでしょう。まぁ「債権放棄」の変形として「貸出の株式化」などという事は良く行われておりますが、もしかしてそれが「高度な信用供与」と仰るのでしょうか?益々意味不明。

『このような形で企業と金融機関の関係を構築し直すことができれば、日本発の新たな企業金融のモデルとして改めて世界に向けて発信できるようになるかもしれません。』


という事で、相変わらず立脚点がへんてこりんな状況で企業金融に関して色々なお話をしているのですが、この人のこの手の話を聞くたびに日本の銀行及び企業金融の将来に不安を抱く訳であります。

では。

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2004/07/23

お題「福井総裁講演なんですが・・・これでいいのか?」

昨日の相場も平穏でして、20年国債入札も相場を崩す事なく順調に推移。と言っても相場が上昇して慌てて買いを入れるのはお調子者のディーラーくらいなものでして、フツーの投資家様は追っかけ買いの動き特になしという感じです。益々債券市場はのんびりモードになりそうです。

さて、そんな中で日銀総裁が日本経済研究センターで「金融サービスの高度化―経済の将来を切り開く」というお題で講演をしておりました。日銀総裁がお好きな「これからの金融斯く有るべし」というお話なのですが、まぁ突込み所満載というか、お笑いのネタとしては実に楽しい講演であります。内容的には激しく無内容でありまして、まるで学生時代のあたくしが金融機関への就職を希望して面接試験で言いそうな、というとかなり失礼ですが、正直その程度のお話であります。日銀総裁がこのような現状認識で「金融はこうあるべきだ」などと言うのを見ると激しく寒いものを感じる訳です。本当に大丈夫か今後の金融機関?

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0407c.htm


○大本営発表的表現

まぁこの部分は判っていて言っているんでしょうが、こういう表現のレトリックは敗走を転進と呼ぶ大本営発表的なものを感じます。

『そこで金融システムの現状ですが、焦点の不良債権の処理は順調に進捗しています。(中間割愛)また、昨年度決算では、大手銀行、地域銀行を通じて9割程度の先が最終利益の黒字を確保しています。』

大手で大赤字出している所があったような気がするのですが(-_-メ)。


○まるで学生のゼミ論文のような意味不明なお話

『わが国の信用仲介のあり方を巡る議論に関しても、私はかねがね、信用供与チャネルの多様化──つまりは間接金融から直接金融まで連続的にサポートできるシームレスな信用供給システムの構築が必要であると申し上げてきました。そうしたシームレスな信用供給システムは、多様な分業の中で構築されていくものだと考えられます。』

この「シームレスな信用供給システム」っつーのは福井総裁のお気に入りに登録されているようでして、金融の将来がどうのこうのという時に必ず出てくるのですが、未だもって意味不明です。何を言いたいのか解読できた方教えてくださいませ。

『また金融界で、比較優位を活かした多様な分業が成立するようになれば、金融機関の数の多寡を巡る議論はあまり意味を持たなくなります。わが国金融界に対しては「金融サービスが必ずしも十分でない」という批判がある一方で、「オーバーバンキングである」とも指摘されています。多様な分業が進展していけば、こうした複雑な状況も次第に解消していくように思われます。』

何でも、金融界で色々な部門に関しての分業がもっと進むべきだというお話の流れでそういうお話になっているのですが、分業が進むとなぜ上記のような話になるのかも謎な上に、それ以前の問題として業務は多様化してますが金融機関は集約化しているんですけど。。。。

ちなみに、総裁様講演の後の方で、個人部門への融資業務に関してこんな事を言っております。

『最近、金融界では、銀行、カード、信販、消費者金融といった形で分断されている現状を見直して、充実した店舗網を有する銀行自身が営業戦略面で工夫を凝らすとか、業界横断的なアライアンスを強化するといった対応を図っており、こうした努力を続けることによって、全体としてサービスの一層の向上が期待できるように思われます。』

お前はさっき「多様な分業が成立するのが結構」と言ったんちゃうかと。


○リスク管理に関して楽しいお話が

統合的リスク管理がどうのこうのと日銀総裁大得意になってお話を(^^)。

『金融業務についてまわる多様なリスクを全体として管理し、経営体力とのバランスや部門毎の収益性を判断できる枠組みが必要となります。これが統合的リスク管理の手法と呼ばれるものです。』

『具体的には、市場リスク、信用リスクといった諸リスクを計量化するとともに、各リスク量をバリュー・アット・リスク等の共通の手法で統合し、ビジネス全体のリスク量を把握した上、各業務分野に適切な資本を割り振るものです。』

何でも計量化できると考えているところがすでに痛いのですが。

『この先も、企業や家計の金融ニーズが多様化・複雑化するにつれて、金融機関が引き受けるリスクの態様や性格が変容を遂げることは避けられません。金融機関のリスクや収益管理の枠組みも、最新の金融理論や技法を取り入れながら、不断に改良されていかなければなりません。』

いかにも頭の良さそうな人が考える事ですが、この手の尤もらしい金融最新理論を持ち出してくる人たちの商業的目論見にずっぽり嵌っているわけでして、今後とも日本の金融機関は良いカモになりそうですな。

それはそれとしまして、その次が素晴らしい。

『そう申し上げたうえで、私は、リスクや収益を管理する枠組みが有効に機能するための最大の要素は、人間、とくに経営者の判断にあることを強調したいと思います。』

『実際、経済情勢の変化のみならず、金融市場での市況の変動、さらには地政学的リスクの顕現化など、様々な要因により、経営環境は事前の想定とは異なる方向に振れることがあります。このような局面でこそ、金融機関経営陣の機敏で冷静な判断が求められますが、それを可能とするには、平時から備えを充実しておくことが必要です。』

はぁそうですか、っつーか「避難訓練をやっておけば火事が起きても安心」みたいな香りがして(訓練が無意味とは言いませんが)なんとも。

『すなわち、金融機関が環境の変化に対し、ためらうことなく迅速かつ的確に取り組むことができるかどうかは、スタッフが、自社や業界を巡る現状はもとより、需要予測など将来に関する分析や情報を、常日頃から十分現実味のある形で経営陣に提供しているか、経営陣は、それに加え、平素から、幅広い視野、深い洞察力、豊かな構想力、強い決断力を磨いているか、にかかっていると思われます。』

統合リスク管理の話というよりはそれは「経営論」のお話。そもそも総裁のいう「スタッフが、自社や業界を巡る現状はもとより、需要予測など将来に関する分析や情報を、常日頃から十分現実味のある形で経営陣に提供」するというのはごく小規模なベンチャー企業みたいなところなら兎も角、大組織でそんな事ができると思うのが最早現実を理解していないという物です。

益々大丈夫かと思ってしまう今日この頃。


○変なレトリック

さて、突込み所満載でもっと色々と突っ込めるお笑い講演なのですが、昨日遅かった上に目覚まし時計のご機嫌が麗しくなくて寝坊してしまった為に遺憾ながら本日はあと2箇所ほどつっこんでお開きとさせていただきます。

『課題の第三は、郵貯や公的金融の改革です。わが国では、もともと郵便貯金が金融資産の中で大きなプレゼンスを占めていることから、資金仲介のかなりの部分が公的セクターを通じて市場メカニズムの外側で行われ、結果として効率的な資源配分を歪めている可能性が強いと指摘されています。』

公的金融も確かに色々とアレな所もありますが、それより郵貯資金の「出口」として激しく巨大なのは「財投」であったり「国債」であったりする訳で、効率的な資源配分がどうのこうのというのであれば現在の政府のあり方を如何なものかと言うのが話として先なのではないかと。郵政民営化の結果が先にありきという論理展開に見えますな。

『また、現状においては流動性預金の全額保護措置が継続されていることから、公的な元利保証が付された預貯金のプレゼンスが一層高くなっており、その結果、個人の間で「様々な金融資産の収益性とリスクを判断し、貯蓄保有形態に工夫を凝らす」という意識が育ちにくくなっています。このことは、日本の金融システム全体としてのイノベーションを妨げる一因にもなっているように思えます。』

という事でペイオフの全面解禁が行われるからどうのこうのという話をしているのですが、ご存知の通り決済性預金を全額保護する訳ですから、現状の超越的低金利が維持されている限りは、決済性預金全額保護がペイオフの骨抜き効果を生み出すと思いますが、そこについて判って話をしているのかどうかが怪しいわけですな。これも大本営発表なのでしょうか。


で、講演の後の方でペイオフ解禁に絡んで新BIS規制の話をしていますが、これがまたお笑いというか情けないというか。

『因みに、6月26日に公表された新BIS規制は、銀行の破綻を前提にしています。そこでは、銀行に対し、百年に一度起こるぐらいの最大の年間損失にも耐え得るような自己資本を最低限、保有することを求めています。これを裏返せば、それ以上の損失が生じた場合は、銀行破綻が発生することを想定していることになります。誤解を恐れずに単純化して言えば、ぎりぎり最低限の自己資本しか持たない銀行が百行あるとすると、そのうち年に一行ぐらいは破綻が生じても不思議ではないということです。』

多分銀行経営ってのは基本的に景気産業なのですから、年に一行破綻するのではなく、百年に一度起こるくらいの最大の年間損失が発生するような状況になったら全部が破綻すると思うんですけれども。確率問題じゃないでしょ。

まー判りやすくお話をしている積りなのかも知れませんが、あまりにも論理構成が???な部分が多すぎ。本講演の本当のお題は「金融サービスの高度化」というでして、そちらのお話が益々ツッコミどころ満載というか、「この人本当に現状認識しているのか????」と思わせる内容であります。お笑いと言えばお笑いなのですが、正直言って現実に起きている事と全然違う事を元にして政策決定されたら洒落にならんという感じです。既に鳴り物入りで導入された「資産担保証券の買入」のように形骸化しているものもありますが、形骸化しないで政策が暴走してしまうと激しく寒いのでして、何とかならんのかと申し上げたいところではあります。

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2004/07/15

お題「日銀総裁定例会見」

金融政策決定会合に行なわれた日銀総裁定例記者会見。一応注目材料だった筈なのですが、まぁ昨今余計な事を言って相場撹乱要因になっているという悪態を気にしておられるのか、材料に使われるような発言はあまり無かったという感じですか。とは申しましても、まぁやはりネタには困らない記者会見でもある訳でして、軽くチェックしておきませう。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0407b.htm

○いちいち反応する癖は治らない訳でして

会見の冒頭質疑で日銀総裁おもむろに新しい銀行券の見本パンフを持ち出してご説明をおっぱじめました。何と昨日は東京新聞の朝刊にもその件が写真入りで掲載される始末(^^)。

『なお、本日の金融政策決定会合と直接関係はないが、本年11月から偽造に対する抵抗力を強化した新しいデザインの銀行券の発行を開始する予定であり、現在これに向けて鋭意準備を進めている状況である。その点について一言触れさせて頂きたい。』

『1つ大事な点は、新しい銀行券の発行後も、現在の銀行券――新券が発行された後は旧券になる――は引き続き完全に有効であるということである。この点は、前もって世間で多少の誤解があるような気がしており、私どもにとっては心配事である。新しい銀行券と全く同様に旧券も使用できるので、この点はくれぐれも誤解のないようにお願いしたい。』

まぁ書店にいきますと預金封鎖だの財産税だのといった本がうじゃうじゃ出ておりまして(先日あたくしも珍しく1冊買って読書室でご紹介しましたが^^)一応その手の妄説を否定した訳ですが、日銀総裁さまとあろう方が一々妄説の流布に対してご心配されている方が心配という気もするんですが。んな事は質問されたら答えれば良い類の妄言(真剣に今回の新札発行でやると思っている人皆無でしょ)でして、質問される前にわざわざお答えになる必要はないと思いますけどね〜。

『旧券同様、新券についても、国民の皆様に親しまれ、広く流通することを期待しているが、旧券は無効となるのではなく、引き続き全く同様に通用するということである。』

当たり前です。ちなみに、大東亜戦争後に実施された新円切替以降に発行された通貨は全て通用可能(古銭商に売った方が高いので流通しませんが^^)の筈です。日銀のWebに書いてあります。


○「甘いささやき」って・・・・・・・・・(^^)

こんな質問をする記者がおいでです。

『(問)先程、何としてでもデフレ克服が必要だとおっしゃっていたが、景気の実態は非常に良いし、短観も非常に良い数字が出ている。デフレと言ってもCPI変化率はマイナス0.1%程度の状況で推移しているのだが、「デフレを克服しなければならない」とそこまで強く言うほどの問題を抱えているとお考えか。』

『(答)その甘いささやきには決して乗らない。やはり、将来のことを深く考えると、物価がマイナスに陥って国民の皆様が苦しい状況を再度経験しなければならないという不幸な状況をもう見たくないという気持ちが非常に強い。』

この記者会見要旨を作成していると思われる日銀の事務方の担当者が苦笑しながら作っている姿を想像しつつ読んでしまいます。

まぁある意味「語るに落ちる」って奴でして、上記の質問に対して福井さん「甘いささやき」というご認識をお持ちということを示した訳。福井さん個人としてはまさに上記の質問にあるように「景気の実態は非常に良いし、短観も非常に良い数字が出ている。デフレと言ってもCPI変化率はマイナス0.1%程度の状況」だから現在の異常極まりない手足を縛られまくった金融政策から脱却して、中央銀行本来の金融政策運営をやりたいってのがホンネではないかと勝手なる憶測を逞しくするあたくしなのでありました。まー元々景気強気の最右翼ですし。

一応その答えの続き。

『私どもの金融政策の約束の仕方は、あまりにもバーの高いところに縛りを設けて、そこにいくまでは目をつむるというほどに大きな賭けをしているわけではない。鉄棒で言えば、地面すれすれの非常に低いところにバーを設けて、そこにしがみついているとは言えると思うが、それぐらいの賭けは我々に許してもらえると思う。』

えーっとこの部分は、この質疑の前に「景気回復の進行に対してCPIが遅行するギャップが広がっている」という趣旨のお話が出てまして(昨日ご紹介した金融経済月報での「展望レポート中間レビュー」でも景気と企業物価は上方修正して消費者物価は判断据置きでしたね)、記者会見での質疑でも『景気と物価の対比では、物価は今のお言葉を借りれば一番ラグを伴っており、短期的には動きの鈍いところに焦点を当てて──あるいはそこをターゲットとして──政策をやっているというのは事実であるが、』と発言している事を意識しているかと思います。

どうも「甘いささやき^^」を否定するために金融政策のコミットメントのハードルが滅茶苦茶高い話なのではないと言いたいようなのですが、この字面だけ追って読んでますと、さっき話してた事と話のケツが合っていないようにも思える諸刃の剣(^^)。

なおもその続き。

『将来再びデフレに陥って、せっかく出始めた新しい展望を根こそぎ摘み取ってしまうようなことにならないように、多少の賭けをすることはお許しいただきたいし、我々は甘いささやきにはそれまでは応えない。こういう姿勢で臨みたいということである。』

どうもこの「甘いささやき」という言葉がお気に入りに追加されたようでして、この質疑は最後から2番目だったのですが、最後にもこの言葉がでておりました。


しかし、景気が明確に回復基調にある中で、異常な過剰流動性の垂れ流しを続けている金融政策は今後も継続しますっていうのは中々政策の説明をするのに整合性を取りにくいというのは事実でありますので、ど〜しても質疑応答とかを行ないますと、どこかに整合性の取れない所が発生してしまうのは仕方ないのとは思っております。ご同情申し上げてもいる訳です(^^)。


○余計な強調はしないほうが良いのでは

情報ベンダーで「必要な時間をたっぷり保ちながら我慢して量的緩和政策を続けていく」というようなフラッシュが出てきて「おいおいまたかよ」と市場は正直うんざり。この件が出てきた質疑応答の後半部分だけ引用します。

『デフレ脱却のためには、日本銀行はそれだけリスクをとる(引用者注:金融政策のターゲットを、景気回復に遅行するCPIに一点張りしているという事、要はビハインド・ザ・カーブのリスクなんですが、そう言うとまた別の思惑が発生するので慎重に言葉を選んでいますな)価値があるとも同時に判断しているわけである。この通過点だけはどうしても通過しないと、その後の真にダイナミックな日本経済の建設の道に通じないということである。そういう意味で、気持ちの上ではこの通過点を早く脱却したい。しかし、焦りすぎると通過点を通過し損なう心配もあるので、その微妙な結節点をここに求めている。我々は願わくば、結果的にここに過大なリスクを取ることなく、将来ある時点で通過したいが、それまで必要な時間的距離はたっぷり保ちながら、我々は我慢して政策をやっていくという構図になっていると思う。』

別に量的緩和の時間軸を延長しようという話の流れで言っている訳ではないというのはここまで読むとお判りになるかと。ひところ「CPIのターゲット引き上げ論」が妙に流布されて、あたくしなんぞは「もうアフォか馬鹿かと」などと罵倒しておりましたが、最近は逆に「CPIが経済実態に対して反応度が鈍い」という点の突っ込みが来るようになってきている訳でして、まぁ変われば変わるものです。

で、そういう話の流れで回答しているので、「CPIは景気回復に遅行するけれども、CPIへの一点張りの姿勢は堅持する」という事を強調したいがためにまた例によって例の如く「時間的距離はたっぷり保ちながら」などという余計な言葉が出てくるわけです。

変な思惑を呼ぶから止めなさいって言っても伝わる訳は無く(-_-メ)。

あたくしとしては「我慢して政策をやっていく」という方にこそホンネが出ているのではないかと思ってますが(^^)。


まー福井総裁ってある意味正直なお方だなーと思ってしまう記者会見でありました。インフレ参照値に関する質疑がなかったのはちと残念でした。

7月16日補足:「日銀総裁のホンネ」補足

昨日のドラめもんで「語るに落ちる」記者会見のご紹介をしましたがその補足。良く良く日銀総裁の発言記録をみていると、量的緩和の継続というお話をする際にいつも言っているのは、『我慢して政策をやっていく』とか『我慢強く今の政策を続けていく』というフレーズであります。

自分の発言意図を強調したいためにやたらと形容詞や副詞を多様する傾向にある日銀総裁のホンネはやはり「今の量的緩和はやりたくないけど我慢してやっている」って事なんでしょう。別に淡々と説明すればいいと思うのですが、自分の意図が市場にきちんと伝わっていないという認識があるために、自分の発言意図を強調しようとして却って裏読みされるという状態。

「市場との対話」ってのは市場を自分の意図する方向に持っていこうとする事ではないと思うんですが、どうも市場に対して何か働きかけたいという意思が見え隠れするんですよ、日銀総裁の言動を見てますと。

いずれこの件もまとめようかと思いつつ纏まりに欠けるのでとりあえず書いてみるの巻でした(^^)。



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2004/06/29

○何故か喧嘩腰の総裁記者会見

昨日ドラめもんでご紹介した日銀総裁記者会見の要旨が日銀Webにアップされました。これが中々笑えるのですが。
http://www.boj.or.jp/press/04/kk0406d.htm

最初の質疑応答から長期金利へのコメントを求める記者に対して、中央銀行総裁としての本来あるべき(と思われる)回答をしていたのは最初だけ。その後はどうも記者の執拗な質問にぶち切れて喧嘩状態になっているというのが要旨によく出てきております。最初の質疑の引用は割愛して、日銀総裁ぶち切れと思われる質疑の開始。

『(問)前回の記者会見時の長期金利に関する総裁の発言を巡って、マーケットでは2つの見方がある。1つは長期金利の上昇を牽制されたというものであり、もう1つは、長期金利の上昇を総裁が容認されたのではないかというものである。そういう2つの見方が交錯して長期金利が1.9%台へ乗せるような動きもあったのだが、その辺の総裁の真意について改めてお伺いしたい。』

中々嫌がらせ入ってますな。

『(答)特に意図を持って発言しているわけではない。マーケットに対する極めて客観的な我々のものの考え方と、その考え方に照らして見てマーケットの現実の動きがどうかということについて、コメントを申し上げたつもりである。』

『今も申し上げた通り、マーケットには、長い目で見て経済や物価の情勢の先行きに沿うように動いていくという一面と、短期的には様々な思惑も絡んで不安定な動きを示すという一面がある。常にこの二面を申し上げているので、一面の動きをとらえてどうだとか、また一方の動きをとらえてどうだという解釈は、有り得ると思うがそれはどうぞご自由にということである。』

他にはこんな質疑も。

『(問)前回の会見の時にデータをよく見た上で市場は動いてほしいというご趣旨のことをおっしゃったと思うが、そのデータというのは一体何をどういう部分を指しているのか伺いたい。』

『(答)本日長期金利について申し上げた通り、市場は、経済および物価に関する動き、指標を着々と消化しつつ動いていると申し上げた。何をというよりはすべての指標を消化しながら動いている。そういう意味では、市場は正常に動いているというように私どもは判断している。しかしやはり、市場は常に先のほうを見ながら動くという面もあり、そこにやはり時々思惑が入って不安定な動きを示すこともある。これは市場本来の性格として避けられないところである。そこのところは我々も注意深く見ていかなければならないと申し上げているところである。市場は、指標に目をつむって動いているとか、指標を読み間違っていると申し上げているわけではない。』

これじゃ喧嘩です(^^)。

ま〜今回の会見では「前回このように仰ってましたがどういうことなのでしょうか?」という質問が多くなっておりまして、要するに記者の皆様が「あなたは言っている事(も政策も?)が首尾一貫しておらん」という雰囲気で追及モードになってきているところが中々香しいものを感じるところであります。

そんな中で原油価格(だいぶ下がってきましたが)に関するこの質疑は一応チェックしておきましょう。

『(問)原油高について伺いたい。原油高については、前回の会見の中で総裁は、素直な物価高である反面、企業収益の圧迫要因にもなりうるとおっしゃったと思うが、現状でどの程度企業収益を圧迫する要因になっているのか、評価を伺いたい。また、出口政策を今後考えるにあたって、例えばコミットメントの総合判断の中で、その部分をどのように判断されているのか伺いたい。』

『(答)今のところはまだ消費者物価指数に出てきていない段階であるので、経済全般へのコスト高という面からの影響は我々としても測りかねている。少なくとも企業段階では、収益の見通しが急に暗くなったという感じは今のところ聞いていないが、やはり消費者物価指数の段階でどの程度影響があり、経済全体にコストアップ効果がどのくらいあり、また翻って企業段階がそれをどう受け止めるか見極める必要があると思う。何分にも景気は比較的順調に回復しているが、デフレ脱却という目標からすると、まだかなり遠い状況にあるので、原油価格の上昇を単に景気が強いことの反映というように一面的には見ていない。常に二面性――もう1つの面――についても注意深く見極めながら、対処していきたいと思っている。』

ちなみに、この答えの真ん中あたりにある『デフレ脱却という目標からすると、まだかなり遠い状況にある』というのが思いっきり失言というかサービス発言というか「やっちまった」って奴なんでしょう。情報ベンダーからヘッドラインが出てきて「おいおいまた言っちまったよ」という感じで債券先物の引け後の(余計な)上昇の一因になった訳です。

という話は兎も角、原油価格上昇に関しても前回は物価に注目した発言が目立ちましたが今回は妙にサービスフレーズっぽい発言。財務省に気を使っているのか、選挙期間中だから金利の余計な上昇をさせるとマズイと思っているのか良く判りませんが、前回の会見から見ると随分豹変しているという印象です。


全部引用する訳にもいきませんのでこの辺までにしますが、この会見は最初から喧嘩腰というか吊るし上げ大会というか。特に前回の会見要旨と比較すると実に対照的で笑えるのでご一読をお勧めします(^^)。

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2004/06/28

お題「元の木阿弥」

怒涛の不安定相場はいつになったら落ち着くのやら・・・・・・

○またやってしまった火付け会見

金融政策決定会合は予想通り現状維持。会合終了も11時半頃という素早さで、まぁ織り込み済みなので反応しませんでした。

で、反応したのは総裁会見(本当に反応したのかは怪しい節もあるのですが)でして、元々上昇というか踏みあがりのような動きで高値引けした相場の流れに火付けをしてしまった状況になってしまいました。週末引け後恐るべし。

肝心の総裁記者会見要旨はまだ日銀Webにアップされていないのですが、情報ベンダーから出てくる総裁発言は前回の落ち着き払った記者会見の状況とは一変して、昔のようにリップサービスが出まくっていました。曰く、「量的緩和政策を断固として継続する」「量的緩和政策を終了させるにはかなり長い時間が掛かる」ってな感じ。特に量的緩和政策の「期間」に言及したのは具体的な発言って奴ですので、またも金融市場に対するサービス発言という訳です。

前回の金融政策決定会合後に行った記者会見では、珍しくもサービス発言(失言ともいうが)が飛び出さない内容となっておりまして、日本銀行としてのスタンスと淡々と説明するものとなって「おお、やっと学習効果が働いて余計な事を言わなくなった、それでこそ中央銀行総裁」って感じだったのですが、結局元に戻ってしまいました。


先週木曜日(金融政策決定会合の前日)に林財務事務次官が記者会見をしておりまして、この時も「効果的な金融政策を日本銀行にお願いしたい」という発言を繰り返しております。まぁ財務省引き続き血圧上昇の巻って感じだったのですが、何度となく財務省筋から出てくる「金利上昇に対して怒り心頭モード」というシグナルに対して初めてまともに反応したという事なのでしょう。


○問題は「間が悪い」事でありまして

つーことで、結局福井総裁に置かれましてはどっしりと落ち着いて構えるというのは本人の性格として出来ないのか、それとも過去のサービスフレーズ乱発によって言わないわけには行かないという状況に陥っているのか判りませんが、どうも無理があるようです。

で、サービス発言をするならするでもいい(というか仕方無い)のですが、先週末のサービスフレーズもまたタイミングが悪いのがこのお方の何とも評しがたい特徴なのであります。先週末の場合は異常なまでに(というか当たり前なのですが)注目されていた物価統計が「6月東京都区部▲0.1%、5月全国▲0.3%」ということで市場が懸念していた「ゼロ」に達しておりませんで、債券市場は買い戻し優勢の展開となっておりました。従いまして、別に総裁のサービス発言が必要な状況ではなかった訳でして、総裁の発言が踏み上げモードに拍車をかけるという結果を生むだけになってしまった訳です。

今回は買い戻し合戦の火に油を注ぐ発言でしたが、以前も「金利に蓋をする」という迷言あるいは妄言によりまして10年金利の戻り高値1.2%をつけさせに行く相場展開(そういえばまだ2月の話ですな)を見事にサポートしてくださったり、もっと前では債券市場がバブル的上昇をしている時に「国債価格の上昇と株式バブルと同列に論じることはできず、バブルとは言えない」などといった趣旨の発言をしてみたりと、まぁこのお方が余計なサービス発言をするたびに相場が不安定化して上下に余計な振れを生じさせやすくなる訳です。

ど〜せそのような「サービス発言」をするなら、前回の金融政策決定会合後(6月15日)にすれば良いものを、実にタイミングが悪いとしか申し上げようがないお方であります。そんな訳で、またも債券市場には「福井リスク」が復活したと考えるのが妥当だという事になる訳です。困ったもんだ。


○発言の真意を勝手読み

情報ベンダーで識者のコメントを面白がって見ていたのですが、その中で「ほほう」と思ったのは東短リサーチの加藤さんのコメントでして、「短観で結構なよい数字が出てくる可能性を考えて、短観で債券市場が動揺しないように先に量的緩和政策の維持を強調した」というような感じ(間違っていたらゴメンナサイ)の指摘。確かにさもありなんという感じもする訳です。

まぁ本来的に言えば、CPIやらFOMCに短観と重要イベントが控えているので参加者は間違って相場が下ぶれした時への備えをそれなりにやっている筈でして、こ〜ゆ〜サービスフレーズを出す事によって折角皆さんが準備しているリスクヘッジを踏み上げさせてしまいますので、仮に短観の数字が上ぶれしていた場合には却って相場の下げに拍車をかける(ヘッジを解除しちゃった後だから)という恐ろしい効果を発揮する訳でございます。何だかな〜。

まぁ前回あまりにも淡々と記者会見を行い、隙らしきものを見せなかった総裁様。今回は散々質問を浴びせられて例によって勢いで言ってしまったっていうお噂もちらほらと仄聞しておるのですが。

ま〜どっちにしても「また元の木阿弥か!」って感じです。詳しくは日銀Webに本日会見要旨がアップされる筈なので、何か面白い部分でもあればまたご紹介します。

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2004/06/17

「総裁記者会見(6月15日分)レビュー」

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0406b.htm

○金融市場に関する発言

まず最初の質疑では直球で長期金利の質問が出ております。

『(問)長期金利がじわじわ上がってきており、昨日は1.85%台とほぼ4年振りくらいの水準までつけている。こうした動向について、ポジティブ・サインという見方がある反面、最近は政府筋からは行き過ぎた上昇への警戒感や牽制する発言も出ているが、長期金利の動向と現在の水準について、総裁の認識を伺いたい。』

長くて読みにくいと思うので途中できりますね。

『(答)長期金利に限らず、金融為替市場の市況の動きについては、丹念にフォローしているつもりである。また、市場の声にも冷静に耳を傾けているつもりである。市場の声として我々の耳に静かに聞こえてくるのは、今お尋ねの長期金利について言えば、世界経済がよりバランスのとれたかたちでより高めの成長を続けている、また、世界的にディスインフレーションの傾向にも少し変化が窺われつつある。その中で、日本の景気も回復してきている、そういうことが大きな背景だろうという声が聞こえてきている。』

『長期金利というのは、何回もお話ししているが、長い目でみると将来の経済や物価に対する人々の見方を反映して変動していくものであり、市場の静かなる声もそれと同じ見方をしているということだろうと思う。もちろん、同時に市場の中では、いろいろ思惑めいた話、そうした雰囲気もあるようだが、これはかねてから申し上げているとおり、市場は短期的には様々な思惑によって動く一面も有しているということだろうと思う。』

確かにこう言われると「長期金利の現状について大きな懸念はない」というフラッシュを打ちたくなるわなという感じです。で、その続き。

『私どもは、現在の市場の動きについては、先程申し上げた内外の経済の動きを反映して、為替市場、株式市場、債券市場、それぞれの市場が相互に牽制機能を働かせながら、均衡点を模索している段階と思っている。もちろん、市場は思惑によって大きく振れるリスクを常に抱えているので、日本銀行としては、金融政策の効果を円滑に浸透していく立場から、そうした動きを含め、注意深く見ていかなければいけないと思っている段階である。』


でもこの会見時点での問題というのは「量的緩和政策の早期終了を織り込む金融市場」なのでありまして、そういう観点からより突っ込んだ質疑もある訳ですな。

『(問)先程、「市場は短期的には振れることがある」とおっしゃったが、端的に伺うが、今の水準はやや振れている水準なのか。金利先物市場で昨日──今日は多少買い戻されたようだが──、来年3月限の先物金利の水準が0.3%近くまで上昇し、単純に考えると、来年3月での量的緩和政策解除という思惑を市場が持っているような市況になっていた。これも「やや振れている」とお考えか、長期金利と併せて、ご意見を伺いたい。』

うーん直球ストレートの投げ込みが厳しい質問です。で、お答え。これがまた数段落に分かれていて長いのよ。

『(答)市場全体を眺めていると、私どもが特徴的に捉えているのは、繰り返しになるが、為替市場、株式市場、そして債券市場が相互に牽制機能を働かせながら、均衡点を懸命に模索している動きだ。そういう意味では、非常に正常な市場の動きと捉えられると思う。』

ということで、不安定ながらも正常な動きで市場は次の均衡点に動くと言っているようですが。

『また、債券市場だけをみても、皆様方のご記憶に一番新しいのは、昨年の夏から秋の動きだと思うが、その時点と比べてみると、例えば、スワップ・スプレッドの開きがそれほど大きくないし、ボラティリティーが非常に高まっているという状況ではないと思う。先程私は「市場の静かな声」と言ったが、その「静かな声」が私どもの耳に聞き取れないほど掻き乱されているわけではないというのが市場の雰囲気であり、昨年の夏から秋にかけてよりはずっと落ち着いている。この2つのことが申し上げられると思う。』

うーむ、どこぞのレポートで作られた「偽りの武藤ショック」なんてのもありましたが、何と言うか「落ち着いている」のかね〜??

『しかし、昨日までのここ数日の動き──今日(引用者注:15日ね)は債券が買い戻されているが──については、足取りが少し速くないかというと、少し速いかなという印象は受ける。もっとも、それは市場の日々の動きで、1日、2日の動きを捉えてコメントすべき性格のものではなかろうと思う。』

2年やらスワップやらの動きは「1日、2日の動き」というよりは「安定していたものがいきなり動き出した」もの。そういう意味ではもうちょっと気を使った言い方をして欲しかった訳ですが、まぁそれは兎も角。

『いずれにしても、これからデフレ脱却の目的を果たしていくために、金融政策の効果を浸透させていく非常に重要な過程にある。私どもの量的緩和政策は、景気が上向き過程に入り、かつ上向きの動きを続ければ続けるほど、この量的緩和の景気刺激効果が強まっていく。この強まっていく効果をしっかり発現させて行かねばならない重要な過程に入っている。』

『従って、市場の動きがこれに対して攪乱的な影響を持つかどうか、あるいは、思惑がこれを乱すか、ということについては、非常に注意深くみていかなくてはならない。』

『繰り返し申し上げるが、今の緩和スタンスを続けるという我々の姿勢はいささかも揺るぎがない。この点について、思惑の入る余地はないと断言申し上げたい。』

最後に量的緩和継続に関してだけはきちんと言及しましたが、よくよく読んでみると長期金利の方についてはあまり下げようとする発言は出ておりませんな。「金利に蓋をする」などという迷言もあったお方とは思えませんな(^^)。

長期金利水準に対して政府(というか財務省)が「有効な施策を打ってくれ」という話が散々出ているのですが、その点に関する質問に対しては(時間とスペースの都合上今日は引用しませんが)基本的にゼロ回答ですな。表現についてはやたらと気を使ってはいるものの。


○物価動向に関して

金融経済月報にありますように、国内企業物価は相変わらず「現在は上昇傾向で今後も強含み」という見通しになっており、一方で消費者物価はCPIターゲットの縛りの問題があるので「小幅のマイナス継続」という見通しです。しかし、昨日ドラめもんでご紹介したように「ダム論」は絶賛発展中なわけでして、その辺の問題についてこれまた秋山登のカミソリシュート(古いね)って感じで質問が。

『(問)原油高と円高の修正ということで、企業物価については日銀が展望レポートで想定した見通しをかなり大きく上回ってきている。仮に今後、川下段階にも原油高などの影響が出た場合、一部では、これはコスト・プッシュ要因であり、企業収益、あるいは消費者にとってもメリットはないとの見方から、CPIが安定的にゼロを上回るという判断においても原油高による物価上昇というのは勘案するべきでない──つまりそうした物価上昇は量的緩和を解除するには十分条件にはならないのではないか──との見方もある。こうした見方についてのお考えを伺いたい。』

『(答)企業物価指数は、これから今年度が終わってみて、最終的にどうなるかわからないが、今の足許の動きは確かに少し上振れ気味に動いている。世界的な景気の回復、商品市況の上昇、それに原油高の影響が上乗せされているということだろうと理解している。しかし、その企業物価自身も中身をブレイク・ダウンしてみると、川上の動きが川中にかなり波及しているということであるが、川下段階への波及は生産性の上昇によってかなり吸収されて限定的に止まっている、という構図に分解することができる。』

ダムからの水はまだ川中にあると言うことですか。展望レポートよりも上ブレしていることに関して認めている事にはご注意ください。

『消費者物価指数は、景気回復に伴う需給要因の改善ということが一番基本的な要素だとみている。逆にコスト・プッシュ要因という意味では企業物価の段階でみられる変化が消費者物価段階にどのように及ぶかということであるが、これは目下のところ限定的な影響に止まっているし、止まり続けるだろう。ただ、原油については、一般の商品市況の浸透よりはストレートに川下段階、あるいは消費者物価段階にも及んでくる公算が強いと思っている。従って、もうしばらくすると、日本の消費者物価指数にも原油高の影響は及んでくるであろうとみている。』

だそうですので、原油高の影響ってことはCPIも暫くすると強含み。で、ここからが最注目点。重要なので段落を途中で切ります。

『原油高の影響が及んできて消費者物価指数の数字が少し変わった場合、これをどう読むかということはなかなか難しい問題を孕んでいると思う。米の値段が上がったから来年下がるだろうとか、医療費が上がったのは一過性のものだといった、特殊要因としての扱いは原油高については適当でないと思う。』

最後の部分に注目くださいね。特殊要因とするのは適当ではないのですよ。

『原油高の場合は、特に1970年代の石油ショックの時と比べて、今回は世界景気の拡大──つまり世界的な需要の増加──ということが大きな背景になったものであるという側面が強い。もちろん地政学的リスクに絡んで、いつ何時供給ショックが起こるかわからないという要素もある──そこは不確定要因である──が、経済的にみていくと、今回は世界需要の回復を大きな背景とする原油高という要素も非常に強い。』

まぁ確かにコストプッシュかディマンドプルかって話もアレなのでして、モノ不足が背景にあればコストプッシュって言えるのかも知れませんね。やたらと「原油高での物価上昇は量的金融緩和の解除に結びつけるべきではない」という話が横行(あたしもややしてますが最近宗旨変更中)しているのに対して中々挑戦的なコメントです。

『この面からみていくと、原油高というのは景気が良いことの反映であり、従ってそれは素直に物価高であると理解しなければならない面と、逆に原油高はコスト・アップを通じて企業収益を押し下げる、あるいは所得の海外移転を伴うということがあって景気にとってはマイナスの面があり、両刃の刃というところがある。』

『そこのところをじっくり分析しないと、単に表面的な消費者物価の変化率が原油高が浸透してきて変わったといって、単純な理解でこれを処理するわけにいけない。我々は経済全体に与える影響というものを少し深掘りしながら、それを分析していきたいと思っている。』

つーことで、何気に原油高に関して「原油高のCPI上昇は緩和終了に繋がらない」という議論に対して反駁しております。もちろん「我々は経済全体に与える影響というものを少し深掘りしながら、それを分析していきたいと思っている。」って言っているわけですから、原油高を全て景気回復需要増大だと捉えてはいませんが、フリーハンドはしっかり確保している訳です。


○日銀事務方の隠れた意思表明なのか?

ということで、本日はあえていくつかの質疑について質問と回答を丸々全文引用というのをやってみました。分量が多くなってすいません。

当然この会見要旨ってのは日銀の事務方(企画部門?)が作る(筈)でしょうから、昨日のドラめもんでご紹介した「金利上昇への危機感現れる国債市場懇談会議事要旨」と同じ理屈で会見要旨を作っている部署の意思というのを(公開の質疑応答ですから文面は日経金融新聞あたりの記事とほぼ同じになるんでしょうが)文書としては出せないでしょうが、何と言うか行間からにじみ出てくるニュアンスってのに感じたりする訳ですな。だんだん話がオカルトじみてきますが(^^)。

で、この要旨を読んで見ると、何となく財務省の感じる危機感とはやや温度差があるように思えるのですよ。この会見要旨。


気のせいなのかもしれませんがね〜♪

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「総裁記者会見」(2004/05/24)

金曜日にご紹介した日銀総裁記者会見の要旨が公表されたので、金曜日の補足をば。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0405b.htm

○質問はひたすら「新たな時間軸」

今回の金融政策決定会合はものの見事に何も変化のない結果でして、会見の冒頭で総裁が「本日、ご報告申し上げることは極めて簡潔である。」と言ったのですが、相変わらず会見要旨を紙に打ち出すと6ページ(実質5ページ)になってしまう訳であります。そして質疑応答が(定例の最初の質問を除いて)9問あったのですが、そのうち6問が「新時間軸」に関るものでした。まぁいきなり何の前振りもなしに先日の中原審議委員の講演と福井総裁の講演で出口政策が話題になってしまったのですから質問が集中するのは当然ですが。

金曜日にも申し上げましたが、どうも総裁「市場との対話」というのを妙に意識しすぎているのではないかと思われる節がございまして、余計な発言が多くなっている一因となっているように見えます。元はと言えば、国会やら政府向けやらに行った過剰とも思えるリップサービス発言が市場に波紋を呼び起こしたのが始まり。その動揺を抑えるために何かをすると、「やり過ぎ」になってしまい、今度はまた余計な期待を生んでしまうという状況になっている訳です。こんな応答がありました。

『(問)総裁は、最近「CPIゼロ%は通過点」だと言われているが、これは市場が先行きの景気、物価、政策を織り込んで不安定化することを防ぐ目的で言われているのか。「CPIゼロ%は通過点」ということの真意をもう1度伺いたい。』

『(答)私のほうは正直に申し上げている。多少私のほうから逆に疑っているのは、市場の皆様が、CPIがゼロになった途端に、何か日本銀行が態度を豹変させる、芝居で言えば、舞台ががらりと回って全然違った世界が展開するようなセリフで、いろいろと市場条件を探り合うということがもしかして行われる可能性があるのかな、と思うものだから──市場はそのように想像しておられないと思うし、私の疑いが間違っていればそれは全く良いわけで、むしろ良いケースなのだが──、そういう心配はないのではないかと素直に申し上げている。』

この「私のほうは正直に申し上げている。」というあたりが最早痛々しいというか総裁逆切れ状態というか何なのですが、今まで量的緩和政策のコミットメントの中にある「CPIゼロ」を(最終的な政策判断は「総合的な判断」な筈なのに)やたらと強調したために「CPIゼロ」が何か重大な護符のような扱いになってしまったのは、そもそも自分たちが原因であるという認識が今一歩欠けているよう見えるこの発言。

現在はといいますと、CPIがゼロ以上になりだした時に起こる(と言う事になっている)市場の不安定化を懸念する余りに「新時間軸」みたいな話が出てきて「時間軸が強化されるのではないか」という思惑がでてくる・・・・くらいならまぁ大した事は無いですが、「日銀はそんなに総合的判断に自信が無いのか」と足元を見透かされる事になり、(あたくしも言ってますが)「ゼロ金利解除のトラウマ」などと言われるようになってしまう訳です。

まぁ自分の作った影に自分が反応してやたらと動く破目になっている日本銀行には「まぁ落ち着け」とこっちが言いたくなってしまいますな。もう少し言動を首尾一貫させるのも重要ではないかと。


○景気認識

冒頭の「金融経済月報・基本的見解」に関する総裁の説明で景気への現状認識が示されていますが、例によって例の如く強気であります。

『先般の1―3月期のGDP統計の発表で、2004年度の経済の発射台を高くしたという感じを持っているが、現時点での私どもの2004年度全体を見渡す展望は、前回の「展望レポート」の通りである。内容的にも、先般のGDP統計で個人消費が我々の事前の予想よりは少し強く出ている印象があるが、今後、生産活動や企業収益からの好影響が雇用・所得面へ徐々に及んでいくという裏打ちを伴いながら、さらに個人消費がしっかりしていくということを期待しているし、おそらくそうなるであろうと考えている。』

お馴染みの「ダム論」復活の香り。

『物価面では、本日改めて特別なことを申し上げる材料を持ち合わせてはいない。国内企業物価については、川上段階の商品市況の動き等が波及してきており、上昇傾向がさらに明確化してきている。先行きも当面上昇を続けるとみられる。』

これもそうですな。

『一方、消費者物価は、そのベースにある需給ギャップは着実に縮まってきていると判断しているが、消費者物価指数そのものの前年比変化率という点では、なお当面、ゼロ近傍ではあるが、若干のマイナス幅をもって推移するという見通しを変えていない。』

CPIの見通しをゼロ以上にすると大騒ぎになるので、CPIの見通しだけは相変わらずマイナスになっていますが、言ってることはやたらと明るい見通しになっていることには注意が必要ですな。

『日本も含め、世界経済全体として、拡大シナリオがより明確化してきている。連れて、物価全般の大きな流れも少しずつ変化してきている中で、金融資本市場がこれに適応しようという動きがいろいろなかたちで出てきている。』

物価全般の大きな流れが少しずつ変化してきているそうです。デフレ脱却だというラッパは鳴らしませんが、まぁデフレ脱却が展望できてきたって事ではないかと思われます。


まぁ相場も見事に手がかり難で、イールドカーブも毎日日替わりで変化(時によっては日中で変化しますし)するという困った相場でありまして、どうもドラめもんのネタも同じような話で恐縮であります。週末の経済統計に注目したいですね

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「情報発信蟻地獄状態の日銀総裁」(2004/05/21)

昨日の日銀総裁記者会見の要旨は本日日銀Webにアップされると思いますが、本日はロイター日本語版ニュースで報道された「福井日銀総裁記者会見の一問一答」という記事を参考にちょっと見ておきたいかと思います。

昨日の会見で質問が集中した(ように見える)のはやはり「時間軸強化、インフレ参照値問題」でありまして、手を変え品を変え質問がされておりました。そしてその質問に対して日銀総裁は「まだ時期尚早です」というのに大童な状態であったように見えるわけですな。

記事の中で最後にでてきた質疑応答がちょっと笑えたわけでして、

『問:インフレ参照値が議論になるということは、日銀が量的緩和のハードルの実質的な引き上げを模索しているのではないか、そういう議論を始めているとする市場参加者もいる。そう考える市場参加者は誤解しているのか。』

『答:今のところ、約束しているコミットメントを修正しようという意図は全くないし、そういう議論は一切していない。審議委員の発言がそう理解されると、発言した人の真意にも反するのではないかと推察する。』

大体「量的緩和のハードルの実質的な引き上げ」話を盛り上げているのはどこぞの超有力経済新聞および一部の有力かつ著名なエコノミストあるいは債券ストラテジストの方々なわけですが、これで質問者がそのどこぞの経済新聞だったりすると自爆質問というかかなり恥ずかしい質問のような気もしますな。他社の質問だとするとこれは痛烈な嫌味質問でそれはそれで笑えるのですが。

という話は兎も角(^^)、中原審議委員の講演に関してはあたくしも先週のドラめもんで連日ネタにした通りでまして、その後の記者会見で中原委員は「量的緩和政策を解除したあとに金利ターゲットにしてゼロ金利政策を実施。その際に望ましいCPIターゲットを明示してある種の時間軸効果をもたらす」という発言をしている訳で、これを量的緩和のハードルの実質的な引き上げと言わずして何というのでしょうと指摘致しましたな。

まぁ例によって例の如く、またまた余計な情報発信をして撤回をするという間の抜けた状態が続いているのですが、恐らくこうやって否定を一生懸命しだすと「出口論の封印」などと言われて、またまたそれを否定に回らないといけなくなるというまさに「情報発信蟻地獄」状態。結果として、本人の意図しないところで「究極のマッチポンプ」を演じる破目になってしまっている日銀総裁におかれましては、エエカッコシイでウケ狙いのリップサービスを行ってきたツケがどんどん回ってきたという事でありますので、まぁご本人の自業自得であって、ざまぁ見ろと心の底から申し奉りたい所でございます。


しかしですな、本来は景気(というか株価)回復の初動段階でまだまだ物価上昇の気配も見られず、需給ギャップもでかいという頃には「CPI時間軸が存在するのでご安心」と言って時間軸効果を強調すればよかったのに、景気回復ムードに浮かれて「景気回復に伴う金利上昇は自然なこと」みたいな話やら「出口論」を連想させるような話をしだして市場の不安を煽ってしまい債券暴落祭りの火にガソリンをぶち込み市場大爆発。で、今回はと言うと、時間軸が近い将来ヒットしそうな雰囲気を醸し出してきている最近こそ「量的緩和からの脱却は最終的には総合判断で行う」と強調すればいいのに、妙にCPIターゲットのヒットの方にに拘って「実質的な時間軸の延長をするのではないか」という「市場の期待形成の安定化工作」について語りだして(総裁が語ったのではないが)またも市場の心理を不安定化させる(まだ爆発していないから良いようなものの)情報発信をおっぱじめて慌てて否定ってあまりにもセンスが無さ過ぎであります。

まぁこれだから「通常の金融政策に戻る時に何をしでかすか判らない」というそこはかとない不安をもたれる訳でして、いい加減にしやがれって感じでありまする。困ったものです。

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「気が付けば出口政策議論」(2004/05/14)

中原審議委員の講演に引き続き、昨日は福井総裁の講演がありまして、中原さんと同様に金融政策運営に関する言及がされ、時間軸が延びるというか強化されるという思惑が台頭しているようでもあります。そんなあたりを中原さんの記者会見と福井総裁の講演要旨を見ながら検証してみましょう。って多分さらっと流すだけになりそうでして、詳細検討は宿題になりそうですけど。

総裁講演→http://www.boj.or.jp/press/04/ko0405b.htm
中原氏記者会見→http://www.boj.or.jp/press/04/ko0405a.htm

○量的緩和終了後の話がでてくるという重み

中原審議委員の講演に引き続き福井総裁も「量的緩和政策が終了した後にどういう金融政策の枠組みが構築されるのか」という点についてお話をしている訳ですが、さすがに福井総裁はその「新しいゲームのルール」についての具体的言及は避けております。

『確かに、CPIの前年比変化率0%は一つの通過点に過ぎず、日本銀行としては、その先の政策運営についても透明性の高い方式を模索して行きたいと考えています。ただ、現状において具体的な運営方式を示すことは時期尚早であり、当面は既に掲げた目標達成のため脇目も振らず全力を尽くしたいと考えています。』

まぁ新しい金融政策の枠組みに関して当然ながら検討はしているのでしょうが、その内容に関して具体的な話をする訳はなく、まぁその必要も無いということです。

『もっとも、将来どういう政策運営を行うにしても、現在のような異例な金融の姿から脱して行く過程においては、長期金利をはじめ市場の動向について人々の予想が不安定になるリスクがあることは十分念頭に置いておかなければなりません。日本銀行としては、通過点の前後で市場の状況が急屈折するとか、著しく不連続になることのないよう、細心の注意をもって臨む必要があると考えております。』

まぁこの辺の話も実は微妙なところでして、そもそも現在のCPIターゲットが「足元のCPIをターゲットにする」というものですから、結果として「ターゲットが近づいてくると足元の経済指標に反応しやすい」という特徴というか問題点がある訳です。ターゲットから遠い位置にいるときには期待の安定化に寄与したかもしれないのですが、いざ接近してくるとこれが逆に不安定化を懸念される悩みの種となるという諸刃の剣であることが見えてきたということでしょう。

金融政策のターゲットを単一の指標、しかも足元の数値を参照にするというのはあまり行われない手法でありまして、日本銀行は壮大な実験をしているとも言えたのですが、案の定「ターゲットが近づくと期待が不安定化するリスクが生じる(可能性が指摘される)」というお話になってきたということでしょう。

勿論、現在の量的緩和のコミットメントに関しては、上記の総裁講演にあるように「最終的には総合的な判断で量的緩和の解除を決定する」ということになっているのですが、最初に「コミットメントの明文化」を行った時に期待の安定化を急ぐためだったのか「CPIゼロ以上」の方をやたらと強調した為に「CPIの足元の数字」の方ばかりが意識される展開になりそうになっているのは皮肉なことなんでしょうな。


○よく考えてみると・・・・・・

さて、ここまで話をして良く良く考えてみますと、中原審議委員の講演と福井総裁の講演を経まして「さて、量的緩和終了後の政策枠組みはどうなるんでしょう」などという話を何の抵抗も無く行っていることに気が付く訳であります。

何て偉そうに言ってますが、実はあたくしも言われて初めて気がついているのでありまして、実は一昨日の中原審議委員の講演について、みずほ証券の落合氏がデイリーレポートで「出口政策が公然と語られたことは注目すべき」と指摘しておられてまして、「おお、目から鱗!」と思った次第でございます(^^)。

実は時間軸の延長がどうのこうのと言って喜ぶのは早計ではないかと思うのはこの辺りにあるわけでして、勝手読みなのかも知れませんが「量的緩和終了を展望した場合に早いうちから出口政策を意識させておかないと、本当にCPIがゼロになってから大騒ぎになる危険がある」という認識を日銀が持っているために、そろそろ地ならしの準備でも初めてみようかという動きに着手したということなのでは?とも思えるわけです。

で、もっと勝手に読みを続けますと、中原審議委員の一昨日の講演で「新しい時間軸の設定」というような「時間軸の延長」を意識させるような話をしているのは、実は原材料価格の上昇に起因する消費者物価上昇が想定よりも早くやってくる(先日発表されていた4月東京都区部コアCPIは▲0.1%でしたが、「特殊要因で持ち上げられていた分の剥落」が特に見られなかったというお話もあるわけですし)ことを懸念し、事前に「CPIゼロ」のショックを緩和するために行っているという見方もできるわけで(って結構勝手に深読みしているんですけどね^^)、まぁ慌てて債券(特に短期ゾーン)を売り叩く必要は無いでしょうが、そんなに喜び勇んで債券を買い上げるほどのお話ではないと思うんですけどどうでしょうかね〜。


○ペイオフの全面解禁の次に懸念される事は

わずか3行(日銀Web上)のコメントですが、重要なお話と思えるのがここ。

『なお、市場条件の中でも、とくに長期金利については、政府の財政規律が確固たるものであること、投資家のニーズにマッチして適切な国債発行が行われることが、何よりも重要であることは改めて申すまでもありません。』

国債大量発行のケツを全部日銀にもっていくんじゃねぇコノヤローという風に読解したのは例によって読みにあたくしの主観的判断が入りすぎではありますが(^^)、徐々に「財政規律」だとか「国債管理政策」などといった点について日銀から反転攻勢(笑)が行われてくる気配が見られるのは誠に結構なことであります。散々「政治ウケばかり気にしているのではないか」と辛口批評(あるいは悪口雑言)をしていたあたくしも今回のこのコメントには瞠目。

デフレ脱却はかなり明確に見えてきたという自信の表れなのか「今度は政府の番ですよ」と言っているように見えるのは、ちょっとあたくしが希望的に見すぎなのかもしれませんが、今後の金融政策運営というお話と絡めて財政規律の問題を強調している(今までも財政規律について触れていた事はありますが、割とさらりと流していた)のは「ペイオフ全面解禁(何か抜け穴があるので本当に全面解禁するとは全く思えないのですが、それは兎も角)の後は財政規律問題」という姿勢を打ち出したものとして理解しております。


という訳で、結構盛りだくさんかつ内容的にまとめるのにお時間がかかっておりまして、今朝は記者会見の方やら、講演での経済見通しの話やらは宿題という感じになってしまいましたが、続きは後日ということでお願いしますm(__)m。

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「総裁記者会見を読む」(2004/05/06)

先日の金融政策決定会合後に行われた総裁記者会見要旨が先週末に日銀Webにアップされておりました。まぁ最近総裁が折にふれて話す事の集大成みたいな内容ですので、まとめのつもりでこちらをご紹介と言うことで。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0404d.htm

内容をまとめると3点に集約されるかと思います。その3点とは何ぞやと申しますと・・・・・・

1.非常に強気な景気認識
2.袋小路の金融政策
3.ペイオフ解禁への懸念

という感じですな。会見内容を見てみましょう(^^)。

○非常に強気な景気認識

いきなり会見冒頭から強気の進軍ラッパですな。

『背景となる経済・物価情勢の判断については、前回会合(4月8・9日)以降、あまり日が経っていないため、特段大きな変化はないと言ってしまえばそれまでであるが、経済は生き物であるので、注目すべき変化は刻々と出ていると思う。』

金融経済月報における景気判断を大幅に前進させた前回の決定会合以降の情勢に関して「注目すべき変化は刻々と出ていると思う」と言ってしまう所なんぞはまぁ恐るべしという事なのですが、(後でも触れますが)金融政策自体が打つ手なし状態なのを見込んでいるせいかあまりこの総裁の超強気発言を大々的に話題にしていませんな。

まぁ今まで散々この総裁の不規則発言に真正直に反応していた債券市場に学習効果が出てきたという事なのかもしれませんが、景気に関しては常に強気の最先端を行っているのが総裁だと言う事に関しては注意しておく必要がありますな。

『国内のほうも、昨年10〜12月の高い成長率に比べると今は少し反動局面にあるとは思うが、景気回復の裾野が広がってきている。あるいは、物価の面でも企業物価指数の段階では、海外商品市況高騰の影響が及んできているということがある。』

『また、本日、いわゆる「展望レポート」を決定・公表し、2004年度の経済・物価の見通しを明らかにした。そのポイントはいくつかあるが、一言で言えば、2004年度も、生産や企業収益の増加を背景に、前向きの循環が次第に強まるもとで、景気は回復を続けるという予想である。』

ということで強気一辺倒なのですが、物価に関しては下手に強気な発言が出来ないので、消費者物価だけ奥歯にものの挟まったようなお話に終始してしまうのが「量的緩和のコミットメントの明文化」という中央銀行にあるまじき政策スタンスの副作用という事でもある訳ですな。

『一方、消費者物価についてみると、物価の基調に影響する需給ギャップは着実に縮小すると見込まれる。しかし、米価格上昇などの一時的要因が剥落するほか、商品市況上昇の影響も企業部門における生産性上昇等によってかなりの程度吸収されると見込まれる状況にある。従って、2004年度の消費者物価指数は、基調的にはなおごく小幅の下落が続くと予想し、これをレポートの内容に織り込んだわけである。』

別の質問に関してはこんな感じ。

『展望レポートの中の消費者物価指数の予測、特に中央値の前年比−0.2%というのは、年度全体を見渡して平均して、大体そういう予測を持つということである。年度の中の変化、つまり、いわゆるラップ・タイムでみてどうかというようなことは、今の段階で正確に予測していないので何とも申し上げられない。』

本当かな〜と思うのですが。4月の東京都区部CPIも特殊要因の剥落とやらの影響があまり見られなかったと思うのですがねぇ。世界経済に関してはこんなコメントしてるし。

『世界経済の動向については、順調に経済が拡大する方向性が次第に定着してきているということが確認されたと思うし、一方、物価情勢について言えば、世界的にみてディスインフレーションの傾向に歯止めがかかりつつあるということも確認されたと思う。』


○袋小路の金融政策

大変本源的な質問が出ております。質問の後半だけ引用しますが。

『CPIの前年比上昇率がゼロ%以上になるまで「現在のフレームワーク」を続けるということであるが、現在のフレームワークは、2001年3月から──「金利」から「量」のレジームに変えた時から──続けているものである。このフレームワークの中では、当座預金残高目標を増やし続ける、一定に保つ、あるいは減らすということについては何も言っていないわけで、量のフレームワークを続けている限りは、「量的緩和である」という定義ができるかと思う。そういう意味からすると、「CPIの前年比上昇率がゼロ%以上になるまで現在のフレームワークを続ける」ということの中には、現在の30〜35兆円程度という当座預金残高目標を減らしていくということもあり得るのかどうか伺いたい。』

『後段のご質問であるが、「今のフレームワークのもとで緩和政策を続ける」と申し上げた。現状で当座預金残高目標が30〜35兆円程度という幅で、大量の流動性を供給し続けており、基本的にこれは修正しないということを前提に申し上げている。』

当座預金残高を減らす意思は全く無いらしいというご発言なのですが、量的緩和政策を解除する時は現在の当座預金残高30兆円がいきなり大幅減少(5〜6兆円くらいですかね)させるというお話のようです。まぁそれでも技術的にやってやれない事は無いでしょうが、当座預金残高を減らすという選択肢を全く否定するのはどうなのかな〜とは思うわけです。当座預金残高を減らすというのも市場への意思表示のツールだと思うのですが、それをしないで今後も「市場の安定化」について悩む破目になるのでしょうな。別の質問に関してこんなコメントをしております。

『今後、世界の経済情勢がさらに良くなっていき、物価情勢にも微妙な変化が出てくる中では、市場がその状況に相応しい金利形成をしていく過程で、市場の中における期待が常に安定を保つことが自律的にできるかどうか。市場には、いろいろな物事に過剰に反応する性格と、逆にそれを吸収する性格と両方ある。常に落ち着いた市場情勢で新しいファンダメンタルズに沿った市場条件が形成されていくかどうかということについては、事前にはわかり難いところがある。しかし、事後的にはなるべく安定性が常時保たれているという状況を実現する必要があるわけで、そういう難しさのことを申し上げたわけである。』

何か判ったような判らないようなお話ですが、要するに昨年の債券市場暴走には相当懲りているようで市場の安定化に関しては色々と気にしているという事のようで。それなら当座預金残高の減少という選択肢を作れば良いのにと思いますがしないようです。まぁ脅威の為替介入で発生したFB残高の問題ってのは根が深いので当座預金残高を減少させにくいという事もあるんでしょうな。

『私どもとしては、この3つの条件(引用者注:量的緩和のコミットメントの3条件)はかなり明確な条件ではないかと思っている。市場がその解釈を巡って混乱する可能性があるとは必ずしも思っていない。』

『しかし、おっしゃる通り、局面によっては理解の混乱が起こる心配というものをまったく打ち消しているわけではない。今後の状況をみながら、私どもとしては必要なメッセージは当然差し上げなければならない、その都度、工夫を凝らして新しいメッセージが必要であれば、差し上げていきたいと考えている。』

この後に「そのような事は直ぐには起きないでしょう」と言ってますが、まぁ精々工夫を凝らしていただきたいのですが、既に「金利をできるだけ低い所で安定させる」とか「金利に蓋をする」とか総裁が発信した「工夫を凝らしたメッセージ」を債券市場が見事に誤解して長期金利低下祭りが発生して余計な怪我人を増やしていただけに、将来CPI前年同月比がゼロになってきた時には「正しい工夫」をして頂きたいものであります。


○ペイオフ解禁への懸念

これも前から総裁がやたらと指摘している話ですが、ペイオフ前面解禁への懸念というお話があって、金融機関経営に関してもコメントしております。まぁ日本銀行は「銀行の銀行」でもあるのでコメントするのもご尤もなのですけれども。

『来年の春までに不良債権比率を半減することを確実なものにするために、不良債権処理を加速してもらいたいということがナンバーワンだが、特に大手行の場合には、当然自力でペイオフ全面解禁を乗り越え、さらにその先を展望し、前向きの新しいビジネスを顧客のニーズに十分応えられるかたちで展開できるように、できるだけ早い段階から体制の整備をしてもらいたい。』

とか言いながら、「決済性預金は全額保護」というペイオフが本来含む筈の自己責任(そういえばそんな言葉が最近流行しましたが・・・・)原則を見事に骨抜きにする抜け穴を大々的に拡大して「全ての銀行は個人向けの決済性預金を商品として導入すべし」って話になっている所が実に笑える所であり、そんな乳母日傘状態のペイオフ茶番解禁を捕まえて「ペイオフ全面解禁を乗り越え」も糞もあったものではないと思うのですが、まぁそれは日銀ではなくて金融庁マターの金融政策の方ですんで悪態はこの辺まで(^^)。

で、まぁ金融政策でやることがないので、プルーデンス部局がせっせとお仕事をしたいって事なのでしょうか。金融庁と競うように検査の強化をするそうですが、はっきり言って業務妨害以外の何物でもないのが当局の検査であります。金融庁と日銀で似たような検査やるようですが、ど〜せ提出資料は当局ご指定のフォームですので、同じような資料を2度作らないといけない訳で、大変でしょうな。まぁ最近はコンピュータが発達しているから少しは楽かも知れないけど。

『大口与信管理態勢検査──金融庁において新たに実施されるもの──については、金融庁独自の何か新しい考え方に基づくものであるかもしれない。私どものほうからは具体的にコメントを申し上げるのは難しいが、日本銀行の考査においては、金融機関の信用リスク管理体制について、債務者の実態把握あるいは自己査定、企業再生に係る経営改善計画の評価が適切かどうか、管理体制全般について厳正に検証することとしている。』

『特に大口与信については、信用リスクの変化が金融機関の経営全般に与える影響を定量的に算出した上で、適切な対応が講じられているかどうかということを確認するなど、より詳細な検証を行うこととしている。これらの点については、既に「平成16年度の考査の実施方針等について」にも盛り込んでいるところである。』

「信用リスクの変化」ってのはそもそも定量的な現象なのでしょうかと突っ込みを入れたくなるようなコメントでありますな。定性的な現象である信用リスクの変化を定量的に算出するってどういう事なんでしょうか。貸出資産全体を統計的に処理しろって事なのかも知れませんけど、正直無駄な努力でしょうな。まぁそういうのを商売のネタにしている人が多いっつーか最近の流行モノなんですけど、あれって一種の○○でしょ。

『おそらく、金融庁のやり方と、こうした新しい方針を盛り込んだ日本銀行考査とは、平仄のとれたものになっていくだろうと考えている。』

「平仄がとれたもの」なら別に両方でやる事はないでしょ。何か大手といわれる某銀行に勤務していた時代に本店の色々な部から似たような資料を少しずつフォームを変えて提出させられて支店の現場の下っ端としては非常に苦労した時代を思い出しますな(-_-#)。


で、大手金融機関には妙な最先端的管理手法を整備して欲しいらしいのですが、そもそもそんな管理手法に意味があるのか謎ではありますな。

『新しい業務の構築ということがビジネスの最前線できちんと行われるとともに、その銀行の資産サイドのポートフォリオの管理が能動的にできるような新しい経営体制――これは今年度の日本銀行の考査の方針に入れているが、この方針の中で念頭においたようなビジネスの体制――を組んでほしい。(中間割愛)新しい能動的なポートフォリオの管理、新しいリスク管理体制という裏打ちを十分持ちながら、新しいビジネスの体制を整えてほしい。』

何だか新しい事をして欲しいらしいです。何だかな〜って感じです。

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「時間軸と財政の関係」(2004/04/14)

激しく根源的な話で、このネタを研究しだすと大変長い話になるのですが、とりあえずあたくし的愚意見を何となく書いてみます。そのうち真面目に論理展開をしてみたいネタなのですが。

現在の景気回復に関しては時々書いているように「政府+日銀によって下支えしている景気」と認識しております。まぁ財政というか量的緩和によってサポートされる円売り介入とか、りそな救済スキームやら産業再生機構やらといった公共事業ではない財政支出あるいは財政の債務保証(見せ金)という隠れ財政による訳でして。

そういう状況の中でCPIが(死ぬほど上昇すれば別ですが)ゼロ程度になったからといって金融緩和状況を大幅に解除するのは如何なものかと思う訳ですな。先日も申し上げましたが恐らくゼロ金利解除の二の舞になるかと。

そもそも、ある程度の金利上昇に耐えられる試算にはなっていると思いますが、財政が上記の状況で相変わらず絶賛発散中なのに、金利上昇に耐えられるのかという問題がございます。だいたい今でも借金をしてチワワを買うような財政運営状態なのに、財政赤字が縮小しないのに金利が調子よく上昇しだした時に財政が借金の利払いに耐えられるのでしょうか。税収が上がって赤字縮小になってくれれば良いのですが。

ということで、まぁ正常な金融状態に持っていくためにはCPIよりもプライマリーバランスの達成(しなくてもする方向になるということ)が大事なのではないかと思いますが、如何でしょうか?

先日の日銀総裁記者会見でも「財政再建問題」と金融政策を絡めた質問がありまして、それに対して日銀総裁はこんなコメントをしています。ちと長くなりますが財政に関する部分を引用します。段落が切れていないので長い引用ですいません。

『それから、財政再建という言葉をお使いになられたが、長期的に見て日本の財政規律というものをより強めていくことが当然重要な課題である。この時間的距離はもっと長い。金融政策が今の緩和のフレームワークの段階を過ぎる時期からさらにその先において、非常にロングランな、しかし非常に重要な課題として意識していかなければならない。おそらく、金融政策が今お尋ねになったようなかたちで「エグジット」という時期を過ぎた以降の状況になると、人々が経済政策全体を見た場合に、財政規律を将来にわたってどう確立していくかという点について、デフレの状況が続いている今の状況よりもより厳しく、より厳格な判断を持ってウォッチしていくであろうと思っている。また、そのような人々の視線に我々は強く期待しており、長期的に見て財政規律というものがしっかりと担保される前提のもとでなければ、より均衡のとれた日本経済の姿にたどりつくための望ましい金融政策を組み立てていく作業そのものに困難さが加わるということにもなってくる。従って、日本銀行も時の経過とともに財政規律に対する見方を厳しい方向にしていかなければならないと思っているが、これは非常にロングランな課題である。政府は既に、10年くらい先を展望して、プライマリー・バランスの回復――ないしはプライマリー・サープラスの実現――というターゲットをしっかり持ってこれから前進していこうとしておられる訳だが、おそらく時の経過とともにそれがどのような具体的な裏付けをもって実現されていくのかについて、より詳しく人々の検証作業が始まるだろうと私は見ている。』

まる引用で長くなりましたな。恐縮至極。

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「通貨及び金融の調節に関する報告書の続き」(2004/04/07)

相場が多忙を極めていることもありますので、手抜きと言う説もありますが本日は昨日の続きです(汗)。

○量的緩和からの脱却での「重要な条件」なのか??

昨日引用していた福井総裁答弁の続きからまいります。『』は会議録からの引用で、『』内の()は引用者による注釈です。

『しかし、やはり、将来に目を転じますと、ある時点、こうした枠組み(量的緩和政策)からは脱却していかなきゃいけない。』

と言う事なのですが、この時に『そのときに非常に重要な条件が二つある』そうです。

『一つは、やはりこの量的緩和のフレームワークの中で金融政策をやっておりますと、特に流動性を非常にたくさん供給するという金融政策をやっておりますと、市場のメカニズムをある部分犠牲にしながらやってきているところがございます。したがいまして、委員おっしゃいましたエグジットポリシーということになりますと、この市場のメカニズムの蘇生と言うとおかしいんですが、回復を図りながら、そこを十分、どの程度回復したかということを見ながら変化を遂げていかなきゃいけないと思います。』

量的緩和を解除する際には市場メカニズムを復活させながら解除への地ならしをするという事のようですが、ここまで散々当座預金残高を増やしまくって短期金融市場の機能が無くなっている(今や市場とは名ばかりで、ボリュームは大きいけどよく見れば日銀との相対取引で調達運用しているような状況ですから)現状をどうやって復活させるのか、お手並み拝見と参りたい物です。

『もう一つは、委員御指摘のとおり、市場の期待の安定化ということが大事だというふうに思います。長期金利をただ低く抑えればいいというものではないにいたしましても、経済、物価の先行き見通しと整合的な金利の形成が、市場の中で余り不規則な動きをすることなく整々と形成されていくように、期待の安定化を図りながらやっていかなきゃいけない。』

この総裁様、昨年の長期金利、というか中短期の金利が絶賛大上昇して、早期利上げまで織り込む壊滅的な相場になったときは、本当に壊滅状態になって焼死者が続出する暴落祭り状態になるまで「金利は市場が決める」と能天気な発言を行っておりました。

で、先日も引用しましたが1月末の無意味当座預金残高目標引上げの後には衆議院財務金融委員会で「金利を抑える」発言をして、5年国債が0.5%割れまで買われるまさに余計な戻り相場を招く発言。

とまぁそういう訳でして、この総裁様が『市場の期待の安定化ということが大事だ』などと仰るのは日頃から意地悪く要人発言をチェックしている市場関係者(というかあたくし)にとりましては、自爆系のギャグにしか思えないのですが、ご本人は至って真面目に仰っているようであります。そこがまた恐ろしい所なのでありますが。


○話は逸れますが

総裁発言にあります「市場の期待の安定化」に関して恐らく総裁は自分および日銀の政策運営が発する情報を「市場の期待の安定化」を図るように日々よーーーく考えて行動しておられると思う訳ですよ。金融市場を撹乱させる為に行動する中央銀行なんてありえません(為替市場で暴れるのは別問題^^)から、客観的には一々火に油を注ぐ言動をしている日銀総裁および一部審議委員も大真面目に「市場の期待の安定化」をしようとしていると思います。

でも、結果として出てくる動きがどうも悉く後手後手に回っているというのがあたくしの受ける印象。まぁ片言隻句が後手後手に回るくらいなら別に実害はないのですが、この調子では政策決定でも後手を踏む事になるのではないかと危惧する次第でありまして、「ゼロ金利解除の悲劇リターンズ」を想像するあたくしであります。


基本的にあたくしは、現在の景気回復万歳モードは所詮財政で支えているものであると認識しております。直接の一般会計からの財政支出は抑制していますが、金融機関への税金投入を「見せ金」に使ったり、産業再生機構も何だか大盤振る舞いモードになりつつあり、止めは巨額介入で米国様の財政赤字ファイナンスを実施。それを支えているのがどんどん増えつづける日銀当座預金残高の拡大というように、「統合政府による新手の公共事業」はせっせと実施しております。

これらの「支え装置」が外れたときに本当にこの景気回復が持続するのかと考えますとどうも「?」が飛び交う訳でありますな。まぁその前の日経平均8000円とかが下にやりすぎだったという面もありますけれども。

そんな訳でして、現在の「本格的景気回復」などというものは所詮大本営発表の世界でして、循環的な回復局面に過ぎないと思ってはおります。とは言え、懐かしいアイテーバブルの頃を思い出しますと、大体「ありゃま随分上昇しだしましたな」などと思いだした頃から絶賛大上昇が始まり、最高値をつけるまでの日柄が約半年ございまして、この「景気回復モード」状態の相場もまぁ半年は続くでしょ。

今の内に勝手な大予想しておきますと、一番早くても参議院選挙。多分秋口まではこの状況が続き、もしかしたら年末あたりにピークを迎えるのかな〜なんて思っておりますんで一つよろしく(何を??)です。


で、ずれまくった話を戻して、あたくしが勝手に考える今後の展開を申しますと、そんな感じで美しい景気回復モードになって実は年末あたりに景気が循環的にピークアウト。その後にペイオフ解禁になるのですが、何となく余韻が残って無事通過。何となく景気も回復してるしペイオフ解禁も無事に実施できてさあ量的緩和解除だとなる時には実は景気は循環的に下降局面へ向っており財政も締めだしているので相乗効果でお陀仏さん。という感じでしょうか。

前回のゼロ金利解除の時にはまさしくアイテー系の怪しいベンチャー会社でお仕事にいそしんでいたのですが、アイテーバブル崩壊によって本業がいかれる前に投資損失やら資金繰りが回らないやらで騒ぎが起き出しておりまして、2000年7月(でしたっけ?)当時「何でこんなタイミングで金融引締めをやるんだろう?」と激しく理解に苦しんだ覚えがあります。

まぁ今回も似非本格回復景気(いや、本当の本当に本格的に日本の経済構造が改革されていて本格的な回復になっているのなら素晴らしい話なんですがね)ムードに何となく流されつつ、漫然と時間が経過してしまい、「さて量的緩和解除」とやっている時には循環的景気回復はピークアウトした後で、既に「宴の後」状態になっているのではないかと思う訳であります。

ま、小渕政権の「景気回復」とやらも大盤振る舞い財政によってもたらされたものでありまして、実は今回も同じ道を歩んでいるのではないかと思い出す今日この頃であります。今度景気が失速したら財政打つ手なしで、究極の手段「財政インフレによる事実上の徳政令攻撃」が出るのではないかと気にかけるあたくしです。是非杞憂であって欲しいものですが。


という訳で、昨日の続きと称しつつも全然別の話になりましたな(^^)。


ちなみに当該会議録ではウケを取るのが大好きで、その芸風があまりにも間抜けな為に支持率絶賛暴落中の某野党第1党様の委員から「ゴルゴ13」がどうのこうのという話題になった質問をしている一部始終も掲載されておりまして、読者の失笑を誘う内容となっておりますので、お暇なときに軽く読み流す事をお勧め致します。

ではでは。

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「通貨及び金融の調節に関する報告書」(2004/04/06)

ちょっと前の話になるのですが、衆議院財務金融委員会で半年に一回(だったと思いますが)行われる通貨及び金融の調節に関する報告というのがありました。その会議録が衆議院Webにアップされた(実は先週にアップされたのですが)のですが、普段割とさらさらと終わるこの報告会が今回に関しては参考人大量招集の上、結構なボリュームの会議録になっておりまして、とりあえず長時間やったようであります。

ちなみに、参考人で呼ばれたのが福井総裁、岩田副総裁、三谷理事、小林理事、白川理事と見事なメンバーでして、何でまたこんなに気合の入った参考人招致になるのか不思議な会であります。

量がやたらと多いので本日はその一部をご紹介。

○報告書概要の説明

『日本銀行の福井でございます。日本銀行は、昨年十二月、平成十五年度上期の通貨及び金融の調節に関する報告書を当国会に提出させていただきました。今回、日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をちょうだいし、厚く御礼を申し上げます。まず、最近の経済金融情勢について御説明を申し上げます。』

冒頭は福井総裁による当該報告書の概要説明なのですが、まぁ普段日銀が言っている公式見解です。「現在の金融経済情勢」に関しては日銀の金融経済月報と同じ分析になっていますので、最後のまとめの部分だけご紹介。

『我が国経済は、一年前に比べ、明るい動きが着実にふえてきていると申すことができると思います。しかし、同時に、持続的成長の実現とデフレ克服のためにはまだまだ課題が多く残されていることも事実でございます。また、大企業と中小企業、製造業と非製造業、都市圏と地方圏との間で景況感に格差が存在することも十分認識いたしております。景気の前向きの循環メカニズムが働き始めている今こそ、日本経済全体に景気回復の動きが行き渡るよう、企業、金融機関、そして政策当局といった幅広い主体が経済活性化に向けた取り組みを重ねていくことが重要であると認識いたしております。日本銀行といたしましては、民間部門の前向きな経済活動を金融面からしっかりと支援し、持続的な成長軌道への復帰とデフレの克服に向けて今後とも全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。』

相変わらず景気認識は大いに強気です。前々から当ドラめもんで指摘しておりますが、恐らく日銀でも一番強気。しかもかなり前から強気継続しておりまして、まぁ昨今の情勢は総裁としては会心の状態って感じでは無いでしょうか。自信の程が窺われます。

○谷口隆義委員の質疑

公明党の谷口さん、ご本人も質疑の時に仰っていますが、福井総裁就任時には財務省の副大臣をやっていたお方で、時々金融政策決定会合にも出席していたような記憶がございます。

まぁこちらのセンセイの質疑は基本的に(与党なので当然ですが)大翼賛質問でありまして、総裁もご機嫌で答弁をしているという雰囲気が会議録から伝わってきます。実際見ていないので勝手な想像で申し上げているのですが^^。

質疑を全部紹介していると延々とかかるので端折りますが、谷口委員の具体的質問の一発目は「量的緩和のコミットメントの明確化」の経緯と意図となっています。

『昨年の八月、九月に、若干景気回復が見込まれるということで長期金利が上がったときがありまして、これは一・六%程度まで長期金利が上がったわけでありますけれども、そのような、市場のオーバーシュートをやはり懸念するというようなこともこれあり、日本銀行でこのような厳密な定義(引用者注:量的緩和コミットメントの明確化)をすることによって、いわばエグジットポリシーと申しますか出口政策を余り論じないようにしよう、まだ先なんだと。いわば、先ほどのデフレのことでありますけれども、やはりなかなかデフレは難しいよというようなことで、簡単にこれがまたすぐにさっといくようなものじゃないというようなことでやられたのではないかと思うわけでありますけれども、厳密にまた定義をされた目的を教えていただきたいと思います。』

で、これに対してよせばいいのにまたサービスフレーズが炸裂する福井総裁。困ったものです。

『私どもの物価に対します基本的な認識は、日本経済が持続的な経済の成長パスにしっかり戻っていくということを前提に、物価、デフレという姿で根が深く生えている、この根をだんだん短くしていって物価の動きをプラスの世界に持っていく、この根の深さということを十分認識しながら金融政策をやらせていただきたい。景気という、表向きに出ている姿が少し好転したからといって、物価のデフレという根が急速に短くなるものではないという認識に立っているわけでございます。』

この「デフレの根」ってのをどこぞの情報ベンダーが間違えて「デフレの芽」と配信してマーケット関係者に笑いを取るという自爆ギャグを行っておりましたが、それは兎も角。

『こういう前提からいきますと、非常に早い段階から長期金利が先を読み過ぎて上昇するということとは両立しない物の考え方になります。そういう意味で、私どもは、先々まで金融緩和が続くという約束を改めて明確にして、私どもの持っている認識を国民の皆様方にも同じように持っていただいて、金融政策の効果の出方に十分関心を払い続けていただきたい、こういう趣旨で実施したものでございます。』

まぁ段々こういうのに反応しなくなってきている債券市場というのも結構なお話ではないかと思うのですが、別の観点からしますと、この総裁のいる限りは日銀の送るシグナルが思いっきり誤解されて伝わりやすい(誤解されるような訳のわからん言い方や行動をするからいけないのですが)訳でして、市場の対話もあったものではないという話もまた事実かと。


で、上気し次に関連して出口政策についての質疑もあります。

『エグジットポリシーを市場関係者はいろいろ論じられているわけでありますけれども、これはなかなか日本銀行の方からおっしゃるのは難しいと思うわけでありますけれども、しかし、これをタブー視するというわけにいかぬのではないかと私(谷口委員)自身は思うんです。(中間大幅割愛)このエグジットポリシーも論じていく、それは市場に安心感を与えながら論じていく必要もあるのではないかと思うわけですけれども、総裁、ちょっと言いにくいでしょうけれども、御答弁をお願いいたしたいと思います。』

で、この出口政策に関しての答弁はこんな感じです。

『私どもも、量的緩和政策という今までとったこともない政策を異例の措置としてとっているわけでございますので、できるだけ早くデフレ脱却の成果を上げて、こういった異常な金融政策の枠組みからはやはり卒業して、通常の金利機能が生かせる金融政策に早く戻るべきだ、こういうふうに思っております。』

『しかし、(途中割愛)この実態を十分整える前に我々は決して早とちりはできないということでございます。』

『そのために、ことしの一月には、景気はいい方向に向かっている中にあっても、なおこの回復をより確実にするために追加的な緩和措置をとった。ある意味で時間軸効果もこれをもって補強して、国民の皆様方ももう少し、今のかなり大胆な緩和政策が長く続くんだということについて認識を新しくして持っていただきたいという趣旨でやったわけでございます。』

『しかし、やはり、将来に目を転じますと、ある時点、こうした枠組みからは脱却していかなきゃいけない。』

3番目にまた余計なフレーズが有るのですが、日銀総裁の発言を通して見ますとこの辺の金利に関するコメントはサービスフレーズであってサービスフレーズではないという見方も言えるかも知れません。

つまり、日銀総裁としては景気に関する認識がとにかくカンカンの強気になっている訳でして、その大強気景気認識からすれば「先回りして長期金利が上がる」という事態が起きても不思議ではない訳で、総裁はその基本認識の元に金利上昇を抑制する積りで、量的緩和の拡大に関して後付けで「今のかなり大胆な緩和政策が長く続くんだ」というような発言をしているのではないかと思います。

ここ近日はともかく、2月頃の債券市場では平均株価の伸び悩みを背景にして景気回復のペースに関して懐疑的な見方が出てきている所でしたが、日銀総裁としては景気に強気一辺倒でしたので、総裁なりにシグナルを出したら、市場が勝手に誤解をして金利絶賛低下攻撃により、何故か5年金利が0.5%を割れてみたり10年金利が1.2%に接近してみたりしたということなのでしょう。

シグナル出すのは結構ですが、「市場との対話」を文字通りしていただきたいものです。どうも市場の状況が総裁にちゃんと伝わっていないような気がするんですよね。総裁の出すシグナルが「火に油を注ぐ」状態になることが往々にしてあるというのはいかがなものかと思う訳で。


まだまだあるのですが、時間の都合上この辺で。

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「総裁の心象風景を勝手に忖度する」(2004/04/02)

相変わらず性格と意地の悪いあたくしは日銀のWebから「入行式における総裁挨拶」などというものを見つけて来る訳であります。

http://www.boj.or.jo/press/04/ko0404a.htm

相変わらず景気にはお強気でおいでの総裁様は、景気に関してはこんな形で言及しておりまして、やる気満々と言うところですか。

『日本経済は、持続的成長、デフレ脱却へ向けて着実に前進しており、次第に好ましい動きを見せ始めている状況です。これまで大変苦しい時期を経験してきた訳ですが、今正に、過去10年以上にも及ぶ国民的努力をどうしても結実させなければならない大切な時期を迎えています。』

しかし、自分たちの政策意図がきちんと伝わっていないという批判に付いては気になるようですな。日銀内部的にはカリスマ総裁として絶賛君臨中というお噂をちらほらと聞くのですが、この手の批判を妙に気にするところがこの人のウィークポイントではないかと思う訳ですな。これがまた。

『日本銀行は、経済全体のより良き動きを実現するため、公的な立場で仕事をするところですが、政府のように法令で律するのでなく、銀行券の発行や、金融市場における様々な取引を通じて、意図するところを経済の隅々まで、国民の皆様に的確に伝え、その方向に沿った行動を促すことによって、目的を達成しなければなりません。その際大切なことは、日本銀行の考えていることが国民の皆様に十分理解されることです。』

論理的整合性が破綻している政策運営をして何を言ってるんだかって気もしますが、内部にはやたらと権威的で外の批判を妙に気にするという姿勢は何ともね〜って感じです。これ以上書く暴言になりそうなので以下自粛。続きを読んでみます。

『従って、皆さんも、中央銀行員として、専門性、得意分野のノウハウを厳しく磨き上げていく必要があることは申すまでもありませんが、狭い殻の中に閉じこもってはならないという点が非常に大切なことです。』

まぁそれはそうですな。その後一言入るのですがそこは飛ばして、その次に出てくるのが「セントラルバンクサービス」なる不思議なお言葉。

『今、皆さんが持っておられる強い好奇心、広範囲に及ぶ関心を、今後益々広げながら努力してもらいたいと思います。そして、国民一人ひとりの心の奥底に迫るという気迫で、タイムリーに政策行動その他高度なセントラルバンク・サービスを提供していく心構えを是非持って貰いたいと思います。』

タイムリーに政策行動ってのは自分に対する言い訳なんでしょうけれども、この「高度なセントラルバンク・サービス」って何ですか??中央銀行は実効ある政策を着実に遂行してくれれば良い(それが難しいからこそ優秀な人材が求められるのですが)わけで、別にサービス精神を持たなくても結構なのですが。

パブリックサーバントの意図で言っているのかと解釈したいですけれども、何か違和感の思いっきりある言葉です。もしかして国会やら記者会見やら講演なんかで「サービスフレーズ」を語るのが「セントラルバンク・サービス」なんでしょうか???

で、この総裁様がおいでのうちには日銀は「動く」のがお仕事になるようですので、金融政策のスタンスが安定している筈なのに、余計なサービスフレーズ的な情報発信によってスタンスがぶれるかと見紛う事も起きるのでしょう。頭の痛い所です。

『その(引用者注:近日実施される日銀の組織運営と人事制度の見直しの)キーワードは「戦略、起動、実現」です。このキーワードは、皆さんも、今この場で確りと頭に入れておいて下さい。』

『日本銀行は、昔の中央銀行のような「鎮守の森」ではありません。』

『皆さんの旺盛な好奇心、ものごとに挑戦する心を呼び起こすダイナミックな職場です。』

『厳しい中にもワクワクしながら仕事に打ち込める、仕事を通じて社会に貢献するとともに、自分自身を磨き上げることが出来る、一人でも多くの皆さんと早くそういう気持ちを共有したい。』

確かに世の中の動きが速いですから鎮守の森でも困りますけど、やはり中央銀行は「通貨の番人」という役割を果たす為にわざわざ政府と別組織にしているという歴史的経緯というか歴史の教訓も踏まえて頂きたい訳でして、意気込み抜群状態で「ワクワクしながら」「ダイナミック」に行動されても困るんですけど。


と、相変わらず性格と根性の悪いあたくしは思うのでありました(^^)/。

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