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2005年度下期の福井総裁発言等インデックス

2006/03/28「3月10日の衆議院予算委員会での岩田副総裁、福井総裁の答弁」
2006/03/23「国会で火消し発言再び」
2006/03/17「参議院財政金融委員会で火消し発言をしているのですが・・・」
2006/03/13「解除発表時の総裁記者会見のポイントだけ少々」
2006/03/07「参議院予算委員会での総裁答弁と首相発言」
2006/02/27「国会でまたも前傾発言連発」
2006/02/15「9日の記者会見補足、論点多し」
2006/02/10「やる気満々の総裁記者会見」
2006/01/24「総裁記者会見、景気には強気でインタゲ否定、実質金利マイナスへのリスク言及も」
2005/12/26「福井総裁講演の金融政策に関するフレーズ(政策予想をおまけにしてます)」
2005/12/20「トーンを抑えているようで抑えていない総裁記者会見」
2005/12/09「またもやる気満々講演」
2005/11/24「記者会見補足」
2005/11/22「俺様理論大爆発の記者会見」
2005/11/21「総裁定例記者会見メモ」
2005/11/14「展望レポートの解説をした総裁講演」
2005/11/10「長期国債買入と金融調節の柔軟性(9日分エントリーの補足)」
2005/11/09「やる気満々の記者会見(10月31日分)」
2005/10/24「総裁国会答弁続き(頂いたメールより)」
2005/10/21「またまた国会(参議院財政金融委員会)で不用意発言」
2005/10/20「諮問会議での総裁発言」
2005/10/17「総裁記者会見補足」
2005/10/14「総裁記者会見、もう飛ばす飛ばす」
2005/10/13「総裁定例記者会見の録画放送を聴いてみた」
2005/10/11「10月3日の衆議院予算委員会での山本幸三議員とのやりとり」
2005/10/04「国会でお得意の売り言葉に買い言葉」
2005/10/03「総裁記者会見続き(9月29日)」


2006/03/28

お題「今更ですが3月10日の衆議院財務金融委員会」

つーかまあ相場の方が月末の買いくらいしかネタ無いのでちと古いですが量的緩和解除の翌日に行われた衆議院財務金融委員会での質疑応答から少々。

さすがにこの日はあたくしも衆議院インターネットTVを聞きながらお仕事をしてましたが、まあまともに読んでいるとかなり長いので(結構長時間でした)ほんのさわりだけ。

衆議院のウェブサイトから会議録→財務金融委員会で3月10日の分をクリックすると出てきますが、一応URLも置いておきますね。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516420060310007.htm


○岩田副総裁もフォワードルッキング

最初に質問をした越智隆雄委員に対する岩田副総裁の答弁。

『これでは、ただいま時間軸効果についてのお尋ねがございましたので、お答えを申し上げたいと思います。(途中省略)具体的には、消費者物価、除く生鮮食品の前年比が安定的にゼロ以上となるまで継続するという、これは政策持続効果とかあるいは時間軸効果というように申し上げておりますが、こういう効果を通じまして市場の金利を低目に安定させる、こういう効果が生まれたというふうに考えております。』

『しかしながら、金融政策というのは、本来、十分長い先行きの経済、物価の動きをいわばフォワードルッキングな形で予測しながら、弾力的かつ機動的に運営すべきだというふうに考えられます。したがいまして、今回の新しい枠組みのもとにおきましては、現時点におけます政策委員の中期的な物価安定の理解を示す、それから、二つの大きな柱に従いまして経済、物価情勢を点検していく、さらに、これを前提といたしまして、当面の金融政策運営の考え方を整理して公表する、こういう新しい枠組みのもとで市場との対話を円滑に行っていきたいということであります。(以下省略)』

ということですので、岩田副総裁のこの発言から行きますと、量的緩和解除後には金融緩和政策をビハインド・ザ・カーブで運営するリスク(量的緩和政策のコミットメントには本来ビハインドの運営になるリスクが内包している)は取らないというお話になるかと思います。

でね、岩田副総裁って物価に関してはかなり強気の人でして、量的緩和政策を実施している時から「これだけ量を出しているのだから物価が上らないのはおかしい」という趣旨のお話が時折聞かれたと思うのでして、物価に関して強気で、金融緩和政策の政策効果がかなり有効だと思っている人が金融政策は本来フォワードルッキングという話をすると・・・・何かタカになっちゃうかもしれませんな。

この答弁を聞いた時にあたくしは「岩田副総裁フォワードルッキング発言キター!」と勝手に盛り上がっていたのですが、特に反応していなかったかも知れません。まあ一応こう言ってますんで念の為。


○福井総裁の説明

まあ当然ながら色々と説明しているのですが、まあ代表的な部分はこの辺りかと思います。同じく越智委員からの質疑応答部分です。

『量的緩和政策のときと違います一つの点は、先ほども申し上げましたとおり、コミットメントによって日本銀行がみずから手足を縛るということはしない、フリーハンドでタイムリーな金融政策をできるようにした。』

『コミュニケーションの仕方も変わってまいります。これが二番目でございます。我々は、政策委員の一人一人が持っておられる物価観というものを正直に出して、世の中の人々の物価観と十分すり合わせができるようにした、これは大きな透明性のバックグラウンドでございます。(途中省略)』

『第三の違いがございます。それは、量的緩和政策のときは市場金利の動きは原則的には封殺されている、特に短期金融市場でございますね。今後は、金利が生きてくるということでございますので、マーケットとのコミュニケーションという場合に、金利の動きというものが仲介項になってまいります。言葉のやりとりだけがコミュニケーションではない、本来のマーケットとのコミュニケーションでございます。我々が情勢判断について見解を述べ、市場の理解するところは市場が先行きのレートということで示し出してこられる、見解のすり合わせの中でそういう市場レートが敏感に動くということで、市場レートを仲介項としてダイナミックなコミュニケーションが行われる、これが本来の中央銀行とマーケットとのコミュニケーションでございます。そういうふうに変わっていくということでございます。』

まあそうですかって感じですが、どうみましても「我々が情勢判断について見解を述べ」以下の部分ちゅうのは現状では政策委員による市場の口先介入あるいはアラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態にしか思えませんな。


で、その次の質疑応答でこんな発言がありまして、「いつまでも低金利と言うのは勘違いじゃねーのか」ということになったわけですな。

『金利と申しますものは、経済、物価の情勢に見合った金利水準というところにセットされて初めて金利機能が最大限その効用を発揮する、資源の再配分機能というのを最も有効に発揮することによって経済の活力を最大限引き出し、いい経済のパフォーマンスを実現していく道につながる、こういうことになります。したがいまして、いずれは日本の金利も日本の経済、物価の状況に見合った水準に段階的には引き上げていく必要があるわけでございます。(途中省略)』

で、この続きでこういう発言も一応しております。念の為。

『この両面を考慮しながら、しばらくはゼロ金利ないしは極めて低い金利水準というものを保てる期間があるのではないか、こういうふうに想定しております。しかし、いずれは中立的な金利水準に徐々に戻すということがこれからの日本の経済の活力を真に引き出す道につながる、こういうふうに考えております。』

前半の部分と後半の部分両方のうちどっちを強調するかによって与える印象は違ってくるでしょうなあってお話ではございます。

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2006/03/23

○火消しのハーモニーですが・・・・

昨日は参議院財政金融委員会に福井総裁が出席。しかしまあいつも申し上げてますが、なんでそう毎度毎度委員会に日銀総裁を呼び出さないといけないのかさっぱり判らんですな。出席すりゃ不規則発言も出るわけで困ったもんですわなあというところです。

で、昨日はまたまた火消し発言。そりゃまあ解除即利上げみたいな思惑で金利が上がりだすと何言われるか判らんのでとりあえず目先は火消しをしておいて経済状況が予定通りに行くのを見るということですわなあとは思いますが。昨日のブルームバーグニュースのヘッドラインやニュース記事などを見るとこんな感じですか。

「しばらくゼロ金利、その後も極めて低金利続く可能性」
「時間軸効果は不要になった」
「目先の金融調節上、国債買入額の変更必要ない」

ということで、まあ昨日も火消しっぽく発言しているのですが、与謝野経済財政担当大臣の答弁のヘッドラインを読んでいるとまあ福井総裁と良くコラボレートできてますなあという感じである意味感心。

「まだゼロ金利政策の解除を議論するシーズンではない」
「量的緩和政策もゼロ金利政策も他国に例をみない異常な事態における止むを得ない選択だった」
「金融政策自体は、日本経済の再生とともに、徐々に正常な道に戻らなければならないと思う。」

小泉総裁の後継総裁は誰でしょうって話が次のテーマであって、どうも竹中路線への対抗として与謝野さんが妙に日銀に理解を示しているのではなかろうかっちゅう気もする訳でして、そう考えますと何か金融政策が政争に巻き込まれるんじゃねえのかという悪寒もする今日この頃。

まあ大体べき論は兎も角として予想屋として先行きの金融政策を読むと言うことになると経済状況の前に政治スケジュールを気にしちゃったり、政府のデフレ脱却宣言が出ると利上げ〜なんていう発想が起きちゃうので今更なのかもしれないけど、ちょっと気になるところです。

で、与謝野さんこんな発言してたらしいのですが、どうもこの預金者の金利収入がどうのこうのって話はマジで金融政策正常化(!)の大義名分にされそうで誠に遺憾でございます。ブルームバーグニュース記事より引用。

『さらに経財相は、「一般国民が銀行で定期預金をした時に、ほとんど取り分(金利収入)がゼロということは異常なこと」と述べ、「定期預金の金利、預金者の金利を含めて資金を提供している側になにがしかの配分のある社会の方が正しい社会だと思う」と語った。』

好意的に解釈すれば「上記のような状態になってしまうデフレ経済という事態はあってはならない」という事を言ったとも取れますけど、だったらデフレに戻ることの無いような金融政策運営をって話になってくると思うのですが、話が金融政策の正常化に向っているので、どうも金融政策が先にありきという雰囲気が漂って参りますな。

ま、政府がデフレ脱却宣言をするのに日銀にゼロ金利をやらせるわけにも行かないでしょうから、そういう意味では極めて政治的に「金融政策の正常化」プロセスが進行していくって事なんでしょうな、はあ〜。

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2006/03/17

○火消しご苦労様です(総裁の国会答弁)

昨日は福井総裁が都内で講演を行いましたが、そちらよりも相場を動かしたのは参議院財政金融委員会での答弁だったようですな。ブルームバーグニュース16日14:49のニュース(第1報はもっと早くでてます。この時間に出てるのはまとめ版みたいなもんです)から引用するとこんな感じだったようですな。曰く、

『具体的にゼロ金利を修正する時期がいつかを考えるには、まだ量的緩和の枠組みに終止符を打った直後なので、それを論じるにはあまりに早すぎると考えている』

『私どもが意図しているのは、直ちに金融引き締めに向うことではない、日本経済が最終的に物価安定の下で持続的な成長の実現に向けてしっかり軌道を歩んでいくように、引き続き金融面でしっかりとサポートしたい。緩和的な金融環境を維持することで、経済に対するサポートをしていきたい、というところに主眼がある』

で、まあ債券先物はこのあたりの報道を受けて20銭くらい上昇したようですが、まあたった20銭ぽっちしか上らなかった(笑)という印象もあるようでして、まあさすがに今まで総裁のハト派っぽい発言を信じて何度も足を掬われている経験が量的緩和解除直後ということで効いているのかなあなどと思ってしまいました。

水野審議委員が過激発言をしてその後福井総裁が火消し発言をするという構図は昨年も似たような組み合わせがあった(直ぐにいつだったか思い出せませんが、汗)ように記憶しておりますが、さてその後はどうなったでしょうかなどと言う所ですが。


まあやや解釈にタカ派バイアス(あたくしがタカ派なのではなく、福井総裁をタカ派と見立てて少々バイアスが掛かるって意味です、為念)が入りますが・・・・

この発言もよくよく見ますと、最初の部分だって「早すぎる」のタイムスパンがどの位なのか判らんですし、次の発言に関して言えば「金融引き締め」局面入りを否定はしてますが、だから利上げが無いと思うのは実は早とちりでございます。

と、申しますのは、同日の別の答弁(講演でも同じような話もしたようですが)や先日の記者会見にも見られましたように、『金利が一定水準の下で経済が良くなり、物価上昇率が上れば、刺激効果は逆に強まる。』とか『現在(の金融政策)もビハインド・ザ・カーブの状態』というようなお話を福井総裁は行っている訳でして、景気刺激的な金融政策から中立的な金融政策への転換」をする場合には必然的にゼロ金利状況からの脱却、即ち利上げを行う事になりますわな。

ということで、「金融引き締め局面に入らない」というのは「利上げをしない」と同義にはならないのですが、さすがにこの辺りの表現の微妙な違いもだいぶ人口に膾炙してきたようで誠に結構な事でございます。

ま、これが英訳されてニュースになるとまたニュアンスがちゃんと伝わっているのか甚だ疑問ではありますが、笑。

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2006/03/13

○そんなわけで日銀総裁記者会見

総裁記者会見の前に国会での説明に関して気になったのが一点あったので付け加えておきます。事実関係は会議録を見ないと判らんのですが、インターネットでの国会中継を見ていたら、金融政策に関して岩田副総裁が「政策はフォワードルッキング」という事を発言してたように聞こえたのですが、岩田副総裁ってビハインド路線じゃなかったのかなあと思いまして、いつの間に宗旨変えしたのだろうと思いつつ、こりゃ政策委員会の止め役は中原審議委員しかいないようですなあとちょっと不安。

時間も長く量も多いのであたくし的に気になった部分を。多分明日に持ち越しになるものと思われます。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0603a.htm


・フォワードルッキングでありルールベースではありません

最初の説明の部分で早速発言してますが。

『「中長期的な物価安定の理解」を示し、それを念頭に置いてこれから金融政策を行っていくが、いわゆるインフレーション・ターゲティングというものと違って、ルール・ベースの金融政策の運営をするわけではない。物価についての理解を念頭に置いて金融政策を行っていくが、金融政策運営そのものはフォワード・ルッキングであり、総合判断でやっていく。』

別の質問に対する回答ではこんな感じです。

『それから先程、皆様のご理解を頂くためにわざわざ、ルール・ベースの政策運営をするわけではない、フォワード・ルッキングで総合判断でやっていくとわかりやすく申し上げた。各国の中央銀行の政策運営のやり方をみても、ルール・ベースに近い運営とか裁量による運営など、概念的な整理を試みることはある程度可能である。しかし実際には、例えば、インフレーション・ターゲティングを採用している国の中央銀行でも、文字通り、機械的なルール・ベースの政策運営をしている中央銀行は殆ど存在しないと認識している。』

フォワードルッキングで、物価安定の理解が総合CPIで0−2%って組み合わせは物凄い勢いでインフレバスター政策になるようにしか思えないんですが。

「参照値でも無い」と最後の質疑で言ってますんで念のためそちらも引用しておきますね。

『政策委員の認識を数字で表すと、こういうことになる、ということである。これは金融政策の透明性と機動性の両立を真剣に考えて出てきた新しい知恵のようなものであり、私ども自身が出した知恵を私ども自身が活かしていくことによって、おっしゃるような懸念を払拭していくことができると思われる。そのためにも、「理解」というものの概念を、皆さん方からもきちんと報道して頂きたい。「参照値」と同じようなものだと報道されると、世の中に混乱をおこすと思われる。「理解」については、英語で言えばunderstandingという言葉を私どもは使用していく。そういうunderstandingを政策委員会のメンバーでbroadly shared(広く共有)するというものである。新しい概念なので、日本だけでなく海外においてもきちんと理解してもらうためには、しばらく努力がいると思うが、こうした新しい知恵がきちんと理解されれば、そういうリスクは減っていくであろう。数字が一人歩きする心配を私どもも持っているが、それを打ち消していく努力をこれからもやっていかなくてはならない。』


・経済物価情勢に見合った金利水準

という言葉を福井総裁はよく使います。で、質疑の最初の方ではこんなことを言ってたのですが・・・・・

『それでは、所要準備額までの調整が終わったらすぐゼロ%でなくなるのかというと、私どもはそういうことを言っているわけではない。つまり、準備を削減していく過程は基本的にゼロ%で、おそらくその後もしばらくはゼロ%で、その次に極めて低い金利となり、さらには経済・物価情勢に見合った金利水準への調整過程となろう。』

ほほうゼロ金利長期化ですか・・・・と思いたくなるのですが、最後の質疑ではこんな表現をしております。

『量的緩和政策の枠組みからの脱却によって、イールドカーブのショーターエンド(オーバーナイト物)以外のところにまで強い下方プレッシャーをかけるというディストーション(歪み)は一応なくなる。この意味では、金利機能を封殺している度合いは少し緩和されると思う。しかし、経済・物価情勢に見合った金利水準という意味では、まだかなり離れた状況にあるのではないのか。これから相当時間をかけて、ギャップを埋めていくことになるので、本当の意味での金利機能が生きて、資源再配分機能を本来金利が持っているキャパシティの通りに機能を発揮していくということと比較すると、極めて低い金利を続けている以上は、そこに何がしか犠牲が生じていることは否めない。』

どうもここを読むと福井総裁がイメージする「経済物価に見合った水準」はゼロ金利じゃあないと思うんですけどね。

それから、金曜もご紹介しましたが、こんな事も言ってますんで。

『量的緩和政策そのものも、極めて大幅なビハインド・ザ・カーブの金融政策である量的緩和の枠組みを脱出してゼロ金利からスタートするが、消費者物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率がかなりのプラスを続けている状況のもとでは、これはかなりビハインド・ザ・カーブのところを出発点にした金融政策である。この金融政策との組み合わせで、緩和のしすぎのリスクが中長期的にあるということを指摘しており、一方を強調しているということにはならない。』

現状で既にビハインド・ザ・カーブ状態だそうです。それで政策をフォワードルッキングにした場合に何が起きるのでしょうかねえ。



・別にダイナミックにならなくて結構なんですが

『これから市場と日本銀行のコミュニケーションは非常にダイナミックになる。ある意味では本来の姿になる。市場は市場の見方を市場レート、特に先物の市場レートの中に反映するだろうし、私どもは毎月の金融政策決定会合の後、あるいは展望レポートの中で私どもなりの先行きの見通しを出していく。それが市場の見通しと合っているか合っていないか、合っていない部分については市場が改めてレビューしながら、市場金利の変動というかたちで映し出してくる。私どもはそれを読み取りながら、私どもの情勢判断を更に磨いていく。こういう市場金利の動きを仲介項としながらのコミュニケーションになっていく。量的緩和政策のもとでは、市場機能を封殺していると申し上げていたが、封殺している限りはそういう仲介項がないために、さかんに日本銀行の言葉のみを探るということがあった。これから先はそういうことはなくなり、よりダイナミックになっていくと思う。』

いやあの日銀がもうちょっと黙って頂ければ別に言葉を探る必要もないのですが、そうするとドラめもんのネタも無くなるという諸刃の剣(笑)。今までも経済状況とか見ながら相場が動いてた面もあると思うんですが、自分で書いた駄文を週末せっせと読み直しながら整理してると、やっぱ日銀の偉い人喋りすぎ(喋らされすぎの面もありますが)ではないかと思いますけどね。まあ頑張ってくださいね〜。

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2006/03/07

○微妙な答弁が続きますが

参議院予算委員会のインターネット中継を何となく聞いていたのですが、結局ソースはブルームバーグニュースで参ります。

・小泉首相の牽制だか牽制じゃないのか判らん発言

『デフレ脱却の兆しはみえてきたものの、このまま脱却といっていいのかどうかという点については慎重的な立場だ』
『仮に金融緩和を解除した場合には、二度と、失敗したら元に戻すというようなことがあってはならないと考えている』(以上ブルームバーグニュース)
『賢明な日銀総裁のことですから、私の発言も含めて、状況を見極めて判断すると思います』(ここの発言だけ自分のメモ書きベースです)


特に賢明な日銀総裁がどうのこうのってのは民主党の平野委員に何度も「首相は日銀に申し入れることは無いのか」と念を押されて、そのたびに「賢明な日銀総裁」を繰り返してました。

これを聞いているときは「ひえーこわいよー」などとと思ったのですが、世の中には冷静に聞いている人はいるわけで、「量的緩和の解除」じゃなくて「金融緩和の解除」と言ってるので、これは実は量的緩和解除を牽制しているのではなくて「利上げの牽制ではないか」という意見も聞きました(いやまあネタバレしちゃうと本石町日記先生に言われて気が付いたんですけどね、あっはっは)。確かにそれなら別に量的緩和解除しても良いけど利上げは駄目よって読めるので話がだいぶ違う。

まあ小泉首相の場合は素で言い間違えているだけとか、量的緩和解除と金利引き上げの違いを判って無いんじゃネーノとかいう気もしますが。

それと2番目の「失敗したら二度と元に戻うようなことがあってはならないと考えている」ってのも、まあ多分小泉首相は何も考えてないとは思いますが、意味持って言ってたらそれはそれで示唆深いお言葉(^^)。と申しますのは、この「元に戻すようなことがあってはならない」ってのがまさに量的緩和政策のコミットメント3条件にある「再びデフレに戻らないという見通し」そのものである訳でして、デフレ脱却という重要なテーマを抱える日銀が「ビハインド・ザ・カーブも辞さず」で行っていた筈の量的緩和政策のキモだったんじゃないんでしょうかねえという感じですわな。

ま、市場的には牽制が入ったという反応にはなっていると思いますが。


・福井総裁本当に安定化策とやらを出すのか??

『今週8、9日に3月の金融政策決定会合を予定しているが、ここにおいても、経済、物価情勢を総合的に点検したうえで、金融政策運営について適切な判断をしていきたいと思っている。(中略)会議の討議を通じて、創造的な結論を出すプロセスを出していきたい』(ブルームバーグニュースより)

まあ以前から散々それらしい話をする上に新聞各紙でリークだかアドバルーンだか上げているので、本当になんか出てくるのかもしれませんが、正直こっちも白紙で臨むしかないなあという感じです(笑)。インタゲみたいなものが出てくるとは到底思えませんので、展望レポートのおまけみたいなものがちょろっと出てくるだけではないかと思いますが。

ま、これだけ言ってるんだからおためごかしみたいな物になる気はしますが、何か出てくるんでしょう。まあ日銀の先行きの行動を縛るようなものは出てこないでしょうし、そもそも量的緩和政策コミットメントに見られるように最終的には色々理屈をつけて空文化するでしょって思いますけど、市場はそこまで意地悪じゃないからちゃんと反応してくれると思いますよ。おっほっほ。

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2006/02/27

○ベシャリも程々にしていただかないと・・・・

金曜日の衆議院財務金融委員会でも福井総裁がまた変なヘッドラインを打たれるような答弁をしていました。もう頼むから勘弁してくれというのが正直な感想でございます。

ブルームバーグニュース(24日12:16配信)より:

『日本銀行の福井俊彦総裁は24日午前、衆院財務金融委員会で、「政府の経済政策全般との整合性を常に念頭に入れながら政策を行う」と述べる一方で、「失敗を恐れてばかりはいられないところもある。先行きの情勢を読みながら、リスクを取って政策行動をしていく。真剣勝負だ。」と語った。また量的緩和政策の解除について「条件は少しずつ成立しつつあると判断している」と述べ、解除の時期が極めて近いという認識を改めて示した。』

で、この記事のお題は「日銀総裁:政府と整合性図るが失敗恐れずリスク取る、真剣勝負」と書かれてしまうわけで、こう書かれると今まで発言から日銀総裁はもうフォワードルッキングで解除後の早期利上げまでやる気満々ですわなあと取られてしまうでしょう。特に事情を何となくしか判ってない海外の投資家さんなんかは益々。

で、まあ衆議院インターネット中継を聞いてみたんですが、どうもこのくだりは民主党の小沢鋭仁議員が「日銀は政策の責任をどう取るのか」みたいな言い方でやや挑発的な質問をしていたのに対して「日銀は別に無責任体制で政策をやっているんじゃない!」ってニュアンスで答えていたら上記のような答弁になったように(あたくしもその部分だけしか聞いてませんが)思えます。まあまた釣られちゃいましたなって感じ。ちなみに実際は福井総裁「失敗を恐れずと言っても(自粛)撃ちではない」ともお答えしてました(ようにあたくしには聞こえました)が、不適切用語が混じっています(あたくしのヒアリングが正しければ)ので報道しにくい(こういうのは議事録にどう載るの?)でございますわな。残念!

とは言え、今までの総裁の発言が基本的に量的緩和解除とその先の金利引き上げに前のめりに取られる発言が多いわけでして、まあ釣られたというよりは「やはり総裁は金利を早く引き上げたいんだなあ」と思わせてしまうところでございますわな。あまりそのような心情を発言するのは如何なものかと思いますが。本来は量的緩和解除後の金利政策に関しては基本的にその時の物価情勢とか経済状況次第なので決め打ち禁物な筈ですけど、こうやって方向性を出してしまうと市場としてはドンドン先の方を織り込みに行きます。で、上記したような連続利上げ織り込みモードになると。

まあそんな事は考えていないと思いたいのですが、もしかして量的緩和解除をした後に市場金利が跳ねると何言われるか判らんから先に口先介入をして金利を上げておこうとか、(この前似たようなニュアンスの発言を水野審議委員がしていましたが)市場を煽っておいてから「市場は利上げを催促しているので市場追認で利上げ」とか言い出す練習でもしているのではないかと(今回の量的解除ではさすがに利上げをいきなりする訳には行かないでしょうが)いう邪推までしたくなってしまいます。

いずれにせよ、昨日も申し上げましたが、情報発信のやり方にどうも疑問がありますなあという所ではございます。中央銀行総裁がむやみやたらと国会出席させられる状態も何だかなあと思いますし。

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2006/02/15

お題「今更ですが総裁記者会見」

今朝のモーサテ東京スタジオの最初のお話。「」は本村ゆっこさんのお話で()内はあたくしの声ですが^^;

「量的金融緩和の解除がマーケットの注目を集めていますが、気になるニュースがありました(ほほう何でしょう)。時事通信が有力エコノミスト10名にアンケートを行った結果(量的解除で流動性縮小から株が下げるとでも出たのかねえ?)、10名中8名が4月の量的金融緩和の解除を予想しています(いやあの市場でとっくに織り込み済みの話をマーケット情報番組で大ニュースのように言われても。一般ニュースならともかく)。」

いやまあ本村キャスターは言わされているだけでしょうから別にゆっこ様のせいでも何でも無いんですが、朝から物凄い勢いで脱力するのでありました。この番組の編成をしている人間を捕まえて小一時間問い詰めてみたい(そんなことは時間の無駄だが)ものでございます。今朝も「2月15日水曜日です」っていう矢吹さんの声のトーンを聞いただけでNY株式大幅上昇を予想したらその通りだし(笑)。まあお笑い番組だと思って見てるんで余程とんでもない話でも出てこない限りは血圧も上がらないのですけれども、やはり朝は仕事モードで脳内活性化したいですからねえ。

そんな訳で、最近6時からはMXテレビ(と南関東UHF3局でやってる)ブルームバーグテレビの方がまだマシなのでそっちに切り替えてしまうのでありました。まあそもそも日経新聞を定期購読してないんでそれ以前の問題ではありますが(苦笑)。


という訳で遅くなりましたが2月9日の総裁記者会見。質疑応答を読むと中々オモロイのですが、オモロイ部分を引用してると結構長くなりそうな気がするのでテキトーに。それから金曜にブルームバーグニュース記事から引用させてもらった分は今回割愛。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0602b.htm

○明示したコミットメントは取らないという見解ですな

政策枠組みの透明性や期待の安定化をしていくための施策について。

『(前半割愛。一言で言えば「現在検討中」って感じ)従って、今ここで何がしかの方向性、イメージを申し上げることはできない。ただし、毎回申し上げている通り、量的緩和政策は、消費者物価指数を軸にして日本銀行自身の手足を縛ることに意味を持たせた政策として行ってきたが、量的緩和政策解除後は透明性確保と、金融政策の機動的・弾力的な運営つまり柔軟性とが明確に両立するようなメッセージの出し方でなければならない。この点は非常に明確なポイントとして、各委員とも揃って重視しながら検討を続けている状況である。』

ということで、明示的なコミットメントを設定して政策を行うと言うのはあまり採用したくないらしいですなあ。


○今後の情報発信について:展望レポートなどに関連して

展望レポートを今後どうするかという質問がでましてその回答部分。

『もう一つ重要な話であるが、展望レポートについて皆様がどのように評価されているかわからないが、私どもとしては展望レポートの中の特に金融政策に関する部分において、私どもの先行きの政策径路について、できる限りのメッセージ、最大限のメッセージを盛り込んできているつもりである。量的緩和政策の枠組み修正のタイミングについても触れてきているし、枠組み修正後の金利政策の運営についても、私どもとしては相当程度のメッセージをそこに既に盛り込んできているつもりである。』

『今後の私どもの作業としては、仮に枠組み修正後ということになると枠組み修正までのプロセスは終わるわけであるが、その後の金利をターゲットとする通常の金融政策の運営について、既に書いている部分もある。それを今後の新しい経済のアウトルックとの対比において、これで十分かどうか、さらに追加的に情報提供できる部分があれば惜しみなく情報提供していくことになると思う。ごく自然体に考えて、経済の見通しと政策の径路について、できる限り整合性のとれたかたちでメッセージを出していくということであり、ここで離れ業的なことをするつもりは全くない。』

どうもこの辺りのコメントを聞いて(読んで、ですけど)いると引っ掛かってしまうのですが。と申しますのは、どうも今までの実績を勘案するに、これからも「日銀は経済の先行きがこうなると思うから今後の金融政策は引き締めだよ(または緩和だよ)」とかって言い出すんじゃないかという風に思ってしまうのであります。今の「地均し」路線と同じことを今後もやりだすんじゃないかという漠然とした不安が。。。。

昨日ご紹介した(というか記事の引用ですが)水野審議委員の寄稿がまさにそうなのですが、日銀の審議委員が一々市場に手を突っ込むような話をして、それをもって「市場との対話」とか言われても甚だ迷惑。何か日銀が情報を発信してそれに市場が反応するのを見て「期待の安定化をしないと」となって更に情報発信っていうようなアホアホな事態が発生するのは勘弁していただきたいものです。まあ余計な話をするなと思うのだが。

でも福井総裁はこういうコメントをしているのですが。別の質問に対する答え。

『私どもの頭の中に最後に残る長期金利の姿は、基本的には将来の経済や物価に関する市場の見方を反映して、市場そのものが決めるというものである。理論が決めるものでもないし、誰かパワフルな人が決められるものでもない。市場そのものが、将来の経済や物価に関して貪欲なまでのエネルギーを注いで眺め尽くした後、市場自身が判断して決まると思っている。』

その割には地均しとかしちゃうってのがどうもよく判らん。イールドカーブの見通しまでコメントする水野審議委員は論外ですけど。


○ビハインド・ザ・カーブは反故ですかそうですか

今更驚かないけど、総括しないで有耶無耶のうちに反故にするというのは甚だ遺憾でございます。

『毎回申し上げているが、金融政策は、経済・物価情勢の流れの中でもっとも適切なタイミングを、遅からず早からずという意味で適切なタイミングを掴んでいかなければならないので、情勢判断を離れたイベントが、金融政策の判断のタイミングを決める上で、非常に重要なウエイトを占めるということはない。』

ほほうそうですか。


○景気と物価の見通しに関してはいつもどおりの強気です

まあこういうコメントになるのはいつものことですが、益々意気軒昂と行った所で。

『ご説明した通り、日本経済については、理想的とまでは言わないが、どの角度から見ても比較的バランスの良い経済の姿になっている。生産が強く、企業投資、企業所得がしっかりし、それが家計部門にも均てんして雇用者所得も増え、消費も底堅い。つまり国内経済の循環メカニズムが上手く作動しているが故に、着実な回復、持続性を強めながらの回復になっている。別の言い方をすると、外からのショックに対しても、かつては脆弱性を持っていたが、脆弱性の少ないあるいはショックに対してより強い経済になりつつあると思う。しかし、引き続き、特に外から来るショックに対して、日本経済が本当にどれくらい吸収していける力があるかを、十分見定めていかなければならないと思っている。』

そのショックの中で挙げているのが一次産品や原油価格の上昇と、地政学的リスク(イラン問題が日本に対する地政学的リスクなのかよというツッコミはさておいて)です。

『物価は既に3か月連続でゼロ%以上になっており、見通しとしては、1月分以降はより明確なプラスの数字が出るであろうということである。その背後にある経済情勢の分析を加えて判断していけば、物価のプラス基調がより強く定着していくという合わせ技の判断が出てくると思う。その根底は、経済の持続的な拡大の中で需給が改善し、ユニット・レーバー・コスト(単位当り労働コスト)が物価を押し下げる方向に働く力が減衰していくというように、物価形成の基礎がしっかりしてくるということであり、そこが非常に重要な判断の土台である。消費者物価指数自体が、特殊要因、一時的要因で多少上下することはいつでもあるが、その一時的要因で上下するという物価指数の表層部分の動きをそれほど重視して考えなくても、基調がしっかりしてきたという判断があれば、それは私どもの「安定的にゼロ%以上」という判断に結びつきやすいと考えている。』

いやまあ強気ですなあ。

その他、物価安定目標に関する見解とか(金曜日に引用しましたが)のあたりもまあ読んでおくと吉かと。要するに最初に引用した所にあるように、福井総裁としては数値目標を出すのは相当抵抗あるようですな。そう考えるとまあ(ビハインド・ザ・カーブの反故もそうですが)福井総裁は今まで随分一生懸命に猫をかぶっていたんですなあと思ってしまうのでございました。

では。

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2006/02/10

○総裁記者会見

日銀発表の会見要旨は本日午後にでもアップされますので、とりあえずブルームバーグニュースのURLを置いときます。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=a9QUtHHxukFM&refer=jp_news_index

最近は諸般の事情(でも何でもなく単にそんなに情報ベンダー持っててもしょうがないでしょって理由ですが)により、同時に複数の情報ベンダーのニュースフラッシュを見ながら画面に向うなどというような器用なことをしておりませんので、人に聞いて回った結果なのですが、各情報ベンダーのフラッシュの打ち方を見ると「強気の記者会見」という印象を与えるものと、「配慮をした記者会見」という印象を与えるものと微妙に違っているようでございました。まあどっちとも取れるような会見だったんでしょうね。

で、ブルームバーグニュースの上記記事にあります一問一答から引用致しますが。

――前回の会見で、量的緩和の解除について「冷静かつ適切に判断していく重要な局面に入っている」と述べられた。解除を判断するにあたって、後は何が必要か。

「日銀の姿勢は極めてクリアだ。コアCPIの前年比が安定的にゼロ%になるまで(続ける)というのが、量的緩和導入時に公表した明確な約束だ。それにそって緩和政策を継続しているわけで、枠組みの変更にあたっては、まさにこの条件が満たされたかどうか、それは、経済・物価情勢全体を十分点検したうえで、この約束が満たされたどうか、ということをきちんと判断していく。予断を持たず、冷静に判断していく、ということに尽きる」

「何か後1つ、具体的なものが加われば、というようなことではない。CPIとか、いろいろな経済指標そのものは、いちいち重要な判断材料だが、背後にある経済全体の動きをきちんと点検することが一番大事なことだと思っている。毎回そうした観点から政策決定会合では議論を重ね、判断を続けてきているが、今日もなお安定的にゼロ%以上とは言えないという判断となった」

「今後はどうかと言うお尋ねなので、1月分以降の消費者物価指数は比較的はっきりとしたプラスになると見込んでいる。したがって、次回の会合以降のこうした経済全体を見据えた指数の判断ということは、より重要になっていると考えている」


――3月の決定会合で量的緩和の解除を判断する際、たとえば年度末が近くて金融調節が難しいとか、国会の会期中だとか、自民党の金融政策に関する小委員会の報告書がまだまとまっていないとか、解除の障害になり得るような要素はあるとお考えか。

「来月に限らず、あるいはそれ以降も、年末であるとか、いろいろ政治的なイベントであるとか、いろいろなことは常にあるわけで、そうしたことは毎回申し上げているが、金融政策は経済、物価情勢の流れの中で最も適切なタイミングを、遅からず早からずという意味で、適切なタイミングをつかんでいかなければならない。情勢判断を離れたイベント事項が金融政策のタイミングを決める非常に重要なウエートを占めることはない。これは明確にないと申し上げる」


まあ3月以降のあと3回ある決定会合のうちのどこかで解除になるんでしょうなあ。CPIがいきなりマイナスとかになっちゃったら話は別ですが。

いやまあ今のところ日銀の裸単騎突撃は順調に行っておるようでございますが、読者様からは「裸単騎よりもオープンリーチの方が感覚的に近い気がします」とお話が(^^)。確かにそうですなあ。そういや学生の時に5面チャンで8巡目リーチしたら実はフリテンで、ハイテイで発単騎の緑一色に振り込むという素晴らしいことをした事がございますが(意味の判らない人は周囲のロクデナシに聞いて下さい)、まあ色々と悪態はつきまくっておりますが、事ここまで到ったら「何とか日銀のシナリオ通りに経済が推移して下さいますように」と申し上げるしかございませんな、と言ってる側からハイテイで役満振込などと書くあたくしは性格が悪いですかそうですか。まあ最も遅くても5月の決定会合までに解除しないと流局の悪寒が致しますが。

今後のことを考えますと、まあ全局オープンリーチされても困りますんで、あまり決め打ち勝負しないで金融政策運営を行っていただきたいのと同時に、今回の決め打ち大作戦に関しても「結果が良かったからプロセスは無問題」ということにならんようにお願いしたいものです。まあ当然ながら中の人たちは皆様よく考えておられるものと信じています。

それから、本日は引用してませんが、上記の会見記事にも「解除後に関してはまだ白紙」というニュアンスの発言があったようですので、さすがに解除後の短期金利引き上げに関しては決め打ちを行わないものと期待(?)しておりますです。


インタゲ等に関しては相変わらず否定的でありまして、望ましい物価上昇率に関しても欧米よりも低いのではないかという発言もありまして、その辺ちとオーバーキルの不安もあるのですが・・・・・・

同じく記者会見記事より。

「多くの識者の方でさえ、簡単に海外ではインフレターゲットは2%くらいではないかとか、2%から3%くらいではないかとおっしゃる。これは私にとっては非常に不思議なことだ。日本の国民の物価観はどうですかということは、われわれは本当は正しく知りたい。そういうことを共有しなければ、正しいメッセージを作ることは難しい。概要を言ってみればそんなことだが、まだ具体案は持っていない」

「望ましい物価上昇率ということを簡単に言う人も多いが、そんなことがアプリオリに(先天的に)あるわけはないし、何かこう計算上すぐに出てくるものではないと思う。要するに、金融政策は人々に物価に関して、余計な心配をしていただかなくて、100%経済活動にいそしんでいただくためにやっている。そういう意味での経済的なウエルフェアー(福祉)を確保するために金融政策をやっている」

「人々が物価に対して心配される領域をもし仮に数字で表せば、ひょっとしたら日本の場合は過去の系譜から言って他の国よりは低いのではないかという感じを私自身は持っていると申し上げた」

だそうです。

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2006/01/24

20日の総裁記者会見を今更。タイミングがライブドア強制捜査と重なったので一部しょうもない質問もございますが、総じて興味深い応答(ただしネタ的にオモロイかというとそれは別問題か^^)ではございます。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0601a.htm


○「重要な局面」発言部分

ブルームバーグでフラッシュを打たれてた部分は質疑の最初の部分。

『消費者物価指数(除く生鮮食品)が11月にプラスになったが、これから先、経済・物価情勢を十分点検しながら、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比が安定的にゼロ%以上となったと言えるかどうかを、かねてからお示ししている基準に沿って、冷静かつ適切に判断していく重要な局面に入っている。従って、いつ頃、量的緩和政策の枠組み修正ができるかについて、予断を持って臨んでいないことは前回までと変わっていない。現時点において言えることは、現在の枠組みを変更する可能性は2006年度にかけて高まっていく、とかねがね申し上げている通りであり、この点についての見方は少しも変わっていない。』

ということで、発言の前後も読むといつもと同じ話をしているのですが、まあわざわざ「重要な局面」とか言っちゃうのが福井総裁のお茶目な所でして、本人のやる気というか心が伝わって来る発言ではございます。

まあ何ですな、今から直せって言っても無理な話なんですが、今後の政策枠組みで裁量を重視するって事になったらあまり「私はこう考えてます」って「やる気」があまり表に出ないようにした方が良いんじゃねえかと思うのですが。裁量でやるなら「何考えてるか判らん(「何しでかすか判らんで」はない)」風にしておかないと将来の自分の手足を縛る破目になるし、意思を出しまくった見込みが外れたら洒落にならん。

上記応答の続き。

『私どもは枠組み変更の時期について予断を持って臨んでおらず、これからが冷静に判断していく重要な局面だと申し上げたが、枠組み変更後の短期金利の水準や時間的経路についても、言うまでもなく、今後の金融経済情勢や金融市場の状況次第、すなわち全くオープンであり、この点についても何ら予断は持っていない。現時点で申し上げられるのは、10月の展望レポートでも記述した通り、概念的整理に留まっている。』

『枠組み変更後のプロセスは、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序を辿るということである。かつ、経済がバランスのとれた持続的な成長過程を辿る中にあって物価の上昇圧力が抑制された状況が続くと判断されるのであれば、枠組みの変更やその後のプロセスは、余裕をもって対応を進められる可能性が高いということである。』

まあここで市場とて気にになるのは「極めて低い短期金利の水準」がどのくらい続くかという話になるのですが、この点に関して債券市場はどうも楽観しているのではないかと思うのでありました。この次の質疑で賃金の上昇問題に関して話がありますが、そこまで引用しているときりが無いので引用割愛しますが、雇用者所得や賃金の上昇がどういう風に転んでいくかは気にした方が良い気がする(けど、昔みたいに自分の周り見てると全体の感じが掴めるって世の中じゃないから中々判りにくいのかもしれないが)。

で、「余裕をもって対応を進められる可能性が高い」とか、欧米でのイールドカーブのフラット化とかインフレ懸念があまりございませんなあとかいう辺りから、量的緩和解除後にもゼロ金利が相当期間続くという見方が多いのですが、そもそも欧米でインフレ懸念が加速しないで金利がフラットとか言ってる金利水準と日本の水準は全然違うんですけどねえ。

ま、3月だか4月だか知りませんが、量的緩和解除したとして物理的に当預引く時間は足元金利がゼロ近辺になっちゃう(いやまあ即時利上げすれば話は別だが、これだけ言って置いていきなり利上げ攻撃はやらないでしょう)でしょうからそれが1ヶ月程度は継続するとして、その後どこまでゼロ金利?ってのは微妙な気もする。。。。


○インフレ参照値等(等って便利な言葉だ^^)に関する発言

『以前にもお答えしたが、この点(引用者注:インフレ参照値など)については、この先の金融政策の透明性向上のための枠組みを、どのように構築していくかという幅広い議論の中で位置付けながら考えていけば良いと思っている。繰り返し申し上げると、異例な金融政策を実施することによって日本経済がデフレ・スパイラルのリスクに陥るのを身を呈して防ぐという局面から、先行きはより正常な金融政策の枠組みに移っていき、民間のよりダイナミックな動きを引き出して日本経済の実力を底上げしながら、振幅の小さい景気拡大過程を築き上げたいということである。』

『この先、金融政策にとってもっとも重要なことは、情勢判断に即応できる、つまり機動性の高い金融政策であり、何か特定のことに縛りを受けている──ストレート・ジャケット(拘束服)を着たような──金融政策は必ず害が出るということである。従って、金融政策運営の透明性とフレキシビリティーの両立というポイントは欠かせないと思う。』

身を呈して防ぐってのはまた大袈裟な(^^)。まあそりゃ兎も角として、基本的に福井総裁は「量的緩和解除後の金融政策に縛りは要らん」というお話。このあたりの議論が今後具体化していくのでしょうな。

『物価に関して特定の参照値という形で何かを示すことが、今後の日本経済情勢とか日本経済を巡って人々が抱いている期待との関係で本当に良い手法なのかどうか、よく検討しなくてはならない。議論としては極めて単純にターゲットだとか参照値だとか出ているが、過去のパターンをそのまま引用したような議論が多く、私どもとしては多少閉口している。実は、透明性の議論の幅は非常に広い。皆さんも心にゆとりを持って、どんなものが出てくるのかというぐらいで楽しみに待っていて頂きたい。』

最後の一文、釣りがお上手ですなあという話は兎も角と致しまして、字面と今までの福井総裁の発言を並べて考えると「そんなんやるかよへっへー」と読んでしまいますが(笑)。



○不動産融資の質疑応答2題

やはりこの点に関しては質問が出ますわな。

『(問)本日公表の月報でも銀行貸出の増加幅が拡大しているという記述がある。その中で不動産向け融資も増加してきているが、これに対して日銀としてどのように見ているのか。また、昨年末、一部の報道で日銀として監視を強化していくとの報道があったが、そのようなことを考えているのか伺いたい。 』

『(応答の最初の部分割愛します)それでも現状はなお、住宅関連あるいは不動産関連の資金需要が、家計および企業部門両方から強いということも事実である。東京都心部等一部の土地を中心に、土地の値上がりとの関連で資金需要が出ているという傾向も否定できないと思うし、土地から期待し得る先行きの収益についての評価が楽観的になり過ぎていないかどうか、将来のバリューを現在価値に引き直す時のレートが甘くなり過ぎていないか等、様々に心配する声もちらほら聞こえるようになってきていることは事実である。しかしながら、私どもは日本経済全体、全国各地の動きまで総合しながら判断しているが、今のところ経済全体として不健全な軌道に踏み込むリスクを感じさせるという所まではいっていないと思っている。』

ということでして、特にそういうことはしませんがなというのが公式見解。ただ公式見解は公式見解として考査やら通常のモニタリングの方ではどうなのよってのも気にかかりますが。

『(問)日銀として、ここにきて不動産融資の監視強化をするということは特にないということで良いか。』

『(答)実際のところ、私どもの考査では、取引先金融機関の経営実態を把握するため、様々な業務に伴うリスクの管理状況等を検証している。その中で、融資についても、信用リスクの実情や管理状況等をつぶさに検証しているということも事実であり、幅広いチェックを通じて、もし管理体制等の面で問題ありということであれば、個々の金融機関に対して改善を要請している。これは私どもの通常のアクションである。しかしながら、一部報道にみられたように、ここにきて考査で特に不動産融資に対する監視にフォーカス(焦点)を当てて強化しようという方針を決めたことはない。執行部においても、独自にそういう方針をプラクティスとしてとろうとしているということもない。不動産融資に限らず、広く与信行為全般についてのリスク管理状況をつぶさに把握し続ける。不動産融資についても、当然その中に含まれているということである。 』

だそうです。それはそれとして気になったのは最初の質問に対する答えの最後の部分でして、不動産融資とは関係ない話ですけれども・・・・・

『先程も申し上げた通り、これから本当に物価がデフレ的と言われた状況から安定化局面に入り、それと交錯しながら経済が着実に上昇するにつれ実質金利が下がるという局面に入っていくと、様々な交錯した現象が出てくる。ここをしっかり読み分けていくことが重要な局面に入っていると思う。』

どうも実質金利マイナス(何をもって実質金利というのかという問題に関しては議論が分かれる所ですが、その点は置いておくと致しまして)での政策運営に関して福井総裁は結構リスクを感じているのではないかと思われる節のあるこの発言でございます。今後「実質金利マイナス運営も辞さず」というスタンスとの政策論争が楽しみでございます。

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2005/12/26

○総裁講演における金融政策運営のフレーズ

やや注目度低下でありますが福井総裁が経団連で講演(正しくは挨拶)を行いました。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0512e.htm

まあ相変わらず強気の講演なのですが、報道されているヘッドラインを見て「おお!」と思ったのは「来年度にかけて量的緩和政策の変更を迎える可能性が高まっている」という所でした。で、その部分に関しては早速本石町日記さんが採り上げてますので、まあそちらをご参照ありたし。→http://hongokucho.exblog.jp/3937497

講演の当該部分はこんな感じ。

『当面の金融政策運営については、この目的を達成するため、消費者物価指数に基づく明確な「約束」に従って、量的緩和政策の枠組みを継続していく所存です。もっとも、景気回復の持続性が高く、消費者物価上昇率も次第にプラス基調が定着していくことが展望される中、量的緩和政策というデフレ・スパイラル阻止のための異例の政策運営枠組みは、来年度にかけて変更を迎える可能性が高まっています。その際には、経済・物価情勢を十分に点検し、「約束」で示した条件、すなわち「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上」が満たされたかどうかを確認していくことになります。』

まあ何ですな、話している相手が経団連だからなのかも知れませんが、福井さんのホンネっぽいものが文面から窺えるというのは読みすぎかいな。

第1文はまあ普通なのですが、第2文目を見ますと量的緩和政策に関して「デフレ・スパイラル阻止のための異例の政策運営枠組み」と言ってますが、それでは今までの量的緩和政策における量を増やした事の意味は何だったんでしょうかと小一時間。いやまあなし崩し的に「ゼロ金利+時間軸」だと言う事にしているんですけども、それでは過去において「量的緩和の強化」という題目の下に当預残高目標を増やしていったのは只のプラシーボだったんでしょうかそんなことで金融政策って良いんですかって思うあたくし。

結果よければ全て良しって評価も勿論あるんでしょうが、今後の金融政策という面を考えますと、ちゃんと分析をしていただかないと、将来の経済において似たような事が起こった場合にどう対処すべきかという知見の蓄積が出来ないと思うんですが。まぁ当然中ではちゃんと検証してるんでしょうが、変に政策の正当化を図るような大本営発表的な検証ならしないほうがマシですので、それだけは勘弁していただきたいものです。

と、つい悪態が長くなってしまいましたが、2番目の文には「量的緩和はデフレ・スパイラル阻止」という「あれそうでしたっけ?」という定義(?)が入っておりますので、裏を返せばデフレスパイラルにならなければ量的緩和政策は用無しだと言ってる訳ですな。

で、その文の後半部分は本石町日記さんのご指摘の通りで、「高まると考えられます」ってのが「高まってます」という風に(ここはヘッドラインで見た時に個人的にはちとビックリしました。マーケットへのインパクトは無かったけど)なっているので、合わせますとまぁ強気の進軍ラッパですわな。


第3文目では、量的緩和政策解除の判断に何を考えるかということですが、上記(だいぶ上になっちゃいましたが)にありますように、消費者物価指数の一点張りでして、「再びデフレに戻らない事を重視」といった(岩田副総裁と中原審議委員が提唱中ですが)フレーズは全くございませんですわな。

まあ先日来強気な姿勢が目立つ福井総裁ですが、ここのフレーズを見ておりますと、CPIのプラスがある程度続いたらもう量的緩和政策は解除するってのは明白で、その時期は今年度末から来年度入りくらいですかって所ですわな。

金融機関の決算があるから政策変更を3月に行わないという説もあるのですが、金利引き上げを伴わない限り、枠組み変更は特にその辺気にして行うとも思えませんな。


○という事で来年の政策を妄想

ちょっと株価が上昇してくるとすぐ大喜びで財政再建路線だの金融引き締め路線だのという話になるのは困ったもんですが、まあ予想屋(でも何でもないが)としては政策シナリオを妄想しておく事としましょう。

まあ今回の総裁講演でも判るように、CPIがプラス転換して(明日のCPIは概ねプラス転換予想だと思いましたが)3ヶ月も経てば量的緩和政策自体は解除と言う事になるんでしょう。そう考えると2月までのCPIを見た後に3月の決定会合で解除と考えるのが妥当かな。2月の目も残ってるとは思うけど。

で、政府と言うか与党がおとなしいのは量的緩和政策の解除をしてもゼロ金利を継続するという事で話がついているというのがあたくしの勝手読み。金利を上げるのはCPIが0.5%くらい(あくまでも勘です)になってから検討するって所になるんじゃないでしょうか?まぁ量的緩和解除してもO/Nの金利が現在の0.001%から精々0.01%に上る位(短期にとってはそれでもまあそこそこインパクトあるけれども、長期にはそんなに影響なかろう)の話ではないかと思います。

ちと気になるのは、今朝のブルームバーグテレビでも言ってたんですが、米国のインフレ(と住宅バブル)警戒モードですかな。米国の金融当局では、日本の過剰流動性資金が米国に流れてきてインフレを招いているのではないかという意見が云々というお話がございました。てめえが金融緩和しているときは日銀もっと出せ出せみたいな話で、為替介入も散々やらせておいて金融引き締めモードになったら過剰流動性ですかそうですか随分とご都合のよろしいお話でなどと思うのですがそれは兎も角として、そーゆー論議が回ってくるとなると、日本政府様におかれましても急に静かになってしまうかもしれませんな。

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2005/12/20

お題「トーンを抑えているようで抑えていない総裁記者会見」

ということで金曜の総裁記者会見を生暖かくヲチ。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0512e_f.htm

○これは笑うところでしょうか?

冒頭は総裁による決定会合と月報の説明でして、その次の質疑でいきなりずっこけるあたくしなのでありました。

『(問)金融政策のスタンスについて伺いたい。8日の講演において、総裁は量的緩和政策の解除に向けて改めて意欲を示された。一方で、政府はそれを強くけん制する発言を続けている。今後の金融政策運営における政府と日本銀行の関係について改めて見解を伺いたい。』

『(答)意欲を示すとか、示さない、という話ではない。毎回申し上げている通り、あらゆる経済・物価の動きを冷静に点検して、経済の実勢に見合った金融政策を施すことによって、結果として、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していきたいという方向性に一切のブレはない。』

『そして消費者物価指数(除く生鮮食品)が現実に前年比ゼロ%の水準になってきて、今後同指数が安定的にゼロ%以上になるかどうかを、冷静かつ真剣に見極めていかなければならない段階であるので、意欲先行ということは私にとっては全くない。今後とも冷静に判断していきたい。(後半割愛)』

意欲先行では無いそうです。いやまあ奥が深いご発言でございますが(苦笑)、好意的に解釈しますと、「何も解除に前のめりではありませんよ」という言い方をする事によって政治との余計な軋轢を避けるという発想になっているんでしょうな。政府の方面がおとなしくなったのは先日の総理との懇談会が影響しているのではないかと勝手に想像中(罠かもしれんが)。


○望ましい物価上昇率に関して

2回ほど本件について質疑応答がありますが、結局明言は避けておりますわな。まあ元々インフレターゲットみたいな政策に関しては福井総裁は導入する気は無さそうな感じでして、仮にそれらしい政策を導入しても、あまり物価上昇率の期待の安定化という本来の機能が効くような形には持っていかないんじゃないかとは想像してますが。

『(問)先程、物価安定のもとでの持続的成長という点で、政府との間に認識のズレなどありようがないとおっしゃった。その物価安定の中身について、最近何人かの審議委員が、講演等で望ましい物価上昇率のあり方を示すことについてやや前向きの発言しているように思うが、総裁はこの点についてどのようにお考えか。』

『(答)私自身と言うよりも、日本銀行においてももちろんであるが、どの国の中央銀行においても、金融政策運営の責任を担い、かつ実際に運営している立場からは、望ましい物価安定とは何かということを、その国の経済構造の変化等も下敷きにしながら、発見努力を常に行っている。』

ということでこの後色々と理屈が続いているのですが、だいたい長々と理屈が出てくる時ってのは、ややこしい問題(誰が見ても答が明快って訳に行かない問題)に関して持論を述べる時だと思うんですが、福井総裁の会見にもその傾向はあるような気がする。で、そこの理屈部分を変にカットして引用するとミスリードしそうなので結論の所を引用。

『一言でインフレーション・ターゲティングとか望ましい物価安定目標の定義とか言っても、そこに至る思考プロセスに、各中央銀行の創造的な過程が前提となっている。単に、他の国の中央銀行はこういう姿をとっているからといったテキストブック・アプローチでこれを持ってくれば良いというような軽い考え方で、インフレ率のターゲットを置いている中央銀行は一つもないと信じている。』

『そうした状況(引用者注:経済のグローバル化状況だそうです)の下では、あまり先見的に数値のイメージを持たずに、物価形成メカニズムの新しいプロセスを深く分析しながら、私どもは次の新しい透明性の戦略に辿り着くほうが望ましいと思っている。インフレーション・ターゲットに積極的とか消極的とか言うことではなく、そういう事前のプロセスが大事な段階に日本経済は入りつつあると考えている。』

要するに「やらん」と言っている訳ですな。経済に新しい状況が起きるから云々って言い出したら、常に「昨日と同じ今日は無い」んですから、永遠に「望ましい物価水準の設定」は出来ないという話になるという恐ろしい理論。

別の質問に対する答えではこんな感じで話をしております。

『世界では、インフレーション・ターゲティングというか、一つの大くくりで言えばその範疇に入るような色々なやり方をとっている国がいくつもあるが、仔細に見ると国毎にその性格は違っている。日本の場合、どこかにテキストブックがあって、それをそのまま模写すればよいということは絶対にない。よそ見をする前に日本の経済・金融の構造がどう変わるかといった足許の状況をよく見て、日本人特有の国民心理あるいは気持ちにぴったり沿うような透明性確保の方法でなければならない。隙間があれば、必ずそこに便乗した違った思惑が入ってくるので、真似事はいけないということだけは明確に申し上げておく。』

「隙間があれば、必ずそこに便乗した違った思惑が入ってくる」というのは地均しの事でしょうかなどと無粋な突っ込みをしてはいけません(笑)が、物には言い方ちゅうのもあるのではないかと思うんですが、日本の例を参考にしてデフレ回避に成功したどこぞの国の中央銀行ってのもある訳でして、「よそ見」も必要なんじゃないですか?(勿論日銀の中の人たちは先刻そんなことはご承知でしょうし、ちゃんと研究してると思いますが)

まあ要するにインタゲは導入する気無しと。福井総裁になってから当預目標は景気良く上げていきましたが、中長期国債の買入額は速水総裁時代の月1兆2000億円からびた一文引き上げなかったように、「これ」と決めた物に関してはかなり頑固と思われる福井総裁の在任中は物価安定目標の具体的な数値が出てくるってのは難しそうな気がします。


○本日の釣り質問(笑)

本日の釣り質問はこちら。

『(問)先日、FRBのFOMCで再び利上げが決定されて、ステートメントにも若干インフレ警戒的なトーンが出てきた。ECBも利上げをしており、世界的にインフレ警戒とか金利上昇傾向が出てきているように思う。こうした世界経済の環境について、総裁はどのようにお考えか伺いたい。』

答えは会見要旨をご覧下さい(手抜き)。やや釣られ気味ですな。


○最後に結局やる気が出てたりするのですが

今年を振り返ってどうでした?って質問に関して答えをしているのですが。

『(答)あまりうしろは振り返らないのが私の性分であるといつも申し上げており、振り返ってどうかという質問が最も苦手である。』

ここはいつも悪態をついてますが、政策に関してはちゃんと振り返ってね(はあと)。

『特に感想はないが、強いて言えば春のペイオフ解禁という関門を順調にクリアでき、その後日本経済の足取りが、リズム感のいいものになってきたと思う。その時点で、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になることが次の大きな関門、あるいは通過点だと申し上げた。その通過点も、4月の時点で想像していた状況よりは少し良い状況で近づいてきている。10月の展望レポートを、4月の展望レポートに比べ若干中身を上方修正して皆様にお示しすることができたので、そう申し上げている。次の通過点の展望が、遠ざかるよりはより近付いてくる方向で推移しているので、今後ともそうした方向性がより確実になるように十分目配りをしながら適切な金融政策を行っていきたい。』

ということで、景気に関しては思いっきり強気であることは変りありません。

『私どもが正確な情勢判断を持つということが大前提であり、その情勢判断を基に市場とより濃密な会話を繰り返していきたい。これは非常に真剣かつ冷静なプロセスである。』

どうもこう引っ掛かるんですよね。こういうのを見ると元来ひねくれ者のあたくしは「日銀様の情勢判断を市場に押し付けますが何か?」と読んでしまうのであります。

『皆さんも、これをできるかぎり静かに見守って頂ければ、私どもとしては幸いである。』

えーっと、ここも笑う所でしょうか?地均しモードをおっぱじめたのはどこの誰だと。


○最後の最後は何か微妙な話

デフレ脱却がどうのこうのって問題に関して、「デフレを克服したということがきっちりとわかるように、わかりやすい数字を日銀と一緒に共有したいという考えをお持ちの先生方が多いように思うが」という質問が最後にまた出たのですが、デフレ脱却の観測について福井総裁はこのように述べています。

『デフレがいつ脱却したかという時点の観測についても、例えば景気の山谷に関し、今が山である、今が谷であるということを誰もわからず、山や谷を過ぎてしばらくしてから振り返って専門家が山谷を判断し、皆が納得する。なぜ納得するかといえば、専門家の分析に納得しているのではなくて、多くの人々が振り返ってみて、確かにあの頃は頂点だと感じながら私どもは経済活動をしていた、あの時はやっぱり谷底だったと納得がいき、合点がいく。デフレがいつ脱却したかは、経済が良い方向に進んでしばらく経って振り返ってみると、やっぱりあの時に脱却したと皆が納得できる時点というのはきっとあると思うが、前もって、これがデフレ脱却の時点だと言うと、それは嘘じゃないかという人が多いに違いないと思う。』

「専門家の分析に納得しているのではなくて」云々は内閣府に喧嘩を売っているのでしょうかと思わず突っ込みをしたくなりますが、字面でみる印象と会見のニュアンスは往々にして違う(今回は会見の録画まだ見てません)のでまあ良いとしまして。

「後になったらデフレ脱却が判る」と言い、(この会見では言ってませんが)「現在の景気動向では量的緩和政策解除の後の政策は余裕をもって対応する事ができる」と表明しているのであれば、これを二つあわせると「フォワードルッキングあるいはジャストタイミングでの量的緩和政策解除をする必要は現在はございません」って突っ込みが飛んできませんかねえと思いますが。


#意外に突っ込み所が多かったですな

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2005/12/09

○福井総裁講演なんですが・・・・・

という騒動ですっかり話題から外れてしまった(わけでもないが)福井総裁講演なんですが、前の話題を書くうちに例によって時間がなくなってしまったので詳しくは後日。

http://www/boj.or.jp/press/05/ko0512d.htm

講演テキスト自体はそんなに過激ではなかったのですが、ヘッドラインに出た上で報道もされていたのは「量的緩和解除が展望出来ることは明らか」というコメントでございました。

いやまあ一昨日の政府との懇談会でまた自信をもっちゃった(政府の理解を得た)んでまたまた暴れん坊将軍モードになってしまったのではないかと想像しちゃうんですけど、日銀法改正を虎視眈々と狙う与党筋が日銀を焚きつけておいて解除強行→景気失速→日銀のせいだから日銀法改正!って陰謀がめぐらされているかもしれないっていう予想はしないんですかね。

と、そこまで裏読みしたがるあたくしの方が変ですかそうですか。

・・・詳しくは記者会見と併せて週明けにでも。

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2005/11/24

まずは火曜日の続きから。

○潜在成長率がどうしたこうした

こんな質疑応答があった訳ですが、

『(質問前半部分割愛)また、2年続けて2%成長を遂げているが、日銀は日本の潜在成長率を1%近辺と述べている。すなわち、潜在成長率を1%超える成長を2年続けているので、それなりに需給ギャップは縮小していると思われるにも拘わらず、物価が上昇していない。こうした背景には、生産性の上昇に伴って潜在成長率が上昇している可能性がある。潜在成長率上昇の結果、需給ギャップの縮小が緩やかになる中で、消費者物価指数が0.5%を超えて1%に向けてどんどん上昇するということはなかなか想像し難いのではないか。』

即ち、現在の環境で拙速に緩和解除する必要があるんでしょうかという質問なのかはちょっと判りませんが(^^)。

『(答)大変重要な質問である。今後の日本経済の安定的な姿を最終的にどのように認識できるのかということにつながる重要な問題である。とりあえず、この先の当面の見通しも、少なくとも1.5%を上回る成長とみており、民間の予測でも2%に足をかけている。これは潜在成長能力を少し上回っている可能性が非常に高く、需給ギャップがかなり縮んで来て、今後も縮小し続ける。これは少なくとも明確に言えることであると思う。需給面から物価の基調が変わる。』

あのだから質問者は「日銀の言う潜在成長率を1%上回る成長を2年続けてまだデフレって事は潜在成長率の読みが低くないっすか」と聞いてると思うんですが、将来の話じゃなくて。

『しかし、もう一つは生産性がどれくらい上昇しつつあるか、従って日本経済の潜在成長能力がどの程度のスピードで上方修正されつつあるのかが大事である。』

「上方修正されつつある」という言い方ですから、現在見積もっている潜在成長率1%というのは「過去2年間の経済成長でも物価絶賛下落」という実績を見ても見直さないのでしょうな。まぁ潜在成長率は最終的には類推するしかないものだと思うんですが、結果を見てから過去の推計を見直すって発想は無いんでしょうか?(さすがにあると信じたいのだが)

『ここのところは、どこの国でも前もって読みとれないところであるが、生産性が上がり、潜在成長能力が少しずつ上方に向いているとすれば、それだけ成長を嵩上げする力が増している。その一方で生産性が上がって潜在成長能力が上がり、潜在成長能力通りの成長が続いていく過程にあっては、需要が増えてもインフレにはなりにくい面があると思われる。』

インフレになりにくいのなら何故いまそんなに慌てて緩和解除と小一時間。

『需給ギャップが縮まることと、生産性が上がって物価上昇圧力を吸収する余地が広がることの両面から考えていかなければならない。今後はその点について究明努力をしっかりやっていかなければならない。これは日本銀行だけでなく、能力のあるシンクタンクの方々や経済分析家に、少しエネルギーを割いて頂くと私どもとしても大変助かるところである。』

暫く前の内閣府のフォーラムだかで「潜在成長率2%台前半」とかいうのがあったような気がする(その割には確か内閣府公式見解は潜在成長率1%台前半だったと思うが)し、もうちっと潜在成長率あるんジャマイカというレポートとかもあったような気がするが。しかしこの「能力のあるシンクタンクの方々」とか「経済分析家」ってのは何か慇懃無礼というか嫌味なものを感じてしまうのは気のせいでしょうか(笑)。


ま〜それはそれと致しまして、潜在成長率が1%そこそこだという認識を変えないというのであれば、そりゃもう2年連続で2%成長してて来年度も2%以上の成長をしそうですよって見通しであれば「すわインフレ」ってことになる訳でして、そりゃもう量的緩和政策をとっとと解除してインフレ発生に対して機動的な対応をしなければいけないというものですな(えー

解除で慌てる前に潜在成長率1%そこそこってのを見直す事もご検討ありたいところなんですが・・・・・


『物価について言えば、いろいろな面からファンダメンタルズをきちんと分析していかなければならない。それに加えて、グローバル化の影響、すなわち海外との競争圧力が引き続き日本企業に厳しく向かってくることを上乗せしながら、物価がどの程度上がりにくい経済なのかを注意して見ていかなくてはならない。私どもはそれらすべてを考慮に入れて、量的緩和政策の枠組みを修正した後でも、急にインフレ圧力が高まるとは考えにくく、しばらくは余裕を持った政策運営が出来るのではないかと今のところは想定している。今後、時間の経過とともに、その一番大事なところに分析のメスをさらに詳しく入れていかなければならない。』

何というか、量的緩和解除は先にやっちまってからご検討のようですね。もう今となっては量的緩和政策のコミットメントが与える期待(緩和解除がビハインド・ザ・カーブになるという例の話)そのものがぶち壊しではありますが、緩和解除しちゃうと益々「ちょっと経済成長したら日銀はいきなり引き締めに走るんじゃネーノ」という期待(というか思惑というか)が強くなるような気が致しますですわな。困ったもんだ。


#しかし突っ込みどころの多い記者会見ではあります

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2005/11/22

お題「俺様理論爆発の総裁記者会見」

先週末の総裁記者会見がアップされました。金融経済月報で穏やかにやっていましたが、記者会見はまぁ実にアレな訳でございまして、もしかしてと思ってbewaadさん(http://bewaad.com)のところを見に行ったら厳しいツッコミをしており、つい読みふけってしまいました。確かにこの会見要旨突っ込みどころ満載というかどこをどうネタにするべえかってなもんですので、まぁ本日は簡単に。思いついたら続編を出すかもしれません(と言ってまぁ出さないと思うが)。

総裁記者会見はこちら→http://www.boj.or.jp/press/05/kk0511b.htm

○まずこちらに出てきた文書の全体的印象

ブルームバーグニュース端末で視聴可能な記者会見のストリーミング放送を全部聞けば良かった(まぁ今からでも聞けるんで無問題ですが)という感じですが、どちらかというとやる気満々感が漂ってくるという所ではあります。いやはやそうですかって所ですが、全体トーンの余りと言えば余りなハッスル振りに呆然としつつ、そうさいのもくろみどおりにぶっかがばんばんじょうしょうするといいですね(棒読み)と思うのでありました。


○量的緩和政策はデフレスパイラル阻止ですかそうですか

bewaadさんの所でも突っ込みが入ってましたので簡単に。最初から3番目(実質的には2番目)の質問に対する答えの一節から。

『量的緩和政策は、日本経済がデフレ・スパイラルに陥るリスクが懸念された状況において導入された異例の政策である。そうした異例の政策を、消費者物価指数に基づく約束に従って、条件が満たされるまで続けるということである。日銀当座預金残高を操作目標とする思い切った緩和政策を継続する基準として、この約束を示したのである。』

で、デフレスパイラル云々と言うフレーズをこのあと2回発言しているのですが、まぁ当然最後の方でこんな突っ込みが来るわけです。

『(問)そうすると、量的緩和政策というのはデフレ・スパイラル対策であって、デフレ対策ではないということになるのか。』

『(答)デフレ対策である。それは妙な質問であると思うが、デフレ・スパイラルを免れるように努力するというのがデフレ対策そのものであるし、デフレ・スパイラルに陥るのを防ぐことにある程度成功して、安定的な拡大に戻っていく過程すべてがデフレ脱却のプロセスである。その間、量的緩和政策が効果を発揮し続ける限り、それはデフレ対策と言って良いと思う。』

「妙な質問」ってあなた様が3回もデフレスパイラル対策って言ってましたから〜残念!


○いや何と申しますか・・・・

『現状、消費者物価指数がまだ僅かながらマイナスの領域で推移している状況のもとで、私どもは引き続き量的緩和政策をコミットメントに従って堅持するということであり、現状消費者物価指数がマイナスであることを前提に政府の発言が色々あっても、私どもの基本的な認識と相違はないと思っている。』

もうすぐ解除するぞと言いまくるのは「コミットメントに従って堅持」でも何でもないんですけれどももう何というか泣数行下ると言った所でございましょう。

『先程も申し上げたように、景気が回復を続ける中で、物価上昇圧力が高まらないのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持することができると思っている。』

いやあの物価上昇圧力が高まる時に引き締めをすれば良い訳で、物価上昇圧力が大した事無いのなら何故量的緩和解除を急ぐのかと小一時間でございます。


○篠塚理論キター

毎度お約束のこんな質問がありまして、

『(問)量的緩和政策を続けることの副作用について改めて伺いたい。また、インフレ・ターゲティングについて、今の段階でどのようにお考えか伺いたい。』

『ごく大掴みに一般論で言えば、量的緩和政策は、経済を健全に運行していくメカニズムの中で一番大事な金利メカニズムを封殺しながら運営してきている。そのような大きな犠牲を払いながら、デフレ・スパイラルから脱却するためのかなり異例な措置であるという点を忘れずに、私どもが今後することについて、なぜそのような転換が必要かを是非正しく理解して頂きたい。従って、消費者物価指数に基づく約束が満たされたという判断に至った以降も、そのような大きな犠牲を払い続けた場合に、よりダイナミックで健全な息遣いが聞ける経済になるか、ということが問われなければならない。』

はあはあそうですか。金利機能ってそんなに大事ですかそうですか。いやまあしじょうかんけいしゃとしてはまことにきょうしゅくしごくでございます(棒読み)。物価がゼロ近傍でちょっとしたショックで直ぐにデフレになってしまうような状況において、金利機能がデフレに陥るリスクよりも大事とは参りました。

つーか(後でも出てくるけど)一度プラスに戻ったら、物価がデフレ方向に戻る可能性は無いと確信というか信仰状態になっているんジャマイカと。

別の質疑でとうとう来ました預金金利ゼロ理論(-_-メ)。

『量的緩和政策は、あくまでもデフレ・スパイラルに陥って経済が死んでしまうことを捨て身で防ぐための異例な措置であり、これには大変コストがかかっている。金利機能を封殺しているし、多くの消費者の皆さんも、ほとんど一文も預金利息を受け取れないという犠牲を払ってこの政策を支えている。』

いやあの一般物価の上昇率が5%で預金金利が2%の方がよっぽど預金者の犠牲が・・・・・・というか、篠塚英子元審議委員の主張を思い出すのでありました。まあ篠塚さんの場合は是非は兎も角(というかかなり???でしたが)として、それはそれで主張一貫して金融緩和に反対するある意味清算主義的主張だったのですが、福井総裁様におかれましてはどうも量的緩和政策解除の為に世論を味方につけようとしてこの理屈を持ち出しているのではないかという邪推をしたくなりますわな〜ってところですな。


○お前が言うなって奴ですな

総務省のCPI改定に絡む質問に対して奥が深いご答弁がございました。

『これ(引用者注:コアCPI)を共通の基準として約束してきているので、あまり技術的な理由で中身を入れ替えるようなことをして、また国民の皆様に頭の中で整理し直して頂く必要はないのではないかと思う。』

『人々のインフレ心理やデフレ心理にどのような影響をもたらしているか、これから行おうとする行動を前向きに刺激しているのか、足を引っ張ろうとしているのか、といったことを十分頭に置きながら数字を読むということである。数字の読み方の問題であって、数字の中身を入れ替えて自己満足するというようなことを私どもはやらない。』

本石町日記さんのところで紹介されていた「机上のエコノミスト」発言はどうもこのやりとりの中で出ていたらしいのですが、惜しくも会見要旨には載って来ないようです(また聞きなおすか)。まーそれは兎も角として、「数字の中身を入れ替えて自己満足」ですか。潜在成長率を算定するのにまさか結果から逆算しておられませんでしょうなあ。

ま何と申しますか、どこにあったのか判らん流動性危機とか、「短期金融市場でターム物取引が活性化しないのは金融機関の信用力が復活して無いから」とか大変に素晴らしい話がポンポン飛び出す人たちに言われてもねぇ・・・・


○そしてバンザイアタックですか

最後の質疑。

『(問)先程から、量的緩和政策は異例な金融政策だと繰り返されているが、いったん解除した後に予想し得なかったリスクも含めて経済が悪化してしまった、あるいは物価が下がってしまったといった場合に、中央銀行としてどのような手の打ち方があるのか伺いたい。』

長いので段落分けますが、前半は気合、後半は願望の表明と言いますか・・・・

『(答)異例な金融政策に帰ることをあらかじめ想定して金融政策はしたくない。それゆえに、私どもは粘り強く消費者物価指数が安定的にプラスになるまで量的緩和政策を続けると、政策運営の手足を縛り、ある意味で国民の皆様にコストを払って頂いている。預金金利が低いという状況が一つの典型であるが、国民の皆様にコストを払って頂きながら異例な金融政策を粘り強く行っているということは、また簡単に量的緩和政策に戻ればいいという気持ちがないがゆえである。』

『ショックが色々及んでくる可能性が全くないとは言えないが、ここまで日本経済において、特に民間部門の構造改革が進み、バランス・シートの健全化が進み、イノベーションが強いという経済を前提とした場合、何か強いショックが来たからといって単純に量的緩和政策に戻らなければならないような弱い経済であろうか。その点を私どもはしっかりと点検した上で量的緩和政策の枠組みの修正に踏み切るということである。』

いやはや。


#その他「マジで鳥インフルエンザ話してたのね」とか、何か香ばしいフレーズがいくつか拾えるのですが、引用も長いし時間も無くなったのでこの辺で。

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2005/11/21

○総裁記者会見ですが

記者会見要旨は例によって例の如く本日午後にでもアップされるのですが、ブルームバーグニュースが行う会見ストりーミング放送(ただし録画もの)を3分の2ほど見た感想を少々。

・だから今からインフレファイターになってどうする

「インフレマインドが来る前に解除(手元のメモにはそう書いてあるけど、表現は違うと思う)」という部分でかなり腰の砕けたあたくし。いやまぁもうインフレファイターですか今はデフレですよ総裁って感じなんですが。

全体的にインフレ抑制っぽいトーンの発言が多いというか、インフレという言葉に妙に反応するのは日銀マンの仕様でしょうか?

・一応撤退路確保作戦もしてるのかな?

「経済に何らかのショックがあれば解除は遅らせるのは当然(脳内メモリーベースの意訳)」という発言がございました。まぁここまで振り上げた拳を下ろすには、まさか「政府のご指導」って訳にも行かないですから、それなりに「経済にショックを与えるような突発事態」というのが言い訳として必要とされる今日この頃ではございます。そのために今回布石を打っているのがこの発言なのではないかとも取れる訳ですわな。

そこで鳥インフルエンザですよ(笑)。先日与太話をしている時に「しかしSARSって言うと語感的に何だか恐ろしい病気っぽいけど、鳥インフルエンザだと何かこう間の抜けた感じがしますわな。日銀の政策決定文書に載せるとなると」などというしょーもないネタで盛り上がりましたが、何か言い訳があれば量的緩和を引っ張るという「名誉ある撤退」もできるかも知れませんな。

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2005/11/14

お題「もう完全に既定路線化ということで」

「政策目標で日銀に独立性は無い(中川自民党政調会長)」ちゅうのもまぁ金丸さんを思い出しますなぁってもんで、そりゃ一体どういう事なのよって気もしますけど、今月の月刊現代にあった論説(ちょっと人に貸与中なので詳しく覚えてませんが)にあるように、日銀の独立性が獲得されるまでに「政府に抗して狂乱物価を止めた」みたいなことがあったら、ここまで言われるこたぁ無いのかもしれませんな〜などと思いつつ。


先週金曜日には福井総裁の講演がまたまたございましたが、基本的に金融政策に関しては「量的緩和を解除する」というのが既定路線状態になっている訳でして、金融政策に関しては緩和政策解除を前提にした話になってますわな(ブルームバーグテレビ見てたら量的緩和解除してからもゼロ金利継続って言ってる人がいたのですが、まだその見方のほうが強いようですな)。まぁ何だかなと思いつつ。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0511a.htm

○量的緩和政策を総括してますが

今回の講演は基本的に前回の展望リポートを踏襲したような内容になっておりますので、展望リポートのレビューだと思って読むと吉ではないかと思います。で、展望リポートでも話題になっていた量的緩和政策の総括をまた行っております。

『潤沢な資金供給は、金融システムに対する不安感が強かった時期──大手行の不良債権処理がピークを迎え、ペイオフの部分解禁を控えた2001〜02年や、りそな銀行への公的資金注入が行われた2003年頃──においては、金融機関の流動性需要に応えることによって、金融市場の安定や緩和的な金融環境を維持し、経済活動の収縮を回避することに大きな効果を発揮しました。』

コミットメントの方はまあ良いとしまして、展望リポートではここまで個別具体的な言及は無かったような気がしますが、まぁこういう事のようですな。で、その頃に金融機関の流動性需要ってそんなにございましたっけ?というとどう考えても個別要因以外でんな物はありませんでしたがという結論。

で、このように口喧しく悪態をついておりますと、「結果的に景気が回復しているのだから無問題」というご批評を頂くのですが、例えば実験でも生産でも良いんですが、プロセスの分析が不正確なままであれば、幾ら結果が出ても「後に繋がる」事にはならんと思うのですわな。特に経済なんてのは毎度毎度前提条件(化学実験だったら反応条件ですな)が違うのですから、今まで行った政策のプロセスをちゃんと分析しておかないと、新しい前提条件に適切な対応が取れないと思うのですが。

ということで、先日の展望リポートの後に本石町日記さんがご指摘していた事と重なりますけど、いつの間にか「2003年頃には金融機関の流動性需要があった」という事に「なってしまっている」という事に関しては懸念を感じるあたくしなのでした。


○金利上昇はデフレ脱却インフレ期待によるものでしょうか?

『そもそも、「約束」に伴う量的緩和政策の継続期間は、市場参加者の物価見通しによって伸縮するという性格を有しています。最近のように消費者物価の前年比が近い将来にプラスに転じるとの見方が増加するもとでは、市場参加者が予想する量的緩和政策の継続期間は短縮しており、その結果、やや長めの金利形成において「約束」の果たす役割は徐々に後退しつつあります。このことは、「約束」の性格上、自然なことと言えます。』

まぁ何ですな、デフレ脱却からその先の物価上昇期待が醸成されれば、金利は量的緩和政策の出口を展望するので足元金利がゼロであっても上昇するってぇお話ではございますわな。

ところで、最近確かに金利は上昇しておりますが、国債市場におきましてはイールドカーブは思いっきりフラットニングしておりますわな。このインプリケーションは上記のような総裁様の話と整合性が取れませんが如何でしょうか?もしかしてやや長めの金利形成って2年金利くらいまでの話をして10年以降の長期金利に関しては華麗にスルーなんでしょうか???

ど〜みましても、2年あたりの金利は早期利上げを織り込みながらも長めの金利に関してはそこまでの物価上昇期待(懸念)を持って動いていないというお話になりそうな気がするんですけど、イールドカーブの中で自分に都合の良い部分だけ取り出して見てませんかぁ??


○ということでやる気もへったくれも無く

『今後、量的緩和政策の枠組みの変更に当っては、経済・物価情勢を点検し、「約束」で示した条件──「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上」──が満足されたかどうかを確認していくことになります。枠組み変更の可能性は、経済・物価情勢が今回の展望レポートの見通しに沿って展開していくのであれば、2006年度にかけて高まっていくと考えられます。より具体的な時期については、今後の金融経済情勢次第であり、予断を持つことなく、適切に判断していきます。』

やる気満々というよりは最早やる事を前提に淡々と話をしているという感じでございますわな。

『将来、量的緩和政策の枠組みを変更する場合には、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、金融調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更することになります。現在も、量的緩和政策の効果は、次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきていますので、枠組みの変更それ自体は、政策効果について非連続的な変化を伴うものではありません。その後は、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済の実勢に見合った金利水準に調整していくことになると考えられます。』

で、まぁこの期間についての見方が色々と分かれている所だというのが現在の金融市場といった所ですわな。で、ゼロ金利政策が暫く続くという見方も多いのですけれども、最終的に金利水準がどうのこうのという話をしている事を踏まえますと、そんなにゼロ金利が続くと考えるのはどうかと思いますし、量的緩和終わってもゼロ金利だったら何のために解除したのか(日銀的に)訳判らんと思うのですが。

で、実はもう一つ気になってるのは前回の展望リポートからそうなのですが、「経済の上振れ要因」に関してやたらと事細かに言及するようになった事。もちろん展望リポートは毎回先行き見通しに関して「上振れ、下振れ要因」に関して言及しているのですが、前回のレポートでやや上振れ要因を強調しだしたなぁと思って見ておったのですが、今回の講演でも上振れ要因に関して細かく話をしております。細々とはご紹介しませんが。


○うーん

物価見通しに関連して。

『ただ、2003年度以降、既に2年以上の間、潜在成長率を上回る成長が続き、需給バランスが改善してきたとみられる割には、物価の反応は小幅なものにとどまっています。生産性の上昇と賃金の抑制のもとで、製品やサービスを作り出すために必要とされる単位あたりの人件費──ユニット・レーバー・コスト──が低下し、物価を上がりにくくする方向に作用してきたことが主な要因と考えられます。ユニット・レーバー・コストの先行きについては、賃金は上昇するものの、生産性の上昇による低下圧力は続くとみられるため、近い将来、明確な上昇に転じるとは考えにくい状況にあります。このため、物価の上昇ペースが加速していく可能性は低いと考えています。』

この後こちらでも上振れ要因について言及してますが、「加速していく可能性が低い」のであれば何も急いで量的緩和政策を解除しなくても良いと思うのですが、まぁ福井総裁としては、インフレ期待が加速してから引き締めに転じる為には今のうちに金利政策に戻しておいた方が後でやりやすいっていう意識なんでしょうな。

それはそれで一つの考え方だと思うんですが、それはCPIがプラスに転じてから考えればいいことであって、何もマイナス継続中の時にそんな話をするこたぁねぇだろうと思う次第。つーかゼロ近傍のプラスだったら何かの拍子にまたマイナスになるかもしれないんですけど。


そういえばしょうも無い雑談の類ですが・・・

『以上が、景気の見通しに対する下振れ要因ですが、上振れの可能性についても頭に置いておく必要があります。』

で、マインドの話になるのですが。

『日本経済の先行きに関する国内の見方は、10年以上にわたる低成長の経験もあって、どうしても悲観的になりがちですが、海外では、英国のエコノミスト誌が『日はまた昇る』と題する特集記事を掲載するなど、日本経済の先行きに対する楽観的な論調が目立ってきているように思われます。』

つい数年前には日本は滝壷逝きとか何とか言ってた雑誌様がこの期に及んで「日はまた昇る」とか言い出すと「えー後追い指標ですか〜持ってあと1年かな」などとつい思ってしまうあたくしはひねくれ者ですかそうですか(笑)。


まぁそんなことで。今回の講演は先ほど申し上げたように、展望リポートの判り易い説明って感じですので、まぁ現在の日銀を見る上では読みやすくて良いと思いますよ。

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2005/11/10

お題「長期国債買入と金融調節の柔軟性(昨日の補足)」

今日の話はかなりマニアックな気がする。マニアックな割には自分で書いていて完全にクリアカットになっていない自覚症状がありますので突っ込みキボンヌ。

○長期国債買入と金融調節の柔軟性

昨日になって遅ればせながらご紹介した先月31日の福井総裁記者会見に関してあたくしこんなことを書いてみたのですが・・・・(以下昨日の再掲)

『しかし、その際に重要なことは、金融調節の柔軟性を確保する観点である。その観点から、銀行券発行残高を上限としてオペレーションの額に制限を設けてきた。引き続き、こうした考え方に沿って実施していく方針である。』

成長通貨供給だから銀行券発行残高が上限(その説明もアレですがまぁ兎も角)であるという話じゃなかったっけと思いますが。柔軟性確保するなら上限設けない方が良いんじゃないでしょうか(苦笑)?

(以上昨日書いた話ね)

で、何か別の理屈があった気がするとか思いなおしまして、人に聞きつつ考えてみたのですが(汗)、この柔軟性確保って意味は「本来短期のオペレーションで対応すべき物を長期のオペレーションで対応すると、オペレーション上不都合が生じる可能性がある」って事なんですな。謹んで昨日のあたくしの発言を撤回致しますが、その理屈はちゃんと説明してくれんと理解されないと思う希ガス(日銀ストーじゃなくてヲチャーを詐じゃなくて自称するあたくしもついうっかりの巻ですから、ってそりゃあたくしの頭が弱いからですか)。

ということで、何がどう不都合なのかというお話をば。正直、妙に単純化している嫌いがあるので、変な点はご指摘下さいませ。

日銀のB/S(という話を始めるとまた以前ややこしく論議を呼んだお話になるのですが、本石町日記さんの過去ログでもご参照下さいと書いて華麗にスルー)で考えると銀行券(日銀券)ちゅうのは日銀の長期負債になってまして、その長期負債の見合い資産として長期国債を持っているという次第であるというお話になりますわな。

で、その日銀が長期負債以上に長期資産を持つと言う事になりますと、その分短期負債(だから今だと売出手形とかになるんですかな)を発生させるという理屈になるのですが、まぁそこまでは良い(やや良くなさそうだが華麗にスルー)と致しまして。

何らかの事情でこの状況から吸収オペレーションが必要になった場合(インフレ高進で引締必要とか銀行券が減るというテクニカルな場合とかですか)に何をするかちゅう事を考えますと、

1.短期の調節で回収するとただで無くさえ銀行券オーバー分の売出手形がある所で回収となるので、短期回収オペレーションのロールオーバー大会になって短期金利の乱高下要因になりそう(つーか、長期国債買いながら短期の回収というのも間の抜けた話)

2.長期の調節で回収を対応するとなると、それは長期国債売切(または買切をいきなり停止)なんで、長期金利が乱高下要因

という事が想定されるので、機動的に動かしやすい短期のオペレーションで対応すべしってことから「柔軟性の確保」って言ったんですな。資金の短期的繁閑を調節する事を考えると、最初に述べたように資産に長期国債が沢山あって負債に銀行券と売出手形が入っているという段階で、短期のオペレーションに制約を受ける形になるのでそもそも柔軟性が確保できていないのですけれども。

普通の会計と一緒くたにして説明するのはかなり乱暴ですけれども敢えてなおざっくりと概念的な話をしますと、、日銀券見合い以上に長期国債を保有しているという図は、保有している長期資産に対する長期負債が不足していて短期負債まで食い込んでいる状況と言う事になるので、言ってみれば設備投資のファイナンスを短期借り入れのロールオーバーで対応しているの図(あっしが昔勤務していた銀行では「固定長期適合率が100%未満」って言い方してたですな)ということで・・・・却ってややこしくなったか??


とまぁこういう事を書きますと、日銀が国債を買いまくった分を回収する必要がどこにあるのかとか、日銀が国債を買い捲れば銀行券は増えるのではないかとかいう指摘もやってくるのですが、それに関するお話は、だいぶ前にbewaadさんとマーケットの馬車馬さん(http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/)がブログで議論をしておりましたのでそのあたりをご参照ありたしとまたもスルーするのでありました。

#うーん、考えながら書いていたので、他の雑談を書く時間がまたもなくなってしまった。だいたいこれってネタとして突っ込みだすとややこしいですな。

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2005/11/09

○31日の総裁記者会見

すいません遅くなりました。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0511a.htm

会見の中盤でこんな質問がありました。

『(問)展望レポートで、インフレ予想が進むというリスク要因も指摘されているので改めて伺いたい。総裁は経済の持続的成長にとって望ましい物価水準はどういうものであるとお考えか。数字でなくてもいいので、基本的な考え方を伺いたい。』
『また、展望レポートの末尾に「金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明し、期待の安定化に努める」という表現があるが、総裁ご自身としては、こういう目的を達成するために必要な具体的な措置について、どのようなことをお考えか。』

で、この答が思いっきり長く、この質疑応答部分だけで1ページ分になっております。

・マイルドインフレという発想は・・・・・?

『(答)望ましい物価水準について具体的なイメージを持っているかと言われれば、持っていない。これから、物価がある時点以降プラスの世界に移った後、ダイナミックかつ均衡のとれた日本経済の姿がどのように形成されていくのか、その中で安定的な物価水準とは一体どういうものかということは、さらに検討が進められていかなければならないと思う。』

総裁は相当前からこの「均衡の取れた日本経済」っていう言い方をしてるのですが、まぁ「具体的なイメージは無い」ってのはいつものことですし、変に言及しても日銀としてコンセンサスを取ってる問題じゃないからマズイんでまぁ仕方ないでしょうな。で、途中を一部割愛してその後。

『大事なことは、インフレ方向であれデフレ方向であれ、人々が物価の変化を常に念頭におかなければ安定した事業計画や安定した家計部門の経済生活ができないということがあってはならない、という点であると思う。』

えー、ゼロインフレ論ですかー。

『あまり物価変動リスクを念頭におかず、事業計画をきちんと立てることができ、人々の生活設計もできる、ということでなければならない。それが物価安定の一番基本的なエッセンスであるという点は、時代がどう変わろうと、経済構造がどう変わろうと、どこの国であろうと、普遍的という言葉は少し言い過ぎかもしれないが、共通項であると思っている。』

うーん、まぁ好意的に読めば「デフレにならない程度の低インフレが望ましい」とも読めるのですが、どうも上段の一節が気になりますわなぁ。


・期待の安定化と市場誘導を混同しているのではないかという・・・・

この次に質問後半に対応する期待の安定化がどうのこうのって話をしているのですけれども、微妙に禅問答っぽくて要点が引用しにくかったりするのであった。

前半に金利機能復活の話をしてるのですが、微妙に蒟蒻問答なので引用するのは控えておきます。後から記者会見のストリーミング放送聞きましたが、このあたり確かにナンノコッチャ感が漂ってました。

『従って、この間(現在は経済が望ましい状態に向かう過程だという話だそうで)の金融政策は通常の局面以上に、日本銀行がその時々の時点で、何を目的にどのような意図で政策運営をしているか、その目的ないし意図に沿ってどのような行動をしているか、またそれらを如何なる表現で説明していくかということが、市場関係者の方々に少しでもクリアに理解され続けていくことが、市場機能が一層活きていくためのひとつの大きな前提条件である。また、それらのことは、最終的に市場の中で金利その他の市場条件が決定される時に、人々が共通して認識する将来の日本経済・物価の姿にフィットするかたちで、金利その他の市場条件が決定される基になると考えられる。 』

うーん、何か微妙にアレなのですが・・・と思うとその続きがありまして、

『それが市場の安定化という最終的に望ましい解であるが、人々の期待の安定化があって、安定した市場条件が形成される。人々の期待の安定化ということは、日本銀行の力だけではできるものではないということは良く承知しているが、日本銀行は人々の期待の安定化に努めることができるポジションにいると思っている。期待は自由に操作できるというおこがましいことは全く考えていないが、期待の安定化のためには全力を尽くさせて頂きたいという強い意思表明である。』

とは言ってますが、どうも「市場の安定化」が先にあるというか市場誘導先にありきなのではないかという風に思う訳なのですよ。

『何か具体的なやり方を今念頭に置いているわけではない。コミュニケーションは大事であるが、そのコミュニケーションを前提として、私どものものの考え方が明確であり、私どものとる行動がそれと平仄がとれて一貫性があり、説明との間にも齟齬がないということは念頭に置いている。』

ものの考え方が明確で行動が平仄がとれているってのはまさに現在仰せの通りではあるのですが、何かちと違う気がする。。。。


・長期国債買入についてちと???に思ったこと

これは別の質疑での総裁コメント。

『長期国債の買入れについては、現在の量的緩和政策のもとでは、円滑な資金供給を実現する上で必要と判断される場合に、これまでも増額を行ってきており、現在も月々多額の国債オペを実施している。』

量的緩和政策導入時に審議委員だった植田さんがダウトを出している割には長期国債買入増額を「これまでも行ってきており」って福井総裁になってから増額してねぇだろうよと思うのですが、微妙に我田引水の香りが漂いますな。

『しかし、その際に重要なことは、金融調節の柔軟性を確保する観点である。その観点から、銀行券発行残高を上限としてオペレーションの額に制限を設けてきた。引き続き、こうした考え方に沿って実施していく方針である。』

成長通貨供給だから銀行券発行残高が上限(その説明もアレですがまぁ兎も角)であるという話じゃなかったっけと思いますが。柔軟性確保するなら上限設けない方が良いんじゃないでしょうか(苦笑)?

ということで、何か説明がアヤシイですわな。まぁ『量的緩和政策の枠組み変更後における長期国債買入れの運営については、解除時点での金融情勢に即して判断すべきものであり、現時点では、具体的なことは申し上げられない。』ということのようですが。


会見全体を読むとどちらかというと「やる気満々」に見えましたが。会見要旨には出てませんでしたが、また「政策が最もライトタイミング」って言ってましたし、ビハインド・ザ・カーブはどこへ逝ったのやらと小一時間ですな。

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2005/10/24

○総裁国会答弁続き

金曜は前日の国会(参議院財政金融委員会)答弁に対しまして(あたくし的には)久々に勢い良く「もうね、アホか馬鹿かと」を連発しましたが、続々と(というのはオーバーですが)ご意見を頂きまして大変ありがとうございました。

で、ご本人の承諾によりまして、頂きましたご意見ご感想メール(の一部)をご紹介します。

『ところで、昨日の国会答弁で、福井総裁が「長期的には買入額は減らすよ」と発言してお叱りを受けている件ですが、率直に申し上げて、「そんなことも織り込まれてなかったの??」というのが印象です。冷静に日銀のB/Sの状況を考えれば、すごく当たり前のことのように思われるのですが。。。』

金曜日に米国市場で株安債券高をやってくれたので救われた面がございまして、木曜のイブニングの急落は何だったんだって感じにはなりました。市場が冷静になったのかどうかは正直良く判らん(ちゃんと見て無いし)所で、相変わらず先物3銭安で5年が5糸甘なのに10年が5糸強(273回だけ1毛強)で20年2.5毛強に30年5毛強って過激なイールドカーブを見るに相場がどうも落ち着いていない悪寒が致しますが。まぁそれは兎も角。

量的緩和政策の解除後の輪番オペの扱いに関しては、現在の状況がそのまま引っ張られると上記のご指摘通りで「買入減額ですがな」ということになろうかという所(あたくしもそう思う)なのですが、この点に関してはまだ意見が分かれている所ではないかと思います。

まぁそういう事を申し上げるのもアレですが、審議委員の皆様の地均し発言の中で、地均ししながらも市場に衝撃は与えたくないって考えからなのか「量的緩和解除後も低金利が続く」という趣旨のフレーズが多いのも変に輪番が減らないという期待を与えているのではないかという気も致します。微妙なところですが。


まー確かに発言の全部を見れば単に一般論を語っているのに過ぎないのですが、一般論を言うにもタイミングというのがある訳でして、福井総裁の「一般論」話は妙にタイミングの悪いものが多いという印象で(まぁスルーされるようなのは印象に残らないのだから当たり前ですが^^)す。過去においても大昔の債券日々絶賛連騰相場時代に「国債は償還されるものであって株式バブルと同列にして国債バブルというのはちょっと変です」などと一般論を言って益々燃料投下をしたり、その他色々と楽しい(楽しくないのだが)発言をして下さる訳です。

正直、もうちょっと当たり障りのない言い方(金曜も言ったけど「輪番の扱いはその時の経済状況で適切に判断する」とか)をして頂きたいというのが要望(??)でございますわな。何でそう黒白つけるような言い方をしちゃうんでしょうかねぇ。>総裁

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2005/10/21

○国債市場特別参加者会合での指摘

本当はプライマリーディーラー制度に関する雑感も書きたい所でございますが、次の話があるので(月曜分のネタを温存してるんだろうという指摘をしてはいけません)ここでは日銀袋叩きの図という部分に関して引用をしておきますね。

『9月の初めからの長期金利の上昇は、株高や景況感の改善等による面もあるが、日銀からの極めて積極的な情報発信が市場の大きな反応を招いたという面もあるのではないか。特に時間軸効果の影響の大きい5年ゾーンにおいて0.5%から0.9%程度まで金利が上昇したが、これは、市場のコンセンサスが急速に一方向に動いた結果と考えられる。日銀による情報発信は、金融政策の先行きの透明性の向上を意図したものとは思うが、今回のケースでは市場のボラティリティを著しく高めることになったと考えている。(途中割愛)日銀は、これらの点(CPIはプラス転換するかもしれないけど、全体的な景気動向はどうよって話です)を配慮し、今後、十分慎重な情報発信を心がけて欲しい。』

別のお方(だいたいどこの誰かは予想できますけど^^)はより手厳しい指摘です。

『量的緩和解除の3条件が明示されているのだから、その条件が満たされていくかどうか及びそのタイミングをマーケットが判断していくのが本筋であり、日銀はビハインド・ザ・カーブで政策変更をすることが想定されていたにも関わらず、最近の一連の発言で、いわゆる「地ならし」をしてしまい、それがマーケットに対してサプライズとなったことが足元の金利上昇の一因。』

『ただ、今までのところ、むしろ市場のほうが冷静になったためか、長期金利の上昇は限定的であり、足元では少し金利が下がってきている。これは、もちろん株安ということもあるが、2年債利回りで0.3%近くという水準は、フォワードレートから計算すれば、2年後に3ヶ月金利が0.6%〜0.7%まで上がってこなければ概ねペイできる水準であって、そこまでの政策変更は行われないだろうという判断が市場でなされており、その結果、5年で0.9%、10年で1.6%に迫ったところで水準感からの買いが入ったということだったのではないか。』

冷静になっているのかどうかは少々アレですが、確かに昨日朝の時点では「やっと下げ止まったですねよかったですね」という雰囲気が市場に流れていたものと思われ。

『ただし、日銀が量的緩和解除に更に前のめりになるようなことになれば、冷静だったマーケットが懐疑的になりかねない。例えば、可能性は少ないとは思うが、連続利上げが行われ、さらには毎月1兆2000億円行われている長国買入が減額されることまであり得るという想定に立てば、スパイラル的に長期金利が上がるリスクもあるかもしれない。こうした余計なリスクの芽は予め摘んでおくべきであり、ゼロ金利を長く継続して欲しいというつもりはないが、日銀の情報発信については、これまで決定会合で議論されている通りにやっていただきたいというのが正直な印象である。』

で、問題の国会答弁になるのですが・・・・・・


○もうね、アホかと馬鹿かと

昨日の午後2時から行われた参議院財政金融委員会(どうでもいい話だが、衆議院と参議院で同じ事をやってる委員会の名前を変える必要があるの?)に福井総裁がご出席。最初ちょっとだけストリーミング放送聞いたのですが、別の「逝ってよし」案件(後述します)がありまして一気に聴取する気力が萎えたらその後に爆弾投下ですよ先生。

2時半過ぎから債券先物が下がりだした(で、相変わらず超長期ゾーンが強いらしいです。ナンノコッチャ相場ですな。)のは、財政規律問題に絡めて長期金利に言及した部分で打たれたフラッシュが原因のようです。以下ソースは昨日のブルームバーグニュース「福井日銀総裁:長期金利は非常に低いーリスクプレミアム小さい(7)」って奴です。

『ご承知の通り、世界的に長期金利は低いが、日本の市場においても、長期国債の金利は非常に低い水準にある。おそらく今は、国民の財政規律に対する不信感がむしろなくて、リスクプレミアムが非常に小さい状況になっている』

で、まぁフラッシュはさっきのお題のように打たれる訳でして、日頃から日銀が地均しに余念が無いことを勘案すると「また地均しか!」と市場が考えるのは当然のことでございます。金利水準がどうのこうのって言い出すなよアフォと思う訳ですが。


そんな訳でそれまで137円50銭台で落ち着いていた債券先物は引けに掛けて見事に下げて137円20銭割れまでやって25銭引け。で、その後に出てきた答弁がイブニングセッションでなおも下げの原因となったようで、誠に遺憾極まりない(ちなみに安値137円77銭!)答弁ですわな。

量的緩和を終わらせるのであれば長期国債の買入額も減らすべきではないかって質問をした民主党の大久保勉委員に対してこんな答弁をしたそうな。

『将来を見渡したとき、長い方向性としては当然減らしていくことになると思うが、これもまた一瀉千里に早めに調整することが本当に市場に対して円滑な調整になるかどうか、やはり市場条件を大事にしながら、われわれとしてはできるだけスムーズな調整を図っていきたい』

で、まぁ「長国買入は長期的には当然減らす」って事でまさにゲロゲロ。おまいは昨日の国債市場参加者特別会合の議事要旨を読んでないのかと、オブザーバーで日銀の人間が出席しているらしいのだが、その報告は聞いてないのかと小一時間問い詰めたいものであります。もうね、アホかと馬鹿かと。

だいたいからして成長通貨供給がそもそものお題目なんですから、その時の経済情勢次第で長国買入はどうなるか判らん筈なのに、もう決め打ちで発言する所が、「従業員が働かないのが悪い」とどこぞの経済誌のインタビューで言及して日本中(除く当該企業関係者)を爆笑の渦に巻き込んだ某経営者を彷彿させる率直なご発言(笑)と言ったところでしょうな。そんなの「その時の経済情勢次第」と言えば済む事じゃん。


○そもそも「期待の安定化」と「市場誘導」は違います

このコメントに続いて総裁様はこんな事を仰せです。

『いわば、市場関係者に十分予見可能性を与えながら調整を進めていくのがわれわれの責任ではないか』

別の質問に対してこんな事も仰せのようです。

『本当に消費者物価指数がわずかでもプラスの世界に入って以降は、市場はもっとさまざまな経済の変動や、将来の政策の構図に対して敏感に反応するようになると思う。したがって、金融政策も期待の安定化に相当努力しなければならない』

根本的に「期待の安定化」というのを間違えています。さっき引用した国債市場特別参加者会合での指摘をよく読めと。大体からして経済の将来状況が100%予見可能じゃないのに金融政策の予見可能もへったくれもあったもんじゃ無いでしょ。

この調子で日銀が熱心に「地均し(笑)」を行った結果として市場金利が利上げ前提状態になった後で「市場も景気回復を織り込んで金利が形成されており、利上げも無問題」とかいい訳をして利上げをするのを自作自演と言わずして何と言うのでしょうか?

ちなみに昨日は輪番云々発言の後、激怒激怒大激怒モードの知人ディーラーから「あの総裁は何とかならんのか」というコメントを頂いたり、別のディーラーからは「もう速水(前総裁)状態だなありゃ」というコメントを頂いたり。全然期待の安定化になっていないという事を理解して頂きたいものです。

2000年のゼロ金利解除の時は諸般の事情(謎)で金融市場ヲチをしていなかった為にイマイチ雰囲気は判らないのですが、上記コメントにあるように、速水優さまの生き霊(ここで「あ〜る田中いきりょう」というネタを思い出したあたくしは漫画の読みすぎですかそうですか)でもとりついているのか、それとも日本銀行のDNAなのか知りませんが、先日中原伸之前審議委員が指摘した「5年前に良く似ている」状態全開と言ったところでしょう。

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2005/10/20

○経済財政諮問会議

一昨日の諮問会議で「福井総裁が量的緩和政策の長期化を求める政府を牽制した」という報道がありまして、昨日の債券市場ではちょっと話題になっておりました。諮問会議ヲチャーを自称するあたくし(思いっきり嘘です)としては禿げ上がるほど不覚でございました(汗)。

経済財政諮問会議の議事要旨や配布資料は内閣府のWebから経済財政諮問会議ってのがうだうだ並んでいるメニューの一番最初にありますので、そこから辿れば見つかると思いますが、債券市場で話題になったのは後半部分の「財政健全化の4つの経験則について」という民間議員が提案したペーパーに基づく議論の所ですな。

福井総裁はこの配布資料についてそりゃちょっとどうよって指摘したのですが、それを議事要旨から拾うとこんな感じです。

『経験則1、2、3、4の中の3と4について、念のためコメントする。』

『まず経験則3は、リスクプレミアムの縮小という表現になっているが、今マーケットで仕事をしている人たちから言えば、現実には、リスクプレミアムはこれ以上下がりようもないところまで下がっている。今後はいかにしてリスクプレミアムを発生させないかという見方がされており、更に低下というと違和感がある感じがする。リスクプレミアムをいかに発生させないかということが重要ではないか。』

配布資料の「経験則3」にあるくだんの部分ですが、まぁ資料を見ると判るのですが、改革(小さな政府に向けた取組み)をすると国民の信頼が高まり、将来に対する期待が発生しますってフローチャートになっておりますわな。で、この将来に対する期待とやらが『将来の税負担増の軽減』『財政破綻のリスク低下⇒長期金利の低下(リスクプレミアムの縮小)』ってモノなんですな。

・・・・・そりゃ福井総裁じゃなくてもツッコミは入れたくなると思うんですが。幾らなんでも「財政リスクプレミアムが縮小すると長期金利が低下」っちゅうのは一般論としてはともかく、現状認識をしてこれから施策を打っていこうという会議で言い出す事ではないと思うぞ。

ちなみに、将来に対する期待の先には「生涯所得の増加」⇒「民需拡大」ってなってるのですが、「小さな政府に向けた取組み」で将来の税負担が軽減するって言ったってじゃあ財政支出が減る方はどこでどう埋めるのかと聞きたくなりますが。何かどこぞの政党のWebで「郵政民営化をすると社会保障は充実するわ戦略的外交で安全保障は確立できるわ安心で安全な社会が維持できるわともうウハウハですよ(意訳)」って図があった(今でもありますが)のを思い出しますな。いやまぁ気持ちは判らんでもないけどさぁ。。。。。


『経験則4では、財政収支の黒字化にはデフレの克服が急務とあるが、財政収支の黒字化は今後の長期的な課題なので、デフレ克服の後どういう経済運営が行われるかということがより重要であり、実体経済が持続的に成長し、かつ物価が安定しているということが大事ではないか。デフレを克服すればあとは黒字化、というようには直結しないという気がする。』

こちらでは「デフレが継続すると自然減収するからデフレを克服しろ」ってまぁ基本的に当たり前の話をしています。ただこの資料の書き方もどうかと思うのは、内容が「2001年以降歳出削減しているけどもデフレ継続で自然減収してるんじゃゴルア!(意訳)」って図になってるんですな。

で、この最初の「デフレの克服が急務」ってお題で、インタゲ(及びその類似政策)導入に相当反対な福井総裁としては「カチン」と来た(「まずデフレを止めよ」という本がございますな^^)んでしょう。そのカチンと来た所で資料を見れば、「日銀がデフレを放置しているから財政再建が進まないんじゃゴルア!」と読んでしまってもおかしくない訳でして(笑)、上記の発言になったのではないかとあたくしにしては珍しく日銀総裁寄りの解釈をしてみるのでありました。

まぁインタゲ導入に対して釘を刺したというのが福井総裁の真意ではないかと勝手に人の胸中を憶測するあたくしでございました。


ま、前半の政府系金融機関の統廃合議論の方が面白いと思いますよ。

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2005/10/17

○日銀総裁記者会見補足の補足

見落としていましたが(汗)こんなのがございました。

『(答)実体経済と物価は、不可分一体なものであるが、強いて分ければ、景気回復の持続可能性を改めてしっかり確認するということだと思う。これからそういったことを判断する時点までにリスク要因がどのように変化し、リスクがあっても経済が確実にそれをこなしつつあるかどうかなどについて、今後の推移を十分点検しなくてはならない。さらにその最終判断の時点で、その先の様々なリスク要因に対して日本経済がこれを十分に乗り越え、緩やかであっても持続性をもって景気回復を続けられるかどうかが、重要な判断ポイントである。』

『物価は、消費者物価指数が数か月プラスになった、あるいは先行き見通しもプラスだと判断しても、その物価が形成されていく背後の事情、つまり経済の持続的回復と裏腹であるが、需給の関係がどのように変化しつつあるか、ユニット・レーバー・コスト(単位当たりの労働コスト)の状況がどのように変化しつつあるかなど、物価形成の一番重要な決定要因のところを探り当てて、きちんとした判断を固めたい。』

燃料投下(笑)質疑の前で、会見の冒頭近辺に出た質疑応答なんですが、まぁここの所は会見のスタート段階ではあまり強気タカ派傾向を出さない(途中から段々強気タカ派になっちゃうんですが^^)というのが総裁クオリティでして、その分を勘案する必要はありますが、どうも労働コストというか雇用者所得の推移に関しては気にしているようですな。統計上はかなり改善傾向だったりしてますけど。


○量的緩和政策終了のインパクトを気にしてるんでしょうかねぇ

同じく木曜の総裁記者会見から。

『この前の講演でも申し上げたが、時の経過とともに経済情勢の大きな変化を背景に、量的緩和政策の効果については、短期金利がゼロ%であることによる効果が次第に中心的な役割を占めるようになってきている。従って、量的緩和政策の枠組みの変更自体は、金融政策が突如不連続に変化することを意味するものではない。このことをまず十分にご理解頂くことが大切である。』

短期金利の操作を中央銀行がする時はその変化たるや常に不連続になるので、この理屈っちゅうのも訳判らんとしか言いようが無いですし、だいたいからしてそういう事を言い出すから債券市場が「量的緩和政策を解除した後にゼロ金利政策を導入する」という風に解釈するんですがって感じなんですが。

まぁ好意的に解釈しますと、量的緩和政策の解除によって市場が混乱して、その結果解除に失敗するのを相当に気にしているとも言えるのですが、その為に「地均し」と称して市場を先に解除モードに持って行くというのは「市場との対話」じゃねぇと思うんですけどね。


『私どもは、市場との対話に十分工夫を重ねながら、まずは量的緩和政策の枠組みの変更があっても不連続なものではなく、その後の政策運営にあたっても、市場における期待の安定化に十分配慮しながら政策運営を進めていきたいと思っている。』

これ以上工夫を重ねられても困るのですが(苦笑)。悲願(?)の量的緩和政策解除を円滑に推進するために地均しをせっせとしている訳ですが、それは市場との対話じゃなくて単なる市場の誘導でしょうな。まぁ日銀の先行き見通しがズバリ当たれば結果オーライですが、前回のゼロ金利解除でミソをつけて今回また失敗したらその先の事を考えると、日銀が財政の打ち出の小槌化に追い込まれる悪寒が激しく発生してガクガクブルブルでございます。


まぁこの辺の「市場との対話」に関する議論は決定会合議事要旨を読んで見たいと思います。どういう発想でやっているのでしょうかねぇと思うんですが。

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2005/10/14

○総裁記者会見続き

記者会見要旨がでましたので昨日の続き。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0510b.htm

字面を見ると最初のうちは火付けをしないように言葉を選んでいるように見えますが・・・・・

・前半ではこんなトーン

『当面の政策運営については(一部割愛)もともとの約束に従って量的緩和政策を堅持していく。これに尽きる。ただし、先行き量的緩和政策の解除つまり量的緩和政策の枠組み修正の判断基準については、繰り返し申し上げている通り、2003年10月に明確にした3つの基準に忠実に沿って、正確に判断していきたい。消費者物価指数の前年比が数か月均してみてゼロ%以上で推移することと、先行き再びマイナスに戻らないと見込まれることは必要条件である。ただし、十分条件ではない。十分条件でないという意味は、この2つの条件を満たすと機械的に量的緩和政策の枠組みを修正するということではない、ということである。量的緩和政策の枠組み修正にあたっては、この考え方に沿って、経済・物価情勢を改めて点検し、全体として消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になったと言えるかどうかを、ボードメンバーで十分確認したい。』

まぁこんな感じでやっておりまして、量的緩和政策解除後の金融政策をどうしますかって話に関しては「その時に適切な判断をしますよ」って内容に終始しております。当たり前ですけれども。


・日銀は干渉されませんが何か?

燃料投下質問が前半途中に出るわけですが(^^)。

『(問)量的緩和の解除に関しては閣僚から慎重な対応を求める声が出ている。これに関連して、総裁は先の国会答弁で、異常な政策をいつまでも続けるわけにはいかない、といった趣旨の発言をされているが、一般の国民からすれば、量的緩和やゼロ金利に慣れてしまっており、何が異常かわからないと思われる。改めて量的緩和政策をいつまでも継続した場合の副作用について、どのような考えなのか伺いたい。』

『(答)副作用は数多いが(注:たしかあたくしの聞き取りでは「副作用を挙げたらきりがない」と言ってたような希ガス)、かねてから申し上げている通り、一番重要な副作用は、金利機能を封殺しながら政策運営をしていることだと思う。』

金利機能の封殺キターーーーーーーーー!

『従って、この量的緩和政策の枠組み修正は早すぎてはいけないが、遅すぎてもいけない。遅すぎるとデメリットがメリットを大きく上回るリスクがあると思う。その辺の判断をきちんとしなくてはいけないし、これからが重要な局面だと思う。』

フォワードルッキングキターーーーーーーー!

『ただし、おっしゃったような注文が具体的についているという認識は、鈍感なのかもしれないが、持っていない。現状、消費者物価指数はまだわずかであるがマイナスの世界で動いており、私どもは今の政策を堅持すると申し上げているので、不一致はないと認識している。』

注文なんぞ聞いてませんキターーーーーー!

という感じで、まぁこの辺を読みますと(後でも同じような質疑応答がありましたが)、量的緩和解除後に金利政策を行う時に「ゼロ金利政策」というのは採らないと見る方がフツーだと思うんですが。当預残を下げている期間中(で超過準備が大量残りの時)に結果としてゼロ金利になってしまうというのはゼロ金利政策とは言わん筈なのですが、意図的なのか無意識なのか本職の方々でもこのあたりを混同して説明する向きが見受けられるのが残念ですな。


・インフレ参照値について

公式発言としてはこのようになっているということで一つ宜しく。

『期待の安定化を図るためにどのような道具立てあるいはコミュニケーションの仕方があるかについても、まだ多様な考え方があり、今のところはこれを収斂させて物事を組み立てていこうという段階には至っていない。インフレ・ターゲティングやインフレ参照値がお題目的に議論されるのを私は好まないが、そうしたものについてもバリエーションが可能であり、私どもとしてはさらにそこに知識創造を加えながら、本当にそうしたものが使えるのか否か、使えるとしてもどのように組み立て直して使えるのか、あるいは全く使えないのか、これから十分に検討したいと思う。』

これをどう読むかちゅう事なんですが、字面を見ると「前向きに検討する」という感じなんですけど、どうも会見のストリーミングを見た感じでは「やる気ねぇよ」って印象でしたが、これはあたくしの勝手な思い込みかもしれません。ただ今までの総裁発言から考えるとそんなにやる気は無いと思いますが。

しかしあたくしには「そんなもの」と聞こえたんだけどなぁ(笑)。


・長期金利の安定化に関して

『市場金利、特に長期金利を金融政策で飴細工のように一定のポジションに置き換えることはできないと思う。それ故に、私どもは情勢判断に正確を期して政策を遂行する以外になく、情勢判断が正しければ、長期金利は、多少の振れを伴っても、結局のところ先行きの経済・物価見通しに関する人々の観測と一致するところに修正されていくはずである。そのような運営を行っていく以外にはないと思う。』

飴細工キターーーーーーー!

『もちろん、市場の中でその方向性と違った動きをすることによって鞘取りなどのいろいろな取引が行われると思うが、実勢から離れた市場金利の水準を長く維持できる力のある人は、この世の中には存在しない。結局は、経済実勢に合ったところに金利は修正されていくと思う。金融政策のスタンスと経済の先行き見通しについて、多くの皆さんの見通しと私どもの見通しが一致していて、政策もそれに一致している限り、非常に飛び離れた金利が長く続くという危険はそれほど大きくないと思う。』

このくだりと、先ほどのインフレ参照値に関するくだりを関連させて「量的緩和解除後には長期金利の安定化策を日銀は打ち出す必要に迫られるだろう」というような趣旨の見解を出されていたどこぞの方がおいででしたが、それはちと違うような希ガス。

どっちかというと長期金利放置プレイ(今までもそうでしたが)だと思いますけどね。大体からしてインタゲおよび類似政策の提案の趣旨は「インフレ期待をマイルドインフレで安定化させる」というものであって(間違っていたらゴメンナサイ、即座に訂正致しますのでご連絡お待ちしております!)、その「期待の安定化」を「期待」=「長期金利」と結びつけると話がややこしくなるのではないかと。

まー国債管理政策の一環で長期金利の安定化策を取ってくれという話は出るでしょうけれども、さすがにそれは筋が悪い話なので中央銀行としては認められませんなって所だと思うんですが。


まぁそんな感じ(どんな感じだ?)で。

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2005/10/13

○迷言続出の予感:総裁記者会見

昨日は福井総裁記者会見のストリーミング放送(ただし録画)というものを初めて見て(というか聞いてというか)みました。ブルームバーグが放送しているものですので残念ながらブルームバーグ端末が無いと見えませんので悪しからず。

会見要旨そのものは本日日銀Webにアップされますが、会見をぶっ通しで見た印象としては「いやー総裁やる気全開ですなー」って所でした。これが字になるとどういう雰囲気になるのかはよく判りませんが。

で、今回の記者会見で気になった名(迷)言。ただしあたくしのメモベースですので正確性については保証いたしかねますが、本線は外していないと思います。


・ライトタイミング!

金融政策の変更に関して「ライトタイミング」ということで早すぎず遅すぎずみたいな発言をしていたのですが、これはもう大昔の副総裁時代に金融政策の変更に関して「ジャストタイミングで考えている」と発言して次の瞬間に債券先物を特別売り気配にして頂いたことを物凄く懐かしく思い出すというものでございます。合掌(何に?)。

しかし量的緩和政策のコミットメントはビハインド・ザ・カーブを覚悟していた筈なんですけれども、出口がみえてきたらいきなりフォワードルッキングですかそうですか。


・インタゲは「そんなもの」ですかそうですか

量的緩和政策解除後の政策枠組みに関連してインフレターゲットや物価参照値の導入はどのように考えているかという趣旨の質問に対する回答の中で、本当に「そんなもの」が使えるかどうか良く検討して云々というお話をしておりまして、なるほど総裁様はインタゲあるいは物価参照値というようなのは嫌いなのねって印象を強く受けました。

ちなみに、その他の質疑応答でも金利ターゲットの政策になった場合は「金利を通じて(市場と)対話する」とか量的緩和政策の副作用に関して一番大きいものとして「金利機能の封殺」を挙げてみたりと、金利ターゲット政策になった場合は昔の政策に戻りますよって雰囲気が全開でしたな。


・どうも物価下落懸念は1ミリも無いようで

コミットメント第2条件に関して「展望レポートで発表される物価見通しは、予想期間に対しての平均値であって、第2条件は先行きの見通しがゼロ以上であるので、展望レポートの見通しがプラスだからと言っても第2条件が達成されていない可能性もありますがどうでしょう」みたいな質問があった時に総裁は「訳判らん質問ですなぁ」みたいな感じで回答してました。

その答えなんですが、「現状がプラスで先行きがプラス予想だったら予想期間の全期間プラスだからそんな質問されても困りますなぁ(激しく意訳)」という感じでして、どうも総裁様におかれましては「現状プラス転換したけど、先行き見通しは下向きベクトルで、平均してみるとプラスです」という状況は想定の範囲外(笑)のようでございます。はあそうですか。

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2005/10/11

○衆議院予算委員会

先日「異常な政策云々」という福井総裁の発言が飛び出した衆議院予算委員会の会議録が衆議院Webにアップされました。衆議院Web→会議録→予算委員会→10月3日から閲覧できます。

で、その予算委員会での福井総裁発言前後でどんな話をしてたのかということですが、既に週末に毎度お馴染みbewaadさんが纏めていたりするので(http://bewaad.com/20051008.html#p01)、まぁそちらを読みましょうで終了するのも何ですので、どんな文脈でこの話になったのよという所をちょっとだけ。

『○山本(幸)委員 私も全くそのとおり(引用者注:竹中大臣が「デフレ脱却にはマネーサプライ増加が重要」と答弁した事かと)だと思うんですが、では、どうしてデフレ期待が払拭できないかという話をちょっとしたいと思います。日本銀行は量的金融緩和というのを続けていて、これは結構なことだと私は思っておりました。これも、ゼロ金利解除の失敗に懲りてそういうことになったんですけれども、去年の一月までは大変すばらしいパフォーマンスだったと私は思っているんですが、そこでとめちゃったんですね。そこまでの伸ばしたものが今ごろきいてきて、いろいろな実体経済にいい影響を与えているんじゃないかと思っているんですが、私が心配しているのは、去年の一月以降打ちどめにしちゃったので、そっちの影響がこれから出てくる。それと、原油価格それから社会保障の負担等が絡むとちょっと心配じゃないかという懸念を持っているわけですね、杞憂に終わればいいですけれども。』

うーん、マネーサプライが大幅に増えるまで当座預金残高目標を増やし続けろというお話をしているように読めるのですが、(もうちっと前にマネーサプライが伸びないのは何故だという論争をしている)景気が上向きになりだした時点では量をどうのこうのというよりは「ビハインド・ザ・カーブ」を強調した方が意味があるような気がしますな。まぁ日銀も訳判らん理屈を振り回しだすのでこれに騙されてあたくしも時に訳判らん話をするのですが(汗)。

『そこで、一番日本銀行にやってもらいたいのは、デフレ期待を早く明らかに払拭してもらいたい。そうしないと、どんなに金を出しても効果が薄い。これはもう経済理論からも、過去の昭和恐慌の歴史から、あるいはアメリカの大恐慌の歴史から見ても、金だけ出したらいいというものじゃない。そうじゃなくて、期待感ががらっと変わって、いや、将来的にはもうデフレじゃないんだ、将来的には少なくともマイルドなインフレになるんだというようにがらっと期待感が変わったときに、すべてがうまくいき出すんですよね。私はそう思っているんです。』

で、この後にCPIに上方バイアスが掛かるからCPIのゼロ%ではデフレ脱却とは言えず、1%以上無いとデフレ脱却とは言えないって話をした(さっきご紹介したリンク先にそのあたりの引用がございます)上で、福井総裁の答弁がございます。

『○福井参考人 かねてより幾たびかお答え申し上げてきておりますけれども、消費者物価指数の前年比変化率がゼロ%になれば日本経済が本当に最終的に我々が目指すべき望ましい、均衡のとれた経済になるとか、CPIゼロ%が我々にとって本当に望ましい物価水準であるとかいうふうに考えていないということをたびたび申し上げました。』

確かにその発言だいぶ前に見たことあります。日本経済が云々って話をしてたのはCPIのプラス転換がまるで展望できない頃によくしていましたが、最近では地均しモード全開ですんで久しぶりに聞きましたな。じゃあCPIゼロ%が望ましい物価水準ではなく、もっと上だという話をするのかと思えばさにあらず。

『そういう状態に持っていくための一つの通過点、重要な通過点がCPIがゼロ%というところであり、量的緩和政策という、世界にも日本にもかつてとられたことのない異例な金融政策というものをいつまでやるんだということは、最低限そこまでやっていけば、我々はその後も安全に経済を運転していけますと。急にそこから引き締めるというふうなことを一度も申し上げたことはないわけでして、それからも日本経済に対しては、金融政策の面からは十分弾力的に、そして持続的な成長が可能になるような、そして物価の安定が最終的にうまく実現できるような経済に持っていきたい。その一つの大きな通過点がCPIゼロ%ということで、異常な政策をいつまでも続けろというふうな御意見には我々は断固くみすることはできないということでございます。』

えー、何というか微妙に訳のわからん言い方をしているのですが、どうも「CPIがゼロ%になったら量的緩和は止めるけど、超低金利政策は維持するんだからそれで勘弁しやがれ」と言っているような気が致しますな。

どうも「最悪ゼロ金利でも良いから兎に角金利政策に戻したい」という風に考えているのではないかと思う今日この頃ですが、福井総裁は現在の量的緩和政策に関して時間軸が短縮されてきて単なるゼロ金利に近づいてきた云々という話を先日しておりまして、その認識通りであれば別に大騒ぎしてゼロ金利政策にする必要は無いと思うんですがどうなんでしょう。実(ゼロ金利じゃない金利政策)より名(ゼロ金利でも量的緩和解除)を取りたいんでしょうかねぇ。どうも理解致しかねますな。

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2005/10/04

○また言っちゃいましたな

福井総裁といえば国会に呼び出されて答弁する時に時々やっちゃうお方なのですが、昨日も衆議院のどこぞの委員会(忘れた)で山本幸三氏に対して、『(量的緩和政策という)異常な政策をいつまでも続けろ)からというご意見にはわれわれは断じて屈することはできない』(ブルームバーグニュースより)って言っちゃいましたな。

いやまぁお気持ちはそうなんでしょうなぁってのは既に皆さんに思いっきり伝わっていますけど(笑)、それを言うのはどうよって所でしょうか。実際の質疑応答を見てませんけど、まぁまたお得意の「売り言葉に買い言葉」だったのでしょうか。相手が山本幸三さんだし。

と、言う訳で3条件のうち何故か3条件目が達成されていて、先行き見通しもだいたい毎度毎度プラス予想になっていて2条件目が達成となりますと形式要件のCPI安定的プラス推移が達成されたら解除したいんですかそうですか。

かつて「金利に蓋をする」と国会で答弁して信じる者たちの足元を見事に掬ってくれた事がございましたが、まぁ今回に関しては足元が掬われるような経済状況にならない事を祈りたいとは思いますが、しかし困ったお方ですわなぁ・・・・としか言いようの無い発言でした。

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2005/10/03

お題「総裁記者会見続き」

金曜にご挨拶したように、あたくし本日からは運用部門の中の人ざんす。フォローするのは相変わらず債券の予定ですので引き続き自分の勉強(と本人は一応思っている)を書き散らしていきたいと存じます。

ま〜金曜もそんな訳で相場を全然見て無いので人のフンドシで相撲を取るあたくしなのですが、先日ネタにした須田審議委員の講演に関してbewaadさんが日曜にエントリーをアップしておられます。いつもいつも「なるほど」と頷くことが多いですが、今回もまた勉強になりましたので(散々参考にしてますんで皆様既にURLご存知だと思いますが)是非ご一読を。→http://bewaad.com/20051002.html

さて、総裁記者会見要旨は日銀のWebhttp://www.boj.or.jp/press/05/kk0509f.htmにございます。会見の質疑応答の量自体は多くは有りませんが、まぁ内容は本石町日記さんが「長距離砲発射」というように量的緩和の量の効果をいつの間にか単なる流動性危機対応にすりかえるわ、量的緩和政策の終了時期を高らかに決め打ちするわともうエライコッチャですわな。これで間違って景気が失速したら日銀打つ手無くなるんですが(国債引受とかヘリコプターマネーとかならありますが)本当の本当に大丈夫なんでしょうか??


○量の効果がいつの間にか・・・・

冒頭の質疑応答で「量的緩和政策の持つ意味は、次第にゼロ金利に近づいてきている」という発言の意味について聞かれた福井総裁はこう言いました。

『量的緩和政策の実態的な中身が、次第にゼロ金利政策そのものに近付いていくことを申し上げたのは、量的緩和政策の枠組みを修正する将来いずれかの時点で、金融緩和の度合いがガタンと階段をつけるように不連続に変化するわけではないことを申し上げたかったからである。』

合ってるかどうか責任は取りかねますが、勝手に総裁のコメントを補足しますと、景気実態と物価動向によって量的緩和政策の時間軸期待は短くなるので、量的緩和政策の終点が近くなった時には時間軸効果がなくなっている(ので不連続な変化にはならない)という事を言いたいのでしょうな。で、この続きのコメントはまた自分で自分の首を絞める結果にならんことをお祈りしますよ。

『つまり、今日に至るまでの段階でも、金融機関における信用不安を背景とした流動性の予備的需要は趨勢的に減ってきているわけで、それが最後の段階までずっと続いていく。そうだとすると、流動性の予備的需要が減衰する中で、量的緩和の枠組みで最後までコアとして残るものはゼロ金利そのものということである。そのように、量的緩和政策は、実行し続けている過程で中身が次第に煮詰まってきている。』

量的緩和政策の量の効果に関して「金融機関における信用不安を背景とした流動性の予備的需要」という話に持ち込んでいますわな。いやまぁ量の効果に関して為替介入の非不胎化効果以外に何かあったのかと言われると、正直あたしゃーよー判らんのですが、そうは申しましても今まで「量の増大は金融緩和であって、経済への効果がある」って言ってやっていた政策を何の公式なレビューもなしに(審議委員が講演で言うのはあくまで審議委員個人の意見)「流動性の予備的需要」って話に持ち込むのは如何なものかと。

というか、そのあたりに関してはデフレ脱却が完全に展望できて量的緩和政策を解除した後になってから「いや〜♪どうも流動性の予備的需要としての効果しか無かったみたいですね〜♪」(あたしゃそれだけしか効果なかった訳ではないと思うけど)ってレビューすれば良いのにと思う訳ですが、今から総裁がそんなこと言い出してどうする。

つまり、当座預金残高目標の「量」の効果に関して流動性予備需要以外の効果を認めないのであればデフレ脱却前に景気が失速した場合に打つ手はまぁ長期国債の買入拡大(福井体制になってから拡大してない)しか無くなりますけど、そこまで勝負を掛けるほどの物かよって思うんですな。それに量的緩和政策導入時に、「量的緩和政策はゼロ金利政策と違う」と日銀として公式に表明している訳でして、そこのところの落とし前もつけて欲しい訳ですな。

まぁ本石町日記さんの言葉を拝借すると「日銀の運が良いといいですね」って感じです。しかしわざわざ勝負する事は無いと思う。


○緩和解除の方法は決め打ち無用でしょうな

次の質疑の一部は金曜にご紹介した部分ですが。

『(問)お話を伺っていると、今の枠組みが終わった後、まだゼロ金利政策があるということのようであった。しかし、海外の一部では、量的緩和が終わること自体がゼロ金利の終わりという見方がある。今の景気の底堅さがさらに増し、将来、量的緩和を解除した時に、純粋なゼロに近いゼロ金利政策というものより、もう少し乖離した形で、ややそれよりも高い金利を目指すということはあり得るのか。』

答えは長いので最初の段落だけ引用。

『(答)今のこの段階ではそこまでは予見出来ない。量的緩和の枠組みの修正のタイミングがいつ頃になるか、まだ明確に予想し難い段階にある。その先の金利の操作について、何か予断を持ち得る状況かと言うと、それは全くない。そういう予断は一切持たないで、今後の経済情勢・物価情勢にきちんと符合するような政策をしていかなければならない。それは非常に真剣な課題であり、「何かしたい」とか、「こうあるべきだ」とか、「こうなるだろう」という絵を予め画用紙に描いて、それに沿って我々が政策の中身を詰めていくという態度は採りたくないし、採らない。情勢判断に忠実でありたいと思っている。』

本石町日記さんがhttp://hongokucho.exblog.jp/3546386/のエントリーで話題にしたように、今後は解除方法がどうなるかって事に関して色々な予想が出てくると思います。上記エントリーのコメント欄でも議論になっていますが、まず最初に話題になるのは「当座預金残高を所要くらい(たぶん6兆円とか7兆円とか)に下げるのにどのくらいの期間が掛かるか」って話だと思います。

で、現状だと1ヶ月から3ヶ月くらいかかるとかもうちょっとかかるとかいう話で、そのために「量的緩和終了後にゼロ金利」って話になるのですが、どうも議論に混乱があると思うのはこの「ゼロ金利」って言葉でして、「短期市場金利の誘導目標がゼロ」という意味の「ゼロ金利政策」なのか、「当座預金残高を所要残に落としていく過程で結果的に短期市場金利がゼロになっている」という意味の「結果としてのゼロ金利」なのかが曖昧のまま論議が始まっている気がします。

で、「結果としてのゼロ金利」に関しては、今の時点で量的緩和政策を解除すれば最低でも1ヶ月くらいはゼロ金利になるかもしれませんが、現状のように市場の期待時間軸が短期化している時には資金供給オペの期間を短くできますので、順調にオペ期間の短期化を図ればその分だけ当座預金残高を引くのに必要なエネルギーが減るので、将来はもっとスムーズに金利政策に移行できる訳ですな。そう考えますと、現時点での延長で「当座預金残高を所要に引くのに何ヶ月掛かるから云々」という議論は必要かもしれないけど、それを参考にして「結果としてのゼロ金利が何ヶ月続くから」という決め打ちはイクナイと思います。先週の物価統計もマイナスだったんだし時間はまだあるでしょ。


で、総裁の記者会見に話は戻りまして、総裁の答えにあるように「情勢判断に忠実でありたいと思っている」というのが正しいでしょうな。で、その直前に結果ありきで政策を詰めていく態度は取らないとも仰せですが、その割には何で量的緩和政策解除の地均しをするですか皆様はと小一時間問い詰めていると初日から遅刻するので本日はこの辺で(^^)。

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