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まさかの特別編キタコレ

2014/04/11「福井総裁のインチキが凄かったという思い出話で2004年1月会合の会見から」
2012/11/28「自民党安倍総裁の無茶苦茶発言に俊ちゃんが物申す!」


2007年下期の福井総裁発言インデックス

2008/03/24「退任記者会見:お疲れ様でした」
2008/03/11「定例記者会見はニュートラルにしてあとにフリーハンドを」
2008/02/20「記者会見続き、最後に来て思いっきりトーンダウン」
2008/02/19「慎重な物言いが目立つ総裁記者会見」
2008/01/25「定例記者会見続き:景気の先行きにかなり慎重です」
2008/01/24「定例記者会見:金利水準調整終了のお知らせ」
2008/01/22「1月11日の国会答弁、、確かにまあ景気先行き警戒全開です」
2008/01/09「今年の中銀サークルのテーマは市場との対話と金融政策の透明性?」
2007/12/25「大した話は無かったが総裁記者会見」
2007/12/05「ややトーンダウン気味の記者会見でした」
2007/12/04「名古屋での各界代表者との懇談会での発言で相場大騒ぎ」
2007/12/03「総裁講演またまた」
2007/11/28「またまた正常化を訴えてますがまたも市場は黙殺」
2007/11/20「11月15日の講演@MAS、利上げ意欲はありますが市場は無視です」
2007/11/15「今回の会見はバランスが取れています」
2007/11/07「会見は売り言葉に買い言葉の応酬だったようで」
2007/11/06「ちょっと痛々しい大阪での講演と記者会見」
2007/11/05「国会でも利上げ意欲を滲ませる(が相場は無視してました)」
2007/11/02「空元気の総裁記者会見」
2007/10/23「G7での総裁記者会見、慎重なトーンに見えますが」
2007/10/16「支店長会議での総裁挨拶」
2007/10/15「総裁記者会見はトーンダウンのような感じがするのですが」

2014/04/11

○さてここで話は変わりますが俊ちゃんの過去の無茶苦茶ロジックを鑑賞してみましょう!!

先般駄文でドラギ総裁の会見ネタを持ち出した時に「ドラギ俊彦」と咄嗟に二つ名を付けてみたら一部の読者様におかれましては盛大にツボって頂いたようで今後はドラギ俊彦先生とお呼びして麿並みに定着を図りたい(誰に?)と思う今日この頃ではございますが、話が七色の変化球のように変わるドラギ俊彦先生と言えども本家の俊ちゃんにはまだまだである、という事を確認するために2004年1月の金融政策決定会合での福井総裁定例会見の要旨を鑑賞してみましょう、というヒマネタ(暇では無いが)なのでありました(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2004/kk0401a.htm/
平成16年1月20日(火)
総裁記者会見要旨 ( 1月20日)

なお引用時にスペースや改行で手を加えておりますので念のため申し添えます。

『(問)本日の金融政策変更の理由について説明を頂きたい。』

『(答)今年初めての記者会見である。本年もよろしくお願い申し上げる。本日は本年最初の決定会合であるが、皆様にご報告申し上げる点が2点ある。 1点目は、金融市場調節方針について、日銀当座預金残高の目標値を従来の「27〜32兆円程度」から「30〜35兆円程度」と、3兆円の幅を持って引き上げたということである。』

ということでこの回というのは「景気判断を据え置き(実質的には回復が継続しているという認識な上に上振れという認識)する中で追加緩和を行ったという中々不思議な会合でして、 田谷さんと須田さんが反対に回って7対2になったんですよね。

『(途中割愛)このうち、当座預金残高目標値の引き上げは、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとすることを目的とするものである。(以下割愛)』

・・・・・・・・・・最早当座預金残高が拡大することによってどのような効果があるからどうだという話でも何でも無く「気合を入れる為に押し上げ緩和を行った」という訳のわからん話になっております。

『(問)当座預金残高目標値の引き上げについて伺いたい。本日発表された金融経済月報の基本的見解でも、経済・物価動向については標準シナリオ通りに沿って動いているという判断を示しているが、そうした中で、なぜ、当座預金残高目標値の引き上げが必要なのか、また円高けん制の狙いがあるのかという点について、説明を頂きたい。』

そら質問する罠。

『(答)経済あるいは金融情勢についての私どもの見方は、本日発表した金融経済月報の基本的見解の中で示している通り、現状、景気は緩やかに回復している。また、先行きについても景気は回復を続けると見込まれるが、引き続き企業の過剰債務など構造的な要因が根強いことを踏まえると、景気の回復テンポは緩やかにとどまる可能性が強いと考えている。現在のところ、米国、中国を始めとした海外経済が、事前の予想よりやや強めに推移しており、これを大きな背景として日本からの輸出が順調に増えている。さらに、生産の増加、企業所得の増加、企業の支出――設備投資の増加――というような前向きの循環メカニズムが既に働き始めている。むしろ、こうした循環メカニズムはやや強含みで作動し始めている。』

前向きの循環メカニズムというのは日銀の得意な言葉ですね。しかも上振れとな。

『そうした中、今後、こうした動きが持続的な回復につながり、デフレ脱却の目途をつけるところまで行くかどうかという点については、不透明要因が多い。特に、大企業・製造業を中心に始まった景気回復の動きの裾野が、非製造業さらには中堅・中小企業の分野においても――それぞれの企業におけるさらなるリストラ努力の成功を伴いながら――、広がっていくかどうか、そして経済全体としてみれば、需給ギャップの縮小が順調に進み、デフレ脱却の目途が見えてくるかどうかという点がなお不透明ということである。』

で?

『昨年10月に発表した展望レポートの中で示した標準シナリオとの関係では、概ね標準シナリオの通りに経済は動いているが、先行きこれをさらに良い姿につなげていく必要がある。そうした意味で、現在比較的良い方向に経済が動き始めていることは、極めて歓迎すべきことであるが、これで満足してはならない。おそらく、民間企業や金融機関におかれては、構造的な改善を伴いながら、こうした好循環をより確かなものに持っていこうという努力と決意を固められつつある段階ではないかと思う。金融政策の面でも、こうした民間の決意と努力をさらにしっかりとサポートしていきたい。今回の措置の真の狙いはこの点にある。』

ただの気合で追加緩和とかもう景気判断と関係ねええええええという所ですな。


『(問)標準シナリオについてもう一度お伺いしたい。現状では、経済は標準シナリオ通りに動いていると判断されており、長・短期金利についても、――先程、万全を期したいと指摘されたが――現状をみれば安定している。また、市場にショックが持ち込まれた時もあったが――金融機関の破綻があったけれども――、特融も出さずに今のところ落ち着いて動いている。今回は、事実上、景気回復局面での金融緩和ということになると思うが、デフレ脱却シナリオというものがあって、それを基に判断するということになれば、マーケットからは非常に読み難い、透明性に欠けるような金融政策と受け取られないか。』

当然の質問。

『(答) そのリスクは全くないと思う。』

えー!!

『デフレ脱却後の正常な経済の回転の中で――好況・不況の波の中で――動いている場合に、景気回復が進んでいる時には追加緩和はあり得ないということと、構造改革の推進を伴いながらデフレ脱却のプロセスを歩んでいる現在の状況とでは、前提条件が全く違うということだと思う。』

何という屁理屈。

『従って、我々は標準シナリオ通りに動いていても――あるいは標準シナリオから上振れる条件が幾らかあるにしても――必要に応じて追加緩和はあり得るということは、前から申し上げている。その通りのことを今回判断したということである。』

でまあこの俊ちゃんの凄まじいのはこんな感じで緩和やっておいてそこから半年位で出口政策に向けての地均し情報発信をおっぱじめだした(緩和政策のビハインド・ザ・カーブのリスクの話を始めたり、量的緩和終了後の政策の枠組みがどうのこうのみたいな話を始めた(出口後の政策枠組みについて最初に講演で言及したは中原(真)審議委員でこの年の5月)訳ですが本格的な地均しはもうちょっと後)という所でして、そらまあ市場も毎回振り回されるわという所です。

『量的緩和の場合には、金利が生きている時の経済とは違って、金融市場における金利の動きというものを、緩和効果である程度封じ込めているというところもある。』

ふむふむ。

『従って、追加緩和の有無を読めないというのは当然のことであり、ここを読めるように機械的にやっていくということはほとんど不可能なことだと思う。』

な、なんだってー!!!

『我々も金融政策決定会合に臨んであらゆる材料を点検し、ディスカッションをして始めて結論の出る話である。』

ということで、政策の予見可能性とか市場との対話とか全て放棄して俊ちゃんロジック全開という感じですが、ちなみにこの会見最初から最後まで読みますと最早何が何だか判らないとしか申し上げようがなく、この時期の俊ちゃん(まあ量的緩和解除するころには何か怪しげなるもののそこそこロジカルに戻っていたのですが)はもうロジックも何も放り出して「こうしないとイカンからこうする、市場との対話とか予見可能性とか知らんがな」という開き直りもここまでくると清々しい状態で、この時期の俊ちゃんから見ますと逆さ絵先生のインチキロジックやドラギ俊ちゃんのびりーぶみーなど可愛いもんですなという話だと思います。

という鑑賞会でありましたとさ。まあこの回の議事録は面白そうなので6月の公開を楽しみに待ちたいと思います。

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2012/11/28

・俊ちゃんキタコレ

まあ話題になっていたのでご覧になられた方も多いと存じますが。

http://www.canon-igs.org/management/toshihiko_fukui/20121121_1663.html
2012.11.21 [役員室から] 打ち出の小槌はない
理事長 福井 俊彦

・・・・・・・・・・・・・俊ちゃんキタコレでございますが、全くご尤もという所でございまして、安倍さんも勉強熱心であるというのは把握致しましたので、できましたら今周囲におられます変な取り巻きからのレクチャーというのを止めて頂いて(そういや月曜の某六本木テレビの某番組で取り巻きさんが雁首揃えて出ておられたとの話を小耳に挟みましたが)俊ちゃんなどからの授業を受講されますと誠に有り難く存じますが、どうも取り巻きさんたちが「日銀の陰謀ガー」「財務省の陰謀ガー」とか言う人たちのようでございまして、聞く耳持たないとか言い出さないかと不安はございますな。

という事でしかしまあこのネタ(というのはリンク先辺りをご覧ください)で書く事が毎度あるとかネタに困らないのは結構でございますが、どう見てもいち国民としては不幸だなあとしか思えないのがorzorzでありまする。

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2008/03/24

福井総裁の退任記者会見がアップされていましたので。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0803c.pdf

○最後までオモロイ例えを出してくれました

最初の質疑応答でいきなり出たんですが。

『(答) 本日を以って退任をさせて頂きます。5年間、皆様方から大変厚いご支援を賜り、感謝しております。厚く御礼申し上げます。』

『5年間を振り返っての特別な感想はありません。日本銀行の政策委員会および執行部のマシンは非常によく回転したと感じております。私自身は、このマシンのエンジンの音をいつも確かめながら、専ら前を向いて全力投球、全力疾走してきたと感じています。それ以上の特別な感想はありません。』

なるほど、マシンね。

『任期満了の時点で後任の総裁が任命されていないということは、歴史的にも極めて異例なことであり、残念なことだと思っております。二人の副総裁が3月20 日付けで任命される運びになっていると思いますので、この両輪が先頭に立って日本銀行のマシンを引き続きしっかり駆動して行ってもらいたいと願っています。』

当座預金残高30兆円に増やす中で足の長いオペを打ったり、短国買入増やしてみたり、量的緩和解除をした後には淡々とオペの期落ちをロールしないで1か月で引いたり(解除直後は30兆円を維持してた)という量の話もそうですし、まあ手を変え品を変え市場への資金供給手段を色々と工夫してまして、余程の事がない限り足元の流動性問題というのは生じない(時々ヘタクソが信じられないような取り上がり方をして急に足元が上がる事はありますが、それはヘタクソが悪い)という状態にまでなりましたな。

お蔭で各国中銀の流動性対策の時に別に日銀やることない(既に道具が揃ってるから仰々しくやる事無い)という状態になっておりまして、他国がこの手のことに対して物凄く遅れているだけなんですが、どうも自虐的な論評が好きな人(まあ人の事は言えませんかそうですか)というか米国マンセーな人たちからは「世界の協調体制から取り残されている」とか言われるのはもう何だかねって感じですけど。

まあそれは兎も角として、日銀直下のインターバンクの状況をきちんと把握して安定的に運営する能力に関しては、まさにマシーンでありますと思う次第。最近はレポ市場などの拡大もありますので、インターバンクだけじゃなくてオープンに関しても市場の状況を一番良く把握してるのって大口の市場参加者じゃなくて金融市場局なんじゃねえのかと思うのですが(^^)。

しかしマシーンってのには「現場は優秀(以下自主規制)」ということばをつい思い出してしまうのはあたくしの性格が悪いからですかそうですか。


○えーっと、これはもっと早くに言って欲しかった気が

5ページ目で、この5年間で一番印象に残った事について質問がありまして、その答えはまあ量的緩和解除なんですけど、その続きにこんな言葉が。

『先程、金利正常化が途半ばではないかというご質問がありました。途半ばかもしれませんが、正常化を急いで失敗するよりは、やはり確実な判断で進んでいった方がいいと思っております。やり残した仕事は沢山あることは間違いありません。しかし、私は5年間という任期中にエネルギーをフルに注いでおりますので、やり残した仕事をさらにやるだけのエネルギーは残っていないと思っています。』

金利正常化の意欲は相変わらずですけど、「正常化を急いで失敗するよりは、やはり確実な判断で」っていうのはもうちょっと早めに仰って頂きますと。いやまあ市場の方は去年の秋口からすっかり「いやあちょっと利上げは厳しいでっしゃろうなあ」という感じになっておりましたんで正常化の意欲を見せても無反応ではありましたんで関係ないですけど、一般メディア的には相変わらずだったんでね。

まあ後任にフリーハンドを渡したという事なんでしょうけれどもね。

ちなみに、その前に金利正常化途半ばという質問があった訳ですけれども、そちらに関してはこんな感じで。

『経済の変化については、毎回の記者会見等の場を通じて確認し続けてきており、皆様方と認識を共有していると思っています。一言で表現するのはなかなか難しいですが、5年前に着任した時の日本の経済・金融の姿と現在の経済・金融の姿は異なっています。』

左様でございます。

『少なくとも経済については、前向きな循環メカニズムが作動するようになっており、外からのショックに対する頑健性が増してきています。金融についても、金融機関の健全性は回復し、政策金利はまだ低いですが金融市場も金利機能がきちんと働くようになっています。』

最初の循環メカニズムは怪しいですがその他はそうですね。

『最近のサブプライム住宅ローン問題を発端とするグローバルな金融市場の変動や海外経済から起こってきているダウンサイドリスクが日本経済にどの程度影響があるかを、金融市場はきちんと映し出して私どもに見せてくれるようになっています。その程度には状況は改善してきていると思っています。』

で、この時にはさっき引用したような話は無かったので、まあ後から改めて説明したって感じなのでしょうかね。


○とりあえず業務執行は問題ないとしましても・・・・・

後任が決まらないのに金融市場が全然気にしてるように見えないのは何ででしょうというある意味意地悪な質問に対して(^^)。

『トップが独裁的に運営している中央銀行であれば、トップが決まらない場合、市場が急激に反応を起こすと思いますが、政策委員会、執行部という重層的な構造を持つマシンがしっかりしている中央銀行の場合は、トップが一時的に決まらないからといって、市場が急激な反応を起こさないということは、さほど不思議なことではないと思います。』

『しかし、日本銀行にはそれだけ余計に負荷がかかっていると申し上げました。余計にかかっている負荷をしっかり担っていかなければならないこれからの日本銀行にとっては、もう一段エンジンを駆動させていくには重い力、強い力が必要だと思っています。』

ま、そうなんですけど、それよりも当面金融政策動かないから関係ねえというのが一番でかいのでありますが、それを言い出すと無粋にも程がありますので言わないで置きましょう。


○お疲れ様でした

『(問) (前半割愛)また、日銀を退任された後の人生設計ではないですが、今後についてどのようなことを考えておられるのでしょうか。10 年前は「世に迷い出る」という言葉も残されましたが、今回はどのようなお気持ちなのでしょうか。』

『(答) (前半割愛)これから先どうするかは何も決めておりません。これからよく考えます。もう迷い出るというような年頃でもありませんので。』

で、最後の質疑応答は洒落てますね。

『(問) 退任された後の人生設計は考えていらっしゃらないということですが、今日終わって何かやりたいことありますか。』

『(答) 今日はビールを一杯飲みたい気分ですが、特別の予定はありません。』

どうもお疲れ様でした。量的緩和解除前のドタバタ(なお書き修正も含めて)と村上ファンド問題はちょっと何だかねと思いましたが。てか就任直後の緊急政策決定会合にはかなり「何じゃこりゃ」と思ったんですけどね。

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2008/03/11

まずは総裁記者会見ですが、今回の会見は次の人に向けて一旦ニュートラルにしたというのが特徴的でありますな。まあ新体制になってからは正常化路線を(既に引っ込めてますけど)とりあえず封印して様子見しつつとなるんでしょう。

ただ利下げする時には政府サイドも何か手を打ってくれませんと日銀が緩和してる側から政府が引き締めとかいう間の抜けた事態になりそうな悪寒は相変わらずなのでございますが。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0803a.pdf

○現在の金利水準が低いのかという話

金利正常化は道半ばですなあという質問に対する答が妙に神妙でありまして、これはまあ次期執行部になった時に金利正常化路線に固執しなくていいですよっていう福井総裁のメッセージなんでしょう。

『それから、金融政策は連続線上で行われるものですので、経済や市場がダイナミックに動くように、金利政策も先行きを見ながら生きた政策を行わなければならないと思っています。スチールカメラで一瞬を捉えて金利が高すぎるとか低すぎると言うのは、分析の道具、分析の途上としては意味のある場合がありますが、実際は生き物としての金利、生き物としての経済、生き物としての市場の呼吸が上手く合っていることが、より良い経済のパフォーマンスに繋がっていく金利政策ということになります。』

はてさてどういうことかと言いますとその続き。

『今スチールカメラで姿を捉え、将来の望ましい成長経路との関係で金利水準が高いか低いかと言えば、それはおそらく非常に低いのだ、極めて緩和的な金利政策が展開され続けている、とおっしゃる方が結構多いだろうと思います。』

さよですか、まあその経路が怪しいのですけどね。

『しかし、経済そのものは、今申し上げた通り、かなり大きなダウンサイド・リスクに直面しています。一方でアップサイド・リスクにも直面しています。その狭間で、経済が大きく取り乱した姿で次の局面を迎えるということがないような金利政策は何かということになると、本日も特にその点を議論したのですが、今のところ日本の場合はスチールカメラで撮れば低すぎるかも知れませんが、なおこの金利水準を今は据え置くことが、将来に経済をどう持っていくかという観点から最適であるという判断を下したわけです。』

アップサイド・リスクはねえだろと思うのですが、まあこれはきっと「かなり大きなダウンサイド・リスク」という強い言い方をしたので、アップサイドにも言及しないとマズイと思って付け加えたのではないかと勝手に思料しますです。要するにダウンサイドリスクが大きいうちは金利動けませんという話でございますわな。

『毎回申し上げております通り、先々をどう読むかに当たっては、金融政策決定会合の都度、新しい材料を吸収しながら判断していきますので、スチールカメラで撮った映像を無視するわけでは決してありませんが、その映像をみて金利が低すぎるから何が何でも上げなければならないという台詞にはならないということです。』

結局は量的緩和解除時のロジックが金利水準の調整(金利正常化路線と言ってもあまり差異は無いですが)路線一点張りとなっており、福井総裁の発言もそのロジックに沿ったものになっていたことから、世の中的に「日銀は利上げ路線」という認識が共有されてしまった(金利水準の調整が基本的ロジックなのだから当たり前ですが)ので、経済状況がこのようになると火消しが大変になる次第なのですな。何度かこの話をしてますが、今回は「利上げ路線に固執していない」っていうのを強調している感じですね。

『先行きの読みといかに合致した判断ができるかどうか、そこが一番重要なことです。これまでもやってきましたし、体制は変わりますが、先々の日本銀行も基本的にはこの姿勢でやっていくのではないかと想像しています。』

ということで、後任は正常化路線に固執する必要は必ずしも無いのではないかってお話をしているように読めましたがどうでしょうか。


○財政と金融の分離とかいう話について

質問されて福井総裁も答えるの大変だと思いますが。

『財政と金融の分離という言葉よりはもう少し広い捉え方となるかもしれませんが、政府の経済政策と中央銀行の金融政策について、日本銀行法では、政府と日銀の間で十分意思の疎通を図りコミュニケーションをよくして、大きな経済情勢判断や大きな政策の方向性について基本的な齟齬がないように努めるべし、ということが書かれています。』

どう見ても民主党の理屈の間違い指摘です。本当にありがとうございました。・・・ただまあそこで話を終了させると、ナントカに刃物状態の民主党が益々ヒートアップしますので、何だか訳の判らん話をしてお茶を濁しておられます。

『また、金融政策そのものについては、日本銀行の政策委員会・金融政策決定会合において100%責任を持って決めることになっています。従って、少なくとも私および現在の政策委員会のメンバーは、その組み合わせの中で日銀法の基本的な趣旨を踏まえて行動するということが、今おっしゃった意味での財政と金融の分離にも通じるものだということを明確に認識していると思っています。』

・・・・何のこっちゃですけど、まあナントカに刃物が暴れてますから仕方ございませんですわな。


○これはうっかりしてました

昨日ご紹介した金融経済月報の基本的見解ですが、これはうっかりしておりました(大汗)。

『(問) 2点お伺いします。1 点目は、本日の基本的見解のなかで、足許の景気については「減速している」と断定的な表現に変えられましたが、(以下割愛)』

これはすいませんうっかりしてました。


○で、物価の影響について

昨日ご紹介した金融経済月報の基本的見解部分冒頭にも原材料価格上昇を景気減速に結びつける文章がございましたが、総裁もこの点に言及しています。

『これ(引用者追記:日銀の先行き見通しが緩やかな拡大になっている事)が実感とあっているかどうかということですが、実感というものは幅が少し広く、身の回りの食料品やその他の値上がりがこのところ加速しており、これがインフレ期待を呼ぶというよりは、今のところ生活水準を悪くするのではないかという方向の気持ちを刺激しているという面もあると思います。』

で、その点について少なくとも国内金融市場では同じ認識となっているのでCPIがちょっと上昇しようとも全然債券とか売られないのでありますけれども、日銀ケシカランという人は勿論のこと、一般のメディアなどに中々伝わってくれていなさそうなのは残念な所であります。日銀に関しては、只でなくさえ利上げバイアスがあるという報道とか認識とかが昔からあるのですから、逆に言えばそこまで金利調整路線の強調をしなくても良かったんじゃねえのか何ていうのを今更ながらに思うあたくしなのでありました(^^)。

『よって、経済の動きを客観的に捉えた時の表現と、そうした心理的要素まで含めた場合のニュアンスとの間には若干ギャップがあるかもしれません。私どもは、そうした企業家心理、さらには消費者マインドがどのような状況にあるかということや経済全体のセンチメント――これは、人々の行動が次の局面に向けてどの程度前向きになるかということに影響してきますが――、これらを十分織り込みながら先行きの判断をしていかなければならないと思っています。』


○村上ファンドの話

久しぶりにこの話に質問がありましてその答え。

『もう一つのご質問(引用者追記:村上ファンド出資問題)については、追加的に何も申し上げることはございません。私自身も一人の人間として十分注意深く行動してきているつもりですが、振返って十分でなかった点があったということを重ね重ね反省していると、前々から申し上げている通りです。』

反省してるのは判ったが、あの解約タイミングは如何にも間が悪すぎでしょ。どう見てもブタエモンの所にガサ入れがあったのを見てこれはヤバイとばかりに慌ててこっそり解約したようにしか見えませんもん。トンマとしか言いようがございませんですよ。



まあ全体的には次の執行部に向けてお土産を残すのではなく、一旦お掃除をしてニュートラルにしたって感じじゃないでしょうか。

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2008/02/20

昨日は引用でやたら長くなっちゃいまして失礼しましたですが、総裁会見の続きから。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0802d.pdf


○物価が上がったから緩和効果が高まるかという話

『(問) 先ほどの物価に関する質問とも関係しますが、CPIが表面上0.8%と上昇する中で政策金利が同水準を続けているということは、緩和効果が強まっているという認識でよいのでしょうか。』

てな質問がございまして、福井総裁の答えはこうなってます。

『(答) 経済の実勢と金利水準の比較はなかなか難しく、現実の成長率、今ご指摘の現実の物価指数を一方に置き、一方で現在の0.5%という政策金利と比較してどうかということになりますと、CPIの前年比がゼロ近傍から0.8%に上がってきたということは、計算上、緩和効果はより強まっていると言えると思います。』

と、計算上の話をした後に次の話が。

『ただ、本来は期待インフレ率、企業の実質収益率との対比でみて金利水準はどうかということを計算しなくてはなりません。この点は、色々な前提を置かなければ計算できませんが、CPIの前年比がゼロ近傍にあった時点から0.8%まで上がってきた僅かここ数か月の間に、実質的な緩和度合いが、今ご指摘の計算方法ほどに急速に増しているとは言えないのではないでしょうか。』

ほほう。これはまた慎重なお話で。

『いずれにせよかなり緩和された状態が続いているということだけは明確に言えると思います。』

まあ最後に結局この話になるんですけど・・・・・うむむ。

まあ文脈的には「コストプッシュで物価が上昇する中で金利が一定だと緩和方向になるというのはちとまあ話に無理があるでしょう」と言ってるようには見えるので、これまたややトーンダウンですかいなという感じ。


○利上げの効果に関して

『(問) 前回の政策変更いわゆる利上げから約1年が経過しましたが、この1年間に金融市場、金融機関経営あるいは実体経済において、どのような政策効果というか利上げ効果があったと分析・評価されているのか、ご見解をお伺いします。』

『(答) 世界経済全体との緊密な連関のもとで日本経済が動いていますので、政策効果というものを抽出してみることは非常に難しいわけであります。世界経済全体は米国を中心に大きな調整の過程を経つつあり、そしてグローバルな金融資本市場でも――リスク再評価と言っていますが――大きな調整の過程を経つつあります。日本経済も、実体経済面あるいは金融面から、前もって想定した以上のリスク要因の高まりという大きな環境変化の中に置かれてきたと思います。』

『しかし、日本銀行の金融政策は、かなり先々まで読み取りながら、緩やかではあっても日本経済が持続的な成長軌道にしっかり乗り続けるように、そして物価安定の基礎を決して損なわないように意識し、できる限り持続的な成長を図りながら物価安定の基盤をより強固にしていくという方向性をしっかり見据えて量的緩和脱却後の金利の設定を行い続けています。金融政策決定会合はこのところ変更なしということが多いわけですが、変更なしということは、変更しないことが最適だという判断を毎回行ってきたわけです。』

・・・・・・何が何だかさっぱり判りません(><;

さっき(と言っても質問順ではこっちが先ですけど)現在の状況は緩和的という話をしてるので、水準に関する見方はあるようなのですけれども、効果の分析は他の要因もあるので難しいとはこれは何と言うか。いやまあ単純に割り切れる話ではないと言いたいのでしょうけれども。

と悪態つきましたけど、夏からの個人消費伸び悩みって税源移譲と定率減税廃止がマトモに効いているでしょうし、建築基準法の問題とか、そっちの政策効果をスルーして何でも日銀日銀というのもどうかとは思いますけどね。

で、途中の流動性のところを飛ばしまして。

『結果として、現在、多少経済は減速していますが──これには建築基準法改正という内部的なショックも一枚加わっていますが──、生産・所得・支出の好循環のメカニズムは基本的には損なわれることなく、先行きに上手くつなげていける可能性を十分残して、政策運営が行われているところです。これから一層の努力が必要だと思いますが、十分先行きにつながりのある金融政策運営ができているのではないかと思っております。』

何か任期終了を意識した発言でまあちょっと感慨もわくのですが、「可能性を十分残して」とか「十分先行きにつながりのある」というのがちょっとこれまたトーンダウンですなあという感じで。次の人にバトンタッチする時期も近くなってきたのであまり決め打ちをしない方が後任がやりやすかろうというのもあるでしょうけれども。


ということで、最後に来て思いっきりトーンダウンした総裁会見でございました。

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2008/02/19

お題「最後に来てやたら慎重姿勢になりましたなあ」

総裁会見は慎重さが目立ったんですが、そもそも論として市場の方は1月の絶賛株下げによって利下げ織り込みを思いっきり先走った事もありまして、福井総裁が慎重な発言をしても「ふ〜ん」ってなもんでございます。

どっちかと言いますと米国様の利下げ効果とか、何か国内株もさすがに一旦底を打った感じもする(とあたくしは思うわけだが。あーたトヨタ自動車なんて5000円割れから昨日は6200円とかですよ)のでありまして。

今回の総裁会見は質疑応答の応答の方がやたら長くて引用しにくいでありますよorz

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0802d.pdf


○中小企業が悪化している話

質疑の最初の方をちょっと飛ばしまして真ん中辺りから。

『最近のアンケート調査等を見ますと、中小企業の業況判断が少し後退し、収益の見通しが少し悪くなっているという状況にあることは、十分に認識しています。(理由に関する部分は皆さんご存知なので割愛)それにとどまらず、中小企業、中でも規模の小さな企業において、ボーナスの支払いなど賃金への企業所得の還元が従前の予想より弱めに出ているようです。これらは、家計部門の主体、すなわち消費者の心理に多少悪い影響を及ぼしていると受け止めています。』

中小企業の悪化が賃金に波及して消費に悪影響を与えるという話をきっちりとしておりますな。

『私どもは、マクロ経済の判断を行っていく場合の一番の軸は、生産・所得・支出の循環メカニズムであると言っておりますが、所得の部分、つまり生産が伸びた時に企業所得がどのように形成されるかという部分において、中小企業にプロフィット・スクイーズ(利潤圧縮)が起きていることに注目しています。』

『そこからさらに家計部門へ還元する過程において、中小企業の方が大企業に比べて鈍いということも認識しています。これらが消費者マインドに翳りをもたらす一つの要因となっているとすれば、生産・所得・支出の循環メカニズムにおける最終段階、つまり支出の段階にも影響が及んでいるとみられます。』

どう見てもメカニズム変調です。本当にありがとうございました。

『従って、生産・所得・支出の好循環メカニズムは基本的に維持されているが、足許ではそのメカニズムが若干弱まっていると認識しており、今後ショックをうまく吸収しながら再びリズム感をもう少し良くしていく方向に、うまく運営していかなくてはならないと認識しています。』

基本的に維持されているがと言いながらこの慎重姿勢。いやあの退任近くなって今更感はあるのですけど、まあ最後の最後までもう好循環ですよ金利調整ですよというよりはまだマシか。


○デカップリング論を否定

ポールソン財務長官のデカップリング否定発言に関して。

『ポールソン長官とは、世界経済について何回も議論しています。私は神話という言葉を聞いたわけではないのですが、ポールソン長官と共有している考え方は、グローバル化が進展していくもとでの世界経済あるいは各国の経済というのは、相互連関を強めながら大きな経済の原動力を作っていくということです。相互連関を強めながら、ということがポイントですから、各国で生じた現象は様々なルートを通じて、例えば輸出入などの取引や国際的な金融資本市場の動きなどを通じて、他国経済とお互いに影響を与え合いながら前進していくということです。よって、経済の完全なデカップリングということは、定義上あり得ないのではないかと思っています。』

んでまあ具体的にはどうなのかという話ですが。

『ただ、あくまでも程度問題として考えた場合、世界経済の成長を牽引する力を持つのは米国および先進諸国だけという状況から、エマージング諸国などを含むかたちに多極化していますので、米国経済の動向が世界経済全体に与える影響は相対的に小さくなりつつあるということは言えると思います。』

途中端折りまして、

『しかし一方で、サブプライム住宅ローン問題に端を発した国際金融資本市場の動揺が続く中で、米国における経済・金融の調整がわが国経済に全く無縁で済むかというと、そうではなく、株式市場などは非常に大きなマグニチュードで影響を受けていますし、それ以外の面でも当初の予想を上回る影響が出てきていることは否めないと思います。』

『従って、米国におけるダウンサイドリスクが顕現化すればするほど、他国への影響の心配が高まっていくと考えておいた方がいいと思います。貿易等を通じた直接的なショックの度合いはかつてに比べて少し薄まっていると思いますが、先行きをみていく上で、デカップリングを当然の前提とするのは少し甘い考え方ではないかと思います。』

ということで、こちらでも慎重姿勢でございます(^^)。何かこう強気発言に終始して日経平均2万円ですよと言ってたどこかの誰かさんが急に弱気発言するとか、どこぞの禿先生が落ち短発言するとか、まあそんなものを感じたのは単に強気なあたくしの勘違いですかそうですか(^^)。


○日本のインフレリスクは小さい

まあこの点は前から言ってますけど。

『日本においても、基本的な構図は同じですが、今は改正建築基準法の影響などもあって、一時的に日本の成長は、ぎりぎり潜在成長能力並みかあるいは少し下回るペースに落ちていますので、需給要因から物価を押し上げる力が欧米に比べると少し弱い状況にあります。(略)引き続き周辺諸国に対する競争力確保、あるいは向上ということを考えると、固定費抑制が一つの大きなルートになるため、最終価格への転嫁度合いを最小にしながら経済全体の仕組みが動き、その結果、インフレリスクは欧米に比べて小さく、インフレ期待が急激に誘発されるリスクも比較的低い状況にあると思います。』

『いずれにしても、ダウンサイドリスクに対しては、経済情勢判断上、比較的一方向に計算しやすいものです。一方、エネルギーコスト、原材料価格、あるいは食料品価格の上昇については、インフレサイドの要素がある一方、原油その他一次産品の産出国でない先進工業国にとっては所得を持っていかれる側として、相対価格の変化、交易条件の変化を通じた所得移転に伴う景気押し下げの要素もありますので、これら二つの異なる方向のベクトルの間に立って、正しい判断をしていかなければなりません。その時にインフレ圧力がどのくらい強いかは、国・地域によってかなりの違いが存在し得ますが、日本の場合目下のところインフレリスクは比較的小さい状況で推移していると思います。』

つまり足元の数値は利上げ判断に向うようなものではないというお話でございますな。何かそういう話をここもと福井総裁は繰り返している筈なのですけれども、それがちゃんと世の中に伝わっているのかがやや疑問があるのでございますけど。

グリーンスパン方式は良いとは思わないのですが、バイアスの掛かった報道で真意がちゃんと伝わっているのか疑問がございますという状況も何だかなあと思います(いやまあ丁寧に会見要旨とか議事要旨とかのやや日銀文学の入りにくい物を読んでいればある程度の部分までは読めるはずなんですが。日銀文学の方はちょっとアレですけど^^)次第なのでございまして。


○CPIとGDPデフレーターのお話

『今月以降公表される消費者物価指数(CPI)もおそらく同じことが言えると思いますが、このところ、ガソリン等石油関連製品と食料品の価格の上昇が主因となってCPIの上昇幅にやや加速度がついているという状況です。これまでの原油価格あるいは国際的な商品市況の状況からみると、しばらく国内のCPIを押し上げる要因になると思います。』

『エネルギーにしても原材料にしても、わが国にとっては先ず輸入価格の上昇となって現れますが、GDPにおける外需は輸出から輸入を差し引いたものですので、輸入価格の上昇はGDPデフレーターにとってマイナス要因になるわけです。こうした状況では、CPIが上昇している、イコール、GDPデフレーターが下がっていることになるため、これらを別々にとらえて単純にインフレとかデフレという言葉で表現してはならないと思います。』

なるほど。数字に出てくる現象の背景が重要と言う事であります。で、将来はどうなるかという話ですが、何かよく見ると留保条件がつきまくりで、将来的な物価上昇を展望する話してますけど、こりゃまあ願望でございますな(^^)。

『物価については、この先原油等の一次産品の市況がどうなるかわかりませんが、仮にこれ以上あまり上がらないとの前提に立てば、原油や食料品等の価格高騰といったCPIの押し上げ要因はいずれ減衰していくと思います。しかし、経済が潜在成長能力ないしそれを若干上回る軌道に再び戻って安定的に成長していくことになれば、今度は需給要因が徐々に物価の押し上げ要因になると思います。それが先々インフレ的な動きにならないか十分注意しながら、経済を運営していく必要があります。』

やっとここで以前の福井総裁が出ているのですが、実はこの前段で『足許の経済は少し減速していますが、先々このショックをうまく吸収していけば、改めて潜在成長能力近傍の成長軌道に復していくと思います。』と言ってるところが泣かせてくれるところでして、そこまでの話で延々と先行き警戒をしている訳ですので、それを併せますと誠に残念な事に「今警戒しているものが解決したら需要が復活して物価が上がるかもしれませんなあ」という話になりますわな。ここだけ切リとるとまあタカ派発言に見えますが、そこまでの話の流れからすると将来の願望ですな願望。



○輪番オペに関して

長期国債の買入は現状を考えたら増額はあっても減額は有りえませんのですが、何故か長期国債買入を減額しないのかというトンマな質問をするメディアがいるんですけど、あのそのちょっと勉強した方が良いんじゃないでしょうか。長期国債買入の増額余地に関しては複数の人からレポート出てますって。一応質問者は5年とか10年とかって話をしてますが、そこまで先になったらそもそも経済のあり方がどうなってるのかだって判らんって。

この質問に対する説明はやたら長いですし、まあ皆様先刻ご承知のお話ではございますが、整理するのにちょうど良い説明ですので最後の部分を除いて長々と引用します。別にまあ整理しなくてもという皆様におかれましては、この先長くて、ついでにこれが最後なので本日はこれまでという事で(^^)。

では参ります。

『長期国債の買入れという政策手段は、中央銀行にとって必ずしも例外的とは言えません。短期国債と長期国債との適切な組み合わせで、政策金利をきちんと実現していくために必要な市場資金の需給調節を行っていますが、各国ともそれぞれの事情に合わせて、各政策手段をうまく組み合わせて、政策目標を達成していこうとしています。もっとも、期間の長い資産を買い入れる場合には、いわゆる底溜まり的に流動性を供給していく手段になると思います。』

これは輪番話をしたときに紹介した日銀のペーパーにあるとおり。

『かつて、成長通貨の増加に見合った範囲内で長期国債を買入れるという考え方は、そのようなことに由来しています。5年以上前、金融が危機的な状況にあった時に日本銀行が長期国債の買入れ額をかなり大幅に増やしましたが、その時期でも「銀行券の発行残高の範囲内」といったしっかりとした上限を設けています。「銀行券の発行残高の範囲内」ということは、成長通貨の増加額ではなく成長通貨の供給残高の制限でありますが、これは既存の成長通貨の供給の範囲内という概念の延長線上にあるもので、それからはみ出たものではないと思います。』

この部分は読んでて「ほほー」と思った所。まあ福井総裁になってからは長期国債買入をいじってないので何なんですけど、この部分って買入長期国債の償還乗換方式変更とも絡む論点のような気がするのですけれども、ちょっと頭を整理できてないのでほほーと思ったとだけ書くアルよ。

『もっとも、現在の買入れ額が比較的大きいということは認めますが、同時にペイオフ解禁後、既にかなりの期間が経過し、金融システムも相対的に安定し、経済も落ち着いた成長軌道に乗ってきているといった状況にある中、銀行券の発行残高あるいは伸び率はまだかなり高い状況で推移しており、銀行券の伸び率が目先急激に下がる可能性もなく、なかなか動かない状況ですので、銀行券の発行残高対比では、日本銀行の長期国債買入れ残高は、かなり余裕を残した状況で推移しています。』

さっき申し上げたとおりで、輪番は増額余地ありますし、逆にここで減額なんぞされますと短期の資金供給オペに負担がより一層かかると思うのですが。

『期間の長い長期国債を買っているのは間違いありませんが、実際に買入れている長期国債のデュレーション(残存期間)にはかなり幅があり、日本銀行の保有長期国債の平均残存期間は、想像されるよりはかなり短い状況になっています。』

これはオペのテクニカル要因に起因するという話も以前致しました。

『さらに言えば、国庫の収支状況をみますと、政府において、買入消却措置がここしばらくの間、かなりの規模で行われており、日本銀行の保有国債も買入消却の対象となりました。これによって日本銀行のポートフォリオに入っている長期国債の残高はさらに減っています。直近では、日本銀行の全資産に対する保有ポートフォリオの長期国債残高の比率は、FRBのそれよりも低い状況です。よって、今の状況は、日本銀行が何か無理したために非常に極端な状態になっており、日本銀行のバランスシートに偏りがあり過ぎて金融調節上何か不便を感じたり、弾力的な金融調節が出来ずに支障があるということには、全くなっておりません。』

ということでございます。んでまあ先々の話として銀行券の伸びが低下すると見ているので、その場合は必要があれば調整(そこだけを切り取ってヘッドラインを打たれたようですが)することもあるかもという話はしてますけれども、それはあくまでも銀行券が伸びなくなったらという話でありますので、現状はどう考えても輪番を減らす話にはなりませんですな。

というわけで、最後輪番の所の引用が長くなっちゃいまして恐縮至極。

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2008/01/25

○総裁記者会見の続き

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0801b.pdf

・「すわ利下げ」で盛り上がった質疑応答

金融市場が「利下げキター!」と盛り上がったらしい部分はこの質疑応答でございますな。

『(問) 金融政策は目先の状況だけでなくフォワード・ルッキングな視点が重要だとのことですが、欧米は目先の状況に対応するために利下げといった対応を取っていると思います。協調の観点から日銀だけが現状維持でいいのかという点と、日本の金利水準が欧米に比べてまだ低いので利下げという選択肢を取りにくいという考えなのかどうかをお聞かせ下さい。』

欧米じゃなくて米英というのが正しいのですがそれは兎も角(^^)。

『(答) 中央銀行の金融政策の基本的な考え方については、国際会議等で十分な擦り合わせを繰り返してきているつもりです。目先の状況だけで政策判断を行って正しい金融政策ができると思っている中央銀行は一つもないと思います。(長くなるので割愛しますけど、要は先行きを分析することに皆努力してるという話)欧米諸国において、あたかも目先の問題に対応して金融政策を行っているように見える場合でも、かなり先々まで分析作業を施した上で金融政策の最終的な判断をしているということは間違いないと思います。それぞれの中央銀行の議事要旨をみますと、そうした議論の集積が十分行われていると確信できます。』

で、この次ですな。

『日本の場合、金利水準が非常に低いことを出発点として、金融政策に制約があるという前提で物事を考えるという立場は、私どもはとっておりません。』

んでまあこの部分がヘッドラインになって、金利が低いのが制約ではない→金利の引き下げも選択肢になる→利下げキター!となった訳で。

『あくまで情勢判断を中心に考えています。フォワード・ルッキングであり、確信が持てれば正しいタイミングで必要な施策をとる、そのような機動性は十分保ちながらやっていきたいということです。目先の現象に目を曇らせて、性急な判断で物事を処理するということは避けながら対応したいということは、繰り返し申し上げたいと思います。』

ま、ここまで読みますと、景気が復活すれば利上げも復活ですよという話をしてましたねと言う事なんですけれども、昨日ご紹介した株価下落への強い懸念発言もありましたし、まー最後の所はただの空元気って奴ですかね。

勿論きちんと時系列分析しているわけではないのですが、福井総裁クオリティーとしては、先行きに本当に自信満々の時は余裕ぶっこいているのでそんなに前のめり発言をしなくて、自信がちょっと無くなって来るとさも自信があるかの如き強気発言が段々出てくるという傾向が見て取れるんですが、降参モードになると急に警戒感丸出しの発言になってくるというのが流れとしての印象でありましてですな、まあ昨日の会見は要旨から見ますと降参モードって感じでしょうという雰囲気が伝わってきますわな。


・株式市場に対するコメント

それはそれとして株式市場の下落に関してもう一つ良い分析をしている部分がございまして、昨日ご紹介するときにうっかり八兵衛で見落としておりましたすいませんすいません。

『それから株価の下落ですが、他の国に比べて大きい、小さいというのは、いつを起点に考えるかによってかなり差が出ますが、最近日本の株価の下落幅が少し他の国に比べて大きいという感じをお持ちになられるような面があることは、否定し得ないと思っています。』

さよでございますな。

『日本も、世界同時株安という基調の範囲を超えるものとは思いませんが、円相場が少し円高方向に振れていることも一つの原因として作用していると思います。また、日本の株式市場において、過去に比べると外国人投資家のウエイトが非常に大きくなっている点も挙げられます。』

『少し振り返ってみると、2005 年あたりは外国人投資家の日本株の買い増しが非常に大きかったわけです。今は世界的にポートフォリオの見直しが行われる中で、他の投資ポートフォリオに生じた損失を日本株の売却によって益出しをしてカバーするという外国人投資家の行動も少し加わってきていて、それが追加的な株価押し下げ要因になっている可能性はあると思います。一つ一つの投資家の行動を見ているわけではありませんが、全体としての動きを見ている限り、そのようなことも言えると思います。』

これね、今週インドで引導状態になってた時に同じようなバージョンがあったと思うんですよ。と申しますのも、個人投資家さんの株式などのポートを勘案しますと、現物株では大体食らっている筈なんですけど、インド株投信みたいなのって(設定タイミングにもよりますが)概ねまだまだ大利食いゾーンにあるので、ここもとの下落で向った人が「やっぱダメじゃん売ってもう一回買いなおし」となった時に「利が乗ってるものを合わせ切りしておこう」となると利が乗っているのは新興国株系の商品と相成りますので、それがバカスカやって来ていきなりサーキットブレーカーって要因が(勿論それが全てとは思いませんが)あったんジャマイカと存じます次第。

ということで、昨日ご紹介した部分とこの部分を見ますと、まあ立場上閣僚よりは良く見てるの当たり前ですけど、閣僚さまの発言と比較して非常にちゃんとしていると思いますですよ。


・官製不況に関して

『(問) 国内の住宅投資の不芳は、建築基準法の改正のほか、貸金業法、金融商品取引法など一連の法改正による「官製不況」との指摘の声も出ていますが、総裁はどのようにお考えでしょうか。』

これはある意味上手い釣りでありまして・・・・・

『(答) 国内の住宅投資については、改正建築基準法の施行に伴う影響が予想以上に大幅で長引いているということが、下振れの基本要因ではないかと見ています。それ以外の政策的、制度的要因が強く絡んでいるかどうかは明確には認識しておりません。従って、建築確認に関する手続き面での問題が解消していけば、住宅投資は徐々に回復していくと基本的には考えています。』

で、途中を割愛しますが、この先でこんなコメントを。

『ただ、改正建築基準法の影響だけかと言えば、そうではなく、改正前からの住宅投資の動きを見てみますと、マンションについては、既に昨年から、特に都市部においてかなり物件価格が上がっており、そうした地域では住宅の新規購入態度に弱さが認められていました。それに改正建築基準法の影響が加わったため、両者の影響を見分けることが難しくなってしまったわけですが、私どもは、改正建築基準法の影響は徐々に薄れていく一方、物件価格の上昇によって弱さがみられる部分は少し尾を引く可能性があると考えております。』

まあ決定会合議事要旨でも指摘している人がいましたわな。

『従って、基本的には住宅投資は来年度入り後回復するが、回復のペースについては幾ばくかの不確実性が残っていると感じております。』

不確実性キター!ということで、この官製不況質問は中々良い誘導になったんではないかと存じます(^^)。やっぱ先行き気にしてるじゃん。。。

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2008/01/24

○福井総裁記者会見:「金利水準の調整」終了のお知らせ(^^)

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0801b.pdf

上のほうの結局またトサカモードの書き物してるうちに時間が無くなって参りましたのでとりあえず簡単に(汗)。

・今までは「現状維持か利上げ」でしたが・・・・

何という直球質問(^^)。

『(問) 本日の中間評価でもありましたが、景気判断が下方修正されていく中で、今後の金融政策としては、利上げではなく利下げを検討する過程にあると考えてよろしいのでしょうか。』

『(答) 今申し上げましたように、先行きの経済見通しについて基本的シナリオは大筋維持されており、これまでの金融政策の基本的なスタンスには変わりはありません。見通しの蓋然性と上下両方のリスクを丹念に点検しながら、金融政策決定会合でその都度適切な政策判断をきちんと行っていくということに尽きます。』

途中を大いに割愛して。

『最も蓋然性の高い見通しは、わが国経済が物価安定のもとで緩やかな拡大を続けるということですので、先行きの金融政策運営についての基本的な考え方は、これまでと変わりありません。『リスク要因は、変化の激しい環境の中では刻々と変わります。私どもとしては、それを十分フォローし政策判断の中にきちんと取り入れながら、的確な判断を重ねていきたいと考えています。』

となっておりましたが、例えば12月の定例記者会見ではこのようになっておったんですよね。

『一言で言えば、先行きの金融政策運営についての日本銀行の基本的な考え方は、これまでと全く変わっていないということであります。日本経済が物価安定の下で息の長い成長軌道を今後とも辿るのであれば、金利水準を徐々に引き上げていく方向にあるとかねてより申し上げております。この基本線にいささかの揺るぎもありません。』(これは12月ですので念の為)

・・・・本石町日記さんのエントリー(昨日ご紹介しました)で指摘されていたように、利上げとか金利の調整とかという話が見事に消えましたね。

どう見ても「金利水準の調整」終了です。本当にありがとうございました。


・株価の話

株価についての総裁のコメント。

『(答) 大きな背景としては既に申し上げました通り、米国を始めとする世界経済全体の不確実性を市場が強く認識している、あるいは国際金融資本市場における全般的な不安定性を引き続き強く認識していることがあると思います。結果として、様々な市場において、投資家のリスク回避の動きが、足許非常に強まっています。そうした流れの中で、世界的な株価の下落が急激に進行中だと私どもは理解しています。』

リスクリパトリと経済の不透明の合わせ技というのは確かにさよで。

『日本の株式市場についても例外ではなく、中央銀行としては十分警戒的な目でもってフォローしていかなければなりません。経済全体の分析を常に踏まえながら、冷静に事態の把握に努めていきたいと思っています。』

『日本の経済全体の姿や、サブプライム住宅ローン問題の波及については既に申し上げました。株価の下落については、そのこと自体が直接日本経済に対して、いわば逆資産効果、あるいは企業マインドや消費者マインドへの影響等を通じたネガティブな影響を及ぼすリスクがあり、注意深くみていきたいと思っています。』

正直、閣僚の発言よりも総裁の発言の方がちゃんとしてますなあと思うのですが・・・・・

ということで、足元の株価下落に関してもちゃんと警戒しているようですな。

時間が無くて詳しくご紹介出来ませんでしたが、結構警戒色が強い内容になっていまして、さすがに(当たり前ですが)「利上げ時期を模索する」というトーンはすっかり影を潜めておりますな。利下げまで行くかというとそれもちょっとまだって感じですけれどもね。

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2008/01/22

○さて1月11日の衆議院財務金融委員会

例によって直リンのアドレスがわからなかったので、以下の所から財務金融委員会の1月11日をご覧になりたし。

http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm

今回は定例の四半期報告の質疑だったんですけれども。

・物価上昇が景気下押しという話

自民党の鈴木馨祐委員の物価に対する見方に対する福井総裁の答弁にはこんな部分がございました。

『ただ、その一方で、原油価格を初めとする原材料価格の高騰は、企業収益の圧迫という一面を持っておりまして、これを通じた場合には経済活動に対する下押し要因となる。つまり、一方で物価を押し上げ、片方で企業収益の圧迫を通じて経済を下押す要因となるということでありますので、なかなか複雑でございます。』

これは最近政策委員の皆様が指摘していることですが、

『この下押し圧力の方を重んじて考えれば、将来の物価にマイナスの影響が及ぶ可能性すらあるということでございます。』

ほほう、これはちょっと踏み込んでネガティブ(というのも変な言い方ですが)な言い方してますな。これはこれは。

『したがいまして、日本銀行といたしましては、原油を初めとするエネルギーの動向あるいは原材料価格の動向が経済や物価の先行きに与える影響については、少し幅広い角度から検討を深めてまいりまして、随時適切な結論を得て、適切な金融政策の運営につなげていかなければならない。そういうふうに、少し視野を広げ、分析を深め、適切な政策判断につなげたい、こういう考え方でおります。』

この前の部分では人々のインフレ感がどうのこうのという話もあるのですけれども、流れからするとこの「幅広い角度」というのは従来の物価上昇したら金利正常化(と少なくとも外の人からは見られやすかった)という話ではないですよという解釈になると存じますな。


・ちょっと微妙ですが総裁またうっかり梯子外し?

同じく鈴木委員の質疑応答の中でこんな答弁が。

『そして、最近の物価動向、特に消費者物価指数の動きなどを見ておりますと、マイナスの領域から少しプラスの領域に入ってきた。プラスの領域に入って、当面の見通しも、今申し上げましたとおり目先は供給要因から、その先は需給がよりタイトになるという要因で、ゆっくりと上昇基調をたどっていくということでありますので、この物価安定の理解の範囲内で、基調的な物価安定ということはしっかり確保しながら物価が推移していくだろうという見通しでございますので、理解について変更する必要はない、こういうふうに考えております。』

後半はまあどうでも良いのですが、冒頭部分を良く見ますと「マイナスの領域」と仰せなのですが、えーっとあのその去年2月から9月のコアCPIは「ゼロ近傍」じゃなかったでしたっけ?????

と思って答弁じゃなくて報告部分の冒頭を見ますと、こちらでも福井総裁こう説明してますが。

『消費者物価指数ですが、生鮮食品を除くベースで見ますと、その前年比は、昨年十月にプラス〇・一%とプラスに転じまして、十一月にはプラス〇・四%というふうになりました。』

プラスに「転じ」ますという表現ですとその前はマイナスだったと解釈するのが普通ですよね。いやまあ「ゼロ近傍だったのがプラスに転じました」っても言えますけど、その後でマイナスの領域から云々が出ちゃいますと、今までのゼロ近傍は何だったのよと・・・・・

たぶん「実数がマイナスになっていることと継続的な物価下落という意味でのデフレとは別なのでゼロ近傍としている」とかいう話になるのでしょうけれども、何と申しますか総裁もうっかりさんですなあと(^^)。


・で、景気減速発言

同じく鈴木委員から景気認識について質問されて・・・

『委員御承知のとおり、まず、日本経済を単体として眺めますと、足元景気は少し減速している、率直にそういう状況だというふうに思います。』

ということで、まあその後色々と基本的なメカニズムは崩れてないという話をしていますが、まあまあ最初がこれということで、今回の答弁の印象としては従来の強気を引っ込めてますねという感じでしょうか。


・日銀総裁に必要とされること

これまた同じく鈴木委員の質問に対する答弁から。

『一つは、やはり何と言っても通貨の安定に対する強い信念と実行力。それから、こういうグローバル化のもとで、日本経済は世界経済と緊密な連関を持って動いているということがありますので、やはり鋭敏な国際感覚というものは必要だと。それから、何と言ってもマーケットエコノミー、経済と市場とが相互連関、相互作用と言った方がいいですね、インタラクションを持ちながら発展していく状況でありますので、市場を大切にする気持ちというものが非常に大事じゃないかというふうに思います。』

とりあえず理解したが、市場を大切にする気持ちというのはあのその何と申しますか・・・・もういいや。

『そして、最後に、政策委員会で、一つの結論を創造的に導き出していくプロセスを、リードしていくという言葉もあれですが、そういう政策委員会のダイナミクスを前進させていくエネルギーが要る、創造的な能力が要る。言ってみればそんなことでありまして、そのいずれも私は十分満たしているとはもちろん思っておりませんが、後任には私以上にそういった条件を満たす方を選んでいただきたいというふうに思っております。』

自分でも微妙な表現と思ったようですが、やはり「リードしていく」という意識はそりゃまあ福井総裁だったらございますわなと。いやあのリードするならするでも良いんですけれども、笛吹き男にリードされて全員で入水する破目になっても困りますので、そのあたり一つ宜しくお願いしたいと思うのでありまする。

ちなみに、その後民主党の鈴木克昌委員の質問に対する答弁も似たようなもんでしたが、その最後の部分。文章が全部繋がっているので最後の方だけ引用すると少々アレなのですが。

『経済も自律的な調整をしますが、市場も自律的な調整をする。その相互の調整の波長がうまく合えば、次は経済と市場とがよりバランスのとれた好ましい発展の条件が整うということでありますので、そこを目指して適切な市場調節あるいは金融政策を運営して次のターゲットに結びつけていくということでありますので、市場を大切にする気持ちというのはもう絶対に欠かせないし、十分市場からの情報に耳を傾ける、あるいは市場に十分コミュニケーションをしていくというふうに、意思の疎通が十分できるということが非常に大切だというふうに思います。』

意思の疎通ですかそうですか・・・・・・


・おまけ

ということでまあ引用はこんな感じなんですが、民主党の鈴木委員がサブプライム問題に関して現在どうなっているかという質問をするなかでこんな話が。

『まず、皆さんもお聞きになっておって、えっと思われる。この九月末というのが、今はもう年が改まっているわけですよ。まず、このデータが九月末時点でというふうな話がこの委員会で出ておるということは、私は、これは一体全体本当にどうなっているのかなというふうに思います。』(これは鈴木委員の質問)

気持ちは良く判りますが、集計をするのは金融機関の現場でして、あんまり頻繁に報告しろと言われますとそれこそ報告が仕事になってしまって肝心のリスク管理があさっての方向に行ってしまいますので、一つそのあたりは穏便にして頂きたく存じます。。。。

あと、民主党の階猛委員が質問してたんですが、最初の部分でアセスメントを変えているのに金融政策の方向が変らないのはどうしてだという質問をしているのが面白かったのですが、途中からどうでもいい質問を総花的に行ってしまい実に惜しかったです。

共産党の佐々木憲昭委員が「景気は後退入りしていないか」と思いっきり質問してたのも中々でしたが、後半がちょっと共産党節になってたのが残念。

それはそれとして階さんの冒頭の一言に何とも。

『旧日本長期信用銀行、十年前に破綻した、そこの出身の階でございます。きょうは福井総裁と、私は元バンカーですけれども、バンカー同士ということで、忌憚のない意見交換をさせていただければ、こう思っております。』

バンカーねえ・・・・・

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2008/01/09

昨日日銀のサイトにアップされていたのはおフランスで行われました福井総裁の講演要旨。こちらはモノが何とおフランス語という代物ですが、さすがに邦訳付きでございます。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0801b.htm

○今年のお題は金融政策の透明性ですか

昨日ご紹介した岩田副総裁の講演のお題がまんま金融政策の透明性とコミュニケーションポリシーでしたが、こちらでも福井総裁が金融政策の透明性に関して説明しています。講演の後半部分になります。

『同時に、中央銀行どうしは、互いに切磋琢磨する関係にもあります。それぞれが、他国の中央銀行の経験から学ぶことに貪欲で、良いところを取り込もうと日々努力しているという意味です。そこには特許はありません。また、他国が適切な金融政策を行うことは、世界経済の安定を通じて、自らの利益になりますから、どの中央銀行も自身の経験を教えることにも熱心なのです。』

という所から始まるのですが。

『そのひとつの例が、金融政策の透明性の向上を巡る各国の取り組みです。』

金融政策の透明性向上キター!

『1990年代以降、物価安定の意義への理解が深まるもとで、中央銀行が政府からの独立性を高める動きが、日本や欧州を含む、多くの国と地域でみられました。同時に、政策の透明性と説明責任の拡充が、それまで以上に求められるようになったことも共通しています。透明性の向上は、家計、企業、市場参加者などの期待に働きかけることを通じて、金融政策の有効性を高める観点からも、重要なことです。こうした問題意識のもとで、どのように政策を説明し、市場との円滑な対話をどう図るか、各中央銀行は、互いに他の中央銀行の事例を参考にしつつ、それぞれ、経済・社会の実情に照らし最適と考えられる方策を模索してきました。』

岩田副総裁の講演と同じお題ですが、この先は物価安定に関する話になってきます。

『例えば、金融政策の目的である「物価の安定」をどう表現するか、という根本的な問題は、単にわかりやすさを追求するというだけではなく、一方でどう柔軟性を確保するか、というバランスの問題です。この難問に対して、各国は同じ問題意識のもとでも、異なる解答を示しています。』

現場的に申し上げれば、多分単一指標で自動コントロールってのをやると、その指標が全然ブレないものなら別かも知れませんが、多分指標のブレに対応して短期金利のブレがでかくなってしまうという結果になりやすそうではございますので、岩田副総裁が指摘しているようにまずは中央銀行の行動で示すという事になるのかなあとか漠然と思う訳ですが。単一指標コントロールで金利がブレまくった極端な例は確かボルカー時代のマネーサプライコントロールと記憶しております。

でも今の日本の政策ロジックは基本的なシナリオに対して最適化しすぎている(悪口モードで言えば「利上げが前提」ですが^^)のでこれはこれでわかりにくいのですけどね、と話が逸れましたが。

『最も直裁に目標インフレ率を示すインフレーション・ターゲティングは、英国などで採用されていますが、運用が硬直的にならないように柔軟性を確保する仕組みが次第に整えられてきました。1998年に設立された欧州中央銀行では、物価安定の定義を消費者物価指数前年比で表現するとともに、通貨供給量の増加率に参照値を設けています。』

『日本銀行では、2006年に新たな金融政策の枠組みを採用し、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率を集計して公表しています。そして、この理解との関係で、蓋然性の高いシナリオを評価するとともに、上下のリスクの点検を行うという複合的な枠組みになっています。』

複合的過ぎて訳判らんのですが(><;

『米国連邦準備制度(FED)では、昨年11月、コミュニケーション戦略の拡充策を公表し、そのひとつの要素として、経済・物価見通しの期間を3年間に延長しました。先行き3年目の物価見通しは、物価安定と雇用の最大化というFEDの任務と整合的とFOMC参加者が判断したインフレ率を表していると説明されています。』

『これらの仕組みは、他国の経験を学んだ上で、自国に最もふさわしいものを考え抜いて、導入されたものです。この先も各国の経験を踏まえながら枠組みを磨いていくプロセスは、螺旋構造のように進んでいくと思います。』

ということで、岩田副総裁の講演もそうでしたが、今年の先進国中央銀行におけるメインテーマは「金融政策の透明性と市場との対話」ということになるんでしょうかと思わせてくれる年初早々2発の講演要旨でございました。

特に日本の場合は3月に執行部が入れ替わる(全員入替じゃないかも知れませんが)ので、これを機に金融政策の透明性向上と市場との対話に関しまして新しい機軸を出していただく事を希望します。とここの所そればっか申し上げてますが(^^)。


○これは余談ですが

前半は日本とフランスの歴史的なつながりがどうのこうのという話をしているのですが、その中で福井総裁ならではと思ったのはこの部分。

『私自身、中央銀行間のフォーラムであるBIS総裁会議には欠かさず出席し、ノワイエ総裁をはじめ総裁方とお話することを楽しみにしてきました。そこでは、経済や物価の現状についての情報交換にとどまらず、それぞれが抱える問題や世界共通の課題について語り合い、同僚から多くの示唆を受けることができます。海外の同僚たちとは、世界経済をともに支える同志として、強い連帯感をもっています。』

何せ村上ファンド出資問題で大騒ぎになっていた時にもBIS総裁会議に出席してたくらいですから、福井総裁の思い入れがたっぷりなのでしょうなあと読みながら思うのでありました(^^)。

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2007/12/25

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0712b.pdf

○水野審議委員の据え置き賛成理由

冒頭の質問で当然ながら水野審議委員が利上げから据え置きとなった理由について説明がありました。

『水野委員は、今回は他の委員と同じく、金融調節の方針を現状維持とすることに賛成されました。水野委員の議論の内容は改めて議事要旨等でご確認頂きたいと思いますが、住宅投資の足許の急激な落ち込みや、エネルギーあるいは海外商品市況高の影響を受けたコスト高が、特に中小企業を中心に収益に影響を及ぼし、企業マインドにも影響している、さらには消費者マインドにも影響を及ぼしているという点を指摘しておられました。』

会見のヘッドラインでは「住宅の落ち込みと中小企業部門」というような書き方でしたけど、総裁の応答を読みますと、中小企業部門がどうこうというよりは、企業物価の上昇と生活関連商品の価格上昇がコストプッシュとして景気に悪影響を与えているという点を指摘しているように見えます。

てなことで、何度か申し上げていると思いますが、ここもとの物価上昇に関してはコストプッシュということで景気に対する悪化材料として働くんじゃないでしょうかという認識が政策委員会の中でもあり、物価上昇即利上げという話にはなりにくいでしょうと所ではないかと思います。でもまあ現在の政策ロジックが利上げ前提になっているので、「日銀はCPIが上昇したら利上げ体制復活するんじゃないか」と相変わらず(市場の中の人たちは来年前半まで利上げ無しでしょと思ってますけど)言われるのはまあ不徳の致す所って奴なんでしょうな。


○景気の現状に「減速」が入った点について

この質問をしたのはあたくしではありません(^^)。

『(問)本日公表の月報で、景気の現状についても先行きについても、「減速」という言葉が入っています。この「減速」というのは、何がしかの景気判断の変更を意味しており、それを踏まえて水野委員が賛成に回ったということでしょうか。』

答えが例によって長いのですが。

『(答) 水野委員だけを抜き出してお考えになるのは適当でないと思います。私どもは本日、月報の基本的見解をお示ししましたが、その中で書いていることの一つは、足許における住宅投資の減少が急激だということです。(途中割愛)こうしたことは、ここしばらくの間の経済の推移をご覧になって、私どもも含めすべての方々が等しく認識していることであり、今の時点でそれらをまとめて表現すればこういうことになる、ということです。従って、少なくとも足許はわが国の景気は減速しているとの判断を率直に示しました。』

率直に示しましたっていうのが微妙に総裁のホンネと言うか無念感があるような気がするのは気のせいですかそうですか。

『もっとも、住宅投資の動きは基本的には改正建築基準法施行に伴う手続き面の問題が主因であり、その遅れが徐々に解消していくことを期待しておりますし、期待して良いと思います。その遅れが徐々に解消して行けば、その後の需要として現われてくる筋合いのものです。(以下割愛)』

えーっとですね、たぶんあんまり期待できないような気がするのでございますけれども。供給サイドのショックが発生して需要が変化無かったら物不足で人気殺到でもう大変ですよにならんかね。


○今回の決定でスタンスは変化するのかという質問に対して

『(答) 一言で言えば、先行きの金融政策運営についての日本銀行の基本的な考え方は、これまでと全く変わっていないということであります。日本経済が物価安定の下で息の長い成長軌道を今後とも辿るのであれば、金利水準を徐々に引き上げていく方向にあるとかねてより申し上げております。この基本線にいささかの揺るぎもありません。しかし、同時にこれまでも、目を瞑って一定のペースで利上げをするということを一度も申し上げたことはありません。』

結局このあたりが一番わかりにくい所でありまして、現状が緩和的であり、景気が下に向く懸念があまりない(というのが今の展望レポートで示されている見解ですな)というのであれば中立的な水準に向けて淡々と金利調整をするという話になるでしょうし、そうじゃなくて現状の金利水準が適正であるというのであれば経済物価情勢とその先行き見通しを踏まえてて政策金利を上げるまたは下げるという話になると思うんですよね。特に今のように先行き不透明という状態になっている時は現状のロジックが苦しくなりますわなということで。

『目先、ダウンサイドリスクが高まっているということは率直に申し上げていますが、金融政策というものは、より長い目でみて、将来可能性は低くとも、もし起こればコストが非常に高いリスクがないか、ということまで十分念頭に置きながら毎回適切な判断をしていくということであり、私どもは今後とも極めてフレキシブルに対応していくと思います。硬直的な判断をもって私どもの行動をご覧になることは、適切ではないということを断言したいと思います。』

いやあの総裁のスタンスが硬直的なんで世間様が「日銀は何が何でも利上げしようとしている」と批判すると思うんですが・・・・・・


○物価と景気に関して

物価に関するインフレのリスクと日本経済の下振れのリスクをどう見ているのかという中々良い質問がありまして、その答えから。

『いずれにしても、物価が上がる、特にグローバルな要因によって物価が上がる場合には、国内経済に引き直してそのインプリケーションを探り当てようとすると、一つは、どうしても交易条件の悪化、海外への所得移転という要素がありますので、景気に対して何らかの下押し圧力があるとの面があります。その一方で、今申し上げました通り、グローバルな要因があるといっても、国内での先行きの物価観、インフレ期待というものを上方に修正するといった力も持っていますので、私どもはダウンサイド、アップサイド両方の変化というものを今後正確に受け止めながら対応していかなければならないと思います。』

ということで、ここの見解は先ほど総裁から説明があった水野審議委員の見解とは微妙に差があるような感じは致します。しかしどう見ましてもダウンサイドの方が具体的にマインドの悪化として出ておりまして、アップサイドの方は将来のリスク(なのか?という議論もありますがそれは措く)ですからダウンサイドとアップサイドが全然バランスしてないと思うんですけど、総裁はそのあたりどう思っているんだか。

『金融政策としては、上下両方のリスクを適正に判断しながらやっていくことは常道であり、何か異常な世界に入りつつあるとか、際立って私どもの仕事が難しくなっているとは考えていません。しかし、リスクの変化度合いがどのように出るかを、上下両方しっかりとみて、総合的に正しい判断を毎回出さなければならないという意味では、私どもの仕事は、物価が凪のように動かない状況と比べて、よりダイナミックになっていくといえると思います。』

ダイナミックに利下げじゃなくてダイナミックに利上げしたいんでしょうかねえとは思いますが、まあど〜せあと3か月ですのでど〜ぞど〜ぞお好きにご発言頂ければと存じます、あっはっは。


○コックピットがどうしたという発言

最後の部分で今年を振り返ってどうでしたかという質問に対して例のコックピットがどうしたという発言が出たのですが。

『日本経済に関しては、この一年間の推移はそれほど悪いものではなかったと思います。極めて頑健に前向きの回転速度が上がったといえるとは思いませんが、さほど悪いものではなかったと思います。』

ほうほう。

『しかし、コックピットの中から経済・物価情勢の推移を確認しながら金融政策の舵取りをするといった観点に立ってみますと、今年は春先から夏場以降にかけて、やや視界不良の中での操縦過程に入った、あるいは多少乱気流気味の中での操縦過程に入ったといえると思います。』

今度は飛行機ですかそうですか。

『海外、特に米国経済の調整やグローバルな金融資本市場での調整の動きが、視界不良ないし乱気流気味の状況を大きく形成していると思います。足許、国内では住宅投資の急減がありますし、コスト高による中小企業への心理的な影響、業況感へのマイナスの影響がやや強まっており、これに一人当たり賃金の上昇圧力が弱いという問題が上乗せされ、やや視界不良、乱気流気味の中での操縦を余儀なくされたと思っています。』

お、ここでは物価上昇の景気下押し圧力にちゃんと言及してますな。

『しかしながら、私どもは、そのようなコックピットの中にいて、方向感覚を失っている、あるいは失いそうだと思ったことは一度もありません。基本スタンスは極めて明確であり、方向も極めて明確です。』

そういうことを言うから利上げ先にありきと言われるんですけど。というかそれならそれで最初から「中立金利水準までは経済に相当の下押し圧力が働かない限り淡々と利上げしますよ。だって現状は緩和水準なんですから」とやってもらった方が判り易いんですが。

ということで、まあ最後のところで総裁節が出てきましたなという所でありました。基本的には総裁節を除けば月報基本的見解での「減速」に沿った会見だったでしょうと言う感じです。サブプライム関連の質疑応答も結構スペースがあったのですが、こちらに関しての引用は割愛致しましたです。

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2007/12/05

○記者会見もあったのね

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0712a.pdf

・徐行運転発言は講演後の一問一答でした

昨日ご紹介した結果的に衝撃の発言となってしまった「徐行運転」はやはり講演後の一問一答でのもの(記者会見は13:45から実施)のようでして、こちらにはございませんでした。残念無念。

その部分は「懇談でこんな話がありました」って冒頭の総裁発言部分にございましたです。

『懇談でお伺いした意見をもう少し具体的に申し上げますと、(途中の具体的な部分思いっきり割愛)金融政策面では、これらの景気減速リスクとともに、原材料価格上昇などに伴う物価上昇リスクにも十分配慮することが重要である、ブレーキとアクセルを踏み間違えないように適切な対応をお願いしますというお話でした。』

さすがに目先では物価上昇がコストプッシュっぽいですから、長期的な話は別にして早期利上げにむかって好材料とは中々いかないでしょうと思いますし、さすがに政策委員会様もそこはコアCPIプラス復活を利上げ論議に直結させてはこないと思いますけどね。


・経済物価情勢の見通し

経済物価情勢に関して端的に説明した部分もございました。

『経済及び物価の情勢については、改正建築基準法施行に伴う建築着工面の不規則な動き(イレギュラリティ)が含まれていると思いますが、全体として日本経済の成長はより長い期間をとってみると均して実質2%絡みの安定した成長軌道を決して踏み外していないと思います。』

「より長い期間をとってみると」「均して」「決して〜と思います」ってあたりが強がりっぽいとか言うのは意地悪ですかねえ。

『それから消費者物価指数についても、需給のタイト化とともに目立たないけれども徐々に物価の基調が強まってくるという従来の見通しの線上で動いてきています。CPI は10 月から除く生鮮食品でみて+0.1%とごくわずかのプラスに入りましたが、引き続きゼロ近傍の推移で今後これがプラス幅を徐々に拡大していくだろうという見通しについても私どもは変える必要はないという状況ですので、今後内外のリスク要因を十分判断に入れながら、毎回の政策決定会合で従来通り丹念に分析し議論し、正確な結論を見出していきたいと思っています。』

この「引き続きゼロ近傍」という言葉を見た瞬間に、あたくしの今月の決定会合(その前に短観がありますが)の注目材料は「金融経済月報でのCPIの表現」になった次第です(^^)。(まあこのCPIも実はヘッドラインのCPIの話をしてたような気もするんで話がややこしいのですが・・・)

『米国の経済については、住宅市場の調整はなお長引くということですが、やはり個人消費にどのような影響が最終的に及んでくるかが一つのキーポイントだということは皆さまと問題意識を共有していると思います。(以下割愛)』

暫く前にご紹介した10月の決定会合議事要旨にありますように、この部分がサブプライム問題の実体経済への波及を考える点ですなということで。


・これは良い質問

『(問) 2つお聞きします。ひとつは、講演要旨の中で日本経済について「緩やかな拡大を続けている」とありますが、その前に「全体としてみれば」という表現があります。日銀の11 月の金融経済月報その他の情勢判断では、「緩やかな拡大を続けている」だけで「全体として」という表現は入っていません。これは、「全体として」という表現を入れなければならないという意味で若干景気判断を下方修正されているのかどうか、これが1 点です。』

『もう1 点は、講演でお話がありました通り、日本経済を巡る海外の状況や国内の中小企業の問題など日銀のシナリオに対する下方リスクというのは強く存在している訳です。金利が低い水準にあるが故に中長期的に引上げていくという方向性は常々おっしゃっていることですし十分理解はできるのですけれど、もし下方リスクが顕現化した時には、それに対応する十分な政策というのがあるのかどうか、日本経済が2%成長という持続的な成長ができないと判断された時には果断に金融緩和方向に対応を採られる用意があるのかどうかという点をお伺いします。』

ということで総裁の答えですが、長いのでポイントっぽいところだけ。

『無条件に同じテンポで改善が続いていると言ってもいいぐらいなのですけれども、先ほど申し上げましたように改正建築基準法施行に伴う不規則な動きなども入っていますから、少し違うのではないかと言われる部分もありますので、「全体としてみれば」と丁寧に言っている訳で、目障りであれば取っていただいても結構です。』

・・・・・(^^)

『それから、ダウンサイドシナリオにつきましては、長い目でみたダウンサイドリスクというのは目先、特に海外において多少高まっていると率直に認めています。しかし、長い目でみてやはり金利が低すぎることに伴うアップサイドリスクは十分あるということも、その程度を和らげることなく我々はリスクとして感じ続けているということです。』

ほうほうなるほど。しかし「率直に認めてます」とか言いながらリスクの話をするあたりかなりトホホ状態なんでしょうな。福井総裁もまもなく任期満了でして、燃料投下総裁としては結構秀逸だったんですけど、先行き見通しの確信モードの時は割と穏やかな発言をして、確信が揺らぎだすと妙に威勢の良い発言をして、そのあとちょっとしょんぼりモードになるというのが福井総裁の仕様なんですねえと思いましたよ。


んでまあ2番目の質問に対してはこう答えてます。

『先行きダウンサイドリスクが本当にリスクとして顕現化した場合の金融政策については、その時の政策委員会で正当な結論を出せばよいわけであり、予め何らかのシナリオが用意されているような性格のものではないということです。』

まあ今までだったら「ダウンサイドリスクが顕在化する可能性は低いと思っている」ってトーンの返しが多かったので、微妙にヤケクソ発言のような雰囲気もありますが(^^)、当然の発言ですわな。。。。

ま、トーンダウンはトーンダウンなんでしょうね。

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2007/12/04

○総裁講演後の発言で・・・・・

昨日は名古屋での各界代表者との懇談がありまして、そっちはまあいつもの話だったんですが、昼前に報道された講演後の発言内容が(本当に直接の原因だったのかどうかは微妙ですが)先物主導の相場上昇大攻撃のきっかけになったという事になっております。

ブルームバーグ日本語版のヘッドラインを見るとこんな感じ。

JBN 11:17*福井日銀総裁:徐行が必要なときにはきちんと徐行する−金融政策
JBN 11:12*福井日銀総裁:適切なタイミングでは果断に金利引き上げる
JBN 11:11*福井日銀総裁:利上げを急いでいるわけではない
JBN 11:11*福井日銀総裁:今の金利水準は低すぎる

・・・・徐行云々だけで上ったの??と思って英語版をみるとまあ当たり前ですが似たようなヘッドライン。

BN 11:18*FUKUI SAYS MISTAKEN TO SAY BOJ IS BENT ON RAISING RATES
BN 11:18*FUKUI SAYS BOJ CAN PUT THE BREAKS ON POLICY WHEN NECESSARY
BN 11:18*FUKUI SAYS CURRENT RATES ARE LOW GIVEN ECONOMIC STATE
BN 11:18*FUKUI SAYS BOJ NOT IN RUSH INTEREST RATES

まあでも福井総裁が必要なら利上げ休むって言ってるのって重要なのかなあ・・・だけどそもそも来年6月くらいまでの利上げ無しは織り込み済みじゃなかったんでしょうかねえとか思いつつロイター英語版のヘッドラインを見るあたくし。

11:11 03Dec07 RTRS-BOJ FUKUI: WILL RAISE RATES AS SLOWLY AS POSSIBLE

・・・・・・・・(゜д゜)・・そりゃまあ先物踏みあがるわな・・・

関連ヘッドラインの2つ下には「NEED TO RAISE RATES DECISIVELY AY APPROPRIATE TIME」ってありまして、何考えて矛盾するヘッドラインを打ち込んでいるんだとロイターの報道姿勢に疑問を感じざるを得ませんわなというところではございまする。発言切り取ってセンセーショナルなヘッドラインを打って営業に役立てようとか思ってねえだろうなと邪推したくなります。

今回の講演後の発言は「懇談会での主なやりとり」として報道されてましたんで、毎度お馴染みのサービス発言なんでしょうが、こういうミスリードな報道が行われた時は何らかの形で否定できないもんかねとも思うんですが、そもそもが切り取られやすいサービスフレーズなんでこればかりは福井総裁の仕様ですかなという所である程度諦めるしか無いのかもしれません。

ちなみに、この部分を時事メイン12時47分配信の記事から引用するとこうなっています。読みやすくするために質問と思われるところに「質問:」総裁発言の冒頭に「福井総裁:」と入れていますのをお断り致します。

『質問:日銀はブレーキとアクセルの踏みわけを』

『福井総裁:われわれは金利をあげたがっていると思われているが、何が何でもアクセルを踏みたがってはいない。アクセルを踏むべき時は踏む、ブレーキを踏んで徐行運転すべき時は徐行するのがわれわれの政策判断だ。政策決定会合で金利を変えないことも重要な判断。金利を上げる判断も、上げない判断も同じウエートだ。』

えーっと、これをどう翻訳するとさっきのロイター英語版のヘッドラインになるのか判りませんが、冷静にこの発言を読みますと、金利を「上げる」のと「上げない」のが「同じウエート」でして、金利を「下げる」方向が微塵も無い時点でやっぱり利上げ前提発言に見えてしまうのですが、そこは総裁様の布教が効いているので一件不思議じゃなく読めるのですな。奥が深い(?)。


てな訳で、この発言で債券市場が本当にあがるのかよと考えると実に微妙なのですが、昨日の場合は「要するに債券相場が上がりたがってた」というのが相場上昇の原因でしょうな、とか言うと関係者以外はナンノコッチャと言う感じですけど(^^)、月末のインデックス系の長期化が相場の位置が位置ですし、直ぐ先の火曜日に10年国債の入札もありますし、さてさてどうしたもんかとかいう状態のタイミングだったので、絶妙の燃料になってしまったという感じでしょうか。

これで現物が爆裂したらエライコッチャでしたが、昨日の所は先物主導っぽいのでその程度ということで・・・・でも米債がまた強いのですけれども(最近さすがに米債にバカスカ振り回されるわけでも無いですが)、、、どうなるんでしょ。



○一応総裁講演

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0712a.htm

例によって展望レポートをベースにした話をしていますが、先行きの『上振れ・下振れ要因』ってところを読みますと、どう見ても下振れが満載でございますな。

『まず第一に、海外経済の動向です。』から始まる下振れの部分ですが、明らかに景気下振れの話が21行分。その部分で世界的なインフレの話もしてまして、実はコストプッシュだったらどうなのよという論点はあるのですがそこはカウントしてませんです(^^)。で、毎度お馴染みの『第二に、緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が拡大する可能性があることです。』から始まる上振れの部分が9行分ですな。

あんまり今までこの文章量を気にした事がないのですが、今回はこれまた下振れリスクの分量が多いですわなあという感じでして、10月くらいの総裁の勢いはどこへ行ってしまったのと存じます次第。

それはそれとして、あたくし的に気になるのは講演のこの辺なんですが。

『一方で、世界経済が全体として高い成長を続けていることを考えると、インフレ方向の動きにも注意が必要です。米国では、労働や設備といった資源の稼働状況が高い状態が続いており、原油価格の動向などと相俟って、基調的なインフレ圧力が減衰したとは言い難い状況です。』

この認識だとインフレ方向の動きがディマンドプルな認識に見えるのですけれども、少なくとも日本は(たぶん米国も)物価上昇がコストプッシュじゃねえのかという感じがするんで、その辺の総裁の真意はどうなんでしょうか(下振れの話ばかりするとバランスが取れないので敢えてインフレの話をしているという面もありそうなので)と思うんですな。


それから、今後の金融政策に関する部分ですがいつもどおりです。

『先ほど申し述べたとおり、金融環境は極めて緩和的ですので、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長軌道を辿るのであれば、金利水準は引き上げていく方向にあると考えています。具体的なタイミングについては予断を持つことなく、経済・物価の見通しのパスやその蓋然性、上下両方向のリスクなどを、十分に点検しながら、決定していく所存です。』

左様ですか。

『私どもとしては、物価の安定のもとでの持続的な成長が続く可能性が高いと考えていますが、そうした見通しの蓋然性を確認していくことは当然必要です。同時に、見通しに影響を及ぼし得るリスク要因を点検することも重要であり、その際には、目の前のダウンサイドリスクだけに囚われることなく、上下両方向のリスクに目を配っていかなければならないと思っています。』

上のリスクですかあ・・・・

『金融政策は、経済・物価に影響を及ぼす事象を幅広い視野でバランス良く点検していくことが極めて重要であり、そうした点検の上に立って、適切な判断を行っていきたいと考えています。』

と、まあそういうことでいつも通りの話をしてたんですが、講演後の質疑応答がまたサービスフレーズ出やがったなという感じであります。

ただまあ福井総裁の任期中に利上げって無理でしょっていう予想が共通認識だったと思うので、昨日の先物アゲアゲは発言のタイミングの問題だったような気がしますけどね。

#でもモーサテで「当面利上げは難しい」とか解説してて、円金利市場の中の人からすれば何を今更言ってるのと思うんですが、一般的にはまだ早期の利上げあるという方が多いんでしょうかねえ。よーわからんが。

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2007/12/03

○福井総裁講演

最近妙に講演が多いのですが、先週金曜のお題は『わが国金融システムの競争力強化に向けて』ですので、まあそんなにややこしい話をしてるわけではありません。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711h.htm

相変わらず日本の金融機関の収益性が低くて、それは一般事業法人にも言えますねというような話をしてますが、それを高めて証券化とかした結果どうなってるのよというツッコミもあるんですけど、まあその辺は置きまして、最後の部分でサブプライムローン問題に関するお話をしてるのでその辺りから。

『まず、サブプライムローン問題のわが国金融システムへの影響ですが、海外市場における問題の一段の拡がりと深まりに伴い、わが国金融機関にも、当初の想定に比べて影響はじわじわと拡大しています。』

『しかし、わが国金融機関の場合、クレジット市場への関与の度合いは相対的に小さく、これまでのところ損失は各金融機関・金融グループの期間収益や経営体力の範囲内で十分吸収可能とみられます。欧米金融市場の動向については、今後とも注意深くみていく必要がありますが、現時点において、今回の問題がわが国金融システムの安定性に大きな影響を及ぼすものとは考えていません。 』

概ね今までと同じ話ですが、影響は当初想定よりも拡大、でも日本の金融システム不安まで行くことはないって所ですので、先日の中村審議委員の会見じゃないですけれども、着地を見極めるまで様子見というほどではないが、でもまあ様子は見ましょうという所なんでしょう。で、この次に『以上を踏まえたうえで、この問題からは、金融機関経営や金融市場のあり方を考えるうえで、幾つかの教訓を学び取ることができると思いますので、二点お話しします。』が中々良かったなと思うのですけど。

『第一は、金融機関からのリスク移転や遮断の難しさです。サブプライムローンは、通常の住宅ローンに比べるとリスクの高い商品ですが、その大部分は証券化され、リスクは投資家に移転されるはずでした。しかし、この問題の表面化以降、様々な形で金融機関にリスクが飛び火する展開となっています。』

『例えば、証券化商品の投資家への転売が困難になったため、金融機関は予想外に同商品の在庫を抱えることとなりましたが、市場流動性が枯渇したため、多額の売却損や評価損を計上する事態が生じました。また、証券化商品に投資していたファンドの市場からの資金調達が困難化したため、一部金融機関では、――明示的なコミットメントラインの設定がない場合にも、――関連ファンドに対し、多額の流動性を供給するといった事態が生じています。』

『こうした事例は、高度にリスク分散が進み、金融機能の分業が発達した現代においては、金融機関は実に多様な形でリスクの仲介に関与しており、市場にひとたび大きなショックが発生すると、想定外のリスクをも引き受けざるを得ない面があるということを示唆しています。』

証券化によるリスク遮断が実はできていない場合もあるんじゃないですかという論点ですが、あたくしちょっと別の面から思うというかツッコミをしたいんですよね。と申しますのは、(引用してないけど)総裁の講演でもありますように「証券化(とかデリバティブ)などの技術によって金融機関のROEが改善されます」みたいな話がよくある、というか普通に一般常識モードになっているのですけれども、このような事例から考えますと、本当にそれで良いのかというお話でもあるんじゃねえのと思うんですけど。

ちなみに、第2の点は「透明性が大事ですよ」という話ですので割愛致しますですよ。ちなみに、総裁はこのようにも仰せです。

『今回のサブプライムローン問題では、証券化によってリスクが世界中に拡散され、リスクの所在の把握が困難になったことを問題視する声が挙がっています。しかしながら、証券化やクレジット・デリバティブズなどのリスク移転取引自体は、リスクの分散により金融システムを安定させる機能を有するものです。』

ま、そりゃそうですけど前段と微妙にずれてる気もせんでもない。。。

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2007/11/28

○もはや無視状態の講演でしたが

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711g.htm

引き続き金利正常化路線の正しさを訴えているような気がしますが。

『例えば、米国サブプライム問題に端を発する今般の国際金融市場の変動の基本的な性格は、良好な経済・金融情勢が続くもとで、リスク評価が徐々に緩み、過度なポジション・テイクが行われた結果、市場の自律的調整により巻き戻しが起きたということだと思います。こうした基本的な性格は、10年前のアジア危機など、他のグローバル・レベルで起こった金融危機にも当てはまる問題です。』

『中央銀行として、こうした事態に対してどう対処するのか、特に予防的措置と事後処理とのどちらにより注力すべきかについては、政策当局者やアカデミアでも、多くの論戦が繰り広げられてきていますが、私自身のこれまでの体験を振り返ると、これらは二者択一の問題ではなく、その両方とも大事としかいいようがありません。』

はあそうですか、で、こっちの都合上途中を飛ばして結論と思われる部分を引用しますとこうなります。

『二つ目の柱では、さまざまなリスク要因をチェックしますが、その際、起こる可能性は低くても、起こったときに多大なコストを引き起こしかねないリスクに関しても評価を行っています。ここには、先ほど申し上げました行き過ぎやその巻き戻しのリスクも含まれています。私どもは、このように、予防的対応をしっかりスコープに入れた判断を行うよう努めています。』

ということでまたまた第二の柱の重要性を強調しておりますが、さっき飛ばした部分でこういう話をしておりまして・・・・・

『いざことが起きた時の迅速で適切な対応は当然です。ただ、むしろ平常時においては、いや、平常時であるからこそ、潜在的なリスク要因を念頭においた充分注意深い政策運営を心がけることが必要であると思っています。金融危機といった経済の動揺は、人間の身体に降りかかる大病のようなものとみなせるかもしれません。大病にかかった後の治療よろしきを得ることが重要なのは当然ですが、まずは、日ごろから健康管理に気をつけ、予防に心を配るということが大切であることは自明です。』

えーっと、現下の国際金融情勢は大病あるいは大病一歩手前であって平常時じゃないと思いますし、この話の別の部分で総裁様におかれましては『各国の金融市場がグローバルなレベルで一体化し、相互に複雑に影響を及ぼしあう中』ってご認識されておられる次第でございますので、欧米金融システムが大病一歩手前になっているのに日本だけ平常時と言うのは無理があるんじゃないでしょうかねえ。

ま、どっちにしても全然市場反応せず。完全な狼ジジイ状態に落涙を禁じ得ません。

ところで、さっき引用してた最初の部分に米国サブプライム問題について『良好な経済・金融情勢が続くもとで、リスク評価が徐々に緩み、過度なポジション・テイクが行われた結果』って話をしてまして、確かに良好な環境の生み出したものなのかも知れませんけれども、そもそも論として市場はオーバーシュートするもので、それを妙な規制(格付け別リスクウェイトというある意味で高度化した管理手法による規制)や運用難が後押ししたともいえるのかなあなどと漠然と思うあたくしなのでありました。その話はいずれまた。

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2007/11/20

○残念ながら(^^)市場は華麗にスルーしてましたな

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711e.htm

・物価が上りにくい構造だと金融政策が難しいという話

『近年の世界経済の特徴は、単に高い成長率に止まりません。成長率、インフレ率とも極めて振れが小さいことが、もうひとつの際立った特徴です。多くの識者によって、Great Moderationと呼ばれている現象です。経済・物価の安定化傾向は、第二次石油危機以降、明確化していますが、特にインフレ率は、2000年以降、先進国においても、新興経済国においても、平均値、分散とも顕著に低下しています。このように、低インフレと高成長が極めて安定的に実現されている近年の世界経済の状態は、物価・経済の安定を図ることを使命とする中央銀行の立場からも、望ましい現象と言えます。』

ふむふむなるほど。

『しかし、各国中央銀行の仕事は、決して楽にはなっていません。むしろ、一層チャレンジングになってきている、というのが私の偽らざる実感です。次に、その背景にある、いくつかの事象についてご説明したいと思います。』

はてさて。

『一つめの事象は、経済と物価の間の関係について、従来の経験則が当てはまりにくくなってきている、ということです。経済学の用語で表現すれば、フィリップス曲線がフラット化しているとみられると同時に、その傾きが正確にどの程度なのか、また、将来もこのような状況が続くのか、いずれ従来の関係に復していくのか、不確実性があるということです。』

んでまあ日本の例を出しているのですがそこはスルーしまして。

『このような物価を巡る環境変化のもとで、中央銀行は、難しい政策運営を迫られます。一般に、中央銀行の金利政策は、まず実体経済を変動させ、それが、資源の稼働状況の変化を通じて、物価に影響を及ぼすと考えられます。経済と物価の関係が変化し、従来の経験則が当てはまりにくくなっているということは、中央銀行にとっては、金利をどの程度動かせば、最終的に物価をどの程度変化させるのかについても、はっきりしなくなっていることを意味します。』

でもまあそれって今に始まった事じゃないような気もしますが。昭和30年代の金利と物価の関係と50年代と今と全然違うんじゃないっすかとか言い出すと素人はすっこんでろと言われますかそうですか。

でまあもうひとつ素人のたわごとモードになりますけど、資金不足かつ間接金融ガチガチで金利操作とか窓口指導とかが機能してた時と比較すると、市場ってのは期待収益率がもっと素敵なブレを示す上に投資しないといけない金が余っている状態となりますと、金利操作が資源配分に大昔より効き難くなりそうなのは感覚的に思うのですが。

『日本銀行は、昨年3月に量的緩和政策から金利政策に戻って以降、消費者物価前年比がゼロ%近傍と極めて安定的な中にあっても、政策金利を緩やかなペースで引き上げてきています。そうした政策運営の背景には、今ご説明したような経済と物価の関係の変化があります。仮に、現在のような状況下で、短期間に物価を引き上げようとすれば、国内景気の成長スピードをかなり速いものにしなければなりません。加えて、どの程度の景気拡大スピードが必要なのか、大きな不確実性を伴います。したがって、そのような政策は、結果として、金融・経済活動の振幅を大きくし、景気拡大の持続性を危険にさらすことになりかねません。それよりも、できるだけ振幅の小さい、息の長い成長を確保することで、緩やかな物価上昇を期待するほうが、より安全で確実だと考えられます。』

あのですな、とりあえず景気拡大していただいた方が多分世の中困らないので、まずは景気拡大させてから後のことは後のことという訳にはいかんもんでしょうか。経済の活気という意味では別に振幅大きくなってもいいじゃないか(まあ確かに振幅が大きくなると強者ウハウハで弱者には厳しいのですが、それは福祉政策の世界で何とかしていただくということで)と思うんですけど。

どうせなら「物価を上げようとして低金利を無理に継続(別に今は無理に継続している状態ではないと思うがその話は置いといて)した場合には、期待インフレ率の急速な上昇で長期金利が跳ねますし、将来は急速に引き締めないといけないタイミングが来ますけどそれで宜しいでしょうか」と開き直った説明した方が良いんじゃネーノとか思うのですが(苦笑)。


・バブルあるいはフロスの発生と金融政策

『緩和的な金融環境が長期に亘る中で、低金利がいつまでも続くという期待が生じれば、資産価格の決定式における将来収益の割引率が低下し、資産価格の上昇をもたらす傾向が強まります。また、同様のことは、実体面において高成長が続く中で、人々の採算見通しが甘くなることでも生じます。例えば、80年代の日本についていえば「内需主導の成長への転換」、90年代の通貨危機前の状況についていえば「アジアの奇跡」など、社会を覆うような「テーマ」があり、人々のリスク感覚に緩みを生じさせたり、期待収益率を上振れさせたりする、ということです。』

まあそりゃそうなのですが、そもそも金余りという状況自体が緩和的な金融環境な訳でして、金利だけで止めようというのは中々こう難しいような気がするんですけど。とまたドシロートのたわごとモード。

『こうした状況のもとで金融政策を運営し、中長期的にみて物価の安定を実現するためには、より長い目でみて経済活動や物価の振幅を大きくしそうなリスクへの対応が一層重要になります。具体的には、例えば、発生の確率は必ずしも大きくないものの、資産バブルなど、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因や、金融環境、インフレ期待など中長期的な経済・物価情勢に影響を与えうる要因をつぶさに検証する、という作業になります。』

持論はよく判りますが、この例って全部利上げ方向の話ばかりでございまして、んな言い方するから「利上げ先にありき」と言われるんじゃと申しあげたいです。

これでまあコアCPIがプラス0.3%位で平均株価が18000円でもあれば市場は利上げモードになってくれるのでしょうが、海の向こうで金融機関同士が見苦しい叩きあいをして不安の連鎖が起きているような有様では市場が反応する訳もなく、華麗にスルーされるのでありました。

#福井総裁の任期が来年3月で切れるのもありますかね


・ゴールキーパー論久しぶりに見ましたよ

『私は、時々、中央銀行を、サッカーのチームにおける、ゴールキーパーに喩えてお話をします。ゴールキーパーは、自分で得点を挙げることはあまりありませんが、ゴールをしっかりと守りつつ、仲間のプレーヤーが得点を狙いに行くことを助けます。守る際には、相手の陣形を読むこと、すなわち、経済や金融市場のリスクプロファイルを的確に分析することが必要です。』

確か入行式の挨拶か何かでこういう話をしてたような気がするんですが、久しぶりに拝見致しました。

『そして攻める際には、チームの体制を整えること、つまり、効率的な資源の配分を達成し、イノベーションを促すことに尽力していかなければなりません。』

別に攻める方まで考えなくても良いと思うんですが。。。というか景気の変動をしたほうが資源の配分がよりダイナミックになるような気がするのですけど。。。。。。ま、いっか。

ということで、あんまり材料にはならなかったんですが、福井総裁の利上げに対する持論は把握した。でも状況がそれを許しそうも無いので残念でしたということで。

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2007/11/15

お題「今回はバランスを取った総裁記者会見」

昨日は先日の水野審議委員の講演もアップされていましたが、こちらもまた長いのでちょっと両方という訳にも参りませんで、本日は総裁記者会見で勘弁。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0711c.pdf

○まず結論を申しあげますと

ここもと福井総裁の会見やら国会答弁やらてんこ盛りでありましたが、まあご案内の通りで妙に強気な発言が目についた(特に先日の大阪での記者会見では売り言葉に買い言葉モードになっておりましたな)のですが、今回の記者会見は字面を見ますと穏当というか平和というか。まあバランスを取った発言になってますなあという感じです。

まあ威勢の良い発言をだいぶしたのでファイティングポーズは伝わったということで穏当モードになったんでしょうかねえと思うのですが、威勢の良い発言をしても市場は反応しないわ、世間からは「何言っとるんじゃ」と非難を食らう状態では言うだけ損だと思ったのかもしれませんね(^^)。

結局、総裁が強気な発言をしても経済指標や資産価格動向などがなどの環境が強気発言にそれなりにマッチする状況じゃないと市場ってえのは反応しない訳ですなあということですわな。


○景気に関する発言は「シナリオ通りだけど点検事項が多い」

実質最初の質疑(3ページ)は住宅投資の低迷や原材料高に絡んで国内景気に関する見方についての質問でした。で、その答えですが、

住宅投資に関して

『おおまかな印象を申し上げますと、足許の住宅着工の減少はかなり急激であると思います。これは、本日公表されたGDP統計にもあらわれており、2007 年度の成長率を下押しする要因となっていると思います。ただ、改正建築基準法施行に伴う手続き面の問題が主因であるため、基調としての住宅着工が弱っているかどうか判然としない状況です。改正建築基準法施行に伴う手続き面の遅れが徐々に解消していけば、その後需要は再びあらわれてくるものと思います。この点については、今後もう少し様子をみないと正確なことが言えないと思います。』

原材料価格の上昇に関して

『また、原油価格をはじめとする原材料価格の上昇についてですが、中小企業を中心にこのところ企業収益を圧迫している、というお話を東京でも地方でも伺います。事実としてそのように認識しております。ただ、全体としてみる限り、中小企業も利益水準はかなり高い状況であり、この先生産の増加が続く中で、中小企業も増益傾向は続く可能性が高いのではないかとみております。』

景気循環に関して

『資本ストック循環の観点からみると、設備投資の増加テンポは昨年度までと比べれば緩やかになることを想定しており、展望レポートの見通しに織り込んでいます。』

『一方で、家計部門への波及が緩やかながら着実に進む中で、家計所得は緩やかな増加を続け、個人消費は緩やかな増加基調を辿るであろうと考えています。』

『このように、日本経済を全体としてとらえてみれば、展望レポートでお示しした通り、生産・所得・支出の好循環が途切れることなく働き続け、そのもとで息の長い拡大を続ける可能性が高いとみています。循環的要素を全く無視しているわけではなく、影響の大きい設備投資循環をある程度シナリオの中に入れているということです。』

という話をした後に、最後に不確実性に関して言及しています。

『もっとも、繰り返しになりますが、海外経済や国際金融資本市場の動向などには不確実な要因が存在しています。リスク要因がもし顕現化した場合には、その程度如何によって世界経済全体が下振れ、ひいては、日本経済にも影響が及ぶ可能性があります。引き続きそういう目で十分注視していく必要があるという点を付け加えさせて頂きたいと思います。』

いやあ急に中の人が変わったのではないかと思うようなバランスを考えたような発言でございますが、景気に関して基本的に強気な見方を変えず(2週間前に展望レポート出したばかりですし)で「確認すべき事項があります」という言い方で決め打ちを避けるという感じで宜しいのではないかと思うんですけどね。


○サブプライム問題、世界経済

4ページ目から5ページ目に掛けての総裁発言です。

『リスク再評価の過程というのは、新しい価格を発見するという非常に難しいプロセスを経ることであります。そして新しい価格を発見すれば、必ず何らかの損失が浮かび上がるのです。誰が損失を負担するかはともかく、誰かがその損失を処理しなければならないという、苦痛を伴うプロセスであることを申し上げました。従って、時間がかかるし、多少行ったり来たりしながら市場は新しい均衡価格を見出す努力を続けるだろう、と申し上げました。』

『そうした大きな枠組みで言えば、現在までのリスク再評価の過程というものは、私の頭の中に当初浮かび上がったイメージとさほど齟齬はなく進んできたと思っています。』

とは言いましても・・・・

『価格再発見の目処はまだついたわけではなく、欧米の金融機関の処理すべき損失額、マグニチュードについて、まだ明確に底が見通せる段階ではありません。全体の処理の枠組みは、私の頭の中の想定に沿って進んでいますが、最終的な処理の大きさ、マグニチュードについては、想定外かどうかまだ判定できない段階にあると思っています。』

で、世界経済ですが。

『実体経済について、米国の住宅市場の状況をみますと、ご承知の通り住宅投資が減少を続けており、在庫も非常に高い水準にあるので、こちらも当分の間調整が続くと感じています。これまでにかなりの時間をかけて調整を経てきておりますが、依然として、米国の個人消費や設備投資は少し減速しつつも、緩やかな増加基調を維持していると言えると思います。』

『7〜9月のGDP統計はさほど悪くなく、上方修正されるかもしれないという指摘もありますが、今後、成長率はある程度下がるとみるのが自然だろうと思われます。私どもは、そうした過程を経て、その後の安定成長に向けて軟着陸していく可能性が引き続き高いとみています。』

『また、世界経済全体としては、米国の減速をエマージング諸国の高い成長が補い、堅調な拡大を続ける可能性が高いとみています。』

ということで、こちらも展望レポートどおりであります。当たり前ですが。


○これは何というかちとオモロカッタ

こんな質問がありましたんですが(6ページ)。

『(問)(前半割愛)先程お話のあった住宅投資の落ち込みや原油高等、内需を取り巻く環境は決して楽観視できないという見方もありますが、この点は日銀の利上げ判断にマイナスとなるのかどうか、お伺いします。』

で、この答なんですけど・・・・・

『(答) まず、何事につけ、それを利上げ判断だけに直結して物を考えるという姿勢を取っていないということを申し上げます。』

と、最初に断ってから経済状況の話を始めているのですが、後半で結局こういう発言になっておりましてですな。

『金利引き上げのタイミング云々ということは、これだけでは決まりません。経済全体の拡大がシナリオ通り頑健に続いていくということが確認されるかどうか、リスク要因が数多く指摘されていますが、これらが想定以上に悪い姿で顕現化する心配がないかどうかなど、色々なことを考えながら毎回きちんと判断していきたいと思っています。』

どう見ても利上げ判断に直結して考えていますな(^^)。

別の所でもこんな事言ってましたんで、国会で「利上げ先にありきの姿勢は如何なものか」と散々言われたのがさすがにちょっとマズイと思ったのでしょうかね。

『繰り返し申し上げておりますが、私どもは利上げのスケジュールを前提にして、それとの比較で経済がどうかという見方はしておりません。』

とは言いましても、そもそも展望レポートにおける先行き見通しは市場が織り込む先行きの政策金利を勘案して設定されているんじゃなかったでしたっけとかいうツッコミは野暮ですかそうですか(^^)。



○長期金利の低下はフライト・トゥー・クオリティですかそうですか

最後にこんな質問が。

『(問) (前半割愛)2点目は、これに関し、特に債券市場では1.5%を割り、日銀がまだ量的緩和政策を続けていた時の水準に戻ってしまっています。総裁はかねがね、市場は金融政策の鏡という言い方をされていますが、今の市場が鏡となっているかどうかお伺いします。(以下略)』

『(答)2点目のご質問である長期金利が非常に低くなっている点ですが、これは世界的に連動しており日本の長期金利もそうなっています。グローバルな金融資本市場におけるリスクの再評価の過程で、いったんリスクテイクの姿勢が後退しリスクの少ない資産に流動性が向かうというflight to quality(質への逃避)の一つの表れです。少なくとも今の長期金利動向は、こうした動きの中で一つの経過的な位置付けを持ったものだとみております。』

中々良い感じで意地っ張りであるというのは把握致しました。

まあ強気なのは変わらないんですけど、先日来のちょっと強引な発言は抑えつつも福井さん個人としては強気ですよ利上げですよというのは変りませんという所でしょうか。でもまあさすがにこの状況では笛吹けど踊らずということで、総裁在任中に金融市場情勢が落ち着いて景気が踊り場脱却してくれたらいいですね(棒読み)。

#ちなみに3か月FBと6か月FBの利回りがほとんど同じというとても素敵な状況になっているのでして、どう見ても市場は年度内利上げをケアーしてません本当にありがとうございました。。。。

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2007/11/07

さて月曜の福井総裁記者会見。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0711a.pdf

○かなり「利上げするな」と言われたんでしょうな

全部で9ページの質疑応答なのですが、質疑応答の内容がほとんど「これだけ皆さんに利上げするなと言われてる中で利上げしようというのは何でなんでしょうか」というような勢いの質問で、それに対してどんどん売り言葉に買い言葉モードになっていくのが実に香ばしい次第であります。

ということで、こちらは是非全文をお読みいただき流れを楽しんで頂きたいと存じます次第ではありますが、それだと話が終わってしまいますので(^^)後半の質疑のあたりから。

6ページ目の質問が実に良い燃料投下になっております(^^)。

『(問) 懇談会出席者から、利上げについては慎重にとの意見がありましたが、こうした場で、あのような形で要請を受けたことについて、率直なご感想として、どのように受け止められたかを伺いたいと思います。また、常々、「予断を持たずに」というように仰っておられますが、時期的な判断として、世界経済全体の最近の状況から、なかなか利上げし難くなってきているのではないかという見方もあると思います。国内情勢と海外の情勢を含め、そのあたりをどのようにお考えか、もう一度お聞かせ下さい。』

正直、これに対する福井総裁の発言は言語明瞭意味不明の世界でありまして、全部引用すると長くなるし、かいつまんで紹介しようにも意味不明ですのでどこが要点だかワケワカメなのであります。

で、多分この辺が言いたい所だったのかなと思う部分は・・・・

『やはり、色々と新しい材料をこなす過程で過不足のある評価が行われ、しかし、それがマーケットの中でもう1回読み直すというインセンティブが働いて、きちんとリプライスを繰り返しながら、更に前進していく、これが、むしろ経済および金融の普通の姿だと思います。我々は今、より困難になったというよりは、普通の状態に向かっているということであり、金融政策としては普通のやり方で判断していけばいいのではないか。何ものをも楽観視せず、何ものをも無理に、過度に恐れず、そこに冷静な判断が求められる状況になってきていると思います。』

と引用しましたがやっぱり訳が判りません><;


そして今回の白眉は最後のあたりでございまして・・・・・

『(問)(冒頭割愛)足もとの金融市場では、株価が随分変動していることもあると思いますが、日銀の金融政策について年内の政策変更の可能性は非常に小さいという前提に基づいて取引が行われているように見えます。こうした現状が、展望レポートや講演で述べられた「行き過ぎたポジション」に当たるのか、まずお聞かせ頂きたいと思います。』

この指摘もたいがい厳しいですなあという感じですが、その後がもう燃料どころかガソリン投下の様相。

『もう一つ、今日の講演後の質疑応答でも、タイムリーな金利引き上げが重要ということを繰り返されました。このところ、先週の国会質疑でも、同様のお考えを繰り返し述べておられ、日銀はやはり利上げをしなければならないというメッセージが非常に伝わっていると思いますが、実際には、世界経済の下振れリスクとか、市場の変動とか、国内での中小企業の弱さとか、非常に利上げし難い状況が続いていると皆が思っているところです。』

誠に仰せの通りです。そしてかいしんのいちげき!

『そういう中で、利上げしなければならないと繰り返すこと自体が、実際に利上げできない時期が長引いていますので、ある種、狼少年ではないかという指摘もあります。こういう状況が続くことは、日銀の金融政策に対する信認ということにも関わってくるのではないかと思いますが、そのことについてお考えをお聞かせ下さい。』

本来は総裁記者会見の紹介をする筈なのに、質問が素晴らしいので思わず質問の引用が長くなっておりまして恐縮ですなm(__)m

でまあヘッドラインにも出ていた総裁の迷言が登場。

『(答)(最初もオモロイけど割愛)ダウンサイドリスクが、しばらく以前に比べると、米国経済あるいは国際的な金融資本市場中心に、少し高くなってきているという事実は認識しています。これをもカウントしながら今後適切なタイミングを掴んでいかなければならないということですが、ダウンサイドリスクにばかりかまけていて、「しばらく我々は頭の中を空っぽにして待つのだ」ということは、将来の大ミスに繋がる態度になります。』

『我々は、ダウンサイドリスクが強まる場合であっても、一方で、緩和を長く続け過ぎることによる、よりロングランなリスクを十分考えなければなりません。日本に限らず、海外においても、経済の大きな変動を結果としてもたらした、その以前の段階では、ある問題に対する対処に余りにもエネルギーが注がれ過ぎて、一見、すぐには起こりそうもないリスクから目を離すという瞬間があったのではないかという反省があります。率直に言って、日本においても同様のことがあったのではないかと思われます。従って、我々としては、自らそういう態度をとることは許さないという強い自戒の下にやっているということです。』

まあ米国の緩和引っ張り過ぎによる住宅バブルというのはあったような気がしますが、それと現在の日本とは状況が違うのではございませんでしょうかとか思うんですけれども、まあこの部分は福井総裁のバブル警戒主張ということではあはあそうですかと申しあげますけれども・・・・

『何か急いでやりたいという気持ちから、やれないで焦っているとか、やらないことによって狼少年のようなものの言い方をして、やらないからといって信用を失うということはあり得ません。それは経済の結果としてのパフォーマンスをよく見て下さいとしか言いようがないと思います。』

えーパフォーマンスをよく見ると・・・・・・(−−)



で、その次が最後の質疑なのですが、ちと売り言葉に買い言葉で言い過ぎたと総裁も反省したのでしょうか??

『(問) 年内に利上げの可能性が小さいとの市場の見方については如何ですか。』

『(答) 私は、ある意味で時間帯が長い話として申し上げています。年内とか、あるいは至近距離で、利上げの観測が強まったり弱まったりしているのは、マーケットの特性として、日々出てくる新しいデータに大きく揺れ動きながらマーケットが自ら消化していくという過程をとりますので、利上げ観測が遠のいたり近づいたりすること
自身が極めて自然なことです。』

急に冷静になっています(^^)。

『我々の分析アプローチとマーケットのアプローチは違います。我々は個々のデータに一喜一憂しません。全て織り込んで、冷静な分析を延ばしていくという態度です。この間、齟齬はないと思っています。』

個々のデータに一喜一憂しませんって嘘こけとか思うのですがそれは兎も角として、日銀様の高尚な分析は欲まみれの市場の有象無象どもが目先の材料で一々右往左往するのとは違いますですかそうですか。いやまあ別にいいんですけどね。。。。。


ではでは。

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2007/11/06

本日のネタは本当は決定会合の議事要旨にしようと思ったのですが、その後に出てきました総裁講演と記者会見に関して。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0711c.htm

○講演は基本的には展望レポートに沿っていますが・・・

展望レポートが出た直後に行われた講演(正確には挨拶)ですので当然ながら経済物価情勢の説明は展望レポートに沿った内容になっております。ただまあ読んでいますと福井総裁の利上げに対する思いが伝わりますなあという感じはするんですな。

経済物価情勢見通しの基本シナリオに対する上振れ下振れ要因に対する説明の部分なんですけど、「海外経済の動向」と「金融・経済活動の振幅」「需給ギャップに対する物価の感応度」の3点について小見出し作って説明してるんですけど、その中で「金融・経済活動の振幅」に関しては展望レポートでの表現に福井総裁の表現が加わっている部分でして(それ以外の部分は基本的に展望レポートのお話をしています(と読みました)わな)、ここのところを展望レポートと比較するのも面白かろ。

全部引用しながら比較すると長くなりすぎるので部分部分だけで恐縮。

『2つ目の要因は、緩和的な金融環境が続くもとで、資源配分に歪みが生じ、結果として金融・経済活動の振幅が大きくなる可能性があることです。円キャリートレードの動きにその兆しを感じるとの声も聞かれます。』(講演)

『第2に、緩和的な金融環境が続くもとで、金融・経済活動の振幅が拡大する可能性である。』(展望レポート)

ということで、円キャリートレード(早くも死語化してますが)の話を持ち出すところが福井総裁の独自色。


『活発な再開発や堅調なオフィス需要などを背景に、9月に公表された都道府県地価で、東京、大阪、名古屋の3大都市圏の地価上昇率が拡大しました。こうした動きも、企業や金融機関の行動を活発化させる方向に作用すると考えられます。』(講演)

『また、大都市の地価など資産価格の動きも、そうした行動を活発化させる方向に作用すると考えられる。』(展望レポート)

こちらも展望レポートより具体的に例を挙げてまして、バブル懸念への福井総裁の思い(杞憂の気がするが)が伝わりますわな。

『このような動き(経済情勢を離れた低金利継続を背景とした投機的なポジションの積みあがり)は、短期的には景気を押し上げることがあっても、その後大きな反動を招き、息の長い成長を阻害する可能性があります。』(講演)

『このような行動は、短期的には景気や資産価格を押し上げることがあっても、その後の調整を余儀なくされ、息の長い成長を阻害する可能性がある。 』(展望レポート)

ここでも展望レポートの「調整」が「大きな反動」と強い表現になっておりまして、まあバブルに関する懸念が伝わりますね。




○やたら強気発言の記者会見

でまあ総裁記者会見ですが、ブルームバーグニュースのヘッドラインを見るともはや落涙を禁じ得ません。曰く、

16:55*福井日銀総裁:低すぎる金利は危険
16:55*福井日銀総裁:タイミングよく金利引き上げなければいけない
16:56*福井日銀総裁:着実に金利上げないと企業努力も水泡に
16:56*福井日銀総裁:将来にわたりバブルはいけない
16:56*福井日銀総裁:慎重に先読みしながら金利を引き上げ
16:57*福井日銀総裁:先行きは不確実性に満ちている
16:57*福井日銀総裁:緩やかながらも息の長い成長続く可能性高い
(以上ブルームバーグニュースより)

んでまあ会見の記事のお題が『福井日銀総裁:頭を空にして待つのは大失敗につながる−利上げで』ということでして、まあ例によって売り言葉に買い言葉だと思うのですが、やたらめったら利上げに積極的な発言をしているのですが、どうも市場はあんまり反応してないようで。

まあ時間も時間ということがあって市場が反応しなかったとも言えますけれども、先週の総裁会見でも別に市場が派手に反応したわけでもないという事を勘案しますと、要するに今の経済物価情勢が到底連続的な金利調整を許す状況じゃないでしょと市場が申しているとも言える訳でありまして、その上福井総裁の任期もあとわずかという事でもありますので、まあ強気発言しても反応しませんわなあという所なのでしょう。

何か総裁頑張って利上げ無し期待の広がりを抑えたいというのは判るのですが、まあ経済物価情勢は不透明感強いけどでもそんなの関係ねえという利上げ強調発言はさすがに説得力が無いので如何なものかと思いますが。某速水総裁の円高発言を思い出したのはあたくしだけでしょうか。

狼ジジイとか言われないように願いたいものであります。というか殆ど市場の反応は狼ジジイ扱いになりつつあるんですが。。。。。

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2007/11/05

○あまり材料になりませんでしたが総裁の国会答弁(ちょっとだけ)

木曜に引き続いて金曜には衆議院財務金融委員会で日銀の半期報告がありまして、質疑応答が結構行われました。

で、内容は結構こちらも多岐に渡っていて興味深いと申しますか、こちらも会議録見なきゃと思うのですが、ブルームバーグニュースから「ほほー」と思った質疑を引用します。ブルームバーグニュース2日13時34分配信の記事の最後のほうで、民主党の小沢鋭人委員の質問とその答えでして、小沢さんは「サブプライム問題の影響でもし景気が下振れしたら利下げをする覚悟はあるか」と極めてご尤もですが、福井総裁相手になると釣り質問確実な質問をしておりまして・・・・・

『具体的な将来の状況を一定のイメージを描いて政策措置をあらかじめ予定するというのは、金融政策上絶対にない。将来の状況を正しく読み取りながら、早めに手を打っていくというのが、われわれが取っている基本スタンスだ。日本経済にとって何が重要か。目先のダウンサイドリスクは、われわれは嫌と言うほどきっちり認識している。これは誤りなく認識している』

えーっと、展望レポートで先行き見通しを置いて、それに対して政策金利の調整が必要になるというストーリーがあったような気がしますが、それは「具体的な将来の状況を一定のイメージを描いて政策措置をあらかじめ予定する」のとは違うんでしょうか??

ということで、ナンノコッチャでございますが、以下ブルームバーグニュースの記事より引用しますね。

『しかし、本当の長い将来を見通したとき、これから厳しい少子高齢化、人口減少、財政再建という長いプロセスの中で、一番困ることは景気が大きく振れるということだ。これは国民の皆様にとってものすごく大きなダメージになる。あらゆる対応が全部行き詰るというリスクがある。したがって出来るだけ長く物価安定の下でも持続的な成長を、たとえ緩やかであっても絶対にキープしなければならない』

『したがって、われわれはダウンサイドリスク、手前のものは十分認識するが、そこにばかりかまけていて、将来バブルの発生、あるいはその崩壊ということがあってよいかというと、絶対にあってはならんわけなので、そこまで読みながら安定的な経済運営をしたい。そういう判断をしている』

要するに何があっても利下げはしたくないですかそうですか・・・・・・

#ま、総裁がそう思ってても他の政策委員が違えば多数決ですから

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2007/11/02

ということで総裁記者会見ですが、今回の会見のヘッドラインは妙に強気なものが並んでいましたが、会見要旨を読み進めておりますと「これは苦しい空元気」という感じでどちらかというと落涙を禁じ得ない質疑応答となっているように見えましたがどうでしょうか。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0711a.pdf

#今回はオモロイ質疑応答が続くので是非ご覧になられたし。


○どう見てもお題目です本当にありがとうございました

実質的に最初の質問(冒頭は幹事社が「今日の結果についてお願いします」とやるので)はサブプライム問題で金利調整が遅れるのではないかという物でしたが、これに対する総裁の答えの中に落涙物の部分がございますが、その前の部分も中々でありますので段落分けながら引用をば。

『(答) 必ずしもそうは言えないと思います。今申し上げた通り、サブプライム住宅ローン問題に端を発し、国際金融資本市場の不安定な状態が続いており、今後もしばらく続きそうであるほか、米国経済の先行きを含め、世界経済について何らかの不確実性が生じていることも事実です。そういう意味では下振れリスクは高まっていると率直に言えると思います。』

とここまでは良いとして、

『ただし、そうした状況のもとで、私どもが判断した最も蓋然性の高い見通しは、日本経済は先行きも物価安定のもとで息の長い成長を続けるということです。加えて、サブプライム住宅ローン問題や国際金融資本市場の変動が、わが国の金融情勢に及ぼす影響は限定的であり、極めて緩和的な金融環境が維持されるとみられるということです。こうした中で、低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着し、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分につながるリスクは引き続き存在すると考えています。』

この意地っ張り!と言いたくなりますが、この次が落涙物ですよ先生。

『これは決してお題目ではなく、本当にそう考えています。』

どう見てもお題目です。本当にありがとうございました。

ということで、この発言に見られるように「確かに下振れリスクはございますが、標準シナリオ通りに進んでいるんですよ」というような流れの発言がやたら多く、まあ強気ヘッドラインが出るのも当然なのですが、こりゃ強気というよりは空元気と申しますか大本営(ry


○企業部門から家計への波及が遅れている件

次の質問が上記の件なのでありますが(しかしツッコミが厳しい事^^)、それに対する答えも何となく小島よしお状態。

『経済の拡大の中身を子細に点検し続けていますが、それによると2007 年度前半の経済は、好調な企業部門に比べると家計部門の改善テンポが些か緩慢な状況が続いたことは事実だと思います。』

『しかし、それをも含めた経済全体の動きは、4月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移したと言えると思います。そして大事なことは先行きについてです。先行きについて本日もしっかり議論しましたが、高水準の企業収益等企業部門の好調が続き、家計部門への波及も緩やかながら着実に進んでいくという判断に至りました。』

こりゃまあ本石町日記さんから「願望レポート」とか言われちゃいますな。そういえば昨日の参議院財政金融委員会で民主党の大久保勉委員から「業界の中からは「願望レポート」とも言われているようですが」というような質問がされたようですが(笑)。


○目先は下振れリスクがあるが長い目で見ると・・・・・

中々オモロイので次の質疑も引用する訳ですが、次の質問は「メインシナリオは変らないとして、上振れリスクと下振れリスクのバランスはどう考えていますか」というような趣旨の質問でしてこれに対する総裁の発言。

『目の前で起こっている現象、あるいはやや短期的にみて、海外経済やグローバルな金融資本市場の動きの中で、ダウンサイドリスクが幾ばくか高まっている、あるいは高まった状況が続いている、しばらく続きそうだということは、その通りだと思います。』

と、ここまでは左様でございますなあという所ですが・・・

『従って、短期的にはダウンサイドリスクの方が強いと言えなくもないのですが、展望レポートの中で私どもは上振れリスク・下振れリスクをより長い目でみています。』

ほほう。

『金融政策も目先だけではなく、ずっと先々、できる限り先まで読みながら、一番手前の政策判断を行っていくというアプローチをとっていますので、時間の尺度を少し長く伸ばして上下のリスクを考えた場合に、低金利をあまりにも長く続けることのリスクや、資源配分が歪み、結果として経済に大きな振幅をもたらすというリスクを、手前のダウンサイドリスクが大きいからと言って相対的にこれらを希薄化してみるわけにはいかないと、私どもは思っています。』

いやあそれはちょっと無理筋だと思うんですけど・・・・・・



○「今の政策金利が長期化する期待」に釘を指し差したいのは判りますが

今回の会見要旨を見てますと、目立つのは上の方でご紹介したような「足元は確かにダウンサイドリスクあるけど・・・」っていうような流れでありまして、これは何を意味するかと言えば恐らくは小見出しに書いたような事だと思うんですが、債券や金利市場としては(確かに執行部交代のタイミングという政治的なスケジュールの考慮はありますが)、欧米のサブプライム問題とか、国内景気の特にマインド面の悪化とかも見ながら「そう簡単に政策金利上げられないし、引き上げペースが加速するとも思えない」となっている面はございますので、あまりそう必死に釘を指さなくても良いんジャマイカとは思うんですけどね。

別の質疑の中でこんな話をしてますけど、何かそこまで言わんでもという気が。

『先程も申し上げた通り、足許や直近の未来におけるダウンサイドリスクをオーバーにカウントし過ぎると政策は誤る、長い目でみたアップサイドリスクは結構大きいということです。今回のサブプライムローン問題を引き金として起こった世界の様々なことをみても、この問題を決して軽視できないということは非常に明確ではないかと思います。従って、ダウンサイドリスクは強まる一方で先行きのリスクについてもより明らかになってきているということは、政策判断として難しくなったのかと言われればそのように言えなくもないと思いますが、その難しい判断を行っていかなければならないと思っています。』

目先数か月のことだって中々判らないのに、より長い期間のことを重視して判断というのはやはり理屈として苦しいのではないかと。



○政策の話をさせないとやはり不透明ですよとなります

最後の方の質疑ですけれども、政策判断と切り離して「ところで前回会合と対比して今月の不透明感はいかがでしょうか」というような質問がありましたが、これに対する総裁の答えはこれまた長いのですがかいつまんで。

『前回に比べて今回がどうか、この比較はなかなか難しいなと思います。例えば、世界経済の見通しについて、G7などもありましたし、少なくともこれまでに出てきたところの影響は、世界経済に対しては下方修正を迫るものであっても成長率0.4%ポイントの下方修正です。少なくともこれまでの様々な出来事の世界経済への影響は総和としてはとりあえずそんなところということで、世界の政策当局者が認識をシェアしている、ということは前回に比べて少し明確になっていると思います。』

『しかし一方で、これで留まるのかということになると、米国経済については、(途中割愛)米国経済全体に対するダウンサイドリスクがより強まっていると言えなくもないという状況になっています。』

『それから金融資本市場の動きをみますと、夏場に比べるとやはり特にマネーマーケットについては少し落ち着きがみられます。(途中割愛)しかし一方で欧米の金融機関のバランスシートに損失が舞い戻ってきて、その計数の発表があったりするとこれは非常に区々であり、時にはその程度で良かったと思われる場合と予想よりも少し悪いという場合とが入り混じり、かえって先が少し読みにくくなっているとみる人もいる状況です。』

『つまり、少しずつ明確になりながらも、先行きの不確定要因を大きく引きずっているということですので、全体として、私どもは高まった不確定要因がほぼそのままで今も続いているという状況ではないかと思っています。』

ということで、まあ景気に対する認識はこのあたりということになるんでしょう。ただ、それによって市場が「こりゃもう低金利継続ですよ全然利上げ無し」とかなるのは宜しくないので強気(空元気)発言を繰り返したということになるのでしょう。

今までの福井総裁の発言っぷりを拝見(直接見てるわけではないが)しておりますと、本当に自信が有る時って割と余裕をぶっかました発言をするのが福井総裁クオリティでありまして、ちょっとどうなのよという時になると妙に強気な発言とかをし出すという傾向があるんで、まあ強気発言の時はあまり気にしないのが吉とも言えるのでありますよ。市場もさすがに慣れて来たようで、一昨日の総裁会見ではろくすっぽ反応してませんでした(昨日はFRBの利下げ打ち止め示唆攻撃をちょうど良いネタにして10年入札に向けて相場水準を訂正しましたが)わな。

まあ本日はそんなところで。今日も引用だらけでスイマセン。

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2007/10/23

○総裁記者会見(20日の奴)を念の為

昨日のモーサテ様では「福井総裁は日本景気に確信を深めたと発言し、改めて利上げに対する意欲を見せました」とか何とか報道していた20日総裁記者会見。実は昨日はあたくしのPCのご機嫌が麗しくなかったので総裁記者会見のPDFが開けなかったのでして、改めて会見要旨をば。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0710d.pdf

くだんの部分は最終ページ(4ページ)にございます。

『【問】今回の一連の会議で各国当局者と議論した結果として、日銀が描いている「物価安定の下での持続的な成長が今後も続いていく」という見通しは、色々な議論を通じ蓋然性が高まったのかどうか、あるいはやはり霧が深いなという意味でそういう確からしさは今ひとつ進んでいないのかについてお伺います。』

この前須田審議委員も「霧が深い」というような話をしてましたが、この表現もしかして日銀のブームですかな?

『【答】日本経済の姿を内在的に分析する限り、「物価安定の下での持続的成長」というわれわれが思っている基本的シナリオに何か瑕疵があるということは確認されませんでした。われわれはむしろ確信を深めたということでありましたが、』

句点じゃなくて読点で切って恐縮ですが(^^)。

『世界の経済と緊密な連関を持っている日本経済ですから、今グローバルな枠組みの中で起こっている市場の変動が世界の実体経済に及ぼしていく影響については、まだ大きく不確定要因を残しているということです。従って、霧が晴れたかどうかという質問にはなかなか答え難いのですが、引き続き先が読み難い状況が暫く続くということは間違いありません。』

以下は割愛しますが、どう見てもこの句点部分で切って「改めて利上げへの意欲を示した」というのはちょっとそれはどうなのよと思いますけど。


ところでこの会見の中で読んでて「ほほー」と思ったのは2ページ目の質疑応答部分。

『【問】金融市場における規律の緩みの背景として、世界的な過剰流動性が指摘されています。今回の危機で結局各国が対応できたのが金融の緩和でした。これが、当初の原因となった過剰流動性を招いて悪循環に陥るのではないかという指摘もありますが、今回の会議でこれに対する何らかの答えは示されたのでしょうか。』

このロジックを認めると特にアメリカのマエストロ様の否定に繋がりますし、福井日銀様におかれましても金融高度化路線とかを絶賛ご推進しておられるので中々この話はややこしいのでどう答えるのかと思えば。

『【答】冒頭にも申し上げましたが、ここ数年に亘って世界経済や金融環境があまりにも恵まれた状況にあったということだと思います。中央銀行がじゃぶじゃぶにお金を供給したという意味での流動性過剰ではなく、金融市場の中でリスク評価が甘い形で資金が流れ易い環境が続き、非常に流動性の高い経済であったということだと思います。』

ふむふむなるほど。

『今、少し苦痛を伴いながら修正過程が進んでおり、いわば資産の本質的な価値が市場に照らして正当な価格評価がなされる過程にあります。これは本来の姿です。そういう姿にひとたび戻して、実体経済とのインタラクション(相互作用)がうまく働き、リスクがたまり過ぎない市場と経済の一体的運営という姿に、早く辿り着くという努力が今なされていると思います。』

以下は割愛しますが、えーっと現在米国でおっぱじめているサブプライム関連証券塩漬け機関ってどう見ても正当な価格評価に耐えられないから飛ばして問題先送りしているようにしか見えませんが、本当の本当に「本来の姿」とやらに向っている過程なんでしょうかねえ。

話はより脱線しますが(こら)、まあサブプライムどうのこうのに関してはちょっと話を聞いてみれば聞いてみるほどレバレッジが掛かったりして中々香ばしい状況のようでございますので、こりゃまあ世の中総出で先送りして誤魔化す攻撃で逝くしかなさそうではありまして、アメリカ様などのご指摘を賜りまして不良債権処理とやらでシバキアゲを行ってエライコッチャになった国の人間としては「何であたしらはシバキアゲであんたらは先送りなのよ」とどうも釈然としないのでありますな。いつも勉強させていただいております害債さんの最新エントリー(http://ensaigaisai.at.webry.info/200710/article_14.html)にございます『この國際版亀田一家のような国をどのように落ち着かせるか、まったく持って頭の痛いところであります。』というのがツボに嵌まってしまいました(^^)。それから、上記エントリーの最後の部分にも激しく同意です。


ところでG7声明ですが、どう見てもただの一般論羅列です。本当にありがとうございました。

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/g7_191019.pdf

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2007/10/16

○総裁挨拶要旨

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/siten0710.htm

ま、こちらも当然ちゃあ当然ですが項目が一個追加。

『米国のサブプライム住宅ローン問題に端を発して、国際金融資本市場において不安定な状態が続いているほか、米国経済の下振れリスクなど、世界経済についての不確実性がある。したがって、国際金融資本市場および世界経済の動向は、引き続き注視する必要がある。』

ということで、こっちもトーンダウン気味でありますわな。

あとまあホームページとかに出てこないと思いますが、大阪支店長や名古屋支店長のコメントとかもややトーンダウンの感じがしたのでありますが、手元に資料がないので脳内メモリーで書くのも如何なものかと思うので割愛しますけど、情報ベンダーのヘッドラインを見ておりますと、「何かこう全体的にヘッジ入ってますなあ」という感じが致しましたです。

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2007/10/15

ということで総裁記者会見ですが、内容的には淡々としたように字面からは読めます。要は展望レポートをお楽しみにって事かと。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0710b.pdf

○サブプライム問題関連

3ページから。

『前回の金融政策決定会合以降、米欧の金融市場ではいくつか改善の動きがみられていますが、全体としては、なお不安定な状態が続いています。一言で言えばそういうことであります。』

『まず第1のクレジット市場の機能の改善という点ですが、(中間割愛)これらの市場の機能は引き続きかなり低下した状態にあります。』

『それから2番目の着眼点、金融機関のディスクロージャーによる相互の信頼回復についてですが、(中間割愛)短期金融市場では銀行間のレートはまだ高止まった状態が続いており、正常な状態に戻ったとは言えない状況であります。』

『3つ目の着眼点、企業金融全般についてですが、これは引き続き円滑に行われていると言えると思います。』

『このように、米欧の金融市場では、幾つかの改善の動きがみられますが、全体としてはなお不安定な状態が続いています。』

ということですが、一応この流れの中で『これまでのところは、世界経済全体は地域的な拡がりをもって拡大を続けておりますので、影響は最小限に留まっていると思いますが』としていますので、サブプライム問題に関しては注意して慎重に見ていきますが、それはそれという予防線は張っている点には留意が必要ですわな。


○短観で見られた格差拡大に関して

5ページから。

『今回の短観では、業況判断は一言で言ってしまえば全体としては良好な水準にあるということになると思いますが、その中でも例えば中小企業製造業は生産の伸び悩みとか原材料コストの上昇の影響などがあり、業況判断は3期連続の悪化となっています。』

『また、中小企業非製造業でも建設業や消費関連業種を中心に、構造的な調整圧力がかかり続けるもとで2期連続悪化しています。これらは継続的に出てくる新しい経済の姿の変化であり、今回の短観で何か新しい変化が屈折して出てきたというようには、私どもは理解しておりません。』

ということで、グローバル化の進展に伴う部分があるとは言ってますが、景気が今後拡大しないとこのままともなりかねませんのではてどうなんでしょうかねえという気はするんですが。

で、まあそれに関連するのですが、6ページ目ででCPIに関する質問に対してこのような話をしてるんですな。

『グローバル化の中での経済の成長は、国際競争圧力が経済の色々な面に強く浸透してきますので、企業所得が家計部門に満遍なく均霑するという従来の経済と同じパターンではなかなか動き難い、つまり平均してみると家計部門への――特に賃金を通ずるルートでの家計部門への――還元というのが幾ばくか弱目に推移する──想定よりも非常に離れているわけではありませんが──という面があることは事実です。』

結果としてそうなってないから仕方ないところではありますが、これって要するに所謂ダム論を否定しているようにも見えますがどうでしょ。というかそもそもいわゆるダム論自体に無理があったんでしょうけれども、これは日銀だけじゃなくて政府の経済政策においても同じ指摘ができそうですけどね。企業サイドを活性化させると経済全体が底上げされて個人所得にも波及ってのはまさにこれまでの流れだったと思う訳で。


○CPIに関連して

CPIに関連した質疑応答はやたら多い(当たり前ですが)のですが、まずは生活意識アンケート絡みの質疑から(7ページ)。

質疑応答が長いのですが、最初にまず福井総裁はこのように発言してます。

『金融政策はマクロの経済政策ですので、GDP統計とか物価指数とかその他の経済指標、マクロの経済指標から目を離して、感覚的に判断するというわけにはいきません。』

そりゃそうですな。

『やはり消費者が感じる物価感というのは非常に正直なところがあるというのは今ご指摘のとおりです。』

という所だけヘッドラインで打たれてたんですが、市場はあんまり反応してませんでしたね。

『私どもが消費者物価指数を見ておりましても、これを品目別に細かく見ていますと、昨年から最近までの1年間くらいを振り返ってみても下落する品目よりは上昇する品目が刻々と増えてきています。特に最近はおっしゃったように食料品その他生活者の身の回りに関連する品目の上昇が次第に目立ってきています。』

『従って、生活意識アンケート調査を見ますと、大掴みに言って、経済の状況が一頃より少々悪いのではないかという感じになっているわけですが、その背景を探ってみると、物価が上がり始めている、特に身の回り品が上がり始めているではないかということと、どこかで連関しているようにも読めます。』

これはスタグフレーションキター!の懸念がありますがなというお話にもなるように思えますにゃ。でも最後にはこんな結論になっているので、最初のアレは何だったんだという気もするのでした。

『物価指数で見る物価は、マクロの判断として基本としてこれは欠かせないと思いますが、人々の物価感はどうかということは、私どもがフォワード・ルッキングに経済を理解していくためには非常に重要な点ですので、そこのところも十分織り込みながら金融政策の判断につなげていかなければならないと思っています。』

『物価指数は微動だにしない状況で今動いていますが、人々の物価感はかなり変化が始まっている可能性があるとみています。』

結局全部通して読むと、やる気があるのか無いのか判らん・・・・


○この質疑応答はワロタ

6ページ目なのですが。

『(問) CPIがなかなかプラスに転じずに7か月連続でマイナスが続いていますが、これは当初の日銀の考えに比べ見通しが少し狂っているということでしょうか。回復してくるのが後ずれしているのでしょうか。目先はゼロ近傍が続き、先行きはプラス基調といつもおっしゃっていますが、いつまで経ったら転換するのでしょうか。どこまで経っても目先なのかなという感じもするのですが、いかがでしょうか。』

まさにあがるあがる詐欺(失礼)というご指摘を頂いておりますが。

『(答) 数字を一生懸命ご覧頂いて、目もお疲れになるでしょうし、大変恐縮していますが、ご質問の点は、もう少し我慢強くみて頂ければという感じです。そう遠からずCPIはプラス基調で推移していくようになるだろうとみています。(以下割愛)』

茶を噴きそうになりました(^^)。


まあ全体としては今回に関しては利上げに関して淡々としているという印象が強く、前のめり感が全然無いというのが特色だったと思います。


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