亀崎英敏審議委員

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亀崎審議委員

亀崎さんの略歴(日銀Webより)

昭和18年4月1日生
昭和41年3月横浜国立大学経済学部卒業
三菱商事に入社し海外業務第二部長、米欧業務部長、企画業務部長、米国三菱商事EVP、台湾三菱商事社長を経て、平成13年6月執行役員。常務執行役員、代表取締役常務執行役員を歴任し平成17年4月同社代表取締役副社長執行役員。
平成19年4月5日より日本銀行政策委員会審議委員
(前職:三菱商事代表取締役副社長)
詳細はこちら→http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_kamezaki.htm/


平成24年4月4日をもって日本銀行政策委員会審議委員を満期退任しました。

2012/03/02「会見はやはりハト派でした」
2012/03/01「講演は今回も比較的執行部ベース」
2011/07/29「会見も慎重トーン」
2011/07/28「講演では景気が弱気で物価は強気」
2011/02/04「記者会見も比較的執行部見通しに近い話が多い」
2011/02/03「佐賀での講演から、今回は割と執行部と似た見解が多いです」
2010/07/30「会見ではそこまでのハト的な話ではないですがまあ下振れ意識」
2010/07/29「今回の講演もややハト的な内容」
2010/03/29「会見では緩和政策の整合性について質問&追加緩和に積極的な発言」
2010/03/26「今回の講演もハト派全開です」
2009/06/05「やはりハトな記者会見」
2009/06/04「講演はハト派色の強い内容」
2008/12/29「亀崎審議委員記者会見より、結構フリーダムな発言」
2008/12/26「亀崎審議委員講演より」
2008/06/02「亀崎さん記者会見、まず無難で若干ハト」
2008/05/30「日本の成長戦略に関する商社マンらしい考えが興味深いです」
2007/12/28「会見では金融政策に対する柔軟(フラット)な考えが読み取れます」
2007/12/27「割とカラーが出ている亀崎さん初講演(ハト派のようですね)」
2007/04/13「就任記者会見(中村氏と共同会見)」

2012/03/02

○亀崎審議委員記者会見から少々

まあやはりハト気味であるなあと思いましたというのが感想でございます。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1203a.pdf

・足元の数値は良いけれどもそんなに明るい話はしていない

こういう質疑がありましてですな。

『(問) 原油価格が今後、リスク要因ということですが、足許の全体の景気をみると、今朝発表された日本の鉱工業生産指数の前月比が、1月が+2.0%、2月の予測指数が+1.7%、3月も+1.7%となっており、少し上向きになっているようにみえます。日銀の景気判断である「横ばい圏内の動き」との見解と違和感がありますが、やや上向きになってきたというご認識はお持ちでしょうか。』

『(答) 現在、景気は横ばい圏内の動きであるとみています。』

いきなり全否定キタコレ(^^)。

『個人消費は底堅く推移しており、設備投資もややしっかりとした動きでありますが、海外経済の減速や円高で、輸出がかなりマイナスのインパクトを与えている状況です。ただ、生産の数字がプラスに出てきたということは、明るい兆しであると思います。こうした動きは、我々が考えていたシナリオ、すなわち、個人消費は底堅く推移する中で、海外経済の減速等による輸出、生産の落ち込みが、新興国・資源国の成長に牽引されて徐々に回復し、加えて、震災復興関連需要の強まりとも相まって、春先以降は緩やかに回復していくのではないかとみておりましたが、それを裏付ける一面であるとみています。』

ということで、足元の数値が良いから先行きの自信ありという感じではないですな。そらまあ欧米経済に関して全然強気で見ていないのですから当たり前ですけど。


また、冒頭の説明部分で「デフレ」「円高」を連呼していたのがほほうという感じで、冒頭説明部分の一部を引用。

『一方、当地の景気については、元気な動きもみられていますが、デフレが大きな問題であるとの話が多く聞かれました。特に雇用情勢を中心に厳しい状況が続いています。デフレの進行によって、売上げの拡大が期待できず、中小・零細企業を中心に厳しさを増しているとの声が聞かれました。デフレの長期化、円高による市場競争力の低下、産業の空洞化の進展などが、雇用の減少につながっているというお話を伺いました。』

『一方で、日本銀行が2月14日に決定した金融政策については、「良い効果がある」、「デフレ脱却に向けた日本銀行の決意を示すものとして評価したい」という声が聞かれました。また、日本銀行の金融政策に関する丁寧な説明や情報提供を引き続きお願いしたいという要望も頂きました。こうした中で、やはり現在の一番の課題は、根深いデフレからの脱却である、というご意見を伺いました。』

何かデフレと不景気がごっちゃになっているような気もしますけど、まあデフレと円高の話が多いという話を審議委員が強調しているというのはまあハト的な話ではあるなあと思うのでございました。


・電力に関して

『(問) 2点お伺いしたいと思います。1点目は、九州も原発への依存度が高いので、今年の夏に向けて電力不足が懸念されていますが、輸出や生産への影響をどのように捉えていますか。(2点目は割愛)』

『(答) 1点目の原子力発電所の問題ですが、現在、定期点検中の原発の運転再開については、不確実性が高い状況です。この問題が日本経済に与える影響ですが、日本には原発が54基ある中で、現在、動いているのは2基だけです。これらも春頃に定期点検に入ると、全部ストップすることになります。仮に定期点検後の再稼働が難しい場合には、計画停電や電力の使用制限、これを回避するための省エネ促進等による需要抑制、あるいは電力会社等による供給力の積み増しがなされなければなりません。ただ、これらはいずれも簡単に実現する施策ではありません。またコストの問題もあります。』

『特に、現在、イラン情勢を巡る地政学リスクもあり、原油価格が強含んでいるため、火力発電のコストは高まってきています。昨年から本年にかけての貿易収支の赤字も、石油やLNGの輸入が増えたことが大きな要因となっています。再生可能エネルギーについては、まだ発電効率が高くないため、設備の設置費用も含めてコスト高です。原発を継続するにしても安全強化のためのコストが必要になるでしょう。』

ということで・・・・・・・

『仮に電力料金が引き上げられる場合には、実質購買力の低下や企業の収益悪化につながる可能性があり、これは景気の下振れ要因です。』

まあ当然ながらこういう認識ですので、電力料金が上昇して一時的に物価が上昇したという現象だけでいきなり金融正常化とかするって話はございません、という事でよろしゅうございますな。ただまあこの電力料金の上昇による物価上昇がホームメードインフレの引き金となって持続的な物価上昇とかいう話になれば別でしょう。

つーことで、まあ結局の所諸々の要因を総合的に勘案してどうよという話ですわな。

『さらに、やや長い目でみると、電力不足への懸念、コストの増加といった要因が生産設備の海外シフトや国内企業の競争力低下を招く可能性もあります。ひいては日本経済の中長期的な成長力の低下につながりかねません。』

ということで、まあ懸念しておりますという事でございます。


・貿易収支、経常収支

講演での内容に沿っていますが折角ですので再掲。

『それから、2点目の経常収支ですが、最近の貿易収支や経常収支の状況をみると、2011年の貿易収支は1.6兆円の赤字と、1963年の600億円以来、48年振りの赤字となっていますが、この背景としては、輸出が震災による供給面の制約から大幅に減少したこと、輸入が代替品需要から中間財などで増加したことが挙げられます。また、原発停止に伴う火力発電需要の高まりから、LNGと原油の輸入が増加したこともあります。加えて、秋以降の海外経済の減速や円高、タイの洪水が輸出の足を引っ張りましたので、これらが貿易収支の下押し要因となったとみています。』

『このように、様々な要因が複合的に作用していると考えていますが、今申し上げた中で、震災に伴う供給制約やタイの洪水の影響は一時的なものであり、本年の輸出には影響しないと考えています。先程も申し上げたように、1月の貿易収支は赤字が1.5兆円となりました。これは、月単位でみて1979年以降の最大の赤字となっています。通常2月のアジアの春節が今年は1月にずれ込んだといった特殊要因も輸出の落ち込みに影響したとみています。』

『経常収支ですが、2011年に確かに減少しましたが、黒字は維持しています。これは、対外資産からの利子・配当などを背景に所得収支が大幅な黒字となっているためです。日本は約250兆円に上る対外純資産を保有しています。このため、所得収支については、黒字は維持されていく可能性が高いとみています。従って、貿易収支の赤字が急速に拡大していかない限り、経常収支の黒字トレンドは、当分の間、変わらないものとみています。』

まあそんなことで。

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2012/03/01

○亀崎審議委員講演から少々

最初のうちハト派全開で独自色が出てた感じだったのですが、最近は執行部ペースの話が多くなっているという審議委員パターンとしては通常の逆(任期の最後になってくると段々フリーダム化してくるのがよくあるパターン、最初から最後までフリーダムな人もいますけど^^)の亀崎審議委員講演テキストから少々。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120229a1.pdf

特段変わった話があるという感じでもございませんが、亀崎さんの講演は関連資料の図表とかが妙に詳しいのでこれはこれでオモシロスではございます。ただまあ図表を引用するスキルはあたくしには無い(それにまあ図表モロ引用はちょっとアレですから)のでそれは上記URL先を見てちょというところです。

・世界経済に関して

『こうした中、世界経済は減速しています。わが国が直面する海外経済の成長率は、前期比年率で昨年の1〜3 月の+6.5%から、4〜6 月は+3.0%へと減速した後、7〜9 月には+3.8%と幾分加速しましたが、10〜12 月期は再び+0.9%へと減速しています(図表1(1))。先行きについては、欧州債務問題が一段落するにはまだ暫く時間がかかるとみられるほか、米国経済も家計のバランスシート問題が個人消費の足枷となって力強い成長は期待しにくい状況です。』

そうですかダメですか。

『家計のバランスシート問題の解決には、住宅価格が底を打って更に上昇に転じることで住宅ローンの額が住宅の価値を上回る「ネガティブ・エクイティ」の状況が解消されるか、もしくは雇用所得環境の改善により家計の債務返済能力が回復するかの少なくとも何れかが必要となります。しかしながら、過剰債務の調整には相当な時間がかかるというのが日本のバブル後の経験です。』

さいですな。

『このように、先進国経済が全体として伸び悩む中で、私は、新興国・資源国経済を中心に世界経済が成長するシナリオを描いています。この点で、新興国・資源国経済にかかる期待は大きい訳ですが、様々な不確定要素がある中で新興国・資源国が世界経済の成長をどこまで牽引できるかに注目しています。』

ただまあこの先に新興国がどうのこうのという話は無くて、その前の所に、

『また、投資家のリスク回避姿勢の強まりや欧州の銀行によるディレバレッジングの影響は、地理的に近接する中東欧諸国に加え、貿易金融等を通じて関係を有するアジア等でも一部みられています。』

というのがしらっと入っているだけですので、見通しが奈辺にあるのか存じませんが、あまり先行きを楽観視していなさそうな感じは致します。たぶん新興国の楽観的な見通しみたいな執行部ベースの見通しの話はしたくなかったんでしょ、と勝手に妄想。


・財政維持可能性に向けた取り組みについて

国内経済の話の中にいきなりこのネタキターという所で、亀崎さんの個人的趣味でこうなっているのか、それとも日銀として「こっちだって姿勢を転換してるんだから政府与党サイドにも物申さないと」という雰囲気になっているのかは存じませんが、ほーと思うのでありました。

『こうした中、財政健全化に向けた取り組みも、わが国が抱える大きな課題の一つです。』

従来、政策委員の方々が講演などでこのネタに触れるときは日本経済の将来的な課題というような文脈でネタ振りをしていたことが多いと思うのですが、今回はいきなり日本経済の現状と先行き見通しに関する所で出てきているのがチャーミングだと思いました。

『リスクが顕在化している欧州債務問題は、わが国にとって決して対岸の火事ではありません。日本の財政状況を他国と比較してみると、プライマリーバランスでみればスペインやポルトガルと同程度に悪化しているほか、政府債務残高はグロスでみるか、政府が保有する金融資産と相殺したネットベースでみるかによらず極めて大きい状況です(図表2(1))。』

まあ今のところは対岸の火事ではありますが、そうは言いましても貿易収支の赤字がどうのこうのとか言うのが出てくるとまああまり居心地は良くはござーませんわな。

『各国の国債の保有者別内訳をみると、日本は欧米諸国に比べて海外投資家の保有比率が低いので安心であるとの楽観的な見方もあります(図表2(2))。実際、日本では現状、国債価格の低下(長期金利の上昇)が生じているわけではありません。しかしながら、欧州債務問題からの教訓は、一旦財政への信認が低下すれば国債も安全資産と認識されなくなるおそれがあるということです。日本国債についても、これまで安定的に消化されてきたのだから、これからも心配ないと考えることは適切ではありません。日本国債に対する信認も、非連続的に変化し得ると思います。政府の試算では、わが国の財政は今後も厳しい状況が続く見込みです。こうした状況を改善するためには、成長戦略の着実な実行による成長率の引き上げや、社会保障制度や税制の見直しなど、中長期的に財政バランスを維持できると人々が思えるように財政の健全化に向けた道筋を確固としたものにし、これに沿って着実に取り組んでいくことが不可欠であると考えます。』

まあそらそうでしょうな。


・経常収支、貿易収支

その次に経常収支や貿易収支のお話が。

『この間、国際収支統計によれば、2011 年の貿易収支は▲1.6 兆円となり、1963年以来48年振りの赤字となりました(図表3(1))。この背景として3点ほど申し上げます。』

ほほう。

『第1に、輸出が震災に伴う供給面の制約から大幅に減少し、輸入が代替品需要から中間財などで増加したためです。第2に、原発停止に伴う火力発電需要の高まりから、原油や天然ガス等の原燃料輸入が増加したためです。第3に、秋以降の海外経済の減速や円高、タイの洪水なども貿易収支の下押し要因となっています。』

ほう。

『このように昨年の貿易収支の赤字には様々な要因が複合的に作用していると考えますが、このうち、震災に伴う供給制約やタイ洪水の影響については一時的なもので今年以降の輸出入には影響を与えないと考えています。』

『こうした中、先頃発表された貿易統計速報によれば、1月の日本の貿易収支は▲1.5 兆円となり、1979年以降で最大の赤字額となりました(図表3(2))。これには、今年はアジア地域の春節が2月から1月へとずれたことによる輸出の落ち込みという特殊要因が大きく影響しているとみています。』

なるほど。

『この貿易収支に、国際間のサービス取引にかかる費用の受取および支払を計上するサービス収支、海外からの利子・配当金等の受取・支払等を計上する所得収支、政府の食料援助など無償資金協力や国際分担金などを計上する経常移転収支の3項目を加えたものが経常収支です。2011年の経常収支については、貿易収支の赤字を主因に大幅に減少しましたが、黒字を維持しています(前掲図表3(1))。これは、これまでの直接投資や証券投資からの利子や配当などの増加によって、所得収支が大幅な黒字となっているためです。』

『先行きについても、約250 兆円にのぼる対外純資産が存在するもとで、所得収支の黒字が維持されていく可能性が高いと考えます。したがって、貿易収支の赤字が急速に拡大していかない限り、経常収支の黒字トレンドは、当分の間、変わらないものとみています。』

ということで、あと金融政策の話とか、成長戦略の話とかもあるのですが、そんなに変わった話をしている訳でも無いので、本命は記者会見という所ですな。

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2011/07/29

○亀崎審議委員会見から

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1107d.pdf

・為替と金融政策

まあ足元で為替がアレなのと、講演でも為替の話があったので為替と金融政策に関する質問があった訳でして、質疑の後半はほぼ全面に渡ってその話になっているのがチャーミングなのですが、途中から質問がヘタクソで「今すぐ為替対応で金融政策を実施すべきか」とか聞くだけ無駄(そういう質問されたら「為替を直接の対応として金融政策を実施するわけではない」と答えざるを得ないので質問としての出来が悪い)な応答になっているのが残念な所です。

ということで、その件に関しては前半部分の質疑応答がよろしおすえとゆーことでそこの質疑を引用。

『(問) このところ円高が進んでおり、本日も77円70銭台まで円高が進んだようですが、現在の円高についてどのようにお考えでしょうか。輸出に与える影響も含めてお聞かせください。』

『(答) 最近の為替相場の動向をみると、円の対ドルレートは円高方向で推移しています。また、対ユーロでも欧州周縁国におけるソブリンリスク問題の影響などから1ユーロ113円前後と、このところ概ね円高方向で推移しています。』

さいですな。

『為替円高については、原油や食料品といった原材料などの輸入コストを押し下げるというプラスの面もありますが、震災後の落ち込みから持ち直す途上にある日本経済に対し、輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じて、マイナスの影響を及ぼす可能性があるため、私としては極めて慎重にみています。』

極めて慎重キタコレ。

『やや長い目でみても、高い法人税率やFTA/EPA交渉の遅延、日本の震災リスク、そして先程の電力供給懸念など、企業立地に不利な条件が多い中、さらなる為替円高が加わることで、企業の海外シフトの加速や、中長期的な成長期待の低下が生じないか、しっかりとみていく必要があります。』

講演でも強調しているように見えた産業空洞化リスク懸念を改めて示すとな。

『いずれにせよ、日本銀行は、先行きの経済・物価動向について、為替変動の影響を含めて注意深く点検しながら、日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路へと復帰するという目的達成のため、必要な施策をプロアクティブに実施していくべきだと考えています。』

ということで、円高に関しては産業空洞化リスクと絡めて懸念しているというのは把握した。


で、その後こんな面白い質問があってですな。

『(問) 2点質問させて頂きます。1つ目は、円高についてです。最近円高が進行しているにもかかわらず、株価が比較的底堅い動きになっていると思います。これについて、円高の企業マインドへの波及経路が少し弱いという感じがするのですが、円相場と株価の関係、企業マインドとの関係をどのように分析しているのでしょうか。(2点目は米国の債務上限法案関連なので割愛)』

『(答) 1点目の円高傾向にあるにもかかわらず株価が底堅い状況にあるということについては、円高の企業マインドへの影響はどうかという主旨のご質問だと思いますが、これは日本経済がショックから立ち直っている途上にあるということが要因の一つにあると思います。もう一つは、足もとの円高が日本経済のファンダメンタルズを素直に反映しているのかというと、私は若干疑問を持っています。』

円高がファンメタから乖離発言キタコレ。

『このところの為替相場の動きをみると、例えば、欧州のソブリンリスクの問題において、ストレステストを終え、ギリシャの支援を行うといったニュースでも動いています。足もとでは、猶予期限が目前に迫る中での米国の債務上限引き上げ問題の動向も為替相場にかなりの影響を及ぼしているというように思います。(以下割愛)』

まあ何ですな、こうやって質問すると足元の為替市場に関して懸念してるのねっていうニュアンスの発言が出てくるねえと思うので、中々良い感じの質問だったように思えます。

んでもってこの質疑応答とは別の話ですけど、確かにまあ株価が妙にサガランチ会長になっているので円高円高言う割にはハルマゲドン臭の薄い展開となっているように(金融市場的には)見えるのでありますが、日銀のETF購入が効果出しているのでありましたら、追加策で何かまた訳の判らん自己満足成長基盤強化とか、既に散々スプレッドが潰れてどう見ても民業圧迫状態となっているCPとか社債の買入をここから更に拡大とかゆーよーなご勘弁いただきたいような策をやるよりも実はETF買いの拡大してた方がよっぽどハッピーじゃねえの(誰も損しないし^^)という気がしてきたのは何かの気のせいか幻ですよねきっと(^^)。

#まー企業の円高耐性が強まっているのではないか、という分析もあるようですにゃ


一方、最後の方の質疑は途中からグダグダになるのですが。

『(問) 円高に対する政策対応についてお伺いします。先程、プロアクティブに対応されるということでしたが、円高が企業収益などに影響を与える前に政策対応するといったような、さらなる金融緩和の必要性についてどのようにお考えでしょうか。』

まあここまではヨロシと言う感じでして、答えが長いので前半割愛しますが。

『(答)(前半割愛)日本経済が物価安定のもとでの持続的成長を達成するために何が必要なのか、またどういう手段あるいは施策を講じるべきかをあらゆる選択肢を排除せずに、また受動的に受け止めるのではなくて、主体的に能動的に必要な施策を講じていくべきだと考えています。従って、あらかじめこうであるということを申し上げるということではなく、先程申し上げたように金融政策決定会合のその日まで、刻々と動いていくこの金融経済情勢を常に考えながらその必要性を考えるということであって、今現在、何か手を打つのかと言われれば、今現在はそれを考えていません。』

という事で、まあこれはこれで対応について別に消極的というわけでもないように読めるのですが、何故かこういう質問が次に来るのだ。

『(問) 今の質問とも関連するのですが、先程、円高の影響について極めて重要な局面であるといわれましたが、そういう情勢認識であると、やはり政策対応が必要になってくるのではないかと思います。逆にそういう極めて重要な局面にあるにもかかわらず日銀は何もしないとなると、これはプロアクティブとはいえないのではないかと思いますが、改めて政策に対する姿勢をお聞きしたいと思います。』

『(答) 私が申し上げている極めて重要な局面というのは、このところの円高傾向が実体経済にどのような影響を与えるかということです。為替相場そのものを目的に金融政策を行っているわけではありません。』

という答えになるのは普通なのでして、質問の方が為にする質問(わざとこういう答えを出させようとしている質問で建設的な態度に欠けるうんこ質問)にしか読めないざんすけどねえ。答えはまだ続く。

『足もとの円高は、先程ご質問にもありましたように米国の債務上限引き上げ問題の影響を受けていると考えられます。この円高が定着するのか、さらに進むのか、またこれが短期間なのか、もっと続くのか、そしてそれは実体経済・企業・家計にどう影響して、目的である持続的な成長の達成を阻害していくことにならないか、といったことを非常に慎重に見極めなければならない重要な局面にあるという意味で申し上げました。当然のことながら、そういう全ての点検をして必要と判断した場合は、プロアクティブにアクションを起こすということです。』

ということですから、これ普通に考えて「円高定着によって実体経済に悪影響を与えるならば何らかの措置が必要と見ています」という答えをしているようにしか読めないのですけれども、この質問者は続いてこういう質問を。

『(問) さらなる金融緩和についての先ほどの質問のところで、あらかじめこうであるとはいえないとおっしゃった点についてですが、今現在、何らかの措置を取る必要はないとおっしゃられたのでしょうか。』

まあ以下しつこく念を押しているのですが、この質問者が何考えてこういう流れの質問をしているのかさっぱり意味が判らないですな、というかまあ意味は判るのですが、要はこの質問者は「日銀は足元の円高に対して消極的で何もしなくてケシカラン」というフレームに当て嵌めるというのが結論にあってそれに合わせた質問をしてるんでしょという感じではございます。

いやまあ円高対応で何かする言いましてもたぶん米国の債務問題だの何だのとかやっている今まさにこのタイミングで何かやるよりも米国ネタや欧州ネタの材料がある程度見えた所でやった方が効きが良いでしょ(とは言うものの、その効きが良い政策って残ってましたっけというのはあるが・・・・・)とゆー感じはするのですけどにゃ。


・質疑の所でこれはほほーという所で

ここは「ほう」と思いましたというのが3ページの所にあるんですが。

『(問) 特に浜岡原子力発電所の運転停止が当地の経済活動に対してどのような影響を及ぼすとみているのかお聞かせください。』

『(答) 浜岡原子力発電所の運転停止が、直接的にどのような影響を及ぼしているかという定量的なデータを持ち合わせていないので、残念ながらお答えできません。ただ、浜岡原子力発電所の停止の問題は、個別の問題というよりも、全国的な原発再開に向けた動きに繋がる大きな問題だと考えられ、浜岡原発に限定して考えることは、日本経済への中長期的な影響を考えるには必ずしも十分ではないと思います。』

と亀崎審議委員の話の後に会見要旨では珍しく支店長が登場(^^)。

『(答)<櫛田名古屋支店長> 浜岡原子力発電所の運転停止の影響について少し補足させて頂きます。当地も含めてサプライチェーンの復旧から生産活動がまさに回復しようとしていた時に、浜岡原子力発電所の運転停止の報が入りましたが、地元経済界では衝撃をもって受け止められました。もっとも、その後、企業サイドの努力――自動車業界などでの休日シフトや中部電力による休止していた火力発電所の再稼働など――によって、経済活動に大きな影響を与えずに済むところまできています。その将来的な意味合いとしての問題は、亀崎審議委員がお答えした通りですが、浜岡原子力発電所の運転停止自体が当地の経済活動に大きな影響を及ぼすことは回避できていると認識しています。』

まあ支店長が登場というのもこの手の形で会見要旨が出た時に初めて見た気がするのですが(^^)、原発の停止に関する経済に与える悪影響について日銀も懸念してますよってゆーメッセージと言いますか、まあグダグダの政治状況に対してアチャーと思っているのでしょうなあというのは伝わる所ではあります(一応最後のところでフォローは入ってますけど)。

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2011/07/28

ということで亀崎審議委員講演から。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110727a.pdf

○景気はややハトで物価に関しては比較的強気とな

本文14ページで説明用の図表が16ページあるという相変わらず盛大な量になっているのは亀崎審議委員クオリティなのでまあそれはそれとしまして、全体を読んで感じた第一印象はそんなところでございます。

ということでまず講演の順序とは違いますが物価に関しての亀崎さんの説明を引用。

『次は、物価情勢です。国際商品市況は、新興国の経済成長などを背景に上昇してきました。国際金融情勢の不安定化に伴い、最近では弱含む動きもみられていますが、引き続き高値圏で推移しています(図表5(1))。これを反映し、日本の輸入物価や、国内における財の企業間取引価格の変動を示す国内企業物価指数も、高水準となっています(図表5(2)、(3)、6)。』

図表の内容は上記URL先で確認してちょ。

『こうした中、家計の財・サービスの購入価格の変動を示す、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)は、今年の4月、2009 年3月以降約2年間続いた前年比マイナスから脱し、プラスに転じました(図表6(2))。このように、日本経済はデフレから脱却する方向での動きを続けています。こうした背景には、既往の国際商品市況の上昇のほか、需給ギャップの縮小があります(図表7)。』

需給ギャップ縮小とな。

『先行きも、国際商品市況の上昇や需給ギャップの縮小を背景に、生鮮食品を除くCPIの前年比は、小幅のプラスで推移するものと考えています。ただ、こうした見方にも様々な不確実性があります。例えば、国際商品市況の大幅上昇や、日本経済の下振れによる需給ギャップ縮小の遅れ、経済への悲観的な見方による人々の中長期的な物価見通しの下振れ、などの可能性が考えられます。』

ほう。

『ところで、来月にはCPIの基準改定が予定されています。この基準改定に伴って、CPIの前年比は下方修正される可能性が高いと思われます。とはいえ、統計の改定で経済実態が変わる訳ではなく、日本経済がデフレから脱却する方向にあることは確かだと思います。』

ということで、CPIの基準改定に関連して物価安定の理解の実現が遅れるリスクに言及した山口副総裁講演と比べてみますと、この物価に関する下振れリスクに関する説明があっさり味にも程があるという感じでして(ただまあ亀崎さんの場合講演テキストと会見のトーンが微妙に違う場合があるので会見の方もきちんと確認する必要があるのがこれまた仕様なのですけれども)、経済情勢に関する部分との温度差が結構ありますにゃあという印象がありますな。


○というわけで経済情勢だが先行きの「空洞化懸念」を亀崎さんも指摘のようで

でもってここの前の部分に経済情勢に関する見通しの話があります。亀崎さんって背景説明から話をおっぱじめるのでやたら長い(けどまあどういう話をしたいかが判るのでそれはそれで良いのですけど、こーゆー引用する時には取捨選択に悩むのよねえ^^)ので端折って引用するざますわよ。

・海外経済

『足許では、回復ペースが鈍化しています。すなわち、米国は、家計を中心に住宅バブルの崩壊で毀損したバランスシートを抱えており、回復になかなか弾みがつきにくい中、日本の震災や既往の原油高の影響から減速しています。欧州は、ドイツは好調ですが、財政状況の悪いギリシャなどの周縁国は落ち込んでおり、全体として緩やかな回復に止まっています。一方、中国、ブラジルなどの新興国・資源国は、高成長が続いています。もっとも、インフレ圧力を抑えるための金融引き締めの影響から減速感が出始めた国や、日本の震災による部品不足から生産が鈍化している国もみられます。』

で、先行きですが。

『先行きも、世界経済の回復基調は続くものとみていますが、欧州周縁国の財政悪化、新興国・資源国の景気過熱、国際商品市況の高騰などリスク要因も多く、その不確実性は高いものと考えています。』

だそうです。

・国内経済

『今回の震災による落ち込みは、被災による直接被害、部品不足等による間接被害、あるいは電力不足などにより生産・販売が困難となった供給制約に、先行き不安や自粛ムードによる家計や企業のマインド悪化が加わったことによるものです。リーマン・ショック時とは違って外需に大きな変化はなかったため、その後の設備復旧の進行や節電の取り組みなどにより供給制約が和らぐとともに、速やかに持ち直しに転じました。足許では、輸出が増加に転じているほか、家計や企業のマインドが幾分改善する下で、国内民間需要も持ち直しつつあります。』

先行きですけど、

『先行きについては、供給制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくに連れ、海外経済の回復による輸出の増加や、復興需要の顕現化などから、今年度後半以降、緩やかな回復経路へと復していくものとみています。もっとも、こうした見方に関しては、やや長い目でみた場合、下振れリスクを意識する必要があると思っています。』

ほうほうそれでそれで?

『短期的には、サプライチェーンは着実に復旧する方向にあるほか、夏場の電力供給に対する多少の不安はなお残るものの、当初の懸念ほどには経済活動の大きな障害とはならない可能性が強まっています。』

『一方、海外経済については、不確実性が幾分増しており、日本経済にとっての当面のリスクも、供給面から需要面にシフトしつつあります。また、やや長い目でみれば、定期点検後の原発の再稼働問題などを背景に、電力供給に関する不確実性が幾分増しています。為替円高や高い法人税率、FTA/EPA交渉の遅延といった、製造業の立地に不利な条件が多い中、さらに電力供給懸念が加われば、企業の海外シフトが加速しかねないため、大いに懸念しています。』

ということで、「需要面が想定よりも伸びないリスク」に加えて「空洞化リスク」に関する指摘をしていますな。この部分に関しては展望レポートやら先日からの山口副総裁講演、白川総裁講演でも指摘していますけれども、亀崎さんの今回の講演では「原発再稼動問題に端を発する電力供給問題」に加えて「円高」を指摘し、更に規制問題とかFTA/EPA問題などを指摘していまして、企業の海外シフトが起こり得る要因について列挙している辺りに亀崎さんの懸念、というかまあ亀崎審議委員って三菱商事出身ですから、そーゆー意味では実業界(金融屋ではなく)から見た場合の現在日本の政治状況のうんこっぷりが一般事業会社をして海外シフトをさせる要因になりますがな、という点に関してより一層実感として強い懸念をもっている、という事なのではないかと存じます次第。


○日本経済の復興に向けて、という小見出し部分から少々

最後の章が『5.日本経済の復興に向けて』というものでして。

『ここからは、やや長い目でみた日本経済についてお話しします。バブル崩壊以降の日本経済は、幾度かの景気循環はありましたが、均してみれば低成長を余儀なくされ、デフレにも陥った「失われた20 年」となりました。そこに襲った今回の震災は、さらなる大きな痛手となっています。日本経済が低成長から脱して再び輝きを取り戻すためには、東日本のみならず、日本経済全体の復興に向けた抜本的な対策が必要です。』

というころで、例によって例の如くまず最初にこれまでの日本経済の高度成長と低成長の
状況と要因に関する説明があるのですがそこはスルーしまして。

『このように、高度成長終了から現在に至るまで、日本経済の成長力が低下していった理由は、これまで申し上げた通り、@後発者利益の得やすさ、A生産年齢人口の増加、B工業製品のライバル不在、といった好環境が徐々に失われていったことにあると思います。そうであれば、元の高成長に戻るにはその環境を取り戻せばよいのでしょうが、世界が大きく変化した現在、容易ではありません。そこで、時代の変化に合わせて観点をやや変えた、新たな成長モデルの構築が求められます。』

『まず、後発者利益の面では、モノづくり・輸出立国という観点だけではなく、いかに豊かになるかという観点を加えればどうでしょう。例えば、様々な改革で長期低迷から脱した英国やドイツ、豪州など、高負担・高福祉で国民の満足度が高い北欧諸国、競争原理を活かして高成長を遂げ豊かさを実現しているアジアNIEs など、観点を変えれば日本が学ぶべき先達はいくらでもあります。』

ほほう。で、2番目の生産年齢人口増加の話はスルーしまして3番目の論点ですが。

『世界市場でのライバルとの戦いに勝利するには、得意分野の高付加価値化を一段と進めることが重要ですが、既存の技術を活かしながら新分野へ挑戦することも欠かせません。(具体的な部分を割愛します)こうした企業の取り組みを促すには、時代に合わなくなった規制の緩和も必要です。また、世界のライバルと渡り合っていくための前提として、FTA/EPAの締結国を増やすなど競争条件の改善も求められます。そのためには、第一次産業の生産性を高め競争力を強化して、経済成長と第一次産業が両立する道筋をつけることも必要ですが、今回の大震災は、地域の実情に応じて、経営の大規模化や効率化を進める機会ともなるのではないでしょうか。』

ということで、ここでも規制緩和と自由化の話が出ていまして、まあすっかり放置プレイ状態になっているFTA/EPAに関する話を何とかしろやゴルァという話をしたいというのは良く把握しました。


で、ここの最後の最後にこんなのが。

『(3)日本銀行の取り組み

日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路へと復帰するため、中央銀行としての貢献を粘り強く続けています。こうした金融政策面からの取り組みも、日本経済の復興を支援するはずです。今後も日本銀行は、その目的の達成のために必要な施策を、プロアクティブに──すなわち主体的に、能動的に──実施していくべきだと考えています。』

ほうほうという感じですけれども、先ほどの部分で円高に関する言及が入っている事とこの部分を関連付けて考えると「ということは円高進行に対応して日銀は何かするんでしょうか」という発想が湧いてくるというものでありまして、詳しく見てないというか詳しくは本日会見要旨が公表されるからそっちを見てからという事になりますけど、情報ベンダーでみた時には「円高対応で金融緩和を実施」という直接的質問については否定的なコメントをしたように報道されていましたな。

ただまあ足元で政策委員の皆様が次々と円高懸念の話をして、そこに空洞化懸念というより大きなネタを絡ませてきますと、今申し上げましたように、円高対応で何かやるのかいなという印象は浮上するように思えます。でそれって何か日銀やる手段あるんかいと考えますと・・・・・

まー今般の円高って日本が要因というよりは他がもっとうんこだから円に来てるという代物でしょうから、正直言って為替市場に作用するように日銀が単独でやれる事って(白川総裁が会見場に天狗のお面を装着した腰ミノ一丁で現れていきなりファイヤーダンスを踊りだすとかでもすれば話は別ですが^^)中々厳しいでしょという風に思うのでありまして、政府が頑張って腰の入った為替介入しないと市場インパクト無いでしょ(それが適切かどうかという話はここでは措く)と思う訳で、それこそ基金買入で長期国債(と言ってもまあ残存2年ですけど)の買入拡大の実施をアナウンスすると同日にいきなり政府が円売り為替介入を打ち込む位の露骨プレー(で持って1週間だと思うが・・・・・orz)をいれるとかでもしないとねえとゆー所でしょうか。まあむつかしいんジャネーノと思う次第でしゅ。


○おまけですがここは改めて「ほうほうそれでそれで」の部分

金融政策に関する部分なんですけど基金買入の説明ね。

『これは、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促すことで、通常の金融政策の操作対象である短期金利の低下余地が乏しい中でも、一段の金融緩和効果を得るための施策です。特に、相対的にリスクの高いETFやJ−REITを日本銀行が買い入れることが呼び水となって、市場参加者の投資姿勢が積極化すれば、リスク・マネーの仲介が円滑化し、企業の資金調達環境は改善するものと考えられます。』

まあこの説明は前からしている話ではあるのですが、QE1とかQE2の説明との比較という意味で見た場合に、日銀のこの理屈も味わいがあるなあと思うのであります。前もその話したと思いますけど、この基金買入というのもQE1とQE2のハイブリッドみたいな存在で、リスク性資産の買入に関する話をした場合はQE1的な意味合いになるし、国債の買入の話をした場合はQE2的な意味合いになるというのを改めて認識すると共に、じゃあ米国でQE3をやるとした場合、どっちの方向になるのやらというのが中々ワクワクテカテカな所かなと思います。何かQE1的なリスク性資産の買い入れになるような気がせんでもないのですけどね。

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2011/02/04

○亀崎審議委員会見:政策委員会の中心見通しにちょっと近づいたのかな??

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1102a.pdf

『(問) 2点お伺いします。1点目は、講演の中で踊り場局面が短期間で終わるとの見通しを話されていますが、踊り場を脱して回復に復していく時期は具体的にいつ頃とみていますか。もう1点は、足許じりじりと円高が進んでいますが、その背景・原因と日本経済への影響についてどのようにみているかお聞かせください。』

『(答) 1点目の具体的にいつ頃踊り場から脱するかとの質問ですが、本日の金融経済懇談会の挨拶でも申し上げた通り、日本経済は緩やかに回復しつつあるものの、昨年の秋以降は、海外経済の減速、エコ関連施策の段階的な打ち切り、円高進行の影響から景気は踊り場局面にあります。もっとも、最近の経済指標をみますと、海外経済は減速局面を乗り越えたとみられることから、輸出は早晩回復してくるものと思います。また、エコ関連施策打ち切りの影響は、自動車メーカーが補助金終了後に新型車を投入するなどの戦略によって生産や販売が幾分持ち直していることなどからすると、いつまでも経済の足を引っ張ることはないと思います。このほか、円高の進行が一服していることもあります。』

ほほう。

『実際、11月、12月の鉱工業生産指数、それから12月の実質輸出がプラスに転じております。こうしたことから、日本経済は「一服」の状態を短期間で終えて、再び緩やかな回復経路に復していく可能性が高いと考えています。その時期について、ピンポイントで何月と確定的なことは申し上げられませんが、これから春頃にかけて徐々に「一服」の状態から脱していく可能性が高いとみています。』

ということで、先日の総裁定例会見とトーンがそんなに変わらないという感じでありまして、従来はどちらかと言えば執行部よりは景気の現状およびリスク認識を厳しめにみていたというイメージの亀崎審議委員でしたが、亀崎さんの景気認識が進んだのもあると思いますけれども、足元の状況改善を受けて執行部が逆に前のめり感を出さないように慎重な物言いをしているのもあるのかなあとは思いますがどうっすかね。

『それから円高進行の問題ですが、円高が急激に進んでいくという一頃の状況からは一服感があります。確かにここ数日、81円台の状況まできておりますが、為替の影響というのは企業収益とか、企業や家計のマインドに与える影響が大きいと考えますので、注意深くみていきたいと思います。為替については、急激な変動は望ましくないと考えています。この点、今後とも注意深くみていきたいと思っています。』

ということで、為替に関しては今後も注意ということですわな。

国際商品価格上昇に関してですが、交易条件の悪化についての点検が必要、という点をちゃんと指摘していますわな、まあ当たり前ちゃあ当たり前ですが・・・

『(答) このところの国際商品市況の上昇は、ベースには新興国の強い実需、そして天候不順等の供給ショック、さらには投機資金の流入といった金融要因等、複合的な要因によってもたらされていると思っています。そのうえで、経済・物価に与える影響ですが、資源価格をはじめとする国際商品市況の上昇が日本の経済に及ぼす影響については、資源価格の上昇の背後にある新興国・資源国の高成長に伴ってわが国の輸出や生産が増加する効果と、一方では、交易条件の悪化によって資源国に所得が流出する効果を、よく点検することが大事だと思います。私は、今回の中間評価にあたっては、こうした両面の効果を点検した上で、先行き、緩やかな回復経路に復していくという10 月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って推移すると評価しました。(以下割愛)』

てな感じで、この会見のトーンとしては亀崎さんのいつもの慎重さは見受けられますけれども、従来のように執行部の見通しよりも明らかに弱いという感じでは無くなっているようだなあと思いました。質疑応答がそんなに多くないのでまあこんなもんです。

あとおまけですがこの質疑は中々。

『(問) 冒頭のお答えにもありましたが、県内の経済関係者は、どちらかというと緩やかな回復という部分で前向きな発言が多かったのでしょうか。出先企業と地場企業で二極化との発言もありましたが、大勢としては前向きな発言が多かったのでしょうか。』

『(答) 達観して申し上げれば、厳しいながらも持ち直しているという、お話でした。いずれにせよ厳しいわけですが、そうした状況の中で、「もうどうしようもない」ということではなく、むしろそれに「どう立ち向かっていこうか」という前向きな姿勢を私は感じ取りました。』

ほほう。

『特に、印象に残っている言葉としては、「他力本願ではだめだ」、「行政頼みではだめだ」、「自らが切り開いていかないとだめだ」、「従来型の同じやり方ではもうだめだ」と、進取の気風に満ちたご発言がありまして、非常に感銘を受けました。こういった長い経済の停滞の中で、「どうやって成長に繋げていこうか」という気持ちが今のような言葉に表れているのではないかと思いました。』

まあ金融政策と関係ない話ですが、イイハナシダナー的な質疑応答でしたので(^^)。

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2011/02/03

まずは亀崎審議委員講演から。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110202a1.pdf(本文)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110202a2.pdf(図表)

○トーンは上昇気味だがリスクはやはり下方重視っぽい感じかな

前回の講演が7月28日なので直接比較するのはちとアレですけれども、前回は割と公式見解よりも弱く見ているという感じが確り伝わって来る内容だったのですが、今回は基本的な見方に関してはそんなに差が無い(ただし若干弱めは弱め)感じです。ただしリスクに関しては下方重視という風に読みましたがどうっすかね。

と言う訳で世界経済に関してですが、もう思いっきり端折って世界経済のまとめの所から。

『今後も、世界経済は、新興国の高成長と欧米先進国の低成長という二極化の下で、回復を続けるものとみています。もっとも、過剰債務問題を抱える欧米先進国は、何らかのショックで内需が抑制されやすい脆弱な経済環境にあるため、経済の下振れリスクが高いとみております。欧州周縁国を巡る国際金融市場の動揺が、世界経済に再びショックを与えるリスクにも注意が必要です。』

『一方で、生産、所得、支出の好循環メカニズムが作用している新興国や資源国では、金融緩和の修正を進めていますが、先進国の金融緩和がもたらす余剰資金が投資先を求めて流れ込む中、成長が一段と上振れる可能性もあります。ただ、それがインフレや資産市場の過熱をもたらす場合には、強い引き締め策が必要となるため、やや長めにみれば下振れリスクでもあります。』

結局両方とも下振れリスクですな(^^)。でまあこの辺りの認識はそんなに現在の政策委員会の中心的な見通しとは変わりは無いと思いますが、新興国の上振れは結局下振れですよというのを引き続き強調という所ですな。


んでもって日本経済ですが。

『昨年秋以降は、緩やかに回復しつつあるものの、海外経済の減速や、エコ関連施策の段階的な打ち切り、円高進行の影響などから、景気は踊り場局面にあります。現在は、この踊り場の先、再び上へと向かう階段を歩んでいくのか、あるいは越えられずに下り階段を降りていってしまうのかの正念場にあります。』

と、ちょっと慎重かなとは思われますが、その先行きに関しては・・・・

『幸い、海外経済は減速局面を乗り越えたとみられることから、輸出は早晩回復してくるものと思います。また、エコ関連施策打ち切りの影響は、自動車メーカーが補助金終了後に新車を投入するなどの戦略により、生産や販売が幾分持ち直していることなどからすると、いつまでも経済の足を引っ張ることはないように思われます。このほか、円高の進行が一服していることもあります。』

つまり輸出や生産、為替がコケなければ大丈夫ですと。

『そのため、日本経済は、踊り場局面を短期間で終え、再び緩やかな回復経路に復していく可能性が高いと考えています。その結果、雇用・所得環境や設備投資の改善傾向は続くものと思います。』

ということで、基本的なトーンは割と政策委員会の中心的な見通しに近くなっているのではないかと思われますがどうでしょう。前回はどちらかと言うとハト派全開っぽい講演内容だったので、それと比較すると中心的な見通しに近づいてきたイメージなんでございますけど。

『ただ、先行き不透明感が強い中で、家計も企業も、積極的に前向きの支出を行おうとはしないと思われるため、力強い回復は望めないでしょう。』

ということで、まあこの辺は慎重なトーンと言う感じです。


○リスク認識というより問題は構造問題であるとな

この辺は亀崎審議委員が従来より説明している「日本経済の成長力強化」という話に繋がる、と申しますか、講演の後半でその点にスペースを割いて説明しているのですけれども、亀崎審議委員の景気に関する先行きリスク認識としては、国内に関してはそもそも論の世界であったりする次第でして、先ほどの景気先行き認識の続きに先行きの不確実性の話がありまして。

『もっとも、こうした見方には不確実性があります。まず、海外経済には先程述べたような上振れ、下振れのリスクがありますが、それが日本の輸出をはじめとする企業活動全般へ与える影響が考えられます。』

とまあこれは良いとしまして。

『また、国内には、人口減少などにより将来の成長期待が弱まり、年金問題や財政赤字の問題などの不安要素とも相俟って、家計や企業の支出意欲が一段と低下するという下振れリスクも考えられます。一方、そうした不安が和らげば、前向きの支出増加に繋がる可能性もあるものと思います。』

どう見ても構造問題です本当にありがとうございましたorz

つーことで、亀崎審議委員が懸念する日本経済の先行きリスクは循環論ではなくて本質的には日本経済の構造問題ですよ、ということになっておりまして、まあそういう意味では亀崎審議委員がタカ派バリバリになるというのは今後も中々考え難い所ですなあと思います。講演の中で景気認識部分と同じくらいのスペースを取って説明しているのが、『4.物価安定の下での持続的成長経路への復帰に向けて』という章であります。

『次に、日本経済の構造的な問題について触れたいと思います。これまでお話ししてきたとおり、足許の日本経済は緩やかに回復しつつありますが、成長力が弱いためデフレが続いており、バブル崩壊後の「失われた10年」は、今や「失われた20年」となりました。このまま「失われた30年」に陥らないためには、どうすればよいでしょうか。』

ということで、その先に『(1)日本の経済成長過程』、『(2)成長力の再強化のために』とありまして、(;∀;)イイハナシダナーなお話が続くのですが、金融政策関連の話ではないので引用はパスしちゃいますけど、内容的には「ほほー」という感じであります。

色々と話をしていますけれども、骨子としては(1)生産年齢人口の減少対策としての育児支援強化や労働者の新たな能力開発を支援するような積極的な雇用政策、(2)規制緩和ならびに、高成長の継続を前提とした社会制度設計の見直し、(3)年金や財政に対する将来不安の解消として年金制度改革や財政構造改革、というような内容と読みました(亀崎さんの趣旨と違ってたらスイマセン)です、はい。

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2010/07/30

相変わらずPCはうんこだわ市場ちゃんは市場ちゃんでこれまたうんこという事で、日々元気が出ないですなあマッタク。

まずは亀崎審議委員会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1007d.pdf

○自律回復シナリオにはやや懐疑的もそこまでのハトでは無いとな

昨日ご紹介した講演の所でもネタにしましたが、当然ながら会見での質問も出る訳でして。

『(問) 本日の挨拶の中で、今後、これまで日本経済を引っ張ってきた海外の輸出と政策効果が剥落していくとのお話をされていましたが、秋口以降の日本経済のイメージ――自律回復にきちんとバトンタッチしていけるのか、あるいは一旦、踊り場のような状況になってしまうのか――について少し詳しくお話頂ければと思います。』

で、その答えですが。

『(答) 本日の懇談会でもお話しましたが、ご指摘のようにこれまで日本経済は、主として海外経済とエコ関連施策の2つの要因によって押し上げられてきました。ただ、水準としては、まだ、リーマン・ショック前より低いところにありますので、自律的な動きが主導する力強い回復が始まっているとは言えないと認識しています。』

というのが現状認識。

『先行きにつきましては、海外経済は、在庫復元や景気刺激策の効果が減衰していく下で、現在、高い成長を遂げている国々も持続的な巡航速度に移行していく可能性が高いと思われます。そうすると、日本の輸出も増加基調は続くものの、そのペースは次第に緩やかになっていくと思われます。』

で、その説明部分を割愛しまして結論部分。

『基本的には、私は駆け込み需要やその反動といった振幅を日本経済が吸収し、トレンドとして緩やかな回復傾向を辿っていくと思います。一時的に伸びが停滞する――期間的には非常に短いですが――可能性がないとは言えません。例えば、今年10〜12月期辺りが考えられるかも知れませんが、基本的には振幅を吸収し、緩やかな回復傾向を辿っていくと考えています。』

ということで、まあそんなにバリバリのハトでは無いけれども、何かやや微妙にハトテイストを感じますわな。というか白川総裁の発言が基本的に強気トーンっぽいので、比較感でハトっぽく見える、というのもある気はしますです、はい。


○プロアクティブに行動するとは??

これまたオモロイ質問が。

『(問) 2点ご質問です。1点目は、本日の挨拶にありました、委員の持論であるプロアクティブについてですが、3月に行われた講演と違って、成長基盤強化についてプロアクティブにやるということなのか、成長基盤に限定せず、色々なところでプロアクティブなのか、ちょっと分かりにくいという声が市場関係者からありましたので教えて下さい。(2番目は後ほど)』

「市場関係者からありました」って札幌から東京に電話取材でもしたの??というのは兎も角として(^^)、さてそのお答えですけど。

『(答) まず、プロアクティブですが、これまでも私は金融政策については、プロアクティブに実施してきたつもりですし、今後の金融政策に当たっても、プロアクティブに対応していくと言っております。私は、常々、日本銀行はプロアクティブに、すなわち、主体的に、能動的に適切な政策を実施していかなければならないと意識してきました。日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路に復するためになすべき最大限の努力をプロアクティブに行っていきたいと考えており、今後も金融政策についてはプロアクティブに行っていくということです。従って、成長基盤強化に限ったものではありません。』

一段落中プロアクティブが6回も出てくるとは何事ぞ(^^)、というのは兎も角としまして、この話は亀崎さん割と良く強調しますな。まあ実際にやるのかやらんのかという前段階で「いやもう必要な事はドンドンやりますよ」的な見せ方というのも重要なんじゃないかなあとあたしゃ思いますけどにゃ。

つまりですな、折角追加緩和とかしているのに、その緩和実施において正直者であらされる所のどこかの総裁様のように、「何かそんなに効果があるか判らないけど渋々実施しているんですよねえ」的な雰囲気を漂わせてしまいますと、効くもんも効かなくなる恐れだってある訳でして、そらまあインチキは何度も効かないから正道を踏むというのは全くの正論であってその通りだとは思うのですけれども、それはそれとして、昨今のバーナンキ議長や、暫く前の福井前総裁などのようなインチキ力満載攻撃というのも「病は気から」じゃないですけどこれまた考慮して然るべきものなのかも知れませんわな。

#と、書いているあたくしが福井総裁時代のインチキ満載振りにいつも悪態をついていたというのは過去ログを見ると判るのですが(自爆)


○円高に関して

先日の山口副総裁講演および講演後の記者会見でもこの文脈での話があったのですけれども。

こんな質問がありまして。

『2点目は、足もとは幾分落ち着いていますが、為替円高についてです。今のところ日本銀行は静観の姿勢と言われていますが、何らかの形で円高が実態以上に進んだ場合の考えられる対応策について、亀崎審議委員のご意見というか、何が出来るか、何が出来ないかを教えて下さい。』

その答えですが。

『2番目の円高についてですが、短期的には輸出に対して下押し要因になりますし、設備投資、あるいは個人消費にも影響してくるかも知れません。ただ、影響の度合いというのは色々な要因によって左右されると思います。』

とは何ぞやという事ですが。

『円高が進行しているということですが、日本が巨額の対外債権を抱えていることを理由にして、相対的な逃避通貨といいますか、安全資産ということで需要が高まっているのが一因かと思いますが、輸出に対しての下押し要因は短期的にはあります。しかし、世界経済の回復の状況や企業収益の動向、あるいは金融市場や金融システムの状況等々によってその影響の度合いは変わってくるのではないかと思います。』

これまた山口副総裁の発言と同じニュアンスの話ですな。

『現在の状況をみると、世界経済は回復しているほか、企業収益や企業の業況感は改善傾向にあります。また、わが国の短期金融市場、クレジット市場は安定しています。わが国の金融システム、金融仲介機能、これは米国、欧州に比べて遥かに安定しています。こうした点を踏まえると、円高の影響はありますが、先行きのわが国の経済は回復していくというシナリオを変えることはないと思います。』

『勿論、為替が経済・金融全般にどのような影響を及ぼすかということについては、常に見極めていく必要がありますが、為替の特定の水準を前提として金融政策を行う訳ではありません。引き続き、注意深くみていく必要があると考えています。』

とまあそ〜ゆ〜話がここもと出ているのは何ですかという話ですが、まあ勝手にあたくしが思うに、足元でドル円ベースの円高傾向が続いていて、昨年11月末の水準(12月の頭に新型オペ導入の臨時会合開催ですな)の86円台前半とか(ちなみにその頃のユーロドルは1.5近辺でしたな)になって来ると追加緩和まだ〜っていう思惑が高まってくるでしょう、という辺りをここもと意識しているんでしょうという所かと(なお、株価は日経平均で11月27日の終値が9000円カツカツ水準でした)。つまり為替市場がオリャオリャと金融緩和を催促する事に対して、「為替が円高だからすぐに追加緩和する訳じゃねえよ」と宣言しているということで、山口副総裁に続いてハト的な亀崎さんもこの文脈でお話してますので、まあ日銀的には円高から来る追加緩和への思惑を牽制するとゆーことなんでしょうな。

#ただまあそれで政治圧力の方を跳ね返す事ができるのかは・・・難しいんじゃないですかねえ

以上が亀崎さんの会見ということで次は別ネタ。

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2010/07/29

お題「亀崎審議委員講演は今回もややハト的」

PC不調が止まりませんよって時間が少なくて困りますな。

ということで今日は亀崎審議委員講演から少々。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1007b.pdf

○現状の景気認識について

亀崎審議委員は景気認識が政策委員会の中心対比で比較的弱めの話をするのが仕様のような感じですけれども、冒頭の『(1)経済の現状』部分ではこのように纏めています。

『このように、日本経済は、主として海外経済とエコ関連施策の2つの要因に押し上げられています。しかし、これらの影響が及びにくい分野での回復の動きはまだ鈍いため、景気が回復しつつあるとの実感が湧かない方も多いのではないかと思います。また、昨年末から今年初にかけて年率5%前後という高めの成長が続きましたが、水準としては、リーマン・ショック前よりまだ低いところにあります。そうした意味で、国内民間需要の自律的な動きが主導する力強い回復が始まっているとまでは言えないと考えています。』

ということでして、展望レポートなどではどちらかというとこの辺りに関して「前向きな回復のメカニズム」という所を強調している訳でして、例えば白川総裁の7月15日の定例記者会見ではこのように説明していますわな。

『以上ご説明したように、景気回復の起点は新興国の力強い景気回復であり、これが製造業へ、それから非製造業へ、そして家計へと、その期待される波及ルートを辿り、徐々にではありますが波及していく動きがみられています。これは、展望レポートの想定した基本的なメカニズムに沿っているということです。』(7月15日白川総裁会見)

でまあこの白川総裁の発言と、亀崎さんの講演テキストの上記引用部分を比較すると、ちと亀崎さんの方が厳し目なのかなという印象。

ただまあそこだけ比較するのも何でして(汗)、全体観の説明の中では亀崎さんはこのような説明をしていますので念の為。

『日本の輸出は、全地域向けで増加傾向を続けています(図表6)。これが生産の増加をもたらし、設備投資の持ち直しや雇用者所得の下げ止まりに向けた動きにも繋がっています(図表7)。』

『政府のエコ関連施策は、家電のエコポイント制度と、自動車のエコカー減税・補助金が中心です。こうした施策は、各商品の価格対比での大幅な高機能化の進行に加え、テレビ放送の地上デジタル波への移行や、自動車の車齢長期化などといった背景もあって、潜在的な買い替え需要を呼び起こし、対象商品の販売増加に大きな効果を挙げています(図表7(3))。それだけでなく、こうした施策は消費者が販売店へと足を運ぶきっかけとなり、対象外の商品、例えば、薄型テレビと連動性のある録画機や、最新の掃除ロボットなどの購入にも繋がっているようです。こうした耐久消費財への支出増加は、生産の増加を通じて経済に好影響を与えています。』

ということで、まあ海外経済の回復と政府のエコ関連政策の効果の波及については説明しているのですけれども、ただその結論として白川総裁は前向きの循環メカニズムが効いているというような話をしており、その一方で亀崎さんの場合は循環メカニズムまでの言及がない(そこまで行っているのかは怪しいでしょ、という感じですよね)のが小さいようで結構大きな認識の違いなのではないかと思われまする。


○先行きに関しては下振れリスクの説明が多い

次の『(2)経済の先行き』から。

『次に、日本経済の先行きについてです。まず、これまで経済を押し上げてきた2つの要因の力は、今後、弱まっていくと思います。』

まあこの辺に関しては展望レポートでも同じような認識ではありまして、回復のペースがいったん弱まるというのは政策委員会の中心的な見通しと大きく違う訳では無いのですけれども、先程ああだこうだと引用したように、現状認識のキモの部分に「経済の前向き循環メカニズムによる自律的回復」というのがございまして、展望レポートやらその後の総裁会見での話などを総合するとロジックの中にどうも前向きの循環メカニズムというのが混入されている感じがする訳ですけれども、亀崎さんの場合はそこまでの話が無いですからね。

『すなわち、海外経済は、在庫復元や景気刺激策の効果が減衰していく下、現在高い成長を遂げている国々も持続可能な巡航速度に移行していく可能性が高く、それに伴って日本の輸出も、増加基調は続くもののそのペースは次第に緩やかになっていくものとみられます。エコ関連施策は、エコカー補助金が9月末、エコポイント制度が12月末にそれぞれ終了するため、その後に耐久財消費の反動減が見込まれます。』

ただまあメインで見ている亀崎さんのシナリオでもいきなり日本経済大失速とかいうのまでは見ていないので、まあそーゆー点で言えばあたくしがああだこうだとハト派ハト派と申し上げていますが、そう極端に見方が違うという訳でも無いとゆーことでもあろうかと存じますけどね。

『ただその一方で新しい動きも出てくるのではないかと思います。例えば、既に支給が開始された子ども手当ては、個人消費の押上げにそれなりの寄与があるものと思われます。また、これまでの稼働率の上昇や企業収益の改善を背景に、設備投資の回復や雇用者所得の持ち直しが見込まれます。これらも踏まえると、先行きの経済は、緩やかな回復傾向を辿っていくものと考えています(図表8)。』

ということで、前向き循環メカニズムを全否定している訳でも無い、という事ではございまする。


で、リスク要因ですけれども・・・・

『こうした見通しには、不確実性があります。』

『まず、上方向の不確実性としては、新興国・資源国経済の強まりが考えられます。』

ほほう。

『このところ、新興国・資源国では、金融緩和の修正を図る動きが広がってきており、中国では不動産市場の過熱抑制策なども採られていますが、金融緩和を続ける先進国などからの資金流入基調は持続しているように窺われ、こうした動きが新興国・資源国の資産市場の過熱感を高めるとすれば、景気は上振れる可能性があります。そうした場合、日本の景気も、輸出の増加を通じて上振れる可能性があります。』

ほほう。

『ただ、新興国・資源国では、景気の上振れが過熱にまで繋がる場合、その後に強い引き締め策を必要とし、先行きの景気下振れ要因ともなり得るため、手放しで喜ぶべきものとは限らないことには留意しておく必要があります。』

ということで、結局最終的に下振れかいという所ですが、これまあ実は白川さんとかも確かそういうニュアンスの説明をしているのですが、何せ白川総裁の場合は先日ご紹介した会見にもありますように、その話の前段階の「新興国・資源国の上振れ」話をせっせとするのが仕様なもので、「上振れ」の方ばかりがクローズアップされてしまうという残念な事になるのでしょうな。

『下方向の不確実性としては、国際金融市場の不安定化があります。』

さよですな。

『ギリシャ等の信用不安問題は、当該国の緊縮財政による内需悪化のみならず、欧州経済全体について、自国への問題波及を避けるための財政引き締めや、これら諸国向けの債権を持つ金融機関の資金仲介機能の低下、市場全般の不安から来る支出意欲の低下などを通じて、下振れ要因となる可能性があります。』

『日本については、これら欧州周辺国向けの債権は少ないほか、欧州への輸出比率も全体の1割程度に止まるため、景気への直接的な影響は小さいと考えられます。ただ、日本の主要な輸出先である中国や米国は、欧州への輸出比率がいずれも約2割あり、間接的に影響が生じる可能性もあります。』

『また、ユーロ安円高による輸出競争力への影響や、金融市場の不安定化による企業の資金調達面への影響なども、景気下振れリスクとして認識しておく必要があると思います。』

ということで下振れリスクの方がてんこ盛りという感じです。

あとまあ何ですなと思うのですけど、金融市場の不安定化云々というよりは、今後の展開を考えた場合は問題は金融市場発では無くて、欧州のバランスシート(銀行と政府部門の両方)調整に伴うユーロ圏の実体経済の悪化などの方が懸念されるのではないかと思われるのですけどね。つまり銀行で言えば保有する証券の値下がりやらヘアカットがどうのこうのというよりは、バランスシート調整から景気に下押し圧力が掛かって、それが貸出債権の劣化をもたらすというどこかの国でやっていた碌でもない負の連鎖ですわな。


○でまあ物価に関しても下振れ警戒

現状認識としては「落ち込みからようやく戻って来ている」という説明ですがそこの引用は割愛。

『先行きについても、国際商品市況の上昇や需給ギャップの縮小を背景に、生鮮食品を除くCPIの前年比マイナス幅は縮小していき、来年度にはプラスの領域に入る可能性も展望できると考えられます(前掲図表8)。ただ、こうした物価の先行きにも、実体経済と同様に、上下双方向の不確実性があります。』

『まず、上方向の不確実性としては、新興国経済の上振れによる国際商品市況の上振れ等が考えられます。』

『一方、下方向の不確実性としては、景気回復が想定よりも遅れることなどにより、人々の先行きに対する悲観論が広がった場合に、今のところ安定している中長期的な物価についての見方が下振れ、実際の物価も下振れてしまう可能性が挙げられます(図表13)。今後とも、これらの点には十分注意していく必要があると考えています。』

どう見ても下振れ警戒です本当にありがとうございました。


○金融政策ではこれまたいつものフレーズが

んでまあ金融政策に関する説明がその後長く続くのですけれども、基本的にはごく通常の説明(金融収縮への対応措置、デフレ対応としてのターム物金利低下を促す措置、デフレ対応としての成長基盤支援強化措置、に切り分けた説明です)をしているのでその辺りは華麗にスルー。で、その次にデフレ対応としての成長基盤強化の必要性の説明がまた長いのですが、最後の最後に亀崎さんが金融政策の説明をする時に最後に必ず出てくる決め文句が今回も出ましたので(^^)、そちらを引用するでござるの巻。

『私は常々、日本銀行はプロアクティブに──すなわち主体的に、能動的に──適切な政策を実施していかなければならないと意識してきました。今後とも、日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路に復帰するために成すべき最大限の努力をプロアクティブに行っていきたいと考えています。』

いつもの発言なのですが、まあこうやってやる気を見せるのは重要なように思えるのですけどね、今のような状況ですと特に。


○デフレに関して

こちらの話が割と長くて、今回の講演のお題の一つのようでござんす。最初にデフレの弊害の説明をやや丁寧に行っているのですが、そちらはパスしまして、その先から。

『物価上昇率が低下傾向にあるのは世界の先進主要国・地域において共通の現象です。ただ、食料・エネルギーを除くベースでみてマイナスが続いているのは、日本だけです(図表19)。その主要な理由としては、需給ギャップのマイナス幅の大きさが挙げられます。日本の需給ギャップは、90 年代後半以降ほぼ一貫してマイナスであり、しかも他の主要国対比で大幅となっています(図表20)。これは、バブル崩壊以降、国内需要が長期に亘って停滞する一方、それに見合わない過剰な供給力が、あまり調整されずにきたためです。』

『国内需要の停滞が続いたきっかけは、バブル崩壊後、各経済主体のバランスシート調整が長引いて前向きの支出が出にくかったこと、特に金融機関の不良債権処理の遅れが金融仲介機能を弱め、新たな成長分野への資金供給が十分に行われなかったことにあると思います。』

『各経済主体のバランスシート調整圧力は、2000年代入り後にかなり解消されました。但し、その後も、それまでの長期に亘る国内需要の停滞が、この間に起こった日本社会の人口減少への転換とも相俟って(図表21)、各経済主体の先行きの成長期待を押し下げたため、前向きの支出は戻らないまま推移しました。一昨年のリーマン・ショックは、そうした状況に追い討ちをかけるように需要を大きく落ち込ませ、現在に至っております。』

『一方、需要が停滞する中でも過剰な供給力があまり調整されなかったのは、様々な規制や保護政策などにより、需要の変化に合わなくなった様々な生産要素が残存したことにも、その一因があると考えられます。』

なるほど。

『今後も成長期待の低下が続き、需給ギャップがスムーズに縮小していかなければ、各経済主体が予想する先行きの物価上昇率が低下する可能性があります。そうなると、商品やサービスの需要者が支出を先送りしようとする意識を強めたり、供給者が需要喚起に向けて価格引き下げスタンスを一段と強めたりするかもしれません。そうした下では、同じ需給ギャップでも実現する物価上昇率は低下し、デフレからの脱却はさらに難しくなってしまいます。今のところ、中長期的な予想物価上昇率は安定していますが、今後とも低下しないようにしていくことが大切です。』

ということで、デフレからの脱却に向けてどうするの、という話になるのですが、まあ上記の話の展開から判りますように、海外新規需要(主に新興国)の取り込みや国内需要の掘り起こしという話になっていまして、成長基盤強化策に関してもその流れでの実施ですよね、というような流れになっている訳ですな、引用してると長くなるのでまあ割愛します。

#引用大会でしたな

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2010/03/29

まずは亀崎審議委員会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1003c.pdf

質疑は短かったのですが、妙にツッコミがゴリゴリと来ていました。

○まあこのくらい威勢良い話をした方が良いのではないかと

講演の中で「プロアクティブに行動」という話がありましたが、それは何ぞやという点と、では今回の追加緩和措置に関する質問に対する答えから。長いので途中から。

『その間、金融政策や財政政策を積極的に活用することによって先行きに対する安心感を作り出すとともに、各経済主体が様々なイノベーションや地道な努力を重ねて内外の需要を創出し、生産性向上を反映した中長期的な所得増加期待を高めていくことが肝要だと思います。』

『こうした考え方のもと、日本銀行は、今後とも極めて緩和的な金融環境を維持して、わが国経済が物価安定の下での持続的成長経路に復していくことを粘り強く支援していく考えです。そして、その過程においてどのような措置を講じるかということについては、その時々の経済・物価情勢、金融情勢を踏まえて判断していきますが、その際、プロアクティブに政策を行っていくということは、適時適切に、遅れたり早まったりということではなく、その状況に最も適した政策は何なのかということを、追い詰められたり、圧力を受けたり、様々な雑音のようなものを考えながら行っていくわけではなく、自らの判断で実行していくということであり、受け身ではないということです。』

白川総裁にもこの位威勢の良い言い方をすれば良いのに(どうせなんちゃって緩和政策を実施するのだったら、威勢よくやってますよって言えば・・・)って感じが致します。

『このところ景気は幾分上振れ気味で推移していますが、日本経済が物価安定の下での持続的成長経路に復するには、なお時間を要する状況が続いています。こうした中では、金融政策の面からまだ可能な施策があるのであれば、プロアクティブに実施することが肝要であり、そうした意味で今回は企業金融支援特別オペの受け皿としての額以上の大幅拡充を行うことを考えました。景気は若干上振れ気味ですので、実質的な効果はより強いのではないかと考えています。』

ということで、まあやってる内容は兎も角、積極的な緩和姿勢を見せるというのは良い傾向なのではないかと存じます(^^)。


○これは良い言いくるめロジック

同じ質疑の中ですが、新型オペの増額に関する部分の説明はこうなっております。

『今回は、やや長めの金利の低下を促す措置の拡充を行ったわけですが、なぜこのタイミングで行ったのかという点については、まず企業金融支援特別オペが今月末で終了することも踏まえ、その受け皿として固定金利方式の共通担保資金供給オペを拡充することを考えたことが挙げられます。』

それは去年の10月に既に話がありましたが・・・と先日は突っ込みましたが。

『昨年10 月に企業金融支援特別オペを3月で完了すると決定したときは、この共通担保資金供給オペは入札方式しかありませんでした。現在は、企業金融支援特別オペと同じ0.1%の固定金利方式の共通担保資金供給オペという手段があります。』

で、さっき引用した「プロアクティブに実施」という話に繋がるのですけれども、「このオペは長目の短期金利を引き下げる効果があるので通常の共通担保オペよりもより効果が高いからこちらにしました」という話で攻めていますな(^^)。

実際は全体のオペとの兼ね合いがあって、あまり長いオペを乱発すると短いオペが窮屈になる(輪番オペを増やし過ぎると短期オペが窮屈になるのと同じ理屈)ので必ずしも金利押し下げができるのかというとこれがまた難しい面があるのですけれども、そこまでの話はまあ一般向けにしてもシャーナイナイという所ではありましょうな。

で、何がプロアクティブなのかというツッコミが更にやってきたのでそれに対して答えているのですが、これがまた中々いい感じで言いくるめっぽくて結構(誉め言葉ですので為念^^)。

『(答)現在の金融政策・金融環境をみると、まず1点目は、政策金利は0.1%、実質的に金利ゼロの状態です。2点目は、短期金融市場に潤沢に資金を提供する措置を採っています。3点目としては、日本経済が持続的な成長パスに乗っていくよう極めて緩和的な金融環境を維持していくということをコミットしています。』

ここまでは前置き。

『しかし、物価の上昇には相応の時間を要する状況です。経済の実態は、輸出の増加を受け、生産も伸びてきていますが、まだ政策効果および在庫復元効果が大きく効いている段階で、民間最終需要の自律的回復に繋がっている状況ではありません。こうした中で、特別オペが3月で終了するのを控え、その完了を決めた時点ではまだ存在しなかったこの3か月物、0.1%という固定金利オペを拡充することが適当と考えた次第です。何に対してプロアクティブかと申しますと、金融緩和度の一層の深化に対してプロアクティブに手を打ったということです。』

何か判ったような判らんような説明ですが、何となく積極的な姿勢を出しているというのは伝わりました(^^)。


○しかし今回の質疑はやたら突っ込む突っ込む

で、上記応答の次の質問が更にツッコミ。

『(問)金融緩和度合いの一層の拡充にプロアクティブに行動されたというお話でしたが、先行きもデフレが続くということに対してプロアクティブに行動されたというのであれば、例えば4月末の展望レポートにおける物価の見通しで先行き2 年間マイナスが続くということになれば、また一段とプロアクティブに行動しなければいけなくなるということでしょうか。』

何と言う連続ツッコミ。これは高知の激ウマな食べ物を食いに東京から記者が出張したと見ました(^^)。

『(答)プロアクティブというのは、先取りという意味ではありません。受け身ではなく、金融緩和を図るのに遅れてもいけない、早すぎてもいけない、総合的に経済・物価、金融情勢を判断して決断したということであって、決して先取りではありません。』

威勢の良い話をし過ぎたのでトーンダウンですかそうですか。

『また、展望レポートを出した後に何かをしなければならないかどうかについては、まだ全く何も考えていません。政策運営は、常に、その政策を決めるその時、その当日まで、物価だけでなくて実体経済も金融市場も考慮して、その時に最適な、しかも効果のある施策を判断するということです。展望レポートが出た時にまた何か措置を講じなくてはならないといった考えは今の私の頭の中には全くありませんし、そうした見方は適切ではないと思います。』

まあだから本当は4月に展望レポートで厳しい物価見通しを示した所で追加緩和(のようなもの)した方が政策として整合性が取れたのですけれども、どこぞのアホウ新聞がキャンペーン張るもんだからねえ。


○で、威勢の良い部分へのツッコミが続く

次の質問もこれまた中々。

『(問)各経済主体が先行きの持続的な成長に対する自信を取り戻すために、日銀は何ができるとお考えでしょうか。政府はデフレ脱却のために日銀にさまざまなことをやってほしいと言っています。日銀として、自信を取り戻すための施策ができるのなら、なぜ今すぐにやらないのでしょうか。もし限界があるのであれば、できないことをできると幻想を振り撒いていることになってしまうようにも感じますが、その点いかがでしょうか。』

何と言う鬼ツッコミ(^^)。

『(答)日本銀行が発信している様々なメッセージについて読み込んで頂ければ、日本銀行が金融政策だけでデフレから脱却できると思っているという理解は成り立たないと思います。デフレ脱却のために必要なものは、基本的には需給ギャップを解消することであり、そのためには生産性を上げなければいけませんし、経済の成長がなければいけません。また、政府も企業も前向きに努力していく必要があります。』

で、日銀は何をするかというと、要するに緩和的な金融環境を継続するですよという事のようで。

『こうした中で日本銀行としてできることは、金融政策の面からその実体経済活動を支えていくということです。従って、日本経済がデフレから脱却して、成長経済に復していくためにできるだけのことを行うということは、日本銀行として、金融政策の面からでき得ることを行うということであって、需給バランスを解消する、成長性を高める、あるいは企業の収益を上げるということを直接的にできるわけではありませんし、そうした万能の力を持っているわけでもありません。しかし、日本銀行として、金融政策を通じてその成長を支えていくという点については、精一杯の努力を粘り強く続けていくということです。』

ということで以下割愛しますが、まあこの辺はそうですなあという所でございます。


○中長期的な物価予想の下振れ懸念に関して

最後の質疑応答は中々味わいがあります。

『(問)今回の講演の中で、「中長期的な物価上昇率の予想は変わっていないが、1年先には物価が下がると思っている人は増えている」と言及されていますが、この点を懸念して先週の追加緩和を実施したということでしょうか。』

『(答)挨拶の中では、今のところ、中長期的な予想物価上昇率には大きな変化はないように窺われるが、1年後の予想物価上昇率が低下しているほか、1年後の物価が下がるとみる人の割合も一頃より増えていると述べました。こうした物価に対する短期的な見方が中長期的な見方にも波及するとデフレ脱却が難しくなるという側面は、追加緩和を実施したさまざまな要因の中の1つではあったと思いますが、そこだけを見て決めたわけではありません。金融緩和度の一層の深化は、そういった数字もみながら考えたということです。』

これはあたくしの勝手な想像(妄想)なのですが、この部分に関してはまだ政策委員会の中で意見が分かれている論点なんじゃネーノという感じがします。また、あるいは別の妄想になりますけれども、日銀は実はこの論点に関しては相当の危機感を持っているのだけれども、モノが物価というそう簡単にホイホイと上がったり下がったりするものでも無いのが相手ということで、下手に危機感を表明してなお一層のマインド悪化を惹起(政府のトンチキなデフレ宣言の二の舞)しないようにしているのか、まあ微妙なんですけれども、世の中の物価上昇に関する期待の変化に関してはかなり重い論点なんだなと思います。

とまあそんなところで。

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2010/03/26

○亀崎審議委員講演

亀崎さんは講演ではコンセンサス対比ハトなのを示しますし、会見でも結構フリーダム発言をするのであたくし的には楽しく見ておりますが。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1003c1.pdf

・世界経済について

途中を端折って結論を。

『以上をまとめますと、世界経済は、様々なリスクはあるものの、全体として緩やかに回復しており、今後も回復傾向は続くとみられます。ただ、各経済主体のバランスシート調整圧力が強く、自律的な回復に向けた動きが緩やかに止まる先進国と、そうした圧力がなく、世界の金融・財政政策の間接的な効果もあって力強く成長している新興国や資源国とのコントラストは、今後、より際立っていくものと思います。』

つまり先進国の回復は遅いと。

・日本経済ではこのような指摘を

『先行きについては、まず、これまで景気の押し上げ要因であった、在庫復元や政策の効果は次第に剥落していくものとみられます。そうした中、厳しい雇用・所得環境の下、足許で持ち直している個人消費は横這いとなる可能性があります。一方、設備投資は、更新需要を中心に先送りが限界に達し始めることから、次第に持ち直しに転じてくるものと思います。従って、緩やかな持ち直し傾向自体は続くと考えています。』

やや慎重ですな。

『ただ、企業からは、先行き見通しの不透明感から、国内での投資や雇用の拡大を躊躇する声も多く聞かれており、慎重にみていかねばならないと考えています。』

この部分ですけれども、2月の決定会合議事要旨の中で先行きリスクの中でこのような話がありましたな。確か引用したと思いますが。

『また、何人かの委員は、海外への直接投資の増加による国内での設備投資の圧縮や、企業の根強い賃金抑制姿勢による家計所得の伸び悩みなどから、好循環メカニズムが想定どおり作動しないリスクがあると述べた。』(2月決定会合議事要旨より)

ということで、本件に関しては亀崎さんも指摘していますが、他の委員でも指摘している向きがありまして、毎度お馴染みの「企業収益改善による好循環メカニズム」に関してちょっと大丈夫なのという話が出ている点は、時間軸(のようなもの)の長期化につながる論点ではないかと思われます。


・デフレに関連して

デフレに関連しての話も執行部あたりとはちょっとテイストが違う感じがするです。

予想物価上昇率に関しての話の辺りから。

『需給ギャップと物価上昇率との関係は図表15のとおり、あまり明確ではありませんが、局面ごとに分けてみると、需給ギャップのマイナス幅が拡大すると物価上昇率は低下する、という緩やかな関係があるように思われます。ただ、長期的には、同じ需給ギャップでも実現した物価上昇率は次第に下がってきています。』

なるほど。

#ちなみに図表は→http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1003c2.pdf

『これは、各経済主体が抱く中長期的な予想物価上昇率が低下したためだと言われています。誰しも、ある商品の価格が今後さほど上昇しない、あるいは低下すると見込めば、急いで購入する必要はないと思うでしょう。そうした状況下では、商品の供給者は購買意欲を喚起するため、価格設定を低めとすることが考えられます。経済全体でこうした度合いが強まれば、同じ需給ギャップでも実現する物価上昇率は低下するものと考えられます。』

企業の価格設定行動という点に関してですけど、BOEのMPC議事要旨(読んだのにまだご紹介してなくてどうもすいません)を見ますと日本とはまた違った企業行動が見られて面白いのよ。

『Business contacts of the Bank’s Agents reported that a combination of credit constraints, weak cash flows and uncertainty about the economic outlook had made them wary of cutting prices so far.』(3月のBOEのMPC議事要旨の第20パラグラフより)

で、このwaryってのが「用心深い」という事でして、金融環境が悪くて借入の確保に不安があって、キャッシュフローに対して不確実性がある中では、キャッシュフロー確保の為に価格引き下げに慎重という話だと思うのですが、これはやはりベースのインフレが違うと企業の価格設定行動も違ってくるんですなあと思ったのでありまする。

ちょっと脱線しましたがその続き。

『70 年代から90 年代前半にかけて、中長期的な予想物価上昇率が低下した理由としては、原油価格の落ち着きや、趨勢的な円高とそれに伴って拡大した内外価格差の是正圧力、規制緩和などの競争促進策が、関連商品の価格を引き下げるとともに、一般物価全体の上昇予想を抑えたことが考えられます。但し、90 年代後半以降は現在に至るまで、需給ギャップと実現した物価上昇率との関係は安定しており、今のところ、中長期的な予想物価上昇率には大きな変化はないように窺われます。』

『ただ、先にみた通り、1 年後の予想物価上昇率が低下している上、1 年後の物価が下がるとみる人の割合も増えています(前掲図表12)。こうした見方が、中長期的な予想物価上昇率の低下にまで繋がる場合には、デフレ脱却が困難となりかねません。従って、予想物価上昇率の動向は、十分注意してみていかなければならない重要なファクターだと思います。』

ということで、結構デフレ定着に対して警戒しているという事ですな。


・デフレのコストに対してもきちんと説明

きちんと「デフレのコスト」というコーナーがあるのが中々。そらまあ商社出身ですからデフレのコストに関しては実感もありますもんね。

『デフレ特有のコストには、名目金利がゼロ以下にならないことによって実質金利が経済の活動水準に見合う水準まで下がらなくなることが挙げられます。また、負債の実質価値が上がることで債務者の負担が増し、景気が悪化する面もあります。』

というのはまあ一般的に言われますが。

『債権者にとっては資産の実質価値が上昇することになりますが、通常、お金を貸す人より借りる人の方が、支出性向──収入のうち支出に回す分のことです──が高い傾向にあるため、経済全体としての支出額の縮小に繋がるからです。』

これは直感的に判り易い説明(^^)。

『このように、デフレには、インフレにはない特有のコストがあることに注意が必要です。』


・追加緩和に積極的な姿勢とな

最後の所でこんな説明を。

『日本銀行は、必要な場合には、プロアクティブに政策を実施していかなければならないと、常々意識しており、先週の金融緩和措置もそうした方針に基づいたものです。今後とも、各経済主体が先行きの持続的な成長に対する自信を取り戻すことができるよう、最大限の努力をしていきたいと思います。』

これはまた追加緩和にも積極的っぽい言い方。いやまあだから急に追加緩和という訳でもないでしょうけれども、(長くなるので引用をスルーしちゃいましたが)この前の部分で新成長戦略と中期財政フレームに関する期待感を表明していまして、まあ次に追加緩和のようなものを実施という点で言いますと、6月の政府のこれら政策フレームが出てくるタイミングで呼応して成長戦略下支えという形で打って来るというのは絵として美しいと思われます。

#なお、その前の物価安定の理解と展望レポートも何かあるとは思いますけど

とまあそんな感じでハト派的な講演ですし、会見でも報道ベースだとハト全開という感じのようでしたが、亀崎さんの講演は表示形式が箇条書きっぽくて独特だったり、話の中でも独自性を出すので、本当は全部図表も含めてじっくりと鑑賞するのが吉であると思います(ので後日追加するかもしれないししないかもしれません)。

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2009/06/05

○亀崎審議委員の会見から少々:ハトさんですな

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0906a.pdf

・長期金利に関して

足元の金利上昇に関してどのように考えているかという質問がございまして、まあとりあえず模範解答という感じです。

『このところの長期金利の動きについては承知していますが、長期金利は基本的に、先行きの経済成長見通し、物価動向に関する市場参加者の予想をベースに、見通しの不確実性をバランスして水準が落ち着いていくものと考えています。』

『従って、物価や経済成長率が高い場合には長期金利も高くなるなど、経済成長率の見通し、或いは物価の見通しと整合的な水準となるように、長期金利が形成されることが望ましいと考えています。そのためには、財政規律が確保され、また、物価安定の下で持続的成長を目的とした金融政策が運営されることについて、市場の信任を確保することが大事だと考えています。』

ということで財政規律のコメントが出たのですが、それに対して別の質問で各国の長期金利上昇の原因は国債大量発行が主因と考えているかって言われまして、それに対してはこのように。

『先程も、長期金利の考え方については申し上げましたので繰り返しませんが、実際、今の金利の動きについては、一方向だけの見方があるとは考えておりません。経済の先行きに対する見方、或いは底入れ感への期待等もある一方、財政面での見通しに関する見方など、複合的な要因で金利水準が決まっていきます。そうした様々な見方、――基本的には先程申し上げたような長期金利水準を決めるプリンシプル――に基づいて決定されるものであると考えています。』

ということで、長期金利上昇に関して国債増発問題をリンクされるとあまり政策当局としては話がうまくないということですね、わかります(^^)。


・景気認識は厳しいです

これは良い質問。

『(問) 景気の認識で2つ質問があります。1つは、景気は先行き遠からず回復に向かうとの表現が使われています。先月の金融経済月報を発表された段階から、認識としては前進している、良い方向にシナリオどおり進んできている、というお考えなのでしょうか。もう1 つは、本日の挨拶で現状の景気悪化が続いているとの表現を使っていますが、総裁は4〜6月のGDPはプラスになるとの認識を以前から述べられていたかと思います。ここでの悪化というのは、何を意味しているのでしょうか。4〜6月のGDPがプラスとなった場合でも、なお悪化という表現を使うとすれば、それをどう捉えたらよいのか、お考えをお聞かせ下さい。』

で、1点目に関しては、各国の経済指標を持ち出して改善という話を。細かい数字の部分は割愛して結論はこうなります。

『今、申し上げた指数が少しずつ改善している動きを見ますと、一応、私どもが描いているメインシナリオに向かって動いているのかなという感じは持っています。』

でも悪化とは何かと。

『次に、先ほど何をもって悪化と言っているのかという点でありますが、確かに色々な指数が改善してきていますが、従来の水準と比べて見ますと、大幅に落ち込んだ後、それがやっと戻りかけているなど、水準でみてみるとまだ悪化したレベルと申し上げている訳です。』

ということで、特に金融市場が微妙に変な楽観気分になっている事に対して「おめーら最悪状態から止まったくらいで楽観すんじゃねー」と指摘したいということなんでしょうかね(^^)。その楽観を煽ってるのが経済クオリティー(ry


・非伝統的な政策の出口に関して

4月30日の決定会合議事要旨にあった「異例の非伝統的政策からの出口」問題の見解を問われたのですが。

『異例の政策の終了は、金融市場が安定しその機能を平時のレベルと判断できるまでに取り戻すことが前提となります。現時点での金融市場は、一頃に比べ全体として落ち着いてきてはいますが、今回の金融危機の根源である様々な問題につきましては、まだ解決の道筋が見えておらず、引き続き不安定な状況にあります。こうした中で、異例の政策の終了について、考える時期には至っていないと考えています。』

ということで、まあ講演でプロアクティブに今後も対応って話をしてるのだからこういう答えになるのは当然なんですが一応引用。で、その前にこんな指摘もしてるんですけどね。

『こうした政策は、異例であるがゆえに必要な期間に限って実施することが大切であるため、実施期限を設定しています。CP や社債の買入については、実施期限のほかに、適切な最低応札利率を設定することで、金融市場の機能回復とともに日本銀行への依存度が低下する仕組みを設けています。』

まあそうなんですけど、現下の「CPと短国金利逆転」の原因はどっからどう見ても企業金融支援特別オペで「金額の上限無しでサービスレートをご提供」をしていることによるものでございまして、セイフティーネットとしての社債やCP買入の話と強力過ぎじゃねえかという金利低下をさせてしまうツールとなっている企業金融支援特別オペの話はまた別問題のような気はしますけどね。

とまあそんな感じで、ハトさんな亀崎審議委員の会見でございました。

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2009/06/04

まずは亀崎審議委員の講演ですけれども・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0906a.pdf

○講演をご紹介する前に別のネタでございまして・・・・・・

今回の講演に関して報道する日経と共同通信(引用するのは東京新聞ですが共同の転電)のヘッドラインの打ち方が真逆なのに注目するという素敵な根性のあたくし。

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090603AT2C0300A03062009.html
日銀の亀崎委員「景気、遠からず下げ止まる」

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009060301000366.html
景気回復「道筋見えず」 日銀委員、先行きに慎重な見方

どう見ても真逆です本当にありがとうございました(-_-メ)。

・・・・・んじゃあ実際の講演内容はどうなのよという話なのですが、他社のヘッドライン(一々ご紹介しませんが)も概ね共同通信の線でございまして、まあ実際の内容も先行きに対する懸念の方が強いものでありまして、日経新聞だけ(実はクイックも慎重寄りのヘッドラインだったと思います)が何か全然トーンの違うヘッドラインを打って来る理由は何なんでしょうと妄想を逞しくすると色々と楽しいインプリケーションが得られるような気が思いっきりするのですが、保身の為以下自主規制(^^)。

まあその妄想方面は兎も角としてですな、ここもと大して経済状況が改善している訳でもなく、雇用・所得面の本当の悪化はこれからで、それが消費に悪影響与える可能性だって高いという状況だというのに、何だか妙に景気底打ちみたいな話が出てきて、「偽りの夜明け」に騙されて政策対応を間違えるのがリスクだという時ですから、本来「経済のクオリティーペーパー」でありますところの日経さんにおかれましては、「根拠無い楽観」に対する警鐘を鳴らすのがクオリティーペーパーとしての存在意義なんじゃないかと思うのですよね。

然るに、毎度のことではありますが、どうも経済のブームとか雰囲気で流れる動きに対してこのクオリティーペーパーさんはそれを煽る方向で記事書く傾向でもあるんじゃないですかと申し上げたくなってしまう次第でありまして、まあそんな編集姿勢で経済クオリティーペーパー然としておられる(これがそこらのどうでもいいタブロイド紙だったらどうでもいいのですが、現場じゃなくて会議室あたりでふんぞり返っているようなエライ人がこういう編集方向に煽られて現場に変なご下問をしてくるのが一番迷惑なのよね)所に日本における無用なプロクシカリティー発生の一因があるのではないかと思いますけどね。

という悪態はさておきまして(^^)。


○景気に対する見方は厳しいですね

基本的には展望レポートの線に沿って説明してるのですが、まずは海外経済から。

『まず、海外経済の現状と先行きの見通しについてお話します。足もとの海外経済は悪化を続けていますが、そのペースは一頃に比べて緩やかになっており、年内には下げ止まりから持ち直しに向かうとみています。但し、その回復力は、大変弱いものではないかと想定しています。』

ということで、国別展開をしているのですが、リスク要因てんこ盛りでござるの巻。

『国別にみると、米国については、これまで悪化一辺倒だった景気指標の中に、少しずつですが明るいものも出始め、悪化の加速度は落ちてきたように思います。

今後は、2 月に決まった総額7,872 億ドルの景気刺激策が実行に移されていけば、その効果もあって下げ止まりから回復へと向かっていくのではないかと考えています。しかし、家計の過剰な消費や借入れ、金融機関の過剰なリスク資産投資など、長期に亘って蓄積された様々な過剰の調整には相応の時間を要すると思われるため、回復の足取りは弱いものになるとみています。』

家計と金融機関のバランスシート調整に相応の時間を要するというのは資産バブル崩壊で散々な目にあった我々には違和感の無い見通しですが、こればっかりは一回食らわないと判らんということで、米国の見通しは楽観なんでしょうなとも思うのでありました。

『欧州については、経済実態を表す指標の大幅悪化が続いています。先行きについても、期待できる具体的材料には乏しいため、悪化が続くものとみられます。特に、中東欧の経済混乱が、経済の重石となってくる可能性もあり、注意が必要です。』

こりゃまた救いの無い見方で(汗)。

『中国については、輸出の減少は続いているものの、金融・財政政策の効果から景気の減速に歯止めがかかりつつあるように窺われます。これは、金融システムの問題が相対的に小さく、また潜在需要の強い新興国であることから、政策効果が出やすいためと考えられます。

しかし、先進国経済の回復は弱いものに止まり、経済の一方の牽引役である輸出の低迷が続く可能性が高いことから、ここ数年続いてきた2 桁成長ほどの力強い回復は望めないものと考えています。』

結局のところ中国様次第ということですね、わかります。


・・・・で、国内経済。

『日本については、景気の悪化は続いていますが、製造業の大幅減産の効果から在庫調整に目処がつきつつあり、これまでのような急な坂道を転げ落ちるかのような状況にはブレーキがかかってきたように窺われます。』

『先行きは、減産ペースの緩和や政府の施策の効果から遠からず下げ止まり、回復へと向かうものと思います。』

というここの所を日経さんは見出しにしたのですけれども・・・・・

『しかし、その後を展望すると、企業の生産や売上がかつての水準に戻るまでには相当時間がかかり、厳しい収益環境が続く中、設備投資の回復も緩やかなものに止まるものと考えられます。また、家計の雇用・所得環境は、むしろこれから悪化するとみられる中、個人消費も一段と弱まる可能性があります。従って、減産ペースの緩和と財政政策の効果の一巡後は、輸出の回復とその内需誘発効果に依存した回復になるとみています。』

で、肝心の輸出の回復が上記の有様なのですから、結局のところ先行き暗いじゃんという話になるのであります。

物価に関しても何気に厳しいのですよね。後で出てくるのですが、デフレスパイラル入りを相当警戒しているようでして、まー元々亀崎さんはハト派だと見られるのですけれども、益々ハト派面目躍如という感じでしょうか。特に今回特徴が出てたのは物価の見方に関して個別品目の動きやマインドに注目した指摘があることでして、展望レポートの基本的なラインよりも厳しめで見ているのではなかろうかと。

『実際、CPIの個別品目の動きをみると、依然、多くの品目が前年比プラスながらその幅を縮小しているものが増えています。これは原材料価格の下落の影響に加え、利幅を犠牲にしてでも売上数量の確保を重視せざるを得ない企業が増え始めていることを示している可能性があります。』

なるほど。

『また、先行きの物価上昇を見込む人の割合も低下しており、消費者の価格に対する目線も厳しくなりつつあるようです。そのため、企業収益や、雇用・所得環境が一段と厳しさを増すとみられる今後、前年比マイナスとなるものが増えてくるものと考えています。』

ということで。


○デフレスパイラル入りへの強い懸念などなど

以下、先行きのリスク要因などの話になりまして、財政拡大からの長期金利上昇の指摘もちょっとだけあったのですけれどもそっちはスルーして物価に関する部分に注目。

『物価面で注意すべきは、インフレ期待の動向です。経済の回復がメインシナリオ通りとならず、一段の需要不足を招いた場合、中長期の成長期待とインフレ期待が下振れる可能性があります。これは、デフレスパイラルに繋がりかねないため、大変危険だと考えます。』

ということで、この前公表された金融政策決定会合議事要旨(4月30日)で先行きの経済状況が悪化しそうになったら追加の施策を早く打つ必要ありますみたいな発言をしていた複数の委員のうちの一人が亀崎さんなのでしょうなという感じですね。

したがって、結論としてはこんな話になるのです。

『このように、経済・物価情勢のリスク要因としては下振れ方向が中心と考えられ、特に海外経済の回復力が弱く、輸出の回復が捗々しくない場合には、日本経済全体が再び落ち込む可能性も相応にあると考えています。』

ただまあ一応上振れの話もしています。

『但し一方で、中国をはじめとする新興国の成長が予想以上に加速することも、全く考えられないシナリオではありません。』

何かもうとりあえず付けてみましたという感じですが(^^)。

『また、G7諸国やスイスなど主要国の政策金利が軒並み1%以下となるなど、多くの国で低金利政策と大量の資金供給策が採られているほか、各国とも大規模な財政政策が実施されている状況下においては、過剰流動性の発生など効果が出過ぎた上に、その認知と対応が遅れることによる上振れ方向のリスクについても考える必要があります。』

『現に足もとでは、原油価格など国際商品市況がやや上昇しており、市場がこうした上振れリスクを意識していることも考えられます。』

多分「偽りの夜明け」シナリオだと思うのですが、まあ市場の反応は亀崎さんご指摘のような所では無いかと思いまする。



○そういえばこういう考え方があったわけだが

金融政策の話に関しては今般の各種措置について時系列で説明しているので、改めて確認するのには良いのですが、まあ一々引用していると終わらないのでそのあたりはスルーしまして、読んでて思ったあたくし的雑感。

『1月22 日には、企業金融に係る金融商品の買入れについての基本的考え方を公表しました。内容は図表22 のとおり、ある金融商品の取引市場の著しい機能低下が企業金融全体の逼迫に繋がっており、そうした商品の買入れが日本銀行の使命に照らして必要な場合に限り実施する、というものです。』

えーっとCP市場なんですが(以下いつもの話になるので華麗にスルー。短国との逆転現象恒常化とかもうアホかと馬鹿かと。最終投資家絶賛離散させたら角を矯めて牛を殺すにも程があるじゃん)。いや全く困ったもんでございますわよ。

ま、それは兎も角、最後の所で亀崎さんはこのように指摘しています。

『今後についても、先に述べたような不確実性の高い経済・物価見通しの下では、これまで導入した低金利政策、流動性供給策、企業金融支援策を継続して市場の不安を抑え、実体経済における需要の増加を促し、日本経済を金融面から支えていかねばなりません。また、状況変化の度合いによっては、可能かつ有効な施策をプロアクティブに考え、素早く実行していく必要があると考えます。』

ということですので、当然ながら4月30日の決定会合で異例の政策からの出口がどうのこうのという話をした人とは別人28号であることが明白ですな。会見要旨は今日出ると思いますが、報道された内容を見た限りでは亀崎審議委員は「まだ出口政策を云々するのは時期尚早」と明言していたようです。


○さて本当は後半部分が亀崎さんの本領発揮なんですけど・・・・・

で、この本文8ページ目から『4.日本経済の持続的な成長に向けて』(この見出し自体は7ページ目の最後の最後です)というコーナーが始まりまして、日本経済をより長い目で見たときにどのような事が必要になるのかという話をしています。

『今回の景気悪化から得られる教訓は、輸出依存の経済成長には限界があるという事実です。そこで、輸出関連産業の強化は引き続き重要ですが、加えて内需関連産業を育成していくことも必要になります。そうした産業の主要な柱としては、食料、少子高齢化、環境に関連する分野が中心となるのではないかと、私は思っています。

これらは内需の潜在的な成長余地が大きいため、海外経済に左右されない経済基盤の確立という面で重要だと思うからです。しかも、これらはいずれも情勢が急速に悪化しており、緊急性が高い分野でもあります。』

ということで、「食料」、「少子高齢化」、「環境」に関する話をしていて、金融政策の話とは別に面白いのですが、時間と量の都合上本日は割愛します(すいません)。

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2008/12/29

ネタは後入先出法で勘弁ということでまずは亀崎審議委員会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0812d.pdf
会見要旨は6ページなのですが、中盤から中身が濃い質疑応答です。


○今後の政策は企業金融対策強化とターム物誘導(か?)

今後の政策メニューに関する質問に対して。ですが、やたら長いので段落分けしながら。

『(答) 日本銀行としては、世界経済が減速を強めている中で、日本経済も急速に悪化し、また当面悪化が続くであろうという中においては、可能な限りの適切な策を講じていくことが必要であると思います。1 つは金融調節、もう1 つは流動性対策であり、企業の資金繰りが潤滑に行われるように、金融市場の安定化に努めていくことが、日本銀行の責務であると思います。』

なるほど。

『先週19 日の決定会合では、政策金利を0.3%から0.1%前後に引き下げたことに加えて、CP の買い入れについても検討すると決定したわけであります。目下、執行部においてCP 買い入れの具体案について、また、今後企業金融にかかるどのような金融商品を金融調節の対象としていくのかについて検討中であり、私は、現段階で特定の結論は有しておりません。最近の厳しい金融経済情勢を踏まえますと、企業金融の円滑化に資するために、金融調節面でどのような対応が可能か、また望ましいか、真剣に検討しなければならないということであります。』

ということで最初に出てくるのが「企業金融の円滑化」なのです。

『ただし、こうした措置は、結果的に、日本銀行が個別企業の信用リスクを負担するものです。主要国をみますと、かつての日本銀行によるABS あるいはABCP の買い入れ、今回のFRB のCP 等の買い入れは、中央銀行としては異例の措置であります。それだけに、今回、CP を買い入れ対象とすることを契機に、こうした金融商品に対する中央銀行としての対応のあり方について、改めてしっかりと検討することが必要と判断したわけであります。』

それはまあ左様でございます。

『CP 買い入れの具体案や、これ以外の金融商品につきましては、企業金融円滑化のためにどのような対応が考えられるか、執行部の検討結果を踏まえて、金融政策決定会合でしっかり議論していきたいと思っております。』

ということでこれ以外の金融商品ってなりますと社債か株という話になりまして、まあ買取なのではなくて適格担保要件の緩和が本線ではないかと思う(さすがに短期のCPなら兎も角、長いのを買切というのはちょっと)のですがどうでしょうか。

で、この後に「政策金利水準の変更も排除しないのか」という質問が来まして、それに対する亀崎さんの答えは以下の通り。

『(答) 金融政策については、毎回会合当日の8 時50 分まで、ぎりぎりまで考えて会合に臨んでおります。経済現象というものは常にダイナミックに動いて、常に変化しているわけであり、そのデータ、情報をすべてぎりぎりまでみて判断したうえで会合に臨んでおります。今後、現段階で想定ができないような色々な状況が起きる可能性があり、次どうするかということは全く予断を持っておりません。従いまして、先行きの金融政策運営に当たりましては、予め特定の選択肢を排除することなく、必要な措置を検討していくことに変わりはありません。』

と、ここまでは利下げ否定せず。

『ただし、今回、政策金利を0.1%に引き下げましたので、その結果、今後の政策金利の引き下げ幅は自ずと限られてきます。なぜならば、私は、短期金融市場の機能が著しく損なわれるようなことは避けるべきであると考えているからです。今後、追加的な緩和措置をとる必要が生じた場合には、より長めの金利への働き掛けや、あるいは企業金融円滑化に資する措置等を中心に検討していくことになると考えます。』

ターム物誘導をするほうが市場機能が損なわれるような気がせんでもないのでありますが・・・・ちなみに、あんまり量的緩和しないゼロ金利と、超過準備付利と誘導目標金利が同水準で資金供給がジャブジャブになってコールレートが張り付いている状態だと、実はゼロ金利の方が市場機能が生きているような気がするのですけれどもどうでっしゃろ。

ま、もっと実を言えば、コール市場よりもレポ市場の方が今となっては規模がでかいので、レポ市場で裁定取引ができるような流動性があった方が市場機能とか参加者の飯の種という意味ではメシウマだったりするような気がするのはあたくしがインターバンクよりオープンに近いポジショントークですかそうですか。


○長期国債買入に関して

その次にこんな質問が。

『(問) より長めの金利に働きかけるという場合には、長期国債の買い入れ額を増やしていくことも排除しないというお考えなのかどうかをお聞かせください。』

で、これは良い答え方であると思います。

『(答) 長期国債の買い入れは、長めの金利を下げることを目的に行うわけではありませんけれども、それが結果として、そのような形につながる場合もあるかもしれません。それはそれとして結構ですけれど、長めの金利を抑えるために長期国債を買い入れるというわけではありません。』

白川総裁もこういう答弁をして欲しいのですよ。嘘八百を言わなくても良いのですけれども、「結果としてこうなるかもしれませんねえあっはっは」というのは景気付けにはよいと思うのですよね。ちゃんと「長期金利コントロールではない」とは言ってるわけですし。

『(問) 今のお答えですが、先行き長期国債の買い入れも排除しないけれども、長期国債の買い入れをすることによって結果として長めの金利が下がることもあり得るという理解でよろしいですか。現時点で特定の政策を排除することはないということから考えると、長期国債の買い入れ増額も先行きの選択肢の1つとしてあり得るということでよろしいですか。』

『(答) 私が申し上げているのは、長めの金利を下げるために長期国債の買い入れをするということではないということです。』

『(問) 少しくどくなりますが、より長めの金利へ働きかけることを考えるといった場合に、もし長期国債の買い入れでないのであれば、どういったことを考えていらっしゃるのでしょうか。』

『(答) これに関しては、さまざまな金融調節の観点から考えなければならないので、具体的な政策については執行部にまず検討していただいて、それをみて判断していきたいと思います。長期国債の買い入れについては、あくまでも円滑な資金供給という金融市場調節が直接の目的であります。』

ということで、微妙に答えをしないですなが、「円滑な資金供給」という名目で長期国債の買入増額もありえるかなという感じですな。


会見要旨からちとズレますが、先日も申し上げましたけれども、今回の会見でも長期国債の買入を「円滑な資金供給」という名目にしていますが、従来の日銀のロジックだと長期国債の買入は「成長通貨の供給」でありまして、速水総裁時代に当座預金残高目標の拡大と長期国債の買入増額が概ねセットになっていて「マネーを増やすため」という雰囲気を思いっきり漂わせていました。

なお、もうちょっと正確な話をしますと、速水総裁時代に当座預金ターゲットを採用した時点でのリリースを読みますと、長期国債買入増額は『日本銀行当座預金を円滑に供給するうえで必要と判断される場合には』という話にはなっているのですけれども、当座預金残高目標引き上げに長期国債買入増額がセットになっているので、何となく長期国債買入増額とマネー増加が対応しているような見せ方になっとるのですな。

なお、長期国債買入に関する決定会合のリリースを並べておきますね。

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako02/k010319a.htm
2001年3月の量的緩和導入時のリリース(当座預金供給の円滑化に必要があれば増額と書いてありますよね)

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako02/k010814.htm
当座預金残高目標5兆円→6兆円に買入増額(4千億→6千億)がセット

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako02/k011219a.htm
当座預金残高目標6兆円以上→10〜15兆円に買入増額(6千億→8千億)がセット

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako03/k020228.htm
年度末越えの流動性強化策に買入増額(8千億→1兆)がセット

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako03/k021030.htm
当座預金残高目標10〜15兆円→15〜20兆円に買入増額(1兆→1兆2千億)がセット

で、福井総裁になった直後に当座預金残高目標をさっくり引き上げたのですけれども、このとき以降は長期国債買入は増えなかったのであります。

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako03/k030325.htm
俊ちゃんの当座預金残高目標増額第一弾ね。



○利下げとか企業金融円滑化強化とか

『(問) 「市場機能を著しく低下させることは、避けるべきだ」と先ほどおっしゃったのですが、今0.1%しかない金利をこれ以上ゼロに近づけないほうが良いというお考えでおっしゃっているのでしょうか。それから、講演の中で英国ブラウン首相の言葉を引用されて、「非常時には非常の策で対応するべき」とおっしゃいましたが、CP だけでなく、市場で目詰まりが著しい社債についても日本銀行が買い入れるということは検討の余地があるのでしょうか。』

『(答) 市場機能につきましては、0.1%であれば短期金融市場を殺すことにはならない、ぎりぎりの水準ではないかと思っています。一方、これ以上下げるか下げられないかということについては、私が先ほど申し上げましたように、決定会合当日の8 時50 分まで金融政策について考えたうえで最終的な判断をするわけで、今から予断をもって申し上げることは、あまりにも乱暴すぎると思います。ただ、私としては、金融市場の機能を殺すことは避けなければいけないと思っております。』

うーむ、下げる気があるのか下げる気がないのか良く判らんですな。

『それから、企業金融の円滑化につきましては、社債や株式も含め、どこまで対象にできるかということを執行部にしっかり検討してもらって、その結果をみて判断したいと考えています。例えば、銀行の株式保有状況をみますと、わが国の金融機関は2002 年以降株式の保有を大幅に圧縮して、株式保有リスクへの対応は依然大きな課題であり、私どもとしましても、中長期的にその対応が必要であると考えております。』

ほほう。

『ただ、現時点での金融機関の株式保有スタンスをうかがいますと、日本銀行による株式買い入れ再開を利用して、保有株式を売却したいとの具体的なニーズはあまり聞かれておりません。日本銀行としましては、金融機関の株式保有リスク削減に関しまして、金融機関側の今後の検討、進捗状況を見極めつつ、また日本銀行自身のリスク負担のあり方に関する考え方の整理を踏まえて、これに対応し得る有効な手立てがあるかどうか、引き続き慎重に検討していきたいと思っております。』

ということで、プルーデンスの例の奴が復活してもおかしくは無いという事のようですけれども、前回実施した時には過剰な持ち合い解消がテーマになっており、売り圧力があったのですけれども、現状でそんなに売り圧力あるんかいなという気はするんで。


○ということで

延々と丸々引用みたいになっちゃいましたが、亀崎さんのこの会見は割とこう色々と発言してますなあという感じでして、何か存在感が出ているような気もするのであります。今後も注目したいと思いまする。

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2008/12/26

○亀崎審議委員講演

どうも会見の方が面白そうなので今日公表の会見要旨を楽しみにしていますが。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0812e.htm

経済認識とかは厳しいのですが、亀崎さんは従来より経済に関しては厳しめの見方をしてるので、まあそのあたりは想定どおりとスルーしておきます(後日補足するかも)。

講演の途中から続く『4.金融危機について』っていう部分が中々面白いのですが、全部引用してたらきりが無いのでちょっとだけ。

金融危機が発生した辺りの話。

『最初の危機は、先述のSIVから発生しました。欧州のあるSIVが、保有する住宅関連資産の時価を評価できなくなったことから経営不安となり、資金繰りが逼迫して活動停止に追い込まれたのです。これを契機に、他のSIVや、その資金調達を支援していた金融機関の資金繰り困難化、各種の金融市場の混乱に繋がりました。これが、昨年8月9日のパリバショックです。その後ほどなく、米国をはじめ世界中の金融機関に問題が拡がりました。』

『証券化によるリスク分散は、大きなリスクを一部に集中させないことが利点ですが、リスクは分散しても消えずに残っていることも、また事実であります。皆が限度を越えてリスクを移転しあった結果、皆が大きなリスクを背負うことになっていた、と言えます。』

おっしゃる通りで(^^)。で、危機の拡大はリーマンショックですという話。

『リーマン・ブラザーズのように大きな金融機関が破綻したことは、世界の金融市場を極度の不安に陥れました。金融市場では、資金余剰の先はリスクがあれば運用しない、資金不足の先は担保があっても資金が得られない、という状態となりました。ここで再び、中央銀行の大量資金供給が始まりました。この時点では、ほぼ中央銀行のみが資金供給に応じるという状況でした。』

ということで、米国当局の対応が素早いとか言われてますが、本当に日本の問題を理解してたら三洋証券破綻させてコール取引やレポ取引を突然コカした事がその後の市場の大シュリンクに繋がった事くらい判っている筈で、もとはと言えばこのあたりの対応に問題があったのですわなと思うのだが、とかいつの間にか悪態になってどうもすいません。で、その危機が実体経済に波及するという話を。

『このように金融機関が弱って融資能力が低下してくると、実体経済への影響が深刻化します。特にアイスランド、ハンガリー、南アフリカなど、経済が米欧金融機関からの借入に過度に依存していた国では経済危機に陥り、IMFなどからの緊急融資を頼ることとなっています。その他の国でも、金融機関が、リスクのある融資に慎重となっています。』

『こうしたことが景気を冷やし、それが金融機関の不良債権の増加に繋がり、また融資姿勢の慎重化に繋がる、という悪循環に陥っています。このような金融と実体経済の負の連鎖が、現在、世界で最も懸念されている問題と言えます。そのため、金融機関の不良債権処理策と、景気刺激策が望まれます。大規模な景気刺激策は、中国のほか、欧州各国も手を打ち始めていますが、米国では、自動車大手の最終的な救済方法が不透明であるほか、大統領の交代期で有効な政策が打ち出しにくい状況のようです。オバマ新大統領就任後の施策が、注目されています。』

ということで。中身に関しては講演要旨読んで味噌。


ところで、金融政策に関しては施策の説明とともに良い事を仰せであります(^^)。

『中央銀行が民間企業の信用リスクまで負担するのは異例中の異例のことですが、英国ブラウン首相が言ったように、「非常時には非常の策」で対応するべきだと考えています。』

というような発言を白川総裁もして欲しいもんなんですよね。そうじゃないから出し惜しみだの一般紙(東京新聞ですが)に書かれる有様なのよね。

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2008/06/02

お題「亀崎審議委員会見」

先週金曜は久々に暴騰暴落が無かったですね(^^)。

今日は亀崎審議委員の記者会見を簡単にで恐縮。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0805c.pdf

○物価に関する亀崎委員の見解

今回の会見の半分くらいがこの話になっておりますので、まあ延々と引用という手抜き攻撃で参ります。

国際商品価格高騰の背景に関して。

『国際商品価格の高騰には、いくつか背景があると思いますが、一つは、何と言っても中国・インドをはじめとする新興国の旺盛な需要であり、この影響は継続していくものと思われます。二番目には、鉱山開発や精製設備、港湾整備等の遅れによるボトルネックが供給側の要因としてあります。三番目は地政学的リスクで、資源が非常に偏ったところにあるということです。四番目には、サブプライム住宅ローン問題を契機とした国際金融市場の混乱を受けた投機資金の流入、フライト・トゥ・シンプリシティ(商品性がシンプルな商品への資金の逃避)が背景にあるのではないかと思っています。』

日本経済への影響。

『日本経済にとっては、国際商品価格の上昇は、物価上昇要因となる反面で、資源国などへの所得流出を通じて景気の下押し圧力となる可能性もあります。ただし、資源価格の高騰は、鉱山開発向けの建設機械、油送用パイプ等の資源関連技術や、省エネ技術に優れた日本企業に恩恵をもたらす面もあります。これに加えて、資源国の景気拡大を背景として自動車をはじめとする消費財やインフラ関連財などの輸出増加も見込まれます。このため、日本の景気へのプラスの面、あるいはマイナス面の影響が今後どのような形で現れてくるのか必ずしも明確ではないと思います。』

どちらかというと亀崎さんはハト派に分類される人ですが、資源価格高騰の影響を製品の輸出という所にコメントするのはやはり商社マンらしいですねと思ったんですけど(^^)。要は輸出がコケるかコケないかというのがポイントになるんでしょうか。

さて、講演の中で(紹介しなかったんですが)「国際商品市場で日本の「買い負け」が出ている」という話がありまして、その点についての質問に対しての亀崎さんのお話なんですが、やはり商社出身だけに説明が長い、というか本人が生き生きとして説明してるんじゃなかろうかと勝手な想像をしちゃいます。

『資源は、必ずしもエネルギーだけではなく、穀物、あるいは水産物などもありますが、これらは有限であることから、需要の増加に伴って価格が上がっています。例えば、原料炭が前年比3倍ぐらいの高い価格で交渉が妥結したと報道されています。ずっと前を振り返ってみますと、原料炭というものは、鉄鋼製品をつくる際に利用されるわけですが、日本が一番大きな輸入国であったわけです。それが今現在では中国であり、さらにはインドもまた原料炭を必要としています。日本はタームで価格を決めて買い付けておりましたが、インド等はスポットで購入しています。そうしますと、昨年のようにオーストラリアで大豪雨がありますと、露天掘りが出来なくなり、どんどん価格が上昇するわけです。よって、今は、日本の要因というよりも、旺盛な他国の需要に影響される国際需給によって価格が決まっているのです。』

で、この後他の話(豚肉とかマグロとか)の話もあるのですが割愛致しまして・・・・・

『この背景には、新興国――BRICs だけの人口をみても、30 億人近くの人口がありますが――の生活水準が急激に上がり、世界の需給関係が引き締まってきていることがあります。日本が昭和30 年代後半から40 年代に急激に成長していった時にいろんな需要がもたらされましたが、同じように、大変な人口の層が生活水準を高めてきています。需給関係はそういった要因で決まってくるので、日本企業が買えない状況も起きているということです。』

で、それと国内物価への関係についてのお話ですが。

『現在のCPI の前年比+1.2%を分解してみると、エネルギー、すなわち、ガソリン、灯油、プロパンに加え、電気・ガス代などが+0.7%ポイントほど押し上げていますが、これは間違いなく日本の需給要因というよりも、先ほど申し上げたグローバルな需給関係の中での価格決定が影響しているのです。また、食料等が+0.4%ポイントほど寄与していますが、この中には、小麦や飼料など様々な商品の価格が海外の要素で上がっている面もあります。』

『このように、現在の状況は日本国内の需給関係のみではなくて、世界の需給関係の影響をグローバリゼーションの中で受けざるを得なくなっている、ということが言えると思います。』

『従いまして、CPI にしても、どのような要因で上昇しているのかをみる必要があります。原油価格は一本調子で上昇し続けてきましたが、この状態で止まっていけば、いずれは前年同月比で押上げ効果が剥落していくわけであり、そうすれば指数自体は0〜2%の中に落ち着いていくでしょう。消費者物価指数を構成する521 品目の動きについて、それが今だけではなく今後どのように動いていくのかを、よく中身をみていかなければならないと感じています。』

原油価格がこのまま上昇し続ける訳ではないのでCPIも落ち着いて来るでしょうという話にはなっていますが、食料なども上昇してますし、それが新興国の需要増加からもたらされているというお話になっております事からしますと、消費者物価指数に関しては案外上昇が止まらないリスクもあるんじゃないかというニュアンスなのではないかと。


○国際商品価格上昇と金融緩和

こんな質問がありました。

『(問) 先ほどの国際商品市況の上昇につきまして、付け加えてお伺いさせて頂きたいのですが、一部に金融的な要因を強調する説というのがありまして、昨日、日銀本店で行われましたコンファランスでも、著名なエコノミストのテイラー教授が、「国際的な金融緩和が商品市況の上昇をもたらしているのではないか」ということをおっしゃっていました。この点について、委員は、日銀に限らず世界的に見て、金融緩和がやや行き過ぎたことが商品市況の上昇をもたらしているという可能性があるのかどうか、その辺りをお伺いしたいと思います。』

微妙な答え方ですけれども・・・・

『(答) 先ほど、国際商品の価格上昇の背景について4つほど申し上げました。その中の一つに、投機資金の商品への流入がありますが、それだけの要因で価格が上昇したということではなく、4つの要因が影響していると思います。もっとも、例えば原油に限定してみますと、特に足もとの100 ドルを超えてからものすごく早い調子で135 ドル前後まで上昇した動きについては、4つの要因の中でも緩和的な金融環境というのが、どちらかといえばウェイト的には大きな影響を及ぼしているのではないかと思います。ただし、繰り返しますが、その要因の影響だけによるものではないと思っております。』

即ち、基調としての上昇は世界的な需要の増大によるものだが、足元の急速な上昇に関しては投機資金の影響というお話ですな。まあ前半でご紹介したように、基本的な見方としては新興国の需要増加によるものという認識ですわな。でもまあもっとそもそも論になると新興国の成長って商品価格の上昇であったり、国際的な投資活動の活発化によるものだったりするので、どちらが先なのという議論になるとややこしい気がするんですけど。


今回の会見は物価の話がまあメインでしたがその他少々。

○本邦金融機関に関して

荘内銀行と北都銀行の経営統合に絡んで最近の地域金融機関に関するコメントを求められて亀崎さんの発言。

『一般論として申し上げれば、わが国の金融機関は着実に経営体力を回復してきております。ただし、地域金融機関も含めて収益基盤をみていきますと、依然として脆弱であると言わざるを得ないと思います。そうしたもとで金融機関は、一層多様化する顧客ニーズに的確に応えていくことが求められているわけであります。(途中割愛)そうした努力の一環として、民間金融機関の自主的な判断として、他の金融機関との経営統合等が検討されるとすれば、それは地域の期待に応えていくうえでの一つの重要な選択肢ではないかと思います。』

大手銀行に関してはなんだかんだと言いましてもそれなりに経営基盤が確りしてきたように見えますが、地域金融機関まで目を広げるとそういう感じなんでしょうな。


○長期金利上昇について

これはまあ正直質問の方が良い論点なのですが(^^)。

『(問) 1点目は、本日の午前中に長期金利が1.8%目前まで上昇しておりまして、インフレ懸念とか債券市場の需給要因で上がっているわけですが、白川総裁は金融政策を考える場合には、短期金利だけでなく長期金利も議論の対象となると発言されていますが、今回のような景況感の改善を伴わない金利上昇は、日銀の意図せざる金融引締めではないかとの声も聞かれています。これについて委員の見解をお伺いしたいと思います。(以下割愛)』

『(答) まず長期金利については、確かにこのところ上昇気味で1.8%前後まで上昇しておりますが、こういった現在の金利水準について具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。ただ、あくまでも一般論としてですが、あまりにも急激に上がったり下がったりすることは決して良いことではないと思っています。(以下割愛)』

ということで、話はスルーされてしまいましたが、質問にあります『景況感の改善を伴わない金利上昇は、日銀の意図せざる金融引締めではないか』というのは論点として重要な所でしょうな。とはいえ日銀が何かできるのかというとこれまた難しい話なんですけど、とりあえず輪番オペが短国オペ化している現状を何とかするのは吉かと。いやまあその他に東証のシステム改悪何とかさせるとか色々と考えられますが、相手のいないことであればとりあえず輪番ちゃん何とかならんですかね。

#ということで今日も引用で増量しまして誠に恐縮至極

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2008/05/30

で、亀崎審議委員の講演ですが

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0805d.htm

○景気などに関しては大体展望レポートなどに沿っている感じ

景気に関するお話とかは概ね展望レポートに沿ったお話をしていますのでポイントだけ並べますと、

・海外景気減速や円高の影響が輸出に与える影響を注視(現実問題として米国やスペインなどは足元弱めの動きになっている)

・企業部門から家計部門への所得波及に時間がかかっており消費の伸びは期待しにくいが腰折れまでには至らず

・設備投資の伸びも鈍化するが腰折れはしない

という感じでしょうか。CPIの先行きに関しては価格上昇品目の多さや食料品などの一度上昇すると中々下落しにくい品目の価格上昇が広がっている点に触れていまして中々下がりにくいのではないかという話なのかなと。


○持続的成長への試練を新たなチャンスに

今回の講演(挨拶)では日本経済の持続的成長への課題としてどのような事が必要かという持論を展開している部分がありまして、まあ目先の金融政策には関係ない話ですが、商社マン出身としての折角のオリジナルなお話(でしょ?)ですのでこちらを読まねばなりますまい。

小見出し並べるとこんな感じです。

4.景気減速:持続的成長への試練を新たなチャンスに
 (4−1)一段のグローバル展開
 (4−2)対内直接投資
 (4−3)人材確保、労働生産性向上
 (4−4)資源・環境問題への対応
 (4−5)経済・金融活動の大きな変動の回避:歴史から学ぶ姿勢

でまあ適当に引用しますと。

・グローバル展開

『こうした環境にあって、EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)により海外経済との繋がりを一段と強めていくことの重要性は、従来以上に高まっていると思います。因みに、世界の国々の中で、二国間もしくは地域間で結ばれた自由貿易協定は200余りにも及んでいますが、わが国がこれまでに締結したEPAは僅か9件に止まっており、多くの重要な貿易相手国との間で、協定締結に至っていません。』

『また、金融機関が、企業のグローバル展開を支援する動きも少しずつ出始めていますが、今後、日本の金融業が、国際的なプレゼンスをさらに高めて、情報産業としての力を充実させ、企業のグローバル展開の支援のみならず、わが国金融市場の活性化を通じて、経済成長を支える一つの柱となることも、期待されます。』

前段は判りますが、金融機関云々は正直幻(以下悪態に付き自主規制)。で、このグローバル展開の話の中でグローバル・スタンダードという話をしているのですが、アングロサクソンスタンダードじゃない話をしているように読めるのが興味深かったりします。でも正直あたくしこの辺の話はまるっきり不勉強にも程があるので、どういうもんなのか教えてエロイ人。

『近年、経済統合を進めてきた欧州では、環境、製品品質(食品、化学)、会計などの分野で域内に共通基準を設けていますが、こうした基準は、各国の利害対立を乗り越えて策定されただけに、本質的な意義があり、規範性が強いのが特徴であると思います。こうした基準を域内で活動する外国企業にも課すことで、当該基準が、域内に止まらず、グローバルなスタンダードとなっていく例が多くみられます。』

『企業にとって、こうした基準を遵守することにはコストが伴いますが、一面では、適切な外部規律(市場規律)を自らに課すことで、リスク管理能力、ビジネス創造力を高めることを通じて、企業体質を強化していく一助になっています。実際、欧州に進出している日本企業からも、先進的で、厳格な欧州基準に対応していけば、他の地域でも通用する競争力が得られるとの肯定的な意見は少なからず聞かれています。』

『わが国としては、さらに一歩進んでそうした基準のルール・メイキングに、より積極的に関与していけば、基準設定を巡る不透明感を軽減し、企業活動の活発化に繋がることを通じて、長期的には望ましい結果がもたらされるのではないかと考えます。』

判らんので殆ど引用しちゃいました(汗)。


・移民受け入れ問題

対内直接投資の部分はたぶん普通の話なのでスルーして。

『日本の人口は、2060年には8千万人にまで落ち込み、英国(現在6千万人)を下回るという予測もあります。仮に、そうしたペースで人口が減少し、かつ高齢化が進行していった場合には、経済成長や、社会の活力が損なわれかねないと思います。』

『現在、日本における移民は約200万人、人口に占める割合にして1.6%に過ぎません。一方、近年、長期に亘る持続的成長を果たしてきた米国、ドイツ、英国は、いずれも人口に占める移民の比率が高い(それぞれ14.5%、12.7%、9.4%)ことは、認識しておく必要があろうかと思います。これらの国々では、移民増加によって、社会への影響などの面で難しい問題も生じており、国によっては、これまでの寛容な政策への揺り戻しもみられます。しかし、米欧のみならず新興国も経済力を備えつつある状況下、わが国も危機感を持って対応しなければ、国際労働市場において人材の確保は一層難しくなっていくと思われます。この点については、今後、長期的、総合的観点から検討が深まっていくことを期待したいと思います。』

どうなんすかねえ。あたしゃシロートにも程があるのでよーわからんのですけれども、本質的に移民ばっかで構成されているような米国とか、海外植民地を大量に抱えて走っていた欧州各国と日本って事情がだいぶ違うので移民政策って難しいんじゃねえのと思いますが、と言って現状を放置してますと人口減少高齢化社会なんすけどね。

以前福井前総裁もこのテーマに触れていました(今日は引用割愛しますが、亀崎さんは後半では労働生産性を高める話をしてまして、これもまた福井さんがお話してたのと同じ話ですな)し、長い目で見た場合このあたりの問題は極めて重要だという所ですね。


・バブル発生の回避ですかね

『経済・金融活動の大きな変動の回避:歴史から学ぶ姿勢 』ってところなのですけれども、こんな話をしているのはやはりバブル発生回避のお話っぽく読めてしまうのですが。

『経済成長が長く続くと、いずれかの段階で経済・金融活動に行き過ぎが生じ、それがさらに成長を持続していくことへの脅威となってきます。今回のグローバルな金融市場の混乱も、良好な世界経済や金融環境が続いたもとで、市場参加者のリスク評価に緩みが生じ、その後、市場で巻き戻しが現実化した一例とみることができます。このようなことは、後から振り返ってみれば当り前のことにも思われるのですが、歴史をみても、金融上の記憶は比較的短期間に失われてしまいますし、バブルが毎回、同じ態様を伴っていないことも、人々が警戒感を抱きにくい要因となっているように思います。』

ということで、一般論ちゃあ一般論ですが、どうもバブル発生回避に関する話が出てくるとオーバーキルの懸念をしてしまうのは日銀観察が長くなると身につく仕様でございます(笑)。

『しかし、多くの先人が、過去のバブル生成の背景にあった共通する事象として、緩和的な金融環境、相場上昇、強気化、レバレッジ(てこ)を用いたリターンの高い新たな金融商品の開発、金融の天才の出現などを指摘してくれています。』

「金融の天才」ってフレーズといえばガルブレイスの「バブルの物語」(^^)。最近だと金融の天才とは言わずに「最先端の金融工学を駆使した商品」でございましょうかねえと悪態をつくのはあたくしがプレーン商品の現場トレーディング叩き上げだからですかそうですか。

『勿論、金融経済は日々変化しており、市場経済の発展、経済のグローバル化などを受けて、過去にはなかった新たな側面が数多く生じてきていることも事実ですが、他国の例も含めて、歴史から謙虚に学んで、現下の現象の本質を見抜き、経済・金融活動の大きな変動を極力回避していく努力が、企業、金融機関、公的セクターのいずれにも求められていると思います。』

まあそうなんですけど、言うはやすし行うはきよし(古いって)でありまして。

最近その「バブル」さんの発生頻度が高くなっているように見えるのですよね。その原因の一つとしてあたくしが思うのは「決算のタームが短くなっている」というのを提唱したいんですけよ。と申しますのは、世の中で何かの拍子に「最先端の金融工学を駆使した高利回り商品」が出来た時に、こりゃおめえ変だろとか思って逆らおうと思いましても、収益評価の締めのタームが短ければ短いほどそれに逆らう事は逆らわない人対比のパフォーマンス悪化が確実になることに繋がるんですよね。

そうなりますと相場は自己実現をするのいつもの法則に伴いまして、どうしても一度方向性がつくとそっちに向かってしまいますがなの巻になるのでありまして、バブル発生を防ぐためにはその辺りの制度設計というか何というか、上手く表現できないんですけれども、まあ要するに参加者の多様性とか評価の多様性とかも必要なんじゃないのかと思う次第だったりします。イマイチ何を言いたいのか判らん文章ですいませんすいません。

『一方、一たび経済・金融活動の過熱から反動が生じた場合には、早期に経済・金融活動の安定化を図る施策が必要となり得ることも、しっかり意識していくことが必要であると思います。』

まあこれは日本が人柱になった教訓が今まさに海外で生きている話と。

#金融政策に関しては基本的に展望レポートの説明なので割愛します。

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2007/12/28

金融政策決定会合議事要旨の話はどうしたと言われそうでございますが、年末中に更新するか年始のネタにするかということでご勘弁でありまして、今日は亀崎審議委員の会見。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0712c.pdf

全体的には景気に対する慎重な見方が目に付くのと、金融政策に関しては「経済状況を見ながら判断」というスタンスでありまして、中立金利に向けて淡々と調整するという感じではなさそうです。大体最初の4ページ(半分)で亀崎さんの意見が集約されているような感じですのでお急ぎの方は前半だけお読みになっても宜しいんじゃないでしょうか。

○景気に関しての慎重な見方を改めて表明

展望レポートがうたう「生産・所得・支出という好循環メカニズム」に関してどうなのかという質問に対しての亀崎さんのコメント。

『足許の指標をみますと、景気にはやや減速感が出ております。もともと中小企業を中心に、企業から家計への所得の波及は緩やかなものに止まっておりましたが、先ほど申し上げた住宅投資の大幅な落ち込み、あるいは原材料高、円安修正等マイナスの要素が出てきておりまして、生産・所得・支出という好循環メカニズムは、このところ幾分弱まっているように伺われます。』

と、まず弱めの話をしまして・・・・

『ただし、海外景気は全体としては拡大を続けており、これを受けて、わが国の輸出やこれに関連した設備投資は堅調です。また、賃金動向がやや弱めの中にあっても、雇用者数の増加を受けて、所得の総和は緩やかながらも増勢を続けていることなどから、個人消費も今のところは底堅い動きを示しております。住宅投資の大幅な落ち込みについては、改正建築基準法施行により認可が著しく遅れていることに起因する現象で、いずれは反動増も予想されます。』

ということでバランスは取っているのですが、結局の所堅調なのは輸出関連で、とりあえず持ちこたえているのが個人消費という所でございましょうか。住宅投資に関しては野田審議委員が以前指摘してたと思うんですが、反動増するのかというのはどうなんでしょうかねえとは思うところですね。話はそれますが、最近交代した審議委員の皆様が景気動向に一家言あってカラーが出てる感じがするのは中々結構なお話じゃないかと思いますです。

『こうしたことから、生産・所得・支出を巡る好循環メカニズムは維持されていると認識しておりますが、今後の景気動向については予断無く、注視していきたいと考えております。』

ということで講演(挨拶)要旨でも見られたような慎重な見方が示されています。


○米国の住宅市場動向

これもまた講演要旨にあったお話ですが改めて。

『米国商務省が50州の売上税額を発表しています。この50州の売上税額の推移を見てみますと、2004年頃からずっと6〜10%程度の高い伸びで売上税が入ってきていたわけですが、それが昨年の第4四半期頃から、段々下がり始めて、4%、3%、さらに低い水準まで伸び率が下がってきています。これを州別に見てみますと、伸びが落ちているところは、カリフォルニア、ネバダ、フロリダ、メイン、といったところです。今、申し上げた州は、実は住宅価格の伸びも著しく低下してきています。』

なるほど。

『米国の場合、住宅を担保にして借り入れを行って、それが消費に回るというようなメカニズムがありますので、住宅価格の伸びが低下している州で売上税の伸びが低下しているのは、やはり住宅価格の動きが個人消費に影響しているのではないかという目で、私はこのところずっと注目して見てきています。なお、売上税は伸びが減速しているだけで、マイナスになっているわけではないのですが、米国のGDPの7割を占め、世界のGDPの約2割に相当する米国の個人消費が本当に落ち込んでくるとこれはかなり深刻な状況になるため、このところよく見ています。』

『FRBの発表のように、来年の米国のGDP成長率が1.8〜2.5%程度の間で減速し、その後リバウンドしていくのであれば、世界経済が堅調なこともあり、さほど心配する必要はないのではないかとみています。従いまして、住宅価格の下落、そして金融市場の混乱といったものが、実体経済、特に個人消費にどう影響してくるのかを今つぶさにみているところでございます。』

ということです。付け加えますと、最後の方の質疑でデカップリング論に関して亀崎さんはこのように指摘していますんで、米国の個人消費動向に関してかなり懸念しているのではないかと見受けられます。

『過去に比べて、米国経済の世界へのインパクトは、同じというよりも、むしろ若干減っているのではないかと思います。ただ、中国からの輸出はどこが相手先として多いのかというと米国ですし、また中国以外のアジアも米国へ輸出しているものが随分あるし、日本からの輸出も中国・アジアを通して米国に出ているものがあります。そういったことで、米国経済の減速が、世界経済に影響を与えないということはないと思います。』


○金融政策に関して

先ほど申し上げましたように、金融政策に関しては経済情勢睨みというスタンスのようです。先ほどご紹介した最初の質疑応答の後半が実は金融政策に関するお話でして。

『金融政策ですが、先行きの金融政策運営についての基本的な考え方は、これまでと変わりはありません。金融政策の効果が波及するには時間を要するわけですから、先行きの経済・物価の動向を予測しつつ、日本経済が物価安定のもとでの息の長い成長軌道を辿る蓋然性が高いことを確認し、リスク要因を点検しながら、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えています。』

『もともと実勢より低過ぎる金利は、将来に危険性を孕んでいるわけでございまして、これはタイムリーに金利を上げていかなければいけないと思っております。』

という所までは日銀の政策ロジックのお話ですが、

『ただし、米国景気の減速、あるいは米欧金融市場の混乱、原油価格の高騰、更には国内の住宅投資の動向などが実体経済に与える影響には、不確実性が出てきております。こうしたもとで、足許の景気は基調としては緩やかな拡大を続けておりますが、やや減速感もみられております。経済は生き物です。絶えず変化して、絶えず動いておりますので、今後の金融政策運営につきましては、先行きの景気・物価・市場の動向を予断を持つことなく、つぶさにみながら、総合的な観点から判断していきたいと考えております。』

ということで慎重な見方ですわな。で、その後「利下げについてどう考えているか」って質問があったんですが、それに対して亀崎さんはこのようにコメント。

『現状、米国発のサブプライム住宅ローン問題関連の影響が日本の金融機関に深く影を落としたり、あるいは短期金融市場における年末越えの資金調達で日本銀行が通常の枠組みを超えて特段の対応をしなくてはならない、というような状況ではありません。更には、わが国の景気判断に関しましては、足許、住宅投資の減少や企業の先行きの業況判断に慎重さは見られますが、12月の金融政策決定会合での基本的見解にあるとおり、日本経済は基調としては緩やかに拡大していると判断しており、現状は金利を引き下げる必要はないと考えております。』

『最も大事なことは、スケジュール感のようなものを持たずに、絶えず景気や物価の動向を丁寧に見ていく、その注意を怠らないということです。これは金利の引き上げにしても、引き下げにしても同じことで、常に実態をみながら、なおかつ先行きもみて日本経済の中長期的な成長の維持が確認されるという時に調整をしていくということであり、その逆もあるということです。』

ほほうその逆もあるとな。ってな訳でその後「その逆もあるとは利下げもあるということですか」と質問された訳ですが、その質問に対しての亀崎さんの発言は以下の通り。

『中長期的な成長の維持が確認できない場合には、そういうこともあり得るということです。今はそのような必要はないと私は申し上げています。そのような特別な状況というのは、その状況に遭遇してみなければわかりませんが、一般論として述べた次第です。しかし、今はそのような状況にはありません。』

福井総裁あたりになりますと「そのような状況になることは考えられません」的な答えをして、一般論としてでも利下げに繋がるような発言をしないというのは皆様既にご案内の通りでございます。そーゆー意味では亀崎さんのスタンスが柔軟ですなというのが読み取れるのではないかと思います。

1月の展望レポート中間レビューで何らかの軌道修正はあるかも知れない(というかあるんでしょうが)ですが、まあ来年の執行部交代に伴い現在の論理に無理が出てきた金融政策の枠組みをどう整理していくのかが益々楽しみになって参りましたな(と思いっきり野次馬にも程があるスタンス)。

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2007/12/27

お題「亀崎審議委員の講演」

年末押し迫って亀崎審議委員講演と決定会合議事要旨2本とネタを打っていただかなくても(苦笑)。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0712d.htm

箇条書きで紙に打ち出すと7ページということで(図表は別)コンパクトに纏まっておりまする。

○先にあたくしの印象というかまとめ

今回の挨拶要旨を読みますと、亀崎審議委員は景気に関してはやや慎重な見方をしているように見えます。特に米国サブプライムローン問題の帰趨、国内に関しては消費者マインドの悪化を注視しているような感じですな。で、金融政策に関してはとりあえずのところはあまり独自色は出して無さそうですけれども、文章を見てると何となくそのうちカラーが出てきそうな気が(根拠レスな予感ですけれども)します。

あとですな、ちょっと面白いなと思ったのは、今回の挨拶要旨が箇条書き形式になっていること。他の政策委員の皆様の挨拶要旨って文章形式になっていまして、亀崎さんの挨拶要旨の形式が独自だなと思う訳でして、さっき根拠レスな予感と申し上げましたが、一応根拠としてはこの点なんですわな(^^)。こういう形になったのって亀崎さんの独自色ってイメージしたんですけど読みすぎですかね?


○米国経済について

『足もとは米国を中心に海外景気の先行きに不確実性が高まっています。』ということで海外経済の動向に関しては米国サブプライムローン問題の影響に関しての記述が主となっております。まあ当然と言えば当然ですが。

『こうした中、(引用者注:サブプライム問題が発生している中)住宅融資に対する金融機関の態度が厳格化したことから、住宅販売は大幅に減少し、在庫調整が長引き、住宅価格も下落に転じています。企業部門でも、社債発行が減少するなど資金調達面への影響もみられています。これに自動車市場の減速や、原材料高もあるため、これまで海外景気の拡大にも支えられて好調を続けてきた企業収益もさすがに伸びが鈍化し、企業の景況感指数をみても改善幅は縮小しています。』

『こうした中にあっても、雇用は引き続き堅調ですが、消費者コンフィデンス指数は住宅価格下落、株の乱高下、金融機関による融資基準の厳格化、ガソリン高などから、ハリケーン「カトリーナ」の影響を受けて大きく落込んだ2005年10月以来の水準にまで悪化しています。』

『ここへ来て個人消費関連指標もやや軟調となっているほか、主要指標以外にも気になる動きがあります。』

ほほう。

『商務省が発表している全米50州の売上税の前年比は、個人消費と高い連動性を示しており、2004年以降は5%を上回る伸びを続けてきましたが、2006年10-12月からは前年比伸び率は5%を割り込んでさらに鈍化しています。州別の動向をみると、住宅価格の下落幅が大きいカリフォルニア、フロリダ、イリノイ、メイン、ネバダといった諸州では、売上税の落ち込みが大きくなる傾向がみられています。このことは、住宅市場の減速が個人消費に影響を及ぼしつつある可能性を示唆しています。米国の個人消費は、GDPの約7割、全世界のGDPの約2割を占めるだけに、注意してみていく必要があると思います。 』

10月10、11日の金融政策決定会合議事要旨でこんなのがあったのは以前ご紹介したかと存じます。

『別の委員は、住宅価格が下落している州ほど売上税の伸びが低いという傾向が窺われており、住宅価格の下落が個人消費に影響を与え始めている可能性がある、と指摘した。』(10月10、11日の決定会合議事要旨)

そうですか、この指摘は亀崎さんがしてたんですね。なるほどなるほど。

でまあ他の地域に関してはサラリと流している感じですが、他の地域に関しても米国サブプライムローン問題の影響を受ける可能性がある点について注意が必要(そりゃまあ全世界のGDPの2割ですからね)とコメントしておりまして、本件の実体経済に与える悪影響に関しては結構懸念しているという印象を受けました。


○国内景気について

・企業部門

『日本の景気は、基調としては、緩やかながらも、息の長い拡大を続けています。もっとも、その牽引力は引き続き輸出やこれに関連した設備投資であり、個人消費にまでは好影響がなかなか波及しない中で、後程申し上げる住宅投資の大幅な落ち込みもあって、足もとは景気に減速感が出てきています。このため、先行きの景気動向は、原油を含む原材料高、円安修正、株安などの影響も踏まえつつ、丁寧に見ていく必要があろうかと思います。』

ということでこちらに関しても慎重な感じが致しますな。

『日本銀行が先日公表した短観では、企業の業況判断に、やや慎重さが窺えます。特に中小企業については、需要拡大が緩慢なもとで、原材料高を販売価格に転嫁しにくいという事情もあって、このところ業況が芳しくありません。』

『こうしたもとで、生産も引き続き高水準です。但し、改正建築基準法の影響から、住宅投資が大きく落込んでおり、鋼材・セメント等の建設財では一部メーカーが減産に踏み切り、資機材価格も下落しています。住宅投資のGDPに占めるウエイトは3%超ですが、関連産業への生産波及効果があり、サッシ、ガラスなど建築工程の長い業種については、これから影響が出てくる可能性があります。』

『また、電子部品・デバイスに関しては、DRAM等の半導体価格が下落してきています。IT製品の多様化の影響もあって、世界的な需要は引き続き概ね安定的とみられますが、やや供給過剰になっているリスクもあります。』

ということで、二極化が進んでいるという点と、改正建築基準法による住宅着工の遅れが与える生産への影響、IT関連の生産がやや過剰になっているリスクに関しても言及してまして、企業部門に関してもやや先行きを慎重に見ている印象を受けました。ただし輸出に関しては堅調という話になってます。


・家計部門

家計部門に関してですが、雇用については賃金が上がりにくくなっているという認識を示しながらも、中身に関してはもうちょっと細かく見る必要があるのではないかという指摘になっています。

『雇用・所得面をみると、労働需給については、引き続き雇用不足感がみられています。一方、一人当りの賃金をみると、やや弱い動きが続いています。これは、第一に、グローバル競争の強まりが影響しています。(説明部分割愛)第二に、中小企業では、グローバル展開の恩恵が相対的に小さいうえに、原材料高もあって業況が厳しく、人件費を抑制せざるを得なくなっています。全就業者数に占める中小企業のウエイトは大きいだけに、その影響には留意する必要があります。』

『但し、雇用者数が増加するもとで、雇用者所得の総和は、緩やかながらも増勢を続けています。これに株式配当の増加などのルートも経由して、企業から家計への所得の波及は、徐々には進んでいます。また、賃金動向がやや弱めとなっている点については、必ずしも景気拡大ペースが緩やかであることだけでなく、ライフスタイルの変化など、労働市場の構造的な変化を反映している可能性があります。(パートが増えていると言う部分割愛)こうしたライフスタイルの選択は当面続き、その間は統計上の平均給与の抑制要因となると思われますので、賃金動向については、これも踏まえたうえで、丁寧にみていく必要があると考えています。』

個人消費関連については、当然ではありますがマインド悪化について指摘。

『こうしたもとで、個人消費関連指標は、総じて底堅く推移していますが、年金不安や、ガソリン高などもあって、消費者コンフィデンス指数は、このところ悪化しています。最近、英国が97年以降の10年間の移民の数を従来公表していた80万人から110万人に大幅に上方修正しましたが、これらの中には新興国からの若い世代の移民も多いため、衣食住に亘っての需要は力強いものがあります。米国経済における移民によるダイナミズムも極めて大きいものがあります。一方、日本は、移民は少なく、かつ人口減少・高齢化社会であり、また高度成長期と違って殆どの必需品は充たされている成熟社会です。こうした事情も、個人消費がなかなか力強さを持ちづらい背景にあると思われます。』

この移民の話は講演の後半で日本経済の今後の課題として改めて指摘していまして、この点は亀崎審議委員独自の問題認識として興味深い所です。


○物価に関して

たぶん報道ではこの部分だけ切り取られて、それを見た日銀批判スキーな人たちがまた「日銀は生活感覚的な話を持ち出して物価上昇をアピールして利上げを正当化しようとしており、統計を軽視している」と批判するんだろうなあと思う次第。

『こうした状況にあって、物価の基調をしっかりと捉えていくためには、CPI(除く生鮮食品)の数字1本ばかりではなく、中身を丁寧に検証していく必要があると考えています。』

『この点、CPI(除く生鮮食品)を構成する523品目の動きをみると、上昇品目数が下落品目数を上回る状況が、昨年8月以降15ヶ月連続で続いています。とくに本年4月以降、数多くの身の回り品の値上がりが顕著になっており、人々の先行きの物価観に変化が生じていることには留意する必要があります。』

でもこの「こうした状況」ってどうした状況かと申しますとその前の部分を読まないといけませんわな。

『すなわち、日本のCPIは、過去20年平均0.6%という上昇率で、このところも景気拡大が続く中にあっても、ゼロ近傍で推移しています。こうした動きについては、賃金と同様にグローバル競争の強まり等が影響していますが、物価の基調はしっかりとしており、かつ安定的に推移していることが、経済の持続的成長に資するものと考えています。但し、CPI上昇率の水準が低いために、石油製品や携帯通話料・デジタル製品群の価格動向など極めて限られた要因の影響を相対的に大きく受けています。』

ということでありますので、別に統計を軽視している訳じゃないと思う次第でありますし、まあそれ以前の問題として、ここまで延々とご紹介したように、亀崎審議委員は景気に関して慎重な見方をしているように思われますので、物価上昇即利上げという単純な話にはなっていないと思うんですけどね。

ただまあ先行きの物価に関してはやや強気かなという感じです。


○少子高齢化問題

金融政策と直接関係ないですが、あたくしが興味深く思ったので最後にご紹介。なお、金融政策に関する部分もありましたが、ここはあまり独自色が無かったように見えましたので今回は引用を割愛します。

『日本経済の持続的成長に向けて』という部分の冒頭に『少子高齢化への対応』というのがございまして。

『少子高齢化の中にあっても、成長力を維持・向上させていくためには、一人当りの労働生産性を高めていくことが不可欠であり、そのためには、企業がすでに取組まれている設備投資による合理化・省力化、能力増強や、新たな技術の研究開発投資(R&D)を一段と進めるとともに、製造業の優れたモノづくり技術等をしっかりと伝承していくことが重要であることは、改めて申し上げるまでもないかと思います。(以下割愛)』

まあ左様なんですけれども、第三次産業の労働生産性ってどうしたら良いんでしょうかねえとかいつも思うあたくしですが、そんなこと考えてる暇があったらお前の労働生産性を上げなさいというツッコミをされると痛惜の念を禁じ得ません。

『また、高齢化は、経済成長にとって制約要因となる面があるのは事実ですが、一方では、医療・介護に加え、文化・教養といったサービス産業の付加価値を高めるチャンスでもあります。特に、日本は、金融資産の多くを高齢者が保有し、文化・教養等への関心も高いため、将来性は大きいように思います。』

医療介護はともかく、文化教養に関しては・・・・・ま、いっか。

『日本は他国よりも早いペースで高齢化が進展していますが、いずれ米欧、アジアも高齢化時代に入ります。他国に先んじてこうしたサービス産業の生産性を高めていけば、将来的にグローバルにビジネスを拡げる余地も大いにあると思われます。』

そこをどうするのかがムツカシヤと思いますです。どっちかというとこの手のサービス産業って生産性の向上よりは日本ローカル独自の付加価値(と言えば聞こえがいいけど要するに特殊な形態)を追及する方向に行ってるような気がしないでもないですが、それはあたくしの勝手な勘違いかも知れません。で、移民の問題。

『但し、英では15年間、米では10年間の長期間に亘り持続的成長を達成しており、その原動力の一つは、先ほど申し上げた移民によるダイナミズムであると思います。日本についても、社会全体への影響等、難しい問題はありますが、持続的成長を確保するための方策の一つとして、検討を深めていく余地はあるのではないかと考えています。』

この問題に関しては門前の小僧以下のあたくしは論じる基礎的な知見もございませんのではあそうですかとしか申し上げようがございませんが、亀崎審議委員が問題意識として捉えておられるというのは「ほほー」と思った次第でございます。

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2007/04/13

お題「中村・亀崎審議委員の就任会見」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0704c.pdf

○まずあたくしなりにまとめると

当然ちゃあ当然ですが、いきなり新機軸が出てくるというような話にはなりませんけど、両委員とも産業界出身らしく、地方経済に目を向けると言った点はきっちり言及していますなという感じです。で、会見要旨を読んだニュアンスとしては中村委員の方がややハト色を出している感じです。と申しますのは、亀崎委員の言い回しには早速日銀公式見解なフレーズが出てまして、そのあたりを読んでいると「執行部(除く岩田副総裁^^)寄りなのかなあ」と感じてしまうからっちゅうのもありまして。

質疑応答はPDFで10ページあるのですが、割と興味深いやりとりが続いてまして、一度ご覧になることをお勧め致したいです。では参ります。以下くどくなりますけど、発言引用部分に関しては引用の最後に(中村さん)(亀崎さん)ってつけますね。


○経済物価動向についての見解

中村さんから、

『基本的には、我が国の景気は緩やかに拡大していると認識しており、今後の金融政策については、物価や経済の状況を丹念にみながら、徐々に金利水準の調整を進めて行くことになると考えています。』(中村さん)

ここは日銀の基本スタンスと同じですが。

『ただ、最近の景気の特徴としては、景気拡大のテンポが緩やかであることや、地域間での景況感の差異の存在などを感じております。例えば、先程申しましたように、私は国内の輸送を担当しておりましたが、北海道航路においては微増ないしは荷動きが横這い、九州においては比較的順調であるといった地域間格差の問題を感じております。そういった意味では緩やかに拡大しているとは言いながら、拡大しているということを肌で実感することは難しいという方が多いのではないかと感じています。』(中村さん)

『また、物価につきましては、基本的には上昇基調にあると思いますが、長年物価が上がらなかった、あるいは下がってきたということがありまして、値上げに対するアレルギーが根強いことなどから、上昇テンポは緩やかなものにとどまる可能性が高いと感じています。』(中村さん)

ということでこの辺りを読みますと、内航海運を経営しているだけのことがあって地域経済の動きに関してはアンテナが高い(ので当然景気に対しては慎重になるわな)という印象です。


で、亀崎さんですが、ちょっと長いので途中端折っちゃいます。

『日本経済は、成長率が2%強の緩やかな拡大基調にあって、景気拡大期は5年を超えましたが、5年を超えてもなお堅調に推移していると考えています。ただし、その牽引力は第一に輸出、第二に設備投資ということです。即ち、GDPの約6割を占める個人消費がまだ力強いものになっていません。一方、世界経済をみると、2003 年以降、同時好況ともいえる状態で、最近は年率5%程度の成長を遂げており、日本経済もその恩恵を受けています。従いまして、日本経済についても、外部環境が良好なうちに、早く個人消費が成長の牽引力になることが極めて大事な課題かと認識します。』(亀崎さん)

ということで個人消費に注目ということですな。この先に中国経済と米国経済の先行き見通しについて話をしてるのですが、中国経済の方が話として先に出てきたのはやはり台湾現地法人の社長をやっておられただけにアジア経済へのアンテナが高いんでしょうか(^^)。そして米国経済に関して亀崎さんのまとめですが、

『従いまして、全体としては緩やかな景気拡大が続いていて、基本的にはソフトランディングに向かうのではないかと思います。ただし、サブプライム住宅ローンの問題、それから若干弱さがみられる設備投資、インフレ率の高止まり、こういったリスク要因もありますので、今後も景気・物価双方を注意深くみていく必要があるかと思います。』(亀崎さん)

となっています。昨日ご紹介した福井総裁の会見では米国のインフレ懸念について「アップサイドリスク」と表現してて「???」というようなことを書いたと思いますが、亀崎さんは単に「リスク」と表現している訳でして味わいがございますな。そして物価に関して。

『日本の消費者物価については、原油価格反落等の影響もあり、目先はゼロ%近傍で推移するとみられますが、より長い目でみると、需給ギャップは需要超過方向で推移していく中で、プラス基調を続けていくと予想しています。今後の金融政策については、冒頭申し上げましたように、あまり先入観や予断を持たないで、その時々の経済・物価情勢をしっかりと分析し、できる限り先々の見通しも踏まえた上で適切に判断していきたいと考えています。』(亀崎さん)

ということで、ここの部分に関してはきっちり日銀公式見解どおりでございまして、まあこれが会見要旨の頭の方(3ページ目)だけに好対照って感じになっていると思います。


○望ましい中長期的インフレ率

『長期的な物価安定の理解については、昨年日銀の内部で色々議論が行われて、1年後にレビューということになっていると思います。従いまして、近々審議委員の中で、討議されると思います。全くレベル感がない訳ではありませんが、その中において勉強していきたいと思っております。』(中村さん)

『現在の中長期的な物価安定の理解ということでは、0〜2%という範囲がありますが、私としては、これについて特段の違和感を覚えるものではありません。ただし、これから私自身でしっかりと検証していきたいと思っています。』(亀崎さん)

ということで、こちらでも亀崎さんの方がどちらかというと日銀の公式見解寄りのコメントになっていると思います。


○賃金に関して

賃金が足元あんまり上らないことに関してどう考え、どのような状況になれば賃金が上昇するかという質問が出たのですが、さすがにこの質問に関しては企業経営者だけに具体的なお話です。

『このところ、企業業績が良いのは輸出産業であり、各企業が様々なかたちでのコスト削減や合理化を進めた結果であると思います。一方、消費者物価はなかなか上がらず、為替にしても現在は119 円程度ですが、いつまた110 円に戻るかわからないということで、今の企業にとって居心地の良い状態が、先行きどうなるかわからないという感覚を、経営者は持っているのではないかと思います。』(中村さん)

『一般的に、企業はインフレ率が低い中で、企業業績の好調さは月例給与ではなく臨時手当で応えるのが大勢なのではないかと思います。業績が良い企業は、臨時手当を積み増してきていると思います。』(中村さん)

と、ここまでが現状認識ですが、先行きに関しては結構強めで見てます。

『一方で、昨今労働需給も非常にタイト化し、労働市場も流動化しつつあります。これから優秀な社員を採用する、あるいは現在抱えている社員を組織の中で抱えていくには、それなりの待遇をしていかないと、従業員にも辞める権利があるわけですから、これから賃金は上がっていくと思います。年功序列も崩れつつあり、能力給のようなものも広がってきていますので、賃金の個人的なばらつきはかなり出てくると思いますが、一般論としては、現在の労働需給環境を考えると、賃金は上がらざるを得ないのではないかと考えています。』(中村さん)

ということで、先行きにやや強めかと。「上がらざるを得ない」ってのが企業経営者らしい言い回しでちょっと微苦笑しましたが(^^)。

『企業収益が非常に良いのに比べ、賃金が必ずしも上がっていない、比例的に上がっていないという状況であると思いますが、若干時間が遅れて賃金は上昇してくるのではないかと思っています。昨年から今年にかけての各企業の賃上げ状況をみても、今までなかったような賃上げが随所でみられています。一方で今お話がありましたように、雇用需給も非常に逼迫化してきています。企業の人手不足感はかなり高まっていますので、こうしたことも賃金を上昇させる圧力になっていくのではないかと思います。企業収益が直ちには賃金に反映されていませんが、若干タイムラグがあっても、徐々に上昇していくのではないかと考えています。』(亀崎さん)

賃金に関しては中村さんの方がより強め(とあたくしが読んだ印象ですけど)なのは中村さんが海運業界出身で、現業部門の労働流動性が高いってのもあるのかなあとか思ってしまいました。あくまでも憶測でございますが。


○外からみた日銀とか情報発信とか

『今まで日銀サイドから色々な情報発信がされていたと思います。例えば、こういった記者会見、展望レポート、金融経済月報、議事要旨等で随分発信されており、それは大変な情報量だと思うのですが、なかなか一般には理解されていない面があるような気がしていました。それは、情報量が足りない云々ではなく、もう少し日銀の考えていることをわかりやすくするにはこれからどうしたら良いのかということです。』(中村さん)

そしてその次のところであたくしはウケてしまいました(^^)。

『今はまだアイディアを持っていませんが、商船三井にいた時にIRも担当しており、海外投資家に対し、随分説明してきましたが、そうした投資家も自分が関心のあることにしかなかなか耳を貸してくれませんでした。そういう意味では、コミュニケーションをとる場合、どうすれば耳を貸してもらえるか、どういう言葉を使っていけばよいかということは考えていかなければならないと思います。』(中村さん)

「そうした投資家も自分が関心のあることにしかなかなか耳を貸してくれませんでした」というのは実に素晴らしい指摘でございます。いや全く仰る通りでございますな、うんうん。そして亀崎さんですが。

『何を申し上げたいかと言うと、日銀の近くにいる方たち、例えば、日銀ウォッチャーとか金融機関関係者は、日銀も記者会見をやり、月報も出し、色々なものを毎日情報発信している中で、よくみているのでしょうが、ちょっと遠いところにいる身にはあまり関心がない――こういう言い方は申し訳ないのですが――、そういう状況でした。しかし、この五日間を通して感じたのは、特に、金融政策決定会合で政策委員の皆さんが、国内外の経済・物価・金融情勢についてデータを持ち寄って真剣に議論なさっている。極めて専門性が高く、私にとっては、あっという間に時間が過ぎてしまうような非常に刺激的なものでした。』(亀崎さん)

ということで、お二方にはより一般にも判りやすい情報発信のありかたについてご活躍されることを期待致したく存じます。


○まあ金融政策とは関係ない話ですが

さっき引用した亀崎さんの発言の前段に『4月5日にまいりまして、まだ五日間ですが、大変な量の資料がどんどんきます。読み切れないので、家で読まなくてはわからないものもあります。色々な資料がきますので、中村委員と、どのように資料を読み解けば良いのか一度聞いておこうと話し合いました。』(亀崎さん)というのがありますように、物凄い勢いでご多忙な新審議委員でございますけれども、こんな質問がございました。

『(問) お二人とも日本を代表する企業の副社長をお勤めになられており、日銀審議委員に就任されたことによって、大変失礼かもしれませんが、報酬面ではかなり見劣りしてしまうこともあろうかと思います。待遇面の問題から、なかなか日銀の審議委員を引き受けてくれる人がいないという話も聞かれます。そういう中で、あえて審議委員を引き受けられた理由についてお伺いします。』

で、お二方のお答えはまあ全部読むのをお勧めしますが、亀崎さんが『むしろこの歳になって、今までは民間企業で働いていたのが、今度はお国のために働くことができるということは、なんと幸せなことか。』(亀崎さん)と答えてまして、「年収2800万円という高給取りの審議委員を2期も続けるのは問題だ」などという発言をするどこぞの誰かさんにおかれましては亀崎さんの爪の垢でも煎じて飲んだ方が宜しいのではないでしょうかと思うのであります。

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