黒田東彦総裁
(2013年度下期)


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2014/03/27「商工会議所での講演は段々無理筋な話も/ロンドンでも気合講演だが英文では発言がサービス気味」
2014/03/13「3月定例会見は2月に見られた揺らぎはなくなりすっかり通常の追加緩和無回答モード」
2014/02/20「2月定例会見は従来の黒日銀に明らかに白日銀が混入していますよ」
2014/01/24「定例会見より:物価上昇の今後のパスについて丁寧な説明あり&ドヤ顔満載」
2013/12/27「経団連講演ネタの続き:インフレ期待の引き上げが「気合」と「悪でもいいから物価上昇」になっている件」
2013/12/26「経団連でドヤ顔満開の講演」
2013/12/25「定例会見より:ヘッドラインでは追加緩和的な話もありますがどう見ても強気ノリノリ会見です/その他」
2013/12/11「公共政策大学院での講演:まさにノリノリですな(その2)」
2013/12/10「公共政策大学院での講演はまさに「法学部ロジック」で迫る(その1)」
2013/12/04「会見も同様に自信満々モードで追加緩和の可能性はなさそうだが・・・・」
2013/12/03「名古屋での講演も自信満々なのだが何故かヘッドラインでは追加に前向きと報道される怪奇現象」
2013/11/26「定例会見も無風」
2013/11/07「大阪での講演の会見も重要な論点がちらほら」
2013/11/06「大阪での講演が展望レポートダイジェスト状態なのでこちらを先にネタに」
2013/11/05「総裁定例会見より:色々とオモロイ部分が有りますよ」
2013/10/17「直近の総裁講演まとめて成敗:要するに「期待の転換でフィリップスカーブを上方シフト」です」
2013/10/15「きさらぎ会での講演は「QQEの基本的な考え方の確認」ですね」
2013/10/08「定例会見は予想通りの超自信満々モード」

2014/03/27

○黒田総裁の商工会議所での講演から少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140320a1.pdf
なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか
──日本商工会議所における講演──

『はじめに』でこんな話をしているので、まあそういう趣旨の講演ではあります。

『日本銀行では、消費者物価の前年比でみて「2%」が、目指すべき「物価安定の目標」であると考えています。この点については、「物価が上がると生活が苦しくなるのではないか」とか、「物価だけが上がって賃金が上がらないのではないか」といった声も聞かれるところです。また、企業にとっては「物価上昇により仕入価格が上昇した分を販売価格に転嫁できないのではないか」という懸念もあるかもしれません。特に、来月から消費税率が引き上げられることもあって、物価の上昇を心配する向きも多いのではないかと思います。そこで、本日は、日本銀行が、なぜ「2%」の物価上昇を目指すのかということを中心に、私の考え方を述べたいと思います。』


・物価の現状認識はいつも通りの話

まあこの講演ですが、その前に最初の『はじめに』の所で物価の現状に関してはこのように説明していまして、先日ネタにした木内さんの認識とは違いますが、まあこちらが日銀の公式見解になっておりますので念の為。

『このように景気回復が続く中で、物価面でも好転の動きが続いています。生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、昨年6月にプラスに転じたあと、プラス幅を拡大し、昨年12 月、本年1月と、+1.3%になっています。エネルギー関連の押し上げだけでなく、需給バランスが改善し、予想物価上昇率が高まるなど、基調的な物価上昇圧力が強まるもとで、幅広い品目で改善の動きがみられています。こうした改善の拡がりは、食料・エネルギーを除く消費者物価の前年比が、+0.7%まで上昇していることにも表れています(図表2)。』

『先行きについては、消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、今年の夏ごろまでは、基調的な物価上昇圧力が強まる一方、エネルギー価格のプラス寄与が剥落していくことから、1%台前半で推移するとみられます。その後は、需給バランスがさらに改善し、予想物価上昇率が高まるもとで、次第に上昇傾向に復し、2014 年度の終わり頃から2015 年度にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いと考えています。』

ということで、まあ耳にタコという感じですが、もうこの辺はオートリバースカセットテープの如く同じ話をしておりまして、追加緩和という話になるようには思えませんけど何で相変わらずクレクレが多いのかという話は別途出てきます(なおこの講演では無い)のでお楽しみに。


・デフレの弊害の説明がイマイチワカランチ会長な部分がががが

で、『2.デフレの問題点』という所での説明はまあ大体普通の話をしているのですが、この辺の話の繋がりが良く判らんかったので教えてジェネラル。

『また、デフレは企業の投資判断にも影響します。企業にとって、設備投資を決定するに当たって重要なのは、名目ではなく実質金利の動向です。デフレ期待が定着すると、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利は高止まりします。』

という話をしていてそらそうなのですが、その説明の最後の所の締めがこうなっているのは何ぞ??

『この15 年間の日本経済の姿をマクロ経済指標でみてみると、名目ベースでのGDPや雇用者所得は、97 年をピークとして長期下落傾向が続いています(図表3)。日本経済は、デフレのもとで、名目でみた経済活動が一貫して縮小してきたということです。』

実質金利が高止まりした結果として経済活動が縮小の悪循環に陥るという説明をした結論が何故名目での話になるのかの話の繋がり方が良くワカランチ会長で、デフレで名目が縮小したなら名目物価以上に実は落ち込んでいるんですって話をしないと話が繋がっていないと思うのだが。

つーかですな、URL先の図表を見ればヨロシなのですが、長期低落の話をしている図表3というのは名目ベースの話をしているのに、最初に図表1というのがあって、最近のGDPが5四半期連続でプラス成長という話をして今は前向き循環メカニズムという話をしている時には実質GDPの話をしているのは何ですねんというか何というか。

『ところで、日本経済においてこのようなデフレが続いていた間に、消費者物価はどの程度下落したかご存知でしょうか。実は、1998 年度から2012 年度の15 年間についてみると、消費者物価の下落率は、平均して年▲0.3%にすぎません(図表4)。この間の消費者物価の変化率は、ほぼゼロ%に近いマイナスだったといってもよいでしょう。この事実は、消費者物価でみて変化率がほぼゼロ%であっても、実際にはデフレであるということを意味しています。』

デフレって物価の継続的な下落の事だと思うのですが、何かこの説明ってデフレと不景気を意図的に混同させて説明してないかという気がするんですがということで、どうもこの辺の説明がロジックとして良くワカランチ会長だった(いやまあ何を主張したいのかはわかるけど)のですけどにゃあという所で、どうもこの辺の説明に怪しい部分があるせいかこの先の所を読んでも何というかな印象がががががが。


・2%の理由についてとか

『3.なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか』って所ですけれどもね。

『日本銀行法に定められているように、日本銀行が行う金融政策の目的は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」です。物価の安定を実現することは、金融政策の目的であるとともに、日本銀行の責務でもあります。日本銀行が目指しているのは、あくまでも、このような意味での「物価の安定」であって、人為的にインフレを起こそうとしているわけではありません。』

円安に振って物価を上げてバックワードルッキングのインフレ期待改善効果も狙うのは人為的にインフレを起こそうとしている訳では無いのですかそうですか。つーかそもそも物価安定させる為には金融政策で物価をコントロールしようという話なのだから人為的以外にどうやってコントロールするんでしょうなどと意地の悪い話はしてはいけません。

『そのうえで、日本銀行としては、「物価の安定」を消費者物価指数の前年比で数値的に定義すると「2%」であると考えています。その理由をあらかじめ申し上げると、次の3つです(図表6)。』

『第一の理由は、消費者物価指数の特性、すなわち、消費者物価指数には、上方バイアス、つまり、指数の上昇率が高めになる傾向があるということです。第二に、景気が大きく悪化した場合にも金融政策の対応力を維持するために、ある程度の物価上昇率を確保しておく方が良いという、「のりしろ」と呼ばれる考え方です。第三に、こうした考え方は、主要国の中央銀行の間では広く共有されており、多くの中央銀行が「2%」の物価上昇率を目標とする政策運営を行っていることです。つまり、「2%」は、「グローバル・スタンダード」になっているということです。』

1番2番はまあ毎度の話ですが、3番目のグローバルスタンダードなんですけれども、最近は欧米でも経済の実力ベースでの物価の均衡水準って実はそんなに高くないんじゃネーノ的な議論も徐々に広がっているとは思うのですけどねえ。

いやまあ経済政策的な見地として、「2%の物価上昇が長期均衡水準となるような経済状態となるべきです」というベースがあって、長期的には2%物価上昇が均衡水準になるべきというようなことでロンガーランの物価安定目標を2%に置きましょうというのであればそれはそれでメイクセンスする話なんですけど、それを短期的にアクチュアルの物価水準を2%に持って行こうという形で達成するのが良いのかというのは別問題のような気がしますがとか言い出すあたしゃ木内さんや佐藤さんに影響されていますかそうですか。

でまあグローバルに2%という説明がその後にあるんですが、そこの最後のECBの例なんですけどね・・・・・・・・

『実際、米国、ユーロ圏、英国、それぞれの消費者物価指数をみると、このところ低下傾向にあります(図表10)。とはいえ、デフレのリスクが最も議論されているユーロ圏でも+0.7%であり、ここ十数年のわが国の物価上昇率に比べれば、まだ十分に高い水準です。それにもかかわらず、ECBの政策理事会後の記者会見では、このところ毎回のようにデフレのリスクについての質問がなされています。ドラギ総裁は、「低インフレ率が長期間続くことはそれ自体がリスクであり、そのリスクを無視するつもりはない」としつつも、ユーロ圏における中長期のインフレ予想が、ECBが物価安定と定義する「2%未満かつ2%近傍」でしっかりとアンカーされていることを強調しています。先行き景気の緩やかな持ち直しが続くと考えられることもあわせてみれば、ユーロ圏がデフレに陥るリスクは低いと考えます。しかしながら、ユーロ圏におけるこうした動きは、2%を目指すことの重要性と、その裏返しとしてデフレに陥ることの危険性が、彼の地において強く意識されていることの表れであるとみることができます。』

説明はその通りなのですが、実際問題としてECBってじゃあ何か緩和措置やっているかと言うと(直近でバイトマン発言があって期待は高まっていますが)まあ普通の金利政策を実施しているだけだったりしまして、つまり2%がグローバルスタンダードの話はしているのですが、その達成期間はより中長期的(実際問題としてECBの見通しでは2年経っても物価見通しは2%より遠い水準だわさ)なので、まあ2年で達成の話とは整合性は特に取れていないのですな。

もちろん日本の場合はそもそもインフレ期待を引き上げてフィリップスカーブを上方シフトしないといけないので、期待の転換が必要という意味で「2年で」というのを突っ込んでいるというのはあるのですが、実際問題としてインフレ期待がそこそこ上方シフトしてくれた場合に物価安定の目標は本当に2年程度の短期間で目指すものなのでしょうかとか思う訳で、2年の部分がそのまま生き続けるとインフレ目標政策の運営面でフレキシブルでは無くてリジッドなインフレ対応政策みたいな話になっちまいやがるリスクって将来的にあるかもね(まあそうならないようにロジックを色々とと駆使してくるとは思いますが)という気はするのでありました。


・ここの説明は何ぼ何でも無理筋

先日引用した部分ですが再掲。

『4.賃金と物価 ─家計からみた物価─』からですけどね。

『しかし、賃金が上昇せずに、物価だけが上昇するということは、普通には起こらないことです。商品やサービスの価格の上昇により、企業の売上が伸びて、収益が増加すれば、それに見合って、労働者に支払われる賃金は増加します。労働者は、企業の収益の増加に自分たちが貢献した分は、賃金として要求しますので、マクロ的にみれば、名目賃金の上昇率は、物価上昇率と労働生産性上昇率との合計になります。そうでなければ、物価の上昇に伴って、労働者の取り分である労働分配率が下がり続けることになってしまいます。こうしたことは、一時的にはともかく、長く続くとは考えられません。』

この一時的というのと長くというのに関しての時間軸を説明していないのが実にこう味わいがあるのですが、英国経済の場合ついこの前まで延々と物価上昇率が2%のインフレ目標を盛大に上振れて上昇していて、その間LFSベースの賃金上昇とか全然物価に追いついていなかった時期が結構長くて、経済にスラックがあって賃金も抑制されているのに何で物価が下がらんのじゃ(幾つかの特殊要因が入れ替わり立ち代わりやってきた点と、生産性が低い状況が延々と続いているからというような整理になっていたと思うが)という議論があったと思うのだが。

『実際、このことは過去のデータからも裏付けられます。時間当たり賃金の上昇率と消費者物価上昇率の推移を比較すると、物価が上昇している局面においては、基本的に、賃金の上昇率が物価の上昇率を上回って推移していることがわかります。そうならずに、物価上昇率の方が賃金上昇率を上回っているのは、1971 年以降では、1980 年の第二次オイルショックのときと、2007〜2008 年の国際商品市況の高騰のときの2回だけです(図表11)。これは、いずれも、供給ショック、すなわち、国内需要以外の外生的な要因によって、物価上昇率が一時的に大きく高まったときです。』

今も外生的な要因がありませんでしたっけというのは先日も悪態申し上げた通り。

『従って、我々が直面している本当の選択肢は、「賃金も物価も緩やかに上がる世界」を目指すのか、それとも、過去15 年間のように「賃金も物価も下がる世界」を目指すのか、どちらを選ぶのかということです。答えは自明だと思います。』

えーっとですな、世の中にはスタグフレーションというのもあるのですけれどもとゆーのも申し上げましたが、何ちゅうかこういう怪しい2択に持って行くのがどうも胡散臭さ爆発という感じなんですけどねえとは思うのでありまする。


○ロンドンでの総裁講演ですけどね

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140322a.pdf
いかにデフレを克服するか
London School of Economics主催のコンファレンス
(ロンドン)における黒田総裁講演の邦訳

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140322a.pdf
How to Overcome Deflation
Speech at a Conference Held by the London School of Economics and Political Science in London

こちらの講演なのですが、日本語版の章立てで言いますと『1.はじめに』、『2. 日本経済はなぜデフレから抜け出せなかったのか。』、『3. どうやってデフレを克服するのか。』(どうでも良いけど何でこれ小見出しに読点打ってるの?)という辺りは昨年9月のきさらぎ会での総裁講演での説明とまあ同じという感じで、内容的にはこれはこれでクリアカット(木内さんの話とは違いますが)でございまする。

でまあその先の『4. 我々はどこまで到達したのか。』の所で実はサービスフレーズがががががという話。


・追加緩和の期待はこの辺見ていると起きない筈ですが・・・・・・・・・・

『それでは、2%の「物価安定の目標」を実現し、デフレから脱却するという目標に向けて、我々はどこまで到達しているのでしょうか。はじめに結論を申し上げておくと、日本経済は2%の「物価安定の目標」実現への道筋を順調にたどり、道半ばまで来ていると思っています。』

どう見ても強気です本当にカムサハムニダ。

『まず、「量的・質的金融緩和」の効果波及メカニズムは、当初の設計通りに機能しています。』

そもそもどういう設計でしたっけ最初と話がいつの間にか変わっている部分がありませんでしたっけなどと無粋なツッコミをしてはいけません。

『すなわち、予想インフレ率は、各種のアンケートや市場の指標からみて、全体として上昇していると判断しています。また、長期金利は、日本銀行の巨額の国債買入れによって、低位で安定的に推移しています。実際、米国FRBの資産買入減額を巡って米国金利が2%以下の水準から3%程度まで上昇した中でも、日本の金利は落ち着いており、最近は0.6%程度で推移しています。この結果、実質金利は低下しています。』

はあそうですかという所ですが、市場の皆さんが本当に2%達成待ったなしと思った時に本当にこの水準でいるのかは謎でして、市場の皆さんがそう思っていないからこその金利なんじゃネーノという話はあるんですけどね!!!!!

『また、銀行行動にも変化がみられます。銀行貸出は、次第に前年比プラス幅を拡大し、最近では2%台半ばとなっています。内訳をみても、大企業向けだけでなく、中小企業向けも前年比プラスになるなど、その裾野が拡がっています。こうした貸出の動向等も反映して、マネーストックの前年比伸び率も次第に高まっており、最近では4%程度となっています。』

まあそれ以上に預金が増えてますけどね!!!!!

『これに関連して、日本銀行では、先月、金融機関による貸出増加への取組みを支援するBOEのFunding for Lending Schemeと同様の制度を拡充しました。金融機関の貸出増加額の2倍まで資金供給しますが、その際の条件はECBのLTROのように長期の資金供給で、さらに金利面では4年固定0.1%です。日本銀行の金融政策のメインエンジンは「量的・質的金融緩和」ですが、この制度はそのトランスミッション・メカニズムを強化するものです。我々は、2%の「物価安定の目標」実現のために、出来ることは何でもやるという姿勢で臨んでいます。』

とまあこんな文脈で貸出支援制度の説明をしておりまして、まあ文章の流れからすると別に追加緩和をどうのこうのという話をしている感じでは無かったりしますけれども・・・・・・・・・・・・


・英文を読むとサービスフレーズとな

この部分なんですけどね、英文テキストはこんな感じになっているんですよね。

『III. How Far Have We Come?』って所になるんですけど・・・・・・・・

『So, how far have we come toward the goal of achieving the 2 percent price stability target and overcoming deflation? To state the conclusion first, Japan's economy has been following a path toward achieving the 2 percent price stability target as expected, and we are halfway there.』

ふむふむ。

『The transmission mechanism of the QQE has been functioning as initially intended. According to various surveys and market indicators, we judge that inflation expectations have generally been rising. Due to the Bank's massive purchases of government bonds, long-term interest rates have been hovering in a stable manner at low levels. In fact, in the face of a rise in U.S. long-term interest rates from below 2 percent to about 3 percent in relation to speculation about the Fed's tapering of its asset purchases, Japan's long-term interest rates have been stable and recently at around 0.6 percent. As a result, real interest rates have been declining.』

へえへえそうだっか。

『There are also changes in bank behavior. The year-on-year rate of increase in bank lending has gradually accelerated and has been around 2.5 percent. Lending has increased not only to large firms but also to small firms, for which the year-on-year rate of change has turned positive, suggesting that lending has become widespread to a variety of businesses. Partly reflecting this development in bank lending, the year-on-year rate of increase in the money stock has gradually been accelerating, hovering around 4 percent in recent months.』

はあそうだっか。

『In relation to this, last month, the Bank expanded lending facilities to support financial institutions' initiatives to increase lending that are similar to the Funding for Lending Scheme of the Bank of England. The Bank of Japan will provide funds to financial institutions up to double the amount of their net increase in lending and, like the Long-Term Refinancing Operations of the European Central Bank, provide long-term funds. It will provide funds with a four-year fixed rate of 0.1 percent. While the Bank's main engine of its monetary policy is the QQE, these facilities are designed to reinforce a transmission mechanism of the policy. We have been taking a stance of doing whatever we can to achieve the 2 percent price stability target.』

ということで、どうも追加緩和クレクレの人たち的にはここの最後の「taking a stance of doing whatever we can」という辺りでクレクレの支援キタコレとなっているやに思えます。


まあ何ですな、英文と日本文を比較してみると微妙にニュアンスが違う部分もあって、先ほどの比較引用部分の最初を再掲すると・・・・・・

『はじめに結論を申し上げておくと、日本経済は2%の「物価安定の目標」実現への道筋を順調にたどり、道半ばまで来ていると思っています。』

『To state the conclusion first, Japan's economy has been following a path toward achieving the 2 percent price stability target as expected, and we are halfway there.』

となっていて、日本語だと「順調」というのがありますが、英文だと単なる「as expected」となっていまして、「and we are halfway there」なので、ここの部分と最後の「doing whatever we can」と併せると確かに期待しているけどまだ半分なので必要な事を実施します的な読み方を出来そうな気もするなあとか思うのですが、何せこのアタクシは超ドメドメ人間でございまして、こういうのが実際にどういうニュアンスになるのとかはうーむこのという感じでございますので、どうなんでしょ教えてジェネラル(聞いてばっかだな今日は)という所でしゅ。

ただまあ何ですな、どうもイメージ的には海外にはややサービスちっくな表現にしていて、まあ海外の投資家の皆様が異常なまでにクレクレ喧しい(先日はETFを10兆円単位で購入する追加緩和という電波をどこぞ受信しまして、思わず上場ETFのプレーンな日経225型とTOPIX型のETFの時価総額を足し算しちゃいましたよ!)今日この頃でございますので、追加緩和なんかするかよ等と台無し発言をしないでやるやる詐欺で引っ張るという事ですかなどと考えるのは邪推ですかそうですか。


なお、最後の所(『5. おわりに』)でもこういう説明があるので日本語と英語を並べて鑑賞。

『以上申し上げてきたとおり、これまでのところ、「量的・質的金融緩和」が所期の効果を着実に発揮するもとで、日本経済は2%の「物価安定の目標」実現への道筋を順調にたどっています。勿論、まだ道半ばであり、今後も「量的・質的金融緩和」を着実に進めていく方針です。また、経済には上下双方向のリスク要因があるので、それを点検し、2%の「物価安定の目標」実現のために必要であれば調整を行っていきます。こうした政策をしっかりと続けていくことで、2%の「物価安定の目標」を実現してデフレから脱却できると確信しています。』

『As I have mentioned, so far, with the QQE steadily exerting its intended effects, Japan's economy has been following a path toward achieving the 2 percent price stability target as expected. Of course, we are only halfway there and will steadily pursue the QQE. As the economy is associated with upside and downside risks, we will examine them and make adjustments as appropriate in order to achieve the 2 percent price stability target. By firmly continuing with such policy, I am convinced that we can achieve the 2 percent price stability target and overcome deflation.』

まあ何ですな、こちらも順調にという部分がさっきと同じく「as expected」ですとなっておりまして、英文の方がややサービスっぽい感じではありますが、まあいずれにせよ海外向けに話す時はややサービス精神が入っているというのは把握したという所です。

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2014/03/13

○総裁会見から:サービスフレーズが碌すっぽ無いという追加緩和期待に盛大に水を掛ける会見ですね!!

つーことで昨日先取りしましたが本チャンの要旨が出ましたのでこちらから。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1403a.pdf

・2013年度実質GDP+2.7%が難しそうな件に関して

まあ昨日先取りしましたが実際はこういう質疑になっています。

『(問) 昨日発表された昨年10〜12月期のGDPの2次速報は、さらに下方修正となりました。日銀の今年度の経済成長率見通しである2.7%の達成の見通しについて、現時点でどうお考えかご所見をお願いします。』

『(答) ご指摘のように、昨日発表された昨年10〜12月期の実質GDPの2次速報値は、1次速報値から若干の下方修正となり、前期比年率+0.7%の成長率となりました。その内容をみると、国内需要では、設備投資は、法人企業統計を反映して1次速報値から若干の下方修正となったものの、先程申し上げたように、企業収益の改善を背景に、小幅ながらも3四半期連続で増加する姿となっています。』

下方修正だったものの3四半期連続で増加しています(キリッ)とかドラギ先生の会見みたいですね!

『また、個人消費も、雇用者所得が緩やかに持ち直すもとで、底堅い伸びを続けています。一方、外需面では、輸出が新興国向けを中心に弱めの動きとなっている中で、輸入が駆け込みの影響も含め堅調な国内需要を反映して伸びを高めており、純輸出が成長率を押し下げる方向に働いているということだと思います。』

輸入が堅調な国内需要を反映して伸びを高めているので純輸出がGDPの押し下げ方向に働いたとはこれはこれは。

『このように、GDPの2次速報値は、外需が弱めとなった一方で、国内需要が堅調に推移していることを確認する内容であり、全体として、景気の前向きの循環メカニズムは引き続き働いているとみています。』

何という虫の良い解釈などと良い子の皆さんはツッコんではいけません。

『従って、先行きについても、こうした前向きの循環は途切れず、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けていくという見通しには変わりがありません。』

基調的に潜在成長を上回るは良いのですがそれで2年で2%物価上昇するほどの勢い付くのでしょうかなどと思うのですがそれはそれですかそうですか。

『なお、ご指摘の2013年度の成長見通しについては、その先の年度と併せて、4月の展望レポートで改めて公表する予定です。』

どう見ても忍法先送りの術です本当にありがとうございました。


・GDP未達の場合の対応&下振れリスクに関しての認識はどうなのか

まあ今の時点で+2.7%行かなくても全体的な状況と先行き見通しが変化無いので追加緩和とか知らんわヴォケという話をしているのが明白ですが、こういう質疑がございましたぞな。

『(問) 総裁はかねて下振れリスクが顕在化した場合は、躊躇なく調整を行うとおっしゃっていますが、先程のお話にもありましたように、2013年度の成長率の見通しが下振れる可能性がかなり高まっています。また、日銀が今回判断を引き下げた輸出も、やや想定を下回っている、ウクライナ情勢等の地政学的なリスクもあるという中で、政策の調整が必要になるような下振れリスクが高まっている可能性はあるのでしょうか。1月の会見では、下振れリスクはかなり後退しているのではないかとの趣旨のご発言があったかと思うのですが、成長率見通しの引き下げ等も含め、どう考えているかお聞かせ下さい。』

で、この答えがどう見てもゼロ回答です本当にカムサハムニダという内容なのが味わい深い。

『(答) 昨年来の状況からみると、全体として世界経済の下振れリスクは低下しているという状況に変わりはないと思います。』

下振れリスクは低下してるんですってよ奥様!!!

『ただ、1月末から一部の新興国の通貨等が選別的に下落する、最近のウクライナ情勢を反映してウクライナの通貨が下落する、あるいはロシアの通貨が下落するということが起こりましたが、いずれも、現時点では限定的な影響にとどまっており、世界経済全体として下振れリスクが大きくなったということはないと思います。』

現象の話をしながらもリスク低下とはこれまた盛大に強気(というか黒日銀平常運転モード)ですなあ。

『そうしたもとで、日本経済の動向については、先程申し上げたように、生産・所得・支出という好循環が働き始めており、その点には全く変化がないと思います。』

>好循環が働き始めており、その点には全く変化がないと思います
>好循環が働き始めており、その点には全く変化がないと思います
>好循環が働き始めており、その点には全く変化がないと思います

はあそうですか。

『金融政策の運営は、当然のことながら冒頭で申し上げた通り、常に上下双方向のリスク要因を点検して、必要に応じて政策の調整を行うという点は全く変わりません。経済・物価動向を毎回点検していく中で、2%の「物価安定の目標」の達成が困難になった、またはそこへの道筋が順調に進んでないとして調整の必要が出れば、当然、躊躇することなく調整します。しかし、先程来申し上げている通り、内需を中心とした経済の好循環が続いていますし、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減で成長率は上下しますが、0%台半ばとみられる潜在成長率を上回るテンポで、来年度、再来年度と成長していくとみていますので、現時点で、金融政策を調整する必要があるとは思っていません。』

『ただ、何度も申し上げますが、常に上下双方向のリスク要因を点検し、必要があれば躊躇なく調整するという方針です。』

こういう説明をしているのに「困難になったら躊躇なく調整」もきっちりヘッドラインになっている(まあさすがに「調整する必要が無い」が最終的にはニュースヘッドラインになっていましたがとか何じゃそらという感じで、ここの文章通してみれば盛大にゼロ回答をしているのが明白でございますわな。


・輸出に関して

『(問) 2点伺います。(前半の質問割愛)もう1点は、繰り返しで恐縮ですが、輸出についてです。先程のご説明でも外需の一時的な下振れということですが、日本の構造問題といいますか、なかなか輸出が増え難い状態になっているのではないか、円安なのに輸出が増えないという状態に陥っているのではないか、という指摘がかなり出ていると思います。この点について、総裁は輸出の伸びが出てこないのは想定外とみていらっしゃるのか、改めてもう少し詳しくご説明をお願いします。』

『(答)(前半割愛)2点目の輸出については、先程申し上げた通り、確かに企業が海外の需要地に近いところで、あるいは賃金その他の点でより有利なところで生産することで、海外展開は進んでいると思います。これ自体は特にマイナスではないと思います。』

いやそうかも知れんがそもそも置物副総裁理論によると為替レートを調整して輸出がどどーんと伸びるという話じゃなかったでしたっけ。

『そうしたことを踏まえた上で、私どもが昨年「量的・質的金融緩和」を導入した時点で思っていたよりも、最近輸出がやや弱め、内需がやや強めとなっている背景には、ASEANその他新興国の経済がややもたついているということがあります。ご承知のように、日本の輸出の半分以上はアジアの新興国向けであり、そうしたことが影響を与えてきたと思います。その上、一時的な現象だと思いますが、米国における寒波、東アジアにおける春節──春節が例年より少し早く始まったわけです──、そして消費税率引き上げ前の駆け込みの中で一部の企業が国内需要を優先して輸出をやや後回しにしていること、といった3つの要因もあります。』

先ほど引用した金融経済月報でそういう話がございましたね。

『しかし、そういった一時的な要因はいずれ剥げ落ちます。』

一時的要因とな!

『そうなると残るのは、従来からある程度続いていた構造的な海外展開です。これは特に最近テンポが速まったということはなくて、むしろ行き過ぎた円高が是正される中で海外展開のテンポはやや減速しているかもしれません。ただ、いずれにせよ、これは趨勢的にずっと続いている話です。』

ではその点に関してですがどのようにお考えでしょうかという所なのですが、しらっと話が別の方向に進むのが想定問答クオリティというものであります(^^)。

『そうした中で、注目すべきは循環的な要因としてのアジアの新興国の景気回復のもたつきです。ただ、米国を中心とする先進国の経済が成長率を加速させていく──IMFでもOECDでもそういう見通しですが──、そういうもとで、アジア新興国の成長率も緩やかに伸びていくことになると思いますので、循環的な要因の中で、日本の輸出がやや弱いところは是正されて緩やかに伸びていくだろうと思っています。』

ということで、構造要因は特段大きな問題ではなく循環的要因が好転すれば好転するという話になっておりましてホンマカイナというテイストが盛大に漂う説明になっているのでした。


・物価に関しては賃金が上がっていくメカニズムが強まっている&バックワードの予想インフレ上昇とのこと

こんな質問がありまして。

『(問)(前半割愛)もう1点は、4月1日から消費増税が実現しますが、消費増税後の物価の押上げの動向について、変化があるのかどうか、総裁からコメントがありましたらお願いします。』

『(答)(前半割愛)2点目の物価の動向についてですが、冒頭申し上げた通り、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っていると思います。その背景として、初めは円安の影響が大きかったと思いますが、内需中心の経済成長が次第に定着していく中で、ご承知のように、労働市場がどんどんタイトになってきました。いわゆる構造失業率は3%台半ばといわれていますので、現在の失業率3.7%は、完全雇用に極めて近い状況になってきています。そうしたことから、賃金あるいは物価などへの影響も出てきています。』

キタコレ。

『すなわち、潜在成長率を上回る成長、特に今回の内需中心で非製造業がリードする形の景気回復のもとで、労働市場は極めてタイトになり、賃金の押上げ、そして物価の押上げの効果が出てきており、今後もさらに強くなっていくだろうと思っています。』

ひょえー。

『もう1つは、長らく低位にあった予想物価上昇率が、昨年来、全体として少しずつ上昇してきているということです。これも今後、物価を2%の目標に近づけていく要素になるだろうと思っています。』

ほほー。

『従って、従来から申し上げている通り、物価は、ここ半年くらいは1%台前半で推移し、その後1%台半ばから後半、そして2%への道筋を辿っていくと思っています。消費税率引き上げによる直接的な物価押上げ効果は、ご承知のように3%の税率引き上げに対し2%程度と見込まれますが、私どもがみているのは、それを除いた、あくまでもトレンドとしての物価上昇率です。それは、今申し上げたように、今年の前半くらいは1%台前半で推移し、その後徐々に上昇、加速していくだろうと思っており、その見通しに全く変化はありません。』

ということで全く変化ないどころか説明がますます自信満々になっていますよ!!!!!

『それから、今申し上げた、消費税率引き上げによる直接的な物価押上げ効果についてのテクニカルな話で、ご承知かもしれませんが、公共料金については、料金算定期間に3月分を含む場合は、4月の物価指数上は旧税率の5%で計算するということを総務省が発表しています。これを考慮すると、4月1日に税率が5%から8%に引き上がりますが、その物価への影響というのは、4月はいきなり2%分ではなく、それより少し小さい1.7%分くらいであり、5月からフルに2%分ということになります。従って、私どもの物価の判断については、4月分の数値からは1.7%、5月以降は2%引いたところでトレンドをみていくことになると思います。そのトレンドについては、先程申し上げたような考え方で変わりありません。』

別にこれわざわざ説明せんでもと思うのですが、先ほどご紹介した(だけで引用していない)金融経済月報本文直後にあるBOXの中で説明している件に触れているという所のようですな。なおそのBOXの中で紹介されていますが、総務省統計局のサイトの方でも説明があります。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm
消費者物価指数(CPI)

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm#I1
平成26年1月31日 消費者物価指数に関するQ&A(「消費税の取り扱いについて」)を更新しました。


・この質問は如何なものかと

『(問) 3点伺います。1点目は、CPIはコアが1.3%まで上昇していますが、GDPデフレーターはいまだに若干マイナスになっています。コアCPIとデフレーターとのギャップがある背景をどうお考えになっているかお聞かせ下さい。また、今後、2%の「物価安定の目標」を目指すにあたって、デフレーターとのギャップの縮小を実現するためにはさらに政策をパワーアップする必要もあるのではないかと思いますが、その辺りのご所見をお願いします。(以下割愛)』

背景をどうお考えになっているかってあーた統計の質問してどうしますねんという所で、先ほどの総務省統計局のCPIに関するQ&Aというのがあってですな、

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4.htm
消費者物価指数に関するQ&A

そちらの質問「G−8」に思いっきり説明があるんですけど・・・・・・・・

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm#G8
G-8 消費者物価指数とGDPデフレーター(内閣府)が乖離していると聞きますが、それはなぜですか。

でもって総裁の回答も当然ながらこちらのQ&Aに沿った説明をしていますわ。まあ折角なので忘れないように引用しておきますか。

『(答) CPIの動きとGDPデフレーターの動きには、長く遡ってみても常にギャップがあります。それには2つの要因があると思います。第1に、消費者物価指数はあくまでも消費バスケットの中に含まれている消費財の価格がどう動いているかを表すものですが、GDPデフレーターは消費財だけでなく投資財やその他の価格の動きも含むことです。消費財と投資財を比べると、趨勢的に投資財の相対価格がずっと低下してきており――これはどこの国にもある現象ですが――、その結果、GDPデフレーターの上昇率に比して消費者物価上昇率の方が少し高い、逆に言えばGDPデフレーターの伸び率の方が低くなる方向に働きます。消費財と投資財の相対価格の変化があるために、そういったことが起こっているのです。』

『その理由は、消費のバスケットの中では半分以上がサービスですので、機械化その他で効率が良くなる部分があるとしても、資本財のようにどんどん機械化によって安く提供される状況とは異なるからです。消費財の大半がいわば労働コストに応じて変動しますので、消費者物価指数の方がGDPデフレーターよりも上がりやすくなるのです。』

『第2に、GDPデフレーターは、作り方からして当然ですが、輸入財価格が上がると、マイナスに効きます。輸入財価格の上昇分は、一部は消費財の価格上昇に、一部は投資財の価格上昇に転嫁されていきます。長い目でみると、その動きの差はかなりの程度打ち消されるとは思いますが、それでもしばしばGDPデフレーターが大きくマイナスになるのは、基本的には、輸入財価格が上がり、それが部分的にせよ、まだ消費財の価格に完全に反映されていない時点ではギャップが大きくなるからです。完全に反映された後でも、消費財だけでなく投資財の部分もあるので、まったくニュートラルになるとも限りません。』

『この2つの理由でこういう状況になっていますので、別に異常なことではなく普通のことだと思いますし、いずれGDPデフレーターもプラスになっていくと思っています。ただ、数値が同じにならなくてはいけないということはないし、諸外国をみても、日本の何十年間の歴史をみても、消費者物価指数の上昇率の方がGDPデフレーターの上昇率よりも高くなることは幅広く観察されると思います。(以下別の質問の回答部分割愛)』

・・・・・・・まあ何ですな、質問するなら「経済活動全般という意味ではデフレーターも見るべきではないかと思うのですが如何ですか」みたいに聞くもんじゃないですかねえとしか申し上げようがないですな、うんうん。


という所で最後のはおまけですが今回は前回ちょっとサービス過剰(恐らく日銀的にはそこまでサービスする積りは無くて、市場が大反応したのが誤算だったのかも知れないと思う)だったのを元通りの「退かぬ、媚びぬ」攻撃に戻して自信満々の説明を強調したという感じですね!!!!!!

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2014/02/20

お題「総裁会見ネタでMPMレビュー:政策(とオペ)の予見可能性が著しく低下した感があります」

ブルームバーグに社説ってあったのかよ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N15DW36S974001.html
更新日時: 2014/02/19 07:31 JST

でまあそれは兎も角として今日は他のネタもあるような気がしますが総裁会見と雑談で終わってしまいそうなので総裁会見ネタのみという事で。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1402b.pdf

○このフレームアップは金融政策の予見可能性を低下させたと思います

『(問) 本日の決定内容について、とりわけ貸出増加支援制度の延長・拡充の狙い、それからこのタイミングでそれを決められた理由についてご説明下さい。』

つーことで最初の質問に対する答えですが、貸出支援に関する部分が最初にありましてですな、

『(答) 本日の決定会合では、「マネタリーベースが、年間約60〜70 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」という金融市場調節方針を維持することを全員一致で決定しました。資産買入れに関しても、長期国債、ETF、J−REITなどの資産について、これまでの買入れ方針を継続することとしました。』

というのは兎も角としまして、

『また、本日は、近く期限が到来する貸出増加支援資金供給、成長基盤強化支援資金供給、被災地金融機関支援資金供給について、それぞれ1年間延長することを決定しました。その上で、貸出増加支援資金供給については、金融機関が貸出を増加させた額の2 倍まで、日本銀行から資金供給を受けられることとします。また、成長基盤強化支援資金供給については、本則の総枠を3兆5 千億円から7 兆円に倍増します。さらに、この両方の資金供給について、固定金利0.1%で4 年間の資金供給を受けられることとします。』

ほうほうそれでそれで?

『「量的・質的金融緩和」により供給している大量のマネタリーベースが、金融機関の貸出増加や成長力強化の取組みに利用されることは極めて重要であり、今回の見直しは、「量的・質的金融緩和」の効果波及メカニズムを強化するものです。喩えていえば、「量的・質的金融緩和」の導入でエンジンの馬力を大幅に上げたので、その性能を十分に活かすためにタイヤを強化したと言っても良いと思います。』

ということで、明らかにこれは「ほーれほれ」と見せびらかしている状態になっている訳ですが、エンジンの馬力上げてもトランスミッションメカニズムがちゃんとワークしないとタイヤをどうこうしても知らんがなという気はしますが問題はそこだけではないのです。

つまりですな、今回の決定って確かに日銀的に言えば景気判断も先行きもリスク認識も全ての文言に関して現状維持しているので、追加緩和ではないという建付けになっているものの、この説明ですと「景気判断に関わらず現在のMB60-70兆円/年拡大という現状維持の中でも『タイヤを強化する』可能性がある」という話になっている訳ですよね。

ということはどういう事かと申しますと、景気判断とかに変化がない中でも「タイヤを強化」というような言い方を使って例えば次にニバーイニバーイをやりやすそうなものと言えばリスク性資産即ち主にETFとかになると思いますし、大体からしてMB総体から見れば誤差の数字になる部分なのでこれってやっぱり「タイヤ強化」で「2倍」をやりやすいよね、という発想が出てくる訳でして、そうなりますとまあ(債券というよりは他市場になりますが)市場のクレクレ催促が来る、という形になるでしょうなあと思います。

実際問題としては、今回の措置というのは「終了予定措置の延長にちょっと手直しを加えた」という案件なので当初決めたQQEの枠組み変更には当たらないですから、そういう意味ではハードル低いのですけれども、ETFの買入拡大とかそういう話になるとこれは当初決めたQQEの枠組みの手直しという事になるので、それこそ逐次投入モードになってしまうので、今回施策を打ち込んだからじゃあ今後は資産買入の構成変更を「タイヤの強化」という比喩でホイホイ打ち込んでくるのかというと政策決定的なハードルは高くなるのですよね。

でも当たり前ですが、そんな理屈を把握しているのは余程のマニアが重症化して医師の診察を勧められそうな人だけと思われる訳でして、別に日銀の金融政策のその辺の細かい仕切りを理解しようとする気のなさそうな特に海外投資家の皆様なんぞにおかれましては、「今回プリエンティブに対応したから今後も追加の措置があるべし」となって近い将来より一層のクレクレを行ってくるのが見え見えですし、まあ当然ながら市場の方がそうやって煽って追い立てる展開というのが出やすくなると先ほどのロジックを理解している(と思われる)円金利の人たちだって振らされる可能性は出てくる罠という話になるでしょうし、追加緩和ガーと言ってた人たちもそれ見たことかという話になるでしょうなあと。

つーことでですな、本来は淡々と「貸出支援関連措置が期限が来るので延長したのですが、皆様のニーズもあるようですのでこの機会に内容をちょっと充実させましたよ」という感じで軽く説明しておけば良いだけの話だったと思いますし、更に言えば2倍2倍に関してもまあ実際問題としては残高を拡大させたいから2倍という理由があったと思われますが、変に2倍の所がクローズアップされてしまうような見せ方をした(単に「3.5兆円を7.0兆円にしました」だけで良かったんじゃないですか)ので盛大に「2倍」が目立ってしまう結果になるという形。

てな訳で、今回何か妙に悪目立ちさせるような出し方をする事によって、特に最近目立っていた海外投資家の失望気味モードを解消させる事は出来ましたし、まあ株価もその日は盛大に上昇しましたし、クレクレタコラの皆さん大満足だったのでその場は凌げたと思いますが、まあどう見ましてもこれによって「何だ黒田日銀も市場が恫喝すればお土産が出てくるじゃないか」という話が出やすくなりますなあと思う訳で、融通無碍モードになったのかは実際の所良く判らんのですけれども、まあ傍から見る分には明らかに従来の姿勢が変化したと見られるリスクを盛大に高めるという動きをするとはどうしてこうなったという感じではあります。


○ロジックの整合性に混乱があるのも政策予見可能性を下げる訳だが

『(問)(前半割愛)2 点目は、今回の貸出支援関係の拡充です。去年の4 月にやれることは全てやるということで緩和を行ったわけですが、今回の措置は、いわゆる追加的な緩和策とみているのか、総裁の中でどういう位置付けで考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。』

そらまあ聞く罠。

『(答)(前半割愛)2 点目のご質問ですが、貸出支援等の3 つの制度について、それぞれ1年延長し、特に貸出増加支援資金供給と成長基盤強化支援資金供給の2 つについては、大幅な拡充を図りました。この趣旨は、最初に申し上げた通り、「量的・質的金融緩和」の実体経済への波及効果を強化するということです。金融機関の貸出増加や成長力強化の取組みを促すということでかなり思い切った拡充をしたわけであり、そういった意味では、「量的・質的金融緩和」の効果をより強くし、より確実なものとするものであると思っています。』

「かなり思い切った拡充」とか言わなきゃ良いのにという感じですが、「「量的・質的金融緩和」の実体経済への波及効果を強化する」ってまんま麿時代の「量だけではだめで成長基盤強化が車の両輪」という話じゃないっすかねえ。


でまあ次にこんな質問が。

『(問) 貸出増加支援制度に関してですが、ステートメントにもあるように、金融環境は既に緩和状況にあって、銀行貸出も増えています。今回の制度見直しでどれだけ貸出が増えるのか、資金需要という面ではまだまだと思いますが、資金需要についてどのようにみていらっしゃるのか、ご所見をお願い致します。』

『(答) 最初に申し上げた通り、貸出は着実に伸びを高めていますが、こうした制度を拡充することを通じて、さらに貸出が増加していくことを期待しています。今回の公表文の別紙として「貸出増加支援資金供給等の制度見直しの骨子」が付いていますが、貸出増加支援資金供給について、金融機関の貸出増加額の2 倍相当額の貸付を行えるようにすることによって、今の制度の利用率と同程度という仮定で、最終的な貸付残高は30 兆円程度になると見込まれます。これは金融機関による貸出をかなり押し上げる効果を持つのではないかと思っています。』

うーんこのという感じでして、そもそもMBを拡大して異次元に長期国債を買ったら期待インフレが上昇して実質金利が低下して、実質金利の低下それ自体が資金需要を呼び起こすというロジックをQQE始まってから盛大に展開されていた訳ですが、この措置で貸出が伸びるんだったらそもそも国債の買入は異次元じゃなくても良かったんじゃないですかという話になりゃせんですかねえという気もする訳で、従来の話と違うだろヴォケちょっと副総裁室にいる置物出て説明してみろやオラオラオラという感じは非常にするのであります。

・・・・・・・・・てな話を某所の識者と話していたら、「そもそもそのような政策ロジックの整合性を気にする事自体が白い日銀に毒されている証拠である(キリッ)」って話ですなきっと(−_−メというようなネタで盛り上がってしまいましたが、確かにロジックの整合性も気にしないでその時々で説明に都合の良い話を展開するという逆さ絵おじさん(または前半の俊ちゃん)張りの展開だと思ってしまえばそういうものなのかも知れません(−−)。

ただまあ先ほどの話と被りますが、今回の施策のこのフレームアップおよび説明ロジックの混乱というか整合性の低下というのは、当然ながら今後の金融政策運営における予見可能性を低下させることに繋がりますので、まあ物理的に買入が一定量確定している長期国債市場は別かも知れませんが、予見可能性の低下即ちマーケットのボラティリティーを高める方向になると思いますので注意が必要ではないかと思います。


○2倍2倍に関して&0.1%4年の意味合い

昨日駄文でも申し上げましたが。

『(問) 2 点お伺いします。まず、貸出増加支援資金供給と成長基盤強化支援資金供給の規模は2 倍、それからそれぞれ1 年間延長するということです。規模を2 倍にした根拠について、かなりアナウンスメント効果を狙っていらっしゃるという印象があるのですが、改めてお聞かせ下さい。(後半割愛)』

「かなりアナウンスメント効果を狙っていらっしゃるという印象があるのですが」ってそりゃ言われますがなという所で、まあ確信犯的にロジックの整合性から逃れて軟着陸モードを目指して融通無碍モードにするという狙いがあって今回の措置をフレームアップしたのであればそれはそれで作戦の一環だと思いますが、そうじゃなくて今回のフレームアップを実施したのであればちょっとやり過ぎにも程があるんじゃネーノという所ではあります。

『(答) まず1 点目の、貸出増加支援資金供給あるいは成長基盤強化支援資金供給について、前者は、貸出増加額まで貸付を受けられるというものから、貸出増加額の倍まで貸付が受けられるものにしました。また、後者は、総枠を3兆5 千億円から7 兆円と倍にしました。』

はいな。

『理由は、それぞれにあります。貸出増加支援資金供給の方は、先程申し上げたような形で大手銀行は相当活用している一方、地域銀行はまだそこまで活用していません。そういう中で、これを1 年延長し、その際にいわばインセンティブを一層強化するという意味で、貸出増加額の2 倍まで日本銀行からの貸付を受けられることにしました。また、0.1%の固定金利で4 年間借りられることで、金融機関としては金利リスクに対する耐性を強化できます。これによって貸出増加を相当程度支援しますので、この利用が進むだろうと思っています。』

ここの「0.1%の固定金利で4 年間借りられることで、金融機関としては金利リスクに対する耐性を強化できます」というのはまあしらっと説明していますが一番分かりやすい効果ではありますな(ただしALM上のリスクが落ちてもロスカットに抵触すればどうせ金利上昇局面での売り攻撃が出るのですけれども)という所です。

ただ、「これによって貸出増加を相当程度支援しますので、この利用が進むだろうと思っています」ってのは違うだろおいと思いますけどね。

『一方、成長基盤強化支援資金供給は、3 兆5 千億円という総枠が決まっていました。先程申し上げたように、貸出増加支援資金供給の方は総枠がないので、貸出を増やしていけば、いくらでも日本銀行から借りられますが、こちらの方はそもそも総枠が3 兆5 千億円となっており、現状それに近いところまで残高が来ています。そして、一部の銀行では1 行あたりのリミットまで残高が来ているということで、これを拡大する必要があります。倍に拡大すれば、おそらく十分なだけの拡大になるだろうと、こちらの方は総枠を2 倍にしました。』

まあこっちは何となくわかるが、1兆円にしたのは何だかなあ感はあって大手行優遇の香りがプンプン。

『従って、それぞれに2 倍にした理由があり、これらはいずれも貸出増加あるいは成長基盤強化に向けた日本銀行としての強い支援の姿勢、メッセージを含んでいるものとして決定したのです。』

えーっとあまりそれ強調しない方がとは思いますが、まあそういう政策の整合性とかそれは白麿だろとかそういう話を抜きにしますとアピール度は抜群だという事ですかそうですか。


○なお景気認識は妙に強い訳ですが

『(問) 2 点お伺いさせて下さい。1 点は、新興国経済の不安が再燃していますが、週末開かれるG20でどのような分析がなされ、あるいはどのような政策・対策が議論されるのか、見通しを教えて下さい。それからもう1 点は、国内経済についてです。消費税の増税まで1 か月強になりましたが、駆け込み需要とその反動に関し、これまで再三シナリオについてご説明頂いております。そのシナリオに狂いがないかどうか、改めてお聞かせ下さい。』

ふむ。

『(答) まず、1 点目について、国際金融資本市場では、現状、経常収支の赤字などの構造面での脆弱性を抱える一部の国において、神経質な動きがみられています。これら新興国では、当面、成長に勢いを欠き、不確実性も高い状態が続くとみられます。もっとも、米国をはじめとした世界経済の回復テンポが今後、増していく中で、やや長い目でみて、その好影響はこういった新興国経済および市場にも及んでいくと考えられます。』

うーむ結局大丈夫ということか。

『G20では、通常通り、世界経済の現状と先行きや、国際金融情勢について、活発な議論が行われると思います。その中では、新興国市場の動向についても、取り上げられることになると思います。そのほか、議長国のオーストラリアは本年のG20の目標として、成長と雇用を促進すること、経済の頑健性を高めることを掲げています。今回のG20では、こうした構造問題に対しても、11 月のサミットに向けて、どのように議論をしていくかについても、意見の交換が行われると思います。』

何か短期的な混乱の話が無いですな。

『2 点目の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動については、先程申し上げた通り、駆け込み需要は、既に家計支出の一部で顕在化していると思います。例えば、住宅投資については、昨年秋までに契約ベースで発生した注文住宅の駆け込みが、若干のラグを伴って着工に移されてきています。また、乗用車や家電など耐久財の消費についても、このところ駆け込みの影響が強まってきているのではないかと思います。さらに、衣料品や雑貨などの耐久財以外の消費についても、今後、3 月にかけて駆け込みが発生すると予想されます。』

と来ましたが・・・・・・・・

『ただ、住宅投資の増加あるいは個人消費の底堅さの基本的な背景には、冬のボーナスの増額など雇用・所得環境の改善があり、先行きも、雇用・所得環境の改善が続く中で、住宅投資や個人消費は、こうした駆け込みとその反動という振れを伴いつつも、基調的には、底堅く推移するとみています。』

うーん堅調な話ですなあ。


○今年度実質GDP+2.7%(キリッ)って大丈夫なのか?????

『(問) 先程、GDPにつきまして、堅調な内需を背景に伸びが続いているとおっしゃられていましたが、今年度については、日銀の見通しである+2.7%を下振れるのではないかという声が多く聞かれます。その場合は、需給ギャップの改善が遅れる可能性もあります。このような見通しの下振れと、その際の政策対応について、繰り返しになるかもしれませんが、改めてお聞かせ下さい。』

さてこの質問ですが・・・・・・・・・

『(答) 最初に申し上げた通り、毎回、金融政策決定会合で色々な議論が行われるわけですし、経済・物価情勢を点検して、上下双方向のリスクが明らかになれば、それぞれに対応した政策の調整を行うということであり、その点には全く変わりありません。従って、ご指摘のようなリスクが顕在化するようなことがあれば、躊躇なく現在の「量的・質的金融緩和」の調整を行うことになります。もっとも、今のところわが国経済は順調に推移し、日本銀行の経済見通しに沿って動いていると思っており、今の時点で+2.7%の経済成長が達成できないとは考えていません。』

えーそうなんですかねえという所ですが、これ意地の悪い見方をすれば、+2.7%の実質GDPが達成できないと見通し変更に繋がるので調整が行われる、とまあそういう見方をする事も可能ですので、こらまあ今後の定例会見でも同じような質問を繰り返して意地悪く詰めて行くように記者の皆様にはぜひお願い致したいものでありまする(^^)。

『先程申し上げたように、1〜3 月期は若干の駆け込みもあると思いますし、10〜12 月期の成長率でも潜在成長率を上回っていますので、GDPギャップはさらに縮んでいると思います。今後もGDPギャップは縮小していき、最終的にはプラスになり、物価上昇率あるいは予想物価上昇率を押し上げていくと思います。』

ほうほうそうですかそうですか。


○しつこく聞かれてやっと一部あばばばばーな新興国に関する話が

『(問) 2 点伺います。まず、前回の決定会合のステートメントのリスク要因のところで日本経済を取り巻くリスクについて多少上向きの判断をされた後に、米国の金融緩和縮小をきっかけにして、かなりマーケットが荒れました。』

ワロタ。

『今日の総裁のご説明でも中国なり米国なりASEAN等については前向きになっているという話がありましたが、最近問題になっているフラジャイル・ファイブと言われる国々については、米国の金融緩和縮小の影響が相当出るのではないかという懸念が拡がっていると思います。その点について、ある程度長引くとお考えなのか、それとも一時的なものですぐに戻ると思われているのでしょうか。(2点目割愛)』

でそのお答え。

『(答) 1 点目について、まず、米国の資産買入れプログラムが少しずつ縮小していくことの影響がどのように及ぶかですが、何が原因で、何が原因でないか、というのはなかなか言い難いと思います。前回の決定会合以降の状況でみると、一部の新興国・資源国の通貨や株がかなり売られたことは事実です。その後、そうした通貨や株も一部戻っているところもありますし、また、アジアの多くの新興国はそもそもそうした影響をほとんど受けていないので、一概には何とも言い難いということがあります。』

まあこれはこうしか言いようがない罠。

『それから、影響を受けた一部の新興国・資源国も、それぞれの経常赤字や財政赤字、インフレ状況などに対応して金融政策やその他の対応策を打ってきており、それらを含めると今後もまた同じようなことが起こるとも言えないと思います。他方でこういうことが起こったということは、そういうリスクはあり得るということを示したわけですので、十分によくみていく必要があると思います。特に、構造的な問題を抱えた新興国・資源国については、その市場の変動というリスクを考えていく必要があると思っています。ただ、全体として、前回の決定会合でみた海外経済の動向についての基本シナリオが変わったということはないと思います。』

うーんこれですと確かに懸念を示してはいるのですが、何かそんなにリスク認識という感じでは無いですなという所で、まー米国も日本も自分の庭先に火が点かない限り新興国のフラジャイル何とかが火を噴いても知らんがな状態であるというのは把握しました。


とまあそういう所で、金融経済月報(ただし経済物価部分全文一致)とFOMCミニッツ(まだ肝心と思われる所の斜め読みしただけ)ネタは本日はパスという所ですが、再度申し上げますと、今回このタイミングで打ち込んだ施策に関しては、日銀にその意図があったのか無かったのかは今一歩分かりかねるので、議事要旨でその辺に関する話がどう盛り込まれているかを見たいというかちゃんとその辺についての議論してるんでしょうね頼みますよという所です。なおこういう時に困るのはミニッツが出て来るのが遅い事なのだがこればかりは日銀法の建付け上次回決定会合(通常政策委員会ではない)での承認事項になっているのでどうしようも無いのですよね。

いずれにせよ、現象として出てきた事象を外野的に見た場合、黒田日銀の従来の姿勢の変化とか、政策ロジックの整合性低下というような解釈をする事が大いに可能な話でありますので、その点コミュニケーションポリシー的にどうなのかという風には思います。まあ確信犯的にやっているなら軟着陸に向けた融通無碍大作戦なのかもしれませんけどね!!

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2014/01/24

お題「黒田総裁会見をちょっと詳しく読んでみましょうという話」

株価が下がると死んじゃうから何かしたいのは判るが・・・・・・・・
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140124/t10014728051000.html
法人税の実効税率引き下げ 議論活発化へ
1月24日 4時25分

減税すると経済効果が出るからその分で税収ガーとか言い出すとそれは先の大戦での戦争先行き見込みたいな話になるんで勘弁して欲しいのですけど。


○黒田総裁会見はドヤ顔満載モードも物価の説明が丁寧

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1401a.pdf


・冒頭の説明部分から

最初の質疑は実質的に説明部分になりますが、まずはこちらの方からちょこちょこと。

『わが国の景気ですが、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが引き続き働いており、これまでと同様、「緩やかな回復を続けている」と判断しました。先日開催された支店長会議でも、全ての地域から「回復している」あるいは「回復しつつある」との報告が聞かれており、景気回復の裾野も着実に拡がってきています。』

景気回復の裾野が広がっているとな。

『物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、上昇品目の広がりを伴いながらプラス幅の拡大を続けており、11 月は+1.2%となっています。除く食料・エネルギーの前年比も改善傾向を続けており、11 月は+0.6%となっています。予想物価上昇率は、全体としてみれば上昇していると判断されます。』

物価については「上昇品目の広がりを伴い」「コアコア(除く食料エネ)も改善」とかもうキタコレとしか申し上げようがないですな。

『以上のように、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待など、好転の動きが幅広くみられており、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っています。また、海外経済を中心として下振れリスクはこれまでより低下してきています。』

どう見ても満面のドヤ顔です本当にありがとうございました。


・リスク認識に関して

声明文でリスク認識が従来の下振れ警戒から中立に近い表現になった所に関連して。

『(答) 第1点目については、ご指摘の通り、従来からリスク要因として海外経済の不確実性を挙げていましたが、先程もご説明した通り、米国、欧州といった先進国の回復基調が明確になってきました。これを踏まえて世界経済全体としてのリスクが低下してきているとみています。』

>先進国の回復基調が明確になってきました
>先進国の回復基調が明確になってきました
>先進国の回復基調が明確になってきました

どう見てもドヤ顔です。

『ちなみに、IMFも新しい世界経済見通しを発表しましたが、先進国を中心にして、2014年の成長率見通しを上方修正しています。世界経済全体の経済成長率は、2013年より2014年、2014年より2015年というように、だんだんと高まっていくとみられています。従って、ステートメントには、リスク要因として非常に大きいというよりも、むしろ、リスク要因として残っているという意味で、3つを挙げています。』

という表現から判りますように、まあリスク認識は一応下は下なのですが、気分は中立という感じのウキウキ表現になっていますな。


○総裁会見ネタは続きまして物価上昇のメカニズムに関連して

今回の質疑応答ですが、先ほど申し上げたように物価上昇のメカニズムの説明が従来よりもだいぶクリアな感じ(ただしそのロジック自体は気合だ気合だ気合だ部分が思いっきり入っているのですけれども)になっているように見えます。まあコアが1%台に上昇したので説明をよりクリアにして自信満々っぽくプレゼンしてもヨロシカロというのもあるのかもしれませんが、自信を強めたから説明が更にクリアになったという感じも。

6ページ目と11ページ目にある黒田総裁の説明を読みますとその辺の説明がありますので読むべし。

・期待インフレの上方シフトというメカニズム

『(答) 物価については、昨年4 月に「量的・質的金融緩和」を決定し、その後着実に実行する中で、実際の物価上昇率も徐々に上がってきており、先程申し上げたように、生鮮食品を除くベースで+1.2%、食料・エネルギーを除くベースでも+0.6%になっています。そうした中で、最近の民間の見通しは徐々に上昇しており、2013 年度あるいは2014 年度について、私どもの見通しとかなり近い数字になってきていると理解しています。』

ドヤッ!って所ですね分かります。というか日銀某局あたりから高笑いの声が聞こえてきたように思えるのは幻聴ですかそうですか。

『ただ、2015 年度の見通しについては、依然として私どもの大勢見通しと民間の見通しとにややギャップが残っていると思います。』

で、そのポイントは何かと言いますと「予想物価上昇率の上方シフト」だそうです。

『前にも出た論点ですが、経済成長率については、私どもと民間の見通しにそれほど大きな違いはありません。そういう意味では、需給ギャップがだんだん縮小し、いずれプラスになるという方向については、あまり違いはないと思いますが、予想物価上昇率について、まだ民間の方がやや慎重な見方をしているのかなという気がします。』

つまりフィリップスカーブの上方シフトなりスティープ化が起こるかどうか(恐らくスティープだとサステイナブルでは無いので上方シフトだと思うのだが)という点になるのですが、この辺りに関して従来は割と日銀からの情報発信ではフィリップスカーブがどうのこうのという説明をしていましたが、今回の説明ではフィリップスカーブの上方シフトみたいな話をしないで、以下にありますように「中長期的な期待インフレ率の上昇」という話に絞っているのが味わいがございます。

『ただし、民間の見通しがどういう経済モデルを想定して立てているのかなど分かりませんので何とも申し上げかねますが、おそらく、予想物価上昇率の今後についての考え方が違うのかと思います。』

ということで、予想物価上昇率(まあ要するに期待インフレ率だが)という話をしているのがお洒落なのですが、更にお洒落なのはここにありますように「期待インフレ」とか「インフレ期待」というような単語を使っていない所で、これは足元相変わらず安定推移の10年カレント物価連動国債BEIのネタを持ち出さない伏線であると見ましたがどうですかねえ(ニヤニヤ)。


・期待インフレ率がどのようにして上昇するのか

『以前から申し上げている通り、日本銀行が物価上昇率2%を2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現する、そのために「量的・質的金融緩和」を導入すると単に言ったからといって、予想物価上昇率が直ちに2%に跳ね上がるとは思っていません。』

師匠の高度な計算式はどうなったのでございましょうか??????

『そういった政策のアナウンスメントに対応してフォワード・ルッキングに上昇する部分もあると思いますが、実際に物価上昇率が上がっていく過程の中で、いわばバックワード・ルッキングに予想物価上昇率が上昇していく要素も、両方あると思います。』

つまり、従来行われたことの無かった「期待インフレ率をデフレ均衡状態から引き上げて新たな均衡にアンカーさせる」という中においては(インフレ期待が「不安定化して」高くなった状態からの安定化という従来型の金融政策での課題と違って)フォワードルッキングな期待形成だけではなく、実際の物価推移に適合的な期待形成が行われないと、デフレ均衡となっていて望ましくない状況で安定化している期待を動かす為に重要なファクターである、とまあそんな説明になっている訳ですな、うんうん。

『私どもは、私どもの大勢見通しが正しいと思っていますし、実際に物価上昇率が上がってくる中で予想物価上昇率も徐々に上がってきています。そうした傾向が続いていく中で、私どもが申し上げているように、見通し期間の後半、具体的には2014 年度の終わり頃から2015 年度にかけて、2%程度に達する可能性が高いとみています。』

どう見てもドヤ顔ですというか民間エコノミストに盛大に喧嘩売ってます本当にカムサハムニダ。


・今後の物価推移のパスとそのコンポーネント

11ページ目の部分である。

『(答)(別の質問部分割愛)1 点目の、「物価安定の目標」に向けて進む道筋です。色々な前提のもとでみると、エネルギー価格などが物価を押し上げていた部分はだんだん減衰していく一方、GDPギャップは少しずつ改善していき、インフレ期待も、少しずつ上がってきており、今後も上がっていくと想定されます。エネルギー価格による押し上げが小さくなるということと、内需を中心に、経済取引全般について需給がタイトになってきて、少しずつ幅広い品目で物価面の改善がみられるということの、両方の面があります。それがちょうど綱引きで、概ね現状程度の1%台前半という水準が、「暫くの間」――これは、半年程度だと思って頂いてよいと思いますが――、続くだろうとみています。』

ということで、ここで総裁が明言していますが、今回の声明文における「暫くの間」というのは「半年程度」という事のようですので、この間コアCPIの上昇ペースが+1.2%近傍で推移して伸びない場合でも「見通し通り」でありますので追加金融緩和は無いですよというメッセージでもあるという事になります。

それは兎も角として、今後半年程度の期間におきましては、徐々に食料エネの前年比上昇要因が剥落する側から、需給ギャップの改善による実力ベースの物価上昇要因が変わっていく、つまり「同じ物価上昇率でもその質が改善される」という図を想定しているという話ですな。

『その後は、前者の部分はなくなりますので、後者の部分だけになってきます。さらに、後者の部分についても、潜在成長率を上回る成長が続くわけですので、当然、GDPギャップがずっと改善していきます。そうした中で、物価上昇率が上がり、インフレ期待も上がっていくという形で、物価が上昇していくとみているわけです。その結果として、ここにあるような見通しができているということです。』

で、その後の物価上昇に関しては需給ギャップの改善に加え、先ほどの質疑応答で説明していたバックワードルッキングによる予想物価上昇率の上方シフトが起こり、それによって実際の物価も予想物価上昇の上昇に伴い、従来のフィリップスカーブで説明できる需給ギャップによる上昇を上回って上昇する(過去のフィリップスカーブを前提にすると2%は相当の改善が必要ですので)という説明になっておりますな。

『ちなみに、政策委員の大勢見通しの表をみて頂いても分かるように、基本的に、昨年10月時点の展望レポートとほとんど変わらないのですが、仔細にみると、消費者物価の上昇率については、例えば足許の2013 年度については幅がだいぶ縮んできていますし、2014 年度、2015 年度についても、幅のうち、下の方が上がってきています。個々の物価見通しはそれぞれの政策委員の方々の見通しですが、その全体を大勢でみれば、中心値は変わっておりませんし、その幅も、少し下の方が上がってきているということでして、そういった見通しを、政策委員会として持っているということだと思います。』

>少し下の方が上がってきているということでして

ドヤ顔キタコレですなあっはっは。


○金融政策運営(というか追加緩和)に関する部分&市場の動きは勝手にやってろ発言部分とか

先ほどの所でもドヤァ!ってテイストの部分が多々ございましたが、さて他にもこんなのがががが。

『(問) 昨年の1 月22 日に日本銀行が2%の「物価安定の目標」を導入してから、本日でちょうど1 年になります。「物価安定の目標」を導入するメリットについて、先程、総裁から、2%という目標を掲げたからといって、すぐに期待物価上昇率は上昇するわけではないというお話もありました。目標を定めたことの効果について、この1 年間の動きをみていてまだ効果は出ていないのか、それとももう手応えを感じつつあるのか、また、人々の期待が目標の設定によってどのくらい変化したか、ということについて、総裁のご見解をお伺いできればと思います。』

『(答) 私どもとしては、もちろん手応えを感じています。先程申し上げた生鮮食品を除くベースで+1.2%、それから食料、エネルギーを除くいわゆるコアコア指数でも+0.6%になっています。物価上昇率は、徐々にですが、明らかに上昇しています。予想物価上昇率も全体としてみると上昇しており、先行きの見通しについては、先程申し上げた通りであり、「量的・質的金融緩和」は効果を発揮していると思います。』

はいはいドヤ顔ドヤ顔。

『ご指摘のように、昨年の1 月には、2%の「物価安定の目標」を決定して、これをできるだけ早期に実現しようということでした。4 月4 日には、これを「2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」ために必要にして十分なだけの金融緩和措置を採るということで、「量的・質的金融緩和」を導入しました。2%の「物価安定の目標」も非常に重要ですし、それをいわば「2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」という決意のもとに、「量的・質的金融緩和」を導入して、これを毎月着実に実行してきているということも極めて重要な要素であろうと思っています。』

ということで、ドヤ顔の方も宜しいのですが、こちらにありますように「2年」でという方の説明も強調しているのがもう一つのポイントで、必要な措置を投入しましたと改めて説明しているのはつまり相変わらず期待の多い「消費税引上げの落ち込みに対応した予防的追加緩和」への否定をしている訳ですがな。

更に追加緩和に関する直球質問が別の所で。

『(問) 物価は、日銀がみている通り順調に2%に向かっているということですが、市場では日銀の追加緩和期待が根強くあります。その中で、仮にこのまま順調に推移した場合、調整は必要ないことになると思いますが、例えば、今日の決定会合の後などは一旦、株安になったり円高になったりしています。追加緩和に関する思惑があるため、緩和がない場合に市場が荒れ、株安になったり円高になったりすることについて、総裁は懸念を持っていらっしゃいますか。』

これは良い煽り質問(^^)。

『(答) マーケットの状況については常に注視していますが、全体の動きについて何か特別な懸念を持っているかと言われれば、持っていません。』

キターーーーーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

『その1 番大きな理由は、4 月4 日に「量的・質的金融緩和」を決定し、その後、半期毎の展望レポート、またそれを中間評価することを続けてきていますが、基本的に、物価は想定した道筋を辿ってきているということです。』

まあ財務官やってましたからそうなんでしょうなあとは思いますが、やはり黒田さん本質的には「マーケットが俺様の見立て通りに動かないとはケシカラン」という俺様スタンスであるというのが思いっ切り透けて見える、というかまる見え状態になっているのが実に味わいの深い物を感じます。

#財務官と違って「ケシカランので成敗してやる」と逝かないのが残念ですね!!!!

『当然、物価見通しについて上下双方向のリスクはあり得るわけですが、これまでのところそういうリスクは顕在化していませんし、そういうリスクが顕在化しなければ、現在の政策が続いていくということです。』

もうこれに尽きる訳で、顕在化しなければ動かないという訳ですから、そらまあ見えやすい海外大失速でモロにリセッションとか、金融危機発生とかでも無い限り、消費税増税の反動如きでの予防的反応と言うのは無く、消費税増税の反動がどの位になったのかが明らかになる時期に予想よりも莫大な反動減がキタコレとなった場合じゃないと動きません罠となりますので、どこからどう見ても1−3はおろか4−6での追加緩和も期待する方がオカシイという結論になります罠、今のところの話ですけど。

『「マーケットはマーケットに聞け」というくらいで、マーケットはマーケットで色々動くと思いますが、実体経済の動きと物価の動きを十分注視して、適切な金融政策を運営していくことに尽きると思います。』

これがまた豪快にも程がある発言でして、つまりこれまでの間物価見通しに関しては市場の見立てよりも日銀の見立てが大勝利の行進状態になっていた訳でして、俺様の見方に負け続ける市場の動きなんぞ知るかヴォケ勝手にやってろというドヤ顔大勝利モードになっているのがヒジョーに良く判るお話ではございました。


・・・・・・・ということでして、ドヤ顔大勝利モードは今の所勝っているだけに誠に仰せのとおりですと申し上げるしかないのですが、まあ良く良く見たらこの先の物価上昇メカニズムに関しても「バックワードルッキングによる期待の変化」というヒジョーにフワフワしたものを気合で包んでご提供しているだけの話でありまして、結局の所信じるか信じないかの世界である事は変わらん、というかその要素更に強くなっておりますぞなもしという所です。

さはさりながら、この「信じるかどうか」というのは例えが不適切かも知れませんが一種宗教ちっくなものがありまして、じゃあその宗教ちっくなものを信じるかという話になると、目の前で物価上昇という名の実績(最初奇跡と書こうと思ったが思いとどまって実績に文言変更^^)を示されますと信憑性が高まってしまう所がオソロシスな訳であります。

でまあインフレ期待に関連してはこれまた難しくて、(歳がバレるからあまり申し上げたくないが)物価が年々上昇して毎年のように国鉄の運賃や市電の運賃が上昇していた時代の記憶があるあたくしのような世代と、低インフレデフレ時代しか知らない世代とではこの辺の期待変化についても違うんじゃないのかなあとか思ったりして、中々こう難しいというか奥が深い話ではあると思いますが、それこそ世代別のインフレ期待の変化とかを今以上に大々的にサーベイ取って行くと面白いのかもしれないな(難しいと思うけど)などと思ったりしながら今回の総裁会見テキストやら金融経済月報(は今日間に合わないのでネタにしませんすいませんすいません)を読んだりしたアタクシなのでありました。

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2013/12/27

○ということで経団連での総裁講演ネタ続き

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131225a1.pdf

こちらの講演ですが、昨日ネタにした続きにまさに『4.インフレ予想の引き上げ』というコーナーがあるのですわよ奥様。

『このように、「量的・質的金融緩和」は、インフレ予想を引き上げることを重視していますが、政策的にインフレ予想を引き上げることの実現可能性については、市場関係者やエコノミストの方々の中にも、依然として懐疑的な見方が少なくないように思われます。もとより、中央銀行が人々や市場の期待を意のままに動かせるものではないことは十分に承知していますが、ここでは、2つの点を指摘しておきたいと思います。』

丁寧な説明が来ましたよ!!!!って別にこういう流れになる事を狙ってやっていた訳ではないがちょうどこうなるとはラッキーバルボア(^^)。

『第1に、内外の歴史を振り返ると、人々のインフレ予想が短期間で大きく変化した事例は多くはないのは事実ですが、それらはいずれも、政策当局が強い覚悟で行った大胆な政策転換に裏付けられているということです。』

ほほう。

『例えば、1930 年代の米国の大恐慌では、ルーズベルト大統領は、デフレ脱却に向けた強い決意を明確に示し、「ニュー・ディール政策」を実行しました(図表13)。これにより、比較的短期間のうちにインフレ予想はシフトアップし、大恐慌に伴う激しいデフレは収束しました。同時期のわが国でも、「高橋財政」と呼ばれる、拡張的な為替・財政・金融政策の組み合わせが、昭和恐慌からの脱却に大きな成果をあげました。』

ということで例を挙げているのですが、実際問題としてはこの間に通貨政策の大規模な転換(金本位制度からの離脱とか)が起きている訳で、「強い覚悟」も大事ですが中身も大事だということでつまり為替の大規模な修正が必要ということですかそうですか(とはポリティカリーインコレクトなので言えないですけどね)。

『デフレとは逆のインフレ抑制の例になりますが、ボルカーFRB議長が、70 年代末から80 年代初にかけて強力な金融引き締めを行うことによってインフレ予想の引き下げに成功し、その後の低インフレ下での米国経済の繁栄の基礎を築いたことは、よく知られています(前掲図表13)。』

まあ締める方に関しては金利をバンバン上げて貸出とかを絞らせまくれば良いのですけど。


『第2に、インフレ予想の形成に当たっては、日本銀行の約束と行動という「フォワード・ルッキング」な要素に加え、金融緩和の進捗に伴って、実際のインフレ率も高まってくるという実績の積み重ね――つまり「適合的」ないしは「バックワード・ルッキング」な要素も重要であるという点です。』

気合に加えてコストプッシュも辞さずですねわかります。

『消費者物価の前年比上昇率は、本年10 月には+0.9%まで拡大しており、来年前半にかけて+1%を若干上回る水準で推移するものと見込まれます。15 年近くにわたってデフレが続いたことを踏まえると、これ自体、重要な変化です。人々が実際に物価上昇を経験すれば、インフレ予想も、大きく変わってくるはずです。』

どう見てもコストプッシュ歓迎です本当にありがとうございました。

『日本銀行としては、フォワード・ルッキング、バックワード・ルッキング双方の要素が相俟って、予想物価上昇率が上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えています。』

ほうほう。

『なお、これまで、「物価が緩やかに上昇する」と申し上げてきましたが、日本銀行が目指しているのは、あくまでも「物価の安定」であり、人為的にインフレを起こそうとしている訳ではありません。』

いや人為的にインフレ率変えようとしてるでしょうよ。まあ別の意味で言ってるのは判るが。

『日本銀行の考える「物価の安定」を具体的な物価指数に即して数値的に定義すれば、消費者物価の前年比上昇率で2%であるということです。2%が望ましいと考える理由は、いくつかあります。』

つーことでボスキンバイアスの話と、景気悪化時の糊代確保という話をしているのですが、まあそこは普通の話なので引用割愛してこのコーナーの最後の部分。

『海外でも、同様の理由から、インフレ目標を2%程度に設定している国が多く、2%がグローバル・スタンダードになっているのです。』

ということなのですが、ただまあ主要国に関しては世界的に潜在成長率が下がっていて実は望ましい物価上昇率水準に変化が生じているんじゃネーノという議論って今後ネタにはなると思うのですが、何せ各国とも最初にそれを言い出すと為替調整の刑を食らってしまうので手を出しにくいネタでもありまして、もし経済のロンガーランから導き出される本来あるべき物価上昇率水準が2%よりも低いという話になった場合に、2%のターゲット政策を継続した場合ってそれは緩和のやり過ぎになって金融経済の不均衡を招くリスクが高まるという絵も見えますなというのが来年以降徐々に中銀のネタになってくる(まあ中心的な人は言及しないと思いますけど)かも知れませんなと思ったりするのでした。

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2013/12/26

○総裁講演はまたまた自信満々モード

総裁経団連で講演の巻
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131225a1.pdf
デフレ脱却の目指すもの
──日本経済団体連合会審議員会における講演 ──

『日本銀行は、早期のデフレ脱却を目指し、本年4月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。本日は、今年の締めくくりに当たって、やや中長期的な観点から、わが国経済の歩みを振り返りつつ、デフレ脱却によってどのような経済・社会を目指していくのかについて、私の考え方を申し述べたいと思います。』

と大きく出ましたが、デフレが長期化するとデフレ均衡になるので云々の話がここぞとばかりに説明されていて、まあ最近はQQEの説明でマネーを増やすことの定量的な話はすっかりスルーとなり定性的な「期待の転換」の方に説明の重点を置いているのが良く判ります。まあ相手が経団連だからさらに気合だ気合だハッスルハッスルという話なのかもしれませんが。


・デフレ均衡キタコレ

冒頭部分の次の小見出しが『2.デフレの問題』という所でして、結構その部分ああだこうだと説明しているのですが華麗にスルーしまして(すいません)この項の結論部分をば。

『以上のように、デフレが長引くもとで、わが国の経済・社会システムは、物価が上がらないことを前提とした仕組みが定着していきました。先ほども申し上げた通り、個々の経済主体は合理的に行動しており、行動様式を変えるインセンティブを持たないという意味で、このデフレの状態は、ある種の均衡状態にあります。これが、「デフレ均衡」とも呼ばれる所以です。』

デフレ均衡キタコレ!!!ですがきさらぎ会の時は「デフレは、それが長く続くことにより、克服するのが一層難しい課題となっていきました。」(これはきさらぎ会での総裁講演から)という説明をしていましたが、今回の講演ではそこの表現を一歩踏み込んで「デフレ均衡」という言葉を使っているのがマニア的にはほっほーと思いましたです、はい。

『デフレ均衡は安定しているからこそ、長期化し、克服するのがますます難しくなってきたと言えます。しかし、このような均衡状態は、いつまでも続けられるものではありません。何より、新たなビジネスを創造していく企業の積極的なチャレンジがなければ、日本経済の長期的な発展は望めません。日本経済の将来のために、出来るだけ早くデフレから脱却し、「縮小均衡」を「拡大均衡」に転換していくことが必要なのです。』


・ドヤ顔キタコレ

で、その次の小見出しが『3.「量的・質的金融緩和」の考え方──「期待」の抜本的転換』なのですが、そこの冒頭読んでて思わず胡麻麦茶吹いてしまいましたすいませんすいません。

『それでは、どのようにすれば、デフレから脱却できるのでしょうか。これに対する日本銀行の答えが、本年4月に導入した「量的・質的金融緩和」に他なりません。』

どう見てもドヤ顔満艦飾です本当にありがとうございました。この辺の自信満々っぷりは俊ちゃんを彷彿させるというか何というか(^^)。


・つーことで説明が全力で「期待の転換」になっとる訳で

その続き。

『先ほど申し上げたように、デフレ問題の本質は、「物価が上がらない」ことを前提に行動することが、企業や家計にとって合理的となっている点にあります。こうした「デフレ均衡」から抜け出すためには、「物価が緩やかに上昇する」ことを前提に行動する方が、より合理的な選択となるような経済環境に転換する必要があります。』

ふむ。

『「合成の誤謬」によるデフレのもとでは、一社だけで価格や賃金の引き上げを実施することは不利益になりますが、多くの企業が同時に価格や賃金の引き上げを行えば、経済全体にプラスに働く訳ですから、政策当局としては、そのように人々のマインドセットを転換できるような大胆な政策を打ち出さなければなりません。要するに、「デフレ均衡」下のゲームのルールを打ち破る必要があるのです。』

おまいら(聴衆は経団連)がインフレ目標を信じてその通りに行動してくれないと期待が転換せんのじゃヴォケと言っているような気がしないでも無いですが、とにかく期待の転換を説法して回っているということでありますな、うんうん。

『そのために、日本銀行は、消費者物価上昇率2%という「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現すると、強く明確にコミットしました。あわせて、こうした強く明確なコミットメントを裏打ちするために、量・質ともに従来とは次元の異なった大胆な金融緩和を行うことにしました(図表11)。』

『さらに、この「量的・質的金融緩和」は、2%の目標を安定的に持続するために必要な時点まで、継続することを約束しています。その過程においては、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うこととしています。日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現に対して、全面的にコミットしているのです。』

ということでコミットとか2年とかそういうアピールに余念がないのですが、今回は前回のきさらぎ会で説明していた「長期化するデフレからの脱却には短期間でのシフトが必要」というような説明が若干弱い気がしますな。先ほど「デフレ均衡」という話をして、「均衡を破る」という話はしているのですから、その異次元には「短期間で行うのが重要」という部分の説明ももうちょっと加えても良かったんじゃないかと思うのですけどね。大体からして「短期間で遷移するんですよ皆さん大丈夫ですかオラオラオラ」という感じにしないとマインドセットが中々変わらんちゃいますかねえ。


・思いっきり「期待の転換」の話が続いていますが・・・・・・・・

ちょっと飛ばしてその先。

『「量的・質的金融緩和」は、様々な波及経路を想定していますが、日本銀行のこれまでの金融緩和政策や、海外の主要中央銀行で実施されている金融緩和政策と大きく異なるのは、「期待の転換」を特に重視している点です。「量的・質的金融緩和」は、強く明確なコミットメントとそれを裏打ちする異次元の金融緩和によって、市場や経済主体の期待を抜本的に転換し、インフレ予想を直接的に引き上げることを目指しています。インフレ予想が高まり、「先行き物価が上がっていく」との認識が定着すれば、実質金利の低下やポートフォリオ・リバランスといったチャネルに伴う景気刺激効果も強化されます。』

ということで、もう思いっきり波及経路が「期待の転換」経由になっていまして、定量的な話が無いという大変に素敵な政策ルートですが、この先の方で「ではインフレ期待が上昇するルートとは何ぞや」という説明があるのですが年末でネタが枯渇するリスクを勘案して(というのはウソで単に時間の問題)続きはネタが無かったら明日投下します。

まあ結論としますと、今回の講演もどう見ても自信満々という内容でありまして、一方であの金融経済月報や声明文の先行き見通し謎のヘッジクローズてんこもりは何なんだと?????感を強める年の瀬なのでありました。

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2013/12/25

○総裁会見:ニュースヘッドラインは微妙にハトっぽく流されていましたが・・・・・・・・・

総裁会見である。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1312c.pdf

・冒頭の説明を見るとどう見ても強気です本当にありがとうございました

総裁定例会見の場合、最初の質問は幹事社が「ではお願いします」という趣旨で始めるので基本的には最初のお答えは説明部分になりますが・・・・・・・・・

『先日公表した12月短観の結果をみますと、企業の業況感は、広がりを伴いつつ改善を続けています。製造業・非製造業、大企業・中堅企業・中小企業と、どの区分でみても業況判断が「良い」超となったのは、91年11月以来のことです。2013年度の事業計画についても、経常利益が大幅に上方修正される中で、設備投資をしっかりと増加させる計画となっています。雇用人員判断をみると、非製造業を中心に雇用の不足感は一段と強まっています。』

短観の評価は強いですな。

『先行きのわが国経済については、消費税率引上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられます。物価面では、消費者物価の前年比は、当面、プラス幅を拡大し、年内には+1%を若干上回る可能性が高いとみています。』

>年内には+1%を若干上回る可能性が高いとみています
>年内には+1%を若干上回る可能性が高いとみています
>年内には+1%を若干上回る可能性が高いとみています

(;∀;)イイハナシダナー

『以上のように、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待など、好転の動きが幅広くみられており、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っています。』

ということで今回も平常運転の強気モードなのですが、何せベンダーは追加緩和ネタでヒャッハーとやりたいもんですからどうもそっちの方ばかりヘッドラインに出てくるというバイアスが掛かっていて敵わんですな。


・QQEの中間レビューも当然自信満々

1年間を振り返ってどうですかという質問に対してもお約束の答えです。

『(答) ご指摘のように、私が3月に日銀総裁に就任した後、日本銀行は4月早々に、デフレからの脱却を早期に実現するために従来の金融緩和政策とは量的にも質的にも異なったいわゆる異次元の金融緩和である「量的・質的金融緩和」を決定し、その後着実に実行してまいりました。8か月ぐらい経ったところですが、これまでの経済・物価の動向をみると、私どもが想定していた線に沿って、経済は着実に回復し、物価上昇率も消費者物価(除く生鮮食品)でみて6月にプラスに転じた後、10月には+0.9%までプラス幅を拡大してきています。そうした意味で、これまでの経済・物価の動向は極めて順調に「量的・質的金融緩和」が想定している動きとなっていると思いますので、来年も引き続き、「量的・質的金融緩和」をしっかり実施していきたいと思っています。』

どう見ても自信満々です本当にカムサハムニダ。


・来年のポイントは輸出、設備投資、賃金とな

今回の質疑応答って特に経済物価情勢に関する質問に対する答えがいつもよりも長めに見える(厳密には確認していないのでイメージ)のですが、ただまあその内容を見ると基本的に自信満々でもう凄いでしょという話をしたがっているような雰囲気なんですけどね。

ということで来年のポイントに関する質問に対する答え(途中から引用します)。

『2番目の2014年に向けた課題については、経済関係者の方々も、政府の経済政策の担当者の方々もおっしゃっていますように、いくつかポイントがあると思いますが、輸出と設備投資が1つのポイントになると思います。』

ほう。

『最近の動向をみると、世界経済の持ち直しがだんだん明確になってくるにつれて、輸出も少しずつ緩やかに持ち直してきていますので、今後、世界経済が回復していくにつれて、輸出も緩やかに増加していくと思います。設備投資は、足許では全般的に持ち直していますが、製造業の大企業ではやや弱く、輸出がこれまで予想よりやや弱めに出ていたということも影響しているかもしれませんので、その関連で、設備投資がどう伸びていくかがポイントです。』

『先行指標である機械受注等は、今後、製造業を含めて設備投資が増えていくことを示しているので、私自身はそれほど心配していません。』

キタコレ!

『いずれにせよ輸出との関連もあって設備投資の動向をどうみるかということが1つのポイントであり、今後の日本経済の成長が続いていく上で、有力な助けになるであろうと思っています。』

で、次が賃金。

『もう1つは賃金の問題です。ご案内の通り、雇用情勢は改善しており、失業率も有効求人倍率もリーマンショック前の水準までほとんど戻っています。このように雇用情勢は改善しているのですが、所定外賃金やボーナスは大きく伸びている一方、所定内賃金がなかなか伸びていません。日本では、特に所定内賃金のベースアップなどについては「春闘」という形で春先に労使の交渉が行われることが慣行になっていますので、それを注視しています。』

ふむふむ。

『様々な指標からみると、ベースアップも含めて所定内賃金はプラスになっていくと思っていますが、それがどの程度のプラスになるのか、全体として雇用そして雇用者所得がどの程度伸びていくかが、非常に重要なポイントであると思います。私どもとしては、雇用者所得の伸びは次第に高まっていくとみていますが、いずれにしても「政・労・使」の動きも含めて、名目賃金がどう上昇していくか注目しております。』

とのことです。


・消費税に関して

消費税増税の駆け込みと反動に関する質問ですが、これもまた説明が長いので途中から引用します。基本的に住宅投資と個人消費が増税の駆け込みと反動の影響が大きいという説明をしまして・・・・・・

『全体として、住宅投資が比較的順調に伸びている背景には、むしろ金融緩和の状況等の様々な要因があり、10月以降の反動減はそれほど大きくないようです。もちろん今後、3月まで何らかの形で動きがあり得るとは思いますが、むしろ住宅投資自体が趨勢的に伸びているように感じます。』

ほっほー。

『個人消費については、耐久財と非耐久財があります。耐久財については、ある程度駆け込みが起きている可能性はありますが、その辺りはもう少しよくみていかなければならないと思っています。また過去の色々な例等をみても、非耐久財は、本当に間際に駆け込みが起きるので、もう少し先にならないと分からないと思います。』

ほうほうそれでそれで?

『いずれにしても、その動向は注視していかなければならないと思いますが、反動減によって4〜6月の成長率がかなり低下する可能性は十分あるものの、駆け込みと反動減はいわばそれ自体として相殺されるので、むしろ重要なことは、その後、消費税負担が増えたことによる個人消費に対する影響がどの程度あるかということです。この点については、多くの研究ではそれほど大きくないように言われていますが、その辺りはよく注視していく必要があると思っています。』

注視していくとは言ってますが、駆け込みと反動減はそれ自体として相殺とあっさり味で纏めていますな。まあ見通しは堅調ということです。


・追加緩和に関する質問

2つほどあったのですが、どちらも「消費税の反動でコケたらどうしますねん」という感じでして、またまた答えが長いので途中から。

『いずれにせよ、駆け込みが非常に大きければ、確かに、反動減も大きくなりますが、住宅については、政府が様々な対応策を採っていることもあってか、あまり大きな駆け込みもないようです。耐久消費財のうち、自動車についても、一定の対応策が採られていますので、駆け込みはそれほど大きくないかもしれません。何がしかの駆け込みはあろうと思いますので、その反動減として4〜6月に落ち込むことは予想しておいた方がいいとは思いますが、今の時点では、もう少し、駆け込みと反動減がどの程度になるかを注視していかなければならないと思っています。この点については、今回の公表文でも触れていますが、今の時点で何か大きな問題が起きるとは思っていません。』

その後の別の質問では4−6の落ち込みを見て判断するのかその前に判断するのかという質問でして・・・・・・

『(答) 常に申し上げていますが、金融政策決定会合は毎月開催され、毎回経済・物価情勢を点検し、金融政策を決定しています。公表文にもある通り、常に上下双方向のリスクを点検し、必要に応じて調整を行うという点には全く変わりはありません。』

とまあ言ってるのですが・・・・・・・・

『ただ、先程申し上げたように、駆け込みと反動減その他の動きがあることは、一定程度予想しています。そのもとでも基調的に潜在成長率をかなり上回る成長が続いて、GDPギャップが次第に縮小しいずれプラスになっていくということであり、2%の「物価安定の目標」の実現に向かって、着実に──もちろん一本調子ではなく一定の振れは伴うと思いますが──進んでいくという見通しには全く変わりがありません。』

うーん何という自信満々。


・金融政策運営に関して:オープンエンドですとな

これは良い質疑。

『(問) 先程の質問に少し重なるのですが、名古屋でのご講演で図表をみせながら、「来年末に270兆円で終わるものではない」とおっしゃいました。あれは、外国人に誤解があるということですが、2%を目指すオープンエンドであることが理解されていないと、オープンエンドですよと、そういう意味でのメッセージだったと理解してよいでしょうか。』

『(答) はい、そうです。これは、4月4日に「量的・質的金融緩和」を決定した時から、「『量的・質的金融緩和』は、2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」と言っており、今、申し上げた点には全く変わりがありません。』

とは言いましても、実際問題としては「2年で達成」と言っていますので、本来は政策が目論見通りに進展すれば2年程度で買入の拡大は終了方向になる訳で、そもそも論として「期日を決めたターゲット政策」をしている中で「オープンエンドの金融緩和」というのはその時点で相互矛盾しているんですよね。変に広げたこの風呂敷どう畳む事になるのやら(ニヤニヤ)。


・金融政策運営に関して:長期国債買入

何か最近妙に来年の月間買入額が減るので云々というのがネタになりますが、んなの保有明細が公表されているんだから足し算割り算で計算できるじゃんと思うのですけど・・・・・・・・・・

『(問) 「量的・質的金融緩和」のディレクティブにおける「長期国債について、保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加」という部分に関連してお聞きしたいのですが、今、日銀の保有する国債の残存年限が長くなっていることに伴い償還が来年以降減るため、「このディレクティブ通りにやっていると、フローベースの購入額が減るのではないか」という議論がマーケットでされています。そういったマーケットトークは意味のないものだと日銀はご認識されていると側聞していますが、そうは言ってもフローベースの購入額が減ることには何がしかの意味があるとも言えると思います。その辺りはどのようにお考えでしょうか。また、この政策では国債のストックベースの積み上がりに主たる意味があるのであって、フローベースは副次的なものだと捉えておられるのか、ご所見をお聞かせ下さい。』

で、そのお答え。

『(答) この点については、以前から何度も申し上げていますが、日本銀行は、「長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う」ということであり、実際の買入れ額については、日銀の保有する国債の償還額や金融市場の動向などを踏まえて弾力的に運用することとしており、ある程度幅を持ってみる必要があるわけです。現在の買入れのペースが大きく変わるとは考えていません。』

つーことで「大きく変わるとは考えていません」とはゆうとりますが、あくまでもディレクティブは「年間約50兆円の長国保有残高拡大」であり「買い入れる国債の平均残存年限は7年程度」であるという極めてその通りの話をしているのでして・・・・・・・・・

『後段のご質問は、アカデミックなご質問だと思いますが、おそらく金融論の学者の方に聞かれると、「当然ストックに意味があって、フローは全く意味がない」とおっしゃると思います。理論モデルのどれをみてもそうなっているわけです。私どもはアカデミクスではありませんので、皆さんのおっしゃることをよく聞いて対応していきますが、ストックが重要であるということは、学者の方のおっしゃる通りではあるとは思っています。』

>ストックが重要であるということは、学者の方のおっしゃる通りではあるとは思っています
>ストックが重要であるということは、学者の方のおっしゃる通りではあるとは思っています
>ストックが重要であるということは、学者の方のおっしゃる通りではあるとは思っています

まあそういうことですな。



○おまけ:ちなみに今計算するとこうなる筈

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高(11月末)

こちらからZIPで落としてきて各回号の償還を見ながら来年1年の間に償還が来る銘柄の額面合計を計算すればほぼ償還額が読める筈です罠。ちなみに来年償還が来るのは2年は323回まで、5年は87回まで、10年は267回まで、20年は27回までになりまして、11月の計数なので12月償還が入っている事に注意して計算すると、あたくしの計算が間違って居なければ来年に償還が来る中長期国債の残高は25兆5398億円になりまして、これに12月に買入をする1年以内の輪番が入るのですが、11日に行った輪番は足切りがクソ流れしているので20日償還銘柄を打ち込んでいる可能性がありまして微妙なのですが、まあ2200億円おかわりして25兆7598億円。

これに拡大予定額の50兆円を加えると75兆7598億円を年間で買入するという話になり、もっと言えば2000億円分国債整理基金の買入で日銀保有分が減るので結局の所76兆円という計算になります罠。

でもってこの76兆円を12で割りますと6.3から6.4兆円という事になりますので、現在の7兆円強という数字からするとまあ減るには減りますが・・・・・・・という事です罠。

なお、その他要因が本当に行くのかという考察がありまして、それが行かないのなら最終的に長期国債に寄せるしか無いんじゃないですかねえという論点もあるがその話はまた後日(考察の途中なので)。

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2013/12/11

○昨日引用した黒田総裁講演ネタの続き

ということでQQEの説明部分をば。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131207a1.pdf

・何回か紹介しているけれどもこれ重要な

『4. 「量的・質的金融緩和」の考え方』の所から参りますが、最初の所にQQEのポイントの一つ(とアタクシが勝手に解釈している部分)がございます。何回か出ている話ではあるのですけれども、未だに「プリエンティブに追加緩和ガー」という話が出るのを見ますとおまいらいいからここの部分を百回嫁と申し上げたくなる次第で。

『現在、日本経済が直面している問題は、デフレが長く続く中で、人々の予想物価上昇率が低下し、「物価は上がらない」という感覚、デフレ・マインドが定着してしまったことです。こうしたもとで、予想物価上昇率を引き上げることが政策課題となっています。』

であるからこそ「2年間で達成」と期間を区切って「思い切った施策」を「逐次投入ではなく全部一度に投入」しているのがQQEなのでございまして、この組み合わせが期待の転換に寄与するという話ですので、新しい問題が発生して対応するというのであれば仕方ないですが、少なくとも見通しの中に入っている消費税増税に対応してプリエンティブに対応というのはあり得んロジックになるという話ですよね。まあ何度も申し上げていますが。

『これまでの中央銀行の歴史を振り返ってみても、低すぎる予想物価上昇率を政策的に引き上げるというのは、大きな挑戦です。しかも、日本の場合、短期金利は既にゼロ近傍まで低下し、長期金利も1%を割る水準まで低下しています。「名目金利の引き下げ余地が乏しい中で、どうやって予想物価上昇率を政策的に引き上げるか」──これが我々の直面する課題です。そして、「量的・質的金融緩和」がその処方箋なのです。』


・QQEの構成要素が全部気合な件について

まあ元々「期待に直接働きかける」という時点で気合と大和魂の世界ではあるのですが、今回の講演テキスト(ただし邦訳版)の方ではこの部分を割と開き直って説明しているのがワロエます。

『具体的には、「量的・質的金融緩和」は、2つの要素から構成されています。』

ふむ。

『第1に、企業や家計に定着した「デフレ期待」を払拭するため、必ずデフレから脱却するという日本銀行の意志を、強く明確なコミットメントで示すことです。そこで、「消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と明確に表明し、目標達成までの期限をはっきり区切りました。』

どう見てもただの大和魂です本当にありがとうございました。

『第2に、長期間にわたってデフレが継続していることを考えると、どんなに強いコミットメントを示しても、それを裏打ちするものがなければ、人々に日本銀行の強い意志を信じてもらうことはできません。』

そらそうよ。

『とくに、「できるだけ早期に」という観点からは、これまでの延長線上ではないことが国民にはっきりとわかるような、従来とは次元が異なる大胆な金融緩和を行う必要がありました。そこで、日本銀行が直接供給する通貨であるマネタリーベースを2年間で2倍に拡大することとし、これを実現するため、残存期間の長いものを含めて巨額の国債買入れを行うことを決定しました。そして、これまで日本銀行は、この決定通りにマネタリーベースの供給と国債の買入れを進めています(図表3)。』

ということで、つまり構成要素は全部気合だという割と清々しい開き直り方をしている訳で。


・政策の波及ルートは??

気合だけの話ではさすがにアレですのでその直後にはこのような説明が。

『この「量的・質的金融緩和」は、巨額の国債買入れによってイールドカーブ全体に下方圧力を加えるとともに、ポートフォリオ・リバランスを通じてリスク資産への投資を促進し、さらに経済主体の期待に働きかけることを意図しています。』

これはまあ最初のQQE導入時に言っていた説明なのですが・・・・・・・・・・・・

『とくに、主たる波及メカニズムとしては、経済主体の期待を変化させ予想物価上昇率を引き上げる一方で、巨額の国債買入れによって長期金利を抑制することにより、実質金利を低下させ、経済を刺激する効果を狙っています。』

ということで、「主たる波及メカニズム」というのが堂々掲載されているのですが、ポートフォリオリバランスがどうのこうのとかその辺の話は盛大にスルーしまして、基本的に「期待に直接働きかける」という部分と、「経済物価情勢に対して適正と見られる水準から国債買入効果でその金利を下げる」という部分をメインにしておりまして、まあこれも今に始まった訳ではなく最近ずーっとこの説明で通していますが、この辺の説明も明確になりましたな。

『また、こうした経済への刺激の結果として現実の物価上昇率が上昇すれば、さらなる予想物価上昇率の上昇につながるという、好循環が発生することにも期待できます。』

で、これまた毎度指摘していますが、最近は悪い物価上昇がどうのこうのという話をすっかりしなくなりまして、白でも黒でも物価が上がれば良いんだよ!というある種の開き直りモードになっているのもポイントでして、でまあ足元でコストプッシュだろうがなんだろうが現実の物価が上昇すれば期待の転換に寄与するでしょうという話になっている次第。


・こちらでもノリノリである

んでもってその続き。

『この政策の導入から8か月程度経過しましたが、これまでのところ、金融市場、実体経済および物価、期待のいずれもが好転しており、所期の効果を発揮していると考えています。』

ノリノリである。

『まず、金融市場をみると、株価は年初来で約5割上昇しました(図表4)。一方で、長期金利は、先進主要国の長期金利が軒並み上昇する中にあっても、日本銀行による巨額の国債買入れによって強力に抑制されています。10 年物の国債金利をみると、年初の0.8%程度から、最近では0.6%台まで低下しています。』

『このような中、各種のアンケート調査の結果などをみると、「物価が上昇する」と考える人の割合が増加するなど、予想物価上昇率は、全体として上昇しています。この結果、実質金利は低下しており、民間需要をしっかりと刺激しています。』

『こうしたもとで、わが国の景気は、家計・企業の両部門で所得から支出へという前向きな循環メカニズムが働いており、緩やかに回復しています。』

どう見てもノリノリである。

『実質GDP成長率をみると、本年前半に年率4%程度の成長が続いた後、7〜9月もさらに年率2%程度の伸びとなっています(図表5)。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比が、6月にプラスに転じたあと、10 月は0.9%までプラス幅を拡大しています(図表6)。その中身をみても、石油製品などのエネルギー関連の押し上げだけでなく、個人消費が底堅く推移するなど景気が緩やかに回復を続けるもとで、幅広い品目に改善の動きがみられるようになっています。』

最近この物価上昇の中身についてエクスキューズが良く出てきますが、一応白い心というのものがあるのかツッコミ予防なのか・・・・・


・この先行き見通しで追加緩和の話は出んだろ

『先行きについても、日本銀行が1か月ほど前に公表した最新の「展望レポート」で示したように、今後、消費税率が予定通り2014 年4月に3%、2015年10 月に2%引き上げられることを前提にしても、基調として潜在成長率を上回る2%前後の成長が続くと考えています(図表7)。そのもとで、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は徐々に上昇していき、2015 年度までの見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いと考えています。』

4月に追加緩和ガーという話をしている人たちに逆に「何でこの見通しで4月に追加緩和をする事になるのか」ということをお伺いしたいのですが、来年の1−3に何かとんでもない落ち込みがあるとかそういう話なんでしょうかねえ???いやまあ武者フラグとかそういうのはありますけど。

『このように「量的・質的金融緩和」は、想定したとおりの効果を発揮しており、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っています。今後も、日本銀行は、「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。また、その際には、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因をしっかりと点検し、「物価安定の目標」実現のために必要であれば、調整を行っていく方針です。』

って文章を通して読めばどこからどうみてもただの「不測の事態が起きた場合は対応するよ」という超当たり前の一般論を述べているだけなのですが、まあこれで為替の何とかストの皆様とかが喜んで頂くのであれば安いもんですなあという所っすな。

と考えますと、同じ事を恐らく麿が言うと貧乏くさく伝わってしまいまた出し惜しみかと言われるでしょうなあとか思いまするに、イメージ戦略というのも重要ですぞなもしとゆー話になるのですが、それはまた年末年始モードになってから考えてみたいと思います。


・最後にここでもノリノリというか自信満々

最後の部分にこれまたしらっと威勢の良い事が書いてあるのです。

『冒頭に申し上げましたように、経済政策において、学問的知識と実務的知識は密接不可分のものであり、両者の架け橋となる公共政策研究は極めて重要なものとなっています。こうした事情はどこの国でも共通ですし、各国の経済政策の相互関連が深まる中にあっては、グローバルなネットワークの持つ重要性が増しているのは間違いありません。』

ほほう。

『したがって、各国の公共政策大学院が、共同研究や交換教授・学生の拡充を通じて、公共政策研究を推進することが望まれています。中央銀行としても、その成果を存分に活かしながら、適切に金融政策を運営していきたいと、大いなる期待を持っております。』

ほうほう。

『現在、「量的・質的金融緩和(QQE)」でヒットする論文は、まだ多くありません。しかし、何年か後には、日本と日本銀行の経験が、経済学や公共政策研究に新しい1ページを提供しているのではないかと思います。そして、そこで練り上げられた理論が、その後の中央銀行にとって、デフレという現象と戦うための力強い武器のひとつとなっていることを願ってやみません。』

こらまた威勢よく来ましたなという所で、何というノリノリと存じますが、良く良く考えますとここもと政権内野党審議委員の皆さんの講演が続いておりましたので、ここで一発ぶちかましという所だと存じますが、(たぶん)昨日の日銀サイト新コーナー作成とか、こちらでの黒田総裁ノリノリ講演とかで、野党審議委員の皆さんのメッセージをぶちかましておきましょうという事ですかそうですかと勝手に妄想はたくましくなりますが、まあノリノリすぎて滑って怪我しないように願ってやみませんという所ですな、うんうん。

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2013/12/10

○黒田総裁講演はこれまた味わいがありますが時間ががががが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131207a1.pdf
公共政策研究と金融政策運営
−東京大学公共政策大学院における黒田総裁講演の邦訳

という事は元は英文講演ですな。しかしめんどいので邦訳しか読まない手抜きのアタクシです。


・エコノミスト的ビューではございませんなこらまた

木内さんと佐藤さんがここもと講演を行ってエコノミスト的な視点(そらまあ市場のエコノミストだったのですから当然ですが)で金融政策運営の論点について説明していてどちらの講演も興味深い面白い内容であった訳ですが、今回の黒田さんの講演はこらまた別角度ですの。

『3. 金融政策運営の変遷』の部分が中々味わいがある上に参考にもなるのでこのパート全部引用します。

『欧米でも、日本でも、長らく中央銀行の主たる使命は、物価の安定や経済の安定というよりも、金融システムが円滑に機能するのを確保することにありました。例えば、19 世紀後半の英国では、度重なる金融危機を経験したこともあり、中央銀行であるイングランド銀行に対して、「最後の貸し手」として、破たんに瀕した金融機関に流動性を供給し金融システム全体の動揺を防ぐという役割が期待されていました。』

なお話の本筋とは違いますがバジョットの「ロンバード街」はとりあえず読むのが吉です。

『また、米国において、19 世紀終盤から20 世紀初頭にかけて金融危機が続いた反省から、金融システムの不安定性を解消することを狙って連邦準備制度(Federal Reserve System)が設立されたという事実も、中央銀行が金融システム面で果たすべき使命に対する当時の考え方をよく示していると思われます。』

『1882 年に設立された日本銀行については、大量に発行された政府紙幣の整理という目的に加えて、中央銀行を中核とする近代的な金融システムを構築するという狙いが挙げられていました。このように、金融システムの安定性を確保することによって金融恐慌の発生を防止し、経済発展に資することがこの時期の中央銀行の目標だったといえます。』

ふむ。

『こうした状況は、20 世紀に入って徐々に変化しました。とくに、1930 年代に国際金本位制が崩壊し、各国で不換紙幣制度に移行した結果、中央銀行による通貨発行量は金の保有量という制約から解放され、金融政策の自由度が大幅に増しました。そうしたこともあり、主要国では、金融政策によって積極的に経済の安定、なかんずく物価の安定を図るという考え方が拡がっていきました。第二次世界大戦中こそ、多くの国の中央銀行に、財政支出が拡大する中で国債価格を支持する役割が課せられましたが、戦後、金融政策は国債管理政策から分離され、自律性を回復していきました。』

ですです。

『その後、2度のオイル・ショックによる世界的な資源価格高騰と物価高騰を乗り越え、1980 年代半ば以降は、米国など主要先進国では、物価が安定するとともに、景気循環もなだらかになりました。例えば、先進国をみると、1980 年代から、2000 年代のリーマン・ショック直前までの間に、経済成長率はほとんど変化がない中で、物価上昇率は6.5%から2.1%まで低下しています(図表1)。このように、世界経済が過去に例のない良好なパフォーマンスを示すもとで、中央銀行が果たすべき役割についても、「中央銀行が物価上昇率を一定の水準に収斂させることに集中すべき」という考え方が次第に定着していきました。』

『また、こうした変化を背景にした中央銀行に関する制度的な枠組みも整っていきました。すなわち、中央銀行法の改正などにより、中央銀行に独立性を付与するとともに、物価の安定に特化することを明確にするケースが相次ぎました。さらに、金融政策の運営の面では、主要中央銀行による物価安定目標──インフレーション・ターゲティング──の採用につながっていきました。』

キタコレ!

『こうした世界的な潮流のもと、1997 年には現在の日本銀行法が成立しますが、日本の場合は他国とはやや異なる状況も生じていました。1990 年代以降、日本経済は、バブル崩壊に伴う不良債権問題を背景に金融システムが不安定化し、長年にわたる低成長とデフレに苦しむことになります。日本銀行は、世界に先駆けてゼロ金利政策、量的緩和政策など、過去に例のない様々な「非伝統的な金融緩和策」を実施しました。政府は、何度となく大規模な財政支出を行いました。その結果、1930 年代のような恐慌は回避され、景気回復局面もみられましたが、デフレからは15 年たっても脱却することはできませんでした。』

ですなあ。

『長期にわたるデフレの原因としては、低成長の継続、金融システムの不安定化、新興国の台頭、労働市場の構造変化など、様々なものが考えられます。しかしながら、原因は何であれ、私は、日本の中央銀行である日本銀行にはそれを止め、物価の安定を実現する責任があると思っていました。言い換えれば、物価安定に対する日本銀行のコミットメントが弱かったため、金融政策の重要な経路である経済主体の期待に対して十分に働きかけることができていなかったと考えていました。そうした思いが、「量的・質的金融緩和」につながることになります。』

(・∀・)キタコレ!!!

ということでして、アプローチがモロに制度面、法的マンデートという面から来ておりまして、いわゆる麿ドクトリン的な「これは可能なのかどうなのか」という話ではありませんで、「法的にやれって言われているんだから先ずはやらないと存在意義ねえだろ」っつー方向から話がおっぱじまっております所はこれはこれで理屈としては一つのロジックでありますのでよーく判るのですけれども、このアプローチだとエコノミスト的なアプローチとは場面場面では一致する部分も結構あるでしょうが、本質的な部分では水と油な話でもあって、そらまあ最近とみに日銀執行部のアプローチが気合だ気合だ気合だのアニマル浜口状態になっている罠というのが伝わるお話ではありましたという所でこのパート引用しました。


・期待は本当に引き上げられるのでしょうかねえ

『4. 「量的・質的金融緩和」の考え方』の所ではこういう話をしているのですがね。

『現在、日本経済が直面している問題は、デフレが長く続く中で、人々の予想物価上昇率が低下し、「物価は上がらない」という感覚、デフレ・マインドが定着してしまったことです。こうしたもとで、予想物価上昇率を引き上げることが政策課題となっています。』

『これまでの中央銀行の歴史を振り返ってみても、低すぎる予想物価上昇率を政策的に引き上げるというのは、大きな挑戦です。しかも、日本の場合、短期金利は既にゼロ近傍まで低下し、長期金利も1%を割る水準まで低下しています。「名目金利の引き下げ余地が乏しい中で、どうやって予想物価上昇率を政策的に引き上げるか」──これが我々の直面する課題です。そして、「量的・質的金融緩和」がその処方箋なのです。』

ということでああだこうだと説明部分は割愛しますが、最後の所でさっきの「法的マンデートとしてのアプローチ」の話を再度しているのでそこも引用しますね。

『すなわち、第1に、私は、日本銀行は、中央銀行という公共主体として、「物価の安定」という法律で与えられたマンデートに忠実な政策を行うべきだと強く思います。まず、そのことに明確にコミットすべきです。また、第2に、「量的・質的金融緩和」では、中央銀行の明確なコミットメントとそれを裏打ちする大規模な緩和策によって、経済主体の予想物価上昇率を上昇させるというアプローチを採りました。これは、「期待」の重要性を説く経済学の実践です。「量的・質的金融緩和」は、こうした大きな骨組みのもとで、中央銀行の経験や金融実務などの実践的な要素を取り入れて設計したものです。これによって、デフレからの脱却を成し遂げることができると思っています。』

とまあこの辺は威勢が良いのですが、ちとワロタのはこの先の部分の『5. 公共政策研究の将来』の中のトピック部分。

『第2に、政策主体はいかにして「期待」に働きかけることが可能かという点についての研究の深化です。前節でお話ししたとおり、経済主体の期待への働きかけは、金融政策にとって極めて重要なものです。最近の主要中央銀行の政策運営をみても、期待への働きかけが一層重視されるようになってきています。例えば、FRB、欧州中央銀行、イングランド銀行などで、いわゆる「フォワード・ガイダンス」の採用が相次いでいます。』

ふむ。

『この政策手法は、金融政策運営の先行きを明示することにより、不確実性を低下させたり、金利のゼロ制約のもとでのさらなる金融緩和効果を狙うものですが、中央銀行の意図したとおりに市場参加者が期待を形成するように働きかけること(Expectation Management)は簡単ではありません。』

(;∀;)イイハナシダナー

・・・・・・・・・って市場参加者の期待よりも一般的なインフレ期待の働きかけの方が更に難しい気がするんだがしらっとゆうとりますな黒田総裁。

『市場参加者の期待形成は、金融経済情勢に対する見方や過去の経験、あるいは構築しているポジションなど様々な状況に規定されるからです。このように、多様な社会経済状況の下における期待形成の分析は、引き続き公共政策研究の重要な課題であり、その成果は、金融政策運営に資するところが大きいと思われます。』

とまあ綺麗にまとめてはいますが、基本的に自信満々講演の中で珍しく微妙につつかれる穴がありやがったですなあというのが今回の講演のちとワロタ所でありまする。

まあ何ですな、この講演のお題目が公共政策研究というテーマなので、説明の内容が政策運営機関としての法的マンデートに則った政策運営とは何ぞやというようなアプローチになってしまいますねというのは勿論あるのですが、ちょうどここもと木内さんと佐藤さんというエコノミスト的なアプローチでの金融政策運営の論点についての講演が続いた後というタイミングだったこともあって、結構対照的な話を執行部から聞く(読む)ことができましたなというのが味わいの深い所でございました。

なお金融政策の波及効果とかその辺の話についてはネタにするかもしれませんししないかもしれません。先ほども申し上げたように内容のトーンとしては例によって例の如く自信満々モードであります。

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2013/12/04

○総裁会見である

全部で8ページですがまあ普通はこういう分量ですよね。この前の某審議委員のあれはなんだったんでしょうか(棒読み)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1312a.pdf

・異次元緩和の建付けに関する質疑

まあ長い質問だが質問が分かりやすいので引用。

『(問) 本日の講演で、マネタリーベースと長期国債の保有額の残高について、本年末と来年末の残高を示されていることについて、これは見通しであって、政策運営について何ら期限を示したものではないとおっしゃっていますが、その点について何点か質問します。

1点目は、なぜ14年末までしか示していないのかということです。

2点目は、14年末に近付いていくと15年末の見通しも示されることになると思いますが、今の「量的・質的金融緩和」の方針のもとで、マネタリーベースが60〜70兆円のペースで、保有長期国債が50兆円のペースで増やすという、従来の延長線上の数字、つまりマネタリーベースで340兆円、長期国債の保有額で240兆円という数字を示すだけだとすると、これは「追加の緩和」という位置付けになるのかということです。

最後に、2年程度で2%程度という「物価安定の目標」が、今後この1年くらいの間に達成困難であることが判明した場合――つまり、展望レポートその他で見通しを下げられるということだと思いますが――、従来の延長線の数字を示すだけでは、何としても2年で2%を達成するために必要な調整を行うという観点からすると、本当に必要な調整にならないと思うのですが、この点について、どうお考えですか。』

ということで論点整理の質問である。

『(答) そもそも、4月4日に決めた「量的・質的金融緩和」は、今ご指摘の通り、マネタリーベースを年間約60〜70兆円増やす、長期国債の保有残高を年間50兆円増やすことを示したわけです。なぜ、そういうことをするかといえば、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を達成するために導入したわけです。』

『ただ、4月4日の金融政策運営に関するステートメントでも、その後、毎月の金融政策決定会合後に発表している「当面の金融政策運営について」のステートメントでも申し上げている通り、「量的・質的金融緩和」は2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで続けると言っていますので、別に、14年末とか時間的に切られているものではありません。』

つまりオープンエンドという建付けになっているという事ですが、一方で「2年で達成」と言っている訳でして、じゃあ異次元緩和って2年で達成した後どうなるの?という話については華麗にスルーしているのがまあこの説明のインチキ成分であります。

ちなみにこの「2年程度の期間を念頭に置いて」云々の文言ってQQE導入時の声明文冒頭の所の「何でこの政策を突っ込んだか」という説明部分にはございましたが、その後の声明文や展望レポートではこの「2年程度の期間を念頭に置いて」という文言は出ていないのがこれまたややこしい所で、2年で達成を目指すというのはQQEの重要なコンポーネントではあるのですが、そうなると政策がオープンエンドであって行かなかった場合に資産買入が継続されるという点についての認識が広がらないというのがこれまたコミュニケーションムツカシヤという話。

つーかまあそもそも「2年で達成します」って言ってるのに建付けがオープンエンドというのが政策として矛盾のある所なのでコミュニケーションがややこしくなるのは当たり前なのですけどね。

『懇談会でお配りした資料の12ページ(図表12)にあるように、そのトレンドを示し、その中で13年末と14年末の数字について、12年末あるいは13年3月末の数字と比較できる形でお示ししたということです。』

図表は皆さんでご確認くらはい。更に回答の続き。

『物価は、これまでのところ、順調に「物価安定の目標」に向けた道筋をたどっていますので、現時点で、2年程度で「物価安定の目標」を達成できるとみています。実際問題として、政策委員会見通しの中央値についても、13年度の平均で+0.7%、14年度の平均で+1.3%、15年度の平均で+1.9%と、消費税率の変化に伴って直接的に影響される部分を除いた、トレンドとしての物価上昇率は、こういう経路をたどるとみています。言い換えると、14年度後半から15年度前半くらいにかけて、2%に近付くとみていますので、そういうことでお答えになると思います。』

現状の物価情勢は2年で達成する道筋にオントラックですよ(キリッ)との事です。

『つまり、15年末の見通しを示すかどうかとか、2年程度で物価上昇率が2%に達しないような状況になった場合、どういうことをやるかということは、常に申し上げているように、上下双方向にリスクがありますので、上方あるいは下方のそれぞれのリスクが顕在化しようとする、あるいは顕在化する事態になれば、それに対応した適切かつ十分な措置は採るということに尽きると思います。』

まあ何ですな、期待に直接働きかけるという政策を実施しているだけに、その期待を変に壊さないというのも重要な話であって、まあそれを非常に身も蓋も無い言い方をすれば「丁寧な説明をすれば良いというもんじゃない」という事になる訳ですな。ここがもしどこぞの麿とかだったら「2年で達成するとの見通しですので達成したら当然徐々に通常の政策に戻して行く必要があります(キリッ)」とか丁寧な説明をおっぱじめてしまい(というか本来そういうもんですが)台無しモードになってしまうのですが、そういう台無し発言はしない一方で「一般論としての政策対応のありかた」について言及する事によって追加緩和期待を全否定はしないという攻撃に出ておりますな。

これ回答部分を全部読めば分かりますが、2年で達成する見通しだから追加とかする訳ねえだろとその前の部分で説明していて、後段の適切な措置はあくまでも本行の見通しが外れた場合ですからねえあっはっはという話をしていて単なる一般論の話なのですが、当然ながらニュースワイヤーのヘッドラインで反応する市場の動きというのを考えますと、まあその辺のヘッドラインをどう打たれるかということを念頭に置いた説明をしているなあという所です。まあ何ですな、黒田総裁発言と言えば5月に色々と梯子外しやがってコノヤローというようなプレイがありましたけれども、恐らくあの辺りの市場での反応を受けて説明のやり方に修正を加えたんじゃないかねとかそんな事も思ったのでありました。実際どうかは知らんけど。


・物価安定の定義に関する話って微妙にファジーなのよね

『(問) 今の点に関してですが、本日の講演の中で、あえて何らかの期限を示したものではないと言及されており、図表をみると、まさにおっしゃっている通り、点線が14年末以降も描かれていますが、この点について、今回の講演で言及した理由、換言すると、この点について、市場の方でまだ誤解があると総裁の方でみておられるのかということが1点。

もう1点は、「15年度前半にかけて2%程度に近づいていく」という、その先の話になってしまいますが、2%にタッチした後、安定的な状態で実現するまでにかかる時間はどれくらいを念頭に置いているのかについて、お聞かせ下さい。』

小見出しの件に関しては主に後段の方になるのですけれども、折角なので前段の部分の答えから先に。


『(答) 前段のご質問については、そういう誤解はあまりないとは思いますが、東京を訪問された外国の方とお会いした時、2年というカレンダーで切っているように誤解している人がいたものですから――日本では、あまり誤解されていないと思っているのですが――、「4月4日のステートメントも見て下さい。毎月毎月の決定会合後に公表しているステートメントも見て下さい」と申し上げています。「それらは常に、2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、現在の『量的・質的金融緩和』を続ける、と言っており、さらに、当然ですが、上下双方向のリスクもよく点検して必要な調整を行うと言っています」ということを強調しています。』

ここの所少し減ったかもしれないけれども、今でも2015年以降の資産買入に関しての決定をするのを追加緩和として説明している本職の何とかストの方がジャパンにもおいでのようですけどね!!!

『先程申し上げたように、日本国内で特に誤解があるとは思いませんが、4月4日から申し上げていることを、より正確に申し上げたということです。』

(・∀・)

では後段。

『2点目は、今申し上げたステートメントに書いてあることですが――これをフォワードガイダンスというかどうかは別として――、その具体的な解釈は、実際、2%に瞬間タッチして、すぐにまた物価上昇率が下がるという状況であれば、それは「安定的に持続する」という状況には至っていないわけです。逆に、まだ2%になっていなくても、その後、すぐに2%を超えて、その後も安定的に持続することがはっきり見通せるような状況もあるかもしれません。』

ということで、この説明部分がこう実にファジーにも程があるのですが、「安定的に持続する」という定義に関してですが、概念的には以前の講演でもありましたように「需給ギャップがゼロの時にCPIが2%となっている状態」という話であり、フィリップスカーブで言えばそのy切片が2%とかそういう話になると思うのですが、そもそもその需給ギャップというのはリアルタイムで分かる物件ではなく、フィリップスカーブの推計にしたって結局の所後出しで分かるという話なので、じゃあ実際に「安定的に2%が持続する」という事をどう判定するのかという部分って実は解釈に幅が出来得る部分なんですよね。

でもってここの部分でもしらっと話をしていますが「2%になっていなくてもその後すぐに2%を超えて安定的に2%を持続することがはっきりしている」のであれば、実際の物価が2%に達する前に「安定的に持続する」という判定をできるケースだってあり得る訳ですわな。

つーことで実はこの部分をゴリゴリ詰めようとするとかなり話がややこしくなるのですが、まあ現実問題としてCPIが1%にもなっていない状態でその話をするのは混乱の元になるだけなので話をしていませんとそんな状態だと思うのですが、これどこからどう考えましても実際に物価が上昇するというのであれば、来年のどこかのタイミングで話を詰めないといけない部分(不幸にも物価が上昇しないのなら不要)でありまして、実際の物価動向についての2%なのか、フォーキャストターゲットとしての2%なのか、仮にフォーキャストであるならその期間は短期なのか中期なのかロンガーランなのか、というような定義問題っていうのはQQEの継続期間に対する考え方につながる話なのでまあややこしくなるなと思うのでありました。

更に回答は続く。

『いずれにせよ、まさに、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、それが安定的に持続するということは、図解的にいえば、物価上昇率が2%の「物価安定の目標」の周りを安定的に動くような状況になっているかどうかということなので、どのくらいの期間が必要かとか、どこまで上がったらそうなるかとか、一概に数字でいうということは難しいと思います。』

『その局面になった際の具体的な判断は、日本銀行の政策委員会メンバーの判断ということも当然ですが、皆さんがみても――予測の話は、皆さんも色々な意見があると思いますが――、そういう状況になった時の足許の判断は、それ程難しいものではないと思います。ただ、数量的に、どこまでいって何か月経ったらどうとか、そういうことは一概には言えないと思います。』

とまあとりあえずしらっと説明はしているものの、これから先って消費税増税部分とかの特殊要因もある中でそんなに「難しいものではない」と言い切れるのかねというのはひじょーに疑問だと思うのだが、この辺のややこしいい論点を一々説明すると話が混乱してまたまた台無しモードになる可能性があるので敢えてその辺りは触れずにその時になったら考えるという作戦ですな。


つーことで、まあ期待に直接働きかける金融政策って言うと格好良いですけれども、そのためにはある程度のハッタリ成分というかインチキ成分も必要という話でありまして、本来丁寧に説明するなら経済の下振れリスクも丁寧に説明した方が良いんじゃないですかとかゆー話になる筈なのですが、それこそどこぞのドラギ先生のビリーブミーじゃないですけれども、一貫して(キリッ)というスタンスでハッタリをかまして期待を鼓舞するという辺りはドラギ先生もニッコリという所ですなあと思うのですよね。まあこれが「期待に直接働きかける」という真骨頂ですなあと思うのですが、これ逆に逝きだしたら目も当てられないという意味ではそれはそれで痺れる運営でもございまして、最近はビリーブミーの先生も微妙に難しい運営に追い込まれているようですが、本邦ではそうならない事を祈念したいと存じます(・∀・)。

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2013/12/03

お題「黒田総裁講演だがこのテキストが何故追加緩和示唆になるのかさっぱりワカランチ会長」

ドル103円だのユーロ140円だの見て思うのだが、外貨MMFの為替差損益は来年から課税所得扱いになるんじゃなかったでしたっけ??(詳しくは専門の方にご確認を)


さて黒田総裁講演である。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131202a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 名古屋での経済界代表者との懇談における挨拶 ──

まあ毎度のように「そーれ我々のシナリオ通りに展開しとるがな」という説明をしているのですが、何せ講演にしろ会見にしろ最近はとにかくヘッドラインが「追加緩和」を煽るような書き方をするのが待ったなしという状態で、その結果今朝のモーサテ辺りでは為替のコメントの人が「日銀が具体的な追加緩和策を検討しているとの見方も広まり」というような話をおっぱじめる始末。

この自信満々モードからすると来年の早い時期に何か追加策をやる必要性を感じているようには全く見えないですし、大体からして先週末のCPIだって確り強めの数字が出ていまして、それこそ日銀の中では「勝った勝ったまた勝った♪ESPフォーキャストにまた勝った♪♪」とばかりに提灯行列をしてそうな状況(某局某課とか^^)な訳ですが、まあ市場が勝手に勘違いして円安に振れる分には(反動が起きて困るような状態にならない範囲内において)放置プレイという事なんでしょうな。黒田さんの説明を全部読むと追加緩和が何で必要になるんですか今の状況でという風にしか思えませんけどねえ。


ということで中身をサラサラと鑑賞するのだ。

○のっけから自信満々モードなのですが

つーことで最初のマクラ部分から。

『これまでのところ、実体経済や金融市場、人々の期待やマインドは改善するなど、「量的・質的金融緩和」は所期の効果をしっかりと発揮してきており、日本経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっています。そこで本日は、皆様との意見交換に先立ち、日本銀行の経済・物価の現状・先行きに対する見方や「量的・質的金融緩和」の効果について、10 月末に日本銀行が公表した「展望レポート」にも触れながら、お話したいと思います。』

マクラの部分で思いっきり「順調にたどっています」って言ってて、そもそも当初の政策ローンチ時に「逐次投入をせず必要な政策を全て投入した」って言ってるのに何で「追加緩和待ったなし」みたいな見方になるのかおまいらベンダーヘッドラインしか見てねえだろと小一時間問い詰めたいのですが、まあ「金融政策は特に動きも無く」とやってしまうと相場でヒャッハーとやるネタになりませんし、何とかストの皆様におかれましてはレポートのネタも無くなりまして困るという所でしょうけれどもね!!!

でもって現状と先行きのメインシナリオの説明部分となります『2.わが国経済の現状と展望』という部分ですが、基本的には展望レポートの説明になっておりますが、一部アップデートされた部分もありますのでその辺をば。

『こうした中での物価情勢に目を転じると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、6月にプラスに転じた後、プラス幅を拡大しており、10 月は+0.9%となっています(図表2)。この背景をみると、石油製品や電気代といったエネルギー関連が押し上げ方向に寄与していることは事実ですが、個人消費など内需が堅調に推移する中で、幅広い品目に改善の動きが拡がってきています。こうした動きは、食料・エネルギーを除く消費者物価がプラスに転じたことや、下落品目よりも上昇品目の方が多くなってきたことでも確認できます(図表3)。』

ということで、出たばかりの10月CPIが思いっきりここに出ておりまして、もう鼻息の荒さがうかがえる訳で、日銀某局あたりで提灯行列が盛大に展開されていた(大嘘)のではないかと存じます次第ですな。この調子で来年1−3月で1%近辺とかで推移すると4月以降は消費税増税の影響が入るので表面上の数字は上がりますし転嫁の影響云々は少々鉛筆舐めても良いでしょうしもうウハウハですよ先生という所ですか、わかりません><;

従って先行きに関しては展望レポートの強気見通しがそのまんま。

『先行きについては、景気回復によるマクロ的な需給バランスの改善が物価押し上げに寄与するほか、実際の物価上昇率の高まりもあって人々の中長期的な予想インフレ率も上がってくることから、消費者物価の前年比は上昇傾向をたどると考えています。政策委員の中央値を申し上げると、消費税率引き上げの直接的な影響を除くと、2013 年度は0.7%、2014 年度は1.3%、2015年度は1.9%です(前掲図表1)。すなわち、2015 年度までの見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみています。』

>実際の物価上昇率の高まりもあって人々の中長期的な予想インフレ率も上がってくることから
>実際の物価上昇率の高まりもあって人々の中長期的な予想インフレ率も上がってくることから
>実際の物価上昇率の高まりもあって人々の中長期的な予想インフレ率も上がってくることから

最近すっかりこのフレーズが定番化しておりますが、実際に物価が上昇していくのを見ると人々の物価観って案外簡単にバックワードルッキングで変われる物なのか、はたまたそうはならないのかというのは実際に今後の動きを見ないと何ともですけれども、2008年の時と比較して賃金の状況とかその辺りの問題に加え、そもそも消費税増税で強制的にその分上がるというのもありまして、はてさてどうなるんでしょうかね。でまあ毎度申し上げておりますが、こういう「まあとにかく現実の物価が上がるのが効くのよ悪い物価上昇って何でしたっけ良くわかりません」というような開き直りモードになっているのがある意味マンデートに忠実なんだが本当にそれでいいのかという気もせんでもない話っすな。


○回復の持続性についてということで海外の話だが別に下振れは強調してませんぞなもし

次の小見出しは『3.わが国経済の先行きとデフレからの脱却』である。

『次に、今回の景気回復の特徴について確認した上で、今申し上げた経済見通しが実現していくにあたって、注目しているポイントをお話します。』

ほいな。

『まず、今回の景気回復については、輸出や製造業大企業が牽引役となる景気回復の典型的なパターンとは異なり、個人消費や公共投資が牽引役となって、非製造業が先に改善していることが特徴として挙げられます。実際、非製造業の活動水準を示す第3次産業活動指数はリーマン・ショック前の水準近くまで回復してきているのに対し、製造業の生産はリーマン・ショック前のピークの約8割にとどまっています。また、短観の業況判断DIでみても、非製造業は製造業に先行して改善してきています(図表4)。』

まあそうですな。

『こうした今回の景気回復パターンを踏まえると、先行きの景気回復の持続性をみていく上では、これまで景気を牽引してきた内需の堅調さの持続性がポイントとなります。その上で、内需が景気を支えている間に、海外経済が回復して輸出が順調に増加してくるかどうかが、もう一つのポイントです。そこで以下では、このうち、まず海外経済の動向についてお話した後、内需の持続性に関連して家計の雇用・所得動向、企業の設備投資動向についてお話します。』

ということで海外の話が始まるが、後半の内需に関してはどうせ強い見通しと自画自賛が出てくるでしょと思ったらまあその通りでしたのでそれは後ほど。

『海外経済の現状については、一部に緩慢な動きもみられていますが、全体として緩やかに持ち直していると判断しています。先行きについては、先進国を中心に、持ち直しを続けていくとみています。』

『IMFの世界経済見通しでも、世界経済の成長率は、2013 年は2.9%にとどまるとの予測ですが、2014 年は3.6%、2015 年は4.0%と、緩やかに伸び率を高めていく姿となっています(図表5)。』

だいたい展望レポートのベースの数値もIMFの見通しとそんなに変わっていない筈です。なお木内審議委員はこのIMF見通しが連続して下方修正されている事を先日の講演で盛大に指摘して、そもそもこの見通し通りに行くのかの不確実性というのをかなり厳しいトーンで説明していましたが、当然の如くそういう懸念は華麗にスルーするのが執行部クオリティ。

『地域別にみると、米国経済は、財政面からの景気下押し圧力が次第に和らいでいく中、民需を中心に回復テンポが徐々に増していくと予想しています。また、欧州経済は、内需の持ち直しに加え、輸出の回復も加わることを背景に、先行き次第に持ち直していくと考えています。中国経済についても、当局が構造問題への取り組みを進めるとともに、景気にも配慮した政策運営を進める中、安定した成長を維持するとみています。』

まあ素敵!

『中国以外の新興国・資源国については、現在一部に弱めの動きがみられており、当面は成長に勢いを欠く状態が続きますが、やや長い目でみれば、再び持ち直していくと考えています。』

ほほう。

『勿論、先行きの海外経済については、米国における政府債務問題の帰趨、欧州での債務問題や金融システム健全化への取り組み、中国における製造業の過剰設備問題をはじめとする構造改革の行方、そして新興国・資源国における構造問題への取り組みなど、不確実性が大きいことには注意が必要です。』

『しかし、こうした不確実性は念頭におきながらも、中心的な見通しとしては、海外経済は持ち直しを続けていき、それに伴ってわが国の輸出も緩やかに増加していくと予想しています。』

この文章構成だと海外経済の下振れリスク言及部分ってど〜見ても軽い扱いにしか見えませんけどね。


○雇用所得動向と設備投資動向について

雇用所得動向は所定内給与の上昇に期待という所で。

『次に、内需の持続的な回復という観点から、雇用・所得動向についてお話したいと思います。先ほどもお話した通り、わが国経済は先行き、生産・所得・支出の好循環を伴いながら緩やかに回復し、2%の「物価安定の目標」を実現できるとみていますが、そのためには所得の改善が個人消費を支えることが重要です。』

つーことで現状と先行きの話をしていますが、基本的に展望レポートに書いてある威勢の良い話が展開されているので割愛、と申しますかまあ強めの数字が出てますからねえ所定内給与以外は。

『先行きについては、労働需給の改善が続く中で、名目賃金には次第に上昇圧力がかかってくるとみています。このうち所定内給与は、パート比率の上昇もあって、未だ前年比マイナスとなっていますが、安定した給与である所定内給与が増加してくれば、家計支出の持続的な増加に寄与すると考えられます。現在、「政・労・使」の連携による取り組みも行われており、企業収益が増加する中で、ベースアップも含めた所定内給与の上昇が実現することを期待しています。』

ワタクシも期待しております(違)。

設備投資の先行きの中では「実質金利の低下」ネタがありますな。

『次に、企業部門に目を転じますと、生産・所得・支出の好循環を伴う景気回復のためには、企業収益の増加が設備投資に繋がっていくことが重要です。企業収益は円高修正もあって回復が続いていますが(図表8)、設備投資についても、これまで底堅く推移してきた非製造業に加え、出遅れていた製造業にも改善の動きがみられています(図表9)。』

『先行きについては、企業収益の改善に加え、金融緩和効果もあって、設備投資は緩やかな増加基調を続けるとみています。』

ほう。

『すなわち、投資採算の観点からみると、景気回復に伴い資本収益率が上昇していくとともに、後で述べるように、「量的・質的金融緩和」のもとで実質金利が低下方向にあるため、設備投資の採算性が改善し、金融緩和の効果が強まっていくと考えています。』

キタコレで、まあ前からこの話自体はしているのですが、実際問題として物価が上昇してきてこの実質金利ガーの話の鼻息が荒くなっている(というか麿と違って黒田さんって鼻息フンガーというイメージじゃなくて根拠があるのか無いのかは兎も角堂々の自信満々で話しそうなイメージですが^^)という感じがするのは気のせいですかそうですか。

『また、これまでの投資抑制姿勢を反映して、設備投資のペントアップ需要も期待できます(図表10)。さらに、政府の規制・制度改革や減税措置、企業の事業再構築など競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待は緩やかに高まっていくと考えられます。』

設備のヴィンテージが高まったまま、というのは以前から指摘されている話で、第三の矢はどこに行ったのかさっぱりワカランですがまあこの辺も定番の説明ですな。

『こうした設備投資を取り巻く環境を踏まえると、今後経済活動の水準が高まるにつれて、設備投資が増加しやすい状況にあると思います。』


○今回の講演(挨拶)で一番訴えたかった話はここなのではないかと思うので引用

んでもってこのコーナーなのですがその後にこんな話がありますが、恐らくこの部分に関しては今回の講演(というか懇談会だが)の会場が名古屋である事を鑑みると、実際には出席している企業の経営者に聞いて欲しい話なんじゃないのと思う部分なので、まあ政策インプリケーション的にはどうでも良いのだが多分思い入れがありそうなので引用しとくわ。

『振り返ってみると、15 年近いデフレが続く中で、企業は、キャッシュフロー対比で設備投資を抑制するなど(図表11)、いざという時に備えて現金を積み上げていきました。その結果、企業の手元現金は230 兆円とGDPの50%近くにまで達しています。デフレ経済を前提とすれば、相対的に有利な投資である現金を増やすことは、個々の企業としては合理的な行動だったと思いますが、せっかくの資金が有効に活用されない結果として、日本経済全体としては活力を失ってきました。』

『デフレから脱却した経済では、これまでとは異なり、お金は貯めておくのではなく、設備投資や研究開発、人材確保などの形で有効に活用する方が有利になります。企業の方々には、是非こうした環境変化をビジネスチャンスとして捉え、前向きな経済活動に繋げていって頂きたいと思います。』

気合で期待を転換しようとしているのだから企業の皆様におかれましてもここは一発その気合を受け止めてレジームチェンジして頂きたいということですねわかります(^^)。

というのが経済物価に関する話でこの後が注目(とはあまり思わんが)の金融政策パート。


○金融政策運営:誤解しないでね!!別に2014年末で切っているんじゃないからね!!!

つい手が滑ってツンデレ小見出しになったが後悔していない。

『最後に、金融政策運営についてお話します。』

つーことで市場の皆様注目パートじゃ。

『日本銀行は今年の4月、消費者物価上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭において、できるだけ早期に実現することを約束した上で、これを裏打ちする政策として「量的・質的金融緩和」を導入しました。具体的には、マネタリーベースを年間約60〜70 兆円増加させ、2年間で2倍に拡大させます。また、これを実現するために、長期国債の保有額が年間約50 兆円増加するように買入れを行っています(図表12)。』

『なお、図表上で本年末や来年末の残高を示していますが、これは現在の政策のもとで、それぞれの時点に実現する残高の見通しであり、政策運営についての何らかの期限を示したものではありません。』

>政策運営についての何らかの期限を示したものではありません
>政策運営についての何らかの期限を示したものではありません
>政策運営についての何らかの期限を示したものではありません
>政策運営についての何らかの期限を示したものではありません
>政策運営についての何らかの期限を示したものではありません

キタコレ!!!

『「量的・質的金融緩和」は、後ほど申し上げるとおり、あくまで、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続することとしています。』

ということでして、そもそも論としてこの政策の建付け上、「物価安定の目標が安定的に持続する時点に達していないと判断された場合には自動的にMB年間60〜70兆円の拡大が継続される」というオープンエンド政策状態になっている(例えば米国のQE2の場合は最初に総額6000億ドルで約8か月という期間を切っていましたわな)ので、そもそも最初から2年で切れる訳ではありませんとまあそういう話だと改めて説明しておりますな。

でまあその辺を追加緩和示唆と言ってヒャッハーとなって円安になる分には日銀ニッコリという所なのでしょうけれども、前段にありますように、そもそも目標達成に向けて順調に進んでいるというメッセージをこれでもかと送っているのですからこれを持って追加緩和ガーと盛り上がるのもどうなのかねとは思います。

しかも運営に関する話ってここで終了なのよね。以下は波及ルートの話。


○金融政策の波及ルートに関して:ルートは実質金利攻撃ですがそのコンポーネントは幾つかに分解できます

『「量的・質的金融緩和」では、効果波及ルートをいくつか想定していますが、そのうち最も重要なルートは実質金利の引き下げです。』

一番最初は名目の話をしていたように見えますが、まあ最近はこの「実質」の話で統一してますな黒田さんは。

『具体的に申し上げますと、まず第1に、2%の「物価安定の目標」の早期実現を掲げ、それを裏打ちする異次元の緩和策を先々まで行うことを表明することにより、人々の期待を抜本的に転換し、予想インフレ率の引き上げを図ります。』

ここの部分が「異次元政策によってデフレ均衡からインフレ均衡に持って行き、その間にフィリップスカーブが上方にシフトアップする」という話でありまして、均衡から次の均衡(というのが正しいのかどうかは分からんが)に遷移させるということはそこのどこかでグラデュアリズムではない状況というのが必要になる可能性が高いという事でして、グラデュアリズムがベースのESPフォーキャストめ参ったか、とは黒田さん表立っては言ってないとは思いますが、まあ話を勝手に面白おかしく翻訳するとそういう事になるんでしょ。

『第2に、巨額の国債買入れにより、名目の長期金利に強力な低下圧力を加えます。この結果、予想インフレ率の上がり方に比べて、名目金利の上昇を少なめに抑えることができれば、その分実質金利を引き下げることができます。』

こちらがもう一つのコンポーネントで、何度か書いていますが重要なので繰り返しますと、これはまあつまり「経済物価情勢から見て適正と思われる長期金利水準に対して、実際の市場金利を日銀による買入効果で押し下げます」という話ですので、まあこれ今は良いのですがどう見ても出口でドヒャーとなる話であり、先ほどはこの政策自体がオープンエンドだと申し上げましたが、どこからどう見てもこの政策をそのままリニアに長期化したら弊害無茶苦茶高まるだろと思いますけどまあそんな事を考えている余裕はございませんですわウェーッハッハッハということですねわかります。

『そして、実質金利の低下には、設備投資や家計支出を刺激する効果を期待できます。』

という結論なのである。でまあ現状の走りに関する説明が最後に来ますが、まあ読む前から提灯行列モードとなっているのはお判りだと存じますが引用。

『この8か月、こうした取り組みは成功しています。家計やエコノミストのアンケート調査などをみると、予想インフレ率は全体として上昇しているとみられます(図表13)。一方で、長期金利は、グローバルに長期金利が上昇する中でも、0.6%程度で安定的に推移しています(図表14)。したがって、実質金利は低下しています。』

物価連動国債17回債のBEI推移(BEIは消費税上昇による影響分も普通に反映するのにあの数字というのも大概に日銀に喧嘩売ってるとは思うがそれはさておき)の話をしない上に図表の方でも当然の如くネグるということで、いいかおまいらそれは突っ込むなよ突っ込むなよ絶対突っ込むなよということですねわかります(ってツッコんでいるが^^)。市場動向に関しては金利が低い件について「成果」という話をしているのですが、物国17回のBEIにありますように、そもそも2年で2%なんぞ行くかよヴォケと思っているからこその金利水準ではないかという論点をも華麗にスルーしている辺りの自画自賛オソロシスという所で、この辺の図々しさは福井の俊ちゃんもニッコリという所でありまする。

『その景気刺激効果のもとで、日本経済は緩やかな回復過程にあり、消費者物価の前年比はプラスに転じました。「日本銀行が2%の物価上昇率を実現すると言っている」だけでなく、「実際に物価が上昇している」ことは、人々の予想インフレ率をさらに引き上げ、実質金利を低下させる効果があると考えています。このように、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮してきています。』

どう見ても満面のドヤ顔です本当にありがとうございました。


○金融政策運営について:いやまあ確かに「必要なら調整」とは言ってるけどさあ・・・・・・・・・・

んでもってその続き。

『以上、申し上げてきたとおり、日本経済は、2%の「物価安定の目標」実現に向けた道筋を順調にたどっています。今後とも、日本銀行は「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するため必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。また、その際には、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」実現のために必要であれば、調整を行っていく方針です。』

えーっとですな、確かにヘッドラインではこの「リスク要因を点検して必要なら調整」というのが大々的に出ていまして、追加緩和について言及ヒャッハーとか盛り上がっておられる早とちりさんもおいでのようなのですが、こうやって前後(というか最後なので後は殆ど無いが)の文脈を見た場合にどこがどう早期追加緩和の示唆に読めるのか小一時間問い詰めたいのであります。

『こうした金融政策運営によって、日本経済にとって最大の課題であるデフレからの脱却を必ず実現させることをお約束して、ご挨拶とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。』

なお、会見もあったようですので会見要旨も出るでしょう。しかし全然話は違うがこの前の白井さんの前代未聞の会見要旨って何か発言を全然丸めないで白井さんがムキーってなっているのがモロに表現されている辺り、市中晒し者の刑的なアレを感じたのは気のせいですかそうですか^^;

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2013/11/26

○総裁定例会見から少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311d.pdf

・悪い物価上昇でも上がるのは結構という雰囲気がございましてですな・・・・・・

悪い物価上昇だと持続性が無いんじゃネーノという質問がありましてですね、

『(問) 2 点お伺いします。まず、物価の認識についてですが、足許、総裁がおっしゃる通り物価上昇傾向にあるのですが、その要素の中で、エネルギーを中心に、円安による影響が一定程度あると思います。総裁は、それをどの程度であると認識なさっているのでしょうか。相当程度あるとみていらっしゃるのか、あるいは、大したことはないとみていらっしゃるのか。もう1 点は、こうした物価の構造がある中で、総裁がおっしゃるような物価の上昇は、持続可能なのでしょうか。』

これに対する答えに味わいが。

『(答) 2 つの質問は関連していると思います。消費者物価指数の動きをみると、確かに、初めはエネルギー価格の上昇――これは円安の反映でもあると思いますが――が先導していた傾向がありましたが、このところ、幅広い品目に改善の動きがみられており、食料・エネルギーを除いた物価指数――いわゆるコアコア指数――の前年比も、5 年振りくらいでしたでしょうか、マイナスからゼロになってきており、物価の動向は、今や、かなり幅広い品目で下げ止まりないし上昇がみられるようになっていると思います。為替は、今後も変動があると思いますが、現在のような内需を中心とした経済成長が持続していくもとで、消費者物価の上昇率も次第に上昇していく、そして2%の「物価安定の目標」を達成できると考えています。』

ということで、ロジック的にコストプッシュであってもまずは上昇したらこっちのものみたいな感じの説明になっていますが、まあそらコストプッシュで持続性がという話をするほど図々しくは無いので、説明が概ね(展望レポートなどでもそうですが)足元では堅調なディマンドを背景に物価上昇が幅広く及んでいるという形で何となくディマンドプルっぽい話をしていたりもするのですが、展望レポートでも記されたように「実際に物価が上昇すると期待にも影響」という話も持ち出しておりまして・・・・・・・・・

別の質問から。

『(問) 2 点お伺いします。最近、宮尾審議委員など色々な方が講演で、物価の期待を上げるに当たって、足許の物価水準が日本の人々の物価観を上げていってくれるというご説明をされています。具体的に、CPIの前年比が毎月だんだん高まることが期待を上げていくのか、今の0.6%なり0.7%という水準がしばらく続けば「デフレには戻らないな」という形で浸透していくのか、もしくは、やはりCPIが下がり始めると期待も上方シフトは難しいと考えざるを得ないのか、ご見解をお願いします。(後半割愛)』

『(答) 期待物価上昇率がどのようなメカニズムで変わっていくかについては、学界でも色々な議論があります。大まかに言って、当局がコミットメントを示すことによって期待が上昇するという、いわゆるフォワード・ルッキングに期待が上昇する要素もあるでしょうし、足許の物価上昇率に応じて、いわば適応的に物価上昇期待が変化するという、いわゆるバックワード・ルッキングな期待物価上昇率の変化も、両方あり得ると思います。現在、色々なアンケート調査や市場の指標などから推計される予想物価上昇率の上昇の中にも、おそらくその両方の要素が入っているのだろうと思います。』

ふむふむ。

『従って、足許でプラスの物価上昇が続き、さらにはその物価上昇のテンポが上昇していくということになると、おそらく、予想物価上昇率にもプラスの影響が出てくるだろうと思います。』

ということでやはりコストプッシュでも上昇すればこっちの物だという話ですねわかります。

『先程申し上げたように、現時点でも、既にある程度、予想物価上昇率が上昇しているとみられますが、そこには、足許の物価が上がってきていることの影響もあるでしょうし、当局として2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、「量的・質的金融緩和」を続けていることの影響もあろうと思います。(後半割愛)』

ということで、コストプッシュとディマンドプルに関しては従来の日銀はそこは峻別して説明してて、コストプッシュや為替ドリブンで物価が上がってもそれは国民厚生的にどうなのかとか持続性として如何なのものかというようなニュアンスが強かったと思うのですが、そらまあ異次元でございますのでその辺はすっかり割り切って異次元モードで黒い猫でも白い猫でも鼠を取れば良い猫という展開になっているんですねわかりますという所。

ま、この理屈の怖い所は実際にコストプッシュで物価が上がり、一方で一般ピープルの実質可処分所得は減少する(つーか10月からまた社会保険料上がってるだろおい)という状況において世間様が急に「こんな筈じゃなかった」と言い出すとコストプッシュの物価上昇を演出した日銀ケシカランと盛大に梯子が外されて集中砲撃の対象となるリスクがあることですが、まあ今の枠組みの中でそうはならないことを祈っております(棒読み)。


・海外経済がどうのこうの

まあそういう質問も出ます罠。

『(問) 2 点伺います。先程、欧米景気について「回復していく」とおっしゃいましたが、最近の欧米の中央銀行の動きをみると、欧州で利下げしたり、米国の次期議長に内定しているイエレン副議長が雇用について非常に厳しい見方をされたりと、比較的、厳しくみている印象があります。米国は金融緩和を継続する、欧州ではこれからさらに強めるような動きになっていますが、今後、再び緩和競争的な動きになってくる可能性があるのか、総裁はどのようにご覧になっていますか。(後半割愛)』

という質問に対して海外経済半歩前進というお答えが。

『(答) 欧米など諸外国の金融政策、なかんずくその今後について、直接的にとやかく言うことは避けたいと思いますが、初めに申し上げた通り、欧米先進国の改善は続いています。これは、欧米の中央銀行自身が認めているところです。特に、米国経済については、政府機関の一部閉鎖や債務上限問題などの色々な動きがあったことで心配する向きもあったようですが、結果的に、短期的な小さな影響にとどまったとみられており、先行き財政面からの下押し圧力がさらに小さくなっていくもとで、米国経済の回復テンポは徐々に速まっていくとみています。米国を含めて、海外の方もそのようにみていると思います。』

ということで米国の判断を進めましたな。

『また、欧州は、長く景気低迷が続いていましたが、4〜6 月、7〜9 月と2 四半期連続でユーロ圏の成長率がプラスになり、持ち直しに転じつつあります。企業や消費者のマインドも改善が続き、生産も底入れしているようです。先行きについても、今後も持ち直しの動きは続いていくと考えていますし、ユーロ圏、その他海外の方も同様に考えていると思います。欧米先進国の景気は、緩やかな回復ではありますが――欧州は特に緩やかですが――、引き続き回復テンポは次第に高まっていくと考えられますので、そうしたもとで、海外経済について、半歩程度ですが、判断を前進させたところです。』

つーことで半歩前進とゆー所ですが、では新興国はどうなのかという別の質問がありましてそちらに対するお答えはこちら。

『(答) まず、新興国のうち、日本経済との関連が非常に大きい中国経済をみると、内需が極めて堅調であり、安定した経済成長を続けています。今後についても、経済改革を進めつつ、安定した成長を続けていくとみています。』

ほほう。

『その他の新興国は、確かに、一時に比べると金融環境がタイト化している影響もあって、当面、成長にやや勢いを欠く状態が続く可能性もあります。このところ一部の新興国への強い成長期待に陰りがみられる中で、構造面の課題に焦点が当たっており、新興国の間でもやや区々になっている状況です。ただ、もう少し長い目でみると、米国をはじめとして先進国経済の回復の好影響が及んでいくにつれ、新興国の成長率は再び持ち直していくと見込まれます。構造問題への取組み、あるいは国際金融資本市場の反応などをよくみていく必要がありますが、全般的に、新興国経済が大きく下方にいくリスクは、あまり大きくないと思っています。』

先進国の回復の好影響が及んで回復とはこれまた中々虫の良い話をしているように思えるのは気のせいですねわかります(棒)。


・追加緩和に関して

ECBが追加緩和で世界的に緩和強化の流れが云々みたいな質問が(引用してないけど)ありまして、そこの質問での答えを黒田さんが華麗にスルーしたせいでこんな質問が出た訳ですが。

『(問) 今の質疑に関連して、ECBが過去最低の金利に利下げしたということを踏まえて、市場関係者の間からは日銀への追加の金融緩和の期待の高まりもあるのですが、その点について、総裁はどのようにみていらっしゃるのでしょうか。』

これはまた直球な。

『(答) 先程も申し上げたように、あるいは毎月の「当面の金融政策運営について」で繰り返しているように、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。その際、物価あるいは経済情勢について上下双方向のリスク要因を引き続き点検し、必要な調整を行っていくという方針に変わりはありません。当然、今申し上げたような上下双方向のリスクが仮に顕現化すれば、躊躇することなく政策は調整されるわけですが、現時点では、先程申し上げたような実体経済および物価の動向を踏まえ、現状の「量的・質的金融緩和」を継続するということで、本日の金融政策決定会合は一致しています。ご質問の点については、この決定で回答は出ていると思います。』

こうやって説明の全体を見ると(って微妙な言い回しに関してはこれ「会見要旨」なので一応編集は入っていますので念の為、つーてもブルームバーグプロフェッショナルとかで会見の動画出ているから大幅な編集はできませんけど)普通にゼロ回答しているようにしか見えないのですが、何せ足元では報道バイアスが追加緩和ワッショイになっていますので、ここの質疑に関しても「リスクが仮に具現化すれば」云々の方ばかりがクローズアップされて報道されるという流れになっておりまして、まあ債券市場みたいに年がら年中日銀チェックしてて会見とかに関してもちゃんと日銀の出すテキストに当たって確認している人々だと別だと思いますが、ベンダーヘッドラインとか丸められているベンダー記事とかでの印象で判断する人が多いと(というか他市場だと普通そうなる)、またまた他市場の方での追加緩和期待が勝手に盛り上がるという構造になりそうですなあと思うのでした。

とまあそんな所ですかね。

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2013/11/07

○黒田総裁会見からサラサラと

大阪での講演は会見もついているので金懇と同じ感じですな。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311b.pdf

・中小企業金融に関して

質疑の最初の所で中小企業に成長資金をという要望が有ったという話がありまして、それを受けてこんな質問が。

『(問) 先程、何度か、話題あるいはテーマに出てきている、「中小企業向けに長期の資金が回るようにして欲しい」、「そういうふうに日銀のほうで配慮して欲しい」という声が何度か出ているのですが、これについては、何か具体策をお考えでしょうか。』

まあ現実問題としてはこれって日銀がどうこうするというよりは金融行政の方で信用保証制度とか公的金融機関とかその他の制度対応の世界ではないかという気もしますが、まあこんな答えでございます。

『(答) 本日の懇談会でもお話したように、日本銀行は、成長基盤強化支援と貸出増加支援という2つの仕組みを持っており、これは、大手銀行も地銀その他もかなり活用しています。その最終的な借入者の中には、中小・中堅企業も沢山あるようで、そうした意味では――中小企業だけに対する仕組みではありませんが――、中小・中堅企業、特に、成長していく産業に対する低利融資、比較的低い金利での貸出を支援する仕組みがありますので、大いに活用して頂きたいですし、現に、かなり活用されていると思います。』

ふむ。

『また、特に、地銀など、中小・中堅企業と密接な関係を持っている地域金融機関も貸出を増加させています。その増加のテンポ自体は、実は、大手行よりも高いのですが、大手行は、もともとマイナスの伸び率だったのが、最近、急速に伸び率を高めてきているのに対し、地域金融機関は最近特に伸び率が高まっているわけではありません。今後、もう少し中小・中堅企業向けに、前向きの設備資金の供給が進むことが望ましいとは思っています。』

この辺って今回のFSRでも一つのテーマになっていましたな。

『このように、そういうことができる金融的な環境は十分整っているとは思います。』

まあ現状で日本の場合は資本制約がどうのこうのとかいう形でのクレジット供給不足が問題になっている訳でないですから「金融的な環境は十分整っている」というのはそうです罠。

『ただ、そうした地域金融機関と中小・中堅企業との関係で、中小・中堅企業側の業況判断や、それとの関連で、中小・中堅企業側の設備資金あるいは運転資金という需要サイドの状況もありますし、供給サイドとしての地域金融機関側は、貸出をする場合、当然ですが、そのプロジェクトなり、企業なりの将来性等を勘案して貸しますので、私どもが、一方的に押し付けるというわけにはいきません。』

そらそうよ。

『それでも、先程申し上げたように、現在、貸出の伸び率自体は、比較的、地域金融機関の方が高くなっています。再生エネルギー関係、医療関係あるいは不動産関係などの資金需要はある程度伸びており、そうした中小・中堅企業に対する地域金融機関の貸出も伸びているということだと思います。』

『中央銀行としては、今後も最大限の努力を重ねていきたいと思いますし、今後、中小・中堅企業も、業況感の改善とともに、設備投資も伸びていくのではないかと期待しています。』

この辺まさにFSRでの話ですな。


・金利が下がっているのはインフレ期待が下がっているからのではないかという質問

『(問) 長期金利についてお伺いします。先程の講演の中でも、日本の長期金利は0.6%ぐらいで安定しているというお話がありました。これは、異次元緩和の効果ということも言えるかと思いますが、予想インフレ率が上昇すると名目金利も上昇していくことが見込まれます。これに関して、現段階で、金利が上がらない、あるいはじりじりと下がっていくことについて、総裁はどのようにお考えでしょうか。』

インフレ期待が下がっているんじゃネーノという質問では無いですが、どこからどう見てもそういう質問ですな。まあインフレ期待が下がっているのではなくて、市場の見るインフレ期待が日銀の2年で2%達成無理ですから追加緩和待ったなしという見方をしているという事なのかもしれませんが。

『(答) インフレ期待は、先程の懇談会でご説明した資料の中にもあるように、物価連動国債を使って計算される、いわゆるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)などをみても、最長期のもので1.6%〜1.7%というところまできていますし、エコノミストの予想も、1%台半ばくらいのところまできています。』

「最長期のもので1.6%〜1.7%」というのはどういう計算をするとそうなるのでしょうか???たぶん10年新発のBEIは1%をちょっとだけ切る程度の水準だと思うのですけど・・・・・・・・

『そういった意味で、色々な形で、インフレ期待は、徐々にではありますが、上昇してきていることは間違いないと思います。他方、そうした中でも、長期金利は低位安定しており、このところ、若干下がり気味で0.6%くらいになっていること自体は、「量的・質的金融緩和」のもとで、大量の国債を購入していることによる金利低下圧力が効いているということであり、その結果として実質金利は低下を続けており、一部にはマイナスになっているという見方もあるかもしれません。』

ほほう。

『そういうことで、インフレ期待が徐々に上昇している中でも、長期金利は、現在のところ低位で安定している結果、実質金利は下がっているということで、「量的・質的金融緩和」が効果を表しているということだと思います。』

まあ何ですな、実際問題としてコストプッシュとか間接税増税ドリブンで物価が上昇したりインフレ期待が上昇したりしている中で金利が低位安定している状況というのはそらまあ定義上は実質金利が低下するという事になるのでしょうが、その場合って実際問題としてその実質金利の低下が投資意欲を本当の本当に刺激することが出来るのでしょうかというのは甚だ疑問な気もするのですけどねえ・・・・・・・・・


『(問) 現状の動きについて、特に懸念を持たれているということはなく、政策の効果が出ているという方に、むしろ重きを置いておられるのでしょうか。』

これは良い追撃(^^)。

『(答) 物価上昇率がさらに上がっていき、インフレ期待も上がっていくもとで名目金利がどうなっていくかは、今後の注目点だとは思います。しかし、「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するのに必要な時点まで続けるわけですので、大量の国債購入による長期金利に対する低下圧力は続きます。従って、インフレ期待が上がっていき、それに伴い、仮に名目金利が上がるとしても――現在は下がってきているわけですが――、その上昇の程度は、より小さく、やはり実質金利は下がり続けていくだろうと思います。そういうことで、「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」が安定的に達成されるのに必要な時点まで続け、引き続き効果を持っていくと考えています。』

どうも景気が刺激されて需給ギャップが改善して行く中で実質金利を低めに推移させることの効果を前面に出している(昨日引用した講演でもそういう話になっていた)のですが、それって時間が少々掛かる話であって、それよりももっと開き直って(これまた昨日引用した講演の中でもその説明がちらっとありましたが)コストプッシュでも為替ドリブンでも間接税効果でも何でも良いので、まずは「物価は上昇するものだ」という現象を発生させることによって「期待の転換」を促進して経済主体のインフレ期待を無理繰りにでも引き上げてフィリップスカーブを上方シフト(あるいは曲率のスティープ化ですかねえ)させてしまうという方が「短期間でのデフレマインド払拭」という意味では実践的なような気がします。

つーかですな、2年で2%を達成するためのメカニズムという話をする際に、どうもこの「需給ギャップが改善する中で実質金利が低いのが効果を」という話と、「期待を(やや強引であっても)転換することによってフィリップスカーブを上方シフトさせる」という話がまあ2本柱で有る事は分かるのですが、どうもこの柱に関するウエイトの置き方が説明をする人によっても微妙にぶれていますし、黒田総裁の説明を見てもこの2つの間で微妙にぶれている感じがします。まあどちらも重要と言ってしまえばそれまでではあるのですが、確かに国民厚生という点で言えば前者の方が正統的な話かも知れんですが、「デフレはそれが長期化することによって脱却することが難しくなる(きさらぎ会での講演)」という点からすればそこは後者のやや開き直りモードが必要であって、それこそが異次元緩和の異次元たる所以だと思うのですが、異次元緩和実施しているんですから異次元攻撃を継続して頂きたい訳で、ちょっと経済物価情勢がシナリオ通り進行しているからと言って政策の次元を異次元から通常の次元の説明重視にしないで欲しいなあとは思うのですけどね。

#なお、異次元にしたから行くかというとそれは別問題ですが(−−;


・出口政策どうのこうのの質疑だが・・・・・・・・

質問は講演後の質疑であったんですね。

『(問) 懇談会において、緩和の出口について質問があった中で、総裁が「現時点では具体的な議論は時期尚早だ」と述べられる一方で、「もとより出口の当てもなく入口に入ることはない」と述べておられましたが、この「当て」というか、その点についてどのようにみていらっしゃるか。』

まあ「出口の手段は色々ある(キリッ)」と言っていたFEDが出口どころかただの緩和拡大ペース縮小ごときであのテイタラクというのを見るとさてどうなんでしょうというのは興味の起こる所です。

『(答) 懇談会でも申し上げた通り、現在、出口戦略について具体的に議論するのは、やはり時期尚早だと思います。足許、生鮮食品を除く消費者物価の対前年比が0.7%とプラスにはなっていますが、「物価安定の目標」である2%からは、まだまだ程遠いわけです。』

>足許(略)「物価安定の目標」である2%からは、まだまだ程遠いわけです

ほっほーという所でございますが、出口がどうのこうのの話のどさくさに紛れて現状を目標からまだまだ程遠いと定義したのは後で自分の首を絞めることにならないと良いですな(棒読み)。

『何度も申し上げているように、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するのに必要な時点まで現在の政策を続けるという、まだ途上ですので、今から具体的に出口戦略を議論することは、やはり時期尚早であろうと思います。』

まあそういう話をしたかったのでしょうが、じゃあ例えばCPIが1%だったらどの位遠いのかとかその辺の定義が論点になってくると実際問題として物価安定目標の定義そのものが微妙に曖昧なまま放置されているという問題が出てくるでしょうなあと思うのでありました。

『このように申し上げるのは、出口の議論になってくれば、当然、その時の経済・金融情勢等々と関連して議論されるわけですので、そういうことについて、今から、こう仮定したらこうなるとか、ああ仮定したらああなるとか、色々言うこと自体、あまり現実的な意味はありませんし、かえって市場に余計な雑音を与えてしまうことになります。従って、やはり、今の時点で出口戦略を具体的に議論するのは、時期尚早であると思います。』

まあこれはそうですけどね。

で、他の質問。

『(問) 先程の出口戦略について、もう少しお尋ねしたいのですが、「時期尚早だ」ということですが、一方、「内部、日本銀行の中で考えていきたい」というようなことをおっしゃったと思うのですが、これは、今後、議論を公表はしないが、内部で検討を進めていくということなのか。さらに、出口戦略については、やはり今まであまり踏み込んでおっしゃらなかったにもかかわらず、本日、おっしゃったということは、何らかのメッセージを市場に与えようとしたのか、あるいは、副作用を気にする人もいるので、あまり心配しなくてよいというメッセージを与えたかったのか、その辺をお伺いします。』

(・∀・)

『(答) あまり深読みして頂く必要はないと思います。従来から申し上げていることと全く変わっておりません。先程申し上げたように、基本的に、今の段階で出口戦略について具体的に云々することは時期尚早であると考えています。』

FEDがTaperingトークをすることによって結果的に市場金利を経済実態から適正と思われる水準から大きく上振れさせることによって経済に悪影響を与えたというチョンボ事案が発生していますので、まあ導入時点よりはその辺マズーではないかという認識はあるとは思いますし、だからまあ質問に対してそのような回答になったのかなとは思いますが。

とまあそんな感じで。

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2013/11/06

○総裁講演は展望レポートのダイジェストっぽくもあり

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131105a1.pdf
最近の金融経済情勢と金融政策運営
── 大阪経済4団体共催懇談会における挨拶 ──

ということで総裁講演なのですが、これがまた(当たり前ではありますが)展望レポートのまんまという大変に素敵な講演でして、これ展望レポートをネタにする前にネタにすると展望レポート関連の論点を食うわ(笑)という感じで、まあ実に安定の講演ではあります。


・先行き日本経済の注目点(内需その1)個人消費

『今後の日本経済を展望するうえで、特に注目すべき点を2つ挙げると、ひとつは堅調な内需の持続性、もうひとつは海外経済の先行きです。』

ということで先行き日本経済の注目点は内需の持続性と海外経済の先行き、というのは展望レポートでも示されていますがまずは『(堅調な内需の持続性)』という小見出し部分から。

『まず、内需の持続性からお話しします。今回の景気回復の特徴は、個人消費や公共投資といった内需を起点として、非製造業部門が回復を牽引していることです。これは、輸出と生産の増加が起点となって、製造業部門を中心に景気が回復するという、戦後の日本の景気回復の典型的なパターンとは異なっています。実際、製造業の生産はリーマン・ショック前のピークの約8割にとどまっている一方、非製造業の経済活動の状態を示す第3次産業活動指数はリーマン・ショック前の水準近くまで回復しています。また、短観の業況判断DIをみても、今回の回復局面では、非製造業の業況感が、製造業の業況感を上回って推移しています(図表2)。』

『堅調な内需のうち、個人消費については、団塊の世代を始めとするシニア層の活発な消費行動が下支え要因として底流に作用するもとで、年初以来、消費者マインドの改善、株価上昇などによる資産効果が押し上げに働いてきました(図表3)。それが、最近では雇用・所得環境の改善にも支えられる姿になってきています。』

>最近では雇用・所得環境の改善にも支えられる姿になってきています

ということで、展望レポートでも全力で説明しているのですが、とにかく今回の展望レポート、つーかその前の金融経済月報からそうですけれども、日銀の認識としては「前向きの循環メカニズムが働いている」「労働市場は引き締まってきている」というホンマカイナという感じがする強い認識になっていまして、その結果個人消費の現状認識に関しても従来は資産効果とかマインドという持続性の怪しいものをドライバーにしていたのが、雇用所得環境改善という持続性があるという話になっている訳ですな。

『すなわち、雇用情勢をみると、失業率や有効求人倍率がほぼリーマン・ショック前の水準まで回復するなど、雇用環境は緩やかながらも着実な改善が続いています。企業側の雇用不足感も高まっています(図表4)。こうした雇用環境の改善は、賃金にも影響し始めています。1人当たり名目賃金は、夏季賞与が3年振りにプラスとなるなど、全体として下げ止まりつつあります。』

所定内給与ェ・・・・・という話はこの直後に。

『1人当たりの所定内給与は未だ前年比マイナスとなっていますが、これには女性やシニア層のパート形態での労働参加が進んでいることで労働時間が短時間化していることも影響しています。』

なんという物は言いよう。

『いずれにしても、雇用者数は増加していますので、雇用者数と1人当たり賃金を乗じた雇用者所得は、前年比プラスに転じてきています(図表5)。このように、所得環境も全体として改善しつつあります。』

とまあそういう事で

『先行きについては、景気が緩やかに回復するもとで、雇用環境の改善傾向が続き、1人当たり名目賃金にも、次第に上昇圧力がかかっていくとみています。また、やや長い目でみれば、労働需給の引き締まりの影響に加え、予想インフレ率の高まりもあって、賃金の上昇傾向がはっきりしてくると考えています。』

賃金の上昇傾向がはっきりしてくるとな!!

『もとより、企業を取り巻く競争環境が厳しいことは認識していますが、企業収益が改善するなかで、「政・労・使」の連携による取り組みもあって、賃金の上昇につながることを期待しています。』

ということで、個人消費と雇用環境に関しては認識を強めているのもさることながら、その内容がひじょーに質的にも強いものになっているとの説明になっていまして、それをベースに先行きの見通しが立っているのですから、どう見ても日銀の見通しは「持続性のある個人消費の拡大」という話になりますな。

でまあやや話はずれるのですが、以下も内需に関してやたらめったら強い認識を示しており、つまり日本経済は「内需主導で今後も持続的回復」という基本認識を示している訳で、そんな認識を示して居る中で急に追加金融緩和を実施するという方が日銀のロジックを考えれば変としか思えないのですけれども、何故か知らんが(というか判るのだが^^)何とかストの皆さんにおかれましてはもう追加緩和が来年4月までには実施で問題はやるかやらないかではなく何をするのかという位のレポートがホイホイ出てきているのはどういう事なんでしょうね。

・先行き日本経済の注目点(内需その2)設備投資

『内需の先行きを考えるうえで、もうひとつ重要なのは、企業部門における設備投資の動向です。設備投資については、今回の景気回復の特徴を受けて、これまで非製造業が底堅く推移してきましたが、最近では出遅れていた製造業にも改善に向かう動きがみられており、全体として持ち直しています(図表6)。』

キタコレ。

『先行きの設備投資を巡る環境をみますと、「量的・質的金融緩和」のもとでの緩和的な金融環境が、設備投資を後押ししていくと考えられます。』

この話は展望レポートでも示されていまして、まあ基本的に前回の時点でもそういう話をしていて、今回の展望レポートではさらにその見通しをサポートする材料が増えましたよという感じの話になっておりまする。

『すなわち、投資採算の観点からすると、景気回復に伴い資本収益率が上昇していくと同時に、予想インフレ率の高まりなどを反映して実質金利は低下していくと考えられますので、金融緩和の投資刺激効果は強まっていくとみています。』

予想インフレ率上昇で実質金利が低下するので投資刺激効果とな。

『また、各種企業減税の効果も、資本コストの低下やキャッシュフローの上振れといったルートを通じて設備投資を支えていくと考えられます。さらに、これまでの企業の投資抑制姿勢を反映して、設備の老朽化が進んでいることから、設備の維持更新投資に対する潜在需要は強まっているとみられます。経済活動の水準がさらに高まり、企業収益の改善が続けば、循環的にそうした需要が顕在化しやすい状態にあります。』

ちなみに各種企業減税効果云々は今回の展望レポートで新登場しています。なお、展望レポートでは成長力強化の取り組みによって企業の成長期待が高まって設備投資意欲が拡大というような絵も描いてありましたが、さすがに相手が経済団体なのでそこまで書くのは図々しいという認識になったのかどうかは知りませんが、そこは割愛されていますな。

・先行き日本経済の注目点:海外経済

『次に、海外経済の展望についてお話しします。先ほど申し上げたように、日本経済は、先行き、内需が堅調さを維持するなかで、外需も緩やかながら増加していくと想定しています。その前提として、海外経済については、金融資本市場が総じて落ち着いて推移するもとで、次第に持ち直していくとみています。IMFが先月公表した世界経済見通しでも、世界経済の成長率は、2013 年の2.9%から、2014 年は3.6%となり、2015 年は4.0%と次第に伸びを高める予想となっています(図表7)。』

基本的には海外経済の見通しはIMFの数字と大体同じですよというのが展望レポートの見通しの前提になっています。でまあ地域別の展開を引用しようと思ったのですが、大概に長くなってしまいますので割愛しますけれども、米国、欧州、中国に関してはリスクはあるけど見通しは強めになっていまして(ちなみに4月展望レポートで懸念されていた日中関係悪化による輸出の減少という話は無くなっていますな、まあそうでしょうけれども)、弱めなのは新興国となっています。

『このように、各国・地域それぞれにリスク要因を抱えていますが、中心的な見通しとしては、海外経済は、先進国を中心に、次第に持ち直していくとみています。そのもとで、わが国の外需は、緩やかに増加していくと考えています。』

ということで、先行き見通しを見るとまあ強気継続というか強気の確信度が上がって更にドヤ顔としか読めませんので追加金融緩和って何それって感じしか読み取れないんですけどねえ・・・・・・・


・物価情勢:需給ギャップはもうすぐプラス圏に

『現在、日本経済には、なお、マイナスの需給ギャップ、すなわち、労働力や設備の余った状態が残っていると考えられます(図表10)。』

図表10というのを見ると需給ギャップは−2%台後半から−1%近辺にこの半年で縮小したというピクチャーになっています。

『しかし、潜在成長率を上回る成長が続くもとで、労働や設備の稼働状況はさらに高まっていくと考えられますので、先行き需給ギャップはプラスに転じていくとみています。』

とのこと。

『こうしたもとで、財やサービス、労働に対する需給の引き締まりが明確になり、価格や賃金は上昇していくとみています。』

需給の引き締まりが明確になるとな!

『また、中長期的な予想インフレ率の高まりも価格や賃金の上昇に寄与すると考えています。中長期的な予想インフレ率は、「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられます。』

まあ素敵(棒)。


・金融政策波及効果の説明コーナー

『4.金融政策運営の考え方』という所ですが、説明の所では昨日ネタにした会見と同様に「実質金利の低下」を前面に出していますが、良く良く見ると結局のところは「気合で期待を転換してフィリップスカーブを上方シフト」という所に尽きるようですな。

『「量的・質的金融緩和」では、効果の波及経路をいくつか想定しています。そのうち最も重要なルートは、実質金利の引き下げです。』

とあるのですが・・・・・・・・・・

『具体的なメカニズムをお話ししますと、まず第1 に、2%の「物価安定の目標」の早期実現を掲げ、それを裏打ちする異次元の緩和策を先々までアナウンスすることによって、人々の期待を抜本的に転換し、予想インフレ率の引き上げを図ります。』

ということで、そもそもこの最初の部分がどうなのよというのは今に始まった話では無いのですが、結局の所気合で期待を転換してフィリップスカーブが上方シフトというのが何ですねんという話なのですけれども、更にここで重要なのは、上記引用部分にありますように「異次元の緩和策を先々までアナウンスする」という事でありまして、これは即ち「戦力の逐次投入はしない」という事でもあり、そう簡単に追加緩和をホイホイと打つという事にはならない、という結論が容易に導き出せる筈。

しかるに、民間何とかストの皆様におかれましては以下同文という所で、つまりそもそも2%達成出来るかできないかの認識が日銀と民間何とかストの間で齟齬があるというのが追加緩和ネタで民間何とかストだけ盛り上がる(どちらかと言うと市場参加者の方が日銀のこの辺のメッセージを読んでいて追加緩和ネタにあまり踊らない(5年の金利とか0.20割って怪しい部分もありますが)感じ)の巻となっている背景ではあるのかねと存じます。

まあそれは良いのですが、異次元緩和をローンチした時に大絶賛していた民間何とかストの方々におかれましては、当初絶賛したんだから当然ながら2%達成に必要十分な施策であるとの認識だった筈で、半年で追加緩和ガーとか言い出すのって如何なものかと思うのですけどちょっとあんたら看板降ろした方が良いんじゃないですかねえ誰とは言わないけど誰かさんとか誰かさんとか誰かさんとか。

『第2に、巨額の国債買入れにより、名目の長期金利に強力な低下圧力を加えます。この結果、予想インフレ率の上昇に比べて、名目金利の上昇を少なめに抑えることができれば、その分実質金利を低下させることができます。』

まあこの時点で市場機能も蜂の頭も無い訳ですな。つまり市場の価格発見機能を潰してでも金融緩和効果を出すという事ですから、出口の時点ではそれが何倍返しかになって返ってくるんですけどねえとか思ったら会見だかでその手の質問あったのね(後でメモを置く)。

で、実質金利低下の効果がこういうこととまあ毎度の説明ですが。

『企業や家計の支出行動は、実質金利に影響されますので、実質金利が低下すれば、設備投資や住宅投資、個人消費を刺激し、景気を後押しする効果が生み出されます。』

そうなんですかねえ、何か他のファクターも効くような気がするんですが

『そして、景気の改善に伴って、財・サービスや労働市場の需給が引き締まれば、物価には上昇圧力がかかります。実際に物価が上昇すれば、それはまた、人々の予想インフレ率を押し上げることにつながります。』

『すなわち、異次元の金融緩和による予想インフレ率の上昇を起点として、実質金利の低下、景気の改善、実際の物価上昇、また予想インフレ率の上昇という好循環を作っていくということです。』

足元で起きているのは単なるコストプッシュの物価上昇と資産効果&財政フルスロットル効果のような気もするのですが、そう思うのは信心が足りない証拠です(−−)。

何故なら以下金融緩和政策の自画自賛コーナーになるのですが・・・・・・

・金融緩和政策の自画自賛コーナーキタコレ

キタコレですが何せ自画自賛コーナーも展望レポートにある所がお洒落。

『この半年、こうした取り組みは成功しています。先ほど申し上げたように、予想インフレ率は全体として上昇しているとみられます。一方で、長期金利は、世界的な上昇にもかかわらず、日本では0.6%程度の低い水準で安定的に推移しています(図表13)。銀行貸出の金利は、既往ボトムの低水準にあります。したがって、実質金利は低下していると考えられます。』

ほう。

『その刺激効果のもとで、日本経済は回復過程にあり、消費者物価はプラスに転化しました。』

輸入と燃料費のコストプッシュいやまあいいです。

『「日本銀行が2%の物価上昇率を実現すると言っている」というだけではなく、「実際に物価が上昇している」ことは、人々の予想インフレ率の上昇に寄与すると考えられます。』

コストプッシュでも物価が上がればインフレ予想が上がるんだよキタコレですなあ(ニヤニヤ)。

『このように「量的・質的金融緩和」は、想定したとおりの効果を発揮してきています。』

どう見てもドヤ顔です本当にありがとうございました。

『この政策のもとで、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っています。今後とも、日本銀行は、目標実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。また、その際には、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因をしっかりと点検し、「物価安定の目標」実現のために必要であれば、調整を行っていく方針です。こうした金融政策運営によって、15 年来の課題であるデフレからの脱却を必ず実現したいと考えています。』

上下双方向のリスク要因ってあーた上方リスク有った時にどう対応するのよと思いましたがまあ上方リスクなら別に誰も困らない(多分金融市場が困るが)っすかねえ(除く悪性インフレ)という所で、まあ一応「必要であれば調整」という発言はありますが、ここまでの文脈を見ればどう見ても追加で何かという話にはならない筈、となりますな。

つーことで本日は展望レポートネタをするつもりでしたが、何気に展望レポートの説明版みたいな講演になっていましたのでこれで全般を代用して、さらに細かい話について展望レポートを確認したいという感じで参ります。

なお、展望レポートでは先ほどの総裁講演であった波及経路の話はかなりスルー(部分部分の記述にはあるけど)した格好になっているのもちょっとチャーミングです。


・会見テキストにも注目・・・・・かな??(おまけ)

昨日はこんなヘッドラインがががが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MVS4LE6K50YB01.html
日銀総裁:「当てもなく入口に入ることあり得ない」−緩和の出口 (1)
更新日時: 2013/11/05 18:05 JST

『11月5日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は5日午後、量的・質的金融緩和の出口政策について「現時点で具体的な議論を行うのは時期尚早」としながらも、「もとより出口の当てもなく入口に入ることはあり得ない」とし、「しっかり私どもとしても出口戦略を考えておきたい」と述べた。大阪市内で行った講演後の質疑応答で述べた。』(上記URLより)

「考えておきたい」というのと「出口の当てもなく入口に入ることはあり得ない」というのが何かほこ×たてのような気がするのは気のせいですね!!!!!!

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2013/11/05

○総裁会見からあれこれ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311a.pdf

・1票ほど相変わらずイミフの反対があったようで

冒頭の説明部分から。

『なお、展望レポートについて、佐藤委員、木内委員それぞれから、「消費者物価の前年比は、見通し期間の後半にかけて、2%程度に達する可能性が高い」との記述を修正する議案が、また白井委員から、より分かりやすい説明に修正するとともに、より下振れリスクを意識した記述に変更する議案が提出され、否決されました。その上で、これら3 名の委員は、展望レポートに反対されました。その詳細については、次回決定会合後に公表される議事要旨をご覧下さい。』

ということで、佐藤さんと木内さんについては見通しそのものに反対なので分かりやすいのですが、例によって白井さんが謎提案でして、より分かりやすい表現云々って前もそんな話をしていましたぞな。

これは前回の展望レポート討議の4月2回目決定会合議事要旨の記述ですけどね。

『白井委員からは、@分かりやすさの観点をより重視した2つの「柱」による点検結果の記述方法の改善とAリスク要因の記述の明確化、具体的には、@として、第1の柱については「1.わが国の経済・物価の中心的な見通し」の最後に、第2の柱については「2.上振れ要因・下振れ要因」の最後にそれぞれまとめる形で記述する、Aとして、経済情勢に関する上振れ要因・下振れ要因のうち消費税率引き上げの影響について、家計の実質所得減少のリスクをより明確に記述する、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』(4月26日決定会合議事要旨より)

という事で謎提案をして否決されていましたが展望レポートそのものには反対しないという謎攻撃をしていたのですが、今回は結局展望レポートに反対なのですが、前回の展望レポート討議時の決定会合議事要旨では白井さんの提案に関して『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分では特段の記載が無くて、佐藤さんと木内さんの見通しに反対という事に関しては記載がある、というのがあって、つまりこれは白井さんの提案に対する事務方の見解ですねわかりますという事かと思ったのですが、さて今回議事要旨でこの辺どういう記載になるんでしょうかね。


なお、白井さんの提案についてワカランチ会長ということで何回か質問があったのですけれども、結局わからんままではあるのですが、どうも「見通しに反対」の2名とはまた別のようでございます。質問に対する説明を1つ引用しておきます。

『(答) 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することは、本年1月の金融政策決定会合で決まりましたが、2 名の方は反対していたわけです。その後、4 月の展望レポートについても、「物価安定の目標」である2%程度の達成時期について、政策委員会の大勢とやや違った意見の方が引き続き2 人いるということだと思います。白井委員の意見は、先程申し上げたように、このお2 人とは少し違っており、リスクをよりよくみていく必要がある、重視していく必要があるという意見だと思いました。』

・・・・・・・・・・・うーんわけわからん。


・質問も追加緩和モードですな

2番目の質問から。

『(問) 今回、展望レポートでは、2 年程度で2%という物価目標を達成するシナリオを維持したともいえますが、仮に、このシナリオを維持できなかった場合の政策対応について、政策委員の方々が色々ご発言されているようですが、総裁はどのようなお考えかお聞かせ下さい。』

ということでこちらの質問に対する答えが盛大にヘッドラインになっていまして。

『(答) 4 月4 日に現在の「量的・質的金融緩和」を決定した際、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現することを明確に約束しており、そのために必要な施策として「量的・質的金融緩和」を導入し、現在に至るまで着実に実行してきているわけです。』

『そうした中で、先程申し上げたように、先行き、消費税率引上げに伴う駆込み需要とその反動といった振れは予想されますが、わが国経済は、基調的には潜在成長率を上回る成長を続け、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っていくとみています。ただ――これも4 月4 日から常に申し上げていますが――、今後、内外のリスク要因によって、こうした見通しに変化が生じ、「物価安定の目標」を実現するために必要であれば、当然、必要な調整は行っていきます。』

まあこれ自体は声明文にもある話で今般急に変わったという話では無いのですけれども、まあ当然ながら追加緩和で盛り上がる外部(つーても盛り上がっているのは何とかストとかメディアとかで、市場の価格形成がそうなっている訳でも無い)にとっては絶好のエサになるので、まあ言い方にはもうちょっと注意した方が良いのではと思ったのですが・・・・・・・

その次の質問。

『(問) 米国では、債務上限引上げなど財政問題が10 月に入り非常に注目されました。米国の財政問題が、米国経済のみならず世界経済に及ぼすリスクを、総裁はどのように評価しているかお伺いします。』

もうちょっと後ではこんな質問。

『(問) 3 点お伺いします。1 点は、今回、14 年度の経済見通しを引き上げていますが、来年4 月の消費増税前の駆込みとその後の下振れのうち、下振れ時の対応について、消費増税が決まる前の官邸での会議では「何かあれば躊躇しない」との趣旨の発言をされたと記憶しています。現時点で14 年度の見通しが引き上げられたということで、1 回目の8%に上げる時の下振れリスクは下がったとみているのかどうか、追加的な措置が必要となる可能性は低くなっているとみているのかどうか、お伺いします。』

というのがありまして、どうも次の質問あたりで総裁が気が付いたんじゃネーノと思うのですが、あまり下振れリスクの話をしてると却って「日銀が下振れ意識」というヘッドラインになって折角の見通しを打ち消してしまうようなトーンで理解されるとマインド面によろしくないとゆーことで、質疑の最初の部分では上記のような話をしていますが、その後は「そもそもそんなに下振れしませんぞなもし」というトーンの話っぷりになっているように見えますな(^^)。


・米国財政協議の影響は一時的とな

さっきの米国財政協議の質問に対する答えですが。

『(答) 米国経済は、世界最大であり、現在、世界経済の回復を牽引していますから、その先行きは、世界経済にとっても重要なファクターであると考えています。そこで、米国経済の現状をみると、個人消費をはじめとした民間需要は堅調であり、全体として緩やかな回復基調が続いていることは変わりないと思います。』

と、そもそも強い認識。

『もちろん、こうした中で、最近、財政を巡る協議が難航し、政府機関の一部が閉鎖される事態もあったわけです。しかし、その後、協議が進展し、債務支払いの遅延も回避されたため、経済への影響は小幅かつ一時的なものにとどまった公算が大きいと考えています。』

小幅かつ一時的とな。

『従って、先行きの米国経済に関しては、緩和的な金融環境が維持され、財政面からの下押し圧力も次第に和らいでいくことなどを背景に、回復テンポが徐々に速まっていくとみており、こうした見方に変わりはありません。ただし、財政協議は今後とも継続されるため、その帰趨次第では、先行き金融市場や経済主体のマインドへの悪影響から、米国景気が下振れる可能性もあり得ます。その点については留意が必要であり、今後とも十分に注視していきたいと思っています。』

とまあ最後には先行き警戒の話をしていますが、リスク要因として警戒みたいな言い方をしないというのがまあ強気なんですから当然ですけどね。


・QQEの実体経済への効果に関する説明が微妙に微妙

この質問、後半があってそちらもオモロスなのですがまずは前半から。

『(問) 展望レポートの中から2 点伺います。「『量的・質的金融緩和』のもとで、実体経済に好転の動きが幅広くみられる」という記述があると思いますが、少し詳しく教えて下さい。今の金融緩和のどういった効果が――例えば、金利の押下げなど、色々な効果があると思うのですが――、実体経済の具体的などういった分野に効果をもたらして、好転の動きがみられるのか、ここを少し詳しく教えて下さい。(後半割愛)』

『(答) 前者については、現在の「量的・質的金融緩和」を導入した際にもご説明したように、3 つのチャネルを考えています。』

ほう。

『まず第1 に――1 番重要な点かもしれませんが――、大規模な国債の買入れ、あるいはいくつかのリスク資産の買入れを通じて、金利のイールドカーブ全体に下方圧力を加えていくとともに、リスクプレミアムを圧縮することで、全体として金利、資金調達コストを抑制していくことです。』

『第2 に、特に大量の国債買入れを通じて、金融機関その他投資家のポートフォリオ・リバランスを促していくことです。これは、やや中長期的な効果だと思います。』

『第3 に――これも非常に重要だと思いますが――、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現することを明確にコミットし、物価その他の将来予想・期待に働きかけることです。その1 つの効果として、例えば、投資について、名目金利から予想物価上昇率を差し引いた実質金利は明確に低下してきており、一部ではマイナスになっていると思います。これが、投資、特に長期的な投資である設備投資や住宅投資などを刺激する効果が出ていると思います。』

きさらぎ会での講演ではメインを「期待に働きかける」に置いているように見えたのですが、ここでの説明だと相変わらずの「イールドカーブ全体に下押し効果」という話が「一番重要」という説明になっていてほえ?という感じですな。まあ「物価に対する効果」と「実体経済に対する効果」という意味では確かにフィリップスカーブがどうのこうので説明するのも無理があるのかも知れないですけれども。

でもって3番目の話はもうちょっと続いているのだ。

『また、消費にも、実質金利の低下がプラスに働きますが、さらに、株その他の金融資産の価格の上昇が資産効果を通じて消費を刺激する効果もあると思います。輸出などについては、ご承知のようにJカーブ効果等もありますので、名目的な貿易収支に直ちに影響が出てくるわけではないと思いますが、為替の影響はもちろんあります。』

『「量的・質的金融緩和」の効果は、投資、消費、その他の内需に特に大きな効果を持つと思っています。消費は堅調な動きが続いていますが、設備投資についても、これまでは堅調な消費、あるいは住宅投資に支えられて非製造業の設備投資が伸びていましたが、ここへきて、製造業の設備投資も出てきており、今後とも堅調な消費の継続と設備投資のさらなる伸びが期待されます。』

ということで、説明を良く見ると3番目の部分を強調した方が説明としては綺麗な気がしますし、金利に関しては単に(後で質問が飛んできていますが)日銀が「2年で2%の目標が達成できます(キリッ)」と認識しているのに対して市場の方が「行くわけないから来年の早期には追加緩和待ったなし(ニヤニヤ)」となっているという認識でいる、という認識ギャップによって下がっている可能性もオオアリクイなのでございまして、あまりこの「金利ガー」をメインにしない方が良いと思いますけどね。


・なお市場との認識の相違については馬耳東風の模様

つーことで今ネタにした「市場との認識相違」に関する質問も当然飛んでくるのですが・・・・・・・・・

『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、今回の展望レポートでも、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っているという内容になりました。一方で、民間の大方のエコノミストの見方は、それよりは厳しくて、日本銀行の見方とはややかけ離れているというか、乖離しているのが現状だと思います。この原因がどこにあると思われるか、総裁のお考えをお聞かせ下さい。(後半割愛)』

これは質問の筋が良いのですが微妙に質問の仕方が惜しいですな。まあいいけど。

『(答) 1 点目については、民間の色々なエコノミストの方々の考え方は、むしろ民間の方々に聞いて頂いた方がよいと思いますが、私どもとしては、2 年程度の期間を念頭に置いて、2%の「物価安定の目標」を、できるだけ早期に実現するために、必要にして十分な措置ということで、「量的・質的金融緩和」を導入したわけです。』

ほうほうそれでそれで?

『これまでのところ、物価上昇率も予定した経路を辿って徐々に上昇してきており、年度内には、1%という水準には達するのではないかと思っています。』

勝利宣言キタコレ。

『どこの国でも、政策当局者と民間の人との見方は、必ずしも一致するわけではないとは思いますが、私どもとしては、こういった政策対応と、上下双方向のリスクを点検し、必要に応じて調整するということで、2%の「物価安定の目標」に向けて、順調にその道筋を辿っていけると考えています。』

どう見ても馬耳東風です本当にありがとうございました。つーか質疑の冒頭部分以外は基本的にこのトーンで終始していまして、「いや皆さん何を言ってるの我々が4月に想定したとおりじゃないですか」という感じの満面のドヤ顔状態(だったかどうかは会見ビデオを見ていませんので知りませんが^^)の質疑応答に終始しているのですよね〜♪


・ちなみに物価上昇のパスについても強気っすよ

さっき引用したQQEのチャネル質問の後半が物価上昇のパスの質問で、そういうのを最初に近いところで質問したら他の人のネタを食っちゃうじゃないですか(^^)。

『(問)(前半割愛)それからもう1 点、物価のパスについてお伺いしたいのですが、足許、為替の状態がこのままある程度なだらかな状態が続くとすると、円高修正による物価の押上げ効果というのは来年の春くらいになると切れてくると思うのですが、その先、来年度以降の物価が上昇していくというパスを――例えば消費財やサービスなど色々な分野があると思うのですが――、どういった分野の、どういった効果で、さらに物価が上がっていくとみていらっしゃるのか、詳しく教えて下さい。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答)(前半割愛)物価については、ご指摘のように、為替あるいは国際商品市況の影響で、エネルギーを中心とした輸入物価の上昇が消費者物価に影響していたことは事実ですが、最近の消費者物価の動きをみると、いわゆる生鮮食品を除いた消費者物価上昇率がプラスに転じ、8 月には+0.8%、9 月には+0.7%となっただけでなく、食料やエネルギーを除いた、いわゆるコアコアでも、かなり大きなマイナスからゼロ%というところまできています。』

コアコアゼロの指摘キタコレ。

『今後、為替がさらに円安に振れない限り、為替の物価への影響は徐々に小さくなっていくと思います。他方、堅調な内需を受けて、全体として、今後、潜在成長率を上回る成長が続くという前提のもとで、需給ギャップが縮小し、いずれプラスになっていくと思いますので、エネルギー、食料だけでなく、他の品目にも次第に改善の動きが拡がり、一気に2%にいくということはないと思いますが、幅広く、物もサービスも含め、物価は上昇していくとみています。もちろん、品目によって物価上昇の程度は違いますが、ごく一部のものに限って物価が上昇することにはならないのではないかと考えています。』

どう見ても強気です本当にありがとうございましたなのですが、2年は何処へという気はせんでも無い。


・BEI水準の話が???なのだが

『(問) 2 点お伺いします。まず、物価の先行きについてです。物価連動国債からみえるBEI(ブレーク・イーブン・インフレ率)が、財務省の再発行を受けてもあまり変わらず、最近、上昇が止まっていると思いますが、これについてのご所見、解説をお願いします。(後半割愛)』

『(答) 前者の点については、新しい物価連動国債は、若干、元本保証などの性質が違うので、違った計算結果が出てくることもあると思いますが、根っこにあるインフレ予想が新しい物価連動国債によって変化するということではありません。新しい物価連動国債になったから、そこから計算されるBEIが変化するということはないと思います。』

さいですな。

『物価連動国債は、比較的薄いマーケットではありますが、私どもも、指標として十分注視しているわけです。元々発行されていた物価連動国債から算出されるBEIをみると、いったん、2%近いところまで上昇した後に下がり、また少し上がって、最近は、多分、1.6〜1.7%辺りにあると思いますが、半年前、1 年前、2 年前と比べると、やはり、着実に上昇してきていることは事実だと思います。』

えーっとすいません直近の10年新発のBEIって1%近辺なのですが何でそっちの話が出てこないんでしょうか大体からしてBEIって間接税増税の影響込みの数字なんで期間によってその分の寄与が年率換算するとですなあ・・・・・・・・

でまあそういうツッコミを避ける為に上記にあるように、「半年前、1年前、2年前と比べると」というエクスキューズを入れておりまして(まあ展望レポートでもそういう感じで「総じて」という説明してますが^^)何という怪しげな説明。

『BEIは、ここ数か月は、どんどん上がっていく状況ではないのはその通りだと思いますが、他方、インフレ予想には、その他色々な指標があり、それらの中には顕著に上がっている指標もあるので、インフレ予想は全体として上昇してきているし、今後も上昇していくだろうと思っています。』

全体として攻撃キタコレですねわかります。


・微妙に味わいのあるオモシロ質疑から2つほど

うむ、総裁会見は前座の積りだったのにすっかり引用大会になってしまいましたぞなorzorz

『(問)(前半割愛)2 点目は、先程の質問へのお答えの中で、大量に国債を購入する中でポートフォリオ・リバランスを促していくことは、中長期的な効果だとおっしゃっていましたが、大手生保は、運用計画の中で、下期の国債購入を増加させると相次いで発表しています。この辺りはどのようにみておられるのか、ご所見をお願いします。』

ワロタ。

『(答)(前半割愛)2 点目のポートフォリオ・リバランスについては、従来から申し上げているように、やや中長期的にみていくべき話ではありますが、足許でも、例えば、国内の銀行、特に大手行は、相当大幅に国債の保有を減らしており、その代わりに株式への投資を増加させるなど、ポートフォリオ・リバランスの動きが出ています。また、貸出について言えば、大手行だけでなく、銀行全体として、前年比で2%台前半のペースで増加していますので、足許でも、ある程度ポートフォリオ・リバランスが進んでいるということだと思います。これは、最初に申し上げた通り、ある程度時間をかけて効果が出てくると思います。』

ほうほうそうですか。

『一方、今ご指摘があったような、非常に長期の資産を保有する保険会社や年金等が、いわゆるフィックスド・インカム・アセットという長期的にリターンが固定されている資産をある程度持つことは、当然あり得る話だと思います。そうしたところも含めて、中長期的に新しい金融環境にアジャストしていく動きは次第に起こっていくと思っています。』

ほうほうそうですかそうですか。


で、別件でこんなのも。

『(問) 仮定の質問で恐縮です。来年度の成長率の見通しを0.2%引き上げたということですが、これは5 兆円の経済対策を織り込んだ数字だと思います。仮に、その5 兆円がなかったとしたら、今回、見通しは下方修正になった可能性はありますか。』

実にこれは良い質問でワロタ。

『(答) この見通しは、9 人の政策委員の方々の見通しの中央値です。それぞれの方が、経済対策のみならず、その他各種の要因を勘案して、こういう見通しにされたということです。』

ということでそもそもこれは合計ですのでという説明で逃げを打つのだ。

『そこから経済対策分を差し引いてどうかというのは、それぞれの委員がそういう仮定を置いた計算を、モデルなどを使って行うということになります。何回も申し上げますが、9 人の政策委員の方々が、経済対策も含め、その他各種の要因も勘案して見通しを出され、その中央値がこういう数字になっているということです。従って、経済対策なかりせば、どういった成長率になるかと言われても、この展望レポートからはお答えしかねるということです。』

ワロタ。

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2013/10/17

○黒田総裁講演ネタをまとめて投下

G20とかIMF年次総会とかがありましたので、黒田総裁が色々とお話をしていたのでネタをまとめて成敗でござるの巻。

・もう「期待インフレ率を引き上げる」以外の説明が無いですな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131010a.pdf
デフレ克服― 我々の挑戦 ―
Council on Foreign Relations主催の会合(ニューヨーク)における黒田総裁講演の邦訳

ということでお話をしているですが、今回(次に引用するのもそうですが)の講演は要するにQQEに関する説明でありまして、まあ本当は英文を読んで引用した方がニュアンスが判るような気もするんですが、めんどいので日本語訳の方を引用。

・・・・・・・・・・ではあるのですが、これがまた先般のきさらぎ会での総裁講演のダイジェスト版みたいな内容に加えまして、先週の中曽副総裁の島根での金懇の講演(挨拶)での説明と同じような現状認識のコンボとなっておりまして、コピペかよという感じなのですよね(でもネタにするあたくし)。

まず日本のデフレ状況について。

『このように日本の「デフレ」の特徴は、緩やかだが、しつこいということです。これは、大恐慌時代の「デフレ」とは様相が大きく異なる現象です。大恐慌時代の米国でのデフレをみると、短期間に大きな物価下落が起こりました。1931年から1932年の2年間は、年間10%近い激しい物価下落に見舞われましたが、デフレが続いていたのは4年間だけでした。これに対して、日本の消費者物価は、この15年間(1998年度〜2012年度)で、4.1%下落しました。年平均にすれば下落率は0.3%にすぎません。ただし、それは非常にしつこく続くものでした。日本の若者は、生まれた時から、「物価は変わらないか、下がるもの」と思って生活してきたことになります。』

という事でして、だからこそインフレ期待を上げないといけませんという話に持って行かれているのはいつもの通りなのですが、何気にこの辺りの説明を見ていて思うのですが、つまりこの説明って(全くその通りですなあとは思いますが)実は裏を返すと「日本のデフレは大恐慌とは違う」のでありますから「大恐慌の研究をベースにした政策提言は必ずしも当てはまりませんよね」という日銀心のメッセージが含まれているのではないでしょうか(ニヤニヤ)というのに今頃になって気が付いたのは鈍いですかそうですか(^^)。

で、まあ途中を端折ってその結論は「インフレ期待を変える」になるのでした。

『これまで日本銀行は、ゼロ金利政策、量的緩和政策、(最近の用語で言うところの)フォーワードガイダンスといった非伝統的な政策を世界の中央銀行に先駆けて採用するなど、様々な取り組みを行ってきました。しかし、それらは、景気の下支えには機能しても、人々の根強いデフレ予想を変えることはできませんでした。したがって、今回のデフレ脱却にあたっての最大の課題は、人々の予想インフレ率を引上げることにあると言えます。』

でもってその「期待を変える」には何をすれば良いかというと・・・・・・・・・・

『日本銀行は4月に「量的・質的金融緩和」を導入しました。この新たな政策では、インフレ予想に直接働きかけ、グローバルスタンダードである2%まで引き上げることを狙っています。問題はどうやって実現するかです。』

ほうほう。

『我々が至った結論は、@2%の「物価安定の目標」を早期に安定的に実現するという明確な約束を示した上で、Aその決意を裏打ちするため、従来とは明らかに一線を画する、大規模な金融緩和を行うということです。』

で、それがどう作用するとインフレ期待が上昇するのでせうか。

『具体的には、日本銀行が供給するマネタリーベースを2年間で2倍にすると宣言しました。この「量的・質的金融緩和」により、2年後の日本のマネタリーベースは270兆円(2.78兆ドル)となり、対GDP比率は56%に達することになります。ちなみに、現在の米国のマネタリーベースは329兆円(3.39兆ドル)、GDPの20%です。』

という事で凄い数字が出ているのですが、良く良く考えますと足元のMBが180兆円以上になっております訳で、既にGDPの37%以上という水準になっていますし、大体からして2倍にして56%だったら2倍にする前に28%なのですからその時点で米国MBのGDP比率を持ってきてどうのこうの言う時点で定量的な意味があるのかこの議論などとツッコんではいけません。

『その際、日本銀行の資産サイドでは、長期国債の保有額を2倍にします。それに伴う巨額の買い入れは、国債市場の需給を変え、長期金利に強力な低下圧力を加えることになります。』

ということで、話がここから「実質金利の低下によって緩和効果を出す」という話になっていくのがチャーミング。説明があるのだがめんどいので割愛して結論。

『一方、日本では、予想インフレ率は2%の「物価安定の目標」と比べて低すぎる水準にありますので、これを引き上げる余地が十分にあります。この時、名目金利を予想インフレ率の上昇よりも小さめの上昇に抑制することができれば、その分だけ実質金利を低下させることができます。この実質金利の低下によって、設備投資や個人消費が刺激されることで景気が押し上げられ、実際の物価も徐々に上昇していくと期待できます。そして、実際の物価上昇はインフレ予想の上昇にもつながります。』

という定性的なお話はあるのですが、良く良く考えるとこの話って初期の部分であります所の「予想インフレ利率の引き上げ」がきちんと起きないと単に「期待が変化するから効果が出て期待が変化するんです」というトートロジーの世界にばっちり嵌ってしまうというツッコミはしてはいけません。

まあ昨日も申し上げましたが、結局気合なのは判ったが和製フリードマン大先生におかれましては定量的にMBこれだけ増やすと期待インフレ率が2%になるとか、別の大先生は「適切な金融政策を行えば数か月以内のデフレ脱却可能」などと吹いておられた件に関する適切なご説明を賜りたいものであると斯様思うのですが、どう見てもこの論理展開見るとその辺の話は無かった事になっているような気がしますなあ(ニヤニヤ)。

なお、この先に「現在のQQEの成果」の説明があるのですが、先週の中曽副総裁講演での説明とほぼ同じ内容(当たり前っちゃあ当たり前ですが)なので引用割愛。



http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131011a.pdf
「量的・質的金融緩和」の特徴
ブレトンウッズ委員会インターナショナルカウンシルミーティングにおける発言の邦訳

よりダイジェスト版で本文3ページです(^^)。まあ端的に言って上のURLでの講演をよりシンプルにしたものなのですが、シンプルになっているだけに更に分かりやすい(^^)。

・つまり特徴は「インフレ期待を引上げて実質金利を下げる」だがその経路は結局曖昧模糊

『「量的・質的金融緩和」の特徴』という小見出しの所の結論が極めてシンプル。

『この政策の核となるメカニズムは、予想物価上昇率を上昇させることと、それとの対比で長期金利を抑制することです。』

しかしまあ導入当初の「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな波及経路の表からすると随分と話がシンプルになったのは説明という意味では良い傾向のような気もします。

『中央銀行の明確なコミットメントと次元の異なる大規模な金融緩和のもとで、予想物価上昇率を上昇させる一方で、巨額の国債買入れによって長期金利の上昇を抑制します。』

長期金利上昇の抑制は判るのだが、予想物価上昇率が上昇するメカニズムまだー(・∀・ )っ/凵⌒☆

『その結果、実質金利は低下し、経済に刺激効果をもたらします。さらに、これらの結果として現実の物価上昇率が上昇することは、予想物価上昇率の上昇につながります。』

ということで、まあ非常に好意的に捉えれば、従来岩石のように動かなかったインフレ期待に対してショックを与えることによってその岩石を一旦動く事が出来れば上手く動き出すでしょうってな話をしているのですが、問題はその岩石をショックによって動かせるのか、さらに動かしたにしても望ましい方向にちゃんと動かせるのかというのがさっぱりワカランチ会長で、そのショックの与え方で下手を打つと取り返しがつかなくなるリスクがあるんじゃネーノとまあそんな話ではないかと思いますが、しかし先ほどの引用した講演よりもこちらの方が端的で分かりやすいですかそうですか。


・ということで現状認識の部分ですけどね

こちらはシンプルなので折角だから引用しますが、昨日ネタにした中曽副総裁講演における「QQEの今までの所の効果」説明のダイジェスト版にもなっていて分かりやすいのではないでしょうかと思ったので引用という感じっす。

『「量的・質的金融緩和」の進捗状況』という小見出し部分を茶々を入れずに全部引用しますね。

『「量的・質的金融緩和」の導入から、6か月が経過しましたが、こうしたメカニズムは、着実に働いています。日本経済は、2期連続で年率約4%のGDP成長率を達成し、生鮮食品を除く消費者物価も14か月振りにプラスに転じた後、+0.8%まで上昇しています。経済・物価見通しは改善し、株価は年初から30%以上上昇しました。』

『これらは長期金利の上昇要因となっているはずですが、日本の長期金利は年初の0.8%程度から0.6%台へと低下しています。5月末以降、米国など多くの国の長期金利が軒並み大幅に上昇している中でも、日本の長期金利は低下しています。』

『BEIや各種のアンケートから判断される予想物価上昇率も上昇しています。』

『このように、「量的・質的金融緩和」は、企図したとおりの政策効果が現れてきており、日本経済はデフレからの脱却に向けて着実に歩を進めています。』

どう見てもドヤ顔です本当にありがとうございました。


・規制に関する講演はまあ一般的な話だがイイハナシダナーなのでそこを紹介しますね

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131013a.pdf
国際金融協会 年次総会における挨拶の邦訳

『4.より良い規制・監督を目指して』の小見出しの所が中々良いですので引用しますね。

『規制・監督当局は、批判は真摯に受け止めなければなりませんが、これまでの成果を放棄する必要はありません。』

『銀行は、毎日さまざまなリスクに直面しています。常識的に考えて、銀行はこうしたリスクをできる限り正確に測らなければなりません。その延長で、リスクが顕現化し、損失が発生した際にそれを吸収できるだけの自己資本を保有しなければならないと考えるのは自然なことです。その意味で、規制・監督当局は、リスク感応度という考え方を信頼し続けてよいと思います。』

『世界の金融市場がますます一体化し、そうした市場で活動する金融機関におけるリスク管理手法が次第に揃ってくるとみられる中、リスク・ベースの自己資本規制は、とても常識的な体系であるだけでなく、ある程度の国際的な整合性を達成できるおそらく唯一の現実的な枠組みです。したがって、自分としては、リスク・ベースの自己資本規制が引き続き国際的な金融規制の中核にあるべきだと考えています。』

うむ。

『もちろん、留意しなければならない点もあります。たとえば、リスク・ベースの自己資本規制にあまりにも多くの機能を果たさせようという誘惑を断ち切らなければなりません。リスクの計測は常に近似であり、一定のバラつきが生じざるを得ません。規制の信頼性を維持するためにリスク計測のバラつきをできるだけ小さくする努力を続けなければならないとしても、自己資本比率のコンマ以下の違いが大きな意味を有するかのような議論も避けなければなりません。すなわち、匙加減を間違えてはならないということです。』

日本海溝よりも深く同意であります。

#ということで総裁講演関連ネタの成敗終了ですかね(汗)

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2013/10/15

○今更なのですがきさらぎ会の総裁講演ネタ

いやまあいつもの話をしているんですけど、結構この総裁講演ネタが後日になって時間軸強化がどうのこうの的な話題になってみたり、この話とは別件ですけれども、先日は償還乗換に関する話題が出てみたりと、何とかストの皆さんがジャパンの金融政策関連ネタが無くて干上がっているので飛びつくという大変に香ばしい展開になっているんですねえっつー話ですし、さらにその話題で出てくるコメントがお前さん顔洗って出直した方が良いんじゃないのというのが続出している所がアレで、何とかストの看板でそのような認識を示して大丈夫ですかというのが散見されるのが落涙を禁じ得ない所ですがそれは兎も角として。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130920a1.pdf
デフレからの脱却と「量的・質的金融緩和」
── きさらぎ会における講演 ──

9月20日の講演ネタを今さら投下なのですが、講演の前半は経済情勢に関するやたら強気なお話でして、まあいつもの話なのでこちらは割愛しまして、後半は異次元緩和に関する説明の巻。

でですね、あたくし(やあたくしのお友達)などが拝読いたしますと内容的には説明が長いけど新味はないですよねえとなるのですが、どうも異次元緩和のロジックを理解していない、というか俺様解釈をしておられる方々に向けては新鮮だったりしたようで、まあつまりこのきさらぎ会講演は「お前らちゃんとわかってるのかオラァ」という為の物件だったという風に理解すると腑に落ちるというものでありまする。


・「デフレは、それが長く続くことにより、克服するのが一層難しい課題となっていきました」

前半の経済に関する部分もツッコミどころはあるのですが金融政策に関する話をネタにするとしまして、まずは『3.15 年近く続いたデフレとその対応策』という小見出しの部分がフィリップスカーブの上方シフトという話になります。本文5ページ(PDFファイルの6枚目)になります。

『次に、本日のメインのテーマである、15 年近く続いたデフレに話を進めます。ここでは、2つの側面から日本のデフレを分析します。ひとつは、海外と比較して日本の抱えている問題がどう違うのか、ということです。もうひとつは、この15 年を振り返り、日本の経済と物価がどのように推移してきたかということです。このように、海外との比較や歴史的な視点から、日本のデフレの問題を捉えることで、そこから脱却するための対応策、すなわち、現在日本銀行が取り組んでいる「量的・質的金融緩和」をより良く理解していただければと思います。』

ということで、異次元緩和のロジック構築において「適正な水準となる物価安定目標の達成」という異次元緩和が目指している看板について、具体的政策がどうのこうのの前に「デフレ脱却」に関してのお話と、その為に必要になるフィリップスカーブの上方シフトに関するお話をしておりますの。

『(1)海外の課題と日本の課題』

『まず、日本のデフレの問題を、海外との比較という視点から、みていきたいと思います。』

でまあ海外の場合はインフレ期待がアンカーされている中で失業などが高止まりして景気が弱いというような話をしておりまして、その結論は・・・・・・・

『こうした経済・物価情勢を踏まえると、欧州や米国では、現在、実体経済への刺激を続ける、あるいは、さらに強化することが最優先の課題だということができます。これはオーソドックスな課題にみえますが、中央銀行の立場からみれば、やや難しい舵取りを迫られています。』

ほほう。

『すなわち、リーマン・ショック以降の経済の落ち込みに対応するための財政出動の結果、財政面から経済を一段と刺激する余地が限られてきており、金融政策面からの対応が強く期待されています。一方で、金融緩和の結果、物価上昇率がインフレ目標を上回る状態が続けば、物価安定目標自体に対する人々の信頼が失われてしまう、というリスクがあります。』

ふむ。

『このように、欧米の中央銀行は、予想インフレ率のアンカーが外れて将来インフレを招いてしまうリスクを避けながら、どうやって金融政策面から実体経済を刺激するか、という課題に取り組んでいるということができます。例えば、米国や英国では、失業率がある程度低下するまで金融緩和を続けると宣言しつつ、物価の見通しが目標から大きく外れないことを条件にしています。これは、そうしたトレードオフの中でバランスを取ろうとしていることの現れです。』

なるほど。で以下日本の話。

『これに対して、日本は別の種類のチャレンジを抱えています。欧米では人々のインフレ予想は中央銀行の目標とする上昇率の近傍にアンカーされているのに対して、日本では、15 年に及ぶデフレの中で、人々に「物価は上がらない」という見方が定着してしまっています。かなり低いところでアンカーされてしまっているということです。この「錨」を断ち切って、物価安定目標の2%に向けて引き上げ、改めてそこでアンカーしなければなりません。どうやって実現するか。次にお話しする1990 年代後半以降の経済・物価面の変化を振り返る中で、明らかにしていきたいと思います。』

ということで『1990 年代後半以降の経済・物価情勢とその影響』という所で更に詳しく話が続きます。

『振り返ってみると、日本経済には、1990 年代後半以降、不良債権問題、アジア通貨危機、リーマン・ショック、東日本大震災など、強い下押し圧力がかかり続けました。また、新興国からの安値輸入品の流入、規制緩和に伴い競争が激化する中での企業の低価格戦略、非正規雇用による賃金水準の引き下げといった、物価に対する直接的な下押し要因も数多く存在しました。』

ほいほい。

『これに対して、日本銀行は、ゼロ金利政策、量的緩和政策、さらには包括緩和政策など、様々な金融緩和策を実施してきました。こうした実体経済を刺激する政策によって、景気が回復に向かう局面は何度かみられました。しかしながら、原油価格高騰の影響が出た一時期を除けば、物価の下落傾向に歯止めをかけることはできませんでした。』

ですなあ。

『逆に、デフレが長期化した結果、人々に「デフレ期待」を定着させ、デフレからの脱却を一段と難しくするという悪循環が発生してしまいました。いったん「物価は下がる」あるいは「上がらない」ことを前提に行動することが家計や企業に定着してしまうと、それを変えるのは、我々の日常生活に照らしてみてもそうですが、容易なことではありません。このように、デフレは、それが長く続くことにより、克服するのが一層難しい課題となっていきました。』

ということでここがまず最初のポイントになるのですが、「デフレは、それが長く続くことにより、克服するのが一層難しい課題となっていきました」ということが異次元緩和の(本当にそれが出来るのかよという話はさて置きまして^^)ポイントの一つである「2年で2%」のバックボーン(なのか後付理屈なのかは知らんけど^^)となっている訳ですよ。

つまりですね、「デフレは、それが長く続くことにより、克服するのが一層難しい課題となっていきました」という説明の裏を返しますと、デフレを脱却して物価安定目標に持って行く為の時間軸を中長期で置くというのは(いやまあその方が現実的で漸進的なアプローチで良いんじゃネーノとかいう議論はありますが異次元緩和の趣旨を鑑みて考えた場合には)「期待の変化」をさせるのに力不足であるという話でもありまして、だからこそ「2年で2%」を打ち出しているという話でもある、ということをここの部分では示している(この後フィリップスカーブの説明がありますけれども)訳ですよ。

ですから、先日来一部のメディアで「2年よりも2%を重視??」とか「ということは時間軸を強化ですね!!」とかこの講演の後半での安定的な物価目標2%の定義を説明した部分を読んだ人たちが妙に反応していたという事が話題になってアタクシなんぞもリアルお問い合わせが知人から来たりしましたが(^^)、この部分をちゃんと読みますと異次元緩和(段々異次元緩和とタイプするのが面倒になってきたのでQQEにしますわ)の打ち出す「2年で2%」はどちらも重要な概念であって、従ってQQEの時間軸が長期化されるというのはQQEの看板を掲げている以上は出来ない相談であるという結果になる筈なのですよ。

QQEによって発生している異次元緩和は異次元だからこそ期待のアンカーを変化させることによって効果が出る(かどうかは知らんが日銀としてはそういう説明をしている)のであって、それが異次元でなくなった瞬間に期待に対する効果がカボチャの馬車となってしまうという事ですが、その辺のロジックを意外に理解していない、というか俺様説明している何とかストの人が結構いるのねとビックリするやら呆れるやらというのがまあ例の時間軸ネタの感想でありました。


・フィリップスカーブの上方シフトが必要ですという話

という話はともかくとして、この先がフィリップスカーブの上方シフトの話だわ。

『フィリップス曲線の変化』という小見出しから。

『こうした変化を、やや専門的になりますが、「フィリップス曲線」という概念を用いて説明したいと思います(図表8)。フィリップス曲線は、需給ギャップと物価上昇率の関係を示したものです。簡単に言えば、「景気が良く、労働市場や財・サービス市場で需給が引き締まれば、物価は上がる」という関係を表したものです。』

図表はURL先を見てちょ。

『ここでは、縦軸が物価上昇率、横軸が需給ギャップを示しており、景気が良くなって需給ギャップが右方向に進めば、物価上昇率が高まって上方向に進むという、「右肩上がり」の姿が想定されています。そこで、この15 年間にフィリップス曲線がどう変化したかをみてみましょう。』

キタコレ。

『青い線は1990 年代前半までのデータに基づくフィリップス曲線、赤い線は1990 年代後半以降のデータに基づくフィリップス曲線を示しています。これをみると、全体に下方にシフトしていることがわかります。同じ程度の景気の良さであれば、以前より物価上昇率は低いということです。』

ですなあ。

『例えば、需給ギャップがゼロ%、すなわち、「景気が良くも悪くもない平均的な水準」の時、消費者物価の前年比は、青い線では+1.1%と計算されるのに対し、赤い線に基づくと+0.3%となり、大きく低下しています。』

これは図表を見た方が良いと思いますのでまあ図表を確認してください。なおフィリップスカーブに関しては展望レポートなどでも記述があるのでご覧あれ。


・フィリップスカーブの上方シフトについて:目指す姿について

でまあ次の部分が一部の方々の間で話題になった挙句にヴェリタスとかブルームバーグニュース辺りで記事になって(ヴェリタスが先でしたっけ?)あたくしもリアル質問されてナンジャソラと反応して駄文のネタにした切っ掛けの部分です。

『このような変化が起こった結果、現在のフィリップス曲線の形状を前提とすると、2%の物価安定目標を達成するためには、6%程度という大幅なプラスの需給ギャップが必要という計算になります。これは1980 年代末から1990 年初にかけてのバブル期のピークの水準です。もちろん、私たちはこうした姿を目指しているわけではありません。なぜなら、景気が「ものすごく良い」時に2%を達成しても、景気の波の中でまた物価上昇率は下がってしまうからです。したがって、安定的に2%の物価上昇率を実現するためには、景気が普通の状態の時に2%になるような経済・物価の関係を作る必要があります。』

ということで、話題になったのはこの部分の最後の文章になりますが、こうやって文章の流れを見ますと極めて当然の話をしているだけですよね、というのが判ると思います。

そもそも「2%の物価安定目標」というのは物価「安定」目標であって、ワンタイムで行けば良いというものではない訳ですからして、それであれば当然ながら「需給ギャップがゼロ、つまり景気が普通の状態の時に2%の物価水準が達成できる」という状態が物価「安定」目標である訳でして、そもそもこの定義自体QQEをローンチした時というよりはその前の物価安定の目標を作った時点からも自明以外の何物でもないと思うのですよね。

それが急に大騒ぎになっているというのは、まあおまいら日銀のロジックちゃんと研究してねえだろというのもあるのですが、ちょっと助け船を出してみると、そもそもフィリップスカーブをどうやって上方シフトさせるかという具体的な手段やその手段による効果のルートとかが全然確立されていないなかで、(先ほどの引用部分にあった数値を使えば)フィリップスカーブの水準を足元から物価水準ベースで1.5%以上も上方シフトさせ、1990年までの水準をも上回らせようという無茶振りをそもそも2年で出来る訳ネーダロと普通に考えると結論が付けられますので、ではそのQQEで出来る「現実的な線」ってナンジャラホイとなった場合に、1990年以前までの平均的な水準程度までフィリップスカーブを上方シフトして需給ギャップ2%程度(確かそんな感じですよ)で物価水準2%達成ですなあとなると思うのですよ。

でまあその「まだ現実に近い話」を前提にして考えて異次元緩和関連提灯レポートとかを書きますと、頭の中にそちらの方が入っているので、いやあのそんなフィリップスカーブの上方シフトは無理だろ常識的に考えてとなりまして、じゃあ時間軸が伸びるしか無いじゃんという考察になるので、その結果として時間軸がどうのこうの的な「話題」になったんでしょうなあというのは分かります。

つーことで、本来こうでしょという話を出されて市場の一部がビビるというのも、そもそもQQEが異次元過ぎて、市場の皆様におかれましてもその異次元にマインドセットが付いていっていないとゆー事を示す訳ですな、うんうん。

ではその続き。

『こう考えると、従来のように「景気を良くして物価上昇率を上げる」というアプローチだけでは、物価安定目標である2%を持続的に達成することはできないということがわかります。ここに、フィリップス曲線を上方にシフトさせるような政策が必要になるということです。または、同じことですが、企業や家計の予想物価上昇率を上げること、すなわち、人々の「物価は上がらない」という考え方を転換する政策が必要となるのです。先ほどの「錨」の喩えでいえば、現在の「錨」を断ち切り、2%の新しい「錨」まで持っていく政策です。』

このために「2年で2%」というのを打ち出して期待のシフトを図るという事になるのです。


・以下の部分は時間も無いので引用大会である

というのがQQEの基本的なバックボーンで、結局の所「気合を持って期待を変化させる」というのが政策の肝であるという大和魂金融政策であるという話になるのですが、具体的にこのような事をしております云々の部分をざっくり引用しますね。

『(3)課題の克服に向けて』という小見出しから。

『以上申し上げたように、わが国では、15 年近くデフレが継続したことにより、フィリップス曲線の下方シフトが進行しました。言い換えれば、「物価が上がりにくい体質」が染み付いてしまったわけです。どうやってここから抜け出すかを、次にご説明します。』

以下延々と説明があるのですが、そもそもQQEを実行することによって何故フィリップス曲線の上方シフトに繋がるような「期待の変化」が起こるのかという具体的な政策効果波及ルートの話は残念ながら1ミリも無く(無いのは当たり前ですが)、まあ要するにQQEのキモは「大和魂」であるというのがひじょーに良く判りますので、まあ長くなりますが鑑賞してケロケロ。

『もちろん、金融緩和により経済を刺激し、需給ギャップを縮小させるという伝統的な経路は、引き続き重要です。現在、日本経済にはなおマイナスの需給ギャップが残っており、これをプラスに持っていかなければなりません。また、その過程で、実際に物価上昇率が高まることを経験することは、人々の予想インフレ率を高めることに役立ちます。』

『しかし、わが国では、「デフレ期待」が定着している、すなわち、フィリップス曲線の形状が変化していることを踏まえれば、それだけではデフレ脱却には辿りつき難いのも事実です。したがって、日本銀行としては、これまでの政策からさらに大きく踏み込んで、人々の期待に直接働きかけて「デフレ期待」を払拭すること、すなわち、人々の予想インフレ率を引き上げるような政策に踏み込むことにより、フィリップス曲線そのものを上方にシフトさせることが必要と考えました。』

問題は何で以下の政策で期待が高まるのかですけどね。

『また、デフレが続くこと自体がそこからの脱却を一層難しくすることを勘案すれば、できるだけ早くこれを実行に移す必要があると判断しました。「量的・質的金融緩和」は、まさにそれを狙って導入した政策です(図表9)。』

先程の繰り返しになりますが、ここにありますように「2年」も重要でありまして、時間軸が伸びる云々というのはちょっとズレた解釈になるというのが判ると思います。


次の小見出しは『強く明確なコミットメントと量・質ともに次元の違う金融緩和』です。

『「量的・質的金融緩和」には、人々の期待をできるだけ早期に抜本的に転換するという観点から、2つの要素を盛り込んでいます。』

ほうほうそれで?

『第1に、企業や家計に定着した「デフレ期待」を払拭するため、必ずデフレから脱却するという日本銀行の意志を、強く明確なコミットメントで示すことです。そこで、「消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と明確に表明し、目標達成までの期限を「2年程度」とはっきり区切りました。』

『第2に、15 年近くもデフレが継続していることを考えると、どんなに強いコミットメントを示しても、それを裏打ちするものがなければ、人々に日本銀行の強い意志を信じてもらうことはできません。とくに、「できるだけ早期に」という観点からは、これまでの延長線上ではないことを、皆さんに感じていただけるような、大胆な施策を講じる必要があります。そこで、金融市場調節の目標を、これまでの無担保コールレート・オーバーナイト物という「金利」から、マネタリーベースという「量」に変更して、これを「2年間で2倍」に増加させることにしました。また、これを実現するため、日本銀行が保有する長期国債・ETFなどの残高も「2年間で2倍」に拡大しました。さらに、長期国債買入れの平均残存期間も「2倍以上」に延長することとしました。このように、これまでとは「量」の面でも「質」の面でも次元が違う金融緩和を決定しました。』

結局どちらも「気合」あるいは「大和魂」の世界であるという事ですね!!!!!!

で、最後に『金融緩和の継続期間』というのがありまして、まあ確かに前後読まないでここだけ読むと継続期間が延びますねとか思ってしまうのかも知れませんが、ちゃんと最初から最後まで読んでから反応した方が良いと思います。

『これらに加えて、先行きの政策スタンスについても、日本銀行は、「2%を安定的に持続するために必要な時点まで継続する」と明確に示しています。日本銀行のコミットメントは、2%の物価上昇率をできるだけ早期に実現することですが、これは、一時的にでも2%を達成すればよいということではありません。「2%を安定的に持続する」ことが重要なのです。』

『そのためには、現実の物価上昇率だけでなく、中長期的な予想インフレ率も2%程度になることが必要です。実際の物価上昇率が平均的に2%程度で変動し、「物価がだいたい2%くらい上がる」ことを前提に企業や家計が行動するようになれば、中長期的にも物価の安定につながると考えられます。』

『それは、先ほどの「錨」の喩えでいえば、2%の「錨」をしっかりと人々の気持ちに定着させ、実際のインフレ率がその周辺で動くようにするということです。また、フィリップス曲線の概念で説明すれば、経済が平均的な状態にある時、すなわち、需給ギャップがゼロの状態にある時に、2%の物価上昇率が実現されることを意味します。「2%を安定的に持続する」とは、こうした意味です。』

『日本銀行は、物価の基調的な動きを見極めながら、これを実現するのに必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を続けます。』

でまあそもそもそんなフィリップスカーブの上方シフトは無理ゲーだろという認識を前提に置くと、ここの下りを読んだだけだと時間軸が伸びるじゃねえかという反応になるのかも知れませんが、そもそも日銀の現在のQQEのバックボーン的には「これを2年間で達成させるという気合が重要」という事でありますので、つまりこの黒田さんの講演は別に従来のQQEのスタンスの変化を示すものではなく、むしろQQEが伸びないとダメだよねーとか言う向きに対して気合と大和魂を示したものである、と解釈するのが至当ではないかと思うのですが如何でしょうか?????

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2013/10/08

○総裁会見はまあ予想通りに自信満々モード

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1310a.pdf

・前向きの循環メカニズムの確信キターーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーー

冒頭のいつもの説明を見て「あれ?」と思って9月の会見を確認するこのアタクシ。

『わが国の景気ですが、企業・家計の両部門で所得から支出へという前向きな循環メカニズムが働いています。景気の現状判断としては、先月と同様、「緩やかに回復している」としました。』

>前向きな循環メカニズムが働いています
>前向きな循環メカニズムが働いています
>前向きな循環メカニズムが働いています
>前向きな循環メカニズムが働いています
>前向きな循環メカニズムが働いています

で、念のため9月の会見での冒頭説明の当該部分を確認するとこの通り。

『わが国の景気ですが、企業部門において収益の改善が設備投資にプラスに作用しており、家計部門においても雇用・所得環境の改善の動きが個人消費を支える要因となるなど、企業・家計の両部門で所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第にしっかりと働いてきています。このような情勢を踏まえ、景気の総括判断について、先月の「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」へと前進させました。』(9月定例会見の総裁発言から)

ということで、1か月にしてもう前向きな循環メカニズムが「働いています」という言い切り型になっている訳で、何という自信満々モードという所ですが、まあこういう現状認識である以上、この先は延々と自信満々モードになる訳でして、確かにまあ追加緩和に関する質問などではあまり頭ごなしに否定みたいな発言をしないのがどこぞの麿と違う所ではあるのですが、冒頭の時点でこれでして、つまりは声明文での全体的な景気認識部分には変化はないものの、今回のこの表現を見るとどう見ても景気現状認識の引き上げ&自信満々です本当にカムサハムニダという風情でありまして、従いまして追加緩和なにそれおいしいのという所でしょうロジカルに考えて、と思いますがね。


・物価の見通しもこの通り

でまあ最初の質疑ですけど。

『(問) 本日で、4 月4 日の異次元緩和からちょうど半年になります。その効果を総裁はどのように評価しておられるでしょうか。また、「2 年程度で2%」という物価安定の達成の道筋は見えたとお考えでしょうか。』

『(答) 先程申し上げた通り、足許のわが国の経済をみると、「量的・質的金融緩和」は、その効果を着実に発揮してきていると考えています。まず、金融市場をみると、株価が上昇した一方で、長期金利は非常に安定的に推移しています。そしてこの間、予想物価上昇率は全体として上昇していますので、実質金利は低下しており、民間需要を刺激していると思います。』

生活意識アンケートによりますと実質金利の低下は民間需要の刺激になっていないような気もしますがまあいいですねそうですね。

『そうしたこともあって、実体経済面では、先程申し上げたように、企業でも家計でも所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第にしっかりと働いてきていると思います。こうしたもとで、わが国経済は、今後とも緩やかな回復を続けていくと思っています。』

所得の前に支出の方が出ている気がしますけどね!!

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の対前年比が6月にプラスになり、8 月は+0.8%まできているわけですが、これも、今後さらに上昇率が高まっていくとみています。金融市場、実体経済あるいは物価の面でみても、「量的・質的金融緩和」が着実に効果を発揮してきており、2%の「物価安定の目標」の達成に向けて想定される道筋を、着実に進んでいると思っています。』

とまあこういう現状認識の中でそもそも追加緩和措置があると思う方が無理があるのですが、どうも追加緩和に関する前向きな姿勢みたいなのが欲しいみたいな(主に為替方面ですが)何とかストの見解が多かったりするのも何だかなあという感じはします。


・追加のツッコミ

この後にオモシロ質疑があるのですが、それは後ほどということで今の質疑の追加ツッコミ。

『(問) 2 点お伺いします。総裁は、今のご発言の中で、実質金利の低下が民需を刺激しているというお話をなさったのですが、どういった分野を刺激しているとお考えでしょうか。それからもう1 点、物価が、今+0.8%まできているのですが、これが、緩和効果でどの程度押し上げられているとみていらっしゃるのか──なかなか定量的にみるのは難しいと思うのですが──、お伺いします。』

総裁会見なんですが、回を追うごとに段々黒田さんパターンに慣れて来たのか、聞く方のツッコミ方が「いやあの自信満々は判ったけど具体的にはどうよ」という感じになって来ていて実に楽しいですが、この調子で記者の皆様が金融経済懇談会で木久扇師匠にツッコミを入れたらもっと楽しい光景が見られそうなので商工会議所や大学で講演とかするだけじゃなくて金懇をはよ実施してくらはい。

『(答) 実質金利が一番典型的に効くのは投資、それも長期の投資というのが経済学における一般的な理解だと思います。そういう意味では、住宅投資、それから設備投資でも、特に期間の長いものには効いていると思います。また消費にもある程度効果があるとも経済学では言われています。』

ほほう。

『つまり、実質金利は消費と貯蓄の選択に影響するので、実質金利がどんどん下がっていくと──これは投資ほど明確に出てくるのは難しいとは思いますが──、貯蓄よりも消費の方にシフトすることが言われています。従って、何らかの形で、住宅投資、設備投資などを中心に民需に影響していると思います。』

ほうほう(棒)。

『なお、「量的・質的金融緩和」は、例えば、株価などの資産価格の上昇という資産効果を通じて、より間接的な形で家計の消費などに影響することは、かなりはっきりと言われています。』

資産持ってない人ェ・・・・・・・・

『消費者物価の動きについては、先程申し上げたように、6 月にプラスになり、徐々にプラス幅を拡大しており、基本的に、こうした傾向は続いていくと思います。』

ということで物価も強気。

『ただ、毎月毎月の数字は色々な要素で影響されますので、一本調子に上昇率が高まっていくと決めつけることはできないと思います。基本的には、足許の上昇の状況をみると、確かに、エネルギー価格や電力料金の上昇が1 つの要因になっていることは事実ですが、他方、食品その他の様々な消費財価格の下落幅も徐々に縮小してきています。現に、食料・エネルギーを除く消費者物価指数でみても、マイナス幅が徐々に縮小してきています。』

ふむ。

『そういう意味で、全般的に需給が次第にタイトになる中で、価格転嫁が進みつつあり、幅広い品目で物価を巡る環境の改善が起こっています。』

どさくさに紛れてしらっと需給ギャップの改善で価格転嫁という話になっているのだが、正直申し上げまして一人の一般消費者として見た場合、最近起きているのは「値札は変えずに量や質を調整して実質値上げ」というプレイでありまして(弁当屋とかスーパーの惣菜とか刺身盛りとか見たらそうとしか思えんのですけどどうでしょ)、需給ギャップの改善で価格転嫁というよりは単に上流のコストプッシュに収益的に耐えられなくなった結果下流で価格転嫁が進んでいるように見えるのですが、気のせいですかそうですか。

『そうした傾向は、今後とも続いていくし、さらに強まっていくだろうと思っています。』

まあそういう事で、ホンマカイナというツッコミ所は多々ございますが、何はともあれ自信満々モードである事には変わりありません、つーかますます自信満々に拍車が掛かっている次第。


・フィリップスカーブの上方シフトに関して

こんな質問があったがそういえばきさらぎ会での総裁講演をネタにするのを忘れていましたが、正直言ってきさらぎ会の講演ってもういつもの話そのまんまでおもんないのでネタにするのをすっかり忘れてしまった次第という所です。

質問が長いが論点が整理されているので敢えて質問を長々引用します。

『(問) 日銀は、現在の「量的・質的金融緩和」について、本日の公表文にも出ていますが、「2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで」続けられるとおっしゃっています。この「安定的な持続」という言葉の意味について、先般、9 月20 日のご講演の中で、より詳しく説明されていますが、要するに、需給ギャップがゼロの時に物価上昇率2%を実現するというのがそのイメージであるとご説明され、非常に興味深く受け止めましたが、この点についてお伺いします。』

つまりこの先にもありますが、安定的に2%の物価上昇をするには、そもそも論としてフィリップスカーブが上方シフトしないと無理という話ですな。

『ご講演の時に用意された図表をみると、日本経済がまだ元気だった1980 年代半ばから90 年代半ばぐらいのフィリップス・カーブをみても、需給ギャップがゼロの時の物価上昇率は大体1%ぐらいにしかなっていないことを考えると、需給ギャップがゼロで2%を実現するには、相当強力なインフレ期待を作り出さないと難しいと思います。その状態を作り出すために、現在の「量的・質的金融緩和」で十分に対応できるとお考えなのか、あるいはそれ以外の何か成長戦略的なものも必要になってくると思っているのか、先程述べられた賃金の上昇といった点も考慮しつつ、お考えをお聞かせ下さい。』

でまあそのお答え。

『(答) 確かに、現状のフィリップス・カーブを前提にすると、GDPギャップがゼロの辺りでは、物価上昇率はなかなか2%には達し難いわけで、2%前後で物価上昇率が安定するためには、平均的にみて、需給ギャップがゼロぐらいのところで、2%の物価上昇率になるような位置に、フィリップス・カーブが徐々にシフトしていかなくてはいけないことはその通りと思っています。』

ですな。

『しかし、一気にそういう状況が実現するということではありません。期待についても、実際に物価がまだ下落している状況で、一気に2%の物価上昇期待が生まれることはなかなかないわけです。』

で、何で2年で達成するの??

『実際、物価上昇率が足許で0.5%あるいは1.0%、1.5%と、2%に向けて上昇していく中で、期待も上昇していくと思いますし、そうなれば、まさに――英語で言うとバイ・デフィニション(定義により)で――GDPギャップがゼロ近傍であっても2%程度の物価上昇率になる。』

バイデフィニションキタコレ。

『それがまさに、物価上昇期待が安定的に2%になるということであり、そうなると思います。ただ、それは、直ちに実現するということではなく、少なくとも、2 年程度を目途に今の政策を遂行していますので、その辺りで2%に近付いていくと思います。』

とりあえず物価が上昇すればインフレ期待が上昇するので2年程度でやると言ってるんだから行くんですという大和魂理論の説明にしか見えないのですが・・・・・・・・・・

『現に、展望レポートにおける政策委員見通しの中央値でも、2015 年度には2%に近いところ──これは消費税率引上げの直接的影響を除いたものですが──にいくとみている通り、私どもとしては、現在の政策で、そこへ達し得ると思っています。』

それはあんさんらがそう思っているというだけの話のような気がしますがまあいいです。

『何度も申し上げるように、現在の政策は、そういった2%の「物価安定の目標」を安定的に達成することができるまで続けます。もしかすると2 年よりも長いかもしれないし、あるいは2 年より短いかもしれませんが、いずれにせよ、2 年程度で達成することを目標に、着々と政策を実行しているわけです。そこに何か上下のリスクがあれば、当然、調整しますが、現時点では、様々なリスク要因を考慮しても、当初考えていた2%の「物価安定の目標」に向けて着実に進んでいると思っています。』

というのは判ったのですが、そもそもそのアホほど国債を買ってMBを積み上げると期待が上昇してアクチュアルの物価も上昇する、という所が「行くから行くんです」という説明しかしていないように思える訳でして(黒田さんの説明だとその辺うまーく誤魔化していますが、木久扇師匠の場合は見事にその最初の所を所与とした説明になっているのが分かりやすいので誠にアレ)、そもそもの前提がどうなのよという話をさておいて自信満々モードだから何ともという所ではありますが、まあいずれにせよ自信満々モードなので追加がどうのこうのという話にはなりにくいでしょこの説明だと、という気はします。

それから蛇足になるかも知れませんが、黒田さんの金融政策の説明(というか今の日銀の説明)って、最初に所与になっている部分がどう見ても気合理論になっている点を除くと、その先だけはしっかりロジカルに作ってある(どこぞの師匠の場合は風桶屋説明の色彩が濃いが)という感じでして、まあ追加緩和についてもそれなりにロジカルな物が無いと打ち込みはしてこないんじゃないかと思いますですよ。


・追加緩和に関しては一応サービス発言

で、その追加緩和に関して後の方の質疑になりますが。

『(問) 先程、5 兆円の経済対策で、成長率がかなりプラスになるとおっしゃいました。また、もし、消費増税が物価目標に対するリスクと認識される場合は緩和をするということをおっしゃっていましたが、経済対策によってその可能性は低くなったとお考えでしょうか。』

『(答) 「足し算」をしていくようにすればそうだとは思いますが、何度も申し上げているように、経済は生き物ですし、特に、海外のリスクは、こちらがコントロールできませんので、そういうことも踏まえ、今後とも、十分慎重に、適切に対応していきたいと思っています。』

ということで、まあ海外の問題が顕在化した場合という話ですが、追加緩和に関してまあ何かあるとすれば将来的にどう見てもおめえ2年で2%無理だろ落とし前どうつけるんだという話になる場合以外では、やはり円高進行してそれこそ直近の短観で示されている想定為替レートを大きく超えて円高が進行して輸出企業様からお怒りの声が出てきた場合という事になるでしょうなあとは思うのでありました。



・素敵な質疑を少々:師匠の件

しかもこの質問かなり前の方で出ているのですが^^;

『(問) 本日の決定会合結果とは少し離れる質問になります。投資助言会社のアブラハム・プライベートバンクに対し、証券取引等監視委員会は、金融商品取引法違反で金融庁に行政処分を勧告しました。この会社のウェブサイトには、岩田規久男副総裁が就任前の学習院大学教授時代に受けたインタビューが掲載されています。岩田副総裁は、このアブラハムという会社とどのような関係があり、今でもその関係が続いているのでしょうか。総裁は、副総裁の職務遂行にこの問題は全く影響しないとお考えでしょうか。ご説明下さい。』

ワロタ。

『(答) 副総裁就任前の案件については、コメントする立場にありません。』

さいですな。

『(問) 確認ですが、今ではもうその会社とは全く無関係だという理解でよろしいですか。』

『(答) 詳細については、必要があれば、広報にお尋ね下さい。』

(・∀・)ニヤニヤ


・素敵な質疑を少々:長期金利の件

最後の質疑になっておりますが。

『(問) 長期金利は、今また0.6%台とかなり低くなっていますが、これは「安定的」とおっしゃっています。しかし、0.8%に上がっていく段階では、「期待インフレ率が上がっていく中では、健全な上昇はあるのだ」と言っておられたと思うのですが、今、下がってきていることについては、どのように解釈しているのでしょうか。』

どう見ても古傷ほじくり返しの嫌味質問です本当にありがとうございました。

『(答) 私は、以前から、日本銀行の巨額の国債買入れは、タームプレミアムを押し下げ、イールドカーブ全体に押下げ圧力をかけていくと申し上げており、その効果が現れているものと思っています。もちろん、海外要因やその他の影響もあるとは思いますが、基本的には、巨額の国債買入れによるタームプレミアムの圧縮が効果を挙げていると思っています。』

ほうほうという所で会見ネタはこんな所で。

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