森本宜久審議委員


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森本さんの略歴(日銀Webより)

昭和19年6月25日生
昭和42年3月 東京大学法学部卒業
東京電力に入社し、電力契約部長、取締役エネルギー営業部長を歴任し、平成14年6月同社常務取締役。
平成16年6月に同社取締役副社長販売営業本部長に就任。
平成19年6月より同社取締役・電気事業連合会副会長に就任
(前職:東京電力取締役副社長、電気事業連合会副会長)
平成22年7月1日 日本銀行政策委員会審議委員に就任

平成27年6月30日に任期満了で退任しました。お疲れ様でした。

詳しくはこちら→http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_morimoto.htm/

2015/07/02「森本さんお疲れ様でした」
2015/02/12「千葉金懇での会見はさらにいい感じで弾けております」
2015/02/10「多分最後の金懇となる今回は最後の意地と男気を見せてくれました」
2014/06/25「森本審議委員会見は基本無風だが最後の質疑にワロタ」
2014/06/20「今回の金懇は基本的に執行部ベースの話がほとんど」
2014/02/24「これ以上の円安は負担とか微妙に今までの異次元緩和と違うトーンが混じる森本さんの会見」
2014/02/21「2月会合のシマウマ化を受けた森本さんの講演の説明にも白成分が混じっています」
2013/09/02「岩手での講演では執行部ベースで進行も貸出増加支援系の話を妙に強調」
2013/02/22「森本さんの会見は講演同様に想定問答集棒読みのようで誠に遺憾です」
2013/02/21「高知での講演は普通に執行部見解通り」
2012/08/09「金沢での講演&会見、講演は公式見解通りで会見はやや円高への言及が目立つ」
2012/03/26「会見もまあ同様でした」
2012/03/23「景気には微妙に弱めも追加緩和の前のめり感はない講演」
2011/06/27「会見もまあ無難です」
2011/06/24「講演は基本的に展望レポートどおり、やや景気下方リスク重視か」
2010/12/13「会見で”ターム物金利が低下”と発言しているのは如何なものかと」
2010/12/10「デビュー戦の講演は会見がちょっと・・・」
2010/07/05「就任記者会見(その2)」
2010/07/02「就任記者会見より、ちょっとハトかな?」
2010/03/16「次期審議委員に森本宜久さんが指名される見込み」

2015/07/02

○布野審議委員就任&森本審議委員お疲れ様でした

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150701b.htm/
審議委員の発令について

『布野 幸利
日本銀行政策委員会審議委員に任命する

平成27年7月1日
内閣

なお、森本宜久政策委員会審議委員は、6月30日任期満了により退任しました。』

ということで森本さんですが、就任後最初の金懇デビューで微妙発言というか言葉尻をとらえられてヘッドラインを打たれて相場を動かしてしまったのが災いして、その後対外発言が慎重になられてしまった(その間に出身母体でアレがありましたし)ので、対外的な意味では地味な方という感じで終始していましたが、昨年10月の追加緩和への反対という所で重みを発揮されましたなと。

やはり産業界で経営者をやってこられた方というのは、どこぞの変な理論だけで突っ走るというような事は当然ながら無いですし、組織運営の重みというのも考えているのでしょうから、そういう方が反対に回った昨年10月の追加緩和というのはやはり意味を良く考えるべきではないか、というような話は当時からあった(というかナンジャコラと言ってた人たちは大体指摘していましたが)と思いますし、最近の「ピーターパンのように信じれば空を飛べる(総裁)」とか「QQEの副作用は理論的にも存在しない(決定会合での誰かの発言)」とかを見ますと、そんなノリでQQEの運営をやっている執行部が謎の追加緩和とか言い出したらそら森本さんが反対するわなというのが後付で良くわかりますし、そうなってみると森本さんの反対というのは実に意味が深いものだったんだなあと分かります。

なお石田さんも反対していましてやはり企業経営の方なのでやはり同様に10月の反対というのは重いのですが、石田さんの場合は通常からちょっと独自主張があった分だけ、「普段温厚でニコニコしている人が怒り出す怖さ」みたいなのは森本さんの方にあったかなあと思うのでした(^^)。


で、布野さんの就任記者会見に関しては本日アップされますので詳しくはそちらからになりますが、せっかくですのでロイターさんの記事から少々。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0ZH3BR20150701
UPDATE 2-目標2%の達成重要、柔軟な政策対応にも言及=布野日銀審議委員
2015年 07月 1日 21:00 JST

ということで、こちらでは「柔軟な政策対応にも言及」となっていましたが、最初のヘッドラインベースではベンダーヘッドライン的には「2%の達成が重要」「2%に到達すべき」というようなのが踊っていましたので、最初のヘッドラインだけ見ている人たち(就任記者会見は会見中継のような企画はないので本人の生発言の確認は不能)は「布野さんはアクチュアルの物価2%達成に拘る人」という評価をしてしまうかも知れませんが、今日出る会見要旨を良く確認しないとヘッドライン詐欺で変な先入観をもってしまう可能性があるので注意したいところです。

でまあそれで終了しても何なので上記ロイター記事からで、以下の『』部分は上記URL先からです。

『布野委員は、日銀が現在進めている量的・質的緩和(QQE)の効果について「これまでのところ、うまく行っている」とし、日本経済は「この2年ほどで未来が見えるところまできた」と政策効果を評価した。』

まあこれは順当。

『ただ、足元の消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)の前年比上昇率はゼロ%程度で推移し、日銀が目標に掲げる2%には大きな距離がある。物価の現状について「デフレ脱却は前進しているが、まだ本格的ではない」と述べ、「2%をきっちり達成していくことが重要だ」と強調。追加緩和の必要性については「今言うのは難しい」と述べるにとどめた。』

この「2%をきっちり達成していくことが重要だ」というのがヘッドラインで強いトーンで打ち込まれていた感じがあって、そちらの印象が(ヘッドラインをリアルタイムで見ていた人には)強かったように思えます。

『そのうえで「経済は生き物で変化する」と繰り返し、物価2%の「目標を見ながら、リアリティを持って政策展開・戦略展開をやっていくのが常識」と主張。「傾向を見ながら対策をやるのが、実体経済を踏まえた取り組みの理念だ」と語った。』

ということで、実際は2%リジッドな物価目標というような話なのかというとそこもまた微妙な気がしますし、そらまあ実業界の実務家の方からしたらピーターパン理論やらMB直線一気置物理論やらというようなのに殉ずるというような事は無いでしょと思うので、常識的な見解が出てくることが大いに期待できますな(^^)。

『大規模な金融緩和を続ける中で「副作用のない薬はない」と認めながらも、「副作用は常にウオッチしていかなければならない」と注視していく姿勢を示した。』

(;∀;)イイハナシダナー

まあ置物だかジンバブエだか知らんですが(さすがにそれ以外の人間が言ったら卒倒する自信がある)QQEには理論的にも実証的にも副作用はない(キリッ)とか言い出しているという首の上に載っている物体に何らかの不具合があるのではないかというような方の存在する決定会合で、常識人の真ん中にいるように思われる布野さんがどういう感想を持ち、どういう動きをするのかというのは楽しみですな、うんうん。

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2015/02/12

○森本審議委員会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1502b.pdf

・経済に関する説明は会見の方がやや慎重なニュアンス

冒頭の説明の中で読んでてほほーと思ったのでその辺からまず。

『まず1点目ですが、足許の千葉県の景気情勢については、全体としては緩やかに回復しているとのことでした。企業活動の面では、行政の支援もあって、設備投資の動きがみられ、それに伴う資金需要もみられるとの指摘も聞かれました。また、雇用・所得面ですが、有効求人倍率が改善傾向にあるほか、冬季の賞与も前年を上回ったということでした。』

ここは景気の見方云々ではなくて、行政支援で設備投資の動きという部分がほほーと思ったりしました。

『2点目は、ただ、こうした前向きな動きが企業全般に波及しているわけではなく、地域経済を支える中小企業を中心に、依然として景気の回復を実感できない先がまだ多いということでした。』

ということで・・・・・・・

『具体的には、為替円安に伴う原材料価格の上昇により、販売価格への転嫁が難しい内需型の中小企業を中心に収益が圧迫されているとの指摘が聞かれたところです。』

円安デメリット指摘キタコレ。

『この間、今春の賃上げ交渉に向けた動きについては、企業側の方々からは、中小企業を中心に一律のベアは難しいという声も聞かれたところです。』

あいやーという所ですな、3点目もあるけど割愛しますです。


・物価は基調で判断という話は当然として師匠にイヤミキタコレ

物価に関する質問に対しての答えを途中から。

『(答)(冒頭割愛)そういう中で、物価の見通しについて大変重要なことは、今おっしゃったように基調だと思っています。この基調を規定する要因としては、以前より申し上げている通り、需給ギャップと予想物価上昇率がどうなっていくかということが大変重要だと思っています。そういう意味では、需給ギャップについては、足許長期的な平均であるゼロ近傍になっていますし、これから原油価格の低下等も経済に好影響で効いてきますので、そういう意味で潜在成長率を上回る成長を期待し、見込んでいるところです。そういう中で、需給ギャップも改善していくものとみています。』

需給ギャップについてはそういう話ですがさてインフレ予想はと言いますと・・・・・・

『それから予想物価上昇率ですが、これはどういうデータでみていくのか、本当に難しいわけです。』

置物副総裁に対する悪態ですねわかります。

『我々としては、企業、家計、それから市場、こういうところの色々なデータを総合して、判定していきたいと思っています。家計については消費動向調査とか、生活意識アンケート調査、企業については短観もあります。それからエコノミストについてはESPフォーキャスト等、色々出ていますし、市場としてはBEIがあります。』

うむ。

『そういう中で、今、BEIについては、世界的にもこの原油価格の影響のもとで、足許若干低下している状況は事実だと思います。ただ、そのほかの色々なデータをみますと、やや長い目でみると先行き上昇していくという傾向は維持されているのではないかと思っているところです。』

そもそも追加緩和に反対する立場をとっているから基調的な予想インフレについてそんなに弱い話はしませんな。

『また、賃金の動向をみても、連合で2%のベアを要求しているとか、賃上げについて前向きな動きがありますが、こういった点、また企業の価格設定行動についても変わってきていますので、そういった色々な意味で、予想物価上昇率についても先行き上がっていく状況が確認されるのではないかと思っています。』

賃金に関しては相当期待しているみたいで、この後ネタにしますが佐藤審議委員が英国で講演をしていて、そこでも思いっきり賃金上昇に対する期待が入っています。


・今追加緩和しろと言われたらやはり反対ですとな

『(問) 2点お伺いします。1点目は、追加緩和について反対されていて、その理由を公の場で言及されたのは今回が初めてだと思いますが、もし当時追加緩和の議論がなくて、足許のこの経済状況で、今初めて追加緩和の議論が金融政策決定会合で出ていたら、今でも反対していたか、それとも今ならば賛成していたか、お聞かせ下さい。(後半割愛)』

これは(^^)。

『(答) 1点目に関しては、昨年10月時点では、私自身色々議論した中で、反対票を投じたわけですが、このときの反対理由については皆さん議事要旨の中でお読みになっていると思います。私自身もこれは同じような考え方でして、当時、原油価格の下落により、先行きの物価見通しのリスクが大きくなっていたことは認識していました。ただし、そういう中で「量的・質的金融緩和」については、累積的に効果が出てきますので、所期の効果を発揮し、経済・物価の前向きの循環メカニズムは維持されているとみていました。また、原油価格の下落についても、短期的には物価の下振れ要因となりますが、やや長い目でみて経済・物価に好影響を与えると考えていました。』

正論である。

『こうした状況のもとで、拡大措置による効果はある程度限定的ではないかという一方、市場機能の低下リスクとか、実質財政ファイナンスとの見方をされるリスクが高まる可能性があるなど、副作用への懸念が大きいと考え、反対したわけです。』

ですな。

『期待される効果として、金利については、先行きも一段と低下すると見込まれるわけですが、既に歴史的な低水準にありましたし、実質金利も大幅マイナスになっていました。また、買入れの効果も先程申し上げましたが、これからも累積的に高まっていくほか、期待への働きかけという面では、導入当初に比べ、効果はかなり限定的ではないかと考えていました。』

仰せのとおり。

『こういうもとで、私としてはこれまでの方針を継続することが適当で、特にその段階での拡大措置は必要ないと考えていました。』

うむ。

『そのときはそういうことですが、今の原油とか経済の状況の中で、追加緩和の議論が出てきた場合はどうかというと、仮の質問なので非常に答え難いのですが、今申し上げましたような状況をみますと、原油価格については当時から一段と下落していますが、それ以外の状況については、私としてはそんなに大きく基調としては変わっていないと考えています。原油価格の下落により、短期的には物価は一段と下振れになると思いますが、基調は私自身は変わっていないのではないかと判断しています。それから、原油価格の下落についても、日本はご承知の通り原油輸入国ですから、交易条件が非常に改善されるわけです。そういう意味で、景気についても好条件になるというのが先程申し上げたようなことだと思います。』

なるほど。

『そういう意味では、仮にあの時ではなくて、今提案されたらということについては、多分色々条件を比較してみると、判断についてはあまり変わらなかったのではないかと思います。厳密に申し上げれば、当時やらなければデフレマインドの転換が遅れるのではないか、その為の予防的な措置と言っていますが、それがどういう形で働いたかについては検証が難しい面があります。私としてはあまり基調の動きとして大きく変わっていないのではないかと思っています。』

>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります
>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります
>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります
>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります
>それ(追加緩和)がどういう形で(期待インフレに)働いたかについては検証が難しい面があります

(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー
(;∀;)イイハナシダナー

しらっとこの前の追加緩和について「それがどういう形で働いたかについては検証が難しい面があります」と砲撃を行っているのが実にすばらしいとしか申し上げようがありません。この会見で一番強烈な所ですな。



・円安デメリットに関して

『(問) 2つお聞きします。1つは、挨拶要旨の6ページ〜7ページにかけて「消費者マインドについては、足許小幅の改善はみられますが、慎重さが残る点はやや気掛かりです。急速な円安もあり」と、以下一部を省きますが、「家計には負担感がより強く意識されているとみられ、今後の動向を注視したい」と述べています。この円安が消費マインドをやや慎重にさせているのではないかと推測できるようなご発言ですが、昨年10月の追加緩和によって10円内外の大幅な円安がもたらされたと多くの人がみているわけですが、10月の追加緩和は、結果としてはこういった消費者マインドを悪化させる要因になったのではないかとお考えなのかどうか、それがまず第1点です。(後半割愛)』

これはワロタという質問ですな。

『(答) まず、1点目の昨年10月時点で、追加緩和により結果として円安方向に振れたということで、それが消費者マインドに影響したとみているのかどうかについて、為替水準そのものについては様々な要因によって左右されますので、水準についてはコメントを控えたいと思いますが、いずれにしても一般論として、ご承知の通り、円安については、輸出企業にとっては輸出の増加ということで好影響がありますし、グローバルに展開する企業は企業収益という面でもプラスです。また、資産効果という面でもプラスであろうかと思っています。』

とまあここまでは良いとしまして。

『一方では、いわゆる内需型の非製造業ですとか、規模の小さい中小企業にとっては、輸入価格の上昇、これをどう価格転嫁するかといった面でなかなかつらい面があり、そういう企業にとっては影響があるでしょう。また、家計にとっては、やはり実質購買力という面で食料品等に影響があるのは事実だと思います。一般的にはこういう影響はあろうかと思います。』

『そういうことで、我々としても、為替の動向については、しっかり見守っていきたいと思っています。景気ウォッチャー調査とか、消費者態度指数、こういうところに円安が直接的に影響しているのかどうかという点については、なかなか定量的にチェックするのは難しいのですが、ただし、先程申し上げた通り、家計の実質購買力に影響を与えているのは事実なので、そういう意味では、影響がないことはないと思っています。そういう意味で、影響も少しあったのではないかと私としては考えています。(以下割愛)』

「家計の実質購買力に影響を与えているのは事実」キタコレという所ですな。


・市場機能に関しては残念ながら踏み込み不足だが別の含意もありますね

先ほどの質疑の後半。

『(問)(前半割愛)もう1つの質問は、やはり10月の追加緩和についてですが、先程反対された理由として、副作用やコストとして市場機能の低下リスクや実質的な財政ファイナンスとみなされるリスクを高めてしまうのではないかと挙げられました。今、昨年10月の追加緩和から3か月、4か月経とうとしていますが、実際にこういった副作用やコストは出てきているとお考えなのかをお答え頂きたいと思います。』

こちらの答えはやや踏み込み不足かなとは思いますが、答えの流れを見ると大本営の参謀の皆さんが偉い人にどういう戦況説明をしているのかは何となく伝わる気がするので鑑賞。

『(答)(前半割愛)次に、副作用で市場機能低下リスクと実質財政ファイナンスとみられるリスクを代表例として挙げているわけですが、今、それがどうなのか、というご質問です。この市場機能の低下について、これも皆さんもご承知の通り、まず国債市場の流動性低下リスクについてですが、これが特に今、何か重要な問題が起きているとは思っていません。』

重要な問題が起きるとは思っていません、で締められると「特段問題なし」というニュアンスでヘッドラインを打たれてしまうので何だかなあとは思うのですけど。

『ただ、市場の流動性が極端に低下した場合は、何らかのショックをきっかけに金利が非連続的に変動する可能性が高まるので、それが顕現化した場合は、市場の不安定化を通じて実体経済とか、金融システムに悪影響が及ぶことにつながりかねないわけです。また、金利の低下に伴い資産運用が困難化するリスク、あるいは金融機関の収益が低下すること等を通じて、金融仲介機能に与える影響も懸念されるということもあります。』

うむ。

『いずれにしても国債の需給に影響を与えることでイールドカーブ全体を引き下げ、金利低下を促すことを狙った政策ですので、私どもが「量的・質的金融緩和」を導入した当初から市場に影響を与えることは十分認識していたところです。』

そらまあそうですな。

『そうしたことで、導入当初の公表文でも色々明記しているように、買入れを進めるに当たっては、市場参加者との間で、市場調節ですとか市場取引全般に関して密接な対話を行ってきました。また、オペ運営も柔軟化していますし、国債補完供給制度の実施条件を緩和するといった対応を行ってきています。』

まあそういう事になっているのだが補完供給制度をジャンジャン使えるようなものではなくてどちらかと言えばスティグマ付という状態になっているのは変わらないと思いますけどね。

『これからも新たに実施する債券市場サーベイを活用するとか、債券市場参加者会合を定期的に開催していくとか、そういうことで対話をより密にしたいと思っています。まずサーベイで市場をより詳細に分析、点検して、対話もより深めていきたいと思っています。』

まあどう見てもただのアリバイにしかならないと思いますけどね。

『そうしたもとで、国債市場の流動性について、特に取引量も含めて、流動性が極端に低下している状態とは思っていません。それから、金融仲介機能ですとか、資金運用の問題についても、何か大きな問題が起こっているとはみていません。』

・・・・・・・・・えーっとまあそらいきなり凄まじい問題が噴出するような状態とはアタクシも思いませんけれども、こういう形で纏められると「ああ状況が伝わってませんなあ」というのが見えてきて、それはそれで含意のある話だなと思います。

つーかですね、この前も蒸し返しましたけどリーマンショックの後にカウンターパーティーリスク(に伴う取引執行リスク)を意識した動きが強烈になって利下げしたのにGCレポレートが上昇してCP金利に波及して大概に悲惨な状態が続いたのですが、その間の日銀の腰の重さったら全くもう何なんだよという所でございましたが、森本さんの示す認識を見ますと「ああ昔も今も変わってないなあ」というお話でして、インターバンクのところだけは日銀ちゃんと認識しているのですが、そこから先のオープン市場とかさらには債券市場とかに関しての認識能力が相変わらず低水準だなあ(MOFの理財と比べると正直月とスッポンレベル)と思いますし、この調子で出口政策できるかよ(そういやうっかりネタにするのを忘れていたので明日から投下しますがFEDの出口政策へのテストをエライ細かくやっているのよね)と思いますよ。

『いずれにしても、私も本日の懇談会の中で申し上げたように、こういったリスクの顕現化を止める、あるいは最小化する努力は、我々としては、全力でやらないといけないと思っていますので、今、そういったことで、市場の分析ですとか、対話をより密にしていきたいと努力をしている段階です。』

市場との対話と言っている時点でまあ中々ねと。対話じゃなくてまずは聞くことなんですけどね。

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2015/02/10

○森本審議委員講演は最後の部分に味わいが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150209a.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 千葉県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

再任などという罰ゲームはあり得ないと思うので多分最後の金懇になるんでしょうかね。森本さんは最初の金懇会見でやや不用意な言葉尻をヘッドラインにして森本ショックとか言われてしまってその後発言が超慎重になってしまったのが残念な上に、その後は出身母体が震災でアレという事になってその点でも発言に気を使っていたように見える(実際どうかは知らんけど)のが外野的にはちと残念なところではありましたな。

でまあたぶん最後の金懇なのでやや長めに引用しましたが見どころは大体最後のところに集中しております。


・経済見通しについては概ね執行部見解通り:海外について

ということですので概ねその辺は流しますけど海外経済について。

『こうしたもとで、海外経済は、新興国経済の回復にばらつきはみられますが、先進国を中心に全体として緩やかに回復しています。先行きについても、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいます。1月に公表されたIMFによる世界経済の成長率見通しは、昨年10月時点の見通しから下方修正されましたが、2014年実績である+3.3%から、2015年+3.5%、2016年+3.7%と、緩やかに高まっていく見通しは維持されています。』

まあこの辺の海外見通しに関しては政府も日銀もだいたいこんな話をしておりますので特段変わった話ではありません。

『主要国・地域別にみると、米国経済については、良好な雇用環境に加えて、大幅なガソリン価格の低下もあり、個人消費は堅調に推移しています。また家計部門の好影響が企業にも波及し、企業活動のモメンタムは確りとしており、景気の前向きな循環が維持されるもとで、しっかりとした回復を続けるとみられます。』

米国は強め。

『欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、低インフレが長期化するリスクやウクライナ・ロシア情勢が実体経済やマインド面に与える影響に注視していく必要がありますが、個人消費の底堅さなどに支えられ、ごく緩やかながらも回復を続けると考えられます。なお、低インフレが継続するリスクに対し、ECB(欧州中央銀行)は、1月下旬に各国の国債等を買入れ、市場に大量の資金供給を行う資産買入れの拡大1を3月から開始することを公表しており、今後の景気や物価への効果の波及を見極めていきたいと思います。』

欧州は底抜け脱線ゲームにはならないでしょうという見通し。

『中国経済については、投資や生産面に減速感がみられるほか、不動産市場の調整が長引く可能性や、政府が構造調整を優先する姿勢にあることから内需減速にも留意が必要です。もっとも、新常態(ニューノーマル)への移行を見据え、金融面を含めて時宜に応じた政府の景気対策が導入されてきており、先行きは成長ペースをやや鈍化させながらも7%程度の安定成長が続くとみています。その他の新興国・資源国経済については、国・地域によるばらつきはありますが、先進国の景気回復の波及と、緩和的な金融環境を受けた内需の持ち直しから、成長率を緩やかに高めていくと見込んでいます。但し、新興国市場を取り巻く金融資本市場の動向次第では、成長に勢いを欠く展開が続く可能性もあります。』

ということで金融資本市場の動向次第では云々という最後の部分がほほうという所で、要は米国の金融正常化サイクルの中で新興国経済の成長が弱いままで推移する可能性がありますよという認識ですな。

ただまあ直近では世界経済の成長ドライバーが大体米国になっておりますので、新興国があばばばばーでも成長鈍化程度ならそこまでの悪影響はないでしょとかいう話になるのでしょうかね。

『今後、米欧経済の回復ペース、FRB(米連邦準備制度理事会)やECBの政策対応と波及効果、ウクライナ・中東情勢等の地政学リスクなど、先行きのリスク要素は多岐に亘っており、幅広い視点から十分な目配りが必要と考えています。』

とまあここまでが海外。


・経済見通しについては概ね執行部見解通り:国内について

これまた概ね執行部通りですけど途中から引用しますね。

『需要項目別にみると、個人消費は、雇用・所得環境が引き続き改善する中で、家計支出も持ち直しつつあり、基調的に底堅く推移しています。また、設備投資は、高水準の企業収益もあり、企業の前向きの設備投資スタンスが維持されるもとで、緩やかな増加基調にあるほか、輸出は、資本財等の米国向けやNIEs向けを中心に全体として持ち直しています。こうした内外需要のもとで、在庫調整が進捗しており、鉱工業生産は下げ止まっています。以上から、景気の前向きの循環メカニズムは、企業収益や労働需給の着実な改善を伴いながら、しっかりと働き続けていると考えています。』

ほうほうそうですか。

『先行きを展望すると、消費税率引き上げに伴う影響は全体として和らいでおり、雇用・所得環境の改善が続くもとで国内需要が底堅さを維持するとみられるほか、海外経済の回復や円安による下支え効果などを背景に、輸出も緩やかに増加していくと見込まれます。』

ほうほう。

『さらに、原油価格下落による経済への好影響も期待されます。』

キタコレ。

『わが国経済は、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続していくと考えられ、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるとみています。具体的な数値で申し上げると、日本銀行が1月に発表した展望レポート・中間評価における政策委員見通しの中央値は、昨年10月時点と比較し、2014年度の成長率は−0.5%と下振れる一方、15年度は+2.1%、16年度は+1.6%と共に上振れています。』

ということでこの辺は大本営発表通りですな。


・物価に関してもこれまた執行部通り

ですのでちょっとだけ引用します。

『当面の間、足許の円安による物価上昇圧力がある一方で、原油価格の大幅下落による下押し影響が大きいことから、消費者物価の前年比プラス幅はさらに縮小するとみられます。もっとも、原油価格の下落は、交易条件の改善を通じて、やや長い目でみれば経済活動へ好影響を与え、物価を押し上げる方向に寄与していくと考えています。先行きの物価は、当面の間、前年比プラス幅を縮小するとみられますが、その後は景気の前向きな循環メカニズムが持続し、物価上昇期待が維持されるもとで、原油安の経済活動への好影響を通じたマクロ的な需給バランス改善が見込まれるほか、原油価格の下落については前年比でみた影響はいずれ剥落する性質のものであり、次第にその上昇率を高めていくとみています。この結果、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみています。』

という見通しになっておりますな。


・森本さんの論点コーナーである

とまあこのあたりまでが前座で、次が(経済・物価見通しを巡る主な論点)というコーナー。

『以下では、先ほど申し上げた経済・物価見通しが実現していくに当たって私自身が注目しているポイントを、お話ししたいと思います。』

ほほう。で、小見出しが以下の通り。

『イ.雇用・所得環境と家計の支出動向』
『ロ.輸出動向』
『ハ.設備投資動向』
『ニ.物価動向』


・雇用所得に関してはやはり賃上げへの期待が大きい

雇用所得に関しての途中から。

『こうした労働需給の引き締まりは、賃金にも影響しており、名目賃金は、昨年春のベースアップの実施に伴う所定内給与の増加や、賞与や一時金を含む特別給与の増加を背景に改善しています。以上のような雇用・賃金動向を反映して、雇用者所得は緩やかに増加しています。』

『先行きについては、基調として潜在成長率を上回る成長が見込まれるもとで、労働需給の引き締まり傾向は強まり、所定内給与を中心に賃金に上昇圧力がかかっていくとみています。昨年12月に政労使間で今春の賃上げに向けた合意文書が取り纏められるなど、今春の賃上げに向けた動きが拡がりをみせています。』

ということで賃上げに期待で、その結果として家計支出の先行き見通しは・・・・・・・

『先行きは、一時的な下押し要因が剥落するもとで、雇用・所得環境の改善が続き、団塊の世代を中心とする高齢者の旺盛な消費意欲もあって、ごく緩やかながらも増加基調を続けるとみています。もっとも、消費者マインドについては、足許小幅の改善はみられますが、慎重さが残る点はやや気懸かりです。急速な円安もあり、生活に密着する食料品等の値上げが目立つほか、消費税率引き上げに伴う実質所得低下もあり、家計には負担感がより強く意識されているとみられ、今後の動向を注視したいと思います。』

見通しは強いのですが留保付となっていますな。なお極私的なアネクドートで言えば最近は生鮮系じゃない食品などで従来よりも値下げ品が増えているように思えまして、そういうあたりの消費の基調は弱まってきているのではないか(実質所得が下がってもお財布の状況を見てそれに気が付くまでラグがあるのが普通だと思うの)って気はだいぶしますけどね。


・輸出について

輸出である。

『先行きは、海外経済が先進国を中心に全体として緩やかに回復する見通しにあることや、円安による下支え効果などを背景に、緩やかに増加していくとみています。』

『なお、これまでの輸出の弱さの背景には、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因が相応に影響していたと考えられます。こうした要因は、短期的に解消するものではなく、先行きも相応に輸出の下押し要因として残るとみられますが、円高修正を背景に海外生産比率の上昇ペースが鈍化することなどを通じて、輸出を下押しする程度は和らいでいくとみています。最近では、生産拠点の国内回帰を検討する動きも一部にみられ始めており、今後、輸出面も含めて国内経済へのプラス寄与も期待されます。』

国内回帰が進んでウハウハですよ的な説明にはなっていないですな、もうちょっと控えめ。

『一方で、ガソリン価格の低下で北米向けの大型車は好調なものの、優位性のある低燃費車の輸出に影響を及ぼす可能性等もあり、今後の動向を注視したいと思います。』

ほほうという所で、執行部見解を踏まえつつもやや慎重ですかね。


・設備投資について

『次に、設備投資動向についてお話しします。持続的な経済成長を実現していく上では、企業収益の改善や需要の増加が、前向きな投資に繋がっていくことが重要です。足許は、企業の前向きの投資スタンスが維持される中、機械投資の一致指標である資本財総供給が持ち直しています。先行きも機械受注が緩やかながら回復傾向にあるほか、建築着工床面積も増加に転ずるなど、緩やかな増加基調を辿るとみています。』

ということですが・・・・・・・・

『こうした設備投資を支える背景としては、以下の点が挙げられます。第一に、潜在需要が大きいと窺われることです。これまでの長期間に亘る投資抑制によって設備老朽化が進んでおり、維持・更新投資などの潜在需要が顕在化しやすい状況にあると考えられます。』

ヴィンテージが高まっての話。

『第二に、円高修正が進む中、海外生産を加速するペースが鈍化しているとみられる点です。企業の設備投資計画では、今年度から国内投資のウェイトを高める計画となっています。』

国内回帰で戻るぜヒャッハーという表現でないのがチャーミング。

『第三に、政府の競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待が緩やかに高まり、国内本社を研究開発やマザー工場の拠点として再構築しつつ、戦略分野では能力増強投資に踏み切る動きがみられる点です。』

そ、そうなのか・・・・・・・・・・・・?????

『さらに、非製造業を中心に人手不足感が強まるもとで、省力化投資を進める動きも今後の設備投資の下支えになるとみられます。』

これも前から出ている話ですな。まあ基本的に控えめな説明&政府のなんちゃら部分は希望的観測というところですね。


・物価に関して

まあそんなに変わった話はないのですが、インフレ予想に関する部分の後半くらいから引用します。

『この点、金融市場のデータから得られるブレーク・イーブン・インフレ率は、世界的な低下の中で幾分低下していますが、家計・企業などのサーベイ調査でみた中長期的な予想物価上昇率は総じて維持されています。さらに、企業の価格設定行動についても、従来の低価格戦略を見直し、付加価値を高めながら販売価格を引き上げる行動は続くもと、今春の賃上げ交渉に向けて、連合では2%以上のベースアップを要求する方針を示しているほか、政労使による賃上げに向けた前向きの合意がみられるなど、企業や家計の物価観に変化がみられています。以上を踏まえ、予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみています。』

ということですが、その価格設定行動に関しては本当にそうなのかというと2極化みたいな感じになっている気がしますし、あとはもう賃上げに期待の話がここでも出るということで、結局のところこの賃金がきちんと上昇するのか、その結果個人消費がどうなるのかというあたりを見極める期間までは金融政策の次の判断は行われません、という事になるんでしょう。


・金融政策に関しては置き土産メッセージ的なモノが(^^)

で、金融政策に関してですが、後半部分の『(2)今後の金融政策運営上の留意点』に味わいが。

『昨年10月末の金融政策決定会合における「量的・質的金融緩和」の拡大については、政策委員会メンバーの間で慎重な見方もあり意見が分かれましたが、議決の結果、その実施が決定されました。慎重な見方を示した委員の考え方は、「先行きの物価見通しに対するリスクは大きくなっているとの見方は共有しつつも、経済や物価の基本的な前向きのメカニズムは維持されており、原油価格の下落もやや長い目でみて経済や物価に好影響を与えるとみられる」ことや、「金利は既に歴史的な低水準にある等、大規模緩和の導入時に比べ、期待される効果は限定的なものに止まる一方、それを上回るコストや副作用が懸念される」ということが中心でした。』

ふむ。

『コストや副作用として、市場機能の低下リスクや実質的な財政ファイナンスとみなされるリスク等を挙げています。』

イイシテキダナー。

『私自身は反対票を投じた立場ですが、政策委員会として機関決定した以上、これを早期に変更することは中央銀行の信認を損ないますので、決定された政策を適切に実行し、早期の物価安定目標の実現に繋げていくことが重要と考えています。』

まあここは判断に悩むところですがその考えもありだと思います。

『但し、政策遂行に当たっては、そのリスクの顕現化を防ぎあるいは最小限に止めるよう努力すべきと考えており、今後、以下の点に十分な留意が必要です。』

(;∀;)イイシテキダナー

『第一に、市場機能の低下リスクへの対応です。この点、市場参加者との対話を一層強化しつつ、金融市場の動向や日本銀行の資産買入れが市場に及ぼす影響等について多面的な分析やモニタリングを通じ、丹念に点検していくこととしています。また、市場と適切なコミュニケーションを図りながら、市場の状況に応じ、柔軟なオペ運営を行っていくことが肝要だと考えており、引き続き適切に対応していきます。』

まあそれがきちんとできていない(別に今に始まったわけではなくてリーマンショックの時の対応も大概だった)のが日銀クオリティなんですけどね!!!!!!

『さらに、金融仲介機能への影響にも留意が必要です。金利が低水準となる中、金融面の不均衡が蓄積される動きがないかについても、しっかりと点検を行っていくことが重要です。』

マイナス金利は政策効果(キリッ)とか言われますと不均衡が蓄積すると思いますけどね。

『第二に、財政健全化への信認の維持です。金融緩和政策を円滑に遂行する上では、財政健全化に向けた取り組みが不可欠です。昨秋の10%への消費税率引き上げの延期決定以降、日本国債の格下げが行われ、本邦金融機関の格下げにも波及しています。現時点ではその影響は限定的とみていますが、今後、政府の財政健全化へのコミットが薄れたと判断された場合には、金融緩和の効果が減殺されることに繋がる可能性があります。また、量的・質的金融緩和の出口を円滑に迎えるためにも、財政健全化への信認が確りと維持されていることが重要です。夏頃に新たな財政健全化に向けた計画が策定されることになっていますが、引き続き財政健全化に向けた政府の努力を期待したいと思います。』

まあこれはその通り。

『また、原油価格の下落が続くもとで、月々の消費者物価指数の動きに注目が集まる傾向がみられますが、今後の金融政策運営において物価動向を判断する際には、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金などの動向を点検しながら物価の基調を捉えていくことが重要と考えています。』

(;∀;)イイシテキダナー・・・・・というか執行部に対するイヤミですねわかります。

『物価指標については、消費者物価の総合指数は勿論、生鮮食品を除くベース(コア指数)や食料およびエネルギーを除くベース(コアコア指数)、さらには刈込平均値等も含めて、総合的に点検することが重要です。いずれにしても、物価指標を点検する際には、様々な物価指数の点検を行い、その背後にある実体経済の動きと併せて、総合的な判断を行うことが適当と考えています。』

これ極めて当たり前の話で、置物リフレ理論のように物価目標達成すれば景気が良くなるはずだからハッピーハッピーみたいな話ではなくて、金融政策判断にあたっては森本さんが言うように「実体経済の動き」が重要なのでありまして、過度に物価にフォーカスするリジッドなインフレーションターゲット政策とか2周回遅れ位の話だろと思うのですが、今の執行部って(足元でややロジックを立て直した感じですけれども)2年で2%ばっかり状態が置物理論によって継続しておりましたというのに対して森本さんの方が思いっきり正論の置き土産というのが実にこう何と申しますかという所ですにゃ。

なおこの後に貸出支援基金の説明などがありますがパスします。

#多分最終回になると思ったので今日はちょっと引用を多めにしてみました

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2014/06/25

○森本審議委員会見

ちょっと遅くなりましてすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1406c.pdf

・輸出に関して

『(問) 海外経済の動向次第では輸出が上下双方向に変動する可能性があるということを言われていますが、現状ですと、昨日出た5月の実質輸出は数字も弱く先行きなかなか輸出の回復のタイミングが難しいと思うのですが、ここで言われている上下双方向ということで、上振れ・下振れリスクに関して、どのような状況を想定しているのかもう少しお伺いします。』

とまあこれは聞かれます罠という所ですが・・・・・・・・・・

『(答) 今ご指摘がありました実質輸出の伸び率ですが、10〜12月期は若干のプラス、1〜3月期は若干のマイナス、そして4月はややプラスになりましたが、5月にはまたマイナスとなりました。このところ輸出には弱さがみられていると思いますが、横ばい圏内あるいは若干の力強さに欠けるという状況かと思います。この状況はご承知の通り、基本的には、わが国経済との結びつきが強い東アジア経済等のもたつきの影響が大きいと思っていますが、ベースにはわが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性があるのかなと思っています。また、駆け込み需要への対応で国内向け出荷を優先する動きであるとか、米国の記録的な寒波といった一時的な要因が作用していたと思います。』

ということで、講演の方では消費税駆け込み対応で云々という言及が無かったので、これはついに駆け込み対応の話は実はたいした影響では無かったという話にするのかと思いましたが、昨日ネタにした総裁講演でもそうでしたけれども、やはりこの件は引き続き輸出の一時的な下押し要因に入れっぱなしという事のようですな。

『そういうもとで、先行きについては、一時的な下押し要因が剥落していくのは間違いないわけであり、そうした状況にプラスして、米国等先進国を中心に海外経済の成長率が高まっていくということで、輸出は緩やかながらも増加していくのではないかと考えています。』

ほうほう。

『そういう中で、上下のリスクという点について、上については、ASEAN等新興国で政情不安とか構造的な問題も抱えて、ここのところもたついているわけですが、その辺の状況が改善して、しかも米国等の先進国の景気が回復していくことに伴って、輸出等が拡大していくという、こういう上振れがありますし、それから、米国自身も記録的な寒波から抜け出して、今、回復基調の経済指標が色々確認されているところです。こうした上振れ要因にプラスして、機械受注でも外需がここのところ伸びを強めてきており、こうした面も先行き輸出が少しずつ伸びていく下支えにもなるのではないかと思っております。』

と、講演では微妙に下振れの話をしていたようにも見えたのに会見では上振れの話となという所なのですけれども・・・・・・・

『それから、プラス面ばかり言うようで恐縮なのですが、やや長い目でみると、本日の講演でも触れましたように、これまでの円高水準の修正で、これからは一定レンジでの為替の動きになると思われますので──今もそういう状況で動いています──、海外生産比率の上昇ペースを鈍化させるということもあるのではないかと思っています。一方で下振れ要因としては、新興国等のリスク要因が顕現化してきて、東アジア自身の経済が下振れていくという要因も考えられるかと思っています。』

ということで上振れの話ばかりされておりますが、記者の方が気を利かせて次の質問をしたのですかねえ。

『(問) 追加の質問ですが、現状ですと両方のリスクがあるけれども、どちらかといえば上振れが起こって困るような状況でなければ、下振れの方のリスクを注視するという、そちらの方に軸足があるということでよろしいのですか。』

これは記者の優しさを見た感じですな(^^)。

『(答) 項目的には上振れの方を多く挙げましたけれども、やはりリスクについては両方起こり得る話ですから、下振れの方をより強く意識というか、これはしっかり注視していかないといけないと思いますが、一方で基調というものをみる上で、やはり上下双方向についてみていくべきではないかと思っています。』

質問の誘導に乗ってかどうか知らんが上手くまとまっていますなという所で、つまり見通しの基本的な部分は上振れというか強く、リスクは下を見て注意しましょうという結論で綺麗に纏まっていますが、要するに強気なんでしょという所ではあります。


・物価について夏場にいったん下がるという話はここでも出ていますが数字は微妙に違いますな

順序が逆になったのが却ってよいネタになったかも知れません(別に狙った訳ではなくただの偶然)が、昨日ネタにした月曜の総裁講演ちゃんでの「夏場に向けて物価が1%近傍に下がるかもしれません云々」が日銀の見通し弱気化みたいなネタとして何とかストの皆さん歓喜でレポートを出すの展開となっております(が、そもそもそれが変だろ見通し更に自信を深めてるし大勝利宣言があちこちにあるでよという話は昨日申し上げた通りです)けど、森本さんの会見でもこのような言及がございますので念の為。

『(問) 2点お伺いします。1点目は、物価についてですが、夏場にいったん下がって、またその後は上がっていく、シナリオ通りにいくと今日もおっしゃっていると思いますが、そう言われる根拠を、今の情勢を踏まえて、お伺いします。(以下引用割愛)』

『(答) 物価については、直近4月は、消費増税の直接的な影響を除いて1.5%という数字だったわけですが、それまでは大体1.3%くらい、いわゆる1%台前半で推移してきたわけです。この背景には、経済が緩やかに回復して、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、ある程度バランスよく回復しながら、労働需給の引き締まり等もあって、雇用・賃金の増加を伴いながら、物価が上昇してきている状況だと思っています。』

しらっと直近の数字を出してくるあたり強い訳で。

『その背景には、需要も強くなってきていますので、需給ギャップも、縮小してきて日本銀行の試算ではゼロ近傍まできていますし、予想物価上昇率についても、家計、企業、市場の色々見方はありますが、全体としては、この経済的な状況を背景に上昇してきているのではないかと思っています。』

まあ森本さんなので別に市場に嫌味を言っている訳ではないと思いますが、ここの「色々の見方はありますが」というのはどう見ても市場の見方が弱いですねえあっはっはという話でありまして、昨日の総裁講演でも市場の見方がどうのこうのですがウヘヘヘヘヘ(意訳)というのがありましたように、どう見ても市場の何とかストの皆さん喧嘩売られてますなあウヒョヒョヒョヒョ。

『そうしたもとで、いわゆる為替の影響を受けやすい食料や工業品を除いても、非常に幅広い品目で──上昇品目も全体の5割以上になってきていますし──、上昇がみられるといった状況ではないかと思っています。』

ここの所はまた別の見方でも物価が上がっていますよという話で中々。

『そういうことで、円安による部分が夏頃にかけて、エネルギー関連を中心に剥落していくわけですが、一方で、幅広い品目が、需給ギャップの縮小あるいはプラス転化、予想物価上昇率の高まりと共に、雇用・所得環境の改善──ご承知の通り、失業率も構造的失業率に近い状況になっていますし、色々心配されたベースアップについても、中小企業も含めて幅広く行われたということだと思いますし、それから夏季のボーナスも非常に堅調な数字が出ています──の中で、幅広く上昇してきていますので、この剥落していく部分と伸びる部分のせめぎ合いだと思います。それで、暫く夏場くらいまで1%台前半で推移するかと思いますが、年度後半以降、消費増税の影響からも逃れて経済も回復していきますし、連れて需給ギャップも改善していくと思います。』

まあ何ですな、ここでは確かに1%近くに云々というのは無いので、その辺を見て飛びつきたくなるのは判らんでも無い。

『また、予想物価上昇率も上がると思いますので、そうしたことを背景に、年度後半からは、また物価も上昇局面に入っていくのではないかと考えているところです。』

てなことで、結局の所は強い見通しという話になっている訳ですな。


・この質疑は盛大にワロタ

『(問) 先月、白井審議委員が那覇で会見された時に、日銀が昨年4月4日にお決めになった、約2年を念頭に2%を達成するという宣言について、何が何でも絶対に2年で2%を達成するということではないとおっしゃいました。こういう見方に森本審議委員も賛同されるかどうか、やっぱり何が何でも絶対に達成するべきものであるとお考えなのか、あるいは白井委員のように絶対ではないとお考えなのか、お聞かせ頂けますでしょうか。』

これはワロタとしか申し上げようがないですが答えも中々。

『(答) 昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した時に、2年程度の期間を念頭にできるだけ早期に物価安定目標を実現する、その2%の「物価安定の目標」の実現を目指して、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続するという、こういうコミットメントをして、今、この大規模な資産買入れを着実に進めているところでありまして、当初考えておりました所期の効果は発揮されているのではないかと思っています。』

ふむふむ。

『そうした中で、4月の展望レポートで、私どもの中心的な物価見通しとして、消費税率引き上げの影響を除いたケースですが、14年度1.3%、15年度1.9%、それから16年度は2.1%という数字を出したわけです。そういうことで、大きく言って、その見通しの期間の中盤頃にこうした2%程度が達成できるのではないかという見通しを持っており、色々リスク要因はありますけれども、今、私どもが展望している状況の中では、当初お約束しているような、ある程度の期間を念頭に置いた中で、順調に物価上昇のパスは辿っているのではないかと考えているところです。これが大勢見通しということであり、私も大体それと同じような考え方をしています。』

「当初お約束している」という辺りに微妙に白井さんをdisっていてワロタという所ですが、まあ大勢見通しと同じということで普通に与党審議委員ですなうんうん。

『白井委員については、2016年度に達成ということでありますが、白井委員の考え方について私がコメントをすることは差し控えさせて頂きます。これは色々議論した中で、日銀としての大勢見通しは、先程申し上げたような数字になっているわけで、今のところ頭に描いているような物価上昇のパスを辿っているのではないかと思っています。』

差し控えるとか言ってますがまあその前に盛大にコミットという話をしているのが実にお洒落な質疑応答で、最初の所の引用ネタもそうですが、何か阿吽の呼吸みたいな会見になっていて今回の会見はそういう意味で(どういう意味だ^^)味わいというか侘び寂びの世界というか誠に心の温まるものを感じる会見ではございましたです、はい。

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2014/06/20

○森本審議委員講演は基本的に執行部見解ベースと見られます

秋田での金懇です
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140619a.pdf

・経済物価情勢に関する今後のポイントについての説明から

講演ですけれども、最初のパートが経済物価情勢の現状と先行き見通しの話なのですが、これは概ね展望レポートのロジックと同じ説明になっています(まあ政策委員会メンバーとして説明したらそうなるのは当然なので別にだからどうという話ではないので念の為)のでスルーしまして、その先の『(3)経済・物価見通しを巡る主な論点』という小見出しから。

『以下では、先ほど申し上げた経済・物価見通しが実現していくに当たって私自身が注目しているポイントを、内需、外需、物価の順にお話ししたいと思います。』

ということでまずは内需ですが、最初の小見出しは『(家計支出動向と雇用・所得環境)』。

『まず、家計支出動向とこれを支える雇用・所得環境についてお話しします。家計支出に関連しては、消費税率引き上げの影響を見極めていくことが重要ですが、個人消費は、雇用・所得環境が改善するもとで、基調的な底堅さが維持されており、反動減の影響は夏場以降減衰していくと考えています。4月入り後の消費動向については、自動車など駆け込み需要が大きかった耐久財を中心に、反動減がはっきりと現れていますが、これまでのところ、企業からは、「反動減の大きさは概ね想定の範囲内であり、消費の基調的な底堅さは維持されている」との声が多く聞かれています。』

以下アネクドータルな話と景気ウォッチャーのデータの話になりますが割愛。

『このように、個人消費や住宅投資が底堅さを維持していくうえでは、雇用・所得環境の持続的な改善が鍵になります。労働需給をみると、完全失業率は3.6%にまで低下、有効求人倍率は1.08倍に上昇しており、いずれもリーマン・ショック前の最も良好な水準並みとなっています。また、3月短観の雇用人員判断DIは、非製造業で1992年12月以来の大幅な不足超となり、製造業でも不足超に転じるなど、労働需給は引き締まり傾向が強まっています。』

ふむ。

『企業側では、建設業や小売業などの人手不足感の強い業種を中心に労働条件の見直しを通じて人材確保を図る動きも広がっており、女性や高齢者の労働参加も高まっています。こうして新たに活用される労働力は、これまでのところ、パートなどの短時間労働が中心ではありますが、所得増加などを通じた需要面への影響のほか、中長期的な成長力の押し上げにもつながっていくと考えられます。』

という説明も何かそういえば執行部方面から出ていたような気もせんでもないですが、しかし実はこの後の方での説明にあるのですが、先行きの物価動向に関する説明をする中で森本さんは需給ギャップの説明をしていまして、そちらでは供給力の天井に達している可能性があって需給ギャップは盛大に改善みたいな説明をしていまして、経済の持続性という意味での成長力の押し上げの話をこちらでは行っていて、物価見通しの方では需給ギャップの改善の話を行っているというのが何といいますか「いいとこどり」な説明にも程があるような気がするのは気のせいですかそうですか。

『こうした労働需給の引き締まりは、賃金にも影響し始めており、労働者全体の時間当たり名目賃金は、振れを伴いつつ緩やかな上昇に転じています。今春のこれまでの賃金改定交渉では、連合集計で、中小企業を含めた全体で0%台半ばのベースアップ、全体では2.1%程度の賃上げが実現する方向となり、各種調査からは夏季賞与の増加も見込まれています。先行きについても、わが国経済が潜在成長率を上回る成長を続ける中で、企業が正社員を含め採用意欲を高めていることもあって、労働需給の引き締まり傾向は強まっていく可能性が高いとみられますので、失業率は、過剰労働力が解消した状態である構造的失業率並みの水準に向けてさらに低下していくと予想しています。そうしたもとで、賃金そして物価には、上昇圧力がかかっていく可能性が高いと考えています。』

という説明になっていまして、まあ基本的には強い見通しという執行部見解を踏襲した形ですな。

で、次が『(設備投資動向)』になっているのですが、こちらもまあ強い話なのですが、先行き見通しに関する所ではこんな話が。

『こうした設備投資を支える要因としては、第一に、投資採算の改善があります。実体経済の改善に伴い資本収益率が上昇していくと同時に、予想物価上昇率の高まりなどを反映して実質金利が低下していくため、金融緩和の投資刺激効果は強まっていくとみられます。』

実質金利が低下すると企業がよーしパパ設備投資しちゃうぞーとなるのかねというのは極めて????な気がするんですけどねえ。

『第二には、潜在需要が大きいことが挙げられます。設備投資は、4四半期連続で増加したとは言え、リーマン・ショックや震災後の落ち込みからようやく回復過程に入った段階ですので、経済活動の水準が高まることで、維持更新投資などの潜在需要が顕在化しやすい状況にあると考えられます。』

逆に何でここまで潜在需要が顕在化しない件について考察するのが先のような気がするんだが。

『第三に、政府の規制・制度改革や企業の事業再構築など、競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みなどもあって、企業の中長期的な成長期待が高まっていくことも、設備投資を下支えするとみられます。』

ほうほう中長期的な成長期待が高まるとな(棒)。という事で設備投資に関しても見通しは強いのだがホンマカイナという感じもする部分があったり無かったりですが、次の『(輸出動向)』に来ると更にこう微妙な所がががががが。

『次に、輸出動向についてお話しします。輸出は、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきや、米国の寒波の影響など一時的な下押し要因もあって、横ばい圏内の動きとなっていますが、このところの輸出の弱さの背景には、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高いと考えられます。』

となっていまして、はあそうですかという所ではあるのですが、ここでちょっとお洒落なのは従来輸出について一時的な下押し要因として日銀執行部が挙げていた「消費税増税前の駆け込み需要対応の為に輸出ではなく国内向け生産を優先したための落ちこみの可能性」という点についての言及がすっぽりと抜けている事でして、これはまあ何ですねんというと、現実問題として貿易統計的に駆け込み需要要因が剥落している筈の時期に入っても別に輸出が伸びている訳では無くて、つまり従来の可能性は所詮可能性程度(全くない訳ではないでしょうが有意に輸出の全体を押し下げるような効果があった訳ではないという話)の話だったという所ですな、うんうん。

『先行きは、先進国を中心に海外経済が全体として緩やかに回復するにつれて、緩やかながらも増加に転じていくと想定しています。なお、海外経済の動向次第では、輸出が上下双方向に変動する可能性がありますので、今後とも、新興国経済の先行きや、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の動向等を注視していく必要があります。』

ということで、まあこちらに関してはさすがにあまり威勢の良い話をしにくいというのも執行部見解と同じような感じですな。


・物価の先行き動向に関する論点では若干慎重な説明も入るのだ

次が『(物価と予想物価上昇率の動向)』であります。まず物価の現状に関する話がありまして、そちらはスルーしまして予想物価上昇率やフィリップスカーブ的な話の部分を。

『そうしたもとで、需給バランスに対する物価の感応度や短期を含めた予想物価上昇率も高まりつつあるとみられます。』

ふむ。

『3月短観から調査をはじめた企業の物価見通しでは、大企業と中小企業で差はありますが、全産業全規模でみて1年後が1%台半ば、3年後、5年後のいずれについてもややこれを上回る形となっており、先行きの物価上昇率が高まっていくとみているように窺えます。』

「窺えます」という微妙な表現を使っているのはさすがに気を使っているなあとは思いますが、しかしこの短観データって公表されたのまだ1回分なのですからして、あまりこのネタを持ち出さない方が吉のような気がするんですけどねえ。

『足もとでは非製造業を中心に労働需給が逼迫しつつありますので、今後は、企業や家計も含めて予想物価上昇率の上昇に弾みがつきやすい環境になってきています。ただ、実際の物価上昇率が中長期的な予想物価上昇率に影響を与えていくという側面もありますので、夏場にかけて、仮に既往の円安効果の剥落や反動減による需給緩和の影響で消費者物価上昇の勢いが鈍るような場合に、予想物価上昇率がどのような影響を受けるのか、夏場以降の景気が再び緩やかに回復していく過程も含めて、引き続き注視していく必要があります。』

ということで、この辺に関してはバックワードルッキングで予想物価上昇率も高まるぜ円安要らずで持続的な物価上昇だぜヒャッハーという執行部的な説明だけではなく、いやいや上昇止まったら期待も変化するかも知れませんぜという注釈を加えているのが味わいがありますな。


・成長力引上げ云々の話で供給の天井論が出ているのですが・・・・・・・・・・・

でその続き。

『このように、先行きの日本経済は、企業収益が改善し、雇用・賃金や設備投資の増加などを伴いながら実体経済がバランスよく持続的に改善していくもとで、物価上昇率も次第に高まっていく姿を見込んでいます。』

ほうほうそうですか(棒)。

『このところ、わが国のマクロ的な需給ギャップは、国内需要が底堅く推移する一方で、少子高齢化が潜在的な労働供給を減少させる方向に作用していることなどを背景に、過去の長期平均並みであるゼロ近傍となるなど、供給面の問題が顕現化してきました。したがって、中長期的に日本経済の成長率を底上げし、持続的な経済成長を実現していくうえでは、供給力を強化していくことが重要な課題となっています。そのためには、女性や高齢者の活躍推進による労働力の確保や、企業の前向きな投資の促進、さらには規制・制度改革を含めて生産性向上にしっかり取り組み潜在成長力を高めるとともに、そうした供給力の向上に呼応する需要を創造し続けていくことが不可欠です。』

ということで、需給ギャップの改善という話と共に供給面の問題が顕現化してきたという認識を示しているのですが、その面において物価が上昇傾向にあるという事は、それって潜在成長力が強化されたら物価の上昇力落ちるんじゃないですかという話でもあったりして、基本的な見通しの部分での置きに変化が生じませんかねえというのはありますし、では潜在成長力が強化されなかったらどうかというと、その場合での物価上昇のサステイナビリティーの問題とか、そもそもそんな状況で物価上昇して誰得なのかとか、そういう論点になりますよねというのは先般の佐藤審議委員の講演で示されている話の受け売りになるので割愛しますけれども、話を通していくとここの「成長力強化」の部分で全体の話の整合性が微妙に変になるというのが現状での日銀ロジックの微妙な所なのではないか、とまあそんな事を思いつつ森本さんの講演を鑑賞するのでありましたとさ。

なお、この先は金融政策運営に関する説明ですが、特段変わった話をしている訳でも無いのでスルーします。

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2014/02/24

○森本審議委員会見から少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1402c.pdf

・これ以上の円安はという話がががが

冒頭の質疑から。

『(問) 2点質問させて頂きます。まず、今回の金融経済懇談会の印象を教えて下さい。また、和歌山県の景気の先行きについてどういった捉え方をされているのか教えて下さい。』

『(答) 1点目の本日の金融経済懇談会の印象ですが、本日の懇談会では、和歌山県の行政、経済界、金融界を代表する方々から、当地の経済・金融の現状と課題についてのお話や、本行の金融政策運営に関する率直なご意見・要望を頂き、大変有意義な意見交換ができました。この場をお借りして、改めて御礼申し上げたいと思います。席上で頂いたご意見・ご要望は多岐にわたりますので、特に印象付けられたことを整理して申し上げたいと思います。(途中割愛)第2に、為替円安等に伴う原燃料価格の高騰や、労働需給の逼迫による人件費増加などのコストアップが、収益を圧迫しているとのお話もありました。私どもとしては、当地においても景気は堅調さを増しており、これらの懸念を乗り越えていくモメンタムは強まっているとみていますが、今後も引き続き、景気の情勢を注意深くみていきたいと考えています。(以下割愛)』

ということで為替円安でコストアップとなという話が出ている辺りがうーんこのという所でありまして、いやそれは物価目標達成の為にシャーナイナイなのではないかという話では無かったでしたっけねえという気もするのだが。


・リスク認識に関して

『(問) 講演で、上下双方向のリスクを点検されるとおっしゃっていますが、森本委員からみられて、現状、上下双方向のリスクのバランスがどうなっているか、お伺いします。(途中割愛)このように、輸出と消費の面からみると、下振れの方が大きいのではないかと思いますが、見解をお伺いします。』

『(答) かねて申し上げている通り、我が国の経済は、緩やかに回復を続けており、生産・所得・支出の好循環が維持される下で、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調に辿っていると思っています。その上で、上下双方向のリスク要因ということですが、まず内需については、良好な雇用・所得環境を背景に、個人消費は堅調に推移しています。設備投資についても、これは10〜12月のGDP速報で確認されたように、プラスの伸びを示しています。機械受注の動き等、心配な面はありますが、これは月々の振れが大きい指標ですし、均してみれば3四半期連続で伸びてきています。更新需要は相当積み上がっていますので、先行きに関する色々な調査によっても、堅調な計画が立てられており、設備投資は、企業収益が改善する下で、堅調な動きをするのではないかと思っています。このほか、住宅投資もご承知の通り増加傾向ですし、公共投資も、色々な経済対策によって、高水準の動きになっています。このように、内需は、足許、堅調な動きとなっています。』

何という強気。

『一方、外需の方は、以前から「内需はやや強め、外需はやや弱め」と申し上げていました。10〜12月の輸出は1.1%とプラスになってはいましたが、製造拠点の海外移転の問題や、生産が、このところ堅調な内需に振り向けられている面があったり、また、基本的には、日本との関係が深いASEAN等で少し弱い動きがみられるということで、ご指摘の通り、輸出については勢いを欠く状況が続いています。ただ、これについても、先進国を中心に先行き緩やかな回復が期待できますので、つれてこういった新興国も徐々に回復テンポを強めていくのではないかと思っています。従って、外需はやや弱めではありますが、そうした状況の中で、トータルとしては、私どもが色々と申し上げているようなリスク要因が顕在化してきている状況ではないと判断しています。』

外需も強気でリスク要因顕在化とは何の話ですかという世界ですが、もしかして直近の金融政策決定会合での施策フレームアップのし過ぎで金融政策の予見可能性が著しく低下した件に対して気にしている結果としてこういう感じで強い話をしようという事になったんですかね。


・新興国に関して更にツッコミ

『(問) リーマンショック以降、世界経済は新興国を中心に成長してきましたが、今年以降は先進国が中心となって引っ張っていくことが見込まれています。こうしたバトンタッチはうまくいくのか、また、それはいつ頃とお考えでしょうか。その際に、新興国を最大のリスク要因として捉えていらっしゃるか、お聞かせ下さい。』

で、ツッコミの結果このようなお答えなのですがやたら長い。

『(答) リーマンショック以降、中国の4兆元の投資が大きな牽引力となり、世界経済を引っ張ってきた面があります。その後、米国においても色々な対策がとられ、緩やかな回復傾向になっていますし、ユーロ圏についても、色々マイナス要因はありましたが、このところ3四半期連続でプラスの伸びになっており、家計や企業のマインド指標も改善されてきています。一方、牽引してきた中国についても、一時の高い伸びはありませんが、中国当局は、構造調整と成長を両立させることを絶えず発信しています。何より、堅調な内需に支えられていますし、また、輸出についてもこのところ回復傾向がみられるため、中国は、7%台半ばの安定した成長を続けており、今後もそのように見込まれると思います。』

『そうした中で、米国の、いわゆるテーパリングが意識される下で、経常収支赤字や財政収支赤字、インフレ等、構造的な問題を抱えたいわゆる「脆弱な」新興国において、米中の一部弱めの指標に反応して、通貨や株で色々変化がありました。確かに、新興国のリスクが指摘されていますが、2014年のIMFの先進国の成長見通しが上方修正されているように、米国は、財政の下押し要因が剥げてくるほか、緩和的な金融環境が継続される状況の中で、堅調な民需を背景に、これからも堅調な回復が続くという見通しが、大体コンセンサスを得た見方と考えています。また、ユーロ圏についても、2014年は一定の回復が見込まれる数字になっています。新興国の中でも、中国は、依然安定した成長を示すだろうと考えています。』

『これまで新興国が世界経済を牽引してきた流れが、先進国にうまくバトンタッチされるかというご質問に対しては、牽引役の中国が力を失っていないという状況の下で、構造的な脆弱性を抱えた一部の新興国も、リスク要因が指摘されているものの、先進国の立ち直りとともに徐々に回復していくとみているため、うまくバトンタッチできていくと考えています。』

とまあああだこうだとやたら長いのですが、要するに強気の話を連発しているという感じで、やはりこう金融政策の先行き不透明性低下みたいなイメージに対して牽制しようとしているのかなあとは思いましたです。


・追加緩和に関して

『(問) 講演の中で、今後の金融政策を判断していく上では、消費税率の引き上げの駆け込みとその反動を均した上で、前年比+2%の物価安定の実現に向けた道筋を辿っていくかがポイントになる、と指摘しておられましたが、影響を均してみる必要があるということは、今後の金融政策を判断する上で、4〜6月が中心となるであろう反動減を見極めた上で、今後の政策判断を行うということになるのでしょうか。逆に言うと、増税を見据えた予防的な対応は必要ないという意味合いでよろしいのでしょうか。』

まあ答えはこうなりますよね、という質問ですな。

『(答) 講演の中でそうしたことを発言させて頂きました。申し上げるまでもなく、1997年の増税時には駆込みと反動減があのような形で発生した訳であり、今回も、足許では、既に自動車や一部家電等の耐久消費財への駆込みがみられており、1〜3月は更に耐久消費財以外の衣料等を含めて駆込みが想定されます。1997年の例でみても、1〜3月、4〜6月の駆込みと反動について考えていかなければならない訳ですが、我々の展望レポートと中間評価の想定にあたっても、この辺の状況や見通しを頭に入れて、判断や見通しを作成しています。』

まあそういう事になっています。

『そういう意味で、基調判断をする上で、均してみるということですが、実績を見てから判断するのかという点については、私どもとしてはそのように考えている訳ではありません。「量的・質的金融緩和」を着実に進めるに当たって、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検して、必要な調整を行うと申し上げているのは、何らかのリスク要因の顕現化によって、見通しに変化が生じて必要ならば調整を行う、ということです。』

実績を見て何か判断する訳では無いという話ですが、ではこの前の総裁定例会見での「今年度実質GDP+2.7%行きます」攻撃はナンダッタンダという話になりますが、立て直しに向けての発言という事なのか、今回の森本審議委員の講演や会見は両建ての一貫で従来の話をしているのかはワカランチ会長であるという事です。

『この「見通しに変化が生じて」という点は、見通しの基本的なパスに変化が生じているのかどうかというところを確りと見極めてから、私どもの対応方針を決めていこうということです。これは実績を確り見てからということに限っている訳ではなく、毎月の決定会合、展望レポート、中間評価の段階で経済・物価情勢を確りと点検して議論して、足許と先行きの状況を見通して、見通しの基本的なパスに変化が生じているのかどうかという点を毎回見極めていきながら、方針を決定していくという考え方です。』

ふむふむ。とは言っても「実績を確り見てからということに限っている訳ではなく」って言い方ですと、逆にGDPの結果を待たずとも展望レポ―トの見通しに対してGDPが下振れたそうなのが確実になった場合には・・・・・なのでしょうかという質問をしたくなる訳でして。


『(問) 今のお話の中でも、上下双方向のリスクについてみていかなければならないということで、市場では日銀の追加緩和に対する期待というのがまだ根強い訳ですが、委員自身はどういったときに追加緩和が必要だと思うかということを教えて下さい。』

直球質問過ぎるわw

『(答) 追加緩和が必要な時期について、今一概に申し上げることは非常に難しいと思います。今申し上げたように、上下双方向のリスク要因をしっかりチェックして必要な調整を行うということですが、それは、毎回の決定会合等で、その時々の色々な経済・物価情勢をしっかり点検し、議論するということです。先程も申し上げたように、今のところ経済・物価情勢は、私どもが考えているような順調なパスを辿っていますので、今どういう条件でどういう時にと申し上げるようなタイミングではないということでして、その時々の経済・物価情勢をしっかりチェックして、議論をして、その中で決めていくということが一番大事なことではないかと思っています。』

ということで直球質問過ぎたので避けられてしまいましたが(^^)、森本審議委員の今回の会見ですけれども、まあ景気見通しの所とかリスク認識の所とかで強気ポーズは継続しているものの、どうも金融政策運営に関する部分でツッコミを食らうと微妙な答えが返ってくるという感じでして、やはりこう2月決定会合で見られたあれれ感を払拭する感じでも無かったりしますなとゆー事で。

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2014/02/21

○森本審議委員講演:やはりメカニズムの説明に若干の混乱が

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140220a.pdf

・経済物価情勢の所は簡単に引用しておきます

『先行きの日本経済を展望すると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調的には0%台半ばとみられる潜在成長率を上回る成長を続けていくと予想しています。先進国を中心に海外経済が緩やかに回復していくもとで、輸出も緩やかに増加していくと考えられます。この間、設備投資は企業収益の改善につれて緩やかな増加基調をたどるとみられます。個人消費や住宅投資については、雇用者所得の改善が次第にはっきりとしていくとみられることから、振れを伴いつつも、基調的には底堅く推移するとみています。公共投資は、当面、2013年度補正予算の効果等にも支えられて増加傾向で推移したのち、高水準で推移するとみられます。日本銀行が1月に発表した展望レポート・中間評価における政策委員見通しの中央値では、2013年度の成長率は2.7%、2014年度は1.4%、2015年度は1.5%とみています。』

ということで展望レポートの話をしていますが、まあどう見ても2013年度2.7%は無理だろと思うのですけれども、この前の会見で総裁が大見得を切った件に関連する質問は飛んでいたっぽいので今日出る会見要旨を確認したいと思います。


『先行きは、石油製品価格等の押し上げ効果が剥落するため、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられます。その後は、景気回復に伴うマクロ的な需給バランスの改善や、期待の転換による中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇し、2015年度までの見通し期間の後半に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみています。具体的な数値で申し上げれば、日本銀行が1月に発表した展望レポート・中間評価における政策委員見通しの中央値では、2013年度の消費者物価(除く生鮮食品、2014・2015年度は消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の上昇率は0.7%、2014年度は1.3%、2015年度は1.9%とみています。』

つーことで数字は兎も角としまして、メカニズムとしては需給ギャップの改善などの要因による押し上げとエネルギーや円安などの押し上げ要因の前年対比の剥落効果による押し下げが相殺して1%台で推移する間に、物価が現実に1%(名目ベースは消費税もあるからもっと上)という状況を受けてインフレ期待に変化が起きるのでその後はインフレ期待による物価上昇効果もありますよという毎度のお話で、この辺に関する説明には当然ながら変化はありません。

ちなみに、海外経済に関する説明部分では新興国経済に関連する中で最近何かあちこちで山猫ストのように個別国通貨が盛大に下落したりしていますが、その件に関する言及は1行もございませんで、まあ森本審議委員の金懇での説明は基本的に執行部見解をベースにしていると思われますので、そーゆー意味では執行部見解的にこの辺りの部分について特段懸念するに当たらずというFEDのペースに似ていますなという所です。


・メカニズムの話が微妙に混乱

まずは『「量的・質的金融緩和」の効果』という所。

『この金融緩和策の実体経済への波及経路としては、主に名目の長期金利への低下圧力と予想物価上昇率の引き上げを通じた実質金利の引き下げと、ポートフォリオ・リバランス効果を念頭に置いて取り組んでいます。』

はあそうですか。

『実質金利の引き下げに際しては、まず巨額の国債買入れにより需給を引き締めることで、名目の長期金利に強力な低下圧力を加えています。そして、「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束し、これを裏付ける大規模な資産の買入れを継続することで、経済活動が活発化するとの人々の期待を高め、予想物価上昇率の引き上げを図ります。この結果、予想物価上昇率の上昇に比べて、名目金利の上昇を小幅にとどめることができれば、その分、実質金利を低下させることができます。』

実質金利キタコレ。

『企業や家計の支出行動は実質金利に影響されますので、実質金利が低下すれば、企業・家計の投資・消費活動の活性化につながると考えています。』

まあ従来の説明ですな。

『足もとの実質金利は、名目の長期金利が低位安定して推移する中、予想物価上昇率は全体として上昇しており、低下傾向にあるとみられます。先行きも、実際の物価上昇率の高まりと相俟って予想物価上昇率が高まっていくもとで、日本銀行による大規模な国債買入れが名目の長期金利に強力な低下圧力を加えることから、実質金利の低下傾向が続くと考えています。』

というのはまあ毎度の説明なのですが、では今般の貸出支援基金強化に関する話は何ですねんという部分ですけれども、『(2)「貸出支援基金」について』での説明はですな。

『これからも経済の好循環を持続させていくためには、企業や家計が緩和的な金融環境を実際に活用して資金を調達し、これが投資や支出の増加を通じて、マクロ的な需給バランスの改善につながり、そのうえで成長力も高まっていくことが大事です。』

えーっとですな、今しがた(と言っても4ページ程前)説明していたのは「企業や家計の支出行動は実質金利に影響される」という話なので、「緩和的な金融環境を実際に活用して〜投資や支出の増加を通じて〜」云々というのは実質金利の引き下げによって達成されるものであって、そもそも(昨日引用した総裁会見でのツッコミと同じになりますが)金融環境は緩和した状態にあるという認識をだいぶ前から日銀は示している訳で、その中で実質金利を下げたら自動的に企業や個人の資金需要が高まるんじゃないんですかねえ(棒読み)という所でありまする。

『今回の両制度の延長・見直しは、そうした動きを加速させるものと考えています。』

何で加速するのかが判らんですなあ(棒)、実質金利低下で銀行から見たらインバウンドで貸出が増えますよと言う話になる筈なのに、銀行に対してインセンティブを与えてアウトバウンドで貸出を伸ばさせるという話をここで引っ張り出すというのはやはりロジックの混乱(というか麿時代への回帰)と思いますけどねえ。

『企業部門では、投資をキャッシュ・フローの範囲内にとどめる動きが長らく続くもとで230兆円もの現預金を積み上げてきましたが、このところは外部からの資金調達で新たな投資に果敢にチャレンジする動きも増えてきています。日本銀行としても、これらの措置を通じて、企業の挑戦をしっかりとサポートして参りたいと考えています。』

えーっとだから実質金利が低下すると自動的にそういう事になるんじゃなかったでしたっけ。

『このような取り組みが、政府の競争力の強化に向けた「日本再興戦略」の具体的展開と相俟って、貸出増加や成長基盤の強化に向け、金融機関の一段と積極的な行動や企業や家計の前向きな資金需要の増加を促すことを期待しています。』

ま、この施策を宣伝するメリットの一つとして「政治対策」というのもあるんでしょうなあと意地悪く思ってしまうのはこの部分を見てという所で、まーそういう意味ではかつてハチャメチャなロジックで当座預金残高を拡大して、積極性のアピールと政治へのアピールを強くして政治資源を確保した(何せ前任が速水の優ちゃんでしたから)福井の俊ちゃん化となりますと、まあ出口戦略着手前の俊ちゃんがまさにそうでしたが、何を理屈に「次の一手」を捻りだして来るかさっぱりワカランチ会長(ちなみに俊ちゃんはSARSをネタに当座預金目標を拡大するという最早何が何だかワカランチなプレイを炸裂させたりしてましたからねえ)となるでしょうし、過去との整合性をしらっとスルーするようになるという事は昨年4月4日に広げた大風呂敷もいつまでもあると思わない方が良いかもしれませんな、とまあそういう事になると思います。

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2013/09/02

お題「森本審議委員講演&会見でござる」

最初に訂正なのですが、金曜にネタにした鶴光師匠の落語もとい岩田副総裁の講演ネタですが、師匠の高級な計算に基づく理論であります所の「当座預金残高が10%拡大すると予想物価上昇率が0.44%上昇する」というものを最初にそう引用しておきながら、後段であたくしが愚意見を申し上げる際に0.14%と全力で誤記してしまった事をお詫びして過去ログの方は既に訂正させて頂きました。

だって実際問題当座預金残高って3月末(581300億円)と8月末(886100億円)で比較すると52.4%拡大している訳で、実際のBEIの推移を拝見しますとそら0.44%じゃなくて0.14%と書きたくなる罠(まあ0.14%でも合っていないのだが)ということでございますよあっはっは。

#本当に素で間違えたのだが意識としてえーっと全然上がっていないよねというのがあったからタイポしたんでしょうなあwww


○遅れましたが森本審議委員講演でふ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130829a.pdf
わが国の経済・物価情勢と金融政策
── 岩手県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

・基本的には執行部ベースのお話が延々と続く

まあ何ですな、森本審議委員は最初の講演の時の質疑応答でちょっと言葉尻に不用意な所があってそのヘッドラインを受けて相場が動いて市場がムキーってなってしまったというひじょーに残念な事案があったせいかどうか知らんのですが、その後の講演が段々大人しくなってしまった(出身母体が盛大なやらかしをしたのも影響してるかもですが)のが残念なのですけど。

つーことでまあ基本的に延々と執行部ベースの話が続くのでありまして、「日銀の考え方を伝える」という意味ではさいですなという話なのではありますが、一方で森本さん独自の視点でどうのこうのというのが講演で中々出てこないというのも惜しいなと思います。折角の委員会なのですから、産業界の立場から見た場合にという形で、米国の言い方を使えばウォールストリートとメインストリートを繋ぐ独自見解というのもあっても良いのかなと思うのですけどね。

とは言え、米国の現状のようにもう連銀の人たちが勝手気ままにカオスモードというのもこれまた意見バラバラじゃんという話になるのでその辺の兼ね合いはムツカシヤとは思いまする、はい。


・とはいえ一応引用しておく

でまあそれはそれとして一応景気に関する部分を引用だけしておくが基本執行部と同じ話。

『まず、わが国の経済の先行きを見ていくうえで重要な海外経済の動向についてお話しさせて頂きます。海外経済は、一部に緩慢な動きもみられますが、米国経済の回復の足取りが確かなものになりつつあるなど、全体としては徐々に持ち直しに向かっています。先行きについては、緩やかながらも回復に転じていくとみていますが、新興国経済が伸び悩む中で、景気の回復テンポは総じて緩慢なものに止まると見込んでいます。これらの点について、地域別にもう少し詳しくお話ししたいと思います。』

となりまして地域別の話はありますが、米国経済はこれからも順調に回復、ユーロ圏は最悪期を脱して底入れから回復へ、中国は現状程度の安定成長軌道と来ております。

『海外経済を巡る不確実性として、米国の金融政策を巡る思惑が金融市場や新興国・資源国に与える影響や、中国経済、欧州債務問題の動向に十分な注意が必要だと考えています。』

ほう。

『米国では、連邦準備理事会(FRB)の資産買入れの減額が議論されはじめています。この背景には、米国経済が緩やかながらも着実に回復していることがあり、そのこと自体は、世界経済にとってプラス材料です。また、FRBは雇用情勢の改善が継続することが実際に資産買入れペースを調整していく前提であると繰り返し指摘しています。市場にもそうしたFRBの考え方は徐々に浸透しつつありますが、市場参加者が資産買入れ縮小を意識する中で、これまで投資していた新興国・資源国市場などから資金を引き揚げる動きがみられ、今後もそうしたリスクがあります。世界経済の回復力はなお脆弱であり、急激な資金流出がみられた場合の金融資本市場や実体経済への影響にかかる不確実性は大きいと考えています。』

実際はTaperingは経済の回復力云々よりもこれ以上QEを拡大する事のメリットが殆ど無いのに対して出口政策の困難さが飛躍的に高まるなどのデメリットを重視しているからじゃないかと思うのですけどねえ。確かに「利上げ」は遠い話だけど。

『中国経済については、安定成長を持続させていけるかが大きなポイントです。今後、製造業の過剰設備や格差問題など様々な課題を克服して安定成長を続けるうえで、「シャドーバンキング」などの経済成長を上回るペースでの急速な信用の拡大を抑えながら、構造改革を着実に進め、投資から消費へのリバランスを進めていくことができるか注視していく必要があります。』

『欧州債務問題を巡っては、ひと頃意識されていた「ユーロ崩壊」といった極端なテール・リスクは後退しているものの、不確実性はなお残されています。域内経済・金融の統合強化や財政改革への取り組みが後退するようなことがあれば、市場の緊張が再び高まる可能性も否定できません。当面は、9月のドイツ総選挙の帰趨など加盟国の政治情勢を注視していく必要があります。このほか中東情勢等を巡る地政学リスクにも目配りが必要です。』

とまあ無難にまとめています。


・日本経済の先行き見通し

これまた執行部ベースの話だが執行部ベースの話を確認する意味もあるので引用。

『先行きについては、輸出は海外経済の持ち直しや円高修正効果などにより緩やかに増加していくとみられます。国内需要については、公共投資や住宅投資の増加傾向が続くほか、企業収益や雇用環境の改善を反映して、設備投資が緩やかに増加し、個人消費も引き続き底堅く推移していくと考えられます。そうしたもとで、鉱工業生産も、企業からの聞き取り調査なども踏まえると、緩やかに増加していくことが見込まれています。以上の内外需要や生産面の動きを背景に、わが国経済は緩やかに回復していくと考えられます。』

足元のどう見てもコストプッシュの物価上昇による実質雇用者所得の減についてはスルーというのが現在の執行部クオリティ。

『こうした動きを若干敷衍しますと、昨年末以降の円高修正・株高の動きもあって、マインド面の改善がみられており、これが、当面、個人消費の下支えに寄与するとともに、企業の支出行動にも次第にプラスに作用していくと考えられます。』

ほほう。

『個人消費の増加は、株式の保有率が高い中高年層で目立っています。』

格差拡大ですね!!

『団塊世代は他の世代に比べて消費性向が高いという特徴があり、企業サイドの需要掘り起こしの努力もあって、引き続き消費活動は堅調さを維持するとみられます。』

何かそれって全然サステイナブルに見えないのですけれども・・・・・というのは気のせいですね!!!(白目)

『この間、設備投資については、先送りしてきた機械等の維持・更新投資の再開や防災・エネルギー関連の投資などから、緩やかに増加していくとみられます。公的需要の面からも、先行指標である公共工事請負額は既に大きく増加しており、今後、押し上げ効果が本格化していくと考えられます。』

財政刺激以外って全然サステイナブル以下同文。


・物価が持続的に上昇するには賃金の増加が鍵と

まあそらそうよという話ですが。

『こうした景気回復に向けた動きを持続させ、消費者物価の前年比上昇率で2%の「物価安定の目標」を実現していくうえでは、企業業績の改善が雇用者所得に波及することが鍵となります。』

まあそんな中で消費税増税+法人税減税(するのか知らんが)ですな(白目)。

『最近の雇用所得環境をみると、失業率や有効求人倍率などの労働需給が改善し、雇用者数が前年比プラスで推移するもと、1人当たり名目賃金は、パート比率の趨勢的な上昇による下押し圧力はありますが、夏季賞与が含まれる6月の特別給与は3年振りに増加に転じ、全体で前年比小幅のプラスにまで戻してきています。』

何か上手い事説明して煙に巻いてますけど結局一人当たりって上がってないですよね!!!

『先行きの不確実性はあるものの、こうした動きが所定内賃金の引き上げにもつながっていくか確認していきたいと思います。』

要するにまだ上がっていないと。


・よく消費税増税を実施するなら追加緩和という説を唱える人が居ますけど・・・・・・・・・・

会見等での質疑応答などでも良くこの辺にツッコミが来ていて、「下振れリスクなどが高まったら必要な手段を取る」と言わせてはいまして、どうも債券市場ではそんな期待している人いないと思いますが、他市場で微妙にそういう期待があるようなので(他市場の人が見てるか知らんが^^)念の為。

『これらの点を踏まえて先行き3か年度の日本経済について総括的に申し上げると、予定されている二度の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、生産・所得・支出の好循環が維持されるもとで、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想しています。』

『日本銀行が7月に発表した展望レポート・中間評価における政策委員見通しの中央値では、2013年度の成長率は各種経済対策の効果や駆け込み需要によりやや高めの2.8%、2014年度は駆け込みの反動もあり1.3%、2015年度は1.5%とみています。』

とまあこういう想定をしている訳ですから、ここで「消費税増税の経済に対する影響をかんがみ追加的な緩和措置」みたいなのが実施されるというのは政策ロジック的に有り得ない(それまでの見通しが嘘八百であったという話になるので)のでして、勘違いしている人のために念の為申し添えます。


・貸出支援関連措置が何時の間にやら重要施策に再び格上げになっている件について

これって先般の黒田総裁のジャクソンホール講演でも急に飛び出してきた話で、「金融政策でフィリップスカーブを思いっきり上方シフト」というだけでもアチャーの世界なのに、その上今度は「金融政策で中立金利即ち潜在成長率を引き上げる」という金融政策超万能理論まで登場したのでえーーーーという話を申し上げましたが、森本さんの講演でも貸出支援の辺りの説明ががががが。

金融政策の話の部分を全力でワープして『(2)「貸出支援基金」への取り組み』という所まで飛びます。

『こうした好循環を持続させていくためには、企業や家計が緩和的な金融環境を実際に活用して資金を調達し、これが投資や支出の増加を通じて、マクロ的な需給バランスの改善につながっていくことが大事だと考えています。資金需要面では、このところ前向きな動きがみられはじめていますが、なお多くの企業では設備投資を行う際に借入をせず、手許のキャッシュ・フローの範囲内で対応しています。このため、日本銀行では、強力な金融緩和に加えて、緩和的な金融環境を企業や家計に最大限に活かして頂ける状況を創出するために、「貸出支援基金」を設け、「貸出増加を支援するための資金供給」(貸出増加支援)と「成長基盤強化を支援するための資金供給」(成長基盤強化支援)の二つの措置を講じています。』

ほほう。

『「貸出増加を支援するための資金供給」(貸出増加支援)は、金融機関の一段と積極的な行動と企業や家計の前向きな資金需要の増加を促すことを狙いとして導入した措置です。』

でまあ説明があるのですがそこは飛ばして。

『ネット増加額を計算するうえで対象とする貸出には、円建てのほか、外貨建ても加えています。企業の国際的な業務展開とそれを支える金融機関の融資活動は、グローバルな需要を取り込んでいく観点から重要であり、外貨建ても含めて、海外に所在する企業への貸出や海外店貸出を支援することは、わが国の成長力を強化するうえで有効と考えています。』

>わが国の成長力を強化するうえで有効
>わが国の成長力を強化するうえで有効
>わが国の成長力を強化するうえで有効

ほほう。

『また、「成長基盤強化を支援するための資金供給」(成長基盤強化支援)では、成長分野への資金の流れを後押しすることを目的としています。日本銀行が、こうした資金供給の枠組みを導入したのは、デフレを克服し、物価安定の下での持続的な経済成長を実現するためには、世界に先駆けて少子高齢化が進むもとでわが国経済が直面している趨勢的な成長率低下というトレンドを逆転させ、中長期的な成長期待を高め、その軌道を引き上げていくことが重要と考えているためです。』

まあこれについては導入時からそういう話をしてましたが、めんどい(というのと無駄に長くなるのでというのがありますが)ので以下引用割愛しますけれども、この成長基盤強化支援の話と政府の成長戦略を絡めた説明になっていまして、何気にこの辺の話が壮大になってきているのが最近の説明の特徴でありまする。

つまりですね、先般の黒田総裁の説明も唐突に出てきた感はあったのですが、今回の森本審議委員の説明もQQEに関する説明って実際に実施した事やその効果についての説明も含めまして(引用してないけどまあ説明は執行部ペースです)3ページ半程度の量を割いているのですが、貸出増加支援と成長基盤強化支援の説明パートが2ページ半ございまして、当初QQE打ち込んだ時には完全にスルー状態だったこれらの麿総裁の置き土産ものがいつのまにやらまたウェイト高くなって復活傾向という風になっているのが何というか色々と味わいの深い物を感じるのでありました。


○会見なのですが「説明がやたら長いのに内容が超無難」という珍しいパターン

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1308b.pdf

今回の会見テキスト見ててちょっと珍しいな〜と思ったのは、小見出しの通りの事象であるという話でして、質疑応答の際に森本さんが結構な割合で長広舌を振るっているのですが、その演説の内容を見ると特段こう変わった話が無くて中身が思いっきり展望レポートや金融経済月報の説明のまんまであるという所でして、これは総裁や副総裁よりも執行部ベース(ナンノコッチャ^^)ではないかとまあそんな感じです。

・何が凄いと言ってこの最初の説明がすごく長い事

『(問) 2点質問させて頂きます。1点目は、当地での懇談会は10年振りとなりますが、地元出席者からの声と感想をお聞かせください。また、2点目は、岩手県は震災からの復興に向けて歩んでいる途上にありますが、岩手県経済の先行きについて、どのようにご覧になっているか、お聞かせ下さい。』

ということで、お約束の冒頭の質問があるのですが、この答が何と4ページ目の4分の1辺りの部分まで続いております。まあ岩手ということで震災絡みの話とか色々とお話をするテーマはあるにせよ、エライ説明が長い罠と。長いので引用しませんが。


・やたら消費税増税に関する質問が多かったですが・・・・・・

でまあ後の質疑なのですが、主に消費税増税に関連するものと、海外経済のリスク認識に関連するものが多かった(というかだいたいそればっかり)のですが、消費税関連での質問では「増税とセットで追加緩和はどうよ」というのがまあネタかなと思いますのでその辺でも。

『(問) 消費増税の関連で1点お伺いします。消費増税を行う場合、景気への悪影響を回避するために、財政出動や減税措置等の激変緩和策を求める声が出ております。そうした中で、日本銀行に対しても政府の対策と歩調を合わせて、との思惑が市場内に出ています。』

どこの市場????

『こうした状況の中で、日本銀行としては、2年で2%の「物価安定の目標」が達成できる見通しであれば、そのようなことは必要ないとの考えにあるのでしょうか。また、予定通りに増税が行われなかった場合のリスクについて、どのようなことが想定されるのか、お聞かせ下さい。』

つーことで増税しない場合のリスクに関する質問については「政府の話なので勘弁」という事なので引用割愛して追加緩和に関する部分から。

『(答)(前半割愛)そうした前提で、市場等において、政府と歩調を合わせて日銀がどうかという話ですが、政府の判断自体について、私どもは、どうなるかは分かりません。ただ、私どもとしては、経済の状況は緩やかに回復しつつあると認識しており、実体経済、金融市場にも、前向きな動きが広がっており、所得から支出への好循環もみられ始めている状況にあると思っています。こうした中で、物価も6月には前年比+ 0.4%となっており、私どもが考えているシナリオの中で動いていると思っています。今後も、こうした好循環のもとで、経済がバランス良く持続的に回復し、2%の「物価安定の目標」を達成していきたいと考えています。今は、経済が私どもの考えている状況で進んでおりますので、こうした状況下で、しっかり「物価安定の目標」の達成に向けて引き続き努力していきたいと思います。』

つまり消費税増税とリンクして追加緩和というのは有り得ないというのが結論ですね。

『当然ながら、4月の量的・質的金融緩和を導入した際に、これからも経済の上下のリスク要因をしっかり点検し、必要ならば調整していく方針を出していますので、そうした一般的な対応は考えていますが、現在のところ、私どもが考えているシナリオの中で動いていると考えています。』

ということですからね。


・海外経済のリスクは高まっていないという認識の香りがするのだが・・・・・・

『(問) 追加で質問ですが、日本銀行の海外経済に関する判断が、ここ数か月、若干弱めの判断が続いているかと思いますが、海外経済がさらに落ち込んで日本の輸出が影響を受けるリスクについて、現状認識をお聞かせ下さい。』

という質問があるのだが、これの説明がこれまた長いのよ。

『(答) 海外経済について、米国経済は、ご承知の通り、財政の下押し圧力というか下押し要因はあるものの、堅調な民需、とりわけ個人消費が堅調であるほか、住宅投資等々も堅調です。住宅市場は、強弱の数字が入り混じることがありますが、基本的には、価格、販売戸数についても回復していると評価しています。こうした家計部門が企業部門にも影響して、しっかりと回復していくと考えています。ユーロ圏経済についても、ご承知の通り、後退を続けていましたが、ここのところ、マインド面の改善も徐々に図られてきていますし、この4〜6月の経済も、7四半期振りにプラスに転化していますので、底入れから持ち直しを探る展開に基本的になっていると思います。』

『新興国・資源国についてですが、中国経済については、色々懸念する声がありますが、政府が各種改革に取り組む中で、一頃と比べれば低めではあるものの、安定した成長が続いていると思います。内需は引き続き堅調に推移していますし、中でも個人消費は良好な雇用・所得環境を背景に2桁の伸びが続いているほか、固定資産投資も、インフラ・不動産投資に支えられ、前年比2割増の伸びを続けています。ただ、生産活動をみますと、PMIはやや改善していますが、素材を中心に在庫調整の動きが続いていることなどから、一頃と比べて勢いを欠いていると思います。いずれにしても、中国経済の先行きは、堅調な内需に支えられ、現状程度の安定した成長が続くと思っています。』

『ただ、このような中で、これから中国政策当局が、従来のスピードよりも質を重視した構造改革に取り組んでいく方針を強く打ち出すと同時に、経済成長にも目配りする姿勢も示しています。これから、構造改革を進める過程において不確実性は高いですが、今、申し上げた通り、経済成長にも目配りするという姿勢からすると、現状程度の成長は期待できると思っています。』

『そのほかの新興国・資源国経済については、それぞれ国によって様々、区々であり、ご承知の通りですが、経常収支等々が弱い国については、米国のtapering観測に伴い資金流出等がみられ、これからのリスクも考えられます。もっとも、新興国全体をみますと、中国経済は現状程度の安定、そのほかの国は様々で、注意は必要ですが、全体としてはある程度バランスしているとみています。』

『海外経済全体としては、リスクはあるものの持ち直しに向かって進んでいると評価しています。こうした中で、輸出も、基本的には、海外経済の持ち直しとともに、円高修正が相俟って、基調的には増加していくと思っています。』

とまあこれだけ長い説明なのですが、どこかで見た文章ですなという位に最初の講演での説明内容と同じ話をこれでもかと続けている訳でして、結局どうですねんというのが判らん訳で、ちょっと後の方ではこんな質問がありまして・・・・・・・・・


『(問) 今日の講演の内容などを通して、海外経済が日本経済に与える影響というところで、海外経済の不確実性やリスクというのは、以前にも増して高まっているというような委員のご認識でよろしいでしょうか。』

『(答) 従来から、日本銀行の今の経済・物価情勢を色々見通す中で、やはり最大のリスク要因は、海外経済ということで、これは米国の中では財政の問題がある他、ユーロはテール危機こそ遠のきましたが、そのほかの様々なリスク要因があります。また、新興国・資源国については、足許、米国のtapering観測等々も踏まえたリスク要因というのが考えられるようになってきています。いずれにしても、従来から、海外経済については、私どもの最大のリスク要因というように考えておりましたので、その点について、特に引き続きしっかりウォッチしていきたいという姿勢には、特に変化はないと思っております。』

ということで、結局認識が高まったのか高まってないのか明言していませんが、講演の部分とか見てもそうなのですが、あまり海外経済のリスク認識が高まっているという風には思えない内容ではございますなという所では無いでしょうか。


ということで、まあ引用大会で長くなってしまいましたが、説明と言い質疑応答と言い見事なまでに執行部ベースというか日銀の月報や展望レポート等での説明になっておりますので、そーゆー意味では執行部の考えている説明ロジックが見えますなという所ではあります。

んでもってまあ今回の講演&会見見ててほーと思ったのは「先日の黒田総裁講演と同じように成長基盤強化支援措置を金融政策の効果発揮のロジックに使いだしている(QQE一本槍状態からちょっとした変化が見られる)」というのと、「何だかんだ言って下振れリスクをあまり見ていなくて海外経済にも強気ですよね」という所かなあとあたしゃ思いましたです、はい。

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2013/02/22

○森本審議委員記者会見も安全運転

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1302e.pdf

会見も今回は安全運転モードになっていてネタ的には無風に近いのでこれまたメモ程度に。

・政策オプションについてはノーコメント

『(問) 今の質問にも関連しますが、金融緩和の手段についてお伺いします。昨日発表された1月会合の議事要旨で、基金による国債買入れの年限を5年まで延長してはどうかという複数の委員の方の言及があったのですが、森本審議委員は、追加緩和のオプションとして年限長期化についてどのような見解をお持ちなのか、是非の理由も含めてお聞かせ下さい。』

と言う質問に関して。

『(答) 今、1年から3年という年限で長期国債の買入れを進めているのは、わが国の資金調達構造上、期間3年以下の貸出等の割合が高いことから、金融緩和を目的とした資産買入等の基金においては、それに概ね対応する期間の金利に働きかけることが最も効果的だと考え、実施しているためです。こうした考えのもとで、先程申し上げた基金の積み上げをしっかり達成していこうということですが、こうした大量の国債を買い入れることによって、周辺の金利にも低下圧力がかかり、今の状況になっていると思います。その上で、5年物まで買ってはどうかといった個別の金融政策については、その時々の経済・物価情勢等を入念にチェックしつつ、リスク要因も考慮に入れながら、どういった方策が一番良いのかということで判断しています。いわゆる金融政策方針については、効果とコストをしっかりチェックしながら考えていきたいと思っています。』

と言う答えなのですが、その前の質問でもマイナス金利の買入についてコメントしなかったりということで、別の質問でこんなのがあったのがワロタ。

『(問) 森本審議委員は、金融政策の1つ1つの選択肢についてはコメントされないということだと思いますが、買入対象国債の年限を5年まで延長するとか、あるいは日銀当座預金の超過準備付利金利を引き下げるないし撤廃するなど、金融政策のあらゆる選択肢を排除しないという姿勢なのでしょうか。(後半割愛、強調は引用者による)』

(2月24日追記:何かもうこの辺見ていると記者の方もやる気がねえというかやる気が失せましたという感じですね)


『(答) 私どもは、毎回の金融政策決定会合の中で、@経済物価情勢の現状・先行きの点検、それからAリスク要因の点検という、いわゆる2本柱をしっかり入念に行いながら、その時々に、金融緩和政策が必要かどうかということを議論しています。そうした中で、より長い年限の国債の買入れとか、日銀当座預金の超過準備付利金利を引き下げるないし撤廃するとか、様々な政策があるわけですが、これらについては、当然、効果とコストがあるので、こうしたことを色々と考えながら決めていくということです。(後半割愛)』

・・・・・・・・・何と言うノーコメント。


・リスクはバランスとな

しかし良く見ると森本さんの見解ではないのがオソロシス。

『(問) 午前中の講演の中で、経済の中心的見通しは上下双方向に不確実性があるというお話でした。物価については上振れのリスク、下振れのリスク、両方あると思いますが、今後の政策を考える上でどちらに重きを置いてみていきたいか、ご意見をお願いします。』

『(答) このところの金融政策決定会合においては、経済のリスクは上下双方向の不確実性があるということで、大方の政策委員は、上下ほぼバランスした見方をされているのではないかと思います。物価についても、経済と連動しているので、上下双方向のリスクがあるということで、大方の政策委員は、上下ほぼバランスした見方をされていると思っています。一方、先程も触れましたが、当面の物価情勢については、昨年の耐久消費財の価格調査品目の入れ替えや、エネルギー価格が上昇していたことの反動の問題があり、少し下振れる可能性はあろうかと思います。もっとも、これはリスクというよりも、見通しの問題であって、リスク要因という意味では、上下ほぼバランスしているというのが、政策委員の皆さんの大体の考え方・見通しではないかと思っています。』

ほうほうリスクはバランスですか・・・・・・・・と思って良く読みなおすと森本さん個人の意見を言っている訳では無くて単に政策委員会の大勢はリスクはバランスとおもっていますぞなもしという話になっているのがオソロシス。

てな感じで今回の森本さんの講演と会見は見事なまでに無風モードでした。ネタ的には残念無念(^^)。

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2013/02/21

○森本審議員講演は基本的に執行部ペースの説明なのでメモ程度である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130220a.pdf

説明や経済認識に関しては基本的に執行部ペースの説明なのですが、成長力強化の所で労働力人口の拡大についての話をしているのがちょっとオモロイ。

・成長力強化に労働力人口の実質的な強化を

『(成長力強化の重要性)』って所から。

『こうした状況を打破するためには、成長力を強化し、企業や家計の中長期的な成長期待を高め、慢性的な需要不足を解消することが必要となります。少子高齢化の進展を短期間で食い止めることは困難ですので、成長力を強化していくうえでは、その前提となる就業者数の確保と就業者一人一人が生み出す付加価値(付加価値生産性)の向上が必要です。』

キタコレ。

『就業者数の確保という点では、労働市場の柔軟性を高め、異なる産業間での労働力の移動や、女性および高齢者の労働参加を容易にするための取り組みを進めることが重要です。先行き、このまま労働力人口が減少していけば、2010年代の経済成長は年率−0.6%程度下押しされる見通しにあります。』

お、これ1月議事要旨に出てましたな。

『労働力人口の減少は、中国でも2012年から初めて減少に転じるなど、危機意識が生じていますが、これから先進国や新興国の多くの国でも直面する問題です。しかし、わが国において、仮に2030年までに、女性の労働力率がスウェーデン並みに上昇するとともに、60歳以上の高齢者の労働力率も上昇すれば、2010年代の労働力人口は年率+0.2%の増加となるという試算があります。』

ほほう。

『高齢者に関しては、この4月から、年金の支給開始年齢の65歳への引き上げに合わせた雇用延長措置が義務化されます。日本社会が、1980年代にかけて、55歳定年制から60歳定年制に移行することができた実績を踏まえれば、今後、制度改革や働き方の見直し・工夫を通じて、65歳まで、あるいはそれ以降も働くことが一般的になるという社会は決して実現できないものではありません。』

>65歳まで、あるいはそれ以降も働くことが一般的になるという社会は決して実現できないものではありません
>65歳まで、あるいはそれ以降も働くことが一般的になるという社会は決して実現できないものではありません
>65歳まで、あるいはそれ以降も働くことが一般的になるという社会は決して実現できないものではありません

お、おう・・・・・・・・・・・・・

『次に、付加価値生産性を高める観点では、新たなビジネスモデルの展開を含む広い意味でのイノベーションが実現しやすい経済の仕組みを構築していくことが必要だと思います。最近では、社会構造の変化を捉えて、幅広いシニアビジネスや環境・エネルギー分野、情報・通信分野などでの新しい取り組みも拡がりつつあります。』

『これらの取り組みを加速することにより、労働力人口や付加価値生産性の底上げを伴いながら、価格競争から新たな財・サービスを生み出す競争へと企業の中心戦略が変化していけば、実際に経済活動も活発化する中で、企業や家計の中長期的な成長期待が高まっていくと考えられます。』

まあこの辺ははあそうですかという感じですが。


・共同声明に関して

金融政策の説明もまあ公式見解ベースになるのですが、共同声明に関する所でこれまた1月議事要旨で出ていた文章がでておりまして森本さんの見解だったのですかねと思ったのでそこを引用。

『(3)政府と日本銀行の政策連携の強化』という所から。

『成長力強化は、新たなビジネスの創造や拡大に向けた企業や金融機関のチャレンジが積み重なって実現されていくものです。そうした際に、民間部門がチャレンジ精神を発揮しやすい環境を規制・制度改革などを通じて整備することが、政府の重要な役割だと思います。また、日本銀行はこれからも大規模な国債買入れを含め、強力な金融緩和を進めていきます。』

さいですな。

『こうした中、わが国の財政状況は世界の中でも極めて厳しい実態にあり、財政に対する信認が揺らぐことにもなれば、金利が上昇し、財政運営がさらに厳しくなるほか、金融緩和の効果が損なわれる惧れもあります。金融緩和の効果を十分に発揮していくうえでも、財政の健全化に対する市場の信認を確保していくことは重要な課題です。この点、今回の共同声明は、政府と日本銀行が、それぞれお互いの役割を明確に認識したうえで、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けて一体となって取り組むことを明らかにしたものであり、その意義は極めて大きいと考えています。』

思いっ切りこの趣旨の話が1月議事要旨にあったので引用してみました(^^)。

ということで後は特段変わった話をしている訳でも無いのでまあ講演はこんな所ですかな。一応物価が上昇する為のメカニズムの説明部分とかも一度目を通しておいても良いかもしれません(まあめんどいので引用割愛しましたが)。会見の方でどんな話をしているのかを見たいと思います。

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2012/08/09

○森本審議委員講演&会見から少々

まずは講演から
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120802a1.pdf

・講演は概ね執行部見解ベースですが

基本的に講演で示されている経済の見立ておよび景気見通しに関しては執行部見解のベースになっているのでそんなに変わった話をしている訳でも無いのですけれども、冒頭の所とかはふーんという感じです。つまりですな、

『まず、わが国の経済を左右する国際金融資本市場や海外経済の動向についてお話しさせて頂きます。』

って最初にありまして、まあそれ自体は普通の話ちゃあ普通の話なので森本さんがそこまで意識しているのかどうかはワカランチ会長ではあるのですが、内需が従来想定より堅調だから景気は今の所オンラインという話に対して、先行きに重要なのは海外要因、というのを強調しているのは、まあ海外が想定よりも今の所弱めに来ているという日銀見解と合わせますと「先行きは楽観してはいけません」という結論になる筈なんですよね。

先般の山口副総裁講演でも同じような感じで「日本経済の持続的な回復には輸出の拡大を起点とした循環メカニズムが働く必要がある」という指摘をしていまして、そういう文脈からややハト成分を感じたという事を申し上げたと思いますが、森本さんの今回の講演でもまずは海外要因の話をしておりまして(それはそれで現在の注目度からしたら当たり前ですけど)、同じように若干ハト的な物を感じる次第。


ということで海外の話ですが、まあ話自体はそんなに変わった話はしていませんけど折角なんでちょっとだけ引用。

『ギリシャでは新政権が発足し、6 月末の欧州首脳会議では、今後の成長戦略が謳われたことに加え、ESM を使った銀行への直接資本注入も視野に入れて、汎欧州の金融監督制度の創設を検討していくことなどで合意しました(図表2)。こうした合意を受け、スペインの金融システム不安と政府債務の増大の悪循環に歯止めが掛かるとの期待などから、市場は一旦落ち着きを取り戻しましたが、これも長続きはせず、同国の10 年物国債利回りは7%前後で推移しています。一方、銀行間の資金調達市場は、欧州中央銀行(ECB)による潤沢な資金供給等により、本年入り後は総じて安定した状態が続いています(図表3)。しかし、欧州の財政・経済構造改革や金融システム面の対応を巡る不確実性の解消には今暫く時間を要するものと思われます。欧州債務問題の展開には、これからも十分な注意が必要です。』

ということで、まあこれはそうですねという感じですな。何だかんだと言って欧州大騒ぎにはなるものの重大インシデントにならないのは銀行のファンディングが回っている所でして、こらまあ日本のかつての流れもそんな感じでしたが、とりあえずリクイディティーさえ回っていればソルベンシーがアレで飛ぶケースがあっても、ある程度の予見可能性がありますからして、市場参加者的にはいきなり不意打ちの闇討ち食らって大騒ぎ、という事にはならないっすよねとゆー事で(ソルベンシーが連鎖したらダメですけどね)。


海外経済情勢に関してもそんなに変わった話では無く。

『そうしたもとで、海外経済には緩やかながら改善の動きもみられていますが、全体としては減速した状態から脱していません(図表4)。』

では地域的にどうなのかという話ですが。

『地域別にみると、欧州経済については、輸出に持ち直しの動きがみられますが、域内需要の低迷を背景に停滞が続いています。周縁国を中心に、財政緊縮化への取組みや金融環境の悪化に伴う実体経済の下振れが、財政や金融機関の財務状況の一段の悪化に繋がるという悪循環に陥っています。(途中割愛)また、周縁国経済の悪化はコア国の企業マインドにも影響を及ぼしており、当面は欧州経済の停滞が続くとみられます。』

『次に米国経済は、基調としては緩やかな回復が続いています。個人消費は、ガソリン価格下落に伴う実質購買力の増加もあって底堅く推移し、住宅市場にも持ち直しの兆しが窺われます。また、設備投資は、足許、底堅い企業収益を背景に増加傾向にあります。ただ、企業マインドに弱めの動きがみられるほか、雇用者数の増勢はこのところ鈍化しています。さらに、バランスシート調整圧力が残る中で、欧州債務問題の影響や、来年初から予定されている財政支出削減や年末に期限切れとなる減税の取扱い等の、いわゆる「財政の崖」を巡る不確実性により、家計や企業は支出スタンスを積極化させ難いとみられます。これらの点を勘案すると、米国経済の回復は先行きも緩やかなものになるとみられます。』

『この間、新興国・資源国経済をみますと、成長ペースが鈍化した状態から脱していませんが、総じてみれば内需が堅調に推移するもとで高めの成長を維持しています。(途中思いっきり割愛)先行きは、ブラジル等その他新興国も含めて、インフレ率の低下に伴う実質購買力の回復や緩和的な金融環境のもと、成長率は次第に高まっていくものとみています。』

ということで、概ね執行部見解ペースと同じではないかと思います。


でまあ日本経済に関してですけど。

『日本経済は、リーマン・ショックからの回復途上において、東日本大震災により再び大きく落ち込んだ後、昨年秋口までは着実に持ち直してきましたが、その後は、海外経済減速や円高の影響等から、本年春先までは全体として横ばい圏内の動きとなりました(図表6)。このところは、復興関連需要や個人消費等の国内需要が堅調に推移しているほか、輸出にも持ち直しの動きがみられ、全体として緩やかに持ち直しつつあります(図表7)。』

『不確実性は大きいですが、6 月の日銀短観や地域経済報告でも確認されましたように、わが国経済の先行きは、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられます。こうした内外需要のもとで、生産・所得・支出の前向きな循環メカニズムが徐々に強まることから、2012 年度全体をみると、比較的高い成長率となることが予想されます。2013 年度については、復興需要による景気押し上げ効果が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012 年度対比では幾分鈍化しますが、海外経済が全体として高めの成長を続けるもとで、堅調に推移するものと考えられます。』

という話なのですが、しかし前半の海外見通しって色々な置きを入れている中での強気見通しなのになんでこうなるんでしょというのが毎度の感想ではございます。

で、リスク要因は欧州債務問題、というのも同じですので面倒なので割愛。


・会見では執行部見解ベースだけでは無い部分もあったりする

でもって会見ですが
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1208a.pdf

『(答) 本日の懇談会では、石川県の各界を代表する方々から、当地経済の現状や今後取り組むべき課題のほか、私ども日本銀行の金融政策運営に対して、大変貴重なご意見・ご要望を数多く頂戴し、極めて有意義な意見交換ができたと感謝しています。ご出席頂いた各界の代表者の方々に改めてお礼を申し上げたいと思います。ご質問の懇談会の内容ですが、席上頂戴したご意見・ご要望を踏まえた私なりの印象を申し上げると、大きく3 点にまとめられます。』

普段は最初の所をあまりネタにしませんけど今回は森本さんのまとめがほほうという感じで。

『まず第1 に、製造業を中心に、欧州債務問題など海外経済減速や為替円高による影響を懸念されるご発言のほか、建設関連、個人消費関連サービスなどでは、価格競争が一段と激しさを増しており、中小・零細企業の業況は厳しいとのご指摘を頂戴したところです。』

ということで、こういう厳しい認識を一発目にカマすというのはまあ執行部見解ペースの講演のトーンとはまた微妙に違う感じがしましてほほーって所。

『中小・零細企業の金融の安定という観点では、行政でもファンドを創設するなど対応を進めておられますが、来年3 月の金融円滑化法の終了に伴う中小・零細企業への影響を懸念するご意見も多数頂戴しました。』

また延長になるんですかね。

『海外経済情勢をみると、欧州債務問題を巡り、不透明感の強い状態が続いています。また、欧州以外にも世界経済には不確実性が存在しているだけに、海外経済情勢および為替円高が及ぼす影響については、日本銀行として注意深くみていく必要があると認識しています。』

つーことで、この部分で為替円高という言葉が2回出るでござるの巻となっておりまして、先般の山口副総裁の講演後会見でも(広島での講演でしたからこちらも輸出産業が集積してますし)円高の悪影響についての指摘をしていまして、どこぞの麿のように円高は内需には好影響もとかいうような事実ではあるがノンキナトウサンな話をしない所が目に付くなあとか思っているあたくし。

『第3 は、私ども日本銀行の金融政策運営に対するご要望です。これからも経済物価情勢を丹念に点検しながら、適切な金融政策運営に努めていきたいと考えていますが、そのうえで現在の最大のリスクである欧州債務問題を始めとする海外経済減速への対応については、日本銀行としても注意深くみていく必要があるということを改めて切に認識しました。また、地域の実情をしっかり踏まえ金融政策運営に引き続きあたって欲しいとのご要望を数多くの方から頂戴しました。』

つーことで、この辺りもまあ講演よりはハト成分あるかなと思った所ですが、若干あたくしの深読みのし過ぎかもしれませんのでそこは一つよろしゅうに。


・円高に関連して更にこんな質問が

『(問) 先程の審議委員のお話では、為替円高について、日本銀行として特に注意する必要があるとのことでしたが、先月末よりは幾分か円安方向となっているものの、為替円高は徐々に進行していると思います。特にユーロに対して円高の状態となっていますが、こうした状況を踏まえて、以前よりさらに為替に注意しなければならないというお考えでしょうか。また、先日、山口副総裁が、為替円高が日本銀行のシナリオの大きなリスクになる場合、金融緩和を躊躇しないと発言されましたが、そうしたレベルになりつつあるのかどうか、森本審議委員のご見解をお伺いします。』

『(答) 為替については、申し上げるまでもなく、内外金利差や経常収支の状況など、様々な要因に左右されます。このところの為替円高は、特に欧州債務問題等を背景とした投資家のリスク回避姿勢が強まる中で、相対的に安全とみられている円が買われたことによる面が強いのではないかと認識しています。ただし、水準自体については、具体的にコメントすることは差し控えさせて頂きたいと思います。』

とまあここまでは執行部ベースでもこう来るコメントですが。

『いずれにしても、こうした為替円高は、海外経済の先行きを巡る不確実性が大きい今の局面においては、輸出や企業収益の減少、あるいは企業マインドの悪化などを通じて、日本経済にマイナスの影響を及ぼす可能性がありますので、これについては特に注意する必要があると思っています。これは従来からも注視してきたところですし、これからも丹念に経済・物価情勢を点検して、その影響をみていきたいと考えています。』

つーことで、山口副総裁ほどのサービス成分はありませんけれども、やはり為替円高の悪影響を強調しておりまして、ややハト成分という所でよろしいのではないかと認識します。


・基金国債買入の下限撤廃に関して

『(問) 少し技術的な話になり恐縮ですが、昨日実施した資産買入等の基金を通じた長期国債買入れオペで札割れが発生しています。7 月の金融政策決定会合で、札割れ対策を打ち出したばかりですが、こうした札割れが長期国債の買入れを進めるにあたって支障となり、年末までに65 兆円、来年6 月末までに70 兆円という目標達成が難しくなるとみていらっしゃるか、教えて下さい。また、短期国債等の買入れについて、下限金利を撤廃されていますが、今後、長期国債の買入れについても、下限金利を撤廃するという選択肢についてどのようにお考えか、お聞かせ願います。』

『(答) 私どもは強力な金融緩和を推進するということで、資産買入等の基金について着実に買入れを進めていきたいと思っています。ご質問を頂いた長期国債の買入れは、昨日札割れが生じたわけですが、これについては従来から申し上げている通り、強力な金融緩和の効果が顕れている証左であると思っています。』

でまあこの続きが当然あるのですがその前に挟みますと(^^)、現在の包括緩和政策における資産買入等基金の位置づけが微妙に曖昧なのが調節を実施する現場に対する皺寄せになっている、というのがあって、そもそも包括緩和は「量」で勝負しているのか「金利」で勝負しているのかがさっぱりワカランチ会長というかコウモリ状態で曖昧にしているというのかというのがございますからねえというお話ですが、その点は森本さんも以下のように説明。

『ただ、そうは言いながらも、私どもとしては、金融緩和を着実に進めていくことが大事であると思っており、運用面でも色々工夫を加えながら、買入れをしっかりやっていくということで進めてきています。』

つまり、そもそも包括緩和の枠組みという中では金利(およびリスクプレミアム)に働きかけるという建付けになっていて、基本的には金利で勝負なのですけれども、実際問題としてはその買入基金の見せ方が量で勝負という形になっているので、こういう複雑骨折のような事が起きて、調節担当部署が色々とオモシロオペを実施しないといかんとゆー素敵な事態になっているのでございますけどね。

>運用面でも色々工夫を加えながら
>運用面でも色々工夫を加えながら
>運用面でも色々工夫を加えながら

・・・・・・・どう見ても調節担当部署にマルナゲータです本当にありがとうございました。

『この積み上げに支障はないのかという点については、昨日の結果はそういうことですが、この状況をよくみながら、市場で資金余剰感がある中で、どのような資金ニーズがあって、今後どのように動いていくかについて、もう少しみながら色々とやっていく必要があるのではないかと思っています。』

でですな、この後でちょっとだけメモ書きしておきますが、昨日の債券市場で2年カレント物の利回りがサクッと上昇しまして、0.095%とかの出合になっていたようでございまして、そんなこんなでこの辺の需給に変化が起きると下限撤廃に関して今月は様子見して粘る、というような話になるかもしれないなあとか思うのでありまして、この感じだと今月は下限撤廃スルーかもしれませんな。

まーただのテクニカルな問題だし、下限撤廃したからと言って金利が本当に低下するかと言えば、やはり超過準備付利金利というのが作用する、という方が大きいのでございまして、需給が極端に変わらなければ下限撤廃しても極端に市場が変わる訳では無いっすし、ちょうど海外中銀が様子見モードになっている時なので、テクニカルな変更如きでも大好感してくれるかもしれないとか思いますと(^^)、今回(というか今日ですが)下限撤廃してもエエンチャイマスカという無責任な見解があたくしの無責任見解。


つーことで森本審議委員ネタが遅くなりまして誠に申し訳ないm(__)m

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2012/03/26

○森本審議委員会見もまあ景気慎重気味

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1203c.pdf

・電力供給懸念に関して

冒頭の「どういう話がありましたか」という質問に対しての部分から。

『こうした中、本日の議論全てを網羅することはできませんが、席上聞かれた話を整理して申し上げると、まず、「大半の地元企業にとっては、まだまだ高い水準にある円高、原油高、電力供給不足懸念等により引き続き厳しい状況にある」というお話や、「ビジネスのやり方を見直す時期に来ており、国内空洞化も懸念される」といった声、また、「事業再構築の必要があるが、海外戦略を企画・立案する人材がなかなか得られない、不足している」といった収益環境の厳しさや環境変化への対応の難しさを指摘する話が聞かれたところです。また、「金融円滑化法の下での企業再生支援の取組みの難しさ」についてもお話がありました。』

円高、原油高、電力供給不足懸念となという部分と、ビジネスのやり方を見直す云々の辺りがこらまたあちゃーって感じでして、まあ基調として森本審議委員は国内経済に関してやや厳しい見方、つーか構造的にちと問題含みみたいな認識を示しているなあという感じを受けましたがどうでしょうかね。


で、その電力に関しては原発停止による電力不足懸念のリスクに関して改めて質問されていまして、そちらではこのように。

『2点目の原発停止に伴う需給問題については、関電はご承知の通り原子力ウェイトが高いため、当地域においては非常に高い関心事項の1つだと思います。関電管内では、2月20日をもって、原子力発電が全て停止となり、これから、原発再開については安全性をしっかり確認した上で、政府をはじめ関係者間で協議されていくことになると思いますので、大変申し訳ありませんが、私からは具体的にコメントすることは差し控えさせて頂きたいと思います。』

そらまあ東電出身という立場ですから益々コメントできんわな。

『ただ、その上で当然ながら電力は、経済・生産活動に非常に大きな役割を果たしていますので、今年の夏をはじめ当面の電力需給の問題に加えて、仮に関西の電力供給が中長期的に不安定という状況になれば、当該地域での製造コストや投資という面での見直しもあり得ますし、兵庫県でも潜在的な経済活動水準が低下するリスクが浮上してくるのではないかと思っています。具体的には、当地への企業誘致・立地などにおいても影響を与えることも懸念されますので、十分に注意してみていく必要があると思っています。』

という話になりますわな。更に電力不足に関しては最後でも質問がありまして・・・・・・

『(問) 先ほどの2点目の質問について追加ですが、電力不足の件については、全国的な経済全体への下押し懸念についてどのようにご覧になっていらっしゃるのか。政治情勢のところはコメントが難しいと思いますが、今日の懇談でもお話が出たかも知れませんが、企業サイドからモノ自体がないことへの懸念が相当高まっていると思われますので、経済全体への下押し圧力としてはどのようにみているのか、改めてお伺いします。』

『(答) よく経済界の皆さんが「六重苦」――従来の「五重苦」に電力需給問題を加えて――とおっしゃいますが、エネルギーインフラが不安定になっていないか、というのは企業経営上大変大きな問題になっていると思います。』

全くですな。

『これが全国レベルでどういった状況になっていくのかということで、先ほど申し上げたように、原発の再開問題については安全第一、安全を十分に確認した上で、政府をはじめ関係者で色々協議されていくことになると思います。そのうえで、電力供給に関する不確実性であるとか、火力発電への依存度の高まり等を映じたコスト高という問題が生じる可能性があるとすると、輸出や生産だけではなく、経済活動全体に対してマイナスの影響が及びますし、中長期的にみても、その不安感が拭えないとすると、国内企業の競争力低下、あるいは生産設備の海外シフトといったことを招く可能性もありますので、私どもとしては十分に注視して参りたいと思っています。』

まあ日銀としては十分に注視するしかやる事無いのですが、また今年も夏に向けて節電大会と言う事に成ると、その前の街の人出と最近の人出というのを比較すりゃ東京の方だと直ぐ判ると思いますけど経済活動という意味ではまたまた下押し圧力ですわなあと思ったりするあたくしでございます。


・下振れ懸念に関連して

こんな質問も。

『(問) 本日の挨拶の内容をみると、特に欧州問題について――先日、ギリシャ問題については国債の償還が一段落したわけですが――、先行きについてはかなり強い懸念を持たれている印象を受けましたが、今後の欧州のリスクについてどのようにみていらっしゃいますか。(後半割愛)』

でまあ答えが微妙に長いのですけれども、ここまでの経緯に関する話の部分を割愛して該当部分の後半を引用。

『今後、与えられた時間を活かして、財政健全化策や競争力強化策を着実に実行することが求められますが、これらがどういう風に進んでいくのか、という面で不安定要因があると思っています。』

『ギリシャという個別国の財政改革に加えて、欧州債務問題の解決に不可欠である2つのポイントとして、1つはユーロ圏内部の財政ガバナンスの強化、もう1つはいわゆるファイヤーウォールの拡充といった大きな問題があろうかと思います。まず、1つ目の財政ガバナンス強化については、3月初のEU首脳会合で新たな財政協定が署名されるなど、一定の進展がみられています。一方、ファイヤーウォールの問題については、色々と検討される中で、決定が当初予定の3月初から3月末にずれ込んでいて、不透明感が払拭されていません。こうした状況において、関係者による粘り強い努力が、これから実を結んでいくことを期待したいと思っています。』

ふむふむ。

『もう1つ、欧州債務問題の世界経済への波及という意味で、いわゆるデレバレッジングの問題があり、これによる金融面からの下押し圧力が引き続き懸念材料として残っています。今のところ、これが大きな影響をもたらしているわけではありませんが、先行き、欧州金融機関の資金調達環境が悪化すれば、中東欧向け与信に加え、アジアなど他地域向けでも、プレゼンスの大きい貿易金融やプロジェクトファイナンスなどが削減される可能性があり、このような欧州債務問題に対する対応次第では、世界経済に大きな影響を与える可能性もあって、それが日本にも影響してくるおそれがあります。』

ということで、まあ普通の話ではあるのですが。

『このように、ひとまず緊張は和らいでいますが、色々な不安定要因を考えると、これらをこれからも注視していかなければならないと思っています。』

という風に締めている(この後別の質問に対する回答が続くので締めではないが)ので、まあ先行きの見方は慎重という印象を与える受け答えという所ではないでしょうか。


・宮尾委員の追加緩和提案に関して

という質問がありましてその答えの部分から。

『それから、前回、宮尾審議委員からの増額の提案に対して、他の8人の政策委員が反対したわけですが、これも繰り返しになって恐縮ですが、デフレからの脱却は、成長力強化への努力と金融面からの強力な下支えを通じて、実現されていくものだという基本的な考え方のもとで、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の金融緩和措置を進めていこう、合わせて、この3月に成長力強化のために成長基盤強化支援にも取り組んでいくというパッケージで方針を打ち出したわけです。我々としてはデフレ脱却への動きを2つのパッケージで上手く起動して、デフレ脱却へ向かって進んでいくことを期待したわけです。これからも経済・物価情勢を丹念に点検しながら、適切な政策運営に努めていきたいというのが反対した意思です。』

ということで、まあ今回はこの前出した追加緩和の効果を見るという話のようです。


・物価安定の目途関連

上記と同じ質疑の中で目途の数値の見直しについてどうよという質問がありましてですな。

『2月に「中長期的な物価安定の目途」導入に当たって、議事要旨の中で「2%」あるいは「1〜2%」という記述があったと思いますが、色々な議論の上に、結果的に「中長期的な物価安定の目途」として「2%以下のプラスの領域で、当面1%を目途」として頑張っていこうという決定が結論になったわけです。この1%が低いのではないかなど色々なご意見があるわけですが、これを色々議論して結論に至った私どもの根拠とは(根拠の部分に関しては「物価安定の目途」公表文書と同じなので引用割愛)私どもが色々と議論した中において、「1%」とか「1〜2%」という議論があったわけです。』

『いわゆる「物価観」を取り上げると、緩やかなデフレに陥る前から海外主要国に比べて一貫して低い状態が続いています。また実際の消費者物価の上昇率をみても、バブル期(1986〜1990年)でも年平均で+1.3%に過ぎず、同期間、G7では同+3.4%ぐらいだったと思います。このように物価が安定していると、日本の家計や企業が考える物価上昇率は、やはり諸外国より幾分低いと判断されるのが通常の見方と思っています。そういう国民の物価観の下で、一気にこれまであまり経験していないような物価上昇率を目指そうとした場合には、家計や企業がかえって大きな不確実性に直面する可能性があり、思いがけない長期金利の上昇を招くおそれもないわけではありません。』

まあ長期金利上昇に関しては取ってつけたような言い訳のような気はしますが、バブル期でもCPIは最後の最後まで安定していた(最後の方に上昇した)という話はそうなんですよねえ。

『こうした色々な観点を踏まえて、当面1%を目指し、強力な金融緩和と成長力強化の支援のパッケージで、私どもとしてしっかり強いメッセージを出して頑張っていこうということになったわけです。今後についても色々な考え方が皆さんにある中で、これからの経済状況等が構造的に変化していくかといった、色々な視点を踏まえながら、原則として1年ごとに点検していくとの方針の中で、また議論していきたいと考えています。』

という事で、まあ森本審議委員の真意がどの辺にあるのか推測しにくい所ではございますけれども、何となく森本さんはそんなに上の数字をみている訳では無さそうという所でして、先ほどの追加緩和提案に対する回答も合わせると、追加緩和に関しての前のめり感はあまり感じない、という所かなあと思いましたがどうでしょうか。

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2012/03/23

ということで(どういうことだ)まずは森本審議委員講演から。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120322a.pdf

○概ねこんな感じかと

・景気については微妙に弱めの話だが基本的には金融政策月報ベース
・ただ下振れリスク強調はちょっと目に付く
・物価に関してはまあ普通の話
・成長戦略の話や財政の話をけっこうきっちり行っている
・金融政策に関しては第2の柱の強調もしていてあまり追加緩和モードではない

という風に思った次第で、引用の前に思ったのですけど、どうも2月の金融政策決定会合議事要旨見ててもちょっと思ったのですが、政策委員会の中で今後の金融政策スタンスに関してより積極的な追加緩和をジャンジャンアピールしちゃいましょうというある意味現実派の俊ちゃんスキームっぽいタイプと、まあそうは言っても後先考えないで野放図に緩和(というか資産買入)拡大するのは如何なものかというタイプに割れている感じを受けたのですが、もしかしたらその辺今後の審議委員の講演とか発言とかを見るとその辺りに関してニュアンスが出てタイプ別分析みたいなのが出来るようになるかもしれないなあって妄想した次第。まあ考えすぎ鴨しれませんのでその辺はあまり気にしないで下さいませ。とりあえず忘れないようにメモしてみたという所で。

それでは簡単に引用を。


○景気や物価に関して

これまでの流れについての話とかありますが、まあ頭の部分はスルーして。

・海外経済

『こうしたもとで、海外経済は減速した状態から脱していません。わが国の輸出ウェイトで加重平均した海外経済の成長率をみると、リーマン・ショックからの回復局面の2010年には前年比+6.8%、2011年1〜3月期には前期比年率+6.5%と高い伸びを示していましたが、7〜9月期には+3%台に減速し、10〜12月期には+0.9%となっています。』

海外経済は減速した状態から脱していませんとな。で、欧州ですが。

『欧州経済をみると、昨年後半以降、各国の財政緊縮化への取組みや金融機関の貸出態度厳格化が、企業や家計のマインドを冷やしています。さらに、一部の国では、こうした実体経済の悪化が財政や金融機関の財務状況の一段の悪化に繋がるという悪循環に陥っており、停滞感を強めています。足許では、ドイツの景況感が改善するなど持ち直しの兆しもみられていますが、財政緊縮の影響が尾を引く中、欧州経済全体に前向きな循環が作動するには、なお時間を要すると思われます。』

まあ欧州はそうなりますなという所ですが、「前向きな循環が作動するには」という辺りが日銀っぽい言い方になってて森本さん(は東電出身)もすっかりこういう言い回しに慣れてきましたなあとか思うのですけれども(^^)。

『次に米国経済は、昨年夏から秋にかけて、国際金融資本市場の緊張や財政問題を受けて景況感が悪化しました。足許では、緩和的な金融環境のもとで、株価がリーマン・ショック後の高値圏で推移しているほか、雇用情勢の改善などから個人消費も底堅く推移していますが、家計のバランスシート調整圧力が根強く続く中、経済全体の回復は総じて緩やかなものとなっています。先行きも、こうしたバランスシート調整に加えて、財政問題が尾を引くとみられることから、回復ペースは引き続き緩やかなものに止まると思われます。』

ということで、まあ字面を見るとやや弱気っぽいニュアンスですが、話の大筋は金融経済月報ベースと同じような感じだと思います。

『この間、新興国・資源国経済をみると、欧州経済の減速などを受けて成長ペースが幾分鈍化してはいますが、総じてみれば旺盛な内需を背景に高めの成長を維持しています。』

ほう。

『このうち中国経済は、これまで高成長を続けてきましたが、輸出や不動産投資等の減速により、2011年の経済成長率は前年の伸び率を下回る+9.2%となりました。2012年については民間見通しでは+8%半ばへの減速が予測されています。ただ、安定成長に軸足を移すもとで伸び率が縮小するとは言え、所得水準の上昇や都市化を背景とする構造的な内需拡大の余地は大きく、高めの成長は続けていくとみています。』

『NIEs・ASEAN経済については、昨年後半は、インフレ率の高まりや先進国向け輸出の減少、さらにはタイの洪水の影響もあって減速しましたが、先行きは、洪水被害からの復旧に加えて緩和的な金融環境が経済活動を下支えすると考えられます。』

『また、新興国・資源国全体としてここへきてインフレ率が徐々に低下してきており、実質購買力の回復による消費下支えも期待できます。こうした新興国・資源国の成長が今後も世界経済を牽引していくものとみています。』

という話で、新興国に関してはちょうど先日ネタにした2月決定会合議事要旨での海外経済認識と大体同じ話をしていまして、概ね公式見解ペースという所でしょうか。


・先行きの下振れについて強調

『(5)先行きの見通しに対する不確実性』というのがその次にありましてですな。

『先程、申し上げましたように、わが国経済は新年度前半には緩やかな回復経路に復していくことを中心的な見通しとしていますが、全体として景気を下振れさせる方向の不確実性が高い状況にあります。』

という話を入れていまして、まあ足元で日銀の景気判断とか徐々に強含みになっている(水準的には弱いけど)ので、この辺の下振れリスク強調はほほーという感じです。

でまあ長くなるので引用しませんが、その下振れリスクに関しては、

『ここでは、実体経済に大きな影響を与え得るリスクとして、欧州債務問題の行方、イランに関する地政学リスクの高まりによる原油高騰の可能性、夏場の電力需給の不確実性の3点に触れたいと思います。』

ということです。ちなみに原油高騰に関しては実質購買力の低下やGDPの下押し圧力という話をしておりまして、さすがにまあ原油高騰でデフレ脱却だぜヒャッハーという話は出てきておりません、当たり前ですが(^^)。


・物価に関して

こちらはまあ普通の見通しです。

『企業物価指数の前年比をみると、ここ数か月、前年比プラス幅は徐々に縮小してきましたが、足許の国際商品市況の上昇を受けて2月はこうした傾向に歯止めがかかっており、先行きは強含んでいくとみられます。』

『次に生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比をみると、(一部割愛)昨年夏頃からは概ねゼロ近傍で推移しています。当面こうした動きが続くとみていますが、その後は、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、需給ギャップの改善などを背景に、徐々にプラスに転じていくと考えています。』

ということでまあ普通の見通しですな。


○成長戦略とか財政再建とか

その次が『4.日本経済の中長期的な課題』という部分。

『ここで、現在のデフレの背景について確認しておきたいと思います。』ということで物価に関する長期的な話をしております。

『こうした物価動向の背景には、外需減退などの循環的な要因に加えて、わが国の人口動態に根差した構造的な内需の弱さも影響し、マクロ経済全体として需要が供給能力を下回る状態、つまり需給ギャップのマイナスの状態が長く続いていることがあります。わが国では、先進国に先駆けて高齢化が進み、15歳から64歳までの人口である生産年齢人口が減少に転じました。先行きは減少ペースが加速していく見込みで、国立社会保障・人口問題研究所の予測によれば1995年の8,727万人をピークに2060年には約半数の4,418万人まで減少するとしています。』

ほほう。

『わが国経済が、こうした構造的な縮小圧力のもとで持続的成長を実現するには、何とか成長力を高め、成長期待を引き上げることが不可欠です。このためには、(1)新しい需要を創出し、生産年齢人口が減少する中にあっても、国内の労働力を確保していくこと、(2)雇用創出効果の高い産業の生産性を高めていくことが必要になります。』

ということで、色々と話があるのですが、その辺は長くなるので割愛しますが、まあ労働生産性云々の部分に関してだけ引用しておきますだよ。

『1990年代以降20年間のわが国の労働生産性の伸び率は年平均1%程度に停滞していますが、これには労働生産性の伸び率が低いサービス業への就業者のシフトが影響しています。日本生産性本部のまとめによれば、この20年間の労働生産性は、製造業が年平均で2.5%と比較的高い伸びを続けているのに対し、雇用創出効果の高いサービス業は同1.0%程度に止まっています。そうした半面、就業構造の変化をみると、製造業の就業者が1990年代半ばから減少に転じる一方で、サービス業がこれを逆転し、足許では全産業の3割に達しています。』

ふーむ。

『とりわけ、高齢化の進展に伴って医療・介護などのシニア向けサービスの需要拡大が顕著で、こうした動きは今後も続くとみられます。独創的で付加価値の高いサービスの提供などにより、サービス業の労働生産性を高めていくことが、わが国の成長力強化の鍵になるのではないかと思います。そのうえで、さらなる潜在需要の掘り起こしで雇用を増やし、労働生産性も向上させていくという前向きの循環につなげていくことが大事だと考えています。』

とまあさらっとそういう話になっているのですが、どうもあたくしの頭が悪いせいか、「サービス業の労働生産性をどうやって高めるんじゃろ」というのが????ではございまする。


んでまあその先の方で財政再建の話がごじゃりますが、そんなに変な話をしている訳でも無く。

『欧州債務問題の例にあるように、財政健全化に向けた取組み姿勢にひとたび市場が疑義を持つと、こうした状況は非連続に変化する可能性があります。これからも社会保障費等の増加圧力がかかり続けますので、財政規律に対する信頼が維持されている間に、歳出・歳入の両面で財政の構造改革を進めていく必要があります。』

とまあ普通は普通ですが、足元の政治状況では歳出の話に全然ならず(本質的な所じゃない公務員給与削減だの何だのという話は熱心だが、肝心なのは社会保障でしょと思う訳で)、歳入の話ではまあ揉めまくりという状況は何ぞそれという感じですな。


○金融政策に関して

・第二の柱

『5.金融政策運営』という所で、『ここからは、金融政策運営についてお話しします。』となりましてまあ色々と説明しているのですが、時間軸政策の話をしている中で第二の柱にきっちり言及しているのがほほーという感じです。

『なお、消費者物価の動きとは別に、資産価格が上昇し、バブルが発生するようなことがあれば、結果として、長い目でみた経済・物価の安定が大きく損なわれる可能性があります。このため、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないことを、強力な金融緩和を推進していく条件としています。』

まあこれ自体は決定事項として公表文書に織り込まれている訳ですけれども、第二の柱に関してちゃんと説明しているのはふーんという感じでありまする。

・基金買入の政策目的

『「資産買入等の基金」は、短期金利の低下余地が限界的となっているもとで、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促して、金融緩和を一段と強力に推進するために2010年10月に創設したものです。日本銀行のバランスシート上に基金を設けて、固定金利方式の資金供給に加えて、国債やCP、社債、さらにETFやJ-REITといった多様な金融資産を買入れています。』

ということで、これまた公式見解通りではございますが、「長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小」という話をしていますが、はてさて今後どうするんでしょうねえという感じであります。長めの市場金利ったって足元のGCから2年までが既に0.105%とか0.11%になっていますし、3年とかの金利もいい感じの潰れっぷり。まあ長期金利の低下を促すのは買入でやるよりも時間軸効かせた方が良いですし(というか買入で低下させるのは無理というのはFRBが身を切って実践しているようにしか思えないのですが、何故かそういう話になっていないのが不思議である)、リスクプレミアムは既に縮小してますからねえ。

・財政ファイナンスではないという話

はあそうですか(棒読み)という所ですが。

『このタイミングで基金の増額に踏み切ったのは、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、日本経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものにするためです。』

ふーんという感じですが、森本さんの場合は下振れを強調している分だけまあなんとなく整合性が取れない事も無いなあという感じですね。

『国債の買入額を増額した結果、基金とは別に趨勢的な銀行券需要に対応して買入れている国債と合わせると、日本銀行は、本年末までの間、月間で3.3兆円、年率換算で約40兆円のペースで大規模に長期国債を買入れていくことになります。ただ、こうした大量の国債購入は、物価安定のもとでの持続的成長の実現のために行うものであり、言うまでもなく、財政ファイナンスを目的としたものではありません。』

おお、この話も強調という所でして、一方で物価目途に関して将来的に引き上げみたいな話をしておりませんで、前半の景気に関するトーンはやや弱めに見えるのですが、金融政策運営に関してはYOU緩和やっちゃいなYO!タイプではない話をしているのがほほーという感じでした。

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2011/06/27

まずは森本審議委員の会見から。

○まあそんなに変わった話は無かったですが・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1106c.pdf

質疑応答を見ていますと・・・・・・前回の講演後の会見(昨年12月9日)で長期金利について質問されたのが結論のところだけ切り取られてヘッドラインに使われて債券市場の下落を後押しした(と言われた)っつー残念なデビュー戦の実績が影響しているのかどうか知りませんが、今回はこれまた妙に慎重な、というかオモロさの無い質疑応答が続いて少々残念感が漂うのでありますが、まあ微妙に引用してみる。

・なるほど円高の影響ですか

最初の長崎県経済の部分から少々。

『長崎県の経済は昨年来、持ち直しの動きが続いていましたが、東日本大震災の発生に伴い部品調達が困難となり、精密機械の一部が操業を停止したほか、自粛ムードや原発事故の影響等から消費手控え、また、観光客の予約キャンセルの動きが広範にみられたとの話もありました。』

『ただ、当地主力の造船や一般機械が全体として高操業を続けているほか、電子部品等でも東日本大震災に伴う代替生産の実施の動きがみられており、自動車産業のウエイトが当地は低いといったこともあって、生産面への影響は比較的軽微なものに止まっている状況だと思います。また、外国人観光客は引き続き大幅に減少しているとのお話がありました。ただ、修学旅行の増加等もあり、国内観光客は回復してきているほか、消費手控えの動きも次第に和らいできているということが全般的な話としてありました。』

「国内景気が持ち直し」という執行部ペースの話に整合的な話ですな。

『こうした中で、本日の懇談会では、造船関係では、「円高の影響等から採算を確保しづらい」とか、観光業界からは、「大震災の影響から外国人観光客が激減している」といった実感のこもったお話があり、収益環境の厳しさを指摘する声が随所で聞かれました。また、中小企業の業況の先行き不透明感が増していく中で、資金繰りがやや窮屈化しているといったお話もありました。』

ほほう円高ですかそうですか。


・海外景気に関しては先行きの下振れリスクの話が多い

こらまた強引な質問(^^)。

『(問) 冒頭挨拶の中で、米国経済の減速、あるいはギリシャ国債の流通利回りが15%に達していることを挙げて、海外のリスクがこれまでより大きくなっているとの認識を示されたと思います。これは足許、金融政策において、より緩和的な方向に進まなければいけないのではないかとの懸念を示されているとの認識でよろしいでしょうか。』

クソ長いのですが引用します。まずは米国経済。

『(答) 海外経済の状況について、まず米国についてみると、FOMCの報告も出ていましたが、最近の主要な経済指標では市場予想を下回るものが多くなっており、米国経済についても慎重な見方が多くなっているかと思います。もともと、米国経済については、家計のバランスシート問題が引き続き非常に重石になっている中で、国際商品市況の影響でガソリン価格が高騰している状況も受け、個人消費の伸びが足許鈍化しています。また、生産も日本のサプライチェーン障害の下押し要因もあり、足許減速している状況があったと思います。FOMCでも、そうした状況について一時的ではないかとの見方がなされたと思います。いずれにしても、そうした状況は時間とともにある程度緩和されていく方向にあり、また、緩和的な金融環境はさらに継続するため、これに支えられ、成長テンポを再び回復させていくのではないか──年後半から緩やかではあるが回復軌道に復していく──との見方がありましたが、概ね私どもの展望レポートでもそうした方向で考えています。ただ、下振れリスクの要因が少し大きくなってきていますので、引き続きこうした面については注目していきたいと考えています。』

続いて欧州経済。

『欧州経済については、ドイツなどコア国は好調な一方、周縁国は債務問題により低調な動きを続けており、全体としては、ばらつきを伴いながらも緩やかに改善している状況だと思います。ただ、ご質問の趣旨もおそらくそういうことだと思いますが、金融面でもソブリンリスク懸念が非常に重くのしかかってきていると思います。特にギリシャの債務問題に対する不透明感が非常に強く残る中で、周縁国の国債利回りの対独スプレッドは、既往ピーク圏にあります。こうした中で、いわゆる周縁国全体の景気の下振れという問題に直面しており、債務問題の解決がさらに困難になっている面があり、EU全体で対応が急がれている状況と思います。ギリシャについても、当面の資金繰りについては、何とか目途をつけたのではないかと思いますが、いずれにしても、周縁国が、政府部門の過剰債務を圧縮していく道筋を何としても付けることが大変重要なことだと思います。緊縮財政、あるいは民営化プログラムなど、産業競争力の強化に向けた構造改革が必要であることを、国と国民が危機感をもって共有して、着実に必要な政策を採っていかなければならない状況にあると思います。』

ということで結論。

『そうした意味で、現状から判断すると、予断を許さない状況でもありますので、海外のリスクがやや大きくなっているのではないかということで、そのような表現にしました。』

この辺は講演にもありましたが、海外経済のリスクに関してはトーンとして懸念モードになっているという感じでして、やや執行部ペースよりも慎重な感じがせんでもないという所です。そして説明をうだうだと実施した結果追加緩和の話を華麗にスルーしている所がチャーミングで、まあ独自色を出さないようにしてますなあという感じが。


・ただまあレクどおりに喋ってる部分があるなあとか思うのが今回も

前回の会見では包括緩和実施後の市場金利について「ターム物金利が低下している」とその時点で低下している「ターム物金利」が非実在金利として著名なTIBOR金利だけだったというタイミングで極めて不思議発言を行いまして市場の一部から「???」という反響を獲得したのですが、今回も何か微妙な発言が。

『(問) 先日の金融政策決定会合で導入したABL(動産・債権担保融資)に対する支援について伺います。全銀協の会長が、米国と違って日本では、ABLで融資した際、担保について第三者から権利を主張された時にそれに対抗できるだけの条件が整っていないので、日本で導入するのは難しいとの見解を示されています。この点について、日銀として、どのようにしてこれが拡大していくとみているのか、何が必要かということについて教えて下さい。』

で、その答えですが。

『(答) ABLは、米国では40兆円以上の市場があるのですが、日本ではまだ3〜5千億円程度の規模かと思います。この意味で、十分に普及していると言える状況ではありませんが、これから成長を目指す企業──中小企業や、色々と前向きに取り組みたいとする企業──が多くあると思います。しかし、出資等の資本性の資金が不足するケースがある、あるいは十分な不動産や人的保証等の担保を持たないために十分な資金を受けられないケースがあるとの声があります。』

いやだからそもそもの金融に関する成り立ちとか違いますし法的環境も違いますから。

『こうした状況をみて、私どもとしては、是非、後押ししていきたい、潜在的な成長の芽を掘り起こしていきたい、企業のこうした前向きな活動を引き出す方向で金融機関の成長基盤の強化に貢献する力を後押ししていきたい、との趣旨で導入を決めました。』

ほうほうそれでそれで。

『ご質問にあるとおり、ABLについては、日本ではなかなか手法が確立されているわけではないということは事実だと思います。ただ、こうした成長を目指す企業が、そういう制約要因がある中で、新たに将来を拓いていける、道筋をつけていけることが非常に大事ではないかと思っています。日本銀行として、こうした金融手法があることについて情報発信・情報提供を進めていくことにより、この市場の認知度が向上し、ABLが少しでも拡がっていくことを強く希望しているところです。』

どう見てもただの気合あるいは根性論です本当にありがとうございました。

と申しますか、何かこの辺りの話って想定問答集の世界っぽいテイストを醸し出しているとゆー感じでして、この前の「ターム物金利低下」発言といい、今回のABL絡みの発言といい、どうも何か微妙なテイストを醸し出す発言が飛び出すのが森本審議委員会見のクオリティに思えますな、うんうん。


・この質問は・・・・・・

『(問) 森本審議委員は東京電力のご出身ですので、電力業界については、非常にお詳しいかと思います。浜岡原発の運転停止をきっかけとして、全国的に現在休止中の原発の運転再開ができないのではないかとの懸念が出てきています。来年夏には、現在停止中の原発が運転できない、また、現在運転中の原発が点検に入って運転できなくなるということになると、全国の原発が止まってしまうリスクを指摘する声が増えています。そうした点について、どの程度の可能性があるとご認識されていらっしゃるのでしょうか。また、仮に全国的に原発が全て停止した場合、電力料金や生産など経済活動に対する様々な影響があると思いますが、具体的にどのような影響が予想されるのか、ご意見を頂ければと思います。』

>森本審議委員は東京電力のご出身ですので、電力業界については、非常にお詳しいかと思います
>森本審議委員は東京電力のご出身ですので、電力業界については、非常にお詳しいかと思います
>森本審議委員は東京電力のご出身ですので、電力業界については、非常にお詳しいかと思います

・・・・・・・いやまあそうなのですがこれは(^^)。

でまあ原発問題、というか電力供給問題に関しては厳しい見通しを示しています、当たり前っちゃあ当たり前ですけど。

『(答) 浜岡原発の停止に伴い、停止中の原子力発電所の再稼働問題と、これによる電力の安定供給については、やや長い目でみて不確実性が増してきており、先行きについては順調に運転再開されるかどうか、来年春以降、全原発が止まってしまうという事態も最悪は考えられるわけですが、予断を許さない状況だと思います。国や原発立地県等の関係者の皆さんの間で、今後、安全確認等に関する色々な議論が尽くされるかと思いますので、状況を見守ってまいりたいと思います。』

まあ見通しは厳しいと。

『また、原発が全て停止した場合の影響についてですが、これは私が申し上げるまでもなく、先行きの日本経済に大変大きな影響を与えるかと思います。具体的にとのお話ですが、エネルギー需給、エネルギーコスト等を含めて、これは全般に大きく関わる話ですので、細かく触れることは控えさせて頂きたいと思います。』

とりあえず元東京電力副社長ですからあまりこのネタに関して必要以上にああだこうだと言うのは控えたいというのは把握しました(^^)。まあ森本さんの会見に関してはこんなところで。

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2011/06/24

ということで森本審議委員講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110623a.pdf

○基本的には展望レポートベースのお話に見えましたが

『日本銀行では、去る4月29日に「経済・物価情勢の展望」、いわゆる「展望レポート」を公表しました。そこでは、当面のわが国経済は、震災による設備へのダメージ、部品供給ネットワーク――いわゆるサプライチェーン――の障害、電力の供給制約などによる下押し圧力に晒されますが、これらの供給面の制約が次第に和らぎ生産活動が回復するにつれ、本年度の後半からは景気は緩やかな回復に戻るとみられるといった見通しをお示ししています。』

『もちろん、生産の回復も、製品が売れなければ長続きしません。このシナリオを支える重要な背景の一つに、海外経済が改善するもとで輸出が増加するという見通しがあります。ですからわが国の経済を考えるに先立ち、世界の経済はどうなのかをみてみたいと思います。』

ということで海外経済の見通しが最初に来ますが。

・米国

『6月の雇用統計も、非農業部門雇用者数の増加幅が市場予想を大幅に下回るなど、労働市場の改善傾向は依然として確固たるものとはなっていません。バランスシート調整の重石や財政再建の道筋が定まっていない点なども含め、下振れリスクに留意する必要性は高まっています。』

ほうほう。

『もっとも、米国経済の先行きについては、力強さを欠きながらも緩やかに回復することをメインシナリオとしてみていましたので、これまでの動きは、下の方ではありますが、想定の範囲内の動きであるとみていて良いのではないかと思っています。』

あらそうですか。

『先行きも、新興国・資源国向けを中心に輸出は増加基調を辿るとみられますし、ここ数週間調整局面にある株式市場もやや長い目でみれば底堅さを保っていると言え、そうしたもとで個人消費や設備投資が大きく崩れるとは考えにくい状況です。下振れリスクを意識しつつも、過度に悲観することなく情勢を見守りたいと思います。』

ということで、米国市場でQE3ヒャッハーとか言ってるのに対して温度差あるような気もせんでもないですが、まあ市場は市場で毎度毎度景気先行きに関して楽観と悲観の過剰反応をするのがメリケンクオリティーでもあるので、これに関してははあそうですかと申し上げるに留めておきますが、市場との乖離という面は気になるなあとは思います。


・欧州

欧州に関するリスクですけどね。

『金融市場から実体経済全体にダメージが拡がる可能性がありますので、ギリシャはじめ周縁国の財政立て直しとEU全体での対応を注視していく必要があります。』

という話ですが、あまり凄い警戒という感じではないっすが、このあたりに関しては会見のトーンともあわせてみないと行けませんので判断保留。


・新興国

『新興国・資源国経済は、堅調な内需を核として拡大しています。先行きも、インフレ懸念が高まるもとで金融を引き締める動きが続くとみられますが、経済は幾分減速しつつも高めの成長を維持する見通しです。』

ほうほうそうですか。

・・・・・という感じで、まあ展望レポートどおりっちゃあそれまでなのですけれども、やはり足元の市場ちゃんのテーマとちょっと齟齬を感じるなあとゆー所ですわな。


・日本経済

んでもって日本経済の部分は先行き見通しを主に読んでみますけれども。

『こうしたもとで、当初は秋口以降に供給面の制約が和らいでいくとみていましたが、生産は7〜9月中に震災前の水準まで戻る可能性が強まっており、秋口頃には供給面の制約が概ね解消されるのではないかとみられます。しかし長い目でみた電力供給不安等の不確実性は依然残りますが、そうした状況になれば、海外経済の改善が輸出や生産の増加につながり、この動きがわが国経済の回復を支える原動力として作用し始めると考えられます。またその頃になると、震災で損なわれたインフラ、建物、設備の復旧・復興の動きも本格化し、わが国経済を押し上げると思われます。』

ということで、まあこれも展望レポートとか今月の金融経済月報どおりでございますけど、はてそうなんですかねえという気は思いっきりするんですけど。

輸出のところではこんな話を。

『ですから、為替動向には注意が必要ですが、従来みていたよりやや前倒しされ、7〜9月のどこかのタイミングで抑え込まれていた出荷が大きく動き出して震災前の水準をほぼ回復する可能性が強まっていますし、その後も輸出は拡大経路を辿るとみて良いと思います。』

でもって設備投資。

『こうしたもと、設備投資は、当面一進一退はあるものの、2010年度の高収益を背景に底堅く推移し、秋口頃からは輸出、生産の復調に加え、震災復興の取り組みも本格化するにつれ、持ち直しは明確になると予想されます。』

個人消費。

『次に家計部門のうち個人消費をみますと、震災直後の自粛ムードが徐々に和らぐもと、百貨店や家電販売等の小売サイドからは、不安感を伴いながらも、消費の地合いは正常化しつつあるという声も聞かれています。また、各種指標の動きからみて消費者マインドも幾分改善しつつあるため、先行きの個人消費は徐々に緩やかな持ち直しに向かっていくとみて良いのではないかと考えております。』

ごくごく個人的生活実感からすると個人消費の先行きは相当予断を許さない(急角度で落ちてるんじゃないかと思ってる)と思いますけれどもまあその辺りは措いといて(^^)。

『もちろん、夏場の電力需給がサービス業に与える影響には注意が必要ですし、長引く原発問題や節電意識は消費者マインドに影を落とすものと思います。』

『また、雇用・所得環境も、賃金面を中心にやや厳しさが増しています。このため、持ち直しと申しましても、その足取りはかなり緩やかなものとなる可能性が高いと思います。』

という部分の影響ってもうちょっと大きいんジャマイカと思ってるんですけどね、いたあの個人的感想なんでまあいいんですけど。


○先行きリスクの部分は下ぶれリスクを強調していますな

で、先行きリスクの部分に関して見ると、森本さんが先行きやや懸念しているのかなあとも思える部分がございましてね。

『海外経済の動向を巡るリスクについては、先ほど大方ご説明しましたので重複は避けますが、これまでよりやや大きくなっているように感じられます。』

ほう。

『新興国では、景気拡大による上振れリスクがある一方、金融引き締めが続いていますが、景気の過熱やインフレ懸念が十分に鎮静化されている状況ではなく、より長い目でみれば、景気の振幅が拡大して、持続的成長を損なうおそれもあります。また、国際商品市況が一段と上昇しますと、その分家計の購買力は弱まりますし、企業収益も一層厳しくなり、その結果、国内民間需要が下押しされることになりかねません。』

『こうしたリスク要因については、私としてはどれも軽重のつけがたい重要な事項であると感じています。供給制約の解消が想定より早まれば経済が上振れる可能性がありますが、やはり、未曾有の津波や原発事故を伴った大震災ですから、その影響の不確実性からくる下振れリスクを最も重く受け止めざるを得ないと思っています。』

『またこの点と関連して、国内の空洞化が進む形で生産拠点の海外シフトが加速しないかどうか、特に中小企業の皆様にとって重大な関心事だと思いますが、私もここは注意が必要だと考えています。』

ということで、日本経済の先行きリスクに関しては下振れリスク強調という感じです。

以下、物価に関する部分とか金融政策に関する部分は引用割愛という事で。

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2010/12/13

森本審議委員のデビュー戦講演ネタの続きを。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko1012d.htm

講演の基本的な部分は展望レポートの説明になりますので、その辺りは基本的に公式見解ベースの話になるのですが、金融政策運営に関する部分では森本さんの見解が示されているのでその辺りから引用しますね。

○短観の落ち込みに注目

で、その中で包括緩和の実施に関して、どのような点を注目したのかというのが早速ございまして(本文8ページ以降)。

『しかし、10月初頭の金融政策決定会合の時点では、夏頃からの米国経済の減速や為替円高による企業マインド面への影響などを受けて、わが国経済の成長率は従来の想定をやや下回ると考えられました。また、先行きの下振れリスクも踏まえると、経済が本格的な自律的回復パスに復するタイミングが後ずれする可能性があるとも思われました。』

まあこの辺は公式見解と同じベースの話ですが。

『特に私が強く意識したのは、9月の日銀短観の結果です。駆け込み需要の反動などから、業況判断の先行き予想がある程度悪化するだろうとは思っていましたが、結果をみてみますと、悪化の変化幅は考えていた以上に大きなものでした。』

ほほう。どちらかというと足元の数字ばっかり見ちゃう傾向があるあたくしはそんなに悪くないんじゃないかという風に思ってしまっていましたが、それよりも先行き数値に示されるマインド部分に注目していたと言う事ですか、なるほど。


○包括緩和政策は金利ルート

まだネタにしてませんが(後入れ先出しでスイマセン)須田審議委員の講演では包括緩和政策に関して別のルート(そらまあ元々基金の国債買入は反対して社債、CP、ETFやJ−REIT買入は賛成する位ですから当たり前ですが)を推奨してますし、先日の白川総裁の講演を見ると(本人は露骨には言ってませんけれども)白川さんは為替ルートでの効果をメインに見ていそうなのですが、森本審議委員はより直球で金利ルートによる政策波及効果を見ているようですな。

『対応の主眼は、金融緩和を一段と強力に推進することであり、私としては、まず、(1)金利誘導目標の変更と (2)「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の明確化を打ち出すことは重要であると考えました。』

『さて、そのほかにどのような手が打てるかです。金利はオーバーナイトからやや長めの期間まで、これ以上の低下は難しいという水準まで下がっておりまして、従来の金融政策の枠組みからしますと、選択肢は非常に限られていた訳です。そうした中で、パッケージの第3弾となる(3)資産買入等の基金の創設を打ち出すことになります。私も、一層長い期間の金利まで政策の対象を拡げ、また幅広い金融資産を買い取るなど、臨時異例の施策を排除せずに多様な可能性を検討することは是非やるべきであると思いました。』

という説明なのですが、基本的には金利ルートの方をメインで説明している感じですわな。


○ちなみに成長基盤強化に関して

成長基盤強化オペに関してこういうコメントがあるのはほほうと思うのでした。

『日本銀行の成長基盤強化を支援するための資金供給に関して、白川方明総裁は、「資金を貸し出すという即物的な効果以上に、問題提起をしていくことの重要性を感じていた」といった発言をしていますが、産業界にいた私も全く同感です。問題の本質、根源的な原因を冷徹に見極めること、そして時間がかかるとしても根本原因に対して最も的確な対応をとることが求められていると思います。』

これまたまだネタにしてないのですが、須田さんの別の講演(というか大学での特別講義)でデフレに関する説明をしているモノがございまして、そちらでも成長基盤強化の必要性の話がございまして、中々良い感じの講演なのですが、急ぐネタでもないのでヒマな時に引用します(こら)。


と言う感じなんですけどね、会見の方で「うーむ」というのがあってですなあ。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1012b.pdf

○会見で非常に気になったのは足元の市場動向に関する質疑応答でして・・・・

『(問)長期金利について伺います。先ほど、委員は包括緩和の効果を総合的に評価して欲しいとおっしゃいました。森本委員は、現在の長期金利の上昇は一時的であり、現段階では、長期金利の上昇が緩和効果を阻害するとか、日銀が長めの金利を下げようとしていることに対して悪影響を及ぼしている状況にはなっていないとお考えだということでしょうか。』

本当はこういう時に「足元で時間軸効果が働いているであろう期間の金利までが上昇傾向となっている点についてはやや違和感があります」とか言いますと日銀として危機感持ってますよってえのが伝わってタダで効果が出るんじゃないかなあという気もするんですが・・・・

『(答)今の長期金利の上昇は、ある程度米国の影響もあると思っていますが、現在の包括緩和は、既に社債のスプレッドが下がってきているなど現段階では一定の効果を発揮していると思っています。それが長期金利に至るまで、どういった経路を辿っていくのかという点については、金融政策の浸透には一定の時間がかかることもあり、もう少し時間をかけてしっかり注視していきたいと考えています。現時点では、長期金利の動向が大きな悪影響を与えるという状況だとは考えていません。』

ということで「大きな悪影響を与える状況だとは考えていません」の文章の流れを見ると別にまあ長期金利上昇を容認しているという程の発言でもないのは判るのですが、ヘッドラインとしてはこういう時に必ず最後の部分だけ切り取られてしまいますので、特にマーケットが大きく荒れているような時(この会見があったのは先週木曜の大暴れ相場ね)には言い回しには注意した方がよろしいかと。

それから包括緩和って社債とJ−REITには効いていると思うのですが、一番見た目の資金を出していることになっている国債のターム物金利がですねえ・・・と思いつつ会見を見ますと、上記の質問にある「総合的に見て欲しい」云々はこの辺りの質疑応答をベースにしていまして。

『(問) 2つお伺いします。1つ目は最近の長期金利上昇の動きについてです。米国の影響を指摘する声があるほか、国内でも長期プライムレートを引き上げる動きもあります。この点について、どのようにみておられるのか委員のご見解をお聞かせ下さい。(2つ目は割愛)』

『(答) まず、長期金利の上昇についてお答えします。米国の状況についてはいろいろな見方があります。すなわち、市場予想を上回る経済指標が出たとか、減税の効果とかいろいろなことが言われていますが、そうした情報がどの程度長期金利に影響を与えているのか、はっきりとは分かりません。ただ、株式市場が活況を呈している一方で債券市場の地合いは悪いといった状況が、ある程度日本の長期金利にも影響を与えているということだと思っています。』

まあこの辺は良いとして。

『こうした中で、私どもとしては包括緩和策を実行している最中であり、まさに政策パッケージとして打ち出していますので総合的に評価して頂きたいと思います。この効果はある程度出てきていると申し上げましたが、加えて時間軸効果についてもはっきりと考え方を申し上げています。こうしたパッケージとしての対策を打っていく中で長期金利にも影響することが期待されます。金融政策の効果浸透にはある程度時間がかかりますので、買い入れは始まったばかりですが、来年にかけてしっかりやっていきたいと思っています。』

「買入はまだ始まったばかりで来年に掛けてやっていく」ってあーた金利を下げるっていう話をそんなにちんたらとやられましても困るんですけど何かどうも怪しげな理屈ですなあと思うのですが・・・・・・

でですね、わざと今回質疑応答を逆順から引用しているのですが、会見要旨の3ページ目の質疑応答の中に問題の本質ではないかと思われる部分が見え隠れするのでありますよ。

『(問) 日本銀行は10月初めに包括緩和を決定し、既に資産の買い入れが開始されています。本施策については、市場関係者からも一定の効果がみられると評価されていますが、この点に関する委員のご見解をお聞かせ下さい。』(この質問は2ページの最後)

『(答)(冒頭部分割愛)最近の銀行間取引の動向をみますと、きわめて低い水準にあったターム物金利が、僅かでありますがさらに低下しているほか、社債についても発行環境が改善しており、対国債の金利スプレッド幅も縮小しています。』

ええええええええ!!!「ターム物金利」って何ですかああああ?????短国の金利とか2年の金利とかの「国債」の金利は包括緩和実施後上昇しているのですけれどもおおお。

もしかして「ターム物金利」ってあの非実在金利として著名なTIBORの事ですかねえとは思いますけれども、その先物であります所のユーロ円金利先物金利も上昇しているんですけどねえ。(現物?は一応下がっています、為念)

『また、株価あるいは、まだ買い入れを始めていませんが、J-REIT価格をみても上昇しているという点では、投資家の安心感が広がり市場が拡大しつつあるなど、一定の効果が顕れていると思います。』

いやまあ社債とJ−REITに関しては確かに効果が出ているように見えますけれども、一番資金突っ込んでいるターム物金利に関してはどう見ても包括緩和が華麗に空振りした結果になっている(まあ包括緩和ではなくて市場機能重視オペレーションが基本にあって、そこに米国のQE2大空振りが外的ショックとして追い討ちを掛けたので米国のQE2空振りとはちとその空振りの意味が違う)のですけれども・・・・

という事でですな、いやまあ知っててオトボケの話をしているのならまあそれはそれで芝居として有りだとは思うのですが、審議委員デビュー戦での会見での質疑応答でこういうのを見せられますと、もしかして事務方が真面目に上に対して「ターム物金利は僅かですが下がっています(キリッ)」ってご説明申し上げているのでしたらヒジョーに寒いものを感じるのですが、それはあたくしの心配のし過ぎですよね、ね、ね、ね・・・

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2010/12/10

○森本審議委員デビュー戦ですが会見がちょっと・・・・

森本審議委員デビュー戦
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1012d.pdf

途中までの説明は展望レポートベースの話なのでそんなに変わった話ではないのですけれども、金融政策運営に関わる部分では森本さんが今回の包括緩和でどの部分のルートを重視したかというのがコメントされています。

で、引用もしないで結論だけ申し上げますと、森本さんは「金利ルート」重視の説明をしていまして、(これまた虫干しネタになっていますが)先般の須田さんの主張する「各種スプレッド縮小ルート」重視とは対をなしている感じでございます。

まあそれ以外に関しては展望レポートベースの説明なのでそんなに特異な話をしている訳でもありませんですな、と思いました。

で、ちょっとどうかと思ったのは会見でして。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aBObyZDPtqe4
森本日銀委員:大きな悪影響与える状況でない−長期金利上昇(Update2)

『12月9日(ブルームバーグ):日本銀行の森本宜久審議委員は9日午後、さいたま市内で会見し、長期金利がこのところ上昇傾向にあることについて「大きな悪影響を与えるまでの状況とは今はまだ考えていない」と述べ、当面情勢を注視する姿勢を示した』(上記記事より)

いやまあ昨日の債券市場で別に森本さんの発言に反応して動いたという訳でもなかったようです(昨日、というか最近は審議委員の講演だの会見だのに一々反応する所ではないようなスーパーカオス展開が続いておりますので)が、タイミングとしてこのヘッドライン出たのが14時半前後とかで相場がヘロヘロになっているところでもありましたし、まあ後付けでそれこそ先ほど申し上げた危機感云々という所を突っ込まれる格好のネタになる所でございます。

平常時とか特にまあどうでも良いちんたらした動きをしている時なら良いのですけれども、足元で米国金利も日本金利もボラの高い動きとなっており、かなり地合いが不安定になっている時にはこの手の発言が絶好のガソリン投下になるリスクがある訳でございまして、デビュー戦でいきなりこの相場の中というのはご愁傷様ではあるのですが、そうは言いましてもやはり審議委員としては相場が荒れている時の
発言はより慎重に願いたいと思うのでございます。

詳しくは後日(汗)。

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2010/07/05

○森本審議委員会見詳報

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1007a.pdf

・景気認識に関して

景気認識に関する最初の質疑応答を引用しますね。

『(答)現在の経済状況については、海外経済の回復を起点として、緩やかに回復しつつあるとの基本認識です。本日公表の短観でも、景況感は2 年振りにプラスになっていますし、その他の色々な指標を見ても改善傾向が見られると思っています。特に、輸出および生産は、新興国・資源国経済が好調であるため増加基調にあると思います。』

というのは基本的に日銀の見解と同じ。

『私が勤めてきた電力事業を見ても、景気の一致指数である大口電力指標は、昨年12 月から6 か月連続のプラスであり、特にこの1月からは、昨年がボトム近辺であったので、高い伸びになっています。』

ほほう。

『ただし、リーマンショック前の水準に比べると8〜9%程度低い水準で、いまだに本格的な回復と言える状況ではないと思っています。その他の指標についても回復しつつあると思っており、輸出や生産の回復が民間需要にも波及しつつある状況ではないかと思っています。』

つまり回復はしているけれども水準はイマイチ。

『そうした中でのリスク要因は、上振れ要因としては資源国・新興国経済の強まりが考えられると思います。一方、下振れ要因としては、欧州を中心とした金融不安があります。一旦は緊急的措置等がとられて落ち着いてきた状況かと思っていたわけですが、緊縮財政等の思惑も影響してきているのか、ここへ来てまた不安感を増していると思います。そうした状況の中で、円高ユーロ安という為替の動向が国際競争力にも影響しますし、企業収益あるいは企業家心理にも影響を与えてきます。そうした要因についても、しっかりと見ていく必要があると考えています。』

まあ一応上振れの話もしていますが、下振れの話を丁寧にしている所からしますと、普通に下振れ警戒なんでしょうな。じゃあハトなのかというとその点は微妙な気もしますけどね。


・インフレターゲットに関して

森本審議委員の見解がどうのこうのというよりはこれはあたくし的な雑談になりますけれどもね。

『(答)インフレ・ターゲット的に目標設定をすることについて、今、私が詳細を承知しているわけではありません。ただし、日銀は「中長期的な物価安定の理解」の中で2%を上限、中心値を1%として、プラスの物価上昇を実現していくことを明確にし、この物価安定の理解のもとに色々な対策をしっかりやっていこうとしていると思います。』

『私は、インフレ・ターゲットというのは、物価上昇の目標を設定するという非常に狭い目標設定の感じを持っていると思います。現に、物価安定の理解の中では、数値目標的な要素も取り込んでいるわけです。』

『また、消費者物価だけに着目すると、かつてのバブル時代のように、不動産価格や株価等が物価とは相当かけ離れて動いた場合に不都合なこともあります。』

『そうしたことを総合的に考えていく枠組みが大事ではないかと思っており、今、日銀が採っている物価安定の理解のもとで、デフレ脱却の意思を明確にして対応していくことが大事ではないかと思っています。』

まあこれはインフレ目標設定どうのこうのと言われた時の一般的なツッコミ方法だと思われます。「単一の経済指標で目標を厳格に設定すると例えば足元でのBOEのように景気回復前に物価が上振れた場合に問題が起きるでしょ」→「別にインフレ目標というのは一から十まで厳格運営しろというものではない」→「だったら『目標』と『理解』の違いに問題あるのか」というような流れですな。

つまりですな、もし文句付けるのであれば、現在の日本では足元で「中長期的物価安定の理解」の下限以下の数値で推移しており、先行きの見通しでも暫くはバンドの下限近辺までしか上昇しないという状況なのに、何故か「低金利の長期化の弊害」的な話をするのは如何なものかというような点にツッコミを入れれば良い(=つまり、実は中長期的な物価安定の理解の数値よりもお前ら低い数値を政策運営で行っているのではないか、というようなツッコミ方)と思うのであります。

まあ後は中心1%が低いのではという話もありますが、じゃあ高くすれば良いかというと、例えば一時話題になったIMFのブランシャールさんのペーパーにあった「インフレ目標を4%などに置くという選択肢も検討できるのでは」という話は(暫く前にご紹介した)FRBのコーン前副議長から物凄い勢いで駄目出しを食らっているように、まあ割と中央銀行界でハト的な所からも駄目出し状態なので、2%程度にするという議論ならまあ判りますけどそれ以上の話と言うのは中々現実解としては難しいでしょうな。


・金融政策とは関係ないけどこれはオモシロス

エネルギー価格体系に関する見通しの質問に対する答えが興味深いです(^^)。

『(答) 電気料金については、適正で効率的な経営のもとで必要なコストを顧客に負担して頂くことを基本とし、そうした中、3 分の2 位は自由化されているので、顧客の電気の使い方も反映した契約方式となっています。電気料金を構成するコストとして、今、燃料価格の話がありました。かつて原油価格が1バレル147 ドルという時代もありましたが、資源国の資源を大事にしようとする思惑や市場的な動きから、今は75 ドル位で推移しています。こうした原油価格の動きは企業努力の限界を超えたところにあるので、基本となる燃料価格をベースに毎月の価格を燃料費調整で反映することになっています。』

まあそうですな。

『一方で、ゼロ・エミッション電源による安定供給と低炭素化も志向されており、原子力ならびに水力を含む再生可能エネルギーの比率を10 年位先には50%に持っていこうとしています。原子力については、50%といったうちの40%分位を目指しています。ウラン価格は、その時々の需給にもよりますが発電コストの中でのウエイトは1割位と非常に少なく、バックエンドコストを含めても全体の3割位にとどまります。』

ほほう。

『こうしたことから、原子力について安全を大前提に稼働率も上げ新増設も着実に推進していくことにより、こうした化石燃料価格高騰等によるコスト構造を全体として薄めるよう努力することが大きな課題であり、それに取り組んでいるところだと思います。』

なるほど。

『また、送電のネットワークコストについても、平成12 年位からの電力自由化のもとで非常に厳しいコストダウンに取り組んできたことから、設備の経年劣化が心配されています。今後、こうしたネットワーク部門での設備投資あるいは修繕費等が資本費として若干上がっていく傾向があるのではないかと思いますが、いずれにしても効率化努力によりできるだけ吸収していくよう、エネルギー業界全体で頑張っていかれるのではないかと思います。』

送電設備の経年劣化ですか。電力って送電でロスするんですよねそう言えば。

#ということで全然金融政策にインプリケーションの無い話ですが引用しました(^^)

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2010/07/02

○森本審議委員就任会見(詳しくは会見要旨を見てからですが)

1日に就任した森本審議委員、いやあもう結構な激務でしかも拘束がキツくて、記者は張り付くわというお仕事でございますが、5年間頑張って頂きたいと
存じますが(^^)。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aaGVDZ9xPZq8

上記URL記事より引用。

『7月1日(ブルームバーグ):日本銀行の審議委員に1日付で就任した元東京電力取締役の森本宜久氏は同日夕、本店で就任会見を行い、「景気は海外経済の改善を起点として緩やかに回復しつつある」としながらも、金融政策については「市場にさらに必要な資金をしっかり供給し、家計や企業の経済活動を下支えする必要がある」と述べた。』

『森本氏は「国内外ともに多くのリスク要因を抱えており、先行きを見通すことが非常に難しい局面にある」と指摘。為替相場については「円高ユーロ安という状況だが、こういった為替の状況自身が競争力に影響するし、企業収益や企業心理にも影響を与えていく。そうした対外的な要因もしっかりウオッチしていく必要がある」と述べた。 』

『森本氏は「電力需要を見ても、大口電力需要は昨年12月から6カ月連続でプラスになっており、特に1月からは前年が非常にボトム近辺だったこともあり、高い伸びになっている」としながらも、「リーマンショック前の水準に比べると8%から9%くらい低い水準で、いまだ本格的な回復と言える状況ではない」と述べた。』

ということで、基本的には景気認識は厳しめで見ているように思われますので、審議委員の景気慎重な見方VS執行部(というか総裁)の景気強気気味な見方の構造は引き続き継続という所になるのでしょうかね。よー知らんが。

あ、それから就任内定の後森本さんのページを作った時に書いたのをこっちに移動しておきますね。

東京電力副社長で65歳です。よくぞ年収2600万如きで資産は全部大公開されて、5年間株とかその他全然動かせず、兼職も出来ず、フルタイムで金融のマニアックな細かい事までこき使われて、休日にも記者が散歩先にやってくるような(笑)お仕事で、休暇もそんなに遠くに行けない(連絡あったらすぐ戻ってこないと行けません)というようなお仕事をお引き受けになられたと大変敬服する次第です。

パブリックサーバントとして働くという覚悟がないと中々大変なお仕事だと思いますが、是非ともご活躍を願いたいと存じます。


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2010/03/16

○新しい審議委員は産業界から(金曜のネタですが)

http://www.asahi.com/business/update/0312/TKY201003120218.html
日銀審議委員に森本・東電前副社長提示 国会同意人事案

東京電力からは以前もこれまた副社長を務められた春英彦さんが審議委員になられた事がありまして、同じ企業から2人目というのは新法になってからは初めてですかね。

で、こうなりますと田谷さん→水野さんと続いたエコノミストなのか証券系という括りなのか知りませんが、まあその席が無くなって我こそはと思っておられた一部の何とかストの皆様におかれましては誠に痛惜の念を禁じ得ませんという所でございますな、あっはっは。

という話はどうでも良いのですが、資産大公開されて任期中には株式売買みたいなこともできず、ついでにフルタイムでこき使われてプライベートな時間も十分に取れず(休暇で出掛ける先も片道1日掛かりみたいな所には行けないんじゃ無かったでしたっけ)金融のクソ細かいマニアな事でああでもないこうでもないと言われるという大変なお仕事ではございます。これが金融業界の人とか学者さんだったら本人に箔も付きますが、東京電力副社長だったら別に箔がどうのこうのという話でもなく、恐らくは収入もダウンするでしょうな。公にご奉仕の心でお引き受けになられたかと存じます次第でございます。

つーことで、産業界の人が増える訳ですが、その事によってどうこうというのはそもそも森本さんがどのようなお考えを持っているのかとかは残念ながらあたくし全く存じ上げませんので何とも言いようがありませんが、実体経済の現場の雰囲気を金融政策決定会合により伝えられるような流れになって頂ければいいのかなあとか漠然と思うあたくしでした。

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