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武藤敏郎副総裁

武藤さんの略歴(日銀Webより)

昭和18年7月2日生
昭和41年3月東京大学法学部卒業
昭和41年4月大蔵省入省
銀行局中小金融課長、大臣官房秘書課長を経て平成4年6月に主計局次長。
その後大臣官房総務審議官を経て平成9年7月に大臣官房長。
再度大臣官房総務審議官となり平成11年7月に主計局長。
平成12年6月から大蔵事務次官となり、平成13年の省庁再編で財務省事務次官。
平成15年1月に財務事務次官を辞職し財務省顧問。
平成15年3月20日に日本銀行副総裁に就任
平成20年に日銀総裁に政府より指名されるも参議院で野党の反対によって人事承認されず。
その後大和総研理事長に就任。

詳しくはこちら→http://www.boj.or.jp/type/list/pb_member/mutoh.htm

日銀退任後(大和総研理事長時代)の武藤さんの発言

2009/11/13「辛口講演でとっても良い感じの武藤さん講演」


日銀副総裁時代の武藤さんの発言

2008/01/15「武藤副総裁記者会見」
2008/01/11「先行き見通しは慎重ですが、ちょっと市場は反応し過ぎかも・・・」
2007/11/21「慎重さを見せたブルームバーグにニュースインタビュー」
2007/08/30「ヘッドラインはやや刺激的でしたが一般論だった講演」
2007/07/04「武藤副総裁講演再び」
2007/06/26「武藤副総裁講演より」
2007/06/25「武藤副総裁記者会見、公式見解どおりも若干ハトかも」
2007/05/25「5月12日の講演から」
2007/04/05「武藤副総裁講演、2月利上げの説明や市場との対話など」
2007/01/05「1月3日の日経新聞掲載インタビュー:金融政策の正常化をアピール」
2006/11/24「インタビュー追記」
2006/11/22「武藤副総裁の時事通信インタビュー」
2006/10/10「貫禄の武藤副総裁記者会見」
2006/10/06「景気見通しは比較的強気っぽい武藤副総裁講演」
2006/07/25「中立的もハトでは無さそうな武藤講演(その2)」
2006/07/24「中立的もハトでは無さそうな武藤講演(その1)」
2006/06/07「余り注目されなかった米国でのスピーチ」
2006/04/21「参議院財政金融委員会でのお手本のような答弁(全くの中立発言です)」
2006/02/06「益々ゼロ金利長期化観測に?したくなる武藤副総裁記者会見」
2006/02/03「この講演テキストでハト派発言と思うのは謎なんですが」
2005/12/28「『道しるべ』に言及した武藤副総裁の日経新聞インタビュー」
2005/12/07「武藤副総裁、市場との対話について言及」
2005/12/05「どう見ても日銀の公式見解です。本当にありがとうございました。」
2005/09/06「昨日の補足」
2005/09/05「武藤副総裁のブルームバーグインタビュー、どうも先日とは調子が違いまして」
2005/06/27「武藤副総裁記者会見」
2005/06/24「初めて旗幟鮮明にした武藤副総裁注目の講演」
2004/12/08「12月3日講演に絡めて(その2というか補足)」
2004/12/06「講演:決済システムと日本銀行(12月3日FISCでの講演)に絡めて(その1)」
2004/06/22「対照的な副総裁(武藤さんの記者会見&岩田さんの講演)」
2004/06/21「6月18日の石川県金融経済講演会における挨拶」
2004/06/10「作られた?武藤ショック」


2009/11/13

○武藤前副総裁の中々結構な講演

JPプレスってもう開設1周年だったんですかそうですか。早いもんですなあ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2131

良く見ると中々いい話が続いておりますな(^^)。

『武藤氏は「われわれの経験では一度巨額の財政出動を行うと、単年度で終わることはない。何度かやらないと政策的にもたない。2010年前半の日本のGDPは四半期ベースでマイナスになる可能性も否定できない」と懸念を示した。物価に関しても、「需給ギャップがどれぐらい続くかがポイントになる。2010〜11年、さらに先までCPI(消費者物価指数)のマイナスが続くかもしれない」と述べ、デフレ長期化のリスクを指摘した。』

ということで、まー上記URL先(全部で6ページ)読んでつかあせという所ですが、あたくしとしては俺様備忘録でもありますので引用させて頂きとう存じます。

んでもってまずは2ページ目から引用。

『私は(日銀副総裁を務めていた)2003年頃、米連邦準備制度理事会(FRB)の幹部に「日本の経験から見ても、現在の米国の住宅市況はバブルそのものだ」と指摘したことがある。ところが、FRBは「日本の土地バブルは投機から始まったが、米国は実需に基づく値上がりだ」と(反論し)、バブル論には耳を傾けてくれなかった。』

(;∀;)イイハナシダナー

んでもって、かつての日本も米国も初動動作が遅れて損失拡大を招いたという話をしていますが、日本の処理が遅れた件に関してもいい感じでコメント。

『ここで日本の金融破綻処理を振り返ってみると、1995〜96年の住宅金融専門会社(住専)破綻に際し、6850億円の公的資金を注入するために一国会を丸々使う大議論になった。金融機関への税金投入に対し、国民に強い抵抗があった。その上、住専が預金を取り扱わないノンバンクであり、国民の問題として認識されづらかった。その後、北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の破綻で何兆円もの税金を投入したことを考えれば、なぜ6850億円であれほどの大騒ぎをしたのか。日本にとって、金融破綻処理がノンバンクから始まったのは非常に不幸なことだった。』

そして住専国会を住専国会にしたのは・・・いやまあいいですけどね。

『米国は2008年のブッシュ政権下で金融安定化法が成立し、7000億ドル規模の公的資金注入を決定した。そして、それは自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)にまで投じられることになった。信用秩序を維持して預金者を保護するという大義があるからこそ、金融機関への税金投入は正当化される。産業救済のための税金投入は同じ理屈で説明し難いが、米国にとって最も重要な産業であるGMの救済は一種の政治的な決断だった。』

『米政府がGMを救済した途端、日本でも産業界に公的資金を入れるムードが高まった。住専にあれほどのアレルギー反応を示した1990年代の感覚ではとても考えられないことだ。リーマン・ショックが起こった際、「日本のバブル崩壊の経験を米国に活かすべきだ」という議論が行われた時期もあったが、結局のところ日本の政策は米国の後追いをしているだけかもしれない。』

(;∀;)イイハナシダナー

というか、何かこう辛口の指摘連発という感じですな。「金融問題を政局にするのはケシカラン」から始まって、「公的資金投入は信用秩序維持と一般預金者保護の為に行う」という指摘は、昨今の何でもかんでも公的資金で救済みたいな話をするどっかの誰かさんへの批判を暗に行っているように見えまして、誠にイイハナシダナーな講演。

んでまあ経済見通しに関しては厳しい見方が示されていますわな。

『日本経済に関しては、米国向け輸出の回復がカギを握る。「内需主導による景気回復」という理想論は何十年も言われ続け、結局は実現していない。次の景気回復も外需主導にならざるを得ず、米景気の動向は1つのポイントだ。』

>何十年も言われ続け、結局は実現していない
>何十年も言われ続け、結局は実現していない
>何十年も言われ続け、結局は実現していない

・・・・何という身も蓋もない指摘(^^)。

『米国の個人消費は良い数字、悪い数字が入り乱れているし、失業率は10%を超えて当面は高止まりが続くだろう。米経済は順調な回復が想定されるものの、リスクがないわけではない。』

さいですな。

『日本は(麻生太郎)前政権が2009年4月に15兆円の大規模補正予算を編成した。基本的に財政出動には単年度のワンショット効果しかなく、出動効果が剥落すると逆にマイナス成長になってしまう。我々の経験では、一度巨額の財政出動を行うと単年度で終わることはない。何度かやらないと、政策的には持たない。もちろん実体経済がよくなれば別だが、それが良くない中で政策的な下支えをすることで今の成長がある。2010年前半の日本のGDPは、四半期ベースでマイナスになる可能性も否定できない。』

『もう1つはデフレ問題だ。消費者物価指数(CPI)は2008年に原油価格高騰で2%を超えていたが、その後は反転してマイナス圏に突入した。エネルギー価格と生鮮食品を除いた「コア・コア」CPIもマイナス圏にあり、デフレ的状況を示している。需給ギャップがどれぐらい続くかがポイントになるが、2010〜11年、さらに先までCPIのマイナスが続く可能性がある。』

まあ厳しい見方ですわな。

『メインシナリオとしては、日本経済は少しずつ改善に向かっていると思う。「二番底」という表現は大げさなので避けたいが、しかし必ずしも順調な回復ということにはならないだろう。2010年前半の成長率が実際にマイナスとなれば、さらなる財政出動や金融政策といった議論が巻き起こる可能性もある。』

ということで、まあそう簡単に行きませんと言う見通しですが、金利市場の中の人達の見方も比較的似たようなもんだと思います。「財政破綻ヒャッハー」シナリオはまた別の次元の話ではございますけど。

んでもって最後のページに質疑応答があるのですが、これがまた味わい深い。

『――鳩山政権の政策運営をどう見るか。』

『武藤氏 政権交代から100日の「ハネムーン期間」は温かい目で見守りたい。ケチの付けどころは色々あるかもしれないが、これまでの政権も何もかもが理想的に行われてきたわけではない。』

つまり101日目からは厳しくケチを付ける訳ですね、判ります(違)。

『民主党は政権を取って初めて色々なことに遭遇し、意思決定をしていく時期にある。2010年度予算編成を通じて、財政赤字や社会保障政策などについて総合的にどのように考えているのかを示すことになる。予算は総合戦だ。そこで何か不足があれば、批判をするなり、対案を提示するなりしていけばよい。また、情報を収集・整理し、政治家が政策判断をするための材料を提供するシンクタンクとしての中央省庁の機能は、どの国においても不可欠な機能だ。役人を活かすか否かは、政治のやりよう次第。もうちょっとうまく連携プレーが図れるといい。今のままでは、十分な連携プレーとは言い得ない。』

全然温かい目じゃねえっす武藤さん(^^)。


『――日銀がインフレターゲット(物価目標)を導入することで、デフレ脱却は可能になるか。』

『武藤氏 世界的に見ると、インフレターゲットの導入はハイパーインフレーションの修正がその目的だった。デフレ脱却のためにターゲットを導入した国はない。金融政策は引き締めは得意なのだけれど、緩和方向には大きな効果を発揮しづらい。それは、むしろ財政政策の役割になる。インフレターゲットは一定の状況下では有効な政策かもしれないが、常に正しい政策とは言えない。』

ハイパーだと大げさな気もしますが、高インフレの是正の為にというのはさいでござんすな。まあこれ質問する方も(単に記事の都合上簡略化しているのだとは思いますが)アレでして、導入するだけで特に何もしなかったらそりゃ脱却はできない訳ですから(宣言するだけで勝手に脱却出来るなら誰も苦労はせんし、どこぞのマービンキング総裁が毎度毎度財務大臣宛に詫び状書かんで済みますわな)、本当はどういう質問したのかなという興味は少々。

>金融政策は引き締めは得意なのだけれど、緩和方向には大きな効果を発揮しづらい。それは、むしろ財政政策の役割になる。

というか金融政策と財政政策が方向性を一緒にした時に効果が出るんでしょうなって思いますが、金融政策は実体経済への波及に掛かる時間が少々ございますので、物価指数のような遅行指標に対して1点張りのターゲットを設定して厳格運営するという話になると、引き締めにしても緩和にしてもやり過ぎになる(効果が出るのに時間が掛かるので、結果を確認してから政策終了させると終了させる頃にはやり過ぎになっているつー事で)のではという悪感もしますな。

#だから最近のBOEなんかもその辺はまあファジーに運営しているのでしょうけれども

ま、そもそもインフレターゲット言う人も厳格に適用しろというような極端なお話をする人はさすがに見受けられませんので、微妙な質疑応答のようではございますけどね。

なお、JBプレスに載っている方には説明用のグラフとかもあってオモロイので、ここまでお読みになった方はそっちのサイトもご覧下さいませなのです。

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2008/01/15

○10日木曜日の武藤副総裁記者会見

ちょっと会見要旨が出た時間が遅かった気が。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0801a.pdf

前半部分で足元減速(これは講演でもその認識を披露してましたけど)とか下振れリスクの話を強調した感じですが、後半になると今度は強調した分の火消し(?)をするという感じになってしまいました。何で火消しモードっぽくなったかは以下をご覧いただければ宜しいかと(^^)。


・住宅着工の復活に関する不確実性

『 一点目の改正建築基準法施行の問題でありますが、(途中略)そういう手続き面での問題が解消していけば、徐々に住宅投資は回復していくと考えております。ただ、これは首都圏中心のことではありますが、マンションの物件価格の上昇等を背景に、マンション販売に弱さがみられております。従って、住宅投資の回復のペースや水準については、不確実な面があると言わざるを得ないと思います。』

これは既にだいぶ前から決定会合の議事の中でも論じられていました(議事要旨のご紹介で何度か出したと思います)ように、当初は一人の委員からの指摘でしたが、最近は複数の委員がこの点を注視しておりまして、その複数の委員の中に武藤副総裁も含まれるということでございましょうか。


・メインシナリオのリスクについて

『わが国経済は減速していますが、将来緩やかな拡大を続けると申し上げました。ただ、それは、標準的な見方、あくまでもメインシナリオという意味で申し上げており、見通しでありますから、それにはリスクというものがあることを念頭に置かなければなりません。』

先行きリスク来ましたな。

『世界経済をみますと、米国経済や国際金融市場が不安定な状態にあることから来る不確実性というものが、下振れリスクを高めているということを申し上げたわけであります。そのようなリスクについて申し上げましたが、メインシナリオに対して、根本的に変更を加えているものではありません。従って、我々の金融政策運営の基本的な考え方についても、変えることは考えていないということであります。』

ちなみに引用を飛ばしちゃいましたが、この応答の前半部分では

『挨拶では、生産・所得・支出の好循環メカニズムが一時的に弱まっていると申し上げました。その背景の一つは今申し上げたような改正建築基準法の施行に伴って住宅投資が大幅に減少していること、あるいは原材料価格の高騰に伴って企業収益が伸び悩んでいること、また、サブプライム住宅ローン問題の影響によって企業の業況感が慎重化していること』

というのを国内要因として挙げています。で、さっきの続きに戻りますと、

『今後の金融経済情勢というものを十分分析し、仮に私どもが申し述べている通りの緩やかな拡大が続いていくのであれば、その度合いに応じて、現在、非常に緩和的な状況にあるこの金利水準を徐々に調整していく方向にあることを申し上げているわけであります。』

という話はしてるのですが、市場的にはまあこっちには反応しにくいですなあってところでございまする(^^)。


・足元の景気減速という話と景気拡大という話

でまあメインシナリオのリスクについて説明する武藤副総裁ですが、それ以前の問題として、基本的な認識である『わが国の景気は現在減速しているとみられます。』という部分に対して結構いい感じの質疑応答が中盤以降続いております。

『(問) 今日の挨拶で、日本の経済について、足許住宅投資の落ち込みなどから減速しており、先行きも当面減速が続くものの、その後は緩やかな拡大を続けるとみているとおっしゃっています。12月の日銀の景気判断では、「基調としては緩やかに拡大している」という表現もあったわけですが、今日の副総裁の挨拶の中には、足許について、「基調としては緩やかに拡大している」という表現はありませんでした。これは、足許の景気については、一言で、減速しているということに尽きるということであり、足許の基調として緩やかに拡大しているとは判断していない、という理解でよろしいのかどうか、教えて下さい。』

これは中々良い質問でありまして、ちょっと武藤副総裁の応答が苦しそうな感じでありまする。

『(答) 私が申し上げておりますのは、足許、日本経済は減速しているということに加えまして、目先、当面のところ、この減速は続いていくであろうとみております。しかし、その先については緩やかな拡大を続けていくであろうということであります。基調という表現について触れられていましたが、私の言いたいことは、足許減速していて、目先は減速が続くであろうけれども、その先は、緩やかな拡大に復していくであろう、ということであります。』

んでまあその後もツッコミを受けるわけですが(^^)、質疑全部引用するとやたら増量になるので応答部分を引用します。

『(答) 緩やかな拡大という言葉は、足許からすぐ先のこと申し上げているのではありません。当面は減速が続き、しかし、その後は緩やかな拡大を続けていくであろうということを申し上げているわけであります。』

『(答) 拡大はしているわけです。減速という意味は、成長率がスローダウンしているということであって、成長が止まっているとかマイナスになっているという意味ではないことをはっきり申し述べておきたいと思います。』

で、多分最初の質問をした人と思しき方が更にツッコミをしまして、中々良い質問なのでこれまた引用。

『(問) 日銀は、当初、拡大という言葉を使ったときに、拡大というのは需給ギャップがプラスになって、それがプラスの領域で成長していることであると説明されたと思います。ただ、足許の成長率は潜在成長率を下回っておりますし、拡大という言葉を使うのは、成長率が単にプラスにあるということでは使えないのではないかと思います。そういう意味で今、足許拡大という言葉を使っていないということは、すなわち拡大が止まっているという理解になるのではないでしょうか。』

もはやこれは解釈の世界として説明するしかなかろうと思ったら案の定。

『(答) 需給ギャップの拡大は、おっしゃるとおり足踏みしていると思います。しかしながら、将来、成長が緩やかに拡大していけば、需給ギャップも少しずつ拡大していくであろうとみています。経済成長率の減速と、需給ギャップの拡大というものを、はっきりと区別して申し上げているつもりであります。(以下割愛)』

もう何かだいぶ苦しそうでございますが、要するに「足元減速してるけど基調の拡大は変りません」という話をしたいという事なんでしょう。金融経済月報の基本的見解に引っ張られざるを得ない所が何ともですね。いやはや。

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2008/01/11

○えーっと時間がなくなったので武藤副総裁講演ですが簡単に

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0801c.htm

紙に出すと5ページです。基本的なトーンとしては下振れリスクを意識しつつも腰折れ景気悪化までは見てないという事で、結論から行きますと「利下げまで踏み込んでませんが利上げは当面様子見するっきゃないですなあ」と言ったところではないかと思うのですけどね。一応バランス考えている感じっすね。

『さきほどご説明しましたとおり、わが国の景気は現在減速しているとみられます。そうしたもとで、需給ギャップのプラス方向への動きは当面足踏みすると思われます。ただ、やや長い目でみれば、景気の拡大基調が続く中で、需給ギャップもプラス方向に向かうとみられ、それを背景に物価のプラス基調が続くと考えています。』

『以上のように、わが国経済は、もともと緩やかなペースで拡大していたところに、原材料価格の高騰、住宅投資の急減、世界経済の不透明感の高まりといったマイナスの要素が加わり、減速しているとみられます。このため、現在、生産・所得・支出の好循環メカニズムは一時的に弱まっていますが、これでメカニズムが途切れるとは考えていません。』

では何で途切れないかと言いますと・・・・

『今回の景気拡大局面は、世界経済が拡大していることと、国内では企業や金融機関の様々な過剰の調整が進んだことを背景としています。現在、世界経済との接点である輸出や生産は、増加を続けており、好循環メカニズムの起点はしっかりとしています。企業の構造調整の進み度合いには業種や企業規模による違いはありますが、企業部門全体としてみれば、設備や人員、在庫などの面で調整圧力を抱えているわけではありません。(以下項目展開部分割愛)』

日本の場合はストック調整が進んでいるのでそう簡単に悪化までいかないんじゃないでしょうかというのは甚だ同意でありまする。

ただまあ・・・・

『もっとも、今申し述べた要素に変化が生じるリスクには注意が必要です。とりわけメカニズムの起点にある世界経済の成長の持続という点は、重要なリスク要因であると考えています。』

で、その説明部分全部端折りまして結論を引用すると、

『このように、世界経済は地域的な広がりを持ちながら高成長を続けるというのが標準的な見方ですが、米国経済や国際金融資本市場の調整が深まる中で、ダウンサイドリスクが増していると考えられます。』

『同時に、インフレ方向のリスクにも注意が必要です。(途中思いっきり割愛)このように経済のダウンサイドリスク、物価のアップサイドリスクの双方に対処していかなければならないという意味で、各国の金融政策は難しい局面にあります。』

という点も仰る通りでありまする。


で、金融政策に関しては景気減速と物価高をどう評価するかという点を強調していますわな。

『本日ご説明した経済・物価情勢に即して申しますと、日本経済は、当面減速するとみられる一方で、消費者物価は石油製品や食料品の値上がりなどから当面上昇幅が拡大していくと見込まれます。金融政策運営においては、こうした動きが先行きの経済や物価にどのように影響するかを予測する必要があります。』

『たとえば、(1)減速が一時的なもので景気は拡大軌道に復すると考えてよいか、あるいは、減速が予想以上に長引くことはないか、(2)物価上昇が経済に悪影響を与えて、先行きの経済や物価を下振れさせることはないか、(3)逆に、物価上昇が、家計の物価についての見方や企業の価格設定行動に影響を与えて、先行きの物価を上振れさせることになるかどうか、といったことを、丹念に分析しながら、先行きの経済・物価の見通しに織り込んで判断していくことになります。

『』もとより、見通しには不確実な面がありますので、見通しそのものだけでなくて、その蓋然性や上下両方向に乖離するリスクも重要な判断材料です。このように、見通しやその蓋然性、上下両方向のリスクを十分に点検しながら、物価安定のもとで持続的な成長を達成できるように、適切な金融政策運営を行っていく所存です。』

まあ従来の金融政策の枠組みは維持しつつも、従来の枠組みに組み込まれている「シナリオ通りなら利上げ」という部分を強調しないことによってトーンを落として慎重な姿勢を見せていますということでして、さすがにこの講演で利下げまで見に行くのはちと無理がありそうな気がしますけどね。

#と、やたら簡単で恐縮至極でした

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2007/11/21

○武藤副総裁のブルームバーグインタビュー(ちと昔のネタ)

先週金曜のブルームバーグ記事になるので少々どころかだいぶ前のお話になるんですが、武藤副総裁の単独インタビューの記事がございましたです。以下引用部分はブルームバーグニュース16日12時25分配信の記事です。

・こりゃまあ利上げについては慎重と読むのが妥当

米国経済について

『米国経済については、緩やかな調整局面が続いている。(途中の説明部分割愛)ただ、少なくとも現時点では、住宅部門の調整や貸出基準のタイト化がその他の部門に波及しているという事実は観察されていない』

『米国の個人消費と設備投資は減速しているが、緩やかな増加基調を続けている。米国の潜在成長率は以前と比べて多少下がっているという見方もあるが、先行きはその潜在成長率近傍の成長パスに戻っていくとみている』

『ただ、米国の住宅市場の調整が一段と厳しいものになった場合、あるいは国際金融市場の変動の影響が予想以上に広範囲にわたるような場合、マイナスの資産効果や信用収縮、マインド悪化を通じて、個人消費や設備投資が下振れる可能性も考えられる。その場合、米国経済は一段と減速する可能性がある』

『さらに、米国経済の減速の程度によっては、他の地域に悪影響を及ぼし、世界経済が下振れるリスクも全くないわけではない。こういう米国を含めた海外経済の状況、あるいは国際金融市場の動きなども頭に入れて、適切な金融政策の運営を行っていかなければならないと思っている』

日本の金融政策について

『われわれは予断を持ったり、スケジュールを決めたりせず、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで金融政策の運営を行うと繰り返し言っており、この点にそれほど誤解はないのではないか。ただ、事態はなかなか複雑なものがあるのはご指摘の通りだ』

『1つは、米国の住宅市場の調整が一段と厳しいものになった場合、あるいは金融市場の変動の影響が予想以上のものとなった場合、下振れのリスクがあることは十分認識している。一方で、10月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)でも指摘しているが、低金利が経済・物価情勢と離れて継続するという期待が定着すると、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分が生じたりするリスクがあることも、われわれは繰り返し申し上げている』

『したがって、蓋然性の高い見通しは先ほど申し上げた通りだが、いろいろなリスクもあるので、そういう上下両方のリスクを丹念に点検しながら、金融政策を運営する必要があると申し上げている。グローバルなメカニズムのなかでのリスクなので、事態は非常に複雑で、そう単純ではない。なかなか困難な状況にある』

と、引用ばかりですが、まあ武藤副総裁の見立て的にはちょっと下のリスクを注視しているというところではないかと思います。


・これは感心しちゃいます

財務省出身ですがという質問に対しての武藤さんの発言は「さすが事務次官まで努めたお方だ」と感心致します(皮肉じゃなくてマジで)。

『少なくとも、私はこの4年半、中央銀行マンになりきっていたので、官僚だったということを金融政策の判断の基準にしたことは一度もない』

『私が財務省出身であるがゆえに生じるさまざまな憶測については、私自身はそういう考え方は全くもっていない。今まで随分いろいろなポストについて、いろいろな仕事をさせていただいた。しかし、前にこういうポストにいたから、今のポストでの判断が変わるなどということは、考えたこともないし、現実にもあり得ない』

『ポストは任命権者に与えられるわけで、自分で決めるものでは決してない。与えられたポストを天職と考え、そのポストで職責を全うするため、全力投球を行うという気持ちでずっとやってきた。残された任期はわずかだが、同じような気持ちでやっていきたい』

パブリックサーバントとしてあるべき姿勢だと思うのであります。


#と、引用のタイピングで時間が無くなったのでほとんど引用だけで恐縮至極でありました。

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2007/07/30

○ヘッドラインはちょっとだけ刺激的でしたが

一昨日の話を今更で恐縮でありますが、武藤副総裁が北京で行われた「第3回北京−東京フォーラム」で講演を行っていまして、この講演要旨が一昨日アップされていたのですが、当日は超長期の入札とか金融政策決定会合議事要旨とか、他のネタもありますし、そもそも論として金融政策に関しては海外の信用収縮モードが収まらないと話が進まないでしょというのもありますので、あまり相場への影響は無かったかと。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0708a.htm

まあお題が『「開かれたアジア経済」の発展に向けて』ということですので、金融政策がらみの話ではないのですが、講演内容の一部が情報ベンダーからヘッドラインとして使われました。講演中の(資本フローとマクロ政策)の部分です。

『増大する資本フローといかに共存していくかについて、各国はアジア危機から多くの教訓を学びました。ひとつの重要な教訓は、固定的な為替レートは安定的な経済発展にとって不可欠な価格調整機能を阻害するほか、投機的な資本の流入とその変調による混乱といった事態を招き易いということです。』

ということから話が進みまして、途中を割愛してその先に。

『ただ、こうしたレジーム(引用者注:アジア危機の教訓で得られた「固定為替に固執せず」に「国内物価の安定を主眼に据える」金融政策運営手法)の下でも、近年の旺盛な資本流入への対応は容易なことではなく、アジアの当局は様々な問題に直面しています。多くの国で、為替上昇ペースを調整するために市場介入を行った結果、外貨準備が急速なピッチで積み上がっています。同時に、為替市場介入の結果、国内通貨建ての流動性が増大し、中央銀行はその不胎化を余儀なくされています。』

『こうした状況は、次第に中央銀行の財務上の負担となってきています。巨額の外貨準備は為替の増価によって為替評価損をもたらします。また、国内通貨建ての流動性を不胎化する際には、中央銀行債を発行する国が多くみられますが、この利払い負担も大きなものとなっています。』

『また、流入する資本は過剰流動性を生み、国内の不動産や株式などの資産価格が上昇するといった事象を招いています。このことは、長期的にみて物価安定への脅威となり得るほか、金融システムの安定に及ぼす影響という観点からも注意深く見守っていくことが必要です。』

ということで、話題としては至極ご尤もなお話でして、ここで言う過剰流動性の話って日本で言えばニクソンショック以降の為替介入をイメージしてるように思えるのですが、これが情報ベンダーのヘッドラインに掛かりますと、「過剰流動性が資産価格上昇を生む」というところが妙にクローズアップ去れてしまう訳ですな。何のこっちゃでございますけれどもまあそういう仕様ですので仕方なし。

今の相場環境ですと、先ほども申しあげましたように海外の信用収縮関連の見極めがテーマなのであまり政策委員会の皆様の発言に反応しにくいという状態なのですが、世が世ならヘッドライン見て「すわ第2の柱の強調か」という発想にもなりかねなかった所ではあります。で、講演要旨を真面目に読むと日本の今の話をしている訳では1ミリも無いという事が判ってありゃまとなると(^^)。

まあ何ですな、ベンダーのヘッドラインは便利ですし、まずはそれで反応するのは仕方ないのですが、1次資料が取得できる時には1次資料にあたらないとミスリードされる、というと格好良いですけど、要は「釣られますた」となりやすいので注意ですな。と自戒なのですよ。

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2007/07/04

○武藤副総裁の講演:だいたい前回と同じですが・・・・

最近武藤副総裁の出番が増えているのはやはり来年を見据えた動きなのでせうか(^^)。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0707a.htm

基本的には例によって展望レポートや金融経済月報に沿ったお話でして、6月20日の島根県金融経済懇談会の講演(6月26日にご紹介しました)と同じであります。要するに物価に関する見通しが政策委員会平均よりもやや弱気になっているのではないかというところでしょうか。ただまあちょっとだけ説明が長くなっている部分がございます。小見出しの最後の部分になりますけど「情報発信について」の説明部分がございます。

まあこれに関しましてもかつての講演と同じなので、特筆することもないのですが、一応いつもの部分を引用したいと存じます。

『第三に、こうしたプロセスで、中央銀行が発信すべき情報とは、経済・物価情勢に関する判断と金融政策運営についての基本的な考え方の2つです。市場参加者は、こうして発信された情報を、自らの経済・物価に関する情勢判断と照らし合わせて金利観を形成し、中央銀行は、形成された金利、イールド・カーブから市場の経済・物価認識を読み取ることができます。』

『市場との対話とは、こうした双方向のコミュニケーションです。一般論として、こうしたプロセスにおいて、具体的な政策変更のタイミングを示唆することは好ましくありません。そうしたことをすれば、市場参加者は自らの経済・物価観に基づいて取引を行うことなく、中央銀行の示唆するタイミングを前提とした取引を行うことになり、双方向のコミュニケーションとは言い難いものとなるからです。』

イールドカーブがどうのこうのというような御託を並べる人には猛省を促したいですわな。


で、それよりも微笑したのはと申しますと、今回の講演では前回対比で金融政策における第1の柱と第2の柱の点検作業の部分の説明がちょっとわかり易くなっているところですわな(^^)。


(今回)
『4月の展望レポートでは、「『中長期的な物価安定の理解』に照らして、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長軌道を辿る蓋然性が高いことを確認し、リスク要因を点検しながら、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えられる」と記述しています。ここでも、「日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長軌道を辿る蓋然性が高いことを確認する」という第1の柱による点検と、「リスク要因を点検する」という第2の柱による点検の双方を丹念に行っていく方針を、はっきりと述べております。どちらかの柱を他方に優先させるといったことではなく、あくまで2つの柱をバランスよく点検した上で、適切に政策判断を行って参りたいと考えています。』


(前回)
『このように、先行きの金融政策は、「中長期的な物価安定の理解」に照らして、わが国経済が物価安定のもとでの持続的な成長軌道を辿る蓋然性が高いことを確認し、リスク要因を点検しながら、進めて参ります。こうした確認・点検を踏まえた上で、経済・物価情勢の改善の度合いに応じたペースで、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えています。』

前回よりも「第1の柱と第2の柱に基づく点検作業」の部分の説明が丁寧になっていて、あくまでも「柱」はメインシナリオVSメインシナリオ以外の点検作業だという点を明確にして、ついでに「第1の柱と第2の柱の点検は同等扱いだ」という面も明確にしているのは、先日のBIS年次報告にあった『The second move was based on the second perspective』というのに少々トサカに来たのではないかと存じます(^^)。

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2007/06/26

お題「ネタの虫干しで武藤副総裁講演です」

今週は金曜の物価統計と雇用統計&来週の短観待ちなのでありまして(まあその前に月末のリバランスとかあるけど)正直そこまでは様子見地蔵なのであります。短い所では月末越えのGC、期末越えのFB、月末スタートのCPなんぞのイベントがございますけどね。

という訳で、別に意図的にそうなった訳ではないですが(汗)、ネタ先送りになっている武藤副総裁の講演(記者会見を先にネタにするとは何たる逆順)をば。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0706b.htm

量的にはそんなに長くないですし、基本的には政策委員会の出している公表文に沿った説明ではありますが、ちょっと先行きに関しては慎重なトーンという印象を与えそうな感じであります。ただまあ一部の読み方については微妙なのですけれども。

○経済の先行きリスク要因

『以上のように、この先2年程度を展望した場合、わが国経済は、潜在成長率を幾分上回る2%程度の息の長い成長を続け、消費者物価は、目先はゼロ%近傍でも、より長い目でみると、プラス幅が次第に拡大していくとみています。これが最も蓋然性が高い見通しだと考えていますが、将来のことには当然不確実性がありますので、そうならない可能性も考えておく必要があります。ここでは、幾つかのリスク要因についてお話したいと思います。』

ということで、先行きのリスク要因を3点言及してますが、そのうち2点が下向きのリスクで、1点が上向きのリスクとなっております。

『一つ目のリスク要因は、海外経済の動向です。(略)米国経済については、住宅市場の調整の進捗度合いや設備投資の先行きを不安視する見方もあります。ここ数か月話題になっている低所得者層を対象にした住宅融資の返済の延滞問題、いわゆる「サブプライム住宅ローン」の問題については、景気全体や金融システムに広範な影響を及ぼさないとの見方が強まりつつあるようですが、住宅市場の調整が想定以上に深刻なものとなったり、設備投資が下振れた場合には、景気は一段と減速する可能性があります。』

『また、米国では、資源の稼働状況が高水準であるもとで、インフレ圧力が持続するリスクもあります。コアの消費者物価の伸び率をみると、このところ幾分低下していますが、依然やや高止まっています。仮にインフレ圧力が減衰しない場合には、長期金利や為替相場などの反応を介して、米国のみならず、世界の金融市場や経済に悪影響が及ぶリスクがあります。(中国の話もあるのですが以下割愛)』

ということで、武藤副総裁の言及では海外のインフレ圧力に関して「金融市場や経済に悪影響が及ぶリスク」と微妙な表現になっています。インフレ圧力に関してアップサイドリスクという表現をする傾向にある福井総裁とはちと違いますなという感じでして、この表現はどっちかというと下振れリスクっぽい印象ではありますが、「減速」と言わないで「悪影響」と言うのが何とも微妙であります。うーむ。


『二つ目のリスク要因は、IT関連財について在庫調整が継続していることです。(略)この分野は供給能力の拡大ペースが速く、また、そうしたもとで稼働率の維持を優先する動きもみられることから、例えば、海外経済における景気減速リスクが顕現化し、需要が下振れる場合には、在庫調整圧力が一段と高まる可能性もあります。』

IT関連の話は金融経済月報などでは一旦第2線に引っ込んだ感じですが、まあこの部分は引き続き注目ということでしょうか。ちなみに、さっきから引用で(略)とやってる部分に何が書いてあるかといいますと(本来URL先を見て欲しいのですが^^)、「このリスク要因に関しては基本的には大丈夫だと見られます」という話になっておりますので念の為。


『三つ目のリスク要因は、金融環境などに関する楽観的な想定に基づいた金融・経済活動の振幅の拡大です。(以下いつものお話です)』

ということで、こちらはいつものお話なのですが、ちょっと注目したのはここで現在の金利に関して『企業や金融機関の財務体質が改善している中、実質金利は極めて低い水準にあることから、金融・経済活動が積極化しやすい局面にあります。』と言及していることでして、展望レポートでは『経済・物価情勢の改善が展望できる状況下、金融政策面からの刺激効果は一段と強まる可能性がある。』という表現になっておりまして(当然ですが4月27日の決定会合議事要旨でも同じ指摘です)、現在の金利水準についての武藤副総裁の認識は展望レポートよりももうちょっと「現在が緩和状況」という方向にシフトしているように見えます。



○んでまあ物価面ですが

良く見ると物価面に関しては上振れリスクの方が多かったりするのでありますよ。まあゼロ近傍で下振れリスクがでかいとなると利上げどころの騒ぎではないですが(^^)。

『一つには、景気が拡大しても、物価が想定のとおりには上昇しないリスクです。先ほどお話したように、企業が厳しい競争環境に直面している中で、賃金の上昇テンポが生産性との対比で高まっていくかどうかは不確実です。また、家計部門への所得波及が想定以上に遅れる場合には、消費財・サービスを巡る需給環境があまり改善しないことにもつながります。』

これって一見すると下振れ(というか足踏み)リスクに言及しているようにも見えますが、先日ご紹介した4月27日の金融政策決定会合議事要旨を見ますとこのリスクは「第2の柱に基づく点検」で言及されているリスク要因でありまして、金曜にも申しあげたように、「消費者物価指数が上昇しにくい状況下で、消費者物価指数に過度にフォーカスして金利調整が遅れると問題がある」という話にも繋がるので、これまた実に微妙なお話。

『一方、潜在成長率を上回る成長が2008年度まで持続すれば、設備や労働といった資源の稼働状況は一段と高まりますので、これまで低位で安定してきたインフレ予想が上昇する可能性があります。また、企業の人手不足感が高まっている中で、良い人材を確保しようとすれば、人件費抑制姿勢を変化させる可能性もあります。そのような状況では、労働者側の賃金に対する姿勢も徐々に変わっていくかもしれません。これらは、物価に上振れ圧力が加わることを意味します。』

まあ潜在成長率云々は兎も角として、あたくし個人的には賃金経由の物価上昇圧力は気にしております(ので週末の雇用指標注目ですが)。

『また、原油をはじめとする国際商品市況については、地政学リスクなどの要因によって、上下双方向に大きく振れる可能性があります。そうした場合、国内企業物価や消費者物価にも大きな影響を与えることになりますので、その動向をよくみていく必要があります。』

これは上下両方向でございます。現在はサガランチ会長ですな。



○金融政策に関しては見事に公式見解通り

んでまあその次が金融政策に関してなのですが、こちらは見事な想定問答ですねという感じであります。これではヘッドラインリスクも起きませんわなという所で(^^)。

正直申しあげて引用しても展望レポートなどの引き写しになる(念の為3回読んでみたのですが^^)のですが、記者会見で質問のあった部分を引用してみるのであります。

『経済・物価が今後とも見通しに沿った動きを続けていくためには、政策金利水準の調整を行っていくことが必要となってくると考えられます。ただ、必要な調整のペースは、今後の経済や物価情勢の改善度合いに応じて、決まってくるものであり、予めそのスケジュールが決まっているものではありません。』

最近スケジュール感を否定しているのは多分正直な所なのではないかと思うのです。というかスケジュール感があって金利調整をしていくのであれば、かつてのFRBみたいに中立金利水準に向けてメジャードペース(しかし今でも不思議なのは「メジャード」が何で「ゆっくりした」となったんだろという事^^)で利上げをしていくというロジックで行った方が理屈としては判りやすくなると思うんですが、多分FRBの利上げ開始よりも日銀の利上げ開始のタイミングが早めだということもあるんで足元ルッキングのゆっくりした(どう見てもFRBより遅いですわな)調整となるっちゅうことなのでしょうか。

と申しますか、あたくし個人的にはFRBの利上げ開始は結果的に見て少々遅かった(=緩和を引っ張りすぎた)んジャマイカという感じもするところ(本当はどうだったのかは良く判りませんので今後の検証を待ちたいのですけれども)でして、まあ難しいところではありますわな。日本の場合はもともと米国ほどインフレ期待が無いですから、緩和引っ張っても急にリスクが顕在化するとも思えないところではありますので、これまたムツカシイお話ではありますわな。

#と、最後は何が何だか良く判らんグダグダになって本日は終了なのでした。また引用で増量してしまいましたすいませんすいません。

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2007/06/25

お題「ちと順序が逆ですが武藤副総裁の会見より」

てな訳で、先週の武藤副総裁の講演と会見なのですが、ちと順序が逆になりますが今日は会見の方を。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0706c.pdf

まず最初にあたくしのまとめですが、武藤副総裁の記者会見の全体的な印象を最初に申し上げますと「何というスキの無い会見」と言ったところかと思います。武藤さんが総裁になったら福井さんのような「オイシイ」会見は中々見せてくれないなあと思うと共に、阪神タイガースがどうのこうのというような愚劣としか言いようの無い質問をするテレビ局のアナウンサーがしゃしゃり出てくる(そういえばそのアナウンサーは今・・・・)ことも無くなるんでしょうね。


○武藤副総裁の「市場との対話」

また「8月に利上げをするのか」というくだらねえ質問があったのですが、引っ掛け質問は止めなさいと思いますよ。まあ記者サイドはどうにかして言わせたいんでしょうな。武藤さん相手に聞いても無駄ですけどねえ。

『3点お尋ねします。1点目は、OIS(Overnight Index Swap)市場や金融先物市場をみると、8月、9月の利上げをほとんどフルに織り込んでいます。(途中割愛)要するに、市場がもう利上げするのだろう、8月に金利が上がるだろうとみたとしても、政策委員会としては、よくよく先行きを考えた上で8月に利上げをしない可能性もあると考えても良いですか。(以下割愛)』

この露骨な質問に対して武藤副総裁が質問を返しているのが何とも(^^)。

『1点目の質問の中で、8月利上げ云々とおっしゃいましたが、ご質問の趣旨は、「8月、9月のOIS市場の織込みを踏まえて、8月に利上げを実施するのか」といったことなのか、それとも、「それよりも前に織り込まれている部分を考えても8月に実施するのか」という趣旨でしょうか。』

で、要するに「市場がフルに利上げを織り込んでも利上げをしない場合があるのか」という質問に内容を明確化させて武藤副総裁は実に素晴らしい応答をしています。以下長いですけれども、おっしゃるとおりですので、適宜段落わけしながら引用します。

『1点目の市場が次の利上げをどのように織り込んでいるのか、そして、その織り込んだ姿に対して日本銀行はどのように対応していくのかというご質問については、かねてから申し上げていますように、日本銀行として、いつ、どういうタイミングで政策変更があり得るけれども、こういうタイミングではない、といった情報発信をするのは適切ではない、と私は考えています。』

これはその通りであります。で、その次に中央銀行と市場の対話について武藤さんが持論を展開しているのです。

『中央銀行と市場との対話はいかにあるべきか、ということにご質問の本質があると思います。この点に関しては、中央銀行は、まず経済・物価情勢に関する判断と金融政策運営の基本的な考え方を情報発信し、市場参加者は、そうした情報を踏まえた上で、自らの経済・物価観に照らして、市場金利を形成します。』

『中央銀行は、その形成された金利から市場参加者の経済・物価観についての情報を得ますが、自らの情勢判断に役立てていくということであって、それに従うということではありません。この双方のやり取りで成り立っているのが情報発信であると考えます。』

「市場は鏡」という福井総裁よりは一歩引いたニュアンスを感じましたけれども、こうでなければアラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」になり兼ねない訳ですから。

『日本銀行として、タイミングはいつだということを情報発信して、それにマーケットが付いて行くというのも適当なことではありませんし、逆の意味で、マーケットがあることを示した、ということに対してそれに追随していく中央銀行というのも適当ではありません。中央銀行が市場参加者による金融政策の見方について、論評を加えること自体が、双方向のコミュニケーションを阻害することになり兼ねず、適切ではありません。市場参加者による金融政策の見方について、私どもとしては論評する立場にないということです。』

イールドカーブがどうこうとか言うのがお好きな審議委員もおいでのようですが、やはりちょっとどうなんでしょうかねえと思うのですが。


○4月の展望レポートで「改善度合いに応じたペースで」金利調整となったこと

これも中々良い質問。

『同じ5月16日、17日の議事要旨の中で「何人かの委員は、今後の経済情勢次第で利上げのインターバルが変化し得るという点は、今回の展望レポートの中で記述を工夫したポイントの一つ」としています。具体的には、4月の展望レポートでは、金融政策運営について、「経済・物価情勢の改善度合いに応じたペースで徐々に金利水準の調整を行なう」として、昨年10 月の「情勢の変化に応じて徐々に」という記述から変化しています。この点も工夫したポイントの1つと理解してよろしいのでしょうか。』

『展望レポートの表現の中で、今後の政策運営の基本的な考え方に関しては、まさに今ご指摘の点が一番大きな変更点です。そこで、表現したかったことは、一定のシナリオのもとで、一定期間経過したら、政策変更を行なっていくといった、いわゆるスケジュール感をもった政策変更という議論が存在することに対して、私どもとしては、「スケジュール感をもった政策変更は、考えていません。要するに、今後の景気回復のペースの度合いに応じて対応していきます」ということを明らかにしたわけです。ご質問にあった議事要旨の記述がその部分を指していると、私も理解しています。』

まあこの裏を返しますと、量的緩和解除からゼロ金利解除に至る部分ではスケジュール感があったんじゃないのかなって感じるんですよね。それがCPI改定以降ちょっとトーンダウンしたと言ったところなのではないかなあと思いますな。

んでまあその次の質問で「じゃあ当面不確実性があると一致しているんだから利上げのインターバルは長くなるんですか」というのが飛んで来る訳ですが、それに対する武藤さんの答え。

『不確実性については、ダウンサイドの方にバイアスがあると言うことも可能ですが、私は、物価上昇が経済回復の度合いに応じて上昇していかないリスクがあると同時に、何らかの展開を契機にして、例えばインフレ期待が高まるということによって上振れるリスクもありうる、即ち、アップサイド、ダウンサイド両方のリスクがあると考えています。従って、ペースに応じた政策展開が一方的に先延ばしになるということではなく、遅くなるかもしれないし、早まる方向に働くかもしれないと理解しています。』

ということで、当面の金利調整(つまり利上げプロセス)は足元ルッキングになるというのが一点ですが、武藤さんのアップサイドリスクの説明がちょっと弱い(他の質問に対する答で「インフレが急激に起こる可能性は今のところ迫っていない」と言ってます)ので、武藤さんもちょっとダウンサイドリスクの方に注意しているような印象を受けました。


○しかし隙が無いですな

こんな質問も。例によって一部を切り取ってますが。

『リスクをアップサイド、ダウンサイドとご丁寧に説明頂きましたが、福井総裁は、IMC(International Monetary Conference)の会合や6月の記者会見において、最大の敵は急激なインフレ期待の増大である旨をおっしゃったと思います。情報を受ける側としては、「もちろんアップサイド、ダウンサイド両方のリスクがあるが、インフレについては、CPIだけみていてもだめで色々なものをみなければいけない。もしかすると、色々な国の中央銀行が利上げに転じている中で、知らないうちにインフレが進行していて、急にインフレ期待が高まることもあるということを強調されていたのではないか」と思うのですが、具体的にはどのようなことを想定しておられるのでしょうか。』

これに対する武藤さんの答え。

『IMC等における総裁発言については――正確な文脈を覚えておりませんので留保が必要ですが――、物価を巡るリスクには、アップサイド、ダウンサイド両方ある中で、ダウンサイド・リスクとして物価下落がさらなる物価下落を呼ぶ、という意味でデフレ・スパイラルのリスクがあるかというご質問であれば、その可能性はかなり小さいと判断しています。(以下割愛)』

『一方、インフレが急激に起こる可能性については、私ばかりでなくかなり多数の意見だと理解していますが、その可能性が喫緊に迫っているとは考えていません。しかし、いわゆるリスク管理のあり方として、めったに起こらないかもしれないが、起こったら非常に大きなダメージを経済・物価に与えるおそれがあるものに対しては、私どもは極めて鋭敏でなければならないと思います。その意味で、「最大の敵」という表現はともかくとして、やはりインフレ期待が急激に上昇することに関しては私どもは極めて注意深くなければならないと考えています。』

何というバランスの取れた発言。で、『「最大の敵」という表現はともかくとして』ってのは福井総裁の表現がヘッドラインリスクを招きやすい事についてちょっと苦言を呈しているように見えてそれにもまた萌えるのでございますが(^^)。


○良い物価下落、悪い物価下落という表現は・・・・

その前の質疑で『コスト引き下げ努力、生産性の向上、規制緩和等による競争の促進等によって物価が上昇しにくい状態が起こること、あるいは物価が引き下げられること自体は、プラスに評価するべきだと思います。』って武藤さんが答えた所にすかさず質問をするのも鋭いですが。

『個々のケースで、歓迎できる物価下落があるという理解でよろしいでしょうか。』

で、武藤さんの答がまたスキの無いお答えで。

『私は良い物価下落とか悪い物価下落という議論を軽軽に語るべきではないと思います。一般的な表現として案外人口に膾炙したものではありますが、簡単に良い物価下落、悪い物価下落と言っても、最終的にはなかなか判断が難しく、一般的にそのように言うことには慎重であるべきだと考えています。しかし、個別の事例について、規制緩和による競争強化を企図して料金等が引き下げられることがあるならば、それは政策としてむしろ望んで行われているものであり、その限りにおいて望ましいことと考えています。』

まさに「一般的にそのように言うことには慎重であるべきだ」ということなのでしょうな。

まあそんな感じで、スキの無い質疑応答で、中立的ではありますが、無理矢理タカかハトかと色をつければどっちかというとハトに近くなるのではないかなあと思うのは、足元ルッキングについて強調している所とか、ダウンサイドとアップサイドで並べている要因がちょっとダウンサイドの方が具体的っぽい所とかでしょうか。まあ国内経済要因というよりは海外要因のダウンサイドリスクなんで、それほどでかいわけでもないでしょうが。

#引用が多くて増量になってしまいましたね。

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2007/05/25

○武藤副総裁の日本金融学会での講演(5月12日)

あたくしがお休みしてた時のネタのサルベージ。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0705c.pdf

お題は『中央銀行の政策決定と委員会制度』ということで、FRBとECBとBOEの事例を挙げながらの講演でございまして、まあ教科書として読むのにはお勧め。で、現在の日銀の金融政策のありかたがどうのこうのという問題ですが、最後の方で情報発信(というか説明責任という方が正しいかな)の有り方云々というお題がありまして、その最後の部分で(最近の情報発信に関する教訓)というのがございました。3点述べているのですが、まさにおっしゃるとおりでございますと思います。

『第一に、金融政策決定会合前の情報発信に関しては、合議制である金融政策決定会合では、審議や討議を通じて意思決定がなされる訳で──例えば、委員会における討議を通じて、「会合後の私は、会合前の私とは異なる」ということが起こりうる訳で──、採決が行われるまで結果は判明しませんので、会合の決定に関する情報発信が会合前に行われることはありえないということをご理解頂くことが重要だと思っています。』

ということで、これは事前のフライング報道というかリークもどき報道に対する苦言でもあろうかと思います。で、これまた調子に乗って引用してると終わらないので第2の引用は割愛しますが、少数意見が出ることによって討議のプロセスが明確化されるという話です。ということは、武藤副総裁としては先般の岩田副総裁の利上げ反対のような少数意見が出ることこそ望ましい(講演本論中にもそれに類した話があったように読めましたが)という節があるのではないかと。

『第三に、こうしたプロセスで、中央銀行が発信すべき情報とは、経済・物価情勢に関する判断と金融政策運営についての基本的な考え方の2 つです。市場参加者は、こうして発信された情報を、自らの経済・物価に関する情勢判断と照らし合わせて金利観を形成し、中央銀行は、形成された金利、イールド・カーブから市場の経済・物価認識を読み取ることができます。』

『市場との対話とは、こうした双方向のコミュニケーションです。一般論として、こうしたプロセスにおいて、具体的な政策変更のタイミングを示唆することは好ましくありません。そうしたことをすれば、市場参加者は自らの経済・物価観に基づいて取引を行うことなく、中央銀行の示唆するタイミングを前提とした取引を行うことになり、双方向のコミュニケーションとは言い難いものとなるからです。』

ということで、まあ地均し(というと物凄い勢いでそうじゃないと言われそうですが^^)路線については否定的(当然ですが)ということで、これは武藤副総裁前々から言ってますけど、仮に武藤さんが次の日銀総裁に就任された日には、会見や講演などでの不規則発言は中々見られなくなるかもしれませんな(^^;


まあそんなところで本日もサルベージシリーズでした(汗)。

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2007/04/05

ということで武藤副総裁講演。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0704b.pdf

武藤副総裁の講演となりますと、大体こう日銀の公式見解に沿った趣旨で手堅く(または無難に)まとめるという内容になってまして、そんなに突拍子も無い話は出てこないのであります。当然ながら今回もそんな感じですけど・・・・・

○経済物価情勢に関する部分

基本的にはここで書かれている話が展望レポートの基本的な骨子になるんじゃないのかと勝手に想像しております。今まで日銀(というか政策委員の人たち)から出ていた話と趣旨は変らんので細かくは紹介しませんけど。

・米国経済について(2ページ目)

『住宅市場の調整の帰趨はまだ見えていませんし、物価面ではコアのCPIが依然高めの伸びを続けていることから、引き続き、景気後退とインフレの上下双方のリスクに注意が必要です。ただし、これまでの動きを踏まえると、今後、ソフトランディングに向かう可能性(中略)が高いと判断できます。』

ところで米国がスタグフレーションになったらどうしましょ??


・国内物価の先行きを上昇と見る根拠(7ページ目)

『短観3月調査によると、設備が不足していると感じる企業の割合が過剰と感じる企業を上回っているほか、企業の人手不足感も強まっており、資源の稼働率は確実に高まっています。』

『また、マクロ的な需給ギャップを推計すると、需要超過方向で推移しています。』

『さらに、これまで、物価押し下げに作用してきたユニット・レーバー・コスト、すなわち生産1単位当たりの人件費についても、先行き、賃金の上昇傾向が徐々にはっきりとしていくにつれて、物価への下押し圧力を弱めていくものと考えられます。』

という3点が日銀的な「先行き物価上昇しますよ」の根拠ということですな。まあ既にこの話は何度も出てますが一応整理の為。


○そろりと出てきた「正常化」

金融政策運営に関する部分もまあツッコミをしたくなるのですが、基本的に日銀の公式見解ベースの説明ですんで、悪態をつくこっちもいつもと同じ話になるので華麗に割愛。で、ほほうと思ったのは12ページ以降の(先行きの金融政策運営の考え方)部分でございます。13ページの冒頭部分から。

『市場やメディアから、こうしたプロセスは「正常化」なのか、という質問を受けることがありますが、「正常化」という言葉は色々な意味で使われているように思います。もし、これが「いわゆる中立的な水準などの一定の水準に向けて、スケジュール感を持って金利を調整すること」を意味するということでしたら、私どもは、そのような考え方は採っていません。』

『日本銀行の金融政策運営の考え方は、今申し上げたとおり、@極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持すること、A経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うこと、であり、この点について政策委員の考え方は一致しています。したがって、金利水準の調整は、「経済・物価情勢の変化に応じて」スケジュール感を持つことなく行うことになります。』

『仮に、そうしたプロセスを「正常化」と呼ぶのであれば、私どもは、経済・物価情勢が正常化していくにしたがって、それに応じて徐々に金利水準を調整していくと言っても良いかもしれません。』

えーっとつまりFRBが行っていた「中立金利水準に向けてのメジャードペースな金利引上げ」みたいなやり方は取らないですけど経済物価情勢が正常化していくのだから金利も正常化しますという話ですかそうですか。で、その正常化ということは正常な水準を意識してないと話が始まらんような気もするんですけど。

てえこたあ米国の中立水準に向けての利上げはありゃビハインド(かどーかは知らんが)でやってましたけど日銀はフォワードルッキングでやってるから米国みたいに計ったようなペース(メジャードペースって直訳するとそうなると思うんだが^^)で利上げするような対応にはなりませんがなという事なのでしょうか。うーむどうも書いてて自分でも頭がワケワカメになってまいりますな。

しかし福井総裁がやたらとその言葉を使うのを忌避する「正常化」について「これを正常化といえば正常化」的な説明が武藤副総裁から出てくるとは。


○市場との対話

まあこれは毎度お馴染みの話ですけど14ページより。

『一般に、こうしたプロセス(引用者注:市場との対話)において、具体的な政策変更のタイミングを示唆することは好ましくありません。そうしたことをすれば、市場参加者は自らの経済・物価観に基づいて取引を行うことなく、中央銀行の示唆するタイミングを前提とした取引を行うことになり、双方向のコミュニケーションとは言い難いものとなります。』

まあそりゃそうなのですが、一方で政策運営にあたっての日銀の見通しの前提にいつもの奴がある訳ですな。10ページからが2月の政策変更に関する説明なのですが、その11ページから。

『こうした見通しは、市場参加者や企業などの民間経済主体が、先行きある程度の政策変更を織り込んだうえで、経済活動にかかる意思決定を行っていることを前提としたものです。』

即ち日銀の経済物価情勢の先行き見通しの前提に「先行きある程度の政策変更を織り込んだ」というのが入っている以上、毎度おなじみの円環性問題が生じる(暫く言われていた「日銀は先行きの利上げ織り込みを前提にしてるのだから、このあたりで利上げしないと日銀の経済見通しと整合性が取れない」という指摘も本質的に同じ話だと思う)のではないかと存じます次第でございまして、やっぱ「今の金融情勢を継続した場合今後こうなるので政策の変更を行う/行わない」とした方が話としてはよさそうに思うのですけどねえ。。。。

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2007/01/05

○実物手元にないけど読んだ記憶で一応メモを書いておきます(追記あり)

武藤副総裁のインタビューでしたが、見出しは「利上げ、成長戦略と矛盾せず」という趣旨でございまして、経済が正常化する中で超緩和的な金融状況を続けると余計な過熱が起きるから、金融政策の正常化をするというような話でした(脳内メモリーから書き出しておりますので後日補記致したく存じます)。

まあ要するに「1月か遅くても2月には利上げしますよ」ってお話なんでしょうという風に市場の中の人たちは理解する訳でして(読売新聞の記事も影響してたと思いますが)金先や債先が売られておりましたが、年末年始の関係上今月前半は入札の本数が多いので相場の水準も訂正してくれないと困りますんで妥当な反応という事で。

別にそんなに利上げを急がないといけない理由は判らんのですが、ものは試しに正常化理論を正当化してみますと、(1)引き締めを行うのではなくて景気が拡大する中での正常化という文脈なので、期待インフレ率(がそもそもそんなに高いのかという問題は華麗にスルー)を押し下げる訳ではない、(2)正常化路線をとらずに低金利継続の期待が強まると、期待インフレ率の上昇に拍車がかかり、長期金利に上昇圧力が掛かりやすくなるので、財政健全化に対してもアゲンストであり、正常化路線によって長期金利の過度な上昇が抑えられる、なんて感じでしょうか。まあ愚考もいいところでございますが。

読売新聞ではこんな記事が出てたようですし、まあ基本的には(記事にもありますが)政府の理解が得られれば1月に利上げですし、まあ1月やらないにしても2月にはって感じなんでしょうな(さすがに今度はやらないにしても利上げ提案でますよね)という所でしょう。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20070104mh01.htm
月内にも利上げ 日銀検討
日本銀行が、1月にも追加利上げを実施する方向で検討する見通しとなったことが、31日、分かった。2006年末の経済指標で日本経済の底堅さが確認されたとして、利上げに向けた環境が整いつつあるとの判断を固めた模様だ。

(以下1月8日追記)

で、まあインタビュー記事ですが日経新聞3日朝刊5面にございまして、内容の一部を引用させていただきます。

(問)景気持続のカギは何ですか。

(答)企業から家計に波及していくメカニズムが今後も順調に働くかがポイントだ。だが波及は後ずれしている。1月の金融政策決定会合では経済情勢が10月に公表した日銀の経済見通しを示す『経済・物価情勢の展望(展望リポート)』に沿っていくのかしっかり議論し、中間評価を示したい。

(問)日銀の金融政策はどう運営すべきですか。

(答)金融政策は先行きの経済・物価動向を予測しながら運営する必要がある。物価安定の下で行きの長い拡大を続けていくのが最も蓋然性の高い見通しだ。リスク要因を点検したうえで展望リポートの見通しに沿っていくと見込めるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に金利水準の調整をする。

(問)「徐々に」というのはどの程度の期間を想定しているのですか。

(答)我々はスケジュールの感覚を持って議論しているわけではない。今後出てくる指標や情報を丹念に点検することが重要で、具体的にどのタイミングで政策の変更が行われるのかを予め示すのは適切ではない。市場には米連邦準備理事会(FRB)が毎回0.25%ずつ利上げして逝った強烈な印象があるので、それを参考に『徐々に』という表現を理解しようとする傾向がある。そうした前例がなければ、『徐々に』の意味について『何カ月ごとか』という質問が出てくる余地はないと思う。あくまで虚心坦懐に判断していくと理解して欲しい

(問)利上げは成長を重視する安部晋三政権の「上げ潮政策」と対立するとの見方もあります。

(答)上げ潮政策は『活力に満ちたオープンな経済社会の構築』という意味だと理解している。そのためにはイノベーションで民間活力を引き出し、潜在成長率を高めることが重要だ。政府の基本的な考え方に異存はない。日銀の役割は、物価安定の元で持続的な成長の実現に貢献することに尽きる。金利をずっと低位に据え置くことが持続的な成長のために一番必要かというと、決してそうではない。経済が順調に成長しているのに金利を無理に維持すれば必ずひずみをもたらす。景気の急激な拡大と縮小という大きな調整コストを払うことになる可能性が高く、成長の芽を摘んでしまう恐れがある。経済が正常な姿になっていくのであれば、それに応じて金利水準を正常化していくことが望ましい。

(追記終わり)

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2006/11/24

○武藤副総裁のインタビュー

時事メイン21日火曜日14時12分配信の武藤副総裁インタビュー記事からなんですが、このインタビューが一問一答形式でかなーり長いのでほんのちょっとだけ。

『(問)「市場との対話」をどう進めていくのか。』

『(答)金融政策は金融市場や金融機関の行動を通じて効果を発揮するため、透明性が高いほど政策効果も上がる。この点は、かつての金融政策の思想と様変わりした。日銀は今年3月に「新たな金融政策運営の枠組み」をつくった。7月のゼロ金利解除では、最初の利上げが市場にどう影響を及ぼすのか非常に心配する向きがあったが、結果的に市場参加者に日銀の意図が織り込まれ、金融市場は安定的に推移した。これは新しい枠組みが有効に機能している証拠であり、引き続きこれを生かして丁寧な情報発信を進めていきたい。』

まあ先日の展望レポートや決定会合議事要旨、総裁記者会見でもこういう話になっておりますので、政策委員会の総意なんでしょうが、ここを読んでいるとどうも「地均し絶賛大礼賛」にしか読めないのはあたくしの僻目ですかそうですか。で、まあその次に直球の質問が出るわけでして。

『(問)追加利上げ前にも、日銀の考えを市場に織り込ませるということか。』

『(答)一般論として言えば、サプライズを与えるような形は望ましくない。出来る限りサプライズのない情報発信や、透明性の確保に努めていく必要がある。』

だそうです。そうなると、どっかでまた「次回やりますよ」地均しが発生するのではないかと思うのが人情(?)というものでございます。いみじくもこの質疑応答の直前にはこんなのがございました。

『(問)市場には「はじめにスケジュールありき」という推測もあるが。』

『(答)そういうことも、ある時期においては起こるのかも知れないが、少なくとも現時点でタイミングを決めて対応する、というようなことは全くない。』

ちなみに、市場が反応した「条件が揃えば果断に対応」というのはこういう質疑応答の流れで出ております。ちょうど上記質疑の前になります。

『(問)12月を含め、特定のタイミングを排除していないのか。』

『(答)そうだ。この段階で「12月にある」「ない」になりがちだが、われわれはそれを含めて特定しているわけではない。』

『(問)現時点で何月と決めていないのか。』

『(答)決まっていない。白紙だ。諸データの点検が必要だ。特に、足元でいろいろなデータが出てくるから、それを見ていかないと。あらかじめ何か決まった思い込みがあるのはおかしい話であり、そういう意味でわれわれは常にデータをよく見て、それで判断していく。そういう姿勢が非常に重要だと思うし、そうでないと説得力はない。』

『(問)データがそろえば果断に行動するのか。』
 
『(答)そういうことだ。』

という訳で、「果断に行動する」と武藤副総裁が言った訳ではございませんので念の為ご注意下さい。

(以下11月24日の夜に追記)
・・・・と書いたのですが、指摘を受けまして大間違いに気が付きました)

武藤副総裁はこの質疑の前にこんな話をしています。しかも直前でございますスイマセンスイマセン。

『(前半割愛)具体的な政策(変更の)タイミング、あるいは金利水準をどうするかについては、「経済・物価情勢次第である」と、現時点ではタイミングを特定しているわけでは全くない。しかし、世の中には「日銀はどうも早めに利上げしたいんじゃないか」、逆に「利上げはできるだけ遅い方がいいんだ」などいろんな意見がある。』
『われわれは毎回の政策決定会合で経済・物価の動向をフォーワードルッキングに、しかも基調の動向を1つ1つ点検して早くもなく遅くもなく、そういうタイミングで政策変更していく。慎重に判断する必要はあると思うが、判断が固まれば果断に実行していくのが基本だと思う。

ということで、記事をお読みになっている方には先刻ご承知だと存じますが、ソースが一般的に読めないものだけに間違えると思いっきり問題でございました。伏してお詫び申し上げます。

また、メールにてご指摘いただきましたことを深く感謝致します。改めてありがとうございました。
(追記ここまで)

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2006/11/22

○武藤副総裁時事通信インタビュー(メモ、たぶん金曜に続く)

議事要旨の話を書いているうちに時間が無くなった(寒くて朝起きるのが・・・)のでとりあえずメモ。

昨日の市場では武藤副総裁インタビューのうち、フラッシュで「データがそろえば果断に行動する」とかいう(すいません、時事メインが無いので良くわからんのですけど、汗)所に債券先物もユーロ円金利先物も反応していましたが、その後長期ゾーンは復活し、中短期ゾーンはヘロヘロのままとなりました。

まあこのインプリケーションをどう見るのか難しいところではございますが、あたくしの勝手な見立てを申し上げますと、短期ゾーンに関しては一昨日昨日の時点で株価やらメルボルンでの福井総裁発言(=「12月利上げの蓋然性が高まった訳ではない」)を見て「12月利上げ懸念がかなり後退してた」というのがあったかと思います。

一昨日の引けで2年が4.5毛強だの5年5毛強だのやらかしておりましたし、昨日の国債買現先オペ(=短期資金供給)では、12月26日のエンドで平均0.314%の足切り0.31%となってまして、先週金曜日に実施された共通担保資金供給本店オペの平均0.312%、足切り0.31%とまるで変らんレートでして、12月の決定会合越えになって足が6日間延びているのに金利が殆ど同じというのは「まあ全然あがりませんでしたなあ」ということでごく一部のマニア市場関係者で話題になってました次第(ちなみに、どこぞの情報ベンダーでは「オペ金利が強含み」と比較の対象が不適当なお題の記事を配信していましたが)でして、ちょっと楽観しすぎてたって事でしょう。

実際の内容はちょっと読んだのですが、基本的に今までの話の踏襲であって、「市場との対話」に関しては「武藤副総裁も地均し路線ですか」とちょっと脱力する部分もございましたが(金曜にでも)、まあそういうことですんで、債券の方は「そうは言ってもこの状況で連続利上げでもないでしょ」と冷静になって戻ったために、カーブがツイストみたいな感じになったのではないかと思料。

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2006/10/10

お題「武藤副総裁記者会見」

PDFで7ページ程度ですが、よくよく見ると質疑応答の内容は充実してまして、実のところ全部引用したくなる感じですが、そうも言ってられませんので適宜。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0610a.pdf


○市場の景況感VS日銀の見立て

マーケットが反応したと思われる質疑2本のその1です。

市場の景況感と日銀の景況感が違う(市場は利上げが遅れる方向で走っている)ことに関して、『こうした中で、日本銀行が利上げをしようとする時に大きな反動が出てしまうと思うのですが、そのハンドリングをどのようにしていくのでしょうか。』という質問に対しての武藤さんの答え。

『まず、最初の質問について、マーケットがどのような予測をしているのか、ということについては、私どもは色々な見方があり、必ずしも一定方向の流れがあるとはみておりません。』

えーっと、市場が利上げ(とか量的緩和解除)を織り込みに行った時は「市場も織り込んでます」とかいうような話になると思ったのですが、市場の景況感が日銀と違ってくると「色々な見方がある」ですかそうですか。ふーん。

という悪態は悪態としてまあフォローしますと、確かに短期国債の金利とかを見てますと年度内の利上げも無いんじゃないかという話になってましたが、じゃあ皆さん本当にそう思っているのかというとこれまた別のような気もしますんで、色々な見方があるというのは現時点を切り取るとそれはそれで変な話でもないとも言えますわな。難しいところですが。

『日本銀行としての基本的スタンスは繰り返し申し上げているとおり、「予断を持っていない」ということであります。勿論、今後事態の変化、次々と出てくる経済・物価関係の指標をみながら判断していくわけですが、恐らくそういうデータが一つ一つ現実のものになってくれば、マーケットもそれを織り込んで自律的な判断をする可能性が十分あると思います。』

まあここは一般的なお話。で、次にこういうコメント。

『したがって、今すぐ私どもがマーケットに対して何か政策変更をしたら、それがショックを生じさせるような状況にあるとは思っていません。』

ちと市場の景況感に対するコメントが引っ掛かりますが、ここまでの流れとこの先の流れを読みますと、まあそんなにややこしい話をしてるわけではないですな。ここだけ切り取ると「ええっ!」となりますけど。

『勿論、今後の展開次第では、そういう可能性もあるかもしれませんが、今後の展開が一つの大きな流れを作っていくのではないかと考えております。私ども自身もデータをみながら、予断を持たずに客観的に判断していきたいと考えております。』


○米国クリスマス商戦がどうのこうのという話

一番マーケットが反応した質疑は多分これ。質問の当該部分を引用します。

『2点目は、それと関連して、挨拶要旨の中で、リスク要因として米国経済を挙げ、米国の消費マインドやインフレ動向を注意深く見守りたいとおっしゃっているが、米国の消費動向を判断する上で、クリスマス商戦というのは、IT需要とも関連し非常に重要だと思います。これを見極めないと、次の利上げは難しいとお考えですか。見極めるという意味では、クリスマス商戦のデータが出てくるのは年明け以降になり、それを見極めなければ追加利上げは難しいとお考えですか。』

1点目と3点目も似たような趣旨の話をして、要するに「年内の利上げは出来ませんですよね」という超具体的な質問です。こういう質問が来たら「そりゃ違います」って答えが当然帰ってきますわな。

そういうことでこの答えが出てきたわけです。

『そういうこととの関連で2番目の質問も出てきていると思いますが、米国の消費動向について、クリスマス商戦を見極めないとその判断が出来ないかどうかというと、クリスマス商戦は米国の消費動向を占う上で、非常に重要なものだと理解しておりますが、その見極めができないと政策展開ができないというような考え方をとっているわけではありません。』

まあ先ほどの質疑応答からして、当然こういう答えになりますわな。政策委員会としては基本的に「今後の金融政策はオープン」というスタンスなんですから、年内利上げの可能性を否定する訳にはいかないでしょう。ちなみに米国経済への見立てはその続きにあります。

『米国では、住宅販売、あるいは住宅価格が減速していることから、逆資産効果を通じて消費に悪影響があると考えられますが、その住宅動向の消費に与える影響については色々な考え方があろうかと思います。また、住宅動向が全てではありませんので、その他の指標をみますと、住宅を除いては好調なものが多いと思っております。』

『一方、原油価格が60 ドルを切るといったように大分低下してきました。米国において、原油価格が消費に与える影響は、かなり大きなものがありますので、そのこと自体は消費に対してプラスの影響があるということが考えられるわけです。このように消費に与える影響としては、プラス面、マイナス面の両面あるわけで、「全体としてどのようになるのか」ということが、今後の注目点であると考えております。』

基本的には講演要旨と同じような話ですけれども、米国経済の先行きに関してはちと不安要因もあるけど、まあ一応はそんなに懸念している感じではなさそうですね。


○物価だけでは判断しませんよという話

先ほどの質疑のうち、3つ目の質問というのがありまして、CPIの改定に絡んだお話がありました。で、それに対する応答部分の中でこんな部分が。

『そして、利上げあるいは政策変更ということになると、確かに物価が重要な一つのデータではありますが、物価だけで判断するわけではありません。その他の経済情勢を総合的に判断するということであり、さらに正確に言えば、この3月に示した新しい金融政策の枠組みに基づいて点検しながら判断していくということですので、それ(CPIの技術的な問題です)によって直ちに時期が具体的に決まってくるということではないと思っております。』

で、最後の質疑でしらっとこんなお話が行われております。

『(問)今の質問に関連したことですが、先ほどからおっしゃっているように、政策はフォワード・ルッキングでなければならないが、消費者物価指数の計数が公表された時点では、公表された計数は大分過去のものになっています。それでは、実際にどのような計数やサーベイをご覧になるのか――物価だけではないとおっしゃいましたが――、もう少し具体的にどういうことを一つずつみていかれるのかご説明ください。』

『(答)実体経済のデータ、すなわち、生産や消費、設備投資、あるいは賃金など、そういうものをすべて色々な形で勘案しながら考えていくということです。私どもは経済の需給ギャップの動向をフォワード・ルッキングに念頭において行動するということです。その実体経済のデータのうち特定のデータをみている、という立場は、私どもはとっていないということです。』

ということで、フォワード・ルッキングを強調していますわな。物価指数に関しては政策効果の結果として出てきた数字であって、将来の判断をする場合に足元のCPIの数字に縛られたくは無いという事なんでしょうな。まあその通りに出来るかというとそれもまた難しい気もするのですけど。。。。


○短観の評価

短観に関する評価についての質問に対してはこのように話をしてます。

『結論的に申し上げますと、私は、これまで日本銀行が展望レポートで説明してきた私どもの経済情勢の見通しが、この短観によって確認されたと考えております。それがこれまでの私どもの見通しに比べ上振れたかという趣旨のご質問であれば、そうではなく、今までの私どもの見通しがこの短観によって確認されたとみるのが妥当ではないかと考えております。』

ということで、短観が出てからやたらめったら景気回復利上げモードの報道になっていた新聞メディアの論調よりも日銀は冷静に受け止めているということでしょう。まあ悪い数字じゃなくてホッとしたという所なんじゃないでしょうかねえ。


○その他

最初の質疑応答部分では京都(京都府金融経済懇談会ですから)の経済情勢に関する見解を披露しているのですが、他の政策委員の皆さんのコメントは割りと地域限定の話っぽいのですが、武藤副総裁のコメントは京都の話をしながらも、一般的な話に繋がるような事例の指摘を行っているのが印象的で、他の政策委員の方のコメントと一味違うという感触を受けました。引用すると長くなるので割愛しますが。

あと、企業部門の家計部門への波及に関する質疑もありましたが、基本的には講演要旨と同じくで、先行き波及していくでしょうって結論になっていました。こちらも引用は割愛します。

全体的に読みどころの多い内容でして、何と申しますか武藤副総裁さすがの貫禄と思ってしまったのはあたくしが安定感の高い武藤さんの総裁就任待望なための贔屓目でしょうかね。

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2006/10/06

お題「武藤副総裁講演」

経済指標が弱くて金利が下がれば株価上昇、指標が強けりゃ景気が良いので株価上昇って実に威勢のよろしいお祭りワッショイ相場ですなあアメさんは。

さてまあ昨日の話題は武藤副総裁講演と記者会見。

○順序逆ですが記者会見メモ

と言いましても、講演の方ではそんなに反応してなかったと思うので、本日要旨が出ると思われる記者会見のメモ。

市場が反応したのでは無いかと思われるのは、年内の利上げに含みを持たせる趣旨の発言かと存じますが、ヘッドラインでは『米年末商戦見極めないと政策展開できない訳はない』『物価は重要な1つのデータではあるが、物価だけで判断するわけではない。』(以上ブルームバーグニュースのヘッドライン)なんてえのが出てきまして、まあこれ実は講演テキストを見れば、そういう答が出てくるのは当たり前なんですが、改めてヘッドラインにでないと反応しないのが市場クオリティ。

この手の発言に海外勢は反応しやすいようで、引け後も金先とか弱そうな感じがしたのは気のせいかな?

でですな、金融政策に関する発言とかも色々と行ってまして、こちらは会見要旨をじっくりと読んで見たいと思いますので詳しくは後日。


で、武藤副総裁の講演に参りましょう。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0610a.htm

まずは景気に関する見立てからですが、講演要旨の3.の小見出しがそのものズバリで『3.景気拡大の背景』となっておりますわな。

○外需については拡大判断継続

『まず、前提となる外需の動きをみますと、このところ米国における景気拡大のペースダウンがはっきりとしてきていますが、世界経済は、全体としては、地域的な広がりを伴いつつ、拡大を続けています。』

『米国では、設備投資や生産が増加傾向にあり、景気拡大が続いていますが、これまでに比べると、拡大のピッチは緩やかになってきています。住宅建設の面では、住宅着工戸数や新築一戸建て販売戸数が前年割れとなっているほか、住宅価格の伸び率は、鈍化傾向が続いています。住宅価格の下落は資産効果を通じて、家計の消費にマイナスの影響を与えるのではないか、という懸念がある一方で、原油価格が一頃に比べて落ち着きをみせていることが消費にプラスの影響を与える、との見方もあり、今後の個人消費の動向や消費者コンフィデンス指標が注目されます。』

ということで、米国経済に関しては先行きリスクについて言及しつつも基本的には先行きを強気で見ていると解釈されるかと思います。

『物価面では、原油価格や高い稼働率を背景に、インフレ・リスクが引き続き存在します。先行きについて、FRBでは、景気減速やこれまでの利上げの累積的効果などから、インフレ圧力は次第に緩和する可能性が高いとしています。私どももこの点を注意深く見守っていきたいと考えています。』

おまけにインフレリスクにも言及ですよ先生。

ちなみに、他の地域に関しても当然お話はあるのですが、こちらに関してはめんどいので引用しませんけど、強気というか威勢の良いお話になってますにゃ。


○内需に関しても先行き強気のようです

設備投資に関しては堅調というお話。『民間設備投資が引き続き堅調です。』ということで、内容について触れてますが引用割愛。で、家計部門に関しても割と先行き強気ではないかと。

『このような企業部門の好調さは、家計部門にも緩やかに波及してきています。』ということで、労働需給環境が良いという話をしているのですが、所定内給与が弱いという点については武藤副総裁はこのように言及しています。

『こうした中で、所定内給与は、前年並みの水準で推移しており、弱めの動きとなっていますが、これは、相対的に賃金の低い新卒を企業が積極的に採用していることが、全体の下押しに働いているほか、基本的には企業の人件費抑制スタンスが根強いことを反映したものであると考えられます。ただし、今後、労働需給の引き締まり傾向が続いていくならば、いずれは所定内給与にも影響を及ぼしていく可能性が高い、と考えられます。』

いずれはいずれはと言いつつ中々その時期が来てない気もしますが、まあそういう認識で先行きを展望しているということですな。

で、この先には金融環境とか構造調整の進展という話があるのですが、そちらは割愛。


○物価動向に関して

(現状と見通し)という部分ではこういうお話をしてます。まずは現状。

『需給ギャップ、すなわち経済全体の総需要と供給能力の差を推計してみますと、既に供給超過の状態を脱しており、今後も需要超過方向で推移していくとみられます。』

『ユニット・レーバー・コストの下落による物価への下押し圧力は、次第に緩和していると考えられます。』

『消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比も、プラス基調で推移しており、価格が上昇している品目は、原油高の影響を受けている石油製品ばかりではなく、様々な財・サービスに広がりをみせてきています。』

そして先行きに関して。

『先行きについても、景気の拡大が続く中で、マクロ的な需給ギャップが需要超過で推移していくと考えられることから、物価のプラス基調が続いていくとみられます。ちなみに、短観や各種サーベイ調査の結果をみても、企業や家計が、先行き物価が上昇していくとの見通しを持っていることを示しています。』

しらっと書いてますが、この「ちなみに」以下の部分はマインドに関するお話ですんで、結構重要視してるんじゃないかと思われます。最近物価見通しの話が出るたびにこのマインドに関する言及が出てきますわな。

CPIの基準改定についてですが、これに関してはのっけから結論を出してますんで、この「結論」を強調したいんでしょうな。

『結論から申しますと、この基準改定は、私どもの物価を巡る基本的な判断に変更を迫るものではありません。幾分、技術的ですが、この点について補足しておきたいと思います。』

とありますが、技術的な話の引用はめんどくさいので割愛(こら)。


○リスク要因

ちなみに、この講演要旨を読みますと、見出しが『3.景気拡大の背景』、『4.物価の動向等』、『5.日本銀行の金融政策運営』ときてまして、先行きのリスク要因に関しては『4.物価の動向等』の最後に小見出しで(先行きのリスク要因)というのが載っております。

ということはですな、リスク要因に関しては「等」なわけでして、まあこの講演要旨のトーン(実際の講演は聞いてませんから判らんけど)としては強気という印象を受ける訳ですな。

リスク要因は「米国経済」「IT需要」「原油価格」となっています。



○さて金融政策

暫く前にご紹介した決定会合議事要旨でも同じような表現があって、「いやあの何と申しますか・・・」とツッコミをしたのが聞こえたのかど〜か知りませんけど、講演要旨にはこの話が。

『このように円滑に政策変更が行われた背景の一つとしては、私どもが3月の量的緩和政策解除の際に導入した「新たな金融政策運営の枠組み」が、市場参加者などとの対話のツールの一つとして有効に機能したことが挙げられると思います。』

でまあその中にある2つの「柱」に関して解説してるんですが、そっちの引用は端折りまして、金融政策の枠組みに関してこんな話を。

『この枠組みは、長い目でみてわが国経済が良好な成長を遂げることができるように、先行きの経済・物価動向を十分に見越して――「フォワード・ルッキングに」という表現がしばしば用いられますが、――金融政策運営を柔軟かつ機動的に行うという考え方に立って作られています。また、そうした政策運営を行う上で、市場参加者などの期待形成の重要性にも十分配慮し、日本銀行の経済・物価情勢についての認識や金融政策運営に関する考え方を発信し、金融政策運営の透明性を確保することとしています。』

この「フォワード・ルッキング」「柔軟かつ機動的」という部分と、先行きの景気見通しの話を読めば、年内利上げ無し観測についてちょっと決め打ちはどうよっていうコメントが出てくるのは読めると思うんですがねえ。

ただまあ先行きの金融政策に関しては全くオープンというか、別に前のめりになる必要はないですよって話は当然ながらしています。先行きの金融政策運営に関してはこのように。

『具体的な政策変更の時期について予断を持っている訳ではありませんが、経済・物価情勢が4月の展望レポートで示した見通しに沿って展開していくと見込まれるのであれば、政策金利水準の調整については、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行うことになります。』

『この場合、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面、維持される可能性が高いと考えられます。これまで繰り返し述べてきたように、金利水準の調整は、経済・物価情勢を良く見極めながら、ゆっくりと進めていくということです。』

まあ従来の日銀公式見解通りではございますので今更言うことでもないのですけれども、日銀としては現在の金融環境は「緩和的」という認識であるということであるというのは念頭においておく必要があるんじゃないかと思います。


○この時期にこの講演ですんで

まあこの時期に武藤副総裁が景気に関して色々と言及した講演をした訳ですが、このトーンが今月末に出てくる展望レポートのトーンに繋がるんじゃネーノって思う次第でして、まあ結構先行き強気見通しの内容で展望レポート出てくるのではないかというのは読みすぎですかねえ。

引用が多くて長くなりましたが、本日はこんなところで。

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2006/07/25

福井総裁はリップサービスが多くて実にネタに困らないお方ではございますが、武藤さんが総裁になった方がまあ日銀の中の人としては不規則発言による突発事態が起きなくてやりやすいでしょうな。

そんな訳で、昨日華麗にスルーした経済状況に関する武藤副総裁講演テキストより。


○経済の見立てに既視感が

『まず、前提となる海外経済は、地域的な広がりを伴いながら、拡大を続けています。米国では、住宅建設が減少し始め、家計支出や雇用面で増勢が鈍りつつあるなど、拡大テンポが幾分鈍化していますが、これは、安定成長に向けた調整と捉えることができると考えています。』

『欧州では、輸出や生産が増加しているほか、家計支出も持ち直しており、景気回復のモメンタムが徐々に強まっています。中国をはじめとする新興諸国は、経済のグローバル化のもとで、規模・質の両面で、国際分業体制が一段と進展していることを背景に、力強い拡大を続けています。』

『海外経済の拡大を受けて、わが国の輸出は、堅調なペースで増加しています。』

どっかで見た事のある話の展開だと思ったらこれは6月14、15日の金融政策決定会合議事要旨でもこんな経済見立てになっていたという感じですな。実は恥ずかしながら金融経済月報の本文って読んでない事が多い手抜きなあたくしですが、もしかして月報もこんな感じなのかもね。

んでまあこの調子で引用していると全部引用する破目になってしまいますので(^^)、このあとはあたくしがこう読んだってのを箇条書きにすると・・・・

・設備投資:企業収益の増加や設備更新需要で高水準続く
・家計部門:好調な企業収益が家計に波及し、マインドも改善

どう見てもダム論です。本当にありがとうございました。

で、株価下落に関する評価がこれまた既視感のあるテキスト。

『こうした動きは、わが国だけでなく、他の主要国やエマージング諸国においても幅広く観察されており、グローバルな現象であることが大きな特徴です。その背景としては、各国の中央銀行が経済・物価情勢に応じて金融緩和度合いの修正を進める中で、市場参加者のリスク評価についての見直しが進み、その結果として、株価の調整が生じたという面があるように思います。』

これまた先日ご紹介した6月の金融政策決定会合の議事要旨で見たことのあるようなお話。ちなみにこの部分もうちょっと長いのですけれども、まさに「株価下落は心配ないぜ」ってトーンの方が強そうに見えるのはあたくしの気のせいですかそうですか。



○物価環境はバラ色の未来に見えますが気のせいでしょうか

そんでですな、物価環境の部分もこれまた何か先行きとってもバラ色ですよウェーハッハッハと書いてあるように見えるのですよ。曰く、

『長期間に亘って回復を続けてきた結果、経済全体の総需要と潜在的な総供給能力との差である「需給ギャップ」を推計しますと、長らく続いた供給超過状態が解消して、現在は需要超過状態に入ってきています。』

『短観における企業の判断をみますと、過去十数年で初めて、設備の過剰感が解消しています。』

『雇用については、労働市場の需給改善が進む中で、過剰感が解消しているだけでなく、むしろ不足感が強まってきています。』

そんなわけで、賃金が緩やかに上昇基調となっているという認識の続きにこんなお話が(^^)。

『先行きについては、生産性上昇に伴う下押し圧力は続くと見込まれますが、賃金が緩やかな上昇を続けていることから、ユニット・レーバー・コストの下落幅は縮小し、いずれ若干の上昇に転じていくと考えられます。』

どう見てもバラ色の見通しです。本当にありがとうございました。しかもこの次には消費者マインドの好転に言及しておりますわな。

『日本銀行情報サービス局が実施している「生活意識に関するアンケート調査」では、先行きの物価について具体的な数値を家計に尋ねており、それによると、これまで1%程度で推移していた今後5年間の予想インフレ率の中央値は、足もとでは2%まで上昇してきています。』

2%といえば「物価安定に関する理解」の上限値ですよ!

まあ何ですな、需給ギャップ解消の話と消費者マインド好転の話から物価上昇話という直球というか本命の話が全面に出て来たような気がしますにゃ。気のせいかも知れないけど。

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2006/07/24

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0607b.htm

○丁寧かつ手堅い印象なんですが・・・

全編を通してざっと読んだ第一印象はいつものように「丁寧な内容」で「手堅い」ですなあというものです。ここの所出てきていた(と言いながらまだ読んでないペーパーがあったりするのですが、汗)日銀レビューの内容や展望レポートなどで示されている論点に丁寧に触れている感じでございます。内容的にはタカでもハトでもなくって感じですが、金融政策のあり方に関する部分ではちと気になる点も(後述)。

でですな、ふと読んでいるうちに脳内妄想が沸き起こってきたのですけど、今回の講演を読んでると「さすが武藤副総裁だ、これなら総裁の首をすげかえても心配ないぜ」という感じではございますな。不規則発言がどのくらい講演で出たのかは出席して無いので存じませんが、変なフラッシュが出てなかったようですので、まあ福井総裁のようなことは無いんでしょう。いつものことですが。

福井総裁は自信満々の暴れ馬っぽいところがあるようですが(だから判断ミスするとファンド出資問題での行動のような事が起こる訳で)、武藤副総裁の方がその点では(前からその印象強いのですが)安定感抜群ですなあと毎度の如く思うのでした。


○今回の政策変更に関する説明部分

『3.今回の政策変更の狙い』の『(今回の金融市場調節方針変更)』より。

『今回の政策変更は、4月の展望レポートで示した経済・物価見通しを維持した上で、同じく展望レポートで示している金融政策運営の基本的な考え方に基づいて行ったものです。今後についても、経済・物価情勢を丹念に点検しながら、金融政策を運営していくことになります。すなわち、経済・物価情勢が展望レポートで示した見通しに沿って展開していくと見込まれるのであれば、政策金利水準の調整については、経済・物価情勢の変化に応じて徐々に行うことになります。この場合、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高いと考えられます。こうした考え方はこれまでも繰り返し説明してきたところですが、要すれば、金利水準の調整は、経済・物価情勢をよく見極めながら、ゆっくりと進めていくということです。』

どう見ても公式見解です、本当にありがとうございました。

『なお、今回の金融市場調節方針の変更に当たって、補完貸付の適用金利については、0.4%としました。』

ということでロンバート(引用しませんが、講演の後の方で「これからは公定歩合って言葉は使いませんのでよろしくね」って説明もしてました)金利についてのお話もしてます。

『(前の説明部分省略)このところ、レポレートの高止まり等を背景に、多額の補完貸付が恒常的に利用される状態が続き、市場における自由な金利形成の面からは、やや窮屈な状態となっていました。そうした一方で、量的緩和政策の解除以降、短期金融市場の機能は徐々に回復してきてはいますが、なお道半ばであり、引き続きコールレートの安定的なコントロールにも配慮する必要があると考えられます。』

座りが悪いとか中途半端とかいう話は(講演だから当たり前ですが)テキストにはございませんな(^^)。


○金利コントロールの仕組みと波及経路というお話

今回の講演の見ものは『4.金利コントロールの仕組みと波及経路』という部分かと勝手に思う訳でして、ここの話が丹念に行われている事からさっき書いたような脳内発想が出てきたんですな(笑)。

『(中長期金利への波及メカニズム)』って所から。

『このようにして実現している中長期金利には、将来の短期金利の経路に関する市場の予想が反映されていると考えられます。金融政策は、金利と期間の関係を表す曲線、すなわち、イールドカーブを直接動かすものではなく、市場参加者により先行きの中央銀行の行動が予想され、それが金利の期間構造に織り込まれることにより、イールドカーブが形成されていきます。そして、こうしたイールドカーブの形状が、全体として、企業や家計の経済活動に影響を与えていくのです。』

『予想された短期金利の変動が重要といっても、日本銀行が、政策金利である短期金利のパスを低く設定し、これを市場に伝えれば、常に中長期金利を低く保つことができるということにはなりません。政策金利のパスは、長い目でみて、経済・物価情勢に応じたものでなくてはならないからです。政策金利が経済・物価情勢に対して過度に高かったり低かったりする状態が続くと、経済や物価に望ましくない動きが生じ、いずれはそれに対応するために、政策金利を大きく引き下げたり、引き上げたりしなければならなくなります。そうした金利の無用な変動を金融市場が予想し、不確実性が高まれば、リスクプレミアムが拡大し、中長期金利はかえって高い水準になってしまいます。』

『「長期金利は、将来の経済や物価に対する人々の見方を反映して決まるものであって、金融政策によってコントロールできるものではない」と言われることがあります。長期金利は、金融政策の影響を受けますが、只今申し上げたような理由から、経済や物価の情勢から離れてコントロールすることはできないものです。金融政策が経済・物価情勢に応じて適切に行われ、このことを市場が信用している状態を実現していけば、リスクプレミアムが小さくなって、長期金利の安定に最も望ましいと考えられます。』

ということで、このあたりの件を読んでおりますと、先日読んでまだご紹介しておりません(おい)が、長期金利コントロールの重要性に言及している中原伸之さんの「日銀はだれのものか」(中央公論新社)を思い出してしまうのですが(苦笑)。

この前後の説明も色々とご覧になるのが宜しいかと。


○一歩間違えるとそれは地均し路線何ですが・・・・

というよりは現状が地均し路線な訳でして、その辺に関して本音としてはどうお考えなのか非常に知りたい所ではございます。『5.金利コントロールを巡る論点』の『(期待形成の重要性)』という所から。

『先ほど、将来の政策金利の経路に関する経済主体の予想が、実体経済活動に影響を及ぼし、それがさらに物価に影響を与えていくということを述べました。金融政策は、一つ一つの利上げや利下げのアクションだけでなく、その後の政策運営についての市場の予想に働きかけることで、大きな効果を持っていくということです。』

それはその通りなのですが、そうなりますと「金融政策の正常化」という話で量的緩和政策を解除した時に「時間軸はなくなっているので解除しても実態は変らない」という公式説明をしてたのと話が微妙に矛盾しませんですかねえという気もするんですがまあそれは兎も角。

『先行きの短期金利の変動が予想され、それが中長期金利に十分に織り込まれている場合の金利の変動については、重要なポイントがあります。』

『第1に、政策変更は、それが事前に予想された時点で、中長期金利の変動を通じて、金融政策の効果を発揮していくということです。イールドカーブが将来の政策変更を織り込んでいるのであれば、企業や家計はそのことを前提として、投資や消費の意思決定を行うからです。』

『第2に、実際に政策金利の変更を行った時には、中長期金利は大きく変動しないということです。政策変更がサプライズとなって中長期金利が大きく変動しないと、政策効果はないと考えるのは適当ではありません。予想通りの政策変更である場合、中央銀行の政策変更は市場の動きに追随しているようにみえますが、これは、金融政策運営が透明かつクレディブルであり、かつ、企業や家計といった経済主体がそれに基づき行動してきたことの表れと考えられます。』

『第3に、政策変更が事前に織り込まれて、政策効果を発揮しているからといって、政策変更は不要にはならないということです。予想が裏切られれば、その後の政策についての見方が変化し、イールドカーブの形状も変わっていくからです。』

なるほどそうですか。ややツッコミを入れたい気もするのですが、こちらの頭が整理されていないので今日は引用するだけで恐縮至極(汗)。


でですな、その後の部分が何ちゅうか地均し礼賛攻撃のような気が思いっきりする部分ですが、このあたりの論理展開って「個人の見解に属する」日銀レビューで先日拝読したような気がするんじゃがのう。

『以上に述べたような期待形成とイールドカーブの関係を踏まえますと、イールドカーブが政策運営の考え方と整合的に形成されるよう、中央銀行は、金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明し、透明性の向上に努めていく必要があります。(中略)言うまでもないことですが、市場が政策変更を誤って織り込んでいる場合に、中央銀行が、それに追随するような金融政策運営を行っていくことはありません。そうした場合には、情勢判断や政策運営の考え方を市場に伝えていくことを通じて、市場の予想の修正を図っていくことになります。』

えーっとですな、この場合は「中央銀行の金融経済情勢に関する判断が市場の情勢判断よりも常に正しい」という命題が成立する必要があるような気がするんですが。一歩間違えると中央銀行無謬の前提で結果先にありきの運営にならんかねえという不安が。

いやまあ「情勢を丹念に点検して」って市場の価格形成もよく見ますって話は別の部分でしてるんですけど・・・・・・何だかね。

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2006/06/07

○武藤副総裁のスピーチ

武藤副総裁が米国だか何だか忘れましたがどこぞの会議でスピーチをしておりました。日銀のWebサイトには残念ながら掲載されてないのですが、ブルームバーグニュースで通訳付き(スピーチは英語)でやってたのを聞いてみました。さすがは武藤副総裁でして、決めうち一切無しのバランス重視のスピーチという印象。手元のメモベースですが一応備忘録。

・暫くは金利ゼロをベースとする緩和的な状況は続くだろう
・将来は必要に応じて金利を上げていくでしょう

というのが日本の金融政策に関するコメントでした。通訳の日本語ベースをメモしたんで英語のニュアンスと通訳の日本語の間に齟齬があるかも知れんので断言しにくいですけど、聞いてて「おっ」と思ったのは緩和的な状況の枕詞に「金利ゼロをベースとする」ってのがあった事。福井総裁などの発言でも「金利の調整はゆっくり」とか「緩和的な状況を継続する」というのはあるのですが、「金利ゼロをベースとする」って言い方をしているのは(あたくしの記憶が間違ってない限り)見た事はないのでちょっと耳がダンボになりました。

でもその後に必要に応じて金利を調整していく話をしているのでさらりと水を掛けているところがさすがは武藤副総裁という感じですな。暫くのタームがいくらかはさっぱり判らんのですが、まあ先月大騒ぎした6月利上げはさすがにこりゃ有り得んでしょう。

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2006/04/21

○武藤副総裁の参議院財政金融委員会出席

だから何でこんなに毎度毎度日銀の総裁やら副総裁を国会に呼び出すのかと小一時間。センセイ方にとっては「国会で金融政策に関して日銀副総裁に質問」と宣伝すると政策通だって箔がつくんでしょうけれども、毎度毎度同じような質問に対応するために出席者やら国会対応の職員やらの時間を拘束している訳ですから、数字には出ないですけどリソースの大いなる無駄遣いだと思いますが。


さて、その財政金融委員会ですが、報道によりますと武藤副総裁は特に長期金利に関しても金融政策に関しても全く「余計な事」は言わなかった模様です。そのため、というよりは与謝野大臣あたりが長期金利上昇について楽観している発言をしたためのような気がしますが、ユーロ円金先や債券先物は国会のお時間中に若干下押しした感じですな。

以下ブルームバーグニュース20日15時56分の報道より。

(武藤副総裁)
『現時点では、その量的な当座預金残高の削減を円滑に順調に行っていくことがきわめて重要』
『その段階で、ゼロ金利の今後についてどうするかについて、予断を持って語ることは、いかがなことか』
『(長期金利については)いずれ市場がきちんと反応し、正常に作用していけば、しかるべきところに落ち着いていく』
『長期金利は、将来の物価や経済の動向によって決まるという要因が非常に大きい。直接、これに効果的な影響を与えることはできない』

(与謝野経済財政・金融担当大臣)
『今の(長期金利の)動きは、世界の長期金利と連動して併行的な連動ではないか(長期金利を中長期的にコントロールすることはできないとも指摘)』
『オーバーナイト物がゼロというのは世界の金融の中では異常な政策の1つ、いずれ是正されるべきであることは間違いない』
『(ゼロ金利解除の)時期については、日銀が金融政策として独自にご判断されること』

(谷垣財務大臣)
『デフレが緩やかながらも継続しているような状況で金利が急に上っていくということは、景気にも悪影響を及ぼすし、決して望ましいことではない』
『足元の金利上昇のスピードは少し早すぎるのではないかと懸念している』


まあここもとの長期金利上昇に関しては日銀の早期の政策金利引き上げとか連続的な引き上げ懸念がどうのこうのってよりは、海外のインフレ懸念とかフラットニングポジションのアンワインドとか日本の株価が全然下がらない(というのは主力株とかインデックスの話で、新興市場は何かアレな部分もあるようですが)とか言ったファクターの方が強い(早期利上げ懸念で上るなら3月中に長期がもっと上昇してないと話が変)ので、そーゆー意味ではデフレ完全脱却期待も混じっているとも言えるような気もするんですが・・・・・

いずれにせよ、印象としては長期金利の上昇に関してこの程度であればそれほど政府から圧力が掛からないってのを与える一連の答弁(の報道)ではございました。

先日(一昨日)は一部の情報ベンダーで「財務省幹部」発言として、「福井総裁は連続利上げの間違ったメッセージが伝わらないようG7で説明するだろう」ってのがあったのですが、基本的に連続利上げが行われるのか行われないのかという問題(利上げしないという問題もそうですが)は経済物価情勢に依存するものでして、例えば何らかの事情で突如インフレマインドが大盛り上がりして物価が急激にとんでもない上昇をしだしたら(んな事は98%無いと思うが)連続利上げとか金融本格引き締めだってやる訳ですから、結局は「決め打ち禁物」ということに尽きるのではないでしょうか。孤軍での弾打ちは程々に。

と、考えると決め打ち発言をして市場を誘導したがるようにしか見えない水野審議委員逝って良しという話にもなります(^^)。いつもの結論ではございますが、あっはっは。

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2006/02/06

○武藤副総裁記者会見

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0602a_f.htm

・道しるべ云々に関して

『講演でも申し上げたように、展望レポートの見通しに沿って先行きの経済が進展すると仮定すると、2006年度にかけて、金融政策の枠組み変更の可能性が次第に高まっていくと思われる。そういう状況の中で、どのような透明性向上のための対応をしていくか、そしていつそれを行っていくかということは、コミュニケーションポリシー、あるいはマーケットとの対話といった観点から大変重要であるという基本認識を持っている。これが、「道しるべ」という言葉を使って申し上げたかったことである。』

『具体的にどういう枠組みが、金融政策の透明性を向上させるのかということについては、中央銀行を取巻く環境によっても異なり、従って国によっても異なり、様々なバリエーションが存在していると思われる。そういう中で、よく言われるフォワード・ルッキング・ランゲージといった言葉・文章の方法が良いのか、なんらかの数値的なものがあり得るのかという点については、これからの検討課題であると申し上げたことは、今でも変っていない。特に、「道しるべ」という言葉の中身について、現時点で予断を持っているということではない。』

ということで、「道しるべ」に関しては武藤副総裁はイメージをもっているのかも知れませんけども、何をどうするという話に関しては明言を避ける格好でございますな。で、引用し続けると長くなるのでインタゲに関してですが、『私は、現時点で申し上げれば、インフレーション・ターゲティングについては検討すべき多くの課題があるのではないかと思っている。』だそうです。


・先行きの政策に関して

『(問)先ほどの透明性の向上について、フォワード・ルッキング・ランゲージという言葉があったが、透明性を向上させるために、その時点時点の日銀の考え方を説明するだけでなく、将来の金融政策の予測可能性を高めるという観点で、検討する必要があるという考えを持っているのか。(他もう一つ質問がありましたが)』

『(答)フォワード・ルッキング・ランゲージと申し上げたことに対するご質問の趣旨は、その時々の状況ではなく、将来の政策の方向性を具体的に示すかどうかということを尋ねられているものと理解した。将来の政策の方向性について、どこまで言えるか、何が言えるか、ということを含めて、検討されることだろうと思う。FRB(米連邦準備制度理事会)がこれまで行ってきたことをイメージされながらのお尋ねかもしれないが、それを排除するつもりもないものの、それとは違うものもあるかもしれないので、予断を持っていないと申し上げた次第である。何らかの透明性向上のための配慮は必要だということを基本に、どうしたら良いか考えていくが、中身については今後の検討課題と申し上げさせて頂きたいと思う。』

まあいずれにせよ、金融政策の予測可能性を高めるために何らかのアナウンスメントを政策決定会合で行うというお話なんでしょう。それが何か「地均し」になられても困るのですけれども。

何か時事メイン報じるところによりますと、日銀の金融市場局長様が量的緩和解除に向けて各金融機関は準備しましょうねってコメントをしているとか聞きましたが、そういう「予測可能性」はどうでもいいんで、つーか一々手取り足取りやってたらいつまで経っても金融機関の経営の中の人たちが経済状況じゃなくてお上の方を向いたままになっちゃうんで、本当にそれが長い目で見て金融機関のためになっているのか考えた方がよいのではないかと存じますが。ってまたいつもの話になってしまった(汗)。


・量的緩和解除後の金利に関して

『講演で申し上げたのは、新しいことを申し上げたつもりはなく、この考え方は、基本的に展望レポートで既に述べられていると思っている。お尋ねの1月の中間評価において、上振れて推移するという評価の部分との関係ということであれば、確かに経済全体についてはそういう評価もしているが、消費者物価については大体展望レポートに沿った展開であると評価している。この点、特に上振れたとは私どもは考えていない。そういうことを前提として、量的緩和政策解除後、ゼロ金利がどのくらい続くのか、あるいはどのくらいの時点で、経済物価情勢に見合ったということで金利が引き上げられていくのかということについては、今の展望レポートの中間評価の段階で、そのお尋ねに答えるだけのデータは揃っていないと言うべきだと思う。ここにあるように、「まさに経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存する」というのは、これから毎月出る経済・物価のデータ、金融情勢に依存するのであって、今暫くこの状況を観察するということである。そこから先のことは、「経済がバランスのとれた…」以下の一文に全て集約されていると自分は思っている。』

えーっと長くなりましたが一つの質問に対する答をまるまる引用しちゃいました。

要するに、(1)量的緩和解除と同時の政策金利引き上げ(0.25%とか)は現状段階では無い、(2)将来の金利政策に関しては全くの白紙。ということでしょう。CPIに関して「特に上振れたとは私どもは考えていない」という事ですので、まあもともとの見通しが強気っちゃあ強気ですけど、現状では引き締め方向に傾斜しているという訳でも無さそうな感じ。まあ結局将来に関してはあくまでもその時次第ちゅうことですわな。量的緩和解除だけは既成路線のようですが(笑)。

とまあそういうことで。物価や景気に強気じゃないのなら判りますが、何かちょっと債券市場はゼロ金利の長期化見通しに傾斜気味なんじゃねえのかという気がややするのではございますが(って先週後半は金利上昇しましたけど)。

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2006/02/03

お題「武藤副総裁講演」

えーっと、株を大量取得した人が経営陣(と従業員)に「MBOを提案」すると言うと横文字使っているから格好良さそうに聞こえるんですけど、それは「買占め屋が会社に株の肩代わりを要求している」というのとどこがどう違うのかと小一時間問い詰めたいですなあ。

などという悪態は兎も角本題ですが。

10年国債入札の日に講演とは困ったもんですが、武藤副総裁だけに物凄い勢いで手堅く纏まった講演テキストです。しかしあのテキストを読んで「低金利長期化」に決め打ちするのはどうなんでしょ?とまず結論を先に申し上げて。

武藤副総裁講演テキスト
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0602a.htm
その後の記者会見関連ニュース(ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aMU2SxYqgJ5g&refer=jp_news_index


○受け取られるニュアンスが「ハト派」に聞こえたのでしょうか

講演テキストを読んだ限りではどう見ても「決め打ち禁物」にしか思えないのですが、日経クイックでは講演に関して「当座預金残高引下げは情勢を見ながら」というフラッシュを打ってましたし、上記ブルームバーグの記事のお題が「量的緩和解除まだ判断するのは早い」となっています。その場で講演や記者会見を聴いた人が受け取るニュアンスが「ハト派」に見えたということなのかなあとは思うんですが、雰囲気わからず字面を見ていると、そんなにハト派発言をしているようにも思えず。

と申しますのは、昨年6月23日に「武藤副総裁ハト派の旗幟鮮明に!」と思わせる講演を行って(昨年6月24日と27日のドラめもんでネタにしましたのでご参照を)たのですが、9月2日のブルームバーグニュースとのインタビューでは「何かこの前と勝手が違うんですけど」ってお話になって(こちらは昨年9月5日のドラめもんでネタにしてます)ましたな。この時には武藤さん『わたしとしては、6月の会見でそれほど難しいことを言ったつもりはない。あの時申し上げたかったのは、4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通しだけに基づいて量的緩和政策解除の時期を予断するのは適当ではない、ということだ。現実の政策判断は、今後の経済、物価情勢を十分見極めたうえで判断していくものだということを申しあげたかった』ってお話をしております。

まああの時は金融政策論議は無茶苦茶(というか今も論理は破綻してますが)だわ、何か複数の審議委員が超前のめりになっていた(ので相場の方疑心暗鬼になっていた)ので、それを抑えるというニュアンスもあったんでしょうかねえとは思いますが、結構武藤さんもタヌキはタヌキだなあとこの時に思った訳でして。まあ市場との対話って言ったってメディアとの対話もうまくなきゃあいかん訳でして、そーゆー意味では武藤さん上手いのかなあとも思いました。



○先行きの金融政策に関して−良く見りゃとにかく「フリーハンド」ですな

こちらの講演ですが、内容はかなり網羅的で、しかも日銀が何をどう考えているのかというのを丁寧に説明しておりまして、まあ勝手な想像をすると日銀の企画部門の人たちによる渾身の作品ではないかと思うのですが(ってちなみにそれは別に武藤副総裁がオリジナルの意見で言わないと文句を言っている訳ではないので念の為)、色々と読むポイントがございます。何かちとそれは日銀さま何となく我田引水チックじゃネーノか(貸出約定平均金利の低下を金融政策効果と絡めてるようにも感じられるところとかね)つーのもありますけど。まあとりあえず今朝は一番市場が気にする「先行きの金融政策」に関る部分に関して。

講演後半の「日本銀行の金融政策運営」という部分に関して。

『枠組みの変更に当たっては、金融調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更するとともに、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減していくこととなります。各金融機関は、量的緩和政策のもとで、長期間にわたって多額の当座預金残高を前提として資金繰りを行ってきています。短期金融市場の機能はいずれ回復するとしても、枠組み変更後しばらくの間は、金融市場における円滑な資金の運用・調達という点から注意が必要になると考えられます。それだけに、当座預金残高の削減にあたっては、金融市場の状況を十分に点検しながら行う必要があると考えています。』

で、この部分に関してクイックがフラッシュを打っていたのは先ほど申し上げた通り。別にややこしい事を言っている訳ではなくて、字面だけみているとごく普通の話をしているに過ぎません。過大評価するのは禁物。

『ここまでは、所要準備を上回る当座預金が存在することになりますので、ごく短い金利は、多少の振れはあるにせよ、基本的にゼロ%となります。量的緩和の効果は、現在、短期金利がゼロ%であることが中心となってきていますので、枠組みを変更すること自体、政策効果の面では大きな変化がないと考えています。』

これは最近お得意の理論。それに関するツッコミをするのは疲れたので略。

『むしろ、物価が上昇していく中で、実質金利はさらに低下することになります。つまり、こうしたプロセスの間、短期金利がゼロ%であることを考えると、景気・物価に対する刺激効果は一段と強まっていくことになると考えられます。』

ということで、ここも最近の公式見解でございます。

『その後、極めて低い金利水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序を辿ることになりますが、この過程における金利水準や時間的経路は、まさに経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存します。』

ということでして、まあ先行きの金利に関しては経済物価情勢次第ですわなあという感じでして、特に決めうちをしていないです。ただ、今回の講演でも同様に述べていますが、物価が上がりにくいというのであればそんなにガンガン利上げをする事はないのでしょうなあということですかな。

『この点、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していけると思っています。』

ただまあ「低金利の刺激効果が一段と強まっていく」というのが正しいのであれば、物価の上昇圧力が抑制された状況と両立したままって訳にいくのかなあという疑問は個人的にはあるんですが。


○その他としては・・・・

箇条書きで。

・物価動向に関しては強気、雇用環境の改善(本当なのかという話は置いて)に伴うマインド好転に触れ、また大都市圏の一部の地価に関して「経済の先行きに関する人々の見方が好転しつつあることを示唆するものとして注目」と指摘

・日経新聞インタビューで言及のあった政策運営の「道しるべ」に関しては特に言及なく、インタゲなどの導入に関しては否定も肯定もせず

・記者会見では「金融政策が目指すべき物価上昇率が何%かというのが重要なファクターになるが、そういうことがなかなか明確に決めがたい」「わたし自身は現時点で申し上げれば、インフレターゲッティングについては検討すべき多くの課題があるのではないか」(ブルームバーグニュースより)と発言しており、まあ消極的なニュアンス

・ブルームバーグニュースのニュースのお題にある「まだ早い」はよくよく記事を見ると「確かに昨年10月にゼロ%、11、12月にプラス0.1%の上昇となったが、これをもって条件が満たされたかと言うことであれば、今申し上げたようなデータなので、まだわたしは判断をするのは早いと思う。引き続き状況の推移を見ていく必要があると考えている」という発言であり、今すぐに解除する状態では無いと言っているに過ぎないので、ちとアレですな。

といった所で。まだまだありそうですが。。。。

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2005/12/28

○武藤副総裁のインタビュー

実は昨日の日経新聞1面にこんな記事があったのですが、日経を読まないあたくしが知る由もなしということで今更ですが。

ご案内のように昨日の日経新聞1面に武藤副総裁のインタビュー記事(インタビューしたのは滝田編集委員)がございまして、債券市場に影響を与えたのはこの部分。

『量的緩和政策が持っている時間軸の効果はなくなる。それに代わる何らかの先行きへの道しるべが必要だ。数字的なものか、それともソフトな方がよいかは、これからの検討課題。よくよく考えないといけない。』(12月27日日経新聞朝刊1面記事より)

滝田さんも指摘してますが、インフレ目標とは異なる目標とは何になるんでしょうかって感は致しますが、言った人が武藤副総裁なだけに「量的緩和政策解除後にゼロ金利が長期化する」という連想で債券買われるの巻。まあ当然そうなるのですが、量的緩和の解除だけは早く実施してゼロ金利を長期化するって既にコンセンサスじゃネーノと思っていたのでここまで上るのも「ふ〜ん」って感じではございました。

ってか「景気拡大の下でゼロ金利政策を長期化」ってのは物凄い勢いで景気刺激になる訳でして、デフレ突入阻止モードから現在に到る米国の金利の推移を見たら、中短期金利が低下するのは判りますが、長期金利まで一緒になって下がらなくても良いのでは無いかと思うのですが。ゼロ金利の長期化の意味する所は将来の引き締め局面においてより威勢良い引き締めが必要になるって事ですんで。。。。まあ需給要因(月末だし年内最終受渡)とか場の勢いとか米国のイールドカーブが今まさにフラットだの逆イールドだのとか言うのはありますけど、そんなにお付き合いしてて良いのかね?


しかしまあ何ですな、量的緩和政策解除して時間軸が無くなった後に「何らかの先行きへの道しるべが必要」って話も皮肉に捉えれば「日銀そこまで自信ないのかよ!」なんて言いたくなっちゃったりするざます。元々量的緩和継続のコミットメント3条件ってのは量的緩和政策導入時には記者会見などでの口頭ベースでは似たような事言ってましたが、明文化されたのは2003年の「量的緩和政策早期解除観測」相場による債券相場大下げ(2年あたり以外の金利が今よりも高かった訳だが)で市場にメッセージを出す破目に追い込まれたという経緯がございました。で、今回も量的緩和政策の解除をして「新たな時間軸のようなもの」が必要というのは何だかなあ(普通にインフレ目標とか望ましい物価変動水準とかの呈示をするなら判りますが)とも。自分たちの政策判断に自信があるんなら別に「時間軸のようなもの」は不要だと思うんですが(苦笑)。

まあ導入するぞという期待を醸成しておいて量的緩和政策解除への抵抗を弱めたり、市場の金利上昇を抑えようって思惑もあるんじゃねえのかと憶測しちゃいたくなりますけどね。新たな「道しるべ」が日銀の保身の為に使われるものにならないように期待致したく存じます。

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2005/12/07

○武藤副総裁に関しては人の褌が登場するのでした。

武藤副総裁の講演に関しては経済倶楽部で行われたものでして、記者会見がセットされていたのではなくて質疑応答形式。そのため残念ながら日銀のWebにはその内容は載ってこないのですが、本石町日記さんがレポートしていますので既にご覧になった方も多いかと存じますがご紹介。

http://hongokucho.exblog.jp/3853991より引用させてもらいます。

「(政策運営で)将来のことについて、ある程度見通しを述べるのは非常に重要なことだが、それは現時点で、どこまで言えるかという問題に対しても非常に注意深くなければならない。現在において言えること以上のことを申し上げるのが透明性向上になるのかと言えば、それはむしろノイズを発信してしまうことになってしまう」

“自分の尾を追う犬”になってしまった日銀。もはや手遅れの感もある。武藤副総裁、もう少し早い時期にノイズ防止の手立てを取って欲しかった。ところで「市場との対話」を理解しているのは武藤副総裁しかいないような気も。日銀内の潜在的シンパは増えそう…。

(引用ここまで)

いや全く同感でございます。まぁこうなったら某審議委員のように獅子吼しても仕方が無いというか逆効果なんで、大人しく「市場が出口に連れてってくれる」状態を待った方がよろしいんジャマイカと存じます。

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2005/12/05

お題「武藤副総裁講演」

○武藤副総裁講演が買い材料になったのか?

金曜日の債券相場は輪番オペにぶつけたのだか何だか判りませんが中期ゾーンに玉ぶつけ攻撃と、中期売りの超長期ゾーン買いという入替っぽい動きで先物が売られやすい相場となっておりました。で、中期単売り(またはスワップの払い)攻撃の影響?で先物下げている中で武藤副総裁の講演待ちという感じになったので、週末の後場でもありますし何となく売りが売りを呼ぶと言う形になったようですな。

まーこの株高円安でよく値持ちしてるわな〜って雰囲気が流れてましたし、勢いついて下がりだすと「ああやはり」って感じになったという所ですわな。そんな中に出てきた武藤副総裁の講演なんですが、最初に出てきたヘッドラインがやや穏やかな話だったのと、望ましい物価上昇率がどうのこうのという話が出たので短期的(短期的というのはデイトレードレベルでの短期ね)に売られ過ぎたものに一旦買い戻しが入ったというところのようです。

よって武藤講演は買い材料にはなってなかったというのが正しいかと存じます。と珍しく相場の話をしたのは複数のディーラー(=おともだち)と相場話と武藤講演話をした結果でございますので、それなりに本人はちゃんと相場後講釈しているつもりです(^^)。


○どう見ても日銀の公式見解です

あたくしはヘッドライン出てから(ニュースベンダーのヘッドラインが出だすのと日銀のWebにアップされるのがほぼ同時なので)日銀Webを見に行き、全文を速攻で斜め読みしたのですが、感想は「どう見ても日銀の公式見解です。本当にありがとうございました。」ってところですな。

内容を総括すると、前半は何気にインフレファイターっぽいお話が連発しておりまして、後半から「望ましい物価上昇」に関するお題でお話を展開することによって政府にリップサービスをしております。で、なおのこと素晴らしいのは、望ましい物価上昇率の話をするのに英国やら欧州、米国の例などを数字を出して持ち出して説明する事によって「望ましい物価上昇率」に関する数字的なイメージを持たせつつも日本に関しては「よく判りませんな〜」と具体的な数字の言及を全く行わずに言質を与えていない事ですな。

講演要旨の目次を見ると大変によく出来ているとなお感心致します。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0512b.htm

目次の構成はこうなってます。

(はじめに)
1.「物価の安定」はなぜ必要か?
  (中央銀行と「物価の安定」)
  (「相対価格」が持つシグナル機能)
  (所得分配への影響)
  (物価下落固有の問題)
2.「物価の安定」と「国民経済の健全な発展」
3.「物価の安定」をどのような指標で測定するのか?
  (消費者物価指数の位置付け)
  (消費者物価指数以外の物価指標)
4.量的緩和政策と消費者物価指数へのコミットメント
5.望ましい消費者物価上昇率
  (物価指数のバイアス)
  (物価上昇率の「糊代」)
6.「物価の安定」と金融政策の透明性向上
(おわりに)

このヘッドラインがよく出来ていると思うのは、最近とみに政治干渉をしたがっている与党の方々が喜びそうなお題が並んでいる事で、ここを見ると「物価下落はイクナイ!」「物価指数には上方バイアスがある!」「物価上昇率の糊代を検討すべし!」と言っているように見える所ですな。いや勿論そういう話もしているのですが、返す刀で別の論点もお話ししてまして(例えばお題では所得分配への影響って書いてある所はインフレとデフレのどっちもイクナイって話をしてますし)、非常に慎重かつ丁寧に作りこんである講演内容となっています。どこぞの審議委員とは大違い。

内容に関してはいつものように話の矛盾点を突っ込んだり、論旨不明快なところに関して嫌味たっぷりに肴にするという余地は殆どございませんでして、いやあの日本銀行様におかれましてはいつもこんな調子であれば政治から恫喝付きで干渉攻撃が飛んでくるような(正直言って今の日銀(の政策委員会)に批判的スタンスのあたくしであってもあの恫喝的態度は如何なものかと思います)隙を作る事もないのではと思いますな。

勝手に想像するに、このテキストは副総裁と日銀の事務方がきっちり練り上げて作ったという感じでして、優秀な官僚として名高い武藤氏が日銀副総裁という立場とその役割に対して最もふさわしい行動を取っているというのがうかがえるものです。


それはいいのですが、内容に関して引用を始めると終わらないので、本石町日記さんのところでも既に紹介されてたんですが、資産価格上昇問題について言及した所を引用しておきます。

最近ちょっと上昇ピッチが早くなってきた株価指数もそうなんですが、あたくし的には最近の公募REITなんかのディスクロを時間があると丹念に見てるのですが(その成果はご報告するかもしれないししないかもしれない)何か投資対象物件がファンド間でぐるぐる回ってませんですか(物件の入替してるんだけど、購入先と売却先が別会社なるもよくよく見ると同じ資本系列だったりするような事案とか)資本がねえっていうのが気になって仕方ない局地的不動産価格の絶賛大上昇がかつてPER何千倍まで買われたアイテーバブルを思い出させますわな。

という独り言を余計にかましましたが、資産価格に関するくだりは長いので適当に段落わけしてご紹介です。

『1990年代の日本経済に大きな影響を与えた1980年代後半のバブル期を振り返りますと、景気拡大局面は1986年に始まり、実質経済成長率は1987年から1988年にかけて年率5%を上回る高成長を記録しました。ところが、輸入物価の下落や電力料金の引き下げといった供給サイドの要因が強く働いたことから、当時の消費者物価指数の上昇率は前年比ゼロ%台と、極めて落ち着いた状況が続きました。』

『その後、消費者物価指数の前年比は、徐々に上昇ペースを速めましたが、前年比で3%台といった上昇ペースを示すに至ったのは1990年から1991年にかけてであり、景気拡大局面に入ってから既に4年を経過してのことでした。事後的にみると1991年に終焉を迎えた景気拡大局面の最終局面ということです。この間に、地価をはじめとする資産価格の大きな変動が生じて、その後の実体経済の長期低迷につながったことは、ご承知の通りです。』

『こうした苦い経験は、物価が足もとで安定していても、それがいつまでも続くとは限らないこと、つまりバブル期の経験で言えば、輸入物価の下落や電力料金の引き下げなど供給サイドから物価を押し下げる力が働いているケースでは、景気拡大に伴う物価上昇圧力を過小評価し、その後の物価の上昇テンポが予想以上に加速してしまうことがあり得ることを示していると考えられます。』

『また、物価が表面的には安定している場合でも、資産価格の大幅な変動等のかたちで経済に歪みを内包し、むしろ先行き経済の健全な発展を阻害するリスクを蓄積している可能性もあります。その時々において「物価の安定」が実現しているかどうかを適切に判断することは容易ではありません。』

『ただ、「物価の安定」に責任を有する中央銀行としては、「物価の安定」は、あくまでも足もとだけでなく将来にわたって持続し得るものであるかどうか、経済の健全な発展と整合的なものであるかどうか、という観点に立って、物価情勢を常に点検していくことが重要であると考えています。』

暫く前(昨年でしたっけ)にBOEが金融引き締めをした時に当時は物価上昇率は安定目標の下限近くにいたのですが、住宅価格に代表される資産価格の上昇を冷やすために金融引き締めをしたってえのがありまして、まぁ各国は日本のバブル大発生と大崩壊から色々と考えているというのがございますので、まぁその辺を意識しているのかなあと思うのでありました。

で、他の話に関しては豪快な寝坊のせいでご紹介する時間がないので、講演テキストをよみませう(おい)。いやまあよく出来てます(偉そうな言い方でスイマセンが)よ。

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2005/09/06

○武藤副総裁インタビューの追加

金曜日のブルームバーグニュースによるインタビューの追加引用をします。何気に結構ポイントになる話が多いので。

・CPIの基準改定に関する問題に関して

『物価の改定によってどういう結果がもたされるか、いろいろな予測があるが、それはあくまで予測でしかなく、確たることは申し上げられない。これは一般に言えることだが、実質国内総生産(GDP)も速報から確報へ、いろいろな形でデータの改定が行われる。しかし、われわれがある時点で政策判断をするとき、その時点で利用可能なデータを使うしか他に方法はない。そういう意味で、その時点で利用可能なデータを用いるということで十分なのではないか』

『その結果、多少、事後的に変わっても、それは仕方のないことだと思う。ただし、そのときに物価の基調をみるわけなので、単に現象としての上昇率だけでなく、背後にある基調を見るので、そういう実体的な判断が行われれば、判断に間違いはないだろうと思っている』

ということで、一見するとCPIの基準改定によって事後的にCPIがマイナスになるような状態での量的緩和解除を否定していないので、タカ派っぽくも読めるのですが、要はその時点での「基調」が重要なのであって、CPIのその時点での数字のみを取り出して判断するのではない(勿論その時点でマイナスだったら判断も糞もありませんが)という事を言ってますので、まぁあまりタカ派タカ派した発言でも無い所に注意が必要ですな。


・量的緩和政策の解除プロセスに関して

『いつ、どういうプロセスを経て量的緩和を解除するかという問題は、その時々の金融経済情勢を十分点検したうえで、毎回の金融政策決定会合で決定していく。今後の金融経済情勢いかん、としか申し上げようがない。ただ、金融政策運営について、市場などに判りやすく説明する努力をしていくことは非常に重要なので、その努力を最大限やっていかなければならない。審議委員それぞれにはいろいろな考えがあると思うが、現時点でそれを議論する段階にはない』

まぁ当たり前ではあるのですが、その時になってみないと解除プロセスは判らないですし、その時になればどういう解除プロセスを取ればいいかというのはある程度明白でもありますので、まぁそうなる前に仮定の話を色々としても単にマーケットにノイズを振りまくだけの結果になると言う事かと存じます。この点は毎度毎度他の審議委員が時に話し出す「仮定のお話」をあまりしすぎないようにって思いがこめられているのではないかと勝手に妄想しております。

昨日も申し上げましたが、実にこう模範的な回答が並んでおりますな。>副総裁

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2005/09/05

○武藤副総裁は最もセントラルバンカーなお方ではないかと

ブルームバーグニュースが金曜日の15時24分に配信した武藤副総裁のインタビュー記事、先般の会見でハト派的な発言がクローズアップされたり、札割れ容認騒動前後に当預引き下げに傾きかけた執行部を抑え込んだという報道が一部で行われたりとすっかり「ハト派」のイメージが市場に蔓延していた為に、その内容が知れ渡ると「ありゃりゃ」感が漂い、引け後に債券先物は10銭ほど売られていたりしておりました。

ポイントは記事の前半部分にもありましたが、

・物価と景気の先行きに関しては結構強気
・当面は量的緩和政策継続だが、先行きは緩和解除の条件を満たしていく
・財務省よりと言われるのは心外

で、勝手にあたくしの解釈をすると、武藤副総裁としてはあまり「こうあるべきだ」という思い入れ(「金利の正常化をするべきだ」みたいな考え)を持たずに、経済物価状況を見ながら自然体で対処するという事なのではないかと思う次第。まぁ一番正統的な考えなのではないかと思うんですが。


一問一答もかなりの量になっていますが、ちょっとだけ引用させていただきます。

・景気と物価に関連して

『わが国の景気は情報技術(IT)関連分野の調整が進むもとで、回復を続けている。設備投資は高水準の企業収益を背景に増加を続けており、個人消費も雇用者所得が緩やかに増加するもとで底堅く推移している。国内の民間需要は総じて堅調に推移している、輸出は中国向けが引き続き伸び悩んでいるが、海外経済が拡大基調を続けているので、全体としては緩やかな増加を続けている。こういう状況を踏まえると、景気は踊り場を脱却したといって良いのではないか』

『コアCPIの前年比は、電気、電話料金の引き下げの影響もあって小幅のマイナスで推移すると予想している。もっとも、今年末から来年初にかけて、コメ価格の下落や電気、電話料金の引き下げといった、いわゆる特殊要因の影響がはく落していくとみられるので、そういう過程でプラスに転じていくだろう、06年度にかけては、安定的にゼロ%以上と判断できるようになる可能性が高くなってきているのではないか』

ということで強気ですわな。

6月23日の記者会見について

『わたしとしては、6月の会見でそれほど難しいことを言ったつもりはない。あの時申し上げたかったのは、4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通しだけに基づいて量的緩和政策解除の時期を予断するのは適当ではない、ということだ。現実の政策判断は、今後の経済、物価情勢を十分見極めたうえで判断していくものだということを申しあげたかった』

『現実の政策判断は今言ったような判断基準(引用者注:量的緩和政策のコミットメント3条件)に従って、今後も、経済、物価情勢を十分見極めたうえで判断すべきだと申し上げたわけで、その点は今も考えは同じだ。ただ、4月の展望リポートの見通しが仮に実現すると言う前提を置けば、06年度にかけて量的緩和政策の枠組みを変更する可能性が徐々に高まっていくというのも確かであって、このことは4月の展望リポートでも明確に書かれている。この点についても、わたしはまったく同じ考えだ』

『また、4月の展望リポートから今日までの時間的な経過のなかで、その後いろいろなデータが出てきているわけで、現時点で考えると、展望リポートの見通しが実現するがい然性は次第に高まってきていると考えてよいのではないか』

上記の景気物価強気と同じ話ではあります。どうも武藤副総裁のスタンスに関して「強力ハト派」と安心し過ぎるのはよくなさそうですわな。


・財務省寄り云々について

『わたしは03年3月に副総裁を拝命して以来、一貫して日銀副総裁としての役割を忠実に遂行してきたつもりだ。ひとたび日銀副総裁に任命された以上、財務省寄りという物差しを持つようなことがあってはならないと思っている。もし、市場などで、わたしが財務省寄りという見方があるのであれば、それは全くの誤解であり、大変心外だ』

・財政と金融政策にかんして

『確かに、長期金利が極めて低い水準で推移していることで、財政面で国債の利払い費が抑制されているのは事実だ。財政規律だけでなく、市場規律についてもモラルハザードを起こしているのではないかという指摘もある。金融資産の保有者にとってもメリットが少ないなど、いろいろなことが副作用として言われている。しかし、われわれが何の為に現在の金融政策をやっているかというと、財政のためではなく、あくまでデフレ脱却と経済の持続的な発展が目的だ』

『量的緩和政策、あるいはゼロ金利政策という今の金融政策は、効果と副作用の両方のバランスを考えて、日本経済をデフレから脱却させることが大事だという判断のもとで行っている。したがって、いろいろな問題があることは常に認識していなければならないが、政策選択ということになれば、現状の金融政策を当面続けていくのが適切な政策だろうと思う』

まぁ総じていえるのですが、非常に模範的な回答ではないかと思います。何か思いいれとかが入っていないので、今後とも政策委員会のバランサーとして機能する事が期待できそうですわな。

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2005/06/27

○武藤副総裁記者会見

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0506c.htm

金曜にご紹介しなかった部分に関しまして。

『(問)懇談会の講演の最後のほうで、量的緩和解除の時期について、4月に出た展望レポートの内容を繰り返して、2006年度にかけて徐々に量的緩和解除の可能性が高まると言われた。その一方で、講演で消費者物価指数について、2005年度はゼロ%近傍、2006年度はごく僅かなプラスになると、展望レポートと同じ内容を話され、その後で、講演録にはない「デフレから脱却するシナリオはなかなか描けない」と言われた。展望レポートでは2006年度にかけて量的緩和解除の可能性は徐々に高まるという意味で、それなりのシナリオが描かれていると理解しているのだが、ここで言われた「デフレ脱却のシナリオが描けない」というコメントは武藤副総裁の本音なのか。』

質問が長いので一旦ここで対応する回答を。講演録には無かった(ニュースでは確か見た記憶がありますが)デフレ脱却シナリオ云々に関して質問がされましたが、この部分に関してはさらっと流した回答になっております。

『(答)(前半部分割愛)「2005年度がゼロ%近傍で、2006年度が若干のプラス」ということイコール「デフレ脱却」であると断言するのは、なかなか簡単ではないということを申し上げたかったわけである。展望レポートに書いてあることよりも、意味を変えようとか付け加えようと意図してデフレ脱却の姿がなかなか描けないと申し上げたつもりではない。展望レポートでデフレ脱却がもう描けたという意見はなかなかとれないのではないかということである。』

で、この質問の後半部分。量的緩和政策の3条件のいう「デフレ脱却」とは何ぞやという結構これまた微妙な部分です。

『(問)また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が来年1〜3月期に僅かとはいえ小幅なプラスに転じるというのが市場のコンセンサスになってきていると思う。あるいは、早ければ今年の10〜12月期にも小幅なプラスになるのではないかという見方もある。そうした中で、なおデフレ脱却のシナリオが描けないというようにみているということは、僅かなプラスではやはり量的緩和を解除するための条件には満たないと考えているのか。』

『(答)従って、今の質問の中で指摘されていたように、確かに来年の1〜3月になると、今は抑制方向に働いている幾つかの要因が剥落するかたちで、どちらかというとプラスの要因のほうが強くなっていくという可能性が十分にあるとみるのが、確かに有力な見方であろうと私も思う。そうであるからこそ、2006年度にかけて枠組み変更の可能性が徐々に高まっていくとみることができるだろうと思っている。』

で、この続きはまたまたハト派発言って感じになります。

『徐々に高まってはいくが、本当に見直すことができるかとなると、それは不透明であると思う。今、申し上げたような物価の見通しが、このシナリオどおりに実現されるかどうかは、現実にこれから時間の経過とともに、どういうことが起こっていくのかということを、足許よく確かめながらみていかなければならない。我々の予測は非常に重要な作業ではあるが、予測にはどうしても限界があるわけであり、予測を持って予断をしてしまうのは、ある意味では危険なことである。予測は予測であり、予測能力にも限界があるし、現実は予測の中に必ずしも織り込まれていないことが起こり得るということを頭に置いておかなければならないのではないかと思う。そういう意味で、これからの量的緩和政策の運営を考える場合には、そういうことを念頭に置いたうえで、時事刻々と変化する事実をしっかりと見極めて適切な政策判断を行う必要があると思っている。』

何と言うか実に微妙な言い方なんですが、先日ご紹介した武藤副総裁の講演で触れられていた景気回復のテンポの遅さという事を併せて見ますと、「今回の景気回復は非常に緩やかなんだから、そんなに慌てて金融政策をいじる事はないんじゃネーノ」ってな所でしょう。


で、この質疑応答に関連してその続きって感じの質疑。

『(問)展望レポートどおりに2006年度の消費者物価指数の前年比が小幅なプラスを実現したとしてもデフレ脱却とは言い切れないというのは、デフレ脱却と言い切れるのはもう少し上の水準であることが条件になってくるとお考えなのか。さらに、消費者物価指数の水準と量的緩和の枠組みの変更との関係についてどのようにお考えなのか。(後半部分割愛)』

『(答)私がデフレ脱却と言い切れないと言った言葉の真意について、今後起こることがシナリオ通りであればどうかということと、シナリオ通り運ぶかどうかということに対しては必ずしも言い切れない部分があって、その両方のことを頭に置きながら簡単に即断できないと申し上げているつもりである。』

まぁそれはともかく。

『もし本当に予定通り(消費者物価指数の前年比が)プラスになり、それが相当続くとなればデフレ脱却と言えるではないかということは議論の余地があると思う。そうかどうかはもう一度慎重な議論が必要だと思う。ただし、見通しにはやはり限界があるとすると、そういう見通しの中でかなり十分にプラスが高いレベルであれば、見通しが多少ずれても大きなずれはないと言えるかもしれないが、わずかなプラスの状況で、少し見通しがずれたら姿が変わってしまうかもしれない中で、本当に言い切れるのかということを言っているつもりである。もっとも、一年経ってみたらきちんとプラスになったということであれば、私の発言は修正を要するだろうと思う。どのように修正するかはその時の足許の状況やプラスになった状況がどのくらい続くのかということを慎重に判断する必要があるだろうと思う。』

足もとの景気回復に関して回復の角度が緩やかという認識だからという事もあるのかも知れませんが、「わずかなプラスの中で本当に(デフレ脱却と)言い切れるのかどうか」と言うのは、一般論とも取れますし、岩田副総裁や中原審議委員の言う「糊代論」とも取れる微妙な言い方ですが、「具体的に糊代を設定」って話になってませんので結局は「その話はCPIのプラスが達成された時の景気上昇角度に依存する」って事なんでしょうが、本件に関しては今後の発言に注目かと。


金曜日にご紹介(ソースがブルームバーグニュース)した当預目標引下げ論に関する武藤副総裁のコメントに関して補足も兼ねてご紹介します。ちと長いけど。

『それから審議委員の中に今回の「なお書き」の対応が出口政策に向けての第一歩であるという趣旨の意見があるという話があったが、まず基本として断らなければならないのは、それぞれの審議委員において自分の信ずるところを述べることに対して、私がいちいちコメントするのは適当でなく、審議委員の一人一人が自分の責任を持って述べていることにコメントするかたちで私は発言しない。』

『 しかし、私自身がその第一歩であるかどうかと考えているのかという問いであるならば、私はそう思っていない。それはもし仮に第一歩を踏み出すのであれば、(量的緩和政策解除の)3条件が満たされたかどうかということを、きっちりと吟味しなければできないことであって、それもしないまま第一歩が踏み出されるというのは適切でないだろうと思っている。』

『日本経済が踊り場を脱却するかどうかということが、当座預金残高目標に何らかの変更を及ぼすかということについては、量的緩和政策がどういうことを意味するのかによって、今の質問には多少ニュアンスの差が出てくると思う。ただ一つ言えることは踊り場にある実体経済が今後どのようになっていくかということが、金融政策を考えていくにあたって一番大事なことであると私は思っている。経済の回復を確実なものにして、(量的緩和政策解除の)3条件を満たすようなかたちで前向きの循環が始まっていけば、その時には色々な金融政策の現状の在り方について議論をするという順番になってくると思う。』

『従って、実体経済が踊り場にあって、マーケットに何らかの事情が生じたら量的緩和政策を変えるかどうかということになれば、実体経済が重要なのであって、実体経済をどのように判断するかということをまず徹底的に議論する必要があると思う。そのうえで次のステップにいくということだろうと思う。踊り場を脱却したら量を引き下げるというのは、あまりにも前提条件なしに議論を簡単にやり過ぎることになる。様々な状況をきちんと整理したうえで判断しないと、その引き下げが何を意味するのか、技術的な理由で引き下げるということなのか、それとも、違った理由で引き下げるということなのか、そういうことも含めて議論しないと、なかなか一言で良いとか悪いとか言うのは難しいと思う。』

当座預金残高目標引き下げがどうのこうのって話をする段階じゃねぇぞゴルァ!と言った所なんでしょうな。

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2005/06/24

お題「武藤副総裁!」

昨日は大分県金融経済懇談会において武藤副総裁が講演を行い、その後記者会見を行いました。内容としては市場では「ハト派発言」として、いままで基本的に当たり障りの無い発言をしていた武藤副総裁だけに少々サプライズという評価だったと思います。

最近の迷走する当座預金残高目標減額論議に関して苦言を呈した事に関連して「出身母体である財務省の意思を反映している」という見解もございますが、講演や記者会見(会見要旨はまだアップされてないのでベンダーからのニュースによりますが)を読みますと、財務省のどうのこうのというよりは、景気回復モードに浮かれる政策委員会に対して「まぁおまえら落ち着け」と言っているようでもありますな。昨今の混迷しまくる政策論議(特に酷いのは水野審議委員だと思いますが)動向に悪態をつきまくっているあたくしとしては「久々によい話を聞いた」ってなもんですが、あはは。

では講演を読んでみませう。
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0506c.htm


○景気見通しに関して

先ほども申しあげたように、武藤副総裁は今まで比較的穏やかと申しますか、当たり障りのないお話をするのが常でしたんで、今回の講演では景気見通しに掛かる部分に関しても割と主張が見えてきてることには留意ですな。

景気関連のお話が多くの部分を占めている(お題が「わが国経済の展望について」なので当たり前ですが)のですが、その小見出しを並べますとこうなります。

・(わが国経済の現状と先行き見通し)
・(日本経済が直面した2つの構造調整圧力)
・(2つの構造調整圧力の減衰)
・(残された課題と対応の方向性)
・(構造調整とマクロ政策の関係)

色々とお話をしているので、物凄く端折ってしまいます(というか例によって週明けのネタにするかも知れませんが)と、経済の先行き見通しに関しまして武藤副総裁は「わが国経済の現状と先行き見通し」の部分で以下のように指摘しています。

『こうした経済・物価の見通し(=4月発表の日銀「展望レポート」で示された見通しです)のベースにあるのは、慎重な企業行動が続くという見方です。今回の景気回復については、回復ペースが緩やかで、加速感が乏しいことが一つの特徴となっています。地方への波及も乏しいものとなっています。』

『こうした企業の慎重なスタンスが続くことを前提としますと、先行きの回復のテンポも「緩やか」なものにとどまる可能性が高いと考えられます。そうした一方で、それゆえに、「息の長い」成長が続くと考えられる訳です。』

ということで、比較的景気の先行きに関しては慎重・・・・なのかな?と思うのはこの先の部分です。

『過去の景気の振幅を振り返りますと、企業行動が景気循環を増幅したケースが少なくありません。経済活動が活発化する中で、先行きの成長に対する過大な期待が生まれると、設備投資や在庫投資の面で行き過ぎが生じがちになります。この場合、景気の「山」は高くなりますが、行き過ぎの調整を通じて、その後の「谷」も深くなることが避けられません。今回は、企業行動が慎重である分、そうした景気の大きな振幅は生じにくいという面があるように思います。』

「振幅が生じにくい」ことに関して武藤副総裁は「安定していて結構」という評価ではないのがこの続きにあります。

『しかし、長い目でみると、慎重な企業行動が続くということは、日本経済が本来持つ潜在力を発揮し、さらにそれを高めていくうえで、障害となり得ると考えておいた方が良いと思います。競争環境や利用可能な技術が変化し続ける中で、企業が中期的に高い収益力を維持していくためには、潜在的な高収益分野にチャレンジし続け、経営資源の再配分を継続的かつスピーディーに行っていくことが必要であると考えられるからです。仮に、慎重な企業行動が長く続き、そうしたチャレンジが先送りされていくとなると、日本経済が本来持つ潜在力を発揮し、さらにそれを高めていくことは、難しくなってきます。』

で、『そうしたことも念頭に置きながら、以下では、日本経済が90年代に直面してきた構造調整の性格を振り返ってみたいと思います。』ということで構造調整について話が始まるのですが、ここの部分までご紹介していると本日の文書が終わらなくなりますので本日はパス。


○企業行動の積極化には「期待」が重要と言っているような気がする

「残された課題と対応の可能性」部分から引用します。

『このように問題の調整が進んできているにもかかわらず、企業の前向きな動きが広範に広がるまでには至っていないことは、冒頭述べた通りです。その背景については、まず、これまで低成長の期間が長く続いてきたことが、日本経済の将来に対する人々の成長期待を過度に低くしている面はあると思います。実際、内閣府の企業行動アンケートなどをみますと、企業の成長期待は過去数年の経済成長率の実績に基づいて形成される傾向があります。』

この後話は少子高齢化に関する話になるのですが、先ほどの「慎重な企業行動」云々の部分も含めまして、「景気回復持続期待の形成」が重要だという話をしているような気がするのはあたくしの考えすぎですかな?



○「金融緩和は構造改革を阻害する」論を斬ってますな

「構造調整とマクロ政策の関係」部分から引用します。

『しばしば、金融緩和を続けていると、不採算の企業や事業の延命を通じて、構造改革を阻害する面が出てくるのではないかというご批判を頂戴することがあります。確かに、既に述べた通り、2つの構造調整圧力 ―― 産業構造の調整圧力と地価の下落に関連する調整圧力 ―― は、減衰しており、そうした中で、徐々に持続的な景気回復を展望できるようになってきています。しかし、繰り返しになりますが、現在は、企業の前向きな動きがなお十分には強まっておらず、残された課題への対応が強く意識される状況です。そうしたもとで、金融政策を含むマクロ政策に課されている役割は、資源配分の過度な歪みをもたらさないように留意しながら、やはり、構造改革を進めやすい良好なマクロの環境を整えていくことであると考えられます。』

という事で、金融緩和が構造改革を阻害するという話は否定しておりますわな。ちなみにここで引用したように「構造改革をしましょう」ってお話をこの講演で強調しております。ちなみにマクロ政策における構造改革が何ぞやということに関しては武藤副総裁は、「財政支出の内容を効率的なものに見直し」「規制緩和の推進」「社会保障制度の将来不安を和らげるような制度改革」ってのを挙げておりました。


と、ここまで経済に関する部分を結構引用しましたが、目先の金融政策に関する話は講演と記者会見を併せて読んだ方が良さそうではあります。


○量的緩和政策の効果について

「資金の潤沢な供給」と「時間軸効果」を分けて話をしています。

『まず、第1に、日本銀行は、金融市場に極めて潤沢な資金供給を続けています。(中略)これにより、金融市場では、流動性に関する安心感が隈なく広がるとともに、短期金利のゼロ金利が実現しています。また、金融機関に資金調達に対する安心感が定着することを通じて、緩和的な企業金融環境の維持に寄与し、民間の経済活動を金融面からしっかりと支援する役割を果たしています。金融システムに対する不安感が強かった時期においても、金融市場の安定や緩和的な金融環境は維持され、クレジットクランチに陥ることはありませんでした。また、そのことは、物価下落が企業収益の下落などを通じて経済活動の収縮を招くデフレスパイラルを回避することに大きな効果を発揮しました。』

『日本銀行当座預金残高を増やすことによって、いわゆるポートフォリオ・リバランス効果、すなわち、無利子の日本銀行当座預金が増加することで金融機関が他の資産への投資を増やすということも、政策導入当初より期待されていますが、こうした効果は、これまでのところ、ほとんど確認されていません。』

『第2に、(中略)この「約束」は、市場参加者が先行きのゼロ金利の継続を予想することを通じて、やや長めの金利を低位で安定的に推移させ、企業収益を下支えるとともに、投資採算の改善を実現します。景気の回復が続く中でも低利での資金調達が可能となる環境が整えられているということになります。そうしたもとで、企業が新しい事業機会に挑戦するなど、前向きの姿勢で活動を展開するようになれば、経済全体としての成長期待も高まっていくと考えられます。』

量は流動性供給によって緩和的な企業金融環境を維持したりデフレスパイラルの回避の為の下支え効果があるものの、ポートフォリオリバランス効果は確認できず、時間軸効果は将来においても緩和的な企業金融継続が期待できるというお話でございますわな。日銀の公式見解でもありそうですが、最近はこの「効果」に関して「副作用論」が幅を利かせているような気もしますな。


○なお書き修正に関しては「市場機能対応論」なのは残念ですな

なお書き修正に関してはこんな感じで。

『資金需要が極めて弱い場合には、調節運営上の対応により当座預金残高目標を維持するとしても、その方法如何によって、金利形成を歪めてしまうことなどを通じて、市場機能に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。こうした情勢を踏まえ、「30〜35兆円程度」という当座預金残高目標は維持したうえで、金融機関の資金需要が極めて弱いと判断される場合には、当座預金残高が一時的に目標値を下回ることがありうることとした訳です。』

この「市場機能」論は相変わらず如何なものかと思いますが、まぁ出口論を否定しながらなお書き修正を容認するための理屈はこの技術論しかあるまい。

『このように、先般の私どもの決定は、金融システムの安定化のもとでの金融機関の流動性需要の後退とそれへの対応という点にポイントがあるのですが、市場等には、これを量的緩和政策の「出口」に向けた一歩ではないかとする見方もみられるところです。この点、まず強調したいのは、基本的には「30〜35兆円程度」という当座預金残高目標を維持していくことに何ら変わりはないということです。私どもの決定は、決して量的緩和政策の方針転換を企図したものではなく、むしろ、市場機能に配慮しながら資金供給を行っていくことで、量的緩和政策をより円滑に運営していくことが可能になると考えています。』

だそうです。しかし今日は引用増量ですなぁ(滝汗)。


○水野審議委員を初めとする当預引き下げ論を思いっきり否定する記者会見

記者会見の一問一答はブルームバーグニュース23日16時59分配信記事を参照しております。一問一答の最後の部分です。

(問)5月のなお書き修正が量的緩和の出口に向けた第1歩だという指摘が政策委員のなかから出ているが、武藤副総裁はどう考えるか。

(答)わたしはそう思っていない。もし、本当に仮に、第1歩を踏み出すのであれば、(量的緩和政策の解除のための)3条件が満たされたかどうかをきっちりと吟味しなければ出来ないことだ。それもしないままに第1歩が踏みだされることは適切ではないだろうと思う。

(問)政策委員のなかに、景気が踊り場を脱却すれば、当座預金残高目標を引き下げやすくなるという指摘がある。武藤副総裁はどう考えるか。

(答)わたしは(当座預金残高目標を)引き下げるという議論に与していないので、答えようがないというか、答え方が難しいが、「もし資金需要がなくなったから、量を下げても良い」という議論が正しいのかどうか、という議論に関連してくる。いったい、この量的緩和はどういう理由でやってきたのか。確かに、金融システム不安を払しょくするために量を増やしてきた面があるのは、その通りだが、やはりそれだけではなく、もう少し経済全体のデフレからの脱却のために量的緩和政策をとってきたという事実もあるので、わたしは札割れや資金需要の減退だけを理由に(当座預金残高目標の)額を下げるという立場にはたっていない。

・・・・久々に聞くちゃんとした政策話でして、先日ご紹介した決定会合議事要旨で散々悪態をついていたあたくしの心も洗われる清々しい話でした(^^)。

ということで本日は引用ばかりで失礼しました。

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2004/12/08

お題「武藤副総裁講演に関して思う」

月曜日にご紹介した先週末の武藤副総裁の講演ですが、ご紹介の中で触れまなかった部分に重要な示唆があったようであたくしの目の節穴振りに大変恐縮至極なのでありますが、その点に関しては東短リサーチのウィークリーレポートとか、昨日の時事メインコラム「金融観測」などで指摘されておりますんでそちらをご参考に。要するに「今後日銀が決済システムの構築に関して色々と考えている」って事を示唆してますよって話。東短のレポートでは「武藤さんの量的緩和が決済制度の改革を遅らせているって指摘は武藤さんが量的緩和長期化に対して否定的になりつつある」という話もあったのですが、それはちと読みすぎのような気も。


で、まぁそちらの話は兎も角として(というか二番煎じをするのも何ですし、まだあたくしがちゃんと理解できていない部分があるので)、別のお話を致しますと、「この講演もまた日銀事務方(というか企画というか)の意見を忠実に語っているな〜」って印象が起こる訳でございます。何せ今回の決済システムに関る話は超マニアックなお話でして、いくら武藤副総裁が優秀なお方だとしてもここまでの話(月曜にご紹介したときに「よく出来た講演要旨」と申しあげたと思いますが)をする為には、事務方から相当に事前準備をしてもらわないと厳しいかと存じます。というか恐らく事務方が原稿を用意した上でレクチャーをしたのだと思いますが(^^)。

てな訳でして、以前からドラめもんで指摘しておりますが、武藤副総裁が外部でモノを言う時は毎回「日銀事務方の意向を忠実に外部に向けて発信している」という印象が強うございます。この点に関して対照的なのは日銀執行部の残り2名でありまして、無闇やたらと出番が多く、特に記者会見や国会などでよく言えば「自分のお言葉」、まぁ要するに「不規則発言」というか「情緒的な表現」が多くマーケットに燃料を投下して下さる福井総裁や、相変わらず自説の開陳にご多忙で時に「ええっ!!」と言いたくなるご発言(国会で同席している福井総裁と違う見解を堂々とご披露して下さったり、リフレ派経済学者大集合のセミナーで訳の判らん「ETF転換型国債の発行」などという話をしてみたり)をして下さる岩田副総裁という2名の「暴れん坊将軍ズ」とは大違いですな〜って感じ。


まぁ次期総裁含みで格下の副総裁に就任したなどとゆ〜話をしては良くないのですが、(財務事務次官と日銀副総裁を比較したてどっちが格上かど〜かは旧官制というふる〜い話を持ち出すと判り易いと思うのですが、日銀副総裁の位置づけがわからんかったので。ちなみに各省次官は勅任官になりますので「閣下」と呼ばれます。)まぁそうでしょうな〜と世の中的に推測されている武藤副総裁が日銀事務方の意向を一番良く汲み取り、「量的緩和政策を直接に国債管理政策にリンクして緩和政策を延々と続けるような事はしませんよ」と言った趣旨のお話もして下さる訳でして、まぁ暴れ馬コンビ(というかお互いにタッグを組んで暴れているわけではないのでコンビではないですが)の福井総裁あんど岩田副総裁よりも日銀内部から見ると遥かに「頼りになる存在」になりつつあるのではないかと存じます。

何故か暴れん坊将軍ズのお二方と比較して外部で情報発信をする機会が極端に少なく、またその場も先日の講演は「金融情報システムセンター」というまぁ一般ピープルというよりはマニアックな専門家っぽい会合であるように、割と「専門的な場所」。国会に出てくるときに武藤副総裁が出てくるというのもあまり印象がありませんし、大体ドラめもんでネタにした武藤副総裁の前回の出番は6月18日の石川県での金融経済懇談会でありました。その前は現在過去の作品の未整理箱に入ってますので少なくとも半年は遡ると言う事でして、外部から見ると妙に印象というか影の薄い存在になっているように見える武藤副総裁。


しかし偶に出てくる時に発信される情報は日銀事務方の意向を忠実に代弁してくれますし、激しく地味なのですが結構重要な話をしている事も多いと来ておりますので、着々と内部の掌握を進めているのかもしれませんね。まぁ官僚機構のトップに立たれるようなお方ですからそ〜ゆ〜事はお手のものだと思う訳ですが、まぁともかくとして、浮き上がっているという感が強い暴れん坊将軍ズよりも地味ながら武藤副総裁の偶に出てくる情報発信は注目していきたいと思います。



昨日あまりにも超大作を作りすぎてしまったので疲れましたって事で(というのはウソで、ちょっと昨日は突発の会が入ってしまったので、やろうとしていた準備が出来なかったというのが事実です、スイマセン。)本日は甚だ簡単なお話になってしまいました。恐縮至極。ちなみにこの分量はやたらと同じ話を繰り返してくれるので引用するのがややこしかった水野審議委員のインタビューネタで過去最高の分量になってしまった昨日の4分の1です^^。

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2004/12/06

○決済システムに関して

という重いネタに関してはあたくし昔々に日本国債のレポ取引市場の立ち上げ時期に某会社でレポ取引の立ち上げっつーお仕事をした事がありますので、何気にこのネタに関しては興味と関心がございます。そんな中で武藤副総裁が先週末に金融情報システムセンターとかいうところで講演をしていたようで(全然話題になって無かったので、あたくしも気がつきませんでしたが)、「決済システムと日本銀行」というお題で紙に打ち出すと11ページにもある講演でございます。

で、まぁこーゆーネタに関しては土日にのんびりと書いておけば良かったのですが、まぁ例によってサボっていたので今朝は講演で触れられている話に関してあまり体系的ではない雑感を。ちゃんとした考察は後日で勘弁して下さい(汗)。

講演はこちら→http://www.boj.or.jp/press/04/ko0412a.htmでして、見出しを並べると以下のようになります。量が多く読みではそこそこありますので、ちょっとだけ拾って行きます。

1.はじめに
2.決済と日本銀行
3.安全で効率的な決済システムを目指して
4.小口資金決済
5.大口資金決済
6.証券決済
7.BCPの強化
8.決済のオーバーサイトと民間の努力
9.おわりに


・決済業務は重要ですな(2.決済と日本銀行)

『日本銀行は明治15年に設立されましたが、大蔵卿である松方正義が三条太政大臣に提出した「日本銀行創立の議」及びその付属資料である「日本銀行創立旨趣の説明」によれば、日本銀行設立の大きな狙いの一つは、「銀行のコルレス網を整備し、全国各地の金融の繁閑を調整・平準化する」ことにあるとされており、全国的な金融市場と効率的な決済システムを作り上げていくことが設立当時から大きな政策目的とされていたことがみてとれます。』

そういえば絶賛内紛中と伝えられるどこぞの銀行は「金融維新」などと仰せでしたが、決済業務は実質的にやってないのと同じで既存インフラにただ乗りという大変虫のいい事をしてますが、それは普通「銀行」とは言わずに「無尽」というのが正しいのではないかと思いますな。話が尚も逸れますが、決済業務をやっている訳でもない銀行の預金を預金保険で保護するのは預金保険制度の趣旨に半分くらい合致していない(小口預金の保護には合致してますが、そもそも何の為に小口預金を保護しているのかと考えると、小口決済が止まりまくって経済に混乱を与える事を防ごうって話でしょ)と思いますが。

・小口決済における現金に関する考察(4.小口資金決済)

小口決済に関して日米比較を交えながらお話をしております。で、この手のお話をしだすと日米比較をしながら「日本はキャッシュレスが進んでおらず、現金好きの日本人は誠にケシカラン」という論調になりがちなんですけど、この講演では日米比較をしながら「日本の小口決済で現金が使われるのはそれはそれで良い事である」という感じで話をしておりまして、「おお、ちゃんとした話じゃん」と思ってしまった訳です。

『銀行券は広く利用されています。随分昔から「キャッシュレス社会の到来」が言われてきたことを考えますと、不可解な動きに映るかもしれません。このようにわが国で現金の利用が多い背景としては、「日本人の現金好き」といった、言わば、文化論的な説明がなされることがありますが、それだけでなく、もう少し実体的な理由もあるように思われます。』

『わが国で現金が使われるのは、使われるだけの利便性、安全性が備わっているからであり、その背後には、日々幅広い関係者がそのための努力を払っている側面も無視できないと思っています。例えば、CD・ATMの設置台数は国際的にみても非常に多く、ネットワークが充実しており、そのお陰で現金の入手が容易になっています。また、治安が良いために安心して現金を持ち歩ける、といった事情もあると思われます。』

で、現金を使わない方のシステムに関しても全銀システムの優秀さについて触れておりまして、正直こ〜ゆ〜話は「銀行ケシカラン」ばかり言っているマスメディアやそこらのインチキコメンテーターにでも聞かせてやりたい訳ですが。

『銀行振込等に利用される内国為替制度においては、わが国のほとんどすべての金融機関の店舗をカバーしているオンラインのネットワーク・システムである全銀システムが1973年に構築され、今日に至るまで、日本の小口決済システムにおいて中心的な役割を果たしてきました。このように小口の銀行振込等を、全国何処にでも当日中に実行できる効率的な決済システムは他国にあまり例はありません。わが国の消費者は、日頃はあまり意識することがないかも知れませんが、世界に冠たる決済システムとして誇ってよいと思います。』


・問題は大口資金決済と証券決済ですが、ネタが重いのであたくしの雑感

まぁここまでは前振りみたいなもんでして、現在絶賛改革中なのはこの辺の話でございます。で、この辺に関してはあたくしめも色々と思うところがあるのですが、この講演を敷衍しながら話をしていくのにはさすがに色々と考えないと書けませんので、思いっきり竜頭蛇尾なのを覚悟いたしまして以下あたくしの愚考をば。


まぁ世の中欠点の無いシステムなどというものは存在しませんが、現在の日本における証券決済、というか債券決済に関する問題点としてあたくしが思いますのはまずは「決済方式が混在している」という事ではないかと。

講演でもあるのですが国債決済に関してはDVP(資金と証券の同時決済)が導入されて将来のSTP(約定から決済までの一貫した処理)化を睨んでいるのですが、肝心のDVP決済が全てに行き渡っているかと言うとこれが必ずしもそうではない所が日本的といえば日本的なのですが如何なものかという所であります。

と申しますのは、多くの取引がDVP化されていますが、一部の市場参加者は相変わらず国債と資金の決済をバラバラに実施しておりまして、この取引が決済の中に混在すると、その取引分に関しては国債決済と資金決済のタイムラグが発生する為に日中資金繰りという問題が生じてしまいますし、国債決済に関してもRTGS(即時グロス決済)と別に動く事になる(この辺の知識はうろ覚えなのですが、何せRTGS導入の頃には債券業務やってませんでした)ので物の受渡もまたややこしい話になる(らしい)ようです。

決済制度として導入するならそれこそ全銀システムのように決済の基本的な部分は一本で確定させないと非常にややこしい事になるのではないかと思いますが如何でしょうか(って質問してますけど、質問内容がマニア過ぎますな^^)。


並べだすと幾つも問題点を出せるのですが、もう一つだけ挙げますと「合成の誤謬が決済制度に負担をかけているのではないか」という(偉そうな)点でございます。

DVP決済導入に伴い大口取引において一発で決済できなくなるリスクを考えて、取引を小口化(1000億なら50億*20本とか)してみたり、これは決済制度とは関係ないですが、資産運用業務での合同運用の廃止といった施策によって、債券の決済がやたらめったら小口化しておりまして、国債決済業務のおおもとであります日銀さまの決済業務負担も大変に増大していると仄聞しております。

取引の小口化とか合同運用の廃止とか、一つ一つを見ると御尤もな話なのですが、それらが回りまわって全部決済制度に皺寄せがきているように思える訳でして、まぁ市場取引慣行の整備も大事ですが、慣行を整備した結果「合成の誤謬」にならないようにしていただきたいものです。


というわけで、予定通り(汗)話が発散したまま以下明日以降に続くという事で宜しくお願い致します。

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2004/06/22

お題「対照的な副総裁」

な〜んてお題ですが別に大したお話ではないので雑談程度のお話なんですけれどもね。

○武藤副総裁の記者会見

先週末に行われた講演(というか挨拶)の後に記者会見がありまして、会見の要旨が日銀Webにアップされました。
http://www.boj.or.jp/press/04/kk0406c.htm

記者会見の内容を思いっきり要約してしまうと、「長期金利の水準については上昇スピードが急でなければ特に問題なし」「量的緩和解除に関しては消費者物価指数のプラスへの転換がまだ先になるという言い方で慎重な見方を示す」「インフレ参照値に関しては検討するのは時期尚早」でありまして、更に「量的緩和政策と財政問題についての直接的なリンクについて否定する」というのが大変に特色があるかと。

財務省事務次官まで勤めた大物副総裁である武藤さん。財務省出身ということで、ま〜日銀としてはある意味鬱陶しい副総裁ではないかと思うのですが、腹の中でどう思っているかはともかくと致しまして、日銀のオペレーションを財政対策にリンクするような趣旨の質問に関して否定する所なんざぁ「日銀の人」になりきっているように見えます。

良くも悪くも「日本の優秀な官僚ってこうなんだな」と思わせる姿勢でありまして、置かれた場において最も求められる動きというのを理解した動きをしているとも言えますし、次期総裁含みという事を意識して「鬱陶しい落下傘副総裁」という意識があるであろう日銀プロパーの人心掌握を図っているとも言えますし、まぁ「立場をわきまえた最適な行動」って奴なんでしょう。

という訳で、記者会見のポイントとなると思われるところを引用。(趣旨を損なわない程度に一部割愛しています)

・長期金利について

『長期金利は(略)このところ多少上昇傾向にあることは事実である。これは、世界経済全体が好調であり、ひところ懸念されたディスインフレーション傾向に対する見方も変化しつつあることに加えて、日本経済も、私どもの判断として「緩やかな回復」から「緩やか」がとれるなど、より良い方向の循環が始まったことによるものと認識している。』

『長期金利については(略)短期的にみると、マーケットは様々な思惑によって動くというのも事実だと思っている。日本銀行としては、今後、長期金利の動向が、実体経済にどういう影響があるのかということを含めて、しっかりと注意深くみていく必要があると考えている。』

『金利の日々の動きについて中央銀行が直接コメントすること――このことは水準を論ずることと同義である――が、マーケットとの対話方法として適切とは考えていない。(略)中央銀行としては、適切な金利形成が行われているかどうかという点について、実体経済との関係も含めて注意深くみていく立場にある訳だが、金利水準そのものが適切であるかどうかについて直接的に言及するのは、マーケットとの望ましい対話の方法ではないと私自身は思っている。』

要するにオーバーシュートしなければ別に良しだということで。

・財政問題と金融政策

『財政面からいえば、長期金利が上昇すれば、当然、国債利払い負担が増えるということである。その際、その背後に景気全体が上向いているという事情があり、かつそのことと整合性がとれたものであるとすれば税収の増加がある訳だが、その規模が如何ほどのものなのか、金利負担をcompensate(埋め合わせ)するものかどうかということについて、現時点では私は具体的によく知らない。しかしながら、理論的には、単なる利払い負担の面だけでなく、収入面を含め、あるいはそのほか経済の好影響による財政負担の減少もある筈であり、そういう面も含めて考えていくべきものと思う。』

金曜日にご紹介した「財務省の密かな悩み」での財務省的な現状認識というか現状への危機感とは激しく温度差のあるコメントになっているところが注目されます。財務事務次官までやっていた訳ですから、先日あたくしがご紹介したような「財務省的な危機感」は武藤さんもお持ちだと思うのですが、このさらっとした日銀的なご発言は良くも悪くも立派ですな。

『また、同時に、財政も長期金利というマーケットの状況から様々な評価を受けるのは当然であり、経済活動の一環として色々な評価を受けるのはある意味自然なことである。従って、財政もマーケットの状況を良く考えながら、運営されていくべきものであると思う。』

『量的緩和政策の変更との関係で、財政の立場からどう考えるかとの趣旨の質問であるが、あくまでも我々は金融政策の立場である。』

お見事です。

『先程の金利上昇あるいは財政負担という観点から国債買いオペが論じられるという様な状況に今あるとは思っていない。国債買いオペをどのようにするかというのは、日本銀行としての考え方として、短期、中期、長期、バランスのとれたやり方をしていくということから出てきているものであって、財政負担、国債の金利負担が増えたからどうのこうのと、そういう様な文脈で国債の買いオペが語られるということは、少なくとも現時点では全くないと私は思っている。』



○岩田副総裁シンポジウムで吠えるの巻?

日本語版ロイターの記事によりますと、昨日岩田副総裁は都内でのシンポジウムで毎度お馴染みの持論を唱えておられます。以下は昨日17:43の日本語版ロイターの記事を参考にしております。

岩田副総裁はシンポジウムでいつも氏が主張しているわたくしども凡下には判りかねる理論を展開。どうも伊藤隆敏氏も出席ということで、所謂リフレ派の皆様大いに盛り上がるの巻だったのかと思われるところでありました。その場での岩田さんのお話。

「将来もマネタリーベースのプラスの伸びを保つ」「現在の財政健全化目標をきちんと守る」「1−2%のコアCPIの目標を置く」という政策を行うとデフレからの脱却が可能になる。といういつものお話をしております。だいぶ前にドラめもんで同じ氏の主張を丸写ししてみたものの何の事か判らなかったのですが、どうも人から教えて貰った所によるとこういうことらしいです。

「マネタリーベースのプラス」+「プライマリーバランスがゼロになる(だけであって、国債の発行額を削減するという話ではない)」という政策は、バランスシートで言えば「日銀の負債増加」+「政府の負債増加(ただし発散しない)」という訳です。従ってこの反対側には「民間部門の資産増加」と言うのがありますわな。で、財政が発散するとなりますと財政への信認問題が発生してしまうのですが、プライマリーバランスがゼロになる政策を取っていれば財政への信認も確保されているので、資産逃避なども起きず、増加した民間部門の資産は消費やら設備投資に回るのでデフレ脱却に繋がる。という事だそうな。

何か元々の前提条件が激しく理解に苦しむ(マネーサプライは政策当局が意図するようにコントロールが可能なのかという問題とか、そもそも財政相変わらず発散してますが何か?という話とか)のですが、それはそれと致しましてもこの理論は謎。しかし岩田副総裁様におかれましては、最近家計部門が赤字に転じたのは上記政策が効果を上げている為に起きている現象だとリアルで思っている節があるようです。

で、先日時事通信社とのインタビューでは理解したように見えた、「ビハインド・ザ・カーブのカタパルト効果」についてもまた本卦帰りしてしまったようで同じ話をおっぱじめています。

岩田さんは、量的緩和のコミットメントの条件について「コアCPIが再びマイナスに戻らない為の物価上昇率には1%は必要だ。そうすると政策が遅れる、ビハインド・ザ・カーブになるという議論があるが、それは2%という上限で抑えられると考えている」と述べたそうなのですが、そうやって目標を引き上げる事自体がカタパルト効果をもたらす訳だとおもうのですが。先日のインタビューでは単に「のりしろ」と言ってましたが、結局事実上のCPIターゲット引き上げの話が続いているようであたくしとしては遺憾に存じます。

まぁ仲間内の話なのでもう調子に乗って論理展開が凶暴化する岩田センセイは記事によるとこんな提言もしていたようで。

長期金利のオーバーシュートをどのように防ぐかという点について、記事によりますと岩田副総裁「新しく発行する国債には、インデックスボンドにいつでも変えられるオプションを付ける。経団連もこうしたことを提言している」と述べたそうです。

このインデックスボンドというのはもしかしてETF転換国債って意味なのか(過去の経団連の発言にそんなのがあったような気がする)とも思うのですが、それって結局の所「普通の国債が売れないからオプション付与してあげますよ」ってな話ですから目先の発行コスト削減の為に将来につけ回し(オプションが将来行使される可能性があるから)をしているだけで、何の解決にもなっていないアフォな話であります。

で、この人に限らず日本の経済学者といわれる人(個人的にはリフレ派などのような現実離れしたお話を堂々とする人に多い気がするのですが)お得意のフレーズが炸裂していたのがお笑いなのです。「経団連もこうしたことを提言している」って言ったってそもそも経団連が金融政策をまともに理解して提言しているのかよって感じなのですが、この手の「誰々もこういっている」という主張を自分の意見の補完として乱用するのは学者としていかがな物かと思うわけです。

そういえば(以前ご紹介しましたが)昔々、岩田さんが内閣府にいたときに行われたとある討論会で、現在の白川理事に「今の日本経済を論じる時にはテーラーがどういったとかクルーグマンがどういったということではなく、現状認識を行い処方箋を出さなければ」などという趣旨の楽しい突っ込みを他のリフレ派の方共々食らっておりましたな。まぁいいけど。


というわけで、岩田副総裁はやはり岩田センセイのままでおられるようであります。しかしこのシンポジウムの内容公表されないかな〜。中々凶暴な論理展開が見られそうなんですけど(^^)。






2004/06/21

「武藤副総裁講演」

さて、俄かに注目の的となってしまった石川県金融経済懇談会における武藤副総裁の挨拶と記者会見。何故か挨拶要旨の方しか日銀のWebにアップされておりませんで、記者会見については今日アップされるようなので本来はそっちも読んだ方が良いのですが、とりあえず挨拶要旨を読んでみましょう。
http://www.boj.or.jp/press/04/ko0406d.htm

まぁ先に結論を申し上げると極めてオーソドックス。だいぶ大昔に武藤副総裁の講演を紹介した時にも「財務省出身という看板を持っているのに日銀の企画ラインの発想(=正統的な日銀の発想)に則したお話をするんだな〜。優秀な官僚というのはこういうもんなんでしょうな〜。」などという感想を書いたと思うのですが、今回の講演もまさに模範解答のような講演でありますね。

ポイントがやや多いのですが。

・経済の現状は強気、所謂ダム論が展開されています

『わが国の景気は、昨年後半以降、回復を続けており、最近では、雇用面でも改善の動きがみられます。今回の景気回復は、海外経済の好転に伴う輸出増を起点に始まり、それが生産活動の活発化、企業収益の増加に繋がり、さらに設備投資の拡大を促すという「前向きの循環」が働いています。』

で、その前向きの循環が雇用面への改善の動きになっているということですから、景気に遅行する雇用が改善傾向と言うことで、景気回復熱烈進行中というお話。

『こうした順調なわが国の景気回復は、私どもの想定を上回るものでした。そのひとつの背景は、米国、中国を中心とした世界経済の予想以上の回復です。』

『もうひとつの背景は、雇用・所得環境が必ずしも明確な回復をみていない中にあっても、個人消費が予想以上に健闘していることです。』

と、ここまでは普通のお話なのですが、もうひとつの要因として結構驚愕の要因を挙げている訳でして(^^)、長いけど引用。

『さらに、今回の景気回復局面の中で見逃してはならないのは、構造調整の進展が景気回復の動きをサポートしているという点です。バブル経済崩壊以降、わが国の企業は、過剰な債務、雇用、設備についての調整に懸命に取り組んできたわけですが、ようやくその努力が実を結びつつあります。とくに製造業大企業では、リストラや企業再編等を通じて、収益を上げやすい企業体質に変化しつつあり、日本銀行の短観によると、売上高経常利益率がバブル経済崩壊後のピークを更新している状況です。また、金融機関の不良債権処理についても、全般に相当進捗してきています。金融システムが全体として健全性、安定性を徐々に取り戻しつつあることは、企業金融面での安心感に繋がっていると思います。』

金曜にご紹介した財務省というか池尾先生の御認識とは随分こりゃまた温度差を感じるお話。「構造調整の進展」というのが日銀的(というか世間的にもそうですが)な認識なのかただの大本営発表なのかは知りませんが、どうも日銀から景気良く出てくる進軍ラッパを聞いているともしかしてリアルで「構造調整の進展」と言っているのかも知れないとつい思ってしまいますな。金曜日にご紹介したように「構造調整の進展」は単に「政府部門へのツケ回し」に他ならず、政府部門の構造問題(=財政絶賛大赤字と訳のわからん特別会計なんかの肥大化)は調整どころかせっせと拡大中ですが。

・物価情勢

「経済の先行き」に関しては省略。そんなに変わった話はしていなくて、基本的に今後は景気回復の効果が個人部門に及んでくる(要するに雇用)かどうかがポイントになるでしょうって話。海外経済とあわせまして。

『その中身(国内企業物価が0.5%前後の伸びを示していること)をもう少し詳しくみると、昨年後半頃より、米国、中国を中心とした世界経済の回復を背景に原材料価格の上昇が目立ち始めたのに続き、今年に入ってその中間財価格への波及が明確化してきています。』

『しかし、その一方で、最終財価格や、消費者物価、例えば家電製品価格などへの波及はなお限定的です。これは、企業の生産性向上に向けた努力や賃金抑制姿勢を反映して、商品を生産するのに必要な人件費コストが低下していることが基本的背景にあります。つまり原材料にかかるコスト上昇が企業段階で吸収されていると言えます。』

『また、物価の基調的な動きに影響する経済全体の需要と供給のバランスは、景気の回復を反映して着実な改善をみていますが、なお緩和した状態が続いており、引き続き物価を押し下げる方向に作用していると考えられます。』

相変わらずこの理屈で消費者物価だけ上がらないという話なんですが、景気回復のダム論が正しいのならば労働分配率が上がってやっぱり上昇って話にならんのかな〜とおもったりもします。だから「雇用情勢に関しては今後のポイント」という事ですから話としての整合性は取れているとも言えますが(^^)。

『これらの事情を踏まえ、私どもでは、物価下落圧力は徐々に減じているものの、今年度の消費者物価は基調的には依然として小幅な下落が続くものと予想しています。』

で、原油価格上昇についてもお話をしているのですが、非常にオーソドックスなお話。先日福井総裁は記者会見で「原油価格上昇は需要の増加という面もある」などと景気の良い話をしていましたが、武藤副総裁は福井総裁のような楽観的な面ではなく、『わが国のように、原油をほとんど輸入に頼っている経済にとっては、原油高は交易条件の悪化を通じてマクロの実質的な購買力を圧迫するなど、景気にマイナスの影響を与える惧れがあります。』と慎重な見方を示しています。


・金融政策運営

金利水準については市場の一部で勝手に期待していたような牽制あるいは介入的な発言はございませんでした。というかあると思っている方が日頃日銀見てね〜だろって感じですが。

『長期金利は概して安定的に推移してきましたが、ここにきてやや強含んでいます。これは、世界経済が高めの成長を続けており、ディスインフレーションの傾向にも変化が窺われつつあることや、わが国の景気も回復しているといった状況の中での動きと理解できると思います。長期金利は、やや長い目でみると経済や物価情勢を反映して変動するものです。ただ、同時に短期的には様々な思惑によって動く一面も有していますので、今後の長期金利の動きについて、注意深くみてまいりたいと考えています。』

まるで模範解答ですな。

CPIターゲットの引き上げに関しては思いっきり否定。どこぞのストラテジストやら日経新聞やらが「ひとつの案」などと言っていて、それに乗ってしまった(自分でお考えになったのかも知れませんけどね)中原審議委員さま十字砲火で撃沈の巻と言った所で実に香しい。しかも時事メインの「金融観測」で指摘された「カタパルト効果」にも言及しておりますな(^^)。

『このように申し上げると、「約束」の水準を引き上げて、例えば、基準となる消費者物価の前年比についてゼロ%より高い水準に改めた方が、もっと景気刺激効果を引き出せるのではないかという疑問を持たれるかもしれません。しかし、物事には必ず表と裏があります。』

『仮に日本銀行が消費者物価の前年比が高い水準に達することを確認するまで現在の政策を続けると宣言し、経済にどのような変化が生じても、そうした段階に至るまでゼロ金利状態を続けるとなると、経済は過熱し、物価上昇率は急速に高まるかもしれません。少なくとも、市場は常に経済の先行きを予想しながら動く性格を有していますから、ゼロ金利状態が長くなる分だけ、将来の短期金利の上昇幅は大きくなるという予想が広がり、結果として長期金利が大きく上昇する可能性もあります。』

非常に明解な説明、というかこんなの金利市場に絡む仕事してたら当たり前の常識であってそんな理屈も判らんで「期待形成の安定化の為にCPIターゲットを引き上げる」と言っていた人は本当にイールドカーブとか判っているのかと小一時間(略)。


なお、念のため申し上げますと、当然武藤副総裁は「出口論議は時期尚早」であって「いまの量的緩和を続ける」と言っております。

『現在は、景気が回復を続けているとはいえ、消費者物価の前年比がなお小幅のマイナスで推移している状況です。そうしたもとでは、量的緩和政策からの「出口」を具体的に論じる段階ではないと考えています。』

『現時点で私がもっとも重要と認識している点を一言述べれば、政策の転換のプロセスを通じて人々の予想形成を不安定にさせないということです。このためには、日本銀行として、経済・物価情勢の判断を的確に行ったうえで、金融政策運営についてどのように分かりやすく説明していくか、言い換えれば金融政策の透明性を高める方法についてどのように考えていくかが何にも増して大切になってくると思います。』

『いずれにせよ、日本銀行としては、デフレ脱却を最優先として、今後とも、消費者物価に基づく「約束」にしたがって、適切な金融政策運営に努めてまいりたいと思います。』

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2004/06/10

「作られた?武藤ショック」

最近出来た豪華ビル(事故で有名ではないほう)にご入居のどこぞの外資系証券会社様の有名なお方が、6月7日に武藤副総裁がロンドンで行った講演の内容を見事に換骨奪胎した素晴らしいレポートをお出しになられたそうで、昨日はそれもまた市場の話題になっておりました。そのお方によれば、一昨日の相場下落(5年国債入札の日)も武藤副総裁のスピーチのせいだという事になっているという大変な作品。

何でも、そのレポートによれば、武藤副総裁は「コアCPIが数ヶ月続けてプラスとなれば、我々の金融政策スタンスは変わるだろう」と述べて金融市場に「武藤ショック」を与えたという事になっております。

で、その講演ってのは英語で行われていまして、内容も別に特筆すべき事ではなかったので、日銀も訳文をWebに上げていなかったのは不覚といえば不覚だったのかもしれません。何せ日本語ページからでは判らない所にこの英文原稿がありましたので、あたくしも人から教わるまでこの講演の原稿の居場所がわかりませんでした。

http://www.boj.or.jp/en/press/04/ko0406a.htm

問題の部分はこうです。インチキ和訳の文責はあたくし。

Of the three features of the current monetary policy, let me elaborate on the second one: the Bank's policy commitment.

この前の部分で、現在の日銀がやっている金融政策を3本柱で説明しています。量的緩和政策、緩和のコミットメントによる時間軸効果、緩和政策の波及効果を確実にするために行っている証券化市場の育成、の3本でして、ここではそのコミットメントに関しての説明をする.、と言っているようですな。

In this commitment, the Bank will maintain quantitative easing until the core CPI registers stably zero percent or an increase year-on-year.

このコミットメントではCPIが安定的に前年比ゼロ以上になるまで日銀は量的緩和を続ける、と言っているようです。

More specifically, before the Bank considers terminating quantitative easing, certain conditions must be met: the core CPI inflation has been positive over a few months and it is forecast to remain positive in the future.

で、ここが問題の部分なのですが、あたくしの英語力によりますと、『日本銀行が量的緩和政策の終了について検討をするためには、「数ヶ月間に渡ってCPIのプラス基調が続き、将来に渡ってプラスであるという見通しが立つ」ことが必要である』としか読めないのですがどうでしょうか。

だいたい量的緩和のコミットメントには「量的緩和はCPIにペッグする」とは一言も書いてないのでありますし、今まで毒にも薬にもならないというか自分の個性を全然打ち出さない発言や講演しかしていない武藤副総裁が、わざわざ海外で金利が急上昇するような爆弾発言をする訳は無いというのは、ある程度真面目かつ不真面目に日銀ウォッチをしているあたくしであっても理解できる訳でして、「武藤ショック」などと書いた著名外国人ストラテジスト(なのか?)様はなに考えてこんなレポートを出したんでしょう。

無知で書いたとすれば只の馬鹿ですし、知っていて書いたなら為にする悪意のレポートと言われても仕方が無いかと思われます。だいたい上記の英文をみると「武藤ショック」と言われるようなお話はありませんし、全文読んでいるわけではないですが、とりあえずその手の爆弾発言は特にない講演原稿でありました。まぁ英文なのですぐに気が付かれないのを良い事に換骨奪胎したという解釈なんですがね。

と、散々書きましたが、実はあたくしはレポートのダイジェスト見たいな部分しか見ていませんので、もしかして「レポートなるもの」が勝手に一人歩きしているのかもしれません。もしそうなら(とは思っていないが)上記の罵倒部分は慎んで撤回し陳謝する積りです。

後日補足:思いっきりレポートは上記の通りでした。やはり「勝手に作られたショック」ということで。しかし結局お咎め無しらしい。世の中わからん。

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