白井早百合審議委員

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白井さんの略歴(日銀Webより)

昭和38年1月2日生
昭和62年 3月 慶應義塾大学文学部卒業
平成元年 3月 慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了
平成 5年 5月 コロンビア大学Ph.D(経済学博士)取得
平成 5年 9月 国際通貨基金(IMF)エコノミスト
平成10年 9月 慶應義塾大学総合政策学部助教授
平成18年 4月 慶應義塾大学総合政策学部教授
平成23年 4月 1日 日本銀行政策委員会審議委員に就任

詳しくはこちら→http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_shirai.htm/

2015/11/29「白井さんの金懇会見質疑がゴリゴリ詰め大会になって面白い件について」
2015/11/27「白井さん海外講演および金懇&会見で完全に今のロジックと違う話をして逃亡モード」
2015/11/25「海外で講演だが急に黒田ドクトリンじゃない話を始め逃亡準備のようで」
2015/09/10「海外で日米欧のQEの話をしているのだが色々と事実誤認が多すぎる」
2015/06/08「白井さんの会見はああだこうだ説明するのだが結局何を言いたいのか分からん」
2015/06/04「三重金懇の挨拶は相変わらずのアタシがアタシがだわ内容はアレだわ」
2015/03/12「白井さん海外講演でまた国の恥レベルのクソクオリティ&浅ましい内容」
2014/11/28「広島金懇の会見がまた酷過ぎるクオリティというか財政マネタイズ容認とか審議委員辞めろよ」
2014/11/27「広島での金懇はもはや何を言っているのかおかしいとしか言いようがないさゆりワールドに突入」
2014/10/08「またまた金融政策決定会合で意味不明の提案を打ち込む白井さんの頭の中はオガクズか何かですか」
2014/07/28「シンガポールでの講演は量は多いが中身はツッコミどころ満載のしょうも無い代物」
2014/06/03「白井審議委員会見はただの売り言葉に買い言葉状態」
2014/06/02「白井審議委員講演&会見は相変わらずの謎発言に質疑応答がけんか腰」
2014/05/30「講演が自己アピールの場になっている謎の白井審議委員」
2014/03/06「まあ結局謎の俺様理論を展開する白井審議委員講演だが正直読むのも時間の無駄ですな」
2014/03/04「米国の講演ですがどうも英文の方がマトモになっているのは日銀スタッフの英訳(銃声)」
2014/03/03「またまた海外行脚でNYで意味不明の講演を」
2014/01/23「謎提案に拍車が掛かる白井審議委員の謎の声明文文言反対」
2014/01/10「シンガポールでの大講演がありましたが中身がどうでも良いので金融政策の所だけ」
2013/11/29「徳島の金懇では前代未聞の質疑応答キタコレ」
2013/09/26「IMFでのフォワードガイダンスの講演は内容が少々おかしいと思われます」
2013/07/02「また微妙な講演だがクイックのサーベイからそのまま実質金利を出すのは無茶だと思います」
2013/06/17「会見でも大演説をしているのだが正直やはり意味不明」
2013/06/14「講演で3月と4月提案の説明をしているのだが全くもって意味不明」
2013/05/28「4月2回目の決定会合でも意味不明な提案をする白井委員はちょっと大丈夫かと言う風情」
2013/03/08「3月会合という消化試合で突如新提案をする不思議な白井委員の行動」
2013/01/17「イタリアでの講演はQEの論点整理ですが付利下げ示唆という報道はどう見ても変」
2012/12/04「熊本での講演は講演よりも会見の方が面白いかな」
2012/09/11「人口動態に関する講演」
2012/06/12「欧州情勢の解説はまあ良いのですがこれまた政策インプリケーションの無い長話」
2012/05/14「会見はやたらと長広舌なのだが政策インプリケーションが無い長話という不思議なお方」
2012/05/11「講演では海外経済の下振れリスクを意識」
2011/12/19「11月に行われた最初の講演も無難に済ませていますな」
2011/04/07「就任会見は無難に」

2015/11/29

お題「白井審議委員会見鑑賞会(休日版、といっても結局日曜の夜なんですけどね)」

いやー結局日曜の夜の更新なんで月曜の分を先に書いているだけのような気がしますが。

○この会見はとにかく質問の畳み掛け方が秀逸な訳でして

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1511d.pdf

ということで金曜の続きですけどね。

・今のQQEがいつまで続けられるのかの認識が無いのがもうね

『(問) 午前中の挨拶の中で、白井委員は物価 2%を安定的に持続する時期について、もう少し長いスパンでみていく必要があるとお話しされていますが、具体的にはどの程度の期間を念頭に置いておっしゃられているのか伺えますか。併せて、現行の緩和政策がかなり長期化するということを意味するかと思うのですが、これ以上の長期化が持続可能なのかどうか、そのあたりも伺えますでしょうか。』

と当然質問されるのですが、どうも認識が甘いというか何というかなようで。

『(答) 2%を安定的に持続する時期について、私の挨拶要旨で「少し長い目でみる必要がある」と申し上げたのは、挨拶要旨にも書いていますが、2017 年度に 2 回目の消費税の引き上げがあり、それとともにオリンピックに向けた公的・民間の固定資産投資もでてきますが、それがどのくらいになるのかというのは、まだはっきり分からないわけです。』

今のQQEの建付けが2020年近くまで持つと思っている時点で認識が無茶苦茶おかしいのだが、参謀が戦況についてちゃんと報告を上げなかったら司令部の判断が思いっきり間違えると思うのだが大丈夫か。

『ですから、来年から私どもは物価が上がってくるとみていますので、それをみながら──そうしますと家計や企業の予想物価上昇率がどのように変化しつつあるのかということが分かりますので──、その段階で判断すれば良いと思っています。今の段階では、ちょっとまだ時期が早いと思います。』

はて?

『ただ、消費税の引き上げもあることを考えますと、それを少し越えた形での判断が必要かもしれないということは今の段階では思っていますが、まだ明確にそこは評価する時期ではないと思っています。』

オリンピックと言った後に来年と言って、その後消費税引き上げ(2017年秋)と言っているのだが結局いつなんだと小一時間問い詰めたい。

『それから、もし緩和が長期化した場合の持続性はどうかということですが、当然のことながら、私たちは、この量的・質的金融緩和をしているときに、経済・物価の上下双方向のリスクをみながら継続を判断していくと申し上げています。そこには、金融不均衡とか現在の量的・質的金融緩和の持続性の問題も当然入ってくるわけです。あるいは国債市場の流動性ということもあります。』

で?

『そうしたものをみながら判断しておりまして、現時点では、日本銀行のオペ担当者によりますと、問題なく買えているということです。』

短国買入を増額した後にマイナス水準がぶっ飛んだら急に買入が減ったり、2年カレントがマイナス3bpになった後に1−3の輪番を減額しているのを見ていると問題なく買えているという状態になっていないようにしか見えませんがどういう報告を上げているのでしょうか。というかオペ担当が泣きを入れたら買入減らすんですか???

『今まで、市場の多くの方が「とても持続は無理だ」と言われていましたけれども、それ以上に今のところは持続していますし、順調に買えているわけです。今のところ、今後もその持続性に特に問題があるということは聞いておりませんので、その限りにおいては、続けていくことが大事だと思っています。』

聞いておりませんのでってどういう聞き方をしているのか存じませんが、この白井さんの発言のなんだそりゃと思うのは「問題があるということは聞いておりませんので」って所でして、つまり問題があるかどうかに関して自分で調べて裏を取りに行こうとしないで日銀スタッフの言う事をそのまま受止めているのだから何かあったら「ワタシは聞いてませんでしたよ」とか言い出して責任逃れをしようという風に読めてしまうのは読んでいる人の心が濁っているからですかそうですか。

『仮に、その持続性の問題が出てきたら、それはそれで諦めるということではなく、持続的なやり方で2%の物価安定目標の実現を目指せばよいと思っています。』

それは一般的に「政策の限界が来たので諦める」という事になるのですし、木内さんはその持続性の問題が出る前に持続的なやり方に変えようと言って提案しているのですけれどもねえ。


・蒟蒻問答キタコレ!!

次の質問は質問も微妙に要領を得てないのだが答えが更に訳が分からないという落語の蒟蒻問答もビックリの質疑応答。

『(問) 先程の質問と絡みますが、』

というのは金曜にネタにした2つ前の質問ね。

『サンフランシスコにおける講演の中で家計には長期的な予想インフレ率に関して上方バイアスがあるということを言われていて、ここでも言われている日本銀行が目指す 2%に関して家計がついていけないというか受け入れ難いと感じる可能性があると言われています。賃上げに関して、日本銀行が指示するとかそういったことはできないので、現状までのところでみると来年度の賃金は今年度よりも上がらないような感じの数字が出ていますけれど、なかなか物価上昇に賃金がついてこない段階で家計がやはり受け入れ難いと判断された場合には日銀の 2%の目標にどういうふうに影響するのでしょうか。』

分かったような分からんような質問の仕方だがまあ良いとして。

『(答) 家計のインフレ予想に、上方バイアスがある背景は、名目賃金が長く上がってこなかったことの裏返しのように思います。実際、アメリカの消費者調査をみますと、低所得者の方ほど収入の先行きの見通しが慎重ですので、物価が高いと感じやすいのと同じ傾向があるのですけれども、日本の方が総じてみれば上方バイアスが高いです。ですから、この 2%の物価目標を安定的に実現するためには、名目賃金が上がっていくこと、そしてそれが持続することが非常に重要です。』

で?

『現在は、企業が大企業を中心に企業収益が非常に高い状態にありますし、それから日本では人手不足になっていますので、より人を大事に、職業訓練を含めて質の高い人材をこの国で供給していき、質の高い財やサービスを生産できるような国にしていく必要があるわけですから、そういう人材育成とか人材を大事にしていくという思いは共有されていると思います。』

だったら賃金がもっと上がるはずですが。

『そこで、徐々に賃金が上昇していくことが予想されると思います。今日、明日ということではなくて、この国をみたときに、やはり人は大事で、その人手が不足しているわけですから、その人がより質の高いものを作れるような人材形成が行われていますので、そうした生産性の高さに見合う賃金を払うという社会が徐々にできてきつつあると思いますし、これからも起きていくと思います。』

どこの国の話でしょうか?

『そうなると家計は、公的な CPI の統計データとの大きなずれがだんだん縮小してくる可能性があると思います。今のところそれができないとの見通しは全く立っておりませんし、むしろ徐々にそういう好循環が出てきていると思いますので、今はそれを見守りたいと思っています。』

結局何を言いたいのか分からん、というか答えになっていない。


・QQEをいつまで続けるつもりなのかという質問とか

『(問) 2 点お伺いしたいのですが、1 点目が先程の質問にもあった物価 2%安定持続する部分なのですが、そこでのご回答で「消費税を少し越えた段階」での判断が必要になるかもしれないとおっしゃられました。17 年度の 2 回目の消費増税を行われると影響一巡するのは、見極めるのはやはり 2018 年度以降くらいになると思うのですが、具体的に 2018 年度以降まで今現在の量的・質的金融緩和を継続する可能性があるとお考えでおられるのでしょうか。』

もう一点も繋がっているので一緒に引用する。

『もう 1 点は、午前の挨拶で、「仮に想定通りの物価上昇パスが全くみられない場合、金融政策の調整を検討するのが良い」とおっしゃられているのですが、その上昇パスというのが、挨拶の中で金融政策運営の中に出てくる 5 つのポイントを挙げられておられますけれども、これが変調するケース、つまりメカニズムのことを指しておられるのか、それとも物価上昇のペースなど達成時期を含めておっしゃられているのか、追加緩和が必要となるケースについて、白井委員がどのような状況を想定しておられるのか、もう少し具体的に教えて下さい。』

ということで白井さんのお答え。

『(答) 今の段階では、2017 年度はどのくらい予想物価上昇率が上がってくるのか──今は横ばいの状況ですから──、まだ不確実性が高いです。繰り返しになりますが、オリンピックに向けた公的・民間の設備投資やインフラ投資がどのくらい出てくるのか、あるいは、家計の消費税に対する対応力は──一度2014 年に経験していますので──どのように反応するのか、少なくとも名目賃金は上がってきますから、そこは 2014 年とは同じではないと思います。』

2014年も名目賃金上がっていたはずですが。

『やはりそれは見極めなければなりませんので、今の段階では、消費税の引き上げによる直接的な影響は 1 年ほど出ますから、そのあとも含めて安定的な実現というのを分析した方が良いとは思っていますけれども、それはこれからどのように家計や企業の物価観、企業の価格設定行動が変わってくるのかにもよりますので、変わり得るとは思いますけれども、今の段階ではその程度のタイムスパンでみていく必要があるかもしれないと思っています。』

だからそこまでオペが持たないっちゅうの。

『また、日本銀行も公式見解としては 2%を安定的に実現するのに必要な時期まで量的・質的金融緩和を継続すると申し上げていますので、その限りは続けるということだと思います。私もそう思っています。』

その定義があやふやなんですけどねえ。

『2 つ目の、金融政策の調整を検討する可能性について触れた際の、「物価上昇パス」の意味については、まず確認しておきたいのですが、私たちの 2%の物価安定目標というのは、総合消費者物価指数でみています。総合消費者物価指数が長い目でみたときに平均して 2%であるというのが私どもの政策が成功したということになります。』

いやだからそれは概念的な整理だけどQQEという強力な金融緩和政策を2%達成後にそのまま継続して景気の1サイクル分まるまる実施したら緩和のやり過ぎになるんだからダメだろと思うのだが、どうも白井さんの説明だとそういう事のようにも思えます。

いやあのそんなに長期間見極める余裕を持ってQQEが実施出来るというのないならそもそもQQEの効果が物凄く小さいという事になる訳ですが、何ぼ何でもこの勢いで国債残高増やすのを2%到達後に景気の1サイクル継続したらそれはとんでもない事になるでしょうと思う訳で、何か無茶苦茶無責任な話をしているように見受けられるのですけれどもねえ。

『ところが、今トレンドでみるときには、色々なエネルギーとか、為替の影響もあって、変動が大きいので、この間、調査統計局等から物価の基調を判断する際に注目する指標として 5 つの指標が示されましたけれども、そうしたものをみながら、しっかり上がっているかをみていくということです。』

結局このお方は何がどうなったら「2%を安定的に持続する状態」というのを定義しているのかが全く示してくれない、というかそもそも示せないんでしょうなあ。

『ですから、当然、私たちが今やっている金融政策の調整が必要かどうかを考える時には、そうした物価の基調を判断するいくつかの指標をみながら、予想インフレ率がどのような形で変化してきているのか、実際の需給ギャップ等もみながら、総合的に判断していくということになると思います。それが全く改善がみられないということになれば、それは金融政策の緩和の度合いが足りないのか、あるいは金融政策対応を工夫した方が良いのか、という判断になってきますので、それは原油価格の動向等にもよりますけれども、必要があれば検討する必要があるのではないかと申し上げています。』

質問に対しての答えが全く無いんですけどこれは。


・2%についても曖昧な説明を続ける

『(問) 挨拶要旨の中で物価達成時期について、2017 年 1 月〜3 月期、4 月〜6月期にかけて 1.7〜1.8%程度に達する可能性が高く、すなわち 2%程度に近づくとおっしゃっています。日本銀行の見方としては 2016 年後半頃に 2%程度に達すると書いています。白井委員の 2%程度という認識は1.7〜1.8%程度ということで、2%に必ずしもタッチしなくて良いとお考えなのでしょうか。』

『(答) 今の私の中心的な見通しは、2016 年度の末から 2017 年の初めに 1.7〜1.8%程度に達すると見込んでいます。それは日本銀行の公式見解である 2%程度に達する時期が 2016 年度後半とするところと違うのではないかという質問だったかと思いますけれども、』

そうじゃなくて2%に関する説明が「2%程度に達する」だと1.7-1.8%なので「では物価目標の2%には1.7-1.8%も含まれるのか」と質問したら(金曜に引用した部分)それは違うという説明になっていたので別の角度から質問しているんですけどね。

『その 2%程度というのは、──私は 2%程度に近づくと申し上げていますが──柔軟に解釈すべきだと思います。』

説明が分かりにくいにも程がある。

たぶんですね、日銀執行部に説明をさせるとそういう話になると思うのですが、「物価目標としての2%というのは平均的に2%であって平均的に1.7%でも1.8%でもない」けれども「物価見通しとして2%程度に達する」という一時点の話の場合は1.7%や1.8%は2%程度の範疇に含まれる」というお話になるんですよ。でもって白井さんはその執行部の理屈(随分とややこしい理屈というか屁理屈になりますけど)に乗って説明しているつもりなのでしょうが、白井さんの中でちゃんと執行部屁理屈の整理がついていなくて、説明が全然クリアカットにならないんですよね。

『私自身、挨拶要旨で、物価見通しに関するリスク、上振れも下振れ要因もあるというところで、為替の動向と原油価格をはじめとするコモディティ価格については、非常に不確実性が高いと述べています。それは、私の見通しを上振れさせる可能性もあるし、下振れさせる可能性もあるわけです。そういった中で、柔軟に解釈をすれば日本銀行の基本的見解としての 2016年度後半頃に 2%程度に達している可能性が高い、ということと、さほど大差がないということで、賛成しているわけです。』

不確実性が高かったら「達している可能性が高い」とはならんだろおいこらどういう説明しとるんだ。


・ということでドラめもん史上(??)初の「冒頭説明を除き会見要旨全文引用」になってしまいましたorzorzorz

本当の本当に全文引用じゃないから勘弁してくださいすいませんすいませんm(__)m

『(問) 先程、国債買入れの持続性について、仮に問題が出たら、持続的なやり方で 2%を目指せば良いとおっしゃいました。この「持続的なやり方で」というのは、具体的に言えば、現在ネットで年間 80 兆円増えるようなペースで国債、長期国債を買い入れているわけですけれども、持続性に問題が出た場合は、持続的なやり方でということは、つまりこの 80 兆円ペースというのを削減する・縮小するという解釈で良いのかどうかを教えて下さい。


壁にぶつかって減額するという白井さんのアプローチだとそれは負け戦なんですけど中々こう最後にイヤミな念押しで中々よろしい。

『(答) 今の量的・質的金融緩和の枠組みというのは、もともと、金利・イールドカーブが 7〜8 年ぐらいまでの中期ゾーンまでかなり下がり、』

7-8年は中期と言いません。

『その下げ余地がかなり乏しくなっている中で、より多くの金融緩和効果を狙って、大量に最長 40 年までの国債を中心に資産買入れをすることを始めたわけです。』

始めたってそもそも包括緩和の枠組みでも輪番自体では30年まで買っていましたし、大体からしてQQE突っ込むときにはその7-8年の金利の低下余地は普通にありましたが何か?

『ですから通常は、その枠組みで調整を考えるならば、国債を中心に買っていますので、その国債の量なのか、あるいはその買い入れの平均残存期間の変化、長期化なのか、』

買入が限界になっているのに更に長期化するとな???

『あるいは他のリスク性資産も買っていますので、そことの組み合わせになるのか、』

国債が買えないからリスク性資産の買入を増やすとのことですが、マネタリーベースに意味があるという事でやるならそれらの資産は量を多く買えませんので増やしてもマネタリーベースの大幅拡大はできませんし、実質金利の低下を促す施策をしているというのであれば株やREIT買い増すのはそもそも話の筋が違いますし、CPや社債はそれこそ金利の低下余地がないんですがそれは。

『そういったことが通常調整というときに意味することだと思います。それが量的・質的金融緩和の枠組みだと思っています。』

そもそものQQE政策の経路や波及効果に関する整理がちゃんとできているのかこの人は??

『基本的にはそういうことだと思いますが、それ以外の金融政策ということもあり得るとは思います。』

具体的にはなんでしょうか?

『あらゆる手段に対してオープンに、選択肢として排除する必要はないと思いますけども、量的・質的金融緩和を持続できるという判断の中では、今申し上げたような中での調整がまず考えられることではないかと思います。』

ということで結局無責任にも程がある説明だったりしますし、まあそれ以前の問題として任期がもうそんなにないので後は野となれ山となれ的な感じが漂ってきて大変に香ばしいと思うのでありましたとさ。

#以上日曜の夜に記述

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2015/11/27

○白井さんの金懇挨拶は珍しく普通の量である

でまあ白井さん祭りとなっていましたな。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151125a1.pdf
わが国経済・物価情勢と金融政策:物価の基調と予想物価上昇率
──島根県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151121a1.pdf
多様化するグローバル経済における金融政策
〜日米およびアジア・太平洋地域の現状〜
米国サンフランシスコ連邦準備銀行主催「アジア経済政策カンファレンス」パネルディスカッションにおける発言要旨の邦訳
(11月20日、於サンフランシスコ)

金懇後の会見
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1511d.pdf

という感じで投下されていまして、先日SFでの講演については

『こうした上方バイアスが存在する下では、日本銀行が掲げる物価安定目標 2%に向けた物価上昇は、家計には2%を上回る物価上昇と実感され、受け入れがたいと感じられる可能性があります。』

というお前は今更何を言っているんだという発言をネタにしたのですが、本日はこっちの前に金懇と会見の方をネタに、というか会見がオモロイのだが。


・今回の金懇挨拶の評価すべき点

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151125a1.pdf

ということでいつもケチョンケチョンに言っているお前が何を言うと言われそうですが、別にアタクシはケチョンケチョンに言っている訳ではなくて一応ツッコミを入れているだけなんですけどね(満面の微笑)。

でまあ今回の白井さんの金懇挨拶ですが、通常の講演とかだと無暗矢鱈と長い(しかも単に冗長)のですけれども、今回は本文9ページと、前回6月の金懇挨拶が本文12ページあったので何と25%も削減されていて誠に結構なのですが、まあ元々その程度の分量で話が出来るのをやたら長くしていたというのが実際の所なので任期最後に来てやっと普通に近づいたかと感慨がわいてくるというものです。

あとですね、今回は「物価だけ上がれば良いというものではない」とか物価安定目標達成までの期間を長めに見るべきとか、言ってることが置物リフレ理論から一線を画しまくってどちらかと言えば野党審議委員の皆様に近くなってるのも良いポイントだとは思うのですが、甚だ残念なのはこの講演内容と実際の金融政策運営における行動が全然一致していない上に、QQE始めて2年半経過した所でやっとこの有様でお前は今まで何を言っていたんだと小一時間問い詰めたい辺りが惜しいとしか申し上げようが無い所ですな。

と評価とか言いながら悪態になっている気がしますが講演について。


・物価見通しの説明が何ともアレ

日銀の見通しと自分の見通しを並べて説明するのは毎度の事で、それはそれで別に悪い事でもなんでもないのですが、一々そこに下線を引くのも毎度の仕様ですなあと思いますがそれはさておきまして、物価に関する部分の説明辺りから拝読。

『私自身の物価見通しですが、最初に全体像をお話ししますと、物価の上昇メカニズムは中心的な見通しと同じですが、政策委員見通し中央値対比で慎重な見方を維持しています。また、2017 年度までの期間を通じて幾分下方修正しています。コア CPI 伸び率が 2%程度に近づく時期は、これまでの「2016 年度末」から、「2016 年度末から 2017 年度初め頃」へと1四半期ほど後ずれさせています。以下、少し詳しくご説明します。』

・・・・・・・・・・・えーっとすいません、2016年度後半頃に達成という『2%程度に達する時期は、(略)2016年度後半頃になると予想される。そ後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』というのが展望レポートの表現なのですが、だったら何で展望レポートの表現を了承しているのかがよくわかりませんが、ということでそれは後で本人の説明があります。


『2015 年度の物価見通しについては、0%程度とみています。7月時点から幾分下方修正した理由は原油価格の下落にありますが、4〜6月期の需給ギャップの悪化を踏まえて、その改善の遅れも織り込んでいます。2016 年度の物価見通しについては、1%強とこれまでよりもやや慎重にみています。これは@エネルギー価格下落の影響が残ること、A需給ギャップがプラスに転じる時期が1四半期ほど遅れること、B「予想物価上昇率」が上昇し始める時期も物価上昇が遅れることで後ずれする点を織り込んだためです。その後、物価上昇率の上昇ペースは高まり、「駆け込み需要が最も強まる 2017 年1〜3月期」から「消費税率引き上げに合わせた価格改定が起きやすい4〜6月期」にかけて、1.7〜1.8%程度に達する可能性が高く、すなわち「2%程度に近づく」とみています。』

途中の説明はどうでも良いのですが、「1.7〜1.8は2%程度」と言っているのが味わいが有る訳で、もともと2%という数値に無茶苦茶拘る姿勢を見せているのが今の黒田執行部な訳でして、どさくさに紛れてしらっと2%の数値そのものにリジッドな意味を持たせないような話をしているのが味わいがあるというものです。

いやね、フレキシブルターゲットとかの話を考えたら別にリジッドに2%という話をする必要が無いので、これはこれで言ってる事自体は変じゃないのですが、だったらその趣旨で反対意見を明確に示すとか、提案の形を出すとかして頂きたい訳でして、「出来るだけ早期に」どころか「2%」の方まで定義を勝手に曖昧化して自分だけで話すの止めてもらえませんかと思うのですけどねえ。

『2017 年度全体としては、駆け込み需要の反動と実質所得の下落の影響等によって物価上昇率は幾分低下するとみており、1%台半ばを少し上回る程度と、7月時点から少し下方修正しています。2%を安定的に持続する時期については、消費税率引き上げの影響や 2020 年オリンピックに向けた投資規模について不確実性が高いほか、予想物価上昇率の上昇には時間が掛かるとみられることから、もう少し長いスパンで判断していく必要があるように思います。』

ということでこれも会見で突っ込まれていましたが、2%達成時期に関して「もう少し長いスパンで判断していく必要がある」ってお前は何を言ってるんだという事でありまして、2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成という今の建付けに対していきなり沈没船から逃げ出す攻撃をかましてくるとか何なんですかというか、だったら木内さんの「中長期的に目指す」に賛成しろよと思う訳で、この人は何を考えて現執行部の提案する政策の建付けに賛成しているのかさっぱり意味がわかりません。

いやまあ現執行部の言ってる建付けの方が無茶だからこういう見通しの元で政策を考える方が妥当だとは思うのですが、だったらそれにあった政策手段というのを考えていただかないと、白井さんの考えているようなタイムスパンまで今の政策手段が持たないんですけどねえと思うし、大体からして根本思想が違うのになんで賛成するんだよ・・・・・・・・・・・・


ちょっと飛ばして『(3)2%程度の達成時期の表現について 』という所から。

『今回の展望レポートでは、2%程度の達成時期の表現を、4月時点の「2016年度前半頃」から「2016年度後半頃」へと2四半期ほど後ずれさせています。この点、私は4月時点の表現に対して反対し、「2016年度を中心とする期間」とする代替案を提出しました。しかし、今回は、「2016年度後半頃」とする表現を支持しましたので、その経緯をご説明いたします。 』

意味が分からないので教えてください。

『今回、政策委員見通し中央値が大きく下方修正され、2016年度前半の2%程度の実現可能性は低いことから、表現の修正は自然なことです。ただし、その表現については、物価見通しの下振れリスクが大きいことから、幅を持たせて、例えば「2016年度後半から2017年度前半にかけて」といった表現が適しているようにも思います。』

だったら何故そう提案しないの?

『しかしながら、「2016年度後半頃」との表現は、結果として、4月時点の私の代替案が意図した後半の時期に該当しています。』

私言いましたよね攻撃キター!!

『また、何よりも、私の現時点の見通しにかなり近いものとなっており、「2%程度」を柔軟に解釈すればほぼ整合的な表現となっています。以上の2点が、今回賛成した理由です。 』

えーっとすいません2%程度ってのを柔軟に解釈したら「早期達成へのコミットメント」に対する信認に問題が出るのではないでしょうか・・・・・・・・・・・・

ということで結局訳が分からんのですが、要するに後から私言いましたよね攻撃もできるし、かと言って一々反対するのも嫌だからどっちに転んでも良いように両建てをしたということですねわかります。


・段々面倒になってきたので端折りますよ

『4.金融政策運営について 』の所ですがこれまたクソ長いのですが言ってるポイントになりそうなのは少々なのでそちらを鑑賞。

『なお、重要なのは、2%物価安定目標は、単に物価さえ上がればよいというものではなく、持続的な賃金の上昇と家計支出の拡大を伴うことです。この点、企業と家計による、生産・所得・支出の前向きな循環メカニズムが維持されているかが重要ですが、それを判断するうえでのポイントを5点ご説明します。 』

ということで、物価が上昇してインフレ期待が上がればすべて解決という置物リフレ理論はこちらでも否定されていますな。

『第一に、企業の業況判断と収益状況が昨年対比で良好です。』

以下説明が続くのですがめんどいので割愛。

『第二に、足もとではエネルギーを除く幅広い消費項目で物価が上昇しており、デフレに逆戻りするリスクは低いと判断されます。』

ほほうという所ですな。この前の議事要旨でもこの手の論議が出ていましたけれども。

『第三に、企業の販売価格設定行動にも前向きの変化が生じています。』

ってこのあたりの話って思いっきり先日ネタにした10月30日議事要旨と被りますね。

『第四に、予想物価上昇率については一部指標で下落がみられますが、現時点では今後の動向を見守るのがよいと考えています。』

これは意味わからんのだが執行部がそうだからそうなんでしょ。

『これに関連して、第五に、家計の予想物価上昇率は、常に企業よりも高く、家計は実際には緩やかなデフレやごくわずかなインフレ局面でも常に物価が上昇していると認識し、また上昇していくと予想する傾向があるようです(図表5)。』

出たよこの話ということで、だったら最初から円安に振って物価をまず上げれば期待が向上という理屈が変だったという話だし、今景気が何となく持っているのって実はヘッドラインのCPIが上がっていないからという事にならんかねとは思うのですがねえ。


とまあそんな感じで、毎度の話と執行部の話もあるのですが、柔軟に解釈だのタイムスパンの話だの、物価だけ上げれば良い訳ではないだの、野党審議委員チックな説明も入っているのが単なる両建てなのか、沈没船からの脱出なのか良く分かりませんが、まあそんな金懇挨拶ですなあということで。


○会見が無茶苦茶面白いのだが量が多すぎて全部紹介できない(ので週末に追加更新する)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1511d.pdf

・見どころは質問の素晴らしいまでの連携プレーとグダグダの回答

今回の会見ですけれども上記金懇挨拶にありますように、白井さんの説明が野党審議委員成分と執行部の成分とが混じっている内容になっているので、そもそもそこを整合性取って説明するというのに無理がありまして、会見では見事にそこを突かれた感じになっていて質問に対する答えが超グダグダになっているのと、そこをゴリゴリと突っ込む記者の皆さんの連携プレーが見事としか申し上げようがないです。

まあ記者の皆様におかれましては総裁会見で同じくらいの連携ツッコミをしていただきたいと切に思いますので、今回の金懇会見に出た記者さんだけで総裁会見やったら如何でしょうかねえ(ニヤニヤ)。

ということで実質最初の質問(最初は本日の所感についてなので)になりますが・・・・・・・・・・・・・

『(問) 物価目標 2%への道筋について、先日サンフランシスコで討論会に参加されたときに、そこに近づいていくに従って、家計の抵抗感みたいなものも出てくるからゆっくり進めていくべきではないか、日本銀行もそういう緩やかな達成を目指しているという理解を得ていくべきだということをお話されまして、今回の挨拶要旨にもそのエッセンスが入っていると思います。さらに今回の挨拶要旨の中で、2%の物価目標で、「2%程度」という言葉を意識的に使われているのかと思います。これまでおっしゃってきた「2 年で 2%」、何が何でも達成するという日本銀行の姿勢が変化しつつあるということなのか、あるいは変化させた方が良いと委員自身がお考えなのでしょうか。 』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) 私は 2013 年の 4 月に量的・質的金融緩和を始めたときから、できるだけ早く 2%の物価安定目標を実現したいという気持ちを持っておりまして、今もその気持ちは変わっておりません。その一方で、2%の物価安定目標というのは、今まで長い間、マイルドなデフレが続いてきましたので、家計や企業が調整していくのに負担があるかもしれませんので、そうした負担も配慮しながら、大きな負担とならないように、持続可能な成長と賃金上昇を伴いながら、物価目標を実現していくことが大事だということを当初から申しております。』

それは白川ドクトリンなんですけれども2013年2月に唐突に追加緩和提案して真っ先に白川ドクトリンという沈没船から逃げたお方が今更何を仰っているのでしょうか。

『ですので、2013 年の初めから、もう少し時間がかかるということは申し上げてきました。その考えは今も変わっておりません。できるだけ早くというのは、これはどこの中央銀行も同じ思いだと思います。』

早くやりたいと思っているが出来るかどうかは知らんっていうのは強力なコミットメントにはならないと思います!!!

以下延々と見苦しい説明が続く。

『もちろんそうしたいと思いますが、同時に、家計はどちらかというと、米国や欧州よりも、公式のデータが示す以上に物価が高いと感じてしまう傾向が日本の特徴です。その背景には、長い間、名目賃金がずっと伸び悩んできたということがあると思います。つまり、物価が高く感じてしまう、あるいは物価が高くなると予想してしまう背景には、賃金があまり伸びていかないという状況があったと思います。今それが少しずつ変わりつつあると思います。まず名目賃金は、去年から上昇していますし、実質賃金に関しては今年の 7 月からプラスに転じていますし、少しずつ家計も、賃金の上昇を享受している方もいて、それは一部の業種では消費の拡大ということを伴っておりますので、徐々にプラスの、前向きの状況がでてきていると思います。そうした状況を金融政策として支えていくのが重要だと思っています。スピード感を持っていますけれども、家計が物価が高いと感じること、それがあるからこそ企業も慎重になりますので、企業も少しずつ物価を上げる時に、より質の高い財・サービスを提供するという努力をしています。そういう前向きな動きが出てきましたので、そういった動きを支えていきたいですし、最終的には 2%の物価安定目標を実現したいと思っています。』

ワロタ。

『「程度」と言っているのは、ピンポイントというのは普通あまり考えにくいので、2%程度と言い換えているだけで、2%の物価安定目標を実現したいという気持ちには変わりはありません。』

柔軟に解釈とか1.7-1.8%は2%とか言っているのと全然整合性が取れない・・・・・・・・・

『(問) 今の点について私もお聞きしたいのですが、』

連係プレーキタコレ!!!!!

『本日公表された 10 月 30日の決定会合の議事要旨をみると、2%の達成時期が後ずれすることと、2%の物価目標を 2 年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するというコミットメントとの関係について、議論が行われたようです。』

ですな。

『その中で 2 年にこだわるとおっしゃっている方が複数いらっしゃって、その後の黒田総裁の会見でも、2 年を念頭にという考えは変わっていないということをおっしゃいました。』

そうそう。

『この議事要旨によると、そういった考えに対して反対されている方が複数いらっしゃいました。ただ、この複数の方というのは、展望レポートにも反対をした佐藤委員と木内委員だと思われます。見通し期間中には物価上昇率は2%程度に達しないという認識を示した複数の委員となっていますので、これは佐藤委員と木内委員に間違いないと思います。つまり、この中には白井委員は入っていないわけです。』

(;∀;)イイシテキダナー

『サンフランシスコで行われた講演でも、2%に対して家計が受け入れ難いと感じられる可能性もあるというふうにおっしゃっています。また 1 年前に白井委員が広島で行った講演でも、2 年よりも長い期間をかける経路が望ましいというようにもおっしゃっています。これらは黒田総裁を始め執行部の 2 年にこだわる考え方とは真っ向から違っているのではないかと思うのですが、この議事要旨によると、全く反論されていらっしゃらない、議論もされていない。つまり、これは 2 年にこだわる黒田総裁の考えを追認しているというふうにしか受け取れないのですが、その点はどうお考えでしょうか。』

コウモリやっているとこうやってツッコミのネタをどんどん提供する。

『(答) まず、私の考えは、一部繰り返しになりますが、2013 年に量的・質的金融緩和を始めた時から、企業、家計に無理なく 2%程度を達成するには 2 年以上かかるということで、2 年程度を、幅を持って解釈すべきだということを2013 年から申し上げています。現在は 1.7〜1.8%程度、2%程度に近づくのが2016 年度の末から 2017 年度の初めになるとの見通しを立てています。』

だったら何でそういう議論や提案をしない。

『その上で、2 年程度にコミットする方たちがいるということについて、私が受けている理解を申し上げますと、確かに既に開始した時から 2 年が過ぎていますので、まだ「2 年程度」にこだわることに違和感がある方は対外的にもいらっしゃると思います。』

意味不明。

『海外の中央銀行はどうしているかと言うと、一般的には、例えば2%の目標を掲げている場合にできるだけ早期にという気持ちはあるのですが、2 年程度と明記している中央銀行は今はあまり多くはないです。原油価格とかコモディティ価格とか、為替の変動が大きいものですから、不確実性が高いので、どちらかというと見通しを示すという形が多いと思います。その上でなぜ日本銀行が 2 年程度ということにこだわっているかについて私なりに理解したところを申し上げますと、結局「できるだけ早く」という日本語の持つ意味と、英語で言う“at earliest possible time” という表現のニュアンスが、同じではないということなのです。英語では、“at earliest possible time”というのはかなり迅速にという気持ちがあって文字通りそうなのですけれども、日本語で「できるだけ早く」というと、それは 10 年ということでも「できるだけ早く」ということにもなると思っています。』

>10 年ということでも「できるだけ早く」ということにもなると思っています
>10 年ということでも「できるだけ早く」ということにもなると思っています
>10 年ということでも「できるだけ早く」ということにもなると思っています

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

「2年程度を念頭にできるだけ早期」が10年でも良いとな!!!!!!

つーかそもそも短期勝負での政策手段を投下しているのに10年とか最早何を言っているのか医師の診察をお勧めするレベル。

『ですから、日本語の持っている「できるだけ早く」が英語と同じ意味ではないために、執行部を中心に、確かに 2013 年 4 月に始めてから時間が掛っていますけれども、それは色々な理由──原油価格の急落とか、消費税の予想以上の反動とか、新興諸国の減速とか──がありましたので、当初に思っていた、「できるだけ早く」という気持ちを伝えたいということで、その 2 年程度という表現を外さなかったと理解しています。』

英語の表現のせいにしていますがそもそも国内の期待を転換するための政策なので国内向け文言の方が重要ですし、大体からして英文は「ご参考」であって、声明文その他の公式文書の正本は日本語なのですけど何で英語のせいにできるのかもう意味がわかりません。

『ただ、英語では、なかなかそこをわかって頂くのが難しい点と、もうひとつは、サンフランシスコ連銀での私の講演要旨に書きましたように、物価が上がっていくというのは、賃金の上昇が一緒に伴うと良いのですけれども、必ずしも同時進行にならない時に、あまり「早く、早く」と言ってしまうと、家計の方は、自分の実質所得が目減りしたなと思われてしまうところがあるので、日本銀行の対外説明は、より丁寧にしていく必要があると思います。これが、私が当初から家計、企業に向けて、理解して頂けるように丁寧な説明・対外広報戦略を工夫する必要があるのではないかと申し上げてきた背景です。』

まず白井大先生の説明が理解可能なように工夫する必要があるのではないかと申し上げたい。

『先程指摘した執行部の思いが分かるので、個人的には、特にそこに強く反対はしておりません。』

思いが分かるから自分の意見が違っても反対しないって「あれは個人的には反対だったが」って後から言いだすようなもんですね!!!!!!!!!!!!!!!!

『また、私自身は 2016 年度末から 2017 年度初めに 2%程度に近づくと申していますし、2%程度を柔軟に解釈すれば、執行部を中心とする方々の 2016 年度後半頃に 2 年程度を達成していると見込まれるというのと大きく違いはないということもあり、賛同しています。』

もはや訳が分かりません。

・・・・・・・・とまあここまでで(冒頭部分を除いて計算した場合)8ページのうちの3ページ目まで来ているのですが、以下も見事な連携によるゴリゴリツッコミがあるのですが、時間と量の関係上週末にこの続きを投下しておきます(なお一番早くても土曜の夕方だったりするのであまり期待しないで月曜にまとめてご覧ください、あとMPM議事要旨ネタの最後の部分もパスしていましたので、汗)。

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2015/11/25

○いつの間にやら白井さんの講演が打ち込まれていたがこれまたアレなテイストな件(ただし今日はハイライトのみ)

まーた海外出張かよ
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151121a1.pdf
多様化するグローバル経済における金融政策〜日米およびアジア・太平洋地域の現状〜
米国サンフランシスコ連邦準備銀行主催「アジア経済政策カンファレンス」パネルディスカッションにおける発言要旨の邦訳
(11月20日、於サンフランシスコ)

諸般の事情(単に検算で時間を食っただけですが)によって本日はこのネタのハイライト部分だけにして続きは明日というもうネタの消化が追い付かないという嬉しい悲鳴状態。


・今更お前は何を言っているんだという話だがある意味でのフラグでもある話

『家計によるインフレ予想の上方バイアスと収入との関係』という小見出しの所で3〜4ページですけどね。

『第三の特徴として、日本と米国の家計の短・長期予想インフレ率(中央値)は、2〜3%の水準を中心に振幅している点を指摘します(図表 3)。日本銀行の「生活意識アンケート調査」とミシガン大学の「消費者調査」によれば、短期(日本は1 年後、米国は今後 1 年間)について、ここ 2 年ほどは双方ともに 3%程度と同じ水準で安定しています。長期(日本は 5 年後、米国は 5−10 年後)については、日本は 2%程度、米国は 3%程度で長く安定しています。とくに日本では、この間、緩やかなデフレが続いた局面がありましたが、その時でも家計がプラスのインフレを予想していたという事実はあまり知られていません。同様のことは日本の家計の「現在の物価感」(昨年対比の実感)にも当てはまり、緩やかなデフレ局面でもマイナスの領域に陥ったことはありませんでした(図表 4)。』

「あまり知られていません」だと?????????????????

『もうひとつ重要な傾向は、両国とも家計の予想インフレ率が実際のインフレ率を上回ることが多く、いわゆる「インフレ予想の上方バイアス」の可能性があることです。』

んなもん可能性もへったくれも前から指摘されてたんチャウの?

『ここには家計が食品・日用品やガソリン等の身近な物・サービスの値段をもとに回答する傾向が影響していると思われます。しかし、バイアスの大きさには違いがあり、一般的に、日本が米国より大きくなっています。』

『ここで、長期予想インフレ率と総合物価指数の伸び率の平均値の差がバイアスを反映すると仮定しますと、2014 年 10 月の原油価格急落以前の約 10 年間は、日本では平均約 2%程度、米国では平均約 1%程度でした。すなわち、日本の家計の長期予想インフレ率が先に見たとおり一見 2%程度で安定しているのは、単に上方バイアスの結果である可能性があります。』

はて??

『こうした上方バイアスが存在する下では、日本銀行が掲げる物価安定目標 2%に向けた物価上昇は、家計には2%を上回る物価上昇と実感され、受け入れがたいと感じられる可能性があります。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

・・・・・・お前は今更何を言ってるんだという話で、インフレ期待をシフトアップさせてレジームチェンジとか言いながらQQEを実施してもう2年半も経過しているのに何を言い出すんだこの人はとしか申し上げようがない訳ですし、大体からして白井大先生様が賛成した昨年10月の追加緩和の理由は何でしたっけと小一時間問い詰めたいとしか申し上げようがありません。


でもって一応フォローする為に続きを引用しますとですな、

『日本の家計の上方バイアスが大きい要因として、収入見通しの違いが影響していると考えられます。例えば、両国で比較可能な「1 年後の予想収入 D.I.」(上昇回答割合と下落回答割合の差)を算出しますと、日本の D.I.は常にマイナスの領域にあり、直近でもマイナス 30%前後となっています。すなわち、日本の家計は常に将来の収入の低下を予想しており、予算のタイト化を意識した強い生活防衛意識の結果として、将来のインフレ予想の上方バイアスが大きくなっている可能性があります。』

つまり所得拡大期待が重要なので成長期待の強化が必要でそれにはポテンシャルグロースを上げないといけないってまんま白川ドクトリンでして、とにかく期待を上げて物価さえ上げてしまえば好循環が回りだすという置物リフレドクトリンの話じゃないですよね。

とフォローしてみたものの・・・・・・・・・・

『その場合、家計の物価上昇への抵抗感を除いていくうえでは、日本銀行が目指しているのは賃金の上昇と消費の持続的な拡大を伴う緩やかな物価上昇であるとの理解が広がることが重要になります。


2年半もやっていて今更何を言ってるんだと小一時間ということで、あまりフォローが出来ない所が何とも残念というか、政策責任者の一翼を担っているのになんちゅう傍観者発言と呆れてしまうのでございました。


・・・・・・・でですな、まあそういうのは毎度の白井クオリティなので、またやってやがるという話ではあるのですけれども、何せ白井大先生というのは2013年2月というタイミングで突如追加緩和を提案して間もなくやってくる執行部に媚を売るというプレイをやって市場とのコミュニケーションをややこしくさせるという凄まじい前科がありまして、まあ周囲の流れを読む、と言えば格好いいですけれども、要するに沈没船からいち早く逃げ出す鼠的な能力が卓越していて(ただそれが露骨に出るのが甚だ遺憾)まあそういう方だからこそ今の地位におられるというのもあるのでしょうが、そういうクオリティの方がこうやっていきなり「2%物価上昇が家計に受入れられていない可能性があるので今後の改善が必要」とか言い出すのが何とも味わいがあります。

つまりですな、白井大先生様が置物リフレ理論およびそれに乗っかっている現在の黒田ドクトリンに沈没の香りを察知して早速逃げ出す為の準備万端という話をしている(最終的には毎度の「私が言った通り」攻撃をしてくるのが見えますなあ)のでしょうなあ、と考えると中々示唆に富んでいると思うのですけれどもどうですかね。

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2015/09/10

○白井審議委員の講演は相変わらず不毛にツッコミどころが転がっている件について

まーた海外出張してるのか。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150909a1.pdf
日本銀行と欧州中央銀行(ECB)の非伝統的金融政策
ブリューゲル年次総会でのパネルディスカッション「金融政策とセントラルバンキング:世界の見通し」における発言要旨の邦訳

去年もこれに出てたような気がせんでもない。まあ金融政策運営という点でのインプリケーションは相変わらず無い上に、説明がお前それおかしいだろというのが多々ありまして、頼むから海外でズレた話をドヤ顔でして回らないで欲しいわと思う次第ですが、ツッコミ素材として見ればまあ使えないことも無いので廃物利用ということで少々ネタに。

でまあお題の通りでお話は非伝統的政策の比較、という話なのですが、そもそも論として非伝統的政策の導入から拡大に至る過程っていうのは大体その場で何か捻りださないといけないというような感じで投下されていったものの合計な訳でありまして、最初に何もない所からスクラッチで作ったものと違うので、つぎはぎ感が結構あるというのも特徴なのですけど、どうもその辺を斟酌しないで説明しているから話がズレているのと、そもそもの説明でズレているのがありまして何だかなあとしか申し上げようがないです。

でまあそういう事で説明がズレているものなので政策インプリケーション何かあるのかというと多分あまり無いのですが、以下適当にネタにしてみるの巻なのです。


・相変わらず「日本のフォワードガイダンス」の話をしているのは何とかならんのか

最初が『2.日本銀行と ECB の非伝統的金融政策:共通の特徴 』という小見出し。

『日本銀行と ECB が採用する非伝統的な金融緩和手段には、幾つかの共通点がみられます。それらは、国債を中心とする大規模な資産買入れ、将来の金融緩和方針を示すフォーワードガイダンス、条件付きの長期貸出制度の三点です(図表1、参考図表)。』

でまあガイダンス文言の話があるのですが・・・・・・・・・・・・・

『第二の共通点は、日本銀行も ECB も現行の金融緩和についての将来の方向性を示す目的でフォーワードガイダンスを採用しており、シグナリング効果が期待されています。世界的には、低い政策金利を長く継続する見通しを表明することで短中期イールドカーブに下押し圧力をかけ、追加の金融緩和手段とする事例が幾つかみられます。また、フォーワードガイダンスは資産買入れに関する将来の方針を示す場合にも用いられ、(買入れ資産の残存期間にも依存しますが)長期イールドカーブを中心に下押し圧力をかけることになります。』

あちゃー。

『日本銀行の場合、QQE 導入の際に、金融市場調節方針の対象を従来の政策金利からマネタリーベースに変更していますので、FRB のような政策金利のフォーワードガイダンスはありません。従って、QQE(マネタリーベースとそれを達成するための資産買入れの規模・種類のパッケージ)の枠組みに関する将来の方針に対して適用しており、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する、との成果(アウトカム)ベース表現がこれに相当します。また、経済・物価の上下リスク要因を点検するとの但し書きも付随していますので、リスク評価上問題がない限りにおいて QQE を継続していく状況を示したと言えます。』

えーっとすいません、「2年程度を念頭に出来るだけ早期に」物価安定目標の達成を図るという強力なコミットメントというのがQQEのもう一つの柱(いつのまにか柱にあった2年程度が何処かに逝ってしまいましたが)なのですが・・・・・・・・・・・・・

『既に 2010 年 10 月からの「包括的金融緩和」によって短中期イールドカーブは低い水準にあったことから、このフォーワードガイダンスによってより長めのイールドカーブに下押し圧力をかけることが想定されています1。同時に、2%目標の安定的な持続とは、予想インフレ率を 2%程度で安定させることと同義なので、予想インフレ率の引き上げ効果も想定されています。』

という説明になっているのですが、2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成という(全然守られていない)コミットメントがある以上、QQE政策の継続期間というのはコミットメント通りに逝くのであれば、本来的に言えば2年程度になる筈であって、そうなるとインフレ期待が上昇したらフィッシャー効果を持ち出すまでもなく長期の金利は上昇圧力が掛かるんですけど。

でもってそのインフレ期待の高まりによって上昇圧力が掛かる長期金利に対して大規模な長期国債買入によって市場の国債需給を締めて、その結果として金利低下圧力をかける、というのがQQEのメカニズムな訳でして、フォワードガイダンスが効いて長期金利が下がるのはそもそも論として日銀の物価目標達成へのコミットメントが信用されていないことを意味するんですが、いつまで経ってもこのお方はフォワードガイダンスと言い続けますなあ。ちゃんと勉強してるのかね。


『一方、ECB では、フォーワードガイダンスとして、2013 年 7 月に政策金利に対して適用しており、ECB の主要諸政策金利について現状あるいはそれより低い水準に、長期にわたり(extended period of time)留まることを予想している、と表明しています。2014 年 9 月の金利引き下げの際に、先行きの金利引き下げ余地はないと指摘していることから、現行の低金利水準(例えば、MRO は 0.05%)の維持期間に対する方針として位置付けられます。』

『加えて、2015 年 3 月には、月約 600 億ユーロ相当の買入れの将来の方針についてフォーワードガイダンスを適用しており、少なくとも 2016 年 9 月まで実施することが意図されており、いずれにせよ中期的に2%未満かつ2%近傍を達成する目的と整合的な物価上昇率の経路へ持続的な調整がみられるまで継続される、と言明しています。』

こちらはまあある意味フォワードガイダンスではあるのですが、別にコミットメントをしている訳ではなく、単に現状での経済見通しに整合的な金利政策(あるいはAPP政策)の実施期間の予想を示しているだけの話で、情勢の変化によって反故にされる可能性もありますがなという話。

でまあこれが一応ガイダンスらしく機能するのは、そもそも市場参加者の経済物価見通しがECBの出す見通しに対して少なくとも市場の方が見通しが強い訳ではない、という事に加え、ECBが物価目標の達成時期に対するタイムホライズンを長めにとっている事がある訳で、短期での達成をコミットしている(達成できているかどうかの話は別ですが)日銀と「共通の特徴」とか言われてもナンジャソラとしか思えないでしょうし、そもそもそんな説明をすると「日銀は短期での達成を諦めたのか」という誤認を招きかねないと思うのですけどねえ。


・ECBのマイナス金利の説明も何か微妙である

『3.日本銀行と ECB の非伝統的金融政策の相違点 』という所ですが。

『ECB がマイナスの預金ファシリティ金利を採用した背景』から。

『ECB では 2014 年 6 月にマイナス 0.1%の預金ファシリティ金利を導入し、同年9 月にマイナス 0.2%へ引き下げています。マイナス金利を今日まで維持し続けている背景には、主に 3 つ要因が影響していると考えられます。』

ということで以下ドヤ顔で説明しているのですが、こんなの元々APPやりたくないからマイナス金利を入れてみたものの、イマイチ効かないし、その間にドラギ総裁がバランスシートとか言い出すもんだからAPPを入れないといけない破目になって、そのAPP導入時にマイナス金利解消すればよかったのに、それを引締めと言われてユーロ高に振れるのが怖かったからマイナス金利を解消しそこなって今に至る、という単にそれだけの流れなんですけどね。

『一つ目は、ユーロ圏国債等の発行残高に占める非居住者の保有割合は 5 割を超えており、しかも短期志向の投資家から長期保有目的の機関投資家や外国の中央銀行まで様々です。このため、マイナス金利にあまり影響を受けずにキャピタルゲイン目的で ECB に売却したり、域内の社債・株式に乗り換える投資家も相応に見込まれることです。』

??????

『二つ目の要因は、企業・家計による潜在的資金需要がある限り、ユーロ圏の金融機関がマイナス金利を回避しようと貸出を促進したり、貸出金利を引き上げても貸出を増やせる可能性があります。その結果、信用創造が進み、金融機関がマイナス預金金利のコストを上回る収益を挙げられる可能性があります。』

ますます訳が分からんのだが、貸出を促進しても超過準備は減らないのであって、マイナス金利を回避しようとするのなら超過準備を減らさないと意味がないという時点で説明がおかしいし、潜在的な資金需要があれば貸出金利を引き上げても貸出を増やせる可能性があるとかいうなら、そもそもそういう問題が生じないようにマイナス金利を回避した方が更にお得じゃないのと思いますし、金利を上げたら需要が減るだろとしか申し上げようがないので何を言ってるのかさっぱり分からん。

『最後の要因としては、ユーロ圏では域内のクロスボーダー銀行間市場が世界的な金融危機以降分断された状態にあり、マイナス金利は資金余剰の金融機関の銀行間市場での行動にあまり影響を与えそうにないことが考えられます。』

は?????


・日銀のプラス付利金利の説明を見るとさっきの説明が変なのが更に分かるというお話

次が『日本銀行がプラスの付利金利を維持してきた背景 』である。

『日本銀行では、プラスの付利金利(0.1%)を 2008 年から維持しています。その大きな背景として、そもそも QQE では、短期金利の引き下げ余地がなくなる中で、長期名目金利の引き下げと予想インフレ率の引き上げによって長期ゾーンの実質金利の低下を促すことで、短期金利の限界的な引き下げよりも大きな緩和効果を創出するストラテジーを採ったことがあります。』

へいへい。

『そのうえで、付利金利を維持した積極的な理由としては、まず付利金利がさらに低下すると、資産買入れの目標額を円滑に実施するのが難しくなる可能性が考えられたことです。9 割以上の国債残高を居住者が保有しており、中でも長期保有目的の金融機関も多く、プラスの付利金利を維持することで売却インセンティブが高まる面もあると思います。』

わけわからん。プラスの付利金利は超過準備の保有インセンティブによってマネタリーベース目標政策の実施を円滑化にするためではあっても、それがあるから売却インセンティブというのはさすがに説明が無利筋で、じゃあ付利金利上げたら売却インセンティブが更に高まるとでも言うのかと小一時間問い詰めたい。

『第二に、マイナスの付利金利を設定しても、金融機関がそれに合わせて顧客の預金金利を(既に 0%程度にある現状から)引き下げることが困難な場合、収益の低下を招いて金融仲介機能を損なうリスクがあります。或いは、金融機関が収益を維持しようと貸出金利を引き上げれば、資金需要が減って貸出が伸び悩む可能性もあるように思います。』

欧州が大丈夫で日本はダメという理由is何???

『なお、一部の欧州諸国では、預金ファシリティ金利だけでなく政策(貸出)金利もマイナス水準に設定している中央銀行がありますが、個人預金金利についてはプラスの水準を維持しながら、大口顧客や銀行間市場の預金金利でマイナス水準を設定し、企業向け貸出金利を引き上げる金融機関もあるようです。日本のように預貸比率が 7 割前後の下で貸出競争が激しい状況では、貸出金利の引き上げは難しく、収益の減少となり易い可能性があります。』

それ普通に欧州金融機関でも負担になっていますが、さっきの説明との整合性is何処??

『そして、第三の要因として、当座預金対象先と非対象先の間の裁定取引等を維持することで、銀行間市場の機能をある程度維持しておくことが重要だと考えられることです。また、一定程度の金融取引が維持されればレファレンス金利としての有用性も維持され、金融取引や金融政策判断でも役立ちます2。』

この「当座預金対象先と非対称先の間に差があって裁定取引が発生」っていうのは地雷説明の香りしかしないので止めた方が良いと思いますよ!!!!!!!!!!


・付利を下げてもインフレ期待に影響しないという謎説明

その次。

『より重要な点は、ECB が負の預金ファシリティ金利を導入した 2014 年後半においても、ユーロ圏の予想インフレ率の低下やディスインフレリスクが進行したことから、日本銀行が重視する予想インフレ率の押し上げ効果はあまり期待できないことが示唆されます。』

『以上より、付利金利の引き下げについては、その可能性を否定するものではありませんが、各国・地域の金融市場構造の違いも勘案して考える必要があるように思います。』

いやあの金融政策の波及する時間の話とかはどうなっているのという話なのだが、まあ付利下げの話を否定したい、という所だけはこの講演の中にある唯一の政策インプリケーションだと思うのだが、その説明が無理筋。


・ECBは信用緩和とな

『信用緩和の重要性の違い』という所なのですが・・・・・・・・・・

『もう一つの違いは、ECB の金融緩和政策では信用緩和の色彩が強いことです。』

え???

『最近のユーロ圏では、民間部門への貸出金利も低下しており、民間貸出残高もプラスに転じています。しかし、中小企業向けの厳格な貸出基準や高めの金利、資金のアベイラビリティが限定される等の状態が残るようです。そこで、TLTROによって金融機関の資金調達コストを引き下げて民間貸出を増やし、また ABSの買入れによって市場を活性化して中小企業を含む銀行ローンの証券化の促進を目指しているようです。ECB の政策では、金融仲介機能を完全に回復していない銀行システムに対する信用緩和の意味合いが常に意識されているようです。』

金融政策の効果に関してのECBの説明では確かに貸出関連の金利やアベイラビリティについての話をしているのですが、だから信用緩和を行っているという説明はちょっと・・・・・・・・・・・・


『他方、日本では、世界的な金融危機直後に CP や社債市場で機能が低下し、日本銀行が 2009 年に信用緩和政策としてこれらの資産を買入れるきっかけとなったことがあります。しかし、銀行危機が発生しなかったこともあって金融機関の健全性が概ね維持されており、中小企業にとっての資金アベイラビリティや借入金利は QQE 導入以前から緩和的な状態が続いています。また、現在では、信用緩和政策は以前ほど意識されていません。』

・・・・・・・・えーっとすいません、株式ETFなんぞを盛大に買っているのは日本だけなんですけれども、という所ですが、まあこの部分はETFの一段の拡大的な意識は白井さんの中ではあまり強くないという事を意味する可能性はあるなあと思います。


・インフレ期待云々の話は段々ツッコミ疲れてきたので概ね割愛しますが一か所だけツッコミ

その次が『4.日本とユーロ圏の予想インフレ率の動向 』ということでダラダラと説明が続くのですが、もうだんだんどうでもよくなってきたので一か所だけツッコミ。

『日本とユーロ圏にみられる共通の特徴として、世界的な金融危機直後の一時期を除いて、家計は足もとの物価が上昇したと常に実感していること、将来の物価も上昇していくと予想していることが窺えます(図表 9、10)。消費支出についても、将来の支出を減らすと予想する傾向が共通してみられます。以上より家計は、物価上昇による予算のタイト化を意識し、将来の消費を減らす見通しを立てているようです。』

>以上より家計は、物価上昇による予算のタイト化を意識し、将来の消費を減らす見通しを立てているようです
>以上より家計は、物価上昇による予算のタイト化を意識し、将来の消費を減らす見通しを立てているようです
>以上より家計は、物価上昇による予算のタイト化を意識し、将来の消費を減らす見通しを立てているようです

「立てているようです」じゃねーだろおいおいおい!!!という所でして、おまいら物価上昇目標を引き上げてインフレ目標も引き上げて、しかもそれを2年程度を念頭に出来るだけ早期に実施するって言ってるんだから、家計がその状況じゃ困るんだが、「ようです」で済ませてどうするんだと小一時間問い詰めたい。


#とまあそんな感じでいつものようにアレな講演ではありましたが、ツッコミ道の鍛錬には有用なテキストではあります

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2015/06/08

○遅くなりましたが白井審議委員会見である

ということで白井審議委員の会見ですが・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1506b.pdf

・英文テキストと日本文テキストが違っている件について

『(問) 本日の懇談会についてお聞きします。日本語の挨拶要旨では11ページに、金融政策運営について以下のような発言があります。「物価の基調が大きく弱まるような下振れリスクが顕在化する場合には、金融政策による対応を検討する余地があると思いますが、現時点ではそのような蓋然性は低いと、私は考えています」と。これが、同時に公表された英語版の方では、「金融政策による対応を検討する余地がある」という部分が、「I would not hesitate to consider some monetary policy actions」となっています。「not hesitate to consider」ということなので、検討することを躊躇しない、躊躇せず検討する、ということだと思います。』

テキスト出た途端にこれに気が付くとはどういう事やと思いますが、講演出た途端にニュース記事にしていたブルームバーグ社の某H記者のお名前しか浮かんで参りませんが、どれだけ粘着(褒め言葉)なのでしょうかオソロシス(褒め言葉)。

『この日本語の表現は、追加緩和に対してやや受け身な印象を、これを英語で言えばパッシブな印象を与えると思うのですが、英語の方の「not hesitate to consider」というのは、より能動的な印象、英語で言えばプロアクティブな印象を与える表現になっています。』

あたしゃドメドメ人間なので詳しいニュアンスの差というのは体感的には分からんのですが、英和辞典(ちなみに愛用はデイリーコンサイス)引き引き確認するとそういう感じではございます。

『日本の大学の入試で、この文章を日本語から英語に、あるいは英語から日本語に直せ、という問題が出たとしたら、これは不合格になるんじゃないのかと思います。白井先生が採点したら、もしかしたら合格になるのかもしれませんが、この金融政策運営の非常に重要なメッセージで、日本語と英語がこれほど大きく異なる背景についてちょっとお聞かせ頂けますでしょうか。』

いちいち悪態を入れて喧嘩を売るなんてイヤミ成分満々ですねえ誰ですかこんな質問してるのは(^^)。


白井さんのお答え。

『(答) 私は、これまで海外でも講演をたくさん行っていますが、私が常に重視しているのは、同じ意味・同じことを伝えるのですが、英語あるいは日本語の持っている言葉の流れを重視して、読み手にとって読みやすい書き方にするようにしています。』

ほほう。つまり「アタシが英文も日本文も作っているのよ!」という話をしておりますのと、「アタシの英文はちゃんと作り込んでいるのよ、そこらの翻訳マシンとは違うのよ!」という自慢をしているのですね。

『ですから、私の講演原稿は、これまでのものも見て頂ければお分かりのように、逐語訳はしておりません。』

ほうほう。

『その上で、今おっしゃった日本語の表現と英語の表現について、ご質問されている方は、日本語の方が受け身に取れるという印象をお持ちになったということですが、私はそのような違いがあるとは全く思っておりません。』

what?????

『ですので、もしそのような表現の違いというような誤解があるのであれば、この場をもって、全くそういう違いは一切ありませんということを明確にお伝え致します。』

誤解があるような表現だとしたら訂正しますではなく、「違いは一切ありません(キリッ)」と言われましても「では英文と日本文のどっちが正しいのか」という部分についてはスルーというのが白井クオリティ。


・・・・・・となりますと当たり前の如く続きの質問が飛びます。直後に同じ人と思われる質問が。

『(問) そうすると、要は、日本語の方が正しいのか、それとも英語の方が正しいのでしょうか。違いがないという割には、随分表現が違いますし、私だけではなく、市場の人たちも、これは明らかに意味が違うと言っております。』

「市場の人たちも、これは明らかに意味が違うと言っております」ってのを質問でぶつけたかったから会見の話が出る前にあちこち取材して記事にしてたんですねH記者段取り良さすぎです(^^)。

『そういう意味では、どちらがよりおっしゃりたいことに近いのかということを、英語でも結構ですし、日本語でも結構ですし、お伝え頂けますでしょうか。』

さて白井さんの答えですが・・・・・・・・・・・・

『(答) 私は違いがあるとは思っていません。』

・・・・・( ゚д゚)

『私は、必要があれば、何らかの金融政策対応は考え得るということを言っており、「しない」という否定は一切しておりません。そういうことが必要な時期には──そういう判断がなされるのであれば──、何らかの対応を考えるという点では全く違いがありません。ただ、現時点ではそのような蓋然性が低いと言っているところも、英語も日本語も全く同じです。』

ということで、結局追加緩和にやる気があるのか無いのか分からないですし、大体からしてこの人物価目標達成の時期が遅れるのに追加緩和やインフレ期待を引き上げるような措置(というのがあるのかは知らんけど置物理論だとMBがあれば上がるという話)を提案するだろと思うのですが、それはしないというこの有様。

まあ何ですな、そもそも2年で2%の目標を達成していないという現状において、その間に何らかの政策的インプリケーションのある提案なり反対意見なりを出しているならともかく、それを一切実施していない(白井さんの展望レポート反対提案はただの見通し時期だけ)挙句に2年2%が遅れているのを「アタシの言っていた通り」とか言い出すこの政策責任者の態度として無責任極まる筈なのだがどう見ても本人は自分が100%正しいとしか話をしないという白井さんの面目躍如なこの説明。

つまりですね、海外向けに話をするときは緩和積極派みたいな話をする(昨年10月の追加にも賛成していますし)方が海外筋のウケが良いから積極緩和派みたいにとれる表現をしておいて、一方で現在の執行部の動きを見れば追加緩和は当分やらないで済むならやらないという消極的な感じになっているので、そちらには日本語でヨイショしておき、どっちに転んでも「アタシが前に言った通り」となる、という事で、両建て予想しておいて当たった方だけ後から出してきて百発百中でござるというようなもんですが、出すときに「アピールしやすい使い分けをする」という辺りが更にこのタチの悪さを示しておりましてとても素敵です白井先生。


・何回読んでも何の答えをしているのかが分からん質疑応答

『(問) 2点お伺いいたします。1点目は午前の懇談会ですが、ご自身の物価の見通しについて、2016年度末に2%に近付くとご紹介されており、一方、先の展望リポートの議論では、2%の達成時期について、「2016年度を中心とする時期」とのご提案を白井委員はされていますけれども、やはり2016年度末に2%に近付くということであれば、2%の達成時期というのは2017年度になると思います。このご提案の内容と講演発言の整合性をどのように考えればよいのか教えて下さい。(後半割愛)』

ちなみに先日公表された4/30MPMの議事要旨によりますと白井さんの提案はこうなっていました。

『これに対し、白井委員からは、物価見通しについて、2%程度に達する時期の記述を「2016 年度前半頃」から「2016 年度を中心とする期間」に変更することを内容とする議案が提出され、採決に付された。』(4/30金融政策決定会合議事要旨から)

ということで、4月30日の提案と早速整合性のない見通しを示しているがどういう事やという質問ですな。

『(答) 私の見通しは、おっしゃったように2016年度の末に2%程度に近づいていくということで、2017年度にそれを少し下回る水準という見方です。』

何かこっそり下方修正してませんか????

『私は、総意として、どういう表現が適切なのかということで提案しました。その理由は、挨拶要旨にも書いてありますが、「2016年度の前半頃」とするよりは、「2016年度を中心とする時期」の方が、総意としても、表現がよりフィットしているのではないか、ということです。』

いやだからそれだったら2016年度の終盤に、とか2017年度に向けた時期に、とかになるだろと思う訳で、なんちゅうかこの人はなんの断りもなしに言っている事がコロコロ変わるという恐ろしい仕様になっているようですが、まあ良く考えたら置物一派の置物理論だって昔はマンデルフレミングで財政効かないからこそ金融政策とか言ってたのに、最近は超大規模金融緩和よりも3%如消費増税の方が効くという話になっているようですし、もしかしたら経済学というのはそういうものなのかも知れませんね(イヤミ)!!!

で、ここで話が終わればはあそうですかで終了なのですが、この先にああだこうだ無駄な説明が入っているのですな。

『それには、2つ理由があり、物価の下振れリスクが高いと日本銀行の基本的見解として書いているわけですから、下振れリスクが高いのに半年程度の範囲で実現するという見通しとは合わないのではないか。下振れリスクが高いのであれば、より大きなタイムスパンを持った方が妥当ではないかというのが1つ。』

?????????????????????

えーっとすいません下振れリスクとメインシナリオをごっちゃしてませんか??

『もう1つは、その非常に狭い半年程度の期間に2%程度が達成できるというような表現にしてしまうと、金融政策の柔軟性が削がれるのではないかと思いまして、総意として、より適切な表現は「2016年度を中心とする時期」ということで提案しました。』

あのーすいません、今のQQEは「期限を区切って2%物価目標を達成するという強いコミットメント」が看板の一つなのでありまして、それによってインフレ期待を2%にアンカーさせる(ちなみに日銀は「リアンカー」を使いたがるがそもそも過去において2%にアンカーされていた訳ではないので「リ」はねえだろと)というのが重要なファクターな訳で、全然違う話をしているのが分かります。

でね、更にこのお方がアレだと思うのは、「短い期間で達成させるためには追加緩和」ということで行われた昨年10月の追加緩和には賛成していることでして、これを森本さんや石田さんが主張するのなら話は分かるのですけれども、10月は10月で執行部提案に唯々諾々としたがっておきながらウケが良さそうな「柔軟な運営」という話を一方でするとか言行支離滅裂にも程があるのですが、まあさっきの英文と日本文の差分を見ればわかるように、言行支離滅裂ではあっても一本筋が通っているのは「とりあえず自分の評価が上がりそうな方向には都合の良い事を言って/行っておこう」という辺りなのではないかと推察せざるを得ないのが非常に残念に見えるところでありまする。

『なお、その表現の中で、私の見方ですが、今申し上げましたけれども、この見通し期間の間に2%の達成の可能性を完全に排除しているわけではないので、概ねこの表現の中に入ると考えております。』

最早何を言っているのか分からん・・・・・・・・・・



・物価見通しがより後ろに倒れるのに追加緩和はしないの??????という質問

同じ質問の後半です(この質疑前半後半ともにポイントがあるので通して読むと白井さんの答えがクソ長くて読みにくいにも程がある)。

『(問) (前半割愛)また、その関連で金融政策運営ですが、挨拶の内容を拝読しますと、金融政策については、今後、余程の下振れがない限り、追加緩和は不要との印象を受けたのですが、先程の質問との関連で2017年度までの見通し期間中に2%達成が展望できるような状況が確保されるのであれば、達成時期が現在よりも後ずれしても、追加緩和不要とお考えになるのか。また、仮に今後追加緩和不要となる場合、どういうケースをイメージしておられるのか。』

で、お答えですがあり得ないくらいに冗長。

『(答)(前半割愛)それから、追加緩和の可能性についてですが、追加緩和が必要かどうかというのは、やはり2%程度の達成に向けたその道筋がどうか、ということで判断するべきと思っています。昨年10月の場合には、明らかに需要が相当弱まっていて、家計、企業のマインドも悪化していて、そういう中でやはり追加緩和が必要だと判断しました。インフレ予想も下落するものも多かったので、そういたしました。』

ふーん。

『現在は、昨年10月に行った追加緩和からまだ1年も経っておりませんので、その緩和効果が徐々に今出てきていると思いますから、それを見極める時期だと思います。』

2年で2%だし「できるだけ早期に」達成なのですが・・・・・・・・・・

『それとともに、1月〜3月のGDPが公表されて、日本銀行の推計では需給ギャップはプラスの方向で改善していると思います。それから、インフレ予想も下落していたものが概ね横ばいになってきていますし、これから物価の基調は名目賃金、実質賃金の上昇とともに高まっていきます。今もう既に家計のマインドも改善し、企業のマインドも改善し、設備投資も前向きな動きが出てきているわけですから、物価の基調は高まっていくと思います。従って、今は物価の基調が高まっていくことを確認する時だと思いますので、現在は現状維持でよいと思っています。』

QQEの重要な点として「早期に達成」というのがあるのですがすっかり無い事になっていますね!!!!!

『その上で、追加緩和を絶対にしないのかと言えば、絶対にしないとは言っていません。どういう場合に追加緩和かと言えば、当然──繰り返しになりますが──、2%の達成に向けた道筋が明らかに逆方向に向いているという場合です。』

ここで止めておけばよいのに余計な説明をするからこの人の話は冗長で何を言いたいのか分からんし、まあそれが本人の作戦で何でもかんでも喋っておけば「ほらアタシの言った通りでしょ」となるということなのでしょうが、誠に遺憾の極みに存じます。

『例えば、様々なあらゆる予想物価上昇率が低下している、企業では新しいよりイノベーティブな財・サービスを提供して適正価格で提供しようという前向きな行動が今出ていますが、それが逆行してしまって再び2012年の時のようなディスカウント競争になってくる、家計もディスカウントに走る、そういう行動が明らかに出てくる、その背景には当然需要の減退、需給ギャップの悪化、賃金の低下があると思いますが、そういうものが出てきたら、金融政策として何ができるのかを検討するのは当たり前のことです。そういう状況があるのであれば、検討するべきだと思いますが、私の見通しでは、その蓋然性はかなり低いと、今はみているということです。』

供給過剰の状態になっていて経済にスラックがある状態の中で金融緩和政策の効きが悪くなるから非伝統的な政策をという話なのですが、白井さんが説明したこのトリガーに対して金融政策でどういう効かせに行くのかについて小一時間問い詰めたいが、一つ問い詰めると1万倍くらいの返しが白井さんの場合は来そうなので問い詰めるにも覚悟が必要な気がしますな(−−;


・質問と答えがかみ合っていないが結局QQEは資産価格ルートかよという話

ちょっと先に参りまして。

『(問) 今のお話と絡むのですが、家計が物価上昇を容認するには時間がかかるということで、昨日発表された毎月勤労統計ですと4月の実質賃金は+0.1%になりました。これは、結局物価が下がっているので、名目が下がらなければ実質が上がったということかと思います。その中で現在円安が進んでいて、製造業には確かにプラスなのでしょうけれども、円安から来る輸入物価上昇で、足許結構食料品が上がっていて、それによって家計の支出が削減されたり、マインドにも影響していると思うのですけど、現状の、というか先行きのさらなる円安のポジティブの影響とネガティブの影響をみたときに、どちらの方が勝ると現状でみていらっしゃるのでしょうか。円安が進むと家計にはマイナスの影響が大きいかと思うのですが、その辺をお伺いしたいです。』

ちょっと前でも「金融緩和で製造業に効果」(場所も三重県ですし)という話を何回かしておりまして、QQEによる円安の効果とデメリットのバランスについての質問だったのですが・・・・・・・・・・・・

『(答) 為替の円安の良い、悪いということは、私は申し上げる立場にはないので、それについてのコメントは避けたいと思います。』

いやお前それはないだろ。

『重要な点は、例えば実質賃金は3月までずっと下落していましたが、家計マインドはもう12月から改善し始めています。12月、1月、2月、3月と結構改善してきて、4月は横ばいになりましたけれども、家計のマインドは改善してきています。なぜ実質賃金がマイナスでも家計のマインドが改善したのかといえば、これは3つ理由があると思っています。(ここから先暫く割愛)』

ということでどうも実質賃金が上昇してきたけど物価が上がったら元の木阿弥という考えについては、そうは言っても名目賃金上がっているし、雇用そのものが強いから次は大丈夫みたいな話をしているようなのだが冗長につき途中割愛。

『(途中から)それから、2つ目は、株高と円安が――これは円安のプラスの効果になるかもしれませんが――あることによって、機関投資家だけではなくて、他の金融機関もそれから個人投資家も資産が増えたと思います。その結果、今、NISAの開設口座もそうですし、回転率も上がっているように、多くの個人の投資家がより前向きに自分の資産運用を考えるようになっています。高齢の方達も余資がある人達は運用に積極的になっています。それが家計のマインドとか収入の補足にもなるわけでプラスに働いていると思います。(またしばらく割愛)』

資産効果攻撃キタコレですが、この次の説明がもはや何を言ってるのか分からん(いやまあ一応話は価格設定行動が変わったという話をしたいみたいなのだが)のでこれまた割愛しまして説明の最後。

『(途中から)重要な点は、QQEがもたらした効果というのは、私は2つあると思います。』

『1つは、2012年までは非常に行き過ぎた円高で大変なデフレ圧力があったと思います。例えば、製造業では競争力を維持するために円建ての輸出価格をすごく下げようとして、下請けの方など多くの方が大変なコスト削減を必要としました。しかし、そういう形の無理なコスト削減はかなり減っていると聞いています。ですから、デフレ圧力は相当緩和されたということです。』

『もう1つは先程の繰り返しになりますが、健全なリスクテイクが少しずつ起こってきています。企業も株価が上がっていて、それに見合うだけの収益を上げようと思っていますし、ガバナンスを改善しようとみんなが取り組んでいます。』

>企業も株価が上がっていて、それに見合うだけの収益を上げようと思っていますし

いやー正直でよろしいのですが「株価が収益に見合わないバブル水準である」って言ってるようなもんですので表現不穏当。

『QQEを始めてからもっと地方の創生、地方の活力を高めるために積極的に、地方銀行もメガバンクも取り組んでいます。』

地方創生とかいうワードを入れてヨイショにも余念がないですね!!!!!

『そういう姿勢が2012年にあったでしょうか。また、先程申し上げましたように、個人投資家も、少し資産運用に前向きになってきていますし、あらゆる人たちがより健全なリスクテイクをするようになってきていて、そういう前向きな姿勢があります。これらの変化が重要なわけですから、もちろん、その過渡期にはより恩恵を受ける人と受けない人というのがありますけれど、やはり総じてみればプラスの効果が出ていると思いますので、そういったところをみながら、少しずつプラスの効果が日本経済に広がっていくのではないかと私はみています。』

ということで、結局の所QQEの効果の説明が為替ルートと資産価格ルートで、マネタリーベース直線一気理論とは何だったのかという思いが益々強くなるのでありました。


#今朝は諸般の事情でこの虫干しネタだけで勘弁

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2015/06/04

○白井審議委員講演だが金融政策スタンスに関して「以前から主張していた」事が以前主張していないという珍現象発生

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150603a1.pdf
わが国経済・物価情勢と金融政策:量的・質的金融緩和の導入後2 年間を振り返って
── 三重県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

・『消費税率引き上げの影響がなければプラス成長の継続』は分かったがお前のマンデートは物価だ

『2.量的・質的金融緩和の導入後2 年間の経済・物価の実績』というのがあってだな。

『それでは、過去2 年間の経済・物価の実績についてお話をさせて頂きます。』

ってなことで話があるのですが2番目の小見出しから。

『消費税率引き上げの影響がなければプラス成長の継続』

ふーん。

『次に、2014 年4 月の消費税率の引き上げはわが国経済に多大な影響を与えましたので、金融緩和の効果を評価する上では、消費税率引き上げの影響を取り除いて経済の実績を確認してみることも重要です。そこで、消費税率引き上げが成長率に及ぼす影響についての日本銀行の試算値(2013 年度は+0.5%ポイント程度、2014 年度は−1.2%ポイント程度)を踏まえて、消費税率引き上げの影響を除いた2013 年度と2014 年度の実質GDP の前年からの変化額と変化率を算出してみました(前掲図表1)。』

この前師匠がQQEの物価への効果という話で消費税増税の駆け込み需要による物価押し上げ効果の分を完全に無視した話をして笑いを取っていたのでさすがに白井さんここは考慮していまして、以下ああだこうだという話をしているのですがそこはパスしてこの小見出しの結論。

『図表1 によると、消費税率引き上げの影響を除いた実質GDP の変化額は、2013年度は+8.1 兆円の増額となっており、消費税率引き上げによる押し上げ分の2.7 兆円分だけ減少していますが、それでも1.6%程度の上昇率を維持しています。2014 年度の変化額に至っては+0.8 兆円の増額へとプラスに転じており、消費税率引き上げによる成長下押し分(6.4 兆円程度)が無ければ、わが国経済は落ち込まずに0.2%程度成長していたと言えます。』

だそうですが、まず第一にMB残高やら資産買入が累積的に拡大して、金融緩和の効果についても経済にラグを持って効く、という事を考慮に入れますと、QQEが累積的に拡大してきた昨年度の方が成長が弱いという時点でQQEのGDPに関する効果はどうなっているんだよというか、実は2013年度の方が高かったのだったらそれは麿時代の金融政策効果じゃねえのかと小一時間。

まあそんな話よりも、QQEの効果ガーという話をするのにマンデートである物価の話をしないで何の効果分析だよと小一時間問い詰めたい訳です。なおこの白井さんの分析の後にこの前企画が出していたペーパーの説明が延々と続き、その中で予想物価上昇率に対しての効果とかの話があるにはあるが白井さんの分析に関する部分では物価の話が無いとかお前ナメトンノカという話ですな。

なお、0.2%しか成長しないのかよという点に関する言い訳説明がこの先に繰り広げられていますがどうでもよいので引用しません。


・引用しないけど一応小見出しだけ引用しておく

なお、今申し上げましたように上記引用部分以降に関しては「2014年がイマイチだった理由」というのを(消費税以外の要因で)説明していまして、その次の小見出しに関しては『展望レポートの「量的・質的金融緩和の効果の検証」と私の見方(物価面)』、『家計と企業の予想物価上昇率(インフレ予想)の動きをどう理解すべきか』とあって、また「私の」見方かよとうんざりしますが、内容に関しては別に新味も無いどうでもよいものであるので引用する価値なしと判断して全部割愛して次のコーナーに行く。


・経済物価見通しを一応引用する

その次が『3.わが国の経済・物価の中期見通しとリスク評価』である。

『私自身の経済見通しについては、2015年度は1%台後半、2016年度は1%台半ば程度、2017年度は0%を少し上回る程度で推移すると予想しています。2015年度について中心的な見通しよりも慎重なのは、賃金上昇ペースの想定の違いもあるように思います。非製造業の労働生産性はこれまで殆ど改善していないことから、私は、今後の賃金もより緩やかな上昇を想定しており、それに見合った消費回復力を予想しています。』

えーっとすいませんそれなら追加緩和提案をするなり金融政策での「2年で2%」の看板に関して何らかの政策提案するなりしないとダメなんじゃないでしょうか。

『私自身の物価見通しは、物価の上昇メカニズムは中心的な見通しと同じですが、そのペースは2016年度末に2%程度に近づき、2017年度は2%を幾分下回る水準で推移すると予想しています。2015年度平均では0%台半ば程度と中央値対比で低く見ており、この背景には、企業の自社販売価格の引き上げがより緩やかに生じるとの慎重な見方があります。』

以下うだうだと冗長なのだが仕方ないので引用する。

『足もとの幾つかの企業調査(日銀短観を含む)によれば、一部の企業で仕入価格下落に対して販売価格の上昇を多少抑制する動きも確認されており、物価上昇率が0%近傍で推移する間はこうした状態が続くとみていることも影響しています。2016年度平均についても、1%台半ば程度と中央値対比で慎重な見通しを立てています。これは、所得の持続的な改善とともに家計の物価上昇を容認する姿勢が強まるにつれ、企業の価格設定力も高まり、中長期の予想物価上昇率が2%程度に向けて収斂していくプロセスが、より緩やかなペースで生じると考えているからです。』

ふーん。

『なお、2%程度の達成時期についての中心的見通しですが、従来の「2015年度を中心とする時期」から、今回は「2016年度前半頃」へと1〜2四半期程度後ずれさせています。後ずれ自体は、私のこれまでの主張に沿っていますが、その表現について、私は「2016年度を中心とする時期」へと修正する案を提出しました。』

アタシがアタシがとやかましいんじゃ。

『理由は、第一に、日本銀行の基本的見解として物価見通しの下振れリスクが大きいと判断していることから幅をもった表現が適切であること、第二に、従来の表現は「1年あるいは1年以上のレンジ」で示していたのを、「半年程度のレンジ」に狭めており、金融政策の柔軟性を弱める可能性があるからです。』

?????????????????????????


・ということで金融政策スタンスの話をしているがいつの間に「前から申し上げていたこと」になるのでしょうか

上記引用部分の続き。

『念のために申しあげておきますと、私は、量的・質的金融緩和の導入時から、家計・企業に過大な調整負担をかけない範囲で、「できるだけ早期に」2%目標の達成を目指してきており、私の提案はその見方を修正するものではありません。』

「2年」という期限を切った大看板を出すことに意味がある、と黒田総裁や置物副総裁は仰せなのですが。

・・・・・・・・・というかですね、『私は、量的・質的金融緩和の導入時から、家計・企業に過大な調整負担をかけない範囲で、「できるだけ早期に」2%目標の達成を目指してきており、私の提案はその見方を修正するものではありません。』とか言ってるんですが、ここで2013年9月20日の白井さんの講演を見てみましょう。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko130921a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130921a1.pdf
我が国の金融政策とフォーワードガイダンス ―金融政策運営についてのコミュニケーション政策―
国際通貨基金(IMF)及び米国連邦準備制度理事会における講演(各9月19日、20日、於ワシントンDC)の邦訳
日本銀行政策委員会審議委員 白井 さゆり
2013年9月20日

この時にQQEの建付けに対して『量的・質的緩和の下でのフォーワードガイダンス』という謎小見出しの中で謎の説明をしていて意味不明であると悪態をついた次第ですが、この部分から引用してみましょう。

『日本銀行は、本年4月4日に量的・質的緩和の導入に伴い、金融緩和の時間軸に関する以下の二つの表現を含む公表文を公表致しました。

(1)日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する(これを「第一のフォーワードガイダンス」と呼ぶことにします)。

(2)「量的・質的緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(これを「第二のフォーワードガイダンス」と呼ぶことにします)。』(上記2013年9月20日白井審議委員講演より)

で、その第一のフォワードガイダンスとやらが「2年で2%」なのですけど・・・・・・・・・

『この第一のフォーワードガイダンスの目的は、市場や国民に対して、日本銀行が、2%目標を2年程度という期間内――これはインフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行が通常想定している期間に相当しますが――に達成するという強い決意を示すためのものです。このガイダンスは、日付ベース(2年程度)と経済状況ベース(2%)の二つの特徴を兼ね備えています。このうち日付ベースの側面は、2%を可能な限り早期に達成するとの日本銀行の強い意図とその可能性についての市場や国民からの信認をできるだけ早く高めるために不可欠だと考えられました。日本銀行の政策に対する市場や国民の信頼が高まるほど中長期インフレ期待が上昇するペースが加速し、そうなれば企業が需給状況に合わせて販売価格を調整するような価格設定行動を強めることにも寄与すると考えられます。』(上記2013年9月20日白井審議委員講演より)

ということで、どこからどうみても先ほどの「家計・企業に過大な調整負担をかけない範囲で、「できるだけ早期に」2%目標の達成を目指してきており」というのと整合性が無いのですが、いつの間に勝手にそのような主張を以前からしていたとでっち上げられているのでしょうか。


では今回の講演に戻りまして。

『他の主要中央銀行と同様に、外生的な内外の要因によって環境が変われば、経済・物価の見通しを後ずれ(あるいは前倒し)させるのはごく自然なことです。新しい情報を適宜織り込み、目安としての目標達成時期を示しながら、持続性に配慮した2%程度のインフレ社会を速やかに実現するために努力をしていくことが重要です。』(ここからは今回の金懇挨拶からの引用に戻ります)

えーっとすいません2013年9月20日の講演では「日付ベースのフォワードガイダンス」(なお念のため申し上げますがこのフォワードガイダンス云々という説明は用語の使い方が明らかに一般的な使い方ではないのでその点に関して駄文で悪態申し上げたですのでよろしゅうに)と2年に関する話をしていたのに、何で今回は「目安としての」時期になるんでしょうか????????????

『これが、私が量的・質的金融緩和の導入時から主張し、また日本銀行を含む主要中央銀行が事実上採用している「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」の本質だと考えています。』

以前言っている事と違いますし、そもそも「2年」は単なる「目安」ではなくて達成時期としてのコミットメントであるという建付けで執行部は説明した上で金融政策決定会合や展望レポートの表現がある訳で、日銀はそういう説明を採用していないのですが。

でもって日銀の2年で2%スタンスに関して決定会合あるいは展望レポートで反対議案をだしている訳でもなく(白井さんの出している反対は単に2%物価の到達時期見込みに関してのみ)、体制順応しておいて後から旗色悪くなると「私が申し上げていた通り」とかズルにも程があるとしか申し上げようがない。白井さんの場合は単に物価2%到達時期に関してだけ反対議案だしていますが、

『なお、前述した私自身の物価見通しは、見通し期間中に2%程度に達する可能性を排除していませんので、私の提案した表現なら概ねカバーされると判断しています。』

だったら金融政策スタンスに関する提案をするか追加緩和提案しろやゴルァ!!!!


・これはウケたという指摘

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPCMRQ6S972901.html
「余地ある」が英語で「躊躇なく」−白井日銀委員の使い分け
2015/06/03 16:01 JST

『(ブルームバーグ):日本銀行の白井さゆり審議委員は3日、津市内で講演し、物価の下振れリスクが顕現化すれば「対応を検討する余地がある」と述べた。一方で、日銀が公表した英文訳では「躊躇(ちゅうちょ)なく対応を検討する」と、日英で異なるメッセージを発しており、金融市場からはこうした使い分けに批判的な声が相次いでいる。 』(上記URL記事より、以下暫く同様)

「批判的な声が相次いでいる」ってさすがにジャパニーズの皆様がかなりどうでも良いネタ審議委員の金懇挨拶如きで英文まで見ないわと思う次第なので、これはこの記事書いた某記者が「こういうのはどう思いますか」と聞いて回って集めた話だろとさすがに吹いた。

『白井委員は講演で、「物価の基調が大きく弱まるような下振れリスクが顕在化する場合には、金融政策による対応を検討する余地があると思いますが、現時点ではそのような蓋然(がいぜん)性は低いと、私は考えています」と述べた。』

ちなみにこれは今まで引用した後の所で最後の部分にあります。本文11ページでPDFの12枚目になりますのでご参照あれ。

『この「対応を検討する余地がある」という部分が英語では、「I would not hesitate to consider some monetary policy actions」と訳されており、日本語では「躊躇なく検討するであろう」という意味になっている。』

なお、英文を見たい時に一番便利なのは日本語トップページから行けるHTMLで
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150603a.htm/

となっている所で、画面右にある日本銀行の建物の画像の下あたりに「ENGLISH」というリンクがあって、ここをクリックすると英文ページになる(いやまあトップページからでも同じですけど)ので便利でして、まあそこから見に行くと確かに記事の指摘通りです。

『この「躊躇なく」という表現は黒田東彦総裁の決まり文句でもある。総裁が5月15日に行った講演でも「物価の基調が変化し、2%の実現のために必要となれば、躊躇なく調整を行う方針である」と述べたが、英文では「without hesitation」と正確に訳されている。』

クソワロタ。

『白井委員はその後の記者会見で、日英の講演録の違いについて問われ、「私の講演原稿は逐語訳はしていない」と指摘。「必要があれば何らかの金融政策の対応は考え得ると言っており、追加緩和をしないという否定は一切していない。必要だという判断があれば、何らかの対応を考えるという点では全く違いはない」と述べた。』

「問われ」って質問したのアナタデショとか思いましたが、必要なら追加緩和をするというのであれば確かに日本語の表現の方が弱いわというのは事実だなと思ったので、会見で更に墓穴掘ったなという感じでございます。


・相変わらず内容の割に分量だけは多いが少しはマシになったのだけは評価しておく

ということで白井さんの金懇挨拶ネタ終了なのですが、今回も相変わらず無駄に説明が冗長で、そんな事は言われんでもわかっとるわという話がクドクド続くわ「私の」は連呼するわで紙の無駄遣いにも程があるのですが、少しだけマシになったのは今回の金懇挨拶って表紙と図表含めて23枚に止めている点でして、たとえば同じ金懇で2013年6月13日の金懇挨拶では32枚もありまして、とりあえず資源の無駄遣いの削減がなされているのだけは評価しますが、1枚でも100枚でも内容的に資源の無駄遣いであることに変りがないというのが残念な所であるとも申し上げておきましょう。

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2015/03/12

○白井審議委員の講演は内容が無く量があるのだがまたまた「さゆりちゃんの事大主義」が炸裂している件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150311a.htm
緩やかなインフレ経済への転換に向けて
―企業と家計のインフレ予想の現状―
ブリューゲル(3 月4 日)、欧州中央銀行(3 月6 日)、イングランド銀行(3 月10 日)における講演の邦訳

何と表紙と図表を含めると42ページもありまして、どんだけ凄い話をしているのかと思って読んだのですが、これがまた内容が全然無くて読んでいて苦痛としか申し上げようが無いのだが、これを海外でドヤ顔で講演していたかと思いますと、最早国辱レベルですし、あなたさまの出張経費は実質的には公費なんですけどと思いますと大変に血圧も上昇する健康によろしくない講演ではあります。


・でまあ内容はマジで無いのだがどういう風に無いのかだけ報告

最初にこんな説明しています。

『そうした点を念頭に置いて、本日は、QQE導入以降の約2年間に亘る日本銀行の「経済・物価見通し」を振り返り、かつ「直近」の見通しを上振れ・下振れさせるリスク要因について、私の見方をご説明します。その後、物価安定目標の実現において各中央銀行が重視する予想物価上昇率について、わが国の現状についてもお話しいたします。』

でまあ後半の予想物価上昇率に関してですが、日銀短観の物価に関するサーベイと、生活意識アンケートの物価に関するサーベイの結果として公表されている結果および図表を延々と並べてああでもないこうでもないと屁理屈を繰り広げている部分が講演テキスト本文7ページ目から16ページ目まで延々と続くという、そういう説明はスタッフがやる話だろお前は政策委員なんだからその結果を踏まえてどうするという話をしやがれという状態でありまして、まあ何なんでしょこの人はという所です。


・ということでまあ読む部分は最後のまとめの部分だけなんですけどね

つーことでまあこの白井講演ですが、まとめの『4.最後に』という1ページ弱の部分だけが読み物として使えるという頼むから早く審議委員引退してくださいという感じなのですが、この内容がまた顎が外れるレベルで酷いというかさゆりちゃんの事大主義(悪い意味で言ってますよもちろん)炸裂の巻という浅ましさを感じるものです。

『日本銀行が2%の数値目標を掲げた理由は、@再度デフレに陥らないために、統計の上方バイアスも勘案したある程度の「物価上昇率のバッファー」を残しておく必要性、A景気後退局面において柔軟な金融政策発動余地を維持しておく必要性、B恒常的な円高を避けるために国際基準となりつつある2%程度の目標に合わせる必要性、等を考慮したためです。加えて、わが国経済は、過去15年間に亘り名目GDPが横ばいないし低下していますが、この伸びがプラス圏内で推移するような経済状況の実現が不可欠だと考えられているからです。』

とまあここまでは普通なのですが・・・・・・・・・・

『とはいえ、家計は「物価上昇は生活費の上昇をもたらし好ましくない」と捉える傾向があり、しかも2014年度は実質所得が低下したことから、2%目標を掲げることの意味を広く理解していただくのは容易ではありません。しかし、2015年度以降は(名目・実質)所得が上昇していくことが見込まれます。そこで、2%目標の重要性や金融緩和の意図に対する理解が国民・市場に浸透していくように、日本銀行による広報活動をもっと工夫する必要があると考えています。今後も改善を目指して努力をしていく所存です。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、そもそもQQE実施して物価が先に上昇すると賃金は基本的に遅行して上昇する(浜田先生などは実質賃金が下がることによって雇用の数量が拡大することが重要と説明していましたよね)わけで、賃金が遅行して上昇するのは最初から分かりきった話であり、それに対して2年の目標達成期限がもうすぐというこの時期に『2%目標を掲げることの意味を広く理解していただくのは容易ではありません。』とかお前は2年間何無駄飯食ってたんだと小一時間問い詰めたい。

ちなみに2013年11月27日の徳島金懇では白井さんこのような説明をしていましたけどね。

『『以上の英国の事例をわが国に置き換えますと、以下の点が指摘できるかと思います。

・ 実際のインフレ率が2%目標に向けて上昇していく途上において、中長期の予想インフレ率も上昇しうると考えられること。

・ 中長期の予想インフレ率が2%に向けて収束していく途上でアンカーが確立するまでの間は、実際のインフレ率は(国際商品市況やその他の影響を受けるため)中長期の予想インフレ率をオーバーシュートして上昇することが起こりうると考えられること。

・ 2%の物価目標については、一定のレンジよりも、ポイント水準の方が望ましいと考えられること。』
(以上2013年11月27日の徳島県金融経済懇談会挨拶より)


・しかしこれは事大主義さゆりちゃんが炸裂したと思えば驚かないという点について

つーことで、そもそもお前QQEの推進をなんだと思っているんだというゴミ講演が飛び出してしまい、今回はあまりのゴミさに遂に細々としたいちゃもんをつける気力もわかないというゲロクオリティになっているうんこ講演な訳ですが、うんこはうんこなりに意味合いというのを考えますと、そういえばこのお方は執行部が変わる直前の決定会合で謎提案をして自己アピールをした、という見苦しいにも程がある上にコミュニケーションポリシーを混乱させるというクズ提案をしたという実績がほんの2年間にある訳ですよ。

でまあ今回は急に「2%を一般の方々に理解いただくのは難しい」とか2%目標そのものに対して問題提起をするかのような話(当然2年云々の必要性の話はない訳で)をしているというのは、まあ2年前の浅ましい行動と同様に政治方面から吹いてくる風を読んでさっそく鞍替えに入っている、とまあそのように考えますと、さゆりちゃんの事大主義(悪い意味で使われる方の事大主義ですよ)がさっそく炸裂して新しい風に尻尾を振って擦り寄っているという事で、なるほどそういう流れになっているのかなどと思いますとそれはそれで味わいがあるというのものです。そういえば今度来るジンバブエ先生も2%目標よりも重要なのは雇用が良くなることであって2%は手段に過ぎないとかお前今までの話はどこに逝ったんだよという話をしていますからね!!!!!!

しかしまあ何ですな、この前の宮尾さんの講演も大概でしたが、日本の経済学者ちゅうのはこういう芯も何もないのだらけなのかよと小一時間問い詰めたくなる訳で、先日も悪態をついたと思いますが、こんなフニャフニャなのが揃っていますと執行部は楽でいいだろうなあと思いますけど、まあそもそも理論の前提自体が必ずしも堅確なものではないだけにコロコロと転がってしまうんでしょうなあと思いますと、実業界なり金融市場なりという確固としたバックグラウンドのある審議委員の皆様のしっかりぶりと学者の腰抜け振りというのがまあそんなもんなんでしょうかねと思ったりする春のひと時なのでございました。

何せ白井さんの場合はさっき全面的にすっ飛ばしましたけれども経済物価情勢の所の最後で物価についてこういう話をしているんですよ今回。

『最後に私の個人的な見解ですが、物価上昇率の一時的な低下は、(昨年10月に追加緩和をしたこともあって)物価の基調や国内需要の回復ペースが持続している限り、容認し得ると受け止めています。しかしながら、物価上昇率が2%程度に近づくタイミングについては、直近の見通しから後ずれする可能性を含めて、不確実性が高まっていると考えています。』

だったら追加緩和の提案しろとか思う訳で、このように両建てポジションを作って当たった方だけ後から引っ張り出してきて「私が指摘した通りになりました(ドヤァ)」と言い出すという辺りがもう何だかねという所ですが、どうも白井大先生におきましては政府方面からの梯子外しプレイの空気を読んで自分も先に足抜けをしようとしているようで、実に浅ましいのですがこういう浅ましプレイが便利使いされてしまうという世の中というのもまあ釈然としませんなあと思うのでありました。

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2014/11/28

○今日もさゆりワールドへようこそ!!!(白井審議委員広島金懇会見ネタ)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411e.pdf

なお最初にお断りしておきますが、この質疑応答から金融政策の先行きに対する有益なインプリケーションは1ミリも得られることはございませんで、あくまでも夢の国のお伽噺の不思議ワールドへの旅へのお誘いという事で宜しく。

#まあ夢の国というよりは夢の島のような気もします(「夢の島」の含意って若い衆は知らんのかな)

・いきなりの出落ちで腹筋崩壊

最初の説明部分はさておきまして、2ページ目に最初の質問がございましてですね。

『(問) 追加緩和から1か月経ちますが、出席者からその評価も出たのではないかと思います。評価する声が多かったのか、しない声が多かったのか判りませんが、そのあたりのことも含めて、追加緩和が及ぼす広島県経済の今後の見通しと、追加緩和を決めるにあたって、地方ではまだ景気回復の波が波及していないと言われていますが、そういった地方の回復の遅れといったようなものも、緩和にあたって考慮事項に入ったのでしょうか。その2点をお尋ねします。』

QQE(とかアベノミクスとか)と地方経済の関係についての質問ですが・・・・・・・・

『(答) 今回の追加緩和については、私が今日ご説明するまでは、「正直言って、なぜしたのか理由がよく判らない」という声が聞かれたのですが、私なりの説明をいたしましたところ、「非常にその趣旨が判りました」という声を伺いました。』

・・・・・(;゚д゚)

もうこの時点で降参wwwwwwwww

『それから何よりも、今回の金融懇談会で共有できたのは、これは日本銀行だけが頑張ればよいというものではないということです。』

まだネタにしていませんが先日の名古屋での総裁講演でも経済界にお願いモードになっていましたが、ついにこのモードに入ったかという所ですな。

『インフレ目標を設定して、インフレを実現するのは金融政策だとしても、そこにはやはり持続可能な成長が必要な訳であり、私の挨拶要旨にもありますように潜在成長率が落ちてきている経済ですから、それを底上げしていくのはやはり皆の努力が必要なので、今、日本銀行が金融緩和をしている、この状況を、是非、活かしていただいて、企業も金融機関も頑張っていくと、地方政府も頑張っていくと、そういうことが共有できたと思います。』

デフレは貨幣的な現象なので金融政策だけで達成できるという置物理論is何処??

『そういう意味で、追加緩和の理由がよく判ったということと、皆で頑張りましょうという、その意識が共有できたと思います。』

ぽかーん。

『地域経済に対して、私たちの「量的・質的金融緩和」の影響が少ないのではないかとの意見があるかも知れませんが、今、日本の潜在成長率がどんどん落ちてきている中で、それを底上げしようとしている訳です。』

事務方がもはや要旨を纏める事ができないような発言が展開されています!!!

『今の日本は、成熟していますから、高度経済成長期のような大きな成長を期待できる社会ではないです。そういう中で、成長率が落ちているところを皆で努力して上げて、潜在成長率も上げて、物価もマイルドなインフレ、2%を実現しようということです。』

結局物価目標は日銀単独で達成できないと言いたそうな説明だが、それは今のQQE理論とは違いますよね。

『そういう意味では、広島県も色々なところで影響を受けていると思います。』

以下寝言が続くのでこの質疑部分は割愛しますが、最後の所だけ引用しておきましょう。

『地方に効果が及んでないとおっしゃいますけども、地方経済の活性化のひとつは観光です。今、観光客が世界から日本に沢山来ている、そういうことによって地方経済も恩恵を受けていると思いますので、私は金融緩和政策の効果はあるとみています。』

いやあの円安によるコストプッシュのマイナスと観光収支のプラスとは比較にならないスケールでしょ足し算引き算大丈夫でちゅか????


・マネタイゼーションがどうのこうの

質問も長いので困るのですが。

『(問) 3点お伺いしたいと思います。まず、追加緩和についてですが、昨日公表の議事要旨にも出ていたところですけれども、今日の講演でも、ここで追加緩和をしないことによって、信認が崩れるようなことになれば、2%の実現性自体も成り立ち得なくなる、というご論旨だったのではないかと思いますが、一方でマネタイゼーションの懸念というか、財政ファイナンスという面からの信認ということへの懸念というのも、多くの委員から示されたところではないかと思うので、――その円安ということで経済に悪影響が来ているということをさっきの質問でも出ましたが、その辺に加えて――このマネタイゼーションへの懸念ということについて、どのようにお考えなのか、それがあるのに何故、今このタイミングで追加緩和に賛成を示されたのかというところをお伺いしたいと思います。(以下割愛)』

『(答) 質問は4つあったと思います。まず1つめは、マネタイゼーションへの懸念があるなかでなぜ賛成したのかとのことですが、私たちは――金融政策は、どこの中央銀行でも同じですけども――、見通しをたてて、その見通しの内容によっては、必要であれば金融緩和をやるというのが中央銀行の政策です。(以下無駄に長いので途中割愛)ところが、今年の夏からは、横這いを示すものだけではなく、下がっている指標もいくつかみられた訳です。物価上昇率が落ちていて、予想物価上昇率も落ちていて、見通しも下方修正があるときに、金融政策運営をしている当事者として、それを放置することができるのだろうかと考えました。(以下無駄に長いのでまたまた割愛)』

えーっとですね、予想物価上昇率は「全体として上昇している」というのが政策委員会の認識なのですが、そうなると白井さんだけ追加緩和賛成のロジックが異なるという理解でよろしいでしょうか??

『(さっきの続きだが途中は割愛)中央銀行の金融政策にとって、物価の動きと予想物価上昇率の動きは大変重要です。それらが下がっている時に、しかも見通しも下がっている時に、放置できるということがあり得るのだろうか、私は金融政策運営者としてそれはできないというのが最大の理由です。それはマネタイゼーションへの懸念を越えて重要な問題だと思います。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚) バカデスカコノヒトハ

『なぜ今、先進国の中央銀行が皆、そこを懸念するかと言うと、一回デフレに陥るとなかなかデフレ脱却が難しい。例えば、今、物価上昇率は一応プラスになりデフレ脱却がみえてきても、企業や家計のデフレマインドはそう簡単には変わりません。まだやはり特売とかを求める方も多いですし、賃金も消費税率の引き上げもあって実質賃金はマイナスになっていますから、なかなか、インフレは根付かない訳です。』

ほうほうそれでそれで?

『そういう中で、掲げた目標を中途半端にしていいのか、日本銀行は、もの凄い大胆な金融緩和をして「これまでと違った」という評価を受けている中で、中途半端にすることによって、「やっぱり同じだった」と、「中途半端でやめるのですか」と、そういうことになったら取り返しがつかない訳です。私は金融政策に携わる者として、それは放置できない、それが最大の優先課題だと思いました。』

財政マネタイゼーションと財政赤字の発散の合わせ技で制御不能な事態になった方がもっと取り返しがつかないと思うのですけれども、まるで負けが込んで最終レースに有り金勝負するかのような説明振りに頭を抱えざるを得ませんな。


・物凄く質疑が噛み合っていない一例

さっきの質疑で割愛した方にこんなのがありますが会話になっていない感が凄いので観賞用に引用。

『(問)(前半割愛)最後の1点は、2014年度は潜在成長率、またはそれを下回る程度で推移するということを、今日、おっしゃったと思うのですが、これは、普通に考えれば、来年1月の成長率見通しを引き下げなければいけないのではないかと思えるのですけれども、そこについてのご所見をお聞かせ下さい。』

たしかに。

『(答)(前半割愛)4つ目の質問ですけれども、2014年度の成長率は、10月末までの情報をもとにして、見通しを立てていますので、そのもとでは2014年度の経済成長率は潜在成長率と同程度か、それを下回るぐらいと考えています。その後、11月17日に7〜9月期のGDPの第一次推計値が発表され、正直申しまして、予想以上に消費の回復のペースが緩やかですし、設備投資も前期比マイナスになりましたし、比較的回復ペースが弱いということが確認されました。次回の見通しを出すのは1月ですが、12月にはGDPの第二次推計値が発表されますので、そのときには在庫のデータについても、もう少し明確な情報も入ってくると思いますし、2013年度のGDPの改定も行われる可能性もありますので、そういうことも含めて、1月には新たな見通しを立てたいと思っています。ただ、現時点で出ているGDPの一次推計値によれば、2014年度の経済成長率は、現在掲げている数値よりも下振れる可能性は高いというふうに思います。』

?????????何を言ってるのか良く判らん。


・講演での説明と会見の説明がおかしい件など

『(問) 午前の講演で潜在成長率について、足もと0%台前半まで低下していると、さらに14年度の成長率がそれを下回る可能性についても言及されました。日銀では経済の先行きについて、「潜在成長率を上回るペースで成長を続ける」というふうにしているのですけれども、少なくとも14年度の成長が、潜在成長率を下回るようなことになった場合、これは需給ギャップの改善ペースとかシナリオの下振れということにならないのでしょうか。』

これは先ほどの質疑の直後に打ち込まれていまして、要するに先ほどの質疑が話が噛み合っていない証拠。

『それとも15、16年度と潜在成長率を上回る成長を続けていれば基調として問題ないのか、潜在成長率を下回った場合の政策対応の追加的な必要性についても含めて、お伺いしたいと思います。』


でまあ答えが無駄に長いのだが。

『(答) 7〜9月期のGDP一次推計値が公表され、そのデータに基づくと現時点では2014年度の経済成長率は下振れる可能性が高いですし、マイナスになる可能性もあります。その意味では確かに潜在成長率を下回り得ますので、需給ギャップの改善ペースは10月末に想定したよりも、もう少し緩やかになる可能性はあると思います。』

ふむ。

『ただそうは言いますものの、やはり9月以降のデータをみますと、消費ですと、例えば、幅広い関連指標で既に前期比プラスに転じているものもあります。(以下無駄に長いので途中割愛)ですから、やはり我が国の経済は少しずつ回復の方向に向かっているのは事実だと思います。そういう意味では、日本銀行が考えてきた前向きの循環メカニズムは否定されるものではないと思います。』

おいおい下振れリスクが顕在化して見通し下がったんじゃないのかよ・・・・・・・・

『労働指標は、9月のデータを見ますと、新規求人者数も前月比増加に転じています。失業率は上昇しましたが、非自発的失業者は減少していまして、ミスマッチ以外の失業者はほとんど見当たらない状況になってきています。かなり人手不足になっていますし、労働市場は極めて好調です。(さらにクソ長くので途中割愛)』

・・・・・(;゚д゚)

えーっと講演では

『私は本年1 月から4 月にかけて、金融政策決定会合の「対外公表文」に示すわが国経済の下振れリスク要因として、海外経済要因だけでなく「国内の雇用・所得環境の改善ペース」も明記すべきだと主張しました。結果として、私が指摘したリスクが顕在化し、経済が下振れる主因になったと思います。』(これは講演より)

って話をしているのに労働市場は完全雇用状態だったら「私が指摘したリスクが顕在化」とは白井さんの想像上の産物なのでしょうか??????

でまあだいぶ割愛しまして答弁の最後の方を。

『私自身の見通しは、元々経済成長率も物価上昇率も政策委員の中央値対比で慎重です。そこに、今日の挨拶要旨にも書かれているように、私が2016年度、見通し期間の終盤までに、2%程度に達している可能性が高いと考える理由は、今回の7〜9月期のGDP実質成長率の内訳を見ても確認されるのではないかと思います。』

わけわからん。

『そういう意味で今回の追加金融緩和は先手を打ったと思っています。私たちは昨年の4月に「量的・質的金融緩和」を始めたときに逐次投入はしないと申し上げました。その方針は現在も変わっていないと私は思っています。ですから、今回はそういうことも踏まえて、現在取りうる最大限の追加緩和をしていますので、今後、何らかの理由で私たちの見通しが下振れるからといって、機械的に追加緩和をするというようなことはないと思っています。』

えーっとすいません先ほどは下振れたから追加緩和をしたと言ってたのですが・・・・・・・・・

『今しばらくは、この追加緩和をやったことで今後の経済物価情勢がどうなっていくのか、金融緩和の効果をしっかり見極めていきたいと思っています。』

ということで不思議ワールドなのであります。


・さらに不思議な説明は続く

『(問) 今回の追加緩和の背景として、物価の下振れというのを挙げておりましたけれども、今回は5対4という非常に際どい採決で成立した訳です。白井委員が、もしそこで反対していれば、これは追加緩和が成り立たなかったということも言えると思うのですけど、どういうふうに採決されているかはよく判りませんが、その辺のいわゆる危機感、――もし自分が否決、反対したら水泡に帰してしまうみたいな――、そういった危機感みたいなものを感じられたのでしょうか。』

ってな質問なのですが、答えの最後の方にまたオモシロ説明(途中はマジでどうでも良いので割愛)が。

『(答)(途中までほとんど割愛)。こういう異次元緩和と言われる大胆な金融緩和は、何度も出来るものではないです。』

オープンエンドを強調してませんでしたっけ白井さん???

『また、確かに今私たちは、政府や企業の努力によって、潜在成長率を上げていって欲しいし、上げなければならないと思っています。しかし、2%のマイルドなインフレ率の実現というのは、これは金融政策によってしかできないのです。』

さっきと話が違いますが・・・・・・・・・・・・

『私たちが目標を掲げ、そのコミットメントをしっかり示していくことによってできる、そこが問われていたと思いますので、先程から申していますように、こういう物価上昇率が低下し、予想物価上昇率も低下しており、見通しも下振れるという状況で、何もしないということがもたらすことのマイナスの効果のほうが大きいと判断いたしまして――私は個人的には、挨拶要旨にも書いておりますし、前からも申し上げていますように、金融緩和の延長が望ましいとこれまで考えてきましたが、それ以上に日本銀行の信認を守ることが重要だと思いましたので――、今は、最大限の努力をして、2%の実現に向けて努力していくときではないかと思っております。』

そもそも見通しの下振れという時点で日銀公式と説明が違うと思うのですけどねえ・・・・・・・・


・辛辣な質問を鑑賞するの巻

質問がほぼ2ページという作品だが質問の方が面白いので観賞しましょう!!!

『(問) 10月31日の追加緩和と、白井委員ご自身のこれまでのご主張との整合性についてお聞きします。』

キタコレ!!!!

『5月29日の那覇での講演・会見で、「我々は2%の達成を目指すときに、他のインフレーション・ターゲティングを採用している国と同じで、『フレキシブル・インフレーション・ターゲティング』を採用している」、「何が何でも絶対に2年で2%を達成するというものではない」とおっしゃっています。』

でしたな。

『「もともと日銀の中心的な見通しからは1年遅い2%達成を見通していらっしゃるのに、なぜ『2年、2年』というふうに日銀全体が言っているときに、追加緩和をご主張されないのか」という質問に対してのお答えでした。』

そうでした。

『ここでは、その「何が何でも絶対に2年で2%ではない」とおっしゃっていることと、フレキシブル・インフレ・ターゲットだとおっしゃっていることについてお聞きします。』

さあもりあがってまいりました!!!

『今回の10月31日の追加緩和が、先程の地元の方々への説明会でも「なぜか判らない」という声があったとおっしゃっていましたが、それは当然でして、日銀としては「景気が緩やかに回復していて、先行きも回復基調が続く」、「前向きな循環がしっかり維持されている」と、そういう中で短期的に原油価格が下がったからといって追加緩和をすると、原油価格が下がること自体は日本国民のほとんどの人にとってはプラスであって、足もと物価が下がっても、先行き景気についてはすごく良いことだと、そういう状況で大規模な追加緩和をやるのは一体なぜなのかというのは、非常にごく自然な発想だと思います。』

ですねー。

『そこで、今回10月31日に追加緩和に踏み切った理由について、黒田総裁がその後の講演でおっしゃっていますが、「デフレ自体を払しょくして人々の気持ちの中に2%を根付かせるためには、それなりの速度と勢いが必要だ」と、「これが日銀が2%の達成にこだわる理由である」と、「2%の早期達成のためにできることは何でもやる」とおっしゃっています。』

その通りですな。

『これはもともと白井委員がおっしゃっている「何が何でも絶対に2%ではない」という考え方とは非常に対極にある考え方ではないかと思います。』

(;∀;)イイシテキダナー

『つまり、インフレ・ターゲットというのは、今採用されているのはフレキシブルであるということを白井委員は何度もおっしゃっています。しかし、今回の日銀の追加緩和というのは、フレキシブルの対極にある、非常にリジッドなインフレ・ターゲットだというのが、おそらく世界中ほとんどの人たちの理解ではないかと思います。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『実際にフレキシブル・インフレ・ターゲットだということを重視されている佐藤委員、木内委員、石田委員、森本委員は、今回反対されています。今日の講演の中でも、インフレ・ターゲットはフレキシブルだとご指摘されていますが、10月31日の追加緩和に賛成して尚、「この今の日銀の金融政策はフレキシブルだ」とおっしゃられているということは、これは学者としての良心に反しないのかということをまずお聞きします。』

最後で大爆笑してしまいました(褒め言葉ですので念の為^^)。

さらに追及は続く。

『それともう一つ、もともと「2016年度までの見通しの終盤頃に2%に達する可能性が高い」とおっしゃっていた訳で、今回の原油価格が下がったということで、これが主な理由として日銀は追加緩和に踏み切った訳ですけれども、この原油価格が下がったということは、これは1年経てばほぼ中立になる話でして、物価に対する影響というのは1年で消えてしまう訳です。その後は、これまでの需給ギャップという面においても、この原油価格の下落というのはプラスに働いてくる訳です。』

(・∀・)ニヤニヤ

『これはつまり、2016年度に2%に達するという見通しをされている白井委員の見通しにはほぼ影響がないのではないかと思うのですけれども、そもそも、なぜこの短期的な原油価格の下落が白井委員の見通しに影響があり、それでこの追加緩和に踏み切らないといけないとなったのかがさっぱり判らないというのが2番目の質問です。』

クソワロタ(褒め言葉です)。

ということで辛辣な質問を鑑賞しましたので答えなのですが、これがまた丸々2ページあるのですが全然答えになっていないのですよね。


・そもそも説明が色々とおかしい白井さん

『(答) まず、私だけではなくて、日本銀行の基本的な立場として、フレキシブル・インフレーション・ターゲティングを導入しています。それは、総裁も今まで説明されてきたと思います。そのフレキシブル・インフレーション・ターゲティングというのは、何が何でもきっちりと、ある決めたカレンダーの日付で、2%を実現するということではありません。』

『様々な予期せぬ色々なことが起きます。例えば、今回の場合、天候要因によって消費が打撃を受けるといったことが起きる訳です。アメリカの場合ですと、寒波があって1月から3月にマイナスになったように、そういう予期せぬことが起こります。そういう時に、何が何でもあらかじめ決めた時期に、2%を達成するものではないということで、そういう時には柔軟に、成長のところも配慮しながら、インフレ目標、物価安定目標を実現しようという考え方は、日本銀行も全く同じだと思います。』

QQEでは「2年を念頭に出来るだけ早期に」と言っているのでして、達成時期までの2年が置物理論によりますとグローバルスタンダードらしいのでそういうリジットな対応をしているのでして、今の建付け全然フレキシブルではないのですが。

なお、説明のどさくさに紛れて自分の宣伝に余念がない辺りがさゆりワールドの恐ろしい所なのでその先をちょっと見てみましょう。

『重要な点は、もう一度遡りますと、これまで「量的・質的金融緩和」をする前の日本銀行では、昨年の1月に、あらゆる角度から考えて、2%の物価安定目標を掲げることが大事だと決定した訳です。その時に、当時、我々が行っていた包括的金融緩和では、2%を達成できるというふうに思っていた国民、市場の方は、ほとんどいなかった訳です。そういう中で私は、昨年3月に自分で議案を出して、30年までの長期国債を毎月5兆円程度買い入れていくオープン・エンドのやり方を提案し、否決されましたけども、その時もその私の提案では2%を達成できないというふうにみている方が多かったと思います。(以下思いっ切り割愛)』

いきなりこうやって過去のアリバイ提案の正当性を主張する訳ですが、あの提案出した事がその後のコミュニケーションポリシーに随分と禍根を残したという認識が1ミリも無い(あったらそもそも退任直前の執行部相手にあんな提案しないわな)というのがさすがというか面の皮がどんだけの鋼鉄で出来ているのか頭(内務省検閲)なのかと。

なお、この後延々と意味不明の供述が続くのですが、全くと言っていいほど質問に対する説明になっていないので、引用するだけインターネットのリソースの無駄(そもそもこのネタ自体が不毛とか言わないでね!)ですので会見要旨を直接ご覧ください。

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2014/11/27

○色々と意味不明な白井審議委員講演

いやまあ意味不明なのは今に始まった訳ではないですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141126a1.pdf

・その前にこれは酷いとしか

でまあその講演ですが、さらに会見の所で凄い発言をしておりましたので詳しくは会見要旨が出てからまたネタにしますがロイター記事から。

http://jp.reuters.com/article/idJPT9N0SX00920141126
BRIEF-デフレマインド転換しないことの方が、マネタイゼーションより重要な問題=白井日銀委員
2014年 11月 26日 14:29 JST

『[広島市 26日 ロイター] - 日銀の白井さゆり審議委員は26日、金融経済懇談会後の記者会見で、予想以上のペースで物価上昇率が落ちているとし、10月の消費者物価指数(生鮮食品、消費増税の影響除く)が1%を割る可能性があるとの見通しを示した。また、デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題だと指摘した。』(上記URLより)

>デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題
>デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題
>デフレマインドが転換しないことの方がマネタイゼーションより重要な問題

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやどう考えても財政マネタイゼーションは不味いだろとしか思えませんというか、昨日ネタにした10月30日の金融政策決定会合議事要旨でも追加緩和に対して財政ファイナンスと見られるリスクについての指摘があったし、総裁会見なんかでも財政ファイナンスのリスクについての質問があってそのリスクはありませんという応酬が毎度続いているのですが、このオバハンは何という発言をしているのでしょうか。

白井さんが特段注目されるような方じゃないからスルーされて無事に終わったから良いようなもので、これ総裁が同じ事言ったらそれだけで日本格下げ食らっても文句が言えないレベルの話で、現象面として日銀が財政ファイナンスとしか思えない買入をしている事と、日銀の政策委員が財政マネタイゼーションも辞さずという事の間には思いっきり差がある訳でして、それって日本の財政運営に関する現象面とスタンス面はまた別でしょというお作法の世界と同じ話だと思うのですけれども、どうも今回の講演の中でもそうなのですが、白井審議委員におかれましては現実の世界で金融政策運営をしている筈なのにもかかわらず、勝手にアタクシワールドのお花畑の世界に飛んで逝っておられるのではないかという疑問がわき起こってくるというものです。

ということで講演を鑑賞。

・後付両建大作戦とか見苦しいにも程がある件について

経済物価情勢と見通しの部分ですが、一々『ここで、私自身の経済見通しを申し上げますと、』とあって、しかも「私自身の経済見通し」の部分に下線が引いてあるというどんだけ自己顕示欲が強いんだよという辺りが既に白井クオリティなのですが、その説明が何とも見苦しい。

『ここで、私自身の経済見通しを申し上げますと、まず2014年度の経済成長率については、もともと政策委員見通しの中央値対比で慎重ですが、今回はさらに下方修正いたしました。主因は、個人消費の下振れです。本年7月中間評価時点では消費税率引き上げ後の消費の反動は「想定内」との企業の見方が多く聞かれていましたが、実際には予想を超える反動減となり、本年8月以降も回復がもたついていることにあります。この背景には、実質所得の低下の他、天候要因や株価等の資産効果が振るわなかったことも影響しているとみています。』

「もともと慎重」ねえ・・・・・・・・

『こうした点を懸念して、私は本年1 月から4 月にかけて、金融政策決定会合の「対外公表文」に示すわが国経済の下振れリスク要因として、海外経済要因だけでなく「国内の雇用・所得環境の改善ペース」も明記すべきだと主張しました。結果として、私が指摘したリスクが顕在化し、経済が下振れる主因になったと思います。』

何か「ねえねえアタシは指摘していたのよ」という話をしておられるのですが、今回の追加金融緩和は建付け上は「リスク対応」の追加緩和だった訳でして、リスクがあるという認識を前から持っているなら何で追加緩和の提案をしていないのかと小一時間ですし、大体からして5月以降にその提案してねえだろということで、両建てしておいて後から当たった方だけ出して来るとか、四季報見ながら殆どの銘柄の買い推奨をして当たった物だけ後から出して来るよりも見苦しいわと大変に素敵な味わいがする訳です。

しかもですよ、そもそも白井さんが指摘していたリスクは「雇用・所得環境」のリスクであって、そちらに関しては引き続き堅調に推移しているというのが展望レポートで示された認識でありますし、一般的にも雇用関連に関しては強い状況が続いているという認識の筈であって、別に白井さんが指摘したリスクが顕在化しているとも思えないのですが、何で当たった事になっているのか理解に極めて苦しむものです。

つーかだいたいその前の部分でアンタ『雇用の増加傾向と名目賃金の上昇によって「雇用者所得」(1人当たり名目賃金×雇用者数)も対前年比で増加しており、消費を下支えしています。』って説明してるじゃないかと思う訳で、まさかとは思いますが論理的思考力に重篤な問題を持っておられるのではないかと心配したくなる次第でございます。

大体からして「ねえねえアタシのリスク認識が当たったのよ凄いでしょ凄いでしょ(実際は別のリスクが出ているだけでそもそも指摘しているリスクについては当たっていないのでその時点で間違いだがそれは措く)」とか自慢されましても困る訳でして、政策運営の立案をする人なのですから、そのようなリスク認識に対して事前に何らかの施策を提案するとか、そういう行動に出て頂かないと当たったとしても何の意味もございませんがなとしか申し上げようがないですな。


・QQEの枠組みと違う話を前提にするならその旨議案をだすべき

物価の話がまた色々とぶっ飛んでいまして。

『ここで、私自身の物価見通しを申し上げますと、2014 年度の消費者物価上昇率の見通しは、本年7 月中間評価時点よりも幾分引き下げました。その理由として、@需給ギャップの改善ペースがより緩慢になると見込まれること、A中長期の予想物価上昇率が以前から概ね横ばいの指標(例えば、家計と一部エコノミストの指標)も見られる中で、本年夏場以降からブレーク・イーブン・インフレ率、インフレ・スワップ・レート、国債市場参加者の指標、企業の自社販売価格の現在水準と比べた変化率等が低下を示してきたこと、また(実際の物価上昇率も本年5 月から下落が続いていることから)それらが直ちに持続的な上昇傾向を示すとは考えにくいこと(前掲図表4−1、4−2)、B商品価格の下落の影響がラグを伴って消費者物価に反映されると見込まれること等が挙げられます。』

ほうほうそれでそれで?

『つまり、消費者物価の上昇率は、暫くの間、1%前後で推移した後、2015 年度前半にかけて再び上昇傾向を辿るとみており、上昇に転じるタイミングを幾分後ずれさせました。』

2年で2%との整合性はという気はしますが、まあ15年度1.7%平均が展望レポートの中心的な見通しになるのでここはスルーしましょう。

『2015 年度以降の私の物価見通しについても7 月中間評価時点よりも幾分下方修正していますが、今回の追加緩和の効果を織り込むことで(追加緩和がなければさらに後ずれする見通しがほぼ元に戻る形で)、これまでの見通しに概ね沿ったものとなっています。すなわち、「見通し期間の終盤にかけて2%程度に達する可能性が高い」とみています。』

えーっとすいません2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に達成という話なので見通し期間の終盤だと2016年度終わりという形ですからQQE導入からみたら4年近くになってしまってタイムホライズン全然おかしいんですけど。

それに2017年4月に消費税率上げようって話をしているんですから、その判断をする頃には物価目標達成してないと不味いんじゃないですかねえ。

『なお、中心的な見通しでは、2%程度に達する可能性が高いとみる時期について「見通し期間の中盤頃、すなわち2015 年度を中心とする期間」としていますが、私を含めた多くの政策委員の見通しを網羅する表現としては、この表現よりも、「見通し期間の終盤までに」の表現の方が適当と考え、10 月末の金融政策決定会合で修正案を提案しました。』

QQEの今の考え方を前提にするなら(なお木内さんはそもそも中長期で目指せと言っていますし、佐藤さんはフォーキャストターゲットの枠組みでの話をしているのが展望レポートの提案部分で明確に示されています(石田さんはその提案してませんが講演とかではそういう趣旨の話をしてますな)し、大体からして今回反対に回っていますのでその辺りの人とは別)白井さんは「その緩和では物価目標達成時期が遅いのでもっと緩和すべき」という提案をすべきですし、そうでないのなら物価目標達成時期に関する文言について何らかのアクションをするべきだと思うのですけれどもねえ・・・・・・・・・・・・・

『私の見通しが中心的な見通しよりも一貫して慎重なのは、人手不足が賃金上昇をもたらすペース、及び、需給ギャップや予想物価上昇率が物価上昇をもたらすペースがより緩やかに高まっていくと予想しているからです。言い換えれば、少子高齢化が進むわが国では潜在的需要がそもそもさほど旺盛ではないため、@他国のように需給ギャップの改善が必ずしもすぐに賃金上昇やインフレ圧力をもたらすわけではなく、A予想物価上昇率の持続的な上昇には時間がかかると、私自身は以前から考えていることにあります。』

だったら緩和政策が元から足りないという主張を何でしないのでしょうか????


・金融政策に関する説明が完全に俺様ワールドに入っている件について

でまあその後もクドクドと説明があるのですがその辺は盛大にスルーしまして『3.日本銀行の「量的・質的金融緩和」の拡大について』の中にある『(3)金融緩和の拡大についての私の考え方』ということで、背景に関して説明がきちんと行われている追加金融緩和に関して一々「私の考え方」とか説明せんでもヨロシというか、お前は銀座とか赤坂界隈に雨後の筍のように乱立する某チェーン店(?)かと小一時間問い詰めたい所です。

『私は今回、追加緩和策に対して賛成票を投じました。金融政策決定会合における議論の内容は、議事要旨・議事録という一定のルールに則って開示される扱いとなっていますので、ここでは、金融緩和に関する私の考えをご説明したいと思います。』

まあわざわざ説明する位ですからアナザーワールドにぶっ飛んでいるのですけどね!!!!

『繰り返しになりますが、私は、2013 年4 月の量的・質的金融緩和の導入時から、無理なく2%の物価安定目標を達成するためには2 年以上かかり、「2015 年度末に2%程度に近づいていく」との見通しを示し、現在でもこの見方を概ね維持しています。つまり、「2 年程度」については幅をもって解釈してきた訳ですが、今年4 月の展望レポートで新たに見通し期間を2016 年度まで延長した際に、従来の私の見方をより明確化する必要があると判断し、「見通し期間の終盤にかけて2%に達している可能性が高い」と表現することにしました。』

それってほぼ4年なのでして、幅を持って解釈するにはあまりにも無茶苦茶なタイムホライズン。

『重要な点は、日本銀行が「持続的な成長を伴いながら2%の安定的な実現」を目指す「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」の枠組みを採用していることであり、そのもとで「家計・企業に対して過大な調整負担をかけずに持続可能なインフレ率2%を社会に定着させるには、2 年よりも長い時間をかける経路が望ましい」と私は考えてきました。』

・・・・・( ゚д゚)

そもそもフレキシブルターゲットの意味を間違えて使っているだろと思いますし、現在の日銀が行っているのは「短期間で物価目標を達成させよう」という話(今や反対している審議委員がうじゃうじゃいますけど)であって、「2年よりも長い時間をかける経路が望ましい」というのが「2013 年4 月の量的・質的金融緩和の導入時から」の考えだったらそもそも導入当初の時点から反対するとか、まあQQE導入当時に関しては色々と期待形成やら大人の事情やらもあるから反対できない部分もあるにせよ、少なくとも木内さんが色々と提案しているのを横で見ながら何もしないのに講演ではこういう話をしてくるのが意味判りません。

『この観点から、「2%の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、量的・質的金融緩和を継続する」との枠組みのもとで、2015 年度以降も「金融緩和の継続」が望ましいとの考えをこれまで明確にしてきました。』

何か提案とかしてましたっけ???つーかそれQQEの今の建付けの考えと合ってないのですけど。

『その上で、金融市場調節方針であるマネタリーベースの増額ペースについては、2013 年4 月4 日の対外公表文に明記されているように、「年間約60〜70 兆円に相当するペースで増額」し、マネタリーベースが「2 年間で2 倍」になるのは、2013 年4 月を起点とすれば2015 年4 月前後であることから、まずはこの時期まではその増額ペースを維持することが適当だと考えてきました。』

QQEは2年程度を念頭に出来るだけ早期に達成という建付けなのですが、一人全然別の見通しを基に金融政策運営を是としているとか訳が分かりません。

『そして、その後の「金融緩和の継続」については、同じペース(及び資産買い入れ内容)をオープンエンドで維持していくこともひとつの方法として考えられましたし、別の方法としては、私自身は2%程度の達成には2016 年度までかかるとみてきたことから、その頃までを念頭に(買い入れ資産の構成について)多少の工夫を伴いつつも継続することに力点をおいた方法も考え得ると思っていました。』

後出しじゃんけんキタコレ!!!!


・某ベンダーのヘッドラインがこの辺りをクローズアップしているのに悪意を感じました(^^)

さらに謎説明は続く。

『他方、私は「追加緩和」が検討され得る場合として、昨年、2 つのケースに言及したことがあります。ひとつは、「経済・物価の下振れリスクが顕在化して、それが中心的見通しを大きく下振れさせる」ケースです。もうひとつは、「金融政策に対する信認」が低下したと国民・市場に見做されるリスクがあるケースで、例えば、日本銀行がこれまで示してきたコミットメント(何らかのリスク要因によって中心的な見通しに変化が生じ、2%の物価安定目標を実現するために必要であれば、躊躇なく調整を行うとの方針)をしっかり果たしていないと判断されるリスクがある場合です。』

えーっとすいませんどちらも「見通しが下振れた場合」の話をしているようにしか見えませんが・・・・・・・・

『私自身は、今回は、物価上昇率および一部の中長期の予想物価上昇率を示す指標が低下しているのと相俟って、これら2つのケースが該当し得ると考えました。』

???????

『そこで、追加緩和によって2%の物価安定目標の実現に向けた道筋をより確実なものにしていくことを、この際、最も重視すべきだとの思いに至りました。』

????????

『仮に、そうしないことで、日本銀行がこれまで築きあげた信認が崩れることになれば、私自身の物価見通しはおろか、2%の実現性自体も成り立ち得なくなるからです。』

いやその前に貴女様の・・・・いやまあどうでもよいです。

なお、某ベンダーは思いっきりこの信認云々の所をヘッドラインとして盛大に打ち込んできて、それをみた金利市場関係者の皆様が「ひょっとしてそれはギャグでいっているのか?」と総ツッコミをしたであろうことは言うまでもありません。


・緩和政策の波及経路の説明がありますがどうも内容がパッとしませんな

その次が『(4)量的・質的金融緩和の波及経路』という話なので鑑賞鑑賞。

『つぎに、改めて、日本銀行の金融緩和政策の波及メカニズムを確認しておきたいと思います。量的・質的金融緩和では、幾つかの波及経路を通じて(名目・実質)長期金利に下押し圧力をかけ、様々な市場の「資金調達コストの低下」と「資産価格の上昇」をもたらし、最終的には企業・家計等の総需要を増やし、インフレ率を高めて物価安定目標を実現すると想定しています。ここでは、中心的なツールである国債の買い入れに焦点を当てて、その波及経路について簡単にご説明いたします。』

これは茶々を入れずに鑑賞ですね!!!!

『単純化のために、波及経路を3 つに大別して話を進めたいと思います。まず、第一の波及経路(シグナリング・チャネル)は、日本銀行が金融緩和スタンスについて国債買い入れを通じて国民・市場に伝えることで、「将来の短期金利の経路」に関する市場の予想(期待)を下押しすることで、(名目・実質)長期金利の低下に導く経路です。』

以下説明がありますが、金利が下がると効果が出るという話。

『リスクフリー金利が低下することで証券価格や不動産価格等が上昇しますし、金利の低下や担保価値の上昇によって企業・家計の資金調達コストも下がります。』

ただこの部分って既に十分に金利は下がっていたし、金融機関の貸出態度は十分に緩和的な状況が続いていたと思うのですけどね。

『ハードルレートも下がるため企業が採択する投資案件も増え、企業・家計が保有する幅広い資産価格の上昇によって設備投資や消費も促されます。』

ダウト。

『金融機関等の財務基盤も自己資本の充実や保有資産価格の上昇を通じて改善するため、内外投融資に積極的になり得ます。』

「なり得る」のと「なる」のは別問題。

『この経路では、当初は名目長期金利には下押し圧力が強くかかりますが、物価上昇率が高まるにつれて次第に上昇していくことが予想されます。』

ふむ。


『第二の波及経路(ポートフォリオリバランス・チャネル)では、「タームプレミアム」の下押しによって(名目・実質)長期金利を下押しし、金融機関等がポートフォリオ構成を変えることを促し、直接的に資本調達コストの低下と資産価格の上昇を実現する経路です。』

結局金利が下がる話か・・・・・・・・・・

『まず日本銀行が長期国債を買い入れますと、金融機関等の保有資産の中で長期国債が減少し、日本銀行へ預ける当座預金が増加します。このとき当座預金と長期国債は「不完全な代替資産」であるため、金融機関等は増えた当座預金を減額して新たに長期国債を購入しようとするので、長期金利は低下します。』

そこが本当に不完全な代替資産なのかというのは微妙ではないでしょうかねえ。完全代替では無いとは思いますが、それで効果出したいのなら国債じゃなくて他の物買った方が話が早いし、少ない買入で効果がでませんかねえ。

『この結果、金融機関等は相対的に利回りが高い他の金融資産への投資を増やそうとします。なお、国債の残存期間が長くなるほど当座預金との代替性が低くなりますが、当座預金と長期国債の代替性が低いほどこのインセンティブは高まります。また、市場に出回る長期国債の供給量が減り市場で取引される国債の平均残存期間が短期化するため、市場のタームプレミアムが低下するわけです。』

何か微妙な説明だが、そもそも第1の波及も第2の波及も結果としては金利低下と資産価格の上昇を狙っているのですから波及経路の説明としては同じじゃないですかねえ。


『一般的に、中央銀行がより長めの国債を買い入れるほどタームプレミアムの下押し効果が大きくなります。その結果、金融機関等の金利リスク量が減少してリスクテイク余力が高まることから、リスク性資産への投資インセンティブが高まると考えられています。』

ダウト。

『リスク性資産への投資は、まずは長期国債との「代替性が高い」(又は長期国債との期待収益率の相関が高い)社債やローン等へ向けられますが、それらの利回りが低下すればさらにリスクの高い低格付け債、株式、不動産、投信、海外投融資等も増えていくと考えられます。その結果、幅広い資産価格が上昇し、資金調達コストも低下すると想定されています。』

信用リスクフリー扱いの国債の金利リスクの部分と、クレジットリスクなどの発生する投資の部分に関しては代替性が低い訳で、そもそも金利リスクを除去しなくても金融機関の資本規制の部分でも対応できるし、そっちのファクターの方が大きいでしょと思いますが。

つーか、資本状況に変化が無い中で金利リスクを強制的に召し上げて他のリスクを取るように仕向けるというのは、将来そのクレジット等の商品がリスクに見合う適正な水準を超えて上昇するようなバブル的状況が発生した場合に金融不均衡の発生を促す事になりますがそっちの話はどうなのよと。


『第三の波及経路(インフレ期待チャネル)は、実際の物価上昇率の引き上げだけでなく、国民・市場の中長期の予想インフレ率も引き上げて実質長期金利の低下に導く経路です。』

どうやって上がるのでしょうか??

『前述の2 つの経路によって実際の物価上昇率が高まることで間接的に予想インフレ率が上昇するという経路の他、』

そもそも金利が下がって資産価格が上昇すると実際の物価上昇率が高まるという話って当初想定していたような設備投資ルートとかで回っていないでしょ。

『2%の物価安定目標を達成するために国債買い入れによる金融緩和を続ける姿勢を示すことで、予想物価上昇率が直接的にも上昇し得ると考えられます。』

気合キタコレ。

『予想物価上昇率が上昇しますと名目長期金利には押上げ圧力が働きますが、その一方で前述したタームプレミアム等の下押し圧力が作用するため、名目長期金利の上昇幅はその分限定的となります。その結果、実質長期金利が低下すると考えられます。』

で、その実質長期金利の低下が本当に設備投資に効いているの???とかその辺の検証がちゃんとできているのかが謎ですな。

『また、日本銀行では長期国債に加えてリスク性資産を買い入れているため、こうした経路以外にも、直接的に様々な市場に働きかける効果が期待されます。』

という事で、波及経路の説明はここまでなのですが、まあこの部分に関しては白井さんオリジナルというよりは政策委員会の中心的な見解を思いっきり踏まえて説明していると思うのですけど、何か1年半たってまだこの程度の説明だとしますと、そもそも今回追加緩和をした数値的な根拠とかその手の話って説明ちゃんと出来るのかいなと疑問が百万回位頭の中を飛び交うのでありました。

つーかMBの量に関する置物副総裁直線一気理論が全く出てこないのは如何なものかと・・・・・・・

#生産性の無い講演ツッコミでどうもすいませんすいません

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2014/10/08

○決定会合レビュー:白井さんの謎提案キタコレ

全くもってこのお方は何なんでしょうかとしか申し上げようがない。

『(注1)白井委員は、予想物価上昇率の記述について、足もとでは横ばいになっている指標が多くなっているものの、やや長い目でみれば上昇傾向は続いている、との表現にすべきであるとして反対した。』(今回)

・・・・・・・・・・・・・??????????????

何ちゅうか貴女様の頭の中に詰まっているものはまさかオガクズか何かでいらっしゃいますかとお伺いしたくなるかのような表現変更でして、そもそも直接的な計測が難しくて総合判断しないといけない予想物価上昇率の部分について政策変更を伴わないのに表現を変更するというのが政策ロジック的に全然整合性が取れない話でありまして、こういう表現変更を提案するならそれにセットとして予想物価上昇率を望ましい水準に引き上げる為の施策を出さなかったらそれは政策当局者ではなくてただの傍観者でありますし、しかもインフレ期待の部分についてはまさにQQEの建付け的に金融政策で何とかしようというものでありますので、この提案しておいて政策変更提案無しという行動はそもそも論として現在の金融政策運営の建付けとなるロジックを理解していない事を意味しているのですが、まあオガクズ脳なので理解できていなくても致し方ないのかもしれませんね。

しかしまあ何ですな、このオガクズ先生は講演などで毎度毎度クソ長いけれども単に「ねえねえアタシってこんなに色々な事を知っているのよ凄いでしょう」という内容の文章を投下してヲチャーの時間を浪費させるのを得意技としておりますので、単なる自己顕示の世界で提案しているのかも知れませんが、もう一つのケースとしては昨年3月の謎提案によって自分だけ新体制に向けたゴマスリ提案をして他の政策委員に反対票を投下させてコミュニケーションをややこしくしたという実績がありますように、年金問題で散々引っ掻き回した挙句に具体的な話の前にコロンビア大学に逃亡するというどこぞの先生と同様に、沈没前の船から逃げ出すネズミのような動きを示しているのかも知れず、ただの自己顕示ならばどうでも良いのですが、もしかしたらドブネズミモードが入っているかも知れませんなあと思うのでありました。

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2014/07/28

○白井審議委員のオモシロ講演を鑑賞する(ただし政策的なインプリケーション無し)

本当は英文でのレポートですが、邦訳版で本文が24ページもあるという講演を英文で読む気が起きないのは当然ですな。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140724a1.pdf
最近の先進国およびアジア・太平洋地域
における金融政策の潮流
National Asset-Liability Management Conferenceでの基調講演の邦訳
(7月23日、於、シンガポール)

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140724a1.pdf
ちなみに読む気も起きなかったが英文版だと本文26ページですよ(白目)。

・しかし長いわ意味の無い所にツッコミどころがあるわという講演で

この講演なのですが、同日に黒田総裁の海外出張での講演の日本語版がありまして、まあそちらでは「これはアジア開銀総裁の黒田さんですね」というような能書きが展開されていたのですが、もしかすると白井さんのこのしょうもない講演に注目させない為に同日にぶつけてきたのではないかという感じです。

つーかですな、この講演アホのように長いのでそもそも読む気が失せるのですが、まあそれを我慢して読みますと内容としては単なる非伝統的金融政策の説明と、インフレターゲット的な何かの説明になっているのですが、まあ端的に申し上げると「ねえねえアタシこれだけ知ってるのよ凄いでしょ凄いでしょ」というアピールにしか読めない内容で特段新しい視点での説明というような知見も無い上に、当たり前の話しかテーマにしていないのでうっかり読むと流してしまうのですが、そこを我慢してツッコミどころを探しながら読むとあちこちで意味不明な説明があるという素敵な代物になっています(流して読んでいると読んでいる方はベースの知識があるので基本的におかしい部分を勝手に脳内補正して読んでしまうと思います)。

ということで以下週初雑談にふさわしく(??)鑑賞会でも。以下引用元は邦訳の方からになります。


・一番凄いのは本文10ページの後半(PDFだと11枚目)

ということであちこちに凄い部分があるのですが、今回の講演の白眉(馬氏の五常と違って優秀じゃない方なので白眉というのは誤用ですかそうですか^^)のオモシロ部分は本文10ページ後半になります。

『金融安定を維持するための流動性吸収オペレーションの活用』という小見出しがまずおかしい訳で、ファイナンシャルスタビリティの話でもしているのかと思えばさにあらず。

『金融不均衡に対しては、第一義的にはマクロプルーデンス政策で対応するという考えが一般的ではありますが、中央銀行が採れるもうひとつのアプローチとして、超過準備への付利あるいはリバースレポ金利を使ってマネーマーケットの潤沢な流動性を抑制する考えも最近注目されています3。』

まずこの説明が盛大に意味不明でして、付利引上やリバースレポは「流動性の不胎化」という意味でのオペレーショナルな話であって、金融不均衡に対応するいわゆるBISビュー対FEDビューの話は「金利を上げるか規制で対応するか」という話であって、そういう手段の話の中に何でその金利を上げる際のオペレーションの話が出てくるのか意味わかりません。

『中央銀行はこうした金利を自ら設定することができるため、金融機関が中央銀行に預ける超過準備をコントロールすることで(つまり中央銀行に多額の超過準備を維持することを促すことによって)、金融システムの安定に寄与する可能性があります。』

さらにおかしいのはここで、超過準備を維持することによって安定化するのは(不胎化している状態で維持されている超過準備に意味があるのかは微妙な面があるが)いわゆる金融危機のような状況における支払準備としての流動性維持であって、ファイナンシャルスタビリティーの観点から利上げとかいう話をする際に超過準備があるから金融システムの安定に寄与というのはそもそも説明の前提となる状況が違う(BISビューでの金融安定化の為の利上げというのは「leaning against the wind」であってその時点で流動性危機が生じている状況ではない)のですな。

『こうした施策は、引き続き中央銀行に短期金利を誘導する手段を残すため、物価の安定や持続的な経済成長等の目標への影響を限定的に留めつつ実施できると考えられています。この考えは、最近の米国において活発に議論されており、とくにこれらの金利はFRBが出口戦略で超過準備を抱えている中で徐々に引き上げることで市場金利を正常化していく手段として語られることが多いようです。しかし、同時にこれらの金利を使って超過準備を長く維持できれば、過剰な投融資によるバブルを抑制する政策手段となりうるとの観点からも議論されるようになっています。』

もはや何を仰っているのかわからないのですが、さきほどまでツッコんでおりましたように、どうも白井大先生様におおかれましては色々な状況の論点を全部まとめて混同して説明しているようでございまして、「超過準備を長く維持できれば・・・・バブルを抑制する政策手段」との観点とのことですが、もしかするとそれは貴女の想像上の議論なのではないでしょうかと小一時間問い詰めたいところではございます。


・そもそも自分の政策の説明でもツッコミ所がある件について

本文5ページの『(A)資産買入れ』って所から。

『日本銀行は予め設定した年間の資産保有残高の増額ペースをもとに買入れを進めています(現時点では2014年末までの増額を明確にしています)。』

えーっとですね、そらまあ政策自体は続くとは思うのですが、現在の政策の建付けはあくまでも「次回決定会合までの間は」年間70兆円ペースでMBを拡大するようなMB目標運営をする、という形になっていて、別に2014年末までの買入を確約している訳ではなく、目標がその前に達成されるとか、第二の柱での点検で問題が生じる場合などは途中で終了する可能性があるのですよね。

でまあ本文5ページから6ページに掛けての『(B)フォーワードガイダンス』も微妙でして、

『一方、日本銀行ではフォーワードガイダンスを「QQE全体」に適用しており、政策金利に適用している訳ではありません。金融政策の操作目標は無担保コール翌日物レートからマネタリーベースへと変更しているからです。そこで、マネタリーベースの増額ペースが決まれば、おおよそ国債等の買入れ額も決まるので、マネタリーベースと資産買入れ額はある種の「不可分」の関係として扱われています。』

いやその内訳で長期国債の長いのを沢山買うというのがQQEの異次元アピールでしょ。

『その上で、フォーワードガイダンスによって、将来にわたってマネタリーベースの増額と資産買入れを維持するとのメッセージを市場・国民に発信しています。』

まあそれをフォワードガイダンスと言いたければまあ良いですけど、単にマンデート達成までの期間継続するというのは別にまあガイダンスでも内容な気が。


・ECBマイナス金利の解説で肝心な所が抜けている件

同じく金融政策の説明の本文7ページ『(E)準備預金へのマイナス金利適用』という所でECBのマイナス金利と他国のプラスの解説部分も妙。

『中央銀行がこのようにプラスの金利を支払っている理由はいくつかありますが、ひとつにはマイナスの金利だと銀行間市場が縮小して金融機関がいざ必要なときに市場から即座に資金調達することが難しくなる可能性にあります。』

ぽかーん。いやあのスタンディングファシリティがあってスティグマ無しに利用できれば別にそれ自体はシステム的な問題にならないと思いますがまあ良いとしまして。

『また、これに関連していますが、付利金利があると銀行間市場の金利に下限が生まれますので、プラスの金利を維持すれば市場金利の変動は小さくなると考えられます。』

??????????????????最近のジャパンの短期市場の金利の動きをご観察頂きたいのですが。

『これにより、中央銀行は市場金利を大きく変動させることなく銀行間市場に十分な流動性を円滑に供給し、バランスシートを拡大する量的緩和政策をし易くなるという利点があります。』

さらに何を言っているのか判りません、というか付利金利をプラスで維持しているのは「超過準備保有のインセンティブを与えることによって」中央銀行のバランスシート拡大をしやすくなることであって、白井さんの言う説明は超意味不明なんですけどねえ。

『その一方で、マイナス金利で期待される効果として、為替相場の減価や金融機関の貸出金利の低下等を期待する見方があります。この点、例えば、デンマークでは大量の資金流入に直面した際に、ERM IIの下で対ユーロの固定相場を維持するために、中央銀行のCDファシリティにマイナス金利を適用(2012年7月〜2014年4月)しました。その結果、自国通貨を減価方向に戻して、固定相場が維持される効果が得られています。他方、貸出金利は殆ど下がらず、貸出額はむしろ低下しています。』

なんか小国の話とECBの話がごっちゃになっていますなという所で、デンマークの場合はそもそも通貨をユーロにペッグしているから固定為替維持する為に金利でアクロバットな事をしないといけない場面が生じるという話でしょうと思いますし、マイナス金利に関しては「貸出金利の低下」よりは「貸出に回させる(という説明も妙だが)」という話でしょと思う(マイナス金利適用は金融機関に対するペナルティでもあるので、ペナルティ部分のコストを顧客に転嫁する可能性だってあるんだし)のですけれどもねえ。

でまあ何ですな、白井さん「ワタシの勉強の成果」の説明をしたいのは判るのですが、枠組みの話の説明が怪しい点も勘弁してやるとしましても、オペレーショナルな部分に関する説明が上記のようにハチャメチャというか無理解モードな訳でして、まあ確かにオペレーションの部分って実務を触っていないとワカランチンな部分が多々あるので間違える部分もあろうかと存じます(それにしては何年も審議委員やっててこの理解かよというのはありますが)けれども、白井さんに審議委員として求められている能力はオペの細かい話では無くて、もっとこうマクロな話とかを求められて審議委員になっている筈なのでして、そっちの話じゃなくてオペの話(しかも盛大に間違え)をするとか、思いっきりこうやっている事の方向性がおかしいというかゼークトの言う(自粛)な働き者みたいなアレ感を感じてしまうのですけどねえ。



・最早だんだん何だか判らないのですがここの説明もよく判らん

本文9ページの小見出し『中央銀行によるマクロプルーデンス政策への関心の高まり』という所ですが。

『こうした物価の安定と金融の安定のトレードオフから示唆されることは、中央銀行に十分な政策手段を付与しないまま金融政策に複数の目的を当てることには潜在的な問題をはらみ得るということです。そこで、金融不均衡が高まっている際に、中央銀行が採り得る「最初の防衛線」として考えられるのがマクロプルーデンス政策手段の活用です。』

ティンバーゲンルールの話をしたいのかも知れないが、「十分な政策手段を付与しないまま金融政策に複数の目的を当てる」というのと、金融不均衡が高まっている時に最初の防衛線でマクプルを利用するというのは別の次元の話ではないかと思われますが、その後は「ねえねえこんなに知ってるのよ」という話なので引用を割愛します(−−;



・本文11ページから先の部分が盛大に意味不明な点について

シンガポーでの講演だけにアジアの金融政策の話をしているのですが、その話をしている本文11ページ以降の部分がこれまた盛大に意味不明な作りになっています。

『3.アジア・太平洋地域における金融政策運営の変化』というお題の部分ですけど、ここの本文が全面的に違和感ありまくりな内容ですが、どうも色々とおかしい話をしているのですが、もはやツッコミにも疲れてきますので誰か細かくツッコんでちょという所です。

『次に、アジア太平洋地域に話題を移します。1997-98年に東アジア経済危機が発生して以来、多くの中央銀行はドル固定相場制から移行し、それに合わせて金融政策の枠組みも変化しており、金融政策運営については域内である程度の収斂が見られています。ここで5つの共通点を指摘いたしますと、(1)物価安定の重視、(2)先進国・地域よりも柔軟なインフレーション・ターゲティングの運営、(3)より柔軟な為替相場の容認、(4)資本流入局面での低金利政策、(5)金融安定の維持を目的としたマクロプルーデンス政策の積極活用、を挙げることができます。以下、それぞれご説明いたします。』

ということで以下延々とダラダラとした説明が7ページほど展開され、その後今後のアジアの金融政策の展望という話をしているのですが、どうも成熟経済(=先進国)の金融政策の話をそのまま成長経済の金融政策の話に当て嵌めて説明しているっぽくて、いやあの経済の置かれている状況が全然違うのに何で成熟経済における金融政策運営に関する話をアジア成長国の金融政策運営に敷衍するんだよというところではあります。

そもそもインフレターゲット云々という前に新興国の場合は為替がペッグなりフロートペッグなりなっていたりするので、通貨政策が金融政策に直結する話ですし、あと成長経済において重要なのは資本フローの管理というか調節であって、成熟経済みたいに資本フローが自由という訳ではなく、資本フローの管理もまた経済政策のキモという経済なので、インフレターゲットが柔軟云々とか意味判らんわという感じなのですな。しかしどこをどう突っ込んで良い物かよく判らんので大滝秀治風に「お前の言ってることはわからん!」と申し上げて終了する事とします。

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2014/06/03

○生産性は無いが白井審議委員VS記者の怪獣大戦争を鑑賞しましょう

昨日の続き。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405d.pdf

昨日引用した超長い質問(ただし良く整理されている)と超長い答え(だいぶハチャメチャ)の続きですが、まあ説明が全然噛み合っていないという事で更に砲撃は続く。なおこの記者様におかれましては前回の金懇の際も砲撃を加えていましたが、今回はその砲撃が十字砲火状態になっておりまして誠にワロタとしか申し上げようがありません。

・日銀が出さないからアタシも出さないとは許さん&2年で達成しなくて良いとはどういう事やという砲撃

なお昨日の駄文をもう一度確認あるいは上記URLの4ページから8ページをご覧になってから以下の砲撃を確認するのが吉。質疑応答の8ページめ半ばから。

『(問) 最初の質問について、今年末までしか示していないマネタリーベースの残高見通しを、何故来年以降もお示しにならないのかというふうに聞いた訳です。』

先ほどの答えは答えになっていないキタコレ!

『日銀が示していないから示さないというのはある種、これは鶏と卵と言いますか、白井委員ご自身が1 票持っていらっしゃる訳であって、白井委員が属される政策委員会が政策を決める訳でいらっしゃるので、日銀と白井委員が別人格であると語られるのはちょっとおかしいと思います。』

「ちょっとおかしい」キタコレ!!!

『つまり、私が言いたいのは、何故そういうふうな主張をされないのかということで、主張して提案しないのかということです。』

ワロタ。

『もう一つ、何が何でも2 年で絶対に2%を達成するという訳ではないとおっしゃいましたけれども、少なくとも我々が黒田総裁がおっしゃっている話を聞く限りにおいては、そのように主張されていると思います。白井委員はそうでないとおっしゃるのであれば、何故それに対して黒田総裁、あるいは、日銀の中心的な政策・考え方に反対しないのかということです。』

(;∀;)イイシツモンダナー

さてそのお答え。

『(答) 1 つ目の質問は、これは色々な考え方があると思いますが、私は今の2016 年度までの見通しを立てるに当たり、「量的・質的金融緩和」の継続は必要だと、その前提の上でないと見通しが立たないと思いましたので、それを明記しました。更にその具体的な内容を申し上げるかどうかも考えましたので、ご質問の趣旨は分かりますけれども、それは日本銀行が明確に示す際に、私の見解を申し上げます。』

これは日銀事務方が答えの日本語の意味をどうしても理解できなかったので逐語でアップしたと見た、つーか俺も判らん。

『2 つ目の2%を何が何でも実現するということが黒田総裁のご意見かどうかは黒田総裁にお伺い頂きたいですが、私自身の理解では、何が何でも実現するというよりも、2%を無理して達成して、その次の年に出来なくなるというようなことは避けると、つまり安定的に実現することが最大の重要目標ですから、その中で無理なく実現していくことだと思っています。』

まず根本的に間違っているのですが、日銀が今言っているのは「2%の物価安定目標」を「2年を念頭に出来るだけ早い時期に達成する」という話であり、サステイナブルでは無い2%のアクチュアルの数値を2年でヒットさせるとは一言も説明していない(確かにその部分を曖昧にしている面はあるが)訳でございまして、しかもまた「無理なく」とか言っていますが、そういう「グラデュアリズム」の白川ドクトリンは否定してデフレ均衡からのジャンプを目指してQQEを打ち込んだ訳で、こういう説明はそもそものQQEの基本理念から相当程度逸脱している訳で、何をゆうとるねんこのオバハンとしか申し上げようがありません。

『ですから、私は、無理して多大な負担を家計や企業にかけてするということではないと理解していますし、またそういう理解で常に自分の考えを申し上げています。(以下割愛)』

で、その話を企業や家計へ負担とかいうフレーズで逃げ口上を図るのが実にこう姑息です罠と思うのですけれどもねえ。均衡からの脱却を行うには良くも悪くも何らかの摩擦が起きる筈なんだが。

なお、以下割愛としているのは何故かこの先に物価見通しの話をして「だから見通し期間の終盤に掛けて物価が2%に向けて上昇する」という聞かれもしない説明をしておりますので割愛。


・ねえねえアタシがやったのよアタシがやったのよに冷や水ワロス

次の質疑。

『(問) 3 ページのところに言及されている、1 月から白井委員が反対意見を表明されてきた所得・雇用の部分についてですけれども、ここによると展望レポートの中にも消費税引き上げの影響という中で消費マインドの変化とか所得・雇用について言及されているので、敢えて反対を示さなくてもということだったと思うのですが、ただレポートをみるとあくまで一般的な言及に止まるようにも見えて、この程度の認識の上で中盤頃に達成するという見通しを出されているということについて、改めてご見解を伺いたい。』

ワロタ。

『また、今回の挨拶要旨でも下振れのリスク要因を引き続き意識する必要があるというようにおっしゃっていますが、特に雇用について人手不足ということが言われ始めているのですが、実際に本当に雇用の状況が改善されているのかどうか、下振れリスクについて特に消費・雇用というところについての認識を改めてお聞かせ頂ければと思います。』

ニヤニヤ。で、答えですがこれがまた無用に長い上に内容が散漫でまとまっていないので、引用する方としてもどうやって一部引用するのか非常に難しい。

『(答) まず私が1 月から4 月まで公表文に対して反対表明をしてきた理由は2つあります。私は去年の4 月に実は1 回、金融政策決定会合で議案を一旦出しています。その1 つの理由は、当時はまだ消費税率引き上げについて国民の方で十分にご存知ない方もいらっしゃるようだったので、今年の4 月に消費税率が引き上げられると、急に物価が上昇してサプライズとなり、もしかしたら消費が急減するリスクがあるかも知れない、あるいはもし消費税率引き上げが周知されたとしても実質所得が目減りすることによって消費が減退する可能性があるのではないかと考えたのですが、そうしたリスクに対して、去年4 月の展望レポートの書きぶりは非常に少ないのではないかと思い、議案を出しました。』

昨年4月の展望レポートって全般的にシンプルにする中で織り込んでいる筈の消費税率引き上げの影響に関して何でまた提案するねんという件ですね。

『私の考えではこうした私の懸念も反映され、去年10 月の展望レポートでは大変詳しくこの辺について書かれています。その時の展望レポートでは、経済の見通しの下振れリスクとして、「家計の雇用・所得動向」と、「消費税の影響」の2つに分けて書いています。』

ねえねえアタシがやったのよですかそうですか。単にベースアップの時期と消費税の時期が近づいてきたのと税率引き上げが確定したからじゃないですかねえ。まあいいけど。

『これはよく読んで頂きますとお分かりのように、1 つに纏められる内容ですが、いずれにしても家計の雇用・所得ということを非常に重視していました。』

???????????????

『それにも拘わらず今年1 月の公表文からは当面のリスク要因として、その部分にあたる記載がなく、海外の動向だけが書いてありましたので、それはどうなのかなと思い、皆様の関心もそこに集中しておりましたので、雇用・所得の改善ペースは書いた方が良いのではないか、というのが1月からの私の反対の趣旨でした。』

まあその時点で既にベースアップがどうのこうのという話は出だしてましたけどね。

『こうした私の懸念も反映していると考えておりますが、4 月の展望レポートでは、10 月の展望レポートで2 つに分けて記載していた当該部分を1 つに纏めたものと私は理解しておりますが、引き続き「消費税率引き上げの家計支出への影響は、その時々の消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得るため注意が必要である」と明記されたのです。』

えーっとだからそれは雇用所得の下振れ懸念にリスクウェイトを置いた表現とはちゃいますがなと思うのですけれども、何で「当面のリスクは低くなったので提案を下げた」とか言えないんでしょうかねえ。何という意地っ張り。

『私自身が今まで重視していたのは、家計サーベイ調査によると、去年の末から一貫して消費者マインドは悪化し続けているということと、今のところ先行きの収入が上がっていくという期待が確認できないということです。4 月の展望レポートには、消費者マインドという新しい言葉も入りましたし、私の懸念が反映されたと思っています。そこをリスク要因として、日本銀行もみているということが確認できたというのが第1 点です。』

とまあここまでで第1点というのがもう泣ける訳ですけれども。

『もう1 点は、どれくらいのベアの上昇になるかが、次第に分かってきたこと、今年の夏はボーナスも対前年比で上昇が見込まれること、それから公務員の給与減額措置が終了することもあって、名目賃金は上昇の方向を向いていることから、足許ではどちらかというと、さほどリスクとしては大きくないのかなと、思います。(以下割愛)』

で、その後にやってやっと現実の事象に対しての認識変化の話をするというのがもう何だかねという感じで、これ逆順に説明してたらまだ説得力があるのですが、明らかにまずは「自分の考えが反映された」というアタシがアタシがというのが先に出てくるから何じゃこのオバハンという話になる訳で、もう少し物の言い方を考えたらちったあ話を聞く気も起きるのですけどねえと思うのでありました。


・2%の物価安定目標の定義はどうなっていますねんという件について

でまたその次。

『(問) 今のご発言をお伺いしておりまして2 点ほどお伺いします。まず、委員の中で、いつ2%を達成すべきか、あるいは達成するであろうという見通しに違いがあると、今の段階で追加緩和は必要かという議論がうまく噛み合わないのではないかと思われます。』

うむ。

『もう1 つは、何が何でも2%ではないと、それと無理なくということを強調されました。そしてコミュニケーションの大切さもおっしゃっている訳でして、もし分かり易いということでは2%がピンポイントではなくて、ある程度レンジを持つべきだということで数字を出しても宜しいのではないでしょうか。もし出さないにしても、白井委員の中で2%というのは何%から何%というレンジが想定されているのでしょうか。』

まあこれは白井さんの説明が判りにくいというのがあって、恐らく白井さんとしては「目標数値として掲げる安定目標は2%のピンポイントであるが、実際の運営に際して常に2%は無理だから、そこは安定的にその近辺で推移するのが妥当である。ただしそこもレンジで示すとそもそも目標を幾らで置いているのかに対して解釈の幅が生じ得るからインフレ期待をアンカーさせる為には2%のピンポイントで示すのが重要」という話をしたいのだなあというのはこの会見とか講演をネタにしようと思って私も一回読んだだけでは何が何だかワカランチ会長で都合7回位は(頭を抱えながら)熟読した結果そういう事じゃないのという認識に至った位なので、そらまあ質疑も噛み合わない訳でして・・・・・・・・・・

『(答) まず、最初の2%を達成するという見通しと追加緩和がかみ合わないということですが、私がコミットしているのは昨年1 月の、2%の「物価安定の目標」の実現です。政府とそれぞれがやるべきことをやるという前提の下で、2%の「物価安定の目標」の実現に最善を尽くすことにコミットしております。それで、それに相当する時間軸の表現は何かといえば、昨年4 月4 日の公表文の「『量的・質的緩和』は2%の『物価安定の目標』の実現を目指し、これを安定的に持続するのに必要な時点まで継続する」というところです。これが最も重要だと思っています。その上で、もちろん出来るだけ早く目標は実現した方が良いですし、インフレーション・ターゲティングを採用している国は通常2 年程度というようにしていますから、そういう気持ちに変わりはありません。(以下割愛)』

・・・・・・・・悪文にも程がある答えでございますわな。なお以下は経済物価状況と見通しの話をまた聞かれもしないのにしているのでその部分は割愛。

なお、その中で金融政策に関してはこんな話もしているのだがマジ意味不明。

『(先ほどの割愛部分の続きになります)もしかしたら今私が想定しているようにならない可能性が出てきた時には、企業や家計に多大な負担を与えることなく無理なく2%を達成し、その後に安定的に実現するという見通しが変わる可能性があります。その時にどういう金融緩和政策が必要かについては、当然見直す必要が出てくる訳で、その中でもし追加緩和をすることで、何らかのプラスになるのであれば、私は否定しないと言いましたが、あくまでも、無理なく2%をまず達成し、そして安定的に実現するという道筋が大事なので、その中で金融政策として何が出来るかということを考えていくべきだと、昨年からずっと考えており、そのような情報発信をしております。』

ネタの為とは言え、この政策インプリケーションが1ミリも存在しない質疑応答を都合7回だか8回読み直す自分の根性を褒めてやりたい(自画自賛)。

『レンジに関しては、私はかつて意見申し上げたのですが、例えばイギリスとかカナダとか先進国で、インフレ目標を明確にしているところもありますし、インフレーション・ターゲティングを採用していなくても、類似したような政策として、2%のロングラン・ゴールを提示しているアメリカもあります。2%あるいはその近傍という表現をしているECBもありますように、各々がだいたい2%のあたりで目標を立てている訳です』

ということでレンジの話ですけどね。

『だからといって、そういう先進国の物価上昇率が毎年2%かというとそうではありません。これは前に黒田総裁もおっしゃったと思いますが、物価は、日々燃料価格が上がったり天候の変化があったりして変動し得る訳ですが、長い目で均してみると、平均して2%ぐらいになっている、というのがインフレーション・ターゲティング、あるいはそれに類似した政策をしている国がやっていることです。そういう社会を目指そうと言っている訳ですから、そこでわざわざレンジにする必要があるのかと言えば、今の段階では必要ないと思っています。』

つーことで、この質疑にしたって最初にこのレンジの話をすればこの部分は先ほど私が申し上げた解釈をもうちょっとくどくど説明しているだけの事なのでして、その前の謎の説明が無駄にも程があってそのせいで会見要旨が全般的にお笑い怪獣大戦争になってしまうのですよね。

『まして、今そのレンジを言うことによって、私たちが去年1 月にコミットしている2%の「物価安定の目標」から、それを取り止めたいかのような、何か弱さを示す誤解を与えてしまう状況があるのであれば、レンジの採用を今検討するべきではない、と前にも申し上げたことがあります。(以下割愛)』

とまあここの説明単体では話は判るのですが、一方の2年間のコミットメントの説明が先ほどのようにオッペケペーなので結局ダメダメなんですけどね。


・何というかこう質疑が最後までかみ合わないのでした

この質疑はワロタ。

『(問) 先程と関連し、確認に近いと思うのですけれども、白井委員が見通し期間の終盤にかけて、日銀の中心的なシナリオよりもやや遅い段階で2%を達成するというシナリオでテールリスクとか突発的なリスクが発生しなければ追加緩和は必要ない、追加緩和しなくて現状の金融政策を続けていけば良いというお考えでらっしゃるのかということと、見通し期間の終盤にかけてというのは、もう少し具体的にもし時期を明確化できるようでしたら、例えば2016 年度の後半と思ってらっしゃるのか、もしくは2016 年度中なのかという辺りを少し詳しくお聞かせ下さい。』

助け船キタコレ。

『(答) テールリスクがなければ追加緩和しないのかと言えば、私は必ずしもそういうことではなく、やはり重要なのは2%の「物価安定の目標」を実現することだと考えています。』

いきなり助け船を砲撃ワロタ。

『それはどういうことかというと、2%を安定的に実現するというのは、企業や家計や様々な人達の長期インフレ予想を2%程度に安定させるということです。それがあると、例えば、現在、先進諸国の実際の物価上昇率は目標である2%を下回って推移していますが、長い目で見ると、彼らの企業や家計のインフレ予想は2%程度で安定しているので、2%に向けて戻っていく訳です。』

ホンマカイナと思うがスルー。

『日本でもそういう社会を実現したいと思っている訳で、それが大事なことなのです。2%を安定的に実現する社会を目指す上で、追加緩和をすることがプラスになるのであれば、私は否定をしないと申し上げている訳です。(時期の話に関する部分は引用割愛)』

そりゃまた急に曖昧な話を始めましたなという感じです。なお、以下まだ質疑は続きますがまあ白井さんのしょうもない説明が続きまして、その中で「無理なく」を連呼しているのが何だかなあというかあんさん誰に向かってそれアピールしてますねんという風情で、まあ困った方だというか、こういうへっぽこ質疑を満天下に公開されるのもどうかなあという感じではあります。

#以上ただの鑑賞会恐縮至極

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2014/06/02

○白井さんの講演ネタの続き&記者会見である

まずは講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140529a1.pdf(講演)

全般的に白井さんの話は無駄にくどくて長いので(お前が言うなというツッコミは却下^^)引用が無駄に長くなる(色々とカットはしますが)点最初にお詫びしておきます。

『(3)日本銀行のコミュニケーションについて』だけではなく他の部分でも「ねえねえアタシがやったのよアタシがやったのよ」というのがあちこち散見されまして、お前は何処に向かってアピールしているんだという事ですが、そこの最後の部分にこんなのがあるのが実にこう味わいのある部分でございまする。

『2%の物価安定目標の実現は、国民の理解があって初めて可能になりますので、中期経営計画で示した方針をしっかり果たしていくよう努めて参ります。』

まあその本人が色々と分かっていないんじゃネーノという点について以下ご紹介をば(−−)

・フレキシブルターゲットなのにピンポイントの達成時期に拘る理由が判りません

最初の『(2)物価の見通しと上振れ・下振れ要因』という所からですけどね。

『2015年度以降の私の見通しについては、「2015年度平均で1%半ばかそれを若干上回る程度に達し、見通し期間の終盤にかけて2%に達している可能性が高い。その後、次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく」との見方をしています。私は、昨年4月以降、「2015年度末には2%程度に近づいていく」との判断を示したうえで、「見通し期間の後半にかけて、2%程度に達する可能性が高い」とする展望レポートの中心的見通し表現の「下限」にぎりぎり収まると判断してきました。しかし、今回、新たに2016年度までの予測を示すに際し、「2%程度」という幅のある表現ではなく、日本銀行の物価安定目標である「2%」の達成時期を、明確に示すべきだと判断しました2。』

ということで見通しの記述は明確に2%の達成時期という話をしているのですが、この12行ほど先の所には・・・・・・・

『重要な点は、日本銀行は一時的に2%を実現すればよいと考えているのではなく、持続的な成長を伴いながら「2%の安定的な実現」を目指して金融緩和を実施していることです。この「フレキシブル・インフレーション・ターゲティング」の枠組みのもとで、家計・企業に対して過大な調整負担を掛けずに2%を達成するには、私は「2年」よりも長く時間が掛かるとかねてより考えています。また、そうした経路が2%を安定的に持続する社会の実現性を高めますし、望ましいとみています。この経路についての私の見解は後程お話しいたします。』

いやあのフレキシブルターゲットなのに何で見通しの所で「程度」がダメという話になりますねんと思うのですが、その後の需給ギャップとかフィリップスカーブの説明が少なくとも日銀が展望レポートで示しているような話と違いますがなという気がするんですよねえ。


・成長制約に関する話がそもそも小見出しからおかしい

最近出ている成長制約に関する話ですが、どうも「成長制約による物価の上振れは起きないでしょう」という話をしたいようなのですが、小見出しの時点でアジェンダセッティングがおかしいので説明がワケワカランのですよ。本文8ページから。

小見出しが『需給ギャップの解消は直ちに成長制約をもたらすのか』となっているのですが、そうじゃなくて今のテーマは「構造的に成長制約が低い所になっていて、その結果として需給ギャップの解消が進んだだけ(なのでそれによる物価上昇はサステイナブルではない)」という話なので、そもそも論として白井さんの説明だとアジェンダの置き方がおかしい。

『さて、わが国の需給がほぼバランスしているとなりますと、それがあらゆる産業・企業において直ちに労働や設備を逼迫させ、経済成長を阻害することになるのでしょうか。まずは短中期的な視点で、この問題について考えてみたいと思います。』

順番が逆です。

『まず、需給ギャップが概ねゼロ%近傍にある状態とは、需要量が単に「過去の長期平均的な供給力」とバランスしていることなので、それが直ちに成長制約に繋がる訳ではありません。』

いやだから問題意識は逆だと小一時間問い詰めたいのだが、以下これをベースにああだこうだという話をしていて、結論部分はこうなります。

『以上をまとめますと、わが国の潜在成長率は世界金融危機後に低下しましたが、その一因は景気後退にあったと思います。景気後退局面での潜在成長率の低下は他の先進諸国でも共通して見られます。今後は潜在成長率が1%程度に向けて緩やかに上昇していくもとで、それを上回る経済成長が続くと予想しています。この間の、需給ギャップは今年度夏頃から来年度を通じて改善を続け、その後もプラスで推移するとみています。』

構造的成長制約が発生して潜在成長率が低下しているかもしれません、という問題意識に対する説明になっていない説明が続いた後にこの結論ですとそもそも説明になっていません罠。なおこの次に『需給ギャップが示唆する中長期的な課題』という更に良く判らん部分があって、構造改革が重要みたいな話をしているのですが、だったら構造的な供給力の低下に関しての話をしないで説明をした前段はナンダッタンダという話になる訳で、この人の説明も何ちゅうかパーツパーツと全体の整合性がおかしい。


・フィリップスカーブのスティープ化だけでは安定的な2%にならんだろ

その次が『4.需給ギャップとインフレ期待の物価・賃金との関係』という所で、『需給ギャップと物価の関係:フィリップス曲線について』という説明も何だかなあという感じです。

『まず、CPI(除く生鮮食品)をベースとしたフィリップス曲線を見ると、2012年10−12月期以降に急速に「勾配のスティープ化」と「切片の上昇」(曲線の上方シフト)が生じているように見えます。』

ということで、展望レポートの図表でも出ている話なのですが、直近の特殊要因混じりのプロットで説明というのも如何なものかという感じですな。

『この内の勾配のスティープ化に注目しますと、これは同程度の需給ギャップの「変化」に対して、従来よりも物価が高まり易い状況を示しています(切片については後述します)。これは、企業が販売価格の引き上げや価格転嫁をし易くなっていることを意味します。ただし、足許で起きている勾配のスティープ化の動きは、ごく短期間に大幅な円安が起きたことから輸入物価が急ピッチで上昇し、エネルギー価格やその他の物価に跳ね返ったことが主因と考えられます(図表13)。』

ふむ。

『他方、CPI(除く食料・エネルギー)をベースとしたフィリップス曲線では、勾配のスティープ化はあまり見られていません。CPI(除く生鮮食品)を構成する品目の約3割のウェイトを占める食料・エネルギーが含まれていない分、円安の影響が限定的になるからです。このベースで見ると、2%のインフレ率の達成には今後同曲線の勾配が一段とスティープ化することが期待されますが、それにはまだ時間がかかるように思います。』

ということですが、スティープしてもそれは需給ギャップに対する価格の感応度が高まったという話なのですから、景気が交代したら簡単に物価がコケてしまうという事を意味しませんかねという気がするのですが・・・・・・・・

『フィリップス曲線は、1990年代末から勾配がフラット化したことが知られています。その要因のひとつとして、「価格改定頻度」の低下が挙げられます。企業にとっては、景気が低迷する中、競争相手が設定する販売価格や顧客の低価格志向に配慮して、生産コストが上昇しても販売価格の引き上げが難しい状況が続いてきました。今後、景気回復が続き緩やかなインフレが定着していくなかで、価格の改定頻度が高まり、同曲線の勾配は徐々にスティープ化していくと考えています。』

ということで、どうもスティープ化の話をああだこうだとしているのですが、フィリップスカーブがフラット化したのはもしかしたら均衡に向かっていく過程で、その後デフレ均衡になってしまったのでフラット化が加速したという話じゃないのと思う次第で、スティープしたのはデフレ均衡からの脱却が出来たというだけの話じゃないのかねという風に思うのですけどねえ。


・なお物価が上昇する理由が良く判らん

『物価上昇率が2%に向けて緩やかに上昇していくと考える理由』という小見出しが本文13ページ以降にあるのですけどね。

『 まず、中長期の予想物価上昇率の動きは全体としては上昇していますが、このところ横ばいを示す指標も見られます。とくに家計の長期予想物価上昇率はずっと横ばいで推移しています。今後、インフレがしっかり社会に定着し、同時に2%の物価安定目標への認識・理解が高まるならば、緩やかに上昇していくとみています。』

バックワードルッキングは判るが認識云々とは??

『 しかし、消費者にとって、物価が継続して上昇していく状況に慣れるには時間がかかると思われます。(消費税の影響を含む)CPIでデフレートした実質賃金が低下し、年金給付額も物価の動き対比では抑制的に推移すると見込まれる中で、日本銀行の「生活意識アンケート調査」でも支出において「価格の安さ」を重視する傾向が依然として示されています。家計の成長・所得期待が高まり、財政・社会保障制度に関する将来不安が緩和されるもとで、緩やかなインフレが徐々に容認されていくと考えています。』

それは金融政策でどうにかできる話ではないような気がするのだが・・・・・・・・・


・続いて会見であるが・・・・・・・・・・・

会見なんですけどね。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1405d.pdf

途中から何かオモシロ対決状態になっていまして、白井さんの説明が酷いとしか言いようがないのですが、質問する方もいじめっ子状態になっているので中々アレ。

でですね、白井さんの説明が酷いというか訳判んない状態になっているのはこの「要旨」を書いたスタッフの皆様におかれましても恐らく白井さんの説明というか考え方がよく伝わっていないんでしょうなあという風に思うのですよ。

つまりですね、会見「要旨」でして黒田さんの会見要旨を見ても判るように、別に発言している事を逐語掲載している訳ではなく、発言の趣旨を踏まえて丸めている部分というのも当然あるのですけれども、この会見要旨を見ておりましてまあ白井さんが何を言いたいのかさっぱり判らんという部分が散見される次第で、これはまあ聞いている日銀スタッフも????と思いながら話を聞いているに違いないと思ってしまいましたですよ、いやマジで。

で、今回の質疑応答の中では4ページ目から金融政策に関する質問があるのですが、最初の質疑だけで8ページ目まで逝くという代物でして誠にこうアレです。とりあえずその部分の鑑賞会。

質問がまたクソ長いのですが。

『(問) 2 つお聞きします。まず1 つ目は、挨拶要旨の4 ページで「量的・質的金融緩和」の継続期間に関して、「2%が安定的に持続すると判断するには、2 回目の消費税率引き上げ後の動向を確認する必要がある」とおっしゃっています。その後、ご自身の経済・物価見通しというのは、「量的・質的金融緩和」が「2015年以降も継続されるということを前提にしています」とおっしゃいました。』

ふむ。

『2 回目の消費税引き上げ等の具体的なイベント、経済的なイベントに関連付けて「量的・質的金融緩和」の継続期間ということに言及されたのは、おそらく政策委員の中でも初めてではないかと思います。今のところ日銀は今年末、2014 年末までしか政策の手段であるマネタリーベースの残高見通しを示していません。白井委員のように来年以降も続けると、しかも来年10 月に実施される2 回目の消費税率引き上げの影響まで見なければいけないとおっしゃっているということであれば、来年以降のマネタリーベース残高の見通し等も示すのが筋ではないかと思います。あるいは、示すよう政策委員会の議論の中で提案するなり促すなりということが行われて然るべきではないかと思うのですがいかがでしょうか、というのがまず1 点です。』

つまり見通しと整合的な金融政策ならば2014年末以降の数値を出さないのは変だろという話。

『もう1 点は、日銀の中心的な見通しとしては、消費者物価指数前年比が目標である2%に達するのは、2016 年度までの見通し期間の中盤頃というふうになっている訳ですけれども、白井委員の見通しは、4 ページの初めの方に書かれているように、それよりもほぼ1 年後ずれするという見通しでいらっしゃって、中心的見通しに対して反対意見までお出しになっていらっしゃいます。黒田総裁は、かねがね日銀の中心的見通しがずれてしまう場合、見通しから経済・物価が外れていく場合には、躊躇なく金融緩和を行うというふうにおっしゃっています。白井委員のこの見通し自体は、中心的な見通しとは随分かけ離れている訳でして、既にこの中心的な見通しから外れているという見方が妥当だと思います。だとすれば、なぜ追加緩和というものを主張されないのかというのが2 番目の質問です。』

最初の質問と繋がっていますが、更に踏み込んでいまして「2年で達成」という事に対して2年で達成しないという見通しなら追加緩和するのが筋じゃないかという質問ですな。

『もともと去年4 月4 日の「量的・質的金融緩和」導入時、2 年で2%を目指すということに白井委員も賛同されていらっしゃいます。そこで、2 年で2%が難しいというにも拘わらず、何故追加緩和をしないのかということです。』

イイシツモンダナー。

『去年4 月4 日に木内委員は2 年で2%に反対されています。賛成されていらっしゃいます佐藤委員は、賛成はしていますけれども、これ以上の追加緩和は副作用が大きいとの考え方でいらっしゃいます。したがって追加緩和は必要ないと、お二人ともそういう考えだと思います。』

展望レポートに反対した他の2名の論点整理までするとは何という親切な質問。

『白井委員は去年4 月4 日の2 年で2%には賛成していらっしゃいます。それにも拘らず追加緩和を主張されないということは、佐藤委員と同じように追加緩和の副作用が大きいというお考えなのか、あるいは、去年4 月4 日の「量的・質的金融緩和」導入時の2年で2%という約束は、それほどしゃかりきになって守る必要のないようなものであるというふうにお考えなのか、その辺りをお聞かせ頂きたいと思います。』

ということで、「白井さんの見通しなら今の金融政策の枠組みなら追加緩和を主張するか、2年で目標達成の旗を降ろすのが筋ではないですか」という質問をこれでもかと逃げ道をふさぎながら質問するという鬼質問で質問だけでお腹一杯。

で、その答え。

『(答) 非常に沢山のご質問を一気に頂いたと思いますが、私なりに理解したところから順々に説明させて頂きたいと思います。』

本当は沢山の質問じゃないんですけどね。まず物価見通しの話ですけど結論がワロタ。

『(途中だいぶ割愛)そのような間接的な影響も踏まえて、私たちが、2%が安定的に持続していると判断するには、消費税率引き上げが終わった後の影響をみる必要があり、それは2016 年10 月からなので、そこを見極めた方が良いのではないかということを申し上げた次第です。』

だそうだが世の中には消費税だけじゃなくて色々な「一時的要因」がございますので一生見極めてろとしか申し上げようがない。

『それから、今回私が2016 年度までの見通しを出す時に、「量的・質的金融緩和」の継続を前提としているのならば、なぜマネタリーベース等の残高の増加額なりを示さないのかとのご質問だったと思います。ご質問の趣旨は、私自身も理解できます。』

ほほう。で、この先がもう何が何やらワカランチ会長なのですよ。

『しかし、今私たちは、対外的には2014 年12 月までのマネタリーベースの増加額と、それを達成するための国債を中心とする資産買い入れの増加額を明確に示していますが、2015 年1 月以降のことはまだ明確に対外的に示していません。したがって、私は今回は明確に示していませんが、私の個人的な考えとしては、適切な時期に明確にすることになるのではと思っております。』

???????

『私は、これまでは2015 年度末にかけて2%程度に近づいていくというように申し上げてきて、2%に達するというようにみていると申し上げたことはないです。』

2年で2%は???

『今回2016 年度までの見通しを新たに出すにあたり、私はその辺を明確にする必要があると思い、「見通し期間の終盤にかけて2%に達している可能性が高い」という表現は、従来からの見方が変わった訳ではないですが、より明確に示したということです。』

???????ですが、この先の日本語が日本語なのに何が何だか更に判らなくなります。

『この私の見通しを立てる際に、「量的・質的金融緩和」がストップしているということは考えづらく、──もともと私たちは、去年4 月4 日に2%を目指し、それを安定的に持続するのに必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続するということに合意しておりますから──、その前提が私の見通しに必要であるため、今回明確にしました。それがどういう金額なのかどういう内容なのかについては、先程申しましたように、まだ日本銀行として対外的に明確にしていない以上、私自身の考えはありますが、それを明確にする時期ではないと判断しました。日本銀行が明確に示す際に、私自身の見解を申し上げたいと思っております。これが1 つ目の質問だったと思います。』

意味が掴めないのでスタッフがヤケクソでそのまま逐語で出したんじゃないか疑惑ががががが。

『2 つ目についてですが、私自身はまず、昨年1 月の2%の「物価安定の目標」を実現するために「量的・質的金融緩和」を通して最大限の努力をすると、その際に政府と共同声明を出しておりまして、政府には成長戦略や中期的な財政再建を確りやって頂く下で、2%の「物価安定の目標」の実現に最大限の努力をすることにコミットしております。その上で、昨年4 月4 日の公表文をご覧頂ければ、──少しそこに誤解があると思いますので申し上げますと──、2 つの時間軸表現があります。』

出たよ謎の2つの時間軸。ということで途中を飛ばしましてですね。

『(途中割愛)。但し、我々は、その2%の達成を目指すときに、他のインフレーション・ターゲティング国と同様、フレキシブル・インフレーション・ターゲティングというものを採用しています。フレキシブル・インフレーション・ターゲティングとは、何が何でも、絶対に2年で2%を達成するということではありません。』

ほほう。

『どんなインフレーション・ターゲティングを採用している国も同じですが、無理なく、経済成長の持続性も考えながら、最終的に物価安定目標を達成するというのがフレキシブル・インフレーション・ターゲティングですから、企業や家計に過大な負担を与えることなく達成するという意味で「2 年程度」に合意している訳です。』

今回の白井さんの説明では何度も「無理なく」というのがあるのですが、そもそもQQEというのは金融政策のレジーム転換という「無理」をする事によってデフレ均衡状態を脱却させて、インフレ期待を持ち上げる事によって概念的に言えばフィリップスカーブの上方シフトを行うという話で、そもそもこの「無理なく」という話がQQEの概念と異なるでしょと思うのですけどねえ。

『ですからもともと期間は「2 年程度」です。私は当初から、「程度」には幅をもってみるという意味で賛同しております。また、無理なくやるべきであるという意見をずっと伝えてきましたし、今もそのつもりです。ですから、無理なくやるという視点から、2%が達成している可能性が高いとみるのが、私自身は予てから申し上げているように、見通し期間の終盤にかけてというところに当たると思っています。』

いや3年は2年程度と違うだろと思いますが。

『その上で、追加緩和というのはまた違う話だと思っています。追加緩和というのは、人それぞれで違う意味で使われているようにも思いますが、もし、今年のマネタリーベースに上乗せするという意味であれば、私自身は、今申し上げている見通しを示している訳ですけれども、その見通しが今の私が持っている全ての知識を持ってみると、2%を達成しているという可能性が高いという時期は、見通し期間の終盤というふうに思っています。』

で?

『そのうえで、この見通しが、もし下振れる場合、この見通しが仮に何か想定違いなどがあって、下振れる場合は、その時はどういう原因かをまず追究しなければいけないと思います。その下振れる理由が、何らかの突発的なテールリスク的なことが起きているのか、あるいは、私たちの見通しの前提そのものが何か違っていたのか、色々な事情があると思います。それを見ながら、あくまでも重要なのは、この2つ目の時間軸の表現である、2%を安定的に実現するのに必要な時期まで金融緩和をするということです。』

という事ですがそれ「2年で2%」と違いますがな。

『これが昨年1 月に私がコミットした2%の「物価安定の目標」の実現ですから、これが最も重要な訳です。この2%を無理なく実現し、それを安定的に持続するために必要なシナリオを考えていますから、それがもし下振れる場合があれば、その時には金融政策の内容の再検討が必要な訳で、その時もし追加緩和によって、その見通し、──2%を無理なく実現し、安定的に持続するのに必要な道筋──、にプラスになると判断すれば、私はそれを否定するものではないと思っています。私は、1 月のシンガポールの講演でも申しましたように、追加緩和は、見通しが下振れる場合には検討し得るが、その際に、企業や家計に無理な負担が掛からずに2%を安定的に実現できるかとの視点で金融緩和を考えるべきだと、そのような文脈において否定するものではないと考えています。』

最後の方は質疑が全然噛み合っていないのが判るかと思います。なお以下延々と応酬が続きますが以下明日以降に。

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2014/05/30

○白井さんの講演だが「頭の中が異次元緩和」というフレーズを思いついてみました

なお、もちろん特定の誰かをさして異次元緩和と申し上げている訳ではない点について皆様におかれましては誤解の無きように節にご理解ご支援の程賜りますよう宜しくお願い申し上げます(棒読み)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140529a1.pdf
わが国経済・物価情勢と金融政策:マクロ的な需給バランス、物価、賃金の関係について

上記の「紙」が出るまではこちらの鑑賞会がメインイベントかと思っていたのですが、「紙」の鑑賞会の方が面白いのとついこちらがおまけ状態になってしまっているのが残念無念、つーか今日間に合わなかったら会見ネタと合わせて週明けに。


・「私の言った通り」がやたら多い上に本当に言った通りかよという大変浅ましい件について

まあ何ですな、今回のこの講演ですけど特に前半部分の所でやたらめったら「私ガー」を連発しているのが非常に見苦しい所でございまして、しかもそれがその通りだったらまだ良いのですけれども、どう見てもそれはこじつけというのが散見される所がもう残念というか浅ましいレベルに達しているのであります。

一番吹いたのはこちら。本文2ページのケツの所から始まります。

『なお、所得環境の評価に関して、私は本年1月から4回連続して、金融政策決定会合の「対外公表文」のリスク要因の記述に関して、反対を表明してきました。これは、先行きのリスク要因として海外要因のみが挙げられ、「国内の雇用・所得環境の改善ペース」について触れられていないことに違和感を覚えたからです。』

でまあ実際は雇用所得環境が想定以上に改善して良かったですねという話をするのかと思えばさにあらず、というのが白井大大大先生の異次元緩和な所であります。

『しかし、この私の懸念について、今回の展望レポートでは、昨年10月の同レポートの記述をほぼ踏襲する形で、リスク要因として「消費税率引き上げの影響」を明記しています。また、雇用・所得環境、物価の動向に加えて、新たに「消費者マインド」の変化によっても消費が影響を受け得ることを指摘しており、私の懸念が共有されていることが確認できたと考えています。』

どうしてこの人は「懸念が杞憂に終わって良かったですね」という話を出来ないんでしょうかねえと思うのですが、もしかすると金融政策決定会合大喜利では木久扇師匠とさゆちゃん師匠が黄色い羽織でボケ合戦をかましているのではないかと懸念される所でございます。


ちなみにこれもワラタ。本文1ページね。

『なお、輸出の伸び悩みについては、海外生産移管の拡大、国際競争力の低下、世界経済の回復力の弱さのほか、米国での悪天候による経済活動の減速や国内の駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先するといった一時的な要因も影響したとみています。この点、私は昨年10月に、展望レポートにおける景気見通しのリスク評価について、「上下にバランスしている」との議長案に反対し、輸出が想定よりも弱含むリスク等から「下振れリスクを意識する必要がある」と主張しました。結果として、この私の懸念が顕在化するかたちになったと思います。』

・・・・・・・・・はて、全体のリスクという意味では結局下振れしていないでオントラックで推移していると思うのですが、輸出が下振れしたから大勝利とか言われましてもそれ政策運営的に意味のある話なのかねと思う訳で、政策担当者として何を言っているのか全くもって意味不明ですし、これも「輸出に関しては下振れしていますが他がカバーしているので全体として下振れリスクは顕在化していませんが注意は怠れません」とかそういう話をすれば良いだけだと思うのですが、何ちゅうか自己正当化の話をしたがるとか大変にこう人間としての器(以下の部分は諸般の事情を鑑み割愛されました)。

なお、本文5ページの『(3)日本銀行のコミュニケーションについて』の部分がもう「ねえねえアタシがやったのよアタシがやったのよ」感が大変に良く漂う名文なのですが、名文過ぎて畏れ多いので引用割愛致します。


・潜在成長率の図表でニヤリ

講演のお題にもある需給ギャップに関連して潜在成長率の話が出ているのですが、ここで示している図表でニヤリである。本文7ページから。

『第一に、そもそも需給ギャップや潜在GDPの推計においては、データの取り扱いや推計方法によって生じる推計誤差が考えられます。これは、実際のGDPデータについては内閣府の「国民経済計算」から入手できますが、潜在GDPには公式データがなく、各機関や研究者が様々な労働や設備等のデータをもとに多様な統計手法で推計していることによるものです。また、推計方法に関する違いとしては、日本銀行では需給ギャップを推計してから、実際の経済成長率を適用して潜在成長率を推計する手順を踏んでいるのに対して、内閣府では潜在成長率を推計してから、実際の経済成長率を当てはめて需給ギャップを推計している点が挙げられます(図表5)4。両推計値ともやや長い期間をとれば改善を示している点は共通しています。』

『これに関連しますが、第二に、潜在成長率の推計値の違いが考えられます。わが国の潜在成長率については、日本銀行は0%台半ば程度と推計している一方で、内閣府は0.7%程度と推計しており、その分だけ日本銀行の需給ギャップの推計値の改善幅が大きく表れている可能性があります5。日本銀行の推計によると、潜在成長率は世界金融危機前後から低下を示しており、これには人口動態および既存設備の物理的な廃棄や陳腐化・摩耗による資本ストックの減少等の反映方法が影響しているように思います。』

ということで説明は淡々と普通に行われているのですが、注目すべきはこの説明の中にある「図表5」でございまして、潜在成長率の日銀推計値のグラフがありまして、これは実は展望レポートでも毎回出ているもので、先般の展望レポートですと図表40の所に該当するのですが、そこの図表40と今回の図表5を比較致しますと、図表5を見ると潜在成長率の推計値が「ゼロ%台半ば程度」という表現で想定される数字よりもどう見ても小さいです本当にカムサハムニダというのが判るかと思います(図表を張るスキルは無いですし勝手に張るのは多分イクナイと思うので図表は皆さんで日銀のHP行ってみてちょ)。

なお、展望レポートの図表40も同じ図表なのですが、長期時系列にしている関係上目盛が荒くなっていまして、ゼロ%前半なのか半ばなのかというのは一見すると誤差範囲に収まってしまう(定規を当てれば気が付くのだが)という図表の作りになっている所が日銀の卓越したプレゼンクオリティを反映しているのは言うまでもありません。

でまあそう考えますと、白井さんの話はさておきまして考えた場合、これだけ潜在成長率が低いと物価は上にも下にも振れやすくなるという話になると思う訳でして、展望レポートで示している2015年度1.9%、2016年度2.1%のコアCPI見通しっていうのは実質GDP見通しから考えるとどう見ても見通しの置きが過少じゃないか(物価がもっと上に振れないと潜在成長率との関係では整合性が取れない)という話になると思いますし、そうなるとマーケットエコノミストの皆様は夏場以降の物価上昇が進まない話をしている中で、実は日銀は物価の上振れ懸念モードじゃねえかというような話になる次第でして、まあ潜在成長率の話を前面に出して経済物価見通しを出すのは色々と問題含みのような気がせんでも無いとは思うのですけどどうでしょうかねえ。

でまあ白井さんの講演ではこの辺の需給バランスと物価、予想物価上昇率の変化をフィリップスカーブに置き換えて考えた場合どうなるのかという話をしているのですが、予想通り時間が無くなってきたので会見ネタと合わせて週明けにでも(ちなみに白井さんは予想物価上昇率がそう簡単に上がらないからフィリップスカーブの上方シフトは起き難いという見解みたいな気がします)。

なお、オラが予想通りの展開で云々の部分をもうちょっとゴリゴリとネタにしようかとも当初は思っていたのですが、置物副総裁のアレをやっていて生産性の無さに却って朝から疲弊致しましたので(−−;)何かスルー気味ですいませんすいません。と言いつつ週末の虫の居所次第ではまた疲弊上等モードになるかも(^^)。

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2014/03/06

○ところで白井審議委員の謎講演の続き

さて、他の審議委員の皆様がそういうお話をしている中で一人謎の講演を繰り広げる白井さんの講演ですが、まあ正直言ってクオリティがどうなのというのはありますがツッコミネタとしてはまあそこそこ使えるのでネタの続きである。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf(日本語版)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf(英語版)

・FRBとの比較というお話ですが・・・・・・・・・・・・

まあそもそも日本の異次元緩和でしめされている「2%の物価安定の目標を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する。量的・質的緩和は、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」というのはフォワードガイダンスじゃなくてコミットメントという話なのですが、まあそこは先日も申し上げましたのでスルーしまして白井さんの説明を鑑賞。『米国連邦準備制度理事会(FRB)のフォーワードガイダンスとの違い』という所から。

『この日本銀行のフォーワードガイダンスは、FRBが採用するものとは内容が異なっています(図表4)。第一に、FRBは、フォーワードガイダンスを金融政策の操作目標である「政策金利」に適用し、将来にわたって同金利を低水準に維持することを市場・国民に伝えています。つまり、FRBは「短期政策金利の将来にわたる低水準の維持」に関して市場・国民の予想(期待)に働きかけることで、長期金利の押し下げ圧力をかけていると言えます。また、資産買入れについては別の金融緩和手段とみなし、金利政策とフォーワードガイダンスを補完する手段と位置づけているようです。』

まあQE3を実施した後にフォワードガイダンスのスレッショルドを作ったりしてまして、後付でQE3のオープンエンドという風呂敷をどう畳むかという事を考えて「金利政策が本来の政策なのでこれがメイン」という話をしたというのもありますが、まあ資産買入は別というのはそういう話ではございます。ただし資産買入に関しても当初から長期金利(やモーゲージ金利)の押し下げ圧力という話をしていた(Taperingで金利が上がると困るから最近その話をしていないだけ)のですけどね。

『一方、日本銀行のフォーワードガイダンスはQQE全体に適用されています。金融政策の操作目標であるマネタリーベースの増加ペースが決まれば、おおよそ国債の買入れペースも決まるので、これらはある種の「不可分」の関係として扱われています(図表3)。その上で、フォーワードガイダンスによって、将来にわたってマネタリーベースの拡大と国債を中心とする資産の買入れを維持するとのメッセージを市場・国民に発信しています。つまり、日本銀行では「将来にわたるイールドカーブ全体への下押し圧力の維持」に関して市場・国民の予想に働きかけることで、長期金利の下押し圧力に影響を及ぼしていると言えます。』

うーんわけわからん。長期金利の下押し圧力に関しては物理的な買入効果の話をしていて、日銀のロジックはMBを異次元に増加させるという政策と、2年で2%達成というコミットメントを示すことによって「インフレ期待」の方を高めて「実質金利」を低下させるという話をしているのではなかったでしたっけねえ。

『第二に、日本銀行は、マネタリーベース・ターゲットを達成するための資産買入れ手段として国債の他に国庫短期証券等も買入れており、3か月物(1年物まで可能)を中心に短期の固定金利オペも実施しています6。従って、これらのオペによって短期金利にも直接的に下押し圧力が働いています。これに対して、FRBは、資産買入れは残存期間が4年以上から30年物の長期国債やエージェンシー住宅ローン担保証券(MBS)が中心で、短期金利への働きかけは政策金利のフォーワードガイダンスで実施しています。』

えーっとすいません量的緩和実施して超過準備が無茶苦茶増えたら短期の市場金利って下がるのですけれども。短期下げたくなかったら量を回収して不胎化しないとマズーなのですが。なお超過準備などに付利をする預金ファシリティーがあればある程度までの超過準備は不胎化可能なのですが、そもそも準備預金などの外側にいる人がいますので、やはり膨大に超過準備出すと短期金利は下がりますので、買入がどうのこうのあまり関係ないと思いますがねえ。

ちなみにここに6とあるのが脚注でして・・・・・・・

『6 この他、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)、コマーシャルペーパー、社債等も買入れています。また、2008 年10 月から当座預金残高の超過準備に対して0.1%の金利を適用しています。同金利は銀行間市場における取引金利のフロアーとして概ね機能しています。』

「フロアーとして概ね機能」はしてねえだろ(無かったら今頃ゼロかマイナスだから機能していない訳では無いけど)。


『第三に、長期の予想インフレ率に関する「想定」が、日本銀行とFRBでは異なっています。FRBのフォーワードガイダンスでは、長期の予想インフレ率は既に2%程度にアンカーされているとの認識が前提となっています。しかし、予想インフレ率が不安定化する懸念は皆無ではないので、金融政策運営上の関心は長期の予想インフレ率をアンカーし続けることに十分注意を払いながら、金融緩和を継続して景気の改善を図ることにあります。それに対して、日本銀行ではまだ長期の予想インフレ率を2%にアンカーさせる状態に達していません。そのため、まずはあらゆる経済主体によるデフレ志向が克服されることを促し、その上で予想インフレ率を2%に向けて安定的に高めていく手順を踏む必要があるのです。このため、フォーワードガイダンスの閾値は「2%」「安定的に2%を維持」という物価関連指標に集中しているわけです。』

うーんこのという感じですが、だからそれはフォワードガイダンスじゃなくてコミットメントであって、しかもこれを「2年程度を念頭に置いて出来るだけ早期に達成する」というのが重要なコンポーネントになっている筈で、その背景には粘着性の強い低いインフレ期待および実際の低インフレ状態というのを脱却する必要があるという話であって、「2年(早期)で」達成するというのがQQEの重要なコミットメントになっているのですけどねえ。


『第四に、FRBのフォーワードガイダンスには失業率の閾値が含まれています。FRBの場合には、法令上、物価安定と最大雇用の実現という2つが責務とされているからです。他方、日本銀行の主たる目的は物価安定の実現にあるほか、失業率自体は諸外国と比べて低水準となっています。既に2013年12月には3.7%まで低下しており、世界金融危機前に記録した近年最低水準である2007年7月時点の3.6%に近づいています。従って、閾値として雇用関連情報を示す必要性は低いと考えられます。正規社員と非正規社員の間での賃金・その他処遇の格差問題やより柔軟な労働規制を求める企業の要望が聞かれるのも事実ですが、これらは構造的な性質を持ち、金融政策の領域を超えています。』

まあこれはどうでも良いですけれども、何だかねというのはじゃあBOEとかどうでしたっけという話でして、結局の所米国や英国のフォワードガイダンスというのは「中長期的なインフレ期待がアンカーされている」+「足元の物価は少々ぶれている場合もあるけれども中期的には物価は目標に戻る見込み」というセットの中で、金融緩和政策を継続する為にどういう理屈を繰り出して来るかというのが先にあるようにも見えますけどねえとは思われます。実際問題としてFRBのロジックも最近徐々に事実上のフレキシブルインフレーションターゲッティングっぽくなって来ています罠と思うのですけどね。

つーかですな、そもそも物価がマンデート達成できているという状態、という認識の下で緩和的な金融政策を継続するという話の中で導入しているのですから最初の説明にあった米国はLSAPとフォワードガイダンスを区別しているけれども日本はQQEがパッケージっての当たり前という結論にならんかというのがありますし、大体からしてフォワードガイダンス云々じゃなくて日本の緩和政策は「量で勝負」なのであって、本来的な相違というのは「量で勝負」の日銀と「量で勝負を止めつつある」米国や欧州という話ではないかと思うのですが、どうも日本の金融政策を謎のフォワードガイダンスで説明しようとしておりますな。


ということで、どうも白井さんの説明は全般的にそもそもQQEでのメインの説明から外れた部分が多々見受けられる訳でして、そんな中でこの後コミュニケーションがどうのこうのという意味不明の話が続くのですが、『3.日本銀行のコミュニケーション政策面でのチャレンジ』という部分を読んでツッコミをしようかと思うのですがこれがまた中々の苦行でありまして、何を言いたいのかがそもそも良く判らんという日本語になっておりまして、実は(この前ちょっとネタにしましたように)英文の方が書き振りがマシな部分もあるのですが、正直良く判らんのでありまして、残念ながらネタにするのも厳しいという感じでありまする。

#ということでやはりネタとしては腹下しをする類ですなあorz

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2014/03/04

○白井審議委員講演ネタを少々

白井さんの講演ですが昨日申し上げましたようにまあ何だかねえという感じなのですけれども、マニアとしてはツッコミをするのも責務かと思いまして、というのはウソで単なるヒマ(ではないが)ネタの積りで日銀の政策に関する説明を読んでみますとツッコミながら読めばそれはそれで材料になるので材料にしてみる。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf
非伝統的な金融政策環境の下でのコミュニケーションとフォーワードガイダンス:日本銀行の事例
2014年米国金融政策フォーラムでの講演の邦訳
(於、米国ニューヨーク市、2月28日)

28日の講演の方をツッコミのネタにするのですけどね。

・QQEの説明が色々と微妙な件について

『2.QQE の特徴とフォーワードガイダンス』という小見出し(QQEはフォワードガイダンスじゃねえだろというのは昨日も申し上げましたが)から。

『それでは、QQEの全体像について、それ以前の包括的金融緩和(CME)との違いにも触れながらお話しし、QQEのフォーワードガイダンスについてご紹介します(図表1)。』

はあそうですか。

『QQEの最大の特徴は、金融政策の操作目標として金融緩和の「量」を示す指標であるマネタリーベースを採用したことにあります。』

そうですな。

『当座預金残高と銀行券発行残高等から構成されるマネタリーベースの拡大はインフレを連想しやすい通貨の大量供給を意味しますので、国民にも直感的に分かりやすいと考えました。』

さて実際問題としてどうなんですかというのと、そもそも超過準備が積み上がっている状況が実際のインフレにどのように影響するのかという問題がある訳でして、そこの所のきちんとした定量的な説明って結局無かったですし、あったにしても洋一先生一派の直線番長理論でして、置物副総裁理論によればとっくの昔にインフレが盛大に高進していると思われますし、そういう意味ではQQE導入当初に「これはやり過ぎ」と言った中原伸之元審議委員の方がよっぽど誠実、と思っていたら中原さん最近は追加緩和の余地があるとか言い出してはいはいおじいちゃん去年はやり過ぎって言ってたでしょという香ばしい風情を醸し出しているのですがそれは兎も角として。

そもそも経済活動が活発になって貸出などが拡大すると預金が拡大するし銀行券需要も拡大するので、結果としてMBが拡大するとか、赤字財政ファイナンスでマネープリンティングした結果としてMB拡大するとか、まあそういうのがベースにあればインフレとMBってまあ繋がる話だと思うのですが、結局の所MBって結果の話なんじゃネーノというお話にみえるのですが。

『マネタリーベースは、市場参加者が金融取引に際して、各国中央銀行の金融緩和の度合いを判断する材料として、一般的にも用いられています。』

これは酷いというか何というかでして、そもそも単純にMBを比較して金融緩和度合いがどうのこうのって言われましても金融市場にストレスが掛かっていて予備的な流動性需要が高い時とそうじゃない時ではじゃあどちらの金融市場が緩和的ですかとかそういう説明を日銀だけではなくてどこの中銀も行っている筈でして、こんな事象は市場参加者が盛大に誤解、というと言いすぎかも知れませんが、要は市場参加者が事象を単純化しすぎて価格形成のネタにしているに過ぎない話であって、本来中央銀行のコミュニケーションという意味では「そういう単純化イクナイ」という事できちんと説明をするのがあるべきコミュニケーションであって、「市場がこういう単純化をしているからそれに乗りました」とか中銀の政策委員として話をするのは恥ずかしいと思うのですがねえ。

いやまあ勿論MB直線理論の単純貨幣数量説での説明を一貫して頂けるのでありましたら別にそれはそれで話の筋は通っているので、ここまで言うならこの後の説明もMB一本槍で行っているのかと思えばご案内のようにこの後ははコミュニケーションポリシーだのという話をしているのですけれども何なんでしょうかね。

『また、日本銀行がマネタリーベース・ターゲットを採用する際には、幾つかの学術研究がその理論的根拠として勘案されました3。』

で、この3番の脚注ですが・・・・・・・

『3 日本銀行の金融政策について分析した研究も含め、P. Krugman "It's Baaack: Japan's Slump and the Return of the Liquidity Trap," Brookings Papers on Economic Activity, 1998 (2); 137-205; A. Meltzer, "The Transmission Process," paper presented to the Deutsche Bundesbank Conference on the Monetary Transmission Process: Recent Developments and Lessons for Europe, 1999; B.. Bernanke "Japanese Monetary Policy: A Case of Self-Induced Paralysis?" in Adam Posen and Ryoichi Mikitani, eds., Japan's Financial Crisis and Its Parallels to U.S. Experience, Special Report 13, Institute for International Economics, Washington, D.C., 149-166; and B. McCallum, "Alternative Monetary Policy Rules: A Comparison with Historical Settings for the United States, the United Kingdom, and Japan," Economic Quarterly, Federal Reserve Bank of Richmond, 49-79, 2000 等を参照。』

ということだそうな。

『そして、何よりも金融調節の操作目標が金利から通貨量へ切り替われれば、新しい枠組みに転換したというメッセージを強く発信することになり、「コミュニケーション政策」としても有効と判断されました。』

まあ最近白井さん以外の審議委員の皆さんが白日銀な説明を交えてシマウマ化してますけどね!

『なお、マネタリーベース・ターゲット達成のための主な手段として国債買入れを位置づけ、買入れ対象年限を残存期間1年以下から最長40 年債を含む全年限を対象としました。』

年限を2倍にした話はスルーですかそうですか。


・予想インフレ率が上昇すればめでたし理論とな

『予想インフレ率への働きかけ』という小見出しから。

『QQEでは、デフレ脱却を目指してマイナスの長期実質金利を実現するために、他の中央銀行よりも長期の予想インフレ率への働きかけを重視しています。予想インフレ率の上昇によって実質金利がマイナスとなれば、投資や消費が活性化され、インフレ率が更に上昇すると見込まれればそうした活動がより一層促進されます。また、そうした予想により、現在の販売価格や賃金等に影響を及ぼし、需要もある程度喚起される効果があります。』

まあこれが従来の黒日銀説明な訳ですが。

『そこで、日本銀行としては、我が国に浸透しているデフレマインドを払拭し、インフレ予想を高めるために、日本銀行として実施可能なあらゆる手段を採用することにし、その観点からも「量」を重視するアプローチが適切と判断しました。QQEは、予想インフレ率の引き上げや金融緩和措置の示し方をこれまで以上に重視しているという点で、従来の金融融緩和政策とは異なっています。』

ということでコミュニケーションポリシーというか謎のフォワードガイダンス理論になるのですが、結局「MBを拡大するとそのMBが定量的にどのように作用した結果として予想インフレ率が上昇して、予想インフレ率が上昇すると経済活動が何故活発になるのか」という話がワケワカランままでして、そんなに予想インフレ率が上昇したら経済活動が活発になるなら何でもっと高インフレを目指す中銀がいないのですかとか申し上げたいのですが、その辺の説明が雑すぎるんですよね。


・2年で2%はフォワードガイダンスですと???

『QQE で採用しているフォーワードガイダンス』って所が白井さんの謎説明の白眉。

『フォーワードガイダンスは、QQEでも重要な柱となっています。』

そりは初耳(というか白井さんこの話大好きみたいで何度もしているので実は白井さんの講演的には初耳では無いが)。

『これに関して、日本銀行は2013 年4 月にQQE の導入に伴い、金融緩和の時間軸に関する二つの表現を含む対外公表文を発表しています。第一の表現は、「2%の物価安定の目標を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」という内容です。第二の表現は、「量的・質的緩和は、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」という内容です(図表2)。』

それはしっとる。

『この第一の表現については、市場・国民に対して、日本銀行が、2%目標を2年程度(インフレ・ターゲッティングを採用する多くの中央銀行が通常想定している期間に相当)で達成するという決意を示すためのものです。』

本当に2年が通常想定してる期間なのかというと最近のフレキシブルインフレーションターゲッティングの考え方からするともっと柔軟な物であり、状況に応じて伸縮し得るという話なのがそもそも主要国の金融政策運営の標準的な考え方になっているとしか思えませんがまあそれは兎も角。

『この目的のために金融政策の操作目標をマネタリーベースに変更し、それを2年間(暦年2013−14 年)で2 倍に拡大するように年間約60〜70 兆円に相当するペースで増加させています。そしてそのターゲットを達成するために、長期国債の保有残高も2年間で2倍に拡大するように年間約50兆円(残高)ペースで買入れています(図表3)。』

さてそれでですな、

『市場・国民の中には、この表現が「期間を限定したコミットメント」と捉えた方も多いようです。この背景として、2013年4月に日本銀行がQQEを打ち出した際に、分かり易く伝えるコミュニケーション上の工夫として多用した「2」というキーワード――2%の物価安定の目標、2 年程度の期間を念頭において、マネタリーベースおよび国債の保有額を2年間で2 倍に拡大、国債買入れの平均残存期間を2 倍以上に延長――による強い印象があるようです。』

いや期間を限定したコミットメント以外の何なんでしょうかと思うのですが・・・・・・・・・・・

『すなわち、こうした工夫は新しい枠組みに関する明確なメッセージの打ち出しに成功した一方で、その分、後述する第二の表現への印象を薄め、期限付きの強いコミットメントとの認識を一部に与えたのではないかと思います。』

えーっと、黒田総裁のその後の説明(昨年9月のきさらぎ会での説明が分かりやすい)でも「2年」と「2%」はどちらも重要という話をしていまして、2%という物価安定目標の水準も重要だがそれを2年で達成するというコミットメントが重要ということになっていたと思うのですがががが。

『個人的には、この第一の表現は、2年程度という「期間ベース」と2%という「閾値ベース」の二つの特徴を兼ね備えたフォーワードガイダンスと解釈されうると考えています。ただし、その場合は、2年程度という期間については、幅を持って解釈されるものだと認識しています。』

ぽかーん。

2%って「物価安定目標」の数値であって、スレッショルドじゃないでしょと存じますっつーか、そもそも数値のスレッショルドを(辛うじて今の所は)置いているFRBにしたって設置しているスレッショルドは失業率に関して言えばロンガーランの中立水準としている数値よりも手前の数値にしていまして(物価に関しては今の所目標を達成できている事になっているので、そこから大きくずれなければ良しという閾値設定になっている)、ロンガーランのゴールが閾値ってナンジャソラという感じなのですが。


『第二の表現は、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検して金融緩和の継続に関して必要な調整を行うとしていますので、「条件付きのコミットメント」と言えます。』

ぽかーん。

えーっとですな、これって要するに将来の金融政策を完全にコミットして行うというような硬直的な運営を行うのではなく、情勢の変化に応じてState-Contingentに金融政策を行いますよという話と、(あまり日銀は前面に出しませんがFRBが時に説明するように)ファイナンシャルスタビリティーに関する論点とかも含めたState-Contingentという話をしているんでしょと思いますけどねえ。


『これは「閾値ベース」(2%を安定的に持続)のガイダンスで、QQEの継続に関連付けています。』

????????

『また、第一の表現よりも、長期の予想インフレ率を2%程度に安定化させ、長期金利の低位安定にもつながると考えられます。』

????????

『また、第一の表現が2%の達成自体に、第二の表現が2%の安定的な維持に、それぞれ言及するものと解釈すれば、第一の表現は第二の表現の「必要条件」と捉えることができます。』

いやあの物価安定目標にはそもそも「2%の安定的な維持」(ただしこの安定的な維持という点について実際の数値なのか見通し数値なのかインフレ期待がアンカーされているという状況であると解釈できれば良いのかという点は現状曖昧なままなのは昨日申し上げました通りです)を含むのでありまして、第一の表現とやらがそもそも2%の安定的な維持を達成することにコミットしたものなのですが白井さんの説明ってどう見ても黒田総裁以下日銀の皆様の説明している事と話が違うのですけれども。つーか政策委員会で誰かツッコンで差し上げなさいと思うのですが時間が長くなるからツッコミたくないんですかそうですか。MPMでやられると市場も迷惑するので通常政策委員会でツッコミを入れて差し上げて頂けませんでしょうか(平伏)。

『これら二つの表現の時間軸は重複しうるものの、第二の表現の方がより長い時間軸を示唆しています。』

はて?

『つまり、資産買入れは2年間に限定されず、閾値ベース(2%を安定的に維持)のガイダンスが達成されるまでは出口に向かわないことを示しています。』

「2%を安定的に維持」っていうのはState of Economyを示すのですからそれはThresholdとは普通言わんと思うのですが、どうも無理矢理米国などのフォワードガイダンス政策と話を結び付けようとして説明が複雑骨折になっている悪寒。

『この観点から、QQEは、2013年4月の対外公表文では先行き2年間についてのマネタリーベースの増額規模を示している一方で、「オープンエンド型」とみなしても良いと思います。従って、二つの表現はお互いに矛盾するものではないと考えています。』

うーんこのという感じですが・・・・・・・・


・英文の方が本チャンなので仕方なく読んで何となく把握した事

という所まで書いてまあ英文も確認すんべ(手抜きですいません)と思ったのですが、これまた英文で見ると何かまた日本語と表現が違ってニュアンス違くねえかという所ですが・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf

さっきの2つのフォワードガイダンスがどうのこうのという部分が大体PDFの4枚目の『The Bank's Communication Strategy and Two Descriptions in Its Forward Guidance』という所になるのですけれども。

『QQE entails forward guidance as one of its most important elements (Chart 2). The Bank released a public statement in April 2013 that introduced QQE, and contained two descriptions of the time span of monetary accommodation. The first description was a statement of the Bank's intention to achieve the 2 percent price stability target at the earliest possible time, with a time horizon of about two years. The second description was a statement of its intention to continue with QQE as long as it was necessary for maintaining the 2 percent target in a stable manner. This description also added a condition that both upside and downside risks to economic activity and prices would be examined, and that adjustments would be made as appropriate.』

何故か英語の方がクリアカットに書いてあるというのが不思議なのですが、どうもこちらを見ますと白井さんの説明で根本的に妙というか他の政策委員の皆さんとの説明が違っている部分は「2%の達成」という白井さんの言う第一の表現において「物価安定目標としての2%」という概念を含めていない点にあるようでして、日本語の訳の方をみても何となくそうなのかなというのは判るのですが、あまりクリアカットに書いていなかったので???でしたが、英文で見るとはあなるほどという所です。

それから第2の表現の説明部分ですけどね。

『The second description is related to a conditional commitment, because the continuation of QQE is subject to the examination of upside and downside risk factors. It is also state-contingent guidance (to maintain the 2 percent target in a stable manner), linked to the continuation of QQE, and it plays a greater role than the first description in stabilizing long-term inflation expectations at around 2 percent. This helps to reduce long-term interest rate volatility and prevent its overshooting.』

日本語の方を再掲しますけど。

『第二の表現は、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検して金融緩和の継続に関して必要な調整を行うとしていますので、「条件付きのコミットメント」と言えます。これは「閾値ベース」(2%を安定的に持続)のガイダンスで、QQEの継続に関連付けています。また、第一の表現よりも、長期の予想インフレ率を2%程度に安定化させ、長期金利の低位安定にもつながると考えられます。』

state-contingent guidanceというのと「閾値ベース」のガイダンスって何か随分と日本語と英語で表現のニュアンス違うのだがこれはどうなっているのですかという疑問ががががが。

ということで、英文を読むと別の意味で謎が深まるのですが、日本語の方に入っている「閾値」の話はどこにあるの(ちなみに検索掛けたがFRBとの比較の部分でThresholdという単語は出てきたのだがこのパートには無かったりする)という感じではあります。

ということで実はFRBとの比較という話が後半にあるのですが、英文読んでいるうちに何となく何でこの先生の話が変なのかが理解できた積りなのと時間が無くなってしまったので今日はこの辺でという中途半端な終わり方ですいませんすいません。

#やはりネタにすると当たる(悪い方の意味で)事案だったか・・・・・・・・・・

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2014/03/03

○この人の場合は出張経費の無駄遣いにしか見えないのですが・・・・・・・・・・

何かまた白井審議委員が海外に出張しているようですが。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140228a1.pdf
日本銀行の金融緩和とコミュニケーション政策〜サーベイ調査に基づくレビュー〜
コロンビア大学における講演の邦訳
(於、米国ニューヨーク市、2月27日)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140301a1.pdf
非伝統的な金融政策環境の下でのコミュニケーションとフォーワードガイダンス:日本銀行の事例
2014年米国金融政策フォーラムでの講演の邦訳
(於、米国ニューヨーク市、2月28日)

ということで講演をしているのですが、フォワードガイダンスがどうのこうのという説明をメインにしているのは良いとしまして、そのフォワードガイダンスが肝心の米国で定量的なのから定性的なものに書き換えようとしているとか、英国のフォワードガイダンスのようなものに関しても(そういや最近BOEネタをあまりやっておりませんすいませんすいません)位置づけをどうしようかというように、そもそも論としてこの手のガイダンス政策というのは運営が意外に難しいという話でもしていれば読みものとして面白いのですが、単に事実関係を記述しているだけの話で何ともとしか申し上げようが無い訳でして、出張してまで話す内容かよと思うのであります。

なお、日銀のフォワードガイダンスに関して、講演で(どちらの講演でも「図表2」になります)「第一のフォワードガイダンス、第二のフォワードガイダンス」という謎概念を示しておりまして、はっきり言って意味不明にも程があるのですが、例えば27日の方の講演(どっちを引用しても同じですが)を引用しますとこうなります。テキスト5ページ。

『フォーワードガイダンスは、QQE でも重要な柱を形成しています。これに関して、日本銀行は2013 年4 月にQQE の導入に伴い、金融緩和の時間軸に関する二つの表現を含む対外公表文を発表しています。第一の表現は、「2%の物価安定の目標を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」という内容です。第二の表現は、「量的・質的緩和は、2%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」という内容です(図表2)。』

そもそもフォワードガイダンスというのは金利政策運営における名目金利制約の中で、金融政策の効果を出す為に金融政策運営の先行きのガイダンスを出すという話であって、日銀の場合は単なる「コミットメント」の話であり、そのコミットメントを具体的に示したものが必要な時点まで継続するという話でして、いわゆるガイダンス政策とは違うぞなもしという話だと思うのですけれども、この謎理論を海外で盛大に吹聴して回っている白井さんが「金融政策のコミュニケーションがどうのこうので日銀の政策への理解を」とか話をしているのがもう何だかねという所で、どうもご本人が一番金融政策コミュニケーション上のノイズになっておられるというご認識に欠けているようで誠に遺憾の極みとしか申し上げようがございません。

つーかこんなに海外出張する審議委員って(総裁は別として)あまり見ない訳でして、しかも話の内容たるや(罵倒文言の可能性があるので自粛)な訳でして、なんちゅうかその出張経費の無駄遣いにしか見えないのでマジ勘弁して欲しいというか誰だよこの委員選んだのはと。

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2014/01/23

○白井さんの提案の意味不明度合いに更に拍車が掛かっている件について

さて今回の声明文ですが先ほどご紹介した6番の所に戻ってみましょう。

『6.リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)

で、この注1ですけれども・・・・・・・

『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、6.の記述に反対した。』(今回)

・・・・・・・・・・・?????

いやあのかなーりどうでも良い部分で反対とか何なんでしょという所でして、これ「下振れリスクはまだ大きい」とか言うならまだ意味があると思うのですが、別に声明文に掲載していなかったらその部分について警戒していないという訳では無い筈で、その中で国内の雇用所得環境の改善ベースをわざわざ載せるかどうかというので一々反対とかもう何のための反対だか判らんわ。

単に賃上げが重要と吠えている政権の皆様に対してアピールでもしたかったんですかMPMは貴方様のアピール会場じゃないんですよという所で、決定内容や金融政策の根幹にかかわる部分を普通に賛成しているのにこのような瑣末な部分でわざわざ反対するという頭の構造が理解致しかねますが、この前の謎講演での説明でもそうですが、これ本人は「コミュニケーションの改善の為に分かりやすい表現を」という文脈で大真面目にやっているっぽい所に本格派のアレの風格を感じるものでして、早い所任期が来ていただきたい物だと願って止みません。

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2014/01/10

○白井審議委員講演がクソ長い件について

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140109a1.pdf
急速に変化する世界経済環境のもとでの中央銀行の直面するチャレンジ

シンガポール通貨庁における講演(1月7日)及びユーラシア・ビジネス経済学会における
基調講演(1月9日)の邦訳(於、シンガポール)

講演本文が何と22ページもありまして、一応読んでみたものの、「どこどこの国ではこういう事が起きまして、それにこのように対処しているのが新しいチャレンジです」みたいなこれまでの事象が延々と述べられているだけでして、それに対して何か白井さんの独自見解でもあるのかというとこれがまたろくすっぽ無い、という実にこう残念な講演でこのテキスト読むのに費やした時間は何だったのかという物件ですので連休中の読書としてはあまり推奨致しかねます。

・・・・・・・で終わりにするのも何ですので、一応ヘッドラインになっていた部分の辺り(というかこの部分しかヘッドラインになっていなかった気がするんだが)の『中央銀行が直面する課題(4):日本銀行の2%物価安定目標の達成に向けたチャレンジ』という小見出し部分の所を一応引用してみましょう。

『一般的に、インフレーション・ターゲティング採用国では、物価安定目標を達成するための期間として2年程度を想定しています。このため、日本銀行も2%の物価安定目標を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現すると表明しています。私自身も、経済が持続的に成長し、企業・家計に大きな負担とならない形で2%を2年程度で早く実現できるのであれば、それに越したことはないと思っています。しかし、消費者による実質所得の急速な減少への懸念や企業による自社販売価格の引き上げにおける慎重な行動を考慮しますと、現時点では金融緩和の効果が十分出尽くすにはある程度の時間がかかる可能性があるとみています。このため、2%程度の達成期間については現段階では不確実性が高いと考えています。』

だったら追加緩和するなり達成の期限に関する提案をするというのはどうでしょうか。

『重要な点は、日本銀行は一時的に2%を実現すればよいと考えているのではなく、持続的な成長を伴いながら「2%の安定的な実現」を目指して金融緩和を実施しているということです。無理して一時的に2%を達成して、その後持続できなくなるような状況は回避しなくてはなりません。』

ふむ。

『これに関連して、日本銀行の経済・物価の基本シナリオが大きく下振れると判断される場合には、日本銀行の信認を損なわないためにも、躊躇することなく追加緩和をすべきと考えています。その際、家計・企業の負担が過度に重くなるとみられる場合には、2年程度よりもやや緩やかなペースでの2%実現を目指した緩和が望ましいと判断されることもありうるとみています。いずれにしましても、家計・企業の経済行動やその見通しに注目しています。』

ということでヘッドラインになっていたのはこの部分なのですが、しかし「追加緩和しろ」という話をしている側から2%達成期限を延ばすのであれば、今のオープンエンドの枠組みをそのまま生かせば良いだけのような気がするんですが(なお枠組み自体は物理的な買入の限界が来てオープンエンド継続は多分無理なのですけど^^)。

つーかですね、何かとりあえず「追加緩和」というサービスフレーズを言いたかっただけちゃうんかいと小一時間問い詰めたくなる訳でして、大体からして2年で達成するのが経済にストレスなのであれば現状の異次元緩和のペースを下げて期間を長くした方が合理的行動だろと思う訳で、今のスキームってとにかく2年で達成させる為に異次元緩和を実施しているという流れなんですからして、その場合は追加緩和と違ってスキーム変更だろと思いますが。

でまあ2年で達成させる為に追加緩和をというのでしたらまあ判らんでも無いのですが、じゃあ具体的に何をするのかという案はあるのかねと思う次第でして、大体からしてここからMB70兆円増やすのですらアップアップになりそうなのに、何をどう追加緩和するんだよと思うのですが、肝心の異次元金融政策の波及効果の話がろくすっぽ無いので何の示唆も無いのが残念無念。


なお、この続きにはこのような記載があります。

『また、もう一点指摘しておきたいことは、日本銀行が掲げる2%の物価安定目標の重要性について、広く一般国民からの理解が得られなければ、インフレ率を高めようとする日本銀行の量的・質的金融緩和が実を結ぶことは難しいということです。このため、そうした理解促進を図るコミュニケーション政策が重要になります。』

キタコレ。

『一般国民の多くは、過去15年間に経験した緩やかなデフレが決して良い経済状況ではなかったことを認識していても、インフレ率を高めることについては、生活費の上昇に直結するので納得しにくいのではないかと思います。とくに本年4月には消費税率の引上げが予定されており、金融緩和による物価上昇効果と合わせて一時的にインフレ率は2%を超える可能性があります。従いまして、「何故2%の達成が重要なのか、2%を安定的に実現した経済とはどのようなものか」等の一般国民の方々が抱くであろう素朴な疑問や懸念に答えるような、分かり易い言葉による説明を通じて、日本銀行の政策への理解と共感を広く浸透させていく努力が重要だと考えています。』

ほほう。

『この点、日本銀行は最近、ホームページのトップページに、「2%の『物価安定の目標』と『量的・質的金融緩和』」という項目を新規開設し、関連情報へのアクセスの向上を図る等、分かりやすさを高める工夫を行っています。』

あれって単に足元物価が順調に推移しているから調子に乗って掲載した気合いやまあどうでもいいです。

『しかし、日本銀行の政策に対する更なる理解を深めて頂くためには、コミュニケーション政策面における追加的な工夫の余地があろうかと思いますので、私自身、引き続き一層の改善が進むよう取り組んでいきたいと思っています。』

つまりまた展望レポートの記述とかの訳の分からん所で訳の分からんオモシロ提案が行われるので、展望レポートの行われる金融政策決定会合の終了時間が無駄に遅くなるんですねわかりますorzorzorz

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2013/11/29

○白井審議委員の講演&記者会見であるがこれがまた・・・・・・・・・・・・・・

水曜日徳島での金懇です
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko131127a1.pdf(講演)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311e.pdf(会見)

えーっとですね、講演がフォント小さ目の字で本文20ページ(+資料13枚)というのも量が大杉だわという所ですが、金懇の会見で会見要旨が12ページって金融政策変更した総裁会見かというような量になっておりまして、「わかりやすさ」を主張されておられる白井さん講演の分量大杉勝男なんですけど勘弁して下さいなどとは申してはいけませんし、そもそも何でこんなに会見が長いのかはこの後明らかになりますよ!!!

まず講演をサラサラと。

とりあえずここから暫くは講演からの引用になりますので『』部分は上記URLのうち講演の方からということでご理解下さい。

・勝手に総評

まあそういう事で文章がやたらめったら長い上に、前日の別の審議委員講演と違いましてこのまたロジックが良くワカランチ会長でして、ワカランチ会長なのはきっと不肖このアタクシの知能に問題があるからだとは思うのですが、何となくは分かるけどイマイチ腑に落ちないという点で???感の残る物件ではございました。


・下振れ要因評価について

前半の方では下振れ要因の評価について、展望レポートの見解と白井さんの見解の違いがどこにあるのかというのを説明しています。本文5ページの『(2)経済見通しのリスク要因についての私の見解』以降になります。

『なお、展望レポートにおける経済見通しのリスク評価の記述について、私は10 月末の決定会合において反対意見を表明しておりますので、この場を借りて私の見解をご説明したいと思います。私は、4 月から一貫して経済の上振れ・下振れ要因についての全体のリスクバランスは、「どちらかと言えば下方に傾いている」と評価してきました。』

ふむ。

『それはまず、海外経済の回復ペースについての不確実性が高いなかで、わが国の輸出の回復ペースが既に私自身のベースライン・シナリオに織り込まれている以上に緩慢になる可能性が否定できなかったからです。また、円の為替相場が大きく減価してから暫く時間が経過していますが、Jカーブ効果や海外需要の緩慢な回復力以外の要因、例えば、海外生産へのシフトや企業の競争力の変化といった構造的要因が予想以上に強く働いているとも考えられ、わが国の輸出構造の動向を注視する必要があると考えているからです。』

つまり財政で吹かしているものの、将来的に持続的な回復の為に必要な輸出の回復が見込みにくいのではないかという話ですな。

『今回は、この点についての不確実性が4 月・7 月評価対比でやや強まっていることに加えて、賃金の伸びが物価上昇率に追いつかない可能性、あるいは資産効果が実質所得の減殺を十分相殺できない可能性、家計・企業の中長期的な成長期待が下振れる可能性等についても、4 月・7 月評価時点と比べてやや明確に意識しておく必要が高まっていると考えました。例えば、本年9 月の日本銀行の「生活意識アンケート調査」では、調査時点がオリンピック招致の成功が報道される前ということもあるのかもしれませんが、わが国の「経済成長力D.I.」が本年6 月調査結果から悪化していることを示しています。』

ふむふむ。で、この後色々と説明があるのですが、その詳説を一々引用していると後半まで辿りつきそうもないので超端折って参ります。この経済部分を色々とああだこうだ指摘しているのですが、引用パスしますのでお暇な方は白井さんの講演テキストをお読みくらはい。


・中長期の予想インフレ率の動向の不確実性

『最近の中長期の予想インフレ率の動向』という小見出し(本文10ページ)まで飛びます。

『2%の物価安定目標の実現に向けて、予想インフレを「安定化(アンカー)」させる観点から重要な役割を果たすのが(「フィリップス曲線」の切片に影響を及ぼす)中長期の予想インフレ率の動向です。中長期の予想インフレ率はこれまで上昇してきましたが、足もとでは一部の指標では上昇傾向が続いているものの、複数の指標ではその上昇ペースが緩慢または横ばい圏内の動きとなっているようにみえます(図表3)。』

さいですな。

『また、物価安定目標である2%からもまだ距離がありますので、今後、見通し期間中にこれが2%まで上昇していくのかについては不確実性があるとみています。例えば、上昇がみられていた物価連動国債のブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)の動向をみてみますと、かつては円ドル相場との相関はさほど明確にはみられませんでしたが、2012 年末以降は円安傾向と整合的なかたちで急速に上昇しており、この間の相関はかなり高い水準にありました(図表5)。しかし、今年半ば以降は、円ドル相場が振れはあるもののほぼ横ばいに転じた動きにあわせるかのように横ばいに近い状態となっているようにみえます。足もとでの円安の動きを含めて、今後の予想インフレ率の動向を注視しています。』

ほう。

『2%の物価安定目標の実現に向けて、需給ギャップに対する物価の感応度の動向――すなわち「フィリップス曲線」の勾配の変化――も重要な役割を果たすと考えられます。一般的に、フィリップス曲線の勾配は、同じ需給ギャップの水準にあっても企業にとって販売価格の引き上げや価格転嫁が以前よりも容易になり、価格改定頻度も高まるにつれ、スティープ化していくと考えられます。現在は、勾配が緩やかにスティープ化しうる環境へと改善しつつあると思います。』

ふむふむ。

『しかし、企業間の競争が厳しいなか、販売価格の引き上げに伴う個人消費の減少を懸念する企業が多い場合には、フィリップス曲線はさほどスティープ化せず、想定よりも物価の上昇幅が下振れる可能性があります。特に2014 年度については、企業が消費税率の上乗せ分以上の(需給ギャップの改善見合いや予想インフレ率の上昇による)販売価格の引き上げをどれだけ実施するのかは予想しにくい面があり、消費税率を除いた消費者物価の引き上げの一部は2015 年度以降に先送りされる可能性もあります。』

この辺日銀の中心見解とはだいぶ乖離してますなという所で。バックワードルッキングも含めて上昇するぜ気合だ気合だという話には与してい無さそうですね。


・バックワードルッキングのインフレ期待上昇に関する説明に少々違和感ががががが

でまあ更に盛大にワープしまして、本文14ページに参ります。この辺延々と予想物価上昇率(中長期の)がどうなるかという話をしていてこれはこれでふむふむと思いながら読めるのですが、腑に落ちるかというと少々微妙ではありますがそれは兎も角。

『実際のインフレ率は中長期の予想インフレ率の引き上げをもたらすのか』という小見出しの所から。

『まず、「1 つ目のチャンネル」として、実際の消費者物価上昇率は足もとまでは緩やかに上昇してきており、本年度下期中には1%程度に達する可能性がありますが、そうした実際のインフレが社会で定着していくなかで、中長期の予想インフレ率が一段と上昇していくことが考えられます。』

『日本銀行の「生活意識アンケート調査」によると、家計の今後5 年間の予想インフレ率はガソリン価格や頻繁に購入する品目(例えば、食料品、日用品)の物価動向に影響を受けていることが分かります。このため、これらの品目の物価が足もとで上昇が続いていると、予想インフレ率もそれに影響を受けて上昇していくと考えられます。』

とまあここまでは良いとしまして。

『次に、参考として、英国の事例――実際のインフレ率が高い水準で推移するなかで中長期の予想インフレ率を引き下げていった事例で、わが国とは逆の状態ですが――をみてみたいと思います。』

・・・・・・・・うーん。

ということで説明してこういう結論になっているのですが・・・・・・・・

『以上の英国の事例をわが国に置き換えますと、以下の点が指摘できるかと思います。

・ 実際のインフレ率が2%目標に向けて上昇していく途上において、中長期の予想インフレ率も上昇しうると考えられること。

・ 中長期の予想インフレ率が2%に向けて収束していく途上でアンカーが確立するまでの間は、実際のインフレ率は(国際商品市況やその他の影響を受けるため)中長期の予想インフレ率をオーバーシュートして上昇することが起こりうると考えられること。

・ 2%の物価目標については、一定のレンジよりも、ポイント水準の方が望ましいと考えられること。』

いやまあ英国の話(引用割愛してますが)を上下ひっくり返せばそういう事になるのですけれども、現実問題として期待インフレ率を「下げる」方は金融大引き締めをすれば良いのですから(政治的に実行できるかという話をさて置けば)簡単な話なのですが、じゃあ期待インフレ率を「上げる」方って(無茶苦茶やって通貨価値大毀損ヒャッハーというのではないアプローチでね)難しいというそもそもの大前提への考察が抜けているような気がするんですよね。大体簡単に上げられるんだったら当座預金残高100兆円とかの昨今、木久扇師匠の理論によればとっくの昔に期待インフレは2%になっている筈なんですけどね。


・展望レポートを読みやすく云々の話

最後にまあそういうのがありまして。例の謎提案の趣旨説明がございます。

『この趣旨をご説明いたしますと、私は審議委員に就任した当初から、金融政策についての外部の理解を促進するために、展望レポートを含む様々な公表文書について日本銀行によるコミュニケーションを大幅に改善することの重要性を訴えてきました。とくに二つの柱の記述に関しては、このレポートを読んでくださる国民の皆様の視点に立つと、趣旨を理解することが困難であるうえに、一読して理解できるような親切な書きぶりとなっていないのではないかと問題提起してきました。』

はあそうですか。

『そこで、正副総裁の交代以降初めての展望レポートを議論した4 月末の決定会合を見直しの絶好の機会ととらえ、二つの柱という用語を全く使わずに、全体の文章を通して該当箇所に必要な説明を織り込むという提案を行いました。この提案は否決されましたが、今回の展望レポートでは、私の問題意識を踏まえて、二つの柱による評価を行っている箇所(「3.金融政策運営」)に「脚注」を新たに挿入し、関連する今年1 月の公表文を参照するよう指摘する修正を加えています。』

はあそうですか。

『しかし、読者の立場にたった分かり易さという視点では、同じレポート内で説明が完結していません。そこで、さらに追加的な改善の余地があると思われましたので、今回も新たな提案を行うことにいたしました。今回の提案では、読者の方々が最初から同レポートの流れを意識することができ、かつ2 つの柱についても冒頭で簡単に解説されていますので、格段に読みやすくなると思いました。』

はあそうですか。

『因みに、こうした導入部分の挿入は2011 年10 月から2012 年10 月までの展望レポートでもみられますが、私の提案は特に二つの柱についての説明の追加という点で、より前進した内容になっていると思います。』

ふーん。

『現在、日本銀行は2%の物価目標を掲げて異例の金融緩和を実施中という重要な時期にあります。日本銀行はコミュニケーションの改善に努めてきてはおりますが、金融政策の内容や日本銀行の意図について国民の皆様に理解を一段と深めていただく余地は大きいと感じております。』

・・・・・・・・と言ってるご本人が謎の提案はするわ異次元緩和の気合理論を説明しないわとはどういう事でございましょうか????と思ったら会見が凄い事になっております。


○会見が前代未聞モード!!!!

改めて会見URLを。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1311e.pdf

何で12ページあるのかというのはまあ読めば分かります。メインイベントの前に前座を引用。

・追加緩和言い過ぎなのですが・・・・・・

『(問) 2点質問があります。1点目、委員は経済・物価見通しの下振れリスクに関して指摘していらっしゃいます。具体的にどういう大きさのリスクとみているのでしょうか。2点目、それらのリスクに対応して、具体的にどのような追加金融緩和策、あるいは調整が必要であるとお考えでしょうか。』

『(答) 私の中心シナリオに関しては、若干慎重ながらも、概ね展望レポートの中心的見通しに沿っていると判断しています。とはいえ、経済に関しては、海外経済の下振れリスクがあるのではないかということと、家計の雇用・所得動向に関して慎重にみていく必要があるのではないかということから、やや下振れの方に傾いているのではないかと、様々な分析等から判断しています。物価に関しては、これも中心的な見通しに対して若干慎重な見方をしていますが、概ね沿っていると判断しています。下振れリスクとして、中長期の予想インフレ率が想定した通りに上がっていかない可能性と、需給バランスに対する物価の感応度が想定したほど高まらないことに関して、現在はより下振れに傾いているのではないかと意識しています。これは、下振れリスクですから、中心シナリオとして反映させているわけではないので、ここをきっちりみていきたいという判断です。』

これはさっきの講演の通り。

『ご質問の追加金融緩和という点について、私は、否定はしません。』

あちゃー。

『もし将来的に追加金融緩和を考える場合には2つの可能性があると思っています。1つは、今申しましたように、経済あるいは物価の下振れリスクが顕在化して、それが中心シナリオを明確に大きく下振れさせるような可能性があると判断された場合には──これは日本銀行の金融政策の信認に関わることですので──、躊躇することなく、追加緩和すべきだと思っています。』

まあこれは良いのですが・・・・・・・・

『もう1つは、金融政策の信認だと思っています。』

はい??

『私どもは2%の「物価安定の目標」という大変チャレンジングな政策を今やっています。この私どものコミットメントを維持していくことが大事です。金融政策に対して、信認が大きく低下するようなことが仮にあるとすれば、その場合には、追加緩和を検討すべきではないかと考えています。』

最初の信認の低下とこの話と何がどう違うのかわからんのですが、後の方で質問されていまして、そこでの説明を読んでも判らん(ただしこの時にはメインインベント発生後だったのでそもそも質疑応答がアレになっていたというのがあります)。

『2つ目のご質問について、追加緩和を検討するのは、中心シナリオが下振れるケースと、もう一つは信認が大きく低下するケースです。信認というのは、私の考えでは、物価が2%に向けて着実に上昇していく経路を辿っているかということが1つで、中長期の予想インフレ率が2%に向けて上昇していく傾向がみられるのかということと、もう1つは市場参加者の見方とのズレがありますが、そこのところがどうなっていくか、をみています。』(これは別の質問に対する答えです)

??????市場に追い込まれたら追加緩和するという事なのでしょうか??????

ということで、そもそも追加緩和を強調する時点で異次元イリュージョン政策の建付けと全然違う話をしている訳でして、まあこの辺のヘッドライン出た時に相場何となく反応してましたように、何か分かりやすさを強調する白井さんの方が肝心の異次元政策の骨子を理解しないでノイズを振りまいているようにしか見えませんな。


○さて本日のメインイベント(え?)

ここまで延々引用大会をご覧いただいた上に実は本編はここから始まります。とある一連の(というか2つだが)質疑で延々と6ページ分を消費しているという前代未聞の恐ろしい事案がございまして・・・・・・・・

『(問) 分かりやすさを主張されていますが、主張されている内容自体はもっぱら分かりにくいというのが率直な感想です。』

ひえー。

『まず、ご自身の見通しが、委員の中央値よりも低くて、さらにその上に下振れリスクを意識する必要があるというのであれば、ご自身のメインのシナリオ自体を引き下げて、佐藤委員とか木内委員のように展望レポートそのものに反対をされればよいのではないかと思うのですが、この点どうかというのがまず1点です。』

『2点目として、今の質問にも関連しますが、委員の中央値よりも緩やかなペースでしか2%に向かって上昇していかないとご覧になっていて、2%への道筋が「順調」というのは不適切であるとまでおっしゃっているわけです。だとすると、2年で2%という目標そのものを反故にするものでなければ、2年で2%を達成するために今この時点で追加緩和を提案すべきではないかと思うのですが、如何でしょうか。』

『3点目として、展望レポートの分かりやすさということで、展望レポートそのものに反対をされていますが、我々読者からすると、ちょっと問題としては瑣末ではないかと、それぐらいのことで反対するのではなく、この程度の話であれば、決定会合以外の時間にボードの方々とか事務方と一緒に議論されて、変えるところは変えればいいのではないかというのが率直な感想です。この3点目についても、ご意見をお願いします。』

3点目辛辣にも程がある・・・・・・・

で、それに対する白井さんの答えですが、もはや細々茶々を入れるのもアレですので合いの手をあまり入れずに引用しますからご鑑賞下さい。

『(答) まず、3点目からお答えすると、私は4月にも同様の提案を出していますが、その趣旨について、もし展望レポートの表現・表記上程度のことに異議を唱えたとお考えの方がいれば、そうではないのです。私自身がなぜこれを4月から主張しているか理由を申し上げますと、実は私は審議委員に就任する前から、日本銀行の公式文書の書き方、表現が分かりづらい、どうしてこういうあまり一般的には使わない言葉を用いるのか、色々な説明が抽象度が高くて分かりづらい、という印象を個人的に持っておりました。』

『審議委員になる機会を得た2011年4月以降、私は与えられたあらゆる機会を捉えて、私自身が感じている分かりにくさを私なりのやり方で訴えてきました。この点、日本銀行も色々なところで努力をしていると思います。しかし、それでも分かりにくさがあり、日本銀行の書いていることは分かりづらいとして、文章を読むのを諦めてしまっている方達も多くいると思います。今回の挨拶要旨の脚注にも書きましたように、日本銀行の生活意識アンケート調査では、「日本銀行の外部に対する説明が分かりにくい」と言っている方達が約60%で、「分かりやすい」と言っている方達が6%です。』

『なぜ私がこれを主張するかということを理解して頂きたいのですが、私どもは1月に2%の「物価安定の目標」を掲げました。これは、予想インフレ率を引き上げていくという、先進国で他の中央銀行がやったことがない大変チャレンジングなものです。一般的に言って、国民の皆様、消費者の皆様からみてインフレを下げる政策の方が上げる政策よりも理解しやすいです。ですから、15年間のデフレの下で経済は決してよかったわけではないのですが、それでもインフレ率を上げるとなると、なかなか感情的に納得いかない方達が多いというのが事実です。今多くの国民の皆様は、メディアの皆様のご協力もあり、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を実現したいということはおそらく分かっていると思います。しかし、知っているだけでは実現しないのです。知っていることから、共感、理解があって初めて日本銀行の金融政策に対するサポートが生まれるわけです。そうなって初めて社会に根付いていくと思うのです。そのためには、これまでのような対外的な説明で十分なのかというと、おそらく十分ではないのです。そのぐらい大変なことをやっているのです。』

『私は2011年4月から改善について多くの指摘をしており、いくつかは私の意見を踏まえて反映されてきています。例えば、4月の展望レポートは、それまで非常に量が多くて重複感があったものが、かなり簡素化されました。この点は、私も訴えてきたことなので、歓迎しています。また、4月に私が行った提案に関しては、消費税率引き上げの実質所得への影響の書き振りが中立的でしたので、もう少し踏み込んだ書き方が必要ではないかと提案しました。これは否決されましたが、10月の展望レポートでは改善されています。』

『また、2つの柱の記述が分かりにくいとの私の提案については、10月の展望レポートでは、脚注に、今年の1月の公表文を参照するようにと書かれています。それでもまだ、1月の公表文をみなければ分からないようになっているわけです。文章はその中で完結するようにしなければならない、という趣旨で、私はあえて一度否決された提案を出すのではなく、今回は、2つの柱が何かということを冒頭に説明する形にすれば、少なくとも流れは読めるようになると思い、提案しました。』

『もちろん、私の提案だけで分かりやすくなるとは思っていません。やはり普通では使わない言葉があって難しいので、満足しているわけではないのです。ただ、9人の政策委員で決めることですし、そうした言葉に慣れている方、今のやり方がよいという方もいるかもしれません。しかし、少なくとも2つの柱だけは説明が書かれていないので明らかに分かりにくいのではないかと思います。これは、日本銀行が2%の「物価安定の目標」を実現するためにあらゆる努力をしなければならない中の一つとして言っているシンボルなのです。』

『ですから、展望レポートのみの問題ではなく、対外的な説明の分かり易さ向上に向けた一歩として、そういう考え方に向かっていきませんか、ということを言いたいのです。私どもからみて分かりやすいかどうかではなく、国民の目線に立った時に本当に分かりやすくなっているのか、展望レポートを読んでくださる読者の数を増やしていかなくては、どうやって金融政策に対するサポートが得られるのか、と私は思いました。これが、今回こうした提案に踏み切った背景です。』


・・・・・・・・・とりあえず湯気ポッポーとなりながら話をしているのは把握したが、まだ続きます。


『2点目について、私は、確かに中心的シナリオについて中央値の見通しよりもやや慎重だと申しました。ただ、リスクチャートをみて分かるように、中央値に対して上の見方をする方もいますし、下の見方をする人もいます。そういう中で多少のズレはありますが、中心シナリオの表現に関しては、概ね同意するということです。完全に一致するというのは中央値に近いことですが、審議委員の見方はそれぞれ違うわけです。その中で、私は確かに2%の達成時期に関しては中央値に比べれば遅れるとみていますが、それでも「見通し期間の後半にかけて、2%程度に達する可能性が高い」という表現に大きな違いがないと判断したので、中心シナリオに関して反対していません。』

『それよりも、私どもは、今、前例がない新しいことをやっているわけですから、実証分析をするにも非常に難しいわけで、当然、不確実性があります。私はそれを率直に言っていきたいと思いました。』

それこそ「分かりにくい」のですが・・・・・・・・・・

『今回の挨拶要旨の中で、「概念的チャンネル」として説明しましたように、2%を達成するためにはこういうチャンネルがあるかもしれないと思っています。概念的と申しましたのは、やったことがないものだからですが、頭では考えることができるチャンネルで、少しその兆しもみられます。ですからこれをしっかりみていきたい、と考えており、これが実現していけば私が懸念している下振れリスクは減っていくわけです。こうした観点から、下振れリスクをしっかり意識して、金融政策運営をやっていることを国民や市場参加者の皆様に率直にお伝えすることが、金融政策に対する信認を高め、将来の経済・物価見通しに不安をお持ちの方に少しでも安心して頂くことに貢献できるのではないかと思い、議案を出しました。』

・・・・・どうも白井審議委員におかれましては「期待に直接働きかける」という異次元イリュージョンに対するご理解が不足されているように思われます。積極的に期待に水をぶっかけてどうするんでしょうかねえ。

『「順調」という表現に関しては、それぞれの見方がありますので、他のボードメンバーがどのようにお考えになるかは、尊重したいと思います。ただ、挨拶要旨にも書きましたように、確かに今のところコアCPIは順調に0.7%まで上がってきましたが、主因はエネルギー関連価格の上昇です。GDPギャップが改善していく、あるいは予想インフレ率が上がっていくことによる物価上昇は、これから本格化するのではないかと考えており、今はそれを見極める段階ではないかと思います。それから予想インフレ率はかなり上がってきましたが、足許はやや横ばいか緩やかな上昇となっているようにデータでみえますし、2%からは距離がありますから、そういうことを考えますと2%の目標達成への道筋の辿り方が順調かと言われると、そこまではちょっとまだ判断ができない、ということで「緩やかに」という表現が適切ではないかと判断しました。』

さらに答弁は続くのだ。

『そして、私の提案が瑣末だというように表記上の問題だと捉える方がいらっしゃるかと思いますが、瑣末ではないのです。』

・・・・・・・・・・・・・・・すまんが吹いたコーヒー返して下さい。

『2%を達成することがいかに大変かということを踏まえると、国民の皆様が2%の「物価安定の目標」を知っているだけでは駄目なのです。私どもは期待に働きかけようとします。その期待への働きかけは2種類あるのです。一つは、私どもの金融緩和に対する期待です。私どもの本源的な時間軸表現である2%を安定的に実現するまで、「量的・質的金融緩和」を継続することを約束しており、しっかりとコミットを示していくということでやっていきます。もう一つの期待というのは、市場参加者と企業や家計の期待を上げていくということです。この点、2%をなぜ実現したいと思っているのか、なぜ1%より2%がよいと判断しているのか、そういうことをもっともっと皆さんに理解して頂き、共感して頂かなければなりません。共感して頂いて初めて2%は社会に根付くのだと思います。展望レポートの文章の改善はそのための一つのきっかけに過ぎないのです。あらゆる努力をしなければならない。その中の一つとして言っていますので、決して瑣末なものではなく、非常に重いものだと思っていますし、これからも私はそれを訴えかけたいと思います。』

だったら何で行くのが難しいとか下振れリスクとか強調するのでしょうかだったら緩和が足りないと主張しないんでしょうかと質問者と同じ質問したくなります。

『本日の懇談会でも、分かりやすさを高めていく点に賛同する声があったことは、国民の声ではないでしょうか。』

国民の声ねえ・・・・・・

『私はそういう立場から内部で色々な形で言ってきました。そして一部は、確かに改善されていますし、また色々な形で日本銀行が努力しているのは事実です。しかし、やはり国民の目線に立った分かりやすさ、いかにして2%が重要かを理解して頂くところでは、大きな改善の余地があることは、生活意識アンケート調査をみても明らかなわけですから、ここは日本銀行が率直に真摯な気持ちでやっていく必要があるということです。』

だんだんうんざりしてきたとは思いますがあと一息です。

『4月の展望レポートにおいて提案を出したのは、新総裁になり、コミュニケーションを重視するというきっかけがありましたので、それを捉えて言いました。議案を出すことによって私の主張がより明確になりますから、これをきっかけにまたボードメンバーの中で色々な議論が出てくる可能性もあります。そして、もう一つなぜ議案を出したかと言いますと、国民の皆様に、「日本銀行が今まで対外説明してきたことがまだ難しいのではないか、改善の余地があるのではないか」、ということを日頃考え、また、それを改善できるように努力していきたいと思っている人がいることをお伝えし、そこからまた日本銀行のコミュニケーションが改善していくきっかけが生まれるかもしれないと、そういう気持ちで議案を出しました。』

・・・・・・・・・・・・延々と引用して恐縮でございました。なお、この後もう一つ続きの質疑応答(これは1ページ程度)があるのですが、さすがに疲れたと思われますので引用割愛します。

しかし一つの質疑応答でこの量って前代未聞というか何というか。質問された記者の方もお疲れ様でございましたが、是非とも師匠の金懇が実施される際は全力で質問を投下して頂きたくエールを送らさせて頂きます。

なお、良く見たらこれ白井さん1点目と2点目の質問に殆ど答えていないような気もします・・・・・・

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2013/09/26

○白井さんの講演だがはっきり言って意味が分からん

先週の土曜にこんなのが出てたんですけどね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130921a.htm/
我が国の金融政策とフォーワードガイダンス ―金融政策運営についてのコミュニケーション政策―
国際通貨基金(IMF)及び米国連邦準備制度理事会における白井審議委員講演(各9月19日、20日、於ワシントンDC)の邦訳

『国際通貨基金(IMF)及び米国連邦準備制度理事会における白井審議委員講演(各9月19日、20日、於ワシントンDC)の邦訳を本ホームページに掲載しました。』

ということで邦訳版はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130921a1.pdf
我が国の金融政策とフォーワードガイダンス
── 金融政策運営についてのコミュニケーション政策 ──
国際通貨基金(IMF)及び米国連邦準備制度理事会における講演
(各9月19日、20日、於ワシントンDC)の邦訳


でまあ昨日ちょっと申し上げましたが、講演の中で一部先般BOEが非伝統的政策に関する各国比較みたいなペーパーを出していて、これがまた諸般の事情で読んでる暇が無かったもんでどうしたもんかなあと思いましたが、忘れる前にネタにしておこうと思ってとりあえずネタにするのですが・・・・・・


・異次元緩和がフォワードガイダンス????????

いやまあこの講演なのですが、図表込みで38ページ(本文21ページ)も延々と話をしているのですけれども、肝心の日本の金融政策解説部分が全くもって意味不明でありまして、正直何を言ってるのかさっぱりワカランです。

で、その前にフォワードガイダンス云々という定義の話が必要なのですが、そちらについては本文4ページのケツ以降にこういう話をしています。

『フォーワードガイダンスは金融政策の効果を高めるために活用されていますが、目的によって二つに分類できると考えられます。』

ふむ。

『第一の目的は、中央銀行の「通常の」政策反応関数(または通常の金融政策運営)について明確化を図ることです。一方、第二の目的通常の政策スタンスを明確化するためのフォーワードガイダンスは、ゼロ金利制約下の中央銀行が通常の政策反応関数で想定されるよりも「より緩和的な」金融政策を、将来にわたって継続することを約束することです。』

まあその分類というのは理解できます。

『詳細については後で申し上げますが、これら二つの目的の違いを端的に申しますと、長期金利への低下圧力(そして資産価格の上昇)といった金融市場への影響を意図しているかどうかの違いにあります。第一の目的の場合はそうした影響を必ずしも意図している訳ではないのですが、第二の目的の場合には非伝統的な金融政策手段として用いられるため、常にそうした影響の実現を意図しています。ところで、最近のフォーワードガイダンスに関する議論では、米国のように金融緩和を縮小していく出口段階にある国でその解釈について注目されがちですが、本日の私の講演ではむしろフォーワードガイダンスの本来の目的である「金融緩和策の導入及び維持」における役割に注目していきます。』

まあその辺の話も分かるのですが、では日本の政策という事になりますと、本文9ページ目の『量的・質的緩和の下でのフォーワードガイダンス』辺りから説明があるんですけれども・・・・・・・・

『日本銀行は、本年4月4日に量的・質的緩和の導入に伴い、金融緩和の時間軸に関する以下の二つの表現を含む公表文を公表致しました。

(1)日本銀行は、2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する(これを「第一のフォーワードガイダンス」と呼ぶことにします)。

(2)「量的・質的緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(これを「第二のフォーワードガイダンス」と呼ぶことにします)。』


えーっと、これってガイダンスでも何でも無くて前者は「インフレ目標の達成期間の明確化」であって後者は「State-Contigentに実施しますという当たり前の説明」にしか見えないのですが何がどうフォワードガイダンスなのでしょうか?????????

『これをご覧になって、皆様はこれら二つの表現の関係はどうなっているのだろうと思われるかもしれません。この点について、日本銀行の黒田東彦総裁は、本年4月12日に実施した講演の中で、2%の物価安定目標を2年程度で達成するために必要なことは、量的・質的緩和にすべて盛り込んだと思っていると説明しています。そのうえで、経済には不確実性があり、人々の予想には常に幅があるため、全ての人に金融緩和が十分に実施されると確信してもらうために、日本銀行は2%を安定的に実現するために必要な時点まで、金融緩和を実施していくと述べることが適切であると解説しています。従って、これら二つの表現は一体となって、日本銀行の目標達成に向けたコミットメントに対する信認を高めるものとなっています。』

えーっと、だからそれはただのインフレ目標達成期間の明確化だし、物凄く無理矢理言えば金融政策の反応関数の明確化(白井さんのさっき定義した第一の目的)かもしれないけれども、ゼロ金利制約で更に金利効果を出す(白井さんのさっき定義した第二の目的)ための政策は別途無理矢理買入政策の実施を行うという形で実行するのであって、ここの文言関係ないでしょうが。

『さらにこの点について、これら二つのフォーワードガイダンス各々の役割に注目して私の見解を説明していきたいと思います。なお、以下の内容については、必ずしも日本銀行の政策委員のコンセンサスを映じたものではないことを予め申し上げておきます。』

コンセンサスだったら怖いわ。

『フォーワードガイダンスがこのように二部構成となっているのは、市場や国民のデフレマインドからの転換を図り、しかもインフレ期待を2%程度まで高めてアンカーするというチャレンジングな課題に直面している日本銀行が置かれている環境を踏まえてデザインされているからです。』

だからフォワードガイダンス関係ないんですけどね、まあ続きます。

『第一のフォーワードガイダンスの表現は、公表文の最初の部分で明記されており、これまでとは次元の違う金融緩和を実施するための根拠と位置付けられています(図表4)。』

以下実施した買入の内容の話なので引用割愛して次に。

『この第一のフォーワードガイダンスの目的は、市場や国民に対して、日本銀行が、2%目標を2年程度という期間内――これはインフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行が通常想定している期間に相当しますが――に達成するという強い決意を示すためのものです。』

それで話は終了する筈なのですが・・・・・・・・・・・・・・

『このガイダンスは、日付ベース(2年程度)と経済状況ベース(2%)の二つの特徴を兼ね備えています。』

???????????????

『このうち日付ベースの側面は、2%を可能な限り早期に達成するとの日本銀行の強い意図とその可能性についての市場や国民からの信認をできるだけ早く高めるために不可欠だと考えられました。日本銀行の政策に対する市場や国民の信頼が高まるほど中長期インフレ期待が上昇するペースが加速し、そうなれば企業が需給状況に合わせて販売価格を調整するような価格設定行動を強めることにも寄与すると考えられます。』

えーっと、先ほどのフォワードガイダンスの定義ではこういう話は関係ないと思うのですが。

『第二のフォーワードガイダンスは、公表文の中頃の「量的・質的金融緩和の継続」という副題の下で明記されています。これは条件付きのコミットメントであり、経済物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検して金融緩和の継続に関して必要な調整を行うとしています(前掲図表4)。また、これは経済状況ベース(2%を安定的に持続)でもあり、量的・質的緩和の継続に関連付けて、中長期インフレ期待を2%程度に安定化していくうえで、第一のフォーワードガイダンスよりも強力な役割を果たします。』

えーっと、元々「2年で達成する」ということを書いている訳で、何でこれが強力な役割になるのか意味が分からん。

んでもって更に飛ばしましてこのコーナーの結論に近い部分に行きますと・・・・・・・・

『なお、これらの二つのフォーワードガイダンスは相互に矛盾するものではなく、第一のガイダンスは第二のガイダンスを達成するための必要条件と位置付けられます。』

ほえ??

『さらに、第二のガイダンスは、2%目標を安定的に実現するまで量的・質的緩和を継続するとの強いコミットメントを示したものと言えます(前掲図表4)。』

だから2年で達成するんじゃないのですか、物価安定の目標そのものが別に瞬間風速で達成すれば良いという定義じゃない訳で、何か白井さんはその「2年で2%」という定義を勘違いしているのではないかと思うのですが。

まあそもそもそこが曖昧ちゃあ曖昧で、物価安定の目標の細かい定義について元々の麿時代の定義が生きているのかどうかが不明確なのですが変わったという話は今まで出ていなかったので、変わっていませんよというのであれば、そもそもの物価安定の目標自体に「安定的に2%」というのが包含されている筈。

『従って、これらの二つのガイダンスの時間軸は重複するものの、第二のガイダンスの方が幾分より長期的な時間軸を内包することが示唆されています。』

これまたイミフなのですが、物価安定の目標自体にそもそも安定的に2%達成というのが含まれているのであれば、単に後半のガイダンス(と白井さんが言っている部分)は、2年で2%が(上下共に)怪しくなった時のState-Contigentな文言であるという定義にしかならんと思うのですけれども。

『また、第二のガイダンスは、長期金利のボラティリティの低減および過度な上昇の防止に寄与すると考えられます。』

はあそうですか。

『個人的な見解ですが、この第二のガイダンスは、日本銀行が2%を安定的に実現するとの目的に照らして必要があると判断すれば、金融緩和を2年間に限定することなく必要な追加行動を採りうることを示唆しています。』

示唆もへったくれもその通りだと思うが。

『また、この経済状況ベースのガイダンスが達成されるまでは金融緩和を継続し、出口に向かわないことも示していると思います。』

いやそういうことでしょ。でもそれって最初の「2年で2%」とは矛盾している訳で、つまり「2年で2%達成とは言ってるけど、まあ世の中上手く逝かずに上下にぶれた場合に、最初に申し上げた2年先までの資産買入をその通りに実施するかどうかは別問題ですよ」というヘッジ文言であると思うのですが、何か白井さんの理解というか説明が異次元過ぎて良く判らんのですが、異次元緩和だから仕方ないのかもしれませんね!!!!!!!(なげやり)

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2013/07/02

○白井審議委員講演が引き続き中々のアレ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130629a1.pdf
経済統合が進むアジアにおける日本経済と金融政策
ペナン経済コンファレンス(於マレーシア)における講演の邦訳

ということでめんどいので日本語版を読むのですが、前半が金融政策の説明をしていて実にこうアレなのがあってそこにツッコミを入れようかというか鑑賞しようかというか。


・長期金利の説明がアレなのだが

話の都合上後の方にある『わが国の金融資本為替市場の動向』の冒頭を読むとこれがまたアレ。

『まず、長期金利は、概念的には@リスクプレミアムとA予想短期金利(将来の短期金利の予想経路)によって構成されると考えられます。日本銀行の国債買入れは、主としてリスクプレミアムを、次いで予想短期金利を下押しする効果が期待されます。さらに2%物価目標の安定的な実現を目指すコミットメントが、これらの効果を強めています。その一方で、景気回復期待とインフレ期待の高まりや海外の長期金利の上昇は、予想短期金利の押し上げにつながると考えられます。』

@のリスクプレミアムに関しては、まあ流動性低下やボラ上昇がどうのこうのみたいな面があって微妙で有るという事が示された訳ですがそちらの方はまだ良いとしまして、腰が砕けたのはこのAの部分。

えーっとですな、日本銀行の国債買入および2%物価目標のコミットメントってどう見ても「予想短期金利」については将来の押し上げ要因にしかならない(ゼロ近傍の物価上昇率を短期間で2%水準までに押し上げるような強力金融緩和を行ったら目標達成後は正常化を急がないといけないでしょ)のですが、何でこれが「これらの効果を強めています」となるのか意味がワカランチ会長なのですがどういう理屈なんでしょうか・・・・・・・・・


・まあ言いたい事は分からんでも無いがちょっと微妙な希ガス

『金融緩和の波及経路』という所から。

『量的・質的緩和の実体経済への波及経路については、第一に、(名目)長期金利や資産価格のリスクプレミアムへの働きかけを通じた経路で、企業・家計の資金調達コストの低下、企業・金融機関の財務基盤の改善、家計の資産効果を通じて、企業・家計の投資・消費活動の活性化を狙うものです。第二は、投資家や金融機関に対して高い収益が得られる資産への投資を促す「ポートフォリオ・リバランス」を通じた経路で、新興・成長企業へのリスクマネーの供給やリスク資産への投資を増やし、経済の成長力を高める効果を見込んでいます。第三に、中長期のインフレ期待への働きかけを通じた経路で、インフレ期待が高まることや実質長期金利の低下により、企業の設備投資や家計の耐久財消費、住宅投資などを刺激する効果を想定しています。こうした三つの経路を通じて、総需要の拡大、GDPギャップの改善、インフレ期待の上昇などが生じることで、物価の上昇傾向が高まっていくと考えています。』

という説明は良いとしましてその次。

『私自身はこれらの中で、とくに第二の経路により、わが国経済の活性化に必要なある程度のリスクをとる行為が生じることを期待しています。』

ほうほうそれでそれで?

『デフレマインドが蔓延している状況では、貨幣を保有していても機会費用が低いため、リスクマネーがなかなか生まれません。そうなりますと、これから若者・高齢者問わず様々な方々が新たに起業し、あるいは潜在的な技術力を持つ企業が成長していけばそれがわが国経済の強みとなっていく可能性があるのに、そうした企業・個人にお金が回らない可能性があるわけです。』

『だからこそ、約15年間のデフレのなかで染みついた消極的なマインド、あるいはデフレに慣れた資産運用方針や企業の価格設定から徐々に脱却していこうという思いで量的・質的緩和を導入したわけです。』

・・・・・・・・・・・いやまあ言いたい事は分からんでも無いが、これはデフレ云々ではなくて成長期待の話であって、コストプッシュでインフレになったらリスクマネーが供給されるのかと小一時間問い詰めたいですし、大体からしてリスクマネー供給云々んという文脈で言えば金融規制とかそっちの方が効く話だと思うのですけどねえ。

#物価上昇期待でリスクマネーがドンドンでるなら消費税毎年上げればという話ですわ


・というのはマクラで今回の白眉はこれです

で、そこの最後の部分に実は今回の白眉があります。

『同時に、実体経済への影響を考える上で実質金利の低下が重要だと考えています。』

ほうほうそうですか。

『データの取り方にもよりますが、足元では実際、実質金利は低下している可能性が高いとみています(図表2)。』

・・・・・・・・・・・さて、この図表2には堂々と「実質金利」と書いてあるのですが、例によって図表を磔刑にするスキルが無いので上記URL先の10枚目を見てくださいという所なのですが、そこの図表の下を見るとこのようなことが書いてあります。

『(注) 実質金利 = 名目金利(国債)− 予想物価上昇率(QUICK 調査)。』

えーっとですな、クイックのサーベイって確かに長年データがあるので使いたくなるのは判るのですが、このサーベイで質問されている「予想物価上昇率」って間接税の影響を含むのか含まないのか質問文面では分かり難い内容になっている筈(はず、というのは不肖このアタクシ無力市場参加者でありますので有力市場参加者対象のクイックのサーベイに答えるような身分では無いのでそういうエライ人に聞いているからです、本当の所はクイックさんに聞いてください)なのですが・・・・・・・・・・・・・

と思いながら図表を見ると、そもそも全年限において実質金利が昨年の半ばくらいから下がっているように見える時点でこれって消費税要因ですよねという感じですし、名目金利に低下余地が殆どない2年の所の数値とか見てますと実質金利低下過程の前半ってどう見ても消費税要因です本当にありがとうございましたという風にしか読めません罠という動き。

まあ足元については円安要因もあると思います(2年の低下とかそうですよね)ので2年の実質金利は低下傾向続いていますが(2年の名目金利はハナクソ程度しか動かないのでちょうど見やすい)、10年の実質金利はどう見ても足元で上昇しています本当にありがとうございましたという感じっすけど、まあそれよりもアレなのは、そもそも消費税込み要因がどうなっているのか微妙な数値をベースにして「実質金利がこう推移しています」(キリッ)とかこりゃまた随分と雑な話を堂々としますなあという所でして、結論先にありきで雑な分析をしているなどという事は日本銀行様におかれましてはまさかそのような事は無いとは存じますけれども何なんでしょこれはと目がテンになるグラフなのでありました。

ということでこちらからは以上です(キリッ)。

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2013/06/17

○白井審議委員会見ですが・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1306b.pdf

まあ何ですな、オモシロ提案2発を実施しただけの事はあって講演とか会見とかあまり注目されていなかったような気がする(つーか講演の方がワケワカメだった事もある)のですが、長期金利の質問がやたらあって、それに対してああだこうだ喋り過ぎだろこの姉さんはという所でありましてですねえ・・・・・・・

・金利に関する大演説があるのだが

2つめの質問で金利に関する質問がありまして、それに対して延々と演説しているのですけれども、まるまる4ページ分の大演説だと言うのに以下自粛。

でまあ正直言って引用するのもどうかなという風に思ったのですが、まあツッコミどころらしきものが来る前の部分もしょうがないから引用する。

『(前半割愛)金利に関しては、旭川だけでなく日本全体で関心があるテーマだと思いますので、全体的な方向感で話をしたいと思います。金利が4月以降、変動が高まるような状態になりました。私なりに状況を整理すると、2つ環境の変化があったと思っています。』

つーことで始まるのですがね。

『1つは、今までは、私どもは包括緩和のもとで金融緩和をやってきましたが、なかなかデフレを脱却できなかった。1月に2%のインフレ目標を示しましたが、それでも2%が果たして可能だろうかという声が殆どでした。インフレ期待が上がるような状況ではありませんでした。そういう中で、私どもが大胆な金融緩和を4月4日に打ち出したことで、全員ではありませんが、一部の方々――金融機関の方々――が、インフレが起こるかもしれないと思うようになったということです。デフレ脱却が全く難しいという状況に比べれば、4月4日の金融政策は、以前に比べれば確実に信認を高めているのは事実だと思います。』

・・・・・・・・・・・????

『それは事実ですが、やはり今まで、デフレに慣れた運用の仕方、デフレに慣れた企業の価格設定が約15年ほど続きましたから、なかなかすぐに調整ができず様子見の方もいますし、インフレを意識した行動をする人もいる、そういう過渡期にあると思います。投資家の中には、率先してインフレ期待を取り込んでいく方々もいれば、様子見の方々もいる。そういう中で、市場が今までと違う動きをしている。それが金利の変動を起こしている背景の1つにあると思います。』

・・・・・・・・・・・・????

『これ自体は、今までの状況とは違い、いわゆる先進国並みの2%を目指しませんかという方向で政策が動いていく中での動きではないかと思っています。』

何となく言わんとしていることは判らない事も無いのだが、どうも何を仰せなのかがワカランチ会長。

『もう1つは、米国が今年は財政引き締めをしていますが、それにもかかわらず比較的緩やかな成長を続けており、ファンダメンタルが強くなってきています。そういう中で、中央銀行の幹部を中心に資産買入額の縮小を匂わすような表現が出てきている。そうすると、米国の長く続いた金融緩和が、そろそろ出口に向かう方向に動き出すかもしれない、そういう色々な投資家の考えがあって市場が動いている。本来であれば、金融緩和を縮小していくということはその前提として景気が良くなっている、あるいはその見通しがあるはずなので、米国の景気が良くなっている中で金融緩和が解除される方向であれば、米国の金利が上がり、ドル高になり、米国の株が上がっていくことが考えられると思います。』

『とはいえ財政引き締めの影響もありますし、発表される経済指標も区々で、良いものもあれば、悪いものもある。そういう中で、いつ頃資産買入れの金額が減っていくのかについて、投資家の中では様々な見方、違いがでてくるわけです。そのために米国の金利が上がり、ドル高になり、米国の株が上がるということでなく、むしろ米国の金利が変動し、その中でドル安になったり、米国の株安になるという状況があって、それが日本に波及している面もある。その中でファンドを中心にリスク量が高まってポジションを解消するとか、利益確定売りというものもあったのではないかと思っています。』

んーっとですね、正直言ってこういう市場後講釈って何とかストが商売で話をするのは良いのですけれども、政策当局者があまり良く判らない段階でよく判らない解釈をするのは如何なものかと思うのですけれどもねえ。

『これらが2つの環境変化ということではないかと思います。今、米国の金利状況と、インフレに移行していく過程での日本の投資家の動きの違いを説明しました。』

しかしこの先がまた更にアレ。

『この間、国債市場の取引高に関しては決して減ってはいません。取引は活発に行われている。ビッド・アスク・スプレッドも、過去の歴史的なデータからみて非常に高いわけではないですが、いわゆる「板が薄い状況」にはあると思います。板が薄い状況とは、国債の価格に対して買い手と売り手がいて、それぞれに枚数というものがあるわけですが、それが今までよりすごく薄くなっているという状況です。』

えーっとですね、あまり良く判っていない事を聞きかじりで解説しない方が良いと思いますよ。

『ですから、ある金融機関が大量に国債を買う、あるいは売りたいという時に、今までのような価格では希望する金額全てを取れなくなるようなことが起こっていて、そのために取引コストが高くなっている状態にあるのは事実です。また、市場流動性――流動性を日中の値幅(最高の値と最低の値の差)を出来高で割った比率と定義するのであれば――も、高めの水準で推移しているという意味では、影響を受けています。これに関しては、私自身は、今は投資家によって様子見の方もいますし、リスク量が大きくなって少し待ちたいという人もいますし、積極的な行動をしている人もいる中で、徐々に落ち着いてくるのではないかとみています。』

ここちょっと気になったのだが『流動性を日中の値幅(最高の値と最低の値の差)を出来高で割った比率と定義するのであれば』って言うけどそもそも値幅は高安の差だけではなくて本来真面目に見たいのだったら日中の値動きの全ての幅(つまり一方通行とジャイアントスイング相場では全然違うでしょという事)を見た方が良いんじゃないですかと思いますけど、もしかして日銀の中では白井さんがここで言ったような数字で把握している積りになっているの???と思ってしまいましたぞな。

そして演説は更に続く(これ信じがたいですが一つの質問に対する答えなんですよね)。

『加えてもう1点、国債市場の関連で影響を与えているのが、投資家の日本銀行の金融政策に関する見方だと思います。日本銀行の金融政策の結果、長期金利がどう動いていくかについて、市場参加者の中には、非常に早く上がっていくという見方やゆっくり上がっていく見方など、意見が色々あり、それが市場に反映されているのではないかとみています。』

はあそうですか(棒)。でまあこの辺までが謎の前振りでして、ここからさらに謎の説明になるのですがメインのお話みたいですよ。

『しかし、より私自身が重要だと思っていることは、同時に公表文で2%の物価目標を安定的に持続するために必要な時点まで金融緩和を継続するとコミットしている点です。こちらの方を私自身は重視しており、ここを敢えて本日は強調したいと思います。つまり、これが意味するところは、例えば2年経てばすぐに出口に向かう、といったことではありません。むしろ重要なのは、先進国並みの2%にインフレ率をもっていき、それが持続的に実現するように金融緩和を続けるということなので、何か急いで止めるということはないということをご理解頂きたいと思います。』

・・・・・・・・・・・えーっと、仰せの事が全くもって理解致しかねるのですが、「2年で目標達成」するというタイムフレームがありますし、大体からしてゼロインフレ継続状態から金融政策で思いっきりフィリップスカーブをシフトさせて物価目標を達成させる為にやや強引な政策をしているのにその後も大規模緩和継続というのは話が変でしょと思いますが。

『違う言い方をすれば、ここで意味していることは、私自身は、長期金利は緩やかに上昇していくとみております。』

これ総裁とかの発言だったらまたひと騒動になるんですけどまあ白井さんなのでスルーされていたのが不幸中の幸い。

『もう少し私の考えを申し上げると、本日の講演原稿でも書いてあるように、日本銀行は毎月7兆円という大変な金額の国債を、これから少なくとも来年末まで着々と買っていくわけで、これは金利を下押しする効果があるわけです。これは、今まだ開始して2か月が過ぎたところですが、その金利押し下げ効果は、今後むしろ累積的に高まっていく可能性が高いわけです。そういう中で、長期金利は2〜3年の期間をかけて緩やかに上がっていくのではないか、と現時点では私は考えています。』

『インフレ期待との関係ですが、インフレ期待は、本日の講演原稿にもあるように長期金利の一部を構成していますが、一方で国債を買い続けることによってリスク・プレミアムを下げる圧力があります。ですから、しばらくの間は、インフレ期待が緩やかに2〜3年かけて上がっていく中で、長期金利はそれを下回るスピードで上がっていく、つまり、実質金利が下落していくと考えています。』

実は白井さんの講演では最近日銀が説明している「フィリップスカーブの上方シフト」の話がございませんでして、そのせいなのかもしれませんが『インフレ期待が緩やかに2〜3年かけて上がっていく』と仰せな所がそもそも日銀の基本的な説明とロジック整合性取れてないように見える訳でして、大体からしてインフレ期待が緩やかにしか上昇しないのに何で2年で物価目標を達成できるのかがワカランチ会長という風に思うのですけどねえ。

つーことで、金利に関する説明もイマイチ判らんし、インフレ期待に関する説明では何かそれで2年で2%の目標行くのかいなという説明になっているし、まあ結論からしますと実はあたくしここの説明を読んでいて?????だったのですが誰か解読できた人ご教授願いたいです。


・追加策見送りに関して

『(問) 市場が依然としてボラティリティの高い状態が続いているのですが、総裁は昨日も今日も市場は徐々に落ち着きを取り戻すとの見方を示されています。しかし、依然として今日も円高、株安が進んでいる状況です。先日の決定会合で金利を抑制する追加策が見送られましたが、見送りという判断について問題がなかったのかどうか、ご意見お聞かせ頂ければと思います。』


これがまた謎の大演説になるのですけど・・・・・・・・

『(答) 市場では、11日の金融政策決定会合で、2年物の固定金利オペが導入されるのではないかという観測が出ていたと思います。決定会合では、むろん、色々なこと、プラスもマイナスも議論したわけですが、結論しては、私どもは今まで3回、市場参加者との懇談会を続けており、その結果として5月30日に当面の国債買入れのオペの運営方針を出して、弾力化に踏み切ったわけです。また、何故2年物の資金供給という話が出てくるかといえば、恐らく一部の金融機関による資産と負債、アセットとライアビリティの観点からのヘッジ手段ということでみているのかと思います。それに関しては、現在のところは1年物を使って、これは金融緩和という役割ではなく、ヘッジ手段として今までやってきていますし、その上に5月30日にさらに弾力的なオペの方針を出しているということが第1点です。』

えーっとですね、喋り過ぎですな。しかも『1年物を使って、これは金融緩和という役割ではなく、ヘッジ手段として今までやってきていますし』とか意味判んないですし。

『2点目は、ご存知のように来週から新しく貸出増加支援のための資金供給オペを開始します。これは、現在では0.1%という大変低い固定金利で、1年、2年、3年から選択ができ、無制限――貸出したという実績に基づきますが――です。最長4年まで使えるという固定金利オペがあるわけです。私どもは、何故4月に量的・質的緩和を打ち出したかと言えば、ポートフォリオ・リバランスという言葉に尽きますが、もう少し私の言葉で説明すると、今まで非常にデフレマインド、企業のデフレ的な価格の設定、あるいは金融機関、投資家のデフレ的な運用方針が続いていた。そういうところでは、貨幣を持っていることの機会費用があまりないため、リスクマネーがなかなか生じないわけです。そういうデフレ的状況の中では、リスクをとるような動きはあまり起きません。』

『貨幣を持っていることの機会費用があまりないため、リスクマネーがなかなか生じないわけです』というのが問題意識なんだったら長期金利が落ち着いて推移するという見通しになら無い筈なんですけどねえ。

『そうすると、これから新しい若者達が起業していく、あるいは非常にスキルのあるイノベーティブな企業がこれからどんどん発展していって欲しい、それがわが国の強みになっていくのに、そういったところにお金が回らない可能性があるわけです。』

それは物価どうのこうのではなくてプルーデンスの問題とか成長期待の問題だと思うのですが・・・・・・・

『したがって、4月4日は、まず日本銀行が率先してリスクをとることによって、そういう15年のデフレのなかで染みついてしまったマインド、あるいは運用方針、価格設定から除々に脱却していきませんかという思いでやってきました。』

そ、そうなのか。

『そういう視点に立って、来週から貸出増加支援のための資金供給オペをやります。これは固定金利で最長4年までという、先進国では非常に珍しい資金供給オペですので、是非これをご活用頂きたいということです。むろん、金利変動リスクが懸念されることは重々承知していますが、これをご活用頂きたいと思います。』

そういう視点とか言ってるけど制定したのは昨年12月だけどな。つーか問題は金利じゃなくてちゃんとした資金需要がという所だとは思うのだけど、まあやらないよりはやった方が良いでしょうね。

『3点目は、金融市場は、確かに変動が高まりました。その一部は先ほど申しあげたように、投資家、金融機関によって動きが区々になったことによって起きているところもあり、なかなか今までのように同じ国債を売買するにしても、価格発見が以前よりも簡単でないのは事実です。』

色々な人が別々の動きをした方が市場の価格発見機能が高まるような気がするんですけど。

『それは先ほど申しあげたように板が薄くなる状況になっていますから、コストがかかるようになっている。この辺は、段々落ち着いてくる可能性もあるわけです。そういうところも想定していますし、やはり日銀は粛々と決めました7兆円程度を毎月買っていきますので、その下押し効果というのはこれからも出てくると思っております。』

ということで、マインドセットを変えると言ってみたりインフレ目標は徐々に変化すると言ってみたり、一方金利の動きは徐々に落ちつくと言ってみたりで話が整合性取れていないので正直何を言いたいのかワカランチ会長な会見テキストでした。

まあ会見テキストがワケワカランというのは恐らく実際の説明が更にワケワカランチ会長で、それを要旨(これ逐語文字起こしとは微妙に違いますので念のため)にまとめるスタッフの皆様も????となりながら作ったのでこうなったという事ですねわかります(^^)。


ということで質疑応答の大演説を一応引用してみましたが正直ワカランチ会長なのでありましたorzorz

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2013/06/14

○白井審議委員の講演が正直ワケワカランのですががががが

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130613a1.pdf
我が国の経済・物価情勢と新しい金融緩和政策:金融政策の過去と現在
── 旭川市金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

本文が22ページもありやがりましてもう読むのがめんどいのですが、異次元緩和の説明部分を読む前に後半の方が鑑賞物としてアレなのでその辺を鑑賞しようかと。


・その前にこれは何なんだと

半分よりちょっと前の辺りに『3.包括緩和に対する私の見方と3 月会合での提案』という小見出しがありまして、その辺からが鑑賞物として鑑賞対象になるのですが、そこから読んでいるとそれなりに量があるのでまあこの部分ではとりあえずここの小見出しに釣られてみた。

本文15ページ(PDFファイルで16枚目)なんですけどね。

『小出しで大胆さに欠けるとみなされた金融緩和』

・・・・・・・・・・・・それをやっていたのは何処の誰だと小一時間問い詰めたい。

『二つ目の問題ですが、包括緩和の導入以降、1 回あたり5〜10 兆円という規模の基金の増額を9 回にわたって行うなど、積極的な金融緩和を実施してきたと思います(前掲図表13)。にもかかわらず、市場・国民との対話が必ずしも効果的ではなかったのか、小出しで大胆さに欠けるとの見方を持たれた方々が少なからずおられたようです。日本銀行はデフレ脱却に消極的との印象を拭えず、金融緩和に対する本気度にある程度疑問が投げかけられていたことは認めなければなりません。』

『また、過去に日本銀行が行った金融緩和の出口のタイミングが早かった――例えば、2000 年8 月のゼロ金利政策の解除や2006 年3 月の量的金融緩和政策の解除――との見方も根強いように思います。そうしたこともあり、日本銀行は包括緩和を実施しながらも本気ではデフレ脱却を望んでいないのではないかといった批判に拍車がかかったように感じています。』

大昔の話はともかく、小出しで大胆さに欠けるとか言いましても非伝統的政策のアプローチとしてグラデュアルにって話だったんじゃなかったのかよそれを説明するのあんさんじゃねえのとか思う訳で、お前は何を言っているんだと思いますが、その3月の謎提案に関する説明がそのちょっと後にございます。


・3月の謎提案の言い訳キタコレ

『(5)本年3 月会合における基金・輪番オペ統合と追加金融緩和の提案』

『以上の問題意識から、私は、金融政策決定会合においても、昨年来、何度か、問題提起を行なってきました。そうした経緯を踏まえて、これまでの主張を取り纏めて3 月会合での議案提出に至ったわけです。』

だから何故3月会合なんだと。

『この提案では、日本銀行が買入れ対象とする資産として最も重要な資産を国債と位置づけた上で、その買入れの具体策をパッケージとして示しています。その内容を簡単に整理しますと、以下の通りです。』

ぐ、ぐたいてきなパッケージだと???

『第一に、輪番オペと基金オペを統合し、基金の下での国債買入れも輪番オペと同様の30 年まで広げて、イールドカーブ全体の押下げ圧力を高めます。30 年までのゾーンを含めるのは、多様な年限があれば市場からの買入れも容易になること、金融緩和効果が高まること、金融緩和姿勢の見せ方としてもメッセージ性が強まると考えたからです。』

『第二に、統合後の国債買入れ額については、現在の月額4 兆円程度から「少なくとも5 兆円程度」に増額し、「期限を定めない資産買入れ方式」を2014 年初から前倒しして速やかに導入します。』

『なお、平均買入年限については、両者の統合後、残存期間5 年程度を中心に買入れを増やすことで、現在の3 年弱から4 年以上に長期化することを見込んでいました。また、国債の年限別区分については、個人的には、新発国債が多く流動性が高い年限の2 年、5 年、10 年を中心に、「3 年以下」、「3 年超5 年以下」、「5 年超10 年以下」、「10 年超30 年以下」といった区分がよいと考えていましたが、実際に各ゾーンで日本銀行による買入れがどの程度可能なのか不透明な部分もありますので、執行部に検討してもらい成案を得たうえで、速やかに導入するという形式をとることに致しました。』

>執行部に検討してもらい成案を得たうえで、速やかに導入するという形式をとることに致しました
>執行部に検討してもらい成案を得たうえで、速やかに導入するという形式をとることに致しました
>執行部に検討してもらい成案を得たうえで、速やかに導入するという形式をとることに致しました

・・・・・・・・・どこがどう具体策をパッケージしているのかおじちゃん頭が悪いのでワカランチ会長です><;

『最終的に、4 月4 日の量的・質的緩和の導入において、統合が実現に至ったことは、大きな政策の前進であったと大変高く評価しています。』

そらようござんしたね(棒読み)


・肝心の論点をスルーされましても困るのですけれどもねえ

『(6)「量的・質的緩和」と私の提案の類似点と相違点』という本人的にはドヤ顔なんだろうなあと思われる小見出しが続くのでありまして・・・・・・・(本文17ページ)

『ここで、量的・質的緩和と前述の私の3 月提案との関係を申し上げますと、共通している点は、2%の物価安定目標の早期実現を目指すための重要な政策手段として長期国債の買入れを位置づけたこと、イールドカーブ全体への下押し圧力を高めることを重視していること、輪番オペと基金オペを統合したことが挙げられると思います。』

ほうほうそれでそれで?

『一方、両者で異なる点は、月間買入れ額の多寡です。具体的には、私の3 月提案はオープンエンドの買入れ方式で少なくとも月間5 兆円程度の買入れを速やかに実施するという内容でした。それに対して、新しい政策では2 年程度の期間に集中してネットベースで年間50 兆円程度、(償還分を含む)グロスベースに換算しますと、月額「7 兆円強」の買入れを行うというものです。』

『つまり、私の提案では、より長い期間の金融緩和の実施を想定しつつ、月間買入れ額を少なくとも5 兆円程度としているのに対して、4 月の政策内容はより短期間に集中してより多額の買入れを行う点に違いがあります。』

で?

『この点、私は、3 月の提案において、月間買入額として5 兆円程度が妥当と考えましたが、より大胆な金融緩和が必要ではないかとの思いを、3 月の提案以降、徐々に強めました。』

???????

『最終的に、私は、量的・質的緩和の導入に際して、月間国債買入れ額を7 兆円強とすることに賛成しましたが、その理由を改めて申し上げれば、以下のとおりです。今申し上げたように3 月時点以上の月間買入額が必要だという思いがある一方、国債の新規発行額(月間10 兆円程度)に近づくと財政ファイナンスと誤解される懸念がありますので、その中間程度の金額が妥当だと考えたからです。』

とまあどうも「買入の総額としてはアタシの3月の提案と同じなのよ(キリッ)」ってな感じの話をしているように思えるのですが、「2年間で達成」という時間軸に関わる部分に重要な違いがあるという事実を完全にスルーして「類似点と相違点(キリッ)」とか言われましても何だかねえという風に思うのでありまする。

もうちょっと続くので一応引用だけしておく。

『ちなみに、世界金融危機以降、金融市場において、日本銀行はFRB に比べて金融緩和に消極的との意見が多く聞かれましたが、4 月の政策は米国対比でみても遜色ないものだと思います。すなわち、月間買入額は(償還分を除く)ネットベースでは4 兆円程度ですので、FRB のネットベースの月間買入額である850 億ドル(国債450 億ドル、MBS が400 億ドル、円換算で8.5 兆円)の半分程度に達することになります。我が国の経済規模(例えば、名目GDP)が米国の4割程度であることを考えますと、かなりの買入額だということが分かります。また、平均買入年限についても、FRB の平均買入年限が9 年程度であることを踏まえれば、7 年程度(6〜8 年)への延長は十分長期化したと思います。』


・続いて4月の謎提案の説明ががががが

『4.展望レポートに対する私の見解と本年4 月会合での提案』というのが続くのだが、最初の小見出しの『(1)経済・物価見通しを1 年延長した理由』というのはどうでも良いので割愛致しましてその次の『(2)リスク要因に関する記述の見直し』である。

『消費税率引上げに伴う影響についての私の提案』

そういやそんな提案もあったな。

『次に、経済見通し対する日本銀行のリスク評価については、第2 部でも指摘していますが、全体として「上下にバランスしている」と判断しています。ただし、リスク要因のうち消費税率引上げに伴う影響について、個人的には注意してみています。この点は、2%の物価安定目標の実現との兼ね合いでも重要ですし、実際、私は4 月26 日の金融政策決定会合において提案を行いましたので、その提案の内容にも触れつつ、お話しします。』

ほほう。

『むろん、財政の健全性と社会保障制度の持続性の見地から消費税率引上げは着実に実施されることが望ましく、その点を問題にしているわけではありません。私が懸念しているのは、今回の消費税率引上げは、1989 年の消費税導入と1997 年の消費税率引上げ時期と比べて、大規模な金融緩和による物価上昇の影響が重なることが見込まれており、日本銀行や政府による適切なコミュニケーションが行われなければ、消費税率引上げを含めたインフレ率の上昇が家計の想定を上回るのではないか、その結果、家計の予想を超える実質所得の減少によって想定以上に景気が下振れるリスクがあるのではないか、ということです。』

・・・・・・・・・・・?????

えーっと、そもそもフィリップスカーブを上方シフトさせないと物価目標行かないという前提になっている訳で、期待の大きな変化を伴う為には想定を上回る物価上昇が短期的に発生した方が寧ろ望ましいような気がするんだが。

『具体的には、2014 年度に予定されている消費税率の5%から8%への引上げは、インフレ率を2%ポイント程度引上げると想定されています。その一方で、企業・家計の間では「2%のインフレ目標」という言葉がメディアなどを通じてかなり浸透しています。ところが、その2%が、家計の側から見れば、消費税率の引上げによる2%なのか、それとも量的・質的緩和の効果にもとづく2%程度のインフレ率を示しているのか、定かではありません。』

「定かではありません(キリッ)」とか言われましてもそれはあんさんらがちゃんと説明する話じゃ無いのでしょうか???????????

『仮に、両方の効果を含めるのであれば、本来、短期的なインフレ率として、4%程度(消費税引上げ分2%プラスその他の物価上昇分2%程度)が予想されても不思議ではありません。この点、展望レポートで示している委員見通しの中央値で確認しておくと、2014 年度の消費者物価(除く生鮮食品)は、消費税率引上げ分を除くベースで1.4%、これに引上げ分を加えれば3.4%にもなり、2%よりも高くなります(前掲図表2)。』

そらそうや。

『ところが、実際には、短期のインフレ期待を示す指標をみると、最近上昇傾向にありますが、その水準にはまだ距離があるように見えます。つまり、家計がそれだけのインフレ率の実現を予想しているとは今のところ思えません。むしろ、家計の(2014 年度辺りを反映した)「短期」のインフレ期待は、2%程度かそれ以下に留まっている可能性があると考えた方が実感に近いように思います(図表15)。』

『加えて、消費税率引上げ分を含む物価上昇率に関する認識は、2014 年度入り後に消費税率が引上げられてから、急速に国民の間に浸透する可能性があります。つまり、消費税率の上昇分が大きい2014年度については、家計のマインドに物価面から現在想定している以上の下押し圧力が加わることで内需が減少しその影響が長引く可能性を意識しています。』

・・・・・・・・・・えーっと、そこのマインドセットを変えないとフィリップスカーブが上方シフトしないのですから物価上昇に関する認識が広がるのがリスクとか言われましても困るのですけど。

大体からして「期待を抜本的に変える」という政策やっているのにその期待が上方シフトすると経済に下方リスクとか言ってたら話が元から矛盾しませんかねえ・・・・・・・・

『こうした点を踏まえますと、展望レポートの書き振りはその可能性に十分踏み込んでいないと判断致しました。なぜなら同レポートでは「第4に、消費税率引上げに伴う駆け込み需要とその反動の規模は、その時々の実質所得や物価の動向によって大きく変化し得る」との記述に留まっているからです。そこで、私は、4 月会合では、当該記述について、家計の実質所得減少の可能性をより織り込んだ記述に変更する旨の提案を行いました(この提案は、後述する展望レポートの「2つの柱」の書き振りについての改善案とともに提出しました)。』

マジでワケワカランのですけどどういう事だか判る人教えてジェネラル。

『また、こうした想定外の需要の下押し圧力が生じないように、今後、国民に対して、日本銀行自らが消費税率引上げ分を含めた物価の見通しについて、早くからより効果的に情報発信をしていく必要があると考えています。』

まあこれは判るけど。

『なお、私の提案は結果的に否決されましたが、提案の意図は、より実体を反映したリスク要因に関する記述を含めて、具体的な改善を目指したものです。従って、展望レポートの内容自体に反対したわけではありませんので、その後の議長案については最終的に賛成することにしました。』

ワケワカランチ会長。

『いずれにせよ、私が指摘した点は引き続き重要だと考えており、今後も家計・企業のインフレ期待などの動向を把握しながら、注視していきたいと思います。』


・更に謎提案の説明は続く

途中を飛ばしまして『(3)展望レポートの構成:2 つの柱についての提案』という小見出しなのだがこれがまた良く判らん・・・・・・・(本文21ページ)

『最後に、4月の決定会合では、展望レポートの構成について、国民への分かりやすさを高めるべきとの観点から、記述方法についての改善提案を行いましたので、この点について説明したいと思います。』

『同レポートは、(1)先行きの経済物価情勢の点検、(2)金融政策運営に当たって重視すべきリスク、をそれぞれ第1の柱と第2の柱として点検するという構成になっています。この点検作業に異論はありませんが、その構成については日本銀行の意図が十分伝わる形式になっていないと考え、就任当初から様々な機会を捉えて問題提起や議論を行ってきました。』

そ、そうなのか・・・・・・・・

『そして、最終的には、新体制の下で初めて展望レポートを公表する4 月26 日会合の場で、改善提案を行いました。すなわち、現状の書き方では、点検作業を第1 の柱、第2 の柱と名付けて、それらの点検結果を切り出して(後方に位置する)第3 章で記述する形式をとっています。しかし、この方法では、第1 章と第2 章に書かれている内容と第3 章とのつながりが一読して分かる構成となっておらず、読者の方々に、二つの柱の意図が十分理解されずに読み過ごされてしまう可能性が高いと感じています。そこで、第3 章の第1 の柱と第2 の柱という用語自体とそれに関する記述を全て削除し、全体の文章を通して該当箇所に適宜それらの柱で点検した内容を織り込むべきとする内容の提案を行いました。具体的な内容は以下のとおりです。』

点検作業の部分を分けた方が分かりやすい気がするんだが・・・・・・・・・

『第1 の柱に基づく点検結果については、第1 章「 我が国の経済・物価の中心的な見通し」の最後に記述する。』

『第2の柱に基づく点検結果については、@「景気」部分について、第2章「上振れ要因・下振れ要因」の第1節「経済情勢」の最後に、A「物価」部分について、第2 章の第2節「物価情勢」の最後に、B残る「金融の不均衡」部分について、第3 章の「金融政策運営」のなかに残したうえで若干書き改めて、それぞれ記述する。』

点検部分があちこちに飛んじゃうと点検作業を全体として見た場合の整合性とかが見えにくくなる、というか整合性が無いような点検(良くあるこっちとあっちで都合の良い部分だけ切りだしてくるという技ですな)をしているかの検証が必要になるのでどう見ても読みにくいのだが・・・・・・・

『他にも改善方法は様々あるように思いますが、全体の文章を通してスムーズに読める方が良いと考えたわけです。私としては、日本銀行は、展望レポートを含む公表物について、従来の読者層だけではなく、より多くの市場・国民の皆様にお読み頂けるように、謙虚な気持ちで、読者の視点に立った分かりやすさを追求していくべきだと思っております。私自身は、今後もコミュニケーション戦略の改善について考えていきたいと思っております。』

「分かりやすさ」キタコレという所ですが、分かりやすさも勿論重要なのですが、分かりやすさを追求するあまり全体としての整合性がぐちゃぐちゃになったら元も子も無い訳で、この人は何を言ってるんだという所で分かりにくい話だわこりゃとか思いましたぞなもし。


ということで、何回かこの前後読んだのですが、結局何か?????感がぬぐえない次第で、まああまりにも?????なので鑑賞物件として陳列してみましたという所でございます。

#また海原雄山状態になって以下割愛

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2013/05/28

4月26日開催、ということですので展望レポートの回の議事要旨であります。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130426.pdf

・この政策委員を選定したのは誰だあ!(ガラッ)←海原雄山風で

今回の議事要旨ですが、まあ読んでいて色々とツッコミ所が多くて鑑賞物としては笑えるのだが真面目に考えるとその笑いもひきつるというものですが、本文中も色々とツッコミどころがありますけれども今回の最大のオモシロ部分は最後にあります。

本文16ページ(ファイルの18枚目になります)にそのツッコミどころが!!

『白井委員からは、@分かりやすさの観点をより重視した2つの「柱」による点検結果の記述方法の改善とAリスク要因の記述の明確化、具体的には、@として、第1の柱については「1.わが国の経済・物価の中心的な見通し」の最後に、第2の柱については「2.上振れ要因・下振れ要因」の最後にそれぞれまとめる形で記述する、Aとして、経済情勢に関する上振れ要因・下振れ要因のうち消費税率引き上げの影響について、家計の実質所得減少のリスクをより明確に記述する、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

・・・・・・・・・・・・・・???????????????????

えーっとですね、これ百万回、とは申しませんが10回くらい読み直したのですけれども、「書いてある日本語は言語として認識可能だが、言っている事の意味が全く認識できない」という大変に素敵な内容にしかあたくしには見えないのですが、これ真面目な話何をしたくて提案しているのか1ミリも理解できません。

大体からして第1の柱と第2の柱の点検に関する話って既にだいぶ前から実施されている話でありまして、別に今さら記述を変えたからと言って分かりやすくなるとは思えないですし、大体からして出来上がりの文言を想像したのですけれども何がどう分かりやすくなるのかワカランチ会長。

#そもそもポートフォリオリバランスを前面に打ち出した政策で第2の柱の点検というのが矛盾しているのではないかという論点を持ち出すならまだ政策論として判るのだが

『賛成:白井委員
反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、石田委員、佐藤委員、木内委員』

そらそうよという所ですが、そもそもこれあたくしが何度読んでも「?????」状態でポカーンという話なのに、実際にMPMでどういう説明をして議決したのかと思うと、他の審議委員の皆様「????????????」状態だったのではないかと愚考する所ではございまする。

つーかさ、この先生3月にも意味不明というか政策の体を成していないレベルの提案をして否決された結果ミスコミュニケーションの種を振り撒いているのですが、今回は今回でまたまた超越意味不明提案を持ち出しておられるという事でして、もうこれは海原雄山が厨房に乗り込んで行って「この政策委員をノミネートしたのは誰だあ」(ガラッ)となるレベルですが大丈夫ですかという風情でありまする。しかも3月もそうでしたが今回も「わかりやすさの観点」とか何かもうヨイショの香り以下自主規制(−−;

ちなみに、白井さんの謎提案に関してなのですが、『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分では他の2名(佐藤さんと木内さん)の展望レポートの記述に関する反対提案(木内さんの場合は声明文でのフォワードガイダンス文言に関する反対提案もある)に関する説明部分が記載されているのですが、白井さんの謎提案に関しては『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の所には説明部分が記載されているもののそちらには記述が無いという事ですので、これはつまり白井委員の提案には政策インプリケーションが以下自主規制(^^)。

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2013/03/08

○決定会合レビューその2:白井審議委員謎の提案

今回市場の話題というか「??????」を集めたのは白井さんの提案。

『(注1)白井委員より、基金の長期国債の買入れについて、「期限を定めない買入れ方式」を速やかに導入し、「金融調節上の必要から行う国債買入れ」と統合する議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:白井委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、石田委員、佐藤委員、木内委員)。』

この提案があったというヘッドラインが出た時に債券先物が反応してやや上昇してましたけれども、これはいったいなんなんですねんという話ではございます。

・そもそも全体像が判らんがな

でね、声明文の場合否決された提案に関して事細かに公表されないので、この白井さんの提案に関してはさすがにもうちょっとディテールを見せてくれないと何を考えているのかがさっぱりワカランのが困ったもんでありますが、まあしょうがないので字面で考えるしかございませんな。決定会合議事要旨である程度どういう趣旨のもとでこういう提案が出た、というのが判るのですが、議事要旨が出るのは(これは今の日銀法のテクニカルな問題だと思うので改正して欲しいわと思うのですが)日銀法の規定上次回以降の政策委員会・金融政策決定会合において承認されないと公表されないので内容が判ったころには過去の話になっているのが遺憾の極みでありまする。

んでもってこの提案ですが、輪番と基金を統合すると言われましてもその瞬間にいわゆる銀行券ルールを突破しまして、まあ包括緩和(量的緩和)やっている時に調節技術上の銀行券ルール抵触云々は正直どうでも良いのですけれども、一応銀行券ルール自体は「財政ファイナンス懸念に対してそうではありませんとお答えするため」としての存在意義がございますので、この銀行券ルールとの折り合いはどうするんでしょうというのが公表文だけだとワカランのがまず第一に困ります。

更に困るのは、統合して期限の無い買入にするにしても、じゃあ買入をどうやって実施するのかとかどの年限をどう買うのかという話がこれまた見事に書いていないので何考えているのかがさっぱり判らないというのが困りものです、というかそもそもどういう年限をどう買うかみたいなのって結構良く練って考えないといけないもので、先行きの買入残高や保有資産構成がどうなるかという試算をベースにそれで良いのかどうかとか考えないといけない話ですからして、その辺綿密に作り込んだ案なのかがさっぱりワカランので判断のしようがないのですが、作り込んでいなかったらちょっとねえという所ではございます。


・オープンエンド買入の前倒しと今のAPP残高目標との関係

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/release/2013/mei1302.pdf
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高(2013年2月28日現在)

こちらの2ページ目にAPPでの買入残高がありますので引値表でも見ながらヘコヘコと償還順に額面を計算していきますと償還スケジュールが判るのですけれども、まあそんな事せんでも実を言えば今年償還になるAPPでの国債買入残高は償還分以外の変化は無い(買入をするのは残存1年以上だから)のですけれどもまあそれは兎も角(^^)。

営業毎旬報告ベースで見ますと、2月末のAPPでの国債買入残高が26兆4481億円になっておりまして(→http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2013/ac130228.htm/)、上記の銘柄別残高でヘコヘコとあたくしが計算した額面ベースの数字が26兆3187億円になっているのでたぶん額面と価格との差分を考えたらあってるだろうと思いつつ申し上げますが、あたくしが手元でヘコヘコ計算したベースなので本人は合っているという自信満々のドヤ顔(ではありませんが)で申し上げますが正確な数値は皆さん計算してちょということで。

現在の買入残高が26.45兆円でして、6月までに来る償還額が9995億円になっているので、残高目標34.0兆円に対して残高達成に必要な買入額は(額面と時価の差があるのでその辺はネグって頂きたいのですが)6月までは(単純に4で割っているだけですが)2.1兆円程度の買入ペースが必要になります。

んでもって12月の目標残高は44.0兆円ですので、6月から12月の6か月での買入が必要なのは10兆円に加えて償還予定額が50965億円ありますので15.1兆円でして、償還分を勘案すると必要買入額は7月以降は月割りすると2.5兆円程度の買入ペースが必要になるんですよね。そんなに買えるのか(超過準備積む人が居なくなって札割れするとか、こっちは札割れしないけれども別の供給系オペに影響するとかになるという話)というのも大変だと思いますが。

つーことでですな、よく「オープンエンド買入を前倒ししないのは消極的」とか言われたりするのでございますが、そもそもオープンエンド買入を開始する前の残高目標ベースの方が長期国債に関しては買入ペースが結果としては早くなる筈という風になっている訳でして、オープンエンド前倒しするのは良いのですが、実は今直ぐにオープンエンド方式に切り替えると、短期国債の方は明らかにAPP積み上げペースが速まる(普通に考えて買入残高が30兆円になるのですが、12月末の目標が24.5兆円ですので)のですけれども、長期国債の方は実は当初の約束よりちょっと遅れる(短期国債の増え方の方がデカイのでAPPそのものという意味ではオープンエンドを前倒しにした方が早く積みあがる)という話でして、短期国債で積み上げペースを加速させたAPPでもヨロシという負債サイドビューだけで物事を語るのであればまあ良いのですが、そうじゃないという方は日銀の公表文書(と各銘柄の償還は財務省のページでもロイターでもクイックでもブルームバーグでも判りますのでその内容)ベースでこの程度の計算はただの足し算割り算の世界で計算できますのでその辺考えてくださいね(はぁと)という所ではございます。

まあその辺を判った上でしらっと演技モードで突っ込むというのは一つの手段ではあるのですが、この部分との折り合いをどう考えて提案したのかも見えないので何だかな論評に苦しむ提案ではあります。


・つーか何もこの時期に提案せんでも良いのではないかと

他に却下されていたのは宮尾さんの提案なのですが、まあ宮尾さんの場合は物価目標2%導入時からの継続提案なのでこれは一貫している話で問題は無いです罠。

一方で次回のMPMから総裁副総裁の3名が変わるというこの時期に新たな政策提案をするとか、緊急性のあるような案件なら兎も角そうでもないのに何で提案するねんそもそも今回で終了の3名にそういう投票行動させるとかナンジャラホイというかTPO的にどうなのというかKYさんですなあというかという感じですが、まああたくしの周囲3メートル(電話線と電子メールの届く範囲内も含む^^)で言われていたのは概ね以下のような感じですかねえ。

その1:新執行部擦り寄り早速キターーーー(・∀・)ーーーーーーーー
その2:提案して却下されるプロレス提案キタコレ
その3:単に目立ちたかっただけなんじゃないでしょうか????

でまあその2というのは時々そういうネタが語られる事もあるのですが、まあさすがにそういう行動というのは取れないでしょ(大体からして1から10まで議事録が後日公表されるからプロレス提案とかしたら文脈で判っちゃうでしょ)と思いますのでまあこれは却下。

そうしますとその1かその3のどっちかという話になる訳でして(オープンエンドを早く実施したいのであれば前回の時になぜ言わないという話ですから)、と勝手に決めつけてしまいますが(すいません)、その位唐突感があるので何なんでしょという所ではございます。いやこれが実は来週2月会合の議事要旨が出て前回もそういう話をしている人がいたというのであれば少しだけ考え方改めますが。

その1はまあ判りやすい(^^)ですけど、実は単にその3であって、石田さんも宮尾さんも佐藤さんも木内さんも色々と目立っている中で「あたしも〜♪」と目立とうとしたのではないかという考察をするのは失礼ですかそうですかもしかして笑点大喜利の黄色い羽織役をまさかの白井さんが買って出たということでしょうかわかりません(><;

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2013/01/17

○白井審議委員講演:付利下げ検討ヘッドラインはどう見てもベンダーのヘッドライン詐欺です本当にカムサハムニダ

副題がなげえよという事ですが、どうもベンダーのヘッドライン詐欺というか煽りが酷いのでおもわずこっちも小見出しに書いてみた訳ですが(−−)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/ko130116a.htm/
チャレンジングな経済環境下での我が国の金融政策

ちなみに本チャンの講演テキストはこちら(英文です)。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2013/data/ko130116a1.pdf
Japan's Monetary Policy in a Challenging Environment

Speeches at the Bank of Italy and the Eurasia Business and Economics Society Conference Held in Rome (January 11th-12th)

なお、七面倒臭いので英文原文では無く邦訳の方から引用することを予めお断り致します(汗)。


・内容は非伝統的金融政策の論点整理

でまあ冒頭の所から引用。

『まず、本日のプレゼンテーションの流れについて簡単にご説明致します。本日の話題の中心は、日本銀行がバブル崩壊後の1991 年に最初に政策金利を引き下げて以来、およそ20 年にわたって実施している金融緩和政策についてご紹介することにあります。時間の制約もございますので、そのなかでも2つのタイプの「非伝統的な」金融政策について焦点をあてていきたいと思っています。』

キタコレ(・∀・)

『まずは、第1 期の金融緩和の枠組み、すなわち2001 年から2006 年にかけて実施したいわゆる「量的緩和(Quantitative Easing <QE>)」政策についてお話いたします。そのうえで、第2 期の金融緩和の枠組み、すなわち、2010 年から現在にかけて実施している、いわゆる「包括的金融緩和(Comprehensive MonetaryEasing <CME>)」政策についてご説明いたします。』

包括緩和の事をComprehensive Easingというのは認識していたけどCMEというとシカゴ商品取引市場を最初に思い出すので何だか違和感があるのですががが(−−)。

『そして、最後に、構造的問題とそれがマクロ経済に及ぼしている影響についてお話し、こうしたきわめてチャレンジングな経済環境のもとで日本銀行なりに取り組んでいる施策についてご紹介していきたいと思っています。』

とまあ最後のパートは人口動態の問題などの日本経済に対する影響という話になっています。

んでもってこちらの講演なのですが非伝統的金融政策に関する論点整理となっておりまして、非常に丁寧かつ手際よく内容が纏まっておりますし、読んでいてまあそんなに違和感が起きるような内容(つまり効果などに関するおまえそれは俺様評価にも程があるだろというFEDのペーパーなどで良くあるパターンは特段見受けられないという事であります)でして、まあ英文の方を読むのも何ですので日本語の方を一読されることを推奨致します。

でまあ他にネタが無いのであればこの講演を細々と題材にしたい所なのですが、ご案内の通りの市場状況でございますので、そっちの備忘録もなどと思いますと本日は遺憾ながら甚だ簡単に参りたいと存じますm(__)m


・QE政策の効果に関する部分から

『(3)量的緩和政策は効果的だったのか?』というお題の部分から引用。

『実証的には、QE 政策の効果とそのトランスミッション・メカニズム(政策効果の実体経済や金融資本市場への波及経路)は、図表7 で概念化していますように、(1)第一段階として金融緩和から金融資本市場への波及経路、(2)第二段階として第一段階から実体経済や物価への影響に分けて見ることができます。』

まあ今の包括緩和でもこの観点は同じですけど。

『鵜飼(2006)論文では、特に第一段階に関連する量的緩和政策の既存の実証文献をまとめて、先ほどもご説明いたしましたQE 政策の3つの柱である(a)当座預金残高を増やすことでバランスシートを拡大することがもたらす効果、(b)時間軸政策が短期金利の将来経路に及ぼす効果、(c)長期国債の買入れによる日本銀行のバランスシートの構成変化がもたらす効果に分けて分析しています(前掲図表4)。このうち、(a)と(c)はポートフォリオ・リバランス効果とシグナリング効果を通じて、(b)はシグナリング効果を通じて金融資本市場に働きかけることが想定されています。』

でまあ講演の後半パートになる包括緩和あるいはそれに関連して触れられているFEDのバランスシート政策(LSAP)についてで論点として指摘もされているのですが、実際問題としては2001年からの量的緩和政策においてはバランスシートの構成を意図的に変化させる方向でのポートフォリオリバランスはあまり謳っていなかった(バランスシートのサイズを拡大することと金利の名目ゼロ化によるポートフォリオリバランスの話は導入当時から行っている)のですな。

『実証分析結果では、QE 政策の効果は、主として時間軸政策を通じて、イールドカーブを下方に押し下げること(すなわちシグナリング効果)を通じて確認できることが明らかにされています。(a)と(c)によるポートフォリオ・リバランス効果については効果があるという研究とほとんど確認できないという研究の両方があり、明確な結論は出ていません。』

ふむ。

『ただし、長期国債の買い入れについては、リスクプレミアムの引き下げにはほとんど影響がないとの結果が出ている一方、株価については、量的緩和が資本流出を促しその資金を海外のヘッジファンド等が活用して日本株に再投資することで株価の上昇に寄与したとの分析が見られます。』

『QE 政策の効果の第二段階については、それがマクロ経済状況に及ぼす影響を分析した研究は少ないようです。このうち、日本銀行のバランスシートの拡大が総需要や物価に及ぼした効果は限定的とする研究がある一方、QE 政策が生産に対して統計的に有意な影響を及ぼしたものの、コアCPI に対してはほとんど影響がないとする研究が見られます。』

ほほう。

『QE 政策の総合的評価については、2006 年に、当時の福井俊彦総裁の講演のなかで触れられています。すなわち、第一に、潤沢に流動性を供給することで金融システムの安定化に寄与しており、特に金融システムの安定性に対して根強い懸念があったときに大きな効果があったことです。潤沢な流動性供給は、増大する金融機関の流動性需要を充たし、それにより1990 年代後半の金融危機の際に見られた大規模な信用収縮の再来を回避できました。第二に、QE 政策を継続する「約束」をすることで、日本企業の回復を下支えする極めて緩和的な金融環境を形成したことです。特に、銀行の貸出金利や社債の発行金利は、イールドカーブがフラット化し、リスクプレミアムも緩やかに低下しました。』

『その一方で、日本銀行は、これまで、QE 政策の副作用として、金利がゼロ%まで低下したことで裁定の機会が失われたことや、市場からの資金調達の必要性がなくなったことで銀行間市場が縮小した点を指摘しています。また、金融機関のクレジットラインが縮小し、金融機関の内部で資金部門の人員削減やシステム投資が抑制され、取引基盤が弱まったとの指摘も聞かれています。』

まあそうですな。

『そうした点に加えて、より厳しい事実は、これだけの金融緩和策を実施しても、銀行の融資活動が活発にならなかったことです(図表8)。』

キタコレ。

『この原因は、大量な不良債権を抱える金融機関のバランスシートの悪化に対処するための政策対応が遅れたことにありますが、部分的には、多くの人々が不動産価格や株価がいずれは戻ってくるであろうと期待したことで、金融危機の可能性や景気後退の可能性を認めなかったことに求められます。実際、後に、多くの専門家が公的資金を金融機関に供給する必要があるという点で合意したあとでさえも、公的資金の注入は国民の反発に遭いました(白川 2012)。同時に、企業もバランスシート問題と3つの過剰(雇用、設備投資、債務)を抱えていたことで、投資等の総需要への下押し圧力は大きかったわけです。ただし、こうした状況下にあっても、日本銀行が供給する流動性が銀行の融資活動に及ぼす効果は、小さいながらも統計的にはプラスの効果があったとする研究も見られます(Bowman et al. 2011)。』

とまあ現在の欧米における金融政策の論点も踏まえながらの説明になっていて中々興味深い話が展開されているのですが引用しだすとキリが無いので金融政策の論点部分は皆さん読んでちょ。


・付利引下げ云々の所はどう見てもベンダーのヘッドラインがミスリード

でまあ白井審議委員講演という事でベンダーがヘッドラインを打っていたのですが、あたくしが確認した範囲内ですとB社とR社のヘッドラインはこの講演の中での付利下げのメリットとしてその可能性を指摘している「短期市場金利の引き下げによる円安効果」という部分ばかりを全力で引用しておりまして、おまいら講演テキスト全文を真面目に読めやこのヴォケとしか申し上げようが無い訳ですよ。

つまりですね、市場の短期ゾーンの国債金利がご案内のように低下しているという現状がありまして、まあ単に自己実現的な金利低下から付利下げへの警戒が高まってフィードバックループ状態というかバンドワゴン効果状態になっているというのが足元での現状なのですが、ベンダー各位におかれましては市場がそういう風に動き出すと「市場が何々を織り込みに行ってるぜヒャッハー」と頭の中がお祭りモードになってそちらの方向にバイアスが掛かったヘッドラインを打ちたがり、それが更にバンドワゴン状態になるとゆー誠にうんことしか申し上げようのないフィードバックループを生む傾向にあるというのは毎度の仕様ではあるのですがまたかよとうんざりする所。

ということで付利云々の部分を全部引用しちゃるからよく目ん玉開けて読めやベンダー各位という所でございますけれども、本文12ページあたり(小見出し『(3)量的緩和(QE)と包括的金融緩和(CME)はどのように違うのか?』の途中から、PDFファイルで13ページです)からになります。

『第三に、CME 政策では、政策金利の誘導目標として0〜0.1%程度を維持する一方で、補完当座預金制度(2008 年10 月導入)の下で適用金利(付利金利)0.1%が適用されています。』

ということで説明開始。

『これに対してQE 政策では短期金利はゼロ%に達していたなかで補完当座預金制度は導入されていませんでした。当座預金の超過準備に対して0.1%を支払っている理由はいくつかあります。』

『ひとつには、先ほどQE 政策の評価のところでも指摘いたしましたが、(付利がないと)銀行間市場が縮小してしまい金融機関がいざ必要なときに市場から即座に資金調達することが難しくなる可能性にあります。』

『また、これに関連していますが、付利金利があると銀行間市場の金利に下限が生まれますので、その分だけ市場金利の変動は小さくなると考えられます。これにより、日本銀行は市場金利を大きく変動させることなく銀行間市場に十分な流動性を円滑に供給できるという利点があります。』

『さらに、将来の話になりますが、学術的には、景気回復局面で中央銀行が過度なインフレを引き起こすことなく、金融政策の正常化に向けて円滑に移行できる利点が指摘されています(Svensson 2012)。付利金利があらかじめ維持されていれば、たとえ当座預金に多額の超過準備が残されていたとしても、(市場金利の下限を形成する)付利金利を引き上げることで市場金利も引き上げることができると考えられるからです。』

で、その後がベンダーヘッドラインで出ていた話。

『その一方で、付利撤廃で期待される効果もあるようです。例えば、国庫短期証券やそのほかの短期金利が低下しますので、米国など他国との金利差をもたらすことで為替相場を円安方向に後押しする効果が期待されます。』

『この他、付利撤廃がもたらす影響が定かではないのが、金融機関の貸出行動への影響です。一般論として、付利金利を撤廃すれば金利の付かない当座預金に預けておくよりも民間貸出を増やすインセンティブが高まるという見方がある一方で、付利収入を失うこと等により金融機関の収益が低下すると信用リスクのある民間貸出を伸ばすインセンティブがむしろ阻害される可能性も指摘されています。』

付利の話とちょっとだけ違うので白井さんはここでは触れていないようですが、先般ご紹介したBOEの11月(だったと思います、ちなみに12月議事要旨はとっくの昔に読んでいるのにネタにしていませんすいませんすいません)議事要旨で政策金利の引き下げのデメリットとして後者の論点を指摘している向きがございましたぞな。

『いずれにしましても付利金利の長所と短所について、その撤廃の有無が経済・物価にどのように寄与するのかを含めて理解と議論を深めていく必要があるように思います。』

という結論でして、どう見てもこれを読んで次回会合で付利下げヒャッハーとか早期付利下げヒャッハーとか言い出すのは筋違いにも程があります本当にありがとうございましたという話ではございますな。

更にこの次に米国の例がございまして。

『海外では我が国と同じようなアプローチを、米国連邦準備制度(FRB)が採用しています。FRB は政策金利(フェデラルファンドレート)の誘導目標を0〜0.25%に設定しながら、付利金利を0.25%に維持しています。おそらく、銀行間市場の機能を維持するという狙いがあると思われます。一方、欧州中央銀行(ECB)では2012 年7 月に政策金利(主要リファイナンスオペレーションに適用される固定金利)を1%から0.75%に引き下げた際に、預金ファシリティの適用金利を0.25%からゼロ%へと引き下げています。ゼロ%に設定した理由は、ユーロ圏では銀行間市場が欧州債務問題の深刻化とともに分断されてほとんど機能しておらず、中央銀行からの借入れに依存する金融機関が多いという実態を踏まえて、銀行間市場の機能を阻害する問題が限定的と判断されたのではないかと考えられます。』

という所なのでして、ヘッドライン詐欺には十分注意しましょうというお話でした。


・念の為もう一つの論点を補足しておきますよ

でですね、更にあたくしなりに付け加えさせて頂きますと、先ほど引用した部分にもありましたように、付利下げ論議の中で良く言われる論点として「付利金利を撤廃すれば金利の付かない当座預金に預けておくよりも民間貸出を増やすインセンティブが高まるという見方」というのがあるのですが、そもそも現在日本や米国、英国の実施しているバランスシート政策というのはバランスシートの構成に焦点を当てて政策を進めるという論点が強い(一番強いのが米国で、日本、英国の順になっていますぞな)訳でありまして、つまり「超過準備が多いのがケシカラン」的な発想というのはそもそも現在の包括緩和あるいは米国のQE(とCEのハイブリッド)政策のフレームワークを理解していれば出てこない発想になるんですよね。

即ち、「超過準備が減るようなインセンティブを金融機関に与える」という事は中央銀行のバランスシートを縮小せしめることになる訳でして、中央銀行のバランスシートの資産サイドを縮小させるような政策を実施するというのは(出口政策を実施するなら別ですが)本質的に従来の政策フレームワークの全面的な見直しに繋がるという事になるのでして、そう簡単に付利下げ撤廃という話って「バランスシート政策」を前面に打ち出している時にはできない筈なんですよ。

では何でECBが預金ファシリティー金利をゼロに下げて平然としているかという話ですが、そもそもECBは量的緩和政策を実施しておりませんで、実施しているメインの政策になるフルアロットメント方式のLTROおよびMROとOMT(国債買入は抜かずの宝刀状態ですけれども)は前者はバランスシート拡大を企図している訳では無い流動性対策であり、OMTに関しては国債買入実施した場合に出た流動性は吸収するという事を明言している(OMTの導入を公表した時の声明文や会見での説明をご確認ください)のでありまして、そもそもECBの非伝統的政策は量的緩和政策の観点からのバランスシート政策では無くて、いわゆる信用緩和政策に特化している(ので先日ネタにしたように預金ファシリティが減った事をドラギ総裁が「金融市場の改善の傍証」として提示している訳です)ので平然としていられる、という事になりますぞなもしという所です。

その辺を全然斟酌しないでデンマークの預金ファシリティーガ〜とかECBはゼロ金利だから〜とかゆー観点で付利金利の話をするのは誠に遺憾に存じます議論という事ですな。

念の為バランスシート政策に関する白井さんの講演での説明部分を引用しておきますね。

『第二に、CME 政策は日本銀行のバランスシートの「資産側」に注目し、同基金残高の「量」そのものよりも長めの金利やリスクプレミアムの引き下げ効果を重視しています。これに対して、QE 政策はバランスシートの「負債側」にある日本銀行当座預金残高に注目し、しかもその残高の「量」を増やしていくことを金融市場調節方針の柱として重視しているという違いがあります。つまり、CME 政策では、金融緩和によって長めの金利やリスクプレミアムの下げ余地があるのかどうかが重要です。したがいまして、当座預金の大きさはもはや達成すべき「目標」ではなく、金融緩和措置の実施によって「内生的に」決まると考えられています。』

でまあ付利金利撤廃ってそう考えると無い議論ですよねという事になる(現在の政策フレームワークがどう見ても機能しないし効果も無いという事になったら話は別でしょうが)のですが、名目ゼロ金利制約が近い状況下での付利金利の引き下げというのはテクニカルにありそうに見えるからそういう話をする何とかストの方とかも散見されるのですが、実際問題として非伝統的政策を実施するような名目ゼロ金利制約下においては、この金利の引き下げは市場に対して更なる引き下げから金利ゼロ化に対する思惑を強めるだけであって、結局金利のゼロ化に追い込まれるだけなので引き下げという選択肢というのは机の上での話としてしか存在しないでしょとまあそう思いますけどねあたしゃ(詳しくは明日にでもプレビュー雑談を再度纏めますわ)。

ということで他にも読むと色々と興味深いので皆様におかれましては一読推奨、と申しますか、昨日はヘッドライン見て「何と!」と思って講演テキストに当たった方も多いかと存じますけれども(^^)。

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2012/12/04

○白井審議委員講演は正直会見の方が(あたくしの駄文ネタ的な意味では)オモロイが講演から

先週の講演ネタを成敗している側から西村副総裁と白川総裁の講演はあるわ、それよりも来週にFOMCという大物がある中でFED高官の講演などの読み込みができている物と出来ていないものがあるとか中々遺憾にも程があります。

#でまあ今年もカレンダーを見ますと最後の1週間がネタが無さそうな悪寒もしますが、うまく行くと政治ネタ(揉めなければ年内に組閣間に合うのではないかと思料)が出るかもしれませんな

ということで白井審議委員講演と会見ですが、講演はどうみても白井さんの力作だと思うのですけれども、罪深いこのあたくしは会見の方がオモロイとか言ってしまう訳で誠に相済みませんという次第でございます。いやまあ講演も面白いですけどね。

講演はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko121129a1.pdf
少子高齢化を迎えるアジア地域と我が国の金融経済情勢
── 熊本県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──


講演は資料編がやたら多くて全部で29ページ(表紙含む)もあるのですが、内容としてはこれはこれで面白いのですが、お題にありますように人口動態に関する話という大きなネタになっておりますので、足元の金融政策的にどうよという話ではない(後半に金融政策に関する話はありますが、基本的に現在の日銀がどうやっております関連の話)ですな。


・人口動態関連でここの部分がオモロスでした

まずは講演からでここから暫くの引用元は講演になります。

『2.経済成長と人口動態の変化──人口動態の変化を迎えるアジア──』というのが実質最初のお題部分になりますが。

『それでは、我が国を含むアジア地域の人口動態の変化、すなわち「少子高齢化」の実態について、これまでの傾向並びに今後の見通しを中心にお話していきます。』

ということでそこの小見出しが『(1)人口のボーナス期とオーナス期』ということで、人口動態の変化、主に生産者人口あるいは従属人口比率の推移などを見ながら人口ボーナス期と人口オーナス期(逆ボーナスとは言わないのね^^)がどうのこうのという話をしていますが、まあその辺は皆様もご案内の通りのお話。

でまあその次の小見出しが『(2)人口オーナス期に移行している日本』という事で、内容を引用すると悲しくなってきますので大体割愛しますが、日本の人口動態は

『こうした出生率の急速な低下と高齢化を背景に、出生率の低下で従属人口比率が低下を始めた1955年頃に人口ボーナス期が始まり、生産年齢人口が減少を始めた1995年頃に人口オーナス期に移行したと考えられ、人口オーナス期に入ってから既に15年以上の年数が経過しています(図表4、図表5)。』

という事のようですが、まあ日本の事はどうでも良くて、アジアの話が興味深かったので以下引用。

『(3)アジアでも進行する人口動態の変化』以下から引用。

『しかし、最近では、アジア地域のなかでも人口動態の変化において違いが際立つようになっています。大雑把に言うと、アジア諸国・地域を人口ボーナス期の終焉を近く迎える「先発グループ」と今後さらに数十年にわたって人口ボーナス期を享受する「後発グループ」に分けられると思います。』

ふむ。

『先発グループには、韓国、シンガポール、台湾、香港等のいわゆる早くから工業化し高い成長率を実現した「新興工業経済地域(NIEs)」が入ります。その他には、中国やタイ等が含まれています。NIEsは1970年代に出生率の低下とともに年少人口の人口比率(年少人口比率)が急速に低下し、香港ではグループのなかでは最も早い1965年に、韓国とシンガポールは1970年に、タイは1975年に、台湾と中国は最も遅い1980年頃に人口ボーナス期に移行しています(前掲図表5、図表6)。そして、香港と韓国は2010年頃に人口ボーナス期を終了し、2015年頃には人口オーナス期に移行することが見込まれています。中国、シンガポール、台湾、タイは少し遅れて2015年頃に人口ボーナス期を終了し、2020年頃には人口オーナス期に移行すると予想されています。』

というのは良く言われる話ですが。

『我が国が人口ボーナス期の終焉を迎えた1990年の一人あたり年間所得はおよそ2万7000ドルで既に高所得国の所得水準に達していましたが、NIEsも同様に既に一人あたり年間所得が2万ドル以上の高い所得水準を達成している段階で、人口ボーナス期の終焉を迎えることができるようです。』

ということで、人口動態と国民所得水準との関連の話がほほうという所なのですが・・・・・

『これに対して、中国では1979年からの一人っ子政策の開始により少子化が進行しており、1980年頃から年少人口比率が急速に低下しています(前掲図表6)。一方で、高齢化も急速に進み、2000年には高齢人口が7%を突破しており、他のアジア諸国と比べても短い期間で人口動態の変化が生じています。人口オーナス期に移行すると予想される2020年頃には、国際通貨基金(IMF)の推計によると、まだ一人あたり年間所得水準が8千〜1万ドル程度の中所得国の段階ですが、この時点で人口ボーナス期を終えてしまうことになります。つまり、社会資本インフラや社会保障制度が十分に整備されていない段階で、高齢化を迎えることになるため、高齢になっても働く労働者を増やすことができない限り、高齢化の負担が政府や社会に急速に重くのしかかる可能性があります。しかも、中国の場合、高齢者の人口比率が現在はまだ10%弱と、我が国(2011年時点で23%)、香港(2010年時点で13%)、韓国(同11%)と比べて低いのですが、高齢人口が既に約1億人と人数が非常に大きいという特徴があります(前掲図表6)。タイも中国と同程度の中所得水準の段階で、人口ボーナス期を終える可能性があります。』

でまあそのインプリケーションがどうよという話は何となくは見通しの所であるのですが、どうもこの部分を拝読いたしますと「中国は人口動態が変化するまでにより高い成長を達成しないと構造的にオワコン化するリスクがある」というように読める訳で何という残念な話と。


・中国の見通しはでも何となく威勢が良いとな

でまあ人口ボーナス期のアジア新興国がどうのこうのの部分とかバッサリ割愛しまして中国の今後に関する白井さんの説明部分をちと長いですが引用。『(3)中国:所得増加と拡大する消費市場』ということで何となく景気が良さそうに見えますがまあその通り。

『中国では、アジア地域の生産拠点として、これまでは低賃金の労働者が農村部から都市部の生産活動に向けて供給されてきました。このため、賃金の伸びは労働生産性の伸びを下回り、家計消費支出は伸びているとはいえGDPの伸びを大きく下回ってきました(前掲図表14)。しかし、農村部からの低コストの労働供給は少しずつ限界に近づいており、賃金上昇が各地で見られるようになっています。』

『しだいに労働力の需給関係がタイト化していけば賃金上昇傾向が加速し、一人当たり可処分所得水準がさらに上昇して中間層が増えていくと考えられます。また金融資本市場も規制緩和等で発展していけば家計の金融資産も増えて、消費の一層の拡大を促すことも予想されます。』

『そうなると、まずは所得上昇に合わせて所得弾力性が高い家電や乗用車等の耐久財消費が拡大し、同時に住宅投資も増えていく可能性があります。世界銀行が中国国務院開発研究センターと共同で2012年に発表した『中国2030』と題する報告書によれば、今後、中国では、内陸部を含めて都市化がさらに進んでいくと予想されており、都市部に居住する人口の総人口に占める割合は、2009年時点の50%から2030年には70%近くと東京並みになると見込まれています。また、最も成長が早い20都市は内陸部に位置し、一人当たり所得は沿岸部に追いつきつつあります。こうした都市化に合わせてインフラ整備が進めば、現時点で世帯当たり乗用車の普及率が低い中国ではさらに需要が拡大していくほか、サービスについても、より質の高い公共サービス、娯楽活動、教育、金融保険等への需要が高まっていくと考えられます。』

何か威勢の良い話になっておりますな。

『前述の世界銀行等による報告書によれば、GDPに占める産業別の付加価値の割合は製造業を中心とする第二次産業が、2010年時点の47%から2015年には44%、2020年には41%、2025年には38%、2030年には35%へ段階的に低下するとの予測を示しています。このことは、生産拠点が今後もボーナス期を長く享受する他のアジア諸国に部分的に移転する可能性を示唆しているように思います。』

『中国では、現在、社会資本インフラの整備と社会保障制度改革が進行中であることから、高齢化が進展していても、しばらくは緩やかなペースで消費比率が上昇を続ける可能性が高いと考えられます。実際、前述の報告書では、より大きな賃金上昇圧力とその結果としての家計所得(の対GDPシェア)の増加に伴い、過去にみられた消費比率の減少傾向が逆転すると予想しています。この結果、サービス産業を中心とする第三次産業は2010年時点の43%から2015年には48%、2020年には52%、2025年には56%、2030年には61%にまで拡大する見込みです。』

『ただし、こうした見通しは、中国で生産年齢人口が減少に転じても、高付加価値産業への転換や構造改革を通じて、比較的高い生産性を維持して成長力を維持できることが前提となっていることには注意が必要です。また、現在は退職年齢が男性は60歳、女性は55歳となっていますが、退職年齢の引き上げ、高齢者の就業促進とスキルアップ、一人っ子政策のさらなる調整といった対応を急ぐ必要もありそうです。我が国では65歳以上の人口比率が7%から14%に転換するまでに要した期間は約25年と欧州と比べてかなり短期間でしたが、中国の場合はそれに近い25年程度と予想されていますが、それ以上に短くなるとの見解も聞かれます。以上を踏まえると、中国政府は急速に進む高齢化に向けた対応という大きな課題に直面しているといえます。』

・・・・・・・・前提条件がどうよというのがあるのですが、実際に中国がそのような産業転換できるのでしょうかというのは激しく????ではあるのですけど、そこがコケると盛大にコケるの図になりそうな悪寒もしますし、そうは言っても今まではコケるコケると思わせながら何とかなっておりましたのでこれからも何とかなるのかも知れませんし、どうも中国は不思議ですな。



○でまあ面白い方の会見ですが・・・・・・・・

会見はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1211d.pdf

・景気は今の所見通し範囲内だが下振れ警戒

『(問) 金融政策と景気判断に関してお伺いします。今年の9月、10月と連続して金融緩和を行い、先行きの経済・物価もある程度悪化することを想定していたかと思いますが、本日午前中の講演をお伺いすると結構弱めの発言があり、物価にしろ経済にしろ下振れの話をされていました。この現状の悪化というのは、10月に金融緩和を決めた時に想定していた範囲なのか、それよりもちょっと下振れているのかをお伺いします。』

でまあその答え。

『(答) 現状では、景気は減速していると判断しています。展望レポートの時でも景気は厳しいと申し上げていましたが、下振れリスクも含めまして、現在はその範囲内で推移しているとみています。いずれにしても、今の日本経済が置かれている状況、特に海外の経済が減速している状況は事実ですので、その下振れリスクが顕在していくかどうかを含めて、今後慎重にみていきたいと思っています。』

ということで今のところは見通し通りだが、下振れ状況を注意ということで、下振れリスクについての質問があったのですがこれに対する答えは以下の通り。

『(答) (前半割愛)それから、どのような点について下振れリスクを意識しているかということですが、生産と輸出に関しては、減少を始めてしばらく経っていますが、私が今注目しているのは、先程も申し上げた通り、製造業を中心に、設備投資の一部に先送りがみられており、これが今しばらく続くのかということです。』

設備投資とな。

『もう1つは、消費です。現在、エコカー補助金が終了して、明らかに自動車の需要が減少していますが、このエコカー補助金の終了による反動減がどの程度続くのかということ、また、最近では、生産と輸出の減少などによって、製造業を中心に労働時間の減少と新規雇用の減少がみられますから、それが続いてしまいますと、消費マインドに影響していくように思います。こうした観点から、設備投資と消費に関しては、しっかりと下振れリスクをみていきたいと思っています。』

消費とそれを支える雇用ということですが、元は製造業の設備投資および生産ということのようですな。


・大人の対応キタコレ

『(問) 自民党の安倍晋三総裁や要人から、日銀の金融政策に関する発言が相次いでいます。これらをどのように受け止め、どのように考えたらよいのでしょうか。中央銀行としての一般論に即してでも構いませんのでご教示下さい。』

一般論で構わないですキタコレ。

『(答) 非常に大きな質問ですので、少し答え難いですが、安倍総裁のご発言について発言することは差し控えたいと思います。』

まあそらそうだ。

『ただ、金融政策について様々な発言があるというのは、日本経済の景気回復の現状がそれだけ厳しいということを認識されているのだと思います。本年前半の成長率は比較的高かったのですが、半ば以降からは海外の経済を中心に減速が続いており、生産・輸出も減少し、設備投資も一部先送りの兆しがあります。そういう厳しい景気認識の中で、日本銀行に対する期待を反映した発言ではないかと思っています。』

>日本銀行に対する期待を反映した発言ではないかと思っています
>日本銀行に対する期待を反映した発言ではないかと思っています
>日本銀行に対する期待を反映した発言ではないかと思っています

・・・・・・・・・・・(;∀;)イイコタエダナー

『私自身も経済の厳しさというのは共有しています。日本銀行として、何ができるかということは常に考え、これまでも対策をしていますし、今後もきっちりと慎重に見極めていきたいと思っています。』

でまあ次の質問でもそんな感じ。

『(問) 今の質問に関連しますが、自民党の安倍総裁がかなり細かいことを金融政策について指摘しています。将来総理になると思われる人がここまで細かいことを言うことに対して、中央銀行の独立性が脅かされているという感触をお持ちかどうか、お伺いします。それから、白井委員は本日午前中の講演で、10月に日銀と政府で出された共同文書について、非常に大きな意義がある旨、指摘されています。他方で、いわゆる政策協定(アコード)を結ぼうという話が出ていますが、アコードを結ぶ意味はあるのかどうかということをお伺いします。』

『(答) まず、1点目の独立性が脅かされているかということですが、私自身は、独立性は維持されていると思っていますし、今後も維持されていくべきであると思っています。ただ、中央銀行に対して、景気が厳しい局面で色々な期待が起きるということは、これは日本だけのことではありません。他の国でも同様に起きていることだと思います。私としては、金融政策を決定する立場の者として、私どもが行っている金融政策や現状認識を、時間を掛けて丁寧に説明していきたい、また、そういう形でお互いに理解を深める努力をしていきたい、と思っています。(アコードの話は躱して以下別の演説が始まるので以下割愛)』

ということで、さすがメディア慣れしているだけの事はあって何という大人の対応という所ですが、まあ冷静に思い起こせばこの前の定例会見での白川総裁様(麿とは言わない)のあの懇切丁寧にも程がある「一般論」で安倍さんが発言したとして報道された色々な論点に思いっきり直接的に(笑)お答えする方が普通じゃないのでありまして、ああいう時は日銀は余計な軋轢を避けるためにノーコメント地蔵になるのが通常の仕様である所を踏まえると、この前の白川大総裁様の丁寧な説明というのは(いくらあと半年以内で任期終了だからとはいえ)良くあれだけ言ったですなあという所なのでしょうけれども。


・時間軸政策の論点

これは重要な所なのですがスルーされやすいので引用しておく。

『(問) 2点お伺いします。(前半割愛)もう1点は、展望リポートを決めた決定会合で、物価上昇率を巡る表現について委員の間で意見が分かれたところがありました。白井委員は、金融緩和の期限を、1%を「安定的に達成するまで」というのではなく、1%を「見通せるようになるまで」という表現を支持されたと思います。また、達成の時期についても、2014年度には「徐々に緩やかな上昇に転じていく」にとどめるのではなく、2014年度に「1%に着実に近づいていく」という表現を支持されたと思います。その理由について教えて頂けますか。』

支持したのは白井さんじゃなくて佐藤さん(提案者)と木内さんだったと思いますがそれは兎も角として。

『(答) まず、1%を安定的に達成するまで、というのと、1%を目指してそれが見通せるようになるまで、というところで意見が分かれました。私が、その中のどの意見かということは申し上げられませんが、一般論として申し上げると、これは『時間軸政策』といわれる政策に関するものだと思います。』

ということでこの先の論点は重要なのでまあ忘れないように引用しておく。

『『時間軸政策』というのは、その考え方が生まれてきたアカデミックな背景をみると、元々は政策金利に対して、本来なら出口戦略が起こるタイミングよりももう少し長く伸ばし、それによってインフレ期待を起こすという考え方にあると思います。そうした『時間軸政策』は、いつ効果があるかといえば、まず導入時です。これはデータをみても確認できます。もう1つは、いわゆる経済がよくなって、そろそろ出口に近くなっている時に効果がある、といわれているようです。』

これ重要な論点でして、米国のガイダンス文言変更を巡る議論の中でもこの部分を意識した話が展開されている筈でして(だからこそ意見がバラバラでとても12月FOMCで纏まるとは思えないのですが・・・・・・・で、手ぶらは何なのでその代わりにQE3にトッピングサービスを入れるというのが来週のFOMC予想ですがコンセンサス過ぎて面白くないですかそうですか)、ガイダンス文言の変更がどうのこうのの時に、閾値の経済数値を「実データ」におくのか「コレクティブジャッジメント」におくのかというのは物凄く政策インプリケーションが異なってくる話になるので、そらまあ何時まで経っても議論が収束せんわな(ミニッツ見てて全然話が収束する気配が感じられない)と思うのであります。

まあ以下の部分は今の金融政策運営スタンスに関する普通の話なので割愛しておきます。


・インフレ期待の低下に注意

これはほほうと思いましたが。

『(問) 今までの質問と若干重複するところがあるかと思いますが、講演の中で、中長期的な予想物価上昇率について、「幾分弱めの動きがみられる点には注意していきたい」とおっしゃっていましたが、これは具体的には何をおっしゃっているのでしょうか。』

『(答) エコノミストの見方、あるいは市場のデータで、やや長期のインフレ期待が少し下がっているというデータがあります。これを踏まえて、こうした傾向が長く続くかどうかをみたいということです。私自身は、中長期のインフレ期待を注視したいと思っています。実は、特に日本の場合、インフレ期待は中長期の成長期待と非常に深い関係があります。』

ほっほー。

『従って、日本の民間資金需要や経済活動を活発にするような成長力強化策等が行われていくと、日本銀行の金融緩和措置も非常に活用される状況になりますし、そうすると、人口減少で縮小しつつあるマーケットであっても、「日本はこういう分野で成長できる」と企業が成長期待を持つことができます。こうしたことが、中長期のインフレ予想の引き上げにもつながってきます。そういう意味で、物価安定の目途を実現するためにも、まずは成長力強化が大事ですし、成長力強化によって「成長する」という期待が中長期的に生まれれば、それがまたインフレ期待にもプラスに働くようになります。そういう意味で非常に注視しています。』

まあ後半は願望の話ですが、最初の所はへーと思ったので引用。


・まあこれは永遠の課題なんでしょうなあ

金融政策と直接関係ないですが最後の質疑から。まあ引用だけですけどご覧くらはい。答えよりも質問の方が重くてですなあ・・・・・・・・

『(問) 質問が熊本県の情勢に戻りますが、当県では、熊本市が政令指定都市になったということもあって、一極集中化が進んでおり、特に県南では疲弊が目立つといわれています。今後、一極集中のままでよいのか、また、経済を面的に発展させるためには、若干のギャップと言うか、都市部と郡部で発展・成長にズレが生じるのは仕方ないのか、といった点をお伺いします。』

『(答) 非常に難しいご質問です。もちろん、可能であれば域内全体が発展していくのが一番よいわけですが、人口減少が起きている状況下、例えば、高齢の方々についてみると、病院に行きたい、買い物に行きたいということになると、都市に住む方が多くなるかもしれません。少子高齢化の影響は、色々な点で考えていかなければならないと思います。こうした影響は、おそらく、各県、各市によっても違ってくると思います。仮に、人口が都市に──熊本県なら熊本市に──集中したとしても、その都市以外の場所をどう活用するかということを考える必要があるわけです。農業にしても製造業にしても、大きな視点で少子高齢化をプラスに捉えながら、各地域の利点を活かして、成長戦略を考えて頂きたいと思います。熊本県の場合は、人の行き来をもっと拡大したい、すなわち、他県からも、世界からも人を呼び込みたいと思っておられますが、そういう形で経済が活発化する可能性もあります。熊本県は素晴らしい可能性を持っています。熊本県は、自然資源・観光資源が豊富で、食べ物も美味しい。こういうところをもっともっと活用できると思っています。』

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2012/09/11

○中身は中々面白いのですが・・・・・・・・・・・・

最近は西村副総裁の世界行脚とか麿のブンデスバンク東京事務所25周年挨拶とか、面白ネタが色々と投下されているのですが、ECB会見ネタですらまだ全部成敗していないというのにこれまた追加ネタが投入されるでござるの巻。ネタ切れで困って居た時にこの辺のネタ投下してケロよと思うのですが(笑)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120910a.htm/
人口動態の変化は我が国のマクロ経済に影響を与えているのか? ― 金融政策へのインプリケーション ―

白井審議委員が上記のお題で講演をしているのですな。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/press/koen_2012/data/ko120910a1.pdf(原文)
Have Demographic Changes Affected Japan's Macroeconomic Performance?
-- Some Implications for Monetary Policy --

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120910a1.pdf(邦訳)

でまあこちらの中身がこれまた面白いのですが、これ引用していると結構長くなるので本日は諸般の事情で中身の細かい話はスルーというか後日にさせて頂きたく存じます。

では何でこれがネタになるかと申しますと、そこの第4部にこんなのがありましてですな。

『4.人口動態、需給ギャップ、緩やかなデフレ

高齢化がマクロ経済に与える影響についての私の考え方を要約する形で図表12に示してみました。この図表をご覧頂きながら、第 4 部では、我が国の需給ギャップと緩やかなデフレに関わる問題、そしてそれに関連して日本銀行の金融政策運営についてお話しを進めて行きたいと思います。』

ということでお話がありまして、その中でこんな論点を。

『ちなみに、人口動態に関するデータ(例えば生産年齢人口の伸び率)と需給ギャップの関係をプロットしてみますと、これらの変数の間には明確な相関関係は確認されません。』

ほう。

『ただし、このことは、直ちに人口動態と需給ギャップが無関係であることを意味するものではなく、むしろ、人口動態が需給ギャップに及ぼす影響が、様々な複雑なチャネルを通して発揮されている可能性があることを示唆していると考えています。』

とまあ悪態をつけば往生際が悪いという話ですが、まあそこはそこ(^^)。

『複数の研究では、マイナスの需給ギャップに寄与している要因として主に 3 点指摘しています。それらは、(1)自然利子率の低下とゼロ金利制約による金利ギャップの存在、(2)潜在成長率の低下に起因する経済の期待成長率の低下、(3)リスク回避的な銀行行動といった要因です。もちろんこれらの要因は相反するものではなく、同時に成立している可能性はあります。』

でまあそこの説明の引用は長くなるので結論の所だけ引用しますが。

『このことから、自然利子率が長期間にわたってマイナスに陥っていたかどうかについては確かではありません。付け加えれば、斎藤他(2012)では(推計される金融政策ショックがゼロ金利制約のショックをとらえると仮定する DSGE モデルにもとづき)名目金利のゼロ金利制約の効果は比較的小さかったと指摘しています。したがって、要因(1)が、需給ギャップが長くマイナス圏で推移したことに対して、有意な説明力を有しているかどうかについては議論の余地があるように思われます。』

『次に、要因(2)についてですが、潜在成長率の趨勢的な低下の一因が高齢化にあることは明らかですが、こうした潜在成長率の低下が経済の成長期待の趨勢的な低下をもたらし、これが需給ギャップを悪化させている可能性があります(図表 15)。(途中割愛)こうした状況が潜在成長率の低迷をもたらし、それが企業や家計の成長期待を抑制することで需給ギャップの悪化をもたらしているという説明は実感にも近く、それなりに説明力があるように思われます。』

『最後に、要因(3)では、金融規制の強化や資本制約によって金融機関の貸出行動が抑制される点に注目しています。(途中割愛)ただ、私自身としては、このような効果が現実にそれほど重要なのか多少疑問があります。』

というお話のようです。


・・・・・・・・でですな、そらまあ良いのですけれども、まあ日銀がこういう話をすると、その話の内容が正論であろうとも「まーた日銀はデフレを人口動態のせいにして言い訳している」という批判になる訳でございまして、最近人口動態の話が日銀大好きなのは判るのですが、あまりそれを強調するのはそれこそ「金融政策では何もできません」と言い出していると受け止められるリスクが高い話であって、それはそれであのドラギ総裁ですらハッタリかまして色々と見せ方工夫してびりーぶみーとか言ってる訳でございまして、逆さ絵おじさんの雨人クオリティを見習えとは申しませんが、もうちょっと何とかならんのか日銀の情報発信ってとは思ったのでその悪態を書くだけのために引用しました次第。

なお、内容そのものは色々と興味深いので、それはそれとして後日ネタ投下の所存。

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2012/06/12

○白井審議委員講演ェ・・・・・・・・・

白井審議委員講演
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120611a1.pdf
欧州金融経済情勢とわが国の金融政策
── 第77回証券経済学会全国大会における講演要旨 ──

何と全36ページもありやがりまして、本文がうち18ページで、そのうちお題の「欧州金融経済情勢」の部分が14ページという事で、「白井先生の欧州問題解説」という風情の講演ではございます。

んでもって欧州金融情勢の説明に関してはさすが元IMFという事で白井先生の独擅場という感じですが、日本の金融政策に関しては基本的に日銀の執行部見解をそのままカーボンコピーしたようなお話なので、まあ前半に関してネタにするかもしれませんが、今日は時間が無いですし、今週は内外金融政策雑談でネタが潰れそうな悪寒がする(本当は今日はBOJとFEDのアクションに関して当たらない予想というか妄想をするつもりだったのですが時間が無い)ので、そのうちまあ暇な時にネタにするかもしれませんしこのままかも知れません。

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2012/05/14

○質疑応答というより講演ですな

まずは白井審議委員会見から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1205b.pdf

・欧州ソブリン問題

まあこれは白井さんの元々の専門ですので話が長くなるのは判るのですが。まずは総選挙後のギリシャ情勢に関してテイルリスクが拡大したか&ギリシャのユーロ離脱の可能性に関しての質問から。

『(答) 先ず1点目ですが、総選挙後のギリシャで新政権の樹立が非常に難航しており、このままではギリシャの財政再建の継続は難しいかもしれないとの見方も出ている中で、テイル・リスクについてどう判断しているのかという趣旨のご質問と思います。確かに、5月に入って、フランスで大統領選挙、ギリシャで総選挙があり、厳しい状況にある国が幾つかあるとは思いますが、テイル・リスクについていえば、昨年までの状況と比べると、緊張が緩和してきている状況は変わっていないのではないかと思っています。』

ほう。で、その後の説明がこれが長いのですが(^^)。

『その理由は幾つかあります。ギリシャ危機というのは一昨年前から起きていますが、その時と現在の違いというのは、一言で申しますと、それなりの制度、仕組みができつつあるということです。』

ふむふむ。

『具体的には、まず、昨年から日本銀行を含めて6中央銀行でドルの資金供給あるいはそれ以外の通貨での資金供給を実施しています。欧州の金融機関はドル建ての投資あるいはドル建ての資金調達が多かったわけですが、これによって、そのドル建ての資金調達がかなり容易になったということです。それから、ご存じのように、ECB(欧州中央銀行)が3年物の長期の資金供給──いわゆるLTRO──を昨年末の12月と今年の2月に行い、これによって欧州の金融機関の資金繰りがかなり楽になっておりますので、これらの点からも、金融市場の緊張度は昨年に比べて緩和してきていると思います。』

それは「ソブリン問題が金融危機に発展する可能性」問題だと思いますが、ソブリン問題がまた火がボーボーになった場合にリクイディティーではなくソルベンシーの話になった場合はどうなんでしょうかね、という論点ですが。

『こうした手段の他に、ご存じのようにファイヤーウォールの拡充──いわゆるEFSF、ESMを通じた融資能力増強──、それからIMFを通じた資金基盤の強化が進められておりますので、国際的に様々な国を巻き込みかねない危機について、そのリスクが他国に伝搬することを防ぐ制度がつくられつつあると思います。最後に、昨年からずっと懸念されていたギリシャの公的債務の民間保有分の問題については、債務カットが今年行われて、それに伴い第二次支援が行われています。』

つまりソブリン問題が伝播しないという見通しみたいっすけど。

『現在、こうした措置により財政の持続可能性が確保されているのかどうかが問題となっているわけですが、この問題についていえば――一般論として申し上げますが――、欧州のユーロ圏の17か国を一括りに議論することは難しいと思います。各国が抱えている問題が異なるためです。もしある国が、例えば財政データに対する信頼を損ない、それによってその国の財政再建に対する意思に対して市場で疑念が生じた場合、そういう国にとって大事なことは、信認を回復していくことです。この点に関連して、いわゆる周縁国の一部では、かねてから──今回の危機が起こる前から──、成長を促進するような様々な規制緩和の必要性が多くの国際機関や専門家により指摘されてきたにもかかわらず、こうした取り組みがなされてこなかったという現状があります。そういう場合には、財政再建をきっちりとやっていくことと同時に、以前から指摘されてきた成長を促進するような改革を実行していく必要があります。それをどのようなタイミングでどのような順番でやっていくのかということは、当該国や融資をしているEUあるいはIMFが考えることで、私が申し上げることではありませんが、いずれにせよ、信認をできるだけ早く回復するということが大事だと思います。』

この部分は長い割には一般的な話しかしてないような気がしまして、結局答えになっていないように思える(というか単にべき論を述べただけ)次第で、実際問題としてテイルリスク化に関する懸念をどう見ているのかという話は微妙にスルーしてますな。まあ展望レポートで明るめの話をしたばっかりの手前あまりその話をしたくないのか、本当に楽観しているのかが良くワカランチ会長ではございます。

で、白井さんの凄いのはこれで質問の1番目(この質問実は3項目あるのですが、3項目目はこの次に。ちなみに答えが3ページ分あるという代物です)で、ユーロ離脱云々についての項目への答えが続きます。

『2つ目の、ユーロの離脱の可能性については、私の立場でその可能性についてコメントをすることは差し控えますが、離脱をするかしないかについては、様々な見方があり得ると思います。あくまで一般に言われていることですが、ユーロ圏に加盟しているからこそ、今、EUから、そしてIMFから協調で融資がなされているという側面があります。ギリシャも含めて、ユーロ圏に加盟しているからこそ、ユーロ圏17か国の必要な金融機関に融資が行われておりますので、ユーロ圏に加盟している恩恵は非常に大きいわけです。こうした融資が行われている中で、借り手に対してやるべきことはきっちりやって欲しいということで、現在、コンディショナリティと呼ばれる融資条件が課されており、それは信認回復のプロセスとして必要であるわけです。』

『以上をまとめると、もしギリシャがユーロを離脱した場合には、これらの支援が今後どうなっていくのか、もし、離脱することにより、ギリシャが再びドラクマを採用する場合、信認を伴わない中で、自国通貨を採用するということがどういう帰結になるのか、十分検討していく必要があるのではないでしょうか。特に、ギリシャの場合はユーロ建ての借金が多いわけですから、自国通貨を採用するということは、借金がユーロ建てから外貨建てに切り替わることになります。そういうインプリケーションもみていく必要があると言われていますので、どうするかということは、もちろんギリシャの国民自身が決めていくことですが、これらの問題を踏まえた最善の選択がなされると思っています。』

ユーロ建て云々の話ってもうちょっとクリアに話をすれば良いのにと思うのですが、問題は国の債務よりも民間の債権債務関係の方で、ユーロ離脱ってテクニカルにも難しい話ですし、国よりも問題なのはユーロ建て借金している民間がユーロ離脱したら死ぬって話ですよね、という事だと思うのですけど。


・外貨建て資産を日銀が購入云々

同じ質問で外貨建て資産の購入がどうのこうのという話がありまして。

『3つ目の外貨建て資産の購入――日銀が外貨建て資産を購入するかどうか――についてですが、個々の政策の一つひとつの是非について、今、私の立場で申し上げることは致しません。ただ、一般論として言えることは、あらゆる政策手段について、絶対にない、というようには考えてはおらず、あらゆる政策手段を常に念頭に置いておくことが必要だと思います。ただ、その際に、その政策が採用できるかどうかということに関しては、私個人としては、今までもそうしてきましたが、常に3点の視点から判断をしていきたいと思っています。』

ほう。

『第1点は、その政策を採用したときにどの程度の効果があるのか。同じ金融緩和をするにしても、様々なやり方があり、その手段によっては効果も違うでしょうし副作用も違ってくるわけですから、効果と副作用を、それぞれ短期、中長期の視点からみていく必要があります。』

『第2点ですが、中央銀行は様々なリスク性資産――ETFやREIT、社債、CPもそうですが──を買い入れています。そういう時に気をつけなければならないのは、公的機関である中央銀行がどの程度市場に介入すべきなのかということです。やはり基本的には市場主義経済ですから、市場で価格が決まってくる、その点を大事にしなければいけないと思います。政策の採用が市場にどういった影響を及ぼすのか、つまり介入が及ぼす影響、価格決定に及ぼす影響について配慮していく必要があります。』

『そして第3点として、忘れられがちですが、日本銀行は中央銀行として銀行券を発行し、通貨の信用を支えているわけですから、その発行主体である日本銀行の財務の健全性が非常に重要です。従いまして、様々なリスク性資産を含めて購入する場合、当然のことながら、財務の健全性は配慮して判断すべきだと思います。』

・・・・・・・・・・どうみても麿の腹話術人形化しています本当にありがとうございました。

逆さ絵オヤジとかどこぞの俊ちゃんみたいに(まあどちらも表立っては言わないですけど)「効くか効かないか判らないけどまあエイヤーでやってみますか」的な話にならないのが麿クオリティ、というかECBとかも同じですのでブンデスバンククオリティという所でございますが、まあ伝統的中銀スタイルではございますので麿の腹話術人形とかいう言い方をしたら失礼ですかそうですか。

『そのように申し上げたうえで、最後に1つ付け加えたいことは、外貨建て資産の購入──例えば外債の購入とか──について、ご質問が為替市場への介入といったようなことを念頭におかれているのであれば、現在の日本銀行法のもとでは、為替相場の安定化を目的にした為替売買は財務大臣の所管であり、日本銀行は代理人として介入していますので、こうした日本銀行法の規定を十分踏まえなければいけないと思っています。』

日本銀行法の規定云々というのはイマイチ言い訳じみているので、もうちょっとこの辺は露骨に話をした方が良いのではないかと思いますが。


・欧州問題に関して再度

別の質問に対する答えから。

『欧州問題に関しては、展望レポートの上振れ・下振れの要因のところにも書いてあるように、私どもも、これは非常に重要な下振れ要因の一つとみています。それを考慮したうえで、そういうリスクが高いからこそ、今はまだ横這い圏内ですが少しずつ回復の兆しが出てきているわが国の景気について、私どもは今後2012年度の前半から緩やかな成長、回復経路に復していくという中心シナリオを持っているわけですが、それをより確実にするために、欧州問題を含めたリスクを考慮したうえで、金融緩和を強化した──具体的には基金の規模を65兆円から70兆円にした──わけです。』

ほほう。

『4月末現在で、基金による買入れ残高は50兆円となっていますが、それを70兆円規模にするわけですから、これから約20兆円の金融緩和をしていくということになります。』

固定金利オペは金融緩和なのかねという気もしますが、まあ固定金利オペ自体は既に一杯に実施していて今減らし方向(というかオペが札割れで勝手に減っている)ですけど。

『従って、今後、長めの金利や、あるいはリスクプレミアムの低下という形で効果が次第に出てくるだろうと思います。金融政策というのはご存知のように効果に時間がかかるわけであり、だいたい1年半から2年くらいかけて金融緩和の効果が出てきますので、それをこれからも見極めていきたいと思っています。ギリシャやフランスの問題を含めて、欧州の問題に関してはリスク要因として私どもは考慮したうえで金融緩和をしたということで、その効果をこれから見極めていきたいと思いますし、そういう効果が出て私どもが考えている中心シナリオが実現していくことを期待しています。』

ということで、まあ講演にあったように下方リスク認識みたいなのは把握した。



・この質疑はワロタ

今回の質疑応答は何せ白井さんの答えがむやみやたらと長い(ああでもないこうでもないといつも文章をひねくり回すお前が言うなですかそうですか^^)のが特徴なので質問まで引用しているとクソ長くて遺憾なのですが、質問がオモロイので引用。

『(問) 2つお聞きします。1点目ですが、本日の講演録の5ページ目で、4月27日に追加緩和を行った背景について述べられています。そこでは、「日本銀行の金融政策上のコミットメントに対する揺るぎない意思を示す点からも適切であると考えています」とおっしゃっています。2月も同じような姿勢を示すということが強調されたかと思いますが、2月にやり、3か月足らずでまた姿勢を示さなければいけないと、こう何度も日銀が姿勢を示さなければいけないということは、裏を返すとなかなか日銀の姿勢というものが伝わっていないからだと思いますが、それはなかなか理解してくれない相手が悪いのか、それとも日銀の姿勢そのものに問題があるのか、どうお考えかをお聞かせ下さい。(2点目はこの次に)』

ワロタ(^^)。でまあこの答えが恐ろしくクソ長いのですが引用しますわ。

『(答) 1つ目の質問ですが、日本銀行は以前からデフレ脱却を目指しており、物価安定のもとでの持続可能な成長を実現したいとの意思をずっと持ってきました。もっとも、こうした意思は以前から貫いて政策運営をしてきているのですが、なかなか日本銀行のスタンスが分かりづらいという批判もあり、そうであれば、私どもの気持ちそのものは何も変わりませんが、国民の皆様により私どものスタンスが理解して頂けるのであれば、もう一歩明確な形にしようということで、以前は「中長期的な物価安定の理解」と言っていましたが、2月14日に私どものスタンスを明確化するべく「目途」という言葉を使いました。これは、ある意味では一歩前進だったと思っています。以前は、それぞれの委員が中長期的に物価安定と思う数値を全体的に網羅する表現である「理解」であったわけですが、それを一つの数値として示すことでボードメンバーが合意に至ったということでありますので、そういう意味で私は明確化がなされたと思っています。その際、言葉だけではなく、私どもはこうした意思を持っているということを伝えるために、10兆円の増額を行ったのが2月14日です。』

はあそうですか。

『4月27日に関しては、年に2回の展望レポートを発表する時期にあたり、今回は2013年度までの経済・物価の見通しを発表するタイミングでした。私どもは、今回の展望レポートで、1月の中間段階に比べて経済成長率や物価の変化率の見通しを上方修正しましたが、同時に、日本経済を取り巻く不確実性は大きいと感じておりました。欧州情勢だけではなくて、原油価格の問題もありますし、このほかに展望レポートに書いてあるような様々な上振れ・下振れ要因があるためです。私どもは、当面、物価上昇率1%を目指し、それを実現するまで強力な金融緩和を行うということを2月14日に申し上げましたが、このように日本経済を取り巻く不確実性が大きいことを踏まえて、2013年度までの私どもの経済・物価の見通しを出す機会に、こうした意思を再度明確に示すために金融緩和を一段と強化したわけです。』

ふむふむ。毎度毎度意志を明確に示すってのも何ですかねと思う訳ですが、何せ展望レポートに「遠からず1%云々」というのを入れているのは「見通し期間で1%という数字が出ていないから緩和しているんじゃないからね!」という事を主張したいというのは把握したのでまあこういう答えになるんでしょうな。どう見ても判りにくいわとは思いますけど。

『こうした日本銀行の姿勢は、なかなか理解されていないのかもしれません。それは相手の問題かもしれませんし、日本銀行のコミュニケーションの問題かもしれませんが、今、私が世界の様々な中央銀行の方々と話していてつくづく痛感することは、日本は、他の先進国に先駆けて、少子高齢化というどの国も経験していない新たな段階に入っているということです。欧州の一部の国が人口減少に転じてようやく似たような状況に直面しつつあるにしても、65歳以上の人口比率がここまで高い国は日本だけです。このように日本が他の先進国が経験したことのない新しい時代に入っている中にあって、様々な経済政策の役割や効果は自ずと変化してきており、日本銀行の金融政策についてもなかなか理解されない面があると思います。それは相手が悪いということではなくて、現在の日本が、先進国の中央銀行でも直面したことのない問題に直面していることに起因する難しさであるように感じております。』

そ、そうなのか・・・・・・・・・(・・?)

『今の日本経済が抱えている問題について、どうやって国民のコンセンサスを得て、必要な政策を皆で実施していけるのか、日銀は日銀で、政府は政府で、民間企業あるいは金融機関はそれぞれの立場で、デフレ脱却のためにどうしたらよいのか、人口が減少しているというマイナスを克服して成長に繋げていくにはどうしたらよいのかという問題を考えなければならない時代にきているわけです。そういう状況の中で中央銀行のコミュニケーションも難しい面はありますが、私自身も今後最善を尽くして、現在抱えている問題、そして取り組まなければならない課題について国民の皆様に分かりやすくお伝えしていきたいと考えており、そのためにも様々な方々と意見交換をしていきたいと思っています。』

前回の講演(昨年11月2日)後の記者会見でもやや答えが長めかなとは思ったのですが、今回の会見ではまあご覧の通りで一つの質問に対する答えがやたらと長い(ちなみにこの分量でほぼ2ページ費やしている)んですが、よくよく見るとそんなに政策インプリケーションのある話をしている訳でもなくて一般論が多かったりするのは何ですねんという気がするざますわよ奥様。

まあ今回は一応長々と引用しているのですけれども、次回以降この調子だと引用部分を相当選ぶかもしれませんな、マッタクモウ。


・国債買入が金融不均衡云々

先ほどと同じ質問の2番目の項目が「第2の柱で言う金融不均衡に国債買入による長期金利低下は入らないのか」というような話でしてその答え。

『2つ目の質問ですが、ご指摘のように、金融緩和の結果として、日本銀行は市場から大量に国債を買っており、既にかなりの金額となっています。こうした状況を受けて、金利は非常に低下してきており、10年物金利でいえば0.8%台という非常に低い水準になっています。そのことがかえって金融システムの不安定化を招く、あるいはその懸念があるのではないかという趣旨のご質問だと思います。』

まあ大体そういう質問です。

『日本銀行でも、金融面での不均衡の蓄積といったリスクがないかという問題意識のもとで、様々な金融機関と常に意見交換をしていますし、私どもからリスク管理について提言やアドバイスも行っています。先ほども申し上げましたが、労働力人口が1995年以降減少している、つまり働く人が少なくなっているということは、それだけGDPも減っていくということになります。こうしたマイナスをどのように克服して成長に繋げていくのか、あるいは一人当たりの収入をどのように増やしていくのか、これらは国民レベルで日銀を含めて考えなければいけない課題だと思います。』

なぜそこに話が飛ぶ??

『この点、現在では、企業の方々あるいは消費者の皆様にまだまだ不安が残っています。企業経営者の方々とお話しても、人口減少が続きマーケットの縮小に歯止めがかからない中で、工場や設備を新たにつくりたいとは思わない方が多いですし、消費者の皆様も、年金、社会保障、財政含め将来への不安が大きいですから、余分にお金があるなら貯金したいと考えがちです。こういう状況では、なかなか消費も増えないし、設備投資も増えないわけです。そうすると、日本銀行が一生懸命金融緩和を行って金融機関に資金を供給しても、こうした資金が経済を活性化する方向に回っていきません。従って、豊富な資金を使って経済を活性化していくためにはどうしたらいいかを考えなければいけないわけです。』

はあ。

『現在、預金が増加して大量に資金を抱えている金融機関も多いわけですが、こうした大量の資金を設備投資、消費といった需要サイドにどうやって回していくのか、そこに焦点を当てて、政府、民間企業、金融機関、日銀それぞれがやるべきことに取り組んでいくことが重要だと思います。』

まあ要するにあまり答えにはなっていないのですけれども、成長基盤強化が重要的な話に走るというのは何か麿ペースっぽくてちょっとねえという感じもする次第なんですけどね。

ということで無駄にクソ長い(ちなみに今引用した質疑応答の答えで3ページ分でして、この質疑応答って10ページ分(最終頁は一行だけ)あるのですが、今引用した答えだけで6ページ費やしているという大演説モードの会見なのでありました。

会見で大演説する事のインプリケーションが良く判らないのですが、言いたいことがあって話をしている割には話が金融政策的なお話でも無いですし、単に説明がくどい人というだけのこと(またお前が言うなという声が聞こえてきたような気が^^)なのでしょうか、よくわかりません。

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2012/05/11

○白井審議委員講演から少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120510a1.pdf
わが国の金融経済情勢と成長力強化に向けたアジア地域の成長の取り込み
── 秋田県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

でまあ本論は新興国経済の成長に関して、現在どのような優位性を持っているのかとか、それに対して日本がアジア経済との間に従来どのような関わりをして、最近はどのような動きになっているのか、というのを貿易と資本とか証券投資とかの関係についての説明をして、では今後日本としてどういう取り組みが必要かとそういう話なのですが、まあそちらは華麗にスルーして(どうもすいません)『2.最近の経済・物価情勢と日本銀行の金融政策』の所から。

『(1)国際金融資本市場と海外経済』から。

『海外経済については、2011年春以降、成長ペースが鈍化しましたが、現在では、米国経済が緩やかな回復を続けるなか、欧州経済の停滞感の強まりに歯止めがかかり、新興諸国・資源諸国経済も内需を中心に底堅く推移しており、全体として成長ペースに改善の動きがみられています。先行きについても、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移すれば、新興諸国・資源諸国に牽引される形で徐々に成長率が高まっていくとみています。』

とまあこちらは展望レポート通りの話をしておりますが、リスク要因の所ではこうなっております。『(3)リスク要因』から。

『これらリスク要因の詳細は同レポートをご覧頂ければと思いますが、なかでも、私は、海外経済に関わるリスク、具体的には、@国際商品市況、とりわけ原油価格上昇リスクや、A欧州債務問題の再燃といったリスクのほか、B欧州以外の海外経済の動向に注視しています。』

ほう。

『このうち、原油価格については、地政学的リスクが残るなか、依然として高い水準にあり、先行き一段と上昇した場合、世界経済の下振れリスクが高まるほか、わが国も、交易条件の悪化から、企業収益や家計の実質購買力が下押しされ、経済が下振れるリスクがあります。』

『また、海外経済については、欧州債務問題を巡って、国際金融資本市場が動揺し世界経済が大きく下振れるリスクは低下しましたが、欧州債務問題自体が解決したわけではありません。現在、欧州域内で進められている中長期的な成長力の引き上げや対外不均衡の是正、財政の持続可能性の確保といった改革が、ひとたび市場の信認を失えば、国際金融資本市場が再び緊張し、世界経済あるいはわが国経済が下振れるリスクがあります。米国も引き続きバランスシート問題を抱えるなか、今後の経済が減速することもあり得る点にも注意が必要だと思います。』

ということで、さすがに展望レポートにありました「海外も上手くいけば上振れ」というような話をしないのは安心しました(^^)。まあ普通に下振れ警戒ですね。


国内経済に関してですけれども『(2)わが国経済・物価の現状と先行き』にありますけれども・・・

『先行きも、海外経済が成長率を高めるもとで、震災復興関連需要が強まるにつれて、2012年度前半にかけて緩やかな回復経路に復していき、2012年度全体ではやや高めの成長率となる見込みです。その後、2013年度についても、復興需要の景気押上げ効果の減衰から前年対比幾分減速するものの、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられます。』

ということでまあこちらは展望レポート通りの話。

『なお、1月の中間評価時点との比較でみると、成長率は、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクが低下し、市場環境がやや改善したことなどから、2012年度を中心に幾分上振れています。また、物価は、景気見通しの上方修正に伴うマクロ需給バランスの改善や、為替円高の修正、原油価格上昇の影響もあって、2012年度、2013年度とも幾分上振れています。』

とこちらも展望レポートに沿った話をしておりまして、この辺は変わらないのですが、リスク要因の説明で下振れを強調しているのは展望レポートの中心的な論調よりも若干ハト風味があるかもしれませんね程度の話になろうかと思います。

しかしまあ問題が政治的になっているから指摘したくないのかもしれないのですけれども、夏季電力供給に関してはそれこそ昨年の経済見通しの中で「供給制約」がキーワードになっていた位に重要な問題だと思いますので、それはそれでやはり触れておくべきなのではないかと思うのですけどね。「どうすべきだ」って話をしなけりゃ良いだけの話のような気はするのですけどにゃあ。

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2011/12/19

○超虫干しネタですが11月2日の白井審議委員講演と会見から

講演はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111102a1.pdf(講演)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111102a2.pdf(図表)
欧州を中心とする最近の金融経済情勢とわが国の金融政策
── 山梨県金融経済懇談会における挨拶要旨 ──

会見はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1111b.pdf

・まあ出だしなので無難っちゃあ無難

でまあ講演なのですが、今回は白井さんデビュー戦という事もあってか、基本的にまあ無難な話をしているという印象でした。元IMFということで欧州問題でもっと独自の面白い視点でもあるかなと期待したのですが正直あんまりおもろくない。

で、まあオモロクなかったのでネタにするのをすっかり忘れていたのですが(汗)。

『それでは本題に入ります。世界は、目下のところ、二つの課題に直面しています。具体的には、世界経済の減速感の強まりと欧州の財政・金融問題をきっかけとする国際金融市場の不安定化です。』

ということで、まあこの時の講演は11月2日ということでパパンドレウ先生のお笑い劇場国民投票提案の巻が始まった所でありますが、欧州問題の金融市場に与える影響の話は以前から指摘されていた話ですので、そんなに独自色っぽくはありません。


・米国経済について

で、米国経済に関しては11月時点ではこんな話をしていますが・・・・

『最近の(引用者追記:米国経済の)企業の景況感に関連した指標をみると、一頃に比べ、低迷した水準で推移していますが、こうした市場での悲観的見方に比べて、実体経済面ではそれなりに堅調さを維持しているとみています。』

構造問題を指摘という事で、まあ景気2番底みたいな見方は否定するものの長期的にきびしいでしょうというようなまとめ方に。

『とはいえ、米国では、家計における住宅バブル崩壊の後遺症──いわゆるバランスシート問題──が残っていることから、景気の回復ペースはごく緩やかなものに留まっています。家計にとって、住宅ローン等の債務は依然として過剰な状態にあり、雇用・所得環境の改善が緩慢なもとで、債務返済は重い負担となっています。しかも、金融資産の3割ほどが株式に投資されているため、最近の株価低迷がもたらす負の資産効果も大きいと思われます。こうしたなか、オバマ大統領は本年9月に4,470億ドル(GDP比3%)の雇用対策を発表しましたが、米議会の審議の先行きが不透明な中、来年からの景気押し上げ効果が期待できるのか不透明となっています。こうした状況を踏まえて、先行きについては、引き続きバランスシート調整の圧力が残る中で、緩やかな景気回復ペースに留まるとみています。』



・国際金融市場問題、欧州問題に関して

国際金融市場問題に関してはこんな話を。

『このように国際金融市場が不安定になっているのは、欧州の財政・金融問題の解決に向けた対策とその実現性について、市場による信認が十分得られていないことに起因しています。この問題は次に述べるように一朝一夕に解決する問題ではありません。従って、当面、国際金融市場では緊張感の強い状況が続くとみておいた方がよいと思います。』

まあこの辺りは大当たりですので、まあそこまで読んでる方が大滝秀治状態になる必要もないのですし(^^)、欧州の話の部分は一応説明を詳しくしているのでそこはまあ良い感じ(だが特段凄くユニークな話があるという訳では無い)。

『第1の問題は、そもそもの問題の発端であるギリシアの財政再建・経済改革プログラムに対して市場の信認が失われていることです。ギリシアはユーロ圏に参加する以前からもともと政府債務の規模が大きい国でした。しかも、政府が統計自体を操作して財政赤字を過少計上していたことが2009年後半に発覚したことから、ギリシアの経済・財政運営に対する不信感が募り、国債が相次いで格下げされて国債価格が急落(国債利回りは大幅上昇)したため、同国政府の資金調達が困難となりました。このため、先ほど申し上げた通り、政府がEUとIMFに融資を申請し、昨年5月から金融支援を受けるに至っています。』

『最近では、ギリシアの財政状態が想定以上に悪化しているため、一部の加盟国からは、当初の債務再編案の債務削減率では持続的に債務返済できる状態にならないことから、さらに追加の債務削減を求める声が聞かれるようになりました。こうした声を受けて、10月末には、EUと民間債権者の間で交渉が行われ、債務削減率を5割まで引き上げることになりました。しかし、同時に厳しい財政再建を進める必要があります。そのため、ギリシアでは、景気後退のなか、国際公約を守るために、さらに追加的な財政再建を要求され、それにより一層国内景気が冷え込むという悪循環に陥っています。こうした悪循環を断ち切るためには、債務削減ももちろん重要ですが、成長を生み出す経済改革を進め、財政健全化の道筋をたてて、市場の信認を回復していくことが重要であると考えています。』

と、途中をだいぶ端折りましたが講演当時にホットだったギリシャネタ。


『第2の問題は、ギリシア問題が他のユーロ圏加盟国へ波及するのを阻止する体制についての問題です。』

ふむふむ。

『市場では、既にスペインやイタリアといった域内でも経済規模が大きい国々への危機の伝播が意識されており、ユーロ圏首脳会議で打ち出された基金の機能拡充策の貸出可能額ではこれら大国への波及を防止するには不十分であるとの受け止め方が広がっています。もっとも、これ以上の貸出可能額の拡大は、ドイツ等が難色を示しており、なかなか実現困難な状況です。そこで、10月末のEU・ユーロ圏首脳会合では、レバレッジを利かせてEFSFの危機対応力を高める新たな方策で合意しましたが、詳細は11月以降に改めて検討が行われることに加え、今後の各国の承認プロセス等を考えると、実際に利用可能となるには相応の時間を要するとみられます。こうしたユーロ圏全体への財政危機の波及を防ぐ体制整備の問題は、国際金融市場の安定化に向けて重要ですが、市場の信認を得られるかどうかがポイントとなります。』

まあここの指摘は結果から見たら仰る通りでしたな。


『第3の問題は、欧州の財政問題が金融システム上の安定性の問題へと転化していることです。当初はギリシアの財政問題だったものが、財政不安あるいは経済改革への信認が低下するなかで、ギリシア以外の国々にも波及し、さらに、これら諸国の国債の信用力が疑問視されるなかで、こうした国債を多く保有する欧州系銀行に対する懸念へと問題が拡大しています。』

で、金融機関の自己資本増強は大変なので・・・・・

『金融機関の間では、カウンターパーティリスクに対する懸念が高まったことで、市場運用を手控える銀行もみられています。加えて、ターム物を中心に無担保取引が縮小する傾向もみられており、欧州系銀行の資金調達コストは、長めの資金およびドル建てを中心に上昇しています。』

というのはまあキタコレという事ですが。

『当初のギリシアのように問題が財政に限定されていれば、解決策は、短期的には歳入拡大と歳出削減、中長期的には持続的な経済成長の実現に向けた経済改革が基本となり、対応方針は比較的立てやすいといえます。しかし、金融システムの安定性の問題への対応となると、国際金融市場への影響もあり、格段に難しくなります。現在は、財政問題とあわせて金融システムの安定性という課題にも目配りしなければならない難しい状況となっており、このことが、国際金融市場を不安定化させている重要な要因となっています。』

つーまとめになっていまして、欧州経済に関しては次の章で、

『こうした欧州の問題は、財政、金融システムのみならず、堅調であった実体経済にも影響を及ぼしつつあり、これら三者の間に負の相乗作用が働き始めています。』

としていますが、まあここまでの話でそんなに突拍子もない話はしていないので、無難ちゃあ無難ですが個人的にはもうちょっとユニークな視点が出てほしかったかなあとか思いますけどねえ。


・会見で基金買入に関する質疑応答が

でまあ会見なのですが、欧州問題に関する質疑応答はごく普通の話でして、基金買入の拡大をこの直前の決定会合で行ったせいかその話をしていたのが目立ちました。

んでもって基金買入に関する説明は結構クリアカットに論点を整理していました。

『(問) 先週の金融政策決定会合における資産買入等の基金の増額では、増額の対象が長期国債のみとされましたが、銀行券ルールの外で長期国債を買い増していくことがマーケットから財政ファイナンスであると受け取られるおそれはないのか、お考えをお聞かせください。(質問の後半割愛)』

『(答) 日本銀行は、国債を市場から買い入れて既にかなりの金額を保有しています。これは金融政策、時には危機対応として購入してきた結果であり、明らかに財政ファイナンスとは全く別のものです。』

ふむふむ。

『詳しく申し上げますと、国債の買入れは2つの目的で行っています。1つは、長期国債買入れと言われるもので、最高で30年のものまで購入していますが、この目的が銀行券ルールと言われるものです。私どもは、銀行券を発行していますが、銀行券は比較的長期的に安定した負債ですので、これに見合う資産として長期国債を買っているということです。』

『もう1つは、昨年10月から始めている包括的金融緩和の下で、資産買入等の基金を通して買い入れているもので、この目的は金融緩和です。金融緩和の一環としての長期国債買入れは、超短期の金利がかなり潰れている状態の中で、私どもとして何ができるかを考えた時に、より長期の金利に働きかけていこうということです。』

これはクリアカットな説明である。

『国債はリスクフリーと言われる資産で、あらゆる金利のもとになりますから、長期国債の買入れを通して色々な金利に働きかけていこうという思いで買入れを始めました。長期国債の残存期間は1〜2年としていますが、企業の借入期間が3年以下ですから、これにほぼ合わせた形でやっているということです。目的が違うからこそ、あえて「基金」というものを作り、一時的な措置として行っているものであり、中長期的な性質を持つ銀行券の見合いとして買うものとは全く違う性質のものです。』

ということですな(後半は引用割愛した質問の答えなので引用割愛)。


で、最後にこのようにツッコミが来てましたわな。

『(問) 企業の資金調達が3年以下ということであれば、3年の金利がより下がった方が良いわけなので、なぜ残存期間が3年以上の国債を買わないのかということについて再度、お聞かせください。』

『(答) 繰り返しになりますが、やはり1〜2年、それからその近傍の金利に働きかけているということでご理解頂きたいと思います。今の時点では、先ほど申し上げた3つの視点(引用者追記:金融政策の波及経路への配慮、日銀の資産健全性への配慮、市場の価格形成に対する影響への配慮、の3点です)にも配慮し、そのように考えています。』

・・・・・ということですので、まあ日銀としては企業借入期間云々のネタで基金買入の期間を3年に拡大する余地は残している、という事ではないかと思われる次第で、先ほどの雑談になるというのが虫干しネタとの関連だったりするのでありました(^^)。

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2011/04/07

○白井さんの就任会見から

ちと出遅れました(汗)。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1104a.pdf

・震災の影響に関して

『(答) 震災後の見通しですが、まだ判断するためのマクロデータがありません。この点をお断りした上で、私の意見を申し上げます。まず、当面は生産や輸出等が減少する可能性があります。それは、1つには東北地方でインフラや生産設備そのものがかなりの被害を受けているということ、それから北関東地方の工場も被災しているということ、また電力供給の悪化による経済活動・物流への影響を考えると、自動車産業を中心に、当面は輸出・生産が減少すると考えられます。同時に、先程も申し上げましたが、今回の震災や電力不足が、日本全体の家計や企業へ心理的に様々な影響を与えています。そうした大きな影響があるので、当面の見通しは非常に不確実性が高いと思っています。 ただ、いずれ中期的には復興・復旧が始まり、それに関連した需要が増えていくため、その分だけ成長していく可能性もあります。それがいつ始まるのか、どの程度の大きさなのかは、今判断するのは時期尚早だとみています。』

ということで、まあ基本的には「先行き不透明性が高い」「供給の低下による生産の低下」「マインド面への影響」という点を指摘していまして、まあ普通ちゃあ普通ですけれども当然ながら慎重な見方ではあります。


・日銀の国債引受論議に関して

『(答) (冒頭割愛)この、復興国債という話は、非常に大きな震災があり皆さんが心を痛めていて、どうしたら早く復旧できるかという観点から出てきた案だと思います。そうした気持ちは、私も十分理解しています。ただ、一つ一つの政策を考える際には、その政策が私達国民にとって長期的にみて良い結果をもたらすのかどうかを常に検討しなければいけないと思います。』

さいですな。

『その上で、中央銀行による国債の引受けについて一般論を申し上げると、例えば、私が専門分野としてきた欧州、とくにEUでは、基本条約でECB(欧州中央銀行)による国債の引受けおよび政府に対する直接的な融資を明確に禁止しています。その他の多くの主要な国々でも、明確に中央銀行による国債引受けを禁じています。このように、ある種の国際的なコンセンサスがあることをまずきちんと踏まえなければいけないと思います。何故そのようなコンセンサスが国際的にできているのかといえば、その背景には共通の歴史的な認識があることが指摘できます。』

『最初は、中央銀行による国債引受けを認めて、それが良いと思うかもしれません。しかし、そうしたことを一旦導入してしまうと、後に歯止めが効かなくなり、国債の乱発に繋がるかもしれません。そのためにインフレが起きてしまえば、結局国民の皆様が銀行券を安心して使えなくなってしまい、経済活動に色々な歪みをもたらす惧れがあります。』

『一番気を付けなければならないことは、長期的にみた場合に、通貨に対する信認が失われてしまう可能性です。一度通貨に対する信認が失われると、長期金利に跳ね返ってきます。長期金利が上昇すれば、政府の利払いに大きな負担となって返ってきます。そうしたことがあるからこそ、先程申し上げたようにEUも明確に中央銀行の国債引受けを法律で禁じており、日本でも財政法5条で日本銀行による国債の引受けを禁止しているわけです。したがって、そのようなリスクを十分考慮した上で、日本銀行による引受けといった案が妥当かどうかを考えていく必要があると思っています。』

まあ通貨の信認が喪失したら長期金利云々の世界ではないような気もしますが、お話としてはそうなりますわな、ということで、これまた中銀のスタンスとしては普通っちゃあ普通の話ですけれども、まあとりあえずは最初の最初なのでそんなに変わった話をしている訳ではないとゆー所でありました。

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