須田美矢子前審議委員

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須田美矢子審議委員

須田さんの略歴(日銀Webより)

昭和23年 5月15日生
昭和46年6月 東京大学教養学部卒業
昭和54年3月 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得
昭和57年4月 専修大学経済学部助教授に就任し、昭和63年4月に教授。
平成2年4月 学習院大学経済学部教授に就任
平成13年4月1日より日本銀行政策委員会審議委員
平成18年4月1日に審議委員再任
(前職:学習院大学経済学部教授)

平成23年3月31日に審議委員満期となり退任されました。お疲れ様でした。

詳しくはこちら→http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/bm_suda.htm/

2010/12/28「10月28日決定会合議事要旨から、須田委員が展望レポートの見通しに反対意見とな」
2010/12/20「須田審議委員講演および会見:景気には弱気ですな」
2010/12/14「須田審議委員講演:包括緩和はQEよりCE」
2010/06/07「須田審議員会見」
2010/06/04「須田審議委員講演、景気の下振れリスクを意識」
2010/03/11「須田さんのセミナーでの発言要旨より」
2009/12/04「下振れリスクの意識が高まった須田審議委員講演」
2009/09/30「須田審議委員講演続き、物価に関する説明から」
2009/09/17「須田審議委員講演、企業金融措置の見直しに言及」
2009/03/10「須田審議委員講演、政府紙幣に関して」
2009/03/09「須田審議委員講演、シニョレッジの論点整理」
2009/03/06「須田審議委員講演と会見、社債買入などの件に関して論点整理」
2009/03/05「須田審議委員講演(予告編)、やるときはやる派ですね」
2008/09/01「記者会見もインフレタカ派です」
2008/08/29「今回はタカ派チックな須田審議委員講演」
2008/04/04「須田審議委員記者会見、やはりインフレタカ派」
2008/04/03「須田審議委員講演続き」
2008/04/02「須田審議委員講演、インフレタカ派振りは変らず」
2007/10/02「須田審議委員講演続き、金融政策に関しては引き続きタカ派」」
2007/10/01「須田審議委員記者会見」
2007/09/28「景気の現状判断を下向きに変更したように見える講演です」
2007/01/29「須田審議委員記者会見、利上げ派と据え置き派のの距離は遠そう」
2007/01/26「須田審議委員講演、政策金利調整論が前面に」
2006/07/31「記者会見なお補足」
2006/07/28「須田審議委員講演と記者会見より(続)
2006/07/27「経済下振れリスクに言及してるんですが、結局ホーキッシュな講演(その1)」
2005/09/29「今度は須田委員の燃料投下講演」
2005/03/31「日経新聞『経済教室』への寄稿」
2005/02/14「記者会見:当座預金残高問題とゼロインフレへの言及の真意」
2005/02/10「須田委員の函館市での講演(の一部)ゼロインフレにあえて言及」
2004/10/07「須田委員の講演:物価に弱気でビハインド・ザ・カーブを警戒」
2004/05/31「講演の続き」
2004/05/28「講演:中央銀行の情報発信と金融政策」
2004/04/23「言ってることが論旨一貫してない須田委員の政策論」
2004/04/22「4月21日の沖縄における講演」
2003/12/19「続き(9月7日と12月5日の講演ダイジェスト)」
2003/12/18「須田審議委員の量的緩和政策への評価(講演ダイジェスト)」
2003/07/03「懐かしき日銀理論(講義ダイジェスト)」

2010/12/28

○展望レポートが楽観的ではないかとの須田審議委員の指摘とな(10月28日議事要旨)

昨日は議事要旨が2発ございましたが、とりあえず10月28日の展望レポート分から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g101028.pdf

展望レポートの討議の部分が議事要旨本文8ページ『2.経済・物価情勢の展望』からなのですけれども。

『経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、多くの委員は、10月5日の金融政策決定会合において、物価安定のもとでの持続的成長経路に復する時期が後ずれする可能性が高いと判断したが、その後、包括緩和を導入したことや、政府の緊急総合経済対策が明らかになったこともあって、なお時間を要するものの、物価安定のもとでの持続的成長に向けて、着実な歩みを進めていくとの認識を示した。』

ということで展望レポートが妙に強気に見える結果になったのですけれども、真面目な話この包括緩和にしろ緊急総合経済対策にしろ、その効果がどのように出てくるのかというのはこれからの話(つーか包括緩和の具体的な内容の第一弾をこの会合で決定したんですし)なのですが、それを堂々と効果として入れて良いのでございましょうかと。

つまりですな、これを入れることによってやや強めの展望レポートを出して、時間軸が妙に長くなるのを避けようというような意図があるんじゃネーノという香りがプンプンとするのでありまして(展望レポートの数字だと「中長期的な物価安定の理解」の達成は実はそんなに先ではない(ですが、そもそも市場の方が「それはアリエネー」という認識なのであまり時間軸が揺らがなかったりする)のですよね)、何かこうどうなのよという風に思うのであります。

と思ったら展望レポートに反対意見というのがあるというお洒落な事態が(^^)。

本文15ページでございますが。

『続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、採決に付された。採決の結果、賛成多数で決定され、即日公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、10 月29 日に公表することとされた。』

ほほう賛成多数とな。

『なお、須田委員は、展望レポートで示した見通しに比べて、マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し、物価の先行きを慎重にみていることや、消費者物価指数の基準改定などに伴う不確実性に一段と配慮した情報発信が必要と考えていることから、反対した。』

>マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し
>マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し
>マクロ的な需給バランスの改善が物価上昇率を引き上げる力や包括緩和の効果を控えめに判断し

・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

ということで、物価の見通しに関して楽観的ではないかというツッコミでございまして、まあこれは展望レポートで(普段そういうの見込まない筈の)これから実施する経済対策やら金融緩和の効果を思いっきり織り込んだ楽観ちっくな展望レポートに反対と言う事で、これは示唆する事がある反対理由ではないかと存じます次第。

つまりね、白川総裁のご趣味だか何だか知りませんけれども、市場機能論位ならまあいいですけど、マクロプルーデンスとか金融の不均衡の拡大防止(ってまあマクロプルーデンスと言う話ですか^^)とか言い出してあっという間に包括緩和解除モードになるべくシナリオ逆算型の見通しみたいなのをぶち上げそうな懸念を、ってまあそれは考えすぎの杞憂であると思うのですけれども、微妙にその辺りの危うさが現在の白川体制に内包されているのではなかろうか、などというのをこの須田さんの反対理由およびその前の議事要旨部分を見て思うのですよあたしゃ。

いやね、ただの杞憂だと思うのですがど〜も心のどこかに引っ掛かるのよね〜という事で。

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2010/12/20

○虫干しネタで今更月初の須田審議委員講演から

12月1日の山形県金融経済懇談会での挨拶から
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1012a.pdf

・景気に関しては弱め、つーか構造的に伸びないのではみたいな話

本文5ページの辺りに景気に関する話をしているのですが、展望レポートをベースにした話をしつつちゃっかり自分の見解が入っているのがチャーミング。

『私もこのような見通しを持っておりますが、わが国経済の先行き見通しを考える上で、海外経済の成長の果実をどの程度取り込めるのか懸念しています。この点、日本の輸出の伸びは90年代半ば以降、他国よりも緩やかであり、中国をはじめとした貿易自由化が進む中で、世界の輸出に占める日本のウェイトは90年代半ばから減少傾向にあること(図表9)等を踏まえると、私は、わが国経済が海外成長の果実を上手に取り込めていないのではないか、との思いを強めています。』

『さらに、足もとでは、稼働率の回復が未だに不十分ななかで急速に為替円高が進行したほか、後に述べますが、新興国の技術上のキャッチアップや海外において自由貿易協定の締結が進むなど、為替以外の要因によるわが国経済の競争環境の悪化も懸念されるところです。』

『また、各種環境規制や税負担、あるいは労働規制といった企業の競争力に直結する問題も引き続き指摘されている状況です。』

『以上の点を踏まえると、わが国経済あるいは企業がグローバルな需要を思ったように取り込めない傾向が今後さらに強まらないか、注意が必要です。』

循環的な話ではなくて構造的にいかんでしょという話をしているのですが、須田さんの今回の講演(およびネタにしてませんが東京大学での講演)では構造的にどうなんですか的な話が多いのが特徴的だと思いましたです。


・物価に関する話がサパーリわからんのだが

本文6ページからの部分が判らんのだが・・・・

『ロ.将来予想される物価上昇率に対する見方』という小見出しのところなのですが、よく判らん計算式が出てきまして(いやまあ基本的な式らしいのですが、式で書かないで日本語の説明文で書けと経済のこの手のを見てていつも思うのだが・・・)

『今期のインフレ率=γ×(来期の期待インフレ率)+(1−γ)×(前期のインフレ率)+β×(今期の需給ギャップ)+α×輸入物価変動率 ※但し、γ、α、βはパラメータ』

とか言うのがあって、何か知らんが『一つの見方として、現実のインフレ率は、中長期の予想インフレ率だけでなく、過去のインフレ率に短中期の期待が牽引(アンカー)されている可能性があるとの解釈も可能です。この解釈によれば、わが国の場合、プラスの中長期の予想インフレ率と、マイナスの過去のインフレ率の綱引きにおいて、どちらの牽引力が強いかが鍵ということになります。』という話をしているだわさ。

しかしそもそも日本の中長期の予想インフレ率ってプラスなのかというのがこれがまたワケワカランとあたくしが思っている(一応脚注には『エコノミストによる中長期的な予想物価上昇率は、ここ数年、概ね1%程度で安定しているとみられます。』とある)ので、この先の話が禅問答にしか読めないのかも知れませんが、マジで禅問答モードで泣きそうなんですが><;

『この点、わが国においても、現実のインフレ率に対する、中長期的な予想インフレ率の牽引力を強めることが重要であることはいうまでもありません。』

まあ中長期的な予想インフレ率が本当にプラスならね。

『しかし、私は、デフレが長期化するわが国において、かかる中長期的な予想インフレ率の牽引力を強めることは容易ではないと考えています。さらにいえば、海外においても、最近、わが国と同様に、現実のインフレ率に対する、中長期的な予想インフレ率の牽引力が弱まっているように見受けられます。例えば、日本とは状況がまったく異なりますが、インフレーション・ターゲティングを採用している英国をみると、インフレ率が物価目標の上限を超過する状況が1年近く続く中、かかる過去のインフレ率により、中期のインフレ予想が上昇するリスクが重要なリスクとして指摘されています。また、米国においても、足もとのディスインフレが中期的なインフレ予想を引き下げることにつながらないか懸念する声が聞かれます。』

そもそも中期的なインフレ予想って足元のインフレ率に引っ張られまくるもんじゃないのかと思うのですが、まあそういう実証分析とやらがあるからそうなんですかねえ。何かシロート的にはやはり中期的なインフレ予想がアンカーされる云々の問題は足元のインフレ率がある程度の期間に渡ってトレンドを持った場合にはインフレ予想の方が引っ張られるもんじゃネーノという気がするんざんすが。この辺の話はどうもよー判らん。


・話は飛んで信用緩和政策に関して

物価に関する話はワケワカランのでスルーしまして一気にワープして17ページにある信用緩和に関する部分をば。

「金利政策よりも信用緩和」という話は先日引用しましたが、そのデメリットの説明部分で「シニョリッジを非伝統的政策に突っ込むのは財政政策に繋がる」という話をしているので、その部分を引用。

『ご承知のように、日本銀行の収益の源泉は、独占的な通貨発行権から得られる通貨発行益(シニョレッジ)であるわけですが、かかる通貨発行益は本来国民のものであるため、基本的に政府の一般会計に納付され、日本銀行が自由に利用できるものではありません。言い換えれば、日本銀行の損失は最終的に国民負担になるわけです。また、そもそも日本銀行の財務の健全性が維持されないと、独立した中央銀行の存立基盤が揺らぎかねず、ひいては機動的な政策対応に支障をきたし、そのために、通貨の信認が揺らぎかねません。日本銀行が、政府に対して、本措置による損失が生じた場合の損失処理の仕方について理解を求めているのはこうした背景があるわけです。』

日銀の収益は本来国庫納付して使われるものであり、その使途を政治的な手続きの無い日銀が好き勝手に使うのは如何なものかという話ですわな。まあそれはそれで仰るとおりだと思いますが、この辺をすっかりスルーした話も世の中には多いと思われますので敢えて引用したでござるの巻。


・会見はそんなに変わった話は無かったですが、物価に関して続き

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1012a.pdf

『(答) 物価についての見通しの蓋然性の程度ですが、私自身のメインシナリオとして相対的に蓋然性が高いものとしては、2011年度にプラスの物価が実現できるとは思っていないということであって、それ以上の蓋然性の程度については申し上げかねます。』

という事でして、さっき引用忘れましたけど、講演の中では先ほどの「中期的なインフレ期待の牽引力の弱さ」に加え、「グローバル化の進展における新興国の生産向上に伴う物価抑制圧力」によって、このような見通しを立てています。

『私は、物価見通しについては、来年度中に消費者物価指数(除く生鮮)の前年比がマイナスから脱却できる蓋然性は高くなく、デフレ脱却へ向けての改善にも時間がかかるとみています。また、展望レポートで触れられているように、来年度には消費者物価指数は2010年度基準に切り替わりますが、それを考慮に入れた場合、その蓋然性はさらに低下するとみています。』

ただし、リスクに関しては物価についてのみ上振れ予想となっています。

『物価の見通しについては、先ほど申し上げたとおり、中長期的な予想物価上昇率のアンカー機能がどの程度働くかが重要な論点であったわけですが、私は、この点について慎重な見方をしております。また、政策効果についても慎重にみていますので、物価に関するリスクとしては、むしろ上振れリスクを意識しています。』

メインが慎重なのでリスクは上という事のようです。

で、須田さんは任期が来年3月一杯となりますので、景気、物価の見方が慎重な人が1名退任という事になった場合に、執行部ペースが強まると何か少々いやな予感がするのは杞憂だと良いですなあ、などと思う今日この頃でありました。

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2010/12/14

で、須田さんの講演ネタ(ただし虫干しネタ)と思ったのだが時間がねえ。明日はFOMC声明文という大ネタが待っているというのにこれはどうした事ぞ(自業自得)。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1012a.pdf

○講演の(あたくしが勝手に読んだ)ポイントは「景気にやや弱め」「QEよりCE」

とりあえず先に結論だけ書いておきますとそーゆー感じかと。景気に関しては5ページから9ページの辺り、金融政策に関しては15ページ以降になるのですけれども、特に16ページの辺りとかはいやまあその通りですなあという所ではないかと存じます。

で、須田さんの講演はやたら長いのが仕様で、引用するのが中々難しい(長いので)というのがあるんですが、とりあえず金融政策に関する部分をば。

・須田さんは「リスクプレミアムの縮小」を包括緩和の効果として考える

ということでして、暫く前にご紹介した白川さんの話、昨日ご紹介した森本さんの話と微妙に違うのが何と申しますかお洒落なところでして、そーゆー意味では包括緩和っつーのは包括なだけにイメージが微妙にバラバラ。そのバラバラなところが出ているのが今日もうだうだと悪態をついております資金供給オペとGC市場に関する部分とかになるのではなかろうか、という感じが非常にするんですけどねえ。

まあそれは兎も角として本文15ページから。

『これはさきほど述べた4つの分類のなかでいえば、あくまで長めの市場金利の低下(@)と各種リスク・プレミアムの縮小(B)がメインです。この点、市場では、基金の規模に注目する向きもあるようですが、「量」は本措置の直接の目的ではなく、あくまで、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を狙った後に、結果として「量」が拡大することを改めて申し上げておきたいと思います。』

さいざんすな。

『なお、ここでいう、リスク・プレミアム縮小への働きかけは、リスク資産を大量購入して価格を下支えすることを意味するものではありません。言い換えれば、日本銀行が、リスクを取って多様な金融資産を購入することにより、それを「呼び水」として、市場におけるリスク性金融資産に対する需要・供給が増え、すでに潤沢に供給されている資金が経済の活性化のために有効活用される効果を狙っているものです。』

これはまあそうですな。で、そのうち長めの市場金利の低下に関して須田さんは反対だった訳で、その理由の説明が本文16ページ以降にあるのですが、まあこれはこれで筋の通った話ではございます。

『ただ、私は、この「包括的な金融緩和政策」のすべてに賛成することはできませんでした。具体的には、本基金の買入対象資産として、国債を検討対象とすることについて反対しました。』

その理由ですが。

『主たる理由としては、現在のように、金融機関の目が資産運用対象先として国債に向かっており、かつ短期金利のみならずより長い金利も低くなっている中で(例えば2年物金利は過去1ヶ月でみると0.130〜0.200%で推移しています)、長めの市場金利の一層の低下を促すよりも、高止まりしているリスク・プレミアム縮小への働きかけ(Bの質的緩和)を強めることがより有効ではないかと考えていたためです。』

『したがって、長めの市場金利低下を一層促すために国債買入れを増額させても効果は限定的である一方、債券市場の過熱に繋がるリスクや、過度な金利低下が金融機関の収益機会を奪い、かえって金融緩和効果を阻害する惧れがあり、副作用の方が大きいと考えています。』

まあ実際は資金供給オペの匙加減でターム物金利はいじれるというのも今回実証されているのですよね(−−;)

『その上、長期国債買入れについては、財政再建への中長期的な道筋が不明確な中、銀行券を上限とする取扱いに例外を設けると、財政ファイナンスに一歩近づいたとの疑念が市場に生じ、かえって長期金利に悪影響が及ぶ可能性があることを懸念したことも反対の理由の一つです。』

まあ現状の日本は財政ファイナンスネタがメインではないと思いますが、米国とか一時怪しげでしたわな。最近は30年とかの上昇幅がマイルドになってきたので、どっちかというと景気回復商品価格上昇減税継続ヒャッハー相場だとは思いますが・・・・

という所で時間がなくなったので続きは後日(大汗)。

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2010/06/07

まずは須田さんの会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1006a.pdf

○下振れリスクの中にしらっと円高ネタが

冒頭の質問で「どういう意見がありましたか」というのがあったのですけれども、その答えの最初にしらっと円高の話が。

『(答)本日の懇談では、「経済指標は数字の上では戻ってきているが、円高などもあって景況感は依然として厳しい」とか、「人口減少のペースが速く、小売業への打撃が大きい」、「有効求人倍率は全国より高めだが、正規労働者の比率が低いなど内容が良くない」といった厳しい声が聞かれました。』

・・・・いやまあ指摘しているのは参加者さんですから須田さんではないのですが、わざわざここで円高の話が出ているのが何気にお洒落な所ではないかと思うあたくし。つまり、何のかんの言いましても昨年12月以来の金融政策での動きってゆーのは為替市場やら株式市場(まあ主に為替市場でしょ)の期待に働きかけて何とか円高株安を回避しましょうっていうのが一連の流れな訳でして、その点からしますと足元のユーロ安が円全面高になってしまうと今までの努力が見事に水の泡になるので円高懸念ってえ所ではないかと。

その点では菅さんが円安のイメージを持たれているのはオイシイのですけれども、何せ現状では主要国が(表立っては言わないけれども)自国通貨安で外需(というか新興国の成長)ドライブで景気を何とかしようとしている最中ですので、日本だけ原則論でおじゃるとか言ってたら円独歩高で単なるババ掴みになってしまうので、まあ円安期待が外れた時の方がオソロシスな気もせんでもないです。


○下振れリスクではないが銀行のコア収益が減っている件について

『(問) 和歌山県を含め、現在の地域金融機関の経営についてどのようにみているかお聞かせ下さい。』

答えの最初の所は吹きましたが。

『(答) 現時点において、和歌山県の金融機関で2009年度決算発表を終えているのは1行のみですので、個別金融機関の経営やその評価については、コメントを差し控えさせて頂きます。』

まあそれはともかく。

『和歌山県を含む近畿地区における地域銀行の2009年度決算をみると、2008年度の赤字から黒字に転換しました。このような収益改善の背景には、2008年度に大幅な損失を計上した有価証券関係損益が益超に転化する中で、信用コストの発生も全体としてみれば落ち着いた動きとなったことが挙げられます。』

それは良い話なのですが。

『ただし、貸出金利回りの低下に伴う預貸金利鞘の縮小などから、銀行の本業としての利益を表すコア業務純益はむしろ悪化しており、安定的な収益基盤の確立という点では、なお大きな課題が残っていると認識しています。』

という事で、まあ厳しいということですな。システミックリスクという論点で言えば(この先の部分で須田さんが指摘していますが)まあ特に問題があるとは思えない状況ですが、コア純益が悪化していると言う事は将来に向けて問題が発生しつつありますなという事でもありますにゃという話ですか。そう言えば金融システムレポート関連は何気に注目してますので、そっちの話も(レポート出たら)ネタにしないといけませんね。


○新型オペの拡大には引き続き反対と

最後の質問で新型オペに関する見解を求められていますが。

『(答) 私自身は、3月17日の金融政策決定会合において固定金利オペの拡充に対して反対票を投じたわけですが、これは以下のような理由から、措置を講ずることのメリットよりもコストが大きいと判断したためです。』

決定会合議事要旨にもありましたが重要な論点ですので改めて引用(^^)。

『第1に、足許の各種経済指標は概ね想定どおりに推移しており、追加の緩和措置を講じる明確な理由が見当たらなかったことです。すなわち、メインシナリオとリスク評価に特段の変更がない中での政策変更は、現行の金融政策運営の枠組みと整合的ではなく、市場との対話に支障を来たすおそれがあったためです。』

『第2に、日本銀行の金融政策は、あくまで金利水準を目安にしているにもかかわらず、特定のオペ資金供給量が金融緩和の度合いを示すとの誤解を招くおそれがあったためです。』

『第3に、いったん市場が政策を織り込めば、それに従わざるを得ないとの見方が強まるおそれがあったためです。そうなれば、観測記事や投機的な動きが増え、適切なコミュニケーションや政策判断が困難になるリスクがありました。』

いやもうこれは原則論として仰る通り。ただあの措置自体は実際のところ「ターム物金利の誘導」じゃなくて「為替市場への期待に作用」な所を、まさか表向きそういう訳にはいかない(そういうのと言っていいのはSNBみたいな小国だけでございますけれども、SNBのアレだって相当評判は悪いと思われます)ので、まあ実施しましたよという所でしょうな。

更に話が脱線して須田さん会見と関係ない話になりますが、まあ何だかんだと言っても為替市場ちゃんが勘違いしてくれる効果もありますので、本来的に言えば売出手形などを実施して引きながら固定オペを増やして、更に短い普通のオペも継続すればコールとGCをバランスよく推移させることができる(先週はコール9bp割れが連発しておいおいと言う感じだったのだが)のですが、テクニカルな資金吸収を捕まえて引締めとか言い出すお馬鹿さんが多いのでそれが出来ないというのが困りますわなあと思いますです。

それはともかく。

『以上の点に加え、ターム物金利が既に十分低い水準まで低下していた中にあって、追加措置の効果や金融機関の収益ならびに市場機能に与える影響についても、より慎重な検討が必要との判断もありました。こうした判断は、基本的に現在も変わっていません。私がこの政策に反対した状況は、依然として続いていると解釈しています。』

まあ金利村の事情だけで言えば須田さんのおっしゃる通りではございます。


○これは中々面白い質疑応答

物価に関する質疑応答があたくし的にはウケました。

『(問) 本日の挨拶で話した潜在成長率とデフレに関して伺います。もともと須田委員は、物価安定については、プラスだが比較的低い水準を主張されていたと思います。実際、本年4月30日開催の金融政策決定会合の議事要旨にも、「1%よりゼロ%に近いプラスが中心」、「中心値である1%を過度に強調するのは望ましくないのではないか」といった発言があります。本日の発言が、日本の物価が長年比較的低位で安定していることが問題であるとの趣旨であれば、これと須田委員の物価安定に関する主張とは矛盾するのではないかと思われますが、これらの整合性についてどのように考えられているのでしょうか。』

『また、デフレの根本的な原因について、最近、日本銀行の方々が潜在成長率の低下であると発言されていますが、潜在成長率が高くなれば、それだけ高い成長をしなければ物価は抑制されるのではないかと思うのですが、この点のご説明をお願いします。』

・・・・・・・(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) まず、「中長期的な物価安定の理解」については、金融政策決定会合において個々人の物価に対する数値を総合的にみたうえで判断すべきであると思っていますので、現時点では、消費者物価指数の前年比2%以下のプラスの領域としか考えていません。1%を強調すべきではないというのは、この領域で考えているとの意味であり、これまでの発言において矛盾したことを言っているとは思っていません。』

いい感じで華麗にスルーしているようにしか見えんのだが。

『2つ目の質問についてですが、潜在成長率が実際に高まるには時間を要する一方で、期待成長率が高まれば、人々は恒常所得が増えると想定し、その時点で需要が高まってくるため、需要が供給を上回ることを通じて物価に上昇圧力がかかることになります。本日話したことは、逆に潜在成長率がどんどん下がっていくなかで人々が恒常所得が減っていくと想定すると、供給サイドの減少以上に需要が減少し、需給ギャップが悪化していくということです。潜在成長率が上昇するということは、将来に対する消費や投資を行っていくということで、物価にプラスの圧力がかかると捉えています。』

何か判ったような判らんような説明で、言いくるめられているような気がする・・・と思ったら尚もツッコミが続くのだ。

『(問) 一つ目の物価に関する質問について、須田委員は矛盾していないと答えましたが、本日の挨拶内容によれば、日本の物価が90年代後半以降、物価が低く抑えられてきたことが問題であるとのことならば、やはり須田委員が主張されている中長期的な物価の理解として「1%よりゼロ%に近いプラス」が良いとの考えと矛盾するように思われますが、いかがでしょうか。』

・・・・・・・(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) 本日の挨拶で90年代後半について言及しているのは、物価がマイナスになったことについて説明しているつもりです。リーマン・ショックが発生した時に、日本の物価だけが大きくマイナスとなったことについては、90年代後半以降、日本のインフレ率が相対的に低かったことが原因であるという事実のみを述べたかったのであり、インフレ率が低かったことの良し悪しについて踏み込んでいるわけではありません。』

・・・・・・えーっと最早何が何だか良く判らん。ということで、見事な質疑応答(というか質問)の引用でした。

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2010/06/04

で、須田審議委員講演から。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1006a.pdf

相変わらず長いっす。

○足元では欧州発の下振れリスクに注意

まず日本の金融市場動向に関しての部分から。

『この間、企業金融を取り巻く環境をみますと、企業のキャッシュインフローが改善し、企業の外部資金への需要が低迷を続ける下で、CPや社債市場では、格付けの低い銘柄にまで発行スプレッドの縮小傾向が拡がっています。日本銀行では、こうした企業金融の改善を受けて、リーマンショック後に導入した異例の措置、すなわち、CP・社債の買入れを昨年12 月末に、企業金融支援特別オペを本年3月末に、それぞれ完了しました。それに伴う影響は特に窺われていませんが、足もとでは、株価や為替が不安定化する中、リスク回避の動きによる影響を注視しています。』

まあどうなんでしょ。基本的に言えば日本の投資家がそんなに欧州にエクスポージャーを大量に持っている訳ではないですから無問題という話になるのですが、実際問題としては欧州のデレバレッジが起きると、その流れから日本も全くの無縁という訳にも行かないでしょう。ただ、足元は昨日もうだうだ書きましたように急性ショック症状の発生は回避できているので、それよりも時間をかけながら徐々にデレバレッジの流れが効いてくる方が懸念されますかな、という所です。

『以上のように、国際金融資本市場では、このところ不透明感が窺われていますが、経済指標には景気回復に向けた裾野の拡がりを示唆するものが増えており、日本銀行では、5月20日、21日に開催した金融政策決定会合において、景気の現状判断を、4月6日、7日の会合の「持ち直しを続けている」から、「緩やかに回復しつつある」に、一歩前進させました。ただし、繰り返しになりますが、国際金融資本市場が足もと不安定化しており、それが今後実体経済にどのような影響を及ぼしてくるのか、留意すべき状況にあります。以下では、まず、景気の現状判断について各項目の動きをみた後、先行きに対する見通しと、それに関するリスクについて詳しく述べたいと思います。』

でまあ詳しく説明しているのですが、やたら詳しいので引用は華麗にスルー(^^)。

で終了しちゃうと何ですが、輸出に関しては新興国については強いとしつつも、米国に関しては足元の数字は良いものの、バランスシート調整の影響を指摘していますわな。

『(引用者追記:米国の事です)しかしながら、失業率が高止まり、平均失業期間が既往ピークを更新する中、クレジットカード向け貸出のタイト化も続いており、家計のバランスシート調整圧力が消費回復の足取りを重くしている姿に、変わりはありません。住宅市場でも、住宅価格指数の回復がもたつく中で、延滞率の上昇や差し押さえ件数の増加が続いています。こうした下で、企業部門の回復が家計部門に波及するペースは、引き続き緩やかなものに止まっています。』

で、ユーロエリアはどう見てもうんこという話もしてますが、まあ当然と言うところですが、リスク要因の中でも思いっきり最初にこの点を挙げています。

『こうしたリスク要因を背景に、足もと不確実性が高まっており、現在では下振れリスクの方を意識しています。』

『第一に、国際金融資本市場の動向です。現在、国際金融資本市場を不安定化させている要因として、欧州周辺国における財政問題、欧州金融機関のバランスシート問題、ドイツの空売り規制など米欧の金融規制を巡る動き、中国の引き締め観測が挙げられます。いずれも重要なチェック項目ですが、中でも、PIIGSをはじめとする欧州周辺国の財政問題を特に注視しています。』

『冒頭でもご説明しましたが、欧州周辺国における財政問題は、ユーロという単一通貨圏における経済システム上の困難を背景としており、解決までに長い時間と厳しい財政再建による痛みを伴う可能性があります。そのため、各国株価や為替相場が大幅に不安定化しており、その結果、欧州だけでなくわが国でも、家計や企業のマインド悪化を通じて、消費や設備投資に悪影響を及ぼす可能性があります。また、財政問題を抱える欧州周辺国では、今後、厳しい財政再建策を実施する予定ですが、その結果、ユーロ圏経済が下振れることになれば、わが国の輸出にも少なからず影響が出てくることになります。さらに、欧州金融機関の損失発生を通じて、欧州金融市場の脆弱性が他国へ伝播するリスクも意識しておく必要があります。』

ということで論点が全部出てますが、まあそういう事でしょうな。


○景気の前向き循環メカニズム(またの名をダム論)に関して

日本経済および物価の先行き見通しに関して。

『以上のように、わが国経済は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつあります。また、先行きに関しましては、「各種対策の効果は薄れてくるものの、新興国・資源国が高成長を維持することに加え、国内民間需要の自律的回復力も徐々に高まってくるとみられることから、わが国経済は回復傾向を辿る」とみています。』

と、ここまでは展望レポート通りですが。

『なお、こうした見通しが実現していくためには、生産・所得・支出の循環メカニズムを通じて、企業部門の回復が家計部門へ波及していくことが重要です。しかしながら、2002年以降の景気回復局面での経験に照らせば、その波及ペースは緩やかなものに止まる可能性が高いとみています。』

どう見てもダム論に懐疑的です本当にカムサハムニダ。

『加えて、欧州周辺国の財政問題を背景とする国際金融資本市場の不安定化により、先行きの不確実性も高まっています。こうしたリスク要因については、後ほど詳しく述べることとし、以下では、主な項目ごとに、先行きの見通しをみていきます。』

で、その項目別の話はスルーしますが、海外経済の回復に関してはさっき引用した米国のバランスシート調整の影響を強めに見ており、その分見通しが厳し目になっている点が注目かと思います。


○潜在成長率を引き上げていくことがデフレ克服に重要だそうで

という話が後半のメインテーマになっているのですが、まあそーゆー難しい話はあたくしのような無学モノにおきましては何かこう判じ物のような話でよー判らんのでこれまた華麗にスルーしますが、まあその為に日銀が成長基盤強化の施策を行いますよってえ話をしています。

で、それは良いのですが、そのコーナーの最後にチャーミングな話題が。

『(政策当局に対する信認の重要性)』

・・・・これはキタキタ。

『以上のことから、物価安定の下での持続的な成長を実現していくためにも、潜在成長率を引き上げていくことが、極めて重要な課題と言えます。』

『金利に低下余地が限られる中で、即効性の高い財政支出を躊躇すべきでないとの意見も聞かれます。しかし、安易な財政支出の拡大は、既に巨額の公的債務残高を抱えるわが国では、財政政策に対する信認を低下させてしまう可能性があります。』

『また、ギリシャ問題をきっかけに、財政の持続可能性に対する関心が高まる中、将来の税負担増や、年金の受け取りなどに対する不安感に繋がれば、かえって消費を抑制させることにもなりかねません。そうなれば、マクロ的な需給バランスの悪化を通じて、デフレ圧力を高めてしまうことにもなります。』

『さらに、財政政策に対する信認が低下すれば、金利が上昇することによって利払い費が増加するほか、国債を保有する金融機関のバランスシートにも悪影響を及ぼし、金融面から景気の下押しに繋がるリスクも高まります。』

ふむふむ。

『信認が重要である点は、中央銀行も同様です。』

キターーーーーー(・∀・)ーーーーーーー

『信認が重要である点は、中央銀行も同様です。ファイナンス面から財政支出の拡大余地が乏しくなったからといって、中央銀行がファイナンスをする、或いはそうした疑念が生じると、中央銀行が独立して物価安定のために金融政策を運営していくという信認は失われ、金利が上昇することになります10。』

で、この10というのは何かと言いますと脚注でして・・・・

『10 Ben S. Bernanke, “Central Bank Independence, Transparency, and Accountability”, 25 May 2010,Institute for monetary and Economics Studies International Conference, Bank of Japan. をご参照ください。』

バーナンキを引用してくる所が実にチャーミングでありますな、ニヤニヤ。

で、その後はこんな説明が。

『政府の予算制約に照らして考えてみましょう。政府の予算を考えますと、財政赤字はその分国債の発行増加に繋がりますので、それを実質化した上で将来にわたって積み上げますと、政府の異時点間の予算制約式が得られます。

国債発行残高/物価水準=財政余剰の割引現在価値(実質ベース)

上式から、政府が財政支出を拡大させると、その分だけ財政余剰の割引現在価値が低下します。そのとき、金利水準を所与としますと、国債発行残高の実質価値の低下、つまり物価の上昇が生じなければ辻褄が合いません。ただし、仮にこうした手法によってデフレ状態を脱却出来たとしても、政府が財政赤字を積み上げ、それをインフレによって消化を図るのではないか、という不安が残るため、今後、中央銀行がいくら物価安定にコミットしても、信認を保つことは難しくなります。。そして、結局は経済・物価の不安定化に繋がってしまいます。』

・・・・何か巧みに言いくるめられている気がしないでもないが、じゃあ緊縮財政しながらもっと金融緩和するというケースの場合はどうなるんでしょうかな。まあ良く判らん。


○ということでとりあえず景気先行きには慎重ということで

まあ最後の所は「財政出せ」とか「財政ファイナンスしろ」という話に対しての反論にバーナンキの直近の講演を出してくるなどのチャーミングな部分がございますけれども、それはそれとして、景気に関する前半部分では、欧州の金融問題が実体経済に負のフィードバックを与えるという金融ルートに関して懸念しているというのは良く伝わりました。ただし追加緩和に関しては消極的っぽいなあといのが最後の所で伝わって参ります。

『今日、経済・物価情勢がメインシナリオにほぼ沿って推移し、先行き消費者物価の前年比がプラスの領域に戻っていくことが展望できる中にあっては、経済全体の生産性を引き上げ、潜在成長率を高めていくために力を注いでいくことが、デフレ脱却のみならず、財政赤字問題の改善のためにも、望ましい方向性であると考えています。』

つまり追加緩和はしないで成長戦略基盤強化の施策がどうのこうのという方で済ますということですね、わかります。

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2010/03/11

○須田さんのセミナーでの発言ですが・・・・

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1003b.pdf

そんなに長い話では無いのでちょっとだけ。

・リスクはバランスですかそうですか

『以上お示ししたシナリオが、私ども日本銀行政策委員のメインシナリオです。ただし、こうしたシナリオに関する不確実性は、リーマンショック以降高い状態が続いています。詳細は10月の展望レポートでご覧頂けますが、(途中思いっきり割愛)。なお、私自身としましては、以上でお示ししたリスク要因は、不確実性が高いもとで、上下両方向にほぼバランスした状態であるとみています。』

・構造問題と金融政策

『最初に、構造問題に対して金融政策がなし得る役割は、基本的に二つあると考えています。第一に、中長期的に物価安定を維持させるということです。ここで重要なポイントは中長期的な見通しであり、先行き物価が安定に向かうかどうかという点です。日本銀行政策委員の「中長期的な物価安定の理解」は、消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度が中心となっています。こうした物価安定のもとで、各種の経済主体は相対価格の変化を正確に認識することができ、構造的変化への対応を適切に行なうことが可能となると考えられます。』

『第二に、痛みを伴う構造改革が進んでいる場合には、金融緩和によってその痛みを和らげることが可能になります。例えば、1990年代のバブル崩壊後や、1990年代後半のアジア通貨危機時における日本のケース、1990年代初頭の米国のケースなどでは、金融政策が景気底割れを防ぐ役目を果たしました。』

でも、金融政策は構造問題を解決しないですよと。

『ここで注意しなければならないのは、金融政策は構造改革の進展を間接的に支えることはできても、構造改革そのものを進展させる効果はないということです。現在のところ、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復することを促すために、緩和的な金融環境を維持することが最優先課題ではありますが、景気回復と並んで、必要な構造改革を果敢に進め、構造変化に応じた新陳代謝を促していくことも、現在の日本経済にとって重要な課題と言えます。また、構造改革が先送りされたままでは、金融政策に期待される景気浮揚効果も減殺されてしまいかねません。』

この構造改革ってえのも定義がよーわからん言葉でアレなのでございますが、まあ金融政策単独で構造問題の解消はできませんですよ、構造問題で生じる痛みの軽減は出来るけども、という話をしているのはまあそうでしょうなあという感じです。

・・・・でまあそれはそれなのですが、ここの部分をより意地悪くというか穿って読みますと、「何でもかんでも金融政策にケツ持ちをさせようとする現内閣は逝って良し」という発言をしているように思えるのは、日経新聞をはじめとする新聞メディアによる「政府VS日銀」のフレームアップに頭が毒されていますかそうですか(^^)。

#ということで超簡単版でございました

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2009/12/04

お題「須田審議委員も微妙に下振れの話をしてましたな/その他」

前日に固定金利オペの打ちこみがあったので注目度は低かったのですが、須田審議委員の講演と会見要旨からサラサラと。須田さんの講演は長いので読むほうもアレなのですが、まあ今回は割とポイントを絞っているのでそのポイントから少々という感じで。

講演要旨
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0912a.pdf

会見要旨
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0912c.pdf


○短期的には下振れですかそうですか

前半が景気に関する話で、後半が金融政策に関する話なんですけど、そのうち景気に関する最初の方は景気の現状と見通しに関するメインシナリオ部分となります。んでもって、メインシナリオに関しては大体展望レポートや執行部の方々が講演でお話をする内容と似たようなもんですので華麗にスルーの所存(長くなるから手抜きという説はあるが^^)。

で、7ページに『(4)リスク要因』というのがありまして、こんな話を。

『日本銀行が見通し期間としている2011年度までを通してみますと、新興国や資源国が高い成長を続けるとともに、国際金融資本市場が脆弱性を残しつつも、改善の動きを続けていることもあって、私としましては、経済・物価ともリスクはバランスする方向にあるとみています。ただし、短期的には、このところの国際金融面での動きや、為替市場の不安定化などが、企業や家計のマインドの悪化などを通じて、経済活動に悪影響を及ぼすリスクが高まっているように窺われます。』

『10月の展望レポートには、現在意識しておくべきリスク要因が取り纏められていますので、ここでそれらを全て挙げることは致しませんが、以下では、その中でも、私が特に留意している点について述べておきたいと思います。』

ということで、短期的な下振れリスクの話をしているのですが、その次にいきなりこういう小見出しが出てくる所が須田さんクオリティ。

『(拡張的なマクロ経済政策に関するリスク)』

・・・・なんつーか今まさに景気悪化とデフレ防止で拡張的な経済政策を実施している所で何と言う様式美の世界。

ま、須田さんは従来から拡張的な金融政策の長期化による資源配分の歪みとかに対して懸念をしてまして、先般の企業金融措置解除(しかし特オペ廃止して共通担保の特オペ実施とはという気がしますが^^)に関しても積極的な発言をしていたので、そーゆー意味では従来の須田さんのスタンスとの整合性は取れておりますな。

『最初に、拡張的なマクロ経済政策に関するリスクです。各国で講じられている拡張的なマクロ経済政策には、想定以上に各国の実体経済を押し上げる上振れリスクと、過熱をもたらした後、大きな反動が生じる下振れリスクがあります。』

それはもうちょっと後の話ではないかと思うのですが・・・と思ったら。

『最近では、特に新興国や資源国において、後者のリスクが高まりつつあるように思われます。』

ということで、何か無理矢理感もあるのですけれども、拡張的なマクロ経済政策の長期化に対するリスクを下振れリスクに結びつけるという荒業で従来の須田さんスタンスを維持という感じが漂って参ります。で、途中を飛ばして。

『また、財政規律への疑念による長期金利の上振れリスクにも、引き続き警戒が必要です。中央銀行による安易なマネタイゼーションは、かえって財政規律への疑念を助長することになります。』

まあさいですな。んでもって物価に関するリスクですが。

『次に、物価に関するリスクです。物価についても上下両方向にリスクがあります。少し長い目でみれば、グローバルな金融緩和が続くもとで、再び商品市場に資金が流入し、一次産品価格の高騰を通じてインフレ率が想定以上に上振れてしまうリスクに、引き続き留意が必要です。』

と、(講演要旨では)4行で上振れの方は終了。まあ我が国では原油価格がアホのように上昇して、その前にベースの景気が良かった時でも+2.5%とかにしかならなかったですからね。あたくし的には米国の方がヤバイ気がするんですけど。

そんでもって、下振れの方が延々と24行を費やして説明となっており、どう見ても下振れ意識です本当にありがとうございました。

『一方、目先については、このところの急速な円高が実体経済に与える影響も含め、内外経済が下振れ、それに伴ってインフレ予想が下振れてしまうリスクを、意識しておく必要があります。その際、今後の賃金動向が重要な鍵を握っているように思われます。』

ほほう。

『最近、わが国の失業率が他の先進国ほど悪化しない代わりに、賃金の下落幅が相対的に大きいことを捉えて、日本では人件費の圧縮を雇用の削減よりも賃金の引き下げによって行う傾向が強いと、改めて指摘されています。特に近年では、雇用調整助成金などの政策効果もありますので、そうした傾向が一層強まっている可能性があります。このような特徴は、賃金を維持する代わりに雇用を大胆にカットして、労働生産性を急回復させている米国とは対照的です。』

『賃金を調整して雇用を維持する日本の場合、雇用不安を通じたコンフィデンスの急激な悪化を防止するという利点がある反面、サービス価格等の下押しを通じて物価に下落圧力として作用するリスクがあります。』

つまり日本の場合は落ち込みそのものは小さくても長く引っ張るということですね。

『今のところ、賃金の下落は、時間給の引き下げというより、労働時間の短縮を中心に行われていることや、ウエイトの高い家賃が比較的安定して推移していることから、サービス価格は目立って下落しているわけではありませんが(図表4)、所定内の時間当り賃金にまで調整が及ぶようなことになれば、サービス価格の一段の下落に繋がることにもなりかねません。』

以下割愛しますが、当面は雇用関係の指標に注目しつつ物価下落がデフレスパイラルに繋がらないかどうか注意するというスタンスなんでしょうな、という話がその次の『デフレについて』というコーナー。


○デフレに関して

『以上のような、インフレ予想の下振れは、物価のさらなる下振れに繋がるリスクを高めることになります。先ほど、「デフレ」に関する報道が最近増えていることを紹介しましたが、ここで、デフレという言葉について少し考えてみたいと思います。まず、デフレを教科書的に定義するならば、「一般物価の持続的な下落」となります。この定義に従えば、現在、デフレとみることができます。その場合、金融政策上は、物価の動きをどの統計でみるのか、デフレの原因は何なのか、という点が重要なポイントになります。』

やっと皆さんデフレというようになりましたなあ(しみじみ)。展望レポートで数値はとっくの昔に出していて、ただそれをデフレ呼ばわりしなかったという事なんで、展望レポートなどの発信を細々見ている金融市場の中の人的には既にそれは織り込んでいて、ポイントは「デフレというからには何か出てくるでしょう」という所だったのですが、何せ白川総裁が月曜の講演でハト派っぽい話をしたと思ったらいきなり緩和して、それと同時に「デフレ」と言い出すというセット販売だったので、はてさて今後はどうなるのってえ感じですな。

で、統計数値の話はスルーしまして。

『また、デフレの原因につきましては、@資源価格など輸入物価の変動、A経済全体の需給バランスの悪化、B生産性の向上、などが指摘できます。現在の持続的な物価下落は、昨年の資源価格高騰の反動による影響が主因とみられますが、先述の大きなスラックを踏まえますと、経済全体の需給バランスの悪化も影響を及ぼしていると考えられます。』

統計上の反動で数字が下がった分は兎も角、トレンドとして下がっている部分の方が問題なのでは無かろうかと存じますが、と思ったらその話が次に。

『一般にも、今回の物価下落局面では、単に物価が持続的に下落しているという現象面だけを捉えるのではなく、供給に比べ需要が不足していることと併せて、デフレを議論していることが多いように窺われます。今後は、資源価格高騰の反動による影響が薄れていく一方、むしろ経済全体の需給バランス悪化の影響の方が相対的に大きくなっていく可能性があります。』

今後じゃなくて既にそうなのではないかという気がするのだが。いやまあ数字上では反動減の方がでかいのでしょうけれどもね。

『そうした中、物価下落が想定以上に長引くようなことがあれば、物価下落が起点となって消費を先送りさせたり、企業業績を悪化させることなどによって実体経済を下振れさせ、それがインフレ予想の下振れを伴いながら、相乗的にさらなる物価の下振れに繋がるという、いわゆるデフレスパイラルのリスクが高まることになります。』

ということで、リスクについてのお話は下を見ている感はあるのですが、従来の流れもあって微妙にリスク認識が甘めな気がします。ただまあ甘めではあっても今回はそれなりにリスク認識を下方向に引き上げているので、須田さんちょっとハト寄りになったかねという感じです。


○後半は今日はスルーします

金融政策運営に関する話がその次にありまして、特オペ廃止に関する微妙にアレな説明とかもあるのですが、今日はスルー(後日でネタ採用予定)。それから後半が『3.中央銀行のバランスシートと金融政策』というお題でありまして、まーお話としては先日ご紹介した白塚さんのワーキングペーパーからバランスシート政策に関する話をコンパクトにまとめたような感じなのです。まー相変わらず中央銀行のバランスシート規模がどうのこうのという議論が多いようですが、白塚さんのWP読むのがめんどい方はこちらを読んで味噌という所ですな。

で、あと記者会見なのですけれども、前日の臨時政策決定会合の余波なのかどうか知らんが、金融政策に関する質問については質問がずれている感じで、あまり話が噛み合っておらず、読んでてあまり面白くなかった(不協和音ぶりを見るという意味では面白いですけど)です。

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2009/09/30

○須田さん講演から(虫干しネタですよん)

昨日のCPIはヘッドラインの数字もさることながら、下落品目の拡大だとか、生活関連品目が弱いとか、まあ内容的にも宜しくないようで、誠に遺憾な状況のようですな。まあ利上げがどうのこうのというのは日本の場合そもそも議論にも成らない段階なのは今に始まったことでは無い(筈なのですけれども、どこぞのレポートを見ていたら「日銀が目論む早期利上げに対して今回のCPIは云々」とかお前は日銀の公表文書をちゃんと読んでいるのかと小一時間問い詰めたいようなレポートを書いている何とかストの方が居たように見えたのですが、「日銀は隙あれば利上げバイアス」ってあーたもう総裁は福井さんじゃないんですけど・・・)のですが、益々もってアレな状況ということで、10月の展望レポート(末に出ますわな)での物価見通しどうなるやらという話ですな。

で、だいぶ前の話になるのですが、須田審議委員が今月9日に行った講演に関連して、物価に関する部分ってどんな話をしているのかという部分をちと引用してみます(金融政策の臨時措置に関する話は17日にご紹介いたしましたです、はい)。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0909b.pdf

講演本文4ページ目(PDFファイルだと5ページ目)に経済状況に関する話の流れで物価に関する話をしております。

『この間、物価面をみますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、昨年の石油製品価格高騰の反動や需給バランスの悪化などから、マイナス幅を拡大させています。市場では、7 月の前年比が-2.2%と、前月に続き過去最大のマイナス幅を更新したことから、デフレを囃す向きも窺われますが、これまでのところ想定の範囲内の動きであり、以下の点にも留意しながら、冷静に評価する必要があるように思われます。』

まあ昨日のCPI見て須田さんの意見が変わるのかどうかは存じませんが、以下どういう話を展開しているのかを見てみましょう。

『第一に、商品市況の変動特性を考慮すべきという点です。』

『昨年来の物価の変動は、原油をはじめとする商品市況の影響によるところが大きいわけですが、商品市況は、上昇局面に比べて下落局面の方がスピードが速くなるという特性を持っています。したがって、消費者物価の下落幅がある程度大きくなるのも不思議ではありません。下落率だけをみますと、随分下げたとの印象を受けますが、指数水準自体は100.1 であり、石油製品価格が高騰をはじめる前の2007 年秋の水準―原油市況も概ね当時の水準に戻っています― に戻ったというイメージに過ぎません(図表1(1))。』

図表はURL先のPDFでも見て頂くとしまして、まあそりゃそうなのですが、本職の方々のレポートを見ておりますと、商品市況の影響だけじゃない部分へ物価下落が拡大してきてるんじゃないかという動きが出ているのは誠に遺憾な所ではないかと。


『第二に、物価指数の下落には、技術進歩や生産性の向上による部分もあるという点です。』

『消費者物価から石油製品の影響を除いてみるために、食料およびエネルギーを除くベースの指数でみてみますと、やはり前年比は下落しています。したがって、消費者物価の下落には、石油製品価格高騰の反動以外の要因、例えば需給バランスの悪化も、何がしか影響を及ぼしている可能性は確かにあります。』

というのは認めてますが・・・・・

『しかし、食料およびエネルギーを除くベースの消費者物価指数を、もっと長い時系列でみてみますと(図表1(2))、中長期的な下落トレンドを有していることがわかります。このことは、短期的な需給バランスの影響以外の要因、つまり、技術進歩や生産性向上に伴う下落分が含まれていることを示唆しています。』

『こうした要因が消費者物価指数の先行きにどのような影響を及ぼしていくのかは不透明ですが、いずれにせよ、消費者物価の動きを評価する際には留意が必要です。』

統計上の修正が効いているという話ですかの。まーいち消費者として見た場合に「そんなに下がってるかよ」と思うのもあるんですけど(家電製品とかPCのヘドニックとか)、あたくしは頭が悪いので良くわかりませんので誰かアホに判るようにご解説頂きたく存じます、いやマジで。

で、ちなみにその部分に脚注がありますので脚注も引用なのだ。

『例えば、BIS の前金融経済局長W.R.ホワイトは、こうした物価下落を“benign deflation”と称し、経済成長に悪影響を及ぼすデフレとは区別して議論しています(“Is price stability enough? ,”BIS Working Papers, No205, April 2006)。実際、消費者物価指数(除く食料およびエネルギー)が下落トレンドを形成している2002 年度以降も、日本経済は暫く年率2%程度の成長を続けました』

まあ2002年以降の「CPIはマイナス推移する中で経済成長をしている」という現象と金融政策どうなのよという話に関しては、この前もお話しました時事通信社が出している「金融財政」2004年8月号の山口泰前副総裁(今だと元副総裁)インタビューでも論点になっていましたが、「ビナインデフレーション」って本当にあるのかどうかってのはまた難しい話になるのかなあという所なんでしょうか、よー知らんが。

で、その続き。

『第三に、物価を見通すに当って、需給バランスといった特定の数字に必要以上に引き摺られてしまうリスクです。』

『例えば、需給バランスを表す代表的な指標に需給ギャップがあります。現在では、今回の大幅な景気悪化を反映して、マイナスの需給ギャップが拡大しているとみられます。もっとも、これまで様々な方法で需給ギャップを推計し、物価動向の分析に利用してきた私どもの経験からしますと、あまりそうした数字に囚われ過ぎると、却って物価の見通しを誤らせることにもなりかねない、というのが素直な感想です。』

ほほー。

『どのような推計方法でも誤差はつきものですし、それが物価にどのようなタイミングで、またどのような強さで影響してくるのかについて定量的に把握することは、技術的に極めて難しい問題です。需給バランスの悪化が足もとの物価に下押し圧力となって作用していることは、考え方としては間違ってはいません。しかし、それを実際に物価の見通しにどのように織り込んでいくのかについては、慎重な検討が必要です。』

ということで、どうも頭が宜しくないあたくし的には煙に巻かれてしまうのですけれども、まー物価に関してはマイナス圏が延々と続くという話になってきた場合には、どういう解釈をすべきかという話に関しての情報発信が日銀から増えてくると思いますので、ちょっと前のモノで申し訳ありませんが、まずは須田さんの講演を引用して見ました。今後も色々と説明が出てくるので内容を注目したいと思ってます。

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2009/09/17

○須田審議委員講演からちょっとだけ

お休み中のネタで恐縮ですが9日の講演から。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0909b.pdf

物価に関する話が実は中々アレなのですが、そっちはまた後日にするとしまして、とりあえずは企業金融オペに関する話のあたりから。

『「異例の措置」の出口戦略』って所から引用。

『先述のとおり、7 月の金融政策決定会合において、9 月末としていた「異例の措置」の実施期限を3 か月延長し、12 月末までとしました。それまでに、企業金融の状況を「異例の措置」継続の要否の観点から改めて点検し、仮に情勢が改善していれば、終了または見直しを行う一方、情勢が十分に改善しておらず、継続が必要と判断される場合には、「異例の措置」を延長することになります。現在のところ、それに向けて予断は全く持っていません。』

『最初に、「異例の措置」を解除するか延長するかに関わらず、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していくことを促すべく、当面は十分緩和的な金融環境を維持していくことが必要だという点です。』

つまり金利政策の出口論議ではないという点に釘を挿しているのですが、その先が須田節で中々。さっきの部分はもうちょっと説明があるのですが(バランスシートの大きさと緩和度合いの話)そこはスルーして第2以下に。

『第二に、企業金融を取り巻く環境が改善し、「異例の措置」の役割は後退しつつあるという点です。』

(;∀;)イイハナシダナー

『「異例の措置」は企業に対して一定の安心感を与えてきました。したがって、それを解除することで再び不安感を呼ぶのではないかという懸念も理解できます。しかしながら、次の点を考慮しますと、企業金融を取り巻く環境は、通常の資金供給オペで代替しても安心感を損なわないレベルにまで、改善しつつあるのではないかとみています。すなわち、@CP等買入れオペ、社債買入れオペでは大幅な札割れが続いており、それらの必要性は低下しています。また、A短期オペ残全体に占める「異例の措置」の比率はさほど高くなく(図表3(1))、B共通担保資金供給といった通常のオペのレートも、十分低い水準まで低下していることから(図表3(2))、企業金融支援特別オペの相対的な位置付けも低下していると考えられます。』

何かその説明は微妙にアレなのですが。企業オペの実施によってCPレートが潰れて短国を買わないといけなくなった人が出てレートが下がったというルートもアリエールなのではないかと。まあそれよりも世間的に金が余っている(というのもこれまたイメージ的な話ですいませんが)為にレートが下がったというルートなのかも知れませんし、正直よー判らん。

多分3か月物の金利が0.15水準(というか割れてますが)で延々と定着してしまった辺りは金余りの影響が大きいと思いますし、その前のCPと短国逆転が始まった辺りはオペの影響が大きいと思います、と「思います」だけで何のデータもございませんけど、まーそんな感じじゃないっすかねえ。

『第三に、判断の際に重要なのは、企業金融全体の状況であるという点です。例えば、低格付け社債のスプレッドが高止まりしているという二極化問題や、中小企業の資金繰りが依然として厳しいという点などは、企業金融を考える上では、当然意識しておかなければいけない重要なポイントです。しかし、次の第四の点で指摘するようなデメリットを勘案しますと、「異例の措置」の要否を判断する際には、貸出やCPなどを含めた企業金融全体の状況がポイントになります。』

デメリットとの比較と来ました!

『第四に、「異例の措置」の持つデメリットを軽視すべきではないという点です。「異例の措置」に踏み切ったことによって、CPや社債の発行金利やターム物金利を抑え、高格付け銘柄を中心に社債の起債を促し、市場センチメントの改善に大きく貢献したことは事実です。しかし、その一方で、CP発行レートの「官民逆転」のような副作用が出ていることもまた事実です。』

いやもう出ているもクソも最近はA格あれば普通に官民逆転が当たり前になり、銘柄間の較差もろくすっぽ無いという意味ではクレジットスプレッドの概念が霧散状態になっているのがCP市場の現状でありまして、まあ金融ファクシミリ新聞さんあたりが時々書いてますけど、企業金融オペによるファンディングとか、キャッシュ潰しという動きではなく、純粋に他の短期金融商品との利回り比較で運用する業態(要するに短期公社債投信ですが)のCP運用が素敵に減少していますわな。いやはや。

『こうした行き過ぎた状態が長く続けば、投資家の投資意欲が後退し、市場が本来持っている自律的な調整機能を却って阻害することになりかねません。』

というかもう後退してると思います(−−)。

『また、中央銀行がミクロ的な資源配分へ少なからず関与することによって、市場の公平性や効率性を阻害してしまうリスクもあります。』

(;∀;)イイハナシダナー

『以上のような点を慎重に見極めながら、12 月末に向けて「異例の措置」の扱いを検討していくことになります。繰り返しになりますが、「異例の措置」のメリットとデメリットは、文字通り裏腹の関係にあります。効き目が強ければ強いほど、その副作用も大きくなります。企業金融を取り巻く環境が十分改善したにも拘らず、「異例の措置」を必要以上に長引かせるようなことがあれば、副作用による悪影響が、導入によるプラス効果を、結果的に凌駕してしまうことにもなりかねません。そうしたことが生じることのないよう、十分留意していく必要があります。』

結局は来月終わりの会合が11月の会合で延長の可否を判断という事になると思いますので、そーゆー意味では次回の短観とか、その後の株価動向とかが一番のポイントになるとは思うのですが、その他の素敵な不透明要因も発生した事ですし、そうは言っても中々そう簡単に企業金融特別オペをあっさり停止って事にはならないでしょうなあという感じはします。

ただまあ会見(http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0909c.pdf)の中では中小企業金融の状況に関して、

『(答) 本日の懇談会では、中小企業金融に関しては「厳しい」という声が聞かれたほか、「緊急保証制度などの公的サポートが切れた時にどうなるのか」などといった懸念の声の方が強く、明るい話は聞かれませんでした。中小企業金融については安心感が得られるような状況だとは思っていません。』

という話をしていまして、CPの話で言えばA格で官民逆転とかいうような楽しい話もありますが、全体としてどうよという話では厳しいというところなのかなとは思います。ただ、弊害に関して質問された時には改めて同じ話ですけれども、このように説明してますので、一部見直しの方向で提案とかもあるかもしれません。

『(答) 表に出ているものとしては金利の「官民逆転」(企業が発行するCPの金利が国庫短期証券を下回る現象)です。また、これが長く続くことにより投資家の投資意欲が減退し、市場が本来持っている自律的な調整が行なわれなくなる可能性があります。さらに、中央銀行がミクロ的な資源配分へ直接介入していることや、市場の公平感等の問題点も私自身は意識しています。したがって、企業金融の環境、情勢が改善すれば「異例の措置」を解除することが大事であると思っています。』

市場の公平感という意味では、企業金融支援オペが結果としてCPがやたら入る事になって、CP市場即ち大企業のファンディングを過剰に優遇しているという理屈(だいぶ屁理屈が入ってますが)も成り立つ訳ですな、うんうん。

・・・・などとあたくしも申してますが、まあ先日来ご紹介した西村副総裁の講演にもありますように、基本的に政策委員会のコンセンサスは須田さんの意見とは違う所にあるんでしょうなあとは思いますので、企業金融オペに関しては状況が改善(日経平均13000円とかね)しないと中々厳しいという感じじゃないっすかねえ。

物価の話がオモロイので続きは後日。

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2009/03/10

○須田さんの講演(引っ張ってすいません)、政府紙幣に関連して

連日引用している須田審議委員講演ですが本文19ページ目から政府紙幣の話になります。

『最近、財政政策の資金源としてのシニョレッジに期待する声が聞かれています。例えば、「政府紙幣」の議論はその一例とみることができます。』

ということで政府紙幣の話ですが。

『「政府紙幣」の発行は、その仕組み如何によって、「国債の市中発行」か、あるいは「無利息永久国債の日銀引受け」の、いずれかと実質的に同じになります。後者の場合、前節の議論でいえば、財政赤字を民間からのファイナンスに依存するのではなく、結局、日本銀行が国債を引き受けることによって、その分中銀マネーの供給を増やすことと同じになります。こうした国債の日銀引受は、財政規律上の問題から財政プレミアムを拡大させたり、日本銀行の財務の健全性に対する疑念を通じて、通貨に対する信認を害するおそれがあります。』

まあそれはそうなんですけど、多分実際問題的には次の論点の方が微妙にスルーされている問題ではなかろうかと。

『時間を通じたシニョレッジの使い方に関する問題もあります。物価の安定と、長期的なシニョレッジを最大化するインフレ率が一致するとは限りません。政府が、中央銀行が望ましいと考える安定的なインフレ率から実際のインフレ率を乖離させ、シニョレッジを変化させることは可能です。しかし、図表4でみたように、長期的にはシニョレッジの増加には限界があります。』

『したがって、財政赤字をシニョレッジによってファイナンスするということは、結局、シニョレッジを前借りするということにほかなりません。政府が先取りしてしまう分だけ、中銀マネーの供給の見返りとして得られる、将来国庫に納付されるシニョレッジが減少することになります。』

ということで、将来のシニョレッジが減少という話をしてますけど、まあもうちょっと身も蓋も無い言い方をすれば将来の収入を先食いしているという話ですから、それって国債発行に関して「次世代にツケ回しをするな」とか言って麻生さんの財政拡張路線にケチつける政治家さんが同じ口で政府紙幣とか言うのかねとか不思議な所ですなということで。正面切って国債発行で景気対策で良いじゃんと思いますけどね。

#そもそも政府紙幣が1回こっきりで終わる訳無くてその後打ち出の小槌の如く何十年も先のシニョレッジまで使うことになるでしょっていう話は昨日榊原元財務官がブルームバーグニュースのインタビューで指摘してた気がする。

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2009/03/09

○須田審議委員講演、シニョレッジの論点整理

野田審議委員の講演(おサボり中の奴)とか山口副総裁のブルームバーグ(ちなみに普通に発音するとブルンバーグなのですが、会社が自分で「ブルームバーグ」と言ってる以上それを尊重するのだ^^)単独インタビュー記事(えーっと今更追加で何やるのですか山口さん??)とかあるのですが、その辺はまたまた後回しにして。

ところで某公共放送が「日銀の社債買入効果は限定的」というニュースをやっててどこぞのアホウが浅ましさ爆発のクレクレコメントをしてましたけれども、開始して1回ぽっちしかも事務不慣れ状態の中でやった入札を見て対象範囲もっと拡大(しかもアホウのコメントは期間も延ばせ格付けも下げろとか浅ましさ大爆発でした)しろとか須田さんの反対理由がどう見ても大正解です本当にカムサハムニダという所ですが、山口さんの「期末に向けて更に企業金融対策」云々ってまさか早速対象範囲拡大とか考えてるのかね????という感じです。

#やる気満々なら兎も角、そうでないのなら市場を期待させて自分らが追い込まれるだけなんで言わずもがなだと思うけど・・・・・・

前置きの余計な話が長くなりましたが、須田審議委員講演の続き。

講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0903a.pdf

講演本文14ページ目の「金融政策とシニョレッジ」という辺りからです。

・シニョレッジの前に金融政策を巡る論点

思い切った手を打つのはいいけど、どんなことするのという論点に関する整理を最初に行っていますのでその辺から。

『ただ、思い切った対応と言っても、政策金利に低下余地が限られる中で、どのような選択肢があり得るのでしょうか。最近、欧米の中央銀行の間では、

@ 準備預金や貨幣供給量などの量的指標を政策目標にするのかしないのか、

A 資産サイドについては、機能不全に陥ったクレジット市場に介入して機能回復に働きかけるのか、あるいは長期国債など民間の資源配分に極力中立的な資産の購入に重きをおくのか、

B 異例の措置からの退出をどのように想定しておくのか、

といったことについて、積極的に議論が行われています。』(機種依存文字は原文ママ)

で、その論点に関して須田さんの説明です。論点の整理に便利なので引用。

『@の量的指標につきましては、適当な指標の選択が難しいことや、日本の経験等に照らして有効な政策となり得るのかという問題が指摘される一方、量的指標によるターゲットなしでは市場との対話が円滑にできないという、コミュニケーション上の問題も意識されています。』

確かにそうですな。

『Aにつきましては、クレジット商品の購入に軸足が置かれるもとで、購入資産の価格変動リスクやクレジットリスクに伴う損失発生問題をどうクリアしていくのか、個別市場への介入をどの程度許容するのかなどが、論点となっています。また、英国では、中銀マネー(銀行券および準備預金)を国債の購入によって供給することが検討されているほか(英国の中央銀行であるBOE の金融政策委員会<MPC>の議事要旨<09 年2 月>)、米国では、1月27-28 日のFOMC で、ラッカー・リッチモンド連銀総裁が、民間のクレジットフローに歪みをもたらさず、悪いインセンティブ効果を最小化できる国債購入によりマネー供給量を拡大した方が、クレジット・プログラムより望ましいとして、現在の政策に反対票を投じています。』

英国はこの講演後にまあ予定通りの実施に。英国の場合はクレジット関連市場が米国のそれとは違うとか、CP買入プログラム(ただし政府のケツ持ちスキームつき)とかありますな。米国のラッカーリッチモンド連銀総裁の「長期国債の買入はマネタリーベース拡大だろうがゴルァ!」票決に関しては先般御紹介したとおりです。

『Bの出口戦略に関しましては、中銀関係者をはじめ、その重要性を指摘する声が少なくありません。出口戦略について早すぎる言及は、政策の効果を損ねる可能性もありますが、中央銀行としての考え方を明らかにしておくことは、信認の維持に繋がると思われます。上で紹介したBOEでも、2 月MPCの議事録をみると、国債管理政策に言及しており、出口戦略を意識していることを示唆しています。』

確かに出口出口言うのもどうかと思いますが、一度やると財政クレクレ状態になるのはまるでナントカ族議員に陳情するの図みたいな絵ですわな(苦笑)。でまあ金融政策が財政政策に踏み込むような図ですなあという話から、シニョレッジの話になるのです。


・シニョレッジに関して

講演本文16ページから。

『まず、シニョレッジを定義しておきます。概念上、通貨の発行額そのものをシニョレッジと捉える考え方と、発行した通貨から得られる収益をシニョレッジと捉える考え方の二つがあります。発行した通貨から得られる収益とは、通貨発行権に由来する収益であって、無利子の負債を負う形で通貨を発行し、その見合いに取得した金融資産から獲得する利益を意味します。』

『発行した通貨を運用することによって得られるシニョレッジは、幾つかの前提を置けば、先ほど申し上げた通貨の発行額そのものをシニョレッジと捉える場合と、結局は同じことになります。通貨発行の見合いで得た取得資産からは将来にわたって収益が期待でき、その収益の現在価値を同じ収益率を用いて割り引きますと1となります。このように将来までを展望すると、通貨発行益は発行額と同等とみることができます。つまり、一万円券を発行すればそれがそのまま発行益となるということです。』

ということで財政政策とシニョレッジの話になります。

『最初に全体像を把握するために、政府と中央銀行の二部門からなる統合政府があると仮定します。それぞれの部門は独立に政策を行います。財政政策は政府が掌っており、財政赤字は国債の発行によってファイナンスされます。中央銀行の目的は物価の安定であり、そのために中銀マネー(銀行券と準備預金)を供給しますが、それは国債買入か対民間信用を通じて行なわれます。』

『簡単化のために、さしあたり対民間信用は考えないとしますと、この二つの関係から、統合政府でみれば、財政赤字は民間保有の国債残高増加か中銀マネー残高の増加によってファイナンスされることがわかります。この関係式は常に成立しますので、実質化してこの関係式を将来にわたって積み上げると、

民間保有国債残高÷物価水準=財政余剰の割引現在価値(実質ベース)+中銀マネー残高の変化の割引現在価値(実質ベース)

と整理できます。すなわち、統合政府は、民間から借りたお金の返済を、財政の余剰か中銀マネーの供給という二つのルートを通じて行わなければなりません。その後者が、中銀マネーから得られる収益であるシニョレッジの割引現在価値(実質ベース)です。』

脚注に『@財政赤字=国債発行増と、A対政府信用増(国債買切りオペ)=中銀マネー増の2 式から、B財政余剰+民間保有国債増+中銀マネー増=0 の関係が導けます。』ってのがありますので念の為。

で、マネーを増やせばシニョレッジがどんどん増えるのかというと、ここで実質ベースのお話をしているので、話が実質ベースの話になっておりまして・・・・というのが微妙に読んでて何なのですが引用します。

『先ほど申し上げた恒等式からも明らかなように、シニョレッジは基本的に政府一般会計へ移転されますから、それが借金の返済の財源の一つになります。ただし、中銀マネーを増加させればさせるほど、実質ベースでみたシニョレッジが増加するわけではないことに注意が必要です。(中略)ここからは、実質ベースのシニョレッジはある一定のインフレ率で最大となることが分かります。この理由は、中銀マネーの供給を増やしインフレ率を高めていけば、マネー1 単位の購買力、つまり実質ベースでみたシニョレッジが低下するからです。』

で、政府紙幣の話になるのですが、延々と引用しすぎたのでまた明日送りでどうもすいません。どうも論点が色々あって長いですな(^^)。

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2009/03/06

○須田審議委員講演と会見から(やはり終わらないのでなお後日に続く)

講演
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0903a.pdf

会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0903a.pdf


・社債買入に関する論点

講演本文の11ページあたりから社債買入に関する話があるのですが、最初の部分は以前日銀が公表した「基本的な考え方」の説明でして、まあその論点も重要なのですが引用すると長くなるのでスルーして本文12ページ目あたりから。

『このように、日本銀行では、買入れに対する基本的な考え方や留意点を明らかにしています。ただし、購入に踏み切る・踏み切らないに関する明確な基準を設けているわけではありません。設けられないと言った方が正しいかもしれません。そのため、市場の求めに応じて購入額が膨らんでしまう危険性を孕んでいます。また、スタンフォード大学のテイラー教授が、monetary policyとindustrial policyを掛け合わせて“mondustrial policy”と揶揄し、懸念しているように、中央銀行が個別の市場に介入しすぎると、経済の資源配分を歪めてしまうことにも繋がりかねません。したがって、特に、入口と出口の運用が重要になります。』

それは仰る通りです。

『入口については、上で指摘しました必要性の条件、すなわち、市場機能の著しい低下が発生し、企業金融全体の逼迫に繋がっていないか、日本銀行の使命に照らし買入れが必要と認められるかについて、慎重に検討するということです。一旦買入れに踏み切りますと、どこまでなら買入れ対象として認められるのか等、線引きが困難な中で、対象範囲が拡大していく誘引が働くことに十分留意する必要があります。』

社債買入に関する市場(全員ではありませんので念の為^^)のクレクレ攻撃がまさにそれを具現化したものでありますな(滝汗)。

『一方、出口につきましては、実施期限を設定するとか、市場機能が著しい低下と言えなくなった際に、市場に混乱を引き起こさずスムースに退出できる工夫などが必要です。また、それを事前にアナウンスしておくことも重要だと考えます。』

この点で言えば落札レートの下限金利が存在しているのが一つの工夫かと思います。まあ中々現下の経済状況で出口というのも難しい面がありますが。


・で、社債買入に反対した理由

『さて、日本銀行では、CP 買入れと社債買入れオペを順次導入しましたが、私はCP 買入れオペには賛成しましたが、社債買入れオペに関しては反対票を投じました。以下ではその理由について簡単に整理しておきたいと思います。』

『まず、CP 買入れオペにつきましては、
@ カウンターパーティ・リスクが過度に意識され、企業の運転資金の調達手段として定着していたCP 市場の機能が、極端に低下していたこと、
A 同じく市場機能が低下していた社債の代替手段としての起債ニーズが高まっていたこと、
等から買入れ実施の必要性を満たしており、導入しない場合のリスクの方が高いと判断し、賛成致しました。』

(機種依存文字は原文ママで勘弁)

『一方、社債買入れオペの導入に対しては、以下の理由により、反対しました。
@ 社債の発行額をやや長い時系列でみると、足もとが過去と比較して特に極端に減っているわけではないこと。
A CP や貸出による代替もあり、社債市場の機能低下が企業金融全体を逼迫させるような状況には至っていないこと。
B 日本銀行では、企業金融支援特別オペやCP 買入れなど、既に十分な措置を講じていること。
C 残存1年以内の社債買入れでは、企業金融の円滑化に与える効果が限定的と言わざるを得ないこと。
すなわち、現在の社債市場につきましては、買入れ実施の必要性を満たしているとは言えないというのが、現時点での私の判断です。』

まあ社債買入時期尚早と申し上げていましたあたくしの見立てと3番目までは変わりませんですな。4番目はあたくしは「そもそも論として社債市場はCP市場と成り立ちが全然違うので、業者の社債(あれ報道でなんで「銀行が保有する社債を買入」とかミスリードするのかねと思うのだがそれは兎も角)を買入する効果はCP買入とは全然違うのでコストと効果を天秤に掛けたときに全然間尺に合わない(からやらない方が良い)という主張が基本ですけどね。

会見でも同じ説明をしています(会見要旨の3ページ目)が、繰り返しになるので引用は致しません。


・シニョリッジ関連(後日に続きますが)

えーっと、本当はこの次はシニョリッジの説明部分とそれに関連する会見での質疑応答の話が論点整理に役立つのでご紹介する所なのですが、今日もまた時間切れになってしまいやがりまして(ええすいません寒いと寝起きが悪いもんで^^)、会見の方からの引用を先に致しとう存じます。

こんな質問から話が始まってますが。

『(問) 2点お伺いします。(前半割愛)もう1つは、委員が社債の買入れに反対したことに象徴的に表れているように、委員は企業金融については保守的というか非常に慎重な姿勢をとっていると思います。そうした中で、「通常の政策ルールを逸脱するほどの思い切った政策」とは、民間のリスク資産を買い取ることでないとすれば、国債について思い切ったことをやるということでしょうか。挨拶要旨にある「中央銀行の強い意思」が市場に十分に伝わっているとも思えませんので、もう少し踏み込んでお話頂けないでしょうか。』

『(答)(前半割愛) 2つ目の「思い切った政策」については、今回、シニョレッジ、つまり通貨発行益の立場から説明しています。基本的な考え方は懇談会の挨拶要旨の最後の方に述べていますが、日本銀行は独立性を付与された中央銀行として、しっかり中銀マネーを長期的にコントロールしていくことが、物価安定の下での持続的な成長に資するために重要ということです。しかしながら、その中銀マネーを供給することから得られるシニョレッジをどのように活用していくかについては、政府と中央銀行の間で議論を深めていく必要があると思います。もちろん、「思い切った政策」というのは、その時の経済状況や物価状況、金融資本市場状況にもよりますから、今、決めつけるわけにはいきませんが、私自身がこれから先どのような政策を行うべきか考える際、シニョレッジを政府と中央銀行とでどのように国民のために活用していけばよいのかということの方向性がみえてこないと、日本銀行独自で思い切った政策を行うということは困難ではないかと判断しています。』

・・・・ということは、その辺に関してはやはり国民的な合意が必要だという話で日銀が独走する訳には行かないでしょという見解なのかなと思ったら次に微妙にアレな質問が。

『(問) 政府と日本銀行の間でシニョレッジをどう活用するかを議論するという点ですが、もう少し噛み砕いて言うと、日銀がリスク資産を購入して損失が出た場合に、政府が補償するあるいは補填するということをおっしゃっているのでしょうか。』

・・・・・?????

『(答) それは違います。シニョレッジはもともと国民のものであり、日本銀行自身がシニョレッジを使ってしまう、つまり、価格変動リスクあるいはクレジットリスクがあるものを保有することで先行きロスの可能性を秘めた政策を採ることは、本来、国民に帰属すべき納付金が減ってしまう可能性があることになります。』

ということでその先が本論であたくしもまあ似たようなこと考えてましたので敢えて段落を分けてご紹介してみましょう。

『民主主義社会の中にあって、日本銀行が独自にそうした政策を採用していいのかという思いがあります。政府の補償云々ではなくて、日本銀行がマネーを発行して獲得した資産の収益を、どの程度日本銀行が独自の判断で使って良いかということに関して、ある程度、国民間の合意が必要だということが私の基本的な考え方です。』

ということですよね。


・やるときはやる派

思い切った施策云々の流れで次にこんな質問が。

『(問) 今後の金融政策について、ゼロ金利政策や量的緩和政策の導入も視野に入っているのでしょうか。今日の懇談会の挨拶要旨の中でも、海外では量的緩和についての色々な議論がなされているとありますが、国内でも再び導入するということに関しての考えをお聞かせください。』

『(答) 本日の懇談会で海外の金融政策の話をしましたが、ゼロ金利政策や量的緩和政策といった政策については、その効果と副作用をしっかりと勘案しながら、その時々の経済情勢次第では採用するといったことも否定はできないと考えています。(途中割愛)現時点では、そうした政策が必要とは判断していませんが、先行きについては、経済状況次第といえますので、何とも言えません。』

『(問) ゼロ金利政策や量的緩和政策を採用することが否定できないというのは、日本についてもという理解でよいですか。』

『(答) 日本と海外とでは金融経済状況が異なるので何とも言えないということです。現時点ではそうした政策による効果があるとは思っていませんので、今の状況ではそうした政策の採用は私の頭の中にはありません。しかしながら、先行きについては、そのときの金融経済情勢がどのような状況になっているのかわかりません。このため、先行きの政策について、何事も排除するということは望ましくないことから、はっきりとは言えないというお答えしかできないと思います。』

『(問) 先程のお答えは、量的緩和政策についてということでしょうか。』

『(答) 量的緩和政策もゼロ金利政策もということです。(以下割愛というか続く)』

とは言ってますけど、こういう言及も同じ答えの中で来てますのでまあ全面的にやる気満々なのでもなさそうですけどね。

『また、FRBはゼロ金利政策と言われ、日本はそうではないと言われますが、今日の懇談会の挨拶要旨でもお示ししたように、現在、政策金利が最も低いのは日本です。そうした状況下でさらに政策金利を引き下げていくことは、政策の効果と副作用を考えたときに副作用の方が大きいと判断しています。いずれにしても、現時点ではそうした政策は選択の範囲にありません。』

まあ基本的に「やるなら効果があるように」というのが須田さんの基本的な考え方としてあるように見えます。やった振りしたナンチャッテ政策とかハッタリかましてやるやる詐欺みたいな政策は好まないという所なんでしょうね。

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2009/03/05

○須田審議委員のやたら長い講演(予告編^^)

須田審議委員の講演、PDF見たらやたらメモリがあるので、図表の山かと思ったら何と講演本文が23ページもあるという代物。久々なのは判りますがちょっと多過ぎですがな(^^)。

でまあ本当は今日延々と引用する積りだった講演のどの辺読みましょかという話で勘弁。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0903a.pdf

前半には景気見通しの話もありまして、まあ暗い見通しなのですけど、リスク要因のあたり(本文8ページ)はよく見ておくという感じですな。

で、今回読んでてほほーというのは当然ながら金融政策に関する部分でありまして、社債買い入れに関する話とか、リスク資産買い入れに関する話の部分と、シニョレッジに関する話の部分が今回の読みどころではないかと思われます。

ということで読むのは本文11ページというか12ページから13ページ(社債買い入れおよびリスク資産買い入れに関する話)と、本文16ページから20ページのシニョレッジに関する話の部分になるかと思います。で、社債買い入れに反対した理由も書いてありますので読んでみる(というか明日ご紹介しますが)と吉かと存じます。講演や会見ヘッドラインだけ見てると須田さんあまり積極派に見えないかもしれないですけど、よくよく見ると結構積極派というか「やるとなったらやる派」という感じかと思います。

本文14ページにこんな件があるのもそういう所かなという感じで。

『先ほど、経済・物価情勢の先行きに対する下振れリスクについて述べましたが、ある程度そうしたリスクが顕在化すれば、機動的で柔軟な対応を採ることも必要です。その際、不確実性が高いもとでは、「いざとなれば、通常の政策ルールを逸脱するほどの思い切った策を打つ」という中央銀行の強い意思を表明しておき、そのことについて市場の信頼を得ておくことが、社会的な調整コストを結果的に少なくするという観点から重要です。つまり機動的と言いながらも、ある程度リスクが顕在化するのを確認しながら、対応するときは思い切って対応するということです。』

やるときはやりますよ派ですな(^^)。以下明日に続くという事で勘弁。

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2008/09/01

お題「須田審議委員会見もまあこりゃタカでしょ」

もう9月になっちゃいましたね。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0808c.pdf

○スタグフレーション時の対応に関して

まあ当然この質問がでますわな。

『(問) 講演の中で、リスクシナリオとして世界経済が減速している中で、国際商品市況が再び上昇に転じてインフレ率が予想外に上振れるような事態について記述されています。この場合、持続的な成長実現のためには、金融政策としてやはりインフレ抑制、場合によっては利上げを、一時的な景気下振れのリスクを冒してでも行なわなければいけない、というようなご認識でしょうか。』

『(答) 私は、長い目でみた物価安定のもとで、持続的な経済成長を実現するために、どのような金融政策運営を行うべきかを常に考えていますので、今の段階では、どのようなこともあり得る、ということしか言えません。』

で、どうなのかと言うと・・・・

『景気が減速し、資源需要が減っているにもかかわらず、資源価格が上昇している状態は、グローバルにみれば金融緩和の状態にあるということだと思います。金融政策運営は、私どもの政策が世界にどういう影響を与え、それが自国にどう跳ね返ってくるかも考慮に入れながら、行っていくべきだと考えています。』

金融引き締めですね、わかります(^^)。

『したがって、こうした点を考慮しない場合よりは、バイアスは引き締め方向に掛かっているということかもしれませんが、だからと言って、私はそういうバイアスを持って金融政策に挑むということでは全くなく、常に予断を持つことなく、政策目標のために今は何をすべきかを考えながら、金融政策を判断しようと思っています。お答えとしては、どちらもあり得るということです。』

ということで、物価上昇と景気後退のどっちを懸念するかというと物価上昇を懸念という事になるんでしょうねえ。


○利上げに関してはまあ一番積極的でしょうね

何か質問するほうも妙にインフレ警戒バイアスが掛かっているのですが。

『(問) 日銀が何の行動もせずに、いわば様子見をするだけで、言葉のうえで物価の安定を守ると言い続けたとしても、それが消費者の不安を取り除くことにつながるかどうか多いに疑問があります。今回の講演要旨を読む限り、インフレに対して強い警戒感を示されており、景気の下振れリスクと物価の上振れリスクの両方を指摘されています。ただ、最初に物価の上振れリスクについて随分書いていますし、「行動」についていえば、景気の下振れリスクというものが低下すれば、物価の上振れリスクに対応するために、これまで利上げ、金利の調整は休止していますが、今まで以上のペースで金利の正常化、金利の調整を進めていく、と考えておられるのでしょうか。』

その答え。

『(答) 口で言うことによって、日本銀行に対して信任が得られ、そして物価安定が維持できるという、単純なものであるとは私も思っていません。したがって、物価安定のもとでの持続的な成長パスに復することに対しての蓋然性について、ある程度確信が持てれば、私はそれなりの行動をとる必要があると思っています。景気の下振れリスクがかなり現存している状態で行動するというのではなく、下振れリスクが小さくなることが当然前提にはなりますが、景気が上向いていく蓋然性が高まれば、行動を考えていくのが望ましいというのが、今の私の考えです。』

ということで、今のボードの中で一番インフレ警戒スタンスが強いという所になりますが、でもやっぱり景気下振れリスクが小さくならないと行動はしませんよという話でしょうね、以下続き。

『いずれにしても、私は、将来について不確実性が高い経済が続くと思っていますので、ある程度確信が持てれば行動を起こす方が望ましいとは思っていますが、行動しても大丈夫な状況かどうか、じっくりと考える時間が必要だと思っています。つまり、少し早めに、しかし余裕を持って対応できる政策運営を行なっていきたいということです。どんどん利上げをしなくてはいけない、というような状況は起こしたくないというのが基本です。』



○景気下振れリスクが弱まる条件に関して

というような質問があったんですが、それに対しての答えは・・・・

『(答) 非常に不確実性が高い中で、経済が上向く蓋然性がどのような状況で高まるのかということについては、現時点ではよくわかっていません。ただ、一つは、米国経済の先行きについて、もう少し先がみえてくることが必要だという思いはあります。もっとも、住宅市場の調整はこれからもまだ続くと思いますし、米国の経済成長率が高まっていく状況が、近い将来実現するとは思っていません。先行きどの時点で見通しに自分なりの自信が持てるのか、はっきりはしませんが、ものの考え方として、そういう場合にはやはり行動した方が良い、と考えているということを、今日は述べさせて頂きました。』

米国経済がキーという話ですが、その米国経済に関しては先行き不透明ですという事になってまして、さっきまでの威勢のよい話からはトーンダウンという感じでしょうか。

『それから、回復が後ずれるかどうかに関しても、私にはわかりません。米国経済についても、ある程度、ネガティブサプライズが起こらなくなってきた時には、マーケットもそれを吸収して、下振れ懸念が解消していくかもしれないという思いもありますし、まだまだ混乱が続くという可能性もあります。原材料価格がどう動くかについても全くみえない状況ですので、回復が後ずれするのか、私としては、今の時点では不確実だと答えるしかないということです。』

経済の下振れリスクが弱まる件に関してはまあ今のところ期待はあまり持ちにくいという感じですね。まあその辺に関しては何でも利上げという話ではなさそうです。



○インフレ警戒スタンスな理由は・・・・

明らかにインフレ警戒に傾斜してますねという質問に対して。

『(答) インフレ警戒感が高いと私がみていると思われるとすれば、それは、私がグローバルな視点を持っているということが影響していると思います。』

ほほう。

『もし世界が一国であるとするならば、資源価格の上昇とそれに伴うインフレは、結局、その国の需要が強すぎたからである、と思っています。したがって、グローバルなインフレを安定的なインフレに戻すためには、現状が緩和状態にあるわけですから、やはり引き締めるべきであると思います。それを前提に日本の行動を考えているため、インフレに対する懸念が高いと思われるのかも知れません。』

そ、そうなの?で、次の部分はちとワロタ。

『先程私が物価の上振れリスクの方から議論を始めたことに対する言及がありましたが、あえて上振れリスクを強調したのではありません。インフレ上振れリスクがそのまま景気の下振れリスクにもつながるということであり、インフレの上振れリスクが低下した時に景気の下振れリスクも減少するということが、資源価格高騰のもとでは起こり得るということです。二つを別のもの扱いにしていることが、そもそも問題だという思いもありますので、決してインフレの上振れリスクから議論したからといって、その順番に重きを置いたつもりはありません。』

順序がインフレから来てたらインフレ警戒を重視でしょ常識的に考えて。


ということで、まあ景気に対してそんなに自信がある訳ではないですが、インフレ警戒に関しては随分威勢が良いという所かと思います。

#引用ばかりの手抜き攻撃ですいません

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2008/08/29

お題「須田審議委員講演ですが」

結局今週は日銀の公表文書を読むだけで一週間使うという企画になってしまいましたな(汗)。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0808b.htm

○基本的には日銀公式見解に沿っていますが

「が」と言うのは何かと申しますとですな、リスク要因の説明のところでして、冒頭の目次を見ていただくと・・・・・

>(3)リスク要因
>(インフレの上振れリスク)
>(景気の下振れリスク)

となっていまして、従来の展望レポートやら金融経済月報などでは必ず下振れリスクへの言及が「景気の下振れ」→「物価の上振れ」という流れだったのですが、この講演では「インフレの上振れ」が先に来ているのが気にかかるのですね。

で、先日ご紹介した白川総裁の講演では「物価上昇の2次的効果」に関する言及があって、第2時石油ショックの時にインフレが抑制されたことに関して「早めの金融引き締め」を評価する部分があったりして「鷹の香りがする」って申し上げましたが、今回に関しても「インフレの上振れリスク」が先に出てきたという辺りには、ちょっと怪しげなものを感じたのは変な深読みのし過ぎですかそうですか。

物価上昇は利上げに繋がらないっていうロジックは依然として景気下振れリスクが高い現状では変化無いとは思うのですけれども、その点をここもと大宣伝しまくった効果が行き過ぎたという認識になったんじゃねえのというこれまた勝手読みですけど、そんな気がします。変に時間軸っぽい動きとか、利下げ期待とかがあるけど、おまいら景気下振れリスクが薄れたら正常化っつーの忘れてるんじゃねえかって言いたいのではないかしらん。

ええまあ全て勝手に読んでるだけで、恐らく「順序が違うのは他意がある訳ではないですよ」って事なんでしょうけれども(^^)。


○景気に関して

基本的には展望レポートやら金融経済月報と同じ話なのですけれども、それに加えてという点ではこのあたりですかね。

『ただ、ここで申し上げておきたいことは、景気がここにきて急に落ち込んだ訳ではないということです。確かに、実質GDP成長率を前期比でみますと、4-6月に急に減速感が強まったような印象を受けますが、もともと振れの大きい統計であることには十分留意しておく必要があります。』

ほほう、急に減速した訳ではないとな。

『成長のモメンタムを弱めているという点では、日本経済は現在「停滞」局面にあることは確かですが、過剰な在庫や設備を抱えている訳ではないため、1998年や2001年のような大幅な調整は想定していません。』

まあここは展望レポートや月報にもある話。

『因みに、前年同期比でみてみますと、足もとにかけて緩やかに減速している姿が、より鮮明にみてとれます。私の景気実感からは、この前年同期比の動きの方がイメージに近いと言えます。』

ということで、緩やかに減速ですよと仰せなのですな。で、現状分析の話を項目別に展開していますが、それはまあ日銀の公式見解と同じ話なので引用割愛。


○先行き見通しを大きく下げていないですよという言及

先行き見通しの話ではこの辺でほほうと。

『8月の金融政策決定会合で政策委員が合意したとおり、景気については、「国際商品市況高が一服し、海外経済も減速局面を脱するにつれて、次第に緩やかな成長経路に復していく」、また消費者物価指数(除く生鮮食品)については、「当面上昇率がやや高まった後、徐々に低下していく」というのが、現在の標準シナリオです。景気の足もとを「停滞」としておきながら、楽観的ではないかとの印象を持たれるかもしれませんが、私どもでは、金融政策を行う立場から日本経済の先行きを見通しています。金融政策はその効果が出てくるまである程度の期間を要しますので、我々の見通しもそうした先行きの姿を念頭において、その蓋然性の程度を確認するという視点から日々の材料をみています。』

えーっと楽観的な気がするんですが、まあいっか。

『これに対し、例えば市場参加者の皆さんは、日々の材料を追いながら先行きの姿を探られていますので、我々の見方とはギャップが生じる可能性があります。ここで、改めて申し上げておきたいのは、今のところ、私どもの標準シナリオは、従来のものから大きくぶれている訳ではないということです。』

ということになっております。ほほーって感じですが。


○グローバルなインフレ圧力が伝播しにくい理由

で、先行きの項目別展開もあるのですが、これまた割愛して物価の方に参ります。

『次に、物価の先行きについて述べたいと思います。最近、市場エコノミストや海外の機関投資家等から、グローバルなインフレ圧力に対する経済のパフォーマンスが相対的に良好な国として、わが国を見直す声が聞かれています。確かに、日本では、他国に比べて国際商品価格の上昇が川下製品へ波及し難い印象があります。なぜ、わが国ではグローバルなインフレ圧力が国内に伝わり難いのでしょうか。』

『その鍵は抑制的な賃金にあると思っています。(その要因部分を割愛しますので(1)とか(2)とか唐突に出てくるのは勘弁してください)このうち(1)と(2)は影響が小さくなったと考えられますが、その他の点については、現在でも構造的な賃金抑制要因として作用していると思われ、賃金がインフレ率にスライドする傾向の強い欧米諸国や新興国との大きな違いとなっています。こうした抑制的な賃金のもとで、エネルギー・食料品価格の上昇が実質的な購買力を減退させてしまうため、消費者に近い川下製品ほど価格転嫁が困難になっていると解釈できます。』

何か川下の物価上昇が抑制的なのは賃金が抑制的だからっていうのであれば、それって別に前半に書いてある「日本の経済パフォーマンスが相対的に良好」って言えるのかいなと少々引っ掛かるあたくし。そんなら物価も賃金も上がる方がパフォーマンスとやらは兎も角、名目上拡大してた方が財政運営とかも楽じゃないのかなあという気がするんですが。

いやまあだからどうだと言われると困りますが。


○で、何故かリスク要因の先はインフレになるのでした

『最初に、インフレの上振れリスクから述べたいと思います。』

ということで、先行きリスク要因にインフレの上振れが出ているのが先程申し上げましたようにちょっと順番逆なのではと思う所です(^^)。んでまあ資源価格がどうのこうのという話があるのですが、その中で須田さんが言及しているのが金融緩和だったりするのも注目しちゃうのであります。

『しかし、私が上振れ方向のリスクを意識しているのは、世界的に緩和的な金融環境が背景にあるからです。今年5月に日本銀行で開催された国際コンファランスで、スタンフォード大学のジョン・テイラー教授が示唆に富む指摘を行なっています。要すれば、「インフレに対する金融政策の対応原則は、一時的変動を均らした上で、インフレ上昇率以上に名目金利を引き上げることである(テイラーの原則)。しかし、ここ数年間、各国の短期誘導金利はインフレ率ほど上昇しておらず、むしろ昨年夏以降は低下している」というものです。つまり、昨年以降の国際商品市況の高騰の背景には、資源制約を超える世界的な需要の増加が、グローバルな金融緩和によって発生した、という面があると考えられます。』

金融緩和で資源価格高騰ネタキタコレ。

『テイラー教授は、講演の中で昨年夏以降の米国の利下げにも言及していますが、米国の利下げの背景には、サブプライムローン問題に端を発する金融資本市場の混乱があります。FRBのバーナンキ議長は、7月15日の議会証言で「金融市場の機能正常化を助けることが引き続き最優先課題(a top priority)である」と述べていましたが、8月5日のFOMCは、金融資本市場に緊張感が依然として残る中、FFレートの誘導目標を2%のまま据え置きました。』

『この結果、ドルペッグ制を採用している産油国等においても、緩和的な金融環境が継続しているということになります。先ほど、金融引締めに動いている中央銀行が増えつつあることをご紹介しましたが、各国のインフレ率の高さを踏まえますと、世界全体でみれば、テイラーの原則に照らし十分な引締めになっていない可能性が高く、グローバルな金融環境は、引き続きインフレリスクを高めやすい状態にあると考えられます。』

ついでに、物価上昇の2次的効果による動向にも注意しているようで。途中とばして結論部分を。

『今のところ、一人当たり名目賃金に目立った上昇は窺われていませんが、消費者物価とともに賃金も上昇するという両者の関係がなくなった訳ではありません。このまま原材料価格の転嫁が進み、消費者物価が上昇し続ければ、賃金も次第に上昇ペースを速め、インフレ率と賃金の相乗的な上昇傾向が思いのほか強まっていく可能性もあります。グローバルな金融緩和の状態が続く中、世界でインフレ率が高まっており、人々や企業のインフレ予想は確実に高まっていると思われます。したがって、足もと国際商品市況が調整局面にあるからといって、インフレリスクに対する警戒を怠るべきではないと考えています。』

ということで、いつぞやの金融政策決定会合で「景気下振れリスクが弱くなってきたら早めの利上げ対応が必要」という発言をしている人がいたのが決定会合要旨から読み取れた筈ですが、やはりその発言は須田審議委員によるものだったんじゃないかなと思わせてくれる部分でございました。


○ということでインフレリスク警戒色が目に付きましたな

今後の金融政策運営という部分でもこんなお話が。

『7月に公表した「金融市場レポート」(日本銀行)では、国際商品市況の上昇持続を背景に、インフレ懸念の高まりが先行きの金融政策運営やマクロ経済環境を巡る不確実性を一層高め、投資家のリスク・アペタイトを削ぐことになったと指摘しています。インフレ懸念による不確実性の高まりは、投資家だけでなく、家計や企業に対しても経済活動の意思決定を難しくします。言い方を換えれば、経済の効率性を高め、持続的な経済成長を達成させるためには、インフレ率の安定化が不可欠だということです。その鍵を握っているのは人々のインフレ予想です。インフレ予想がアンカーされているからこそ様々な危機にも弾力的に対応できるのであって、そのためには、不断にインフレリスクに対峙しておくことが、中央銀行としての重要な責務であると考えています。』

という感じで、講演はインフレリスク警戒の話が多かった感がします。

また、交易条件の話もあったのですがこちらは引用省略します。

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2008/04/04

○今更続きで須田審議委員記者会見

先週のネタを今頃引っ張り出してますが、まあ一応俺様備忘録ですから勘弁してちょ。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0803e.pdf

・日銀が今打つべき手について

日銀はどうするのですかという趣旨の質問(質問が結構面白かったのですが長くなるので割愛)がありまして、それに対して須田さんが説明してます。文章の切れ間が無くて遺憾でして、勝手に途中から切り取ります。

『従って、欧米の中央銀行の方々としっかりと情報共有して、この問題がどの程度世界経済にとって大変な問題かを把握し、それが各国経済にどれだけ影響を与えるのか、そしてそれが日本経済にどのように波及してくるのかということも含めて、今はしっかりと情勢判断する時期だと思っています。』

『リスクファクターは色々ありますが、こうした状況下では、どうしても市場は悲観的な方向へ傾くことがありますので、私としては、色々とダウンサイドリスクがある一方で、市場に織り込まれていたことがその通りにならないという意味ではアップサイドリスクもあることを頭に置きながら見ていきたいと思っています。』

やはりハト派転向ってイメージが無いのですが。

『金融政策のスタンスですが、私は今のような状況にあって、実体経済ないし物価情勢が堅調なもとで、フォワードルッキングだからということで、先行きを想定してアグレッシブに緩和政策をとるということではなく──それをやってしまうと、実体経済が悪くなったときに、より一層緩和が織り込まれてしまう可能性もあるので──、実際にある程度その兆候がでてきた時にかなり思い切った処置をとっていくということを市場と共有しておくことが大事だと思っています。』

と、やはり利下げ派っぽくないのですが・・・・・

『緩和度合いをもっと高めなくてはいけないといった時に、「もう0.5%しかないではないか」という考え方は私はとっておりません。私は、元々「今、金融政策の糊代はあまりない」という考え方には与していません。緩和政策をとらなくてはいけない状況になった時には、様々なことを考えていきたいと思っています。』

と、ここの部分の発言を切り取られて相場が瞬間反応していた気がする。全体を通してみると、結局の所ハードデータが相当悪くなってこないと利下げにならなさそうなんですが。


・まあこの辺も反応した部分ですね

0.5%の利下げ余地以外にやる事あるんですかという質問に対しまして。

『私どもはずっとこれまで、非常にデフレスパイラルに陥るリスクがある状況のもとで様々なことをやってきました。それを参考にしながら様々なことが考えられると思っています。具体的にどうこうということではなく、また、その時になってみないとどういうものが良いかは申し上げられませんが、過去の経験は今後、何かやらなくてはならない時に参考になると思っています。』


・生活関連物価が上昇する中でコア物価は上昇しない件について

須田さんの現状認識についてはまあアグリーかなあ。

『私自身は、特に食料品の価格については、これから先、代替エネルギーという部分もありますし、また、生活水準が上がる国民が海外にたくさんいる中では、上昇していく可能性があると思っています。そういう意味では、生活関連財の価格は今後も上昇する一方、その他の財・サービスの価格が余り上がらないという状況で、一般ないしコアの消費者物価はあまり上がらない、しかし生活関連財は上がっていくという状況が続く可能性がある程度はあると思っています。』

で、どうするのかという話。

『そうした中で、金融政策をどうするかということに関してですが、まずインフレ予想という部分については、生活に関わる国民は生活関連財の価格でインフレ予想を立てますので、国民のインフレ予想は一般物価をみているマーケットの人達よりも高いというギャップが存在します。そうした中で金融政策をやることの難しさを、今回BOEの例を挙げてお示ししました。つまり、インフレのターゲットは守っていても、生活関連財の価格が上がっていると、それに対して中央銀行がちゃんと仕事をしているという国民の思いがだんだんと下がっていくことが示されているわけです。』

昨日引用した講演(挨拶)要旨のとおりですね。

『そしてそれに対しては、今回、日本銀行のスタッフの分析例を挙げましたが、やはり中央銀行がしっかりと金融政策について物価安定を持続していくのだということを示すこと、生活関連財の価格の上昇ペースがこれから先どんどん上がって、インフレが高まっていくと思わなくて良いように、常に語りかけて、私どもは物価の安定を維持しますと語っていくことによって、国民に不安感をもたらしてマインドを下げ、消費を下げるという事態を減らすことができるのではないかと思っています。』

ただまあ消費マインドが下がっているのはインフレ期待と所得が上昇しない上に社会保険等の負担が増している(のは去年の話でしたが)点の併せ技でございますと思う次第でして、インフレ期待どころかデフレ期待が起きるとそれはそれで買い控え傾向とかになるのではないでしょうかと単純に思うのでありますが。適度なインフレ期待があった方が宜しいのでは。

『それから、基本的には金融政策を考える上では振れを均しながら、ということでコアの消費者物価をみていますが、いま申し上げたように、一次産品価格がトレンドをもっていくかもしれないという時には、コアだけをみるのではなくて、総合もみながら、あるいはコアコアもみながら、トレンド、基調はどこにあるのかということをしっかり判断しながら政策をやらないと、経済全体でみた真のインフレ率をみながら政策をするということができなくなってしまいますので、気を付けてやっていきたいと思っています。』

生活関連財の振れが大きいからなんですけど、正直言って物価統計で出てくる数字って上にも下にも小さめの数字が出ているような気はするんですよね。


ということで、ヘッドラインではハト派転向っぽく見えましたが、やはりインフレタカ派のようでありますな。

#遅くなりましてスイマセンでした

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2008/04/03

お題「須田審議委員講演続き:インフレタカ派っぽいのですが」

ガソリンスタンド身を切るセールス中。何てこったいと同情の念に耐えませんですが、そういえば北ハマー先生が以前ボログでゴールドマンサックス証券の決算に言及して同社を褒めてましたが、GS違いで砲撃するとはオソロシス。

今月末にガソリンをポリタンクで保管して火事を起こすアホウが出て何故か政府与党がマスコミに叩かれるに1万ジンバブエドル。

てな与太話は兎も角、昨日の続きで暫く前の須田審議委員講演の後半部分から。


○当面の金融政策運営に関して

どう見てもインフレタカ派です本当にありがとうございましたというお話の続きに『当面の金融政策運営に当たって』という部分がありまして、その部分がフラッシュで打たれてハト派的な印象を与えましたなという感じです。

てか、あたしゃこっちの方が頑張りますなあという感じを受けたんですけどね。

『現在の金融環境が、零細企業や格付けの低い企業などのファイナンスには気になる点もあるものの、全体として極めて緩和的な状況にあることを踏まえますと、これまでどおり利上げを意識するのが自然です。』

まあ市場は全然意識してませんが。で、この後がヘッジクローズになるのよ。

『ただ、現時点で私は2008年度の経済見通しは下振れる可能性が高いと思っていますし、現在は、金融資本市場が一段と不安定化する中で、先行きを見通すには霧の濃い状態にありますので、上下双方のリスク要因を、予断を持つことなく丁寧に点検する時期だと考えています。』

ほほう。

『引き続き各国中央銀行と連携を取りながら、市場動向や経済に与える影響等について全力をあげて調査・分析を行い、日本経済が「中長期的な物価安定の理解」に照らして物価安定のもとでの持続的な成長軌道を辿る蓋然性が高いかどうか確認した上で、それに応じて適切な政策判断を下していく所存です。』

『不確実性の高い中では、情勢を見極めながら漸進主義で臨むことが適切だと考えていますが、機動的かつ柔軟な対応が必要な状況かどうかについても、常に意識しておきたいと思っています。』

と、後に来ると機動的な利下げをしそうな流れに。しかも最後の一文には脚注をつけていまして、この脚注がなおアレでございます。

『私の政策スタンスに近いものに、翁邦雄・木村武・原尚子「『デフレへの保険』を考慮した金融政策の枠組み」(日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No08-J-6、2008年2月)があります。この論文では、「不確実性が極めて大きい状況下では、リアルタイムでは実現不可能なほど思い切った金利引き下げを行い低金利維持にコミットすることや、信認が得られないような高めの目標インフレ率設定ではなく、ある程度デフレリスクが顕在化した段階では、通常の政策ルールを逸脱して思い切った金利の引き下げを行う(ただしデフレリスクが遠のいた時点で遅滞なく通常の政策ルールに復帰する)という中央銀行の行動方針を表明し、そのことについて市場参加者の信頼を得る、ということであると考えられる」と述べています。』

ということで、ちょっと読むとこれは物凄い勢いで直ぐに利下げしてくれそうなのですが・・・・

あたしゃここを「ある程度デフレリスクが顕在化した段階では」てのが曲者だと思うんですけど。利上げロジックの中では「顕在化してないけど将来発生した場合にエライコッチャになるリスクにも注意して金融政策を検討(意訳^^)」って論理展開してると思うのですけど、ここを読みますと、利下げの時はリスクが顕在化しないとドカンと下げないという結論になるような気がするだよ。毎度お馴染みの非対称的攻撃ですかそうですかって気がしたのは気のせいでしょうか。


○原油高と金融政策

という見出しから始まる文章で今回の講演の後半3分の1が使われておりまして、話のテーマはご存知のとおりこういう点でございます。

『金融政策は物価と経済成長を両にらみで行うのが一般的ですが、それらが政策目標に対して逆方向に動いている場合、極めて難しい政策対応を迫られます。以下では、そのような状況における金融政策のあり方について、考えてみたいと思います。』

ということで、まず最初は物価指数は何を見るべきかという話になっていますが、結論的には「コアを見るべきだが、コアと総合(ヘッドライン)に持続的な乖離があるときは総合も見た方が良さそうですね」って所になるようです。で、日本の場合はコアコアはイマイチでございますなあという話も。以下引用です。

『国民にとっての物価としては、消費者物価、しかも消費する財をすべて含んだ総合指数で考えるのが基本です。(途中割愛)インフレターゲットを採用している国の多くも、総合指数を採用しています。ただし、総合指数は、生鮮食料品等が天候要因によりかなり変動しますので、政策判断の際には、振れの激しい生鮮食料品を除いたコア指数でトレンドを把握するのが適切だといえます。(途中割愛)ミシュキンFRB理事は、原油価格にショックが発生した際、コア指数と総合指数のどちらに金融政策を対応させる方が失業率を抑えることができるかシミュレーションを行った結果、金融政策はコア指数を安定化することに焦点を当てるべきと結論付けています。』

『図表14によれば、コア指数と総合指数との乖離が上下に分散しており、日本ではコア指数がやや長い目でみれば、総合指数をよくトレースしていると言えそうです。他方、コアコアの場合は、コアほどにはトレースできていません。』

ということで、米国だとコアコアも良いけど日本ではまた話が別なんじゃないのって指摘もございますな。

『問題は、コア指数と総合指数の乖離に持続性がある場合です。事実、日本ではコアコアと総合、米国ではコアと総合との間に、数年タームではかなり持続的な乖離がみられています。現在のように、ガソリンや食料品といった生活必需品の価格が持続的に上昇しているような局面では、コア指数を対象とする政策を採ると、金融政策の判断が誤っているのでは、との批判が高まる可能性があります。FRBがFOMCメンバーの予想インフレ率をコアだけでなく、総合についても公表することとした背景には、こうした批判への対応という意味もあったようです。』


次が国民のインフレ実感と基調インフレ率のギャップについてです。

『次に指摘しておきたい問題点は、国民の実感としてのインフレ率と、政策当局が政策の対象としている基調インフレ率とのギャップです。国民のインフレ実感は、消費者物価全体よりも生活必需品の価格によって影響される傾向があります。図表8にありますように、エネルギーや食料品を含む購入頻度の高い商品の価格指数はかなり上昇しています。国民のインフレ実感は高まっており、それは日本銀行や内閣府のアンケート調査からも窺えます。』

で、英国の例を出しております。ほほう。

『英国ではインフレ目標の対象となっているCPIに住宅コストが十分反映されていないため、たとえCPIがインフレ目標を達成していても、国民には不満があるようです。2月のインフレーションレポート公表時のキング総裁の記者会見では、人々のインフレ予想が上昇している背景に、CPIをインフレターゲットの基準としている一方、人々は生活水準に関心があるため、生計費の上昇を反映しているRPIXを重視しており、両者間の格差が拡大していることがある、という指摘はわかると述べています。実際、図表16にみられるように、BOEはインフレ目標をほぼ達成していますが、インフレ・コントロールの仕事振りに対する満足度は、総合インフレ率RPIXの高さに反応して、最近低下しています。』

まあ何となく判らんでもない話でありますな。

『このようなギャップにどう対応したらよいのでしょうか。日本においては、2006年に入ってから予想インフレ率が上振れていますが、日銀スタッフの分析によると、家計が日銀の活動に関心があるほど、また日本銀行に対する信頼が厚いほど、予想インフレ率の上昇が抑制されるという関係がみられるとのことです。つまり、家計の予想インフレ率を低位安定化させるためには、金融政策について国民の関心と信頼を高めておくことが必要ということです。そのためには国民との対話が重要であり、日本銀行が日々どのような考え方で金融政策を行っているのか、わかりやすく丁寧に説明していくことが我々に求められています。』

ふーん、それは信頼というよりは・・・・いやまあいいんですけど。


○予想インフレ率の安定化が必要というお話

で、このコーナーは予想インフレ率を安定化させることが重要という話になってまして、最後の結論部分を引用します。

『インフレ予想が高まれば、政策金利を引き下げても長期の資金調達コストは低下せず、景気刺激の重要な経路のひとつが奪われてしまうことにもなります。積極的な緩和策が有効となるには、インフレ予想が安定していることが前提になります。』

『そのような政策が必要以上に人々のインフレ予想を上振れさせれば、その後継続的なインフレと、より深いリセッションを引き起こす可能性もあります。こうしたことのないよう、中央銀行はインフレリスクに対する警戒を常に怠るべきではなく、人々のインフレ予想に不断に働きかけておくことが、信認獲得・維持のためには重要です。わが国の場合、海外に比べればまだインフレ率は高くはありませんが、長い目でみれば日本についても同じだと思っています。』

ということで、やはりインフレタカ派な結論になるのでありました。で、前に戻って日本の現状に関する部分のお話ですが、インフレ予想の高まりに早くも警戒をしてそうな流れっぽく読めてしまいますが。

『ひとつの鍵は予想インフレといえるかもしれません。たとえば、原材料価格上昇にもかかわらず期待インフレが高まらず、その結果価格転嫁もできず、また物価も上昇しにくいという場合には、交易条件悪化によるマイナス効果が経済成長により強くでることになります。こうしたケースでは、金融政策を緩和的に運営することが望ましい、ということになるでしょう。』

『実際、日本では、原油や食料品をはじめとする一時産品の価格高騰が、企業収益や個人消費に悪影響を与えるとの見方が多く、利上げ論が出てこないのは、インフレ予想が上振れないことが前提となっているからかも知れません。しかし、資源価格の持続的な高騰や生活用品の値上げをうけて、家計の予想インフレが高まっています。このもとで価格転嫁が進み、名目賃金の引き上げを伴いながら物価が上昇するということも考えられます。この場合には、引き締め気味の政策運営が望ましいといえます。原材料価格の上昇が継続すると想定される場合も同様です。』

とまあそういうことで、インフレ予想が上振れないことに関しては結構気にしてるのねって所であります。


てな訳で、この講演(挨拶要旨)を見てると「須田さんハト派転向」とは読みにくい(さすがに目先利上げの話はしないと思いますが)と思うのでありますが、どないでしょ。

#引用ばかりで長くなるわ、記者会見スルーするわで正直スマンカッタ

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2008/04/02

○須田審議委員講演(遅くなりました)

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0803b.htm

27日の講演ですので今更証文の出し遅れですいませんすいません。期末の相場フォローが忙しかったもんで。で、例によって気が遠くなる長さなので、たぶん明日に続きます。

・日本経済が見通しよりも下振れているポイントについて

『昨年9月の金融経済懇談会時点で述べた私の見通しに比べますと、住宅投資については概ね予想どおりでしたが、その他の点に関しては、金融資本市場の脆弱性の高まり、米国経済の下振れ、原材料価格の一段の高騰とそれに伴う賃金・企業収益やマインドの悪化など、以前から指摘していたダウンサイドリスクが予想以上に顕在化したとの印象です。以下では、そうした点のフォローアップから始めたいと思います。』

で、9月からの比較という話になっているのでその辺は読むときに注意しないといけないんですけど。まずは米国サブプラ関連。

『9月の金融経済懇談会の時点では、住宅金融会社のファンディングやLBO案件の資金繰りに関するポジティブな情報が聞かれたほか、CP発行残高の減少ペースにも歯止めがかかりつつあったこと等から、引き続き警戒を怠るべきではないものの、サブプライムローンを含む証券化商品のリプライシングにある程度目途がたてば、もともと投資家のリスクアピタイトは旺盛でもあり、いずれクレジット市場の正常化は進むだろうと考えていました。』

『しかしながら、この問題が金融機関のバランスシート・資本不足問題にまで深刻化してきたことは、想定外の展開でした。足もとでは広範な資産の圧縮が金融機関やヘッジファンドによって行われており、市場機能がかなり低下している状況となっています。』

んでまあその説明が延々と続くのですがそこは端折りまして。

『このような国際金融資本市場の動揺は、再評価された価格にある程度市場が納得し、不良債権額の拡大ペースに歯止めがかかる、つまりその根本問題である米国の住宅市場調整に底入れ感がでてくるまで、なかなかおさまらないかもしれません。市場動向には今後ともしっかり注視していく必要があります。』

『昨年10月の展望レポートの中で、米国経済に関し、「住宅市場の調整が一段と厳しいものとなった場合や金融資本市場の変動の影響が予想以上に広範なものとなった場合、資産効果や信用収縮、マインド悪化などを通じて、個人消費、設備投資が下振れ、米国景気が一段と減速する可能性も考えられる」と、下振れリスクを指摘していたわけですが、現在、そうしたリスクの多くが顕在化したとみることができます。』

『昨年9月時点での私の米国経済に対する見通しは、当時の市場の平均的な見方に比べて慎重なものだったのですが、昨今の金融市場や経済情勢に鑑みると、足もとの成長率はその9月時点の想定に比べても下振れているとみておいた方が良さそうです。』

ということで米国経済に関しては慎重ではあるのですが、さっきも申し上げたように比較対象が9月なんで割り引いて読む必要がありますわな。


で、続いて新興市場の話をしてますが、これは先日来ほかの審議委員が指摘している「全部が全部カップリングしている訳でもないですし、全部が全部デカップリングしている訳でもないですよ」という話が基本になっていますな。で、次は物価上昇の中小企業への悪影響に関して。

『また、一次産品の価格上昇は中小企業の収益や景況感にも影響を及ぼしています。すなわち、中小企業では、原油や食料品をはじめとする原材料価格の上昇を販売価格へ転嫁するのが困難なうえ、改正建築基準法の影響等もあって、景況感が昨年後半以降目立って悪化しました。こうした中小企業の収益押下げ圧力の高まりと、マインドの急激な悪化は、彼らの賃金抑制姿勢を一段と強めるとともに、設備投資の増勢鈍化に繋がった可能性が高いとみられます。(途中割愛)こうした動きが、生産・所得・支出の前向きの循環メカニズムのペースを弱めた可能性があります。』

ということで、この辺はまあ公式見解ベースですわな。


・先行き見通しに関する須田さんの見解

『以上の考え方の下で、日本経済の先行きについて、私なりの見通しを述べたいと思います。1月の中間評価では、2007年度の成長率は一時的に潜在成長率を下回ると下方修正しましたが、その後公表された経済指標等をみますと、2007年度の成長率は潜在成長率以下にまで落ち込まない公算が高まっています。しかし、足もとでは、米国経済の成長が予想以上に鈍化しており、さすがにわが国の輸出への影響が否めないことに加え、生産が横這う下で改正建築基準法の影響や個人消費の増勢鈍化等も窺われることから、私としましては、2008年度の成長率は、潜在成長率並みのレベルまで下振れる可能性が高まったとみています。』

えーっと、潜在成長率並みのレベルまで下振れるということは実質GDPが1%台半ばの成長という話だと思うんですけど、それって結構強気じゃないでしょうかと思うんですが・・・・・多分市場コンセンサスはもうちょっと低いと思うんですけどあたくしの勘違い?

んでまあ項目展開してる部分は思いっきり割愛してその部分の最後を引用致しますと・・・・・

『次に、以上の見通しに関するリスク要因を指摘しておきたいと思います。私どもでは、金融政策を行う立場から日本経済の先行きを見通しています。金融政策はその効果が出てくるまで半年なり1年なり、ある程度の期間を要しますので、見通しもそうした先行きの姿を念頭においておく必要があります。我々の見通しが、ときに楽観的と受け取られることがあるとすれば、我々が目先の動きにとらわれるのではなく、トレンドとしての日本経済のパスを想定しているからです。もちろん、足もとのデータを全く無視しているということではありません。その時点時点で利用可能なデータを全て利用し、企業の皆様からのお声も拝聴しながら、上下双方のリスクを慎重に検討した上で、経済の先行きを的確に見通す努力をしています。これから述べるリスクも、そうした作業の一環として検討したものです。』

うーむ、一応市場コンセンサス比楽観的見通しになっているという認識はあるんですね。いやまあ市場コンセンサスが正しいかと言えば、何せ証券業の業況判断DIがあの有様ということですから別にアテにはならないというのは事実でございますけど(^^)。

んで、その先行きリスクが2項目ありまして、『(海外経済金融情勢に関するリスク)』と『(インフレリスク)』ざます。で、インフレリスクでどんな話をしてるのやらということですが。

『米国では、潜在成長率の低下、賃金高止まりという物価上昇圧力がある中で、FRBは、TAF(Term Auction Facility)をはじめとする各種流動性対策に加え、FF金利の誘導目標を6度に亘り引き下げました。こうした積極的な政策対応は、金融機関の損失拡大やバランスシート問題がシステミックリスクに発展することを防止するためであり、また金融資本市場の不安定化や与信姿勢のタイト化が実体経済に及ぼす悪影響を緩和するためのものでした。』

『ただ、その一方で、こうした一連の緩和策がドルペッグ制を採用している産油国等を巻き込みながら、グローバルな金融緩和に繋がっていると思われます。その結果、先ほど述べましたように、米国内の景気はスローダウンしているにも拘わらず、潤沢な資金がコモディティに流入することにより商品市況が騰勢を強め、さらにドル安がそれに拍車をかけるといったディレンマが発生しています。(説明部分思いっきり割愛してますスイマセン)金融環境はグローバルに緩和的な状態が続く上、引き続きインフレが上振れやすい環境であることに間違いはありません。』

『わが国でもインフレリスクが全くないわけではありません。これまでのところは、CPIコアコア(除く生鮮・食料品・エネルギー)の前年比は依然としてゼロ近傍で推移していますが、エネルギー価格や食料品価格の上昇が思いのほか長引けば、人々のインフレ予想が徐々に上方修正され、ヘッドラインに引っ張られる形でCPIコアコアも次第にプラス幅を拡大させていく可能性があります。今後とも、インフレリスクに対する警戒は怠るべきではないと考えています。』

どう見てもインフレタカ派です。本当にありがとうございました。

・・・で、金融政策はどうなるのかの話と記者会見に関しては明日。

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2007/10/02

○須田審議委員の講演続き

すっかり後回しになってしまいましたが須田審議委員の講演後半の金融政策に関するタカ派な部分を。

・いきなりテイラールール

『さて、次に、金融政策のあり方について、最近考えていることを述べてみたいと思います。』と言って出てきたのがいきなりテイラー・ルールのお話になっております。いやあのそういうの金融経済懇談会でされてもポカーンだと思うんですけど・・・まあいっか。

んでまあテイラー・ルールの説明は兎も角、政策対応のタイミングについてのお話がございます。途中割愛しようとしたのに各々の文が長すぎて割愛できねええええ。

『日本経済は、バブル崩壊後長い調整過程を経験したわけですが、当時の日銀の金融政策については、テイラー・ルールを判断の物差しに使って、80年代の後半にもっと早く利上げすべきであったとか、90年代前半にもっと早くアグレッシブに利下げすべきであったといった議論がなされてきました20。前者の批判については日本の金融政策はテイラー・ルールに沿ったものであったとの分析結果も出され、バブル期における日本の金融政策の問題は、90年代前半に利下げをアグレッシブに行わなかったことにあるという結論がFRBからだされました。』

『実際、ミシュキン理事は、日本の経験から引き出されるべき教訓は、バブルに立ち向かう中央銀行の仕事はそれをとめることではなく、破裂した後に素早く対応することであると述べています。』

とまあそういうことでその後現在の米国の住宅問題の話をしていまして、そっちもちゃんとご紹介しないと次の引用部分と内容が飛んでしまうんですけど、これまた色々と話がありまして引用しようとすると全部引用する破目になりますのでそこは敢えてすっ飛ばします。


・『フォワード・ルッキングかつ漸進的な対応の必要性』という小見出し

で、その米国のお話の次にこの小見出しが出て参ります。

『それでは、金融政策は、住宅価格などの資産価格をより配慮すべきなのでしょうか。テイラー・ルールでいえば、先に示した式の右辺に資産価格の動きを付加すべきなのでしょうか27。確かに、現在、米国における金融政策の運営をむずかしくしているのは、サブプライム問題をきっかけにした金融市場の混乱による先行き不透明感の高まりであり、その根本的な原因は米国の住宅市場のブームとその調整にあります。』

『もっとも、FRBは資産バブルに金融政策で直接対応することに対しては、バブルの認識が難しいことなどからかなり批判的です。中央銀行は住宅価格が総需要と資源の稼動状況に影響を与える程度に応じて、住宅価格に対応すべきだという考え方はFRBでも共有されているようです。しかし、テイラー・ルールに直接資産価格の変動を組み込むべきではないという立場を明確にしています。例えば、ファーガソンFRB副議長は、2005年1月に「資産価格のブームと破裂はリセッションにしばしば関連するが、市場の熱狂が疑われる状況に対して明確な政策対応をとることは提唱できない」と述べています。』

んでまあ日本の事例に触れまして、結局バブル崩壊対応は金融政策だけでは中々難しいという結論に。

『このようにバブル崩壊の懸念が強まった後に、金融政策対応だけでうまく経済をソフトランディングさせることはなかなかむずかしい、というのが日本の経験が我々に語っていることだといえます30。将来に対する経済主体の期待が著しく強気化した後は政策対応が大変になります。したがって、バブルの発生を未然に防止するよう努めることも、重要だと思います。そのためには、フォワードルッキングに様々なリスクをできるだけ顕現化しないうちに把握し、早めに対応していくことが不可欠です。』

ということで、(途中を割愛しますが)タカ派ヘッドラインの元となる(^^)まとめになるのでした。

『足もと物価が落ち着いていても、持続的な物価安定が損なわれるリスクが高まっていると判断される場合には、早期に金利を引き上げ、持続的な物価安定を確保していく必要があります。もちろん、このようなフォワードルッキングで予防的な政策も口でいうほど簡単ではありませんが、そのような努力を続けていくつもりです。』


・『金利調整の現状評価』というお話

こちらを見てて「ほほー」と思った部分が(^^)。

『我々は物価上昇圧力が弱いもとで、これまで半年に一度というようなゆっくりとしたペースで金利を調整してきました。』

いやまあ結果的にそうなっていたという話だとは思うのですが、これだけ見ると「おや?利上げにスケジュール感あったんですかあ??」というツッコミが(^^)。

まあそれは兎も角。

『さて、最後に現在の金利調整の適切さの程度について言及しておきたいと思います。図表14にありますように、現在のような実質金利がずっと続くとしたら実質経済成長率との関係でみて、金利がかなり低い状態にあることがわかります。』

で、さっきの半年に一度云々の続きでこういうタカ派ヘッドラインの元が。

『この間の金利調整を、オリジナルなテイラー・ルールに当てはめて評価しますと、多くの場合、利上げが遅すぎるという結果がでるのではないかと思います。ただ、経済構造についての考え方や損失の考え方で望ましい政策ルールはいかようにも変化することは前に述べたとおりです。』

ただまあ一方的にタカなのではなくて、今までの金利調整に関しては『不確実性の高い経済』における『フォワードルッキングな漸進主義』というロジックから『これまでの金利調整のスピードが遅すぎたというようには必ずしも捉えていません。』という話はしております。そりゃまあ利上げ提案してないんですからそういうの当たり前でもありますけどね。



・てな次第で、先行きの政策スタンスはいつも通りのタカなのですよね

と、まあこのような感じで先行きの金融政策に関する話は延々とタカ派的なお話は続く次第でありまして、あたしゃ須田審議委員の講演および記者会見に関しましては足元の景気判断の慎重化にウェイトを置いてご紹介しました(理由は昨日も申しあげたとおりで、元々金融政策のスタンスがタカの人がタカの発言をするのは仕様であって、足元の景況感慎重というのが「いつもと違う」からそっちを注目するということであります)が、先行きの政策に関する基本的考え方は全然変っていません。

従って本職の皆様でも今回の須田さんの講演および会見に関してはタカ派的なニュアンスで読む人もいるでしょうし、あたくしみたいに「おやタカがちょっと引っ込んでますなあ」と読む人もいるのではないかと思うのであります。

引用でやたら増量してしまって恐縮至極でありまする。

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2007/10/01

お題「須田審議委員記者会見」

須田審議委員の講演後半の話もありますがその前に会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0709b.pdf

○全体で言えば「足元慎重で先行きは一応強気」でしょうか

講演に関して(まだ金融政策に関する部分をご紹介してませんけど皆様ご覧の事と存じますが・・・)金曜日に申しあげました通り、「現状の経済認識が結構慎重というか弱気」という印象でありましたが、質疑応答の中で象徴的な質疑が7ページ目から8ページ目にございましたのでまずはそこから。

『(問) 挨拶要旨の中では、アップサイドリスクについても言及されていましたが、現状、景気については、アップサイドリスクとダウンサイドリスクというのは、ほぼ均衡しているというふうに捉えていらっしゃるのか、あるいは、どちらかにウェイトを置かれてみておられるのか、如何でしょうか。』

『(答) 本日は、実体経済のダウンサイドリスクと、物価上昇のアップサイドリスクという話をさせて頂いたのですが、これを比較することができるのか、私自身よく分かりません。比較するといっても、タイムスパンが違うと思っています。』

『今、実体経済のダウンサイドリスクには、足許も含めて短期のものがあり、物価については、私はもう少し長いタイムスパンでアップサイドリスクをみています。短期のダウンサイドリスクと、もう少し長い意味での物価のアップサイドリスクということがあって、両者のバランスという観点ではお答えできないと思っています。』

ということですから、まあどう見てもこりゃダウンサイドリスクを意識しておりますわなあという感じであります。



○中小企業問題

講演の中で目立った「中小企業問題」「サブプライム問題」の2つのお題に関する質問が多かったのは当然なのですが、まずは中小企業問題に関連して。

三重県の地域格差問題に関して(1ページ目)

『私も事前の勉強を通じて、かなり格差の問題があるのだなとは認識していたのですが、本日、お話を伺う中でも、なかなか南側に北側の景気が波及していかないということが伝わってきました。』

『私は、金融政策運営を行なっていくという立場でお話を伺ったのですが、金融政策というのは、一つの政策手段しかありませんから、地域によって非常に格差がある中では、難しい決断を迫られることになるのだなということ、また、そうした問題にもしっかりと耳を傾けながらも、経済全体の「真中」はどこなのかということを考えながら政策を行なっていく必要があると、改めて感じたところです。』


中小企業の業況が悪化しているのではないかという点(3ページ目)

『まず最初の中小企業の問題ですが、私どもは、生産・所得・支出という好循環のメカニズムが続いていくことを考えておりますが、少しその波及のスピードが遅いのではないか、というのが出発点です。』

『そこの波及が遅くなっているという背景に、ひょっとしたら中小企業において──本日も沢山話が出ましたが──、コスト高を転嫁できないということによる収益の低減、それと同時に賃金に下押し圧力を掛けざるを得ない、という部分があるのではないかということです。雇用者所得という意味では、中小企業で働いていらっしゃる方々は沢山いますから、この波及の程度を決めるところで、中小企業の弱さが影響しているのではないか、という観点から、私は主として中小企業に関心を持っております。』


ということで、今までの須田審議委員の講演などではこの「中小企業」というような特定のカテゴリーに注目して意見を表明するという動きが無かったと思う(あっても扱いは小さい)次第でありまして、普段こういう話をしなかった人がこの手の話をしだすというのは注目すべき事なのであるとあたしゃ思うのですが如何でしょうか?

というかね、須田審議委員はタカ派のイメージが出来てるから、情報ベンダーがヘッドライン打つとどうしてもタカ派の部分に目が行ってしまいますし、講演要旨みた人たちの後講釈でもそっちに目が行くのはある程度仕方ない面があるかも知れませんが、タカ派の人がタカ派の発言をするのはある意味仕様でありまして、最も注意してみなければいけないのは「いつもと違う事を言った場合」にその背景とか思想に何があるのかってのを講演要旨や会見要旨から読んで見るちゅうのが大事なんじゃねえのと(あたくしのスタンスがそうだからと言ってしまえばそれまでですが^^)思うんすけどね。金融経済月報読みで「前月との表現変更」をやたら気にする癖が全体に波及しているというのはあるんですけど、あっはっは。


○サブプライム問題

サブプライムに絡んでの発言にはやたら「不透明」というのが目立つ印象でございますが、これはあたくしが講演要旨や一連の発言などから「須田さんが慎重発言してるううう」と目がランランと輝いているのでそっちに目が逝きやすいという面はありますので念の為(^^)。

3ページ目から。発言の途中をぶった切ってますので元ソースも見てね。

『私はサブプライムの問題が起こりそうだと思ったとき、非常に不透明さを感じました。一体これはどういうことなのかと。(途中割愛)サブプライムの問題では、まずリプライシングの話―証券の価格を正しくもう一回付け直さなければならないという問題―がでてきました。さらに非常に予想外のことであったのは、ABCPのマーケットで、流動性補完の関連で金融機関が流動性需要を非常に増大させて、一種の流動性リスクが高まりました。』

『私の不透明感は、かつてよりは薄らいできています。(割愛)この問題について、いつ霧が晴れるかということについては、全く予想できなくて、霧というのは予想外に早く晴れるということもありますし、深くなっていくこともありますので、現在は全く予断を持たずにやっていくしかないと思っています。』

6ページ目から。

『今確かにサブプライムの問題は、短期金融市場の問題だったり、再評価の問題であったりというところで注目を浴びていますが、基本は住宅市場の調整の問題だと思っています。これに関しては、確かにオーストラリアとか、一時の英国のように、思いのほか上手くソフトランディングしたというケースはあるのですが、やはり日本の経験を踏まえると、住宅問題の調整はそう簡単には終わりません。』

『価格が下がり始めた時に金融政策でどれだけ対応できるかという問題も私は認識として持っています。住宅の問題は長引くとは思っていますが、ただ、それは急激に起こることではなくて、アメリカの経済成長の頭を抑えていくというものである、と捉えています。』

ということで、一応米国経済はまあソフトランディングというのが須田さんのメインシナリオである事は変りなくという所のようですし、世界経済全体で見れば新興国などの状況が良いので、世界景気の悪化までは見ていませんとなっている点については念の為。


○物価に関して

先日ご紹介した決定会合議事要旨で、物価に関して意見が分かれていますなあというのがありましたが、同じ事に注目した記者さんがいるようで8ページ目にその質問がありまして、須田さんは以下のようにコメントしています。

『実体経済が2%程度の成長を続けていて、潜在成長率はそれよりは幾分低めと判断しておりますから、需給ギャップはプラスの方向に動いており、そういった成長が続いていくということ、そして、今のところユニット・レーバー・コストは、少しマイナスが続いていますが、どんどん悪化していくということはなくなっていくだろう、また、原油価格の高止まりもある、といったことを考えていくと、普通に考えたらある程度物価が上昇しても良いのではないか、ということです。』

『これまでそういう状況にあって、実際、物価のコアの部分は、1年というタイムスパンでみれば、少しずつ上昇してきております。足許は、物価の基礎的な部分の動きが少し鈍いというところがあるので、そういうところを含めて考えると、ある程度は上昇しても不思議ではないと考えられます。』

『それから、企業の行動が少しは変わるかもしれないし、また、家計も少しずつ色々な価格の上昇を受け入れていくかもしれません。こうしたことを思うと、今までなかなか上がっていかなかったので、それをずっと先に引き延ばすのではなくて、思いのほか物価が上がっていくということがあっても不思議ではないと私自身は思っています。』

ということで、講演要旨にもありましたように、物価に関しては上昇リスクを見ているほうということになるかと存じます。


#期末の話とか講演の後半部分とかは明日以降に繰越。。。

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2007/09/28

お題「須田審議委員講演はタカにみえないのですが・・・・」

期末だというのに盛り上がらないこと夥しいです。正直言って資金供給オペ打ち過ぎだと思うんですけど・・・・・

という話は兎も角(というか後日)。

須田審議委員の講演ですけど、今回あたくしはヘッドラインを見る前に講演(挨拶)要旨を見た(と書くとナンノコッチャですけれどもヘッドライン出てた時間に席を外していたという事でございまする)ので、「おお!これは須田さん慎重派になったですなあ」と思って後からヘッドラインを見たら全然印象が違うのにビックリしちゃいましたことよ。。。。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0709d.htm

○総じて言えば「現状判断は弱気、政策に関しては強気」っすか

挨拶前半の部分では米国サブプライム問題の話をしているのですけれども、この部分を見るとサブプライム問題の影響に関してかなり懸念しているように見えます。ということで現状判断は慎重、というよりは弱気になっているような感じです。

んで、ヘッドラインの方ではボカスカ使われていた金融政策に関するお話の部分では毎度お馴染みの「フォワードルッキングかつ漸進的な政策の必要性」について述べているのですけれども、これは将来の話であって、足元の慎重姿勢へのある意味転換したっぽい部分の方が気になりますですよ。はい。

A4の紙に印刷すると14ページになるといういつもながら長い要旨でありますのでちょっと端折りながらになるかも知れませんが。


○米国サブプライム関連

ということで経済見通しの標準シナリを部分をいきなり端折りまして『(2)標準シナリオにおけるリスク要因』の米国サブプライム関連の部分から参ります(^^)。んで、まずは『(ii)米国経済はソフトランディングするか』ってところを見なければなりますまいて。

『現在、欧米のクレジット市場では、依然としてクレジットリスクの再評価の過程にあるとみられます。もちろん、クレジット・スプレッドが一頃のような極端に薄い状態に戻ることはないと思っていますが、サブプライムローンを含む証券化商品のリプライシングにある程度目途が立てば、もともと投資家のリスクアピタイトは旺盛だったわけですから、いずれクレジット市場の正常化は進むと思われます。』

と始まるのですが、そのパラグラフのまとめは『市場は、引き続き不安定化し易い地合いが続くとみられ、まだ警戒を解くわけにはいきません。』となってまして、その次のパラグラフも警戒モード。

『今後、クレジット市場が落ち着きを取り戻したとしても、クレジットリスクの再評価が行われるとすれば、結果として信用力の乏しい借り手を中心に、与信条件が厳格化されることとなります。リスクプレミアムの復活によってクラウドアウトされた信用力の乏しい借り手が、FRBの利下げによって再び住宅市場に戻ってくるとは考え難く、結局、住宅市場の調整はこれまで以上に長引く可能性が高いと思われます。』

で、この部分のまとめはこうなっています。

『住宅在庫水準が高いことや、延滞率や差し押さえ発生率はむしろ2008年にかけて高まっていくとみられていること等から、私は、米国住宅市場の調整は2008年後半まで長引く可能性が高いと考えています。そうなれば、現在、平均的に2%台半ばと見込まれている市場の2008年成長率見通しは、もっと下振れることになります。ただし、仮に、2%程度にまで下振れたとしても、2007年の市場見通しとほぼ同程度であり、ソフトランディングシナリオから大きく逸脱するものではありません。』

最後でソフトランディングするという話になっているのですが、サブプライム問題が住宅市場の調整につながり、実体経済に悪影響ってパスに関しては慎重に見てますなあと思うのです。


○中銀の流動性対応に関して

引用した部分の前段は各国中銀の流動性対応について触れているのですが、日銀の対応に関して須田さんご説明モード。

『なお、日本銀行に対して、一部の市場参加者から、「FRBやECBに比べて対応が不十分だったのでは」との声を耳にすることがあります。しかし、私ども日本銀行では、金融システム不安や量的緩和政策の時期を通じて、流動性供給方法に工夫を凝らしてきた結果、海外中央銀行と比べても、かなり充実した供給手段を持つに至っています。』

『今回のサブプライム問題につきましても、各国中央銀行や金融機関から収集した的確な情報に基づき、通常の金融調節の範囲内で十分対応可能との判断のもとで、粛々と対応してまいりました。8月積み期の最終局面で、無担コール(オーバーナイト物)レートが誘導目標の0.5%を大幅に下回ったことや、その最終局面を除けば、レートは概ね安定して推移していたことからも、我々の対応が十分であったことがお分かりいただけると思います。』

てかレートが大幅に下がったという位ですから十分以上に対応しているのですけどね(^^)。まーこれは批判するほうが不勉強というか無理解のまま勝手に馬鹿解釈した挙句にケシカランとか言ってる訳で、今話題のモンスターペアレントみたいなもんですわな。


○サブプライム問題の波及にも結構慎重姿勢に見えますが

その次のあたりから。

『以上みてきましたように、米国のサブプライム問題を端緒とするクレジット・リスクや流動性リスクの高まりは、これまでのところわが国には目立って伝播してはいません。しかし、実体経済のチャネルを通じた波及、すなわち、(1)米景気の下振れに伴う米国向け輸出の減少、(2)株価や為替の変動を通じた企業の投資マインドや消費コンフィデンスへの影響については、慎重に検討する必要があります。』

ということで、ここでも慎重に検討と出てまして、まーニュアンスとしては見極め必要ってのが目に付いちゃいますわな。ただまあ結論としては先ほど引用したように「とは言え織り込み済みですから影響大きくないですよ」にはなっておりますので念の為。

『そもそも米国経済については、住宅市場の調整を背景とする景気の減速とその後のソフトランディングを織り込んでいますので、現在市場が平均的に見込んでいる程度の下振れであれば、わが国の輸出全体に与える影響はあまりないと言ってよいでしょう。私自身は、先ほど申しましたようにもっと下振れる可能性が高いとみていますが、世界経済へかなり影響が出るほど大幅な下振れにはならないと考えています。』

ということですが、「かなり影響」がでるほどの「大幅な下振れ」にはならないというのは少々下振れはあるかもねって話でもございますので(??)・・・・・・

途中を端折って(2)部分。

『もう一つの波及ルートである、株価等の金融資産価格の変動が企業の投資マインドや消費者コンフィデンスに与える影響については、今後公表される指標の動向を注視していくしかないと思っています。実際、今夏以降、株価下落、為替円高が進んでいるわけですから、その影響はゼロではないと考えています。それが、原油価格の高止まり等とも併せて、標準シナリオにまで影響を及ぼしてくるのかどうか、注意深くみていきたいと思います。』

どう見ても慎重姿勢です。本当にありがとうございました。


○国内要因でも中小企業動向に注目しています

米国の話の後で国内に関して言及。

『展望レポート等では、これまでもIT関連財の在庫調整について経済の下振れリスクとして指摘してきました。最近、デジタル家電やゲーム機向けの出荷が世界的に好調を持続するもとで、パソコン向けも新型OS関連向けに持ち直す動きが窺われており、電子部品・デバイスの在庫調整にも漸く目途が立ちつつあります。このままクリスマス商戦へ向けて良好な需給環境が継続すれば、年後半にかけてその点からの下振れリスクはかなり軽減されると見込まれます。』

と、ここまではよいのですが。

『一方、ここへきて気になっているのが、中小企業の状況です。4-6月の法人企業統計の資本金別設備投資をみますと、10億円以上の大企業が前年比+2.5%と増加基調を継続している一方で、1億円〜10億円の企業が同-3.7%、1,000万円〜1億円の企業が同-19.9%と、ここへきて大企業と中堅・中小企業とのコントラストが目立つようになっています。』

『また、中小企業金融公庫の「中小製造業設備投資動向調査」による2007年当初計画をみても、前年度の当初計画対比-7%とやや弱めです。法人企業統計の設備投資の下振れについては、サンプル要因による振れが影響している可能性を指摘しましたが、それだけでこの中小企業の弱さをすべて説明できるわけではありません。』

『食料品や卸・小売、不動産といった中小企業の比率が高い業種も、軒並み前年割れとなっており、中小企業の収益環境が全般的に厳しさを増しつつあることを示唆しています。確かに、中小企業庁のアンケート調査結果からも、原油や原材料価格の上昇が収益を圧迫していることが窺えますし、中小企業金融公庫の「中小企業動向調査」でも、業況判断DIが足もと頭打ち傾向となっています。』

ということで、実は中小企業に皺寄せが来てるんじゃないですかという指摘をしておりますです。


○物価について触れていますが

『これまでみてきましたように、息の長い景気拡大を続けてきた日本経済の今後を考えるとき、どうしてもダウンサイドリスクに目を奪われがちになります。しかし、ここであえてアップサイドリスクについても触れておきたいと思います。具体的には、物価動向の今後についてです。』

ということで生活関連用品の値上げの話をしておりまして、結論として『このまま雇用のタイト化と原材料価格の高止まりが続けば、そう遠くない将来、インフレ率が思いのほか上振れるリスクも、念頭においておく必要があると思っています。』と纏めててそれはそれでアップサイド(実はスタグフレーション入りだったりしてという暗い話は措く)リスクなんですけど、「ここであえて」っていう風になる所が須田さんのマインドがちょっと慎重化している事の反映ですかなとか思ったのは裏読みのしすぎですかそうですか。



○で、金融政策に関してですが時間切れですな

そもそも須田さんの講演(挨拶)はやたら長いので量と時間が追いつかないのでありますが(^^)、今朝も案の定追い着かないの巻になってしまいましたスイマセンスイマセン。

えーっと、金融政策に関する話はテイラールールの話から始まって講演要旨の後半部分になるのですが、ちとこれは週明け送りでしゅ。一応超端折って申しあげますと・・・・・

『このようにバブル崩壊の懸念が強まった後に、金融政策対応だけでうまく経済をソフトランディングさせることはなかなかむずかしい、というのが日本の経験が我々に語っていることだといえます。将来に対する経済主体の期待が著しく強気化した後は政策対応が大変になります。したがって、バブルの発生を未然に防止するよう努めることも、重要だと思います。そのためには、フォワードルッキングに様々なリスクをできるだけ顕現化しないうちに把握し、早めに対応していくことが不可欠です。』

とか、

『先行きの政策スタンスについては経済・物価情勢の変化、及び、それを取り巻く不確実性の状況に応じて政策金利水準を調整することになります。望ましい金利調整パスもそれにつれて変わりますので、今後どのようなスピードで金利調整するのが望ましいのか定かではありません。ただ、あまりにゆっくりとした金利調整を行うと、経済が過熱するリスクが高まります。もし遅すぎる対応であったことが判明し、将来の過熱リスクが高まれば積極的に対応しなければなりません。したがって、これからも過熱リスクの点検は怠れません。そのようなビハインド・ザ・カーブになることを極力避けるためには、経済情勢をかなり先まで見通して、ある程度早めに、かつ漸進的に対応することが望ましいと思っています。』

といった部分がタカ派ヘッドラインの元になったと思うんですけれども、まあ講演要旨を頭から読んでいきますと、前半部分の「景気の現状および先行き見通しに関して慎重な見極めが必要」って所がクローズアップされると思うんですけどね。景気判断から離れた金融政策ってのは有り得ないですから・・・・

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2007/01/29

お題「須田審議委員記者会見」

PDFファイルで8ページになるのですが、一つ一つオモロイ。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0701b.pdf

質疑の中で多かったのは「フォワードルッキングのスタンス」に関してと、利上げするという人と現状維持の人の差がどこから来ているのかという話でした。まあ当然なのですが。


○須田審議委員の基本的な考え

という訳で、須田審議委員のフォワードルッキングのスタンスについてですが、質疑の3ページ目のあたりからその話です。講演(正しくは挨拶)要旨の中で「先行きのシナリオにある程度確信が持てるのであれば躊躇なく政策変更を検討すべき」という部分があったことに対する質問に対する答えから。

『先行きのシナリオについて、今のところ我々は07 年度まで持っていますが、それは将来のことであり、基本的には確実ではありません。従って、ある程度は、リスクをとる必要があると思っています。』

『そのリスクをとるにあたっては、自分たちの描いているシナリオの蓋然性がどれくらいか――それが何パーセントかということは申し上げられませんが――、そのシナリオの蓋然性は高いが、下振れリスクなり、上振れリスクなりの不安の程度が大きければ、それは今のシナリオにより確信をもてるまで色々と分析等を行うということになると思います。』

『私自身、12 月の決定会合の時期と1月の会合の時期を比較してみた時に、いわゆる標準シナリオが実現する蓋然性はより高まっていると感じたわけです。』

ということでして、そのフォワードルッキングに関してどういう話をしているかというと別の質問に対する答えの部分の方が判りやすいですわな。

『私は先ほども申し上げたように、フォワード・ルッキングであるからには、ある程度のリスクをとって政策を行っていかなければ、利上げが遅れ過ぎるリスクを抱えることになるという思いがあり、物価安定のもとでの持続的な成長ないしは息の長い景気拡大を続けていくためには、ある程度景気の山谷を均していくことが必要になると思っています。』

まあこれはこれで一つの見識だと思うのですが、やはり標準的なシナリオの中に利上げが前提になっとるのがまた話がややこしくなると思うんすけど。「展望レポート方式」だと中長期のシナリオを先に出す形になってしまうので、足元の指標が中長期のシナリオ通りに行かなかった場合に(例えば現在に関して言えば、ちょっと足踏み状態になってる訳ですが)現在のように路線が違ってるんじゃねえのって話になってきて訳判らんモードになるのかと思うのですな。

で、まあこの「中長期のシナリオを出す」(1−2年は中長期とは言わないとツッコミを受けそうですが、笑)というのは経済が動くという事を考えますと、ちょっとリスキーなんじゃないのかなあとあたくし考える次第。経済情勢の変化によってシナリオをちょこちょこ書き換えていたら「何だか安定しませんな」って感じになるし、かと言って「シナリオ不変」を貫いたままでいると以前の判断に縛られてしまい、判断を変更するタイミングが遅れる結果になりかねないということで。

まあ「新たな金融政策の枠組み」をやって見ましたが、市場との対話という点で齟齬が発生してますので、枠組み構築を見直すということでご検討されるのも宜しいのではないかと思うんですよね。結局「物価安定の理解」が数値目標っぽく見えるのに、実はターゲットじゃなくてアンダースタンディング(??)であり、政策は総合判断っていうのはやっぱ判りにくいと思うのですよね。


○市場との対話がどうも上手く行ってませんがという話

市場との対話についての質問に対して。

『今回私がこのようなテーマでスピーチをしたのも、情報発信力を少しでも高めようとする努力の表れです。ただし、対話の再構築ということではく、私自身としては、新たな金融政策運営の枠組みがまだ理解されていないとの思いが非常に強かったため、この点についても本日お話させて頂きたいと思いました。』

先ほども申し上げたように、あたくし思うに展望レポートの作り方を変えてみたほうが良いのではと。正直金融経済月報だけで十分であって、第1の柱とか第2の柱に関しては決定会合の中で議論してくれれば、それが議事要旨という形で出てくるので(よって、議事要旨が次回の会合前に出てくれると良いのですが)、それで判断できると思うのですけど。判りやすくしようとする中で色々なものを盛り込んでしまったので、ポイントが見えにくくなっているという面があると思うんですよね、今の金融政策の枠組みって。

#ポイントを曖昧にすることによってフリーハンド確保なんてことはまさか考えてないと思うが・・・・

『この考え方をしっかり共有してもらえれば、もう少し対話しやすくなるのではないか、あるいは枠組みが共有財産となっていない中ではなかなか対話も難しい、と判断しました。この点は私も反省するところであり、もう少ししっかりとこの枠組みについて情報発信してくるべきだったと思っています。』

率直に申し上げまして、多分須田審議委員のご説明でも枠組みへの理解は中々進まないと存じます><;


○利上げ派と現状維持派の距離について

その距離はフィロソフィー(哲学)の違いからきているのではないかという質問がございまして、それに対する須田さんの答え。

『フィロソフィーの違いと言われると、何ともお答えできませんが、金融政策決定会合で議論する上で、そもそもの考え方という点で議論するのに困るというようなメンバーがいたことは一度もなく、それがフィロソフィーの違い――定義はわかりませんが――という感じは一切持っていません。』

とは仰っていますが、どうも微妙に違うような気がするんだが・・・

『私自身の感覚としても、先行きの見通しについての確信度合いは皆さんそれぞれであって、それぞれのメンバーが経済全体として何か特定の指標をみて判断されるということではないため、新しい指標が顕著に良くならないと考え方が変わらないというわけではありません。もともと持っているのは標準シナリオであり、これを確認するためのデータがもう少し欲しいという人と、もうこれでOKという人の差ですから、私としては先行きのこと(引用者注:ここで言ってる先行きのこととは、慎重派の意見が1〜2か月で変わるのかという事に関してです。質問を引用してないので文脈から読み取れないですね)は全くわかりません。』

「標準シナリオが確認できない」というのは要するに「シナリオ通りに行ってません」って話のような気もするんですけど、一度書くと中々ホイホイと書き換える訳にも行かんので、先ほどと同じ話になりますが、金融経済月報でやった方が良いと思うんですよね。現状判断と先行きをどうせ月報で書いてるんですから・・・・


○原油価格に関して

以前は「原油価格上昇の背景には投機があるが、根本には世界経済の拡大があるのでCPIの判断には原油も含めるのが適当」と言ってた点について須田さんの答え。

『次に、原油の問題ですが、原油取引にはもともと投機的な部分がありますが、その一方で、NIEs、加えてASEANといった新たなアジアの力、経済の発展のもとで、原油等の需要は基本的には増加していきます。また、世界経済が拡大していく前提のもとでは、先進国の原油需要も増加し、その中で原油価格は上昇基調にあると思っています。その意味では、それを物価の一つの力として捉える必要があると思っています。』

『ただ、どこまでがトレンドで、どこまでが投機的なものかわからない面があり、振り返ってみれば、最近原油価格が急激に落ちたのは、投機的な部分の影響があったと判断しています。そういう意味では、考え方が変わったということではなく、もともと実体経済の強さを反映したものである限りは、それは物価に反映されて、それを含んだもので良いと思っています。ただし、一時的な要因で動きがあったとわかった時には一時的だという判断をした方が良いと私は思っています。』

何か判ったような判らんような話ですが、そうすると一時的だという判断になった部分で行った金融政策に関しては是正をするべきという結論になるように思えますが(^^)。

結局ですね、色々と物差しを出してくる中で、その時の政策運営に都合の良い(というか日銀様の標準シナリオに都合の良いと言うか・・・・)ものがホイホイ出てきて、都合が悪くなるとあっさり引っ込めると市場から(市場以外からもだと思うが)思われている時点で対話が上手く行っとらんと思うんっすよね。

・・・という訳で、本日は須田さんの記者会見のご紹介なんだかあたくしの金融政策雑感なんだかよく判らん展開になってしまい誠に汗顔の至りでございます。こんなところで。

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2007/01/26

お題「須田審議委員講演」

何はともあれ本日のCPIがネタとして注目されるところですけれども、市場予想+0.2%ということになってますけど、+0.1%くらいまで織り込んでるような気もするんですがどうなんでしょうかね。

予想通りタカ派な須田審議委員の講演でしたので別に市場は反応しなかったんですが、ロジックを整理するのにはちょうど良いのでこの講演を読んでおくのは吉ではないかと存じます。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0701b.htm

講演本文をA4の紙に打ち出すと13ページになりまして、図表(上記URLにリンクがあります)が20ページという中々の量になりまして、景気に関する部分も読むところ多いのですが、本日は金融政策に関する後半部分を読むということで。


○フォワードルッキング

『報道にもありますように、日本経済の先行きにつきましては、「見通し」に概ね沿って推移する可能性が高いとの認識で意見の一致がみられた一方、金融政策については意見が分かれたことになります。その意見の分かれ目になりましたのは、各委員の「見通し」に対する確信度合いということになりますが、こうした一見するとややわかり辛い結果が、金融政策運営に対する市場の見方を複雑化している面は否めません。』

ということで須田さんの解説が始まります。フォワードルッキングの重要性については・・・

『このような政策によって、政策を変更しなければ生じたであろう問題の芽を早めに刈り取ることができれば、そして中央銀行の政策を国民が信認していれば、国民の将来に対する期待も安定化しますので、金融政策の有効性が高まり、それは持続的な成長の実現に資することにもなります。』

と指摘しておりまして、それは確かにその通りなのですが、現時点で「日銀に利上げバイアスがある」と(日銀の中の人たちの大勢がそんなに利上げバイアスあるのかといわれるとそうでも無いんじゃないのかという気はするのですが・・・)世の中に認識されている時点でフォワードルッキングの有効性について黄信号が絶賛大点燈の香りがしますが。

その他フォワードルッキングの重要性について指摘しておりますが、特に変った話をしている訳ではなく、まあ確かにその通りでございますという話が続いておりますので引用割愛。


○「新たな金融政策運営の枠組み」に関して

『昨年10月の展望レポートでは、標準シナリオを点検して第1の「柱」で「わが国経済は、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していく可能性が高い」と評価するとともに、第2の「柱」では、金融政策面からの刺激効果が一段と強まり、中長期的にみると、経済活動や物価の振幅が大きくなるリスクがある、ということと、景気拡大や物価の上昇が足踏みするような局面も考えられるが、物価下落と景気悪化の悪循環に転化するリスクは小さい、と指摘しました。』

『このように、われわれの先行きの政策運営に関する情報発信は、二つの「柱」に基づく点検結果とセットになっています。なお、毎回の決定会合では前回決定会合以降に出てきた指標を中心に経済物価情勢の現状と先行きについて点検していますが、常に展望レポートのシナリオを意識しながらみています。』

というのが第1の柱と第2の柱って奴ですが、この第1の柱と第2の柱にフォワードルッキングが微妙に混じっていて、というか第2はまんまフォワードルッキングなのですが、フォワードルッキングを強調する→第2の柱がフレームアップされる→第2の柱は先行きのリスクを強調している→利上げバイアスが意識される→色々な話が利上げ先にありきになる、という流れになっちゃうと思うので、やっぱこの枠組みも「先行きの金融政策に予断を持たず」っていうのには馴染まない気がするんですが。

とはいえ、本来で言えば金融政策は「先行きの経済情勢を見ながらリスク対応も考え」っていうので別に変ではない気もするのでして、何で日銀の口からその話がでると利上げバイアスが出てくるのやらと思う訳ですが(苦笑)、過去の実績および、展望レポートの標準シナリオの作り方のせいではと思うのですが。

『現在の標準シナリオは、政策金利について市場に織り込まれたと見られる市場参加者の予想を参考にしつつ作成されています。現在は利上げが織り込まれていますので、それを前提に標準シナリオはつくられています。したがって、現実の経済物価情勢が標準シナリオに沿ったものであれば、おのずと市場の平均的な見方と大きく乖離することなく利上げに行き着くことになります。』

結局ここのところが「利上げ先にありき」と言われてしまう原因でして、先行きの金融政策に予断を持たないでフラットな対応をするという形じゃない所にロジックの複雑骨折(利上げ主張する須田さんの方が却ってロジックは展望レポートや枠組みに沿っているのですっきりしてますわな、骨折気味なのは据え置きの人たち)が出てますってことを明らかにしてくれる話ですな。

大体からして、市場なんて常にオーバーシュートするんですから、「政策金利について市場に織り込まれたと見られる市場参加者の予想」を参考にしてるのでしたら、シナリオが物凄い勢いでコロコロ書き換わるような気がするんですが、そういう訳でもなさそうなのは、「予想」はどこかで切り取った数字を使っているのか、須田さんの講演テキストのように「将来の利上げを織り込んでいるから先々利上げがあったとして・・・」みたいなファジーなお話なのか、この「予想」が何か曖昧模糊としている所が、この枠組みをわけわからんものにしてる原因のように思えるのですが。

以前も申し上げましたが、標準シナリオを書くのであれば「市場の予想を参考にしたベース」の他に、「現在の金融政策を不変として対応した場合」ってのを出していただく方が判りやすいと思います。


○須田さんの先行き見通し

前半部分に詳しい話があるのですが、今後の金融政策という話の中でも須田さんの見通しが披露されてますので引用。

『私自身、1月の決定会合に向けて、その(引用者注:標準シナリオの実現性)確信度合いを高めてきました。』

『米国景気については先ほど述べましたように、強めの指標を確認することにより、米国経済のソフトランディング・シナリオの蓋然性が高まったとみています。』

『国内の個人消費については、もともと緩やかな雇用者所得の伸びに見合った形を想定しており、それほど強い姿を想定しているわけではありませんが、雇用者所得が緩やかに増加している状況に特に変化はみられていませんでしたので、夏場の落ち込みは一時的な振れ、かつ統計上の歪みと捉えていました。ここへきてそのような考え方で基本的に問題ないとの確信をより高めています。』

『物価については、原油価格の下振れによって足もと下振れていますが、それは一時的な要因とみられ、かつ経済活動にはむしろプラスに働くと考えられます。私にとって関心あるのは物価の先行き基調です。GDP統計の改訂で、物価の基調を決める要因である需給ギャップとユニットレーバーコストの動きを点検しましたが、物価の基調判断に変更を迫るものではありませんでした。これらだけでなく、この間公表された様々な指標も、いつものごとく丹念に点検したことは言うまでもありません。』

『なお、10月の展望レポートの第2の「柱」にあるように、「仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、金融行動・投資活動などを通じて、中長期的に、経済活動の振幅が大きくなり、ひいては物価上昇率も大きく変動するリスク」は気がかりです。』

特に解説するようなお話でもございませんので、はあそうですかという事で。


○特定の指標1点張りのリスクについて

『もちろん、我々は毎日新たに出てくる様々な指標の数値をみながら、それをベースとして経済物価情勢の中期的なトレンドに変更が必要かどうかを点検していますので、その意味では、フォワードルッキングといっても、足もとの指標を全く無視していることにはなりません。』

『とはいえ、何か特定の指数をとりあげてその値を重点的に予想に組み込んでいくということではありません。数値は振れますし、多くの経済指標においては、確定値になるまで数次に亘り過去のデータが遡及改訂されるという技術的な問題もあるからです。政策決定にとって重要な予測を一つの指標のそのときの値に依存させすぎますと、結果的には、意図とは異なる政策運営を行ってしまう可能性も否定できません。』

ということで、特定指標に対する1点張りを否定している訳ですが・・・

『ダラス連銀のフィッシャー総裁は、実際に指数改訂によって政策判断が違ってしまったケースを例示しています。すなわち、「FOMCでは、2002年の終わりから03年の初めにかけて、コアPCEがコンフォートゾーンの下限である1%を割りそうになったため、金融緩和を実施し、金利水準を低く維持する約束を行ったが、後になってコアPCEが0.5%上方修正されたため、結果的に緩和しすぎとなってしまった」と指摘しています。このケースでは、不十分なデータがもたらした金融政策が、住宅やその他の市場で投機的な行為を増幅させたと述べています。』

という具体例をだしてまして、コアPCEの改定がどうなっていたかという解説をしておりまして、一つの指標に依存した形でのフォワードルッキングの難しさが非常に難しいという話をしてます。インタゲ導入に否定的って話なんでしょうかねえ。


○で、市場との対話なんですが

そこに辿り着く前に時間が無くなってしまったので細かく引用するのはスルー致しますが、どうも現在の「金融政策の枠組み」と「展望レポート」のセットという大枠をそのまま使って対話をしていくという話(まあ新しいものを作り直せとは言いにくいでしょうけれども^^)になっておりまして、あたくしの頭が痛くなるものだったりするのです。

『私どもにとっても記者会見や議事要旨は重要な情報発信手段ですが、それを使って政策変更時期を直接示唆するような方法はとっておりません。先ほど説明いたしました「新たな金融政策運営の枠組み」のもとで、金融政策についての基本的な考え方や経済・物価情勢全般についての対話から、市場の自律的な予想形成を促しながら、一緒に利上げ時期を見出していくという戦略を採用しています。』

『金利の世界に戻ってからまだ時間が経っておらず、またこの新たな枠組みについての理解が十分浸透していないもとで、ある程度利上げの織り込み度合いが振れるのは致し方ない面もありますが、今後、日本銀行、市場、マスコミが学習を重ねることで、政策先行き予測の乱高下は次第に回避できるようになると期待しています。』

たぶん、「市場の自律的な予想形成を促しながら、一緒に利上げ時期を見出していくという戦略」というのは市場がオーバーシュートしやすいという事を考え合わせますと、乱高下の回避というのは難しいともうしますか、どっちかというと市場の期待の振れを増幅しやすいメカニズムがこの枠組みに内包されているのではないかと思うのですけど。

現在の枠組みには工夫というか改善の余地が大ありと存じます。

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2006/07/31

お題「須田審議委員講演の補足」

週初に月末が来るとしんどいですな。今朝は延々同じネタで恐縮ですが先日の須田審議委員講演後の記者会見から。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607c.pdf

○物価重視か景気重視か

金曜にご紹介したように記者会見で須田さんは

『(前半割愛)今の日本銀行の見通しから多少下振れても金利を徐々に引き上げていく、という方向性は変わらないと考えてよろしいでしょうか。』

という質問に対して『私自身はそのように認識しています。』って発言をしてまして、その前には

『(前半割愛)CPI の上昇率が今後なかなか上がり難い中で、需給ギャップがプラス方向へ拡大していけば、物価上昇率が低くても金利調整が必要になってくるという意味でおっしゃったのか、詳しく説明して下さい。』

という質問に対して『(前半割愛、物価が需給ギャップより遅れて反応するという話です)短期的・中期的にみてあまりに振れの大きい経済は望ましくないと思っていますので、その意味からも需給ギャップに関心を持っているということです。』


ということで、まあ「金利調整」(要するに利上げ)やりましょうってお話が進んでいるわけですが、質疑の最後の部分もまた中々示唆がありますわな。

『(前半割愛)挨拶要旨の中で、物価偏重ではなく景気の方にも十分目配りをするというような表現をされていますが、むしろこういう表現であれば「物価ではなく、私は景気を重視する」という読み方をすると話しはうまく流れると思いますが、この辺はどのように理解したら良いのでしょうか。』

これに対しまして須田審議委員真っ向否定。

『そのようには読まれたくはありません。(中間割愛)。なぜ、景気も踏まえたいと考えているかというと、先ほども申し上げたとおり、中長期的な物価安定に資するからという側面と、やはり物価安定だけでなく実体経済も安定して欲しいというのが、私が金融政策を行なう上での考え方ですので、景気も重視したいと申し上げている訳です。』

ということで、先ほど金曜にご紹介した再掲分と同じ話を再度強調。そして(中間割愛)部分ですが、こちらは物価ばかり見るんじゃねえゴルァというお話をしております。まー出た当初から形骸化するんじゃネーノと思ってた日銀ヲチャーも多かったとは思いますが、「物価安定に対する理解」はやっぱり「理解」であってターゲットでも何でもございません(下限0%じゃなければ意味あるかもしれないですけど下限0%じゃあ当たり前過ぎ)でしたな。

『足許の物価の数値と物価安定の理解として私どもが出している数字だけを比較して、これから先の金融政策を考えて欲しくないと思います。例えば、先日公表されたOECD の対日審査でも同じ意見でしたが、最近、インフレ率が1%になるまで次の利上げは控えた方が良いのではないかというようなご意見を見聞きすることがありますが、物価だけに焦点を当てて金融政策を語って欲しくないと思います。』

総合判断は結構でございますが、どうも利上げの結論が先に来てませんですかねえというのが不安視してるところなんですが・・・・


○市場との対話

先ほどの回答の続きの部分が市場との対話に関して。

『これから先のわが国の経済にしても、世界経済にしても非常に不確実性が高い中で、私どももいつどうなるかといったことはわからないというのが正直なところです。従いまして、毎回の金融政策決定会合においてしっかりと判断していきたいと思っています。』

という割には金利調整が必要という話をしてるのは何故というツッコミはさておきまして、

『このように先行きの金融政策に予断を持っていない中で、市場と対話していくために何らかのコミットメントをするということは、結果的にみると決して良くないことだと思います。』

まあこれは先ほどのIMFの意見のようなお話に対応したコメントだと思いますが、それでは金利調整が必要という話(ry

『私自身は、市場との対話の中でもう少し不確実性があっても良いと思っており、不確実性というのは良くわからないところがあるということです。』

そりゃまあそうですが、その割には判りやすいお話をしてますが須田先生。

『そのとき(引用者注記:金融政策を判断する時)の判断材料は何かといえば、実体経済と物価についての現状と先行きの見通しです。そこの部分を如何にマーケットと共有できるか―― 政府との共有もそうです―― が必要なことだと考えています。それができていれば、金融政策を行っていくのはそれほど難しいことだとは思っていませんし、金融政策の先行きについてマーケットの判断と私どもの判断が違ってくるとは思っておりません。従いまして、この部分についてしっかりと対話していくことがこれから先は大事だと認識しています。』

とは言ってますが、実体経済と物価についての対話だけじゃなくて、どう見ても金融政策の先行きに関してしっかりとお話をしています。本当にありがとうございました。

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2006/07/28

お題「須田審議委員講演、記者会見(続き)」

ベストセラー本の訳者がスイスで永住権を取得して所得税を納税、それが日本での課税回避行為じゃないかという件で国税がスイスと協議中なんてぇニュースが昨日唐突に出てましたが、谷垣財務大臣の自民党総裁出馬表明&消費税増税を全面に掲げた政策発表とタイミングが合っているのはただの偶然ですな偶然。

・・・などと一々何でもかんでもまずは裏読みする変な癖がつくと、恐怖の陰謀論者になりかねないので裏読みも程々に(笑)。


さて、金利関係市場はネタ切れもいいところでして、相場が持ち合いで煮詰まっているというよりは単に「さあ、盛り下がってまいりました。ショボーン」って感じでございますな。CPI前ですがんな話も盛り上らずとはこれいかに。

で、まあ昨日ご紹介した須田委員の講演話続きと記者会見をネタに。しかしまあ理屈が早期利上げ先にありきとしか思えませんが、何でこの人は重任になって中原さんは重任しなかったんでちゅかねえ。

須田審議委員の記者会見要旨はまたPDFファイル。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0607c.pdf

まずは講演の金融政策関連話の続きから。

○物価安定「のりしろ」論に関連して

昨日ご紹介した『つまり過半数の国民が、物価が安定し主観的にインフレ率がゼロと思っているような状況では、実際の物価指数は僅かなマイナスを示すことがあってもこのようなコストを意識しないでよいということなのではないでしょうか。』というお話の続きが『望ましい物価安定の数値の難しさ』です。

『国民の目線に合わせて、物価安定の理解の数値を求めるとしても、政策担当者としてはそれをそのまま用いるわけにはいきません。「中長期的な物価安定の理解」を数値で示すにあたっては、物価指数のバイアスやインフレ率ののりしろについて検討が必要となります。』

と言う事でご検討する訳ですが、この先延々と説明がございまして、まあその辺りをご紹介すると昨日のように引用で大増量になってしまうので物凄く端折ってまず結論部分。

『以上のようにバイアスやのりしろについてはプラスであるものの、かつてよりも下がっているととらえています。それを考慮にいれると、私の物価安定の理解の中央値はプラスであるもののかなり低めということになります。』

ということで、その理由として物価を巡る経済環境の変化と共に『物価下落を回避することに対する関心をこれまでほど強く持ち続ける必要性が低下しつつあると考えているからです。』ともご説明です。はあそうですか・・・・

『前者の環境の変化については、3月9日に公表した物価の安定についての考え方の背景説明では、のりしろに関係する要因として、名目賃金の下方硬直性の度合い、潜在成長率の水準、金融システムの頑健性、財政政策の発動余地、金融政策の有効性の5つがあげられています。これらについては財政政策の発動余地は別にして、残りの4つの要因についてはのりしろを小さくする方向に変化しています。』

『それらに加えて、ゼロ近辺の物価変動に国民が慣れてきた、つまりそれはサプライズではなくなってきたということをあげておきたいと思います。』

ということで、環境の変化をみていくと『のりしろの確保を優先し過ぎることは適当ではないと考えられます。』という事だそうでございます。バーナンキ議長の発言も引き合いに出されてますなあ。



○角を矯めて牛を殺さないようにお願いしたいのですが

で、この話の後も講演テキストは続くのですが、金融政策の運営に関してこんな話をしております。

『当面の物価上昇率のみではなく、私の場合は、中長期的な物価の安定という観点も含めて景気にも十分大きなウェイトを与えて判断していきたいと思います。もちろん実際に政策を行う場合にどちらを重視するかは目標からのギャップの大きさにも依存することになりますので、その時々の経済・物価情勢によって異なります。』

と、ここだけ読むと、昨日ご紹介したように経済の先行きに関して下ぶれリスクを意識しているのでハトさんのように見えるのですが、その次にすかさずこんなテキストが。

『また、政策の反応度合いは政策担当者が急激な金利調整を避けたいと思うかどうかにもかかわってきます。私は、不確実性の高い経済環境にあっては漸進主義の考え方が有用ですが、同時にビハインド・ザ・カーブに陥らない程度に金利調整を進めていくことも必要であると思っています。』

さてこれは何じゃらほいと言う事ですが、記者会見での主要な質疑は主にこの部分がフォーカスされていました。そりゃそうだわな。

そんな訳で会見の5ページ目くらいからそのネタで質疑が続きます。以下会見要旨より。

『(問)挨拶要旨の中で、「物価の安定」と「需給ギャップ」の両方に配慮して政策判断していきたいとおっしゃっておられますが、これの意味するところは、CPI の上昇率が今後なかなか上がり難い中で、需給ギャップがプラス方向へ拡大していけば、物価上昇率が低くても金利調整が必要になってくるという意味でおっしゃったのか、詳しく説明して下さい。』

『(答)「物価の安定」と「景気」の両方に対して目配りしたいというのには2 つの意味があります。一つは、今後、1〜2 年の物価については、私どもは既に見通しを持っている訳ですが、物価は需給ギャップより遅れて反応しますので、それより先の物価を見通していくうえでは、需給ギャップを参考にするという側面があります。』

『それに加えて、私は経済があまり大きく変動していくことは望ましいことであるとは思っていません。短期的・中期的にみてあまりに振れの大きい経済は望ましくないと思っていますので、その意味からも需給ギャップに関心を持っているということです。』

一つ飛ばして次に手を変えて質問が。

『(問)金融政策について、須田委員は、「不確実性の高い経済環境にあっては漸進主義の考え方が有用だが、同時にビハインド・ザ・カーブに陥らない程度に金利調整を進めていくことも必要」とされています。一方、福井総裁がゼロ金利解除前に日本記者クラブで講演された際に「フォワード・ルッキングな政策」、言い換えれば「早めに、小刻みに、ゆっくりと」政策を行っていくとおっしゃっておられますが、須田委員は総裁と同じ姿勢であると理解して良いでしょうか。』

『(答)福井総裁が、どのような意味でそのような表現をお使いになったのか直接確認していませんので、比較することはできません。ただし、「ビハインド・ザ・カーブに陥らない程度に金利調整を進めていく」という言い方は、金利の調整をじっと待っていて、その水準では低すぎるとわかってから急激に引き上げるより、ある程度リスクがあるかもしれないが自分なりに判断できた時に一歩踏み出し、そしてその政策変更の経済・物価情勢への影響を確認していくという形で政策を行う方が、長い目で見たときには、物価の安定と持続的な経済成長に資するということを意味しています。これが、不確実性の高い経済環境においての私の金融政策についての考え方です。』

何かね、その発想も判らんことはないけど、景気過熱を懸念する余り景気を冷やす結果になる方が怖いと思うんですけどね。


○どう見ても利上げバイアス掛かりまくりです。本当に(ry

その後の質疑にはこんなのが。

『(問)「(引用者注:年内利上げが)ないと決めつけるのは良くない」ということは、裏を返せば年内利上げは十分あり得るという理解で良ろしいでしょうか。』

『(答)受け止め方は人それぞれだと思います。』

『(問)挨拶要旨の中で「経済活動や物価上昇率が下振れした場合でも、経済・物価情勢を見極めながらゆっくりとした金利調整を行うのであれば、金融システムの安定が回復し、設備、雇用、債務の過剰が解消されてきていることなどから、物価下落と景気悪化の悪循環が発生するリスクは小さい」と述べられておりますが、今の日本銀行の見通しから多少下振れても金利を徐々に引き上げていく、という方向性は変わらないと考えてよろしいでしょうか。』

『(答)私自身はそのように認識しています。』


とまあそういう訳でして、「物価だけでなく景気も重視」というのは別に「下振れリスクを意識して利上げは慎重に行う」という意味ではございませんわな。どっちかというと物価を理由に利上げ反対を主張する論者へのカウンターとしての意味合いの方が強いんジャマイカと思われるところでございます。

いやはや何とも。

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2006/07/27

お題「ヘッドラインに騙されないようにしましょう(須田審議委員講演)」

騙されるとは人聞きの悪い表現ですが(笑)、別に須田さんにその意図があったわけではなく、ベンダーのフラッシュだけ見て反応する方が悪い訳です。はー自己責任自己責任。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0607c.htm

○何がどう騙されたのか簡単に

昨日の債券、というよりも金先の方が判りやすい動きでしたが、前場引け近くに行われた須田審議委員の講演の内容がヘッドライン打たれた辺りから上昇。後場になって平均株価が下がったのも後押しして相場上昇したのですが、14時頃に須田審議委員の記者会見での発言を受けて瞬間「ありゃー」と下落(その後やや戻しましたが)となりました。

いやまあそれだけが理由じゃないんですが、講演内容を伝えるヘッドラインがハト派っぽい(須田さんはタカ派的イメージが強いのでサプライズ)ものだったんですな。例えばブルームバーグニュースだと・・・・

『米国経済は不確実性高く、下ぶれリスク強まっている』
『国内景気も踊り場的な状況が生じる可能性がある』
『不確実性高く漸進主義が有用だが金利調整は必要』

・・・・最後のを見ると結局「金利調整は必要」なんですけど、景気の減速リスクのヘッドラインが印象強い(実際は他にも数本あります)訳でして、講演テキストを読んでいたあたくしと致しましては「何でこの講演内容で買わにゃいかんのかねえ」というものだったんですけど。

で、14時に打たれた発言内容がこれです。

『決め付けるのは良くない−年内利上げなしの見方に』

・・・・・(^^)/

ま、これで瞬間先物とか金先とか下がった訳ですが、普通こういう発言になると思うんですがにゃあ。そもそもアナリストの皆さんはともかく、トレーダーの人たちはそこまで「年内利上げ無し」に張っていないと思われます。「もしかしたら年内追加利上げあるかもしれないけど、今の状況だとちとやりにくいなあ」くらいが中心的な見方だと思うんですけどね。まあ他に大したネタも無いからスペキュレーション振り回す人たちがネタに使ったという事なんでしょうけどね。


と、前置き長くなったのですが、講演も結構長いので今日書ききれるか少々不安があるあたくしなのでした。まあテキストも読んでね。


○上方修正したものではありませんかそうですか

最初は当然ながら日本経済の現状に関する話。こちらは金融経済月報や展望レポートに則した内容となっておりますが「へえ〜」と思った箇所がございます。曰く、

『なお、私どもが公表している「金融経済月報」における表現が今月より「回復」から「拡大」に変更されていますが、これはマクロ的な需給ギャップが、長く続いた供給過剰状態を解消し、現在は需要超過状態に入ってきているとみられることを意味しているのであり、景気判断を上方修正したものではありません。』

需給ギャップが需要超過状態になったという判断はとっても重要なことのような気がするんですが、それは景気判断上方修正じゃないんですかそうですか。シロートなんでよーわからんのですが、それはやっぱ景気判断上方修正なんジャマイカと思うんですが。


○国内設備投資・個人消費

日本経済と米国経済に関する見立てと先行き見通しに関しては各項目ごとに色々と説明しておりまして、こちらはまあ読むと吉かと存じます。全部紹介しているときりがないのでまずは国内設備投資と個人消費に関する須田さんの現状の見立てに関して。

『設備投資について2006年度計画を同じく6月短観でみると、大企業では製造業が前年度比+16.4%と昨年同時期並みの高い伸びとなっているほか、非製造業は前年比+8.9%と、昨年に比べてさらに伸びが高まっています。また、中小企業をみると、製造業では、前回対比大幅に上方修正され、6月時点で既に前年並みの水準となっています。一方、非製造業については、前年比でみた計画値が現時点では1割程度下回っていますが、2005年度が1割以上の高い伸びとなったことを勘案すると底堅い計画だと評価できます。』

『個人消費については、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、着実な増加を続ける可能性が高いと考えられます。これまでの景気回復・拡大により、雇用に対する不安は後退しており、雇用者所得に見合った個人消費の増加を想定しています。ただ、雇用のミスマッチで一部では大幅な賃金上昇が起こり得ると思いますが、総じてみれば、企業の慎重な経営スタンス、つまり、企業の人件費等のコスト削減姿勢は堅持されており、賃金の上昇圧力が明確に顕在化するには至っておらず、雇用者所得の増加は主として雇用者数の増加を中心に緩やかなものに止まると思っています。』

総じて見ると「そんなにカンカンの強気ではない」けれども「下ぶれリスクはあまり意識していない」ということで、いわゆる「着実な上昇」というところになるのではないかと思います。


○リスク要因:米国経済、IT在庫調整、景気循環

ヘッドラインに打たれて「須田さんが下ぶれリスクに言及ですよ」となったのは日本経済の先行きに関するリスク要因として米国経済に触れた部分。確かにこの部分も丁寧に説明しておりますので、ヘッドライン打ちたくなるのも判らんではないですけどね。

『私は、米国経済の減速とインフレ加速を巡って不確実性が高まっており、その下振れリスクの度合いは多少なりとも強まっているように思います。』

『米国経済の景気拡大テンポは、消費・住宅関連指標や雇用統計を眺めますと、確実に減速しています。シナリオどおりの減速なら望ましいのですが、問題は、来年前半にかけての減速の度合いが春先に予想していたより多少強まっている感がある上に、不確実性が高まっていることです。』

という話と、金融政策の先行き不透明感に関してこんな話を。

『フィリップス曲線のフラット化などの可能性もあって、原油高等を映じた物価上昇圧力の高まり方が読みづらくなっていると思います。フラット化の進捗度合いが測りきれない中で、インフレ期待が高まり、この抑制を狙った金融引き締めが行きすぎとなって、想定していたパスよりも成長率を低めてしまう可能性があると思っています。他方、潜在成長率を楽観的にみすぎて物価上昇圧力を過小評価する可能性も否定できません。』

『FOMCの声明で「アコモデーション」という表現が「ファーミング」に変更されてからこれまで累計で1%ポイントの利上げが行われていることに加え、世界各国で金融政策が引き締め方向に調整されていますが、その影響を織り込みにくいことも金融政策の先行き不透明感を高める要因となっています。』

まあそういう話をしてますが、基本的には『マクロ統計をみる限り、米国経済の先行きについて標準シナリオの変更を迫るような統計は見当たりません。』ということで今後に注視というお話。

IT在庫調整と、景気循環で踊り場が来るかもしれないって話もありますが、こちらに関してもリスク要因を説明した後で「とは言え現状では大丈夫ではないかと思います」って話になってます。紹介してると長くなるので割愛。


○金融政策の説明になると一転してタカなんですよこれが

ヘッドラインでは主に景気の見立てのほうが注目されていました。確かにリスク要因に関して詳しく言及したというのは注目されるんですけど、後半の金融政策に関する話になると何ちゅうかもうこれがタカに見えるのはバイアス掛けてみてるからだけではないと思います。

で、こちらの部分に関しても色々と興味深い論点についてお話が続くのですが、最初にあたくしが懸念した通り(苦笑)、全部の論点紹介してると全然終わらないので、あたくし的に「おおこれはこれは」というのをとりあえずご紹介するだよ。


○武藤副総裁講演に次いで須田講演でもインフレマインド話が

(国民の目線で見た物価安定の理解)ってお題の部分が気になるあたくし。

『そうはいっても(引用者注:物価安定の理解で示されている物価の)下限が低すぎるのでは、という意見に対して、私の物価安定についての考え方をここで示しておきたいと思います。』

『私は、物価安定について数値化する際に、国民の物価観、つまり、国民が、物価が安定していると考える物価上昇率を大事にする必要があると思っています。国民はこうした物価上昇率を前提にして経済活動の意思決定を行っていると考えられますので、物価安定についての数字が国民の物価観から離れたものになると、国民の物価の先行きに対する見方に混乱を引き起こし経済が不安定化しかねないと思っています。』

『また今回の物価安定の数値化を私ども政策委員と国民が物価の安定を巡って、効果的なコミュニケーションを行うことを可能とするための一つの方法と位置付けておりますので、その第一歩としてまずは国民の目線を大事にしたいということでもあります。』

まあそういう考えも判らんでもないですが、その発想だと期待形成の安定化を行いマイルドインフレをターゲットにっていう方向には行かないってことでもあるんでしょうな。それでそれで。

『日本銀行が四半期ごとに行っている「生活意識に関するアンケート調査」によりますと、全体としての物価の見方は実際の物価の動きと対応していることがわかります。とはいえこの間、多くの調査時点で過半数の人が過去1年間物価はほとんど変わっていないと答えています。そこで過半数の人が物価安定だと考えている時期を実際の消費者物価に対応させてみますと、消費者物価の前年比においてコア、ヘッドラインでみて▲0.5%〜+0.5%程度のときに、過半数の人が、物価が安定していたと思っていたことがわかります。』

で、もうちょっと説明があるのですがそこを飛ばしまして、先日ご紹介した武藤副総裁講演でも言及されたお話に進みます。

『なお、先日公表されました6月の調査の内訳をみると、1年後の物価が上がると思うとの回答が大きく増え、これまでずっとゼロであった1年後の物価上昇率の中央値は2%にまで上昇しています。ここにきてインフレについての捉え方が変化し、デフレマインドは解消されてきたことがわかります。同様のことは内閣府の「消費動向調査」からも窺えます。ただし、3月調査と比べて「1年前比」、「1年後予想」ともかなり平均値が上昇しましたが、公表されているアンケート結果で示されたインフレ率の平均値は高すぎると思われます。実際、現実離れした値を修正してみますと、アンケート結果における上昇幅ほど大きな上昇ではないと推測されます。』

ということで平均値は統計の綾で大きく出ちゃった(異常値処理に関するお話はテキストの最後に示されています。念の為)けど、それはそれとしてマインド面でもデフレ意識は払拭しているということですな。『デフレマインドは解消』ですから。


で、その次にはこんなお話を。

『さて、主観的に「物価が上がっている」と思っている人の物価上昇についての感想は、「どちらかと言えば、困ったことだと思う」という答えが8割を占めています。他方、主観的に「物価が下がっている」と思っている人の物価下落についての感想は、「どちらかと言えば、好ましいことだと思う」という答えが一番多くなっており、国民は物価上昇を望んでいないことが伺えます。』

・・・・・・(-_-メ)

『ただ、個々人は自分の名目所得を与件として答えている可能性が高いので、物価の下落は経済全体でみて望ましいということにはなりません。』

さよでございますな。

『実際、かつてデフレ期待が定着すると消費を先送りすることになるから望ましくないという議論がなされました。仮に、それが正しいとするとデフレ期待が解消しインフレ期待が高まってきた今日、消費が活発化することが想定されます。しかし足許、インフレ期待の高まりのもと消費動向調査や景気ウオッチャー調査における消費者コンフィデンスは悪化しています。実際の消費は天候要因があるもののそれほどよくはありません。つまりデフレ期待の解消とともに消費が増えるというシナリオは顕現化していません。』

い、いんふれ期待の高まりですって?デフレマインドが払拭する=インフレ期待の高まりだったんですか。まるでキムタケ先生みたいだ・・・・

『この点からはマイルドなデフレのもとではデフレ期待による消費の先送りをデフレのコストとして強く認識する必要はないといえるかもしれません。つまり過半数の国民が、物価が安定し主観的にインフレ率がゼロと思っているような状況では、実際の物価指数は僅かなマイナスを示すことがあってもこのようなコストを意識しないでよいということなのではないでしょうか。』

・・・・・・(゜Д゜)


○で、実は「金利調整は必要」って言ってるんですよね〜

その後に物価上昇ののりしろ論とか、金融政策の波及効果のタイムラグ問題とか話をしているのですが、案の定時間切れになったので続きは明日。

いや、須田さんの講演っていつもこんな感じで、紹介するのも中々ホネではございます。読むところが一杯あるから興味深く読めますが。

#尻切れトンボで恐縮至極

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2005/09/29

○で、須田委員は何を言いたかったのでしょうか

昨日は須田審議委員の講演のヘッドラインが出たのが昼の11時4分ごろという(先物が終了したあと日本相互証券の業者間売買が11時5分までやっているので)恐ろしく微妙な時間だったよう(聞いた話なんで)ですが、ヘッドラインに「量的緩和政策の解除の時期が近づきつつある」というのが出てもうそれは大騒ぎということになったのですが、この須田委員問題の講演と記者会見(はまだ日銀Webにはアップされてませんので昨日17時55分配信の日本語版ロイターの記事を参照しています)に関してその部分を槍玉(^^)に。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0509g.htm

講演はインフレターゲット導入論に対して単一の経済指標数値に依存した機械的な金融政策はイクナイというお話が主眼のようなのですが、そちらに関する論考はbewaadさんにお願いすると致しまして(おいおい)、あたくしはくだんの部分に関する所に苦言でも。講演をA4の紙に打ち出すと17ページもあるので既にめげているなどと言ってはいけません(爆)。(追記:10月2日エントリーでより敷衍したエントリーをbewaadさんがアップしていただきました。ありがとうございます。)

問題の部分は講演の最後の方(紙に出すと多分14枚目)にある(当面の金融政策)のところです。

『私自身は、文字通り、消費者物価が安定的にゼロ以上で推移するかどうかを、解除の重要な判断基準としたいと思っており、今のところ、量的緩和政策の解除の時期が近づきつつあるとみています。』

消費者物価はまだ前年比マイナス推移してまして、(今月発表分は30日)量的緩和政策のコミットメント3条件の第一条件というか大前提の部分が達成されていないのに「近づきつつある」というのは一体全体何をお考えなのでしょうか?

まぁこういう言い方をすれば聞いた方(「市場」とは敢えて申しません)は消費者物価指数がゼロ以上に転換し、1〜3ヶ月程度ゼロ以上が続けば、あるいは下手したら直ぐにでも量的緩和解除を行うでしょうという予想をしたくなるのは人情(笑)というものですわな。3条件のうちの最後が「総合判断」の筈ですがその「総合判断」が何故か先行するという謎の展開でありまして(2つの条件達成されてから「総合判断」するんじゃネーノ?)、金融政策運営に関して予断を与えるフレーズなんですが・・・・・

その直後の部分ではこんな話になっています。

『今後、量的緩和政策の継続期間(時間軸)の短縮効果が市場にどのようにでてくるのか、時間軸についてマーケットと私どもの見方があっているどうかということとともに、まだ足許はコミットメントが満たされていませんので、コミットメントが満たされるようになるまでの間、予断をもたずに経済物価情勢の現状・先行きをしっかりとみていきたいと思います。』

「予断をもたずに」というのはギャグでしょうか??


ちなみにこの後にこんなことを言ってますが・・・・

『オペ環境がよいということがあくまでも前提ですが、コミットメントが満たされるまで、当座預金残高目標は現状維持を続けることがよいと思っています。オペ環境がよいもとでの残高目標の引き下げは出口論と混同される可能性があるので、私としては避けるべきだと思っています。』

いやあの「量的緩和政策の解除の時期が近づきつつあるとみています」ってのは出口論とどこがどう違うのかと小一時間・・・・


で、もっと情けないのはその後の記者会見でして、ソースの日本語版ロイターによりますとこんな感じです。質問者の突っ込み方が強烈で感動しました(^^)。他の質疑もどうも十字砲火モードの香りがしますがそれは会見要旨が今日出るとおもうので明日にでも。

(問)『「量的緩和の時期が近づきつつある」としているが、半年以上先のことを近づいてくるとは常識的には言わないと思う。年明け早々にも訪れると思っているのか。講演のなかにある「低金利」とは、どの程度のことを低金利と言っているのか。最初の着地点まで少しずつ調整していくということは、かなり時間をかけてよいということか。それならば0.25%程度の利上げも想定できない経済物価情勢から、量的緩和解除をする必要はあるのか。』(11月14日編集時追記:この質問は恐らくブルームバーグニュースの日高記者によるものと思われます。他の人にも同じような質問をして、福井総裁なんぞは大変ご機嫌が宜しくない感じでしたが^^)

(答)『近づきつつある、がどの程度かということは、簡単に申し上げれば、私がいる間にそういうことが起こるかもしれないし、起こらないかもしれない、というのが答え』(以下後半部分に関する回答があるのですが長い上に妙にくどいので割愛)

・・・・なら「近づきつつある」とか言うなよと思うのはあたくしだけでしょうか??


まぁそんな調子で金融政策運営に関して審議委員の皆様から予断与えまくりのご発言が出てくるわけでして、べき論としては「エエカゲンニセエ」なのですが、こんな感じですと「日銀はCPIがプラス転換したら早期に量的緩和解除を行うだろう」という予想が形成されやすくなりますわな。結果として市場金利が日銀の動きを予想した形で早期の量的緩和解除を織り込んで形成されてしまい、「市場の景況感と自分たちの景況感が一致している」と勘違いした日銀が逆噴射解除を実施・・・というシナリオも考えないとイカンっちゅう事になるでしょうな。

ってこの部分は昨日の時事メインコラム「金融観測」(お題は「金融政策運営も劇場型?=モノローグの落とし穴」です)の受け売り状態ですが、あたくしも全く同意でございますので書いちゃいました。全く困ったもんですなぁ。

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2005/03/31

お題「今度は須田審議委員なんですが」

2004年度も最終日となりました。来年度もドラめもんをよろしくお願い致します。

本日は須田審議委員の寄稿した日本経済新聞「経済教室」をサカナに。3月30日の日本経済新聞の同記事をご覧下さいませ。

○昔は結構良い事言う人だと思ってたんですが・・・・

というのが結論です。かつて景気判断を上方修正しながら当座預金残高目標の引き上げを行うという決定に「政策としての筋が通らん」と反対票を投じていた頃は「政策の筋論を通す人なんですなぁ」とあたくし的にはポイント高かったのですが、最近の氏の主張は何と言うかもうダメダメ状態になって誠に残念です。

本稿で述べている事は最近須田さんが講演等で折に触れて主張していることを纏めたような形になっているのですが、相変わらずそのご主張が我田引水解釈というか何と言うか。


『この間(引用者注:量的緩和政策による当座預金残高目標の引き上げ)に生じたことの中で、少し長めの視点から今後の金融政策を考えるに当たり筆者が重要と考えることを三点指摘しておきたい。』

と言うことで3つの点について論じているのですが、その3点というのは悉く「量的緩和政策が意図していたことの結果」だと思うんですが・・・・・


○日銀券の見合い資産が長期国債なのがそんなに悪いの?

『一つ目は日銀のバランスシートの拡大である。』

って事で日銀のバランスシートが拡大して、長期国債の買入が増加しているというのを量的緩和政策解除後の懸念材料らしく論じているのですが、記事中に掲載されている99年9月末と04年9月末との比較をみたら、長期国債の増加額が銀行券の発行残高の増加額に見合っている(ともに概ね20兆円増加)訳でして、発行銀行券が減りまくるというのであれば話は別ですが、理屈の上では別に長期国債の増加は無問題というお話になるんですが。

当座預金が29兆円増えていて、その見合いになっているのは買入手形と短期国債で十分間に合っている形になっており、このバランスシート見るだけでは別に問題ないでしょうに。

まぁ須田委員としては流動性を回収した時の出来上がりの形として「日銀券」という日銀から見ると短期債務に対して「長期国債」という長期資産を持っているのがバランス悪いって言いたいんでしょうが、一般の事業会社や民間金融機関じゃないんですからその論点はどうも良く判らんのですよ。

確かに日本銀行券は短期債務(須田さんは流動性負債と言ってますがまぁ同じ意味で使ってると思ってちょ)なんですが、別に履行を求められる債務でもないですし、そもそも日本銀行券が現象したらベースマネーが縮小して経済が縮小しませんでしょうかと(無茶苦茶乱暴な言い方で経済学をちゃんと勉強している人から怒られそうですが)小一時間問い詰めたい訳ですが。(銀行券が例えば電子マネーなんかに化ける場合は銀行券の減少に見合って民間銀行部門の預金が増えますが、最終的にはその分は日銀に帰ってくるとおもいますがどうなんでしょ?頭があまり良くないのでうまく説明できませんが)

と言うわけで、バランスシートが拡大して長期国債の買入残高が増えているのがどうのこうのという論点はどうも変なのではないでしょうかと思いますわな。だいたいからして「日本銀行のバランスシートが悪化」っつーのを問題視するんなら、どうせ満期になれば償還される長期国債の評価損などというどうでもいい事を問題視するんじゃなくて、適格担保とか特融とかでしょうに。。。。。


○押し売りしておいてそれはないでしょ

『二つ目は民間金融機関が資金を融通し合う短期金融市場(コール市場)の縮小である。日銀が潤沢に資金を供給したため、各金融機関はコール市場から資金を取る必要がなくなり、金融機関は日銀を頼りにするようになっている。』

別に頼るもへったくれも無い訳で、そもそも預金超過になっている所に日銀が押し売りの如く(笑)資金を供給してコール市場の存在意義を潰している訳でして、それを「金融機関は日銀を頼りにするようになっている」とか言われても激しく困るんですけど。

須田審議委員は市場機能の回復がどうのこうのという主張を折にふれてしておられるんですが、量的緩和政策を継続する限りにおいては短期金融市場の市場機能とか言われましても「それじゃあ須田さんは量的緩和解除熱烈キボンヌなんでしょうか」という風に解釈されるだけの事ですわな。あっはっは。



○量的緩和政策の効果な訳でして

『三つ目は、短期資金供給オペの期間の長期化である。(中略)その結果、長めの金利も限りなくゼロに近くなり、自然な金利形成がゆがめられているように思う。』

そもそも量的緩和政策実施の時に速水総裁は「CPI時間軸の効果によって長めの金利に対しても影響を与える」という趣旨の発言をしておりまして(その割には需給問題やら国債30兆円枠がどうしたこうしたと言った事で瞬間激烈フラットニングしたイールドカーブがスティープしちゃったんですが)、同じ理屈で短期金融市場の金利がゼロに近づいても無問題という解釈になるんですがどうなんでしょ?何をもって自然な金利形成って言っているのか良く判らん。

ちなみに、須田委員はこの中で何故か短期資金供給オペの期間に関して突然『(欧米では一週間程度)』というフレーズをぶちこんでいるのですが、やっている金融政策が全然違うのにそこで欧米と比較するというのは何ちゅうかもう涙が出てきちゃいます。



○政策委員が現状認識を我田引水するのはどうかと思うぞ

福間委員も同じような事を言っていてこの点に関しては物凄く懸念をいだいているところでありますが・・・・・

『足元、コール市場に復活の兆しが見られるが、その背景には、金融システム不安後退の影響による資金の需要と供給の増加などがある。こうした芽をつぶさないで育てていけば、資金偏在調整の担い手を日銀からコール市場に戻す際の混乱は少なくて済むと思う。』

コール市場の復活と金融システム不安後退の因果関係は相当怪しいところ。現状では企業のバランスシート調整っつーか要するに借入金絶賛大返済と、不良固定化貸付金の絶賛償却処理によって企業部門の資金需要が減退した(物凄く乱暴に言うとその分政府部門が真っ赤になっているのでしょうが)事もあり金融機関は基本的にどこも預金超過状態。単に短期金融市場でひところイールドカーブがそこそこ立って、資金ディーリング的な妙味が発生したからターム物取引が出来るようになったのではないかと言う可能性も否定できないっすな。つーか先ほど申しあげたように、、コール市場潰したのは量的緩和政策の効果なんですが。

で、コール市場に「資金偏在調整の担い手」という昔むかしの機能をイメージしているようなんですが、当面金融機関が預金超過状態にあるんですから資金偏在調整(昔は大手銀行は概ね貸出超過状態で毎日コール市場で資金繰りをしてました。だから97年に大騒ぎが起こった訳ですが・・・)じゃなくて単なる足元の需給調整と短期資金ディーリングだけの世界になると思いますが。(大手金融機関が貸出超過になるような頃にはとっくの昔にデフレ脱却してるでしょ)


どうもこの市場機能云々は福間さんと須田さんが主に主張しているようなのですが、そもそも前提としている認識に物凄く違和感を受けるものでありまして、何か大丈夫かと思ってしまうわけです。


○その他細々突っ込むと色々ありそうなんですが

まぁこんな所で。昨日の伊藤先生に関しては「うーん」という感想ではありましたが、日本銀行政策委員会審議委員というお仕事をしているお方にしてこのお話というのは大幅に血圧が上昇するものでありまして甚だ遺憾としか申しあげようがありませんな。

で、最後にとってつけたように「いずれにせよ現在の量的緩和政策を粘り強く続けていきたい」って書いているのがまた血圧急上昇ですよ。それなら延々と主張していたのはただのノイズですか?


・・・・と血圧も上がったところで本日は終了(^^)。

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2005/02/14

お題「当座預金残高問題とゼロインフレ問題」

今日も引き続き須田委員の講演絡みです。須田委員の講演に関する記者会見が同日(9日)に行われまして、その会見要旨が日銀Webにアップされましたが、案の定木曜日のドラめもんでご紹介した金融政策に関る部分(講演要旨12ページ中2ページ位の部分なんですが)に質問が集中しました。しかも結構強烈な質問が多かったりしたのは何でなんでしょ?

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0502b.htm

○「量的緩和政策はゼロ金利政策と違う」という茶番

最初の方(会見要旨を紙に出すと2ページ目の冒頭)に質問をしたお方が直球速球剛速球を投げ込みまして会見の方向性が決まった感があります(^^)。

『(問)いくつか質問させて頂く。まず、一点目は足許でオペの札割れが頻発していることについて、挨拶ではこれに対する対処方法として二つあげておられ、二つ目のやり方として一時的に目標を下回ることを認めるという対応について言及されている。また、その部分の最後のほうで少なくともこうした技術的な対応が必要になるかもしれないとご指摘されている。仮にこのような対応が行われた場合、30〜35兆円という当座預金残高目標に対し、目標を上回ることには「なお書き」というものが認められていて、一時的に上回ることもあり得る一方、下回ることについてもまた同じように「なお書き」で一時的に下回ることも認めるというのは、レンジの上下で上振れたり下振れたりすることを認めるということになるが、そうなれば量的緩和政策において30〜35兆円で今までやってきたことにどのような意味があったのかと疑問を持つ人もいると思う。上にも下にも需要に応じて増減させるということは、そもそもゼロ金利政策とあまり変わりがないのではないか。需要に応じて量を上下させるのであれば、99年2月から1年半ほど行われたゼロ金利政策とあまり差はないのではないか。そうだとすると、これまでの量的緩和政策というのはどのような意味があって、ゼロ金利と何が違うのかということをお聞きしたい。』

講演で「当座預金残高の一時的な目標割れは容認してよいのではないか」という話が出た事に関する質問ですが、「当座預金残高目標のなし崩し的な形骸化を行うと今まで日銀が政策に関して説明していた話しと違うんじゃね〜か」という事でして、誠に核心に切り込むものでございます。この部分に関する須田委員のお答え。

『最初のご質問についてであるが、私がもともと量的緩和政策における「量」について、ある程度変動幅をもったほうが良く、場合によって「量」を減らしても良いと思うのは、「金利を安定化させる」というよりも、逆に「金利機能を少しでも活かして欲しい」ということを念頭において、「量」の振れのことに言及しているのであり、ゼロ金利政策とは視点が違っている。本日お示ししたのは、もともと資金需要が非常に小さい状況下で、国債発行の増加、税収の増加といった政府の要因で日々の資金需給の振れが非常に大きくなっているのであり、そこのところの対応のほうを大きく考えている。資金需要が非常に弱い状況で、かなり短期の間で10兆円を超えるようなかたちでの資金の振れがある場合について、それにうまく対応できるかなと考えたときに、技術的な対応として、下振れてしまうことは許容しても良いのではないかと私は考えている。』

だいぶ苦しい理屈です。ゼロ金利政策との違いについては・・・・

『ご質問のゼロ金利政策との違いという点だが、いずれにしても「量」は必要以上に出し続けるということである。資金需要がどれだけなのかを図ることは私には到底できないが、この分だけ需要が減ったから、その分だけ減らせばいいということでは全くないと考えている。十分必要以上に「量」を出し続けることを前提として、当預残高目標の引き下げの可否を考えている。』

ただ、須田委員はこの記者会見の最後の部分でも発言しているように、これまで当座預金残高目標の引き上げについて反対に回っていた人でして、量的緩和政策の「量」の効果については直接的な効果がデメリットと比較して乏しいと主張してきている人ですので、そもそも論として量的緩和政策の量に関する認識が日銀の公式見解(というものは実は微妙に曖昧なので、多数派と思われる見解ですな)とはやや違いますんでそこんとこヨロシク。



○ゼロインフレに関する質問

講演でやたら「ゼロインフレ」について強調しているように見えた(しかしゼロインフレに関する大昔のグリーンスパン議長のコメントを引用してましたが、ついこの前の米国の金融緩和ってデフレ突入を回避する為に「ゼロインフレになる前」に実施したような気もするんですが・・・)のですが、案の定この点にも質問が。

『(問)基調的に消費者物価指数の前年比がゼロ%以上で、見通しもゼロ%を超えるという量的緩和政策の解除条件について、先程から述べられているように、挨拶では「ゼロ」は「ゼロ」と言葉どおりに捉えるべきだと言われた。さらに、展望レポートで、来年度の消費者物価指数の前年比の予想がプラスに転じ、広義の公共サービスを除けば物価がもっと上昇しているということであれば、早ければ来年度ぐらいには量的緩和政策の解除の時期が来るのかどうか、解除時期についてのお考えを伺いたい。』

『(答)本日申し上げたことについてであるが、量的緩和政策の解除の条件は何も変えていない。消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が数か月均してゼロ%以上、政策委員の多くが見通し期間において物価上昇率がゼロ%を超えるという見通しを有していること、という条件はそのままである。』

ここまではまぁごく当然のコメント。

『本日申し上げたかったのは次のようなことである。私は、物価の問題において、理念的には物価上昇率がゼロ%というのが物価の安定であると述べた。ただ、それを実際の数値に落としたらどうかと言えば、やはりプラスアルファだと考えており、ゼロだとは思っていない。但し、アルファがいくらかはわからない。それも時として変動していくと思う。その下で、景気に対応する物価と規制緩和により下落している物価が混ざっているのが今の一般の物価であり、景気に対応している物価が上昇しているというのがみえるのであれば、よく言われる「のりしろ」とか、プラスアルファとかはそこの部分で見てもらえばいいのではないかと考えている。』

講演でちょっと「ゼロインフレ」について強調しすぎたので、「実際はプラス」ということをコメントしております。んなら講演の時にあそこまで「消費者物価指数がゼロ」について強調しなきゃいいのにとも思う訳ですが、経済学徒としての「理念」をちと強調しすぎて「実際に落とし込むとどうなのよ」って話がうまく伝わっていないというのも如何なものかと思う訳です。既にゼロインフレがどうのこうのという部分は所謂リフレ派の人が早速槍玉に挙げているようですしねぇ。

『したがって、「数か月均してみて確認する」という結果の部分としては、「ゼロ」ということで判断すれば良いのではないかと思っている。ただ、念のため申し上げておくが、必要条件を満たしたから、すぐ量的緩和政策を解除するということでは全くない。今申し上げたことは必要条件であって、きちんと景気が持続的に回復していくかというところを主として見ながら総合的に判断するというところが一番大事である。特に物価だけに、しかも個別のことに引き回されて金融政策をやっているというのはおかしくて、基本的には物価の条件を早く満たした状態にしたうえで景気・経済・金融の実態をみながら、これから先の金融政策を考えていきたいというのが一番言いたかったことである。「ゼロ」は文字通り「ゼロ」と言ったからといってその分だけ私が量的緩和政策の解除時期を手前に引き寄せているということではない。』

だそうです。結局いいたかったのは「糊代論」の排除という事のようですな。こりゃ岩田副総裁や中原審議委員との意見対立が鮮明になって実にみものです。


○長期国債買入増額問題についての突っ込み

最初の剛速球質問に戻ります。

『二点目は、もともと量的緩和政策では、須田委員がご指摘の通り、資金供給を円滑に行うために長期国債を買い入れるという手段をとったわけだが、まずはそれをやってからというのが、そもそも論で言えば量的緩和政策なのではないか。長期国債の買い入れ増額をあらかじめ排除し、一時的に当座預金残高目標を下回ることを認めるということは、量的緩和政策自体がかなり歪んでおり、もともとかなり欠陥のある政策だと判断せざるを得ないと思う。』

須田委員のお答えは・・・・

『二点目の質問についてであるが、確かにもともとは、資金供給を円滑にするために長期国債の買い入れを増額することもあり得ると考えてきたわけだが、それは少しずつ増やしていくということである。挨拶で申し上げたように、今のような状況で簡単に長期国債の買い入れを増やすような対応ができるかといえばそうではないと思う。一時期に大量に買えば良いと言われれば、そうかも知れないが、資金ニーズがそもそも残高でみて下がってきている、資金需要がこれまでよりも弱くなっている中で長期国債をたくさん買えば他のオペの札割れが多くなる。市場参加者が欲している流動性ニーズに限りがあって、そのニーズが小さくなっている限り、そこに長期国債での資金供給を足したからといって、資金がうまく供給できるという自信が私にはない。』

長期国債の買入はハイパワードマネーの供給で日々の資金繁閑を均すものではないってお話なんですが、じゃあ長期国債買入を死ぬほど増やしたらどうなるのよって考えますと、この説明も少々アレではあります。で、その続き。

『それともう一つは、これから先の金融政策が正常化していくという過程を念頭に置いたときに、日本銀行のバランスシートを考えると、負債の部分では当預残高および日銀券といった短期の負債が大部分であるのに対して長期の資産を多く持っているということは、正常化の過程で流動負債を減らしていくときに、場合によっては、そういった長期の資産を売却しなくてはならず、それは調整の過程で、非常にコストが大きくなる側面もあると思う。この観点からも私は長期国債の買い入れで資金供給を円滑にしていくという選択肢は認められないと現在は考えている。』

所謂「リフレ派」といわれる人たちが具体的な施策について言及する場合、大体「日銀は長期国債をドンドン買いなさい」と言いますわな。で、目標インフレが達成されて、尚インフレが高進しそうになった場合はそれまで購入した保有長期国債の売却を行ってマネーを吸収すれば良いという風に処方箋を書く訳なんですが、須田審議委員はこの点に関しても批判的なのではないかと思わせる部分であります。まぁあたくしも所謂「リフレ派」の言ってる事って「実際にその通りに出来れば結構な政策だ」とは思うのですが、具体的処方箋が「そりゃ実際にやったらマズイんじゃネーノ」って所(例えば上記の施策だと、マネーの供給・吸収に伴って債券市場の需給が大きくぶれることによって長期金利が無茶苦茶に乱高下するリスクが高いんじゃねぇかと。所謂「リフレ派」の方に言わせると「期待が安定化するから市場の変動が小さくなる」というんですが、そりゃちょっと違いわせんかねぇと思うのですが)ですわな。


○そもそも量的緩和政策のコミットメントが・・・・・

最初の質問の第3点も大変に剛球でございまして・・・・・

『三点目は、足許のデフレについて随分細かく言及されており、読んでいてなるほどと思う点がかなり多い。例えば、広義の公共サービスを除くと、物価はここ数か月上昇している現状にはなるほどと思う。ただ、なるほどと思えば思うほど量的緩和政策の「消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで続ける」という枠組み自体が何かおかしいのではないかと考えるのが普通ではないかと思う。須田委員は、量的緩和政策の解除に関する約束は守るとおっしゃっている。ただその約束自体がもともとおかしい約束ではないかという考え方になると思うが、それにも関わらず約束を守ると言い続ける理由は何かお聞きしたい。』

何というストレートな質問なんでしょうか、感動した!

『今の量的緩和政策の枠組み、あるいは約束がおかしいという三点目のご指摘についてであるが、2003年10月に量的緩和政策のコミットメント ── 消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上になるまで量的緩和政策を続けるという約束 ── を明確化する際に、いろいろなことを考えた。明確化した条件については、こういった条件を付けると「ビハインド・ザ・カーブ」になる可能性はあるのだろうかといったことも考えた上で決定したものである。この条件については、我々は「ゼロ%」と書いているが、一時期のマーケットの反応をみていると、もう少し高いインフレ率になるまでこの状態が続くであろうと受け止められているようなところもある。そうではなくて、「ゼロ%」というのを言葉どおりと考えるべきである。』

糊代論に関しては講演にあるように、広義の公共サービスの下方バイアスがあるので不要だという事のようです。

『状況が変わったら条件は変えても良いのではないかという考え方に関しては、そういうことを一度行うと中央銀行の言っていることに対する信頼が欠如するということもあると考えている。また、金融政策の決定に携わるボードメンバーには任期があるが、メンバーが変われば条件を変えても良いというふうになってしまうのはとても怖いことである。中央銀行として過去に決定したことを尊重しながら、その時々の条件に応じて皆を説得しながら政策を変更していくということだと思っている。今の条件の「ゼロ%」が文字通り「ゼロ%」以上であるということならば、それほど厳しい条件ではないというふうに思っているし、そして中央銀行の信認を維持するためにもこの条件はこのままで守っていきたいと考えている。』


で、この答えに関して改めて質問がされました。なおも直球でして、

『(問)今の質問に関連して、三点ほどお聞きしたい。一点目は、個別の指標に金融政策が引き回されるのはおかしいということが、本日の挨拶からも良く伝わってくるが、そうであるならば、もともとの物価が安定、CPIコア前年比がゼロ%以上に安定的になるまでという約束自体がおかしいのではないか、それに拘ること自体がやはりおかしいのではないかと強く感じるがその点についてどうお考えか。』

『二点目は、約束を破ったら、日本銀行の信認の維持のために苦しくなるという点についても、もともと誤った約束なり、誤った政策なのであれば、それを続けることの方が、長期的に考えれば信認維持という観点からすれば非常にまずいのではないか。個別の指標に引き回されるのはおかしいという主張は非常に良くわかるが、そうであるならば、この量的緩和解除の条件自体もおかしいのではないか。論理的に考えればそうなるのではないかと思うが、須田委員のお考えは如何か。』

『三点目は、この条件をどうしても続けるということであるならば、須田委員が挨拶で言及されているように文字通り「ゼロ」に拘るのであれば、持続的な景気の回復が確認されれば、コアCPIがたとえプラス0.1%でも解除するという判断は十分にあり得ると聞こえるのだが、そういう理解で良いのかお伺いしたい。』

この直球に関してのこたえはこんな感じであります。

『(答)デフレはいけないことだということは政府も言っている。デフレから脱却しようということであるならば、物価はマイナスであってはいけないということだと思う。その物価がどの物価かということに関しては、私は決めの問題であるという部分もあると思っている。ただ、その物価について、その問題点も指摘しながらCPIコアを選択したのであるから、何か別のものに動かすものではないと思っている。デフレ脱却が望ましいというのが国民の判断であるとするならば、これは維持していく必要があるということだと思っている。一般論として「誤った約束だと思ったら、約束は破れ、破った方が良い」というのはその通りだと思っている。自分が決めたことは絶対に守らなければならないということではないと私も思っている。ただ、今、私が見ている限り、そういう状態が来るとは思っていないため、この約束を維持することが信認に繋がると思っている。なお、数字の上では、私はプラス0.1%でもイエスと言う。プラス0.1%でも良いと思っている。』

何というか苦しそうな回答だというのは良く判りました。結局三点目の質問に関しては「イエス」だというのは判りましたが、前の二点に関してはまぁムニャムニャという感じなのが考えを良く反映しているという事でしょうな(^^)。


○量的緩和政策に関する須田さんの見解?

最後の質問に関する答えを引用のみいたします。長いけど。

『(答)ここまで「量」を増やしてきた量的緩和政策であるが、私は「量」を増やすことにずっと反対してきた。このことからもおわかりのように、私は、「量」を増やすことの効果よりは、それがもたらすマイナス面の方を認識してきている。もっとも、今の金融政策に対する考え方が多くの人の間で一致しているかと言うと、そうではないとも思っている。金利ターゲット政策であれば、金利を上げるとか、下げるということで、金融緩和か、引き締めかということが多くの人にとってわかりやすいと思う。ただ、今は「量」を増やし、結果的にゼロ金利になっているという政策をとっているが、こんな「量」には意味がないと言う人がいる一方で、「量」が増えるということに対してプラスの評価をしている人もいる。例えば、資産価格に対する影響、ないしはもともとマネタリスト的な考え方をする人達にとって、「量」は意味をもっている。今実施している政策について、私は効果があるとしたら人々の期待に働きかけていくという効果の部分が大きいと思っている。どうすれば日本銀行が行う金融政策が、景気が下振れたときに景気を下支えする効果を持つだろうかと考えた時に、今のように「ゼロ金利」で、たくさんの「量」を供給しているという状況下では、人々がどう思ってくれるかということを重視せざるを得ないということであり、ボードメンバーが頭の中でここはこうすれば良いということができるような状況ではないと思う。人々の期待に働きかけながら政策をやっていかざるを得ない状況にあるということである。仮にマイナス面が少なければ私が本来望んでいるようなかたちでもう少し金利機能を活かしたような形の方向に移って行けるかもしれない。ただ、そういう判断はどうしても期待を通じる効果ということを念頭に置く必要がある限り、相手が国民や市場ないし海外がどう受け止めるかということなしには議論できない。政策委員会は必要ないと言われたが、金融政策というのはポリティカルな面も非常にあり、実際に政策をやった者にしかわからないところがあるのかなと感じている。』


引用しまくって物凄く長くなってしまった事をお詫びいたします。

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2005/02/10

お題「須田審議委員の講演:金融政策に関る部分に関して」

昨日は須田審議委員の講演が行われました。須田さんの講演は内容が結構細かくて毎度毎度量も多いので引用とかしながら紹介しておりますとドラめもん1回分では済まないんで、本日はとりあえず金融政策に絡む部分に関して読んでみたいと思います。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0502a.htm

○ゼロインフレが目標ですかそうですか

講演の後半部分で「物価と金融政策」って小見出しでお話しをしているのですが、須田委員はこのように言っております。

『日本銀行法15にも定められているとおり、金融政策を運営する上で、「物価の安定」が重要な地位を占めていることはいうまでもありません。物価の安定が保たれていれば、家計や企業等のさまざまな経済主体が、物価の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができます。』

まぁそんなもんでございますかね。

『グリーンスパンFRB議長は「物価の安定」の定義を、「経済主体が意思決定を行うに当たり、将来の一般物価水準の変動を気にかけなくてもよい状態」と表現していますが、「具体的な水準はどこか」と問われて、「インフレ率が正確に測れるならば、ゼロである」と答えています。プール・セントルイス連銀総裁もそのような考え方に賛成しています。』

え〜ゼロインフレっすか?と思って(引用したときに脚注の番号を省略しているんですが)脚注を見たら、グリーンスパン議長の発言って96年7月のFOMC議事録だそうなんですが、そりゃちょっと昔過ぎませんか?って気も少々。プールさんのは2004年だそうです(脚注先の文書は見てませんが)んで、まぁそれは良いとしまして。

てな訳で、こういう事になるそうです。

『私も物価の安定を数値で問われたら、「理念的には物価上昇率がゼロ%」と答えるでしょう。物価が変動すると、メニューを書き換えなければならないといった資源の無駄遣い、相対価格の変動が不必要に大きくなるため相対価格がもつシグナル効果の低下、価格変動の不確実性がもたらすリスク・プレミアム、税制を通じる歪みの発生などによって、資源配分の効率性が損なわれることになるからです。』

ゼロインフレは理想なのかもしれませんが、じゃあきちんと常にゼロインフレにできるかというとその間にマイナスインフレになったらどうなのよって話については続けて須田さんはこのように指摘しています。

『もっとも、理念上のゼロインフレを実際の物価指数に当てはめることは容易ではありません。物価指数の選択の難しさに加え、物価指数には様々なバイアスがあり、かつその幅が変動する可能性があることから、バイアスをある一定の数値に決めその大きさをもって、ある物価指数による数字上の物価安定の定義とできるわけではありません。つまり、物価の安定についての理念上の概念と実際の物価指数とを常に具体的な特定の「数字」でもって関連付けることはできません。』

『また、ゼロ金利制約、名目賃金の下方硬直性や債務契約の硬直性などの存在が物価下落特有のコストをもたらす可能性があることなどから、デフレに陥らないためにインフレ率を若干プラスにしておく方が望ましいという議論もありますが、これについてもデフレのコストは経済状況に応じて変化しますし、「のりしろ」としてある適当な値を導くことが必ずしも常にできるわけではありません。』

まぁこのあたりだけ引用しているとこのお方は激烈的インフレ退治論者と思われそうなので補足しますと、この話をする前に特に「広義公共サービス(電力料金その他ですな)の価格問題」について言及しておりまして、広義公共サービスの価格が規制緩和のもとで基調的に下落傾向が持続し、世界的に見て割高なこれらの価格が是正されるという点を指摘しております。即ち、広義公共サービスの価格下落は構造改革の成果としての物価下落でありますが、この価格下落も消費者物価指数という面で言えばマイナスに作用するので、景気が回復を続けても消費者物価が上昇しにくい状況が続く可能性があるという点を指摘。

そんな背景があるので須田委員は敢えて「ゼロインフレ」を強調したと思われます。


○当座預金残高維持問題について

最初に結論を書きますと・・・・

(1)短期金融市場における資金供給オペで札割れが続くのは金融機関の流動性
問題が解消に向かっている証左であり、望ましい方向への変化である
(2)長期国債の買入増額で残高維持をするという考え方は賛成しがたい
(3)当座預金残高が一時的に目標を割り込む事も容認すべきではないか
(4)当座預金残高目標の引き下げは今までの「引き上げ=金融緩和」との整合性
をどうするのかという問題がある
(5)よって目標を減額せずに技術的な対応をするのが吉では

って話しですな。書いているうちに時間がなくなってしまった(汗)ので、あとは上記の点の部分を引用します。

『最初に、このような現象(引用者注:短期市場での札割れ)が生じている背景について、よく考える必要があります。金融機関の流動性需要が着実に減退していることは、不良債権の減少を背景に、金融システム問題が改善に向かっていることを反映しています。金融システム問題の解決はわが国の経済にとって過去10年以上に亘る課題であったことを考えると、最近における札割れの発生は、金融機関が最早従来ほどには流動性を必要としないというサインを送っていることを意味しているのではないでしょうか。その意味では、最近の札割れの発生は、それ自体としては望ましい方向への変化です。そうした基本認識をもったうえで、従来と同様の大量の流動性を供給することが適当か、また可能かというのが現在問われている問題です。』

『残高目標達成がむずかしいのであれば、「長期国債の買い入れを増額すれば良いのではないか」、という声も聞こえてきそうです。確かに、過去の局面では、「資金供給を円滑に行うため、長期国債の買い入れを増額する」という手段をとったのも事実です。もっとも、金融機関では最早従来ほどには流動性を必要とせず、金融機関側がオペの取捨選択をしているといわれるような現状では、長期国債買い入れオペ自体が札割れすることはないとしても、その分、その他のオペの入り具合が悪化することが考えられ、根本的な解決策にはならないのではないかと思います。さらに、中央銀行のバランスシート上、流動性負債(日本銀行券、日銀当座預金残高)に比べ、長期の資産を持ちすぎると、流動性を吸収する正常化の過程で、長期の資産を売却せねばならず、市場への影響等を勘案すれば調整を難しくする可能性があると考えています。』

『一つ目の考え方(引用者注:当座預金残高目標の引き下げ)については、当座預金残高目標の引き下げは、潤沢な資金供給を限界的に減らす技術的なものであることを理解してもらう必要があります。実際、国内の短期市場の関係者からは「多少当座預金残高目標が引き下げられても、なお所要準備比じゃぶじゃぶの資金供給は継続されるため、過剰反応を起こすようなことは考え難い」との声が聞こえてきます。ただ、これまで当座預金残高目標の引き上げについて、金融市場の安定確保とそれを通じた景気回復を支援する効果を念頭においた「金融緩和である」という説明を行ってきたこともあり、目標の減額の可否については、減額に対する内外市場や国民の受け止め方と市場機能の改善の程度を比較考量する必要があります。その大小関係はそのときどきの経済・金融環境などによって異なってくると考えています。』

『一方、二つ目の考え方ですが、当座預金残高目標を維持した上での、まさに技術的な対応です。最近の資金需給動向をみますと、金融機関の当座預金ニーズが減退している中で、国債発行の増加や税収の増加といった政府の要因で日々の振れが過去に比べて大きくなっています(図表20)。資金余剰感が増大しているもとでのこうした状況を勘案して、オペによる資金供給が難しくなった時に、資金需給の振れに伴う一時的な目標レンジ割れを認めるという対応です。これまでやってきたオペの工夫にも限界がありますので、オペ・ニーズの減退が持続するようであれば、少なくともこのような技術的な対応が必要になるかもしれません。』


まぁそうなるのかも知れないんですけど、当座預金残高目標に5兆円のレンジがある上に「なお書き」で残高目標の上限突破と下限突破を容認するってのは何だかそりゃ何のための当座預金残高目標設定なのかもう無茶苦茶って気もするんですが、まぁここまで色々と結論先にありきで理屈をこねくり回して来た弊害がどんどん顕在化してきておりまして、誠に香しいものがございますな。

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2004/10/07

お題「須田審議委員の講演」

月末の金融政策決定会合で展望レポートが出されるわけですが、その前に審議委員の皆様一通り講演でもしてくれって感じなのでしょうか。で、この須田委員と言えば「日銀の本来の主張に近いお話をする人」というのがあたくしのイメージでして、その昔あたくしが読んだ「金融政策」って本(今は日本銀行金融研究所所長であります翁邦夫さんの書いた本)の論理展開と同じような金融政策論を展開するのが印象的。

という事で、須田さんの講演はあたくし的には割と注目していたりする訳ですな。ついでに申しあげますと、このお方の講演要旨って非常に読みやすく纏まっておりまして、まぁ字数は多いのですが実際に読んでみると読みやすい(と思う)のでご一読を推奨。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0410a.htm

○景気に関する見方はまぁ標準的

景気に関してはやや減速気味ではあるが、巡航速度へソフトランディングする流れの一環であり、今年度に入ってから日銀が折に触れて言及している「前向きの循環メカニズム」は引き続き絶賛継続中で要するに回復傾向変らず。講演要旨がよく纏まっているのであたくしが余計なコメントするよりは丸引用した方が吉かと(と言う事にして手抜きを誤魔化すのだが)。

『わが国の景気の現状をみると、輸出、設備投資を中心に最終需要の回復が続いており、生産活動などからの好影響が雇用面にも及んでおります。更に、個人消費もやや強めの動きを続けており、総括すれば「わが国の景気は、回復を続けている」状況です。』

『最近、米国を中心に世界経済が若干減速気味である中、電子部品・デバイス工業製品の在庫増加や原油価格の高騰等のネガティブな材料もあり、足許と先行きの景気に悲観的な見方が散見されます。もっとも、私としては、4月の沖縄県金融経済懇談会の席上でも申し上げましたとおり、米国の経済成長率は2005年に減速すると考えており、それに連れてわが国経済も減速すると考えておりましたため、減速自体は、然程、驚くようなことではないと思っております。』

『わが国経済の先行きについては、米国を中心とする海外経済が巡航速度へ減速するという想定のもと、わが国経済の成長も減速するものの、引き続き潜在成長率を上回る成長率が実現できるというのがメインシナリオではないかと考えています。つまり、原油の高騰や半導体の在庫調整等による海外経済の調整が本格的なものにならずに一時的なものに止まり、輸出が徐々に増勢を取り戻し、企業部門から家計部門への所得の波及が次第にみられ始め、足許の所得比強めの個人消費の維持や設備投資における製造業から非製造業・中小企業へのバトンタッチの動きが広がり、前向きの循環が明確化していくというシナリオは維持できると思っております。 』

引用した3つの文のうち、最後の部分の文章の書き方なんですが、まず結論を書いた後に「つまり〜」と要因を書くというスタイルが金融経済月報の基本的見解の書き方と似ている(というか同じ)ので本職でもないのにマニアックに金融経済月報読み続けているあたくしにとって「読みやすい」のかもしれませんな。余談ですが。

景気先行きに関するリスクはこんな感じです。まぁありがちですが。

『現時点で特に注視が必要だと考えられるのは、まず、世界の景気を牽引している米国、その恩恵を受けている中国等アジア諸国を始めとする海外経済やIT関連需要が想定以上に減速するリスクです。この点については、これから始まるクリスマス・年末商戦に注目しております。もちろん、原油価格の動向も要注意です。また、米国の「双子の赤字」についても、古くて新しい問題ではありますが、足許の赤字のレベルは既往最大規模となっており、大統領選挙後に米国政府がどのような動きをみせるかが気になります。』

まぁ総じて標準的な見解って感じです。


○物価の見通しはちょっと弱気気味か?

で、物価に関しては最近おなじみのユニット・レーバー・コストの低下傾向が当面持続するために、物価上昇圧力を吸収してしまうでしょうってお話です。どっちかというと弱気の部類に入るのではないでしょうか。

『さて、物価の先行きについてですが、潜在成長率を上回る経済成長率が実現できるというメインシナリオのもとでは、需給ギャップは次第に改善していくものと思われます。』

となりますと・・・・

『素直に考えれば、その延長線上には消費者物価指数の前年比上昇率のプラス転化が展望できますが、』

「展望できない」というお話が続くわけですな。当然ながら。

『1.生産性の上昇率をどうみるか、2.企業の人件費抑制圧力がどの程度強いのか、によって見通しは変化すると思われます。別の言い方をすれば、これまでは非正規雇用の活用もあって賃金が低下しており、この賃金を生産性で割ったユニット・レーバー・コストが低下したことが物価の上昇を妨げていた原因の一つですが、先行きこのユニット・レーバー・コストの低下傾向をどうみるかがポイントとなります。これには後に述べる企業による構造調整がどこまで進んでいるとみるかにも係ってきますが、それを見通しの中に織り込むことは難しいと考えています。』

という事で結論はこうなります。

『私としては、当面はユニット・レーバー・コストが低下傾向を持続し、原油価格の高騰等のコストプッシュ要因は、基本的には収益で吸収できると想定している一方、所得に裏付けられた消費の増加はまだみられないため、消費者物価の価格上昇圧力は強くないとみています。とはいえ先行き不確実性がありますので、予断をもたずにみていきたいと思います。』


○金融政策に関して

本当はこの講演のお題は「日本経済の現状・先行きと構造調整」というものですので講演の本題であります構造調整に関する部分もご紹介しないといけないのですが、その部分はスルーしてしまいまして(汗)、金融政策に関する部分に飛んでしまいます。

量的緩和政策の副作用について言及しているのですが、まぁ正直言ってそんなに重大な副作用があるような話にはなってませんな。

『景気回復のもとでもこのような超低金利を持続させているがゆえに、利払いの重さが、企業自らが主体的に生き残りをかけて「選択と集中」に取り組むというインセンティブになりにくかったという点で、構造調整を遅らせる面があったことも否めません。また、短期金融市場金利を限りなくゼロにしているため、資金余剰の金融機関、特に地域金融機関が余剰資金を短期金融市場で運用して利鞘を稼ぐという利益機会を結果的には奪ってしまっているということもいえると思います。』

構造調整がどうのこうのという所は昔から言われていることですが、「景気回復のもとで」って前置きをおいているのがちょっとだけ印象に残るかなって所ですか。それにしてもデメリットとメリットを比較したら(講演では比較してませんが)どうみてもメリットが大きいって話になりそうですな。

まぁそれは兎も角と致しまして、本講演での金融政策に関する言及部分でちと読み込む必要があるのはこの後の部分でして、本来はフォワードルッキングで行われるべき金融政策が量的緩和政策の出口において「ビハインド・ザ・カーブ容認」みたいな話が流れとなっているような雰囲気(岩田副総裁が最右翼ですけど。近日中にちゃんと分類しますね)もありますので、ちょっと一石を投じているという感じのお話になっています。

と、書いちゃうと「タカ派」という印象になってしまうのでしつこく補足しますと、恐らくこの辺の部分に関しては「総合判断の重要性」を言いたいのだと思います。岩田副総裁は講演その他で「再びデフレに突入しないためには1%くらいの糊代が必要」と実質的に量的緩和のコミットメントをゼロから1%に引き上げるべきというような論議を展開しておりますが、そういう機械的な金融政策はいかがなものかって事を言いたいのではないでしょうか。

『(量的緩和政策の)コミットメントには「消費者物価の前年比上昇率が先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要」とあります。それを私どもの先行き見通しで判断することになりますので、この政策の枠組みにはフォワードルッキングな部分が含まれているということになります。ところが、先程も申し上げましたように、経済・物価の先行きについてはかなり不確実な面があります。このような不確実性の高い状況下で、フォワードルッキングな政策を行うのは正直にいって難しいといわざるを得ません。政策運営にあたってはマーケットとの対話の観点からもアカウンタブルである必要がありますので、なおさらです。 』

『先行き不確実な状況で、フォワードルッキングかつアカウンタブルな政策を採ろうとすると、一度に大幅な政策変更を行うよりも、まずは小幅な政策変更を行い、様子をみながら必要に応じて追加的な政策変更を行う「漸進主義」(gradualism)がある程度望ましい政策運営方法になると考えられます。バーナンキFRB理事は、「漸進主義」のような政策の方が先行きの金融政策について予想しやすく、中央銀行は長期金利を直接操作するようなことはできないものの、現在と将来の短期金利を通じて長期金利への影響度を高められるうえ、金融市場の不安定化のリスクを減らせると述べています。』

所謂「リフレ派」の皆様が崇拝するバーナンキ氏のコメントを持ってくる所が実に芸が細かいところであります。もしかして岩田副総裁への皮肉ですか(^^)??

『私は、わが国においてもコミットメントが達成され量的緩和政策が解除された後の金融政策については、―― その時点での経済・物価情勢にもよりますが ―― 基本的にはこのような「漸進主義」が採られることが望ましいと思っています。現在は異常事態に慣れ過ぎてしまっていますので、金融政策正常化のプロセスでは、政策の効果がどこにでているか、マーケットの反応や世間の受け止め方はどうか、経済の情勢判断が正しいかどうかを確かめながら、政策を運営する方が望ましいと考えるからです。』

ここで読み間違えてはいけないのですが、須田委員はあくまでも「コミットメントが達成された後」のお話をしている事です。この後に「量的緩和解除が遅れた場合のリスク」について述べているので「タカ派発言」と取ってしまいそうなのですが、それはちょっと売り材料に読み過ぎという事になるでしょう。

ただし、今まで良くあった話では「判断が遅れた場合のリスクは小さい」と言っている人が多かった中なので、この部分はやっぱり目立つでしょうな〜。

『但し、この場合、政策変更の幅が小幅過ぎ、かえって政策変更が遅くなり過ぎる可能性があるため、場合によってはマーケット等の予想が上振れし、結果として、後で大幅な政策変更を余儀なくされる可能性があります。この可能性の大きさは、量的緩和政策解除が適切なタイミングで行われるかどうかにもかかわってきます。仮にコミットメントが達成されたかどうかの判断が遅れ過ぎますと、そのような可能性が高まります。』

しかも「マイルドなデフレのコストが減少している」って話までしてるわけでして、以前ご紹介した山口前副総裁の時事通信インタビューも彷彿させるのですな。

『金融システム不安が解消されつつある今日、デフレスパイラルに陥る懸念を耳にすることはなくなりました。また、これまで申し上げましたように民間企業の債務削減などの構造調整が進展し、潜在成長率の上昇、今後物価が上昇するとみる人の増加、労働市場の硬直性の低下など、デフレになると大きなコストをもたらすと指摘されてきた条件・要因に改善傾向がみられ、かつ不良債権処置に目処が立ちつつあるといえるようになった現在においては、マイルドなデフレのコストは量的緩和政策導入時よりも減少していると思います。』

引用を端折っちゃいましたが、この前に「政策変更が遅れた場合のコストと早かった場合のコストの比較勘案は、先行きの見通し(デフレ再突入リスクおよびそのコストと将来の大幅金利引き上げのリスクおよびそのコストを勘案して)に依存する」というお話をしておりまして、そういう流れで言えば「ビハインド・ザ・カーブのリスクは絶賛容認というのは如何なものか」という発言ではないかと思います。


引用が多くて長くなりましたが本日はこんなところで。

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「須田委員の講演(その2)」(2004/05/31)

ネタ不足によって予定通り(?)金曜の続きです。

○FRBに学ぶ対話戦略の重要性

FRBの情報発信に関して、特に先般来の金融緩和政策の似非コミットメントとその解除という実例をあげて「FRBの市場との対話ーデフレ懸念を巡ってー」ってなお題でお話をしています。FRBは時間軸効果の解除を徐々に行う為に色々と工夫していましたが、必ずしも全面的に評価しているわけではなく、

『日本の経験を生かしたつもりが、結果的には政策への期待が予想以上に大きくなり過ぎ、金利の振れを生じさせたことは、市場との対話の難しさを示す一例だと思います。』

などと指摘していますが、FRBも日銀からは言われたくないだろうにって感じでしょう。まぁその後でFRBの工夫について学ばないといけないってフォローしていますけどね。

『このように声明文を変更させることで、FRBは時間軸効果を徐々に解除していくのに成功したように思われますが、声明文の変更だけで市場の期待をうまくコントロールできたわけではないと思います。』

確かにご指摘の通りでして、FOMC議事録の公表も市場の期待のコントロールに寄与しているわけであります。

『この間、1月の「相当期間」の削除は市場を驚かせ時間軸が大きく短縮化したと解釈されましたが、その後に公表された12月FOMCの議事要旨が市場の落ち着きに貢献しました。なぜ議事要旨が市場の落ち着きに貢献したかというと、12月のFOMCで複数のメンバーが「相当期間」の削除を求めていることが記載されており、その後の強い指標の発表もあったため、1月のFOMCでは他のメンバーも「相当期間」の削除に賛成したという流れに、市場が納得したという面があったと思います。』

『また、2月11日の半期金融政策報告は、声明文とほぼ同じ文章で締めくくられていましたが、現在の金融政策について適切だと述べていたほか、僅かな言葉の違いを見出して、グリーンスパン議長が利上げを急いでいないというように市場は解釈しました。』

この「僅かな言葉の違いを見出して」ってのが泣かせる所でして、先日どこぞの中央銀行の総裁は記者会見で逆切れしてこんな事を言っていた事を思い出してしまうわけです。

『(答)全く同じ言葉を使わなければ同じ見方ではないというところまで厳密にお考え頂くのであれば、言い直さなければならない。今まで通り「緩やかな回復過程を続けている」という判断に変わりはない。毎回「緩やかな回復」が続いているとしても、何か心配事があるのかないのかということまで考えて言えば、そうした範囲の景気回復であれば、当面そんなに大きな懸念材料がないという意味で「順調だ」ということだ。私の使う単語について、あまり厳密にその連続性をご理解頂かないほうが会話がしやすい気がする。』

ちなみに2月26日の総裁記者会見でのご発言でした。


で、話を戻してFRBですが、5月には時間軸の解除を行ったような事をしたのですが、この時の期待の安定化にはグリーンスパン議長の議会証言を活用しています。

『その後、5月のFOMCに向けて、3月19日に公表された1月のFOMCの議事要旨によって、「辛抱強くなれる」という表現を削除すべきという意見があったことが公表され市場で注目を浴びました。』

『これに対して、4月20日に行われた上院銀行委員会でのグリーンスパン議長の証言では「デフレ懸念は過去のものとなった」と述べるとともに、「辛抱強くなれる」との表現がなくなり「必要に応じて行動する」との表現に変更されたことから、市場では早急な利上げ観測が生じました。もっとも、翌日には「足許、広範なインフレ圧力は発生していない」と、インフレに対してより中立的な発言になったことから、市場の早急な利上げ観測は後退しました。また、それとともに「辛抱強くなれる」という言葉の削除が市場に織り込まれることとなりました。』


○日本は今後どうするのかという話

『このようなFRBの対話戦略に得るものは多いのですが、残念ながらこのような方法は日本について必ずしも適用できません。それは、一つには議会証言で求められる内容やスタイルが異なるということがありますし、議事要旨の内容も議論を幅広く載せるというスタイルであるため、メッセージや焦点が惚ける可能性があるということもあります。』

で、まぁおまけに日本では既に量的緩和のコミットメントに関して一部で誤解があるなんてぇ話もしてますが、引用するとくどくなるので省略。

まぁ議会に年がら年中総裁が引っ張り出されてしょうも無い質問を受けて不規則発言をお返ししてしまうような状況ですんで、中々期待の安定化にはほど遠い状況ではないかと実に寒い状態なわけです。

で、将来の時間軸の強化といった点に関しては須田委員は思いっきり否定的でありまして、こんなコメントをしております。

『今後、現在設定されている必要条件が満たされたことだけを受けて直ちに量的緩和政策を解除するということはありませんが、いつ解除されるかが定かでなくなることに対し、市場における解除時期を巡る不安感の解消のために解除条件を厳しくすることが求められるかもしれません。しかし、デフレ脱却の道筋が見えてきたときには、今のような「物価」だけの強いコミットメントで日銀の手足を縛ることではなく、国民からの信認を得て総合判断で金融政策を運営する方が私は望ましいと思います。そのためにも、今回の米国の対話戦略を学んでおく必要があると思っています。』

と言うことで、須田委員は「総合判断」派であるという宣言をしておりまして、中原委員との今後の論戦(があればの話ですが)が期待される所でございます。


○金融政策の透明性向上のためには

1.金融政策の目的の透明性向上

『まず最初に、金融政策の透明性を高めるには、金融政策目標を明らかにしておく必要があります。金融政策の目的を「物価の安定」と表現すること自体にはコンセンサスがありますが、問題はその解釈です。物価の安定といった場合、何らかの物価指標の数値を用いて定義する場合と、持続的な経済成長の基礎的な前提条件としての物価の安定を考え、物価の安定をより広い概念で捉える場合とがあります。前者は数値目標の達成が、後者はマクロ経済環境の安定化を図ることが重要となります。』

で、まぁ前者のように数値を出す事に関して、昨今ではあたかも望ましいインフレ率について合意ができて、中央銀行の信頼性の向上や物価安定やインフレ期待の形成に役立つという議論がされる場合もありますが、その点に関しては須田委員は『私はそんな単純なものではないと考えています。』と否定的です。

コミュニケーションの道具として物価安定を数値化させることにメリットがあるかどうかという観点から目標の数値化を行う場合、資産価格との折り合いをどうするかという話もあります(が、今更その話は日本では証文の出し遅れかと思いますが)ので、次にこんな話を。

2.バブル下での望ましい物価目標

『金融政策の目標は物価の安定だといった場合に、資産価格の動きをどう扱うかが問題になりますが、資産価格を政策目標に取り込むのは望ましくないというのが一般的な意見です。この際、物価安定下での資産価格上昇にどのように対応するかというのが難しい課題になります。とりわけコミュニケーションの向上を目的に目標の明示化をする場合には、困難が伴います。このことは現在のイングランド銀行のケースを考えると難しさが伝わってきます。』

どういうケースだったかと言うとこういうことらしいですな。

『英国では、政策目標未達の場合、大蔵省への弁明のための公開書簡が必要となりますが、足許、消費者物価上昇率が目標下限値の1%に近付いています(3月+1.1%)。それにもかかわらず、住宅価格の上昇が続いているため、5月の金融政策委員会(MPC)で金利を引き上げました。このことは政策の柔軟性の証であるともいえますが、過去三回の継続的な金利上昇がすべてインフレーション・レポートの公表時(したがって三か月ごと)であったことから考えると、消費者物価上昇率が目標をかなり下回っているために、インフレーション・レポートの力を借りなければ利上げへの政策変更を説明しにくいという意味で、政策決定の制約要因になっていると思います。それでも現在、市場が金利の上昇を受け入れているのは、英国の景気が良いことと、イングランド銀行への信認があることが影響していることは否めません。』

日本では資産価格上昇にも拘らず消費者物価が安定しているために金融引締めが激しく遅れてバブル祭り大発生になってしまい、向こう10年以上にわたる需要を先食いしてしまったかのような好景気の反動で非常に悲しい日々が続いている訳ですな。

そのため、須田委員は望ましい物価目標を定める場合には資産価格上昇時に適切な金融引締めを可能にするために『日本のバブル期を振り返ってみて、望ましい物価上昇率の下限が、バブル期の物価上昇率よりも高いような状況は避けておきたいと思います。』と指摘しております。

3.金融政策ルールの透明性

段々技術的な話になってきましたが、最近はやりの「より透明な金融政策」ってのに対する反論でもあろうかと思える部分であります。おそらくどこぞの学者大臣や学者副総裁あたりはテーラー・ルールのようなものを想定したと思える発言をしていたりするのですが、これに対して須田委員の反論。

『私も政策反応関数として、機械的なルールを適用できないと思っています。委員会で決定している政策を単純なルールでどの程度表わせるのか疑問であると考えています。それは、金融政策のトランスミッション・メカニズムについて、ある程度の共通の理解が前提となるからです。』

『厳密なルールはわかり易いとは思いますが、このような決定プロセスのもとでは、構造変化や大きなショックに直面した場合に、特にルールの継続性について、市場から疑念を持たれ易いと思います。ルールは、その時々のメンバーが日々の判断を積み重ねることと、それを通じて自ら「学ぶ」ことに委ねるしかないのではと思います。』

4.情勢判断の難しさ

どうもこの講演のまとめの部分とおもわれるこのコーナーは話がピョンピョンと飛ぶので、書いているこっちも纏め難いったらありゃしないのですが、まぁ要するに言いたいのは「情勢判断は目先の数字でも中々区々まちまちである事が多い」「従って情報発信に関してはあまり目先の数字で細々と情勢判断を発信していくのは如何なものか」「ところで、市場関係者も日銀の判断ばかり気にしないようにしましょう」と言った所です。


○最後に「出口政策の検討開始宣言」

最後の最後のまとめのところもまた色々と話をしているのですが、出口政策を検討し始めるべきであると言う須田委員の意見表明がなされておりますので、最後にそこを引用します。

『ゼロ金利制約のもとでは、金融政策の波及効果は主として期待を通じるものとなるため、今のコミットメントの必要条件が達成されたあとに、どのような出口政策を考えるのかについても、不確実な要素が多すぎるということだと思いますが、市場の誤解を防ぐためにも考え始める必要があると思います。』

引用多大で恐縮至極でした。

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「須田委員の講演」(2004/05/28)

去る5月15日に須田審議委員が日本金融学会春季大会で講演を行いまして、その内容を加筆修正した講演記録「中央銀行の情報発信と金融政策」というのが日銀のWebにアップされました。紙に打ち出すと18ページ(実質16ページ)の大作となっておりまして、これからご紹介するように「須田委員の個人的な意見」として日銀の情報発信をどうしていくかと言ったお話をしております。中々興味深い内容でして、とりあえず本日はざっと目を通した段階でのご紹介で恐縮であります。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0405c.htm

○金融政策の透明性とは何ぞやという話

講演の最初の方はこの講演の根本であります「金融政策の透明性とは?」って事の説明です。

『中央銀行はオーバーナイト金利や準備預金(または当座預金)などを操作目標として、金融政策を運営していますが、操作目標の水準自体が実体経済に直接働きかけるというより、むしろ金融政策の見通し、例えば、オーバーナイト金利の先行き予想が、長めの金利や資産価格に影響を与え、それらを通じて実体経済に影響が及ぶということです。』

『すなわち、中央銀行がどのような政策目的をもち、足許や先行きの経済をどのようにみていて、かつ政策目的と経済情勢判断とを対応させて先行きどのような金融政策を採ると思われるか(政策運営方法)、についての市場の予想が、政策の波及効果にとって非常に重要となります。』

ということで、「金融政策の透明性」とは何ぞやと言いますと、

『金融政策の透明性は(略)(1)政策目的、(2)経済情勢判断、(3)政策運営方法、という三つの視点から議論されています。』

となるわけですが、なぜ透明性を強調するかと言いますと、

『これらにかかわる情報についての透明性が全体的に高まれば、市場参加者は経済情勢に応じて中央銀行がどのような政策を採るのかをより的確に予想できますので、中央銀行の政策運営に関する不確実性が小さくなります。この結果、長めの金利形成についても、中央銀行の政策意図がより正確に反映されることになります。延いては、期待が安定化し、リスクプレミアムも縮小し、経済主体も中央銀行が望んだ方向に反応すると想定できます。』

と言う事なわけです。


○情報発信は高品質でいきましょう

『透明性を向上させるべく情報発信を行うためには、どのような情報を出すかということに加えて、情報発信のフレームワークの構築が重要です。これを構成するものとしては、日本銀行についていえば、金融経済月報、経済・物価情勢の展望(いわゆる「展望レポート」)、金融政策決定会合議事要旨、総裁の定例記者会見などがあげられます。』

これらの情報発信の枠組みにあるものは「定期的」に行われて、内容が「包括的」であって「事前のコミュニケーション」と言われてるそうです。で、この枠組みで出てくる情報発信の意義はと言いますと、

『このような情報発信は、市場にとって金融政策決定会合での対外公表文に含まれる中央銀行の意図や目的を理解し易くします。政策の意図や目的を明示すれば、中央銀行としては、自らのレピュテーションを守るために明示した意図や目的に沿った行動を採る必要があり、それは結果的に中央銀行への信認を高めることにつながります。また、情報を手にした人が、自分だけでなく、他の全ての人もそれと同じ情報を手にしていると確信できる、つまり「共有知識」につながることが意味を持ちます。』

と言う事になるのですが、当然ここに落とし穴がある事を須田委員は指摘している訳で、何気に現状批判になっているのではないかとも。

『また、有効な情報発信を行うためには、情報発信のフレームワークの構築とともに、そこで発信される情報の質を高める必要があります。裏返せば情報発信のメリットは、質の高い情報、つまりノイズのない情報の存在が前提であって、情報の質が悪ければ情報発信は益よりも害をもたらす可能性が高いといえます。例えば、景気や物価についての判断にかかる情報発信を行ったとしても、その内容が正確でなければ、かえって市場の混乱を招いてしまうといったことです。』

中央銀行といえども無謬ではありえないので「ノイズの無い情報」ってのはちょっと逆の意味で問題ではないかとおもうのですが、まぁそれは兎も角として、「情報の質が悪ければ情報発信は益よりも害をもたらす可能性が高い」ってもしかして他の審議委員を暗に批判してません??


○金融政策決定会合の運営話

金融政策決定会合の議事録は10年後に公表され、そのときには誰が何を言ったかというところまで公開される訳でして、その辺も意識しながら須田委員はこんな感じで決定会合に出席するそうです。

『議事録がいつかは公開されると思うと、自分の発言に責任を持つという意識がより強まります。例えば、過去の発言との整合性もなければならないと考えますので、過去の発言などもチェックしながら、時間をかけて発言原稿をしっかりと準備します。』

FOMCでも発言原稿を準備しているそうですね。

『金融政策決定会合のディスカッションは、まず各委員が順番に金融経済情勢と金融政策について、意見を開陳しますが、この意見開陳については時間制限(各々5分程度)があるため、いかにポイントを絞って意見を述べるか、いつも苦労しています。また、各ラウンドの後に自由討議の時間があります。自由討議は、各委員の発言内容に沿った部分で盛り上がることはありますが、発言を超えて自由闊達にドンドン議論を広げていくことには難しさがあります。』

中々興味深いご指摘でありますな。

『言いたいことを前もって準備しておくこのような意見開陳の仕方は、少なくとも私にとって、その場の判断でアドリブで話すよりもわかりやすくかつ内容は濃いものになりますし、時間の節約にもなります。他方、準備なしに特定の問題について突然議論を始めても、全ての話題について質の高い議論をする自信はありません。また、他の委員の意見を聞いてその場で判断を大幅に変えるということもまずあり得ません。他の委員の発言に対してその場で意見を述べることはあるものの、本格的にその意見に対応したい場合には、次回の金融政策決定会合で対応しよう、ということを考えます。』

と言う事は、次回の会合ではインフレ参照値の話題が俎上にのってくるのかもしれませんね。そう言われて議事要旨を見ると尚面白いかな。

『このように情報公開を前提にすると、その場の突然の議論には慎重になりますが、今の方法でもよく考えて意見を述べることができるうえ、時間の経過とともに議論が蓄積されることになります。したがって、時間の経過も加味して、行われた議論を全体で捉えると、私自身は自分の意見を十分に言っているといえます。』

ドラめもんも審議委員の発言等について鋭意アーカイブ整理中です(^^)。

『一方、限られた時間のなかで結論を導かなければならないとき、情報公開が前提の会合の問題点は、会合の前に委員会のメンバーが集まって非公式に議論することができないことにあります。委員会には様々な考え方のメンバーがいますので、他のメンバーの考え方を事前に聞いて、自分の考えをまとめていくという作業ができれば、自分の考えもまとまりやすく、また自分の意見がどのような位置付けにあるのかもわかります。ただ、情報公開が前提の会合において、取り扱うテーマによってはこのようなことができませんので、各メンバーは、別々に勉強・検討してから会議に臨むしかありません。』

『重要事項を1回の会合ですぐに決定するのではなく、何回かの会合に分けて議論を行うことができればよいのですが、次の会合までの間に情報が漏れてしまうリスクやその間に公表される議事要旨に議論途上の話題を掲載するのかしないのかといった問題もあります。このことは、取り扱う議題によっては議論を複数回の会合に分けて行うことを難しくしている面があります。』

なるほどなるほど。ところで、別の所ではこんな話もしております。ほうほう。

『金融政策決定会合の資料は、会合の2営業日前に手元に届きますので、会合までの2日間に、月報や展望レポートの基本的見解の文章表現についても、自分の見方と違うところはないかチェックしています。』



○議事要旨形式で発表する場合の問題点

須田委員はこのように指摘しております。あたくしも同感。

『情報発信のツールとしては、議事録よりも議事要旨の方が、その要約の仕方やそれが公表されるタイミング等の面で難しい問題があると思っています。』

『一つは会合ごとに、先に述べた事情から、議論が各回で完結しない場合がありますので、ある意見について他のメンバーから反応がなかった場合について、それが必ずしも「同意」を意味するわけではないため、誤解を呼ぶ惧れがあることです。もう一つの問題は、日本銀行では金融政策決定会合の議事要旨において、少数意見も含めて記述していることです。』

というのが、どういうことかと言いますと、

『私が日本銀行の審議委員に就任する前に議事要旨を読んだときの感想は、様々な意見が並列して記載されている結果、大勢意見や議論の大きな流れがわかりにくいということでした。議事要旨は、「一人の委員は」とか「複数の委員は」というような形で書かれていますが、メンバー全員が発言時にそれを意識し、例えば、他のメンバーと同じ意見であっても敢えて繰り返したりすれば、そうした表現は意味を持つことになります。もっとも、現実的には発言には時間的な制約もあるため、執行部の説明や他のメンバーの意見が自らと同じであれば、自分はそれに言及しないということもあります。』

なるほどなるほど。この次がまた奥の深いお話で。

『つまり、その話題に言及した人数の多少が必ずしもメンバーの関心の強さに比例しているわけではありませんので、その数に敏感に反応されてしまうと、議論の内容や方向が誤って伝わる可能性があります。議事要旨が薄いからとか、行数が少ないから議論がなかったということでもありません。』

『そういう意味でも、議事要旨で各委員の持つ意見の全体像を示すのはなかなか難しい作業です。今後も改善の努力は必要でしょうが、これについてもメンバーそれぞれの考え方がありますので、いまのところ妙案は見出せていません。』

昨日のドラめもんでも議事要旨の分量の話をちょっとしましたが、時々議事要旨の分量が妙に少ない気がするのは「議論持ち越しで結論が出ていない」というような場合もあるのでしょうなと思えば、後から考えると「なるほど」と思える節もありそうですね。


で、この議事要旨の発表タイミングに関しては須田委員の割と的確な指摘かつ反省が述べられています。

『議事要旨がいつ公表されるかということも重要です。昨年の夏、金利の上昇が納まったときに開かれた7月の金融政策決定会合の議事要旨が、債券市場が再び荒れ始めた8月に公表されたため、非常に反感を買うことになりました。「日本銀行は量的緩和政策を解除するのではないか」という意見まで出ました。仮に会合時点に時間的に近い市場環境で公表されていたなら、議事要旨が市場の材料になることもなく、このような混乱が起きなかったかもしれません。』

全くご指摘の通りであります。しかしこの「非常に反感を買う」って表現は笑っちゃいけないんですけど思わず笑ってしまいますね〜(^^)。

どのタイミングで発表するかと言う点については、やはり一長一短があるわけで、FRBでも色々なメリットデメリットを考えながら慎重に継続検討中という状況になっているそうです。

で、この講演はまだまだ続くのであります。昨年の秋口からつい先日に至るまでFRBがFOMCの声明文やグリーンスパン議長の議会証言を活用して行った「市場との対話」の経緯を実例にあげて検証したあとに、講演のまとめになっていくのですが、これまた内容充実かつ量が多いので、後半は後日ということでよろしくお願い致します。

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「言ってることが論旨一貫していない須田委員の政策論」(2004/04/23)

昨日のドラめもんでは「日銀現場サイドの入れ知恵があるのでは」などと書きましたが、講演の最後の部分であります金融政策への講釈を見ますと、これがまた突込み所満載というか何を言いたいのか良く判らん内容です。こんな内容の講演原稿を日銀の内部の人間が書くわけありませんので、昨日の入れ知恵説は慎んで撤回させて頂きたいと存じますm(__)m。


○金利形成を日銀が決める??

『金利効果については、量的緩和政策への移行前から短期金利(無担保コールレート<オーバーナイト物>)はほぼゼロであったため、資金供給量を増やしてその金利を限りなくゼロに近づけても、その金利低下効果は非常に限定的でありました。したがって、先ほど示した量的緩和政策の解除条件を示すことで、短期金利(無担保コールレート<オーバーナイト物>)が限りなくゼロに近い状態の継続期間についてコミットし、それを通じてオーバーナイト物だけでなく、イールドカーブにもその金利低下効果を浸透させていくことを狙う「時間軸」効果にも期待しました。これは景気の下支えに効果があったと評価できます。』

まぁ量的緩和政策とコミットメントに関する説明はごく当たり前の内容ですので省略しますが、この後に前回の講演などでも言われたご本人の意見に属するお話が出てきます。

『コミットメント効果を伴った量的緩和政策は、景気、物価についての市場の判断によって、時間軸を伸び縮みさせて金利効果を発揮させるメカニズムを内包しています。』

というか昨年の夏に時間軸が縮んだのは日銀の梯子外し的な景気回復大歓迎出口政策論議モードで期待に働きかける政策とやらが意図せざる方向に爆走した為だったような気がしますが、まぁともかく。

『このような市場の経済・物価に対する見方が、経済・物価の真の姿や、日本銀行の経済・物価情勢の判断とも整合的であれば、このような時間軸の変化は、経済・物価情勢を反映したスムーズな金利変動に資するものであり、景気回復やデフレ克服とも整合的です。一方、市場の経済・物価の見方と、日本銀行の経済・物価情勢との判断にズレがあれば、時間軸が不安定になり、金利の動きが必要以上に大きくなってしまいます。』

そもそも日本銀行の判断とやらが正しいという前提で物事を語っている時点で「何じゃこりゃ」なんですけど、「期待に働きかける金融政策」をやると言いながら、「金利形成を市場で決めて欲しい」と言いつつ、最後には「日銀の判断どおりに動かないと時間軸が不安定になり」と言い出すというのは幾ら何でも支離滅裂すぎやせんかね大先生って感じなんですが。

○と言いながらもこんな事も言ってまして

と、自己矛盾したお話をしつつもやはり日銀が相場を撹乱しているという事は認めているのが良い感じの講演でもありまして(^^)、

『したがって、日本銀行として重要なことは、コミットメント、すなわち量的緩和政策の解除は現行の条件にしたがって行なうことを明確化するとともに、解除の判断基準となる景気や物価についての見方を市場に丁寧に説明する一方で、市場の声に耳を傾け、市場との間に認識のギャップができるだけ生じないようにしておくことであると考えています。この点については、このコミットメントを明確化した昨年10月に私自身が強く意識したことです。』

『先程お話したように足許の金融経済情勢では、量的緩和政策の解除の条件が揃うような状況は予見できません。こうしたもとで、今後とも、金融経済情勢の分析や日本銀行の行動について、誤解を生まないような情報発信を心がけ、日本銀行の行動に起因する予想形成の不確実性を小さくする努力も重要だと考えています。』

いいですな〜『日本銀行の行動に起因する予想形成の不確実性』。


○金利機能の復活って話

この前(12月)に講演ダイジェストが日銀Webにアップされた時にもご紹介した「金利機能復活待望論」でありますが、まぁこんなお話をしておられます。

『景気回復の芽を摘まないためには低金利政策を粘り強く続けていくことが必要なことは言うまでもありませんが、実体経済の回復度合いに見合った僅かな金利や資金需給を映じた僅かな金利の変動を現時点でも容認することが必要なのではないかと考えています。』

念の為に申しますと、この部分は短期金融市場を念頭においたお話なんですが、一方で時間軸のコミットをしておいて、更にとてつもない額の資金供給をしている中で金利をつけるというのは物理的に不可能なお話ですし、そもそも現行の政策はゼロ金利政策と同じ物理的効果を発揮するものであり、現行政策と矛盾した無いものねだりってところかと思われます。

『確かに日本銀行が当座預金目標を30〜35兆円に設定し、資金を潤沢に供給しているため、無担保コールレート(オーバーナイト物)は殆どゼロ金利となっております。もっとも、ターム物等に若干の金利はみられることからこうした金利を潰さないようにして、少しでも金利機能を復活させることが必要なのではないかと考えています。』

量的緩和の効果と言うことで福井総裁は国会で「長短金利をできるだけ低いところで安定させる」という説明をしておりましたが、その説明とも矛盾したお話でして、別に全員の意見が揃っている必要はないでしょうが、今まさに実行している政策に関して色々な説が飛び交うという状況は、その政策の効果が見えていないという事の傍証でもあるわけで、結局は量的緩和政策という名目は壮大な茶番的政策であるというお話になってしまうのではないかと思う訳で。

まぁ元々の政策に無理があるので、それに対して無理矢理意義付けを行おうとして更に無理矢理なお話になると言うことで、まるでどこかの国のいつぞの時代の政策みたいですな。

その他に「クレジット・リスクに見合う金利」という話もしているのですが、何度もあたくしがドラめもんで申し上げているように、それは金融庁の支離滅裂金融行政と同じお話です。つーか量的緩和で企業の調達コストを下げるって話と矛盾しているでしょう。一応「市場機能を高める」というのが氏のテーマらしいです。まぁいいけど。


○何か早速誤解がある「日銀の国債品貸し制度」

国債の品貸し制度に関して自画自賛しないといけない日銀に置かれましては、色々とその効果について説明する訳ですが、これはちょっといかがな物かと。

『また、同一銘柄について複数の市場参加者の売買が複雑に連鎖している下では、1つの取引の決済の不履行が次々と波及することがありますが、これに対しても対象となっている銘柄を一時的に供給することで、決済の履行を確保することができます。』

「1つの取引の決済の不履行が次々と波及することがあります」という理由で現物国債の流通玉を激しく減らす効果をもたらした「国債決済のRTGS化」という奴をおっぱじめたのではないのでしょうか。言葉尻を捕らえるような指摘かも知れませんが、こういう細かい事の認識の齟齬からドンドン話にズレが生じてきているのが最近の「市場の育成」やら「市場の拡大」やらを行おうとしながらもピントのずれた施策を次々に打ち出してくる日本銀行(だけではなく、政策当局全般に言える事ですが)の行動を招いているのではないかと思う訳ですな。


まぁ日銀が適切な情報発信をする努力をしているのは認めますが、努力の方向がどうも迷走しているようですな。是非読者の皆様におかれましては、日本銀行Webの中にある「CIについて」という所なんぞをご覧になられるとかなり腰が砕けるとおもいますので是非ご一読を。本館のライトアップって何の意味があるんだ??

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「4月21日、沖縄における須田審議委員の講演」(2004/04/22)

沖縄県金融経済懇談会に須田審議委員が出席して、「日本経済の現状・先行きと金融政策」というお題の挨拶(というか講演)を行っておりました。この須田審議委員というお方は過去の講演やら記者会見やらでの発言から類推すると、本来の日銀理論に立脚した議論を展開したりしておりますので、日銀内部というか日銀事務方というか、とにかく執行部ではない日銀現場の声を代弁する傾向にあると勝手に分析しております。

と言うことで、須田委員の講演は多分に日銀現場の意見を反映している(とあたくしが勝手に分析しているだけですが)事から自称日銀ウォッチャーのあたくしとしては重視する訳でありまして、講演のご紹介という事になりますな。

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0404d.htm

○次回展望レポートは上ぶれの予定ですな

この講演は昨年の景気のレビューと今後の見通し、そして量的緩和政策と「展望レポート」という内容で構成されておりますが、レビュー部分もそれなりに興味深いのですが、とりあえず端折りまして今後の見通し部分に関して。

『今年度については、前年度初にみられたSARSの影響といったようなこともなく、先行きの不透明感は薄らいでいますが、見通しは様々な前提を置いて求めることになりますので、なるべく蓋然性の高い前提を置く必要があります。』

『昨年10月の展望レポートでは、今年度も米国や東アジアなどを中心に高めの成長を続けるとの想定のもとに、今年度を通じて回復が続くが、「緩やかな回復」となる可能性が高いとしています。なお、今年度のシナリオが前回展望レポートで示した通りと想定するとしても、実質経済成長率や国内企業物価については、昨年度分が前回展望レポート対比上振れていますのでその分を反映するだけで、数字の上では前回の想定よりも上振れることになることに注意が必要です。』

と言うことで、次回の展望レポートでは数字が上振れるというお話をしていますな。何でも本日の日経新聞朝刊に展望レポートの消費者物価指数見通しがマイナス継続とかいうリークなのか観測記事なのか判らない(記事の実物見てないので)記事が出ているらしいですが、債券相場に最も重要(という事になっている)問題について微妙なタイミング(グリーンスパン議長の議会証言で米国利上げ観測が高まり、20年国債の入札のある日ですが)でこういう記事が出てくるとは、相変わらず品性というものが感じられないお話ですな。リークなら日銀逝ってよしですし、勝手な観測記事なら風説の流布みたいなもんで、どっちにしろ気分の良い記事ではありませんな。

つい話しが逸れましたが、日本経済のリスク要因に関しては以下の4点を挙げております。

『以下では、このような問題意識をもちながら、鍵を握っていると思われる点に絞って、つまり、(1)海外経済の回復動向、(2)企業の増益、(3)製造業の設備投資の更なる増加と非製造業への広がり、(4)所得環境比強めの個人消費の動向について、現時点で私が蓋然性が高いと考えている見方とリスク要因についてお話したいと思います。』

○海外経済の回復動向

『日本の輸出が米国および東アジアの経済の回復に支えられている構図は、当面、変わらないと思います。従って、日本経済の持続的な回復のためには、米国および東アジア経済の高めの成長が今後も続くことが必要となります。』

というお話でして、米国、東アジアというか中国の見通しについて述べていますが、金融経済月報などに現れている見方よりはやや慎重なスタンスを示しております。まず米国経済については、

『家計債務が増加している中で、堅調な消費が減税効果剥落後も持続する可能性が高いと必ずしもいいきれないからです。(一部割愛)注目を集めていた3月の雇用者統計は予想以上の強い数字となり、第1四半期における雇用者の増加数は、景気回復に必要な雇用者の増加数(一般に+15万人/月といわれています)を超えております。ただ、これで安心できるかというとそうではなく、何人かの米国当局者が「こうした状況が数ヶ月続くかどうか見極めたい」と慎重な姿勢をみせております。私も同感であり、今暫く雇用・所得の環境が好転するか否かについては慎重にみておきたいと思っています。』

『また、地政学的リスクの高まりなどによる消費者マインドの低下、ガソリン価格の上昇、米国の低金利政策からの転換ないしはそれをめぐる思惑によって金利やそのボラティリティが高まるリスクなども気になります。米国金利の変動は、資本移動を通じてエマージング・マーケットをはじめ世界に波及しますので、その点からも気になるところです。』

一方中国経済についてはこんな感じです。

『中国経済は2004年も8%成長を達成し、2008年の北京オリンピックや2010年の上海万博まで足許の好景気が続くという強気の見方が多かったのですが、最近、一部地区の資産価格・人件費の高騰、過剰設備投資、電力、石油、石炭等の供給制約などへの関心が高まり、過熱気味だという見方が増えてきたようです。』

『私は中国の2004年の成長について、昨年ほどではないものの高い成長を想定していますが、このような二極化拡大問題を背景に、適度な引き締め政策によって過熱分だけ除去して、安定成長を持続することができるのかどうか、気になるところです。また、足許の景気は、沿海部を除き、財政主導の投資が牽引していることにも注意が必要です。』

福井総裁の講演なんかでは米国経済は大いに堅調、中国どころかブラジルにロシアにインドなんぞも持ち出してBRIC'sの発展で世界経済が益々発展だのと文字通り景気の良いお話が出てくるのでありますが、須田審議委員(あたくしの勝手な予想では日銀の現場も)におかれましてはまぁ割と慎重な見方のようですな。

○企業収益の増益

企業収益の増益傾向がどの程度持続的なものなのかという点について、原材料価格の上昇という川上面と、雇用者賃金への影響という川下(というよりは川の脇の伏流水ですか)面について指摘しています。短いから丸々引用。

『3月短観によると昨年度に大幅増益を実現した後、今年度も増益が続く計画となっています。具体的には、製造業が前年度比+9.8%、非製造業が同+11.1%の増益を見込んでいます。ただ、原材料価格が依然として上昇していますのでその上昇を引続き数量効果と計画されたユニット・レーバー・コストの低下でカバーできるのかが気になります。最終財価格への転嫁が部分的に止まるため、今後も増益を維持するために更なる賃金抑制を招くとしたならば、雇用・所得環境に悪影響を及ぼしかねないだけに心配です。他方、現在では、その可能性はかなり小さいとみていますが、個人消費の回復次第では、価格転嫁が消費者物価に何がしか影響を与えることも否定できませんので、注意深くみておく必要があります。』

つーことで、原材料価格の上昇に関しては先日国会で竹中金融担当大臣も懸念する発言をしていましたが、まぁ皆様懸念のようですな。物価上昇でデフレが解消って言ったって、最終需要の拡大によって物価が上昇するのなら良いですけど、原材料価格の上昇で物価が上昇して、景気が回復していなかったらそれはスタグフレーションって奴ですわな。最悪な訳で。

○製造業の設備投資の更なる増加と非製造業への広がり

『3月短観によると、製造業については、大企業・中小企業とも今年度は積極的に設備投資を行う計画となっています。このように今年度の設備投資については、持続的な回復が見込まれるものの、キャッシュフロー対比では抑制的な回復にとどまる蓋然性が高いとみています。』

ということで、新規投資については抑制的な回復なのですが、更新需要に関しては期待を持っているようでして、上ぶれの可能性に言及しています。

『ただし、バブル崩壊後、企業は設備投資を手控えてきたこともあり、生産設備のヴィンテージは約11年と過去最長になっている一方で、企業収益増を実現していることから更新投資に期待が持てます。また、素材産業では稼働率が上昇しているうえ、プロダクト・サイクルが短くなっている電気機械では除却率が高まっており、これが続けば設備投資が上振れる可能性もあります。』

そのヴィンテージって言葉は止めていただきたいのですが、まぁ要するに既存設備の更新需要が目先高まるのではないかという事ですな。企業収益に余裕ができたら既存設備の更新需要も高まるかも知れませんしね。

製造業の設備投資の持続・拡大についてはかなり期待をもっているようですが、非製造業については期待が出来ないという見通しであり、『現時点では設備投資の裾野がどんどん広がっていくと判断できる状況にはありません。』というお馴染みのダム論もどきのお話が出てまいりまして、設備投資の非製造業への広がりは道遠しという所のようですな。

○所得環境比強めの個人消費の動向

『昨年度の個人消費については、先ほど述べましたように雇用・所得環境の改善が捗々しくないものの、貯蓄率の低下等を背景に強めの動きとなりました。』

ということで、雇用・所得環境に対して個人消費が強めであった昨年度の傾向が持続するのかって分析をしております。

『貯蓄率の持続的な低下については、その蓋然性が高いようには思えません。例えば、金融広報中央委員会が行っている「家計の金融資産に関する世論調査」3をみると、貯蓄残高が減った理由として59.6%の方が「定期的な収入が減ったので貯蓄を取り崩した」と回答しており、こうした人々は収入が増加すれば貯蓄の復元を図ると思われるからです(図表8)。また、そもそも貯蓄を保有している世帯割合は3年前の87.6%から77.4%に減少しています。今後は所謂「団塊の世代」が順次定年を迎えることとなりますが、こうした世代はリストラ等による所得減に直面しています。厚生労働省が先に公表した「賃金構造基本統計調査」によりますと、昨年6月時点の50歳代前半の男性の平均賃金(ボーナス、残業代を除く所定内給与)は、▲1.7%と全体の平均(▲0.2%)を下回っています。この世代は「年金不安」等を強く感じている世代でもあるため、現在のシニア層と同じように貯蓄を取り崩して消費を続けるということは考え難いと思います。』

激しく同意ですな。

『こうした状況であるため、貯蓄率の低下を伴う個人消費の強さが続くとは考え難く、堅調な消費を維持するには、企業の増益が雇用・所得環境に好影響を及ぼしていくことが見通せる必要があります。』

で、賃上げなんぞ持っての他などと言っている某優良企業経営者なんぞは国賊だという事になるというような流れにはなりませんが(当たり前ですな)、先ほど紹介した原材料価格の問題や、趨勢的な雇用環境の構造変化などがあるので、やはり個人部門の雇用・所得環境の改善は厳しいのではというお話になっているようです。

『先ほども述べましたように3月短観によると雇用の過剰感は緩みつつありますが、派遣労働者の台頭などによる構造的な賃金押し下げ要因の存在がありますし、現象面として企業収益から所得へのリンケージが未だはっきりと見えてきていません。また、原材料価格の上昇等をさらなる雇用・賃金の抑制でカバーしようとする企業行動が続く可能性もあります。したがって、足許の個人消費の強さが今後もかなりの期間持続すると想定することは難しいのではないかと考えています。』


○総括判断

「成長率と物価の関係」という小見出しで総括判断をしているのですが、基本的な判断としては、地味な判断ではありますがこんな感じのようであります。

『以上私が展望レポートで経済見通しを構築する際に重要と思っている項目について、みてまいりましたが、今年度中に景気が腰折れせず「緩やかな景気回復」が続き、昨年度程度の経済成長が維持できるのではないか、というのが現時点での私の見方です。』

ただ、構造要因に関しては金融経済月報に見られるような「改善に向いつつある」という表現は使ってはいますが、『その過程で二極化が拡大することはあっても、縮小するまでには至らず、したがってマクロでみた場合、なかなか経済の改善となって現れてこないということかもしれません。』と言及しておりまして、個別では強い部分もあるものの、全体的な改善は展望しずらいという分析のようです。

物価に関しても同様にわりと慎重なスタンスのようでして、

『短期的には、実質経済成長率が高まっても、一方で供給力も伸びるため、需給ギャップはあまり縮まらず、この結果、直ちには物価上昇圧力が高まらない可能性が高いように思います。今年度の上振れリスクシナリオとして、このような強い経済を想定することができますが、その場合でも近い将来に消費者物価が安定的なプラスに転じることまでは展望しにくいというのが現在の私の見方です。』

となっております。まぁ非常にオーソドックスな見方ではありますが、鉦や太鼓を鳴らしながら景気回復音頭を謳っているトップと慎重な現場(の意見が反映されていると勝手にあたくしが推測しているだけですが)の対比が興味深い所ではあります。


#引用多用でやたらと長くなったことをお詫び致します。

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「引き続き須田委員の講演記録」(2003/12/19)

20年国債の入札は見事に順調な結果でありましたが、この新発債はどう見ても業者の持ちになっております。一部の銀行さんもお買いになられているようですが、本来の投資家層の買いってあったんでしょうかね〜。

ま、落札業者がこれまた見事にばらけているので、業者連合艦隊が頑張って支えるでしょう。ただし相場の上下ではなく、10年〜20年のイールドカーブで支える格好になるでしょうが(相場を上げると売りが来るので)・・・・

と言うわけで昨日に引き続き須田審議委員の講演記録。

あたくしが昨日「金融緩和の波及効果として為替レートを通じる効果についてのお話があるのですが・・・」と申し上げました所、色々と参考になる資料など頂きまし恐縮でございます。で、その資料を読んで理解するのにこれまた時間が必要ということで(とほほ)、結局本日は別の部分について書いてみたいと思います(汗)。


○量的緩和は金利ターゲットではない筈ですが

量的緩和はゼロ金利政策ではないと言っておきながら(というかそういう政策だという事になっているのですが)も、結局は金利ターゲットに本卦帰りしていると思われるお話があります。

「量的緩和政策採用時点での議論」というお題で、ゼロ金利政策と量的緩和政策の違いについて強調しているのですが、政策における道具をミックスすると結局金利ターゲットになっていると思う訳です。

『量的緩和政策の導入時点では、「ゼロ金利政策」に戻ることも選択肢の一つでしたが、なぜ「量的緩和政策」を採用したのでしょうか。その理由の一つは、「市場機能の維持」です。ゼロ金利政策の下で失われてしまった市場機能を、量的緩和政策を採用することにより、維持していきたいとの考えがありました。』

昨日ご紹介したように、結果としては市場機能の維持はできなかったのでありまして、その点についてはこの講演でも当然ながら触れています。で、何で市場機能が維持できなかったかと申しますれば、本質的には「なお書き」だというわけであります。

『ただし、量を一定にすると「金利」が大幅に振れる可能性があるので、それを防ぐために、「なお書き」が導入されました。通常のなお書きは、「なお、資金需要が急激に増大するなど金融市場が不安定化するおそれがある場合には、上記目標にかかわらず、一層潤沢な資金供給を行う」というものです。』

『「量」をターゲットにした場合、金利がボラタイルに動く可能性があります。とはいっても、同年3月16日から補完貸付制度(通常の場合の貸付金利は公定歩合)が運用を開始されていましたので、公定歩合(当時0.25%)が概念上は無担保コールレート(オーバーナイトもの)の上限金利になるはずです。ところが、量的緩和政策に移行する前は、無担保コールレート(オーバーナイトもの)の金利が0.15%程度でしたので、補完貸付制度があっても、それが0.15%をオーバーしてしまうことは排除できませんでした。金融緩和政策と言いながら、金利がそれまでよりも高くなってしまうと緩和にならないという意見があって、そのような高い金利を回避するために、「なお書き」が付け加えられました。金利が高くなりそうなときに弾力的な資金供給を行えば、金利の跳ねを防ぐことができるというのが、「なお書き」の意味合いでした。』

そもそも市場機能の維持をしようというのであれば、金利が跳ね上がった場合に資金供給を行うというのは妙なお話でございます。「金利が上がったら金融緩和にならない」というのは仰る通りですけれども、そういう話になること自体が「金利ターゲット」的な発想でございます(-_-メ)。

この矛盾に関して須田委員は「量的緩和政策の現実」というお題のコーナーでこのようにコメントしています。

『量の増大が金利の平均的な低下だけでなくゼロ近傍での安定化をもたらしたことは、市場機能の維持という当初の狙いとは異なる結果をもたらしましたが、その一因として取り上げておきたいのが、当時想定していた扱いとは異なるようにみえる、「なお書き」の運用とその受け止め方です。なお書きについては、前に申し上げた通り、短期金利が一時的に許容範囲を超えて跳ねた場合に資金供給量を増やして、マーケットを鎮めるということを想定していました。』

『(前半割愛)なお書きを発動した時の状況を見れば、結局、大きなショックに対しての施策として、かなり大量に、かなりの期間、資金供給を増やしたということになります。確かに、大量に資金を供給した結果、金利は跳ね上がらずに済んだと言えるでしょうが、当初考えていたように、金利が変動し、許容範囲以上に金利が跳ねた場合に、なお書きを発動するということにはなりませんでした。』

『今日では、市場は、日本銀行は単純に当座預金残高を目標にしているだけではなくて、短期金融市場において継続的に金利をゼロ%近辺に維持することにも強くコミットとしていると認識しています。資金需要の急増に対して補完貸付に委ねてある程度の金利上昇を許容するのではなく、なお書きで対応しゼロ金利を維持してきたことが、このような認識を生じさせた一因であると思います。』

と言うことでして、講演では指摘してませんが、「金利ターゲットではない」と言いながら結局やっている事は「金利ターゲットと同じだよ〜」という事でありまして、そうなると量的緩和政策における量の拡大って何の意味があるざんしょってな感じになるのですが、その点については全く別の論点でお話がされているのが惜しい所ですな(-_-メ)。


○量的緩和における「量」の意味

この話を真面目に取り上げだすと大変な重い話(ただし実務上の意味はないような気もするのですが)だったりするのですが、この講演から関連するコメントを拾って見るとこんな感じになります。

『量的緩和政策への移行を決めたものの、量自体の効果については不確かであり、その効果や当座預金残高の増額による追加緩和の可能性については、その後も検討を続けることになりました。』

『この政策を採用した時点では、コミットメントが満たされるまで、量をターゲットとする政策の枠組みを用いることを決めたのであって、その間、量のターゲットを減らすことはあり得ないということまでコミットしたわけではありません。ただ、その後、市場においては「量的緩和を進めることが金融緩和である」という期待が形成されていますので、今のところはそういう形で政策が進められています。』

その割には先日は「当座預金ターゲットを拡大したけど追加緩和ではない」という無茶苦茶な理屈になっておりましたが、その点についてはスルーしております。極めて遺憾の念に堪えません(^^)。

『短期金融市場の機能の低下を取り上げましたが、それが当座預金需要増に結びついていったのは、日本銀行がその機能を代替していったからです。』

『(途中は思いっきり割愛)以上のように、供給面の工夫と需要面の要因が相俟って、当初の想定以上の当座預金残高目標の増大にもかかわらず、それに合わせて資金供給を増やすことが、比較的スムーズにできました。』

ここでは例によって指摘していないのですが、追加的金融緩和をしているように見せるために当座預金残高のターゲット拡大を行い、いつの間にやらターゲット拡大が自己目的化しているのではないかという印象を与えてくれます(^^)。

で、この量に関する評価に関しては「ゼロ金利下での量増大の効果をどうみるか 」というお題のコーナーで須田委員こんな指摘をしています(^^)。

『なお、展望レポートでは現在のようなゼロ金利のもとで「量」を増やすことの効果についてそれだけを取り出して評価していませんが、私の現在時点での量増加の効果についての評価は、その効果は不確実であって、これまではあるとしても非常に小さくて確認できない程度であったということです。』

と言うことで、須田委員的には「流動性の罠」に陥っているという評価になっているのではないかと思います。マネタリスト的発言で金融政策に口を出す某大臣におかれましては良く良くお読み頂きたいものであります。

『最近、日本の金融政策は研究テーマとして世界的に関心が高いので、様々な分析が行われるようになっています。量の増大はマネタリストからみれば当然有効だということになります。他方、「ゼロ金利の状況下ではマネタリーベースの増加と供給手段の多様化、それに中央銀行が何を買うかは、市場参加者の将来の金利に関する期待形成を変化させることがない限り、経済の均衡に影響を与えることはない。ゼロ金利の状況下では量的緩和は無効である」という有名な論文もあります11。いずれにせよ、今のところ、理論の世界でも実証の世界でも、ゼロ金利下で「量」を増やすということの効果については、決着がついていないということです。』

というのが結論となっております。どうなんでしょう、結局は??

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「須田審議委員の量的緩和政策への評価」(2003/12/18)

日銀Webに昨日アップされた須田審議委員の講演記録。お題が「量的緩和政策について-その暫定的評価と今後の課題-」となっておりまして、内容は9月7日と12月5日に行われた講演の内容をまとめたものであります。

http://www.boj.or.jp/press/03/ko0312d.htm

須田審議委員といえば、最近の「意味のない当座預金残高引き上げ」に対して田谷審議委員とともに早くから反対票を投じている方です。だいぶ前に当ドラめもんで講演記録をご紹介した時に「昔の『日銀理論』に近い文脈で話をしてますな」という感想を申し上げたと思いますが、この講演も基本的に日銀本来の政策思考に沿った内容になっているのではないかと思われます。

ちと量が多く(本文を紙に出すと13ページ)、結構内容が充実しているので、実はまだ全部を詳細に読めておりません。そんな訳で、本日は順番が逆になるような気がしますが講演の最後の方にあたります「今後の課題」という部分についてさらっと読んでみたいと思います。

○長期金利上昇に関して

「市場との対話の重要性」ということで、6月以降の長期金利上昇への反省なども指摘しています。米国と英国の中央銀行が市場との対話に色々と苦労しているという例を挙げたあとに、日銀について話を転じております。

『今年の6月以降に長期金利が急騰し、ボラティリティもかなり高くなりました。私はこの一件以来、市場との対話の重要性を拠り一層強く実感するようになりました。市場との対話について改善できるところはないかどうか、常に考えていなければならない課題だと思います。金利急騰時の経験は、私にとって、市場との対話の改善のためのよい教材となりましたので、それをもとにお話したいと思います。』

ということで、金利上昇の要因分析並びに須田さん的な見解であります。

『6月以降の長期金利の急騰の要因としていろいろ挙げられています。金利低下の行き過ぎ感の強まりや内外における経済指標の好転を背景に景気についての過度の悲観論が後退し景況感が改善したこと、金融機関による利益確定売り、もしくは損切り、それにボラティリティ上昇やそれに伴っての持高調整売り等が嵩んだこと、などが指摘されています。』

ですな。で、出口政策への意識が市場金利に影響を与えていた(と言われている)点について率直な見解があらわされておりまして中々のものであります。

『8月以降については、消費者物価の前年比下落幅が0.1%まで縮小したもとで、そのとき公表された7月の決定会合議事要旨の読み手が、「日本銀行が量的緩和の出口論を本格化させたのではないか」という疑念を抱いたことなどもあって、量的緩和の出口のことなど、まったく考えていなかった人達が出口を意識しはじめたことも、金利上昇に影響を与えたといわれています。』

『この間、イールドカーブの形状が(1)時間軸の長さと(2)量的緩和後の短期金利の水準によって決定されるとの前提をおいて、イールドカーブの動きから、市場が先行きの金利予想をどのように変更させたかを探ると、量的緩和解除後の金利水準が、過度の悲観論の後退や経済指標の改善に伴って、上昇するとともに、時間軸が短縮したことがわかります。特に出口論が注目された8月には時間軸が大きく短期化しました。』

時間軸の短期化と出口論への注目についてきっちりと言及してますな。ちゃんと現状認識ができております。

『その間、私は日本経済は展望レポートの標準シナリオに沿った動きを続けているという判断を維持していましたし、時間軸が大きく短期化しているという認識もありませんでした。したがって、市場の景況感の急な強気化と時間軸の短期化には大きな認識ギャップを感じていました。長期金利の急騰に、景気や時間軸についての日銀の見方を市場がきちんと把握していなかったことが影響を与えていたとしたら、それはこちら側にも責任があります。』

非常に婉曲な表現なのですが、あたくしは何気にこの部分は日銀総裁への遠まわしな批判なのではないかと思ってしまったりしております。講演者の本意ではないかもしれませんけれども。

と申しますのは、この「市場との対話」につきまして、一番最初に挙げた実例としまして、FRBグリーンスパン議長の事例が挙げられておりましたからでして、

『FRBが非伝統的な金融政策に移行する可能性を示唆したことを受け、長期金利が3%台まで低下していた状況下で、グリーンスパン議長が景気について少し楽観的に取れるような発言をしたため、途端に金利が跳ね上がったことは記憶に新しい
出来事です。』

なんてコメントしております。これって市場金利急騰で市場金利から逆算される時間軸(=市場の期待時間軸って事ですかな)が見る見る短期化していく間に景気に楽観的なコメントを出しつづけていた福井総裁を暗に批判していると読んでしまった訳であります。読みすぎかな??


○出口論は否定、時間軸に関しては機能している

順番が逆になりましたが、この「今後の課題」と言う所の前置き部分ではこのようなコメントを行っております。

『量的緩和政策について、以上のようなコストがあるとしても、コミットメントが達成されないかぎり量的緩和政策からイグジットすることはあり得ません。また出口論も重要な課題ですが、以下で述べる必要条件の提示以外には、頭の体操としてもまだ具体的に議論できる状況にありません。』

てな訳でして、時間軸効果については先日のコミットメント発表を評価しておりまして、一歩進んでインフレーションターゲットを取ると言う発想は無いようです。

『なお、出口のための必要十分条件として、物価のハードルをより高くして条件を数値だけにするということも考えられますが、物価と景気とには一対一の関係があるとはいえず、物価以外の要因も無視できないため、総合判断の方が望ましいと思っています。それに出口のための必要条件を高く設定すると、量的緩和の解除が非常に遅れてしまうリスクもあります。』

『例えば、歴史依存性が非常に強いコミットメントである物価水準ターゲットの採用を求める声もありますが、それが正当化されるのはデフレの慣性がない場合であって、日本のようにデフレの慣性がある場合に物価水準をターゲットまで戻そうとすると、GDPギャップの大幅なオーバーシュートを引き起こしてしまうとの分析があります。市場が量的緩和からの解除が遅れる蓋然性が高いという認識を強めれば、むしろ長期金利が上昇する可能性があります。』

浅学非才ではありますが、あたくしもそう思います。

『実際、今回の時間軸効果の明確化について、量的緩和解除が遅くなりすぎるリスクへの言及も見受けられますが、今回の発表によって時間軸は長期化してはいないようです。時間軸の明確化で量的緩和の継続が明確になった1年半程度の金利は低下しましたが、発表自体が長期金利全体へ与えた影響は限定的であったと思われます。今回は混乱を生じさせることなく時間軸を明確化できたのではないかと思いますが、イグジットは最終的に総合判断としていることもありますので、まだ改善する余地はないか探っていく必要があるとも思っています。』

ご指摘ご尤もであります。


○「市場機能回復」が日銀現場の本音なのかな?

量的緩和政策のコストとして、「市場機能が喪失した」という事をこの講演の前半でも指摘しております。市場機能の喪失の変わりに日銀がその機能を代替している(というか必然的にそうなるのですが)事については、須田委員(たぶん日銀の現場の意向を反映していると思われますが)的には「何とかならんか」と思っているのでしょうな。現在の政策の枠組みでは無理だと思いますけどね。

『現在の量的緩和政策は市場機能の低下をもたらしたという意味では、当初、想定していた政策とは異なっていることを指摘しましたが、少しでもそのコストを削減するために、「市場メカニズムに配慮しつつゼロ金利政策の有する金融緩和効果を実現」という初心に戻ってもう少し市場機能を活かした政策にできないものかと考えています。』

と言うことで、短期金融市場での金利形成が常識の反対的現象が起きているという点について述べておられます。まさに日銀の現場から出てきそうな指摘ですが、ちょっとマニアな指摘かつ文章が長いので須田さん的結論だけ引用します。

『これ以上、短期金融市場の機能を低下させないために、できることなら金利機能を僅かでも回復させることが必要ではないかと思っています。』

『30兆円も資金を供給していますので、短期金融市場で資金を運用して儲かるような金利が付くのは稀かもしれませんが、少なくとも日本銀行はそのような金利をつぶすような金融調節はすべきではないと思っています。』


この講演記録、次には金融緩和の波及効果として為替レートを通じる効果についてのお話があるのですが、時間とスペースとあたくしの読み込みの関係上、何も無ければ明日にでもご紹介いたします。

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2003/07/03

日銀審議委員の須田美矢子さん。最近では田谷貞三審議委員と並び「シャンシャン決定会合」に一石を投じる役割を果たしておられるお方として、世の中に20人もいないと思われる日銀ウォッチャーの注目を浴びつつあるお方だったりします(^^)。

で、そのお方が6月4日に東北大学経済学部、7月2日に大分大学経済学部で特別講義を行ったそうで、そのときの資料というか講義レジュメが日銀HPにアップされました。http://www.boj.or.jp/press/03/ko0307a.htm

講義のお題は「デフレと金融政策」というものでして、講義録だけにプリントアウトすると本文量が17ページになってしまう大作でございます。ただ、内容は判りやすくまとめてありまして、金融政策に関して本買ってお勉強する前にこの文章をお読み頂くと非常によろしいかと思います。お勧めです^^。

内容を全文精読できていませんが、この講義録読んでいて真っ先に思ったのが懐かしき「翁邦雄」さんでございます。金融政策にマネーサプライターゲットを導入すべきかというかの「岩田ー翁論争」で名を馳せたお方ですにゃ。と言ってもその頃はあたくしそういう事には興味なしでして、実際は翁さんの書いた「金融政策」という名著がございまして、この本を読んで金融政策の基本的な考え方を勉強したようなものであります。実務に則した発想で大変明解かつ説得力のある解説でした。

で、この講義録の中に「デフレは貨幣的な要因によるものなのか」という件がございまして、こんな感じで論旨展開をしております。以下『』内が講義録からの引用になります。

『過去2年余の金融緩和措置の現時点における波及効果は、「金融政策をフル回転してマネタリーベースを増やせば、マネーサプライが増え、名目GDPが増え、物価が上昇する」という単純な貨幣数量説に基づく政策提言の信憑性に大きな疑問を投げ掛けているように思います。』

とまず一発かました後に返す刀で竹中大臣および取り巻きが信奉するフリードマンさんの名前を出してきます。

『この政策提言は、米国の著名な経済学者であるフリードマンが唱えた「インフレは貨幣的な現象である」という命題に基づいています。』

で、まぁこの説の前提になっている条件について『一つは、中央銀行がマネーサプライをかなりの精度で操作できることです。もう一つは、マネーサプライと実体経済活動水準との関係が中長期的に安定していることです』と言及したあとで、上記の前提についての誤りを指摘しております。その中にこんな文章がございまして、これこそ正に翁邦雄さんの「金融政策」だと懐かしく思った次第です(^^)。

『マクロ経済学の入門的教科書では、IS−LM分析の記述にかなりのスペースが割かれており、マネーサプライが外生変数と位置付けられていますが、現実の経済では、マネーサプライを、まるで空からヘリコプターで撒き散らすかのようにして増やすことはできません。通貨は、企業や家計などが必要と感じているからこそ保有されています。一般的に、マネーサプライが増える背後に、所得が増えるとか、経済活動が活発化するとか、あるいは資産価格が上昇するという動きがあります。』

「マネーサプライは日銀が能動的に動かすものではなく、外部環境によって受動的に決まるものだ。」という発想は正しく昔懐かしき日銀理論でございます。

てなわけで、この講義録だけで判断するのは早計なのかもしれませんが、前々から薄々思っていたのですが、須田委員の主張は日銀本来の主張である翁邦雄氏的なものを色濃く反映していると推測されるのではないかと、あたくしは勝手に考えております。今後の須田委員の主張には注目が必要でしょう。念のため付け加えますと、「須田さんの主張が翁さんの理論に似ている」というのは別に須田委員をけなしているわけではござんせん。経済学者出身の方のようですが、日銀理論に理解があるなんて結構凄いお方だと敬服しております。

ちなみに、この講義録は他にも読むべき点が一杯あるのですが、それを書いていますといつまでたってもドラめもんが終わらなくなりそうな悪寒が致しますので、土日までに他のネタが出なければ月曜日にでもまた^^。

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