山口廣秀副総裁

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山口廣秀副総裁

山口さんの略歴(日銀Webより)

昭和26年3月6日生
昭和49年3月 東京大学経済学部卒業
昭和49年4月 日本銀行入行
物価統計課長、大阪支店営業課長、営業局金融長を経て平成8年5月高松支店長
平成10年5月 経営企画室参事
平成16年5月 企画局長
平成17年2月 日本銀行理事に就任
平成20年10月27日 日本銀行副総裁に就任
(前職:日本銀行理事)

詳しくはこちら→http://www.boj.or.jp/about/organization/policyboard/dg_yamaguchi.htm/

2013/02/04「講演の威勢の良さが会見ではトーンダウンとな」
2013/02/01「麿のケツ拭きのつもりか見せ方を結構工夫した講演」
2012/09/25「決定会合直後第1回目の講演は言い訳成分でアレな内容でした」
2012/07/30「7月25日広島での講演&会見は追加緩和のサービス発言多目」
2012/04/24「円高への配慮を強調したサービス気味の講演よりメモ」
2012/02/07「高松での講演は景気下振れを警戒」
2011/11/25「海外景気に弱気&財政に警鐘の中々な講演」
2011/07/27「山口副総裁会見は下振れ警戒モード」
2011/07/21「山口副総裁講演は物価安定の実現に時間が掛かるとの指摘がありました」
2011/02/25「山口副総裁会見から、やはり真性ハトなのかはやや怪しい(^^)」
2011/02/24「山口副総裁青森での講演から、ハト風味の講演テキスト」
2010/07/23「山口副総裁会見では円高での追加緩和を否定するトーンが目立つ」
2010/07/22「富山での講演では総裁の強気とバランスを取る感じで」
2010/05/12「臨時会合後の記者会見(白川総裁不在時の会見)」
2010/02/26「変な部分を確り突っ込まれて対応する山口さんだが、そもそもが脇が甘いというか不用意」
2010/02/25「普通の講演なのですが1か所妙に違和感を感じる部分が」
2009/11/27「マクロプルーデンスの話と銀行経営に関する話ですが、どさくさに紛れて予防的引き締めの話も」
2009/09/25「景気に関してちょっと明るめのコメントも」
2009/07/24「山口副総裁会見、物価に関する質問にタジタジ?」
2009/07/23「山口副総裁講演、特に突飛な話はありません」
2009/03/27「山口副総裁会見、輪番に関する質問相次ぐ」
2009/03/26「山口副総裁最初の講演、景気には相当厳しい見方ですね」
2008/11/21「国会での量的緩和政策に関する答弁」
2008/10/29「就任記者会見」

2013/02/04

○山口副総裁会見は微妙にトーンダウンしているぞな

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1302a.pdf

・講演は威勢が良かったのですが会見の応答が微妙にアレ

最初の説明が何故か3ページ半もあるのが何でですねんという所ですが、実質最初の質問になるのが4ページ目になりましてその辺から怪しげな雲行き。

『(問) 午前中の懇談会での副総裁の冒頭挨拶の中で、「先行きの基金の運営については、経済・物価情勢を点検しながら、必要に応じてさらなる緩和を図っていくこともあり得る」とおっしゃったのですが、それについて、もう少し具体的に教えて下さい。』

そらまあ質問する罠。

『(答) 「必要に応じてさらなる緩和を図っていくこともあり得る」というのは、あくまでも一般論として申し上げたものです。』

一般論と言えば麿、麿と言えば一般論として名高い(今勝手に作ったのだが)一般論キタコレという所でございますが。

『私どもは、2%という物価安定の目標を掲げ、それをできるだけ早期に実現するよう、強力に金融緩和を行っていくことを決定したわけです。そういう中で、経済・物価情勢の変化を見つつ、必要と判断すれば追加的な金融緩和を行っていく可能性があるということを一般論として述べたということです。』

この2発の「一般論」を入れなければ普通に「状況の推移を見て必要ならば追加緩和をしますぜウェーハッハッハ」とゆー話になるのですが、この一般論2発突っ込んでいる所で見事な麿テイストとなるのでありました。講演テキストで見られた威勢の良さはどこに逝ったのという所ですが、まー政策委員の皆様の講演に記者会見が付いている時には概ね会見で本音に近いのが出る、と言う事を勘案するといきなりの出オチで誠に遺憾。


『(問) 2 点質問します。先々、「必要に応じてさらなる緩和を図っていくこともあり得る」というお話のところで、これまで、日銀が行ってきた追加緩和をみると、景気が後退しているとか、景気の先行きがある程度怪しくなっているとか、そういうときに、ある意味で、下支え的な効果を狙って追加緩和した例が多いかと思います。今回、物価安定目標2%を決め、政府が経済財政諮問会議で定期的にチェックする枠組みができたことで、景気にはそれほど懸念はないが、物価が上がってこないということで、景気と物価を切り離し、物価だけをみて追加緩和をやらなければならない可能性が今後増えてくるのではないかと思われます。今後、追加緩和をやる際に、これまで以上に物価に重点を置いて考えていくのかどうか、という点が一つ目の質問です。(2点目は割愛)』

という事で次の質問が中々良い質問でありました。つーかさ、昨年2月に「中長期的な物価安定の目途」を公表した時の追加金融緩和がまさにこの質問者の指摘するような文脈での追加金融緩和になっていて、その時に市場が思いっきり反応したのはその「ロジックの本格的な転換」に対してだった(国内よりも海外の方が反応したのもそのせいでしょ)訳で、然るにその後何故か元に戻って普通の景気見通し的なロジックに3月会合およびその後の会見で戻ってしまったからこそ足元の正副総裁北京ダック状態になっている訳で。

『(答) 私どもの金融政策は、景気と物価の両方をしっかりとみながら、時々に必要な政策を行っていくのが基本です。従って、2%の物価安定目標を掲げたわけですが、これから先の政策対応についても、景気の状況がどうなのか、物価の動きがどうなのかをバランスよく点検しながら政策対応を図っていくということに尽きます。これが1 点目の質問に対するお答えです。(後半割愛)』

「バランスよく点検」というのはそらまあその通りではあるのですが、この「バランスアプローチ」も逆さ絵のおじさんが発言すると「閾値を機械的に見て判断する訳では無いので必要があれば緩和はもっと継続しますよ」という風に取られるのですが、世の中的に引締めバイアスがあると思われている(実際にはそういう人もいるしそうじゃない人もいるという所でしょと思いますが)組織の人たちが上記のような質疑をしますと、ああ物価重視じゃないんですねとゆー風に思われるので誠に遺憾に存じますという次第。


・時間軸について

こんな質問が。

『(問)(1点目の質問もまあネタにしても良いのだが質疑とも微妙なので割愛)2 点目は、政策の約束と言いますか、「いつまで今のような金融緩和を続けるか」というコミットメントについでです。昨年2 月の「物価安定の目途」導入時には、消費者物価上昇率1%を見通せるまで、強力な金融緩和を推進していく、続けていく、とおっしゃっていました。しかし、今回は、「必要と判断されるまで」と変えられました。この強力な金融緩和継続の約束は、従来の「1%を見通せるまで」という約束に比べ、果たして強いのかどうか、より強化されたのかどうか。もし、より強化されたということであれば、具体的に何を指して強化されたと言うのかについてお伺いします。』

まあ良い質問ですな。ただまあこれあたくしが質問するなら「物価安定の目標を事実上引き上げたのと引き換えに裁量度が上がったようですが、何故今回裁量度が上がったのでしょうか」という風な聞き方で行くかな?とは思いますけど。

『(答)(前半割愛)次に、「政策のコミットメント」についてです。もともとコミットメントの強弱を何で判断するかというのは難しいところがありますが、1 つは、金利のイールドカーブの動向です。』

ほえ??

『私どもが、今回のコミットメントを発表して以降、金利のイールドカーブに大きな変動があったとは思っていません。従って、市場の反応としては、基本的には、これまでのコミットメントの強さと大きく変わるものではないと受け止められたものと思っています。』

そ、そうなのか???

『ただ、私どもとしては、今回、2%という物価安定目標を出来るだけ早期に実現することを目指して強力に金融緩和を推進していく、しかも2014 年については、資産買入れ等の基金の残高を10 兆円増やすように毎月の買入れを行っていき、それ以降は毎月の買入について期限を定めずに継続していく、という形で政策の方向感を約束しているわけです。この約束自体は、これまでの私どもの約束に比べて、やはり強いものだと私は思っています。』

本当に10兆円増えるのかどうかはその時次第(もっと増えるかもしれないし減るかもしれない)のに思いっきり「10兆円増やす」とか言って大丈夫かねと思いますが、まあ強めたという話にはなっているのですがどうも奥歯に物の挟まった言い方ですなあ。


・この質疑応答はワロタ

『(問) 少し嫌な質問かもしれませんが、大きな政策転換があると、よく海外の投資家、あるいはBOJウォッチャーの方々から、「日銀は変わったのか」という質問があります。それに対して、副総裁はどうお答えになりますか。』

『(答) 率直に言って、「変わったのか」と問われても、何の変化を意味しているのかよく分かりませんので、「変わった」とも「変わっていない」ともなかなか答え難いところです。』

ナンジャコラ。

『私どもは、今回、金融緩和について、「思い切った前進を図った」と申し上げています。このことを海外の投資家や日銀ウォッチャーの方々が、どのように評価するかは分りませんし、私自身がそれについてあれこれいう立場でもありません。ともあれ、思い切った前進を図った措置であると受け止めて頂きたいと思います。』

「思い切った前進」とは言うのですが、「チェンジ」とは言わないというのがまあこの正直者という所でありまして、講演では威勢が良かったのですが会見ではトーンダウンという所で、確かにまあ会見のヘッドラインに関しては今引用した「変わったとも変わっていないとも答え難い」というような部分が出たりして「???」という感じでしたな。

まあそれよりも今回の講演及び会見を通じて悲報としか申し上げようが無かったのは、講演と会見のヘッドラインが色々と出ているのに市場が1ミリも反応して居なかったことでございまして、先々週の麿講演(決定会合後の会見では無い)以降これで2回連続2度目という事でございますが、すっかりスルーモードとなっている市場の反応残酷にも程があるぞなもしという所ではありまする。おまいら幾らなんでも無視し過ぎですぞな。

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2013/02/01

○色々なキーワードを散りばめてやる気を見せる山口副総裁講演

でまあ昨日はあまり市場が反応していない(ように見える)のが残念だが山口副総裁の講演テキストは色々と練り込んでいておりましたぞな、と言う事でネタは来た順に消化の法則で山口副総裁講演から。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130131a.pdf
デフレ脱却への道と金融緩和の思い切った前進
── 長崎県金融経済懇談会における挨拶 ──

ということで、題名からして配慮の跡が窺える訳ですが(^^)。


・景気の見立ては景気が良い(^^)

しかしまあ物は言いようですなあと思う訳で、こちらの講演に関するベンダーヘッドラインをみておりますと、景気の見立てが景気が良い点についてのヘッドラインよりも題名に見られるような「キーワード」の部分がポンポン飛び出すの巻という動きになっておりますので、景気の方で結構な強気なものを出していても別に「出口ガー」みたいにならないのがチャーミング、というか見せ方と言うのはこういう風にすれば良い訳ですな。どこぞの麿様におかれましては緩和をそんなにバンバン拡大するのは不本意でおじゃるみたいな香りを漂わるので、そういう人が景気の明るい見通しを話すと更に追加緩和する気がねえなという印象になってしまう訳で、まあ物は言いようということでありまする。

『2.海外経済の動向:先行き明るさを増していく海外景気』というのがまずキタコレな訳でございますが、現状と先行きの部分を引用しますぞな。

『まず、海外経済の動きからみていくこととします。昨年の動きを振り返りますと、夏場にかけて欧州の債務問題が深刻化しました。その悪影響は、貿易取引の減少や企業マインドの悪化を通じて世界的に拡がり、夏場以降、多くの国で景気減速の度合いが強まりました。海外経済は、現在もなお減速した状態にありますが、このところ、米国や中国を中心に明るい動きもみられ始めています。』

と言う風に書いていますが、個別地域ごとのパートを見るとここの文章よりももうちょっと明るめになっているのがチャーミング。

地域別の先行き見通しですけれども以下の通りです。

『欧州景気の先行きについては、緊縮的な財政運営が続くこともあって、当面は、緩やかな後退が続くと考えていますが、いずれは輸出の持ち直しを起点として、ドイツなどコア国を中心に後退局面を脱していくとみています。』

『今後については、「財政の崖」がぎりぎりのところで一応回避されたことで、企業マインドは改善し、設備投資も回復が見込まれます。また、個人消費や住宅投資も、緩和的な金融環境にも支えられて、持ち直しを続けていく可能性が高いとみています。こうした結果、米国経済は先行きも緩やかな回復経路を辿り、世界経済の牽引役となっていくことが期待されるところです。』

『長い目でみますと、中国経済は、高度成長から安定成長への移行期にあり、円滑な移行が行われるかどうか、懸念がない訳ではありません。ただ、ここ暫くということで言えば、財政・金融両面からの政策効果に加え、堅調な内需に支えられた在庫調整の進捗、輸出の持ち直しも予想されるため、徐々に回復傾向がはっきりしてくるものとみています。』

『NIEs、ASEAN経済は、現状、欧州向けなどの輸出が停滞していることもあって、持ち直しの動きが緩やかとなっています。しかしながら、先行きについては、米国や中国にリードされるかたちで世界経済が明るさを増していけば、輸出が次第に持ち直し、回復テンポを速めていく可能性が高いとみられます。』

と、地域別の話をすると何気に景気が良いのですが、締めの部分ではこういう記述で。

『以上をまとめますと、先行きの海外経済は、米国と中国を牽引役としながら次第に減速した状態から脱し、緩やかな回復に転じていくとみられます。もちろん、欧州債務問題の帰趨については、なお目が離せません。米国経済も、財政問題を乗り越えながらその回復を継続できるかどうか予断を許しません。中国経済にしても、様々な問題を抱えているだけに、回復経路に円滑に移行していくことができるかどうか、懸念がない訳ではありません。こういった不確実性の存在には引き続き十分な注意が必要だと思っています。』

ということで纏めの所ではリスク警戒みたいな言い方をしていまして、頭と最後の部分ではしっかり締めた言い方をしながら途中では割と威勢の良い話をする、というこの構成は中々よろしゅおすなあと思うのでありました(^^)。

でまあ日本経済に関しても先行きの所は割と威勢が良い。

『先行きのわが国経済については、冒頭述べましたように、当面弱めの推移を続けたあと、国内需要が底堅く推移し、海外経済が次第に明るさを増していくにつれ、年央頃にかけて緩やかな回復経路に復していくと予想しています。弱めの動きが続いたあとの回復であり、しかもそのペースもゆっくりしたものであるため、企業の皆様にとってはなかなか景気回復を実感できないかもしれません。しかし、「あとで振り返ってみれば、本年前半が転換点だった」となっている可能性は十分あるとみています。』

ほほうという所ですが、ここでサービスフレーズも散りばめながら需要項目別の話を。

『先ほど申し上げたとおり、海外経済に明るい兆しがみられており、とりわけ米国経済が回復基調を辿っていることは心強い材料です。加えて、最近の円相場の動きも、次第に輸出の下支えに作用していくと思います。』

>最近の円相場の動きも、次第に輸出の下支えに作用していくと思います
>最近の円相場の動きも、次第に輸出の下支えに作用していくと思います
>最近の円相場の動きも、次第に輸出の下支えに作用していくと思います

・・・・・・・・サービスフレーズというかまあ当然のフレーズでもあるのですが、こういうのをちゃんと散りばめておく(ちなみにこの部分ベンダーヘッドラインにも使われました)というのが重要な所でありまする。

『内需面においては、公共投資が引き続き増加傾向を辿り、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられます。設備投資は、防災・エネルギー関連の投資もあって、遠からず緩やかな増加基調に復すると見込まれます。個人消費は、エコカー補助金終了後の反動減の影響も和らいできており、基調的には底堅く推移していくものと考えています。』

と、結構威勢の良い話なのでした。


・物価に関しての話が何気にチャーミング

物価情勢の話は展望レポートの内容説明なのですが、その最後の所にチャーミングな記述が。

『私どもが、今回「物価安定の目標」として2%を掲げたのは、2014 年度には、当面の目途としてきた1%達成がこのように視野に入ってくる中で、日本銀行として次の目標を明らかにしていく必要があると判断したからです。この辺りの考え方は、後ほど改めてお話させて頂きます。』

・・・・・・・・・・おいおい大きく出たなという所ですが、まあ2%目標にしたという話をするのにこういう風に言うと随分とこれまた威勢の良いイメージになる訳でございまして、麿様におかれましてもこの位の威勢の良さを出して頂ければもうちょっと展開が違っていたんじゃネーノとか思うのでありますが。


・「思い切った前進」ですかそうですか

次の小見出しが『4.今回の政策決定の内容とその考え方:金融緩和の思い切った前進』ですけれども、そこにありますように、というか題の所にもありましたが、「思い切った前進」というのを何度も出しまして、威勢の良さを見せるという見せ方をしておりますな。

『冒頭申し上げた通り、日本銀行は、先週の金融政策決定会合において、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向け、金融緩和を思い切って前進させることとしました。』



・物価目標2%(日銀表現として正しいのは「物価安定の目標」ですよ)の説明部分が色々とお洒落

んでまあ物価安定の目標導入の説明ですが、デフレの要因に構造的な要因がありまして云々といういつもの話を入れながらも、話の展開として「でも行けるんです!」という風に持って行くのが良い見せ方でございます。

『逆に言えば、こうした構造を転換していくことができれば、デフレから脱却することも可能になるということです。要は、日本経済の柔軟性や適応力を回復させ、その潜在力を引き出し、そのことによって、企業や家計の成長期待を高めることが必要だということです。』

で、この次がベンダーヘッドラインにも使われていた部分であります。

『私は、今がデフレからの脱却に向けての「好機」だと思っています。』

・・・・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

『日本経済に大きな影響を与える、米国経済や中国経済が回復経路に復する見通しが出てきました。こうした中で、昨年来低迷を続けてきたわが国経済も先ほど述べたように、本年半ばにかけて緩やかな回復経路に復帰していく可能性が高まってきています。また、私どもの経済・物価見通しでも、2014 年度には消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が1%に達する可能性が拓けつつあります。』

キタコレ。

『このような変化のもとで、実際に物価上昇率が高まっていけば、人々の予想物価上昇率も上昇していくと考えられます。この「好機」を逃すべきではないと思います。』

まー良く考えると理屈と言うよりは根性論の世界になっているのですけれども、根性論であってもこういう説明でやる気元気井脇モードで見せると受ける印象がどこぞの麿と大違いですの。

『以上のように考えまして、これまで「当面1%を目指す」としてきた私どもの方針を一段と推し進め、「物価安定の目標」として2%とすることとしました。日本銀行は、そのもとで金融緩和を強力に推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指します。』

ということでして、つまりこの前決定会合後に麿が「基本的な考え方は変わりません」とか抜かして市場がズコーとずっこけて円高に振れたあの麿節はナンダッタンダという話になる訳ですが、政策企画課長の翌日の説明でも2%はピンポイントという趣旨の発言があったと報じられていますし、今回も「方針を一段と推し進め」という風に副総裁が言ってますから、あれは麿の個人的見解(というか麿イズムというか)の披瀝でしたんですね判りますという理解で良いんでしょうな。マッタクモウ。

『こうした日本銀行の金融政策運営方針について、いわゆる「インフレ・ターゲット」を採用したということか、といったご質問を頂くこともあります。この点、実際に「インフレ・ターゲット」を採用している英国などの金融政策運営をみると、物価だけでなく、実体経済や資産価格などにも目配りした柔軟な金融政策運営が行われています。今般の日本銀行の「物価安定の目標」も、現在、多くの中央銀行が導入しているものと同様であり、一般的には「柔軟なインフレーション・ターゲティング」と呼ばれています。』

とまあここまでは従来の説明と同じ、というかこれ以外の説明は無いのですが・・・・・・・

『日本銀行は、こうした金融政策の枠組みのもとで、今後とも経済・物価の情勢をしっかり点検しながら、従来にも増して、果断な政策対応を講じていく考えです。』

というフレーズを一発入れるだけで印象が違う訳で、果断な政策対応云々の部分もヘッドラインにしっかり使われていまして、まあこの辺見せ方を工夫していますなという所です。


・オープンエンドの説明部分から少々

まあこちらからは少々。

『今回、期限を定めず毎月一定額の金融資産の買入額を決めて買入れを行うことにしたのは、その方が、新たに導入した「物価安定の目標」の実現を目指して資産買入れを継続的に行っていく、という政策の構えを明確に示すことができると判断したためです。』

はあそうですかという所ですが。

『こうした新しい資産買入れ方式について、「せっかく導入するなら来年初からではなく、なぜ今すぐ始めないのか」といったご質問を頂くことがあります。』

という所の答えをどう用意するのかは興味があったので以下引用。

『この点端的な答えとしては、今年は既に50 兆円を上回る規模の大量の資金供給を行うこととしているからです。』

まあそうやね。以下の部分はご案内の方にはご案内でしょうが一応メモ代わりに引用。

『少し詳しくご説明しますと、「資産買入等の基金」の残高は、現在約65 兆円ですが、既に決定している買入れを行うことによって、本年末までに40 兆円弱増加します。また、日本銀行は、昨年の10 月に、金融機関が貸出を増やせば、その純増額全額をバックファイナンスする枠組みとして、「貸出増加を支援するための資金供給」を導入しました。この制度の趣旨については、後ほど改めてお話させて頂きますが、資金供給額は、最近の貸出実績を前提にしますと、概ね1年間で15 兆円を上回る規模となることが見込まれます。これらを合わせますと、日本銀行は、この1年余りの間に50 兆円超という巨額の資金供給を新たに行うこととなります。』

『来年初からは、これに加えて、さらに毎月13 兆円程度の金融資産の買入れを行うことにしたということです。』

ふーん。

『このように日本銀行は切れ目なく強力に金融緩和を推し進めていくこととしており、こうした大規模な資金供給を来年以降も継続していくことを今の段階から約束することで、緩和的な金融環境を一段と緩和的なものにしていきたいと判断した訳です。』

>来年以降も継続していくことを今の段階から約束する

ほうほうそうですか。

『「金融緩和の思い切った前進」としては、10 兆円程度の基金の増額では不十分ではないか、というご指摘もあります。』

足りないのではという話ですな。

『この点は、今ほど述べたように今年から来年以降も切れ目なく金融緩和を続けていくという日本銀行の強い姿勢との関係で評価して頂きたいと思っています。「物価安定の目標」の早期実現に向けて、来年初以降も、期限を定めることなく資産買入れを行い、2014年中には残高として10 兆円程度の増加を見込み、その後も少なくともその高水準の残高は維持していくという日本銀行の約束は、相当に踏み込んだ政策姿勢であると考えています。』

だけで終わらせると言い訳じみるのですが、最後にこれを付け加えることによってそれを緩和するのがチャーミング。

『もちろん、先行きの基金の運営については、経済・物価情勢を点検しながら、必要に応じてさらなる緩和を図っていくこともあり得ると考えています。』


・政府との連携の部分でお洒落な記載があってアタクシ歓喜(^^)

『(政府と日本銀行の政策連携の強化)』という所ですが、その最後の所では中央銀行の財政ファイナンス懸念の部分について釘をさしておりますな。

『今回の共同声明において、政府は、財政運営に関して、「日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」と明確に述べています。このことは、日本銀行が、強力な金融緩和を進めていくうえで、重要なポイントであると考えています。』

でまあそれはそれとしてあたくしが歓喜したのはもちょっと前のこの部分。

『先ほどもご説明したように、日本経済が遠からず緩やかな回復経路に復するとともに、2014 年度中には消費者物価(除く生鮮食品)の前年比上昇率が1%に達する可能性がみえてきただけに、こうした「好機」を捉えて、政府と日本銀行が連携して、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために気合を揃えて取り組んでいくことの意義はきわめて大きいと考えました。』

>気合を揃えて取り組んでいく
>気合を揃えて取り組んでいく
>気合を揃えて取り組んでいく
>気合を揃えて取り組んでいく
>気合を揃えて取り組んでいく

日銀に足りないのは気合とハッタリ(とインチキ成分)という事を先般来申し上げていた、というか別にあたくしだけじゃなくてこれは真面目に金融政策動向見てると普通に誰でも思う事ではあるのですけれども、まあここで「気合」という単語があったのにはアタクシ歓喜でございましたぞな(^^)。


ということで、総じて今回の講演は「見せ方の工夫」が出来ていて「気合」を見せるような形にしつつもまあ景気見通しはちゃっかり強くしてやがる、とまあそういう内容でございました。

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2012/09/25

お題「一読するとハトに見えるが精読すると色々怪しい山口副総裁講演@東京」

お題が長いですかそうですか^^;

○その前に雑談

・当座預金残高は過去最大を更新して今日も更新するのですが

昨日の当座預金残高速報
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jx120924.htm
当座預金残高 442,100

本日の当座預金残高増減予想
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/jp120925.htm
当座預金増減 +7,800

ということで、昨日は予定通りに7月2日のピーク残高を上回り、さらに本日は当座預金残高が44兆9000億円まで増えるという大変に素敵な状態になりますが、まあ見事に話題になりませんなあ(いやまあさすがにベンダー見ると時事とか共同とかはフラッシュは打っていますが)ということで。


・20日なので償還マジックである^^;

20日の営業毎旬報告
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120920.htm/

10日の営業毎旬報告
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120910.htm/

発行銀行券は10日が80兆5128億円で20日が80兆2861億円なのでまあそんなにぶれていない(当たり前だが)のですが、20日と言えば四半期大量償還になりますので長期国債の残高が10日の84兆1581億円から20日の79兆9497億円に減少となりましてまたも発行銀行券残高を下回るの巻になりましたですな。いやまあそれだけの事ですが(・∀・)。


とまあどうでも良いのですがとりあえずメモという事で。


で、追加緩和後一発目の講演しかも副総裁の講演というのをネタに(決定会合議事要旨ネタは多分間に合わないのでそれはそれでまた投下予定)。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120924a.pdf
内外経済の下振れと金融緩和
── アジア調査会における講演 ──

まあここの所白川総裁や西村副総裁が海外で華々しく(かどうか知らんが)講演をしていまして、何か山口副総裁が地味に留守居の城代家老みたいな感じでちょっと目立たなくてカワイソスと思っていたのですが、追加金融緩和実施後一発目の講演という晴れ舞台(かどうか知らんが)に山口副総裁颯爽と登場の図でございますので、まあこういうポイントの講演はヲチャー的にはじっくり読んでみたりするのですが、さて・・・・・・・・


○最初読むと普通に見えるのですが処々にツッコミどころがあるという不思議な講演

講演を総括するとまあそんな感じでございまして、お題からして「内外経済の下振れと金融緩和」ということで、この講演さらっと斜め読みしたり、ベンダーのヘッドラインだけ見ているとまあ普通に追加金融緩和に関する説明と景気の見方の弱さを示したハト講演に見えるのですが、あたくしのように一々ツッコミを入れながら読まないと気が済まない人種に掛かりますと、色々と引っ掛かる部分が存在するのですよね。

表面的には最初の『1.はじめに』を読むとまあ普通の講演に読めるのですよね。

『本日、私からは、「内外経済の下振れと金融緩和」というテーマでお話ししたいと考えています。前半では、世界経済および日本経済の現状と先行きについて概観します。後半では、そうした内外経済の状況を踏まえた日本銀行の金融政策運営についてご説明します。予めポイントを申し上げますと、以下の5点に纏められるかと思います。』

ほう。

『第1に、海外経済をみると、欧州債務問題の影響により、各地で製造業を中心に企業マインドが慎重化しており、減速の度合いをやや強めています。先行きの不確実性も依然として大きいと考えています。』

海外経済の減速および先行きの慎重な見方とな。

『第2に、こうした海外経済の減速の背景を考えるうえでは、欧州債務問題の影響ばかりに着目するのではなく、より大きな視点で捉えた方が良さそうです。すなわち、「大いなる安定(Great Moderation)」と呼ばれた2000年代半ばにかけての時期に、先進国ではバブルが生じ、その崩壊後のバランスシート調整に今なお苦しんでいる一方で、新興国では、「大いなる安定」を支えた一因である低賃金労働力の供給余地が乏しくなる中、経済成長と物価安定の両立を図ることが難しくなっている、という大きな構図を念頭に置く必要があるということです。』

趣味の日銀ストーじゃなかったヲチャーのあたくしはこの部分で最初に「つまり欧州問題だけではなく減速という話=ハト的」と読みながらも何か引っかかるような気がピーンとするのでありまして、そのネタ(あるいは悪態)は後ほど(^^)。

『第3に、日本経済は、本年前半は高めの成長を実現してきましたが、海外経済の弱い動きを反映して、持ち直しの動きが一服しています。先行きも、当面、横ばい圏内の動きにとどまるとみられます。』

『第4に、日本銀行は、こうした景気見通しの下振れに対応し、先行きの経済が「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という軌道を踏み外すことのないよう、先週の金融政策決定会合において、金融緩和を一段と強化しました。』

まあこれは決定会合での説明と同じじゃな。

『第5に、日本経済がデフレから脱却するためには、このような金融面からの下支えに加えて成長力強化の取り組みを行い、緩和的な金融環境を活かしていくことが重要です。以上をご説明したうえで、今回の金融緩和を巡って聞かれる幾つかのご質問にお答えしたいと思います。』

しかしここだけ読んで終了してしまうと「山口副総裁はハト講演をしていますね」だけになってしまい、ネタにならないので更に読み込むと微妙にツッコミどころが出てくるのですな、うんうん。


○構造問題を強調するというのは一つの見解ではあるのですが・・・・・・・・

海外経済の部分で米国と中国の話をしていまして(欧州については問題が長引くというまあ普通の話)、その双方でこんなのが。

『米国では、住宅バブルが崩壊したことに伴う家計のバランスシート調整が、相応に進捗してきているとはいえ、なお根強く残っています。そうしたもとで、欧州債務問題の影響に加えて、いわゆる「財政の崖(fiscal cliff)」について解決の目途が立っていないことや、やや長い目でみた財政再建の不確実性も意識されるようになっていることが、企業や家計のマインドの慎重化を通じて、当面、景気の抑制要因として働き続ける可能性が高いとみられます。米国経済は先行き、緩和的な金融環境にも支えられ、回復を続ける見込みですが、当面の回復ペースは、緩やかなものにとどまると考えられます。』

『中国では、政策当局が金融緩和やインフラ投資の前倒しなど政策対応を実施しており、その効果が顕在化していけば、徐々に成長ペースを高めていくとみられていました。この想定自体は今でも維持できると思いますが、減速は予想以上に長引いており、景気が減速した状態から抜け出す時期が後ずれすることは確実です。』

まあ中国の減速が予想以上だったというのが見通し下げの主因というのがこの辺りで示されてはおりますが。

『原因としては、最大の貿易相手である欧州経済の予想以上の低迷が挙げられますが、より構造的な問題もあるように思います。ひとつは、政策当局が成長の方向にアクセルを踏むことを躊躇しているようにみえることです。これは、リーマン・ショック後の大規模な財政出動や金融緩和が、物価の上昇や不動産価格の高騰に繋がった苦い経験があるためと考えられます。物価の安定と成長の両立は、多くの新興国・資源国に共通の課題です。この点は、次の話題の中で詳しくお話しします。また、中国は、長年公共投資や設備投資に偏った成長を続けてきた結果、素材産業などが構造的な過剰投資の問題を抱えており、需要と供給のバランスが崩れやすいことも原因と考えられます。』

というような話をしているのですが、より構造的な問題があるというのであれば、従来のあんさんらの「内需から外需へバトンタッチされて持続的な景気回復経路に復する」というシナリオはそもそも妥当なのかというツッコミをしたくなるのでございまして、循環的な落ち込みが想定以上というのなら兎も角、構造問題ガーとか言うのってまあ確かに先行きの厳しい見方を示すからハト的ではあるのですが、じゃあこれまでのあんさんらの見通しは何でしたねんというツッコミをしたくなるのは意地悪ですかそうですか。


更にですな、『世界経済の大きな構図』というのがありまして・・・・・・

『以上、欧州、米国、中国と個々にみてきましたが、それだけでは世界経済の全体像はみえません。先進国に共通する課題、新興国が抱える課題など、世界経済の大きな構図の中で理解すべき要素もあるように思います。』

ということでああだこうだと説明しているのですが(講演本文実質19ページの中でこの部分が3ページ分ある)、その中の説明はまあ構造要因の話。

『その後、米欧をはじめとする先進国が経験していることは、大規模なバブルが崩壊し、金融危機が起きると、経済の調整は長期にわたり、その間は低成長を余儀なくされるという、過去の歴史において度々繰り返されてきた事象です。』

『バランスシートの調整過程では、景気は思うように回復しません。上に弾みにくく、下に落ち込みやすい経済が長期間続くことになります。この事実を認識しないと「これだけの政策対応をしてなぜ成長率が高まらないのか」、「なぜ失業率は下がらないのか」というフラストレーションが表面化しやすくなります。米国にしても、欧州にしても、なおバランスシート調整過程における「普通の成長ペース」が見極められていないようにみえます。そのことは、経済政策への期待の高まりや、社会的な不安・不満といった難しい問題を生じさせているように思います。』

一見するとサラッと流しそうな部分ですが、これってまあポイントではございまして、バーナンキ議長の主張では基本的に「現在の問題は循環的に景気が悪い所に住宅問題などがあり、いわゆる自然失業率や潜在成長率が下がっている訳では無いので主に金融政策対応によってリセッション前の水準を回復できる(ただし金融政策で全て万能という訳では無いが)」というような話をしております(なお、ブラードセントルイス連銀総裁などは「リセッション前の水準はバブルで下駄を履いているので、その水準がノーマルと考えるのはおかしい」という主張していますぞな)が、山口副総裁のこの説明を見ますと「構造要因」を強調しているという事でありまして、それって「景気の悪い状態が続きます」という話ではあるのですが、別の点から言いますと「構造問題があるので金融政策の役割が限定される」というロジックにも繋がる話。

いやまあどちらが正しいとかはワカランチ会長ではあるのですが、こういう話を強調しますと、FRBが失業について「循環要因によって悪い数字になっている」というロジック(一部の地区連銀総裁は反対意見ですがまあ決定事項として出ている)で追加金融緩和を打ち込んでくる(循環要因なので金融政策による経済刺激が効くというロジック)のに比較すると、まあ意地悪な言い方をしますと日銀が「ボクたちは金融緩和やってるんだけど構造問題が有るから仕方ないんだよね」的なスタンスを取っていると見なされますぞなもしという話ではございますなあと。

という辺りをスルー致しましてこの部分を読めば、結論の

『このように、世界経済は、欧州債務問題の影響と、各国・地域が抱える固有の要因、すなわち先進国におけるバランスシート調整、新興国における持続的な成長パスの模索という、それぞれに大きな課題とが複合的に作用するかたちで、減速した状態をやや強めています。先行きは、先ほどご説明したとおり、米国経済が緩やかな回復を続け、中国において政策効果が徐々に顕在化してくるもとで、次第に減速した状態から脱していくと考えられますが、そのタイミングは後ずれしています。』

という部分を見てまあハトですなあという話になるのですが、どうもこの構造要因の強調(ちなみに最初に引用したように「成長力の強化が必要」という話をするのもこれまた構造要因の強調ではございますわな)部分が何回か読み直すうちに気になったのでツッコミという所です。


○日本経済のお話もまあハトはハト

『3.日本経済の現状と先行き』から少々。

『ただ、このところ個人消費で弱めの指標も一部にみられます。天候要因による部分もありますが、生産の弱さから製造業中心に時間外賃金が伸び悩んでいることや、夏のボーナスが減少したことが、所得面から消費を抑える方向に寄与している可能性もあります。また、エコカー補助金の受付が先週末で終了しましたが、直前にかけて駆け込みがみられなかった点は、終了後に補助金に代わるキャッシュバックを行ったり、人気の高い低燃費タイプの新型車を投入するといった販売側の対応が予想されている面もあるにせよ、需要の先食いが限界にきているとみるべきかもしれません。』

まあダメじゃんという感じですな。

『設備投資についても、基調としては増加を続ける可能性が高いと思いますが、グローバルな企業マインドの悪化の影響が出てこないか、注意してみていく必要があります。全体として、内需は底堅さを維持するとみられますが、外需の不振を補って、さらに景気を持ち上げるほどの力は期待しにくいように思います。』

ということでまあ先行きの見方も慎重。

『この間、リスク要因をみても、欧州債務問題、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きいほか、金融・為替市場動向が景気・物価に及ぼす影響には、注意が必要と考えています。』

声明文どおりですが、もうちょっと為替の言及有るかなと思ったのでやや拍子抜け。


○でまあ問題は追加金融緩和の説明部分でして・・・・・・・・

まあここまでは前座である。

『4.日本銀行の金融政策運営』の『金融緩和の強化の内容』以下がツッコミどころ(その前は大体普通の説明で声明文とか月報とかの通り)でありまして・・・・・

『先ほども触れましたとおり、今回、「資産買入等の基金」の枠を10兆円程度と大幅に増額することにしました。現下の経済・物価情勢に関する認識のもとで、長い目でみた経済・物価の見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくという軌道を踏み外さないようにするためには、大きな金額が必要と考えたためです。増額の対象については、リスク性資産という選択肢もありますが、現在わが国では、投資家の不安心理やリスク回避姿勢からリスク・プレミアムが拡大するような状況にはないため、短期国債および長期国債としました。』

ここでまあある意味丁寧というか馬鹿正直にリスク性資産の購入をしなかった説明をしているのですけれども、現状ってたとえば社債やCP市場でややスプレッドの二極化みたいな動きが起きていたりしてますし、金融環境という意味では相変わらずの円高ですしCPIはアレですし、さらに言えばまあ株価は相変わらずの低空飛行ですし・・・・・・と考えますと、

>投資家の不安心理やリスク回避姿勢からリスク・プレミアムが拡大するような状況にはないため

という状況かよ!という気がする訳でございまして、何でまあわざわざこういう事を言うんだか(確かに金融環境に関する認識は8月の決定会合で「緩和した状態」という認識に引き上げているのですが、それもまあいわゆるFCI的な観点からして如何なものかという気がしていたら、その後からCP市場での金利二極化が絶賛進行したりするのが日銀クオリティだったりします)という感じで、こういうのは正直言って黙っておけば良いのにと思うのでございます。


あとですね、この説明でおもったのですけど、そもそも包括緩和って信用緩和と量的緩和のハイブリッドでやっておりましたが、ここもとは「量で勝負」という話に傾斜している訳でございまして、一方で海外中銀では従来は量で勝負していたBOEはFLSという貸出促進スキームを打ち込み、FEDはMBS市場に特化した買入を突っ込むという信用緩和的な色彩の強い物を打ち込む(もともとECBは量では勝負していない)という流れになっている訳で、背景としては「量で勝負しても限界がある」という話になっている筈。

然るに、日銀はそもそも包括緩和した時には「単純な量で勝負しないで、買入資産の中身を見て下さい(キリッ)」という話をしていた筈なのに、何故かこのタイミングで「量で勝負」という話になってくるのかと思いますと何とも違和感というか何というか。元々は景気刺激の為にリスク資産購入して量だけでは無く質でも勝負というのが日銀の包括緩和導入当初の話ですし、大体からして構造要因に問題があるという話だったら単純な量で勝負というのは効きが悪いという結論になる(まあ日銀的には成長基盤支援オペをしていますという話になるのでしょうが)ような気がするんですが。


○景気判断に関する言い訳の往生際が悪い件について

でまあその先に『情勢判断と金融緩和のタイミング』というのがありましてですね。

『以上で、今回の措置について、背景となる経済・物価に関する判断と狙い、具体的な措置の内容、想定している波及経路とそれを活かすための成長力強化の重要性といった大きな考え方を説明してきました。以下では、今回の措置に関連して聞かれるいくつかのご質問にお答えしたいと思います。』

ほう。

『一つ目は、「なぜ今回の会合で金融緩和を行ったのか」という質問です。これは、「今までの景気判断が甘かったのではないか」という方向からの問いかけと、逆に、「10月初公表の短観や10月末の展望レポートでの点検を待っても良かったのではないか」という方向からの問いかけとがあり得ます。』

いやまあ普通に前半の論点しか無いと思いますが・・・・・・

『この点、まず景気判断につきましては、ここ数か月、欧州債務問題の影響などを背景に、世界経済の減速した状態が続いてきていたことは、総裁の記者会見、講演、インタビューなどの機会に申し上げてきました。』

はあそうですか。

『そうした中で、ここにきて多くの国・地域で製造業を中心に減速の度合いが強まり、それがわが国の輸出や鉱工業生産に明確に波及してきたことが確認されたということです。』

まあ足元でそういう数値になっています罠、ということで中国経済を中心にする海外経済の予想以上の減速が8月末の指標でアチャーとなったという話で、まあここで話を止めておけば良いものがですなあ・・・・・

『この間の世界経済の下振れは、企業マインド指標の悪化にも表れているとおり、私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います。』

>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います
>私どもを含め大方の想定を超えるものであったと思います

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(Д)°°キョウチョウシチャイマシタヨ

いやあのどうして「ちょっと強気の予想を引っ張り過ぎましたどうもすいません」って言えないんだか・・・・・・


とまあそういう事で、今回の山口副総裁の講演なのですが、冒頭部分を見た時にはまあサラサラ読む講演ですなとか思い、斜め読みして何か微妙に違和感が起き、さらにもう一度読むと色々とツッコミをしたくなる、とまあそういう講演でございまして、雉も鳴かずば撃たれまいという風情の内容ではございましたという所ですが、こんなに細かくツッコむ方が変態ですかそうですか(^^)。

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2012/07/30

○山口副総裁講演&会見はハト成分を強めに入れております

まずは講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120725a.pdf

小見出しを並べるとこうなります。

1.はじめに
2.海外経済の動向:大きなリスクと背中合わせの先行きの回復
3.欧州債務問題:なお険しい解決への道のり
4.財政問題と長期金利:財政再建に向けた取り組みの重要性
5.日本経済の当面の見通し:緩やかな回復とそれを巡る不確実性
6.日本経済の中長期的な課題:見られ始めた成長の芽
7.日本銀行の金融政策運営:金融緩和の推進と成長力強化の支援
8.おわりに

・・・・・・ということで4番と6番に麿風味を感じますが(^^)、その他の小見出しはハト風味を醸し出すような物となっているのが山口副総裁クオリティという所でございまして、麿の麿節のフォローに回る山口副総裁ってい風情なのが中々泣ける所でございます。


・海外経済に関して

ということで海外経済に関して。

『それでは、海外経済の動向から話を始めます。海外経済は、2008年秋のリーマン・ショックの後、2009年半ば頃から回復を続けてきましたが、昨年後半以降、成長ペースが幾分鈍化しており、現在もなお、減速した状態から脱していません。』

つーことですが、地域別の先行き見通しはと言いますと。

『春先以降、雇用者数の伸びが鈍化していることもあって、市場では、米国経済の先行きに対する慎重な見方も窺われますが、個人消費は緩やかな増加を続け、長らく低迷していた住宅販売にも持ち直しの兆しがみられます。これは、リーマン・ショック以降、経済の重石となっていた家計部門の債務負担が次第に和らぎつつあることを示唆しています。また、春先以降のガソリン価格の下落が家計の実質購買力を押し上げ、個人消費の増加を下支えしていくことも期待されます。こうしたことから、米国経済については、先行き、成長ペースが目立って加速することはないにせよ、基本的には、緩やかな回復が途切れることなく続いていくと考えています。』

ほう。

『欧州経済は、後ほどお話しする欧州債務問題の影響などから、全体として停滞しており、この先も、当面、厳しい状況が続くと考えられます。』

これは順当。

『インフレ率の低下は、家計の実質購買力を高め、支出活動を促します。また、中国当局は、物価や資産価格の落ち着きを受けて、6月と7月に2か月連続で利下げを行ったほか、省エネ家電等の消費促進に向けた財政支援を決定するなど、金融・財政の両面から、本格的な景気刺激策を講じ始めています。輸出全体の約2割を占める欧州向け輸出の弱さには注意が必要ですが、中国経済は、そう遠くない将来、内需を中心に緩やかな回復経路に復していくとみています。』

>欧州向け輸出の弱さには注意が必要ですが
>欧州向け輸出の弱さには注意が必要ですが
>欧州向け輸出の弱さには注意が必要ですが

うむ。

『以上のように考えますと、先行きについては、米国経済の緩やかな回復と中国経済の持ち直しを推進力としながら、海外経済は次第に減速局面を脱し、成長率は徐々に高まってくると考えています。ただし、米国や中国を含めて海外経済の先行きには、引き続き、高い不確実性があります。いわば、中心的な経済の回復シナリオとリスクシナリオが背中合わせとなっている状況が続いています。とりわけ、次にお話しする欧州債務問題の展開は最も注意すべきリスク要因です。』

「米国経済の緩やかな回復と中国経済の持ち直しを推進力」ってえ事ですからまあその推進力がかなり怪しげというのは「いわば、中心的な経済の回復シナリオとリスクシナリオが背中合わせとなっている状況が続いています」ってな話をしていますし、そもそも先ほどの中国の回復が欧州向け輸出の弱さについて指摘しているので、まあそういう意味では山口副総裁の説明ってベースは日銀公式見解なのですけれども、その中でのリスクを強調する事によってハト風味を出すという感じっすな。


・欧州問題の解決には時間が掛かる

んでまあ欧州問題ですけれども。

『欧州では、周縁国を中心に、こうした財政、金融、実体経済の間で負の相乗作用が働いていることが大きな問題となっています。』

ということで負の相乗作用についての説明の部分はめんどいので端折りましたが状況はこういう話でして、では今後の話ですけれども。

『したがって、差し当たって必要なことは、こうした負の相乗作用を断ち切ることです。現在は、多額の不良債権を抱えるスペインの金融機関の立て直しが議論の焦点となっており、先月、ユーロ加盟国は、最大1,000億ユーロに上る金融支援を決定しました。欧州中央銀行も、昨年12月以降、金融市場に対し、貸付期間3年という中央銀行としては異例に長期の資金供給を実施しています。こうした当局の姿勢を受けて、金融機関同士が資金をやり取りする短期の金融市場は、危機感が強かった昨年末頃に比べて、随分と落ち着きを取り戻しています。』

まあそうではありますが。

『これらの対応は、負の相乗作用を食い止める応急措置という意味で必須ではありますが、欧州債務問題の根本的な解決にはなりません。』

キタコレ。

『先ほどお話しした周縁国の問題の原因に遡れば、これらの国で抜本的な財政再建や中長期的な成長力強化に向けた経済構造改革が行われることが必要不可欠です。また、欧州全体としても、「ユーロ」という単一通貨を使いながら、各国の財政や銀行監督がばらばらのままで、経済や金融システムの安定を図れるのか、という課題を突きつけられています。』

ということで、財政同盟が必要とか銀行同盟が必要とか極めてその通りの話なのですが、当然ながらそれは時間が掛かりますがなという話で。

『ただし、この問題は、欧州の政治・経済・社会の統合の将来像をどう描いていくかという極めて本質的な課題です。問題の大きさと複雑さ、各国の政治的意思決定の難しさを考えれば、ある程度の時間がかかることは覚悟しなければなりません。』

という話をしておりますが、その後は「市場が追い込んでくるので危機バネが働く」という話。

『一方で、市場は性急に結論を求めます。待ってはくれません。この時間軸の違いが、市場の神経質な反応に繋がっているのですが、同時にこのことが、欧州債務問題の解決を早める力になる可能性もあります。』

ということで、結論は・・・・

『そして何よりも、これまでの議論を通じ、欧州全体に、ユーロを瓦解させないという共通の認識が醸成されてきています。こうした状況を踏まえると、その道のりはなお険しいものの、そう遠くない将来、欧州債務問題の解決に向けた進展がみられるのではないかと期待しているところです。』

ということで。


・財政再建と長期金利キタコレ

まあここは毎度の話なのですが、いつもの事ですが読んでいて正直「ちょっと違うんじゃないか」というのはここの部分。

『それでは、なぜ、日本国債の円滑な発行が実現しているのでしょうか。私は、わが国の将来の政策運営に対する信認が存在しているからだと考えています。つまり、財政バランスの悪化にもかかわらず、市場参加者は、「日本は、最終的には財政再建にしっかり取り組む意思と能力を有している」と信頼しているのだと思います。』

まあそれ以外の答えをするのも政策当局者としてアレというのは判りますが、市場の中の人って政策運営に対する信認じゃなくて単にISバランス見て「とりあえず当面はサステイナブル」なのだからそら資金需給的に国債買うしかなかんべという風な割り切りモードなんじゃネーノとか思うのですけれどもね。

だから恐らく少々の馬鹿発言が出ても国債市場ってコケないのですけれども、その「当面はサステイナブル」の当面がどの程度なのかというのが変わるとそれはそれでアレな事になるような希ガス。


・日本経済について

『先行きについては、当面、内需の堅調が、日本経済の緩やかな回復を支える姿を想定しています。ただ、今後は、エコカー補助金がこの夏にも予算切れとなる可能性があるほか、ペントアップ需要も次第に減衰していくと考えられます。そうした中にあって、経済全体の前向きな動きを確かなものとしていくためには、内需が景気を支えている間に、輸出がしっかりと立ち上がってくることが必要です。』

結局の所輸出が立ち上がるかという話で、それはそれでリスク有りという話ですがな。で、物価に関してですけれども。

『私どもが、当面の目途として目指している1%には、2014年度以降、遠からず達すると考えています。』

とはゆうとるものの・・・・・・

『このように、やや長い目で見れば、日本経済は物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくとみています。ただ、こうした見通しを巡っては、様々な不確実性が存在しています。特に、欧州債務問題の動向や為替相場の変動が日本経済に及ぼす影響については、引き続き、十分な注意を払っていく必要があります。』

為替相場の変動キタコレ。

『また、仮に経済・物価情勢が見通しどおりに展開したとしても、消費者物価の前年比が1%に達するのは再来年度以降であり、デフレ脱却に向けては、なお時間を要する状況にあると考えています。』

「見通し通りだったとしてもデフレ脱却に時間を要する」キタコレという事で、この辺りのニュアンスも麿風味とはだいぶ違ってハト風味。まあ先ほども申し上げましたが、麿が麿節を飛ばしてアレなのを山口副総裁がフォローして回っているの図という感じでしょうな。


・金融政策に関してもサービス発言多い

金融政策に関して。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識しています。そうした認識のもとで、本年2月には、デフレ脱却に向けた私どもの政策姿勢をより明確化しました。具体的には、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、強力に金融緩和を推進していくことを明らかにしたところです。』

現在完了形じゃなくて「今後も協力に金融緩和を推進する」の2月会合文言が出るとはこれはお洒落(^^)。

『振り返ってみると、リーマン・ショック以降、日本銀行の金融政策の構えは、わが国経済の状況に応じて変化してきました。当初はリーマン・ショックやその後の震災を含め、度重なる景気下押し圧力を緩和し、経済を下支えしていくという性格のものでした。その後、日本経済は、こうしたショックから徐々に抜け出し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復するという見通しが示せるような状況になってきました。それでも2月と4月に金融緩和の強化を実施したのは、それまでの金融緩和の累積的な効果と併せて、こうした見通しをさらに確実なものとするためです。』

ほう。

『現在は、拡充された枠のもとで日々資産の買入れを進めながら、金融緩和の効果や、経済・物価の見通しとリスクを丹念に点検しているところです。もちろん、例えば何らかのショックによって見通しが下振れたり、見通しを巡るリスクが大きく高まるような場合には、追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めてまいります。』

>追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません
>追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません
>追加的な金融緩和を実施することを躊躇しません

・・・・・・・・・・・というかこーゆーのって副総裁に言わせるんじゃなくて麿が言うべきじゃネーノと思うのでございますけどにゃあ。


でまあ記者会見に参りますが。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1207c.pdf

講演もまあその傾向があるのですが、実際にあたくしが「麿の麿節をフォローして回る山口副総裁の図」というのを感じたのは会見の方でございますがなという所です。

・リスク認識は高いんです(キリッ)

海外経済に対する警戒感が市場で高まっているでしょという質問に対しての答え。

『(答) 本日の挨拶の中でも、海外経済については、一言で言えば「大きなリスクと背中合わせの先行きの回復」と申し上げました。従って、大きなリスクが存在していることについては、私自身十分認識しているつもりです。そういう認識のないままに楽観論を申し上げたわけではありません。』

>そういう認識のないままに楽観論を申し上げたわけではありません
>そういう認識のないままに楽観論を申し上げたわけではありません
>そういう認識のないままに楽観論を申し上げたわけではありません

・・・・・・・・まあ何だ、この部分って山口副総裁の発言というよりも「日本銀行の見通しが楽観的にも程がある」という悪態に対して述べたんだろうなあと思ったのですけれども(^^)(^^)(^^)。

『一番大きなリスクとしては何を認識しているのかということですが、それは、欧州債務問題を最大のリスクファクターと考えています。そのことについても本日お話ししたところです。その解決に向けては、色々な努力が関係者の間で加えられていますが、道のりは依然として険しいと申し上げたところです。このリスクは相当強く意識しなければなりませんし、欧州債務問題において、仮にリスクが表面化することになれば、それは米国経済にも、新興国経済にも影響が及ぶでしょうし、もちろん日本経済にも影響が及ぶという形でリスクを認識しているということです。』

ということでリスク意識全開ではございます。


・円高と追加緩和

会場が広島ということで円高に関して日銀は何しますねんというお約束の質問に対して。

『(答) 最初に円高ということですが、ご指摘の通り、本日の懇談会の場でも、何人かの方から円高の企業経営に及ぼす影響は非常に厳しいというお話がありました。確かに、輸出産業――自動車あるいは電機――を抱える当地にとっては、円高がダイレクトに輸出そのものにも影響を与えるでしょうし、企業収益にも影響を与えるでしょう。更には先々を踏まえての企業マインドにも影響を与えると思っています。従って、そうした影響の大きさは、きちっと念頭に置いて、私どもも経済情勢の分析をしなければいけませんし、それを踏まえて何らかの政策対応が必要であれば、それをやっていくことになるだろうと思います。』

で、その次にサービスキタコレ。

『仮に、私どもとして、円高が日本経済のこれからの回復のパスに大きな下振れ要素として働いてくるという判断、あるいは、そのリスクがかなり高いという判断に立つとすれば、追加の緩和を行っていくことになるのだろうと思います。』

キタコレ(・∀・)

『しかし、この辺りについては、情勢をきちっと分析し、見極めた上で考えていくべきことだろうと思っています。今、あれこれ判断すべきことではないと認識しています。』

ふむふむ。


・やはり輸出が重要

輸出に関する質問に対しての答えから。

『次に、仮に、輸出が回復しなければ緩やかな回復は実現できないのかというもう1つのご質問です。内需が堅調であることは事実です。その堅調さについても、それなりに持続可能性のある部分が目につくようになっていることも事実なので、その堅調さはしっかり評価しておく必要があると思います。しかし、日本経済全体として、自律的な回復力をしっかりと発揮していくということになると、やはり、輸出も回復し、それが企業収益に影響を及ぼし、そしてそれが雇用や所得に影響を及ぼしていくルートが作動することが、必要ではないかと思っています。従って、内需に加えて輸出の回復、それが相俟って、わが国経済の緩やかな回復が実現していくと思っています。』

ということで輸出の回復が必須とな。


・追加緩和の手段に関して

これは面白い質問。

『(問)(前半も面白いのですが割愛)加えて、もう1点、現在、基金で長期国債を購入されているわけですが、購入対象のところはもちろん、購入対象ではない5年物でも、相当程度金利が低下してきています。更に買入れを行って金利を低めに誘導して、一体どれだけの効果があるのかなというところもあり、今後も買い増しという緩和策を継続するような追加緩和で良いのかどうか、お考えがあればお聞かせ下さい。』

『(答)(前半割愛)次に、一般論として、追加緩和をするとすれば、もはや基金の増額をやってもあまり意味がないのではないかという趣旨のご質問と考えてお答えします。私どもとしては、少しでも効果のある政策は、引き続き追求していくということだと思っていますし、これから来年6月末までに基金の残高を70兆円まで増やすことにしています。基金の残高は、現在、53兆円程度ですから、これから17兆円を買い増していくプロセスでもあります。従って、緩和効果が追加され続ける状況ですし、そういうものに期待しながら、更に何か必要ということになれば、それはそういう中で考えていくべきことと思っています。』

>少しでも効果のある政策は、引き続き追求していくということだと思っています
>少しでも効果のある政策は、引き続き追求していくということだと思っています
>少しでも効果のある政策は、引き続き追求していくということだと思っています

・・・・・・・・・麿はこの手の話をどうもあまりしたがらないように見えると申しますか、まあある意味麿の麿な所で真面目というか誠実な所なのですが、「いやこんなのやってもそんなに効果があるんかね」というようなトーンになってしまうのが麿クオリティでして、これに対して山口副総裁の方が狸成分が入っていると申しますか、俊ちゃんテイストが入っている(俊ちゃんの大狸には敵いませんが)という感じでしょうか。

>更に何か必要ということになれば、それはそういう中で考えていくべきことと思っています
>更に何か必要ということになれば、それはそういう中で考えていくべきことと思っています
>更に何か必要ということになれば、それはそういう中で考えていくべきことと思っています

ということのようで。


つーことで、まあ引用大会で手抜き勘弁でございますが、山口副総裁の講演と会見に関してはハト成分が高めに入っておりまして、麿が麿節を出して「日銀ってちょっと楽観的すぎないか」と言われる状況に対してフォローするの図となっている所で、副総裁っちゅうか官房長官っぽい風情を示しておりますなという所でございましたな(^^)。

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2012/04/24

・山口副総裁講演(メモ)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120419b1.pdf
日本経済の課題と中小企業の挑戦
── 日本商工会議所における講演 ──

時間があったら改めてネタにしますが、時間があれなのでメモだけ。

(1)不確実性に関しては下振れ方向を強調&円高の問題を強調

経済の不確実性の話の部分の締めはこんな感じ。

『このように、経済の先行きに対する不確実性は、現時点の企業の経済活動に多少なりともブレーキをかけることになります。その意味で、中長期的な経済の動向やそれに対する企業の見方は、足もとの景気に投影されます。』

でまあ下振れなのですが、この中では円高の事を強調しているのが目立ちますな。

『先ほど述べた第1の不確実性、すなわち海外経済の動向に関連して、為替市場の動きにも触れておきたいと思います。本年2月以降、相場は幾分円安方向で推移していますが、それでもリーマン・ショック前に比べれば、かなりの円高水準が続いています。これには、リーマン・ショックやその後の欧州債務問題の深刻化などから、グローバルな投資家がリスク回避姿勢を強め、相対的に安全とみられる円などを買い進めてきたことが影響しています。』

>それでもリーマン・ショック前に比べれば、かなりの円高水準が続いています
>それでもリーマン・ショック前に比べれば、かなりの円高水準が続いています
>それでもリーマン・ショック前に比べれば、かなりの円高水準が続いています


『日本銀行では、海外経済の先行きを巡る不確実性が大きい現在の局面においては、円高が、輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じて、日本経済にマイナスの影響を及ぼす可能性に、特に注意が必要であると考えています。』

キタコレ。

『円高には、輸入コストの抑制など、様々なメリットもあります。しかし、円高メリットを期待できるはずの内需関連企業でも、将来の成長の姿がなかなか描けない現状にあっては、そのメリットを活かした前向きなビジネスに踏み出しにくい状態にあるように思います。』

(2)成長の中期的な分析に関しては図表の2がほほーという感じ

図表なので引用できませんが、まあこの図表はなるほどいう感じです。

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2012/02/07

○山口副総裁の講演会見は下振れ警戒全開で

先週木曜にあった講演ネタで出遅れにも程がありますが・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120202a.pdf
欧州債務問題、日本経済、金融政策運営
── 香川県金融経済懇談会における挨拶 ──

まあ何ですな、一言で纏めてしまえば「下振れ警戒ですね」で終了なのでございますが少々引用しつつあっさり味で。

・最初は雑談ネタで(^^)

『香川県は、私自身にとって思い出深い土地です。私は1996 年5月から約2年間、支店長として高松支店に勤務いたしました。』

高松支店の歴代支店長はこちら(日銀高松支店のサイトです)。
http://www3.boj.or.jp/takamatsu/sum/list.htm
歴代支店長一覧

『日本銀行高松支店の歴代支店長は、第24代日本銀行総裁の前川春雄氏(故人)、第29代日本銀行総裁の福井俊彦氏などが歴任し、現在の 清水 季子(しみず ときこ)支店長は第35代目の支店長となります。』

この歴代支店長リストは中々豪華ですな、うんうん。


・欧州債務問題に関しては先行きを懸念

『2.海外経済の動向と欧州債務問題の現状』の所から少々。

『その後、イタリア、スペインとも、それぞれ新政権のもとで財政再建策が打ち出されたこともあって、最近は国債利回りが幾分低下しています。しかし、そうした財政再建策が確実に実行されるかどうかはまだ不透明ですし、この春にかけては過去に発行した国債が大量に満期を迎え、その借り換えが順調に行われるかどうかも注目されています。また、ポルトガルについては、国債の格付けが大きく引き下げられたことなどから、財政を巡る懸念がこのところむしろ強まっており、国債利回りは15%を超える高い水準で推移しています。』

先行きのキャッシュ繰りへの懸念ですかそうですか。

『こうした状況のもと、欧州中央銀行は昨年12月に、貸付期間3年という中央銀行としては異例に長期の資金を、金融市場に大量に供給しました。その間、日米欧の主要6中央銀行も結束して、ドル資金の供給体制を強化するなど、国際金融市場の安定に努めてきました。その結果、本年入り後は、ドル資金を取引する際の金利が低下するなど、市場の緊張は幾分和らいでいます。しかし、これはあくまでも、当面の資金繰り不安が後退したということであって、欧州の金融機関は依然として大きな損失を抱え、それとの関係で自己資本が十分ではないとみられています。』

で、以下が資金繰りの方ではなくアセットサイドの話。

『これらの金融機関は、本年6月末までに自己資本比率を引き上げることを金融当局から求められていますが、資本そのものを十分に確保できなければ、計算上の分母である資産を減らして自己資本比率を引き上げることにならざるを得ません。そうした資産の圧縮、いわゆるデレバレッジングと言われる動きは既に生じ始めていますが、今後、企業など資金の借り手にさらなる悪影響を与えないかどうか、また、欧州系金融機関からの借入れが多い新興国経済に影響が及ぶことがないかどうか、注意が必要だと思います。』

新興国経済への影響警戒キタコレ。

『要すれば、財政に端を発した問題が金融面にも波及し、それが実体経済に及ぶという悪循環が、グローバルにも拡がらないかどうか、注意が怠れないということです。』

何せ新興国経済が回復が日本経済回復のカギという扱いになっていますからね。

で、以下『3.欧州債務問題の基本的な性格』ということで欧州問題に関する単一通貨と複数経済の問題についての話があるのですけれども、まあこれは普通にきっちりと纏めている話でありますので、これは今回は引用スルーということで。


・新興国に関しても懸念が

そもそもの経済シナリオはですな。

『新興国・資源国経済は、全体として高めの成長率を維持しています。しかしながら、最近は成長ペースが鈍化してきており、しかも成長の減速やインフレ率低下の度合いに、国ごとのばらつきが見られるようになっています。例えば、インドやブラジルでは、経済の減速が目立ってきているにもかかわらず、インフレ率はなお高止まっています。一方、中国では、成長の減速とインフレ圧力の低下がともに緩やかに進行しており、なお不確実性はありますが、うまく軟着陸に向かう兆しが出てきています。』

まあ中国がセーフならセーフという感じでしょうかね。

『なお、先月下旬に公表されたIMF(国際通貨基金)の最新の世界経済見通しによれば、2012年の世界経済の成長率は+3.3%との予想が示されています。昨年9月時点の見通し+4.0%に比べれば、欧州債務問題を主因に下方修正されていますが、新興国・資源国を中心に世界経済が次第に回復していくという見方は、大筋において維持されています。』

「大筋において」キタコレという感じですな。んでもって新興国に関してですが、先行きの不透明要因の中にこのような記述が。

『4.日本経済の展望と中長期的な課題』の中で『しかし欧州債務問題の影響を始め不確実性は大きい』とある所にこんな話が。

『ただし、以上の見通しには様々な不確実性が存在します。最大のリスクは、既に述べた欧州債務問題ですが、それ以外にも意識しておくべき不確実性があります。』

ほう。

『先ほどの日本経済の回復シナリオでは、新興国・資源国が、インフレ圧力の低下を受けて成長率を再び高め、世界経済を牽引していく姿を想定しています。しかし、そうした基本的な想定についても、その通り実現するかどうかについては、予断を持たずに見ていく必要があります。』

キタコレ。

『また、イランを巡る地政学リスクも懸念されます。今後、仮に情勢が緊迫化して原油価格が大幅に上昇すれば、物価には上振れ圧力となる一方、企業収益の悪化などを通じて景気には下振れ要因となります。原油価格の高騰は新興国経済の減速にもつながり得るだけに、今後の展開には十分な注意が必要です。』

決定会合の声明文とかを見ていると原油価格の高騰は物価の上振れリスクとしか書いていないように見えるのですが、山口副総裁のこの講演テキストによれば原油価格高騰が新興国経済の減速要因という話になりまして、声明文で受けるイメージとはニュアンスが違って景気警戒ムード高まるという感じではないでしょうか。


・財政の持続性に関して

これはブルームバーグやロイターがややこしい報道をした部分ですな。

『4.日本経済の展望と中長期的な課題』の最後にある『市場の信認が失われないうちに財政の持続性をしっかり確保すべき』という所から。

『こうした成長力の強化と並んで、財政の持続性確保に向けた取り組みも着実に進めていく必要があります。わが国の政府債務残高は対名目GDP比で200%を超えており、先進国の中で最も高い水準となっています。それにもかかわらず、国債金利が低水準で安定している最も基本的な理由は、わが国には財政健全化に向けて取り組む強い意志があり、したがって日本国債は安全な資産であり続けると、市場が信頼しているためだと考えています。』

まあギリシャみたいなヒャッハー状態だと思われたら売られるでしょうが、じゃあ今買われている理由が上記のようなものかというとそれは微妙ですけどにゃ。

『そうは言っても、国の借金がなお増え続けている現状では、何らかのきっかけで国債市場の信認が一気に崩れるリスクは排除できません。仮にこれが現実のものとなった場合、金融システムや実体経済に大きな影響が及ぶことは、欧州の実例が証明しているとおりです。一段と高齢化が進む中で、社会保障費の増加圧力がかかり続けることなどを踏まえますと、成長力の強化だけで財政健全化の道筋を確保することは困難です。市場からの信認が失われる前に、歳出・歳入の両面で財政の構造改革を進めていく必要があります。』

しかし今は何故か知らんが増税の話ばかりが先行するのが詐欺フェストミンスクオリティ。

というのはどうでも良いですが、まあここでは普通の話をしているだけで、特段日本の長期金利がどうのこうの言ってるようには見えませんけどねえ。つーかこれだけ慎重な物言いをしている山口副総裁がそんな不用意発言(報道のヘッドラインにあった「長期金利の低位安定はやや不可思議」って奴)するのかねという感じはせんでも無い。


・政策対応に関してもハト派というか慎重な姿勢を強調

『5.日本銀行の金融政策運営』の『金融政策運営の不断の点検と万が一の場合に備えた体制整備』という所から。

『日本銀行は、デフレからの脱却、そして中長期的な成長力の強化に向けて、中央銀行として最大限の貢献を粘り強く続けるとともに、海外経済の減速や円高の影響など、当面の情勢には不確実性が大きいことを十分認識し、引き続き適切な政策対応に努めてまいります。金融政策の運営に当たっては、市場とのコミュニケーションのあり方を含め、客観的かつ冷静な目で不断に点検していくことが重要だと思っています。』

「海外経済の減速や円高の影響など、当面の情勢には不確実性が大きいことを十分認識し」キタコレという感じでございまするが。

『このほか、欧州債務問題については、その確率が低いとは言え、金融市場が大きく混乱するようなまさかの事態にも備えておかなければならないと申し上げました。この点、日本銀行は、金融システムや決済システム、金融機関経営の状況をしっかりと把握し、政府や各国中央銀行とも緊密に連携をとりつつ、万が一の場合にも金融市場の安定を確保するよう、万全の体制を整えておきたいと考えています。』

ということで、日銀は慎重姿勢ですよというアピールですな、うんうん。


○会見もまあ似たようなトーンです

金曜に会見要旨も出ているのでそっちの話も少々。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202a.pdf

・円高に関して

講演では日本経済に対する円高の悪影響の話がありましたがめんどいのでスルーした訳ですが、そちらの質疑ですな。

『(問) 為替相場、対ドル相場で、76円台ぎりぎりまで円高が進んでいます。本日の副総裁の挨拶でも、円高の定着や電力コストの上昇等が今後の成長期待を下押しする可能性があるというお話がありました。足許のこの円高が日本経済の回復に与える影響について、どのようにみておられますか。』

『(答) このところ、米国経済についてやや慎重な見方が出てきていることを背景に、円高の動きが少し進んでいる状況だと思います。今、日本経済は海外経済の状況に非常に影響を受けやすい状況にあります。そういうもとでの円高進行は、これから先の輸出の動向、企業収益の状況などに影響を与えます。さらには、企業のマインド面にも悪影響を及ぼす可能性があります。こうした点を踏まえ、昨今の円高がどのような形で日本経済に影響を与えてくるのか、注意深くみていく必要があると思っています。』

ということで、まあ普通ちゃあ普通の答えなのですが、先日麿の定例記者会見をネタにした時に雉も鳴かずば撃たれまいとか何とか申し上げたような気がしますが、確かに個人消費に関連して円高のプラス効果が出ている、という面があるかもしれませんが、足元の金融政策運営では基本的に下振れ警戒の方を注意し、かつ現状特段の金融不均衡の拡大的なものがあるようにも見えない(まあ本当はあるのかもしれないけど普通に見てて現状そういう流れじゃないっしょ)という中で、何も好き好んで「円高のメリット」の話をせんでもよかばいという気がしましたけれども、山口副総裁はそのへんの地雷を踏まないようにするのが得意ですな、うんうん。

『(問) 前の方の質問と重複する部分もあるかと思いますが、FRBの新しい発表があって以降、米国の長期金利が下がって、日米金利差が縮小するなかで、今回の円高が進んでいるのではないかという指摘もあります。そういう意味で経済にとって必ずしもプラスではない円高を是正するために、日銀として一段と長めの金利を引き下げるような何らかの取り組みが必要ではないかという意見もあるようですが、こうした意見に対する考え方を教えてください。』

『(答) 確かにこのところ、以前に比べれば、円高方向に推移していることは事実ですが、為替相場というのは、御承知の通り非常に振れやすいものです。したがって、その基調的な動きを判断するには、それなりの時間をかけながら慎重にみていく必要があると考えています。円高の背景としてマーケットで言われていることは様々あるわけですが、1つには、米国経済に対する見方が少し慎重味を増していることも、円高の大きな要素となっていると言われています。こうした見方の妥当性を見極める意味でも、もう少し様子をみていく必要があると思っています。それと合わせて、昨今の円高が仮に続いていく場合に、日本経済の景気面、物価面にどのような影響を与えるのか、真剣に見極めつつ政策対応を考えていくということです。このところの円高をみて直ちに政策対応が必要だと思っているわけではありません。』

まあ何ですな、微妙な言い方をしていますけれども、冷静に考えた場合に米国の追加金融緩和(のようなものであってただのインチキ時間軸なので本当に効果があるのかはあたくし的には微妙だと思いますが)の効果が出ると市場が認識した場合、必ずしも長期金利の低下になるかどうかというのはQEシリーズ実施後の長期金利推移をみれば明白ではありますので、そーゆー意味では一々反応しないで様子をちょっと見つつという話になるのはまあそうかなとは思います。

ただまあ円高がまた高値更新とかしやがるとあちこちからピーピーピーと携帯電話の電池切れの如くヤヤコシヤな状況になってくるとは存じますがね。


・米国金融政策に関連して

『(問) 2点お伺いします。まず、対ドルで円高が進んでいる理由についてお伺いします。先日FRBが新しい金融政策の方針を公表しましたが、米国に比べて日本の方が緩和の方針が弱いといいますか、逆にいうと米国の方が金融緩和の方針が強いのではないかという見方から、ドルが売られて円が買われるという、ある意味多少投機的な動きが増えてくるのではないかという見方も出てきているようです。本日の挨拶でも、米国でも2%という方針を出しているが、日銀も同じような明確な方針を出している、というお話がありました。FRBが出している方針と、日銀が既に出している物価安定の理解がどう違うのか、改めて確認させて頂きたいと思います。

もう1点は、金融緩和の時間軸について、米国の方は2014年末としていますが、この点について、日銀はそれと比べて長いのか短いのか、マーケット参加者がどのようにみているのかということがあると思いますが、この点についてどのようにご覧になっていますか。』

ちなみに時間軸に関しては雨人がどう思っているかはともかくとして、2年金利でも5年金利でも見れば日本が認識している時間軸の方が明らかに長いというのは明白のような気もしますが。

『(答) 先般、FRBが公表したコミュニケーションの方法についての見直し、特に物価についての彼らの考え方と、私どもが示している中長期的な物価安定の理解、この違い如何というご質問かと思います。私どもは、消費者物価でいえば前年比で2%以下のプラスの領域、中心値としては1%程度になることが中長期的にみての物価の安定である──物価が安定した状態である──という理解をしています。米国は、ロングランのゴールとして、すなわち長い目でみた目標として2%という数値を出しているので、相違点の1つは、当然、この数値上の違いです。』

ふむふむ。まあその1%と2%の差がどうなのよという話は思いっきりあるのだが。

『一方で、類似点も実は結構あります。1つは、彼らは、物価の目標だけを掲げて政策運営を行うのではなく、いわゆるデュアルマンデートのもとで、雇用にも目配りしながら物価の安定も図っていくという立場であることを、バーナンキ議長自身が明確に語っています。私どもも、中長期的にみて物価が安定している状態について明確に表現すると同時に、金融的な不均衡その他のリスク要因を抱え込むことがないかどうかをチェックしながら、物価の安定を図っていくという考え方を示しています。』

チェックする方向が日米逆のような気がしますが、まあ米国の場合は物価の長期的なゴールの数値よりも足元の物価が高いのですから当然緩和方向でのチェック項目が入り、日本の場合は物価の長期的なゴールよりも足元の物価が低いのですからチェック項目にタカの香りがする、という話なのでしょうが、これだったら別に日本の方でのチェック云々の話をするよりも「経済情勢を見ながら総合的に判断」とか何とかお茶を濁せば良いのにとか思ってしまうあたくしでした。

『こうしたことを踏まえると、FRBが今回導入したコミュニケーションの方法と、私どもが「中長期的な物価の安定の理解」を示しながら政策の構えを示す方法は、考え方において基本的に変わりはないと思っています。』

つーか、FRBのアレって日銀の物価安定の理解をベースにしているような香りがプンプンする訳でして、いわゆるインフレーションターゲットという言葉で想像されるターゲット政策では無い「中長期的なゴール」という形での政策目標提示、という意味では日銀の物価安定の理解と建付け自体は極めて類似している、と申しますか、普通に現在の主要国の中銀で行われる方向性ってこうなるんでしょという話になるのでは(BOEなんか延々とCPIがターゲット比上振れしているけれども「中長期的には2%に落ち着く」の一言で済ませていますからねえ)と思いまする。

まあ他にもネタがあるような気がしますがとりあえずこんなところで。

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2011/11/25

○改めて山口副総裁講演

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111122a.pdf
内外の金融経済情勢と日本経済再生の課題
── JCIF国際金融セミナーにおける講演 ──

・世界経済に関して

『まず、リーマンショックの震源地となった米国では、依然として家計部門を中心にバランスシート調整が経済の重石となっており、景気回復のペースはごく緩やかなものにとどまっています。欧州をみますと、リーマンショックのあと緩やかに回復してきましたが、ギリシャなどの周縁国に始まったソブリン問題が深刻の度合いを強める中で、このところ成長率は明確に減速しています。』

明確に減速キタコレ。

『一方、これまで高い成長を実現してきた新興国や資源国の経済も、成長のペースが幾分鈍化しています。エネルギーや食料品価格の上昇によって、実質購買力が低下したことや、景気の過熱を抑制するために実施された金融引き締めの効果が現れているためです。これらに加えて、先進国経済の減速の影響も出ています。やや過熱気味であった新興国・資源国経済の成長スピードが低下すること自体は、物価安定のもとでの持続的成長を実現していく上で望ましい面もありますが、今のところインフレ圧力は十分に沈静化していません。』

減速しているけどインフレ圧力が続くとかダメダメじゃないですか・・・・・・

先行き見通しは展望レポート通りの願望レポート状態なので割愛(^^)。


・欧州ソブリン問題と経済の不均衡

今回の講演における世界経済に関する説明の本題はその次の『欧州ソブリン問題と金融経済の不均衡の蓄積』という部分以降の所である。

状況の説明部分は割愛しまして現状のまとめと考察部分を引用するだよ。

『現在、欧州において、リーマンショックのような急激な負の相乗作用が生じているわけではありませんが、財政、金融、実体経済の三者の間で、負の相乗作用が働き始めているとみています。』

負の相乗作用キタコレですが、まあこちらは既に政策決定会合などでも指摘されていますね、
で、この先が中々。

『欧州ソブリン問題の背後には、リーマンショックと本質的に共通した要因が存在しています。それは、2000年代半ばにおける緩和的な金融環境、資産価格の上昇、楽観的な成長期待などを背景に、金融や実体経済の不均衡が蓄積したことです。』

ほほう。

『米国では、証券化商品の拡大という「金融技術革新」を背景に、サブプライム・ローン等に関する金融機関や投資家のリスク認識がかなり甘くなりました。そのことが、金融緩和と住宅価格の上昇と相俟って、住宅ローンの大幅な拡大、家計部門を中心とする不均衡の蓄積につながり、結局、リーマンショックを惹き起すことになったというわけです。』

そうですな。

『一方、欧州周縁国等の場合は、「単一通貨ユーロ」の信認を背景に財政資金の調達が容易になったことに加え、将来の経済成長力や税収増に対する過度な期待もあって、財政規律が緩みがちとなりました。もちろん、この場合の不均衡拡大の主役は政府部門ですが、民間部門でも、緩和的な金融環境に支えられるかたちで、非効率な投資や過剰な雇用が行われ、生産性や対外競争力が低下しました。』

・・・・・・・!!!

『ユーロに加盟しているというだけで、政府も民間も、実力以上に低い金利で資金調達を行ない、支出を拡大し続けることは、もともと持続可能ではありません。いったん財政に対する信認が低下し、国債金利が高騰し、政府や民間の資金調達環境が厳しくなると、実体経済が落ち込み、これまでとは逆の回転が始まります。』

なるほど。まあそういうコンテクストで理解するとそうっすなという感じであります。

・・・・・まあ何ですな、あたくしのリアル知り合いならご存知かと思いますが、もうだいぶ前から「続々と貧乏国が加盟していくユーロ通貨が需給要因があるにせよどんどん強くなるのが訳わかんね」とかあたしゃ思ってはいた(でもそれ言ってたの5年以上前からずっとなので、その頃にショートしてたらとっくに爆死しておりますので自慢にも何にもならないというのは念のため申し添えます^^)のですが、まあこういう謎の不均衡というのはかなり溜まるからこそこういうお洒落な事態になるんでしょうなあとかふと思いましたです、はい。


・即効薬はありませんという当然だが身も蓋も無い指摘

次の『問題解決に向けて』って所から。

『問題を解決するための即効薬は、残念ながらありません。』

こらまた身も蓋も無いご指摘。

『不均衡の蓄積は、いわば長年の不摂生が招いた慢性病です。その治療には、時間をかけて体質改善していくことが必要となります。すなわち、財政規律を取り戻すとともに、経済成長力を高めていくことによって、借金を着実に返済し、将来再び借金をため込まないようにしていくことが、正常化への道です。』

全くその通りでございますが、何か長年の不摂生とか言われると自分の事かと思ってどうもすいませんとか謝ってしまうのは気のせいです。

『資金繰り支援や債務のリストラクチャリングなどの対応も重要ではありますが、いわば「時間を買う」政策であり、市場の信認を得るためには、将来に亘って債務を返済する能力があることを示す必要があります。』

さいですな。

『欧州ソブリン問題の解決の道筋をこのように踏まえると、欧州の実体経済や金融システムは、この先も暫く不安定な状態を続ける可能性が高いように思います。また、本日は詳しく触れませんが、米国についても、金融や経済の不均衡の後遺症を抱えているという点では、同様の性格を有していることに注意が必要です。』

・・・・・・中期的に見て先進国経済の成長力は高まりませんですかそうですかorz


ということで、まあその後に日本経済再生の為に成長力の強化が云々という話が続くのですけれども、その辺はまあ既に皆様ご案内の内容かと存じますので華麗にスルーして、昨日も引用しましたが財政に関する部分を再掲しておきますね。

『以上、日本経済の成長力強化の方向性についてお話ししてきましたが、これとも関連する重要な課題は、財政再建です。日本の政府債務残高は、他の先進国と比べても、非常に高い水準にあります。しかし、これまでのところ、金融資本市場に深刻な影響が及ぶ事態には発展していません。』

『もっとも、欧州ソブリン問題の例をみてもわかるとおり、一国の財政に対する市場の見方は突然に変化します。従来「安全資産」とみなされていた国債が、非連続的に「危険資産」に変わるリスクは常にあると言っても過言でないと思います。』

市場の人的には同感なのですが、この辺の話を経済お勉強系の人とすると「じゃあ具体的にどのような水準になると変化するのか」とか定量的なアプローチ突っ込まれて困るのですよね。いや正直言ってそういうのって「世の中(まあ市場と言っても良いのですが最終的には世の中である)の見方によってはその閾値は変化するので何とも」としか申し上げようがなくて、そうなると「それじゃ対策もへったくれもないじゃないか」という話になって終了しちゃうのが残念無念な所。定性的にどうのこうのって話っていうのは(それこそテールリスクって奴ですから)定量化し難いだけに実に扱い難い話ですわな、と思います。

#まあテールリスクが定量化できないからこそ経験値による何となく嫌な予感とかいうようなものを持っている年寄りの存在価値があるんですけどね(汗)

と、話がそれましたがその次。

『それだけに、市場が落ち着いているこの時期にこそ、財政再建に向けて着実に歩を進めていくべきであると考えます。先ほど申し上げたような取り組みによって日本経済の成長力を高めていくことは、税収の増加などを通じて財政赤字の削減につながります。また、日本の税制や社会保障制度が、少子高齢化に適応した持続可能なものへと改革されていけば、家計の将来不安が低減することなどを通じて、景気の自律回復力がサポートされ、中長期的な成長率の上昇につながる可能性も小さくありません。成長力の強化と財政再建を同時に進め、プラスの相乗作用が働くようにしていくことが大事だと思います。』

ということで、まあ当然の話っちゃあ当然の話ではあるのですが、昨今の欧州問題の爆発的な拡大とかを見ていると、市場に近い所にいる人的にはさすがにちょっと最近の日本の政治方面からの財政論議があまりにも増税拒否のトーンが強すぎな上に、何か金融財政政策に対してクレクレ的なトーンが強いという感じがする訳でございまして、日本でも財政の維持可能性という言葉が出てくるんじゃネーノという気がしてくるというのがあるんじゃないっすかねえとか思うのであります。

まあ増税反対の話をしている人たち的には逆に財務省サイドが経済を犠牲にしてでも増税推進のトーンを強めている、という風に見ていると思いますし、その懸念も一概に否定できないというのも確かですので、まあ要はもっとバランスのとれた議論が出て欲しいな、と思うのであります。

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2011/07/27

○山口副総裁会見は下振れ警戒とな

虫干しネタで恐縮ですが山口副総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1107c.pdf

・為替円高の話について

円高の影響について質問がありまして、それに対する答えが割と円高警戒っぽいのでありまして・・・・・・・

『ご質問は、円高のマインド面への影響と、設備投資を含めた実態的な影響はどうかという趣旨だと思います。まずマインド面ですが、多分皆様ご承知のとおり、最近の円高について企業経営者の方々に聞けば、それぞれ問題意識が高まっていることは事実だと思います。その意味で既に企業のマインド面に影響が現れている訳ですし、またそうしたマインド面への影響は為替相場の動向次第ではこの先も続く可能性があるように思っています。』

マインド面の悪化キタコレ。

『問題はそうしたマインド面での変化が実態的な変化を呼び起こすことになるのかどうかだと思います。おっしゃったように設備投資の面にどのような影響が出てくるのか、国内の設備投資面への影響、海外生産シフトという形での変化につながるのかどうかということだと思いますが、そうした実態的な形での円高の影響がはっきりと現われてくる段階にはまだ至っていないと思っています。そうした動きが今後出てくるのかどうかについては、我々としてしっかりと注視していきたいと考えています。』

ということで、(円高によって発生した)マインド面の悪化が実体経済に影響を与えるまでには至らないとは言ってますけど、既に企業マインド悪化に関しては影響が出ていると認定してるというのがちょっと踏み込んでいるイメージがあるのですけど、それはあたくしが勝手に思っているだけですので人によってここの部分の解釈は分かれるのかなあと思いつつあたしゃそーゆー解釈しておきますね。


・リスクシナリオのバランスの話は展望レポートの中間評価どおり

まあそういう質問があったのですけどそれに対する答えから。

『いろいろな観点からのご質問があったかと思いますが、最後におっしゃった日本経済のメインシナリオにまつわるリスクをどのようにみているかに焦点を絞ってお答えしたいと思います。』

で、足元に関しては震災による直接的な影響は復旧復興の進展により下振れリスクが軽減されましたねという話をしていますがそこは引用割愛しまして、

『その上で、先週の金融政策決定会合において、4月の展望レポートに対する中間評価を実施したわけですが、先行きについてのリスクは様々存在するということです。』

という事でその項目に関しては展望レポートの中間評価どおりですけれども、改めて見ますと下振れのオンパレードです本当にカムサハムニダという所で。

『1つは、海外経済ですが、アメリカについては、バランスシート調整の帰趨がまだまだ読めない、その影響の大きさもまだはっきりしない、ということがあります。それから欧州については、ソブリンリスク問題があって、これが欧州経済に対して、どのようなインパクトを持つのかに関しなお不確実性が強いということです。また、新興国については、高い成長とインフレ率とのバランスをどう実現していくのか、物価の安定と成長の持続の両立をどう実現していくのか、不確実性が依然として存在するということです。』

『その上に、日本国内の事情として、長い目でみた電力供給について、様々な不確実性が存在します。これらを頭に置きながら、これからのメインシナリオをみていかなければならないと認識しています。』

どう見ても下振れ警戒です本当に(ry


・CPI改定に関して

「物価安定の実現が遅れるリスク」という中々痺れる論点について話がありましたよね、ということで質問が飛ぶのは当然でございましてこんな質問がありました。

『(問) 「物価安定の実現が遅れるリスク」についての質問です。足許5月の直近の数字が+0.6%上昇というコアCPIが、指数の改定によってゼロ近傍まで下方修正される可能性が高いとおっしゃっています。最近のエコノミストの予測では、改定幅はむしろもう少し大きいのではないか、1%ポイント近い下方修正が行われるのではないかという見方が増えているように見受けられます。その場合には、ゼロ近傍というよりは、明確なマイナスになる可能性もあるわけで、日銀の11年度、12年度の見通しも10月に展望レポートが出されるわけですが、ゼロ近傍ないしマイナスという見通しが出される可能性もあるかと思います。』

まあ内閣府様によると押し下げは▲0.72%らしい(この会見の翌日のニュースでこんなのがありましたな→http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110722-00000161-reu-bus_all)ので直近部分でまともにどマイナスという事にはならないようですが、「振り出しに戻る」になるのは明白ですわな。

『そうなると、ここでおっしゃっている物価安定の実現が遅れるリスク自体が顕現化するのではないかと思うのですが、その場合に別の所でおっしゃっている金融政策の柔軟かつ果断な対応ということに結びつくのかどうか、その点をお願いします。』

つーことでお答え。

『(答) 今ご質問された点は、いろいろな前提に立ってのお話のように思います。特に消費者物価指数の基準改定でどれくらい今の消費者物価指数を下押すことになるのか、この点について私どもとしてどうみているのかにかなりの程度依存していると思いますので、その点をお答えすることで答えにさせていただきたいと思います。』

『私は確かに挨拶で、基準改定によってゼロ%近傍まで下方修正される可能性が高いとみていると申し上げました。しかし、具体的にどの程度下方修正されるかについて、まだ明確には判断出来ていません。ご指摘のように、民間のエコノミスト等の中には、かなり大幅な下方改定があるという見方をしている人がいることは私も承知しています。ただ、今回の基準改定は、種々の要素を考慮して行われるものだと思っています。指数そのものの作り方の問題、指数の中に取り込まれる品目の入れ替えの問題、指数を計算する際の計算式の問題など、様々な要素が考慮されるものと思っており、今の段階でそれらについて一定の予測をして、改定幅を織り込むことは実際上難しいと考えています。従って、挨拶で申し上げたようなゼロ%近傍まで下方修正される可能性が高いというのが、今私が言い得る限界です。』

ということで、このときは答えを控えていたようですが、まあゼロ近傍まで下方修正という事になりますと、結局包括緩和政策やってる間も物価安定の実現まで時間が掛かる状況が続いていましたわなという話になりますが、これがまた出来上がりがゼロ近傍になるというのが中々チャーミングで、マイナスならまあ何かしますかという話が浮上しやすいですし、逆にプラス継続で更に先行きも上昇見込みという絵を描いた場合に、先行きの金融政策としては様子見モードで無問題という話がしやすいのですが、ゼロ近傍ですよって話の時にはどっちでも話を組み立てられる(まあ最終的には先行きの物価上昇をどのように見るか、という話に依存しまして、そういう意味では「物価安定の理解」ってのは足元の数字だけの問題ではないのですけれども、そーは言いましても足元の数字はこれはこれで重要な問題ですからねえ)ので中々お洒落ですなあとか存じます次第。


・空洞化懸念にも円高が影響とな

もうちょっと長いスパンの話(めんどいから講演の引用割愛した部分ですが)で日本の空洞化懸念に関して山口副総裁が日本の将来的な空洞化に関して懸念した件について、日銀は何か出来ますかね??という質問がありまして、それに対する答えの部分から。

『それから、空洞化に対して日本銀行として何らか出来ることがあるのかということですが、まずは空洞化が懸念されているバックグラウンドに何があるのかについて考えてみる必要があります。1つは昨今の円高があると思います。もう1つは大震災以降、非常に強く意識されるようになった日本における震災のリスクもあると思います。それからもう1つは、原発問題に端を発する電力供給についての懸念もあると思います。』

円高の影響キタキタ。

『ただ、こうした懸念が、企業の投資行動の変化あるいは企業の雇用行動の変化といった形で現実に現れているかというと、まだそういう状況にはなっていないと思います。例えば、私どもが7月1日に発表した短観の結果をみても、設備投資については、製造業が中心ではありますが、底堅い計画を維持しています。国内の設備投資を減額し、海外の設備投資を増やすという企業行動が広がってきている状況にはないのではないかと思います。』

ほほう。

『そうお答えした上で、仮に空洞化が生じた場合に日本銀行として出来ることは何かというと、1つはやはり物価の安定のもとでの持続的な成長を実現していくということだと思います。そのことを通じて企業が日本国内において投資をしたり雇用を増やしたりすることについて、少しでも安心感を持って行動出来るような環境を作っていくことが非常に大きいと思います。』

何か蒟蒻問答のような説明ですが、それよりも空洞化が生じないようにどうするのかが質問の趣旨だったような気がするんだが、うっかり答えにくいという事ニカ?

『もう1つは、情報発信もあろうと思っています。企業の経営者の方々は様々な情報を捉えながら日本経済の先行き、あるいは業界の先行きを展望して、投資行動を決めていくのだと思います。その際に、日本銀行がわが国経済の先行きをどのようにみているのか、あるいは日本経済の先行きをより明るいものにするためにどういう政策行動を取っているのか、これらの情報は企業経営者の投資行動ないし雇用に対するスタンスにそれなりに影響を与えるものだと認識しています。』

つまり威勢の良い話をしないといけませんよってえ話なんでしょうか、わかりません><;

てな感じで、答えの後半になると微妙に微妙な説明になっていくのが今回の質疑応答の仕様になっているのですが、どうも説明の端々に先行き懸念、および円高への懸念が示されている印象を受けましたがどうでしょうかね。


・で、最後に円高リスクの懸念が増大してますか?という質問が

質問は(この時点では米国の債務なんちゃらよりも欧州ソブリンの方が大ネタでしたからそうなるのですが)欧州問題からの円高リスクなどを強く意識しているのでしょうかその時はどういう措置を念頭にとかいう感じでしたが、それに対する山口副総裁の答え。

『さらなる円高の可能性をどうみているかについては、為替相場の先行きについてコメントしないというのが一貫した我々の立場ですので、そのことを繰り返させていただきたいと思います。ただ、円高の背景として、ヨーロッパのソブリン問題、それによる投資家のリスク回避姿勢の強まりがあると市場で言われていることは私自身理解しています。』

『それから「柔軟かつ果断に」という表現が、私どもの政策対応について、これまで以上に前のめりの姿勢を示しているのではないかという趣旨のご質問かと思いますが、柔軟かつ果断に金融政策を行っていくことは常に変わらない我々の構えです。必要に応じて、柔軟かつ果断に適切な措置を行っていくことは、これまでの我々の基本的なスタンスそのものです。』

ほうほうそうですか(棒読み)。

#ということで虫干しネタでどうもすいませんでした

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2011/07/21

まあそれは兎も角山口副総裁講演から。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110720a.pdf
大震災後の日本経済と金融政策の課題:不確実性への備えと成長力の強化

○「物価安定の実現に時間が掛かるリスク」とな

展望レポートの中間レビューというか今回の決定会合で示された経済見通しがそういう感じですが、山口副総裁の講演も基本的にはまあそういう流れになっております。執行部だから当たり前っちゃあ当たり前ですけれども。

ということで今回の講演はうまい事に小見出し付きなので安直に小見出しを並べてみる。

『3.日本の経済・物価情勢

(1)経済・物価の現状および見通し
・本年度後半には再び緩やかな回復経路へ
・物価は小幅のプラスで推移

(2)先行きの経済・物価を巡る不確実性
・予断を許さない海外の金融経済情勢
・不確実性を増す電力事情
・物価安定の実現が遅れるリスク』

・・・・・ということですが、不確実性がどうのこうのという所に関しては「ほほう」という感じがするのですが、まずこの不確実性の所の最初にこういう言い方をしていまして、先行きの下振れリスクを強調する形になっておりますな。

『以上、経済・物価の見通しを申し上げましたが、これらには様々な不確実性があることを、強調しておきたいと思います。震災後、これまでは、サプライチェーンがどの程度速やかに回復するか、という点に大きな不確実性がありました。しかし、その点についてのリスクは、先ほど申し上げたように、かなり後退してきました。むしろ今後は、需要そのものがしっかり増加を続けていくかどうかに、景気の展開が左右されることになります。』

てな感じで話が続くのですが、海外の金融経済情勢と電力事情(およびそれに伴う製造業の空洞化懸念)はまあ既に言われている事なのですが、『物価安定の実現が遅れるリスク』というのは中々新しいのでこちらを引用しませう。

『以上のような様々な不確実要因により、仮に景気が、先ほど申し上げた見通しよりも下振れた場合、物価も下振れる可能性があります。加えて、物価には、統計上の不確実要因もあります。消費者物価指数は、5年ごとに指数が改定されることになっており、今年はちょうど、改定の年に当たっています。来月、新しい指数に切り替わり、最近のデータも遡って修正される予定です。先ほど、直近5月の消費者物価の前年比は+0.6%であったと申し上げましたが、これが指数の改定により、ゼロ%近傍まで下方修正される可能性が高いとみています。』

つーかマイナスの可能性もあるようですな。

『そのように最近のデータが変わりますと、先ほど申し上げた2011 年度、2012 年度とも+0.7%と申し上げた消費者物価の見通しも、もう少し低めに読み替えなければならない、ということになります。』

キタコレ。

『日本銀行では、消費者物価の前年比が2%以下のプラス、中心としては1%程度で推移する状態が、「物価安定」に最も近いと考えています。現在の物価見通しは、そうした「物価安定」の実現になお時間がかかることを意味していますが、今後の景気展開や、指数改定などによって、物価安定が達成できるタイミングにどのような影響が及ぶか、注意深くみていく必要があります。』

「現在の見通しでも物価安定の実現に時間がかかる事を意味している」というのは結構言い方としては踏み込んでいるようなイメージがあるんですが。どちらかというと日銀の言い方って「長い目で見れば物価安定に近づく」というポジティブな言い方(まあ中身は同じかも知れんが)をしていると思いますので、山口副総裁がこういう言い方をしているのって「ほほう」と思った次第。

それに、上記の言い方ですと+0.7%となる物価見通しは「物価安定」よりもやや低めの水準ですよって言ってるように見えまして、1%をより強調しているような印象を受けるのですけれどもその辺ってどうなんですかにゃあとゆーのが気になったざんす。まあここのテキストだけ見ていると日本の緩和政策の時間軸は伸びそうなイメージなのでございますけど・・・・・・


○成長基盤強化のおかわりはABL主眼とな

で、まあその後講演のお題にあるように「成長力の強化が必要」という話をしているのですけれども、まあその辺の話は華麗にスルーしまして、金融政策の説明部分の『成長基盤強化の支援』の所を引用しますと、今般の成長基盤強化のおかわりに関してはこんな説明をしているようで。

『本措置のために予定していた3兆円の資金は、概ね使い切られました。そこで、先月には5千億円の新たな貸出枠を設けました。新しい貸出枠では、企業に出資を行った金融機関や、売掛金や在庫などを担保とする融資を行った金融機関に対して、当初2年で最長4年の長期資金を、0.1%の低利で供給します。』

で、この次に色々と説明しているのはABLの話でして、出資の話に関しては華麗にスルーしているように見えます。まあ出資というのは説明不要ってえ事なのかもしれませんが、「新しいイノベーション」みたいなのがお好きな日銀クオリティ(これは日銀だけじゃなくて金融庁とか金融絡みの監督官庁の全てにその傾向があるのですが、何か「カイカク」をしたがるのって何なんでしょうねえと頑迷保守でウルトラコンサバのあたくしは思うのでありました^^)だけにまあABLの推進をしたいんでしょうなあというのは把握した。

『売掛金や在庫などを担保とする融資は、動産・債権担保融資(Asset Based Lending)と呼ばれ、米国では盛んに行われています。このABLは、不動産担保融資に比べて、担保価値の評価などの面で難しさを伴います。ビジネスの過程で生じる資産の価値は、そのビジネスの内容や業界動向について、借り手と金融機関が深く理解し合わなければ、評価ができないからです。しかし、積極的にそういう手間をかけることには、不動産担保や経営者の個人保証がない企業にも、資金調達への道が開かれる、という大きなメリットがあります。こうしたメリットを活かすよう、企業と金融機関が二人三脚で収益機会の開拓に取り組み、これまで埋もれていた成長の芽が日本全体で育っていくよう、期待しています。』

まあ期待します(棒読み)という感じですが、日本の場合そういう事業のどうのこうので信用供与って話は商社なりメーカーなりの企業間与信が対応しているんじゃねえのかという気がするし、動産担保とかだとノンバンクで対応しているような気がするんだが、あたくしも金貸し現場を離れて長いので正直良く判らん。

まあ山口副総裁講演はそんな感じで(どういう感じだ)。

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2011/02/25

昨日山口副総裁会見テキストが出たのが何か知らんが遅かったので今朝慌てて読んでみた。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2011/kk1102d.pdf

○商品価格上昇の影響に質問が集まる

青森県ネタの質疑応答も多かったのですがそこは華麗にスルーして商品価格上昇の影響に関する質問に対する山口副総裁のコメントですが、影響に関してはマイナス面をやや強調するような流れになっているように読みましたがどうでしょうかね。

『(答) 中東情勢、北アフリカ情勢が、このところ不透明感を強めています。そうしたもとで原油価格は上昇してきています。 このことの我が国経済に与える影響ですが、原油価格の上昇がどのような要因によってもたらされていると考えるかが、大事なポイントだと思います。』

なるほど。

『2009年初以来、国際商品市況は上昇基調を辿ってきました。そして昨年の秋以降、その上昇ペースがやや加速してきているわけです。その背景には、新興国・資源国の需要の拡大という要因が存在しており、こうした場合には、我が国から新興国・資源国向けの輸出の増加というかたちでプラスの効果が表れる可能性があります。』

という話をしてはいるのですが・・・・・

『一方で、昨今のように政治情勢が難しさを強めてきている中で、供給ショックによる原油価格の上昇と捉えると、先ほど申し上げたようなプラス効果が表れてこないということになります。その上、原油価格の上昇は、交易条件の悪化をもたらし、我が国の所得の海外流出を発生させることになります。これは明らかにマイナス効果です。』

『従って原油価格、あるいはそれを含めた国際商品価格の上昇が我が国の景気に与える影響は、プラスの面もあればマイナスの面もあるということだと思っています。』

とは言ってますけど、プラスの話をするときとマイナスの話をするときの表現の仕方がマイナスに力点を置いているように読めますにゃ(^^)。

『これら両面が実際にどういうかたちで表れてくるのかについては、今の段階では、なお予断を許さないと思っています。今後の推移を注意深くみながら点検していくべきことです。私どもは1月に展望レポートの中間レビューを行いましたが、今の段階でそこで考えていた景気のシナリオについて見直さなければならない状況であるとは考えていません。』

ただまあ「明らかにマイナス効果」という話をしてはいるものの、このように「シナリオは変わりません」という話でありまして(まあそれは当たり前ではありますが)、トータルで考えて見ますと「景気に対して日銀が楽観的な見方をしている」というようなイメージを与えないようにしつつも、日銀が現在展望レポートなどで示している先行きについての割と強気テイストのメインシナリオは維持というで、前のめり感を出さないように工夫された見せ方であって、下手にここで前のめり感を出すと引っ込みが付かなくなるリスクに配慮しているちゅうことでしょうな。


○商品価格上昇の国際的な検討というG20関連のお話

同じ質問の中の答えなのですけどね。

『2点目は、G20で国際商品市況の上昇について議論があり、今後それについてしっかり勉強していくためのスタディ・グループの設置が決まり、その議長として日本銀行の中曽理事が任命されたわけですが、それに関連して日本銀行としてどのような貢献がありうるかというご質問と思います。』

『1点目のご質問でお答えしたことと重なりますが、国際商品市況上昇の背景ないし原因をどう捉えるかということがまずあります。先ほど申し上げたように、新興国・資源国の景気の拡大に伴う需要の増加なのか、あるいは供給面のショック的なものなのか、さらには先ほどは申し上げませんでしたが、先進国の金融緩和に伴って投資資金が国際商品市場に流入している結果であるのか、その原因を見定めることについては、これから十分に検討していかなければならないという認識がまずあります。』

金融緩和で投機資金流入キタコレ。

『それに加えて、国際商品市況の上昇が、先進国そして新興国・資源国の経済に対してどういうインパクトを与えるのか、このあたりについても十分に勉強する必要があると思います。さらに言えば、そうした勉強の結果として国際商品市況の上昇に対して、各国政策当局がどのような対応を取るべきかについての検討も必要になるだろうと思います。』

ふむふむ。

『そうした問題意識は、グローバルにも共有されているということだと思います。G20のもとにスタディ・グループを立ち上げ、その議長に中曽理事が任命されたということですが、日本銀行としても、今申し上げたような国際商品市況に関連した検討については、非常に重要なテーマだと認識しています。相応の成果が得られるように努力していくことが、日本銀行の仕事および貢献だと思っています。』

とまあ何となく判ったような判らんような一般的な話をむにゃむにゃとしておられますが、別の(次の)質問で「じゃあ金融政策に影響するのか」という直球が投げ込まれたのでその答えを引用。

『まず、昨今の国際商品市況の上昇について、先進国の金融緩和の影響があるのではないか、仮にそう受け止めていく場合には、日本銀行の金融政策に何らか影響が及ぶのかというご質問であったと思います。』

『言うまでもなく、各国の金融政策は、各国の金融経済情勢を踏まえて、各国が独自に判断していくものです。従って、日本銀行の立場で言えば、我が国の経済の状況、金融環境を踏まえて政策を行っていくことが基本的な対応ですし、そのことは今後とも変わらないと思っています。』

『ただ、先進国の金融緩和による資金が、投資資金として国際商品市場に流れ込むことによって国際商品市況の上昇を招いていると理解する場合には、我々自身も、その点を念頭において、日本経済の先行きを考え、物価の状況を展望しながら、政策運営を図っていかなければならないと思っています。先進国の金融緩和が、何らかのかたちでグローバルな影響を持つようになっていることについて、十分な理解をしたうえで、政策対応を図っていくということだと思っています。ただいずれにしても、日本の経済の状況、金融の状況を踏まえたうえで、適切と考える金融政策を行っていくことに尽きると思っています。』

という事で、まあきれいに想定問答ちっくな答えが並ぶのでありまして、山口副総裁の会見対応ってまた随分安定してるなとは思いますけど、「投機資金の問題は金融政策では無くて規制で対応」みたいな話をしない所がこれまた微妙にマクロプルーデンスの観点での政策対応という理屈での動きに対してフリーハンドを残しているような感じがするのは邪推のし過ぎですかそうですか。これがバーナンキとかイエレン辺りだったら「投機資金の流入問題に金融政策を割り当てる必要は無いです(キリッ)」って普通に言うと思うので(^^)。


○デフレ脱却への展望に関して

『(問) 午前中の講演の中で、物価の先行きに関して、消費者物価指数の基準改定もあり、デフレの脱却には紆余曲折がありそうだと仰っていましたが、この基準改定以外に「紆余曲折」の根拠となる見通しや材料があるのであれば教えていただきたいと思います。』

『(答) 消費者物価指数の前年比のマイナス幅は縮小してきており、昨年12月については一時的な要素を取り除いて考えると、+0.1%まできています。こうした状況を踏まえて、今我々が頭に描いている景気展開からすると、消費者物価指数のマイナス幅縮小はさらに続くだろうとみています。そして2012年度にかけて前年比プラスの世界に入っていくという見通しを立てているわけです。』

『その限りにおいては、デフレ克服に向けて我が国経済が着実に歩を進めていることは、間違いないと思っています。ただ、そうは言っても、基準改定によって下方修正されるとなれば、そうした道のりが平坦なものではなく、デコボコした感じも表れてくるのではないかと思っています。そのあたりを念頭に置いたうえで、紆余曲折もありうると表現したということです。』

という事で、基調的な物価下落が止まりつつあるという認識はそれはそれであるというのが読み取れるのですが、昨日読みました講演のように、その状況を表現するときに紆余曲折というような話をしたり、色々な要因を挙げてみたりとゆー風にしていまして、まあこの辺りを見ますと現状では山口副総裁は「ハト風味」ではあっても「ハト」という訳でも無いのではないか、という風に思うあたくしなのでありました。基調はそんなに弱気じゃないけれども、ただまあその表現において強気テイストをあまり見せないようにしている的な感じですかね。

・・・・などと書いていて今気がついたのですが、これではあたくし山口副総裁を狸認定しているように読めてしまうではあ〜りませんかorz

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2011/02/24

○ハト風味の山口副総裁かな??

青森での講演から。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko110223a.pdf

(世界経済の現状と先行き)って小見出しのところを見ると既にハト風味があるのですよねこれがまた。

『先進国に目を転じますと、米国経済は、緩やかな回復を続けています。輸出が新興国向けを中心に増加を続けているほか、個人消費をみても、昨年末のクリスマス商戦は2000 年代半ば以来の高い伸びとなりました。昨年夏場には、米国景気に関して悲観的な見方が強まりましたが、米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度)が大規模な金融緩和政策を実施したことや、減税措置の延長という財政面の措置が講じられたこともあって、悲観論は急速に後退し、むしろ楽観論が台頭しています。そうした中で、株価も上昇しています。』

いやまあ別に普通の話っちゃあ普通の話ですが、「むしろ楽観論が台頭しています」っていう表現には「その前の悲観も今の楽観もオーバーシュートじゃないの?」と仰りたい、というテイストを感じてしまうのは読むあたくしにバイアスが掛かっていますかそうですか(^^)。

勿論、世界経済の基本的な見通しはこのように明るめですが・・・・・

『先行きも、世界経済は、高成長を続ける新興国・資源国に牽引されるかたちで、高めの成長を続ける蓋然性が高いとみています。ちなみに、IMF(国際通貨基金)では、世界経済の成長率について、昨年5%成長を達成した後、本年、来年ともに4%を上回る高い伸びを予想しています。この数字は、2008年の金融危機の前まで数年間続いた歴史的な高成長に匹敵するものです。』


その次の(世界経済の先行きを巡る不確実性)というのが下向きリスクオンパレードだったりするのが中々。

『第1の不確実性は、新興国・資源国経済を巡る過熱リスクです。中国をはじめとするこれらの国では、高い成長や資本流入が続く中で、インフレや資産価格の上昇など経済の過熱現象が目立ってきています。このため、多くの国で、金融緩和策の修正が進められていますが、景気の過熱やインフレに対する懸念は十分払拭されていません。こうした引き締め方向での政策運営を通じて経済の過熱をうまく抑制できなければ、やや長い目でみると、行き過ぎの反動が大きくなり、急激かつ大幅な景気調整を余儀なくされるリスクがあります。』

これまた普通の話ちゃあ普通の話なのですが、よくよく見ると「新興国などが過熱した場合に一旦上方リスクとして作用する」というような文言が無いのに気がつくと思いますが、そのセンテンスが無いだけで何かこう印象が違う訳でして、この「過熱リスク」も堂々の下振れリスク認定に見えますよね。


『第2の不確実性は、先進国経済に関するものです。(欧米の信用バブル発生の経緯部分割愛)家計は、住宅価格の下落によって傷んだバランスシートを修復するため、借入金の圧縮を続けざるを得ません。また、金融機関も、多額の不良債権処理に追われ、新規の貸出に対して慎重になっています。わが国が90 年代以降に経験したように、経済がいったんバランスシート調整という重石を抱えると、景気は上に弾みにくく、下に振れやすい状況が続く可能性が大きいと考えられます。』

『先ほど述べたように、米国では、最近、好調な経済指標などを受けて、先行きに対して楽観的な見方が強まっていますが、先行きこうした楽観論が修正される可能性も否定できません。また、ギリシャやアイルランドなどの欧州周縁国では、ソブリン・リスクと呼ばれる財政悪化問題に直面しています。信用バブルによる投資ブームの中で、政府が外国から過大な借入れを行ったことや、バブル崩壊後の危機対応の過程において、政府が民間金融機関のリスクや債務を肩代わりする形で財政支出を大幅に拡大したことなどが背景です。』

『この問題も政府部門における一種のバランスシート調整とみることができます。財政悪化問題の解決には相応の時間がかかるため、その間、こうした問題に対する懸念の広がりが、国際金融資本市場に与える影響に注意が必要です。』

ということで、先般の白川総裁定例会見では「もしかしたら米国の場合は日本と経済の基本的な部分に違いがあるからバランスシート調整の圧力および改善の速度が日本と違うのではないか」というような趣旨の発言もあっておおおおと思いましたが、山口副総裁のこの点に関する言及は引き続き厳しい認識を示しているという風に思われます。


『第3の不確実性として、国際商品市況の動向と、これが世界経済・物価動向に与える影響が挙げられます。国際商品市況は2009 年初以降、上昇基調を続けています。とくに昨年秋以降は、食料品等を中心に上昇テンポを速めており、一部の非鉄金属や穀物は、過去のピークである2008 年夏頃の水準ないしはそれを上回る水準となっています。』

キタコレ。

『新興国・資源国の高成長による需要の増加に加え、天候不順による穀物供給の減少などがその背景ですが、先進国の大規模な金融緩和が続く中で、投資資金の一部が、商品先物市場に流入していることも、国際商品市況の上昇を後押ししているとみられます。』

まあ普通にこういう話になりますよね。で、山口副総裁の講演からちょっと脱線しますけれども、バーナンキ大先生とかはテメエらの金融緩和に関して株価上昇などの効果を強調するくせに国際商品価格上昇に関しては「新興国の需要拡大と供給制約によるものです(キリッ)」とか言うのは良く考えたら随分と都合の良い話ではございますわなと思った今日この頃(^^)。

『いずれにしても、国際商品市況が今後どのような展開を辿るか、そして先進国あるいは新興国などの景気や物価面に具体的にどう影響を及ぼしていくかについては、中東情勢などの先行き不透明感もあり、目下のところ予断を許さないといってよいと思います。』



で、日本経済ですが。

『次に、以上のような世界経済の動向を踏まえて、日本経済の動向について、お話します。結論をやや先取りして申し上げると、当面の短期的な景気の見通しについては、やや楽観的にみていますが、中長期的には慎重にみざるを得ないというのが、私の現時点での認識です。』

・・・・・ハト風味が致しますな、うんうん、でその結論ですが、

『先行きについては、海外経済の高い成長を背景に、早晩踊り場から脱し、緩やかな回復経路に戻っていくと予想しています。』

という話なのですが、物価とかの話になるとやはりハト風味が。

『先行きについては、景気が緩やかな回復経路に復していくとみられる中、国際商品市況が上昇基調にあることも踏まえると、消費者物価の前年比は2012年度にかけて徐々にプラス幅を拡大させていく見込みです。ただ、本年8月には消費者物価指数統計の5年毎に行われる基準改定が予定されています。この5年間で、薄型テレビをはじめ価格の下落幅が大きい商品の消費ウェイトが高まっており、この要因が基準改定時に反映されることなどから、消費者物価の前年比は下方改定される可能性が高いとみています。この点も含め、デフレ克服が見えてくるまでには、なお紆余曲折がありそうです。』

まあこの辺にもハト風味を混ぜてますなという感じです。


つまりですな、白川総裁の麿テイストが入ると、この手の話をするときにも「そのような指数改定という要因はあるけれども基調的な部分での動きは着実に改善しているでおじゃる」という話が必ず入ってくるのですけれども、山口副総裁の講演ではその手の話を混ぜないで話を進めるというのが仕様のようであって、そのためハト風味が出るんですなあと思われる次第であります。

ただまあ山口副総裁が真性ハトなのか、単にその手の発言を不用意に混入して前のめり感を出さないように注意しているだけなのかという点についてはこれまた微妙な気もする訳でございまして、そらまあ執行部の一員ですから個人的見解っぽいのが講演テキストなどではまず出てこないのは仕様なのですが、ベースの話自体は白川総裁が折に触れて話をしている事とそんなに差があるわけでもなく、まあこの辺りは表現というか見せ方の部分があると思うのです。

ただまあ先行き楽観してたら見せ方がこうはならないですから、少なくともタカであるという事は無いかと思われますので、ハトに分類するよりはハト風味程度で見ておこうかと思います。どちらかというと直ぐに明るい話をしたがる麿クオリティーを「前のめり感は出さないで下さい総裁」って止めてる感じがするのは深読みのし過ぎですかそうですか(^^)。

で、今後のべき論であり、本来こっちの話がメインであるような気もする『4.日本経済の中長期的な再生に向けて』という部分と『5.日本銀行の政策対応』の部分(を合わせて講演の半分くらいあるのですが・・・・・)は華麗にスルーということで勘弁。

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2010/07/23

○山口副総裁会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1007c.pdf

富山県に関する話の部分は華麗にスルーしまして(汗)、為替市場に関する話と景気見通しに関する部分をば。

・円高に関して

『今の為替市場の状況について、私どもが注意深くみていることは間違いありません。それをまずお断りした上で申し上げますと、特定の為替レートの水準を前提に金融政策を考えることは、日本銀行としては従来から行ってこなかったことですし、今後においても、そうだと思っています。昨今の為替相場の円高方向への動きについていえば、それが経済全体にどのようなインパクトを与えるのかに関してきちんと見極めながら、政策判断を行うということです。為替相場に関してお答えできることは以上です。』

円高について質問されたら最初はこんな答えだったのですが、その次に良い感じのツッコミが(^^)。

『(問) また為替の話で申し訳ありませんが、ドバイ・ショックの折には、「このところの国際金融面での動きや為替市場の不安定さなどが、企業マインドなどを通じて実体経済に悪影響を及ぼすリスクがある」ということで緩和に踏み切ったと認識しています。今の円高が企業マインドに与える影響についてどのようにみているかお聞かせ下さい。また、為替市場で介入警戒感が強まっていますが、それについて所見をお伺いします。』

・・・・・これは良い切り返し(^^)。

んでまあ介入に関しては政府の仕事ということでスルーしているのですが、企業マインドに関する部分はこんな感じ。

『それから、企業マインドに与える影響ということですが、円高が輸出や企業マインドに影響を与えることは否定できません。ただし、その度合いは相場がどの程度の期間に亘って円高を続けるのか、そしてまた、それがどの程度の円高であるのかといったことに依存していると思います。つまり、現実の為替相場の動きに応じて企業マインドも変化するということです。企業の方々が為替相場の状況に非常に神経を使っておられることは十分想像ができるわけですが、この局面における為替相場が企業マインドに対してどの程度のインパクトを持ち得るのか、それが実際の企業行動にどのような影響を与えていくのかについては、一定の時間をかけながら判断していくべきものだと思っています。』

何と言うああでもないこうでもない発言と思うのですが、この後の質疑でまたこんなツッコミがありまして、これまた中々良い切り返しなのですが(^^)。


『(問)(前半割愛)2点目は、円高についてです。ドル・円レートはもちろんそうですが、実質実効為替レートでみても、既にドバイ・ショックの時の水準を越え、リーマン・ショック後の高値に近づこうとしています。かつ、ギリシャ・ショック後、円高基調が2か月程度続いています。そういう状況の中で、円高の影響について、副総裁は一定の時間をかけて判断するとおっしゃいましたが、そういう局面なのかという疑問があります。さらに付け加えれば、円高はデフレ圧力になるわけであり、デフレ脱却を最優先課題としている日銀としては、何らかの対策・対応が必要な局面なのではないかと思いますが如何でしょうか。』

・・・・・こういう感じで日銀のロジックを使って質問してくると答えをするのも中々難しいようでして(^^)、山口副総裁の答えはこうなります。

『もう1つの円高に関するご質問についてです。確かに、この1、2か月は円高的な状況が続いていることは事実ですが、昨年11月のドバイ・ショック時と現在とでは状況は大分違っていると見ています。』

ほほう。

『違うのは、とくに、企業の景気に対する見方だと思います。昨年の11月末頃は、まだ景気の先行きについて十分な自信が持てないというのが多くの企業の方々の見方だったと思います。特に今年の4-6月から夏場にかけては、二番底の懸念があるかも知れないということも言われていた状況であったと思います。しかし、現在、そうした見方に比べれば随分事態は改善してきていると思います。』

つまり景気のベースラインが上がっていると。

『昨年10-12 月のGDP、今年1-3月のGDPを均してみれば、日本は先進国の中で最も早いペースで回復している状況になってきています。また、稼働率が上がるにしたがって企業の収益に対する見方も随分変わってきています。こういうことからすると、企業家の――特に輸出依存度の高い企業家にとっての――為替に対する受け止め方は随分変わっていると私自身は思っています。そういった状況変化と企業マインドのありようをトータルに捉えて評価していくべきものだと思います。』

よーするに景気のベースラインが上がっているので今のところは様子見ですよという話ですわな。

先般の総裁会見では円高に関して「安全資産としての買いが来ているのも要因」という話をしていましたが、どうもこの一連の発言を見ていますと、足元の円高に対応して追加緩和(のようなもの)をするのはまだ待ちたいという事なんでしょうな。総裁の話っぷりだと「円高は安全資産としての買い」→「日本が追加緩和してもそんなに円高対策にならないんじゃないでしょうか」という事ですし、山口副総裁の話だと「ドバイショックなどの頃より景気のベースラインが上がっている」→「ドバイショック辺りの水準程度の円高ならベースラインの上昇で吸収できる」という事でしょうからね。


・景気の見方に関して

景気の見方が楽観的じゃないですかという質問に対して。

『最初に、日銀の景気の見方は楽観的過ぎないかという点ですが、私どもの景気についての見方は、本日の講演でも申し上げたとおりですし、先般の金融政策決定会合後の記者会見でも総裁が申し上げたとおりです。日本経済については先行き緩やかな回復過程を辿るというのが基本的な見方です。ただし、それについては、上下にリスク要因があるということです。私どもとしては楽観的でも悲観的でもなく、経済の現実の姿と、先行きに関し入手できる様々な情報を踏まえたうえで描いているシナリオということです。非常に冷静な分析に立ったうえでの見通しということだと思っています。』

まあこういう答え方しか無いでしょうけれども(^^)、さてどうなんでしょとは思います。


・先進国の緩和が新興国の緩和になるとかいう件に関して

『まず、私の認識を申し上げます。先進国で非常に緩和的な金融環境が作り出されていますが、先進国の多くは金融部門においてバランスシート調整の問題、言い換えると不良債権処理の問題を抱えています。従って、金融機関が信用仲介機能を十全には果たし難い環境にあると思います。その結果として、先進国において行われている金融緩和が、先進国において十分な効果を発揮せずに、その一部が新興国に資金が流出するという形で、新興国の景気刺激効果をもたらしていると認識していると申し上げたわけです。』

なるほど。

『この点については、それぞれの国が、置かれた状況の中で最適な政策を考えていくことが金融政策あるいは経済政策の基本原則です。そういうことからすると、先進国の緩和効果が新興国にも及んでいるとすれば、その新興国において現実に起きている景気の状態、物価の状況、あるいは資産価格の動き、こういったものをトータルに評価しながら、当該新興国において適切な政策運営を行っていくということに尽きるのではないかと思っています』

という結論なのですが、そんなら別にわざわざ講演で言わんでもという気がするんですけどね。何かあれだけ見ると「またお馴染みのバブル警戒か」という風に捉えられそうな気がするんですけど・・・・・


ということで、講演は何となく総裁の楽観に対してバランスを取る格好でしたけれども、会見を見ると円高を受けた追加緩和思惑を否定するようなトーンの発言が目立つなあという風に思いましたです、はい。

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2010/07/22

○山口副総裁講演は(総裁と)バランスを取っている印象かなあ

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1007a.pdf

日本経済に関しては、先般の成長支援貸出制度の理屈に則って、経済としての生産力を高める事が重要、というお話をしているのですけれども、まあその部分に関しては従来から白川総裁などが講演などで詳しく説明している話を丁寧に説明しているという感じですわな。

ということで、まあ世界経済の方を読む訳ですが。

『日本経済についてお話する前に、その前提として、まず、世界経済の動向から始めたいと思います。』

ということで、講演前半は世界経済に関する話になっていまして、この部分はほほーという感じでしたかな。

先進国に関しては当然ながらバランスシート調整に関する話でして。

『今申し述べた金融危機ですとか、財政問題といったものは、一見、異なる現象のように見えますが、実は、その背景には、ここ数年の世界経済の大きな構図を形作ってきた共通の要因があります。それは、米欧諸国における信用バブルの崩壊に伴う「バランスシート調整」という問題です。』

で、途中を全部スルーしてまとめの部分。

『いったん住宅価格などの資産価格が下落に転じると、このような動きは一気に逆回転を始めます。家計や企業は積み上げた借入れを圧縮するために、つまり傷んだバランスシートを修復するために、消費や投資を削減せざるを得ません。また、金融機関も、多額の不良債権処理に追われることとなり、新規の貸出に対して慎重な姿勢をとらざるを得なくなります。これは、まさに、わが国がバブル崩壊後の90年代に苦しんだバランスシート調整のプロセスにほかなりません。』

ということになるとどうなるかと言えば、

『経済がこのような問題を抱え込んだ場合、その影響は二通りの現れ方をします。ひとつは、いわば「慢性症状」で、バランスシート調整にめどがつくまでは、金融市場や経済に強い下押し圧力がかかり続けることになります。もうひとつは、何らかのきっかけで急激な病変がもたらされる事態です。リーマンブラザーズ破綻後の世界的な金融危機は、まさにそうした「急性症状」に相当するショックでした。現在の米欧経済は、各国政府や中央銀行による様々な政策対応により、「急性症状」からは何とか立ち直ったものの、「慢性症状」はなお重く残っている状態ということができるように思います。』

ということで慎重な見方と。いやまあ総裁会見も良く見ればバランスシート調整の影響については結構厳しい見方をしているのですけれども、何せ総裁の場合は「上振れ」の話を先に持って行って明るい話ばっかりしちゃうので、こっちの話があまり印象に残らないんですよね。あたかも「偽りの夜明け」に白川さん自身が引っ掛かっているんじゃないですか、というような感じですが、山口副総裁はこのような慎重な見方を先に出す事によってバランス取っているんでしょうな。


でもって新興国経済については、「新興国・資源国経済の高成長と課題」という小見出しになっていまして、その中でこんな説明をしています。

『このような新興国の力強い成長の背景として、幾つかの要因が挙げられます。』

『第1に、これらの国々は、先進国並みの生活水準へのキャッチアップ過程にあり、耐久消費財やインフラ投資に対する潜在需要が大きいという特徴があります。また、米欧と異なり、バランスシート調整という重石がないため、生産・所得・支出の好循環メカニズムがうまく働き、個人消費や設備投資などの内需が力強く伸びています。』

しらっと読み流しそうですが、ここで「バランスシート調整という重石がない」というのはそらまあ当然その通りなのですが、実はこの中に「日本だって米欧とは違ってバランスシート調整が深くないから好循環メカニズムが働きやすいのですよ」という事も指摘しているのがチャーミングな所ではあります(^^)。

『第2に、新興国の中でも、特に中国をはじめとするアジア諸国は、世界的なIT関連財の生産基地となっているという事情が挙げられます。近年、スマートフォン型の携帯電話や薄型テレビなど、新しいIT製品に対する需要は世界的に拡大しています。アジア新興国は、このような「新たなITブーム」ともいわれる成長機会を存分に活用しているといえます。』

そういえば先日のFOMC6月議事要旨でもIT関連需要の拡大について指摘していましたな。

『第3の要因として、先進国で有利な運用機会を見出せないマネーが大量に流入し、これが資産取引や投資活動を通じて経済を刺激していることが挙げられます。こうした先進国からのマネーの流入は、為替レートの上昇要因となりますが、多くの新興国がドルに対して固定的な為替政策を採用しており、市場への介入によって為替レートの上昇を抑制しているため、これが金融緩和効果を更に強めています。』

ほほう。

『本日は詳しくは触れませんが、いってみれば、先進国の低金利政策は、国境を越えた資金の流れを通じて、自国よりも新興国に対して大きな景気刺激効果を及ぼしてきたという面があります。』

この事を詳しくご解説する機会がありましたら一つ宜しくお願いしたいのですけれども、この状況下でこの話を詳しくしだすと「また低金利政策の弊害話かよ」と言われるのでそこをスルーするというのは中々バランスの宜しい事(^^)。

で、結論ですが。

『これらの事情を背景に予想以上の高成長を遂げてきた新興国経済ですが、現在、大変重要な転機を迎えているように思います。』

これはこれは。

『これらの国では、高い成長や活発な資金流入が続いた結果、インフレや資産価格の上昇など、経済の過熱現象が目立ってきました。このため、多くの国で、政策金利の引き上げなど金融引き締め方向への転換が図られているほか、為替政策の柔軟化も進められています。こうした政策運営が効果を挙げ、経済の過熱を抑制しつつ持続的な成長を確保できるかどうかは、世界経済全体の観点からも大変重要な着目点です。』

ということで、上振れ話をする白川総裁とは一味違う話になっていまして、山口副総裁が色々とバランスを取ろうとして(白川総裁の話と先般の展望レポートなどだけだとやたら日銀が強気に見えてしまう)いるんだなあというのがこの辺を読んでいると何となく伝わった感じです。

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2010/05/12

○月曜の山口副総裁記者会見メモ

特に政策インプリケーションがどうのこうのという話ではないですが、場面が場面というのもあるでしょうけれども、山口副総裁の会見トーンは「循環的な回復局面」を強調したがる仕様の白川総裁のここもとの会見にあるような楽観トーンが無いなあとは思いました。

ただまあ今申し上げたように、今回の会見はいつもの話とは違いますので、実際にその辺の温度差があるのかどうかという話はまあ正直判らん。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1005b.pdf

『(問) 今回のドル資金供給オペの導入措置はリーマン・ショック時の対応以来ということですが、市場の緊張感なり影響はリーマン・ショック直後とかなり似た深刻度合いというご認識でしょうか。(後半割愛)』

『(答) まず、リーマン・ショック後の状況との比較ですが、ドル資金について申し上げれば、やはりあの当時はドルの流動性が枯渇すると言ってよいような状況だったと思います。一方、足もとについては、先程、欧州短期金融市場において米ドルの流動性が低下していると申し上げましたが、リーマン・ショック後と比べれば、流動性の低下の程度は相対的に落ち着いたものに留まっていると思います。ただし、既に生じている流動性低下という緊張感が、グローバルにみてこの先金融市場全般の流動性低下につながる可能性がないか、あるいは不安定化を助長させる惧れがないかという点については、やはり注意深くみていく必要があり、こうした判断が今回の決定の背景にあったということです。(後半割愛)』

東京市場はともかく、欧州市場での流動性問題が世界的に拡大する前に各国中銀の協調対応を示しましたという話ですな。


『(問) 先程の質問にも関連しますが、米ドル資金供給にしてもCP・社債の買入れにしても、日本銀行では臨時の措置を順次止めてきています。今回、各国中央銀行とともに臨時・異例の措置を再び採用するということは、そうした臨時・異例の状態に戻ったという理解でよろしいのでしょうか。また、先日の展望レポートでは、経済・物価の見通しを若干上方修正されていますが、海外経済が日本経済にもたらす影響を現状どのようにご覧になっているかお聞かせ下さい。』

『(答) 臨時・異例の状態に戻ったのかどうかということですが、非常に定性的に申し上げれば、通例行わないようなオペレーションを実施するということですので、臨時・異例ということになろうかと思います。しかし、先程リーマン・ショック後の状態との比較についてのご質問に対してお答えした通り、状況についてはリーマン・ショック後とは比較にならないという感じを持っています。その上で採った措置と認識して頂ければと思います。』

『今回、私どもが採ろうとしている措置および既に発表された欧米の措置によって、現在拡がろうとしている金融市場の困難、それから生じるかもしれない実体経済面への悪影響が封じ込められることを私どもは期待しています。それを前提にする限りにおいては、4月の終わりに展望レポートにより私どもが示した日本経済の先行きについての評価を変える必要はないと思っています。』

つまり問題が長期化すれば下振れ要因ということですな。で、あと即日オペに関連して。

『(問) 先週金曜日と本日に即日オペを実施していますが、この狙いについて教えて下さい。また、このオペでは少し札割れが起きていますが、この評価についてもお聞かせ下さい。』

そうそう、こういう場合は札割れしても別に構わんと思います(で、一旦目先の欧州市場流動性枯渇モードが解消した昨日は即日オペ行わずというのはお手本通りですわな)。札割れの評価ってナンジャラホイという気がするというか質問者のポイントがずれていると思います。で、山口さんの答え。

『(答) ご承知の通り先週金曜日と本日に2兆円ずつ即日オペを行いました。実際には札割れが生じていますが、こうしたかたちで果敢に資金供給行動を行っていくことは、市場に対して私どもの姿勢を明確化するという点でも、また、実際に資金を供給するという点でも、ともに市場の安定化に資するものであると考えています。』

『実際にマーケットの反応等をみる限りにおいては、そうした効果は一応得られたものと認識しています。結果として札割れになったわけですが、それは市場の資金需給の状態や金融機関の資金繰りの状態といったものの結果ですので、札割れの規模などにあまり大きな意味はないと思っています。』

誠にその通りかと存じますです。はい。

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2010/02/26

ではまあ山口副総裁の会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1002c.pdf

あたくしの確認間違いでしたら申し訳ないのですが、昨日の結構遅めの時間(夜の時間ね)に日銀HPにF5攻撃を行った時にはこちらがまだアップされていなくて、さすがに今朝はあるだろうと思ってサイトを見に行ったら上記URLのようにアップされておりました。

いやまあ別に他意は無くて、それこそ決裁する人が出張してたとかそういうことだとは思うのですけれども、妙に更新される時間が遅かったのはどうした事ぞというのはふと思いました。

#まあどうでもいいけど

割と質疑応答もあっさり味でしたが、ブルームバーグのオモシロヘッドラインに関連する質問があったのはチャーミングというか中々鋭い(つーかブルームバーグの人が質問したのかな^^)。


○財政リスクがどうしたこうした

財政の話は現在キャッチーということで。

『(問) 最近、世界的に財政状況の懸念と長期金利の上昇ということが言われています。日本においては、国債のストックベースでみて9割方を国内の人々が持っています。基本的には日本の期待インフレ率とか成長期待が上がらなければ、長期金利は上がらないと言われていたように思いますが、日本の財政状況と長期金利の今後のリスク(上昇懸念)に関してお伺いします。』

『(答) いくつかの側面に分けてお話しした方が良いと思います。1つ目は、日本の財政の状況について市場がどうみているかという点。その上で、2つ目は、この先の長期金利の展開について財政との関係でどのように考えるのかという点。この2つに分けてお話しします。』

『まず、日本の財政状況についてのマーケットの見方ですが、長期国債の消化という点で言えば、問題なく消化が行われています。それから、長期金利は非常に低いところでほぼ安定的に推移しています。従って、財政に対する日本のマーケットの評価は、非常に安定した状態が続いていると言えます。』

それはまあその通りですが、経済状況だけを勘案するともうちょっと金利が下がってもエエンジャネエノという気もするんですがまあそこは置いとく。

『その上で、今後、財政状況と長期金利との関係をどのようにみていくかということですが、長期金利がどうなるかということについて、私の立場から色々と申し上げるのは適当でないと思います。日本の財政バランスが、やはり非常に厳しい状況にあることは事実だと思います。従って、どのような形で財政バランスを回復していくのか、あるいはどのような形で財政規律を発揮していくのか、これが非常に重要なポイントだと思っています。長期債市場に限らず、広い意味での金融資本市場は、そうしたことについて政府がどのような対応をするのかという点を常に注目していると思っています。』

まあ綺麗に言えばそういう感じですが、どちらかというと金融資本市場は政府のオモシロ対応をお笑いネタとして生温かく見守っているという所ではないかと思いますが(^^)、まー財政発散がどうのこうのというのは政府の財政規律に関するポンチ絵もそうですが、実際問題としての国債入札の消化状況がどうなのよ的な部分から静かに進行していって、それがどこかで大騒ぎになるのでしょうなあとか思うのですけどどうでしょ。

とりあえず先日の白川総裁の会見が「政府に異例の注文」みたいな報道のされ方になって外野的に余計な波乱を起こしたような感じもする(金融市場的には全然反応してませんが)ので、ちょっと発言に工夫をしたような感じは受けましたです、はい。


○追加緩和に関して

『(問) 2つお聞きします。1つは、先程、物価の下落幅の縮小テンポがやや遅いという質問とも多少関連していますが、講演ではデフレが起点となって景気の悪化をもたらす点に注意が必要と繰り返していらっしゃいます。その上で、「デフレがデフレを呼ぶ状況を生まないためにも、企業マインドが萎縮しないように働きかけていくことが大切」だとおっしゃっています。日銀として、デフレや物価上昇率ゼロは許容しないと言っているわけですが、「デフレがデフレを呼ぶ状況を生まないために、企業マインドが萎縮しないように働きかけていく」ということについて、日銀として追加的に何かやるお考えがあるのかどうか、というのがまず1点です。』

第2点は後ほど引用します。

『(答) デフレがさらに進行して企業マインドの悪化ということが起きないように、日本銀行としては何らかの追加策を考えているのかということが最初のご質問だったと思います。これについては直接的にお答えすることは難しいです。私どもは、状況に応じて必要と考えられる政策をその時点で実行していくという構えにあります。これは日本銀行として一貫して変わらない姿勢です。今後ともこの姿勢を貫いていくということであり、それ以上の答えはできません。』

これはまあ要するに先行きの物価や景気に関する見通しあるいはリスク認識が下がらないと実施されないという話ですが、じゃあそれが下がる為には何が引き金になるのかという事を勘案しますと、まあ普通の結論ですが経済関連のデータが悪いの続くか、それとも為替市場あるいは株式市場かというごく常識的な話になりますわな。

で、スケジュール感からしますと、(マーケットの方は無視して考えると)短観が出て展望レポートが新しく出て、中長期的な物価安定の理解の見直しが行われる4月がその手の認識を変更しやすいという所でしょうから、まあ自然体でなんか見通しをいじりやすい4月は注目という事になるでしょうな。


○やはりこの質問が来たか

きっとブルームバーグの人なんでしょうな(^^)。

『もう1つは、逆の観点での質問です。講演では「デフレ克服という課題は、より長い目でみたわが国経済の課題に直接繋がっている」とおっしゃっています。それから「90 年代以降、日本経済は、低い成長率やインフレ率を続けている」、「長期に亘る低金利と大規模な公共投資が継続的に実施される中で、経済の新陳代謝が進みにくく、生産性の低い一部の企業や企業部門が残った」ともおっしゃっています。低金利がこの10 年、20 年と続いているわけですが、この低金利自体も根強いデフレの一因になっているというご認識をお持ちでしょうか。』

これはまた判っててイヤミな質問を(^^)。

『それから、低金利自体が、デフレ的な状況を継続させることに一役買っているのではないかということですが、これは原因と結果をどう考えるかという非常に難しい問題を含んでいます。』

それって非常に難しい問題なのかな?単に悪循環のスパイラルとか、ゼロ金利制約の問題とかいう話のような気がするんだが。

『ただ、私自身の素直な感じで申し上げれば、日本経済は2002 年から数年間に亘って景気の拡大局面を経験しておりますが、それに先立つ90 年代から始まる日本経済の動きに対応して、中央銀行として必要な施策を採ってきたということです。その結果が、概して言えば低い金利であったということであろうと思っていますし、日本経済にとって、そうした政策対応は必要不可欠であったと認識しています。』

でしたら講演でわざわざ「長期に亘る低金利と大規模な公共投資が継続的に実施される中で、経済の新陳代謝が進みにくく、生産性の低い一部の企業や企業部門が残った」とか唐突に「低金利と財政支出拡大はケシカラン」みたいな話を入れなきゃ良いと思う次第でして、不用意&脇が甘いっすなあという感じであります。


つまりですな、そらまあ政策金利を動かせるような状態になった方が良いというお気持ちは理解できますし、そういう意味では現在の状況が不本意にも程があるのは判りますが、そうは言いましても現状ではどうせ緩和政策をやらないと行けない訳ですから、それならば「いや本来こうあるべきなのですけれども嫌々やってるんですよ」とか言わないでもっと大真面目な顔をして「ほら、私たちはこんな緩和政策をしてるんですよ凄いでしょ」ってやった方がそれこそ中央銀行の政策に関する期待形成という点からしても同じ政策で緩和効果が出やすくなるという物ではないかと。で、そうすれば結果として異例の政策からの出口も近くなると思うのですが、どうもこう上記のような「ポロリ」をやってしまうのが白川執行部の仕様のようでございまして、その点に関しては福井大狸を参考にすべきではないかと。

まあ経済の新陳代謝が必要という話だけしておけばよかったんじゃないですかねえという所でございます。


まあこの2つの質疑以外は特に大きなネタもなく、淡々と終始した感じではないかと思いますので堂々の割愛。

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2010/02/25

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko1002b.pdf

○例によって成長期待がどうしたこうした

景気見通しに関る部分の最後に、今後の不確定要因のうち特に重要だと思う点について2つ挙げています。

『1つは、海外経済の展開です。これまでお話したとおり、わが国の経済の見通しは、海外の経済情勢に大きく影響されます。このうち、中国などの新興国は、これまで予想外に速いペースで改善してきました。この点、今後もよい意味で予想が裏切られていく可能性は十分にあります。』

そうだといいですね(棒)

『ただ、経済が急速な成長を続けるなかで、景気が過熱するリスクを孕んでいることにも意識しておく必要があります。』

人のリスクを心配する前に(以下悪態につき割愛)。

『また、米国や欧州も、金融危機の負の遺産を引き摺っているだけに、先行きの見通しには不確実性があります。特に、金融機関の不良債権問題や家計の過剰債務問題がどのように解消されていくかを巡っては、様々な見方があります。かつての日本は、バブルの崩壊後、金融機関の不良債権問題が解消されるまでに非常に長い時間を費やしました。このような歴史が繰り返されることがないか、注目していきたいと思います。』

どっちかと言うとこっちのほうがリスク何じゃネーノという感じですけど、まあここまでが海外経済で、その次が最近良く日銀が言う成長期待がどうしたこうしたというお話ね。


『もう1つは、企業が、将来に向けた展望をどう描いていくかということです。先ほど申し上げた見通しでは、経済が徐々に改善していくなかで、企業が設備投資や新規雇用などに踏み切っていくと考えています。ただ、現在は、金融危機もあって、先が見通しにくい状況です。ここで、将来への悲観的な見方が強まりますと、支出活動が必要以上に萎縮してしまいます。日本経済が多くの課題を抱えていることは事実ですが、これらの課題を克服していくためにも、企業の成長期待を引き上げていくことが重要です。この点については、後ほど改めてお話したいと思います。』

んでまあその具体的な話は色々と後ろの方にあるのですが、先日の白川総裁の記者会見や、従来白川総裁が話している事とそんなに変わらないので割愛。


○デフレの問題に関して

『デフレの根本的な原因は、需要と供給のバランスが悪化していることです。物価は、やや比喩的にいえば、経済の体温にあたります。これに従いますと、デフレ、つまり経済の体温が下がった状態にあるのは、日本経済の基礎体力が低下していることの顕われといえます。』


つーことでまあ現在はデフレだというのを認めた上で、問題としては・・・・

『ただし、デフレについては、こうした結果という面だけではなく、これが起点となって景気の悪化をもたらしうる点にも注意が必要です。』

ということで、まあそれは要するにデフレスパイラルという事ですねということで、その説明部分は全部スルーして結論部分を。

『以上、デフレが起点となって景気の悪化をもたらす可能性について、企業経営の視点から何点か指摘しました。先ほどの体温の比喩に戻りますと、体調不良によって体温が低下するだけでなく、逆に体温の低下が病状を悪化させるリスクも意識しているということです。このようなリスクが存在するからこそ、デフレの克服は一層重要になります。』

ということだそうですが、では何が必要なのかという結論部分は・・・・

『デフレを克服するためには、需要不足という根本的な原因に対する治療を粘り強く続ける必要があります。また、併せて、デフレが起点となって経済を悪化させる状況、つまり、デフレがデフレを呼ぶ状況を生まないためにも、企業マインドが萎縮しないように働きかけていくことが大切です。そのためには、設備投資や家計の消費といった民間需要の回復が鍵を握りますし、前提として、企業の成長期待を引き上げていくことが重要だという点は、先ほどお話したとおりです。その意味で、デフレ克服という課題は、より長い目でみたわが国経済の課題に直接繋がっている問題と捉えられると思います。』

それは判ったが日銀は???

で、この次は、成長戦略がどうのこうのという点で、成長を取りこんでいくために成長するアジアの需要を取り込んだり、国内でも将来伸びそうな分野もありますしという話をしているのですが、これまた先日の白川総裁の会見などで示された話を敷衍したような感じですので全部割愛。


○で、日銀は当面の政策を継続しますよと

『以上、日本経済が直面する課題について述べてきました。これらの課題は、その解決に向けて、民間企業と政策当局がそれぞれの立場で地道な取り組みを進めていくことが大切です。もちろん、その中では、日本銀行も重要な役割を果たすべきであると考えています。』

『1つは、デフレの基本的な要因の解消を目指すことです。これは、需要と供給の乖離を、持続的に解消していくことを意味します。このような観点に立って、日本銀行は、これまで思い切った金融緩和を行ってきました。』

ということで従来の政策の説明をしてますが割愛。

『もう1つの取り組みは、人々の物価に対する見方が下振れないようにすることです。このため、日本銀行は、消費者物価の前年比がプラスの状態を実現することが大事であるという姿勢を一層明確にしました。これは人々の物価に対する見方を安定化させる取り組みの一環です。』

まー執行部様的には中長期的な物価安定の理解の明確化で安定化させる取り組みをしたという話になるのでしょうけれども、この部分って諸刃の剣みたいな説明でもありまして、「それなら下振れしないようにするならもっと物価安定の理解を引き上げるべきではないか」とか「下限の部分に0というのがあるのは如何なものか」という話になってくる訳でして(^^)、はてさてどうなんでしょという感じっすな。ニヤニヤ。

つまり、(この前も申し上げましたが)目標がどうのこうのとかいう論点で話をするよりは「物価安定の理解」の下限数値が低すぎるのではないかとか、中心の1%ってどうなのとかいうような議論をした方が議論の実りが多いと思われる次第でありますがどうでしょうかね。

まあよーするに「現状の政策は当分(1年どころではなく)維持しますし、出口政策とかそんなのファンタジーにも程がありますけれども、追加緩和ってのも何ですねえ」という所なんでしょ、と思いますが、会見に関しては明日にでも。


○ブルームバーグさすがにこれはどうかと

で、昨日は講演に関するベンダーのヘッドラインを見てたらのけぞったのが
ブルームバーグから出てました。

ネット版を見るとこういうお題なのですが・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ay.q1_RhVShM
山口日銀副総裁:必要と判断すれば適宜適切な対策講じる(Update2)

ここの小見出しで『低金利が新陳代謝を阻害』ってのがあると思いますが、ベンダーの方でのヘッドラインでは11時29分の所で

『低金利と公共投資が経済の新陳代謝を阻害している』

と打ってたのですな。

?????と思って講演内容をもう一度熟読したら、確かに成長を高める話の中でこういう部分がありましたが・・・・・

『企業にとってみれば、技術革新を進めるためには、経営資源や人材を投入することが必要になり、その分だけ大きなコストがかかります。振り返ってみますと、90 年代以降、日本経済は、低い成長率やインフレ率を続けてきました。長期に亘る低金利と大規模な公共投資が継続的に実施される中で、経済の新陳代謝が進みにくく、生産性の低い一部の企業や企業部門が残りました。その結果、企業の収益期待を全体として低めてしまい、思い切った技術革新を妨げてきた面もあると思います。今後、どういった要因に働きかければ企業の技術革新に向けた取り組みをより促すことができるのか、という点を改めて考えていく必要もあると思います。』

なるほどまあそういう話はしてますなあとは思いますが、足元および先行きの金融政策運営に対するインプリケーションというよりは、単にこれは「低金利が長期間継続したり、大規模な公共投資が長期間継続するような経済環境にあるのは良くないですねえ」という話をしているのに過ぎない話で、前後の流れから言えば「だから成長戦略が必要です」という話だと思うのですが。


普通に報道するとロイター日本語版の報道のようになる筈でしょ。
http://jp.reuters.com/article/marketEyeNews/idJPnTK038093420100224
UPDATE2: 今後、必要なら適時適切な対応講じていく=山口日銀副総裁

・・・講演の趣旨を踏まえればこうなると思うのだが。


なんかね、ヘッドライン打つのにまあオモシロヘッドラインを打ちたいというのは判るのですが、あまりにも一部分を切り取ってセンセーショナルに報道しようというのはベンダーとして如何な物かと思うのでありまして、あんまりそういう事ばっかりやっているとニュースベンダーとしての競争力に悪影響だと思うのでございますけどねえ。>ブルームバーグ

ま、山口副総裁も山口副総裁で、現状で財政金融政策による経済へのサポートが必要な中で、こういうフレーズをわざわざ入れて揚げ足を取られるのは不用意にも程があると思われる次第。いやまあ本音はシバキアゲで今からすぐにでも正常化したいんですぅというのをどうしても言いたいのでしたら堂々それを主張して内外から総叩きにあえばヨロシと思うのでありますけどね(−−;

#本来は大狸と化して本音を見せない福井の俊ちゃんが正しい姿と思われます
#経済が良くなってからそういう話をすりゃ良いだけの話でしょ

正常化路線を着々と実行する中で火消しに余念がなく、その火消しが市場から(今のところは)信用されているFRBの動きから見ると、あまりにも脇の甘い話ですなあという感じではございます。

まあそんな感じで。

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2009/11/27

○山口副総裁講演から、マクロプルーデンスと金融機関の課題と

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/data/ko0911f.pdf

まずはマクロプルーデンスの部分から。

『今回の国際金融危機の本質は、信用バブルの生成と崩壊と言ってよいと思います。その原因について、これまで様々なことが指摘されてきましたが、私がとくに指摘したいのは次の3点です。』

んでもって最初の2つは良好なマクロ環境の継続によるリスクテイクの過剰と金融機関行動の行き過ぎという話ですがそこはスルーしまして3点目に注目したあたくし。

『第3に、危機に先立つ信用バブルの生成に対して、米欧の政策当局や監督当局の対応が遅れ気味であったこともまた、危機を増幅した可能性を否定できません。』

ほほー。

『その一つの理由は、保険会社やモノライン、ヘッジファンドなどのいわゆるシャドーバンキングが拡大し、リスクの所在と規模を、政策当局や監督当局が的確に把握することが難しくなったことです。これが、最近の海外における規制・監督体制見直しの一つの背景ともなっています。』

今後の展開を考える上で、このあたりの規制監督の動きが投資家行動にどのような影響を与えるのか(どうせ貪欲系の人達はまたその規制をすり抜ける悪知恵を編み出すのですけど、それがまた変な所に変な歪みやバブルを発生させる訳でして)という事には注意をせにゃあなあと思うのであります。

『また、金融政策面について言えば、信用バブルの抑制に関連して、中央銀行の間でも資産価格への対応のあり方を含め考え方が整理されていなかったことが挙げられます。』

FEDビュー批判キタコレ。

『すなわち、「金融政策は資産価格には割り当てられるべきでなく、バブルが崩壊した後に積極的な金融緩和を行うことによって対応すべき」との立場もあれば、「バブル崩壊後に発生する経済への悪影響の大きさを考えると、金融政策はバブルの発生を回避することに努めるべき」との立場もありました。要すれば、マクロのプルーデンスを如何に確保していくかに関して、各国中央銀行間で、コンセンサスが形成されていなかったということです。』

『今回の金融危機を踏まえ、中央銀行の間では、マクロプルーデンスの観点に立ち、実体経済と金融システムの連関を視野に入れて、金融システム全体を分析、評価することの重要性が共通に認識されるようになっています。金融政策面における資産価格への対応のあり方についても、今後議論がさらに深められていくものと思います。』

どう見てもFEDビュー敗れたりとの発言です本当にカムサハムニダ。

・・・・でですね、本当にFEDビュー敗れたりというコンセンサスなのかという点については、そうじゃなさそうにも思える次第で、目先のFRBの低金利長期化表明を見てると資産価格上昇って何でしたっけという感じも受けるのであります次第ですな。まー本当にコンセンサスがBISビューと言われる系列で揃ってくるという話になると、フォワードルッキング的な緩和終了という流れが生まれやすくなるという話になって、主要国中銀のインフレ抑制的なバイアスが従来よりも掛かりやすくなる(日本の場合はインフレどころの騒ぎでは無いので別に変わらんのですが)のかなあとも思います(けどFRB見てるとそうでもなさそうですけどね)。


んでもって金融機関経営の課題に関して。

『以下では、日本銀行が年2回作成・公表している『金融システムレポート』の中の分析結果も踏まえながら、わが国金融機関経営の特徴と課題について、お話しします。』

ということで、まあ金融システムレポートは熟読すべきだと思います。前半にあります現状認識の部分はこれまた華麗にスルーしちゃいまして、我が国金融機関経営の課題の部分から引用します。


『第1の課題は、金融機関の収益性の低さです。』

・・・・またどこかの金融担当大臣が聞いたら湯気を立てそうな話を(^^)。

で、我が国の金融機関の収益が低い水準にとどまっているという説明をした後、その原因はどこにあるかという事についてこのように。

『こうした低収益の最大の理由は、資金利益の低さです。』

いやもう全てそこに帰着という感じっすよね。まー皆様既にご承知かと思いますけど具体的にはこんな感じで。

『資金利益の構成要素の一つである預貸利鞘(貸出金利と預金金利の差)について過去20年間の推移をみると、米銀の平均が5〜6%であるのに対し、わが国金融機関は平均2%弱にとどまります。このようなわが国金融機関の低利鞘の背景には、多くの金融機関が、長期安定的な取引関係の獲得を目指して、比較的同質の商業銀行業務を展開しつつ、基本的には金利競争に終始してきていることが挙げられます。』

そうは言ってもそもそも規制金利の上に店舗規制とか規制ガチガチ時代が長かった(何せあたくしが社会人になった頃も堂々の規制金利に出店規制でしたからねえ、って歳がばれますかそうですか)んですから銀行のせいだけにされても困るんですけど正直言って。

という愚痴は兎も角として、ここおよびこの先の説明で華麗にスルーされていますけれども、公的金融の存在というのがこれまた貸出利鞘を圧迫するのでありまして、「リスクに見合った貸出金利」などというのは絵に描いた餅にも程がある状況が続いているのでございますわな(って話は金融システムレポートでもその辺りに対する指摘があったりするようですけれども)。こんな中でゆうちょ銀行が貸出業務に本格的に突撃とかいう話になってしまうと益々預貸利鞘の縮小に拍車がかかるでござるの巻となりそうな気がするんですよね。

『要すれば、金融機関ごとのビジネスモデルの違いが殆ど観察されないということです。貸出市場を分析してみると、わが国では、市場規模の大きい地域ほど、多くの金融機関が参入し、競争が激化する傾向がみられます。これに対して、米国市場では、市場規模と市場の集中度の間に有意な相関はみられず、金融機関の間で一定の棲み分けが生まれている可能性が示唆されています。何故このような棲み分けができているのか、理由は明確ではありませんが、不毛な金利競争を避けることが可能となっていることは確かです。』

まあそう言い切られるとその通りなのですけれども、じゃあ金融機関どうしろと言われると過剰ともいえるサービスを強いられる上に公的金融などが不毛な金利競争に割って入って来るわ、銀行が儲けるのはケシカラン批判みたいなのは厳然としてあるわ(まあ過去の行いに問題があった点もあるからそこはある程度言われるの仕方ない面はあるけど)と、「いやそうおっしゃられましても」という感じがするのは否めませんっすけどね。

ただまあ日銀がそういう問題意識を持っていても、今の金融担当大臣様があれでございますので、中々そーゆー風には行かないのではないかと思いますし、金融機関監督という点で日銀と政府の齟齬が生じたりしてくるのはあまり良い話ではなさそうな気もしますがその辺どうなんでしょうかねえ。


で、もう一つの問題は持ち合いね。

『第2の課題は、収益が信用コストの増減や株価の騰落によって振れやすいことです。』

『とくに、先に述べたようにコアとなる収益が低水準にとどまるもとでは、一旦信用コストや株式減損が膨らむと、期間収益が直ちに赤字に陥る惧れが出てきます。実際、過去20年間における信用コストと株式関係純損失を合計してみると、コア業務純益を上回る規模に達した年が8年にも及んでいます。』

『このうち信用コストは、不良資産処理の完了とともに、水準が大分低下しましたが、2008年度は景気の悪化を受けて、再び増加に転じました。また、金融機関の政策投資株保有は、大手行では、2000年代初めの不良資産処理の過程でその残高をほぼ半減させたあと、その後はほぼ横這いが続いています。これは、金融機関と企業の株式持合い慣行が今なお継続していることを示唆すると同時に、現在の株式保有残高は、依然として金融機関収益の大きな変動要因であることを示しています。』

株式持合い問題キタコレ。

『これらの課題の克服は決して容易ではありませんが、金融機関には、わが国経済の活力を維持し、さらに向上させていくためにも、是非これを一つのチャレンジの機会と捉え、取り組みを強化していただきたいと思います。』

要するに「持ち合い株減らせやゴルァ!」と仰せなのですが、そうは言いましても我が国の状況としまして営業政策上の大問題として、株式を持たないと取引基盤の拡大が困難とかいうような話が厳然として存在する訳でありまして、そりゃまあ日銀様的には持ち合い株なんぞ減らせやという話だと思いますけれども、それがホイホイ出来るのであれば誰も苦労はしないのでありまして、そこまでの問題意識を持っているのであれば、(まあ情けない話ではありますが)制度的に金融機関(およびその子会社等)はトレーディング目的以外での株式保有を禁止する位の荒業を使って、そもそも論として持ち合いというものが存在しない位の意識改革を行わないとどうにもならんという感は致します。

ということで、問題点としての「資金収益の低さ」「株式持合い」というのはもうその通りとしか言いようがないのですが、日本経済の風土に根差した問題でもありますので、指摘するのは簡単なのですがじゃあどうするのよとなるとこれまた難しい話です。

まあ後の方でも似たような点の指摘が相次いでいるのでして、引用だけしておきますね。

『株式保有リスクの管理に関連して言えば、政策投資株を実際にどの程度保有し合うかは基本的に企業と金融機関のビジネス戦略に委ねられるものです。しかし、現在のわが国金融機関全体の株式リスク量は自己資本との対比でみて引き続き高水準にあり、このことを踏まえれば、個別の金融機関経営の健全性にとっても、またわが国金融システムの安定性にとっても、株式リスク量を着実に削減していくことが重要な課題であることは間違いありません。』

いやまあそれはそうなのですが先ほど申し上げた通りでして(汗)。

『わが国における金融機関経営上の問題の一つは、預金基盤を維持するためのコストと収益が見合っているかどうかという点です。24時間稼動し続けるATMなど、リテール金融には特有のコストアップ要因が伴います。その一方で、ミニマム・バランスを下回る決済性預金に対して手数料を取ることについては、顧客の理解が必ずしも得られる状況ではありません。コストと収益をどのようにバランスさせるかは、大きな経営判断ですが、金融機関として採算割れに陥る可能性だけは回避する必要があると思います。』

んな事言ったって採算割れ防ぐとか言ったら数万や数十万の預金って悉く採算割れている訳でして(ちなみに銀行の窓口で振り込みとかされるとこれまたあの手数料でも普通に大赤字のはずです。ATMだと良く判らんけど)、まあどうにもならんがなという感じですけれども。

というか採算取ろうとしだしたら金融担当大臣が(苦笑)。

『わが国の住宅ローンは、今回の金融危機にあっても着実に増加を続けています。ただ、問題はその採算性です。。私どもの分析によれば、わが国金融機関の住宅ローンの採算性は、競争激化を背景に、近年一貫して悪化しています。因みに、2003年度と2007年度に組成された住宅ローンについて、全融資期間を通じた採算性を現在価値ベースで比較してみると、この間に約6パーセント・ポイント悪化した計算となります。今後、貸し倒れ率が大きく上昇するようなことがあれば、一気に収益が悪化する可能性もなしとしません。住宅ローンの採算性についても、十分慎重に吟味していく必要があるように思います。』

・・・・・涙

ということで、まあ後半の金融機関経営の課題に関しては、「そりゃまあ仰る事はその通りですけれども、それが出来りゃ苦労せんのよ」という指摘が多うございまして、微妙にこうアレな部分があるのもさることながら、ここもとの金融担当大臣様のご意向とはだいぶ方向性が違う話になっている所にも微妙なものを感じる所はございますです、はい。

まーそれはともかくとして、ここで述べられている話の中でその気になると何とかなりそうな話は「持ち合い株式の削減」という所かと思います。このテーマが具体化してきた場合、金融機関の投資行動にも変化が起きる可能性がありますし、そもそも株式市場に与えるインパクトという面もあると思いますので、今後の流れをこっそりヲチしたいと存じます次第。

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2009/09/25

○山口副総裁の講演から

17日に全国証券大会、18日にユーロマネー日本市場コングレスで講演を行いまして、17日の話題はだいぶ18日の話と被るので、18日の方を紹介します。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0909c.pdf(17日)

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0909d.pdf(18日)
↑紹介するのはこっちの方です。

・前向きのメカニズムとな

金融経済情勢に関しましては、まあいつものように「不均衡の調整過程ですよ」という話から始まるのですが・・・・・・

『昨年秋以降起こっていることは、本質的には、こうして蓄積された不均衡の調整過程、表現を換えると、世界的な信用バブルの生成とその崩壊の過程ということができます。』

ところが、その後の下げ止まりの話の中でこんな話が。

『もっとも、世界経済は、今年の春頃からは、下げ止まりの動きをみせています。』

で、背景説明部分はいつもどおりなので割愛しますが・・・・・

『こうした世界経済の動きを背景に、わが国経済も前向きのメカニズムが作動するようになっています。自動車や電子部品を中心に輸出や生産の回復傾向が明確化しています。公共投資などの財政措置も経済活動を下支えしています。』

前向きのメカニズム来ましたよ(^^)。

で、先行き見通しですけど。

『先行きについてみると、世界経済の持ち直しに向けた動きは、暫く継続するとみられます。このところ新興国の回復傾向が明確となっていることは心強い材料です。このため、わが国経済も、本年度後半以降、持ち直していくものとみています。』

と、この辺のトーンはやや良くなっていますが、基本的な部分には変更が無さそうです。つまり・・・・

『もちろん、今程述べましたように、現在の世界経済には、企業や消費者のバランスシート調整という要因が働いています。それだけに、今後の世界経済回復のモメンタムは、バランスシート調整がどう進むかに大きく依存していますし、日本経済もその影響の埒外ではありません。したがって、只今申し述べた見通しを巡っては、依然大きな不確実性があると考えています。』

という感じです。


・金融危機に関連するお話

その後が金融危機に関する感想という部分です。こっちも面白いです。

『以上のように、今回の金融危機と実体経済の大幅な変動を改めて確認して、私は、幾つかの感想ないし疑問を持ちました。』

『一つは、金融技術の高度化は、リスクの制御という面でどの程度有効性を持つのか、』
『二つめは、良好な金融経済環境が続くことが、経済主体あるいは市場参加者の行き過ぎた行動を促し、かえって将来の大幅な経済変動を引き起こす原因になり得る、という矛盾を克服できるのか、』
『三つめは、どのようなショックの下にあっても、常に高い市場流動性を維持することは可能か、』
『四つめは、市場参加者の極端な不安心理は、どのようにすればコントロールできるのか、』

『といった点です。いずれも容易には答えを出しにくい難問です。本日は、相互に関連する面もある、最初の二つの点について、私なりの考え方を整理し、皆様方の議論の参考に供したいと思います。』

ということで、最初の2つに関する話ですが、まず最初の金融技術云々に関して。


・問題は技術そのものにあるのではなく使い方にある

まー超味気なくまとめてしまえばこういう事になるのでしょうけれどもね。

『近年、急速に発達した金融工学は、もともと、リスクを制御する技術として、すなわち、金融商品にかかるリスクを分解し、制御する方法論として発達したものです。実際、こうした金融技術の高度化によって、様々な投資家のリスクの選好度合いに応じて、様々な金融商品を設計できるようになり、結果として、金融資本市場は多様で厚みのあるものとなりました。』

でまあその具体的な説明をして、これによってリスクが的確に制御できるようになったと考えられたのですが、実際は違いましたという話を。

『しかしながら、現実は異なりました。実際に混乱が生ずると大規模なリスクが表面化し、当初想定されていたリスク制御の方法論が機能しなかったことが判明しました。』

『ここで重要なことは、問題の原因が、複雑な証券化技術そのものにあったというよりも、実は、より単純なリスク要素に対する評価の甘さにあったということです。すなわち、原債務者の信用リスク、リスクのモニタリング、投資ビークル等の流動性リスク、リスク間の相関の程度、といった、いわばリスク管理の基本というべき事項がなおざりになっていました。さらに、金融資本市場に大きなストレスがかかった時の、テールリスクへの備えが十分でなかった点も忘れてはなりません。』

さよですな。

『このように考えると、問題の本質は、利益追求を至上命題とする市場参加者の行動様式の下で緩に流れたリスク評価と、いわゆる情報の非対称性に根差すエージェンシー問題の二つに帰着するように思います。』

ということになるのですが、話はそれだけで済む物では無い訳で。

『もちろん、こうした問題の解決は簡単ではありません。規制強化や高度な金融技術の導入をもってしても、リスクを全て制御することはできませんし、エージェンシー問題を完璧に解決することもできません。また、利益追求が市場参加者にとっての基本的なインセンティブである以上、市場環境次第でリスク評価が甘くなることは、人間の本性に由来している面もあるように思います。』

『私は、金融技術の高度化によるリスク管理の充実の意義を否定する訳ではありませんが、金融技術でもって、人間の本性や心理をコントロールすることは多分難しいと思います。何よりも重要なことは、市場参加者がリスク管理のための金融技術に過度の安心感を抱くことなく、肝心のリスク感覚を常に麻痺させない努力、つまり「自己規律」を保つことです。』

という事になろうかと思います。金融監督のあり方に関しても、自己規律をどう強化するのですかという話になってくるという事も指摘しています。


・行き過ぎの防止に関して、その他

『次に、経済主体あるいは市場参加者の行き過ぎた行動を未然に抑止する方策はないか、といった点について考えてみたいと思います。』

ということで話が続くのですが、市場参加者のインセンティブと政策当局のインセンティブがどうのこうのという話になりまして、正直言って話が難しくて(というか抽象的で)よーわからんので、このあたりの話は華麗にスルーしちゃいますです、はい。

で、最後に何故か企業金融措置に関する話をしているのですが、そこではこういう話をしています。

『こうした時限措置の今後の取り扱いについては、企業金融や金融市場の状況をしっかりと点検した上で、その改善度合いに応じて、適切に判断する必要があることは言うまでもありません。また、その際には、時限措置を長く続けることで、市場機能の自律的な回復が阻害され、結果として、資源配分が歪められるリスクにも配慮が必要です。』

ほうほう。

『こうしたリスクについても、市場参加者との間で、一つの「常識」として共有することができれば、タイムリーな政策運営を図っていくうえで有益だと考えています。また、長い目でみて安定的な金融経済環境を実現するという点で、市場参加者と私ども政策当局のインセンティブの一致点を見出すこともできるのではないかと思います。』

最後の所は微妙に訳判らんですが、まあそれまでの話の流れにくっつけてみたのでしょう。

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2009/07/24

お題「物価に関するツッコミを受けると中々大変ですなあ(棒読み)」

他にも調べ中のネタとか読み中のペーパーとかあるんですけど、微妙に多忙なもんで纏まっておらずで、今日はは山口副総裁の会見で勘弁して下さいませ。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0907b.pdf

○物価見通しと金融政策に関する質問がメインでしたな

会見要旨が7ページ弱で、最初の2ページが北海道経済に関する話になっていますのでそんなに量は無いのですが、何故か長文質問と長文回答の応酬になっております。

で、物価に関する話が今回はメインのお題になったようです。まずは需給ギャップ拡大中なのに物価見通し大丈夫かという質問に対する山口副総裁のお話から。

『ご質問の趣旨は、2つに分けられると思います。1つは、需給ギャップが存在する中で、物価情勢についてどうみているのかという点、もう1つは、物価が下落していくとすれば、そうした中で成長期待に何らかの影響が生じるのではないかという点です。』

ということで、その2点に対する説明ですが。

『物価についてですが、ご指摘のように、経済成長率は今年度3%を超えるマイナスになりそうですが、来年度についてはプラス成長を見込んでいます。従って、その間、潜在成長率について変化がなければ、需給ギャップは一応縮まっていく方向と理解しています。先週の決定会合後に公表した私どもの景気観、物価観でも明らかにした通り、消費者物価の前年比は、当面マイナスを拡大していくけれども、今年度の後半以降はマイナス幅を縮小していくという見通しにあります。』

まあこの部分の突っ込みどころについてはその後の質問で突っ込まれているのでそこでまた。

『問題は、そういう物価情勢が続く中で、企業が抱く成長期待が何らかの影響を受けるかどうかということです。はっきり申し上げれば、ここには不確実性があります。』

つまりヤバそうだということですね、わかります。

『しかし、大きな流れとして、2010 年度にかけて経済成長率はマイナスからプラスに変わっていくということを私どもとしては予想しています。また、物価上昇率のマイナス幅についても、先ほど申し上げましたように、今年度後半以降、マイナス幅が縮まるという推移を予想しています。そうした景気・物価の展開を前提とすれば、企業が抱く成長期待が下方屈折する可能性は大きくないのではないかと思っています。』

まあメインシナリオ通りに行けば良いのですけど。あの米国株式市場様の戻りがホンモノだったら意外や意外に生き返るの早いかもしれませんけど・・・・


○これはまあ理屈上こう回答するしか無いわなとは思いますが・・・・・

で、その次の質疑では微妙に意地の悪い質問が。

『(問) 今日の講演の中でも、物価の安定とはあくまで中長期的な概念であるということ、またデフレスパイラルに繋がらないようにすることが、何よりも大事というお話をされていたと思います。日銀としては、年度後半以降、物価上昇率のマイナス幅が縮小していく姿を想定されていますが、そういうことであれば、現状、物価上昇率はマイナスですが、デフレスパイラルに陥るようなことがなければ、特に追加緩和をとる必要性がないという理解で良いのでしょうか。』

そりゃまあ数日前に現状維持の決定をしたばっかなのですから、答えの仕方としては「現状では追加緩和不要」というか「デフレスパイラルが顕在化したら追加緩和が必要」というかのどっちかしか有り得ないわな、と思って答を見るとこうなっていました。

『(答) 先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、物価について、方向としては来年度にかけて下落幅が縮小するという展開を想定しているということです。私どもが物価情勢について最も注意しているのは、物価下落と景気後退の相乗作用が起きないかということですが、現状そうした状態に陥るリスクは小さいと思っております。従って、物価についてのそうした状況認識を前提に置きますと、今の段階で更なる金融緩和を行わなければならない状況にはないと理解しています。』

まあ無理無理インプリケーションを探すとすれば、先ほど申し上げたように、「リスクが顕在化したら追加緩和が必要」と答えるのではなく「現状では追加緩和不要」と答えたという点が山口副総裁の心象風景により近い、つまり現状維持寄りのスタンスですねという解釈は可能ですが(^^)。



○成長すると言ってるがそんなに成長しないじゃないかというツッコミ

で、その次の質疑応答がまたいい感じのツッコミ。質問がクソ長いので勝手にこっちがまとめますと、(1)2010年度プラス成長するからデフレスパイラルの心配無いと言うけどそもそも2009年度に落ち込むのだから水準として低いままで本当に大丈夫か、(2)割と有りそうなシナリオとして、10月に出る展望レポートで2011年度物価上昇率マイナス予想が出た場合には3年マイナスとなるが、それは中長期的な物価安定の理解から外れているでしょ。というツッコミです。

『(答) 2011 年度まで物価を見通してどうかということですが、決定会合では、2011 年度の見通しについての具体的な議論を行っていません。従って、これから申し上げるのは一般論であると同時に、私自身の意見ということになります。』

という前置きをしまして、山口さんの説明になります。

『繰り返しになりますが、私どもは2010 年度にかけて経済の成長率が回復していくとの見通しを立てています。その延長線上で考える限りでは、2011 年度以降も、海外経済が回復を続ければ、わが国の経済も回復基調を持続するであろうと思います。そうだとすると、物価上昇率を左右する要因の1つである経済全体の需給バランスは、2011 年度以降も改善していくことになり、その限りでは、物価の下落圧力は低下していくと思います。2011 年度までの見通しについては、今の段階ではこの程度の「ふわっとした」ことしか申し上げられません。』

つまり不確実ですという話ですね、わかります。

『この点について付け加えておかなければならないのは、経済全体の需給バランスを的確に捉えることは非常に難しいということです。それに加えて、需給バランスが改善したとして、それが物価の下落圧力の低下にどの程度繋がっていくのか、あるいは繋がるとしてもそのタイミングはいつ頃になるのか、こういった点についても不確実性が大きいということです。従って、2011 年度にかけて、物価の下落圧力が低下していくといった方向感を申し上げましたが、それについては不確実性がかなり伴うものと理解して頂きたいと思います。』

需給ギャップの計測が難しい攻撃をしていますが(^^)、ここでの話は「需給ギャップが改善しても物価が戻るかはまた微妙な問題」という趣旨になっていまして、結構物価見通しに関しては弱気なのですかねと思わせてくれます。


『もう1つのご質問は、2011 年度についてもマイナスの物価上昇率にとどまるとすると、追加緩和が必要になるのではないかということかと思います。まず、そうなるかどうか今の段階では何とも言えないという点は、繰り返し述べさせて頂きたいと思います。』

まあそう答えるしかないですが。

『その上で、今日の講演でも述べましたが、欧米も含めてグローバルにみて、景気や物価に与える非常に大きなショックが、特に昨年秋以降に生じたわけです。これだけ大きなショックが経済に加わると、その影響はかなりの期間に亘って続くだろうと思います。経済の振幅もその分大きくなると思いますし、物価についても私どもが物価安定と考えるレンジに収まるには、それなりに時間がかかる可能性が高いと思います。』

『従って、物価が安定していると考えられるレンジにいずれ収まっていくという方向感を持てるかどうかが非常に重要であると思います。』

何かもうかなりのファジー問答状態になっておりますが、まあ物価に関して言われますと答えが大変ですわな、おっほっほ。

『私は、今の段階では2011 年度までについて見通しを明確に申し上げる材料を持っていませんが、大きな流れとしては、私どもが物価が安定していると考える状態に向けて進んでいくであろうと思っています。そうした判断に立つ限りは、政策面からの追加的な対応が必要とは認識していないということです。』

大きな流れって何年後の話ですかとかというような追加ツッコミはございませんでしたが(笑)。


○企業金融措置に関して

講演では企業金融の先行きの改善が広がるのか不確実という話をしていましたけれども、不確実な状況だというのであれば12月での終了は考えられないですよねという質問がございまして、それに対する回答。

『2点目の、企業金融の先行きについて不確実性があるとすると、12 月末まで延長した企業金融支援措置をさらに延長する可能性があるのか、というご質問についてです。この点に関しては、つい先週の金融政策決定会合で延長を決めたばかりです。私どもとしては、これからの企業金融の状況を確りと見極めながら、企業金融支援措置を終了する、見直す、あるいは再延長する、いずれの対応が望ましいのか、予断を持つことなく考えていきたいと思っています。』

まー予想通りややこしい答えにならないようにスルーしていますが、ここでは企業金融支援措置に関して「見直す」という選択肢もあるというのが判りましたなと言うのがインプリケーションっちゃあインプリケーションかも知れませんわなという所ですか。まー単なる勝手読みかもしれませんけどね!!


ということで、他のネタ全部スルーでどうもすいません。

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2009/07/23

お題「山口副総裁講演、オーソドックスにまとめている感じです」

ホントは金融経済月報とか日銀から出ている各種ペーパーの話とか短国市場雑談とかもあったりするんですけどにゃあ。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0907a.pdf

○景気回復に関してはとっても慎重ですが・・・・・

というのは既に散々色々な場で政策委員の皆様がお話をしている訳ですが、今回もまた同じ趣旨でございます。景気動向に関する話をしている本文4ページ(PDFファイルの5ページ目に相当します、以下同様)から引用。

『もっとも、こうした市場や人々の期待の改善度合いが、わが国経済の今後の回復力、つまり回復の力強さやその持続性と整合的か、という点については、もう少し詳しい点検が必要だと思います。』

で、点検の結果は予想通りケチ付き捲りなんですけどね(−−)。

『先ほど、最近の景気下げ止まりについて、輸出や生産の動きからご説明しましたが、こうした動きの背後に何があるかを確認してみます。改めてまとめると、大きく3つあると思います。』

ということでその3つがナンデスカという事ですが。

『1つ目は、国内外における在庫調整がかなり早いペースで進んでいることです。』

『2つ目は、各国において積極的な財政・金融政策、あるいは金融システム安定化のための施策が幅広く実施されていることです。』

『そして3つ目が、経済の先行きに対する極端な不安心理が薄れてきていることです。』

そして・・・・・

『しかし、こうして整理してみると、これら3つの要因は、それだけでは経済が自律的に回復し続けること、言い換えれば、民間の最終需要が持ち直してくることを保証するものではないということに気づきます。』

ということで、民間の最終需要が自立的に回復するんですかという話ですが、これは毎度お馴染みのように『不確実な面が大きい』となります。その不確実要因は2つ挙げられていまして、まー既にご案内の話とは思いますが、整理をするためにも引用するのだ。

『第1に、今後のわが国の最終需要の動向は、海外の経済情勢に大きく依存します。』

で、その海外動向ですが、金融と実体経済の負の相互作用は一段落しているものの、それがまた復活した場合は宜しくないでしょという話をしてますが引用の方は長くなるので割愛します。

『第2の不確実要因は、「企業の中長期的な成長期待」の変化が経済にもたらす影響です。』

これも先般ご紹介した決定会合議事要旨の中でも議論されていますし、リスク要因として挙げられている話ですが、企業の成長期待が低下して、設備投資や雇用に悪影響を与えるリスクがありますという話です。



で、そんな話の中でちょっとだけ希望があるのはこのまとめ部分の中にこんなコメントがある事ですかな。本文5ページ目なんですけどね。

『経済の先行きを不透明なものとする要因はほかにもいくつか存在し、想定以上に景気が上向く可能性もあります。ただ、日本銀行としては、只今申し上げた点を中心に、下向きに振れる可能性により注意が必要な状況にあると考えています。』

・・・・基本下向きなのですが、「上向く可能性もあります」というのはイイハナシダナー。



○デフレスパイラルの可能性は低いとな

物価の話はまあそりゃ説明が苦しめだわなという感じ。物価下落予想の後こんな話をしております。

『ところで皆様は、どのような状態のときに、「物価が安定している」と感じるでしょうか。概念的には、「物価の安定」とは、次のような状態を指すものと考えられています。すなわち、「企業や家計といった様々な経済主体が、物価水準の変動を気にすることなく、投資や消費などの経済活動に関する意思決定を行うことができる状況」です。』

CPIが下がりだすとこのネタが出ますなあ(^^)。

『このため、企業や家計が、日頃、どの程度の物価変動を前提として経済活動を行っているかが重要なポイントとなります。この点については、過去の歴史、すなわち、企業や家計が、これまでどのような物価上昇率を実際に経験してきたかにも大きく依存します。』

ということで、以下は引用しなくても何を言ってるかはお分かりになるかと存じますのであえて引用はスルー致します(^^)。ただまあそれだけだとやはり説明にこじつけの香りが漂いますので、一時的な物価下落とデフレスパイラルを分けた説明をして微妙に凌ごうというのは把握した。

『そう(引用者追記:物価安定の理解の中央値が1%程度となっている話です)申し上げると、皆様の中には、消費者物価が、当面、前年比マイナスになることとの関係をどう考えたら良いのか疑問をもたれる方がいるかも知れません。この点については、先ず、「物価の安定とは、あくまで中長期的な概念である」ということをご理解頂きたいと思います。』

『特に、経済にこれだけ大きなショックが加わると、現実の物価上昇率が短期的に大きく変動することは、どうしても避けられません。その上で申し上げたいことは、日本銀行としては、そうした状況においても、「物価の下落が、デフレスパイラルにつながらないようにすることが何よりも大事である」と考えているということです。』

ほほう。

『デフレスパイラルとは、物価下落が景気を悪化させ、そうした景気の悪化が更なる物価下落をもたらす悪循環のことです。先ほど申し上げたとおり、日本銀行では、中心的な見通しとして、物価のマイナス幅は一旦拡大するものの、本年度後半以降は、景気の持ち直しに伴い、物価のマイナス幅も縮小していく姿を想定しています。従って、現時点では、わが国経済がデフレスパイラルに陥り、物価安定の状態からどんどん離れていってしまう可能性は低いと考えています。』

ほっほー。


○企業金融の一層の改善に関しては先行き不確実

で、その次は企業金融に関する話になりますが、これまた声明文やら6月会合議事要旨にあるような話が主なのですが、先行き見通しに関してはこのようになって
います。

『先行きの企業金融についても、このまま改善の動きが拡がっていくのかどうか、不確実な面があります。』

即ち・・・・

『わが国の金融機関は、サブプライムローン問題の発生後も相対的に安定した経営を維持しており、米欧のように、金融機関の破綻が現実の問題となっている訳ではありません。しかしながら、2008年度の金融機関の決算は、業務純益の減少や有価証券損益の悪化などから、銀行では5年ぶり、信用金庫では6年ぶりの最終赤字となりました。こうした中、今後の景気動向や企業業績次第ではありますが、先行き、企業の信用力に対する金融機関や市場の見方が厳しさを増す可能性は否定できません。』

『そうなると、金融機関の融資姿勢が慎重化し、企業を巡る金融環境が十分に改善していかない可能性もあります。日本銀行としては、全国の支店ネットワークも活用しながら、引き続き、企業金融の動向について丹念に点検していきたいと考えています。』

ということで、ポイントになりそうなのは株価動向と企業業績動向という事になるのでしょうかね。



○金融と実体経済の負の相互作用

本文8ページ目から12ページまでが上記お題での話になっておりまして、よーするに金融と実体経済の負の相互作用オソロシスという話なのですが、負の相互作用そのものは散々っぱら見聞しましたのでその辺の話はスルーして。

『このように、「負の相乗作用」が経済に与えるインパクトは非常に大きいものがあります。しかも、次に述べるような厄介な問題を抱えており、政策当局に対し、非常に難しい対応を迫るものでもあります。』

でまあその問題ですけど・・・・・

『第1の問題は、「負の相乗作用」は、はっきりとした前触れがない中で一気に進行するという性質を持っているため、これを事前に予測することが難しく、必要な政策対応が遅れる可能性があるということです。』

説明はまあ本文みてちょという感じですが、要するに資本制約などの臨界点を超えた所でいきなり非線形的な変化が発生するという厄介な代物だということで、政策当局は金融情勢の変化を常にウォッチする必要があるという指摘をしています。

『第2の問題は、一旦「負の相乗作用」が強まり始めると、これを食い止めることが非常に難しいということです。』

これまた説明は本文見てくんなましという所ですが、対策としては金融システム問題への対処だけでは不十分で、経済への下支えを行う為の利下げや財政刺激政策が必要になりますという話で、かつての日本の取り組みや最近の世界的な取り組みについて説明しています(とだいぶ引用を割愛しましたな^^)。

で、この章の最後の部分にもしらっとこんな話があったりするのがチャーミング(^^)。

『金融と実体経済の関係について、最後に1点付け加えたいと思います。ここまで、景気悪化局面において金融と経済が下向きに落ち込んでいくことについてお話してきましたが、景気拡大局面では、これとは反対方向の現象が生じる可能性があります。(途中割愛)今回の大幅な景気後退と、それに先立つ世界的な景気の過熱を経験し、現在、国際的には、こうした景気変動の増幅を緩和することを目指し、金融機関に対する具体的な規制のあり方を含めた幅広い議論が活発に行われています。』

プロクシカリティーがどうしたこうしたという白川さんのお話もありましたが、まーFEDビューでは上手く回らないんじゃないですかというのは実際にそんな感じになりやがりましたもんね。


○で、具体的な金融政策に関しては企業金融オペ関連

企業金融オペに関する話をしていまして、いわゆる「染み出し効果」チックな説明をしまして、あたくしのような輩が申し上げる「CPばっかりやたら優遇してませんかねえ」という悪態にお答えしています(^^)。

『これらの措置によってメリットを受けるのは、CPや社債を発行する大企業に限られる訳ではありません。大企業の資金調達環境が改善すれば、これを起点とした企業間信用の条件が、金利水準や返済期日の面で緩和されるなど、政策のプラス効果が中堅・中小企業にも広く波及していくと考えています。』

この手の「染み出し効果」的な話って時々出てくるのですが、たいがいの場合実際問題としてそーゆー効果があるかと言うと「やっぱり染み出し効果はありませんでした」となるのがオチというのが仕様のような気がするので、この理屈は思いっきり眉に唾モンだと思いますけどね。

ただし、今般(昨年10月から12月)の企業金融逼迫期間というのは、大企業の売上減や、予備的資金需要に基づく資金需要が急増して、おまけに短期金融市場が機能低下していましたので、銀行借り入れに大企業がワンサカ到来して、その結果中小企業貸出が弾き飛ばされるような勢いになったという事例はございまして、そーゆー文脈からの効果は当然ながらあると思います。

でまあその先では「これは異例の政策」という話をしてまして。

『また、CP・社債といった特定の市場に介入し過ぎると、日本銀行の買入れ対象銘柄に取引が集中するなど、本来であれば、自らの手で効率的に資金を配分するという市場の機能を却って歪める惧れがあります。更に、こうした支援措置を必要以上に長期間に亘って続けると、経済活動を過熱させ、景気や物価の変動を大きくする可能性もあります。』

後半部分に関しては喫緊の問題ではございませんが、前半部分に関しましては既に散々あたくしが悪態ついている通りでございまする(-_-メ)。

『従って、こうした異例の措置を、いつ、どのような形で終了するかということも、重要な政策課題です。その場合、企業金融や金融市場の動向、各措置の効果をしっかりと点検していく必要がありますし、市場に無用の混乱を生じさせないためには、市場参加者が先行きの対応を予測できるような形とすることも重要です。』

ちゅーことで説明してたりするのですが、まあ結論はこんな話になってまして、ごく一般的な話に留まっています。

『日本銀行としては、新たな期限である12 月末までには、措置の終了や見直しを行うのか、あるいは再延長するのかを決定することになります。この点に関しては、予断を持つことなく、今後の企業金融や金融市場の展開を注意深く点検したうえで、現在の措置によるサポートが引き続き必要かどうか、適切なタイミングで判断していきたいと考えています。』


てなわけで、基本的にはオーソドックスな話をしているのですが、所々に微妙にチャーミングな部分が混じってるなあという印象は受けましたです。

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2009/03/27

お題「山口副総裁会見」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0903e.pdf

またまたメインの話題は長期国債買入なんですけどね(^^)。

○景気が良くない中で長期金利が上昇したら・・・・

こんな質問が。

『(問)2点お伺いします。1点目は、先程、白川総裁が国会のご答弁で新発の国債を引き受けるつもりは一切ないということを発言されており、理由は歯止めがかからなくなるとハイパーインフレを起こすということでした。現在日銀は色々な政策を採っていますが、もし、将来的にまだ景気が良くないのに長期金利が上がり始めるということがあった場合に、どのように対処されるのでしょうか。その時にはJGB を買う以外に何か方法があるのでしょうか、というのが1点です。(2点目以下割愛)』

まず長期国債の引受に関して。

『新発の国債を引き受けるつもりがあるのかということですが、総裁が国会でどのように答えたのか正確に分かりませんが、日本銀行としては、財政法5条で禁止されている措置でもあり、新発の国債を引き受けるといった考えは持っていないということです。』

ハイパーインフレ云々の部分が怪しいので微妙に回避行動な答えですな(^^)。

『長期金利が上がった場合にどうするのかというご質問ですが、これは難しい問題を含んでいると思います。』

そらそうよ。

『景気が悪いにもかかわらず、長期金利が上がるという事態を想定したご質問だと思いますが、通常、長期金利が上昇していく状態というのは、先行きの景気に対する認識が改善していく、あるいは先行きの物価が上昇する可能性が高まっていく、といった見方を反映して起こるものだと思います。』

いや多分質問の意図は「財政のサステイナビリティへの懸念で長期金利が上昇した場合どうするのか」という話だと思いますが・・・・まあ続き。

『仮に景気が良くなっていくという状況であれば、そのようなことが起きたとしても、私どもはマーケットの判断を尊重していくことになると思います。また、物価が上がるということについては、その上がり方が重要な点であると思います。私どもが物価が安定していると判断できる範囲であれば、長期金利が上昇したとしても、マーケットの判断を受け止めていくということになります。』

いやまあそんな場合は問題無いのですが。

『景気が悪い中で長期金利が上がるような状態をどう考えるかということですが、私どもとしては、そういう事態は基本的には想定し難いと考えていますが、長期金利の動向については引き続き注視していきたいと思います。』

ということでサラリと逃げておりますが、それこそバーナンキのFRBが長期国債買入を行うロジックが「信用市場の環境緩和」という蒟蒻問答成分がだいぶ入ったモノでありまして、実質的には財政ファイナンスして長期金利支えるといわんばかりの行動ですんで、結構重いテーマじゃねえのと思うのですが。

日本に関しても、普通に考えるとここから国債大増発で、特に短期国債(国庫短期証券)に今の所増発が来てるのですが、既にレートが下がりにくくなっている(丁度今は期末の資金が余剰になって買いが来てレート低下してますが)有様で、まあいずれ長期ゾーンに振る時にどこかで市場がプギャーと言い出さないかと。

ま、国債発行して調達した分に関してはいずれ民間に還流してくるので、最終的にはその資金が国債購入に回らざるを得なくなるかどうかが問題になるとは思いますので、景気が悪くて財政赤字懸念で長期金利上昇ってのは資金が海外流出しない限りは継続的な話じゃあないとか何となく思うのですけれども、まだ良く頭が整理できないので言ってみただけでござるの巻。

とりあえず今回の山口副総裁会見ではこのあたりの論点をスルーということで。


○財政ファイナンスに関して

『(問) 先般、国債の買入れ増額を決定会合で決めた時のことですが、総裁は記者会見で、しきりに「財政ファイナンスではない」ということを強調されていたと思います。一方、市場では、長期金利の上昇を抑える、債券相場の下支え要因という受け止め方があるのも事実です。結局、国債を買うことについて、財政ファイナンスとそうではない国債の買入れを区別できるものなのか、副総裁の見解をお伺いしたいというのが1 点目です。(2点目は後ほど引用)』

『(答) 私どもが長期国債を買うことについて、財政ファイナンスを目的とするものか、あるいは流動性供給のためのものか識別困難ではないか、というのが第1のご質問の趣旨かと思います。私どもは、その点をはっきりさせるために、銀行券ルールというものを設け、長期国債の買入れを行っているわけです。銀行券ルールを逸脱しない範囲での買入れが、まさに財政ファイナンスと認識されない長期国債へのオペレーションだと考えています。』

ということで銀行券ルールの説明になるのですが。

『なぜ銀行券ルールに拘るのかについてですが、銀行券ルールについては2つの意義があると思っています。』

「なぜ銀行券ルールに拘るのか」って所に「いやあうちの社長がやたら拘るんですよねえ」みたいなニュアンスを勝手に感じたのはあたくしだけですかそうですか(^^)。

『1つは、円滑な金融市場調節を確保するということであり、この基本的な考え方は、日本銀行のバランスシートにおいて、長期の負債である銀行券――日本銀行にとってお札は負債になります――に対して、長期の資産である長期国債を割り当て、準備預金や短期的に変動する負債に対しては、短期の資金供給手段を割り当てるというものです。これによって、短期的な資金需給の振れに対してきめ細かな対応が可能となり、円滑な金融市場調節ができるというのが、銀行券ルールの意義の1つです。』

たぶん技術的にはこの点に尽きると思いますけどね。長期国債の売切を短期の資金需給の変化に応じてホイホイ実施できれば無問題なんでしょうが、確かにまあそれは技術的に難しそう(長期金利がランコルゲしそうだから金融調節は出来ても、金利市場が不安定になるのでは金融調節の最終的な目的が達成できない)ですにゃ。

『もう1つは――繰り返しになりますが――、銀行券ルールが、長期国債の買入れが国債価格の買い支えや財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確にするという役割も同時に果たしているということだと思っています。従って、私どもが、銀行券ルールに即して長期国債の買入れ増額を図るという趣旨を明確にすることによって、そのこと自体が国債価格の買い支えや財政ファイナンスを狙ったものではないことを明らかにできると認識しています。』

つまり、何か別の上手い理屈を考えればヨロシという気が思いっきりするのですが、別の質問でこんな話が。


『(問) 今の長期国債の買入れに関連してですが、先程日銀券ルールを逸脱しない範囲での買入れが、財政ファイナンスと認識されないオペだと発言されましたが、将来もしこの銀行券ルールを逸脱して日銀が国債買入れをしなければならないような状況に立ち入った時には、これはすなわち財政ファイナンスとみなしてよいのか、というのがまず1点です。(以下後で引用)』

『(答) 先ほど、銀行券ルールは、長期国債の買入れが財政ファイナンスを目的とするものではないという趣旨を明確にするための効果を持つ、ということを申し上げました。しかし、形式的な論理としていえば、逆に銀行券ルールを逸脱したからといって、直ちに財政ファイナンスを意図するものとなるということではないと思います。』

そらそうですが、あまりにも総裁が銀行券ルールをやいのやいの言うと、逆に財政ファイナンスが意識されてしまうという悪い展開になってしまいますがなと思いますので、白川総裁に組み込まれているらしい「急にスイッチが入ったので」仕様の改善をお願い致したく。

『そうした形式論はともかく、私どもとしては、財政ファイナンスとみなされることがないように、銀行券ルールを尊重し、長期国債のオペレーションをしっかりと行っていきたいと考えています。』

で、この質問の2番目も中々な突っ込み。

『(質問の前振り部分割愛)今後さらに金融市場の安定確保が必要になった場合、やはり柱になるのは、この長期国債の買入れオペではないかと思うのです。ただ、今後、金融市場の安定確保のために、長期国債の買入れをもっと増やさなければならないような状況になることも有り得ると思うのですが、この銀行券ルールにぶち当たるかもしれません。その時にぎりぎりの判断としてどうするのかについて、今の段階ではなかなか答え難いと思うのですが、銀行券ルールという制約がある下で、長期国債の買入れオペの増額が必要になるかもしれないという状況が起こった時の基本的な考えをお聞かせ頂けますでしょうか。』

結局の所はこの質問にあるように「金融市場の安定確保」という理屈で押してくるのでしょうかねえとも思われる次第でありまして。

『これから先の金融政策というのは、長い目でみると色々な対応が必要になるかと思いますが、本日私がスピーチで申し上げたのは、当面という断りを付けたうえでの話であり、そうした中で、金融市場の安定確保と企業金融の円滑化支援が中心的なものになると申し上げたわけです。私は、金融市場の安定確保のために長期国債の買い増しが必要になり、それが結果的に銀行券ルールを超えるかたちでの買い増しとなるという事態を想定しているわけではありません。』

まあ何にせよ「端から想定しない」というのは如何な物かと思いますが、これはまあさっき引用した「悪い長期金利上昇」に対する応答と同じで、「まあその質問はちょっとまだ触れないで下さいな」というある意味センシティブなお題なのですかねえという感じがしました、まあ「当面」というのを言ってますので、総裁よりは柔軟な気もします(というか総裁の頑なさが凄いのですが)。


○量的緩和政策に対する評価

さっき引用した質問のうち(2点目は後ほど引用)って奴の続きです。

『もう1点は、これに関連して、バンク・オブ・イングランドは、英国債の買入れを量的緩和だと言っているようですが、日銀は、2001 年から2006 年まで行った当座預金の残高を目標にする量的緩和政策について、金融システム不安を緩和する以外の効果は限定的だったという評価をされているようですが、そもそも何を期待し、なぜ上手くいかなかったのか、特になぜ上手くいかなかったかについて改めてご説明頂きたいと思います。』

説明はだいぶ長いのですが。

『また、私どもが2006 年まで行っていた量的緩和政策がなぜ上手くいかなかったのか、というご質問についてですが、私どもは、2001 年に量的緩和を導入する際に、未踏の領域に入る金融政策であり、どのような効果を持つかについては、その時々において確かめながら政策運営を行って参りたいということを述べた次第です。私どもとしては、仮に景気を持ち上げる効果を十分持ち得なかったとしても、それをもってその政策が必ずしも上手くいかなかったということではないと思っております。』

そらそうよ。

『もう少し詳しく説明致しますと、日本銀行が行った量的緩和政策は、大きく言うと2つの要素から成り立っていると思います。1つは、準備預金――流動性といってよいのですが――を大量に金融機関に供給することによって、オーバーナイト物の政策金利を限りなくゼロに近づけていくということです。それからもう1つは、こうした緩和政策を、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまで継続するという約束をした――これは時間軸効果と呼ばれたものですが――ということです。』

しらっと当座預金残高の目標を引き上げたという肝心の「量」の話をここで言わないで金利の話になっているのは次の説明で言及しているような分析になっているからだと思いますけれども、読みながらだと気にならない(次に量の話が来るので、ここの所で量の話をスルーしているのが気にならない)けど、こうやって段落分けして引用してると気になっちゃいますね。

『この2つの要素によって行われた政策の効果についてですが、私どもは、量を拡大すること自体によって景気を拡大する効果を持ち得たという明確な証拠を今のところ持ち合わせていません。ただし、当時の日本の金融システムは非常に不安定な状況が続き、銀行間の資金取引も円滑性に欠ける状況にありました。こうした下では、日本銀行が大量の流動性を供給することが金融機関に安心感を与え、結果として、金融システム不安を多少なりとも抑える効果を持ったことは事実だと思っています。』

りそな救済に絡んで量を拡大したのはご案内の通り(って若人は知らんのか)ですが、実は金融システム不安がどっか行っても量を出しっぱなしだったという事実もありますけどね。

『2つ目の要素として申し上げた時間軸効果の結果として、長めの金利を低位で安定させることができました。当時、企業等は、過剰な設備投資や雇用、債務を抱えながら、それらを調整することに一生懸命であったわけですが、長めの金利の低位安定を保つことで、そうした企業の血が滲むような努力を後押ししたという面で効果があったと思っています。』

まあ最後は長期金利バブっちゃいましたけどね。

『私どもは、日銀の量的緩和政策を今申し上げたようなかたちで整理しており、一方的に上手くいかなかった政策であったと認識している訳ではありません。』

という整理になっているのですな。当時は長期国債買入を拡大しない中だったので、現在の欧米や日本での政策とはまた違う話になって何とも微妙ではありますが。

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2009/03/26

お題「山口副総裁講演から少々」

長期国債の買入実施したけど5年入札が悪くて10年のトレジャリーは8毛甘で終了ですか・・・・・・ほっほーなるほどなるほど(ニヤニヤ)

ということで山口副総裁講演。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0903d.pdf

講演よりも輪番および銀行券ルールに関する記者会見の方が面白そうなのですが、そっちに関しては会見要旨が出てから内容を確認するのが吉かと思いますのでとりあえず講演から。

まず勝手にまとめると「景気に関する見方が厳しい」という所ではなかろうかと思います。で、景気に関する所を読んでみますです。

○世界経済に関して

まあ勿論の事ですが「状況は厳しい」という話なのですが、大恐慌との比較論をしている中で、基本的には「大恐慌とは状況が異なる」としながらも、警戒感を強めていますな。

『しかしながら、「金融と実体経済の負の相乗作用」がまさに進行している中、金融システム安定化に向けた現在の取り組みだけで十分といえるのか、有効需要の不足を具体的にどのような形で補っていくのか、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみて金融環境は十分緩和的といえるのか、更には、自国産業の過剰な支援など保護主義的な動きが再燃することはないか、といった点は、引き続き十分に注意していく必要があると思います。。月並みではありますが、重要なことは、過去と比較すること自体ではなく、そこから得られた教訓を踏まえつつ、今日的な視点を持って現状を冷静に分析し、過大にも過小にも評価しない姿勢を堅持することだと考えています。』

『そのうえで申し上げると、今回の金融危機と景気悪化は、過去数年に亘り、広範に蓄積された様々な不均衡を調整する過程であるだけに、当面は、厳しい状況が続く可能性が高いと思っています。世界経済が回復するためには、米欧の金融システムが安定化し、金融面からの実体経済の下押し圧力が低下するとともに、資産価格や生産、過剰設備等の調整が進み、総需要回復への展望が拓けてくることが必要になります。』

先日は野田審議委員がこの過程に関して「循環的なものではなくて構造的なものであると認識すべき」と指摘しています。山口副総裁の今回の講演でも構造面の回復が重要と言うニュアンスが出ているかなあと思いました。

『しかしながら、米欧の金融システム不安は燻り続けており、不良債権の抜本的な処理に向けた取り組みは、緒についたばかりです。また、主要国の各種経済指標を見ても、現時点で目立った改善は見られず、各国の財政・金融政策についても、その効果が十分に発揮されるまでにはなお時間を要すると思われます。』

『日本銀行では、2009 年度後半以降、国際金融市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱することを想定していますが、以上のような世界経済の現状を踏まえると、こうしたシナリオについての不確実性は非常に大きいと言わざるを得ないと考えています。』

まあこの辺は日銀のメインの見解なのですが、段々見方が厳しくなって来てますなあという感じではございます。


○日本経済の先行きに関して

『景気・物価の先行きについては、日本銀行では、中心的な見通しとして、2009 年度後半以降、国際金融資本市場が落ち着きを取り戻し、海外経済が減速局面を脱するにつれ、わが国経済も持ち直し、物価の下落幅も縮小していく姿を想定しています。ただし、こうしたシナリオに関する不確実性は高く、また、リスク要因も存在します。』

ということでリスク要因なのですが・・・・・

『例えば、わが国の生産は、当面は減少を続けるものの、在庫調整圧力が減衰するにつれて、その減少テンポも次第に緩やかになると見込まれます。従って、わが国の生産が回復し、ひいては経済全体が回復するかどうかの重要なポイントは、こうした調整が進捗した後、最終需要が速やかに立ち上がってくるかどうかです。この点、先ほど申し上げたとおり、世界経済の回復についての不確実性が非常に高い状況にある下で、輸出の持ち直しにどの程度期待できるかといったあたりにもリスクが存在していると考えています。』

どう見ても外需がそう簡単に回復するとは思えませんなあというのが多分エコノミストな方々の基本的なコンセンサスだと見られますので、そう考えるとやっぱダメじゃんという感じがしてまいりますな。

『こうした輸出の動向を含め、仮に最終需要の回復が大きく遅れたり、小幅に止まるようであれば、企業の中長期的な成長期待が低下し、設備や雇用の調整圧力が高まることを通じて、国内民間需要が一層下振れるリスクがあると考えています。』

国内民間需要は落ちていて輸出が戻らないとなると、需給ギャップ埋めるのは財政だと思うのですが、そこの対策が遅れた場合には設備や雇用の調整圧力が高まりって話はリスクシナリオというより有り得そうな話にも思えますがどうなんでしょうかね。

『また、物価に関しても、景気の下振れリスクが顕現化し、物価上昇率が長期間に亘ってマイナスを続けるような状況となれば、企業や家計の中長期的なインフレ予想が下振れるリスクがあると考えています。』

・・・・ってデフレスパイラル???

という感じでリスク要因満載という感じで。



○金融環境なんですけどちょっと気になる点が

最初の所なんですけどね。

『次に、最近の金融環境についてご説明します。一言で申し上げれば、わが国の金融環境は、リーマン・ブラザーズ破綻以降、厳しい状態が続いています。本日は特に、皆様にとって最も係わりが深いと思われる企業金融の動向を中心にご説明したいと思います。』

ということでさらっと書いてあるのですけど、従来の日銀の説明だと政策金利に関して緩和的な状況という話をしつつ、企業金融などの環境が11月以降厳しくなってきているという話になっていたのですが、ここでは「金融環境は厳しい」という話になっておりまして、「緩和」という文言が居なくなっているのでして、ちょっとそこは気になりました。

企業金融に関する環境認識なんですけどね。

『昨年末にかけて高騰したCP発行金利が年明け以降低下しているほか、銀行貸出金利も、短期プライムレートの引き下げなどからやや低下しています。しかしながら、信用スプレッドはむしろ拡大ないし高止まりを続けており、政策金利の引き下げ効果は、その分減殺された状態にあるといえます。』(今回の山口副総裁講演)

例えば、12月の利下げ&企業金融措置公表後の白川総裁の講演では、『金融政策の緩和効果が十分に波及するように、日本銀行は企業金融を支援するための様々な措置を講じています。』というように緩和という話をしてますし、今月の金融経済月報でもコールレートに関しては『コールレートはきわめて低い水準にあるが、大幅に悪化している実体経済活動との比較でみると、緩和度合いは低下している。』というように緩和度合いがどうのこうのという話をしているのですが、今回の講演では「緩和」という文言が微妙に無いように見える所で。

もうちょっと後で政策金利の話をしているのですが、そこではこんな表現で。

『日本銀行では、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標を0.5%から0.1%まで引き下げました。また、資金供給手段の工夫等によってターム物金利への働きかけを強めており、この結果、ターム物金利は、年度末に向けた資金需要が高まるこの時期においても、年初に比べ、幾分低下した水準で推移しています。』

という話はしているのですが、緩和的な状態という話はしてないのがちょっと気になる次第ですが、まあよくよく考えてみれば、物価の先行きに関して今回の講演でも、

『消費者物価の前年比は、(途中割愛)1月の前年比プラス幅はゼロ%まで縮小しました。今後は、厳しい経済情勢に伴う需給バランスの悪化も加わって、前年比マイナスになっていくと予想しています。』

と言ってるのですから、そりゃまあ政策金利も緩和的とは言いがたくなってるわなというところではないかと思います。


○当面は金融市場安定化と企業金融の円滑化を・・・と言ってますが

『日本銀行についていえば、次の3つの柱に基づく政策運営を行っています。1つは、金利の引き下げであり、2つめは、金融市場安定化のための積極的な資金供給であり、3つめは、個別の金融市場への働きかけなどによる企業金融の円滑化です。』

ということで、金融政策に関しては例の「3つの柱」というので説明しまして、今回はこのようにまとめております。

『もっとも、先ほど申し上げたように、わが国の経済・金融情勢は引き続き厳しい状況が続くと見込まれます。金融政策面からの対応という観点からは、当面、第2の柱である金融市場の安定化策と、第3の柱である企業金融の円滑化策を中心に据えながら対応していくことになると思われます。いずれにしても、日本銀行としては、金融市場や企業金融の動向を丹念に点検しつつ、予断を持つことなく、必要な施策を果断に実施
していきたいと考えています。』

ここで輪番増額はというと2つ目の柱になる「金融市場安定化策」という文脈になると思いますのですが、何故か会見では日銀券ルールの話で妙に突っ込まれて妙に頑なっぽかったのが気になるというか先々の事を考えると懸念されるところです。銀行券ルールって別に太古の昔からあったルールとかでも無いですし、そもそも調節の技術上の問題からしたら長国アウトライトオペを財務省がやってる流動性供給入札チックにやって上手いこと「実体ベースでは長期国債売切オペなんだけど何となくオブラートに包んでインパクトを軽減する」みたいな売りオペが実施できれば銀行券ルールをそんなに頑張って墨守せんでもいいだろとは思いますけどねえ。

と言う話はまた会見要旨を見てから。

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2008/11/21

○量的緩和政策の効果に関する質疑(国会コーナー)

11月11日の参議院財政金融委員会から
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/170/17011110060002a.html

後半3分の1あたりでして、椎名一保委員に対する山口副総裁の答弁から。

『あと、九〇年代の経験をどのように世界に向けて発信していくかというお尋ねでありますが、先ほど財務大臣の方からもお話があったところでありますけれども、私どもも十年余りの間、非常に苦労に苦労を重ねてきたところあるわけでありますが、私どもの政策運営としては、やはり先ほども御指摘のありましたように、ゼロ金利政策を導入し、一時期は量的緩和政策を導入するというような形で対応してきたわけであります。そういう特に量的緩和政策というようなことについてはどういう意味を持ったかについて、実は明快な答えがまだ出ているということではありません。』

ほほう。

『ただ、私どもなりの理解ということで申し上げると、やはり量を大量に供給する中で極端にゼロ金利を追求していくという状況になったわけでありますが、そういう中ではやはり金融システム不安、それを背景とする金融市場での金融機関間のお金のやり取りが難しくなるという状況に対しては、これは有効打になったんではないかというように思っております。したがって、そういう意味で、量的緩和というのは、量を供給することで、金融システム不安を抱える世の中においてはそれなりの市場安定化効果を持ったんではないかというふうに私自身は認識しています。』

では日本は現在金融システム不安が無いので量的緩和はあまり関係ないということですね、判ります(-_-)。

『ただ、じゃ、量自身が直ちに景気を押し上げる効果を持ったのかどうか、これについてはいろいろと議論が分かれるところだろうと思っております。私どものこれまでの勉強の成果によると、実はそれについて明快な答えが出ているということではありません。そういうことであるんですが、量的緩和ということについてはもう一つ、私ども、時間軸を利かせるというような対応も取ったわけであります。これは、量的緩和という金融緩和政策を長く続けるということを世の中に明らかにすることによって長めの金利をより低いところで安定させると、そういった効果をねらったものであったわけでありますが、そのこと自体はやはり経済に対して何らかの浮揚力を持ったということはあるんではないかというふうに思っています。』

時間軸効果の話ですかそうですか。何かこれに関する報道を見たときには(市場は特に何の反応もしてませんでしたけど)量的緩和効果について副総裁が評価した答弁をしているみたいな感じでしたが、実際の答弁を読みますと評価しているのはあくまでも過去の話と時間軸の話ですなあ。

『いずれにしても、今申し上げたような形で量的緩和を実施したり、あるいはゼロ金利を追求するというようなことの中で、経済に対していろんな意味でのプラス効果というのはあったようには理解しております。』

ということで、何か「あったようには理解しております」ってどうも乗り気ではなさそう感が物凄く漂ってくるのはあたくしの気のせいですかそうですか(^^)。

と、ちょっとこのニュース出たときから気にはしてたのでクリップしてみました。

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2008/10/29

○山口副総裁就任記者会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0810d.pdf

・景気の見通しは従来の公式見解通りなるも下振れ懸念強し

冒頭の日本経済に関する質問から。

『日本経済につきましても、既にエネルギー・原材料価格がかなり高騰した時期を経過してきたわけですが、そうした高騰の影響がなお出ていますし、それに加え、今申し上げた欧米を中心とする海外経済の減速が明らかになってきていますので、当面停滞を続ける可能性が高いと思っています。』

『更にその先については見通しがなかなか難しくなりますが、やや長い目でみると、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れていくとみられるほか、海外経済も減速局面を脱することになると予想されますので、次第に緩やかな成長経路に復していくとみてよいのではないかと思っています。』

と、まあここまでが展望レポートおよび毎月の検討で示されるお話と同じ部分でございまする。

『ただし率直に申し上げれば、昨今の状況を踏まえると、こうした見通しを巡る不確実性は増大してきていると認識しています。』

ということで、これはまあ今週末の展望レポートでの下方修正(たぶん大幅)を示唆していますわなという所で。


・でも物価の上振れリスクの話はちゃっかりしていまして

企業向けサービス価格指数が絶賛大失速してたと思うのですけどねえ・・・・ということで同じ部分から。

『さらに先行きのリスク要因についてですが、景気の面では、国際金融資本市場の動向や世界経済の情勢が一段と悪化してきており、その実体面への影響が懸念される状況にあるため、下振れリスクが高まっているとみています。』

と、まあここまでは良いとして。

『一方、物価の面については、なお高めの消費者物価(除く生鮮食品)上昇率が続いているため、当面は、エネルギー・原材料価格の動向や消費者のインフレ予想といった上振れリスクへの注意がなお怠れないといった状況だと思っています。』

いやあインフレ懸念リスクへの注意は大変ですねえ(棒読み)。


・レポ市場の話をしてますが

同じ質疑で市場がシュリンクしている点についても話しています。

『こうした中、わが国の金融資本市場の動向についてですが、先程申し上げた通り、国際的な金融資本市場では著しく緊張が高まっているという状況のもとで、わが国の金融資本市場についても不安定さを増しているとみています。短期金融市場では、市場参加者のリスク回避姿勢がかなり強まっており、神経質な状態が続いているほか、レポ市場における流動性低下もみられています。また、株価も大きく下落しているほか、為替市場では円高が急速に進行している状況にあります。』

・・・・えーっと、そういうご認識なのでしたらコールしか気にしてないような調節でオープン市場が実質利上げ状態でCPレート上昇して企業金融にも影響が出ていますがなという状況についてどのようなご認識をお持ちか小一時間お伺いしたいものでありますけど。


・利下げに関して

途中をすっ飛ばしてこの質問から。

『(問) これまでの金融危機で、世界の中央銀行は豊富な資金供給とともに利下げを行ってきました。一方、日本銀行は豊富な資金供給は行ってきましたが、利下げには踏み切りませんでした。これまでの一連の対応について、どのような考えをお持ちでしょうか。』

『(答) 現在の政策金利の水準について、私どもとしてどう評価しているかということから話をします。現在の政策金利0.5%という水準については、日本の経済成長率や物価上昇率との関係からみて極めて低い、緩和的な水準が維持されていると認識しています。従って、企業の資金調達コストも相当低い水準で推移しているということになりますし、こうした緩和的な金融環境というのは企業活動を支えているはずだと認識しています。』

足元ではオープン金利の上昇(以下同文)というツッコミはまあスルーしますとして、緩和的な水準ですかそうですかという事で。

でですね、この質疑の話とずれちゃうかもしれませんけど、政策金利は無担保コール翌日物加重平均な訳ですが、その金利がコントロールできていても足元市場の裁定機能が低下(というか無い)している中で、各種金利が必ずしも安定して推移していないという状況になっていますよね。金融政策の効果っていうのは、無担保コール翌日物金利というよりは、これらの各種金利が影響すると思うのでして・・・・とか申し上げているうちにいつもの話になってしまった(汗)。

『先行きの金融政策運営については、総裁がいつも言っていることですが、経済・物価の見通しとその蓋然性、それから上下両方向のリスク要因を丹念に点検しながら機動的に行っていくというのが基本的なスタンスです。ただ、国際金融資本市場の動向が極めて緊張感に満ちた状況になりつつあるため、これまで弾力的かつ大量の流動性の供給を通じて金融市場の安定確保に努めてきたわけですが、今後ともそうした対応を続けていきたいと思います。』

ということで注目すべき点は展望レポートの書きっぷりになるわけで、現在の政策金利水準が緩和的なのかどうか、というのと、先行きの経済見通しが回復方向になっているのかどうか、という所だと思います。


・CP買入について

資金供給に関する質問の中でCPの話がありました。

『ただ、企業金融について、先程は申し上げませんでしたが、このところCPの金利が上昇するといったようなかたちで何がしかの厳しさが表れてきているのも事実です。そうした認識に立って、先般、CP現先オペについて積極的に行っていくことを決め、現にそうしたオペレーションを行ってきているところです。そういう意味では、私どもの弾力的かつ大量の流動性供給というのは、第一義的には金融市場に対してですが、企業金融面でも何らかの流動性の供給が必要であればそうした対応も採っていくと、このように認識しています。』

えーっと、一発打っただけなのですがそれを積極的とか言われましても・・・・で、CP買入が検討課題かどうかという質問が次に出てそれに対する答えですが。

『質問のご趣旨がCPの買切りオペ導入の可能性ということであれば私どもとしては、現在は現先方式での資金供給ということで対応可能と考えています。』

まあ、昨日も申し上げましたが、一発買切りをやるだけとかだったらアリバイオペにも程がありますので、定例的(最低毎週1回)に現先オペを打ってそれをロールしてもらったほうがよっぽど意味がありますので、まあ買切の前にもうちょっとオペのやる気を見せていただきとう存じますけれども。

その他、FRBビューとBISビューの話とかあったのですが時間の関係で今日はこんな感じで勘弁。

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