東京電力賠償支払スキームに関する民主党政権の無法発言に対して怒って書いた駄文の後日談(2011年5月22日設置

東京電力賠償スキームは更に混迷するのでありました・・・・・いつもは日付逆順ですが今回は日付順になります。

そして民主党だけではなくて自民党や東証社長などからも馬鹿発言が続くのであった・・・・・こちらへ

2011/05/16

お題「引き続き東電関連の雑感が続くあたくし(−−;」

基本的に営業日にもさもさ更新するのがあたくしの仕様ですが、土曜日は珍しくトサカパワーで書いたのでこの下の方に載っけております(^^)。

○これはこれは

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110515-00000037-jij-pol
東電存続、前提とせず=「発送電部門分離も」―玄葉戦略相
時事通信 5月15日(日)14時38分配信

『賠償支払いの枠組みに関し、玄葉氏は政府案の前提となった東電のリストラ策について「不十分だ」と述べ、さらなる合理化の必要性を強調。枝野幸男官房長官が金融機関の債権放棄の必要性に言及したことについては「言い過ぎた感じがする。東電が自主的に協力を求めていくことが一番適切だ」と苦言を呈した。』(上記URLより)

いやまあ東電のやりかたがトンマなのは金融危機以降の金融機関へのあの風当たりっぷりをお前ら見てなかったのかという感じですが、金融機関の場合はいくつかあってホイホイと血祭りに上げる事ができたので途中で金融機関も気がついてだいぶ平身低頭モードになったのですが、まあ繰延税金資産問題で梯子を外す攻撃に出た後は色々とアレでございましたわな。

でね、玄葉さん的には枝野海江田発言の火消しをした積りなのでしょうけれども、既に「ステークホルダー、特に金融機関の協力を求める」というのが「条件」となっているペーパー出しておいて「東電が自主的に協力を求めていくことが一番適切」とか茶番以外の何物でもない訳で、まあ残念ですなあ玄葉さんという感じです。

つーか「東電存続前提とせず」とか言ったら東電への融資や社債のリファイナンスをどうするんだよという感じでありまして、更に話がヤヤコシイ事になるじゃろとしか思えんのですけどねえ。


○権力が暴走する件に関して

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110515-00000023-maip-pol
毎日世論調査 浜岡原発停止「評価する」66% 
毎日新聞 5月15日(日)21時15分配信

まあどうせそんなもんになるんだろうなあと思うのですが、毎日とか朝日とか基本的に左翼系のメディアが一連の流れをやたら褒めていますからそらまあ毎日新聞が世論調査してもそうなるんでしょ。

でまあ浜岡原発が止まった時に申し上げた事の蒸し返しになっちゃいますけど、国家権力(だけじゃなくて権力一般というのものも含まれると思いますが)というのはまあ強制力であってある意味暴力装置のようなもんでありまして、その強制力を恣意的に濫用されたらその権力の下にいる構成員にとっては暗黒社会の到来に他ならないっすよね。で、その権力の濫用を防ぐのが法の支配という概念だという風にあたくしは理解している(ちなみにあたくし法律専攻じゃないから間違ってたら教えてちょ)訳でございます。

明治時代の最初の新聞は「藩閥政府の専制を指弾する」のが存在意義だったと思うのですけれども、今では権力の暴走を賞賛するとか新聞としてどうなのかと思いますが、まあ良く考えたら先の大戦の時だって新聞が先頭切って戦争を煽っていたのですからそんなもんなのでしょう。ゴミですなゴミ。


まあこちとら金融などという古今東西世間受けしない業務を生業としておりますと、こんな調子で権力が法の支配をいとも簡単に乗り越えた「国民感情」を基にした施策を打って来ますと、今度はこの権力は何を言い出すんでしょと心配になる訳でございまして、しまいには「財政赤字削減に協力する為に自主的協力を」とか言い出して以下自主規制という事でもあったらどうしようとかいうようなブラックスワンが気になってくる週末なのでありました。いやこれ富裕層が逃げ出し(本人は兎も角お金ね)てもおかしくない世界なんですけどねえ。


○まあしかしある意味今回の枝野さんの一件は良いリトマス試験紙になる訳で

と思って各社の社説を(新聞買い揃えるのはめんどいので手抜きでネットで)見たのですが、この件に関する社説であたくしが見つけたのは朝日と日経でございまして、他の新聞社はナニシトンネンと思いましたが、読売が割と批判的な解説をしていてホッと一息。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110514-OYT1T00240.htm
東電融資に政府が異例介入…金融界、一斉反発

記事の後半を引用するだよ。(段落分けのみ改変しています)

『枝野長官が言及したのは、震災後に大手行が行った約2兆円の緊急融資を除いた約2兆円についてだ。東電が優良企業だったこともあり、大半は担保を取っていない無担保融資だ。このため、東電が債権放棄などの金融支援を要請した場合、取引金融機関は貸し倒れに備えた引当金を大幅に積み増し、最大数千億円の損失計上を迫られる。新たな融資をすればするほど損失を計上する必要があり、取引行は「新規融資には応じられなくなる」(幹部)と反発している。

 金融機関に負担を求めるのは当然という感情論だけでは、枠組みの前提となる金融機関の協力が得られなくなる可能性が高い。

 東電の信用力も低下するのは確実で、13日の東京株式市場で東電株は大幅続落した。企業が破綻するリスクを取引する金融派生商品(クレジット・デフォルト・スワップ)のうち、東電のスプレッド(保証料率)も急拡大した。「破綻確率が高まった」と受け止めた投資家が増えたためだ。

 社債などの発行は一段と困難になる可能性が高く、東電が市場からも資金調達ができなくなり、東電を破綻させずに損害賠償を進めていく政府の枠組みが機能しなくなる危うさをはらんでいる。

 銀行が債権放棄に応じるためには、東電が実質的な債務超過に陥っていることが前提となる。しかし、現時点では被災者への損害賠償や、福島第一原発の廃炉に必要な費用も見積もれない段階で、債務超過の認定ができるのか、疑問視する声が多い。(是枝智、越前谷知子)(2011年5月14日10時04分 読売新聞)』(上記URLより)

という事で、この解説記事は論点がほぼ過不足無く織り込まれておりまして、何でこれをベースに社説書かないのよと思うのですけれども、特に「リファイナンスを回さないとワークしない」という論点と「現時点で銀行が債権放棄をするのは法的に無理がある」という論点をきっちり押さえていて、まあこの程度書いていただかないと新聞として困るっちゃあ困りますが、宜しい感じですな。


日経新聞14日社説。
http://www.nikkei.com/news/editorial/article/g=96958A96889DE0EAE7E0E3EAE4E2E3E6E2E7E0E2E3E38297EAE2E2E2;n=96948D819A938D96E38D8D8D8D8D
原発賠償への一歩を踏み出す東電と国
2011/5/14付

『枝野幸男官房長官は13日の記者会見で、東電支援の枠組みに関連して、銀行に債権放棄を求めていると取れる発言をした。債権放棄は通常、借り手の深刻な経営難が前提だ。補償総額が不明ななか、国が東電を助ける枠組みが決まった直後の発言は極めて軽率で、真意を測りかねる。』(上記URLより)

という辺りはまあ一応指摘してて良いのですが・・・・・

『しかし、銀行などの債権者や株主、そして何よりも国の責任の取り方について、まだ合意ができたとはいえない。国が金融機関以外の企業を破綻前に救済することには、賛否両論がある。』(上記URLより)

この「責任」という部分ですが、債権者や株主の「責任」と国の「責任」というのは責任の次元が違う筈だと思うのですが、何でそれを一緒くたにして「責任」として表現するのか日経新聞の社説子の意図が理解できません。即ち、債権者や株主の責任負担というのは当該企業の経営状況が悪化することによって結果的に負担することになる経済的な責任ですが、国の責任は原子力政策における許認可、監督者としての責任であって、つまりは「原発事故の責任」であるという意味で話の次元が全然違う訳ですが、日経新聞社説におけるこの表現はその辺りを混同するようにミスリードするそれこそ軽率な表現であろうかと存じます。

あと、2文目の「救済」というのもこれまたどうかと思うわけで、現行の法的な枠組みなどから考えて将来の長い期間に渡って東京電力に事故賠償金を支払わせる事を担保するためのスキーム(ただ前提に「金融機関の協力」がある時点で現行の法的な枠組みを飛び出しているのでダメダメなのですがそれは措く)として作っているつもりの物であって、「東電救済」とかメディアが言うから話が更にややこしくなって、「じゃあ金融機関にお願いしよう」とかいう無茶苦茶な流れになったんでしょとか思いますけどねえ。

ということで、日経社説は読売のさっきの記事に遠く及びませんな。


朝日新聞14日社説。
http://www.asahi.com/paper/editorial20110514.html#Edit2
原発事故賠償―株主や貸手も責任を

『これでは、とうてい納得できない。東京電力福島第一原発の事故を受けて、菅政権が13日に決めた賠償策のことだ。電力10社の出資で「機構」をつくり、東電の資金繰りを支援する。政府も公的資金を投じるが、最終的には東電と他の電力各社が弁済するため「国民負担は生じない」という。

 だが、賠償金の支払いや電力の安定供給を名目に、生かさず殺さずで東電を存続させる今回の案は、責任の所在をあいまいにしたまま、電力業界を守り続ける枠組みになりかねない。

 まず、株主や金融機関に負担を求めないのはなぜなのか。

 確かに、株価下落や無配転落で株主は一定の損を被る。金融機関についても、政府は債権放棄がなければ公的支援はしないとの揺さぶりをかけ、協力を引き出す構えだ。

 だが、実質的に経営破綻(はたん)の企業を公的に救済する以上、必要な減資や債権放棄は枠組みの中できちんと位置づけるべきだ。』(上記URLから)

>金融機関についても、政府は債権放棄がなければ公的支援はしないとの揺さぶりをかけ、協力を引き出す構えだ。
>金融機関についても、政府は債権放棄がなければ公的支援はしないとの揺さぶりをかけ、協力を引き出す構えだ。
>金融機関についても、政府は債権放棄がなければ公的支援はしないとの揺さぶりをかけ、協力を引き出す構えだ。

・・・・・・・無法措置をこれだけ賞賛する新聞社も珍しいですが、このような無法を主張するような新聞社に対する融資を行うのは金融機関としての社会的責任という意味からして如何なものかと思われますので、融資のロールオーバーとか応じない方が宜しいのではないでしょうかねえマッタクモウ。

ということで、朝日新聞は唯一ネ申によって地獄の火の中に投げ込まれるべきものであるというのが良く理解できました。


まあ以下おまけですけど。

ロイター
http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20110513-00000852-reu-bus_all
東電賠償スキーム、事実上株主・社債権者などを免責
5月13日(金)12時38分配信 ロイター

『[東京 13日 ロイター] 政府が13日発表した福島第1原子力発電所事故による東京電力の損害賠償支援スキームは、株主や社債権者などの各ステークホルダーを事実上、免責するものとなった。巨額の損害賠償が発生し、債務超過に陥れば優先・劣後関係の中で損失を負担していくのが金融市場の原則だが、”too big to fail”(大きすぎて潰せない)との主張の前に、最初にき損されるべき株主も守られるスキームだ。「リスク・リターンの原則もないがしろ。究極のモラルハザード案」(外資系証券幹部)との指摘も出ている。』(上記URLより)

ということで、書いてあることは会社法上の優先劣後の関係について述べているのですが、題名の所で株主と社債権者を同列にしている時点でマイナス100万点としか申し上げようがありません。記者会見などでニュースの見出しがミスリードというのはロイターの得意技なのでサプライズは無いですがこの記事見出しの時点で論外。

あと、記事の後半の方もなんか変な事書いてある気がするけど、読む気が起きないのでツッコミはしない。いやあロイターさんって市場関係者向けベンダーの販売を頑張っている筈なんですけど随分楽しい記事書きますねえ。


更におまけ

abz2010さんのブログから
http://d.hatena.ne.jp/abz2010/20110515/1305449669
あまりに「アウトロー」な民主党政府の原発事故賠償スキームについて

特に最後の部分が冷静で、あたくしのような湯気ポッポーの悪態しか書けないあたくしとしては頭が下がりますので勝手に引用。

『枝野官房長官や仙石官房副長官は弁護士出身であり、法律については当然詳しいと考えられるが、弁護士としての法律への接し方と政府としての法律への接し方は本来違うはずである。

弁護士としてはとにかく依頼者の利益を守るべく法律を最大限都合よく解釈して(時には明らかな拡大解釈と見えるようなものまで駆使して)勝訴を目指すのが本来の職務なのかもしれないが、法律の専門家がそのような法律への接し方をしても法律に対する信頼感が(大きくは)毀損しないのは、最終的に裁判官が法律に則って判断するからである。

ところが、同じような法律への接し方を政府が行い、かつその解釈を政府と民意の圧力で押し付けるようなことが起こったなら、法律への信頼感は急速に毀損するだろう。

そうなれば、「いざとなれば法律も信用できない」という前提で国民は行動しなければならなくなり、個々に準備・対応すべきリスクは格段に大きくなる。 又、「原子力損害賠償法」で原子力発電を国策として推進したような対策も従来のようには効果を発揮しなくなるだろう。市場原理主義を信奉する人間にとってはそれこそが本来の姿ということかもしれないが、少なくとも国としての手持ちのカードを一つ捨てるということであり、そうでなくても手持ちのカードの少ない日本にとって良い事は殆ど無いはずである。』(上記エントリーの最後の部分)

全く同感です。


一方でこんな人もいるようですが、金融の専門家でメシ食ってる人の発言とは思えん。
http://twitter.com/#!/yamagen_jp/status/69324778250571776

引用するのも忌々しいので引用はしませんがまあ読んでちょ。


2011/05/17

お題「まあ東電ネタは大概にしたいのだが雑談メモメモ」

市場の話はすっかりスルーでどうもすいませんすいません。

○政権の無茶振りにさすがの銀行もお怒りのようです

ブルームバーグニュースから
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aOZHcYQHF1G0
大手銀5G決算:与信費用減で6割増益1兆7631億円−今期予想は慎重

『5月16日(ブルームバーグ):(途中割愛ね)三菱UFJの永易克典社長は、政府部内で銀行の債権放棄が前提との見解がある東電賠償の枠組みについて「債権放棄とは実効性のある再建計画を企業と一緒に作っていく過程で応じるのが金融のルールだ。非常な違和感がある」と強調。再生の可能性がなければ株主代表訴訟になるなどと指摘した。東電からまだ話はきていないという。』(上記URLより)

>債権放棄とは実効性のある再建計画を企業と一緒に作っていく過程で応じるのが金融のルールだ
>債権放棄とは実効性のある再建計画を企業と一緒に作っていく過程で応じるのが金融のルールだ
>債権放棄とは実効性のある再建計画を企業と一緒に作っていく過程で応じるのが金融のルールだ


読売新聞から
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110516-OYT1T00953.htm
三菱UFJ社長、債権放棄は「かなり難しい」

『三菱UFJフィナンシャル・グループの永易克典社長は16日の決算記者会見で、枝野官房長官が東京電力への融資について債権放棄を求めていることに、「唐突で、違和感のある発言だった。民間と民間の関係に政府が直接的に関与するのはいかがなものか」と不快感を示した。』(上記URLより)

>民間と民間の関係に政府が直接的に関与するのはいかがなものか
>民間と民間の関係に政府が直接的に関与するのはいかがなものか
>民間と民間の関係に政府が直接的に関与するのはいかがなものか

『また、永易社長は「金融協力には金利減免やリスケ(返済期日の延期)などがあり、債権放棄はその極にある」と指摘した。永易氏は「東電が抜本的な再建計画を作る中で、どういう金融協力ができるかを考える」と述べたが、その前提として「(東電の)大リストラが前提になる」と強調した。(2011年5月16日21時02分 読売新聞)』(上記URLより)

>金融協力には金利減免やリスケ(返済期日の延期)などがあり、債権放棄はその極にある
>金融協力には金利減免やリスケ(返済期日の延期)などがあり、債権放棄はその極にある
>金融協力には金利減免やリスケ(返済期日の延期)などがあり、債権放棄はその極にある

どう見ても騙し討ちを食らった銀行がお怒りのようです・・・・・って当たり前としか申し上げようがございませんが、こーゆー風になるの当たり前にも程がありまして、まあ何と申しますか本当はただのおまいらの説明放棄であり利害関係者の調整努力を1ミリもしないで全く使い物にならない「案」とやらとドヤ顔で作って勝手な「国民感情」を持ち出して圧力掛けるだけしか能の無い政権の仕打ちにいつまでも甘い顔してたら銀行にどんだけ無理無体が飛んでくるか判りませんがなという所でございましょう。

しかしブルームバーグの方にありましたが、「東電からまだ話はきていない」っていうのが実際問題としてどのような段階(打診段階なのか本当に何も来ていないのか)なのかは判らんですけど、交渉以前の問題である、というのであればそもそも政府は何を考えてあんな無茶振りの前提条件付きの構想を出したのか全く理解に苦しみますが、どうせ支持率アップの為に何か出そうとか、決算発表までに何か出そうとか、そういうのが先に有って、本当に重要な「実際にワークする施策を作るために利害関係者間の調整を粘り強く行う」という地味な事はやらないでパフォーマンスだけ政治やってるからこういう話になるんでしょとゆー所ですわなあっはっはorz

しかしまあ東電も何か相変わらず危機感あるのか無いのか判らん(少なくとも「話がきてない」と言われるレベルの動きしかしてないと言うことでしょ)ですし、まあ元々が借入にしろ社債発行にしろ(激しく自主規制)であらされた流れをまだ引きずっているんでしょうかねえ。

まあしかし本件に関しては(少なくとも表面的には)結構こじれてしまったなあと言う感じでありますし、少なくともあの一連の無法発言ですっかり信頼関係が壊れてしまった感があります次第で、そもそもこの手の交渉するのに信頼関係もへったくれも無いという状況から開始するとなるとまあ話が中々進まんわなという所であります。唯一の救いは菅さんが収拾に乗り出すコースかなあ(恫喝的発言に対して菅さんが撤回するという感じ、まあよーやらんでしょうが)とは思いますけどねえ。



○しかし相変わらずの調子なのがこのお方

またまたブルームバーグニュースから。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aF571yB_qf5g
枝野氏:東電の資産売却、経費削減が大前提、政府の賠償支援−会見

『5月16日(ブルームバーグ):枝野幸男官房長官は16日午後の会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故をめぐる賠償問題について、政府の支援は同社が資産売却、経費削減を徹底的にするのが大前提だと述べた。また、ステークホルダーにどう協力してもらうか明確にする必要があるとも指摘した。』(上記URLより)

>ステークホルダーにどう協力してもらうか明確にする必要がある
>ステークホルダーにどう協力してもらうか明確にする必要がある
>ステークホルダーにどう協力してもらうか明確にする必要がある

おいこらまだ言ってるのかお前自分の発言の意味判ってるのかてめえ一般担保の債権者で自主的な「協力」とかする奴いると思ってるのかという所でありまして、枝野様におかれましては金融関連の法的な問題に関してはどうもあまりお得意ではなく、却って話をこじらせる方向に作用される事でもございますので、それよりも脱原発のクリーンエネルギー開発研究方面に貢献して頂きたいと存じます次第でございまして、例えばブルジュ・ハリーファの最上階からイカロスの翼の稼動実験の実演を行っていただくなどというような貢献を是非ともお願いしたい所でございます。


より詳しいニュースはこっちでしたな(汗)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=al7SN1PfjYK4
枝野氏:発送電分離など東電事業形態見直しも選択肢−記者会見(1)

『5月16日(ブルームバーグ):枝野幸男官房長官は16日午前の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けた今後の同社の在り方に関し、発電・送電部門の分離を含めた事業形態見直しも選択肢としてあり得るとの認識を示した。 』(上記URLより)

・・・・・まあそれやってエンロンリターンズとかニューヨーク大停電リターンズとかになられても困る訳で、今回の震災で固定回線も携帯回線も役立たず振りを発揮したどこぞの禿のようなのが電力事業に参入されても何だかなという感じなのでございますけれども、まあそれはとりあえず措くとしませう。

でね、それはまあ措くとしましても、発送電分離とかいう話になると社債的に申し上げますとそれは「重要な資産の売却」という事になると存じます次第でございまして、そういう場合は同社の負債をどういう形で継承するのかという点についてキチンとした形で詰めないと社債の失期事由に引っ掛かった社債権者が売却差し止め請求とかを飛ばすことになる(つーか社債管理会社が社債権者の権利保全に動かないと今度は社管がエライコトになる)とかいうような素敵な話になってしまうのでございますが、ど〜せそんな事この人たち何も考えて無いでしょ。

つーかさ、これ昨日も書いたけど、将来的に事業形態見直しされるというような話が見えていて、かつ一連の閣僚発言で「この政権に掛かると何を言い出すか判らない」という状態になっているのに誰がそんな企業に追加融資するのよという話になって、問題が益々ややこしくなるのでありまして、事業形態の見直しがどうのこうのというのであれば、検討の際には必ず同社の債務をその時点でどういう形にするのかという所を明示しないとダメだろという所でありまする。これが自民党政権時代だったらその辺あまりきっちり書いてなくても当然の如くその辺りを勘案した動きをするという安心感がございました(まあ金融行政に関して言えば竹中プラン時代に随分やってくれましたのでやはり微妙にアレな所があると思いますけどね)けれども、現政権は全くその辺の安心感が無いですからねえ。


○そして法案提出先送りだとおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

共同通信(47NEWS)から
http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051601000929.html
東電の賠償支援法案も先送り 政府民主、臨時国会へ

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

原発事故の避難者や農業漁業などの被害者に対して迅速な措置を取り、かつ賠償の支払いを東京電力に確実に履行させる為に急いで今回の仕組みを作ろうとしたんじゃないんでしょうか???????????????

『菅直人首相は今国会を6月22日の会期末で閉じたい意向で、40日を切った残り会期中に処理する法案を絞り込みたい思惑もある。本格復興のための2011年度第2次補正予算に加え、賠償支援法案の処理も先送りとなれば、野党が反発するのは必至だ。』(上記URLより)

えーっと、2次補正先送りに加えて賠償支払いスキームも先送りとか要するに震災復興も原発事故被害者支援も先送りして政権延命をしたいということでしょうか?

『これに関し枝野幸男官房長官は16日の記者会見で、東電の清水正孝社長が賠償支援法案の今国会成立を求めたことに対し「まず東電が経費節減の努力を示し、責任を果たしているとの理解が得られなければ前に進めない」と不快感を表明。岡田氏も会見で「政府の準備状況がはっきりしない」として、早期提出の状況にないとの認識を示した。』(上記URLより)

東京電力の経営陣の対応の仕方が如何にもマズいのはそうなのですが、本当の問題は元々出たプランの前提条件にある「ステークホルダーの協力」という法的根拠無く一部の利害関係者に損失を押し付けるような部分やら、もっとそもそも論を言えば現在のプランがあまりにもフワフワで最終案の体を為していないというのもありまして、まあ結局のところ本案を作成するにあたって政府が何か調整の努力をする訳でもなく、「金融機関の協力」問題に関しては内閣官房長官御自らが「民民の問題」と言いつつ「協力が無いと国民の理解が得られない」などと恫喝的な言辞を弄するだけという現政権の何もしない攻撃が問題なのですけど、こらまた明らかに東電(と金融機関)に話が進まない責任をおっかぶせる気が満々とか意味判りませんなあ。

・・・・まあそんなこんなで昨日も血圧の上昇する一日であったことよ、という所でございますな、いやはや全く精神衛生によろしくありませんですなあorz


2011/05/18

お題「結局また東電関連雑談になってしまったorz」

まあ大概にと言いつつも実に何ともなネタなので東電関連クリップは続く。

○結局のところ「枠組み」の「6項目目」が明らかにクソな訳ですな

昨日の閣議後の会見を報じたブルームバーグから。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=auI22n.A.9oE
野田財務相:東電と金融機関が対応協議を−債権放棄問題(1)

『5月17日(ブルームバーグ):野田佳彦財務相は17日午前の閣議後会見で、東京電力の賠償スキームに絡んで枝野幸男官房長官が金融機関の債権放棄が前提との認識を示したことを受け、「具体的に政府で協議したことはない」としながらも、「全てのステークホルダーの協力を得ていくのが基本的な姿勢。その中で国民負担の最小化を図るという原則がある。それに基づいた対応を東電と金融機関が民民の関係で協議いただくことが基本姿勢だ」との認識を示した。』(上記URLより)

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=airlH_5CmTtw
自見金融相:債権放棄「民間当事者同士で話し合うべき」−東電賠償

『5月17日(ブルームバーグ):自見庄三郎金融担当相は17日午前の閣議後会見で、東京電力原発電所事故の賠償の枠組みに関連して、「東電支援は国民の理解を得ることが重要。民間当事者間同士で話し合うべき事柄だ」と述べた。』(上記URLより)

・・・・・まあ野田財務大臣も言うように、「政府が公式な機関決定として民間金融機関に債権の放棄などを強要している訳ではない」(したらどこの暗黒中世国家だという話ですけど)という事なのでしょうが、まあ既に枝野官房長官が金融機関の債権放棄などを事実上の政府による支援条件とする発言をした後に、自見さんのように『東電支援は国民の理解を得ることが重要。』という発言をしちゃいますと、「財務省も金融庁も金融機関による債権放棄などを要求している」と取られちゃうリスクが高い訳でございまして、益々ヘッドラインリスクを高めるというものでございまする。つーかこれって「東電支援」じゃなくて「賠償支払い支援」でしょ自見さん・・・・・

まあ要するに例の6項目の最後の項目が明らかに余計、というかそれを「条件」にした時点で「政府による金融機関への法的根拠無き強要」になっているというのが問題にも程があるのである訳ですよね。

まあ毎日書いてるから耳タコですいませんが、お金のやりとりにおける契約関係に関して、後から国家権力が法律の枠組みを壊すような形で「世間的に反発されにくい取りやすい所から取立てますか」というようなスキームを炸裂させちゃいますと、そらあーた金融なんてやってられまへんがなという事ですし、大体からして世間受けの悪い「金持ち」とかが「この国に金を置いておくと何かあった時に大事なお金を法律の枠組みを超えて国家に収奪されちゃうリスクがある」と認識するんじゃないですかという話なのですが、まあ金融だの金持ちだのというのは(あたくしは金融屋だが金には縁が・・・orz)世間的に嫌われますので、迫害の対象になる事に関してはナーバスなんじゃネーノと思いますけどねえ。


ま、電力事業の主務大臣様であらされる経済産業大臣がこれだから困るのだが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aFCRivCI0gB4
海江田氏:金融機関もいろんな協力してくれると思う−東電賠償(1)

『5月17日(ブルームバーグ):(冒頭部分割愛)海江田氏は金融機関の協力の在り方について「基本的には民と民の関係であり、私どもがああしろ、こうしろということを今の段階で直接口を挟むということではなしに、金融機関の方もいろんな協力をしてくれるだろうと思っている」と述べた。』(上記URLより)

えーっと、思いっきり圧力掛けてますが海江田さん永易さんの会見内容を見てないんですかねえ。更に話がこじれるだけじゃねえのこれじゃあ話が百年経っても進まねえよ・・・・・しかも主務大臣が「事業分割」の話をしているのだが、この会社って公募社債での資金調達が多いのだから、そんなに簡単に事業分割を口にされますと困るんですけどねえ(社債の元利金返済のきちんとした承継スキームがあるなら別だが)。



というのが、共同通信ニュースになるとこうなります。

http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011051701000296.html
東電と金融機関で協議を 債権放棄めぐり野田財務相

まあシャーナイわなという感じですが、こんな感じでヘッドラインリスクがホイホイ出てくるというのは全く持って何なんですかという所ではございまする。


まあこの辺とか見てると微妙に無法路線の修正をしようとしているのかなあという気もするのでその辺に期待したいですが
http://www.asahi.com/politics/update/0517/TKY201105170560.html
原発被災者「国策の被害者」と明記 政権の取り組み方針

おせえよという感じではありますが、まあちったあ前進ですかねえ。




○官房長官は益々意地になっておられるようですなあ

公共放送ニュースより
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110516/t10015922781000.html
官房長官 支援法案は合理化策後に 5月16日 19時43分

『東京電力の清水社長は、16日の衆議院予算委員会で、福島第一原発の事故を受けた賠償金の支払いを支援する枠組みに必要な法案について、今国会での成立を要請しました。これについて、枝野官房長官は記者会見で、「支援の大前提として、東京電力による資産の売却や、安全に関わらない経費の徹底的な節減、それに関係者の協力が得られることが求められる」と述べ、東京電力に対し、早急に経営の合理化策を示すよう求めました。そのうえで、枝野長官は「『早く法案の成立を』と言う前に、情報公開と内部努力を進めることが、前に早く進む何よりの要因だ。東京電力が事業主体として責任を果たしているという国民的な理解が得られなければ前に進まない」と述べ、法案の提出時期は、東京電力が経営の合理化策を示したあとになるという認識を示しました。』(上記URLより)

ということで、どうも「債権放棄」に関して直接言及するのは避けているようにも見えますが、相変わらず『関係者の協力』とか言ってるし、『支援の前提として資産の売却』などの『合理化が先』という話になっているようで、益々意固地になっておられるように見えるのですがどうなんすかねえ。

つーかさ、合理化策は良いんですけど、役員報酬削減だったら別にホイホイと決められますけど、退職者年金の削減とか給与削減って交渉相手がいることですし、資産売却だって今日売ると言って明日ホイホイ売れるものでもない上に、尾瀬の土地みたいに横槍入ったりもするでしょうし、まあそれ以前の問題として一般担保付の社債という長期負債が山ほどある会社において「重要な資産の処分」をホイホイ行うのは一般担保の社債権者との権利関係の問題もある訳で、そらまあ鉛筆舐め舐めのお絵かき策だったら簡単に出せるかもしれないけど、まともに実効性のある話をしろといわれた場合に今日の明日とかに合理化策を出すのも大変でしょ。その間に時間は経過していくんですけどねえ・・・・


ま、こんな調子でそこらじゅうから批判されて更に意地になっていると見た。

http://www.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210518001.html
【原発】枝野長官の債権放棄に経済界から批判(05/18 05:50)

「あの」テレビ朝日でもこの調子ですからにゃあ。


○しらっと書いてあったが何だかなという話

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aH0h7UrjcFwI
東電賠償スキーム、銀行債権放棄、政府見解でなし−支援に不透明感(1)

最後の部分が盛大な釣り針で・・・・・・

『東電広報担当の松本直之氏は、金融機関に債権放棄を「要請するかは現在コメントできない」とし、「これまで通り低コストの資金供給などの支援を願いたい」と述べた。「政府に支援してもらいながら被害者への公正かつ迅速な補償に向け準備を進めている」という。』(上記URLより)

>これまで通り低コストの資金供給などの支援を願いたい
>これまで通り低コストの資金供給などの支援を願いたい
>これまで通り低コストの資金供給などの支援を願いたい

・・・・・・・・・・いやあのどういう文脈で仰ったのか良く判らないですからあんまり悪態はつきたくないのですが、社長が資金が回らなくて政府に支援要請とか言ってる会社で、しかも政府から金融機関に公然圧力モードになっていて今後の融資どうすんのというような話になっている状態なのに『低コスト』の融資寄越せとか金融機関の首脳がこれ見たらカチンと来るんじゃネーノと思うのですが。

まあまさか素でそういう話をしたとも思えず、文脈の中で切り取られただけだとは思う(というか思いたい)のですが、こういう風に報道されるリスクのあるような物の言い方を避けないと「東電の態度は何なんだ」という感情的反発を呼んでまとまるものもまとまらなくなってくる訳でございまして、だから不良債権処理時代の銀行からちったあ勉強した方が良いんじゃないのとか思うのでありまする。

報道機関ってこういう時にできるだけオモシロヘッドラインを作ろうとするのでありまして、まあ例えば清水社長の企業年金削減に関する話とかだって法的な筋論としては別に間違った話をしている訳では無さそうなのですが、兎に角こういう時にはヘッドラインとして「東電ケシカラン」という結論になるような報道のされ方をするものですからもうちょっと何とかした方が良いと思いますけどって先日も書いたけど多分時既にお寿司ではあるのですけどね。


○更に脱線雑談:こんな国で財政マネタイズ道具与えちゃいかんでしょ

最近ちょっと下火になった、というか単に2次補正が先送りになったので、予算が先送りになれば財源論も先送りになるというだけの事だと思われる「日銀が財政マネタイズ(=財源としての国債引受)をしろ論」なのでございますがね。

まあ小見出しの通りでございましてですな、財政マネタイズに反対するクチと致しましては、主な論点として「一旦財政マネタイズを認めると足元は兎も角、将来に渡って安易に財政マネタイズを乱発する結果、財政インフレという誰も得しない展開になりませんか」というのがあって、そーゆーのに対して「財政規律を法律で縛れば」「日銀がインフレターゲットをすれば」という話が出てくるのでありますわな。

でもね、今般の東電賠償スキーム策定において内閣官房長官という政府高官が堂々の無法発言をするような国において、「国債の市中消化」という原則を崩したら打ち出の小槌を物凄い勢いで振りまくってそんな財政規律法律だのスルーしちゃうんじゃ無いのという懸念が思いっきりあると存じますし、そうなったらインフレターゲットも糞も無いと思うのですけど、その辺に関してはどうお考えなのでしょうかと思うのですよ。

「いやそんな事したら選挙で落とされるから政治家がやらない」というのかも知れませんが、一旦財政インフレ的な動きになったら次の選挙で血祭りになったとしてもその時には国民生活は破壊されている訳ですから、んなもん歯止めになるかいなという風に思うのでありまして、やはり国債の市中消化という原則をそう簡単に崩す必要は無いと思うのですけどねえ。


2011/05/19

○ちょっとだけ悪態的雑談

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110518-00000038-maip-pol
福島第1原発 菅首相、発・送電の分離検討
毎日新聞 5月18日(水)21時3分配信

・・・・・・いやあのですね、発送電分離の話とか(表題には無いけど)エネルギー政策の見直しとかの話をする前に今やるべきことは福島第一原発事故の安定化と、経済復興の為にも重要な電力供給の安定化であって、しかもそれは待ったなしの話だと思うのですけどねえ。

その為にも東電の賠償支払いスキームを実効性のあるもの(無法発言によって債権放棄を強要するとか論外にも程があるのですわ)として、東電の今後のリファイナンスを確実なものにすると共に、他の電力会社に対しても無駄に変な負担を掛けたり先行きのリスクを高めたりすることによって資金調達に負荷を掛けるような事をしない事が最重要であって、クリーンエネルギーとか発送電分離とかいうのはその辺りが落ち着いてから追々やれば良い話ではないかと思うのですけれども、誰に変な話吹き込まれたのか知りませんが、喫緊の課題を先送りにするのは熱心なようで非常に困ったもんだとしか申し上げようがございませんわな。

などと血圧を上げていると健康に宜しくないのでまあちょっと毒出ししてみただけね。


2011/05/20

いやね、悪態ばっか書いてもシャーナイナイなのですけどついついネタが出るとそんな餌に俺様がクマーになってしまうあたくしorz


○益々意地になっておられる人がおいでのようで

市場に乾いた笑いと頭痛を巻き起こしたのは昨日もこの人でありました。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=ah_7Q16_e3G8
枝野氏:東電は「普通の民間とは違う」−債権放棄発言への批判に(1)

はあはあそうですか、で、何と仰せなのでしょう。以下の『』内は上記URLの記事からね。

『5月19日(ブルームバーグ):枝野幸男官房長官は19日午前の記者会見で、東京電力について「公的な目的のために国として一定の支援を行う限りにおいては普通の民間企業とは違う」と述べ、福島第一原子力発電所事故賠償への政府支援は震災前債権の放棄など金融機関による協力が前提になるとした自らの発言への理解を求めた。』

いやまあ普通の民間企業とは違うかもしれませんけど、あんさん先週金曜日には「民民の関係」とか何とか仰っておられませんでしたっけ????いやですから政府がちゃんと関与するというのであれば、法的枠組みに則って賠償の支払いと電力の安定供給(と原発事故の収束)が継続できるようなやり方を取って頂ければヨロシイ訳でして、震災前債権の放棄を「自主的に行う」のを「協力要請」するという”法に則らない行動”をしろというから銀行どころか経済界が反発するのですけどねえ。

『枝野氏は金融機関や東電の株主に対し、「当事者である東電が貸し手に限らず株主も含めてさまざまなステークホルダーの皆さんに、政府からの支援がない場合の財務状況を前提にして、さまざまなご協力をお願いしていく。そのことについて国民の理解が得られなければ国としてのスキームが前に進むことはない」と述べ、あらためて賠償への協力を求めた。』

あーもしもし???アナタ今「普通の民間企業とは違う」って仰ったのに、何で「協力」する時の前提が「政府からの支援が無い場合」になるんでしょうか???大体法的枠組み考えたらこうなりますというスキーム作って、その説明をするのがあんさんらの仕事であって、「国民感情」とやらに阿って法律無視の横車通すのが政府の仕事ってどこのファッショだよという感じっすけどねえ。

つーことで、最初の話にある「民間企業とは違う」発言とこの段落の部分って論理矛盾してるようにしか見えないのですが、いやこんな弁護士に弁護頼んだら瞬時に敗訴確定ですなああっはっはとしか申し上げようがございませんねえ。

まあ何ですな、枝野センセイにおかれましては「政府様が関与するのだからお前ら言うこと聞きやがれ」ってゆー話をしているように見えますが、そもそも民間企業の活動に対して法に則らない行為を恫喝交じりに強要しようとしているのに対して反発が起きているのに、この人その点全く把握してないでしょっつー所で残念ですなあ。

『一方、東電債権を放棄すれば金融機関自身が株主代表訴訟を提起される可能性があるとの指摘が出ているとの質問に対しては、「金融機関がどういうロジックを持っているか直接コメントする立場にはない」と述べるにとどめた。』

・・・・・・・いやあのそれは金融機関のロジック云々じゃなくて普通に商法だの会社法だのを普通に解釈するとそうなりますがなという世界であって、別に金融機関が勝手に問題点をでっち上げている訳でも何でも無いのですけれども、もしかして枝野大先生におかれましては「俺様がルールブック」という古代暴君伝説もビックリの法律運用を当然であるとでも思っているのでしょうかねえ。


とまあそういう事で、何せ官房長官がネックという素敵な状態になっている上に、益々無茶振りの発言をエスカレートするという状態ですので、まあこの人の発言を何とかして「無かった事」にするという方向、そして例の6項目目の「協力」に関しては「期限がこれからやってくる貸出金のリファイナンスへの協力」というような方向で解釈して、枝野発言に関しては菅さんが撤回なり訂正する(本来なら今回の無法発言は「政府高官が法の支配の原則を逸脱した」という意味からすると罷免して議員辞職勧告モノだと思いますけど、まあさすがにそれは難しいでしょうからね)ことによって、まずは賠償支払スキームが実際にワークして、東電のリファイナンスを回すようにしないと賠償支払い以前に原発事故収束も電力の安定供給も回らないと思うのですけどねえマッタクモウ。


昨日のMoody'sの発表のニュース。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=akMWl3pgOeCo
ムーディーズ:東電、銀行が金利減免なら、デフォルトへ格下げ検討(2)

3月末に格下げした時は、先行きの方向性とか全然見えていない段階でいきなり格下げしたので格下げテロ呼ばわりした覚えがございますが(^^)、まあ今回の動きに関しても何だかなあとは思いますけど、そらまあ言うわなと3月末のような怒りよりも乾いた笑いのような感情が起こるわけで、というか怒りの方はどこぞの無法官房長官に向かいますがね。



○2次補正→賠償スキーム→エネルギー政策見直しとな

ふむふむ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=auwg.LBU1UwY
電力株下落率1位、首相発言で電力行政警戒−地域独占や発送電分離

いやね、これ株が下がるのも厳しいですけど、発送電分離とか軽々しく言われましてもじゃあ既存の貸出や社債はどうなるのという話になった時にこの政府何も考えないで後から変な「協力」でも求めてきやがるんじゃないかとかまで心配したくもなる(常識的にはそういうアホな事は有りえないのだが、枝野発言によってこの政府はそういう契約履行などに関する常識が通用しないリスクがあるというステージになっているからねえ)訳ですし、まあそれ以前の問題として直近で債権放棄を求められる状態の中で、他の電力で似たような事態が起きたらどうすんのというような話になったらそらまあ電力会社への融資のレートは少なくとも上げてくれないと困りますがな(従来の御用金調達レートでは厳しいですなあ)という話になりゃーしまへんかねというのが気になるざますわよ奥様。

つまりですな、ただでなくさえ原発見直しの方向が続いて発電コストが上がり、その上電力供給能力に対する不安もありますねという中で、電力会社の資金調達に悪影響を与えるような事を国が推進してどないすんねんと思うのでありまして、昨日も申し上げましたように、今まさに緊急の課題は電力の安定供給(東電はそれに原発関連が加わりますが)の確保なのに、自由化論議とかこのタイミングで行ってどうするんじゃいとあたしゃ思うのですけどねえ。


まあ何ですな、2次補正の話をしてたら財源論で大騒ぎになったから収拾が付かなくなって先送り、賠償スキームの話をしたら債権放棄云々で大騒ぎになったから収拾が付かなくなってこれまた先送り、となりまして、何か支持率アップと政権延命のネタは無いかという事で今度はエネルギー政策どうのこうのとなって発送電分離というのに飛びついてみたという事だとは思うのですが、やることが一々証券市場や金融市場の迷惑でございまして、内閣の皆様におかれましては可及的速やかに西方浄土へのご訪問をお勧めしたく存じます。

#ちなみにどうでも良いが、発送電分離してあちこちで小規模発電とかいう話って見た目は美しいですけど、現在の技術水準でそれやると「土法高炉」状態にならんかねと懸念しとるんじゃが素人なのでよー知らん


2011/05/26

○てめえふざけるなああああああああああああ!!!!!

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=ax1hBHBJim_Y
枝野氏:「私は求めていない」、東電向け銀行債権放棄−国会答弁(1)

『5月25日(ブルームバーグ):東京電力福島第一原子力発電所事故の賠償スキームをめぐり銀行が東電向け債権を放棄する必要性があるかどうかの問題について、枝野幸男官房長官は25日の国会答弁で、記者会見での質問に対し見解を示しただけで、自ら債権放棄を求めたものではないと強調した。』(上記URLより)

・・・・・・・・・(゚Д゚#)ゴルァァアアアァァァ!!

えーっと、どうもこの官房長官様は無法者の上に自分の発言の意味が判っておられないようで、まあきっとお気楽野党の評論家気分で権力を振り回しておられるということなんでしょうかねえ。

『また、同氏は25日の答弁で、原発事故の収束に向けた関連企業の業務継続、原発事故賠償、東電管内の電力供給安定の3点を確保するため「会社更生等の法的手続きは残念ながら取れないと考えている」と述べた。』(上記URLより)

>残念ながら
>残念ながら
>残念ながら

・・・・・・・・??????????

何でこう意味不明に強硬なのかと考えますと、そもそも原子力政策を推進していた政府がありまして、原子力保安院とか作って管理監督を責任取って実施していた筈なのですが、その論点を一連の無法発言でスルーさせようという事なんですかね、とでも考えないとイミワカンネ。

大体ですな、物権に関する法の前提を平気でひっくり返して融資の放棄だのを要請するような発言を内閣官房長官が平然と行うっつー時点で、「この国は後付で法的枠組みがひっくり返される国」(事後法でいきなり逮捕されたりいきなり財産没収されるようなアホな事の起きない国)という認識になる訳でございまして、従来はアジアの中でその手のリスクの無い国として日本は扱われていた筈でありましたが、枝野官房長官の債権放棄要請発言ってそれを突き崩すという意味で激しく国益を損ねるリスクのある発言なんですよね。

然るに、「そんな話をした訳ではない」と「勝手に解釈するお前らが悪い」と言わんばかりの発言とはこれまた酷い開き直りでして、発言を撤回して謝罪しないとそもそも話が始まらないと思うのですけど、何と申しますかこの官房長官様におかれましては可及的速やかに天寿を全うして頂きたいものでございますとしか申し上げようがございませんな。

ということで、金融市場に(゚Д゚#)ゴルァの反響を巻き起こした官房長官のご発言に関してメモメモ悪態なのでございました。

ちなみに、政策投資銀行も債権放棄に関してはこのように仰せのようで(^^)。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a2m.Rw8eR_f0
政投銀の荒木副社長:債権放棄に慎重「まず政府と東電間で協議を」

『5月25日(ブルームバーグ):日本政策投資銀行の荒木幹夫副社長は25日の決算会見で、東京電力の原発事故補償の枠組みは金融機関の債権放棄が前提になるとの枝野幸男官房長官に発言について、「まずは東電と政府で考え方を整理し、金融機関を含む関係者とそれを共有させてもらわないと、われわれ自身も判断できない」と慎重姿勢を示した。

同副社長は一般論として「債権放棄は金融支援としては不快だ。当然事業者もその後の調達に支障が生じる。最後の手段ということだと思う。その辺を含め考え方をきちっと理解したい」と言及。ただ「電力は国、産業、生活にとって重要なインフラで具体的要請なり枠組みが見えてきた段階ではお手伝いできることは力を尽くしたい」と述べた。』(上記URLより)

・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー



2011/05/31

○S&Pが東電格下げとか

こちらはニュース。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=axAZifqKovqM
東京電力の会社格付けを5段階引き下げ、ジャンク級に−S&P (1)

『5月30日(ブルームバーグ):格付け会社スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は30日、東京電力の格付けをジャンク級(投機的格付け)に引き下げた。銀行借り入れについて何らかの債務再編がなされる可能性が高まっているとの見解を示した。

発表によると、長期会社格付けば「B+(シングルBプラス)」に5段階引き下げた。長期優先債券格付けは2段階引き下げ「BB+(ダブルBプラス)」とした。いずれも従来は「BBB(トリプルB)」。短期会社格付けも「B」に2段階引き下げた。すべての格付けは方向性不確定の「クレジット・ウォッチ」を継続する。』(上記URLより)


んでもってS&Pのリリース(登録しないでも見れる奴)。
http://www2.standardandpoors.com/portal/site/sp/jp/jp/page.article/1,0,0,0,1204866766588.html
東京電力の債券格付けを「BB+」に、CP格付けを「B」に引き下げ
会社格付けは「B+/B」に引き下げ、すべて方向性不確定の「クレジット・ウォッチ」を継続

ということで、長期優先債務と長期会社格付けが思いっきりスプリットになったのですけれども、どっちも格下げ攻撃となったんすよね。銀行融資が債務再編に掛かった場合には他の債権者的にはオイチイ話のような気もするのですけれども、まあ(Q&Aみたいなのがリリースされてるようなのでそれを見れば書いていると思うけど)新規でのファイナンスと言う観点からしたら銀行融資を債務再編しようかという企業が一般担保付とは言え社債発行したらそれってどうなのよとか言われるとまあそーゆー事なんですかねえ、よー知らんが。

で、上記S&Pのリリースにもありますけど、今回の決定理由の中に『1)政府による損害賠償支援の内容や正式決定の時期などが依然として不透明である』というのがございまして、まあ要するに「政府は早く東電の賠償支払いスキームの具体化と法案整備をしやがれコノヤロー」だというのだけは把握しました。

この前政府案出た時に格下げしたばっかりで、何か随分とタイミング早くねえかという感じではございます(まあ銀行決算発表後なのだけは気を使ったのかもしれませんが^^)けれども、まあ政府案のようなものが関係閣僚会議で公表された後絶賛たなざらし状態になっているので格付け会社がイラっとさんになりましたという事だと存じますが、そもそもどこぞの馬鹿官房長官が馬鹿な前提条件を恫喝的に言い出したのが本件具体化に向けての話をややこしくした原因でありまして、馬鹿官房長官におかれましてはミニ水力発電の研究の為に三途の川を視察に逝かれる事を心からお勧めして止まないものであります。

何かまあ短期的にはこの前の2兆円融資が効いて資金繰りダイジョーブ的な余裕ぶっかましモードになっているから政府案の具体化が全然進まないという事があるのかもしれませんが、まあたなざらしが長くなりすぎると色々と騒ぐ動きも出てきますがなっちゅう事ですので、実効性があって、変に債務再編とかしない賠償支払いスキーム(長期に渡って東電がタコ部屋送りになるようなスキームが今の政府案と理解してますが)の具体化を望む訳でございまする。


2011/06/02

○だいたい雑談コーナー

・R&Iは1ノッチ下げですかそうですか(9501)

格付投資情報センターさん昨日は東電格下げアクション。
http://www.r-i.co.jp/jpn/
とりあえずR&IはA格維持ですにゃ。

リリースはこちら
http://www.r-i.co.jp/jpn/body/cfp/news_release_A/2011/06/news_release_2011-A-264_01.pdf

いやまあこちらのリリースにもございますし、S&Pの格付けアクションもそうなのですけど、今回は「賠償支払支援スキームの具体化が進んでいない」という点をレーティングアクションの大きな理由の一つにしている訳でございまして、いやまあそう言われますとそらそうですなとしか申し上げようが無いでござる。

まあ悪態(格付け会社向けではなくて政権向けね)は火曜日にも書いたので今更なのでございますが、何か微妙にフワフワな「案」だけ出して(しかもただの関係閣僚会議合意であって閣議決定ですらない)その具体化に向けての所で「ステークホルダーの協力」に関して関係閣僚の発言が食い違う(上に無法発言をする内閣官房長官がいるわ)という状態で話が宙に浮く位だったら、スキーム案まだ検討中って感じの方が良かったんじゃねえのとか(実際にはそれはそれで問題になるんでしょうけど)愚痴りたくもなりますにゃ。

何はともあれこのままダラダラとされても誰も得をしない展開になります訳でして、現政権におかれましてはもうちょっと物事の優先順位というものを考えていただきたく存じます次第でございます、あ、それから法治国家としてのあり方もお忘れなきように。

毎日新聞でもこんな記事があったんですな。うんうん。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20110531ddm008020131000c.html
東京電力:「投資不適格」 社債市場回復に水 契機は債権放棄要求発言
毎日新聞 2011年5月31日 東京朝刊