決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2006年度上期に書いた分)

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2006年上期

2006/09/21「慎重意見が出てきた8月の決定会合議事要旨(追記あり:後日判明した模様)」
2006/09/20「金融経済月報(9月):ほぼ変化なし」
2006/08/22「日銀はデリバティブ市場がお好き?」
2006/08/21「信用リスク内部格付け勉強会/日銀のサイトにちと注文」
2006/08/18「7月13、14日の議事要旨続き」
2006/08/17「利上げを決定した金融政策決定会合議事要旨(7月13、14日)」
2006/08/14「金融経済月報は不変」
2006/08/01「日銀の短期市場レポート」
2006/07/26「しらっと出された量的緩和の効果に関する実証研究まとめ」
2006/07/24「オペレーション刻み幅が元に戻りました」
2006/07/21「6月14、15日の金融政策決定会合議事要旨」
2006/07/18「ゼロ金利解除/7月金融経済月報」
2006/07/14「GCレポ金利のコントロール/とうとう利上げですか」
2006/07/13「0.125%利上げ説/オペ金利高い/ロンバート0.4?0.5?」
2006/07/10「しらっと重要な指摘もある日銀の金融調節ペーパー」
2006/07/04「6月短観さらっと読み」
2006/06/27「4月28日&5月18、19日の決定会合議事要旨」
2006/06/16「6月金融経済月報は株価下落にもめげずに5月とまるっきり同じ内容」
2006/05/31「どさくさに紛れて地均し礼賛レポートです」
2006/05/25「ツッコミどころの多い4月10、11日の決定会合議事要旨」
2006/05/22「5月金融経済月報、会見は火消しだけど内容は強気です」
2006/05/12「レポートに関して(TIBORがバーチャルマーケット/円環性問題)」
2006/05/11「レポートへの悪態の続きあるいはフォロー」
2006/05/10「この金先ミラーマンレポートはいかがなものか(TIBORの形骸化という論点から)」
2006/05/01「展望レポートはゼロ金利解除宣言みたいなもんです」
2006/04/26「消費者物価指数に関する日銀白塚氏レポート」
2006/04/24「イールドカーブと金融政策に関する企画局白塚氏の日銀レビュー(その1)」
2006/04/19「さくらレポート備忘メモ」
2006/04/17「3月8、9日の決定会合議事要旨より」
2006/04/12「4月11、12日の決定会合に関して」
2006/04/06「短期金融市場の課題レポート」
2006/04/04「日銀短観メモ/国債補完貸付久々の実施」


2006/09/21

お題「8月10、11日決定会合議事要旨」

タイはタクシン首相亡命ということで平穏に収拾の模様らしく、まあよかったですねという感じのようですな。確か今年に入ったあたりから延々と混迷してましたので。

しかしどこぞのテレビニュースで本件のニュースをやってたのですが、タイに向う渡航者へのインタビュー映像で出てきたのが「情報が少ないのでとっても不安です」というオバハン。よく見るとそのオバハン「旅行者」となってまして(^^)、「とっても不安なら逝くなよバカチン!」と思わず画面にツッコミを入れたのはあたくしだけではあるまいて。

本日も虫干しシリーズですいません。決定会合議事要旨。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060811.pdf

○ちらちら出てくる慎重意見

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』という部分。議事要旨本文の5ページ目(ファイルの6ページ目)のあたり。個人消費に関する部分ですけれども少数意見としてこんな意見が。

『ある委員は、景気回復が所得層によって異なる影響を与えている可能性があり、その場合、好調な企業業績から個人消費への波及効果が想定比弱いかもしれないと指摘した。』

とは言え、最初の所では『個人消費について、委員は、増加基調にあり、先行きについても、雇用者所得の緩やかな増加等を背景に、増加を続ける可能性が高いとの見方で一致した。』とはなっておりますけど。

消費者物価に関してはこういう指摘もあります(本文6ページ目)。

『ある委員は、エネルギー関連の物価上昇率に比べて、その他の品目の物価上昇率が高まっていないことについては留意すべきだと指摘した。』

まあ直ぐ後に反論意見も入ってますが。


○現行の政策金利は妥当な水準とな

で、この慎重意見は本文8ページ目にも出てきてます。『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分になりますけれども、今後の金融政策運営に関する部分。

『ある委員は、マクロ的な需給の伸びが均衡しており、需要超過幅が拡大していく局面にあるとはみられないことを踏まえると、現行の政策金利は妥当な水準であり、金利水準の調整はゆっくり行うことが適当であると述べた。』

水野審議委員が以前持ち出して物議を醸した「中立的な政策金利水準」云々のロジックや、正式にそういうロジックにはなっているとは表明されてないけれども、まあ多分そういう論理展開なんだろうなあという理屈によりますと、「現在の政策金利水準は緩和的」→「政策金利水準の調整が必要」→「政策金利引上げ」というお話になると思うのですが、このロジックとはちと違うお話ですわな。

とは言っても、政策金利水準の調整が必要と言ってる人でも直ぐに利上げしろと言ってるわけではない(言うのなら利上げ提案してる筈)のですが、金融経済月報にもありますように、「マクロ的な需給ギャップが今後需要超過方向に向うので物価が上昇する」というのが先行きの見通しの正式版であることを考えると、少数意見が出てきましたなあという感じですな。

(追記:10月2日のドラめもんで指摘しましたが、その後の日経新聞インタビューを見ると、どうもこの慎重派は野田審議委員のようです)

○んなこたあない

まあとりあえずこの少数意見が目に付きまして、後はおまけみたいなお話ではございますけれども。

同じく当面の金融政策運営に関する検討云々という所でこんな話が。

『多くの委員は、7月の政策変更が総じて円滑に行われた背景として、3月に導入した「新たな金融政策運営の枠組み」が、市場との対話において有効に機能し、展望レポート等を通じて発信した日本銀行のメッセージが市場参加者に浸透していたことが挙げられるとの見方を示した。』

えーっと、あの「枠組み」がターゲットでも参照値でも何でもないということが市場に浸透したからなのではないかと存じますが・・・・確かに展望レポートの発信は機能しましたけど(-_-メ)。

まあ短期金融市場の機能回復がどうのこうのとか円キャリートレードがどうのこうのとかいう話も出てましたが、何かそんなに必死こいて話をする問題なのかはよく判らんですな。

短期市場の機能回復なんぞ金利が上昇して短期市場での運用調達の巧拙が収益に与える影響が大きくなれば機能は勝手に回復する(ただし法律や制度面でのインフラが整備されているかの注目は必要でしょうが)ので、政策金利を引き上げられるような経済状況になりますかって話の方が大事だと思います(要は本末転倒な話でしょってこと)。

で、円キャリートレードに関してはその影響がどうのこうのってのはあるのかも知れませんけれども、別にそれで政策判断を変えなきゃいけないという代物ではないと思うんですが。

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2006/09/20

○金融経済月報を前月と比較

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0609.htm(9月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0608.htm(8月)

・現状判断部分で住宅投資に文言追加

『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』から始まる景気の現状判断ですけれども、こちらで8月と変ったのは住宅投資に関する部分。

『住宅投資も、振れを伴いつつ緩やかに増加している。』(9月)
『住宅投資も緩やかに増加している。』(8月)

住宅投資関連の指標って正直真面目に見てない(不動産関連の話はどうも大本営発表の香りを感じることが多いんで)ので、この振れが上なのか下なのかよく判らんのですが。もしかしたら全文を読むとどっちなのか判るかも知れません。

・先行きに関しては全く変化なし

『先行きについても、景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。』から始まる先行き判断部分に関しては8月と文言が一言一句変らずです。「輸出も国内民間需要も増加するので生産も増加する」っていう毎度お馴染みの美しい話。

・物価に関しても全く同じ

まあ見事に同じ文言が並んでおります。

『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面は国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比も、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』

といういつものお話です。

・珍しく金融面を真面目に読んだのですが

変ってたのは銀行貸出。どうもこの部分の記述が変化するというのには反応しちゃいます。

『こうしたもとで、民間銀行貸出は増加している。』(9月)
『こうしたもとで、民間銀行貸出は増加幅が拡大している。』(8月)

何かこれも前向き評価なのかそうじゃないのかがよく判らんのですが、はてさてどっちなんでしょうか(とお前が聞くなと言われそうですが^^)。

ところで、今更気が付いたのですが、この基本的見解なんですが、数字で全角と半角を使っているのは何か意味があるんでしょうか?デザインの問題だとは思うのですが・・・(というあたくしもその時の気分で全角と半角が混在するので人の事は言えませんけど^^)

『マネーサプライの前年比は0%(0が全角)台となっている。』
『オーバーナイト物金利は0.25%(0.25が半角)前後で推移し、』

・総じて言えば

まあ引き続き判断維持という所なんでしょう。ということは強気継続と。

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2006/08/22

○デリバティブ市場がお好き?

毎度お馴染みの日銀レビュー
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j15.pdf

今回のお題は『わが国OIS(Overnight Index Swap)市場の現状』でございますが、ああそういえばそんな取引があったような無かったようなって言い出すのはあたくしがドメドメだからですかそうですか。

で、まあどういう取引ですかという詳しい話は上記レビューをご覧になると吉なのですが、まあだいたい1ヶ月間の翌日物レート(を複利運用した場合の利回り)と固定金利の交換という取引なのですが、まあレビューにもありますように本邦では取引はごく一部の参加者に限られています。

でね、取引が拡大しない理由についてこんな話してるんですが・・・

『その背景としては、@日本銀行によるゼロ金利政策導入(99/2月)から量的緩和政策解除(06/3月)に至るまで、翌日物レートが一時期を除き、概ね下限近辺で推移し、変動性が乏しかったこと、Aその下でターム物レートも非常に低水準で推移していたこと、が挙げられる。実際にOISを用いて金利変動リスクをヘッジするニーズや、裁定取引による利鞘稼得の機会が乏しかったため、当初参入を検討していた一部の本邦金融機関も、結局本格的な参入には至らなかったという経緯がある。』

まあそれもあるんですが、本邦の場合はインターバンクのネット資金過不足が大きく振れる(銀行券と財政の振れがでかい)ために短期市場における資金供給吸収のオペレーションが多様に存在する為に、金利リスクのヘッジというか資金ポジションのカバーにオペが「使える」状態であることが寄与してるんジャマイカと。

こちらのレポートによれば、何でも量的緩和解除が視野に入ってからは取引が拡大しているようですけど、そもそもコール市場を安定推移させるという方向(だからこそロンバートが0.4%ですし)で現状の運営が行われているのでして、コール市場の日々の振れが小さい安定した市場状況であればニーズがそんなに広がるのかなあって疑問が。と言うか、今後の課題としてお話があるのですが、そんなにOIS取引とやらが活発に動くような短期市場になって欲しいのかいなって気も(苦笑)。


まあそれは良いのですが、このレポートを拝読しておりまして、思わず「またか!」と突っ込みを入れてしまったのは4ページ目のこの部分。

『前述のように、OISなどの翌日物レートを取引対象とするデリバティブ商品は、翌日物レートについての予想を直接取引対象としているため、政策金利に対する市場見通しを観察するのに適している。』

この一節(というかその前の小見出しからですが)見た瞬間に「キター!」でございます(^^)。

『こうした点に着目し、欧米では、中央銀行やアナリストなどにより、これらのデリバティブ商品のレートが織り込む平均的な金利変更確率が推計され、モニタリング情報として重視されている。』

キターキターキター!ですけれども、ど〜してそうデリバティブ取引をモニタリングに使おうとするのかなあって思うんですけど。本邦の場合ですと、最終投資家といわれる人たちはその居場所によって少しずつ違いますけど、色々と運用に関する制約条件があって、そうホイホイとデリバティブ取引使えないし、ヘッジ目的での利用に関してもやってやれない事は無いですけど色々とややこしいのよこれが。

まあ海外の事情はよー知らんのですが、少なくとも本邦の場合は、ユーロ円金利先物取引に関してもTB/FBや資金取引をやっている人がヘッジとして認識しながら取引をするというケースはまず見受けられない(ヘッジと言って売買している人は本気で言ってるならそのうち退場確実、両方スペックの言い訳としてヘッジという呪文を持ち出しているだけです)状態でして、保有する短期国債やら資金ポジションの金利リスクを動かしたかったら日銀のオペを使えばよろし(まあそもそもそれすらしないで単純にポジションの上げ下げで対応するんでしょうが)というお話でございます。金先ですらその状態でOISが「現実に」資金ポジション(投資家も含めて)を持っている人たちの参加進むんかいなって感じですけど。

で、まあ確かに幾つもの限月がある先物(またはOTCフォワード)が流動性あって価格形成をしているって状態で、その市場から金融政策の先行きに関するモニタリングが出来るってのは実にこう美しい姿なんですが、そういうことはあまりねえって一々水をぶっかけて回るあたくしは無粋ですかそうですか。

暫く前(5月)に「金先市場のイールドカーブが市場での金融政策の先行きに関する見方をモニタリングするのに適しています」って趣旨のレポートが出てて、マーケットの一部で「な、なんだってー!(AA略)」と話題をさらっておりましたが、いやまあモニタリングするなら発行が山のようにあるFBの利回りでも見てればいいんジャマイカというあたくしはキャッシュ重視のローテクアナクロ人間ですかそうですか。

しかしまあモニタリング情報云々のところを見てたら「あんたも好きねえ」って苦笑を禁じ得ませんでした。いやはや。

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2006/08/21

○信用リスク内部格付けのお勉強

と申しましても、あたくしがお勉強している訳ではなく、例によって日本銀行様が主宰して勉強をしているようでして、こんなものが金曜に公表されていました。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/fsc0608d.pdf

お題は『内部格付制度に基づく信用リスク管理の更なる高度化に関する議論(2)──「信用リスク管理高度化勉強会」における議論の要約』というものでして、本文は11ページに及びます。

・・・・与信先のリスク管理という話になると個別案件レベルのお話しか知らないあたくしとしては、結局この貸出先は信用できるのかってのを地べた這いずり回ってウォッチしていくもんですなあというレベルしか知らないというお恥ずかしい次第でございますので、正直この要約を読んでもお経にしか読めませんですわな。日本振興銀行で中小零細企業への信用貸しを推進している(という振れ込みになっている)木村剛先生が融資個別案件でクレジットスコアリングモデル利用なんぞケシカランという「お前が言うな」話を暫く前にしていたなどというネタを申し上げましたが、信用リスク管理に関してもそういう話にならん事を希望いたしたいところです。

で、まあお経に関してはあたくしさっぱり判らないのですが、お題を拝見いたしますと、バーゼルU採用に向けて、内部格付制度に基づく信用リスク管理を行いましょうという趣旨で日銀が音頭とっておっぱじめたものなんですよね。で、最後のページを見るとメガバンク3グループのお方が勢揃い。

・・・とまあそういう状況を拝見すると非常にいやーな悪寒がしてくるのですが、これって内部格付制度がメガバンクで皆揃って同じモデルを使うとかいうような方向になって来るんジャマイカなんて思ってくるわけですよね。で、ある特定の制度が出来ると、必ず規制を回避する形で変なもの(必ずしも変かというとそうでもないですが)が出てくるわけで、(中小企業貸出目標が出たときにSPCが中小企業のカテゴリーに入るのを利用してSPC向けの貸出を増やした銀行がいたというお話はよく聞きましたが)こういうのを日本の貸出市場におけるシェアを全部足した時にエライコッチャになる筈のメガバンク3グループ全部で同じような管理をはじめるのは如何なものかと思いますけど。

いやまあこれはただの勉強会で実際は違う云々って話なのかもしれませんので、杞憂だと結構なのですが、ど〜せ内部格付制度を導入した場合にその制度の妥当性について審査をする訳ですから、1行が突出して違うもの出す訳にもいかないんじゃネーノというのが直感的に浮かんできますんで。


ま、こういうことにエネルギーを注ぐのが悪いとは言いませんが、銀行に関わる事件の報道やら又聞きでの話やらから思いまするのは、現場の与信管理、与信判断能力を引き上げる方が重要なんじゃネーノって思うんですけど、方向として現場の権限が縮小されて基幹店舗や本部に権限が集中する形になっているようですので、地べた這いずり回ってたもと金貸しの手先としてはどうもねえと思うアナクロなあたくしなのでした。


○ところで超雑談なのですが

日銀のウェブサイトにちょっと注文。そういえばだいぶ前にPDFで文書公表されると紙が勿体無い(HTMLよりもページあたりの文字数が少ないから)と悪態をつきましたら、読者様から「PDFを印刷する時には印刷メニューに1枚に複数ページを印刷する事ができますよ」と教えていただきまして重宝しておりますm(__)mがそれは兎も角。

たまたま『オペレーション(毎営業日更新)』のページに物申そうと思って手元のPCで場所を探そうと思ったのですが、慣れてないせいもあるんですが、探すのが非常に面倒でした。で、一つ利用者として提案なんですが、日々公表のデータ(コールレートとかオペレーションとか当座預金増減要因とか)へのリンクページを作っていただくと、そこをブックマークすればページに飛ぶ→前のページに戻るで各種データを参照できるので便利なんですけど如何でしょうか。

で、別の話ですが、その『オペレーション(毎営業日更新)』のページなんですが(http://www3.boj.or.jp/market/jp/menu_o.htm)、ここの落札結果発表のうち、落札結果の足切りレートの刻みが前のままになっているのって直らないんでしょうか?まあそれをすると平均落札レートも桁揃えるって話になるのでしたら仕方ないのですが、オペ応札刻みが0.01%の資金オペの足切りレートの表示が相変わらず「0.250%」と応札が物理的に出来ない桁まであるのも何か妙な気がするんですが。

などということはメールで日銀に送りなさいって言われそうですが(笑)。

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2006/08/18

お題「金融政策決定会合議事要旨続き」

昨日の続きから。

○利上げの理屈

『当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の最初の部分が利上げの理屈です。まあ政策委員の講演や記者会見などでも触れられていますが、改めて読んでみるのも宜しいかと。

まず全員が一致していることは何かと申しますと・・・

『委員は、経済・物価情勢が4月の展望レポートで示したシナリオに沿って着実に改善する中、金融政策面からの刺激効果は次第に強まってきており、今後ともゼロ金利を継続すれば、結果的に、将来、経済・物価が大きく変動する可能性があるとの認識を共有した。』

『こうしたもとで、委員は、今後とも経済・物価が望ましい姿で推移していくためには、ここで政策金利の調整を行うことが適当であり、このことは、長い目でみて物価の安定と持続的な成長につながっていくとの考え方で一致した。』

ということでして、これが利上げをする理屈でございます。

後のほうで市場が利上げ織り込んでるって話が出てきますが、実際問題としては7月時点で短期市場金利は利上げ織り込みモードでして、3か月FB利回りなんぞは12日の入札では0.4%になっていた(ちなみに昨日は0.36%です)訳でして、この時点で実質的にゼロ金利解除状態の金利形成になっていた(まあその原因が7月解除の見方なんでニワトリと卵みたいな話ですけど)のですけどね。

まあそんな言いがかりは兎も角(笑)、金融政策面からの刺激効果を金利ルートからと考えますと、実際問題として企業の資金コストはねてくる金利はオーバーナイト金利じゃなくてターム物金利であって、CP発行利回りやらTIBORレートということになる筈ですが、ご案内のように利上げの後で連続利上げを否定して、ついでに株価や経済指標(のうち生産以外)が少々怪しい動きをした事も影響してるんでしょうが、ターム物の金利は低下しておりますわな。

となりますと、このゼロ金利継続の景気刺激効果強すぎリスクというロジックで考えた場合は、利上げしたあとに打ち止め感出してターム物金利を下げてしまうと何の事はないリスク回避になってませんがって話になるように思えるのですけど。(とはいえ、銀行貸出金利は別に全部が全部市場金利連動だけじゃないので、政策金利をいじってくれないと貸出金利を引き上げる言い訳がしにくいので政策金利引上げしてくれないと、なんちゅうのも言えそうでして、まあこの辺りの話は突っ込みだすとワケワカメ^^)

先日水野審議委員が講演で短期市場金利について金利の先高感が自然に発生して緩やかにイールドカーブが立つのが望ましいのではないかという考察をしていましたが、まあ景気過熱リスクへの対応って意味なら確かにそりゃそうですわな(市場金利の形成状況に意見するのは政策委員として如何なものかとは思いますが)。


複数の委員が指摘しているお話。

『また、別の複数の委員は、経済が正常に戻りつつある過程で、異例のゼロ金利を続ける必要性は乏しく、金利体系が自然なものになっていくことは、中長期的な観点からみて物価安定のもとでの持続的な成長を支援すると指摘した。』

また出たな「異例のゼロ金利」。

『この間、何人かの委員は、市場では7月のゼロ金利解除を織り込んでおり、本会合で0 .2 5 % の利上げを決定したとしても、市場が動揺する可能性は低いと付け加えた。』

つーか地均しをしてたのは君らですがな。


ひとりの委員が指摘しているお話。

『一人の委員は、実質成長率のトレンドと実質コールレートとの差をみると足もと緩和度合いは徐々に強まっていると指摘した。ある委員は、現在、投資の行き過ぎが生じているわけではないが、長い目でみると、部門間で偏った投資が行われるリスクについてはよくみていく必要があると述べた。』

『ある委員は、今回金利水準の調整を行うことは、足もとの過熱を抑え込むといったことではなくて、むしろ長い目でみて経済・物価の振幅を小さくすることにより、日本経済の成長を支えるための措置と位置付けられると述べた。』

この最後の理屈も何というか判ったようで判らんお話ですよね。中立金利に向けて予防的に金利調整を行っているようにしか思えんのですが、そういう訳では無いと。まああまり何でもクリアカットにしちゃうのも金融政策としてどうなのよ(グリーンスパン議長の運営なんぞまさに「グリーンスパン様が按配良くやって置きますから皆さんご安心を」っていう感じでしたしねえ)というのも有りますから、全部が全部クリアに説明できないのかもしれませんが。


○補完貸付金利に関して

本石町日記さんの所で野田審議委員が0.5%主張ネタのエントリーがございましたのでそちらもご参考になると宜しいかと。

『0 .5 % の適用金利を支持する委員は、現在コールレートとのスプレッドが狭過ぎる結果、最近では補完貸付が大量に利用されているが、補完貸付の適用金利をある程度高めに設定した方が市場における裁定取引を活発化させ、むしろ短期金融市場の機能の回復を促進する効果が期待できる、と指摘した。』

実際問題として短期金融市場の機能回復がどうのこうのって話になりますと、色々と申し上げたいことはございまして、正直言って短期市場の参加者層が増えるために金利がどうこうって話になるなら0.25%如きでそんなに顕著に変りゃあせんでしょう。まあ某経済新聞なんぞは「金利上昇でタンス預金が動き出す」とか煽りネタを時々だしてますけど、そもそもタンス預金するような性質の資金にそんな細かい金利感応性はないと思うんですけど(タンス預金が投信を買うなどという話に至っては「何の理由でタンス預金になってるのかもうちょっと考えて見ましょう」と小一時間ですな)。

時々申し上げているように、例えばGCレポ取引の資金放出者を増やそうとすると色々な制度やら体制上のネックがある訳でして、それらのネックを取り外そうってインセンティブが涌く為の金利って話になったら0.25%ではとてもとてもと思うのですが(無担保コールのようにまあ制度や事務面は対応できてるものなら資金運用者はそれなりに増えるでしょうが)。

『このうち一人の委員は、市場に安心感を与える観点からは、補完貸付の適用金利の引上げ幅を小幅に止めることではなく、今後の金融政策運営に関する情報発信を適切に行うことで対応すべきであると付け加えた。』

これは残念ながらちょっと違うと思う。確かに利上げ直前の時に申し上げた気がしますが、利上げ前は補完貸付金利くらいまでGCレポ金利の水準が上るなどと吹聴していた(あたくしは「んなアフォなことはねえ」って申してましたが)関係者も多うございまして、実際問題としては0.4でも0.5でも同じなんですけど、やはり短期市場が利上げ後あっさり落ち着くのに一定の効果があったと評価したいですな。

さて、0.4%の意見はというと。

『一方、多くの委員は、スプレッドの拡大は、長い目でみれば市場機能の観点から必要であるとしつつ、量的緩和政策の解除以降、市場機能は徐々に回復してきているものの、なお道半ばであり、現時点では、コールレートの安定的なコントロールに最大限配慮することが適当であるとして、0.4%を支持した。』

まあそれは良いのですが、政策金利引上げと関係なく補完貸付金利だけ引き上げるという事を記者会見でいきなり否定してしまったのはどうだったんでしょうかねえと思いました。

以前どこぞのストラテジスト様だかが「市場追随でロンバート引上げ」論を出した時にもうアホか馬鹿かとという勢いで文句つけましたが、あれは「市場追随で上げる」というのがおかしいでしょって話でして、別に市場追随でも何でも無いタイミングでロンバートのスプレッドを拡大させるのはアリエールな選択肢ではないかと。

でね、そもそも0.4%にした理由が上記にあるように「コールレートの安定的なコントロールに最大限配慮」であれば、現在のように足元金利も落ち着き、GCレポレートもまあ概ね0.3%少々のあたりで推移(時々上ったり下がったりしますが)して安定しているという状態になった今はロンバートをさらっと引き上げても良いと思うんですけどね。ただまあ「利上げ地均し」とか報道されそうなので難しいのかもしれないですけど。

ということで、以前も申し上げましたが、ロンバート金利だけ動かすという選択肢をいきなり全否定してしまったこの時の総裁記者会見はどうだったのかなあとは思います。ま、あの時にロンバート金利だけ動かすこともあるとか言ったら変な思惑を招いた可能性もあるのでその辺の匙加減は非常にムツカシイところではありますが。

#まあそんなところで。

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2006/08/17

お題「金融政策決定会合議事要旨(7月13、14日)」

何かモーサテが出席者全員物凄い勢いで株式市場に大楽観モードになってるんですけど。何じゃらほい。

昨日はFB入札のセカンダリーが何かぱっとしませんなあというようなお話や、また先物主導で上ってるけど株高をあまり馬鹿にしない方が良いのではとか、まー雑感はありますけど、当然の如く本日は決定会合議事要旨。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060714.pdf

表紙+本文で16ページなんですが、実質の討議に関する部分は9ページとなっております。で、委員会の検討の概要に関する部分を読んでも割とあっさり味の印象。


○金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

まあ大体はここもとの日銀政策委員からの講演やら会見、金融経済月報で示されているお話から大差ないのですが。

・個人消費

最近どうもここの指標がパッと致しませんが、ここに関しては一部の委員から色々と指摘が出ておりました。

『何人かの委員は、サービス関連消費は増加を続けている一方で、小売関連指標やマインド指標には弱めの動きもみられるとした上で、こうした動きには天候不順といった一時的要因も影響しているとみられるが、消費者マインドの動向には注意していく必要があると述べた。』

『このうち一人の委員は、足もとの消費動向には株安も影響しているとみられると付け加えた。』

『この間、ある委員は、景気回復が所得層によって異なる影響を与えている可能性があり、その場合、好調な企業業績から個人消費への波及効果が想定比弱いかもしれないと指摘した。』

最後の指摘に関してはいわゆる「ダム論」に対してそれはどうなのよという指摘でして、なるほどと思いましたですよ。


・金融経済月報の表現変更に関して

『経済の活動水準について、委員は、需給ギャップの推計値が供給超過状態から需要超過状態に入ってきているとみられるほか、6月短観でも企業の雇用人員や設備に関する不足感がさらに強まっていく見通しにあることを踏まえると、景気の現状評価に関する表現については、「着実に回復を続けている」から「緩やかに拡大している」に変更することが適当であるとの見方を共有した。』

まあここまでは月報の中にも書いてありましたわな。

『委員は、今回の景気の現状評価に関する表現の変更は、経済の活動水準の変化に応じたものであり、景気の足取りの強さに関する判断を上方修正したものではないとの認識もあわせて確認した。』

ここのところが何ともまあという感じですが、景気拡大が加速しているという意味ではない→政策金利変更後の早期追加利上げ観測を抑えるっていう意図なんでしょうなあと存じます。「活動水準の変化」ちゅうのは「需給ギャップが解消されました」って話に対応する訳ですから、それは景気判断的に言えば判断上方修正以外の何物でも無いと思うんですけど。

ということでして、わざわざそういう話になっているという事は、折角の大願成就ゼロ金利解除後に追加利上げ観測が早々に出て関係各所からいちゃもんがつく事に対して相当神経を使ってたんでしょうなあというお話になるのかと存じます。


○順序変りますが財務省からの注文

昨日はこの議事要旨公開にあたって「財務省からの発言」部分が結構話題になってましたし、今朝のモーサテでもそこのところが強調されていました。

『また、市場の安定の確保も重要である。具体的には、市場は憶測で動いて不安定になることもあるので、金融政策の先行きの考え方や道筋について、丁寧に説明して頂く必要があり、特に、今後の利上げが連続的なものとなるわけではないというメッセージをきちんと発信して頂きたいと考えている。』

ここの部分がモーサテでも報道されてまして、番組様の講釈によるとこの財務省の発言を受けて福井総裁が連続利上げを否定したような言い方になってましたが、先ほどご紹介した部分にあるように、政策委員会としてはそもそも早期の追加利上げ観測が出てこないように注意していた節が見受けられますし、政策委員の皆さんの発言なども概ねそんな感じで動いてますわな。ということで、財務省からの発言としてその次に出てくるものはこうなったのですな。

『本日の議論および先程の議案に照らせば、これらの点について、日本銀行にも認識を共有して頂けるものと考えるので、ゼロ金利解除のタイミングについては、内外の経済状況および市場の動向を慎重に見極めて頂いた上で、日本銀行の判断に委ねたいと思う。』

まあそういう事ですので、「財務省が追加利上げを牽制した結果、連続利上げを否定する総裁発言に繋がった」というような解釈は少々ピントがずれているのではないかと思うのですがどうでしょう?

#ただまあ「連続的な利上げ」の「連続的」とは何ぞやという点に関して財務省と日銀は同床異夢の香りが致しますが(苦笑)。


ちなみに、長期国債買入に関しても財務省から発言がありまして・・・

『加えて、長期金利を含めた金利全般に目配りして頂き、長期国債の買入れ額については、現状を維持することが必要であると考えている。』

残念ながら日銀の理屈は中長期国債買入は長期金利コントロールではございません(大体からして今や2年切った債券の絶好の投げ場と化してますし)ので、「はあはあそうですか」で終了されるかと存じます。

まあ調節のテクニカルな話だから要望するのはちと無理がありますが、短国買入が減ると短期国債の需給が良くないままで推移しやすいので、ターム物金利が下がりにくくなるわ、FBの消化が重くなるわという話がある訳で、中長期国債買入は今のところ減らす理由も見当たらないですから、短期国債買入の維持を要望した方が良かったんジャマイカ?って半分くらいギャグネタではございますが。


○当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

どうも最近寝坊が多くて誠に遺憾なあたくしなのですが、実は今朝も目覚まし警戒網を突破して最後の網に掛かったもんで(苦笑)、肝心のここに来た時点で時間切れ。続きは明日ですすいませんすいません。

今後の金融政策運営についてって所を引用しておきます。

『その上で、何人かの委員は、日本銀行が利上げを急いでいるという印象を与えないようにすることが大切であると述べた。』

『このうち一人の委員は、米国のような連続的な利上げが行われると受け止められることのないようにする必要があると述べた。』

米国のような連続的な利上げとは決定会合の度に利上げをするというお話ですわな。そりゃ展望レポートなどの趣旨に反するから元々あると誰も思って無い筈でして、この「米国のような」ってのは一種トリックの入った表現ですわな。勝手に想像するに財務省さまにおかれましては連続利上げというのを4半期ベースでの利上げとか、利上げの次のアクションは利上げですがってのを強調するとか、まあそういうようなことをイメージして「そんな事するんじゃねえゴルァ!」と考えてるかと存じますんで、その妄想が正しければやっぱ同床異夢ですわなあと思う次第でして。

『ある委員は、この機会に、今後の金利水準の調整は徐々に行うことをさらに明確に説明することは重要であると指摘した。ただ、同時にそれは「経済・物価情勢が展望レポートの見通しに沿って展開していくと見込まれるのであれば」という条件付きであることも説明する必要があると付け加えた。』

これが景気の上ブレか下ブレかどっちを意識してるのかイマイチ判らん。

『また、複数の委員は、今後の政策運営に関する情報発信については、過度に先行きの政策運営を縛ることにならないように、あくまで展望レポートで示した考え方を基本とすべきであると述べた。』

というのを読むと、どうも「連続的利上げなし」が年内利上げなしと決め打ちする訳には行きませんなあって話になるんでしょうな。ただまあ結局は経済情勢次第だと思うんですけどね。

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2006/08/14

○金融経済月報にも変更無し

金融政策決定会合で何の変更もなくついでに全会一致というのはまあ大方の予想通り。8月分の金融経済月報基本的見解も公表されておりましたが・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0608.htm(8月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0607.htm(7月)

内容が見事に変更無しなのですが、それで終了してしまうと今日の書き物が終了してしまうので(おい)、内容に関して一応ご紹介をば。

・現状認識

『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』(7月と同じ)

項目別の話に関しては、7月に記述のあった『業況感も良好な水準で推移する中』『この間、マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し〜』という部分が外れておりますが、他の部分は同じ記述になっております。公共投資以外は全て上向きベクトルという相変わらず強気なお話。

・先行き見通し

『先行きについても、景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。』(7月と同じ)

で、まあ項目別の話がこれまた7月と見事に一言一句変らずの巻。

『すなわち、輸出は、海外経済の拡大を背景に、増加を続けていくとみられる。また、国内民間需要も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、引き続き増加していく可能性が高い。こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。この間、公共投資は、減少基調を続けると考えられる。』(7月とまるっきり同じ)

えーっとですな、海外経済が引き続き拡大するそうでございますし、企業収益の高水準さから雇用者所得へと経済拡大が流れるといういわゆる「ダム論」的な見通しは、見事なまでに判断持続しております。何か相変わらず強気ですなあと言った所です。

・物価に関して

これまた前月と同じな訳でして、つい全部引用に走るのでした。

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、上昇を続けている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラス基調で推移している。』

『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面は国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比も、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』

金融面に関しても同じなのですが、ここは毎度の如く省略。

・・・・そんなわけでして、日銀の景況感は不動の信念の如く強気のままの状態が継続しているということでございますわな。「海外経済の拡大」や「設備投資以外の国内需要(要するに個人消費)の増加」と言った辺りに関してはどうもこう「ええー?」って感が拭えないのでございますけど。。。。。。

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2006/08/01

お題「日銀の金融市場レポート(の追録)」

金融市場局が出している金融市場レポートですが、これは毎度中々面白く読みやすいのでお勧めというわけで本日はこちらから少々。中は皆さん読んでください(おい

本日お勧めは金融市場レポートの追録版でして、お題は「量的緩和政策解除後の短期金融市場の動向」→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0607b.pdf

日銀のサイトをご覧になると判りますが、新着情報としてアップされたのが追録の方が先というのは思わず微笑と言った所ですが、まあこっちをまず読めって事なんでしょう。

○まずは最初にまとめがあります

1ページ目にまとめがございます。現状分析に関してですが、前回金融市場レポートが出たときの追録で「量的緩和政策解除後の短期金融市場の課題」ってのが出てたときにはレポ市場の問題点(=資金出し手がやたら優位の世界という問題というか欠陥)に関してちと切り込み甘いようなって突っ込みをした記憶がございますが、今回はオペ先など約150社にアンケート調査をしたりとポイントを抑えた内容になっておりますな。9月くらいになったらこの続きの調査をするということでフォローアップすると面白そうですね。

んでまあそのまとめ部分なんですが、皆さんご存知のようにレポ市場がどうなっていくかが重要だっちゅうお話になりますわな。ポイントとして箇条書きに上げられている中で、この辺りに関してはご案内の通り。

『量的緩和政策解除後の翌日物金利の動きをみても、日銀当座預金残高が相当程度減少した5 月以降、レポレートがいち早く上昇し、これが裁定を通じて円転レートや無担保コールレートなどに波及する形となった。ただ、レポレートが無担保コールレートなどに比べて高止まりする傾向が続くなど、レポ市場と無担保コール市場等との間の資金の流れ・裁定が、必ずしも円滑ではない面も窺われた。』

ここで債券市場の話を入れるとややこしくなるので入れなかったんだと思うのですが・・・・TB/FB市場で4月にアフォのようなキャッシュ潰し行為が行われ(何せ3か月FB0.02%だの2か月FB100円テイクーンだの)てその反動が5月大型連休直前から爆発したというお話とか、突如浮上した6月利上げ説によるFBレートの上昇から「FB購入/レポやオペでの調達」というトレードによるオペ金利、レポレートの上昇とかございましたな。それから円転レートに関しては「円転が回らなくなったからレポに調達が流れてレポが上昇した」と言ってた人もいましたな。まあそれはともかく。

『レポ市場と無担保コール市場等との間の資金の流れ・裁定が、必ずしも円滑ではない』・・・つーかだいぶ円滑じゃないのですが、何となく暗黙の了解でコール+5bpでGCレポが回っているかと存じます。そういう意味では裁定してるっちゃあ裁定してますな。インチキの香りがする「裁定」ですが(苦笑)。

で、今後の課題としては・・・・

『その際、市場間の資金の流れを一層円滑にし、より安定的な金利形成を実現していく観点からは、@クレジット・ラインの適切な設定・拡充などを通じて無担保取引を円滑化していくこと、Aより多くの市場参加者が有担保での取引体制を整えていくとともに、即日での取引を含め、レポや有担保コールといった有担保市場の流動性、効率性を高めていくことが、重要な課題となっているように思われる。』

ということで、歴史的に無担保市場の規模がでかい状態が長かったので有担市場をやっていくのに制度上のネックがございまして、今後は有担保市場の深みというか厚みを拡充する事が必要ですわなという話ですな。

でね、取引体制を整えていくという点ですが、「金利が上昇して裁定機会が出来れば市場参加者がクレジットラインとか設定して体制作るでしょう」っていうのも正論ではあるのですが、制度上のネックに関しては個別参加者が手当てすれば良いってもんでもありません。で、本来的にはそんなことまで日銀が口出す話じゃないんですが、まあ日銀も一枚噛んでいただくことになるんでしょうなあ、というかお願いします(苦笑)。


○レポ市場に関して

本レポートではレポ市場に関してページを割いて(10ページ中4ページ)説明しておりますが、内容は非常に良くできていると思います。市場の問題点として、まあ皆様もご存知のようにGCレポ市場での資金の出し手の広がりの乏しさについて指摘がございます。6ページ目のあたり。

『後述するように、地銀や機関投資家などは、レポでの取引体制を構築していない先も少なくないとされており、出し手が少ない一因となっている。また、出し手の約6 割を占める信託は、有価証券信託で受託した国債をSCで証券などに貸し出し、その際に受け入れた現金担保を今度はGCで当該証券等に対して再運用する事例が多い。(中間割愛)信託のGCにおける資金放出はSCとセットで約定されることが多く、相手先との間では、実態として資金的にニュートラルな債券交換に近い取引となっている。』

ということはどういう事かと申しますと、残りの資金の出し手でありますところの都市銀行(シェア約3割)が実質的な資金の出し手になってるということでございますな。信託は在庫調整(証券から見ればショートセールしたものの穴埋めと、ロングで余っているものの在庫ファイナンスがセットになっている)として機能というお話。そうなりますと・・・・

『(信託GCレポの)レート形成も、SCレポレートとGCレポレートのスプレッドに重点が置かれ、GCレポレートは市場実勢レートを受けて決められることが少なくないようである。こうしたこともあって、市場参加者の間では、資金の出し手の少なさが意識されやすくなっている可能性がある。』

ということでちょっと資金需給が締まると都銀がレート決め放題となっているという事を穏やかな表現で示しておりますという事ですわな(^^)。

で、まあこの辺りの話は紹介してると全文引用になってしまうので、途中は全部端折りまして(こら)、9ページ目に良い事が書いてあります。

『レポ市場におけるより円滑なレート形成を図っていく観点からは、レポ市場と無担保コールなど他の翌日物市場との間の裁定を働きやすくしていくことが必要と考えられる。そのためには、まず、より多くの市場参加者、とくに資金の出し手がレポなど有担保での取引体制を整え、有担保市場の厚みを増していくことが重要である。』

投信と生保の短期資金がレポ運用するようになると相当厚みが広がると思いますが、制度上のネックや、事務負担に信託銀行が対応できないといった問題があるようでして、まあこの辺りをどうにかしないといかんっちゅう所は相変わらずのようですな。

『また、即日での運用を指向する出し手の存在や取り手サイドのクレジット・ラインの制約などを前提にすると、「先日付・有担保」が中心のレポ市場と「即日・無担保」が中心の無担保コール市場の間を橋渡しする「即日・有担保」市場の拡大、例えばT+0レポ取引の拡大や有担保コール市場の活性化などが一つの鍵となってくる可能性がある。』

(紹介しませんでしたが)有担保コール市場の所であった担保掛目の問題をどうにかしないと中々ムツカシイところもあるかもしれません。今後の課題ですわな。

#本日は寝坊したのでこんなところで恐縮ですが、是非日銀のサイトへ行ってお読み下さいませ。

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2006/07/26

○量的緩和政策の実証研究まとめペーパー

以前URLだけ置いたものですが、忘れる前に少々。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06j14.htm

相変わらず本文(上記URL先に本文のPDFファイルへのリンクがあります)は斜め読みしかしてないのですが、上記URLが本文のサマリーという位置づけになってますんで、まあそちらでも。

『本稿では、日本銀行(以下、日銀)が2001年3月から2006年3月までの約5年間実施した、いわゆる量的緩和政策の効果に関する実証研究結果をサーベイした。量的緩和政策の効果の実証結果の蓄積は十分とは言えないが、現時点(2006年6月)で利用可能な範囲で、量的緩和政策が日本経済にもたらした効果を定量的に検証した論文を包括的に整理することを目的としている。』

ということで、実証研究の包括的な整理ということですし、そもそも「日本銀行の公式見解を示すものではありません」なので、まあこれは量的緩和政策の日銀レビューというのかどうかは微妙でございますが、忘却の彼方に沈む前に読みますね。


・量的緩和政策の緩和効果は時間軸によるものが最大と

『はじめに、量的緩和政策の効果波及メカニズムについて採り上げた。すなわち、量的緩和政策の効果を操作手段別に「量的緩和政策継続のコミットメントが将来の短期金利の予想経路に働きかける効果」、「日銀当座預金供給増による日銀のバランスシート拡大の効果」、「長期国債オペ増額による日銀の資産構成変化の効果」の3つに分類したうえで、それぞれが具体的にどのような波及チャネルを通じてどの程度効果がみられたのかについて、実証分析結果を検討した。』

ということで、時間軸効果(に類するもの)、マネタリーベース拡大効果、長期国債買入増額おのおのの波及効果はどないなんよってことについて色々な実証分析の整理をしている(のは本文中)のですが、

『ここまでの実証研究をみる限り、量的緩和政策から抽出された最も大きな緩和効果は、将来にわたる予想短期金利の経路に働きかけるチャネルを通じたものであった。』

ということでして、名目金利ゼロ制約があるときには・・・

『ゼロ金利制約を意識した金融政策運営を行う際に、政策効果を発現させるうえで中央銀行から民間に対する金融政策に関する情報発信が重要であることが示唆される。』

ということだそうですが、長期国債買入増額って福井総裁になってからはやってなくて、その後は物凄い勢いで日銀当座預金残高を増加させてるということで、やってる時期が微妙に違うというのはどういう分析になるのかやや興味がある(本文と本文の参考文献を読むと色々あると思うんですが、そこまで根性が入ってないっす)ところではございます。


・需要・物価への直接効果よりは金融環境の緩和効果だそうで

『以上を踏まえ、量的緩和政策が、様々な波及チャネルを通じて、全体として日本経済にマクロ的に及ぼした効果を分析した研究を採り上げた。総じて緩和的な金融環境を作り出し、企業の回復をサポートしたとの見方が多い。』

ということで、当座預金残高目標なお書き修正の前あたりから審議委員の方々が言ってるお話を補強する内容っぽいですな。

『まず、波及チャネルは特定されていないが、量的緩和政策によって、不良債権問題を抱えていた金融機関が市場から調達する資金にかかるプレミアムが、格付け格差を殆ど反映しないところまで縮小したことが実証されている。こうした結果を前提とすると、量的緩和政策は金融機関の資金繰り不安を回避することによって金融市場の安定や緩和的な金融環境を維持し、先行きの資金調達に対する企業の不安を通じた景気・物価のさらなる悪化を回避する効果があったと解釈できる。』

プルーデンス的説明の香りがしますが・・・・

『一方、総需要・物価への直接的な押し上げ効果は限定的との結果が多かった。中でも、マネタリーベース増加の効果は、金融政策のレジームがゼロ金利制約下で変化した点まで踏まえて実証すると、検出されないか、あってもゼロ金利制約のない時期よりも小さいとの結果であった。』

『また、量的緩和政策によって、総じてみれば無担保コール・レート・オーバーナイト物を単にゼロ%にする以上の金融緩和効果が実現したことが示されているが、それでも総需要・物価の押し上げ効果は限定的との結果であった。この理由として、ゼロ金利制約以外に、資産価格の大幅な下落によって企業および金融機関の自己資本が毀損した結果、金融緩和に対する企業、金融機関の反応が大きく低下したという分析結果や解釈が示されることが多い。』


まあいずれまた別の形で量的緩和政策のレビューが出るとは思うのですけれども、現状はこんな感じのレビューになっているということなんでしょうね。

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2006/07/24

○オペ刻み変更来ました

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/mok0607a.htm

昨日の引け後にしらっと公表されていたのですが、量的緩和政策下でオペの刻み幅を0.001%にしていた(理由:0.01%刻みだと最低金利が0.01%未満に下がらない)のを元に戻したという措置。まあさすがにベースレートが0.25%になってからはコールの呼び値も概ね0.01%刻みになってますので、実態に即した変更でございます。

ということで、政策的に何か意味のあるお話ではなくて、量的緩和政策の下で行われていた緊急避難措置の解消です。今年4月に財務省がTB、FBの入札の応札刻み幅を広げた(らその後金利が低下したのは微苦笑を禁じ得なかったのですがそれは兎も角)時に日銀がオペ刻み幅元に戻すという誤報を1面で打っていた新聞がございましたが(笑)、結局利上げ後に様子を見てから刻み幅変更というまあ当然の形になりました。こうしないと政策的意図がどうのこうのとか勘違い講釈をする人が現れますからね。

#売買系のオペは元々刻み幅が0.001%ですので変更ないです。
#なぜか金先が引け後に売られていたのは気になりますが

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2006/07/21

お題「金融政策決定会合議事要旨(6月14、15日)」

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060615.pdf

○PDF形式より従来のHTMLの方が・・・・

いきなり内容と関係ない話で恐縮ですが。

上記URLにありますように、議事要旨の公表形式が今回PDFになっています。最近記者会見とかもPDFになったりしてる場合があるのですが、従来のHTML形式と比較すると、

(1)ダウンロードしないといけないから手間とダウンロードの時間が増える
(2)ページ当たりの字数が少なくなるので紙に打ち出したときに余計に枚数が掛かる
(3)2と同じ理由で今までよりも読むのに手間が掛かる(HTMLだとスクロールすれば読めるんで一覧性がある)

ちゅうことで正直読み難いんですけど勘弁していただけないでしょうか。慣れの問題もあるんですけど、日銀のWebサイトに関してはリニューアルして改悪になったと思います。いやまあ努力というか工夫したというのは判るんですが、以前の方が調べ物するのも便利でして、変に凝った作りにして却って不便になりましたな。

話がどんどん逸れますが(笑)、日銀のサイトが新しくなってからは、必要な情報に行き着くためにトップページから辿る階層が多くなってます(よって毎日見る所を全部ブックマークしないと面倒という状況になってます。以前はそんな事無かったんですが)し、それ以前の問題として、サイトリニューアルで過去のドキュメントのリンク先を変えてしまってるので、あたくしの過去の駄文とかでもリンク切れになってる(リンク直す気力が涌かない・・・)のも勘弁して欲しいのですが。

もっとどうでも良い話になりますと、HTML形式で公表されている会見要旨をWordなどに落とす場合(IEの場合ですが)「全て選択」で本文だけ選べた(フレーム形式だったんで)んですが、フレーム形式じゃなくなった為に「全て選択」すると余計な部分まで選択されるので一々範囲選択しないといけなくなったのもまた面倒なお話でして(苦笑)。

と、日銀のサイトリニューアルに散々悪態書いてますが、正直前のサイトの方があたくし的には使いやすかったんですけど何とかなりませんですかねえ。(と勝手な言い草ですが^^)


○株価の下落に対する評価

本文6ページ(表紙で1ページ使ってますので注意)『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『2.金融面の動向』で株価下落についての議論が。

『株価の下落について、多くの委員は、程度の差はあるが、主要先進国、新興市場諸国に共通して見られており、基本的には、昨年後半以降の大幅な上昇に対する調整が進んでいるとの認識を示した。複数の委員は、非鉄など国際商品市況でも同様の傾向があると付け加えた。多くの委員は、各国で金融政策の転換が行われてきた中で、投資家のリスク・アペタイトが後退していると述べた。』

アペタイトってappetiteのことですかな。別に横文字使わんでも良いと思うんですがまあそれはそれとして、その前段にありますが、株価下落(この会合の時点では13日に福井総裁様のファンド出資問題やら新興国株大下落やらで大下げの14218円なんぞやってましたが)は調整の過程だそうでございますな。

『また、多くの委員は、特に最近の動向について、米国経済で、インフレ懸念や景気減速懸念などが、従来よりも強く意識されるようになっていることも影響していると指摘した。』

景気減速に言及してますが、インフレ懸念にも言及。まあ確かに米国に関してはインフレが懸念される所ではありますけど。

『もっとも、このうち何人かの委員は、これまでのところ、日本を含め、各国経済のファンダメンタルズには大きな変化は生じていないので、株価の下落を実体経済に関する何らかの変調を示すものとまで見る必要はないとの見方を示した。』

平均株価14000円接近でも変調を示すものではないそうです。

『株価の動向が経済の先行きに与える影響について、何人かの委員は、調整が長引いたり、調整の幅が大きいと、マインド面などを通じて経済に悪影響を与えかねないとの見方を示した。』

4月に日経平均17500円とかトピ1780とかやってたのがこの決定会合時点では13日ベースで14200円(18%下げ)とか1470とか(17%下げ)とかやってますが調整の幅は大きくないということですね。ほうほうなるほどなるほど。

『こうした議論を経て、委員は、国際金融資本市場の動向を、その実体経済に与える影響を含めて注視していくことで一致した。』

ここも「国内株式市場動向」じゃないところがあたくしには引っ掛かるのでございますが。結局国内株式市況は心配ないぜというように読めてしまうあたくしは頭の中が「政策委員会は利上げバイアスが掛かっている」のがデフォになっているからそんな読み方になってしまうんでしょうかねえ??

ま、上ってる時はバブル懸念みたいな話もちらほらあった(確かに日本の新興市場の値付けは如何なものかというのは有ったけど)訳で、下がっても動じず(本当に動じて無いかは知らんが、ここだけ見てると全然動じて無さそう)というのはまあ態度が一貫していると言えば一貫してますかな。

そんな訳で、ここを見てると株価が現在(15000ちょっと割れ)くらいの水準であっても平気で次回の利上げを行いそうな悪寒がするのですけど・・・それで大丈夫かなあ??


○6月時点で利上げ慎重派はひとりと見えますが

7ページ目『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』。

『大方の委員は、現在までの経済・物価情勢は、展望レポートの見通しに概ね沿って展開しているが、世界的な金融資本市場や米国経済の動向などを含め、さらに情勢を見極める必要があると述べた。』

ということではございますが、慎重派のコメントはどうもお一人のようでして、まあ中原眞さんであることは間違いないかと存じます。気のせいか外部の審議委員の皆様退任直前になると大勢意見から離れているケースが目立つんですが、このインプリケーションは・・・(苦笑)。

『このうち、ひとりの委員は、足もとにおいて景気や物価が上振れるリスクが喫緊のものとなっている訳ではないので、慎重に情勢を見極めていく時間的余裕はまだあると指摘した。』

禿げ上がるほど同意ですが、これに対してもう利上げできますよウェーッハッハッハという強硬派が少なくとも2名おいでな事が読み取れます。

『この間、ある委員は、短期金融市場で安定的な金利形成が行われるか見守る必要があるほか、市場にサプライズとならないように金融政策運営を行う必要があるため、今回は現状維持とするのが適当であるが、経済のファンダメンタルズの面では金利を引き上げられる条件はすでに備わっていると述べた。』

この「市場にサプライズとならないように」ってのが地均し路線に繋がるのが毎度ながら如何なものかと存じますが、経済の条件で金利引上げできるんなら何故利上げ提案をしないんでしょうかねえ。市場がどうのこうのというのは金融政策判断に対してそこまで優先されることなのかしらん?

『これとは別の委員は、実質成長率のトレンドと実質短期金利の乖離はさらに拡大しており、金融緩和の度合いが強まっているため、政策対応を適切なタイミングで行う必要があると述べた。』

実質短期金利とはどういう計算してるのか浅学非才の為存じませんが、5月の連休明けからターム物金利が上昇して足元金利も上昇する場面が5月末とかにもあったと思うんですが、実質成長率のトレンドが強いちゅうことなんでしょうな。適切なタイミング云々はどう見ても利上げ早くやりましょう発言です。本当にありがとうございました。

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2006/07/18

お題「さて色々と話がございますが」

色々とあるのだから連休中に少しは書いておけば良いのですが、いざ休みになると書かないのがドラめもんクオリティなのであります。休み中にも見に来る人がいるというのにスイマセンスイマセン。

○景気判断を益々強気にしている7月月報

金融政策変更のディレクティブの前にマニアっぽく月報ネタ。→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0607.htm

例によって6月分と比較するのですが、株価下落にもめげずに5月と一言一句変らない月報をだした6月にも瞠目しましたが、今月は利上げしたから判断前進してるのは理屈としては判るんですが、いやあのこのタイミングで判断思いっきり強気化って・・・・うーむ・・・・・。

6月分(http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0606.htm)と比較しながら毎度の如く。

・基調判断を「拡大」に変更

『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』(7月)
『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』(6月)

この「着実に」と「緩やかに」のニュアンスの差という議論もあるのですけれども、「回復」と「拡大」の方を注目したいというのがあたくしの見立て。何故かと申しますと、今回もそうですけど、ここもとの金利引上げのロジックが「金利の調整」という言い方でして、「景気が拡大しているからそれに併せて調整」という方が回復状態という現状認識よりも話として通しやすいですから。


・微妙な順序替え

景気の現状判断部分も強くなっております。

『公共投資は減少傾向にあるが、輸出は増加を続けている。』(7月)
『輸出や生産は増加を続けている。(途中色々あって最後に)この間、公共投資は減少傾向にある。』(6月)

今まで最後に「この間、公共投資は・・・」って書いてたのがいきなり前に来まして、何とも妙な繋がり方になっているのが今月の月報。文書として何だか妙なのですが、「(悪い材料)だが、(良い材料)です」という書き方にしたのは、悪い材料の影響は少ないですよって言いたいからなんでしょうね。公共投資と輸出を並べて書くのは物凄く妙な書き方ですが、ここしか文章上入れようがなかったんでしょう。で、「生産」はどこに行ったのかと申しますとそれは後述。


・短観の結果挿入

まあこれは短観発表後のお約束ですので、6月分には無い所。

『企業収益が高水準を続け、業況感も良好な水準で推移する中、設備投資は引き続き増加している。』(7月)
『企業収益が高水準で推移するもとで、設備投資は引き続き増加している。』(6月)


・需給ギャップは需要超過へ判断前進

7月月報の現状判断部分に需給ギャップのお話が入りました。当該部分は6月までは先行き見通し部分で記述されていた部分でして、この認識ですと日銀としては需給ギャップは絶賛解消し、もう需要超過で内外需要が増加してますよ。デフレ?何ですかそれは?ってなもんでしょう。

『このように、内外需要の増加が続く中で、生産も増加を続けている。』(7月)

さっき順序替えがどうのこうのという話をした時にどこかに行った生産はこちらにございました。「内外需要の増加」という話を生産にくっつけたかった訳ですな。そしてその次の部分にはこんな記述が。

『マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在は需要超過状態に入ってきているとみられる。』(7月)

現状判断が需要超過ですよ先生!で、ちなみに6月はどうなっていたかと言うと、先行き判断部分にこの話がありまして、現状はゼロですよって感じでした。

『マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとみられる。』(6月)

ということで、このタイミングで需要超過に判断前進なのでした。


・先行き見通し、物価等は変更なし

で、その先ですが、景気の先行きやら物価に関する部分は変更無しになっております。先行きに関しては引き続き『先行きについても、景気は緩やかな拡大を続けるとみられる。』となってますが、この「緩やかな」という文言を入れる事によって将来的な追加利上げに関して「別に急いでは実施しませんよ」ってニュアンスを包含しているんだと思います。

今回に関しては現状判断の強気っぷりが目に付きますが、まあ利上げした瞬間なので現状判断が強気になってないと話が合わないという事でしょう。



○金利変更即時実施ですかそうですか

14日の「利上げ即時実施」には少々驚きました。翌営業日で良いじゃんとか思ったのですが(今書きながらふと気が付いたのですが、思い切って「補完貸付の金利は16日の利息計算部分から実施」というのはどうだったかしらって多分そんなことしたら事務的に無理ですかそうですか^^)、まあ14日に関してはその時間までに即日スタートのオーバーナイト物(14日〜18日)資金供給をご丁寧にも国債買現先と共通担保オペの2本立てで各8000億の計1兆6000億円ぶち込んでおりましたし、そもそも「翌日実施でしょ」と思ってた人も多かったので、当日のコールはまあ概ね終了の巻となってましたわな。よって利上げは無関係状態でした。

でも、これをやっちゃうと次回の金融政策変更(があるかも知れないと皆が思っている)時に当日のコール出し渋り現象が絶賛大発生して話がややこしくなるんじゃないかなあという懸念も少々どころかかなりございますわな。

・・・などと思っていたのですが、夕刻に公表された資金需給状況を見てロンバートが3兆2000億円も出ていた事を知り、「ああなるほど」と納得してしまいました。朝からそんなにロンバートが出ていたのならば致し方なしですわな。しかしロンバート借りるなら当日の即日オペでも良かった(ちなみにオペの落札金利はどっちも0.1%割れ)のでは無いかと思うんですが、どうもこうインターバンクの中の人たちの行動はワケワカラン。

ちなみに、コールは0.08−0.09で出合ってたと思うんですが、無担保コールのうち短資会社仲介分は0.02%+消費税(なので0.021%)の短資会社手数料が両方から徴収されますので、0.08%で無担保コール取っても直接取引じゃ無い場合のコストは0.1%を超えてしまうので、担保繰りに何の問題も無い昨今の状態ではまあ使われませんわなという感じでこれはこれで仕方ないという所でしょう。


しかし微苦笑したのは最後の即日売出手形オペ結果。ロンバートは出るわ、供給オペは打つわで資金が出まくったので引いたんでしょうが、1兆2000億円のオファーに対して応札が1兆6090億円あって落札が何故か9870億円。よく見たら最高落札利回りが0.4%でして、0.4%超の札が切られておりました。久々に見たぜ応札カット攻撃(^^)。

まあこのオファー見たときに直感的に「金が余っててギャグで入れるなら0.4%」と思った訳ですが、この0.4%というのは公定歩合(という言葉はお蔵入りですのでこれからは「ロンバート金利」ですな)でして、これより上に札を入れると落札分をロンバートでカバーすれば利益確定になってしまいますから札切るのは当たり前といえば当たり前。

つーか0.4%超で応札するのは、資金供給オペでマイナス金利を応札(というのは物理的に不可能です、為念)するくらい喧嘩売ってると思うんですけど、6000億円ほどそのようなオトボケあるいは喧嘩売り札が有ったということですな。というか多分喧嘩売ってる意識はあんまり無いかとは思いますが(苦笑)。


○ロンバート0.4%でしたね

総裁記者会見のテキストが出てからその辺の話をまたしますが、この0.4%に関しては「座りが悪い」とか「コール誘導目標から0.15%は異例に狭い」というようなお話をしていたようですな(ブルームバーグニュースより)。その割には本石町日記さんの所によりますと「ロンバートだけ単独引上げ」を否定していたそうで、それは別に否定する必要はなかったのではないかと思うんですが。

まあ今回3兆2000億円もロンバートが出てましたが、次回に0.25%利上げする時(がいつになるのか前途遼遠だと思うのですが)にまたまた駆け込みロンバートが発生することを勘案しますと、短期市場の金利コントロールがきちんと機能する事が確認できた時点で、しらっとロンバートの幅を拡大する事も有りだと思ってますんで、わざわざその道を否定するのはどうだったんでしょうかねえと思います。

まあ一応「ロンバート0.4%」が好感されたような感じになっていましたが、実際問題としてロンバートが0.4でも0.5でもGCレポや現先レートにそんなに直接的な影響は無さそうなので、あとは心理的な問題という所かと思います。木曜のオペやら金曜のGCなんぞを見てますと、まあ本日のコール市場が落ち着けば、以前どこぞで吹聴されていた「GCレートが0.4%でもしかしたらロンバート金利(当時だと0.5%の認識)まで跳ねることもあるかも」などというような状態にはならんという感じではございます。こればかりは蓋を開けてみないと判らんですが。

話は逸れますが、前回の量的緩和解除の前にも「解除後のコールが0.05%〜0.1%になるリスクも」とか吹聴している人がいた訳ですが、現実には当座預金が思いっきり引かれた2か月後になってやっと上昇したわけで、最初のは勘違いなのかもしれませんが、同じネタが吹聴されるのは勘違いじゃなくてポジショントークの香りがプンプンですな(笑)。


○まあ今後は経済情勢次第でしょうな

結局は物価指数と株価次第ではないかと思います。だと話がそこで終了しちゃいますけど、ディレクティブに関して言えば先行きの金融政策に関して「経済・物価情勢を丹念に点検しながら」と書いていますが、もう一つ注目されていたダウンサイドリスクに関する言及は特に見当たらずですし、同日公表された金融経済月報は相変わらず進軍ラッパが鳴りまくりんぐでございます。市場は「ロンバート0.4%」にやたらと反応していたような気もしましたが、ロンバートの衣の下に何気に鎧も見える感じが少々致しますな。「もう年内利上げ無し」って話もでまくってますが、平均株価が戻ってきたら意外に早く利上げの虫が騒ぎ出すのではないかという点はリスクシナリオとして見て置いた方が良さそうな感じ。

#まあ本日はそんなところで。

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2006/07/14

お題「GCレポ、現先金利のコントロール」

今日も今日とて思いっきりテクニカルなお話ですが。

○大変に素晴らしい国債買現先オペ

昨日午前の金融調節では国債買現先オペを実質8000億円実施したのですが、この期間が実にきめ細かい打ち方でして、オファー時点から「これは凄い」との声が(^^)。

8000億円の現先を14日→18日、18日→27日という2本立てで打ったのですが、14→18というのは今日から翌営業日でして、ロンバート大量利用の懸念ありの本日の翌日物にぶつけてきた格好、そして18→27は前日の共通担保オペの期間と同一で、勿論資金需給予想を反映して足を27日に設定してるんでしょうが、前日のオペとまるっきり同期間という事で、何となく金利下がらんかねえと応札するほうが思う(前日のオペで資金需要に対応してるから)期間。

ま、そんな事もありまして、14→18のオペは平均0.102%で最低0.095%となりまして(ということは0.1%以上の札もあったということですが、一昨日のGCレートから勘案すると低下してるからエエンジャネエノ)まあそこそこ落ち着きモード。18→27のオペ金利は平均0.334%で最低0.303%となりまして、前日の共通担保オペ金利の平均0.389%最低0.360%から大きく低下となりました。

で、まあこの低下を受けまして昨日のGCレポ取引(19日スタートの翌日物取引)は0.30%近辺まで低下して、前日比5BP位は低下した感じで、混乱モードから平静モードへ移行しつつあるといった感がございます。実は共通担保オペ金利は相変わらず高い(と言っても昨日のは期間が長いのでまあ単純比較しにくいですが)状態なんですが、GCレポや現先取引をする時に参考にするオペ金利が共通担保オペ金利から現先オペ金利に移ってきたようで、昨日のオペはGCレポや現先市場を落ち着かせる(って本当に落ち着いたかどうかはまだ判らんですが)効果が高かったと思われますです。はい。

何はともあれ昨日の現先オペの期間設定方法に拍手。午前中にT+1スタートとT+2スタートを2本立て(というか連続方式ですが)で打ったのは中々よく考えられた方法かと思います。



○レポ金利の跳ね上がりも抑えられるのでは・・・・

ということで、昨日の朝に駄文を書いているときは共通担保オペの金利上昇(というか高止まり、火曜のオペ金利も高かったし)→GCレポいきなり0.35%かよ!ってことで「利上げ(まだ決定してないですが)後のレポ市場大丈夫かよ」と思ったのですが、昨日のオペ結果とその後のレポ金利の低下を見ますと「金融調節で落ち着かせることできるじゃん」ってことで、これならまあロンバート0.5%でも心配ないぜって感じでしょうかね。

まあそもそもの話として、誘導目標金利0.25%に対してGCや現先が0.4%近辺で張り付いてしまったら、その時点で金融調節が上手く行ってないという話になりますんで、そういう意味ではロンバート0.4%でも0.5%でも実を言えば同じだったりするという指摘も現場的にはございまして(まあ期末期初だけですか)、あとはまあ心理的な問題に過ぎないという気もします。と、昨日の市場を見てかなり安心したあたくしなのでありました(^^)。

ま、ど〜せ同じなので最初0.4%にしておいて、市場が落ち着いているのでコリドーを広げてみるよってのも別に日和見だとは思わないですけどね。その点では本石町日記さんおよび本石町日記のコメント欄の大勢意見と違ってマル公0.5%にそこまで拘る気分にはならないです。現在の誘導ゼロ近傍+ロンバート0.1%は、上限0.1%(抜けることもありますが)で下限が名目ゼロ金利(だから実は純粋なゼロ金利政策とは言い難い)ですけど、誘導目標が0.25%になった時には下限制約が外れるのでスプレッドが0.1%のままだとしても実質レンジは拡大(まあロンバート0.35%は無いでしょうが)なんですよね。

#たぶんマル公は0.5%になるんでしょうけど。


○しかし共通担保オペの金利高いですな

昨日の共通担保オペですが、本店方式での実行で7月18日〜9月5日の期間。相変わらずレートが意味不明の高さで平均が0.406%の最低が0.381%となっています。いやまあ期間が長いからその分プレミアムが乗っても良いんですけど、それにしても期間中の現先利回りとかを予想するにその金利はちと高くないでしょうかって感じなのですが。

昨日の短期国債市場は全般的に確り(ロンバートの金利が0.4%になるんじゃないかという憶測が流れて買いが入ったというのもあったようですけれども)でして、前日に入札が行われた3か月FBが0.38%近辺まで金利低下してたんですが、共通担保オペだけ何か別世界になっているのは何か違和感ありまくり。他市場の動きや現先オペの金利(共通担保オペは午後に実施されたので、午前のオペ結果は判明している)とかの動きと整合性が取れてないのは何なんでしょ。

ま、共通担保オペを入れる人が何か全然別の論理で動いているとしか思えませんけど、何考えてるんだかって感じです。


○という訳でとうとう利上げですかそうですか

まあここまで来ちゃいますと利上げ確定でしょうし、まあ予想屋(ではないが)としては量的緩和解除の時から「7月利上げの可能性思いっきり大有りでしょう」と言ってた予想大当たりですんでこれはこれはって感じですけど・・・・そんなに急いで利上げする(まだしてないけど^^)必要があったのかはあたくしには謎です。

量的緩和解除をした当初は金利が逆に下がりましたが、5月の連休明けから(6月解除観測が急浮上したせいでもありますが)ターム物金利とかが上昇しだしてますんで、その観点からすると5月以降は市場金利上昇という形でそれなりに金利の引上げ効果が出て来てる筈だと思います。(追記:そう考えますと、株価が5月連休明けから下落しているのと、ターム物金利の上昇が期を一にしているわけですよ。現象面であって因果関係があるのかどうかは兎も角として)で、その影響を見極めつつアクションするならもうちょっと様子見ても良かったのかなあとも思いますけど・・・・

ま、ここまで短期市場金利が利上げを織り込んでしまうと、利上げして材料出尽くしにしちゃった方が却って市場金利が落ち着くんですけど、問題は「ちゃんと材料出尽くしにしてくれるかどうか」でございますわな。その点に関して物凄く懐疑的なあたくしであります。要するにちょっと株価が上ったり、政府のデフレ脱却宣言が出たりしたら、またまた利上げの虫が動き出すのではないかという懸念でございますな。頼むから今度こそちゃんと「利上げの効果を確認」してからにしてくださいね(はあと)。

とりあえず日銀の景気見立ての通りに経済情勢が向ってくれる事を祈ります。

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2006/07/13

お題「決定会合ですが色々と雑談を」

6時のNHKニュースの2本目がゼロ金利解除でしたが、無担保コールの誘導目標について「短期市場金利」という表現で、説明は「日本銀行が誘導目標にする短期市場金利を0.25%に引き上げる見通しです」って言い方をしてましたな。なるほど。

○0.125%引上げとか有り得ねえんですが

一昨日の引け後からユーロ円金利先物が急に上昇したんですが、この時聞いて回ったら「ゼロ金利解除後の目標金利が0.125%とかになる」って観測が突如流れたとのこと。あまりにも馬鹿馬鹿しいので放置してたら昨日の債券市場でもその話題で短いゾーンがしっかりしたとの後講釈(実際は何考えて買いが入ったのか判らんですけど)。

いやあのですな、0.125%への引上げなどという中途半端なことしかやらないのであれば引き上げない方がマシですし、そもそも0.125%だったら量的緩和解除と同時にそこまで利上げしてたと思う(以前そんな事を書いてた記憶がある)。

大体からしてGCレポレートがゼロ金利政策前提でも0.1%近くにある状態ですから、0.125%の引上げだとただの現状追認とあまり変化ない次第ですわな。となりますと、「ただの現状追認をしているのに利上げのアナウンスをした」ということで、利上げをすることによる政策効果が得られないのにアナウンスだけするという無駄玉撃ち行動という事ですから、まあ常識的に考えてそりゃねえでしょ。

で、まあこの後で書きますが、マネーマーケット方面ではそんな観測は完全無視で「無担保コール0.25%、ロンバート0.5%、GCレポレート0.35%」で動いている、というか昨日もまたまた金利が上昇していまして、金利が下がったのは6か月以降のゾーンでございますので、先行きの利上げペースがどうのこうのということに関する思惑なら兎も角、少なくともマネーマーケットで0.125%説は全く相手にされていない事がお判りになるかと思います。

なお、ユーロ円金利先物市場ですが、あれはカテゴリーは短期市場ですが、現状はマネーマーケットのヘッジとして機能してませんので短期市場とは言い難いものがございます。ユーロ円金先が動いてるから短期市場がこう考えているのは昨日のような場合は思いっきりピンボケ論議になります(勿論いつも短期と無関係に動くわけではないですけど)のでご注意ありたし。まあGCレポだの現先レートだのCPレートだのって言われても今幾らですかってのはベンダーとかで公開されてる訳じゃないから知らんがな〜ってのはあるんでつい金先を見たくなるのも判りますけどね。



○オペ金利高けえぇぇぇよ→GCレートも強い

昨日の資金供給オペですが、ついに18日スタートのオペが実施となりました。18日〜27日というショートタームのオペだったのですが、多分ゼロ金利解除されて新金利が始まるであろう初日からの金利の見立てが露骨に判る期間で8000億円のオファー。

結果は平均0.389%ってちょっと待てそれは何ですか状態のレートになっております。ここもとのオペ金利がやたらめったら上昇してるんで、まあそんな勢いなのかとも思いますが、この期間のGCや現先レートが平均で0.39%に達するとか真面目に考えないとそのレートは取れないと思うのですが、何の金利を見てもそんなレートで回っている物はございませんがな。どう見ても逆鞘です。本当にありがとうございました。

そんなこともございましたので、午後遅めの時間に行われた18日スタートの翌日物GCレポ金利も堂々0.35%近傍での取引となりました。14−18日のGCレポ金利が前日の最終で0.10%まで下がったのはありゃ一体全体何だったんでしょうなあ。

多分次回の積み前半は超過準備がある状態からスタートだから本来だとそんなに金利が上らない筈なんですけどって思うのですが、皆さんがこぞって足元で資金を抱え込むと金利は高止まりするわ準備預金の進捗は進むわという非常に香ばしい事態が発生する(積み後半の調節が苦労するという意味です)かも知れませんな。金融調節担当の人も大変ですなあ。

しかし0.35%でもちと高いが、まあ最初だから仕方ない面もあるのかなあとは思いますが、0.4%はあなたそれはマジっすか状態でございますな。

毎度申し上げますが、GCだの現先だのの利回りはターム物金利でありますところのFBだのCPだのの金利にまともに反映されるものでして、この辺の金利が上ると企業の調達コストにも跳ねるお話。つーことは、0.25%の利上げをしているように見えて実はもっと利上げ効果があるんですよウェーハッハッハという話になるかもしれませんなあという論点は正直マニアな話なので(あちこちでその話してる人いるんですが)、あまり話題になって暮れませんな。

#まあそもそも論で言えばFBの発行が市場の処理能力を超えているからこんなにGCのレートが上るのでして、日銀頑張って供給しなさいとツッコミ入れるだけでは話が発展しませんけど。

昨日のFBは0.40%にはさすがに絶対水準バイヤーが登場してたように見受けれられます(最後の最後には0.395%テイクン)ので、昨日の市場を見るとコールが0.25%でGCや現先金利が0.35%あるいはそれよりも高くて3か月FBが0.40%という訳の判らん価格形成になっておりますわな。まあどこかが変なんでしょうけど。


○ふと思ったのだが・・・・下限制約を勘違いしてないか?

とまあそんな感じでやたらめったら盛り上がるレポというよりはオペの金利なのですが、色々と妄想しているうちにふと思ったのは、今度実施されるであろう0.25%への誘導金利引上げの「0.25%」をゼロ金利の「0%」と一緒くたにして考えてないかってお話。

「ゼロ近傍」が誘導目標の時は、名目ゼロ金利には物理的に下限制約がある(日銀当座預金金利はゼロ、各種オペレーションの金利はゼロおよびマイナスにならない)ので、「誘導目標ゼロ近傍」と言いましても、実際問題としては「下限がゼロで上限を抑える」という形になるわけで(為替スワップの関係でマイナス金利がどうのこうのという話はとりあえず措く)して、この場合のゼロは目標といいつつ下限金利でもあったわけですわな。

ところが、誘導目標が0.25%になった時には物理的な下限制約は無い(日銀当座預金への付利が行われればその金利がスタンディングファシリティになりえますが、現状では日銀当座預金金利はゼロ)ので、「平均して0.25%近辺になるように」(どういう表現になるのか知りませんが、まあそんな感じになるんでしょ)誘導した場合には加重平均金利が0.25%を下回る日だってある筈ですわな。何かそのあたりに妙な勘違いがあるんじゃないかって気がしてくるこのオペ金利の上昇でございます。

ええ勿論上記の話はあたくしの脳内妄想の世界でして、まさか皆様そんな勘違いしてないと思うんですが・・・・・どうもこのレートは。


○いやあしかし7月にゼロ金利解除ですか

4月に量的緩和解除のコンセンサスが出来上がっていたのに強引に地均しして3月解除を行った時にあたくし「3月に解除すると7月の利上げに間に合いますなあ」などと申し上げてましたが、日銀様のシナリオ通りに7月に利上げでございますかそうですか。

そういえばその前には「量的緩和解除してゼロ金利を長期間継続するのであれば別に量的緩和解除する意味が無くて、『量的緩和解除したという結果だけが残る』ので日銀にリスクだけあって意味無いんじゃないの」などとも申し上げてましたが、結局量的緩和解除してから当座預金残高を引いた時点でさっくりと金利引上げでございますなあ。

・・・・などと珍しく当たったので自慢するあたくしですが、まあ当たったと申しましても、そんな威張るようなもんでもなくて、同じような指摘をしている人は結構いたと思うんですが、あの「物価安定に関する理解」でゼロ金利が長期化するとかいうのは大いなる勘違いでしたなあという所でございますな。

で、今回ですけど、誘導目標は0.25%ですが、ロンバートは市場コンセンサスはたぶん0.5%(少なくとも短期では)だと思うのですが、現状でオペ金利がこんな有様で0.5%になった時には日銀の短期金利のコントロールがきちんと効くのかどうかは色々言われそうな感じではありますな。まあ最終的には収斂するんでしょうけれども、その「最終的には」に2週間も3週間も掛かっているとあちこちから文句が出てくるのではないかと思料される訳でして、今回は0.4%でも良いんじゃないのっては思いますが。落ち着いてきたらorその次の利上げ時に引き上げればよろしアルね。

「市場機能回復の為には一時的な金利上振れも容認すべき」という見解も判らんでもないのですが、その「一時的」が経済に悪影響を与えるような幅や期間になるようであれば、やはりそれはイカンと思う次第でして、まあそこまで来ると皆さんの感覚の世界になるので議論しにくい所ではありますが、市場機能回復に熱心になる余り、金利引上げ効果が過剰になる事を忘れてはいかんと思うのでございます。いやまあそんなに長期間に渡ってショートターム物の金利が高止まりしないとは思うんですが、日銀的には0.25%でもまだまだぶっちぎりで低水準と思っていそうな気がするのがちと気掛かり。

#うだうだ書いてたら長くなってしまいましたな。

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2006/07/10

お題「日銀の金融調節レポート」

ちと前の話ですが、日銀から『主要国の中央銀行における金融調節の枠組み』というのが出ておりました(6月30日)本文はPDF22ページ(最終ページは参考文献リスト)でして、本石町日記さんが「お勧め」って紹介してましたのでお読みになった方も多いかと存じます。確かにマジでお勧め(ただしマニアの方のみ)。→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/data/ron0606c.pdf


○これは「個人的見解」ペーパーではございません

そのレポートの冒頭部分を紹介したページはこちらです。→http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research/ron0606c.htm

で、ついついあたくし本文読み出す前に妙な点に着目しちゃうのですが、このペーペーよく見ますと普段良く出てくる「日銀ワーキングペーペーシリーズ」と違いまして、毎度お馴染みのヘッジクローズであります所の『なお、本論文の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行および企画局の公式見解を示すものではない。』というのがございませんな。

まあ内容に関しては日米英にECBの金融調節の枠組みに関する説明ではあるのですが、何気にしらっと重要な論点が転がっているようにも思えますので、個人的見解ではない解説レポートだというのも中々奥深いものがあるかと存じます。

#しかし何でそんな点を最初に書くんだか>自分


○準備預金制度は金融調節の円滑化に寄与

いきなり15ページに飛びまして、3.(3)の『法令または契約に基づく中銀当預の積み立て制度』ってところに参ります。上の方で言及した本石町日記さんの所でも解説がございましたが。

『以上では、主に中央銀行による資金の供給・吸収に焦点を当ててみてきたが、金融調節を円滑に実施するためには、同時に、中銀当預に対する需要が安定的かつ予測可能であることが不可欠である。』

『既に述べたとおり、中銀当預は民間金融機関の様々な取引にかかる資金決済に利用されるため、一義的には、中銀当預に対する需要はそうした資金決済を円滑に行っていくために必要とされる残高(資金決済需要)となる。しかし、個々の民間金融機関の資金決済金額の動きに応じて、全体としての資金決済需要は日々変動し、中央銀行がこれを予め正確に予測することは必ずしも容易ではない。』

という訳で、準備預金制度があると便利ですよってお話になります。

『こうしたなか、中銀当預の残高について、日々の資金決済需要を安定的に上回る一定の水準に維持するように促す仕組みが設けられていれば、中央銀行による中銀当預に対する需要の予測は容易になり、金融調節を円滑に行うことが可能となる。』

実務的な論点では全く仰せの通りでございますが、この点に関して経済学的には準備預金制度というのはどういう扱いになっているのでしょうかというお話を本石町日記さんがしてまして、ここから先の話をするとただの2番煎じもいいところなので、本石町さんの下記エントリーをご覧下さい。→http://hongokucho.exblog.jp/5176437/


○積み期間と金融政策決定会合の関係

20ページのコラム「BOX2」の『ECB、BOEにおける積み期間やオペ期間の変更』部分を読みつつ「ほほう」と。

『法令や契約に基づく中銀当預積み立て制度における積み期間の途中に、金融政策決定会合の開催が予定されていると、時により、目先の政策変更を見込んだ民間金融機関の裁定行動(意図的な積み進捗操作)を通じて中銀当預に対する需要が変動し、オーバーナイト物など、ごく短期の市場金利が政策金利と整合的な水準から大きく乖離することがあり得る。』

この文を一読しただけで何の事か判るのは短期金利が動く時代をご存知の方でしょうな。一応しつこく説明しますと、準備預金の積み方式は対象期間(日本の場合だと当月分の積み期間は当月16日から翌月15日まで)の積数(要するに合計残高ですわな)ですので、極端に言えば初日に全額積んでしまえばそれ以降は準備預金の積み不要となりますが、積み期間中に政策金利が動くという予想をした場合には、積みのペースを速める(金利が上ると思った時)とか遅めにする(下がると思った時)という動きがあるというお話ですな。

この事例って昔々短期金利が動いた時代にはよくあった話でして、政策金利が下がると思う→準備預金の積みを遅らせる→市場の資金需要が大いに減退→コール金利が勝手に下がりだす(→怒りの積み下調節あるいは日銀貸出炸裂^^)というのは何度か見た覚えが微かにございますな。

ちなみに、コラムでも書いてますが、オペが金利指値方式の場合は応札の過熱(金利が上ると思った時)や札割れ(下がると思った時)という形で反映されますわな。従いましてこういう話になります。

『オペの金利を政策金利としているユーロエリア(MROの最低応札レート)や英国(Short-termRepo OMOsの適用レート)では、こうした事態が発生することを防ぐ観点から、積み期間やオペの実施日・期間を金融政策決定会合の日程と整合的に設定することにより、金融調節運営の円滑化を図っている。』

なるほどそうですな。ちなみに先週もちと書きましたが、今月の金融政策決定会合が行われる7月14日は積み最終日(惜しくも15〜17が3連休で、次の積み期間初日に掛かりますので、厳密な意味では積み最終日+積み初日になります)になりますので、金融政策変更をするのには技術的には都合が良いんですよ(^^)。ちなみに、金融政策決定会合の日程を調べても(実は10月会合も週末の14日(訂正:13日)に実施^^)別に政策的なインプリケーションは発生しない筈ですので勘違いしないようにお願いします。

と申しますのは、金融調節の枠組みという技術的な問題に関して日本と類似しているFRBの場合について同じ20ページの脚注にこんな記述があるわけで、日本の枠組みの場合は別に積み期間中に決定会合があっても無問題な訳ですわな。

『米国では、FOMCが通常積み期間中に開催され、政策金利の変更は直ちに実施されるため、意図的な積み進捗操作を行う誘因が働き得る仕組みとなっており、翌日物の市場金利は政策変更を先取りして動く傾向がある。もっとも、FRSでは、オペの金利は、応札レートに制約のない金利競争入札によって市場動向を反映するかたちで形成されることから、オペの応札過熱や札割れといった事態は比較的生じにくい。また、FRSでは、積み進捗操作に伴う需要の増大をある程度吸収するかたちでオペを運営している。』

昔の日本でも「翌日物の市場金利は政策変更を先取りして動く傾向がある」というのはございましたわな。ただし当時は市場下限金利としての強力な最終兵器「日銀貸出」がございました(ただし低め誘導政策始まってからは最終兵器は使えなくなりましたが)ので、下げ方向であまり無茶な先取り行動はできなかったような記憶も。まあ「怒りの積み下調節」とか色々面白かったですけど(^^)。

同じ脚注でECBについてこんな記述があって「なるほど」と思いました。

『ECBは、当初、政策金利をMROの適用レートとしていたが、利上げ局面においてオペへの応札が過熱する事態が生じたことなどを受け、2000 年6 月にこれをMROの最低応札レートに変更した。2004 年3月の見直しは、利下げ局面においてオペの札割れが生じやすいことを踏まえて実施されたものである。』

なるほどなるほど。

#と、マニアなお話をしてオチも無く本日は終了。

と思ったのですが、一応一言。金融政策の話になりますと、日銀サイドが金融調節の技術的な論点にすぐ話を持っていくとお嘆きの皆様におかれましては、まあこういうのも是非お読みになると宜しいのかと。

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2006/07/04

○6月短観をさらっと読みます

毎度お馴染みの「前回の見通し対比で業況判断DIはどうなったか」というのを見ましょう。

製造業大企業(以下3月時点でのDI見通し→6月DI)
22→21
非製造業大企業
19→20
製造業中堅企業
12→13
非製造業中堅企業
5→4
製造業中小企業
9→7
非製造業中小企業
▲8→▲6

まちまちって言えばまちまちですが、3月調査時点で既に良い状態であった事を勘案するとまあ強い数字。中小企業の景況感が改善しているのが強気後押しという感じですな。

で、先行きの予想DIが非製造業中小企業以外で今回比改善あるいは横ばいを見込んでいまして、回答期間がちょうど6月中だった割にはマインドの悪化が見られませんって事でなお強気という感じですわな。まあそうは言いましても、実際問題として日経平均やTOPIXが上った下がったと言って市場が大騒ぎするのと、フツーの企業が受け止める景況感は必ずしもリンクしないというのがあるものと(自社株が暴落でもすれば話は別でしょうが)思われまして、株安のインパクトに関しては市場と一般企業の感じる温度差はあると思いますけど。


その他内容に関してポイントの設備投資、価格、雇用ですけれども・・・・

設備投資計画の数字は全体的に上方修正。製品仕入価格判断DIの改善(というか上昇)傾向が加速。雇用人員判断DIが3月予想時点での不足予想ほどの現状判断にはなっていないものの全規模・業種で不足。しかも先行きの人員判断DIが現状よりも更に不足方向に振れていますな。詳しくはあたくしのようなオタクシロートではなく、専業のお方にどうぞ。

ということで、どう見ても7月利上げです。本当にありがとうございました。

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2006/06/27

お題「金融政策決定会合議事要旨」

適当に聞き流しているモーサテなんですが、出てくるコメンテーターの皆様に置かれましては、金融引き締めの行き過ぎを「ビハインド・ザ・カーブ」という人がいるわ(オーバーキルでしょ)、チャート上で価格のギャップを埋める動きを「穴埋め」という人がいるわ(窓埋めでしょ)と、おまいらそれでもプロかよと言いたくなるのですが、まあ生放送ですからと聞き流すのが大人の対応ですかそうですか。

で、本日は虫干しシリーズ。

4月28日の議事要旨
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060428.htm

5月18、19日の議事要旨
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060519.htm


○総じて景気には強気です

まあ一々引用するとこれこそ長くなるのですが、両方の議事要旨に共通するのが「景気に強気」というか楽観というか。まあ4月28日と言えばスティーブン・ローチ先生が見通しをドテン強気にするような時期でしたし、5月17日あたりでも日経平均ベースで16000円はまだキープしていましたので、内容的に強気になっているのはまあそんなもんではあります。

まあ大体こんな感じです。5月分の要旨「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」部分から。

『経済情勢の現状について、委員は、わが国の景気は、内需と外需、企業部門と家計部門のバランスがとれた形で、着実に回復を続けており、マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとの認識で一致した。』

5月の金融経済月報にも需給ギャップ云々の記述がありましたな。


○月報での先行き景気が「拡大」という表現に関連して

金融経済月報ベースだと5月に景気の先行き判断を「着実に回復」から「緩やかに拡大」と変化させたというのはご記憶に新しいかと思いますが、この時どういう話があったのかということが5月の議事要旨にございます。「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」部分です(さっきの続きにあたります)。

『先行きについて、委員は、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、潜在成長率を幾分上回る成長を続ける可能性が高いとの見方を共有した。その上で、金融経済月報における先行きの総括判断として、委員は、先行きの景気については「緩やかに拡大していく」という表現が適切であるという点で一致した。』

うーむ強気強気。

『何人かの委員は、「回復」から「拡大」への変更は、展望レポートで示したように、経済活動の水準が高まり、マクロ的な需給ギャップの面で需要超過の領域に入っていくとみられることを受けたものであり、成長ペースが速いということを必ずしも意味しないとした上で、「緩やかに」を「拡大」に付しておけば、当面の成長率が潜在成長率を幾分上回る程度であることを明確にすることが可能であると述べた。』

ちなみに4月の議事要旨には『多くの委員は、今回の回復局面は、既に4年3ヶ月を経過しているだけに、景気が「成熟段階」に入っていくに連れ、成長率は潜在成長率近傍の水準に向けて徐々に減速する可能性が高いとの見方を示した。』という表現がありまして、総裁の会見などでも確か同じような見立てが披露されていたと記憶しておりますが、「緩やかに」「拡大」という言葉の意味する所は上記のようなものですって訳だったんですな(大体想像はついたが)。このくだりは月報読みの参考になる話でした(^^)。


○米国経済のインフレ懸念

同じく5月分の「金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」部分で米国経済に関してこんな見立てになっているのですが。

『米国経済について、多くの委員は、住宅販売件数などに減速の兆しがみられるものの、現状は家計支出や設備投資を中心に着実な拡大を続けており、先行きも潜在成長率近傍の拡大を続ける可能性が高いとの見方を示した。ある委員は、住宅投資の減速が同国経済に与える影響については、不確実性が小さくないため、注意してみていく必要があると述べた。』

『物価動向について、何人かの委員は、労働需給の引き締まりや設備稼働率の高さを踏まえると、原油価格を含めた商品市況の上昇とも相俟って、インフレ圧力が高まってくるリスクには注意する必要があるとの見方を示した。複数の委員は、インフレ・リスクは既に顕在化しつつあり、金融政策の舵取りがより重要な局面となっているとコメントした。』

米国経済のインフレ懸念ですか。先日ご紹介した総裁の講演(日本記者クラブ)でもグローバルなインフレ懸念節が炸裂しておりましたので、こんなのも出るだろうなあとは思いつつも、やはりこう「今は利上げゆっくりと言ってるけど、いざ利上げしたらインフレ懸念持ち出すんじゃネーノ」って懸念は拭いきれないのであります。あたくし的には経済情勢が(政治ではなく^^)そう簡単に次の利上げ前のめりを許さんとは思うんだが・・・・


○市場機能の回復orz

これまた5月の議事要旨「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」から(ちなみに4月28日はその部分殆ど無しのすけ状態)。

『別の複数の委員は、当座預金残高の削減が進む中で、短期金融市場の取引は増加傾向にあり、今後も市場取引の回復が期待できるとコメントした。』

正直、その話はせんで宜しいと思うんですが。金利が上がれば短期金融取引で収入が期待できるから参加者も増えるでしょうし、取引も自然に活性化する話ですから、「犬が西向きゃ尾は東」みたいなお話。殊更にその点を話題にすると、「短期金融市場の活性化のために利上げは本末転倒も甚だしい」ってツッコミが飛んでくると存じますが。


○まあそれはそうなんですが

5月の連休明けに俄かに飛び出して大騒ぎになった「6月利上げ観測」に関連したお話。これまた5月分の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」から。

『金融市場で一時早期利上げ観測が高まったことに関連して、何人かの委員は、市場は、量的緩和政策のもとでのコミットメントのような異例に明確な政策の運営指針に慣れてしまっているため、より具体的な基準を求めがちであり、当座預金残高の削減ペースなどから、利上げのタイミングを読み取ろうとする向きも少なくないようであると指摘した。複数の委員は、当座預金残高の削減は利上げに直接リンクしていないことを改めて説明していく必要があると述べた。』

まあこの時の早期利上げ観測って大騒ぎしてたのは海外でして、海外の売り叩きに例によって例の如くバンクのALMがヘッジ入れだして反応したのでなお大騒ぎになったと理解しております。で、本件と話が違いますが、最近短期市場で話題というか笑いになっているのは「次回の利上げが0.125%とか0.15%になる」という説でして、これもまた海外方面からやってきてるらしいのですが、どうも先日の日銀総裁発言の「小刻みに」金利の調整を行うという「小刻み」をそう解釈したお話だそうな。

いやね、6月利上げの話が出た時もそうなんですが、金融政策がらみでは短期金融市場界隈からみると「はぁ?」って珍説が海外(や他市場)から飛び出して来る事が多くて、まあそれに対して丁寧に説明することも大事っちゃあ大事なんですが、どこに向けて説明すれば良いのかというのもこれまたムツカシイですなあと思う次第。

まあ本職の人でも「ロンバート金利先行引上げ」などという珍説を披露するケースがございますので(笑)、気が遠くなるようはお話かもしれません。


○3つ併記のシナリオ

同じく5月の要旨の続きで最後の部分でこんなのがありました。便宜上段落分けしてますが、この部分は一つの段落です。

『この間、一人の委員は、実質成長率のトレンドと実質短期金利の乖離はかなり拡大しており、経済・物価が見通し通りに展開していく中では、緩和度合いが強まり過ぎるリスクに注意しながら遅過ぎることがないように適切な政策運営を行う必要があると述べた。』

『別の委員は、最近の内外株価の下落や国際商品市況の乱高下などが市場に不安心理をもたらしていることにも配慮しながら政策を運営していく必要があると述べた。』

『さらに別の委員は、資本設備の経済的陳腐化の影響は次第に薄れつつあるが、現状は投資の限界収益率が極めて低い水準から緩やかに上昇し始めたばかりの段階であるという見方を披露した上で、いつまでもゼロ金利を維持することは不適当である一方、物価上昇率が目立って加速しない限り、物価安定と整合的な金利の上昇テンポは緩やかなものになると指摘した。』

最後のは西村審議委員でしょう。先日の講演と同じ話ですから(^^)。

3つ並んでますが、金利早期上げ方向の話に慎重論がサンドイッチになっているという書き方を見ると、まあ初回に関しては早めの利上げって話になるんでしょうなあという雰囲気を勝手に感じてしまいました。

ま、6月の月報で株価下落は心配ないぜとばかりに5月と全く同じ内容にしてきた件に興味がありますので、あたくし的には6月の議事要旨まだ〜って茶碗を箸で叩きたい気分でございます(^^)。

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2006/06/16

お願いですから北浜先生「警戒が必要」のままでいて下さい。間違っても底打ち宣言なんぞしないように、ナムナム。


○株価下落に対して強気継続ですなあ

金融政策決定会合は当然の如く変更無し。で、6月の金融経済月報(基本的見解)が出たのですが・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0606.htm

一読して「株価下落で判断何も変えてないじゃん」と思って5月のと比較しようと思って両方紙に打ち出しまし、ふと気がついて2つ重ね合わせて透かしてみました。

・・・・・いやはや、現在のマーケットに関する言及以外まるっきり同じですよ(^^)。ということで、株価大幅下落でも景況判断関係ないぜというのが今回の月報の特筆すべきことだという訳ですな。

・前月と記述が違う所はここだけ

(6月)『為替・資本市場では、前月と比べ、円の対ドル相場および株価は下落し、長期金利も低下している。』
(5月)『為替・資本市場では、前月と比べ、円の対ドル相場は上昇しており、株価は下落している。この間、長期金利は前月と概ね同じ水準となっている。』

ということで、ここ以外は前月と一言一句変りません。うーむ、強気というよりは「この程度の下げは調整の範囲内」という認識なのかもしれませんが、はてさてどうなんでしょうかね。

あとは5月と同じなのでややこしい比較検討はしませんが、念の為ポイントの文言を並べておきます。

・景気先行き見通し
『マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとみられる。そのうえで、今後も、輸出は、海外経済の拡大を背景に、増加を続けていくとみられる。また、国内民間需要も、高水準の企業収益や雇用者所得の緩やかな増加を背景に、引き続き増加していく可能性が高い。こうした内外需要の増加を反映して、生産も増加基調をたどるとみられる。(以下割愛)』

・物価見通し
『物価の先行きについて、国内企業物価は、当面は国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップが、今後は緩やかに需要超過方向に向かっていくとみられる中、プラス基調を続けていくと予想される。』

まあそういうことで、株価下落も心配ないぜというのが公式スタンスであるという点に関しては留意が必要かと思います。

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2006/05/31

○何かまた燃料レポートの香りが

しかしまあ色々と金融政策に説明を尽くさないと(というか尽くしても)楽しい解釈が飛び出すのがニッポンクオリティなのですが、個人名論文で一々燃料を投下する日銀もどうかと思うぞ、ということで昨日はこんなのが。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp06e09.htm

お題は「スイス国民銀行の金融政策運営:2001〜2004年の経験」ってものですが、恐ろしいことに全文が英語ですのでとてもあたくし読む気起きません。よって上記URLにある要旨しかよんでません(おい)。

そこにはこんな記述が。

『第2に、SNBは、利下げ局面では、結果的に市場参加者の見通しに修正をせまるかたちで政策決定や情報発信を行った。一方、金融緩和の巻き戻し時には、時間をかけて、市場参加者が経済・金融環境の変化などを材料に利上げの可能性を十分に織り込むのを待ってから政策変更を実施した。こうした巻き戻し時の対応は、確率は小さいながらもディスインフレ傾向が再び強まった場合の損失はインフレ率が加速した場合の損失より大きいとの判断から、SNBが頑健な政策運営を行ったものと解釈できる。』

・・・・どう見ても地均し礼賛です。本当にありがとうございました。

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2006/05/25

お題「なかなか楽しめる議事要旨(4月10、11日分)」

昨日の3か月FB、足元GCレートの絶賛上昇を受けて在庫にしにくい人たちが続出しちゃって0.25%まで金利上昇。前週比6BPでさすがに債券先物もビックリして下がってしまいましたな。

さて、総裁定例記者会見の前にまたまたネタが出てしまったのでそちらを先に。4月10、11日の金融政策決定会合議事要旨でして、やたら強気な金融経済月報の出た会合ですが、なかなか楽しめる内容でございます。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060411.htm

○経済情勢の見立てに関しては総じて強気

『III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の辺り。

『経済情勢について、委員は、わが国の景気は着実に回復を続けているとの認識で一致した。多くの委員は、外需と内需、企業部門と家計部門がともに回復し、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、景気は着実に回復を続けていく可能性が高いとの見方を述べた。』

まあ4月上旬でしたので、強気になっているのは当然でもあります。項目別に色々な話がございますが、一々並べていると長くなるのでまあ上記URL先を見て下さい。


で、まあ内容の本筋とはちと違いますが微妙に引っ掛かる所や、ニヤリとする応酬もございました。まずは物価見通しに関するある委員の指摘。

『ある委員は、このところプラス寄与の大きい帰属家賃の上昇傾向が続くと見込まれることなどを指摘し、物価の改善傾向は明確であると述べた。』

いやこういう話で局地的な個人的感覚を持ち出して反論するのは筋が良くないのは承知の上で敢えて反論しますと時々お話してるから皆さん耳タコかもしれない都市機構の賃貸住宅(いわゆつ公団住宅)の都心部物件の入居状況。東京都区部CPIでも帰属家賃が上昇傾向だと聞いてますが(ってちゃんとお前読めというお叱りを受けそうですが)、本当に家賃相場上昇してるのかよってのは少々疑問があるんですけど・・・・どういう統計の取り方してるんだろ。

まあそれはあたくしの勘違いであることを期待致しましてもうひとつはちょっとニヤリとした応酬でして、議事要旨での順序ではさっきの前になりますが個人消費に関して。

『また、ある委員は、高額商品の販売が好調であることを指摘し、株価上昇や配当の増加も影響していると考えられると述べた。一方、別のある委員は、高額品と安値品の二極化が進んでいることや、サービス支出の回復も特定の分野に限定されていることなどを指摘し、個人消費の回復は、底堅いものの力強いとは言えないとの見方を示した。』

あたくしとしては「別のある委員」に1票を投じたいですな。


○例によって例の如く当面の金融政策運営に関する検討は・・・・

まあ市場の人たちがまず最初に読むのは『IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』です、などと書くと市場の人間は結局ファンダメンタルズよりも日銀の一挙手一投足重視ですかと言われそうですが(まあ全面的に否定はしにくい^^)、経済状況の見立てや先行き見通しは金融経済月報で既に公表されているのでアウトラインは判っているからということで(^^)。

で、まあこちらの部分ですが、またまた何と申しますかツッコミ所の多い議事要旨で本業多忙でネタ検討の時間の少ない昨今のあたくしにとっては干天の慈雨(^^)。


○議事要旨公開が昨日でよかったですねえという部分

当座預金残高削減の短期金融市場への影響に関連して、頭の痛くなる指摘をしている人がいます。

『この間、別のひとりの委員は、市場では早期のゼロ金利政策解除観測が強まりつつあると指摘したうえで、あまりに早いペースでの当座預金残高の削減は、こうした思惑に拍車をかけるリスクがあると述べた。』

好意的に解釈すれば、だからこそ当座預金残高の削減ペースと先行きの金利変更はリンクしないという事を日銀として強調する必要があるって言ったんでしょう。というかそうであることを期待したい。そうじゃないなら何考えてそんな発言したのか訳判らんですな、お前はどういう理解になっているのだと小一時間。


○「物価安定の理解」はインタゲではありません、だそうです

まあとっくの昔にそういう話になってはいるのですが。

『何人かの委員は、一部に「中長期的な物価安定の理解」で示した物価上昇率を、先行きの政策変更のタイミングと直接結びつけて理解する向きがあると指摘した。これらの委員は、「中長期的な物価安定の理解」は、現時点において、各政策委員が金融政策運営の判断に当たって物価が安定していると理解する物価上昇率を示したものであり、インフレーション・ターゲットや物価安定の数値的定義とは異なるものであることについて理解を得る必要があると述べた。』

で、まあその先にも議論が続いておりますが、引用を始めると全部引用することになりそうなので上記部分だけ引用しました。結局鵺というかコウモリのような「理解」でございましたちゃんちゃんってところですな。


○ここの件が良く判らんのだが

何か難しそうな話をしているのですが、どうもこの政策委員さまにおかれましては中央銀行がインフレ期待(と書くと一般ピープル的な印象がアレなので、「物価安定期待」などと言い換えた方が吉なのかも・・・)の安定化を中央銀行として主導的に行うというのは否定的なんじゃないだろうかと読んでしまったのですが、ちと長いですけど引用します。

『ある委員は、わが国の場合、海外主要国に比べて過去の平均的な物価上昇率が低いため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率が低くなっているとの考え方について、「フォワード・ルッキングな期待形成を理解していない」との批判があることに言及した。』

『この委員は、わが国では、物価の安定に対する認識が過去の経験に即した形でバックワード・ルッキングに形成されている部分が少なくないとの実証分析を紹介したうえで、こうした期待形成から乖離した物価目標の設定は、インフレ誘導的であると受け止められるリスクがあると指摘した。そのうえで、この委員は、バックワード・ルッキングな期待形成は、経済構造の変化に伴って比較的短期間で変化する可能性があるため、定期的な見直しが重要であると述べた。』

それこそレジーム転換をしましょうかどうですかって論議なのではないかと思ったのですが。まあ現状維持で行きましょうって見解なんでしょう。反論らしきくだりが無いのは今回意見開陳モードだっただけなのか、誰もレジーム転換には興味ないのかは判断致しかねますな。


○情報発信は慎重に

『先行きの金融政策運営について、委員は、量的緩和政策解除時の公表文に示したとおり、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持できる可能性が高いということについて、十分説明していくことが大切であるとの認識を共有した。』

まったくその通りでございますな。

『この点に関し、何人かの委員は、市場において金融政策の先行きに対する関心が高いことを踏まえ、情報発信には慎重を期する必要があると述べた。』

この話何度も言われているのに懲りない人がいるのは何故でしょう?


○財務省の心の叫び

『V.政府からの出席者の発言』の財務省出席者発言に思わず落涙。

『前回の金融政策決定会合では、当面の金融政策運営について、「物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高い」との考え方が、全員一致で決定されたものと承知している。』

『にもかかわらず、市場関係者の間では、今後連続的に利上げが実施されるとの思惑が生じ、その結果、中短期金利が上昇するなど、金融政策の先行きについて日本銀行の決定されたメッセージを市場が正しく理解していない節も窺われるところである。』

『日本銀行におかれては、この金融政策決定会合での決定に沿って、金融政策運営の考え方を市場や国民に丁寧に説明し、市場の安定に努めて頂きたいと考えている。』

早期利上げよりも今後の連続的な利上げ(しかも速いペースでの)への懸念が債券市場にとって重いテーマになっているという事を正しく把握しておられます。しかしこの発言趣旨は泣かせてくれます。一応「市場が正しく理解していない」という表現で日銀に配慮してるようですが、まあ本音はどうなんでしょうか。


○どう見ても円環性です。本当にありがとうございました。

円環性に関しては以前ご紹介しましたけど、要するに「自分の尾を追う犬(byブラインダー元FRB副議長)」と化した中央銀行の図ですな。ちょっと話戻りまして先ほどの「当面の金融政策運営〜」の部分にこんな論議がある訳です。

『何人かの委員は、新たな金融政策運営の枠組みは、量的緩和政策のもとでの「約束」に比べて明確性を欠いているとの批判についてコメントした。これらの委員は、金利政策のもとでの中央銀行と市場との対話は、これまでの「約束」のような一方通行のものとは異なり、市場金利を仲介項としたダイナミックなものに変わっていかなければならないとの見方を示した。』

まあとりあえずここまでは良いとしましょう。というか何で今回の議事要旨は「〜との批判について言及」ってのが2箇所もあるんでしょうか??この次のコメント。何となく福井総裁の言いそうなことなのですけど・・・・

『ある委員は、この点について、具体的には、(1)日本銀行が金融政策運営に対する基本的な考え方や経済・物価情勢に対する認識を示す一方、(2)市場参加者は、これらを踏まえたうえで自らの金利観に基づいて取引を行い、(3)日本銀行は、市場動向から重要な情報を汲み取っていくという相互関係が基本となっていくと敷衍した。』

どうみても円環性です。本当にありがとうございました。

・・・だとちょっと言い方キツイかもしれないけど、どうもこの相互関係は円環性に陥りそうな罠満載のように思えるのは杞憂ですかそうですか。

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2006/05/22

お題「あとは気合の問題になっていますな」

先週末の決定会合は当然ながら現状維持。で、出た金融経済月報もまあ予想通りに先月の展望レポートの継続という形で強気の内容です。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0605.htm

○現状は同じなのですが

『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』から始まる現状認識部分ですが、こちらに関しては4月分で入っていた短観に関する記述(業況感)が抜けているだけで表現はまったく同じです。引用してると量が長くなるので引用割愛。


○先行きは「拡大」で需給ギャップはゼロ近傍

既に報道されていますのでご存知とは思いますが、先行きの見通しが「回復」から「拡大」になりました。利上げする時にはさっきご紹介した現状の「回復」も「拡大」の表現になるんでしょうなあ。

(5月)『先行きについては、景気は緩やかに拡大していくとみられる。』
(4月)『先行きについても、景気は着実に回復を続けていくとみられる。』

ということで、回復じゃなくて拡大ということですから、あとは現状が「景気拡大局面」という認識になれば政策金利の引き上げ(調整って言い方になりそうな予感)を躊躇する理由は無いという理屈になりますな(本当に大丈夫かどうかは知らんが)。

ま、問題は先行きに連続利上げがあるのかどうかって話でして、どうも3月に量的緩和を頑張って解除した実績を踏まえると慎重な利上げじゃなくて積極的にやるんじゃネーノって不安が起きやすいわけでございますな。それはともかくとして先行き見通しの中身の部分には需給ギャップゼロ話が。

4月に『すなわち、各種の過剰は解消されてきており、企業の雇用不足感が強まるなど、経済活動の水準は高まっている。』という表現で強気のラッパが鳴りましたが、今月はと言いますとこんな感じ。

『すなわち、マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとみられる。』

ま、展望レポートでも同じ話がございましたので、特に驚くには当たらないのですが、『各種の過剰は解消されてきており』ってのが4月中旬の金融経済月報で最初に出たと思ったら、4月末の展望レポートと今回では堂々「需給ギャップゼロ宣言」ということで、いやあずいぶんときゅうそくなけいきかくだいきょくめんですなあそりゃたいへんだあ(棒読み)。

で、このあとの内訳部分に関しては4月と同じ表現です。こちらも面倒なので引用割愛。


○需給ギャップが解消したからCPIも

物価の現状は同じですが、先行きに関しては当然ながら需給ギャップが解消してるから上昇って話を付け加えております。

(5月)『消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップが、今後は緩やかに需要超過方向に向かっていくとみられる中、プラス基調を続けていくと予想される。』
(4月)『消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、若干の振れを伴いつつも、プラス基調を続けていくと予想される。』

どう見てもプラス方向一点張りです。本当にありがとうございました。


○小まとめ

まあ手を変え品を変え金利引き上げ方向の理屈が繰り出されるもんですなあという感じですが、展望レポートに引き続き「あとは気合の問題」という状態になっていますなあという所でしょう。今度はさすがに6月に利上げはやらないと思うんですが(やったら年内3回利上げのリスクシナリオが急速に意識されると思うんでそこまでやるかなあって思うのですが)。



○記者会見に関してメモメモ

記者会見に関しては例によって日銀が会見要旨をWebに公表してから改めて読んでみたいのですが、ニュースベンダーの記事を参考にして気が付いたところをメモメモ。

・潜在成長率上昇というお話

福井総裁は経済の先行きの判断上方修正に関してこんな話をしておりました(以下福井総裁の発言のソースは19日18時35分配信のブルームバーグニュース)。

『(景気の先行き見通しについて)「拡大」という言葉を使ったが、ますます成長率が上がるという意味ではなくて、成長率自身は成熟段階に入ったので、(1%台後半の潜在成長率に向けて)徐々に減速していくと想定できる』

するってぇと成長率は上らないけど実質金利は益々マイナスになるので、名目金利の調整が必要ですかそうですか。

・インフレ懸念の話

先週月曜日の講演(火曜日にご紹介して、木曜に補足書きましたが)でも触れられていた「インフレ懸念」(!)ですが、世界経済の動向をどう読んでいるのかって質問の時にここぞとばかりにコメントしてますな。

『一方で、グローバル経済なので、末端の消費者物価指数が上がりにくい状況が続いているが、それでも、物価上昇圧力がじわじわと感じられるという状況になっている。従って、世界の中央銀行の金利政策は、極めて慎重だが、緩和の度合いを若干調整する方向で動いている』

だそうですが、FRBって現状中立金利に近いってステートメントになってたような気がするのですがまあそれはともかくとして、物価上昇圧力という直球を投げ出しましたなあという感じ。

ついこの前までは「物価が急激に上昇しにくい経済環境が続けば極めて低い金利の状況を継続できるでしょう」ってお話だったのですが、その話がいつの間にか華麗にスルーされだしたなあと思っていたらここへ来てインフレ懸念ですかそうですか。

・当座預金残高の話

当たり前ですが「6ー7兆円は数字の縛りではない」って話になっていました。今回は6−7兆円発言を捕らえて訳のわからんヨタ記事が出るという事も無かったから良かったんですが、真意を間違って報道されやすい表現は避けて頂きたいと切に願います。

『当座預金残高が何兆円になったら、ということで数字でこだわるのであれば、数字は全部お忘れください。要するに、将来、限りなく時間をかければ、所要準備額に近づいていくとはいえるだろうが、それ以前の段階で、過剰な流動性の吸収プロセスが概ね終わったと言える段階というのが何兆円になったら、というのは分からないと思う』

『われわれのターゲットはあくまで無担保コール翌日物金利でゼロ%近傍なので、それ(当座預金残高)をどんどん数字を低くすれば良いという調節はしない』

当然の発言でございます。でも本当は国会でその話をすれば一々今回説明する必要無かったんですけどね。国会答弁は鬼門ですな。

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2006/05/12

ミスター円先生のインタビューがあったのでモーサテ見てましたが、円高円高もう円高で介入ですよ大荒れですよってあたりまではほほうドテン円高論転換ですかお気楽ですなあくらいだったのですが、日銀が日経金融使って利上げキャンペーンという辺りに至って時間の無駄であることを確信(追記:まあ某審議委員だけはそんな発想あるかも知れんが、日銀の中では迷惑している向きが多いと思う)していつものようにブルームバーグテレビ(東京MXで放送中)に切り替えるのでありました。

○悪態はちょっと聞こえたようですが

TIBORがバーチャルマーケットですなあという悪態が聞こえたのかどうか存じませんが(笑)、全銀協様ご公表のユーロ円TIBOR金利あたりを拝見致しますと、昨日はやっと上昇したようでございます。

・・・とは申しましても、12ヶ月ものがようやっと0.408%でございまして、昨日のロンドン11時のLIBOR円12ヶ月もの金利0.5425%(ちなみに10日は0.53%)から見るとエラク違います。で、来年4月20日償還のTB399回債(なので11ヶ月もの)はと言いますと昨日の引けでは0.425%近辺にいまして、まあどっちが実勢に近いのかは推して知るべし。

まあ日銀レビューによりますとそのあたりの問題点も十分に把握なさった上でユーロ円金利先物を参考になさるようでございますので、それほどなーばすになることもないんですよ。いやもうまったくもんだいはないんでしょうなあ(突如棒読み)。

#とは言え、いままでろくすっぽ動かしてなかったものをいきなり昨日の今日でレートを死ぬほど動かすわけにも行かないというのはあたくしも理解は致しますし同情は致しますが、まあネタにはしますよ。


○「円環性」の問題ネタで少々

先日ご紹介した本石町日記さんのエントリーでお話はまあだいたい尽くされているような気はしますが、一応あたくし用手控えメモ。

「円環性」の問題云々って本文見てもねえなあと思って読んでいたのですが、良く見たら最後の脚注の4番に記述がございました。実に迷文ですので残しておかナイト。

『経済のファンダメンタルズから乖離し得る市場の予想金利を経済見通しの前提にして、中央銀行が政策判断をするようになると、市場はそのことを織り込んで金利の予想を行うようになる可能性がある。この時、市場の金利予想は、ますますファンダメンタルズから乖離し、自己実現化するという「円環性」の問題が発生し得る。同問題の影響を断ち切るためには、中央銀行が常に、自らの情勢判断に基づきながら、ファンダメンタルズに沿った政策金利の経路を念頭において政策運営していくことが必要である。』

アラン・ブラインダー氏の言う「自分の尾を追う犬」の話でございます(えっとですな、この話は以前もご紹介しましたが、ブラインダーさんの講演を纏めた「金融政策の理論と実践」ちゅうのが河野龍太郎さんと前田栄治さんの訳で東洋経済新報社から出てるんで読むべし)が、ここの記述ではどう見ても市場の予想金利が勝手に間違える(『経済のファンダメンタルズから乖離し得る市場の予想金利』ってそういう意味でしょ)としか読めませんですな。

ええ、短期市場ってのは中央銀行のアクションに一番ビビットに反応するのでして、期間が長くなればなるほど経済ファンメタに反応するというのが一応教科書的な回答になります(ただし日本の場合は大手銀行が振り回すゾーンがビビットに反応するという説もありますけど、笑)し、基本的にはそういうもんでしょ。

それに地均しをしたがる中央銀行のボードメンバーがセットになりますと、そこから導き出されるインプリケーションは「日本銀行は自分達で市場に対して地均ししておいてその金利上昇を容認して利上げアクションをするんですかそうですか」とどうしてもなってしまいますわなあという所でおじゃります。

上記の記述にある「同問題の影響を断ち切るためには」って話ですが、「中央銀行が常に、自らの情勢判断に基づきながら、ファンダメンタルズに沿った政策金利の経路を念頭において政策運営していくことが必要である。」と小難しい事を書いてますが、それ以前のそもそも論として、「まずデフレを止めよ」じゃなかった「まず地均しを止めよ」でしょう。

政策を語るな、金利水準を語るな、景況感と景気見通しを語れと。

#微妙に切り口は違いますが、本石町日記さんの最新エントリーhttp://hongokucho.exblog.jp/4637891もご参照下さい。

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2006/05/11

○昨日の続きというか補足(日銀レビュー)

昨日威勢良くボロカスに書きました日銀レビュー。まあレビューをよくよく読みますと金先以外にもTBFBとかTIBOR(の現物)とかスワップとかも「総合的に勘案」っていう事は書いてはございます。で、確かに昔のようにTIBORがターム物取引の市場実勢に近く、短期金融取引(主にターム物取引とかCDとかCPとか)との裁定が効いている時代であればユーロ円金利先物の金利水準は指標として訳に立つ訳ですから、別に書いていることが理念的に間違えているとまでは申しません。(と一応フォロー)

ただね、現在の市場状況として(昨日申し上げたように)TIBORの金利がバーチャルマーケット状態になってしまっている訳で、その状況下でペーパーご紹介ページに堂々「先物が参考になる」ってのは短期とか債券の現場的には燃料になっちゃう訳ですよ。昨日のブルームバーグニュースの短期市場概況解説記事(16時40分配信)では『日銀からは「市場金利から先行きの金利見通しに関する情報を得るには先物金利が参考になる」との個人論文が発表されたことも嫌気され、市場追随で動く日銀を警戒した海外勢中心の売りが膨らんだ。』って書かれちゃいましたが、まあそれはさすがにちと執筆者カワイソスではございますけど、燃料効果オソロシスでもある訳ですな。


でまあ何でTIBORがこんなになっちゃったかと考えますと、何と言いましても銀行間のターム物取引の打ち合いというものが死滅状態になっている訳で、背景には量的緩和長期化とかインターバンクで信用リスクがどうのこうのとかうるさくなったとか大手銀行がマネーポジションからローンポジションになったとか色々とあるようですので、TIBORレートがバーチャルレートでケシカランと言ってるだけでは話が始まらんようではございますが。

とりあえずTIBORレートにそーゆー問題があるという理解の元に相場の方向性とかを見るというお話であれ(レビューを良く読むとそういう書き方をしているようですが)ば無問題なのでしょうが、一部の審議委員様に置かれましては金先「金利」の絶対水準を見て「市場は複数回の利上げを織り込み」と発言しているとしか思えないような人がいる訳でして、レビューとこのような動きをセットで考えちゃうとどうしても「金先金利の絶対水準を見て市場の金融政策織り込み度合いを判断するんですかそうですか」という印象を与えちゃいますわな。

まあアレだ、何というか公表タイミングは相変わらず間が悪かったですなあという感じですが、ついでにサマリーの書き方もちと配慮足りなかったんじゃネーノということにしておきます。

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2006/05/10

○近来稀に見る手前味噌レポートですね

既に本石町日記先生がエントリーを上げておられる訳ですが。
http://hongokucho.exblog.jp/4616087

昨日の日銀レビューシリーズのお題は「経済見通しの作成における政策金利の前提」というまさに展望レポートの言い訳のようなものでございます。
(要旨)http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev06j09.htm
(本文、PDF)http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j09.pdf

で、まあ色々と書いてあるのですが、上記の要旨にもありますように

『実際に観察される市場金利から先行きの金利見通しに関する情報を得るには、先物金利が参考になる。』

という(まあ予想された事とは言え)衝撃の記述が。金先マーケットが主にスワップのヘッジと一部スペキュレーションの玉が飛び交う世界で、日銀の地均しに一番ビビットに反応する商品だとあたくしは思っているのですが、その地均し、と逝っちゃあアレですから「中央銀行のアクション」と言い換えても良いですが、まあその中央銀行が見せる政策への意図に反応しやすい市場が一番参考になるといってる訳ですな。そんな中央銀行はどう見てもアラン・ブラインダー氏の言う「自分の尾を追う犬」です。本当にありがとうございました。

でまあその辺りの論点からのツッコミは本石町日記さんの記事を読んで頂くと致しまして(と手抜き)、現物債やら短期金融商品やらの投資や売買をする人から見ると金先が一番参考につかえるってのが物凄い勢いで違和感がございますって話を別の論点から。

#なお、予めお断りしますが、以下の話は「金先金利を金融政策のリファレンスに使うのは如何なものか」という趣旨で展開されまして、先に申し上げますとオチは「現物金利と乖離してるでしょうこれは」って話になりますが、金先の機能まで否定する積りはございませんので念の為。と、書かないと金先市場関係者(と全銀協とTIFFE)の方が気を思いっきり悪くしそうな気がするので(汗)。よろしこです。



えーっとですな、さっきのPDFの方の5ページ目には主なターム物レートの特徴というコラムがありまして、そこでユーロ円金先を大絶賛しております。ユーロ円金先は『東京金融先物取引所に上場。市場参加者が多く、流動性は極めて高い。』だそうです。

で、その市場参加者に実際の投資マネーのヘッジはどのくらい入っているのですかと小一時間な訳ですよ。例えば短期国債とかCPとかでも良いのですが、現物債(または短期金融商品)の投資をする人やディーラーから見ると現物との相関が弱くてヘッジに使えませんわな(使っている人はヘッジという名目でスペキュレーションやってるようなもので、オマジナイ程度の効用しかありません)。リアルマネー系のヘッジ(売りだけじゃなくて買いだってありえますが)玉が入りにくいんですが、「市場参加者が多く」って・・・・・

債券先物(長期国債先物)の場合は商品設計上、現在のイールドカーブ体系だと7年ですが、受渡適格銘柄のうちどこかが最割安銘柄になるので、そのゾーンの現物債金利と相関するという特徴がございますわな(イールドカーブが思いっきり横になると最割安候補がドカドカ出現するのですけど、まあそこまで今は考えなくて良いでしょう)。ところがユーロ円金先でございますが、上記のコラムにもありますが、このへん(http://www.tfx.co.jp/products/ey.shtml)にもありますように、最終決済はSQ方式でリファレンスレートは全銀協発表のユーロ円TIBOR3か月ものでございますわな。

で、このTIBORが曲者(←北浜先生ではありません)。確かにこのユーロ円TIBOR(国内円TIBORが95年11月16日から、ユーロ円TIBORが1998年3月2日から)が公表された頃はLIBORが国内円の金利と思いっきり乖離するようになってきて、金先が現物の金利からあさっての方向に逝ってしまうのでコリャイカンという話があったというように記憶しておりますし、そもそもこの時代はリファレンスレートを出す大手銀行の多くがマネーポジション(短期金融市場で調達超)であったので、あまりとぼけたリファレンスレートを出していると他行から「じゃあお前そのレートで出すんだな」と攻撃を食らいかねないという時代でもありました(いやまあ一応TIBIDってのもある筈ですが)。

では今はどうなっているかというお話ですが、あたくしもろくすっぽ見て無いTIBORですが(笑)、全銀協のウェブサイトを見ると驚愕の事実が判明するのであります。

http://www.zenginkyo.or.jp/tibor/index.html

ここの一番下にあります「全銀協TIBORレート」ってのをクリックしますと、説明画面の下のほうに「今月のレート」というのと「履歴」っていうのがありますわな。どれを見てもまあ良いのですが、「履歴」をクリックして「2006年」即ち今年をクリックするとまたまたPDFファイルが出てまいりますので、その1月以降のTIBOR3か月のレート推移をご覧下さい。

・・・・・えーっと、今年の1月以降のあたくしの駄文のログでも辿って頂ければお判りになりますし、もうちょっと簡潔にってのであれば財務省のウェブサイトに政府短期証券の落札結果が履歴として出てますんでその間の3か月FBの落札平均利回り(正確には価格)推移をご覧になられると宜しいかと思いますが、ご案内の通り、2月上旬までのんびりと「4月末くらいに量的緩和解除するけどゼロ金利は長期化するからねえ」とやってた市場は2月中旬の福井総裁記者会見のイケイケ発言から大騒ぎになりましたわな。あたくしも駄文で利回り4倍!とか10倍!とか書いてましたが。勿論この間にCPの利回りも急上昇しましたわな。その後実際に解除になってから低下傾向を辿り、4月はなお低下して5月直前から上昇となっている訳ですが。

で、ユーロ円TIBORの2月、3月あたりの金利推移をご覧頂きたいのですけどまあ見事にひたすら似たような数字が並んでおりますわな。これじゃあどう見ても(暴言につき自主規制)です。本当にありがとうございました。


という訳でございまして、現物債と申しますかリアルの短期金融商品の価格推移をちゃんと反映しているのかという点についてあたくしとしては疑問を出したくなりますレートが最終的な決済価格になる「金利先物」はそりゃまあ流動性はありますし、スワップなりのヘッジとかで売り買いしてる人はいますから方向性として値動きを参考にするのは良いのかもしれませんが、絶対水準に注目した「金利」としてのリファレンス機能に関して本当に参考になるんでしょうかって思う訳ですよ、ええ。

でも、このレポートによりますとどうも金先「金利」から導き出されるインプライドフォワードレートとかは『標準的な金利水準の予想』(←本文より)の参考になりますなあ(もちろんリスクプレミアムも反映されてるって話もしてますけど)と言ってるような気がしまして激しくガクガクブルブルなのでありました。

いやまあこのペーパーは久々にねじり鉢巻で料理したくなるような良質の燃料なんですが、あたくしの感覚的に申し上げて「金先金利が将来の市場の政策金利予想として使えますなあ」とか言うのは・・・・債券市場や短期金融市場に喧嘩売ってるような気がするんですけどねえ。金先使いの人は大喜びだと思いますけど。。。。。

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2006/05/01

お題「どうみてもゼロ金利早期解除です。本当に(略」

先週末は注目の展望レポート(本名は「経済・物価情勢の展望」)が出ました。市場のほうはといいますとさほど反応せずでして、おまけに引け後にユーロ圏のCPIが強い数字出てたんですが、金先は上昇ということで無難な反応。

まあ無難な反応でして、この展望レポートは読み方によってかなりどうとでも取れそうな書き方になっています。しかしまあ今までの日銀の動きから勘案するとこれはどう見てもゼロ金利早期解除です。本当にありがとうございました。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0604.htm

○需給ギャップはゼロですかそうですか

冒頭部分に思わず「おお!」となってしまうあたくし。これはまさに2000年の再来ではなかろうかということで。

『わが国経済は、着実に回復を続けている。(中間割愛ですが、項目別に景気の良いことが書いてます)このように内外需がともに着実な増加を続ける中で、2005年度の経済は、昨年10月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した見通しに比べて、上振れて推移した見込みである。この結果、マクロ的な需給ギャップは、長く続いた供給超過状態が解消し、現在はゼロ近傍にあるとみられる。』

需給ギャップがもうありませんですよゼロ金利解除ですよという声が聞こえそうなお話です。あまり詳しくは覚えてませんが2000年の時もこんな話になってたような気がする訳で、いやあやりますなあという所です。


○景気先行き見通しのメカニズム(メインシナリオ)について

先行きに関しても勿論強気なのですが、その背景にはこんな見立てがあるそうです。引用だけで手抜きですかそうですか。

『第1に、海外経済の拡大が続くことを背景に、輸出は増加を続けると予想される。』

『第2に、企業部門の好調が続くとみられる。企業収益は、2002年度から4年連続の増益となり、2006年度も売上高経常利益率はバブル期のピークを上回る水準を続けるとみられる(以下長いので省略)。』

『第3に、企業部門から家計部門への波及がより明確になってくるとみられる。企業部門の好調の影響は、雇用や賃金の増加に加え、配当の増加や株価の上昇を通じて、家計部門にも波及している。そうしたもとで、個人消費は、着実な増加を続けると予想される。住宅投資も、都心部などで地価が上昇に転じる中で、金利の底値感が台頭していることもあって、緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。この結果、家計支出は、国内民間需要の主たる牽引役になっていくとともに、その堅調が企業部門にフィードバックして、前向きの循環メカニズムが維持されていくと考えられる。』

『第4に、極めて緩和的な金融環境が引き続き民間需要を後押しするとみられる。金融機関の貸出態度は積極化しており、民間の資金需要の下げ止まりとも相まって、民間銀行貸出は前年比プラス幅を拡大している。実質短期金利も低下している。中小企業設備投資や住宅投資の増加には、そうした金融環境も影響しているとみられる。』


○景気の上振れ、下振れ要因が並んでますが・・・・・

上記の4つが前提になっているそうな。このあたりの前提が崩れると話が変りますよって事にはなるんでしょう。で、物価の見通しの話を飛ばしてリスク要因に関してちょっと先で書いています。

『第1に、海外経済の動向である。見通しにおいては、わが国の主要貿易相手国が潜在成長率近傍の成長を続けることを前提にしており、それらの展開次第では、わが国の輸出や生産は上振れ・下振れいずれの可能性もある。』

ということで書いてるんですが、原油価格の話と米国、中国の話をしてるのですけれども、最後に中国をもってきて『見通し期間中の成長率が上振れる可能性がある。』で纏まっているのが「強気だよ強気」って声が聞こえてきそうな構成だとみるのはあたくしにバイアスが掛かっているからですかそうですか。

『第2に、在庫調整の可能性である。』ということで、IT部門の在庫調整に関して例示して書いているのですが、ここの部分の最後はどうまとめているかと言いますと、『もっとも、その場合でも、わが国企業が全体としては過剰雇用・設備の調整を終えており、企業収益も高水準であることは、景気全体への影響を緩和する要因として働くと考えられる。』だそうですよウェーハッハッハ。

『第3に、企業の投資行動の一段の積極化である。見通しにおいては、設備資が徐々に減速することを想定している。これは景気が次第に成熟化していくことに着目した想定であるが、企業の投資行動がより積極化する場合には、成長率が一時的に大きく上振れる反面、その後は資本ストックの過剰な積み上がりの反動が生じ、調整を余儀なくされる可能性もある。』

はいはい上振れ上振れ。で、この後にこんな事を書いているのにも思わず注目してしまうあたくしなのでございますが。

『また、最近における地価、株価等の資産価格の動きも民間需要を押し上げる方向に作用している。』

バブル懸念とは一言も書いてませんが、資産バブルが発生すると民間需要が過大に押し上げられる結果、バブルが潰れた場合に反動で民間需要が大きく落ち込むリスクがありますよ(確かにそりゃそうだが、問題は現状がバブルを懸念するほどの状況かという点でして)ってお話をしてますな。

『他方、金融市場において、経済の実態と整合的な価格形成が行われる場合には、景気の大きな振幅を抑える方向に作用すると考えられる。』

つまりアレだ。今の中長期金利上昇は経済の実態と整合的な価格形成だから景気の無用な過熱を抑える緩衝機能を果たしているんですな。まあ言いたい理屈も判らんでは無いが、そもそもその価格形成は地均しの結果生じたものではないかという気が思いっきりするんで、何か自画自賛の香りが漂ってくる俺様理論っぽい気がするんですけどねえ。

しかし書き方というのは面白いもので、リスク要因の説明をしながら最後には「まあそうは言っても」という感じでまとめていまして、まあよく出来た文章でございます。


○潜在成長率が上昇しているというお見立てだそうで

景気の上振れ、下振れ要因に関して書いている後に物価上昇率の上振れ、下振れの話をしてます。

『第1に、需給ギャップのプラス転化(需要超過)の影響である。』という書き出しから始まって、前半では世界的に需給ギャップに対するCPIの感応度低下の話をしているのですが、最後のまとめが当然ながらこうなるのでありました。

『もっとも、需給ギャップがゼロ近傍から徐々に需要超過に転化すると予想される中では、いずれかの時点で、予想インフレ率の切り上がりを伴いつつ、賃金・物価上昇率が上振れする可能性もある。』

はいはい物価上振れ物価上振れ。

『第2に、原油をはじめとする商品市況の動向には上下両方向に不確実性が大きい。』

前節では原油価格上昇に関連して景気への悪影響という話をしてますが、こっちでも述べているということは原油価格上昇は物価への上振れリスクもありますよという指摘なんでしょうか。

『第3に、潜在成長率の上昇の影響である。潜在成長率の上昇は、供給面からは、物価の押し下げ要因となる一方、需要面からは、将来所得に対する見方の上振れを通じて物価の押し上げ要因となり得る。』

ということでして、『わが国の潜在成長率は、様々な構造調整を経て、足もと上昇方向にあると考えられるが、その変化をリアルタイムで認識することは難しいだけに、この面からも不確実性が存在する。』だそうです。ほほう。


○金融政策運営の部分でもこんな事かいてますが

で、次の『(金融政策運営)』の部分ですが、重視すべきリスクのお話をしてまして、そこにもまた強気なお話がございますが・・・・・

『この間、より長期的な視点を踏まえつつ、確率は高くなくても発生した場合に生じるコストも意識しながら、金融政策運営という観点から重視すべきリスクを点検すると(第2の柱)、企業の収益率が改善し、物価情勢も一頃に比べ好転している状況下、金融政策面からの刺激効果は一段と強まる可能性がある。その場合には、現在、需給ギャップの水準がゼロ近傍にあることから、中長期的にみると、経済活動の振幅が大きくなり、ひいては物価上昇率も大きく変動するリスクは意識する必要がある。』

金融緩和の刺激効果が高くなったリスクキター!ですわな。

『一方、経済活動や物価上昇率が下振れした場合でも、金融システムの安定が回復し、設備、雇用、債務の過剰が解消されてきていることから、物価下落と景気悪化の悪循環が発生するリスクは小さくなっていると考えられる。 』

悪化リスクは小さいですキターー!という感じ。

いやまあ2000年の時から比べると確かにリスクが大きいとは思わないけど、読めば読むほど強気の部分が印象として強くなるのはあたくしが早期ゼロ金利解除を予想しているからですかそうですか。


○総じて申し上げますと・・・・・

結論として出てきている大勢見通しは無難に纏めてますが、中に書いてある文を見ますと、経済物価の上振れリスクといか、金融超緩和状態の長期化リスクという部分が(特に後者)目に付く次第でして、これだけ見てると極端に言えば5月にゼロ金利解除してもおかしくない位の進軍ラッパに見えます。まあさすがに5月はないでしょうが(苦笑)、あたくしの読み筋の本命7月どころか6月にゼロ金利解除しても何らおかしくはないという内容ではございますな。まあ現在の調子だと6月解除しても金利政策に持っていくのは何ら問題なさそうですな。足元金利もやっと動き出した(ただし大型連休要因の可能性もあります)ようだし。

記者会見でも興味深いコメントがあったようですが、こちらに関しては会見テキストが出てから明日にでも。

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2006/04/26

お題「消費者物価指数に関する日銀レポート読書メモ」

米国債券市場、経済指標が出るたびに上ったり下がったりというのはまあ自然といえば自然ですが、まあコロコロと見方が変化する不安定な動きというのは「延々と金利下げ」→「延々と金利上げ」というトレンド状態が長かったのでこーゆーのに慣れてないちゅうのもあるんじゃないかと。

まあ本日は3か月もの政府短期証券の入札があるとか、月末発行のCPがやたら多いですなあとかいう話題もありますが、まあ週末の展望レポートに物価統計がありますので、そこまではとりあえずそんなに相場の決定的な取っ掛かりも無しということで、昨日もちょっと申し上げましたが、日銀レビューシリーズのお話を。

『消費者物価指数のコア指標』というお題のレポートが、この展望レポート公表直前というまたまた狙ったようなタイミングで出てくる所にどうしても意図を感じざるを得ない訳ですが(勿論日銀はそんな意図は毛頭無しという見解ですが)、今回のお題は「一時的な要因を極力排除したCPIのトレンドを見るためにはどの数字に注目するのが良いのか」というものです。
要旨はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev06j07.htm
本文はこちら(PDFです)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j07.pdf


○結論は「CPIの10%刈込平均」が良さそうとの事で

金融政策で今後見ていくCPIは「CPI総合」だという話は3月の決定会合以降何度もお話がされてます。とは言え、このCPI総合のトレンドをじゃあどうやってみるのかという話に関しては今まで出ていなかったかと記憶しております(違ってたらゴメン)。で、今回のペーパーということですんで、まあ(日銀の公式見解じゃあありませんが)こんなのを見てますよってのをさらっと説明したペーパーではないかと勝手に解釈しております。

で、CPI総合をどう加工するとCPIのトレンドがより読みやすくなるのかという点について、本ペーパーでは「除く生鮮食品(今まで皆が見てた所謂日本でのコアCPI)」「除く食料・エネルギー(総務省の偉い人の肝いりで唐突という印象で公表が始まった奴)」「除く農水畜産物・エネルギー・公共性料金」「10%刈込平均」の4つを日本のデータから比較検討するという事をしてます(5ページ目以降)。

で、この10%刈込平均って何でしょってのも最初の方に書いてあるんですが、他の3つの算定のように項目を選んでCPI総合から除外するのでは無くて、項目中の前年比変化が上下に大きい物から順にCPI総合に対するウェイトで10%になるところまで除外して(品目数で10%ではありません)内側のウェイト80%部分(上下10%を除外するから)を採用するって事だと本文を読んで理解したのですが、違っていたら誰かご指摘いただくと誠に助かります。

ちなみに何でこの10%という数字が出てきたかという話は本文の前半部分に過去のデータからこうやって出しましたってのがありますのでそちらをご覧頂ければ。


まあ今後CPIのトレンドを見るときは10%刈込平均のトレンド(んなもん発表されないでしょうから本職の方は算出するんでしょう^^)も見るちゅう話になるのかなあとは思いますが、ペーパーにもあるように、そんなに極端な差が出る訳ではないようですな。まとめ部分の7ページ目にこんな記述がございます。

『これまでの検討結果を整理すると、各指標のパフォーマンスに決定的な優劣の差はみられなかった。ただ、あえて優劣をつけると、全体的なパフォーマンスは、除く生鮮食品、10%刈込平均がやや高く、除く食料・エネルギー、除く農水畜産物・エネルギー・公共性料金が幾分見劣りする。』

『まず、除く生鮮食品は、除外対象を最小限とした上で、一過性の要因を的確に除外し、基調的な物価変動の捕捉や将来の予測力といった点で、安定したパフォーマンスを示している。したがって、これまで長期にわたって利用されており、定着度が高いことも踏まえると、引き続き、コア指標として注目していくとの判断は妥当と考えられる。』

『また、10%刈込平均は、全体としてみると、コア指標としてのパフォーマンスは高く、基調的な物価の動きをみるために除外すべき品目が、経済・物価情勢に応じて変化している可能性を示唆している。ただ、上述したように、将来の総合指標の変化の方向性の予測力は、2000年基準改定の影響を受けている可能性があるが、2000年基準改定以降のデータが蓄積されることで、この問題は徐々に解消されていくと考えられる。』


○何気に竹中先生に反論が(^^)

と、ごく真面目に読んでいるだけではアレでございますので、あたくしとしてはやはり竹中先生肝いりで公表がさっくり開始になった「除く食料・エネルギー」に関するこのペーパーの扱いに微妙に注目する訳でございます(^^)。

『また、最近では、高止まりが続く原油価格の影響も控除するため、食料品とエネルギーを除外した指数(食料<酒類を除く>及びエネルギーを除く総合)も公表されている。』

ということで、脚注には「米国のコアCPIに対応する概念」という説明もあるこの指数ですが、しれっとボコボコにされているような気がするのはあたくしの読み方にバイアスがかかっているからですかそうですか。

5ページ目のBOXっていう囲みコラムコーナー(?)には米国のコアCPIと日本の「除く食料・エネルギー」の比較をしているのですが、そこでは日米データを比較して、今まで日本でのコアCPIとしてエネルギーを除外しなかったのは妥当ではないかというお話をしてます(^^)。そして先ほどご紹介したまとめの部分の8ページ目なんですが、とどめのようにこんな事を。ちと長いですけど。

『この間、除く食料・エネルギーと除く農水畜産物・エネルギー・公共性料金は、除外対象をやや広くとっており、カバレッジが低くなっている。このため、基調的な物価変動を反映した情報までをも除外している可能性があり、これがコア指標としてのパフォーマンスを低下させていることも考えられる。』

『特に、両者ともエネルギーを除外しているが、その妥当性は、背後にある原油価格の変動要因等に依存している。例えば、近年の原油高の背景としては、中国等の新興市場諸国における高成長によって需要が増加しているという側面が重要である。こうした趨勢的な原油需要の増加は、供給面での制約とは異なり、一過性のものとして除外することは、必ずしも適当とは言えない。』

『また、除く食料・エネルギーは、必ずしも攪乱的な動きを示していない生鮮食品以外の食品までも除外しており、わが国消費者物価の変動の特性を踏まえると、必ずしも適当とは言えない。』

・・・・・・・(^^)

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2006/04/24

○ちと古いが白塚さんのレポートがありまして

ネタにせずに華麗にスルーしてたんですが、3分の1くらい読んでみました。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev06j05.htm

毎度おなじみ日銀レビューシリーズでこれまた毎度お馴染みの企画局白塚さんによります『金利の期間構造と金融政策』というお題のレポート。

本文はこちら(PDFです)http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev06j05.pdf

金利の期間構造からマーケットの経済動向(物価その他)に対する見方を得たり、金融政策に関する信認度合いを見るというお話がございまして、この辺の話ってのは大体あたくしのような人間は10回くらい真面目にツッコミを入れながら読むと何となく状況が掴めるのですが(←ただのアホです)、まだ読み込み不足のようで、何となく「はて?」と思いながら読んでる段階です。

でもこのレポートは中々興味深いのでお勧めかも知れない。

で、いつもだと「マーケットなんちゅうのは間違えまくってますから」ってレポートに悪態をつくところですが、なぜ悪態が出ないかと申しますと、7ページ目にこんな記述があるんですな(^^)。

『このように金利の期間構造が包含している情報は、市場参加者の経済動向に関する長期的な見方を読み取る上で、有用な情報を提供している。ただ、こうした情報を活用していく上では、いくつか留意しなければならない点もある。』

『第一は、長期フォワード・レートが予想されていない情報に対して過剰に反応する問題である。』

『(中間の肝心な部分を思いっきり割愛しちゃいます)この観察事実からは、標準的なマクロ経済モデルで想定されている、定常状態が不変であり、この定常状態に向けて経済主体の長期的な予想が収斂していくという仮定は、現実には、必ずしも成立していない可能性が考えられる。』

『第二は、中央銀行が民間部門のインフレ予測に機械的に反応するような政策行動をとった場合、合理的期待形成を仮定した均衡が不決定になる可能性が指摘されている(円環性問題、circularity problem)。』

『つまり、中央銀行が金融市場に機械的に追随してしまうと、中央銀行は金融市場の見方を是認しているとみなされてしまい、それをまた市場が織り込んでいくといった形で、マクロ経済全体の不安定化をもたらす惧れがある。この点についてブラインダーは、中央銀行は金融市場に追随する誘惑に陥りやすく、短視眼的な金融市場の時間的視野を採用するリスクがあるとしている。』

ええ全くその通りなんですが、政策委員会の中の人には市場誘導発言をしながら「市場が利上げ催促することもありますわなあ」というような話をする向きもありますんで一つその辺も宜しく。

ま、もうちょっと読んでみます。

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2006/04/19

○日銀地域経済報告

さくらレポートという何と申しますかちょっとアレなお名前のレポートでございますが。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0604.htm

中身詳しく見てる暇がなかったのでまだなんですが、そこのURL先にある概況話見てますと相変わらず前回から上方修正か横ばいになってまして、判断が全部横ばいなのは北海道と九州ですかそうですかというところで、他の地域は何がしかの判断に上方修正が入ってますな。

支店長会議で総裁の開会挨拶がありましたが、これはまあいつものとおり公式見解のままでございました。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/siten0604.htm

一応メモだけですが。

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2006/04/17

お題「3月8、9日の決定会合議事要旨」

10年が2.5%だのというのなら兎も角として、10年が2%近くに接近した如きで「日銀は説明を」とか言うのは量的緩和解除に関して政府と日銀の認識に齟齬がありますって宣伝してるように感じてしまうのですが。まあ銀行の貸出金利により影響がある1年〜5年の中短期金利が急上昇して時にはあまりアクションせずに、後追いの形で10年金利が上ってやっと物言いだすのはあたくし的には今更感が漂う何だかなあという感じ。>谷垣大臣

ま、日銀は説明をどうのこうのってのはモーサテとブルームバーグTVが報道しているのが谷垣さんの発言をちゃんと伝えているというのを前提にしてますんで、谷垣発言の意図がそうじゃないのであったらゴメンナサイ。


それはともかく、量的緩和政策解除が行われた金融政策決定会合の議事要旨が公表されました。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g060309.htm
紙に打ち出すと15ページとかになりますが、本論部分は7ページ分でございます。

まあ総じて申し上げますと、量的緩和解除後に福井総裁から色々と説明があって、物価安定に関する「理解」に関しての公表文書とかもありますので、まあその辺りに関して読み込んだ内容の再確認って感じかと思います。そんなに「こりゃビックリ」みたいなややこしい話は(今のところ)気が付きませんです。

○CPIの「のりしろ」論

「III.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」の3番目の「3.金融政策運営の対外的説明について」の部分から。

『多くの委員は、概念上の「物価の安定」は、計測誤差(バイアス)のない物価指数でみて変化率がゼロ%の状態と考えられるとした上で、デフレ・スパイラルに陥るリスクを回避する観点から、消費者物価指数の前年比でみて、若干のプラス(「のりしろ」)を許容したとしても、「物価の安定」の範囲内と言えると指摘した。』

うーむ、計測誤差無し状態でゼロ%か。

『これに関して、何人かの委員は、統計作成当局の努力もあって、わが国の消費者物価のバイアスは大きくないとみられると述べた。また、物価下落のリスクに備えた「のりしろ」について、一人の委員は、名目賃金の下方硬直性が小さくなっているとみられること、今後潜在成長率の上昇が期待できること、金融システムが安定を回復していることなどを考慮すると、必要な「のりしろ」は大きなものではないとの見方を示した。』

うむむ・・・・では具体的には幾らなのかという話はもうちょっと後ろに出ております。結構幅がありますなあ。

『複数の委員は、バイアスの存在や物価の継続的下落に陥らないための「のりしろ」を踏まえると、2%よりは低くとも、1%よりは高いくらいが適当であると述べた。』

『何人かの委員は、国民が物価の安定と考える物価上昇率がかなり低くなっている可能性を踏まえた上で、バイアスの存在や「のりしろ」の必要性も勘案すると、1%程度を挟んだ範囲で考えるべきであると述べた。』

『別の何人かの委員は、わが国のインフレ率は過去数十年間低く、国民が物価の安定と感じる水準も低いとみられることは重要であり、1%を下回る水準である程度の幅をもって考えるべきであると述べた。このうち一人の委員は、平均的な国民が物価安定と考える状態に対応する消費者物価上昇率は、指数のバイアスや国民の消費パターン分布を勘案すると、1%より若干低いレベルを中心とする範囲になると述べた。』

『別の委員は、名目賃金の下方硬直性の低下等から必要な「のりしろ」は縮小しており、中心値は0%に近いプラスと考えられると述べた。』

ここのくだりを読んでいると何か1%より低い所に「理解」の数値を置いている人の方が多そうな悪寒がするのは「政策委員会はマイルドインフレであってもファイターでは」って先入観をあたくしが持って読んでいるからですかそうですか(苦笑)。


○フォワードルッキングが重要と

同じセクションの中から。

『物価の安定について、多くの委員は、2000年10月に日本銀行が示した「『物価の安定』についての考え方」にあるように、「家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」と考えられると述べた。これらの委員は、物価の安定は中長期的に目指すべきものであること、金融政策運営に当たっては、政策の効果波及にラグがあることを踏まえ、フォワード・ルッキングな姿勢で臨むことが重要であることを強調した。』

量的緩和政策解除の翌日に行われた衆議院財務金融委員会での岩田副総裁の答弁にも「金融政策はフォワードルッキング」ってのがあったって話を以前ご紹介しまして、「岩田副総裁もですか」って思ったのですが。勿論、金融政策の波及効果にタイムラグがあるんでフォワードルッキングで政策を打つのが理屈の上ではその通りなんですけど、何と申しますか『フォワード・ルッキングな姿勢で臨む』のは昨今の日銀トラックレコードを勘案すると前のめり攻撃を連想しちゃうんですけど。


○中原委員の反対理由メモ

まあ一応メモとして残しておきます。当然ながら「採決」のところです。

『中原委員は、現状の景気判断においては、多数意見と基本的に相違はないものの、(1)消費者物価指数の実績が安定的にプラスであると判断するには、もう少し検証する方が良いこと、(2)先行き消費者物価がマイナスになることがないかどうかを判断するには展望レポートに準じた慎重な分析と検証が必要であること、(3)今後4月にかけて公表される3月短観その他の指標が解除判断を行うに当たり重要と思われること、(4)期末という市場にとって一つの節目である時期に解除を行うことのリスクが残る一方、これを4月に延期することのコストは殆どないと思われること、から反対した。』

ちなみに、この反対理由に対しては、先ほどの「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」の1番目の部分に載ってますがこんな感じ。

『これに対して、複数の委員は、1、2ヶ月待ったとしても、「約束」の条件の充足について、新たな判断材料が加わるとは考え難いとの見解を示した。また、別の複数の委員は、量的緩和政策は、金融政策の機動性低下や市場機能の低下といった問題を内包する異例の政策であり、「約束」の条件が満たされたと判断される以上、早期に金利を操作目標とする政策に移行することが適当であると述べた。』

このあたりを読んでいるとどうもこう前のめりな香りを感じてしまうのはあたくしの先入観(以下同文)。


○その他景況感でちょっと気になった所を2つほど

まあ景気判断に関連する所はさらっと流し読みしてるんですが、今回は読んでてちょっと気になったのが2箇所あったんで。「II.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」の1番目「経済情勢」から。

『複数の委員は、高額商品の販売が好調であり、株価上昇等の資産効果が出ている可能性があると述べた。』

ま、売れないよりは売れるほうが良いのですが、資産効果で高額商品が好調ってのは資産効果が全体に波及するようなものになっていないって話でもありそうで、ちょっと読んでて何となく気になる所で。

『別の委員は、ウェイトの大きい住居費で帰属家賃の上昇が明確化していることや、労働需給の引き締まりに伴い様々な財・サービス価格に上昇の動きが窺われていること、品質調整で大きく下げてきたパソコンの下げ幅も縮小していることに言及した。』

確かに帰属家賃は上昇してたのですが、どうもあたくしの実感と全然合わないと思ったら木造戸建の家賃上昇が効いていたとやらで、マンションとかはきっちり下がってるんですよね(だと思いましたが、違って居たらゴメン)。

#まあちょっと気になった所でした。

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2006/04/12

○金融政策決定会合で一つ決定されてましたが

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/mok0604a.htm

まあ読んでも何の事だか判らんという人の方が多いと思いますが。

「共通担保資金供給オペレーション」が実施されることになったというのが発表されていました。従来の手形買いオペを7月末までに共通担保を見合いにした貸し出しにしますよというお話(手形売りオペはそのままなんですかね)。

まあこれ自体は元々予定されていた事ですが、このあたりの変更が金融機関の担保繰りにどういう影響を与えるかとか言う話はよー判らんので勉強しておく(多分影響は無いような施策にしてると思うけど)として、それ以外で気が付いたのは今回の措置に伴い「手形買いオペとロンバート貸付が経理上は(たぶん)同じ勘定になった(んじゃないかなあ)」ということですな。

どちらも日銀による貸付(担保付)という扱いになりますが、申し込みの窓口は変更がなければオペは金融調節でロンバートはプルーデンスになりますんで、そこの所は違いますけど、科目上は(たぶん)同じになるのでバランスシートに乗っけても見分けがつかないぜということでして、相変わらずロンバート借り入れに微妙な抵抗感がある(のかどーか知らんが、そういう報道になってますわな)金融機関の皆様におかれましてもこれで堂々ロンバート借り入れが出来るというものです。

ロンバートがきちんと機能しないと短期金利の金利回廊設定が機能してくれないので、今回の措置の副次的効果ではあるんでしょうが、まあ良いお話ですなあと思った次第です。


○過剰解消キター!(4月金融経済月報)

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0604.htm(4月分)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0603.htm(3月分)

例によって見比べるのですが、今回はちょっと言い回しを変えてますね。

総合判断は同じ『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』でして、第2段落の現状判断部分は日銀短観を受けた『良好な業況感も維持される中』ってのが入っている以外はまあ同じです。

先行きは『先行きについても、景気は着実に回復を続けていくとみられる。』というのは同じなのですが、その次の部分が(まあ皆さん注目したでしょうけれども)注目ですわな。新しく入った文言はこんな感じ。

『すなわち、各種の過剰は解消されてきており、企業の雇用不足感が強まるなど、経済活動の水準は高まっている。』

「過剰は解消されてきており」「雇用不足」「経済活動水準が高まる」ですよこれはキタ−−−−−−−−−−−!!って感じですわな。まあ量的緩和解除してるんだからこの位の見立てをしてないと話のつじつまが合わないから当然といえば当然なのですが。

それ以外のところは前回と同じ(物価の現状の所は勿論ちょっと違いますが、これは当たり前なので割愛)で、まあ元々内容的には強い話をしてます。

まああと今回に関しては、あまり気にはしてない金融面のところで、企業金融環境についてちょいとだけ変っていましたのでその点だけ。

『金融面をみると、企業金融を巡る環境は、緩和的な状態にある。』(4月)
『金融面をみると、企業金融を巡る環境は、総じて緩和の方向にある。』(3月)

緩和の方向から緩和的な状態にステップアップですな。


○総裁記者会見メモ

詳しくは本日のテキスト出てから明日にでもということでメモだけ。

債券市場の動向についてブルームバーグニュースおよび今朝のブルームバーグTVで放映されてました。

『もっとも、海外市場の動向とも絡んで、債券市場の一部にボラタイルな動きがみられることも事実だ。日銀としては引き続き金融市場の動きを十分注視していく必要があると考えている』(ブルームバーグニュースより)

ここで注意しなければいけないのは、債券市場の動向について「ボラタイルな動き」と言ってることでして、「金利上昇」と言って無い事です。まあ総裁(あるいは政策委員会)としては経済実態(と思っているもの)にあったメジャードペースな金利の上昇に関して別に文句を言う気は無いっちゅうことでしょうにゃ。ただまあボラタイルに相場が暴れられると問題ですがなって所なんでしょ。もし金利上昇ケシカランと言うのであれば「経済実態から乖離した相場のオーバーシュート」みたいな言い方をしてくるでしょうから。

で、これが某テレビ局の経済お笑い番組の手にかかると「福井総裁、長期金利上昇を注視」というヘッドラインになるわけですな(もしかしたらヘッドラインは注視じゃなくて牽制って書いてたかも知れないけどもう忘れたよあっはっは)金利上昇を牽制した発言でも何でもないんですが、例によって(本当にそうなのか知らんが)海外投資家さまにおかれましては円売りのネタにしたらしく(まあ純粋外国人マネーを日本市場で焼いていただくのは日本国民として誠に結構なお話ですのでどんどん勘違いして焼いてくれ)。ブルームバーグTVでは「債券市場に注視必要」と見出しを打ってましたが、どう見ても
こちらの方が正確ですな。

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2006/04/06

お題「短期金融市場の課題というレポートが出ていました」

月末月初(しかも期末期初)は本業多忙でネタはあれども検証する暇はあまり無く・・・で、今日は日銀が昨日出していた『量的緩和政策解除後の短期金融市場の課題』というペーパーを見ながら雑談。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/mkr/mkr0604.pdf
(PDFファイルです)

昨日日銀金融市場局から出た金融市場レポート追録は短期金融市場が過去(ゼロ金利前)と比較してどういう変化が起きて今後どのような課題がありますかってお話です。さすがに金融市場局が作っているだけに状況をよく把握しておられますな。お勧めなんですけど短期市場に興味がないと何が何だかって所かもしれませんな。

○レポ市場に関して

だいたい書いてあることに異論はないのですが、ちょっと気になったのはレポ市場に関連してのところかなあ。6ページになるのですが。

『レポ・現先市場は着実に拡大してきており、市場機能面で大きな課題がある訳ではないが、敢えて挙げればやや長めのタームの取引が薄い点がある。』

この辺は実際に証券会社で玉繰りをやってる人を横で見てた感覚からすると、ターム物取引の前にレポ市場の厚みというか深みというか、確かに取引高はでかいのですが、市場の懐がそんなにまだ深くないんじゃないのかって気はします。

まあこれは国債の保有主体がメガ化した影響もあるんでしょうが、先日の国債補完貸付で見られたように、何かちょっと相場が下がると現物債のSCレポ取引で玉締め類似行為(微妙に断言しませんが)が横行しちゃったり、大して意味も無く「マーケットで業者のポジションがショートになっている銘柄」を聞きつけて大手だけじゃなくてフツーの投資家さんまでもが特定銘柄ばかりを買いに来て変な価格形成になるとか。まあ何か相変わらず「残高はでかいけどマーケットの懐は浅いんじゃネーノ」という気は思いっきり致します。

GCレポ取引に関しても資金の出し手がバリエーションに乏しいというのは課題ではないかと思う(本来安定的な出し手として登場して欲しい投信とか年金とかがそんなに出ているとは思えない)次第ですが、多分事務が回らない(レポをやるとなると担保値洗いをどうするとかいう話が浮上してくるし)ものと思料。ちなみにSC取引に関しても投信とか年金の保有は基本的に安定保有(アクティブ運用は別ですが)だから本当は安定的な供給主体になる筈ですし、品貸しによって品貸料(正確にはSC取引で入ってきた現金をGC取引で運用して稼ぐGC-SC金利スプレッド分ですが)が入ってくるので本来ならやった方が良い筈なんですが、事務の問題に加えまして、これをやると運用の見かけ上「レバレッジが掛かった」状態になってしまう(=100億円の資金を100億円債券で運用してSC取引に放出して品貸料取りにGC取引で資金運用したら運用額が200億円になってしまいます)ので、これが基本的には出来ない(レバレッジ掛けて運用するって決めになっていれば別ですが、債券の年金運用でレバレッジ掛ける人はまあ殆ど居ないでしょう)という問題点が。。。。。

調達サイドは調達しないとケツに火が点くのでまあ体制整備はサクサク進むのでしょうが、運用サイドに関してはケツが重そうな気がしますな(レポの所ではないですが、別のところでペーパーでも同じような指摘が)純粋資金運用の投信や年金側としてはレポを行ってレバレッジがかかる問題(単純に資金放出してるだけならその問題はないですが)を業界としてどうクリアするか何て話には・・・ならないだろうなあ。

ペーパーにあるように当日スタートのレポ取引も広がると面白いんですが、まあ事務が回らんでしょうな。で、そのあたりの事務が回らないから短期金融市場の機能が回復しないって話に関しては、短期市場の事務体制に金を掛けて間尺に合わない時代が長かったんで、実際問題として短期金利がそこそこついて商売として成立すれば自然と機能回復はするでしょうから無問題だと思う。(市場機能が回復しないから当座預金残高下げられないとか、市場機能を回復させるために利上げするとかいう議論は勘弁して欲しいのですが、笑)


○まとめの部分ですが

で、7ページ目のまとめの部分ですが。

『日本銀行は、量的緩和政策の解除後、数か月程度を目途にしつつ、当座預金残高を所要準備額に向けて削減していくこととしている。削減にあたっては、以上みてきたような問題意識を踏まえ、短期金融市場の動向や機能回復の状況を十分に点検しながら、進めていくこととしている。』

早速クイックでは「短期金融市場の動向や機能回復の状況を十分に点検しながら」って所にスポットをあててヘッドラインを打ってまして、何か如何にも「当座預金残高の削減には時間が物凄い勢いで掛かります」という印象を与えてましたが、まあここの所は「強引に引くことはしませんよ」という意味と理解したほうが良いかと。さっき申し上げたように、市場機能の回復云々と言いましても、現実問題としてゼロ金利状態でわざわざ手間隙掛けて資金の放出をするのは腰の軽い人でして、大体世の中は8月20日過ぎに夏休みの宿題をやるような人が多いっすから、現実に金利が上昇しないと資金の出し手が涌いて出てくる状況にはならないでしょうし。

『また、補完貸付について、現在0.1%である適用金利を据え置くともに、同金利による利用日数に関して上限を設けない臨時措置を当面継続することとした。補完貸付は短期金融市場での安定的な金利形成を目的として設計された制度であり、日本銀行としては必要に応じ躊躇なく利用されることを期待している。』

多分ここの所は活字を大きくして強調したいところでしょう。ロンバート貸出が機能しないと短期市場金利のキャップ(有担保ですから無担保取引のキャップには直接はなりませんけど、まあ有担保でもキャップがあるのは大きい訳で)が機能しませんからねえ。

次世代RTGSの話はスルー致しまして。

『短期金融市場は、金融機関間の資金の過不足の調整の場であると同時に、金融市場調節の場である。したがって、日本銀行としては、短期金融市場の機能がどのようなペースで回復していくのかについて、大きな関心を有している。こうした観点から、市場参加者との意見交換を通じて短期金融市場が今後どのように変化していくのかを把握するとともに、市場参加者の市場機能の向上に向けた取組みを支援していきたいと考えている。』

市場参加者に意見を聞くときには皆さんまあ基本的に自分の都合で話をするという事を割り引いていただくと誠に幸いですので(笑)、できるだけ広範囲の人にお話を聞かれる事を願いたいものです。まあ金融市場局だったらクオンツ系(笑)じゃないと思いますが。

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2006/04/04

○短観はパッと見悪そうですがまあ良いのではないかと

昨日は日銀短観が公表されました。「大企業製造業業況判断DIが+20」という数字が事前予想を下回ってましたので最初は2年ゾーンや金先などが確りしておりました。その後長期超長期やら中期やらもう売り売りで結局先週来弱かった2年の方に鞘寄せされる方向になったんですが、それは兎も角として。

短観のDIですが、毎回(昨年の9月短観はスルーしましたが)似たような所しか見てませんが、今回もちょっとだけ。本当の分析は本職の方のレポートを読みましょう。

・前回からの見通し達成度合い

短観では毎回「向こう3か月の予測DI」が公表されます。で、この数字を見ながら「今回の業況判断DIは前回時点での予測と比べてどうでしたか」というのをチェックするのが人の過去の発言をほじくり返して一々ツッコミを入れるのが好きなあたくしの趣味。(予)は12月短観での予測DIで(実)は今回の業況判断DIです。

製造業
大企業(予)19→(実)20
中堅企業(予)6→(実)12
中小企業(予)6→(実)7

非製造業
大企業(予)17→(実)19
中堅企業(予)3→(実)3
中小企業(予)▲9→(実)▲9

えーっと、12月調査時点での先行き見通しよりも実績が良いではない(か予想通りか)ですか。

・先行きの方向性

ここ1年くらいの推移を見てますと、毎回毎回先行きの予想DIがやや堅めに出る傾向がありまして、基本的にあまり先行きの方向性が揃って改善ってのは見なかった(これを表にするのは面倒なので割愛)というところですな。これを楽観とみるのか先行きに自信ありありと見るのかはその人の強気弱気次第ということで(おい)。

ま、あと付け加えると、大企業のDIが横ばいで中堅企業のDIが何となく良くなってきているという見方もできる(実は非製造業中小企業のDIが前回比悪化してるのが気になるが)訳でして。


・例によって雇用関連

短観(概要)の6ページ目には雇用人員判断のDIが公表されています。で、こちらの数字に関しても上記と同じように12月時点での判断と比較してどうなのよって話をすると、まあ大体予想通りの展開になってるのですが、そもそも12月時点での先行き予想が強気というか雇用人員が不足傾向の方向性が全産業の全規模において出てましたので、雇用関連に関して言えば「予想通り人員不足感が強い」ということでしょう。

例によっておまけですが、7ページにある金融機関の雇用人員判断を見ますと何か夢のような「不足」数字なのですけど(笑)。


○補完貸付2度目の実施

昨日は日銀による国債補完貸付が行われました。銘柄は10年252回。先物のチーペストでして、ここの所どうも業者のショートが深くなっていると申しますか、どこかでせっせと買って貸し渋っているアホウがいるようで無茶苦茶なレポレートになっていたりしたようで。

まあ日銀もこれは50億円しか持ってないので25億円しか貸出できないのですが(よって量の問題で言えば焼け石に水)、まあ「スクイーズしてるんじゃねえ」という意思(?)が伝わると大変に結構なのですが。

つーかフェイルも相変わらず業者間以外では碌に定着せずの状態で、スクイーズの規制も無しでこれ以上国債決済の期間短縮はマジで無理では無いかと思う(日銀や金融庁は決済期間を短縮化させたいらしいのですが)んでこの辺り何とかならんかねって思う期初でありました。

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