決定会合議事要旨や金融経済月報などについて
(2009年度下期に書いた分)

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2009年下期の見出し

2010/03/31「3月月報は景況感を引き上げていますなあ」
2010/03/24「2月会合議事要旨より」
2010/03/18「緩和しているのに声明文は上方修正」
2010/03/03「短観のCP計数が実際の発行企業への集計分を追加した件について」
2010/03/02「金融経済月報(2月)の本文を前月分と比較してみるの巻」
2010/02/24「1月会合議事要旨は特に大ネタは無いものの、マインドのスパイラル悪化を懸念」
2010/02/22「月報は企業物価を上げているけれども消費を下げています」
2010/02/19「声明文は1月と見事に同じ」
2010/02/08「12月定例会合の議事要旨から(続き)」
2010/02/02「12月定例会合の方の議事要旨から」
2010/02/01「12月臨時会合の議事要旨から、苦しい理屈ですなあ(棒読み)」
2010/01/29「月報に特に大きな変化無し」
2010/01/27「決定会合レビュー」
2010/01/20「新興国バブルに関する日銀レビューとな」
2010/01/19「さくらレポートはデフレ話」
2010/01/18「決済システムレポートから」
2010/01/15「生活意識アンケートから」
2010/01/13「バーゼルの総裁・長官会議声明」
2009/12/30「12月金融経済月報」
2009/12/29「11月金融政策決定会合議事要旨から」
2009/12/28「12月会合声明文比較」
2009/12/21「物価安定の理解の明確化が出ました」
2009/12/16「今更ですが10月30日の決定会合議事要旨」
2009/12/15「短観の与太分析」
2009/12/02「臨時政策決定会合が開催されました!!」
2009/11/24「決定会合声明文、語順が変わったり足元判断を引き上げたり」
2009/11/20「白塚さんの作成した非伝統的金融政策に関するディスカッションペーパー(その2)」
2009/11/19「白塚さんの作成した非伝統的金融政策に関するディスカッションペーパー(その1)」
2009/11/12「金融危機の波及に関する日銀レビュー」
2009/11/11「WP関連補足」
2009/11/10「CP買現先の効果が23bpはさすがに無いと思うが」
2009/11/06「10月14日の決定会合議事要旨から」
2009/11/02「決定会合レビュー」
2009/10/30「銀行貸出ルートの機能が低下すると金融政策効果が落ちるという話」
2009/10/20「9月会合では企業金融改善の議論と物価低迷の議論を」
2009/10/19「月報はやはり上方修正/決済フォーラムから」
2009/10/15「決定会合声明文はあまり前進してなさそうですが」
2009/10/08「生活者意識アンケートでは物価見通しが意外に下がらない」
2009/10/05「短観のいつもの分析/フェイルに関する日銀ペーパー」
2009/10/02「保振のCPレート公表開始/短観は個別の内容をみるといまいち(説明だけ)」

2010/03/31

○すっかり忘れていましたが金融経済月報

いやまあ忘れてた訳ではないですが。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1003.pdf(3月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1002.pdf(2月)
PDFでページ数が多いのでご注意ありたし。

例によって手抜きで概要部分だけですが、これがまた概要の所だけ見ていると上方修正にしか見えない所がチャーミング。

・現状判断

まずは現状判断部分。

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

という所は同じでして、需要項目別の展開で言えば、設備投資と住宅投資の判断を引き上げて、公共投資の判断を下げています。

『設備投資は概ね下げ止まっている。』(今回)
『設備投資は下げ止まりつつある。』(前回)

『住宅投資は下げ止まりつつある。』(今回)
『住宅投資は下げ止まりの動きがみられている。』(前回)

『公共投資は減少している。』(今回)
『公共投資は頭打ちとなっている。』(前回)

まあ低い水準中での話ではありますが(−−)


・先行き見通し

で、先行きに関しても総括判断の、

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』(今回)

というのは変わらないのですが、先行きに関しての需要項目ですが、設備投資の所で企業収益の水準を引き上げています。

『設備投資は、収益が回復しているものの、設備過剰感が強いことなどから、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。』(今回)
『設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。』(前回)

ということで収益の回復という話になったのですが、ところでこの「など」というのはどういう意味があるのでしょ?

で、公共投資の先行きは引き下げていますが、まあこれは上記の現状判断と同じ話ですので引用割愛します。


・物価

物価に関してはこれまた現状判断や見通しに関しての基調判断は変わっていないのですが、経済全体の需給バランスに関しての表現が微妙に上方修正されているのでありまして。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(前回)

ということで、経済の需給バランスが「緩和」から「緩和状態」となったのは毎度の上方修正パターンでございます(^^)。


・金融環境

殆ど変っていないのですが、その中でしらっと緩和政策の緩和度合いに関する表現を前進させているのはこれまたお洒落。

『実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』(今回)

『実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果はなお減殺されているものの、その度合いは和らぎつつある。』(前回)

ということで、企業収益の上方修正を受けて金融環境に関しても、緩和政策の効果がより出るようになってきましたという上方修正をしているのは何気にポイント高いと思います。まあ実際にそうなのですかねという話は置いときまして、ですけれどもね。

#ということで虫干しネタでどうもすいません

#しかし期末になると帳尻合わせのように日銀から色々なレポートが出てくるので読むのに出るのが(出るのに読むのがのタイポです)追いつかないですぅ

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2010/03/24

では続いて2月の金融政策決定会合の話をほんの少々なんですがね。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100218.pdf


○まあ2月の時点で何かやらないとという話があるのは把握した

だったら国会とかで白川総裁は原則論を展開してばかりというのもどうなのかと思うのでありまして、この前悪態を申し上げましたように、外野から見た場合には「原則論を披露」→「政治が差し込む」→「あっさり陥落」としか見えないので、どっからどうみても政治やら市場が追い込みを掛けるとその通りに動くとしか解釈のしようが無いのであって、それはやはり日銀の見せ方として上手くないと思われます。

とか何とか考えますと、やはり中央銀行の総裁には良い意味でのインチキな所が必要なのであるかと思われる次第でありまして、まあ平常時ならそんなにインチキパワーは必要じゃないのでしょうけれども、どっからどう見ても政治家の風格が漂うバーナンキ先生のロジック整合性もへったくれも無い堂々の姿勢(誉めてますので念の為^^)を拝見するに、平常時じゃない時に原則論を披露してばっかというのも如何な物かと思われる所でございます。

で、その該当部分は『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』です。

『先行きの政策運営について、委員は、わが国経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく必要があるとの見解で一致した。その上で、委員は、金融政策運営に当たっては、金融市場における需要を十分に満たす潤沢な資金供給を行うとともに、極めて低い金利水準を維持することを通じて、極めて緩和的な金融環境を粘り強く確保していくとの考え方で一致した。』

まあここまではいつもの話。で、その次ね。

『この間、複数の委員は、企業経営者の間で、中長期的な成長戦略が描きにくく、焦燥感が強まっている結果、金融政策への期待が高まっていると述べた。』

ふむふむ。

『この点に関し、何人かの委員は、本格的な回復には、生産性を高めることが不可欠であると指摘した上で、これを金融政策面からも下支えするため、必要と判断される場合には迅速・果断に行動していく必要があるとの見解を示した。』


なるほど。この辺の指摘を誰がしたのかなというのは興味がある所ですが、10年経たないと判らないのが残念な所ですな。



○プロセスが良くてもパフォーマンスが悪ければ意味がないのですが

という小見出しが微妙に琴線に触れた貴殿は(以下自主規制)。

あと、金融政策に関する最後の部分で、インフレターゲットがどうのこうのという話をしているのですけど・・・・・

『委員は、現在、日本銀行が採用している金融政策運営の枠組みと、インフレーション・ターゲットとの関係についても意見を交換した。』

まあ要するにこの件ってあたくしが思いまするに、「物価指数は遅行指標だし、金融政策の効果も遅行性があるので、物価指数を単一の目標にして機械的に金融政策の上げ下げを行っていると(安定している時にはいいけど)ぶれ出すと緩和にしても引き締めにしても全部後追い&やり過ぎになりますね」という話が「目標値」に対する問題じゃないかねという希ガス。

で、期待の安定化とか言う意味で言えば、硬直的なターゲットではなくて物価安定の理解みたいなもんでも用は足りると思うのですが、日本の場合はそれによって示されている数値に糊代が足りないのではないかという議論をするともうちょっと論議が発展すると思うのですがどうなんでしょうかね。

それは兎も角。

『何人かの委員は、今回の金融危機の経験を踏まえ、インフレーション・ターゲットの枠組みが持ちやすい短期的な物価の動向に焦点を当てて政策を考えていくというバイアスをどのように克服するかが、金融政策運営を巡る、国際的な議論の俎上にのぼっていることを指摘した。』

ここでは短期的な物価変動の変化がどうのこうのという話をしているということですが、一時的な要因での上げ下げのノイズを除去する話はどちらかというとテクニカルな問題のような気がするんだが。まあいいけど。

『このうちの複数の委員は、いわゆるインフレーション・ターゲットの採用国・非採用国とも、@ 物価安定に関する数字的な目標や定義、理解の公表、A 先行き数年間の経済物価見通しの公表、B 中長期的な経済・物価・金融の安定の達成をより重視することへの認識の高まり、という点で、共通した柔軟な枠組みになってきていると指摘した。』

まあBOEは金利の上げ下げ(やら量的緩和政策やら)をCPI通りにやっていたらエライコッチャになっておりますが、そこは財務大臣に詫び状1枚で(・∀・)キニシナイ!という所ですからね(そのBOEの2月と3月のMPC議事要旨での議論の豹変が凄いのですがその話は後日)。

で、ツッコミどころは最後。

『この点に関し、別の複数の委員は、日本銀行の金融政策運営の枠組みは、物価の安定だけでなく、金融的な不均衡の蓄積等の様々なリスクにも目配りできるなど、従来のインフレーション・ターゲットを進化させたものであり、最近の国際的な議論を先取りしたものであると付け加えた。』

・・・・・orz

いやまあ確かに枠組みの作り方とかはリードしてます(キリッ!)というのは判らんでも無いのだが、現実問題として(政府が足を引っ張ってる面も多々ありますが)物価見通しが延々とマイナスという状況は状況としてある訳でして、まるであの何と申しますか、金融業界でよく散見される事案と致しまして、「このような最新の金融理論に基づいた投資手法を用いまして・・・」とか宣伝しながら結果がアレなアレとかが御座いますが(汗)、それに極めて似たテイストを感じるのは気のせいですかそうですか(-_-メ)。


○リスクバランスはこれを見るとバランスよりも下のような気がするが

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の中でリスク認識の話があったのですが・・・・

『わが国経済のリスク・バランスについて、何人かの委員は、リスクはバランスしつつあるとの認識を示した。』

バランスしつつあるというのはまだバランスしていないという話ではないかと思うのですが・・・・

『複数の委員は、景気の下振れリスクは相応にあると述べ、このうちの1人の委員は、特に今年の夏場まではショックに対してかなり脆弱な状態が続くことに注意が必要と述べた。また、何人かの委員は、海外への直接投資の増加による国内での設備投資の圧縮や、企業の根強い賃金抑制姿勢による家計所得の伸び悩みなどから、好循環メカニズムが想定どおり作動しないリスクがあると述べた。』

まだショックに対して弱いとか、企業収益が回復しても国内投資や個人セクターへ回らないとか、パッとしない話なんですよね。

『一方、ある委員は、全体としてリスクはバランスしているとの認識を示した上で、下振れリスクだけでなく、新興国のバブルと商品市況の上振れリスクにも配意する必要があると述べた。』

・・・・ということで、ここら辺を見ているとあまり「リスクはバランスしている」という感じでも無い様な気がするんですが、この辺がいまいちよー判らんのでございまする。

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2010/03/18

どう見ても政府の押しこみです本当にありがとうございましたorz

○という訳で週2回8000億円でした

今回声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf

『2.日本銀行は、昨年12 月、金融緩和の一段の強化を図るため、固定金利方式の共通担保資金供給オペレーション(固定金利オペ)を新たに導入し、やや長めの金利の低下を促す措置を実施してきている。4月以降、企業金融支援特別オペレーションの残高が漸次減少していくことを踏まえ、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することとした(注2)。』

で、この注2というのが反対2票という事ですが(^^)。

「やや長めの金利の低下を促す措置の拡充」ってえのですから追加緩和は追加緩和という事になりましたが、企業金融オペの代替に熨斗を付けて10兆円増額という理屈でやってきました。まあこれで「期末対策」とか言い出さなかっただけマシでしたが、4月になると特オペの残高が減るから実施するので3月に決定したというのもまあ頑張って理屈作りましたなという感じです。と申しますのも特オペの日程がこの通りでして。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0912b.pdf

何の事はない実はまだ特オペってあと1回実施されるんですけど、まあ確かに4月1日からは落ちていくのでその落ちの前に実施を決めるという意味ではこのタイミングという事になりますわな。そう考えるとどう見ても期末対策でも何でもないので、それを言わなくて良かったねという所ですが。


○で、反対2名とな

『(注2)須田委員および野田委員は、本文中、固定金利オペを大幅に増額することにより、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充することについて、反対した。』

野田さんに関しては4日に講演を行ったら翌日の5日の日経朝刊にあの記事でございまして、あまりといえばあまりの展開になってしまいましたが、講演および会見で説明していたロジックを敷衍すれば反対というのは態度として一貫しています。須田さんも先日のシンポジウムか何かでの発言からしたら反対しても不思議では無かった所ですので、まあ反対になったんでしょう。

為替市場は最初この反対2名に反応したのか、単に市場予想通りの結果であったことから一旦材料が出尽くしただけなのか良く判りませんが、最初円高という反応をしましたが、その後は円安方向に振れた(ったって90円台の中での動きで誤差の範囲内だが)というややこしい反応で、最初の円高を見て為替系の何とかストとかの皆さんが情報ベンダーにコメントした記事が円安に振れ出した14時ごろに続々と出てきたのには爆笑の発作を禁じ得ませんでした(^^)がそれは兎も角。


しつこく申し上げておりますように、本来の政策枠組みがどうのこうのという本筋の話をするのであれば、4月から宮尾委員が加わる事でもありますし、展望レポートに物価安定の理解の確認という所で、例えば物価安定の理解に関して下限上限の表現を取っ払う(=中心値の1%だけ出す)とか下限のプラスの領域というのを引き上げるとか、そーゆーのが筋であって、正直本件はどうでも良い話だと存じますということで、筋論としての反対が入ったという事でしょう。大体からして景気認識に変化無いのに追加緩和とか筋通ってないし。

須田さんはやや微妙ですが、野田さんの場合は従来の講演での発言などを見ますと、金融機関の不良債権問題が経済に与える影響の長さや深さについて(銀行界出身だけに)より強い懸念を持っていると思われますので、別にタカ派は無いと思われます。で、その野田さんが反対したのは筋論で反対したという風に思えるのですが、これは議事要旨や議事録を見ないと何とも言えませんけどね。


○声明文の景気判断は上がっているのですが・・・・

まあここもとの経済指標全般的に強いですもんね。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100218.pdf(前回)

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

というのがそもそも変わっていませんし、その後もここまでは同じです。

『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)

で、その後が設備投資で上方修正。

『設備投資は概ね下げ止まっている。』(今回)
『設備投資は下げ止まりつつある。』(前回)

個人消費は変わらずで、公共投資を下げています、ってつまり政府は足を引っ張っているだけだというのが良く判りますな(-_-メ)。

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は減少している』(今回)

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなっている。』(前回)

金融環境は変化なし。

『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(今回)

物価認識では経済全体の需給に関する言及に変化が(^^)。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(前回)

これはまた微妙な文学ですが(^^)、緩和というのが緩和「状態」になるのは、超微妙な上方修正で、縮小傾向を「続けている」というのはこれまた微妙ですけれども、物価下落幅の縮小がトレンドになっていますよというアピール感は伝わって来るのであります。


○声明文の先行き判断とリスク要因は見事に同じ

なので引用だけ。

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

毎度見ているのでしまいには暗記しそうです(^^)。で、決意表明文では今回の措置に言及している部分は当然違うのですが、その他では「今後とも」という文言が入っているのがチャーミング。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。今回のやや長めの金利の低下を促す措置の拡充もこうした方針に基づくものであり、金融政策運営に当たっては、今後とも、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(前回)

さてこの「今後とも」とは何ぞやという所ですが、英文での声明文を見るとこのようになっております。該当部分だけ引用(^^)。

http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc10/k100317.pdf
『in the conduct of monetary policy, the Bank will continue to aim to maintain the extremely accommodative financial environment.』(今回)

http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc10/k100218.pdf
『In the conduct of monetary policy, the Bank will aim to maintain the extremely accommodative financial environment.』(前回)

「continue to」というのが入りましたな(^^)。

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2010/03/03

○短観のCP計数に関して

http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr10/nttk30.htm
短観の「CPの発行環境」に関する参考系列の公表開始

『短観(全国企業短期経済観測調査)では、現在、調査項目の一つである「CPの発行環境」について、「回答企業がCPを発行する場合の全般的な発行環境についての判断」と定義し、実際のCP発行の有無にかかわらず、全ての企業に回答を依頼しています。』

そうなんですよね。

『こうした中、統計ユーザーから、CP発行実績がある企業に対象範囲を限定した「CPの発行環境」について高い関心が寄せられていることを踏まえて、2010年3月調査から、参考系列として「CPの発行環境(発行企業ベース)」の公表を開始することにしましたのでお知らせします。』

これは大変にアリガタヤなお話。あたくしは「この数字参考にならんがな」と最近あまり真面目に見なくなった訳ですが。で、過去の計数がこちらに。

http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr10/data/nttk30.pdf

で、これを過去の数値(CP発行しない企業まで含めた数値)と比較すると非常に味わい深いものがございます。数字は過去の短観からあたくしが手で拾って来たものなのでよろしゅうに。

    (発行企業ベース)(全企業ベース:従来の公表値)
2009年12月  +24      ▲9
2009年09月  +23     ▲11
2009年06月  +15     ▲14
2009年03月  ▲22     ▲24
2008年12月  ▲55     ▲20
2008年09月  +13      +1
2008年06月  +18      +3
2008年03月  +17      +3

・・・・ということで、調査時点のタイミングとかを考えますと、一昨年の10月末の利下げにも関わらずCPレートやらGCレートやらが上昇するという無茶な展開になり、特にCPレートがエライコッチャになっていた状態や、昨年の2月後半あたりからの急速なCP発行環境の改善や、4月以降のCP市場亜空間状態とかを物の見事に反映した数値になっているという実に味わいのある数値になっています。

まあ日銀様におかれましては当然ながら内部ではこの分析はしていたのではないかと存じますけれども、CP市場がどうしたこうしたで大騒ぎしていた時期に出して頂きとうございましたが、まあ今まで出していなかった物が出てくるのは良い傾向。

とはいえ、参考系列扱いで発表当日には出ないし時系列統計データ検索サイトにも反映されないのが微妙に残念感を漂わせているのですけれども、無いよりは良い話なので今後ともよろしゅうに。ま、ただの趣味で手元で計数保存しておきますけどにゃ。

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2010/03/02

ということでお題の件ですが、金融経済月報の本文を珍しく1月と比較してみたりしたのでその辺りから。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1002.pdf(2月月報)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1001.pdf(1月月報)

でまあいつもは概要の部分を比較するのですけれども、今日は珍しく本文の方を読んでみます。と言いましても本文は全部で10ページもありますのでそれを一々比較していると

○個人消費の部分が割と下がっているのだ

輸出、生産、設備投資に関する部分でも微妙に表現が変わっている部分がある(実質輸出と実質輸入が両方とも強めになっているのはまあ傾向としては良い話なんでしょ、ネットの純輸出は同じ表現ですけど)のですけれどもそこはスルーして個人消費の部分から。

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している(図表12、13)。まず、財消費の動きを小売業販売額(実質)でみると(図表12(1))、10〜12 月は3四半期連続の増加となった。』(2月)

という所までは1月と(当然ながらデータが1か月前の物になるので、1月の表現は11月までのデータを基にしている点が違いますけれども、現状の認識はここまで同じということです)です。

『耐久消費財についてみると(図表12(2))、家電販売額(実質)は、エコポイント制度などを背景に、薄型テレビを中心に増加を続けている。ただし、単月でみると、前月比マイナスが2か月続くなど、増加テンポは一頃に比べて緩やかになってきている。』(2月)

『耐久消費財についてみると(図表12(2))、家電販売額(実質)は、11 月は前月比減少となったが、均してみると、エコポイント制度などを背景に、薄型テレビを中心に大幅な増加を続けている。』(1月)

ということになっていまして、増加は増加ですけれども、そのテンポが緩やかになっており、「大幅な増加」→「増加」となっていますが、まあ要するにこれって政策による刺激が徐々に弱まっているという話になるんでしょうかね。


『乗用車の新車登録台数(除く軽自動車)は、減税や補助金の効果などから、急速に回復したあと、足もとは横ばいの動きとなっている。』(2月)

『乗用車の新車登録台数(除く軽自動車)は、昨年3月まで大幅に落ち込んでいたが、4月以降は減税や補助金の効果などから急速に回復している。』(1月)

こちらも下げと。

『一方、全国百貨店売上高、全国スーパー売上高、コンビニエンスストア売上高は、一頃に比べて減少ペースが和らぐ兆しもみられるが、減少傾向を続けている(図表13(1))。』(2月)

『一方、全国百貨店売上高、全国スーパー売上高、コンビニエンスストア売上高は、数量および単価の弱さを反映して、減少傾向を続けている(図表13(1))。』(1月)

「数量および単価の弱さ」という部分が抜けてやや改善。


『サービス消費をみると(図表13(2))、10〜12月の旅行取扱額は、雇用・所得環境の厳しさが続く中、シルバーウィークなどにより押し上げられた7〜9月から減少した。外食産業売上高は、客単価の落ち込みを主因に、減少傾向にある。』(2月)

『サービス消費をみると(図表13(2))、10〜11 月の旅行取扱額は、雇用・所得環境の厳しさが続くなか、シルバーウィークなどにより押し上げられた7〜9月から減少した。外食産業売上高は、10 月は販売促進策の奏効などから、幾分持ち直す動きとなっていたが、11 月は客単価の落ち込みが響き、大きく減少した。』(1月)

こちらは引き続き減少傾向が続くとあまり良くないお話で。


『財について生産者段階で包括的に捉えた消費財総供給をみると、耐久消費財(自動車)の動きを反映して、10〜12 月は3四半期連続の増加となった(図表14(1))。需要側の統計について、家計調査の消費水準指数(実質ベース)を、GDPの推計に利用される品目にほぼ限定した「除く住居等」のベースでみると(図表12(1))、7〜9月に続き、10〜12 月も増加した。一方、家計消費状況調査の支出総額(二人以上の世帯、実質ベース)は、7〜9月まで3四半期連続で増加したあと、10〜12 月は減少した。』(2月)

ここの部分はデータがアップデートされた分以外の現状認識に変化はないです。


『この間、消費者コンフィデンス関連指標は、総じて一進一退の動きとなっている(図表15)。』(2月)
『この間、消費者コンフィデンス関連指標は、昨年末にかけて、改善が頭打ちないし幾分悪化する動きとなった(図表15)。』(1月)

頭打ちないし幾分悪化したものが一進一退なので水準はあまり変わっておらず、方向性としては若干改善という事ですな。というのを踏まえた結論が・・・・

『先行きの個人消費は、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。』(2月)

『先行きの個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続く中にあっても、当面、各種対策の効果などから、耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い。』(1月)

ということで、この結論部分だけは概要の所にありましたので、先日比較して「下げましたねえ」という話になった訳ですが、こうやって中身を見ておりますと割と下げているなあという感じがしますがどうでしょ。特に最初の辺りですけれども、各種政策による刺激効果が剥落するという話になっている辺りがマズーな感じがします。


○鉱工業生産関連は割と引き上げてます

その次の住宅投資は総じて同じ。持ち直しの明確化には時間が掛かるという表現が入っているので、方向性は変わらないものの水準感およびその角度に関しては厳しい見方なんでしょう(引用割愛)。

で、鉱工業生産なのですが。

『鉱工業生産は増加を続けている。』(2月)
『鉱工業生産は、内外の在庫調整の進捗や政策効果を背景に、増加を続けている。』(1月)

前月比ベースで10か月連続増加と強いのですけれども、在庫調整の進捗と政策効果という部分が抜けているので微妙は微妙。まあ普通は余計な言葉が無い方が上方修正なのですけれども、さっきの所でも政策効果が抜けているのですよね。

出荷に関して。

『出荷も、10〜12 月の前期比は+5.2%の増加となった。出荷の動きを財別にみると(図表18)、耐久消費財や生産財は、昨年初の水準から大幅に回復している。資本財は、低水準ながら持ち直している。建設財については、引き続き弱めの動きとなっている。非耐久消費財は、横ばい圏内で推移している。』(2月)

『出荷も、4〜6月、7〜9月と増加したあと、10〜11 月の7〜9月対比は+4.7%の増加となった。出荷の動きを財別にみると(図表18)、耐久消費財や生産財は急回復しているが、生産財の回復ペースはこのところ幾分鈍化している。資本財は持ち直しつつある。建設財については、引き続き弱めの動きとなっている。非耐久消費財は、横ばい圏内で推移している。』(1月)

生産財を若干下げて資本財を若干引き上げていますな。


在庫に関して。

『在庫は緩やかに減少している。財別に出荷・在庫バランスをみると(図表19)、耐久消費財、電子部品・デバイス、その他生産財(化学、鉄鋼など)は、出荷の持ち直しもあって在庫調整圧力が解消している。また、資本財(除く輸送機械)も、在庫調整圧力はほぼ解消している。一方、建設財は、出荷の落ち込みを背景に、在庫調整圧力が依然大きい状態にある。』(2月)

『在庫は緩やかに減少している。財別に出荷・在庫バランスをみると(図表19)、耐久消費財、電子部品・デバイス、その他生産財(化学、鉄鋼など)は、出荷の持ち直しもあって在庫調整圧力が解消している。また、資本財(除く輸送機械)も、在庫調整圧力はかなり減衰している。一方、建設財は、出荷の落ち込みを背景に、在庫調整圧力が依然大きい状態にある。』(1月)

ということで、在庫に関しては「在庫調整圧力はほぼ解消している」というのが上方修正ですな。で、その先行き見通しですが。

『先行きの生産については、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、輸出同様、増加基調を続けると予想される。企業からの聞き取り調査によると、1〜3月は、伸び率が鈍化するものの、増加を続けると予想されている。』(2月)

『先行きの生産については、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、輸出同様、増加基調を続けると予想される。企業からの聞き取り調査によると、1〜3月は、伸び率が鈍化するものの、増加を続けるとの感触にある。もっとも、4〜6月以降の需要見通しについては、引き続き不確実性が大きい。』(1月)


ということで4〜6月期の需要に関しての不確実性が大きい云々がばっさり削られていますので、そういう意味では増加基調に自信を深めたという事になるので、これはこれで結構な上方修正ですな。


○ということでどうなんだと言うとこれが良く判らんのですが

消費の現状判断および先行きを下げる中で鉱工業生産は在庫調整終了&先行きは引き上げという事でありますので、トータルするとどっちなのかよー判らんのですが、要するに「外需次第」という話になると思いますけど、何となくシロート的に考えると、消費の先行き見通しを厳し目にする中で他の物が良くなるという話にも無理があるような気がするんですけど・・・・とは思います。

で、その辺りが消費者物価の先行き見通しに反映されているのではないかと思いますけれども、これは概要部分にもあったのですが。

『消費者物価の前年比は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(2月)

『消費者物価の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、石油製品価格が押し上げに働くことなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(1月)

需給バランスの改善という文言が入ったのが大きいのですが、一方で目先に関しては1月よりも見通しを下げているという器用な事をしていまして、この辺りが見通しをどう置くのかという所で微妙な匙加減というか味付けをしているというような所なのではないかと勝手に予想するのでありました(^^)。

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2010/02/24

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g100126.pdf

まあそんなに驚くようなネタは無いのですけれども少々。

○マインドの悪化と中長期的なインフレ期待に関連して

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から幾つか。

『こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。。委員は、輸出や生産の増加や、個人消費の持ち直しを背景に、わが国の景気は持ち直しているとの認識で一致した。また、委員は、これまでの景気の持ち直しは、内外における各種対策や在庫復元の動きに支えられたものであり、民間需要の自律的回復力はなお弱い状況が続いていると述べた。』

というのはまあ基本的な話で、まあ政策次第ですねという話ですけれども、企業マインドがどうのこうのという所がほほうという感じでございまして。

『また、何人かの委員は、業況の改善度合いに比べ、企業マインドの改善が弱いことを指摘した。これらの委員は、企業が中長期的な成長ビジョンを描けていないことが背景にあるのではないかと述べ、こうした慎重な企業マインドが設備投資等に与える影響を注視する必要があると指摘した。』

・・・・うーむ、パッとしない話ですが、これがまた個人消費でもマインドの悪化についての指摘が。

『ただし、複数の委員は、冬季賞与の大幅減少やデフレを巡る議論などを受けて消費者マインドが悪化している点も踏まえると、先行きの消費持ち直しのペースは慎重にみておく必要があると指摘した。』

対策も打たずにデフレ宣言ですからねえ。宣言するならどどーんと補正予算出すとかポンチ絵じゃない説得力のある成長政策もセットにするもんでしょ。少なくともローゼンはやってましたけどねえ。

『ある委員は、厳しいグローバル競争を背景とした企業の賃金抑制姿勢などを踏まえると、企業部門の好転が家計部門にも徐々に波及していくというメカニズムが期待通りには働かない可能性もあると述べた。』

こっちはマインドの話では無いですけれども、物価予想に関る話に繋がるので引用しやした。で、この論点って前回の回復局面でも同じような事象が発生していた訳でして、ダム論とか染み出し効果みたいな話は絵に描いた餅になりやすい話ですわな。

で、消費者物価ですけど。

『物価の先行きに影響を及ぼす要因として、中長期的な予想物価上昇率や企業の価格設定行動についても議論が行われた。』

『何人かの委員は、最近、アンケート調査で、消費者の短期的な予想物価上昇率が低下している点を指摘した。この要因として、複数の委員は、昨年夏場にかけて物価下落幅が拡大したことや、秋以降にデフレを巡る議論が活発になったことが、消費者の見方に影響を与えた可能性があると述べた。もっとも、複数の委員は、これまでのところ中長期的な予想物価上昇率はさほど低下していないと指摘した。』

・・・・と、議事要旨の中ではさらりと片付いていますが、実際問題としてマインド悪化が直撃したら中長期的な物価期待ってやっぱり下がるもんであって、そういう意味で言えば「物価下落」→「マインド悪化」→「マインド悪化の結果更に物価下落」のスパイラル一歩手前にいるのではないかと思うのですが。まあマインドが極端に悪化しないのは何だかんだと言っても株価とか為替とか世間的に判りやすい市場価格が持ちこたえているからのような気がする。全く根拠は無いけど。


○企業活動が戻っても賃金が上がらないのではないかという論点

さっき引用したあたりに雇用所得環境に関する部分もありまして。

『ある委員は、高水準の雇用保蔵などを背景に企業の雇用過剰感が強いほか、賃金に対する企業経営者の厳しい姿勢も窺われており、今後景気が持ち直しても、雇用者数や所得の増加に繋がりにくい可能性もあると述べた。』

で、さっき引用した

『ある委員は、厳しいグローバル競争を背景とした企業の賃金抑制姿勢などを踏まえると、企業部門の好転が家計部門にも徐々に波及していくというメカニズムが期待通りには働かない可能性もあると述べた。』

というのもありますし(同じ人が指摘しているのだと思いますが)、まー雇用所得環境が改善するのは時間掛かるんじゃないかというのと、ダム論的な話も中々難しいという所かと存じます。とは言いましてもまあ企業活動を上向きにしない事にはそもそも話が始まらない所でありますので、是非企業経営者の皆様におかれましては活動を上向きにする段階で賃金をですな、っていつの間にか自分の都合の話を(汗)。

まあ冗談は兎も角、じゃあ企業から召し上げて個人に回したとしても、企業活動が委縮して雇用環境が悪化したら意味無いですから、この話からいきなり企業ケシカラン攻撃という現政権が斜め上モードにならないように願いたいものでありまする。


○先進国の金融緩和が新興国のバブルをどうのこうの

海外の経済情勢のところでの話ですが。

『先行きを巡るリスクについては、何人かの委員が、金融緩和を続ける先進国からの資金流入の増加などが、新興国経済の過熱や、その後の巻き戻しに繋がる可能性に留意する必要があると述べた。』

まあこれは月報やら展望レポートやらにもある話ですけれども、いやあのそんな先の心配するよりも目先の下振れリスクの方を心配するんじゃないのでしょうかという気がする次第ですけど、実は(話が議事要旨ネタじゃなくて総裁会見ネタになりまして恐縮ですが)総裁会見でこんな話をしてたんですな。

『もう1つ私どもが強調していることは、先程、先進国の金融緩和が新興国に波及するということを申し上げましたが、そのことがまた日本も含めて先進国の方に戻ってくるということです。外需を完全な外生変数として扱うという議論がよくあります。確かに相当部分が外生であるというのは、多くの場合その通りですが、すべてが外生ではなく、先進国が全体として行っている金融緩和の効果が、自らにブーメランの様に跳ね返ってきているという面もあるわけです。色々なかたちで金融緩和の効果が浸透中であるといえます』(2月18日の白川総裁記者会見より)

・・・・まあ「先進国の金融緩和が新興国のバブルがどうのこうの」といういつもの話からはトーンダウンした話で誠に結構だと思うのでありまして、バブル懸念がどうのこうののネガティブ話よりも足元および目先はポジティブ話なんじゃないですかと思うのであります。

とまあ大体そんな感じで。新型オペの効果の話もあったけど、まあ議事要旨の通りかと存じます。

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2010/02/22

ではまず月報比較から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1002.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1001.pdf(前回)

例によって手抜きで概要部分のみ。

○先行き見通し項目別展開が微妙に違う

ということで、現状判断部分は声明文通りです。一応引用。

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりの動きがみられている。この間、公共投資は頭打ちとなっている。』

この部分ですが、声明文と同様に公共投資の部分が『なりつつある』から『なっている』に変わっただけです。で、先行き見通し。

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。』

という所までは同じですが、ここから微妙に変化。

『設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。個人消費も、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。』(今回)

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続く中にあっても、当面、各種対策の効果などから、耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い。一方、設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。』(前回)

この部分を鑑賞致しますと、個人消費の見通しを下げている(『耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い』→『当面、横ばい圏内で推移』と変化)のが当然ながら下方修正なのですが、語順に変化がありまして、前回は個人消費は明るいけれども設備投資はイマイチですねという書き方だったのが、今回はどっちもイマイチということで、パッとしませんなあというイメージを強くさせているのもチャーミング。

『この間、公共投資は、次第に減少していくとみられる。』

というのは前回と同じです。


○物価はちょこちょこと訂正

まずは現状認識。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く一方、既往の国際商品市況高の影響から、足もとは強含んでいる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、幾分弱含んでいる。』(前回)

ということで「既往の国際商品市況高の影響」による強含みとな。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(今回)

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』(前回)

消費者物価の方の結果は同じですが、「影響が薄れてきたことなどから」が抜けるとは何でじゃろ(って全文読めば良いのですが^^)。

で、次は先行き見通し。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、強含みないし横ばいで推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、製品需給緩和の影響が続く一方、国際商品市況の上昇が押し上げに働くことから、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。』(前回)

ということで強含みキタコレ。


『消費者物価の前年比は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『消費者物価の前年比は、石油製品価格が押し上げに働くことなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(前回)

ここでは「需給バランスの改善」というのが出てきたのが「おお!」という感じですが、出来上がりの数値に関しては「現状程度の下落幅で推移したあと」に下落幅縮小となっているので、需給バランスは改善するものの、下落幅縮小には少々時間が掛かるというややこしい結論に。まあデフレ宣言以来のマインド悪化で人々の物価予想が下がっているせいなんでしょうかねえ。


○金融環境はほぼ同じにも程があります

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』

という金融環境ですけれども、こちらは思いっきり前回と同じで、違うのは銀行貸出の部分だけです。一応引用。

『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、前年における著増の反動もあって減少している。』(今回)
『企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、前年における著増の反動もあって減少に転じている。』(前回)

まあこれじゃ変化という程でもありませんけど、「減少に転じた」ものがそのまま「減少した」になっただけなのですな(^^)。

以上、声明文よりもあちこち微妙に変化があるのでした。しかし経済指標はそんなに悪くないと思うのですが、結局のところ雇用・所得と物価に関する所がパッとしないのが影響してるのかなあって感じですかね。

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2010/02/19

○これは見事な現状維持

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100218.pdf(今回の声明文)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100126.pdf(前回の声明文)

・・・・・これはネタにならん(^^)。

えーっと、前回との違いは2箇所(展望レポートの中間レビューに関する部分は除く)でございまして、

・景気の現状認識部分の公共投資

『公共投資は頭打ちとなっている。』(今回)
『公共投資は頭打ちとなりつつある。』(前回)

公共投資が頭打ちになっちゃいましたと。

・物価の現状認識部分の石油関連に関する部分

『石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している。』(今回)
『石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』(前回)

結論は同じですし、まあここの部分ってテクニカルな話なのであんまりキニシナイのですが、まあ一応そういうことで。

・・・・・とまあそういうことで前回の現状認識、先行き見通し、リスク要因に関しての大筋に変化は無く、特に先行き見通しとリスク要因はワーディングまで一緒という素敵な現状維持なのでございました(^^)。

一応先行き見通しとリスク要因を(後で自分が見る時の為に)まる引用して置きたく存じます。これ全部前回と同じ文言(リスク要因の番号だけ違うけど)なのであります。

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』

まあナローパスな気はしますが、何気に出てくる経済指標は微妙に良かったりしているのもチャーミング。

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』

あたくし的には黒い白鳥さんがエーゲ海から飛んでくるリスクが気になるところでありますが(北禿先生のお告げのせいではありません^^)、その辺りに関する議論はどういう風に進んだのでしょうというのは気になる。


ということで、見事に現状維持でして正午前に終了とは恐るべし。これじゃあ金融経済月報もあんまり変わらないのでしょうかねえ。

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2010/02/08

すっかり書くのを忘れていたので書くのでありますが(汗)。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091218.pdf

肝心の『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』部分が明日書きますとか言いながらやるやる詐欺となっておりましたので、お待たせ致しまして恐縮至極(誰も待ってないですかそうですか)。

『委員は、「中長期的な物価安定の理解」についての検討も行った。』

急にこのネタが出てきた訳ですが。

『ある委員は、先般決定した金融緩和の強化措置が十分な効果をあげていくためには、その背景にある物価安定に関する日本銀行の考え方が正しく理解され、浸透していく必要があると述べた。』

と思うのであれば「主要国の低金利政策が必要以上に長期化すると新興国バブルを発生させるので問題」みたいな話はあんまりしない方がよろしいんじゃないかと思うのでありまして、いやまあ言いたい事は判りますし、話としてもまあ現実に起きている事からすると懸念されるっちゃあ懸念されますけど、そんな話は一部の超タカ派扱いされているような人に言わせるようにしとけばヨロシがな。

ってのは上記会合の後になってペーパーだの総裁の講演だので出て来ているネタですが(^^)、まあ一事が万事と申しますか、別にタカ派ちっくな発言をせんでもよろしがなと思われる所で妙なタカ派発言をする事から「日銀は大変なタカ派」という期待形成が出来ちゃいやすいと思われるのですよねえ。

『その上で、この委員は、現在の「中長期的な物価安定の理解」のうち、「0 〜2 % 程度」という表現が、ゼロを含むマイナスの領域を許容しているかのような印象を与えている可能性があると指摘した。』

CPIマイナスでも経済成長してた時期があり、その時期の評価をどうすべきかとかいう話があったのはすっかりワープでござるの巻。いやまあ別にいいですけど(棒読み)。

『ある委員は、政策委員会が合議制のもとにある以上、止むを得ない面があるが、「委員毎の中心値は、大勢として、1% 程度となっている」という表現も、国民や市場からみて分かりにくいものとなっていると付け加えた。』

そういやネタにしませんでしたが、先般のESRIのセミナーでのパネルディスカッションでは岩田一政さんが「0〜2%という表現よりも、1%という数字をピンポイントで出した方が判りやすくて良い」というような発言をしていたやに報道で読みましたが(そういや水野温氏さんは「本来もっと緩和すべき」とかハト派全開だったとの報道もありましたが、もと身内(日銀生え抜きから見たら身内じゃないのかもしれないけど^^)からああだこうだ言われる日銀って・・・・・><)話をしていましたね。

『こうした議論を経て、委員は、「中長期的な物価安定の理解」の表現を明確化することは、物価安定に関する日本銀行の考え方や金融政策運営を国民や市場に十分理解してもらううえで有益であるとの認識で一致した。』

ということで、決意表明のようなものになりましたとな。

『次に、委員は、具体的な表現に関する検討を行った。』

まあ色々と指摘されている事はあるんじゃが、基本的には最初の部分にある

『多くの委員は、「中長期的な物価安定の理解」の水準を検討する場合の主要なポイント、すなわち、消費者物価指数のバイアス、物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」、物価が安定していると企業や家計が考える物価上昇率に対する認識は、前回議論した本年4月以降、大きく変化していないと述べた。』

という事のようですのでそこの段落はスルー致します。で、今回の明確化に関してああでもないこうでもないという議論がある部分が中々味わいがあるというものです。いやまあ一言で言えば「意見割れてますねえ」という所なのですけれどもね(^^)。

『ある委員は、今回の明確化は、「中長期的な物価安定の理解」がもつ中長期的なインフレ予想のアンカー機能の強化に繋がる可能性もあると述べた。』

なるといいですね(棒読み)。

『また、ある委員は、展望レポートで示している経済・物価の見通しや、毎回の決定会合後に公表する金融政策運営方針とともに、物価の安定に関する日本銀行の考え方が一層浸透することは、これら全体として、金融市場における金利形成にも相応の影響があるとの認識を示した。』

『この点に関し、別のある委員は、今回の明確化の趣旨は、現在の委員の考え方をより分かりやすく示すことであり、時間軸効果を狙ったものではなく、金利に与える影響の度合いも定かではないと述べた。』

まあそりゃそうなのでありまして、「デフレ脱却を目指しつつ時間軸政策」というのは、前回の量的緩和政策で日本では短期金利だけでは無く長期金利まで安定しやがってくれましたが、それは本質的に日本のインフレ期待が全然盛り上がらないからという所によるものでありまして(涙)、まあフツーに考えるとデフレ脱却してまともに+2%とかのインフレ国だったら長期金利が2%とかいう話は無い訳でありまして(今は1.3%ですかそうですか)、時間軸で効く期間が長くなるのも変な話(本当に政策実施によって期待形成に変化が起きるのであれば)ですわな。

ただ、それを思いっきり言っちゃうのもどうかなと思われる所でありまして、そのあたりは、金融政策がすっかり俊ちゃんメソッドになって狸政治家の風格を確立しているバーナンキ先生のメソッドを参考にすべきかと思われる次第でもありまして、米国長期財務省証券の買入で、最初は金利誘導のような雰囲気を見せておいて、実際に長期金利が結局上昇しても平然とその辺に触れずにスルーしまくるという、まあぶっちゃけて言えば「市場の誤解を利用する政策」ってえ狸ワールドもこういう時には必要なのではないかとゆー気はする訳でして、多分まあそういう論点からの意見が次に。

『他方、何人かの委員は、かつての量的緩和期に採用した時間軸政策とは異なるものの、今回の明確化が市場における金利形成の安定化に資する可能性はあり、これを広い意味で時間軸的な効果と呼ぶのであれば、そのこと自体を否定する必要はないとの認識を示した。』

まあ少なくとも展望レポートとの合わせ技で考えれば、景気が上振れない限りは2011年度半ば位までの利上げは無いですよという事になるので、それは時間軸でもありますしね。

#ということでやるやる詐欺どうもすいません

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2010/02/02

○12月17、18日の決定会合議事要旨から少々

謎の決意表明が行われた会合ですな
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091218.pdf

例によって『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・海外経済の見通し

『海外経済の先行きを巡るリスクについて、何人かの委員は、金融緩和を続ける先進国からの資金流入の増加などが、新興国経済の予想以上の上振れや、その後の巻き戻しに繋がる可能性に留意しておく必要があると指摘した。』

『何人かの委員は、バランスシート問題の重石を抱える米欧先進国を中心に、政策効果が剥落した後の景気回復のペースや持続性については、引き続き不確実性が大きいと述べた。』

エマージングの上振れについて指摘しているのですが、どうも総体でみた場合には、先行きリスクってバランスしているというよりはやっぱり海外に関しては下のような気がする。

んでもって国際金融環境ですけれども。

『多くの委員は、11 月下旬のドバイ・ショックを受けて、各国の株価や為替相場は一時不安定化したが、その後は、債務返済に関する不透明感の後退もあって、足もと落ち着きを取り戻しているとの認識を示した。』

ということですが、12月の月報ではドバイショックの影響によるマインド悪化への下振れ懸念をわざわざ書いていた(表現ではドバイショックなどとは書いてませんが)ので、まあ1日の臨時会合の顔を立てたっちゅうことでございますかそうですか。

『ある委員は、これまでのところ投資家のリスクアペタイトが大きく低下するには至っておらず、新興国への資金流入は当面続く可能性が高いとの見方を示した。一方、何人かの委員は、国際金融資本市場の不安定化に繋がり得る要因として、ギリシャの格下げや中東欧諸国経済の停滞などに言及した。これらの委員は、今後、市場参加者のリスク回避姿勢が再び強まることがあれば、金融面を通じて、ファンダメンタルズの弱い国や地域の実体経済に悪影響が及ぶ可能性があると指摘した。』

でね、これはこれでその通りなのですが、そこを土台にして12月月報で企業マインドがどうしたこうしたと細かく下振れリスクについて言及したのであれば、1月になっても別に欧州ソブリン問題とか全然解決していないですから、その辺りの表現が継続されて然るべきだと思うのでありまして、1月月報で表現がソフトになったのはどうしてかと考えると、微妙に理屈としてしっくりと落ちないのでありまして、12月1日の臨時会合が理屈を超越した部分があったのではないでしょうかと思わせる次第でもあります。

#勝手読みのし過ぎではありますが


・ユーロエリアでは銀行貸出に注目

へーって思ったので引用。

『何人かの委員は、銀行貸出やマネーストックの伸び率が急速に低下していることを指摘した。これらの委員は、欧州では間接金融の比重が大きいだけに、こうした動きが今後の実体経済に及ぼす影響について、注意深くみていく必要があると述べた。』

なるほど。


・中国はまあ当然ながら当局動向に注目

『何人かの委員は、中国当局が、来年入り後も現在の拡張的なマクロ経済政策を維持する姿勢を示していることなどから、当面、高い成長が維持される可能性が高いと述べた。他方、何人かの委員は、先行き、金融経済活動の過熱が住宅価格の高騰やインフレの昂進に繋がるリスクは否定できないとの見方を示した。この点に関し、複数の委員は、最近では、個人の住宅販売にかかる免税措置の見直しなど、バブル抑制的な施策を強化する動きも一部にみられると指摘し、今後の政策当局の舵取りに注目していく必要があると述べた。』

でまあ中国は年明けになると当局が何となくスピード制限をしている感じになってきたので、そういう意味ではエマージンングバブルをバブル崩壊にしないで、何とかうまく飼いならして頂ければ誠に慶賀に耐えません。


・で、国内経済の話ですが

『先行きについて、委員は、輸出や生産が増加基調を続けることなどを背景に、わが国の景気は、持ち直しを続けるとの認識を共有した。もっとも、何人かの委員は、今後、在庫復元や景気刺激策の効果が減衰していくと見込まれるため、来年度半ばにかけて、景気持ち直しのペースは鈍化していく可能性があると述べた。』

というのはいつもの話ですが、ふーんと思ったのはその先。まずは生産が伸びてるけど戻っている訳ではないですよという指摘が。

『その上で、この委員は、生産の水準がピーク比8割程度までしか回復していないうえに、多くの企業が中長期的な成長ビジョンを描けていないという状況を踏まえると、この時期、わが国経済が下方ショックに対してかなり脆弱であることについては、改めて意識しておかなければならないと指摘した。』

ほほうこれはこれは。一瞬水野さんかと思いましたが、良く考えたら水野さんは退任してますから、別の方ですね。うんうん。


で、世の中のマインドが委縮しているという話。

『この間、何人かの委員は、今回の短観の結果が、市場やメディアにおいて比較的慎重に受け止められたことについて言及した。ある委員は、短観調査先企業の経営者と話をしていても、業況感は改善していると現に回答しているにもかかわらず、経営者自身のマインドの弱さを感じる面があると述べた。』

確かに左様でございますな。

『これらの背景について、何人かの委員は、景気ウォッチャー調査の結果が足もと悪化していることなども合わせて考えると、最近の国際金融面での動きやデフレに関する議論の拡がりが、企業や消費者のマインドに影響を与えている可能性があると述べた。』

つまり何の対策も打たないでデフレ宣言して「大変だぁ」とだけ言うという図は有り得ないですという政府批判ですね、わかります(^^)。

ということで、まあこの辺りの話って難しいのでありますが、やはり当局があまりにも景気の悪い話をするというのもどうかという感はこの一連のマインド悪化を見ていると思うのでありまして、いやまあデフレ宣言しちゃ悪いとは思いませんけれども、「このようにデフレですが、それに対してこんな効果的な対策を打ちましたので、いついつまでにデフレ脱却ですよ皆さんもう少しです頑張りましょう」というような方向で話を持って行かない事にはいかんちゅうこってしょ。

米国でそういや金融機関のストレステストを実施した時の前提となる失業率が8.9%というギャグのような数値で、外野から見ると「何ちゅう大本営発表」と呆れたもんでありますが、何故かその後失業率が8.9%を抜けた(直後に8.9になりましたわな)時も別に米国メディアで「インチキストレステスト」という話になる訳でもなく(というのは日本で見た印象なので米国でどうだったのかは知らんですけど)推移して現在は金融機関が公的資金を何故か返済しているというのを見ますと、マインドというのもまあ大事な話だなあと思うのであります。

ま、だからと言って1から10まで大本営発表で良いかというとそれは勿論ダメな話ですし、狼少年みたいなもんで威勢の良いチアリーディング攻撃というか市場の誤解に働きかける政策メソッドというかってえのも、大概使いすぎると信認問題になって後で大変な事になるでしょうし、まーその辺ってえのは永遠の課題なのではないでしょうか。


・物価のデフレ循環警戒ですな

消費者物価に関連しての指摘から。

『ある委員は、最近の民間エコノミストの予想などをみると、中長期的なインフレ予想が若干ながら低下していると指摘した。複数の委員は、こうした動きだけをもって、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率が下振れているとはいえないが、最近の経済・物価情勢を踏まえると、予想物価上昇率の動向については、引き続き、丹念に点検していく必要があると述べた。』

一番マズーなシナリオは、企業や家計の予想物価上昇率が下振れる事によって、デフレマインドが更なる物価の下落を招く事態で、従来は物価下落が金融経済活動の下振れを招いて更なる物価下落を招くというスパイラルの警戒をしていた訳ですが、ここへ来てマインド面の悪化からのスパイラルというのが懸念されるという認識になっているものと思われます。


・どうでも良いがこれは違うと思う

『ターム物金利について、多くの委員は、先日の臨時会合以降、短国レートや銀行間取引金利など、やや長めの市場金利が一段と低下していることを指摘した。また、何人かの委員は、年末越えプレミアム、年度末越えプレミアムについても、落ち着いた動きをみせていると付け加えた。』

実際には1日の公表で一回短国レートがどどーんと低下した後、実際にはGCレートがイマイチ下がらなかったのではしごを外された格好になってレートは若干上昇したのですけれども。それに年末越えプレミアムは単に足元で量を出したからだけだと思うのだが。

『こうした状況を踏まえ、多くの委員は、固定金利方式の共通担保資金供給オペは、既にその効果を発揮し始めているとの認識を示した。』

いやまあアナウンスメントという意味での効果はあったと思うけど、この会合時点ではそれは無いと思う。



○議事要旨ネタの続きですが

さっきのマインドどうのこうのという所の続きにこんなのがあるので、そこから妄想力を発揮して超越的勝手読みをしてみる。

『また、複数の委員は、より長い目でみたわが国経済の将来像や、そのもとでの企業戦略が見出せないことに対する不安が反映されているのではないかと指摘した。こうした点に関し、何人かの委員は、デフレからの脱却を実現していくうえでも、わが国経済の成長力強化というより根源的な問題に取り組んでいくことが必要であるとの認識を示した。』

いやまあそれはその通りなのですが、じゃあ日銀は具体的に何をするの??という話はここからは残念ながら見えてきませんわな。いやまあ実際は議論しているけれどもここでは端折っているのかも知れないので何とも言えませんけれども、結局これは政府マターですねみたいな話ですよね。

一方で政府は政府で、この前の菅財務大臣の財政演説でも「デフレ脱却に向けて日本銀行と一体となって」取組むみたいな話を折に触れて行っていまして、政府は政府で日銀に何とかしろというような感じの物言いが目立つように思えます。

つまりですな、よく「政府と日銀の認識は同じ」という話が出ているのですけれども、妙にそういう事を強調する中でこういうようなモノが出ているというのを見ますと、傍目にはまるっきり政府と日銀の間の一体感が無いんじゃないですかという風にしか見えないんですよね。いやまあ自公政権の時も時々その辺の隙間風というか齟齬を感じる事もありましたが、民主党政権になった現在ほど酷い状態ではなかったと思うのですよ。

などと言う事を議事要旨のこの部分を読んでてふと思ったのでありました。

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2010/02/01

12月に実施された決定会合議事要旨が2丁出ましたので、本日はそちらから少々と思ったのですが、思ったよりも話が長くなってしまったので、本日は12月1日の会合議事要旨をネタに少々。

12月1日の唐突に実施された臨時会合(新オペ導入)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091201.pdf


○イベントをネタに何か実施というのは福井メソッドですね

もうね、最初の時点でまあ何ですな。「T.臨時金融政策決定会合開催の趣旨説明」って所ではこんな話が。

『このところの国際金融面での動きや 、為替市場の不安定さなどが、企業マインドなどを通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクが高まっているように見受けられる。』

んでもって「U.最近の金融市場動向に関する執行部報告の概要」でもこのように。

『最近の国際金融市場では、一部に不安定な動きがみられている。すなわち、ドバイ・ショックの影響から、欧州株が大きく下落しているほか、一部新興国の通貨や株価で大幅な低下が観察されている。また、為替市場では、特にドバイ・ショック以後、円高方向の動きが強まっている。』

『こうした国際金融市場の動向の影響もあって、わが国の株価は、電気機械、自動車といった輸出関連株を中心に下落傾向が続いている。市場では、金融市場の不安定化による企業マインドの悪化を懸念する声が拡がっている。』

ということで、一応理屈としては、ドバイショックの影響から株価は下がるわ為替は円高になるわで、しかもその動きがショック症状みたいになっているから金融強化が必要、という事にはなっていますが、そんなん一々反応して緩和してたら政策幾らやっても足りないのでありまして、イラク戦争で臨時会合を招集したり、SARSやりそな救済で当座預金残高目標を引き上げた福井メソッドにも通じるものがあるのですが・・・・・

ただね、福井総裁の場合は自分からホイホイと当座預金残高を拡大するというお芝居の打ち方がうまかった訳ですが、白川総裁の場合はどっからどう見ても政府(というか政治)サイドからの要請が来まくりでございますがな状態。まあ普通に考えますと、その前から主要閣僚から「日銀何かしてクレクレ」コールが出まくっていた事を勘案致しますと(以下自粛)。

いやまあ一昨年10月の緩和の時もちょっとゴタゴタした感じはありましたが、それでも自公政権の場合はそのあたりは比べものにならないくらいにスマートだったと思うのでして、素人恐るべしというかなんちゃらに刃物と言うか。


○出たな中原三原則

んでまあ「1.執行部提案に関する委員会の検討」から。

『多くの委員は、わが国経済は持ち直しているものの、来年度の半ば頃までは回復ペースが緩やかなものに止まると見込まれる中で、このところの国際金融面の動きや為替市場の不安定な動きが企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクが加わってきているとの認識を示した。』

というのはさっきと同じ話。

『ある委員は、最近のデフレを巡る議論の拡がりが、家計や企業のマインド面に悪影響を及ぼし、実体経済に対する下押し圧力が強まる可能性も懸念されると付け加えた。』

で、現実問題として、消費者マインド系の調査では物価に対するマインドが11月の政府によるデフレ宣言以降急速に悪化していまして、その辺の結果はこの指摘の後に出てきた12月以降というか1月に随分と出てきましたわなという所で。


んでまあそれはそれで良いのですが、その次は論理展開がアレな所。

『こうした情勢判断を踏まえ、委員は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することを支援するため、金融政策面からの追加措置が必要であるとの意見を共有した。』

というのははあはあそうですかっちゅう事ですが、直前に実施された11月19、20日ではこのデフレに関してああでもないこうでもないと話をしていたのでありまして・・・

『委員は、物価に関する情勢判断の情報発信の仕方を巡って議論を行った。ある委員は、展望レポートで2011 年度まで物価下落が続くという見通しを示したあと、予想されたとおり、「デフレ」に関する議論が高まってきたと述べた。多くの委員は、これまで日本銀行が説明してきたとおり、「デフレ」という言葉が使われる場合には、財・サービス価格の持続的な下落、厳しい景気の状況、資産価格の下落など、様々な定義で用いられており、論者によって異なるため、日本銀行が「デフレ」という言葉を使用する時は、細心の注意を払う必要があるとの見方を示した。』

『もっとも、何人かの委員は、こうした説明は正しいものの、このような言い方をすることによって、日本銀行は「デフレ」という言葉をあえて避けているとの印象を与えている可能性があると述べた。その上で、ある委員は、「持続的な物価下落」を「デフレ」と定義するのであれば、そうした物価動向の評価は、日本銀行が展望レポートで示した見方と異なっていないという点を対外的にも説明していく必要があると述べた。また、別の委員は、「デフレ」について情報発信する際には、それ自体がマインドに悪影響を与えることのないよう留意する必要があると付け加えた。』

(以上は11月19、20日の決定会合議事要旨より)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091120.pdf

えーっと、このようにわずか10日前にはあーでもないこーでもないと言っていた訳でして、つまりわざわざ臨時会合を実施した結果「最新の注意を払って」デフレという話になったということですね(棒読み)。

ま、それよりも大きなファクターは、11月20日(まさにこの会合やっている日の夕方に出たのでして間が悪い話ですが)に政府がデフレ宣言とかしちゃったので、政府が「デフレだ」と言ってるのに日銀が「いやそのりくつはおかしい」とか言う訳にも行かずという事だと思うのですが、こんな感じで急にポッキリと折れる時にはまあ大体アレですよアレ。

・・・・いやまああくまでも妄想で仮定の話ですから「アレ」としか申し上げませんけどね、うひょひょひょひょ。この回の議事録は10年後に忘れてなければ読みたいもんですな。

なお、こういう現象に関して、中原伸之元審議委員は「日銀の政策変更に関する三原則」というのを指摘してまして、それをネタにして(というか正確にはそのネタがあった時事通信の記事をネタにしたのだが)書いた駄文がこの辺にございます。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/hatsugensonota.html#nakaharanobuyuki050520

まあ今回は政策変更というよりは「デフレ」定義の所で中原三原則発動ということですから、福井総裁が君子大豹変したような政策ロジックのワープじゃないのですが、それまでがああでもないこうでもないと言ってたという印象を与えていたので、「まあ政府のデフレ宣言に押し切られましたなあ」というイメージが強うございますわなということで。

あ、一応付け加えておきますが、11月の会合で「日銀がデフレと言って世間のマインドが悪化するかも」と指摘してる中で政府が堂々デフレ宣言しちゃったので結局同じ事になったのですが、まあ政府デフレ宣言の結果消費者の物価マインドが悪化したので、ああでもないこうでもないと言ってたこと自体が全くの無駄だとは思わないですし、キャッチーな話をしないけれどもまあ展望レポートで物価見通しマイナスを11年度まで出しているので察してくださいなというメソッドも無くは無いかなあとは思うのですけどね。と一応何となく書いておく。


○まあ要するに緩和措置は他市場対策ですね

『具体的な措置について、多くの委員は、オーバーナイト物金利が実質ゼロ金利となる中で、追加的に金融面から景気回復を支援していくためには、短期金融市場におけるターム物金利の更なる低下を促すことが、最も効果的であると述べた。』

ということでターム物金利誘導になったのですけれども、実際問題としてはこっちの方がメインでしょというのがその続きに。

『ターム物金利の低下の効果に加え、ある委員は、景気の下振れリスクが強まる中で、金融緩和を強化する姿勢を示すことが、各経済主体の不安心理を和らげる効果も考えられると述べた。』

これを平たく言うと、為替市場や株式市場への効果が出るような政策を打たないと行けませんなという話でしょ。

『別のある委員は、現在、政府も経済対策の取りまとめを進めており、今回日本銀行が追加的な措置を実施すれば、政府の取り組みとも相俟って、企業・家計のマインドを安定させる効果も期待されると指摘した。』

良く考えたら11月20日にデフレ宣言して12月1日の時点ではまだ政府経済対策の「取りまとめを進めている」状態とはこれまた何と言うスケジュール感の無い政府だことという感じですな。普通は一昨年の麻生政権のように、対策を用意して動くもんだと思うのですがねえ。


○情報発信に関して

『委員は、今回の措置の導入に当たり、情報発信の観点から注意しておくべき点について議論を行った。』

ということで。

『多くの委員は、市場の一部に、量的緩和政策導入などを巡る思惑が生じている点を指摘した。これに関し、多くの委員は、日本銀行は、金融機関の流動性需要を十分満たす供給を行う旨を明確にしており、今後とも、新しい資金供給手段も活用しながら、潤沢な資金供給を続けていく方針を市場にしっかりと伝えていくことが大事であるとの見解を示した。』

まあ元々量は出してますという話みたいですけれども、ディレクティブが金利な時点で量は後付けで決まる問題。ただし、預金ファシリティと誘導目標が同じなので、それなりに量は出そうと思えば出せるという事ですけど。

『これらの委員は、そうした日本銀行の姿勢を、誤解が生じない形で情報発信する必要があると述べた。ある委員は、情報発信にあたっては、今回の措置がターム物金利の引き下げを企図したものであることを明確にし、特定の量的指標を目標としたものと受け止められないように留意することが必要であると述べた。』

でもオペを出す時に「超低金利、固定、10兆円」と言って出していた訳でありまして、為替市場とか株式市場向けには「量」を意識させるようなプレゼンを行い効果を出そうとしているとしか思えない動きですので、ここのところはどうなんでしょうかね。

『別のある委員は、市場の需要に応えて大量の資金を供給し、日本銀行からの資金供給量が金融機関行動を制約することのない状況を作り出すという意味では、広い意味での量的緩和と言うことができると述べた。』

まあFRBも自分たちは信用緩和で量的緩和じゃないですと思いっきり言っていましたが、徐々にその定義論争をスルーするようになったように、まあこの辺っていうのはファジーな話なんじゃないですかねということで。


ということで本日はまあそんな所で。

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2010/01/29

○金融経済月報はまあ微妙な変化だけっすな

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1001.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0912.pdf(前回)

読み物が多いので手抜きで最初の【概要】部分を比較。

・現状判断部分では住宅投資を引き上げ

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

引き続きカワランチ会長なのれす。で、項目別展開。

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりの動きがみられている。この間、公共投資は頭打ちとなりつつある。』(今回)

この部分ですけれども、12月月報では日銀短観を受けた業況感の話が入っていまして、そこが抜けていますが、それは短観直後の月報に挿入される仕様なのでキニシナイ。で、その他の文言ですけれども、他は一致しているのですが、住宅投資の所だけ違っていまして、前回は、

『住宅投資は減少している。』(前回の住宅投資の部分)

となっていました。減少から下げ止まりですけど住宅投資は何気に波及するものがでかいと思われるので今後持ち直すかどうかですね。


・先行き見通しは見事に不変

いわゆる一つの全文一致って奴ですので比較引用できませんがな。

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。

すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続く中にあっても、当面、各種対策の効果などから、耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い。一方、設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。この間、公共投資は、次第に減少していくとみられる。』(今回)

まあ先行き見通しが不変という事は即ち上方修正に非ずという事でございまして、かつ「緩やかな回復」ではあっても「ペースは遅い」ということでありますので、金融政策的なインプリケーションはそれこそどこかの「for an extended period」状態だという事になりますわな。いやまあ基本的な見通しがもっと急回復とかなら話は違いますけれどね。


・物価は引き上げで基本は原油価格

原油価格上昇が基本での物価見通し上げで、しかも別に内需が盛り上がってディマンドプルみたいな上昇をしている訳でも何でもないというのは、まあ金融政策的には動くような文脈でもなかろうとは思いますけど。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、幾分弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、幾分弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落している。』(前回)

下落幅が縮小となりましたな。で、先行き見通し。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、製品需給緩和の影響が続く一方、国際商品市況の上昇が押し上げに働くことから、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の強含みが押し上げに働くものの、製品需給緩和の影響が続くことから、当面、弱含みで推移するとみられる。』(前回)

国内企業物価は弱含みから横ばいに変化しましたが、あたくし的にはこの時の書き方の語順を先に見るのでありまして(^^)、つまりAだけどBだからどうのこうのという言い方っていうのは、要因としてはBがメインになる訳ですから、こーゆー時にはああなるほどとか思ってしまうんですよね(^^)。

『消費者物価の前年比は、石油製品価格が押し上げに働くことなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『消費者物価の前年比は、前年における石油製品価格高騰の反動の影響が薄れていくにしたがい、下落幅が縮小すると予想される。』(前回)

ということで、まあ見通しを上げたということでしょうか。ほうほう。


・金融環境は地味ながらちゃっかり改善

書いてある所に関しては市場動向に関する部分でも文言変更がありますが、これは現象面の記述で特に判断に関わる部分でもないので割愛しまして、金融環境について。

全体的な判断は、

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(今回)

と同じでして、項目別展開も同じなのですが、企業の資金調達コストの部分と金融緩和の効果部分を変更しています。つまり、

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低下傾向が続いている。実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果はなお減殺されているものの、その度合いは和らぎつつある。』(今回)

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、幾分低下している。実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果はなお減殺されているものの、その度合いは和らぎ始めている。』(前回)

資金調達コストが「幾分低下」というのが「低下傾向が続いている」となっているのと、低金利政策による実体的な緩和効果に関して従来より効果が減殺されているという認識ですが、この減殺度合いが緩和されてきているという書きっぷりが更に改善しているという状態。

ま、企業金融関連については金融大臣様もうるさいので、この辺りは改善していかないと困るってえのもありますな。まあ足元市場調達に関する部分だけで言えば、米国金融危機以来発行するのが微妙扱いされちゃっていた発行体さんとかでも普通社債発行してたり、超足元で言えばCPレートも誠に結構な状態になっていますわなという事ですが、ただまあ月報でも指摘されているように(引用はしませんけど)、そもそも企業の資金需要が伸びていないので調達環境が良いというのもありますけどね。

ということで、今回の月報は若干上方修正っちゃあ上方修正ですし、方向性としてはまあ明るめの話も交じっていますが、基本的な部分には変更無しという感じではなかろうかと存じます。

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2010/01/27

お題「決定会合レビューなど」

○経済見通しの文言にほぼ変化はないです

今回の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100126.pdf

前回の声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091218.pdf

んでまあこの声明文を並べて比較すると、12月の通常会合で物価安定の理解の明確化を公表した関係で微妙に違う部分があるのですが、中心的な文言には見事に変化がありません。

・・・と書くと話が終わってしまいますので今回の声明文を引用しつつということで。

・現状認識で新興国経済の認識を引き上げています

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』

『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』

ここのところですが、前回は『新興国の回復』となっていまして、新興国経済の現状認識を引き上げましたというのが前回と違う所。

『設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなりつつある。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格変動の影響が薄れてきたことなどから、下落幅は縮小している。』

ということで、12月の現状認識と違うのは新興国経済が強いという話。まーこの前ご紹介した日銀レビューでは「新興国への資金流入」というお題があったように、エマージングはアジア中心に活況みたいですからね。


・先行き見通しは変化無いです

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。』

変化無し。

『その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。』

これまた同じ。本当に波及するのか存じませんが(−−;)

『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』

ここで『マクロ的な〜』という文言が前回無かったので一瞬「おお上方修正」と思ったのですが、良く良く考えてみたら今回は展望レポートの中間レビューがありますので、ここの部分は10月の展望レポートとの比較をしないといけない訳でありまして(^^)、10月の展望レポートの基本的見解の5ページ目に、

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf(前回の基本的見解)

『消費者物価指数(除く生鮮食品、以下同)の前年比は、(途中割愛)2010年度以降は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移すると見込まれる中で、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することから、消費者物価指数の前年比下落幅は、引き続き縮小していくと考えられる。』(10月の展望レポートから)

てな訳でありますので、今回は物価見通しの基本的な見方を変えたとか上方修正したという話でもないと思われます。


・原油価格の上昇の影響ですが・・・・

『10 月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価については、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも、原油価格高の影響などから、見通しに比べてやや上振れて推移すると予想される。』

で、まあここの部分で「原油価格高の影響」というのが結構引っ掛かったりするのかもしれませんな。昨年10月の時点でWTI先物がバレル70ドルから80ドルとかでございますので、今とあんまり水準的には変化無いですが、一昨年10月よりも昨年1月の方が原油価格低かった(昨年の今頃はWTI先物で40ドル近辺)から前年比が上がるという話なのかとも思いますが、10月の水準がヨコだと今頃前年比での数値が上がるのは明らかだったので、この辺の趣旨は背景説明を含めた全文を読まないといかんのかなとも思います。


・リスク要因では国際金融面の動きの書き方があっさり味に

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』

これは前回と同じです。

『また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。』

で、この部分ですが、前回はこのように書いてありました。

『当面は、国際金融面での動きなどが、企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクについても、引き続き注意する必要がある。』(12月声明文から)

だいたいこれはいわゆるドバイショックを受けた文言だったのですが、その時点からは為替、株価ともに状況が好転しているので、やや書き方があっさり味になったという事でしょう。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』

これは同じですが、マインド統計がここへきて物価下落方向になってきている点について何かの言及は無いもんかという気はあたくし的にはするのですけどね。


・最後の決意表明のような物には変化なし

まあ当たり前ですけどね、引用だけ。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』



○ところでヨコですがBOEの物価見通し

ちなみに、話はここでいきなりヨコに飛びますが、1月6、7日のBOEのMPC議事要旨が先日公表されてまして、ネタにしようとしつつもスルーしていたのですけれども、こちらの議事要旨の第23、24パラグラフ(議事要旨本文6ページ)にこんな記述がございます。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1001.pdf(BOEの1月MPC議事要旨)

『It was increasingly probable that CPI inflation would rise to well above the 2% target in the early part of 2010 and remain elevated for several months.』

何と言う景気の良い話。

『The most recent intelligence about the likely pass-through of the January VAT rise and the potential impact on energy prices from the unusually cold weather suggested that inflation in the short term would be further above target than the Committee had previously expected.』

と思ったら下げてたVATの引き上げ影響と寒波襲来によるエネルギー価格の予想以上の上昇が影響ですかそうですか。

『There was a risk that a sustained period of above-target inflation could cause inflation expectations to drift upwards. 』

(2%という)ターゲットを上回る物価上昇率が継続すると、世の中のインフレ期待が上振れるリスクがあるとはこれまた景気の良い話ですが、上記にありますように、物価の上昇自体が景気が良くなったからという要因でもなさそうなので、残念感が伴うのでありますが。

『The Committee would monitor closely the extent to which price-level shocks affected inflation expectations. But so long as expectations remained consistent with the 2% target, the medium-term outlook for inflation ? the key consideration when setting monetary policy ?would reflect the balance between demand and the supply potential of the economy. The available evidence continued to suggest that this balance would bear down on inflation for a considerable period.』

途中で切るのも何なのでこの段落最後まで引用しましたが、まあ中長期的には安定しているけれども、足元上昇という状況で、別に景気が良い訳でもない(引用始めるとお題が変わってしまいますので引用はしませんが、景気見通しはまあパッとしません)ので中々大変ですなあというお話。なお、事務方からの説明でも物価上昇要因について、

『CPI inflation had risen to 1.9% in November, largely as a result of an increase in petrol price inflation. This factor, along with the reversal of the December 2008 VAT cut, was set to boost inflation further in forthcoming months. 』

とありまして(第18パラグラフ)、この辺の文言をこの前読んだばっかりだったので、あたくしが今回日銀の物価の先行き見通し上方修正(してもマイナスですが)されるような文言があっても「ふーん」程度で終わったのかもしれませんな(^^)。

しかし何ですな、BOEの場合は「上振れた物価状況が続いた場合のインフレ期待の上方シフト」が懸念材料なのでありますが、日銀のおかれた状況はこの逆なのでありまして(−−;)、さてその辺どういう認識になっているのか。いやまあ「そのために中長期的な物価安定の理解の明確化」を出したという事なのでしょうけれども、インフレ期待(というかデフレ懸念というか)の下方シフトに関するリスクを、どの位懸念しているのか、その状況に変化があるのかという所が、決定会合声明文比較だけだとあんまり見えてこないのが微妙に遺憾に存じます次第でありますが、これまた背景説明を含む全文を読んでみると致したく存じます。


○そりゃまあ上方修正っちゃあ上方修正だけどさあ(一部産経電波浴も含みます)

ということで話を戻すと、今回はビューをほとんど変えていないという結論になるのですけれども、まあ見通しに関しては2009年度の実質GDPと、先行きのCPI見通しを引き上げになっています。(書くのめんどいから声明文見てちょ)

ということで、某モーサテ辺りでは「上方修正」というヘッドラインを打っていましたが、今年度の見通しなんぞレビューみたいなもんでそれが上方修正されても意味無いし、GDP見通しに関しては2010年度で0.1%しか上方修正してなくて、2011年度は不変ですので、普通に金融政策へのインプリケーションとしては「変化無し」という話になると思うのですが、まあこういうヘッドラインになるのが、ネタを欲しがるメディアクオリティなんでしょうな。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100126-OYT8T00786.htm
成長見通し、上方修正…日銀決定会合

いやだから全然上方修正じゃないって。まあ物価の見通しは上げてますけど、上げた結果2011年度でもまだ▲0.2%(従来▲0.4%)なのでして、これまた金融政策へのインプリケーションは同様に「まあ事実上の時間軸が続きますなあ」という話なのですが、日銀を何でも良いから批判するというのが仕様になっている産経に掛かるとこの有様。

http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100126/fnc1001262013017-n1.htm
日銀“楽観シナリオ”に危うさ 原材料高・内需不足のダブルパンチ懸念

・・・・えーっと、これを楽観シナリオ(一応カギかっこ付いてるけどさ)ってどんなマゾ属性だよという感じではございます。いやあのね、産経新聞ってそれなりに一定の主張があって、それはそれで悪くは無い話なのですが、その主張を補強する為に事実の一部だけを恣意的に切り取って来るとか、限りなく曲解に近い解釈をして報道をするとか、それってもう報道機関というよりは単なるアジビラじゃねえのと思うのでありまして、いやまあアジビラもアジビラとしてのニーズはありますから、商売的にはそれでも成り立つと思いますけど、報道機関としての姿勢としてどうなのよと思うのであります。経済記事よりもどうも外交とか軍事とかの話がもっと斜め上らしいのですけれども、最近は経済記事がすっかりこんな調子になっているのは困ったもんです。

なお、普通に解釈するとこうなる筈というのが東京新聞。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2010012602000226.html
日銀 政策金利据え置き 景気判断も変えず

これは会見前に出た記事みたいですけれども(夕刊記事)、普通に読むとこういう記事になる筈なのですが、これじゃヘッドラインとして面白くないと言ってオモシロヘッドラインにしようする動きにイデオロギー(?)まで入った挙句に電波ゆんゆんの記事になってしまうというリスクにはご注意ありたいものです。



○財金分離じゃなかったんでしたっけ

まあ今に始まったことではないですが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aULOZtkDOzGo
菅財務相:もっとという気が率直のところある−日銀の金融緩和策で

『1月26日(ブルームバーグ):菅直人副総理兼財務相は26日午後の参院予算委員会で、日銀の金融政策について、極めて緩和的な環境を維持しているとする一方、「もっとという気が率直のところある」と述べ、さらなる緩和策が必要との認識を示唆した。その上で、日銀とはデフレ克服に向け「方向性は一致している」と述べ、物価をプラスに転じていくため日銀と協力していく姿勢を示した。民主党の辻泰弘氏への答弁。』

昨日は日経新聞だかの朝刊で「財政演説で日銀に追加緩和を求める」云々みたいな記事もあって、金利市場の人は別に何もないでしょとは思ってましたけど、金融政策ネタになると斜め上にも程があるレポートが乱発される為替市場様におかれましてはそれなりに期待もあったり無かったりという感じだったみたいですね。

お前ら財金分離とか言って武藤総裁を潰したんじゃ無かったのかよと小一時間なのでありますが、まあこういう話をして市場が勝手に変な期待をするというのは当面続くという感じじゃないでしょうか。12月の2回の決定会合で市場的な評価って「ああ日銀は政治圧力に弱いのね」という扱いになっていると客観的に思われる次第でありますが、その政治が何せシロウト集団でありまして、何を言い出すかさっぱり読めないという人達でございますので、まあナントカに刃物とは良く言った物だと呆れる次第であります。

まあ政治屋さんとしてはアピールが大事なのは判りますけどね。

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2010/01/20

○これはまた一読した瞬間に微妙なテイストを

本文はPDFで8ページですのでまあ重くはありませんです。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev10j01.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j01.pdf(本文)

んでもってお題が『新興国の国際資金フローと資産価格の変動』というものでして、これはまた微妙なお題ですなあと思ったら、最初に出てくるサマリー部分が案の定この通り。

『新興国への海外資金の流入は、リーマンブラザーズの破綻後に急速に減少したが、2009 年春以降、グローバル投資家のリスクアペタイトの改善を背景に、再び増勢を強めている。』

さよですな。

『新興国の経済が回復に向かう中で、先進国における低金利長期化の予想が強まったことなどが、投資家のリスクアペタイトの改善につながったとみられる。新興国への資金流入の大幅な増加は、こうした国々の拡張的な金融財政政策と相俟って、景気の過熱や資産価格の高騰をもたらし、先々の調整圧力を高める可能性がある。』

中身を読みますと(後で一応紹介しますが)「こうした国々」というのは先進国ではなくて新興国を意味するようなのですが、新興国への資金流入がバブル的になるとその反動が発生するよという指摘ですな。

『現在、バランスシート問題を抱えた米英など先進国の景気回復テンポが緩やかなもとで、世界経済の回復を牽引しているのは新興国である。新興国が持続的な経済成長を維持し、世界経済の拡大に寄与し続けるには、拡張的なマクロ経済政策を適切なタイミングで修正し、新興国における大幅な国際資金の流出入と資産価格の変動を回避していく必要があると考えられる。』

ということで、新興国は金融緩和政策を抑制的にする必要があるという結論になっているので、まあそれはそれでさいですなという感じですけれども、新興国への海外資金の流入の元はどこかと言えば、それはどう見ても先進国における低金利政策なのでありますから、この日銀レビューをパッと読んだ場合には「じゃあ先進国の拡張的な金融財政政策の出口政策を検討しろという事ですね」という印象を思いっきり受けるのですが、書いている皆様(国際局の国際経済調査担当と、珍しく個人名になっていないのですが)の真意はどうなんでしょうかねえ(^^)。

ということで中身について少々。


○リスクアペタイトの改善による資金流入

本文2ページが『2. リスクアペタイトの改善と新興国への資金流入』という項でして、こちらでは主要国における投資家のリスク許容度復活によって新興国への資金流入がどうしておきますかねという話と、その結果どうなっているかという話を説明しています。例によって全部引用していると長くなりますので適当に端折って引用。

『さらに、各国における積極的な金融緩和は、投資家のインセンティブ構造を経由して、リスクアペタイトに影響した側面もあると考えられる。』

ほほう。

『すなわち、低金利が長く続くと、機関投資家は、目標運用利回りを達成することが困難となるため、リスクテイク姿勢を強める傾向がある。また、ヘッジファンドの報酬は、一般に、運用純利益や運用純資産に連動しているため、低金利の継続によって、純利益や純資産が伸び悩むと、ファンドマネージャーは、報酬の引き上げを狙って、リスクテイク姿勢を強めていく傾向がある。』

まあ低金利継続と資金繰り環境改善のコンボによって特に短い年限ではターム物金利が潰れるわクレジットスプレッドは潰れるわというのは、本邦でも普通に発生してますので、実は報酬によるインセンティブが無い(普通にその辺りの世界はヘッジファンド云々とは関係ない世界ですからね)状態でも起きるのだ(^^)。

『こうした金利水準と投資家のリスクアペタイトの関係を調べるために、先進国G5 の平均金利(2 年物、10 年物)を用いて、グレンジャーの因果性検定を行ってみた(図表3)。』

で、そりゃ何じゃという話はスルーしまして結果ですが・・・

『以上の分析結果を踏まえると、主要先進国(G5)の金利低下は、ラグを伴いながら、投資家のリスクアペタイトに影響するとみられ、足もとのリスクアペタイトの回復も、リーマンブラザーズ破綻後の先進国の大幅な金融緩和の効果に支えられている側面があると考えられる。』

そらそうですな。んでもってその結果どういう事が起きやすくなるかと言うのが新興国への資金流入という話。

『リスクアペタイトの改善した投資家が運用利回りを高める一番の近道は、流動性の低い金融資産への投資である。新興国の株式や債券は、先進国の証券に比べ、市場流動性が低く価格変動リスクは高いことから、平均的にはハイリターンを享受できる。』

で、「流動性が低いんだったらいざと言う時に逃げられないのではないか」とゆーツッコミをしたくなると思いますが、まあその「いざと言う時」の事を考えていたら流動性の低い市場に突っ込むこたあ出来ないのでありまして(−−;)、流動性が低くても後から金を突っ込む人がいたら無問題でしょとばかりに次々とハーメルンの笛吹き男よろしくレミング現象となって特攻していくのが悲しき金融市場クオリティなのであります。

『こうした理由から、リスクアペタイトの改善した投資家は、新興国への証券投資を拡大させている。新興国の株価の上昇や、債券の対米国債スプレッドの低下には、こうした海外からの資金流入が寄与している(前掲図表1、図表5)。特に、2009 年春頃から、先進国と新興国の成長率格差の拡大が投資家に意識されるようになったこと、そして、先進国における低金利長期化の予想が強まっていることなどが、新興国への投資を後押ししている。』

という事で、その次の部分で実際の事例として『キャリートレードの活発化』と『コモディティ市場への資金流入』という項を設けて説明しています。で、キャリートレードの所はスルーしまして商品価格の所を引用。

『グローバル投資家がリスク資産への投資を増やしていく中で、コモディティ市場への資金流入も継続した。2008 年夏をピークに大幅に下落した原油をはじめとするエネルギー価格は、2009 年春頃から再び上昇基調に転じた(前掲図表5)。資源効率の低い新興国の経済成長と、それらの国の通貨の増価に伴う購買力上昇が、コモディティ価格の上昇圧力につながっている。』

『しかし、最近のスポット価格の上昇傾向には、こうした実需要因だけではなく、投機要因も影響しているとみられる。例えば、原油在庫が、例年に比べ多めに推移しているにもかかわらず、先物価格がスポット価格よりも高い順鞘(コンタンゴ)の状態が続いている(図表7)。』

在庫が多いから先安感があってしかるべきなのだが順鞘の状態になっているというお話なのですが、あたくし商品先物のこと詳しい訳じゃないけど、普通は商品先物って保有コスト勘案すると現物よりも先物の方が高くなって、当限よりも先限の方が高くなるもんじゃないかと思うのだが、商品先物に詳しい人教えてジェネラル。

『先物価格カーブがこうした形状となる背景には、低金利による在庫保有コストの低下を受けて、コモディティ現物への在庫投資を拡大させ、値上がり益を得ようとする投資家の動きがあると考えられる。』

そうなんですか。まあこの前振りの部分はちょっとあたくし的にびみょーに引っ掛かる部分もある(単にあたくしが無知なだけだと思う)のですが、その先の所はほほーという感じで。

『ちなみに、原油価格は、2008 年上期に、140ドルまで上昇したが、当時は、在庫水準も低く、かつ、先物価格がスポット価格よりも低い逆鞘(バックワーデーション)の状態にあった(図表7)。このため、当時は、「原油価格の上昇は、先進国の低金利を背景とした投機によるものではなく、実需の増加によって牽引されている」という指摘が多く聞かれた。この点を踏まえると、2009 年春以降の原油価格の上昇の背景は、2008 年上期の上昇とは異なる側面があるように窺われる。』

何か当時はそういう事意識した事無かったけど、確かにこの辺りの論点はオモロイ(あたくし的には期先が逆鞘になっている方が変な気がするので、逆鞘状態の方が現物(または当限)が思惑人気で高くなっているという意味なのじゃないかと思うのですが、あたしゃ商品相場には素人さんですのでてめえのアホウを晒す積りで書いてみただけ)ですな。


○ということで新興国の出口戦略

その次は『3. 新興国の資産価格上昇と景気の過熱感』って項で、新興国への資金流入が過熱しているかどうかに関して、まず資産価格の現象面についての説明をして、その後マネーサプライなどのマネー部分に注目して説明しています。

『新興国への資金流入の増加は、資本市場における企業の資金調達環境の改善や資産価格の上昇による資産効果を経由して、新興国の内需増加を後押しする効果がある。こうした動きが新興国の持続的な成長につながるか否かは、新興国の資産価格の上昇がファンダメンタルズを適切に反映しているかどうかに依存する側面がある。』

てなことで、中身はまあスルーしますが結論部分。

『アジアを中心とする新興国の先行きを展望した場合、稼働率の上昇から設備投資が増加し、エネルギー価格の上昇などから運転資金の需要も増加していくもとで、企業向け貸出の伸びは徐々に高まっていくと考えられる。さらに、海外からの資金流入の継続が、資本市場を経由して、企業のバランスシート拡大を後押しする方向に作用すると考えられる。また、足もと、企業向け貸出の低迷から、貸出全体の伸びは鈍化していても、韓国や豪州などでは、家計向けの住宅貸付は増加しており、住宅価格の上昇と家計のバランスシートの拡大が同時に起きていることには留意が必要である。』

ということで、次が『新興国の金融財政政策の出口戦略』という項。

『新興国や資源国への国際資金の流入が継続すれば、景気や資産市場の過熱感を強め、国内経済主体のバランスシートの拡大を引き起こすことで、その後の経済調整圧力を高めることになる。また、ひとたび調整が始まれば、海外投資家の資金引き揚げを誘発し、資産価格や自国通貨の急落を招き、経済のハードランディングを強いられる可能性もある。』

ここ15年位の間に何回も見ましたな。

『こうしたハードランディングのリスクを小さくするには、金融緩和政策を適切なタイミングで修正していく必要がある。実際、資源国の豪州やノルウェーが2009 年末にかけて利上げを開始している。いずれも、国内経済が予想以上に速いテンポで回復していることを踏まえたものである。』

『また、財政政策の適切な運営も重要な要素となる。特に、固定相場制や管理フロート制を採用している国では、拡張的な財政政策を適切なタイミングで切り替えていく必要がある。すなわち、マンデル・フレミング・モデルが示すように、固定相場制のもとで拡張的な財政政策が採られた場合、自国通貨に生じる増価圧力に対応するため、通貨当局が外貨買い・自国通貨売りを行う結果、マネーが増加し、景気浮揚効果が大きくなる。このため、景気の過熱を抑制するには、財政支出を縮小させる必要がある。』

ということで、まあこちらは「新興国経済のバブル大発生&バブル大崩壊を予防する為に」「新興国での」抑制的な金融財政政策運営が必要という話になっています。


○まとめでしらっとこんな話が

という話だったのですが、まとめ部分でしらっとこんな話を。『4. おわりに』って所です。

『金融緩和が、どういった経済主体のリスクテイクを後押しし、経済に影響を与えるかという点については、バランスシート問題の有無が重要なポイントとなる。米国の家計はバランスシート問題を抱えているため、過去に比べると、金融緩和が米国内の家計支出や不動産価格を通して、景気を刺激する効果は弱まっているとみられる。一方、米国など先進国の金融緩和は、新興国自身の金融緩和と相俟って、バランスシート問題を抱えていないグローバル投資家のリスクテイク(新興国への投資など)を促し、同じくバランスシート問題を抱えていない新興国経済に対する景気刺激効果を強めているように窺われる。』

なるほど。

『この点は、1929 年に始まった世界大恐慌のケースと全く逆の現象と解釈することもできる。世界大恐慌が、文字通り、「世界」的に波及した背景には、米国の引締め的な金融政策の影響が、金本位制採用国に伝播したためとの指摘がある。』

ほほう。

『すなわち、金本位制を早期に離脱した国や銀本位制を採用していた国では、恐慌の深刻な影響を受けなかったが、金本位制からの離脱が遅れた国ほど、米国の金融引締め政策の影響を受け、景気後退が長期化し、かつ深化したとの見方である。』

つまり新興国は為替ペッグや管理フロートを離脱すべきだということですか(たぶんそれはあたくしが飛躍して読み過ぎ^^)。

『一方、今回の局面では、米国の徹底した金融緩和が、固定相場制や管理フロート制を採用する新興国の景気拡張効果をもたらしている側面があると考えられる。市場では、当面、米国など先進国の金融緩和が続くとの見方が支配的となっており、その場合、固定相場制や管理フロート制を採用する新興国経済をオーバーシュートさせるリスクも同時に高まっていく。こうしたリスクをできるだけ回避するには、抑制的な財政運営が必要となっていく。』

主語が抜けているのでアレですが、まあこれは新興国の抑制的な財政運営が必要という話なのでしょうが、言外に米国の出口戦略の適切な運営が必要ではないかという悪態をついているように見えるのはあたくしが飛躍して読んでいますかそうですか(^^)。

まー何ですな、金本位制がどうのこうのという話になると、英国が国際金本位制を維持するために行っていた役割を米国がきちんと引き継がなくて金本位制を不安定なものにしちゃいましたというような指摘を思い出す次第で、上記の指摘に何か重なるものを感じますな。うんうん。

#と書いていたら時間切れなのでその他の雑感はスルー

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2010/01/19

まあ何と申しますか次のネタ探しの相場状態でして、細かい動きは色々とあるのですが、結局レンジですなあ状態なのが誠に遺憾(平和でいいけど)な所でありまする。

○さくらレポートから少々

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki1001.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki1001.pdf(本文)

冒頭部分ですが。

『各地域の取りまとめ店の報告によると、全ての地域が足もとの景気について、「持ち直している」との判断を示したが、ペースや広がりには引き続き差異が認められる。また、ほとんどの地域が、業種間、企業間等におけるばらつきの存在を指摘しているほか、引き続き水準の厳しさに言及している地域が多い。』

『なお、今回の地域別総括判断を前回と比較すると、5地域(北海道、東北、北陸、中国、四国)が基調に変化なしと判断した一方、4地域(関東甲信越、東海、近畿、九州・沖縄)では基調に改善方向の変化がみられると判断した。』

まあ全部が良いなどというような結構な話は中々ないのですが、毎度お馴染みの「方向は持ち直しだが絶対水準はダメダメですよ」という話になっているという形なのは予想通り過ぎですけど。

2010年1月(今回):4地域で上方修正
2009年10月:9地域で上方修正
2009年7月:9地域で上方修正
2009年4月:7地域で下方修正
2009年1月:9地域で下方修正
2008年10月:9地域で下方修正
2008年7月:8地域で下方修正
2008年4月:8地域で下方修正
2008年1月:5地域で下方修正

・・・・うーむ、何ちゅうか鉱工業生産指数とかも禿げしく下げてその後禿げしくリバウンド(でも別に倍返しで戻る訳ではない)しておりましたが、それに似たよな推移をやらかしていますなあという感じではございますけれども、9地域で上方修正が2連発した後で上方修正地域が減るというのは思いっきり足踏みの香りがするのでありまして、いやあ先行きちょっとヤバイかも知れませんねえ的な気分が出ているような感じを受けるのはあたくしの勝手読みですかそうですか。

んでもって個別展開。

・個人消費

『個人消費は、全ての地域が政策効果による家電販売、乗用車販売の増加に言及したが、全体としての地合いについては、9地域中7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、近畿、四国、九州・沖縄)で「引き続き弱い」と判断された。この間、東海と中国では、全体としての基調も改善方向に変化したと判断された。』

政策効果で堅調な部分はあるが基調は弱いとはダメじゃん状態。

『耐久消費財以外の主な動きをみると、百貨店等大型小売店については、全ての地域から、売上高の減少傾向が続いているとの報告があった。観光については、4地域(北海道、東北、関東甲信越、九州・沖縄)が観光客の減少を報告しているが、四国では、堅調に推移していると評価された。』

四国が堅調とは何故??


・設備投資

『設備投資は、企業収益の悪化等を背景に、各地域で大幅な減少が続いている、ないし低水準で推移していると判断された。もっとも、関東甲信越は「減少幅の拡大には歯止めがかかりつつある」、九州・沖縄も「下げ止まりつつある」と、基調変化の兆しに言及した。』

ほほう基調変化とな。


・生産

要するに生産が景気を引っ張っているのでありまして。

『生産については、改善ペースや広がりは異なるものの、引き続き全地域で、増加基調にあると判断された。』

『主要業種別の動きをみると、全ての地域で、自動車・同部品、電子部品・デバイスについて増加基調にあるとの報告が行われた。また、鉄鋼については6地域(北海道、東北、北陸、東海、中国、九州・沖縄)、化学については4地域(北陸、東海、中国、四国)、非鉄金属については3地域(東北、北陸、四国)で、生産水準が上昇ないし高操業が続いているとされた。この間、一般機械については、4地域(東北、関東甲信越、東海、九州・沖縄)で下げ止まりないし持ち直しと評価された一方、3地域(北陸、中国、四国)では低操業ないし大幅な減産が続いているとされた。紙・パルプについては、3地域(北海道、東北、四国)から、減産継続ないし低操業との報告があった。』

例によって例の如く自動車と電子部品デバイスが好調ですが、一般機械がイマイチとはどう見ても輸出のお蔭です本当にありがとうございました・・・・なんですよね?


・雇用所得環境

『雇用・所得環境をみると、雇用情勢は、全地域から厳しい状況が続いていると報告された。すなわち、各地域とも有効求人倍率が低水準で推移しているほか、雇用者数についても多くの地域で減少傾向をたどっている。この間、東海では、労働需給が持ち直していると判断された。』

『雇用者所得は、冬季賞与等を中心に、全地域で引き続き減少していると判断された。』

ダメじゃん・・・・・


ということで、要するに海外様のお蔭で生産が何とかなっているから何とかなっておりますよという話のようですな。まあそうなんですけどね。


・地域の視点

さくらレポートの本文だと4ページ目(PDFの6ページ目)から毎回のトピックスを「U.地域の視点」として特集しているのですが、今回のお題はもう狙ったように『根強い価格下落圧力の中での企業戦略』というお題。

んでまあ価格が下がりそうな話が製造業、非製造業の順に色々と並ぶのでありますが、その辺はスルー致しまして先行き見通しのまとめ部分から。

『● 先行き、製商品・サービス価格は、当面、弱含みの状況が続くとの見方が多いが、流れを変えるものとして期待されているのは、値ごろ感の台頭(不動産、卸・小売)や消費者の節約疲れ(小売、個人向けサービス)、企業収益改善による需要増加(一般機械、企業向けサービス)等である。前述したような価格競争以外の需要獲得策については、相応の手応えを感じている実施先が少なくない。今後、こうした取り組みがさらに広がりをみせれば、全体としての物価の下落傾向に対する歯止め効果が期待できるのではないか、との声も聞かれるところ。』

だいぶ願望が入っているような気もしますが・・・・

『▽ 先行きについては、需要回復への道筋が不透明な中、非製造業を中心に、企業の経費節減や個人の節約志向・低価格志向を背景に、当面弱含みの状況が続くとみている先が多い。』

『具体的には、製造業では、前述のように、素材業種を中心に、原材料価格上昇に伴う値上げを図る動きがみられるものの、電気機械、輸送用機械、一般機械などで引き続き価格は弱含みの状況が続くとの見方が多い。実際、自動車では、既に納入先から1年後の価格を半額以下に引き下げるように要求されている部品メーカーがみられるほか、いち早く自ら大規模な原価低減方針を策定した完成車メーカーもみられる。また、非製造業では、雇用・所得環境の目立った改善が見込めないこと(小売、個人向けサービス)や、政策変更による需要減少(建設)等から、当分の間、価格の下落が続くと見る向きが多い。』

「1年後の価格を半額以下に引き下げるように要求されている」自動車部品メーカーカワイソス。

『▽ 一方で、卸・小売や個人向けサービスおよびその関連業種では、「揺り戻し的に足もとの下落幅が縮小したことを眺め、値下げを見合わせる先がみられる」(青森)とか、「値下げしても需要が伸びず疲労感が残るだけとの認識も徐々に強まりつつあり、川下からの値下げ圧力もそろそろ歯止めがかかる」(新潟)、「低価格実現のために品質を落とす段階に入りつつあるが、特に食料品では品質引下げに限界がある以上、これが値下げ合戦にブレーキをかけるきっかけになるかもしれない」(高松)、「値下げ商品も毎回同じものでは飽きられてしまい、リピーターが減少している」(熊本)等、企業の価格設定方針の転換点が近づきつつある、との見方も聞かれ始めている。』

・・・・何かもう「これ以上絞れないので雑巾絞りませんが何か?」という感じが漂って参ります次第で、あまり威勢の良い話ではないようですな、ナムナム。

ちなみに、こちらのお題って基本的に「現在キャッチーなネタ」を扱ってりますので、3年前から過去のお題を全部並べると、景気失速前からの推移が読めて落涙を禁じ得ませんので、久々に過去の分を全部ならべてみませう。


・『根強い価格下落圧力の中での企業戦略 』(今回)

・『1.最近の雇用・所得動向――企業の雇用・賃金調整を巡る動きを中心に――
  2.環境・省エネビジネスへの取り組みと関連企業の対応』(2009年10月)


・『最近の個人消費動向の特徴点と消費関連企業の対応』(2009年7月)

・『1.地場企業を取り巻く経営環境の悪化とその対応──設備投資、雇用を中心に──
  2.各地域からみたインバウンド観光の現状と課題』(2009年4月)

・『わが国中小企業の経営の現状および当面の見通し
──最近の収益環境、企業支出、資金繰りの動向等を中心に──』(2009年1月)

・『1.各地域からみた最近の個人消費動向と消費関連企業の対応』
 2.地域経済における原油価格等上昇の影響とその対応─水産業のケース─』(2008年10月)

・『最近の企業の設備投資動向 』(2008年7月)

・『1.グローバル需要の取り込みに向けた企業の対応について
── 中堅・中小製造業や非製造業の動きを中心に
 2.地域からみた最近の雇用・賃金情勢について』(2008年4月)

・『原材料価格上昇のもとでの企業の対応
── 最終消費者に近い「川下」段階にある地場企業を中心に』
(2008年1月)

・『1.最近の企業立地の動向と立地戦略の特徴点
 2.北海道農業の現状と新たな取り組み』(2007年10月)

・『中小企業の収益動向と支出行動の特徴点』(2007年7月)

・『1.各地域からみた最近の雇用・賃金情勢について
 2.近年の東京における高額消費市場の特徴
――海外ブランドや外資系ホテルの動向を中心に』(2007年4月)

・『各地域からみた最近の住宅投資動向について』(2007年1月)


・・・・2007年あたりのお題を読んでいるとつい3年前の話なのに遠い昔の事に(涙)。



○しかしまあデフレネタを色々と出しますねえ

で、その支店長会議の開会挨拶概要がこちら。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/siten1001.htm

まあ景気に関する話は相変わらずの文言ですが、今回は最後に12月通常会合でも示したやる気元気井脇宣言のような決意表明のようなものを打ちこんでみましたとな。

『(6)日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』

今回のさくらレポートでの「地域の視点」のお題もそうですけれども、政府がやたらデフレデフレとやかましいので、まあ日銀もそれにお付き合いちゅう感じですけれども、まあそれこそ内閣支持率が下がったりすると、政府は自分の所に降りかかった火の粉をどっかにかぶせようとする訳でして、「困った時のイラク空爆」のような外交ネタが使えない(いやまあ一応米国ネタを使うのが民主党政権のDNAだとは思うのですが、早速藪蛇状態になっているのがテラアホスなのでそうは使えないでしょ)所でもありますので、またぞろ景気回復の為に日銀何とかしやがれコノヤロー状態になってくる懸念が大蟻という所なのではないかと。

とまあ考えますと、企業金融関連施策でわざわざ大騒ぎして解除して波風立てた分で余計な日銀の政治資本を使ってしまったのは勿体なかったという風にも思えます(微妙な固定金利オペを導入しなくて済んだのかもしれないし・・)が、そうは言いましてもまあ黙って3か月継続していて今の時点で「企業金融関連の臨時措置は臨時措置だから解除」と言えたかとゆーとそれも微妙なので(米国は思いっきり臨時措置解除モードなのですけれどもね)、とにかく臨時措置解除先にあるのであればあの時点で解除しとかないと解除できませんでしたねという言い方もあるので、まあその辺はどっちもどっちなのですけれども、まーCPや社債の買入は継続しても継続しなくてもそんなに利用自体が多くない状態が継続してただろうと思うと、政治資本をちょっと派手に使っちゃったですかねとは思います。

まあ株価だの為替だのがまたコケてこないと追加緩和圧力が来ないというのが基本的な発想だと思う(というかあたくしもそう思う)のですが、デフレ継続をネタに自分たちの火の粉軽減の一環として日銀に圧力掛けて世間の批判を日銀に向けようとか平気でやってきそうなのが民主党政権クオリティだと認識しているあたくしは、何気に内閣支持率の動向とかも気になる今日この頃でございます。

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2010/01/18

年初に出てた決済システムレポートから雑感を少々。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/psr/psr2009.htm(内容紹介)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/psr/data/psr2009.pdf(本文)

本文はPDFで68ページございますので注意。で、最初の方には日本の決済に関する概要説明とかありましてコンパクトな説明になっていて大変によろしゅうございますよ。

○破綻法制の不備に関連して

で、その辺りをスルーして本文11ページ(PDFファイルの20ページです)から引用&雑感。

『リーマン証券の破綻は、1997 年の三洋証券の破綻以来、わが国金融市場が約10年ぶりに経験する「債務の一部が履行されない主要金融機関の破綻」であった。実際、リーマン証券の破綻に伴って、決済が停止された同社の約定済み取引は数兆円に達したとみられる。』

つーことでここの脚注なのですが、

『このうち、証券取引と上場デリバティブ取引に関する決済の一部については、清算機関の業務方法書や当事者間の基本契約の定めに従い、決済を停止したうえで、一括清算や反対売買などの手続が実施された。この間、金融庁による業務の一部停止命令や民事再生手続の開始申立てに伴う保全命令で、顧客預り資産の返還や双務契約に基づく証券取引の履行等を念頭に、リーマン証券が決済を継続できるよう除外規定が設けられた。しかし、一括清算等が行われた取引以外については、決済内容が国内外に跨って輻輳していたことから、正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する旨が同社自身によって決定された。この結果、16日朝以降、同社を当事者とするすべての決済が約定どおりには履行されないこととなった。』

こちらは決済システムレポートなんで、この先も基本的にレポなどの取引で生きていた物がどういう形で正常化できたかという論点の話になってしまうのだと思うのですけれども。上記の「正確な財務状況が確認されるまで既往契約に基づく決済を停止する旨が同社自身によって決定された」というのが実はまあ困った話だったんですよね。つまり、レポなどのような一括清算が契約上行えるという事になっていた物は一括清算できたのですが、一般売買に関しては結局その間に相場が物凄い勢いで上昇して連日下落した結果として、リーマン破綻前の相場水準に偶々戻ってくれましたので、そのどさくさに紛れて約定を事後的に取り消すという対応でもそんなに莫大な差損益がカウンターパーティーに発生しませんでしたが(という点は軽く後の方でも述べられています)、結局一般売買はそっちで勝手に取り消してくれ状態になるわ、何故か取引所売買の委託取引まで決済が遅延するとか信用取引などの反対売買が数日間出来なくなっただのと投資家的には大迷惑な事案が続出した訳であります。

まあそれは決済システムと直接関係しない破綻法制の問題ですからこちらのレポートでその話までおっぱじめると話が無限に広がるのでそっちの話をゴリゴリとやらなかったのだと思いますが、実際問題として投資家の動きがやたらシュリンクしたとかカウンターパーティーリスクがどうのこうのという話になったのは、取引がフェイルになって決済が遅延した事もさることながら、約定が事後的に取り消しになるリスクの方が巨大な問題でありまして、まあモノが来ないと買った物が売れない(投資家もフェイルしようと思えば出来るようになっているのですが、実際問題として投資家がフェイルした場合の計理処理とか法的建付が不明なのでそっちのリスクがある)程度の話ならまあ仕方ないのですが、遡及で損益がぶれるのはかなーりマズーですわな。というのと、リーマンの場合個人向けの取引を実質してなかったから良い様なもんで、取引所取引まで建玉処理が止まるとかを広範に一般個人に対してやらかしたらそれこそ大変な騒ぎになっていたと思われる次第でありまして、今回の処理は破綻処理の法的な進め方としては相当の問題含みであったのではないかと思います。

って前も書きましたけど、こんなレポート出たからまたしつこく繰り返すのでありました。


○ということで決済動向に関して

次の本文12ページから。

『相対決済の取引については、リーマン証券の破綻後、同社とその取引相手方が取引の約定の規定に基づき(規定がない場合には協議のうえ)、契約の解除や一括清算11などの対応を行った(ポジションの解消)。また、取引相手方は、これと並行して、リーマン証券から支払いや引渡しを受けられなかった資金や証券をみずから調達することとなった(ポジションの再構築)。』

対投資家の一般売買に関しては「協議のうえ」というよりは暫く何をどうするのかさっぱり判らん状況で、最終的には相場水準戻ったからやれやれ取り消しになったという感じだったと思いますけどまあいっか。

『清算機関を通じた決済についても、清算機関がその業務方法書の定めに基づき、リーマン証券に対して一括清算などの対応を行った。また、清算機関は、これと並行して、リーマン証券から支払いを受けられなかった資金について、銀行からの借入枠の行使や市場取引等によって資金調達を行い、他の参加者への資金支払いに充当した。さらに、リーマン証券から引渡しを受けられなかった証券については、清算機関がみずから市場等で調達し、他の参加者への証券引渡しに充当した。』

清算機関関連の取引も中々素敵なフェイルになったようですが詳しくはパス。

で、時系列の話はその先に説明がありますが、その中身に関するツッコミは決済やらレポやらの関連の皆様に聞いて下さいませという所ですが、まあこちらは決済レポートにつき決済遅延の解消に関する話なのは仕様です。

で、証券決済の次が外国為替決済なのですが、そっちはまあ正直よく知らんのでありますが、読んでいてほほーと思ったのはこの辺(本文16ページ以降)。

『この間、国際金融市場の動向をみると、米ドル資金市場の流動性が大きく低下したため、日本や欧州など米国以外の金融機関は、米ドルの調達を為替スワップ市場における自国通貨と米ドルの交換に依存することとなった。この場合、仮にCLS による PVP 決済の仕組みが存在せず、時差に伴う決済リスクを意識せざるをえなかったとすれば、金融機関どうしの信認が大きく揺らぐもとで、外為市場での米ドル調達はより困難となった可能性が高い。そうした観点からみて、CLS によるPVP 決済の提供は、国際的な金融ショックの増幅を抑制する防波堤として効果的に機能したとみることができる。』

これは確かにそうなんでしょうね。で、その先がほほーという箇所。

『なお、CLS では、比較的少数の直接参加者を経由して非常に多くの間接参加者が決済を行っている。このような構造のもとでは、直接参加者が大きな信用リスクや流動性リスクを抱え込むことになる。今次金融危機において金融機関の信用リスクに対する懸念が高まるもとで、こうした構造上の課題が改めて認識された。また、取扱対象通貨の拡大や、当日約定・当日受払い取引の取込みなどが今後の課題とされている。』

この後で出てくる日本の証券決済期間短縮に関する話でもこれっていうのは論点になりうる物ではないかと思われます。つまり、証券決済期間を短縮化することによって、一般個人投資家などの取引が繋がっているような部分のように取引が山ほどある場合とか、証券決済期間短縮に対する事務負担やら設備投資がしんどいという所では、証券決済期間が即日化に近くなってきた場合に、クリアリングバンクにぶら下がって決済(直接の決済から離脱する)という事になって来るのではないかと勝手に妄想するのですが、そーなった時に今度はクリアリングバンクがどうあるべきなのかという論点にも繋がりそうですね。



○証券決済期間短縮に関して

本文18ページから

『一方、リーマン証券破綻に伴う決済処理が金融市場に及ぼした影響をみると、国債市場ではフェイルの急増を眺めて、投資家等がフェイル発生の可能性を懸念し、レポ運用を減少させるといった事態がみられた。もっとも、市場参加者に破綻が生じる場合、これに起因して証券市場でフェイルが発生することは避け難い。リーマン証券の破綻にあっても、フェイルが増加したこと自体は自然であり、その後の対応も、清算機関等が規則等であらかじめ定めていた方法、手順等に従い着実に実行された。その意味で、わが国の国債清算・決済システムは、今回の国際金融危機の局面にあって、国債市場の機能を下支えしたと評価される。』

まあその通りなのですが、今回は破綻の取り扱いに関して結局一般売買なども含めて取引を履行しませんでしたよねというか、履行するのかしないのか判らん状態が暫く続いた辺りに問題があったような気がします。まあ確かに一般売買といえども取引にはリスクがあるので、まあ取引相手が飛んで損益が発生するという話は仕方ないのも上記と同じ理屈でその通りなのですけれども、計理的には「約定事後取消」となる証券事故扱いになったのも何かどうだったのかなとは思います。ということで、レポ運用のシュリンクもさることながら、一般売買のカウンターパーティーリスクがいきなり顕在化した方が取引の縮小につながったのではないかというのはさっきの繰り返し。

『その一方で、後述のように、債券決済期間を短縮することなどによりフェイルの発生額を抑制し、投資家のフェイルに対する懸念をやわらげることができれば、ストレス下におけるレポ市場の機能低下も緩和されるものとみられる。フェイル慣行の定着とともに、これらを実現していくことが今後の課題となる。』

というよりは、証券決済期間短縮って「未決済約定残高の削減」というカウンターパーティーリスクの削減であって、フェイルそのものは証券決済期間を短縮した方が物理的に増えないかという気がするんだが(ただし発生したフェイルの解消も早くなると思うけど)どうなんでしょ。

ということで、次の「安全性向上に向けた課題と取組み」という部分になりますが、そこでさっきあたくしが申し上げた事が少々。本文20ページより。

『上記のとおり、リーマン証券の破綻にあって、わが国決済システムは全体としてその機能を十分に発揮する一方、いくつかの課題も明らかとなった。また、今回の場合には、破綻日以降2 週間程度、市場価格の変動が落ち着いていたことから、決済処理における損失額が比較的小規模にとどまったことにも留意する必要がある(図表2-5)。』

いやそのファクターはかなり大きかったと思いますよ。で、課題の中に証券決済期間の短縮があるのですが。

『第2 の課題は、国債の決済期間の短縮である。証券の約定・決済にあっては、約定から決済までの期間が長いほど、未決済状態にある取引が決済リスクに晒される期間が長くなる。これは、日々の取引金額が同じならば、決済期間が長いほど未決済残高が積み上がることを意味する。決済期間の短縮によって、市場参加者のエクスポージャーや市場全体での未決済残高を抑制することができれば、以下のようなメリットが享受できる(BOX2 参照)。』

んでもってそのメリットの説明がありますが、まあ割愛します。これはその通りの話かと存じますけど。

『このほか、決済期間の短縮は、市場全体におけるフェイルの連鎖やフェイル残高の積み上がりを抑制する効果もある。たとえば、証券決済の不履行により当該証券を再調達する必要が生じた場合、上述のように決済期間が短いほど、短期間のうちに再調達を行えるようになる。この結果、フェイルの解消がより早く進み、フェイルの連鎖的な発生も抑制されるようになるため、投資家等のフェイルに対する懸念をやわらげる効果が期待できる。』

こらまた微妙な書き方でして、さっきは「フェイルの発生額を抑制」と書いて居ましたが、あたくしのようなツッコミをする人がいるのを予期してか(^^)、フェイルの発生そのものよりも、フェイルの積み上がりやフェイル解消への時間が減るという話をメリットにおいているので、これはまあその通りなのですけれども、「フェイルに対する懸念をやわらげる」かというとそれはまた微妙なのではないかと思います。

『さらに、国債決済期間の短縮には、国債の魅力を高める効果もある。金融資産としての国債の換金性が高まれば、金融機関の安全で迅速な資金調達手段が充実し、投資家にとっても短期の余資運用手段が多様化するほか、当日物・翌日物といった短期のレポ市場の発展を後押しすることにもつながる。』

だいぶこの辺になると我田引水っぽい話になっていますな。いやあの今でも別にT+2とかT+1とか売ろうと思えば売れますし、短国だったらたぶんT+0だって売れる(長期国債でも大丈夫なんじゃないかな?)と思うのですが、そりゃまあ1000億2000億売るとなると話は別だが。

『国債取引の決済は、わが国では約定後 3 日目決済が慣行となっている。一方、英国や米国では翌日決済が実現している。わが国でも、証券決済制度改革推進会議のもとに、日本証券業協会を事務局として、国債決済期間の短縮を検討するワーキング・グループが組成され、現在、検討が進められている。わが国金融市場の一層の整備に向けて、こうした検討が着実に進むことを期待するとともに、日本銀行としても、市場参加者の取組みを強く支援していく方針である。』

えーっとですね、T+1決済という事になると、在庫だの資金繰りだのがT+0で対処しないといけないという話で、それはつまりリアルタイムでの資金繰りおよび玉繰りが必要になるという話でありまして、取引を一人でやっているなら兎も角、多数の人間が色々な取引をした総体としての資金や玉の動向があるという事は、やはりシステムで管理するとなりますと、バッチ処理をする時間が欲しい訳でありまして、それをリアルタイムで把握するというのはハードルがかなり高いと思います。T+2をすっ飛ばしてT+1をやろうという気が満々みたいな報道やらレポートやらを見るにつれ、それはちょっと時期尚早なのではないかと思うのでありまする。とりあえずT+2で様子見た方が良いのではないかと。

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2010/01/15

○調査時期極悪の生活意識アンケート

3か月1回の恒例行事ですが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki1001.pdf

1ページ目にこんな記載が(^^)。

調査実施期間:平成21年11月12日(木)〜12月8日(火)

・・・・これはまた極悪な期間に調査したもんですが、さてその結果は。

数字だけのデータが16ページ以降にありますのでそっちから引用。()内は前回9月調査時の数値でありますが。

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。

1 良くなった 1.6 ( 1.8 )
2 変わらない 29.1 ( 23.5 )
3 悪くなった 68.6 ( 74.1 )

Q3. 現在の景気をどう感じますか。

1 良い 0.1 ( 0.1 )
2 どちらかと言えば、良い 0.8 ( 0.8 )
3 どちらとも言えない 11.7 ( 10.6 )
4 どちらかと言えば、悪い 46.4 ( 46.5 )
5 悪い 40.6 ( 41.6 )

実は9月の時も「悪くなった」というのが減っていまして、どうも単に「悪くなった」と思うのではなくて「そもそも悪いのですが何か?」という人達が増えたというのが現状なのではないかと思う次第でして・・・・・

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。

1 良くなる 8.6 ( 14.9 )
2 変わらない 58.8 ( 63.4 )
3 悪くなる 31.7 ( 20.6 )

まあそんな感じでしょうな。でもって例によって例の如く物価に関する見通しの所なのですが、そっちはこんな感じ。

Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか
(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった 4.4 ( 8.0 )
2 少し上がった 24.4 ( 39.4 )
3 ほとんど変わらない 35 1 ( 31 5 )
4 少し下がった 31.5 ( 18.6 )
5 かなり下がった 3.4 ( 1.5 )

えええ、まだ上がったというのがこんなにあるのかねというのが不思議ちゃんな所なのですが、何か値段上がってましたっけ????ただ、物価統計の「品質向上効果で物価下落」という攻撃もございますし、言われてみれば家電製品とか新製品出て品質向上しながら名目の値段は上昇(して旧モデルの値段が下がるのであたくしはそっちを買うのですが^^)してたりするから「上がった」という印象を持つ人もいるのかなあと勝手に妄想。たぶん的を外していると思うが。

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値:+0.2 ( +3.6 )
中央値:0.0 ( +0.1 )

・・・+3.6が+0.2とはどどーんと下がったのですが、そうは言ってもまだ上昇ですかそうですか。何か不思議な結果ですな。

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる 3.0 ( 4.0 )
2 少し上がる 30.8 ( 41.9 )
3 ほとんど変わらない 46.2 ( 42.4 )
4 少し下がる 17.3 ( 10.3 )
5 かなり下がる 1.1 ( 0.4 )

さすがに下がる系の答えが増えてますので、これは「デフレ懸念の払拭」を意識すべきなのではないかと存じます(^^)。

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値:+1.7 ( +3.1 )
中央値:0.0 ( +0.1 )

・・・・うーむ、まだ上昇なのかという感じですが、まーこういう結果になっているという事は、足元の物価下落が継続すると世間の期待インフレ率が低下してきていると言う事でもありますので、従いまして緩和政策を継続しないといけませんねという話になる筈なのでございますが、この結果に関する話とかが決定会合議事要旨でどの位ネタとして扱われるのかはそれこそ議事要旨を後日見るしかないですな。一応参考にはしてるみたいな感じではありますが。

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2010/01/13

○またまたバーゼルUおよび雑談

エライ人がBISに集合してこんなのが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/data/bis1001a.pdf

バーゼル委員会の親分として総裁・長官グループというのがあって、その人達がリリース出したのの日本語仮訳が上記URLということでございますな。で、最後の部分にスケジュール感が出ています。上記PDFファイルの3ページ目ざます。

『中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、本年中に、これらの各項目に関する具体的な提案内容を検討する予定である。』

ほほう。

『中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、本年末に資本の最低水準及び最低水準を上回るバッファーの最終的な水準調整を行う前に、銀行セクター及びより広範な経済双方への影響を含んだ、改革案に係る広範な市中協議及び包括的な評価についてのバーゼル委のアプローチを承認した。中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、新しい国際基準の目的は、銀行セクターの安定性と持続可能な信用供与の増加のより良いバランスを達成することにあるべきであることを強調した。トリシェ総裁は、「総裁・長官グループは、改革案の最終決定及び水準調整の双方を含む局面において、バーゼル委による作業を強力に監視していく」と述べた。』

項目別の話はその前にうだうだと書いているのですが、ゴリゴリと実施されると銀行業務なんぞやってられっか状態になるような気がせんでもない。

『2012 年末までを目標に、金融情勢が改善し景気回復が確実になった時点で段階的に実施に移せるようにするため、完全に水準調整された一連の基準は2010 年末までに策定される。これには、新基準への円滑な移行を確保するため、適切な段階的実施に向けた措置及びグランドファザリング(既存の取扱いを一定期間認める措置)を十分に長期に亘り設定することが含まれる。』

ということで、2012年でゴリゴリ実施という話では無さそうですが、いつぞやにどこぞの新聞が大々的に記事にした「10年延期」というような「租借期限99年」を彷彿させるようなお話にはなりそうも無く、まあ銀行さんも大変ですなという事のような希ガス。

で、最初の部分ですけれども。

『中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、国際的な自己資本及び流動性に係る基準の水準及び質を強化するためのミクロ・プルーデンス(ミクロ健全性)の視点からの改革とともに、プロシクリカリティ(景気循環増幅効果)やシステミック・リスクへの対応としてのマクロ・プルーデンス(マクロ健全性)の視点の導入の双方にバーゼル委が焦点を当てていることを歓迎した。また、中央銀行総裁・銀行監督当局長官は、ガイダンスを示し、以下の鍵となる分野における進展を図ることの重要性に言及した。』

ということで、各分野についての言及があるのですけれども、そこを見ているとマクロプルーデンスの視点の導入とは書いてありますが、まあその部分っていうのは一律的な規制ではどうにもならん所があるのではいかと思料。即ち、信用格付けを反映した自己資本規制の概念によって「格付けが高いけれども利回りが高い魔法の証券化商品」がバカ売れした(まあそれだけの理由ではないですけど)ように、規制ができるとその規制を微妙にスルーして別のバブルをでっちあげるのが強欲金融資本主義および最先端の金融工学の仕様だとあたくしは思っておりますので、中々この規制だけでどうこうというよりは、規制内容の不断の見直しや、各国の金融当局による適時かつ包括的な協力が必要って話になるんでしょうかねえ、と微妙にエラソーな書き方ですな(汗)。

でまあ個別の話ですが、全部引用しても良いのですが一部だけで勘弁。

『カウンターシクリカル(景気連動抑制的)な資本バッファーの枠組みの導入: こうした枠組みは、以下の相互に補完し合う2つの鍵となる要素を含み得る。一つ目の要素は、個別の銀行及び銀行セクター全体におけるストレス期に使用可能な適切なバッファーの構築の促進を意図している。これは、過度な配当支払、自社株購入、報酬支払の制限を含む資本維持措置の組み合わせを通じて達成されるであろう。二つ目の要素は、一つまたはそれ以上の信用変数に連動するカウンターシクリカルな資本バッファーを通じて、過度な信用拡大期から銀行セクターを守るというより広範なマクロ健全性上の目的を達成するであろう。』

ここだけではないのですが、書いてる事が寿限無寿限無みたいで(^^;

資本規制の中にプロシクリカリティーを抑制するような要素を打ちこむという話で、その中にどさくさに紛れて配当規制や報酬制限なども設けられるという話のようで、信用バブルの再発を防止したいのは判るのですが、こうなって来るとまたぞろ銀行業の看板を下ろす投資銀行とかが出てくるのではないかという悪感も。その悪寒は最後の所にある流動性規制の方で益々漂ってくるのですが。

『流動性: 定量的影響度調査を通じて集められた情報に基づき、バーゼル委は、30日間の流動性カバレッジ比率とより長期的な構造に関する流動性比率の双方を含む、国際的な流動性に係る最低基準の詳細を具体化すべきである。』

流動性規制に関しては、ストックビジネスとしての銀行業という点では導入するという話はよーく判るのですが、フローとかブローカレッジビジネスやっている所に銀行並みの流動性規制を掛けられるとこれまたエライコッチャになりませんかねえという感じもするので、そうなって来ると益々GSみたいな所は銀行業の看板を下ろすんじゃないかなあとふと思うのでありました、よー知らんが。


話は横になりますが、金融機関の報酬制限がどうしたこうしたという話で英国で打ちこまれた施策に関して金融村の評判はあまり宜しく無いと存じますが、「金融システムが壊れると経済に悪影響だからと言う事なので税金で救済したのに、ちょっと良くなったからって何で高額報酬という話になるんだ」という一般ピープル的な理屈はあたしゃ共感する所が多うございましてですな、つまり決済システムなどのインフラ部門と、ハイレバレッジでどうのこうのというような投資銀行部門が同じ所にいるのが話をややこしくしている面は多々あるのではないかと思う所でもあります。じゃあナローバンキングで食っていけるのかという話になると、それなりに金利水準が高く(高いと言うのは5%だ6%だとゆー世界ね)ないとナローバンキングで食っていくのは難しいように思われる(何となく経験則とイメージだけの話ですが)ので、これまた難しい話ではあるのですが、その辺りを分割管理するという訳にはいかないもんなのでしょうかねえと思うあたくしでありまする。

ところで、また邦銀が普通株増資ですかそうですかというのはこの辺。

『コンティンジェント・キャピタル(条件付資本): バーゼル委は、コンティンジェント・キャピタル及び転換可能資本商品が、規制資本の枠組みにおいて果たし得る役割について検討を行っている。これには、損失吸収力を確保するためのこれら商品のTier1資本、Tier2 資本のいずれかまたは双方への算入基準や、より一般的に最低規制資本及びバッファーとしてのこれらの資本の役割の検討が含まれる。』

まあ資本の質の問題ってえ話は前々から出ていますが、これもどういう扱いになるのかで条件付き資本調達がそこそこある邦銀には影響するんでしょうな。まあその前にこの部分の不確実さで影響されたくないという発想でTier1参入確定の普通株増資をしたくなるという流れなんでしょうけれども・・・・

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2009/12/30

○これまた虫干しネタですが金融経済月報

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0912.pdf(12月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0911.pdf(11月)

と言っても例によって概要部分だけなのですが。

・まず結論を言えば見通しを下げて金融環境を上げると

概要部分を11月と比較しますと、総じて見ますと先行き見通しの項目別展開を若干引き下げて、一方で金融環境に関しては引き上げちゅう感じだと思います。以下比較を。

・現状認識部分

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(12月)

というのは先月と変わりません。

『輸出や生産は増加を続けている。企業の業況感は、製造業大企業を中心に、緩やかに改善している。設備投資は下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。この間、公共投資は頭打ちとなりつつあり、住宅投資は減少している。』(12月)

『公共投資が振れを伴いつつも増加を続けているほか、輸出や生産も増加を続けている。設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けてきたが、最近では下げ止まりつつある。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。この間、住宅投資は減少している。』(11月)

今回は壮大に手抜きバージョンでいきなり項目別展開部分を全部引用した状態で並べましたが、やはりいきなり並べると比較しにくもんですな(おいおい)。で、結論なんですが、今回は公共投資に関して引き下げを行っているというのは昨日ご紹介した声明文比較にある通りですが、あと違っているのは企業の収益状況に関する部分であります。つまり11月は「厳しい収益状況」とあった所が、12月は収益状況に関する文言が外されて、短観を受けた「業況感の改善」の文言が入っています。ということで、まあ差引チャラという感じになるんですかね。


・先行き見通し部分

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』(12月)

これまた11月と同じ。で、項目別展開をすると(さっきは語順とかが微妙に変わっているので面倒になって全部引用しましたが^^)。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。』(12月)

『すなわち、輸出や生産は、海外経済の改善が続くことなどから、増加を続けるとみられる』(11月)

海外経済の改善については変化してませんが、増加ペースに関しては引き下げとなりまして増加「基調」とお馴染みのヘッジクローズが入ったでござるの巻。

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続く中にあっても、当面、各種対策の効果などから、耐久消費財を中心に持ち直しの動きが続く可能性が高い。一方、設備投資は、収益がなお低水準で、設備過剰感も強いもとで、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。』(12月)

個人消費と設備投資は変わらず。

『この間、公共投資は、次第に減少していくとみられる。』(12月)
『この間、公共投資は、徐々に頭打ちになっていくとみられる。』(11月)

公共投資は引き続き引き下げと。

ということで、先行き見通しはやや下げとなっていますが、まあ「増加ペースが緩やか」というのと、公共投資に関してはそうは言っても政府与党の匙加減で何とかなる話ですから、まあ下げと言ってもそんなにメタメタな下げでも無いんジャマイカという感じですかね。

・物価は特に変化なし

現状認識部分。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響などから、幾分弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落している。』(12月)

11月は「足もとは幾分弱含んでいる」となっていただけで後は同じです。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の強含みが押し上げに働くものの、製品需給緩和の影響が続くことから、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、前年における石油製品価格高騰の反動の影響が薄れていくにしたがい、下落幅が縮小すると予想される。』(12月)

11月には「年末頃にかけて」という文言がありましたが、既に年末頃なのでそこの文言が外れただけで後は同じと。


・金融環境

金融環境のマーケットデータ部分はパス。金融環境に関する部分をば。

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(12月)

という全体観は変わっていませんが、内訳をみると何となく改善っぽい感じが。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、幾分低下している。』(12月)
『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(11月)

新オペの効果ですかそうですか(^^)。タイボーが下がったという事っすかこれは???

『実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果はなお減殺されているものの、その度合いは和らぎ始めている。』(12月)

『ただし、実体経済活動や企業収益との対比でみれば、低金利の緩和効果は減殺されていると考えられる。』(11月)

緩和効果が効きだしているということですね、わかります(・∀・)

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、改善している。CP・社債市場では、低格付社債を除き、良好な発行環境が続いている。』(12月)

『資金需要面では、企業の運転資金需要、設備資金需要とも後退しているほか、一部に、これまで積み上げてきた手許資金取り崩しの動きもみられている。』(12月)

とまあこの辺は前月と同じです。

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、前年における著増の反動もあって伸びが低下している。社債の残高は前年を上回っている一方、CPの残高は減少している。』(12月)

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は、伸びが鈍化している。社債の残高は前年を上回っている一方、CPの残高は減少している。』(11月)

銀行貸出の伸びが鈍化から低下になっていますが、一方でその理由は去年の今頃伸びた反動ですという話をしてますな。

『こうした中、企業の資金繰りをみると、中小企業を中心になお厳しいとする先が多いものの、改善の動きが続いている。この間、マネーストックは、前年比3%台前半の伸びとなっている。』(12月)

というのも同じということですが、金融環境に関する部分は認識をしらっと改善させているのが中々チャーミングでございます。つまり企業金融臨時措置を解除方向にしているけれども問題は無いという事を言いたいというのは大変に良く判りました(^^)。そこで「何と言う予定調和な現状認識」などとツッコムのは無粋ですので注意しましょう(・Д・)

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2009/12/29

ということで今更シリーズで11月の決定会合議事要旨から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091120.pdf

○結構12月の布石はあったのね

というのを今になって認識しても相場的にはまあアレなのですが、なるほどそういう流れになっちょるのねというのは確認しておくべきものかと思うのれす。

まずは景気の先行きに関する政策委員の議論の辺りから(本文7ページ、PDFファイル9ページから)。

『先行きについて、委員は、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高いとの見方で一致した。』

というのは良いのですが・・・・

『多くの委員は、展望レポートでも指摘しているとおり、当面、米欧におけるバランスシート調整や国内での雇用・賃金面での調整圧力が残存すると述べた。これらの委員は、内外における各種需要刺激策の効果や在庫調整の影響が減衰するとみられるため、わが国のGDP成長率や生産の伸び率は、来年度前半にかけて一時的に鈍化する可能性があるとの見方を示した。何人かの委員は、民間エコノミストの来年度の成長率見通しも、10 月の展望レポートの見通しとほぼ同じであり、来年度前半にかけて、景気のモメンタムが一時的に弱まる可能性については、日本銀行も民間も同様の見方をしていると指摘した。』

つまり先行き下振れになるのはメインシナリオ状態と言う事ですな。で、その先で株式市場という名の先行指標に対する議論が行われています。あんまり株価の話がどどーんと出てくるというのもケースとしては多くは無いのですが、この頃は平均株価が絶賛下落して20日時点で9,500円割れとかやっていたのでそういう話になったのでしょうと思うのですが、これが泣ける。

『多くの委員は、景気や企業業績の改善などを背景に、先進国や新興国の株価は上昇基調にある一方で、日本株だけが弱めの動きを続けていると指摘した。』

さいですな。

『これについて、何人かの委員は、日本経済や日本企業の成長戦略と中長期的な成長力に対する市場の見方がなにがしか影響しているのではないかと述べた。別の委員は、日本企業が今後、新興国需要をうまく取り込めていけるかどうかに対する市場の懸念を反映している可能性があると述べた。』

・・・・・orz

『もっとも、ある委員は、株価は短期的には大きく変動するものであり、こうした動きから経済のファンダメンタルズを読み取ることには注意を要すると指摘した。別の委員は、バブル経済崩壊後の日本株もある程度の上昇はみられたとして、バランスシート調整が続いている米欧については、株価上昇の持続性について留意する必要があると述べた。』

という指摘もありますが、何かこう「どうして日本株だけ弱いのよ」というくらーい議論をしていたのではないかと行間から漂ってくるのはあたくしの勝手読みですかそうですか(^^)。


○だったら別に時限措置の将来の解除までコミットする必要があったのかと

結局新型オペを入れたのですから同じになったとも言えますけどそれは兎も角として、本文9ページから始まる当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要部分から。

『前回会合で決定した各種時限措置の取り扱いについて、多くの委員は、前回会合以降、金融市場は落ち着いた状態が続いているとの見方を示した。これらの委員は、@ 対外公表文で「金融市場の状況変化に即応した、最も効果的な金融調節手法を採用する」と記述しているとおり、日本銀行は、金融市場の状況が変化すれば、それに応じて迅速に対応するという姿勢を堅持していること、A 各種時限措置を継続することによって市場機能を阻害するなどの副作用もみられることなどを、今後とも対外的にしっかりと説明していく必要があると述べた。』(機種依存文字は原文ママで勘弁)

という事なんすけど、んだったら別に企業金融オペの「3月の終了」というのを一々明言する必要があったのかというのは今でも不思議であります。期限が来れば自然消滅なのですから、単純に「3か月延長」と言っておいてCPと社債(社債についてはどうかという気もしましたけど)買入だけ廃止すれば、まあ方向として特別措置廃止なんですねという流れで市場も先読みしたんじゃねえのかという気がします。

『何人かの委員は、前回の会合において、各種時限措置の見直しが、直ちにマクロの金融緩和措置の変更につながるものではないことを明確にする趣旨から、「当面、現在の低金利水準を維持するとともに、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を通じて、きわめて緩和的な金融環境を維持していく」方針を示したと述べた。これらの委員は、こうした考え方については、現在も全く変わりはないと付け加えた。』

つまり「需要を十分に満たす潤沢な資金供給」というのは単に景気付けの文言みたいなもんでして(^^)、実はこの辺り(つまり10月会合)辺りから、日銀の公表文が「ヤマダ電機の安売りチラシ状態」(by切込隊長)化していったという事が読みとれます。

つーかね、結局10月にこの措置を実施して「物価見通しも景気見通しも良く無い中で何でわざわざ臨時措置を解除したのか」という点について、金融市場の中の人たちですら「???」という感じ(そんなに大騒ぎして急ぐ話だったのかよって意味ね)だったのでありまして、そりゃまあ他市場やら政治方面やら一般メディア方面からは益々日銀の理屈が訳判らんという話になって、結局の所追加緩和圧力になったんじゃないっすかという気はします。

とは申しましても(コロコロ変わりますなあ>自分)、まあどうせ追加緩和に追いこまれるのだったら外せるものは先に外して置きたい、特に企業のクレジットリスクを中央銀行が直接持つのは宜しく無い、という理屈もまあ判らんでも無いのですけれども、やはり政策の流れとして「臨時措置解除」→「追加緩和決定」というのは美しく無いというか迷走しているように見えてしまう訳でして、兵力を小出しにして個別撃破されているような印象が強いっすな。やはり順序は逆であった方が美しかったというか結果として出口が速くなったのではないかと思うのでありますが。


○デフレという文言がどうのこうの

その次の部分から。

『委員は、物価に関する情勢判断の情報発信の仕方を巡って議論を行った。』

さいですか。

『ある委員は、展望レポートで2011 年度まで物価下落が続くという見通しを示したあと、予想されたとおり、「デフレ」に関する議論が高まってきたと述べた。』

『多くの委員は、これまで日本銀行が説明してきたとおり、「デフレ」という言葉が使われる場合には、財・サービス価格の持続的な下落、厳しい景気の状況、資産価格の下落など、様々な定義で用いられており、論者によって異なるため、日本銀行が「デフレ」という言葉を使用する時は、細心の注意を払う必要があるとの見方を示した。』

というのはいつもの話ですが。

『もっとも、何人かの委員は、こうした説明は正しいものの、このような言い方をすることによって、日本銀行は「デフレ」という言葉をあえて避けているとの印象を与えている可能性があると述べた。』

可能性があるじゃなくて避けているもんだと思ってましたが何か?

『その上で、ある委員は、「持続的な物価下落」を「デフレ」と定義するのであれば、そうした物価動向の評価は、日本銀行が展望レポートで示した見方と異なっていないという点を対外的にも説明していく必要があると述べた。』

という話をしてたのですが、この会合後の総裁会見では政府のデフレ宣言に対する質問で、白川総裁はまたこの話をしていたんですよね。

『(導入部分割愛)デフレには様々な定義があるので、こうした物価の状況をどのような言葉で表現するかについては、当然論者によって異なり得る性格のものだと思います。いずれにせよ、「緩やかなデフレ状況にある」との今回の政府の見解は、「持続的な物価下落」という定義に基づいたものであり、そうした物価動向の評価という点では、以前から日本銀行が展望レポートで示している考え方と異なっていないと思います。(以下割愛)』(11月20日白川総裁定例会見より)

この時も「政府と日銀の物価認識は同じ」と言いながら「デフレには様々な定義がある」とか言わんでも良い話をして折角の話をする傍から自分で否定してしまう所が残念な所だった訳ですな(^^)。で、その後30日の講演で急にデフレ問題に対応する為の基本的な考え方がどうのこうのという話を始めたと思ったら12月1日の臨時決定会合になったという流れだった次第ですな。後から読むとこれはこれで味わいのある文書となっております。

で、次の指摘はどっからどう見ても政府の「対策も無いのにデフレ宣言だけ実施」というアホウにも程があるデフレ宣言に対する嫌味ですな。

『また、別の委員は、「デフレ」について情報発信する際には、それ自体がマインドに悪影響を与えることのないよう留意する必要があると付け加えた。』(強調は引用者が勝手に行っております^^)

どう見ても菅直人副総理への悪態です本当にありがとうございました(^^)。

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2009/12/28

○決定会合声明文比較

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091218.pdf(12月18日)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091201.pdf(12月1日)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091120.pdf(11月20日)

3つ一気に比較すると話がややこしいのですが、基本的には定例会合同士で比較しますので11月と今回の比較になります。

・なのですがディレクティブに関して

今回のディレクティブはあっさり味。

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注1))。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。』(12月18日)

12月1日は新オペ導入だったのでその関連の話が長いのだ・

『1.日本銀行は、本日、臨時の政策委員会・金融政策決定会合を開催し、新しい資金供給手段の導入によって、やや長めの金利のさらなる低下を促すことを通じ、金融緩和の一段の強化を図ることとした。』

『3.日本銀行は、きわめて低い金利でやや長めの資金を十分潤沢に供給することにより、現在の強力な金融緩和を一段と浸透させ、短期金融市場における長めの金利のさらなる低下を促すことが、現在、金融面から景気回復を支援する最も効果的な手段であると判断した。このため、以下の通り、新しい資金供給手段を導入することを決定した(全員一致(注1))。』

『4.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針については、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す」ことを決定した(全員一致(注2))。』(12月1日)

ということで、実際問題としてはディレクティブそのものは12月1日の臨時決定会合と変化は無いのですが、そうなりますと12月1日の決定内容がややこしいという事になる次第でして、12月1日の決定では「ターム物金利(とは書いてませんが、やや長めの金利とは基本的にターム物金利の筈)の一段の低下を促す」という話をしているのですが、ディレクティブそのものは「無担保コール翌日物を0.1%前後で推移」という事で変わらんという状態。

で、ターム物金利誘導ならGCレートの低位安定を促さないといけないのですが、無担保コール翌日物を0.10%近辺で推移させつつGCレートが上に振れないようにするというのはテクニカルに難しい話というのはここの所申し上げている通りですので、今後の調節方針に関してはもう少し練った方が市場が調節方針判らんという話をせんで済むと思うのですけれども。


・でもって景気認識

以降は11月定例会合との比較です。

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

というのは11月と同じです。で、個別項目ですけれども。

『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)

『すなわち、公共投資が振れを伴いつつも増加を続けているほか、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産も増加を続けている。』(11月)

ということで、公共投資はどこに行ったのという話ですが、公共投資は後ろの方に移ってしまい、判断を引き下げております。

『企業の業況感は、製造業大企業を中心に、緩やかに改善している。設備投資は下げ止まりつつある。』(今回)

『設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けてきたが、最近では下げ止まりつつある。』(11月)

企業の業況感は短観に関する所ですので今回だけ入るのですが、設備投資も「下げ止まり」で基本的な所は変わりません。また「減少を続けてきたが」というのがしらっと抜けています。

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は頭打ちとなりつつある。』(今回)

個人消費は前回と同じで、公共投資は先ほど申し上げたように下方修正。ということで、今回は公共投資を下方修正した以外は基本的に変化なしというのが現状認識部分です。


・先行き見通しは見事に同じ

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

というのは11月と見事にまったく同じ文言です。まあ毎回同じって感じですが。


・リスク要因にドバイネタのような物が

リスク要因の所ですが、基本的にこれも同じなのですけれども・・・・

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済情勢など上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』(今回)

と言う所は11月と同じなのですが、今回はこの一文が入りました。

『また、当面は、国際金融面での動きなどが、企業マインド等を通じて実体経済活動に悪影響を及ぼすリスクについても、引き続き注意する必要がある。』(今回)

これが新しく入った部分でして、ドバイネタを意識しているのと、今後またどこかで地雷が火を吹くリスクについて改めて指摘したという事のようで。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

というのも11月と同じです。


・最後の部分が当然ながら今回長いのですが

今回の会合では中長期的な物価安定の理解の明確化というのが出たので、そこの説明がうだうだと入っているのが今回の声明文の仕様になっております。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)

『金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく方針である。日本銀行としては、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを粘り強く支援していく考えである。』(11月)

ということで、一応今回は色々と文言はついているのですけれども、良く良く見れば「所信表明」みたいな文言ですなという感じです。しかも物価安定の理解の説明の最後にはこのような文言がしらっと。

『今回の世界的な金融危機の経験を踏まえ、物価安定のもとでの持続的成長を実現するうえでは、資産価格や信用量の動向など金融面での不均衡の蓄積も含めたリスク要因を幅広く点検していく必要があるとの認識が、各国においても拡がっている。日本銀行としては、上記の「理解」を念頭に置いた上で、様々なリスク要因にも十分注意を払いつつ、2つの「柱」(注3)による点検を行い、適切な金融政策運営に努めていく方針である。』(今回)

・・・・つまり緩和政策長期化のリスクですね、わかります。

物価安定の理解でも最後にこの趣旨の「リスク点検の重要性」ってのがありましたが、そちらでは「上記の「理解」を念頭に、金融面での不均衡の蓄積も含めた様々なリスク要因も点検」とさらっと流している所をきっちりと説明している次第でありまして、先般のマクロプルーデンスに関する白川総裁の講演でもありましたように、まあ白川総裁的にはこの「リスク点検の重要性」に関する拘りがありそうに見えますわな、というのが先々は金融政策に関する市場の見方に影響を与えそうな気がします。まあCPIが反転してきた時の話ですから目先は特に問題無いと思いますけどね。

という所で手抜き引用大会でした。

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2009/12/21

ではまあ今日は例の「理解明確化」に関してあれこれ雑感をば。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912c.pdf


○物価安定の理解明確化リリースに俊ちゃん路線の香り

前回の臨時会合では切込隊長から『最近、日銀がヤマダ電機の特売みたいな物言いを増やしている件について』と評されましたが(^^)、今回のリリースのポンチ絵も中々こう良い感じのテイストを漂わせているのであります。前回の特売チラシでは「新しい資金供給手段」(=実は手段としては従来通りだし、指値オペも既に企業金融オペで実施済み)、「超低金利」というのがキャッチーな売り文句でございましたが(^^)、今回の宣伝文句はやはり「ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない」でありましょう(^^)。

まあ確かに報道されている総裁記者会見でもありますように、「日銀はマイナスインフレを容認している」というトンチキな話が人口に膾炙しているとゆーのも事実でございまして、まーそういう意味からも「そうじゃねえよ」という説明はどっかでしておかないといけませんなあという事もあったんで今回作ってみましたよ、という点では意味はある話なのですけれども・・・・・

ただね、この説明自体はそもそもこの「理解」導入の時点で話している事の繰り返しに過ぎないのでありまして、今回何らかの金融緩和に関する政策発動を行っている訳ではないのでありまして、つまりそれは「これは大事ですから繰り返して言います」と同じ話に過ぎないというのがまず原理的な話であります。まあ上で書いたようなマイナスインフレ許容的な解釈が結構あるのと、「ゼロ以下許容しない」がキャッチーだった事から市場や世間様が反応して良かったですねという感じです。

つまり、まあ別に詐欺でも何でも無いですけれども、良く言えば「見せ方を工夫した」んですけど、悪く言えば「大した話でも無い事を強調する福井俊彦的ペテン路線」が前回の臨時会合以来の仕様になりつつあるのですかねえという感がして、中々味わい深いものを感じるのでありました(^^)。


○でも俊ちゃんになるのはムツカシイ

詳しくは今日の会見要旨出てからなので明日のネタになりますが・・・・

総裁会見での白川さんは、「広い意味での時間軸的政策」(的ってのがミソですけどね^^)とか「物価安定の理解が浸透すれば金利形成が変わって来る」とか良い感じで良い話もしているのですが、先ほども市場メモ部分で書いたように「従来の見方を変えた訳ではない」というような発言をしちゃうのがチャーミングな所でして、量的緩和政策をやっている時には大狸と化して緩和の狸芝居(芝居の出来が良かったので猿芝居とは言わない^^)を打ち続けていた福井の俊ちゃん(ただし、解除モードのスイッチが入ってからのジャガーチェンジ振りも凄かったですが)になりきれない所が白川総裁クオリティ。

ま、詳しくは明日のネタですけれども、「物価安定の理解が浸透すれば云々」というのは「わたくしどもの申し上げていることを皆様がちゃんと理解していただけれれば金利はきちんと低位安定するんですよ」と言っているのでありまして、元々この話って金利の世界の人達向けというよりは、金融政策の枠組みとかの内容をちゃんと理解していないで好き勝手なる俺様解釈をして勝手に動いてくれる他市場とか、やるやる詐欺で口だけは達者な政治方面へのアピールなのでしょうと思ってましたけど、何気に金利市場ももっと反応しやがれってえ事かもしれませんな。

#超脱線するんですけど、先日どこぞの為替レポート(の最初に書いてあった要約だけですが)見てたら「日銀は新オペ導入後にコールレートを恒常的に0.1%を割り込むような調節を行っておらず、姿勢の明確化が求められる」とかいう説明があったんですけれども、それはお前ディレクティブ違反だっつーのという感じでして、ちゃんとした銀行が出しているのにそれかよという所に落涙を禁じ得ない所です。別に何を言うのかってのはそりゃまあ自由ですけれども、基本的なこと位押さえてくれよと思うのであります。

会見関連は明日に続き、さっきの明確化に話を戻しましょ。


○物価安定の理解は中長期的な理解でありまして・・・

まずですな、これって「『中長期的』な物価安定の理解」であるんですな。即ち、今回明確化したと堂々リリースされたのは「日本銀行は中長期的にマイナスインフレは容認していない」って事ですが、そんなの当たり前の話でして、中長期的に持続的な物価下落を容認する中央銀行はいませんわなということっすよね。

しかもこれって中長期的な話でありまして、足元で「〜による特殊要因の反動による物価の一時的な下落」の結果としてのマイナス値を許容するかしないかというのとは別ですがな、という事にもありますわな。日銀的な理屈からするとたぶん。

しかもこの明確化なんですけれども、よくよく見ますと最後の部分に『リスク点検の重要性』というチャーミングな箇所がございます。曰く、

『上記の「理解」を念頭に、金融面での不均衡の蓄積も含めた様々なリスク要因も点検』

どう見ても低金利政策長期化懸念です本当にありがとうございました・・・って読んじゃいますけれども、そもそもこの「中長期的な物価安定の理解」というのは明確化のリリース文書にもありますように、2006年の量的緩和解除の時に最初に出たのでして・・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/mpo0603a.htm

まあこの時ってあたくしウダウダと書き物をした覚えがありますので、2006年3月10日と13日に書いた駄文とか、当時の総裁会見とかをご参照ありたし。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0603a.htm
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisaku05-02.html#seisaku060313
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisaku05-02.html#seisaku060310

ま、今回はさすがに低金利政策長期化リスクを想像させる箇所を下の方に追いやっているのは配慮を感じますが、その部分もちゃんと残しているのは、(元々今回「理解」に関して何の変更も無いのですから当たり前ですが)これまたチャーミングな所でございます(^^)。

それから「中心1%」っていうのに多分いい感じで騙されると思うのですけれども(2006年の駄文でも書いてますけど)、中長期的な物価安定の理解が1%であるという事は即ち、「1%水準のインフレならば金融政策は中立的で良い」という話でもある訳でして、金融政策が効いてくるのにタイムラグがあるからフォワードルッキングがどうしたこうしたという話を持ち出しますと、CPIが0.5%程度でも堂々「超緩和政策の解除であって引き締めでもなく、依然として緩和的」とか言いながら政策金利を引き上げることは大いに可能であります(つーか前はそうやって利上げした)し、上限2%ってえ事は「2%を超えるインフレなら金融政策は引き締め的に」って随分タカ派だなおいおいって言う話でもあるんですけどね。

ま、足元物価が絶賛マイナス推移だからどうでもいい話ですけど、その辺りを忘れると物価が戻ってきた時に勘違いする元になるので注意しましょう(^^)。



○で、時間軸かという話ですが・・・・

まず原理原則的な話をすると、これは「中長期的な理解」であって足元にコミットしていないという点では時間軸ではございません。

ただし、展望レポートで既に示されているように、2011年度まで物価の見通しがマイナス推移していると言う事は、即ちどこをどう考えても日銀様におかれましては、2011年度の半ば(本当はもうちょっと先の話だとと思いますが、政策のタイムラグを考えたフォワードルッキングとやらを考えて上り最速^^で考える)までは緩和的な金融環境を継続していかないと話にならんと(今のところは)考えているという事になりますので、そもそも論からして時間軸効果のようなものは前からあるにはあるという事になります。

まあこの明確化がどうのこうのというよりは、実際問題として行っている指値オペの方が徐々に効いてきて、ターム物金利が押さえ付けられていくというルートの方が時間軸効果の結果としての中長期金利低位安定には効いてくると思いますが、より長い所になりますと、財政がどうのこうのとか米国などの長期金利動向とかに振らされるという事になるんでしょうかね、よー知らんが。


○追加緩和はあるのかどうかの私見

まー今回は「外向けアピール」ということでありまして、本石町日記さんの所で『気まぐれな政権とある程度付き合う金融施策運営は…』というエントリーがあるような感じだと思います。
http://hongokucho.exblog.jp/12521075/

ただし、展望レポートにありますように、2011年度までのマイナスインフレが展望されるという話で、2年先までマイナスと言っているのを中長期的ではないとはさすがに言えないでしょ、という事を勘案しますと、緩和的な金融政策をより強化しないといけないんじゃないのというのが理屈としてはある訳でして(まあ展望レポートを出した後の12月1日に緩和の強化をしましたよ!とは言い訳として出来るとは思いますけどね^^)、今後に関してはやはり理屈をキリキリと詰めますと何か緩和強化をせにゃならんという事になるかと思います。

で、例によって緩和強化は金利ルートの話になるというのが従来路線で行った場合の方向性になるのですが、0.1をゼロにするよりはターム物の引き下げ方向で、新型オペのオファー額を拡大するとか、期間を3か月から6か月にするとか(最終型は1年ですか)、まあ基本的には金利ルート。輪番拡大は、前回のロジックが流動性対策だったことからして、金融市場が何か変調になってきたとかいうような場合には発動されそうですが、そうじゃない場合はバランスシート拡大に伴う技術的な対応という理屈じゃないと中々出てこなさそうな気はします。よー知らんがの。

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2009/12/16

○今更ですが10月30日の決定会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091030.pdf

各種措置の解除を行ったと思ったら1か月後には別の新オペ実施でござるの巻となった訳ですが、まあ「どうしても個別企業直接のクレジットは取らない」(買入じゃなくて通常の資金供給オペ担保だったら一義的には金融機関向けのクレジットになるから)という意思が強いというのであれば、CPやら社債の買入とターム物金利誘導が入れ替えになったという事なんでしょうけれども、市場機能がどうのこうのという論点から言えば普通に前者の方が市場機能重視だと思うのですけどねえ・・・・


・景気見通しは(もう1か月半前の話ですから)観賞用です

という話は兎も角、1か月半前の景気見通し部分はまあ政策インプリケーションというよりは観賞用として読みますと、新興国経済に関する話の所などが「ほほー」という感じっすか。

『また、多くの委員は、新興国・資源国経済の動向と世界各国で取り組んでいる各種政策の今後の展開は、密接に結びついた問題であるとの認識を示した。この点について何人かの委員は、新興国・資源国において採られている大規模な景気刺激策と、先進国の緩和的な金融政策による新興国・資源国に対する資金流入が相俟って、新興国・資源国経済が上振れる可能性を指摘した。これらの委員は、新興国・資源国経済が過熱に至った場合、資源価格が上昇する可能性が高いため、わが国にとっては交易条件の悪化からかえって景気の下振れリスクとなる可能性もある点についても付言した。』

途中まで景気の良い話なのですが、最後に景気下振れリスクになっているのがチャーミングですな。まあ輸出は伸びるけど交易条件悪化になるかも知れませんなあというお話のようで。

で、この先に企業の中期的な成長期待に関する論議があるのですが、そのくだりを読んでいて今となっては落涙を禁じ得なかったのはこの部分。

『一方、別のある委員は、今後新政権による新たな政策対応が奏功すれば、成長期待が上振れる可能性もあるとの見方を示した。』

・・・・いやもう残念としか申し上げようがございません。


・CPと社債買入解除に関して

でもってですな、買入解除、特オペ延長して終了という決定をした『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分ですけれどもまあ何と申しますか。

『C P ・社債の買入れについては、多くの委員が、C P ・社債市場の発行環境が低格付社債を除き良好なものとなっているほか、応札額もごく僅かないしはゼロとなっており、市場機能回復という所期の目的は十分達成されているとの見方を示した。』

使われていないのなら取りあえずバックストップで残しておくという話をしていた西村副総裁を小一時間問い詰めたいのですけれども。

『何人かの委員は、特にC P 市場において、日銀のC P 買入れの存在を前提とした価格形成によって、C P 発行レートのばらつきが縮小するなどの副作用も無視し得なくなっていると指摘した。』

えーっと、それは買入じゃなくて特オペ前提の方だと思います。

『こうした議論を踏まえ、大方の委員は、C P ・社債買入れの扱いについては、予定通り、現行期限の12 月末をもって完了することが適当との認識を示した。』

別に10月に決定せんでもよかろうとは思うのですが・・・・

『ただし、ある委員は、社債買入れは、将来の不確実性に備える安全弁として機能しているだけでなく、市場に特段歪みをもたらしていないと指摘した上で、格付けの引き下げが懸念されている状況にあっては、社債買入れを延長することが適当との意見を述べた。』

どう見ても水野審議委員(当時)です本当にありがとうございました。実際問題として言うと、格下げもどんどん進行すると買入の対象から外れてしまうという罠もあるのですけど、まあその個別具体的な話では無く、市場環境がどうのこうのという話をしてるんでしょうな。


・特オペの「半年後の解除」に関して

まあこの辺りの理屈が香ばしめなのは何度か申し上げた通りですけれども。

『何人かの委員は、金融市場が安定し、共通担保オペの落札金利が特別オペ金利の0.1%とほぼ同水準に低下する中で、両オペの効果の差は小さくなっており、特別オペも所期の目的は、かなり達成されたと評価していると述べた。』

それは特オペの力で共通担保が下がっていたともいえるので、非常に微妙ではなかろうかと思われますけど、まあ何度も書いた話なのでそこはスルー。

『ただし、これらの委員も、年度末に向け、金融市場の安定確保に万全を期す必要があることを踏まえ、年度末までは特別オペの実施が適当であるとの見解を示した。こうした議論を経て、委員は、特別オペの期限を2010 年3月まで延長することが適当との認識で一致した。』

さいざんすか。

『更に、委員は、4 月以降のオペの運用についても検討を行った。何人かの委員は、同オペの影響として、高格付けC P の発行レートが短国レートを下回る「官民逆転現象」等の副作用がみられることを指摘した。』

まあここまではその通りですが、官民逆転なんぞ半年くらいずーっと継続していたのでありまして、ここでその副作用をことさら強調するのは(前から指摘してた人はまあいますけど)結論先にありきの香りがプンプン。

『また、何人かの委員は、こうした特別オペの副作用も踏まえ、特別オペと共通担保オペの効果の差が小さくなったもとでは、より担保範囲が広く、市場の資金需要に応じてオペの期間を弾力的に変えられる共通担保オペを利用することが、金融市場の安定を確保し、企業金融の円滑化を支援していく上で、より望ましいとの意見を述べた。』

ここの理屈はちょっと変。市場の資金需給に応じてオペを増やしたり減らしたりして、出来上がりの資金供給額を一定水準にするというのがまあオペレーションの基本みたいな感じなんですけど、金融市場の安定という観点、つまり市場金利のボラを下げて低位安定させるという目的があるのであれば(無いのなら話は別ですので念の為)、オペレーションを伸縮させるのではなく、ある程度予見可能な形で同じ量の資金供給をロールして行くという動きが必要になるんですよね。

つまりですな、短期市場的に言えば、というかGC市場的な話をしますと、資金の主要な出し手が偏在している上に、金利水準がこの状態で市場取引が活発ではないという状況なので、各種モノ日になると参加者の資金ポジションが偏在する傾向が益々顕著になっている訳でありまして、結局の所日銀の資金供給オペがないと国債ディーラーの安定的な在庫ファンディングが難しいという状況になっておる訳ですわな。そうなりますと、資金供給オペを弾力的にいじるのではなく、ある程度のロットのオペをロール前提で安定的に同じ額で供給する方がファンディングの予見可能性および安定性が高まるので、結果としてGCレートが低位安定するという事になり、ターム物金利の低位安定化に繋がるという話になる訳ですな。

それで足元余り過ぎるという場合は吸収オペのツイストをすれば良いですし、今の状況だったら付利金利制約もあるので、別に引かなくても良いでしょという話になるかもしれません(ただし付利金利制約の無い生損保&投信年金があるので運営上はツイストをした方が良いのでしょうけれども)。


と、本当は後の相場雑談で書こうと思った事を書いてしまいましたが、議事要旨に戻りまして。


『その上で、大方の委員は、措置の完了とその後の調節運営を予め示すことで、市場の予見可能性を高め、先行きの安心感を醸成することになるとの見方で一致した。』

訳判りません><;

『もっとも、この点について、一人の委員は、将来同オペを完了することを現時点で表明することは、金融市場を不安定化させるリスクを伴うほか、金融緩和を維持するという本行の姿勢の分かりやすさが損なわれるおそれもあるとの意見を述べた。』

どう見ても水(以下同文)。で、案の定姿勢の分りやすさが損なわれた結果として追加緩和しやがれの大合唱になってあのザマになったのですな。ナムナム。

『この間、別の一人の委員は、先行き、再び必要と判断されるような場合には、特別オペを再び活用することも含め、機動的かつ弾力的に対応することが適当であると述べ、他の委員も賛意を示した。』

だったら最初から停止を明言する必要があったのか(何も決めなければ自動停止なのですから)と小一時間。


・政府からの発言

財務省のこの発言は仰る通りだと思います。

『各国中央銀行の非伝統的措置の取り扱いが注目される中で、日銀の意図や考え方が正確に伝わるよう、時限措置の取り扱いにかかる判断と、展望レポートに示される経済・物価動向についての慎重な見通しとの整合性について分かりやすくご説明頂きたい。』

一方で内閣府のこの発言ってどう見てもアリバイ発言でしょ。

『日本銀行及び政府が政策運営を行っていく上では、経済情勢や金融情勢についての緊密な意見交換が重要であり、政府としては、日本銀行法第4条の規定を踏まえ、政府と日銀の協議の場を設けることを提案したい。』

って提案してる政府の方が全然この協議の日程が設定できないというギャグとしか思えないような流れになっているのはご案内の通りかと存じます。結局12月3日だかなんだかに首相と日銀執行部の会談が実施されただけですよね。内閣府は何やってんだかって所ですな。

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2009/12/15

○毎度の短観与太分析

ということでまずは短観を毎度の趣味的チェック。ちゃんとした分析は本職の方のレポートを読んでちょ。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0912.pdf

・業況判断DIの達成度合い

9月調査時点での先行き見通しがどのくらい達成出来ているかという話。前回は6月までの改善傾向がストップと言う感じになって残念感漂う内容でしたがはて今回は・・・・


        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲33→▲21     ▲24→▲18
製造業中堅企業 ▲40→▲35     ▲30→▲31
製造業中小企業 ▲52→▲44     ▲40→▲42

非製造業大企業  ▲24→▲17    ▲22→▲19
非製造業中堅企業 ▲30→▲28    ▲29→▲33
非製造業中小企業 ▲39→▲40    ▲35→▲41

えーっと、まず目立つのは大企業以外の先行き見通しが改善ではなくなっている事。9月時点では非製造業の大企業以外が横で他は改善という感じでしたが(非製造業の中堅以下というのは最遅行指数ですわな)、今回は製造業の大企業以外が横ばい(若干下)で改善方向になっているのは大企業だけとなり、非製造業の大企業以外は悪化方向ですかそうですか。

でもって、もうひとつというか元々あたくしが見てた推移ですけれども、9月に予想されていたDI数値が達成されているかという点で言えば、製造業大企業で未達となってまして、製造業の中堅中小や非製造業の中小では予測以上にマイナス縮小となっていますけれども、まあこう並べてみると3か月前の予測ほど改善してませんねという感じです。

ただまあ9月調査時点からこの3か月でグダグダ政権のグダグダ政策(というか政策全部先送りだわな。五星紅旗様の会見だけは手早く実施するのにね〜)のもと、株価(はまあここへきて持ち直しましたけど)や為替市場が誠に遺憾になり、先日の景気ウォッチャー調査は大変に華麗な落ち込みを示すという状況下で、まあこんなもんで済んでいるのが目出度いという感じは致します。


・雇用判断DI

こちらも9月になった時点でそこまでの持ち直し傾向が非製造業を中心に早くも頭打ちになってしまいましたねえという感じになっておりました。まあ製造業は比較的マシはマシだったのですが。

        (9月時点)      (12月時点)
         現状→12月予測   現状→3月予測
製造業大企業  +26→+18     +21→+18
製造業中堅企業 +32→+25     +26→+23
製造業中小企業 +35→+27     +29→+27

非製造業大企業  +11→+7     +8→+7
非製造業中堅企業 +10→+7     +9→+9
非製造業中小企業 +12→+9     +9→+10


製造業の雇用判断DIの改善が9月に予測した程には進んでいませんけれども、まあ方向として改善しているのは改善しているという形でござんして、何か先行き真っ暗的な報道が多いのですが、ここの数値の傾向だけ見ていると雇用環境が極端に悪化しているように見えないのがアレですな。まあ雇用調整じゃなくて給与支給ベースで調整しているからという事なのかも知れません。ついでに言えば先行きの雇用人員判断DIも改善方向になっているのは中々心強い話ではあります。

正直ちょっとこのあたりの数値は足元の金融市場動向と報道ベースの話に思いっきり振らされるあたくし的には(開き直ってどーする)「そんなに落ち込まないのね」と新鮮に思ったのでありました。


・証券業の業況判断(堂々の長期時系列^^)

今回も長期時系列を更新。サブプライム爆発前でありますところの2007年6月調査分からのを更新。

        現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23     
(12月時点)▲26→+4       
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0
(9月時点) ▲70→▲44
(12月時点)▲70→▲59
(3月時点) ▲76→▲68
(6月時点) ▲29→▲21
(9月時点) ▲4→+4
(12月時点)▲28→▲8

半年前にはこんな事を書きました。

『・・・・良く見ると、次回予測が前回同様に、足元の数字とあまり大差が無いのでござんすな。ということは、願望成分入れまくって外すのが仕様となっている証券業DIクオリティを勘案すると、株式市場は当面堅調推移というのが結論になる。とまあこういう話になるのであります、ゲラゲラ。』

で、その後は平均株価10000円キープだったのですけれども、9月短観の数値を見た時にはこのような事を書きました。

『で、今回ですが、どうも先行きがプラス数値になっているのが気になる。数字的には8の改善に留まるのですけど、マイナスがプラスってのが・・・・』

うーむ、案の定の結果でありまして、「プラスに改善です!!(キリッ)」と証券業の皆様に置かれましては喜んでいたらご覧のような結果になるのでありましたという正に様式美の世界としか申し上げようがありません。

で、今回ですが、先行き見通しが20ポイントの改善になっているということで、物凄い勢いで願望成分が入っておりますので、まあ向こう3か月の株式市場はどう見ても頭打ち(下手したら下落)です本当にありがとうございましたという事が示されるのでありまして、残念感爆発な証券業の業況判断DIでございます。

しかしまあ何ですな、書いてて情けなくなってくるのですが、証券業の業況判断DIが株式市場の逆指標として役立つとか、何か一般ピープルの皆様が聞いたら呆れそうな話ではございますが。


で、企業金融関連に関してはまあ例の措置は終了しちゃったので正直あまり興味が無くなっておりますが一応今回はアップデート。


・資金繰り判断DI

前回は2極化状態爆裂でした。

      (9月時点) (12月時点)
大企業    +6     +6
中堅企業   ▲6     ▲3
中小企業  ▲18     ▲16

相変わらず2極化。微かに改善しているだけですね。


・貸出態度判断DI

      (9月時点) (12月時点)
大企業    ▲4     ▲1
中堅企業   ▲6     ▲5
中小企業   ▲12    ▲11

相変わらず2極化。大企業だけちょっとだけ改善ですか。


借入金利水準判断とCPの発行環境判断はあまり当てにならないので割愛。


以上与太分析ですが、本当の分析は本職の人のレポートをご参照ありたし。

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2009/12/02

お題「臨時決定会合あれこれ」

今朝の公共放送ニュースで早速「日銀に一段の対応求める声も」と出ていてニヤニヤ。

#ところでドル安で商品価格上昇して株式市場ヒャッハーとかやってる米国はインフレ懸念でやっぱり早期引き締め復活のリスク無視なのか??


○決定内容どうのこうのの前にもうアホかと馬鹿かと

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912a.htm
金融政策決定会合の臨時招集について

これがリリースされたのが午前11時1分くらいでして、そのリリースのタイミングが絶望的に悪いのがもうアホかと馬鹿かという次第。10年国債入札の前場引けに緩和決定が予想される決定会合の臨時召集のリリースというのは酷過ぎですわな。

まあそれだけで債券市場の中の人はご理解頂けると存じますが、中の人じゃない方にも判るようにご説明いたしますと・・・・・

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/nyusatu/2009/offer056.htm

こちらにありますように、昨日は10年国債の入札が2.2兆円実施されまして、この入札の締め切り時間が正午なのですな。で、国債入札というのは、投資家が直接入札に参加する分もありますが、基本的には証券会社などが顧客需要やら何やらを勘案して「今回の入札はいくら落札するか」って感じで正午直前に札を入れて、落札(ただし入札だから読みを外して空振りになったり入り過ぎたりする事もあります)して、ある程度在庫を抱えつつ顧客(機関投資家)の売買(というか買いたい)ニーズに対応するという図式なんですな。

んでもって、当然ながら落札するということは(普通の場合)在庫を持つという事になるのですが、在庫を持つということはその商品在庫価格の変動リスクを抱える事になるので、落札直後に販売できる分は兎も角として、在庫抱えて走る分はある程度ヘッジを入れておかないといかん訳ですな。

で、入札が正午に実施ということは、前場の引け時点では証券会社としてはある程度(別に落札予定全額である必要は更々無いので念の為)は入札に対応するヘッジをしておかないと困る(短期国債みたいにヘッジ要らずのモノもありますが)ので、つまり前場の引け時点でマーケットは一方的にショートポジションに傾いているのですな。入札によってそのショートがカバーされてロングになるのですけど。

・・・ということでお判りかと存じますが、前場の債券先物取引が終了した11時になってノコノコこのようなリリースを行うと、ショートに傾いている所に買い材料を投入した事になるのですから、国債入札を高い値段の所で買い戻して、ドテンロングになってしまうという悲惨以外の何物でもない状況に追い込まれる(実際そうなった)のでありまして、プライマリーディーラー虐殺大会になってしまった訳ですな。

しかもショートが溜まっている中で買い材料をぶつけられ、そこでマーケットの気配が無い(売買やって無い時間ですから)中でカバーをしないといけないという状態ですから、通常の取引時間でこの材料をぶつけられた時よりも値が飛びやすくなりますし、入札が高くなってしまうので購入予定の投資家も涙目という状態になってしまい、まあ市場参加者の評判の悪い事悪い事。

普通に考えてこのリリースは寄り前、遅くとも10時位までには行って長期国債入札までに価格に織り込ませるべきでありまして、10年国債入札という国内債券市場での大イベントがある日の前場引け後にリリースとか市場に喧嘩を売ってるとしか思えないタイミングであります。

いやまあショート溜まった所で臨時会合のアナウンスして長期国債入札の金利を下げて金利低下を演出するという所まで狙って実施したのであれば、ある意味大したもんですので、その辺何考えてたのかは存じませんが、日銀のリリースによって虐殺状態になってしまった業者としては・・・・

「市場との対話」とか言ってるけどそんなものよりも「政治との対話」の方が重要なんでしょ、という認識になってしまった次第でございまして、まあ政策委員会の皆さまに置かれましては、当面「市場との対話」という文言を口にしない方が無難であると思われますのでご忠告させて頂きます。


つーことで、特に金利系の何とかストの皆様も当然ながらトレーダーが虐殺(特に虐殺度合いが厳しいのは大量落札をする大手業者になりますわな)されているのを横で見ながらお仕事をしておりますので、昨日の決定に関する各社さんの解説レポートをちょっとだけ拝読しましたが、まあ罵倒成分が結構入ったレポートが多く、大変な相場だったなあと思わせてくれましたです、はい。


・・・・しまった、政策じゃない話で延々と書いてしまった(汗)。



○輪番増やすより今回のターム物誘導の方が金利には効くと思います

んでまあ決定会合実施の報道から色々な人の「今日は何が実施される」の予想が飛び交って、当日の午後の市場は最後の方には5bp位金利が下がるのを織り込むような勢いになっておりましたし、債券系の人は輪番拡大の予想とか、果ては外債購入とかの観測をする人もいたようでございましたが、結果はターム物誘導。

声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091201.pdf

わけわからん参考図表
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912b.pdf

共通担保オペの指値方式という形になりましたという話
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0912a.pdf

で、この指値オペですけれども、会見によれば毎週8000億円のロットで0.1%の指値で実施となりますが、当然の如くオペ参加者は全員サービスレートの資金が欲しいとなりますから、オペ参加者の多くでその8000億円を分けるという事になりますわな。つまり結果としてはオペ参加者で均等に割り振られるので本店オペだったとしても1回1社辺り160億円の供給となるんですな。

8月27日現在の本店オペ先リスト(50社)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mos0908d.pdf

8月27日現在の全店オペ先リスト(159社)この後増えてます
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mos0908e.pdf

つーことで、まあこのオペそのものでは市場インパクトのある大手参加者が一回のオペで必要となるロットが全然確保できない事が予想されるのですけれども、あとは運用がどうなるかという話でありますな。

つまり、このオペで供給されるトータル10兆円(になるのだからたぶん連休とか無視すると13週間物で実施されるんでしょ)の供給が従来の共通担保オペのリプレースで実施されるのであれば、大手参加者的には「ロットが全然確保できないオペが残高ベースで10兆円増えてその分通常のオペが減りやがった」という話になるので、特にオイシイ話でも無いどころか却って困る位の話になりかねませんが、この10兆円が通常ベースの供給に乗っかって(3か月後には)当座預金残高が20兆円台前半になるというのであれば、まあ足元の資金が潤沢になるから足元のGCレポなどのレートも下がり易くなって、結果としてターム物のオペレートとかも下がると言う事になるでしょう。

その場合、まあドタ勘ですけどGCレートが0.11%あたりに張り付き、3か月TBが0.12位になって、1年ゾーンが0.14位になるというような感じになるんですかね。んでもってこのオペ自体は当分続くようでありますので、現在の政策金利が続くと言う前提であれば、そのあたりのレートがベタベタになって来ると2年とか3年辺りまでのレートも徐々に下がるのではないか・・・と言いたいのですが、昨日の債券市場では、大引けの時点では5bpくらいレートが下がるんじゃないか位の勢いで中短期ゾーンの価格形成をしていましたので(^^)、昨日の引けはあれはあれで2年くらいまで今回の政策効果を全部織り込んでしまったようなレートになっておりましたのはご愛嬌。


まあどうせ輪番を拡大してなんちゃって量的緩和をしても金利が下がるかと言えば何ちゃって量的緩和の部分で足元のGCがちと下がるかもしれないですねえという程度の話で、瞬間的な反応はともかくとして各種の金利が本当に下がるのかという事を考えますと、輪番拡大よりはターム物誘導の方が効くと思います。ただまあ一般ウケしないですし、ターム物誘導そのものも効いてくるのに少々時間が掛かる(1か月位かな?)のではないかと考えられます。

と、これだけ書きましたが、指値で実施した分、通常の競争入札分を減らしたりするとろくすっぽ意味がございませんので、その辺は運用次第だと大事な事なので繰り返して申し上げておきます。



○とりあえず10兆円に食いつきがあって良かったですね(棒読み)

昨日のネットでのニュース見てたら10兆円の文字がそこかしこにございまして、「10兆円の供給」ってわざわざ言って良かったですねという感じでしたが、何せ昨日の臨時会合に関してはタイミングが極悪であった事が証券会社の総スカンを食らっておりましたので、今朝になったら早速公共放送がこの有様。

http://www3.nhk.or.jp/news/t10014137781000.html
日銀に一段の対応求める声も

(;∀;)イイハナシダナー

まあ今回の公表文は本石町日記さんもこのように解説していますが(^^)、
http://hongokucho.exblog.jp/12425002/
『今日のステートメント、量的&緩和感を必死で醸し出そうとする言葉がちりばめられ、日銀文学的に読んでいて凄い疲れるのだが…。』

あたくしもさっき付けたURLの2つ目に軽くツッコミ(^^)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0912b.pdf

そこの『●新しい資金供給手段の概要』って所にこのような記載が。

『金利:超低金利・固定(0.1%)』

>超低金利
>超低金利
>超低金利

・・・・飲んでた紅茶を噴いたので謝罪と賠(ry

0.1%固定と書けば良い話だと思いますが何と言う涙ぐましいアピール・・・


んでまあ本石町日記さんの所で解説がありますので、それをご参考にという感じですが(手抜き)、一応まあ今回はさすがに量を出しそうな雰囲気だけは醸し出しているので、去年のいつぞやのような「出す出す詐欺」にならないようにして頂きとう存じます。まあ当座預金残高が増えるのを容認すると、結果として非不胎化介入のようなものが起きる事も(って財務省が介入しないと話が始まりませんが)あるかも知れませんですね。

というのは、一応総裁会見で「ターム物金利を下げる」「広義の量的緩和」(って白塚さんのレポートでの定義ですな)って話をしている事を真に受けて書いておるものでありまして、これが全部出す出す詐欺だと話は全然違ってくるので、結局のところ運用次第となるかと存じます。

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2009/11/24

○まずは声明文

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091120.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。』

ということで、前回の声明文であった微妙な文言は後ろに回りました。

『5.金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく方針である。日本銀行としては、わが国経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰していくことを粘り強く支援していく考えである。』

まあ変に頭に付け続けるとそこの文言をいじったらどうしたこうしたという意味合いが出来てしまうので、それを避けるために後ろに持って行き、ついでに「当面の間」の文言も外していますわな。

ちなみにこれを英語版で見るとこうなります(^^)。

http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc09/k091120.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/type/release/adhoc09/k091030.pdf(前回)

『5. In the conduct of monetary policy, the Bank will aim to maintain the extremely accommodative financial environment. The Bank will provide steady support for Japan's economy to return to a sustainable growth path with price stability.』(今回)

『1. Monetary policy The Bank will maintain the extremely accommodative financial environment for some time by holding interest rates at their current low levels and providing ample funds sufficient to meet demand in financial markets.』(前回)

for some timeが抜けているのと、providing ample funds云々というのが抜けておりますので、まあガイジンさん的には何かインプリケーションを感じちゃうのかもしれませんな。実際には声明文原文は日本語優先になる筈ですけど時々英文を読むとこれはこれで面白いので今回は引用です。


んでもって、まあ結果が出た時に債券先物とかそれまでの威勢良い上昇から失速したのですが、下がって逆に「えー、そんなに何か期待してたのかよー」という感じでして、実際問題として今回の会合で何か緩和策が出るという期待を真面目にしてた人は皆無の筈ですので、単に週末前にロングの手仕舞いが起きただけだとは思いますが、ちょっと意外感があるという感じでした。



○足元は上方修正ですが展望レポート通りなのではないかと

今度の比較対象は10月14日の公表文になります。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091120.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091014.pdf(前回)

・総合判断

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(今回)

『わが国の景気は持ち直しつつある。』(前回)

持ち直しつつから持ち直しと表現を変えていますが、色々とヘッジクローズが入っているという所が差引という感じっすな。そもそも展望レポートのメインシナリオ通りですと徐々に回復するのですから、足元強い経済指標が多かったという事を勘案するとここで表現が前進しても実際問題としてはおかしくは無かったですわな。ただまあ政府が意味不明のデフレ宣言をした(悪態は後ほど)中で表現上方修正という空気の読まなさ振りに痺れますが。

で、ここのヘッジクローズにある「各種対策の効果」というのは事実その通りですが、その各種対策に水差し野郎となっているのが現政権の施策だったりするので、巧まざる悪態になっていると読むのは意地が悪いですかそうですか。


・個別展開:公共投資、輸出、生産、設備投資

『すなわち、公共投資が振れを伴いつつも増加を続けているほか、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産も増加を続けている。設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けてきたが、最近では下げ止まりつつある。』(今回)

『すなわち、公共投資が増加を続けているほか、内外の在庫調整の進捗や海外経済の持ち直し、とりわけ新興国の回復などを背景に、輸出や生産も増加を続けている。そうしたもとで、企業の景況感は、製造業大企業を中心に、改善の動きがみられる。設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けているが、減少ペースは緩やかになってきている。』(前回)

公共投資を下げて海外経済を上げています。設備投資は下げ止まりつつあるなので若干ですけど上方修正ですかな。


・個人消費

『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。』(今回)

『一方、個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが続いているものの、厳しい雇用・所得環境が続く中で、全体としては弱めの動きとなっている。』(前回)

個人消費を持ち直しに上方修正していますが、それは各種対策の効果でGDP(ただし実質)が強かったという実績による話で、そこら辺の対策効果が切れるとはてどうなるのやら。


・物価、金融

『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和した状態が続く中、前年における石油製品価格高騰の反動などから、下落している。』(今回)

前回分はめんどいので引用しません。と言いますのは、前回と違うのは最後の下落の部分が「下落幅が拡大」だったのが変わっただけでありますので、まあここはスルーで良かろうという感じです。


○先行き見通しは上げてるんだか下げてるんだか訳判らん

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。』(今回)

『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していくと考えられる。』(前回)

持ち直しのペースが緩やかという話になっていますな。まあこれも展望レポート通りではありますが、今回はそれを受けまして先行きの持ち直し角度を下げたという感じになるのでしょうな。


『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(今回)

『物価面では、消費者物価の前年比は、当面、現状程度で推移したあと、中長期的なインフレ予想が安定的に推移するとの想定のもと、石油製品価格などの影響が薄れていくため、下落幅を縮小していくと考えられる。こうした動きが持続すれば、わが国経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けるとみられる。もっとも、海外経済や国際金融資本市場の動向など、見通しを巡る不確実性は大きい。』(前回)

ということで物価はまあ良いとして、ここの所の表現も微妙に変わっているのと、不確実性の話が無くなっている所が相俟って、結局上げてるのだか下げているのだかよー判らんという感じですにゃ。

ま、方向性としての回復の角度は下がったけれども、下振れのリスクは下がったという感じではないかと思います。


○リスク要因は上方修正ですが展望レポートの流れです

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済情勢など上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国の回復といった上振れ要因はあるが、国際的な金融経済情勢、企業の中長期的な成長期待の動向など、景気の下振れリスクが高い状況が続いている。』(前回)

これなんですけど、ついうっかりしてて展望レポートの細かい話をするのを忘れておりましたが、実は展望レポートで「あらら」と思ったのはリスク要因に関する話でして、特に物価なんぞは上振れ要因のオンパレードになっていたのですよ。で、そのあたりを継続したような感じで、今回はリスク要因が下振れ一辺倒からだいぶ修正されてますなという所です。ただし、修正されたのは展望レポートからですので念の為。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

『物価面では、景気の下振れリスクの顕在化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。』(前回)

物価上振れに関して共同がヘッドライン打ってましたが、ここの上振れ部分は展望レポートに示されていましたので慌ててヘッドラインを打つ話でも無く。


ということで、技術的な意味で言えばまあ仰る通りな声明文(月報は今日)でございますが、政府との連携という点で言えば間が悪いという所に実に香ばしいものを感じる決定会合でございました。

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2009/11/20

まずは昨日の続きから。白塚さんのペーパーはこちらです。
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/jdps/2009/09-J-22.pdf
わが国の量的緩和政策の経験:中央銀行バランスシートの規模と構成を巡る再検証

○政策コミットメントに関して

本文12ページ(PDFファイルの15ページ)の『(3)非正統的な金融政策とゼロ金利下での政策コミットメント』から。

いわゆる時間軸効果に関する論考でありまして、今次危機においては明示的なコミットメントを実施している中央銀行は少ないという点を指摘しつつ、このようにまとめています。本文13ページから。

『こうしたなか、今次危機においては、上述のとおり、多くの中央銀行が将来の金融政策経路に対して明示的なコミットメントを行うことなく、非正統的な政策手段を採用している。むろん、中央銀行が金融仲介機能の低下や流動性リスクの増大に対処するためにバランスシートを拡大させている状況では、景気に対して下押し圧力が作用しているため、金融政策は、政策金利を引き下げ、金融緩和を行う方向に運営されると考えられる。特に、中央銀行バランスシートの大規模な拡大が必要される場合、金融システム面からの極めて大きな負のショックが加わっており、政策金利の水準自体は、必然的に極めて低い水準に維持されると考えられる。』

確かにそうですな。

『このため、非正統的な金融政策が必要とされるような金融・経済情勢では、同時に、政策金利を極めて低い水準にまで低下させ、そうした低い水準の政策金利をある程度の期間維持する必要性が高い。その意味で、非正統的な金融政策をゼロ金利下での政策コミットメントと完全に独立した政策措置と考えることは適切ではないと考えられる。』

バランスシート政策を実施するような状況であればそもそも金利操作をしている場合ではないので、非伝統的政策が続くと予想される/続くことが判明している間はそれがコミットメントの代替になりますよというお話ですわな。で、その続きの説明にもありますように、非伝統的政策の実施はそもそも金利操作による効果が何らかの事情(超過準備需要拡大や市場機能低下)で減殺されているからなのですからね。

『今次危機に対する中央銀行の政策対応は、純粋な意味での金融政策のゼロ金利制約下における自然な延長ではなく、金融市場の機能不全を是正するための緊急措置としての色彩が強いことも事実である。この点、今次金融危機における中央銀行の役割は、市場型金融仲介が拡大するもとで、伝統的な最後の貸し手としての対象範囲を拡大させ、銀行以外の金融機関に対する資金流動性の供給やクレジット商品や関連する市場の市場流動性の回復等に踏み込んでいった点に大きな特徴があると考えられる。』

ちょっと話が脱線するかもしれませんが、逆に考えますと、特に市場流動性などに問題が無い様な状況下における単純な「時間軸政策」がどこまで景気に対して有効なのかという話も結構難しい気がするのですよね。時間軸効果のキモっていうのは上記URL引用部分のちょっと前にもありますように、『中央銀行は、短期金利をほぼゼロに維持する期間について明確なコミットメントを行うことで、市場の期待形成に影響を及ぼすことができる。また、このコミットメント期間を信認のある形で長期化することができれば、長期金利を低下させることができる。』(本文12ページより)という所にあるのですが、時間軸効果を狙って明確なコミットメントを行った結果として市場が将来のインフレ率期待を高めてしまうと却って長期金利が上昇するという面もありますから、景気見通しがダメダメな状況下における時間軸政策というのは景気が立ちあがりかけた所でどうワークするのかが微妙かと思う所であります。

今次危機における米国の対応では、長期財務省証券の大々的な買入を行った訳ですが、その間に長期金利は1%程度(アナウンスした瞬間に下げた所から計算したら1.5%程度)上昇しちゃいまして、まあそれは時間軸政策とは別の話ですが、期待に働き掛ける政策っていうのも机の上で考えると美しい話ですけど、実際にワークさせるとこれがまた難しい部分もあるという感はするのであります。

で、その米国ですけど、最近はほぼ明確に時間軸効果狙いに舵を切ったように見えますよね。何か低金利政策継続的な話を連発している訳ですが、じゃあそれで長期金利が下がるかというと、そりゃまあ下がってはいますけれども、依然として3%台前半にいる訳でして、その間に2年の金利はいい感じで低下して今朝だと0.7%切りそうな勢いのようで、短い所に効果発揮でござるの巻という感じですな。つまり、日本みたいに名目の成長期待がろくすっぽ無い状況だと時間軸効果って長期金利まで効いた感じがしましたけど、普通の場合だとやはり時間軸で引っ張れるのはせいぜい2年とかの(債券市場的に言えば)中期というよりは短期に近い程度までの金利で、より長い金利まで効果を出そうとするのは難しいのかも知れず、まーその辺りに関しては米国がある意味身を切って実践中という所なのではないかと愚考される次第なのであります。


○実践を巡る論点

ということで昨日申し上げた最後の部分でして、本文14ページから始まりますけれども、最初の部分をスルーして15ページの『(2)バランスシートの恒久的な拡大と物価水準』から。

『中央銀行バランスシートの拡大は、一時的な政策対応であるが、バランスシート拡大の長期的な部分は、物価水準について長期的な影響をもたしうる。』

ということで、これには脚注が実は付いていまして、そこでは財政とのセットに関する論考を紹介していますので念の為。

『この点について、Auerbach and Obstfeld [2005]は、財政政策面での経路を通じた中央銀行バランスシート拡大効果を検討している。中央銀行の大規模な長期国債買入れによって、マネタリーベースが恒久的に増加したと認識すると、民間部門は、政府債務に対する金利支払いが将来にわたって減少すると予想するため、民間の税負担も減少すると予想する。この場合、マネタリーベースを恒久的に増加させたまま、プラスの金利と整合的な状況に復帰するためには、大幅なインフレが必要とされることになる。』

で、本文に戻りますと。

『極めて大規模なバランスシートの拡大は、一時的に経済へのショックに対応するために、許容されるとしても、一般物価水準への悪影響を回避するためには、中長期的に持続可能な水準に抑制される必要がある。そうした観点からは、中央銀行バランスシートの拡大が政府債務のマネタイゼーションにつながるではないかという懸念を未然に阻止し、国債流通市場の不安定化を阻止していく必要がある。』

ということで、日銀の長期国債買入に関する銀行券ルールの説明をしていますけれども、まあその辺りはご案内の通りなので引用割愛します。

んでもって最後の部分が『(3)出口戦略におけるバランスシート縮小』と言うお題で微妙にチャーミングな話が。本文16ページより。

『中央銀行がバランスシートを縮小させる必要に迫られるケースとして、金融システムが健全な状態を取り戻したことを反映し、超過準備需要が減退した中で、バランスシートの資産サイドに、なお大規模な非正統的な資産が残存している状況を考える。特に、非正統的な金融資産の満期が長い場合には、そうした状況が長期化し、固定化される可能性も考えられる。』

どう見てもFRBのケースです本当にありがとうございました。

『もっとも、中央銀行は、準備預金への付利に加え、リバースレポ等の資金吸収のためのオペ手段を使って金融市場における過剰な流動性を吸収し、バランスシートの大きさをコントロールしつつ、機能を回復した金融市場で、非正統的な金融資産を徐々に売却していくことができると考えられる。』

で、脚注には

『Bernanke [2009c]は、非正統的政策からの出口戦略において、準備預金への付利に、リバースレポ、定期預金手段の創設、保有債券の売却といった資金吸収手段を併用することで、スムーズなバランスシート規模の縮小が可能であると主張している。Fed のバランスシート縮小に向けての金融調節に関する議論については、Dudley [2009]も参照。』

とございますが、普通に考えまして長期国債の売却でも怪しげな気がするのに、非正統的な金融資産の売却とか出来るのかは極めて怪しいと思われますけれども、その辺りを「と考えられる」「と主張している」でサラッと流している所に微妙な悪態成分を感じたのはあたくしだけですかそうですか(^^)。

んでまあスタグフレーションに陥って金利引き上げを余儀なくされた場合にもっと大変じゃねえのという話もしているように見えますが、そこの引用は割愛と致します。


○あと補足

昨日に続いて引用をすっ飛ばしてしまいましたが、昨日も申し上げましたように、本文6ページ以降にあります『(2)量的緩和政策の効果』の部分は熟知すべしと存じますので念の為申し添えます、引用してるとキリが無いから引用しませんが。

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2009/11/19

これは大変に良いレポート(というかディスカッションペーパー)なので興味のある方は100回熟読すべきであると存じます。

http://www.imes.boj.or.jp/japanese/jdps/2009/09-J-22.pdf
わが国の量的緩和政策の経験:中央銀行バランスシートの規模と構成を巡る再検証

金融研究所のディスカッションペーパーシリーズで、今回は白塚さんが書いたものですが、日本の量的緩和政策および最近の主要国のバランスシート政策に関しての考察となっておりまして、論点整理としてクリアに整理されているので、ざっと読むのも良いですが、熟読すると(まだ100回は読んでませんが3回ほどは^^)なお吉かと存じます。

本当は全部読めという感じですけれども(^^)、まあ一応引用はしてよろしいようですので、かいつまんで引用させて頂きたく存じます次第、といいつつお題で(その1)とありますように、このネタで明日も引っ張ろうという魂胆が(^^)、いやマジで重要な論点が並んでいてポイントらしき所を引用するだけで結構な量になるんですけどね。


○非伝統的金融政策とバランスシートの資産、負債サイド

本文6ページ目(PDFファイルでは4ページ目、以下同様)に資産バブル崩壊後の金融対応としての非伝統的政策を中央銀行のバランスシートの規模と構成という要素に分解しています。

『こうした非正統的な金融政策は、理論的には、中央銀行バランスシートの規模と構成という2 つの要素に分解できる。非正統的政策の第1 の要素は、「狭義の量的緩和」として、バランスシートの構成を維持しつつ、その規模を拡大させることに相当する。また、第2 の要素は、「狭義の信用緩和」として、バランスシートの規模を一定に保ちながら、正統的資産を非正統的資産に入れ替えることで、その構成を変化させることに相当する。』

んでそりゃ何ぞやという事ですが、後で出てきますが、狭義の量的緩和というのは具体的には国債買入を拡大するとか、日本がかつて実施した当座預金ターゲットのような方策で、狭義の信用緩和というのはリスク資産の買入による政策で、バーナンキ議長が信用緩和と言っている(最近信用緩和言わなくなりましたが)政策という聖地になります。

『金融危機のもとで、中央銀行バランスシートの資産サイド・負債サイドはいずれも、金融システムにおけるショックに対処するために、非常に重要な役割を果たしている。資産サイドは、クレジット商品の買切りなどを通じて、民間金融仲介を代替する機能を担っている。また、負債サイドは、特に超過準備の拡大を通じ、短期金融市場における資金流動性リスクに対するバッファーとして機能している。さらに、金融仲介の機能不全は、金融機関の資金流動性リスク、そしてその結果としての超過準備需要の拡大と密接に関連しているため、中央銀行バランスシートの資産・負債サイドは、お互いに密接な関係がある。』

ってどういう事ですかという話は本文9ページ以降の『(1)非正統的な金融政策の分類学』という所に詳しい説明が。

『主要国の中央銀行が非正統的な政策手段の範囲を拡大させるに連れ、Fedの政策対応は、バランスシートの資産サイドをより重視していることが強調されている。例えば、Bernanke[2009a]は、クレジット市場を支援するFedのアプローチを、最初に信用緩和と呼び、日本銀行が2001〜06 年にかけて実施した量的緩和政策との概念的な相違を指摘した。彼は、信用緩和を通じた刺激効果は、機能不全に陥った米国のクレジット市場に向けて策定された貸出プログラムと証券買入プログラムの組合せに強く依存しているとした。』

で、さきほど引用した非伝統的政策の分類の説明のあと、ゼロ金利制約下におけるバーナンキらのかつてのバランスシート政策効果に関する考察を紹介しています。同じく本文9ページ以降です。

『Bernanke and Reinhart[2004]は、上述した非正統的な金融政策の分類を使い、短期金利が極めて低くなったとき、あるいはゼロとなったときの金融政策の戦略を概観している。彼らは、中央銀行バランスシートの構成と規模を変更する効果に加え、短期金利の将来経路に関する市場の期待に影響を与える効果を検討している。その際、中央銀行バランスシートの構成と規模の変化に伴うポートフォリオリバランス効果に主として注目している。』

『投資家が短期政府証券と長期国債を不完全代替であるとみなしていれば、中央銀行は、保有資産構成を短期政府証券から長期国債にシフトさせることで、タームプレミアムやイールドカーブ全体に影響を与えることができる。同様に、中央銀行は、マネタリーベースが他の金融資産と不完全代替であれば、マネタリーベースを拡大させることで、マネー以外の金融資産の価格や金利に影響を及ぼすことができる。』

という2004年の考察がある訳ですが、実際にそうなるのかと言うとこれがあまりワークしなかったですという話は引用ワープしてしまった本文6ページ以降の『(2)量的緩和政策の効果』の所にございますので、詳しくはそちらによって熟知すべしです。と言いつつちょっとだけ脱線しますと、最後の方に出口政策の策定ポイントの話もあるのですけれども、そちらにも少々悪態成分が入っているように見えますが、この部分ってしらっとバーナンキ議長に対する悪態成分が入っているように見えますがどうなんでしょう(^^)。

で話を戻しますと、現在の政策もこのポートフォリオリバランス効果とは別の役割を勘案しつつ行われていますわなという説明がその次に。

『しかしながら、今次金融経済危機への政策対応においては、中央銀行バランスシートの資産・負債サイドはいずれも、ポートフォリオリバランス効果と異なる役割を担っている。』

つまりどういう事かと言いますと。

『資産サイドは、例えば、クレジット商品の買い切りなどを通じて、民間金融仲介の代替として機能する。他方、負債サイドは、特に超過準備の拡大を通じ、短期金融市場における資金流動性リスクのバッファーとして機能する。さらに、金融仲介の機能不全は、金融機関の資金流動性リスクと密接に関連し、超過準備の需要を高めることにつながるため、資産・負債サイドは、お互いに密接に結び付いている。』

ということで、先ほど引用した冒頭まとめ部分の説明になっておりますが、「具体的な特定資産の購入(狭義の信用緩和)」が「市場機能の代替」として機能し、「超過準備の拡大(狭義の量的緩和)」が資金流動性リスクのバッファーとして機能という整理になりますが、狭義の信用緩和をしないと行けない状況というのは即ち金融市場が機能不全に陥っているという事ですから、当然ながら資金流動性リスクも高まっている訳で、特定資産の買入によって超過準備が拡大した場合にそれを引くかというと引く必要は無いという場合もあるので、そこを厳密に分けるのが意味あるのかというと微妙になるので、そのあたりのパッケージとして「広義の量的緩和」という説明をしていますがそこの引用は割愛しまして次に。


○バランスシートをどう拡大させるのかは金融システムの状況次第

続きになります本文10ページの『(2)中央銀行バランスシートの規模と構成に関する決定要因』という所から。

『上記の非正統的な金融政策の分類に示されたように、中央銀行は、非正統的な金融政策を、バランスシートの規模と構成を変化させることで実行している。この場合、必要とされる規模と構成の変化は、経済情勢、特に金融システムの情勢に大きく左右される。』

『例えば、金融仲介の機能不全ではなく、資金流動性リスクに対する懸念が高まり、超過準備に対する需要が増加したことから、バランスシートの規模拡大が生じているのであれば、通常の金融市場調節によって、そうしたバランスシートの拡大に対処できると考えられる。この場合、日本銀行による量的緩和政策期のように、通常の金融市場調節においても、満期を延長していくことが考えられる(図5)。これは、金融市場調節の対象とする金融商品の種類の面ではなく、満期の面で、ある種の信用緩和を行っているとみることもできる。』

なるほど、満期の面である種の信用緩和とは言いえて妙ですな。

『逆に、超過準備需要ではなく、金融仲介の機能不全が中央銀行のバランスシート規模の拡大の拡大を促しているのであれば、非正統的な金融資産の購入を拡大させる必要があるため、この資産サイドの拡大に見合った形で、何らかの中央銀行負債を増加させる必要が生じることになる。』

ということで、ここまで来ると次は日米の比較の話が出てくる訳ですな。

『図 10は、日本銀行とFedのバランスシートを示している。このグラフからは、負債サイドの拡大は、日本銀行、Fedとも、主として超過準備の増加によってもたらされており、平時において、最大の負債項目となっている通貨は、相対的に安定的に推移していることがわかる。』

で、その図10というのは本文31ページにありますので熟知すべし。

『これに対し、資産サイドの拡大要因は、両者の間で顕著な違いがみられる。日本銀行は、国債とその他の伝統的資産が増加している。Fedは、短期貸出だけでなく、為替スワップ、クレジット商品やエイジェンシー債、エイジェンシーMBSなどの買入れが拡大している。つまり、日本銀行とFedは、流動性リスクに対処する超過準備需要の増加を、異なる種類の金融資産を購入することで対応しているとみることができる。』

当然ながらその違いは金融市場などの構造の違いによるものですという話が続きます。まあ皆様既にご案内の通りとは存じますが引用。

『購入対象となる金融資産の違いは、各国経済の金融構造の違いと密接に関係している。図11は、日米の金融構造の違いを示しており、わが国は銀行中心の金融システムである一方、米国は市場型の金融システムであることがわかる。米国の金融システム、特に、サブプライム住宅ローンに密接に関連していたクレジット市場は、深刻な機能低下に見舞われている。これに対応するため、Fed は、クレジット市場や関連する市場に積極的に介入する信用緩和手段をとり、機能不全に陥った民間の金融仲介を、Fed のバランスシートを使って、一時的に肩代わりしている。さらに、こうしたクレジット市場の機能不全は、金融機関の資金流動性リスクとも密接に関連しており、結果として、バランスシートの負債サイドに大規模な超過準備が積み上げられている。』

つーことですな。


○以下予告編とガイダンス(^^)

今回は引用をすっ飛ばしてしまいましたが、本文6ページ以降にあります『(2)量的緩和政策の効果』の部分は当時の市場の中にいた人的にはまー体感的にはご案内の通りかと存じますが、どういう整理が行われてどういう考察が行われているかという点に関しては中銀がどう考えるのかという事の理解にも繋がりますので熟知すべしと存じます。当時の市場の中にいなかった方はその前の『2.日本銀行による量的緩和政策』という所、つまり4ページ目から熟知すべしと思いますので念の為。

さて、この先ですけれども、今後の金融政策に関する考察にもなりますネタであります「政策コミットメント」に関する論点が本文12ページ以降に整理されていまして、まあおまえ何で今日そこを引用しないというツッコミに関してはまあここまでで結構な量があったから勘弁ということでご容赦頂きたく(^^)。

で、その後に本文14ページ目から『4.若干の考察』として『上述した非正統的な金融政策に関する理解を踏まえ、本節では、非正統的な金融政策の実践を巡る論点について、やや掘り下げて検討する。』として4ページほどの考察があるのですが、この考察がまた味わい深いので、明日はその辺りもご紹介させていただきたく存じます。

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2009/11/12

○これは中々

昨日出てた日銀レビューですが。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j15.pdf
世界的な金融危機の波及とグローバルな銀行活動
―― 既存研究からのインプリケーション ――

ということで冒頭から引用するでござるの巻。

『サブプライム・ローン問題の発覚を契機とした米国発の金融ショックは、その影響を増幅させながら世界各国に急激に波及し、世界的な金融危機を引き起こした。このような世界的な危機の拡大は、金融混乱前の信用拡張期において、技術革新や規制緩和、並びに世界的な低金利環境を背景として、国境を越えた利回り追求が盛んに行われてきたことと密接に関係している。特に、国際的に活動する銀行は、その活動範囲を地理的にも業容においても拡大させながら、世界的な信用拡張を牽引してきたが、その結果、一度金融ショックが発生すると、その増幅と波及のチャネルと化してしまった。』

『主要国銀行部門の国境を越えた銀行活動の姿を、国際決済銀行(BIS)の国際資金取引統計で確認すると、80 年代半ば以降、各地域向けの対外債権は、米国の景気後退や新興国での通貨危機がみられた局面で、地域によらず大きく縮小している(図表1)。特に今回の金融混乱前後では、2002 年以降のユーロ圏や英国向けを中心とした大幅な資金取引拡大と2007 年後半以降の世界的な資金収縮という、近年にない大きな振幅がみられている。このことは、金融ショック自体の大きさを表しているとともに、今回の危機とグローバルな銀行活動とが深く関わっていることを反映している。』

ということで、金融危機の背景から、危機が発生した時の波及経路に関する説明を実際に今般の金融危機で起きた事象を踏まえながら説明していまして、でまあ題名にありますように、その説明をする際に先行する研究も紹介しつつ行うという内容。あたくしのようなシロートには中々ありがたい内容でございます。

で、その内容をご紹介しようかとも思ったのですが、これがまたどこをどう切り取るかが難しいので、まあ本文にあたっていただきとう存じます次第ですが(汗)、それだけではしょーがないので、小見出しを引用してみましょう。

『金融危機の背景:直接的な契機、増幅要因、波及経路』

『銀行活動の拡がりと金融危機の増幅メカニズム』
『(1)グローバルな資金仲介と流動性不足のドミノ倒し』
『(2) 資産変換を通じたリスクの拡大とデレバレッジ・サイクル』
『(3) 情報の非対称性の深刻化と情報生産機能の低下』

『銀行セクターを経由した危機の波及経路』
『(1)直接的な波及経路:海外支店の所在国や取引相手国への波及』
『(2)間接的な波及経路:コモンレンダー効果』
『(3)群集行動による危機の拡がり』

ということでイメージつかめますでしょうか(ってつかめないか^^)。後半の銀行セクターを経由した危機の波及経路に関する説明に関しては、先般出ていました日銀レビュー『国際金融ネットワークからみた世界的な金融危機』が視覚的に判り易い説明をしていましてシロートのあたくしにも大変に興味深かったのですが、今回はそのまとめ版&発展版という感じなのでしょうかね(^^)。ちなみに先般の日銀レビューはこちら。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j09.pdf

んでまあまとめから引用。

『危機の経験を振り返りつつ、既存研究の示唆を踏まえると、銀行の活動範囲が地理的にも業容においても拡大するにつれて、銀行本来の機能に内在するリスクやメカニズムが危機の増幅につながっていたと理解できる。銀行の活動領域の拡大にともなって、その経済機能がどう変化していくのか、今後、一層の研究成果が待たれている。』

ということで、将来どうせまた発生するであろう何かのバブル(世界でこれだけ金融緩和してたらどーせ発生するでしょ、とあたしゃ思うが)崩壊による金融システム問題発生の悪影響を抑える為には、まあマクロプルーデンスの考えが大事ですねという話になるんでしょうな。

『今回の世界的な金融危機を契機に、政策当局も市場参加者も、より頑健な市場の構築を目指していく必要に迫られているが、こうした国際的な銀行活動の拡がりとそれがもたらす構造変化についても、一層理解を深めていくべきと思われる。その際には、ここで紹介した過去の経験事例を踏まえつつも、新たな伝播メカニズムや経路を常に探求していくことも重要である。』

んでまあマクロプルーデンスの観点は一国だけで終わるものではなく、恐らくは国際展開する金融機関活動の拡大に対応して各国の中銀やら監督当局が相互連携しながら行わないといけませんという話になるのですけれども、まー今般の金融危機対応見てますと各国それぞれお家の事情で色々とやらかしてる部分もありましたなあ(金融政策面では良く協調してましたけど)という事もありますし、最近の金融機関の自己資本問題に関しても何か各国自分の事情に都合の良いポジショントークが多いですなあという感じもしますし、まあ道は遠そうですな。

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2009/11/11

○昨日のレポート関連なんすけどね

昨日は日銀WPに微妙に悪態をついてみた訳ですが、毎度毎度思うのはこの手の分析をする時の元データの取り方に違和感があるという話でして、別に本件だけにケチつけている訳ではないので念の為。

昨日ご紹介した
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j09.pdf
でOISの代わりに3か月TB使わないのはどうしてという話をしましたが、良く良く見たら本文16ページの脚注にこんな記述がございました。

『CP 発行市場の金利スプレッドについては、ベースレートをOIS 金利ではなく代替的な運用資産である3 か月物TB の利回りを用いることも考えられる。しかし、分析の対象とする1998年11 月以降のデータをみると、3 か月物TB の利回りは、需給要因などからCP 発行レートを頻繁に上回っており、運用のベースレートとして必ずしも適合的ではない。また、対象期間の大半に短期金利がゼロ金利近傍で推移していたため、短期資金の調達・運用のベースレートの乖離は僅少であったと考えられる。これらの点を勘案し、本稿ではCP の発行レートのベースレートとしてOIS 金利を採用する。』

まあそりゃ判るのですが、98年と08年では市場環境も国債発行環境も(そもそもCPの発行制度も)違いますので、無理に両方同じ数字で分析するよりは、「その当時の価格形成上一番ベースレートとして適正な数値は何ですか」という所から話をするしか無いと実務的な面からは思うのであります。

それこそ大昔(90年代前半)だったら3か月金利の指標レートって新発CD3か月物金利だったんですし、もっと大昔(銀行の国債フルディーリング前)だったら長期金利の指標レートって加入者利付電電債の流通利回りだったんですし(っていうのは話が古すぎですが)、まあ分析としては比較するのに元データソースが違ったら比較のしようが無いというのはお気持ちとして良く判るのですが、市場というのは実験室じゃないんだから仕方ないじゃんという事で(例えば化学実験でどのファクターが反応に効果があるかを見たければ当然ながら他の条件同一でパラメーターを1個だけ動かして比較実験しますけど)、その辺は「より実態に即したパラメータを探す」っていうのも大事なんじゃないかなあって思うのです。ええまあ無知無教養なあたくしの妄言ではございますけどね。

んでもって、日銀の分析でやたらOISやらユーロ円金先などのオフバランス取引の数値を使いたがるのは仕様のようなのですけれども、短期市場って基本が資金取引ですし、金融政策の効果がどうのこうのという話っていうのは実際の資金取引に反映されてナンボの世界でもありますので、ベースのレートをオフバランス取引に置くのもどうなのかなという感じがします。債券先物みたいにオフバランス取引が現物市場とリンクしているのなら兎も角、OISにしても金先にしても実際の資金取引のヘッジに本当に使われているかというと、実際に資金取引をしている人達のツールではない(なんちゃってヘッジとか、ヘッジしましたと言いながらトレーディングする口実に使う人はいると思いますが)と思いますし、短期は長期債市場以上に市場分断が顕著でもありますので、使い方次第だとは思うのですけど、使い方によっては現場実務労務者的に「???」な分析になり兼ねないと思いまする。

などと分析がどうのこうのと言われてもトンチンカンなあたくしが申し上げるのも僭越というのは重々承知しておりますが呟いてみました。

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2009/11/10

お題「前提の仮定が多いとは言えその結果は微妙ではないかと」

債券市場が久々の安値(と言っても10年1.4%台後半ですが)になっているというのに、何故か債券市場ではなくて日銀ワーキングペーパーに盛大につられてみるでござるの巻。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j09.htm
企業金融の円滑化に向けたCPオペの効果の識別
― 金融危機下の資金供給オペレーションに関する一考察 ―

本論はこちら
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j09.pdf

でね、実は同じ方々が先日「期越えオペの効果の識別」ってWP出してまして、何かツッコミどころがありそうなものの数学に関してはハクション大魔王なあたくしはややこしい式を並べられると読むのが面倒なのでスルーしてたんですが、今回はその第2弾でして、期越えオペに関してはこちらです。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j07.htm
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j07.pdf


そんでもって、期越えオペの効果に関する話は置いときまして、最初のURLにあります「要旨」って所を見るとどうも釣り針があるようなので食いついてしまったあたくし。改めてURLをば。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp09j09.htm

そこの要旨なんですけどね・・・・

『識別の結果、(中略)(2)2008年秋から2009年春にかけての局面をみると、CP買現先オペの積極的活用とCP買入れオペは、実施直後に大きな効果を発揮し、その後は効果が減衰したこと』

・・・・・????

と思いまして、早速本文を読んでみますと(改めてURLを置きます)、
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp09j09.pdf
最初の部分にもうちょっと詳しい纏めがございまして、そこの分析結果部分にこのような話が書いてあります。

『結果をみると、まず、2008 年10 月に開始されたCP 買現先オペの積極的活用は、同月に23bps の押し下げ効果を発揮した(ただし、その後の効果は、12 月を除いて限界的なものに止まった)』


○ということで釣られてみますが

推論の前提の部分を全部スルーして結論を読んでどうのこうのと申し上げるのも何なのですが、昨年のCP買現先オペの積極的活用がどうのこうのという結論部分を見ましょうなのです。本文25ページ(PDFファイルで26ページ)目から。

『表1 は、2008 年秋から2009 年春にかけての局面を対象にCP オペの効果を識別した結果を整理したものである。具体的には、前節で導出した(11)式、(12)式、(13)式を用いてCP 買現先オペ、CP 買入れオペ、特別オペそれぞれの効果をCP 発行市場において「オペが行われた後に実現した金利」と「オペが行われなかった場合に形成されていたであろう金利」の差として識別している。なお、CP 買現先オペの落札レートに対応するベースレートはOIS 金利(3 か月物)を、CP 買入れオペに対応するベースレートは下限利回りを、それぞれ用いた。』

ということで、肝心の表は引用しないので(コピペするのが七面倒)申し訳ございませんが、それによりますと10月はCP買現先オペの積極的活用の効果によって、CPレートは0.23%押し下げられた結果0.74%となりましたというお話になっております。でもって何故か11月はその効果が無くなってしまい、CPレートは押し下げ効果無く1.20%になりましたという事だそうで。

・・・・まずですな、その結果が当時の市場の記憶がまだ鮮明なあたくしとしては直感的に微妙なのでありまして、まあ当時の駄文を1ヶ月分斜め読みでもして頂ければ誠に幸いなのですが、当時は「CP現先オペの積極活用とか言ってたのにオペ1回打ってしまいかよ!」(正確にはオペ活用のアナウンスが10月14日、オペ1発目が16日で2発目が30日でした)と悪態をついて回っていたのでありまして、はてそんな効果あったかよという感じがするのですな。

んでもって当時のノートを見ますと、この時期ってリーマンが飛んだ影響でオープン市場などのレートが軒並み上昇するわ、欧米金融危機で連日株価が大暴落するわ(10月6日〜10日は日経2000円近く下落)という動きで、10日はこの世の終わりみたいな市況になりやがってエライコッチャになっておりましたんですわな。で、13日になってEUがインターバンク取引の保護だの特別指値無限大オペの実施だのというような火消し大対策が出たという流れがあったんですわな。

んでもって日本はこの時ちょうどRTGSのハイブリッド移行もあって運用資金の出が悪かったのですが、週明け14日は海外でのインターバンクの落ち着きもあって資金が出てきてFBには買いが入ってレートが一気に低下(3か月で7毛強、2か月で10.5毛強)となったものの、CPレートは下がらずとその日のメモにしっかり記載されているのがチャーミング。株価急落と市場取引の縮小の影響からCP主要ディーラーの大手銀行のリスク許容度が低下し、現先レートが高止まりした事が原因だと思います。

でもって実際にはオペ3000億打ちこみを行った16日なんですけどね、3000億円のオペ実施で多分満額(は1500億円)とか入れた人がいて在庫が少しは軽くなったのか翌日は現先レートが低下して、CPのレートも下がった(17日は電力さんが3か月0.87%近辺(市場推計)で発行)のですが、その後の動きを子細に(ただしあたくしの手控えノートに依存するのは勘弁)改めて見ますと、その翌週にはGCレポレートや現先レートがまた上昇し出して、翌週にはとある電力会社さんが3か月CPを連日で大量発行してレートが0.9%台に上昇し、かつ2日目のレートは1日目のレートの上のまで堂々ご発行(一気に0.94%(市場推計)まで上昇)するという衝撃の展開になって、その後もレートは上昇して、22日の3か月CPレートは軒並み1%超えになるわCP現先レートは0.7%台になるわと素敵な展開になりましたわな。

で、そのレートは翌週低下したのですが、これは利下げ観測が急速に浮上した事が効いていて、電力さんのレートは良い感じで低下したのですけれども、他の発行体さんのレートはそんなに下がらず、それよりも期間を長くして高めでもロット確保する動きとかあって、体感的なレートはあんまり下がらなかったと思いますです、はい。

でもって、まあ分析にもありますように、11月は利下げを実施した筈なのにGCレポレートは高止まるわCPレートは上昇するわTIBORは上昇するわという涙の出るような展開になり、「利下げよりも流動性対策をやりやがれ」と連日物凄い勢いで悪態をついていたのは昨年11月の駄文にあります通り。


・・・・ということで、延々と当時の状況につきまして書き連ねてみましたけれども、昨年10月に実施したCP買い現先オペの効果があったのかと言えば瞬間は在庫が軽くなるという効果があったと思いますが、それはまあ一瞬の効果(翌日のレート低下)しかございませんで、それ以外のファクターの方が残念ながら強すぎだと思われます。

大体からしてですな、10月はオペ積極活用って言ったって3000億円の買い現先を1回打っただけ(30日にはやっと4000億円のオペを実施しましたが、30日に実施しても10月には寄与しない)でありまして、それが23bpもレートを下げるというのは幾らなんでも政策効果の過大推計になっているとしか申し上げようが無いです。

それに、そんなに効くのであったら、11月になってから毎週CP買現先を実施しているのですから、より効果があって然るべきなのですが、11月は効果減衰しましたという結果が出た時点で、それはちょっと仮定を強く置き過ぎではないかという話にならんのかなあと思う次第。


○まあこの手の定量的分析は難しいですわな

ということで、昨年10月の部分だけピックアップして悪態をつくという少々意地の悪いプレーに出てしまいましたが、まああの当時は「利下げは良いから流動性を」とそこらじゅうでブーブー言ってた人達が多い中でございまして、その当時の記憶がさすがに(健忘症が多いのが金融市場の仕様ですけど)残っている当時市場の中にいた人的に申し上げるとどう見ても巨大釣り針に見えたCP買現先の「積極活用の効果23bp」に華麗に釣られてみましたのです。

本論の最後にもありますように、仮定が色々とあった結果としてこうなりましたよというのがあるんですけど、WPとしてこういうの出ちゃうと、後世になった時に如何にも本当に絶大効果が出たような話になっちちゃうのではないかと存じまして、一応釣られてみましたという事にしておいて下さいませ。で、最後の部分から。

『もっとも、本稿のモデルが多くの強い仮定に依拠しているため、結果の解釈に注意が必要であることも事実である。こうした留意事項の第一としては、本稿の分析が、CP オペとCP 発行市場との関係のみに注目した部分均衡分析であることがあげられる。このため、代替資産や他の市場との関連は考慮できていない。』

という感じであと5つほど留意点があるのですが、結果として出てきた数値に関して入口の部分の数値がどうも違和感あるという時点で、ここで述べられている第4の留意点にはちょっと???感が。

『第四に、本稿のアプローチは、金融市場の機能が低下した下での企業金融の円滑化に向けたCP オペを対象としており、平時の金融調節手段としてのCP オペの効果を評価できるものではない。このため、日本銀行の政策対応などもあって、金融市場の機能が改善しCP オペの役割が平時に復した状況では、別の視点からの分析が必要である。』

さっきの表1の分析結果なんですけど、どっちかというと2009年になってからの効果分析結果の方が市場にいる者としての体感に近い結果になっておりまして、そういう点を考えると実はこのアプローチって市場がグチャグチャになっている時である所の昨年10月から12月の分析には向かなくて、ある程度市場の色々な不安というかパニック的状況が改善された今年になってからの分析に向いているのではないでしょうかと、浅学非才ながら思うのであります。

つまりですな、市場がエライコッチャになっている時というのは、色々なものが非線形というか不連続に動くのでありまして、その非線形あるいは不連続な動きが玉突きのようにあちこちに影響を与えていくという流れになるので、定量的なアプローチで分析するというのは難しいんじゃないかと思うのですよ。別にエライコッチャじゃなくても同じなんですが、市場のテーマがいきなり変わってしまうのってのも同じなんじゃないかな?と思うのでして、何でも連続的な動きでどうのこうのという話を高尚な数式付きで聞かされると、どうも現場叩き上げ的には違和感がございますわなという話かと。

ところで申し忘れましたが、3か月のベースレート使うんだったら参加者超限定(しかも昨年10月以降とか参加者がカウンターパーティーリスク取れていたのかねという気がする)OISじゃなくて、短期国債を使った方が宜しいのではないかと思いますがその場合どんな結果が出るのかな?

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2009/11/06

○で、決定会合議事要旨

10月の第1回ですから3週間前の会合議事要旨。今回は次の決定会合までの日数が少なく、しかも1日会合なのにちゃんと議事要旨の承認をしてくれているので素早い議事要旨公表ってイメージで大変に良い話。

議事要旨の承認が決定会合の決議事項になっているのでどーしても議事要旨が出るまで時間が掛かるのですけど、通常の政策委員会での決議事項とかにならんもんですかね(法改正しないと無理でしたよね)とは思うのでありますが。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g091014.pdf

まずは『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々。

・バランスシート調整に時間が掛かるかどうかに関して

海外の金融経済情勢に関する議論の中で読んでて「ほほー」と思ったのは
このくだり。

『なお、バランスシート問題が米欧経済に及ぼす影響に関して、複数の委員は、毎回の景気循環の展開は異なるものであること、バランスシート調整が進むペースは当該国の人口増加率などで規定される中長期的な成長期待によっても異なりうることを踏まえると、必ずしも日本の経験を直接に当てはめられるわけではない点には、留意が必要であると述べた。』

その理屈はそうかも知れませんが、先行きリスクを考えた場合には、(欧州や英国は兎も角として)米国の中の人達が見ているバランスシート調整の影響を連中が過小評価してるんじゃないかと思うので、バランスシート調整の影響を軽視した米国の動きが(連中的な)思わぬ大失速で日本にも下振れ要因が突如発生という方がオソロシスのような気がするんで、見通しの絵を描くときには厳し目に見た方が良さげに思えるのですがどうなんしょ。

ま、米国経済に関してはこのような話をしてますので、先行きは慎重に見ているのでしょうけれども・・・・

『また、先行きについても、多くの委員が、雇用・所得環境の厳しさ、家計や金融機関のバランスシート調整圧力などを踏まえると、政策効果剥落後の回復力については慎重にみておく必要があると述べた。』


・金融面の動向について

CPの状況は良いという話で一致していたようですが、社債は微妙とな。

『社債について、委員は、本年度上期の発行金額が既往最高水準となるなど、発行環境は良好であると述べた。複数の委員は、特にA 格以上の社債では、当初予定よりも増額発行される案件やマーケティングレンジの下限で発行される案件が増加している点を指摘した。』

さよですな。

『ただし、ある委員は、このところ社債市場では、投資家が格下げリスクに敏感になっており、流通スプレッドも幾分拡大気味であると述べ、こうした動きの持続性や拡がりの有無を見極める必要があるとの見解を示した。』

社債買入解除に反対したのは水野審議委員でしたからこれも水野さんですな。

『低格付社債の発行が低調に推移している点について、多くの委員は、企業の収益環境の厳しさやこれに伴う信用リスクの高まりに加え、わが国の社債市場特有の要因も作用していると述べた。これらの委員は、そうした要因として、低格付企業における社債発行ニーズの低さ、社債発行金利を大きく下回る金融機関の貸出金利の設定、わが国における低格付社債を投資対象とする投資家層の薄さなどを挙げた。こうした議論を踏まえ、多くの委員は、低格付社債発行の低調さを金融環境の厳しさの表れと解釈することは、必ずしも妥当ではないとの見方を示した。』

・・・・うーむ、ここは色々と議論の余地がある所で何ともという感じなのですけれども、社債市場のイメージって(あくまでもあたくしのイメージね)ちょっと環境が悪化するとあっという間に味噌も糞も売られるか、素敵に二極化するかというような極端な動きになり、環境が良いとそれこそ最近のCP市場のように(短国との逆転は置いといて^^)銘柄間格差が見事なまでに潰れに行く(まあCP市場の銘柄間格差の潰れっぷりは極端過ぎですが)でござるの巻と、まー極端なんですよね。

ま、現状ではやはり二極化チックな展開になっているのですけどね。


・で、臨時措置の扱いに関して

ってまあその次の回で結論は出ちゃったのですが、どういう話をしていたのかはヲチするべきでございまして(^^)。

CP・社債買入に関してはさっき引用した所ともろ被りなので引用割愛して、特別オペに関する話。

『また、企業金融支援特別オペについて、何人かの委員は、ターム物金利の低下や、市場の流動性プレミアムの低下などの効果が出ていると指摘した。複数の委員は、高格付C P 発行レートと短国レートとの逆転現象が続いているなど、オペの効果が強く出過ぎている面もあると指摘した。ある委員は、効果の裏側には、円滑な価格形成など市場本来の機能を阻害する面もあり、効果と副作用のバランスを踏まえながら必要性の判断を行うことが適当であると付け加えた。』

まあそれはそうなんですが、逆転現象なんぞ延々と続いているのでありまして、以前そのネタが振られた時の「ターム物金利の安定化」の論点はいつの間にやら何処へという気がせんでもないのですが。

『各種臨時措置の効果に関して、通常のオペ手段による代替可能性を巡っても議論が行われた。多くの委員は、通常のオペ手段である共通担保資金供給オペと企業金融支援特別オペの金利差が縮小していることを指摘し、企業金融支援特別オペの担保が共通担保オペの担保範囲に含まれている以上、両オペの違いは縮小してきていると述べた。』

それは因果関係を逆にした話ではないかと思われるのですが。

『更に、何人かの委員は、民間債務の担保を管理するコストやターム設定が固定的である点を考慮すると、両者の差は実質的にはより小さくなっていると付け加えた。』

何という強引な理屈。

『もっとも、複数の委員は、予め決まったタイミングで、担保範囲内では無制限に資金調達できる企業金融支援特別オペがもたらす安心感を他の手段で代替できるのかどうかは、企業が年度末にかけての資金繰りになお不安感を拭い切れないでいるだけに、慎重な点検が必要であると述べた。』

と思ったら普通の指摘がありました。解除方向で話をしている人の理屈が強引に見えるのですが・・・・

『この間、複数の委員は、昨年度末までの金融市場の緊張度が高い状況とは異なり、金融市場が安定し、市場機能が大幅に改善したもとでは、臨時措置の取り扱いは、出口戦略というより、金融調節手段の選択にかかる技術的な問題という色彩が徐々に濃くなってきているのではないかとの見方を示した。』

出ました技術論(−−)

しかしこの間の議論でバックストップの重要性の話はどこに行ったのでしょうかという気がするのですが・・・・・


・何でまとめて判断したのかという話

『各種臨時措置の取り扱いを決定する方法・時期についても議論が行われた。まず、取り扱いの判断の仕方について、何人かの委員は、各種臨時措置は、相互に補完しながら効果を発揮してきた面もあることを意識しつつ、個別の措置毎に行うことが適当との認識を示した。』

結論としてはそうなりましたな。

『次に、措置の取り扱いの決定時期について、委員は、次のような論点を指摘した。第1 に、仮に特定の措置の縮減を先行して決定すると、他のオペの取り扱いを巡って思惑を呼ぶ惧れがあること、第2 に、措置の取り扱いを取りまとめて公表することで、日本銀行の金融政策運営に関する考え方をまとまった形で示すことができること、第3 に、年末越えおよび年度末越えの取引の状況を更に見極めるとともに、やや長い目で企業金融の状況を点検した上で判断するのが望ましいこと、の3 点である。』

しらっと読み流しそうですが、良く見ると第1の所で「仮に特定の措置の縮減を先行して決定」という既に解除する気満々の前提が入っているのがチャーミング。

普通に考えますと、先行して決定されるものは「延長」であって「解除」ではないと思うのでありまして、「一部の措置だけ延長決定、後の措置は延長するかどうか様子見」という風になった時に判断先送りになった措置に関して解除を市場が織り込みに行くというのは判るのですけど、その理屈は何か訳判らん、というか解除やる気満々なのが良くわかる論点整理でございますことという感じでございます。


・前回声明文のディレクティブに前置きみたいな文言が入った経緯

『金融政策運営上の情報発信についても議論が行われた。第1 に、多くの委員は、臨時措置の取り扱い如何に関わらず、緩和的な金融環境を粘り強く確保していくという日本銀行の基本的な政策運営方針は変わらないという点を、丁寧に情報発信することが最も重要であると述べた。』

ということで前置きがわざわざ入った(にしてはその後のオペは相変わらずの自然体というかやや窮屈めに推移しているのですけれども)という事でしょうけれども、まあ次回出てくる30日の議事要旨も見たいと思います。


・政府からの出席者の発言が長いですな(^^)

14日に出席したのは財務省から大串政務官、内閣府から津村政務官ですが、お二人とも発言が長かったと思われますな(^^)。全部引用してるとやや長いのでちょっとだけ引用。

大串さん

『また、日本銀行の経済・物価・金融情勢に対する認識や金融政策運営の考え方について、国民や市場に分かり易く説明することに引き続き配慮して頂きたい。』

下振れリスクを意識しながら臨時措置を解除する事をちゃんと説明しろということですね、わかります(^^)。

津村さん

『日本銀行におかれては、デフレのリスクにも十分留意しつつ、引き続き、金融政策の面から、景気を下支えされることを期待している。企業の経営環境や資金繰りが引き続き厳しい状況にある中、企業金融に目詰まりが生じないよう、市場の動向を丁寧に点検し、適切に対応されることを期待する。』

なにげに厳しいツッコミをしているように見えます。そんな中でこの次の会合で堂々の臨時措置解除だったのですが、はてさてどうだったのでしょうかね。

で、お二方とも「日本銀行と常に連絡を密にし、十分な意思疎通を図る」という趣旨の話をしていたのも(政権発足直後だからというのもありますが)ほほーという感じですな。

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2009/11/02

決定会合結果
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091030.pdf

展望レポート
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf


○特オペ廃止と時間軸のようなものがセットみたいになっちゃいましたが

『1.当面の金融政策運営

当面、現在の低金利水準を維持するとともに、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を通じて、きわめて緩和的な金融環境を維持していく。

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針については、以下のとおりとする。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を0.1%前後で推移するよう促す。』

まず最初にここを見て「???」と思ったので過去の決定会合結果の声明文をクリッククリックしたのですが、政策金利の前にこんな文章はございませんでして、今回はわざわざこの文章を入れましたというのが時間軸っぽい表現。

日銀用語の「当面」というのは少々長いスパン(次回やその次の会合という訳ではない)になる筈ですので、まあそーゆー意味では時間軸を何となく示したという事になるんですが、良く良く考えてみれば皆様ご案内の展望レポートで2011年度の消費者物価指数見通しが前年比マイナス継続という見通しが出ているのですから、展望レポートそのものが時間軸であって、市場の中の人的に言えばわざわざこのような文章を出す必要は無い筈なんですよね。

で、出す必要があったのかよー判らん文章をわざわざ今回付けたのは当然ながら付ける事に意味を持たせたという事でしょうけれども、素直に解釈をしますと「今回の企業金融特別措置の解除は利上げにつながる出口政策ではありません」というのを一般ピープルにも判り易くする為にこの文章をわざわざ付けましたと言う事になりますわな。

で、もうちょっと嫌らしい解釈をすれば、当然ながら「これって要するに企業金融特別措置解除とのバーターですよね」という意地の悪い解釈になる次第でございまして、(以前より再三再四申し上げているように)そんなに事を大きくしないでも解除できたんじゃないかと思われる企業金融特別措置の解除のバーターで使うカードとしては勿体なかったのではないかと思われます、って本石町日記さんと同じ話ですが。


ただし、この時間軸みたいな文言ですけれども、特に何かコミットメントをしているのかと言えば別にまあそういう訳でも無いですし、そもそも展望レポートがあの状況でしたら景気が超越的に上振れしないと出口がどうしたこうしたという話になる訳ありませんので、特にこれで強烈に日銀の手足が縛られるという話にはならないと思いますが、良く良く考えたらこの文言が次回以降も継続してディレクティブの頭に付くと考えると、そこの文言をいじるとその度に政策インプリケーション発生となりますので、却って先々にノイズ発生の余地を作ってしまったような気もせんでもないのが気になります。次回しらっと外しちゃったらまあ話は別ですが。

あと注目なのは今日以降のオペでありまして、ディレクティブにわざわざ『金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給』と入れているのですから、それ相応のオペが実施されるのかどうかもこっそりと注目しておきたいです。と申し上げておりますが、実はここの文言も何となく微妙な所でありまして、そもそも「金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給」っていうのは超過準備付利導入時の目的でもありまして、その超過準備付利制度が継続されるのですから、これまた一々付ける必要があるのかというと市場の中の人達の論理としては「何を今更」という話でございまして、これまた一般ピープルへのアピールなんでしょう。

大体からして昨年の今頃も「潤沢な供給」だの「CP現先オペの積極活用」だの言いながら大して潤沢供給も積極活用もしてなかった(当時の悪態をご参照ください)という前科があるので、今日以降のオペが果たしてどうなのかはニヤニヤしながら推移を待つという感じでしょうか。まー思いっきり極端に言えば、「金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給」って数字上だけで言えば今だって超過準備が常にあるような状態になっているのですから金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給ちゃあその通りとも言える次第でありまして(^^)、正直この文言に対してオペがどう出るのかはちょっと気にしたい所でもあります。

つまり、まあディレクティブの前半部分の新たに出た文言っていうのは、金利市場の中の人的に言えば、本来別に言うまでも無く自明の事なのですけれども、それをわざわざ言いだしたのは一般ピープルというか他市場とかマスコミとか政府方面とかの「微妙に知っているので却って変に誤解しそうな人達」向けへのアピールなのかなあって感じで、下手に「日本の出口政策」とか言い出して他市場が暴れたりするのを押さえたいというのが狙いなんじゃないかなあという感じです。

まあそうだから金利市場の中の人的には「自明の事をわざわざ書くのはどーしてじゃろ」という文言(しかもコミットメント無し)が入る事になったんでしょうねというのがあたくし的な一応の結論にしておきますが、先ほども申し上げましたように、今後はここの文言をいじるとノイズ(あるいは政策意図丸出しモード^^)になっちゃいますねという点は今後気になる所でございます。



○何も半年後の解除を今決めなくてもよかろうに・・・・

『2.各種時限措置の取り扱い(注2)

日本銀行では、昨年秋以降、金融市場の極端な収縮に対応するため、CP・社債の買入れなど中央銀行として異例の対応を含め、各種の時限措置を導入した。最近のわが国の金融環境をみると、厳しさを残しつつも、CP・社債市場をはじめ改善の動きが拡がっている。今後とも、金融市場の安定を確保し、それを通じて企業金融の円滑化を支援していく上では、金融市場の状況変化に即応した、最も効果的な金融調節手法を採用することが必要である。日本銀行は、こうした考え方に基づき、各種時限措置の取り扱いを以下のとおりとすることとした。』

ということで、CP社債買入が12月末で廃止はまあそうなりますかちゅう感じでしたけれども、特別オペの「延長するけど解除」は少々驚き桃の木。
『(1)企業金融支援特別オペ

企業金融支援特別オペについては、年度末に向け、金融市場の安定確保に万全を期すため、その実施期限を来年3月末まで延長した上で完了する。4月以降は、より広範な担保を利用できる共通担保オペ等の金融調節手段を活用して潤沢な資金供給を行う態勢に移行する。』

まあそう来るだろうと思いつつも如何な物かと思ったのは、特オペの解除を技術論で対応した事でありまして、本来この解除に関しても(CP・社債買入解除と同様に)「導入時の本来の意義・目的を達成したので解除」というロジックを持ち出して、それに対して現状が本当に解除に値する状況なのかという議論をして欲しかったと思う次第。本オペに関しては「指値・無制限」という所に特徴があるので、その部分に対する考察をもうちょっと掘り下げて欲しかったなあというのが、まあ政策ロジック的な印象。

で、もう一丁のより実際問題的なツッコミ所は、「何も半年後の事を今決めなくても良いでしょうに」という話。今回の特オペ解除が技術論で進んでおりまして、しかも上記の文言中にも(FOMCの声明文みたいに)「様子が変わったらやっぱり完了しない」というような部分が無いとなりますと、向こう半年間で景気2番底懸念とかなったらどーするのやらという懸念はある訳です。(まあしらっと延長するにしても最初に言う事無いと思うのですが)

そもそもですな、3か月延長を決めたとしても自動継続する訳では無くて、そのまま期限が来たら自動消滅になるのですから、何も好き好んで解除を今からコミットして変に手足を縛る必要は無いと思う次第でして、わざわざ変な相場張っちゃいましたねとしか申し上げようがございません。まーそんな相場張るリスク取ってでも解除したかったというのが伝わって来る特オペに関する決定なのでありました。

で、水野委員はこれに反対ですけれども、社債買入解除にも反対しているのですから、反対理由は「終了条件をつけての延長ではなく、単純に3か月延長すべき」という事なのはまあ明白でしょうな。



○CP・社債の買入解除は正攻法

『(2)CP・社債買入れ

CP・社債買入れについては、CP・社債の発行環境が大幅に好転し、CP・社債市場の機能回復という所期の目的を達成したことを踏まえ、予定通り、本年12 月末をもって措置を完了する。』

CP買入に関しては4打席連続応札無しという素敵な状態になっておりますのでまあそうでしょうなという感じですが、水野委員が反対する社債に関して言えば微妙な気がせんでもないですが、まーそこは他の政策委員の皆様がそのように判断したという事ですから。

まあこれは正攻法なので、その判断が正しいかどうかは別にして直球勝負。



○適格要件の緩和は1年延長とな

『(3)担保要件の緩和措置

民間企業債務およびABCP の担保要件の緩和措置については、引き続き、企業金融の円滑化を支援する上で重要な役割を果たしていることを踏まえ、その実施期限を、来年12 月末まで延長する。』

まあ利上げするような環境になるまでこのまま放置プレイになるのでしょう。一々議論するのがめんどいから1年延長したと見た(^^)。



○超過準備付利制度の常設ファシリティ化はどうするんでしょ

『(4)補完当座預金制度

補完当座預金制度は、金融市場における需要を十分満たす潤沢な資金供給を行いつつ、円滑な金融市場調節を実施する観点から、その実施期限を、当分の間延長する。』

本来的に言えば、預金ファシリティって別に潤沢な資金供給がどうのこうのという話ではなく、実際は短期市場金利の下限を設定して調節をやりやすくする為の措置なのですが、補完当座預金制度という事で導入の目的が「潤沢な資金供給を行う」という一般的な預金ファシリティとちと違う物を付与されてしまっているので何か微妙は微妙なんですよね。でも、将来的な事を考えれば、この制度を普通の預金ファシリティとして常設化して、ロンバート(常設貸出ファシリティ)と超過準備付利(常設預金ファシリティ)で政策金利との回廊を作った方が金融調節的には美しい(し運営しやすい)と思いますので、その辺を見越して「当分の間延長」となったんでしょうなあと思います。常設化する場合の理屈をどう捻り出すのかが見ものですが。



○展望レポートですが

『(経済情勢の見通し)』の先行き見通しに関して。

『先行き2009 年度後半から2011 年度を展望すると、わが国経済は、他の先進国と同様、世界経済の動向に引き続き大きく左右される展開を辿る可能性が高い。現在、わが国の景気は持ち直しつつあり、2009 年度後半は、海外経済の改善と経済対策の効果を背景に、景気は持ち直していくとみられる。2010 年度もこの傾向は維持されるものの、世界経済の回復のペースが緩やかなものに止まるとみられること、国内においても需要刺激策の効果が減衰する中で、雇用・賃金面の調整圧力が残存することなどから、年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースも緩やかなものとなる可能性が高い。』

『その後は、米欧におけるバランスシート調整が相応に進捗するとともに、わが国においても、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられる。このため、2011 年度には、わが国の成長率は、潜在成長率を明確に上回るペースまで高まる見通しである。』

ということで、だいぶ願望レポートっぽい感じがしますが、まあこんな感じでございますなと思いつつ、ふと脚注をみると素敵な文言が。

『最近時点のわが国の潜在成長率を利用可能なデータで推計すると、大幅な景気悪化により、資本ストックの伸び率が低下していることなどを反映し、従来推定されていた水準よりも低下しているとみられる。見通し期間中の潜在成長率については、一定の手法で推定すると、2009 年4月の展望レポート時点の「1%前後」から低下し、「0%台半ば」と計算される。もっとも、経済が大きく変動している現状では、こうした推計について、相当幅をもってみる必要がある。』

潜在成長率を下げて来ましたか。道理で2010年度の消費者物価見通しが▲0.4%と意外に低くなかった訳ですわという感じでありまして(^^)、何か潜在成長率を下げて先行きの見通しを少しでも良さそうにしましょうって気がするのはきっとそれはあたくしの性格が悪いからそう見えているだけですよね!!


で、項目別展開の所は当然ながら先行きの回復もイマイチ感漂う内容になっていますけれども、その辺を華麗にスルーして金融環境の部分を。

『わが国の金融環境をみると、CP・社債の発行環境が大幅に好転しているほか、金融機関の貸出態度の厳しさが後退し始めるなど、改善の動きが拡がっている。先行きについても、米欧に比べわが国金融システムの頑健性が維持される中、金融機関の貸出態度など、企業の資金調達を巡る情勢は引き続き改善していくものとみられる。』

ということで、まあ買入解除という話になるのですが、普通に来年度も低金利継続ですなあという本音が出ている部分を引用。

『2010 年度以降は、企業の資金調達環境の改善に加え、企業収益の回復を背景に低金利の持つ景気刺激効果が強まり、こうした金融環境全般の改善が、民間需要の自律的な回復を後押しすると期待される。』

どう見ても時間軸です本当にありがとうございました。


○2つの柱による点検

リスク要因の所もあるのですが、引用してると長くなりすぎるので華麗にスルーして2つの柱の所に。

『まず、第1の柱、すなわち先行き2011 年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される見通しについて点検する。上述した通り、わが国経済は持ち直しを続けていくと考えられる。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、2009 年度後半以降、下落幅が徐々に縮小していくと見込まれる。こうした動きが持続すれば、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していく展望が拓けると考えられる。』

さて4月はどう書いてあったでしょうか。

『まず、第1の柱、すなわち先行き2010 年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される見通しについて点検する。上述した通り、わが国経済は、当面、悪化が続くが、次第に下げ止まりに向かい、2009 年度後半以降、成長率が緩やかに持ち直す姿が想定される。また、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比は、2009 年度半ばまでにやや大きく下落した後、2009 年度後半以降は、下落幅が徐々に縮小していくと見込まれる。こうした動きが持続すれば、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路へ復していく展望が拓けると考えられる。』(本年4月の展望レポート)

基本的なストーリーは4月の延長になっていて、悪化が止まって持ち直しという話にはなっているのですが、微妙にチャーミングなのは、4月の展望レポートでは『成長率が緩やかに持ち直す』という話をしていたのですが、今回はそこから「成長率」という文言が外れている事ですな。まあ潜在成長率を下げてそこはチャラにしているのですけど(ニヤニヤ)。


『次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する。景気については、新興国・資源国の経済情勢など、上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある。一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』

で、前回4月はどうでしたかと言いますと。

『次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する。景気については、国際的な金融経済情勢、中長期的な成長期待の動向、わが国の金融環境など、景気の下振れリスクが高い状況が続いていることに注意する必要がある。物価面では、景気の下振れリスクの顕現化、中長期的なインフレ予想の下振れなど、物価上昇率が想定以上に低下する可能性がある。一方、中長期的には、世界経済が回復する過程において、現在の極めて景気刺激的な政策が維持された場合、一次産品価格が予想以上に上振れることなどにより、わが国の物価上昇率が想定以上に上昇する可能性もある。』(本年4月の展望レポート)

下振れリスク強調姿勢だったのが、やや強調度合いが下がったという感じですわな。で、その後の部分でもそうなのですが、4月の展望レポートにあった「当面は、景気・物価の下振れリスクを意識する必要がある。」という文言がちゃっかり削除されておりますので、メインシナリオの見通しそのものは「上昇角度は全然さっぱり」というのが1年延びたという感じではありますけれども、下振れリスクに関する言及が軽くなっている所を総合的に勘案すると、さてどうなんでしょうという気もします。まあ基本的に展望レポートの内容そのものは当初言われていたようにぱっとしませんなというのはその通りではございますけれども。

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2009/10/30

○日銀レビューから

先日出ていた奴ですが。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j14.pdf
米欧諸国における銀行貸出の低迷の背景
―― 日本のバブル崩壊期との比較 ――

日本のバブル崩壊以降の銀行貸出推移と比較して米欧諸国や欧州新興国まで含めてバブル崩壊(ITバブル崩壊と最近の信用バブル崩壊)後の銀行貸出動向を考察するという話で、ややこしい計算式とかございませんので、数学と言えばハクション大魔王並みの頭を誇るあたくし(というフリが判る人は年寄り)にも優しいレビューなのれす。

で、まあ引用始めると全部引用しそうな勢いですが、まあ米国の銀行貸出の部分を引用してみましょ。

4ページ目の『(米欧の 2000 年代前半における金融緩和局面)』って所から。

『図表 6 で、米国の金融緩和局面をみると、2001年から2002年前半にかけて、金利と貸出の伸びの双方が低下したが(--■--)、2002 年後半以降は、金利の低下を伴いながら貸出の伸びが拡大に転じた(--△--)。』

なお、()で書いてあるのは顔文字ではなくて、図表にあるグラフのどれがどれに対応しているかを示しているモノでありますが、図表をスルーして引用すると顔文字みたいですな、特に後の部分(^^)。

『これは、当初、IT バブル崩壊による景気悪化に伴い、借入需要曲線の左方シフトが支配的であったが(前掲図表3B)、その後、銀行の融資スタンスが、調達金利の低下を受けて次第に積極化し、貸出供給曲線が右方シフトしたことを示唆している(前掲図表3@)。つまり、銀行貸出チャネルを経由した金融緩和効果がラグを伴って拡がっていったと考えられる。銀行の貸出態度に関するサーベイ調査からも、この時期に、貸出基準が徐々に緩和の方向に向かっていったことが確認できる。』

機種依存文字は原文ママで勘弁。で、実際問題として確かに当時のイメージはそんな感じでしたねって所ですにゃ。

『また、英国では、2000 年代前半の緩和局面において、貸出の伸びがほぼ一定のもとで、貸出金利が低下していった(--●--)。これは、景気の低迷による借入需要曲線の左方シフトと、金融緩和による貸出供給曲線の右方シフトが同時に生じた影響とみられる(前掲図表3C)。』

『このように、米英における 2000 年代前半の金融緩和局面では、1990 年代前半までの日本の緩和局面と同様に、銀行による貸出供給の増加が景気回復を後押しする効果が確認される。』

で、今回の信用バブル崩壊ではどうですかという話がその次にございまして、『(米欧の今次金融緩和局面)』っつー所に続きますわな。

『一方、2008 年以降の局面では、金融市場が混乱する中で、銀行貸出チャネルを経由した金融緩和効果は弱いものとなった。2008 年中は、貸出金利がほぼ一定のもとで、貸出の伸びが低下しており(−□−)、借入需要曲線と貸出供給曲線の双方が大幅に左方シフトしたと解釈できる(前掲図表3D)。』

『これは、1990 年代後半の本邦貸出市場でも観察された現象であり、金融と実体経済の間の負の相乗作用が顕在化していた可能性を強く示唆している。実際、サーベイ調査でみた銀行の貸出態度や企業の資金繰りは、2008 年中、前回の金融緩和局面時の水準を超えて、厳しさを増していった。また、この局面では、政策金利の低下にもかかわらず、銀行の短期金融市場での調達金利が、市場機能の低下を背景に高止まりする期間が続き、金融緩和効果の浸透を阻害する一因となった(図表7)。』

んでまあその後ですけど。

『その後、2009 年に入ると、金利と貸出の伸びの双方が低下するようになり(−■−)、貸出供給曲線に沿って借入需要曲線の左方シフトが続いたと解釈できる(前掲図表3B)。より厳密には、借入需要曲線も貸出供給曲線も左方シフトが続いたが、後者のシフトが小幅化していった可能性が高い。』

図表なしで引用してるとちょっとアレですので、まあご興味のある方は日銀レビューのホンモノを読んでくださいね。次に具体的な話をしていますのでどういう話なのかは判ると思いますが(^^)。

『すなわち、過剰債務を抱えた家計やストック調整圧力に直面した企業は借入削減を進め、一方の銀行は、サーベイ調査が示す通り、依然厳格な貸出スタンスを維持しつつも、公的資本注入など金融システム安定化策を背景に、貸出供給の絞込みペースを以前に比べ落としていった。』

『また、金融市場における流動性危機が沈静化し、銀行の市場調達金利が低下していったことも、貸出供給曲線の左方シフトを以前に比べ小幅化させたものとみられる(前掲図表7)。』

ということなのですが、まあこれは日本の90年代後半と比較した場合はご案内の通りでありまして。

『このように、米欧では、貸出供給の削減による悪影響が和らいできたが、前回局面と異なり、金融緩和による銀行の貸出供給を通じた景気回復の後押し効果はみられなくなっている。この背景としては、深刻なバランスシート問題を指摘できよう。』

『米欧の銀行は、バランスシートを身の丈にあった規模にするよう調整を進めると同時に、民間主体が過剰債務を抱えるもとで、新規貸出からは収益機会を見出しにくくなっているとみられる。これは、日本の1990年代後半以降の貸出市場と同様な状況と言える。』

ということで、まとめの部分では、当然ながらこういう指摘がございます。

『今後、米欧先進国では、景気回復に向けた動きが続いていくと考えられるが、バランスシート調整圧力が続くもとで、不良債権比率の動向など銀行の財務内容に関する不確実性は払拭されていない(図表10)。このため、何らかの追加的なショックが加われば、銀行の貸出スタンスが再び厳格化の程度を増し、貸出供給曲線が左方シフトすることで、金融と実体経済の間の負の相乗作用が再燃するリスクも存在する。』

まあ日本の経験からすると欧米(特に米国)って妙にこの点楽観していますわなあと思うのであります。

という訳で先日の日銀レビューをちょっとだけ引用してみましたが、まあ読みやすいので、というか一般向けに近い感じですので、金融機関の中の人じゃない方にお勧めかも知れませんね。

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2009/10/20

○9月会合議事要旨、企業金融環境の改善に関して

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g090917.pdf

当然ながら今の注目は企業金融支援策の帰趨になりますので、金融環境に関する議論の部分がニュースネタにもなるという事で、そっちのヘッドラインが踊りまして、益々企業金融支援策の今月末決定会合での見直し(というか買入の解除とか)への雰囲気が高まるでござるの巻という感じでしょうか。

ということでそっちの辺りから。

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の後半が『2.金融面の動向』でございますが。

『わが国の金融環境について、委員は、厳しさを残しつつも、改善の動きが拡がっているとの認識を共有した。』

まあ確かに(後で出てきますが)社債市場とかでもスプレッドが全般縮小というような感じで9月の辺りまでは進んでましたけど、直近で言えば必ずしも何でもかんでもスプレッド縮小という感じかというと、ど〜も弱い所は弱くなるって感じも見受けられる気がする(特にどこぞの消費者金融さんがADRとか言い出したのは影響してると思うのだが)のですけど。まあ業績的やネーム的に買いやすいものは相変わらずスプレッド堅調なんで、市場による信用力による選別機能がワークしてるという話だと言ってしまえばそれまでかも知れませんけど・・・・・ナンカドウモネ

んでその内訳。

『CPの発行環境について、多くの委員は、A−2格の発行スプレッドがリーマン破綻前と遜色ない水準まで低下しているほか、発行残高も昨年末以降大きく増加していることを踏まえると、下位格付先の発行環境も改善していると述べた。ある委員は、CP市場では、高格付けCPの発行レートが短国レートを下回る官民逆転現象など、引き続き、政策効果に行き過ぎの面がみられていると付け加えた。』

まあそれはそうですにゃ。

『社債の発行環境について、多くの委員は、下位格付先は依然として厳しい状態にあるものの、全体としては信用スプレッドの低下や発行銘柄の拡大など、改善傾向が続いているとの見方を示した。』

これも9月時点ではまさにこんな感じでしょう。

『その上で、委員は、社債市場の二極化、特にBBB格の発行環境の厳しさをどう評価するかについて検討を行った。』

んでまあこの後の話は中々。

『ある委員は、最近、社債流通市場では、スプレッドの厚い銘柄に対する投資家の物色が進んできており、BBB格のスプレッドも、一部銘柄を除いて縮小してきていると述べた。』

『また、何人かの委員は、リーマン破綻前に比べてBBB格の発行が減少しているのは事実であるが、一方で、わが国の社債市場については、元々リスク許容度の高い投資家層が薄いほか、コスト面で銀行借入れとの差が大きく、企業の発行ニーズもさほど大きくないとの指摘を行った。』

『ある委員は、昨年秋以降の金融市場の混乱を経験したことで、企業、金融機関とも、間接金融の重要性を意識するようになってきているため、今後、社債市場が改善するとしても、その姿が、かつてと全く同じになるとは限らないと付け加えた。』

『こうした議論を経て、多くの委員は、社債市場の状況を踏まえると、下位格付銘柄の発行が限定的であることをもって、金融環境に厳しさが残っていると評価することは必ずしも妥当ではないとの認識を示した。』

んーっとですね、いやまあこの辺りって実に難しい話なんですが、入口としてはリーマン破綻以来の金融市場の混乱によってアホウのように味噌も糞もスプレッド拡大でござるの巻になったのですが、それが年末年始の利下げだのCP買入だの社債買入だのによって一巡してスプレッドが戻った後も実は2月位って「企業の先行き業績懸念、格下げ懸念」とゆーネタで業種によってはスプレッド再拡大(特にCPで顕著でしたけど)したりという現象もあったという事を勘案すると、市場環境の改善っちゅうのは運用難という状況によってスプレッドが潰れに行ってるだけなんジャマイカとゆー気もせんでもないっす。よー知らんが。

まあその運用難になる金融環境ってえのが金融政策全般の効果っちゃあ効果でもありまして、それはまあ臨時措置よりも低金利政策の効果&資金需要低迷によるものであると言われてしまうとまーその理屈も話としては通るのですが、超根拠レスで単なる杞憂かもしれないですけど、どうも何だか現状で臨時措置をホイホイ解除に回ってしまうのは、CPまだしも、社債とか微妙にいやーな予感はするんですけどね。

んでもって企業の資金繰りがどうしたこうしたという話が続く。

『企業の資金繰りについて、委員は、中小企業を中心に、なお厳しいとする先が多いものの、改善の動きが続いているとの見方を共有した。』

でも10月頭に出た短観の数字(まあアンケートなんで「いやー苦しいっすよ」って答えるバイアスは掛かりそうですけど)からすると残念ながらそーゆーイメージでも無かったですな。

『何人かの委員は、最近の資金繰りの改善は、運転資金需要や設備資金需要の減少による部分が大きいことから、企業の資金繰りについて楽観はできないと述べた。』

全く同意っす。まー売上急減などに伴う企業のストック調整が一巡しているのであれば、平常運転であれば資金需要が盛り上がるっちゅう話にもならんのではとは存じます。前向き資金需要の時は景気が良くなっているので無問題ですけど、問題はここから景気腰折れして赤字資金需要がって話になった時にはおそロシアという所ですか。

『この点に関連し、ある委員は、確かに先行きの景気や売上が見通せないことを心配する声もあるが、今年の春頃までの、日々の資金繰りも覚束ない状況に比べれば、資金繰りを巡る心配の性質は変わってきたように感じていると述べた。』

で、延々と引用して恐縮ですがなお続きます。まあ何か大事な話をしているようですので・・・・・

『その後、委員は、景気の下振れリスクを点検・整理する上で、わが国の金融環境をどう位置付けることが適当か検討を行った。』

『何人かの委員は、景気の先行きを巡る不確実性が大きい中で、将来の資金繰りに対する企業の不安感は十分払拭されていないほか、景気の下振れに伴う金融機関における信用コストの増加や株価下落リスクの顕現化等により、金融と実体経済との負の相乗作用が生じるリスクは解消されていないと述べた上で、わが国の金融環境を、当面、リスク要因として認識しておくことが適当との意見を述べた。』

『これに対し、何人かの委員は、景気のリスク要因については、それ自体が起点となって景気を上振れまたは下振れさせるものとして整理することが適当であると指摘した。』

後半部分がさらっと流れてますが、これは結構委員の間での温度差があったという理解で宜しいのではないかと思います。という事から致しますと、今般絶賛急浮上している企業金融支援の臨時措置に関する扱いに関しても総裁はどう見てもやる気満々ですが、政策委員会の間では温度差があるんでしょうなあというお話で。

『その上で、多くの委員は、現に国内の資金調達環境は着実に改善し、わが国の金融システムも総じて安定を維持していることを踏まえると、今後、わが国の金融市場や金融環境の動向それ自体が起点となって、景気を下振れさせるリスクは減少してきたとの見方を示した。』

たぶんね、景気が下振れした時に加速装置になると思うんですけど・・・・

『こうした議論を経て、委員は、@ 最近の金融環境の評価を踏まえると、わが国の金融環境を景気の下振れ要因として強調する必要性は低下した、もっとも、A 海外経済や国際金融市場の不安定化が、結果としてわが国の金融環境を悪化させ、これが景気を下振れさせるリスクはある、B 経済の先行きを巡る不確実性は大きいため、企業が先行きの資金繰りについて依然不安感を持っている、との認識を共有し、その上で、こうした認識について丁寧に情報発信していくことが適当であるとの見解で一致した。』

機種依存文字は原文ママで勘弁。んでまあこういう話だったら昨今の解除大騒ぎにはならんような気がするんですけど、何故か丁寧な情報発信が技術論による臨時措置解除祭りになっているのが白川総裁クオリティだったりするのです。


○同じく決定会合議事要旨から、物価の見通しは・・・・

金融環境の前の部分で消費者物価の話をしているんですけどね。

『複数の委員は、足もとの下落幅は想定より幾分大きいとの見方を示した。』

ほれほれ。

『この点に関連し、何人かの委員が、需給バランスの悪化を示唆する動きとして、食料品とエネルギーを除いた消費者物価の前年比下落幅が徐々に拡大していることなどを指摘した。』

『消費者物価( 除く生鮮食品) の先行きについて、委員は、当面、下落幅が幾分拡大するものの、石油製品価格などの影響が薄れていくため、本年度後半以降は、下落幅を縮小していくとの認識を共有した。』

『なお、ある委員は、わが国と同様、他の主要国においても、需給バランスの大幅な悪化に直面しており、今後、需給バランスが改善し、望ましい物価上昇率の水準に復するまでには、かなり時間がかかるとの見方が共有されていると述べた。このほか、何人かの委員は、需給バランス以外にも、家計の中長期的なインフレ予想や企業の価格設定行動、為替相場や一次産品価格、雇用者賃金の動向などについても、先行きの物価動向に影響を与え得る要因として注視していく必要があると指摘した。』

どう見ても下振れ認識です本当にありがとうございました。

・・・・つーことですね、まあ企業金融臨時措置を技術的論点だかで解除したり見直ししたりしても結構なんすけどね(だいぶ投げやり)、消費者物価の先行きに不安があるっちゅう見通しを出す中で敢えて実施する必要があるほどの弊害が出ているのかって話になりゃあせんですかという気はするんですよね。まあその異例措置自体が中央銀行としてケシカランので弊害ですと言われてしまえばそれまでですけど。

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2009/10/19

総裁会見の続きとか他にもネタはあった気がしますが(汗)、今日は金融経済月報など少々で勘弁。

○金融経済月報(概要)の内容は強くなってますね、特に金融関連

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0910.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0909.pdf(前回)

総括判断と現状判断のあたりは声明文でも示されたような部分の改善になっていますのでその辺はスルーしまして、先行き判断の項目別部分から。

・公共投資

『公共投資も、当面は増加を続けると見込まれる。』(今回)
『公共投資も増加を続けると見込まれる。』(9月)

ここは補正の執行停止絡みもあって下方修正気味ですが。

・国内民間需要・・・をめぐる環境

『国内民間需要は、耐久財の消費が各種対策の効果などから当面堅調に推移するとみられるが、全体としては、企業収益や雇用・所得環境などの厳しさが続くもとで、引き続き弱めに推移する可能性が高い。』(今回)

『国内民間需要は、耐久財の消費が各種対策の効果などから当面堅調に推移するとみられるが、全体としては、収益・資金調達環境の厳しさが残り、雇用・所得環境が厳しさを増すもとで、引き続き弱めに推移する可能性が高い。』(9月)

引き続き弱めに推移という話は同じなのですが、良く良く見ますとその環境に関しては、「資金調達環境の厳しさ」というのが削除されて、「雇用・所得環境の厳しさが増す」というのが「続く」と方向性的に下向きから横向きに変化しています。ということでこちらはしらっと結構な上方修正。


・物価の先行き

物価の現状に関しては9月と同じなのでスルーしますが、先行き見通しは下落幅の拡大は止まるという話に。ほうほうそうですかそうですか。

『消費者物価の前年比は、当面、現状程度で推移したあと、前年における石油製品価格高騰の反動の影響が薄れていくにしたがい、下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『消費者物価の前年比は、下落幅が幾分拡大したあと、前年における石油製品価格高騰の反動の影響が薄れていくにしたがい、下落幅が縮小していくと予想される。』(9月)

まあこの調子で下がったら洒落にならんですからね。


・金融環境はどさくさに紛れて結構改善

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、改善している。』(今回)

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、幾分改善している。』(9月)

幾分改善から改善とヘッジクローズ解除ですな。

『CP・社債市場では、低格付社債を除き、良好な発行環境となっている。』(今回)

『CP・社債の発行環境は、信用スプレッドの低下や社債の発行銘柄の拡大など、改善傾向が続いている。ただし、下位格付先の社債の発行環境は依然として厳しい状態にある。』(9月)

これまた数あるヘッジクローズを堂々の解除となっています。


・ということで

声明文の方ではサラッとしか書いていなかった金融面に関する環境改善が結構書かれているというのが今回の月報の特徴。あと、何気に雇用環境とかも悪化下げ止まりという表現になっていますので、まあやっぱり内容的には強くなっているという感じでしょう。しかも金融環境の改善が出ているのが企業金融関連臨時措置の扱いをどうにかするという話の布石チックでちょっときな臭しという所でしょうな。


○決済フォーラムがあったので雑談

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/set0910a.htm
議事内容はこちら
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/data/set0910a2.pdf

えーっと、まあこちらの話は「ほうほうそうですか」という話なんですけど、どうも相変わらず決済期間短縮に話を持っていこうとするのが何だかなって気もしますが、今日はちょっと別の雑談を。

リーマンが飛んだ時ってまあレポ取引が止まったとか一般売買取引が止まったとかいうのも(リーマンは国債ディーラーとしてのプレゼンスがでかかったから)大きな影響あったのは間違い無いですが、現場的に「ええええ!」と思ったのは取引所関連の委託取引までフリーズしやがったことだったりします。

どうも業務停止処分+民事再生法というコンボが初めての例だったからというのは判るのですが、リーマン経由で取引所取引を行っていたものがフェイルするとか、制度信用取引の反対売買が出来なくなったとか、先物委託取引の反対売買が出来なくなったとか、中々素敵な事象が発生したんでございますな。未決済建玉の移管の手続きが始まるのにも数日掛かってたりと、まあ事例が初回で突然の出来事だったとは言え、取引所は危機管理プランをちゃんと組んでたのかよという感は激しくしたのでありました。

つまりですね、通常のOTCの一般売買とか、レポ取引とかっていうのであれば、当然ながら相手方に対する与信行為だったり、取引再構築コストが掛かるという事は認識している(まあ今回はその認識が今一歩だった人もいたかも知れないけど)のですが、取引所取引の委託で1日2日であっても反対売買が出来なくてしまうっていうのは「一体全体何のために取引所取引をしているのか」という取引所の根幹に関わる問題につながる話だと思うのですよ。

たまたまリーマンの事例では、同社が一般の個人相手の営業をしていないから良かったようなもんで、同じ事例を国内で幅広い顧客相手に営業している証券会社が行った時にフリーズしちゃったらどうすんのとか、これまたラッキーだったことに、リーマンの事例では債券先物やら株価指数先物の当限最終決済やメジャーSQが済んでいたから先物絡みの混乱も大した話にはなりませんでしたけど、これがSQ直前に発生して建玉の整理が間に合わなくなって、予期せぬ最終決済に掛かってしまった場合、特に現物決済になだれ込んでしまう債券先物ってどうなってしまったのとか、まー取引所取引に関しては結果ラッキー的な部分があったと思うのですよ(山一の時は自主廃業だったから別に取引所取引が動かせなかった訳ではない)。

という話って、別に決済システムがどうのこうのっていう話とは全然違うかもしれません、というか決済システムのデザインの話じゃなくて、破綻法制の問題になると思うのですけれども、これだけ取引が巨大化かつ錯綜して回っている中で、破綻時の取引をどう処理するのかという部分をもっと明確化していかないと、市場参加者が法的破綻を来たした時にまた同じように「取引が止まってしまった」「じゃあ取引先を絞ろう」「売買も絞ろう」って事になってしまうんじゃないかなあと思うのでありました。

ま、それだからこそ金融市場に直接アクセスしている大きな参加者をいきなり法的破綻をさせるというのは良くないちゅう話なんでしょうけどね。

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2009/10/15

○声明文は上方修正のようだがあまりそうでもなさそう

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k091014.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090917.pdf(前回)

・総括判断は上方修正

『わが国の景気は持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の景気は持ち直しに転じつつある。』(9月)

「転じつつ」というのから「持ち直しつつ」になったのですから方向性として持ち直し=回復の方向になりましたって事なのでありますが、上方修正っちゃあ上方修正ですが、標準シナリオ通りと言えば標準シナリオ通り。


・なのですが個別項目の上方修正はあまり無い

個別項目の現状認識に関する部分は大体前回と同じなのですけれども、良く良く見ると変化がある部分があまり無いのですが、変化したのは設備投資部分と個人消費部分。

『設備投資は、厳しい収益状況などを背景に減少を続けているが、減少ペースは緩やかになってきている。』(今回)

『一方、厳しい収益状況などを背景に、設備投資は減少を続けている。』(9月)

まあ一応減少のペースが緩やかになったのだから上方修正ですが。

あとは個人消費。

『個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが続いているものの、厳しい雇用・所得環境が続く中で、全体としては弱めの動きとなっている。』(今回)

『個人消費は、各種対策の効果などから一部に持ち直しの動きが窺われるものの、雇用・所得環境が厳しさを増す中で、全体としては弱めの動きとなっている。』(9月)

持ち直しの動きが「窺われる」から「続く」になったのでこちらは方向性確定って感じですからまあ上方修正なのですが、各種対策の効果によってってえ事ですから、対策剥落したらどうなるんでございまちゅかねえ。


・見通しがこれまた微妙に上方修正

『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していくと考えられる。』(今回)

『2010 年度までの中心的な見通しとしては、中長期的な成長期待が大きく変化しない中、本年度後半以降、海外経済や国際金融資本市場の回復に加え、金融システム面での対策や財政・金融政策の効果もあって、わが国経済は持ち直していく姿が想定される。』(9月)

・・・・うーんとですね、まずは「姿が想定」ってのが「持ち直していくと考えられる」となって変なヘッジクローズが外れたというのは微妙ではありますが、一応これまた方向性確定って話ですので、上方修正ですな。あと9月にあった「本年度後半以降」ってのは10月入りしたから外れたのかどうか良く判らんですな。


・しかし見通しの個別項目は変化なし

変化がないのでめんどいので引用割愛。


・リスク要因でも微妙な上方修正(か?)

『リスク要因をみると、景気については、新興国の回復といった上振れ要因はあるが、』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国の回復といった上振れ要因が生じているが、』(9月)


「生じている」というのが「ある」とこれまた断定口調に変化ということですな。あと下の方は特に変わっておりませんです、はい。


ということで、内容的には総括判断の所や先行き判断の所で上方修正をしているものの、個別項目を見ると「展望レポートで示されている緩やかな回復をするでしょうシナリオ」通りって所なんじゃネーノと言った所でありまする。

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2009/10/08

○生活意識アンケートですが

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0910.pdf

アンケート結果を箇条書きで掲載しているのが16ページ目以降なのですけれども、こちらを簡単に。質問項目とかは上記URLからの引用です(めんどいので『』をつけません)。数字は今回の結果が先に出て、()内は3か月前の調査結果の数字です。改行とかスペースとかはあたくしが適当に挿入しています

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった 1.8 ( 0.5 )
2 変わらない 23.5 ( 17.1 )
3 悪くなった 74.1 ( 81.9 )

ということで、景気が悪化したという人が減ったという数字が出ているので、「おお!」と思いますが、冷静に考えれば延々と「悪くなった」が続くというのは余りと言えば余りの話でありますので、ちったあ歯止めが掛かってくれないと困るという話でもあります。

Q3. 現在の景気をどう感じますか。
1 良い 0.1 ( 0.0 )
2 どちらかと言えば、良い 0.8 ( 0.6 )
3 どちらとも言えない 10.6 ( 9.6 )
4 どちらかと言えば、悪い 46.5 ( 41.8 )
5 悪い 41.6 ( 47.7 )

一応「悪い」カテゴリーの数字は減っていますが、質問1を見た時の印象とはちと違い、まあ大して改善してませんなあって読めてしまいますね。アンケートというのは恐るべし。

一方で、特に現状の景気が改善しているという認識結果にはなっていない中でも金利に関してはこんな結果が。

Q5. 景気の状況を考えたとき、現在の金利水準をどのようにお考えになりますか。
1 金利が低すぎる 50.0 ( 45.5 )
2 適当な水準である 33.5 ( 35.8 )
3 金利が高すぎる 14.1 ( 15.6 )

金利が低すぎるが多いのは毎度の事なんですが、景気認識が特に大きな改善を示さない中で金利が低いという見解が増えているのは、低金利継続によって金融商品の利回りが全般的に低下してきたというのが浸透してきた結果なのかもしれませんね。微妙ですけど。


それから物価に関する部分。

Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった 8.0 ( 8.1 )
2 少し上がった 39.4 ( 39.4 )
3 ほとんど変わらない 31.5 ( 29.2 )
4 少し下がった 18.6 ( 21.0 )
5 かなり下がった 1.5 ( 1.3 )

下がったという人が減っているのは何で??と思いましたが、数字的にはそうでも無いんですよね。

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値: +3.6 ( +3.5 )
中央値: +0.1 ( +1.0 )

ただまあ引き続きプラス圏内継続というのが物価統計の数字と違う(物価統計だと生活関連商品の下落とか、下落品目数の増加とか、いかにも生活者の物価が下がっているという結果なんですが)んですよね。先行き見通しに関してもそうでして。

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる 4.0 ( 3.4 )
2 少し上がる 41.9 ( 34.5 )
3 ほとんど変わらない 42.4 ( 44.5 )
4 少し下がる 10.3 ( 15.6 )
5 かなり下がる 0.4 ( 0.5 )

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値:+3.1 ( +2.2 )
中央値:+0.1 ( 0.0 )

・・・・うーむ、上昇なんですか。

あと、最後に新設コーナーでは日本銀行の広報活動に関する質問というのが出来てまして、ふーんと思いましたが台風到来なのでまた後日にするかも知れませんが多分このままスルーです。

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2009/10/05

○短観の続き、というか数字編

・業況判断DIの達成度合い

6月調査時点での先行き見通しがどのくらい達成出来ているかという話。前回は3月時の予測よりも総じて好転ということで、これは回復期に出てくる(前回の回復期ってひたすら毎回「前回出した先行き予測以上に好転」という言ってみれば「堅めに出した予想を上回る業況が続く」という状態になりました)傾向に似ているじゃあーりませんかという明るい話をしておった訳なのですが・・・・・
          (6月時点)        (9月時点)
          現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業  ▲48→▲30     ▲33→▲21
製造業中堅企業 ▲55→▲46     ▲40→▲35
製造業中小企業 ▲57→▲53     ▲52→▲44

非製造業大企業  ▲29→▲21    ▲24→▲17
非製造業中堅企業 ▲36→▲32    ▲30→▲28
非製造業中小企業 ▲44→▲45    ▲39→▲40

前回あたくしこんな事書いたんですよね。

『3月時点での予測数値よりも実際に6月になった時の数値が好転しているのってえのは、実は上向き方向になっている時の仕様でもありますので、次回短観で今回の予測数値を達成し、それ以上にDIが改善という事になると、中々美しい話になると思います。』(あたくしが7月2日に書いた駄文から)

んでまあ今回ですが、残念ながら6月時点での予測数値近傍だわ、回復過程で調子良かった大企業が予測数値達成できずでござるの巻となっておりまして、残念ですねという感じですわな。

予測数値および方向性は上になっていますが、6月調査時点の雰囲気からの進化が無いという所で。


・雇用判断DI

前回は内容悪いけど先行きの予測的には製造業大企業中心にマシになってくれそうな数字にはなっていたのですが・・・・

          (6月時点)         (9月時点)
          現状→9月予測    現状→12月予測
製造業大企業  +33→+24     +26→+18
製造業中堅企業 +37→+29     +32→+25
製造業中小企業 +40→+34     +35→+27

非製造業大企業  +7→+4      +11→+7
非製造業中堅企業 +11→+8     +10→+7
非製造業中小企業 +13→+11    +12→+9


6月に予想しているほどの好転になっていない(まあそんなにブレも無いですけど)というのもそうですが、非製造業が前回予想では雇用判断改善する予定になっていたのに、蓋を開けてみれば悪化というのは残念無念。まあ非製造業の雇用判断となると遅行指標の遅行指標っぽいのでこんなもんで勘弁なのかもしれませんが、まあ雇用環境がどうのこうのと問題視されている中ではあまり良い数字ではないですね。


・証券業の業況判断

今回も長期時系列を更新。サブプライム爆発前でありますところの一昨年6月調査分から並べますね、前回▲29でしたが・・・・・

        現状→次回予測
(6月時点) +34→+52
(9月時点) ▲30→+23
(12月時点)▲26→+4
(3月時点) ▲55→▲15
(6月時点) ▲45→0
(9月時点) ▲70→▲44
(12月時点)▲70→▲59
(3月時点) ▲76→▲68
(6月時点) ▲29→▲21
(9月時点) ▲4→+4

前回6月調査の数字をみたあたくしはこんな事を書いたんですな。

『さて、このインプリケーションですが、この流れを見ると「株式市場は当面堅調に推移する」という答えになるのです!』(7月2日の駄文より)

その理由ですが・・・・

『・・・・良く見ると、次回予測が前回同様に、足元の数字とあまり大差が無いのでござんすな。ということは、願望成分入れまくって外すのが仕様となっている証券業DIクオリティを勘案すると、株式市場は当面堅調推移というのが結論になる。とまあこういう話になるのであります、ゲラゲラ。』
(これまた7月2日の駄文より)

うーむ、まあ6月は瞬間平均株価瞬間10,000円程度で、その後3か月は基本10,000円キープでしたから、それを堅調と言えるのかは微妙ですが(汗)、まあ無事に推移しやがったという所で、相場観とか入れないで(^^)斜に構えて書いたもんが割と良いパフォーマンスとは喜んで良いのやら悲しんだ方が良いのやら(^^)。

で、今回ですが、どうも先行きがプラス数値になっているのが気になる。数字的には8の改善に留まるのですけど、マイナスがプラスってのが・・・・


んでもって企業金融関連(どうもこっちの数字は良く判らんが)ですけど、引き続きインプリケーションが微妙っすな。

・資金繰り判断DI

前回は大企業がやっとプラスに復活するも中堅中小はまだ厳しいという内容に読めましたが・・・・

      (6月時点) (9月時点)
大企業    +1     +6
中堅企業   ▲7     ▲6
中小企業  ▲20     ▲18

どう見ても2極化です本当にありがとうございました。


・貸出態度判断DI

      (6月時点) (9月時点)
大企業    ▲9     ▲4
中堅企業   ▲9     ▲6
中小企業   ▲13    ▲12

はいはい2極化2極化。しかし銀行的には「貸出を伸ばせるような先が無くて困っている」という話を良く聞くんですけどね。


・借入金利水準判断(プラスが金利上昇です)

         (6月時点)     (9月時点)
         現状→9月予測   現状→12月予測
大企業     +5→+15     +2→+10
中堅企業    +3→+14     +3→+12
中小企業    +2→+12     +3→+10

これね、前回あたくしが書いたのをこれまた引用しますね。

『中堅中小企業の借入金利水準が前回低下してたのに上昇ですかそうですかというのは残念感が漂うのですが、大企業では基本的に足元の資金需要が一巡して年末から年始に掛けてウハウハ金利で貸出をしていた銀行のローンがロール時期になっているので、もうちょっとこの辺の数字が改善してるのかと思いましたが。』

『で、もっと不思議なのは先行きの金利に関して「上昇する」が現状判断よりも増えていることなのですが、これってどうも短観の仕様みたいでして、過去の短観データをクリッククリックしながら眺めていたのですが、量的緩和実施の2001年3月調査時点でも「先行き予測数値」は金利上昇という結果になっていたりするので、どうも「先行き借入金利上昇」というのは仕様ということで。ちなみに、先行き予測で「現状よりも好転」という話になるのは97年とか98年くらいに遡るみたい(全部見てないので見落としはあるかもです)な気がします。もしかしたら、「借入金利が上昇する懸念を持ってると思われた方が日銀に対するプレッシャーになる」っていうような事を答えながら思ったりしてるのかな(^^)。』

(以上7月2日に書いた駄文より)

ということで、これは先行き予測数値を見てもあまりあてにならなさそうですが、金利そのものはあまり下がっていない(微妙に上昇している)というのは継続してるのね。


・CP発行環境判断DI(プラスが楽でマイナスが厳しい)

      (6月時点) (12月時点)
大企業   ▲14     ▲11

これは相変わらず「またまた御冗談を」という数字ですが、そもそもCP発行していない企業さんとかもこの項目答えさせているらしいので、あんまり意味は無さそうなので、多分次回からは華麗にスルーすると思います。


でね、全体を見れば企業金融って別にビックリするような改善をしている訳ではありませんで、一方で企業金融に対する支援がどうのこうのと(肝心の大臣様の発言が段々トーンダウンしてきているのがチャーミングですが)政治方面からぶちあげている中で、企業金融支援策として実施している臨時措置をわざわざ止めに行くとか言い出す政治センス(以下金曜と同文^^)。


まあこれはこんなところで。真面目な分析は本職の方へどうぞ。



○フェイル慣行がどうのこうの

国債決済T+1がどーのこーのという謎の新聞記事が出た直後にこれが出るとは
これまた微妙なタイミングで。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/rev09j12.htm
わが国におけるフェイル慣行の一層の定着に向けて
― フェイル慣行の意義・役割と米国の取組み事例を中心に ―

んでもって本文はこちら(PDFです)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev09j12.pdf

最初の部分から。

『わが国では、国債決済のRTGS 化が図られた2001 年1 月にフェイル慣行が導入された。フェイル慣行整備の背景には、RTGS システムの下で、決済事務の増大や取引の連鎖による決済の遅延、ループの発生などが避けられないことから、市場流動性の確保や決済の円滑化のためには一定のフェイル発生が不可避との認識があった。もっとも、その後も同慣行は十分に定着せず、債券・レポ市場における取引の効率性や市場流動性を歪める場面がみられるとの指摘があった。2008 年9 月のリーマン・ブラザーズ証券の破綻に起因してフェイルが多発する状況でも、これを容認しない先が多いことが、レポ取引の混乱に拍車をかけたとの認識から、市場関係者の間でフェイル慣行に関する問題意識が一段と高まった。』

『こうした中、2009 年5 月、日本証券業協会(日証協)が「債券のフェイル慣行の見直しに関するワーキング・グループ」を設置した。同WGは上記問題意識の高まりを映じて、最終投資家を含む幅広い業態や市場参加者団体の代表者に加え、金融庁・財務省・日本銀行がオブザーバーで参加するなど、フェイル慣行の定着に向け、市場横断的な検討体制となった。』

だそうです。んでまあ問題点としては・・・・

『フェイル慣行の定着に向けては、債券やレポ取引の幅広い市場参加者(経営層を含む)において、同慣行の意義や役割について理解促進を図りつつ、フェイルへの対応のあり方についてコンセンサスを形成すること、更にそうした対応を可能とする制度的枠組みや個社体制の整備が重要との指摘が多い。』

つー話で、フェイルに関する解説があって、まーレポ&決済関連にあまり土地勘の無い方にはお勧めの内容になっておりまして、まあ読めという所なのですが、内容とは微妙に違うかもしれないけどあたくしが思う話を少々申し上げてみましょ。

まずフェイル慣行もさることながら、債券市場での玉繰り円滑化という観点からすると、投資家が気楽にホイホイSCレポを出すようになると良いと思う次第ですが、そもそも論として現状において投資家がフェイル出来ないという建付けになっているのではないかと思われる(思われると微妙な書き方をしているのは、制度上出来ないのか慣行で出来ないのかが良く判らない為ですが、資金運用目的じゃない債券借入って出来ないという人もいると思う)ので、新発引受玉のツモ切りは別ですが、基本的に投資家って支配残ベースじゃなくて保有残ベースで売却可能額を考えるように思えるのですが、まーその辺は自己勘定と他人勘定でまた違っていたりすると思うのであまり断言しませんけどね。

SCレポで貸したは良いけど、エンド時にフェイル食らった場合の事を考えるとその分って実質売れなくなってしまう事になっちゃうというのでは、ロットがでかくて底溜まりになっている玉があるでかい投資家さんでしたら無問題だと思いますけど、特に他人勘定だとロットが細かくなるケースこれありという事で、そうホイホイと玉も出せずで、まあロット細かいから気にすんなとい話もありますが、ナントカも積もれば山になるというのもあるんじゃねえのという気がします。

つまりですね、投資家がフェイルを容認しないというのはよく言われる表現(さっきの所にもありましたが)ですけれども、「容認しない」という背景には「投資家の方がフェイルをできない」という事情もあるというのを勘案して頂きたいのでありまして、まあ色々とクリアすべき点は他にもたくさんあると思うのですが、ひとつ宜しくお願いしたいものでありまする。

米国と違って日本の場合はカストディー銀行に参加者がぶら下がるのではなく、日銀ネットに数多くの参加者が直接参加しているという仕組みをどうするのよ(とは言え、金利が絶賛低下した時にカストディ銀行の収益が悪化して、本当にカストディ専業って食えるのかよという論点もあるし、普通の投資銀行や商業銀行がカストディ兼業した場合には、そのカストディの経営が悪化したらどうなるのよという話もありますし)とか言うのも有りますわな。うーむ。

まーこの話はまた勉強しますです。

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2009/10/02

○CPレート公表

保振がCPレート公表という事で日銀のレート公表終了でござるの巻。
http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr09/re0910a.htm

で、保振のページではこんなリリースが。
http://www.jasdec.com/news/20091001_02.html

んでまあ公表画面を見るわけですが・・・・・
http://www.jasdec.com/reading/cprate_page.php

アサイチだと9月30日分集計が見れますが、暫くすると今日発表分の数字(=10月1日分集計)が出てきちゃうと思うのでアレなのですが、昨日の数字をベースにしてお話しますと・・・・・

その他金融のa-1という所なんですが、タームストラクチャーがこういう感じになっております。

発行期間1週間以内:0.33%
発行期間2週間:0.19%
発行期間1か月:0.29%
発行期間2か月:0.18%
発行期間3か月:0.18%
発行期間3か月超:0.21%

・・・・・うーむ、当該期間に対応する発行を行った発行体さんのネームによってレートがぶれてしまうのでタームストラクチャーもへったくれもあったもんじゃない数字。何だかなあ感がプンプン漂ってくるのですが・・・・

んでまあしつこく悪態ですが、今般のCPレート公表に関する保振のリリースを読みますと・・・・・
http://www.jasdec.com/download/cp/CPpress20091001.pdf

『当機構は、CP 市場の整備及び透明性の向上に資する観点から、本日より当機構ホームページ上において「短期社債(電子CP)平均発行レート」の公表を開始いたしました。』

えーっと毎度申し上げておりますが、短期社債というのは法律上の建て付けとして「少人数私募発行」を行うものでありまして、従いまして法律上の建て付けとして一部の人たちが相対で取引する世界というものなのでありまして、そーゆーものに関して「透明性」を求めるというのは法令解釈的に変な話じゃないでしょうかと思うのですけど。

透明性透明性言うのでしたら、短期社債(電子CP)の法的な建て付けを再考すべきなのではないかと前々から申し上げている悪態なのでした。



○短観は全体感は明るいけど個別内容を見るとイマイチ

という所ではないかと思いますが、上記雑談を書いているうちに毎度お馴染みのギャグ分析をする(というかテキストに落とす)時間がなくなってしまったので詳しくは週明けに。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0909.pdf

毎度見ている部分と、資金繰り関連の部分を見まして思ったことを箇条書きしますね。

・前回の先行き予想DIの達成度合い
→今回は見事にまちまちで傾向がないです

・雇用判断DI
→残念な事に前回の先行き予想よりも好転していません

・資金繰り、貸出態度判断
→どう見ても改善していません本当にありがとうございました

・証券業の業況判断
→先行き判断よりもかなりよろしゅうございますな

というかですね、金融機関の業況判断が今回貸金業以外ではそこそこ改善してまして、特に証券と銀行の改善が非製造業大企業の改善幅(前回比+5)を上回っており、金融市場が何となく改善していった流れを反映しているのでしょうなあとか思うのでありましたです、はい。


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