決定会合議事要旨や金融経済月報などについて
(2011年度上期に書いた分)

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2011/09/21「昔の日銀ペーパーを読みながら時間軸について雑考」
2011/09/13「8月会合議事要旨では妙なところに6M固定オペ実施の正当化が入るのが気になりました」
2011/09/08「9月決定会合では妙な自己アピールが入るものの見通しの変化はなし」
2011/08/16「8月金融経済月報&7月決定会合議事要旨」
2011/08/05「為替介入実施&決定会合前倒しで追加緩和実施」
2011/07/19「6月議事要旨での議論を見ていて思ったのだが資本性資金の融資に関するツッコミは無いの?」
2011/07/15「日銀レポートも執行部よりじゃないものが出て欲しいですよね(雑感)/月報は強い内容」
2011/07/14「金融機構局のいつものクオリティだが銀行の株式保有を減らせと言うレポートは良い皮肉」
2011/07/13「決定会合声明文はメインシナリオは強くてリスク認識が弱いという手の入った内容」
2011/07/12「ABL推進の提灯臭はするものの論点整理したレポート」
2011/07/07「生活意識アンケートでは中長期的インフレ期待の見事な安定振りを確認」
2011/07/05「さくらレポートもV字回復モードとな」
2011/07/04「短観はまあ内容的には良いんでしょうなこりゃ、市場反応しないけど」
2011/07/01「四半期末の駆け込みで日銀レビューを3本もださんでくれ(笑)」
2011/06/27「決済システムレポートはマニア必見の内容」
2011/06/20「5月決定会合議事要旨から、何か微妙に違和感が多いです罠」
2011/06/16「全体的にトーンが強めになっている6月声明文&金融経済月報」
2011/06/15「成長基盤貸出第2弾がどう見ても日銀の自己満足制度にしか見えない点について」
2011/05/26「4月28日決定会合議事要旨から」
2011/05/24「金融経済月報は前月の月報と基本的に変わっていないですね」
2011/05/23「声明文は基本的に横ばい/西村副総裁は今回基金買入増額提案せず」
2011/05/11「日銀の準備金積み増し/4月7日議事要旨から財務省の「日銀引受の検討していない」発言」
2011/05/10「4月7日決定会合議事要旨より」
2011/05/09「金融市場レポート:過去の市場レビューで変な大本営発表はどうかと」
2011/05/06「展望レポート関連補足」
2011/05/02「決定会合レビュー:西村副総裁の緩和提案とか適格担保の金融機関自己申告容認とか」
2011/04/27「金融研究から『第一次大戦後の国債市場改革』を読む」
2011/04/26「ブラックアウトルール変更とな/金融調節のレポートは後で読む」
2011/04/13「3月決定会合記事要旨から」
2011/04/12「どちらもパラダイムシフトに付き前回とは比較にならないが金融経済月報とさくらレポート」
2011/04/08「まあ一応足元の認識は下がっていますな/謎の追加施策の検討へ」
2011/04/04「震災前の短観はかなり好調/物価見通しがやや上昇している生活者アンケート」

2011/09/21

○暫く前にURLだけご紹介した昔の日銀ペーパーネタを少々

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2003/data/wp03j04.pdf
長期金利の変動をどう理解するか?
:マクロ経済モデルを利用した期待短期金利成分とリスクプレミアム成分への分解

2003年10月のペーパーなのですが、こちらで分析しているのは1995年以降の日本の長期金利と戦後の米国の長期金利の話で、主に分析しているのは時間軸効果に関する話なのですが、これはまあペーパーの出た時期が2003年10月につきシャーナイナイではございますが、実際問題としては日銀の時間軸というのは第1弾から第3弾まであって徐々に進化しているというのはマニア同士の会話では極めて普通なのですがマニア以外には何がなんの事やらという感じかと存じますので本論から外れますが一応書いてみるお。

・第一次時間軸:最初のゼロ金利政策の時

もともとゼロ金利政策が開始になったのは1999年2月なんですけどね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_1999/k990212c.htm/
当面の金融政策運営について(1999年2月12日)

最初のうちは「当初0.15%前後を目指し、その後市場の状況を踏まえながら、徐々に一層の低下を促す」という言い方をしていて、「ゼロ金利政策」という言い方をしてて、声明文で「ゼロ金利政策」という言い方をしたのは実は1999年9月からというのが微妙にチャーミングではございますが、たぶん総裁会見か何か(まだ全部探せていないので探したら追記するだよ)でその前に出ていると思うのですが、金融政策に関する公表文書ベースでは1999年の9月に出ています。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_1999/k990921a.htm/
当面の金融政策運営に関する考え方(1999年9月21日)

ここの(10)のところに『(10) 日本銀行は、歴史的にも世界的にも類例のない思い切った金融緩和政策を講ずるとともに、この政策を「デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまで」続けることを明らかにしています。』とあるのが要するに第一次時間軸ですな。


・第二次時間軸:量的緩和導入時

つまり2001年3月である。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2001/k010319a.htm/
金融市場調節方式の変更と一段の金融緩和措置について(2001年3月19日)

の(2)にありますように『(2) 実施期間の目処として消費者物価を採用』として、『新しい金融市場調節方式は、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、継続することとする。』となりましたわな。


・第三次時間軸:2003年9月にコミットメントの強化を実施

これである。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010.htm/
本日の金融政策決定会合における決定について(2003年10月10日)

そこの(3)に『(3)金融政策運営の透明性の強化』ってのがありまして、『金融政策運営の透明性を強化する観点から、量的緩和政策継続のコミットメントをより明確化するとともに、経済・物価情勢に関する日本銀行の判断について説明を充実する(「金融政策の透明性の強化について」参照)。』とあって、その別紙はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010b.htm/

『量的緩和政策継続のコミットメントの明確化』って所に色々と書いてありますが、

『第1に、直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である。こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる。』

とまあここまで細かく手足を縛るのが「強化された時間軸政策」でありまして、「state-contingent」とか言ってるのは時間軸でも何でもないのですが、なにせバーナンキ様におかれましては世間にバーナンキプットと呼ばれる位の方ですので、そーゆー意味から時間軸が強くなる、というのもありますし、そもそも論からして日本の場合は第一次時間軸の際に速水総裁が前科一犯を(結果的には)やらかした事からそもそも時間軸を構成する中央銀行の政策スタンスに対する市場の認識が米国の場合と全然違うというのがあるので、その辺も勘案すると味わいが深いのかもしれませんがそれは兎も角。

ということで、話が思いっきりワープしましたが、元に戻しますとこのペーパーの続き(2003年10月以降の時間軸効果)に関して本当は分析したのってどこかにないのかなあ(探したらあるのかもしれませんが日銀の中の人で知ってる人いたら教えてジェネラルである)とか思いますが、まあそれまでの時間軸に関しての話と、米国のツイストオペレーションの事例を分析した結果は冒頭部分にサマリーがあるので手抜きでそこを引用するざます。以下さっきURL乗っけたWPから引用。

『本稿での分析の主要な結果をあらかじめ紹介すると、次の4 点である。』

『(1) 1995 年以降についてわが国の中長期金利の推移を捉える場合、概ね3つの時期(1995 年〜1997 年、1998 年〜2000 年、2001 年〜2003 年初)に分けて考えることができ、段階的に中長期金利の水準が低下してきている。これは、景気の後退とそれに対応した金融緩和効果などを反映して、期待短期金利成分とリスクプレミアム成分の両者が低下した結果として理解できる。』

『(2) わが国の長期金利(10 年物)の推移を期待短期金利成分とリスクプレミアム成分に分解して観察すると、期待短期金利成分については、概ね前述の3つの時期ごとに段階的に低下してきている。この過程では、金融政策の時間軸効果が同成分の引き下げに寄与した面もある。』

『一方、リスクプレミアム成分は、1998 年以降2001 年末まで趨勢的な変化はなく比較的安定していたが、2002 年入り以降徐々に低下を始め、2003 年第1 四半期までにはかなり低い水準に達した。なお、本年7 月初に長期金利が反騰する局面では、リスクプレミアムは比較的低水準にとどまったが、本年8 月下旬以降に再び長期金利が上昇した局面では、リスクプレミアムが多少拡大する動きが観察される。』(本年というのは2003年です)

ということで、そのリスクプレミアムが拡大したので第三次時間軸の導入に至った(実際問題としてはその前の9月に期間10か月(だか9か月か記憶があやふやだが異例に長い期間)の資金供給オペを連発した上に、福井総裁が会見で量的緩和継続について強調したためにリスクプレミアムは落ち着いたと思います)という事でしょうな。

『(3) わが国の中長期金利を分析した結果、ゼロ金利政策期や量的緩和期には、同政策の継続期間を将来のデフレ脱却と関連付けて判断するという日銀のアナウンスメントが長期金利の形成に対して有意な効果を及ぼしたことが確認された。』

なるほど。

『この時間軸効果は、主として将来の期待短期金利を引き下げることにより、長期金利を低下させる形で機能した。特に2002 年第3 四半期から2003年第1 四半期にかけては、市場参加者は日銀が将来の量的緩和解除の見極めをより慎重に行うと見るように変化してきた、あるいは時間軸のアナウンスメントの意味に対する市場の理解が進んだ可能性が検出された。なお、2003年8 月下旬からの長期金利上昇局面では、市場の予想する量的緩和解除時のCPI下限値が若干低下したが、それでも引き続き、ゼロを有意に上回っている。』

ふーん。

で、一方の米国なのですが・・・・・・

『(4) 米国における1940〜50 年代の国債価格支持政策期と1960 年代前半のツイスト・オペ期について、それぞれ長期金利の推移を分析した。その結果、前者の時期には、期待短期金利成分が上昇してもリスクプレミアム成分の低下がそれを相殺する形で、長期金利の上昇が抑制されたケースが見出された。これは、国債価格支持政策が市場で信認を得ていたことを示唆する。また、当時は、金融政策がシステマティックに運営されるという認識が浸透していなかったことも、リスクプレミアムに政策的な影響を及ぼしやすかった一因と考えられる。』

『なお、国債価格支持政策が放棄されてアコードが締結されたのは、リスクプレミアムがほぼゼロになった時期であった。一方、後者のツイスト・オペ期には、リスクプレミアムに目立った変化が現れておらず、政策効果は検出されなかった。』

『また、将来の短期金利の経路がシステマティックな金融政策運営によって決まるものと認識されると、リスク・プレミアムが小さくなり、その分、直接的な金利ペッグ、国債買入オペ、ないしアナウンスメント等によってリスクプレミアムを操作し得る余地が小さくなると考えられる。』

まあ何ですな、これって第二次時間軸から第三次時間軸の期間に幸いにも債券ディーラーやってて長期債やら中期債やら短期債(短国ではない)やらをいじっていたので体感的に同意なのですけれども、金融政策の期待経路って金融政策自体が「state-contingent」で運営されているとなると、結局のところ外部情勢、というか経済情勢依存になるので、金融政策の緩和効果が強く認識されて経済情勢が若干なりとも好転したら、その時点で金融政策の期待経路が一気に大きく変化してしまいますので、まあ要するにマーライオン相場になる(途中まで真面目に書いているのに最後にマーライオンとか書いちゃうのがドラめもんクオリティなのでケンチャナヨ)とゆー事でございまして、恐らく過去の米国市場と今の米国市場では市場環境が全然違いますので、やはり「長期金利操作」は難しい(別にツイストじゃなくても同じ)と思うのでして、FEDもいい加減に「長期金利操作」的な政策ロジックは放棄すべきだと思うのですけどねえ。

#などと書いていたら時間ががががががが

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2011/09/13

○8月4日の決定会合要旨はあまりネタなし(の割には雑談が多い)

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110804.pdf

・リスク認識部分

3時間弱しかやっていませんのでどうにもこうにもネタが少ないのですが、まあ一応は景気の先行きに関するリスク認識の部分を引用。『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『一方、景気の先行きを巡るリスクについては、委員は、経済見通しを巡る不確実性は高く、このところ、景気の下振れリスクにより留意すべき情勢となっているとの認識を共有した。』

ほうほうそうですか(棒)。

『委員は、米国の財政問題と景気下振れ、欧州のソブリン・リスク問題、新興国・資源国の物価安定と成長の両立といった海外の経済・財政を巡る情勢や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性があるとの見方で一致した。』

ほほう。

『多くの委員は、やや長い目でみて、電力供給を巡る不確実性や、円高の進行などを背景に、企業の海外シフトが加速する可能性にも注意する必要があると指摘した。複数の委員は、特に、震災に伴う供給面の制約を克服しつつあるこの時期に円高が進むことは、企業マインドを大きく悪化させる可能性があると述べ、別の委員は、日本経済の成長期待の低下に繋がる可能性もあると述べた。』

でまあそーゆーのに対応する為に追加緩和を実施しましたという話はまあ良いのですけれども、今月の決定会合での声明文におきまして先行きのリスクに関する部分での電力供給制約の話が抜けているのはなんでですねんという気がするのですけどその辺はどうなんでしょうかね。ちなみに、実はこの電力供給云々に関してはこの回の声明文でもリスク要因の部分から文言が外れていましたが、まあこの回の場合は円高対応のリスク拡大対応で追加緩和を実施したというのもあるので、字数の関係とかもあったのかなあとか思ってたのですけれども、そのまま外れっ放しというのは何でじゃろうのとやや疑問。


・どうでもよい話ですが・・・・・・

読んでて「????」だったのが基金拡大での6Mオペ増額の部分。

『議長の指示を受けて、執行部は以下のとおり説明を行った。

・基金の増額幅を 10 兆円程度とすると、長めの金利低下およびリスクプレミアムの縮小を更に促す観点からは、固定金利オペと資産買入を、それぞれ5兆円程度増額することが考えられる。固定金利オペについては、オペ先からのニーズがある6か月物を増額することが考えられる。』

何かね、別に間違いって話じゃないのですけれども、ちょっと違和感があるのよね。

つまりですね、実際問題としてこの回の結果を受けて以降の固定金利オペの状況って何度かネタにしましたけれども、6か月のオペが札割れ寸前になるような状態が続いてまして、まあ3か月もそんな感じっちゃあそんな感じ(足元では3か月のオペの応札が2倍くらいまで戻っています)ではありましたけれども、6か月固定オペのニーズの無さが目立っていますよね。

ただまあこのオペ増額をする前って6か月の固定オペは按分が3割弱で3か月の固定オペは按分が4割程度でしたので、この時点で言えば「オペ先からのニーズがある6か月物」という説明も別に間違っている訳ではないのですけれども、まあちょっと表面的な見方じゃないですかねえという悪態が出てきたりするのれす。

即ちですな、この時点では3か月のオペが20兆円あって6か月のオペが10兆円という状態でしたので、ターンオーバーの事を考えるとオペのオファー頻度って3か月は6か月の4倍のペースで実施されていた訳でして、6か月と3か月を比較して見ると3か月オペの方が圧倒的に「いつもオファーが来ますよね」状態でして、そーゆー感じで「まあいつでもオファーあるし・・・・」という楽勝カマシ状態になりますと、その分応札する方も余裕ぶっこいて応札するので、札の集まりが悪くなり、その結果按分率が高くなるので応札する方もそれを見越して札入れるという応札が減るスパイラルになるんですな。従って応札割合という表面の数字だけで言えば3か月の方がニーズ無さそうに見えるという結果になると。

で、それを受けて6か月を5兆円増額した訳ですが、そうなりますとまずは固定オペ全体での6か月のウェイトが高まりバランスに変化が生じますし、そもそもの資金供給オペ全体(金利入札も含め)で言えばやはりオペによる平均資金供給期間のバランスが変化するという話になり、その結果として6か月オペの札が一転してハイランチ会長になるという話になる訳でして、つまりまあ端的に言ってしまえば「マーケットインパクトに対する考察が甘いですなあ」というのが上記の「6か月にニーズがある」という話になろうかと思うのですな。言ってみれば「この銘柄は高いですねえ売りたいんだけどレポって普通のレートで出来るの???」と言いながら全力ロットで売ってしまったらその前はSCで普通の銘柄だったのが自分の全力売りでいきなりマーケットショート銘柄にしてしまうようなトンチキプレイみたいな印象を受ける訳でどうにもねと。

大体ですな、固定オペの応札が減ってて、短いオペにニーズがありますよねという話は7月の辺りから既にそーゆー状態になっていて(背景には固定オペが増えてきて債券ディーラーの資金ポジション調整に使いやすい金利入札オペがただでなくさえ減るところに来て全店の金利入札が1か月超とかの長めが多かったから)たのですから、少なくとも債券ディーラーが在庫ファイナンスをするという観点からした場合にはこれ以上の固定オペは勘弁ですし、6か月とか勘弁という感じだと思っていましたので、何だかなあ感が。ヒアリングどうなっていたんでしょうかねえ。

#当然ながらこの時点ではCPIの改定で時間軸が伸びますねとかいうような認識もあって、金利が少なくとも上昇方向では無く、一方で罷り間違って下がる可能性は無いわけでは無いという状態なの長いオペのニーズが相対的に落ちるだけの話で、市場の金利観が引っくり返れば真逆になりますので念の為申し添えます


・・・・・いやまあですね、包括緩和の趣旨からして「長めの短期金利の低下(というかこの時点では既に低下しきっていたので低位安定というのが正しい気もするがそれは兎も角)を促すためには3か月のオペよりも6か月のオペを打った方が、日銀が追加緩和として行うメッセージ性が強いから6か月のオペを増額する」というのであれば別にそれはそれで政策として有りだろうなあと思いますし、市場のニーズが相対的に低くても実施した方が良い政策というのもありますし、大体からして市場のクレクレに一々対応してたらバーナンキプット状態になってしまいますから、まあその辺は別に毅然として「ニーズ的にはあまり長い固定金利オペが必要かどうかは判らないけど(という部分までは当然ながら議事要旨には掲載されないでしょう^^)、政策メッセージとしてより期間の長い固定オペの増額を選択すべきである」という風に増額提案すれば良いと思うのですよね。

然るに、何か本当にその時点で市場のニーズがあったんですかねえというのを理由に持ち出してくるのが何とも市場をダシにしている感が漂ってきて何だかなあと思ったのでありますが、まあどうでも良いっちゃあどうでも良い話ですねすいませんすいません。

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2011/09/08

お題「決定会合レビュー」

えーっと、今回の決定会合に関しては結果そのものよりも何か別の部分で色々とマニア的にはオモシロスな展開でございまして(^^)。

○声明文比較は今回は7月と8月を持ち出して確認:まずは現状判断部分

8月は「先行きのリスク対応」で追加緩和を実施しましたので、その時の声明文は文体が微妙に違っていまして、そーゆー意味では7月のと比較もしないといけないのが今回のややこしいところ。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110907a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110804a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110712a.pdf(7月)

・現状判断部分が微妙に上がっていますな

『わが国の経済は、震災による供給面の制約がほぼ解消する中で、着実に持ち直してきている。』(今回)
『わが国経済は、東日本大震災による供給面の制約が和らぐ中で、着実に持ち直してきている。』(8月)
『わが国の経済は、震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している。』(7月)

ということで総括判断自体は「着実に持ち直し」なんですが供給制約の部分が「ほぼ解消」と判断を前進させています。

・需要項目別判断は7月と比較

需要項目別の話は8月は割愛されていましたので7月と比較。

『すなわち、生産や輸出は、増加を続けており、概ね震災前の水準に復している。こうしたもとで、国内民間需要についても、持ち直している。』(今回)

『すなわち、震災後に大きく落ち込んだ生産活動は、供給面の制約が和らぐ中で、このところ持ち直しの動きが明確になっている。このため、輸出は増加に転じている。国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつある。』(7月)

「概ね震災前の水準に復している」キタコレという感じですが、7月と比べて表現がスッキリしているのは「経済のハードデータを見ると震災の影響からの復旧」という中心的な見通しに対して整合的に経済が進展してますよという事を示しているといった風情。

・金融環境、物価環境

『この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われるものの、総じて緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基準改定に伴い下方修正され、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われるものの、総じて緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスで推移している。』(7月)

物価指数の基準改定を反映させているだけで基本的なところには変化は無いです。


○先行き見通しは7月と8月の表現をブレンド

表現はブレンドしていますが基本的な見方には変化がありません、という事ですな

・経済見通しは基本変化が無いのだがしかし海外需要って大丈夫なの??

『先行きのわが国経済は、堅調な海外需要を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた国内需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについても、生産活動が回復していくにつれ、輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくものとみられる。』(8月)

『先行きのわが国経済は、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(7月)

「堅調な海外需要を背景とする輸出の増加」ってのが何かアレな感じがするのですが・・・・・


・物価見通しは(見通しそのものは同じなのでしょうが)しょんぼり感が強まる

『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『この間、物価面では、当月に予定されている基準改定に伴い、消費者物価の前年比が下方改定される可能性が高い。物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる。』(8月)

『消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる(注2)。
(注2)本年8月の基準改定に伴い、消費者物価指数の前年比は、下方改定される可能性が高い。』(7月)

ということで物価に関しては徐々に表現に寂寥感が漂うのでありました。要するに8月にあるように「何かもう物凄く時間が掛かるけれども方向は一応上に向いているんですよ一つよろしく」というのが見通し(つまり水準は残念なものの基調的に下向きになるという予想ではないとゆーこと)でございますな、うんうん。


○リスク要因はこれまた7月と8月のブレンド風味だが国内要因が減っているような

並べてみる。

『景気のリスク要因をみると、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、丹念に点検していく必要がある。』(今回)

『海外経済をみると、米国においては、債務上限問題が決着をみた後も、市場では、財政健全化を巡る懸念は払拭されておらず、最近では景気の先行きに関する見方も慎重化している。欧州周縁国のソブリン・リスク問題は、全体としてみれば、依然として緊張した状態が続いている。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性がある。』(8月)

『景気のリスク要因をみると、サプライチェーンに関する懸念は減じているが、震災の家計マインド等を通じる影響については、なお注意する必要がある。また、やや長い目でみた電力の供給制約については不確実性が幾分増している。海外経済については、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国については、物価安定と成長の両立に関する不確実性が大きい。』(7月)

7月と比べてみるのが良いのですが、国内要因に関する部分がざっくりと無くなっているのが微妙に微妙な所。まあ7月から9月に向けた変化という意味では当然ながらその間に海外情勢があばばばばーになったというのがあるので、リスク認識的に海外のウェイトが高まったというのがあるのと、声明文のワーディング的に言えば8月にリスク対応で追加緩和をする際にリスクの話をああでもないこうでもないとした分とのバランスを取っている面があると思われますので、今回は声明文ベースでは海外要因の話ばかりになっているという所なのかなあとは考えてますけど、7月までと比較した場合に特に中長期的に見た場合の電力供給制約の話が抜けた点については少々違和感が。

まあ認識から抜けたという事ではなくて、今回は足元で海外経済問題の方がリスク要因としてクローズアップされているからこういう表現になった、という事だとは思うのですが月報を確認したい所です。

・物価のリスク認識は変わっていないとな

『物価面では、国際商品市況の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

これは7月と全く同じ表現であります。ふーん(棒)。


○最後のアピール文書に味わいが・・・・・・・

書き物の構成上7月のを先に引用。最後の決意表明みたいな所です。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく。今後とも、震災の影響を始め、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、必要と判断される場合には、適切な措置を講じていく方針である。』(7月)

まあ毎度こんな感じ(8月は追加緩和を実施したので微妙に違う)なのですが、今回の決意表明みたいな部分がアピール文書になっているのに泣いた。

『日本銀行は、前回の金融政策決定会合において、先行きの景気について下振れリスクにより留意すべき情勢となっているとの判断に基づき、資産買入等の基金を10兆円程度増額し、現在は、金融資産の買入れ等を着実に進めている。』(今回)

前回追加緩和やったんですよおおおおおお!!!!とな。さらにアピりは続く(^^)。

『また、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針である。』(今回)

日銀は以前からFRBの時間軸みたいな事はやっているんですよ!!というアピールと共に、先ほどの物価に関する見通しで「当面はゼロ近傍」という事になっていますし、そもそも8月の時点で「物価安定の理解の実現には時間が掛かる」という説明をしていますので、セットで考えれば当然ながら「現在の緩和政策の解除には時間がかかりますなあ」という話になるので、そーゆー意味では「conditional expectation」のFRBと遜色ない話をしているんですよおおおおおお!と言いたいのでしょうな。

#まあベースの物価水準が米国と日本じゃ違いますなあとか言われたらどう答えるのか見てみたい(大体想像が付くんですけどね^^)のですが

『日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。』(今回)

ということで、こちらのパラグラフでの涙ぐましいアピりっぷりに関しては、ちょうどここにもあります「中長期的な物価安定の理解」の明確化の時の文書でのアピりっぷりを髣髴させる涙ぐましいものを感じるのであります。折角だからその時の文書へのURLを置いておきますのでフォントのでかさや「超低金利!」「0.1%!」というスーパーのチラシのような追加緩和の宣伝文書を改めてご覧になってくんなまし(^^)。

どちらも2009年12月1日の公表文書ですので念の為。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0912b.pdf
(参考)金融緩和の強化について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0912c.pdf
「中長期的な物価安定の理解」の明確化


・・・・・・・えーっとですな、まあ何と申しますか今回のこの涙ぐましいアピール振りを見ておりましてあたくしが勝手に脳内に湧き起ってきた光景なんですけどね。

学校のクラスで成績優秀でスポーツ万能でイケメンなクラスの人気者が色々と皆から拍手喝采されるのを横目に見ている勉強はするんだけどブサメンでオタで人気が全然無い子が「ボ、ボ、ボクだってイケメン君と同じような事をしてるんだぞオオオオオオオ!!!!!」と必死にアピールするの図みたいなのを想像して何故かナイトメア的なフラッシュバックが発生したような気がして目から汗がorzorzorz

・・・・・まあそうやってアピっても「キモッ」の一言で片付けられてしまうような所がまた更に目から汗ががががががorz

まあ何ですな、バーナンキ君は兎も角として、トリシェ君なんぞどう見ても逆噴射利上げしてふざけんじゃねええええと思うのですけれども、そっちは何故かあまり言われずに国債買入の方を褒められているような気がするのは何なんでしょうねマッタクモウ。


ということで声明文比較の筈が途中から駄ボラになりまして誠に遺憾に存じますm(__)m


○しかしおまいらどういうヘッドライン打ってるんだよ

ニュースのヘッドラインはベンダーで見るのですが、最初に共同のヘッドラインを見て茶を盛大に噴いたのだがその後もこのヘッドラインだらけとか・・・・・・・

http://www.47news.jp/CN/201109/CN2011090701000486.html
日銀、追加金融緩和は見送り ゼロ金利政策は維持

・・・・・・えーっとですね、金融政策ってのはそう毎月のようにホイホイ変更するようなものではありませんで、普通は「現状維持」がデフォで何か現状維持ではまずいという時に変更が行われるのでありまして、この「追加緩和は見送り」というヘッドラインだとあたかも「追加緩和するのが正常で見送るのは正常ではない」みたいな書き方(つーかそう思っているんでしょ共同通信さん)なのはもうアホか馬鹿かと。

と思ってたら、その後ベンダー見てて同じく「追加緩和見送り」とか産経が出してまして、まあ産経クオリティだからなあとか思ってたら、他紙も共同の転電で報道しているのか「追加緩和見送り」というヘッドライン一色でした。かろうじて「現状維持」というヘッドラインを出していたのが毎日新聞だけ(あたくしが目視したベースなので漏れがあるかもしれません、あと見てるベンダーの都合でクイックと時事は判りませんでしたが、今朝のモーサテも「追加緩和見送り」とか抜かしてやがりましたな)という状態。

ちなみに市場の方はと申しますと、ドル円は瞬間20銭ちょっと位円高に振れましたけれども、その後特段の動きは無し(というか若干円安に戻っていました)ですし、株式市場は(単に当日のアジア株が強いからだけだと思いますが)普通に上昇ということで、別に市場は「ふーん」で終了だった訳でして、メディアというかポジション持たないで外野で無責任に煽っている人たちが騒いでるだけじゃんという結果となっていて誠に残念な展開でございました。

ちなみに、共同通信が昨日配信していた「追加緩和見送りの解説」というのが中々凄まじい電波浴が可能なのでありますが、どうもベンダー向けに出している記事のようなので勝手にネタに出来ず残念無念なところでございまする。何でも欧州の債務問題が金融不安に発展した場合には今回追加緩和を行わなかった日銀が悪いそうですよ。いやもう凄いのですけれども、産経の場合は所詮産経ですから電波ゆんゆんでもそんなに伝播力無いですけど、共同通信の場合は全国に転電されてしまいますのでもうちょっとまともになって頂くか、それとも都心に海から吹く風の邪魔をするとも言われる汐留の電通株上場益御殿と共に以下自主規制という感がするものでございます。

#いかん、悪態かいてたら時間があああああああ


なお、ベンダーのヘッドラインを見ていますと、どうも総裁会見で麿クオリティがまたまた炸裂した感があるようなのですが、詳しくは会見要旨を見て確認したいと思います。

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2011/08/16

○今更の金融経済月報(古いネタですいません)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1108.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1107.pdf(前回)

めんどいので概要部分の比較だけですが。

・総括判断

『わが国の経済をみると、震災による供給面の制約が和らぐ中で、着実に持ち直してきている。』(今回)
『わが国の経済をみると、震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している』(前回)

ということでこれは声明文にもあったように、「着実に」という強調文言が入りましてさすがですなという所でありまする。

・各需要項目

『震災後に大きく落ち込んだ生産や輸出は、供給面の制約が和らぐ中で、増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は、被災した設備の修復もあって、総じて持ち直しており、個人消費は、一部で弱い動きが続いているが、全体としては持ち直しつつある。』(今回)

『震災後に大きく落ち込んだ生産活動は、供給面の制約が和らぐ中で、このところ持ち直しの動きが明確になっている。このため、輸出は増加に転じている。国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつある。』(前回)

生産については、持ち直しの明確化→増加となり、設備投資の持ち直しが入り、個人消費に関しても持ち直しという話を入れていますが、一方でマインド改善の話がしらっと抜けているのはまあシャーナイナイですけれども(円高ですから)、その他の需要項目の現状判断は総じて引き上げになっているのが大変にチャーミング。しかも今回は従来と違って需要項目別に細々と話をしている訳でございまして、そういう意味では足元の回復に関して判断を強めているという素敵な感じなのです。


・先行き見通し

『先行きについては、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きについては、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで敢えて並べてみましたがご覧の通り判断に変更無し。


・需要項目別

『生産は、供給面の制約がさらに和らぐにつれ、持ち直しを続けると考えられる。そうしたもとで、輸出も、海外経済の改善を背景に、引き続き増加するとみられる。また、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。個人消費も、家計のマインド改善もあって、持ち直していくとみられる。』(今回)

えーっと、めんどいのでこちらは前回を載せていませんが、物の見事に前回と文言が一致しています。


・物価、金融

・・・・・・えーっとですな、こちらなんですが、判断とか関係ない事実関係の部分(ドル円レートとか長期金利とかの水準)の文言に変化があっただけで、現状認識に関する話や先行きの話は全部同じでありまする。


・コチャラコタ総裁が日銀審議委員だったらどうなるかと(^^)

・・・・・てな訳でございまして、まあ金融経済月報を見ますと景気の先行き見通しに関しては何の変化もなく、更に現状判断については改善している、という状況のもとで追加緩和政策(という名目の基金拡大)を実施したのが日銀クオリティと言う事になる訳ですが、昨日ご紹介したミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁がもしこの場で「で、追加緩和どうよ」と言われた時ってど〜ゆ〜反応を示すのでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

まあ何ですな、日銀の今回の決定は「経済の下振れリスク対応」という理由でありましたが、そもそも金融政策運営における「第1の柱」「第2の柱」というのがあって、本来的に言えば金融政策運営って「第1の柱」をメインにして運営する筈で、どちらかというと「第2の柱」って予防的措置みたいなときに敢えて持ち出す理屈なのですけれども、何かすっかり第2の柱がよく使われるようになった気がするのは気のせいですかそうですか(^^)。


○7月の決定会合議事要旨は経済の先行きに関する議論部分に注目してみたいですな

これまた先週火曜日に出てたネタで今更すいませんすいません。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110712.pdf

まあ8月の決定会合でご案内のように追加緩和措置が実施されたので、7月の議事要旨を見る際には「8月の追加緩和措置に繋がる論点はどの辺にあるかいな」という辺りを読むのが吉だと思います。

でまあ今回見て「ほほー」と思ったのは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の部分だったりします。

冒頭が海外情勢になる(ちなみにこの手の議事要旨はFOMCとBOEと日銀のを読むのが趣味なのですが、経済の概観についての話の際に最初に「海外経済」が出るのは日本と英国で、米国は延々と自国の話をして最後に海外経済がでるのは味わいがあります^^)のですが。

『委員は、海外の金融経済情勢について議論を行い、海外経済は、減速しつつも、新興国・資源国の高成長に牽引されるかたちで、緩やかな回復を続けており、先行きも回復を続けていくとの見方を共有した。ただし、何人かの委員は、海外経済の先行きを巡り、景気については下振れリスク、物価については、新興国を中心に上振れリスクが幾分高まっているとの認識を示した。』

・米国、欧州

ということで下振れリスク拡大キタコレだったのですな。で、米国経済に関しては結論は先行き緩やかな景気回復という話なのですが、家計のバランスシート調整がまだ続くという論点を「多くの委員」が指摘しており、更には米国の潜在成長力が低下しているのではないかという指摘もありますな。

『多くの委員は、雇用や住宅市場の回復の遅れを指摘したうえで、バランスシート問題が引き続き重石として作用しており、景気回復に弾みがつきにくい状況はしばらく続くとの認識を示した。ある委員は、金融危機後、家計所得の期待成長率が大幅に低下し、現在も低迷したままであることを踏まえると、経済の潜在的な成長力自体が下振れている可能性もあると指摘した。』

家計所得の期待成長率が大幅に低下すると債務負担感が高まるのでバランスシート調整圧力が更に高まるとかどこの日本ですかという話なのですが、まあ最近のテーマは「世界(というか先進国)の日本化」ですからにゃあ。

で、ユーロエリアに関しては「全体としては緩やかに回復」という風になっているものの、先行きに関してはリスク要因を物凄い勢いで指摘。

『先行きについて、何人かの委員は、各国の財政再建の動きが重石となることもあって、回復テンポは、引き続き緩やかなものにとどまる可能性が高いと述べた。』

さいですな。

『ギリシャのソブリンリスク問題について、何人かの委員は、同国に対する当面の流動性支援策が固まり、危機はひとまず回避されたが、政府債務の削減という本質的な課題が解決された訳ではなく、他の周縁国に問題が伝播する可能性も否定できないと指摘した。』

『ある委員は、国内の反対から財政再建や構造改革が進まず、予定されていた金融支援が滞ったり、対ギリシャ民間債権者の負担のあり方を巡り、将来の追加金融支援に関する議論が難航する可能性もあると付け加えた。』

『多くの委員は、周縁国のソブリンリスク問題については、今後とも、様々なイベントをきっかけに国際金融市場を不安定化させるリスクがあると述べ、欧州金融機関に対するストレステストの結果を含め、細心の注意を払ってみていく必要があると述べた。』

どう見てもこれらのリスク全部顕在化です本当にありがとうございました。

『なお、ある委員は、欧州中央銀行による利上げの動きは、ドイツなど経済が好調な国にとっては必要であるが、周縁国にとっては状況の厳しさに追い討ちをかけるものであり、その影響についても、しっかり点検していくことが必要と指摘した。』

確かに・・・・・・


・中国経済

まあ新興国に関してはインフレ警戒の話がメインという感じですが、中国に関する部分だけとりあえず引用。

『物価面について、多くの委員は、金融引き締めや景気の減速にもかかわらず、6月の消費者物価指数が前年比6.4%と高い伸びを示すなど、インフレ圧力の強い状況が続いていると指摘した。ある委員は、最近の大幅な賃金引き上げの動きを踏まえると、可能性は小さいものの、賃金と物価がスパイラル的に上昇するリスクもあるとの認識を示した。』

ほほう。

『何人かの委員は、金融引き締めの動きは必要かつ望ましい調整といえるが、それが不十分であれば、インフレの深刻化とその先の景気急落、それが行き過ぎれば、世界経済の過度の停滞を招くという点で、政策当局は難しい舵取りを迫られていると指摘した。』

『複数の委員は、中国経済が持続的成長を実現するためには、銀行部門が抱える期間や流動性のミスマッチ、不動産やインフラ向け貸出に関する信用コストの状況などにも目を配り、プルーデンス政策面からも、適切な対応を講じていくことが望まれると付け加えた。』

という話なのですが、これがちゃんとコントロールできるんですかねというのは甚だアレな気がするんですけどねえ・・・・・・


ということで海外経済に関する部分を引用しましたが、国内経済に関する部分も少々。


・国内物価に関して

景気に関する話は微妙に興味深い点を指摘している人がいるというのはあるんですが、まあめんどいのでスルーしまして(おい)物価に関する部分をば。

『続いて、わが国の物価に関する議論が行われた。何人かの委員は、このところ国際商品市況が横ばい圏内の動きとなっていることを背景に、わが国の国内企業物価の上昇ペースは、足もと鈍化していると指摘した。消費者物価( 除く生鮮食品) の前年比について、委員は、マクロ的な需給バランスが基調的に改善していく中で、足もと、先行きとも、小幅のプラスで推移するとの見方を共有した。』

ということでマクロ的な需給バランスの話は声明文などではあまり強調されないようになって来ましたけれども、まあ当然ながら議論の方ではこういう話になってまして、マクロ的な需給バランス改善キタコレという所ですかそうですか。

『ある委員は、食料品・エネルギーを除いた消費者物価指数が、5月に前年比+0.1% と、2008年10月以来のプラスに転じたことや、物価上昇品目数から下落品目数を差し引いた値のマイナス幅が着実に縮小していることについても、マクロ的な需給バランスの改善が影響していると指摘した。』

『ある委員は、地方を含め、既往の国際商品市況の上昇に伴うコスト増加分を、企業が製品価格に転嫁する動きがみられると述べた。』

需給バランス改善だの川上の価格転嫁だの威勢の良い話キタコレ。

『一方、ある委員は、先行きの需要全般を慎重に捉える自らの見通しを前提とすれば、国際商品市況の上昇が、エネルギーや食料品の価格を通じて消費者物価に波及する度合いは、限定的なものにとどまるとの認識を示した。』

一方でこういうコメントもあるという感じですが、総じて言えば・・・・・・


・展望レポートの中間評価部分

『大方の委員は、2011 年度の成長率は、4月の展望レポートの見通しに比べて幾分下振れるとの認識を示した。』

『物価面では、多くの委員が、国内企業物価、消費者物価( 除く生鮮食品) ともに、概ね4月の見通しに沿って推移するとの見方を示した。』

ということなのですが・・・・・

『この間、複数の委員は、自らの経済・物価見通しについて、展望レポートの見通しの範囲内ではあるが、その下限近くであると述べ、このうち一人の委員は、先行きの成長率と物価の見通しは、4月時点に比べて幾分下振れているとの認識を示した。』

てな感じで、まあやはり先行き見通しを下げている人が多かったのね、という所でして、景気に関してはまあ元々弱めですけれども、物価に関しては一部威勢の良い面もあるものの、総じて言えばこれまたやや弱めになっているという感じで見た方が良いという感じかと思うのですけれども、あまり7月会合結果出たところでそこまでのニュアンス出てましたっけというのは少々アレですな。


ということで相場が動かない隙に虫干しネタで恐縮でございますた。

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2011/08/05

お題「NYで株がクソ下げしてますが昨日の介入&決定会合レビュー」

まあ何か急にMPMが1日になったのでもしかしたらとかゆー話もあったのですがECBもアチャーとなりまして益々「緩和のシンクロ」っぽい雰囲気が出てまいりましたなあ。

というのはありますが、まあその辺の話もしないとと思いつつもまだそこまで頭の整理ができていないので昨日のレビューから。

○介入実施と決定会合の前倒し実施のアナウンス

昨日はご案内のように朝の10時くらいに為替が飛び出しまして、その後介入実施の報が。その後頑張って介入して昨日の時点で80円まで持って行ってたから良いようなモンですが、介入しましたとかいう時点で野田財務大臣が「単独介入」とかわざわざ発言する辺りが相変わらずのバカスケ振りで市場の皆様の憤激を買っていた事だけはメモしておきましょう。

で、その直後に日銀からこんなアナウンスが。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/danwa/dan1108a.htm/
総裁談話および金融政策決定会合の日程について
2011年8月4日
日本銀行

『1. 総裁談話
日本銀行は、為替市場における財務省の行動が、為替相場の安定的な形成に寄与することを強く期待している。

2. 金融政策決定会合の日程
政策委員会議長は、本日および明日開催することとなっている政策委員会・金融政策決定会合について、本日午前11時15分に開催し、本日中に終了する予定とした。』

・・・・・というアナウンスがありまして、まあちょうどお友達さんと話をしてたのですけど、介入の報道があった時に「これで明日に向けてバンバン介入するんでしょうなあ」とか話をしていたらこのリリースで「なるほどこれはアリ」とゆー話で意見が一致したものの(^^)、これだとロジ的に考えて決定会合は東証引けには間に合わないかなあとかいう話をしていました。

で、まあこのアナウンスで反応したのが債券市場でして、ちょうどこの総裁談話の出ている辺りで先ほど申し上げた野田財務大臣の「単独介入」発言が出て為替の方は止まっておりまして、「日銀のアナウンスで吹き上がったのはドルではなくて債券先物」という中々残念感溢れる展開になりましたわな。


この日は前日の米国債券市場様が相変わらず30年とかのフラットニングが目立つ展開だったせいか、朝から国内債券市場も超長期が素敵にブルフラットしていたのですけれども、決定会合前倒しの発表後は先物とか中短期の方が吹き上がる展開になり(当たり前ですが)徐々に超長期が出遅れだす展開。そしてこの日は6か月TBの入札が予定されていましたが、入札のほうは普通に実施となりました。

んでもってですね、まあ翌日の決定会合でやっても同じなのに何で今日やるねんという事で(まあECBがやらかす予定だったのでその先に日本がやった、という事だったのかもしれませんが、今にして思えば)、もしかしたら当初予想以上のネタが出たらあばばばばーですなあという事もありまして、中短期ゾーンは更に強くなるわ先物から10年は吹き上がるわで高値では10年0.995%堂々の出合いとかになっておられまして、さあ盛り上がって参りましたという風情。で、6か月TB入札ちゃんでございますが、そもそも何も無くても0.10%カツカツ程度の入札でしょうとか言ってた事もありまして、落札結果は貫禄の0.0972%/0.0992%となりました。

ただまあ事前にはもっと無茶な結果になったらどうしましょという懸念もあったようで、この結果の出来上がりは強いには強いですけれども、まあ間違って超過準備付利金利が下がった場合にエライコッチャになるリスクに対するオプションと思えば割と穏当な値で決着したとゆーのが結果のイメージではございました。

とか何とかいっているうちに徐々に債券市場は戻り売りのようなものが出てきたり、よくよく考えたら追加緩和に介入のセットだと中短期ゾーンは兎も角長期以降って本当に買ってよいのか(マジで効いたら円安株高になるでしょという意味)という観点もあったんでしょうなあという所で、特に長めの所がヘロヘロ感漂う風情(7年〜10年はまだ確りしてたものの超長期が朝の激強から一転して遅れ気味になるという感じ)になってきてました。東京市場昼の時間帯に介入第2弾らしきものがあったと思われまして、一発目で78円30銭近辺に持って行ってたドル円がお昼に79円近辺のレベルに持って行ったというのも影響していたと思われます。


○決定会合結果:今回は時間軸の強化と中短期金利の低位安定を促す内容ですな

決定会合はまさかの場中終了で14時に結果発表となりましたが、3時間弱でどういう議論してたのよというのは10年後の議事録を是非拝読したいものだと存じますが(^^)、何だやればできるじゃんというMPMの結果はこちら。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110804a.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、資産買入等の基金を40 兆円程度から50 兆円程度に10 兆円程度増額し(注1)、金融緩和を強化することを決定した(全員一致(注2))。』

ということで、その内訳ですが、3ページ目の「別紙」にあるとおりです。

(買入系)
・国債:2兆円→4兆円
・短期国債:3兆円→4.5兆円
・CP:2兆円→2.1兆円
・社債:2兆円→2.9兆円
・ETF:0.9兆円→1.4兆円
・REIT:1000億円→1100億円

(固定金利オペ)
・6か月物の固定金利オペを5兆円追加実施

でもって、下のほうに『2.2012 年末を目途に増額を完了する。』とございますので、従来の「2012 年6月末を目途に増額を完了する。」(3月14日の決定会合声明文より)となっていたのに対して足が半年伸びましたねという所です。


まあご覧になれば判りますが、今回の増額は主に残存1年以上2年以内の部分に関わる買入の増額にウェイトが掛かっていまして、短期国債はまあ兎も角として、どう見ても民業圧迫です本当にありがとうございましたと(まあ真面目にヒアリングと市場状況調査をすればCP市場が以前の企業特別オペ実施時代並のあばばばばー状態になっているのは直ぐに判りますわな)いうCP買入の増額が1000億円に留まったのはまあ短期市場をこれ以上殺すのには抑制的ですおというのが伝わったです(^^)。

まーあたくし的には昨日も申し上げていましたが、どちらかというと社債の増額分とETFの増額分が逆の方が良かったような気もしますが、もしかしたら今回はETFの増額を温存している(更に株安になった場合に繰り出す)のかねとか思ったりしつつという感じです。


また、声明文の景気に関する部分ですけど、今回目に付いたのはこの文言ですわな。

『この間、物価面では、当月に予定されている基準改定に伴い、消費者物価の前年比が下方改定される可能性が高い。物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる。』

>物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる
>物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる
>物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる

・・・・・・先ほどの買入期間の延長と共に、この文言が出まして、更に今回は1年から2年ゾーンの買入を拡大という結果になっているというこれらのセットを並べられますと、まあ誰がどう見ても今回の決定会合は「時間軸の強化」を促すという決定内容になっていると解釈が可能かと思われます。


まーつまり今回の決定会合では為替市場に対して影響を与えるルートとして、中短期金利の低位安定(会見で2年債がどうのこうのみたいな話を総裁がしていたようで、何かまあ怪しげな日米2年金利がどうしたこうしたのネタを繰り出していたのには苦笑を禁じ得ませんでしたが詳しくは会見要旨を見てから判断するだよ)による円相場の円低下を促すというのを選択しました、というのが(正面切っては為替対策とは言わないでしょうが)政策決定会合結果のインプリケーションという所でしょうかね。


○一応声明文の景気に関する部分を簡単に

まあ比較するにも書きっぷりが大きく変わっているので、それらしい部分をずらーっと並べて比較してみるだよ。

・メインシナリオの部分

『3.わが国経済は、東日本大震災による供給面の制約が和らぐ中で、着実に持ち直してきている。先行きについても、生産活動が回復していくにつれ、輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくものとみられる。』(今回)

『2.わが国の経済は、震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している。すなわち、震災後に大きく落ち込んだ生産活動は、供給面の制約が和らぐ中で、このところ持ち直しの動きが明確になっている。このため、輸出は増加に転じている。国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつある。この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われるものの、総じて緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスで推移している』(前回)

『3.先行きのわが国経済は、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる(注2)。以上を踏まえると、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられる。』(前回)

今回はメインシナリオに関しては実は特に下げておらず、現状認識に関しても「着実に持ち直している」とわざわざ「着実に」と威勢の良い文言を入れているとゆー所であります。まあ確かに日本国内に関しては経済関連の指標は比較的悪くないものが並んでおりますし、確かにまあこんな感じでしょうという所です。

しかしながら、さっき物価安定の理解の実現がどうのこうのという部分を引用しましたように、今回の景気に関するメインシナリオの先行き見通しの中に従来あった「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という文言が抜けたのがポイント(まあさっきの部分とセットなので話は同じですが)となっていますわな。


・リスク認識の部分

つまりですな、前回の展望レポート中間レビューの時に読者の方からご指摘頂きましたように「メインシナリオはどう見ても回復と書くしかないのだが、先にテールリスク地雷がうじゃうじゃ」という大変に素敵な状態なのが現状の日本経済を取り巻く環境ですよね、という話だと思います(すっかりこの「テールリスク地雷」ってのが気に入ってしまって毎度使わせていただきまして誠にありがたく存じます>某読者様^^)が、そのテールリスク地雷のうち円高地雷がやや火を吹きましたってえ所なんでしょうかね。

『4.しかしながら、こうした見通しを巡る不確実性は高く、このところ、景気の下振れリスクにより留意すべき情勢となっている。海外経済をみると、米国においては、債務上限問題が決着をみた後も、市場では、財政健全化を巡る懸念は払拭されておらず、最近では景気の先行きに関する見方も慎重化している。欧州周縁国のソブリン・リスク問題は、全体としてみれば、依然として緊張した状態が続いている。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国の企業マインドひいては経済活動にマイナスの影響を与える可能性がある。この間、物価面では、当月に予定されている基準改定に伴い、消費者物価の前年比が下方改定される可能性が高い。物価安定の実現までにはなお時間を要するとみられる。』(今回)

『5.景気のリスク要因をみると、サプライチェーンに関する懸念は減じているが、震災の家計マインド等を通じる影響については、なお注意する必要がある。また、やや長い目でみた電力の供給制約については不確実性が幾分増している。海外経済については、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国については、物価安定と成長の両立に関する不確実性が大きい。物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(前回)

ということで、ずらーっと並べるとアレでございますが、まあリスク認識のうち拡大となったのは米欧の景気先行き懸念と金融市場の混乱リスクで、現象面としては金融市場と為替市場って事になってますけど要するに為替市場。それに物価に関してCPIの改定による下振れの大きさ、という所になるんでしょうな。


・従って今回は下振れリスク対応ですな

『5.日本銀行は、上記の景気・物価情勢を検討したうえで、金融緩和を一段と強化し、これを通じて、震災からの立ち直り局面から物価安定のもとでの持続的成長経路への移行を、より確かなものとすることが必要と判断した。』(今回)

ただまあ何ですな、ここでは「物価安定のもとでの持続的成長経路への移行を、より確かなものとする」という物言いをしていますので、最初の部分では文言を削っては居ますが、一応「物価安定のもとでの成長(または回復)」の旗は下ろしていないっちゃあいないのかなあとも思いますけど、この辺りは次回の会合でまたいつものパターンの文言に戻った時にどうなるかwktkしながら見たいと思いまする。


○その後まあ80円に頑張って乗せましたねということで

さてまあこんな結果が出まして、もっと上乗せがあるかと戦々恐々としていた人たちとしてはまあ順当な結果でしたなという感じになりましたところで、為替市場の方は15時過ぎにもせっせと介入して79円50銭の所をぶち抜いて17時30分ごろには80円ちょうどにドル上昇。

いやあ公共放送の夜7時のニュースに「80円」の絵を出すことが出来て(出したかどうかは公共放送ニュース見て無いから知らんが)良かったですねえ(棒)という感じでございましたが、何か朝になってみると米国株安とかもあったから仕方ないなあとは思いましたが79円台。

・・・・・とか何とか思っていたら、今朝の公共放送ニュースによるとトリシェ総裁の会見で日本の為替介入に関するコメントを求めたバカチンがいたのかよorz

http://mainichi.jp/select/biz/news/20110805ddm008020060000c.html
為替介入:政府・日銀、円売り単独 欧州中銀総裁が批判

『【ロンドン共同】欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は4日の記者会見で、日本政府が同日実施した円売り・ドル買い介入について「介入は多国間の決定に基づいてなされなければならない」と述べ、単独介入に批判的な見方を示した。』

・・・・・おいこら質問したのどこの馬鹿だよ。質問した記者は日本の安寧を損なう行動を取る可能性のある人間と認定せざるを得ませんので、ここは法務省様におかれましては是非この馬鹿を入国拒否リストに加えることをお勧め致したく存じます(−−;

まあECBといえばなんか今回は流動性供給を拡大したようですが、この会見の説明文を見てると・・・・・

http://www.ecb.int/press/pressconf/2011/html/is110804.en.html

何か相変わらずこんなこと言ってるのね。事実上の第1パラグラフ(最初は挨拶なので)となる全体感の説明部分の最後の所はこうなっていますな。もう諦めて旗下ろせよと思うのだが。

『Thus, our monetary policy stance remains accommodative. We will continue to monitor very closely all developments with respect to upside risks to price stability. 』

まあそこまで手が回らないので今日はこの辺であまり纏まらない状態で勘弁。

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2011/07/19

○6月決定会合議事要旨から雑談

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110614.pdf

まあ7月の決定会合で「足元は強いしメインシナリオも強いけれども先行きにはテールリスクが地雷原状態」というのが示されまして、そちらの議事要旨の方が楽しみでありまして今回は正直あまり一生懸命見る意欲がorz

・国内景気に関して

でまあ何ですな、委員の国内景気に関する議論の部分を少々確認しておきましょう。『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分から。

『こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。委員は、景気の現状について、震災の影響により生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられているとの認識で一致した。』

で、ああでもないこうでもないという話が続くのですが、先行き見通しとリスク認識に関する部分を引用しますとこうなります。

『景気の先行きについては、委員は、当面、生産面を中心に下押し圧力が残るとみられるが、その後は、供給面での制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくという見方を共有した。』

まあこれは声明文にもあった通りです。で、その生産面での下押し圧力に関する記述が外れたのが7月の決定会合における声明文でございましたですな。これまた7月もそうですけれども、回復のドライブって海外と復興需要なんですよね。

『多くの委員は、サプライチェーンの復旧が進むほか、夏場の電力供給も、当初懸念していたほど大きな制約要因とはならないという見方が増えていることを勘案し、7〜9月期には生産が震災前の水準に復帰する蓋然性が高まっていると指摘した。』

ほほう。

『また、何人かの委員は、生産が持ち直してくれば、輸出も、海外経済の改善傾向を背景に、増加に転じるとの見方を示した。これらの点について、委員は、展望レポートで示した中心的な見通しに概ね沿ったものであるとの認識を示した。』

ふーん、で、先行きリスクですが。

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、震災の影響を中心に、当面、下振れリスクを意識する必要があるとの認識を共有した。』

まあこれもまた声明文にありましたな。

『海外経済を巡るリスクとして、何人かの委員は、米欧経済の先行き不透明感の高まりや欧州のソブリン問題の帰趨に注意が必要であると指摘した。また、多くの委員は、新興国・資源国については、このところ減速の兆しもみられるが、依然として上振れの可能性にも注意が必要であると述べた。』

で、この上振れの話が7月会合でばっさり消えたのですが、実際の議論の前提はどういう流れでそうなったのでしょうか、というのが7月会合の議事要旨を見るときには注目したいなあと思います。

『多くの委員は、震災前と比べて経済活動の水準が低いことが所得形成を下押しする可能性などを指摘した。また、複数の委員は、円高基調が輸出企業のマインドに及ぼす影響への懸念を示した。ある委員は、中東・北アフリカの政治情勢が一段と緊迫したものになれば、国際商品市況が一段と上昇し、国内民間需要を下押しするリスクがあると述べた。』

全部下振れリスクですなあ。

『やや長い目でみたリスクとして、大方の委員は、定期点検後の原子力発電所の運転が再開されない状況が続くことになれば、厳しい供給面の制約が長期間残り、企業の中長期的な成長期待が低下するおそれがあると述べた。』

まあその問題は更に拡大しているんですよね。オソロシス。

『その中のある委員は、震災前から人口動態の問題があることを加味すると、わが国の潜在成長率をやや厳しめに見積もる必要があるかもしれないと付言した。』

ほうほう。

『また、何人かの委員は、サプライチェーンの再構築・複線化の動きの中で、わが国製品の世界的なシェアが低下したり、生産拠点や部材調達先の海外シフトが加速するかもしれないとの見方を示した。』

さいですな。

『一方、ある委員は、このところ、円高を追い風に日本企業が海外企業を買収するという動きが増えていると指摘した。』

やっと明るい話ですが、これを見て「日銀は円高を放置していてケシカラン」とか言い出す人が出てくるに100イタリアリラ。

『こうした中、ある委員は、重要であるのは、足もとの回復に向けたモメンタムが年度後半以降も維持できるかどうかであるとしたうえで、景気回復の経路は、水準でみて震災前の想定よりも低くなる可能性が高く、リスクの面でも、下振れリスクをより強く意識していると述べた。』

ということで、6月会合時点で既に下振れリスクっぽい話が満載になっていまして、しかもこのリスクに関する記述が5月の議事要旨対比で大幅に拡大(行数で言いますと5月の議事要旨での先行きリスクの記述部分が16行あるのですが、6月の議事要旨での同部分の量は27行となっていまして、まあ普段ボケーっとみているあたくしでも「あれ?記述増えたんじゃないの??」と思う位の記述の拡大である)しているのが中々チャーミングである。

更に最後の砦(かどうか知らんが)の新興国・資源国経済に関する部分が7月になって上振れの話が無くなった訳でして、まあ良く見ておくと吉なのは7月会合議事要旨でしょうな。



・成長基盤強化関連

『T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要』のケツの部分に『(3)「成長基盤強化を支援するための資金供給」について』というのがありましてですな。

『「成長基盤強化を支援するための資金供給」は、6月8日に、第4回目として、8,296 億円の貸付を実施した。その結果、総貸付残高は29,424 億円と、新規貸付の最終実行期限まで1年間を残し、上限である3兆円にほぼ達した。』

はあそうですか。

『本資金供給の特徴としては、@ 対象先が153 先まで増加していること、A 各金融機関が設定した投融資枠の総額は8.4 兆円と、本資金供給の上限額の3倍に近い水準となったこと、B投融資の対象分野は、例示18 分野に加え、地場産業への取り組みなど、広範に及んでいること、C 投融資の平均期間は6.4年と、本資金供給の最長貸付可能期間である4年を超えていること、D 貸出運営が積極化した先の理由として「成長分野への取り組み強化」を掲げる先が多いことを指摘できる。これらの点を踏まえると、本資金供給は、金融機関による成長分野向け融資について、呼び水としての役割を相応に果たしてきたといえる。』

それはようございましたね(棒読み)。

『一方、出資については、少額にとどまっており、効果が限定的であった。』

というのがこの時に導入が決定した謎の大きなお世話オペに繋がるのですけれどもね。

『また、一部金融機関から、本資金供給が金利引き下げ競争を助長しているとの批判が聞かれている。』

そらそうや。つーか引き下げ圧力が掛かりやすくなります罠。

『今後の取扱いについては、貸付枠をほぼ使い切った状態を最終実行期限まで続けるかどうか、また、本資金供給を増額するとすれば、これまでの状況を踏まえてどのような工夫を講じることができるかが、論点である。』


で、その後の『V.当面の金融政策運営等に関する委員会の検討の概要』の所で例の謎オペの実施に関する話がありまして、『2.「成長基盤強化を支援するための資金供給」の取扱い』という部分を見ますとですなあ・・・・・・

最初の部分(効果の話)は上にある執行部報告の通りなので割愛しまして副作用の部分から。

『他方、多くの委員は、本資金供給の副作用として、金融機関間の貸出金利の引き下げ競争や他行融資の肩代わりを助長しているとの批判があることも指摘した。』

『この点、ある委員は、金融緩和政策を進める中で、本資金供給だけを金融機関間の利下げ競争激化の原因とする議論はバランスを欠いていると述べた。』

利下げ競争がどうのというよりはね、これらのファンドだの貸付枠だのに対する資金を0.10%で供給しますっていうのを日銀が大宣伝する事によって、一般の人たちに対してこれらの貸付枠などの資金の「仕入れコスト」が0.10%であるかの如く大宣伝する事になる訳でありまして、その結果として金利の引き下げ圧力が掛かりやすくなるというのが問題だと思うのですよね。金融機関的に言うと。

『また、別のある委員は、金融機関が本資金供給を活用しながら成長分野の発掘に向けて競争的に取り組むこと自体は、否定的に捉えることではなく、むしろ政策の狙いでもあったとの見解を示した。』

いやだから別にこの制度なくても普通にオペレーションでファンディング付けてくれれば良いのですけどね。

『何人かの委員は、対象先数・投融資枠の増加ペースが鈍化していることを踏まえると、競争助長という批判を招いていることは、現行措置の呼び水効果が逓減していることの表れの可能性もあると述べた。』

競争助長というのも微妙に論点がずれているような気がします。理由はさっき書いた通りで、どちらかというと当該資金の借入人に対して仕入れコストが如何にも0.10%であるかのようなイメージを与える(いやまあ0.10%でファンディングは付くのですけれども、そもそもこの資金供給自体がやたらめったら手間隙が掛かるので事務コスト的に言ったら別に0.10%でも何でもないですよね、という話)結果として、そもそも金融機関が呈示する金利が低くならざるを得ないというのが問題ですよね、ということだと思うのだが。

『また、何人かの委員は、成長分野への出資などの取り組みについては、件数、金額をみても、呼び水効果が限定的であったとの評価を示した。』

でですな、いきなりこういう話になっているのですけれども、そもそも商業銀行に対してリスクキャピタルを供給させる事を促す、というのが適切なのかという点についての議論が完全に欠如しているのは政策委員会として如何なものかという風に思うのでございます。この会合では野田審議委員の最終回の会合だったと存じますが、銀行出身者として野田さんにおかれましてはその「そもそも論」に対しての論点提供をして頂きたかったなあと思うのは無茶振りですかそうですか。

ということで、その後は例の「資本性資金やABL融資などの促進オペ」というまあABLは兎も角として、本当にそれを促進すべきなのかどうか、という点について本来は熟議が必要なのではないか(そもそも金融庁の金融検査マニュアルとかとの整合性はどうなっているのか)という資本性資金の供給に関する話が出て、その導入と言う話になるのですが、そこでも金額がどうのこうのという話はあっても、当然ながらそれ以前の原則論に関する話が無いのですな。いやまあその前の成長基盤オペの最初の時点で資本性資金に関しても対象にしていたから今更全否定しにくいというのは判るのですけれども、沢山あるメニューの中でちょっと出ているというのと、前面に「資本性資金の供給」を明示して「日銀として推進しますよ」という話はまた別問題だと思うのですよねえ。

てな訳で、議事要旨を見ながら何時の間にか悪態になってしまいました。

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2011/07/15

○本ネタの前に昨日の訂正です(すいません)

えーっとですな、昨日日銀レビューをネタにしたのですが、その際に前回ご紹介したABLマンセーレポートの作成部署を「金融市場局」と申し上げましたが、正しくは「金融機構局」でございましたのでここに謹んでお詫びして訂正させていただきます。

ということで、MPMの結果を思いっきり踏襲したレポートが出たのも金融機構局でしたが、MPMで中小企業向けの資本性資金供給を促進するとゆー政策が出ているのに従来どおりにきっちりと「邦銀は株式保有リスクを削減すべき」といういつものクオリティでレポートを出すのも金融機構局っつー話でこれまた滋味のある話ですな(謎)。

まあどうでも良いっちゃあどうでも良い事なのかも知れませんけど、日銀から出てくるレポートって昔々は時に「何とこれまたフリーダムな」というような内容の物、即ち執行部辺りから出ている話とまた別の視点、と言えば綺麗な言い方ですが、よーするにこらまた執行部見解とは別の話が思いっきり展開(でもそれは見解として筋が通っているんですよね)されているとゆーお洒落なレポートが散見される(まあそんなに年柄年中そういうのが出る訳ではないが)と言った風情があったのですよね。

然るに最近って何か出てくるレポート類が日銀執行部の説明の補完っぽい物ばっかりという話が多くて、「執行部はこう言っているけれども自分はこう思います」的な分析者としての土性骨みたいなのも出て欲しいもんだなどと思うのですけれども、そうは言いましてもアナタもアタシもサラリーマンとゆーことでございまして、世の中が世知辛いとアレでございますなあと世相の反映のようなものも思ったひとときなのでありましたです、はい(^^)。




○月報は声明文の前半と同じようなので強く見えるとゆーことで

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1107.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1106.pdf(前回)

今日も手抜きで『概要』部分を前回と比較であるが、基本的には水曜にネタにした声明文比較の前半部分と同じような結果になるのだが。

・総括判断

『わが国の経済をみると、震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している。』(今回)
『わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられている。』(前回)

ということで声明文にあったとおりですな。

・現状の需要項目別判断

『震災後に大きく落ち込んだ生産活動は、供給面の制約が和らぐ中で、このところ持ち直しの動きが明確になっている。このため、輸出は増加に転じている。国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつある。』(今回)

『生産や輸出は震災後に大きく低下し、国内民間需要も弱い動きとなった。こうした下押し圧力はなお続いているが、最近は供給面の制約が和らぎ始め、家計や企業のマインドも幾分改善しつつあるもとで、生産活動や国内民間需要に持ち直しの動きもみられている。』(前回)

ということで、今回の判断をまとめてしまうと「震災の影響で落ち込んだ分については生産はほぼ回復しており、マインドも回復に向かって順調に推移」という話でしょうか。


・先行き判断

『先行きについては、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が残るものの、供給面での制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、こちらでは生産面の下押し圧力の払拭を指摘している(というか指摘していないのだが、前回まで指摘していたのを外したという事ね)訳ですな。


・先行き判断需要項目別展開

まずは生産。

『生産は、供給面の制約がさらに和らぐにつれ、持ち直しを続けると考えられる。』(今回)
『生産は、供給面での制約がさらに和らぐにつれ、増加が明確になっていくと考えられる。』(前回)

ということで生産は供給制約の下押し圧力がほぼ解消という事でそちらの制約はほぼなくなっているのですが、今後に関しては需要の拡大次第という所になるので、前回までのように供給制約が外れる分だけドンドン増加しまっせとゆー訳でも無いと言うところなのでしょうか、「持ち直し」って言い方をしているのは(^^)。


輸出。

『そうしたもとで、輸出も、海外経済の改善を背景に、引き続き増加するとみられる。』(今回)
『そうしたもとで、輸出も、海外経済の改善を背景に、増加に転じるとみられる。』(前回)

んでまあこちらには先行きリスクの話はありませんが、海外経済に関するリスク認識が下方にシフトしているので、シナリオ通りなら増加なんですけどはてさてどうなんでございましょうかねえ・・・・・という所なのでしょうけれども、まあ先行きのリスクシナリオはあくまでもリスクシナリオですからメインには置けません罠という事でこんな感じで堅調な話になるんでしょう。


設備投資など。

『また、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる』(今回)
『また、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。』(前回)

で、肝心の復興需要に関する予算措置とかそもそもの復興計画が全然進まず、一方でどこぞのペテンハゲに乗せられたしょうもない夢想計画とかには熱心なすっから菅内閣がアレでございまして・・・・・・orz


個人消費。

『個人消費も、家計のマインド改善もあって、持ち直していくとみられる。』(今回)
『この間、個人消費も、生産活動が回復するにつれて、家計のマインド改善もあって、持ち直していくとみられる。』(前回)

個人消費に関してはマインドの改善がどの程度進むかとゆー所ですか。経済指標だけ見てると節電関連家電とかの効果もあってそんなに落ちてないんでしたっけ??


・物価に関してはまあそんなに変化なし

国内企業物価の先行きに関して、足元の国際商品市況動向を反映して「横ばい推移」という見通しに若干下げた程度で大きな変化はありません。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の反落により、上昇幅が縮小している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスで推移している。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスとなっている。』(前回)



『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、横ばい圏内の動きとなるとみられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇幅が縮小していくとみられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる。』(前回)

まあCPIの基準改定で0.5%以上楽勝で落ちるらしいですけどな。


・総じて見ると堅調という感じで

いやまあそういう事にならざるを得ないっつー所でもあるのでしょうが、足元の経済に関しては震災後からのリカバーが順調に推移しているとしか言いようが無い状態になっているものの、そこら中にリスクが顔を出しているという感じでして、この現在の状況を経済調査系の読者様からは『テールリスクに近い地雷があっちこっちに埋まっている状態』という表現で説明したメールを頂戴いたしましてなるほどなるほどと同感した次第。

まあそーゆー状況でもありますので、メインシナリオの話をするのが役割の金融経済月報は普通に強めのトーンになってしまうものの、普通に考えると何かの地雷が爆発せずにはいられなさそうな世界の情勢・・・・と考えるものの、そうは言ってもテールリスクの地雷が火を吹く話をメインにはできませんし、中々難しいというか悩ましいんでしょうなあと思うのでありました。

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2011/07/14

○いつもの機構局クオリティなのだが今回はある意味良い皮肉でもある^^

昨日はこんな日銀レビューが。

邦銀の利益と市場の評価
― 当期純利益と包括利益の比較 ―
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/rev11j07.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j07.pdf(本文)

んでまあ要旨から引用するだよ。

『わが国の上場企業は、2010年度決算から包括利益の開示が義務付けられた。包括利益の開示は、包括利益計算書という注目度の高い財務諸表で行われる。また、米国では、包括利益が導入された1998年を境に、有価証券評価損益の変動を含むその他の包括利益が重視されるようになったと言われている。このため、わが国金融機関の場合も、これを評価する際の市場の目線は、従来以上に包括利益を重視する方向に変化する可能性がある。』

ほうほうそれでそれで?

『邦銀の包括利益の変動は、株価変動の大きさを反映して、当期純利益の変動に比べて格段に大きい。従って、市場が包括利益を重視する場合、邦銀の収益に対するリスク認識が強まり、邦銀の資金調達コスト等にも影響が及び得る。邦銀は、株式保有のリスクとリターンを従来以上に慎重に見極め、リスクが大きいと判断される場合には、リスクの削減に向けた努力が求められる。』

まあ何ですな、金融機構局様謹製の金融システムレポートで毎回のように「邦銀は株式保有が過大です」と指摘されておりますので、まあ今回このようなレポートが出るのはいつもの金融機構局クオリティでしてまあそうですかちゅー話(で、そのレポート及び金融機構局の指摘に対して、いやまあそのお話は重々承知しておりますけれども、日本的慣行というのもありますからねえ・・・・というツッコミが入るのも毎度の様式美状態でもありますが^^)なのですが、今回は何かちと微苦笑しているあたくし。

・・・・・え?何で微苦笑しているのかと申しますとそらあーた最後の一文よ。

>邦銀は、株式保有のリスクとリターンを従来以上に慎重に見極め、リスクが大きいと判断される場合には、リスクの削減に向けた努力が求められる。

いやまあ全く仰る通りなのでございますが、その一方で6月の金融決定会合においてこのようなのが出てたと思いますが・・・・・・(^^)

『金融機関の取り組みをさらに後押ししていく観点から、資本性資金の供給や従来型の担保・保証に依存しない融資に着目し、今後、これを支援していくことが適当と考えられる。こうした判断に基づき、今回の会合では、出資や動産・債権担保融資(いわゆる「ABL」)などを対象として、新たな貸付枠を設定することを決定した。』(6月決定会合声明文より^^)

「成長基盤強化のために資本性資金の供給を支援する」という一方で「保有株式のリスクリターンを勘案してリスクの大きい場合には削減に向けた努力が求められる」とは何ともお洒落でございまして、やはり日銀レビューはこうでなくっちゃと思いますです(^^)。

えーっとですね、念の為申し添えますが、日銀レビュー(だけではなくその他のペーパーでもそうなのですが)に書かれている見解などは「日銀の組織としての機関決定でこのように考えている」という物ではございませんので、そーゆー点からしますと別にこーゆーのが出てきても全く問題が無い、と申しますか、この前の金融市場局(訂正:マンセーレポートを出していたのも金融機構局でした)の出していた「ABLの拡大が必要ですよ決定会合マンセー」みたいなレポートよりも味わいがあるというものでありまして(^^)、これはこれで中々でございました。つーか要旨の最後の一文(さっきの)読んだ瞬間吹いたんですけど^^;

#まあ内容的に「株式減らせってあんさんら簡単に言うけど日本的取引慣行があってだな」というツッコミは相変わらずあるのですけどそれはそれ

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2011/07/13

お題「味わいの深い決定会合声明文」

何かユーロがカーニボーになってる話とかFOMC議事要旨に関しては今日は勘弁でございますorz

という訳で決定会合レビューは声明文を味わうのである。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110712a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110614a.pdf(前回)

○現状判断部分は威勢が良いのです

『わが国の経済は、震災による供給面の制約が和らぐ中で、持ち直している。』(今回)
『わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられている。』(前回)

ということで持ち直しを断言(キリッ)という感じですが、さてそこにありました下押し圧力に関してはどうなったかと言いますと。

『すなわち、震災後に大きく落ち込んだ生産活動は、供給面の制約が和らぐ中で、このところ持ち直しの動きが明確になっている。』(今回)

ということで、持ち直しの動きが明確キタコレ。

『このため、輸出は増加に転じている。』(今回)

輸出増加キタコレ。

『国内民間需要についても、家計や企業のマインドが幾分改善するもとで、持ち直しつつある。』(今回)

ということで国内民間需要は持ち直すわマインドは改善するわウハウハですよ先生という感じであります。この辺り前回はどういう表現になっていたのかを確認するとこうなります。

『すなわち、生産や輸出は、震災後に大きく低下し、国内民間需要も弱い動きとなった。こうした下押し圧力はなお続いているが、最近は供給面の制約が和らぎ始め、家計や企業のマインドも幾分改善しつつあるもとで、生産活動や国内民間需要に持ち直しの動きもみられている。』(前回)

生産や輸出に関しては前回の「下押し圧力」が解消された形になり、マインドに関しては「幾分改善しつつある」が「幾分改善する」とこれまた前進で、その結果として国内民間需要は「持ち直しの動き」から「持ち直しつつある」に上方修正という事でございます。

つまりまあ何ですな、震災で落ち込んだ分の回復が順調に進んでいますよとゆーのが今回の声明文における現状判断部分に現れているという感じですが、ここの部分を見ていると何か強そうに見えます罠。

あと金融環境と物価に関しても一応比較だけ。

『この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われるものの、総じて緩和の動きが続いている。』(今回)

『この間、金融環境をみると、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。』(前回)

ということで、語順が変わって結論が「緩和の動きが続いている」になっているので極めて微妙に上方修正になっていますな。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスで推移している。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスとなっている。』(前回)

まあ物価に関しては基本的に現象の話をするだけなのであまり気にせんでも良い。


○先行き見通しにも「当面の下押し圧力」が消える

『先行きのわが国経済は、供給面の制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が残るとみられる。その後は、供給面での制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、先行き見通しの基本的な考え方は変化無いのですが、今回は「当面、生産面を中心に下押し圧力が残るとみられる」というのが抜けまして、足元震災の影響によって発生した供給制約による下押し圧力がほぼ解消したという話になっていますわな。

んでもって先行きの日本経済に関してのドライブは従来どおり「輸出」と「復興需要」というのは変わらないのはこの後の展望レポート中間レビュー以降の部分を読む際にポイントになるのであります。

一応物価に関する見通しも。

『消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる(注2)。以上を踏まえると、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられる。』(今回)

『消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる(注2)。以上を踏まえると、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられる。』(前回)

と物価に関する部分と最後の結論部分は文言一致してますな。


○展望レポート中間レビュー:足元を下げているのに先を上げないとな

ということでですな、ここから先が今回の声明文ヲチの味わいの深い部分であります。

『4月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、2011 年度の成長率については、震災直後の落ち込みが大きかったことが影響して、幾分下振れるとみられる。もっとも、わが国経済は、本年度後半には緩やかな回復経路に復していくとみられ、2012 年度の成長率については概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価については、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも、概ね見通しに沿って推移すると予想される。』

ということで、後ろに大勢見通しの数値が示されていますが、今回は11年度の実質GDP見通しを下げたのですが、トータルの見通しに変化が無いとすると、11年度を下げた分だけ逆ゲタが生じるので12年度の見通しが上昇して3%台に乗せても不思議ではないとゆーか、日銀がこの手の見通しを出すときには大体「手前を下げて先行きを上げました(その逆の場合もある)がトータルでは変わりませんよ」ってな感じで数字をいじってくるのが仕様みたいなもんなのですけれども、今回は11年度下げた分を12年度で上げないという形になりました。

つまり、実はトータルで見ると今回の中間レビューでは12年度を上げなかった分だけ下方修正(微妙な話ですが)になっているとゆーのがここの数字で示される話でございまして、これは少々意外感というか良い意味であたくし的には期待を裏切られた感じ。

と申しますのはですな、今回って手前のGDP見通しが下がるという話はあったので、その分だけ先が上昇して出来上がりの中間レビューが見た目妙に強気に出る(12年度の実質GDP見通しが堂々の3%乗せになりますし)という結果になり、ちょうど昨日は為替がカーニボーになっていましたので展望レポートの中間レビューを受けて円高ヒャッハー状態になったらまた日銀のKY攻撃炸裂とか思って悪態の準備をしておった訳ですよ(^^)。でもまあそうならなかったのでとりあえず東京時間でドル円80円割れとかに逝かなかったので、欧州のうんこまみれのクソ状態のせいで欧州時間に円高進行しましたが、まあこれは日銀命拾いのテイストで空気読めて良かったねという感じです。

今回の展望レポートの中間レビューに関しては12年度の数値がテクニカルにも上昇せず、よくよく見ると出来上がりの数値は同じですけれどもレンジは下がっているという事で、先行きの見方が慎重になっているという感じではないかと思われる節がまずここに現れているのではないかとゆー感じ(この後も続くが)です。つまり、「震災直後の落ち込みが大きかった」というのが理由で11年度の見通しが下がるのなら声明文にある現状判断部分での足元での回復という認識と合わせると12年度って普通にテクニカルに上がる筈ですから、この辺りから先行きの下方修正の可能性を示しているんじゃないっすかねえという感じがしますが、この次のリスク要因が更に味わいがあるのですな。


○リスク要因の認識が思いっきり下振れ方向にシフトしました

まあ今回の白眉はここでしょここ。

『景気のリスク要因をみると、サプライチェーンに関する懸念は減じているが、震災の家計マインド等を通じる影響については、なお注意する必要がある。また、やや長い目でみた電力の供給制約については不確実性が幾分増している。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、震災がわが国経済に及ぼす影響の不確実性が大きい。』(前回)

マインドに関しては現状判断部分ではやや上方修正しているのですけれども、こちらで思いっきり先行きのリスク要因としてクローズアップしています。どう見てもマインドがこの後腰折れする事への懸念でしょという感じの上に、ご覧の通りで「電力の供給制約」という話を物凄い勢いでクローズアップ。

まあ何ですな、特に電力の供給制約に関する部分って金融政策でどうこうできる話ではなく、どこからどう見てもすっから菅内閣(浜岡原発停止要請以降、手続きも何も踏まないで思いつきでああでもないこうでもないと色々な話が出てきてどれだけ混乱しているのかと思うわけだが)に対して「ちょっと勘弁してください」と言っているようにも見えるわけでございまして、中々味わいもある表現となっています(^^)。


で、海外経済ですが。

『海外経済については、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。』(今回)

『海外経済については、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。』(前回)

とまあここは同じ(どう見ても問題は更に拡大してますけどね)なのですが、

『新興国・資源国については、物価安定と成長の両立に関する不確実性が大きい。』(今回)

『新興国・資源国については、このところ減速の兆しもみられるが、依然として上振れの可能性にも注意が必要である。』(前回)

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやまあ前月までの「上振れの可能性」もどうかと思っていましたが、今回いきなりリスク要因としての扱いが「上振れ」から「下振れ」に変わっているでござるの巻。

まあこの「物価安定と成長の両立」って要するにアジア新興国とか中国とかの話になると思われるのですが、特に中国の金融財政政策がインフレ制御に失敗して目先だけは吹いてもそのあとあばばばばーんとなるような懸念が高まっているという認識をしている(昨年の話になりますが白川総裁は香港の講演で新興国経済のバブル&バーストを防ぐ為の重要なポイントとして「物価安定」を強調していました→http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2010/ko1011b.htm/)という所でございますな。

物価に関しての話は変わっていないのですが、その前にある国際商品市況がどうのこうのという話が今回抜けていまして、そこの部分に従来あった「新興国の高成長」要因が抜けていますので、さっきの部分はどう見ても従来の「上振れリスク」を放棄という話になっておりますな(^^)。

『この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。以上様々な要因はあるが、当面は、震災の影響を中心に、下振れリスクを意識する必要がある。』(前回)

まあ勿論前回も下振れリスク意識でしたが、今回はどこからどう見てもリスク要因が顕在化した場合に全部下振れ要因になるという中々清々しい内容になっておりまして、つまりこれはリスク要因顕在化で下方修正というのがどっからでも掛かって来いとゆー感じになっているのですな。

あと、最後の物価のところは前回と同じです。一応比較引用。

『物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

『物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(前回)



○ということで前半と後半で書いているトーンが違うんじゃネーノという位のお洒落な声明文なのです

とまあうだうだと書きましたが、今回の声明文の味わいの深いのは前半と後半でトーンが何か違いませんかという感じな所でございます。その後半というのが展望レポートの中間レビューであって、より長めの見通し部分でございますので、まあ出来上がり的に見ると今回は「震災からのV字回復までは確認できたけれども先行きに関しては懸念がより高まっている」という形になっていてバランスが取れたなあという感じなのですが、前半と後半のトーンが別人が書いているのかというような雰囲気なのが滋味の深い声明文とゆー事で。

まあここから先は妄想の世界になりますけれども、今回の決定会合って特に新たな政策判断があったわけでも無いのに妙に長かった(声明文公表時刻は13時20分ですが、ちなみに前回の謎成長基盤新オペ実施の回が12時42分である)という事もありますので、これは声明文と展望レポートの中間レビューの出し方に関してああでもないこうでもないとやっていたんじゃネーノと妄想したくなる所ではございまする。つまり先行きのリスク認識を高めて今回変に上方修正っぽい物を出さないようにするという辺りに関して議論が結構あったんじゃないのかなあと。勿論あたくしの勝手な妄想ですけどね(^^;


そーゆー意味では今回の決定会合の議事要旨も興味深いのですが、恐らく議事要旨を見てもイマイチ雰囲気がわからないと思われるので、10年後にあたくしがまだ趣味の日銀ネタでもやっているようであれば議事録を見て議論の推移を確認して見たいものだと思う今回の決定会合でございました(^^)。

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2011/07/12

○そういやこんなレポートが出ていました

6月末に出てた奴ですが。

中小企業の資金繰りを巡る論点
― ABLと電子記録債権による売掛金の活用 ―
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/rev11j06.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j06.pdf(本文)

ABLの現状と一層の活用に向けて
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/rev11j04.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j04.pdf(本文)

・・・・・・いやあのですな、まあ先日の決定会合で資本性資金だのABL融資向けだのの成長基盤強化というどう見ても麿のご趣味です本当にありがとうござましたという決定が出ていましたが、その直後(2週間後位ですが)にこういうのが出てくるというのも何だかなあという感じでございまして、(自主規制)ですかそうですかという印象が最初に出てくるのはあたくしの性格に問題があるからですかそうですかはいはいそうですねすいませんすいません。

というどうでも良い話はさておきまして、この2本のペーパー自体は論点整理を色々としているのでございますが、まあ読んでて思ったのですが、中小企業の資金繰り制約の緩和という点からすると、問題となるべきなのは、取引先の中で大企業などの取引の力関係上売掛金のサイトが長くなりがちな先が近年更にその傾向が高まり、所要経常運転資金が拡大しているという辺りかなと思うのでありました。

つまり、上記URLの中で最初の方のペーパー「中小企業の資金繰りを巡る論点」の本文3ページの最後の辺りからになるのですけれども、『(企業間信用のバランス)』って所を引用。

『企業間信用も、中小企業の資金繰りを左右する。中小企業の企業間信用動向をみると、1990 年代以降、売上債権残高(売掛金+受取手形)が横ばいで推移する中、仕入債務残高(買掛金+支払手形)が趨勢的に減少している(図表5)。このため、企業間信用のバランスは、2000 年代以降、売上債権超幅(売上債権と仕入債務の差額)が拡大する傾向にある。これは、中小企業自身の信用力の問題や親企業などの財務リストラのほか、特に中小企業では、割高な取引費用のために手形の利用が回避されていることを反映したものと考えられる。』

『売上債権超幅が拡大した結果、売上債権の期間が長期化したり、その資金化が期日通りに実行されなければ、中小企業の資金繰りは圧迫されやすい構図になっている。企業部門の金融資産に対する企業間信用の割合(2009 年末時点)をみると、米国の8%に対して、わが国では27%と高い。この点を踏まえると、わが国企業の資金繰りは企業間信用から影響を受けやすいと考えられる。』

図表は本文見てちょという感じですが、ここに示された論点ってまあ金貸しの手先をだいぶ前にほんのちょっとやっていた程度しか実際の知見はございませんけど、まあそのあたくし的にもそうですわなあとか思うのでありまして、実はこの辺りから考えますと、本来的にはこの辺の話って金融政策でどうのこうのという話というよりは、それこそ公取が出てきて大企業に対して取引先の中小企業に対する取引条件の緩和(支払いサイトの短期化)を指導した方が良いんじゃないかねとかゆー話になるような気がせんでもない。

#つーかまあこのペーパーも良く良く読むとABLが出れば全てハッピーとかいうようなお花畑な話をしている訳ではなくて、それ以外の論点を色々とだしているので、まあまさか日銀も今回のABL関連オペで本気で全てがめでたしめでたしで中小企業金融は緩和してもうウハウハですよとは思って無いでしょうけどね。

でですな、実は手形の印紙税をそれこそゼロにする位思い切って手形の優遇を行えば企業間金融において手形が復活して必要な場合には商業手形割引によって中小企業の資金繰り改善するんじゃネーノとか妄想してみたのですが、まあそんなのよりもやはり本命は電子記録債権になるんだろうなあという感じで、同じく先ほどの「中小企業の資金繰りを巡る論点」の5ページ目に電子記録債権に関する指摘が。『(電子記録債権の活用)』という所から引用。

『電子記録債権は、従来の手形や売掛金に代わる新たな金銭債権である。電子債権記録機関による記録を通じて、債権の発生・譲渡・支払いが電子的に行われる。これにより、売上債権を資金化する際、債権の存在や発生原因を確認するためのコストや二重譲渡リスクを軽減することができる。』

『現在、複数の大手行が、電子記録債権の登録・移転会社を設立し、実際にビジネスを開始している。データが利用可能な日本電子債権機構では、月間500 社のペースで電子記録債権の契約企業数が増加している(図表8)。2012 年5 月には、全国銀行協会が同様の機関を開業する予定であり、銀行・企業の双方で、電子記録債権の利用が本格的に広がることが期待される。』

まあ昔々の話ですけれども、あたくしが金貸しの手先をやっていた時には、主に都銀だったと思うのですけれども、大手企業さんとタイアップして大手企業さんの売上債権に対して紐付けの形での融資(特別当座貸越の形態)を実施するような商品がありましたな。まあ多分当時は手形による支払いから期日振込みへのシフトが進んでいた(手形の印紙税削減と現物搬送の事故防止の観点から)と思うのですが、その一環で管理の手間削減と、取引先企業がその債権紐付けで融資を受ける事ができますよ、というのがあった(具体的な説明がヘタクソでイメージしにくいかもしれませんすいませんすいません)訳ですが、電子記録債権であれば手形のように譲渡可能(ただし手形を資金繰りでホイホイ譲渡(取引銀行で商手割引するのとは別)すると取引先企業が嫌がるというのはどうせ昔も今も変わらないでしょと思うのでそうは簡単に話がウマーにはならないと思うけど)となるので、あの昔のアレよりは随分と結構な話になろうかと存じます、とシロートながら思うのですけれども実際問題としてはどうなんでしょ??

結局ですな、まあそら取引先的にはその理屈も判るのですが、資金繰りで手形が譲渡されるどころか、うっかりすると商手割引に回っても微妙な顔をするのが大企業クオリティでもあるというようなのがかつてはあったのですが、今はその辺どないなんでしょと思うけど、どうせその辺は昔も今もそんなに大差ないかなあとか思うのですけれども、前段の所でご紹介したように、大企業がてめえらの力関係押し付けて支払いサイトの長期化しているのだからそういうのにはもうちょっと配慮しやがれとゆー風に思うのでありました。

つまり、電子記録債権が出来てもそれがワークするかというのはこれまた金融政策とかとは別の課題があるかなあと思うのですよね。

・・・・・うーむ、やはり中小企業の資金繰りの話は公取の出番なのか(違)。

と、結論の無い雑談でどうもすいません。まあ2本とも似たような話ですので、両方合わせて読むのが吉だと思います。

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2011/07/07

○生活意識アンケート

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1107.pdf

図表無しの質問と回答の一覧は本文12ページからでございまして、まあ引用はそちらからさせて頂くと致します。以下『』つけるのめんどいので割愛しますけれども、Q&A部分は上記URL先より引用しています。

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1 良くなった1.9 ( 4.5 <4.7> )
2 変わらない36.2 ( 48.2 <48.2> )
3 悪くなった61.4 ( 46.8 <46.7> )

アンケートの中に説明がありますが、今回は震災の関係で岩手、宮城、福島、茨城の4県で調査を行っていないので、その分を加味する為に前回数値に関しては当該4県のサンプルを除外して算出した数値を()内の前回(3月調査)数値の横に<>内として記載していますので、まあ前回数値的には<>を見るほうが吉なんですかな。

Q3. 現在の景気をどう感じますか。
1 良い0.1 ( 0.0 <0.0> )
2 どちらかと言えば、良い1.6 ( 2.0 <2.0> )
3 どちらとも言えない15.9 ( 17.8 <17.9> )
4 どちらかと言えば、悪い52.5 ( 51.2 <51.1> )
5 悪い29.9 ( 28.5 <28.4> )

・・・・・・なんか「1年前と比較して今の景気は悪くなった」という人がやたら増えた割には、現在の景気に関しての数値がこんな程度しかぶれてないのねんという気はするが。

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる10.0 ( 7.7 <7.9> )
2 変わらない50.0 ( 62.4 <62.0> )
3 悪くなる39.6 ( 29.4 <29.6> )

まあシャーナイです罠。

Q5. 景気の状況を考えたとき、現在の金利水準をどのようにお考えになりますか。
1 金利が低すぎる50.9 ( 53.1 <53.2> )
2 適当な水準である34.5 ( 35.1 <35.4> )
3 金利が高すぎる12.3 ( 10.0 <9.5> )

・・・・・・・ま、毎度毎度申し上げますが、景気が悪いだの何だの回答する人がこれだけいるのに、同じサンプルで「金利が低すぎる」が相変わらず過半数回答、というのが何だかなあという感じでございまして、もうちょっと何とかならんのかねえと思うのですけど・・・・・

で、物価に関して。

Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、
「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入
される物やサービスの価格全体のことです)。
1 かなり上がった6.7 ( 6.5 <6.5> )
2 少し上がった43.7 ( 43.8 <43.4> )
3 ほとんど変わらない36.0 ( 35.3 <35.9> )
4 少し下がった11.6 ( 12.7 <12.6> )
5 かなり下がった0.8 ( 1.0 <1.0> )


Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
平均値(注1):+3.6 ( +3.6 < +3.5> )
中央値(注2):+2.0 ( +1.0 < +1.0> )

(注1)極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
(注2)回答を順番に並べた際に中央に位置する値。

・・・・・・ほほう、中央値が上昇とな。では先行き見通しはどないですかと。

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。
1 かなり上がる10.2 ( 7.2 <7.4> )
2 少し上がる56.9 ( 55.8 <55.5> )
3 ほとんど変わらない25.1 ( 30.6 <30.7> )
4 少し下がる5.9 ( 4.8 <4.7> )
5 かなり下がる0.4 ( 0.5 <0.6> )

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
平均値(注1):+4.8 ( +4.3 < +4.3> )
中央値(注2):+3.0 ( +3.0 < +3.0> )


Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。
1 かなり上がる22.5 ( 21.8 <21.5> )
2 少し上がる53.2 ( 54.3 <54.7> )
3 ほとんど変わらない16.1 ( 15.3 <15.4> )
4 少し下がる5.4 ( 5.4 <5.1> )
5 かなり下がる0.8 ( 0.7 <0.7> )

Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
平均値(注1):+4.5 ( +4.3 < +4.4> )
中央値(注2):+3.0 ( +3.0 < +3.0> )

・・・・・・ということで、まるで絵に描いたように「中長期的なインフレ予想は安定して推移しています」というビューテホーな結果になっていまして、まあこの感じですと足元の金融政策に対するインプリケーションは無いですな、という順当なアンケート結果になったものと思料されます。極めて順当な結果っぽいですね今回は。

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2011/07/05

まあそれはそれとしてさくらレポートから。

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer110704.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer110704.pdf(本文、大量に付き注意)

○まあ予想通りの「V字回復」モードになっているのですが

『I. 地域からみた景気情勢』はこのようになっています。

『各地の景気情勢を前回(11年4月)と比較すると、東日本大震災(以下、「震災」)に伴い景気判断を慎重化させた7地域からは、供給面の制約の和らぎ、家計や企業のマインドの改善等を背景に、持ち直し方向の動きがでているとの報告があった。この間、近畿、四国からは、前回からの持ち直しの基調に大きな変化はないとの報告があった。』

V字回復キタコレ。

『ただし、震災に伴う下押し圧力が続いている中、持ち直しの動きには差異がみられている。また、東北や関東甲信越からは、震災被害が甚大だった地域は引き続き厳しい状況に置かれているとの報告があった。』

ということで一応但し書きはありますが、どうも今回のトーンは強めになっていますですなあという感じです。

つまり、地域ごとの景気情勢判断の『前回との比較』というのを見ると、7地域で判断を上方修正していますが、この7地域というのはその前に下方修正した地域でございまして、そーゆー意味では方向だけ見ますと上記の説明にもありますように、震災の影響で判断を下げたところは全部引き上げた(ただまあその程度が全値戻しなのか半値戻しなのかという議論はありまして、内容的にはせいぜい半値戻し程度のようには読めますが)という美しい格好に。上方修正していない2地域ですけれども、元々四国は前回に堂々の判断引き上げを行っていますし、近畿は前回判断を横ばいにしていましたけれども、そもそもの水準が割と高め(「緩やかな回復基調」という見方)ですので、今更上方修正をする必要の無さそうな地域だったりします。

つーことでこれまた今回は判断強くて、今月の展望レポート中間レビューで何を言い出すのかがある意味wktkでございまして、上方修正しやがるんじゃネーノとゆー悪寒も漂ってくる今日この頃でございまする。

・需要項目に関して:生産と消費

まあ需要項目で生産と消費の所でも見ようかと。

『生産については、震災後は大きく減少したが、供給制約が和らぐ中でほとんどの地域からは「増加している」または「持ち直している」等との報告があった。この間、近畿からは「増加基調にあったが、震災の影響がみられている」との報告があった。

なお、東北からは「着実に増加しているが、太平洋沿岸部については、生産設備に甚大な被害を受けたこと等から、引き続き、生産活動の停止や減産を余儀なくされている先が多い」との報告があった。

業種別の主な動きをみると、ほとんどの地域が、供給面の制約の和らぎを指摘しており、こうした中で、自動車・同部品、電気機械、一般機械など多くの業種で生産水準を引き上げる動きが報告された。』

ということで、供給制約の緩和というのが今回のお題のようですな。


『個人消費は、供給制約が緩和しているほか、消費マインドも改善しているもとで、全ての地域から「持ち直しの動きがみられている」等との報告があった。

品目別の動きをみると、大型小売店販売額では、消費マインドが改善しつつあることなどを背景に、全地域から持ち直しの動きや下げ止まりの動きがみられているとの報告があった。』

まあこの後にもありますが、今回のさくらレポートのお題は「供給制約の緩和」と「マインドの改善」という事でございまして、これ即ち4月展望レポートにおける先行き下振れ要因の主要項目(他の主要項目は海外経済動向)でありますので、このようにさくらレポートで国内の下振れ要因が改善しましたとなりますと今月の決定会合でどういう話になるんかいなとゆー感じはしますけどにゃ。

『家電販売でも、九州・沖縄からは弱い動きとの報告があったが、他の地域からは節電意識の高まりによる省エネ型家電の販売増加等の動きが報告された。』

なるほどそうなのか・・・・・(あたくし個人は家電製品って壊れないと買い換えない(壊れたらもう使わないという変化もある^^)人なので・・・・)。

『乗用車販売については、ほとんどの地域から大幅に減少しているとの報告があったが、北海道、東北、関東甲信越、東海、四国、九州・沖縄からは供給制約の和らぎ等を背景に、減少幅縮小等の動きがみられるとの報告があった。』

ほほー。

『一方、旅行関連需要は、九州・沖縄からは国内観光客数が持ち直しているとの報告があったが、北海道、東北、北陸、関東甲信越を中心に、多くの地域から、国内外からの観光客数が減少しているとの報告があった。』

まあそうでっしゃろな。


・『II. 地域の視点』コーナーである

今回のお題はまあ普通に『東日本大震災後の地域経済における特徴的な動きについて』とゆーものでございます。手抜きにも程があるがこの部分全部引用するだよ。

『各地域では、東日本大震災(以下、「震災」)後の懸命な復旧・復興努力などが実を結んで、経済活動の正常化に向けた動きがみられ始めている。具体的には、(1)供給面の制約が和らぎ始めるもとで、製造業の生産活動に持ち直しの動きがみられていること、(2)消費マインドが改善しつつあるもとで、耐久財販売などに増加の動きがみられること、などが挙げられる。』

という事で先ほどから申し上げておりますが、今回のさくらレポートのお題である(^^)。

『東北地方を中心に震災で大きな被害を受けた地域(以下、「被災地」)では、地域差はあるものの、経済活動の正常化に向けた動きが着実に進展している。具体的には、被害を受けた生産・営業用設備が4月頃から順次復旧・再開し、最近では震災前に近い生産水準に回復している先がみられるほか、港湾・道路など社会インフラの復旧も着実に進んでいる。また、ガソリン供給の正常化や、震災以降実施されていた計画停電が4月入り後原則実施されなくなった点も、経済活動の正常化にプラスに働いた。』

ほほう。

『加えて、被災地以外で素材産業や食品などの工場を有する地域では、震災以降、グループ企業間・同業他社間で代替生産が行われている。これらや代替調達の進展もあって、多くの地域でサプライチェーンの修復が進み、これまで生産活動の下押し要因となっていた供給面での制約が緩和してきている。さらには、広い業種で復旧・復興関連需要が顕現化している。こうした動きを背景に、各地域の製造業の生産活動には持ち直しの動きがみられている。』

ということで生産は供給制約の緩和から持ち直しと。

『もっとも、経済活動の正常化に向けた動きは、地域ごとにみるとばらつきもみられる。この背景は、(1)被災地や供給制約の厳しい輸送用機械のウェイトが高い地域ほど、震災後の落ち込みが大きかった分、最近の生産は他地域比はっきりと増加していること、(2)代替生産は震災前の生産水準が低い地域ほど生産面での押し上げ効果が大きいこと、などが挙げられる。』

ばらつきがあると言ってもあまり暗い話になっていませんなあ、うんうん。

『家計支出は、各地域から、消費マインドが改善しつつある中、財やサービス消費ごとにばらつきを伴いながらも持ち直しの動きがみられているとの報告が多い。なお、観光は、外国人観光客を中心に原子力発電所事故の悪影響などから全国的に減少しており、厳しいとの見方が多い。もっとも、一部の地域では国内観光客の震災に伴う振替需要などから持ち直しの動きがみられている。』

ということで、これも観光の落ちの話をしながらも何気に威勢の良いトーンになっとるの。

『この間、農水産業では被災地を中心に震災による直接的な被害や、原子力発電所事故による悪影響がみられている。』

さよざんんすな。で、この次が電力の話。

『本年夏の電力供給制約に対する大口需要家(製造業)の対応をみると、東北電力・東京電力管内の企業は、昨夏の使用最大電力の▲15%節電に向けて様々な努力(勤務シフトや自家発電設備の設置など)を行っている。これにより、本夏の節電による生産活動への影響については、多くの企業が限定的としている。』

限定的の割には日々暑くて誠に遺憾なのですがあたしゃorz

『その他の地域では、最近表面化した電力供給制約に対して、「生産水準に影響しない範囲での節電対策を検討中」とする声が多い。こうした中、電子部品・デバイスメーカーなどの集積する地域からは、「大口需要家に電力使用制限が行われれば、制限緩和措置次第では生産面への影響が避けられない」といった不安の声も一部に聞かれる。』

でもまあ前段でああ言ってる位だから実際は大丈夫ですよウェーハッハッハということになるんですかそうですか。

『また、東京電力管内の中小企業(小口需要家)では、「昨夏の使用最大電力の▲15%節電を目指していく」という先から、「可能な範囲の節電を行う」という先まで対応は区々の状況にある。なお、非製造業では大口需要家・小口需要家とも売上に影響が出ない範囲での細かな節電対策の積み上げで対応しようとする先が多い。この間、一部の企業からは各種節電対策に伴う追加コストが、収益に与える影響を懸念する声も聞かれる。』

この辺りの影響に関しては実際に動き出したこれから判ると思うのですが、6月から関東でも猛暑日発生とかどんな罰ゲームだという展開になっているのが何とも。

『雇用面では、今後の生産の本格的な回復などを見据えた雇用増を示唆する声が聞かれている。例えば、輸送用機械では、「今後の増産対応は人員確保も大きな課題の一つ」とするなど、労働力の円滑な確保が今後の経営上の課題となっている。一方で、被災地では厳しい雇用情勢の継続が見込まれている。また、広い地域から一部の産業における震災による雇用面へのさらなる悪影響を懸念する声が聞かれている。』

雇用の話は結局明るいのか暗いのかはよーわからんですの。

『各地域の企業は、震災後、毀損した生産設備等の復旧やサプライチェーンの障害の解消に向けて注力しており、今回の震災を踏まえた中長期的な対応に着手しているという先は現段階では少ない。もっとも、今回の震災を踏まえて、企業では部品調達先の多様化や生産拠点のあり方などについて再考が必要という問題意識が高まっているほか、限定的ながらも一部の地域では、そうした企業ニーズを捉えることで地域活性化に繋げていこうという動きがみられ始めている。』

というような話になっていて、製造業の空洞化懸念という話はあまり前面に出ていないのがチャーミングでございます。

で、この先にある個別具体的な話に関しても味わいがあるのですが、あまりにも長くなるので引用割愛。まあ上記URLの概要の方でも読めますのでそちらを読んで味噌。

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2011/07/04

○短観でございますが

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1106.pdf

前回数値は回収時期が震災挟みでしたが、まあ結局そんなに大差なかったことでもありますので3月数値に関しては元々公表されたベース(震災前後合計ベース)の方からで勘弁。

・前回の先行き予測DIの達成状況に関しては意味が無いですけど一応

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   +6→+2       ▲9→+2
製造業中堅企業  ▲4→▲5      ▲12→▲7
製造業中小企業 ▲10→▲16     ▲21→▲15

非製造業大企業   +3→+2      ▲5→▲2
非製造業中堅企業  ▲6→▲12    ▲17→▲16
非製造業中小企業 ▲19→▲27    ▲26→▲29

まあ今回は断層が生じているので何ですが、3月数値は結構な強い数字だった訳ですけれども、さて今回の数字ってどうなのよとゆーところではございますけれども、感覚的には思ったほど派手には落ちていない(非製造業中小企業は3月時点の予測数値よりも足元の数値が良いですし)ように思えるのですけれどもどないでっしゃろ。


・雇用判断DI

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   +5→+6       +8→+5
製造業中堅企業  +9→+8      +10→+6
製造業中小企業  +8→+10     +14→+8

非製造業大企業   +3→+5      +4→+2
非製造業中堅企業  +1→+1      +4→+2
非製造業中小企業  +3→+3      +6→+3

まあ当然ながらこちらも足元数値は悪化していますけれども、先行きの見通しに関しては改善傾向になっていますな。んでもって非製造業の雇用判断はそんなに悪化してない一方製造業の雇用判断が悪化していて、特に中小企業で悪化というのはサプライチェーンの毀損が影響しているんでしょうかねえという絵に描いたような展開ですかそうですか。


・しかし相場が反応しないのですが・・・・・・

という事でちゃんとした分析は本職の人がやってくれると思うのでスルー致しますけれども、今回の短観に関してはまあ確かに数値そのものが市場予想からそんなにずれていなかったせいもあるとは思うのですけれども、金曜の債券市場様におかれましては短観に反応した形跡が見られない(そもそもベンダーの相場後講釈でも短観の話がそんなにあったという雰囲気は無い^^)という大変に素敵な展開になっておりましてですな、つまり最近の債券市場って米債と内部需給だけで話が出来てしまうというのも如何なものかという感じがする今日この頃。

いやまあ債券市場ってそーゆーのを得意技にしてはいるのですが、最近はとみに国内の経済指標に反応しないような気がする(気がするだけですけど)のでございまして、何と申しますか色々とファンダメンタルズがどうのこうのと小理屈を捏ねる必要が無い(ように見える)というのも残念にも程がありますわなあと思った金曜のひと時でございましたorz

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2011/07/01

○何か色々とペーパーが出ているのだが

四半期末の駆け込みの如く昨日は日銀レビューシリーズが3発。

ABLの現状と一層の活用に向けて
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/rev11j04.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j04.pdf(本文)

要旨のところをまる引用。

『アセット・ベースト・レンディング(ABL)は、企業が保有する在庫や機械設備、売掛債権など、事業と密接に関連した資産を担保とする、比較的新しい融資手法である。従来型の融資と比較すると、事業資産の産み出すキャッシュフローに着目し、その変化を継続的にモニタリングすることが不可欠な点に特徴がある。』

いやあの別に従来の融資でも普通に債務者の営業キャッシュフローとかって債務者の決済性預金の推移とか見ながら(メインなら特に)把握するようにしていたと思うのですけど、すくなくともあたくしが金貸しの手先やっていた小僧時代は。

『それ故、貸し手・借り手の双方に相応のコストが必要となる反面、不動産担保や個人保証に過度に依存することがなく、貸し手・借り手の関係強化にも繋がるため、企業の借入余地の拡大や資産の有効活用、金融機関の「目利き力」の向上を促し、企業のライフサイクルに応じた柔軟な資金供給の実現に資すると考えられている。』

何かね、「不動産担保や個人保証に過度に依存した融資」とかステレオタイプで言われますと、どうも名作漫画の「ナニワ金融道」的な融資とごっちゃにされているのではないかと思うのですが、普通の銀行とかでやってる融資は、貸付金の回収可能性に注目するのか債務者をゴーイングコンサーンとして考えるかという点でだいぶ違う筈なんですが、どうも何だかなあ感が。

『わが国のABLの規模は未だ小さいが、一段の拡大を通じて、ABLの持つ機能が十分に発揮されるようになれば、わが国経済の成長に貢献していくものと期待される。』

それは素晴らしいですね(棒読み)

で、本文はこれから精読する(斜め読みしかしていない)。


中小企業の資金繰りを巡る論点
― ABLと電子記録債権による売掛金の活用 ―
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/rev11j06.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j06.pdf(本文)

まあこちらも結論はアレでございますが、いやもう麿様の政策が出たと思ったら早速このようなレポートが出るとはこれはこれは(棒読み)という感じですが、概要を読んだだけで本文斜め読みすらしていないのでまた後日。


オプション市場から見た震災後のわが国金融市場の動向
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/rev11j05.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2011/data/rev11j05.pdf(本文)

これから読みますサーセン。

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2011/06/27

○決済システムレポートから雑談を

http://www.boj.or.jp/research/brp/psr/psr2010.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/psr/data/psr2010.pdf(本文・PDFで60ページ)

まあ何ですな、内容は中々盛りだくさん(本文だけで50ページあるのだから当たり前ですけど)なのです詳しくああだこうだとやっていると延々とネタになりそうな気もするのだが、とりあえず雑談的に。

・証券決済T+1相変わらずやる気満々のようだが正直誰得の世界だと思う

めんどいのでまずは最初の「要旨」のところにある『国内決済システムの主要な動き』から。

『国債市場では、2012 年4 月から決済期間を1 営業日短縮し、アウトライトT+2(GCレポT+1)とすることが合意された。本措置は、国債取引の未決済残高の積み上がりを抑え、決済リスクの削減に寄与するものである。市場関係者の間では、さらにアウトライトT+1 化(GC レポT+0 化)について、実現に向けた検討が続けられている。』

で、本文14ページにはこのような解説が。

『(アウトライトT+1 化、GC レポT+0 化)

次に、決済期間をさらに1 営業日短縮し、アウトライトT+1 化を実現することに関しては、GC レポのT+0 決済を行う仕組みを新たに構築する必要があるとされている。これには、現在の約定実務や取引慣行等の大幅な変更を伴うため、幅広い課題を丹念に検討していく必要がある。また、市場参加者のみならず、決済インフラや関係当局を含めた幅広い関係者の協力も不可欠である。このため、WGは2011 年秋頃の最終報告書の取り纏めに向けて、実現に向けた検討を続けている。日本銀行としても、アウトライトT+2 化の2012 年実施、およびアウトライトT+1 化の検討について、市場参加者の取組みを引続き支援していく考えである。』

えーっとですな、相変わらず日銀様におかれましては国債決済のT+1化やる気満々のようで、何かここの解説みてると市場関係者がやる気になっておられるような書きっぷりではございますが、正直言ってこの低金利で決済関連のフィーが雀の涙程しか確保できない中で、システム的にも人的にも無茶苦茶負荷が掛かる事がかなりの確率で予想される国債決済T+1化なんて誰得の世界だと思うのですけどねえ、いやまあシステムベンダーは儲かるかもしれませんけど・・・・・・


・そういや内為決済の大口がRTGSになるんでしたな

当事者じゃないとこの手の話ってちょっと聞いても直ぐ忘れるものでありまして、あたくし見た瞬間にはすっかりこの件失念していたことに気がつきましたですよ(汗)。

本文9ページの『2.日銀ネット次世代RTGS 第2期対応』から。

『日銀ネット次世代RTGS プロジェクトは、わが国における大口資金決済の効率性と安全性の一段の向上を目的とするものであり、以下の2 つの施策を柱としている。

@ 日銀当座預金上のRTGS 処理に流動性節約機能を導入し、資金決済の効率性を改善すること。

A 民間決済システムにおいて、時点ネット決済で処理されてきた大口資金取引(外為円決済取引、1 件1 億円以上の大口内為取引)を日銀当座預金上でRTGS 処理し、決済の安全性を向上させること。』

ということで、この2番目の方ですが。

『―― 外為円決済取引の多くと内為取引の決済は、従来、時点ネット決済方式で行われてきた。しかし、時点ネット決済方式は、参加者に決済不履行が生じた場合の決済の巻戻しリスクを抱えており、決済システム全体にシステミック・リスクをもたらしうる。次世代RTGSプロジェクトは、こうしたリスクを抑制するため、大口資金取引につき、時点ネット決済方式をやめ、RTGS 処理しようとするものである。』

で、今回は内国為替の大口決済がRTGSになると。

『第2期対応では、Aのうち残った大口内為取引のRTGS 化を2011 年11 月14 日に実施する予定である。このため、日銀ネットと全銀システムとを結ぶ新たなインターフェースを構築する(図表1-3)。なお、1 件1 億円未満の小口の内為取引は、引続き、全銀システムを通じた時点ネット決済により処理される。』

まあ何ですな、銀行間は時点決済処理していますけど、内国為替の電信扱(もクソも今は文書扱は無いですが)取引をすると現在は被仕向銀行(をすんなり読めるのは銀行員か経理担当のどちらかかと)で入金確認した時点でサクサク引き出し出来てしまいますので、その間は被仕向行が仕向行に対して与信している状態になっていますから、利用者的には便利な話ですけど、これはこれでリスクはリスクではありますもんね。


・債券市場的にはこれですな

本文12ページの『3.新日銀ネットの構築』から。

『新日銀ネットの機能・仕様の検討の前提となるテーマについては、2010 年4 月以降3 回にわたり、日銀ネットの利用金融機関等が参加した「新日銀ネット構築に関する意見交換会」を開催し、議論の結果を2011 年2 月に公表した。その主要なポイントは、図表1-4 のとおりである。』

『図表1-4 意見交換会での主要な論点と対応

@ 国債決済の一層の円滑化に向けた対応

・ 新日銀ネットと、証券保管振替機構の決済照合システムや日本国債清算機関のシステムとの接続を可能とする。
・ これらのシステムとの接続も念頭に、DVP 決済のメッセージフローを見直す。
・ 新日銀ネットに所要の機能を設けること等により、従来の振替停止期間(償還期日または利子支払期日の2営業日前から前営業日まで)を、廃止する。』

という事で、この辺りは事務フローだけではなく約定の部分も変化する可能性があるかなあとは思いますです。


・あと第3節が面白いと思う

という事で、まあ雑談ネタにしてみましたが、『第3節 民間決済システムによるリスク管理強化への取組み』の部分とかこれがまた読んでいてオモシロイ(まあ面白いと思う人がどの位いるのか知らんけど)と思いましたが、これまた大ネタなので引用割愛。


#ということで適当に雑談ネタを拾っただけで恐縮ですが、面白い人には面白いレポートである

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2011/06/20

続きまして5月決定会合議事要旨から。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110520.pdf

○色々と置いている前提が6月に掛けて変わっているような気がするのだが・・・・・

まあ何ですな、読んでて思ったのは小見出しの通りでございまして、経済の見通しとかの話のあたりとか読んでいまして思ったのは、えーっとベースがこの認識だと6月の決定会合で足元判断を上方修正したのってどうなのよという違和感が益々拡大といった所かと存じます次第。

とゆーことで『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分から。

・海外経済について

『委員は、海外の金融経済情勢について議論を行い、海外経済は、新興国・資源国の高成長に牽引されるかたちで回復を続けており、先行きも回復を続けていくとの見方を共有した。』

という話なのですが、新興国って足元減速気味じゃなかったでしたっけと思うのでございますし、総裁会見でもそういう話をしていた(ただし総裁は「過熱しないのは却って良いことです」という話をしていましたが)よねえとゆー感じになるのでございますが・・・・・・・

『米国経済について、委員は、回復を続けているとの認識を共有した。個人消費について、委員は、追加財政刺激策や雇用者数の増加、株価上昇による資産効果などを挙げ、堅調に推移しているとの見方を示した。ある委員は、好調な収益を背景に設備投資も増加していると述べた。複数の委員は、新興国向けを中心に輸出も好調に推移しているとの見方を示した。更に、複数の委員は、緩和的な金融環境が続いていることも景気を全体として下支えしていると述べた。』

・・・・・・・えーっと、緩和的な金融環境以外の件について5月決定会合以降は減速観が強まっているように思えるのですけれども。

『多くの委員は、バランスシート調整の重石から米国経済が上に弾みにくく、下に振れやすい状態が続いていることが改めて確認されているとの見解を示しつつ、こうした動きは、これまで想定していた米国経済の先行きの見方に対して大きな変更を迫るものではないとの認識を示した。』

はあそうですか。

『ある委員は、一部経済指標の事前予想対比下振れを受けて、米国経済の先行きに関する市場の見方がこのところ再び悲観的な方向に振れていると指摘したうえで、米国経済の下振れリスクは小さくないとの見方を示した。』

えーっと、指摘しているのが1人ですかそうですか。


で、ユーロエリアに関して。

『何人かの委員は、これまでのところ市場の反応は、ギリシャ、アイルランドおよびポルトガル以外の国に対しては比較的冷静であるとの評価を示した。しかし、別の何人かの委員は、ギリシャの債務再編を巡る市場の思惑を受けて、ソブリン問題に対する懸念が再び高まっており、今後、国際金融資本市場全体の不安定化につながることはないか、注視していく必要があるとの見解を示した。』

で、その結果6月決定会合時点ではギリシャ問題が拡大していると思うのですが・・・・・


と、微妙に???な展開が続くのですが、どうも足元の新興国の減速が「良い減速」という認識になっているのが根底にあるのではないかという気がするのは中国経済に関するこの部分。

『複数の委員は、これまでの金融引き締めの効果などから、中国経済が目先幾分鈍化する可能性を指摘したが、多くの委員は、景気の過熱感からインフレ圧力が高まった状態にあり、金融政策の対応が遅れ気味になっているのではないかとの懸念を示した。』


・国内経済に関して

とまあそんな感じが海外経済なのですが、国内経済に関してはその先にありますが、まず基本的な見方としては・・・・・

『委員は、景気の現状について、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にあるとの認識で一致した。先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられるとの見方を共有した。』

というのは声明文にあったとおりですが、5月会合時点では「震災の影響による大きな落ち込みを確認」した上で「改善傾向が見えている」となっていまして、その改善傾向が恐らく6月会合で更に確認できたから上方修正となった、という話になるのでしょうなあというのは把握しましたが、でも肝心の前提条件となる海外経済に関して5月会合での認識よりも減速感が出ているのですよねえというのは不思議ちゃんでございます。

『景気の現状について、委員は、前回会合後に公表された経済指標によって震災直後の景気の落ち込みがきわめて大きなものであったことが確認されたとの見方を共有した。』

ということなのですが、

『もっとも、委員は、最近の経済指標や企業からのヒアリング情報などを踏まえれば、経済活動の水準はなお低いながらも、震災直後の大幅な落ち込みからは徐々に改善していく兆しがみられるとの見方を共有した。』

ということであり、

『こうした中、家計マインドの動きについて、多くの委員が、4 月末を調査時点とする景気ウォッチャー調査で、現状判断が下げ止まり、先行きについての期待も改善していると述べた。企業マインドについても、複数の委員が、いくつかの指標で、このところ下げ止まりの動きがみられると指摘した。』

ということのようです。


・供給制約関連

『委員は、サプライチェーンの障害や電力供給など、供給面での制約が解消していくタイミングについても議論を行った。』

ということでああでもないこうでもないという話が続くのですが、最後のところでこんな指摘が。

『以上の点を踏まえ、複数の委員は、このところ、供給制約の解消に関する不確実性は低下しているとの見方を示した。』

でまあ5月会合時点ではそうだったと思いますが、直近の6月会合ではこの供給制約に関する問題では全国的な原発停止に伴う電力需要の逼迫問題という不確実性は拡大しているように思えますが、なにゆえ6月会合で上方修正をしたのかが微妙ですなあ。

まあ電力問題に関しては先行きリスク認識の部分でこういう指摘もありまして、

『この間、何人かの委員は、定期点検後の原子力発電所の再稼働の問題を考えると、やや長い目でみて、電力の安定的供給についての不確実性はむしろ増しているのではないかとの見方を示した。』

という認識が5月にあった訳で、それが6月会合で更に拡大していると思うので、最早リスク認識というよりは経済への下押し要因として認識した方が良いのではないかとシロートのあたくしは思うのですけどにゃあ。


○金融政策に関する議論も微妙にアレでござる

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分ですけど。

・時間軸の話が出ているのが唐突感があるのですが

この部分の最初には「金融政策は従来どおりを維持という結論になりました」という話になるのですが、そこに微妙な一節が。

『この間、複数の委員は、市場の安定を図るうえで、時間軸に対する市場の理解と信認を確保していくことも引き続き重要であるとの認識を示した。』

・・・・・・・なんかどういう話の流れでこういうのが出ていたのかが良く判らないのですけれども、5月決定会合時点で時間軸がどうのこうのというような話は円債市場では特に話があった訳でもないですし、別にその前後とかでもそれらの思惑って無かったと思うのですけど何か唐突感が。

もしかしたらQE2終了後の米国金融市場を念頭に置いた話なのかもしれませんけれども、それはそれこれはこれだと思うんすけどねえ。


・西村さんともう1人の人

『この間、資産買入等の基金の運営について、ある委員は、前回会合時点では、原子力発電所事故等の展開を背景に将来に対する不安が増大し企業や家計のマインドが更に悪化するリスクが高まっており、基金の増額を図ることが望ましいタイミングだと判断して増額を提案したと述べた。この委員は、その後、景気の先行きの見方に関する指標やヒアリング情報などにより、懸念していたマインドの更なる悪化の兆候がみられていないことなどを指摘したうえで、追加緩和の必要性は潜在的には大きいものの、現時点で基金の増額を行うメリットは大きくないとの見解を示した。』

『別のある委員は、経済物価の見通しを踏まえると追加緩和の必要性は依然として存在しているものの、各緩和措置の効果波及経路と副作用などの検討を続けながら、適切なタイミングを見極めていくことが重要であると述べた。』

『大方の委員は、震災直後に決定した追加緩和の枠組みのもとで、多様な金融資産の買入れを着実に進め、その効果波及を確認していくことが引き続き適当であるとの考えを示した。』

・・・・・うーむ、はあはあそうですか(棒読み)という感じですけどにゃ。


・成長基盤関連

『委員は、成長基盤強化を支援するための資金供給についても議論を行った。多くの委員は、第4回目の資金供給の結果が判明した段階で、これまでの同制度に基づく資金供給の効果について、金融機関からの声も踏まえたうえで、総括的な評価を行い、今後の同措置の在り方について検討を行う必要があるとの見方を示した。』

で、その結果があの日銀自己満足オペレーションの導入ですかそうですか。んでまあ復興復旧と成長基盤強化がどうのこうのという話も微妙にお花畑感がありますが一応一部だけ引用。

『多くの委員は、復旧・復興の過程においては、これまでもわが国が直面してきた成長力強化という基本的な課題に、同時に取り組んでいく必要があるとの見解を述べた。何人かの委員は、復旧・復興自体の資金需要はかなり出てくると思うが、資金需要を成長力強化へ結び付けていくための「呼び水」という観点から、日本銀行が果たすべき役割は大きいとの見解を示した。この点につき、ある委員は、復興資金需要の様々な特性を踏まえた必要な修正を加えたうえで、「成長基盤強化を支援するための資金供給」の枠組みを活用する余地があるのか、検討することも考えられると述べた。』

はあはあそうですか(棒読み)という感じですが、何か今後もこの関連のオペが色々と出るんでしょうかねえと考えるとorzなところではございまする。

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2011/06/16

まずは声明文比較から。

○現状判断を華麗に引き上げとな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110614a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110520a.pdf(前回)

・現状判断はご案内のように華麗に引き上げ

『わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられている。』(今回)
『わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。』(前回)

ということで総括判断がどう見ても引き上げです本当にカムサハムニダとゆー感じですが、その後も上方修正話が続きます。

『すなわち、生産や輸出は、震災後に大きく低下し、国内民間需要も弱い動きとなった。こうした下押し圧力はなお続いているが、最近は供給面の制約が和らぎ始め、家計や企業のマインドも幾分改善しつつあるもとで、生産活動や国内民間需要に持ち直しの動きもみられている。』(今回)

『すなわち、震災による供給面の制約を背景に、生産活動は大きく低下している。この結果、輸出が大幅に減少し、また、企業や家計のマインド悪化の影響もあって、国内民間需要も弱い動きとなっている。』(前回)

ということで、「供給制約の緩和」と「マインドの好転」という思いっきり直球豪速球を投げ込んできましたが、暴投にならないことを心の底から祈念して止まないものであります(棒読み)。


金融環境には変化なし。

『この間、金融環境をみると、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。』(今回)


物価に関しては現象として指数がプラスになった事を言及しているのみです。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のプラスとなっている。』(今回)


・先行き見通しは基本的に大きくは変えていない

つまり「先行きは緩やかに回復する」という従来の見通しの範囲内であるとも声明文的にはなっているのですけれども。

『先行きのわが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が残るとみられる。その後は、供給面での制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

結論の「2011年度後半以降の回復」というのは変化なしで、足元の下押し圧力に関しては「強い状態」から「下押し圧力が残る」に上方修正し、供給制約に関しては「さらに」緩和されるという表現になっていますな。供給制約に関しては既に前段で直球豪速球を投げ込んでいますのでいいとしまして、足元の下押し圧力に関しても(前段の豪速球からしてそうなるのは当然ではありますが)下押し圧力の軽減に言及ということで、まあ先行き見通しの結論は変わっておらず、あくまでも「当初見通しのライン上にありますよ」という話ではありますけれども、足元の景気状況に関してはかなり強い認識になったなあという感じであります。


・リスク要因は新興国の上振れを下げる

だから下向きになったのかと思いきや、総裁会見では「過熱しないのは良い事」みたいなポジティブ話があったのが少々アレなのですが、まあこうなっています。

『リスク要因をみると、景気については、震災がわが国経済に及ぼす影響の不確実性が大きい。』(今回)

『海外経済については、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。』(今回)

と、ここまでは前回と同じ。

『新興国・資源国については、このところ減速の兆しもみられるが、依然として上振れの可能性にも注意が必要である。』(今回)

なので、これが上振れ下がったから先行きのリスク認識が下に振れたのかというと微妙な希ガス。前回とは語順が違っていまして、先に下振れが来ているのはこれはこれで微妙なテイストでして、結論としてはリスク認識が下に振れたというよりは、足元の見方が上方修正された分だけ上振れリスク認識が弱くなったというバランスの取り方になったのではないかという風にオモタです。で、肝心の前回はこちら。

『海外経済については、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けて、新興国・資源国の経済が上振れる可能性がある一方、米欧経済は、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。』(前回)


商品市況に関する表現は前回と同じですが念の為引用。

『この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。』(今回)

で、その結論も前回と同じ。

『以上様々な要因はあるが、当面は、震災の影響を中心に、下振れリスクを意識する必要がある。』(今回)


物価に関してはここもと同じコメントである。

『物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)


ということで、現状判断を大きく引き上げているのが特徴という所ですな。



○金融経済月報(ただし概要部分だけで勘弁)

こちらでは生産に関して現状および見通しを引き上げているのが特徴。まあ項目が生産なだけに直球勝負のテイストを醸し出していますなあという感じではございますけれども、その間に米国経済の指標がお洒落になっている辺りが何と申しますか日銀の見事な様式美ではないかと存じます(^^)。

全文のURLですのでPDFで60ページ近くありますのでご注意を。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1106.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1105.pdf(前回)

・現状総括判断

『わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力が続いているが、持ち直しの動きもみられている。』(今回)
『わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。』(前回)

上方修正キタコレ(^^)。


・現状判断需要項目別

『生産や輸出は震災後に大きく低下し、国内民間需要も弱い動きとなった。こうした下押し圧力はなお続いているが、最近は供給面の制約が和らぎ始め、家計や企業のマインドも幾分改善しつつあるもとで、生産活動や国内民間需要に持ち直しの動きもみられている。』(今回)

『震災による供給面の制約を背景に、生産活動は大きく低下している。この結果、輸出が大幅に減少し、また、企業や家計のマインド悪化の影響もあって、国内民間需要も弱い動きとなっている。』(前回)

ということで、基本的に声明文と同じ変化のしかたでありますな。


・先行き総括判断

『先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が残るものの、供給面での制約がさらに和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

これまた声明文と同じような変化ですわな。


・先行き判断需要項目別

まずは生産と輸出。

『生産は、供給面での制約がさらに和らぐにつれ、増加が明確になっていくと考えられる。そうしたもとで、輸出も、海外経済の改善を背景に、増加に転じるとみられる。』(今回)

『生産は、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。こうした状況になれば、海外経済の改善を背景に、輸出も増加に転じるとみられる。』(前回)

ということで、供給制約に関しての上方修正に伴い「海外経済の改善による輸出の増加によって生産などが拡大し、景気も回復基調に復する」というシナリオの実現可能性を引き上げたようなイメージですわな。

その他の項目は前回と同じ。

『また、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。この間、個人消費も、生産活動が回復するにつれて、家計のマインド改善もあって、持ち直していくとみられる。』(今回)


・物価の先行きに関しては企業物価の上昇幅の縮小を見る

物価に関しては企業物価の部分だけ前回と違います。現状に関しては特にインプリケーション無いので割愛して先行き見通し部分だけ。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇幅が縮小していくとみられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスで推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスに転じていくとみられる。』(前回)


・金融面では社債発行市場の環境改善に言及

金融面の話は基本的に前回と同じ表現が続きますが、社債発行市場に関しては「全体としてみれば良好」としています(つまり電力債除くという意味です)。

『社債市場でも、全体としてみれば、発行環境が改善し、良好となっている。』(今回)
『社債市場では、震災後、発行を見送る動きが一時みられたが、このところ徐々に発行が再開され始めている。』(前回)

という感じでありまして、文章を全体としてみるとやはりトーンが明るいですなあっつーところだと思います。

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2011/06/15

○何じゃこの新制度は???

ということで声明文である。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110614a.pdf

『5.昨年夏以来実施している成長基盤強化を支援するための資金供給は、金融機関の自主的な取り組みを進めるうえでの「呼び水」としての役割を果たしてきている。金融機関の取り組みをさらに後押ししていく観点から、資本性資金の供給や従来型の担保・保証に依存しない融資に着目し、今後、これを支援していくことが適当と考えられる。こうした判断に基づき、今回の会合では、出資や動産・債権担保融資(いわゆる「ABL」)などを対象として、新たな貸付枠を設定することを決定した(別添参照)。日本銀行としては、今回の措置によって、金融機関が、金融面の手法を一段と広げ、わが国経済の成長基盤の強化に向けて、さらに活発に取り組むことを期待している。』

実際の制度に関してはこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110614b.pdf

えーっとですな、色々とツッコミ所の多い制度だと思うのですけれども、何と言ってもツッコミ所は上記の中にある、

『金融機関の取り組みをさらに後押ししていく観点から、資本性資金の供給や従来型の担保・保証に依存しない融資に着目し』

という部分ですわな。まずその後半の従来型の担保云々の部分は措きまして、前半の「資本性資金の供給」というのが全く持って意味が判らないのである。


・銀行が資本性資金の供給を行うとか意味わかんないんですけど

つまりですな、そらまあ日本の金融でいわゆるアーリーステージのリスクキャピタルの出し手が少ないというのはあって、それが直接の原因かというと個人的には疑問がありますけれどベンチャー育成がどうのこうのとか言われるつーのは把握しておりますが、何でそのリスクキャピタルを金融機関、つまり銀行に出させるという発想になるのか全く意味が判りません。

そもそもですな、商業銀行の資金というのは原資が預金なのでありまして、それはつまり一般の皆様の生活資金であったり小口の資金であったりするものでございまして、そーゆー資金を運用するにあたってリスクキャピタルのような流動性も元本の保全にも問題があるような所にホイホイ突っ込んで良いのでしょうかと思うのですよ。その手のリスクキャピタルの出し手はVCなりファンドなり私募投信なり余裕資金をアホほど抱えている金持ちさんとかのように「リスク許容度の高い資金」であるというのが本来的な姿ではないかと思うのでありまして、預金を原資とする商業銀行のようにホイホイ元本が毀損するような事があっては困る資金に対して「資本性資金の供給を促す」とか言われても何考えているのか理解致しかねますがどうでしょうかねえ。

いやね、それとも日銀様におかれましては商業銀行がそのような元本保全を気にしない資金供給をホイホイ行っても良いと仰せで、預金者保護とかバーゼルVとかゆーよーな件とはまた別の発想転換でもされたとでも仰せになったとか、突っ込んだリスクキャピタルの信用リスクを日銀が受けて下さるとでも仰せなのでございましたらばそれはそれで凄い変化なのですが、どっからどうみてもそんな事まで考えているとは思えない訳でございまして、商業銀行に資本性資金の供給を行う取り組みの拡大を促すというのは一見「新しい金融手法」的な美しい話なのですが、そもそも理念的に如何なものかという感想を持たざるを得ませんわなとゆーこってすな。


・動産担保融資の促進とか言われなくても儲かるならやりますがな

でね、後半の動産担保融資云々なんですけどね、大体からして現状で銀行は貸出先が無くて困っている(どう見ても不良債権に発展しそうな先なら沢山あるのでしょうが、銀行の原資は預金でありますので不良債権確実の融資はよーしませんわなあ)のでございまして、別にあんさんらに言われなくても与信先の在庫資金の見合いで融資とかしてますがなとゆー所であります。ちゃんとした債務者だったら無担保でも出しますし、というか動産担保を真面目に取るとなったら例えば商品在庫を担保とかゆーことになったらその管理だって七面倒臭いですし、第三者対抗要件の具備とかの話になると更に面倒臭くてコストが掛かる話なんで、債務者がちゃんとしてたら動産担保取るよりも無担保で融資した方が楽ですし、そんなこんなの関係でまあ不動産担保を根抵当に取っておいた方が実務上楽ですがな、という話だと理解しております(あたくし金貸しの手先の現業業務から離れて久しいので間違っていたらご指摘プリーズ)けどねえ。

つまりですな、信用リスクおよびコストに対するリターンが見込めますというのであれば、別にあんさんらに低利融資していただかなくても(つーか別に0.1%自体市場で取れるし今回の融資制度は共通担保オペ方式なので当該融資にファンディング付く訳じゃないのですが)銀行はドンドンその手の貸出を推進する訳でございまして、どこぞの麿が「融資するからこれらの貸出を推進するように」とかドヤ顔で仰せになりましてもピンボケ感ありありでございますがなという所です。

それよりもその手の動産担保を取得して第三者対抗要件まで具備するという事になった場合、現行の法制度において必要となるコストを軽減するような制度改革に努力すれば、さっき言った「信用リスクおよびコスト」のコストの方が下がるのですから別に融資制度なんぞ作らんでもそれらの貸出が伸びると思いますけどどうなんでしょうかねえ。


あと、保証人云々の話は以前(だいぶ前)にもひとしきりネタにして書いた事がありましたが(リテール金融の高度化みたいな話があったときに色々と書いたりしました、もう5年以上前の話ですが)、そもそも税制などの状況から最適化した行動を取った場合、零細企業になればなるほど企業には内部留保って溜まらないようになっていて、企業単体では財務諸表がうんこにも程があっても経営者の資産まで含めると優良取引先などというのは普通に存在していたとゆーのがあたくしが金貸しの手先をやっていた時の理解ですが世の中そんなに変わっていないと思うんすけどねえ。

この点に関して企業に内部留保するよりもオーナー経営者等の報酬などの形で流出させちゃった方が税制上有利に働くような形をどうにかした場合に話がまた違ってくるんじゃないですかと思うのですけどね。ということでやはり制度改革が必要という話になると存じますがどうでしょうかにゃ。

そういや、「無担保で保証人も取りません(キリッ)」とか言って「ミドルリスクの融資市場の開拓」とか言ってたどこぞの新規設立の銀行さんが結局その市場開拓できずに栄光のペイオフ第1号という先入先出法にも程がある(違)華麗な実績を挙げておられたと存じますけどねえとか書いていたらその代表者様がもと日銀であった事を思い出しましたざますわよ奥様オーッホホホホ。


・大体からして信用リスクは移転しないわけですし

ということで2年で0.10%の金利で出すから取り組みしやがれとか仰せのようでございますが、別に足元で資金取れない訳でもない上に、こーゆー制度を公的に打ち込まれますとその手前これをネタにした貸出等って貸付金利が低くならざるを得ないので、折角金融機関が信用リスク取っているのにそれに対するリターンが減るという面もこれがまたあるような気がするんですが。

大体ですな、決定会合結果の公表文書の3ページ目にもありますが、

『3.資金供給方式 共通担保を担保とする貸し付け』

ということで、本件によって実施した貸付が担保になるわけでもない(たまたまその貸出債権自体が審査の結果担保適格だったらなるけど)ですし、融資なり出資なりが飛んだ場合は金融機関が被る訳ですからして、そうなるとバーゼル何とかだの不良債権比率がどうのだの分類貸出がどうのだのとゆーいつもの残念な話になりますわな。

それらの推進をするってえのでしたら、例えば本件制度に則って融資なり出資して元本毀損した場合でも金融機関にバッテンをつけないとか、無税償却を認めるとか、そーゆーメリットでもつけていただきませんと、単に低利融資が付くから金利を安くしろ攻撃が飛んできて銀行のリターンが減るだけの話という誠に残念な流れになりそうな悪寒。で、その辺のメリットつけるのは金融庁様なり国税様のお話でございまして、つまりまあこの手の話ってのは日銀が単独で金だけ出せば済むという問題ではないと思うのですよね、いやまあ勿論今後そういう件について日銀様におかれましては金融庁様や国税様と協議していただけるとか、制度改革や規制緩和に向けて動いていただけるという事なんでしょうけれども(ニヤニヤ)。


・正直こんな細かい話よりも大所高所の話をしていただきたい訳で

えーっとですな、いやまあ成長基盤強化という事ですから麿様あたりにおかれましてはこれも大所高所の話という事なのかもしれませんけれども、延々と悪態を申し上げたようにそもそも資本性資金を商業銀行が供給するというのは本来の商業銀行の機能として如何なものかという気がしますし、動産担保融資云々に関しては色々と申し上げたように資金供給がどうのこうのではなくて制度上の問題をどうしましょうかという話ではないかと思うのでありますよ。

つまりですな、こういう制度を導入するから金融機関はこれこれの取り組みをしやがれコノヤローとかゆーよーな箸の上げ下げについての「ご指導」をするような細かい話をするよりも、日銀様におかれましてはより大所高所に立った話をして頂きたいと存じます次第。まあ成長基盤オペ位までなら兎も角、さすがに今回の話はあまりにも細かい話過ぎで、いやまあ大所高所で考えたら政策は現状維持しか無いからちゅう事なのかもしれませんけど、ちょっと今回の施策は違和感ありまくりじゃないかなあ、と思いましてつい勢いで悪態大会になってしまいました。

いやね、まあそのリテール金融の高度化みたいな話を推進したいとかいうような事とか、色々な資金供給チャネルの拡充が必要じゃないかというような問題意識とかまで否定している訳じゃないですし、それはそれで問題意識としては有りの話だと思いますけれども、その結果として出てきたのが今回のオペというのはどうにもこうにも何だかなあ感がぬぐえませんわなあという事でありまする。

#とMPMが出たというのに誰得悪態祭りになってしまった

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2011/05/26

○4月28日決定会合議事要旨から

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110428.pdf

展望レポートの回ですが、良く考えたら(良く考えなくてもそうですが)浜岡原発のストップ話が無かったのですが、では景気の先行き見通しがどうなっているのとか西村さんの提案とかどうだったのというような話を少々。


・海外経済に関しては強めですが

『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から。

『委員は、海外の金融経済情勢について議論し、海外経済は、新興国・資源国の高成長に牽引されるかたちで、回復を続けており、先行きも回復を続けていくとの見方を共有した。』

ということで、米国、ユーロエリア、新興国と話が続くのですが、ここのトーンは基本的に強めの見通し。

『米国経済について、委員は、バランスシートの調整圧力は引き続き経済の重石として作用しているものの、回復を続けているとの認識を共有した。何人かの委員は、FRBが大規模な国債買入れを6月に終了することを決定したものの、買入れた資産の残高削減や利上げなどの金融引き締めには慎重であるため、緩和的な金融環境が維持され、景気回復が下支えされていくとの見方を示した。この間、多くの委員は、最近のエネルギー価格の上昇が個人消費や物価に与える影響に、注意が必要であると指摘した。』

『ユーロエリア経済について、委員は、ドイツなどの一部の国が牽引することで、国ごとにばらつきを伴いつつも、全体としては緩やかに回復しているとの認識を共有した。ただし、何人かの委員は、ギリシャの債務再編観測の台頭などを背景に、周縁国の国債利回りの対ドイツ国債スプレッドが再び拡大していることなどから、金融市場のリスクが再び高まっているとの見方を示した。』

『新興国・資源国経済について、委員は、旺盛な内需や海外からの資本流入が続くもとで、高成長が続いているとの認識で一致した。多くの委員は、景気過熱に、国際商品市況高も重なって、インフレ圧力が高まっており、金融引き締めの動きが続いているものの、景気過熱感やインフレ懸念は十分沈静化されていないとの認識を示した。』

新興国の過熱懸念はありますな。


・国内経済は下振れ懸念の指摘が多めですかね

まず現状認識に関して。

『複数の委員は、企業や家計のアンケート調査は、マインドも大きく落ち込んでいることを示していると指摘した。個人消費の動きについて、複数の委員は、原子力発電所の事故などに伴うマインドの悪化や風評被害、自粛ムードなどにより、外食や旅行などのサービス消費を中心に抑制傾向が顕著となっていると述べた。ある委員は、ヒアリング情報などを踏まえると、企業と家計のマインドが相乗的に悪化し、それに伴って需要が減退するリスクを感じると述べた。』

その一方で・・・・

『これに対し、何人かの委員は、生産や支出の落ち込みは、前回決定会合でも想定していたものであると指摘した。ある委員は、海外経済が回復を続けていることに加え、企業による生産再開に関するミクロ情報が増えていることを踏まえると、3月がボトムとなる可能性が高まっているとの見方を示したうえで、世界的に需要が蒸発し、生産や輸出が数か月にわたって大きく落ち込んだリーマン・ショック後とは状況が異なると指摘した。別のある委員は、自粛ムードは修正されつつあるほか、計画停電の解消に伴い百貨店等の営業時間が平常どおりに戻る中、客足が戻ってきたといった声も聞かれ始めるなど、マインドの悪化が加速している様子はないと述べた。』

まあ実際問題としてはマインドの悪化は歯止め掛かった感がございますな。


で、先行き見通し(というか展望レポート)ですが。

『2011年度前半の経済情勢について、何人かの委員は、供給制約に加えて、原子力発電所の事故に伴うマインド悪化などを受けた需要減退も、景気を下押しするとの見方を示した。』

『電力について、複数の委員は、電力会社による供給力の積み増しが進み、夏季の電力供給の制約が当初懸念されたよりも緩和される可能性が高まっていると述べた。ある委員は、サプライチェーンの再構築については、当初の予定よりも早まるといった情報も増えてきていると述べた。』

『一方、一人の委員は、一部の企業から、代替性の低い部品の供給制約が残るため、年末頃まで工場の本格稼働は難しいとの声も聞かれると指摘した。』

ということで、その後サプライチェーンの回復は比較的順調ですが、電力に関しては浜岡原発の停止というのが入りましたので今後が懸念されますな。

『2011年度後半にかけての経済情勢について、委員は、供給制約が和らいでいけば、海外経済の改善が輸出や生産の増加につながっていくとの認識を共有した。2012 年度入り後について、複数の委員は、輸出・生産から所得・支出への波及メカニズムの働きがはっきりし始めるとの見方を示した。』

というのは展望レポートでも示されている通り。その中ですけれども・・・

『多くの委員は、資本ストックの復元に向けた需要の増加が続くとの意見を述べた。この間、複数の委員は、資源価格の高騰に伴う交易条件の悪化が、経済を下押しする要因となると指摘した。これらの委員のうち一人の委員は、供給制約が相応の期間継続する結果、企業収益や家計所得への持続的な下押し圧力が生じることもあって、景気は全体として、震災前に想定していた回復経路よりも下方にシフトした経路を辿るとの見方を示した。別のある委員は、1月の中間評価と比べれば、2011年度は大幅な下振れで、回復が後ずれする見通しとなっており、更なる下振れのリスクも大きいと述べた。』

ということで、まあ下振れリスクの話の方が多いっちゅう感じですな。


・上振れ、下振れ要因

『まず、実体経済面の上振れ・下振れ要因として、委員は、@ 今回の震災のわが国経済に対する影響、A 震災を契機とする企業や家計の中長期的な成長期待の変化、B 海外経済の動向、C 国際商品市況が一段と上昇した場合の影響、の4点を挙げた。』(機種依存文字入り勘弁)

というのは展望レポートどおりですが、この中身の検討部分が以下続く。

『震災の影響について、委員は、供給面の制約が解消する時期に関する不確実性が大きいとの認識を共有した。』

『何人かの委員は、原子力発電所の事故の帰趨などがマインドを通じて及ぼす影響にも留意する必要があると述べた。複数の委員は、原子力発電所の事故がここまで深刻かつ持続的な問題に発展するとは想定しておらず、不確実性は大きくなっていると述べた。』

『これに対し、多くの委員は、サプライチェーンの修復の見通しが徐々に明らかになっていることや、夏場の電力不足に対しても需給両面から対応が進んでいること、金融市場が著しく緊張する可能性が薄らいできていることなどから、不確実性は依然として大きいものの、縮小方向に向かっているとの見方を示した。』

ということで、多くの委員はこの時点では「不確実性は縮小」だったのですけれども、その後はご案内のように浜岡原発停止の問題があり、更に東電賠償スキーム策定における枝野官房長官の馬鹿発言があったことによって東電の信用リスクスプレッドが大幅に拡大したという要因もございまして、はてさてこの辺りのリスク認識はどうなったのかなというのは気になるところです。

『長期的な観点からみた震災の影響について、ある委員は、原子力発電に対する不安が、先行きのエネルギー政策を通じて、経済全体のコストを著しく変化させる可能性があると指摘した。』

これはその後に浜岡原発の停止が決定しましたから確かにご指摘の通りですわな。

『何人かの委員は、サプライチェーンの障害などへの対応が大幅に遅れたり、日本製品の安定供給に対する信頼低下などが生じた場合、生産拠点の海外への移管が加速したり、国内部品メーカーが海外企業に顧客を奪われたりする可能性があると述べた。他方、ある委員は、震災後の様々な懸念材料が早期に解消方向に向かえば、景気の見通しが上振れる可能性もあると指摘した。別のある委員は、震災の経験を踏まえた生産拠点の地域分散化や省エネルギー化が新たな設備投資などにつながる可能性もあると述べた。』


・物価安定の理解に関して中々お洒落な話が

『W.「中長期的な物価安定の理解」の点検』から。

『委員は、まず、「中長期的な物価安定の理解」を検討するうえでの論点について議論を行った。』

『わが国の消費者物価指数のバイアスについて、何人かの委員は、引き続き大きくないと述べた。なお、複数の委員は、バイアスが基準年から離れるに従い大きくなる性質があることを踏まえ、そうした性質がみられにくい「ラスパイレス連鎖基準方式による消費者物価指数」を補完的に利用するなどの工夫をしていく必要があるとの認識を示した。』

ほほう。

『また、物価下落と景気悪化の悪循環に備えた「のりしろ」について、多くの委員が、これを勘案する必要があると指摘した。ある委員は、わが国の潜在成長率が低いことや、中長期的には財政政策の発動余地が限られることから、ある程度の「のりしろ」を確保しておくことが重要であるとの見解を示した。』

『別の委員は、のりしろは必要だが、多少大きなのりしろがあっても、金融危機などの大きな問題に事後的に対応することは困難であり、事前に金融面での不均衡の蓄積を抑制するよう努めることが重要であると指摘した。』

マクロプルーデンスキタコレ(・∀・)

『人々が安定していると考える物価上昇率について、ある委員は、わが国は物価上昇率が低位で安定する状態が長く続いているため、諸外国と比べて低いと考えられると述べた。この委員は、2008年夏に消費者物価指数の前年比が2%を越えた際、それ以上の上昇が容認され難い様子であったことも付け加えた。』

そうでしたっけ???あまりイメージ無いのですが????

『複数の委員は、物価が安定していると理解される物価上昇率を中央銀行が示すことは、国民の将来の政策金利に関する期待形成に働きかけるうえで有用であるが、数値が過度に注目され、政策発動の制約となると、かえって物価の振幅を大きくすることを指摘し、幅を持って示す現状の「中長期的な物価安定の理解」に基づいた金融政策運営の枠組みは、適切であるとの認識を示した。』

これまたキタコレでありますな(^^)。


・西村副総裁の提案に対して

『X.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『この間、一人の委員が、資産買入等の基金の増額を行うことが適当であるとの意見を述べた。この委員は、原子力発電所の事故が長期化し、津波の被害や電力供給能力の不足とともに複合的な問題となっていることから、企業や家計のマインドが更に悪化し、実体経済への悪影響が強まるリスクが高まっているため、資産買入等の基金を5兆円程度増額することが適当との意見を述べた。』

というのが西村副総裁の提案ですな。

『別のある委員は、経済物価の見通しを踏まえると追加緩和の必要性は高まっているとの認識を示したうえで、現在は、以下の点を更に点検しながら、具体的な措置やタイミングを見極めていくことが重要であると述べた。』

ほほう「追加緩和の必要性は高まる」とな。

『すなわち、この委員は、検討の視点として、市場規模の制約等を踏まえたリスク性資産の買入余地、全体として効果を発揮している包括緩和における各措置の効果とその波及経路、非伝統的手段の持つ副作用、効果発現ラグを踏まえた効果的な政策実施時期などを指摘した。』

・・・・・・・はて、こらまた随分と細かい点を指摘していますが、はてさて「この委員」って誰ざんしょと思うのですが、この指摘の細かさからして少なくとも最近審議委員になった人たちでは無さそうな感じっすな(^^)。

で、4月28日はこういう話をしているのですが、これが前回になって何で取り下げになったのかが微妙でございますな。というのは西村さんが4月28日に指摘した話ってその後改善されてましたっけ???と思うとこれまた微妙でして、電力供給問題に関しては状況が悪化していますが、その一方で足元の景気ウォッチャー調査とか鉱工業生産の先行き見通しなどにみられるようにマインドは好転している感がありますので、4月28日から比較して提案を引っ込めるほどの状況だったかしらねえ??という風に思われます。

ということで、本件に関しては次回の議事要旨も確認したい所(でも提案して無いからそもそも記述が無いかも)であります。

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2011/05/24

○金融経済月報はちと微妙

概要の部分から。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1105.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1104.pdf(前回:4月8日)

・現状判断(総括)

『わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。』(今回)

というのは前回と同じなのですが。

『震災による供給面の制約を背景に、生産活動は大きく低下している。この結果、輸出が大幅に減少し、また、企業や家計のマインド悪化の影響もあって、国内民間需要も弱い動きとなっている。』(今回)

『震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内民間需要にも相応の影響が及んでいる。』(前回)

生産活動の低下に関して「一部の」という文言が抜けて、前回の「相応の影響」という部分の内容が詳しくなったのと、表現が厳しくなったという感じですな。

・先行き判断(総括)

『先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

海外経済の〜とか資本ストックの〜とかいうのが抜けているのですが、これがまたこの部分だけだと解釈に苦労するところでして、海外経済の改善や資本ストックの復元というのが現状でどちらも怪しげになっているというのが背景にあってその辺の部分を削ったようにも見えるのですが、その後の文章とか、月報の本文を読みますと、必ずしもそうではなくて、単純に回復に対する自信度が上がったので余計な説明を削除した、と考えるのが妥当に見えます。

というのはあたくしがそう思っているだけなのでよー知らんがの。

・需要個別項目

『生産は、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。こうした状況になれば、海外経済の改善を背景に、輸出も増加に転じるとみられる。設備投資、住宅投資、公共投資も、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。この間、個人消費も、生産活動が回復するにつれて、家計のマインド改善もあって、持ち直していくとみられる。』(今回)

『生産は、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。こうした状況になれば、海外経済の改善を背景に、輸出も増加に転じるとみられる。設備投資、住宅投資、公共投資も、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。この間、個人消費も、生産活動が回復するにつれて、持ち直していくとみられる。』(前回)

ということで、さっき書いたような背景としては、ここの個別需給項目に関する説明部分がものの見事に変化が無い(家計のマインドの部分だけ違うが)という所でございまして、展望レポートでは下振れリスクに関して強調する形でしたが、月報の標準的な見通しに関しては4月からそんなに変わっていないという中々微妙な内容となっています。


・物価

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続け、概ねゼロ%となっている。

物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスに転じていくとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、下落幅は縮小を続けている。

物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくとみられる。』(前回)

現状、先行き共に今回目立つのは「マクロ的な需給バランス」の話が抜けた事。以前声明文から「マクロ的な需給バランス」の話が抜けたという話をして、これは今後の金融政策正常化において需給バランスに過度にフォーカスしないようにという話でしょうなあという話を致しましたが、今回ついに月報からも「マクロ的な需給バランス」の文言が削除されましたな。

物価に関する表現につきましては、基本的に現状、先行き共に上方修正になっています。


・金融に関しては今回は割愛

特に政策インプリケーションも無いと思いますのでめんどいから割愛。


・本文に関しては「現状判断を下げて先行きを変えない」

一々引用すると長くなるので割愛します(ので皆さん見てちょ)が、本文ではもうちょっと詳しく各項目の話をしていまして、そこを見ますと雇用・所得以外の項目に関しては4月の月報から先行き見通しが変わっていないです。

現状判断に関しては生産、個人消費に関しても判断が下がっているのですが、これらの項目に関しては先行き見通しを特に下げるでもなく、4月月報時点の見通しを継続しています。


と言う感じで、まじまじと月報を比較して読むと「存外強気じゃネーノ」という感じもしてくるというのがこれがまたややこしい感じではございます。

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2011/05/23

○声明文は基本的に展望レポートから横ばいかな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110520a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110407a.pdf(4月7日声明文)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104a.pdf(4月28日展望レポート)

直接比較するのが難しいのですが、ニュアンスで勘弁。

・現状判断

『わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。すなわち、震災による供給面の制約を背景に、生産活動は大きく低下している。この結果、輸出が大幅に減少し、また、企業や家計のマインド悪化の影響もあって、国内民間需要も弱い動きとなっている。この間、金融環境をみると、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続け、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。すなわち、震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内民間需要にも相応の影響が及んでいる。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続けている。震災後の金融動向をみると、金融機能は維持されており、資金決済の円滑も確保されている。金融市場は、全体として安定している。この間、金融環境は、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に、一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。』(4月7日)

4月7日と比較するとたぶんサプライチェーンと電力供給の確保(その後の浜岡の影響があるような気がするんだが・・・・)に関する点が改善したのでその辺りの書きっぷりがあっさり味になっているような気もするが、まあ基本的には展望レポートでも震災の影響に関してサプライチェーンが云々の話があるので、まあこの辺は金融経済月報も含めて確認する必要があるかなという感じですわな。

なお、展望レポート(基本的見解)では本文5ページ以降からの部分になるのですけれども、引用しにくい(上に引用すると量が無茶苦茶膨大になる)のでスルーである。


・先行き判断

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、小幅のプラスに転じていくとみられる。以上を踏まえると、日本経済は、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくと考えられる。』(4月7日)

4月7日との比較をしますと、物価に関しては「当面」の文言が抜けていまして、こちらが上方修正、先行きの回復パスに関しては「2011年度後半以降」というのが入ってこちらは下方修正になっていますが、最後に「以上を踏まえると、日本経済は〜」というのが申し訳のように入っていまして、しかもそこに「やや長い目でみれば」と入っています。この部分をどう解釈するのが微妙(これまた金融経済月報を確認という感じです)なのですが、回復の確信度が上がったと見るのか(わざわざ入れているから)、回復パスの時間がやや伸び気味(「やや長い目で見れば」云々があるので)と見るのかがちと判らんです。

で、展望レポートとの比較ですが。

『以上のような動きを背景に、わが国経済は、2011 年度前半は、下押し圧力が強い状態が続いた後、年度後半にかけては、輸出や生産がはっきりとした増加に転じるもとで、年度前半からの反動もあって、景気回復テンポが高まる可能性が高い。2012 年度入り後は、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムの働きがはっきりし始めるとともに、資本ストックの復元に向けた需要の増加も続くため、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』(4月28日展望レポート)

ということで、年度後半からの回復という話は展望レポートと同様になっているのですが、この辺りの表現が横ばいなのか若干弱め(今回の声明文の方が上記の展望レポートよりもトーンが強くないけれども、これは展望レポートと声明文の違いに起因する可能性がある)なのは少々気にならんでもない。


・リスク要因

まず声明文比較で4月7日との比較。

『リスク要因をみると、景気については、震災がわが国経済に及ぼす影響の不確実性が大きい。海外経済については、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けて、新興国・資源国の経済が上振れる可能性がある一方、米欧経済は、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、国際金融市場の動向や、一頃に比べて低下しているとはいえ、米欧経済の先行きを巡る不確実性がある。さらに、震災がわが国経済に及ぼす影響については、不確実性が大きい。』(4月7日)

まあこの部分に関しては下がったなあという感じでして、上振れ要因の海外経済に関する部分が「上振れる『可能性がある』」と下がっていますし、欧州ソブリン問題についての言及や米国経済のバランスシート調整に関する言及が入っていまして、海外経済に関する見方が下がっていますわな。

『この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。とくに、当面は、震災の影響を中心に、下振れリスクを意識する必要がある。(物価に関しては変化が無いので引用割愛)』(今回)

『この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。』(4月7日)

ということで、まあ4月7日から比較して下がっているのは当然ちゃあ当然(何で展望レポートまで引っ張ったんだかという気はするが)。で、展望レポートですけれども9ページ以降になりますが、海外経済の動向に関してはリスクの3番目になっています。

『第3に、海外経済の動向である。先進国経済の動向をみると、米国経済については、先行きの不透明感が昨年秋以降後退しているが、他方で、バランスシートの調整圧力は引き続き経済の重石となって作用している。欧州については、周縁国のソブリン問題を巡る懸念が、金融市場の動揺を通じて、実体経済活動をも下押しし、それらが相乗的に悪影響を及ぼし合うこととならないか、注意が必要である。』(4月28日展望レポート)

『一方、多くの新興国・資源国では、金融引き締めの動きが続いているが、景気の過熱感やインフレ懸念が十分に沈静化されている状況ではない。このため、景気の振幅が拡大し、より長い目で見れば、持続的成長を損なう可能性もある点には留意が必要である。』(4月28日展望レポート)

ということで、海外経済に関しては基本的に展望レポートの線になっています。これは字数の関係だと思いますが、展望レポートでは上下両方の話をしているのですが、声明文では先進国経済に関しては下振れ部分の話、新興国経済に関しては上振れ部分の話しかしてませんが、多分そこに他意はないと思います。



○ところで西村副総裁はどうしたんですか????

前回貫禄の「基金拡大」提案を行って全力で否決された西村副総裁ですが・・・・・・

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注1))。』

『(注1)賛成:白川委員、山口委員、西村委員、野田委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、森本委員、白井委員。
反対:なし』

・・・・・・・あらら、今回は西村さん基金拡大の提案して無いの????

ということで、こらまた不可解な話なのですが、素直に捉えると「前回提案時よりも景気の先行き見通し(またはリスク認識)が上方修正された」という話になるのですが、はてそんなに凄く経済見通し良くなったでしたっけ???という感じはしますがな。

いやまあ確かに浜岡の話は措いとくと、サプライチェーンの回復が割と順調なのと、電力供給に関しても夏場のピークが何とか回りそうな雰囲気も漂ってきている(どう見ても浜岡で状況は全国的な問題になったような気がするのだが・・・・)というのはありましたけれども、提案引っ込める程か????って感は致します。

まあ本人じゃないと判らない話ですが、今回の行動は正直意味不明(前回もまあイミフではありましたが、まあ前回の方が言いたいことはわかったので)でございまして、はてさてこれは何とした事ぞという所でございまする。今回引っ込める位なら前回出さない方が良かった訳で、今は東電絡みで政治様からスルー気味の日銀ですが、また矛先が回って来た時に「日銀は前回の緩和拡大提案が出なくなるとか、経済に関する認識が極めて甘く危機感が無くてケシカラン」と言われる格好の燃料投下になっていると思うのでございますけどどうなんでしょうかねえ。

#ま、こうなったのに何故か6月会合でしらっと全員一致で基金拡大とかやっても不思議じゃないのが日銀クオリティではあるのですけどね(^^)

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2011/05/11

○その他少々

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110510a.htm/
日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請について
2011年5月10日

『日本銀行は、第126回事業年度(平成22年度)決算において、財務の健全性確保の観点から、当期剰余金の5%相当額(注)を超える15%相当額を法定準備金として積み立てる方針を決定し、本日、財務大臣に対して日本銀行法第53条第2項に基づく認可申請を行いましたので、お知らせします。』

ということで自己資本増強するそうな。まあ日銀の自己資本比率がどうのこうのとか本来的に言えばどうでも良い話だとは思う訳ですが、色々とリスク性資産買っている中で真面目に引当しないといけない事態になった時に債務超過とかになって、それが大々的に報道とかされても何ですから程度の話ではございますわな。


あと、昨日の決定会合議事要旨ネタの補足でありますが
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110407.pdf

財務省の出席者からこんな話があったのね。

『復興財源を日本銀行の国債引受けにより調達するとの報道等があるが、政府としてそのような検討は全く行っていない。財政法第5条において、歴史的な反省から、公債の市中消化の原則を定めていること等を踏まえれば、国債の直接引受けについては慎重に考えるべきであると考えている。』

ちなみに、財務省から今回の決定会合に出席したお方はこの2名ですので発言者はこのお二方のどちらかですな。

『4.政府からの出席者:

財務省 木下康司 大臣官房総括審議官(6日)
櫻井 充 財務副大臣(7日)』

>政府としてそのような検討は全く行っていない
>政府としてそのような検討は全く行っていない
>政府としてそのような検討は全く行っていない

・・・・・なんつーかね、あの日経新聞ネット版3月31日の「政府案の内容が判明」(既にネット上では記事が削除されていますので念の為)というのは何だったのかという話でありますが、こういうのは風雪のルルに該当しないのか(法令諸規則に照らし合わせると該当しないのですが)と毎度の事ながら思うのでありまふ。

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2011/05/10

○4月第1回目の決定会合議事要旨から少々

4月の第1回の決定会合議事要旨が出てたのでまずはその辺から少々。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110407.pdf

・震災の生産に与える影響に関する執行部レビュー部分をメモメモ

『T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要』の部分についてはFRBやBOEの議事要旨に比べて基本的にあっさり味の風味となっているのが仕様になっていますが、次回以降の推移を見るという意味で今回はここの中にある震災の影響に関する記述をメモしておきます。つまりこの会合以降に実施された支店長会議や、その後のフォロー状況を受けて4月末の決定会合でこの辺りの記述がどうなっているのかというのを確認したいと思います。ということで今日はメモね。

『4.海外金融経済情勢』から。

『なお、日本の震災の影響については、短期的には、自動車や電機関連におけるサプライチェーンの障害が、アジア諸国を中心に、生産活動を下押しする可能性がある。今後、生産ラインの復旧や製品代替が進むことで、震災の影響は長期化せず限定的なものにとどまるとの指摘もあるが、この点に関する不確実性は高い。』

なるほろ。

『5.国内金融経済情勢』から。

『生産は、震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の業種や地域で大幅に減少している。企業からの聞き取り調査などによると、震災により直接被害を受けた工場の生産停止に加え、被災地以外の工場においても、自動車を中心に、被災地工場からの部品供給の停止や停電の影響などから、大幅な減産を余儀なくされた先が多い。先行きの生産については、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。』


・では委員会の議論に関してですが

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『委員は、今回の震災の影響を中心に、わが国の経済情勢について議論を行った。わが国経済の現状について、委員は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にあるとの認識で一致した。』

そらそうや。

『多くの委員は、震災の直接的な影響として、東北地方を中心に生産設備が大きく毀損されていると述べた。また、委員は、被災地の工場で生産されていた部品や素材の供給に大きな制約が生じたため、被災地のみならず、広い範囲にわたって生産活動が低下しているとの認識を共有した。何人かの委員は、こうしたサプライチェーンの障害による生産活動の停止や縮小の動きは、自動車を始め、一般機械、電子部品、化学など、幅広い業種で生じていると指摘した。更に、発電設備の毀損に伴う電力供給の制約が、関東・東北地方を中心に、生産活動の下押し要因となっているという点でも、委員の認識は一致した。そのうえで、委員は、現時点で全貌を把握することは難しいものの、ミクロ情報などを踏まえれば、3月の生産は大幅に減少した可能性が高いとの認識で一致した。』

まあそういう経済統計が最近になって出て参りましたな。

『委員は、こうした生産活動の低下が、輸出や国内民間需要に相応の影響を及ぼしているとの認識を共有した。このうち、個人消費の動きについて、多くの委員は、3月の新車登録台数が前月比3 割近く落ち込んだことや、家電販売や百貨店売上高、外食、旅行サービスの売上などが震災後に大きく減少していることを指摘した。複数の委員は、停電や商品不足の影響に加え、自粛ムードの拡大や、原発問題などに伴うマインドの悪化が消費の減少につながる需要ショックの様相が一部に表われてきているとの認識を示した。』

さいですな。

『わが国経済の先行きについて、委員は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続くものの、その後は、供給面の制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、緩やかな回復経路に復していくとの認識を共有した。何人かの委員は、リーマン・ショック時のように需要が蒸発している訳ではないため、今後、供給面の制約が解消していけば、基本的には、需要に見合うかたちで経済が回復していくとの見方を示した。』

まあ問題はその供給面の制約がいつ解消するのかというのと、解消するまでの間に生産の落ち込みが雇用・所得などから需要へと効いて来るマイナスのスパイラルになるかどうかちゅうことですが、その辺に関する議論も当然ながらございましたのでその続きを引用。

『供給面の制約解消に向けた動きとして、複数の委員は、既に多くの企業が、被害の小さい生産施設の再稼働、西日本の生産設備の活用、代替調達先の確保など、様々な取り組みを進めていることを指摘した。何人かの委員は、サプライチェーンの復旧に向けた努力の結果、夏前には、多くの企業で生産体制を再構築できる可能性があるとの見方を示した。もっとも、多くの委員は、今後、サプライチェーンの復旧が順調に進んだとしても、夏場にかけて、電力のピーク時需要予想に対する供給能力の不足が問題となり得るため、現時点では、供給制約が全体として解消する時期を見極めることは難しいと述べた。』

でまあその後も続くのですがちと端折りまして、こういう指摘をしている委員もいましたということで。

『この間、何人かの委員は、先行きの設備投資や個人消費については、供給制約の解消時期や原発問題の帰趨に影響される面もあると述べた。ある委員は、こうした問題が長引けば、マインド面への影響や、企業収益や家計所得への持続的な下押し圧力を通じて、景気は全体として、震災前に想定していた回復経路よりも下方にシフトした経路を辿る可能性が相応にあると指摘した。』

ということで、まあこの辺りの部分に関して「何人かの委員」も指摘しているのでござんして、そーゆー意味では展望レポートのメインシナリオで出てきた数字に関してだけ言いますとちょっと強いんじゃネーノという結果になっていましたけれども、まあ展望レポートの基本的見解にある下振れリスク満載感の説明文章やら総裁会見における先行きリスク警戒強調トーンというようなテイストが基本線なのではないかとゆー感じもせんでもないですなあと言うことで。

『以上の議論を経て、委員は、震災がわが国経済に及ぼす影響については、不確実性が非常に大きく、今後とも、供給制約の解消に向けたプロセスや、内外の需要動向など、様々な視点から丹念に点検していく必要があるとの認識を共有した。』


それから『日本の震災が海外経済に及ぼす影響』に関する部分もあります。

『委員は、日本の震災が海外経済に及ぼす影響についても議論を行った。ある委員は、日本からの素材や部品の調達が困難化するなど、サプライチェーンを通じた影響は国際的にも及んでおり、米国やアジアの新興国などでは、自動車など一部業種において、生産計画の下方修正を余儀なくされていると述べた。』

『もっとも、別のある委員は、アジア新興国については、生活必需品などの日本向け輸出が増加するとの指摘もあり、現時点では、プラスとマイナスのどちらの影響が勝るかを見極めることは難しいと述べた。このほか、複数の委員は、震災直後に不安定化した米欧の長期金利や株価が、その後、落ち着きを取り戻し、概ね震災前の水準に戻ったことを踏まえると、グローバル投資家は、日本の震災が世界経済に与える影響は限定的との見方を強めているのではないか、との見解を示した。』

ということですが、まあこの辺りに関してもその後状況は変化していると思いますので、この後の流れでどういうレビューや見通しになっているのかというのがこれまた今後の議事要旨での議論の推移を見たいと思います。


・供給制約の問題は金融政策では解消できませんという話がしらっとありまして(^^)

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『委員は、前回会合で決定した「資産買入等の基金」の増額の効果についても議論を行った。』

ということで、まあ要するに一定の効果が出ましたなという話をしているのですが、その続きに微妙にお洒落な指摘が(^^)。

『そのうえで、何人かの委員は、現時点では、こうした金融市場の動きが実体経済に及ぼす影響を含め、基金増額の効果を見極めていくことが大事であるとの認識を示した。複数の委員は、供給制約自体を金融政策で解決することはできないが、日本銀行としては、供給制約に起因するマインドの悪化や企業収益、家計所得の減少が、経済に対して持続的な下押し圧力を及ぼしたり、それが顕在化する可能性が高まったりすることがないか、今後ともしっかりと点検していく必要があると述べた。』

>供給制約自体を金融政策で解決することはできないが、
>供給制約自体を金融政策で解決することはできないが、
>供給制約自体を金融政策で解決することはできないが、

・・・・・・そらまあ資金供給オペ何ぼやっても電力供給ぽぽぽぽーんとかサプライチェーンがぽぽぽぽーんとか言う訳には行きませんからねえ(−−;

『このほか、多くの委員から、今回の震災の影響の大きさや被災地の金融情勢を踏まえ、日本銀行として、金融面から更なる貢献を行うことを検討すべきとの問題意識が示された。何人かの委員は、中央銀行が有する機能を踏まえると、被災地における金融機関の活動を流動性の面から支援し、金融機能の円滑な発揮を支えることが考えられると述べた』

>中央銀行が有する機能を踏まえると、
>中央銀行が有する機能を踏まえると、
>中央銀行が有する機能を踏まえると、

・・・・・・つまり中央銀行としては資金の目詰まりだけは起こさせ無いようにしますが、それ以上の話は政府や民間などが実際に行う復興事業に依存しますわなという極めて当然の話でありますが、どうみても政府がアレなのでございまして、日銀としても中々頭が痛いのではないかと拝察する所ではございます。


・ということで検討指示が出た件の基本理念ですが

その続きの部分から少々。

『これらの点を踏まえ、委員は、現在の市場への潤沢な資金供給に加え、被災地金融機関に対して長めの資金供給を行うことにより、今後予想される復旧・復興に向けた資金需要への初期対応を資金面から支援していくことが適当であるとの認識で一致した。何人かの委員は、こうした目的に照らせば、資金供給を極力早期に実施することが必要であり、それにより、被災地金融機関の安心感を高めることにも資すると付け加えた。』

『貸付総額について、多くの委員は、被災地金融機関の安心感を高める観点から、十分な規模を確保することが適当であるとの認識を示した。』

『このほか、何人かの委員は、金融機関の安心感を醸成するような、貸付条件面での一定の配慮が必要との認識を示した。』

というような感じで出てきた具体策が先日の会合で出てきましたという所ですわな。


・国債引受問題について

最後にこれまたしらっとこんな話が(^^)。

『また、ある委員は、最近、復興財源を捻出するため、日本銀行が国債を引受けるべきとの主張が一部に聞かれるが、そうした取り扱いは、初めはうまくいったようにみえても、早晩、激しいインフレを招き、国民生活に大きな打撃を与えたというのが歴史の教訓であり、この点について、広く理解を得る努力を続ける必要があるとの認識を示した。』

ほほう。

『これに関し、複数の委員は、中央銀行による国債引受けが行われ、通貨への信認が毀損すると、長期金利の上昇や金融市場の不安定化を招き、現在、円滑に行われている国債発行が困難になる惧れもあるとの認識を示した。』

通貨への信認というよりは、市場での国債発行というモニタリング機能を喪失する事によって、財政赤字が野放図に拡大して、その結果財政維持可能性に対する懸念が極めて大きくなるという事の方が問題だと思いますけどね。

『このうち一人の委員は、通貨への信認は、わが国の金融・経済にとっての重要なインフラの一角をなすものであり、国民生活の安定のためにも、そうしたインフラをしっかりと維持することがきわめて重要であると付け加えた。』

まあ本当のところ委員会の人たち(というか金利市場の人たちもそうなのですが)が懸念しているのは「通貨への信認」よりも上で書いたような「放漫財政による財政インフレ懸念」だと思うのですが、決定会合の議事要旨でそういう書き方もしにくい(中央銀行が財政運営に向けた政治の取り組みについて思いっきり懸念を示しているという読まれ方になって、ただでなくさえ揉める所に更に揉め事の燃料投下をする結果になる可能性があるから)のかなあとは思うのですけど、あまり「通貨の信認」を前面に出すと「庭先論」と言われる可能性がある(というかどうせ批判する人はそう言うでしょ)のでこれまた匙加減もうちょっと考えた方が良いのではないかとも思いますけどどうなんでしょうかね。

ということで、4月7日の決定会合議事要旨から少々なのでありました(少々にしては引用が多かったですかそうですか)。

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2011/05/09

○後半は非常に良いのだが前半部分の市場レビュー部分がだなあ・・・・・

毎年お馴染みの金融市場調節の日銀レポートがこの前出てましたが。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2011/data/ron110425a.pdf

今回のレポートなのですが、後半と言うか最後のところに「参考」ということで、本文45ページ(PDFで46ページ)以降に色々と解説がありまして、そのまま最近の金融調節制度に関するテキストに使えるという大変にアリガタヤなものになっています。

ちなみにリーマンショックとかQEとかCEとかの前の時代になりますけれども、基本的な部分はこちらのテキストあたりですかね。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2006/data/ron0606c.pdf
主要国の中央銀行における金融調節の枠組み(2006年6月)


んでまあそれはそれで良いのですが、本文2ページ目の『1.概観』の所を見て既にいやーな予感のするあたくし。

『年度を通して、無担保コールレート(オーバーナイト物)は金融市場調節方針に沿って推移し、日銀当座預金残高は増加傾向を辿った。10月5日に導入された「包括的な金融緩和政策」(包括緩和政策)により、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準が「0.1%前後」から「0〜0.1%程度」に変更されたことを受けて、同残高の増加ペースは速まった。』

・・・・・・?????

で、その当座預金残高の推移でございますが、本文21ページに図表37というのがありまして(図表なので引用できませんから実際に見てちょ)、そこの説明及びグラフを見ていただきたい訳ですが。

本文20ページのケツから始まる『(2)日銀当座預金残高の動向』の説明になるんですけどね。

『各種の政策により、日本銀行のバランスシートの資産サイドが拡大するもとで、負債サイドでは、日銀当座預金残高が増加傾向を辿った。9月末時点の日銀当座預金残高は20.2 兆円と、前年同期と比べて2.6 兆円増加した。その後、包括緩和政策を導入し、年度末にかけては東日本大震災を受けて極めて潤沢な資金供給を行ったことから、日銀当座預金残高は3月22日から3日連続で過去最高水準を更新した(ピークは3月24日の42.6兆円。なお、従来のピークは2004年3月31日の36.4兆円)。2011年3月末の日銀当座預金残高は40.8兆円と、前年同期と比べて17.3兆円増加した(図表37)。』

・・・・・・・はて、包括緩和政策を導入したのにその間オペ残ろくすっぽ増やさないでGCレートが強含みになるの放置プレイして短国のレート上昇して2年とかのレートも上昇して声明文詐欺とか言われた(などと言ったのはあたくしだけですけれども^^)訳ですし、図表の方もまさにそういう感じで包括緩和実施後当初は当座預金残高を別に拡大しないで緩和的じゃなくて中立的な調節をしてましたというのが判る流れだと思うのですけどね。

あの時は2年金利が0.2%台に上昇した所で基金買入オペのオファーが少し早めになってきたのですが、12月14日の1年TB入札が大流れ(平均0.1763%の足切り0.1893%)した直後の資金供給オペからこれでもかとオペの打ち込みが始まりまして、年末に向けてやっと金利が低下してくれた訳(まあそうしたら今度は打ち込み大会でクソ低下しましたが^^)でして、12月15日に何か知らんですけれども声明文詐欺だの何だの悪態書きまくった覚えがある訳ですよね。

然るに、市場概況に関する説明の『2.金融市場動向と金融市場調節運営』の『(2)2010年10月から2011年3月10日まで』の説明の部分になりますが、本文の7ページ辺りを見ますとですな、

『GCレポレート(S/N物)をみると、11月上旬から中旬にかけては、都市銀行による国債の売却とそれに伴う一部証券会社の在庫負担の高まり等により、日によっては0.130%前後まで強含んだ。11月下旬以降は、資金調達サイドがオペ等によるターム物での調達にシフトする中で、レート上昇圧力は徐々に減衰し、12月以降は、概ね0.100〜0.110%での推移となった。』

えーっと、包括緩和政策を実施して『第3に、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促していくこととした。』(10月5日の包括緩和実施時の声明文から(追記:リンク間違ってたので直しました))という事で「長めの市場金利の低下を促す」としたのですから、長めの市場金利のベース金利となるGCレポレートが上昇したら包括緩和政策における声明文にある「長めの市場金利の低下を促す」になっていない訳で、従いましてこんなにしらっと「都市銀行が国債売却したからGCレートが強含みました」とかしらっとレビューされても困る訳でありまして、

『国庫短期証券利回りは、長期金利の動きが波及するかたちで、期間の長いものを中心に、強含んだ(図表13)。』

とまあこちらもしらっと流していますが、11月にGCレートが跳ねたのを放置した結果として「包括緩和政策で長めの市場金利の低下を促すと言ってたけど別に調節はそうなっていないよね」という日銀のスタンスに対する疑念が生じたから12月になってGCレートが下がってきても中々市場が信用しなくなった(結局包括緩和のスタンスを再確認したのは12月14日以降にバンバン行った資金供給と基金買入と通常のオペを使って短国買入を連発しまくった所だわな)ので、短国レートが中々サガランチ会長になって最後に1年TB入札がマーライオン状態になったわけでございますが、と現場労務者としては記憶しているのですが、これはまた随分なレビュー。


いやね、そらまあ自分らが包括緩和声明文詐欺してましたとか言えないでしょうし、まあディレクティブとの関係だけで言えばこの間のオペレーション自体はディレクティブに沿ったもの(これまた以前にも書きましたが、そもそも誘導金利水準がレンジになっている上に、ディレクティブで誘導することになっているのは無担保コールレートであって、それに対して包括緩和の声明文には基金買入の趣旨として「長めの市場金利の低下を促す」というのがあり、じゃあその「長めの市場金利の低下」に必要なのは何かというとそっちのベースレートはGCレポレートであるという時点で曖昧さがあるので、金融調節部署だけの問題というよりはこれはその辺りを明確にしていなかった政策委員会の問題でもある(オペレーション動向見てると昨年12月の決定会合以降は少なくともGCレポレートを無駄に跳ねさせないような調節を行っているのですが、1月議事要旨を見ると調節スタンスが変わったと見られた点について複数の審議委員が文句垂れているのでその辺が明確になっていたのかどうかがよく判らないままでございます)とは思いますが。

ただまあ何ですな、こういう表に出るレビューでそういうややこしい話はしにくいというか出来ない面があるのは判らんでもないですが、年月が下るに連れてそういう当時の事情というのが関係者の記憶から飛んで行ってしまいますし、そもそも担当が入れ替わるに連れてその辺りの話も忘却されて行きますので、こういうレビューがそのまま「当時有った事」となってしまうのが如何なものかと申しますか、教訓が生かされないですよねという風に思う訳ですよ。

表に出す必要はないとは思いますが、少なくとも中ではこの当時の「包括緩和声明文と調節の間のコンフリクト(あえて詐欺とは申しません^^)」に関してレビューをして頂きまして、まあ似たようなターム物金利誘導的な施策をやる破目になった際に同じようなこと(中立的調節を継続してターム物金利誘導が出来ないみたいな)が起きないようにして頂きたいと思います。

それから、当時の調節で言えば、金利が跳ねた分を戻すために通常以上に資金供給だの短国買入をバンバン実施しないと中々金利が落ち着きませんでしたが、いわゆる緩和的政策を実施しようという時には、一旦金利が跳ねてしまうとそれを元に戻すのに余計なオペを沢山打たないと沈静化しなくなってしまう、というのも教訓として導き出されたかと存じますが、これってリーマンショック以降のターム物やオープン金利の上昇時にも似たようなケースがあって、結局企業金融特別オペにCPと社債の買入という超強力オペを実施して逆に今度はCP金利が国債金利と一部で逆転というような事までやる事になったというのが近い教訓としてあったと思いますのですが、あたくしが微妙に懸念するのはその辺りのレビューを今回も少なくとも内部的にはちゃんとやっていただかないと、次に似たようなケース(が起きない方が良いに決まってますが、起きるときには起きますので)が起きた場合にまたまた「早期の市場の動揺を市場機能と思ってスルーしてたら火がついてしまい火消しのコストが余計に掛かってしまった」的な状況にならないようにして頂きたい物です、と切に思う次第なのでございます。


・・・・・ああでもないこうでもないと書いていたら時間がなくなりましたので本日はただの悪態で終了しちゃいましたが、毎年出るこのレポートに関しては色々な説明の部分(今回だと本文16ページから始まる『3.金融市場調節運営と日本銀行のバランスシート』およびその関連図表あたり)がチャーミングだったりしますので、まあ中々でありますので一読推奨ですが、オペがアレで金利が跳ねた的な事はどうも死んでも書かないのが最近の仕様みたいなのでそこだけはご留意ありたし。

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2011/05/06

○展望レポートネタで抜けてた件の補足

月曜にネタにした展望レポートネタですけど慌てて書いたので抜けがございましたので(汗)補足をば。

・メインではネガティブフィードバックの話は無いです

そらまあメインでそこまで置く訳には行かないというのはあると思いますけれども・・・・・

『今後の経済の見通しは、電力を始めとする様々な供給面の制約が、いつ、どの程度のペースで解消していくかに大きく依存する。そのうえで、先行きを展望すると、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状況が続くと考えられる。』

『すなわち、企業は、被災設備の復旧、代替施設での生産、代替調達先の確保などを進めつつあるが、サプライチェーンの再構築にはある程度の時間を要するとみられる。さらに、電力の供給不足の問題は、電力需要がピークを迎える夏場には経済活動に対して相応の制約となる可能性がある。しかし、秋口以降は、サプライチェーンの再構築も一段と進むとみられることから、電力の需給逼迫が改善に向かうもとで、供給面の制約は和らいでいくと見込まれる。』

『そうした状況になれば、海外経済の改善が輸出や生産の増加につながり、わが国経済の回復を支える原動力として、再びはっきりと作用してくる。さらに、震災によって毀損した資本ストックの復元に向けた動きも、次第にわが国経済を押し上げる方向で寄与してくるものと考えられる。』

というのがメインの見通しになっています。まあ昨日引用したようにヘッジクローズてんこ盛りですし、下振れ要因の中にネガティブフィードバックに関わる部分も(あまり強烈には書いてないけど)指摘しているのでバランスは取っていますけれども、メインだけ見てると妙に明るいですなあという感じでございます。


・物価安定の理解について

『「中長期的な物価安定の理解」については、今回の会合において点検を行った結果、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度である。」となった。』

という事ですが、前回の展望レポートではどうなっていたかと言いますと・・・・・

『 現在、「中長期的な物価安定の理解」については、「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている」としている。』(前回の展望レポートでは脚注扱いです)

ということで、今回「中心が1%」をより明確化したという結果になっていますが、これはまあ物価に関してタカ派な須田さんが退任した事が思いっきり影響しているのではないかと思いますけれども、これはこれで一応「1%」という数値の明確化になったと言うことにしておいて良いかと思います。

ただまあ物価安定の理解に関しても「数年間の中長期的な水準」に関する話でありますので、実際問題として物価指数が上昇基調になった時には足元が1%手前であっても別に金融政策を中立に持っていくために包括緩和解除とか平気でできるというのが「物価安定の理解」+「2つの柱」でありますので、だから時間軸が伸びたとか伸びないとか議論するのもちと微妙な気がする。

ということで、肝心のメインの話と物価安定の理解に関する部分が抜けていたので補足させていただきましたどうもすいませんすいません。

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2011/05/02

お題「決定会合レビュー」

大型連休だがネタがてんこ盛りで追い付かない追い付かない(汗)。

○西村副総裁の緩和提案とな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110428a.pdf

決定内容は兎も角、脚注がアレ。

『(注1)本日の金融政策決定会合では、西村委員より、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、45兆円程度とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:西村委員、反対:白川委員、山口委員、野田委員、中村委員、亀崎委員、宮尾委員、森本委員、白井委員)。』

・・・・・・・・ほほう。

先日横浜で行った講演および会見でサプライチェーンの回復に関して白川総裁が先月7日の会見で行った発言に対して微妙に気を使いながらダメ出しをしていたのを先般ネタにしてみましたが、まさか今回の緩和提案に繋がる話だったとは思っておりませんでして、ネタにしておいて良かったと思うのでありました(^^)。

票決の際に反対票を入れる、というのであれば岩田一政さんが副総裁の時にもそのようなケースはありましたが、副総裁御自らが独自提案をして思いっきり否決されるというケースは初めて見たと思います。

まあ色々と勝手に深読みする事は可能ではございますが、須田審議委員が退任したことから鉄砲玉(?)役をやる人がいなくなったので突如乃公出ずんば状態になって暴れん坊将軍スイッチが入ったのか、それとも追加緩和実施に向けた先駆けの動きでもしているのか、更には7日の会見での白川総裁の発言の翌週に実施された全国支店長会議後に行われた支店長の会見で、名古屋支店長の前田純一さん(当時)が自動車製造に関するサプライチェーンの回復時期について白川総裁の発言よりも厳しい見方(まあ要するに微妙にダメ出しですが)を示していたように、支店やら個別企業ヒアリングで上がって来るミクロ情報からすると経済状況はかなり厳しいんではないかという行内の見方があって、まあそのあたりの空気を読んで「ここは提案しないと!」と急に頑張ったのか、はたまた今回は誰も追加緩和ネタを予想していなかったし、圧力も無かったということで、今回こそは追い込まれる前に自ら突っ込んでやるとゆー事で西村さんが急にスイッチ入った/西村さんを鉄砲玉にした、などなど(長いね)色々と妄想は膨らむのであります。

まあ執行部の1名がわざわざ違う提案をして否決されるってゆーのは、今までの日銀からすると結構変わった状態というか異様な状態でありまして、いやまあ別にそれがイカンという事ではなく、色々な意見が出てきて結構だと思いますが、執行部が割れている観をわざわざ出すと言うのが中々斬新でありました。これが全体の意思の中で出ているのか、単に西村副総裁に急にスイッチが入って突っ込んだ(あるいは須田さんの生霊が急に乗り移った^^)のかによってもイメージ違いますけど、まああんまり決め打ちはしなくて良いかなと思います。


で、提案内容が良く判りませんが、まあ普通に考えると国債とTBなどの買入拡大の提案をしたんでしょ(ETFとかもあるかもしれませんが)とゆー風に思いますです。あたくしも何度か申し上げたような気がしますが、2次補正以降の国債増発が確実視される中で、日銀も何か経済下支えに協力という話になった場合に、輪番オペ増やすとこれがまた後から減らすの大変です(FRBの出口政策においてMBSやら長期債の売却が市場に混乱を与えずに進行した場合、日本でも輪番で買ったものを買いすぎたから売却攻撃が可能という話になり、ホイホイと輪番を増やしたり減らしたりできますなあという話もこの前書いたですけど、まあ現状では輪番の買入額を減らすと言っただけで大騒ぎになりそうですので輪番は結構硬直的になってしまいますわな)ので、そーゆー意味では基金オペの長期国債買入であれば、残存も2年ですし、包括緩和政策を解除するときには大手を振って買入停止できますし、まあ日銀的ロジックからしても拡大しやすいとゆーことでござんす。

つーことで、まあ(勿論景気次第ではありますが)5月か6月位に基金買入の拡大(今回は国債中心になるでしょ)というのが具体化するかもしれませんわなあという感じです。


○展望レポートはヘッジクローズ満載

29日に展望レポートの全文(基本的見解を含む)が公表されていますが。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104a.pdf(基本的見解)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104b.pdf(全文)

めんどいので基本的見解をネタに少々。

今回の展望レポートですが、出来上がりの数字は「実質GDP見通しは11年度を下げているけれども12年度は11年度の逆ゲタも乗っけているので水準的に1月時点の想定からそんなに下げていない」けれども「物価の見通しは11年度を上げて12年度も上げている」という事でございまして、「出来上がりの数字だけは妙に強め」という結果になっています。

つーことで結果の数字だけ見るとKYちっくに見えるのがどうなのよと思うのでありますけれども、展望レポートの構成は物凄い勢いで下振れ警戒全開態勢になっておりますので、金融市場的には展望レポートの本文を見た瞬間に(冒頭からいきなり下振れの話になりますので)「ああ警戒的なのね」という話にはなるかと思いますが、報道ベースですと出来上がりの最後の数字の所だけが走る可能性があるのでちとどうなんすかねえというのは先日もプレビューで書いた通りであります。

ま、今回に関しては「日銀が強気の見通し」みたいな報道のされ方ではなかったような気がします(けど違ってたらゴメンナサイ)ので、ちゃんとレクの時に丁寧に説明したのか、西村副総裁の追加緩和提案がインパクト与えた(と考えると西村さんの提案は展望レポートの最終の見通し数字が強いのでバランス取ったとも言えるが、そんなので一々追加緩和提案はしないでしょうから)のかも知れませんが、まあそーゆー点からしますと今回の展望レポートはちゃんと下振れ警戒が伝わったのかなあとは思ってますがどうですかね。


・冒頭からヘッジクローズ祭り

ということで冒頭の『1.はじめに』のヘッジクローズ祭りを引用。

『わが国経済は、本年入り後、景気の改善テンポが鈍化した状態から脱しつつあったが、3月11 日に発生した東日本大震災により、状況は大きく変化した。震災により、当面、わが国経済に対して大きな下押し圧力がかかり続けることは避けられない。今回の展望レポート(「経済・物価情勢の展望(2011 年4月)」)で示す2012 年度までの日本経済の見通しを点検するに当たっては、以下のような視点を持っておくことが重要である。』

下押し圧力キタコレ。

『第1に、震災による経済への下押し圧力は、基本的には資本設備の毀損等による供給面のショックとして現われており、海外経済の高成長など、震災前まで日本経済の回復を支えていた基本的な条件に大きな変化はない。この点、金融ショックによって世界的に需要が急減したリーマン・ショック時とは異なる。』

ということで、ここでは供給ショックの話をしているのですが、供給ショックから生産が落ちてそれが雇用や所得に悪影響を与えて需要に影響するというようなネガティブフィードバックに対する指摘は基本的見解の部分を探したけど本文見通し中では特に言及は無かったという感じなのが少々あたくし的には楽観的じゃないのかねと思うところですけれども、下振れ要因の所でその辺の記述はあるからまあ良いっちゃあ良いのですけどね(後で引用する)。

『第2に、震災の影響は、時間の経過とともに変化していくことに留意する必要がある。短期的には供給面の制約に伴う影響が大きく出るが、その後は、供給面の制約が和らいでいくうえ、毀損した資本ストックを復元していく動きが顕現化してくる。さらにより長期的には、震災が、わが国経済の趨勢的な成長力にどのような影響を与えていくかという点も重要である。』

とうまく行くと良いのですけどね。まあ成長力云々は仰る通りですが。

『第3に、これらの震災の影響の現われ方については、その時期や規模を含め様々な点で不確実性が大きい。このため、先行きの経済・物価動向を見通すに当たっては、中心的な見通しだけではなく、従来以上にリスク要因を注意深く点検していくことが重要である。』

どう見ても下方修正の予防線です本当にありがとうございました。

『以下では、上記の留意点を念頭に置いたうえで、まず、わが国経済の基調的な動きを左右する海外経済や国際金融資本市場の動向を記述し、その後、わが国の金融環境を評価する。そのうえで、相対的に蓋然性が高いと判断される見通し(「中心的な見通し」)を記述した後、中心的な見通しに対する上振れ要因・下振れ要因を検討する。最後に、金融政策運営の基本的な考え方を整理する。』

ということで、以下話が続くのですが、海外経済などの基本的な部分に大きな変更は無い(従って外需が日本経済に寄与しますという話)ですけど、さすがに国内経済に関しては震災の影響に関するヘッジクローズがてんこ盛りという風情でありまして、まあ今回の展望レポートは思いっきり下振れ警戒モードです罠という所です。


・当然ながら下振れ意識

とりあえず『5.上振れ要因・下振れ要因』のところをネタにしますとですな。

『(1)経済情勢』コーナーは今回はこうなっています。

『第1に、今回の震災がわが国経済に与える影響については、不確実性が大きい。』
『第2に、中心的な見通しでは、企業や家計の中長期的な成長期待は維持されることを
想定しているが、震災を契機とした企業や家計の成長期待の変化にも注意を要する。』
『第3に、海外経済の動向である。』
『第4に、国際商品市況が一段と上昇した場合の影響についても注意が必要である。』

ということで、前回(昨年10月)は第1と第2が世界経済で、第3がマインド、第4が中長期的な成長期待という構成でしたので、今回の方が思いっきりリスクは下に寄っています(中心的な見通しがあたくし的にはやや強く見えますからそらまあ下に寄らないとおかしいですけど)わなということで。

んでもって今回「ふ〜ん」と思ったのはまあ幾つかあるのですが。

第1の部分から。

『一方、マインドを通じた影響については、原子力発電所の事故の帰趨が及ぼす影響に加え、企業収益や雇用者所得見通しの不確実性等について留意する必要がある。』

つーことで、さっきあたくしが申し上げたネガティブフィードバックの指摘が一応この辺りにあることはあるのですが、そんなに全面的に出ているという感じでも無いです。
第3の部分から。

『この点、わが国を含め、多くの先進国では、公的債務残高が大きく増加している。こうしたもとで、財政再建に向けた取り組みが急務となっており、仮にこうした取り組みが市場によって不十分と評価された場合には、長期金利の上昇やコンフィデンスの低下などを通じて、実体経済にマイナスの影響が及ぶ可能性が高い。』

ほうほうそうですか(棒)。日本の話はどうなのかねと思いますが。

第4の部分から。

『また、世界的な金融緩和継続などを背景とする金融面の動きが、国際商品市況の動きを加速させている面もある。』

どさくさに紛れてしらっとこんな文言が・・・・・


で、物価に関してですが、こちらに関しては前回とそんなに違いませんが、ここでもネガティブフィードバックの話があって、これまた物価も下押しリスクを見ています。

『この間、電力不足などにより、経済全体の供給能力が長期間にわたって制約されることになれば、物価に対しては、マクロ的な需給バランスの引き締まりが、上振れ要因として作用する可能性も高い。ただし、供給制約による景気悪化が長期化し、企業収益や雇用者所得に持続的な下押し圧力がかかり続ければ、需給バランスの悪化につながり、物価に対して下振れ要因となる可能性もあることに注意が必要である。』

ということで、まあこの辺りにもそんな指摘がありまして、見通しは上に振れましたけれども、そんなに中身を見ると強い話でもなさそう、という感じでしょうか。

#かなり駆け足でネタにしたので補足を後でやるかもしれません


○この適格担保要件緩和は斬新ですな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110428b.pdf
被災地企業等債務にかかる担保適格要件緩和の概要

緩和内容の(1)が斬新です。

『3.緩和内容

(1)被災地に事業所等を有する企業

@被災地金融機関の直近の自己査定で正常先に区分されている企業の手形および証書貸付債権については、信用力に問題ないものとして取り扱う

A外部格付を有する企業の社債および証書貸付債権は、格付要件を緩和する(A格相当以上→BBB格相当以上)』(機種依存文字は原文ママ)

・・・・・ということで、今回何と「直近の自己査定で正常先なのはOK」という事で、銀行の自己査定結果をそのまま認めるというのが極めて斬新だと思ったのですけれどもあたくしの勘違いだったらゴメンナサイ。

従来の担保適格要件ですけれどもね。

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo18.htm/
適格担保取扱基本要領

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo19.htm/
企業の信用判定基本要領

にありますように(長くなるので引用割愛)、基本的に適格判断に関しては日銀が行う事になっておりまして、金融機関の申し出をそのままOKというのはしていなかったと認識しておりますので、これは中々という感じだと思うのですがどうでしょうか。

ただ、まあ当然ちゃあ当然ですが、今回新しく導入された「自己査定丸呑み担保」の担保掛目が従来基準とは違いますのでそこでヘッジはしているという感じですな。

詳しい掛け目はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110428c.pdf
の7ページ以降に『被災地企業等債務にかかる担保の適格性判定等に関する特則』というのがあります。具体的には、

『4.担保価格

2.(2)に掲げる担保の担保価格は、当該担保が「適格担保取扱基本要領」別表2に掲げる基準を満たす場合を除き、(1)から(3)までに規定するとおりとする。』

『手形 手形金額の81%

証書貸付債権

イ.正常先証書貸付債権
(イ)残存期間1年以内のもの 残存元本額の81%
(ロ)残存期間1年超3年以内のもの 残存元本額の65%
(ハ)残存期間3年超5年以内のもの 残存元本額の50%
(ニ)残存期間5年超7年以内のもの 残存元本額の40%
(ホ)残存期間7年超10年以内のもの 残存元本額の25%
(満期が応当月内に到来するものを含む。)

ロ.イ.以外のもの
(イ)残存期間1年以内のもの 残存元本額の93%
(ロ)残存期間1年超3年以内のもの 残存元本額の82%
(ハ)残存期間3年超5年以内のもの 残存元本額の70%
(ニ)残存期間5年超7年以内のもの 残存元本額の60%
(ホ)残存期間7年超10年以内のもの 残存元本額の50%
(満期が応当月内に到来するものを含む。)』

イが自己査定丸呑み、ロがBBB格ですな。

ちなみに、従来の場合ですが、さっきの『適格担保取扱基本要領』によるとこうなります。

『15. 企業が振出す手形 手形金額の96%

18. 企業に対する証書貸付債権
(1) 残存期間1年以内のもの 残存元本額の96%
(2) 残存期間1年超3年以内のもの 残存元本額の91%
(3) 残存期間3年超5年以内のもの 残存元本額の85%
(4) 残存期間5年超7年以内のもの 残存元本額の75%
(5) 残存期間7年超10年以内のもの 残存元本額の70%
(満期が応当月内に到来するものを含む。)』

ということで、まあだいぶ違いますし、特に自己査定丸呑み分については更に違いますなあという感じではありますが、まあ「自己査定丸呑み」というのは日銀的には結構踏み込んだ緩和だという風に思いますが、マニアしかウケないネタでもあったりするのですorz


#本当は東電ネタとか総裁会見とか(祝日にアップとは^^)も書きたかったのですけれども、MPMネタだけでお腹一杯なのでこれで勘弁ナリ

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2011/04/27

○これは中々面白かったです(「金融研究」のペーパーより)

http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/kk30-2-1.html
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/kk30-2-1.pdf
第一次大戦後の日本における国債流通市場の制度改革

HTMLの概要読んでも何が何やらという所でありますが、PDF版の本文が中々オモシロスなのでございまする。金研の論文ってホイホイ引用してよいのか良くワカランチ会長なのであんまり盛大に引用しないけど、そもそも本文が24ページ(残りは参考文献リスト)ですので、まあそんなに読むのに苦労するわけではない(ただし昔の新聞などからの引用部分はカナ表記部分があって、そこでは音読するのが吉^^)です。

で、まあそこ読んでいて初めて知ったのですが、日本では国債の売買でいわゆるclean priceを使うようになったのって1919年(大正9年ですか)11月における取引所振興における振興策などによるのですな。ということで上記URLの本文15〜16ページより引用。

『その後、大蔵省、日本銀行、東京株式取引所、取引所仲買人、日本興業銀行を中心とする市中銀行などの間で協議が行われた結果、1919 年11 月に取引所市場における取引振興策がまとめられたとみられる48。同時期に日本銀行が作成したと推定される文書49は、その具体案を示したものと推察される。以下、この文書の主な内容について考察する。』

ちなみに48、49というのは脚注ですが、

48「国債取引所設置計画」、東京銀行集会所[1919e]、杉野[1925]。
49 日本銀行、「国債市中取引促進に関する意見」、日本銀行営業局国債売買係、『国債売買関係書類綴』(日本銀行金融研究所アーカイブ保管資料4020)。

だそうです(^^)。

で、その中にこんなのが(本文16ページ)。

『第3 に、当時使用されていた含相場(裸相場に経過利子を加算した金額)53には利回りを比較する際に取引価格から経過利子を差引く必要が生じるなどの不便があったことに対応し、国債市場での取引価格は裸相場による金額とし、経過利子は別に計算して授受するとした54。』

脚注の53と54ですが、

53 例えば、4 月1 日の甲号五分利公債の取引価格88.65 円には、前の利払期日が前年12 月1 日の場合、前年12 月1 日から4 月1 日までの121 日間の経過利子1.65 円(年利5%)が含まれていることになる(太田垣[1923]69〜70 頁)。54「国債取引と裸相場」、東京銀行集会所[1920c]。

いやもうほほうという感じですが。


あとね、順序逆になりますけど、本文の14ページ辺りの記述も興味深くて・・・・

『国債流通市場の整備に関する検討作業は1919 年に入り大蔵省で開始されたとみられる40。同年、大蔵省は、「逐年国債発行高ノ増大ハ国債市価ノ維持、流通力ノ増進ヲ益々急務トスルニ至レル」41との認識のもとで、取引所市場における国債の取引振興策として「国債証券売買増進計画ノ要領」を作成し、日本銀行に回示した42。』

『その主な内容は、(1)日本銀行は日本興業銀行、有力市中銀行、有力現物商、勧業債券月報社などの国債売買を支援する、(2)これらの機関の国債売買価格は日本銀行と協議して統一を図る、(3)これらの機関が買い入れた国債の手許保有高が特定売買資金の2 分の1 を超過する場合や国債の手許保有高では買入れの申込みに対応できない場合、日本銀行はこれらの機関からの申込みに応じて国債売買を行う、(4)計画を円滑に実行するために必要な場合、大蔵省預金部と国債整理基金特別会計は日本銀行の要求に応じて国債売買を行うというもので、日本銀行が取引所市場で国債を直接売買することにより、取引所市場の価格形成・公示機能の向上と国債価格の安定化を図る取引振興策であった。』

と、大蔵省が提唱する中で、日銀はどうだったかと言いますと・・・・

『これに対し、日本銀行は、国債価格の安定化を目的とした取引所市場での国債の直接売買には消極的であり、市場参加者による自由な国債取引の拡大が必要であると判断し、「本行自ラ直接国債売買ヲ行フハ国債市場ノ発達ヲ阻害スルノ虞アルヲ以テ、寧ロ一方国債市場ノ確立ヲ計ルト共ニ本行トシテハ右国債売買ニ付出来得ル限リ銀行其ノ他証券業者ニ便宜ヲ与フル程度ニ止メ積極的ニ之カ取扱ヲナスヲ避ケ度」43旨を大蔵省に答申した。』

カナ文書のところは音読してつかーせ(^^)。で、その詳しい理由ですが・・・・

『この答申で日本銀行は、

「政府及日本銀行ハ公債市場ヲ支配シ適当ナル価格ヲ維持スルニ努ムルタメニハ銀行証券現物商ノタメニ便宜ヲ図ルハ当然ナレトモ日本銀行直接売買業ヲ営ミ証券現物商ノ抵抗シ難キ競争者トナリテ公債市場自然ノ発達ノ萌芽ヲ折ルハ最モ不可ナリ」、

「憖ニ拙ツク手ヲ著ケ売物ニ売物ト嵩ミタル場合引取ル能ハサルカ引取ルニ無理ナル手段ヲ弄セサルヲ得サルヤウノコトアリテハ却テ公債市価ノ下落ヲ来シ又ハ他ノ弊害ヲ醸ス虞アルヲ以テ先ツ余程豊富ナル資金ヲ擁スルニアラサレハ寧ロ之ヲ企テサルヲ可トス」、

「ヨシ豊富ナル資金ヲ擁スルトスルモ虚々実々所謂生キ馬ノ眼ヲ抜ク証券現物商等対手ノ仕事ナレハ相場ヲ定ムルコト及実際取引ヲナス上ニ於テ其人ヲ得サレハ必ス彼等ノ乗スル所トナラン現今ノ日本銀行ニ於テハ斯ル方面ニ訓練ノ機会ナキヲ以テ容易ニ適材ヲ得難ク此点ヨリスルモ大仕掛ノ公債売買援助ハ余程慎重ナル考慮ヲ要スヘシ」、

「公債売買ニ就テハ実際上ノ必要ニ応シ銀行業者証券現物商ニ対シ出来得ル丈ノ便宜ヲ与へ例之或銀行カ必要ニ迫リ売又ハ買ヲ欲スルトキ之ニ応スルトカ或現物商カ買注文ニ接シタレ共市場ニ品物ナクシテ困難スルトカ言フ場合ニ売買ノ求メニ応スル程度ニ止ムル方可ナラン然ラサレハ現物商等ノ策略ニテ折角安定セル公債所有者ヲ動カシ却テ害アルヲ致スヘシ」44

と説明していた45。』

とありまして、いやなんか昔からこういう流れのやりとりがあったのねと思うと同時に、上記の4つの説明のうち3番目は中々ワロタでありまする。

まあ他にも色々面白いとマニア的には思いますのでマニアは読んで味噌。

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2011/04/26

・ブラックアウトルールの改正とな
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110422a.pdf

『各金融政策決定会合の2営業日前(会合が2営業日以上にわたる場合には会合開始日の2営業日前)から会合終了当日の総裁記者会見終了時刻までの期間は、国会において発言する場合等を除き、金融政策及び金融経済情勢に関し、外部に対して発言しない。』

これまでは「国会において発言する場合等を除き」部分が「原則として」だったのですが、今次改定で発言する場所を限定列挙した形になっているとゆーことですから、多分ルールが厳しくなったという風に解釈したのですけれどもどうなんでしょ法令のワーディングに詳しい人教えてジェネラル。


・これは後で読む

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2011/ron110425a.htm/
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2011/data/ron110425a.pdf(量があるので注意)
2010年度の金融市場調節

2010年度と言えば何か一時は短期金融市場に白い鳥がお飛びになっておられたかのような記憶が微妙に残っているのですが(^^)、さてその辺どうなっておられるのかはニヤニヤしながら閲覧したいと存じます(ってまだ斜め読みもしてないのかという突っ込みはしないように)。

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2011/04/13

○この日は原発の話がより深刻化する前、停電で朝の交通がエライコッチャでしたよね

3月会合議事要旨、と言いましても震災後の月曜午前中から実施した奴です。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110314.pdf

でまあ執行部の報告もあの時を思い出す中々な内容でありますので引用だけ。

『地震発生後、東北地方の太平洋沿岸地域を中心に、金融機関の一部店舗の損壊やATMの稼働停止が生じているものの、金融機関の間では、預金の支払いなど、国民のライフラインとしての金融サービスを維持するため、休日営業を実施するなどの取り組みが拡がっている。日本銀行も、こうした取り組みを支援するため、本支店において、休日にも金融機関の現金手当てに対応している。この間、日銀ネットのほか、主要金融機関の資金・決済システムは正常に稼働しており、資金・証券決済に大きな混乱は生じていない。当面の課題としては、被災地における日本銀行の支店の業務継続を確保し、損傷銀行券の引き換えなどに応じられる体制を整えることや、電力会社の施設被害に伴う計画停電への対応などが挙げられる。』

ということで、被災地における日銀の拠点は決済システムの維持のための重要な役割を担っておられたようですが、この後どこぞの銀行が盛大にシステム障害をやらかそうとはお釈迦様でも気づくめえという所でしょうか。

『本日は、地震発生後、初めて金融市場が開くことになる。市場参加者の予備的な資金需要が非常に高まっていることを踏まえ、金融市場の安定を確保する観点から、朝方より本日の午後にかけて、15 兆円の即日資金供給オペレーションを含む、総額21.8 兆円の資金供給オペレーションを実施することとした。こうした日本銀行による大量の資金供給もあって、短期金融市場は、落ち着きを取り戻してきている。』

朝一9時1分に共坦全店即日7兆円オファーにはさすがに「おおおおおおお!!!」と思いましたな、うんうん。

『地震発生後の金融市場をみると、株価は大きく下落しており、日経平均株価は9千円台後半の水準となっている。東証REIT指数も大幅に低下している。社債の流通市場では、取引の成立がみられなくなっているが、潜在的には売り圧力が高い状態にある。わが国のソブリンCDSプレミアムや民間企業のCDSプレミアムは、大きく拡大している。このように、市場では、投資家のリスク回避姿勢が強まった状態にある。この間、為替市場をみると、円の対米ドル相場は、振れやすい展開となっており、一時1ドル80円台半ばまで円高が進んだあと、足もとは82円台で推移している。』

まあこの時点では計画停電の影響がどうなるとかサプライチェーンの毀損の影響がどうなる的な話をしていましたが、その翌日に原発が火を噴くわ放射能はダダ漏れになるわ大変な量の放射線を観測するわというハルマゲドン的な動きになったのはお釈迦様(以下同文)。


では『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の部分に参ります。

『わが国の経済情勢について、委員は、東北地方太平洋沖地震の影響を定量的に評価するだけの情報が乏しい現時点では、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつあるという判断を維持しつつも、経済・物価情勢の先行きを巡る不確実性が大きく高まっていると判断することが適当との見方で一致した。』

さいざんすか。

『地震の影響について、何人かの委員は、東北地方を中心に、生産設備や物流施設、社会インフラ等に大きな被害が生じていると述べた。また、多くの委員は、地震による直接的な被害に加え、発電所の被災に伴い、電力の供給に制約が生じることも経済活動に影響する可能性が高いと述べた。何人かの委員は、被災地域には素材・部品工場が多く立地していることを指摘し、サプライチェーンを通じて生産活動の停滞が国内外に広く波及する可能性もあると述べた。』

ということで、この辺りは直近の決定会合で示された認識と似たような論点ですな。

『一方、一人の委員は、わが国の設備稼働率が低位にある現状に鑑みれば、他の工場や企業への生産シフトを通じ、経済全体でみれば、生産の落ち込み幅が比較的小幅にとどまる可能性もあると指摘した。別の一人の委員は、買いだめなど、生活必需品の消費需要が押し上げられる面もあると述べた。』

ということで、まあ前者については残念無念というところですが、後者については想像以上に必需品の買いは増えたと思いますが、原発という大ネタが炸裂してしまい、そっちの上げよりも一般消費のコケっぷりの方が大きいというのは今回の決定会合および金融経済月報でも示されているかと。

『多くの委員は、深刻な被害状況や電力の安定供給を巡る懸念の高まりなどから、企業や家計のマインドが悪化する可能性にも注意が必要であるとの見方を示した。複数の委員は、今回の地震が、一段の国際商品市況高によって交易条件の悪化が懸念される中で発生したことも、マインド面を通じた経済の下振れリスクをより高めていると指摘した。』

ということで、まあこっちの方が色々と効いている感じですにゃ。


さて、物価に関してはCPIの基準改定で再びデフレマインドが強まる事に注意してます。

『なお、委員は、本年8月に予定されている2010年基準への改定に伴って、消費者物価指数の前年比が下方改定される可能性が高いとの見方を共有した。ある委員は、これに伴って人々の中長期的な予想物価上昇率が下振れるリスクについても意識する必要があると指摘した。複数の委員は、基準改定が物価上昇率に及ぼす影響についても十分意識して対外情報発信を行う必要があると述べた。』

しかし一方で野田審議委員は先般の講演だか会見で指摘していたのは、「そもそも足元のCPIが時間の経過と共に、実力ベースのCPIから上方乖離して出ているのであって、基準改定で下がるから云々という議論は話の筋が違いませんかねえ」という話でございまして、そーゆー観点からすると足元の方がゲタ履いているだけであるのではいかという論点でありますな(つまり物価の基調は弱いと言いたいのでしょうけれども)。


資産買入拡大に関連して。

『以上の金融経済に関する情勢認識のもとで、議長は、金融政策面から対応することが適当であり、今回の地震の発生以降、国民の不安心理の高まりや企業マインドの悪化、金融市場におけるリスク回避姿勢の高まりなどがみられることに鑑みれば、リスク性資産を中心に資産買入等の基金の増額を行うことが考えられるとの見方を示した。』

という事で実施と言う話になったのですが、執行部の説明部分の前半は兎も角として後半の、

『? 買入規模を5兆円程度増額したうえで、この買入を進めていく場合には、既存の5兆円規模の資産買入と同様、1年程度の時間を要すると思われる。』

というのはちとスピード感的にどうなのよという感じはせんでもないですが、その後は通常のオペ拡大もありましたし、まあその後少し早くやっていこう的な感じも見受けられましたのでそれはそれでヨロシアルね。

で、幾つか意見があったようですが・・・・・・

『一人の委員は、日本銀行が、かねてから、経済・物価情勢に照らして必要と判断する場合には資産買入等の基金の増額も選択肢の一つ、と表明してきたこととも整合的であると指摘した。』

まあ本当は国債の買入拡大だったような気もしますが、思わぬ流れで信用緩和の拡大の方になってしまいましたな。

『別の一人の委員は、リスク性資産の買入の増額は、市場を歪める可能性や日本銀行の財務の健全性への負担といったコストを伴うが、現在の経済情勢のもとでは、効果の方が上回るとの判断を示した。』

ふむふむ。

『増額の規模について、一人の委員は、市場に十分な安心感を醸成する観点からは、相応の規模が必要であると述べた。複数の委員は、日本銀行がここまでの措置を講じることで、逆に経済の実態に対する人々の不安感を高めることにつながらないよう、周到な情報発信が必要であるとの意見を述べた。』

まあ周到な情報発信の前に原発問題がまさに火を噴いてしまったのでそれどころの話ではなくなったような気もしますが。

『この間、基金を通じた国債買入の増額について、一人の委員は、長めの金利が低下傾向にある中で実施すると、財政ファイナンスであるとの疑念を招く可能性があると指摘し、資産買入の増額は全てリスク性資産で行うべきであるとの意見を述べた。』

これはどう見ても須田さんですが、まあ是非は兎も角として話の筋は通ってますな。


ということで、まあ今回の議事要旨にそんなに多くの政策インプリケーションは無いと思いますが、震災直後の会合ということで、記憶にとどめる意味もあってうだうだと引用してみました。

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2011/04/12

○金融経済月報はこれまた前月との比較がムツカシヤ

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1104.pdf(今月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1103.pdf(先月)

で、先月は震災直後の3月15日に出ておりますです。

・昨日引用した総裁会見と同じですが供給面の制約について

『わが国の経済をみると、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。』(今回)

『わが国の景気は、改善テンポの鈍化した状態から脱しつつある。』(前回)

ということで、まあ前回の総括判断と比較してもシャーナイですが、当然のようにぶっちぎりで下方修正になっていますわな。で、通常ですと需要項目別の話がこの後続くのですが、今回は震災の影響について生産面というか供給面の制約に関して説明しています。

『震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内民間需要にも相応の影響が及んでいる。』(今回)

ということで、供給面の制約に関しては昨日引用した総裁会見と同様に、(1)設備の毀損、(2)サプライチェーンの毀損、(3)電力供給の制約、という3点を挙げています。


・先行き見通しについて

『先行きについては、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについては、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。もっとも、今回の地震によって、わが国は、地理的にも広範囲な被害を受けており、当面、生産活動の低下が見込まれるほか、企業や家計のマインドの悪化も懸念される。』(前回)

ということで、概要の方では今回しらっとマインドの話をスルーしたのですが、スルーした直後に内閣府からボロボロの景気ウォッチャー調査が出てくるのが日銀の芸風ですのであまり気にしないように(^^)。


・先行き見通し項目別展開

『生産は、当面、低水準で推移するとみられるが、供給面での制約が和らぐにつれ、増加していくと考えられる。こうした状況になれば、海外経済の改善を背景に、輸出も増加に転じるとみられる。設備投資、住宅投資、公共投資も、資本ストックの復元に向けた動きなどから、徐々に増加していくとみられる。この間、個人消費も、生産活動が回復するにつれて、持ち直していくとみられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の改善を背景に、基調的には緩やかに増加していくとみられる。個人消費は、持ち直していくとみられる。この間、設備投資は、企業収益が改善基調にあるもとで、持ち直しの動きを続けるとみられる。もっとも、設備過剰感が残ることなどから、そのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。こうしたもとで、生産は、基調的にみると、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

ということで、前回と比較すると生産、輸出、個人消費に関しての先行き見通しが下がっていまして、設備投資に関しては「設備過剰感」と言う文言が今回抜けたのはある意味画期的な所でありまして、従来の「設備過剰による余剰生産力をどうしましょうか」から日本の経済の課題は「供給制約を如何にして軽減するのか」という方向になってまいりました、という事になるのでしょうな、

しかし個人消費に関しては、というかマインド面の話についてはど〜せ景気ウォッチャーが直ぐに出てくるのですから、特に今回の月報でマインドの話をスルーせんでも良かったんちゃいまっかという気がしないでもない。


・物価に関してはまだ「マクロ的な需給バランスが緩和状態」の文言が

物価に関して。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、下落幅は縮小を続けている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況高の影響などから、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスが緩和状態にあるもとで、下落幅は縮小を続けている。』(前回)

あえて並べてみましたが、見りゃ判るように一言一句変化無し。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくとみられる。』(今回)

これまた前回と同じですが、さすがに2度同じ事をするのはくどいので今回分だけ引用でござるの巻。

・金融面に関して

これは前回と比較してもあまり意味が無いので今回分だけ引用。

『震災後のわが国の金融動向をみると、金融機能は維持されており、資金決済の円滑も確保されている。』(今回)

『わが国の金融環境は、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。』(今回)

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善が続いている。社債市場では、信用スプレッドが幾分拡大する中、発行を見送る動きがみられるが、CP市場では、良好な発行環境が続いている。』(今回)

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は減少している。一方、社債の残高は前年を上回っているほか、CPの残高は減少幅が縮小傾向にある。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善しているが、震災後、中小企業を中心に一部で資金繰りが厳しくなったとする先がみられている。』(今回)

とりあえずこういう認識になっているので、まあ基本的には「中小企業向けの金融面をサポートするようなネタ」というような形になりそうな政策を打つという感じになるかと思いますが、そもそも論からしますと中小企業金融に関しては政府の話になりますので、まあ日銀として何かするのかという話は実際問題としても中々繰り出しにくい所ではないかと思います。


ということで、まあ金融経済月報では現状認識と見通しを当然のように下げているのですが、震災の影響に関しては生産面、つまり供給面における制約の話がクローズアップされていて、供給面のネックが解消したら景気も回復軌道という話になってはいますけど、その間にマインドの悪化が起きたり(つーか起きてるが)需要がそもそも落ち込むのではないでしょうかという話を言及していないので、何となく先行き見通しが甘く見えますなあという感じで。


○さくらレポート

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer110411.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer110411.pdf(本文)

『最近の景気情勢については、多くの地域で東日本大震災(以下「震災」という)後の生産活動の障害等を背景に、慎重な見方が広がっている。

地域別にみると、東北では「社会インフラ、生産・営業用設備の棄損が生じたことから、経済的にも甚大な被害が生じている」ほか、関東甲信越や東海でも、「震災の影響に伴う生産活動の大幅な低下等から厳しい状況にある」等の見方となっている。また、その他の地域でも、サプライチェーンにおける障害や消費マインドの慎重化等から、「震災の影響が生産面などにみられ始めている」、「停滞色がみられ始めている」等の慎重な見方となっている。』

ということで、まあこれまた前回と比較してもシャーナイのですが、今回は現状判断に関して四国が上方修正、近畿は変わらず、他の7地域は現状判断を引き下げとまあ順当な展開になっています。

で、今回は震災直撃地域以外の状況を見ましょうかね。

東海:持ち直しつつあったが、足もとでは悪化しているとみられる

近畿:緩やかな回復基調にあり、昨秋からの足踏み状態を脱しつつあったが、足もとでは震災の影響が生産面などにみられ始めている

中国:震災の影響を受けて、生産活動の制約や個人消費関連での自粛ムードの広がりなどから、停滞色がみられ始めている

四国:持ち直し基調にある。なお、先行きにかけては、今回の震災によって、生産活動のほか企業や家計のマインド等が短期的には下押しされる可能性が高い

九州・沖縄:緩やかに回復してきたものの、足もとでは震災による供給面の制約等の影響がみられている

という事で、四国以外では既に足元に影響が出ているのですが、その背景として生産の停滞という話になっていまして、まあさいですなという感じです。

需要項目としてはまあ生産と消費でも。

『生産については、震災の影響による生産設備の毀損、サプライチェーンの障害、電力使用の制約等を背景に、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)からは「大幅に減少している」または「減少に転じている」等との報告があった。また、残りの2地域(近畿、四国)も「震災の影響がみられ始めている」、「持ち直し基調にある。ただし、今後、震災の影響によって、短期的には生産活動の低下が見込まれる」と言及しているなど、全地域が震災の影響を指摘した。』

『業種別の主な動きをみると、ほとんどの地域から、自動車・同部品がサプライチェーンの障害を背景にした部品調達の困難化等から、「操業度が大幅に低下している」等との報告があった。また、東海、四国からは、電気機械・電子部品、一般機械などで「海外向けを中心に増加している」等との報告があった一方で、複数の地域からは「部材の調達難の影響から生産調整を行う動きもみられる」等の報告があった。この間、被災地向け需要に対応するため、複数の地域(北海道、九州・沖縄)から、食料品における生産水準引き上げの動きについて報告があった。』

で、消費に関して。

『個人消費は、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)からは、震災後の消費マインドの慎重化等を背景に、「弱含んでいる」等と報告があった。この間、2地域(近畿、四国)からは、「持ち直し」等との報告があったが、四国は「先行きの商品仕入や家計マインド等に影響が及ぶことを懸念する向きが多い」点にも言及した。』

『品目別の動きをみると、大型小売店販売額では、多くの地域から非常用物資や防災関連製品の売上増加がみられたものの、消費マインドの慎重化を背景に不要不急品の支出を手控える動きがみられているとの報告があった。』

『乗用車販売については、持ち直し等の動きを報告する地域(近畿、四国)と、震災の影響や政策効果終了後の反動減などから減少の動きを報告する地域(北陸、関東甲信越、東海、中国、九州・沖縄)がみられた。家電販売でも、東海、四国からは持ち直しの動き等の報告があったが、多くの地域からは震災の影響や政策見直しの反動減等の動きについて報告があった。』

『旅行関連需要では、東北からは被災および交通網の寸断等による観光需要への深刻な影響が報告されたほか、他の地域からも外国人観光客の減少や国内観光を取りやめる動きが広がっているとの報告があった。』

ということで消費の落ち込みに関してはマインドの低下と外国人観光客の落ち込みの話が出てます罠という感じですが、まー確かに東京でも外国人観光客落ちていますわなあという感じです。

ということで、まあこういうところを見ますと、金融経済月報以上に現状判断および先行きについては慎重な見方になっていると読めそうな感じですので、月報で供給制約の話だけしているような印象を受けるのとはちとニュアンスが違うような気がします。

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2011/04/08

○足元の見通しは下がっているのですが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110407a.pdf(今回声明文)

直近比較は2回分と確認するのが吉ですたい。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110314a.pdf(震災直後の会合での声明文)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110215a.pdf(遠い昔のような気がする2月声明文)

で、復興支援貸出制度の指示だの担保緩和の指示だのという所をスルーしまして景気の現状判断や見通しに掛かる部分をまず引用します。

・現状判断

『わが国の経済は、震災の影響により、生産面を中心に下押し圧力の強い状態にある。すなわち、震災後、生産設備の毀損、サプライチェーンにおける障害、電力供給の制約などから、一部の生産活動が大きく低下しており、輸出や国内民間需要にも相応の影響が及んでいる。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続けている。震災後の金融動向をみると、金融機能は維持されており、資金決済の円滑も確保されている。金融市場は、全体として安定している。この間、金融環境は、総じて緩和の動きが続いているが、震災後、中小企業を中心に、一部企業の資金繰りに厳しさが窺われる。』

まあ今回の現状判断については過去と比較する意味があまりない(主な論点が震災の影響になっているから)ので今回分だけ引用しますが、震災の影響が直接的には供給面に大きな影響を与えており、経済には「下押し圧力の強い状態」と現状認識を相当厳しくしています。

・先行き見通し

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状態が続いたあと、供給面での制約が和らぎ、生産活動が回復していくにつれ、海外経済の改善を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた需要の顕現化などから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、小幅のプラスに転じていくと考えられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、景気改善テンポの鈍化した状況から脱し、緩やかな回復経路に復していくとみられる。物価面では、引き続き、消費者物価の前年比下落幅は縮小していくと考えられる。』(2月)

当たり前ですが山のようにヘッジクローズが入ったでござるの巻。しかし一応「震災の影響は時間の経過と共に徐々に解消に向かいます」という見通しになっていますな。いやまあ「もうダメです」という見通しをメインに置くのもさすがに何ですのでこうなるのでしょうが・・・・・


・リスク要因:景気

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、国際金融市場の動向や、一頃に比べて低下しているとはいえ、米欧経済の先行きを巡る不確実性がある。さらに、震災がわが国経済に及ぼす影響については、不確実性が大きい。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、上振れ要因として、旺盛な内需や海外からの資本流入を受けた新興国・資源国の経済の強まりなどがある。一方、下振れ要因としては、引き続き、米欧経済の先行きや国際金融市場の動向を巡る不確実性がある。』(2月)

ということで下振れ要因に関しては震災の影響を強く強調しているのは当たり前ですけれども、しらっと米欧経済の先行き不確実性に関しては引き下げているのがチャーミングなのですが、それよりも違和感があるのは上振れ要因の方でありまして「新興国・資源国の経済の強まり」なんですけれども、声明文の前段にありますように現在の経済の問題点が「供給制約による生産の落ち込み」でありますからして、その海外の強まりが輸出増のような形でわが国の経済に「上振れ」といえるような恩恵を与えることができるのか、という点に立った場合に大丈夫ですかねえと思うのです。


・リスク要因:物価と国際商品市況に関して

『この間、国際商品市況の上昇については、その背景にある新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる一方、交易条件の悪化に伴う実質購買力の低下が国内民間需要を下押しする面もある。』(今回)

『物価面では、国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(これも今回)

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした国際商品市況の一段の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(2月)

ということですが、これもまたさっきの話と同じですが、「新興国・資源国の高成長が輸出の増加につながる」というパスが今回の震災による供給制約の発生によって効かなくなり、交易条件悪化というマイナス面だけ出てくるのではないかという気がするので、ちと見通しの置きが強めなのではないかという気が致しますです、はい。


○新しい制度2件については正直内容次第の面がある

『本日、日本銀行は、被災地の金融機関を対象に、今後予想される復旧・復興に向けた資金需要への初期対応を支援するため、長めの資金供給オペレーションを実施することが必要と判断し、別紙の通り骨子素案を取り纏めた。また、日本銀行は、今後の被災地の金融機関の資金調達余力確保の観点から、担保適格要件の緩和を図ることが適当と判断した。議長は、執行部に対し、これら2つの措置について具体的な検討を行い、次回の金融政策決定会合において報告するよう指示した。』

で、そのうち資金供給オペの方に関しては別紙にありますような内容で、まあ要するに成長基盤強化貸出を震災復興支援名目に焼きなおしただけなのですけれども・・・・・

『1.対象先
被災地に営業所を有する金融機関で、共通担保資金供給オペ(全店貸付)の対象先のうち希望する先

系統金融機関については、共通担保資金供給オペ(全店貸付)の非対象先や非当座預金取引先についても取引先金融機関を通じて資金供給を行うことを検討

(注)被災地は、東日本大震災にかかる災害救助法の適用指定を受けている地域(岩手県、宮城県、福島県の全域、青森県、茨城県、栃木県、千葉県の一部)』

と結構対象先が広くなっているのですが、

『5.貸付総額 1兆円』

という事ですな。メガ4行ともに仙台には拠点があった筈ですのでこの貸出の対象にメガも入ってしまうという素敵な対象の広さになると思うのですが、その対象の割には総額が少なめな印象。

まあ恐らく今回の支援貸付はその2文目にあるように、第2地銀や信金、信組などを貸出の対象として意識していて、メガとかは普通に日銀が資金供給するからそっちを使いなはれという事なんでしょうかねと思われます。メガにもバシバシ使ってくんなましというのでしたらもっと額が多くなると思いますので・・・・・

それからしらっと書いてある『担保適格要件の緩和』ですが、これはやりようによっては大変に素敵な緩和になる可能性もありまして、まあどうせなら「貸付債権の担保適格性の判断において銀行の内部格付けを利用する事を認める」とでもやりますと大変に画期的な信用緩和になりますが、それはさすがに豪快過ぎますので(当たり前だ^^)、まあ適格担保の判断を少し緩くするとかいう話になるのか、掛け目をいじってくるのかとかいう話になるのでしょうかねえという所ではございます。

逆に「日銀としては姿勢は見せましたので一つよろしく」というスタンスなのかも知れませんし、その辺に関しては内容の詳細が出てから判断するという話になろうかと思います。

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2011/04/04

○短観ですが震災前の経済はかなり好調だったということのようです

金曜に公表された短観はいつものパターンですと7割方が震災前、3割方が震災後の集計で、その辺りを分けた集計は今日公表されるそうです。
http://www.boj.or.jp/statistics/outline/notice_2011/not110401a.pdf

『日本銀行では、「2011年3月短観」について、回答期間を2月24日から3月31日、回収基準日を3月11日に設定して調査を開始しました。通常の調査回では、回収基準日までに7割方の調査表が回収され、回収基準日以降に残りの調査表が回収されます。こうした中、東北地方太平洋沖地震が3月11日に発生し、地震発生の前と後では、調査対象企業の回答時の状況が大きく異なることとなりました。そこで、今回は異例の措置として、業況判断DIの参考計数として、@調査開始日2月24日から3月11日までの回収分と、A3月12日から調査期間最終日3月31日までの回収分に分けて再集計し、その結果を4月4日(月)午前8時50分に公表することとしましたので、お知らせいたします(詳細は下記参照)。』

ということでまた今日の短観データを見るとどういう事になるのかなとは思いますが、とりあえず金曜に出ていた総合の数値を見ますと小見出しのような状況になっていたようでございますな。

ということで短観はこちら。
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1103.pdf

#自分の書き物読み直したのだがもしかして12月短観ってネタにするの忘れてた??

・前回の先行き予測DIの達成状況

        (12月時点)      (3月時点)
        現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業   +5→▲2       +6→+2
製造業中堅企業  +1→▲12      ▲4→▲5
製造業中小企業 ▲12→▲23     ▲10→▲16

非製造業大企業   +1→▲1      +3→+2
非製造業中堅企業 ▲10→▲17     ▲6→▲12
非製造業中小企業 ▲22→▲29    ▲19→▲27

今回の短観の数字の何が良いってこちらの業況判断DIの改善っぷりが中々でありまして、12月時点では結構先行き落ち込むという予想だったのに、今回の業況判断DIは12月の時点の先行き予測DIどころか製造業中堅企業以外のセクターで前回の足元業況判断DIを上回るという進展を示していまして、大震災なかりせばどう見ても景気下ブレ回避で結構順調な回復基調でしたねという内容になっていたのです。

・雇用判断DI

        (12月時点)      (3月時点)
        現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業   +8→+8       +5→+6
製造業中堅企業 +10→+11      +9→+8
製造業中小企業 +11→+13      +8→+10

非製造業大企業   +4→+4      +3→+5
非製造業中堅企業  +2→+1      +1→+1
非製造業中小企業  +4→+5      +3→+3

相変わらず過剰の方が大きいのは少々アレなのですが、こちらに関しては前回の予測と同じなのが非製造業中堅企業で、それ以外に関しては全てのセクターで前回予測よりも状況が好転(過剰マイナス不足の数字だから数値がマイナスの方が望ましい)しており、更にそもそもの数字も前回の現状雇用判断DIよりも改善している、とこれまた中々結構な数字で、企業の雇用余剰感もこの調子だと徐々に解消に向かうのではないでしょうか的なアンケート結果になっていたのですな。

ただまあ大震災があったので全ての前提が変わってしまいましたよって、この辺の数値はあくまでも参考指標という事になろうかと思います。


○生活者意識アンケートなんですけどね

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1104.pdf
これは震災前の数字ですな。

例によって18ページ以降が調査結果一覧みたいになっているのでそれを見る
あるよろしある。

・金利水準と物価に関するアンケート結果っていつもこうなっているのだが

Q5. 景気の状況を考えたとき、現在の金利水準をどのようにお考えになりますか。
1 金利が低すぎる53.1 ( 52.0 )
2 適当な水準である35.1 ( 35.3 )
3 金利が高すぎる10.0 ( 10.5 )

・・・・・いやあのですな、毎回毎回この数字見て思うのですが、「景気が悪いから日銀が金利を下げました」っていうニュースを流していると思いますし、更にアンケート調査では「景気が悪い」という答えの方が多いというのに、何でその結果として「現在の金利水準が低すぎる」という答えが過半数になってしまうのか非常にワケワカランチ会長ではございますが、恐らく一般ピープルの皆様におかれましては「景気が悪いのだから利息くらいつけろやゴルァ」というようなイメージになっているのでしょうかなあと思うあたくし。

Q12-b.(Q12で4または5「下がった」と答えた方への質問)
「物価」が下がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ33.2 ( 39.8 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ27.0 ( 23.8 )
3 どちらとも言えない37.8 ( 35.8 )

あれだけ物凄い勢いでテレビとかで「デフレで売り上げが落ちた」とか「デフレで企業収益が苦しい」というようなニュースをやっているというのに、何で物価が下がった事が「好ましいことだ」の答えが3分の1とか平気であるのよと思うのでございますが、「自分の買うものの価格が下がるのは好ましいことだ」というような認識なんでしょうなあと思いつつ、なんつーかもうずーっとデフレが良くないという話が人口に膾炙しているはずなのに相変わらずこの調子の答えが結構あるというのはどうした事なのでしょうかと思うのでありまする。


・まあこれまた震災前の数字ですからアレですが物価の見方を次回と比較したいですな

Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか
(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった6.5 ( 6.2 )
2 少し上がった43.8 ( 31.9 )
3 ほとんど変わらない35.3 ( 39.9 )
4 少し下がった12.7 ( 19.2 )
5 かなり下がった1.0 ( 1.9 )

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
平均値:+3.6 ( +2.3 )
中央値:+1.0 ( 0.0 )

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。
1 かなり上がる7.2 ( 3.5 )
2 少し上がる55.8 ( 34.5 )
3 ほとんど変わらない30.6 ( 49.1 )
4 少し下がる4.8 ( 10.7 )
5 かなり下がる0.5 ( 0.6 )

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
平均値:+4.3 ( +2.4 )
中央値:+3.0 ( 0.0 )

Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。
1 かなり上がる21.8 ( 12.3 )
2 少し上がる54.3 ( 48.5 )
3 ほとんど変わらない15.3 ( 25.1 )
4 少し下がる5.4 ( 10.0 )
5 かなり下がる0.7 ( 1.5 )

Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
平均値:+4.3 ( +3.5 )
中央値:+3.0 ( +2.0 )

・・・・・・・えーっと、今回は物価の見通しが上昇しているのですけれども、これが先般の震災を受けてどのように数字が変わってくるのかが注目とゆー所でっしゃろってな感じでふ。