決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2013年度上期に書いた分)

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2013/09/12「8月介護議事要旨(その2)物価に関する論議を鑑賞」
2013/09/11「8月会合議事要旨:表現自体に大きな変化はないが今回は木内さんの提案をボコっている感じが」
2013/09/10「金融経済月報も声明文同様に内容が強い」
2013/09/06「決定会合声明文比較:景気の現状認識の内容がかなり強くなっている」
2013/09/04「レポ取引およびデリバティブ取引に関する規制関連」
2013/08/14「7月会合の議論も何か楽観的というかご都合主義的というか・・・・・」
2013/08/12「金融経済月報は前向きの循環論とフィリップスカーブのシフト論が目立ちます」
2013/08/09「決定会合レビュー」
2013/08/01「2003年3月臨時会合の決定会合議事録から俊ちゃんの俊ちゃん節を鑑賞」
2013/07/19「6月決定会合議事要旨(その2)共通担保オペ期間延長問題など」
2013/07/18「6月決定会合議事要旨:最大の違和感は「グローバルディスインフレ」の影響を無視している人が多い点」
2013/07/17「7月金融経済月報は現状判断の盛大な引上げ&先行きが変わらないとか不思議ちゃん」
2013/07/12「足もとの判断を盛大に引き上げて見通しはオントラックとなった7月決定会合声明文、中間レビュー等」
2013/07/10「さくらレポートは強気な雰囲気」
2013/07/09「生活意識アンケートは物価上昇への見解や日銀の中立性に関して鋭い回答が」
2013/07/02「短観はまあ予想通りに堅調である」
2013/06/18「6月金融経済月報は海外経済の見方が強いですな」
2013/06/17「5月決定会合議事要旨より」
2013/06/12「決定会合レビュー:景気判断引き上げに整合性のある追加緩和ゼロ回答!」
2013/06/06「興味深いペーパー2つ:株式市場の先物と現物の主導性/決済を中心とした預かり金に関する法的論点」
2013/05/28「4月2回目の決定会合議事要旨は正直オモシロカオス状態」
2013/05/23「決定会合声明文:判断引き上げの他に「予想物価上昇率の上昇示唆」という謎文言が!」
2013/05/10「金融調節レポートは引き続き面白い/長期金利の要因分析レポート」
2013/05/07「4月4日決定会合議事要旨を読んだが結局2倍の国債買入の根拠が判らない件」
2013/05/06「展望レポート全文を読んでみるという無謀企画(その2):結局楽観を重ねた空中楼閣に見えます」
2013/05/02「日銀から米国の流動性規制に意見レター発出」
2013/05/01「展望レポート全文を読んでみるという無謀企画(その1)」
2013/04/30「展望レポート基本的見解がかなり無理矢理ナローパスの話になっています」
2013/04/25「4月月報は景気に関してあちこち上方修正」
2013/04/18「金融システムレポートより、何か微妙に異次元緩和との整合性がががが」
2013/04/10「3月決定会合議事要旨より:見所は白井さんの提案がフルボッコにされる部分」
2013/04/05「決定会合声明文より/一部おまけの雑談」
2013/04/02「短観は今一歩か/生活意識アンケートでは物価の上昇を困った事と言う人が増えてるとは残念」

2013/09/12

○決定会合議事要旨ネタの続き:物価に関連して

昨日の続きです。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130808.pdf

物価に関する部分が例によって例の如くまあ色々と鑑賞物としてオモシロスというか、そもそも物価目標の政策なのですからまあ読みましょうねということで(^^)。


・予想物価上昇率ェ・・・・・・・・

まずは『T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要』から。

『物価面では、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、上昇幅が縮小している。先行きについては、当面、緩やかに上昇するとみられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスに転じており、先行きは、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』

ほうほう。

『この間、予想物価上昇率については、マーケットの指標に加えて、企業や家計、エコノミストに対する調査なども踏まえると、全体として上昇しているとみられる。』

・・・・・・・・・・・・・・??????????

とまあお約束のような展開がございます。


・海外ディスインフレ傾向の指摘は続くのだが・・・・・・

続いて『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』ですが米国の物価に関する部分でこういう指摘が。

『別のある委員は、ディスインフレ傾向のもと、短期的な予想物価上昇率の低下が、今はアンカーされている中長期的な予想物価上昇率の低下につながらないか、今後注意が必要であると指摘した。』

ここの話ですが、前回まではこういう指摘が入っていまして・・・・・・

『そのうえで、一人の委員は、世界的なディスインフレ傾向の中で、わが国の物価が、わが国独自の要因でプラス幅を拡大していくか注視していると述べた。』(7月の議事要旨から、6月にも同様の記載があります)

この指摘はもうちょっと後の方にある、国内物価情勢の見通しに関する議論部分に記載されていたのですけれども、今回その部分に関する記述はと言いますとですね・・・・・・・


・何か物価見通しが強気になってきていますな

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとではプラスに転じており、先行きはプラス幅を次第に拡大していくとの見方で一致した。多くの委員は、6月にプラスに転じたことは、エネルギー関連の押し上げだけでなく、幅広い品目に改善の動きがみられたことが影響しているとの見方を示した。』

『ある委員は、個人消費の好調さが続けば、非製造業などの売り上げが幅広く増加し、物価にプラスの影響を及ぼす可能性があると述べた。これに対し複数の委員は、消費者物価の前年比プラス幅は、夏頃までは前年のエネルギー価格下落の反動などから拡大するが、その後、拡大が一服する可能性があるとの認識を示した。予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標に加え、企業や家計、エコノミストに対する調査なども踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。一人の委員は、実績の消費者物価が上昇していることを認識することで、人々の予想物価上昇率がさらに上昇していくことが考えられると指摘した。別のある委員は、消費税率引き上げの蓋然性に対する認識の影響を識別することは、引き続き難しいとの見方を示した。』

ちなみに前回はこういう記述になっています。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっているとの認識で一致した。予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標などで上昇が一服しているものもあるが、家計やエコノミストに対する調査など全体としては上昇を示唆する指標がみられるとの見方を共有した。複数の委員は、実際の物価指標の上昇基調がはっきりとしてくれば、予想物価上昇率も上昇していくとの見方を示した。』(前回)

『物価の先行きについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、5月の東京の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をプラス転化させた要因が全国でも押し上げに働く可能性が高いことから、5月には概ねゼロ%まで明確に改善し、その後についても、マクロ的な需給バランスの改善の影響も加わり、緩やかにプラス幅を拡大していくと考えられるとの見方を共有した。』(前回)

『そのうえで、一人の委員は、世界的なディスインフレ傾向の中で、わが国の物価が、わが国独自の要因でプラス幅を拡大していくか注視していると述べた。別のある委員は、消費者物価の前年比プラス幅は、夏頃までは、前年のエネルギー価格下落の反動などから大きめに拡大するが、その後、拡大ペースが緩やかになる可能性があるとの見方を示した。5月の東京の消費者物価で、テレビの前年比がプラスに転じたことに関連して、ある委員は、海外における賃金上昇や、昨年秋以降の円安方向の動きを受けて、企業の価格設定行動について変化が生じつつあるのではないかという点に注目していると述べた。』(前回)

つーことで並べてみましたが、書いてあるトーンが前回対比で明らかに強気化しているように見えますねというのを鑑賞してみるのでありました。

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2013/09/11

○8月決定会合議事要旨である

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130808.pdf

・木内さんの提案が毎度ボコられている件についてあたくしの感想も含めて

本日はいきなり『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から参りますが、毎度毎度「日本銀行は、中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする。」という提案をして否決されている木内審議委員の議案内容についてこの会合で微妙に皆さんがボコボコとしているの図について鑑賞するの巻。

議事要旨10ページ(ファイルの12枚目)以降になります。

『先行きの金融政策運営について、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続すること、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

『このうちのある委員は、2%の「物価安定の目標」の達成には、人々の予想物価上昇率を2%前後にアンカーすることが不可欠であり、2%の「物価安定の目標」の達成が重要であることについての国民の理解が進むように努める必要があると指摘した。』

とまあここまでは良いとしまして、

『これらに対し、一人の委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとみられる中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化につながる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であると述べた。』

毎度おなじみの木内さんの提案なんですけどね。

『これに対し、ある委員は、金融面での不均衡蓄積などのリスク要因については、「量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、毎回の金融政策決定会合で点検を行い、必要な調整を行っていくという方針を明確に示していると指摘した。』

『別のある委員は、現行の「量的・質的金融緩和」は2年間の時限措置ではなく、2%の「物価安定の目標」を安定的に維持するまで「量的・質的金融緩和」を継続するとのコミットメントに対する理解が一段と浸透するよう、コミュニケーションを行っていくべきであると述べた。』

『この間、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」が、戦力の逐次投入をせずに、初めに大胆に政策を転換するものであることについての市場の理解が進んできたと述べた。』

いやまあ毎回だいたい似たような感じで木内さんの提案がボコられていたりします(前回までは「却って緩和効果を弱める」という指摘をしている人もいたと記録されている)のですが、確かにまあこの木内さんの提案ってちと分かりにくい部分があるなと思うのですよ。

つまりですね、「中長期的に2%を目指す」という部分と「2年間の集中対応期間」という部分が話としての整合性が取れていないのでワカランチ会長になる訳ですが、恐らく木内さん的には足元の2年間でMB2倍2ばーいの図を崩しちゃうと緩和の後退と取られてしまうから、そこを残しながらどうするのと考えた時にこういう提案になっていると思うのですよね。

しかしながら、緩和効果に関してはストックの効果があるんです(キリッ)というビューを持ち出して屁理屈を組んでしまえば、「物価目標2%は中長期的に目指すもの」とか「物価目標2%はアクチュアルにその数字に無理矢理トラックさせるものではなく、フォーキャストのターゲットである」という風にしつつ、「その為に必要と考えられるMB2倍を2年間(つーか残り1年半だが)で達成して、その効果によって中長期的に物価目標に行くんですよ!」という話にしてしまえば良いだけの話で、「集中対応期間」とか言い出すので政策として妙になるんだと思うのですがどうですかね。

つまりですね、方向性としては「2%の物価目標というのはその時点で実際のCPIを2%にトラックさせるものではなく、中長期的な見通しが2%にアンカーされてればいいんです」というような物価目標の定義を持ち出してきてお茶を濁す、という事になると思うので、そういう感じでの提案にした方が良いのかもとは思うのです。でまあAPPの拡大に関しては2年後の状況を見て更に拡大が必要なら拡大するという話で、どうせ今はその辺何も書いていないのですから、下手に明言しないでスルーの方向ということで良いのではないかと思うんですがどうっすか??

いずれにせよ、どこからどう見ても2年で2%がアクチュアルで行くとは到底思えない(除く消費税増税分)中ですから、将来的には(1)ヤケクソで緩和拡大の神風特攻隊(ただしどう見ても現実的には弾なし芳一)、(2)物価安定目標の定義をしらっといじって「中長期的にアンカーされていれば良いじゃないか好況だもの」という風に穏便に収める、という2択が待っていると思うのですけれども、木内さん提案に関してはこの(2)の方向性を示すような形をもう少し目立つようにする(つまり例の集中対応期間云々の部分を削除する)方向で出したらどうなるんだろうなと思うのでありました。



・とにもかくにも前向きの循環メカニズム

8月月報の中でちょっとだけ出ていて、9月月報で大々的に出てきた「前向きの循環メカニズム」ネタですけれども、『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』で盛大にその辺の記載がががが。

本文8ページ(PDFの10枚目)から。

『わが国の景気について、委員は、国内需要の底堅さに輸出の持ち直しも加わって経済活動の水準が緩やかに高まる中で、所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第に働き始めているとみられることから、緩やかに回復しつつあるとの見方で一致した。』

キタコレ!!

『項目別には、輸出について、委員は、米国経済が緩やかに回復する中、為替相場の動きも下支えとなって、持ち直しているとの認識を共有した。』

ほほう為替相場とな(ちなみに8月頭の時点では96円とかでした)。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられているとの見方で一致した。個人消費について、委員は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ふむ。

『複数の委員は、個人消費は株高による資産効果を背景に増加してきたが、最近では雇用・所得環境の改善も加わって底堅さを増していると述べた。』

キタキター!!

『このうちの一人の委員は、恒常的な所得に対する見方が改善していることが消費改善の基調的な要因として考えられ、今後も消費の好調さは続く可能性があると指摘した。』

おいちょっと待て。

『この間、別のある委員は、4〜6月の家計調査は年初来の増勢が鈍化しており、株高による資産効果が減衰している可能性があることから、今後の個人消費の持続性には注意が必要であるとの見方を示した。』

景気ウォッチャー調査ェ・・・・・・・・

『住宅投資について、委員は、持ち直しが明確になっているとの認識で一致した。鉱工業生産について、委員は、国内需要が底堅く推移するもとで、輸出が持ち直していることを反映して、緩やかに増加しているとの見方を共有した。何人かの委員は、6月は低下したが、生産予測指数は7月の増加を見込んでおり、月々の振れを伴いつつも、緩やかに増加していると指摘した。』

ということで威勢の良い話が多いのですが、恒常的な所得に対する見方が改善とか何か飛ばし過ぎじゃネーノという部分もあるのが気になります。

んでもって先行き見通し。

『景気の先行きについて、委員は、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくとの見方を共有した。そのうえで、委員は、次第に働き始めている所得から支出への前向きな循環メカニズムの持続性をみるため、設備投資や雇用者所得などの実績を確認したいとの考えを共有した。』

前向きな循環メカニズムでウハウハですねわかります。

『この点、設備投資に関し、何人かの委員は、6月短観に加えて日本政策投資銀行の調査でも今年度の設備投資計画が高めであることが確認されたが、法人季報や基準改定後の資本財総供給などの実績データを確認したいと述べた。これに対し、ある委員は、輸出の鈍い改善ペースの背景が競争力の低下などの構造的な要因である場合には、設備投資の伸びが抑えられる可能性に注意が必要との見方を示した。』

『また、雇用者所得に関し、多くの委員は、6月の特別給与が3年振りに増加となったが、所得環境の改善については、残りの夏季賞与を含めた実績のデータで今後確認したいと述べた。これに対し一人の委員は、特別給与の引き上げがみられても、所定内給与の引き上げには中小企業を中心に慎重であり、所得環境のさらなる改善には雇用環境の一段の改善が必要であると指摘した。別のある委員は、所定内給与を評価する際には、パート比率の趨勢的な上昇を考慮して評価する必要があると述べた。』

という流れを見ると、いやそうじゃないという人もいるのですが、一方で所得環境は改善しているよね大丈夫だよねってな感じの指摘の方が目に付く訳でして、何かこう雇用所得環境に関する見方がエライ強気化してるわなおいおいと思うのですが、この前向きの循環メカニズム連呼となった先日の会合の議事要旨では景気の見立てがどうなっているのかが中々興味深いというかオソロシスというかですな。

#物価に関する部分も少々あったのだが時間の関係で明日にでも(汗)

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2013/09/10

○金融経済月報比較を少々

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1309.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1308.pdf(前回)

例によって「概要」だけで勘弁。

・現状判断

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(前回)

だいたいこの辺りは決定会合声明文と同じなのですけどね。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(前回)

海外経済は変わらないけど輸出の判断は若干低下。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しつつある。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。』(前回)

設備投資判断は引上げ。

『公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)

『公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

で、例の「雇用所得環境改善」については声明文と同様にここで書かれています。全体的な結果については変更無いのですが、この「マインド改善」が「前向きの循環」となる「雇用所得環境の改善」になったのはまあ大きい、という話は先日も申し上げた通りであります。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられる。』(前回)

ということで表現がすっきり系になったのはこれまた声明文と同様。

『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

輸出は同じ。

『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も増加していくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)

『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も増加していくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

需要、投資に関しての見通し自体は同じなのですが、こちらでも設備投資の所で従来入っていた「防災エネルギー関連の投資」というのが外れておりまして、これは要するに「こういうものがあるから伸びるんですよ!などと言うまでもなく全般的に投資が伸びるでしょう」という事になりますので、これまた先行きの自信度が上昇しています。

『個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(今回)
『個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(前回)

で、こちらを見ると分かりますように、前回の金融経済月報時点で「雇用所得環境の改善」という話をしておりまして、今回はその見通し通りに進行しており、この前向きの循環メカニズムに対して自信を深めたので声明文や会見で進軍ラッパを吹きましたという事になる訳ですね、うんうん。


・リスク要因

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

ということでここは相変わらずのあっさり味。


・物価

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、上昇幅が縮小している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスに転じている。』(前回)

ここはまあ数字が出ている話なのであまりどうのこうのというのは無いですな。

『予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

例によって同じなのですが、今回は図表30(PDFの50枚目)で前回は図表28(PDFの47枚目)になりますが、相変わらずグラフの横軸の期間が長くて直近の動きの変化が見にくいったらありゃしないのですが、どうも見てるとクイックのサーベイと物価連動国債のBEIについては前月対比低下しているように見えるのですが全体として上昇ですかそうですか・・・・・・・・・・

なお、例によって例の如くですが、この予想物価上昇率に関しては細かい説明は本文でもございませんでして、本文のほうでは、

『この間、予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる(図表30)。』(今回の本文15ページ)

ということで、これまた毎度毎度の話ですが、細かいブレークダウンの話は華麗にスルーしていますな。


『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかに上昇するとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(前回)

ということで先行きもほぼ同じ見方で、国内企業物価に関して「上昇する」が「上昇を続ける」に変わった位ですにゃ。


・金融環境はアクチュアルの数値部分以外の変更は無いです

金融環境に関する部分ですが、アクチュアルの数値(MBの伸び率とか市場の価格とか)に関する部分がリバイスされていますが、他の部分に関する認識についての文言変更はありませんでしたので、今回分を引用だけしておきますね。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)

『マネタリーベースは、日本銀行による資産買入れが進捗するなか、大幅に増加しており、前年比は4割台前半の伸びとなっている。企業の資金調達コストは低水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。』(今回)

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、プラスとなっている。企業の資金繰りは、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、3%台後半の伸びとなっている。』(今回)

『金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利は横ばい圏内の動きとなっている。前月と比べ、円の対ドル相場は下落している。この間、長期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(今回)

ということで、だいたい声明文比較で確認した事と概ね同じだし、予想物価上昇率の辺りに関しては引き続きの華麗にスルー攻撃は続くの巻という所でございますにゃ。

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2013/09/06

○決定会合レビューである

金融市場調節方針に関する公表文 2013年
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2013/index.htm/

2013年 9月 5日 当面の金融政策運営について(11時42分公表) [PDF 169KB]
2013年 8月 8日 当面の金融政策運営について(11時59分公表) [PDF 170KB]
2013年 7月11日 当面の金融政策運営について(11時47分公表) [PDF 217KB]
2013年 6月11日 当面の金融政策運営について(11時48分公表) [PDF 173KB]
2013年 5月22日 当面の金融政策運営について(12時07分公表) [PDF 174KB]
2013年 4月26日 当面の金融政策運営について(13時35分公表) [PDF 100KB]
2013年 4月 4日 「量的・質的金融緩和」の導入について(13時40分公表) [PDF 282KB]

・・・・・・ということで、ついに今回はリリース時間が11時42分と最短を更に更新するという無風にも程がある結果となった訳ですが、声明文の方では進軍ラッパが吹きまくっているのがまあそうじゃろうなあとゆー所でございまする。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130905a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130808a.pdf(前回)

・現状判断が盛大に上方修正キタコレ!!

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(前回)

ということで「つつある」から遂に「回復している」と言い切り系になりましたよ!!!!


んでもって個別需要項目ですが・・・・・・・

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。』(前回)

『そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(今回)
『そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(前回)

海外経済の認識は変わっていませんが、輸出に関しては持ち直しに「傾向」というヘッジクローズが入ってここだけ若干の下方修正でありますな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しつつある。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。』(前回)

『公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。』(今回)
『公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。』(前回)

つーことで投資に関しては公共投資と住宅投資は同じですが、設備投資に関して下げ止まりから持ち直しに向かう動き→持ち直しつつある、ということですからこちらは盛大に上方修正とな。

んでもって今回の白眉は冒頭の「言い切り系への変化」もそうなのですが、実はこれではないかと思うのですよ。

『個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。』(今回、強調は引用者による)
『個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。』(前回)

従来は消費に関して「マインドの改善」を背景にしていたのですが、何と「雇用・所得環境の改善」が背景になるというどう見ても「前向きの循環メカニズム」攻撃となっておられまして、こりゃまたエライ強気度が上がりましたなあという所です。

引用の際にブチブチ切っているからアレですが、この辺までを通して読めば「企業収益が改善」と「雇用・所得環境の改善」がコンボになっている訳ですからして、これはどこからどう見ても前向きの循環メカニズムだったりダム論だったりする訳で、本格的にサステイナブルな景気回復局面に向かっていますよという進軍ラッパが鳴り響くの巻でございますとゆー事で、ここの部分を見ておーと思ったあたくしなのでありました。

#俺様の雇用所得環境はなどいうツッコミは毛頭入れておりませんので念の為申し添えます(迫真)

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

生産の見方は前回と同じです。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスに転じている。』(前回)

ファイナンシャルコンディションに関してはまあ毎度同じですし、物価に関しての部分はまあ基本的に事実の記載なのですが、ここで「0%台後半」と書いてありまして「1%近く」と書かないところはまあ謙虚ですなという所ですけど、まー別にその辺でフカシ表現を入れなくても1%近くにここから上昇するでしょというのも見え見えみたいですから別にここの表現で盛らなくてもヨロシという余裕っぷりを感じるのでありました。


で、吹いたのはこちら。

『予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

・・・・・・・・んーっとですね、物国のBEIはここのところ絶賛低下中だったりするのですが、この「全体として」上昇というのはどこのどの辺にあるのでちゅかねえ(白目)。



・先行き見通しも表現がすっきりとなっているのは自信度の上昇でしょうね

でもって先行き見通し部分ですけどね。

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(前回)

ということでまあ物価の方は同じなのですが、経済見通しに関しては現状認識の方が引き上げになった関係で表現が「回復していく」→「回復を続けていく」となっていますが、それよりもほほーと思ったのは従来入っていた「国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に」という文言が割愛されていることで、輸出の見通しは若干下がったものの、海外経済の全体としての見通しは(ここの文言で見る限りは)変わっておらず、加えて国内需要に関する表現はどこからどう見ても強くなっている訳で、本来この文言は削除しなくても良い訳ですよ。

しかしながら今回ここの文言が削除されたというのは、「表現がすっきりしている時ほど見通しの確信度が高い」という日銀文学(つーかまあこれは日銀文学だけじゃなくて一般的にこの手の表現では共通だと思いますが)の仕様から致しますと、つまりは「先行きの回復についての自信度が高まっている」ということを示すと解釈するのが妥当であろうとゆー事かと存じますです、はい。


・リスク認識等の文言は前回と全文一致です

一応引用だけはしておきますね。

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

『このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

で、(注)にあるのは木内さんの毎度おなじみの提案ですがこれまた引用しておきます。

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

ここまで全文一致である(^^)。

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2013/09/04

○今度はレポ取引に関する規制関連ドキュメントが出ております(ただし英文orz)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130903a.htm/
金融安定理事会による「シャドーバンキングの監視と規制の強化:証券貸借・レポ取引のシャドーバンキングリスクに対処するための政策提言」の公表について

でまあ原文(市中協議文書と含む)はこちら。

http://www.financialstabilityboard.org/publications/r_130829b.pdf
Strengthening Oversight and Regulation of Shadow Banking
Policy Framework for Addressing Shadow Banking Risks in Securities Lending and Repos

でまあレポ取引に関する金融安定化に対するリスクがどうのこうのという説明が最初の方に延々とあるのですが、小見出しだけ引用しますと・・・・・・・

『1.1 Pure shadow banking risks』

『(i) Using repo to create short-term, money-like liabilities, facilitating credit growth and maturity/liquidity transformation outside the banking system
(ii) Securities lending cash collateral reinvestment』

『1.2 Risks that span banking and shadow banking

(i) Tendency of securities financing to increase procyclicality of system leverage
(ii) Risk of a fire sale of collateral securities
(iii) Re-hypothecation of unencumbered assets
(iv) Interconnectedness arising from chains of transactions involving the re-use of collateral
(v) Inadequate collateral valuation practices』

中身に関しては本文4p(PDFの8ページ)以降にこの辺の説明があるのですが、よーするにレポ取引によって資金ポジションのレバレッジやクレジットエクスポージャーのレバレッジを拡大し過ぎた場合に、問題が発生した時にレバレッジの解消によるカウンターシクリカルな金融システムへの悪影響とか、対象資産のファイヤーセールによる悪影響の波及とかがリスクですよ云々というような認識を示しているように読めました。

いやまあそうですなとゆー所ではあるのですが、こんなの米国みたいに証券化商品とかのレポがホイホイ行われているケースではそうかも知らんが、日本のレポ取引って多分99.9%は国債の在庫ファイナンスとショートセールのカバーのために行われている国債流通市場の円滑化の為のツールであって、金融安定化へのリスクとか言われてもお前は何を言ってるんだ状態でして、やんちゃやってる所になんでそうじゃない所が合わせないといかんのよとこの手の規制ネタを見ると毎度思うのでありまする。

んでまあ本文6ページ(PDFの10ページ)に『2. Policy recommendations related to improvement in transparency』ってのがあってああだこうだと政策提言が書いてあるのですが、説明部分が付いていて読みにくいので、政策提言の方は本文20ページの『Annex 1: Policy recommendations on securities lending and repos』というのを見るのが吉かもしれません。

で政策提言のうち「集中清算機関で決済されない証券のレポ取引に対するヘアカット規定」に関するパブコメは本文22ページに『Annex 2: Proposed regulatory framework for haircuts on non-centrally cleared securities financing transactions (for public consultation)』というのがありますのでそれを読んでちょという所ですが、どうも見た所、さすがに「格付けの高い国債」についてはこの規制の対象外っぽく読めた(本文25p〜27p辺りをご覧あれ)ので、これでいきなり国債流通市場に影響ががががという話にはならんとは思うのですが良く判らん。

あと、この集中清算機関というのに日本の場合JGBCCが入るのかどうかの定義もよく判らん(入りそうな気がするが)ですなという事で、要するに紹介したものの解説になっていないじゃないかというツッコミはしないようにお願いします(^^)。


じゃあこのFSBのペーパーでどの辺が影響しそうかというのですが、まあ当然ながら不肖このアタクシもザクザクと斜め読みしただけですし、その前の流れをちゃんとわかっている訳では無いので誠に恐縮ではございますが、もっともメンドクサというのは本文40ページ(PDFの44ページ)にあります『Annex 4: Different approaches to data collection (in relation to Policy Recommendations 1-3)』という所にある辺りでしてですな。

『The data that public sector officials need to support their financial stability monitoring needs can be collected in several ways: through (i) regulatory reports, (ii) compulsory market surveys, or (iii) a trade repository (TR). Standardisation of the information collected is important to make it comparable across national markets and get a broad picture of the activity in securities lending and repo markets as they become more global.』

まあ要するに金融安定化のためにという錦の御旗の元、監督当局は市場の状況をより詳しく把握すべきという事で、その結果として何がどうなるかと言いますと、市場参加者が出すべき報告がより一層マンドクサになるという話になりそうなのよね。

具体的には本文46ページ(PDFの50ページ)以降に『Annex 7: Summary of Market Surveys on Securities Lending and Repos』とあって、色塗りの綺麗な表が3ページほど続いているのですが・・・・

『In January 2013, WS5 conducted a stock-taking exercise of the existing official market surveys and other forms of data reporting on securities lending and repos. The following tables summarise the responses received from Australia, Canada, ECB, Germany, Italy, Japan, the Netherlands, Spain, Switzerland, UK and US. The data items are taken from Box 1 of the November 2012 Consultative Document (Proposed information items for enhancing transparency/disclosure in securities lending and repos). The data sources of these jurisdictions are also summarised in Section 4 of this Annex.』

レポや証券貸借取引に関連するどのようなデータサーベイが現在実施されているのか、ということを各国の状況を並べて表示していて、その後のセクションで各国(地域も含む)の状況についての説明文があるのですが、まあ説明文はともかくとして図表をみるとサーベイをすべき(?)項目について色々とありますなあという所でして、FSB肝入りで更に細かく市場モニタリングをしようという話になるのでしょうから市場参加者としては益々事務手間増えますにゃあという所ではあろうかと存じます。

まあシャーナイっちゃあシャーナイ話なのですけどね。

#という雑談ネタでした


○似たような話だがこんなのも

これを出しているのはバーゼルとIOSCOの方ですが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130903c.htm/
バーゼル銀行監督委員会及び証券監督者国際機構による、中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書の公表について

公表文仮訳はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130903c2.pdf

さっきのレポに関してはレバレッジの監視や野放図な拡大防止という趣旨が最初にあるのですが、まあ規制の趣旨としてはこっちも論点的には似たような話なので、折角日本語があるから引用しておきますにゃ。本文1ページ目(PDFでも同じ)の『背景』から。

『2007年に始まった経済・金融危機は、銀行やその他の市場参加者の金融・経済ショックへの耐性が極めて脆弱であることを明らかにした。特に店頭デリバティブ取引に関し今次金融危機によって明らかとなったことは、これらの取引を通じた不透明かつ過度なリスクテイクを制限し、そのシステミック・リスクを低減するために、店頭デリバティブ市場の透明性向上や、店頭デリバティブ取引やその参加者に対する規制強化が必要になるということである。そこでG20は、2009年に、店頭デリバティブ取引に伴うシステミック・リスクを低減するための改革プログラムを開始した。2009年に当初合意された通り、G20の改革プログラムは、以下の4つの要素から構成されている。』

『・ 標準化されたすべての店頭デリバティブ契約は、適当な場合には、取引所又は電子取引基盤を通じて取引されるべき。
・ 標準化されたすべての店頭デリバティブ取引は、中央清算機関(CCP)を通じて決済されるべき。
・ 店頭デリバティブ契約は、取引情報蓄積機関(trade repositories)に報告されるべき。
・ 中央清算機関を通じて決済されないデリバティブ契約は、より高い所要自己資本賦課の対象とされるべき。』

ようするにお前らプレーンなデリバはセントラルカウンターパーティーで決済しろやというのはまあ今に始まった話ではありませんがそういうことね。


で、ちょっと飛ばして『中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制の目的』という所から。

『中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制には、主に以下の2つの効用がある。』

『・ システミック・リスクの低減:』

まあそう来ますな。

『標準化されたデリバティブ取引のみが中央清算に適している。デリバティブ取引の多くは標準化されておらず、中央清算できない。2』

『2 IMFによる「国際金融安定性報告書」(2010年4月)の第3章では、金利スワップ取引の4分の1、クレジット・デフォルト・スワップ取引の3分の1、その他店頭デリバティブ取引の3分の2は、中央清算が可能なほど十分に標準化されたり、高い流動性を有したりしていないと推測している。』

ほっほー。

『これら中央清算されないデリバティブ取引の規模は想定元本でみて数百兆ドルに及び3、今次危機で顕在化したものと同様の、システミックな伝播・波及リスクを有している。』

『3 最近行なわれたBISの調査(デリバティブ取引に関する定例市場報告)によると、2012年6月時点における店頭デリバティブ取引の残高は、想定元本でみて総額639兆米ドルに上る。』

ふむ。

『中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制により、デリバティブ取引の相手方が債務不履行となった際の損失を相殺可能な担保資産を確保し、こうした伝播や波及の効果を低減することが期待される。また、証拠金規制には、より広くマクロ・プルーデンス面でも効用があり、不安定化をもたらし得るプロシクリカルな変動に対する金融システムの脆弱性を低減するとともに、金融システム内の無担保エクスポージャーの積み上がりを抑制できる。』

つまり標準的なデリバティブ以外のデリバティブ取引のコストを証拠金規制やバーゼル3での資本賦課によって高めることによって、そういう取引をバカスカ拡大させないでござるとまーそういう事を企図しているということですねわかります。

『・ 中央清算の促進:』

ふむ。

『多くの法域において、今後、ほとんどの標準化されたデリバティブ取引は中央清算が義務付けられることになる。しかしながら、証拠金をCCPに差し入れる必要が生ずることなどから、清算にはコストがかかる。中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制は、そのようなデリバティブ取引に伴う高いリスクを反映することによって中央清算を促進し、G20の2009年当初の改革プログラムをより効果的なものにする。これは、システミック・リスクの低減にも寄与し得る。』

んでもって証拠金規制は主要な金融取引を行う各国が包括的に掛けろという話が続きます。

『仮に証拠金規制が国際的に整合的でなければ、その実効性は損なわれ得る。証拠金規制の緩い法域への取引シフトにより、以下の2つの懸念が生じる。
・ 証拠金規制の実効性が損なわれる(規制の裁定)。
・ 証拠金規制の緩い法域で活動する金融機関が、競争上優位となる(不平等な競争条件)。』

まあそらそうですなという所で、具体的にどういう思想での施策をという話はまあ中身を読んでくらはい。

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2013/08/14

○決定会合議事要旨である

今週はBOEネタでまる潰しという触れ込みでしたが良く考えたらこれが今週出るんでしたorz

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130711.pdf

まあ中間レビューが大本営じゃなかった楽観的ですなあという話なのですが・・・・・・・・

・物価に関する部分を鑑賞である

この回で声明文に「予想物価上昇率の上昇を示唆する」というような表現が入ってきて、先日のMPM声明文で更にその予想物価上昇率の上昇傾向という表現になって、期待によってフィリップスカーブの上方シフトをさせて2%達成という尤もらしいというか屁理屈というかな理論キタコレという風になっているのですが、さてどういう検討をしていたのかというのが最初に気になった所なので鑑賞。

『T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要』から。

『この間、予想物価上昇率については、マーケットの指標などで上昇が一服しているものもあるが、6月短観の販売価格判断をはじめ企業や家計、エコノミストに対する調査なども踏まえると、全体としては上昇を示唆している。』

短観の販売価格判断が上昇しているのでそれはまあよろしいのですが、それ以上に仕入価格判断の方が上昇しているのですから、当然ながらその部分というのは企業収益のマイナス要因になる筈なのですが、企業の収益環境などに関する部分ではこのような報告になっておりまして・・・・・・

『設備投資は、企業収益が改善する中で下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。この間、企業の業況感は改善しており、6月短観の業況判断DI(全産業全規模)は「悪い」超幅が明確に縮小し、5年半振りの高い水準となった。先行きの設備投資については、企業収益が改善を続ける中で、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調を辿ると予想される。6月短観で2013 年度の設備投資計画(ソフトウェアを除き土地投資額を含むベース)をみると、全産業全規模では、3月短観と比べて上方修正され、前年比+2.0%となった。』

ということで、どう見てもコストプッシュ要因無視です本当にありがとうございましたという所で、都合の良い所だけ切り取って来る大本営発表クオリティキタコレという風情が漂う誠に心温まる報告でございました。

では『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』ですが物価の部分から。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとではゼロ%となっており、先行きはプラスに転じていくとの見方で一致した。ある委員は、流通の各段階で値上げの動きが徐々に増えてきていると指摘した。別の一人の委員は、外食産業の一部で高価格商品を投入する動きもみられるなど、企業の価格設定行動に変化の兆しが窺われるとの見方を示した。』

でまあコストプッシュだったらどうなのという話がその前の所で何かあるかというとそれはやはり執行部報告同様に無いのが残念な所です。

『この間、複数の委員は、消費者物価の前年比プラス幅は、夏頃までは前年のエネルギー価格下落の反動などから拡大するが、その後、拡大が一服する可能性があるとの認識を示した。』

ですなあ。

『このうちの一人の委員は、世界的なディスインフレ傾向の中で、わが国の物価が、わが国独自の要因でプラス幅を拡大していくか引き続き注視していると述べた。』

これは6月議事要旨にもありましたが、何でこの話を「一人の委員」しかしないんでしょうかねえ。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標などで上昇が一服しているものもあるが、6月短観の販売価格判断をはじめ企業や家計、エコノミストに対する調査なども踏まえると、全体としては上昇を示唆しているとの認識を共有した。』

執行部報告通りですかそうですか・・・・・・って内訳は??

『一人の委員は、消費税率引き上げの蓋然性に対する認識の影響を識別することは引き続き難しいとの見方を示した。別のある委員は、「生活意識に関するアンケート調査」では、1年後の物価が「上がる」との回答が約8割まで増加していると指摘した。』

この文脈が端折り過ぎて良く判らんのだが、別のある委員は前の「一人の委員」の意見を補強するつもりで言った(消費税引き上げの蓋然性に対する影響の認識を識別するのが難しい理由として、生活意識アンケートでの短期の見通しを持ち出しているという意味だわさ)ように見えるのですが、そうじゃなかったら足元の物価上昇見通しを出すのってSo What?なのでありまして、さらっと読んでしまうと後者の人が大ボケ発言に見えてしまうのでもうちょっと補足して頂きたく存じます。

というのはともかくとして展望レポート中間評価の物価部分も引用しようず。

『先行きの物価の中心的な見通しについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)は、概ね4月の展望レポートの見通しに沿って推移するとの認識を共有した。』

ふーむ。

『大方の委員は、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向を辿り、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとの見方を示した。』

はあそうですか。

『ある委員は、人々の期待を変え、フィリップスカーブを上方にシフトさせるという観点からは、定例給与の上昇が重要であるとの認識を示した。』

まーこれはある委員っつーか大方の認識ではないかと。

『一方、複数の委員は、4月の展望レポート時と同様に、予想物価上昇率の変化が現実の物価上昇率の高まりにつながる点について不確実性が高いと考えられることなどから、自身の物価見通しは中心的な見通しに比べて慎重であるとの見方を示した。』

佐藤さんと木内さんですねわかります。

『これらの委員は、先行きの物価をみるうえでは所定内賃金の動向が鍵となるが、これまでのところ弱めの動きが続いていると付け加えた。』

まったくですな。

『さらに、ある委員は、消費税率の引き上げによる上昇分を加味すると来年度の物価上昇率は2%の物価目標を大きく上回ることが想定されるため、この分が短期物価上昇予想に十分織り込まれていくのか注視していると述べた。』

ふーんという所ですな。

でまあ結局この予想物価上昇云々に関する部分ですが、どこのどの数字を見てというよりは必殺兵器「総合判断」で判断ということのようなのですが、その予想物価上昇率の先行きについて、『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所でこんな見解が。

『量的・質的金融緩和の効果について、委員は、効果はしっかりと働いており、企業や家計の支出活動を支える金融環境の緩和度合いは、着実に強まっているとの認識を共有した。委員は、こうしたもとで、実体経済や金融市場には前向きな動きが拡がっており、人々の経済・物価に関する期待は好転しているとの見方で一致した。』

はあそうですか。

『ある委員は、アンケート調査などをみると、先行きの実体経済の改善が見通されるもとで、予想物価上昇率が徐々に高まってきており、経済・物価が着実に改善していく姿が展望できると述べた。』

貴殿の目に見えている物は蜃気楼なのではないでしょうかなどという無粋なツッコミをしてはいけません(^^)。

『経済主体の期待の転換を通じた効果について、多くの委員は、名目金利が安定的に推移するもとで、予想物価上昇率の高まりを背景に、実質金利は低下しているとの見方を示した。先行きについて、このうちの一人の委員は、予想物価上昇率は2%に向けて上昇している過程にあるため、予想物価上昇率の上昇とそれに伴う実質金利の低下は、今後さらに進むと付け加えた。』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・何かやたらと楽観的にしか読めませんが気のせいですよね(−−)


・前向きの循環メカニズムですかそうですか

前向きの循環メカニズムと言えば日銀が調子こいて来たじゃなかった先行きの経済物価情勢に自信を強めたモードになった時に強調される話ではあるのですが、6月の議事要旨でもその辺の話がちゃっかり出ているのでありました。『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『わが国の景気について、大方の委員は、国内需要の底堅さに輸出の持ち直しも加わって経済活動の水準が緩やかに高まる中で、企業部門において所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第に働き始めているとみられることから、緩やかに回復しつつあるとの認識を示した。』

キタコレ!!

『これに対し、ある委員は、経済情勢に関するこのような認識を概ね共有しつつも、海外経済を巡る不透明感や、足もと改善を示す経済指標にはDIや計画値が多いことなどを踏まえると、「回復」という文言を用いるにはもう少し時間をかけて見極めた方が良いのではないかと述べた。』

(;∀;)イイシテキダナー

『一方、複数の委員は、各種経済指標の水準が相応に高く、前向きの循環がみられつつあるため、緩やかに回復しつつあるという景気判断を示すことが適当との見方を述べた。別の一人の委員は、短観や需給ギャップの改善状況などをみると、現在の経済活動の水準は過去の景気回復局面並みまで高まっているとの認識を示した。こうした議論を経て、委員は、わが国の景気は緩やかに回復しつつあるとの判断を共有した。』

何という強気。円安株高によるマインドと公共投資で下駄履いているだけだったりしないのかねという風に思うのは債券屋独特の悲観脳ですかどうもすいません。

『項目別には、輸出について、委員は、米国経済が緩やかに回復する中、為替相場の動きも下支えとなって、持ち直しているとの認識を共有した。』

まあこれは良いとして。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられているとの見方で一致した。ある委員は、一致指標をみる限り、これまで出遅れていた設備投資も、4〜6月から持ち直しに転じた可能性があるとの認識を示した。』

(・∀・)ニヤニヤ

『個人消費について、委員は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移しているとの認識を共有した。一人の委員は、個人消費が堅調に推移している主因として、株高などによる資産効果を指摘した。別のある委員は、商業販売統計をみると、多くの業態で売上高が前年比プラスに転じていると述べた。この間、ある委員は、4〜5月の家計調査は年初来の増勢一巡を示唆しているほか、自動車販売も足もと減速しており、今後の個人消費の持続性には注意が必要であるとの見方を示した。』

正直いつまでもサステイナブルとは思えんのだが。

『住宅投資について、委員は、持ち直しが明確になっているとの認識で一致した。鉱工業生産について、委員は、国内需要が底堅く推移するもとで、輸出が持ち直していることを反映して、緩やかに増加しているとの見方を共有した。』

ふむ。で、先行き見通しですがね。

『景気の先行きについて、委員は、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくとの見方を共有した。この点、多くの委員は、6月短観をみると、企業の業況感は、業種の裾野の拡がりを伴いつつ、明確に改善していると指摘した。』

さいざんすか。

『そのうえで、これらの委員は、2013 年度の事業計画についても、売上や収益見通しが改善するもとで、設備投資をしっかりと増加させていく計画となっており、マインドや収益の改善が実際の支出活動に結び付き始めているとの認識を示した。』

(・∀・)ニヤニヤニヤニヤ

『これに対し、ある委員は、設備投資計画をみると、大企業製造業の前年比伸び率や修正率には力強さが感じられないとの見方を述べ、企業は引き続き国内よりも海外での設備投資を重視していると指摘した。』

だすなあ。

『先行きの景気回復の持続性をみるうえでのポイントとして、多くの委員は、所得面への波及が重要であると指摘した。この点に関し、ある委員は、足もと、一人当たり賃金が下げ止まる中で雇用者数が増加しているため、雇用者所得は増加に転じているとの認識を示した。複数の委員は、夏季賞与などには良い兆しがみられ始めていると述べた。もっとも、このうちの一人の委員は、こうした動きはまだ大企業の一部に限られており、中小企業も含めた全体に拡がるかはなお不透明であると付け加えた。』

まあ物価上昇というのに繋がるという面では一人あたりの名目賃金が上がらないと物価上昇に耐えられませんがなという話になりますからねえ。

ということで、物価と経済に関する所を鑑賞致しましたが、今回は木内さんの提案部分と債券市場の話の部分は前回とそんなに変わらないので面倒なので割愛します。

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2013/08/12

○表現が殆ど一致なのだが良く見ると「ダム論」と「フィリップスカーブのシフトアップ」ががががが(金融経済月報)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1308.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1307.pdf(前回)

・総括判断は同じ

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(前回)

まあこの辺は声明文にある通りですけどね。

・現状判断は海外の部分に変化があったのみ

というのも声明文と同じですが、後でネタにする総裁会見で黒田総裁が「海外のリスク認識を引き下げ」という話をしておりまして、まあここの表現変化はそういうことでしたねえという所です。

つーことで外需。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)
『海外経済は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(前回)

「製造業部門」と特定していたのが「一部に」というぼやっとした言い方になったというのは声明文どおりですけど、こういうぼやっとした言い方になる場合は表現として弱くなる、ということですので、今回に関してはその弱くなった表現の掛かる場所が「緩慢な動き」であることから「下向き判断をやや弱くした」ということのようですな。

内需は以下の通り。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は改善している。』(前回)

企業の景況感という短観関連の部分以外は同じですな。


・先行き見通しでダム論キタコレ!

先行き見通しなんですけどね。

『先行きのわが国経済は、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられる。』(前回)

という総括判断の全文一致は良いとしまして・・・・・・・・・・

『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も増加していくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)

『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も増加していくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

ということでここも全文一致なのですけれども・・・・・・・・・・・

『個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(今回)
『個人消費も、雇用環境の改善にも支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(前回)

ここがダム論キタコレの部分でありまして、従来は「雇用環境の改善にも」というような言い方だったのが「雇用・所得環境の改善に」とこちらはぼやっとした言い方から言い切り型になった部分が個人消費が底堅く推移という部分に掛かっていまして、これは雇用所得環境の改善を前月より強調している事でもありますし、さらに「雇用環境」から「雇用・所得環境」となっていて「所得環境の改善」というのが出てきたのはどう見てもダム論です本当にありがとうございましたという風情。

ちなみに月報本文の方ではこうなっています。

『雇用・所得環境をみると、厳しさを残しつつも、労働需給の緩やかな改善が続くなか、雇用者所得も持ち直しに向かう兆しがみられる。』(今回の月報10〜11ページ))
『雇用・所得環境は、厳しい状態が続いているが、労働需給面では緩やかに改善している。』
(前回の月報13ページ)

『雇用者所得は、以上のような雇用・賃金動向を反映して、足もとでは前年比で小幅のプラスとなるなど、持ち直しに向かう兆しがみられている(図表21(3))先行きの雇用者所得については、経済活動や企業業績の回復がはっきりするにつれて、次第に持ち直しが明確になっていくと考えられる。』(今回の月報11〜12ページ)

『雇用者所得は、以上のような雇用・賃金動向を反映して、前年比でなおゼロ%近傍ではあるが、足もとでは小幅のプラスとなっている(図表25(3))。先行きの雇用者所得については、経済活動や企業業績の回復がはっきりするにつれて、次第に改善が明確になっていくと考えられる。』(前回の月報14ページ)

改善と持ち直しだと持ち直しの方が表現が強いとなという所ですが、まあ超地味な表現の変更ではございますが、何気に重要な部分(会見でもその話が出ている)のダム論話に繋がっているのでそーゆー意味では今回の月報の表現変更は中身的に更に強気化しているということですな。


・リスク認識も同じ

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

声明文どおりです。


・物価もフィリップスカーブのシフトアップネタなのだが・・・・・・・・・

物価ですけどね。

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、上昇幅が縮小している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスに転じている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、上昇幅が縮小している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとではゼロ%となっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(前回)

ということで声明文でもありました予想物価上昇率の「全体として上昇」というフィリップスカーブの上方シフト大本営発表なのですけれども、月報本文を見ますと当該箇所はこうなっているのでして・・・・・・・

『この間、予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる(図表28)。』(今回の月報14ページ)
『この間、予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる(図表33)。』(前回の月報17ページ)

で、今回の図表28はPDFファイルベースで47枚目、前回の図表33はPDFファイルベースで55枚目の所にあるのですが、そもそもグラフのスケールが毎度のように2005年から取ってあって、足元の数字が前回対比でどう動いたのかがさぱーりワカランチ会長(まあそんなに動いていなかったからというのも有ると思うのだが)となるような見え方になっておりまして、その中でどの辺の数値をどのように見ながら「全体として上昇」というフィリップスカーブ上方シフト理論になるのかの説明が上記のように一言攻撃ということで、まあ声明文比較の時に今回は詳しい説明があるでしょうなあという悪態をついた通りに説明ががががという所ですな。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかに上昇するとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかに上昇するとみられる。消費者物価の前年比は、プラスに転じていくとみられる。』(前回)

まあこの辺はそうでしょうなあという所です。


・金融環境に関しては引用割愛

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

つーことで、金融環境の部分は基本的に同じです。CPの発行環境に関する認識が改善(前回まであった「総じてみれば」が外れている)のと、ファクトベースになるのでそれは認識も糞も無いのですけれども、銀行貸出残高の前年比部分が変わっております。

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2013/08/09

つーことで決定会合レビューである

○3打席連続で正午前の公表で「戦力の逐次投入無し」というビューテホーな展開

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2013/index.htm/
金融市場調節方針に関する公表文 2013年

2013年 8月 8日 当面の金融政策運営について(11時59分公表)

ということでこれで3打席連続で正午前の決定アナウンスという実にこう無風にも程がある決定会合でありまして、まさしく「戦力の逐次投入はしない」というのを実践に移しているということで政策運営的に言えば実に美しい形になっております。

暫く前の「2年オペ導入騒ぎ」とは何だったんだという話ではありますが、まあ足元では経済指標もここまでは好調ですし、一方で債券市場は貫録のサガランチ会長(日経平均とかいうのが毎日ランコルゲしているというのに)というか何というかでありまして、まあ為替とか株価見ておりますと先行きに盛大な暗雲がどよよーんと垂れこめている気もしないでもないですがそういうのは気にしませんですかそうですかという所で、この調子で美しい金融政策が継続するんでしょうなあというのは把握しました。


つーことで声明文比較。

○今回の白眉は「フィリップスカーブの上方シフトが始まっているかも」部分ですな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130808a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130711a.pdf(前回)

決定内容はどうでもヨロシなので景気認識の部分から。

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(前回)

ということで総括判断に変化なし。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)
『海外経済は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(前回)

海外経済ですけれども、これ金融経済月報を見た方が分かりやすいと思うのですが、「製造業部門」と書いてある部分が「一部に」とぼやっとした表現になっていまして、こういう場合は文学(どこの?)的に言えば表現が弱まった形になっておりますので、何気に海外経済の強さについての判断が若干ですが引き上げになっているという結果になると思います。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は改善している。』(前回)

国内部分は短観結果に関する言及部分(これは当たり前ですが3か月に1回しか言及部分がありませんので今回のと比較する意味は無いです)以外はどう見ても全文一致です本当にありがとうございました。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

金融環境はまあ毎度これです罠。で、今回の声明文の白眉は物価ですにゃ。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラスに転じている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとではゼロ%となっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(前回)

>予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる
>予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる
>予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる
>予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる
>予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる

キタコレ(・∀・)!!!!!

まあ物価がプラスになった件については事実関係の話なのでこれはまあ良いとしまして、何と来ました「予想物価上昇率は全体として上昇」!!!という所でありまして、ここまで書いたのだから今日出る金融経済月報はまさかこの一言だけであとはグラフを見ろで済ませるなんてえ事は無いものと存じますが(とプレッシャー^^)、どのへんの予想物価上昇率がどのように上昇しているかという辺りについて、目盛も細かく打っていないような例のグラフだけではない詳しいご解説があるものと朝からワクワクテカテカしながらお待ち申し上げております(棒読み)。

てな事はまあ良いのですが(^^)、この「予想物価上昇率は全体として上昇」というのはつまり現在の日銀様による2%2年で達成という強引な屁理屈もとい理論のベースになっております「フィリップスカーブの上方シフト」の可能性があるという認識を示しましたと言うことであります。

ということはつまり、今回の声明文は景気判断についての変化は海外をちょっとだけ微調整の上げをしただけ(先行きはこの後比較引用しますが基本同じです)という内容ではあるのですが、2年で2%目標達成という文脈から重要な物価および予想物価上昇率に関してもうドヤ顔感満載の内容となっておりますので、そーゆー意味では結果そのものは無風なのですが、内容的には追手に帆かけてシュラシュシュシュ♪って光景を絵に描いたような感じですな。


でもって先行きですけど。

『先行きのわが国経済については、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、プラスに転じていくとみられる。』(前回)

先行きに関しては物価を「プラス幅を次第拡大」と表現を変えていますが、これはそもそもの物価水準のベースが変わっているので表現が変わっている物ではありますけれども、先ほどのドヤ顔部分と合わせて読みますと「ほら予想通りにプラスを拡大していくんだよ(ドヤッ)」という風情も醸し出しておりますな(^^)。まあそこまでの他意は無いと思いますが。


リスク認識も同じ(展望レポート中間レビュー部分は今回対象外なので比較しません)。

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

決意表明みたいな部分の最終パラグラフも全文一致である。

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(前回)

でもって(注)の部分である所の木内審議委員の提案も同じとな。

『木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

『木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(前回)


○木内さんの提案に雑感というか雑考というか

木内さんの提案なんですが、この「中長期的に目指す」というのは判るのですが、そこに今の政策で2年先の実施までコミットしている形になっている事との整合性を取ろうとしているのか「2年間程度の集中対応措置」というのが入っているのが政策論として分かりにくくなっていると思うのですよね。

じゃあ「中長期的に目指す」だけ入れれば良いような気もするのですが、実際問題としては声明文から「2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に」という文言って「量的・質的金融緩和政策の導入」の際に最初の「導入しますよ」って所に文言として入った後には声明文ベースでは2年程度云々の文言が記載されていないのがこれまたややこしい所。

まあ常識的に言えば現在行っている政策を「量的・質的金融緩和政策」と言っている以上は訂正を入れない限り最初の文言が生きるので、あくまでも4月導入時点から起算して2年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に目標達成という風になってはいるのですけれども、じゃあやっぱり短期的に引き上げるのが得策かという議論をして「中長期的という見方もあるよね」となってもコミュニケーションの作戦上暫くトボけるという手を使うには現在のように足元の声明文ではスルーしてその辺の論議は後になって考えましょうというのが得策という考え方もありますな。

つーことで、個人的には既に今如きの物価上昇でもニュース報道が物価上昇で庶民の生活ガーとなってきている状況において、そんなに無理繰り2%目指して変に経済に無理掛けて政治的にも苦労する結果を招く位だったら目先1%程度でも景気が良ければいいんじゃネーノとか思うので、「中長期的」という看板を出すのは賛同したい所ではあるのですが、それはそれというものでありまして、これを出してしまうと4月4日の声明文の第一パラグラフをひっくり返す話になりますので、意外にこの提案ってハードルが高いんですよねと思います。

#ちなみに4月4日の会合でも木内さんは「2年」の文言に反対しているからその点では主張が一貫しております、為念

まーいずれにせよ足元で(コストプッシュだろうがなんだろうが現実問題として)物価がプラス圏に浮上しましたし、何かよく判らないですけど予想物価上昇率も上昇しているということでありますので、目先その「中長期的」という話にはなってこないと思いますけど。

ついでに木内さんの提案とは別の論点になりますが、「2年で2%」の定義としてその数値がアクチュアルなものなのかフォーキャストベースのものなのかという論点を講演(先日の講演は選挙翌日という凄いタイミングでしたが)で指摘している佐藤審議委員の論点というのも、2年で2%のケツが短くなってくる間に実際にアクチュアルの物価がそこまで浮上しないという状況が見えてくると論点に浮上という事になるんでしょうなと思います。

でもって、先日のBOEのフォワードガイダンスに見られますように、割とピュアな形でのインフレ目標枠組みだった英国が、よりファジーな枠組みに移行している、というような主要国の金融政策の枠組み変化が起きている中でその「2年で2%」というのを普通に(短期的変動要因を除外して考えたベースの)アクチュアルな物価上昇率で捉えて良いのでしょうかねえという論点もある訳ですな。

とは言いましても、まあその辺の話が出てくる条件は「2年でアクチュアルの物価上昇率2%がどう見てもマズーです本当にありがとうございました」となってくる段階であり、それは残り時間が短くなってくるか、コストプッシュ効果が減衰するかという段階じゃないとそういう話にならんと思われますし、何かコストプッシュ攻撃が秋も電力料金などあったりして、意外に持ちこたえそうな見通しも増えてきている中では暫くの間ドヤ顔モードでシュラシュシュシュって流れが続くのかなあと思います。


○会見も鑑賞物としては期待

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE97700220130808
アングル:黒田総裁、消費増税の修正論議にクギ
2013年 08月 8日 21:07 JST

ロイターの消費税ネタと言えばまた某記者の記事かと思ったらこれは別でした。

『[東京 8日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は8日の政策決定会合後の記者会見で、来春に予定されている消費増税について、政府内外で取りざたされている計画修正の動きにくぎを刺した。「脱デフレと消費増税は両立する」。総裁の踏み込んだ発言は、増税案が変更された場合、政府の財政再建の機運が後退し、日銀による大規模な国債買い入れが「財政ファイナンス(穴埋め)」と市場に受けとられることを警戒したためとみられる。』(上記URLより)

まあ実質とか気にしなければ消費増税すると名目の物価は間接税上げた分が跳ねますからそら名目上は両立するわと思いますが、それは兎も角としてまあ日銀総裁としては政府との共同文書で書かれていた大胆な金融政策やってるんだから玉はそっちじゃヴォケという発言をする罠と思う所でありますが、実際にどのような文脈で話をしているのかは今日の会見録を鑑賞ですにゃ。

#ということで無風会合の為だいぶ雑談モードで恐縮至極

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2013/08/01

○俊ちゃん鑑賞会である

決定会合議事録キタコレ。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2003/index.htm/
金融政策決定会合議事録 2003年

まず最初に鑑賞すべきなのは「就任直後の謎の臨時会合」であるが、討議内容云々の前に冒頭から俊ちゃん節が炸裂している事にワロタとしか申し上げようがないので、俊ちゃんの勇姿を鑑賞しませう。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2003/gjrk030325a.pdf(7Mとかあるのでご注意)
2003年3月25日開催:議事録

なお、物は画像ファイルなのでアホのようにファイルが重く、ついでに画像なので引用しようとするとタイピングが必要という誠に遺憾な物であります。つまりタイピングは不肖このアタクシが行いましたよって、タイプミスは無いと思っていますが、間違えがございましたら誠に申し訳ございませんと先に謝罪しておきます。

以下、『』つけると見にくいかもなので(引用開始)(引用終了)とします。

冒頭(議事録本文2ページ)から。

(引用開始)
T.開会

福井議長
 それでは臨時の金融政策決定会合をただ今から開催する。

(午前8時3分開会)

遅起き鳥の私が早朝から招集申し上げたような感じになっていて大変恐縮に存じている。特に政府代表の方、突然のコールをかけて大変失礼した。ありがとうございます。

U.臨時会合開催の趣旨および議事進行についての説明

福井議長
 まず最初に議事進行を説明させて頂く。最初に私から、臨時会合の趣旨説明、あるいは論点の提示といったことを簡単にさせて頂きたいと思う。その後執行部から市況動向について簡単に報告してもらう。その後討議だが、趣旨説明のところでも申し上げるが、イラクとの戦いが始まったことを受けて、それをも含め、当面の対応を議論するパート1と、より基本的に今後の政策運営、これをパート2と、一応二つに分けながら討議をした方が良いのかなと思っている。そのパート1、パート2の討議が一巡したところで政府代表の方から発言を頂戴したい。それを受けて、その後、議案の取り纏め、採決に入りたい。最後に議事要旨の日程の承認という順で行いたいと思う。今日は臨時会合でもあるし、今日の討議の結果、あるいは結論を東京市場が開いている間に公表すべきではないかと思っていて、そういう観点から効率的な議事進行に協力を是非お願いしたいと思っている。そういう趣旨で開始時間も8時とやや異例の早さにさせて頂いた訳である。初めての議長ゆえ不慣れで、不行き届きのところも沢山あると思うが、その点をお許し頂きながら、効率的な中にも、是非活発な討議を期待している。

まず、政府からの出席者だが、財務省から谷口副大臣、内閣府から小林審議官である。宜しくお願いする。なお、いつも申し上げていると思うが、会合の中での発言は全て記録するということになっている。委員、ならびに政府からの出席者は、そのことを踏まえて発言頂ければと思う。
(引用終了)

・・・・・・・・とまあここまではちょっと微妙(コールだのパート1だの^^)ながらも普通なのですが、この次がもう俊ちゃんですよ俊ちゃん!!議事録本文3ページの上段から引用再開。

(引用開始)
ではまずはじめに趣旨説明、あるいは論点の提示を私から簡単に行いたい。

ご承知のとおり日本経済、国内需要が自律的な回復力を欠いている、あるいは乏しいという中で、株価の低迷や不良債権問題など大きな問題を引き続き抱えていて、経済のベースラインがフラジャイルである、外的なショックに対して脆弱な状況にある。こういう基本認識は恐らく皆、共有しているのかなと思うが、そのうえに3月20日からイラク情勢が急展開を遂げている、今後の影響、その帰趨は極めて不透明だという状況である。従って、まず第一に金融市場の安定確保を中心にして、当面の危機対応をここでしっかり検討しておく必要がある。既に、これまでの政策委員会・決定会合の決定内容に従って、執行部において対策本部も設けながら流動性供給を中心に必要な対応をしてきているが、やはりこの決定会合の場で改めてきちんと対応振りについて点検し、確認頂く必要がある、あるいは必要な追加措置をお決め頂く必要がある、これがナンバー1である。それからイラク情勢が今後どう展開するかよく分からない。巧くいかない場合には多少長期化するかもしれない。あるいはシナリオどおりというか、あるいは表面上短期で終結したという場合でも、やはり各国、特に日本経済に対してボディーブローのように、ダウンサイド・リスクがおよんでくるという心配も全くない訳ではないと思う。元々、これまで日本銀行が進めてきた金融緩和政策の効果が十分浸透している部分と、実体経済への効果、というところまで目を通すとなお不十分な面を残している部分、そのうえに新たな条件が加わってきているということも考慮に入れて、今後のより基本的な金融政策の展開ということを考えた場合に、金融緩和の枠組みを今日から、新しいメンバーも加わった今日から討議を開始するという意味合いを今日の会合に持たせるべきではないかと、このようなことが今日会議を招集させて頂いた趣旨である。こういう認識に立って今日は、敢えて臨時決定会合ということにさせて頂いたが、今申したとおり当面の対応ということ、そして少し長い目でみた政策の枠組みの検討の開始ということで議論をして頂きたいと思う。
(引用終了)

俊ちゃんのカタカナ発言・・・・・・・・・(^^)

で、この後の部分でも非常に味わいの深い所があるのですが(^^)、本日は俊ちゃん節鑑賞会ですので、途中ちょっと飛ばして議論が始まった中での俊ちゃん節をちょっとだけ拝見しましょう。

W.金融経済情勢に関する討議および金融政策運営に関する討議・決定
1.金融経済情勢および当面の金融政策運営に関する討議

の議事録本文12ページから始まる俊ちゃん発言なのですが、ちょっと前半割愛して13ページの辺りから本領を発揮しているので途中から引用します。

(引用開始、福井議長の発言の途中から引用しています)
それから今最後に説明のあったいわゆるロンバート貸出、これについては5日間という規制、これなどは少し緩和してこの貸出のファンクションを強化する必要があるのではないかと、こんなことが問題意識である。なお、問題意識をもう一つ付け加えさせて頂くと、株価におよんでくるリスク、それへの対応ということである。先程日本経済は引き続き脆弱な基盤のうえに立っている、最初の基本認識のところで申し上げたが、幾つものファクターがあるが、やはり金融システムが株価の変動と連動しているという点がその大きな弱点の一つである。今後株価にどいうショックが及んでくるか、全く不透明であるが、もし及んでくれば、もっとも経済に直接的な打撃を与えかねないとも心配される。この点を念頭に置きながら考え得る対応はないかという点も、問題意識のナンバー2として議論して頂ければと思う。

もっともこの点については、日本銀行は既に銀行保有株の買取り措置というものを実施してきている。この買取り枠の拡大の可能性という点について、実はこの点に限れば政策決定会合マターではないということだが、全体の危機対応ということに絡む問題としては、必要があればこの場で議論を出して頂いて結構である。

以上問題意識の説明、極めて簡単に申し上げた。以上の点を中心に、政策委員方の意見を伺いたいと思う。今日の議論の仕方は、このパート1については、トゥール・ドゥ・ターブルという形ではご意見を求めない。皆様方から順不同で自由に発言頂ければと思うが、従来の議事進行のルールは私は承知していないが、ランダムになってもいけないので、ご発言を希望の方は手を挙げて頂ければ私が指名させて頂くという形で議論を纏め上げていきたいと思っている。そういう進め方で宜しいか。
(引用終了)

フランス語キタコレ!!ですが更に議論が始まって17ページの所でもついでに引用します。


(引用開始)
福井議長
 会議を招集させて頂いた私の気持ちだけを参考までに申し上げれば、イラクの問題というのはやはり会議を開く重要なきっかけになっているということは事実だと思うが、議題に載せた点は、大きく言って、これは本当にセパレートかどうかも疑問だが、一応大きく分けて二つのことについては、議題に載せたからには、いずれもやっぱり重いと私は思っている。非常にロングランに議論していかなければいけないことと、今日できちんと結論を出さなければいけない当面の対応、この性格の違いはあると思うが、決定会合で議論する以上、やっぱり相応の重みを持って世間も受け止めてくれるように議論を尽くすべきであるし、また当然世間はそのようにみてくれるのではないかと私は期待も持っているということである。取り敢えず私の気持ちはそういうことである。
(引用終了)

・・・・・・・・・・話が進むうちに益々絶好調になってくるのでお暇な人はご鑑賞あれ(^^)

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2013/07/19

○昨日の積み残しで決定会合議事要旨ネタの続き

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130611.pdf

・長期金利に関して

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の後半部分になりますが長期金利動向に関して。

『債券市場の動向について、委員は、前回会合以降、米国長期金利やわが国の株価下落などを材料に、なお振れを伴う展開が続いているが、市場参加者との意見交換などを踏まえた国債買入れオペの運営変更は市場でも好感されており、金利の変動はひと頃に比べると落ち着いてきたとの見方で一致した。』

ふむ。

『委員は、引き続き、弾力的なオペ運営によって、金利の安定的な形成を促していくことが重要との認識を共有した。』

「安定させる」のではなくて「安定的な形成を促す」のですから念の為。

『また、委員は、日本銀行による巨額の国債買入れには、リスク・プレミアムの圧縮効果があり、その効果は、日本銀行の国債買入れが進捗するにつれて累積的に強まるとの認識で一致した。』

ここの「リスクプレミアム」というのがそもそも何ですねんというのもある上に、リスクプレミアムの圧縮効果というのも良く考えてみれば判ったような判らんような話でして、まあ黒田さんなどの情報発信が(最近はこの前の会見に見られるようにちょっと変化している感じはしますが)総裁就任前から威勢の良い話をしたりというのもあって、どうもこの辺の言葉の定義が怪しいまま話だけは進む、みたいなのがあって市場とのコミュニケーション的にどうよというのはありますな。まあそもそもは異次元緩和の打ち込み時に明らかにそれは事前の詰めが足りないだろというのを出した所からそうなっている、と言ってしまえばそれまでなんですけどね。

『この間、何人かの委員は、予想物価上昇率の上昇による実質金利の低下を通じた実体経済へのプラスの効果が重要であり、実質金利の動向にも注意を払う必要があると付け加えた。』

名目金利が下がらないどころか上昇しているので実質金利理論キタコレという所なのですけれども、それはそれとして「予想物価上昇率が上昇するから設備投資する」という理屈がどうもしっくりこないのですけれども。予想物価上昇率の上昇が成長期待の上昇によるものであればそらまあ設備投資するでしょうけれども、コストプッシュで予想物価上昇率は上がれども成長期待が上昇しないって時にはどうなんですかねえとは思いますが。

まあそれは兎も角として、ここでああだこうだ説明されていますが、異次元緩和ローンチ当初にございました「長期金利を下げましょう」という威勢の良い話はすっかり「低下を促す」「いや大事なのは実質金利」というような日和ったーモードになっておられる(というかそもそも無理無理に力技で金利を下げる、という黒田総裁の為替介入ばりの物言いの方がおかしかったということなのでしょうけれどもね)辺りは誠に心の温まるものを感じる所でございました。


・共通担保オペの期間延長問題

んでもってその続き。

『そのうえで、今後長期金利が大きく変動した場合の備えとして、共通担保オペの最長期間の延長についての議論が行われた。』

事前報道があって直前まで妙に盛り上がった案件ですなあ、というか何か直前までダンディールかと思われるような報道振りでしたが。

『何人かの委員は、メリットとして、こうしたオペを適切なタイミングで実施すれば過度な金利変動の抑制に相応の効果を発揮しうること、また、そうしたオペが準備されていれば、その存在自体が市場の安心感につながり、過度な金利変動を抑制する効果が期待できることを指摘した。』

まあそれはそうなのですが。

『一方で、何人かの委員は、調節手段の拡充という面を超えて、金融政策の枠組みの修正や時間軸に関するメッセージを有する措置として市場で誤解される可能性があることを指摘した。』

「2年で2%」を打ち出している以上、本来的に言えば2年オペを実施というのは2年で2%行かないと思っていないと打てないオペですよね、と言われてしまうとぐうの音も出ないということであります。そもそも2年で物価目標達成と言っていて、しかもそれをやや無理気味に行うという金融政策を実施している中では時間軸というのは長期化できないのですから、という話も後でまた出てきます。

『また、別の何人かの委員は、1年を超える期間の共通担保オペは、「貸出増加を支援するための資金供給」と代替関係にある面があり、共通担保オペの最長期間を延長する場合には、両者の関係を整理する必要があると述べた。』

ふむ。

『この間、何人かの委員は、現在、国債買入れオペについては柔軟な運営余地を執行部に与えていること、共通担保オペについても最長1年までの資金供給を行うことが可能であることから、当面は、現在の枠組みのもとで弾力的なオペ運営を行うことにより、金利の安定的な形成を促していくことが可能であるとの見解を示した。』

『こうした議論を経て、委員は、@日本銀行による巨額の国債買入れによるリスク・プレミアムの圧縮効果は、今後着実に強まっていくこと、Aこれまでのところ、弾力的なオペ運営が債券市場の安定に効果を発揮していることなどを踏まえると、現時点では、共通担保オペの最長期間を延長する必要はないとの見解で一致した。』

まあ結果的にはそうでしたな、めでたしめでたし。

でまあこのロジックを敷衍しますと、まあ普通に考えて「2年で2%」の看板を下ろさない限りは2年固定オペをローンチすることにはハードルが高いだろという事になろうかと思います。


・時間軸に関するお話

最後の部分はちょっとえーという感じなのですが。

『この間、最近の長期金利変動の一因として、複数の委員は、短期金利の見通しについて市場の見方がばらついている可能性を指摘した。』

ば、ばらついているのか???????????????

『この点について、複数の委員は、こうしたばらつきを抑え、金利の安定化を図るためには、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続する、というコミットメントをしていることを繰り返し情報発信することで、短期金利をしっかりと低位にアンカーすることが重要であるとの見方を示した。』

単に「2%達成まで継続」というのであればアンカーされますが、「2年で達成」と言っている時点で時間軸を区切っている訳でして、「短期金利をしっかりと低位でアンカー」というような時間軸を前提とする事は出来ないのでして、そこは何をゆうとるんだという話になるのですけどね。

でまあそういうことですので、そもそも「時間軸強化」と「2年で達成」というのは矛盾する話となるのですが、相変わらず報道とか何とかスト(で言ってるのはさすがに少ないが)レポートとかでも「時間軸の強化を」みたいな話をする動きが散見されるのは何なんでしょという所でございます。


・これはワロタ

『W.政府からの出席者の発言』で財務省からこんなのがありました。

『このところ、金融資本市場においてボラティリティの高まりがみられており、その経済への影響を注意深くみていく必要がある。日本銀行におかれては、こうした状況を受け、市場参加者の意見を踏まえ、国債買入れオペの運営方法を見直すなど積極的な対応をとられてきたものと承知している。引き続き、「市場との対話」をしっかりと行い、市場動向を踏まえた弾力的なオペ運営に努めるとともに、そうした姿勢をしっかりと内外に示すようお願いしたい』

まあそうですなと思った訳ですが、内閣府の出席者からもこのようなご発言が。

『日本銀行には、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを期待する。このところの市場のボラティリティの高まりに対して、日本銀行は、市場参加者の意見を踏まえた対応をとるなど努力してきたところであるが、引き続き「市場との対話」を通じて、適切に対応していくようお願いする。』

・・・・・・・・・・・・えーっと、内閣府様の「市場との対話」と仰いますと機長様のコメント(以下自主規制)。


#ということで積み残しネタでした

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2013/07/18

○6月日銀議事要旨も何か微妙なツッコミどころがあるのです

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130611.pdf

最近の決定会合は会合の結果とか展望レポートとかを見るよりも議事要旨を見る方がエンターテイメントになっている、という時点で従来とは違ってきましたなあと思うのですが・・・・・・・・・・

・まずは今回最大のツッコミどころとあたくしが思った箇所ですが物価に関して

出た瞬間に盛大に斜め読みして全力で引っ掛かった箇所がこちらです。

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の冒頭でありますところの『1.経済情勢』の海外経済に関する部分から。

『そのうえで、何人かの委員は、世界的にディスインフレ傾向が続いているとの見解を示した。このうち一人の委員は、こうした動きは、中国やNIEsの経済において、製造業部門の弱さもあって、これまでみていたよりも勢いを欠くところがみられるなど、海外経済の体温が全体的に上がってこない状況を反映している面があるとの認識を示した。ある委員は、ディスインフレの背景には潜在成長率の低下といった構造的な要因が影響している面も相応にあるのではないかと述べた。』

というのはツッコむ箇所というよりはまず最初に読んで「委員会の検討」のほぼ冒頭に近い所で出てきた(ついでに言うと欧州経済の所でもディスインフレ傾向に関する話をしている)ので「おーちゃんとグローバルディスインフレに関して認識してるじゃねえか」と感心した(感心するというのも変ですが^^)訳なのですが・・・・・・・・・・・・・・・・


ちょっと先に行きますと国内経済の話になるのですが、そこのケツが物価情勢の話になっていまして、そちらではこのような指摘があります。

『そのうえで、一人の委員は、世界的なディスインフレ傾向の中で、わが国の物価が、わが国独自の要因でプラス幅を拡大していくか注視していると述べた。』

そうですよねグローバルにディスインフレになっている中で日本の物価が日本要因だけでホイホイ上昇って出来るのですかという論点って物凄く重要ですねえ・・・・・・・と思いながら読むわけですが、ちょっと待ておいこの「一人の委員は」ってのは何なんだという話になって思わず3ページ前を読み返す訳ですよ。

・・・・・・・・・えーっと、世界的にディスインフレ傾向があるという指摘をしているのは「何人か」がしているのにそのグローバルディスインフレが国内と無関係とかそういう認識なんですか残りの人はどないなってますねんという所でして、まあ今回の議事要旨見ててとにかく最初に物凄い勢いで違和感を感じたのはここであると申し上げたかった訳ですな、うんうん。


・もいちど戻って海外経済の検討部分

海外経済に関する部分に戻りまして、先ほど引用した部分も再掲しつつ引用しますね。

『海外経済について、委員は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、欧米において財政面からの下押し圧力が弱まり、企業マインドが改善していくにつれて、次第に持ち直していくとの認識を共有した。そのうえで、何人かの委員は、世界的にディスインフレ傾向が続いているとの見解を示した。このうち一人の委員は、こうした動きは、中国やNIEsの経済において、製造業部門の弱さもあって、これまでみていたよりも勢いを欠くところがみられるなど、海外経済の体温が全体的に上がってこない状況を反映している面があるとの認識を示した。ある委員は、ディスインフレの背景には潜在成長率の低下といった構造的な要因が影響している面も相応にあるのではないかと述べた。』

でまあ米国経済なんすけど。

『米国経済について、委員は、財政面からの下押し圧力を受けつつも、個人消費や住宅投資など堅調な民需を背景に、緩やかな回復基調が続いているとの認識を共有した。もっとも、委員は、政府支出の減少の影響などから製造業の企業マインドが一部慎重化しており、生産や設備投資の持ち直しに向けた動きも緩慢になっているとの見方を共有した。』

ユーロ圏はまあこんな感じね。

『ユーロエリア経済について、委員は、緩やかな後退を続けているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、目先、景気の緩やかな後退がなお続くものの、財政面からの追加的な下押し圧力が弱まるもとで、輸出の持ち直しを起点に、景気は次第に底入れを探っていくとの見方で一致した。』

中国ですが。

『中国経済について、委員は、堅調な内需を背景に、安定化してきているとの認識で一致した。多くの委員は、製造業部門に幾分弱さがみられるなど、改善の動きが想定よりもやや鈍いとの見方を示した。先行きについて、委員は、良好な雇用・所得環境などを背景に、内需は引き続き堅調に推移するとの見方を共有した。もっとも、当面は外需に力強さを欠くほか、「質」を重視しバランスのとれた成長を志向する政府の方針などを考慮すると、かつてのような高い成長に復していく公算は小さいとの見方で一致した。』

新興国について。

『NIEs・ASEAN経済について、委員は、全体として持ち直しているが、韓国・台湾の輸出が弱めとなるなど企業部門では持ち直しの動きが緩やかな状態が続いているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、ASEAN中心に底堅い個人消費が下支えするもとで、輸出が緩やかに持ち直していくにつれて、次第に回復ペースは増していくとの見方を共有した。』

つーことで、これ7月じゃなくて6月の話になりますけれども、この時点での認識とか先行き見通しとかそんなに強いのかねえという感じでして、こういう認識を示しておきながら何故か6月も7月も月報を見ると輸出の先行きが強含みに向かうような結論になっていたりしてまして、先ほどの物価の部分と言い、この海外経済の分析と出てくる結果とのギャップと言い、どうも段々先行き見通しが大本営発表状態になってきてねえか(まあ台湾沖航空戦状態のように戦果の認識がおかしくなるモードではないですけど)という疑惑がががががという所ですな、うんうん。


・国内物価の認識に関して

国内経済の方はまあスルーして国内物価の所をば(さっきの引用部分の再掲も入ります)。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっているとの認識で一致した。』

これは事実認識だからまあ良いとして。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標などで上昇が一服しているものもあるが、家計やエコノミストに対する調査など全体としては上昇を示唆する指標がみられるとの見方を共有した。』

(・∀・)ニヤニヤ

『複数の委員は、実際の物価指標の上昇基調がはっきりとしてくれば、予想物価上昇率も上昇していくとの見方を示した。』

まあそれがデフレ脱却に行かないで消費の冷え込みなどにならない事を祈りますが。

『物価の先行きについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、5月の東京の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比をプラス転化させた要因が全国でも押し上げに働く可能性が高いことから、5月には概ねゼロ%まで明確に改善し、その後についても、マクロ的な需給バランスの改善の影響も加わり、緩やかにプラス幅を拡大していくと考えられるとの見方を共有した。』

これもまあ見やすい見通しなのでヨロシとしまして。

『そのうえで、一人の委員は、世界的なディスインフレ傾向の中で、わが国の物価が、わが国独自の要因でプラス幅を拡大していくか注視していると述べた。』

先程申し上げた通り、何で「一人」ですねん・・・・・・・・・

『別のある委員は、消費者物価の前年比プラス幅は、夏頃までは、前年のエネルギー価格下落の反動などから大きめに拡大するが、その後、拡大ペースが緩やかになる可能性があるとの見方を示した。』

ですなあ。

『5月の東京の消費者物価で、テレビの前年比がプラスに転じたことに関連して、ある委員は、海外における賃金上昇や、昨年秋以降の円安方向の動きを受けて、企業の価格設定行動について変化が生じつつあるのではないかという点に注目していると述べた。』

・・・・・・・・・えーっとですな、じゃあ実際に価格がどうなっているかというのを不肖この第2種兼業主夫でもあります所のあたくしが思いまするに、名目の価格設定っていじっていなくて、従来の商品の中身を微妙に入れ替えることによって調整しているようにしか見えないのですけどにゃあという所なのですよ。まあ報道でも「量を減らして値段据え置き」みたいなニュースが良く有る訳ですが、最近は益々その傾向が目立っているように思える次第でございますが、それって「価格設定行動に変化」というよりは単に「コストプッシュでマージンが無くなってきたけど設定価格を上げられないから仕方ないので中身をいじって調整」とゆー傾向にあるだけのような気がするんですけどなあとか思ったのですけれども、この部分も盛大に端折られているので実際にどの辺の動きを見てそういう話になっているのかがワカランチ会長ではございまする。


・木内さん(と思われる)の見解とそれに関するツッコミ

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所ですが、木内さんの提案とそれに対する見解で大体埋め尽くされているのですな。

『先行きの金融政策運営について、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続すること、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

ここまでは良いとしまして。

『これに対し、ある委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しい中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化につながる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であると述べた。この委員は、そうすることは、債券市場の安定回復にも資すると述べた。』

ここもそうなのですが、微妙な端折り方をされているので木内さん(と思われる人)の見解がイマイチワケワカランチンになっているのですがまあ勝手にここの文章を脳内補完しますとこんな感じですかね。

「2年で達成するのは難しいが、まずとりあえず2年間実施してその時になったら考えましょう、2%達成は2年と切らないで中長期的に考えましょう、そうした方が時間軸が(木内さん的に達成が困難にもかかわらず、達成するというメッセージを与えることによって)短期化するような事もないですよ。」というのが基本線で、その中で「オープンエンドみたいな事をやると永久緩和みたいな間違った認識を与えるので良くないですよね」というのと「2年で2%を強調しすぎると、(木内さんの見通し通りに)やっぱり2年で2%はしんどいですねという事になってきた時に「じゃあもっと過激な政策をしますか」という思惑が浮上して却って問題でしょ」という事なのかなあと思いました。

が、この文章だと端折り過ぎで言いたい事が一見して???なのでもうちょっと丁寧に書いて頂きたいと思うのですけどねえ。

で、反対意見の方も微妙に端折ってるのでこれまたよく判らん。

『ある委員は、これに対し、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとしているにもかかわらず、明確な手段を示さずに中長期的に2%を目指すというのは分かりにくいと指摘した。さらに、この委員は、現在の枠組みでも、必要な調整の可能性は排除されておらず、柔軟性は十分に確保されているとの見方を示した。』

>明確な手段を示さずに中長期的に2%を目指すというのは分かりにくい
>明確な手段を示さずに中長期的に2%を目指すというのは分かりにくい
>明確な手段を示さずに中長期的に2%を目指すというのは分かりにくい

いやそれ主流派もそうなんですけど。フィリップスカーブの上方シフトを気合で促す以外の明確な手段ってありましたっけ????????

『また、別の一人の委員は、「量的・質的金融緩和」の継続期間を2年程度に限定することは、緩和効果を弱める可能性があると述べた。』

これがまた分かりにくいのですが、そもそも2年で2%やる気満々なのであれば、2年程度に限定するのが緩和効果を弱めるというのが????なのですが、良く良く考えてみると2年で2%行かないと思っているのであればわざわざ2年に限定する必要は無くて、わざわざ「集中期間として2年間」みたいなのを掲げるのが変じゃないの?というツッコミであれば有りなツッコミだなとか思うのです。

とまあそんな感じで端折り過ぎとかいちゃもんをつけているのですが、実はこの部分って出口政策に関わる話に繋がる議論でもありますので、あまりここを細々と書いてしまうと今度は別の問題が生じる可能性があるので、確かにここの記述方法って難しい罠とも思うのでありました。


で、あと債券市場の話とオペ期間の延長の話があるのですが、時間が惜しくも無くなったのと引用大会で増量企画にも程があるので明日でも後送りになっておりますFOMCミニッツネタと共に投下予定ですすいませんすいません。

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2013/07/17

○7月金融経済月報比較

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1307.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1306.pdf(前回)

例によって『概要』の所から。

・現状判断

『わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、持ち直している。』(前回)

総括判断の回復キタコレはご案内の通り。

『海外経済は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)
『海外経済は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直しつつある。』(前回)

海外の判断は変わらずで、ついでに言えば先行きの所では海外を若干下げている筈なのですけれども輸出の現状判断は上がっているのですよね。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は改善している。』(今回)

『設備投資は、非製造業が引き続き底堅く推移するなか、全体としても下げ止まりつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(前回)

声明文比較と同じなのでサラサラ参りますが、設備投資、住宅投資、鉱工業生産の判断が上がっておりまして、公共投資、個人消費の判断は(元が強いのですが)横ばいです。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、金融緩和や各種経済対策の効果もあって国内需要が底堅さを増し、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

これがまあスッキリしたのは良いのですが前回とどう変わったのかが解釈に困りますが、結局の所内需の見通しを上げて外需の見通しを下げたということですな。内需については「底堅さ」と言い切り方にして、一方で外需に関しては海外経済の「成長率が高まる」という表現から「持ち直し」と控えめにしているのが理由。

『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、持ち直していくと考えられる。』(前回)

今回の金融経済月報(声明文もそうですが)での謎部分はここの輸出の判断なのですけれども、この部分後でまたやります。

『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も増加していくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費も、雇用環境の改善にも支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(今回)

『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善に向かうなかで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費も、雇用環境の改善にも支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

住宅投資が引き続き増加って消費税増税駆け込み要因が足元の強さにあるんじゃネーノという気もするのですが、まあそれはそれとして住宅投資を引き上げていまして、企業収益と生産の所の先行き見通しも上がっております。


・不確実性に関して

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

まあ同じです。


・物価

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、上昇幅が縮小している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとではゼロ%となっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、為替相場の動きを反映して上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(前回)

まあ現状判断に関しては事実認識の世界ですけれども予想物価上昇率に関しては後ほど。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかに上昇するとみられる。消費者物価の前年比は、プラスに転じていくとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、次第にプラスに転じていくとみられる。』(前回)

まあどっちも上昇なので良いのかもしれませんが、国内企業物価の先行きはやや下がり消費者物価の先行きは上がる(上がると言ってもシナリオの通りという話でしょうが)という所です。


・金融環境

これはめんどいので総括判断の所だけ。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)


○月報の続き:全文の方を見る(海外経済と予想物価上昇率)

・海外経済

気になったので海外経済の先行き部分を確認。

『先行きの海外経済は、米国を中心に、次第に持ち直していくと考えられる。また、上記のような為替相場の動きも、輸出の下支えに対して、より明確に作用していくと予想される。ただし、海外経済の先行きの不確実性は引き続き大きく、当面、持ち直しのペースはごく緩やかなものにとどまると考えられる。』(今回)

『先行きの海外経済は、米国を中心に、成長率が次第に高まっていくと考えられる。また、上記のような為替相場の動きも、輸出の下支えに対して、より明確に作用していくと予想される。ただし、海外経済の先行きの不確実性は引き続き大きく、当面、回復のペースはごく緩やかなものにとどまると考えられる。』(前回)

ということで、結論はやはり「成長率が次第に高まる」から「次第に持ち直す」という表現になっておりまして、まあここらを見ますと相対的な判断は弱くなっているという事でしょう。

しかし内訳をみるとこれがまた謎なのですけどね・・・・・・・・・(以下長いけど勘弁)

『欧州経済の弱さが、貿易や対外投資活動、企業マインドの悪化などを通じて、世界経済の持ち直しを妨げるリスクには引き続き注意が必要である。』(今回)
『欧州経済の弱さが、貿易や対外投資活動、企業マインドの悪化などを通じて、世界経済の持ち直しを妨げるリスクには引き続き注意が必要である。』(前回)

『中国経済については、わが国経済への影響が大きい製造業部門において、これまでの高水準の設備投資によって、素材などの供給能力が需要対比で過剰となっているとみられることなどから、需給バランスの緩和した状態がさらに長引く可能性がある。』(今回)
『中国経済については、わが国経済への影響が大きい製造業部門において、これまでの高水準の設備投資によって、素材などの供給能力が需要対比で過剰となっているとみられることなどから、需給バランスの緩和した状態がさらに長引く可能性がある。』(前回)

『米国経済についても、民間需要が堅調に推移しているとはいえ、当面は、財政面からの下押し圧力が抑制要因として働く可能性が高い。』(今回)
『米国経済についても、民間需要が堅調に推移しているとはいえ、当面は、財政面からの下押し圧力が抑制要因として働く可能性が高い。』(前回)

ということで、良く見ると内訳が変わっていないのですけど・・・・・・・

『これらに関連して、情報関連分野についてみると、昨年末以降、スマートフォン向け部品需要の下振れがわが国の情報関連財の輸出や生産の下押しに作用してきたが、こうした影響は和らいできており、むしろ今後は、新商品向けの部品出荷が、次第に輸出の押し上げに作用し始めると見込まれている。ただし、情報関連分野全体の最終需要をみると、なお明確に改善しているとは言い難く、そうしたスマートフォンの新商品だけでなく、パソコンなどの従来型製品を含めた今後の最終需要全体の動向には引き続き注意していく必要がある。』(今回)

『これらに関連して、情報関連分野についてみると、昨年末以降、わが国の情報関連財の輸出や生産の下押しに作用してきたスマートフォンの新商品向けの部品需要の下振れの影響は、徐々に和らいできているとみられる。ただし、情報関連分野全体の最終需要が明確に改善しているとは言い難いだけに、パソコンなど従来型製品も含め、今後の最終需要全体の動向には引き続き注意していく必要がある。』(前回)

ということで情報関連分野の所で生産の押し上げに寄与の可能性ですってよ奥様。

『この間、日中関係のわが国経済への影響については、自動車関連輸出の持ち直しなどにみられるように、引き続き緩和の方向にある。ただし、こうした改善の動きが今後も続くかどうか、引き続き注意が必要である。』(今回)
『この間、日中関係のわが国経済への影響については、自動車関連輸出の持ち直しなどにみられるように、徐々に緩和している。ただし、こうした改善の動きが続くかどうか、引き続き注意が必要である。』(前回)

ほうそうですかという所ですが、中国の引き締め的な政策がどうのこうのみたいな話は見当たらないですなあという所で。


・予想物価上昇率

『この間、予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる(図表33)。』(今回)
『この間、予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる(図表30)。』(前回)

相変わらずこちらは具体的な話をしないで図表を見ろ攻撃でして、しかも図表を見ても前月からの変化があまりなさそうに見えるのだがまあそういうことですかそうですかという所で。今回の図表は55ページ目、前回の図表は50ページ目にあります。

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2013/07/12

で、今回のMPMですが、展望レポートの中間レビュー付きだというのに無暗矢鱈と早い時間で終了しておりましたが、どうせ無風だからはあそうですかとか思ってたらMPM出た後に為替がドル安なのか円高なのか判らんが振れていたのは何なんですかね。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2013/index.htm/

ちなみに去年の場合どの位の時間に終了していましたかね、というのはこの辺を(^^)。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2012/index.htm/


○声明文:現状判断をやたらめったら上げているのだが先行きの解釈がややムツカシヤ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130711a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130611a.pdf(前回)

会見の報道の解禁時間後に「総裁が景気回復宣言」とか共同のヘッドラインに出ていてワロタですが、まあご案内の通り現状判断部分が物凄い勢いで威勢がよろしゅおすな。

・現状判断:総括判断は「回復」へ

ご案内の通りですが。

『3.わが国の景気は、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『3.わが国の景気は、持ち直している。』(前回)

持ち直しから回復に上がっているのは当然ながら景気の現状に対して自信を深めたからなのですけれども、「緩やかに」とか「しつつある」とか微妙にヘッジクローズを入れているのがチャーミングで、まー亀さんかカタツムリさん辺りがソロソロと首を出して来ましたぞなもしという所で。

・現状判断:需要項目はやたらめったらあちこち上方修正

総括判断よりも目に付くのはこちらの方で、進軍ラッパが鳴り響いているように見えるわけなのよね。

『海外経済は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)
『海外経済は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直しつつある。』(前回)

海外経済全体はヨコなのですが輸出は「持ち直しつつある」から「持ち直している」と言い切り型に変更になって上方修正のように見えますぞな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。』(今回)
『設備投資は、非製造業が引き続き底堅く推移するなか、全体としても下げ止まりつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回)

設備投資の部分が「下げ止まりつつある」から「下げ止まっており」とこれまた言い切り型になりまして、ダウントレンドからの脱却という判断をしめしております。しかもその中で前回は非製造業は底堅いけど製造業はまだまだという話になっていたのが改善されていますし、背景となる部分に「企業収益が改善」となっていてこれまた随分な進軍ラッパですなあという所です。

公共投資はヨコですけれども住宅投資も「持ち直しが明確」とかこちらも自信度アップなのですけれども、住宅投資の「持ち直し」ってそれ消費税の駆け込みとか金利上昇の影響じゃネーノという気もだいぶするので、現状判断をここで威勢よくする必要があるのかという気がすると言いますか、何か尻馬乗り系の香りがするのは気のせいですかそうですか。

『個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は改善している。』(今回)
『個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(前回)

個人消費は強めの判断維持、生産は「持ち直し」から「増加」に上がっていますな。ちなみに業況感云々は短観の出た影響なので前回と比較できませんにゃ。


『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとではゼロ%となっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(前回)

まあここはこんなもんでしょ。


・先行き見通し:解釈が難解ホークスにも程があるわ

今回見てて????だったのは第4パラグラフの経済見通しの方でしてね。

『4.先行きのわが国経済については、国内需要の底堅さと海外経済の持ち直しを背景に、緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)
『4.先行きのわが国経済については、金融緩和や各種経済対策の効果もあって国内需要が底堅さを増し、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

表現がすっきりするのは基本的に「その方向性に対して自信度が上がった場合」という法則があるので上方修正しているように見えますし、結論の部分も「回復経路に復していく」というややこしい表現がすっきりと「回復していく」となっているので上方修正にも見えるのですが、国内需要の底堅さの所が「増し」というのが抜けているのは何ですねんとか、更にワカランチ会長なのは海外経済の所で、「成長率が緩やかながら次第に高まって行く」というのと「持ち直し」だとどっちの見通しが強いのかが最早禅問答というか蒟蒻問答状態。

判らない時は英文(念の為ですが、ステートメントなどの英文バージョンは「ご参考」の物でして、MPMで文言を決定しているものではありません、つーかそこを議論しだしたらこだわりの人たちが喧々諤々状態になってMPMがあと1日余計に必要になると思います^^)を見るという必殺技がございます、つーかまあ判る時も読むのがオモシロスですけどね。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k130711a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k130611a.pdf(前回)

『4. With regard to the outlook, Japan's economy is expected to recover moderately on the back of the resilience in domestic demand and the pick-up in overseas economies.』(今回)

『4. With regard to the outlook, Japan's economy is expected to return to a moderate recovery path, mainly against the background that domestic demand increases its resilience due to the effects of monetary easing as well as various economic measures, and that growth rates of overseas economies gradually pick up, albeit moderately.』(前回)

・・・・・・・・・・ううう、これ読んでも上方修正なのか下方修正なのか横ばいなのか判らない訳でして、単独で見てるとさっぱりワカランチ会長とかちょっとご勘弁頂きたいのですが、まあ今回に関しては展望レポートの中間レビューがあるからそっちの数字と次のパラグラフの表現見てると基本的に「オントラック」状態と判るので、そこから逆算すると今回の先行き見通しは前回対比横ばいという事になるんでしょうが、これは今日出る金融経済月報における項目別の説明部分を読む必要があるぞなもしという話っす。

『消費者物価の前年比は、プラスに転じていくとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、次第にプラスに転じていくとみられる。』(前回)

まあこれは上方修正というか展望レポートのシナリオに沿った推移でございますよという話ですな。


・展望レポート中間レビュー:オントラックですかそうですか

これは今回のみ入りますので前回対比とかありません。

『5.4月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率、消費者物価ともに、概ね見通しに沿って推移すると見込まれる。』(今回)


・リスク認識:海外経済の「成長力」という表現が抜けていますのう

『6.リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)

『5.リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済や新興国・資源国経済の成長力など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

英文版はこちら。

『6. Regarding risks, there remains a high degree of uncertainty concerning Japan's economy, including the prospects for the European debt problem, developments in the emerging and commodity-exporting economies, and the pace of recovery in the U.S. economy.』(今回)

『5. Regarding risks, there remains a high degree of uncertainty concerning Japan's economy, including the prospects for the European debt problem and the growth momentum of the U.S. economy as well as the emerging and commodity-exporting economies.』(前回)

まあ何ですな、これを見ると米国は「成長」が「回復」に格下げになっているのですが、新興国資源国に関しては「動向」となっておりまして、まあメインのシナリオではそんなにいじっていない(と思われるのだが月報みないとワカランチ会長なのは先ほど申し上げた通り)のですが、リスク認識としての海外経済への警戒は高まっているように見えますにゃ。


・最後の部分は同じ

全文一致なので今回分だけ引用。

『7.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

(注)というのは木内さんの提案で、木内さんの提案も全文一致(^^)。


○展望レポート中間レビューの数値とかファンチャートとか

別紙はPDFの3ページ目から。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130711a.pdf

4月展望レポート(の基本的見解)図表その他はPDFの7ページ目から。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304a.pdf

PDFベースで表組みされているとちょっと使いにくいので、FEDのSEPみたいにHTMLで数字を並べている「アクセスしやすいバージョン」というのを作って頂きたい(翌日でもいいですから)のですがロジ的にしんどいですかねえ。ご検討をお願いしますが良く考えたらそれを使うのはアタクシだけですかそうですか(^^)。

実質GDP

2013 年度
今回:+2.5〜+3.0<+2.8>
前回:+2.4〜+3.0<+2.9>

2014 年度
今回:+0.8〜+1.5<+1.3>
前回:+1.0〜+1.5<+1.4>

2015 年度
今回:+1.3〜+1.9<+1.5>
前回:+1.4〜+1.9<+1.6>

2014年度の見通しの数字を下げてきた人がいるのねという所でして、ここの数字だけ見るとちょっと下がっているんじゃないのという感じではあるのですが、磔のスキルがございませんので図表は元の方をご覧ありたい訳ですけど、ファンチャートの方を見るとそんなに下がった感じはしないような見え方ではございます。細かい票読みはまだしておりません(ただの手抜き)ので月報&会見ネタの時にでも。

コアCPI(消費税影響除く)

2013 年度
今回:+0.5〜+0.8<+0.6>
前回:+0.4〜+0.8<+0.7>

2014 年度
今回:+0.7〜+1.6<+1.3>
前回:+0.7〜+1.6<+1.4>

2015 年度
今回:+0.9〜+2.2<+1.9>
前回:+0.9〜+2.2<+1.9>

つーことで、数字の表の方だけみておりますと前提としての実質GDP見通しが若干下がった一方でコアCPIの見通しがあまり変わっていないの?となりそうですが、これまたファンチャートを比較しながら見るとそんなに違和感は無くて、まあ要するにオントラックですよという話なんでしょ。


まあ元々の景気先行き見通しが盛大に強気というか楽観的というか願望レポートというかでございますので、足元の判断が盛大に強くなってもそれはあくまでもオントラックという話だったりするので先行き見通しの方があまりカワランチ会長、とまあそういう事なんでしょうな、うんうん。


○その他少々雑談で

・会見ヘッドラインは例によってヘッドラインバイアスに注意ですが

会見テキストは今日出るのでそちらを見て色々と確認するのが吉なのですけれども、昨日の会見ヘッドラインでウケを取ったり脱力したりというのはこの辺っすかねえ。

JBN 16:40 *日銀総裁:長期金利は極めて安定している
JBN 16:40 *日銀総裁:長期金利のボラティリティも低下している
JBN 16:41 *日銀総裁:米金融政策が新興国市場に与える影響を注視
(以上ブルームバーグニュース昨日のニュースヘッドライン(のほんの一部)から)

最初の2つは「まーたそれか」という奴で、いやあの単に先生!大変なの!!セカンダリーマーケットちゃんが息をしていないの!!!状態でございまして、売買がそこそこ伴って結果として相場の方向性がまあございませんなあという状況ならそれはそれで良いのですが、「極めて安定」というよりは「極めてウゴカンチ会長である」という所だと思うのですがヘッドラインだけ見ていると良く判らん。

とりあえずベンダーのヘッドラインバイアスとしては債券市場に興味の無い黒田総裁みたいなフレームアップをするような感じにヘッドラインが打たれる方向にあるので、その度に一々市場が(#^ω^)ピキピキとなるのはエネルギーの無駄使いのような気はしますが、そうは言いましても引き続きその手のバイアスがあるので総裁発言が燃料投下系になるリスクを念頭に置きながらうまい事発言して頂きたいのですが、これがまた実際に興味が無くて「チッ、うっせーな」と思っているのでしたらあばばばばーではございます。本当はどっちなんでしょうかねえ・・・・・・・・・

で、3番目の部分はワロタというかお前が言うなというかでございまして、誠に味わいのあるヘッドラインでございますが、はてさてこれもまた前後の文脈を読むのが楽しみですなあというものでございまする。

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2013/07/10

○さくらレポートから少々、というか今更気が付いたが前回のレポートネタにしてないわorz

本当に少々ですけど。

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer130704.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer130704.pdf(全文)

・8地域で上方修正&需要項目も強い

『I. 地域からみた景気情勢』から。

『各地の景気情勢を前回(13年4月)と比較すると、8地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から判断を引き上げる報告があった。各地域からの報告をみると、家計・企業マインドが改善するもとで国内需要が底堅さを増しているほか、海外需要も持ち直しに向かっていることを背景に、多くの地域から、「持ち直している」等の報告があった。この間、東北からは、「回復しつつある」と、前回からの変化はないとの報告があった。』

というのはご案内の通りですが、需要項目も基本的に全般強いという絵が。

『公共投資は、東北から、「大幅に増加している」、8地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「増加している」、「増加しつつある」等の報告があった。』

『設備投資は、4地域(北海道、東北、関東甲信越、東海)から、「増加している」、「緩やかに増加している」等、3地域(近畿、中国、九州・沖縄)から、「持ち直している」、「持ち直しつつある」等の報告があった。また、四国から、「一部で弱めの動きがみられているものの、そうした影響を除いてみれば底堅さを増している」との報告があったほか、北陸からは「底堅く推移している」との報告があった。この間、企業の業況感については、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。』

ということで設備投資や公共投資は改善と。

『個人消費は、消費者マインドの改善等を背景に、5地域(北海道、北陸、東海、近畿、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直しつつある」、「持ち直しの動きがみられている」等の報告があったほか、関東甲信越から、「底堅さを増している」との報告があった。この間、3地域(東北、中国、四国)からは、「底堅く推移している」、「横ばい圏内で推移している」等の報告があった。』

個人消費も上方修正されていますな。詳しくはこんな感じ。

『大型小売店販売額をみると、百貨店は、多くの地域から、高額品の販売が堅調となっているなど、「増加している」、「持ち直しの動きが広がっている」等の報告があった。一方、スーパーは、ほとんどの地域で、「弱めの動きが続いている」等の報告があった。』

実質所得が伸びない中での2極化現象のような気がするのは気のせいですよトリクルダウンですよトリクルダウン!!(棒読み)

『乗用車販売は、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。』

ほう。

『家電販売は、スマートフォンや節電機能に優れた白物家電等が堅調であるものの、テレビやパソコンが低調であることから、多くの地域から、「低調に推移している」等の報告があった。一方、複数の地域から、「全体としては横ばい圏内の動き」等の報告があった。』

ふーん。

『旅行関連需要は、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。』

ほー。


で、その他の需要項目。

『住宅投資は、3地域(東北、四国、九州・沖縄)から、「増加している」、近畿から、「緩やかに増加している」との報告があった。また、5地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、中国)から、「持ち直している」、「持ち直しが続いている」等の報告があった。』

『生産は、国内需要が底堅さを増しているほか、海外需要も持ち直しに向かっていることを背景に、北陸、東海から、「全体として増加している」、「増加傾向にある」との報告があったほか、5地域(北海道、関東甲信越、近畿、中国、九州・沖縄)から、「持ち直している」、「緩やかに持ち直している」等の報告があった。また、東北、四国からは、「下げ止まっており、持ち直しに向かう動きがみられている」等の報告があった。』

『雇用・所得動向は、多くの地域から、厳しい状況にあるものの、労働需給面を中心に「緩やかに改善している」等の報告があった。』

何かよく見ると「改善なのだが水準的には今一歩」っぽい気がするのですがそういう景気の悪い事は言わないで改善ヒャッハーと喜んでおきましょう(棒)。


・毎度の『II.地域の視点』コーナーは地方企業の投資行動

『II.地域の視点』というコーナーがあって、その時の話題というかトピックスをネタにしているのですけれども・・・・・・・・・

『事業・収益環境の変化を踏まえた地場企業の投資行動』というのがお題でして、

『1.企業の設備投資動向
2.最近の事業・収益環境の変化を踏まえた投資行動の特徴点
3.資金調達環境と今後の展望』

という小見出しになっております。1番と2番の冒頭部分だけ。

『各地域の地場企業の国内設備投資計画をみると、製造業では、なお慎重な投資姿勢を維持する先もみられるものの、売上・収益が改善しつつある中で、投資マインドが徐々に持ち直してきており、維持・更新や研究開発の再開・実施に踏み切る動きが徐々に広がりつつある。また、非製造業では、小売業やサービス業、運輸業などで店舗や拠点を新設する動きが強まっており、底堅さを増していくとみられる。このほか、成長が期待される分野への対応やエネルギー・防災関連投資も引き続きみられており、先行きの設備投資は、全体として緩やかな増加基調をたどる可能性が高まっている。』

ということで、動向と言う部分では今回のさくらレポート全体のトーンと同じくポジティブな見通し。

『製造業では、なお慎重な投資姿勢を維持する先もみられるものの、海外経済が徐々に持ち直しに向かっていることや為替相場の円安方向の動きに加え、これまでの経営体質改善の効果もあって、売上・収益が改善する企業が増えており、「これまでの我慢するスタンスから、チャンスがあれば前向きな投資を検討する動き」が出るなど、投資マインドが徐々に持ち直してきている。こうした中で、先送りしてきた機械等の維持・更新投資の再開、工場の移転・集約等を含む合理化・効率化投資や新製品開発のための研究開発投資の実施に踏み切る動きなどが、徐々に広がりつつある。』

ほう。で具体的な部分の引用はスルーしまして非製造業。

『非製造業では、消費関連業種において、高齢化の進展やライフスタイルの変化等に伴う消費者ニーズの変化への対応、都市部に集積する需要の取り込みを図るべく、既存の商圏や業態を超えた積極的な業容拡大を進める動きが強まっている。こうした中で、大手を中心とした競合他社や他業態の進出への対抗を意識して、地場企業でも市場シェアの維持や拡大を狙って出店・改装等の投資を積極化させている。』

『また、物流分野では、ネット通販の拡大や配送の小口化・迅速化への対応を進めるため、交通インフラの整備もあって、大型物流施設の新設などが大都市圏周辺でみられている。観光分野でも震災後の需要回復に加え、LCC就航等によるインバウンド需要増等の取り込みを狙った宿泊施設やレジャー施設の増改築が積極化している。このほか、医療介護関連、農林水産業関連など、今後の市場拡大が見込まれる分野での投資も引き続きみられている。』

と、まあそんな感じでトーンとしては威勢が良い話が続いています。中小企業の問題とかコスト時上昇の問題とかの指摘もありますがそこは引用割愛(全体的にはそれでも良いですよ的なまとめをしています、為念)。


惜しいのは3番目の小見出し部分でして。

『企業の資金調達姿勢をみると、設備投資を増加させる企業でも現時点ではキャッシュフローや手元流動性で対応可能な範囲内にとどめる先が多い。もっとも、金融緩和が進む中にあって、企業の資金調達環境は一段と緩んだ状態となっており、中には借入を伴う設備投資を行う動きもみられるなど、企業の投資行動を下支えする方向に寄与しているとみられる。今後、金融緩和の効果がさらに浸透していくもとで、設備投資の増加基調がより確かなものとなっていくことが期待される。』

ポートフォリオリバランス効果とか貸出増加施策ェ・・・・・・・・・・・などと良い子は言ってはいけません(キリッ)。

#ということで今日は雑談大会で恐縮でした

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2013/07/09

○実に味わいのある結果となった生活意識アンケート

金曜はこのアンケートの鑑賞をしておったというのもあったのですがドラギ先生の講談ネタでこっちまで手が回りませんでしたすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1307.pdf

以下引用は上記URLの22ページ以降にあるQ&Aの一覧から参りますが、内容を見るという意味では図表とかがある前の方を見るのが宜しいかと思います。で、『』つけるとややこしくなるので『』つけないで引用しますです、はい。

・物価に関する部分が味わいがががが

Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか
(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった5.2 ( 4.9 )
2 少し上がった45.3 ( 41.7 )
3 ほとんど変わらない44.5 ( 43.2 )
4 少し下がった4.4 ( 8.2 )
5 かなり下がった0.2 ( 0.8 )

上昇キタコレですね。

Q12-a.(Q12で1または2『上がった』と答えた方へ)「物価」が上がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ3.8 ( 2.6 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ81.6 ( 80.3 )
3 どちらとも言えない13.7 ( 16.3 )

好ましい事だも増えているのですが困った事だというのが同じくらい(つーか若干多く)増えているというのが実に香ばしい所であります。で、こちらの数値だと前々回からの比較が無いので、上記URLの9ページをご覧になると当該部分の過去3回分の推移が見れるのですけれども、そこで実に味わいが深いと思う結果ががががが。

つまりですね、2012年12月調査の時から上記の回答の推移を並べますと・・・・・・

1=2.1→2.6→3.8
2=85.0→80.3→81.6
3=11.9→16.3→13.7

となっていまして、2013年3月調査の時点では2%のインフレ目標がどうのこうのだの次期総裁は誰なのだの金融政策の話が盛り上がっている時だった訳ですが、この時には「物価上昇は必ずしも困った事では無い」というイメージが広がったという形になったのですが、6月調査ということで現実問題として輸入物価の一部が上がるとか、さて電気料金が上がりますよとか、まあそういう事態がやってくるとあっさり「困った事だ」に戻る人が登場、という有様。

まあ元々この困った事云々の答えが多いのは仕様ですので水準が多いという自体はシャーナイナイなのですが、こういう推移を見ますと本当に「2%の物価目標」という状態に国民世論が耐えられるのかとゆーのが甚だ不安になってくるのは杞憂ですかそうですか。無理に高い目標出すよりも漸進的なアプローチの方が望ましいと思うのですけどねえ・・・・・・・・


Q12-b.(Q12で4または5『下がった』と答えた方へ)「物価」が下がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ50.0 ( 44.8 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ20.2 ( 21.2 )
3 どちらとも言えない26.0 ( 32.1 )

これまた9ページの方にありますけれども、2012年12月調査からの比較。

1=34.5→44.8→50.0
2=27.4→21.2→20.2
3=36.3→32.1→26.0

まー下がったというオモシロ回答をする方はサンプルが少ないのであまり参考にならんように思えるのだが、何じゃこの「好ましい」の増加はという感じですな。



Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値(注1):+3.1 ( +2.6 )
中央値(注2):+1.0 ( +0.2 )

(注1)極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は + 3.2(前回調査<2013/3月実施>:+ 2.7 )

(注2)回答を数値順に並べた際に中央に位置する値。


まあそうですな。でもってインフレ期待部分ですけれども・・・・・・・

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
※消費税率引上げ分は含めずにご回答下さい。

平均値:+5.1 ( +4.0 )
中央値:+3.0 ( +3.0 )

 ―― 全サンプルの単純平均値は + 5.3 (前回調査<2013/3月実施>:+ 4.1 )。

Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
※消費税率引上げ分は含めずにご回答下さい。

平均値:+4.3 ( +4.0 )
中央値:+2.5 ( +2.0 )

 ―― 全サンプルの単純平均値は + 4.6 (前回調査<2013/3月実施>:+ 4.2)。

ということで上昇しているのでめでたしめでたしという話(ちなみに景況感の方は良くなっておりますので)になるんでしょうなあと思うのでありましたが、前半の「物価上昇困った事だが反転上昇しましたね」という話は華麗にスルーするんでしょうねえと思うのでございましたとさ。


・さらに味わいがあるのは日本銀行に関する質問・・・・・・(^^)

以降のQ21〜25は日本銀行に関する質問です。
 ※原則6月・12月調査において質問。ただし第46回調査(2011年6月)は実施していない。
 ( )内は第52回調査(2012年12月実施)結果。

ということで年に2回実施の質問なのですが・・・・・・・・・

Q23.日本銀行について、以下の(1)〜(5)の項目のそれぞれに対し、あなたの考えにもっともあてはまると思われる番号に1つずつ○を付けて下さい。

ということで、その中での質疑がですな・・・・・・・・・(^^)

(4) 日本銀行の外部に対する説明はわかりやすいと思いますか。

1 わかりやすい0.7 ( 0.7 )
2 どちらかと言えば、わかりやすい4.9 ( 4.2 )
3 どちらとも言えない35.6 ( 33.4 )
4 どちらかと言えば、わかりにくい39.6 ( 37.9 )
5 わかりにくい18.1 ( 22.4 )

・・・・・・・・・・・・2%を2年で実施して2倍の買入という分かりやすいスローガンとかあの2倍2倍を並べたフリップとかの効果は何処へ(−−)

Q23-a.((4)で4または5(『わかりにくい』)と答えた方へ)
わかりにくいと思われる理由は何ですか。【2つまでの複数回答】

1 日本銀行の説明や言葉が専門的で難しい39.2 ( 36.6 )
2 日本銀行について基本的知識がない44.6 ( 45.8 )
3 金融や経済の仕組み自体がわかりにくい38.1 ( 36.6 )
4 そもそも日本銀行の説明を見聞きしたことがない27.1 ( 31.0 )
5 日本銀行についての情報の入手方法がわからない13.6 ( 15.2 )
6 日本銀行のホームページが使いにくい0.8 ( 0.1 )
7 その他2.4 ( 2.1 )

ほうほうそうですかそうですかという所ですが、その次の(5)が泣ける。

(5) 日本銀行を信頼していますか。

1 信頼している14.2 ( 15.6 )
2 どちらかと言えば、信頼している28.4 ( 28.5 )
3 どちらとも言えない48.1 ( 45.5 )
4 どちらかと言えば、信頼していない6.4 ( 7.1 )
5 信頼していない2.1 ( 2.8 )

信頼が減っていますが・・・・・・・・・・

Q23-b.((5)で1または2(『信頼している』)と答えた方へ)
信頼している理由は何ですか。【2つまでの複数回答】

1 日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思うから66.5 ( 65.1 )
2 政策の内容や意図に賛成だから7.7 ( 4.7 )
3 中立の立場で政策が行われていると思うから35.5 ( 44.7 )
4 日本銀行の活動について分かりやすい広報や意見聴取の努力をしていると思うから2.7 ( 2.1 )
5 組織や職員に誠実なイメージを持っているから14.4 ( 16.7 )
6 その他6.6 ( 5.5 )

Q23-c.((5)で4または5(『信頼していない』)と答えた方へ)
信頼していない理由は何ですか。【2つまでの複数回答】

1 日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから31.1 ( 48.5 )
2 政策の内容や意図に反対だから10.4 ( 7.0 )
3 中立の立場で政策が行われていると思わないから44.6 ( 36.2 )
4 日本銀行の活動について分かりやすい広報や意見聴取の努力が不足していると思うから34.2 ( 33.6 )
5 組織や職員に誠実なイメージを持っていないから23.8 ( 16.2 )
6 その他5.2 ( 5.7 )

「中立の立場」「誠実なイメージ」の部分が悪化しているというのがアチャーという感じで、いやあただのアンケートだとか言って馬鹿にするもんじゃないですなあと思いますが(^^)、しかし実は過去にはこのような事案もございましたのでまだまだご安心して頂ければと存じます(棒)。

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki0610.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第27 回)の結果
―― 平成18 年9 月調査 ――

そこの15ページにビジュアルで示されていまして、詳細について22ページから23ページにございましてですね。

問22-c.((5)で「信頼していない」(4または5)と答えた方への質問)
信頼していない理由は何ですか。(2つまでの複数回答)

1 日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから23.1 ( 32.2 )
2 政策の内容や意図に反対だから 4.3 ( 9.8 )
3 中立の立場で政策が行われていると思わないから 43.8 ( 47.8 )
4 日本銀行の活動について分かりやすい広報や意見聴取の努力が不足していると思うから27.5 ( 34.1 )
5 組織や職員に誠実なイメージを持っていないから 55.2 ( 25.9 )
6 その他 7.4 ( 8.3 )

(この部分のみ2006年9月調査から引用、)

・・・・・・・・・・・2006年9月に急に「誠実なイメージ」が極端に悪化するという大変にお洒落な結果になっているのはご存じ俊ちゃんのアレがあった時でございましたが、まあそれは兎も角として「中立の立場で」云々というのは俊ちゃん時代もまあこんな感じの数字で、まあ今回増えたと言っても俊ちゃん時代と似たようなもんですからキニシナイ(・∀・)という事で宜しいのではないでしょうか(棒読み)。

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2013/07/02

○短観であるが公共放送キタコレでもあるのでその話をケツに

6月短観概要
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1306.pdf

まあ真面目な分析は本職の方がやるのでいつもの見物行為を。


・前回の先行き予測DIの達成状況

         (3月時点)     (6月時点)
         現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業    ▲8→▲1     +4→+10 
製造業中堅企業  ▲14→▲13    ▲4→▲3        
製造業中小企業  ▲19→▲14    ▲14→▲7

非製造業大企業   +6→+9    +12→+12
非製造業中堅企業  +4→0      +7→7
非製造業中小企業  ▲8→▲8     ▲4→▲4

製造業が主に良くなっていまして、先行きもまあ良いですねと思ったら先行きがやたら強いのは製造業大企業だけなのかとか、非製造業の先行き見通しが横ばいとはイマイチですなあとかケチのつけようはありますが、まあここで改善しないでいつ改善するという所ですのでこれはこれで宜しいんじゃないでしょうか。3月時点での先行き予測よりも強い結果になったというのはさすがに異次元緩和なのかアベノミクスなのか知らんけど効果っつー話になるんでしょう。


・雇用判断DI

        (3月時点)      (6月時点)
        現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業  +11→+8      +8→+5
製造業中堅企業 +9→+9       +8→+6
製造業中小企業 +11→+9      +11→+5

非製造業大企業   ▲6→▲6      ▲4→▲7
非製造業中堅企業  ▲9→▲10     ▲7→▲12
非製造業中小企業  ▲9→▲10     ▲7→▲12

業況感が派手に改善している割にはこちらの方はイマイチ感がする訳で、製造業は業況感の足元や先行き見通しが盛大に改善している割には雇用判断がそんなに改善しておらず、更に非製造業では雇用人員判断が足元悪化方向(マイナスなのですから基調の不足というのは変わらないのだが)になっていて、その一方で先行き予測の不足幅が拡大とか何とも訳の判らん結果になっていますが、まあこれにいちゃもんをつけるとすれば「企業の業況改善が雇用の改善に繋がっていない」となりますし、肯定的に解釈すれば先行き人員判断DIの改善をネタにして「企業の業況改善が先行きの雇用改善に繋がる指標が示された」となるでしょうな。まあ景況感と比較してイマイチ。


・想定為替レート

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)     2011年度全体(上期)(下期) 2012年度全体(上期)(下期)

2011年6月調査     82.59   82.59   82.59    − − −
2011年9月調査     81.15   81.26   81.06    − − −
2011年12月調査    79.02   80.26  77.90    − − −
2012年3月調査     78.93  80.20  77.69    78.14   78.04  78.24
2012年6月調査     79.27   80.18  78.35    78.95  78.98  78.93
2012年9月調査     −     −   −      79.06  79.16  78.97
2012年12月調査     −     −   −     78.90   79.09  78.73

(円/ドル)   2012年度全体(上期)(下期) 2013年度全体(上期)(下期)
2013年3月調査   80.56   79.15  81.94   85.22   85.10  85.33
2013年6月調査   82.21   79.25  85.11   91.20   91.25  91.16

前回時点で想定為替レートが85円ってどうなのよという感じでしたが、さすがに今回は為替レートが91円までドル高になったですねまあ当然ですなという所で、そらまあ製造業の景況感が改善するわ(なお「石油・石炭商品」に関しては盛大に悪化しているのは輸入業者だから当然ですな)という所ですが、これ次回の短観の時にどっちに振れるか(まあその前に選挙とかあるから市場の方が動きそうですけれども)というようなのを気にするもんですかね、よー知らんけど。


・金融商品取引業の先行きが横ばいとな

見込みが華麗に外れたりブレが非常に大きかったりするのが仕様の金融商品取引業業況判断DIですが。

         (3月時点)       (6月時点)
         現状→6月予測     現状→9月予測
金融商品取引業 +60→+60   +67→+60

前回はDIが88ポイント改善という笑ってしまうような動きでしたが、今回は若干の改善に留まり先行き見通しもほぼ横ばい、とか何か別の意味で死亡フラグのような気もするのですが(汗)。


・価格判断DI

ちなみに設備投資判断とかを見るのが正しいみたいなのですが(まあ内容は強めでしたよね)、価格判断の所でこんなニュースが。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130702/k10015728621000.html
円安の値上がり分 転嫁進まず
7月2日 5時54分

『日銀が1日発表した短観=企業短期経済観測調査によりますと、原材料や部品の「仕入れ価格」が「上昇した」と答えた企業の割合から、「下落した」と答えた企業の割合を差し引いた指数は、大企業の製造業がプラス24ポイント、中小企業の製造業がプラス35ポイントで、いずれも前回3か月前の調査より9ポイント増えました。これは、最近の円安で、海外から輸入する石油や原材料などが値上がりしているためです。』(上記URLより、以下同様)

『一方、自社の製品の「販売価格」については、大企業の製造業がマイナス4ポイント、中小企業の製造業がマイナス12ポイントと、5年前のリーマンショック以来の販売価格の下落傾向には歯止めがかかっていません。これは、自動車や電機業界を中心に海外メーカーとの激しい価格競争が続いていることなどによるもので、多くの企業で原材料の値上がり分を製品の価格に十分転嫁できていない状況が明らかになりました。』

そらそうよ。

『このところの円安は、大企業を中心に企業の業績回復を後押しする一方で、海外事業の割合が小さい中小企業などには経営の新たな負担となっています。』

ということで締めていまして、はあそうですなという所なのですが、お前は昨日こんなニュースを盛大に流していたのに急に何を言い出しているのだという気がしたのは気のせいです。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130701/k10015700091000.html
身近な食料品 きょうから相次ぎ値上げ
7月1日 4時15分

『円安や産地の天候不順などの影響で、原材料の価格が高騰していることから、1日から生活に身近な食料品の価格が相次いで値上げされます。』(上記URLより)

つーことでお前は物価が上がっても大変だというし上がらなくても大変だというし、結局何を言いたいのかと小一時間問い詰める気はあまり起きませんが、まあそういう所です。

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2013/06/18

○出遅れネタで金融経済月報である(汗)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1306.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1305.pdf(前回)

例によって例の如く手抜きで概要部分しか比較しない訳ですが(汗)、基本的には声明文比較と大体同じなのは良いとしまして、ちょっとだけ追加情報がありますのでその辺も少々。

・現状判断

『わが国の景気は、持ち直している。』(今回)
『わが国の景気は、持ち直しつつある。』(前回)

総括部分が引きあがっているのは声明文と同じ。

『海外経済は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直しつつある。』(今回)
『海外経済は、昨年来の減速した状態から徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は下げ止まっている。』(前回)

海外経済と輸出の部分なのですが、これ輸出の表現が「下げ止まり」から「持ち直し」に上方修正した形になるのでややこしいのですが、海外経済に関しては「全体としては」という毎度おなじみのヘッジクローズが入っているので下方修正というややこしい表現でござります。まあ先行きの方を見るとやはり海外経済の見通しが下がっているので、こちらも下方修正なんだろうなあと予想できるのですけれども、正直表現が紛らわしい。

『設備投資は、非製造業が引き続き底堅く推移するなか、全体としても下げ止まりつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)

『設備投資は、非製造業が引き続き底堅く推移するなか、全体としても下げ止まりつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、底堅さを増している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(前回)

個人消費の所が「底堅さを増している」→「引き続き底堅く推移している」という微妙に難しい修正をしておりますが、これは後の方の先行き見通しの前月分表現を見れば判りますように、前月の見通し通りの推移という形です(基本的には若干上方修正)、鉱工業生産に関しては「下げ止まっており、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある」→「持ち直している」と表現がすっきりとしましてこちらは明確な上方修正。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、金融緩和や各種経済対策の効果もあって国内需要が底堅さを増し、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

変更点は2か所。一か所目が「金融緩和や各種経済対策の効果”もあって”」という部分で、この「もあって」というのが前回の「から」との変化で何を意味するのかが今一歩ワカランチ会長。まあ普通に考えると金融緩和や各種経済対策の効果だけではない何かの効果によって国内需要が底堅さを増すという話で、この後の項目別展開を見ていると一番目立つのが「雇用環境の改善」なのでその効果でも言いたいのかなとか思ったのですが正直何が何やら。

もう一か所目はまあ分かりやすいですが、先ほど申し上げた海外経済に関する所で、「海外経済の成長率が”緩やかながらも”次第に高まっていく」と毎度おなじみのヘッジクローズが入りまして、こちらに関しては海外の見通しを下げているという結論になっています。

んでもってここの部分自体にはまあそうじゃろうのうと思うのですけれども、一方で先般ご紹介しましたように決定会合後の総裁記者会見ではやたら海外経済に関する強気というか楽観っぽい見方が示されていたのが気にかかる所でありまして、もしかして総裁はもうちょっと全般的に楽観的なんじゃネーノという気もするのでありました。


『輸出は、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、持ち直していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、持ち直していくと考えられる。』(前回)

つーことでさっきと同じ「緩やかながら」が入っていますな海外は。

『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善に向かうなかで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)

『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善に向かうなかで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

てな訳で公共投資、住宅投資、設備投資の表現は前回と同様。

『個人消費も、雇用環境の改善にも支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『個人消費は、引き続き底堅く推移すると考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は持ち直していくと予想される。』(前回)

個人消費の所ですが「引き続き底堅く推移」という見通しは変わらずなのですが、「雇用環境の改善」という部分が入っているのが「おお!」という所で、この辺は声明文に載っていなかった(普段から先行き見通しの需要項目別展開は声明文に記載されませんので念の為)ので読んでてウヒョーと思ったのですがその割にはネタにするのが遅いですかそうですか(大汗)。


・不確実性について

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

ここはまあ同じ。


・物価について

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、為替相場の動きを反映して上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、為替相場の動きを反映して上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(前回)

>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる
>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる
>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる

キタコレというか前月に登場した文言が今月も出ている訳ですが、じゃあその内容は何ですねんというのは月報本文の方にありまして、本文15ページにあるのですけれども・・・・・・・

『この間、予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる(図表30)。』(6月金融経済月報本文15ページから)
『この間、予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる(図表28)。』(5月金融経済月報本文14ページから)

結局の所図表での説明しか無くて、実際にどの数値がどうなっているとかそういう話は華麗にスルーしてグラフを見ろという説明になっているのが実にお洒落としか申し上げようがございません。

しかしまあ良く良く考えてみますと、5月金融経済月報の時にBEIが華麗に上昇しているのを見て喜び勇んで「予想物価上昇率の上昇」という話を持ち出した手前、「先月上昇したものが下がっちゃいましたねえあっはっは」という訳にも行きませんですし、ESPフォーキャストの数値が上昇しているのでそっちを使って「上昇示唆」のファイティングポーズ(?)を継続という事になったという話ですなうんうん。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、次第にプラスに転じていくとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、マイナス幅を縮小したあと、次第にプラスに転じていくとみられる。』(前回)

つーことで物価の先行きに関しては直近の東京都区部CPIの結果を受けて「マイナス幅を縮小」という途中経過を割愛しているのでこれは上方修正ですな。


・金融環境に関してはまあ割愛

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

以下が金融環境になりますが、こちらに関しては基本的に事実関係の説明になっていますので引用は割愛します。

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2013/06/17

○5月会合議事要旨

まあこの回の時は順当に何も無しという見通しでしたからそれほど大ネタがある訳でも無い。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130522.pdf

・海外経済について

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』

『海外経済について、委員は、ユーロエリアやアジア経済で幾分弱めの動きがみられるものの、全体としてみれば、昨年来の減速した状態から徐々に持ち直しに向かっており、先行きも、米国などを中心に次第に成長率を高めていくとの見方で一致した。そのうえで、何人かの委員は、軟調な国際商品市況や長引くマクロ的な供給超過などを背景に、世界的にディスインフレ傾向が続いており、こうした動きが中長期的な予想物価上昇率の低下や実質金利の上昇を通じて経済に悪影響を及ぼすことはないか、注意してみていく必要があるとの見解を示した。』

ということで、後半の方に「何人かの委員」が指摘しているのでまあそうですなとは思うのですけれども、この時の話からしますと先日の決定会合後の黒田総裁の定例会見における妙な海外経済強気モードは何なんでしょと思うので、念のため各国別の話を引用しておきます。

『米国経済について、委員は、財政面からの下押し圧力を受けつつも、個人消費や住宅投資など堅調な民需を背景に、緩やかな回復基調が続いているとの認識を共有した。ある委員は、米国の経済指標は、ここ3年ほど、年初から春先まで堅調に推移したあと、夏場にかけて弱含むパターンを繰り返してきたが、4月の米雇用統計など最近の経済指標をみる限り、今年はそうしたパターンを回避できているのではないかとコメントした。』

『先行きについて、委員は、財政面からの下押し圧力が続くものの、緩和的な金融環境や新型エネルギーの好影響などを背景に、緩やかな回復が続くとの見方で一致した。複数の委員は、2013会計年度の財政赤字が大幅に縮小する見通しとなったことを受けて、米国財政問題が下振れリスクとして顕在化する蓋然性はやや低下しているとの見方を提示した。このうち一人の委員は、米国の財政赤字の縮小は、財政面からの下押し圧力の強さの表れとも言えるが、その割には米国経済が基調として底堅さを維持していることに注目していると述べた。』

ほうほうという感じですが、米国当局の見通しより強くねえかという気もする。

『ユーロエリア経済について、委員は、緩やかな後退を続けているとの認識を共有した。景気後退が長期化している背景について、ある委員は、雇用環境や不動産市場の悪化から、銀行が中小企業や家計向けの貸出について慎重姿勢を維持しており、これがさらに雇用環境や不動産市場を悪化させるという、家計部門と銀行部門の負の相乗作用が発生している点を指摘した。別の一人の委員は、周縁国が独自の金融政策を採用できないことが、景気回復の大きな阻害要因となっていると述べた。この点に関し、別のある委員は、ユーロ圏内で為替相場の調整を行えない以上、競争力格差を是正する観点から、競争力の低い国においてディスインフレ圧力が生じるのはやむを得ない面もあるとコメントした。』

『こうした議論を経て、委員は、欧州経済の先行きについて、当面、緩やかな景気後退が続く可能性が高いとの見方で一致した。そのうえで、複数の委員は、最近みられている緊縮財政路線を修正する動きは、市場のネガティブな反応を惹起するリスクはあるが、当面は、景気を下支えしてくれると期待しても良いのではないかと述べた。』

まあここは順当。

『中国経済について、委員は、堅調な内需を背景に、安定化してきているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、インフラ投資など内需が引き続き堅調に推移するもとで、成長率は緩やかながらも高まっていくとの見方を共有した。そのうえで、多くの委員は、中国経済の回復力は想定よりもやや弱めとなっているとの認識を示し、その背景として、製造業部門における過剰設備の存在と長引く在庫調整、政府の高成長よりも構造調整を重視した政策スタンスなどを指摘した。』

ここは妙に強気な気がする。

『NIEs・ASEAN経済について、委員は、全体として持ち直しているが、韓国・台湾の輸出が弱めとなるなど企業部門では持ち直しの動きが緩やかな状態が続いているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、ASEAN中心に底堅い個人消費が下支えするもとで、輸出が次第に持ち直していくにつれて、徐々に回復ペースは増していくとの見方を共有した。』

ふむ。


・個人消費の持続性がががががが

ということで国内景気に関する部分。

『わが国の景気について、委員は、個人消費、設備投資、鉱工業生産などにおいてこのところ明るい動きが増えているなど、持ち直しつつあるとの見方で一致した。個人消費について、委員は、株価が上昇傾向を辿り消費者マインドが改善するもとで、底堅さを増しているとの認識を共有した。』

さいですな。

『そのうえで、複数の委員は、個人消費や住宅投資などの家計支出が雇用・所得環境に比べて堅調に推移している背景について見解を述べた。これらの委員は、資産効果や消費者マインドの改善に加え、@為替円安に伴う価格先高感を受けた高額品購入や、A消費税率引き上げを見据えた住宅購入など、将来需要の前倒しも影響しており、その持続性には注意が必要であると指摘した。』

資産効果とか為替とかについてはその後1か月経たずにあばばばばー。

『ある委員は、個人消費が持続的に増加していくためには、恒常所得の増加につながる所定内給与の改善が必要であるが、そうした動きはまだ確認できないと述べた。』

全くで。

『設備投資について、委員は、非製造業が引き続き底堅く推移する中、これまで海外経済の弱さの影響から減少していた製造業を含めて、全体としても下げ止まりつつあるとの見方で一致した。鉱工業生産について、委員は、輸出の下げ止まりや底堅い国内需要を反映して、下げ止まっており、持ち直しに向かう動きが明確になりつつあるとの認識で一致した。』

まあこの辺は声明文や月報で示された認識通りですな。


・先行き見通しですが

『景気の先行きについて、委員は、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、本年央頃には緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』

ほう。

『大方の委員は、わが国経済の回復モメンタムが強まっていくかどうかについて、設備投資の動向が鍵を握るとの見方を示した。この点に関し、多くの委員は、@海外経済の成長率が高まるもとで、輸出や鉱工業生産の持ち直しが明確となれば、設備投資にも波及していくと考えられること、A2013 年度の企業収益は、為替円安による押し上げ寄与もあって、大幅な増益が見込まれていること、Bサーベイ調査等においても、昨年末頃から設備投資意欲のはっきりとした改善が確認されること、などを前向きな動きとして指摘した。』

ほほう。

『これに対し、複数の委員は、@為替円安が進行する中でも、製造業の業況感には幾分慎重さが残っていることや、A製造業の設備の稼働率は依然として低水準にとどまっていることなどを指摘し、製造業部門の先行きについてやや慎重な見方を示した。』

まあこちらじゃネーノとは思うのだが。


・物価に関連して

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっているとの認識で一致した。予想物価上昇率について、委員は、消費税率引き上げが影響を及ぼしていることには注意が必要であるものの、家計や市場参加者に対する調査、マーケットの指標などにおいて、上昇を示唆する指標がみられるとの見方を共有した。』

マーケットの指標ですかそうですか。その後華麗に下がったのでその点について6月会合でどういう話になっているのかが気になりますが、公表文書を見る限りBEIは華麗にスルーするんでしょうな。

で、先行きの話がああだこうだと長いので引用。

『物価の先行きについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、前年の反動の影響が剥落するにつれてマイナス幅を縮小したあと、マクロ的な需給バランスの改善もあって次第にプラスに転じていくとの見方を共有した。』

というのは良いとして、色々な人の意見が中々オモロイ。

『そのうえで、一人の委員は、消費者物価について、除く生鮮食品だけでなく、刈込平均値や除く食料・エネルギーなどでみても、基調的にプラスとなっていくかどうかを見極める必要があると述べた。』

『最近の為替円安に伴う輸入原材料価格の上昇について、何人かの委員は、小売段階で厳しい競争環境が続く中でも、販売価格に転嫁されていくかどうか、その過程で中小企業の収益が圧縮される可能性はないかどうか、十分注意してみていく必要があると述べた。この点に関し、ある委員は、2007〜2008 年頃と異なり、足もと国際商品市況が落ち着いて推移しているため、交易利得への悪影響は当時に比べ抑制されているとの見方を示した。』

『多くの委員は、賃金の上昇を伴いながら物価上昇率も徐々に高まっていくという好循環を実現していくことが、持続的な経済成長の観点から重要であるとの認識を示した。そのうえで、何人かの委員は、時間当たりでみれば一般労働者、パート労働者ともに賃金は上昇傾向にあるが、最近の労働需給の改善の動きが、年度後半以降、本格的に賃金上昇につながっていくかどうか、注視していると述べた。』

『この間、ある委員は、消費税率引き上げの影響を織り込んだ経済・物価見通しについて、丁寧に説明していく必要があるとコメントした。』

最後のだけは白井さんであるというのは把握しました(^^)。


・株式市場のレビューに泣いた

金融市場の動向部分で泣ける箇所ががががが。

『最近の株価の上昇傾向について、多くの委員は、15 年近く続いたデフレのもとでリスク回避的となっていた投資家の期待が、転換しつつあることの現れではないか、との認識を示した。』

・・・・・・・・・・・・いやー残念ですねえ(棒読み)。

『そのうえで、一人の委員は、日本株の売買動向について、これまでのところ、海外投資家の買いと日本の個人投資家の売りというやや一方向的な構図となっているが、今後は、わが国経済の成長期待が高まる中で、本邦株式市場を支える投資家層の厚みが増していくことが望ましいと付け加えた。』


・債券市場に関して

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』である。

『続いて、委員は、債券市場の動向について、議論を行った。』

ほう。

『委員は、足もとの長期金利の上昇には、米欧長期金利の上昇や本邦株価の上昇、為替の円安進行といった要因が影響しているとの見方で一致した。』

まあその後株価と為替は戻ったんですけどね。

『複数の委員は、FRBの資産買入れの早期縮小観測を受けて、米国の長期金利は、経済指標への反応度合いを強めており、そうした動きがわが国長期金利に及ぼす影響に注意していく必要があると述べた。』

『そのうえで、委員は、日本銀行による巨額の国債買入れは、景況感の改善や予想物価上昇率の高まりなどに伴って生じる金利上昇圧力を、リスク・プレミアムの圧縮によって抑制しているとの認識を共有した。何人かの委員は、今後も、日本銀行の国債買入れが進むにつれてリスク・プレミアムの圧縮効果は強まっていくと考えられるため、当面、長期金利が跳ね上がるとは予想し難いと付け加えた。』

この論点って一個一個で見るとそうなんですけれども、そもそも日銀の国債買入で予想物価上昇率を上げようとしているのでリスクプレミアムの圧縮とか言われましてもそれじゃあマッチポンプ理論になるんすけどまあいいです。で、その辺の整理がちゃんとできていないから債券市場は反応に困っている訳ですけどね。

『この間、多くの委員は、債券市場のボラティリティの高い状態が続くと、銀行等の金融機関の抱える金利リスク量の増大を通じて、国債売却の動きが一段と増幅される惧れがあると指摘した。そのうえで、これらの委員は、ボラティリティの上昇や過度な金利上昇を抑制し、長期金利の安定的な形成を促す観点から、オペ運営面で様々な工夫を講じていくことが適当であるとの見方を示した。このうち何人かの委員は、もともと4月4日の「量的・質的金融緩和」の決定では、国債買入れの平均残存期間について、「6〜8年程度」と幅を持たせるなど、弾力的なオペ運営が可能な枠組みとなっていると付け加えた。』

ふむ。

『こうした議論を経て、委員は、長期国債の買入れについて、引き続き、債券市場の動きを丹念に点検し、市場参加者と密接な意見交換を行いつつ、必要に応じて、買入れ頻度や買入れペース、ゾーン別の買入れ額を調整するなど、政策効果の浸透を促すため、弾力的なオペ運営を行っていくことが重要であるとの認識を共有した。』

えーっと、そういう戦術論の問題じゃないと思うのですけどねえ・・・・・・・・・・・

でちょっと飛ばしてその先に。

『この間、最近の長期金利上昇の一因として、何人かの委員は、株高・円安が進行し経済・物価情勢にも前向きな動きがみられるもとで、短期金利が実質的なゼロ金利に維持されると予想される期間がやや短期化している可能性を指摘した。』

まあ市場動向もあるけどそもそも2年で2%目標達成ですからねえ。

『ある委員は、時期尚早な時間軸の短期化は望ましくないと付け加えた。この委員を含む複数の委員は、日本銀行は、長期国債の買入れに加え、様々な短期資金供給オペを通じて、大規模なマネタリーベースの供給を行っていることを丁寧に情報発信することにより、短期金利をしっかりと低位にアンカーしていくことが重要であるとの見方を示した。』

まあそれやっていく事ですかね。

『別の一人の委員は、「物価安定の目標」の達成時期や「量的・質的金融緩和」の継続期間に関する情報発信が、債券市場の予想を不安定にさせ、ボラティリティを高めている面もあるのではないかと述べ、「量的・質的金融緩和」の継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することは、債券市場の安定回復に資すると指摘した。』

これは木内委員の指摘だと思うのですが、そうは言いましても「2年で2%」を引っ込めてしまうとフィリップスカーブの上方シフトとか起きるのでしょうかとか、そっちの話になりますし、大体からして本来の政策目標を望ましい形(景気回復を伴った物価上昇という意味)達成できるのであれば債券市場がどうのこうのとかそこまで気にしなくても良い話ではあるのでねえ、とは思うのでした。

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2013/06/12

お題「決定会合レビューである」

えーっとですね、引け後の動きがあばばばばーだった上に結局おはぎゃーで戻ってきたようなので元々考えていたお題の題名を次の小見出しの方にせざるを得なくなったのですけれども、今回の決定会合、出た時には(少なくともアタクシの知り合い関連では)「筋を通したじゃん」だったんですけどね。

決定会合結果はご案内の通りでただの現状維持で何も追加が無かった上に結果が出たのが11時48分で昼飯ちょっと遅かったら結果に間に合って無かったわという所でした(^^)。だって何かあると思ってんだもん(言い訳)。

ということで・・・・・・・・・・・


○クレクレに屈せず頑張った!感動した!!

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130611a.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

マネタリーベースが、年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。

2.資産の買入れについては、以下の方針を継続する。

@ 長期国債について、保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加し、平均残存期間が7年程度となるよう買入れを行う。
A ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。
B CP等、社債等について、本年末にそれぞれ2.2 兆円、3.2 兆円の残高まで買入れたあと、その残高を維持する。』

・・・・・・・・・ということで今回は事前に散々盛り上がった報道は何だったんでしょうという事で2年オペ導入などのような逐次投入無しとなりました。事前の報道があれだけ盛り上がってもうダンディールかと思わせた上に他市場方面からはやれETFのおかわりだREITのおかわりだとゆーのまで出るわ、債券の方でも一部では2年超のオペだろというような話まで出るという大変なクレクレ状態になっておりましたというのはご案内の通りではございましたが、それらのクレクレを華麗に一蹴する今回のゼロ回答でありました。

いやまあ何ですな、不肖このあたくしなんぞも事前の盛り上がり報道にすっかり騙されまして2年オペ導入という話になってその理屈どうやって整合性付けるのか楽しみだわとか嫌味タラタラ状態でMPM結果を待っておりましたが、べき論、というか元々の政策である「2年で2%達成」「目標達成の為に必要な政策は全て投入した」という原則を崩さず、市場のクレクレを華麗に一蹴したというのは恐れ入りましたと申しますか、感動した!!という所でございまして、これは素直に評価させて頂きたいと斯様思うのであります。市場のクレクレに弱いとか悪態ついてどうもすいませんでしたm(__)m

実際問題として今回何か打ち込んだら、瞬間は市場が好感するかも知れませんが、一旦クレクレの味をしめてしまいますと市場というものは基本的にクレクレのゆすりたかり体質となるものでございまして、MPMの度に「今度はコレをクレクレ」という話になって行きましてキリがないので、今回一発目に原則を通したのは非常に宜しかったと思います。

とにかく、昨今の金融政策に関連しては日銀の政策(あくまでも政策であって調節ではありません。と申しますか現在の金利市場で言う「市場との対話」というのは現場のオペ頻度がどうのこうのというようなレベルで解決する問題ではない)に関するロジックが複雑骨折モードになった結果、この先の金融政策運営、というかありうべき金融政策の変更に対しての予見可能性が著しく低くなった事が最重要な大きな問題の一つであると思われまして、この決定によって「市場がクレクレと言ってもそう簡単にクレクレには応じねぇんわヴォケ」という意思表示が示されることによって、金融政策の予見可能性が若干なりとも改善することを望みたいと考えたりしています。景気が明らかに悪化しない限りは追加緩和政策のようなものは実施されませんね、というのが判ったかと思われます。

更に申し上げれば、クレクレを跳ね付けるだけのポリティカルリソースが黒田総裁にはあった(これが某どこぞの麿だったら同日引けの市場終値を見た政府方面や与党方面から今すぐ三途競艇で転覆してこい位は言われても全く不思議では無い訳ですから)というのがあったのでその辺通すことができた、という点は大きいなあとか思うのですが、正直申し上げて先週の第三の矢の発表以来ドタバタっぽい印象を市場というか世間に与えていた政府方面の動きも含めて、ここで態勢の立て直しが行われて非常に良かったと思った訳なのですが・・・・・・・・・・



○MPM後の反応に関してメモメモ

ただまあ当然ながらクレクレを袖にされた訳ですから為替はいきなり99円台から98円割れレベルへと1円以上すっ飛んでしまい、株式市場は現物後場寄り付き前の先物市場で13200円割れの水準(前場引け時点では13500円近辺の水準だったと思う)まで叩き落されてしまいまして、はてさて債券はどうなるのやらと思いましたが前場引けが142.79(↓17銭)だったのですが後場のスタートは142.60(↓38銭)近辺でのスタートとなり、株安債券安円高という展開に。

債券の方はと言うとそらまあシャーナイナイなのですが2年(0.13%とか)とか5年(0.3%台乗せ)とか弱くて先物とか長期債が売られて一方で超長期はまあ比較的堅調という感じでしたが、まあ今週末5年入札あるので水準訂正した方が良いともいえる所ではあってカレント0.3%台シャーナイナイという気もせんでも無い。

株や為替の方は割と値持ちしていて、ドル円98円台前半で日経平均が13300円近辺で持っていた感じでしたが、まあ案の定というかアチャーというかなのではあるのですが、今回のMPMに関しては海外投資家連中の方が無暗矢鱈と期待していたという話が多かったのを反映したのか何だか知らんですけれども、海外投資家の皆様がお目覚めになられたからかどうか存じませんけど引け近くになって株は結局また下がってきて債券も何か先物とか下げて終了。

ということでまあアチャーだった訳ですが、その後黒田さんの会見タイムになったら黒田さんの会見のせいなのか他の要因なのか知りませんが、あちこちの市場であばばばばばーという状態になりまして、あちこちの株は下がるわ通貨は訳判んねえ動きをするわ債券は米債とか2.25%とかまで上昇するわ(その後戻ったと思ったら2.3%近辺まで来てやがりましたな)で円債の先物の方もイブニングでは結構下がっていたりしたという動き。

まあ何ですな、国内の方では基本的にまあ「クレクレは甘え」という日銀のメッセージにいったん失望する動きではあったものの、そうは言っても冷静に考えてこの方が筋が通っているし姿勢がきっちりしている、という評価になっていたようなプライスアクションに見えたのですが、海外タイムになって何か諸々の要因が絡んでいるのか何だか知らんですけれども流動性低下相場があちこちに飛び火しているの図とゆーよーな感じになっているのがちょっとアレではございます。


ということでこの反応はヒドスという感じなのですがねえ。

http://jp.reuters.com/article/idJPTJE95A03520130611
円が対ドル・ユーロで上げ幅拡大、日銀の緩和コミットメントに疑問
2013年 06月 12日 03:57 JST

『[ニューヨーク 11日 ロイター] - 11日午後中盤ののニューヨーク外為市場で、円がドルとユーロに対し上げ幅を拡大している。日銀が11日の金融政策決定会合で市場の乱高下に対する措置を打ち出さなかったことで、日銀の緩和措置に対するコミットメントが疑問視され始めたことが背景。』(上記URLより)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MO7XZS6TTDS401.html
NY外為:円が上昇、対ドル3年ぶり大幅高−日銀政策維持で
更新日時: 2013/06/12 04:55 JST

『6月11日(ブルームバーグ):ニューヨーク外国為替市場では円がドルに対しここ3年で最大の上げとなった。日本銀行が追加刺激策を打ち出さなかったことが手掛かり。』(上記URLより)

まあ妙に期待していたからというのはあるにせよ、「コミットメントが疑問視」とかお前は何を言っているんだという所で、良く良く考えたら2年オペのネタ最初に言い出したのロイターでしたから(自主規制)なのかもしれませんが、ちょっとねえという後講釈になっております罠。



○とはいえボラティリティー高めたり流動性上げたりしているのは異次元緩和以降な訳で

まあ何ですな、ここで態勢がやや立て直しモードになったのは結構な話とは言いましても、市場の方はと言いますと円債に始まった流動性低下ボラ上昇モードが円株から為替から海外の株やら通貨やらにまで飛び火しているような感じでして、もちろん日銀だけではなく、FEDのTaperingトークや5月に威勢よく利下げして次もありそうな勢いで話をしていた筈のECBが急に日和モードになったとかいう形で、金融政策の先行きの予見可能性が全体的に不安定化しているというのが大本の背景としてあるんじゃネーノというのは皆様もご同意頂けるのではないかと存じます。

とは言いましても、そもそもの発端はジャパンの異次元緩和で、その後海外金融当局が(米国は別ですが)あちこちで追加緩和政策を実施してワールドワイド的流動性ヒャッハー相場になってしまった所に黒田さんの梯子外し攻撃で債券市場とのコミュニケーションに齟齬が生じてきゃりーがマーライオン相場が発生してそのゲロが日本株式市場からゲロゲロと伝染してしまいましたなという話ですから、まあ槍玉に挙げられてしまうのはシャーナイナイではあります罠。

で、まあ日銀は先週までに見られていたドタバタ感(まあ2年オペに関しては外野が勝手に騒いで勝手に盛り上がった訳ですから日銀的には貰い事故みたいな面もあるのですが、第三の矢公表以降の政府の動きがあまりにもアレ)から態勢立て直しになって、「余程経済状況が悪化しない限りは追加緩和なんぞ知らんがな」という事になって金融政策の予見性が再び高まって来たのではないか、と思われる所(ではあるのですが、会見の方のヘッドラインの出方がまた悪意成分がありそうなのが遺憾という話を後で書きます)なので、そーゆー意味では少しマシになるかもしれないなあとは思っていますけどね。

つまりですね、日銀の異次元緩和のロジックが最初に言っていた話である「イールドカーブ全体に強力な低下圧力を掛ける」だの「長期金利の低下を促す」だのという話が「ああ長期金利を低下させるんですね」というメッセージとして捉えられるものだったのに、株高円安になって「状況が改善すれば金利が上昇するのは自然」だの「実質金利は低下している」だの言いだしたのがロジックの揺らぎと受け止められてジャパンの債券市場があばばばばーのきゃりーがマーライオンになった次第という話でありまして、さらに今回の2年オペ云々の話もそうなのですが、最初の時点でのボタンの掛け違いによって「黒田日銀は何をしでかすか判らん」という予見可能性の低下に繋がって、それがボラ拡大と流動性の低下につながった、という話でありまして、正直言って0.6%から先の金利上昇(すなわち5月の頭以降ですな)ってオペの技術論でどうこうという問題ではないと思うのですね。

そこに来てFEDのTapering(しかもその前の5月1日のFOMC声明文では資産買入のペース縮小と拡大の両にらみの文言が入っていたのに・・・・・)に直近ではECBが軽く梯子を外しに来る(と言いましてもドラギ先生の場合は「うちはボラを与えないようにやっています(キリッ)」と言っているのは昨日ご紹介した通り)とか、金融政策の方向性などについての予見可能性が低下しているのでボラ拡大流動性低下であばばばばーという動きになっている、というのが今回の特色という事でしょうかねえ、まあアタクシの解釈が合っているかは自信全くないですけどね。

しかしまあ何ですな、金融政策の予見可能性が少々落ちたという背景からこれだけワールドワイドなゲロゲロをやってしまうというのは逆から考えますと「どんだけ金融政策依存の資産市場なんだよ」という事でもありまして、そらまあ逆さ絵オヤジもガス抜きTaperingをしたくなる罠と思う次第ではございます。何にせよオソロシスではありますの。

・・・・・・で、念のため申し上げますと、これで株が下がったり円高に振れたりしたのを見て次回会合でやっぱり2年オペ導入とかなってしまいますと(他に外部ショックだのあるなら別ですけれども)元の木阿弥どころか市場催促での追加策やっぱりねえとなりますので元の木阿弥以下になってしまうので注意が必要ではあろうかと思います。


○ということで前振りがアホほど長くなりましたが声明文比較

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130611a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130522a.pdf(前回)

決定事項に関する部分は先ほど引用したとおりですのでその後から。

・景気現状判断:総括判断は持ち直しに引き上げキタコレ

『わが国の景気は、持ち直している。』(今回)
『わが国の景気は、持ち直しつつある。』(前回)

キタコレ(・∀・)!


・現状判断需要項目別:海外を微妙に下げて生産を引き上げ

『海外経済は、引き続き製造業部門に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直しつつある。』(今回)
『輸出は、海外経済が昨年来の減速した状態から徐々に持ち直しに向かうもとで、下げ止まっている。』(前回)

・・・・・・・・・・えーっとですね、これ前回の「昨年来の減速した状態」という表現があるのが曲者で一見すると上げているのか下げているのかがヒジョーに分かりにくいのですけれども、良く良く見ますと「製造業部門に緩慢な動き」というのを出している上に、「全体としては」という毎度おなじみのヘッジクローズが入っていますので、これ微妙に引き下げですね。

『設備投資は、非製造業が引き続き底堅く推移するなか、全体としても下げ止まりつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、引き続き底堅く推移している。』(今回)

『設備投資は、非製造業が引き続き底堅く推移するなか、全体としても下げ止まりつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、底堅さを増している。』(前回)

ということでここは変化なし。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(前回)

つーことで生産の判断は引上げ。

金融環境・物価に関しては特段の変化はありませんが比較引用。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっている。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっている。』(前回)

こちらも全文一致。


・ところで予想物価上昇率って・・・・・・・・・・・

実は最後にこんなのがありますけれども。

『予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(今回)
『予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(前回)

前回から入りました予想物価上昇率云々なのですけれども、これ金融経済月報の本文とか図表の方に解説があるとは思うのですが、どこからどう見ても前回決定会合以降BEIって盛大に縮小しているように思えるのですが、どちらにその「上昇を示唆する指標」とやらがあるのかおじちゃん頭が悪いからワカランチ会長であります。

・・・・・・・・・ということで、何かこの辺りの文言を拝読しますと大本営発表の香りが漂ってくるという鑑賞の仕方をするのが正しい(嘘)ヲチャーとしての有り方ですなうんうん(大嘘)。


・先行き見通しの文言だが

『先行きのわが国経済については、金融緩和や各種経済対策の効果もあって国内需要が底堅さを増し、海外経済の成長率が緩やかながらも次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、次第にプラスに転じていくとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、マイナス幅を縮小したあと、次第にプラスに転じていくとみられる。』(前回)

物価の所は先般の東京都区部物価指数に示されたようにプラス転換が見えてきたので「当面マイナスを縮小」というのを取っ払っていまして若干の上方修正とも言えますが、そもそも2年で2%を目標にしているので見通しのオンラインですよという所でしょう。

経済の所ですが、国内需要に関して「底堅く推移」が「底堅さを増し」となっているのは普通に上方修正になるのですが、その一方で「金融緩和や各種経済対策の効果”から”」というのが「〜”もあって”」という文言に代わっておりまして、つまりこれは金融緩和や各種経済対策の効果以外のファクターが国内需要の底堅さを増す要因として考えられるという事を意味するのですけれども、はてさてその「もあって」の所に該当するものは何なんでしょというのがあたしゃーワカランチ会長でしたけどどうなんすかね。


・リスク要因以降は全文一致

透かし読みをして確認したので自信を持って「全文一致」と申し上げます。つーことで以下は今回分だけ引用。

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済や新興国・資源国経済の成長力など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

ちなみに木内委員の提案も前回と全く同じです。

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』


つーことで、総括判断とか上がっているのですが、ファクターを見るとそんなに大きく判断変えるほどの話かねという感じでもありまして、まあ総じて言えば直近の展望レポートや金融経済月報で示した見通しにオンラインで乗っているというような話だと思われまして、まあそうだとすれば追加金融緩和政策の実施というのは話としてロジック崩壊を招くことになりますので実施しない方が政策ロジックとして筋が通っていますねという話ではございますなという事で。


○会見詳しくは今日の要旨を見てからですけれども、ヘッドラインバイアスを見ると色々注意が必要ですねという話

でまあ会見の時間以降に各市場があばばばばーになっておりまして、どこからどこまでが総裁会見の影響なのか知らんですけど、まあヘッドラインを見るとうーんという感じではあるのでメモ気味に書いておく。

これはブルームバーグの記事ですけど。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MO7XS66K50Y501.html
日銀総裁:「必要になったら検討、現時点で必要ない」−1年超オペ
更新日時: 2013/06/11 18:28 JST

『6月11日(ブルームバーグ):黒田東彦総裁は11日午後、定例記者会見で、同日開いた金融政策決定会合で期間1年超の資金供給オペ導入を見送ったことについて、長期金利のボラティリティ(変動)が足元で低下していることなどから、「今のところそういう必要性はない」との認識を示した。一方で「将来、必要になったら検討する」と述べた。』(上記URLより)

・・・・・・・・なんかこの書かれ方だと「じゃあボラが上昇したら2年オペを実施するのか」みたいな印象を与える訳でして、「必要な措置は全て打った、クレクレは甘え」という印象を与えた今回の決定の効果を思いっ切り下げてしまうような感じなのですが、これ実際に会見要旨を見ると印象が違ってくる可能性もある(というか多分黒田さんの事だから「クレクレは甘え(キリッ)」が本旨だと思うのですけどねえ)のですけれども、最初にベンダーヘッドラインが出てくる方が先なので、ヘッドラインでこういう書かれ方をされるという辺りをもう少し考えた言い方をした方が良いかも知れないと思いますし、受け取る方もベンダーヘッドラインを見て一々反応しすぎない方が良いかもしれません。

例えばブルームバーグだとこの辺のヘッドラインってね・・・・・・

JBN:16:37*日銀総裁:長期金利の動向を注視している
JBN:16:38*日銀総裁:将来必要になった時は検討する−1年超のオペ
JBN:16:39*日銀総裁:現時点では変動率低下し必要ないと結論ー1年超のオペ
(昨日のブルームバーグニュースヘッドラインです)

というような感じになっていましたし、共同通信がベンダー向けに出しているヘッドラインの中で日銀総裁会見詳報というのがあるのですがそこの詳報8とかね・・・・・・・

KYO:17:58 日銀総裁会見詳報8 中銀は金利全体に相当影響与えられる
(昨日共同通信がベンダー向けに配信したニュースのヘッドラインです)

という風に、もう共同通信さんったら債券市場の人間が(#^ω^)ピキピキってなるツボをよく心得ているんだからお茶目ねえという風情の素敵なヘッドラインを打ったりしてまして、前回の総裁会見でも申し上げましたが、どうもベンダーヘッドライン的には「市場にボラティリティーをまき散らす黒田さん」という絵がオイチイようでして、黒田さんの発言の中からそういう部分をヘッドラインに打ってくる傾向が更に顕著になってるなあという印象を受けた次第。

まあこういうの勘弁して欲しい所ではあるのですが、そうは言いましてもベンダーも商売でしてヘッドラインとして「おいしい」所を取りたくなるバイアスというのが掛かるのは致し方ない面はありますので、受け止める方もそうなのですが黒田さんも余計な一言(さっきの共同さんのヘッドラインだって別に発言していない事を書いている訳では無いでしょうから、まあ黒田さんが一言多いんですよねえと思うのですよ)言わないようにして、特段決まっていないのならばドラギ先生のように「テクニカルには準備が出来ているし道具立てとして揃っていますがネバープレコミットですが何か?」という形で対応する方がエエンデネエノという気はするのでありました。


○貸出増加支援制度云々

MPMの結果が出るのとほぼ同時だったか直後だったかという感じでしたがこんなリリースが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130611a.pdf
貸出増加を支援するための資金供給の実施予定

『貸付実施の通知日時 2013 年6 月18 日(午前9 時30 分)
貸付日 2013 年6 月20 日
貸付日における貸付予定総額 31,519 億円
貸付先数 70 先』

はあそうですかという所ではあるのですが、オペレーション要綱

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo81.htm/
貸出支援基金の運営として行う貸出増加を支援するための資金供給基本要領

を見ましてもイマイチどういう段取りなのかワカランチ会長なのですけど、貸出実施の通知日時の1週間前に実施予定が出るという建付けなのか何だかよく判らんぞなもしという所です。

まあ貸付限度額自体は要綱の中にありますように、

『(1) 当該貸付先による平成24年10月から12月までの各月末における貸出(政府に対する貸出、地方自治体に対する貸出ならびに金融機関等および預金保険機構その他の別に定める公的法人に対する貸出を除く。以下同じ。)の残高の平均額に対する、貸付毎に別に定める四半期の各月末における貸出の残高の平均額の増加額 』(基本要綱より)

となっていますので事前に限度額判っていますし、審査期間とか事務的な面とか考えたら1週間くらい前に出るのは別におかしくは無いのですが、タイミングとしてMPMの直後に出てきて、しかもMPMでは市場のクレクレにゼロ回答という「クレクレは甘え(キリッ)」という毅然とした姿勢を示している所ですので、ここで「3年物の貸出をやっていますよ〜」というのを同時に近いタイミングで出すというのは何か変な配慮みたいな印象を与えて正直言って如何なものかという気がしましたけどね。まあ厳しい言い方を敢えてしますと小賢しいって所っすかねえ。別にこれはこれで既に決定した施策を通常通りに実施するというものなのですから、こういうタイミングでは無くて普通に淡々と出せば良いのであって、わざわざMPMの発表にぶつけるような形に(結果的かもしれないが)なっているというのもどうなんでしょうかねえと思いますけどね。しかも今回は事前のクレクレがあった訳ですから何とも間が・・・・・・・・・

#なお、これら関連の貸出で今年度末の残高が13兆円(12年度末比10兆円近くの増加)を見込んでいたりするのですが進捗どうなってましたっけとか気にしてはいけません^^;

とまあそんな所でありました。

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2013/06/06

○日銀から色々とペーパーが出ている訳ですが

・先物と現物の市場の関係とな

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2013/rev13j04.htm/
わが国株式市場における先物価格と現物価格の関係:いわゆる「先物主導」の検証

『要旨

株式市場の動向を説明する際、「先物主導」という言葉が使われることがある。本稿の分析結果によると、現物市場に固有の取引制度は、同市場の流動性を先物市場対比で相対的に低下させやすくする側面があり、このことが、わが国株式市場における「先物主導」の株価形成につながっている面があると考えられる。もっとも、こうした株価形成は、先物市場が現物市場に先んじて「真の価格」を発見していることを必ずしも意味しているわけではない。東日本大震災等の大規模ショック時の株式市場の反応から推察すると、現物市場に固有の取引制度は、同市場の流動性を低下させる一方、少なくとも事後的にみれば、「価格発見力」を高める方向に作用しているとの評価も可能である。今後、わが国株式市場においてより効率的な株価形成がなされていくためには、こうした点も含め、多面的な議論が必要である。』

ということで本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2013/data/rev13j04.pdf
わが国株式市場における先物価格と現物価格の関係:いわゆる「先物主導」の検証

中々面白いのですが、後半分から少々。

5ページ目の『「先物主導」の株価形成の帰結』という所から。

『前節では、先物市場と現物市場の取引制度の違いが2つの市場の間の流動性格差を生じさせる可能性について議論してきた。以下では、「先物主導」の株価形成の結果、現物市場の各銘柄がどのように価格付けされるか、その特徴点について確認する。』

ということで。

『東日本大震災のような大規模ショックの直後には、流動性の高い先物市場が現物市場に先んじてマクロ要因を株価に織り込み、その先物価格を手掛かりにしながら現物市場の参加者が売買を行うことで、現物市場でも流動性が回復していったとみられる。この際、実際の現物市場では、先物市場との間の裁定機会を狙うディーラーや投資家の合理的な行動によってETF(指数連動型上場投資信託)の売買や日経平均採用銘柄のバスケット注文などが活発化していったとみられる(図表6)。このほか、個別銘柄に関しても、大規模ショック時には、比較的買い手が豊富にいるような企業規模の大きな銘柄やマクロ要因との株価の連動性が高い銘柄(高ベータ銘柄)から優先して売りに出される傾向があることが知られている。』

なるほど。

『こうした行動は、ディーラーや投資家がマクロ要因を強く意識した取引を行っていたことを示唆している。これにより、マクロ要因が各銘柄の株価に織り込まれていった結果、東日本大震災直後の現物市場では、日経平均株価と各銘柄の株価の相関が、一時的にせよ、著しく高まることとなった(図表7)。』

ふむふむ。でまあ更に興味深いのはこの先の部分。『「先物主導」の株価形成と価格発見力』って所ね。

『これまでにみた通り、「先物主導」の株価形成は、流動性の高い先物市場が現物市場に先行してマクロ要因を株価に織り込もうとする現象である。これを「価格発見力」という観点からみると、先物市場が「真の価格」を現物市場に先んじて発見しているとも考えられるが、実際にそうだろうか。』

これは(^^)。

『例えば、先物価格が、現物価格に比べて大きな振幅を伴いながら、現物価格に先んじて動いているような場合、先物市場は、現物市場に先んじて「真の価格」を発見していると言えるだろうか(図表8)。』

『以下では、前節までの分析を踏まえ、大規模ショック時において、「先物主導」で株価が形成されている先物市場と現物市場で、どのような「価格発見」が行われているのか、について確認する。これにより、「先物主導」の株価形成と、先物市場の「価格発見力」がより高いこととが同義でないことを示すことが可能である。』

つーことで以下分析があるのですが、そちらはまあ読んでくらはいという事で結論にワープ。

『東日本大震災直後である3月14日の寄付前後のこうした注文行動の変化は、この銘柄以外にも、複数の日経平均採用銘柄で観察されている。これは、現物市場に固有の特別気配制度が、ディーラーや投資家の寄付前の過剰反応を修正させ、本来の狙いでは必ずしもないかもしれないが、少なくとも副産物として、「適正な」価格発見を促すように作用する結果となっていたものと解釈することができる。』

ということになっておりますが、実際問題として昔の日本流の値付け方式って「注意気配」とか「特別注意気配」とか使いながら価格の動きをマイルドにするとともに、より多くの注文を集めることによって価格形成を円滑かつ効率的に行い、価格の過激なジャンプを抑止することによって小口投資家の保護にも繋がってますというような感じで行われていたと記憶している(のですが間違っていたら訂正しますのでベテランの方教えて下さいお願いしますお願いします)訳でして、実際問題としては「本来の狙い」の一環として行われているもの(ただし今の取引所の値付けルールは昔と違うので必ずしもその思想が継続されているかどうかは知らん、というかどう見ても高速取引大歓迎で場口銭入ってウマーしか考えてないだろ取引所は何考えてるんだという状況になっているとは思いますけど・・・・・)だったりするように思えます。

プライスアクションが無駄に激しい制度になるとフラッシュクラッシュのような形で却って価格発見機能が阻害されるという含意を込めているものと読みましたが勝手読み過ぎですかね(^^)。

なお、このトピックスバージョンもございますかねえとか思ったが、まあ同じような話になるんでしょうかね。



・これ個人的には物凄く興味深く読んだのですが多分一部のマニア向け

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130531a.htm/
「金融取引における預かり資産を巡る法律問題研究会」報告書
――顧客保護の観点からの預かり資産を巡る法制度のあり方――

本文はこちら(1MB以上あるPDFなのでご注意)
http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kenkyukai/ken1305.pdf


『要旨

本稿は、日本銀行金融研究所が設置した「金融取引における預かり資産を巡る法律問題研究会」(メンバー<50音順、敬称略>:井上聡、沖野眞已、加毛明、神作裕之、神田秀樹<座長>、佐藤正謙、道垣内弘人、前田庸、松下淳一、森田宏樹、事務局:日本銀行金融研究所)の報告書である。

先般の金融危機時には、金融機関が倒産した場合に、金融取引における預かり資産を保全しそれを迅速に顧客に返還する必要性が認識された。また、金融機関による預かり資産の再利用に伴うリスクが顧客に十分に認識されていないことが問題となった。こうした問題を受けて、規制の見直し等を含めた対応のあり方が国際的に議論されている。

わが国においても、金融取引の内容や対象資産の性質から、預かり資産が金融機関の自己資産と十分に区分されない場合があるほか、金融機関の義務違反により預かり資産として保有する資産が不足する場合がある。こうした場合には、金融機関倒産時に顧客が預けた資産の返還を受けられない事態が生じ得る。また、一部の担保型取引では、当事者の合意に基づき金融機関に預かり資産の利用・処分を認めることがあるが、こうした利用・処分を認めることに伴うリスクが顧客に十分に認識されていなければ混乱が生じ得る。さらに、こうした担保型取引については、金融取引の効率性確保の観点から、当事者のニーズに応じた多様な取引形態の選択を可能とするための法制の整備等も重要となる。

以上のような問題意識を踏まえ、本報告書では、預かり資産を巡る金融取引として、振込、証券売買の取次、サービサーの債権回収といった権利移転仲介型取引や担保型取引を取り上げ、わが国現行法上、預かる者と預けた者がいかなる権利義務を有するかにつき、金融機関倒産時における預かり資産の処遇を中心に整理を行っている。そのうえで、諸外国の法制とも比較しつつ、わが国の望ましい法的対応のあり方につき検討を行っている。』

ということで思わず要旨を全部引用(まあさっきもそうですが)してしまいましたが、あまりにもネタがマニアっちゃあマニアなのですが、レポ取引の法的性格として実際に第三債務者がゴネた場合にどういう事になるのかとかその辺に興味が昔からある不肖このあたくしとしては興味深く読んだ(本文52ページ以降、特にレポの担保部分に関する記述は本文57ページ以降)のですが、それ以外の所では証券売買に関する部分(本文16ページからで結構な分量がある)が非常に興味深く読めましたです。

なお、内国為替取引における銀行振り込みが実際にどのように行われているのか、という話もありまして、法的性格に興味が無い方でも実際に皆さんが振込依頼を銀行でホイホイ実施した場合にその資金は厳密に言えばどう動いているのかという記述が本文10ページにありますのでこれまたオモロスです。


ということで、さすがにこれを延々と引用してネタにするのも何ですなと思いましたのでページだけ記載しましたが、他にも色々と金融取引において仲介業者が何らかの形で金員を一時的に預かるケースなどを中心に解説している(後半は担保取引の第三者対抗可能性の話とかで、その間に諸外国の法的建付けの説明がある)ので興味のある方には物凄く面白い話だと思いますが、まあ一般向けでは無いのでお勧めはしませんです、はい(^^)。

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2013/05/28

○ツッコミどころが満載過ぎてどこからツッコんで良いのか判らない議事要旨キタコレ

4月26日開催、ということですので展望レポートの回の議事要旨であります。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130426.pdf

・この政策委員を選定したのは誰だあ!(ガラッ)←海原雄山風で

今回の議事要旨ですが、まあ読んでいて色々とツッコミ所が多くて鑑賞物としては笑えるのだが真面目に考えるとその笑いもひきつるというものですが、本文中も色々とツッコミどころがありますけれども今回の最大のオモシロ部分は最後にあります。

本文16ページ(ファイルの18枚目になります)にそのツッコミどころが!!

『白井委員からは、@分かりやすさの観点をより重視した2つの「柱」による点検結果の記述方法の改善とAリスク要因の記述の明確化、具体的には、@として、第1の柱については「1.わが国の経済・物価の中心的な見通し」の最後に、第2の柱については「2.上振れ要因・下振れ要因」の最後にそれぞれまとめる形で記述する、Aとして、経済情勢に関する上振れ要因・下振れ要因のうち消費税率引き上げの影響について、家計の実質所得減少のリスクをより明確に記述する、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

・・・・・・・・・・・・・・???????????????????

えーっとですね、これ百万回、とは申しませんが10回くらい読み直したのですけれども、「書いてある日本語は言語として認識可能だが、言っている事の意味が全く認識できない」という大変に素敵な内容にしかあたくしには見えないのですが、これ真面目な話何をしたくて提案しているのか1ミリも理解できません。

大体からして第1の柱と第2の柱の点検に関する話って既にだいぶ前から実施されている話でありまして、別に今さら記述を変えたからと言って分かりやすくなるとは思えないですし、大体からして出来上がりの文言を想像したのですけれども何がどう分かりやすくなるのかワカランチ会長。

#そもそもポートフォリオリバランスを前面に打ち出した政策で第2の柱の点検というのが矛盾しているのではないかという論点を持ち出すならまだ政策論として判るのだが

『賛成:白井委員
反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、石田委員、佐藤委員、木内委員』

そらそうよという所ですが、そもそもこれあたくしが何度読んでも「?????」状態でポカーンという話なのに、実際にMPMでどういう説明をして議決したのかと思うと、他の審議委員の皆様「????????????」状態だったのではないかと愚考する所ではございまする。

つーかさ、この先生3月にも意味不明というか政策の体を成していないレベルの提案をして否決された結果ミスコミュニケーションの種を振り撒いているのですが、今回は今回でまたまた超越意味不明提案を持ち出しておられるという事でして、もうこれは海原雄山が厨房に乗り込んで行って「この政策委員をノミネートしたのは誰だあ」(ガラッ)となるレベルですが大丈夫ですかという風情でありまする。しかも3月もそうでしたが今回も「わかりやすさの観点」とか何かもうヨイショの香り以下自主規制(−−;

ちなみに、白井さんの謎提案に関してなのですが、『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の部分では他の2名(佐藤さんと木内さん)の展望レポートの記述に関する反対提案(木内さんの場合は声明文でのフォワードガイダンス文言に関する反対提案もある)に関する説明部分が記載されているのですが、白井さんの謎提案に関しては『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の所には説明部分が記載されているもののそちらには記述が無いという事ですので、これはつまり白井委員の提案には政策インプリケーションが以下自主規制(^^)。


・海外経済の読み筋がFOMCと温度差がある件について

本文5ページの『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』から少々。

『海外経済について、委員は、昨年来の減速した状態から徐々に持ち直しに向かっているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するもとで、米国や中国などを中心に、緩やかながらも次第に成長率を高めていくとの認識を共有した。』

えーっとですな、FOMC議事要旨ネタをまだやっていないので(すいません)アレなのですが、4/30-5/1に実施されたFOMC議事要旨の方では海外経済に関する減速傾向への懸念とか、米国経済の先行き見通しがやや回復ペースが遅くなるのではないかというような認識を大勢が示している格好になっておりまして(明日にでも投下しますすいません)、FOMCの見通しを読んだ後にこれを読むと「おいおい何か強気じゃないの」というツッコミをしたくなる訳で。

まあ当然全員がそうな訳では無いのですが・・・・・・

『そのうえで、ある委員は、海外経済が持ち直し傾向を辿るという見方を変えるものではないものの、前回会合以降、米国や中国で経済指標の市場予想比下振れが相次いでいると指摘した。』

FOMCのスタッフレビューでは「中国の顕著な下振れ」を指摘してましたな。

『別の一人の委員は、今月公表されたIMFの世界経済見通しが1月時点に比べて下方修正されたことについて、成長率の高まる時期が後ずれするリスクに注意が必要だと述べた。』

これもまあFOMCでの米国や中国、欧州経済の認識に近い。

『これに対し、一人の委員は、最近の経済指標の下振れを受けて海外経済の回復への懸念の声も聞かれるが、欧州でここ数年のような大きな混乱がみられないことや、米国で住宅市場の回復が本格化していることなどから、海外経済は次第に回復していくとの見方を示した。』

強気の方もおいでのようですなあ。

ちなみに中国経済に関してですけれども個別の所ではこういう話に。

『中国経済について、委員は、堅調な内需を背景に、安定化してきているとの認識を共有した。そのうえで、何人かの委員は、1〜3月期の実質GDPの伸び率が鈍化したことや、鉄鋼など素材産業の生産調整が続いていることなどを指摘し、本格的な回復には至っていないとの見方を示した。別の一人の委員は、政府による不動産価格抑制策や質素倹約奨励の影響から足もと改善の動きが幾分弱まっているが、緩やかな持ち直しの過程にあることに変わりはないと述べた。』

ふーん。

『先行きについて、委員は、成長テンポはかつてに比べ緩やかになる可能性が高いが、内需が堅調に推移するもとで輸出も次第に持ち直し、回復が鮮明になっていくとの見方を共有した。』

だそうです。


・実質金利が低下するから緩和効果が高まるんですってよ奥様!!

本文6ページからが色々と鑑賞物としてアレな部分ですよ。

『わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。先行きについて、委員は、「量的・質的金融緩和」は長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、期待の転換を通じて予想物価上昇率を上昇させ、実質金利を低下させる効果が期待できるため、金融環境の緩和度合いは景気の改善につれて強まっていくとの考え方を共有した。』

実質金利キタコレですが、一方でこの先の方で金融市場情勢に関する話があって名目だろという人も居るには居るのが救いっちゃあ救いですけどね。

『「量的・質的金融緩和」導入後の市場動向について、委員は、特に債券市場では、直後にやや振れが大きくなる局面があったが、日本銀行による長期国債買入れの運営方針変更などもあり、足もと落ち着きを取り戻しているとの認識で一致した。』

まあ4月末の時点ではそうでした。

『複数の委員は、当初、市場は、@金利の押し下げにつながる大規模な国債の買入れと、A金利の押し上げにつながる「物価安定の目標」の早期実現への強い姿勢とが相反するものと受け止めて動揺した可能性があると指摘した。』

えーっと、たぶん4月末までの長い所の金利上昇は流動性低下要因の方が大きかったと思うのですけれどもねえ。

『このうちの一人の委員は、債券市場の不安定さは潜在的にはなお続いていると付け加えた。』

結果的には正解でしたね!

『別の一人の委員は、日本銀行が大規模な国債の買入れを行う中での金利上昇は、予想物価上昇率の高まりとその背後にある実体経済の好転を示唆している可能性があると述べた。』

・・・・・・・・・・・・・何という手前味噌俺様論点orzorzorz

『ある委員は、金融機関のポートフォリオ・リバランス行動は名目金利の動きに規定される側面が強いため、金利上昇によりリバランスが遅れることが懸念されると述べた。』

そらそうよ。

『足もとの資産価格の上昇について、一人の委員は、バブルを懸念する声も聞かれるが、企業収益等のファンダメンタルズを反映したものであり、過大評価とはいえないとの見方を示した。』

まあそうでしょ。4月末の時点でしたら。

『この間、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」が効果を十分発揮するためには、政策意図の丁寧な説明や適切な金融市場調節などにより、市場の安定を確保する必要があるとの認識を示した。』

政策意図(?)を黒田総裁様が丁寧に説明した結果5月の債券市場が更にあばばばばーになるわ、本当は今日ネタにしたかった黒田総裁の26日の講演があるのですが、まあ色々と建付け的にちょっとロジックに無理無理部分があるのが明確化したせいで更に市場が不安定になったんですけどね!!!!!


・先行き見通しで消費の堅調がどの程度サステイナブルかという点は中々

『以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』

つーことで。

『輸出について、委員は、足もと下げ止まっており、先行きは、海外経済の緩やかな回復や為替相場の円安方向の動きに支えられ、持ち直していくとの見方を共有した。公共投資について、委員は、各種経済対策や復興関連予算の増額などから、当面、高水準で増加を続けるとの認識で一致した。』

どさくさに紛れて為替円安に言及。

『個人消費について、何人かの委員は、株高等によるマインドの改善や資産効果で高額品の売上が増加するなど、底堅さを増しているとの見方を示した。』

はあそうですか。

『そのうえで、複数の委員は、現在の個人消費は雇用・所得環境に比べより堅調であり、その持続性には注意が必要であると付け加えた。』

またFOMC議事要旨ネタになりますが、米国の個人消費に関してFOMCでも同じような認識を示しているのがオモロカッタです。

『住宅投資について、ある委員は、マンション販売が増加基調にあるなど、活発化しているとの見方を示した。こうした議論を経て、委員は、景気は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられているとの認識で一致した。』

へえそうですか。


・物価の所がどう見ても手前味噌です本当にありがとうございました

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、小幅のマイナスとなっているとの認識で一致した。何人かの委員は、物価連動債から算出される予想インフレ率(BEI)や各種アンケート調査をみると、足もと、市場や家計の予想物価上昇率が上昇していると述べた。』

インチキ指標キタコレ。

『これに関し、ある委員は、こうした指標の動きは消費税率引き上げの蓋然性の高まりを織り込んでいる可能性もあり、直ちに予想物価上昇率が高まっているとは解釈できないと指摘した。』

指摘したの1名かよ・・・・・・・(まあ指摘しないけど賛同する人はいるでしょうけど)

『一方、別の一人の委員は、昨年11 月末以降BEIは上昇を続けており、「量的・質的金融緩和」の決定後はそのテンポが早まっていると指摘したうえで、これは消費税率引き上げ予想の高まりというよりも、金融政策のレジーム・チェンジに関する市場の見方を反映した動きであるとの見方を示した。』

日銀の買入と財務省の買入消却が累積的に効果を発揮している話はスルーかよと大変に心温まるものがございますなあ(棒)。つーかBEIの推移と言いましてもですなあという感じですけど。



・でもって展望レポートですがまずは期間を延ばす件

『展望レポートの見通し期間について、多くの委員は、金融政策の効果が実体経済や物価に波及していくにはある程度のタイムラグがあることや、現状、多くの中央銀行が3年程度の見通しを作成・公表していることを踏まえると、見通し期間の延長を検討すべきではないかと問題提起した。』

はあそうですか。

『何人かの委員は、2年程度の期間を念頭にできるだけ早期に「物価安定の目標」を実現するための措置として「量的・質的金融緩和」を導入したこのタイミングで、政策効果を十分点検できるだけの見通し期間を確保することには意義があると述べた。』

はあそうですか。

『複数の委員は、そうした意義を認めたうえで、期間を伸ばした場合には見通しの不確実性が高まるため、必ずしも透明性の向上につながらない面もあると指摘した。』

同意である。というか長期的なのを出すと結局予想と言うよりは目標数値になってくると思うのですが。

『以上の議論を経て、委員は、経済・物価の先行きに対する日本銀行の認識を分かりやすく示す観点から、2015 年度までの見通しを従来より半年前倒しで公表し、見通し期間を3年程度にすることが適当であるとの認識で一致した。』


・物価見通しの部分

『消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると、大方の委員は、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向を辿り、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとの見方を示した。』

まあこれはそういう結論になっていましたけど。

『一人の委員は、中心的な道筋に沿って実際の経済・物価が改善していくことにより人々がその道筋を見通せるようになる、というプロセスの重要性を指摘し、そうした好循環のもとで、人々の短期的なインフレ予想、中長期的なインフレ率のアンカー、現実のインフレ率が、互いに強め合いながら上昇していくことになると述べた。』

んなアホな。

『消費税率の引き上げ前後の時期の物価動向について、ある委員は、消費に追加的な下押し圧力がかかることを懸念して、小売業者が需給バランスの改善分の価格の引き上げを先送りすることも考えられると指摘した。』

ふむ。

『予想物価上昇率について、ある委員は、消費者物価の前年比がプラス幅を拡大していくにつれて企業や家計のデフレ期待が転換していくとの認識を示した。』

ほほう。

『複数の委員は、長きにわたるデフレのもとでわが国に定着したデフレ期待を払拭するためには、日本銀行が「物価安定の目標」の達成に向けて強い姿勢を示すことが重要であると述べた。このうちの一人の委員は、この間の各種市場において海外投資家を中心に政策効果を織り込んだ動きとなっていることを踏まえると、今後、実体経済が改善していくにつれて、国内の経済主体も予想物価上昇率を高めていく可能性が高いと付け加えた。』

「政策効果を織り込んだ動きを踏まえると」「実体経済が改善していくにつれ」ってこらまた願望の二乗みたいな話で誠に結構なお話ですなあ(棒)。

『これらに対し、複数の委員は、予想物価上昇率の変化が現実の物価上昇率の高まりにつながる点については、そのメカニズムも含めて不確実性が高いことなどから、見通し期間の後半にかけて2%程度に達するのは難しいと指摘した。』

佐藤さんと木内さんですねわかります。

『このうちの一人の委員は、不確実性の高い見通しを示して仮にその見通しが下振れた場合、日本銀行の物価見通しや金融政策に対する信認を毀損する惧れが大きいと付け加えた。』

ご指摘の通りだと思います。特に長期的な見通しが「予想」ではなく「目標」に近いものになってしまう性質がある今の状況において、その数値の達成可能性に疑問がもたれると金融政策そのものの信認問題に発展するという点は留意が必要ではないでしょうかねえ。


・委員会の検討の部分は反対提案部分に注目

リスク認識の所もあるのですが時間が怪しくなってきたのでパスして本文12ページからの『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『先行きの金融政策運営について、大方の委員は、2年程度の期間を念頭に置いて、2%の「物価安定の目標」の早期実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続すること、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

まあこれは良いとしまして。

『これに対し、ある委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しい中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡累積など中長期的な経済の不安定化につながる懸念があるため、継続期間を2年程度に限定し、その時点で柔軟に見直すとの表現に変更することが適当であり、政策に対する市場の信認にもつながると述べた。』

これは後の提案を見れば判るように木内さんの意見ですけれども、この場合時間軸が2年で設定されて伸びようがなくなるのが難点なのと、その後継続しないといけない場合や逆に早期終了しないといけない時に説明がややこしくなるのが難点だと思う。

『また、別の一人の委員は、「物価安定の目標」について、あくまで柔軟な枠組みであり、ピンポイントで2%を実現することが究極の目標であるとの誤解を与えるべきでなく、賃金の動向などから先行き2%に達することがある程度見通せるという状況になれば達成したと評価できるとの認識を示した。』

これは後の提案を見ると佐藤さんの見解じゃないかと想像されるのですが・・・・・・・

『これに対し、一人の委員は、「目標」として掲げた以上、2%の物価上昇率といえる状況を2年程度で実現するよう、金融政策を運営していく必要があると述べた。』

ということで、この「2年で2%」に関してですが、以前は「中長期的な物価安定の理解」とか「目途」とかありまして、中長期的に見通せるかどうかという話だったようなのですが、2%目標になってからはこの部分が非常に曖昧になっておりまして、まあそこを今からギリギリ詰めるのはあまり生産的な話でもない(だって足元の物価まだマイナスですから)とは思いますが、いつまでもこの件を建設的曖昧さ状態にする訳にも行かないでしょとは思うのでありました。


・ということで佐藤さんと木内さんの反対提案

『これに対し、佐藤委員からは、@見通し期間後半にかけての物価見通しについて「2%程度に達する可能性が高い」から「2%を見通せるようになる」に変更する、A中心的な見通しについて「2%程度の物価上昇率が実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更する、B物価見通しのリスクについて「上下に概ねバランスしている」から「上下やや非対称である」に変更する、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

先程の物価目標に関する認識とこの提案の2番目が整合的なので佐藤さんの見解かなとは思った訳ですが、あとまあ物価見通しに関しては次の木内さんともども低めの見通し。

3番目の所ですが、今回引用スルーしちゃいましたけれども、「上下やや非対称」ってこらまた微妙な文言で、上か下か明言した方が良いのではとも思うのですが、おそらく「リスクは下」とすると威勢が良くないので悲観的なメッセージを発信する可能性があるよという事(もともと物価見通しが低いのに)なんですかねえ良くわかりませんがと思いましたです、はい。

『木内委員からは、@見通し期間後半にかけての物価見通しについて「「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている」から「上昇幅を緩やかに拡大させていくことが見込まれる」に変更する、A先行きの金融政策運営について「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」から「中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする」に変更する、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

2%を見通せるとも出来ないとはこらまた木内さん物価の見方厳しいですなあという所ですな、2年間の集中期間云々はさっき引用したとおりですね。

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2013/05/23

○決定会合レビューその2:声明文を確認

今回の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130522a.pdf

経済に関する部分は先月の金融経済月報(4/5)の概要部分と比較するのが吉
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1304.pdf

前々回(4/4)の声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdf

現状維持なのはまあスルーしまして景気に関する部分ですがこれは上方修正です。

・経済現状認識

『わが国の景気は、持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。』(前回月報)

総括判断が引上げですな。

『輸出は、海外経済が昨年来の減速した状態から徐々に持ち直しに向かうもとで、下げ止まっている。設備投資は、非製造業が引き続き底堅く推移するなか、全体としても下げ止まりつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、底堅さを増している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(今回)

『海外経済は、昨年来の減速した状態から徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は下げ止まっている。設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、底堅さを増しつつある。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。企業の業況感は、再び改善の動きがみられている。』(前回月報)

輸出は同じ、設備投資は「全体として弱め」から「下げ止まりつつある」に引き上げ、公共投資と住宅投資は同じ、個人消費は「底堅さを増しつつある」から「底堅さを増している」と引上げ、生産は「持ち直しに向かう動きもみられている」から「持ち直しに向かう動きが明確になりつつある」とこちらも引上げ、ということで生産と設備投資の引き上げが目立ちますな。


・金融環境、物価の所では予想物価上昇率がどうのこうのという謎文言が

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、マイナスとなっている。予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる。』(今回)

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回月報)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年の耐久消費財の動きの反動から、小幅のマイナスとなっている。』(前回月報)

まあこの比較はどうでも良いのですが、今回最初に読んでナンジャコラと思うのは・・・・・・

>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる
>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる
>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる
>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる
>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる
>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる
>予想物価上昇率については、上昇を示唆する指標がみられる

・・・・・・・・・・・・・・・・・・はてこれは何なんでしょうと申しますか、この辺が上昇してフィリップスカーブが上方シフトして云々と言う屁理屈じゃなかったロジック構成になっております関係上、この内容が具体的に何を指し示すのかというのが非常に重要でありまして、まあその辺多分金融経済月報の全文を見ると書いてあるかとは思うのですが、会見のニュースを見た感じではここの質問が無かったみたいなのが極めて遺憾(あったらゴメン)でして、これが何なのかは非常に気になります。

えーまさか物価連動国債のBEIガーとか言っているんだったらおまいら板の薄い中で物価連動国債の買入やってBEI拡大に散々寄与しておいてそれを捕まえて政策効果が見られる(キリッ)とか言い出すのはどう見ても自作自演の誹りを免れない話でありますが、まあまさかBEI一点張りという事は無いでしょうと信用しておりますので本日の金融経済月報における記述を穴のあくほど拝読させていただきたいと存じます(迫真)。


・先行き見通しの中で金融緩和の効果という文言があるのね

『先行きのわが国経済については、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、マイナス幅を縮小したあと、次第にプラスに転じていくとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回月報)

さっきの予想物価上昇率と言い、実質金利ガーの総裁発言と言い、ここでの「金融緩和」文言と言い、何か自画自賛的な香りが漂ってくるような気がするのは読んでいるあたくしの心が濁っているからに違いありませんね(白目)。


・リスク要因は同じっぽいですが・・・・・・

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済や新興国・資源国経済の成長力など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回月報)

まあ同じっぽいですけど念の為3月会合の声明文の当該箇所を。

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や米国経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性、日中関係の影響など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(3月決定会合声明文より)

回復力とか書いてあるのが成長力とかになってたり、日中関係の影響というのが抜けてたりしていまして微妙にリスク認識が楽観的になっているような気もするがまあそもそもの基調判断が上がっているのですけどね。


・最後の部分なんですけどね

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

(注)というのは木内さんの反対意見。

『このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

となっている訳ですね、これは4/4の声明文と比較なのですけど。

『日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する(注1)。』(4月4日決定会合声明文、冒頭部分)

(注1)というのは木内さんの反対意見で今回も同じ。

『その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(4月4日決定会合声明文、緩和継続期間に関する部分)

『今回決定した「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。これらは、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(4月4日決定会合声明文、最後の部分)

・・・・・・・・ということで、まあこれは文章を長くしないという現体制の仕様によって文章が短くなったので削除された、という風に見るのが普通だとは思うのですが、4月4日の異次元緩和のローンチの際には「2年程度の期間」「できるだけ早期に」という実現期間が入っていたのに今回抜けているのは何なんですねんとか、同じく異次元緩和ローンチの際に説明していた金融政策効果の波及ルートの「長めの金利」部分を削除しているのは何ですねんとか、まあその辺も気になる人は気になりますな。

前者の2年程度の期間云々に関しては木内審議委員の反対提案で、

『木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された』(今回)

とありまして、中長期的に目指すという提案をしていますし、まあまさかいきなり2年間のタイムフレームが崩れるわけは無いので2年程度云々に関しては単に文章量の都合ということなのでしょうなあという所です。

で、後者の金融緩和政策の波及ルートの話を削除している方に関しては確かに文章量の都合だとは思うのですけれども、こちらは何せ前回「長めの金利を通じた波及ルート」というのを入れているのに肝心の長めの金利とやらは上昇しやがっておりますので、ここの部分を強調するのはツッコまれる元になるということでこっそりと削除している感も漂う訳で、ややアレな香りも致しますな(ニヤニヤ)。


・木内審議委員の反対提案がより明確化

『木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された』(今回、再掲)

『木内委員より、@「2年程度の期間を念頭に置いて」を削除、Aその次に「2年間程度を集中対応期間と位置づけて、『量的・質的金融緩和』を導入する」との一文を追加、B「『量的・質的金融緩和』の継続」の段落を削除するとの議案が提出され、反対多数で否決された』(前回)

前回は「2年程度の期間」について反対していましたが、今回は明確に「中長期的に目指す」という提案をしていまして、まあ前回のもそういう意図だったとは思いますが、今回は2%を2年とかそんな無茶振りするのはやめえやという意思が明確化されたなと思いましたです、はい。

#ということでまあそんな所で

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2013/05/10

○そういう名前はついていませんが金融調節レポート

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2013/data/ron130509a.pdf
2012年度の金融市場調節

毎年のこの調節レポートは何気に楽しみにしているのですが今年もやって参りましたので簡単に。

・今回はまあ調節に関しては方式が4月から変わったので考察部分が面白い

調節のレビューと資金需給要因の話とかもマニアとしては大変にオモシロスなのでございますが、まあそちらに関しては超マニア向けなのでスルー致しまして、それよりも今回はコラムというか考察部分の「BOX」というのがオモロイ(いつもオモロイのだが)。

で、今回のBOXは以下の通りです。

BOX1 GCレポ市場における需給バランスの変化とレート低下
BOX2 国債決済期間短縮化がGCレポ市場に与えた影響
BOX3 海外投資家による本邦国庫短期証券への投資動向
BOX4 資産買入れによる民間金融機関のバランスシート構成の変化
BOX5 銀行券発行高の増加と受払高の減少
BOX6 特例公債法案成立遅延が資金過不足に与えた影響
BOX7 入札下限金利撤廃と付利金利との裁定メカニズム

ということで興味のある所を読んで頂くと中々面白いと思う(ちなみにこのBOXは本文中に適宜挿入されているので掲載ページ自体は飛んでおりますです、はい)のですけれども、まあ一般的に興味がありそうな辺りから少々。


・資産買入による影響云々の所

『BOX4 資産買入れによる民間金融機関のバランスシート構成の変化』から。

『日本銀行による各種資産の買入れは、民間金融機関のバランスシートの構成を変化させ、民間金融機関の行動に影響を与えることを通じて、その効果を発揮する。』

はあそうですか。

『こうした一連のプロセスは、@資産買入れが直接的に民間金融機関のバランスシートにもたらす変化と、Aその結果として期待される金融機関の貸出や有価証券の運用スタンスの変化に分けて考えることができる。』

ほほう。

『まず、日本銀行による資産買入れが直接的に民間金融機関のバランスシートにもたらす変化をみると、バランスシートの規模は変わらないが、資産サイドの構成が変化する。すなわち、民間金融機関が保有する国債等が減少し、その分、日銀当座預金が増加することになる(図表19)。』

図表を磔にするスキルは無いので図表は本文見てくらはい。

『民間金融機関の資産運用の観点からは、日本銀行による資産買入により、日銀当座預金が増加する一方、運用資産である国債等が減少するほか、資産買入の進捗により国債等の利回りにも低下圧力がかかることとなる。このため、民間金融機関は、ポートフォリオ全体としての収益性を維持するためには、リスク性資産への投資や貸出等を積極化することが期待される(ポートフォリオリバランス効果)。』

期待するのは良いのですが、その一方でプルーデンス政策ガーとか言われますとポートフォリオリバランスもへったくれも無いのでして、正直言っていわゆる金融規制の方を緩くした方がこうかはばつぐんだ!と思うのは貸出枠規制だの3業種規制だのという時代に金貸しの手先で現場下働きをしていた時の体感的印象なんですけどまあその話は今日はスルーしまして。

・・・・・・・・でですね、ベンダーのヘッドラインとか見たらこの「民間金融機関がリスク性資産への投資などが積極化されることが期待」というところでヘッドライン打っていまして、まあそうなるだろうなあとは思うのですが、実際に読むべきなのはこの先の解説だと思うのですよ!!!!


『また、資産買入れを円滑に進捗させる観点からは、以下のような点に留意して金融市場調節を運営する必要がある。』

と書いてあるから後の文章を読まない人が続出するのかもしれませんが、本来重要なのは以下の部分であって、そういう意味では「このバランスシートの変化に関して一部で誤解があるようなのでここで解説します」とかぶち上げること推奨(^^)。

『第一に、金融システム全体としての日銀当座預金の残高は、民間金融機関同士の取引によっては変化しないということである。』

>金融システム全体としての日銀当座預金の残高は、民間金融機関同士の取引によっては変化しない
>金融システム全体としての日銀当座預金の残高は、民間金融機関同士の取引によっては変化しない
>金融システム全体としての日銀当座預金の残高は、民間金融機関同士の取引によっては変化しない
>金融システム全体としての日銀当座預金の残高は、民間金融機関同士の取引によっては変化しない
>金融システム全体としての日銀当座預金の残高は、民間金融機関同士の取引によっては変化しない

大事な事なので5回繰り返しましたよ!!!

『例えば、ある金融機関が自らの日銀当座預金を減少させようとして、他の金融機関から国債を買入れた場合には、国債を売却した金融機関の日銀当座預金がその分増加することになり、全体の残高は変化しない。このように、マクロ的な日銀当座預金残高は、あくまでも日銀の資金供給(資産買入れ等)によって決定されることになる。』

『すなわち、全体としてみた場合、日銀当座預金が株式投資や貸出等に振り替わるのではなく、資産買入れ(とそれに伴う日銀当座預金残高の増加)による効果が発揮されることで、株式投資や貸出が増加することとなる。』

>全体としてみた場合、日銀当座預金が株式投資や貸出等に振り替わるのではなく
>全体としてみた場合、日銀当座預金が株式投資や貸出等に振り替わるのではなく
>全体としてみた場合、日銀当座預金が株式投資や貸出等に振り替わるのではなく
>全体としてみた場合、日銀当座預金が株式投資や貸出等に振り替わるのではなく
>全体としてみた場合、日銀当座預金が株式投資や貸出等に振り替わるのではなく

ということで、「大量にある超過準備が貸出に回らないのはケシカラン」というような主張はナンセンスどころかミスリードにも程があるという話なのですが、ここの説明文書を百万回読んで理解すべき話なのですが、残念ながらそっちの方をちゃんと読まないでここの「株式投資」という所に思いっきり釣られたヘッドラインが打たれていたような気がするので甚だ遺憾にも程があるという事で引用してみましたぞな。


『第二に、日本銀行の資産買入れは、民間金融機関との間における任意の取引を通じて行われることから、どの程度円滑に資産買入れを行えるかは、民間金融機関の保有資産の売却ニーズや日銀当座預金の保有スタンスに依存する。例えば、2013年入り後、基金による買入対象ゾーンの需給が急速に逼迫し買入レートが急低下したことも、付利金利引き下げを含めた金融緩和期待が高まったことで、民間金融機関において、日銀当座預金の保有スタンスを消極化するとともに、保有資産の売却ニーズが大きく後退したことによるものと理解することができる。』

ということも重要で、民間金融機関に不必要に超過準備を保有させようという量的緩和政策を実施する場合には、その「不必要な超過準備」保有に対するインセンティブを与えないと営利団体であるところの民間金融機関は動かない訳ですから、ある程度を超えた量的緩和政策を実施する際には超過準備保有のインセンティブが必要になる訳で、付利金利が補助金だとか言ってるアホウは豆腐の角に頭をぶつけてくるべきであると存じます。

・・・・・・・というような論点がしらっと整理されているのでこのBOXは中々読みごたえがあります。


・短国市場について

調子に乗ってもう一つ『BOX3 海外投資家による本邦国庫短期証券への投資動向』を引用。

『国庫短期証券は、本邦で最も信用力が高く、流動性も高い短期金融資産という位置付けから、短期資金の運用資産のほか、資金繰り運営や日本銀行および民間決済機関への差し入れ担保等、幅広い用途で利用されている。』

あと有担保コール国債等担保取引の担保玉ってののニーズですな。

『国庫短期証券の業態別保有割合について、複数の統計やサーベイを用いて試算すると、足もと、都市銀行や証券会社、短資等の付利先が4割程度となる一方、信託銀行(年金等からの受託分)や海外投資家は半分程度と、非付利先による保有割合が相応に大きいことがわかる(図表8)。』

年金よりも投資信託だろと思いますが。

『特に、海外投資家による保有比率は、近年上昇が顕著となっている。海外投資家は、短期資金の運用資産として本邦の国庫短期証券の購入を積極化しているとみられるが、その背景として、以下のような点が考えられる。』

ということで海外の短国ニーズの話。

『まず、サブプライム・ローン問題やリーマン・ショック、欧州債務危機等のグローバルな金融危機を受けて、いわゆる「質への逃避」の動きが強まった局面において、相対的な「安全通貨」と見做された円に退避資金が流入した。こうした退避資金の運用手段として、国庫短期証券が利用された面がある。』

『また、ドル円・為替スワップ市場での円調達コストが本邦国庫短期証券の利回りと比較して低水準で推移していることも、海外投資家の国庫短期証券への投資を後押しした可能性がある。すなわち、海外投資家からみた本邦国庫短期証券の投資妙味の目安として、「ドル資金を無担保で調達し、その資金を為替スワップ市場で円資金に交換する」という一連の取引による円調達コスト(以下、円転コスト)を計算すると、円転コストは本邦国庫短期証券の利回りと比較して概ね低水準での推移となっている(図表9)。』

『こうした海外投資家を中心とする非付利先には、付利金利の水準である0.1%を下回るレートであっても国庫短期証券に対する一定の投資ニーズが存在している。』

さいですな。

『2013年入り後は、そうした非付利先からの需要に上乗せするかたちで、基金による買入ペースが加速されたほか、付利金利引き下げを含む金融緩和期待が強く意識されるもとで、付利先が0.1%を下回る水準でも国庫短期証券への投資を積極化する動きが拡がった。この結果、需給環境の逼迫感が一段と強まり、国庫短期証券の発行・流通レートは、0.1%を大きく下回る水準まで低下した。』

というのはご案内の通り。でまあ付利下げ自体はちょっと(これだけの大規模量的緩和を実施する以上は)難しくなってきてるとは思われるということで水準がやや調整されましたという事で。


ということでBOXを2つだけ引用しましたが、内容はかなり面白いので一読推奨。


○長期金利に関する分析レポートがまたも投入されました

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2013/wp13j06.htm/
ゼロ金利下におけるタームプレミアムの推計:日米英の長期金利の分析

本文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2013/data/wp13j06.pdf

要旨紹介のHTMLの方から。

『本稿では、アフィン期間構造モデルと潜在金利モデルを、日米英の2013年3月までのデータを用いて推計した。推計結果はモデルによって大きく異なり、これは、ゼロ金利制約を考慮していないアフィンモデルにおいて、推計バイアスが生じているためと考えられる。10年物金利のタームプレミアムの推計結果をみると、モデル間の差異が約2%ポイントにまで拡大するケースもみられる。また、米英では、この差異がここ数年拡大している。アフィンモデルには、短期金利の長期的水準を過大推計する強い傾向がみられるが、このことがタームプレミアムを過小推計する方向に寄与しているものと考えられる。』

とのことですが、こちらのペーパーの著者さんはこの手の長期金利分析に関するレポートを定期的に出していまして、一応このペーパー自体は個人の見解で日本銀行の公式見解ではありませんという建付けにはなっていますけれども、日銀(や各国の中銀)が市場の金利形成に関してどのような分析をしているのかというようなテーマについてのペーパーを出していますのでこれまた一読を推奨したいのですが、惜しくもこのあたくしは高校の数V(歳がばれる表現ですかそうですか)レベルで数学の脳味噌が止まり後は退行してあばばばばーとなる一方でございますので、何が何やらという話なのが残念無念な所でありまする。

まあこういう分析に関しては、モデルがどういう前提を基にしていているのかという点についてのロジックを把握する(数学的処理の計算式を見るとハクション大魔王状態になるのでそうではなくて文章で書かれたロジックです、汗)のが重要で、その辺のイメージがつかめるとアウトプットとして出てきたデータがどういう物なのか、という事が判るんでしょうなあとか、まあそんな事を考えながら読んでみたもののやっぱり難しいのでアホのあたくしに判るように教えてジェネラル!!(いやまあまた読んでみますが・・・・・・)

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2013/05/07

○4月4日の決定会合議事要旨が出たのですが結局「2倍」の根拠がさっぱりワカランチ会長な件

4月決定会合議事要旨が出た訳ですが、景気判断云々よりも何でこういう政策を実行したのかという点と、2倍2倍の根拠が何ですねんという辺りとか、そもそも今後の政策展開を見る上では何を見て行けば良いのかとか、まあそういう辺りを注目したかったのですが・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130404.pdf

・まあどうでも良いのだが一応景気認識に関して引用だけしておく

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から先行き見通し部分をへこへこ引用。

『海外経済について、委員は、欧州経済は引き続き緩やかに後退しているが、米国や中国経済を中心に、全体としてみれば昨年来の減速した状態から徐々に持ち直しに向かっているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するもとで、成長率が次第に高まっていくとの認識を共有した。』

『(日本の)景気の先行きについて、委員は、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、米国・中国などを中心に海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』

ふむ。

『ある委員は、予想インフレ率の上昇など期待が大きく変化していること、イールドカーブがフラット化していること、これにより予想実質金利が低下していることから、今後これらが設備投資や消費など実体経済に影響を与え、景気持ち直しの動きがさらに強まっていくとの見方を示した。』

本当はフィッシャー効果とか何とかいうのがあるから予想インフレ率が上昇するんだったらイールドカーブはスティープしないといけないのでこれってサステイナブルな話じゃないんですけどねえ、とおもったらさすがにツッコミがはいっていますた。

『一方、何人かの委員は、現在のマインド改善は期待先行の面があり、今後、企業収益、雇用や賃金といった実体経済がバランス良く改善していくか、注視していきたいとの見解を示した。』

さいですな。

『複数の委員は、先行きの設備投資について、1月の機械受注が減少したほか、3月短観の2013年度設備投資計画が製造業を中心に慎重なものにとどまっていると指摘したうえで、今後の動きを注視していきたいとの考えを示した。』

ふむ。

『これに対し、ある委員は、3月短観では2013 年度の企業の想定為替レートは85円と実勢比円高になっており、これが実勢に合わせて修正されれば改善が見込めると述べた。』

為替キタコレ。

『また、複数の委員は、株価など資産価格の上昇が設備投資を増加させるルートにも注目すべきとの見解を示した。』

・・・・・・・・・・・資産価格が上昇する話は良いのですが、資産価格が上昇すると「設備投資が増加」というメカニズムは何ぼなんでも無理があるように思えるのですけれども、さすがに展望レポート全文の方では設備投資増加のルートで資産価格の効果の話をしておりませんでしたが、この話をした複数の委員様におかれましてはこのルートに関する考察について是非次に講演などをする際に詳しく説明して頂きたい物だと存じます。


・物価に関しては「フィリップスカーブのリフトアップが必要」という話になっていますがさて・・・・・・

物価に関しても展望レポート全文の方に色々とありましたが、こちらの議事要旨でもまあ似たような話になっているのは当然ちゃあ当然。こちらの部分は全部引用だわさ。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年の耐久消費財の動きの反動から、小幅のマイナスとなっており、当面、耐久消費財に加えてエネルギー関連での前年の動きの反動からマイナスを続けたあと、再びゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。』

『物価の先行きについて、委員は、GDPギャップの縮小や円安に伴うエネルギー価格の上昇もあって、徐々にプラスに転じていくとの見方で一致した。』

というのはまあ良いとしまして。

『多くの委員は、物価連動国債から算出される予想インフレ率や各種アンケート調査をみると、足もと、市場や家計の予想物価上昇率が上昇していると指摘した。』

展望レポート全文の前回比較をして分かりますように、BEIに関しては元々市場の流動性がろくすっぽ無くて、おまけに日銀と財務省の買入が実施されている訳ですから従来ここの数字を堂々と出すというのは避けていたのですが、もうこの数字を前面に出してくるとかどんだけマッチポンプというか自作自演なんだと思うのですが、これが「多くの委員」とは何ぞや。

『ただし、このうち一人の委員は、これらの指標から基調的な変化を識別するのは容易ではないため、その解釈には注意を要するとの見方を示した。』

でもってフィリップスカーブの話がこの次。

『何人かの委員は、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するには、予想物価上昇率の高まりによってフィリップスカーブが上方シフトするとともに、その勾配がスティープ化することで、需要の変化に対する物価の反応度が高まることが重要であるとの見方を示した。』

で、どうやってそれを起こすのかという話ですが・・・・・・・

『そのうちの複数の委員は、フィリップスカーブのスティープ化には、家計や企業の成長やインフレ予想を高め、企業が需要や賃金に見合った価格設定を行えるようになることや、賃金上昇を中心とする所得環境の改善がみられることが重要であるとの認識を示した。別の一人の委員は、フィリップスカーブのフラット化は強固なデフレ予想が原因であり、インフレ予想に転換するにつれて、フラット化は修正されていくとの見方を示した。』

まあそれはそうなのですがではどうやってという話はここではありま千円でした。


・リスクに関して

『景気・物価の先行きを巡るリスクについて、委員は、欧州債務問題の今後の展開、米国の財政問題の帰趨や経済の回復力、新興国・資源国経済の持続的成長経路への円滑な移行の可能性など、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きいとの見解で一致した。何人かの委員は、わが国企業の製品競争力の低下や海外進出企業の現地調達の進展により、海外経済の好転や為替円安化に応じて輸出が増加する度合いが小さくなっている可能性を指摘した。ある委員は、中長期的な予想インフレ率の上昇ペースが遅れるリスクには、引き続き注意が必要であると指摘した。』

ということでリスクに関しては短い(これで全部)なのですが、ここを見ておりますとどう見てもリスク認識が下だと思うのですが何で展望レポートでは先行きリスクが上下バランスになったのかが意味判らんです。まあこの点でツッコミを入れた場合「このミニッツで示しているのと、展望レポートで示している見通しについては予想の時間軸が違いますから」という話で済ますと思いますけどね。

ということでまあ景気認識の所はこんな所で。


・金融政策導入に関しての基本的な話の議論内容が読めないのですが・・・・・・

メインイベントは『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』です。まずは基本的な部分がああだこうだと書いてあるのは良いのですが、恐ろしいのは結論は分かるけれどもその間の議論についてはワカランチ会長なので10年後にならないと読めない事です。

『基本的な考え方として、委員は、日本銀行は、1月の会合で決定した消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、できるだけ早期に実現するのが使命であるとの認識を改めて共有した。』

という所からはじまるのですが、どうもこちらの説明を見てもはあそうですかという所なのですがとりあえずヤケクソで引用します。

『多くの委員は、前回までの会合でも議論してきたように、「包括的な金融緩和政策」の下で、オペの札割れが頻発しているほか、さらに追求できる政策効果にも限界がみられることから、政策の枠組み全体を見直す必要があるとの見解を示した。』

オペの札割れって固定金利オペの話でしょ。正直些末な話だと思うのですが。

『このうちのある委員は、従来の政策では、国民から「物価安定の目標」の達成にはなお不十分とみられていると述べた。そのうえで、委員は、これまでも「包括的な金融緩和政策」の下で相当規模の金融緩和を実施してきたが、なおデフレ脱却に至っていないことから、「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するためには、量と質の両面で、これまでとは次元の違う金融緩和を行う必要があるとの認識を共有した。』

「国民から不十分とみられている」からって随分とこりゃまたアレな理屈ですなと思うのですが・・・・・

『何人かの委員は、実体経済や金融市場に前向きな動きが表れ始めた現在は絶好の機会であり、これを活かす必要があると述べた。』

はあそうですか。

『多くの委員は、「物価安定の目標」の具体的な達成期間として、2年程度を念頭に置いて対応を進めることが考えられるとの認識を示した。』

その根拠について何でそうなったのかという議論部分がこちらの要旨で完全にスルーされているのは何故??

『これに対し、一人の委員は、2年程度という達成期間を示すのは、目標達成への不確実性などを踏まえるとリスクが高いと述べた。』

木内審議委員ですねわかります。


・見せ方だの突っ込み方だのの部分

『また、委員は、これまでの漸進的アプローチから転換し、戦力の逐次投入はしないという考え方で一致した。』

という結論も良く良く考えてみますと「非伝統的金融政策は効果やリスクに関する知見が少ないので、色々とアプローチについて工夫しないといけませんよね」という話をそれこそ最近では逆さ絵おじさんですら行っているというのに何ちゅう周回遅れの話をしているんだというのにこの政策打ち込まれた当初はあまり気にならなかったのですが最近は気になって気になって(^^)。

『これに関連し、何人かの委員は、2%の「物価安定の目標」の実現に必要な政策は全て決定したと市場に受け取られるように、インパクトのある規模の政策とすることが重要であるとの考えを示した。さらに、委員は、分かりやすい情報発信が重要であるとの認識で一致した。』

白川さんェ・・・・・・・・・

『これに関して、一人の委員は、従来の金融政策の枠組みが複雑で分かりにくかったことに加え、情報発信が必ずしも効果的でなかったことが、政策効果を削いでいた面があると指摘した。』

白川さんェ・・・・・・・・・

『この間、大規模な金融緩和の副作用について、ある委員は、過度な金利低下のもとで、@金融機関の貸出意欲がかえって減退すること、A金融機関が収益確保のために保有債券のデュレーションを延長し、その結果として、金融システムが金利上昇に対して脆弱になること、B生保・年金基金等の機関投資家の運用が圧迫されること、などの可能性に注意する必要があると指摘した。』

『また、別のある委員は、@財政ファイナンスの観測を高める可能性、A市場機能が大きく損なわれる可能性、B金融市場で大規模な資産購入の実現可能性に疑問が持たれ、政策効果が減じる可能性について、十分認識する必要があると述べた。』

まあ一番破壊的な問題になるのは財政ファイナンスで、次に問題になるのは結局の所金融市場でしか緩和効果が効かなくて資産市場に無駄なバブルが発生するだけに終わるという事でしょうな。まあ後者については金融市場の人間のポジショントーク的にはウハウハではあるのですが(^^)。

『以上の議論を踏まえ、委員は、具体的な金融緩和の内容について、@金融市場調節方針の操作目標、A操作目標と長期国債買入れの増額規模、Bその際の資産買入れ等の基金や「銀行券ルール」の扱い、Cリスク性資産の買入れ、D今回の金融緩和措置の継続期間、という論点などについて議論を行った。この間、委員の質問に対応して、執行部からは、オペレーション上の対応可能性とリスク量、マネタリーベースと長期国債保有残高との計数上の対応関係、政策効果についての定量的な分析などについて補足説明を行った。』

ということで・・・・・・


・マネタリーベースを操作目標にする理由も何か結論先にありきですなあ

『金融市場調節方針の操作目標について、委員は、量的な金融緩和を推進する観点から、現在の無担保コールレート(オーバーナイト物)に代え、何らかの量的な指標に変更することが適当との見解で一致した。』

はあそうですか。

『ある委員は、基金の規模拡大が事実上の金融緩和手段となる中、従来の金利目標が形骸化している面があると指摘したうえで、操作目標を金利から量的な指標に変更することで、新しい枠組みに変わったというメッセージを発信することができるとの考えを示した。』

言いたい事は分かるのですが、金利操作を行わないというのはそれはそれで重要な論点になることなのでメッセージの一言で片づけられる話ではないと思うのですが・・・・・・

『そのうえで、委員は、具体的な操作目標としては、「日本銀行のバランスシート規模」や「日銀当座預金残高」も考えられるが、日本銀行が直接供給する通貨の量を示す「マネタリーベース」が、日本銀行の政策姿勢を市場や国民に分かりやすく伝える観点などから、適当であるとの認識を共有した。』

ということで結論の話しかないのでありましたorzorz


・2倍2倍の根拠が結局ワカランチ会長な件について

『次に委員は、「物価安定の目標」を2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するために必要となるマネタリーベースと長期国債買入れの増額規模について議論した。』

キタコレ!

『委員は、そのためには、長期金利や資産価格に働きかけることを通じて需要を喚起するほか、市場や経済主体のデフレ期待を抜本的に転換させることが必要であり、従来の延長線上ではないような相当な規模とすべきとの認識で一致した。』

まず量をたくさん出すのが結論としてあるんですねわかります。でまあその量の話ですけど・・・・・・

『複数の委員は、少なくとも、包括緩和のもとで既に決まっている長期国債買入れ額やマネタリーベースの残高見通しを大きく上回る規模とする必要があるとの認識を示した。』

多ければ良いとな。

『別の一人の委員は、マーケットに対して最大限のインパクトを与える規模として、例えば長期国債の保有残高を年間50 兆円程度増やす必要があるとの見解を示した。』

何で50兆円なのか判らないのですがそうですかそうですか。

『また、別のある委員は、包括緩和における長期国債の買入れの効果や、非伝統的政策下での当座預金残高と物価の関係についての定量的な関係などを参考にすべきと述べた。』

『別のある委員は、既存の定量的な分析結果によると、資産買入れがインフレ期待を引き上げる効果には不確実性が大きいと指摘した。』

これはしらっと議論に水を差しているように見えますが(^^)。

『こうした議論を踏まえ、委員は、分析手法による差異も大きく、かなりの幅を持って判断すべきであるが、消費者物価に相応の影響を与えるためには数十兆円規模が必要になるとの認識を共有した。』

でその数値的根拠は???と思ったら最後にちょっとだけあるのですが。

『ある委員は、マネタリーベースと期待インフレ率の中長期的な関係やマッカラムルールからみたマネタリーベースの伸び率について見解を述べた。』

木久扇先生ですねわかりますという所ですが、MBと(なぜか)「期待」インフレ率の中長期的な関係とか言われましても、そもそもそれって全然安定的なじゃいだろと思いますがね。ちなみにマッカラムルール云々については日銀(というか金融研究所)のサイトを漁ると過去の色々な考察がペーパーに出ているので読もうと思って読んでいませんがお暇な方は是非。

『次に、委員は、オペレーション上の対応可能性も踏まえる必要があるとの認識に立って、長期国債の買入れ対象を全銘柄に拡げることを前提にすれば、月7兆円程度の買入れが可能であるとの見解で一致した。』

そ、そうなのか????

『以上のような、@市場や経済主体の期待への働きかけ、A定量的な効果についての分析、Bオペレーション上の対応可能性などを踏まえた判断として、委員は、マネタリーベースを年間約60〜70兆円に相当するペースで増加させること、また、長期国債の保有残高を年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れることが適当であるとの認識で一致した。』

『また、委員は、これらを実施した場合、マネタリーベースと長期国債の保有残高は、それぞれ2年間で2倍になるとの見通しを共有した。』

何か結局の所「何でこの数字が出たのか」というのがよく判らんままという残念な話ですが、この数字を出してくる根拠が判らないと「じゃあ物価が上昇しなかった時にどうするのか」とか「物価が予想通りの上昇を示した時にこの資産買入政策をどういう出口で行うのか」ということがさっぱり読めないという大変に素敵な事態になる訳でして、そっちの方が気になるんですけれどもねえという所です。


・期間2倍の根拠は何ぞや

『長期国債買入れの対象年限について、委員は、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、長期国債の買入れ対象を40 年債を含む全ゾーンの国債とすることが適当との見解で一致した。』

『複数の委員は、幅広い年限の国債を買入れることによって、買入れを円滑に進めることも期待できるとの見方を示した。』

まあこの辺は良いとしまして。

『そのうえで、委員は、買入れの平均残存期間を、現状の3年弱から国債発行残高の平均並みの7年程度に延長することが考えられるとの見解で一致した。』

結論はあるのだが根拠について議論した形跡が無いのは何故?????

『何人かの委員は、買入れの平均残存期間は、金融機関の応札状況によって振れが生じるため、6〜8年程度と幅をもってみることが必要であるとの考えを示した。別の何人かの委員は、超長期ゾーンの国債は年金や生保などがALM上の目的で購入しているため、買入れに当たっては配慮が必要であると指摘した。このうち複数の委員は、こうした配慮の結果、買入れの平均残存期間は7年より短く、6〜7年になることも許容するとの考えを示した。』

結論は分かったのだが何で長くしたのかの議論がさっぱり読めんという素敵な記載でしたorz


・付利金利についてはさらっと現状維持

『この間、委員は、大規模な国債買入れを円滑に行うためには、取引先金融機関の積極的な応札など市場参加者の協力が欠かせないとしたうえで、市場参加者との間で、金融市場調節や市場取引全般に関し、これまで以上に密接な意見交換の場を設ける必要があるとの認識を共有した。複数の委員は、差し当たり、市場の国債の流動性に支障が生じないよう、国債補完供給制度(SLF)の要件を緩和してはどうかとの考えを示した。また、大方の委員は、補完当座預金制度の付利金利については、現状を維持するのが適当であるとの認識を示した。』

何で適当なのかが判らん・・・・・・・


・ガイダンスについて

途中をすっ飛ばしましてガイダンス文言について。

『今回の金融緩和措置の継続期間について、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続することが適当であるとの認識を示した。』

一方で木内審議委員が反対意見。

『これに対し、一人の委員は、相応にリスクの高い前例のない規模の資産買入れを行うことになるので、2年間程度を集中対応期間と位置付けてその後の政策の柔軟性を確保したうえで、今回の金融緩和措置を導入するのが適当であるとの見解を示した。』

ここでやっと非伝統的政策なんですから柔軟対応が必要という話が出るのでした。

『一方、ある委員は、事前に2年間と期間を区切ると、金融市場での期待形成がスムーズに行われないと指摘した。また、別のある委員は、フォワード・ガイダンス政策の観点からは、具体的な期間を定めない方が効果が高いと述べた。』

だったらそもそも2年後の数値を出さない方がフォワードガイダンスとしては適切なようにも思えますがね。

『こうした議論を踏まえて、大方の委員は、日本銀行として、2年程度の期間を念頭に置いて2%の物価安定の目標を実現する決意であるが、金融緩和の継続期間としては、最初から2年と限定するのではなく、「物価安定の目標」との関係で定めることが適当であるとの認識で一致した。』

とのことです。

『この間、委員は、こうした金融緩和を行っていくに当たっては、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うことが適当との認識を共有した。ある委員は、リスクの点検については、これまで以上に入念にする必要があるとの認識を示した。』

まあ実際にはリスクの話とか柔軟性の話とかも結構あったんでしょうなあとは思うのですけれども、何かこの議事要旨だけ見ていると途中の議論が碌すっぽ見えないというのが誠に残念至極というか、今後の状況の変化(つまり目標が行きそうもない時)の対応についての予測可能性が皆無にも程があるという点でちょっと何だかなあという議事要旨ではありました。


#ということで引用大会恐縮至極

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2013/05/06

お題「展望レポート全文に突っ込んでみるという無謀企画の続き」

結局連休中に更新とか言いながら連休最終日になってヘコヘコ書きましてその日の夜の更新になっておりまして、連休中にお越し頂きました皆さん誠に相済みません。つーか連休明け月初で忙しいのに実質週明けに更新して読んでる暇ないんですよね(大汗)。

という言い訳は兎も角として、色々と残しているネタがアホのようにあるのでとりあえず連休最終日でアタクシの脳味噌リハビリも兼ねてヘコヘコと作ったものをお出し致します。


つーことで企画第一弾は展望レポート全文に突っ込む企画の続きです。

PDFで100ページとかあるファイルなのでURL先クリックする際にはPCのスペックにご注意。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210b.pdf(前回)

前回(5月1日)は本文17ページの途中までですが、さてこの先は「見通しの前提およびメカニズム」でして、ここが色々とツッコミどころというかえーというかナローパスにも程があるだろうという話が延々と展開されるのであります。

『以下、経済・物価の見通しの前提およびメカニズムについて補足する。』(本文17ページ、PDFファイルで19ページの下の方から)という所からはじまります。


○始まる前にあたくしの愚意見を

というのは結局延々引用していたら結構な量になってしまいまして、正直言ってこれ全部斜め読みするのでもめんどいかなという状態になってしまいました(そらまあ本文だけでも11ページ分あるのですから当たり前なのですが)ので、最初に愚考を申し上げますね。

1.経済見通しについては色々な所で楽観的な前提が組み合わさって作られていて、そらまあ全てが上手く回ったらこの通りになるかもしれないけれども、1つの楽観的な前提が他の楽観的な前提に繋がっている、というような形で次々と連関して構築されているので、何かがコケたらおしマイケルではないかと思う

2.前回と比較して都合の悪い話が微妙にネグられていたり、説明の中で特に財政効果に関する部分が妙に矛盾しているような気がする

3.リスクバランスの認識がどう見ても楽観

4.物価見通しが前提に思いっきりフィリップスカーブの上方シフトがあってどう見てもナローパス

という所でして、まあ何つーかそれはどう見てもナローパスです本当にカムサハムニダという所で、そら佐藤さんと木内さんが反対する罠と思うのが、ここの全文を読み進め、ついでに前回の全文と比較して読むと伝わってくるという感じです。

ちなみに展望レポート全文比較ですが、書きっぷりが前回と今回で違う部分があるので比較して読むのは読みなれていないと結構時間がかかりまして、かく言うこのあたくしも図表の量とかも見ながら赤ペンで書き書きしつつGW前半の方の日曜日に比較したらほんの2時間半ほど掛かりました(日本語なのに・・・・)ので暇人にしかお勧めしませんが、真の達人は英文も比較するらしいのでまだまだこのあたくしも精進が足りませんorz


○政府支出なのですが見通しは分かるのだが銀行券ルール一時撤廃との整合性は???

ということで本文17ページ『(政府支出)』の所から。

『公共投資は、震災復興関連を中心に増加を続けている(前掲図表7)。先行きも、見通し期間の前半については、緊急経済対策に基づく2012年度補正予算や公共投資に厚めの配分となっている2013年度当初予算、さらには復興関連予算増額の効果などから、建設業の人員不足など供給サイドのボトルネックの影響を受けつつも、増加を続けるとみられる。』

まあここは良いとして。

『見通し期間の後半にかけては、各種経済対策の押し上げ寄与が減衰する中で、公共投資は次第に減少に転じていくと考えられるものの、社会インフラの維持更新ニーズの高まりなどを背景に相応の水準は維持されると想定している。』

ふーん。

『この間、政府債務残高の対名目GDP比率については(図表25)、既に高い水準にあるが、先行きは、高齢化に伴う社会保障関連支出の増加などから、消費税率の引き上げを織り込んでも、引き続き上昇していくことが予想される。』

とまあさらっと流しているのですが、これ前回10月の見通しおよびこの間の金融政策における重要な変更を鑑みるとナンジャソラ感がするのですよね。

つまり、前回10月の展望レポートですとこの部分って本文31ページに相当するのですけれども。

『先行きについても、2012 年度中は、被災地での人員不足など供給サイドのボトルネックの影響を受けつつも、引き続き増加ないしは高水準を維持すると見込まれる。一方、2013 年度以降の公共投資については、復興関連の押し上げ寄与が徐々に減衰するにつれて、従来の減少トレンドに復していくと想定している。この間、政府債務残高の対GDP比率については(図表32)、既に高い水準にあるが、先行きは、高齢化に伴う社会保障関連支出の増加などから、消費税率の引き上げを織り込んでも、引き続き上昇していくことが見込まれる。』(前回10月展望レポート本文31〜32ページより)

・・・・・・つまりですね、前回の展望レポートよりも政府支出の見通しを強く読んでいる上に、政府債務残高の対GDP比率については引き続き悪化していく(これ低下の時はどうせ「改善」と書く癖に上昇の時は「悪化」って書かないでしょうなあとか思ってしまうこのあたくし)という見込みになっております。

えーっとですね、だったら何で銀行券ルールを凍結できるのかが良く判らんのですが。そもそも銀行券ルールを一時停止しているのは政府が中長期的な財政再建に対して強力なコミットをしたからなのであって、当然ながら見通しを出す際にそこを加味して見通しを出さないというのは意味がワカランチ会長でありまして、まあ強い経済見通しを出したいからそこの所は都合よい見通しを持ち出しましたというご都合主義じゃないですかねえ。といつものように重箱の隅を突いているのですが、これ銀行券ルールを一時停止している件との整合性という意味では何か凄く違和感があるんですけどねえ。


○海外経済はやたら見通しが強気、というか楽観的というか

本文18ページ『(海外経済)』の所から。

『先行きの海外経済については、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもとで、米国や中国などを中心に、次第に持ち直しから緩やかな回復に転じていくと考えられる。』

『成長率に即してみると、世界的な信用バブル崩壊の影響がなお残ることからリーマン・ショック以前の時期に比べると低めにとどまるものの、見通し期間後半にかけて、過去の長期平均を幾分上回っていくと予想される(前掲図表3(1))。』

はあそうですかという所ですが、地域別ではこういう展開になります。

『米国経済については、緊縮的な財政政策の影響を受けつつも、住宅市場の改善を背景に家計のバランスシート調整圧力が徐々に和らいでいく中で、緩和的な金融環境に支えられて、緩やかな回復が続くと予想される。』

ほう。

『欧州経済については、緊縮財政の影響から緩やかな景気後退がなお暫く続くものの、輸出の回復を起点として、ユーロ圏コア国を中心に次第に下げ止まりから持ち直しに転じていくと想定している。』

と予想した直後に景気だか物価だか分かりにくい(火曜日のネタにします)のですが、ECBが貫録の利下げを行った訳で大草原不可避状態wwwwwwwww

『この間、中国経済については、内需が引き続き堅調に推移し、輸出も持ち直していくにつれて、成長率は幾分高まったあと、安定的に推移すると考えている。』

>成長率は幾分高まったあと

・・・・・・・・・・そ、そうなの??

『NIEs・ASEAN経済についても、底堅い内需が下支えとなる中、米国・中国の回復が波及するかたちで、景気の回復テンポは次第に増していくと見込まれる。』

つまり米国と中国の回復が強くなることが前提ということですが、この次のリスク認識が全くもって楽観というか強気というかめでてーなというかになっていてですね。

ちなみに10月の展望レポートの該当部分では海外経済見通しに関しては、

『先行きの海外経済については、当面減速した状態を続けたあと、減速した状態から次第に脱していくことを中心的な見通しとしている。海外経済の成長率は、当面は過去の長期平均に比べやや低めにとどまるものの、見通し期間後半にかけて、過去の長期平均を幾分上回っていくと想定している(前掲図表3(1))』(前回10月展望レポート本文32ページより)

となっていまして、当面の成長率が何を下回るかというメルクマールが前回が「過去の長期平均」で今回が「リーマンショック以前の時期」となっていますが、これは今回の本文18ページの脚注14にIMFの見通しを引き合いに出してああだこうだと解説していますけど、だいたいここの数値が1%程度上にぶれています(過去33年間が+4.1%でリーマンショック前5年間が+5.2%)ので既にこの時点で上振れ。


○海外経済のリスク認識が何で上もあるの&どさくさに紛れて円高のリスクが

んでもってもっとお洒落なのはリスク認識でして、今回は・・・・・

『もっとも、先行きの海外経済については、上下両方向に不確実性が大きい。』

となっているのですが、これが前回はどうなっていたかというと、

『もっとも、先行きの海外経済については、様々なリスクが存在する。』(前回10月展望レポート本文32ページより)

となっていまして、下振れ警戒だったのが何とこの強い見通しなのに「上振れリスク」と大きく出ました何でしょうこれは凄いですね(棒)という事なので中身を拝読しない訳には参りません。

『米国については、バランスシート調整の進捗や住宅市場等における金融緩和効果の強まり、新型エネルギーの好影響などを背景に景気が上振れる可能性がある一方、財政問題などから下振れる可能性もある。』

えーっと、もともとその辺を加味して見通しにしてませんでしたっけ??????

『また、緊縮財政の影響が続く欧州や、持続可能な成長経路との対比で過剰設備を抱えているとみられる中国では、成長率の高まる時期が想定よりも遅れる可能性がある。この点、海外経済の下振れが、投資家のリスク回避姿勢の高まりによる為替円高を伴うかたちで生じた場合、わが国の輸出は大きな影響を受ける可能性があることには注意が必要である。』

>為替円高を伴うかたちで生じた場合
>為替円高を伴うかたちで生じた場合
>為替円高を伴うかたちで生じた場合

・・・・・・・・・・・・ほほうという感じですが、これ後の方での物価上振れの所で堂々と輸入物価上昇という誰得物価上昇を物価の上振れ要因に入れているように、まあつまり今回の見通しの基本的な部分に「為替市場が円安に振れて頂かないと困るんですけれども」というのが思いっきり見え隠れ(というか見る人が見ればあからさまとも言えますが^^)している一環がここにも現れているという事です。

しかしまあ何ですな、前回の展望レポートではリスク要因(上振れ下振れではなくあくまでリスク)の説明の最後に世界的な構造調整に関する説明を加えていたのですが、これに対する言及がすっかり抜けてしまっていまして、もう構造調整が済んだんですか凄いですねえ(棒読み)としか申し上げようが無いのが実に香ばしい所ですので、前回の展望レポートの当該部分を引用しましょう。

『以上のリスクは、世界経済が、景気循環的な不確実性だけでなく、より長い目でみた構造的な課題にも直面していることと関連するものである。すなわち、欧米経済については、2000 年代半ばにかけての信用バブルが、リーマン・ショックなどを契機に崩壊した後の調整がどのように進んでいくかが重要なポイントとなる。また、中国を始めとする幾つかの新興国については、かつてわが国も経験したように、高度成長からより持続可能な巡航速度の成長へいかに安定的に移行するかという点が課題となっている。』(前回10月展望レポート本文33ページより)


○輸出入の所は簡単にします

次が本文19ページ『(輸出入)』です。

『実質輸出は、足もと、世界的な設備投資の影響を受けやすい資本財・部品などには弱さが残っているが、日中関係の影響が徐々に減衰し海外経済も持ち直しに向かうもとで、下げ止まっている。』

さいですかという所ですが。

『輸出の先行きについては、製造業部門を含め海外経済の成長率が緩やかに高まっていくことなどを背景に、次第に持ち直しが明確となり、その後は見通し期間を通じて増加傾向を続けると考えられる。この間、為替レートをみると(前掲図表3(2))、リーマン・ショック前の水準まで円相場は減価しており、こうした為替相場の動きも、多少のラグを伴いつつ輸出の下支えとして作用していくとみられる。』

ということでここでも為替の話が出ているのがチャーミングです。ちなみにここの見通しとか現状認識の説明なんですけれども、財別の話とかが妙にあっさり味になっておりまして、まあこの部分だけの傾向では無いのですが、ここに関しては前回の説明がやたらと丁寧(またはくどい)だったのに対しまして気になった所です。


○対外収支と貯蓄投資バランスの所もちょっと???

次が本文21ページ『(対外収支と貯蓄投資バランス)』ですが、現状に関しては貿易の赤字が拡大していて経常が黒ですよという話をしているのでまあそこはスルーしまして先行き見通し。

『先行きについては、海外経済の成長率の高まりや為替相場の円安方向の動きなどを背景に、やや長い目でみれば、貿易収支の赤字幅は縮小基調をたどると考えられる。』

ちなみに短期的にはいわゆるJカーブ効果で赤字幅拡大という話になっております。

『加えて、円換算でみた所得収支の黒字幅も緩やかな拡大傾向を続けると予想されるため、経常収支の黒字幅は緩やかながら拡大していくと想定している。』

前回はこの通り。

『(貿易収支の)先行きについては、当面は、輸出が弱めの推移となるもとで、赤字が明確に縮小に向かうことは展望しにくい。その後は、消費税率引き上げを背景とした輸入の増加と反動減による振れを伴いつつも、基調的には、輸出が緩やかに増加していくにつれて、赤字幅は緩やかに縮小していくと考えられる。』(前回10月展望レポート本文36ページより)

『(経常収支の)先行きについては、当面は、海外経済減速などに伴う対外資産の利回り低下がラグをもって影響する可能性などを踏まえると、所得収支の黒字幅は幾分縮小すると考えられる。さらに、貿易収支の赤字が続くこともあって、経常収支の黒字幅が幾分縮小するとみられる。』(前回10月展望レポート本文36ページより)

ということで、何か対外収支バランスについて前回と比較すると色々な面で自分に都合の良い話になっているように思えるのですが気のせいですかねえ。つーか輸入の見通しが増加基調なのにその寄与よりも輸出が伸びる上に円安傾向で所得収支は改善という話なのですが、貿易収支の赤字幅が縮小する上に所得収支自体はトレンド的に改善基調だと思うのですが、それだと円安傾向がサステイナブルにならないと思うのだが・・・・・・・・

で、貯蓄投資バランスの方ですが。

『概念的に経常収支と表裏の関係にある国内の貯蓄投資バランスについて考えると、見通し期間においては、民間部門の貯蓄超過幅は緩やかに縮小する一方、一般政府の赤字幅は、消費税率引き上げに伴う税収の増加もあって、それを幾分上回るペースで縮小すると見込まれるため、全体としては、貯蓄超過幅は緩やかに拡大していくとみられる。』

えーっと、さっきの需要項目別の見通しの冒頭にあった政府支出に関しては前回の見通し対比で引き上げていたのですが、何でこちらでは「一般政府の赤字幅は税収の増加で民間貯蓄超過幅の縮小を上回るペースで改善」という見通しになるのか、さっきは公共投資の水準が相応に維持されて、社会保障関連支出の増加が続くという見通しになっているから政府支出部門が経済情勢の先行き見通しにおいて特段の抑制要因にならないという書きっぷりになっていたと思うのですが、これって前後で話が矛盾してないですかと思ってしまうのですが。背景の計数がどうなっているのやら(たぶん「景気が拡大するから税収が増収になるからモウマンタイ」という置きになっていると思う)。

前回はこうなっていますけどね。

『経常収支と表裏の関係にあり、概念的に一致する国内の貯蓄投資バランスについて考えると、見通し期間においては、一般政府は大幅な赤字が続く一方、民間部門では、企業部門を中心に大幅な貯蓄超過で推移すると見込まれるため、全体としては、貯蓄超過で推移すると見込まれる。』(前回10月展望レポート本文37ページより)

まあ何というかこの辺も????ではありまする。


○更にメインイベントは22ページ以降になるのですが

本文22ページの『(企業の収益環境・設備投資)』の所がこれまた何とも味わいがあるのですが。

まずは企業収益の所で企業収益のファクターの話を見ると面白い部分が。

『企業収益については、海外経済減速などの影響が製造業になお残っているが、総じてみれば内需関連業種を中心に底堅さを維持している(図表30)。先行きについては、電力料金の値上げなどが下押し要因となるものの、国内需要が底堅く推移するもとで、輸出の持ち直しや為替相場の動きにも支えられ、改善傾向をたどると予想される。』

ということでここでも輸出の持ち直し(=海外経済)と為替相場(=円安誘導)の話をしておりますが、これに該当する部分の説明が前回の展望レポートでは企業収益率の説明がもうちょっと丁寧になっていたのが随分あっさり味になった(さっきの輸出入もそうですけれども)のですが、企業収益率の改善の説明の中で中々味わいのある指摘がありましてですな、

『(企業収益率改善における需要面と供給面の要因について)やや長い目でみた供給面の要因として、人件費をはじめとした様々なコストの削減に加え、小売業やサービス業などにおいて、収益性の低い企業の退出を含め業界再編が進んだ結果、市場占有率の上昇によって企業のマージンが改善に向かったことも寄与している可能性が考えられる』(前回10月展望レポート本文37ページより)

ということで、人件費削減の話が思いっきり書いてありますが、当然ながら今回この点については盛大にネグっているのがお洒落な上に展望レポートの基本的見解部分にありましたように、今後は「今後は労働需給の引き締まりにより雇用者所得が上昇する」という話をしていまして、えーっとそれってこれまで企業収益の改善傾向の話をしていた件の逆ですよねという話で実にこう味わいが深いというものでありまする。

んでもって設備投資ですが。

『設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、既往の輸出や鉱工業生産の落ち込みの影響から製造業で減少しており、全体として弱めとなっている。先行きについては、当面一部に弱さが残るものの、防災・エネルギー関連投資が下支えとなる中、企業収益の改善や金融緩和効果を背景に、緩やかな増加基調を続けると考えられる。』

金融緩和効果とな!!!

『こうした見通しの背後にあるメカニズムをやや詳しく述べると以下のとおりである。』

ということで・・・・・・・


○設備投資が増加基調になるメカニズムに関して

メカニズムの一発目が「金融緩和効果」となっています。前回の説明ではまず見通しの説明(さっきの部分に該当する話)が結構ああだこうだと話をしているのですが、その次が資本ストック循環の観点から見た説明になっていまして、今回の説明では異次元緩和のアピールというのもあるようでいきなり金融緩和効果の話をしています。


『第1に、「量的・質的金融緩和」の効果は、見通し期間中、設備投資を後押ししていくと考えられる。この点、投資採算の観点からみると、景気回復に伴い資本収益率が上昇していくと同時に、予想物価上昇率の高まりなどを反映して実質金利が低下していくため、金融緩和の投資刺激効果は強まっていくと予想される。また、資金のアベイラビリティという観点から企業の資金繰り判断をみると、債務残高圧縮の効果もあって、業況判断との対比でみて1980年代後半と同程度に良好な状態を維持しており、企業を取り巻く資金調達環境はきわめて緩和した状態が続いている。』

『次に、金融面の影響については、やや長い目でみれば、財務体質の改善に伴い企業のリスク選好が多少なりとも改善しているもとで、緩和的な金融環境が続くことが、先行きの設備投資の下支えに寄与していくと考えられる。投資採算の観点からみると、見通し期間の終盤にかけては、景気回復に伴い資本収益率が上昇していくと同時に、後述するように物価上昇率の高まりを反映して実質金利が緩やかに低下していくため、金融緩和の効果が次第に強まっていくことが予想される。ただし、製造業における海外現地生産の拡大や国際競争力の低下などの下押し要因を念頭におくと、過去に比べて、投資採算改善の効果は控えめとなると考えられる。』(前回10月展望レポート本文39ページより)

ということで、従来は「見通し期間の終盤にかけて」景気回復に伴い資本収益率が上昇して物価上昇によって実質金利が緩やかに低下していく、となっていたのが「見通し期間にかけて」景気回復の効果と「予想」物価上昇率の上昇による実質金利低下効果を設備投資増加のメカニズムに入れていまして、いやあの強気の見通しを背景にしている中で金融緩和効果についても強気の前提を元にして話が展開されていますなという所です。

つーことで、元々が「景気回復で資本収益率が上昇していくから設備投資が後押しされる」というトートロジーっぽい説明をしていた上に、今回はそのトートロジーを思いっきり前に倒した形で効果を見込んでいる、というのがオソロシスというか大本営発表というかナローパスというかという所でありまして、まあここに来るまでにもそんな感じなのですが、特に前回の展望レポートと比較して、かつ全体を通して読んでみますと、一つ一つの前提やメカニズムだけ単体で見るとそう気にならないかも知れませんが、最初に申し上げたように「楽観的見通しに楽観的見通しを積み重ねている」という感を強くする訳ですよね。

で、資本ストック循環の部分が第2番目。

『第2に、設備投資は、リーマン・ショックや震災後の落ち込みから漸く回復過程に入ったばかりで水準はなお低いため、企業収益が改善し、世界経済の先行きを巡る不確実性が徐々に払拭されていけば、老朽化設備の更新など潜在的なペントアップ需要は顕在化しやすいと考えられる。』

まあこの辺は前回もしてきしています。

『この点、「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」との前提のもと、資本ストック循環の観点から設備投資の伸び率を評価すると、期待成長率が0%台半ばにとどまるとしても、高めの増加率が期待できる。』

『設備投資の水準を名目GDPやキャッシュフローなどとの対比でみても、長期的にみれば低めの水準にあり、増加余地は大きいように窺われる。さらに、設備投資の対資本ストック比率をみても、リーマン・ショック後は、潜在成長率と整合的と考えられる水準を下回って推移しており、見通し期間後半にかけて潜在成長率がごく緩やかに高まるもとで、実際の設備投資も潜在成長率に見合う水準にまで緩やかに増加していくと考えられる。』

この部分、やたら前提が多いんじゃネーノとは思うのですが、前回と比較すると明瞭です。

『まず、今回の設備投資の見通しを、中長期的な経済の成長力との関係に基づいて評価するため、資本ストック循環の観点からみると、当面は、企業の期待成長率が0%台半ば程度にとどまっていたとしても、しっかりとした伸びが期待できる。』(前回10月展望レポート本文39ページより)

『その後については、現存する資本ストックに対する設備投資の比率、すなわち資本ストックの伸び率が徐々に高まっていくため、循環的には設備投資の伸び率自体は減速方向となる。ただし、見通し期間終盤にかけての設備投資の減速は、限定的なものにとどまると考えている。これは、規制改革や事業再構築の進展もあって、成長力強化への取り組みが徐々に実を結び、企業の中長期の成長期待が緩やかながらも高まっていくと想定しているためである。』(前回10月展望レポート本文39ページより)

本当はこの後に「代表した幾つかの指標に則して整理すると」というのがあるのですが、ここまで引用していると長くなる(逆に言いますと今回の展望レポートではそこの詳細説明をスルーしている)ので引用しませんが、今回は前回に無かった「設備投資は、一定の成長期待のもとで、生産活動に必要とされる資本ストックを実現するよう行われる」という前提があって、その前提というのが元々成長期待が引きあがるという話になっていて、それを前提にすると設備投資の先行き見通しが改善しますね、という話であって、この辺も何というかトートロジーっぽい見通しになってネーノと思うのでありますが
どうなんでしょうかねえ。

ちなみに成長期待に関しては一応政府の第三の柱によるものとなっていまして、その部分は前回には無かった説明になります。

『第3に、政府の規制・制度改革や企業の事業再構築など競争力・成長力強化に向けた前向きな取り組みが徐々に進展していくにつれて、企業の中長期的な成長期待は緩やかに高まっていくと考えられる。こうした成長期待の高まりは、資本ストックの積み上がりに伴う設備投資の減速圧力を和らげる方向に作用すると考えられる。』

つーことで、結局の所「海外経済」「円安」「構造改革・規制改革」における楽観的な見通しを前提に楽観的な絵を組み立てているんですねえナローパスですが大丈夫なんでしょうか、という所になる次第。


○雇用・所得環境がこれまた

本文24ページからが『(雇用・所得環境)』です。現状の所はスルーしまして先行きから。

『先行きについては、経済活動の水準が高まっていくにつれて、労働投入量(雇用者数×総労働時間)も増加していくと考えられる。こうしたもとで、先行きも労働需給の改善傾向は続く可能性が高く、失業率は引き続き緩やかな低下傾向をたどっていくと見込まれる。』

ほう。

『以上のような労働需給のもとで、足もとで小幅のマイナスで推移している名目賃金にも、次第に上昇圧力がかかっていくと考えられる。見通し期間の前半については、経済活動の回復に伴い、主として所定外やパートの労働時間の増加が押し上げ要因となる一方、これまでの厳しい企業業績がラグを伴って賃金の抑制に作用するため、一人当たり賃金の改善テンポは緩やかなものにとどまると予想される。もっとも、見通し期間の後半にかけては、労働需給の引き締まりの影響に加え、予想物価上昇率の高まり(後述)もあって、ベースアップを含めた所定内給与も上昇し始めることから、一人当たり賃金の上昇傾向がはっきりしてくる可能性が高い。』

予想物価上昇率が高まると何で所定内給与が上昇するのかがワカランチ会長なのですが、結局ここでも全体の見通しが良くなるから良くなるというような話になっていて、何というか全般的に威勢の良い話になっているのは分かるのですが、肝心の元の部分が不明瞭なまま楽観的な観測をベースにしていて、その結果として全て前向きに働くみたいな話になっているなあという所です。前回の所は引用するとこれまた長くなってさすがに量ががががががという感じですので割愛しますが、前回の見通し内容と比較するとここはエラク強くなっています。


○家計支出について

本文25ページ『(家計の支出行動)』の所から。

『個人消費は、昨年以降、家計所得が伸びない中にあっても底堅く推移してきたが、このところ消費者マインドが改善するもとで底堅さを増しつつある。先行きについても、耐久財を中心に消費税率引き上げに伴う駆け込みと反動という振れを伴いつつも、全体として増加基調で推移していくと考えられる。』

ということですが、その背景として前回展望レポートでは(1)ペントアップ需要(2)エコカー減税などの政策効果(3)企業によるニーズの掘り起こし(4)円高メリット、という後半2つはナンジャソラ状態のものがあったのですが今回はと言いますと・・・・・

『第1に、高齢者の消費が、需要側(団塊世代の高い消費意欲)と供給側(企業による高齢者需要の掘り起こし)双方の要因から、持続的に消費全体を下支えしていくことが考えられる。』

供給側の方は前回もあったけど需要側の高い消費意欲ってホンマカイナ?

『第2に、最近の株価上昇は、消費者マインドの改善や資産効果を通じて、消費の押し上げに寄与すると考えられる。』

株価上昇キタコレ!ってでもこれって一過性ですよね。

『第3に、見通し期間後半にかけて、景気の回復に伴う雇用者報酬の改善傾向がはっきりしてくることも、勤労者世帯を中心に消費を後押ししていくと考えられる。ただし、名目可処分所得の伸びは税や社会保障の負担増加もあって緩やかなものにとどまるうえ、消費税率引き上げや電力値上げなどが実質所得を押し下げる方向に働くと予想される。』

景気の回復に加えて雇用者報酬の改善という2つの楽観的な置きの下で消費が伸びる話になっているのが何ともという所ですが、前回の円高メリットは無理矢理な感じではあったものの、一方で円安になって実質所得が押し下げる方向になる件をスルーしているのもどうかという所です。大体からして物価の上昇期待は期待実質所得を下げるでしょうし、ここまでの見通しでも円安効果を結構見込んでいるのに家計消費の方では円安デメリットをスルーとかどんだけ都合よく解釈してますねんという気はするのだが。

『こうしたもとで、見通し期間中、基調的にみれば、個人消費は家計所得に比べてやや強めに推移し、消費性向はごく緩やかに上昇していくとみられる。』

はあそうですか(棒)という感じですが、住宅投資の見通しについては割愛します。


○物価上昇のメカニズムについても色々とツッコミどころががががが

本文26ページの『(物価変動を取り巻く環境)』から参ります。

『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主たる要因について点検する。』

『第1に、マクロ的な需給バランスの動きについて、やや長い目でみると、リーマン・ショックによる大幅な落ち込みから緩やかな改善傾向を続けてきたが、昨年後半の景気の弱さを反映して改善が足踏みした状態となっている。先行きのマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げによる振れを伴いつつも、潜在成長率を上回る成長が続くという景気展開を反映して、見通し期間中、緩やかな改善基調をたどると考えられる。そのもとで、見通し期間の半ば頃にはマクロ的な需要超過に転じ、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。』

先行きの需給バランスが改善するという基本的な見通しそのものには変化は無いのですが、これでじゃあ2%に行くのかというとフィリップス曲線の形状から考えてそれだけでは逝かないのですよね。結局前提としてフィリップス曲線のシフトアップや傾きの変化が必要、というのがこの後の方で説明があります。

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、市場参加者やエコノミスト、家計を対象とした調査など、足もと上昇を示唆する指標がみられる。債券市場関係者に対するサーベイ調査をみると、昨年末以降、中長期の予想物価上昇率は高まりつつあるほか、固定利付国債と物価連動国債の利回り較差から求められるブレーク・イーブン・インフレ率をみても、足もとはっきりと上昇している。』

BEIの話は前回は行っていませんで、今回思いっきり入った項目なのですが、元々市場規模が小さい所に加えて新規発行が無くて財務省の買入消却と日銀の買いオペで需給が恒常的に改善する方向になっているという状況になっているのに「BEIが足元はっきりと上昇」とかどんなマッチポンプですねんと思う訳で、展望レポートでBEIを「指標」として出すなら少なくとも日銀は買入を停止すべきじゃないですかねえマッタクモウ。

『また、各種サーベイ調査から家計の見方をみても、短中期の予想物価上昇率はこのところ幾分上昇する兆しがみられる。』

ちなみにこの辺の図表に関しては前回対比で今回の方が量が多くなっている唯一の部分でして、ちなみに前回はクイックのサーベイとかESPフォーキャスト、コンセンサスフォーキャストなどと生活意識アンケートが出されていますが、今回はそこにBEIが入りましたなという所です。

『先行きについても、日本銀行が「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束し、これを裏打ちする大規模な資産の買入れを継続することで、中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』

えーっと、その理由は何ででしょうかとか聞いてはならず、考えるな!信じるんだ!とブルース・リー張りの説明になっているような気がするのはあたくしの信心が不足しているからですかそうですか。


○物価見通しの白眉はこの「輸入物価要因」であろう

『第3に、輸入物価は、国際商品市況や為替相場の動きを反映して上昇している。先行きについては、海外経済の成長率が次第に高まっていくことを背景に、国際商品市況は緩やかな上昇傾向をたどると想定している。こうした動きを踏まえると、エネルギー関連や食料品などの輸入価格についても、見通し期間全体でみて、緩やかな上昇傾向をたどると考えられる。』

これがまあヒドスというか何というかの話で、輸入物価が上昇しますってのを物価上昇のメカニズムの中で大々的に話をしているのですが、輸入物価が上昇したら当然ながら交易条件が悪化する訳ですけれども、ここまでの経済見通しの中で交易条件の悪化を下振れ要因としてカウントしていた箇所は無くて、何つーか最初にも申し上げましたが、各種要因の中から自分たちの見通しに都合の良い面だけを引っ張り出してきて見通し作っていませんかとツッコミを受ける訳ですよねこれって。

まあ展望レポートの基本的見解でもこの辺の話が経済見通しと整合性としてどうなのかという話でしたけれども、結局の所全文を読んで確認できたのは「整合性が取れていませんが何か?」つー事だったというのがおそロシアな結論。



○フィリップス曲線のシフトや変化がそもそも前提にならないと2%にならん訳で

ここらで本文28ページになります。

『以上を踏まえ、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢を展望すると、国内企業物価は、当面、為替円安を主因に前年比プラス幅を拡大したあと、海外経済や製品需給が改善するもとで、緩やかな上昇を続けるとみられる。』

ちなみに国内企業物価の見通しが今回から無くなっていますね。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向をたどり、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている。』

で、それに関してフィリップス曲線との関係がこの次に。

『こうした物価見通しをマクロ的な需給バランスとの関係(いわゆるフィリップス曲線)で整理すると(図表43)、消費者物価の前年比は需給バランスの改善に伴い過去の正の相関に沿って上昇していくとともに、予想物価上昇率の高まりからフィリップス曲線自体も徐々にシフトアップしていく姿を想定している。』

ということでそもそもがフィリップス曲線のシフトが前提になっている訳で。

『ただし、わが国経済では15年近くにわたってデフレ状態が続いてきただけに、@マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度(フィリップス曲線の傾き)、A企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向(フィリップス曲線のシフトアップの程度)ともに不確実性は大きく、消費者物価が想定通り上昇していくか十分注意してみていく必要がある。』

ちなみに前回の展望レポートでは「1%に徐々に近づいて行く」という見通しでしたけれども。

『消費者物価とマクロ的な需給バランスの間には、やや長い目でみると緩やかな正の相関関係があると考えられる(図表53(1)(2))。実際、消費者物価の動きをマクロ的な需給バランスとの関係でみると、これまでのところ、マクロ的な需給バランスが緩やかな改善傾向をたどる中で、下落幅が徐々に縮小してきている姿が確認される(図表54(1))。』(前回10月展望レポート本文44ページから)

『マクロ的な需給バランスと消費者物価の関係については、大きな不確実性があり、幅をもって見る必要があるが、2014 年度には、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみて、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に着実に近づいていくという今回の見通しは、過去30 年程度の平均的な関係に沿う形で物価上昇率が高まっていく姿をベースラインとしたものである(前掲図表53)。』(前回10月展望レポート本文44ページから)

ということで、そもそもフィリップスカーブがシフトしない前提になっていたのでまだしも話に無理が無いのですが、ついでにそもそもフィリップスカーブがその通りに効果を出すかという論点についても前回の展望レポートでは説明していまして、

『前回の景気拡大局面において、需給バランスの改善に比べて消費者物価上昇率が抑制された背景には、@中国からの安値輸入品の増加、A規制緩和などに伴う流通の効率化、Bそれらとも相俟って生じた企業の低価格戦略・家計の低価格志向の拡がり、といったマクロの需給バランスとは別の物価押し下げ要因(負の価格ショック)があったと考えられる。』(前回10月展望レポート本文45ページから)

という過去の例との比較をしていまして、足元の情勢についての点検を行い、その結果として、

『価格引き下げ圧力は、厳しい競争環境の中で常にある程度存在するものであり、しかも先行きの不確実性は高いが、足もとみられる変化を踏まえ、前回の景気拡大局面である2000 年代半ばにかけてみられたほどの負の価格ショックは、今回は発生しないと想定している。このため、見通し期間において、マクロ的な需給バランスと物価との関係は、前回の景気拡大局面と比べれば、はっきりとしたものになると考えている。』(前回10月展望レポート本文46ページから)

という話になっていて、そもそも論として需給ギャップが改善した際において、フィリップスカーブの長期トレンド通りに物価が上昇できるかという点についても検討していたというのに、今回はいきなりその辺りもすっ飛ばしてフィリップスカーブの上方シフトや形状変化を前提にしているという点で、思いっ切り気合と信仰の世界になっているというのが判ろうかと思います。

いやね、確かに麿日銀の場合は気合が足りないと悪態を申し上げましたけれども、気合が充実したと思ったら今度は気合だけで勝負とかど〜してそう両極端になってしまうのよという所ですよね。


○物価と名目賃金

最後にこの記述が。本文29ページより。

『この間、物価と名目賃金の関係を確認しておくと(図表44)、消費者物価と時間当たり賃金との間には、長い目でみれば概ね同時に変動するといった安定的な関係が確認される。上記の見通しでは、先行き、労働需給の引き締まりや人々の予想物価上昇率の上昇を反映して時間当たり賃金が緩やかに上昇していく中で、消費者物価も徐々に上昇率を高めていく姿を想定している。』

ふーん(棒)。

『なお、名目賃金と物価の関係は、労働生産性の動向によって異なり得る。すなわち、名目賃金の伸び率から物価上昇率を差し引いた実質賃金の上昇率は、長い目でみれば労働生産性の伸びによって規定されるが、労働生産性の基調的な上昇率は1990年代半ば以降、それ以前の時期に比べると構造的に低下している可能性が高い点には留意する必要がある。』

となると物価が上昇しても直ぐには名目賃金上昇しませんよねとは思うのですが。


ということで長々と恐縮至極でした。

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2013/05/02

○日銀から出ていたドキュメントから少々

・これはどんどん主張していただきたいです

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130501d.htm/
連邦準備制度理事会による外銀規制の市中協議文書へのコメントレター発出について

『日本銀行は、2013年4月30日、連邦準備制度理事会が公表した外銀規制の市中協議文書に関して、コメントレターを発出しました。内容については、以下をご覧ください。』

ということで。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130501d1.pdf(正式版)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel130501d2.pdf(抄訳)

でまあ手抜きで抄訳の方をメモメモ。

『我々は、本規則案(外銀等に適用される厳格なプルーデンス規制および早期矯正措置にかかる規則案)に対してコメントする機会を歓迎する。このレターは、本規則案についての我々の主な懸念を慎重に考慮するよう貴理事会に求めることを目的としている。我々は、本規則案が、(1)グローバルな金融システムの安定性向上を目的とする国際的な取組みと整合的でない点、および(2)その流動性規制を画一的に適用しようとしている点について懸念を有している。』

どういう事かと言いますと・・・・・・

『1.国際的な取組みとの整合性の尊重

我々は、本規則案が、米国金融安定の確保という貴理事会の問題意識に基づくものであると理解している。しかしながら、本規則案がグローバルな金融機関を対象とする以上、バーゼルVやG-SIFIsへの対応といった、現在も継続している国際協調の取組みの有効性を妨げるべきではない。

こうした見地から、我々は、外銀等の母国が国際合意に適合した規制、監督、モニタリングの体制を有している場合には、母国基準を満たした外銀等の米国拠点、特に米国支店・代理店網については、いかなる追加的な規制や手続も講じないよう求めたい。

また、我々は、早期矯正措置について、バーゼルVやこれに準じた母国基準と整合的な形で、資本水準等のトリガーが設定されるべきであると考える。さらに、矯正措置の発動前には、母国当局とホスト当局間の既存の連携枠組みを活用することが適当と思われる。』

勝手に俺様基準作ったら国際的な整合性取れないだろうし大体からして本国の方でちゃんと規制監督受けてるのに何でお前の所で追加的に1から100まで監督されないといかんのじゃお前ら他の国を馬鹿にしとんのかヴォケそもそもクレジットバブル起こしたのはどこの国か考えてから物を言えという事ですね分かります。

『2.より柔軟な流動性規制の枠組み

日本銀行は、わが国金融機関の財務状況やグローバルな流動性リスクについて、海外拠点も含めた形での考査やモニタリングを実施してきている。本枠組みは、国際金融危機に際しても十分に機能したものであるが、こうした経験に基づく我々の知見を踏まえると、流動性規制案には以下の懸念がある。』

でこの指摘がまさにご尤も。

『・外銀等の米国拠点、特にその米国支店・代理店網にまで、母国本部の流動性支援に依存しない流動性バッファーを保有させることは、グローバルベースでの効率的な流動性管理を阻害しかねない。これはまた、グローバルなリスク管理の分断や、グループ内での資金調達・運用構造の変化に伴う米国内・外拠点のリスク特性の複雑化を招きかねない。

・さらに、外銀等の米国拠点に対して米国内で継続的に流動性バッファーを保有させることは、外銀等の非米国拠点において国際決済通貨であるドル流動性の一時的な逼迫が生じた場合に対する対応能力を低下させることに繋がりかねない。これは、一時的かつ局所的な流動性の逼迫をより深刻にする可能性もある。』

米国だけで営業している金融機関と同様の流動性規制と一緒にするとか無理ゲーにも程がある話というのはこの流動性規制の話が出た時に結構のけぞった訳ですが、まあ当然ながらその指摘ですな。

『こうした流動性規制案の負の影響を踏まえれば、例えば、わが国のように、母国当局・中銀がグローバルベースのモニタリングを綿密に行っている国を母国とする外銀等の米国拠点は、規制の適用対象とすべきでない。我々は、外銀等の米国拠点、特にその米国支店・代理店網に対する流動性規制は、画一的な方法ではなく、柔軟に適用されるべきであると信じている。すなわち、流動性規制の適用にあたっては、まず母国当局・中銀による規制、監督、流動性モニタリングの実施状況、そして外銀等の個々の資金調達構造や米国金融システムに対するリスク特性を考慮すべきである。』

大体からしてお前らが羹に懲りて膾を吹きまくっているのに何でこっちが合わせなけりゃならんのだ従来からワシらはちゃんとやっとるんじゃということですね分かります。

『我々は、貴理事会が、上記を考慮し、我々の要請に沿った形で本規則案を修正することを求めたい。もし上記に関し質問があれば、遠慮なく連絡していただきたい。』

原文はこの通り。

『We would like to kindly request that the Board take into consideration the above and amend the Proposed rule in accordance with our requests. Should you have any questions concerning above, please do not hesitate to contact us.』

何か日本語にした方が怖いんですけど(^^)。

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2013/05/01

○展望レポート全文に突っ込んでみるという無謀企画(ただし竜頭蛇尾^^)

PDFで100ページとかあるファイルなのでURL先クリックする際にはPCのスペックにご注意。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210b.pdf(前回)

展望レポートの全文というのは今回改めて前回と比較する形で熟読してみました(普段は前回との比較読みはしないで今回分だけ読んで「ふーん」という程度でした精進が足りませんすいませんすいません)が、まずファイルを開けると分かりますように、前回から分量が(基本的見解と同様に)大きく減っています。一応形式的に比較してみると・・・・・・・

基本的見解部分
本文:17ページ→6ページ
見通しの図表:2ページ→2ページ

背景説明を含めた全文
本文:28ページ→21ページ
補足説明の「BOX」:10ページ→削除

参考計表:65枚+さくらレポート関連1枚→44枚+さくらレポート関連1枚

ということで、結局説明部分も含めて全体的に良く言えばスリム化したのですが、悪態を申し上げれば説明が雑になったような印象でございましてまあ大体昨日申し上げたような感じではあるのですが、背景説明を含めた全文の方を幾つか鑑賞してみませう。


・レビュー部分で「金融情勢」を独立させました

【背景説明】というのが本文9ページ(ファイルの11枚目)から始まるのですが、最初が『1.2012年度後半の経済・物価情勢』というレビューになっていまして、まあここの分量とかも微妙に変化しているのですが、今回ほほうと思ったのはこの次の項番2の所に『2.金融情勢』というのが独立した格好になっている部分。

ちなみに前回はレビューがあってその次の項番は見通しになっているのですが、今回は項番2が入ってその次に見通しとなっていまして、まあ物価安定目標のコミットメントを強く打ち出していて、金融緩和によってインフレ期待や資産価格に働きかけてフィリップスカーブをシフトさせましょうという政策を実施しているので、それに沿って金融情勢についての記述が詳しくなるのはまあそういう事ですかねという所です。

折角独立したので読んでみましょうか。

『(量的・質的金融緩和)』というのが最初にありまして、これはつまり異次元緩和の説明になっております。本文11ページから。

『日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するため、「量的・質的金融緩和」を導入した。具体的には、@マネタリーベース・コントロールの採用、A長期国債買入れの拡大と年限長期化、BETF、J−REITの買入れの拡大、を決定した。以上の措置からなる「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』

というのはまあヨロシ。

『「量的・質的金融緩和」の波及経路としては、第1に、資産買入れにより、イールドカーブ全体の金利低下を促し、資産価格のプレミアムに働きかける効果がある。第2に、金融機関や機関投資家の投資行動が変化し、貸出やリスク性の資産にシフトすること(いわゆるポートフォリオ・リバランス)が考えられる。第3に、「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束し、これを裏打ちする大規模な資産の買入れを継続することで、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。』

ということで波及経路の説明があるのですが、そもそもイールドカーブ全体の金利低下って進んでいませんどころか金利上昇しちゃいましたねいうのもあるのですが、一番アレだと思うのは2番のポートフォリオリバランス部分で、既にとっくの昔から長短金利が低水準で推移している状況でそこから金利を下げたからと言ってポートフォリオリバランスって起きるのかねと思うのでして、そんなことよりも「金融機関の行動を変えるような制度面での対応」というのが必要で、そういう意味でBOEとかFLSを突っ込んで更に中小企業融資に対するお得感を出すようにスキーム変更をしている(けれどもイマイチ効果が出ていないようですけれども)のですから、「金利を下げる」という単純な話ではなくて、例えばバーゼルVの適用を緩和するとか、貸出の自己査定基準を緩和するとか、そーゆー方面の方がポートフォリオリバランス効果を一発で出せると思う(それが結果として良いかという話は別として)のですけれどもね。

でまあ最後の論点はいつもの「期待に働きかける」という奴でありまする。

つーことでですな、まあ後の方でも金融政策の効果の話とかあるのですが、基本的には金融政策の波及経路の説明がこんな感じになっておりますと、じゃあ追加緩和を実施しないと行けなくなった場合に何をするのか、というのがこれよく判らないんですよね。つまり波及経路のどの辺に働きかけようとしているのかによって追加の金融緩和政策をどういう形で出すのかというのが判るのですが、ここに出てくる波及効果って全般的に???な所があるので、そうなると次に何を実施するのかが見えにくい、という事でありまする。

・・・・・というかですな、展望レポートを受けて数多くの本職何とかストの皆様が「どうせ物価が碌に上昇しないので10月展望レポートで下方修正必至で追加緩和必至(一番ファンキーと思われるのは7月追加緩和という予想でしたが^^)」という見通しを出しているという実に香ばしい展開になっておりまして、おまいらどんだけ日銀の見通し信用してないんだ(棒)とゆー所ではあるのですが、物価指標を見ながらさて追加緩和という予想になった後、何をするのかがワカランチ会長という素敵な話にもなるのかなあという所で。

でまあこの後も点検の部分があるのですがめんどいので割愛。ちなみにレビュー部分については全体量が今回6ページ分あるのですが、前回が9ページありまして、ここの部分に関しても実は前回の方がだいぶああだこうだと書いてあったりするのですけれどもそこに関してネチネチ書いていると何時になったら終わるのか判らんのでパス。


・でまあ見通しで2013年度について

本文15ページからが『3.2013年度〜2015年度の経済・物価の見通し』ですがこの『(経済・物価見通し)』が何とも。

『わが国経済の先行きを展望すると、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、本年央頃には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。その後は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、生産・所得・支出の好循環が維持されるもとで、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』

というのは基本的見解にもあった通りですが。

『先行きの景気展開についてやや詳しく述べると、2013年度は、次第に持ち直しの動きが拡がり、年央頃には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。まず、公共投資は、年度を通じて緩やかな増加基調で推移するとみられる。輸出は、海外経済の成長率の高まりに加え、為替相場の円安方向の動きにも支えられ、持ち直しが明確となり、年度中はやや高めの伸びが続くと予想される。以上の外生的な需要の増加は、経済活動の持ち直し、ひいては企業収益や雇用者所得の改善を通じて、国内民間需要の前向きな動きを後押ししていくと考えられる。』

ここは基本的見解の部分を少し詳しく書いてあるのですが、これよく見ると前提条件が色々とついていて、これがまた随分と楽観的ですなあとゆー所ですよね。

『すなわち、設備投資は、防災・エネルギー関連投資が下支えとなる中、企業収益の改善に伴い、これまで先送りされていた老朽化設備の更新等のペントアップ需要が顕在化してくることから、緩やかな増加基調をたどる可能性が高い。個人消費についても、株価の上昇や家計のマインドの改善、高齢者の高い消費意欲といった要因に加えて、雇用者所得の改善も徐々に後押しとして作用し始めることから、底堅さを増していくと見込まれる。』

高齢者の高い消費意欲とか雇用者所得の改善が後押しとかホンマカイナという所ですが。

『このように国内民間需要の前向きな循環が作用するもとで、年度下期には、個人消費を中心に、1回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で発生すると予想されることから、年度全体の成長率はかなり高めになると考えられる。』

はあそうですか。


・消費税引き上げの反動に関する説明に実に味わいの深い部分があります

ここに脚注12というのがあって、本文16ページの下に説明がある。

『消費税率の引き上げは、主として税率の引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動(異時点間の代替効果)を通じて、経済に影響を及ぼすと考えられる。』

ここ大事なので途中で切っていますよ!!

『すなわち、2013年度下期に、1回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要が発生したあと、2014年度上期にはその反動から成長率が大きく鈍化すると予想される。2015年度にも、上期に2回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の発生と、下期にその反動が予想されるが、2回目については、@税率の引き上げ幅が小さいこと、A1回目の引き上げ前にある程度前倒しで駆け込み需要が発生している可能性なども踏まえると、駆け込みの規模はさほど大きくならないと考えられる。以上を踏まえ、消費税率引き上げが年度毎の成長率に及ぼす影響を定量的に試算すると、2013年度+0.3%ポイント程度、2014年度−0.7%ポイント程度、2015年度+0.2%ポイント程度となる。ただし、これらは、その時々の所得環境や物価動向にも左右されるなど不確実性が大きく、相当な幅をもってみる必要がある。消費税率引き上げが経済に与える影響について、詳しくは2012年10月の展望レポートのBOX3を参照。』

ということで前回の展望レポートのBOX3というのが前回レポートの本文51ページ目と52ページ目に書いてあるのですが、これは2ページ分もあるので引用したらエライコッチャになるのですけれども、一番香ばしいのはこの回のBOXの冒頭ではこう書いてあることです!!

『消費税率の引き上げは、経済に対して、可能性としては、@税率の引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動(異時点間の代替効果)と、A税率上昇による物価上昇に伴う実質所得の減少、という2つの経路を通じて影響を及ぼすと考えられる。』(2012年10月展望レポート本文51ページより)

・・・・・・・・・・・・・今回の影響考察の脚注と比較して何か違いまちゅねえ(ニヤニヤ)。


・見通し2014年度以降に関して

ちなみに本文16ページね。

『2014年度から2015年度にかけては、消費税率引き上げによる振れの影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長が見込まれる。』

これ前回どうなっていたかと言いますと・・・・・・

『このため、わが国経済は、潜在成長率を幾分上回る成長経路をたどると考えられる。ただし、上期を中心に、前年度の消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動が出ることから、2014 年度の成長率は小幅のプラスにとどまる可能性が高い。』(2012年10月展望レポート本文30ページより)

ということで上がっていますな。

『すなわち、公共投資は次第に頭打ちから減少に転じていくとみられるものの、輸出は、海外経済が過去の長期平均を幾分上回るペースで成長する中(前掲図表3(1))、増加を続けると想定される。個人消費は、消費税率引き上げによる振れが生じるほか、各種の税負担が実質可処分所得の押し下げに働くものの、労働需給の引き締まりに伴う賃金上昇などに支えられ、緩やかな増加基調が維持されるとみられる。』

やはりここでも賃金上昇が入っていてその根拠はどこにあるんですかねえと思うのですが、あと不思議なのは公共投資が「次第に頭打ちから減少に転じていく」という話になっていまして、ここの時間軸ってどうなっているのかが気になります。すなわち、日銀は今回の異次元緩和実施にあたって政府の中長期的な財政再建への取り組みが共同声明によって担保されているという事を前提にして銀行券ルールの適用を撤廃している訳で、そうであれば経済見通しの所で公共投資について考えた場合にネット政府支出の効果は足元はともかく将来的には逓減していくという前提でおくもんじゃないのかと思うのですけれども、これどこで減少に転じていくという想定なのかしらと。

まあそれ以前に賃金の所はマジデスカという話なんだがさらに続く。

『設備投資は、資本ストックの積み上がりに伴い増加ペースは次第に鈍化していくものの、成長期待の高まりと金融緩和効果が正の相乗作用をもたらす中で、引き続き増加基調で推移する可能性が高い。』

成長期待の高まりと金融緩和効果が正の相乗作用とはこらまた大きく出ましたな。


・で数値の見通し

『以上の見通しを年度ベースの実質GDP成長率で示すと、2013年度は3%程度、2014年度および2015年度は1%台半ばと、「ゼロ%台半ば」とみられる潜在成長率を上回って推移すると想定される。』

前回はこの通り。

『以上の見通しを年度ベースの実質GDP成長率で示すと、2012 年度、2013 年度ともに1%台半ば、2014 年度は0%台半ばと想定される。』(2012年10月展望レポート本文30ページより)

でまあその続き。

『2014年度までの見通しを1月の中間評価と比較すると、成長率は、「量的・質的金融緩和」の導入、金融資本市場の状況の好転、公共投資の増額などにより、上振れて推移すると見込まれる。消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向をたどり、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている。今回の2014年度までの消費者物価の見通しを1月の中間評価と比較すると、マクロ的な需給バランスの改善、予想物価上昇率の上昇、為替相場の円安方向への動きなどから、上振れしている。』

でまあ前回(この部分が長いので引用スルーします)は1%だったのですが、これが2%になっている所が何でですねんという話ですが、上記部分にあるように色々と強気な前提を散りばめた結果としていきなり2%の数字が出て来てますねという所でして、そらまあジャパンの国民としてそうなると誠に結構だとは思うのですが、この様々な強気前提のどれかが崩れてもあばばばばーになってしまうのではないかと存じます次第で、どうなんでしょうかねと思うのであります。


○更にアレなのは実は本文19ページ以降と23ページ以降なのですが・・・・・・・・・

『以下、経済・物価の見通しの前提およびメカニズムについて補足する。』

ということで、見通しの前提部分とそのメカニズムについての説明が本文19ページ以降にありまして、特にその中で本文23ページ以降の説明部分が色々と味わいが深いのですけれども、例によって例の如く時間が無くなってしまいましたので本日の所はここで勘弁という前座で終了してメインイベント無し状態で誠に申し訳ございません。

#なお明日はFOMCネタがあるのでそっちが優先になる予定(大汗)

さすがに黒田総裁会見ネタもやってませんし、これは連休中に更新フラグ来ましたね(キリッ)

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2013/04/30

○決定会合レビューその1:声明文が一言モードで一瞬ビックリしました

1日会合で展望レポートの回なのですが、決定会合の結果が出るのが以外に遅めではてさて何を揉めているんだかと思いましたが、決定会合結果は13時35分に出ましてその結果はこちら。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130426a.pdf
当面の金融政策運営について

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

マネタリーベースが、年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』

表記は4行でして、4行コメントになるケースって例えば中銀為替スワップのように形式上金融政策決定会合を実施しないといけない時だったよなあとか思いまして、最初これを見た時に「分かりやすい金融政策の一環か」とびびったのですけれども、ちょっと待てよと過去の金融政策決定会合の声明文を確認しようと思ったらこれがまたワロタとしか申し上げようがないのですけれどもここの所「展望レポート」と「金融政策変更(要するに追加緩和)」がセットになっている回が続いておりまして、「展望レポートだけ」という決定会合は2011年4月の2回目会合まで遡るのでありました。

ということで、4行コメントの決定会合結果公表は2011年4月28日の声明文でもありましたけれども、異次元緩和実施の次回会合だったのと、何と2年ぶりの「追加金融緩和の無い展望レポート」だったので一瞬市場もビックリという所でしたぞなという事で。

ご参考:2011年4月28日の金融政策決定会合声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110428a.pdf


○決定会合レビューその2:展望レポート基本的見解の数値を確認

ということで何か消化不良モードで金曜の債券市場は引けを迎えたのですが、15時に展望レポートの基本的見解が公表されました。

つーことで基本的見解を見た訳ですが・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210a.pdf(前回昨年10月)

・まずは数値をレビュー

実質GDP見通し

2013年度+2.4〜+3.0<+2.9>
2014年度+1.0〜+1.5<+1.4>
2015年度+1.4〜+1.9<+1.6>

前回見通し

2013年度+1.9〜+2.5<+2.3>
2014年度+0.6〜+1.0<+0.8>

※この間期中の潜在成長率は平均して0%台半ばと推計して変更ありません(本文1ページの脚注2)

コアCPI見通し(消費税増税の影響を除く方)

2013年度+0.4〜+0.8<+0.7>
2014年度+0.7〜+1.6<+1.4>
2015年度+0.9〜+2.2<+1.9>

前回見通し

2013年度+0.3〜+0.6<+0.4>
2014年度+0.5〜+1.0<+0.9>

ちなみに何故か「国内企業物価指数」の見通し表示が無くなったのはコストプッシュとかそういう話ですかそうですかとかまた邪推してしまいましたがそれは兎も角としまして、物価見通しの下の数字が2015年度で1%割れとなっておりまして、これはどう見ても佐藤さんと木内さんが1%以下の数字を出してきて出るかヴォケという話をした事が反映されておりますが、そもそも金融緩和の実施と円安と株高は行きましたけれども、アベノミクスで言う第3の矢などがこれからどうしますかと言ってる中であって、その内容を見極める前に政策効果として織り込んでいきなり強い数字を出せるかヴォケと言った所だと存じますが、この数字が出たことによって茶番化を避けられたとも言えるのでして(お二方は展望レポートの物価見通し記述部分に反対したようでございますな)誠に結構であったとは存じます。

いやね、政策として目指すぞエイエイオーというのはそらまあ高い目標を目指すというのもアリエールだとは思うのですけれども、ではその目標達成の為に現状および先行きをどのように分析するのか、という所で思いっきり始まっても居ない政策効果を次から次へと織り込んでしまうとかゆーのを拝見しちゃいますと、大和魂があればオーエンスタンレー山脈でもアラカン山脈でも徒歩行軍で踏破してポートモレスビーもインパールも攻略できるんですよとかいうようなアレな話をつい思い出してしまうのはあたくしがネガティブ思考の非国民だからですかそうですか誠に申し訳ございません。

なお、2015年度で目標数値に行くという見通しに関してはまあそういうのが出るでしょうねという風な下馬評でしたので特段市場への影響はありませんでしたしサプライズではありませんでしたが、下限が1%切っているのを見て「木内さんと佐藤さん頑張りましたなあ(何を?)」という話にはなっていたんじゃないですかね、よー知らんけど。


○決定会合レビューその3:展望レポート基本的見解をつらつらと読んでみる

・見れば判るように分量が大幅に減っています

二つのファイルを見れば判りますように、前回の基本的見解がファイルで19枚(本文17ページの見通し数値の図表が2ページ)に対して今回の基本的見解がファイルで8枚となり、本文が前回の17ページから6ページにとほぼ3分の1まで少なくなりやがりました。

でまあどの辺が減っているのかと言いますと、一つには前回までの基本的見解で示されていたここまでの経済物価情勢のレビューとして4ページ分あった部分がバッサリと無くなりまして、いきなり『1.わが国の経済・物価の中心的な見通し』からスタートしているというのが1点。

しかしそれでも減る本文は4ページ分でございまして、他に何を削っているんですかという話ですが、これはまあ「全体的に削っていますなあ」としか申し上げようがないのですが、よーするに説明が簡略化された、と言えば聞こえが良いのですが、見通しの表明に止まっていてその背景説明がろくすっぽ無いので、「お前の予想は分かったがその説明根拠は何なんだ」という質問に対して何ら回答になっていないという誠に遺憾の極みとしか言いようがない状態だと思う次第。

いやまあ「シンプルで分かりやすい説明」という趣旨は分からんでも無いのですが、見通しを表明するのに対してその背景部分を簡略化するというのは「説明」じゃなくて「モノローグ」になってしまうと思うのですよね。勿論長ければ良いというもんでは無いですけれども、今回の展望レポートの見通しに関しては市場というか民間エコノミストの見通しに対してやたらと強い内容になっている(従来から強かったですけれども今回は更に)訳ですから、どうしてそういう事が言えるのかという点について基本的見解の部分で説明をしないと、「説明に無理があるからボロを出さないために説明をしなかったんじゃネーノ」と邪推をするのはあたくしだけですかそうですか(^^)。

ということで基本的見解部分に少々ツッコミ。


・花も嵐も乗り越えて〜:消費税引き上げの影響評価に変化が

まずは『1.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『(1)経済情勢』から。

ちなみに経済情勢の点検部分のようなものも冒頭の冒頭にあるのですが、それはほんの2行1文でありまして、まあそこは4月金融経済月報と同様であります。

『わが国の経済をみると、下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。先行きは、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、本年央頃には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

とまあここまでが金融経済月報で示されている目先の見通しと同じね。

『その後は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、生産・所得・支出の好循環が維持されるもとで、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(今回)

ちなみに前回は消費税率引き上げの影響に関してこのように説明していました。

『ただし、年度(引用者追記:2014年度)の成長率は、上期を中心に消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動が出ることから、小幅のプラスにとどまる可能性が高い。』(前回)

ということで、消費税率の引き上げによる駆け込みの反動を大和魂で乗り越えるとの勇ましい見通しになっておりますが(−−;

『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。』(今回分、以下断りの無いのは全部今回分です)

ということですので前提を拝読するのですが、先ほど申し上げましたように前提の説明がどうも雑というか願望レポートというかモノローグと言うかという感じでありまして・・・・・・・・


・円安の影響をどこまで見てるんだか

『第1に、海外経済は、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもとで、米国や中国などを中心に、緩やかながらも次第に成長率を高めていくと考えられる。こうした海外情勢に加えて、為替相場の円安方向の動きにも支えられ、わが国の輸出は増加していくと見込まれる。』

まあ確かに米国の株価とかは調子良いですけれども、最近の主要国海外中銀の見通しを見ると普通に下振れ警戒モードになってきているように見える訳でして、その中で海外経済は堅調でついでに円安で輸出増加という事ですけれども、これは前提としてどの程度の継続的な円安を見てるんだよと思うのだが。


・期待の転換は分かるのですが資産ルートの方はどれだけ見てるのかね

『第2に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。すなわち、「量的・質的金融緩和」は、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、期待の転換を通じて予想物価上昇率を上昇させ、実質金利を低下させる効果が期待できる。これらが民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』

期待の転換で予想物価上昇率を上昇させるという話は思いっきり気合の世界なのでまあ頑張ってちょとしか申し上げようがないのですけれども、それはそれとして長めの金利や資産価格を通じた波及ルートというのはどのくらいの効果を見ているのやらと思いますし、大体からして長めの金利って本当の本当に期待が転換したら上昇するじゃんと考えますと、資産価格ルートというのは金利部分の話をすると話がややこしくなるような気がします。まあ展望レポート以前からの問題かもしれませんが。


・公共投資ェ・・・・・・・・・

『第3に、公共投資は、各種経済対策や復興関連予算の増額などから、当面、高水準で増加を続けるとみられる。』

この「当面」の時間軸が基本的見解を見ただけではワカランチ会長(実際には背景説明を含めた全文というのが土曜日に出ていまして、こちらである程度の説明はあります)ですし、大体からして「政府が財政健全化への取り組みを強める」からこそ「銀行券ルールの一時停止」を決定したはずなのに、展望レポートの前提に財政支出の高水準の増加を前提にするというのは何なんでしょうね。


・第三の矢が必要ですねわかります

『第4に、政府による規制・制度改革や企業による内外の潜在需要の掘り起こしなどの取り組みが徐々に進展し、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』

まあここはアベノミクスの第三の矢に期待する部分ですな。


・2013年度に早速雇用者所得改善の効果が出るとな!

で、この後が先行きの景気展開の展望である。

『以上を前提に、先行きの景気展開を展望すると、2013年度は、公共投資と輸出の増加を起点とした生産・所得・支出の好循環が働き始めるとみられる。』

早くも好循環とな!

『すなわち、設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果を背景に、防災・エネルギー関連投資や老朽化設備の更新需要などもあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。』

金融緩和効果とかホンマカイナとは思いますがこの次が中々威勢がよろしい。

『個人消費は、家計のマインド改善や高齢者の高い消費意欲に加えて、雇用者所得の改善も徐々に後押しとして作用していくことから、底堅さを増していくとみられる。』

>雇用者所得の改善も徐々に後押しとして作用
>雇用者所得の改善も徐々に後押しとして作用
>雇用者所得の改善も徐々に後押しとして作用

・・・・・・・・・えーという感じですがこの後にもこの話が出てくるのだ。

『こうしたもとで、日本経済は、本年央頃には緩やかな回復経路に復していくとみられる。その後、2013年度下期には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で発生すると予想されることから、年度全体の成長率はかなり高めになると考えられる。』

駆け込みで高成長になる点については以前からの話です。


・2014年度から2015年度は花も嵐も乗り越えるそうです(棒読み)

『2014年度から2015年度にかけては、消費税率引き上げによる振れの影響を受けつつも、輸出の増加や金融緩和効果に支えられた国内民間需要の前向きな動きが続き、基調的には潜在成長率を上回る成長が見込まれる。2014年度までの見通しを、1月の中間評価時点と比べると、成長率は、「量的・質的金融緩和」の導入、金融資本市場の状況の好転、公共投資の増額などにより、上振れて推移すると見込まれる。』

消費税引き上げの反動で下をやるという話はどこへという感じですが、後段の輸出の増加とかどこまで円安の影響を見ているんだかという感じですし、金融緩和効果に支えられた国内民間需要の前向きな動きって従来金融緩和効果が中々需要の拡大に繋がらないのが悩みの種という話だったのに随分とこりゃまた強気ですなあと思うのですがまあそうですかと。


・労働需給が引き締まって名目賃金が次第に上昇しますってよ素敵じゃありませんか奥様!!

続いて『(2)物価情勢』ですがこれがまた強気というか何というか。

『先行きの物価上昇率を規定する要因を点検すると、第1に、マクロ的な需給バランスは、緩やかな改善傾向をたどり、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。』

先程纏めましたように、実質GDPの見通しが政策委員の中央値で2013年度+2.9%、2014年度+1.4%、2015年度+1.6%と3年間平均で+2.0%の成長となっていて、潜在成長率を0%台半ばで見ていますのでまあ需要超過になります罠。

『この間、労働需給の引き締まり傾向は明確となり、名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる。』

>名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる
>名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる
>名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる
>名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる
>名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる

・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー(ただし嘘泣きと棒読み)

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、足もと上昇を示唆する指標がみられる。』

ほう。

『先行きも、「量的・質的金融緩和」のもとで上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』

日銀の強力なコミットメントによって2%に上昇するんですねわかります(棒)。

『第3に、輸入物価については、為替相場の動きが当面の上昇要因として働くうえ、国際商品市況が世界経済の成長に沿って緩やかな上昇基調をたどるとの想定のもと、見通し期間中、上昇を続けると見込まれる。』

それってコストプッシュいや何でもないです。つーか海外景気にずいぶん強気で。

『以上を前提に、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向をたどり、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている。今回の2014年度までの消費者物価の見通しを、1月の中間評価時点と比較すると、上振れしている。』

だそうです。


・上振れ要因とな!!!

次が上振れ下振れ要因の話ですけどね。

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、国際金融資本市場の動向が挙げられる。欧州債務問題が国際金融資本市場の動揺と世界経済の大きな下振れにつながるテイル・リスクは後退しているが、欧州情勢を巡ってはなお不透明感が強く、今後の市場の展開を含め引き続き注意していく必要がある。』

『第2に、海外経済の動向に関する不確実性がある。米国については、バランスシート調整の進捗や住宅市場等における金融緩和効果の強まり、新型エネルギーの好影響などを背景に景気が上振れる可能性がある一方、財政問題などから下振れる可能性もある。また、緊縮財政の影響が続く欧州や、持続可能な成長経路との対比で過剰設備を抱えているとみられる中国では、成長率の高まる時期が想定よりも遅れる可能性がある。海外経済の成長率が想定通り高まったとしても、世界的な設備投資の回復が相対的に遅れる場合には、わが国の輸出や鉱工業生産は、資本財・部品のウエイトが高いだけに、十分な恩恵を受けられない可能性もある。』

まあこの辺はそうですねという所です。

『第3に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革等の今後の展開次第によって、上下双方向に変化する可能性がある。』

上もあるのか!

『第4に、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の規模は、その時々の実質所得や物価の動向によって大きく変化し得る。』

まあさいですね。

『第5に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋が明らかになり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』

えーっと、そもそも財政再建の道筋が明らかにならないとダメじゃなかったのという気がするんですけれども、まあそれは兎も角として、この後に「リスクは上下にバランス」という中々お洒落としか申し上げようがない認識が示されていまして、前回の展望レポートも大概に強いわと思ったのですけれども、リスクは下で見ていたのに今回はリスクがバランスとは大きく出たなという感じです。
物価固有のリスクについては以下の3点。

『物価に固有の上振れ、下振れ要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向について不確実性が高い。企業や家計の予想物価上昇率が過去の緩やかな物価下落を反映するかたちで形成され、これがなかなか高まらない可能性がある一方、期待の転換により予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もある。』

きたいのてんかんによりひかくてきそうきにじょうしょうですかそうですか。

『第2に、マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度についても不確実性がある。企業が、厳しい競争環境が続く中でも、需給バランスの引き締まり度合いに応じて価格や賃金を引き上げていくかどうか注意が必要である。』

どうなんでしょうねえ。

『第3に、国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への転嫁の状況については不確実性が高い。』

それはコス(以下同文)。


・第1の柱、第2の柱の点検

『3.金融政策運営』のパートにもう入ります。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、見通し期間の後半にかけて、日本経済は、2%程度の物価上昇率が実現し、持続的成長経路に復する可能性が高いと判断される。』

(キリッ)って感じですなあ。まあそらあたくしだって日本国民としてこの強気前提が沢山あるナローパスシナリオが達成できると良いですねとは思いますけれどもふーんとしか言いようがない。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。物価の中心的な見通しについても、中長期的な予想物価上昇率の動向を巡って不確実性は大きいものの、リスクは上下に概ねバランスしていると考えられる。』

リスクは上下にバランスだそうですわよ奥様!

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない。』

この程度の状態でバブルとか言う人は豆腐の角で頭をぶつけた方が良いと思いますのでこれは全面同意。

『もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は高水準である点には留意する必要がある。』

オマエガナーとか言ってはいけません。


・先行きの金融政策運営は特段のインプリケーション無し

『先行きの金融政策運営については、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』

『このような金融政策運営は、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』

まあここは前回会合での声明文と同じ話なので特段の変化はありません。


○詳しくは展望レポートの全文を読まないといけませんが時間ががががが

PDFが重いのでクリック注意。土曜日に公表されています。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210b.pdf(前回)

このクソ重いファイルを開けますとページ数を見た瞬間に分かりますように、まあ結局展望レポートの背景説明を含めた全文も結構短くなっておりまして、どの辺が短くなったのやらという話や、背景説明の部分などがどうなっているのかという話をしないといけないのですが、どう見てもやりだすとオワランチ会長になりますので明日できればやります。

・・・・・・・とだけですと折角土曜日に公表されたものをせっせと読んだのに全然書かないのもシャクですので印象だけ先に書いておきますとこんな感じでしょうか。

その1:結局の所政策効果の波及経路が期待以外に従来とどう違うかが分からない
その2:展望レポート23ページ以降に背景説明が詳しく書いてあるのですが、前回と認識を変えている部分について。「前回対比なぜ変わったのか」の断りが無いのが多く、飛躍の背景が分からない
その3:物価見通しのメカニズムも同様でして、前回の1%も大概に怪しげな説明だったのに、基本的な話があまり変わらない中でフィリップスカーブのシフト以外に物価見通しが引きあがる説明がさっぱり見えてこない
その4:おまけにそのフィリップスカーブについても、前回はその通りに行くか不確実としているものが、今回は上方シフトを所与とした上で2%行く話になっており、ますます無理矢理感が高まっている

という所でしょうか。ついでに言えば前回の展望レポートは無理気味の説明をしながらも何とか辻褄を合わせようという努力をしているというのが行間から漂っていたのですが、今回は良く言えば自信満々で悪く言えば説明不足という感じでして、分量も減ってますし関連説明も減っていますし、うーむという感じではございました。

でまあ詳しくは明日にでも。

なお、黒田総裁の記者会見も実は土曜日にアップされておりますが時間の関係上本日はパスしましたのでURLだけ取りあえずおいておきますね。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304d.pdf

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2013/04/25

○そういえばすっかり忘れていましたが金融経済月報(汗)

いやどうもすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1304.pdf(今月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1303.pdf(先月)

まあ今さらで恐縮な上にそもそも金融政策に直結するものが物価動向1点張りになってしまってますから景気判断の方はまあスルーで良いやとか思っていたら次のMPM直前とか幾らなんでもテラアホスという所ですなすいませんすいません。

・景気判断に関しては「シナリオ通りの回復基調」という美しい話になっています

という1行コメントで終了という説もあるのですが、前回との比較をしてみるぞな。

まずは総括判断。

『わが国の景気は、下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。』(今回)
『わが国の景気は、下げ止まっている。』(前回)

ほほう。

需要項目別でまず肝心の海外経済と輸出。

『海外経済は、昨年来の減速した状態から徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は下げ止まっている。』(今回)
『海外経済は、減速した状態が続いているが、持ち直しに向けた動きもみられている。そうしたもとで、輸出は下げ止まりつつある。』(前回)

ということで海外経済の判断が上がり、それに対応して輸出の判断も上がっているのですが、こちらに関しては3月月報時点での先行き見通しの中で「海外経済が減速した状態から次第に脱していく」というシナリオを書いていまして、それが目出度く具現化しました、というまあ美しい絵になっています。

国内需要。

『設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は、消費者マインドが改善するもとで、底堅さを増しつつある。』(今回)

『設備投資は、非製造業に底堅さがみられるものの、全体として弱めとなっている。一方、公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直し傾向にある。個人消費は底堅く推移している。』(前回)

こちらでは「消費者マインドの改善」が新たに入りましたが、こちらに関しても先程の海外と同様に3月月報時点の先行き見通しの中で「消費者マインドの改善」に言及していまして、これまた美しい絵になっておりますな。

生産。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。企業の業況感は、再び改善の動きがみられている。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は下げ止まっている。』(前回)

業況感は短観を反映したものですが、生産の判断についても「持ち直しに向かう動きも」と判断を引き上げております。


先行き見通し。

『先行きのわが国経済は、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内で推移したあと、国内需要が各種経済対策の効果もあって底堅く推移し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくことなどを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、今回は「当面横ばい圏内」が抜けて素直に回復シナリオの絵になっていますな。

先行き見通し項目別。

『輸出は、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、持ち直していくと考えられる。国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、当面一部に弱さが残るものの、その後は、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、次第に底堅さを増していくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は持ち直していくと予想される。』(今回)

『輸出は、海外経済が減速した状態から次第に脱していくことなどを背景に、持ち直しに転じていくと考えられる。国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も持ち直し傾向を続けるとみられる。設備投資は、当面製造業を中心に弱さが残るものの、その後は、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費は、消費者マインドの改善などから、引き続き底堅く推移していくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は持ち直していくと予想される。』(前回)

めんどくさくなったのもあるのですが(笑)、こうやってまとめて引用してみますと文章の分量が減っているのが判りますな。でまあ文章の分量が減るというのは日銀文学的に言いますと見立てに対して確信度が高まっているという事を意味しますので、まあこの先行き見通しの回復に関しての確信度が高まりましたよねというお話。

でもって細かく見ますと、輸出の所は引き上げ、その背景の海外経済も引上げ。国内需要に関しては変わらずで、設備投資に関しては「当面製造業中心に弱さが残る」というヘッジクローズが「当面一部に弱さが残る」という形でヘッジクローズは残ったもののその範囲が狭くなっていますが、基調部分は同じ。個人消費の見通しは引き上げで生産は同じですな。


・不確実性の言及は残る

まあ残ります罠。

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)


・物価についてもシナリオ通りの推移

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、為替相場の動きを反映して上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、前年の耐久消費財の動きの反動から、小幅のマイナスとなっている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、為替相場の動きを反映して緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

CPIの耐久消費財の反動に関してはこの後にありますように、前回時点で織り込み済みです。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、耐久消費財に加えてエネルギー関連についても前年の動きの反動が予想されるため、マイナスを続けたあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、前年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動からマイナスとなったあと、再びゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

ということですが、はてさてこれで何がどうなると「2年で2%」になるのやらという所で、展望レポートでどれだけの情報局標語になるのやらという所でして、日銀総裁じゃなくて情報局総裁に名前変えた方が良いんじゃないでしょうかとか悪態をつくような展望レポートが出てくることをワクワクテカテカしながら待つあたくしなのでした。

いやね、別にその2%目標に向けて頑張りましょうというのにケチをつける気はサラサラございませんですけれども、頑張りましょうという目標と現実問題として実力ベースを考えた場合にどうなるのでしょうかという分析を行うのはこれまた別問題でしょうし、大体からしてそういう実力を把握しないで勝負に打って出るとかアホウの極みでしょと思うのでありまして、まあ願望やプロパガンダがそのまま出来もしない目標設定になってその達成の為に無理を重ねて破綻するとかいうようなどこの大東亜戦争だという事態になるのは勘弁して頂きたいと思うのでした、といつの間にか金融経済月報と別の話になっているのでありましたとさ。

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2013/04/18

○金融システムレポートである

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr130417.htm/

本文はこちら(PDFで結構重いのでご注意)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr130417a.pdf

昨日の夕方に公表されまして、まあ斜め読みしかしていないのですがせっかく出ましたのでとりあえず。


・異次元政策とマクロプルーデンスというのは相反する要素があると思うのですが

『はじめに』という所から。

『(今回の特徴など)

今回の『金融システムレポート』は、基本的に2013 年3 月末までの情報をもとに分析している。定例の定点観測に加え、@邦銀の海外業務における収益力の評価、A成長分野向け投融資に向けた金融機関の課題、B地域金融機関の収益力向上のための方策などに関して分析の充実を図った。』

ほっほー。

『日本銀行は、わが国金融システムの安定性確保に一層貢献していく方針であり、こうした観点から、今後とも『金融システムレポート』の充実に努めていく。また、日本銀行は、去る4 月3・4 日に開催された金融政策決定会合において、量的・質的金融緩和を導入した。この政策は、長めの金利や資産価格などを通じる波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。『金融システムレポート』においても、この政策のもとで、金融システムにおける資金の流れや金融機関、投資家の行動にどのような変化が生じていくかを分析していく。』

ということなのですが、まあ分析はこれから実施するのでしょうけれども、「わが国金融システムの安定性確保に一層貢献していく方針であり」という辺りとか、まあこの先の部分を読んでいて思ったりもしたのですが、そもそも量的質的金融緩和によって市場金利や資産価格に関しての変化を起こさせましょうという話をする文脈においては、金融機関経営のマクロプルーデンス的な観点においては一旦は不安定化する(政策が効果を発揮して想定通りに経済が上向きになって経済成長の下で金融緩和政策が素直に出口に向かえるのであればその時には安定しているのでしょうけれどもどう見てもナローパス)んじゃネーノと思うのでありまして、まあこのレポートで「金融システムの安定性確保は知らんがな」とは言えないからこういう表現になるのは仕方ないとは思うのですけれども、実際の運用において従来通りのプルーデンスを行われますと金融機関としては困るんじゃネーノと思うのですよね。


つーことで物凄く斜め読みなのですがちょっとだけ読んでて気になった部分を。


・金融システムにおけるリスクがどうのこうのの部分

『W.金融システムにおけるリスク』の辺りから。

『』本章では、金融面のマクロ的なリスクについて点検したあと、金融資本市場から観察されるリスクについて検討する。その後、銀行・信用金庫やそれ以外の金融機関について、それぞれのリスクの状況を点検する。』

マクロの部分で読んでてうーむと思ったのは長期金利の部分。

『長期金利の変動リスク』って所なのですが、(本文32ページ、PDFの38ページ以降)

『長期金利の水準は、先行きの成長率予想やインフレ予想のほか、財政悪化懸念を含む各種のリスクプレミアムや金融政策に対する期待など、様々な要因に影響される。このうち、財政悪化懸念による金利上昇リスクについて、わが国のソブリンCDS プレミアムから確認する。ソブリンCDS 市場の流動性が低く、同プレミアムが、必ずしもわが国の財政状況に対する市場の見方を正確に反映しているとは限らない点に留意が必要ではあるが、足もとにかけて目立った上昇はみられず、財政悪化懸念の高まりは特に窺われない(図表IV-2-9)。これ以外の様々な要因全てを定量化することは困難であるため、以下では、先行きの成長率予想およびインフレ予想と比較することを通じて、長期金利の変動リスクを評価する。』

ということでこの後色々と分析しているのですが引用していると大変な事になる(そもそも図表を見ながらじゃないとナンノコッチャだと思うので本文見てくんなましという所ですし)ので割愛しますけれども、長期金利の変動リスクという意味でシステミックリスクという点ではそらまあ確かに財政破綻ヒャッハーで長期金利急上昇の方なのかもしれませんが、金融機関の基礎的な収益力の低下という観点から考えた場合は現在行っている量的質的緩和政策による「イールドカーブ全体の押し下げ」の方が遥かに問題だし蓋然性が高いというかそもそも政策が予定通りにワークしたら発生する事象なのですからそっちの分析の方を見たいのですけれどもねえとか思う訳で。


・銀行業態のリスクがどうしたこうしたという話

本文35ページ以降の『3.銀行・信用金庫に内在するリスク』から。

『銀行・信用金庫のリスク量は、総じてみると自己資本との対比で引き続き減少している(図表IV-3-1)。ただし、以下で述べるとおり、信用コストは低水準であるが、貸出債権の質に目立った改善はみられていない。また、国債など有価証券投資のウエイトが高まる中、地域金融機関で金利リスク量が増加しているほか、大手行では株式リスク量が依然として大きい。』

ということで最初が貸付債権関連のリスクの話になりましてその辺も面白いのですが、その次の市場リスクの部分を引用。

『銀行・信用金庫の金利リスク量は総じて増加方向にある。金利が1%pt 上昇する場合を想定した金利リスク量(100bpv)のTier I 資本に対する比率をみると、大手行では概ね横ばい圏内で推移しているものの、地域銀行と信用金庫では引き続き増加している (図表IV-3-17)。また、地域銀行と信用金庫の中には、100bpvの対Tier I 比率が50%を超える先もみられるなど、金融機関間のばらつきも大きい(図表IV-3-18)。』

まあそうでしょうな。

『地域銀行と信用金庫では、債券投資額が増加していることに加え、期間ミスマッチ(資産の平均残存期間と負債の平均残存期間の差)が長期化していることが、金利リスク量の増加をもたらしている(図表IV-3-19、図表IV-3-20)。債券の平均残存期間をみると、大手行では2 年半程度となっているが、地域銀行で4 年程度、信用金庫では5 年近くまで上昇している。また、満期の長い住宅ローンや地方公共団体向け貸出が増加していることから、貸出にかかる平均残存期間も過去と比べて長くなっている(図表IV-3-21)。』

『後述のとおり、国内基準行では、有価証券の評価損が自己資本比率に勘案されない扱いが恒久化されることになるため、金利上昇による債券評価損は原則として自己資本比率に影響しない。もっとも、期間ミスマッチが大きい場合、金利変動による期間収益への影響も大きくなるため、引き続き金利リスクを適切に管理する必要がある。』

>引き続き金利リスクを適切に管理する必要がある
>引き続き金利リスクを適切に管理する必要がある
>引き続き金利リスクを適切に管理する必要がある

・・・・・・・・・・・えーっと、仰ることはその通りなのですが、そもそも包括緩和以降イールドカーブのフラット化を促して金利リスクを取らざるを得ない状況に金融政策の方で持って行っている訳でございまして、更に黒田総裁様におかれましては全力で「イールドカーブ全体を押し下げ」と仰せになって「ポートフォリオリバランス効果を」というような話をしている訳ですから、何かこの辺りの記述が従来とまったくカワランチ会長なトーンだというのはちょっと残念感が漂う所でございます。


でまあ後の方に『収益の動向』というのがあるのですけどね。本文46ページから。

『大手行は、海外業務の積極化を通じて収益力の強化を図っている。もっとも、収益源の大部分を国内業務が占める地域金融機関は、厳しい収益環境に直面している。』

うむ。

『地方圏を中心に人口の減少や高齢化が進行するもとで、中小企業の資金需要は低迷しており、地域金融機関の地元向け貸出は伸び悩んでいる。こうしたもとで、既存の優良企業を巡って、金融機関の業態を超えた貸出競争が激化している。たとえば、地域銀行・信用金庫ともに、貸出における競合金融機関の数が増加している(図表IV-3-32)。また、企業がメインバンクとする業態を10 年前と比較してみると、信用金庫から地域銀行にメインバンクを変更する企業の割合が高くなっている(図表IV-3-33)。』

orz

『中小企業の資金需要低迷や金融機関における貸出姿勢の積極化に伴い、地域銀行と信用金庫の収益力は低下を続けている(図表IV-3-34)。中には、基礎的な収益力が過去の平均的な信用コスト水準(2006 年度以降の平均値)を下回る先もみられる(図表IV-3-35)。収益力の低い金融機関では、貸出業務の収益性が低いうえ、経費率も高い(図表IV-3-36)。』

アイヤー。

『金融機関が収益力を高めていくためには、潜在的な資金需要を掘り起こすことや、貸出業務以外の取り組みなども通じてサービスの充実を図り、手数料を確保していくことが重要である。また、コストを抑制し、他行庫との競争力を高めることも収益力改善への方策となり得る。経費率は金融機関の規模が大きいほど低下する傾向があるため、統合や合併は経営効率化のためのひとつの選択肢となり得る(図表IV-3-37)。実際、合併によってコスト削減を実施し、収益力の低下が業態平均よりも小幅にとどまった事例は少なくない(金融機関の合併についてはBOX 4 を参照)。』

まあそらそうなのですが、一方で金利は下げるわ成長支援貸出制度などで更に金利下げを促進するような政策をマネタリーウィングで実施している中でプルーデンスウィングでこういう話をしらっと言われますと、お話自体は全くもって仰る通りでツッコみようも無い所ではあっても、こう言われる(特に地域の)金融機関サイドとしては何だかなあ感が漂ってきそうなお話ではなるなあと毎度思うのですが、特に新体制になってからどう見てもマネタリーウィングがこういう事スルーしてるでしょと言う風になっているので特に突き放され感というか見放され感を感じるのは僻みですかそうですか。


・マクロストレステストのベースラインががががが

『X.金融システムのリスク耐性』という本文56ページ以降の所なのですけど。

『本章では、経済や金融資本市場に負のショックが発生する状況を想定したマクロ・ストレス・テストを行う。これによって、金融システムのリスク耐性と、将来の金融仲介活動へ及ぼし得る影響を評価する。なお、本章で行うマクロ・ストレス・テストは、銀行が直面するリスクの特性を明らかにし、金融システムのリスク耐性を評価するためのものであり、経済や資産価格などの先行きについて蓋然性の高いシナリオを示したものではない。また、本章の分析結果は一定の仮定に基づく試算であり、考慮されていない要素もあることから、幅を持って解釈する必要がある。』

ということでマクロストレステストの話があるのですけれども・・・・・・・・・

『(2)ベースライン・シナリオ

ベースライン・シナリオでは、海外経済(実質GDP)の成長率が、2012 年の+3%台前半から、先行き2015 年にかけて+4%台半ばへ緩やかに改善すると想定する(図表V-1-1 左図)。株価(TOPIX)と国債利回り(10 年物)は、2012年7〜9 月期の水準から横ばいで推移すると仮定する。また、国内経済(名目GDP)の成長率は、2013 年度に前年の+0%台半ばから+1.6%に高まった後、2015年度にかけて+1%台半ばでの推移を続けると想定する(図表V-1-1 右図)。この間、貸出金利は2013 年度以降横ばい圏内で推移するほか、不動産価格は緩やかに下落(年率0.4%)する。』

まあこういうのは置きの世界ですからどうでも良いっちゃあどうでも良いのですけれども、幾らなんでもベースラインシナリオが少なくとも株価と長期金利と貸出金利はもうちょっと補正して頂きたいと思ったのは気のせいですかそうですか(具体的数字は本文見てちょ)。

やはり異次元緩和を実施した訳ですからして、その辺を加味したようなマクロシナリオ(だとストレスも糞も無いのかもしれませんが金融機関の基礎的収益の方には影響が甚大だと思うので)というのも見たかったですなあと思うのは贅沢ですかどうもすいません。


・まあ要するにこれはこれで問題はプルーデンス政策の運用の方ですので

ということでほんのちょっとだけツッコミというかただの悪態みたいなのを申し上げた次第で誠に恐縮至極でございますが、異次元緩和して少なくとも金利の面で言えば金融機関の基礎的収益が低下する話ですし、一方で大手行はともかく地域金融機関などは(このレポートでも触れられてますが)株式関連収益も上がりにくい状況になっている(株を外したから)上にオルタナティブな収益機会がという話になった場合に大手金融機関対比でどうしても劣勢にならざるを得ないという状況になる訳でして、まあそちらの観点からの分析を今後は充実して欲しいですねと思うのでありました(まあその辺も今後は考えるみたいなのを冒頭に書いてありますので期待していますが)。

つーことで、金利リスクガーという話よりも問題になりそうなのは異次元緩和の進行で基礎的収益力が低下しそうな金融機関(預金金融機関以外も含めて)における収益確保の動きが所謂利回り追求の動きから金融不均衡へというようなリスク点検とかの運用とか、まあ要は運用をどうするのかという話になりますので、レポートはレポートとしましてそちらに期待したいものであります。

でまあガチガチのプルーデンスで来られましてもマネタリーウィングの方では「ポートフォリオリバランスを促進」とか言っている訳ですので、その辺の整合性というのも取ってプルーデンス政策の運営をして頂きたいものですなあなどとエラソーな事を申し上げてとりあえず斜め読みネタ終了ということですが、このレポートは色々と面白いので熟読推奨、つーか週末にでもゆっくり読むのオヌヌメです。

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2013/04/10

○決定会合議事要旨:白井審議委員の提案フルボッコワロタ

ということで3月議事要旨ですが一番の見どころは白井審議委員の提案フルボッコの図。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130307.pdf

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『資産買入等の基金の運営について、多くの委員は、現状は、12 月および1月の決定に基づき、残高を本年末には101 兆円程度まで積み上げ、それ以降は期限を定めず、毎月、長期国債2兆円程度を含む13兆円程度の資産買入れを続けていくことが適当との見解を示した。』

というのは兎も角としてまずは固定金利オペの話から。

『固定金利オペの札割れが発生していることについて、何人かの委員は、資金供給期間の柔軟な設定など、金融調節部署によるオペ運営面での工夫の結果、固定金利オペの大きな札割れは何とか回避できていると述べた。この点に関連して、何人かの委員は、今後更に資金供給額が拡大していく中で、固定金利オペの残高積み上げはより困難化していくことが予想され、いずれは抜本的な対応が必要となる可能性が高いと述べた。このうちの一人の委員は、こうした抜本的な対応は、単なるオペ手法の技術的な見直しではなく、今後の追加緩和策と一体で検討していくべきであると付け加えた。』

まあそうですな。で、次が追加緩和の選択肢についてですが2月もこんな感じでしたなという所です。

『今後、追加緩和を行う場合の選択肢として、委員からは、@補完当座預金制度の適用利率(付利)を引き下げること、A長期国債買入れにおいて残存年限のより長い国債を対象とすること、Bリスク性資産の買入れを増額すること、などが挙げられた。』

ふむ。

『付利引き下げについて、複数の委員は、ベネフィットとコストを慎重に検討すべきと述べた。』

一言ですかそうですかって2月もそうでしたな。でその次の長国買入期間長期化が一番長い記述というのも前回と同じ。

『長期国債買入れについて、何人かの委員は、期間の長い金利に直接働きかけ、イールドカーブを全体的に低下させるためにも、残存年限のより長い国債を買入れの対象とすることが選択肢になり得ると述べた。』

しかしあまりにも大量に買入を行ったら「流動性リスクプレミアム」が発生するというオモシロ副作用が先に顕在化するというのは示唆する所が大きいように思えますね、まあここの議論とは関係ないけれども。

『そのうえで、これらの委員は、今後、現在買入れを行っている残存期間3 年までの長期国債の需給逼迫感が更に強まる可能性が高い状況下、こうした対応により、基金の積み上げを着実に進めていくことにもつながると付け加えた。』

という話って基金残高を積むのが目的なのか長期国債を買うのが目的なのかを一歩間違えると混同して政策技術論として混乱の元になりそうな論点ではある。

『ある委員は、長期国債買入れの残存年限を長期化する場合、現行では買入れの対象を残存期間3年までとしている説明との平仄をとる必要があると述べた。』

実際に4月の緩和ではこの話は見事にスルーされていました。

『何人かの委員は、長期国債の買入れ方法を検討するに当たっては、中央銀行による大量の国債買入れが財政従属(fiscal dominance)ではないという信認を市場から得ることが重要であり、具体的な制度を設計する際には、こうした点に細心の注意を払う必要があると付け加えた。』

えーこのような細心の注意が払われているとは一ミリも思えないのが今回の緩和なんですけれどもこの点に関しては4月会合でどういう扱いになっていたのでしょうかねえ・・・・・・いやまあ「何人か」が白川さんと山口さんと西村さんだったら話はここで終わっているのですが。

でまあリスク性資産に関しても2行状態というのも前回と同じ。

『リスク性資産の買入れ増額について、ある委員は、日本銀行が買い入れた資産から損失が生じた場合に、政府に損失を分担してもらう可能性は考えられないか、との問題意識を述べた。』

まあこれはそうなのですが、ただまあ極端にとんでもない資産でも買わない限りはその辺については大問題かというとちょっと違う気もせんでもないけど。


というのは前座で(^^)、メインイベントは白井さんの提案とそれに対するフルボッコ振りです。

『この間、一人の委員は、「物価安定の目標」の実現を目指して金融緩和を推進する日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、最近みられているわが国経済の改善の動きを金融面から更に後押しする観点から、長期国債の買入れ方法について、「期限を定めない買入れ方式」を速やかに導入し、「金融調節上の必要から行う国債買入れ」と統合する、具体的には、買入れ対象は残存期間30 年まで、買入れ方法は市場利回りを基準とする利回り較差方式に統一し、毎月の買入れ額を少なくとも5兆円程度まで増額してはどうか、と述べた。』

ということで白井さんの提案なのですけれども・・・・・・・・

『そのうえで、買い入れる国債の残存期間による区分や区分別の買入れ金額等については、執行部に検討を指示したいと付け加えた。』

具体的な部分が全然ないとな!!!

ということで白井さんの提案ですが、これはどう見ても案としての出来がうんこにも程があるので他の委員から全力でフルボッコ状態なのは当然であります。

『これに対し、大方の委員は、様々な選択肢の一つであるとの認識を示しつつ、現状においては、これまでの運営方針を維持することが適当との考えを示した。』

以下フルボッコの明細(^^)。

『このうちの複数の委員は、「基金の長期国債の買入れ」と「金融調節上の必要から行う国債買入れ」の統合は、包括緩和政策の枠組みのあり方自体に関わってくるため、なお検討すべき点があると述べた。』

先程の部分にありました白井さん(と思われる委員)の提案の背景説明にある「日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、最近みられているわが国経済の改善の動きを金融面から更に後押しする観点」じゃあ論点として根拠薄弱じゃヴォケという事ですねわかります。

『複数の委員は、どの年限の国債を、どれだけ買入れていくのかという議論は、どの期間の金利に働きかけていくのかという金融政策の根幹に関わる問題であるため、執行部に検討させる問題ではなく、決定会合で決めるべき事項であると指摘した。』

ゾーニングをする、あるいはどのくらいの平均年限になるのか、というような政策効果の根幹部分を形成するポーションに関して事務方丸投げとか何考えてるんじゃヴォケという事ですねわかります。

『複数の委員は、金融調節上の必要から買い入れる長期国債の保有について、銀行券の発行残高の範囲に収めることとしている、いわゆる銀行券ルールの扱いをどうするかという論点があると述べた。』

銀行券ルールに関する話が抜けとるわヴォケという事ですねわかります。

・・・・・・・・ということで、白井さんの提案は肝心な論点が抜けていてそもそも提案の名に値しないフワフワの内容でありましたとさ、というのが皆様の反対理由でありまして、それであればまあ今回の会合で賛成になるのもそれほど無茶苦茶な変化では無い、という事にはなります。

・・・・・・・・そうは言いましても銀行券ルールの所って総裁の説明見てると「大丈夫だから大丈夫」というだけの話だったり、平均残存7年はともかく年間50兆(償還ロールがあるのでもうちょっと本当は多い)とか長国買うフィージビリティーあるのかよ目先1年は良いけど2年大丈夫かよとか、大体からして「MBを年間70兆円拡大」とかそれ3年とかのタームでサステイナブルじゃないだろ2年以降どうするんだよとか、何かその辺のフィージビリティーへの検討が誠に残念な状態になっているのでまあ何なんでしょうね感はあるのですけれども。

ついでに時間軸に関しても記述が長いので引用します。ただし前回会合と同じなのですが。

『金融資産の買入れと実質的なゼロ金利政策とを継続することにより、強力に金融緩和を推進する期間について、一人の委員は、前回会合に引き続き、実質的なゼロ金利政策は、将来の短期金利に関する市場の予想に働きかけるオーソドックスな緩和強化策であり、消費者物価の前年比上昇率2 % が見通せるようになるまで継続して一段と強い意思を示すことが適当と述べた。』

宮尾さんの提案ですな。

『この委員は、2%目標の達成に向けて、経済・物価の道筋を明示すること、実際の経済・物価がそれに沿って改善していくこと、人々が当初の道筋を見通せるようになること、というプロセスの重要性を指摘し、こうした好循環のもとで、人々の短期的なインフレ予想、中長期的なインフレ率のアンカー、現実のインフレ率が、互いに強め合いながら上昇していくことになると付け加えた。』

はあそうですか(棒)。

『こうした見解に対し、別の一人の委員は、今後の経済・物価情勢については不確実性が高いため、現時点で強いコミットメントをすることには効果が期待できないのではないか、あるいは逆に金融面での大きな歪みを生じさせるリスクが高まるのではないかと述べた。』

ふむ。

『また、ある委員は、前回会合と同様に、現在のコミットメントは、金融政策の透明性の観点から見直す余地があるとしたうえで、まずは消費者物価の前年比上昇率1%の実現に向けて資産買入れを行い、その先は2%が視野に入るまで緩和的な金融環境を維持するという、2段階で考えていくことが適当であると述べた。』

ふむふむ。

『別のある委員は、見通し期間を1年延長したうえで、物価上昇率にかかる政策委員の見通しの中央値が1%台半ばを超えるまで、実質的なゼロ金利政策と資産買入れを継続することを明示することも一案であると、前回会合と同様の主張をした。』

『これらの委員は、今回の会合では問題意識の提示にとどめ、大勢意見に従いたいと述べた。こうした議論を経て、金融資産の買入れと実質的なゼロ金利政策の継続期間について、多くの委員は、「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することを目指し、それぞれ必要と判断される時点まで、とすることが適当との見解を示した。』

つーことでこの辺は2月会合と同じ話になっておりますが、論点としては今後出てくる話なので忘れないように引用しておきましたぞな。


あとは物価に関する見通しなどの部分で戻りまして『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の物価部分。

『物価上昇のメカニズムについて、委員は、海外経済の回復を背景とした国内経済の緩やかな回復から需給ギャップが徐々に縮小するもとで、物価上昇率が高まっていくとの認識を改めて共有した。また、その先も経済が持続的に改善していくとの見通しが拡がれば、企業や家計の成長期待が高まり、現実の物価上昇率や予想物価上昇率を更に高めることにつながっていくとの見方で一致した。』

はあそうですか。

『一人の委員は、実体経済が標準シナリオに沿って推移し、かつ円安が持続すれば、2013年度末に消費者物価の前年比が1 % に達する可能性は小さくないとコメントした。』

まあ1%に関しては割と行きそうという話は以前からありますが。

『ある委員は、インフレ率2%の達成時期について、3年以内、5年以内と回答する企業が、それぞれ全体の約3割を占めているというアンケート調査結果を紹介しつつ、新しい物価安定の目標とその実現可能性のイメージが企業部門にも相応に浸透しつつあるのではないかと指摘した。』

我田引水の香りがするんだが・・・・・・・

『一人の委員は、過去の物価の動きをみると、日本の消費者は輸入コストの上昇の販売価格への転嫁には比較的寛容であり、今回の局面においても過去と同様に販売価格への転嫁が進むのかどうか、注目していると付け加えた。』

いやあの月初の円安で物価上昇大変ですよのインフレフォビア丸出し報道や公明党の山口代表の発言とか見てると「転嫁には寛容」かもしれんがそれに対して結局悪態と消費の冷え込みで対処してるんじゃネーノかと思うのだが。

『ある委員は、先行きの消費者物価をみるうえで、消費者物価指数の約2割を占める家賃の動向も重要であると指摘した。』

まあこれは動かないけどな。

『複数の委員は、デフレ脱却との関連で賃金が広く一般に議論されるようになったことは注目すべき変化であるとコメントした。このうちの一人の委員は、こうした賃金に関する問題意識の高まりは、日本経済がデフレから脱却していくために必要な方策を検討する契機となっており、今後、賃金だけでなく、様々な論点を巡り議論が喚起されることを期待したいと述べた。一人の委員は、業績好調企業において、足もと、給与増加の動きがみられることを指摘したうえで、企業の収益改善が賃金上昇につながっていけば、好循環を生み出し、物価上昇率を高めていくことになると述べた。』

持続的な賃金上昇期待が無いと意味ねえだろとツッコもうと思ったら同じツッコミがこの後に(^^)。

『別の一人の委員は、金融政策の範疇を超えると断ったうえで、物価上昇率の上昇につながるためには、一時的な所得増加のみならず、基本給の持続的な引き上げが期待できるような環境整備が必要であると指摘し、そのための雇用慣行に関する見直しの必要性に言及した。』

まあそういう話になります罠、という所で金融政策に関する部分と物価に関する部分を引用してみました。

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2013/04/05

お題「いやこれは色々と凄いですなという決定会合レビューと一部雑談」

もしかしたら間に合うかもとは思いつつ、今回具体的な細目がちゃんと作り込めないんじゃないかと思っていましたが、時間的制約も厳しい中今回の会合で全部のネタを出すとは具体案練り込んだ事務方(企画局と金融市場局)のご苦労は相当な物だったと推察されます。いやあお疲れ様でした。

あとポイントが高かったのは一部を除いて全員一致だった所で、これはまあ随分と色々頑張りましたなあという所ですね。

では声明文を読んでみましょう。


○看板とディレクティブに関して声明文から:内容がかなりスッキリしました

声明文はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdf

・ということで「量的・質的緩和」とな

まあ元々包括緩和っていうのは「量的緩和と質的緩和のハイブリッド」という建付けだったのですが、まあここは題名を挿げ替えた方が「チェンジ」感を出せる、という事なんでしょうね。

まあ本来は昨年のバレンタイン緩和の時に物価安定の目途を出した時に「物価1%行くまでバンバン緩和継続」という話のはずだったのですが、いつの間にやら何故か普通に経済見ながら緩和を調整ですよ何言ってるんですかという話になってしまったのですが、前回の物価目標2%の所で物価目標に向けて緩和を継続しますというのが明確になって今回が仕上げという形になりましたですな、はい。


・ニバーイニバーイ!

最初の看板部分の文書を見て高見山のニバーイニバーイ!とか言っても最近の若い衆はワカランチ会長ですかそうですか(つーか判るのアラフォー以上?)。

『(1)「量的・質的金融緩和」の導入

日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する(注1)。このため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行う。』

2年間というのは従来から黒田総裁や岩田副総裁が言ってた話ですが、まあ「念頭に置いて」という事で完全に2年でやりますという話ではないですが、こういう風に文言に盛り込むというのはそれなりに意味がある話。

でまあその2年間に行うのが「マネタリーベース2倍」「長国保有額2倍」「ETF保有額2倍」「長国買入平均残存期間2倍」ということでニバーイニバイ!というのが今回の宣伝キーワードですねわかりますという事ですが、どうも高見山を思い出してしまうのはジジイだからですかそうですか。

で、「量・質ともに次元の違う金融緩和を行う」と異次元緩和という文言で締めておりまして、まあ全部織り込んでみましたという所ですな、うんうん。

ということで内容につきまして。


・MB目標ということですがまあ当座預金残高目標みたいなもんですな

『@マネタリーベース・コントロールの採用(全員一致)

量的な金融緩和を推進する観点から、金融市場調節の操作目標を、無担保コールレート(オーバーナイト物)からマネタリーベースに変更し、金融市場調節方針を以下のとおりとする。「マネタリーベースが、年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。」1

1 この方針のもとで、マネタリーベース(2012 年末実績138兆円)は、2013 年末200兆円、2014 年末270兆円となる見込み(別紙)。』

ということで別紙の方に『マネタリーベースの目標とバランスシートの見通し』というのがありまして、MBの数値自体は日銀の出しているマネタリーベースの集計が毎月でていまして・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1212.pdf(12月末)
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base1303.pdf(3月末)

ここで出ている数値は月中平残なのですが、たぶん「2012年末」と書いてあるので暦年の年末で、別紙にある2012年末数値が138兆円とあるので末残になるのでしょうな。でまあそのマネタリーベースですけれども、上記の表にありますように、日銀の定義としては「銀行券」+「貨幣」+「日銀当座預金残高」となりますが、まあ銀行券と貨幣に関してはそれほど極端に増えたり減ったりはしない筈なので、まあ事実上日銀当座預金残高目標みたいなもんでしょう。

とは言え、ここで日銀当座預金残高目標復活みたいな言い方をすると過去それは本当に効いていたのかという話が蘇って来る訳で(^^)、そーゆー意味ではここで看板のすげ替えを行った方が美しいというのと、MBだとニバーイニバーイになるからMBにしたんですねとか、MBにした方が何か新しい企画っぽくて「チェンジ」っぽいんじゃないかとか、まーそんなこんなで看板を変えたのでしょうな、うんうん。


・長国買入の規模は予想を上回りました

『A長期国債買入れの拡大と年限長期化(全員一致)

イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う2。また、長期国債の買入れ対象を40年債を含む全ゾーンの国債としたうえで、買入れの平均残存期間を、現状の3年弱3 から国債発行残高の平均並みの7年程度4 に延長する。

2 毎月の長期国債のグロスの買入れ額は7兆円強となる見込み。
3 「資産買入等の基金による長期国債の買入れ」と「金融調節上の必要から行う国債買入れ」を合わせた全体の平均。
4 長期国債買入れの平均残存期間は、金融機関の応札状況によって振れが生じるため、6〜8年程度と、幅をもってみる必要がある』

ということでこの長期国債買入の方が市場予想を上回った訳ですが、今回の「量的緩和」が先程のMB増加で、「質的緩和」の主な部分はこの長期国債の買入の拡大と年限長期化という事になったという事ですな。

で、MB拡大が年間70兆円程度(今年は9か月で62兆円)になるという量的目標が有る中で、そのうち50兆円が長期国債で賄いますという事になり、それを償還分も含めて幾ら買いますかとなると大体月7兆円強となりますよ、とまあそんな感じで答えの7兆円が出るようです。

んでもってその7兆も市場予想を上回っていたいたのですが、それよりもひえーだったのは買入が「国債発行残高の平均並みの7年程度」という所で、月7兆を単純に新規発行のシェアで比例配分すると超長期ゾーンが1兆どころの騒ぎではない額(10年超の発行は2割以上ありますので)になって、もともとの市場予想では「まあ増えるだろうけれども5000億とかでしょ」という話だったので市場どっひゃーとなってスーパーブルフラットしたのはご案内の通り。


・国債買入の内訳

この内訳に関しては夕方に市場局から出たのですが、その前は「この内訳いつ出るんだ??」という話になっていまして、あたくしも「どう見ても即時実施の筈なのに(黙っていると即時実施)従来のゾーニングで明日からどうやって買うんだろ???」とか思っていたのですが、毎回個別にオファーするとかなったらオペの予見可能性下がるわなあとか思っていたのですがね。


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130404d.pdf
当面の長期国債買入れの運営について

『1.買入金額
毎月7.5兆円程度(ただし、今月は6.2兆円)

2.買入対象国債
利付国債(2年債、5年債、10年債、20年債、30年債、40年債、変動利付債、物価連動債)

3.国債種類・残存期間による区分別の買入金額

利付国債(変動利付債、物価連動債を除く)
残存期間:1年以下     月間:0.22兆円
残存期間:1年超5年以下  月間:3.0兆円
残存期間:5年超10年以下  月間:3.4兆円
残存期間:10年超     月間:0.8兆円
変動利付債 隔月:0.14兆円
物価連動債 隔月:0.02兆円

4.買入頻度
原則として月6回程度(今月は5回)

5.買入方式
コンベンショナル方式による入札
・利付国債(変動利付債、物価連動債を除く):利回較差入札方式
・変動利付債、物価連動債 :価格較差入札方式』

ということで、超長期はさすがに兆円とかにはならずに8000億円になりましたが、8000億円でも超長期の買入は今まで1000億円ぽっちしか無かったのでこれはこれで多いのですが、超長期から逆算すると5年から10年のゾーンが厚くなって1年以下が減るという結果になって、何気に5年超も多いですねという感じです罠。

んでもって今回の買入方式は利回り較差入札なので基金オペのような絶対利回り水準方式でなく、特定のゾーンばかりアホほど入るという事は無くなりますが、ゾーニングが細かくなりましたのである程度買入年限は制御できるのでしょうが、今回市場局マターになっているので、MPMを経なくても札の入り方見ながら配分をいじってくる、ということになるんでしょうな、うんうん。


・ETF、J−REITに関してはまだ価格上昇余地がありますかそうですか

『BETF、J−REITの買入れの拡大(全員一致)

資産価格のプレミアムに働きかける観点から、ETFおよびJ−REITの保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う5。

5 CP等、社債等については、本年末にそれぞれ2.2 兆円、3.2 兆円の残高まで買入れたあと、その残高を維持する。なお、CP等、社債等、ETFおよびJ−REITの銘柄別の買入れ限度については、従来通りとする。』

>資産価格のプレミアムに働きかける観点から
>資産価格のプレミアムに働きかける観点から
>資産価格のプレミアムに働きかける観点から

・・・・・・・・・・・ほほうそうですかまだプレミアムを圧縮する余地がありますかつまり今のお値段はまだ上昇余地がありますとまあそういう事ですか、などと言ってはいけません。「価格に働きかける」とは言っておりませんのでね(棒読み)。

ETFに関しては2年間で2兆円買うそうですが、随分日銀のシェアが増えてしまいますのでETFもっと編成しないといけませんねえ。んでもってREITに関しては5%ルールの関係もあるからこんなもんで限界でしょ。


・フォワードガイダンスは微妙な修正

『C「量的・質的金融緩和」の継続(注1)(賛成8反対1)(注2)

「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』

従来のフォワードガイダンス。

『日本銀行は、上記の物価安定の目標の実現を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置(注1)を、それぞれ必要と判断される時点まで継続することを通じて、強力に金融緩和を推進する(注2)。』(3月決定会合声明文より)

ということで「安定的に持続するために必要な時点まで」という事ですが、この2%の数値がアクチュアルなのか見通し数値なのかとかの辺りは引き続きファジーですなあ(一応フレキシブルターゲットという話だからその辺はファジーのままになるんでしょうが)という所ですが、「安定的に持続するために」というのもまあ決意を示したのは判るのですけれども、ゼロから2年で2%まで持って行くパワーで緩和したら途中でペース下げないと2%行った後に上にオーバーシュートするんじゃないのとか色々と謎な部分はあるけれどもまあその辺の出口は知らんがなということですねわかります。


・ということでディレクティブは何なんでしょと言いますと・・・・・・

まあ要するに@〜Bになるのですけれども、従来基金買入によってやたら細々と色々な物の目標残高がついていたのが、今回大幅に簡素化され、その分だけ現場の裁量というか現場で頑張ってください状態になるのですな。

考え方を整理する為にディレクティブを整理すると以下のようになる筈。

(1)「マネタリーベースを、年間約60〜70兆円に相当するペースで増加させる」
(2)「長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。」
   「長期国債買入の平均残存期間を、7年程度に延長する。」
(3)「ETFを年間約1兆円買入」
   「J−REITを年間約300億円買入」
(4)「CP買入残高を年末に2.2兆円にしてそれ以降残高維持」
   「社債買入残高を年末に3.2兆円にしてそれ以降残高維持」

でまあ3番と4番はおまけみたいなもんで、眼目は(1)と(2)で、長期国債の買入に関して(2)を充足させるように買いますが購入方法は市場局にお任せ、MBを増加させるトータルの数字と、長期国債買入の数字は決まっているけれども残りの部分は市場局にお任せ、とまあそういう感じになります。整理の為に書いておきますね。


○銀行券ルールの扱いなど

『(2)「量的・質的金融緩和」に伴う対応』から。

『@資産買入等の基金の廃止

資産買入等の基金は廃止する。「金融調節上の必要から行う国債買入れ」は、既存の残高を含め、上記の長期国債の買入れに吸収する。』

まあこれは当たり前ですが問題の銀行券ルールは・・・・・・・

『A銀行券ルールの一時適用停止

上記の長期国債の買入れは、金融政策目的で行うものであり、財政ファイナンスではない。また、政府は、1月の「共同声明」において、「日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する」としている。これらを踏まえ、いわゆる「銀行券ルール」6を、「量的・質的金融緩和」の実施に際し、一時停止する。』

以前申し上げていたと思いますが、そもそも銀行券ルールの時限的撤廃に関しては1月に共同声明を出す時にやったら美しいんじゃネーノという風に思ったのですが、まあ今回になったのは麿が次の人用に取っておいたのか、単に麿が麿だったからなのかはワカランチ会長。

これ政府が「財政健全化なんぞ知らんがな」とか言い出した時にどうなるのかは見ものではありますがさてどうなるんでしょうかねえ(棒読み)。


○対話の強化とな

『B市場参加者との対話の強化

上記のような巨額の国債買入れと極めて大規模なマネタリーベースの供給を円滑に行うためには、取引先金融機関の積極的な応札など市場参加者の協力が欠かせない。市場参加者との間で、金融市場調節や市場取引全般に関し、これまで以上に密接な意見交換を行う場を設ける。また、差し当たり、市場の国債の流動性に支障が生じないよう、国債補完供給制度(SLF)の要件を緩和する。』

つーかこれだけの買入をしろとなりますと銀行とか手持ちの国債を供出しないといけませんですねとかどこの戦時中だという話になる訳でございまして、対話じゃなくて対話と(自主規制)ではないかなどとは良い子の皆さんは言ってはいけません。

なお、先程の国債買入の内訳もそうですし、短国買入や固定金利オペの目標撤廃にもありますように、従来の緩和政策でやたらめったら短期市場に負荷を掛けていた部分が長期の方に移りますので、相対的に言えば短期金融市場には干天の慈雨状態になっておりまして、昨日もそんな感じの気配になっていた(出来はたぶんない)ようですが、これは短国とか2年とかの下がり過ぎ金利がやや是正される(つーても0.10%までは上がらんでしょうけれども)ようになるでしょうなあという所です。

あと国債補完供給制度の要件緩和ですけれども。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130404c.pdf

まあとりあえずそうしてみましたという所ですが、買入がバカスカ進むと流動性が死ぬほど無くなるのでして、スクイーズ祭りとかになるのでもっとこう景気よくホイホイと流動性供給をして頂きたいのですけれども、『なお、再売却時の期間利回りは、マイナス3%とします。』というのが何だかなあという感じではあります。まあいずれこの辺ももう少しホイホイ物を出せるようにして頂かないと市場のマーケットメイクそのものが出来なくなりますぞなもしという事になり兼ねませんので。



○まあこれは当然

『(3)被災地金融機関支援資金供給の延長

被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションおよび被災地企業等にかかる担保要件の緩和措置を1年延長する。』

まあ当然ですな。



○政策の波及経路に関して

最後が経済の認識などの部分と、今回の政策に関する説明。

『2.わが国経済は下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。先行きは、堅調な国内需要と海外経済の成長率の高まりを背景に、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は足もと小幅のマイナスとなっているが、予想物価上昇率の上昇を示唆する指標がみられる。また、ここ数か月、グローバルな投資家のリスク回避姿勢の後退や国内の政策期待によって、金融資本市場の状況は好転している。』

今回は政策変更があったので前回と比較しにくい(のと前回のを引用すると長くなる)ので前回分の引用を割愛しますが変化について簡単に。

現状認識:「持ち直しに向かう動きもみられている」というのが新たに入る
先行き見通し:結論は同じですが背景の「堅調な国内需要と海外経済の成長率の高まり」が上方修正
物価:「予想物価上昇率の上昇を示唆する指標がみられる」というのが新たに入る
金融資本市場:「グローバルな投資家のリスク回避姿勢の後退や国内の政策期待」ということで状況好転としている

まあ1秒で言えば上方修正です。


で、政策の説明部分。

『日本銀行は、1月の「共同声明」において、「物価安定の目標」の早期実現を明確に約束した。今回決定した「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。これらは、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』

ということで「期待の転換」というのをポイントに入れていますな。まあ普通じゃ2%そう簡単にいかないから期待とか入れない訳にも行きませんがね。


という事で声明文を駆け足で読んでみました。


○雑感やメモなど少々

・為替などの反応

まあ債券はブルフラットしましたが、為替は一旦円安に振れたあとうだうだし、欧州勢が起きたころからもう一発円安に振れて株価とかもそれに連動する感じでして、まあ為替に関しては海外の反応の方が良かったですねと思ったら96円台ですかそうですか。


・短期市場に干天の慈雨だが長期債にはイナゴ到来

さっきも書きましたが大事なので2度繰り返しますが(^^)、「対話との強化」の中でも「当座預金を積んでもらわないといけない」という表現がありましたように、どう見ても付利下げは有り得ない選択肢になりました本当にカムサハムニダという所でありまして(会見でも「今は必要ない」という話をしてた筈)、しかも短国買入の目標は無くなる(MB目標から逆算の帳尻オペになる)し1年以内の国債買入は減るしということで短期市場干天の慈雨、というか単に短期市場方面で発生していたイナゴによってぺんぺん草も生えない状態だったのが、イナゴ様が長期債方面に向かっただけで結局国内円金利部門トータルではモウカランチ会長に拍車が掛かるので干天の慈雨とか喜んでいる場合でも無いのですがorzorzorz

#どさくさに紛れて日銀の資産買入をイナゴ呼ばわりしているのは気のせいです

あと、金利ディレクティブが無くなるのと、上記のように短期の資金供給オペが帳尻オペになって予見可能性が下がる(固定金利オペは淡々とロールのオファーだけ入るのですかねえ)ので、足元金利だけは需給要因で振れやすくなると思います。そういう点もFFレートっぽくなるとゆーことでしょうな。


・しかしこれポートフォリオリバランスって本当に効くのかね

どう見てもこの買入が累積するとイールドカーブは牛の昼寝になってもう円金利市場はモーモー言いながら涎を垂らすしか仕事がなくなってしまうのですが、問題はその金が円金利市場から外にでるかという話でありまして、昨今は金融規制だ何だと言ってちょっとリスクをたくさん取るとあちこちから人がすっ飛んで来てなんでそんなリスク取ってるんですかと小一時間問い詰められるという大変な状況になっているのが金融機関の仕様になりつつあるという次第で、そっちの方を緩和した方が元手要らずでポートフォリオリバランス効果を発揮できるのではないか、と総量規制だの貸出枠管理だのというものを金貸し現場で見ておりました(歳がばれますが)もと金貸しの手先であります所のあたくしは思うのですけどねえ。

という雑感はまた後日詳しく考えてみる。


・まあエンドゲームが気になりますな

まあ何ですな、買入するのは良いとして、このエンドゲームがどうなって、その時に為替市場とか資産市場とか金利市場とかがどうなるのかというのをつらつらと考えているのですが、まだ結論はでなくてこれまた後日色々と書いてみようかと思いますが、1年くらいこれやって物価が全然アガランチ会長となった時にMBや国債買入増やしても効かない→の矢印の先がどうもヤケクソ方面の予想しかできず、その時のエンドゲームがおそロシアというネガティブ志向はダメですかそうですか・・・・・・・・


・ところで岩田副総裁の精緻な理論によりますと・・・・・・・・・・(^^)

ちょうど昨日山本幸三先生のロイターインタビュー記事をネタにしておいて正解でしたな。ということで昨日の再掲。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE93204D20130403?sp=true
インタビュー:2%達成にはマネタリーベース拡大を=自民・山本氏
2013年 04月 3日 15:54 JST

『山本氏は、日銀副総裁に就いた岩田規久男氏が学習院大学教授当時に作成したシミュレーションから、消費者物価上昇率2%達成には、現在145兆円のマネタリーベースを160兆円─170兆円に増やしていく必要があるとした。』

『試算は、リーマンショック後のマネタリーベースの量と予想インフレ率の目安となるブレークイーブン・インフレ率(インフレ期待を測る代表的な指標)の関係からはじき出したもので、同時に円レートや株価との相関式に当てはめると、ドル/円は98円、株価は1万1600円になるだろうとしている。』

『さらに消費者物価指数を3%にするためには、マネタリーベースを180兆円程度に拡大させる必要があるとし、ドル/円は108円程度、株価は1万3600円程度になるだろうと試算する。』(以上上記URLより)

・・・・・・・・・・・・えーっと、今回の決定ってマネタリーベースを年末に200兆円、来年末には何と270兆円にするという物ですが、岩田先生ならびに山本先生の精緻な理論に基づきますと今回の決定でしたらどこからどう見てもマネタリーベースの出し過ぎとしか思えない訳でございまして、「こんなに出したら物価目標が大幅に上に逸脱してしまうではないか」と言って反対するべきではないのでしょうか(棒読み)。

岩田副総裁におかれましては今回決定された数値の積算根拠および、従来のご主張との乖離に関しての説明をじっくりとして頂きたい物でありまして、説明できないのでしたら従来の精緻な理論はただの与太話でしたと言う事になると思うのですけれども如何でございましょうかねえwwwww

#いかんまた最後に悪態で締めてしまった

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2013/04/02

○さて短観

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1303.pdf


・前回の先行き予測DIの達成状況

        (12月時点)     (3月時点)
        現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業   ▲12→▲10    ▲8→▲1 
製造業中堅企業  ▲12→▲20    ▲14→▲13        
製造業中小企業  ▲18→▲26    ▲19→▲14

非製造業大企業   +4→+3      +6→+9
非製造業中堅企業  ▲1→▲7      +4→0
非製造業中小企業  ▲11→▲19    ▲8→▲8

前回は先行き見通しがかなり残念だったのですが、その分は取り戻していますねという所なのですが、良く良く見ると製造業の中堅以下は結局前回よりDI悪化ですかそうですかという所ではありまする。まあ先行きの向きが前回から比べて大いに良くなっているので結構ということなのでしょうけれども。


・雇用判断DI

        (12月時点)      (3月時点)
        現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  +10→+10      +11→+8
製造業中堅企業 +10→+12       +9→+9
製造業中小企業 +14→+14      +11→+9

非製造業大企業   ▲3→▲3      ▲6→▲6
非製造業中堅企業  ▲7→▲9      ▲9→▲10
非製造業中小企業  ▲7→▲8      ▲9→▲10

相変わらず製造業と非製造業が二極化なのですが、方向性が概ね上向きになっているのは結構なのですが、製造業大企業の雇用判断DIが足元悪化してるとな。うーむイマイチ。


・想定為替レート

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2011年度全体(上期)(下期)  2012年度全体(上期)(下期)

2011年6月調査  82.59   82.59   82.59     − − −
2011年9月調査  81.15   81.26  81.06      − − −
2011年12月調査  79.02   80.26  77.90     − − −
2012年3月調査   78.93  80.20  77.69    78.14   78.04  78.24
2012年6月調査   79.27   80.18  78.35    78.95  78.98  78.93
2012年9月調査   −     −   −      79.06  79.16  78.97
2012年12月調査   −     −   −     78.90   79.09  78.73

(円/ドル)   2012年度全体(上期)(下期) 2013年度全体(上期)(下期)
2013年3月調査   80.56   79.15  81.94   85.22   85.10  85.33

前から取っているので今回も前の方から引用しますけれども、過去為替が大動きした時の短観で想定為替レートってあったかなあとかちゃんと調べている暇が無かった(期初ですからね!)ので確認できていないのですが、随分と今回の想定レートがオッペケペーな水準で95円とは言わないけれども90円だろ常識的に考えてとオモタのですけれども、これってそんなにドラスティックに動かさないものなんでしたっけという所でこれ見て最初ビックリしました。

まあこの数字見ると輸出系企業的に言えば収益押し上げ要因なのですが、輸入コストも押し上げ要因だったりするのはコインの裏表。



・金融商品取引業クオリティキター!!!!!!!

見込みが華麗に外れたりブレが非常に大きかったりするのが仕様の金融商品取引業業況判断DIですが。

           (12月時点)       (3月時点)
           現状→3月予測   現状→6月予測
金融商品取引業  ▲28→▲15   +60→+60

前回は金融商品取引業の先行きDIが珍しく当たって何かの死亡フラグかと焦った訳ですけれども(^^)、今回は足元の株式市場為替市場ヒャッハー相場を反映して現状判断DIも前回対比でDIが88ポイント改善とかどんだけヒャッハーなんだよという改善ぶりでこれを見た瞬間椅子からこけそうになりました。

まあ何ですな、先行き予測DIが+100になっていないだけ冷静さを感じますが(違)。


その他細かく見ている暇が無かったのでその他気が付いたら明日にでも追記するけど多分追記しない。


・生活意識アンケート

忙しいんだから期初に出すな期初に。
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1304.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第53回)の結果
―― 2013年3月調査 ――

ということでちょっとだけ引用。追加は明日。ちなみに図表付の方を引用するスキルはアタクシに無いので最後の所にあるQ&Aリスト方式の方から引用で『』つけると見にくくなるので『』はつけませんので念の為(引用の都合上一部記載事項を割愛しています)。

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる10.4 ( 6.3 )
2 少し上がる63.8 ( 46.7 )
3 ほとんど変わらない21.4 ( 38.0 )
4 少し下がる3.3 ( 7.2 )
5 かなり下がる0.6 ( 0.5 )

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。

平均値:+4.0 ( +3.0 )
中央値:+3.0 ( +1.0 )


Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる28.0 ( 22.3 )
2 少し上がる53.6 ( 50.3 )
3 ほとんど変わらない11.9 ( 17.5 )
4 少し下がる3.7 ( 6.6 )
5 かなり下がる0.8 ( 1.3 )

Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。

※年平均値
平均値:+4.0 ( +3.8 )
中央値:+2.0 ( +2.0 )

・・・・・・ということですが、まあ前回はこの辺の数値が下がり気味になっていたのでこれは素直にアベノミクスで物価目標2%をあれだけ宣伝した効果という事でよろしいんじゃないでしょうかねえという所でありまする。

しかしこの結果が相変わらずなのはまあ個人の財布だけ考えたらそうなるんでしょうけれども・・・・・・


Q12.次に「物価」についておうかがいします。
あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)

1 かなり上がった4.9 ( 4.9 )
2 少し上がった41.7 ( 33.6 )
3 ほとんど変わらない43.2 ( 46.8 )
4 少し下がった8.2 ( 12.9 )
5 かなり下がった0.8 ( 1.3 )

Q12-a.(Q12で1または2『上がった』と答えた方へ)「物価」が上がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ2.6 ( 2.1 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ80.3 ( 85.0 )
3 どちらとも言えない16.3 ( 11.9 )

Q12-b.(Q12で4または5『下がった』と答えた方へ)「物価」が下がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ44.8 ( 34.5 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ21.2 ( 27.4 )
3 どちらとも言えない32.1 ( 36.3 )

これまたアベノミクスで物価目標2%の効果で上がった方の「困ったことだ」が減っているのは良い傾向ではあるのですが、下がった方で「好ましい事だ」がこれまた同じような感じで増えているというのが誠に遺憾な所で、物価目標2%でデフレ脱却で皆さんハッピーですよという話を宣伝する中で「物価が下がったのは好ましいことだ」というのが増えてしまうというのが何だかなあという所で、先程の公共放送ニュースもそうなんですが、インフレフォビアの方を何とかする方向でひとつよろしくお願いいたします。まあだからこそ安倍ちゃんは企業に賃上げしろとか何処の社会民主主義政党だというような安倍ちゃんらしからぬ事をしているのでしょうけれども。

#という所で時間切れですいません

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