海外金融政策概観(2012年度上期前半)

トップページへ
見出しのページに戻る


FRBやBOEを中心に趣味成分が高いですが、海外中銀のペーパーや講演などをフォローするのだ。

2012/06/29「バーナンキ会見(その4)麿モードが更にみられる部分」
2012/06/28「ECBの利下げ期待に関する市場の議論に違和感/バーナンキ会見(その3)麿キタコレ」
2012/06/27「FOMC後のバーナンキ議長記者会見より(その2)」
2012/06/26「FOMC後のバーナンキ議長記者会見より(その1)」
2012/06/22「6月BOEは現状維持対買入拡大が5対4な上にキング総裁は買入拡大派でした」
2012/06/21「FOMCはオペレーションツイストの半年延長を決定し、景気判断と先行き見通しを引き下げ」
2012/06/20「英国インフレ低下と新しい資金供給策投下/アトランタ連銀ロックハート総裁講演はハト気味」
2012/06/15「クリーブランド連銀ピアナルト総裁は労働市場の問題は循環要因が主体と指摘」
2012/06/14「コチャラコタ総裁は現在の労働市場はNAIRUの上昇による完全雇用状態ではないかと指摘」
2012/06/11「イエレン副議長とシカゴは積極緩和、クリーブランドは微妙、ミネアポリスは追加緩和否定的」
2012/06/08「バーナンキ議会証言は追加緩和に中立な感じ」
2012/06/07「ECB定例理事会のドラギ総裁会見より/エバンス総裁講演とウィリアムス総裁講演メモ」
2012/06/06「ブラード総裁は追加金融緩和に消極的」
2012/06/04「4月FOMC後のバーナンキ会見から:量的緩和の条件とガイダンス文言などの話」
2012/06/01「ブラード総裁、東京で白川総裁に援護射撃発言」
2012/05/31「5月BOE議事要旨から:物価が下がりにくくなっている件についての議論に注目」
2012/05/24「BOEの現状維持は資産買入に関して今回も8対1」
2012/05/23「バーナンキ会見から:質疑の冒頭で追加緩和サービス発言を連発」
2012/05/22「4月FOMC後のバーナンキ会見から:クルーグマン批判に対して」
2012/05/21「FOMC議事要旨から(その3)経済や労働市場のスラックに関する議論から」
2012/05/18「FOMC議事要旨から(その2)政策決定部分での追加緩和のハードルは下がったようです」
2012/05/17「FOMC議事要旨から(その1)またコミュニケーションツールが出そうな件」
2012/05/16「ガイダンス文言が何時の間にか実質ゼロ金利政策じゃなくなっている件について」
2012/05/15「FOMCおよびECB会見に見る世界のクレクレ」
2012/05/11「BOEは政策据え置きで完了した資産買入プログラムのおかわりは無し」
2012/04/26「現状維持、声明文とSEPは微妙に強気化しているFOMC」
2012/04/25「BOE4月議事要旨より:経済が難しい中でホームメイドインフレ警戒モード」
2012/04/19「BOEではポーゼン委員が何と追加資産購入提案を取り下げ」
2012/04/17「ダドリー総裁講演は追加緩和は示唆しないけどまあハト的」
2012/04/09「FOMC議事要旨から(その2)やはりややトーンが強い」
2012/04/04「FOMC議事要旨から」
2012/04/02「コチャラコタ総裁講演は特段のタカ派でも無かったりする」

2012/06/29

○またまたバーナンキ議長会見ネタ

引き続き引っ張りますが。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf

・財政再建に関して

9ページ目のFox BusinessのPETER BARNES記者の質問から。

『PETER BARNES. Peter Barnes, Fox Business. Sir, you had talked about trying to get maybe a little help from some of the other branches of government, so that leads to the questions about the “fiscal cliff.” Have you seen any evidence that the lack of progress on resolving the fiscal-cliff issue is having an impact on the economy right now? Is it slowing economic growth right now, job creation as we saw last year during this very same debate? And if you’re not seeing it, and if you haven’t seen it yet, when could we-might we start to see it hit the economy and hurt the economy?』

フィスカルクリフに向けた進展が遅いですがその悪影響ってすでに出てますかってな話ですが。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, I think it’s still a bit early, but as we move forward in the year, we do anticipate that the uncertainty associated with the so-called fiscal cliff will have some economic effects.』

つーことで今は影響は殆ど無いが年末が近づけばフィスカルクリフの悪影響に対する不確実性が高まってくるでしょうというお話。

『We heard anecdotes today in the meeting about firms that might be government contractors that were, you know, not sure about whether the contracts would still be in place come January and making employment decisions based on that.』

建築業者などには既に影響が出ているとな。

『More generally, financial markets don’t like uncertainty and, particularly, uncertainty of this magnitude, and that, I think, will be a negative. So that uncertainty is there, that’s going to be an issue.』

不確実性は良くないですし、その影響はネガティブでしょうということで、懸念している感ありありですな。

『I think most importantly, though, is that Congress get the policy right. I’ve talked about three elements for fiscal policy. The first is to do no harm as far as the recovery is concerned, to try to avoid a fiscal cliff that would significantly damage the recovery. But second, to maintain the effort to achieve a sustainable fiscal path over the longer term. And third, to use fiscal policy effectively-to have a better tax code, to make good use of government spending programs and make them efficient and effective, and so on. So I think if Congress does all those things, the ultimate benefits would be substantial.』

ということで今後必要なこととして3つの要素を挙げていますが、フィスカルクリフが経済に顕著な悪影響を与えないようにすること、その一方で財政のサステイナビリティーを確保する事、そして財政の構造改革を行い、有効な形での歳入歳出のデザインをすること、というのを挙げていますな。


・逆さ絵おじさんさすがに前回のはマズーだったと反省したのでしょうか

日経新聞の矢沢(勝手に漢字当ててすいません)記者からの質問が20ページに。

『TOSHIKI YAZAWA. Thank you, Chairman. I’m Toshiki Yazawa from Nikkei. I hear a lot of conversations on liquidity trap in U.S. That was a familiar concept in Japan after a bubble burst in the lost decades. Is U.S. economy in liquidity trap? And if that happens, how could economy escape from here? Thank you.』

米国でも日本のような流動性の罠状態になっているという指摘が多くなってきたが、米国経済についてどう認識しますか?そしてもしそれが起きた場合にどのようにすべきか?という質問でして、後半部分については質問者の意図が普通に素で聞いたのか、それとも日銀に対する政策提案でも貰おうと思ったのかはよく判らないのですが、逆さ絵おじさんの答えがこれまた意外な展開に(^^)。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, the U.S. economy is in a situation where short-term interest rates are close to zero. And so what that means is the Federal Reserve cannot add monetary accommodation by cutting short-term interest rates, the usual approach.』

ゼロ金利制約にあるという話はしていますが、流動性トラップに入っているという話はこの先でもスルーしているのでまあ普通に否定してるのでしょう。というか「金融政策でやる事はある(キリッ)」という主張ですので流動性トラップ説は普通に否定でしょうが。

『It’s been one of the themes of my own work for a long time, including some of the work I did on the Bank of Japan, that central banks are not out of tools once the short-term interest rate hits zero.』

ふむふむ。

『There are additional steps that can be taken. And we have demonstrated through both communications techniques-guidance about future policy, which is something the Japanese have done as well, by the way-and through asset purchases, also something the Bank of Japan has done, that central banks do have some ability to provide financial accommodation to support their recovery even when short-term interest rates are close to zero.』

ゼロ金利制約になっても「日銀がやったように」フォワードガイダンスというコミュニケーションポリシーを用いたり、「日銀がやったように」資産買入などの手段を取ると言った形で、色々な手段を取る事が出来ます(ので現在は流動性トラップではない)という事ですけれども、前回の会見の時にクルーグマン批判に対して若干キレ気味になって「我々は日本のような状況になるのを避けた(キリッ)」とか言ったのはさすがに日銀に悪い事したと思ったのではないかと勝手に愚考するのでありますがどうでしょうかね?質問者が日本のメディアですし^^;

『That being said, as I mentioned to Mr. Ip, these nonstandard policies are less well understood, and they do have some costs and risks. But I do think that, at the same time, that they can be effective in helping the economy.』

Mr. Ipってのは昨日引用した質疑でして、逆さ絵おじさんに麿が憑依した記念すべき(??)質疑応答での話でして、つまりここでも麿モードになっているのが中々アレです。

トップに戻る



2012/06/28

○ECBの利下げ期待はまあ良いとして関連論点がおかしい件について

まあ実は市場のお仲間さんと話しながら色々と考えたので折角だからメモにしておくとかそういう話だったりするのですが、まあECBの利下げ云々に絡む話で何か変じゃねというのがどうも目に付くのよ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M5O5TU6JTSE801.html
ECB、利下げに伴う中銀預金金利ゼロを問題視せず−当局者

『協議が非公式だとして匿名で語った同当局者によると、利下げ実施となれば下限政策金利である中銀預金金利を現行の0.25%から引き下げることを伴うが、政策委員会の大半のメンバーは問題視していない。ただ、この関係者は利下げは確実ではないとも語った。ECB報道官はコメントを控えた。』(上記URLより)

・・・・・・・?????としか申し上げようがないのですけれども、どうも欧米市場発のレポートとか見てるとこの手の話が多くて(逆に「預金ファシリティー金利をゼロに下げられないからECBは利下げができない」という意見もあったりする)、趣味の中銀ヲチャー(中銀ウォッチャーというのはおこがましいのでヲチャーを自称^^)をしておりますあたくし的に思いまするに、そもそも何でMRO金利下げるのと同時に預金ファシリティー金利を下げなきゃいかんのかと小一時間問い詰めたい訳でございます。

そもそも常設ファシリティ―作るのは金利回廊を形成することによって市場金利の上限と下限をまあ大体形成する(正確に言えば貸出ファシリティ―は担保が無いと利用できないので無担保の金利は貸出ファシリティー金利を上回る可能性はある)為に作る物ですが、そのコリドアの幅を幾らに設定するのかは別に勝手に決める世界でありますし、そもそも量的緩和政策のような形でインターバンクに所要準備を遥かに超える資金供給を実施した場合には理念的には市場取引金利は預金ファシリティー金利まで低下した所で張り付く形になるので、量的緩和政策の実施と共に日本や米国の場合は預金ファシリティー金利を政策金利と同水準(その後どちらの中銀も政策金利をバンドにしてそのバンドの上限が預金ファシリティー金利になっていますがな)にしている訳で、利下げするのに同時に預金ファシリティー金利を下げないといけない義理は無いのですけど、まあ未体験ゾーンだからどうも実感として湧かないのでしょうかね。


更にこんな話とか。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M695YN6TTDS001.html
ドラギ総裁、未知の空間に足を踏み入れるか-FRB議長は敬遠

『6月27日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、米連邦準備制度理事会(FRB)が敬遠しているトワイライトゾーン(未知の空間)に金利を設定することを真剣に考えている。ECBの利下げは信頼感改善や貸し出し促進、成長拡大につながるもようだが、下限政策金利である中銀預金金利がゼロ以下に下がることにもなるかもしれない。0.25%からの中銀預金金利引き下げは、てこ入れを図ろうとしている短期金融市場に悪影響を与えかねないことが政策当局者にとって障害となっていたが、もはやタブーではないと、ユーロ圏の中銀当局者2人が15日に語っている。』(上記URLより)

まあさっきのニュースの関連記事ではございますが・・・・・・・

『フランクフルト・トラストの資産配分責任者クリストフ・キント氏は、「金利引き下げは現在の状況では心理的に重要な効果をもたらすだろう」と分析。「マイナス金利は不合理な概念ではない。ただ、ECBが望むような効果が実現するかどうかは分からない」とくぎを刺した。中銀預金金利がゼロ以下になれば、銀行は過剰流動性をECBに預けることを控え、代わりにその資金を融資に回すことが考えられる。ECBへの預金は1日当たり約8000億ユーロ(約79兆円)に上る。』(上記URLより)

・・・・・・・・えーっとですね、現在欧州が直面している問題というのは金融市場の短期的な問題としてはリスクオフという名前の信用収縮でございまして、信用収縮している時に上記のような「中銀預金金利がゼロ以下になれば、銀行は過剰流動性をECBに預けることを控え、代わりにその資金を融資に回すことが考えられる」という効果が起きるのでしょうかという設問に関しては2001年に実施した日本の量的緩和政策およびそれに付随するゼロ金利政策を見れば答えは出ている筈でして、信用収縮だったりバランスシート制約があってそもそも金融機関がリスクテイクできないという状況下では、そもそも金利が高いから貸出をするとかそういう状況にはなり得ない訳でございまして、市場取引がそれによって活性化する訳ねえだろと存じます次第。

いわゆるポートフォリオリバランス効果が働く為には、そもそものバランスシート制約が無い(または極めて少ない)状況であることが前提として必要であり、銀行間取引にしろ融資にしろ、そもそも信用収縮があったりバランスシート制約があったりする時にはそのそもそも論となる問題が解消されない限りにおいてどんな餌を吊るしてもポートフォリオリバランスは期待されるような効果を発揮できないでしょという話でして、日本の例もそうですし、大体からしてサブプライム問題発生以降の米国金融市場だってそんな感じだった訳で、今さらECBは何を言ってるんだという感じですが、まあ報道がそもそも正しいのかどうかがワカランチ会長なのであまり罵詈雑言を放つのは避けますね(^^)。


それにですな、そもそも金融市場が信用収縮モードになっている時というのは短期金融市場における市場機能が低下している訳でして、金融機関のファンディングを円滑に回すためには中央銀行が短期金融市場のカウンターパーティーとなって取引を回さないと行けないのでありまして、それこそFEDも日銀もそういう形での短期金融市場への関与を行っている訳ですが、当座預金金利ゼロだのマイナスだのにして流動性を中央銀行に持たせない政策を実施したら、中銀が短期金融市場のカウンターパーティーとして取引を回すのが却って困難になり、危機下における短期金融市場というか金融機関のファンディングが更に機能低下する訳で、却って危機を拡大するリスクを抱えますがなという事になりますわな。

大体からして信用収縮しててバランスシート制約のある中で中銀の当座預金に所要準備以上置くなというような話に成ったら、金融機関は何をするかと言ったら国債買うか安全な海外の国債(まあ今だったら米国債とか英国債とか日本国債とかでしょ)しかしない訳で、単に安全国と見なされる国の国債金利が低下してそれこそこっちが大迷惑というだけの話でありまして、まあアホな事は勘弁して欲しいものだと思うのですけれども、さすがにこの程度の話ECBは普通に判っていると思うので、単なるポジショントーク含めた煽りを受けて記事にしてるという感じだとは存じますがねえという所で。

あと、利下げは景気判断に基づく話で金融危機対策とは実は別問題だと何度いったら判るのやらという感じではございますけどね(金融危機が実体経済に悪影響を与えるから利下げというのはまあ有るけど)。

#ということでまあ短期市場の皆様におかれましては何を今さら話のメモで誠に恐縮至極


○今日も今日とてバーナンキ議長会見ネタ

まあ四半期末ですので勘弁ということで(謎)。

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf
今朝見たらFINAL版になっているのでページに関してはFINAL版のページで参ります。

#前回の経験からして初稿とFINALの違いは改行処理が違うのと、フォントの大きさが違うのとであって、文面は同じだと思いますのであまり問題は無いと思います

・緩和が足りないぞゴルァという質問は結構多くて・・・・・

昨日引用したちょっと後になりまして、質疑の8ページ(ちなみに初稿版だと9ページになります。初稿だと26ページ組で最終稿は22ページ組と若干ページの総量が減るのだ)からになります。

『BINYAMIN APPELBAUM. Binya Appelbaum, New York Times. I’m looking at the projections you all released today that show that unemployment will be between 8 and 8.2 percent at the end of the year. You told Congress earlier this month that the defining factor in your decision about whether to do more would be whether unemployment was coming down. That’s barely a decrease. And I guess I’m struggling to understand why, in that context, you are not doing more now, particularly when you say that you can do more and that you would do more if it wasn’t happening.』

SEPでの見通しによれば今年末の失業率は8-8.2%となってますが、おっちゃん議会証言でも失業率が低下するかどうかってのが今後の追加緩和を検討するファクターとか言っている訳で、いまこの状況こそがその追加緩和検討時期じゃねえのかやる気あんのかゴルァ、とは言ってませんがまあ非難チック。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, first of all, again, we are-we did take a substantive step today by extending the maturity extension program to the end of the year. Again, I think that’s a meaningful additional step.』

いやいやツイストの延長は重要なステップですよとさっきも言ったじゃないですか、と言っても当然許してくれるわけもなく。

『BINYAMIN APPELBAUM. The projections included that step, right?』

予想にこのツイスト延長を織り込んでこの見通しだったらやっぱり足りないじゃねえかというような意味での質問でございますな。

『CHAIRMAN BERNANKE. It depends on-each individual has their own path of optimal policy, so we’ll provide more information about that in the minutes. But-and again, we’re prepared to do more. We have to get, I think, further information about the state of the economy, about where things are going, about what’s happening in Europe.』

まあそれについては各個人の考えですのでと逃げを打ちつつ、いや今後の準備はしていますし、欧州情勢見ながらそこは検討しています、という話をした訳ですが、この後逆さ絵おじさんに急に麿が憑依されたようで、白川モードキタコレの巻がこの次。

『I guess I would add to that, though, that, you know, each of these nonstandard programs does have various costs and risks associated with it with respect to market functioning, with respect to financial stability, with respect to the exit process, and so I don’t think they should be launched lightly.』

非伝統的政策にはリスクとコストがありますだの、市場機能の問題だの金融の不均衡問題だの、出口政策の問題だの、だから慎重に導入するんですだのどう見ても白川方明です本当にありがとうございましたという麿憑依キタコレという発言にワロタ。

いやね、まあ非伝統的政策を実施する際には当然ながらこの手の事を考えながら行うのは中央銀行的には当たり前の話なのですが、FEDの場合に関しては(以下書き漏れ分追記:)元々こういう出口だの副作用だのの話をスルーして、「とりあえず大きな問題もなさそうだったら効くか効かないか判らないし出口政策どうするのか判らんけど突っ込んじゃえ♪」的な雰囲気が昔からあったので麿モードになって普通の中央銀行が言うような話を逆さ絵先生がおっぱじめたのには意外感があります。

『I think there should be some conviction that they’re needed, but if we do come to that conviction, then we’ll take those additional steps.』

ということで、まあ追加緩和に関しては「より確信が必要」というお話でありました。


・企業金融オペみたいなのの検討とな

ちょっと飛んで18ページから。

『GREG ROBB. Thank you, Mr. Chairman. Greg Robb, MarketWatch. I just wanted to get back to lending and credit. The U.K. has started a program where the Bank of England is going to make lending to banks only if they lend to households and companies. Is that something the Fed has under consideration? Would that be something you’d start here?』

そういやネタにしてませんが(大汗)、BOEが昔々の日銀がやった企業金融支援貸出制度のような貸出制度を実施して企業金融や家計への信用供与しましょうよ策を導入した件についてね。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, we’re very interested in it, and we’re certainly going to follow it. The details are not yet available. And I think it should be noted that it’s not just a Bank of England program, but it’s joint with the British Treasury. So the question-one question might be, how much of a fiscal component is there? Is there some kind of fiscal subsidy being included there?』

ということで、単体では出来ない話なのですがネタとしては考えておりますがなという話。

『But we are looking for-as you know, throughout the crisis, we’ve looked for new programs, new ways to help the economy. And this will be a type of thing that will be on the list of programs that we look at.』

んな訳で、まあFEDもそんなのやるのかよ日銀状態じゃなと胸熱の展開。


・またまた麿モード

どうも「追加やらねえのかコノヤロー」という質問の度が過ぎると急に麿の生霊が憑依するような仕様が逆さ絵おじさんに追加されたようで誠に香ばしい事でございます(^^)。

『GREG IP. Hi. Greg Ip of the Economist. You have an inflation target of 2 percent, but your projections show inflation centered below 2 percent over the medium term. I was wondering if you could explain why. And secondly, you said that the Fed is prepared to do more if necessary. Could you briefly comment on what sort of form additional action might take? And, specifically, what are the relative costs and benefits of doing more QE versus more maturity extension?』

そもそも物価見通しだって中期的に中心が2%切ってるじゃねえかとか中々いい感じで突っ込んでいるのですが、追加の具体例コメントしろだのMEPとQE3のプロコン比較しろだの中々アレですな。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, the-in terms of the inflation forecasts, again, I think it should be said, as a preliminary point, that economic projections have a lot of uncertainty about them. We talk about that uncertainty in the survey of economic projections. So we shouldn’t take a false sense of precision from those numbers.』

物価についてはまあ不確実性なども考えつつこの数字ですが。

『That being said, there is an issue about whether or not there’s sufficient stimulus in the economy. As I mentioned earlier, one problem is that we are now at the zero bound, and that the types of unconventional programs that are available are-we know less about them, they have various costs and risks, and, for that reason, you may get a different amount of financial accommodation in this kind of regime than you would in one where short-term interest rates can be varied freely. So I think that’s really a critical issue.』

非伝統的政策ってあまり試した事が無いのだから色々とコストとかリスクについて慎重に考えて政策を突っ込まないといけないとかどこの麿だと。

『Now, in terms of the costs, I would list, briefly, large asset purchases increase the size of our balance sheet and therefore ultimately will make exit a more extended process.』

バランス拡大しすぎると出口政策に時間が掛かるキタコレ。

『Large asset purchases-which means that the Fed owns a larger share of a particular type of asset-may have implications for market functioning, which in turn might affect the ability of the Fed to have stimulative effects on the economy.』

『There are some financial stability issues that we are monitoring and that have to be taken into account. So any kind of assessment of appropriate policy must look both at the outlook for the economy and for-and at the costs and risks associated with new measures, new steps that might be taken.』

第二の柱までキタコレという感じで、どう見ても白川方明アゲインです本当にありがとうございました。

『That being said, again, I think at this point, we still do have considerable scope to do more, and we are prepared to do more. We’ll continue to monitor the economy and see how things evolve. And if-again, we’re looking primarily at the labor market in this respect-if we’re not seeing a sustained improvement in the labor market, that would require additional action.』

で、必要ならば実施しますよ発言というのがここに来るのだ。

『In terms of balance sheet actions, we are unlikely to do more maturity extension for a while because we have taken that about as far as we can. So we would have to take other types of steps in order to add to the amount of stimulus in the economy.』

あと、MEPについては弾切れの為今後はしばらくできませんよというはなしを付け加えています。

#と言ったところで本日は勘弁

トップに戻る




2012/06/27

○バーナンキ議長会見ネタである

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf
現状で見れるのはPRELIMINARY版ですので、ページとかはFINAL版(しばらくするとリンク先のファイルがFINAL版に差し替えになります)と違うのは勘弁。


・緩和が足りない系の質問が早速飛んでくる

実質2番目の質疑はロイターのMark Felsenthal記者の質問から。5ページ目からになります。

『Mark Felsenthal: Mark Felsenthal with Reuters. Mr. Chairman, many analysts have characterized today's step as somewhat modest. Your own outlook has a much lower GDP projection. The unemployment rate in your outlook is--shows possibly no improvement at all in the unemployment rate through the end of this year. The program itself is smaller and of shorter duration than the original Operation Twist. Given this weaker outlook, why such a modest program? And when you say you are prepared to take further action, which is a stronger characterization than in your last meeting, does that mean you are prepared to do a full-on new asset purchase program?』

ということで、景気見通しをあんだけ下げているのに今回の措置がしょぼい件について何でですねんという早速のクレクレキタコレという感じで甚だお洒落。しかし今回のオペレーションツイストの規模が元々の規模より小さいのはどういう事じゃと言われても弾が無いものはシャーナイじゃないのよと思いますけどねえ。

逆さ絵おじさんのお答え。

『Chairman Bernanke: Well, there has been a great deal of economic news since our last meeting. The incoming data were somewhat disappointing, but not entirely clear how to read them. We had issues with weather and seasonal adjustments and other factors. Meanwhile, Europe has had additional problems. We've seen some of those effects in financial markets. So, I think, there is some case to be made for making some additional judgments about where the economy is going.』

最近のデータは失望的ですが、一時的要因や特殊要因の精査が必要というのはこの前の議会証言でも発言していたことですので、まあそう来る罠とは思います。んでもって欧州問題に関してもまだ少し様子見とか、まあ今はQE3実施という文脈で言えば様子見モードというお話のようで。

『That being said, the step we took, the extension of the Maturity Extension Program, I think is a substantive step and it will provide some additional support. And yes, additional asset purchases would be among the things that we would certainly consider if we need to take additional measures to strengthen the economy.』

で、今回のMEP(って名前なのか)は十分なステップで、今後必要ならばやりますおという答えで済ませておりますな、うんうん。


・金融政策にはもう限界来てませんか系の質問

次の質疑。

『Jon Hilsenrath: Jon Hilsenrath from the Wall Street Journal. Mr.Chairman, I'd like to ask you to respond to a different set of criticisms. This criticism which you hear from Capitol Hill and Wall Street and different places is that the Fed has already pushed interest rates to an extraordinarily low level, a historically low level and that there isn't anything more that the Fed can do to help the recovery.』

キタコレ。

『That criticism is that the Fed at this point should stand down and let Congress or the White House attend to the economy's ailments or let market forces attend to the economy's ailments. What do you think of those arguments and how would you respond to them?』

でまあその質問に対してですが。

『Chairman Bernanke: Well, as I've said many times, monetary policy is not a panacea.』

金融政策は万能薬じゃない発言キタコレ。

『Monetary policy by itself is not going to solve our economic problems. We welcome help and support from any other part of the government, from other economic policy makers.』

まあそうですな。

『So, collaboration is--would be great.』

まあ逆さ絵おじさんが言うとおっしゃる通りとなるのですが、麿が言うと微妙に責任逃れチックに受け止められるというのは残念ながらまあそういう所でしょうなあとか思いますが関係ないですかそうですか。

『I wouldn't accept the proposition, though, that the Fed has no more ammunition. I do think that our tools, while they are nonstandard, still can create more accommodative financial conditions, can still provide support for the economy, can still help us return to a more normal economic situation.』

FEDが弾切れという指摘には全力で否定する所が逆さ絵クオリティ。

『That being said again, any other support that is forthcoming, any other economic policies that are undertaken that are helpful in terms of making our economy stronger are welcome. But I do think that monetary policy still does have some capacity to strengthen the economy by easing financial conditions.』

まあやってますよ感を見せながらこういうと何となく説得力があるので、どこぞの麿様におかれましても見せ方を工夫するという事が大事ではないかと思ったりもしますが、恐らくハッタリ成分が不足しておられるので中々難しい面もあろうかと思います。

・・・・とまあそれだけで片付けるのもアレでございまして、今回冒頭からの質問をここまで見てて思ったのは、段々質問のトーンが辛辣になってきているなというのがございまして、QEだツイストだとやっているけれども労働市場の回復は遅いですよねという状況が続く中で、段々質問する方と申しますか、世間様が逆さ絵おじさんに対してイラっとさんなって来ているんじゃネーノというものを感じるあたくしでした。

つまりですな、確かにまあ白川麿の見せ方もうちょっとハッタリ効かせたらとは思いますけれども、そもそも金融緩和やら信用緩和チックな施策まで含めた包括緩和政策を散々っぱら実施して限界的に金融政策の効きが悪くなってきているので、中々言うても説得力ががががという面があり、米国に関しても徐々にその追加金融緩和政策の効きが悪くなってきて、その結果として記者会見の質問が段々キツめになってきているんじゃないかなという気がするんですよね。まあ気のせいかもしれないけど。


・資産価格ルートへの言及

次の質問はロムニー氏の「QE2の効果は相対的に小さかった」批判に関連して。

『Zach Goldfarb: Thank you. Mitt Romney recently said that QE2 had a relatively little impact on the economy. He said that was in part because of the President's policies, and he said that QE3 was unwarranted and could have negative effects. Do you agree that QE2 had little effect on the economy? Do you think the President's policies has had an effect on the effectiveness of monetary policy? And do you think it's appropriate for a presidential candidate to comment on the future path of monetary policy?』

最後の質問とかどう見ても地雷です本当にありがとうございましたという感じですが。

『Chairman Bernanke: Well, I just say first that we think that both of the asset purchase programs, so-called QE1 and QE2, did have significant effects on asset prices and financial conditions and although there were certain problems in transmission for example, the housing market has not been as responsive as it's been in some times in the past.』

ということで、この話はいつも逆さ絵おじさんが行っていますが、かならず言及してくるのが資産価格ルート。どうもどこぞの麿様におかれましてはこの資産価格ルートを言及するのがお好みではなさそうな感じをひしひしと発言等を見ると受けるのでありますが、非伝統的政策を実施するという文脈で言えば、既に「猫の手も借りたい」状態であるわけでございまして、その面で言えば伝統的政策で考えた場合に猫の手であるかもしれない資産価格ルートについても重要ではないかと思える次第。

もちろん、あまり資産価格資産価格言ってると第二の柱的問題もさることながら、出口政策時に資産価格のバックラッシュが起きるリスクを高めるという意味で、まあ逆さ絵おじさんって出口政策あまり真面目に考えてないだろ(実はこの後にその手の話が出てくるので必ずしもそうではないと思いますが、今日はネタにする時間なし)とか思うので、今は逆さ絵おじさんの方が見栄え良いけど将来は分からんがなとは思いますけどね。

『We do think that they were both effective in providing support for the economy and in particular, so-called QE2 ended what looked to be an incipient deflation problem when we first introduced it. So, I do think those have been effective and as I said to Mr. Hilsenrath, we think that these kinds of programs can still provide additional support. 』

またQE2はデフレーション入りのリスクを回避しましたというのはまあそうでしたねという所で。

『With respect to the rest of your questions, I just want to reiterate that the Federal Reserve is nonpartisan, we are very serious about taking our decisions based on purely economic grounds without political considerations, and we'll continue to do that.』

>we are very serious about taking our decisions based on purely economic grounds without political considerations

はあそうですかという感じもしますが、まあこれはこう答えるしかないですね。


・ポートフォリオリバランス効果への言及

とか何とか引用しているうちに8ページ目に突入しますが。

『Jim Puzzanghera: Thanks. Jim Puzzanghera with the LA Times. Long-term interest rates, mortgage rates are already at historic lows. How much more help can an extension of Operation Twist do and--to lower interest rates?』

既に長期金利もモーゲージ金利も歴史的な低金利水準になっているのに、オペレーションツイストで金利を下げて何の効果がありますねんという身も蓋もない質問ですが、身も蓋も無い質問なだけに答えの方が結構長かったりする。

『Chairman Bernanke: Well, the interest rates are quite low and they're being pushed down more by safe-haven flows and other factors.』

足元での金利低下には安全資産への逃避の動きや他のファクターもありますねと仰せ。

『That being said, I think we can lower interest rates more.』

逆さ絵おじさん「That being said」ってのが良く出てくるのですが、この会見読んでて1つ勉強になりました(→英語力がアレなのがばれますかそうですか)。

『But beyond that, Operation Twist and asset purchases work also through other channels.』

ほほう。で、その別の経路とは・・・・・

『In particular, by acquiring securities in the market and bringing them on to the Fed's balance sheet. We essentially induce investors to move into substantive securities. So for example, an investor who sells a Treasury security to the Fed may end up buying a corporate bond instead and so the effect will be to lower corporate bond rates and corporate spreads or a bank may, having sold its Treasury securities, may decide to make a loan instead. So, it's not just the effect on the long-term interest rate, but there's a broader set of effects that feed through other asset prices, other interest rates, other spreads, and provide a broader ease in financial conditions which is supportive to the economy.』

という事で、いわゆるポートフォリオリバランス効果について説明しているのですけれども、日本の場合このポートフォリオリバランス効果って本当に出たのかはかなり怪しげな部分がありまして、現在の米国でもバランスシート調整の途上な上に、ボルカールールだとか言って金融業のレバレッジ規制が強化され、流動性規制やら資本賦課の引き上げやらというような流れになって、まあ要するに金融業全般にデレバレッジ圧力が掛かりやすい中でのポートフォリオリバランス効果って本当にワークするのですかという風に直感的には思うのですよね。

たぶんね、日本でもいわゆるポートフォリオリバランス効果が云々ってのが体感的にそうかなと思うようになったのって、金融機関の資本問題とかが一応の目途がついて、金融機関がそれなりにバランスシート使ってリスク取って云々みたいな動きができるような状態になってからじゃないかと思うので、そーゆー意味からしてこのポートフォリオリバランス効果というのは(まあ言うのはタダですから言う事は否定しませんが)どうなのよという気がしますがな。

もし緩和的な金融環境によるポートフォリオリバランス効果を出して〜という話であれば、足元で進行しているプルーデンスウィングの規制強化じゃオリャーというのを一旦停止するとかしないと規制によるデレバレッジの方がやはり効くようになると思うのですけどね。

という所でまあ時間と量の関係で本日はここまで。ちなみに全文26ページ中の8ページまで来ましたが、この先はオモシロ質問とどうでも良い質問が混在しているので、どうでも良いのはスルーしつつオモシロ質問をネタにしたいと思います、はい。

トップに戻る



2012/06/26

○バーナンキ議長のFOMC後の会見である

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120620.pdf

まあ色々とネタはあるのですが、今回の質疑見てると「最初はハトな話をしていたけれども途中からはやや麿成分のような物も入る」という内容になっていたのがへーという感じなのですが、そもそも質問のトーンが全体的に「何でQE3をやらないのか」という非難成分が強かったりしておりまして、その一方で今回のFOMC声明文やSEPをみますと明らかに経済情勢の現状認識や先行き見通し、金融政策の先行き見通しに関して前回からハト派寄りになっているという面がありますので、そういう事を考えますと声明文などとのバランスを取って、かつ市場の過剰なクレクレ要求に適当に水をぶっ掛ける事によって、先行きのFRBの金融政策運営に対するフリーハンドを確保するというのがあるんでしょうなあと思うのでありました、って昨日も書いたけど。

前回の会見ではどちらかと言うと経済見通しその他はややタカ化している面があり、特にSEPでの政策金利見通しとか見てるとガイダンス文言との整合性が全然とれていないじゃないのというようなツッコミが会見で来るような状態でしたけれども、それに対してハト的な発言をすることによってバランスを取る(逆に言えばあの会見が無かったらFRBが楽観に傾いたという事で時間軸が急速に短くなる可能性があった)という事をしていたと言う話になるんだろうなあ、とまあ今回の会見でのトーンを見ながら前回FOMCに関するインプリケーションを改めて整理する中で思うのでございます。つまりバーナンキ議長は基本的には先行きの金融政策に関して、基本的にはバランスシート調整途上だから景気が中々力強く上向かないというのをベースラインに置いた上で、先行きの金融政策に関しては極力フリーハンドを確保するようにという配慮をもって会見を運営し、市場が先行き金融政策に決め打ちをすることによって「自分の尾を追う犬」になるのを避けようとしているなあとか思ったのですけれども、どうでしょうかね???

という事で寝坊に付き時間が無いので最初の質疑におけるハト全開モードを引用します。質疑冒頭になりますCNBCのSteve Liesman記者の質問(上記URLで今現在閲覧できる初稿では4ページ目になります、FINALになると若干ページが詰まるので少し変わるかもしれません)から。

『Steve Liesman: Steve Liesman, CNBC. Mr. Chairman, looking back on the last four years of Fed policy, I think it's probably fair to say it has been bold and yet at the same time halting. You did QE1 and then you stopped and you did QE2. You did Operation Twist and you told us it was going to end in June. Now you've extended it. How would you respond if several years from now, a young MIT Graduate student came forward and said, "You know what the problem with that policy was during this period is it was too incremental and that the reason why the economy underperformed was because of that incrementalism." And what do you think the dangers are right now that today's action is also being too incremental?』

まあ要するに「今回はツイストの延長をしましたが、よくよく考えますと金融危機以来のあんさんの金融政策って出したり引っ込めたりの連続でちぐはぐですよねえw」という質問でございますかいな。

『Chairman Bernanke: Well, of course, you know, we cut the federal funds rate in a continuous fashion until December of 2008. And since then, we've been operating with nonstandard monetary tools including asset purchases and extension of maturities. By their nature, these tend to be lumpy. We haven't done them in a continuous way.』

金利を下げ切った後は非伝統的政策を色々と実施してまして、まあ仰せのように不格好な運営にも見えますわなと。

『But our view of the effects of these programs on the economy is that the total stock of outstanding securities in our portfolio is what determines the level of accommodation that the economy is receiving. So in that respect, it wouldn't be really a start and stop rather, whenever we have stopped purchasing the level of accommodation that was already in the system remains there until conditions warrant further action.』

で、ここで資産買入のストックビューに立脚した説明をしていまして、ストックとしての買入残高はそれ自体が金融緩和効果を生むので、緩和を追加したり止めたりしているようにみえるが残高を維持しているという文脈では金融緩和を継続しており、追加の措置を行うのはその時の情勢判断によって必要であるという時に行っているのですと。

『Now,underlying all this, of course, is the fact that the outlook has changed. 』

キターーーーーーーーーー(・∀・)!!!!

『Like many other forecasters, the Federal Reserve was too optimistic early in the recovery about the pace of recovery.』

我々は回復のペースについて楽観的過ぎたキタコレという感じですが、一方で米国が堅調で新興国が減速気味だけどダイジョーブとか言ってたどこぞの中央銀行涙目の展開。

『And we've had to add additional accommodation going forward as we have seen in fact that the headwinds have kept the recovery from being as strong as we would like. But again, by the nature of these unconventional tools, they are--tend to be more discreet in their size but they continue to have accommodative effects even after the pattern of purchases has ended.』

でまあ同じ人が質問しているのでそこまで引用して置くだよ。

『Steve Liesman: Don't you worry about incrementalism now?』

『Chairman Bernanke: Well, we've taken a step today which is a substantive step which will provide additional accommodation for the economy. And moreover, we have stated that we're prepared to take further steps if necessary to promote sustainable growth and recovery in the labor market. So, we are prepared to do what is necessary. We are prepared to provide support for the economy.』

ということで、声明文に今回加えられた「必要ならば更に適切な行動をとる」を更に強いトーンで主張するという形でハト風味を出した訳でございますな。

んでもって実はここから先の質疑はこのハト風味アピールに対して逆に「んな事言ってるけどおまいら出し渋りしてんじゃネーノ」という言ってることだけ威勢がいいじゃねえか的な質疑が続いておりまして、中々味わいが深いのですがそれは後日という事で。

トップに戻る




2012/06/22

○詳しくは後日だがBOE貫録のクオリティ

キング総裁講演ネタがそのままスルーになっていて誠に面目ない(これは論点が色々あるので是非ネタにしたいのだが)のですが、その間にこのような素敵な物件が。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1206.pdf
MINUTES OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE MEETING
6 AND 7 JUNE 2012

今月頭のMPCの議事要旨が出たのですが、まあ今回は何と言っても『The immediate policy decision』の最後の方が白眉中の白眉。

『31 Finally, the Committee discussed further asset purchases. The Committee agreed that asset purchases remained an effective tool for lowering a range of market interest rates, supporting asset prices and so nominal demand. Nevertheless, a significant current impediment to the economic recovery in the United Kingdom lay in the interaction between the financial threats emanating from the euro area, their implications for bank funding costs, and consequently for lending to businesses and households.』

欧州問題による金融市場の緊張が金融機関のファンディングに悪影響を与え、それが結果として企業や家計に対するクレジットアベイラビリティへの悪影響となる、というロジックで、これはネタにする予定の(すいません)キング総裁講演で示された「企業向け金融推進の為の新たなオペレーション」の必要性という話にもなるのだ。

『This might have contributed to the rise in interest rate spreads on mortgages and loans to small and medium-sized businesses in recent months, despite the extension of the asset purchase programme in February. Other complementary policy measures that the authorities might take could be better suited to mitigating these problems than asset purchases on their own, and some members expressed a wish for the MPC to consider additional policy tools.』

『In this context, the Governor informed the Committee that initial discussions were underway with the Treasury on possible measures to ease banks’ funding costs and enhance their ability to lend.』

つーことでして月曜にはキング総裁講演ネタを投下しないといけませんね。

『32 While acknowledging that further stimulus was likely to become warranted at some point, most members noted that there were several key events occurring over the coming weeks that could have a material bearing on the situation in the euro area and that there was merit in waiting to see how matters evolved there before the MPC reached a conclusion on whether to add any further monetary stimulus.』

このMPCは7月6、7日に行われたものですので、ギリシャ総選挙やら何やらの結果が出る前で、とりあえずはwait and seeの方がメリットあるじゃろという見解が出ている訳ですな。

『That would also allow time for an assessment of any policy recommendations made by the FPC and for the possibility of other policy tools, designed to ease bank funding costs, to be explored.』

『In any event, the reduction in market interest rates that had occurred over the month had already provided some additional monetary stimulus. And some of these members remained concerned about the possible persistence of inflation at above-target rates.』

とは言え物価が高止まりという問題も指摘されているとかいろいろと大変でございます。

『33 Some other members judged that there was already a sufficiently compelling case for providing a further monetary stimulus in the form of some additional asset purchases immediately.』

という事で資産買入の拡大を提案する人も居た訳ですが・・・・・・・・

『34 The Governor invited the Committee to vote on the propositions that:

Bank Rate should be maintained at 0.5%;

The Bank of England should maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £325 billion.

Regarding Bank Rate, the Committee voted unanimously in favour of the proposition.』

採決は「現状維持」についてで、まあ政策金利0.5%は良いとしまして・・・・・・・

『Regarding the stock of asset purchases, five members of the Committee (Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale and Martin Weale) voted in favour of the proposition. Four members of the Committee voted against the proposition. The Governor, David Miles and Adam Posen preferred to increase the size of the asset purchase programme by £50 billion to a total of £375 billion. Paul Fisher preferred to increase the size of the asset purchase programme by £25 billion to a total of £350 billion.』

資産買入に関しては買入拡大派が4名で現状維持派が5名という大変に素敵な結果になっているのですが、何がお洒落って「voted against the proposition」の次に燦然と輝く「The Governor」の文字でありまして、総裁の見解も貫録の否決(しかも総裁と副総裁2名(=マネタリーポリシーウィングの副総裁がCharles Beanで、プルーデンスウィングの副総裁がPaul Tucker)の見解が違う・・・)と言うのが英国クオリティで実に素晴らしいと思う次第で、先般のマンションハウスでのキング総裁の講演が全力で景気に弱気で追加金融緩和をやるべしという全力の講演に繋がったのですねとまああたくしだけ一人合点しておりますが、キング総裁講演については月曜にでも(週末はバーナンキの記者会見ネタも追加されるものと思われる(あたくしは英語力がアレなのでテキスト起こしした物が無いとあばばばばーなのです)ので気が向いたら土日に更新するかもしれないが期待しないでちょ)投入したいと存じます。

トップに戻る



2012/06/21

お題「FOMCである」

毎度おなじみ寝起きシリーズ(−−;

○声明文は景気判断と先行き見通しを微妙に下げ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120620a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120425a.htm(前回)

・第1パラグラフ:景気の現状認識

『Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that the economy has been expanding moderately this year. 』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that the economy has been expanding moderately. 』(前回)

と、現状認識の基調判断は同じですが・・・・・・

『However, growth in employment has slowed in recent months, and the unemployment rate remains elevated.』(今回)
『Labor market conditions have improved in recent months; the unemployment rate has declined but remains elevated.』(前回)

労働市場の認識に関して今回は改善がスローであるとしております。

『Business fixed investment has continued to advance. Household spending appears to be rising at a somewhat slower pace than earlier in the year.』(今回)

『Household spending and business fixed investment have continued to advance.』(前回)

企業の固定資産投資は引き続き拡大として判断を据え置いていますが、家計支出に関して拡大しているとしたものの年初よりは若干遅いペースとこれまた引き下げています。

『Despite some signs of improvement, the housing sector remains depressed.』(今回)
『Despite some signs of improvement, the housing sector remains depressed.』(前回)

住宅セクターに関する判断は同一文言。

『Inflation has declined, mainly reflecting lower prices of crude oil and gasoline, and longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation has picked up somewhat, mainly reflecting higher prices of crude oil and gasoline. However, longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

インフレに関してですが、今回は低下しているのですけれども、その要因に関しては前回と同様に原油価格とガソリン価格の影響によるものという事で、まあこの辺に関しては足元の振れは一時的要因ってえ感じにはなっています(がSEP見ると微妙に違うのですがそれは後で)。


・第2パラグラフ:先行き見通し

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up very gradually.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up gradually.』(前回)

最初の一文はいつも同じなので良いとしまして、経済の先行き見通しの基調判断について経済は向こう数四半期間モデレートに拡大し、その後徐々に「大変」緩やかにピックアップしていくと「very」っつーのが入って強調しているのですが、「gradually」を強調するという事はこれって先行き回復ペースの見通しを下げているという事です、というのはその次を見れば判ります。

『Consequently, the Committee anticipates that the unemployment rate will decline only slowly toward levels that it judges to be consistent with its dual mandate.』(今回)

『Consequently, the Committee anticipates that the unemployment rate will decline gradually toward levels that it judges to be consistent with its dual mandate.』(前回)

失業の改善について、「will decline gradually」だったのが「will decline only slowly」となっていて見通しが下がるという残念な結果ですが、これまたSEPにその辺反映されていますです、はい。

『Furthermore, strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook.』(今回)
『Strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook.』(前回)

世界の金融市場の緊張は経済の見通しに対して顕著なダウンサイドリスクをもたらすって話は同じですが、「Furthermore」というのを入れて強調しているんですかねこれ。


『The Committee anticipates that inflation over the medium term will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(今回)

『The increase in oil and gasoline prices earlier this year is expected to affect inflation only temporarily, and the Committee anticipates that subsequently inflation will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(前回)

これはまあ前回の見通しが見事に結果として当たりましたと言う事ですが、原油やガソリン価格の上昇による影響は一時的ですので云々という文言を削除しましたな。基本見通しはカワランチ会長。


・第3パラグラフ:金利政策およびガイダンス文言

ガイダンス文言の中でバランスシートに関する話をするとか大穴予想をしてみましたが、大穴だけにやはり外れましたな(^^)。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy. In particular, the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』(今回)

このパラグラフは前回と完全一致です。


・第4パラグラフ:バランスシート政策など

『The Committee also decided to continue through the end of the year its program to extend the average maturity of its holdings of securities. Specifically, the Committee intends to purchase Treasury securities with remaining maturities of 6 years to 30 years at the current pace and to sell or redeem an equal amount of Treasury securities with remaining maturities of approximately 3 years or less.』(今回)

『The Committee also decided to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September.』(今回)

まあここの辺りは前回と比較すりゃ良いってもんでも無いですが(^^)、まあ要するにいわゆるオペレーションツイストの半年延長なのですが、最初この文言見てて「sell or redeem」の償還ってナンジャラホイと思ったのですが、これは(これまた詳しくはこの後に書きますが)オペの概要みたら判るのですけど、FEDの現在の手持ちの中で年内に償還が来る債券があるのでそれの再投資もオペレーションツイストに含めるという話のようですが・・・・・

『This continuation of the maturity extension program should put downward pressure on longer-term interest rates and help to make broader financial conditions more accommodative.』(今回)

毎度おなじみの事ですけれども、この政策の目的として「長期金利に低下圧力を掛ける事によって全体的な金融環境をより緩和的にする」という話をしていますが、この理屈っていつもながらロジック的にはかなり怪しいなあとは思いますけどね。

大体からしてこの理屈からしたら売りを入れている短い所は同じ理屈で金利が上昇して、イールドカーブ足元の金利が上がるんですがという気もしますし、ついでに言えばこういう派手な事を中央銀行するのって国債発行部門が行っている国債管理政策に全力で介入しているんじゃネーノという論点もあると思うのですがその話はいずれ後日にでも。

『The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities.』(今回)

『The Committee is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction.』(前回)

ということで、引き続きエージェンシー債の償還再投資は継続しますという話をしているのですけれども、前回はここに「国債の償還再投資」の文言が入っていて、それが今回抜けているのは何ですねんという事ですが、それは先ほどあたくしが「・・・・・」と申し上げましたように、国債の償還再投資という従来から実施している事に関してどさくさに紛れてオペレーションツイストに入れるという上げ底プレイをしらっと行っているのがお洒落な所でありまして、FEDの狸成分も更に強まっていますなあとか思うのはあたくしの性格が悪いからですかそうですか。

『The Committee is prepared to take further action as appropriate to promote a stronger economic recovery and sustained improvement in labor market conditions in a context of price stability.』(今回)

『The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』(前回)

今後に関する文言については「is prepared to take further action」という表現にして、まあサービス成分を高めましたねという所ですな、うんうん。


・第5パラグラフ:票決

ラッカー総裁貫録の反対票ですがこれは毎度のラッカークオリティ。まあ前回と比較するような話では無いので前回分の引用はしませんけど。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Dennis P. Lockhart; Sandra Pianalto; Jerome H. Powell; Sarah Bloom Raskin; Jeremy C. Stein; Daniel K. Tarullo; John C. Williams; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who opposed continuation of the maturity extension program.』(今回)

前回の反対理由はガイダンス文言に反対でしたが、今回はオペレーションツイスト延長に反対と。



○オペレーションツイスト延長の概要についてはこちら

最初にFRBのトップを見たらここの「Maturity Extension Program and Reinvestment Policy」の日付が6月20日になっていたのでステートメントを見る前に「ああ延長来たわ」と思ったのはあたくしでございます(^^)。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/maturityextensionprogram.htm

『Under the maturity extension program, the Federal Reserve intends to sell or redeem a total of $667 billion of shorter-term Treasury securities by the end of 2012 and use the proceeds to buy longer-term Treasury securities.』

先ほど申し上げたように、実はこの中には従来から行っている償還再投資分が含まれているというセコいプレイが混じっているのですな。つーか最初見た時に「redeem」だったら資金供給じゃねえかとか勘違いしそうになったのはここだけの話(苦笑)。

『This will extend the average maturity of the securities in the Federal Reserve’s portfolio.』

まあそうですな。

『By reducing the supply of longer-term Treasury securities in the market, this action should put downward pressure on longer-term interest rates, including rates on financial assets that investors consider to be close substitutes for longer-term Treasury securities. The reduction in longer-term interest rates, in turn, will contribute to a broad easing in financial market conditions that will provide additional stimulus to support the economic recovery. 』

というのが政策効果の狙いということですが、この説明が微妙にどうなのよという話は先ほど申し上げた通りだったりしますがその件はまた後日にでも(^^)。

FAQはスルーしましてFederal Reserve Bank of New York operating statementってのを。

http://www.newyorkfed.org/markets/opolicy/operating_policy_120620.html
Statement Regarding Continuation of the Maturity Extension Program
June 20, 2012

どの年限にどの配分をするのかという話とかございます。

『Purchases of Treasury securities for the maturity extension program will be distributed across five sectors using the same approximate weights that have been used in the purchases to date:』

『Nominal Coupon Securities by Remaining Maturity*
*The on-the-run 10-year note will be considered part of the 8-to 10-year sector.
6-8 Years :32%
8-10 Years :32%
10-20 Years :4%
20-30 Years :29%

TIPS**
**TIPS weights are based on unadjusted par amounts.
6-30 Years :3%』(ここは本当は表形式ですがテキストに落とす都合上これで勘弁)

とのこと。

『A combination of sales and redemptions of Treasury securities will be conducted to match the amount of purchases over the program. Sales of Treasury securities will take place in securities maturing between January 2013 and January 2016.』

売却するのは2013年1月償還物から2016年1月償還物。

『Securities maturing in the second half of 2012 will be redeemed-that is, allowed to mature without reinvestment-since redeeming maturing Treasury securities has a nearly identical effect on the portfolio as selling securities that are approaching maturity.』

今年中に償還が来るものに関しては売却しないで再投資プログラムに加えるという話です(ツイストを今年中まで行うから)けれども、よくよく考えますとそれは従来の償還再投資プログラムの看板付け替えではございませんかという気がしますけど、「同じような効果があります(キリッ)」と言って微妙に理屈捏ね太郎と化しているのが狸クオリティ。

『Once the maturity extension program is completed, the Federal Reserve will hold almost no securities maturing through January 2016.』

ということで、今回のプログラムが終了する年末には2016年1月償還(つまり今年の末時点で残存3年1か月物)までの国債保有はなくなりますがなというお話ですので、年末時点ではどう見てもツイストの弾切れです本当にありがとうございましたという事ですな、うんうん。



○SEPは見通しを下げておりますな

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120620.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120425.pdf(前回)

ファンチャートとかは引用するスキルがございませんのでまあ見てちょという所ですが。

・1ページ目

ここは数字の羅列なので引用しようと思えばできる部分っすけどめんどいので勘弁(テキストに落とすと見える形に加工するのがめんどい)。

Central tendencyの所を見ますとこんな感じかと。

Change in real GDP:2012年、2013年の見通しが前回対比で下がっていて2014年は割と変わらない
Unemployment rate:全体的にやや上がっている(ので良くない方向)
PCE inflation:全体的にやや下がっていて、Central tendencyの下限とRangeの下限が同じになっている

・2ページ目

1ページ目のグラフ版ファンチャートですけれども、上記の話がよりビジュアルになっていて、GDPに関しては足元は下がっているけれども2014年の所になるとそんなに下がっていないということで「成長ペースの鈍化」という話にはなっているものの、長期的見通しが極端に下がった訳では無いという結論。失業に関しては全体のレンジが凄い上がった訳でも無いのですけれども、中心レンジが上がっているという感じ。インフレに関してはCentral tendencyが下方に幅広になりましたね、という所でしょうな。


・3ページ目

『Overview of FOMC participants’ assessments of appropriate monetary policy, June 2012』ということで政策金利の適正水準の予想ですな。

『Appropriate timing of policy firming』に関しては2015年が2票増えているのですが、そもそも頭数が2名増えていまして、増えた2名が2015年なのか、中の人が転んだのかはまあ判らんですわな。

『Target federal funds rate at year-end』の方ですが、

2012年:現状維持が14名→16名、年内利上げは3名のままですので、新任理事2名はまあ現状維持でしょ。さすがに年末1%を超える予想はいなくなりました。

2013年:現状維持が11名→13名、利上げは6名のまま。水準を1%以上においている人が6名→4名となっているので、まあ政策金利見通しのタカ成分は後退ですね。

2014年:現状維持が4名→6名、1%以下の水準VS1%超の水準の分布は9vs10だったのが11vs8になったのでガイダンス文言との整合性が取れるようになって良かったですねという話ですが、1番高い金利が2.75%から3.00%になっているのもお洒落。

Longer Run:概ね4%〜4.5%のレンジに納まっている(4%未満の人は前回は2名で3.50%と3.75%、今回は3名で3.00%と3.50%と3.75%)のですけれども、4.50%が7名→5名、4.25%が2名→5名(4.00%が6名で同じ)となっていて、その0.25%の変化は何ですねんというのが不思議ちゃんですなあと思いましたです、はい。

#4ページ目以降はチャートそのものの説明文

ということで、まあSEPに関しては見通し下がりましたねという感じになっているのと、政策金利見通しに関しては利上げ時期そのものはあまり変わっていないのですが、おそらく金利引き上げタイミングに関しても暦年ベースは同じでもその中のタイミングが後ずれしている結果として、タカ派のタカ成分が下がったチャートになっており、ややビジュアル的にハト成分が高まったように見えるなあという所ですな。

トップに戻る



2012/06/20

○英国雑感

本当はこっちが先なのですが、詳しく読んでいる時間がががががorzorz

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2012/speech587.pdf
Speech given by Sir Mervyn King, Governor of the Bank of England

とりあえず次のMPCは7月5日なのでそれまでに、というか何とか金曜には投入したいと存じますが、全部で正味6ページのスピーチなのですが、インプリケーションが大杉でこれはこれで時間を掛けたい所ですので今日は勘弁ですすいませんすいません。

基本的には大警戒モードという感じでして、見通しが下がったですよとか追加緩和が必要ですよとか随分と踏み込んだ内容になっていて、まあこれが出たのは先週木曜日なのですが、このスピーチを受けてなのかどうかはよくわかりませんが、木曜の欧州時間から「各国中銀が流動性供給策を出す」みたいな観測報道が出たりした背景になるかと思います。

で、その流動性供給策として昨年12月に枠組みだけ作ってある「Extended Collateral Term Repo Facility」が本日発動予定。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/060.aspx
News Release - Auctions to be held under the Extended Collateral Term Repo Facility

『In his Mansion House speech last night, Sir Mervyn King, the Governor of the Bank of England, announced that in the current turbulent period, the Bank of England will be commencing operations under the Extended Collateral Term Repo (ECTR) Facility. Activation of this Facility, introduced in December 2011, is intended to mitigate prospective risks to financial stability arising from a market-wide shortage of sterling liquidity by lending to the banking system against the widest range of collateral.』

ということで幅広いレンジの担保に対してこのECTRで資金供給しますという話で、その目的は金融システムにおけるポンド資金の不足によっておこり得る金融の不安定を軽減するという事ですな。

『The Bank intends to hold an ECTR auction at least monthly until further notice. The first auction under the ECTR Facility will be held on 20 June 2012. In its ECTR auctions, the Bank will offer sterling liquidity with a term of 6 months against collateral pre-positioned for use in the Bank’s Discount Window Facility (DWF). The minimum bid rate in these auctions will be a spread to Bank Rate of 25 basis points. All firms registered for access to the Bank’s DWF are eligible for ECTR auctions. The size of ECTR auctions will be announced the day prior to each operation and will be subject to a minimum of £5 billion.』

少なくとも今後は毎月最低50億ポンドの単位でオペレーションを実施し、担保はディスカウントウィンドウの担保(まあ据置担保みたいなもんですか)を使えます。期間は6か月で、最低応札利回りは政策金利+25bpなので0.75%になります。

『The ECTR Facility is part of the Bank’s permanent framework of operations, the Sterling Monetary Framework, and as such is incorporated in the “Red Book”. In conjunction with the Indexed Long-Term Repo (ILTR) operations, and the permanent availability of the Discount Window Facility (DWF) for bilateral transactions, the ECTR Facility enables the Bank to ensure that the banking sector has sufficient access to sterling liquidity to mitigate risks arising from unexpected shocks.』

ということで、今後もこのオペは制度化という話ですかな。

『Further operational details are available in the accompanying Market Notice. 』

詳しい事務手順はこちら。
http://www.bankofengland.co.uk/markets/Documents/marketnotice120615.pdf
Market Notice 15 June 2012
Sterling Monetary Framework: Extended Collateral Term Repo Facility

ちなみに既にある常設ファシリティであるところのOperational Standing Facilities (OSFs)ですけれども、現在のBOEのファシリティはこちらに一覧がありまして。
http://www.bankofengland.co.uk/markets/Documents/sterlingoperations/summaryops120615.pdf

これを見ますと、貸出ファシリティの現在の適用レートは0.75%(ちなみにBOEは預金ファシリティの金利は0%にしています)なので、ECTRと金利同じ(というか最低応札レートだから貸出ファシリティよりも高いケースも)なのですけれども、これはまあ恐らくはStigma問題とかあって常設ファシリティの利用がしにくいとか毎度のお話があるんでしょうなあと思うのでありました。


でですな、これはキング総裁の講演でも金融市場の安定やクレジットアベイラビリティーの確保が重要なのでECTRを実施しますという話があったのですが、そもそもの話をすると英国の場合、物価が中々サガランチ会長であるという状況の説明の中で、「金融環境が必ずしも良くない事によって、企業がキャッシュ確保の為にマージンを確保するように価格設定を行い、その結果として物価が高止まりする一因になっている」というのがここの所ずーっとなされておりまして、まあキング総裁の講演ではそこまでの説明は無いのですけれども、MPCのMinuteでの議論説明を敷衍いたしますと、このECTR発動は金融環境の改善により企業の価格設定行動における過度のマージン確保傾向を抑えるという効果もありますよね、と何か無理矢理の香りもしますがそんな理屈も感じられますな。

あと、
http://www.bankofengland.co.uk/Pages/home.aspx
の右側に各種数値が載っておりますが、昨日はCPIの発表がございまして・・・・・・・

Current Inflation 2.8%
Next due:17 Jul 2012

市場予想が確か3%(前回数値が3%)だったのですが、ついに3%割れと相成りまして、ポンド相場も反応、というかポンド相場自体はこの指標が出る前の欧州オープニング時間からポンド売りになっていましたけど、まあ物価がようやくターゲットに近づいてきたので、追加緩和もやりやすいですなあという所です。



○ああ時間切れですが6月6日のロックハート講演メモ

ということで、FOMC前に成敗したかったアトランタ連銀ロックハート総裁の講演ネタは細かく説明できません(つーかキング総裁のスピーチもまだですが)ですが、一応この講演に関してはサマリーが冒頭にあるのでそこの引用で勘弁。

http://www.frbatlanta.org/news/speeches/120606_lockhart.cfm
http://www.frbatlanta.org/documents/news/speeches/120606_lockhart.pdf

Headwinds, Risks, and Monetary Policy
Dennis P. Lockhart
President and Chief Executive Officer
Federal Reserve Bank of Atlanta

『Key points

・Federal Reserve Bank of Atlanta President Dennis Lockhart said the U.S. economy remains in recovery, which he expects to continue. As recent disappointing employment numbers illustrate, however, the economy is working against some strong headwinds.

・Lockhart said these headwinds include continued deleveraging by the household and financial sectors, a weak housing market, a contracting government sector, and an "uncertainty drag" on confidence and economic activity.

・In addition to headwinds, Lockhart described four risks in his outlook: the behavior of home prices, effect of pending sharp federal fiscal adjustment, financial instability along with recession in Europe, and slowdown in emerging market economies.

・Lockhart views today's highly accommodative stance of monetary policy as being appropriate for the outlook he envisions.

・His views about further policy measures consider two possibilities. First, if his baseline scenario of continued, though modest, growth becomes unrealistic, further monetary actions to support the recovery will need to be considered. Second, he believes the FOMC must maintain a state of readiness to respond to financial or economic instability.』

ということで、経済は緩やかに回復とは言っているものの、思いっきりリスク認識が高くて、最後の所にありますように「ベースラインシナリオの維持が非現実的となった場合には、追加的な金融緩和政策の実施が検討されるべきである」という話をしておりまして、さらに「リスク顕在化によって金融あるいは経済が不安定化した場合には、迅速に対応すべきである」と、まあこちらは流動性対策なども含めた危機対応の重要性を指摘というのが結論になっていまして、とりあえず直ぐの追加緩和という話ではないものの、下振れリスク警戒のトーンを強めた内容になっておりますので、まあ追加緩和という話になった時には賛成サイドに回るという感じじゃないですかね、という所であります。

でまあこちらでは「欧州に関しては前回のFOMCよりも現状はリスクが高まっている」と思いっきり説明していて、これは6日の話なのでギリシャ選挙の結果などは反映していませんけれども、まあ選挙結果見て急に認識が強まるという程でも無いでしょうというのは、講演本文の中で『First, the euro area as a whole is in or near recession, as I mentioned earlier. 』とか思いっきり言及してますのでまあそう変わらんでしょうな。

それから住宅市場とか、フィスカルクリフとかの言及もしていますし、「slowdown in emerging market economies」と思いっきり言及していて、これまた講演本文では『Another connected global risk is the apparent slowdown occurring in a number of large emerging economies−notably in the economies of China, India, and Brazil. 』と国名も挙げて指摘しているという所で、下振れ警戒感を強く印象付ける講演になっております。


#うむ、無理矢理メモにはなったかな

トップに戻る



2012/06/15

○米国労働市場の問題が構造的か循環的かという件についてのネタ(この前の続き)

先日金融政策スタンスに関する部分を引用したクリーブランド連銀ピアナルト総裁の講演@5月31日より
http://www.clevelandfed.org/For_the_Public/News_and_Media/Speeches/2012/Pianalto_20120531.cfm
Monetary Policy, Economics and the Recovery

『Economic Impacts of the Recession: Structural or Cyclical』の所をちょっと引用。

『Many of you are trained economists and are very familiar with the concept of dividing economic activity into structural and cyclical components. Broadly defined, cyclical impacts of a recession will be recovered as the economy works through the business cycle and as economic conditions improve. Such impacts rise and fall, but they do not persist. In contrast, impacts that persist even after the economy has been expanding for years are considered structural.』

構造要因と循環要因に分けるという話は良く行われおりまっせと。

『This distinction is often applied to unemployment rates, but it can also be applied to spending on plants and equipment. The underlying question in either case is, How much of the reduced demand for labor and capital will persist even when the U.S. economy has fully recovered from the recession?』

ということでお話が始まりますが、構造要因という説明を検討してみましょうとなりまして、考察が始まります。

『The U.S. construction sector was at the bull's-eye of the recession. The impact on construction workers was immense and the thinking was that, even after the economy recovered, we would need far fewer construction workers than before the steep downturn. Unemployed construction workers are often cited as examples of structural unemployment because of a belief that many of the pre-recession construction jobs were never coming back. Given that construction workers typically have relatively low levels of formal education and relatively high levels of specialized skills that they acquire on the job, some believed their prospects for employment in other sectors were limited.』

よく引き合いに出されるのが建設セクターでして、セクターの需要がそもそも戻らんだろとか、一旦失業して期間がたつと労働者のスキルが失われますがなというような論点で構造的要因の背景が説明されますよねという事ですかな。

『The statistics tell a different story.』

ほう。

『The recession increased the number of unemployed workers in the construction sector by 1.1 million, raising the unemployment rate of construction workers to a peak of roughly 20 percent. Nonetheless, recent employment statistics indicate that the number of unemployed construction workers is now just 300,000 higher than it was in 2007, even as the construction sector has continued to shrink since the end of the recession. Indeed, the number of unemployed workers from construction has declined more rapidly than the total number of unemployed workers in the United States.』

でも労働統計を見るとそうではなくて、建設関連の労働者ってリセッションの影響で大きく落ちたけれども戻りも早いですよねとか何とか。

『Another sector of the economy often cited for evidence of structural unemployment is manufacturing.』

ほほう。

『Today, manufacturing requires more specialized skills than ever, and some manufacturing activities have moved to other parts of the world. The recession increased the numbers of unemployed workers in the manufacturing sector by 1.2 million people. Here again, unemployment figures in manufacturing have declined more rapidly than economy-wide numbers. The number of unemployed manufacturing workers is now just 300,000 higher than it was in 2007.』

まあ建設セクターと同じような話ですな。

『The employment data for these two large sectors of the economy in part reflects the flexibility of U.S. workers to move out of one sector into another and demonstrates that there has been less structural unemployment than many had thought.』

ということで、これらのセクターにおける労働統計を見ると、米国の労働市場のフレキシビリティーは構造論者のいう程には悪化していないですよねと仰せ。

『A major part of the ongoing unemployment problem today is the elevated numbers of young unemployed people.』

若年層の失業が高い件について。

『The number of unemployed people in the early-career ages of 20 to 34 rose by 2.6 million in the recession. The recovery has been less effective at shrinking this pool of unemployed workers, with 1.8 million young and recently trained workers still looking for work. While it is hard to categorically rule out structural unemployment, people in this age group are typically very flexible about which sector or region they work. In addition, this generation is more educated than prior generations, and that education should be more relevant to current employment opportunities. The employment weakness in this age group points more to a broad-based lack of demand for labor - that is, a cyclical shortfall in employment.』

何かややインチキくさいのですが、若年労働者の方が社会的に言えばフレキシビリティーが高い筈で、その若年労働者の失業が多いという事は、つまり労働市場の問題は構造問題ではなく、循環的に雇用の需要が低い事を示している、という説明でまあホンマカイナという気はする。


でまあその辺の諸々を踏まえて労働市場の問題が循環要因に主に起因するのか構造要因に主に起因するのかという話はこうなります。

『What is extraordinary about today's economy is the number of unemployed people compared to the number of job openings. Before the recession, there was a little over one job seeker for every open position. Today, despite progress, there are about three people looking for work for every job opening. The only long-run solution to the unemployment problem is to increase the number of job openings through more growth in overall economic activity.』

『Together, these facts make a lot of today's unemployment look more cyclical than structural to me, although persistent cyclical unemployment runs the risk of translating into structural unemployment through the loss of skills. I encourage you to read our latest Annual Report, just published, for a thorough discussion of the employment side of the Federal Reserve’s dual mandate.』

ということで、労働市場の問題は主に循環要因に起因し、足元でやや改善している新規求人などがより一層拡大するためには、経済活動のより一層の活発化が必要である、という結論に達していまして、さらに循環的な労働市場の落ち込みを放置していると将来的にそれが硬直化して構造的要因になる(=長期化する)リスクもあるという話ですので、まあ基本的には「経済のより一層の活発化の為に追加的な金融緩和政策が必要です」という話になるんでしょうなあピアナルト総裁も、とまあそういう読み筋になるかと思います。

ただし11日の駄文で申し上げたように、ピアナルト総裁の見通しとしては5年程度で望ましい失業率水準に低下します的なお話をしておりますので、あまり強力緩和推奨ということでもないかもしれない(ボストン連銀のローゼングレン総裁は見通しがそもそも低いし、シカゴ連銀のエバンス総裁は物価上振れ上等の人というのは先日ご紹介したとおり)とは思われます。まあ執行部が緩和提案したらそのまま普通に賛成すると思いますけど。

トップに戻る



2012/06/14

○コチャラコタ総裁ネタが途中だったので続きを

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4886
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_monetary_policy_060712.pdf
Monetary Policy Transparency: Changes and Challenges

途中の論理展開もほほうと思うのですが、その辺は華麗にスルーして最後の部分になります『Policy implications』から少々。

『Over the past ten minutes or so, I have talked about the recent adverse changes in U.S. labor market performance. I have discussed two sharply different possible ways to view those changes: first, that they are largely reversible under appropriate monetary policy and, second, that they are likely to be highly persistent. These two possibilities suggest that the FOMC is confronted with an unusually high degree of uncertainty about the level of “maximum employment” it can achieve.』

ということで、労働市場の問題(失業率の高止まり)に関して、循環的な要因が大きいのか構造的な要因が大きいのかという話をここまでしていまして、まあ結論は構造的な要因という話になっているのですがそこの部分は今日はめんどいのでスルーの方向で(汗)。

『This uncertainty translates directly into a corresponding uncertainty about the appropriate approach to policy. In particular, policymakers who see the deterioration in labor market performance as reversible using monetary policy will typically favor more accommodative policy than those who view the deterioration as more protracted.』

んでもって循環要因によるものという見立ての人は、労働市場の悪化に対してプロアクティブに対応して金融緩和を拡大すべきという主張をしますよね、とまあそういう話。

『Fortunately, we can use other sources of information to reduce the level of uncertainty about the maximum level of employment achievable through monetary policy.』

我々は「金融政策によって到達できる”最大雇用”のレベル」の不確実性を軽減できる他の情報ソースがあります(キリッ)。

『“Maximum employment” for monetary policy is widely interpreted as the level of employment that is sustainable through monetary policy actions without an acceleration in inflation.』

ほほーという所ではございますが、つまり「金融政策行動がインフレを加速させることが無い状況下におけるサステイナブルな状況が「金融政策によって到達する事のできる最大雇用レベル」という話でありまして・・・・・・

『 While we cannot directly observe “maximum employment,” we do observe inflation, and its behavior is a useful signal of how close we are to the maximum level of employment achievable by the FOMC.』

どう見てもインフレ重視派です本当にありがとうございました。

『So, what has been happening with inflation? Inflation was distinctly higher in 2011 than in 2010. Even core measures of inflation, which strip out energy goods and services, and food, went up notably.』

と、インフレが昨年上昇して今年は下がったけどそんなにサガランチ会長であると仰せ。

『I see these changes as a signal that our country’s current labor market performance is closer to “maximum employment,” given the tools available to the FOMC, than the post-World War II U.S. data alone would suggest.』

キタコレという所ですが、つまりは過去のデータから推計されているNAIRUの水準が実は上昇しているので、見た所失業率が高止まりしていても物価がサガランチ会長になっているのでございますという話で、現在の米国の労働市場のパフォーマンスは金融政策で到達すべき「最大雇用」の水準に近いとか中々強烈な説明。

んじゃあそんなにNAIRUの水準がドカンと変わるものなのかという論点なのですが、これは今日は長くなるのでスルーしますが、上記の講演の中盤に『The Swedish experience』というのがありまして90年代初頭の通貨危機だの金融システム不安を通過したスウェーデンの失業率が危機前の水準から大きく上昇し、水準そのものが変化している(けど同国の経済は最近まで良いパフォーマンスを示していた)というような話をしているのでそれを読んでくらはい(手抜き)。

『As I’ve argued in the past, appropriate monetary policy should be responsive to such signals.』

ということですので、どう見ても金融緩和のお代わりは不要という結論。

『It is worth reiterating a point that I made earlier. “Maximum employment” for monetary policy is not the same as “maximum employment” for all policymakers.』

でまあ今が最大雇用とかいうその敗戦思想は人民裁判で吊るされるレベルとか言われるのを防ぐために説明しているのですが、この最大雇用というのは経済政策的な意味での最大雇用というのとは別問題でありますという話でして・・・・・・

『Congress and the president can choose to provide direct subsidies to employers for hiring. Such subsidies will increase the federal deficit, but they do have the power to increase “maximum employment” for the FOMC.』

NAIRUの水準を引き下げるのは政府の仕事であって中央銀行の仕事では無く、政府はNAIRUの水準を引き下げるような政策をおこなってくらはい、とまあそういう話をしております罠。


・・・・・・・・つーことはつまりですな、最近はタカ派分類になっているコチャラコタ総裁なのですけれども、おそらくは物価が落ちだすと今度は思いっきり追加緩和の必要性を唱えるのはほぼ間違いないとみられる、と斯様になりますので、本来はタカだのハトだの言うのではなく「物価重視派」というのが正しい表現になると思います。まあその場その場でのタカハト分類は便利なので分類はするんですけれども、そのタカだのハトだののレッテルが「緩和派」みたいな風になってくると金融政策議論として話がおかしくなってくるのでご注意ありたいと思うのですけれども、どう見てもさっき出した記事に出てくる政治家の皆様におかれましては(以下自粛)。

トップに戻る



2012/06/11

○イエレン副議長講演@6月6日

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20120606a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/yellen20120606a.pdf(図表付で1M以上ある)
Perspectives on Monetary Policy

まあこちらの講演に関しては既に話題になっていたように、追加緩和については普通にやる気ありという感じです。ただまあ次にネタにするボストン連銀のローゼングレン総裁の講演のように全力で追加緩和を支持という程でも無いとゆー感じでございます(一応「メリットとデメリットを検討」とか言ってる)。

でまあ最近の米国での金融政策論議の最大のポイントは「現在の労働市場の問題の主因は循環的な要因によるものか構造的な要因によるものか」という話でして、物価がとりあえず安定しているという話はまあハト派もタカ派も一致しているのですが、デュアルマンデートのもう一方である「最大雇用」に関しまして金融政策がどこまで対処すべきかという点への認識が重要となります。

んでもってイエレン姐さんの講演はPDFで本文19ページとかとんでもなく長く、まあ話は詳しいには詳しいので全部読むと論点のまとめには良いかもしれませんけど、詳しすぎて説明がくどい感じもします(今さらそこの説明は要らんがなというのが多め)。

んでまあ安直に読む順序としてお勧めなのは本文17ページの『Looking Ahead』から『Conclusion』までを読むのが吉です。あと、前半は経済に関する話で、当然ながら労働市場に関する話もあるのですが、労働市場に関しては「現在の悪い状況は循環的なものである」という認識になっております。また中盤は非伝統的金融政策の効果についての話が合って、フォワードガイダンスの効果の話をしている部分がかなーり我田引水成分が強いのが中々香ばしいのですが、その辺までああだこうだ引用するとオワランチ会長になるのでそれは気が向いたら(というか次回FOMCまでにネタが無いのであれば)後日ネタに。

『Looking Ahead』の部分を引用します。

『Recent labor market reports and financial developments serve as a reminder that the economy remains vulnerable to setbacks.』

足元の労働市場の統計や金融市場の状況は経済が傷つきやすい状況であることを再認識させます、とのっけから来る時点でまあ追加緩和措置に関してはやる気ありです罠。

『Indeed, the simulations I described above did not take into account this new information. In our policy deliberations at the upcoming FOMC meeting we will assess the effects of these developments on the economic forecast. If the Committee were to judge that the recovery is unlikely to proceed at a satisfactory pace (for example, that the forecast entails little or no improvement in the labor market over the next few years), or that the downside risks to the outlook had become sufficiently great, or that inflation appeared to be in danger of declining notably below its 2 percent objective, I am convinced that scope remains for the FOMC to provide further policy accommodation either through its forward guidance or through additional balance-sheet actions.』

ということで、新しい情報も加えて次回FOMCでは政策判断という事ですが、「経済の回復が、たとえば今後数年間に渡って殆ど改善が見込めないというような不十分なペースとなると想定される場合」、「先行きのダウンサイドリスクが大きく顕在化した場合」、「物価上昇率が2%を大きく下回って推移する可能性が高まった場合」には「追加緩和を実施」という話で、この場合フォワードガイダンスの文言を使うか、追加のバランスシート政策(必ずしも拡大だけでは無いのは要注意)を実施しますとな。

『In taking these decisions, however, we would need to balance two considerations. 』

ほう。

『On the one hand, our unconventional tools have some limitations and costs.』

プロコンを検討とな。、

『For example, the effects of forward guidance are likely to be weaker the longer the horizon of the guidance, implying that it may be difficult to provide much more stimulus through this channel.』

フォワードガイダンスの効果は、ガイダンスの期間を長くすると効果が弱くなるという話で、まあ中盤の方で何となく話はあるのですが、要はフォワードガイダンス文言がコミットメントじゃないからあまり長くすると景気見通しによってガイダンス文言がその通りと思われないリスクがあるって事ですかね。ここの論点は中々オモシロスではございます。

『As for our balance sheet operations, although we have now acquired some experience with this tool, there is still considerable uncertainty about its likely economic effects. Moreover, some have expressed concern that a substantial further expansion of the balance sheet could interfere with the Fed's ability to execute a smooth exit from its accommodative policies at the appropriate time. I disagree with this view: The FOMC has tested a variety of tools to ensure that we will be able to raise short-term interest rates when needed while gradually returning the portfolio to a more normal size and composition.』

バランスシート政策では、あまりに長期債を買い過ぎると出口政策が困難になるのではないかという意見はありますが、イエレンさん個人としては(というかFRBの執行部としては)まあ大丈夫という見解ではあるものの・・・・・

『But even if unjustified, such concerns could in theory reduce confidence in the Federal Reserve and so lead to an undesired increase in inflation expectations.』

我々の見立てが間違っていた場合にはFRBの信認が低下してインフレ期待を無駄に引き上げるリスクがある。とこのへんはメリットデメリットがどうのこうのという話をしておりますの。

『On the other hand, risk management considerations arising from today's unusual circumstances strengthen the case for additional accommodation beyond that called for by simple policy rules and optimal control under the modal outlook.』

この話題は本文の中盤の方にあるのですが、単純なテイラールールを適用すると金利をもうちょっと上げろという話になるのですが、それよりもバランスを考慮したアプローチをすべきというようなフォワードガイダンス文言を正当化する話になりますがその辺は割愛。

『In particular, as I have noted, there are a number of significant downside risks to the economic outlook, and hence it may well be appropriate to insure against adverse shocks that could push the economy into territory where a self-reinforcing downward spiral of economic weakness would be difficult to arrest.』

ということで、ダウンサイドリスクもあるので、経済の下方ショックに対して保険を掛けて置くのが適切でしょうとか思いっきり追加緩和策に関しては前のめりでございましたとさ。


○ボストン連銀ローゼングレン総裁は追加緩和を思いっきり支持@5月30日

http://www.bos.frb.org/news/speeches/rosengren/2012/053012/index.htm
http://www.bos.frb.org/news/speeches/rosengren/2012/053012/053012.pdf(図表付き)
“The Economic Outlook and Its Policy Implications”

講演の中盤にそのものずばりの『Labor Markets』というのがあるのですが、こちらでローゼングレン総裁は米国労働市場の問題については「循環的な要因が構造的な要因よりも大きい」という事で、色々と図表を出して説明していまして中々説得的な展開をしています。

んでもって経済見通しに関しては、欧州問題と米国の所謂FiscalCliff問題についての見通しを厳しく見ておりまして、その結果として『Recent Economic Data』のケツの部分でこんな話をしています。

『At the Fed, we are now producing and publicly disclosing the estimates of real GDP growth, unemployment, and PCE[4] inflation rates produced by the FOMC participants in a Summary of Economic Projections. The central tendency of the FOMC participants’ estimated forecasts, and my own current forecast, are provided in Figure 5.』

何かどさくさに紛れてしらっと「私の見通しはこうです」とか出しているのがお洒落なのですけれども、その図表5を見ると判るのですが・・・・・・・

『You can see that my own forecasts are a little more pessimistic than the central tendency of the participants at the April FOMC meeting. I am expecting growth of only 2.3 percent for the full year, I’m sorry to say; and unfortunately no improvement in the current U.S. unemployment rate of 8.1 percent. As you can see, I also expect both total PCE inflation and core PCE inflation to be below 2 percent for 2012. My forecast of relative weakness in the economy reflects concern that the uncertainty about both Europe and the U.S. federal “fiscal cliff” will restrain spending by households and businesses - but it also assumes that Europe and our own fiscal situation achieve a “muddling through.”』

ということで、見通しがそもそも弱いのがローゼングレン総裁の仕様になっていますので、結論としてはどう見ても追加緩和という話になります罠。

『I would, however, highlight the uncertainty and downside risks to my forecast. One downside risk is that European problems could become a much greater restraint on growth this year. Another downside risk is that Middle East problems could cause an oil supply shock that negatively affects economic growth. And another is that much greater fiscal austerity could result from a potential failure to reach budget agreements.』

その上ダウンサイドリスクに欧州とフィスカルクリフと原油価格の上昇リスクを挙げると。

『Given my expectations of only modest growth, no improvement in the unemployment rate, an inflation forecast below 2 percent, and significant downside risks to the forecast, I believe monetary policy should remain accommodative at this time and indeed that we should be looking for ways that monetary policy can foster more rapid growth, to bring down the unemployment rate more quickly. I believe further monetary policy accommodation is both appropriate and necessary.』

そらまあ追加緩和が必要となるって話です罠。

『The U.S., like many other countries, needs to facilitate a more rapid recovery, and monetary policy is one important tool with the potential still for encouraging faster growth.』


○クリーブランド連銀ピアナルト総裁は微妙@5月31日

http://www.clevelandfed.org/For_the_Public/News_and_Media/Speeches/2012/Pianalto_20120531.cfm
Monetary Policy, Economics and the Recovery

ピアナルト総裁のこの講演でも労働市場に関する考察があります。『Economic Impacts of the Recession: Structural or Cyclical』って所なのですが、これまた上記2名と同様に労働市場の問題は主に循環的要因によるものが強いという認識になっていまして、量的にこの講演が一番短くて説明がシンプルなので、とりあえず立論の背景を確認するという意味ではこちらの講演がお勧めであります。

一方で追加緩和に関してどうなのよという話になると、ピアナルト総裁の経済見通し&金融政策の見立てが『U.S. Monetary Policy: Responsive and Measured』という所で説明されているのですが・・・・・・

『Currently, I am projecting the economy to grow at a moderate rate, slightly above 2-1/2 percent this year and around 3 percent in 2013 and 2014. At this pace of growth, I expect that it could take as long as four to five years for the unemployment rate to fall to the 6 percent rate I judge to be consistent with maximum employment. I also project inflation to run very close to the Federal Reserve's longer-run objective of 2 percent as measured by the PCE price index through 2014.』

『My inflation outlook, although it is close to the 2 percent objective, is based on an economy that is working through a significant amount of cyclical weakness over the projection horizon. My outlook for both economic activity and inflation relies on monetary policy remaining accommodative. Therefore, I have voted in favor of the FOMC's policy statements and actions, including the statement that economic conditions "are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014."』

ということで、まあタカでは無くてガイダンス文言の2014年末までというのにも賛成であるとゆー話をしているのですが、見通し的に言うと向こう4−5年で失業は望ましい水準に改善し、インフレはその間安定というのですから、さっきのローゼングレン総裁よりも明らかに見通しが強く(前提に緩和的環境の継続というのはありますが)、これだと追加措置に関しては特段急がないという話になりますな。まあ執行部が主導したらそれには賛成しそうですけど。

『Nonetheless, my current assessment is that the real economy continues to show considerable cyclical weakness. This assessment, along with my outlook for moderate growth and subdued inflation, calls for today's highly accommodative monetary policy.』

というのが講演の最後の最後になるのですが、「現在の極めて緩和的な緩和が必要」とは言ってますが、追加の緩和が〜という話は無いですな、うんうん。


○ミネアポリス連銀コチャラコタ総裁は真逆の見解@6月7日

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4886
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_speech_monetary_policy_060712.pdf
Monetary Policy Transparency: Changes and Challenges

これまた前3名様の引用をしているうちに時間が無くなるという毎度おなじみの展開になっておりまして、細かくネタにするの後日なのですが、コチャラコタ総裁の説明はこの辺りの人たちとは真逆です。

どのように真逆かと言うと、労働市場の問題に関して「主に構造的である」という話をしておりまして、その例として『The Swedish experience』としてスウェーデンの例を挙げております。

同国では90年代前半に通貨危機と不良債権問題と金融システム不安が起きて、まあその後現在のように回復しているのですが、この間同国の労働市場はどうなったかと言うと、危機以前に4%を超える事がなく、概ね2%程度で推移していた失業率がピークで10%水準に上昇し、その後の経済回復でも6%をほぼ割ることが無く推移しています。

ってな話を例に出したりして、現在の米国の失業率水準は「中央銀行が達成できるという意味での完全雇用状態」であり、今の水準から完全雇用の状態の失業率を引き下げるのは金融政策ではなく、それ以外の政策によって行うべきである、という話をしていて、循環的要因に注目しすぎて失業率を引き下げようとして追加金融緩和を行うのはインフレが上昇するリスクを高めるので望ましくないという話をしています。

まあ大体ブラード総裁もそんな話をしていますが、コチャラコタ総裁の説明もこれはこれで説得的だったりしまして中々味わいがありますな、うんうん。

つーことで後日ぼちぼちこの4本をネタにするかもしれません。

トップに戻る


2012/06/08

○バーナンキ議会証言は追加緩和の示唆が特段無いとな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M59IOO6S972A01.html
米国債:もみ合い、FRB議長はリスクに言及も具体策挙げず

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M598NU6S972A01.html
FRB議長:追加緩和は景気浮揚も、効果は弱い可能性も

ということでございまして、寝起きで何となく斜め読みをしたのですが
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120607a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120607a.pdf

てきとーに飛ばしながら多分この辺がポイントだと勝手に思う部分の引用とあたくし的超要約を。

・労働市場について(第3パラグラフ)

『Labor market conditions improved in the latter part of 2011 and earlier this year. The unemployment rate has fallen about 1 percentage point since last August; and payroll employment increased 225,000 per month, on average, during the first three months of this year, up from about 150,000 jobs added per month in 2011. In April and May, however, the reported pace of job gains slowed to an average of 75,000 per month, and the unemployment rate ticked up to 8.2 percent.』

と、ここまでが足元の失業率悪化まで含めた現状の話ですな。

『This apparent slowing in the labor market may have been exaggerated by issues related to seasonal adjustment and the unusually warm weather this past winter. But it may also be the case that the larger gains seen late last year and early this year were associated with some catch-up in hiring on the part of employers who had pared their workforces aggressively during and just after the recession. If so, the deceleration in employment in recent months may indicate that this catch-up has largely been completed, and, consequently, that more-rapid gains in economic activity will be required to achieve significant further improvement in labor market conditions.』

ということで、足元での失業率悪化とかNFPの伸び鈍化に関する評価があるのですが、「1Qの季節要因がうまく行っていないのと、暖冬の影響による伸びの剥落による一時的なものである」という可能性もあるし、その一方で「1Qまでの強めの雇用拡大の要因はリセッションによって企業が削減した雇用を取り戻すための需要で、その特需分が終了してしまった事を足元の雇用鈍化が示している」という可能性もあるという指摘をしておりまして、「仮に後者であれば、今後の雇用改善にはより強い経済成長が必要になる」という認識をしめしています。

・・・・・・・・・つまりですな、この説明だと「直近の雇用統計が低調だから追加緩和ですお」というロジックで追加緩和を突っ込むというのはちと無理がある(一時的な要因の可能性があると言ってるんだから)ように思えますけどどうでしょうかね。


・経済の現状について(第4パラグラフ)

『Economic growth appears poised to continue at a moderate pace over coming quarters, supported in part by accommodative monetary policy. In particular, increases in household spending have been relatively well sustained. Income growth has remained quite modest, but the recent declines in energy prices should provide some offsetting lift to real purchasing power. While the most recent readings have been mixed, consumer sentiment is nonetheless up noticeably from its levels late last year. And, despite economic difficulties in Europe, the demand for U.S. exports has held up well. The U.S. business sector is profitable and has become more competitive in international markets.』

住宅問題は相変わらずなのですが、その他の項目については割と明るめの話をしているなあという風に思うのですがどうでしょ。家計所得の伸びは依然として極めて緩慢だけど、足元のエネルギー価格の下落がその分を打ち消しているとかほほうという感じ。リスクとしては当たり前ですが欧州債務問題の影響なのですが、米国の企業セクターの収益力向上と国際競争力の向上にも触れていますな。


・経済の先行き阻害要因について(第5〜6パラグラフ)

『However, some of the factors that have restrained the recovery persist. Notably, households and businesses still appear quite cautious about the economy. For example, according to surveys, households continue to rate their income prospects as relatively poor and do not expect economic conditions to improve significantly. Similarly, concerns about developments in Europe, U.S. fiscal policy, and the strength and sustainability of the recovery have left some firms hesitant to expand capacity.』

家計や企業は経済の先行きに警戒的であること、欧州問題、米国の財政問題、回復の持続性やその期間に関する懸念も阻害要因と。

『The depressed housing market has also been an important drag on the recovery. Despite historically low mortgage rates and high levels of affordability, many prospective homebuyers cannot obtain mortgages, as lending standards have tightened and the creditworthiness of many potential borrowers has been impaired. At the same time, a large stock of vacant houses continues to limit incentives for the construction of new homes, and a substantial backlog of foreclosures will likely add further to the supply of vacant homes. However, a few encouraging signs in housing have appeared recently, including some pickup in sales and construction, improvements in homebuilder sentiment, and the apparent stabilization of home prices in some areas.』

住宅市場に関する話をしているのですが、あたくし的にほほうと思ったのはその住宅市場の現状について「Despite historically low mortgage rates and high levels of affordability, many prospective homebuyers cannot obtain mortgages, as lending standards have tightened and the creditworthiness of many potential borrowers has been impaired.」ということで、「モーゲージ金利が歴史的に低い水準にあり、高いレベルの入手しやすさがあるにも関わらず、多くの住宅購入予定者は、貸出基準の厳しさや、借入の為の信用力が傷ついている為に、モーゲージを取得することが出来ない」とか何とか仰せになっている部分でありまする。

つまりですな、このロジックで行くと「住宅市場のテコ入れの為に追加緩和をしますお」と言った場合に実際に何を中央銀行で出来るかという事を考えますと、まあ金融政策(非伝統も含めて)で対応できる話じゃないですよねという事になりますので、これまた追加金融緩和に関しての後押しロジックになっていない話ではないかと斯様思うのでございまする。


・銀行の健全性について(第7パラグラフ)

まあこの話になるとドヤ顔モードになるのだが、そもそも信用バブルを発生させた上にそれを証券化とか言って世界にばらまくだけばらまいてリーマン突然死させて金融市場を散々混乱させて、自分らの庭先だけさっさと掃除したと思ったら今度は俺様の国債はリスクフリー扱いだが他国の国債はリスク資産というような所に典型的に表れている俺様金融ルールにも程があるボルカールールを提唱とか勝手な事ばっかりしやがって雨公ふざけんなとか思うのですが、って全然関係ないですねすいませんすいません。

『Banking and financial conditions in the United States have improved significantly since the depths of the crisis. Notably, recent stress tests conducted by the Federal Reserve of the balance sheets of the 19 largest U.S. bank holding companies showed that those firms have added about $300 billion to their capital since 2009; the tests also showed that, even in an extremely adverse hypothetical economic scenario, most of those firms would remain able to provide credit to U.S. households and businesses. Lending terms and standards have generally become less restrictive in recent quarters, although some borrowers, such as small businesses and (as already noted) potential homebuyers with less-than-perfect credit, still report difficulties in obtaining loans.』

まあ要するに米国の金融システムは健全でちょっとやそっとの悪いシナリオが発生しても無問題(キリッ)ってな話です罠。


・そして欧州問題がどうのこうのと追加措置がどうのこうのという話(第8パラグラフ)

『Concerns about sovereign debt and the health of banks in a number of euro-area countries continue to create strains in global financial markets. The crisis in Europe has affected the U.S. economy by acting as a drag on our exports, weighing on business and consumer confidence, and pressuring U.S. financial markets and institutions.』

ということで欧州問題によるグローバル金融市場の問題がこれまた米国経済に輸出ルートやらコンフィデンスルートやら金融市場へのプレッシャーやらというようなルートで悪影響と。

『European policymakers have taken a number of actions to address the crisis, but more will likely be needed to stabilize euro-area banks, calm market fears about sovereign finances, achieve a workable fiscal framework for the euro area, and lay the foundations for long-term economic growth.』

欧州政策当局は今後もさらに状況の改善に向けた施策が必要ですよという普通の話ですな。

『U.S. banks have greatly improved their financial strength in recent years, as I noted earlier. Nevertheless, the situation in Europe poses significant risks to the U.S. financial system and economy and must be monitored closely.』

さっきのドヤ顔モードと繋がります(だから引用したのですが)けど、米国の金融機関はここ数年の間に体力を大きく改善してますが、欧州問題の進展によっては、米国の金融システムや米国経済に対して大きなリスクをもたらすものであり、その状況を注意深く見守る必要がありますって仰せですな。

『As always, the Federal Reserve remains prepared to take action as needed to protect the U.S. financial system and economy in the event that financial stresses escalate.』

ということで、追加措置がどうのこうのという部分になるのですが、「金融ストレスがよりエスカレートした場合に、FRBは米国の金融システムや経済を守るために行動する用意があります」って言い方になっているのですが、ここまでの流れも含めましてこの一文を読むと、どこからどう見ても次回FOMCでの追加金融緩和措置の示唆とかにはなっていませんわなあという所でしょう。


・金融政策について(第13パラグラフ)

『With unemployment still quite high and the outlook for inflation subdued, and in the presence of significant downside risks to the outlook posed by strains in global financial markets, the FOMC has continued to maintain a highly accommodative stance of monetary policy. The target range for the federal funds rate remains at 0 to 1/4 percent, and the Committee has indicated in its recent statements that it anticipates that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate at least through late 2014.』

この辺はガイダンス文言に関する説明。

『In addition, the Federal Reserve has been conducting a program, announced last September, to lengthen the average maturity of its securities holdings by purchasing $400 billion of longer-term Treasury securities and selling an equal amount of shorter-term Treasury securities. The Committee also continues to reinvest principal received from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities (MBS) in agency MBS and to roll over its maturing Treasury holdings at auction.』

ここはバランスシートポリシーに関する説明。

『These policies have supported the economic recovery by putting downward pressure on longer-term interest rates, including mortgage rates, and by making broader financial conditions more accommodative.』

これらの金融政策の効果についての説明ですが、長期金利およびモーゲージ金利を引き下げ、金融環境を幅広く緩和的にしているとの仰せ。

『The Committee reviews the size and composition of its securities holdings regularly and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability. 』

声明文にあるのと同じですが、この部分はまあ便利な表現でタカにもハトにも使えるのですが、単純に声明文どおりという説明で話されますと、特段次回に何かする的な話になりませんなあという所です。


・その他

あと、議会証言だけに財政問題の話を色々としているのが目立ちます。インフレに関しては従来通りの説明で、長期的インフレ期待が抑制される中で、インフレは安定して推移するでしょうという話になっています。

トップに戻る




2012/06/07

○寝起きでECB

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120606.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 6 June 2012

寝起きでこんな長いの読めるほどの語学力はございませんので冒頭の部分だけという事になりますが・・・・・・・・・・・

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. While inflation rates are likely to stay above 2% for the remainder of 2012, over the policy-relevant horizon we expect price developments to remain in line with price stability.』

政策金利の変更はありません。インフレは今年の残りの期間に渡って2%以上の水準で推移するものと見られますが、政策見通しにおける期間においての物価推移はECBの政策目的である物価の安定に合致した水準となるでしょう。

『Consistent with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued. Inflation expectations for the euro area economy continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

基調的なマネタリーの拡大ペースが抑制されている事はこの見通しと整合的です。ユーロ圏のインフレ期待は確りとアンカーされており、ECBの目標である中期的に2%より若干低い水準に沿っています。

『At the same time, economic growth in the euro area remains weak, with heightened uncertainty weighing on confidence and sentiment, giving rise to increased downside risks to the economic outlook. 』

同時に、ユーロエリアの経済成長は弱い状態が続いています。そしてコンフィデンスとセンチメントの面で不確実性が高まっており、それらが見通しにダウンサイドリスクを高めています。

『In previous months we have implemented both standard and non-standard monetary policy measures. This combination of measures has supported the transmission of our monetary policy.』

過去数か月間においてECBは伝統的な政策および非伝統的な政策を実行しています。これらの政策は我々の金融政策のトランスミッションメカニズムをサポートしています。

『Today, we have decided to continue conducting our main refinancing operations (MROs) as fixed rate tender procedures with full allotment for as long as necessary, and at least until the end of the 12th maintenance period of 2012 on 15 January 2013. This procedure will also remain in use for the Eurosystem’s special-term refinancing operations with a maturity of one maintenance period, which will continue to be conducted for as long as needed. The fixed rate in these special-term refinancing operations will be the same as the MRO rate prevailing at the time.』

本日、理事会は固定金利・フルアロットメント方式のMROを少なくとも今年の準備預金積み期間(2013/01/15期日)までの期間延長することを決定しました。また、積み期間内に実施するスペシャルタームの資金供給オペも同様に延長致します。この金利はMRO金利と同じとなります。

『Furthermore, the Governing Council has decided to conduct the three-month longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted until the end of 2012 as fixed rate tender procedures with full allotment. The rates in these three-month operations will be fixed at the average rate of the MROs over the life of the respective LTRO.』

理事会は3か月物LTROについても2012年末のオファーまで固定金利・フルアロットメントで実施します。この金利は期間中のMRO金利の平均金利となります。

『Keeping in mind that all our non-standard monetary policy measures are temporary in nature, we will monitor further developments closely and ensure medium-term price stability for the euro area by acting in a firm and timely manner.』

これらの非伝統的政策は毎度申し上げておりますように本来一時的な政策であります。我々は今後の経済の状況をモニターし、ユーロ圏の中期的な物価安定の達成に向けて必要な措置をタイムリーかつ確実に実施する所存です。


・・・・・・・うむ、ついヘタクソ日本語訳をしてしまいましたが、今回の決定事項は資金供給オペのフルアロットメントでの実施を年末のオファー分までは継続するという話ですが、3年LTROに関する話はこの部分では触れられていないので、まあやるかどうかはまだ決め打ちしていないということですかそうですか。


ちなみに、この冒頭説明部分の前回分はこんな感じです。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Inflation rates are likely to stay above 2% in 2012. However, over the policy-relevant horizon, we expect price developments to remain in line with price stability. Consistent with this picture, the underlying pace of monetary expansion remains subdued. Available indicators for the first quarter remain consistent with a stabilisation in economic activity at a low level. Latest survey indicators for the euro area highlight prevailing uncertainty. Looking ahead, economic activity is expected to recover gradually over the course of the year. At the same time, as we said previously, the economic outlook continues to be subject to downside risks.』

『Inflation expectations for the euro area economy continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. Over the last few months we have implemented both standard and non-standard monetary policy measures. This combination of measures has helped both the financial environment and the transmission of our monetary policy. Further developments will be closely monitored, keeping in mind that all our non-standard monetary policy measures are temporary in nature and that we maintain our full capacity to ensure medium-term price stability by acting in a firm and timely manner.』(以上5月3日の定例理事会後のドラギ総裁会見から)

まず前半部分ですが、景気見通しに関して前回は「Looking ahead, economic activity is expected to recover gradually over the course of the year.」としていたのですが、今回は「economic growth in the euro area remains weak, with heightened uncertainty weighing on confidence and sentiment, giving rise to increased downside risks to the economic outlook.」ということで、見通しの話にあった「今後も緩やかに回復」という文言を外して先行きの下振れリスクの話を強調する形になっておりますので、まあここは明らかに現状認識や見通しを下げているという事になるでしょうな。

んでもって金融政策に関する部分は前回は「we maintain our full capacity to ensure medium-term price stability by acting in a firm and timely manner.」となっていたのが「we will monitor further developments closely and ensure medium-term price stability for the euro area by acting in a firm and timely manner.」となっていまして、その「a firm and timely manner」というのは変わっていないのですが、今回は「先行きの経済状況を確りモニターして」というような言い方になっており、これと見通しにおける下振れリスクの強調と合わせ技で考えると、先行きの金融緩和の可能性を言及したとも言えますが、まあ別に前任のトリシェのオッサンのように次回会合でやりますよ宣言という程のもんでも無いような気もせんでも無い。勿論方向性が緩和となっているというのはそうなんですけどね。

で、この先も本当は延々と確認すべきなのでしょうが、ドメドメ人間で中学校に上がるまで「ディスイズアペン」位しか英語を知らなかったこのあたくしにこんな長いのを寝起きで読んで愚講釈を垂れる脳味噌はありません(キリッ)ので、まあここで力尽きるのである。


・・・・・・・ただですね、ヲチャー的に今回「おおおおお!!!」と思った事が一つございまして、ECBの定例理事会後の記者会見のテキストって「当日に総裁の説明(Introductory statement)が出てきて、翌日の遅めの時間(日本時間だと夜中以降だと思う)にQ&Aが出る」という段取りになっているのですが、今回は当日夜に「Introductory statement to the press conference (with Q&A)」という事で、質疑応答付のテキストが出ていることで、これはECBの気合を感じたのですけどどうでしょうかね(^^)。

とは申しましても実を言いますと前回のECBのプレコンテキストにつきましてはジャパンの黄金週間中でございましたので、あたしゃ翌朝じゃなくてのうのうと6日の朝とかに確認しておりましたので、実はこの気合のECBの動きは今回からではなくて前回からだったらごめんなさいごめんなさいという事でありますので、一応そこの所はよろしくお願いいたします(汗)。


○俺様用備忘のためにクリップだけしておく

FOMCが近いので週末には頑張って読む、というか頑張らないと読めないのがあたくしの貧弱な語学力で何とかしたいのですけれどもねorzorzorz

5日のシカゴ連銀エバンス総裁(ぶっちぎりのハト派)講演

http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2012/06_05_12_new_york_university.cfm
http://www.chicagofed.org/digital_assets/publications/speeches/2012/06_05_12_new_york_university_print.pdf
Monetary Policy: Recurring Themes

お隣のセントルイス連銀のブラードのおっちゃんと真逆で「巨大なGDPギャップ」の話をしたり「雇用改善の為には一時的なインフレ上振れ容認上等」な話をするという方でございますが、さて今回はどうだったんでしょ。まあいつものエバンスクオリティだとは思いますが。


6日のサンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁の講演

http://www.frbsf.org/news/speeches/2012/john-williams-0606.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2012/john-williams-0606.pdf
The Economic Outlook: Global and Domestic Challenges to Growth

サンフランシスコ連銀は前任の総裁がイエレンおばちゃんでして、リサーチペーパーとかで金融政策の効果がどうのこうのみたいなのが出てくる時には基本的にFRBの金融政策運営の効果などに関してはFRBの公式見解に近いような物が出てくる傾向(時に論理展開的にお前それは強引だろというような大本営報道部翼賛ペーパーが出るのですが)にあって、このおっちゃんも基本的には執行部寄りの話をすることが多め。

足元では妙に物価の話をしてたりしてあららという感じでしたが、さて今回は何の話をしたんでしょと思いますが、そもそも読んでる時間も無いので、最後から4パラグラフだけ引用しておく(超手抜き)。

『In sum, I see the Fed falling short on both our maximum employment and inflation mandates for some time. And the turmoil in Europe and government fiscal retrenchment in the United States raise the danger that the economy could perform worse than I expect. For these reasons, it’s crucial that we maintain our current highly stimulatory monetary policy stance. As part of this, we’ve stated our intention to keep our benchmark short-term interest rate at exceptionally low levels at least through late 2014.』

『We must also stand ready to do even more if needed to best achieve our statutory goals of maximum employment and price stability. The April FOMC statement indicated that the “Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.”』

『If the outlook for growth worsens to the point that we no longer expect to make sustained progress on bringing the unemployment rate down to levels consistent with our dual mandate, or if the medium-term outlook for inflation falls significantly below our 2 percent target, then additional monetary accommodation would be warranted. In such circumstances, an effective tool would be further purchases of longer-maturity securities, potentially including agency mortgage-backed securities. Past purchases have succeeded in lowering borrowing costs and improving financial conditions, thereby supporting economic recovery.』

『As I’ve tried to make clear, these are highly uncertain times, and our crystal balls are much cloudier than usual. At the Fed, we must be vigilant, and ready to adjust monetary policy as circumstances warrant. Thank you very much.』

先行き見通しの不透明性の話と、マンデート達成に時間が掛かるという話をして、必要な場合には追加緩和も実施しますよという話をしていますな。で、見通しが更に悪化したり、物価の上昇率が低下したら追加緩和で資産の購入拡大も含まれますよ元からそういう声明文出してますね。という所までは理解した。

トップに戻る







2012/06/06

○ブラード総裁は追加緩和に消極的

毎度おなじみブラード総裁である

財政再建に対するブラード総裁のコメントをネタにしようと思ってセントルイス連銀のサイトを見に行ったら直近のスピーチがありましたですお。

ブラード総裁のメッセージとかを並べているページはこちら。
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/index.html

んでまあ直近のスピーチはこちらでした。
http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1425
St. Louis Fed’s Bullard Discusses U.S. Monetary Policy, Housing Bubble
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/BullardBipartisanPolicyCenter5June2012Final.pdf(スライドショー)

寝起きに読んだので上記URL(スライドショーじゃない方)からちょっとだけで勘弁。

『ST. LOUIS - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard discussed “The Aftermath of the Housing Bubble” on Tuesday during an event jointly hosted by the Bipartisan Policy Center’s Housing Commission and the Jack Kemp Foundation.』

ということで・・・・・・

『During his presentation, Bullard discussed current monetary policy in the U.S. and the economic outlook. He also discussed the collapse of the U.S. housing bubble and its implications for the economy. “Recovery from this event is ongoing and will ultimately take many years,” he said, noting that households are saddled with far too much mortgage debt compared with historical norms. 』

米国の住宅バブル崩壊からの回復に関しては「現在は回復の途上にあるが、それには多くの時間が必要である」という事で、モーゲージによる負債が積みあがりまくっているのでシャーナイナイとのお告げ。

『“Monetary policy has been ultra-easy during this period, but cannot reasonably encourage additional borrowing by households with too much debt,” he added.』

金融政策は極めて緩和的ですが、家計の負債が非常に高水準の為に家計が追加の借入を行うことへの助けには緩和的な金融政策があまり寄与しませんとな。

つーことで金融政策について。『Current U.S. Monetary Policy』って小見出しから。

『Many analysts of the U.S. economy are pointing to a “global slowdown,” Bullard said. For example, the Euro-area unemployment rate has increased over the past year, and Chinese economic data has indicated slower growth than anticipated so far this year.』

米国経済についてはグローバルな減速を多くのアナリストが指摘していますが・・・・・・・

『While the U.S. data has been mixed in recent weeks, Bullard noted that “the outlook for 2012 has not changed significantly so far,” with many expecting a stronger second quarter than first quarter in terms of real GDP growth and a stronger second half of 2012 than first half.』

ブラード総裁の米国先行き見通しについては直近の経済指標がまちまちとなっているものの、今年の経済見通しは今の所そんな大きな変化はないということで、2Q以降今年の後半に掛けては米国経済はより強いでしょうという見立てです。

『Regarding labor market conditions, Bullard said, “The recent nonfarm payrolls report was disappointing, but not enough to substantially alter the contours of the U.S. outlook.” He added that seasonal adjustment factors may be disturbing the normal interpretation of the data; when looking at non-seasonally adjusted data, employment growth from one year earlier is better in 2012 than in either 2010 or 2011.』

労働市場に関しても直近のNFPはdisappointingだが、米国経済の見通しの輪郭を変える程の悪い内容ではなく、季節要因による歪みが影響しているとのお話ですな。

『Bullard noted that the situation in Europe has driven U.S. interest rates lower. “Both nominal and real interest rates have fallen substantially over the last year in the U.S.,” he said.』

欧州ドリブンによる米国金利低下によって名目も実質も金利が大きく低下したとのことで、まあここまでが米国経済に関してでしたが、この流れでまあ金融政策に関してどういう話になるかというのはほぼ判ると思いますが・・・・・・・

『“One possible FOMC strategy is to simply pocket the lower yields and continue to wait-and-see on the U.S. economic outlook,” he said, adding that “current policy is already very easy, as the policy rate remains near zero and the balance sheet remains large.”』

現在の緩和的な環境を維持して状況を見守るのが宜しいとな。

『Furthermore, while the global problems are being driven by the continued turmoil in Europe, “a change in U.S. monetary policy at this juncture will not alter the situation in Europe,” Bullard stated.』

「今ここで米国の金融政策の変更を行っても欧州の状況が改善する訳でも無いですし」と言われますとぐうの音も出ませんが(^^)、まあ米国の見通しに大きな変化が無いというのであれば、元々物価重視の姿勢であり、更に「リセッション前の水準というのはそもそもが信用バブルで下駄を履いていた状態であるからして、経済データを評価する時にリセッション前の水準に対してどうのこうのというのはそもそもおかしい」と折に触れて主張しているブラード総裁でございますので、まあこういう感じになるかなあとは思いますが、追加緩和に関しては引き続き不要論という事でございました。


んでもって後半の『U.S. Housing Markets』の所は斜め読みしかしていないのでスルーと致しますが最初と最後だけ引用します。

『In discussing the collapsed U.S. housing bubble, Bullard noted that most components of U.S. GDP - except for the components of investment related to real estate - have recovered to or past their levels of the fourth quarter of 2007. “It is therefore not reasonable to claim that the ‘output gap’ is exceptionally large,” he said.』

ということで、これまた以前よりブラード総裁が主張している話で「リセッション以降の生産ギャップが大きい」というビューは必ずしも妥当では無く、そもそもリセッション以前の基準で考えるのがおかしいでしょというような話(理由はさっきと同じ)をしていると見た。

あとは住宅市場特有の問題とかにも触れているようですが、まあこっちに関しては最後にありますように・・・・・・・・

『“We should expect and plan for slow adjustment in housing markets,” Bullard said.』

ということで、住宅市場の回復には相当の時間が掛かる事を前提にすべきであるという結論のようでございます。


○ということで米国金融政策に関する雑感

まあ何ですな、ブラード総裁は今年のFOMC投票権が無いので票決行動的には関係ないちゃあ関係ないのですが、このおっちゃんはQE2の時に先頭切って大規模な国債買入が必要(かつ低金利政策の長期化は経済のデフレ均衡を起こす可能性があるので避けるべき)というお話をしまして(さっきのセントルイス連銀のブラード総裁のコーナーにある『Key Policy Papers』って所にある『"Seven Faces of 'The Peril'" 』をご参照あれ)、まあ金融政策に関するその手の理屈を先導して出してくるお方(個人的には逆さ絵のおじさん以外にはブラード総裁とコチャラコタ総裁の話とサンフランシスコ時代のイエレン総裁の話って論点が中々興味深い(今のSFウィリアムス総裁も比較的オモロイ)ですな)なので、ここでブラード総裁が米国の追加緩和が必要とか言い出したら米国金融市場はQE3祭りになったのでしょうが惜しかったですな。

つーことでまあ物価重視派の地区連銀総裁の皆様が追加緩和に関してあまり積極的では無く、足元の経済指標でそれほどの経済見通しの引き下げを行っていない、という所からしますと、普通に考えるとLSAPの再拡大的な施策を打ち込むにはFOMC内部のコンセンサスが取れるのかどうかはかなーり怪しい所ではございますなあとは思うのですよ。まあ理事の頭数増えましたし、執行部の意向を多数決で通すという意味ではある程度強引に押し切るというのも出来るとは思うので、票決権の無い物価重視派地区連銀総裁の見解が変わらなくてもまあ追加措置を突っ込めるには突っ込めるとは思います。

ただ、SEP見た時にも思いましたが、「インプット」ではあっても地区連銀総裁の見解がやや景気強気方向になり、その見通しが大きく下がる訳でも無いという状況では中々派手な緩和でござる的なものを突撃するのは難しいんじゃネーノという気はしますので、この前引用したバーナンキ議長会見にありましたような「ガイダンス文言にバランスシートのサイズに関する記述を加える」というような話とかをするとかになるのかなあとか今の所勝手に妄想しております。あとは「不胎化QE」と言われるもの(不胎化したら量は拡大しないのですからQEというのはおかしいけど)っつーのは有るとは思いますが、足元で米国長期金利が絶賛低下している中で更に金利下げてどうすんねんという気もするのでございます。以前は景気見通しが強まった事を背景にして「ツイストオペ終了後に長期金利が上昇したらマズーではないか」というのがそもそもツイストの延長とか不胎化QEとかの思惑のベースにありましたが、何せ足元では米国長期金利が急低下しやがったので、今さら長期金利上昇対策で長期債購入ってのも如何なものか(というか景気見通しが強くなった時の弾に取っておきたいでしょ)という気もする訳でして、はてさてどういう目くらましをしてくるのよという所でしょうか。

しかしまあ何ですな、米国の場合ツイストオペ終了をやっぱり延長するというだけでも何故か追加緩和と呼ばれ、一方のジャパンはご覧の有様というのは、毎度思いますけれども、プレゼンテーションというかまあハッタリ成分つーかインチキ成分の不足と、麿節の出し過ぎという所で、何か折角色々と出している物が対外プレゼン的に残念というのが残念だなあと思う次第なのでございまする。



○ということで本当はネタにするつもりだったブラード総裁の話はこちら(予告編)

セントルイス連銀のアニュアルレポートにブラード総裁のメッセージがあったのよ。
http://www.stlouisfed.org/publications/ar/2011/pdf/AR-2011-Bullard.pdf
European Sovereign Debt Crisis: A Wake-up Call for the U.S.

まあ題名見たらその時点で内容は予想できると思いますが、まあその通りの内容でございまして(^^)、財政健全化に向けた取り組みを米国は進めるべきであるという話をしているのですが、まあジャパンの政治家の皆様は100回位読んだ方が良いと思うのが最後の方にもあったりする(1ページなのでまあさらっと読めます)ので(^^)。

本当は今日のネタはこっちの筈だったのですが、先ほど申し上げましたようにセントルイス連銀のサイトに行ったら直近の講演をうっかり読んでしまったので(^^)ネタが変更になってしまいましたとさ。

トップに戻る



2012/06/04

○今さらなのですが4月FOMC後のバーナンキ会見から

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120425.pdf

時間が無くなってしまったので今さらの虫干しネタから。

・QE3実施の条件について&「量的なガイダンス文言」

QE3の条件って何ですねんという質問がありまして(本文5ページです)ロイターのPEDRO DA COSTA記者の質問から。

『PEDRO DA COSTA. How much more weakness would you need to see for QE3 to be in place? Would you need to see an actual recession take place?』

『CHAIRMAN BERNANKE. The question is, you know, “How much more weakness do we need?” The Committee has to make those assessments, and we’ve been working to try to provide more-explicit guidance, quantitative guidance about our policy reaction function, but so far, you know, we haven’t really done that.』

ここでしらっと出ているのですが、「more-explicit guidance」として「quantitative guidance about our policy reaction function」というのが検討されているという発言がございまして、もしかすると今月のFOMCでは追加緩和のようなものとして「量的なガイダンス文言」という益々何が何だかワカランチ会長な目くらましを打ってくる可能性もありますなあと思います。

まー量的なガイダンスとしては「現在の経済状況および先行き見通しによれば、FEDのバランスシート規模をどのような時期まで維持する事が正当化される」とか言い出すのかなあとか思いますけれども、それでは面白くないので一ひねりする必要もあるかも。

『And I can only say qualitatively that the Committee will continue to look at the evolution of the outlook, try to assess whether unemployment is making sufficient progress towards our objectives, and, in particular, whether the recovery is still continuing. And we remain prepared to use balance sheet tools to support the recovery and to help make sure that unemployment continues its downward path towards longer-run normal levels.』

ということで、「必要ならばやりますよ、バランスシートツールもありますよ」という発言はしながらも、4月25日時点では「失業率が我々の目的に向けて改善しているかどうか、経済は回復に向かっているかどうかを点検しながら」検討します。という話をしておりまして(そらまあ当たり前ですが)特段の決め打ちモードでも無い、というよりは声明文やSEPのトーンは強かったですよね(その強いトーンを会見で火消ししている感じでしたが)という所ですな。


・ガイダンス文言とSEPの矛盾について

これは以前別の質疑を引用しましたが、こちらの方が話が長い。CNBCのSTEVE LIESMAN記者の質疑から(本文6ページより)。

『STEVE LIESMAN. Mr. Chairman, according to the latest forecast, 10 members of the FOMC see a 1 percent or higher fed funds rate in 2014; 7 of them see a 2 percent or higher fed funds rate.』

さいですな。

『Under that-those conditions, how can the guidance in the statement, that you remain exceptionally low through late 2014, be justified? And is there a point at which the dissonance between the individual forecasts and the guidance get to a point where one or the other is no longer tenable?』

SEPの政策金利見通しの引き上げとガイダンス文言の齟齬はどうなってますねんと。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, there’s certainly a range of views, as you’ve noted, but these projections are inputs into a Committee process.』

開き直っているというか何というかなのですが、「このSEPによる各メンバーの見通しはFOMCの議論のプロセスにおけるinputである(キリッ)」というのは何ですねんという感じではございます。

『And it’s in the Committee meeting that we had yesterday and today where we debate not only the possible outcomes, but also the risks, the uncertainties, all the things that inform our collective judgment. And as I said, the Committee had no difficulty coming to a consensus that the guidance that we gave is still appropriate. Again, if there’s a substantial change in the economic outlook in either direction, then the guidance would change appropriately. But for now, I think the Committee is comfortable with the consensus statement that we put out.』

comfortableっていうのは前の質疑でも出た(以前ネタにしました)のですが、このSEPでの各委員の見通しはインプットの一つであって、それを基に議論をして、リスクなども勘案した結果としてあのガイダンス文言になったんじゃ文句あるかコノヤロー(とは言ってませんが^^)とのお告げです。

・・・・・という説明で記者さんが引き下がるわけでも無く、いやいやそれはという質問が続く。

『STEVE LIESMAN. Do you worry about creating confusion in the market between the guidance and the individual forecasts?』

で、逆さ絵おじさんのお答え。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, again, the individual projections are inputs to the Committee decision, so the Committee decision is the critical element in that respect. We are continuing to work to become more transparent, and we have a variety of things that we’re looking at, so you’ll have to stay tuned for that. But again, the Committee was quite comfortable with the consensus that we have reported today.』

なんかもう開き直っている感が強いのですが、そんならそもそもSEPでの個別金利見通しのプロットとかするなよなとは思う次第で、まーFRBの執行部としても内心ではアチャーと思っているのではないかという気もしますけどどうなんでしょうかね。

という今さら小ネタでございました。

トップに戻る






2012/06/01

・ブラード総裁は平常運転

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4VSG66JTSE801.html
セントルイス連銀総裁:資産購入がインフレ目標達成を可能に

『5月31日(ブルームバーグ):米セントルイス連銀のブラード総裁は31日、日本銀行による資産買い取りが日銀の中期的なインフレ目標達成を可能にするとの認識を示した。来日中の同総裁は東京都内での記者説明会で、日銀の資産買い取りについて、日本がデフレ状況から抜け出すことに寄与すると指摘し、「最終的に成功するだろう」と述べた。』(上記URLより)

資産買入政策を重視するブラード総裁らしい発言ですな。で、米国の金融政策に関してはいつもの物価重視姿勢。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4VIVY6JTSEE01.html
セントルイス連銀総裁:追加緩和の適切な時期ではない

『5月31日(ブルームバーグ):米セントルイス連銀のブラード総裁は31日、米国が追加緩和を実施するのに適切な時期ではないとの見解を示した。同総裁は都内で記者団に対し、ギリシャがユーロ圏から離脱する場合は、適切に実行されることが必要だと語り、欧州通貨同盟への大きな打撃を伴わない形での離脱は可能だとした。ブラード総裁はまた、日銀は資産買い取りを通じて、当面1%としている物価安定のめどを達成できるだろうと述べ、資産購入の政策については白川方明総裁と全く意見が同じだとした。』(上記URLより)

トップに戻る



2012/05/31

○5月BOE議事要旨から

まあ趣味のコーナーでどうもすいません。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1205.pdf

・まあ対岸だから当たり前だが欧州懸念しまくりの巻

『 Before turning to its immediate policy decision, and against the background of its latest projections for output and inflation, the Committee discussed financial market developments; the international economy; money, credit, demand and output; and supply, costs and prices.』

という決まり文句が最初にあって、その次に『Financial markets』というのがあるのですが、のっけから「年初以来の市場のセンチメント改善は消えてしまいました」とキタコレ。

『The improvement in sentiment over the first three months of the year had waned and a sense of caution had again become apparent in financial markets.』

まあもちろんその要因は欧州債務問題ですが。

『This reflected renewed concerns about the vulnerabilities associated with the indebtedness and competitiveness of several euro-area economies that had intensified after the results of elections in France and Greece.』

コア国とダメ国のスプレッド拡大はFTQの流れを示唆すると。

『Divergent movements in government bond yields suggested that there had been some flight to safety: yields on ten-year government bonds had fallen to historical lows in Germany and in the United Kingdom, but had risen again in Italy and Spain. Bank CDS premia were higher on the month, especially for Italian and Spanish banks. The partial nationalisation of Bankia, a large Spanish bank, had added to concerns.』

ということで、まあ欧州問題って英国にしてみりゃエライコッチャ(赤い経済新聞は相変わらず対岸の火事ヒャッハーみたいな報道っぷりなのがジョンブルクオリティー爆裂という感じですが政策担当者としてはそうも言ってられないという事でしょうな)ですからリスク認識高まりますがなという所でしょうし、まあ経済に与える条件が日本とは全然違うのですからその点は差っ引かないといけませんけど、この超警戒モードに対して日銀の論議ではどうなっているのかというのは次回の決定会合議事要旨を見るときに(中銀観察人的に)注目されるでしょうなあと思うのですが。


・ポンド上昇の影響に関して

でまあその影響はポンド高にも現れているのですが、そのポンド高について第4パラグラフに指摘が。

『There had been a further appreciation of sterling. In effective terms, sterling had risen by 2% since the Committee’s April meeting and was 8% higher than its low point in the middle of 2011.』

英国ポンドの実効レートは4月から2%、昨年の安値からは8%上昇しています。

『Market intelligence suggested that sterling had benefitted from investors seeking to shift funds into countries with higher perceived credit quality and liquid government bond markets while continuing to diversify their currency holdings.』

その要因はFTQです。

『While sterling remained almost 20% lower than it had been five years earlier, a continuing appreciation could have a material influence on the outlook for growth and inflation in the United Kingdom.』

ということで、成長とインフレに「顕著な影響」があるという指摘ですが、まあインフレには下げ方向で効きますという話ですな。一方で成長には下ということで。


・中国の為替推移に関する指摘もなるほどという感じですが

でまあ話は飛んで為替つながりで『The international economy』の第8パラグラフに中国経済の話がありまして(まあ仕方ないのだが最近はここの部分で日本の話が全くと言っていいほど出て来ないのが何ともさびしい話ではある)これがほほーという感じで。

『GDP growth in China had slowed a little to 1.8% in the first quarter, but both the manufacturing and services PMIs increased modestly in April to levels similar to those reached in the first half of 2011.』

ここまでは足元の話。

『In recent years, domestic demand growth had accounted for more of China’s output growth and the current account surplus had fallen from a peak of over 10% of GDP in 2007 to a little under 3% of GDP in 2011. In part this had reflected a decline in China’s price competitiveness over this period as its real exchange rate appreciated.』

ここ数年に見られる中国経済の成長速度の鈍化や、貿易黒字のピークからの縮小の要因の一部として「RMBの実効レートの上昇が中国の価格競争力の低下をもたらしている」という話をしておりますわな。

『This shift in the Chinese current account surplus raised the possibility that a sustainable reduction in global imbalances might be in train, although one counterpart had been an increase since 2009 in the current account surplus of oil exporters reflecting a higher price of oil, rather than a significant reduction in deficits elsewhere in the world.』

でまあそれはそれでグローバルなインバランスの改善が進むという可能性もという話をしてたりします(一方で原油価格上昇で別のインバランスが発生しているという指摘も)が、割とBOEはこの辺りの為替要因についての議論が多かったりするのが特徴でして、興味深いと申しますか、日銀ってその辺の論議をあまり前面に出してこない(外野がアホのように五月蝿いから逆に黙ってしまうというのもあるとは思いますが)所でして、まあ非伝統的政策で金利ルート以外での政策波及効果も考えないといけませんねという状況の下では、この辺の為替ルートに関する考察というか議論が日銀でももっとあって然るべき、つーか議論はあるんでしょうけれども、あまりそれを大々的に出すという感じじゃないって所なのでしょうか。


・ユーロ圏経済の見通しは厳しい

まあ当たり前ですが第7パラグラフから。

『The latest indicators had continued to highlight the weakness of activity in the euro area. The composite output PMI had fallen in April in both core and periphery countries to around the levels seen the previous autumn, signalling contraction.』

まあこの前出てた日銀の決定会合議事要旨は4月27日分でしたが、そこでのユーロエリア経済の話と、5月10日のMPC議事要旨であります所のこちらの話との温度差ががががが。

『Business and consumer confidence indicators had also deteriorated. Consistent with this weakness, the euro-area unemployment rate had risen to 10.9% in March. Uncertainty was likely to continue to weigh on euro-area confidence and activity.』

これでもかという感じですなあ。

『The Greek election had been inconclusive and this had led to increased speculation that Greece would leave the euro area.』

こういうのちゃんと書くのよね。

『And concerns had increased about the Spanish government’s ability to deliver the planned fiscal consolidation against a poor economic background and further sovereign and banking sector downgrades.』

ということで・・・・・・・・

『The euro area continued to face fundamental challenges, in particular the need to reduce the indebtedness and improve the competitiveness of some member countries. Market participants’ perception of the risk of a disorderly outcome had increased; such an outcome could result in considerably lower output in the euro area and significant disruption to global banking and financial markets.』

まあ日本と英国では欧州問題の影響が思いっきり違うから温度差出るのはシャーナイのですけれども、先般ネタにした総裁会見でも「影響はどうですか」みたいな質問に対してなんか微妙にスルーした回答をしていたのってこういうの見るとどうなのかねと思うのですけね。


・インフレの先行き見通しに関しての考察が興味深い

まあ他の経済に関する話も色々とふーんというのはあるのですが、その辺は華麗にスルー致しまして物価に関する部分。『Supply, costs and prices』の第19パラグラフから。

『A key challenge was to understand better why weak economic activity had not generated greater downward pressure on inflation.』

経済活動が弱いのに何でインフレがサガランチ会長なのかという事を解明するのが重要ですと。

『It was possible that the degree of slack in the economy was having less impact on inflation than assumed.』

経済のスラックがインフレの下方圧力をそれほど生み出さない点についての考察が必要ですってえ話になっていますな。まあ従来このロジックで「先行きはインフレは落ち着いてターゲット水準に低下するでしょう」という話でしたので、まあ困ったなという所なのでしょう。

『For example, that might be because firms with less access to credit were unwilling to cut prices when there was a risk that they would have less recourse to external funds should they run into cash-flow difficulties. There was also, however, the issue of very weak labour productivity growth.』

企業の金融環境が悪い事から、企業がキャッシュフロー確保を重視する価格設定を行う結果として物価に下方圧力がかかりにくいというのと、労働生産性が伸びないという可能性を示しています。

『The Committee discussed two possible broad explanations for this that were not mutually exclusive. Both suggested that the supply capacity of the economy had weakened alongside the weakness of demand.』

まあ両方の要因が効いているのではという話のようで。

『First of all it was possible that the weakness in productivity and demand had a common cause, such as the widespread fear of a disorderly resolution of the euro-area crisis. Symptoms would include elevated risk premia that raised bank funding costs and the cost of capital to companies, whether they were reliant on the banking system for finance or not, and weakened physical investment and innovation.』

『The second explanation was that the weakness in productivity had itself been caused by weakness in demand, perhaps because of mothballing of capital or reduced scope for learning on the job.』

『Elements of both explanations seemed to be evident and helped account for low productivity growth and the lack of more substantial downward pressure on domestic costs.』

つーことで、金融問題による先行き懸念が企業の行動に影響を与えるという話とか、需要が伸びないので企業が労働者のトレーニング投資を行わなくなって労働生産性が落ちるという循環もあるのではというような話ですな。

次のパラグラフから。

『The weakness of productivity growth in recent years had contributed to the low level of businesses’ profit margins. It was possible that companies would seek to restore margins by increasing their prices, particularly if they thought that their competitors were also behaving in the same way.』

で、その労働生産性の伸びの弱さが企業のマージンの縮小に繋がっており、その流れが続く中で企業がマージンを復活させようとして行動するのがインフレのサガランチ会長の要因でもあるという話ですが、この前提として「うちがマージン上げても他所もマージン上げるから無問題」という認識が広がっているからというのがありますがなという事で。

『The latest quarterly CBI surveys suggested that in the first quarter of 2012 there had been an increase of about 0.3 percentage points in the one-year ahead inflation expectations of companies. This was consistent with a similar increase in the Yougov/Citigroup survey of households’ one-year ahead inflation expectations.』

ということでここでインフレ期待の話が出て来まして、サーベイ調査によりますと、1年先の企業のインフレ期待が上昇していて、家計の1年先のインフレ期待も上昇しているというのがございます。でまあこれって(既に何回も引用しているので割愛しますが)金融政策決定に関する議論の中で「インフレ目標を上回った状態のインフレが長期間続く事によってインフレ期待が上昇して物価上昇圧力が高まるリスクがある」という指摘があった件が顕在化しているのではないかという話に繋がっている訳でして、欧州問題で景気に下押し圧力の掛かる中で物価がサガランチ会長となると益々大変ですなあと思う(まあ欧州問題の結果原油価格が下がって英国ポンドが上昇しているのが物価に関しては天の助けではあるのですが)のでございます。


・資産買入おかわりの効果に関して

金融政策決定の議論の所にワープしまして『The immediate policy decision』の第35パラグラフ。

『The Committee had restarted its asset purchase programme in October and at its February meeting had announced an increase in the size of the programme of £50 billion to a total of £325 billion. This had recently been completed.』

ですな。

『As yet, there was no compelling evidence that the impact on nominal demand of this additional round of asset purchases would be materially different from previous asset purchases.』

こういう時にFRBだとこじつけでも何でもいいから「こんな効果がありました(キリッ)」って必ず言う訳で、逆さ絵おじさんだけじゃなくても雨人だと死んでも言わなさそうだなと思うのでありまして、これが欧州クオリティと思うのでありました(^^)。

『Recent market intelligence, low gilt yields and a pickup in sterling deposits by both residents and non-residents were consistent with asset purchases working as expected through the portfolio rebalancing channel with a lag. But the Committee would keep this under review in judging the policy actions required to support the recovery and meet the inflation target. In so doing, it would also need to take account of any decisions of the Financial Policy Committee that might have implications for the provision of credit to the wider economy and the pace of the recovery.』

ということで、資産(つーか国債)買入によるポートフォリオリバランス効果がラグを伴って現れたことによって、足元で居住者および非居住者の英国ポンド建て預金が増加していると市場で言ってる人もいるけれども、MPCとしては判断保留という事のようですな、うんうん。


ということで本日は思いっきり趣味のコーナーではありましたが、まあ「インフレが高止まりする期間が長くなって、かつ企業の金融環境が先行き不透明であるという中で、短期的なインフレ期待が高まった場合に、経済のスラックが物価を押し下げるという理屈が通用しないケースになる」というのを英国が今まさに身を切って示している事は、おそらくFOMCメンバーの中で物価重視派となっている地区連銀総裁(まあ目立つのはプロッサーとかフィッシャーとかコチャラコタとかブラードとかですかな)のインフレ重視スタンスを強化する方向に繋がるんじゃないですかねえとか思うのでありまして、そういう意味では米国の追加緩和をするのかどうかという点もそうですし、もし追加緩和のような物をするにしてもバランスシートの使い方に影響というか制約を与えるんじゃないかなあとか思うのでありました。とここまで趣味の世界におつきあい頂いた方に役に立ちそうなインプリケーションを無理矢理ひねり出してみましたがどうでしょう(^^;

トップに戻る




2012/05/24

・BOEネタを少々

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Pages/mpc/pdf/2012/mpc1205.aspx
Minutes of the Monetary Policy Committee Meeting held on 9 & 10 May 2012

『Regarding Bank Rate, the Committee voted unanimously in favour of the proposition.

Regarding the stock of asset purchases, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale, Paul Fisher, Adam Posen and Martin Weale) voted in favour of the proposition. One member of the Committee (David Miles) voted against, preferring to increase the size of the asset purchase programme by a further £25 billion to a total of £350 billion.』

ということで、今回も8対1でした。議事要旨はこちらだが読んでる暇無いので週末に読む。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1205.pdf

ちなみに、
http://www.bankofengland.co.uk/Pages/home.aspx

の右下の方には

Current Inflation 3.0%
Next due:19 Jun 2012

とございまして、ああやっと3%まで低下したんですねという所ですな。

更にどうでも良いが・・・・・・・

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/050.aspx
Pension funds and quantitative easing
Speech given by
Charlie Bean, Deputy Governor for Monetary Policy, Bank of England

本文はこちら
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2012/speech573.pdf

題名が面白そうなのでちょっと気になりますのでこれまた週末の読み物候補(^^)。

トップに戻る



2012/05/23

○またまた昔のネタでFOMC後のバーナンキ会見ネタを小出し攻撃

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120425.pdf

・冒頭の見せ方が上手いですよねという話&その他論点のある最初の質疑(本文3ページより)

最初の質問はNightly Business ReportのDARREN GERSHさんによるものなのですが、仕込み質問なのかはわかりませんが(^^)、答えを見ると結果的に仕込み質問だったんじゃねえか位のいい感じの質疑応答の展開になっております(^^)。まあ良い答えを引き出すような質問をするのは記者さんの大事なお仕事でもありますけどね。

『DARREN GERSH. Thank you, Mr. Chairman. Darren Gersh, Nightly Business Report. Some of your critics-I’m sure you’re not going to be surprised-think that you’re still being too cautious, that unemployment is still high, the economy may be slowing, inflation is subdued, and I know you just talked about the balance sheet. But given that, is the Committee now any closer to QE3 than it was at its last meeting?』

議長の答え。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, first, the Committee has certainly been bold and aggressive in terms of easing monetary policy.』

と、いきなり冒頭の質疑の冒頭部分で「金融緩和に対して常に大胆かつ積極的です」とサービス発言キタコレという感じですが、結局は皆様既にご案内のように、冒頭のこのハト的なトーンでのサービス発言が続く感じになりました(昨日ネタにしたクルーグマンによる批判に答えた部分では物価ターゲットっぽい発言もしていましたが、あの辺りの発言は今回の会見ではそこだけトーンがちょっと違うという感じです)。

『We’ve maintained the federal funds rate close to zero since late 2008. We’ve had two rounds of so-called quantitative easing. We’ve had a maturity extension program, which is ongoing. We have offered guidance about the federal funds rate that goes into at least late 2014.』

『So we have been very accommodative, and we remain prepared to do more as needed to make sure that this recovery continues and that inflation stays close to target. So, in particular, we will continue to assess, you know, looking at the economic outlook, looking at the risks, whether or not unemployment is making sufficient progress towards its longer-run normal level, and whether inflation is remaining close to target.』

失業の方が「長期的なノーマルレベル」で物価は「ターゲット」と言う事で、まあ前回のデュアルマンデートの理解を公表した時よりは物価の「ターゲット」を強調するような感じを受けました。まあ言い回し自体に極端な変化はないのですが、全体を見た印象として物価の「ターゲット」の風味がより強くなっているような言い方になっているなあと言う風には思いました。

『And, if appropriate, and depending also on assessment of the costs and risks of additional policy actions, we remain entirely prepared to take additional balance sheet actions if necessary to achieve our objectives.』

ということで必要があれば追加の「バランスシート」アクションを行うと発言しているので、まあ何かやる時はバランスシートを何らかの形でいじる政策を行い、先日引用したFOMC議事要旨にある「代替シナリオによる景気見通しの表明」とか「より明示的な金融政策運営の方法」などという議論の俎上にあるものがセットになるのかならないのか判りませんが、まあその手のコミュニケーションポリシーが出てくる時には何らかの緩和っぽい出し方になるのか、バランスシート政策とのセットになるのかという感じでしょうな。

『So those tools remain very much on the table, and we will not hesitate to use them should the economy require that additional support.』

とドヤ顔で締めていますが、本当に打つネタがテーブルにあるのかは正直謎である。


・物価について(4ページ)

次の質疑ですがこれも面白かったので引用。

『JON HILSENRATH. Mr. Chairman, Jon Hilsenrath from the Wall Street Journal. The Fed has been forecasting for some time that inflation would fall to 2 percent or below. The latest measures of inflation suggest that the core PCE is at the higher end of that range and many other measures are above 2 percent. I noticed that in your forecast today that the upper end of your forecasts all the way through 2014 have increased. Do you see a risk that the disinflationary forces in the economy might not be as strong as the Fed had been projecting for some time?』

物価見通しの割にアクチュアルな物価指数が下がっていないのだが、ディスインフレ圧力をFEDは過大に見ていないかという質問ですな。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, I would just say, first, that our projections still have inflation very close to our 2 percent target. As you point out, core inflation and some other measures of underlying inflation have been a little stronger than expected.』

ふむ。

『But I would say first that some of the movement in the first quarter, for example, seems to have come from transitory sources like nonmarket components. And the fundamentals of inflation-in particular, inflation expectations; the amount of slack in the economy; the commodity price behavior, which has been relatively well-controlled in recent months-all of those things suggest that inflation is going to stay close to or perhaps a bit below our 2 percent target.』

『Now, as I mentioned in the opening remarks and as we said in our briefing, the recent rise in gasoline prices has created a temporary bulge in headline inflation, in overall inflation, but we expect that to pass through the system and, assuming no new shocks in the oil sector, inflation ought to moderate to about 2 percent later this year.』

1Qの物価上昇は一時的要因によるもので、物価を巡るファンダメンタルズは物価抑制を示唆していますと。


『JON HILSENRATH. Why did the lower bound in those forecasts rise?』

と同じ人が続いてSEPでの予測の下限値が上昇した事に関する質問。

『CHAIRMAN BERNANKE. The lower bound rose-again, this represents 17 distinct views-but I would guess that the reason is that the data have come in a little bit firmer, core inflation has been a little stronger than was expected. But those differences are not particularly large.』

ということで、これは直近の物価がやや強かったことによるものだが、それ自体は基調的な見方に大きな変化を与えるものでは無いでしょ、という話をしていまして、まあ物価に関して他の地区連銀総裁のような警戒モードを示すという事は無くて、経済のスラックが物価上昇を抑制するというロジックを強くサポートしている(ので結果としてハト派分類になる)という事なのでしょうな。


・「ガイダンス文言はconfortable」(5ページ)

んでもって次の質問である。

『PEDRO DA COSTA. Mr. Chairman, Pedro da Costa from Reuters. So we know that the Committee foresees rates staying very low until late 2014. What is your personal view on the timing of the first rate hike, on the likely timing? And second, do you see the Committee as having an easing bias at the moment or is it neutral? Could it go either way?』

利上げ時期の個人的見解と、FOMCには緩和バイアスがあるのか中立なのかというこらまた直球な質問ですが、回答の方が興味深いのでおじゃる。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, I’m very comfortable with the consensus view that we enunciated today, and I think that the Committee broadly is comfortable-a 9-to-1 vote in favor of
this guidance.』

ガイダンス文言に対してI’m very comfortableと来ましたな。

『So again, that represents a very accommodative stance of policy. Our intention is to maintain a highly accommodative stance of policy for the foreseeable future, and we remain able and willing to take further action if necessary.』

また緩和系サービス発言でございますよ。

『At the same time, I think it is worth noting that the forward guidance on the federal funds rate is conditional on the data, and if the data were to come in much stronger than expected, we would adjust the guidance appropriately. So it’s not unconditional; it does depend on how the outlook evolves. And again, should the outlook strengthen notably, then we would have to respond to that.』

まああまり冒頭から緩和系発言ばかりしていたので、ここでちょっと「まあそうは言っても景気見通しが思いっきり改善したらその時はその時」というのを入れているのがチャーミングというか発言のバランスを取ったという感じで中々味があるというものです。

とか言って延々と引用しているとオワランチ会長になるので、今日はこの辺にしておいて、冒頭のサービス発言部分を引用してみましたけれども、バーナンキ議長は(やや強めの見通しの出ている公表文書に対してバランスを取っているというのもあるのでしょうが)基本的にはハトを強調していますね、というのが判るかと思われます。

#相場ネタがアレにつきこのシリーズもうちょっと続く(予定)

トップに戻る




2012/05/22

○今更ネタですが4月FOMCの会見からまた少々

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120425.pdf

日銀批判がどうのこうのみたいな質疑があってその当座ちょっと話題になっていましたが、壊れた蛍光灯のように今さら引用してみましょう。初稿だと8ページ、こちらのPDFだと7ページになります。

NYTのBINYAMIN APPELBAUMさんからの質問がそれなんですけどね。

『BINYAMIN APPELBAUM. Unemployment is too high, and you said you expect it to remain too high for years to come. Inflation is under control, and you say that you expect it to remain under control. You say that you have additional tools available for you to use, but you’re not using them right now.』

と最初から挑発的ですが。

『Under these circumstances, it’s really hard for a lot of people to understand why you are not using those tools right now. Could you address that?』

あんさん失業が高くて今後も高止まりする予想をしてる、インフレはコントロールできていて、今後もコントロールできると言っている、そして次の緩和ツールも持っていると言ってるのにあんさんは使いませんけど、今こそ追加緩和ツールを使うべきではないのかね??どうなっとるんじゃゴルァ!との事ですな。

『And specifically, could you address whether your current views are inconsistent with the views on that subject that you held as an academic?』

それにあんさんアカデミアの時に散々言ってた事と違うじゃねえかこのウソツキハゲ、などとは言ってませんが、まあ要するに「日銀に対してはあれだけ散々大胆な緩和策をやれと言ってたのにいざFRB議長になったらインフレ恐れて全然大胆な緩和策やらねえじゃねえか」というクルーグマンなどによる悪態を全力で質問している訳ですな。


その答え。

『CHAIRMAN BERNANKE. Yeah. Let me tackle that second part first.』

クルーグマンなどによる批判の答えが先にキター!

『So there’s this view circulating that the views I expressed about 15 years ago on the Bank of Japan are somehow inconsistent with our current policies.』

思いっきりここから話が来ます。

『That is absolutely incorrect. Our-my views and our policies today are completely consistent with the views that I held at that time.』

ほほう。

『I made two points at that time to the Bank of Japan.』

ほうほうそれでそれで?

『The first was that I believe that a determined central bank could and should work to eliminate deflation-that is, falling prices. The second point that I made was that when short-term interest rates hit zero, the tools of a central bank are no longer-are not exhausted, there are still other things that the central bank can do to create additional accommodation.』

デフレを阻止するのが重要というのと、ゼロ金利制約でも政策手段はある、というのが私の主張したポイントですよという事だそうな。何かその手段が結構アレな話だったような気もするのでふーんという感じですが。

『Now, looking at the current situation in United States, we are not in deflation. When deflation became a significant risk in late 2010, or at least a modest risk in late 2010, we used additional balance sheet tools to help return inflation close to the 2 percent target.』

『Likewise, we have been aggressive and creative in using non-federal-funds-rate-centered tools to achieve additional accommodation for the U.S. economy.』

aggressiveなのはまあ同意するがcreativeだっけという気はする。

『So the very critical difference between the Japanese situation 15 years ago and the U.S. situation today is that Japan was in deflation, and, clearly, when you’re in deflation and in recession, then both sides of your mandates, so to speak, are demanding additional accommodation.』

『In this case, it’s-we are not in deflation, we have an inflation rate that’s close to our objective. Now, why don’t we do more?』

まあ話の流れでこうなるのはシャーナイけど、ここまで言わんでもええじゃろとは思うのですけど、つーかこれ質問の趣旨は「失業が高止まりしているのを放置して追加緩和をしないのは何でですか????」というまあ意地悪な質問なのですが、それに対しての答えというよりは「デフレ入りを阻止しました(キリッ)」の方で答えるというある意味高級(というかまあ普通の)テクニックではあるのですが、この辺見てるとバーナンキ的にも景気重視は兎も角として、失業率にマンデートというのはそもそも中銀としてしんどいがなというイメージはあるのかもしれないなあとか思うのでありました。

『Well, first I would again reiterate that we are doing a great deal; policy is extraordinarily accommodative. We-and I won’t go through the list again, but you know all the things that we have done to try to provide support to the economy.』

で、その後はクルーグマンらによる批判に対して反撃の巻。

『I guess the question is, does it make sense to actively seek a higher inflation rate in order to achieve a slightly increased reduction-a slightly increased pace of reduction in the unemployment rate?』

ちょびっと失業率の改善ペースを引き上げる為に高インフレを容認しろとか言ってる連中は逝って良しという話が始まります(^^)。

『The view of the Committee is that that would be very reckless. We have-we, the Federal Reserve, have spent 30 years building up credibility for low and stable inflation, which has proved extremely valuable in that we’ve been be able to take strong accommodative actions in the last four or five years to support the economy without leading to an unanchoring of inflation expectations or a destabilization of inflation. To risk that asset for what I think would be quite tentative and perhaps doubtful gains on the real side would be, I think, an unwise thing to do.』

ということで、失業改善をちょびっと加速する為に一時的な高インフレを容認するのは、結局の所インフレ期待のアンカーが出来なくなって、ここまで長い間掛けてFRBが築いてきた安定的なインフレおよびインフレ期待の枠組みを不安定化させてしまう弊害の方が大きく、そのような政策は取るべきでは無い。という話が結論なのでありました。


ま、つーことでダシに出てきた日本いい面の皮ではありますが、話の趣旨はそういう事でございました。

トップに戻る




2012/05/21

○FOMC議事要旨から少々

引き続き議事要旨ネタである。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20120425.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120425.htm

・冒頭に面白そうな小見出しが

冒頭に『Monetary Policy under Alternative Scenarios』という妙な小見出しが。

『A staff presentation provided an overview of an exercise that explored individual participants' views on appropriate monetary policy responses under alternative economic scenarios.』

どうもSEPか何かで出てくる各政策委員の出す政策金利見通しにおいて、複数の経済シナリオを基にした場合にどうなるかというのを出すとか言う話でもするんでしょうかねえ。

『Committee participants discussed the potential value and drawbacks of this type of exercise for both internal deliberations and external communications about monetary policy.』

でまあ議論しているみたいですけれども、正直言ってそれはコミュニケーションポリシーとしてカオスの拡大になるだけのような気がする。

『Possible benefits include helping to clarify the factors that individual participants judge most important in forming their views about the economic outlook and their assessments of appropriate monetary policy. Two potential limitations of this approach are that the scenario descriptions must by necessity be incomplete, and the practical range of scenarios that can be examined may be insufficient to be informative, given the degree of uncertainty surrounding possible outcomes.』

2つの潜在的な限界があるという話をしているけど、何か委員の皆さんの意見をより詳しく示す方が良い的な話になっているのがオソロシス。(この前ちょっと書いたけどまだネタにはしていない件ですが)バーナンキ議長の会見において「このSEPでの政策金利見通しとガイダンス文言の間に整合性が取れないのだがどうなっているのだ」というツッコミに対して「いやこれは単なるインプットだ」とかゆうとる中で、さらにその「単なるインプット」を事細かに書くのは意味が無いとしか思えませんけどね。

『Some participants stated that exercises using alternative scenarios, with appropriate adjustments, could potentially be helpful for internal deliberations and, thus, should be explored further. However, no decision was made at this meeting regarding future exercises along these lines.』

という事ですので、そのうちSEPだか何だかの形でこの『Monetary Policy under Alternative Scenarios』というのが出るんでしょうなあというのは把握した。


・景気認識に関しては実は強めだったりする

んでもって景気認識の部分ですけれども、『Staff Review of the Economic Situation』の部分でも『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の部分でも景気認識は強めになっているのが特徴的ではあります。

長々と引用するときりがないのでまあちょっとだけ。

『Staff Review of the Economic Situation』の冒頭部分。

『The information reviewed at the April 24-25 meeting suggested that economic activity was expanding moderately. Payroll employment continued to move up, and the unemployment rate, while still elevated, declined a little further. Overall consumer price inflation increased somewhat, primarily reflecting higher prices of crude oil and gasoline, but measures of long-run inflation expectations remained stable.』

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の第2パラグラフ部分(第1パラグラフはSEPを作りましたですお的な記述)から。

『In their discussion of the economic situation and outlook, meeting participants agreed that the information received since the Committee's previous meeting suggested that the economy continued to expand moderately. Labor market conditions improved in recent months. So far this year, payroll employment had expanded at a faster pace than last year and the unemployment rate had declined further, although it remained elevated. Household spending and business fixed investment continued to expand. There were signs of improvement in the housing sector, but from a very low level of activity. Despite some volatility in financial markets over the intermeeting period, financial conditions in U.S. markets continued to improve; bank credit quality and loan demand both increased. Mainly reflecting the increase in the prices of crude oil and gasoline earlier this year, inflation had picked up somewhat. However, longer-term inflation expectations remained stable.』

ということで、現状認識は割と強いですわな。

先行き見通しですが、『Staff Economic Outlook』では短期的なGDP見通しを引き上げて物価の見通しを若干上げていますが、長期的な見通しに関しては変化がありません。

『In the economic forecast prepared for the April FOMC meeting, the staff revised up slightly its near-term projection for real gross domestic product (GDP) growth, reflecting that the unemployment rate was a little lower, the level of overall payroll employment a bit higher, and consumer spending noticeably stronger than the staff had expected at the time of the previous forecast. However, the staff's medium-term projection for real GDP growth in the April forecast was little changed from the one presented in March. The staff continued to project that real GDP would accelerate gradually through 2014, supported by accommodative monetary policy, further improvements in credit availability, and rising consumer and business sentiment. Increases in economic activity were expected to be sufficient to decrease the wide margin of slack in the labor market slowly over the projection period, but the unemployment rate was anticipated to still be elevated at the end of 2014.』

『The staff's forecast for inflation over the projection period was just a bit above the forecast prepared for the March FOMC meeting, reflecting somewhat higher-than-expected data on core consumer prices and a slightly narrower margin of economic slack than in the March forecast. However, with the pass-through of the recent run-up in crude oil prices into consumer energy prices seen as nearly complete, oil prices expected to edge lower from current levels, substantial resource slack persisting over the projection period, and stable long-run inflation expectations, the staff continued to forecast that inflation would be subdued through 2014.』

で、委員の見通しに関しても実はそんなに変わってはいないですし、先行きの経済の足を引っ張る要因に関しても割と同じ話をしてたりするのだ。『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から。

『Participants' assessments of the economic outlook were little changed, with the intermeeting information generally seen as suggesting that economic growth would remain moderate over coming quarters and then pick up gradually. Reflecting the moderate pace of economic growth, most anticipated a gradual decline in the unemployment rate.』

ということですな。

『The incoming information led some participants to become more confident about the durability of the recovery. However, others thought it was premature to infer a stronger underlying trend from the recent positive indicators, since those readings may partially reflect the effects of the mild winter weather or other temporary influences.』

つーことで先行きの回復の持続性に関しては意見は分かれるの巻。

『A number of factors continued to be seen as likely limiting the economic expansion to a moderate pace in the near term; these included slow growth in some foreign economies, prospective fiscal tightening in the United States, slow household income growth, and--notwithstanding some recent signs of improvement--ongoing weakness in the housing market. Participants continued to expect most of the factors restraining economic expansion to ease over time and so anticipated that the recovery would gradually gain strength.』

この辺が経済の足を引っ張る要因。

『The strains in global financial markets, though generally less pronounced than last fall, continued to pose a significant risk to the outlook, and the possibility of a sharp fiscal tightening in the United States was also considered a sizable risk.』

リスクに国際金融市場と米国のいわゆるフィスカルクリフを挙げています。

『Most participants anticipated that inflation would fall back from recent elevated levels as the effects of higher energy prices waned, and still expected that inflation subsequently would run at or below the 2 percent rate that the Committee judges to be most consistent with its statutory mandate. However, other participants saw upside risks to the inflation outlook given the recent pickup in inflation and the highly accommodative stance of monetary policy.』

ということで、今回はインフレのアップサイドリスクを指摘している人がいるのがほほうという感じ。


・労働市場に関連する論議

同じく『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から。今回はこのパラグラフが一番物理的に長いと思います。

『Labor market conditions continued to improve, although unusually warm weather may have inflated payroll job figures somewhat earlier this year. Contacts in some parts of the country said that highly qualified workers were in short supply; overall, however, wage pressures had been limited so far.』

労働市場は若干改善しているけれども天候要因部分も。労働者スキルのミスマッチ問題もとな。

『The decline in labor force participation, which has been sharpest for younger workers, has been a factor in the nearly 1 percentage point decline in the unemployment rate since last August, a drop that was larger than would have been predicted from the historical relationship between real GDP growth and changes in the unemployment rate.』

ということでここから先がオークン則に関連する議論で、まあ要するに構造的な問題なのか循環的な問題なのかという話なのですが、これ仮に「構造的な問題で自然失業率が高止まりしている」という話になると、「失業率が高くてもインフレが進みやすい」という話になるので、金融政策に対するインプリケーションが思いっきりある話ですので、まあ読んでみる。

『Assessing the extent to which the changes in labor force participation reflect cyclical factors that will be reversed once the recovery picks up, as opposed to changes in the trend rate of participation, was seen as important for understanding unemployment dynamics going forward. One participant cited research suggesting that about half of the decline in labor force participation had reflected cyclical factors, and thus, as participation picks up, unemployment may decline more slowly in coming quarters compared with the recent pace. Another posited that the strength in payroll job growth in recent months may be a one-time reaction to the sharp layoffs in 2008 and 2009 and that future job gains may be somewhat weaker unless the pace of economic growth increases.』

労働参加率が増えない件について循環的なものか構造的なものかという事に関する話ですが。

『Participants expressed a range of views on the extent to which the unemployment rate was being boosted by structural factors such as mismatches between the skills of unemployed workers and those being demanded by hiring firms.』

失業率に構造要因(労働者のスキルの問題とか)がどのくらい効いているのかという件についての議論も行われているようですな。

『A few participants acknowledged there could be structural factors at work, but said that in their view, slack remained high and weak aggregate demand was the major reason that unemployment was still elevated. Two noted the possibility that sustained high levels of long-term unemployment could result in higher structural unemployment, an outcome that might be forestalled by increased aggregate demand. A few participants noted that current measures of labor market slack would be overstated if structural factors accounted for a large portion of the current high levels of unemployment. As a result, such measures might be an unreliable guide as to how close the economy was to maximum employment. These participants pointed out that, over time, estimates of the potential level of output have declined, reducing, as a consequence, estimates of the level of economic slack. Some participants cited the recent rise in inflation, abstracting from the direct effect of the rise in energy prices, as supportive of the view that the level of slack was lower than some believe. 』

ということで、ここの部分って「インフレが安定的に推移する」という考えの基本になる「経済のスラック」の程度がどうなのよという話にも繋がりまして、スラックが小さいとなると先ほどと同じ話でインフレが起きやすいという話になるので、インフレの安定化という点でどうなのよ、という話になるのですな。

と言ったところで引用してみましたお。

トップに戻る






2012/05/18

○FOMC議事要旨の金融政策決定部分から少々

昨日の続きである。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20120425.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120425.htm

『Committee Policy Action』の所から(時間が無いので^^)少々。

追加緩和の必要性について指摘したメンバーがどうしたという話の部分とその前を引用してみる。ここの2パラグラフ目が「今後の金融政策に関して」になりますけど。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that only relatively small modifications to the first two paragraphs were needed to reflect the incoming economic data and the modest changes to the economic outlook. With the economic outlook over the medium term not greatly changed, almost all of the members again agreed to indicate that the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』

ここまでは今回の声明文における文言をどうするかとかガイダンス文言をどうするかというお話です。既に声明文に反映されている通りで、あまり変化の必要は無いですね、ガイダンス文言も同じで良いですね、という結論でございます。

『Most members continued to anticipate that the unemployment rate would still be well above their estimates of its longer-run level, and inflation would be at or below the Committee's longer-run objective, in late 2014.』

2014年の遅くまで失業率がFRBの中長期的な望ましい水準よりも高く、物価は政策目的のレベル程度か若干低い水準で推移するでしょう、という話ですが、ここの表現が前回は失業に関して「longer-term normal level」となっていたのが「their estimates of its longer-run level」となっているのがもしかしたらインプリケーションあるかもしれないなあとは思うのだがまだ考えはまとまらない。

『Some Committee members indicated that their policy judgment reflected in part their perception of downside risks to growth, especially since the Committee's ability to respond to weaker-than-expected economic conditions would be somewhat limited by the constraint imposed on monetary policy when the policy rate is near the zero lower bound.』

ほう。

『The need to compensate for a substantial period during which the policy rate was constrained by the zero bound was also cited by a few members as a possible reason to maintain a very low level of the federal funds rate for a longer period than would otherwise be the case.』

ゼロ金利制約のある中では政策対応手段が(金利引き下げが出来ない分だけ)限定されるので、その意味からすると低金利政策をより長い期間継続するという事がダウンサイドリスク対応として必要なのではないか、という論点を「Some Committee members」が示している点はほほうと思うのでございますが、それとあのSEPの政策金利見通しの分布は何ですねんとか思いますと、何かFOMC内部でも意見が更にダイバージェンス状態になっているのかなとか思うのでありますがどうねんでしょ。

で、追加緩和云々の話は次のパラグラフ。

『The Committee also stated that it will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability. Several members indicated that additional monetary policy accommodation could be necessary if the economic recovery lost momentum or the downside risks to the forecast became great enough.』

バランスシートのサイズに関しての検討で今回は「Several members」が仮に景気回復がモメンタムを失ったり、経済のダウンサイドリスクが顕著に高まった場合に追加緩和が必要であると指摘した、という話ですな。

この部分前回はこうなっていました。

『The Committee also stated that it is prepared to adjust the size and composition of its securities holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability. A couple of members indicated that the initiation of additional stimulus could become necessary if the economy lost momentum or if inflation seemed likely to remain below its mandate-consistent rate of 2 percent over the medium run.』(3月FOMC議事要旨から)

前回との違いで「A couple of」から増えたという話がニュースとなっていましたけれども、他に指摘すべきなのは、前回に関しては「景気回復がモメンタムを失う」の他の条件が「物価が2%の目標値を下回る見込みになった場合」だったのが、よりありそうなパターンの「ダウンサイドリスクが顕著に高まった場合」となって、そういう意味で追加刺激策へのハードルが下がった事ですが、あと気になるのですが政策インプリケーションがあるのか無いのかワカランチ会長なのは、前回が「the initiation of additional stimulus」という表現だったのが今回「additional monetary policy accommodation」ということで、単語が微妙に変わっている事なのですがこの意味は正直判らんです。

とまあそんなことで簡単にメモでした。

トップに戻る




2012/05/17

○時間が無いので1パラだけ引用

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120425.pdf
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120425.htm

あたくしが毎度最初に読むのは『Committee Policy Action』の直前部分になるのですが、『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最終パラグラフであります。

『In their discussion of the economic outlook and policy, some participants noted the potential usefulness of simple monetary policy rules, of the type the Committee regularly reviews, as guides for monetary policy decisionmaking and for external communications about policy.』

という事で、金融政策に関するガイダンスとしてのシンプルなルールを制定するのはどうよ、という議論が複数の委員から提示されている模様。

『These participants suggested that because such rules give an indication of how policy should systematically respond to changes in economic conditions they might help clarify the relationship between appropriate monetary policy and the evolution of the economic outlook. While acknowledging that there could be differences across participants in the type of rules they might favor--for example, one participant expressed a preference for rules based on growth rates rather than output gaps because of measurement issues--a few participants indicated that the likely degree of commonality across participants was suggestive that this might be a promising approach to explore.』

なんでしょうね、まあ個人的にはルールベースの金融政策をリジットに運営するとロクな事にならないような気がしますし、一方で計測誤差が大きかったり推計値に過ぎない経済データに紐つけるような金融政策をするとなると、却って不透明性を高めるようにも思えるのですが。

『However, a few other participants were more skeptical. One thought that, while prescriptions from rules might provide useful benchmarks, applying the rules mechanically and with little thought about the embedded assumptions would be counterproductive. Another participant questioned the value of interest rate rules when the policy rate is constrained by the zero lower bound on nominal interest rates and unconventional policy options are being used, but others indicated they believed the rules could be appropriately adjusted to account for these factors. Interest was expressed in examining the usefulness of simple policy rules in a more normal environment, as well as in the current environment in which the policy rate is at the zero lower bound and large-scale asset purchases and the maturity extension program have been implemented.』

うむ。

『Participants planned to discuss further, at a future meeting, the potential merits and drawbacks of using simple rules as guides to monetary policy decisionmaking and for communications.』

まあいずれにせよ、今度はまた「新たなコミュニケーションツール」がドヤ顔で出てくるという流れなんでしょうなあ。とは思う所でございます。

トップに戻る




2012/05/16

○バーナンキ議長FOMC後の会見ネタ・・・・・・と思ったら時間がねえ

前の所でああだこうだとうだうだ書いていたら時間が無くなってしまったという残念な展開。つーか今日の本題ここからのつもりだったのですが(段取りが悪いですかそうですか)。


時間が無いので今日は一発ネタです。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120425.pdf

・ガイダンス文言の「異例の低金利」とは

初稿版だと19ページ目、最終版だと15ページ目になります。

Economist紙のGreg Ipさんの質問から。

『GREG IP. Greg Ip of the Economist. First, assume that you are not constrained by the zero nominal bound right now. What would the federal funds rate be, even if it were a negative number? And do you believe that you are at an equivalent degree of monetary accommodation today using your unconventional tools? And also, a quick supplemental-could you put some numbers on what-on the meaning of “exceptionally low” federal funds rate? For example, would a 1 percent federal funds rate qualify as “exceptionally low” at the end of 2014?』

ということで、マイナス金利という文脈でマイナス金利になるようなツールを使っていますかという話と、その後に補足と言いつつガイダンス文言のexceptionally lowとは何ぼですねんと質問してます。

でまあ「バランスシート政策の効果によって実質金利がマイナスになるように運営している(キリッ)」という答えはドヤ顔風味なのですが・・・・・・

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, the exact reading for the federal funds rate today, in the absence of the zero lower bound, would depend a lot on which particular rule, what particular model that you use. I don’t want to cite a particular number, but it probably would be negative. And in that respect, we are trying to compensate for that by the use of nonstandard tools, including, as you know, almost a $3 trillion balance sheet.』

『We see monetary policy as being approximately in the right place at this point, based on the analysis that we’ve been doing in-of the economy and the outlook. That doesn’t mean we might not take further action; we are certainly prepared to take further action. But for the time being, it appears that we are more or less in the right place.』

でまあここでも「今は適切な金融政策だが必要な場合は更に措置を取る用意がある」とサービス発言をしておりまして、つまりはインフレまたはインフレ期待が低下した場合には貫録のバランスシート拡大攻撃が行われる、というのはまあ普通に見え見えですわな。

『GREG IP. “Exceptionally low”?』

ここからの答えが苦しくなるのが逆さ絵クオリティ。

『CHAIRMAN BERNANKE. “Exceptionally low”; you know, one of the reasons that language in the statement is sometimes a little vaguer than you would like is because we are trying to get a consensus among 17 or at least 10 people, and different members or participants in the FOMC might have somewhat different views of what “exceptionally low” means. Personally, I think it means something close to where we are-where we are now.』

exceptionally lowという文言が若干あいまいであるのは我々の政策は17人(SEPですな)または少なくとも10人(FOMCの議決という意味ですな)で行われ、皆さんがそのexceptionally lowという文言が意味する事に対して異なった見解を持っているからですね、でも私はexceptionally lowというのは現状の金利水準であると思いますよ。(超拙訳)

という事で、何か話がこの前と違うじゃねえかという感じがする次第。

・・・・・・・まあ何ですな、ここだけではなくて、他の質疑でも何回か出てくるのですけれども、SEPで出ているややタカというか強気の見通しや、やや強気の政策金利見通しに対して、声明文で示されているガイダンス文言とかの内容などの整合性がどうなっているのか?という質問に対して、今回のバーナンキ議長は「いやSEPはインプットなんですよ、FOMC決定における議論はこの全員のインプットを基にして行っているんですよ」というような説明を繰り広げております。

まあそれで理屈は通るっちゃあ通るのですけれども、そうだとすればそもそもSEPでの政策金利見通しって(ただのインプットなのなら)出す必要があるのかという話で、それこそコミュニケーションポリシー的に間抜け感が漂う話でございます。

まーFRBのコミュニケーションポリシーもそーゆー意味ではかなりのやっつけ感漂うものなのですけれども、何か色々と手を変え品を変え目くらましのように出して大風呂敷モードになった挙句に風呂敷の右側と左側でやってることが繋がらないという状態になっておりまして、これまあ何となく今は経済状況とかがそれなりに悪くないから良いようなもんで、問題がややこしくなると一気に色々な問題が噴出しそうな気がするんですけどねえ。

という事で一発ネタシリーズ状態の会見ネタでした。

トップに戻る




2012/05/15

○クレクレは世界のトレンド(違)

そういやネタにするとか言って(しかも連休の数時間を潰して逐語読解したのに)FOMC後のバーナンキ議長の会見ネタを見事に放置プレイにしております(が、会見記録を打ち出したものにペン書きしたものだけだと保存上アレですのでいずれ俺様備忘録にしてアップはしますけど、新ネタが投入されるので中々アップする気力がわかない)次第ですが、先般はECBの定例理事会(珍しくバルセロナで開催なのだがマドリッドではなくカタランで開催というのは何ですねんと少々思った。皆でバシリカに昇格したサグラダファミリアでも見に行ったのか?)もございまして、小見出しのような事案があったのでオモシロスということで小ネタである。

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120425.pdf
Transcript of Chairman Bernanke’s Press Conference
April 25, 2012

ちなみにこれ初稿版だと28ページあるのですが、現在FRBのサイトにアップされているのは23ページ組になっていまして、どこをどうすると5ページ減るのかはまだ細かく見ていない(というか保存したつもりだったのだが初稿版をあたくしのPCに落とすのを失念していたようなのでネタにするときに困るなあとか思っているあたくし。持ってたら誰かくらはい)のですが、初稿版だと21ページ目ですけれども最終稿版だと17ページ目にその質疑はございまふ。

Market News InternationalのSTEVE BECKNER記者からの質問

『STEVE BECKNER. Steve Beckner of Market News International. Mr. Chairman, good to see you. There’s been some concern in markets about what will happen to bond yields at the expiration of Operation Twist on June 30th and some speculation on what the Fed might do-might need to do to keep downward pressure on yields. Is that a concern that you share? And do you and your colleagues feel the need not to disappoint these kinds of market expectations?』

クレクレキタコレという感じですが、要するにオペレーションツイストが終わった後のおかわりにが無かったら長期金利が跳ねると市場が懸念しておりますけども、その考えをFedは共有していますか?そして市場のオペレーションツイストのおかわり期待をがっかりさせないようなことをする必要性を考えていますか?という質問ですな。

逆さ絵おじさんのお答え。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, to your last point, the purpose of monetary policy is to achieve our objectives of maximum employment and price stability, it’s not to disappoint or not disappoint investors. So we will take actions based on those economic objectives and not try to achieve certain market outcomes.』

えーっと、つまりこうですね。

>the purpose of monetary policy is not to disappoint or not disappoint investors.
>the purpose of monetary policy is not to disappoint or not disappoint investors.
>the purpose of monetary policy is not to disappoint or not disappoint investors.

・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

ちなみにこの後に説明が続きますけれども、その内容は「バランスシートポリシーとしての資産買入効果は買入のトランザクションの額(その間に幾ら買いましたか、という話)ではなくて、買入の残高が影響するので、残高が維持されている分には緩和効果は継続すると我々は考えている」という話をしておりますが、まあこれは従来からバランスシートポリシーの説明の中で行っているものですな、今日の小ネタのテーマとは別ですが折角ですので引用しておきます。

『There’s some disagreement, I think, about exactly how balance sheet actions by the Federal Reserve affect Treasury yields and other asset prices. The view that we have generally taken at the Fed, in which I think-for which I think the evidence is pretty good, is that it’s the quantity of securities held by the Fed at a given time rather than the new purchases-the flow of new purchases-which is the primary determinant of interest rates. And if that theory is correct, then at such time that our purchases come to an end, there should be relatively minimal effects on interest rates at that time. And that, in fact, has been our-generally our experience in previous episodes where we have launched a program and then allowed it to come to a natural end.』

『Of course, we’ll continue to monitor the situation, and if we believe that financial conditions for whatever reason are inconsistent with our macroeconomic objectives, then we will act to fix that. But, again, our expectation is that, at whatever point that the purchases end, that financial markets being quite forward looking will have anticipated that, and that the effects ought to be moderate.』

最後にはこの会見での特色でもある「でも必要ならやります」発言があるのですが、どうも次の一手についてはさてどうしたもんかモードになっているっぽいなあと思うのでありました。


で、先日はECBの定例理事会もあった訳ですが。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120503.en.html

Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Barcelona, 3 May 2012

こちらの質疑応答では質問者の方が素敵な質問を飛ばしております(^^)。

『Question: Was there a discussion at all about moving the interest rate to the downside because there was speculation in the market, but you know, they are a little bit like children who need more candy. Was there a discussion at all about this?』

>they are a little bit like children who need more candy.
>they are a little bit like children who need more candy.
>they are a little bit like children who need more candy.

・・・・・・・・・ワロタ。

ちなみに今回は利下げの議論は出てませんというのが答えですが一応引用します。

『Draghi: No, we did not discuss any specific move on interest rates but we certainly discussed our general monetary policy stance, which we found accommodative in view of an economic outlook that is becoming more uncertain.』

あと、これは別の視点ですが、スペインは頑張っているんだからextra helpポルファボールという質問もございましたのはまあ会見場がバルセロナなので致し方なし。

『Question: You have been talking for the last days with Spanish and Catalan authorities. Here we have the impression maybe that after all the cuts, all the austerity, all the reforms, there is no reward from the markets or from the ECB. So these people say that the ECB now should give extra help to countries like Spain. What could you say to those people?』

ドラギ先生のお答え。

『Draghi: I would say that the government of Spain has made a very significant effort in policy reform. It is a series of reforms that - I don’t need to remind you - have been taken in a very short time. We have to acknowledge this significant effort. The measures that we have taken, namely the LTROs, have been successful in avoiding a major credit crunch. And of course we would need time to see how this money and when this money will propagate to the real economy, making credit conditions less difficult than they are today. But we can actually see quite clearly that we have avoided an otherwise major credit crunch, worse than what we are seeing today. So these measures, from this viewpoint, have been successful. I think that, and this is true for a variety of countries in the euro area, there has been significant progress on the fiscal front. I think that perseverance, given the amount of progress that has already been achieved, is very important in order to reap, in the end the gains. And together with this, structural reforms are also very important.』

ああだこうだとお話をしていますが、まあ要するにゼロ回答でございます。

ちなみに、こちらもまだネタにしていませんが、時節柄金利の上げ下げの話よりも財政問題に関する質疑がやたら多かったという感じでございます(さらっとネタにする予定)。

トップに戻る





2012/05/11

○BOEは政策据え置き

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2012/047.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £325 billion
10 May 2012

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £325 billion.』

2月に買入拡大を決定しまして、これが3か月掛けて拡大を終了するという話でしたので、今回はおかわりなしの決定ですが、そらまあ前回のMPCで買入拡大票が2票から1票に減った(しかも前から買入拡大を延々と主張していたポーゼン委員が脱落でござるの巻)という動きですのでまあ普通に市場予想通りだと思うのですけれども。

『The Committee’s latest inflation and output projections will appear in the Inflation Report to be published at 10.30am on Wednesday 16 May. The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 23 May.』

ということで、インフレレポートは注目されそうですが、英国に関してはどう見てもスタグフレーションです本当にありがとうございましたという残念無念な展開になっている中で、インフレ上振れが続いた結果ホームメイドインフレが起きるかもというような話がMPC議事要旨にも出ているような状態でありまして、どういう舵取りをするのかというのは中銀ヲチャー的には興味深く見るものでありまする。

トップに戻る




2012/04/26

○FOMC声明文は景気認識が色々と引き上げられる

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120425a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120313a.htm(前回3月)

・第1パラグラフ

全体認識は変わらずです。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that the economy has been expanding moderately.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in January suggests that the economy has been expanding moderately.』(前回)

全く同じですな、うんうん。


労働市場、消費支出、企業投資に関しては実質的に差は無いと思われます。

『Labor market conditions have improved in recent months; the unemployment rate has declined but remains elevated. Household spending and business fixed investment have continued to advance.』(今回)

『Labor market conditions have improved further; the unemployment rate has declined notably in recent months but remains elevated. Household spending and business fixed investment have continued to advance.』(前回)

微妙に表現が変わっていまして、前回はここまでの回復ペースが速くなっているという事を指摘する表現があったのが、今回はその辺の表現がマイルドになっているので、まあそういう意味では勢いが落ちているといも言えますが、別にペースが遅くなったとかいうような表現も無くて引き続きの改善という話ですので実質的には差が無いとみる方が妥当ではないかと。


住宅セクターに関しては「改善のサイン」を指摘。

『Despite some signs of improvement, the housing sector remains depressed.』(今回)
『The housing sector remains depressed.』(前回)

結論は同じですがご覧の通り。


インフレに関しては認識を引き上げキタコレ。

『Inflation has picked up somewhat, mainly reflecting higher prices of crude oil and gasoline. However, longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Inflation has been subdued in recent months, although prices of crude oil and gasoline have increased lately. Longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

長期的なインフレ期待が安定というのは同じ(というかこれがぶれたらエライコッチャ)ですけれども、インフレに関しては要因としてのガソリン価格上昇云々によって「インフレが幾分引き上げられている」という話に。


・第2パラグラフ

最初の文言は当たり前のように同じ。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. 』(前回)

まあこれは良いとして次ですけれども、経済の先行き見通しに関して変化があります。

『The Committee expects economic growth to remain moderate over coming quarters and then to pick up gradually. Consequently, the Committee anticipates that the unemployment rate will decline gradually toward levels that it judges to be consistent with its dual mandate. 』(今回)

『The Committee expects moderate economic growth over coming quarters and consequently anticipates that the unemployment rate will decline gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』(前回)

経済の改善によって失業率は徐々にマンデートに整合的な水準に低下していくと委員会は予想していますというのは同じなのですが、その経路に関して前回よりも今回の表現が強くなっていますな。


国際金融市場に関しては前回の「緊張がやや緩和」が外れています。

『Strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. 』(今回)
『Strains in global financial markets have eased, though they continue to pose significant downside risks to the economic outlook.』(前回)

まあこれは前回ギリシャがいったん火消しモードになった一方で今回はスペインに着火モードになっているから違和感ないですな(この前の日銀の認識の方が妙ですな)。


でもってインフレに関して。

『The increase in oil and gasoline prices earlier this year is expected to affect inflation only temporarily, and the Committee anticipates that subsequently inflation will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(今回)

『The recent increase in oil and gasoline prices will push up inflation temporarily, but the Committee anticipates that subsequently inflation will run at or below the rate that it judges most consistent with its dual mandate.』(前回)

最終的な結論はこれまた同じなのですが、前段の方でインフレの上昇の話をしたバランスだと思うのですけれども、今回は原油やガソリン価格などの上昇による影響に関して「これらの影響は一時的なものに過ぎない」というのを強調していまして、足元のインフレ上昇に関して「一時的」というアピールをすることによって中長期的なインフレの安定を強調する、という感じになっていますな、うんうん。


・第3パラグラフ以降は見事に同一文言

なので今回分を引用だけしておく(俺様メモなので後日の確認用に引用するだけです)。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy. In particular, the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』(今回)

ガイダンス文言も同じなのですが、この次にネタにするSEPとどう見ても整合性が取れないんですけど・・・・・・・・

『The Committee also decided to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September. The Committee is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』(今回)

で、ワロタのは最終パラグラフまで同一文言で、それはつまり票決内容と反対者の反対理由も前回と同じということですな(^^)。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Dennis P. Lockhart; Sandra Pianalto; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; John C. Williams; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who does not anticipate that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate through late 2014.』 (今回)


○SEPの政策金利見通しが声明文と整合性が取れていない件について

ということでSEPの表紙部分公表である。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120425.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120125.pdf(前回1月)

Economic Projections of Federal Reserve Board Members and Federal Reserve Bank Presidents, April 2012


・景気見通し&ファンチャート

失業率が改善して物価が微妙に引き上げ、一方で実質GDPがやや引き下げという所でしょうか。

まずは1ページ目&2ページ目ですが。

GDPに関しては1月予想対比で今回は手前が若干上がって先行きが若干下がっていますが、これはまあファンチャートの方を前回と比較する(印刷したのを重ねて透かして比較という大変にアナログな原始的手法をとっておりますが^^)と、全体レンジは変化無いのですが、見通しの中心部分が若干下方に寄ったという感じになっています。

失業に関してはこれは手前の予想が明確に改善していて、先行きに関してはそれほどの改善になっていませんが、ファンチャートの方を見ますと、全体レンジも手前の部分の改善が顕著なのと、全体のレンジに関してやや下方に寄っている(ので改善傾向)という所ですな。

物価に関してはそもそもスタートの数字が若干上方シフトしているので比較しにくいのですけれども(ファンチャートベース)、まあファンチャートを見て一番目につくのは予想のレンジが全体的に狭くなっている事です。見通しがだいぶ寄ってきたという話だと思うのですけれどもふーんという感じです。ちなみに中心レンジに関してみると、やや下の広がりが無くなっているという感じかと思います。


・政策金利見通しがどう見てもガイダンス文言と整合性が取れない件について

3ページ目の政策金利見通しですが・・・・・・・

・金融引き締め開始の適切な時期予想

2012年:3名(前回3名)
2013年:3名(前回3名)
2014年:7名(前回5名)
2015年:4名(前回4名)
2016年:0名(前回3名)

2015年以降の引き締め開始の人たちの見通しが手前に寄っておりますがな。


・各年末の適正なFF金利水準

2012年:0.25%が14人というのには変化なし。1%の人が1名1.25%になっている
2013年:0.25%が11人というのには変化なし。引き上げの人たちのレンジがやや上がっている
2014年:0.25%の予想が6名から4名に減っており、1%以下の予想は11名から9名に減っている

ということで、そもそも0.25%の予想をしているのが17人中4人とかどマイナーになっている上に、「1%以下」という水準で分けてみても、1%以下の予想が前回は11対6ですから1%以下という意味で言えば「2014年末の低い金利水準」派の大勝利となっているのですけれども、今回は1%の以下の予想が9対8と僅差にも程がある状態になっておりまして、何がどうなるとガイダンス文言の維持になるのか全くもって意味判らんですなという状態。

ちなみに、ロンガーランの適正なFF金利の水準で3.5%という札が一つ入っているのがナンジャコリャという感じですが、中立金利水準に対する考えに変化があった人もいそうな感じでございますの。


ということで、後はまあ会見の方でも読もうかという所で、おそらく会見のtranscriptの速報版は今週末までには出ると思いますので、それを鑑賞するのがこれまたオモシロスという感じかと思います。おそらく福井俊彦先生の生霊が乗り移って言語明瞭ロジックその場しのぎという逆さ絵オヤジクオリティの炸裂が鑑賞できるのではないかと期待しておりまする(^^)。

会見でSEPとガイダンス文言の整合性の質問はさすがに出たと思うのですが、どういう答えをしたんでしょうかにゃあ(ニヤニヤ)。


#声明文だけならそうでもない(ただし朝の脳味噌起動速度は安定しないのでブレがあります^^)のですが、今日はSEPもあったのでこれで時間一杯でございます、どうもすいません

トップに戻る



2012/04/25

○BOEのインフレ懸念

ポーゼン大先生が従来より延々と行っていた「追加資産購入提案」を取り下げていたことが判明したという意味でネタ間違いないと思って読んだ4月MPCの議事要旨はこちら。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1204.pdf

・物価の現状に関して

第18パラグラフから始まる『Supply, costs and prices』の辺りから。

『Twelve-month CPI inflation had fallen to 3.4% in February, down from 3.6% in January and its recent peak of 5.2% in September. If anything, the decline in February had been marginally less than the Committee had expected, and seasonally adjusted annualised monthly inflation rates had been somewhat higher than the inflation target.』

『There was a risk that inflation would fall less rapidly in the near term than the Committee had anticipated in its February Inflation Report central projection.』

ということで、物価上昇率の方は上昇が落ち着いてきているには来ているのですけれども、MPCの想定するペースよりもやや遅いという状態になってますな。要因についてはこの辺の話とかっすか。

『UK wholesale gas prices had risen by around 5% since then. This, together with the rise in oil prices since the start of the year, would put upward pressure on retail energy and petrol prices. And the additional increase in duties announced in the Budget would add around 0.1 percentage points to annual inflation from April.』

で、この先も落ち着くペースが遅くなりそうという話が次のパラグラフ。

『Some statistical projections were pointing to a path for CPI inflation in the coming months higher than would be consistent with the Committee’s central path from the February Inflation Report projections.』

ほう。

『But, as with all forecasts, there was a large margin of error around them, and they did not capture all of the forces acting on prices. In practice, the speed and extent of any further fall in inflation would depend on the rate at which external price pressures eased, and how rapidly domestically generated inflation would fall in response to weaker cost and price pressures from a recovery in productivity growth and the margin of spare capacity.』

そして第20パラグラフでは価格転嫁の動きについて触れています。

『Beyond recent rises in oil prices, the impact of external price pressures was difficult to gauge. The contribution of goods prices to twelve-month CPI inflation had fallen back only marginally in February.』

『This was consistent with a greater degree of pass-through into consumer prices from past increases in import prices, or upward pressure on margins from other sources. But it was also consistent with quicker pass-through, which would imply less upward pressure on consumer prices to come from this source further out.』

ほうほう。

でまあその先にもこの物価に関する話が続いていますが、価格転嫁に関しては第23パラグラフで指摘されていますのでそこへ飛んでみます。

『It was also possible that firms would seek to increase their mark-up over labour costs in setting their prices.』

キタコレ。

『The share of profits of private non-financial non-oil companies in GDP was lower than at any time in the previous 25 years. To the extent that demand continued to be slow to recover, firms might seek to restore profit margins only gradually. 』

『Set against that, many firms had either less access to credit or access on more unfavourable terms than was the case before the crisis. This might lead them to be less willing to invest in gaining market share by keeping prices low, as they would have less recourse to external sources of funds should they run into cash-flow difficulties.』

今回長くなるので引用しませんでしたが、この前段の金融環境に関する議論の部分では「銀行の貸出態度に関しては厳しい部分もある」というような指摘がありまして、さてここではどういう話にそれが繋がっているかと言うと「Set against that」以下の所にある指摘でして、クレジットへのアクセスが厳しいので、企業は価格設定行動において価格を下げてシェア拡大を図るインセンティブが下がる(増加運転資金需要が発生するから)事から、それよりも収益マージンを確保してキャッシュフローを確保する行動に向かい、その結果企業の価格転嫁が進むという何か屁理屈のような気もしますが、まあそういう指摘をしていてほほーという感じです。

でね、日本だとそうではなくこういう時に直ぐに値下げ祭りになるのとの違いはどこにあるのかという論点はこのコーナーではスルーされているのですけれども、次の金融政策決定に関する部分において指摘がありますが、まあ要するにインフレ率の数値自体が高止まりの状態が続いているので消費者も価格転嫁を受け入れてしまうという話で、どう見てもホームメードインフレ懸念です本当にありがとうございましたという流れなのは注目すべきことではないかと思います。


・ということで政策決定論議の中が重い

『The immediate policy decision』から。

ちなみに見通しに関してはGDPの見通しを下げて物価の見通しを上げています。第24パラグラフから。

『The current challenges facing the Committee as it sought to set monetary policy in order to meet the inflation target in the medium term had been thrown into sharp relief by the downside news on the near-term path of GDP likely to be published by the ONS and by the upside news on the near-term path for inflation.』

まさにアチャーという感じですが、この先もBOEの苦悩という雰囲気の議論が続きます。第25パラグラフ以降になります。第25パラグラフでは経済見通しに関する話で、まあこら困ったなという感じのようですが引用だけ。

『There had been unexpected falls in the ONS’s measures of output in manufacturing and, in particular, construction. The sharp falls in construction output in December and January were perplexing, and the Committee was minded not to place much weight on them, particularly given that other indicators of construction activity had suggested far more modest declines.』

『The mechanical impact of the drop in construction output, together with the likely subsequent loss of activity around the Jubilee bank holiday, could lead the ONS to report further falls in GDP in both the first and second quarters of this year. But a wide range of survey indicators pointed to a moderate rate of growth in activity in the first half of the year and this was supported by official data on services output. Underlying aggregate activity growth was likely, if anything, to have picked up since the second half of 2011.』

で、物価に関する話が第26パラグラフですが、足元で物価の上昇鈍化が遅れていることそのものは大きな懸念ではないが、またぞろ物価を押し上げる要因が出ている点については足元の物価を強くする話ですなあと。

『Twelve-month CPI inflation had fallen for five successive months, to 3.4% in February from a recent peak of 5.2% in September. This fall had been welcome but had been slightly less than the Committee had expected. That in itself was not a significant cause for concern but, alongside the recent rise in oil and gas prices, as well as the duty changes announced in the Budget, it meant that the path for inflation in the short run was likely to be higher than indicated in the most recent Inflation Report central projections. The speed at which inflation would return towards target could not be judged with any precision and there were risks on both sides.』

で、物価アップサイドリスクに関する第27パラグラフの論点がこれまでの話と一転してかなり重い論点になっているのですよこれが。

『To the upside, the risk was that elevated inflation might be more persistent than the Committee expected and that the Committee’s commitment to achieving the target might be called into question.』

>the risk was that the Committee’s commitment to achieving the target might be called into question. 
>the risk was that the Committee’s commitment to achieving the target might be called into question. 
>the risk was that the Committee’s commitment to achieving the target might be called into question. 

途中の「物価上昇が継続して」云々を割愛してインフレターゲットが云々の文意を取るとこうなる筈ですな。

つまり従来は足元の物価上昇の長期化がインフレ期待を押し上げるリスクというような文脈で足元の物価上昇継続が中長期的な物価に対するアップサイドのリスクとしていたのですが、BOEのインフレーションターゲッティング政策のコミットメントに対する疑問が生じるリスクというマッコウクジラな論点になってきたのが重いということですな。

『This risk arose from both external and domestic sources.』

ホームメイドインフレのリスクもあるとな。

『Further shocks to oil and other commodity prices remained a possibility, and there could be greater external price pressures from other sources, or greater pass-through of these pressures to consumer prices.』

海外要因は商品や原油価格の上昇の価格転嫁によるものということで。

『Domestically, companies could seek to rebuild margins more aggressively than anticipated, perhaps with a view to achieving a target for cash flow in an environment of uncertain credit supply or because the prolonged period of above-target inflation had enabled them to raise their prices more easily.』

この辺がホームメイドインフレのリスクの話ですが、企業が先行きの不透明感やクレジット環境の厳しさを受けてキャッシュフロー確保のためにマージンの引き上げに走り、ホームメイドインフレになるリスクがあるという事ですが、その背景にはインフレターゲットの水準を上回る状態の物価上昇が長期に渡って継続している事から、価格引き上げ行動がしやすくなっているというのがある、とまあそんな話をしております。

『Against that backdrop, it was notable that seasonally adjusted annualised monthly inflation rates were somewhat higher than the inflation target. The large margin of slack in the labour market was restraining the rate of growth of earnings. But given the continuing weakness in productivity growth, it was possible that nominal wages were nonetheless still increasing rapidly enough that unit labour cost growth was consistent with the inflation target.』

労働市場の大きなスラックは賃金上昇を抑制すると思われるのですが、生産性の伸びが弱い中で、ユニットレーバーコストの伸びがインフレーションターゲットと整合的だと名目賃金の上昇に繋がる可能性がある、とまあ判ったような判らんような言い方ですが、あたくしめが解釈するに、要は長期間に渡るやや高めの水準でのインフレが続く中では、経済にスラックがあってもそのスラックは維持されたままで価格設定の上昇と名目賃金の上昇が起きる可能性があるという話で、それってどう見てもホームメイドインフレやんという感じですわな。

つーかそうなった場合って名目賃金が上昇するご身分の方は良いとして、そうじゃない場合には大変な事になりそうですし、そもそも企業だってマージン確保で価格設定行動をしていくのでしょうから、名目の賃金上昇が追いつかない可能性もありますなあとか、まあ色々と思うのですけれども。

まあこれって日本でも物価が継続的に上昇するのが定着した時に起こりそうな論点で、日本でインフレ目標2%がどうのこうのという話をする人たちが実際にCPIが1%位になったら「物価上昇を看過する日銀はケシカラン」とか言い出したらそいつら全員三途の川の中州でバーベキューでもして来やがれと思うのですけどどうでしょうかね(^^)。

#そういう意味では日銀に2%やれいうならもう政治家の責任を明確化する為にも日銀法改正してお前らの責任というのをはっきりさせろと思いますけどね

と、話がそれましたがアップサイドリスクだけ引用するのもの何ですからダウンサイドリスクも。

『To the downside, the risk was that demand would not be strong enough to absorb the considerable margin of spare capacity in the economy. In the near term, it was possible that the ONS would report further contractions in output in the first and second quarters.』

まあこの話は前から出ていて、直近ではややこっちの話の方が優勢っぽかったのですが、今回のMPCMinuteではこの力関係が逆転していますなという印象を与える作り込みになっているかと思います。

『That might further damage household and business confidence, even if the underlying pace of economic expansion were stronger. It was also possible that underlying growth was not as strong as suggested by the business surveys. Further out, it was not easy to assess the speed at which domestic demand growth would return to more normal rates.』

『Although on current plans the pace of the fiscal consolidation was likely to slow, it would still act as a drag on growth for several years. The latest upward pressure on prices was liable to delay the point when real household income would begin to rise again. And, although any desire by households, firms and banks to build up a buffer of savings or to reduce leverage was unlikely to have a permanent effect on the growth rate of activity, it could have a persistent effect whose duration was very difficult to judge.』

ということで、まあ議論が分かれたという話がありまして、最後の票決でポーゼン委員が資産買入拡大提案から降りたというのが示されています。どうでもいいですがせっかくなので第33パラグラフから。

『Regarding the stock of asset purchases, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale, Paul Fisher, Adam Posen and Martin Weale) voted in favour of the proposition. One member of the Committee (David Miles) voted against, preferring to increase the size of the asset purchase programme by a further £25 billion to a total of £350 billion.』

ということで趣味の引用大会でしたが、BOEはどうも正念場に差し掛かっているようで、あたくし的にはとりあえず他人事モードではありますが(おいおい)生温かく見守って行きたいと思うのでありました。

トップに戻る



2012/04/19

・英国の追加資産購入拡大をポーゼンさんが取り下げたとな

Minutes of the Monetary Policy Committee Meeting held on 4 & 5 April 2012
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Pages/mpc/pdf/2012/mpc1204.aspx(結論だけ)
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2012/mpc1204.pdf(議事要旨本文)

『Regarding the stock of asset purchases, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale, Paul Fisher, Adam Posen and Martin Weale) voted in favour of the proposition. One member of the Committee (David Miles) voted against, preferring to increase the size of the asset purchase programme by a further £25 billion to a total of £350 billion.』

・・・・・・・・・・追加資産購入拡大を提案し続けていたアダム・ポーゼン委員じゃなくて今回の追加資産購入拡大提案はマイルズ委員だったとはほほうという感じですが、議事要旨はこれから読む。

トップに戻る



2012/04/17

で、今日は先週のダドリー講演である。

まあ先週は色々な人の講演があって、本当はラスキンおばちゃんとかイエレンおばちゃんの講演をネタにすべきところではあるのですが、どっちも量が多くて正直読み切れていないので一番短いダドリー先生のでとりあえず勘弁(−−)

で、先週12日の講演の時には追加緩和がどうのこうので米国株式市場が反応したりしてたような気がするんですが・・・・・・
http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2012/dud120413.html

A4の紙に印刷して5ページ、というか事実上4ページ分位にしかならないのでサラサラ読めてしまうのでありまして、それをネタにするあたくしは安直にも程がありますかそうですか。


○講演見ても別に普通にしか読めないのだが

まあその時の記事を読みますと質疑応答の中で2014年末までの低金利政策が適切とかいう話をしていた、という事でしたけれども、冷静に考えてFOMCの声明文で「FOMCは現在の経済状況を勘案すると少なくとも2014年末までの異例の低金利政策の継続が正当化されると判断する」という話をしているのですから、その舌の根が乾かないうちに少なくとも執行部サイドと思われるダドリー(つーかまあ執行部系ハト派扱いですけど)さんがそれを否定するとか有り得ないのでございまして、まあ米国市場としては「QE3期待!」ってのに乗りたいという市場の雰囲気があって、とにかく何が出てもそっちの方向に反応したいとゆー事なのでしょうなあとは思いましたです、はい。

でもってまあまとめは最後に『Conclusion』があるのでそちらから。

『To sum up, the incoming data on the U.S. economy has been a bit more upbeat of late, suggesting that the recovery may be getting better established. But, while these developments are certainly encouraging, it is far too soon to conclude that we are out of the woods in terms of generating a strong, sustainable recovery.』

まずは景気に関してですが、「足元の経済指標はやや強くなっており、景気回復傾向が確りとしてきた事を示唆する」と基本的な見方を強めているというのがそもそもの前提にあるのですが、その次に「しかしながら我々は森を抜けて力強く持続的な回復に向かっているというにはまだ程遠い状態にある」という話をしています。

でですな、まあこの後で引用しますが、景気に関しての話の冒頭部分って上記と同じ表現になっていて、その後にああだこうだと懸念材料を並べているので、まあ印象としてはタカには当然の如く見えませんけれども、じゃあ思いっきりハトなのかと言いますとそもそも論として景気が強まっているという話をしているので、別に思いっきりハトな訳でも無かったりするんじゃネーノという気もする。

『On the inflation front, the year-over-year rate of consumer price inflation has slowed in recent months, and despite the recent rise of gasoline prices, we expect inflation to moderate further in 2012.』

まあインフレに関してはそんなに変な話は無いのですが、これはまあFOMCメンバーの中でも意見がおおむね一致している所(ただし追加緩和の影響についてとか、先行きの緩和政策継続の影響についてではインフレ加速懸念を示す人はいます)です。

まとめ部分はこの先もあるのですが、後は地域経済(今回の講演はシラキュースで実施)の話になりますので引用割愛。


○景気認識に関して

景気に関する話は『National Economic Conditions』と『Regional Economic Conditions』というのがあるのですけれども、後半の方はまあ国内景気に対してNY連銀管内というか地元経済に関する全国平均との違いについての話で、まあネタとしては興味深いのですけれども、金融政策へのインプリケーション的にはスルーで良いので華麗にスルーして前半の米国経済に関する部分から。

『The incoming data on the U.S. economy generally has been a bit more upbeat over the past few months, suggesting that the recovery may be finally establishing a somewhat firmer footing.』

という事で「somewhat firmer footing」キタコレという所。具体的な数値の話が続く。

『Real GDP expanded at a 3.0 percent annual rate in the fourth quarter of 2011, the fastest growth since the first half of 2010. The average monthly job gain was 212,000 in the first quarter of 2012, up from 164,000 in the fourth quarter. Sales of light-weight motor vehicles were about 14-1/2 million at an annual rate in the first quarter, the best quarter for vehicle sales in four years. Survey measures of business activity have rebounded from their dips in the middle of last year, and are now at levels that typically indicate solid overall growth. Even housing starts have firmed somewhat in the last few months, although they remain at depressed levels.』

全体的に景気の良い話ですが・・・・・・

『While these developments are certainly encouraging, it is still too soon to conclude that we are out of the woods. To begin with, the economic data looked brighter at this point in 2010 and again in 2011, only to fade later in those years.』

ということで、さっきのまとめと同じ展開である(つーかまとめの部分と同じ展開なのは当たり前だが^^)。

『Moreover, the United States experienced unusually mild weather over the first quarter, with the number of heating degree days more than 20 percent below the average of the preceding five years, which may have pulled forward some economic activity and hiring.』

『In this regard, the somewhat softer March labor market report that was released last Friday may reflect the earlier positive influence of the mild weather on job creation in January and February, although other less sanguine interpretations are also plausible. We thus will need to see more data to determine the extent to which the March data represent a transitory weather-related setback.』

でまあこの部分がほほーという感じなのですが、暖冬が雇用を押し上げた可能性についての判断が必要という論点でして、1月2月が妙に押し上げられていて実は雇用拡大のトレンドが思ったより強くない可能性というのと、3月が単に反動で伸びが良くなかっただけでトレンドとしての雇用拡大が続いているのかという点を今後の雇用統計を見ていく中で確認していく必要があるという話を出されますと、このロジックを持ち出すという事は少なくとも3月雇用統計一発で追加緩和を打ち込むというのは話としてはややおかしいですよね、という事になるのではないかと思うのですがどうでしょうか。勿論6月の追加緩和(というか長期金利お助け施策?)を排除する話でも何でもないですけれども、少なくとも「この前出た3月雇用統計が悪かったので追加緩和」というロジックには無理があるという話じゃネーノと思う。

『Regardless of the importance of the mild winter in distorting the economic data, real economic activity has yet to be strong enough on a sustained basis to make a big dent in the overall amount of slack in the U.S. economy. While growth was stronger in the fourth quarter, most of it was due to inventory accumulation. Growth of final sales remained quite weak. Historically, quarters in which inventory investment makes significant growth contributions are typically followed by quarters in which that growth contribution is modest or even negative. That appears to be what is shaping up for the first quarter of this year. 』

つーことで、実質的な経済活動については米国経済のスラックを大きく埋めるほどの持続的な強さはありませんがなという話になってきまして、徐々にハトトーンになってくるのだ。

『Based on available data, our current expectations are that real GDP will expand at around a 2-1/4 percent annual rate during the first quarter of 2012.』

2012年の1Qの実質GDP伸び率は年率換算で2.25%程度との予想ですがこの数字は後で出て来るので重要。

『Even with the robust increase of light vehicle sales, overall consumer spending in the first quarter appears to be rising at a similar moderate rate. At the same time, real disposable income has been flat over the past three months, and the large increase of gasoline prices is likely further sapping consumers’ real purchasing power. And growth of business investment spending, which softened in the fourth quarter of 2011, may have been even a little softer in the first quarter of this year.』

とまあそんな感じでイマイチ感が漂う話ですな。

『To put the recent pace of growth into perspective, we believe that the economy’s long-run sustainable growth rate-what economists call the potential growth rate-is around a 2-1/4 percent annual rate.』

ということで実質2.25%というのが潜在成長率と推測される数値とな。

『We need sustained growth above that rate to absorb the still substantial amount of unused productive capacity. Thus, our recent growth rates are barely keeping up with our potential.』

つーことで、経済のスラックを埋める成長を目先では見込んでいない、という話でもありますので、そういう意味あいからは緩和政策の継続という結論になるんでしょうなあという事で、もちろんこちらの講演はタカでも無い、というのが結論になろうかと思います。


雇用に関して。

『Even though the unemployment rate has declined sharply from 9 percent last September to 8.2 percent in March, it is still unacceptably high. In addition, many other measures of the labor market remain weak. The labor force participation rate, the percentage of people employed, and the total number of hours worked in the economy all dropped sharply during the recession and remain well below their pre-recession levels, even taking into account the impact of demographic shifts. Also, it appears that productivity growth has slumped recently. Although that means that a given amount of growth translates into bigger employment gains, it certainly is not an unmitigated positive development.』

ああだこうだと話をしていますが、まあ失業率は低下傾向だけど労働市場を巡る環境は依然として宜しくなく、雇用環境の改善に繋がる経済成長までには至っていないので今後も厳しいですよという話をしていますので、まあさっきと同じくで少なくともタカにはなり得ませんがなという事ですな。

そして「経済には顕著な向かい風がある事を忘れてはならない」キタコレというのが次に。

『Also, we cannot lose sight of the fact that the economy still faces significant headwinds and that there are some meaningful downside risks. In the headwinds department, I would include the run-up in gasoline prices mentioned earlier because that will sap purchasing power, the continued impediments to a strong recovery from ongoing weakness in the housing sector, and fiscal drag at the federal and state and local levels. In terms of downside risks, these include the risk that growth abroad disappoints and the risk of further disruptions to the supply of oil and higher oil prices.』

従来の住宅セクターや財政削減に加えて石油関連価格の上昇による購買力の低下も経済に対するダウンサイドリスクに加わったという話ですな。

んでもってインフレは落ち着いてきて今後も抑制されるでしょうという普通の話。

『While the underlying core inflation rate, that strips out volatile food and energy prices, has been somewhat higher than expected a few months back, it appears that the annual rate of core inflation1 has peaked and we expect it to begin to decline later this year. Finally, inflation expectations, which play an important role in the inflation process, remain well anchored. By this I mean that people expect that the rate of inflation will continue to be relatively low for some time to come.』

ちなみに、金融政策で何をどうするみたいな話は今回は行っておりませんので、経済見通しのみという所です。


○イイハナシダナー(;∀;)

こちらのダドリー講演は経済見通しに関する所がまあ普通に金融政策のインプリケーションという部分なのですが、お話として読んでて面白いのは実は前半分のような気も。

『What the New York Fed Does』という所で、NY連銀が地区の景気状況を把握するためにどのような事をやっているのかという話をこれでもかと説明しているのですが、この説明を見ておりますと(そらまあ国土の広さの差があるけど)日銀の支店(大きな支店は別にして)だとそれこそ支店長と調査にあたる人が1名とか2名とかいうような陣容で地域経済の調査をしているのとはだいぶ違ってまあ日銀としてはウラヤマシスという感じなのではないかと思いますけどどうなんでしょうかねえ。

今回のダドリー総裁の日程(?)はこのようになっているそうな。

『To help me gather more information about the region, yesterday, I had breakfast in Syracuse with business and community leaders at the Center for Economic Development. Then I met with the staff of PathStone, a community development organization, met faculty and students at the Maxwell School of Syracuse University and had lunch with university officials who manage the tech transfer process. In the afternoon, we drove to Skaneateles Falls to tour Welch Allyn, a manufacturer of medical diagnostic instruments. Dr. Julie Shimer is the president and CEO. Dr. Shimer was also recently appointed chair of the Empire State Development Corporation, and we talked about challenges and opportunities for economic development in New York State.』

『After this morning’s gathering, I will speak with staff of the Empire Justice Center, meet with Lt. Governor Bob Duffy, convene a meeting of our Upstate Advisory Board, whose members are major leaders in the upstate economy, and visit the Roswell Park Cancer Institute to learn about their role in economic development in western New York and in the broader world arena.』

中々充実した日程ですな。んでもって連銀スタッフのお仕事はこんな感じ。

『My colleagues and I at the New York Fed continually track conditions in our District, and we have created a number of tools for that purpose. For example, my staff produces monthly indexes of economic activity for New York City, the state of New York and New Jersey. These indexes are essentially measures of local output-similar to gross domestic product, or GDP, at the national level. These measures provide a more complete gauge of activity than the employment report, which is another important metric at the state level. We have also constructed a consumer credit panel to track local household credit conditions at the county and even the zip code level, including the amount and type of personal debt and whether payments are being made in a timely way.』

『In addition, we conduct a periodic poll about the credit needs of small businesses, which are an important source of new jobs. We are just launching our latest poll that also includes questions about the skill needs of small businesses and whether the right kinds of skilled labor are available. Almost 900 regional businesses responded to our last poll, some of which were from this region. If you, as a representative of a small business, would like to participate in our current poll, please pass your card to my colleagues, who are in the audience, or see me after the speech and we will be glad to add you as a respondent.』

だそうで、何とも充実してますなあと思うのでありました。


さてさて、それはそれとして最初の所でダドリー総裁が中々良い話をしているのですな、という感じで今日は講演を後ろから読んでいる格好になっています(^^)。

『I have the great fortune to serve as vice chair of the FOMC that meets eight times a year in Washington to set interest rates and make other decisions about monetary policy. The members of this committee all strive to set policy to advance the mandate given to us by Congress to promote the maximum level of employment consistent with price stability.』

とまあここまでは良いとして・・・・・・

『Sometimes we have different views on the specific policy choice at hand, and you should view this as completely appropriate: these are hard questions-particularly during difficult economic circumstances such as we face today. In fact, I think we make better decisions as a committee because we don't all think alike.』

色々なビューがあって議論があるのが重要という話をしている訳で、まあ当たり前の話だと思うのですが、一方でどこぞの国では「政策に対する考え方がケシカラン、こういう政策の考え方を持つ人間じゃないとダメ」と言って政策委員人事に臨む政治がある訳ですな。

『But we are united in our commitment to our dual mandate and in our belief that Fed independence is essential to the public interest. That independence allows us to make tough decisions insulated from short-term political pressures.』

>That independence allows us to make tough decisions insulated from short-term political pressures.
>That independence allows us to make tough decisions insulated from short-term political pressures.
>That independence allows us to make tough decisions insulated from short-term political pressures.

ま、米国の場合は逆方向の「short-term political pressures」のような気もしますが、追加緩和したら株が上がって為替が円安に振れたけどその勢いがなくなったから緩和の効果が落ちているとかどう見ても短期的視点です本当にカムサハムニダな論点で政治的圧力をせっせとお掛けになられる政治家の皆様たちにおかれましてはちったあ落ち着けやと思うのでありますけどねえなどと存じます。

トップに戻る



2012/04/09

○気を取り直して冷静に(?)FOMC議事要旨から少々

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120313.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120313.pdf

・読むには読むがネタにしない『Staff Review of the Financial Situation』の所から少々

『Staff Review of the Financial Situation』の部分というのは基本的に読むには読むのですけれども、基本的にはややトーンが強めになった(経済指標がそうなのですからまあ当然ですが)という所ですが、そこまで激しく強い話でも無かったりします。

で、その中でほほーと思ったのは「家計資産」に関するこんな所。

『Households' real disposable income increased, on balance, in December and January as labor earnings rose solidly. Moreover, households' net worth grew in the fourth quarter of last year and likely was boosted further by gains in equity values thus far this year. 』

という事で、労働市場の改善で家計の実質所得が改善しているという話に加えて、「更に」と来て株価の上昇が家計のネット資産が拡大している事を指摘するのが米国の家計資産構造を良く示しているなあと毎度思うのであります。

基本的には比較的明るめの話が多いという所でしょうか。まあ手放しで喜んでいるという雰囲気ではないですが、全般的に今回のミニュット読んでいてこの連銀スタッフによる景気状況に関する話の所は割と明るめのトーンというのが印象的でした。


・ついでに『Staff Economic Outlook』から少々

その前の『Staff Review of the Financial Situation』も色々とありますが、まあこちらは引用するまでも無く大体内容は皆さんの想像の範囲内の話だと思いますので引用割愛して連銀スタッフの経済見通しから。

『In the economic projection prepared for the March FOMC meeting, the staff revised up its near-term forecast for real GDP growth a little.』

手前のGDP見通しを若干引き上げたとのことでその次がその背景。

『Although the recent data on aggregate spending were, on balance, about in line with the staff's expectations at the time of the previous forecast, indicators of labor market conditions and production improved somewhat more than the staff had anticipated. In addition, the decline in the unemployment rate over the past year was larger than what seemed consistent with the modest reported rate of real GDP growth.』

例によってGDPの成長の緩やかさに対して失業の改善がやや良いという、オークン則に関する論点がありますなあとか思いつつ。

『Against this backdrop, the staff reduced its estimate of the level of potential output, yielding a measure of the current output gap that was a little narrower and better aligned with the staff's estimate of labor market slack.』

ということで経済のスラックが従来の予想よりもやや小さいという可能性をかんがみ、潜在的な生産に関しての推計を引き下げた(つまり生産ギャップの推計を小さくしたという事ですね)との事でこれはほほーという感じです。

つまり、かねてより「経済のスラックが中長期的な物価上昇を抑制し、労働市場の改善を遅らせる」というのがFRBの基本的なビューであった訳でして、その中でこのような見直しが行われる、というのはまあその基本的なビューに関わる部分でもあるのでして、そういう意味では重要は重要。ただしこのパラグラフの最後の部分で「そうは言っても生産市場と労働市場大きなスラックが云々」という話をしておりますので、今回の変化はまあ小さな変化ではあるという感じなのでしょうけれども・・・・・・

『In its March forecast, the staff's projection for real GDP growth over the medium term was somewhat higher than the one presented in January, mostly reflecting an improved outlook for economic activity abroad, a lower foreign exchange value for the dollar, and a higher projected path of equity prices.』

中期的な実質GDP成長見通しも若干引き上げていまして、その背景には海外経済活動がより強くなっている事や、ドル価格が下がっていること(って対ユーロの話ですかね)と、株価のパスがより高くなっていることと来ましたか。

『Nevertheless, the staff continued to forecast that real GDP growth would pick up only gradually in 2012 and 2013, supported by accommodative monetary policy, easing credit conditions, and improvements in consumer and business sentiment.』

とはいえ2012年と2013年の成長に関しては緩やかなものに留まる見通しと。

『The wide margin of slack in product and labor markets was expected to decrease gradually over the projection period, but the unemployment rate was expected to remain elevated at the end of 2013.』

つーことで、さっきの所で生産ギャップの推計の話をしていますが、まあ基本的な話は引き続き「生産市場と労働市場の大きなスラックは見通し期間において徐々に縮小すると期待されるものの、2013年終わりまで失業率は高い状態が続くものと見込まれる」という部分はまあ相変わらずでございます。

インフレに関してはその次。

『The staff also revised up its forecast for inflation a bit compared with the projection prepared for the January FOMC meeting, reflecting recent data indicating higher paths for the prices of oil, other commodities, and imports, along with a somewhat narrower margin of economic slack in the March forecast.』

若干のインフレ見通し引き上げには石油および商品価格と輸入価格、それに加えて先ほどの中にもあったように「経済のスラックに関する推計を若干引き下げた事によって」というのがあるようで。

『However, with energy prices expected to level out in the second half of this year, substantial resource slack persisting over the forecast period, and stable long-run inflation expectations, the staff continued to project that inflation would be subdued in 2012 and 2013.』

とはいえ、その引き下げたスラックの推計と言いましても、引き続きこのように「かなりの資源のスラックが見通し期間中には依然として残り」という話ですので、まあインフレ見通しに関しては若干引きあがったとは言え「2012年と2013年は抑制された状態が続くと予想する」となっていますにゃ。


・失業の見通しに関する変化キターーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー

今回のFOMC議事要旨の一番の見どころは『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の失業に関する表現です。ちなみにこの部分の話は基本的に連銀スタッフの現状認識と見通しからあまり変わった話は無いのですが、失業に関する表現が前回と大きくニュアンスが異なっているのがキタコレという所です。

『With respect to the economic outlook, participants generally saw the intermeeting news as suggesting that economic growth over coming quarters would continue to be moderate and that the unemployment rate would decline gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate.』

というのが今回の表現ですが、1月はどうなっていたかと言いますと・・・・・・

『With respect to the economic outlook, participants generally anticipated that economic growth over coming quarters would be modest and, consequently, expected that the unemployment rate would decline only gradually. 』(1月FOMC議事要旨より)

となっていまして、(まあこれFOMC声明文でも実は微妙に表現が違っていたのでそういう意味では後追い確認でもあるのですが・・・・・)1月時点では「失業率は極めて緩やかにしか低下しないと予想する」という表現になっていますが、今回は「失業率は徐々に低下して、デュアルマンデートに整合的な水準に向かっていくでしょう」という表現になっていまして、思いっきりこの部分が上方修正されていますというのがキタコレなのですよ。

ここの所は声明文での表現はこうなっていました。

『The Committee expects moderate economic growth over coming quarters and consequently anticipates that the unemployment rate will decline gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(3月声明文)

『The Committee expects economic growth over coming quarters to be modest and consequently anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. 』(1月声明文)

まあこの声明文比較でも判りますっちゃあ判りますのですけれども、議事要旨での表現の方が判りやすいという感じでありまして、まあキタコレと言った所でございましょう。

ということで簡単ではございましたがこんな所で。

トップに戻る



2012/04/04

○気を取り直してFOMC議事要旨

だからTranscriptは後日出るのだからこれは議事録じゃなくて議事要旨だと何度言えば(しつこい)。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120313.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120313.pdf

画面から読む分にはHTMLの方が便利だが、印刷して読みながらメモを入れるのにはPDF版(ページレイアウトを圧縮しないでそのままで印刷)が吉だと思います。

つーことでまあ『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』以下の部分をざざーっと流して読んでみましたけど多分経済の見立てと見通しに関しての部分はスルーしますお。

と言いつつ先に『Committee Policy Action』の部分から。

・早期の追加緩和が必要と言っているのは2名とな

エバンスとあと一人だれですかね(^^)。

『A couple of members indicated that the initiation of additional stimulus could become necessary if the economy lost momentum or if inflation seemed likely to remain below its mandate-consistent rate of 2 percent over the medium run.』

これは上記コーナーのケツの方(分量で言えばdirectiveと公表文があるので真ん中辺りになる)にありますが、「景気の回復モメンタムが失われ、あるいはインフレが中期的に2%割れが続くと見込まれる場合には、追加緩和が必要になるでしょう」という指摘をしているのが2名となっています。

ちなみに、前回1月のMinuteではこんなのがありましてですな、

『A few members observed that, in their judgment, current and prospective economic conditions--including elevated unemployment and inflation at or below the Committee's objective--could warrant the initiation of additional securities purchases before long.』(これは1月FOMC議事要旨です)

ということで、少数名のメンバーから2名のメンバーに減少しているというのがにゃんとも味わいのある所ですし、前回は追加緩和に関して「追加の証券購入」という表現でしたが、今回は「追加緩和」という表現になっているのも味わいがあるかと存じます。


・今後のコミュニケーションポリシー

決定事項議決後の部分がほほうという感じ。『Monetary Policy Communications』という小見出しの所です。

『As it noted in its statement of principles regarding longer-run goals and monetary policy strategy released in January, the Committee seeks to explain its monetary policy decisions to the public as clearly as possible. With that goal in mind, participants discussed a range of additional steps that the Committee might take to help the public better understand the linkages between the evolving economic outlook and the Federal Reserve's monetary policy decisions, and thus the conditionality in the Committee's forward guidance.』

ということでフォワードガイダンスを始めとしたコミュニケーションポリシーの改善についての議論を相変わらず行っているようです。

『The purpose of the discussion was to explore potentially promising approaches for further enhancing FOMC communications; no decisions on this topic were planned for this meeting and none were taken.』

つーことなのですが、まああまり細々とやりだすと今度はその判断を変化させることがアカウンタビリティ問題になってくるリスクがあるので要注意のように思えますけどね。

『Participants discussed ways in which the Committee might include, in its postmeeting statements, additional qualitative or quantitative information that could convey a sense of how the Committee might adjust policy in response to changes in the economic outlook.』

声明文において経済の見通しに対応して金融政策において何らかの追加の量的または質的な情報を追加すべきではないかというのがその議論に含まれるっちゅうんですから、こらまあフォワードガイダンスの改善っぽい気がする。

あとで引用しますが、今回の議事要旨の中で「フォワードガイダンスの期限は経済見通しの顕著な変化に対応して変化しうることでメンバー全員が同意した」という下りがありまして、まあ特定の期間を示すフォワードガイダンスの扱いが意外に難しいという話になってきてるんじゃネーノという風に思ったのですがどうでしょうかね。

『Participants also discussed whether modifications to the SEP that the Committee releases four times per year could be helpful in clarifying the linkages between the economic outlook and the Committee's monetary policy decisions. In addition, several participants suggested that it could be helpful to discuss at a future meeting some alternative economic scenarios and the monetary policy responses that might be seen as appropriate under each one, in order to clarify the Committee's likely behavior in different contingencies.』

SEPの改善だの、複数景気見通しシナリオの提示だのという話もあるんですかそうですか。

『Finally, participants observed that the Committee introduced several important enhancements to its policy communications over the past year or so; these included the Chairman's postmeeting press conferences as well as changes to the FOMC statement and the SEP.』

ほうほう。

『Against this backdrop, some participants noted that additional experience with the changes implemented to date could be helpful in evaluating potential further enhancements.』

つーことで、まあ特段今回何かを決定したという話ではないですが、まあ色々とコミュニケーションポリシーの改善と称してやってきそうな感じですな。


・基本的には「現状維持が適切」ですけど・・・・・・・

『Committee Policy Action』の所に再び。

基本的な線は最初の方にあります。

『Members viewed the information on U.S. economic activity received over the intermeeting period as suggesting that the economy had been expanding moderately and generally agreed that the economic outlook, while a bit stronger overall, was broadly similar to that at the time of their January meeting.』

1月会合よりも若干経済が強くなっていると。

『Labor market conditions had continued to improve and unemployment had declined in recent months, but almost all members saw the unemployment rate as still elevated relative to levels that they viewed as consistent with the Committee's mandate over the longer run.』

労働市場は改善しているけれども失業率は依然として高水準とな。

『With the economy facing continuing headwinds, members generally expected a moderate pace of economic growth over coming quarters, with gradual further declines in the unemployment rate. Strains in global financial markets, while having eased since January, continued to pose significant downside risks to economic activity.』

つーことで、回復は強まっても当面は失業率の低下は極めて緩やかで、しかも国際金融市場の緊張という経済下振れリスクは緩和したものの依然として大きいと。

『Recent monthly readings on inflation had been subdued, and longer-term inflation expectations remained stable. Against that backdrop, members generally anticipated that the recent increase in oil and gasoline prices would push up inflation temporarily, but that subsequently inflation would run at or below the rate that the Committee judges most consistent with its mandate.』

インフレに関しては抑制され、長期的なインフレ期待も安定している。原油やガソリン価格の上昇は一時的にインフレの押し上げ圧力となるが、その後はインフレはマンデート水準またはそれ以下に低下する見通しだと。


・でまあ政策に関してとかには大きな変化の必要なしと

『In their discussion of monetary policy for the period ahead, members agreed that it would be appropriate to maintain the existing highly accommodative stance of monetary policy. In particular, they agreed to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent, to continue the program of extending the average maturity of the Federal Reserve's holdings of securities as announced in September, and to retain the existing policies regarding the reinvestment of principal payments from Federal Reserve holdings of securities.』

従って現状の政策維持が適切という話っすな。

『With respect to the statement to be released following the meeting, members agreed that only relatively small modifications to the first two paragraphs were needed to reflect the incoming economic data, the improvement in financial conditions, and the modest changes to the economic outlook.』

従って声明文における経済の現状見通し(第1パラグラフ)および先行き見通し(第2パラグラフ)に関しては表現を大きく変更する必要は無いとな。

『With the economic outlook over the medium term not greatly changed, almost all members again agreed to indicate that the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』

従ってほとんど全員(除くラッカー総裁)のメンバーはフォワードガイダンスの文言も継続が適切と判断したと。

『Several members continued to anticipate, as in January, that the unemployment rate would still be well above their estimates of its longer-term normal level, and inflation would be at or below the Committee's longer-run objective, in late 2014.』

複数名のメンバーは引き続きlate2014になっても失業がマンデートとして望ましい長期的な通常のレベルよりも遥かに高いレベルを維持し、インフレはマンデートで望ましい長期的な水準またはそれよりも低い(つまりより長い期間の異例の低金利政策が必要となる可能性の示唆ですな)可能性があると予想しました。


・フォワードガイダンス文言はconditionalキタコレ

という部分の次にこの話が。

『It was noted that the Committee's forward guidance is conditional on economic developments, and members concurred that the date given in the statement would be subject to revision in response to significant changes in the economic outlook.』

キタコレという感じですが、つまりフォワードガイダンスは経済の先行き見通しに顕著な変化があったらそれに対応して変化するコンディショナルなものですと皆が同意したとか思いっきり言ってアチャーなのですけれども、ただまあ直前に上記の文章があるのが救い、というか文章構成としてそれはちゃんと考えて作っているのでしょうけれども、これはすなわちハト派とタカ派では同じ「コンディショナルコミットメント」のケツの期間の「見直し」について逆の結論になり得る論点でもございますが、さっきの部分が無くていきなりここだけ出てくると、今の米国市場の雰囲気だと「late2014が前倒しされる可能性がー!」とか言い出す可能性があるので、まあその辺を良く配慮した文章構成だと思いますお(^^)。


・偽りの夜明け第3弾のリスクキタコレ

しかもこの次にもハト的な文章を散りばめておりまして、フォワードガイダンスがコンディショナルという結構地雷な話を入れるに際して前後にハト的な文章を入れることによって、市場が更に「利上げ時期前倒しキタコレ」モードになるのを防ぐという芸の細かさに全米が泣いた(^^)。

『While recent employment data had been encouraging, a number of members perceived a nonnegligible risk that improvements in employment could diminish as the year progressed, as had occurred in 2010 and 2011, and saw this risk as reinforcing the case for leaving the forward guidance unchanged at this meeting.』

偽りの夜明け第3弾のリスクは無視できず、このリスクを勘案すればフォワードガイダンスを今回変更する必要性はないという見方を補強する事になるでしょうと。


・経済見通しに関して

という所で案の定時間が無くなって参りましたので、せっかく読んだ(と言っても所詮は斜め読みですけど)『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の部分がスルーになってしまいましたが(涙)、まあ基本的には見通しは改善しているけれども下振れリスクはありますねという妥当な話で、各需要項目の話とかも何となく面白そう。トーンとしては全般的に明るめだけどまだ慎重って感じじゃないですかね。

インフレに関する部分だけ引用しておきます。最後のパラグラフっすけど。

『While the recent readings on consumer price inflation had been subdued, participants agreed that inflation in the near term would be pushed up by rising oil and gasoline prices.』

『A few participants noted that the crude oil price increases in the latter half of 2010 and the early part of 2011 had been part of a broad-based rise in commodity prices; in contrast, non-energy commodity prices had been more stable of late, which suggested that the recent upward pressure on oil prices was principally due to geopolitical concerns rather than global economic growth.』

ふむふむ、今回の原油価格上昇はディマンドプルの色彩は薄いとな。

『A couple of participants noted that recent readings on unit labor costs had shown a larger increase than earlier, but other participants pointed to other measures of labor compensation that continued to show modest increases.』

この論点も面白そうです罠。

『With longer-run inflation expectations still well anchored, most participants anticipated that after the temporary effect of the rise in oil and gasoline prices had run its course, inflation would be at or below the 2 percent rate that they judge most consistent with the Committee's dual mandate.』

基本はこれです。

『Indeed, a few participants were concerned that, with the persistence of considerable resource slack, inflation might be below the mandate-consistent rate for some time. Other participants, however, were worried that inflation pressures could increase as the expansion continued; these participants argued that, particularly in light of the recent rise in oil and gasoline prices, maintaining the current highly accommodative stance of monetary policy over the medium run could erode the stability of inflation expectations and risk higher inflation.』

で、最後のこの部分がへーという感じですが、スラックによってインフレがマンデートよりも低くなるリスクを指摘する人がいる一方で、原油やガソリン価格の上昇と現在の極めて緩和的な金融政策スタンスが、インフレ期待の安定を損なうリスクってのを指摘している他のメンバーがいた(複数形だから一人では無い)というのがへーという感じでした。

てな所でございまする。

トップに戻る



2012/04/02

○コチャラコタ総裁の「金融政策の限界」は別にタカでは無かったりする(^^)

さきほどからモーサテが「コチャラコタ総裁が来年のインフレ率を2.3%と予想すると発言し、早期の利上げの必要性を示唆」とか凄まじい話をしているのですが、どう見ても2.3%なら早期利上げ不要ですがな番組スタッフは頭沸いとるんかいと思ったら普通にブルームバーグ見たらこうなっていたので一安心、つーか大丈夫かテレビ東京。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1S1UD6K50XS01.html
ミネアポリス連銀総裁:今年のインフレ率を2%前後と予想

『3月31日(ブルームバーグ):米ミネアポリス連銀のコチャラコタ総裁は31日、景気刺激を目的とした連邦準備制度理事会(FRB)の国債購入について、「米経済にいかなるインフレ圧力も創出していない」と指摘、FRBにはバランスシートに伴うリスクを緩和する多くの手段があると述べた。イリノイ州での講演後に聴衆からの質問に答えた。』(上記URLより)


さてさて、31日にも講演があったのですが、あたくしがプリントアウトしたのが20日のセントルイスでの講演だったのでそっちのURLを付けますが、さっき(モーサテが変な事を言うから気になって^^)31日の資料もざっと斜め読みしましたが、内容は同じようでございますのでコチャラコタ総裁の講演から少々。

http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/speech_display.cfm?id=4839
On the Limits to Monetary Policy - Executive Summary
Narayana Kocherlakota - President
Federal Reserve Bank of Minneapolis

2nd Annual Hyman P. Minsky Lecture
Washington University, St. Louis, Missouri
March 20, 2012

エグゼクティブサマリーのPDF版はこちら
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/nrk03-20-12.pdf

プレゼンテーション資料(たぶんパワーポイントベース)のPDF版はこちら(56枚組)
http://www.minneapolisfed.org/news_events/pres/kocherlakota_minsky_speech_032012.pdf

で、まあサマリーの方から。

『Since the start of the Great Recession, employment has fallen considerably, while average inflation has been near the Federal Reserve’s target of 2 percent. Given the Federal Reserve’s dual mandate to promote price stability and maximum employment, an obvious question is “Why does the Federal Reserve appear to be doing so much better on one mandate than the other?”』

ということで、さてどうするかという話なのですが、コチャラコタ総裁は「労働需要ショック」と「生産物需要ショック」(勝手に訳してみたが良い訳は無いかね)という面からの考察を行っていますです、はい。

・労働需要ショックと生産物需要ショックとな

『In this speech, I present a simple model that suggests an answer to this question. A key feature of the model is that there are two distinct types of demand shocks: labor demand shocks and product demand shocks.』

需要に対するショックとして「労働需要に対するショック」と「生産物への需要に対するショック」に分けて考えるとな。

『The labor demand shocks reflect factors such as adverse credit conditions and increased uncertainty that lead firms to demand fewer workers at a given real wage. The product demand shocks reflect factors such as a loss of wealth and a higher risk of job loss that lead households to demand fewer goods at a given real interest rate.』

労働需要ショックはクレジット環境の悪化や、不確実性の拡大によって、企業が現状水準での実質賃金による労働者への需要を減らす事を反映したもの。生産物需要ショックは、家計のバランスシートの悪化や、失業に対するリスクの高まりなどがによって、家計が現状水準での実質金利による物品購入意欲を減らす事を反映したもの。だそうな。

『Each of these shocks leads to a fall in employment, with the decline in employment magnified by slow adjustments in the real wage.』

いずれの場合でも実質賃金の調整が遅れる事によって、雇用の減退拡大に繋がるようで。


・金融政策と非金融政策の使い分け

『When considering these shocks, it is important to distinguish how monetary and non-monetary policies influence the level of output and employment. In the model I employ, the Federal Reserve controls the real interest rate; lowering the real interest rate increases the demand for goods and services, and thereby influences national output and employment.』

で、金融政策と非金融政策の生産や雇用に与える影響を分ける事が重要ですという話でございまして、このコチャラコタ総裁の提唱するモデルだと、「金融政策は実質金利のコントロールが出来る」ので「実質金利の引き下げによって財やサービスに対する需要を拡大することが出来て、その結果として国全体の生産や雇用に影響を与える事が出来る」との由。

『The first implication of the model is that monetary policy can offset the impact of the product demand shocks on employment, but it cannot offset the employment loss due to the fall in labor demand and any associated slow real wage adjustment. As a result, the level of “maximum employment” achievable through monetary policy is less than the “full employment” of labor resources. 』

こちらのURL先ではcanとcannnotが斜字体になっているのですけれども、金融政策は「生産物需要ショックのインパクトを軽減する事は出来る」が、「労働需要ショックを軽減することはできない」と言う事で、それが題名の「金融政策の一つの限界」という話になります。その結果として、労働需要ショックによって起きた雇用の落ち込みに対しては、金融政策によって到達することの出来る「雇用の最大化」レベルは必然的に労働リソースの「完全雇用」には届かない、という話です。

つーことで、この辺に関する概念的な話はコチャラコタ総裁は以前から指摘しているのですけれども、こういう切り口で話をしたのは最近の事(今回が初めてのような気もする)ですなあという所です。


・雇用に対する非金融政策を有効にするのは緩和的な金融環境

ではコチャラコタ総裁は金融政策で完全雇用の達成は難しいのだからFRBはもっと物価重視的になって金融緩和の出口政策を早めるべきであるというような話をしているのかと言えばさにあらずでございまして、この次にこのような話があります。

『A second implication is that non-monetary policies specifically designed to stimulate the demand for workers (such as government subsidies for hiring) can offset some of the employment loss due to the labor demand shocks, but only if accompanied by monetary easing.』

ちなみに「but only if accompanied by monetary easing」がこれまた斜字体になっておりまして、雇用に対する需要を高めるための非金融政策(たとえばという事で、雇用に対する政府関連機関による政策というのを挙げていますが)は「労働需要ショックによって起こされるインパクトを軽減することが出来る」としていますが、その後に「しかしそれには緩和的な金融政策という環境が必要である」という風にしておりまして、つまり「金融政策で完全雇用の達成は難しく、非金融政策による施策が必要である、ただしその非金融政策を有効にするのは緩和的な金融環境です」という話が今回のスピーチのキモのようですな。

『That is, monetary and non-monetary policy must work in concert to reduce the impact of a decline in labor demand; neither can do it alone.』

まあ今申し上げたように「金融政策と非金融政策の双方が必要です」という話っすな。


・FRBの金融政策はインフレをターゲット近辺に落ち着かせることに成功している

『Returning to the question posed at the beginning, this model suggests that the Federal Reserve is performing about as well as it can on both mandates. The Federal Reserve’s accommodative policy has offset much of the impact of product demand shocks and so has kept inflation near target.』

プレゼンテーションの方にもある(めんどいので引用しない)のですが、FRBの緩和的な金融政策によって「product demand shocks」を軽減した結果として物価水準がマンデートの近辺にあるという話ですわな。

『However, this policy has been unable to offset the large adverse shocks to labor demand. The model implies that, in terms of employment, there are limits to what monetary policy can achieve on its own.』

しかし、金融政策だけでは現在の大きな労働需要に対する負のショックをオフセットする事はできませんので、つまり金融政策単体での完全需要達成は無理なので、非金融政策による労働市場への働きかけが必要、という話が結論です。

つーことで、まあ結局サマリー全文引用攻撃になってしまいましたが(^^)、非金融政策による働き掛けの際には緩和的な金融環境が必要という話をしている訳ですから、そーゆー意味では今回の講演はタカ派でも何でもないと思うのですが、何をどう読むとモーサテのように「早期利上げの必要性を示唆」となるのかさっぱり理解致しかねる次第でございまする。

足元でタカ派の地区連銀総裁がタカ派な話をして、その一方で執行部とかハト派の人が対抗するかのようにハト派な話をするというオモシロ展開が続いている(外野で見ている方としてはオモシロ展開なのですが、コミュニケーションポリシーとして如何なものかと思わん事も無い)ので、コチャラコタ総裁がタカ派気味(まあ物価重視的な話がここまで多かった)なので講演をしたら当然タカ派の発言をするだろうという思い込みから講演テキストも見ないで報道したんじゃないか疑惑が出てしまいますなあテレ東さんあるいは日経さん。

#いかん、また悪態がorzorzorz

トップに戻る