海外金融政策概観(2013年度上期後半)

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FRBやBOEを中心に趣味成分が高いですが、海外中銀のペーパーや講演などをフォローするのだ。

2013/09/27「バーナンキ会見(その3)フォワードガイダンスの説明部分など」
2013/09/25「バーナンキ会見(その2)Taperingをなにゆえ日和ったかの説明部分だがマジで意味判らん」
2013/09/24「早速連銀高官から百家争鳴キタコレ/バーナンキ会見から(その1)」
2013/09/20「FEDの金融政策が読みにくくなってきましたという件とSEPのロンガーランの数字がおかしいのではという件」
2013/09/19「FOMCまさかのTapering見送り!!!!!」
2013/09/18「ドラギ総裁9月定例理事会後会見より(その2)超過準備に関する考察」
2013/09/17「サマーズが議長辞退/ECBドラギ総裁9月定例理事会後会見より(その1)」
2013/09/10「やや弱い雇用統計も結局今月Tapering開始のようで」
2013/09/06「BOEは現状維持も償還再投資額をわざわざ声明文に入れてサービス」
2013/09/03「BOE講演でですが「講演の文字起こし」があるのね(メモ)」
2013/08/28「FOMC議事要旨ネタ続き:冒頭に「フルアロットメントの翌日物リバースレポ」の話題がががが」
2013/08/27「BOE議事要旨から:フォワードガイダンスのスレッショルドで反対意見とな」
2013/08/23「FOMC議事要旨続き:Tapering自体はするようですが見解はバラバラですかねえ」
2013/08/22「7月FOMC議事要旨から:結構議論はカオス」
2013/08/21「ドイツ連銀ペーパーネタ補足/新興国市場があばばばばーとTapering/BOE議事要旨から:スレッショルド候補は実質GDPとと失業率だったんですね」
2013/08/20「米債2.9%キタコレ/ブンデスクオリティ?/SF連銀ペーパーは理屈がハチャメチャで結論先にあり気ですな」
2013/08/19「ブラード総裁は10月Tapering判断を想定みたいですね/SF連銀の「QEはもう効きが悪い」ペーパー」
2013/08/16「BOEのフォワードガイダンスの説明資料から(その3)物価重視の旗は降ろさず」
2013/08/15「BOEのフォワードガイダンスの説明資料から(その2)/米国からはまたも金融政策コメント(メモ)」
2013/08/13「BOEのフォワードガイダンスの説明資料から(その1)」
2013/08/08「BOEのフォワードガイダンス登場!!」
2013/08/07「海外中銀のTapering話/ブラード総裁の講演から」
2013/08/05「ECBドラギ総裁会見から:結局フォワードガイダンスが色々とファジーな件について」
2013/08/02「FOMCレビュー雑談/BOEのガイダンスはインフレレポートの来週に/ECBは据え置き」
2013/08/01「FOMC声明文:最大のなぞは景気判断を上げたのか下げたのか横なのかが判らない事・・・・」
2013/07/31「ウィリアムス総裁は住宅中心に景気には強めだが緩和縮小には慎重と来ました」
2013/07/30「パウエル理事講演より(その2)LSAPのプロコンでは問題点を結構力点入れて説明」
2013/07/29「パウエル理事講演より(その1)景気の見方は中心的見解、物価への警戒は大きくない」
2013/07/26「FOMCプレビュー雑談/ラスキン理事の講演は「バブル防止は監督」を強く出し過ぎの気がします」
2013/07/25「プロッサー総裁のタカ派は景気の強気によるもの/ブラード総裁は物価を重視」
2013/07/22「BOE議事要旨に見る「量から金利」への転換」
2013/07/19「6月FOMC議事要旨から(その3)景気や労働市場を見るとまあタカ派に見えますよね」
2013/07/18「バーナンキ議会証言は表現を工夫してハト的な見せ方/BOEは量で勝負から撤退とな」
2013/07/17「6月FOMC議事要旨から(その2)」
2013/07/16「ドイツ連銀バイトマン総裁がドラギさんを後ろから盛大に銃撃する台無し発言を」
2013/07/11「6月FOMC議事要旨は概ね想定されたように「資産買入縮小」を前提にしているようですな」
2013/07/09「ドラギ総裁欧州議会での証言もやる気は見せるが弾は出さない攻撃」
2013/07/08「ドラギ総裁会見を見るとどうもまた「やるやる詐欺」になるリスクもありそうですな」
2013/07/05「BOEは時間軸政策の導入に向けて決定/ECBはソフトな時間軸のようなものを導入」
2013/07/04「バーナンキ会見ネタ更におまけ」
2013/07/03「スタイン理事は景気に弱気もプロコン分析でQEに否定的/ダドリー講演は変わらず」
2013/07/01「バーナンキ会見ネタ続き/ラッカー総裁が火消し・・・・ではなくてやはりQE反対論でした」

2013/09/27

○ということえバーナンキ会見ネタ(大汗)

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20130918.pdf
Transcript of Chairman Bernanke’s Press Conference September 18, 2013

今朝はFINAL版になっておりますので(つーてもほとんど同じだと思います)ページ数などはFINAL版ベースで申し上げます。

冒頭説明部分が更に続きます(まだ冒頭かよというツッコミはしないように)


・フォワードガイダンスの部分では物価が低い見通しだと金利上げないよ文言も

フォワードガイダンスに関する部分では物価への言及が入っているのがほほうという所です。

『Let me turn now to the FOMC’s forward guidance regarding the federal funds rate.』

つーことで。

『The Committee again reaffirmed its expectation that the current exceptionally low range for the funds rate will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, so long as inflation and inflation expectations remain well behaved as described in our statement. As I have noted frequently, the economic conditions we have set out as preceding any future rate increase are thresholds, not triggers.』

今回も従来のフォワードガイダンスを確認しましたよガイダンスはトリガーじゃないよといつもの話。

『For example, a decline in the unemployment rate to 6-1/2 percent would not lead automatically to an increase in the federal funds rate target, but would, instead, indicate only that it had become appropriate for the Committee to consider whether the broader economic outlook justified such an increase.』

でまあ労働市場の総合判断をしますよという話ですが・・・・・・・・・

『The Committee would be unlikely to increase rates if inflation were projected to remain below our 2 percent objective for some time, for example; and, in making its assessment, the Committee would also take into account additional measures of labor market conditions, such as job gains.』

『Thus, the first increases in short-term rates might not occur until the unemployment rate is considerably below 6-1/2 percent.』

ここでインフレが当面2%を下回って推移すると予想される場合には利上げはしませんぞなもしという話を入れているのがほほうという所なのですが、ここがまた逆さ絵先生の狸な所で、この物価の話をアセットパーチェスの所ではしないでスレッショルドの所でしているのがコミュニケーションをある意味ややこしくしている部分でして、物価が低い状況であったらLSAPの縮小を開始しないのかというと、そこについては触れないで誤魔化すという技を使うので、コミュニケーションが分かりにくくなる要因でもあったりします。

つまり、LSAPと金利政策の部分でのコンディショナリティーが、それぞれバラバラになっているのか、それとも連続した流れのものになるのか、という肝心の部分が曖昧になっておりまして、まあ説明上では別途のものとして分けて説明している積りなのでしょうが、そもそも経済物価情勢を勘案して金融緩和の度合いを調節するのですから、その中でLASP⇒金利という建付けにしている以上、LSAP縮小の話(つまり今回のTaperingトーク)をすればその先の金利への思惑も自動的に出てくるのは、何ぼFEDが別物と言ってもやはり通じにくい話ですよね、という事になる辺りを軽視していたという事になるんでしょうなあと思うのでありました。


・フォワードガイダンスとSEPの金利見通し

『The projections of the path of the federal funds rate by individual Committee participants are generally consistent with this guidance. Although the central tendency of the projected unemployment rate for the fourth quarter of next year encompasses 6-1/2 percent, 12 of the 17 participants expect the first rate increase to take place in 2015 and two expect it to occur in 2016.』

さいですな。

『Most participants also see the funds rate target rising only very slowly after the process of removing policy accommodation begins. The median projected funds rate for the end of 2015 is 1 percent. And notably, although the central tendencies of the projections for both inflation and the unemployment rate in 2016 are close to the longer-run normal values for those variables, the median projection for the federal funds rate at the end of 2016 is 2 percent, well below the longer-run normal value for the federal funds rate of 4 percent or so projected by most participants.』

ということで、この2016年に完全雇用で潜在成長よりも強い成長なのですが、政策金利の上昇パスは遅くないかという点は質疑でも一応突っ込まれていた(が答えはスルー気味だった)です。

『Committee participants generally believe that, because the headwinds to recovery will abate only gradually, achieving and maintaining maximum employment and price stability will require a patient policy approach that involves keeping the target for the federal funds rate below its longer-run normal value for some time.』

この辺の話もまあ微妙でして、LSAP縮小に関する話をしている時には「経済の下振れリスクに関しては消えてきている」という認識を強調しているのですが、フォワードガイダンスの話のこの部分では「向かい風は引き続きあるので利上げペースは遅くなる」という説明になりまして、いやまあリスク認識の話と構造的な話なので論点として矛盾はしていないのですし、LSAP縮小と金利政策に関しては別物という建付けになっていますので、これはこれで話の筋は通っていますけれども、やはり如何にも分かりにくい説明ですよねと思う訳ですよ。

つまり、この辺りの説明ってやっぱりLSAP縮小の時にも考慮されますよね、とゆー風に認識するのが通常の世間様の反応だと思う訳でして、金融政策の反応関数をLSAPと金利政策の所で微妙に使い分けてしまうと、説明にウェイトが掛かっている方を市場は重視しちゃいますから、結局の所「金融政策判断の反応関数がワケワカラン」という事になると思いますし、説明がこのように融通無碍モードになっているとやはり「ワカンネーヨ」という事になると思うのよね。


・ということでLSAPと金利政策という分け方を説明しています

とまあこのようなツッコミが来る訳ですので説明部分でもこの話は強調していますが、やはり同じ緩和政策をどうするという話の中で反応関数を分離するというのはコミュニケーション的に難しいものがあると思う。

『Let me close by noting that although the FOMC is employing two instruments of policy-asset purchases and forward guidance about short-term interest rates-the overall stance of monetary policy is what matters for growth, jobs, and inflation.』

でまたこういう風にオーバーオールの判断って成長と雇用とインフレがベースですよ(当たり前ですが)となるのでこれがまたコミュニケーションをややこしくしている希ガス。

『Our program of asset purchases was set up a year ago to help achieve a substantial improvement in the outlook for the labor market in the context of price stability, relative to conditions when the program was initiated, and we have made progress toward meeting that criterion. However, even after asset purchases are wound down-which we will do in a manner that is both deliberate and dependent on the incoming economic data-the Federal Reserve’s rates guidance and its ongoing holdings of securities will ensure that monetary policy remains highly accommodative, consistent with an aggressive pursuit of our mandated objectives of maximum employment and price stability.』

とまあいつもの説明なのですが、やはりこのLSAPと金利を分ける、というのが実際にTaperingトークをしてみた時にコミュニケーションが難しいですね、という事になったかと思うのですが、ただまあ今回については逆さ絵先生的に不幸としか申し上げようが無かったのは、オバマ大統領が後任候補にサマーズさんを挙げてきたことでして、その結果本来意図していた(というか今でもそうだが)「LSAP縮小と金利引き上げを分離して2段階方式での正常化を図る」という作戦にいきなり齟齬が生じてしまったという面があり、長期は兎も角中短期の金利上昇で「サマーズリスク」部分がどの位あったのかは今になってみるともはやワカランチ会長でありますので、実は「Taperingトークの失敗」なのか「オバマのアホウが空気を読まないでFRB議長人事を進めたのが悪かった」のかで、もちろん両方の合わせ技ではあるのですが、どこからどこまでが効いていたのかは微妙だと思うのですよね。

でまあ今回のコレで逆にTaperingに慎重になり過ぎてしまって金融不均衡ガーとなってしまうのが次のリスクになってしまっていると思いますので、まあいずれにせよ色々と難しくなったなあと思われます。

『Thank you, and I’d be glad to take your questions.』

質疑応答にも突入しようかと思ったのですが、それをやりだすとオワランチ会長になりそうですし、やってるとキリがなさそうなので、何か別途作ってこっそりアップとか方策を考えたいと思います。

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2013/09/25

○引き続きちょこちょこと逆さ絵記者会見:・テーパー日和った説明のコーナーから

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20130918.pdf
Transcript of Chairman Bernanke’s Press Conference September 18, 2013

今朝もPRELIMINARY版である。

引き続き冒頭の逆さ絵先生の落語もとい説明で本文3ページ(PDFファイルも同様)から。

『I’ll discuss these tools in turn, beginning with our program of asset purchases.』

で、最初はQE3をどう実施しましたという話。

『In September 2012, the FOMC initiated a program of purchasing $40 billion per month in agency mortgage-backed securities, in addition to the $45 billion per month in longer-term Treasury securities that we were already acquiring as part of our Maturity Extension Program.』

さいですな。

『We stated that, subject to our ongoing assessment of the efficacy and costs of the program, purchases would continue until we saw a substantial improvement in the outlook for the labor market in a context of price stability.』

労働市場の見通しの顕著な改善が物価安定の下で見られるまで継続すると申し上げましたと。

『In December 2012, we announced that we would continue to purchase $45 billion per month in longer-term Treasuries after the Maturity Extension Program ended later that month. Thus, our total purchases of longer-term securities were maintained at $85 billion per month, in addition to the reinvestment or rolling over of maturing securities on our balance sheet.』

で、1月に追加しましたと。

『The Committee agreed today to continue asset purchases at that rate, subject to the same conditions that we laid out a year ago.』

1年前と同じ理由とな!

『Because the Committee tied its asset purchases to the outlook for the labor market, it is important to assess how that outlook has evolved.』

LSAP(ちなみに念の為申し上げますと、QE3以降「ラージスケールオブアセットパーチェス」という言い方をしなくなってるのでよろしゅうに)は労働市場の見通しに紐付けされているとのことですが・・・・・

『As I noted earlier, conditions in the job market today are still far from what all of us would like to see. Nevertheless, meaningful progress has been made in the year since we announced the asset purchase program.』

でこの後実際にどのように改善しているかという話を延々と続けているのですが、「満足する状況からは遠いが改善は進展している」という話と、資産買入政策は上述のように「アウトルック」に紐付けしているのですからして、この「現状が満足する状況からは依然として遠い」というのは本来的に言えば直結しない話でして、そもそも金融政策が雇用に与える影響ってタイムラグがある筈ですからして、現在水準がそうであるから緩和拡大を続けるというのが必ずしも正しい理屈にはならないと思うのですよね。

んでもって今回経済の見通しがそれなりに下がっているというのであれば理屈は通るのですが、SEPの2016年見通しを見れば何と完全雇用で潜在成長を上回る実質GDP成長を達成するというバラ色の未来になっていますし、これ後の方で出てくるのですが「6月FOMC時点の見通しにほぼ同じ」という説明もありまして、そういう中で元々の地均しを何で覆す話になるのかというのが説明不足というか混乱しているにも程があるという所であります。

ちなみに何が改善したかというのも一応引用します。失業率と雇用者数と平均労働時間と失業保険新規申請者数と家計の雇用に関するコンフィデンスの話をしています。

『For example, the unemployment rate has fallen from 8.1 percent at the time of our announcement to 7.3 percent today, and about 2.3 million private-sector jobs have been created over the same period. Over the past 12 months, aggregate hours of work are up by about 2.4 percent, weekly new claims for unemployment insurance have fallen by about 50,000, and surveys suggest that households perceive jobs as more readily available.』

で、ここでまたフィスカルドラッグの話をまじぇまじぇしていまして、まあ要するに逆さ絵先生としては足元のフィスカルドラッグリスクが高まったから日和りましたという事なのでしょうかねと思わせる話。

『Importantly, these gains were achieved despite substantial fiscal headwinds, which are likely slowing economic growth this year by a percentage point or more and reducing employment by hundreds of thousands of jobs.』

わざわざ言わなくても良いのを入れている所に逆さ絵先生の意図を感じますな。

『Not all labor market developments over the past year were positive, however; notably, the labor force participation rate fell by about 0.3 percentage points over the past year, and real wages remained about flat.』

必ずしもすべての雇用関連数値が良い訳ではなく、労働参加率が下がっていることと実質賃金がアガランチ会長な事なんかがございますねという話。


で、次が6月の会見で堂々説明した件の再掲部分みたいなコーナー。

『In light of this cumulative progress, the FOMC concluded at our June meeting that the criterion of “substantial improvement in the outlook for the labor market” might well be met over the subsequent year or so. Accordingly, the Committee sought to provide more guidance on how the pace of purchases might be adjusted over time.』

『The Committee anticipated in June that, subject to certain conditions, it might be appropriate to begin to moderate the pace of purchases later this year, continuing to reduce the pace of purchases in measured steps through the first half of next year, and ending purchases around midyear 2014.』

という説明をしていましたな。

『However, we also made clear at that time that adjustments to the pace of purchases would depend importantly on the evolution of the economic outlook, in particular, on the receipt of evidence supporting the Committee’s expectation that gains in the labor market will be sustained and that inflation is moving back toward its 2 percent objective over time.』

あくまでもデータ次第とこの前言いましたよ(キリッ)とか言いましても、はいはいワロスワロスという所でございまして、だったら何でその前段のような思いっ切り決め打ちみたいな言い方をしたのだと小一時間。


『At the meeting concluded earlier today, the sense of the Committee was that the broad contours of the medium-term economic outlook-including economic growth sufficient to support ongoing gains in the labor market, and inflation moving toward its objective-were close to the views it held in June.』

おい見通しが6月と近いんだったら何で今回見送りになったんだよ、という説明は以下に。

『But in evaluating whether a modest reduction in the pace of asset purchases would be appropriate at this meeting, however, the Committee concluded that the economic data do not yet provide sufficient confirmation of its baseline outlook to warrant such a reduction.』

つまり足元の指標がイマイチなのでヒヨルドになりましたと。

『Moreover, the Committee has some concern that the rapid tightening of financial conditions in recent months could have the effect of slowing growth, as I noted earlier, a concern that would be exacerbated if conditions tightened further.』

お前は何を言ってるんだという所ですが、質疑応答の方でそのものズバリで「あんさんの言った金融市場のタイトニングに対する責任はそもそもあんさんにあると思われますがどうお考えなのでしょうか」というのもありますのでお楽しみに、って今日間に合わないので(つーか質疑応答の2番目、本文8ページにあって質疑ともにオモロイのでお暇な人は読んでくらはい)。

『Finally, the extent of the effects of restrictive fiscal policies remains unclear, and upcoming fiscal debates may involve additional risks to financial markets and to the broader economy.』

まあ結局これなんでしょと思う次第。そもそもアウトルック直結という建付けになっているのに、足元の指標で一々ヒヨルドになるというのもちょっと理屈が通らない訳で、フォワードルッキングに見た場合にフィスカルドラッグがかなり懸念されるのでここで緩和規模の拡大を減らすのはやりたくないというのであればまあ話は分からんでも無い。

『In light of these uncertainties, the Committee decided to await more evidence that the recovery’s progress will be sustained before adjusting the pace of asset purchases.』

ただまあ昨日も申し上げたように、フィスカルポリシーのリスクは年内に全部片が付くのかどうか微妙ですよね本当に「今年の後半に緩和規模縮小」ってのが出来るのですかねという所ですな。

『The Committee will, of course, continue to monitor economic and financial developments closely. As noted in today’s statement, in judging when to moderate the pace of asset purchases, the Committee will, at its coming meetings, assess whether incoming information continues to support the Committee’s expectation of ongoing improvement in labor market conditions and inflation moving back toward its longer-run objective.』

まあその毎回点検する云々は理屈としては分かるしその通りなのですが、では元々6月に示した「見通し」とは何だったのだというツッコミをしたいのに加えまして、先行き見通しが顕著に下がって居る訳でも無いのに何で今回ヒヨルドになったかと小一時間という話になる訳で、まあ財政に関する部分を強調しているからその辺が影響してるんだろうなあというのは分かりましたが、じゃあ財政に関する協議が成立したら早速Taperingなのですかとか、LSAPペースの縮小に関する「判断基準」が下手に事前アナウンスすることによって全くもってワカランチ会長になりました罠という話です。

『However, as we have said and as today’s decision underscores, asset purchases are not on a preset course. The Committee’s decisions about their pace will remain contingent on the economic outlook and on the Committee’s ongoing assessment of the likely efficacy and costs of the program.』

まあ大体声明文でも説明している話ですが、資産買入プログラムのパスは事前に決められたコースではありませんとか、今後もメリットデメリットを勘案しながら検討するとかまあそういう話をしておりますな。

で、この次がフォワードガイダンスの話なのですが時間ががががなので以下明日に続く(いつまで引っ張るんだというツッコミは無しの方向で、他のFEDネタも読んだら投下していきます)。

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2013/09/24

○早速色々と発言キタコレ

さあ盛り上がってまいりました!!!

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MTFAG66K50YC01.html
ブラード総裁:見送りはぎりぎりの判断、10月に小幅縮小も
更新日時: 2013/09/20 23:44 JST
(ちなみにブラード総裁は見送り上等派ですので念の為)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MTG8FH6TTDSA01.html
カンザスシティー連銀総裁:当局は刺激縮小開始の機会逃した
更新日時: 2013/09/21 09:25 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MTL12R6TTDTK01.html
NY連銀総裁:当局は向かい風を「力強く」押し返す必要
更新日時: 2013/09/23 23:44 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MTL0WS6TTDTR01.html
アトランタ連銀総裁:米金融当局は景気加速に注力を
更新日時: 2013/09/23 23:38 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MTLAPQ6TTDTH01.html
米ダラス連銀総裁:緩和縮小見送り、金融当局の信認損ねた
更新日時: 2013/09/24 03:12 JST

おまいら・・・・・・・・・(−_−メ)

ということで、早速タカハト両方からここぞとばかりにああだこうだというのが出て参りまして、さあ盛り上がって参りましたとしか申し上げようがございませんが、あーた逆さ絵先生の会見&Q&A読む暇を与えずにその先の発言がドバドバ出るとかまさに読む暇なし(というかさすがに読んでない)訳ですが、こらまたカオス状態になっております罠という所です。

まーこの調子ですと資産買入に対する市場の見通しも混乱というかフラフラと振れるだろうなあというのは想像するに難くないのですが、フォローする方も疲れるわという所ではございます。

となると益々逆さ絵会見での説明を確認する必要に迫られるのですけれども・・・・・・・・・・・・・


○FOMC後のバーナンキ議長会見ネタ(その1)

どうせ今日書ききれない&まとめきれないので既に諦めモードで(その1)とか書いていますが(汗)。

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20130918.pdf
Transcript of Chairman Bernanke’s Press Conference September 18, 2013

これ書いている現在公開されているのはPRELIMINARY版になりますのでページ等は初稿版ベースになります。


・先にあたくし的印象を書いておくと・・・・・・・・・・・

どうせご紹介の方が今日ではオワランチ会長な位にネタ満載の会見なので先に私家版まとめを書いておきますが、今回の会見での説明および質疑応答を見てて思ったのは「どう見てもシッチャカメッチャカ」というと余りと言えば余りなので言い換えると「いやあ混乱してますなあ」という所でありまする。

つまりですね、まあ当たり前なんですが質疑の方でゴリゴリとツッコミを受ける中で、ああでもないこうでもないと説明はしているのですが、「何で今回オープンエンドのAPPペースの減額をしなかったのか」という質問が手を変え品を変えて(というよりは同じような質問がゴリゴリと来るという感じでしたが)来るのですが、説明をする中でえーっとそれは前後矛盾していませんですかねえというような答えが結構連発されていて、まあ逆さ絵先生におかれましても相当苦労してますなあというのは把握される所でありまする。

んでもって、今回の質疑応答で妙にクローズアップされている感があるのが「連邦財政に関するリスク」でして、ここの部分に注目して考えた場合、債務上限の再拡大問題とか、放置していると来る予定の自動財政支出削減攻撃問題とか、その辺の懸念っていったん後退した筈だったのに、こらまた急にどうしましたねん(オバマ大統領の求心力低下で従来楽勝だと思っていた本件のリスクが高まったという指摘はございますな)という所ですが、しかしそうなると普通に考えて10月FOMC(と言っても10月末だが)の時点で問題が片ついているとも思えず、そうこう言ってるうちに逆さ絵先生の議長としての任期が切れてしまいますので、まさかイタチの最後っ屁のような12月FOMCでのTaperingねえという風に思いますとやはりこれは・・・・・・という気もします。

が、ハト派のブラード総裁(正確に言えばブラードのおっちゃんは超物価派なので、物価見通し次第でハトになったりタカになったりする)が言っているように、ちょっと経済指標(雇用関連)が良くなるといきなり元に戻るかもしれませんし、何が何やら今から決め打ちはしにくい、というか市場が決め打ちモードになったら逆に逝った時のリスクががががとなるんでしょうね。ってな程度の事は普通に皆さん考えるでしょうから米国債券市場でもポジション繰りは半身の構えになるのかも知れませんが、何せ今回のようなTapering云々というのは米国でも中々前例が無かったからメリケンクオリティで大暴れ相場になるに1万ドラクマという事で(^^)。


#いかん前置きが長くなった


・冒頭説明部分から(その1):現状認識の説明部分

最初の所から引用しますが、ご挨拶と今回の決定事項の部分は割愛してその次から。

『Economic growth has generally been proceeding at a moderate pace, with continued-albeit somewhat uneven-improvement in labor market conditions. Of course, to say that the job market has improved does not imply that current conditions are satisfactory. Notably, at 7.3 percent, the unemployment rate remains well above acceptable levels. Long-term unemployment and underemployment remain high. And we have seen ongoing declines in labor force participation, which likely reflects discouragement on the part of many potential workers, as well as longer-term influences such as the aging of the population.』

経済成長の所にgenerallyとかヘッジクローズが入り、労働市場の改善に関しても「幾分かまちまちですが」と入れて、労働参加率の低下の話をしているのですが、実はこの労働参加率に関する説明が微妙にこの後の質疑でワカランチ会長な話をしていて、結局労働参加率の低下が構造的なのか循環的なのかという部分があります。

ただまあ全体を通して読むと労働参加率の低下は構造的な問題で、この点について金融政策でどうこうというのは難しいけれども、雇用環境を見る上では労働参加率の低下を考慮に入れないといけませんよねというのが主張っぽいのだけは把握しました。ただ途中で微妙に矛盾した話もあるんですよねぇ・・・・・・・・・


『In the Committee’s assessment, the downside risks to growth have diminished, on net, over the past year, reflecting, among other factors, somewhat better economic and financial conditions in Europe and increased confidence on the part of households and firms in the staying power of the U.S. recovery.』

この1年間で成長の下方リスクは全体として消えてきているとしていますが・・・・・・・・

『However, the tightening of financial conditions observed in recent months, if sustained, could slow the pace of improvement in the economy and the labor market.』

声明文であった話をここで繰り返しておりますがよう言うわという所で。

『In addition, federal fiscal policy continues to be an important restraint on growth and a source of downside risk.』

つーことで、まあ確かに従来から財政問題についてはリスク扱いでしたけれども、今回はここの部分が従来よりも強調された感がありますな。

『Apart from some fluctuations due primarily to changes in oil prices, inflation has continued to run below the Committee’s 2 percent longer-term objective. The Committee recognizes that inflation persistently below its objective could pose risks to economic performance, and we will continue to monitor inflation developments closely.』

つーことで物価の話は前回のFOMCステートメントから登場していますが、今回も物価の話をする際に現状認識の次に「インフレが低いリスク」をぶちかましているのがチャーミング。

『However, the unwinding of some transitory factors has led to moderately higher inflation recently, as expected; and, with longer-term inflation expectations well-anchored, the Committee anticipates that inflation will gradually move back toward 2 percent.』

で、ぶちかました後に「でも一時的要因の巻き戻しで物価はターゲットに向けて上昇」という風に締めているという説明になっているのでした。


この次がSEPの説明で、その後「我々の政策は資産買入とフォワードガイダンスですので、まずは資産買入からご説明します」ということでキタコレになるのですが、誠に恐縮なことに時間の関係上続きは明日ということですいませんすいません。

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2013/09/20

○FOMCレビュー雑談

本当はここで会見ネタを投下するのが正しい姿なのですが、会見ネタを精読している時間ガーでございまして(超大汗)、今日は今回の声明文とSEP関連の追加雑談(昨日時間切れで書けなかったというか、書いているうちに色々と考えが出てきたのだが時間が無かった件なども含め)で勘弁。


・政策の反応関数がワカランチ会長になった件について=経済指標に振らされそうですね

まあ何せ今回の声明文の白眉は「最近の金利上昇による金融環境の引き締まりが持続した場合、景気や労働市場の改善の速度を遅らせるリスクがある」という部分でして、まあどう見ても恥ずかしい文言としか申し上げようがありませんで、言ってみれば髭を全部抜いて頭に植毛した方が良いんじゃないか位の話なのですが、そういうのを平然と記載するメリケンクオリティに感動したと思ったらやはり皆さんここの文言には呆れ果てていたようで自作自演だのマッチポンプだのという声が多かったようで何より(^ω^)。

でまあその文言もそうですけれども、結局の所今回Tapering開始を見送った理由が「経済指標を見た結果の総合判断」以外にさっぱり判らないというのがこの声明文を見た結果の印象でして、そうなりますと今度は「じゃあ何が改善したらTaperingが始まるのか」というのがこれまた全然ワカランチ会長になってしまったというのが今回の決定の最大級の問題であります。

直近なんぞはSF連銀とNY連銀のエコノミストが連名で追加的な資産買入のマージナルなプロコン分析とかしていて、プロコン的にもここから追加するのはメリット小さいみたいな紙をだしていたり、プロコンの話を結構出していた筈なのですが、今回の声明文では第3パラグラフの頭に「昨年来の買入は連邦政府の財政削減の悪影響をオフセットする効果があった」とか急に資産買入政策の効果みたいなものを持ち出して来まして、良くこの文言が声明文に載ったな(これまでのFOMC参加者の講演などを見ると「プロコン分析的に今後の買入拡大って如何なものか」という見解の人もいた訳ですし)と思うのでありまして、5月以来の地均しと全然違う話が声明文であちこち打ち込まれているというのは、どう見てもコミュニケーション政策大失敗の巻という所でしょう。

つーことで、フォワードガイダンスにしろ資産買入に関する「労働市場の顕著な改善」文言にしろ、本来は「金融政策の反応関数を分かりやすくする」ためのものだった筈なのですが、(金利政策に関するスレッショルドの方はともかくとして)資産買入に関する政策反応関数については今回の謎決定によって市場としてはさっぱり訳が判らなくなってしまったというのが今回の結果でしょうねと思います。

となりますとど〜ゆ〜事になりますと言いますと、普通に考えてそんなに急速に雇用関連のデータが劇的に改善する訳でも無い(失業率の低下はパーティシペーションの低下要因も大きいですから)と想定されると存じますので、そうなったら10月のTaperingは無理無理でしょどころか12月のTapering開始も怪しいわという事になります。


でも、それまでの地均しを9月雇用統計一発でひっくり返した(ようにしか見えませんがどうなんですかねえという辺りがさっぱり読めないのが先ほどからウダウダ申し上げているように「政策反応関数が分からなくなった」という事です)ということを勘案すると、雇用関連指標などの経済指標がちょっと好転したらまたコロッとTaperingヒャッハーとなるかも知れませんし、何にせよ「読みにくい」となりますと米国債券市場のボラは高くなる、というよりは経済指標で一々振らされる展開になるんでしょうなあという風に思いますけれどもどうでしょうかね。


・SEPのロンガーラン数値と見通しの整合性が変な件について

昨日駆け足でやったSEPなんですけどね。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20130918.pdf

実は2016年の予測数値とロンガーランの数値を並べると????なのですがこれはどう解釈すべきかと。

全員のレンジでも中心的見解でもいいのですが、まあ中心的見解の方を出しますね。

2016年
実質GDP:2.5%〜3.3%
失業率:5.4%〜5.9%
PCE総合物価指数:1.7%〜2.0%

ロンガーラン
実質GDP:2.2%〜2.5%
失業率:5.2%〜5.8%
PCE総合物価指数:2.0%

つまり、ロンガーランというのは要するに均衡水準という概念にほぼ近い数字であると考えられますので、2016年は失業率と物価がほぼ均衡水準の一方で実質GDPは均衡水準(潜在成長率)を1%近く上回る水準で推移する、という話になります罠。

一方でFF誘導目標水準の予測値(これは全員の数字になりますが)ですが、

2016年:全員を算術平均すると2.265%、主に1.75-2.00%と2.50-2.75%の所に予想のかたまりがある
ロンガーラン:ほぼ4%で収斂している

という状態になっていまして、2016年に既に物価と失業率が中立水準にある中でFF誘導目標金利が中立金利の水準から2%近く低い水準にある、というのがこのSEPの見通しを全部足した結果になるのですけれども、そんな事したらどこからどう見ても2017年にはインフレが加速してエライコッチャでございますがなという話になると思うので、そう考えますとどう見てもこのSEPって全体の整合性が全然とれていませんがなという話になると思うのですがどうでしょうか。

いやまあ元々SEPの数値って微妙に全体の整合性が取れていませんなあというのはあったのですが、今回は正常化の姿が見えるような予想が出てくる所までの予想が入り、その結果としてお前それは変じゃねえのかという風になったんだろうなあとは思います。記者会見まで全部読めてないので誰か質問した人がいるのかどうか知らんですけど。


でですな、まあこの整合性問題ですけれども、景気見通しと金利見通しの整合性が取れていないというよりは「ロンガーランで示された数値のどこかの置きがおかしい」という事ではないかと思うのですよ。

つまり、根拠レスなんですけれども(おいおい)「中立FF金利4%」という数字の置きが変であって、潜在成長率が実はもうちょっと低いのか、実はロンガーランの物価水準2%というのが高いのか、何かその辺って実は違うんじゃないかなあと思うのですよ。

そもそもSEPの見通し数値って(これは中央銀行が出すものの一般的傾向でもありますが)景気に対しては威勢の良い数値が出てくる傾向にある(景気の悪い見通しを出してマインドを悪化させる事も無いでしょ、という話ですな)ので、そこでバイアスが掛かっている一方で、実際にはそれで金利先高観が出ても困るからということで政策金利に関する数値が低めに出てくる、というバイアスがあると思われますので、そういう部分の矛盾が盛大に露呈したのが今回のSEPである、と考えますとこれはこれで中々味わいの深いものがあると思います。

つーことでですね、景気見通しの上方バイアスと政策金利見通しの下方バイアスが同時に出た結果こういうオモシロ見通しになったともいえるのですが、ただまあそれにしても中立金利との差が大きいので、中立金利水準の置きがおかしい(つまり潜在成長率の低下とグローバルディスインフレ傾向をスルーしている)という要因もあるんじゃないのかな、と思ったのでメモメモでしたが、あたくし頭が悪いのでこのロジックの組み方がおかしいような気もするのでおかしいようでしたら是非ともご教授頂きたく伏してお願い申し上げますm(__)m

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2013/09/19

今日のFOMCでおおビックリという所で。

つーかまあ良く考えたらこの前雇用統計出た時にあたくしも9月Tapering開始の自信がだいぶ減ったとかゆうとったのですが、市場が普通に織り込んでいたのでやっぱり実施ですかそうですかまあFEDは市場が織り込むのに従いますもんねえと思っていたのでいやまあ日和りやがるとはねえという所ですな。

今日はワクワクし過ぎて夜中の2時に目覚めてしまい(ただのジジイじゃねえかとか言わない)、何だまだ2時じゃねえかと寝たら結局いつもの時間になるとか残念なのですが、何せ朝5時の公共放送ニュースがトップの全力でFOMCネタを報道(ちな6時のトップもFOMCで、7時に至ってはトップニュースの上に延々と解説がついて7時7分までこのネタをやっていたわ)していて今朝は瞬間で覚醒しましたわwwww

で、いきなり覚醒して読んだのですが何気に声明文見ているとだいぶアレ感が漂うので声明文等(今回結構書き換わっている)を絶賛鑑賞という所です。

#どうでもいいが「セルインメイは9月に戻って来いというのが入ります(キリッ)」とドヤ顔で説明するのはいいんですけれども既に9月半分過ぎて株価が戻ってるんですがそういうのは後出しと言うんじゃないでしょうか・・・・・・・>モーサテの株解説の人


○あたくし的小まとめ

まず声明文なのですが、まあ前回分と比較して一読した感想は「盛大に日和やがったなおいおい」という所でして、後で申し上げますが、「市場金利の上昇ガー」とかオープンエンド買入を行って緩和を毎月拡大しているものを止めようという話をしたらそら金利は上昇するだろお前は何を言ってるんだというような辺りに盛大な日和っぷりを感じますな。

つーかですな、正直言って今月緩和縮小出来なかったら年内出来るのかよという所で、この前までQE3の拡大の限界的なプロコンがどうのこうのとか言ってたのはどこに逝きやがったのかと思う訳で、ああこりゃマクロプルーデンス的にやらかしの悪寒がするわとゆー気もしますけどまあ今後また話がコロッと変わるかも知れないのでいずれにせよ不安定になるんでしょうな。

んでもってSEPの方も注目していたのですが、こちらは表紙(おもてがみ)を一見すると微妙に整合性が取れて無いんじゃネーノという所なのですが、子細に全体の数値を(ファンチャートなども含めて)確認すると、たぶん全体的な見方として「米国経済の潜在成長率(のような概念のもの)が低下している」というのがあるなあと思いましたですよ。

つまりですね、SEPの中であたくし的に注目しているのって実はロンガーランの数値に変化が起きるかという所なのですけれども、今回見ますとロンガーランのGDP数値が若干下がっていまして、ついでにロンガーランのFF誘導金利(つまり中立金利のような概念のもの)が若干下がっている(ほぼ4%に収斂されているのですが、4%超を出してきた人が降りてきている)というのが目に付きまして、FOMC参加者の皆様の意見をアグリゲートして平均を無理矢理出すとそうなるのね(実際は一部の人が見方を下げた、ということだと思いますが)という話かねと思いましたです。

ただし、今回のSEPは総勢17名になっていて、前回が19名だったので人数単純数値比較をすると全体の数値が必ず減になるのでご注意を^^;

あと、声明文の分量が前回対比長くなっておりまして、まあこういうものはあまりにも短いのもどうかとは思いますが、基本的にA4紙1枚で収まるようにするのが美しい訳でして、文章が長くなってああだこうだとなっているというのは悪文の典型ですな・・・・・・って今そこのあなた!「お前が言うな」と思いましたね!!!!


○ということで声明文である

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20130918a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20130731a.htm(前回)

・第1パラグラフ:何気に色々と下げてやがる件について

『Information received since the Federal Open Market Committee met in July suggests that economic activity has been expanding at a moderate pace.』(今回)
『Information received since the Federal Open Market Committee met in June suggests that economic activity expanded at a modest pace during the first half of the year.』(前回)

のっけから違うのですが、前回謎の「比較期間を変えて急にmodestに下げる」という訳のわからん
攻撃をしたのですが、今回は普通の比較期間(前回会合から、というのに戻す)にして「moderate」
に表現を戻すというプレイに。

『Some indicators of labor market conditions have shown further improvement in recent months, but the unemployment rate remains elevated.』(今回)
『Labor market conditions have shown further improvement in recent months, on balance, but the unemployment rate remains elevated.』(前回)

何かこの辺にも謎の文学的香りがするのですが、労働市場の改善がどうのこうのという部分に関しては前回が「on balance」になっていて今回は「some indicators」になっているので、たぶんこれは前回よりもやや弱い言い方になっている(改善(キリッ)というのに日和成分が高まるという意味です)感じですかね。

『Household spending and business fixed investment advanced, and the housing sector has been strengthening, but mortgage rates have risen further and fiscal policy is restraining economic growth.』(今回)
『Household spending and business fixed investment advanced, and the housing sector has been strengthening, but mortgage rates have risen somewhat and fiscal policy is restraining economic growth.』(前回)

消費支出と住宅セクターの解説および前回から入ったモーゲージ金利の上昇ガーというのは今回も継続ということでここは同文。

『Apart from fluctuations due to changes in energy prices, inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Partly reflecting transitory influences, inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

この物価の所が何気にげげげのげという所なのですが、前回までは足元の物価低下について「一部は一時的な要因による影響で」物価がややマンデート水準から低下というような言い方だったのですが、今回は「エネルギー価格の変動要因は別と致しまして」物価がややマンデート水準から低下となっていますので、物価に対する表現が弱まる、というか物価の上昇率が弱くなっていますねという点をより明確に示したというのがおーという所です。

ただし次のパラグラフにあるのでそこでご紹介しますが、物価の先行き見通しは下げていませんので念の為。


・第2パラグラフ:盛大な日和キタコレ!と思ったのだがどうでしょうかね

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

まあこれはお約束の表現。

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic growth will pick up from its recent pace and the unemployment rate will gradually decline toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate. 』(今回)

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic growth will pick up from its recent pace and the unemployment rate will gradually decline toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

適切な緩和政策によって失業率が物価の安定を伴いながら徐々に低下していくでしょう云々も同じですが問題はこの先。

『The Committee sees the downside risks to the outlook for the economy and the labor market as having diminished, on net, since last fall, but the tightening of financial conditions observed in recent months, if sustained, could slow the pace of improvement in the economy and labor market.』(今回)

『The Committee sees the downside risks to the outlook for the economy and the labor market as having diminished since the fall.』(前回)

後半に新たな付いたものがアレですが、その前に前半の所で従来無かった「on net」というのが入っているのがチャーミングでして、下方リスクは消えました(キリッ)と言ってたのにヘッジクローズが入っているというのがお洒落ですよね。

でまあそれよりもアチャーなのは今回のbut以下の文言でして、「ここ数か月間に観測された金融市場の引締め傾向が、もし継続するのであれば、経済や労働市場の改善ペースを遅らせる可能性がある」という部分であって、お前は何を言っているんだという位の日和っぷり表現を感じる次第ですわな。

もうね、これは見事なマッチポンプとしか申し上げようがない訳で、正常化着手しようとしたら金利が上がったのでやっぱりそれはリスクですよとかビビリが入りましたと宣言しているようなもんで、これはFOMC足元見透かされますわという所で正直これは今回の声明文の中での最大の見ものというかズッコケポイントというかと思うのですがどうっすかね。


『The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, but it anticipates that inflation will move back toward its objective over the medium term.』(今回)

『The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, but it anticipates that inflation will move back toward its objective over the medium term.』(前回)

見通し部分の物価に関する表現は前回と同様で、2%を持続的に下回る状態はリスク云々というブラード総裁もニッコリの表現も継続しています。


・第3パラグラフ:QE3の効果の話をするとかこの辺も日和成分がががが

このパラグラフは基本的にQEの話なのですが、前回対比で思いっきり文章量が長くなっているのがここで、ああでもないこうでもないみたいな書き方が増えるのは基本的に悪文化している典型(とまた自分にブーメラン^^)。

『Taking into account the extent of federal fiscal retrenchment, the Committee sees the improvement in economic activity and labor market conditions since it began its asset purchase program a year ago as consistent with growing underlying strength in the broader economy. However, the Committee decided to await more evidence that progress will be sustained before adjusting the pace of its purchases.』(今回)

ここの部分は概ね新規導入文言でして、まず最初に「財政削減の影響を考慮にいれますとQE3は(その分をオフセットして)基調的な経済全体の成長に伴う経済活動や労働市場の改善に効果がありました」とか言い訳のような話と財政削減云々の話をしているのは何だかなあという感じです。

で、今回はアセットパーチェスの調整(ここでは増やすとも減らすとも言っていないのもチャーミングですけれども次のパラグラフで減らすという話をしています)を行うのには更にエビデンスが必要ですという日和んぐになりましたとの事。

『Accordingly, the Committee decided to continue purchasing additional agency mortgage-backed securities at a pace of $40 billion per month and longer-term Treasury securities at a pace of $45 billion per month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction.』(今回)

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee decided to continue purchasing additional agency mortgage-backed securities at a pace of $40 billion per month and longer-term Treasury securities at a pace of $45 billion per month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction.』(前回)

何を行いますか云々の話はまあ現状維持なのですから表現は同様。

『Taken together, these actions should maintain downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative, which in turn should promote a stronger economic recovery and help to ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with the Committee's dual mandate.』(今回)

『Taken together, these actions should maintain downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative. 』(前回)

今回は後半に余計なものがついていますが、直前で引用したように前回は文章冒頭に「To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate,」とありまして、それが文章構成上後ろに来たという形です。


・第4パラグラフ:一応減らすという話をしていますが

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months and will continue its purchases of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has improved substantially in a context of price stability. 』(今回)

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months. The Committee will continue its purchases of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has improved substantially in a context of price stability. 』(前回)

物価安定の元で労働市場の顕著な改善するまで資産買入を継続します云々については何故か今回従来2文に分かれていたのがandで一文になった以外は同じです。

『In judging when to moderate the pace of asset purchases, the Committee will, at its coming meetings, assess whether incoming information continues to support the Committee's expectation of ongoing improvement in labor market conditions and inflation moving back toward its longer-run objective. Asset purchases are not on a preset course, and the Committee's decisions about their pace will remain contingent on the Committee's economic outlook as well as its assessment of the likely efficacy and costs of such purchases.』(今回)

『The Committee is prepared to increase or reduce the pace of its purchases to maintain appropriate policy accommodation as the outlook for the labor market or inflation changes. In determining the size, pace, and composition of its asset purchases, the Committee will continue to take appropriate account of the likely efficacy and costs of such purchases as well as the extent of progress toward its economic objectives.』(前回)

今後の調整がどうのこうのという部分ですが、こちらについては前回までは「適切だと認識したら増やしたり減らしたりするのは準備できています(キリッ)」となっていたのが、今回は「In judging when to moderate the pace of asset purchases」となっていますので、「減額」を前面にだした形でして、まあこれ自体は減額に向けた話になってはいるのですが、そこまでの各種表現が腰砕けモードになっているからこの辺で少し腰を立て直さないと急にハト派に転換したのでという風になるからというのはあるんでしょうかねとか勝手に思ったりするあたくしですが、まあ何かあまり統一された意志が無いのかもしれませんね、良く判らん。

でもって今回はその「減額」というのを入れておきながらその直後に「でもそれは事前に決めたコースを取って行う訳では無くて経済状況次第」というのも入れておりまして、まあ全体的にはやはり日和というか腰砕けモードという感じですなあという所です。


・第5パラグラフ:金利に関しては前回と全文一致

フォワードガイダンスなどの表現部分はあたくしが読み間違えていなければ全文一致の筈です。今回分だけ引用します。てきとうにぶつ切りはしておきますが。

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate for a considerable time after the asset purchase program ends and the economic recovery strengthens.』(今回)

『In particular, the Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that this exceptionally low range for the federal funds rate will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored.』(今回)

『In determining how long to maintain a highly accommodative stance of monetary policy, the Committee will also consider other information, including additional measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments. When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent.』(今回)


・第6パラグラフ:反対はジョージさんだけとな(理由は同じ)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Charles L. Evans; Jerome H. Powell; Eric S. Rosengren; Jeremy C. Stein; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Charles L. Evans; Jerome H. Powell; Sarah Bloom Raskin; Eric S. Rosengren; Jeremy C. Stein; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen.』(前回)

デューク理事が退任してますがラスキン理事は今回欠席だったのですかね。つーことでSEPは19名から17名にかわっています。

『Voting against the action was Esther L. George, who was concerned that the continued high level of monetary accommodation increased the risks of future economic and financial imbalances and, over time, could cause an increase in long-term inflation expectations.』(今回)

『Voting against the action was Esther L. George, who was concerned that the continued high level of monetary accommodation increased the risks of future economic and financial imbalances and, over time, could cause an increase in long-term inflation expectations. 』(前回)

ということで毎度お馴染みジョージ総裁怒りの反対でした。



○SEP

ヤバイ時間ががががなので駆け足で。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20130918.pdf(今回)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20130619.pdf(前回)

・中心的見通し

ということでこちらの表紙の中心的な見通しを見ると、

GDP:13年上げ、14年下げ、15年上げ
失業率:13年下げ、14年下げ、15年上げ
インフレ:13年上げ、14年下げ、15年横

という感じですが、そんなに極端な変化はありませんな。

でもって16年の見通しですが、

GDP:ロンガーランの成長率を上回る水準
失業率:5.4-5.9なのでロンガーランの5.2-5.8と概ね同じ
インフレ:1.7-2.0でまあ適正

ということで、16年には正常化していますという感じになっています。


・ロンガーランの数値

んでもってあたくしが気にしているロンガーランの数値なのですが、こちらのGDPの数値が中心的な見通し、全体の数値でみた双方で低下している(中心的なのが2.3-2.5→2.2-2.5、全員の数字が2.0-3.0→2.1-2.5)のがほほうというのは先ほども申し上げた通り。

失業率のロンガーランは中心的な見通しが低下してる(5.2-6.0→5.2-5.8)のですが、全員の数値は上がっている(5.0-6.0→5.2-6.0)なので実はそんなに変わっていないのかもです。ファンチャート見てもそんな感じですし。

物価は変わらないのはお約束。


・FF金利に関して

これは母集団が2減っているので単純比較しにくいのですが、ざっと見た感じですと・・・・・・・

利上げの時期に関して、および2015年末のFF誘導金利水準に関する見方はやや金利低下&利上げ遅れる方向になっております。まあそういう計算の仕方も乱暴なのですが、2015年末の所の全員のプロットを算術平均しますと、前回が1.342%だったのですが、今回は1.250%になっておりまして、まあアグリゲートするとちょっと低下したという感じではないでしょうか。

注目の2016年末のFF誘導金利予想ですが、こちらは1.75-2.00%の所に最初のかたまりがあって、2.5-2.75%の所に次のかたまりがあるという感じ(上の方にはタカ派の先生がおいでですが)です。これまた算術平均するとあたくしの計算が間違えていなければ2.265%になります。

ロンガーランについては2名抜けている分も勘案した方が良いのかもしれませんが、それはそれとして、従来4.5%で見ていた3人が降りてしまったのが目立つ所で、4%にほぼ収斂しているのですが、4%超で見ていた人が従来の6名から3名に減っていまして、FOMCメンバーの中立金利に対する見方はタカ派の人たちが降りてきた感じが致します。


ということで時間配分がというか今回は声明文読書に時間を食ってしまったので後半の方が盛大に駆け足になってしまいまして誠に恐縮至極(いつもなら引用するのですが引用しているヒマが無かった)でありまする。

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2013/09/18

○いまさらですが明日はFOMCなのでこの前のECBネタを虫干し

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2013/html/is130905.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 5 September 2013

・超過準備に対する評価

質疑応答の最初にこれがあってほほうと思ったのでご紹介。

『Question: You mentioned that if excess liquidity declines much further, you’d be particularly attentive to developments in that regard. Could you help us by perhaps indicating at what point numerically excess liquidity becomes a concern to you and what then you would do about that?(2番目の質問は中東問題なので割愛)』

ということで超過準備に関する質問ですが、この質問にあります『particularly attentive to developments』の部分ですけれども、冒頭の説明でこのようなのがありまして・・・・・・

『With regard to money market conditions, these have also been influenced by a gradual reduction in excess liquidity. Repayments of funds taken up in the context of the three-year longer-term refinancing operations reflect improvements in financial market confidence, some reduction in financial market fragmentation and the ongoing deleveraging by euro area banks. We will remain particularly attentive to the implications that these developments may have for the stance of monetary policy.』

つーことで、3年LTROの返済が進んで超過準備が減少しているのはマネーマーケットの環境が改善していることを示すとして、最後に「これらの状況の進展が金融政策スタンスに与えるインプリケーションについて引き続き注視する」という話をしておったのですな。


でもってドラギ総裁のお答え。

『Draghi: You are absolutely right to have focused on that sentence “particularly attentive・・・”.』

ほう。

『Right now, we view the current excess liquidity as adequate, but we stand ready to act. Now, we have got to be aware that excess liquidity depends on two factors. The less fragmentation there is, the less is the excess liquidity. The second factor is a reaction to the excess liquidity and to the demand, namely through LTROs.』

更にほほうなのですが、超過準備の減少について2つのファクターとして、超過準備の減少は短期金融市場のフラグメンテーションの減少を意味する、というのはまあそうですねという所ですが、2つ目のファクターとして、超過準備が実体経済に対してどのような影響を与えているのかという点ですというお話。

『So now we are down from ユーロ800 billion to ユーロ250 billion in terms of excess liquidity, and that is all in all good news, because it means that fragmentation has been receding.』

これまでの超過準備減少は良いニュースで、これはフラグメンテーションの減少を意味するとな。

『Now, when we come to the relation between the excess liquidity and the EONIA rates - which is what you are really asking - we have to consider that this relation is unstable, in the sense that there isn’t any precise figure.』

しかしながら、超過準備がある程度以上減少すると、今度は超過準備とEONIA金利の関係(要は従来はジャブジャブだったのでEONIA上昇を気にしないで良かったのが気にする時期が来るよね、という話ですな)という問題が起きるが、超過準備とEONIAの関係については(従来の経験値が無い上に)不安定であり、事前に超過準備がどの位だからEONIAレートがこの辺に落ち着きそうというのがワカランチ会長という問題に至りますなとの指摘。

まあほほーという所ではありまして、この話って思いっきり正常化した市場での話という論点になっていて、まあそういう話を会見で展開するというのがお洒落というかほうほうそうですかと思った所なのですよね。つまり、域内金融問題ヒャッハーでエライコッチャというステージから脱却して、こういう「平常時の話」ができるまで状況が改善している、という認識をECBが持っているからこそ、こんな話になるんですよねと思いまして、いやあ随分と改善したもんですなあと遠い目になるあたくし(^^)。


『I remember some time ago I mentioned a figure of ユーロ200 billion as the threshold, but in fact it is really context-dependent.』

暫く前には超過準備が2000億ユーロを切った所でEONIA上昇という見通しを示したけれども、まあこれは状況次第ですよねということで。

『It depends on the context; it depends on the degree of fragmentation that we have. The ECB’s Monthly Bulletin speaks of a figure between ユーロ200 billion and ユーロ100 billion, but in general the threshold depends on the state of fragmentation. The other note of caution that I would sound is that one should not extrapolate too much from the past repayment pattern of LTROs. As you see from the figures, it has been quite significant for some time, and now it is basically constant. It really depends on who is repaying the LTRO, what is the state of their funding conditions, what is the state of their profitability, what is their general situation. So, I wouldn’t extrapolate too much from this repayment pattern, saying that in a month’s time this figure of ユーロ250 billion would go down to ユーロ200 billion, or whatever. Second, I would say that there isn’t any stable relation between the figure, the threshold and the rates.』

ああだこうだと説明していますが、まあ事前にはどの程度の超過準備縮小でEONIA金利の上昇が起きるのかは良く判らん(2000億なのか1000億なのか判らんみたいな話ですな)という所で、以前言った2000億も本当にそうかはワカランぞなもしと。

『In any event, we would - as I said - stand ready to take appropriate action as needed. Obviously - I already said this several times - we have the fixed rate full allotment policy in place until at least July 2014 and for as long as needed.』

という文脈で「必要ならば適切な行動を取る」と発言していた訳でして、このヘッドラインだけは盛大に報道されていまして、ほうほう利下げの可能性を示唆ですかという印象を与えてくれた訳でして、それを前提にして今回の質疑応答を読むと割と淡々と普通の話をしているし、金融市場に関しても改善してますよという話をしていまして、はて何で利下げ示唆??と思ったのですが、良く良くこの辺を見てみると分かりますよね〜♪

つまりですな、ここでの「必要な場合に適切な処置を取る」というのは、LTROの返済が進み過ぎて超過準備が減少した結果EONIAレートが必要以上に跳ねた場合に「適切な処置を取る」というのがメインにあって、そらまあ利下げをしないと言ってる訳では無いので勿論利下げのような物も含まれるのでしょうけれども、メインで話をしているのは「超過準備減少に伴う意図せざる短期金融市場金利の上昇への備え」という事だと思うのですけれどもどうでしょうかね。

上記の最後の文章にもありますように、そもそも3か月LTROを来年の7月オファー分までフルアロットメントで行う(金利は期間中のMRO金利)ことになっているので、超過準備をうっかり減らし過ぎた場合でもLTROでその分カバーできるのでそんなにEONIAが急騰するとかいう話にはならないとは思うのですが、そうは言っても何か必要な事があった際にはイレギュラーにMROなりLTROなりを入れてきますとかそういう事にはなるかとゆー話だろうなあと思いました。


ということで一つの質疑で延々とネタにしてしまったら時間ががががですし、まあ会見そのものはさっき申し上げましたように割と淡々とした感じだった&景気認識なども淡々としていた(ただし結局海外頼みなのですがorz)という感じですので、虫干しネタはこんな所で。

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2013/09/17

○されにその前にこりはびっくりのサマーズ辞退

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MT7IFG6TTDS801.html
サマーズ氏が米FRB議長候補辞退、民主党上院議員ら強く反対
更新日時: 2013/09/17 03:51 JST

『9月16日(ブルームバーグ):ローレンス・サマーズ氏は米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長の候補を辞退すると表明した。債務上限問題やシリア問題で議会を相手に難しいかじ取りを迫られるオバマ政権を、民主党内の対立回避という形で支援した格好だ。元米財務長官でオバマ政権の国家経済会議(NEC)委員長も務めたサマーズ氏の辞退を受けて、大統領とアドバイザーらは対応を検討している。同氏のFRB議長指名について、何人かの民主党上院議員が反対のキャンペーンを繰り広げていた。』(上記URLより、以下同様)

どんだけ人望が無いんですか先生!という感じですが。

『ジェフ・マークリー(オレゴン州)、シェロッド・ブラウン(オハイオ州)両議員を含む民主党上院議員数名は、金融市場の規制に関するサマーズ氏の姿勢が緩過ぎるとして、指名反対を同党議員らに呼び掛けていた。』

ってのが理由だとすると金融緩和継続ヒャッハーと必ずしも喜んで良いのかというとこれがまた微妙で、金融市場規制でシバキアゲの刑が待っているのであれば量的緩和は続いても規制の方であちゃーになるので喜んで株を買っていて良いのかねえという気もするのでした。

ちなみに金曜はご案内のようにこういう記事が出て市場もやや反応していたのですが・・・・・

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1301K_T10C13A9MM0000/
FRB議長、サマーズ氏指名へ最終調整
副議長にブレイナード氏 2013/9/13 14:00 情報元 日本経済新聞 電子版

『【ワシントン=矢沢俊樹】オバマ米大統領は12日、来年1月に任期切れとなるバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の後任に、ローレンス・サマーズ元米財務長官(58)を指名する方向で最終調整に入った。副議長には女性のラエル・ブレイナード財務次官(国際担当)を起用する意向。』(上記URLより)

ということで、こちらの日経電子版の記事ですが、毎度の日経クオリティと違うのは今回署名記事で出ていた所で、まあ今回はそれなりに日経新聞渾身の報道だったと思われるので、逆に具体化する中であまりと言えばあまりの反対に下手したらこれでオバマ大統領の求心力が落ちるんじゃネーノ(シリアでも振り上げた拳を降ろしてますし)ということで辞退したという事なのかも知れませんね。

まーしかし重要かも知れないので再度繰り返しますと、別にサマーズがタカ派だから反対された訳では無い、という点をうっかりするとマズーなのではないかと存じます(単に「あのヤローは人間的にダメ」というのであれば政策インプリケーションは無いのだが^^)がね、うんうん。


○そういえばECB定例理事会ネタを忘れていましたので(汗)

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2013/html/is130905.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 5 September 2013

先々週のネタをうっかりスルーしておりましたすいませんすいません。

・質疑は金利の話よりも各国の話が多かったです

今回の質疑応答なのですが、フォワードガイダンスとかの質問も勿論あるのですが、今回については個別国に関する状況の質問とか、銀行監督の一元化に関する質問とかそっちの方が多くなっておりまして、まあ域内的にはその方が注目されているのね、というのが分かりましたです。

引用はしませんけど、具体的に質疑応答で出てきた国はオランダ、アイルランド、ギリシャ、スペイン(とドイツの選挙とシリア情勢)でございましたのでご参考までに。


・フォワードガイダンスは結局単なる目くらましに終わりそうな・・・・・・

フォワードガイダンスの改定はあるのかという質問がありまして・・・・・・

『Question: Was there any discussion today on the Governing Council about a more explicit version of your forward guidance? You seem to be dipping your toes into giving us a fuller account by talking earlier about various governors saying this and that. So, if you could answer the question that way that would be brilliant.(後半の質問割愛)』

そのお答え。

『Draghi:(後半の質問に対する部分割愛)But, on the first question, we have of course reflected on the nature of our forward guidance. And we have asked ourselves what the objectives are of forward guidance. Forward guidance contains an assessment by a central bank of its view of the future and contains information about its policy response for the future. I think that is the essence of forward guidance. It is not a change in our reaction function, but rather an explanation of our reaction function. We wanted to be clear. We do not want to change it.』

つーことで、フォワードガイダンスは「ECBのこれまでの政策反応関数についてより分かりやすく説明したもの」という言い方をしているぞなもし。

『There are two types of forward guidance: one is qualitative and the other one is quantitative, with precise state conditions. Ours is the first type.』

フォワードガイダンスは定量的な物と定性的なものがありますが我々のは定性的なものですとな。

『So, all in all, the Governing Council is fairly united - unanimous, actually - on the wish to maintain this type of forward guidance.』

つーことで数値を入れたパターンの「先行きの行動を縛る」タイプのフォワードガイダンスを実施する気はねえということですねわかります。

『I have previously mentioned the BIS paper which actually compares the results and levels of success of different types of forward guidance. As I have said before, the ECB does not score too badly. It scores very well on having controlled volatility and reduced the uncertainty within the corridor and it scores ok in controlling the levels of rates. But, as I have said, there is a continuous flow of news on rates. So, given our specific institutional set-up, the qualitative forward guidance that we have used is the most appropriate and you can easily see why a different type of forward guidance would create problems within our institutional set-up if we were to be willing to adopt a precise formulation, a quantitative formulation, which we are not.』

でまあああだこうだと説明してはいますが、結局の所「経済指標で縛る」形式のフォワードガイダンスは委員会のコンセンサスが得られないんでしょうなあという所で。


・OMTの質疑が中々面白かったので引用

『Question: My question is on OMTs. Just one year ago, you announced the details of these measures. What is interesting for me is why this measure is so effective without being activated. Other central banks - for example, the Bank of Japan and the Federal Reserve - have introduced similar programmes, but they have needed to be activated in order to be effective. So my question is; why is it that only in the euro area has such a programme been effective without being activated?』

何で抜かずの宝刀のままなのにOMTは効果を発揮しているのですかとはお洒落な質問。

『Draghi: Well, it’s very hard to answer this question without flattering oneself!』

のっけからドヤ顔風味満々でコーヒー吹いた。

『But I suspect that the design of this measure has made it both powerful and credible.』

ほほう。

『It’s powerful because it addresses a realistic objective, namely redenomination risk spreads - the spreads that are derived from redenomination risks. It’s credible because it is accompanied by conditionality.』

目的がリスクスプレッドの縮小にあったという点で現実的であり、また実施に際してコンディショナリティーを課したのが信頼されたのではないかとな。

『In our present situation (and in many others, I suspect), a commitment to buy an infinite amount of bonds in order to keep interest rates at a certain level is often not credible - besides being illegal in our present situation.』

単に「金利をこのレベルに抑える為に無限に買う」というだけの施策は実際問題として信頼に値するコミットメントにはならない場合もありますとは中々の視点。

『So, I think this combination of a realistic target, accompanied by what are in principle unlimited means (but are, in fact, limited by the market’s size) and by conditionality, has made this measure very effective without it needing to be activated. But conditionality is an important ingredient, because it says that once this measure is activated, the country that is on the receiving end will actually be undertaking a series of actions - budgetary consolidation or structural reforms, or both - that will have the effect of increasing the value of the bonds issued by that country, the value of the very bonds that the ECB is buying into it.』

つまり、コンディショナリティーを設けることによって、そのコンディショナリティーを満たすということは購入対象の国債の信頼性が高まるようになっていくという中でOMTが行われる、という形にすることによってOMTが政策ツールとして有効になる(OMTを実施しても肝心の対象国債の発行国がザル財政を実施していたら意味がない、ということですな)とな。

『So, the conditionality, if properly activated, produces an increase in the value - if you want to use that word - of the collateral that the country posts in exchange for ECB action. I think that’s one way to look at this. Thanks for asking!』

何かまあうまい事言われて誤魔化されている観もありますが、(じゃあそもそもコンディショナリティーを満たせないでしょという話になって売り仕掛けされたらどうしようも無いじゃんというツッコミとかですな)まあこういう説明をされると何となくそれらしく聞こえる辺りにドラギ先生のドヤ顔が浮かんでくるというものでありまする。

#まあ後何かありましたら追加します

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2013/09/10

○来週にTapering実施という方がコンセンサスに近いのですかね

http://jp.reuters.com/article/idJPTJE98802820130909
ロイター調査:今月米QE縮小との見方多数、縮小幅は100億ドル
2013年 09月 10日 03:02 JST

ということで雇用統計を受けても今月Taperingという方が多いみたいですな。


でまあこういうのはベンダーのヘッドライン詐欺の場合があるから本当は講演本文を読まないと何とも言えないのですが、誠に遺憾ながらそこまでの時間が無いので。

エバンスさん
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MSP84T6JTSEH01.html
シカゴ連銀総裁:緩和の縮小は物価目標達成へ強い自信が必要
更新日時: 2013/09/07 03:12 JST

というヘッドラインになっているけれども見通しとしては「景気見通しが今後も改善するので今年中にTapering開始するでしょう」という話みたいで。


ウィリアムスさん
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MSV7206TTDT501.html
サンフランシスコ連銀総裁、金融政策は資産バブル促す可能性
更新日時: 2013/09/10 02:25 JST

アセットバブルとなという所ですが、まあ方向性として雇用が悪化している訳では無く、さらにQEの規模が拡大していく事によって出口政策の困難性が高まったりするような、まあよーするに「これ以上のQE拡大の効果と副作用を考えた場合に副作用が効果を上回るのではないか」ってな話になっているのであればTapering開始というのは分かりやすいという事になります。

ただまあ昨日も申し上げておりますように、とりあえず「労働市場の顕著な改善」というのをQE政策の拡大停止の判断材料にしているので話がヤヤコシヤとなっている訳で、もし9月にTapering実施するなら「労働市場の改善は継続している」に加えて「これ以上のQE拡大の効果と副作用を考えた場合」というのを入れた方が本当はスッキリするのですが、ただまあこの場合の問題点として「次に何かあった時にもう効かないと言ってしまったのでQEが使えなくなる」という禿しく残念な事になるので、まあ難しいのかもしれませんね。

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2013/09/06

○BOEは現状維持だが「盛り芸」が登場しております(^^)

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2013/009.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £375 billion

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee at its meeting on 4 September voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion.』

金利、資産買入規模共に据え置きです。

『The Committee reached its decisions in the context of the monetary policy forward guidance announced alongside the publication of the August 2013 Inflation Report.』

先般のインフレレポート公表時に示したフォワードガイダンスに沿った決定ですよと、言われもしないのにフォワードガイダンスの話を出しているのもチャーミングですが・・・・・・・

『Also in the context of that guidance, the Committee agreed to reinvest the £1.9 billion of cash flows associated with the redemption of the September 2013 gilt held in the Asset Purchase Facility.』

償還再投資部分に関しては従来から償還分を再投資しますよという説明をしているのだから、一々こんな事を書く必要は1ミリも無いのですけれども、わざわざ「償還分の19億ポンド分については債券購入を実施します」(キリッ)というのが「盛り芸」彷彿という事で、BOEも蟹総裁になって芸風にハッタリ成分が高まって来ましたなあとニヤニヤしながらここの文言を拝読する次第でありました。

『The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 18 September.』

だそうです。


○ECBまで読んでる時間は無いので週末の宿題orz

http://www.ecb.europa.eu/press/pr/date/2013/html/pr130905.en.html
PRESS RELEASE
5 September 2013 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.50%, 1.00% and 0.00% respectively.』

MRO金利、貸出ファシリティ、預金ファシリティ金利ともに据え置き。

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

で、プレコンのQ&A付きが既に公表されているのですが、さすがにここまで読んでいる暇はないのでありましたとさorzorz

http://www.ecb.europa.eu/press/pressconf/2013/html/is130905.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Frankfurt am Main, 5 September 2013

今回はドラギさんだけで対応したようですな。冒頭説明は今回も何か割とサックリ味のような感じがしますが超斜め読みだけしかしていないので詳しくは来週で勘弁。

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2013/09/03

○BOEネタをやろうと思ったら時間がねえorzorz

こんなんがありましてですな。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/speeches/2013/675.aspx
Mark Carney: Speech and Press Conference, held at the East Midlands Conference Centre

こいつなんですが、何が面白いと申しまして、講演原稿と記者会見がある上にですね・・・・・・・

講演原稿
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2013/speech675.pdf
Crossing the threshold to recovery
Speech given by
Mark Carney, Governor of the Bank of England

記者会見一問一答
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2013/conf280813.pdf

あたしゃ初めてこういうパターンを見たのですが、今回は「講演のスピーチ文字起こしと会場での質疑応答」というのが公表されているんですな。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/speeches/2013/speech675trans.pdf
Mark Carney, Governor - Speech
28th August 2013

ちなみに14ページ(表紙はページは打ってないけど本文の最初が2ページ目としてページを打っているので本文ページ=ファイルのページです)から質疑応答ですが・・・・・・・・

『Alastair Cunningham: So as Governor Carney said we've got time for a little bit of a question and answer session, and just in terms of the logistics about how we'd like this to work, if you can raise your hand and attract the attention of one of the members of the team with a little paddle like that. And then once they arrive at your table I'll call out the number and if you could just stand up, take the roving mic and then everyone will be able to hear the question that you're going to be asking.』

『Mark Carney: And if you could - name and home address, if you can give that ・・・』

『Laughter』

『Alastair Cunningham: Oh name and home address as well apparently.』

『Mark Carney: We've a few of our security people here today.』

とかありますので、ガチでTranscriptですかそうですかという所ですな。

でですな、時間が無いので続きは後日なのですが、この中の質疑応答(講演でもそうなのですが)の冒頭部分でカーニー総裁は「インフレ目標遵守が重要」というのを思いっきり強調しているのがほほうという所だったりするのよ。

つまりですな、最初の質問でスレッショルドの位置づけとかのツッコミがあるのですが、それに対する答えとしてカーニーさんこういう話をば。

『Mark Carney: Yeah, well let me say one word of context and I'll answer the questions. I mean the core responsibility of the Bank is to achieve the 2% inflation target, and obviously we're starting from a position where output is very weak and inflation is above target. And the task for the Monetary Policy Committee is to chart the right path to get inflation down while we're supporting output.』

ということで、色々と新たしい機軸が出そうな話を就任前はしていたのですが、結局の所スレッショルドは導入したもののインフレ目標2%に関しては「コアの責務」というような言い方をして更に強調するという流れになっているのですな。

『And we're using forward guidance as a tool, with other things that the Bank's doing in order to achieve those goals. But we're also using it as a tool to provide as much clarity to citizens and business people about the expected path of policy. So the answer on inflation is a little more than two years, so the third quarter of 2015, inflation - bringing it down to that 2% target.(以下割愛)』

つーことで、何かフォワードガイダンスが「今は経済が強い訳では無いので物価目標2%より高いけど緩和政策継続しますので、物価水準が低下するまで少々お待ちいただけますでしょうか」というエクスキューズのように使われているという位置づけになってしまいまして、これはこれで何と申しますか米国のフォワードガイダンスや日本のかつての時間軸政策とはまた一味違った話になっていますな、というか政策ロジック混乱してるなあ、というような話が講演見ると何となくそんな気がしますという事で。

#すいませんただの雑談モードで申し訳なし

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2013/08/28

○そういえばFOMC議事要旨ネタでうっかりスルーしていたのがあった話

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20130731.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20130731.pdf

例によって7月FOMC議事要旨なのですが、冒頭部分にオモシロ記述があるのをネタにするのをうっかりしておりましたので投下。PDFだと2ページ目になりますが、まあ要するに最初の方に延々と書いてある出席者リストの次の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』というバランスシート政策の運営状況に関する報告部分でして、普段は報告をさらっと書いてある(為替介入の有無も報告がある、まあずっと無しだけど)のですが、その次に妙に長いパラグラフがあるのです。

『In support of the Committee's longer-run planning for improvements in the implementation of monetary policy, the Desk report also included a briefing on the potential for establishing a fixed-rate, full-allotment overnight reverse repurchase agreement facility as an additional tool for managing money market interest rates.』

こんな所でしらっと「固定金利フルアロットメント型のリバースレポファシリティーを導入する件に関して」という検討報告をしているのですな。

『The presentation suggested that such a facility would allow the Committee to offer an overnight, risk-free instrument directly to a relatively wide range of market participants, perhaps complementing the payment of interest on excess reserves held by banks and thereby improving the Committee's ability to keep short-term market rates at levels that it deems appropriate to achieve its macroeconomic objectives.』

どうもオーバーナイト方式で実施するようで、つまりは超過準備付利と同じような話なのですが、「relatively wide range of market participants」とありますように、超過準備付利の外側にいる市場参加者に対してこのファシリティーを提供することによって、短期金融市場において量的緩和状態になっている中でも市場金利の下限を画する事ができるのではないか、というお話ですな。

と書くとナンノコッチャですけれども、米国の場合はいわゆるGSMとかそういう手の人たちの短期金融市場におけるウェイトが高いので、超過準備付利を行っていてもそこが必ずしも短期市場における翌日物金利(など)の下限にならないという状態が延々と続いているという状態なので、このままFEDのバランスシートが大きい=短期市場での資金余剰というか量的緩和状態が続く中でFF誘導目標を正常化しようとした場合に、本当に正常化できるのかという問題が当然ながら生じますので、その対策として「超過準備付利対象じゃない人にも広くFED様が翌日物を借りてあげますよ付利しまっせウェーハッハッハしかも何ぼでも持ってきんさい」というのを打ち込む事によって、(事務手間さえ問題無ければの話になりそうですが)FEDに突っ込んだ方が当然リスクフリーなので皆さんそこに短期余剰資金を突っ込むので、実効FFレートがそれよりも高くなるのではないか、とまあそういう話なのですな。

・・・・・・・・ってそれ正常化に向けた新ツール導入の話以外の何物でも無いのですが、微妙に皆さんがスルーしそうな部分にこの話を突っ込んでいる辺りが何とも味わいのある所ではございます。

いやね、まあ議事要旨の構成的にはここに入るブツではあるのですが、普段ですとこの話に関しては別途小見出しを用意しているのが多くの場合のパターンになっている(「短期市場金利の円滑な誘導に関する新たなツールの検討結果について」みたいな名前の小見出しが入って然るべき)のですが、しらっと小見出し抜きでこの話を入れているというのが実にこうお洒落というかFEDも色々とオモシロ文学を駆使するようになっているなあというのを感じました事よということで。

『The staff also identified several key issues that would require consideration in the design of such a facility, including the choice of the appropriate facility interest rate and possible additions to the range of eligible counterparties.』

なお、上記の「オーバーナイトフルアロットメント方式でどちらの旦那様もドンドン持ってきなはれ」ファシリティー以外の手段についても研究中の模様。

『In general, meeting participants indicated that they thought such a facility could prove helpful; they asked the staff to undertake further work to examine how it might operate and how it might affect short-term funding markets.』

FOMC参加者の皆様(日本語だと微妙にここの表現テキトーになってしまいますが、FED文学によりますとparticipantsというのは全員を指していてmembersというのは投票権のある委員という事になるので、いちおうあたしゃ「参加者」「委員」とか書き分けている積りですが、勢いでてきとうになっている場合がございますのですいませんすいません)におかれましてもこれらの手段に興味をお持ちになった模様です、って当たり前ですけど。

『A number of them emphasized that their interest in having the staff conduct additional research reflected an ongoing effort to improve the technical execution of policy and did not signal any change in the Committee's views about policy going forward.』

技術的な検討をもっと進めて頂きたい(そら正常化のツールとして使えそうですから)という見解が参加者から出される一方で、最後に「これらのツールの検討は今後のFOMCの金融政策の方向性に対してなんらの示唆を与えるものでは無い」という見解が示されていまして、まあ当然そういうことになるとは思いますし、だからこそ今回この件に関する表現が目立たないような箇所に書かれている(頭から読めば一発で気が付きますが、インスタント読みをするときには基本後ろから読むので前の方は最初に読まない人の方が多いんじゃないかなと思います)んですねわかりますという所で実にこう味わいの深いものを感じるのでありました(^^)。

つーかまあこういうツール検討して「金融政策の方向性を何ら示唆するものでは無い」とかはいはいワロスワロスという所ではあるのですけどね。

#つーことでうっかり八兵衛な事に関しまして伏してお詫び申し上げます

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2013/08/27

○BOEネタでございますが(汗)スレッショルドの設定で意見が割れたようですな

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2013/mpc1308.pdf

例のスレッショルド決定の7月会合ミニッツネタの続きという趣味コーナーだが『The immediate policy decision』の後半パート。第36パラグラフからは「どのような数値を設定するのか」という部分になりますが・・・・・・・・・

『36 Price stability remained the Committee’s primary objective, and in that light it discussed the application of two price stability knockouts which, if breached, would mean that the policy guidance would cease to hold. 』

結局ここのところが今回のBOEのフォワードガイダンスをややこしくしているのですが、インフレターゲットの枠組みを堅持しながらフォワードガイダンスを導入、というのがそもそも政策技術論として矛盾した話であり、「総合判断」あるいは「定性判断」成分を極力排除して「経済指標などの定量判断」あるいは「期間確定のコミット」をすることによって将来の金融政策運営の自由度を縛るというのがフォワードガイダンスの本旨であり、BOEのってどう見てもそうなっていないからややこしくなるのよね。

『The first knockout would apply when the Committee judged it more likely than not that inflation 18 to 24 months ahead would be half a percentage point or more above the 2% target. The second knockout would apply if there was evidence that medium-term inflation expectations were no longer sufficiently well anchored. The Committee had also discussed the desirability of adding a financial stability knockout: the Financial Policy Committee had agreed to alert the Committee publicly should it judge that the stance of monetary policy posed a significant threat to financial stability that could not be contained by the substantial mitigating policy actions available to the regulatory authorities.』

でまあ例の「18−24か月先の物価見通しが2.5%を超えた場合」「中期的なインフレ期待がアンカーされなくなったと判断された場合」「FPCが緩和的な金融政策が金融安定化を阻害すると判断した場合」というノックアウト条項を設定したという事ですが、最初の数値は既にアクチュアルの物価水準が3%近くに達している時点でナンジャソラでありますし、中期的なインフレ期待云々はどうみても定性的判断です本当にありがとうございましたという話ですがな。

『37 The Committee also agreed that, in the event that the unemployment threshold were reached, or if any of the knockouts were breached, there should be no assumption of an immediate, automatic change to its policy stance. Rather, the Committee would assess the prevailing economic conditions, including wider measures of slack and inflationary pressures, before deciding the appropriate stance for monetary policy.』

おまけにスレッショルドに関しても「達したからと言って利上げする訳ではありません」という話で、まあそれはそれでハト感を出したいからそういう話をしているのですが、結局そうなるとこのスレッショルドは何なんですかという事になると思うのですけどねえ。

『38 The Committee agreed that it was of paramount importance for the credibility of the monetary policy framework that its commitment to meeting the 2% inflation target in the medium term was beyond doubt. It was critical that the design of the guidance strategy did not put this credibility at risk.』

いやなんかもうねという感じですが、金融政策のフレームワークとして2%のインフレ目標というコミットメントについての信頼性を維持する事は「物凄い勢いで重要」(paramountっての中々ミニッツでは出てこないので^^)という話をしている訳で・・・・・・・

『One of the cornerstones of the policy framework was the individual accountability of members, and the Committee agreed that it would be important that individual members continued to form their own judgements about the outlook for inflation and whether the price stability knockouts had been breached.』

「個別メンバーは各人のビューでスレッショルドやノックアウトについて判断することが重要」ってのが出てきて微妙に唐突感のある文なのですが、前後を読み直しているうちに何となくこういうことでは無いかなと思ったのは、要するにこのスレッショルドやノックアウトに関して「経済数値を見て自動判断するのではなく、あくまでも総合判断の一環として行うものである」ということを言いたい、つまりフォワードガイダンスと言っても金融政策の先行きに対するコミットメントというよりも、単に「総合判断において重視する数値を具体的な水準と共に示しました」というだけの話ですかそうですかという事になるのかなと思いましたが同様の趣味人の方のご見解を伺いたいものですm(__)m


『In the discussion of the time horizon for the first inflation knockout there had been a range of views, and some members remained concerned that the longer the time horizon relative to the Committee’s usual policy horizon of around two years, the greater the risk that its commitment to returning inflation to the target over the medium term might be brought into doubt.』

物価のスレッショルドに関して、そのタイムホライズンを長くすると物価目標2%との整合性という問題が生じて(物価目標で想定しているタイムホライズンと一緒にしたらそもそもが2%やる気あるのかという話になるから)インフレ期待のアンカーに対するリスクになりませんかというのが数名(some)から指摘されてますな。


『39 Most members of the Committee judged that a horizon of 18 to 24 months struck an appropriate balance between not bringing inflation back to the target so quickly as to threaten the recovery, while demonstrating the Committee’s determination to bring inflation back to the target over the medium term. One member, while accepting the principles of forward guidance, saw a particularly compelling need to do more to manage the risk that forward guidance could lead to an increase in medium-term inflation expectations, by setting an even shorter time horizon; that would make clear that the forward guidance was fully compatible with the Committee’s commitment to meeting the 2% inflation target in the medium term.』

まあこのフォワードガイダンス出す前からの話ではあるのですが、「現在の経済状況を踏まえると2%の物価目標を中期的に達成するという「中期的」の期間は通常よりも長くなって然るべき」というスタンスでBOEは臨んでいる訳ですが、フォワードガイダンスの物価スレッショルドの見通し期間を18-24か月としてもインフレ期待のアンカーに問題は無いという見解になっているのですが、Weale(後で反対票を投じているので名前が出てくる)委員は「18−24か月の見通しが2.5%を超えない」というガイダンスの物価スレッショルドはタイムホライズン的に問題(もっと短くすべき)という話になっています。


結局の所、従来のインフレ目標堅持という話と、それに加えてそもそも英国の場合は実際の物価水準が恒常的にと言っても良い位に目標から上方乖離しているという状況がある中で、いわゆるタイムコミットメントに近いようなフォワードガイダンスを導入するというのは如何にも話に無理があって、結局の所無理くり最大公約数をとってフォワードガイダンスでございとしたのが今回のガイダンスである、という状況だったのではないかと思われますが、まあ実際にどうなのかは本人たちに聞いてみないとワカランですけどね。


#ということで趣味のコーナーでした^^;

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2013/08/23

○FOMC議事要旨の続きである(汗)

既に本職の方々がレポート出していて、よーするに結論は「Taperingに関する追加情報がねえじゃねーかコノヤロー」ということのようですが、確認のために続きを引用なのだ。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20130731.htm

『Committee Policy Action』の所を引用するだよ。

・景気認識の話はまあ声明文で示されたものをなぞるような感じ

『Committee members viewed the information received over the intermeeting period as suggesting that economic activity expanded at a modest pace during the first half of the year.』

とまあここはサラッと流されていまして、実際問題としては(引用してませんが)前の部分での景気認識に対する議論を見ないといかんのですが、そちらを斜め読みした印象では景気に対してはまあ強気の認識を示しているように見えましたけどね。

で、ここの表現って(この先もそうですが)声明文に示されていて、当初出た時に「モデレートがモデストになったこれは下方修正ヒャッハー」という見解も散見されましたけれども、まーどー見てもそうじゃなかったですよねと存じますです、はい。


『Labor market conditions showed further improvement in recent months, on balance, but the unemployment rate remained elevated. Household spending and business fixed investment advanced, and the housing sector was strengthening, but mortgage rates had risen somewhat and fiscal policy was restraining economic growth. The Committee expected that, with appropriate policy accommodation, economic growth would pick up from its recent pace, resulting in a gradual decline in the unemployment rate toward levels consistent with the Committee's dual mandate.』

『With economic activity and employment continuing to grow despite tighter fiscal policy, and with global financial conditions less strained overall, members generally continued to see the downside risks to the outlook for the economy and the labor market as having diminished since last fall. Inflation was running below the Committee's longer-run objective, partly reflecting transitory influences, but longer-run inflation expectations were stable, and the Committee anticipated that inflation would move back toward its 2 percent objective over the medium term. Members recognized, however, that inflation persistently below the Committee's 2 percent objective could pose risks to economic performance. 』

まあこの辺は声明文でも示された認識でして、ここまでは前座。


・先行きの金融政策については確かに金融政策予想に対する追加情報に乏しいですな

『In their discussion of monetary policy for the period ahead, members judged that a highly accommodative stance of monetary policy was warranted in order to foster a stronger economic recovery and sustained improvement in labor market conditions in a context of price stability.』

ということで先行きの金融政策に関する議論が始まる。

『In considering the likely path for the Committee's asset purchases, members discussed the degree of improvement in the labor market outlook since the purchase program began last fall. 』

オープンエンドQEを開始したのが昨年の秋なので、そこからの改善がどうよという話をするというのはまあその通りではあるのですが、そーゆーロジックで来ると、比較対象があまりにも昔なのでどの程度の改善を評価するのかというのが感覚的に掴みにくくて、市場の方としてはTaperingを判断する反応係数が判らんということになりそうな気がします。だったらもっと定量的な数値をとなるでしょうな。

『The unemployment rate had declined considerably since then, and recent gains in payroll employment had been solid. However, other measures of labor utilization--including the labor force participation rate and the numbers of discouraged workers and those working part time for economic reasons--suggested more modest improvement, and other indicators of labor demand, such as rates of hiring and quits, remained low.』

でまあ金融政策は「総合判断」の世界だからどうしてもこういう定性的な言い方での「改善状況の判断」となるのはまあシャーナイのですけれども、その一方で金利ガイダンスにおけるスレッショルドを設定しているというのが現在のFEDでありまする。

勿論このスレッショルドとオープンエンドQEを整理した今年1月のFOMC声明文で示されているように、当初から資産買入政策の運営に関しては「労働市場の顕著な改善」という表現を継続の目安としておいているので、そういう意味ではこのような定性的な話をするのは当初のお約束通りの話ではあるのですが、実際にQE縮小検討みたいな状態になってみると、定性的な評価でどうのこうのとやると、金利ガイダンスに関する部分でも市場の思惑がぶれて、予想短期金利パスに影響を与えているという結果になっている訳でして、運営上あまり面白くない(傍から見ていると面白いのだが^^)展開になっちゃいますよねという感じがします。

つまりですな、Tapering如きでこの状況な訳ですけれども、実際に利上げ云々のスレッショルドが見えて来た段階になると、恐らく市場の予想短期金利パスが跳ねて、それに対してFEDが定性的な話を色々とするんじゃネーノというのが妄想されるのですけれども、そうなった場合に益々市場がワケワカランとなって暴れモードになり、コミュニケーション的にあちゃーな展開になりゃせんかとそっちの方が気になってくる今日この頃なのでありました。


・・・・・・すいません話が逸れました。

『While a range of views were expressed regarding the cumulative improvement in the labor market since last fall, almost all Committee members agreed that a change in the purchase program was not yet appropriate.』

ここの所をヘッドラインにしているニュースワイヤーがありましたが、7月で何もしなかったし、反対が1名なのだから「殆ど全ての参加者が資産買入政策の変更は現状では不適切と合意」って当たり前の話。

『However, in the view of the one member who dissented from the policy statement, the improvement in the labor market was an important reason for calling for a more explicit statement from the Committee that asset purchases would be reduced in the near future.』

反対したジョージおばちゃんによりますと、労働市場の改善状況は顕著なので近い将来に資産買入を減らすというより明確な表現を声明文に突っ込めやゴルァとの由。

『A few members emphasized the importance of being patient and evaluating additional information on the economy before deciding on any changes to the pace of asset purchases.』

『At the same time, a few others pointed to the contingent plan that had been articulated on behalf of the Committee the previous month, and suggested that it might soon be time to slow somewhat the pace of purchases as outlined in that plan.』

どっちも数名(A fewとa few others)ですが、資産買入のペース縮小についてはより多くの経済データを見極めてからという慎重な姿勢であるべき、というのと、前回示された資産買入の縮小が間もなく必要になるという認識の人がいると。

『At the conclusion of its discussion, the Committee decided to continue adding policy accommodation by purchasing additional MBS at a pace of $40 billion per month and longer-term Treasury securities at a pace of $45 billion per month and to maintain its existing reinvestment policies. In addition, the Committee reaffirmed its intention to keep the target federal funds rate at 0 to 1/4 percent and retained its forward guidance that it anticipates that this exceptionally low range for the federal funds rate will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored.』

という議論を経て政策変更なしになった、ということですが、これペース縮小慎重派と積極派がそれぞれ数名(a fewだから3名以上のそんなに多くない人数)いるのは分かるのですが、残りの軽く見積もっても10名以上はいる筈の中間派(?)の皆さんがどういう話をしているのかがまるで見えないような書き方になっているのが少々アレであります。

つまり、議論がカオスになって要旨に載せるのもアレと判断されたのか、それともマジで中間派が置物になっていたのでこの程度の話になっているのかとか、話としてはかなーり重要で市場の注目が高いのは分かり切っている資産買入ペースに関する議論のこの部分の記述があっさり味(パラグラフの文章自体は長いのですけれども、後半部分で増量して稼いでいて金融政策に関するインプリケーションという意味での情報が少ないという意味である)になっているのが奥が深いというか何というかでありまする。



・声明文のワーディング:物価警戒文言と「緩和的なスタンスが適切」の表現強化とな

『Members also discussed the wording of the policy statement to be issued following the meeting.』

声明文のワーディングに関して議論とな。

『In addition to updating its description of the state of the economy, the Committee decided to underline its concern about recent shortfalls of inflation from its longer-run goal by including in the statement an indication that it recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, while also noting that it continues to anticipate that inflation will move back toward its objective over the medium term.』

足元のインフレの低下傾向に関する警戒と、そうは言いましても中期的にはインフレは目標に戻りますよんという見通しについての表現を明確化すべきであるというのは声明文に反映されていましたな。

『The Committee also considered whether to add more information concerning the contingent outlook for asset purchases to the policy statement, but judged that doing so might prompt an unwarranted shift in market expectations regarding asset purchases.』

これは昨日引用した部分にもありましたが、資産買入政策に関する追加情報を声明文に記載するという議論もあったようですが、さらに市場を混乱させる結果になる可能性があるということで断念したのはまあ正解でしょ。

『The Committee decided to indicate in the statement that it "reaffirmed its view"--rather than simply "expects"--that a highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate for a considerable time after the asset purchase program ends and the economic recovery strengthens.』

これも声明文に反映されていましたが、ガイダンス文言に有る中の「高度に緩和的な金融緩和スタンスは資産買入プログラムが終了し、経済の回復が強まった後でも相当の期間適切である」という事に対しての表現を「expects」から「reaffirmed its view」としたのは、これによりますと「資産買入プログラムが終了しても金融政策は緩和的」というのをより強く言いたかった、ということのようですな。


ということでミニッツネタでありました。

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2013/08/22

お題「FOMC議事要旨である」

高校野球の決勝となるとそろそろ夏が終わりかという話になるのだが今年は(−−;

○7月FOMC議事要旨である

寝起きで斜め読みなのでポイント外してたらゴミンナサイ。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20130731.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20130731.pdf

・足元までの金融市場動向に関する委員の見解に少々意外感があるという件

早読みの基本なので『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』をケツからざくざく読んだのだが金融市場に関する話の部分からまずは読んでみるざます。ちなみに何故そこから読むかと言うとこのパラグラフがクソ長いので、クソ長いということは何かあるに違いありません(と言って空振りの場合もあるので要注意^^)。

『Both domestic and foreign asset markets were volatile at times during the intermeeting period, reacting to policy communications and data releases.』

金融市場が世界的にボラタイルになりましたぞなと。

『In discussing the increases in U.S. longer-term interest rates that occurred in the wake of the June FOMC meeting and the associated press conference, meeting participants pointed to heightened financial market uncertainty about the path of monetary policy and a shift of market expectations toward less policy accommodation.』

さいですな。

『A few participants suggested that this shift occurred in part because Committee participants' economic projections, released following the June meeting, generally showed a somewhat more favorable outlook than those of private forecasters, or because the June policy statement and press conference were seen as indicating relatively little concern about inflation readings, which had been low and declining.』

要因としてはFOMCの強めの経済見通しと、6月声明文やプレコンでインフレ低下に対する警戒感があまり強く出ていなかったと見なされたことなどが挙げられるでしょうと。

『Moreover, investors may have perceived that Committee communications about the possibility of slowing the pace of asset purchases also implied a higher probability of an earlier firming of the federal funds rate.』

そしてTaperingトークの影響についてで、Taperingトークが利上げの前倒しも連想させるようになっているという認識はあるのだな。

『Subsequent Federal Reserve communications, which emphasized that decisions about the two policy tools were distinct and underscored that a highly accommodative stance of monetary policy would remain appropriate for a considerable period after purchases are completed, were seen as having helped clarify the Committee's policy strategy.』

『A number of participants mentioned that, by the end of the intermeeting period, market expectations of the future course of monetary policy, both with regard to asset purchases and with regard to the path of the federal funds rate, appeared well aligned with their own expectations.』

利上げとQEは別という理屈で金融政策スタンスの説明を明確化しているものの、委員からは金融市場の反応を見るとQE縮小に加えてFF金利パスの予想にも影響を与えておりますなあと。

『Nonetheless, some participants felt that, as a result of recent financial market developments, overall financial market conditions had tightened significantly, importantly reflecting larger term premiums, and they expressed concern that the higher level of longer-term interest rates could be a significant factor holding back spending and economic growth.』

キタコレという所ですが、複数名(some)の委員は足元の金融市場動向、特にタームプレミアムの拡大によって「顕著に」金融環境がタイト化しており、長期金利の上昇は消費や経済成長の抑制に「顕著な」要因になる事を懸念していると来ましたよ!

『Several others, however, judged that the rise in rates was likely to exert relatively little restraint, or that the increase in equity prices and easing in bank lending standards would largely offset the effects of the rise in longer-term interest rates.』

しかしながら他の複数名(Several others)は長期金利の上昇の悪影響は相対的に低く、株価の上昇や銀行の貸出態度の緩和化による効果で悪影響は相殺されるでしょうと指摘していて、意外に「上がったっていいじゃないかきんりだもの」という人が居るのにはほほーという感じではございます。もっと「金利上昇はケシカラン」というのが前面に出てくるのかと思いきやという所ですな、うんうん。

『Some participants also stated that financial developments during the intermeeting period might have helped put the financial system on a more sustainable footing, insofar as those developments were associated with an unwinding of unsustainable speculative positions or an increase in term premiums from extraordinarily low levels.』

更に複数名(Some)の委員はこの間の金融市場動向について、「金融システムをより持続可能な立場に置く事を助ける」という指摘をしているとか、スタイン理事みたいな事を言ってるのが複数名いるっちゅう事かいなという所でして、insofar以降に書いてありますように、要は「いつまでもあると思うなQE拡大」によってガス抜きが出来て、利回り追求の行き過ぎに対する抑制効果があったとかいう指摘をしていて、この「直近の金融市場」に関する評価部分でタカっぽい人がそこそこいるじゃネーカというのと、その辺に関する記述がこんな感じで続いているのには若干の意外感を受けました。


・6月以降のコミュニケーションは概ね満足との認識な件

『In looking ahead, meeting participants commented on several considerations pertaining to the course of monetary policy.』

キタコレ。

『First, almost all participants confirmed that they were broadly comfortable with the characterization of the contingent outlook for asset purchases that was presented in the June postmeeting press conference and in the July monetary policy testimony.』

ほとんどすべて(almost all)の委員は6月FOMC後と7月の議会証言における逆さ絵先生による資産買入の先行きに見通しに関する表現に概ね満足しているとな。

『Under that outlook, if economic conditions improved broadly as expected, the Committee would moderate the pace of its securities purchases later this year. And if economic conditions continued to develop broadly as anticipated, the Committee would reduce the pace of purchases in measured steps and conclude the purchase program around the middle of 2014. At that point, if the economy evolved along the lines anticipated, the recovery would have gained further momentum, unemployment would be in the vicinity of 7 percent, and inflation would be moving toward the Committee's 2 percent objective.』

ここは耳タコの話で新たな表現はございませんですな。

『While participants viewed the future path of purchases as contingent on economic and financial developments, one participant indicated discomfort with the contingent plan on the grounds that the references to specific dates could be misinterpreted by the public as suggesting that the purchase program would be wound down on a more-or-less preset schedule rather than in a manner dependent on the state of the economy.』

今後の金融政策パスは先行きの経済金融情勢によって決定されるものであるということから、1名の委員は議長の示したパスについて特定の日程が示されている事に対して不快感を示していて、日程を示すのは市場などを誤解させるリスクがあるという点を指摘しておりますな。

『Generally, however, participants were satisfied that investors had come to understand the data-dependent nature of the Committee's thinking about asset purchases.』

ただ他の人たちは市場が資産買入の今後の動向に関してデータディペンデントであるという理解が市場に広がってきている事に対して満足しているとな。

『A few participants, while comfortable with the plan, stressed the need to avoid putting too much emphasis on the 7 percent value for the unemployment rate, which they saw only as illustrative of conditions that could obtain at the time when the asset purchases are completed. 』

数名(A few)の委員はプランについては満足しているものの、7%の数値に対して過度な注目が集まらないようにする必要があると指摘しています。


・資産買入政策に関連してステートメントに追加記述を入れることを検討していたとなという件

んでその次。

『Second, participants considered whether it would be desirable to include in the Committee's policy statement additional information regarding the Committee's contingent outlook for asset purchases.』

資産買入政策運営に関してステートメントに追加の記載をすべきかどうかという議論をしたそうな。

『Most participants saw the provision of such information, which would reaffirm the contingent outlook presented following the June meeting, as potentially useful; however, many also saw possible difficulties, such as the challenge of conveying the desired information succinctly and with adequate nuance, and the associated risk of again raising uncertainty about the Committee's policy intentions.』

殆どの委員はその記載の有効性は認めたものの、実際にどのような記述をするかという事になると結構難しく、下手な書き方をすると誤解を招くリスクがありますよねという見解。

『A few participants saw other forms of communication as better suited for this purpose. Several participants favored including such additional information in the policy statement to be released following the current meeting; several others indicated that providing such information would be most useful when the time came for the Committee to begin reducing the pace of its securities purchases, reasoning that earlier inclusion might trigger an unintended tightening of financial conditions.』

数名(A few)は声明文以外の別の方法での説明(プレコンなどでしょうか)が適切との認識を示す一方で、数名(Several)の委員はこの回の声明文での追加記述が適切との見解を示していたようですな。でまあ他の数名(several others)は資産買入拡大のペースを縮小する時に資産買入政策運営に関する追加情報を示すことによって、市場の過度な早期引き締め懸念の抑制に寄与するのではないかとの見解を示しておりますな。

ということで、最後の所はもしかすると「声明文で詳しく書けばプレコン無しでも行けるんじゃないか」って考えを元にしている(つまり10月Taperingを念頭に置いている)のかも知れないですなとまで読むのは読み過ぎかもしれませんが、まあちょっと引っ掛かったのでメモメモ。


・フォワードガイダンス関連の議論がどう見てもカオスです本当にありがとうございましたな件

でこの部分の最終パラグラフはフォワードガイダンスの強化??について。

『Finally, the potential for clarifying or strengthening the Committee's forward guidance for the federal funds rate was discussed.』

ほほう。

『In general, there was support for maintaining the current numerical thresholds in the forward guidance.』

全般的には現状維持でエエンチャウノという話。

『A few participants expressed concern that a decision to lower the unemployment threshold could potentially lead the public to view the unemployment threshold as a policy variable that could not only be moved down but also up, thereby calling into question the credibility of the thresholds and undermining their effectiveness.』

そらそうよという感じだが、数名(A few)の委員はスレッショルドの失業率数値を下げるというのは如何なものかという指摘を。

『Nonetheless, several participants were willing to contemplate lowering the unemployment threshold if additional accommodation were to become necessary or if the Committee wanted to adjust the mix of policy tools used to provide the appropriate level of accommodation.』

一方で数名(several)の委員はもし仮に(仮定法過去)追加緩和が必要になった時や、適切な緩和のレベルを調整する為に複数政策手段のセットを使う際に必要であればにスレッショルドの失業率数値を下げることが適切であるとの認識をしめしております。

ただまあ追加緩和が必要な時ってそらスレッショルドが遠くなっている時だからわざわざ下げる必要あるのかいなという気はだいぶするんですけどね・・・・・・・・

『A number of participants also remarked on the possible usefulness of providing additional information on the Committee's intentions regarding adjustments to the federal funds rate after the 6-1/2 percent unemployment rate threshold was reached, in order to strengthen or clarify the Committee's forward guidance.』

数名(A number of)の委員はスレッショルドに到達した後のFF金利レートパスについての追加上方を示すことによってフォワードガイダンスを明確化するのはどうよという見解とな。

『One participant suggested that the Committee could announce an additional, lower set of thresholds for inflation and unemployment; another indicated that the Committee could provide guidance stating that it would not raise its target for the federal funds rate if the inflation rate was expected to run below a given level at a specific horizon.』

もはやカオスなのですが、インフレと失業の数値を両方下げろというのが1名いたり、他の1名はインフレが一定期間特定レベルを上回らないと予想される場合に金利を上げないと明確化する特定レベルを明示すべきとかもうコミュニケーションの話が凄まじくカオス。

『The latter enhancement to the forward guidance might be seen as reinforcing the message that the Committee was willing to defend its longer-term inflation goal from below as well as from above.』

でさっきの後者の人はこの方法によって、物価目標に対する明確な姿勢を打ち出すことが出来るという説明もしておりますな。


つーことで引用してみましたが、何かもうこの部分とか意見がバラバラにも程があって、こりゃ逆さ絵先生てーへんですなと思いますが、まあそれまでが「建設的な曖昧さ」でやってたツケが回っているという面がだいぶあるので致し方ない面もありますね。

で、ここで次の『Committee Policy Action』を引用しないといかんのだが、時間の関係でここで終わってしまう所が誠にすいませんすいませんすいませんm(__)m

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2013/08/21

お題「ドイツ連銀とか新興市場ェ・・・とかの雑談/BOEのスレッショルドは「景気回復での金利上昇抑制」なのかな?」

インドで引導・・・・・と言ってみたかっただけですけど。
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE97I07R20130819
インド・ブラジルなどの新興国通貨、米緩和策縮小懸念で大幅下落
2013年 08月 20日 06:30 JST

○ニュース雑談メモ

・ドイツ連銀の8月月報があったぞなという件(すいませんすいません)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130820-00000136-jij-eurp
アベノミクス「わらに付いた火」=効果は短期間―ドイツ連銀論評
時事通信 8月20日(火)20時22分配信

『【フランクフルト時事】ドイツ連邦銀行(中央銀行)は20日までに発表した8月の月報で、日本の経済政策「アベノミクス」による景気押し上げ効果は「わらに付いた火」のように、短期間で消え去るとの批判的な分析を示した。』(上記URLより)

・・・・・・ということで8月の月報とな!と思ってドイツ連銀のほんちゃんのサイトでありますところのドイツ語版をみましたら、8月月報がございましたぞな(大汗)。

http://www.bundesbank.de/Navigation/DE/Veroeffentlichungen/Monatsberichte/monatsberichte.html
Aktuelle Monatsberichte

Monatsbericht - August 2013
Der Monatsbericht August 2013 erlaeutert die Wirtschaftslage in Deutschland im Sommer 2013.

Datei offnen 19.08.2013 | 1 MB, PDF (書き物作成環境の関係上ウムラウトとかその手の全部外れてますので念の為)

「Datei offnen」って所をクリックするとレポートが出てきます

昨日はドイツ連銀の月報でフォワードガイダンスをdisってた云々の記事をクリップしたのですが、英語サイトでは7月版が8月15日に出ているもんでそんなもんかと思ってたのですが、本家のドイツ語サイトの方が8月分を19日に出しておりましたすいませんすいません。

でまあここでドイツ語の文章を引用しながらドヤ顔で解説するとどこぞの前財務次官かという位格好いいのですが、不肖このアタクシ、大学での第2外国語がドイツ語だった筈なのですが、喋れるドイツ語がだんけしぇーんとぷろーじっと位しかございませんので、とりあえずページだけ見つけたような気がするのでそれだけ。

えーっとですね、フォワードガイダンスがどうのこうのと書いてあるのは本文31ページ目(PDFでも31枚目)から2ページ半ほどある『”Forward Guidance” - Orientierung uber die zukunftige Ausrichtung der Geldpolitik』という所にあるようですが、あたしゃドイツ語は字面を追ってもワカランチ会長なので何が何やら(大汗)。

それから日本の話は本文16ページ目(PDFでも16枚目)にございますが、これがまた延々と図表も並べて4ページ組という代物でして、お題は『Zu den makrookonomischen Effekten der neuen Wirtschaftspolitik in Japan』というものですがドイツ語の得意な人は頑張って読んであたくしに解説して下さいお願いしますお願いします。

でまあ超どうでも良いのですが、このドイツ連銀のレポート、ページの打ち方が表紙や目次にもページを打っているので先ほどのように「本文のページ=PDFファイルでのページ」となっているのですが、そういうのきっちり合わせようとするのはやっぱり律儀なドイツクオリティがこういう所に示されているのではないかと思ったのですが気のせいですかね。表紙や目次のページにもページ打ってるレポート(ただのペーパーだったらそういうこともあるのだが)って中銀関連物を色々と(趣味で)見ているが初めてかも知れん(^^)。


・新興市場ェ・・・・・・・・・・・

インドで引導(しつこい)
http://jp.reuters.com/article/idJPTYE97I07R20130819(再掲)
インド・ブラジルなどの新興国通貨、米緩和策縮小懸念で大幅下落
2013年 08月 20日 06:30 JST

でまあインドで引導なのでFTQヒャッハーと。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MRUE2F6S972Y01.html
米国債:4日ぶりに上昇、新興国市場の波乱で安全への逃避
更新日時: 2013/08/21 03:51 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MRTL1T6S973901.html
NY外為:ユーロやフランが上昇、新興市場から資金引き揚げ
更新日時: 2013/08/21 04:23 JST


昨日は後場になってアジア株が全般的にゲロゲロちゃんで日本株もゲロゲロになって為替が円高に振れて債券は先物から長期中心に買われて先物はだいたい高値引けとかになっている訳ですが、雨公のTaperingでどんだけキャリートレードモードになっていたんだよというか、単に連想だけのような気もせんでもないが、どうにもこうにもという所で。

でまあ債券ちゃんはFTQキタコレ(というか単に連想のような気もするが)の巻でここもとTaperingヒャッハーとか言ってて(これまたホンマカイナという気がするのだが)米国長期金利上昇していたのですが、日本時間からFTQキタコレとなって米債強くなっておりましたな。

まあそれ以前の問題として円債先生の場合前日の米国10年金利2.9%ワンタッチでも10銭少々しか下がらず、その後は貫録の金利低下モードとなっている辺りが威風堂々たる風格を漂わせているのですがね(^^)。でまあいずれにせよ新興国市場が怪しいとなりますと主要国債券はFTQモードという事になるんでしょうが、Taperingネタ一発でこんなになるのかねとどうも微妙に「???」は飛び交いながらちょっと色々と真面目に調べながら考えていきたいと思います。

まーしかし何ですな、これでFEDがびびってTaperingに対して曖昧な状況が続くと更に市場が嫌がる不透明性の継続パターンになってしまいますので、益々ボラタイルになるというあばばばばーなパターンになってしまいますので、全然TaperingやりませんよQE3ヒャッハーですよオープンエンド万歳ですよというのであれば話は別ですが、そうじゃないならとにかく早めに引導を渡す方が吉(=9月にTapering決定しておけということ)だと思うのですけれどもどうなんすかね。


○さてFOMC議事要旨の前にBOE議事要旨ネタでも

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2013/mpc1308.pdf

フォワードガイダンスを突っ込んだ(ガイダンスの公表はインフレレポート時点でしたが)回のBOE議事要旨でありますので少々鑑賞。

・経済認識は割と強めだったりするということはつまり・・・・・・・・・・

前段の執行部報告部分なのですが、経済に関しては「先進国経済については想定より強い」「EM諸国は想定よりも弱い」となっているのですが、英国経済については結構強めの認識を示しておりまして、今回のフォワードガイダンス導入の文書の中でもまあ説明らしきものはあったのですが、なるほどこういう景気認識を示す中でのフォワードガイダンス導入というのは「新たな緩和策」というよりは「将来の政策金利パスを示すことによって回復初期段階での金利上昇を抑えたい」という意図の方が強かったんだなあと思う訳ですよ。

すなわち、『The immediate policy decision』の所でフォワードガイダンスを導入しましょうという話が第31パラグラフから延々と続くのですが、その冒頭でこういう認識を示しているのですわ。

『31 In these unprecedented circumstances, the Committee agreed that explicit policy guidance could enhance the effectiveness of monetary stimulus in three ways.』

まあ金融緩和をエンハンスするってんだから緩和の強化みたいな意味はあるのですが、これをもって長期金利を下げようとか更なる刺激を突っ込もうとしている、と解釈するとそれはちょっと違うんじゃないかなあと思うのでして・・・・・・・・

『It could provide greater clarity about the Committee’s view of the appropriate trade-off between the speed with which inflation was returned to the target and the support given to the recovery. It could reduce uncertainty about the future path of monetary policy as the economy recovered. And it could deliver a robust framework within which the Committee could explore the scope for economic expansion without putting price stability and financial stability at risk. Forward guidance, as part of a mixed strategy towards the conduct of monetary policy, would complement the Committee’s asset purchase programme and the FLS.』

つーことで、2番目にある「as the economy recovered」ってあたりだけこのミニッツ全部を読まないで見ると何を先の話をしてますねんという事になるのですが、前半の方で指摘されているBOEスタッフの経済認識と、ここの部分での前のパラグラフにあるMPC委員の経済認識を合わせて考えますと、「経済が回復する中で先行きのBOEの政策金利パスに対する不確実性を減らす効果」というのは遠い先の話を言っているのではなく割と現実的に「米国に連れて金利が上昇するのは勘弁」「せっかく回復基調にあるのにここで金利急上昇されるのは勘弁」という考え方をしているんだなあというのは把握しました。


では念の為経済状況の検討部分をざくざく引用。第27パラから第29パラまで引用します。

『27 Financial market volatility had fallen since late June, and advanced economy equity indices had risen. UK short-term interest rates were lower than they had been at the time of the July meeting, in part reflecting the Committee’s statement, but remained higher than in early May. Sterling’s effective exchange rate was around 2% lower than in May, in line with the movement in interest rates.』

とりあえず市場のボラは低下して先進国の株価が上昇したという話ですが、その中でUKの短期金利が低下した話の中で「in part reflecting the Committee’s statement」としらっと自画自賛しているのがワロタ。

『28 The news on foreign demand conditions had been mixed. The US recovery seemed to be proceeding broadly as the Committee had expected, and there had been encouraging signs that the euro area might be returning to modest growth. But there were also signs that the slowdown in the emerging economies might prove to be more durable than anticipated.』

USはほぼ予想通りに強く、ユーロ圏は水準はうんこだけど予想よりはやや強いということですな。

『29 Developments in the domestic economy on the month had again been broadly positive. The preliminary release suggested that GDP had increased by 0.6% in Q2, in line with the Committee’s expectation. Survey indicators had risen more strongly than expected. In particular the composite Markit/CIPS output index had risen strongly on the month and was above its historical average prior to the financial crisis.』

つーことでUK国内に関しては強いという認識を示しています。サーベイに見られるセンチメントが強いんですと。

『The revival in growth had partly been driven by a pickup in private consumption, as retail sales had strengthened and consumer confidence improved. Housing investment had also grown strongly in the first quarter.』

個人消費と住宅投資が強いとな。

『It was plausible that the pickup in growth reflected a combination of reduced uncertainty and easing credit conditions, and that these factors would in due course also support a stronger recovery in business investment. Housing market activity had so far picked up only modestly, but some forward-looking indicators pointed to a stronger recovery that might represent a further stimulus to growth.』

要因としては不確実性の低下とクレジットコンディションの改善とそれによって起きた企業投資の強い戻りとな。

『These factors had underpinned the materially stronger near-term growth profile in the Committee’s August Inflation Report projections.』

materially strongerキタコレ。

『Twelve-month CPI inflation in June had been a little lower than the Committee had anticipated at 2.9%, and was expected to stay at around that level for the next few months. The current strength of inflation reflected pass-through from higher import costs and an elevated contribution from administered and regulated prices.』

物価に関しては輸入価格の転嫁と公共料金等の上昇が効いて当面は3%程度で推移とな。

『Pay growth remained subdued. The Committee’s August inflation profile was similar to that in May, reflecting a judgment that much of the increase in demand relative to the May forecast would be matched by an increase in supply.』

物価動向は前回インフレレポートの想定に沿って推移と。


・「実質GDPスレッショルド」VS「失業率スレッショルド」だったとな

でまあ先行きの物価に関する考察の第30パラグラフがあるのですが後回し(つーか明日以降回し)にしまして(汗)フォワードガイダンスにどういうのを設定するかという話がほほうという所ですので第32パラグラフ以降になります。

『32 Prior to its policy meeting, and in the context of preparing the assessment requested by the Chancellor, the Committee had discussed the potential design parameters of a forward guidance strategy. It had agreed that framing guidance in terms of the likely response of monetary policy to economic developments, rather than specifying the period over which it intended to maintain the current highly stimulative stance of monetary policy, was likely to render it more effective. This could be achieved by indicating an intention not to tighten policy at least until some suitable threshold had been met.』

つーことで最初は「カレンダーデート方式」のフォワードガイダンスを却下。

『33 The Committee had discussed a range of potential indicators that might form the basis of such a threshold, focusing on real GDP growth and the unemployment rate. There were risks if policy appeared to be mechanically tied to a single real-side indicator. Those risks included the perception that the Committee would attach undue weight to a single variable in setting policy, and potential confusion about the Committee’s objectives. Nevertheless, the Committee recognised the importance of simplicity in its guidance and concluded these concerns could be mitigated by careful design.』

ここの部分は中々オモシロスと思ったのですが、スレッショルドに「実質GDP」と「失業率」のどっちを使うかという検討をしたという話で、まあ検討内容はここから延々と続くのですけれども(実質GDP対失業率のあとは物価の話になるのですが)、最初の所でこういう話をしているのってアタクシ的にはイイハナシダナー(イヤミじゃなくて^^)と思う所。

つまりですね、「スレッショルドを自動発動のトリガーと取られるのはイクナイ」という認識を示しつつも、「でも総合判断みたいなのだったら意味ないよね」ということで、「スレッショルドとして出すものはある程度シンプルである必要がある」という話をしてまして、その双方をどう天秤に掛けるかという注意深いデザインが必要ですよねという話になっているのを示しているのがいいねえと思う所です。

ただまあこういうイイハナシダナーをしている割には説明の方がとんでもない分量のドキュメントを出してきて何をしたいのか判らんぞなもしという結果になっているのがこれまた残念な所でありましてどうしてこうなったという所ですな(−−;


さて実質GDPと失業率のプロコン比較が34パラと35パラに。

『34 In this context, there were advantages to employing a real GDP growth threshold, since it provided a comprehensive measure of the expansion in economic activity and, as such, provided an indication of the rate at which the margin of spare capacity was closing.』

実質GDPを使うメリットとして、経済活動および経済のスラックを見るのに適切な指標だというのがありますよと。

『The Committee already published projections for real GDP growth and so it had the benefit of continuity. While not a measure of the extent of slack, once growth had reached a suitable threshold, there could be a review of evidence of both unused capacity in the economy and inflationary pressures.』

更なるメリットとして、MPCは実質GDP成長に対しての予想を既に公表しているので、コミュニケーションポリシーとしても有効であり、また、経済のスラックというのは計測しにくいですが実質GDPは経済のスラックとインフレ圧力に対するレビューにもなるので有効ですよという所で。

『On balance, however, the Committee decided that the disadvantages of framing the threshold in terms of real growth - including volatility of GDP growth data, their propensity to be substantially revised, and the need to specify the evolution of potential supply in any event - outweighed these considerations.』

一方でGDPの数値はボラタイルな上に改定が多く、さらにGDPスレッショルドを設定する場合には潜在成長率の置きをしないと適切な数値を設定できないというのも問題なので却下したとの事。

しかし「名目」じゃなくて「実質」で来たのはふーんという所ですが、良く良く考えたら目標じゃなくてスレッショルドなのですから名目は使いにくい(インフレ目標を名目GDP目標に変えるというような場合だと名目が出てくるということでしょうな)んでしょうね。


一方の失業率。

『35 The unemployment rate provided a measure of spare capacity in the labour market which would be likely to move in tandem with the unobservable and highly uncertain margin of spare capacity in companies. Using the unemployment rate would allow the Committee to set monetary policy so that it provided enough support to activity to reduce the degree of spare capacity in the economy without having to rely on an explicit judgement about the extent to which productivity would pick up as the recovery gathered pace. Moreover, the unemployment data were relatively reliable, less prone to revision and well understood. On balance, therefore, the Committee preferred the unemployment rate as a threshold indicator.』

失業率については労働市場のスラックを推計するのには適切であり、労働市場のスラックは企業部門における資源の余剰状況という計測しにくいものとある程度関連するものなので、指標としてはまあ適切でしょうという話。

そんでもってこれは説明文にもありましたが、失業率は改定が少なく信頼性が高い上に、一般的にも知られているので、スレッショルドの数値として適切だという比較検討でありました。

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2013/08/20

○市場ニュース雑談というかクリップ用メモ

・米債ェ・・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MRSJY66S972901.html
米国債:続落、2年ぶり高利回り−FOMC議事録に注目
更新日時: 2013/08/20 03:59 JST

瞬間風速で2.9%マークですかそうですか・・・・・・・・・・

だから議事録は5年後に出るTranscriptであって今週出るのはあくまでも議事要旨ですぞなもしという悪態は1万回位は申し上げたと思いますのでスルー致しまして(粘着^^)、ミニッツ待ちとかそういう問題ではなく、ようはTaperingはどうせ年内のどこかで始まるんでしょうけれども、その影響って始まってみないとワカランチ会長だよね〜とか言ってる内に皆さん様子見地蔵になって積極的に買う人が居なくなってしまいましたとかそういう話ですよねと思うのですがどうっすかね。

とまあそんな事を考えますと、Taperingやるならやるでとっとと開始時期を決めるなりやっぱやらねえよヴァーカと宣言するなりして、とにかく方向性を見せろやゴルァと思う次第でして、個人的には9月FOMCでまずは「オープンエンド買入はやりすぎなので買入拡大を毎月削減(USTとMBSの月の拡大額をそれぞれ1m$ずつ減らすとか)して来年のどこか(多分前半)で拡大停止するからもうオープンエンドじゃないよ〜。あそうそう必要があったらまたQE4やるからね〜」とでもアナウンスして、とにかく一回灰汁抜けさせないとアカンと思われますけどね。

ただまあ昨日ネタにしたようにFRBの「資産買入政策と金利政策は完全に分離」というのは虫のよすぎる理屈であって、ブラード総裁も指摘しているように、Taperingトークといやいや拡大だってあるぜよみたいなのが続くと先行きの政策金利パスがどうしても影響される訳でして、だったら「フォワードガイダンスでの金利政策を中心にしております」というのをより前面に出してLSAPについては別に規模縮小しなくても良いけど拡大はすっぱり止めた方が一々市場が振り回されなくても済むような気もしますが良く判らん。

#従ってオープンエンドとかトンマ政策だったにも程があるというのは連日申し上げておりますが、それはそれとしてほんの1年前に「米国のように日本もオープンエンドをすべき」とか主張していた連中ちょっとツラだせやコノヤローと思うのですが、そういう人たちは既に何事も無かったようにしているのが非常にトサカに来るので過去の人様のレポート調べて糾弾会をしたい気分である

しかしまあ何ですな、米債売られると米株が一緒になって売られておりますのを見ますと、まあ足元だけの瞬間芸だとは思うものの、米債が米株のヘッジになっておりませんという状態ですので、つまり米債を持っていても株式ポートフォリオのヘッジどころか一緒になってズブズブと沈没してしまうという状況になっているとは何ということでしょう状態で、日本株ポートと米債ポートが一緒にズブズブとかになるとマズーな人もいそうな気がするが気のせいかもしれませんな(-Д-)。


・ドイツ連銀ェ・・・・・・・・・

貫録のブンデスバンククオリティ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MRRVUQ6S972T01.html
ECBのフォワードガイダンスは利上げ可能性排除せず-独連銀
更新日時: 2013/08/20 00:53 JST

『独連銀は「このコメントが条件付きであることは明瞭だ」とし、ECBの不変の責務である物価安定維持が条件だと説明。「従って、ユーロシステムのフォワードガイダンスは政策金利の将来の動向に関する無条件の約束ではない」と強調した。ECBのフォワードガイダンスは失業率やインフレ率の数値目標を設定していないため、米金融当局のガイダンスとは異なるものの、共通点もあると独連銀は指摘。「両中銀のフォワードガイダンスはいずれも、それぞれの金融政策戦略に基づいていることを強調する必要がある。従って、米国の政策決定も実際の経済動向に左右される」と説明した。』(上記URL先より)

まあ仰る通りなのですが何も一々後ろから刺すような話をせんでもと思いますけど、しらっと物議を醸しそうなタイミングで投下するのがブンデスクオリティ。

ちなみにドイツ連銀のマンスリーレポートってどこにあるんじゃいと思って探したら、この辺にあるようです。
http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Publications/Monthly_reports/monthly_reports.html
Monthly Report - July 2013 2013-08-15 | 1 MB, PDF

『The Monthly Report July 2013 examines the background and framework for the introduction of the common European Banking Supervisors, explains the problem of the estimates of yield curve in the financial crisis and analyzes the differences in monetary and credit growth in the euro area.』

直近のはこいつ(URLがクソ長いので割愛、さっきのURL先にある「Open File」って所をクリックすると1MBの144枚組ファイルがどどーんと出てくる)ですが、内容が大杉でさすがにその利上げ可能性云々が見つからない、というかその話をしている箇所が良く判らんかったぞなもしというか、多分そういう話よりももうちょっとこの月報ってトーンが違う気がするのだが探して来たものが間違いかも知れん(汗)。内容は面白そうな気がします。


○SF連銀ペーパーネタの補足

しつこく続き、というか補足。

URLが長くて画面レイアウトが壊れるのでリンクは「こちら」に付けます。
http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2013/august/large-scale-asset-purchase-stimulus-interest-rate/
PDFバージョン(同じくで直リンは「こちら」で)
http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2013/august/large-scale-asset-purchase-stimulus-interest-rate/el2013-22.pdf

・市場のセグメンテーションがどうのこうのってのの意味が分からん件

昨日引用しましたように、LSAPの効果は「長期金利のリスクプレミアムを下げる(金利を下げる)ことによって長期債のみに投資ニーズのある経済主体の投資消費行動に変化を与える」という形で実体経済に影響を及ぼすというナンジャソラというような理屈になっているのですが、そらまあその理屈だとLSAPによるインフレ期待がどうのこうのとか、直接的な資産買入による効果がどうのこうのという話が無いんだから「効きが悪い」という結論になる罠と思いつつちょっと引用の続きを。

でまあQE2の効果は突っ込んだ年には実質GDPに+0.13%の効果を出したとかいうのが図1のグラフの辺りにありまして、その辺の説明。

『The 0.13 percentage point median impact on real GDP growth fades after two years.』

グラフを張り付けられないのが残念ですが、もうワロタとしか申し上げようが無くて2年後(8Qという表示になっているが)には効果殆どゼロとか「LSAPはその残高も効果を発揮する(キリッ)」とかゆうとった話はどうなっているのかと小一時間な訳ですよ。

『The median effect on inflation is a mere 0.03 percentage point. To put these numbers in perspective, QE2 was announced in the fourth quarter of 2010. Real GDP growth in that quarter was 1.1% and personal consumption expenditure price index (PCEPI) inflation excluding food and energy was 0.8%.』

ふむ。

『Our estimates suggest that, without LSAPs, real GDP growth would have been about 0.97% and core PCEPI inflation about 0.77%.』

ふーん。

『Chung et al. (2011) find effects about twice as big. Baumeister and Benati (2010) find marginal effects on GDP and inflation of about 3 percentage points and 1 percentage point respectively. Both studies use different methods and assumptions regarding the risk premium. The results of Chung and co-authors fall inside our 50% probability band. But our analysis assigns a negligible chance of LSAP effects as strong as those reported in Baumeister and Benati.』

でここで先行研究の話をしているのですが、先行研究に比べてワシらの推計する効果が何で小さいねんという話なのですが・・・・・・・・・・・

『Our effects are more limited because the data do not support much bond market segmentation. Thus, we find only modest economic impact.』

つーことで、昨日引用した「LSAPが実体経済に影響を与えるには「ボンドオンリー投資」の投資主体以外の債券投資主体の動きが重要」という話のような気がするのだがここのsegmentationの意味が微妙にワカランチ会長orz

『It’s possible that our data sample excludes periods of high financial turbulence that could encourage stronger financial segmentation. That could cause us to underestimate LSAP effects, particularly during the first few asset purchase rounds. To evaluate this, we run our simulation with at least a 5% degree of segmentation. In our first simulation, the probability of at least that level of segmentation is only 50%. With at least 5% segmentation, the impact on real GDP growth nearly doubles to 0.22 percentage point. The effect on inflation remains only about 0.04 percentage point.』

ここでの部分だけを見ると、QE1の頃の方が金融市場にsegmentationが高かったのでLSAPの効果が上がったという話をしているので、このセグメンテーションとは要するに金融市場にストレスが掛かっている状態の事を言うのかと思うのですが、昨日引用した辺りの実体経済への波及ルートの話を見るとそれって金融市場のストレス云々関係ないだろと思うので正直謎。


・LSAPよりも金利政策の方が効くという話

『Fed interest rate policy plays an important role in determining the effects of LSAPs on economic growth.』

LSAPの効果は金利政策が重要な役割を果たすとか何という金利政策重視攻撃。

『The Fed normally sets a higher federal funds rate target in response to higher inflation or economic growth. Thus, if LSAPs boost the economy, they should lead to a higher federal funds rate, offsetting the stimulus. In our simulation, we assume that the FOMC keeps the rate at zero for four quarters and then follows conventional monetary policy.』

ほうほうそれでそれで?

『To explore this interaction, we consider two alternative scenarios. First, if the FOMC had no commitment to keep the interest rate near zero, the median effect of QE2 would have dropped to only 0.04 percentage point on economic growth and 0.02 percentage point on inflation.』

ワロタというか何というか、フォワードガイダンス無かったらQE2の効果ってこんだけとか随分と酷い推計ですなこりゃ。

『Second, if the commitment to keep the federal funds rate near zero lasts five quarters instead of four, then the effect would be 0.22 percentage point on GDP growth and 0.05 percentage point on inflation.』

ほうほう。

『Taken together, these alternative simulations suggest that LSAP economic effects greatly depend on expectations about interest rate policy.』

という結論になっておりまして、ではLSAPと利下げはどう違いますねんという比較が続きます。

『How do LSAP effects compare with those of a conventional federal funds rate cut? Figure 2 shows the effects of a standard 0.25 percentage point temporary federal funds rate cut.』

でまあ例によって図を磔刑にするスキルが無いので図2というのはURL先を見てちょ。

『GDP growth increases about 0.26 percentage point and inflation rises about 0.04 percentage point. This suggests that a program like QE2 stimulates GDP growth only about half as much as a 0.25 percentage point interest rate cut.』

QE2は0.25%の政策金利引き下げの半分の効果ですってよ奥様、というかこれはまた何というLSAPケチョンケチョンの話ということですが、そもそも論としてゼロ金利制約の有る状態での政策と通常の政策を比較するのがおかしい気がするのですが・・・・・・・・・・・

『Both policy tools have similar effects on inflation. However, if we pair the LSAP program with a commitment to keep the federal funds rate near zero for five quarters instead of four quarters, then the median effects on real GDP growth and inflation are similar to those of the 0.25 percentage point interest rate cut.』

はあそうですか。

『Importantly, uncertainty about the effects of LSAPs on economic growth is much higher than uncertainty about the impact of a federal funds rate cut, as can be seen by comparing the shaded bands in Figures 1 and 2.』

そらまあ政策の効果を主に「長期金利のリスクプレミアムの縮小による効果」なのですからLSAPの方が効果が不確実だ罠と思うのですが。

『Our simulations suggest that the main reason for this difference is substantial uncertainty about the degree of financial segmentation. Segmentation is crucial for the effects of asset purchases, but is irrelevant for the impact of a federal funds rate cut on the economy.』

ということでdegree of financial segmentationが資産買入政策の効果に重大な影響を与える、という話になっておりまして、結局このfinancial segmentationが何を言いたいのかがイマイチ判らんのだが、文脈から判断すると「市場が正常化した状態で資産買入を突っ込んでもそれは効果が低いです」という話のような希ガス。


・つーことで結論なんですが

『Asset purchase programs like QE2 appear to have, at best, moderate effects on economic growth and inflation. Research suggests that the key reason these effects are limited is that bond market segmentation is small.』

ほう。

『Moreover, the magnitude of LSAP effects depends greatly on expectations for interest rate policy, but those effects are weaker and more uncertain than conventional interest rate policy. This suggests that communication about the beginning of federal funds rate increases will have stronger effects than guidance about the end of asset purchases.』

ロジックはもうツッコミ所が多数のペーパーで、なんかもうワロタとしか申し上げようがないのですが、要するにロジック云々よりも結論を出したかったというのがこのペーパーなんでしょと思いっきり思う訳で(個人的見解とのクレジットは入ってるけどSFとNY連銀のシニアエコノミストの見解ですからねえ)要するにFOMCの主流見解がQEよりもフォワードガイダンスによる長期金利の抑制が効くという話なのでしょうが、実際問題としてTaperingトークによってこれだけ長期金利が上昇しちゃっている訳(他にも要因有りますけど)でして、まあFED的には出口政策のリスク考えるとLSAPをもう増やしたくないし、長期金利が先走って上昇されると困るし、というジレンマに陥っていますねさてどうしましょ、っていうのが示されたペーパーなんですなということだけは把握できました。

#補足と言いつつ結局後半全部引用になってしまいましたなすいませんすいません

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2013/08/19

○毎度お馴染みブラード総裁は結局慎重派で更に物価重視を強調

木曜日に週末の宿題とした奴を(珍しく)宣言通りに読んだのでネタに。

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1890
News Releases: 2013
AUGUST 15
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Debate on Tapering the Fed’s Asset Purchases

講演資料(プレゼンテーションのPDFバージョンなのでクソ重い)はこちら
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/BullardLouisville15August2013Final.pdf

この前8月2日にはボストンで同じお題で講演をしているので、差分を取ってどんな話をしているのかという違いの部分だけ見ておきます(8月2日の講演については8月7日の駄文でネタにしました)。ちなみに8月2日のスライドショー(プレゼンのお題は『The Tapering Debate』)はこちらなのですが、この時は44枚組だったのに対して今回(プレゼンのお題は『An Update on the Tapering Debate』)は51枚組になっておりまする。


・9月のTaperingに対する反対姿勢が強まったのと物価重視の姿勢を見せた(ような気がする)

いきなり最後なのですけどね(^^)。スライドショーの方が分かりやすいのでスライドショーの実質最終ページ『Conclusions』の所を比較するのだ。

『I have suggested some key questions for the tapering debate in the following areas: Labor market performance, growth, balance sheet size, and inflation.』(今回:8/15ルイビルでの講演)
『I have suggested some key questions for the tapering debate in the following areas: Labor market performance, growth, balance sheet size, and inflation.』(前回:8/2ボストンでの講演)

うむ、最初の所は全文一致。

『The resolution of the tapering debate will depend on additional macroeconomic data from the second half of 2013.』(今回:8/15ルイビルでの講演)
『Most of these questions can be better addressed once we see additional macroeconomic data from the second half of 2013.』(前回:8/2ボストンでの講演)

次の所で表現が異なっていますが、前回は「これらの疑問については年後半のデータを見てからの方がよりよく対処できるでしょう」って言い方だったのが、今回は「年後半のデータ次第だコノヤロー」というような感じの直球モードになっているように見えまして、投票権のあるブラード先生がこのように9月のTapering決定に対してより牽制球を強く放っているという感じがするんですが。

『It is especially important to see if better macroeconomic growth materializes in the months and quarters ahead, and whether inflation naturally returns toward target.』(今回:8/15ルイビルでの講演)
『In particular, it is important to wait to see if better macroeconomic outcomes materialize in the months and quarters ahead.』(前回:8/2ボストンでの講演)

今回の方が「より見る必要がある」というのを強調した表現になっている上に、「インフレがターゲットに戻るかどうかを見極める必要がある」というのを入れているだけに更にその「経済データ確認」のスタンスを強調すると共に、(もともとブラード総裁は物価重視派なのでこれは当然ちゃあ当然なのですが)物価動向についての注意喚起をする形になっており、前回の2週間前よりもより9月Tapering開始に対して慎重姿勢という所でしょう。


・もしかしてブラード総裁は10月(29-30)FOMCが判断時期と考えているのかもね&関連雑談

ではその「年後半に出てくる経済指標を見ながら判断していく」とはどういうことやという話になる訳ですが、ブラード総裁は今回の講演でこんな話をしています。

講演のプレスリリース(講演の要約)の方ではこんな風に書かれています。

『He also stressed the importance of having a press conference after each FOMC meeting instead of after every other meeting, as is the case now. For instance, the tapering debate is currently centered on the September and December FOMC meetings, Bullard noted, adding that because the October meeting does not have a press conference scheduled, it is thought to be an unlikely venue for important policy action.』

まあこれはワタクシなんぞもTapering開始時期の本命を9月に設定する理由の一つとしているだけにこの指摘自体は判らんでも無いという所ですが、ブラード総裁は「FOMC議長の記者会見を(今のようにSEPとセットの形で出てくるのではなく)毎回のFOMCミーティングの後に行うべき」という話をしておりまして、「記者会見が行われない10月FOMCは重要決定を行うミーティングにはならないだろうと市場が予想していて、Taperingについても市場は9月か12月かということで見ている」という指摘ですの。

『“The FOMC should make all meetings ex ante identical so that key decisions can be made at any juncture. This would allow the Committee to better align appropriate decisions with incoming macroeconomic data,” Bullard said.』

そういう会見が有る無しとかで日程が決まるものでは無く、金融政策の決定はその時のマクロ経済データで決まるべきものである、というのはまあその通りでして、つまりはブラード総裁としてはある程度の経済データが出てくる10月末のFOMCでのTapering判断をするのが吉という判断をしているんでしょうなあと思われますがどうですかね。

この部分、プレゼンの方では最後から2枚目(ページで言えば49枚目)の『A press conference at every meeting?』というお題でして、そちらにはこういう風に書いてあります。

『・The tapering debate is currently centered on the September and December meetings of the FOMC.
・What about the October meeting?
・The October meeting does not have a press conference scheduled and so is thought to be an unlikely venue for important policy action.
・The FOMC should make all meetings ex ante identical so that key decisions can be made at any juncture.
・This would allow the Committee to better align appropriate decisions with incoming macroeconomic data.』

ま、それはその通りではあるのですが、この「毎回会見をすべき」という話は諸刃の剣みたいなもんでもありまして、毎回会見をするという事は毎回市場にオラオラとケツを叩かれるリスクがある訳でして、結果としてブラインダー元副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態になるリスクが高まると思うのですよね。特に最近のように「市場の期待に働きかける」系の金融政策を実施しておりますと、期待に働きかけようとした結果、その働きかけている市場から振り回されるという流れになると思うのですよ。最近で言えばECBが結構そういう状況になっているように見えますけど。


・これは仰る通りの指摘だが「量と金利を分けるというのは理屈としてはあっても現実は難しい」という話

前回のプレゼンのアップデートとしてこの点もほほうという所です。スライドショーだと10枚目になるのですけれども、『The expected policy rate rose ・・・』という部分での指摘。

『・The expected path of the policy rate increased, meaning that the date of expected liftoff is earlier than it was in May.

・This suggests that any tapering decision is difficult to separate from Committee promises on the expected path of the policy rate.』

今回この説明が加わったのがブラード総裁分かってますなあと思う所でありまして、もちろんその前の部分で従来からのFEDの主張である「量の決定と金利の決定は別問題」という説明はしていますが、実際問題としてTaperingトークによって市場の予想短期金利パスは上昇しており、「この事は実際問題としてtapering decisionを政策金利予想と分離して市場に認識させることの難しさを示唆している」ということでして、まあその通りとしか申し上げようがないですな。

でまあ何度か指摘しておりますように、従いまして「オープンエンド方式の量的拡大」という政策は明らかに出口政策に対する考慮を欠いた失敗手段でありましたよねという事になるのですけれども、そういう話はしないのがFEDクオリティーではありますが、まー最近のこのドタバタぶりをみるとそういうことです罠。


・景気に対しては「偽りの夜明けリスク」を指摘

まあここに関しては前回も同じ話をしているのですが念の為引用。説明文書の方から。

ブラード総裁はGDPに関しては比較的楽観的にみているのですが、一方で世間的にも先行き景気に関しては楽観的と思われるよねという指摘をしていまして、その見通しに依存しすぎることに対する警戒をしています。プレゼン資料の方ですと29枚目の『The problem with optimism』という所になるのですが。

『・I have been optimistic in my own forecasts for the U.S. economy over the last several years.
・In part, this is because empirical models suggest that, with the current configuration
of data and policy settings, rapid growth lies just ahead.
・I have tempered these forecasts with an explicit recognition that economies tend
to grow more slowly following a financial crisis.
・Still, I have generally been too optimistic.
・Given this experience, I think caution is warranted in taking policy action based on forecasts alone.』

つーことで、説明文の方だと微妙に良く判らんのですが、スライドショーの方ですと割と分かりやすく書いてあると思う次第で、よーするに「ここ数年の「偽りの夜明け」に引っかかってしまってはいけませんよね」という話でして、これまたブラード総裁のTapering早期(つーか9月)決定に関して慎重であるというのが判ると思います。

つーことで、まあ予想通りの結論ではあるのですが、ブラード総裁は9月Taperingについてはかなり否定的であるという感じで、よほど凄まじく良い経済指標でも出てこない限りは、恐らく9月のTaperingには反対票を投じそうですね。


・SF連銀のペーパーネタ

これまた木曜に頭出ししましたけど。

URLが長くて画面レイアウトが壊れるのでリンクは「こちら」に付けます。
http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2013/august/large-scale-asset-purchase-stimulus-interest-rate/

PDFバージョンはこちら(同じくで直リンは「こちら」で)
http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2013/august/large-scale-asset-purchase-stimulus-interest-rate/el2013-22.pdf

・フォワードガイダンス付きの方が効果があるとかいう話

最初のサマリーみたいなのはこの前ネタにしたので本文リードの部分から。

『In November 2010, the Fed’s policy committee, the Federal Open Market Committee (FOMC), announced a program to purchase $600 billion of long-term Treasury securities, the second of a series of large-scale asset purchases (LSAPs). The program’s goal was to boost economic growth and put inflation at levels more consistent with the Fed’s maximum employment and price stability mandate. In Chen, Curdia, and Ferrero (2012), we estimate that the second LSAP program, known as QE2, added about 0.13 percentage point to real GDP growth in late 2010 and 0.03 percentage point to inflation.』

ほほう。

『Our analysis suggests that forward guidance is essential for quantitative easing to be effective. Without forward guidance, QE2 would have added only 0.04 percentage point to GDP growth and 0.02 to inflation. Under conventional monetary policy, higher economic growth and inflation would usually lead the Fed to raise interest rates, offsetting the effects of LSAPs. Forward guidance during QE2 mitigated that factor by making it clear that the federal funds rate was not likely to increase.』

ナンジャソラという感じですが、フォワードガイダンス付きのQEの効果がGDPで0.13%、物価で0.04%の押し上げで、ガイダンス無いとGDPで0.04%、物価で0.02%の押し上げという話なのですが、そもそもこの程度の効果しかない話をああだこうだと分析しているのですが、それって結論として「いやあ効果が無いですなあ」ということなのではないかと・・・・・・・・・・

『Our estimates suggest that the effects of a program like QE2 on GDP growth are smaller and more uncertain than a conventional policy move of temporarily reducing the federal funds rate by 0.25 percentage point.』

確かSF連銀って「QE2は雇用をこのように創出した」(キリッ)というようなペーパーを出していた筈だったのですが、今さら何をゆうとりますねんという話なんですが。

『In addition, our analysis suggests that communication about when the Fed will begin to raise the federal funds rate from its near-zero level will be more important than signals about the precise timing of the end of QE3, the current round of LSAPs.』

QE3になってからは更に量的拡大の効果が無くなってきておりますので、金利を暫く上げないというフォワードガイダンスの効果が大きいという話をしておりまして、ナンジャソラという話ではあるのですが、先日も申し上げましたように、このペーパーを書いているのが空気を読む事で著名な、というか翼賛レポートを書くのが得意な、というかなSF連銀のエコノミストが書いている上に、共著者がNY連銀のエコノミスト、ということですので、これは即ちFEDの方向性が明らかにQEをフェードアウトさせる気満々という所でしょうな。


・ちなみに前提になる話の意味がどうみても胡散臭い件について

LSAPの効果として「リスクプレミアムを下げる」という話ですけどね。

『The first feature involves LSAP effects on financial markets.』

LSAPが金融市場ルートで効果を出すとな。

『An investor can buy either a short-term bond and reinvest proceeds until the desired maturity or buy a long-term bond of the desired maturity. If these alternatives are identical, then their expected returns should also be identical. Hence, the long-term yield should be an average of expected future short-term yields. In reality though, these alternatives present different risks and costs, which imply that the long-term yield equals the expected average future short-term yield plus a risk premium.』

で、ここから怪しげな説明になるのですが・・・・・・・

『LSAPs can affect economic growth and inflation through the risk premium. (For an analysis of the impact of LSAPs through signaling effects about future short-term yields, see Bauer and Rudebusch 2012). In our model, the risk premium results from transaction costs paid to buy long-term bonds. We assume that transaction costs increase with the amount of long-term bonds held by private investors, suggesting that LSAPs reduce the long-term bond risk premium by reducing the absolute amount of privately held long-term bonds.』

LSAPは長期金利のリスクプレミアムに影響を与えることによって効果を出すそうな。

『The second feature in our model concerns the transmission from the risk premium to the economy.』

で、そのリスクプレミアムが経済に対して波及効果があるらしい。

『We consider an economy with two types of investors. The first can invest in both short- and long-term assets. For them, a lower risk premium prompts them to reallocate their portfolios, but doesn’t change their spending behavior. If all investors behaved this way, a change in the risk premium would not affect the economy.』

ここからの話が更に胡散臭いのですが、「短期債と長期債を買う投資家に対しては、長期債のリスクプレミアムを引き下げたとしても、その場合はリスクプレミアム縮小によって魅力度の下がった長期債の投資意欲が低下して短期債にシフトするだけの話で実体経済に影響が小さい」という事だそうで・・・・・・

『The second type of investor buys only long-term bonds, for example to match asset duration with life events, such as retirement date. If long-term yields fall, these investors have less incentive to save and may allocate more money to consumption or investment in nonfinancial assets. This boosts aggregate demand and puts upward pressure on inflation.』

長期債だけを投資対象にする投資家、例えば退職時期に合わせた投資を行うような投資家の場合は、投資のDurationが決まっているので、リスクプレミアム縮小の結果長期金利が低下した場合、貯蓄のインセンティブが低下したり、非金融資産に対する投資を拡大させることになるので、これが需要の拡大やインフレ上昇圧力になります。ということですが、正直んなアホなとしか申し上げようがない理屈。

つーかですな、そういう「金利ルート」の話だけをしていたらそらまあ資産買入がどの程度金利低下に効くかってのは普通の金利フォーカス政策に対してみたら不確実にも程があるのは当たり前になるのですから、当然ながら「フォワードガイダンスの方が効く」「政策金利操作は効果に対する不確実性が低い(引用しないけど後半でそういう話をしている)」っての当たり前にも程があるだろ(ついでに言えばゼロ金利状態なのだから効果の数値自体もGDPで0.1%とかのしょぼい数字になるのも金利水準が低いのだから当たり前だわな)と思うのでして、もうどこからどう見てもこのペーパーって「結論としてQE拡大をdisるのが先にありき」で屁理屈を展開したペーパーじゃねえの疑惑はプンプンします。

ちなみにこの部分の最後はこうです。

『These two types of investors represent a form of financial market segmentation, allowing for the risk premium to affect economic activity. The degree of segmentation is determined by what fraction of investors buy only long-term bonds. The higher the proportion of such investors, the more LSAPs affect the real economy.』

この先の方(引用しませんけど)で「金融市場のsegmentationが小さいとQEの効果が限界的に小さくなる」という文があって、そこだけ読むと所謂ECB的な説明でのsegmentationと勘違いしそう(あたしも最初斜め読みしたら勘違いしかけた)ですが、こういう2つのタイプの投資家のsegmentationが大きいと効果があるとかもう何が何やらという感じです。

まあ結論から申し上げると、何かどうもインチキ臭がプンプンするペーパーですが、その政治的(?)意図は「Taperingを正当化する」というのだけは良く判りますし、書いているのがSFとNY連銀でございますのでああそういうことですねという話っすな。

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2013/08/16

○でまあお盆モードでBOEネタの続き

例のクソ長い説明文書から今日は小ネタというか何というか。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/inflationreport/2013/ir13augforwardguidance.pdf
Monetary policy trade-offs and forward guidance

本編なのですが後半の方に「このフォワードガイダンス以外にどんなのがあるの」という論点整理もこれまたオモシロスなのですが『2. Challenges facing monetary policy in the current economic environment』の辺りもまた中々味わいが深いのでその辺から。

・物価が上振れている理由をさすがに最初に説明しているがどう見ても言い訳モードです本当に(ry

最初に『2.1 The current economic environment』ってのがあってね。

『Since 2007, inflation - as measured by the twelve-month change in the Consumer Prices Index (CPI) - has been elevated, averaging close to 3% (Chart 1). Inflation has been above the 2% target for around 90% of that time, and above 3% for almost half.』

これでインフレ目標を達成できているというのかと小一時間問い詰めたいですがそれは兎も角以下言い訳。

『The elevated rates of inflation have largely reflected the effects of a series of cost shocks - increases in energy prices, higher non-fuel commodity prices, and rises in VAT - and the depreciation of sterling in 2007/08. More recently, above-target inflation has also reflected an unusually large contribution from administered and regulated prices - that is, prices that are affected by government or regulatory decisions and so tend to be less sensitive to the balance of domestic demand and supply (Chart 2).2』

まあそらそうなんですけどね。こうなってくるとインフレ目標の枠組みそのものがどうかという話だと思うのだがそっちは堂々堅持みたいな絵を描いているのがこの説明の以下オモシロスというか香ばしいというかな所で、結果として何をやりたくてこの説明をしているのかが正直ワカランチ会長になっている原因だと思うのだ。つーことで経済の説明はパスして次の部分へ。


・0.5%割れの政策金利のデメリットとな

だいたいBOEにおかれましてはてめえの金融政策の説明をおっぱじめると天上天下唯我独尊モードなドヤ顔風味の所が多分にある(資産買入を開始した時も「国債の買入のみを行うのが真の意味でのQEであり他の連中のQEはパチモンである(超意訳)」という説明を堂々としていて、それがフォワードガイダンスになってねえねえどんな気持ちどんな気持ち(AA略)と申し上げたい所なのですが、その辺の話はいつのまにか無かったことになるのがジョンブルクオリティ)のですが、蟹総裁におかれましては結構平然と他所様の政策に嫌味をかます(ように見える)のが仕様な節がありまして、このコンボが色々とお洒落な発信をしてくれるのではないかとワクワクテカテカであります。

というのはともかくとして、政策金利を0.5%に下げたので名目金利制約がという話をしているのはワロタ。

『Since early 2009, the MPC has had to rely on unconventional policy tools to provide additional monetary stimulus. Bank Rate was cut sharply in response to the financial crisis and the associated deterioration in the economic outlook, to 0.5% in early 2009 from 5% in the summer of 2008.』

0.5%まで下げたのは判るが。

『Since then, the MPC has judged that further cuts in Bank Rate - including cuts that could take Bank Rate below zero - were not the preferred way of providing additional monetary stimulus.』

いきなり英仏海峡の向こう側に喧嘩を売るのが蟹クオリティですねわかります。

『That is because there are limitations to the extent to which the rate of interest paid on reserves could be held below zero without inducing significant substitution into cash, and because lowering Bank Rate below 0.5% could also have adverse consequences on the strength of banks’ balance sheets and the supply of credit, thus offsetting any expansionary impact on aggregate demand.3』

ほほうというところですが、3にあるように『3 The reasons underlying this view are set out in a paper on negative interest rates, sent from the MPC to the Treasury Committee on 16 May 2013. The paper is available at www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/other/treasurycommittee/ir/tsc160513.pdf.』(リンクは「こちら」)ってなことですのですが、しまったこれ見落としたと思う。

まあいずれにせよ「短期政策金利をこれ以上下げても追加緩和効果は限定的で、マイナス金利とか実施してもそれはリザーブが現金に化けるだけの事で意味ないし、んなことやったらクレジットアベイラビリティーに悪影響を与えるわ」というECB涙目だわ政策金利が0.5%を切っているFEDやBOJに喧嘩売っとんのかという俺様は我が道を逝く攻撃ワロス。

『Additional monetary stimulus has instead been provided through the Committee’s programme of asset purchases, financed by the issuance of central bank reserves (also known as quantitative easing). Some £375 billion of gilts have so far been purchased, equivalent to about a quarter of annual nominal GDP.』

ということで、金利政策に限界があるのでQEやったりECTRやったりFLSやったりしましたよっつー話が続くがそこはスルーします。


・金融政策は失業率のような実体経済の変数の水準には短期的な影響は与えられても長期的には影響を与えられない

その次の『2.2 Challenges facing monetary policy in present circumstances』の冒頭(ちなみにPDFの15枚目)を見ると盛大に吹けます(^^)。

『The MPC’s primary objective is to deliver price stability.』

何回これゆうとるねんという位にBOEのフォワードガイダンス導入にあたってインフレ目標の堅持を主張するのって自己矛盾を孕んでるだろうよと思うのですが。

『Subject to that, the Committee is also required to support the Government’s economic policies, including those for growth and employment.』

物価安定のために、MPCは政府の経済政策をサポートする事も求められています、それには成長と雇用に関する政策へのサポートも求められています。というのですからほほうと思うのですけれども次の下りで吹いた。

『As explained in the box on pages 14-15, those objectives stem from the fact that, while monetary policy can affect both real activity and inflation in the near term, it cannot affect the long-run level of real activity, or other real variables such as employment.』

「the fact」とか言ってるのがお洒落ですが、金融政策は実体経済およびインフレに対して短期的なタームでの影響を与えることができるが、長期的な実体経済活動レベルや他の変数、例えば雇用に影響を与えることはできない(キリッ)と仰せになっておりまして、どこぞのデュアルマンデートの国にしらっと喧嘩を売る(まあFEDも「金融政策だけで長期的な失業率は完全には決定できない(ので目標数値は出さないよ)」とは言ってるけど)のがジョンブル+蟹コンボ恐るべしという所ですなあっはっは。


・金融政策の目的とはという壮大な説明キタコレ

で、14-15ページ(PDFで16-17枚目)に『The objectives of monetary policy』というのがあって天上天下唯我独尊モードキタコレの話が炸裂しているので鑑賞しませう。

『The Monetary Policy Committee’s (MPC’s) primary objective, as defined in its remit, is to meet the inflation target set by the Government, which is 2% as measured by the twelve-month increase in the Consumer Prices Index.』

さよで。

『The remit makes clear that the inflation target applies at all times. The remit also recognises that when inflation departs temporarily from the target as a result of shocks or disturbances, attempts to bring inflation back to the target too quickly could lead to undesirable volatility in output.』

『Indeed, subject to its primary objective of ensuring price stability, the MPC is required to support the Government’s objectives for growth and employment. This box explains the effects that monetary policy is likely to have on the economy in the short, medium and long term, and so how the MPC can meet its objectives.』

(・∀・)

『In the long run, monetary policy determines only the general level of prices in the economy. It cannot affect the long-run level of real activity, or other real variables, such as employment and unemployment.』

さっきも言ってたけどこれわwwwという所ですが、FEDから見たら「インフレ目標も碌にキープできないで上振ればっかりしてるBOEが何を言うかヴォケ」という所だと思いますが。

『That is because, in the long run, real variables are determined by structural features of the economy. For example, the rate of unemployment that prevails in the long run will reflect the institutional features of the labour market, such as how costly it is to find information about available jobs, the ease with which employees can move between jobs, the level of unemployment benefits, and the willingness of those not in employment or actively seeking work to look for employment.』

雇用などは経済の構造要因で長期的な部分は決定されるので、金融政策の出番では無い、ということですが、まあこれ自体は英国唯我独尊という訳でも無くて、ブラード辺りのインフレ目標重視派の米国FED高官もこういう話はする(露骨に言うとデュアルマンデートという法的な制約とのコンフリクトが起きるからあまり露骨には言わない場合が多いけど)のでまあそうっすなという所ですが。一方で「失業率も金融政策の目標に加えるべき」などとどこぞの国で主張する方も居ますので世の中色々と考え方というのはあるというものです(棒)。

『Trying to use monetary policy to raise the long-run level of real activity would, ultimately, result only in higher inflation.』

クロワロタ。


『Nevertheless, monetary policy, by anchoring long-run inflation expectations around the Government’s inflation target, does play an important role in facilitating long-run economic stability. That is because price stability is a precondition for ensuring that resources are allocated efficiently across the economy. Price stability can also contribute to financial stability, for example by removing distortions caused by shifts in inflation expectations over time.』

物価安定をさせることによって(英国の場合それが出来ているのかというツッコミはさておき)経済活動の安定化、金融の安定化などに繋がるという理屈ですな。

『It is for these reasons that the primary goal of the MPC is to ensure price stability. Delivering low and stable inflation is the best contribution that monetary policy can make to achieving long-run growth and prosperity.』

まあそのbest contributionが以下同文。

で、以下は実際にどういう波及効果ですねんという説明である。

『Monetary policy can, however, affect the level of real activity in the short term.1』

ほうほうそれでそれで?

『Monetary policy primarily works by influencing the level of money spending by households and businesses. For example, if the MPC changes Bank Rate - the short-term interest rate at which reserves held by commercial banks at the Bank of England are remunerated - that will affect other market interest rates, mortgage rates, bank deposit rates, and the prices of other assets, such as bonds, equities and the exchange rate. In turn, those changes in interest rates and asset values affect the spending and saving decisions of households and companies. Changes in the amount of money spent are not matched immediately by changes in prices, because it takes time for companies to adjust the prices of the goods and services that they produce in response to changes in demand. As a result, changes in the money value of spending lead to changes in the real value of spending in the short term.』

『But, over time, prices gradually adjust until they match the changes in money spending, leaving real spending unaffected by monetary policy in the long run.』

金利の上げ下げによって短期的にはこのような波及効果がありますという説明をしている訳ですが、各種の金利によって貯蓄や借入の行動に影響を与えたり、資産価格に影響を与えたりといった効果がありますという説明をしております。

で同時にお洒落なのは最後とその前2つの文章なのですが、「価格設定行動は需要などの変化に応じて変化していくものであるから、短期的に変化するものではない」という話をしておりまして、つまりここでは「金融政策行動は短期的には経済の活動に影響を与え、長期的には物価水準に影響を与える(つまり短期的な物価水準や長期的な経済レベルには大きな影響を与えない)」という話をしておりまして、そういえばどこぞの国では「適切な金融政策を取ったらあっという間に物価が上昇する」ような話をしていた人が居たような気がしますが以下自主規制。

なお、中期的なのはどうかという話はこの後あって、「中期的にも経済活動に影響を与える」というのが何だか判じ物というか鵺のような説明になっているのが更に味わいがありまする。

『Monetary policy can, at times, affect real activity in the medium term.』

中期的な視点キタコレですが、中期的にも経済活動に影響を与えると。

『That is because the level of output that is produced today can have persistent effects on the level of output that can be produced in the future - a phenomenon that is sometimes referred to as ‘hysteresis’.』

短期的に影響を与えれば中期的な所までは効くとな。

『Unemployment is a key channel through which the future supply capacity of the economy is affected by current conditions. If demand is persistently weak, then unemployment will rise, and so too will the number of people who are unemployed for a long period of time. People who have been unemployed for a long time tend to become less able to move back into employment, for example because they lose the skills that they need to compete effectively for jobs or become disconnected from the labour market. That can lead to a persistently higher level of unemployment, which would mean that the ability of companies to increase output - that is, the economy’s supply capacity - will be lower than it otherwise would have been.』

ふむふむ。

『Monetary policy may also affect how much output can be produced in the medium term for a given amount of employment by affecting the allocation of resources across companies.』

『Policy has two offsetting influences. On the one hand, the current exceptionally stimulative stance of monetary policy may raise growth in the medium term, because low interest rates may help to keep companies with a viable future in business and so help prevent inefficient capital scrapping. But on the other hand, low rates may keep companies without a viable future in operation and so might hinder the reallocation of resources to more productive uses.』

ふーんという感じですが、金融緩和政策は中期的には企業の活動を支援して成長を押し上げるのですが、一方で企業の生産性を高めるような資本のアロケーションに対するインセンティブを下げるので、それが長期的な経済構造に悪影響を与えるとのお告げで、何かシバキっぽい香りがぷんぷん。

『It is because monetary policy can affect real activity in the short and medium term that the MPC can act to support the Government’s economic policies for growth and employment, provided that such an approach remains consistent with meeting its primary objective of medium-term price stability.』

でまあその結果として物価安定と経済活動のサポートというトレードオフに直面していますという認識を示していて、インフレ重視しすぎて経済殺してもダメだし、経済重視しすぎてインフレがスパークしたり金融不安定化を招いたらダメですよね、という話を以下行っていますがここはまあ普通の話なのでパラグラフごと引用して終了ということで勘弁。

『At times, the MPC will face a trade-off between the speed at which it seeks to return inflation to the target and supporting growth and employment. That is because the economy can be hit by shocks and disturbances that push inflation and real activity in opposite directions - for example, an increase in wholesale energy prices tends to raise inflation and reduce activity. Adjusting monetary policy to return inflation to the target rapidly in such circumstances would exacerbate the fall in output. But while the MPC can look through the direct effects of such cost shocks, it must ensure that the rise in the prices of a particular subset of goods does not lead households, businesses and financial market participants to expect the prices of all goods and services to rise more rapidly, potentially jeopardising medium-term price stability.』

『It is also possible that, in attempting to support real activity in the short run, monetary policy might lead to greater output and inflation volatility further ahead by generating financial instability. For example, a prolonged period of low interest rates could encourage both lenders and borrowers to take on more risk. If the microprudential and macroprudential regulators are unable to ensure that such an increase in risk-taking takes place in a safe way, then such behaviour could exacerbate financial imbalances and so endanger financial stability and hence price stability.』

以上お盆モードで趣味のコーナーで誠に申し訳ございませんでしたm(__)m

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2013/08/15

○BOEネタの続きと思ったら新規ネタも突っ込まれているぞな

新規ネタというのはフォワードガイダンス投下の議事要旨。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Pages/mpc/pdf/2013/mpc1308.aspx

『This guidance linking Bank Rate and asset sales to the unemployment threshold would cease to hold if any of the following three knockouts were breached:

・In the MPC’s view, it is more likely than not that CPI inflation 18 to 24 months ahead will be 0.5 percentage points or more above the 2% target; ・Medium-term inflation expectations no longer remain sufficiently well anchored; ・The Financial Policy Committee (FPC) judges that the stance of monetary policy poses a significant threat to financial stability that cannot be contained by the substantial range of mitigating policy actions available to the FPC, the Financial Conduct Authority and the Prudential Regulation Authority in a way consistent with their objectives.』

『Regarding the proposition, eight members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale, Paul Fisher, Ian McCafferty and David Miles) voted in favour. One member of the Committee (Martin Weale), while supportive of the adoption of forward guidance, voted against the proposition in order to register his preference for a time horizon for the first inflation knockout that was shorter than proposed. He nevertheless intended to form his future judgements about the application of guidance and the knockout criteria in line with the framework adopted by the Committee.』

ということで1名反対なのだが、反対の理由は物価のノックアウト判断における予想タイムホライズンを1年半〜2年という期間にするのが長いという話のようでございまして、まあインフレ目標を置く中で元々が「中期的に2%」と言っている中でノックアウト判断のタイムホライズンも中期的な水準にするのは確かにインフレ目標のフレームワークとの関係としてどうよということなのかも知れませんが、その辺の詳しい話はミニッツの方にありそうなので週末の宿題ですな(汗)。

議事要旨本編はこちら。一つ一つの単語にテクニカルタームをあまり使っていないので読みやすそうに見えるのですが、文脈を取るのが難しいというジョンブルクオリティー炸裂の英文でございますのでご注意を。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2013/mpc1308.pdf



○つーことでBOEのフォワードガイダンス大演説ネタの続き

ほぼ趣味の世界ですいません。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/inflationreport/2013/ir13augforwardguidance.pdf

引き続き『Executive summary』であるが(汗)。

・失業率をスレッショルドにした理由について

後半になりましてファイルで言えば8ページのケツになります。

『The best collective judgement of the MPC is that the unemployment rate is the most suitable indicator of economic activity, given present uncertainties about the evolution of supply.』

つーことで以下何でスレッショルドに失業率を使ったかの説明。

『The unemployment rate relates directly to the amount of slack in the economy, is less volatile than some alternative measures of activity, is not prone to substantial revisions, and is widely understood.』

経済のスラックにダイレクトに関係する、指標としてボラタイルではなく改定も他の指標に比べて相対的に少ない、幅広く認識されている指標である、という3点を挙げています。

『The MPC anticipates that it will be appropriate at a minimum to maintain the current stance of monetary policy at least until the LFS headline measure of the unemployment rate falls to 7%, provided that such an approach remains consistent with meeting the inflation target in the medium term. 』

ということでLFS公表のヘッドラインの失業率が7%に低下する水準をスレッショルドにしますたと。


・7%はトリガーではありませんし、目標値でもありません

ってな説明が続くのでした。

『In recognition of the fact that no single variable can provide a comprehensive indication of current economic conditions, the 7% unemployment rate is set as a ‘threshold’, not a ‘trigger’: that is, reaching the threshold will not automatically result in a rise in Bank Rate. Instead, the MPC will reassess whether or not to raise Bank Rate above 0.5% in light of its assessment of the economic outlook. 7% does not represent the MPC’s view of the lowest sustainable rate to which unemployment can fall. Indeed, it is likely that, over time, unemployment can fall materially lower. Rather, the MPC judges that 7% provides an appropriate point at which to reassess the state of the economy and consider whether or not it should start to withdraw the current extraordinary levels of monetary stimulus.』

で、最後のRather以下なのですが、どうもこの部分を読みますと「ヘッドラインの失業率が7%に達した所で金融政策をどうすんべと考える」というような言い方になっていまして、7%のスレッショルドに関しても米国の説明よりもよりファジーな言い方になっているように見えるのですがどうでしょうか。


・そしてまた物価目標重視の話をするのだ

ノックアウトの設定についての説明でしつこく「物価の安定がMPCの目的」というのを繰り返すのがチャーミングっちゅうか何ちゅうかでして、ここを強調するとじゃあフォワードガイダンスは何ですねんという話になるのですが、その能書きがPDF9枚目から延々と続くのですが多分そこを延々とやる時間は無いのでサマリーとイントロ程度しか出来なさそうな気もするが(汗)。

『Price stability remains the MPC’s primary objective.』

んだんだ。

『There are two price stability ‘knockouts’. First, the MPC’s intention not to raise Bank Rate above 0.5% will cease to apply if, in the Committee’s view, it is more likely than not that inflation 18 to 24 months ahead will be half a percentage point or more above the 2% target. Setting this knockout at 2.5% at the 18 to 24-month horizon should allow sufficient scope to return inflation to the 2% target from its current elevated rate without derailing the recovery. But, at the same time, it underlines the MPC’s determination to bring inflation back to the target in the medium term.』

『Second, in order to ensure that the risks to price stability remain contained, the Committee’s intention not to raise Bank Rate above 0.5% also applies only if medium-term inflation expectations remain consistent with the 2% target. In making this assessment, the MPC will draw on a wide range of external indicators as an independent cross-check on its own inflation projection.』

この部分、何の不思議もなく読んでしまってましたが、先ほどのウィール委員の反対理由を見てから改めて読むと確かに微妙に変っちゃあ変で、従来は「中期的に2%になるように」と言っていたのが今回「中期的に2.5%まで逝かなければ良し」ということですので、すなわちインフレ上振れ容認であるという風に読むことも出来る訳です。まあここの文章自体は「この2.5%というのがあるから中期的なインフレを逸脱させないという決意を示している」とか仰せですが。

つーか最初にこのフォワードガイダンスを見た時にインフレ目標の実質的な形骸化かと思ったので、そういう風に普通だったら読めるのですが、何せ説明文書(この説明文書や声明文)ではやたらめったら何度もしつこく「物価目標はMPCの一番の目的である」という文章を突っ込んでいる次第で、こらまあ前から思っていますが、結局何をやりたいですねんというのが細かく読めば読むほど判らなくなるという蟹総裁のロジックが南海ホークスにも程があるわという話で。



・金融安定化がどうのこうのというのはまあ中銀だったら誰でもいう話なのでまあそうでしょ

『Because price stability is the MPC’s primary objective, either of the price stability conditions, if breached, would render the MPC’s unemployment threshold no longer applicable.』

ノックアウトは物価安定と金融の安定という目的のために設定していますという話ですな。

『In a similar vein, a judgement by the FPC, which would be made public, that the stance of monetary policy poses a significant threat to financial stability that cannot be contained by the substantial range of mitigating policy actions available to the regulatory authorities, would also knock out the Committee’s guidance. That is because financial instability could have lasting effects on the economy,damaging growth and endangering price stability. In some circumstances, monetary policy has an important role to play as a last line of defence in mitigating risks to financial stability. While the MPC’s guidance is in force, the MPC will continue to meet each month to decide the level of Bank Rate and the size of the asset purchase programme. These decisions will be made in the context of that guidance.』

ああだこうだゆうてますが、まあ要するにFPCが毎度公表するアセスメントで金融緩和政策の弊害によって金融の不安定化が起こるリスクが高まったという時にはフォワードガイダンスはノックアウトするという話。


・スレッショルドに達しても直ぐに金利は上げませんという話

んでまあ最後の部分。

『So long as the unemployment rate remains above the 7% threshold, the MPC plans that its monthly decision on Bank Rate will depend on individual members' assessments of the price stability knockouts, and on whether or not the FPC has alerted the MPC to financial stability risks. In the event that the unemployment threshold is reached, or if any of the price stability or financial stability knockouts is breached, the action taken by the Committee would depend on its assessment of the appropriate setting of monetary policy required to fulfil its remit to deliver price stability. There is, therefore, no presumption that there would definitely be an immediate rise in Bank Rate.』

スレッショルドはトリガーではありませんしノックアウトが発動されてもトリガーではありませんとかどんだけゆるゆるのガイダンスですねんという感じですな。

『The MPC stands ready to undertake further asset purchases while the LFS unemployment rate remains above 7% if it judges that additional monetary stimulus is warranted. But until the unemployment threshold is reached, and subject to the price and financial stability knockouts not being breached, the MPC intends not to reduce the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves and, consistent with that, intends to reinvest the cashflows associated with all maturing gilts held in the Asset Purchase Facility.』

で、フォワードガイダンスが生きている間は利上げやAPPの規模縮小は行わず(償還による自然減部分は買入で補充する)、必要な場合は更なる追加緩和策を実施しますという説明でした。


#説明の所にもうちょっとオモシロ部分があるので続きは明日(大汗)


○米国金融政策関連メモメモ(俺様宿題リスト)

・ブラード総裁がまたまた講談を

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1888
AUGUST 14
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Debate on Tapering the Fed’s Asset Purchases

プレゼンテーションはこちら(PPTをPDFにしているので重い、1.4Mあるので注意)
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/BullardPaducah14August2013Final.pdf

面白そうなので後で(たぶんこれも週末の宿題)読む


・話題になっていたSF連銀のペーパーは実はNY連銀も関係しています

URLが長くて画面レイアウトが壊れるのでリンクは「こちら」に付けます。
http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2013/august/large-scale-asset-purchase-stimulus-interest-rate/

PDFバージョンはこちら(同じくで直リンは「こちら」で)
http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2013/august/large-scale-asset-purchase-stimulus-interest-rate/el2013-22.pdf

で、お題ですけれども・・・・・・・・^^;
How Stimulatory Are Large-Scale Asset Purchases?
Vasco Curdia and Andrea Ferrero

『The Federal Reserve’s large-scale purchases of long-term Treasury securities most likely provided a moderate boost to economic growth and inflation. Importantly, the effects appear to depend greatly on the Fed’s guidance that short-term interest rates would remain low for an extended period. Indeed, estimates from a macroeconomic model suggest that such interest rate forward guidance probably has greater effects than signals about the amount of assets purchased.』

というのが最初にございまして、下の方の図表を見ると「量的緩和政策の効果が買入の拡大と金融市場の正常化に伴い効果の逓減傾向が見られます」という大変にお洒落なペーパーとなっております。

で、注目を浴びたのはご案内のようにこれを出したのがSF連銀のエコノミストという所でして、SF連銀と言えばもう思いっきりFEDの決定に関する「政策効果」に関連するペーパーで盛大にFOMCに対して(∪^ω^) わんわんお!!なペーパーを捻りだす、じゃなかったまあFOMCをサポートするようなレポートと出すというのが仕様となっている地区連銀(イエレン先生が前議長なのですから当然ちゃあ当然かもしれんが)なのでして、そういう地区連銀がこういうレポートを出してきたというのがお洒落なのですよね。

あ、ちなみに申し添えますと、どこの中銀でもそうですけれども、この手の「リサーチレポート」は「これは弊社エコノミストの見解ではありますが、弊社のハウスビューでは無い場合があります」ってのがございますので念の為。

『Opinions expressed in FRBSF Economic Letter do not necessarily reflect the views of the management of the Federal Reserve Bank of San Francisco or of the Board of Governors of the Federal Reserve System. 』

しかも更にお洒落なのは、このレポートの最後を見ますと・・・・・・・・・・

『Vasco Curdia is a senior economist in the Economic Research Department of the Federal Reserve Bank of San Francisco. Andrea Ferrero is a senior economist at the Federal Reserve Bank of New York.』

・・・・・・・・SF連銀とNY連銀のシニアエコノミストの共著ですかそうですかということで、これもまたあちゃーという感じですが、文章量は少ないのでサラッと読めますのでオヌヌメ(今朝は時間の関係上ネタにする暇がないのだが)。

#しかしこういう逓減というようなグラフが出る中、ジャパンでは量的緩和政策に対して直線番長(政策効果を何でもリニアに計算する人たちの事を某金融クラスタ方面でそう称するらしいので使ってみた)が跋扈しているように見ますなああっはっは

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2013/08/13

○BOEの政策大演説を鑑賞するでござるの巻

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/inflationreport/2013/ir1303.aspx
Inflation Report, August 2013

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/inflationreport/2013/ir13augforwardguidance.pdf
Monetary policy trade-offs and forward guidance

この前も申し上げましたが、まあ大体政策の説明に48枚組のペーパーを出すという時点でもう何が何やらという所でして、この前どこぞの麿銀行が物価安定の目標がどうのこうので8ページ組だったかの説明をああでもないこうでもないと書いて世間的には「????」という所で、一部のマニアからは「何じゃこの往生際の悪い説明は」と大変に好評(イヤミ)だったという事案がありましたが、さすがBOE!俺たちにできない事を平然とやってのける!!そこに痺れない憧れない!!という所でありまして、まあこのクソ暑い中こんな長文出すな読んでる時間は兎も角この暑さで根性が続かんわ(←それはアタクシの個人的状況^^)という話ですな。


つーことでまずは冒頭説明から。PDFの3ページ目にまえがきが。

『In the letter accompanying the 2013 remit for the Monetary Policy Committee (MPC), the Chancellor of the Exchequer asked the MPC to provide more information about the trade-offs inherent in setting monetary policy to meet a forward-looking inflation target while giving due consideration to the desirability of avoiding undue output volatility.

The Committee was also asked to provide an assessment of whether it would be appropriate, given the current exceptional economic circumstances, to deploy explicit forward guidance - including intermediate thresholds - in order to meet its objectives more effectively.』

『This document sets out the MPC’s response to those requests.』

つーことで、このレポートのようなものは一応建付けとしては財務大臣あて書簡の一環のようですな。


・結局何をやりたいのかが判らない理由は「フォワードガイダンスやりながらインフレ目標一点張りを継続」なこと

小見出しが長くてスイマセン。まあそういうことだと思いますけどね。

ファイルの7枚目から始まる『Executive summary』の所は概ねこの前引用したプレスリリースの話を冒頭でしていて、その内容のもうちょっと細かい話が展開されるという物件で、大体からしてサマリーで3ページあってその後の背景説明が延々と続くという時点でナンジャコラという所なのですが、観賞用としては中々面白いので以下鑑賞ということで参ります。

#なお、このネタで今週持たせてやろうなどという事は毛頭考えておりません(キリッ)

最初の部分はスレッショルドとノックアウト条件の話なのでちょっとパスしまして、声明文で出ていた話をもうちょっと敷衍した辺りから参ります。

『In essence, the MPC judges that, until the margin of slack within the economy has narrowed significantly, it will be appropriate to maintain the current exceptionally stimulative stance of monetary policy, provided that such an approach remains consistent with its primary objective of price stability and does not endanger financial stability.』

経済のスラックが顕著に縮小しない限りは、緩和的な金融政策を継続しても物価安定と金融安定に対しての弊害は少ない、という認識を示しております。

まあこの時点でホンマカイナという風情ではありまして、BOEの物価に対するアセスメントというか分析の推移を見ていると、最初の頃は「経済のスラックがあるので物価はいずれターゲットに向かって低下する」という理論を唱えていたのに対して、まてど暮らせど物価がサガランチ会長となって「経済のスラックがあるのに物価が下がらんとはどういうことや」という話になって今度は「英国経済の生産性が低いまま推移しているのが物価を中々下げない事に繋がっている」というような話をしておりましたので、そこから考えると「経済のスラックがあるうちは超緩和政策無問題だぜヒャッハー」にまた宗旨替えですかそうですかというのはマニア的にはツッコミ所ではあります。

『This approach is consistent with the MPC’s objectives, as defined by its remit.』

ほほう(棒)

『The MPC’s primary objective is to maintain price stability - as defined by the Government’s 2% inflation target - and, subject to that, to support the Government’s economic policies, including those for growth and employment. The inflation target applies at all times. The remit also recognises that the actual inflation rate will, on occasion, depart from the 2% target as a result of shocks and disturbances. In the face of such disturbances, particularly when they are large or persistent, the MPC may be confronted with a trade-off between the speed with which it returns inflation to the target and the scope for economic expansion. The remit allows the Committee to extend or reduce the period over which it intends to return inflation to the target, provided that such an approach remains consistent with meeting the inflation target in the medium term.』

でまあここでインフレーションターゲットとはみたいな話をおっぱじめているのが実にこう今回のフォワードガイダンスの話をややこしくしているのですよね。

んでもって今日はそこの引用まで手が回らないので明日のネタ要因なのですが、一方でこの後の方にある背景説明の中ではBOEは「金融政策は経済の一般的な物価水準のみを決定することができるが、長期的な経済の実質レベルや他の変数、例えば失業率などについては影響を与えることができない」(キリッ)とお前はFEDに喧嘩を売っとるのかという貫録の説明をしていまして(読みたい人はPDF16枚目にあるコラムをどうぞ)、失業率スレッショルドとは何なのかという風情。

つーことで、最初スレッショルドを見た時に「これはインフレターゲットから失業率重視に変更したのか」と思わせた訳ですが、ここの大演説コーナーを見ると思いっきりインフレターゲットをベースにした話をしているということで、こらまあ何をやりたいのかというのが判らんわなあという所であります。


・現状の経済認識ですが

その次のパラグラフから。

『Unlike the first decade of the MPC’s existence, the UK economy has been subject to substantial disturbances during the past six years, including not only the global financial crisis and the attendant need for significant private and public sector balance sheet repair, but also the repercussions of the continuing adjustment within the euro area and several significant cost shocks.』

金融危機以降の英国経済は金融危機やバランスシート問題やらユーロ圏問題やその他の価格ショックなどでここ6年あばばばばーでしたと。

『As a consequence, output has remained depressed while inflation has been persistently above the 2% target. Moreover, employment has remained surprisingly resilient and productivity unusually weak, leading to considerable uncertainty about the supply capacity of the economy and the extent to which the deterioration in supply performance will reverse as demand recovers.』

でその結果生産は弱くて経済のスラックは大きく、失業もうんこな中で物価は2%超え状態が継続的に続いたと。

『As a result, the Committee has been faced with the need to balance the risk of achieving an insufficiently rapid restoration in activity against the risk that continued elevated inflation results in medium-term inflation expectations becoming less well anchored to the target. In addition, the scope for further cuts in Bank Rate has been limited since early 2009, complicating the conduct of monetary policy.』

インフレ期待のアンカーが弱まるリスクとの兼ね合いとか名目金利制約とかの中でリスクをどうバランスさせて金融政策を運営するかということを考える困難に直面とな。


・つーことですのでフォワードガイダンスは「リスクバランスアプローチ」らしい

『The MPC has in the past provided broad guidance on its reaction function via its Inflation Reports, the minutes of its monthly meetings, evidence to the Treasury Committee, and speeches by individual Committee members. In the current exceptional circumstances, with both inflation and economic activity far from desirable levels, the MPC has decided to provide explicit forward guidance. In these exceptional circumstances, explicit forward guidance can enhance the effectiveness of monetary stimulus in three ways.』

で、その3つの有効性ですけど・・・・・・・・

『1) It provides greater clarity about the MPC’s view of the appropriate trade-off between the horizon over which inflation is returned to the target and the speed with which growth and employment recover. The forward guidance agreed on 1 August 2013 clarifies that the MPC will seek to reduce the margin of slack in the economy, if necessary by varying the speed at which inflation returns to the target, but only if that does not entail material risks to its overriding objective of price stability. In particular, the guidance is subject to two price stability ‘knockouts’ that, if breached, would mean that the guidance would no longer apply: first, if in the MPC’s view, it is more likely than not that CPI inflation 18 to 24 months ahead will be at least half a percentage point above the 2% target; and second, if medium-term inflation expectations no longer remain sufficiently well anchored.』

は?という感じなのですが、ここの説明が結局物価を重視するのか景気を重視するのか非常に訳判りにくいという感じでして、フォワードガイダンスはそもそも論として景気重視のために将来の金融政策を縛るものなのに対して、一方でこうやってインフレターゲット重視の話をやたらと強調するというのが何とも。

『2) It reduces uncertainty about the future path of monetary policy as the economy recovers. In particular, it increases the understanding of financial market participants, businesses and households of the conditions under which the highly stimulative stance of monetary policy will be maintained. That should reduce the risk that, as the recovery gains traction, market interest rates rise prematurely and people worry excessively about early rises in borrowing costs. By so doing, it should help to secure a recovery of sufficient strength and duration to return output, employment and incomes to their full potential levels, consistent with medium-term price stability.』

まあこれも虫の良い話だと思うのですが、一応「景気が回復した時の先行き金融政策パスの不確実性を減らすことによって金利が安定する」という理屈を掲げています。つまりは景気回復の初期段階において、金融政策の出口論が出て早すぎる市場金利の上昇を起こしたくない、という意思は判るのですが、実際にそれがワークするのかというとだいぶ別問題だと思いますし、大体からしてスレッショルドが近すぎ(つーか物価は上抜けとるし)なのでこの効果を期待するのは無理だと思う。

『3) It delivers a robust framework within which the MPC can explore the scope for economic expansion without putting price and financial stability at risk.』

もうね、これ虫良すぎるでしょとしか申し上げようが無いのですけどね。

『The trade-off between the horizon over which inflation is returned to the target and the speed with which output and employment recover is unusually uncertain at present.』

それはそうなのですが。

『Moreover, the sustained period for which interest rates have been held at historically low levels means there may also be a trade-off between the support monetary policy is able to provide to the UK real economy and the risks that might pose to financial stability.』

超緩和を必要以上に継続すると金融不安定リスクというのはまあその通り。

『Misjudging either of these trade-offs could have significant costs in the medium term. Rather than having to make a firm judgement about the extent to which it can reduce the margin of slack without prompting either of these risks, the existence of the price stability and financial stability knockouts allows the MPC to learn and update its view of the tradeoffs as the economy recovers.』

ふむ。

『In particular, if supply picks up strongly as demand increases, guidance can maintain the current exceptional degree of stimulus until the margin of slack within the economy has narrowed substantially. But if material risks to either price stability or financial stability emerge - such that any of the knockouts were breached - then the guidance would no longer hold and the MPC would reassess the appropriate stance of monetary policy.』

へーという所ですが、経済が順調に回復する中では超緩和政策を継続しますが、一方でファイナンシャルスタビリティーやインフレ期待の不安定化のリスクが高まった場合はその時に改めて適切な政策を考えますのでフォワードガイダンスは反故になりますとな。

『Importantly, the existence of the knockouts, by demonstrating the MPC’s unwillingness to tolerate any material risks to price stability or financial stability, may reduce the likelihood of either risk occurring.』

従って金融不安定化やインフレ期待の望ましくない上昇を防ぐと言う意思を示すということによって、これらの不安定化を防ぐのです(キリッ)という話でして、何だかねえという気はするのですけれども、まあそういうややインチキな理屈になっているのでありますた。


・しまった時間が無いので続きは明日

で、この次に何で「失業率7%スレッショルド」を付けるようになったのかという背景説明があるのですが、時間切れですすいませんすいません。

ちなみに、この先の部分を引用する前に先に申し上げておきますと、BOEパターンのスレッショルドはFED方式と同じように「これはスレッショルドであってトリガーではありません」という説明なのですが、BOEの場合は「このスレッショルドに達してからさてどうしましょうかという検討を開始します」という説明を前面に打ち出しておりまして、そーゆー意味ではFEDの6.5%スレショルドと比較してより緩い感じがしますけどどうでしょうかね。

#以下明日に続く(大汗)

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2013/08/08

ということでBOEのフォワードガイダンスなのですが・・・・・・・・・・・・

○ドキュメント大杉勝男ですわ

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTJE97600Q20130807
英ポンドが1カ月半ぶり高値、中銀の失業率の政策目標設定受け
2013年 08月 8日 00:33 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MR5MYY6JTSEC01.html
英中銀総裁:政策見通しに数値基準を連動−条件次第で解除も
更新日時: 2013/08/08 03:08 JST

えーっとですね、最初にヘッドライン出た時は「えーこれインフレ目標の形骸化かよー」と思う方が自然だと思うように、ポンドは下がるわ短期ゾーンのGiltは買われたけど10年のGlitは金利上昇するわという反応をしていたのですが、説明文書を見た後にさらにインフレレポートのプレコンとかもあったりして、その後の反応が上記の2番目にあるようにそんなに強いフォワードガイダンスじゃないということになったんですかね、良くわかりません。

つーのはですね、今回の決定に関するドキュメントがBOE大杉だわというのもありますのよ。

フォワードガイダンス導入に関するニュースリリースがこいつ。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2013/096.aspx
News Release - Bank of England provides explicit guidance regarding the future conduct of monetary policy

インフレレポートに関するリリース、つーかリンク集状態。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/inflationreport/2013/ir1303.aspx
Inflation Report, August 2013


でまあ上記リンク集ですが、本ちゃんのインフレーションレポートはともかくとして、最初のカーニー総裁の説明と質疑応答はいつも通りにあるのですけど・・・・・・・・・

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/inflationreport/2013/irspnote070813.pdf
INFLATION REPORT PRESS CONFERENCE
Wednesday 7 August 2013
Opening Remarks by the Governor

インフレレポートのプレコンと言いつつ説明の大半がフォワードガイダンスに関する話なのはまあシャーナイナイではありますけどね。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/inflationreport/2013/conf070813.pdf
Quarterly Inflation Report Q&A
7th August 2013

まあ当然ながら一発目からフォワードガイダンスの質疑応答になっているのだが、27ページもあるので(毎度その程度の量があるので今回特に多い訳では無い)残念ながら週末の課題である。

・・・・・・・とまあここまでは良いのですが、今回何か凄そうに見えるものがががが。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/inflationreport/2013/ir13augforwardguidance.pdf
Monetary policy trade-offs and forward guidance
August 2013

何とPDF48枚組でして、表紙とか目次とかるので本文は38ページになるのですが、まあああでもないこうでもないとの大演説モード。冒頭部分はだいたい最初のBOEのリリースとかカーニー総裁の会見での冒頭説明と被っているのですが、その後理論的背景と思われるもの(と思われるというのは超斜め読みしかしていないのでなんですけどorzorz)を出しているという代物であります。

まあ何ですな、こういう理論的背景の説明をするっつーのはまあ随分色々と練ったんですねというのは判るのですけれども、ただまあ金融政策に関する説明がドキュメント30ページ以上に渡ってああでもないこうでもない、という状況になっていること自体が「新たな政策のローンチ」という意味で如何なものか(本来フレームワークはシンプルな方がベターであって、ああでもないこうでもないと大演説をしないといけない時点で政策としてどこかに無理矢理部分があるということを意味するでしょと思うのだが)という気もしますが、38ページ精読は土日にでも行う(って時間が・・・・・・・)ということでありまする。


さてさて、単にあたくし用のリンク集を付けるのに能書きをおまけに付けたらそもそも何の話をしているのかワカランチ会長になって参りましたが(あほです)、最初にこのリリースに関するヘッドラインが出た時には「え?失業率スレショルド??」という反応をする罠と思い、その次に「1年半から2年のインフレ見通し2.5%越えたら」ってお前アクチュアルの物価がほとんど経常的にと言っても良い位マンデートを大きく上回って推移しているのにナメトンノカと思うのかなあとゆー所なのですけれども、さらに総裁の会見とかで追加情報もあるんでしょうなあと思います。

#つーことで詳しく読むにはこれ全部のドキュメントを相当真面目に読んで、ついでに言えば今度出るMPCのミニッツ(いつもだと3週間後に出るのだが今回は何と来週(2週間で)出るようです)も合わせないとマジワカランチ会長っすよ


○ではまあ声明文の説明を読んでみるぞなもし

最初見たら「インフレ目標の形骸化かよ」と思いましたがががが、つーことでとりあえず普通の人が最初に読むリリースの方でも。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2013/096.aspx
News Release - Bank of England provides explicit guidance regarding the future conduct of monetary policy

『At its meeting on 1 August, the Bank of England’s Monetary Policy Committee (MPC) voted to provide some explicit guidance regarding the future conduct of monetary policy.』

ということで、明示的なフォワードガイダンス導入キタコレということですがさて・・・・・・・・

『The Committee intends at a minimum to maintain the current highly stimulative stance of monetary policy until economic slack has been substantially reduced, provided this does not entail material risks to either price stability or financial stability.』

現在の高度に緩和的な金融政策運営スタンスに関して、その金融政策スタンスが物価安定やファイナンシャルスタビリティーを損なわない限りにおいて、経済のスラックが顕著に縮小するまで継続するとゆーことで・・・・・・・

『In particular, the MPC intends not to raise Bank Rate from its current level of 0.5% at least until the Labour Force Survey headline measure of the unemployment rate has fallen to a threshold of 7%, subject to the conditions below.』

フォワードガイダンスキタコレなのですが、0.5%の政策金利を引き上げませんよというガイダンスに関しまして、LFSの総合失業率が7.0%の閾値に達するまでは少なくとも現在水準からの利上げは行いませんよ、ということですが、以下の付帯条件が「provided this does not entail material risks to either price stability or financial stability」という部分になる訳ですな。

『The MPC stands ready to undertake further asset purchases while the unemployment rate remains above 7% if it judges that additional monetary stimulus is warranted. But until the unemployment threshold is reached, and subject to the conditions below, the MPC intends not to reduce the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves and, consistent with that, intends to reinvest the cash flows associated with all maturing gilts held in the Asset Purchase Facility.』

フォワードガイダンスにはAPPでの資産買入規模の維持しますし、必要なら買入規模拡大も有るでよというのも含めているというのが米国と違っている(米国のフォワードガイダンスは金利政策は明示的にスレッショルドを置きながら資産買入に関しては微妙に有耶無耶にしていた(あたしゃ最初からその点指摘してましたけど、とたまには自画自賛させてケロケロ)のに対して、BOEの場合は「量と金利は一体」的な話をしているのがチャーミング。

『The guidance linking Bank Rate and asset sales to the unemployment threshold would cease to hold if any of the following three ‘knockouts’ were breached:』

ただまあしらっとここで「asset sales」とか言ってて出口で平然と国債叩き売りをしてくるような言い方をしているのもこれまたチャーミングですが、3つの条件を「ノックアウト」ってお前エキゾチックオプションかよ^^という所ですがその条件とは。

『・in the MPC’s view, it is more likely than not, that CPI inflation 18 to 24 months ahead will be 0.5 percentage points or more above the 2% target;』

これ最初に読んだ時にナメトンノカと思った訳ですが、お前の所は年がら年中アクチュアルの物価水準が2%を大きく超えて推移して、その度に「中期的には物価は2%ターゲットに向かうんです(キリッ)」とか抜かして財務大臣に紙を書いている訳で、まあゆうてしまえばここの文言ってかなーーーーりファジーな話になると思うのですよね。

つまりですな、今の調子で「足元暫くは高いですけれども中期的には下がるから無問題」と言い続ける攻撃をするのであれば、失業率重視政策ということになる訳で、それってインフレ目標の形骸化に繋がりはせんかという連想になるので、まあファーストアクションでギルトのカーブがツイストスティープしてポンドが下落する罠と思いましたし、これによって恐らくインフレ期待のアンカーが弱まるでしょとは思いますので、実際にインフレ期待が上に振れた場合にこの条項をどう適用するか次第で何とでもなる罠と思いました。

まー米国の場合もスレッショルドに中期的な物価見通しの2.5%というのが入っていまして、その期間に関しても1〜2年程度ということですので、その辺りだけ見ると米国のフォワードガイダンスに建付けは似ているのですが、何せ毎度申し上げておりますように、英国の場合はそもそもインフレ目標に対して実際のインフレ数値が上振れ方向でマンデート逸脱状態になっているので、既に現時点でこの「1年半から2年先の物価見通しが2.5%を上回らない」という条件に相当の鉛筆舐め舐め部分(裁量部分ともいう)が入る事になるので、その点どういう折り合い付けるんでしょうね、というのは若しかしたら質疑応答の方に詳しくあるかもしれませんね!

話が長くなったが後2つのノックアウトオプションのトリガー^^;

『・ medium-term inflation expectations no longer remain sufficiently well anchored;』

『・ the Financial Policy Committee (FPC) judges that the stance of monetary policy poses a significant threat to financial stability that cannot be contained by the substantial range of mitigating policy actions available to the FPC, the Financial Conduct Authority and the Prudential Regulation Authority in a way consistent with their objectives.』

ということで、中期的なインフレ期待がアンカーされない場合、というのと、FPCがファイナンシャルスタビリティーの面で緩和的な金融政策が問題をもたらしていると判断した場合、というのがありましてこちらはまあかなーり定性的な話になりますな。

でまあ先ほどの話と同じですけど、この「中期的なインフレ目標がアンカーされない」という判断を実際に切りだすような事が起きる可能性があるのってフォワードガイダンスを先に投下している米国と比較しますと英国の方がどこからどう見てもマズーなのでありまして、実際にこの条項をどういう経済指標や市場指標、サーベイなどを見ながら判断するのかというのが注目される所でしょう。まあ手の内は見せない(「いやいやそれは総合判断ですよ」となる筈)でしょうけど。

『The Committee will continue to set the level of Bank Rate and the size of the asset purchase programme each month, taking these criteria into account. The action taken by the MPC if any of these knockouts were breached would depend upon its assessment at the time as to the appropriate setting of monetary policy in order to fulfil its remit to deliver price stability.』

とまあここでは「in order to fulfil its remit to deliver price stability」とあくまでもインフレ目標が第一の責務である、という説明をしているのがややこしい(まあそう説明しないといけないので仕方ない面はあるのですが)訳で、この手前まで見ていると「物価の少々の上振れを覚悟しつつ経済に緩和効果を」という文脈になりそうな展開なのですが、ここではインフレ目標の責務という話をして「インフレ期待が上がるのも阻止」というような話(まあ虫の良い話にも見えますが)をしております。

『There is therefore no presumption that breaching any of these knockouts would lead to an immediate increase in Bank Rate or sale of assets.』

これまたややこしくて、ノックアウトに達したからと言ってもじゃあ即座に利上げしたりAPPの資産売却をするのかと言うとそうでもありませんとか、何かもうね・・・・・・・

『Further information regarding the background to this decision can be found in the document Monetary policy trade-offs and forward guidance published alongside today’s Inflation Report, available at http://www.bankofengland.co.uk/publications/Documents/inflationreport/2013/ir13augforwardguidance.pdf

ということで、さっきリンクを付けた貫録の48ページ(ただし本文38ページ)を読めとかもうorzですな。で、ここで華麗にそのドキュメントネタを投入したいが量は兎も角まだ斜め読みしかしてないしこれから読む時間がががががなので勘弁(すいません)。

『As previously announced on 1 August, and consistent with the policy guidance above, the Committee also voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%, and to maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion. The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 14 August.』

つーことで何と2週間でミニッツ公開ですかそうですか。

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2013/08/07

○結局どっちなのかよく判らんですがそれはそれとして雑談

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MR4CZX6VDKHS01.html
シカゴ連銀総裁:債券購入総額は1.2兆ドルに、今年1月以降
更新日時: 2013/08/07 03:17 JST

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE97501V20130806
米資産購入は年内縮小の公算、指標次第で9月開始も=シカゴ連銀総裁
2013年 08月 7日 04:35 JST

ソースによって9月縮小(というか本当は「拡大ペースの減額」なのだが・・・・・)なのかそうじゃないのかさっぱりワカランチ会長ですが(−−;

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE97501Y20130806
米緩和縮小は9月の可能性、先送りも─アトランタ連銀総裁=MNI
2013年 08月 7日 02:38 JST

シカゴとアトランタの連銀サイトに行ってもこの辺りのコメントが出ていないので、実際にどういう文脈でどういう話をしたのかが知らんがな状態なのが遺憾にも程があるのですけれども、今回の2名はどちらかと言うと「ハト」系と目されるお方ですので、まあその辺りから「経済が想定通りに推移すれば9月Taperingの可能性も排除しません」というのが出てくるということでしたらもっと米債とか反応するのかと思えばそうでも無さそうという状況。

つまりまあ何だかんだと言いながらも米国市場的には9月のTapering開始についてはまあそんなもんだろと思っているとゆーのと、最近FEDが強調する「LSAPの拡大ペースを落とすのに着手するのと金利政策は別問題」というロジックに皆さん乗って価格形成していますね。とゆー所なんでしょうな、よー知らんが。


先般来申し上げておりますように、Taperingの着手、ということになりますとそこそこ大きな変化ということになる(=ということで「バランスシート規模を減らす訳でも無い」事にこれだけエネルギーが必要になる結果となった「オープンエンドQE」というのは政策技術論的に明らかに失敗だったですよね、という話になるのだが)ので、それはつまり実施する時には記者会見がセットの9月か12月が適切なのですが、逆さ絵先生が次もFRB議長やるなら兎も角、そうじゃないのに12月18日という任期どん詰まりまで引っ張るというのは普通は考えにくいです罠。

勿論10月から開始という可能性もあるのですが、10月FOMCは声明文1本出して終了の回になりますし、SEPも出ない回になりますし、うっかりするとこの時期には時期FRB議長人事が出ている可能性がありますので、まあその時点で逆さ絵先生がいわゆる死に体モードになって重要な決定をするのも如何なものか状態になっているリスクもありますんで(10月会合は10月と言っても29-30なので殆ど11月)、スケジュールから逆算すると9月が一番美しい。

もちろん「データ次第」というのはあるにせよ、そうは言いましても色々なプロトコルというものも考えると9月しか日程的に有り得ず、まーハト派と目される人たちも別にそこに強硬に反対するという風情でも無さそうな中ですと・・・・・・・となりそうですけどにゃ。

#Tapering着手したから金利が上がるかというとこれは一筋縄ではいかないと思います


○ブラード総裁の直近講演から少々

毎度お馴染みブラード先生。
http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=1877
AUGUST 02
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Debate on Tapering the Fed’s Asset Purchases

プレゼンのスライドショーはこちら(プレゼンテーションのPDF化なので重い)
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/BullardBrandeisMunicipalFinanceConference2August2013.pdf

要約文章の方(上の方のURL先)から引用します。

『BOSTON - Federal Reserve Bank of St. Louis President James Bullard gave remarks Friday on “The Tapering Debate” at the 2013 Municipal Finance Conference, hosted by the Brandeis International Business School.』

こらまた直球の題名ですが、この豪直球(?)振りがブラードクオリティ。


・LSAPに関しては年後半の経済データを良く見てから、と9月着手反対っぽく

『During his presentation, Bullard discussed recent developments in monetary policy. In particular, he noted that at its June meeting, the Federal Open Market Committee (FOMC) authorized Fed Chairman Ben Bernanke to discuss possible plans for reducing the pace of asset purchases, which is often referred to as “tapering” asset purchases.』

さいですな。

『“The financial market reaction was substantial, even though the Committee did not actually change any policy settings at that point or at its recently-concluded July meeting,” Bullard said.』

>The financial market reaction was substantial

この前ネタにした(あれはタイミングが6月末の講演ですから更にですけど)パウエル理事の講演などでも指摘されていましたが、ほぼ全てのFED高官から市場の反応についての感想が出ているというのは「出口政策の困難さ」というのを恐らく初めて実感し、Taperingトークだけなのにあれだけの反応をした事についてFED高官が軽い衝撃を受けたということを示しているんでしょうなあと思いますがどうでしょう。

『Given that altering the pace of asset purchases will depend on economic conditions, Bullard shared his views on how four areas of macroeconomic performance-labor markets, GDP growth, the Fed’s large balance sheet and inflation-might affect tapering. 』

この辺は後の方に。

『“The Committee needs to see more data on macroeconomic performance for the second half of 2013 before making a judgment on this matter,” Bullard concluded.』


>needs to see more data on macroeconomic performance for the second half of 2013

つーことで、ブラード総裁は「年後半の経済パフォーマンスのデータをより多く見てから」のTapering着手を主張しているので、まあ普通にハト成分が高いというのが結論のようです。


・LSAPと金利政策は別ですといういつもの理屈

で、次が『Recent Developments in Monetary Policy』という小見出し。

『Current U.S. monetary policy has three components: the policy rate, forward guidance and asset purchases, he said. The policy rate has been near zero since December 2008, while forward guidance is a promise to keep that rate near zero at least until unemployment falls below 6.5 percent or inflation rises above 2.5 percent. Asset purchases of Treasury securities and mortgage-backed securities are continuing at $85 billion per month until there is substantial improvement in the labor market, as stated by the FOMC.』

まあこれは良いとしまして。

『As the Chairman has emphasized, any decision on the asset purchase program is conceptually separate from any decision concerning the policy rate. “In particular, a decision to reduce the pace of asset purchases does not change the nature of the Committee’s commitment to keep the policy rate near zero,” Bullard explained. He then discussed some possible arguments that might be made for or against tapering.』

つーことで、まあこの辺は普通の説明ですが「LSAPと金利政策は完全にセパレート」という話になっておりますな。今の所市場もこの理屈に乗った形にはなっているものの、じゃあ実際にLSAPがもう増えませんという話になった時に実際どうよというのも微妙だが。


・労働市場の改善を見る基準がファジーな件についてとな

でもって先程出ていた各項目ですけれども、まずは『Labor Market Performance』。

『Bullard noted that by some key measures (e.g., the unemployment rate and payroll employment growth), labor markets have improved since the FOMC adopted its current asset purchase program last September. However, other measures (e.g., the labor force participation rate and the employment-population ratio) have not seen such improvement.』

労働市場の改善については失業率などでは改善しているものの、参加率などでは改善が乏しいとな。

『Therefore, a key labor market issue for the tapering debate is whether the FOMC should focus attention primarily on nonfarm payroll employment and unemployment or consider a wider range of labor market indicators. “If the former, then labor markets have clearly improved since September 2012. If the latter, then labor markets may be judged to remain weak, but the criterion for labor market improvement would be considerably muddied,” Bullard said.』

こらまたオモロイ言い方ですが、改善についてどの位の所まで見て行って判断するのかとなると見る指標によって違ってくるので、その基準ということになると相当に泥まみれ(muddiedって単純に辞書引くとそんな感じなのだが・・・・)になります罠という事で、何かこの辺の判断においては議論が結構分かれているのかも知れませんねということで。


・先行きについては比較的強めに見ているようではあるものの・・・・・・・

次が『Growth in Real GDP』である。

『Recent real GDP growth has been weak, averaging about 1 percent over the past three quarters. Bullard noted that while the FOMC would not normally remove accommodation if real GDP growth was viewed as weak, the FOMC may still wish to remove accommodation if future growth is expected to be strong.』

先行きに相当の自信がないとここもとのGDPの弱めな状況で緩和を取り除く事はしませんよねとな。

『Bullard then addressed the case for an optimistic view of the U.S. economy, explaining that many, but not all, of the factors slowing down the U.S. economy are waning. “Real estate markets are improving, equity markets have rallied, the European sovereign debt crisis remains subdued for now, U.S. fiscal brinksmanship has been less of a problem and household deleveraging is further along,” he said.』

と言いつつもブラード総裁は景気に関しては比較的先行き楽観しているようですね。

『Although he expressed caution against relying too much on optimistic forecasts alone, Bullard noted that a key growth issue for the tapering debate is whether the FOMC should focus attention primarily on recent growth performance or on future projected growth.』

ふむ。

『“If the former, then growth has clearly been weak in recent quarters. If the latter, then growth may be judged to be improving, but forecasting performance for this variable has been poor over the last several years,” he said.』

ふーむ。


・面白いのは「バランスシート規模」に対する警戒である

ここがオモロイというのが次の小見出し『The Size of the Fed’s Balance Sheet』で、バランスシート規模のプロコンという話。

『The Fed’s large balance sheet has been viewed as posing risks to the FOMC’s exit from unconventional monetary policy, Bullard noted.』

巨大なバランスシートは出口政策のリスクを与えるという事は、現在の所ハト派分類となるブラード総裁ですら指摘とはキタコレ。

『While the balance sheet is large by the standards of the past several decades, he pointed out that the Fed’s balance sheet relative to GDP is not particularly large compared to other major central banks or to historical data.』

他の中銀と比較したグラフというのは上記プレゼンテーションのスライドの32枚目にあるのですが、日銀、BOE、ECB、FEDのバランスシートの対GDP比の推移を見せておりまして、ほら他の中銀と比較してFEDってそんなに大きくないよね、という図表になっておりまして、日銀のバランスシートガーという批判をしている人たちにおかれましてはこの図表についてのご感想をぜひ頂戴したいものでございます(^^)。

『Thus, regarding the balance sheet, a key issue for the tapering debate is whether the FOMC should be more concerned about its exit strategy when the size of the Fed’s balance sheet relative to GDP is 30 percent than when it is 20 percent. “If yes, then balance sheet size may be judged a constraint at some point in the future. If no, then exit is equally difficult if the balance sheet is 30 percent or 20 percent of GDP, and the Committee need not view balance sheet size as a constraint going forward,” he said.』

20%位ならまだしも30%になるとマズーとかその辺の積算根拠は判らん(まあそもそもこんなの感覚の問題になっちゃいますし、市場がどう捉えるかの問題でもありますからシャーナイナイだけど)のですが、先ほどの32枚目の図表を見ますとGDP比30%を超えてきた日銀のバランスシートテラリスクということですねわかります(違)。

まーいずれにせよ、ブラード総裁もLSAPをこの調子でノーズロで拡大し続ける事は明確にリスクと認識しているのはほほうという所ですな。


・インフレ目標論者だけにインフレが纏めに

最後が『Inflation』です。

『Turning to recent inflation developments, Bullard noted that current inflation is low and that, on balance, inflation expectations have declined since March. “The Committee would not normally remove policy accommodation in an environment where inflation is below target and is projected to remain there,” he said.』

キタコレ!ということで「物価がこの状況で緩和政策を取り除く方向とか常識的に考えて有り得ん」攻撃ですな。まあブラード総裁はFED高官の中でもインフレターゲッティングを一番重視する方向の人ですから当然なのは何度もこのネタが出ているのでご案内の通りだと思いますが。

『A key inflation issue for the tapering debate is, therefore, whether the current low levels of inflation, as measured by the year-over-year percentage change in the personal consumption expenditures price index, will naturally move up toward 2 percent in the coming months and quarters. 』

つーことで・・・・・・・・・

『If the answer is yes, Bullard said, the FOMC could reduce the pace of asset purchases without worrying about pushing inflation even further below target. “If no, then inflation may be pushed even lower by a decision to taper and hence the risk of deflation may increase,” he added.』

ブラード総裁はTapering着手には少なくとも物価上昇率が戻り基調を見せないと賛成しない、という明確なメッセージでもあります。物価が上がらないままバランスシートだけ拡大していった場合どういう話をしだすのか、というのも見てみたいですけれども、まあその前に大勢見解の方でバランスシート拡大が止まる方向なのでそれは見れないかなあとは思います。


・ブラード総裁の結論は「年後半のデータを慎重に見極めてからTapering着手を検討すべき」

最後がまとめ。

『Regarding these four issues for the tapering debate, Bullard suggested that most of them can be better addressed once the FOMC sees additional macroeconomic data from the second half of this year. “In particular, it is important to wait to see if better macroeconomic outcomes materialize in the months and quarters ahead,” Bullard concluded.』

さっきまあそういう話をしていましたがね。

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2013/08/05

○ドラギ総裁質疑応答から「金利上昇に関するコメント」と「フォワードガイダンスに関するコメント」を少々

http://www.ecb.int/press/pressconf/2013/html/is130801.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 1 August 2013

・金利上昇がケシカランという認識

冒頭説明部分のリスクの話がキタコレである。

『The risks surrounding the economic outlook for the euro area continue to be on the downside. Recent developments in global money and financial market conditions and related uncertainties may have the potential to negatively affect economic conditions.』

キタコレという所ですが、経済のリスクがダウンサイドなのは良いとして、最初に出てくるリスク認識が何ということでしょう!直近のグローバルマネーと金融市場の環境およびそれに起因する不確実性というのを出しています!

まー欧州経済は改善の傾向ということにしているものの、ペースが遅いとはしておりまして、そういう認識の中で市場金利が上昇するのは困るという事なのでしょうが、市場のファンディング状況があばばばばーとか短期金融市場に異常なテンションとかいう訳でも無いただの金利上昇だけでメインのダウンサイドリスク的な言い方をするというのも何だかねえという感じはします。

つまり、口先介入して市場金利の上昇を抑えたいというのは判るのですけれども、ここまで話を大きくして介入せんでも良かろうと思う訳で、魔弾の射手がその腕に溺れて最後に魔王が目の前に現れてしまうの巻という流れになることを懸念する訳で市場への口先介入も程々にとはドラギ先生を見ていて思うのですけどねえ。

まあ難しいのは市場金利上昇はケシカランというならそもそももっと経済の見通しを弱く言えば良いだけの話なのですけれども、そのような景気の悪い話をすると今度はマインドの悪化を中銀が自ら打ち込むという話になるので、中々そういう話も出来ないということで、口先介入するにも限界というのが有りますなというお話。

ちなみにその他のリスクは内外需要が想定よりも弱い事というのに加えまして「構造改革の遅れ」でして、構造改革ガーを強調するのは直近特にその辺りの話に力入れているなあという印象も受けますです、はい。

『Other downside risks include the possibility of weaker than expected domestic and global demand and slow or insufficient implementation of structural reforms in euro area countries.』


・クレジットに関しての説明を詳しく

物価に関する説明は前月と同じで「暫く低空飛行ですが中期的には2%以下かつ2%近辺という目標に近づくですよああそれから上下のリスクはバランスだよ」という話なので割愛致しまして、その後の所で今回もまたクレジットに関する説明が。

『Turning to the monetary analysis, underlying money and, in particular, credit growth remained subdued in June.』

これまた最近になってここのコーナーでの説明っぷりが徐々に変化気味なのですが、マネタリーの分析に関する部分ではマネタリーの話よりもクレジット市場の話の方が強調されています罠というところであります、まあ今月急にという訳では無いですけど。

『Annual growth in broad money (M3) decreased in June to 2.3%, from 2.9% in May. Moreover, annual growth in M1 decreased to 7.5% in June, from 8.4% in May.』

M3の話はこれだけ。

『The annual rate of change of loans to the private sector weakened further. While the annual growth rate of loans to households (adjusted for loan sales and securitisation) remained at 0.3% in June, broadly unchanged since the turn of the year, the annual rate of change of loans to non-financial corporations (adjusted for loan sales and securitisation) was -2.3% in June, after -2.1% in May.』

民間向け貸出の伸びが更に弱くなっている(前年比マイナスが拡大)という話がキタコレ。

『Weak loan dynamics continue to reflect primarily the current stage of the business cycle, heightened credit risk and the ongoing adjustment of financial and non-financial sector balance sheets. The bank lending survey for the second quarter of 2013 confirms that borrowers’ risk and macroeconomic uncertainty remained the main factors restraining banks’ lending policies. At the same time, the degree of net tightening of credit standards for loans to non-financial corporations remained unchanged in the second quarter of 2013, compared with the first quarter, and declined for loans to households.』

つーことでビジネスサイクルで弱い分もあるのですが、バランスシート調整が続く中でクレジットリスクに対する警戒感の高まりも影響しており、銀行の貸出態度に関しても先行きの不透明感などが原因で貸出政策がタイトな状態が継続しているという説明。

ということで、金利がどうのこうのの政策やるよりもこっちの支援をもうちょっとやったらとは傍で見ていて思うのですけれども、ブンデスバンクの伝統もあるのか民間クレジットに関して手を突っ込んで行くという事に関してはECBって微妙(その割には担保政策だけは何か時々えーというのが出てくるのも不思議ちゃんではあるのだが)ですなあという感じです。


・財政に関しては中期的な健全化の重要性を主張

この辺は毎度ですがわざわざ成長重視政策に関する嫌味を入れるとな。

『As regards fiscal policies, in order to bring debt ratios back on a downward path, euro area countries should not unravel their efforts to reduce government budget deficits.』

should notと来ましたな。

『The emphasis should be on growth-friendly fiscal strategies which have a medium-term perspective and combine improving the quality and efficiency of public services with minimising distortionary effects of taxation. To reinforce the overall impact of such a strategy, Member States must step up the implementation of the necessary structural reforms so as to foster competitiveness, growth and job creation. Removing rigidities in the labour market, lowering the administrative burden and strengthening competition in product markets will particularly support small and medium-sized enterprises. These structural reform measures are essential to bring down the currently high level of unemployment, in particular among the younger citizens of the euro area.』

中期的な財政健全化のためにも構造改革が必要という話を毎度のようにしているのですが、こちらに関してはまあECBの立場というのもありますが、各国が財政再建コースを知らんがな状態にするのについては釘を差すというパターンですな。

というのが説明でして、質疑応答はのっけからオモロイ。

・フォワードガイダンスに関して&金利の引き下げに関して

冒頭の質疑ですが、質問もまあ微妙に嫌味が効いているのですが答えの方がアレ。

『Question: Mr Draghi, first of all, I would like to know whether the Governing Council discussed cutting rates today and whether the decision to hold rates at 0.5% was unanimous.』

金利引き下げの議論は無かったのですか、金利については全会一致ですか?という質問は普通ですな。

『My second question is regarding forward guidance.』

キタコレ。

『You have just confirmed the forward guidance you gave in July, and the market impact you had in July has fizzled out by now. It had an impact, but then the impact weakened.』

今日はドラギさん7月のフォワードガイダンスをコンファームしただけですね、でも7月のフォワードガイダンスのマーケットインパクトはもう無いです(fizzled outって辞書を見ると「失敗した」とか出てくる)ねえと嫌味嫌味。

『Now, other central banks started off like the ECB - they had a vague form of forward guidance and then progressed further and introduced a more explicit form of forward guidance. I would like to ask you whether you would rule out that the ECB could go down a similar path.』

これはまた(;∀;)イイシツモンダナーという所ですが、他の中央銀行のフォワードガイダンスの推移を見ておりますと最初は今のECBみたいに曖昧なフォワードガイダンスを実施してその後より具体的かつ明示的なガイダンスを導入していますが、ECBも同じようなパスを辿るのでしょうかとかどう見ても嫌味です本当にありがとうございました。

で、その答えがまたオモロイのですけどね。

『Draghi: Incoming information has confirmed our previous assessment. Underlying price pressures remain subdued, as does money and credit growth. Incoming survey data in July showed some further improvement from low levels and tentatively confirmed the expected stabilisation. So, against this background, our monetary policy stance will remain accommodative for as long as necessary. Basically, we have unanimously confirmed the forward guidance we gave last time.』

ちょwwwwこれはひどいというか何というかですけれども、7月以降に得られた経済データは見通しを確認するものでしたのでこの背景から以下棒読みというのが中々。

で、ここでの説明で何気に聞かれても居ないのに「前回示したフォワードガイダンスは全員一致でその内容をコンファームした」としていまして、わざわざ言う辺り先般のバイトマン辺りの発言(フォワードガイダンスは「海の色の変化」の意味は全くございませんが何か?って奴)で示されたフォワードガイダンスに関する不協和音という市場の認識に対するアピールもしているのでしょうなあというのがお洒落。

まあつまりは全員で一致できるのはこの曖昧な文言という話なんでしょうけどね。

『We want to be clear in this - and this is a partial response to your second question - we want to be clear about our assessment of the inflation outlook over the medium term, and about our “reaction function”.』

フォワードガイダンスに関しては金融政策の反応係数をクリアにしたいということです(キリッ)だそうで。

『We want markets to see our reaction function linked in time to the outlook for price stability.』

しかしその反応係数は「物価安定に対する見通し」じゃあどこがクリアなのかと小一時間。

『So, I will repeat what we stated, and this was unanimous: the Governing Council confirms that the key ECB interest rates, including the rate on the deposit facility , will remain at present or lower levels for an extended period of time.』

で、フォワードガイダンス文言ということですがこのどこが(以下同文)。

『This expectation continues to be based on an unchanged overall subdued outlook for inflation extending in the medium term, given the broad-based weakness in the economy and subdued monetary dynamics.』

結局概念的な話をしているだけという何のフォワードガイダンスだかワカランチ会長。

『So, how long will this horizon be? As long as it is our assessment that inflation remains subdued, as indicated by weak economic activity, weak credit and weak monetary aggregates.』

反応係数を明らかにする、というのはじゃあそれらのアセスメントをする際にどのような経済指標を重視していますかというような話になる筈なのですが、まあ「画期的な変化」と自賛している後ろからバイトマン先生が「金融政策スタンスに何の変化も無い」とか後ろから盛大に銃撃する状況なので、結局の所具体的な物を出すにはコンセンサスが全然とれないということでしょうな。

『As I have said, this assessment was unanimous. All interest rates, including the rate on the deposit facility, are part of that statement.』

金利についても全員一致とな。

『At the same time, let me stress this once again, liquidity will remain abundant. It will stay ample for as long as needed so as to guarantee banks full access to funding, and fixed rate full allotment will stay in place until at least July 2014, although let me underline that there is no connection between this date and the extended period of time to which the forward guidance refers.』

で、聞かれもしないのに「流動性を潤沢に供給していますし少なくとも来年の7月(この時期とフォワードガイダンスの時期は別問題、という話もしています)まではそれが続きます」という話をしているのですが・・・・・・・・・・

『Let me also say that current expectations - and this is a partial response to your last question - of rate hikes in money markets are, according to our assessment unwarranted.』

さらに聞かれもしないのに説明コーナーですけれども、金融市場における金利の上昇はECBの経済見通しに対して正当化されません、と先ほどの「経済のリスクは最近の金融環境」に続いて金利上昇警戒発言キタコレということですな。

『As I have said, current data confirm our baseline scenario, and risks are on the downside. So, developments have to be significantly better than our current baseline scenario for an outlook for price stability in order for us to change our guidance.』


・フォワードガイダンスの質問と議事要旨の質問

フォワードガイダンス繋がりで一つ飛ばして次の質問から。

『Question: First, did you discuss tying the forward guidance to a quantitative threshold or trigger, or is this a discussion that you might want to have in the future? If yes, can we expect it to be introduced sometime soon? Second, did you discuss introducing minutes? What is the latest on this issue?』

スレッショルドを付ける議論はしたのかという質問と議事要旨出す件についての討議はしたのかという質問ですな。

『Draghi: With regard to the first question, no we did not discuss that. However, our formulation of forward guidance is in line with our strategic framework, which is anchored in our assessment of the medium-term outlook for inflation, or price stability. And this outlook depends on economic activity and on money and credit developments. So this is our strategic framework, within which we can say that medium-term inflationary expectations remain firmly anchored. Within this framework, we did not discuss the introduction of thresholds or quantitative benchmarks.』

つーことで、まあ実際問題としてはスレッショルドの導入は反対が多くて議論を始めようがないというところなのか、はたまた中央銀行のDNAとして先行きの政策運営を縛るのが気に食わないという認識が強いのかは兎も角として、あくまでもECBのフォワードガイダンスは「見通しベース」のものとなっておりまして、データベースの話では無いということのようですな、まあ今の所だとは思いますが。

『On the minutes and communication, we are not starting from scratch.』

ふむ。でまあ説明をしているのだがこれがまた話を切りにくい流れで引用者が泣く。

『All central banks have changed their communication throughout the years. This central bank changed the way in which it communicated with the introduction or with the publication of forecasts a few years ago, and even earlier with the precise definition of inflation rate we aim at. Other central banks have taken on our customs and have included press conferences in their communication strategies. It was only natural that the Governing Council should ask for a richer way of communicating our deliberations beyond what is already a fairly transparent way of communicating - given that we already have monthly press conferences, the Monthly Bulletin, and many speeches and other forms of communication.』

皆さん色々とやっていますが、ECBだって会見したりブルテイン出したりスピーチしたりしてコミュニケーションの改善に努めておりますよと。

『In any event, given the increasing complexity of certain types of communication, but also in the long run, the Governing Council thought that it would be wise - as I have said - to have a richer communication of the rationale behind its decisions.』

でまあそれらの機会を通じてクリアなコミュニケーションに努めていますと。

『At this early stage, I can only be relatively general. I think that it is necessary to give an account of why certain decisions have been taken or why they have not been taken, as well as to give a sense of the discussion that has taken place within the Governing Council. 』

ふむ。

『On the other hand, we are not a one-country set-up: we are not the United States, the United Kingdom or Japan. We are members of a 17-country euro area, so it is especially important that any modifications we introduce do not put at risk or call into question the independence of the members of the Governing Council. I should remind everybody that members of the Governing Council sit around that table in their personal capacity, not as representatives of their own countries. They are acting in the interests of the euro area and of the euro. Thus, any change in communication policy should respect this essential ingredient of our monetary policy, which, in a sense, forms the basis of the credibility that this institution has acquired throughout the years. More specifically, the Executive Board will present a proposal to the Governing Council for discussion during this fall.』

ECBは一つの国の中央銀行ではないので、各国中央銀行の独立性というのも論点としてあります(でも政策議論は各国の代表としてではなくてあくまでもECB全体としての論議をしているとも)。現在のコミュニケーションポリシーは長年の工夫によって作っている制度なので、変更をするに当たってもその影響などを考慮しないといけませんというまあ慎重な話をしていますな。実際にはこの秋に執行部から理事会に対して提案をするそうな。

・・・・・・・ということですが何か判ったような判らんような話かと思ったらその次の質疑が分かりやすい。


・もうちょっとクリアカットの質疑が直後に

『Question: I have two questions on forward guidance. First, it is still not entirely clear to me what the difference is between “forward guidance” and just a forecast of the economic outlook for the economy and of inflation. Is there actually a difference, or is it like adding value to a forecast?』

フォワードガイダンスって全然クリアじゃねいですよねという質問がまたも飛ぶ(^^)。

『Second, with regard to the minutes, one of the reasons that the ECB has not published minutes so far is the fear that debates will become politicised. What made you change your view about this risk? It seems to me that the debate in Europe has even become more politicised in recent months, and not less so. What made you change your stance?』

ここの質問でさっきの説明でドラギ総裁が説明していたのがクリアになる訳ですが、議事要旨を出すとECBのメンバーが「各国の代表として発言しているのか、あくまでもECB全体の1委員として発言しているのか」というような点でややこしい事が起きるリスクがありますよね、というのがまあ議事要旨を出すことに関して躊躇する理由というのは判る気がします。

『Draghi: In response to the second question, clearly, that is where the challenge is - to be able to provide you and the markets with greater and richer information without putting into question the independence of the members of the Governing Council and without politicising the discussion, because that would certainly be a big loss. We hope that we will be able to cope with this challenge.』

なるほどですな。

『With regard to the first question, it is not really a forecast; it is more than a forecast.』

フォワードガイダンス文言の背景になるのは単なるフォーキャストではないとな!

『Allow me to point out that the statement says “ We expect”. It does not say “It is expected” and it does not say “An international institution expects”; it says “We - the policy-makers - expect the key ECB interest rates to remain at the present or lower levels for an extended period of time”. So, it is an expectation by a very specific set of policy-makers.』

何じゃこの禅問答という感じですが、フォワードガイダンスでは「It is expected(これはFRBがフォワードガイダンスで使ってる言い方ですな)」ではなく「We expect」と言っており、この「We」というのはECBという意味でのWeであり、すなわちECB理事会の総意を示すものである(キリッ)という説明なのですが、何か屁理屈感は満載というのがドラギクオリティではあるなあと思いましたぞな。

更に延々とフォワードガイダンスの質問は続くのですが、時間と量の関係上この辺で、つーかまあ主要な論点は大体この辺りまでで出ていたように思えるのですが、追加することがありましたら明日追加します。

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2013/08/02

えーっとどっちなのでしょうか(−−)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MQUU3Z6TTDSC01.html
米国株:S&P500種は初の1700台−緩和継続と経済統計で
更新日時: 2013/08/02 05:12 JST

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MQUF3K6K50XX01.html
NY外為:ドル上昇、99円台半ば−米指標好調で緩和縮小観測
更新日時: 2013/08/02 04:46 JST

まあUSTの金利が上昇しているみたいですから緩和縮小観測の方が正しいようなのですが、そのベースが指標好調という場合は・・・・・

○雑談メモである

・FOMCレビュー補足

昨日のFOMC声明文ですけれども、よーするにあの声明文で示されたのは「長期金利が経済状況を踏まえない形で跳ねるのはケシカラン」というのを全力で主張しているのは判るのですが、一方でLSAPと金利政策を思いっきり分けるという理屈を更に補強しておりまして、まーそう考えますと足元のFOMCの中心的な意図と思われるものは「金利政策に政策の重点、注目点をシフトすることによって少なくともオープンエンドQEとなっているQE3を円滑に終了する」というのが眼目にあるという事でしょうなと思われる次第。

あれだけ全力で長期金利上昇に対するケシカラン文言が並んでいる上に、ディスインフレに対する警戒文言が入っているので、そらまあハト的な声明文ではありますな。でまあそのディスインフレ文言については、足元までは金利スレッショルドの6.5%に加えて6月FOMC後の逆さ絵会見で7%という数字が出たので益々失業率にリンクしたような金融政策に見えていた「見せ方」の改善(=あくまでもデュアルマンデートですよというのを示す)に繋がっているなあとも思えます。

つーことで「金利上昇は許さん」ではある声明文が出た所で今朝の金利上昇というのがお洒落なのですけれども、たぶん経済データの好転による長期金利の上昇についてはそこまで問題視しなくて、問題視するのは政策金利の早期引き上げ思惑による中短期金利のゲロゲロ上昇だと思われますが、こういう時にFEDの高官がホイホイとコメントをする訳では無いのでその辺が判らんのは残念無念。

でまあこの「LSAPと金利政策を分ける」という話には金融緩和政策のプロコン議論とも繋がる所ではありまして、それはつまり「バランスシートが大きくなりすぎる弊害」と「必要以上の低金利政策長期化期待による利回り追求などの動きが発生する弊害」というのがまあ金融緩和政策の弊害論議としてある訳ですが、LSAPにおける「大きすぎるバランスシート」問題の弊害は結構共有されているみたいなので、こっちの論点からはQE縮小という話になるのは見えてくるのですが、その一方で金利面で言いますと、足元でやっている「LSAPと金利は別」理論で市場の早期利上げ思惑を排除するような形でフォワードガイダンス政策を強化しすぎると、金融緩和政策のもう一つの弊害である「ゴルディロックスヒャッハー相場の発生による金融不安定化」というのは却って拡大する可能性がありますよとゆーことだと思うのですよね。

くどくど申し上げてスイマセンが、つまりこれはFOMC委員の皆様の中で、金融政策のプロコン分析の中で「バランスシートが大きくなるリスク」と「低金利長期化リスク」をどのようなウェイトでどのように考えているのか、という辺りは(あくまでもプロコンレベルの話ですが)金利政策の方の出口論議に影響するかもしれませんなとは思う訳で。バランスシート巨大化リスクに関しては恐らくこの前までの金利上昇で「これ以上調子に乗ってバランスシートを拡大したら収拾がつかなくなる」という話になったと思われるのですが、今後は主に中立的な人とかハトの人とかが低金利長期化による金融不安定化に関する認識をどう考えているのかという辺りの発言を注意したいと思いまする。まあその前に今回会合のミニッツも注目ですが。


○BOE:フォワードガイダンスは来週までお預け

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2013/008.aspx

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion.』

資産買入規模は据え置きですが、まあフォワードガイダンス導入するという話をして居る中ですからこのタイミングで投下は無いわな。

『The Committee’s latest inflation and output projections will appear in the Inflation Report to be published at 10.30 on Wednesday 7 August. As previously announced, the Committee will also respond to the Chancellor’s request for its assessment of the use of thresholds and forward guidance at that time.』

ということで、来週水曜日にインフレーションレポートを出すので、そこで財務大臣に出す書簡の中でスレッショルドを使ったフォワードガイダンスのアセスメントを出しますとのことですな。

『The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 14 August.』

しかしまあ何ですな、英国の場合フォワードガイダンス政策といいましても、そもそも論としてインフレが延々とターゲットを上振れて推移している状況になっていて、超厳格に物価のみを目標にしているんだったら金融政策は現状維持か緩和縮小方向となるべきものという状況な訳で、インフレーションターゲッティングの趣旨を損なわない形でどういうフォワードガイダンス出すのやらというのは気になりますな。

カーニー総裁は暫く前に名目GDPターゲットに言及していて、まあそれに近いものが出てくるのかねとも思われるのですが、名目GDPだとインフレが上振れても達成してしまうというのがお洒落な所で、単純に名目GDPだけ使うとなるとインフレーションターゲッティング政策の趣旨が益々形骸化するんじゃネーノという気がするので、はてさてどういうのものが出るのか8月7日は正座して(嘘)待ちたいと思います。


○ECBである

諸金利は据え置き。
http://www.ecb.int/press/pr/date/2013/html/pr130801.en.html

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.50%, 1.00% and 0.00% respectively.』

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

んでもって会見。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2013/html/is130801.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 1 August 2013

・決定事項と金融政策全般に関する説明は今回も1パラグラフなのですが・・・・・・・

説明の冒頭ですが、最初に決定事項の話をして経済全般と金融政策運営全般に関する話をして、経済認識の詳細という風に話が展開されるのですが、前回に引き続き今回もこの部分の説明が1パラグラフで収まっております。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged.』

金利は据え置き。

『Incoming information has confirmed our previous assessment.』

最近のデータは前回の見通しを確認するものであるとな。

『Underlying price pressures in the euro area are expected to remain subdued over the medium term. In keeping with this picture, monetary and, in particular, credit dynamics remain subdued. Inflation expectations for the euro area continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term.』

物価に関する言及はまあ判で押したように同じ話をしとります。

『At the same time, recent confidence indicators based on survey data have shown some further improvement from low levels and tentatively confirm the expectation of a stabilisation in economic activity.』

経済活動の状況が低いレベルから更に幾分か改善している傾向を最近のデータは示している、ということでここでの説明ベースでは経済に関する認識をすこし強くしていますな。


・フォワードガイダンス部分を前回と比較すると謎の「confirm」文言が入る

つーことで前回と比較してみませう。

『Our monetary policy stance continues to be geared towards maintaining the degree of monetary accommodation warranted by the outlook for price stability and promoting stable money market conditions.』(今回)

『Our monetary policy stance is geared towards maintaining the degree of monetary accommodation warranted by the outlook for price stability and promoting stable money market conditions.』(前回)

しかし良く考えるとこの「物価安定の見通しの元で正当化される緩和的な程度の金融緩和と短期金融市場の環境の安定をもたらす為の金融政策スタンス」ってのも何とも判じ物のような表現ですな。

『It thereby provides support to a gradual recovery in economic activity in the remaining part of the year and in 2014. Looking ahead, our monetary policy stance will remain accommodative for as long as necessary.』(今回)

『It thereby provides support to a recovery in economic activity later in the year and in 2014. Looking ahead, our monetary policy stance will remain accommodative for as long as necessary.』(前回)

まあ同じだな。

『The Governing Council confirms that it expects the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. This expectation continues to be based on an unchanged overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness in the economy and subdued monetary dynamics. In the period ahead, we will monitor all incoming information on economic and monetary developments and assess any impact on the outlook for price stability.』(今回)

『The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. This expectation is based on the overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness in the real economy and subdued monetary dynamics. In the period ahead, we will monitor all incoming information on economic and monetary developments and assess any impact on the outlook for price stability.』(前回)

でまあここがちょっとお洒落なのですが、前回はこの「長期間政策金利を据え置きまたは今より低い水準で維持します」という部分に関して「expects」という風に表現していたのですが、今回は「confirms that it expects」になっていますな。

表現としては「confirm」って入ったからフォワードガイダンスもどきに対してやや表現を強めてはいるのですが、しかし残念なのはコンファームしたのは結局前回と同じく「it expects」以下の文言でありますので、そのコンファームに何か意味があるのかという感じで、わざわざ言う必要が有る文言なのかよという気はしますが、恐らくブンデスバンクバイトマン総裁の先日の台無し発言に見られますように、これ以上のガイダンス文言強化はECB内部でのコンセンサス取れないんでしょ。

ちなみに、今回の冒頭説明では第1パラグラフが前回より4行ほど長くなっているのですが、前回との差分は経済に関する説明がちょっと長くなっているせいでした。


・経済認識部分でも認識の引き上げを示す

経済認識とリスク認識などが第2〜5パラグラフですが時間の関係上第3以降は只のベタばりで勘弁。

『Let me now explain our assessment in greater detail, starting with the economic analysis. Following a six-quarter economic contraction in the euro area, recent confidence indicators based on survey data have shown some further improvement from low levels and tentatively confirm the expectation of a stabilisation in economic activity at low levels. At the same time, labour market conditions remain weak.』

冒頭説明でもありましたが改めて「some further improvement」を示していますが労働市場は弱いと。

『Looking ahead to the remainder of the year and to 2014, euro area export growth should benefit from a gradual recovery in global demand, while domestic demand should be supported by the accommodative monetary policy stance as well as the recent gains in real income owing to generally lower inflation.』

先行きは緩やかな回復という話で、海外の需要と実質所得の増加が寄与というのも前回と同様です。

『Furthermore, the overall improvements in financial markets seen since last summer appear to be gradually working their way through to the real economy, as should the progress made in fiscal consolidation. This being said, the remaining necessary balance sheet adjustments in the public and private sectors will continue to weigh on economic activity.』

この辺も同じですな。で、結論は・・・・・・

『Overall, euro area economic activity should stabilise and recover at a slow pace.』(今回)

これ前回はこうでして・・・・・・

『Overall, euro area economic activity should stabilise and recover in the course of the year, albeit at a subdued pace.』(前回)

まあ基本的に言ってる事は変わらないので見通しが上がっている訳では無いですけれども、「文章がすっきりした場合は確信度上昇」の法則(?)からするとまあ回復への自信度は上がっているんでしょうな。

リスク認識、物価に関する部分はほぼ前回と同じ話をしています。引用だけで勘弁(時間ががががが)。

リスク認識(下です)。

『The risks surrounding the economic outlook for the euro area continue to be on the downside. Recent developments in global money and financial market conditions and related uncertainties may have the potential to negatively affect economic conditions. Other downside risks include the possibility of weaker than expected domestic and global demand and slow or insufficient implementation of structural reforms in euro area countries.』

物価動向。

『According to Eurostat’s flash estimate, euro area annual HICP inflation was 1.6% in July 2013, unchanged from June. Annual inflation rates are currently expected to temporarily fall over the coming months, owing particularly to base effects relating to energy price developments twelve months earlier. Taking the appropriate medium-term perspective, underlying price pressures are expected to remain subdued, reflecting the broad-based weakness in aggregate demand and the modest pace of the recovery. Medium to long-term inflation expectations continue to be firmly anchored in line with price stability. 』

物価の先行きリスク(上下バランスです)。

『The risks to the outlook for price developments are expected to be still broadly balanced over the medium term, with upside risks relating to stronger than expected increases in administered prices and indirect taxes, as well as higher commodity prices, and downside risks stemming from weaker than expected economic activity.』

ということで。

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2013/08/01

会見無しの分声明文の作り込みを考えましたというか、これ読んでいてFED文学として第一級の芸術作品だなあこりゃ、と思いましたけど。

○FOMC声明文である

今回はSEPも会見も無いので声明文だけの公表っす。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20130731a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20130619a.htm(前回)

・第1パラグラフその1:景気現状判断の文言がFED文学の最高峰じゃないかと思う件

景気判断の文言の解釈が無茶苦茶難しいというか、これが今回の最大の芸術部分だと思います。以下は(いつもそうですけど)ドラめもんの中の人があたしゃこう思うんだけどねという解釈であって、本人は解釈するのに20分くらいああでもないこうでもない考えた結果ですけれども、当然ながら勝手読みの可能性があるので一つの考え方として以下よろしくでありますよ(とヘッジクローズという名の逃げを打つ^^)。

つーことで冒頭一発目の表現はこのように前回と比較されます。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in June suggests that economic activity expanded at a modest pace during the first half of the year.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in May suggests that economic activity has been expanding at a moderate pace.』(前回)

はてさて、一発目からややこしいのですが、景気判断に関する部分が「経済活動はmoderateなペースで拡大を続けてきている(has been expanding)」としていたのが、今回「経済活動はmodest(これはmoderateより弱い)なペースで今年の前半において(during the first half of the year)拡大を続けた(expanded)」という表現になっていますな。

モデレートがモデストになっているので判断文言として弱くなっているのはその通りなのですけれども、動詞の使い方が現在完了進行形だったものを過去形にしておりまして、しかも「今年の前半」という言い方にしているのが物凄くお洒落というか芸術品だと思うのよね。

つまり、前回声明文は「モデレートなペースでの拡大が続いている」という判断だったものを何でまたここで「今年前半はモデストなペースで拡大していましたな〜あっはっは」という表現に変更できるのかというのは良く良く考えないといかんと思うのですよ。いやまあFEDってそこらの整合性を気にしないというのであれば別ですが、メリケンクオリティでもそういうわけは無い、と思って改めて考えるとこうなるのではないかと思うのですよね・・・・・・・


つまりですな、今回の表現が前回と同様に現在完了足元のペースについてモデストであるという話をするのであれば、まあ単純に足元の拡大の勢いが落ち気味であるという認識を示したのですなあで済むのですが、今回の表現って「モデスト」をわざわざ「今年の前半は」という期間に言及して居る訳でして、それはつまりどういう事かと言いますと、つまりこれは単純に前回の声明文の文言から見て「下がった」と読むのは比較として正確性を欠くという事になるんじゃないかと思うのですよね。ということで「今年の前半」の声明文冒頭にある景気判断部分を引用するとこうなる(6月は前回ですのでさっきの再掲です)のですよ。

1月FOMC声明文「growth in economic activity paused in recent months」
3月FOMC声明文「a return to moderate economic growth following a pause late last year」
5月FOMC声明文「economic activity has been expanding at a moderate pace」
6月FOMC声明文「economic activity has been expanding at a moderate pace」

つまりね、良く考えてみたらFOMC声明文で示されていた景気認識なのですが、年初は概ね一時的な要因としながらも経済活動の拡大が停止しているという認識で、3月になって「昨年末の経済活動拡大状態からモデレートな経済活動拡大へと戻っている」という表現になっているのであって、年冒頭の停止モードからの全体レビューを「モデスト」としているのでありまして、何という芸術作品というのはそういうことでありまする。

前回のモデレートがモデストに変わっているので、見た目景気の現状判断を慎重化しているようにも見えるのですが、良く良く考えると前回の表現が「前回会合以降」の判断を示して居るのに対して、今回の表現は「今年前半」の判断を示している訳でして、そこの表現の変化が下がったと言ってもそもそもその前はどうでしたっけとなると、これは結局前回からの継続という観点での判断が本当に下がっているのかと考えると、まあ表現的に敢えて判らなくしているとしか言いようがないですな。

そして、冒頭の文言を「モデレート」から「モデスト」にしているのも当然作り込みでの工夫が有る訳で、この先に(すいません最初の文章でこんなにああだこうだ書いてまして・・・・・・)モーゲージ金利上昇と物価上昇圧力低下(ようはディスインフレ傾向)に関する言及もありまして、つまりはテーパリングトークヒャッハーの反応をされないように表現を思いっきり工夫しているという点で今回は1級芸術品だと思うのですよね。つまり「実質的な景気判断を下げていない(下手したら上げている)可能性もあるのに判断を下げているかのような表現をすることによって市場の過剰反応を防ぐ」という話。

何故そういう話になるかと言いますと、これまた先の話になるのですが景気の先行き認識に関して回復のペースが「ピックアップする」という表現を使い、しかもそれ以外の表現が前回声明文と同じで、すなわち前回FOMCの判断を踏襲しているとしか思えないので、そう見ると景気判断ってこれ実は下がっていないんじゃないの(うっかりしたら上がっているのかね)とも読めるのですが、今回は説明もSEPも無いので、あまり威勢の良い話をすると市場が過剰反応してケシカラン金利上昇になるのを相当懸念した結果としての表現なのではないかなあ、とまあ20分ほどああだこうだと考えて、おまけにキーボード打ちながら更に考えていくうちにそんな結論になったんですけどどうっすかね。

つまり、長期金利が出口政策ヒャッハーにならないようにという点では確かにハト的というのはあるのだが、それとLSAP拡大停止に向けた動きは依然として別物のような気がするということっす。まあ的を盛大に外しているかも知れないけど。


・第1パラグラフその2:モーゲージ金利上昇について言及

最初の所でクソ長くなってしまって正直スマンカッタ。

『Labor market conditions have shown further improvement in recent months, on balance, but the unemployment rate remains elevated.』(今回)
『Labor market conditions have shown further improvement in recent months, on balance, but the unemployment rate remains elevated.』(前回)

労働市場の部分は前回と同じ。

『Household spending and business fixed investment advanced, and the housing sector has been strengthening, but mortgage rates have risen somewhat and fiscal policy is restraining economic growth.』(今回)
『Household spending and business fixed investment advanced, and the housing sector has strengthened further, but fiscal policy is restraining economic growth.』(前回)

家計消費と企業の固定資産投資に関しては同じ、住宅セクターに関しては前回が「has strengthened further」だったのが「has been strengthening」ですけれども、その次にありますようにモーゲージ金利の上昇を従来からあった財政政策に加えて経済成長の阻害要因として言及しているので、まあそれが住宅セクターに影響を及ぼさない訳が無いと考えると微妙に下げているようにも見えるけど良く判らん。

まあそれよりもこの「モーゲージ金利上昇への言及そのもの」の方が当然ながらポイントになる訳で、つまりは早すぎる出口政策ヒャッハー相場により金利上昇は誠に遺憾に存じますということを示して市場の長期金利の無秩序な上昇に対して牽制していますよというのを改めて示している、ということですが、これ後の方でもダメ押しのように金利に関するのが
有るので後ほど。

『Partly reflecting transitory influences, inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)
『Partly reflecting transitory influences, inflation has been running below the Committee's longer-run objective, but longer-term inflation expectations have remained stable.』(前回)

物価の現状判断に関する表現は前回通りです。


・第2パラグラフ:ディスインフレ傾向のリスク認識表明キタコレ&先行き認識の文言が難しい

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(今回)
『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability.』(前回)

ここはまあ良いとして。

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic growth will pick up from its recent pace and the unemployment rate will gradually decline toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(今回)

『The Committee expects that, with appropriate policy accommodation, economic growth will proceed at a moderate pace and the unemployment rate will gradually decline toward levels the Committee judges consistent with its dual mandate.』(前回)

ここがこれまたヤヤコシヤなのですが「これまでのペースからピックアップ」となっている割にはこれ以外の文言が同じでして、結局の所そんなに判断を変えていないのではないかとは思われるのですが、1パラの方でモデストという言い方にしているので、こっちを「最近のペースからピックアップする」としてバランスを取っているのか、はたまたこの「recent」は本当に足元のペースの話をしている(のだったら従来のモデレートなペースから見通しが上がることになるのですよ!)のかがヒジョーに曖昧でして実にワカランチ会長にも程がある表現にしていまして、まあ最初のパラだけ独立してみると「下がってるじゃん」と思ってしまうのですが、ここの部分も総合して読むと、結局の所景気判断は単に横ばいなのではないかと思ってしまうという実にこう解釈が難しい表現です。

まあこれもまた長期金利の跳ね上がるを防ぎつつも悲観的なメッセージを出す気は1ミリも無い、というバランスを考えて表現を練った結果の芸術作品だと思うのですけどね(^^)。

『The Committee sees the downside risks to the outlook for the economy and the labor market as having diminished since the fall.』(今回)
『The Committee sees the downside risks to the outlook for the economy and the labor market as having diminished since the fall.』(前回)

昨年秋から比較して下振れリスクが軽減しているというのは前回と同じ。

『The Committee recognizes that inflation persistently below its 2 percent objective could pose risks to economic performance, but it anticipates that inflation will move back toward its objective over the medium term.』(今回)

『The Committee also anticipates that inflation over the medium term likely will run at or below its 2 percent objective.』(前回)

でまあここがキタコレなのですが、2%目標を持続的に下回る物価水準は経済のパフォーマンスにリスクを与えるという所で、ここまでの流れで妙に失業率の注目ばかりが上がる格好になっていた点のバランスを取る(この文言が入った為に前回反対だったブラード総裁が賛成に回りましたがそれは最後に)という形になったのはまあ良い話です罠。物価先行き見通しについても「中期的に戻る」という言い方になりまして、足元のディスインフレ傾向が暫く継続するという見通しになっていてまあここは明確にハトモード。


・第3、第4パラグラフのLSAP部分は前回と全文一致

例によって透かし読みにて確認したので今回分だけ一応引用。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at the rate most consistent with its dual mandate, the Committee decided to continue purchasing additional agency mortgage-backed securities at a pace of $40 billion per month and longer-term Treasury securities at a pace of $45 billion per month. The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. Taken together, these actions should maintain downward pressure on longer-term interest rates, support mortgage markets, and help to make broader financial conditions more accommodative.』(今回)

『The Committee will closely monitor incoming information on economic and financial developments in coming months. The Committee will continue its purchases of Treasury and agency mortgage-backed securities, and employ its other policy tools as appropriate, until the outlook for the labor market has improved substantially in a context of price stability. The Committee is prepared to increase or reduce the pace of its purchases to maintain appropriate policy accommodation as the outlook for the labor market or inflation changes. In determining the size, pace, and composition of its asset purchases, the Committee will continue to take appropriate account of the likely efficacy and costs of such purchases as well as the extent of progress toward its economic objectives.』(今回)


・第5パラグラフの金利ガイダンス部分はLSAPと金利は別理論を改めて強調

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee today reaffirmed its view that a highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate for a considerable time after the asset purchase program ends and the economic recovery strengthens.』(今回)

『To support continued progress toward maximum employment and price stability, the Committee expects that a highly accommodative stance of monetary policy will remain appropriate for a considerable time after the asset purchase program ends and the economic recovery strengthens. 』(前回)

わざわざ「reaffirmed」したというのがチャーミングですが、要するにAPPと金利政策は別途のものであって、LASPの拡大を止めるのと金利のノーマライゼーションは全く別箇の議論ですよウェーハッハッハとこれまた市場金利上昇を牽制モードというのがここにも(さっきは1パラのモーゲージ金利ね)あるというのが実にお洒落であります。


以下の部分は前回と同じです。一応並べておきまふが長くて正直スマンカッタ。

『In particular, the Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that this exceptionally low range for the federal funds rate will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored. In determining how long to maintain a highly accommodative stance of monetary policy, the Committee will also consider other information, including additional measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments. When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent.』(今回)

『In particular, the Committee decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that this exceptionally low range for the federal funds rate will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent, inflation between one and two years ahead is projected to be no more than a half percentage point above the Committee's 2 percent longer-run goal, and longer-term inflation expectations continue to be well anchored. In determining how long to maintain a highly accommodative stance of monetary policy, the Committee will also consider other information, including additional measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial developments. When the Committee decides to begin to remove policy accommodation, it will take a balanced approach consistent with its longer-run goals of maximum employment and inflation of 2 percent.』(前回)

金利政策の運営だのスレッショルドだのの話は(当たり前だが)前回と全文一致。


・第6パラグラフ:票決ではブラードさん賛成に回る

ディスインフレ警戒文言が入ったのでブラード総裁賛成に回るの巻。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Charles L. Evans; Jerome H. Powell; Sarah Bloom Raskin; Eric S. Rosengren; Jeremy C. Stein; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen.』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Charles L. Evans; Jerome H. Powell; Sarah Bloom Raskin; Eric S. Rosengren; Jeremy C. Stein; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen.』(前回)

ジョージおばちゃんの反対理由は判で押したようにカワランチ会長。

『Voting against the action was Esther L. George, who was concerned that the continued high level of monetary accommodation increased the risks of future economic and financial imbalances and, over time, could cause an increase in long-term inflation expectations.』(今回)

『Voting against the action was James Bullard, who believed that the Committee should signal more strongly its willingness to defend its inflation goal in light of recent low inflation readings, and Esther L. George, who was concerned that the continued high level of monetary accommodation increased the risks of future economic and financial imbalances and, over time, could cause an increase in long-term inflation expectations.』(前回)

先程来申し上げておりますように、セントルイス連銀のブラード総裁は前回物価上昇力の低さについての警戒をより強く示すべきであるとして反対しているので今回は賛成なのは当然っすな。

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2013/07/31

○FOMC前にまたまた(というか最終投下の)虫干し連銀高官講演ネタでウィリアムス総裁講演

サンフランシスコ連銀のサイトデザインが変わっておりますな(汗)しかしURLが長い・・・・・・

(あまりにも長いので画面レイアウトがおかしくなるのを避ける為にリンクにしていません)
http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2013/june/the-economic-recovery-past-present-and-future/
http://www.frbsf.org/our-district/press/presidents-speeches/williams-speeches/2013/june/the-economic-recovery-past-present-and-future/SCEDB_6-28-13_6-27-13_Web_Final_II.pdf
The Economic Recovery: Past, Present, and Future
Presentation to the Sonoma County Economic Development Board
Rohnert Park, California
By John C. Williams, President and CEO, Federal Reserve Bank of San Francisco
For delivery on June 28, 2013

つーことで6月28日の講演ですので、これまた長期金利上昇に対する火消し成分は強くなっていますけれども、総じて見ますと昨日までネタにしたパウエル理事よりもより緩和縮小に対する慎重なニュアンスが感じられまして、まあ大体このSF連銀ウィリアムス総裁というのは「ほぼFOMCの中間的な見方を代表する」という先生でありまして、中間的な見方がぶれてくると本人の発言もぶれてくるという傾向にありますので、そーゆー意味では炭鉱のカナリアじゃないですけれども動向を見るのには良いかなと思っているのですがどうっすかね。


・経済に関しては「回復の強さ」という強めの話をしておりますな

最初の所でいきなり「景気は持続的な成長の時代に入っている」というぶちかましがあります。

『Our economy is well into a period of sustained growth.』

ほうほうそれでそれで?

『It’s now been four years since the recession ended. Recessions are never pleasant, but this one was especially grim. Think back four years to June 2009. The housing market had collapsed. The unemployment rate stood at 9.5 percent and was still rising. Consumers and businesses were deeply shaken. And the stock market had plunged nearly 40 percent.』

『Thankfully, we’ve come a long way since then. From a peak of 10 percent, the unemployment rate has dropped to 7.6 percent. Households and businesses have regained much of their lost confidence. And finally, the housing market is springing back to life.』

つーことで、まず最初に「景気が良くなっている」という話をして、その次に「でも水準的には以前のレベルを取り戻していない」という話をするのもお約束なのですが、その部分とその次にある先進17か国との比較という謎分析をスルーしましてその次。

『The surprise, it turns out, is the strength of the subsequent recovery.』

サブシークエントと言ってるのは、その前の部分でリセッションの後の2年間の回復(つまり2009年から2011年の回復)の説明をしているからなのですが、直近の回復の強さがサプライズとな。

『Now you may not associate the word “strength” with this recovery. So let me explain.』

ほうほう。

『Figure 2 adds to Figure 1 a forecast of real GDP per person for the five years following the start of the recession. This forecast, shown as the dashed red line, is based on an economic model that aims to describe past recessions and recoveries based on a few key factors.』

『According to the model, the enormous boom in private-sector credit before the recession-when credit was cheap and easy to get-was a major reason why the recession ended up being so deep. The model also predicts that the economy should have been virtually stagnant in terms of real GDP per person through 2012. In other words, the recovery has actually been stronger than might be expected given the extent of the prior credit buildup.』

何でもクレジットバブル崩壊によるリセッションからの回復という前提で経済モデルを回すと、もっと回復力が弱くなる筈なのだが足元の米国経済の回復力はそれより強いという話のようで。

『So why has the economy done better than the model predicts after such a destructive financial crisis and credit collapse?』

理由はと言いますと・・・・・・・・

『One big reason is that economic policies put in place during and after the recession, including extraordinary measures taken by the Federal Reserve, lent critical support to the recovery.』

何という自画自賛。

『These policies pulled us out of the recession much faster and made the recovery stronger than would have happened otherwise. To be sure, the recovery has been weaker than we wanted. But the fact that we’ve made as much progress as we have is due to a great extent to these timely policy actions. Absent these actions, I fear that we could have experienced the stagnant economy the model predicts.』

政策効果なかりせば回復はもっと弱かったキタコレですな。


・やっぱり住宅ですかそうですか

で、この回復は継続するでしょうという見通しになっておりまして、その要因は思いっきり「住宅」である所はパウエル理事と全く同じでして、そーゆー意味では最近のFOMCは「やっぱり住宅がナンバーワン!」(って明治大学応援歌「ハイパーユニオン」ネタただし字余りとか通じませんかそうですか)とゆー風情を益々強くするものでありまする。

『Recent data show this improvement is continuing. This is easiest to see in housing, which is now in a broad-based expansion after years of depressed activity. Across the country, sales of new and existing homes have risen substantially over the past year, and prices are up 10 to 15 percent. Homebuilders have responded by stepping up construction.』

『The housing rebound is a powerful tonic for the economy. Homebuyers often want new carpeting, drapes, furniture, and appliances. Meanwhile, rising home prices allow more people to refinance mortgages at lower rates, giving them hundreds or thousands of extra dollars to spend each year. What’s more, rising home prices make people feel wealthier, giving them confidence to reach for their wallets.』

やっぱり住宅がナンバーワン!


・住宅を含めて資産価格上昇によるバランスシート改善を重視とな

『And homes are not the only assets going up in value. Stock prices have risen considerably over the past year, adding significantly to household wealth. Rising wealth makes consumers more willing to spend. My staff estimates that the increase in wealth registered just in the first quarter of this year will raise consumer spending by roughly $90 billion.』

で、その後に株価ということで家計などのバランスシート改善を回復の大きなドライバーとして上げていまして、まあウィリアムス総裁がこういう点を最初に出してくる、という事は即ちFOMCの政策アクションというのも変に資産価格にショックを与えないようにしながらどうやって運営するか、という事を気を使っているということですな。

『This higher wealth has offset the effects of the increase in taxes at the beginning of the year, allowing consumer spending to grow at a healthy pace. That seems likely to continue. Two major surveys show consumer sentiment in recent months has been higher than at any time over the past five years and that people are more upbeat about prospects for economic growth and jobs.』

だからQE3が延々と続くかというと、それはそれでまた別問題であって、恐らくFOMC内部ではQE3を延々と続けた場合に出口における混乱が拡大するリスクも意識しているので、そーゆー意味で言えば「資産価格をコカさないで、かつ将来のリスクも拡大させないで」低金利政策の方はそれはそれで長期間運営しよう、という話になるんでしょうな。


・労働市場の見通しは強めですかね

でまあその後リスクの話とか財政の話(連邦財政と地方財政)がありますがスルーしまして労働市場。

『In the job market, private-sector hiring has actually picked up. Over the past six months, nonfarm private payrolls have grown by just under 200,000 jobs per month compared with an average of about 160,000 in the previous six months. The unemployment rate has fallen six-tenths of a percentage point over the past 12 months.』

民間雇用はactually picked upだそうですよ奥様。

『What about the future? San Francisco Fed researchers have identified indicators that provide information about how the labor market is likely to fare over the next six months. These include data you may be familiar with, such as initial unemployment claims, and less well-known data, such as the percentage of people who say in surveys that it’s hard to find a job. These indicators suggest that the labor market will continue to strengthen.』

the labor market will continue to strengthenとな。

『Here then is my forecast.』

ほいな。

『I expect the unemployment rate to fall to roughly 7-1/4 percent at the end of this year and drop to about 6-3/4 percent by the end of 2014.』

年末に7.25%、来年末に6.75%とスレッショルドに0.25%盛った数字を出して来るのがお洒落ですな。

『Economic growth is likely to be sluggish in the current and next quarter, reflecting federal spending and employment cuts related to sequestration. It should pick up later in the year. For 2013 as a whole, I see inflation-adjusted GDP growing about 2-1/4 percent and picking up to around 3-1/4 percent in 2014.』

ということで数字は結構強めなんですよね。


・物価に対する配慮を示しておりますな

『I’d like to say a few words about inflation. Our mandate from Congress calls on us to pursue both maximum employment and stable prices. High unemployment is certainly the biggest problem we’re facing these days. But we must also pay close attention to inflation.』

物価への注意必要キタコレ。

『History tells us that severe financial crises are often associated with deflation, that is, falling prices, which are very dangerous for the economy.』

キタコレ!

『We’ve managed to avoid deflation, not least because of the Fed’s aggressive monetary policy. The policies we’ve followed have restored growth and generally kept inflation from falling too low. Similarly, the Fed’s announcement of a 2 percent longer-run inflation target has helped keep public inflation expectations stable.』

でもってこの先が現状と先行き認識。

『It’s true that inflation has come in under our target recently and below what I was expecting. This partly reflects temporary factors, such as a decline in Medicare reimbursement prices forced by sequestration. Inflation will probably remain relatively low for a while, but should gradually rise toward our 2 percent target over the next few years as the economy continues to improve and unemployment comes down. I expect our preferred inflation measure will gradually climb from less than 1-1/2 percent in the second half of 2013 to roughly 1-3/4 percent in 2015.』

ということで、インフレが最近低めという指摘をちゃんとしている辺りがまあ元々ハト系の方だなという所ですが、ただまあ見通しとしては特段弱いという訳ではありません。あくまでもリスク要因認識なんでしょうな。


・金融政策の効果に関しての説明ではMBS金利などの影響を強調

で、この後金融政策のパートになるのですが、金融政策の説明ではこれまた(1)フォワードガイダンス、(2)LSAP、の順で説明をしていまして、パウエル理事の説明の順番(というか他の連銀高官の説明でもそうなのですが)と同じセッティングになっておりまして、まあ今後は「フォワードガイダンスを中心にした金利ガイダンス政策で勝負」となるでしょうというのは既に皆様もご案内の通りかと存じます。

でまあその辺はスルーしまして効果の説明部分。

『Our forward guidance and securities purchases have significantly reduced longer-term rates, and that benefits the economy greatly. For example, at the low point of the recession, the 30-year conventional mortgage was about 5-1/2 percent.』

ふむ。

『Buying a $300,000 home with a 20 percent down payment required a monthly payment of around $1,360. Today, despite the recent run-up in interest costs, mortgage rates are roughly 1 percentage point lower. The same size mortgage now carries a monthly payment of about $1,220. That’s an annual reduction of around $1,700, which could be saved or spent. Alternatively, a homebuyer willing to pay $1,360 per month could buy a house worth more than $335,000, boosting demand for homes.』

なるほどという所ですが、この後低金利は住宅以外にも好影響という部分がありますが引用パスします。


・先行きの金融政策については「もう少し様子を見てから」で理由は重要かも

でまあ最後のパートが今後の金融政策。

『Of course, the economy’s increased momentum has raised questions about when the Fed will cut back, and eventually end, its asset purchase program. So, is it time to act?』

その答えは今でしょ!とはなりません(^^)。

『My answer is that it’s still too early.』

まだ早すぎるですわよ奥様♪

『For one thing, we need to be sure that the economy can maintain its momentum in the face of ongoing fiscal contraction. And it is also prudent to wait a bit and make sure that inflation doesn’t keep coming in below expectations, possibly signaling a more persistent decline in inflation.』

で、ここで重要と思われるのはその理由でして、最初の財政削減の影響を見極めというのもそうですけれども、もう一つの理由に「物価動向およびインフレ期待の動向」を挙げているのがほほうという所です。

んでもってこの先には(この時点で)ちょっと前に行われたFOMCでの逆さ絵会見における説明の説明(^^)をしているのですが、まあこれは既に耳タコ状態だと思われますが、いつも通りのポイントをいつも通りに説明しておりますので割愛しまして最後の最後を引用します。

『As I emphasized at the start, I am convinced that our extraordinary policies during the recession and recovery, including our current asset purchase program, have been hugely beneficial for the economy. The good news is that the economy is on the mend.』

『The time will come when we will no longer need to keep adding monetary stimulus. When that time comes, I am confident that we can make this change without jeopardizing the recovery, while working toward our goals of maximum employment and price stability. Thank you very much.』

ということで、緩和の縮小に関しては影響を見極めながら対処ということで、方向性としては緩和縮小オッケーなのですけれども、LSAPのプロコン話とかそういうネタは無く、物価動向に関する説明がありますように、まー緩和縮小に慎重な姿勢を示しているというのが結論でありました。

ちなみに最近出ていたSF連銀スタッフのペーパーによると労働市場の回復はあまり強くはならないのではないか、というのもあるのですが時間が無いのでURLだけ貼っておきます。(これも長いのでリンク形式にしません)
http://www.frbsf.org/economic-research/publications/economic-letter/2013/july/us-labor-market-uncertainty-slow-recovery/

#ということで今晩はFOMC2日目ですね!!

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2013/07/30

○パウエル理事講演ネタ続きである

昨日の続きである(汗)

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20130627a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20130627a.pdf
Governor Jerome H. Powell
At the Bipartisan Policy Center, Washington, D.C.
June 27, 2013
Thoughts on Unconventional Monetary Policy


・LSAPのリスク:金融不安定化の2つのポイント

『Costs of LSAPs』の所である。

『What of the potential costs or risks of the asset purchases? A variety of concerns have been raised over time. With inflation in check, the most important potential risk, in my view, is that of financial instability.』

つーことで最大のリスクはファイナンシャルスタビリティーキタコレです。

『One concern is that our policies might drive excessive risk-taking or create bubbles in financial assets or housing. A related worry is that the eventual process of reducing purchases and normalizing the balance sheet may itself be destabilizing or disruptive to the economy.』

ここでほほーというのがありまして、いわゆる利回り追求で金融不安定ガーというのは今に始まった論点では無いのですが、「金融政策の正常化プロセスにおける金融不安定化のリスク」というのはそういや他の連銀高官も話をしていたなと思ったのですが、この後説明がありまして・・・・・・

『Indeed, recent volatility in markets is in part related to concerns about the possibility of a reduction in asset purchases.』

つまり、この講演の時点で直近(つまり6月後半)の米国債券市場のゲロゲロマーライオン相場に関しては「金融政策の正常化プロセスにおける金融不安定化のリスク」に関連したインプリケーションである、という認識を示しているというのがへーというところで、正直他の連銀高官はこの部分の説明があまりにあっさり味過ぎて「正常化プロセスにおける不安定化リスク」とはナンジャソラという感じだったのでこのパウエルさんの説明でクリアカットになったというのがアタクシの感想。

『I'll address both of these broad concerns, starting with incentives for risk-taking.』


・リスクテイキングの問題はクレジット市場に一部あるという認識でスタイン理事の指摘を支持

で、リスクテイク云々についての背景説明は省略して現状認識についての部分をば。

『By most measures, equity valuations seem to be within a normal range. Whether one looks at trailing or forward price-to-earnings ratios, equity risk premiums, or option prices, there is little basis for arguing that markets show excessive optimism about future returns. Of course, in the equity markets there is always downside risk.』

株式市場のバリュエーションは適正範囲内とな。

『But, as my Board colleague Jeremy Stein has observed, there have been signs of a "reach for yield" in the fixed-income markets for some time.』

キタコレ!

『Demand for higher-yielding fixed-income securities has outstripped new supply. The result has been very low rates, declining spreads, increasing leverage, and pressure on non-price terms such as covenants. These concerns have diminished somewhat as rates have risen since mid-May. Nonetheless, since it is likely that asset purchases will continue for some time, markets will need careful monitoring.』

ということで、スタインさんほど警戒的でも無さそうな言い方ですが、クレジット市場に関しては問題意識を持っているという言い方ですな。

『What about house prices? At the peak of the bubble, house prices were more than 40 percent above their usual relationship to rents, according to one model that the Fed staff follows. At their trough, house prices had fallen about 10 percent below fair valuation. Given the price increases over the past year, they are--by the lights of this one model--moving back into the approximate neighborhood of fair valuation.』

住宅に関してもレントから見た価格など勘案して適正な状況の範囲内でしょうということです。


・正常化におけるリスクの話

ここは中々興味深い説明である。

『The second concern is that the process of normalizing monetary policy and the balance sheet could itself be destabilizing or disruptive to the economy. Many cite the experiences of 1994 and 2003, when long-term rates increased quite sharply on changing views about the likely near-term path of policy. In those instances, there were both changes in views about the economy and changes in the public's understanding of the Federal Reserve's policy intentions. These same two factors have affected markets in recent weeks.』

なるほどという感じですが、過去の緩和からの正常化局面における急激な金利引き上げ観測による市場の動きと、巨大なバランスシートの正常化のケースを重ね合わせてリスク認識をするというのはほほうという感じ。

『Market adjustments since May have been larger than would be justified by any reasonable reassessment of the path of policy.』

この部分がヘッドラインとして出ていましたけれども、つまりこれはFOMCとしては6月会合後の市場の動きが想定を超えたものでビックリしたという事でもあるのかなあと思いましたがどうでしょ?

『In particular, the reaction of the forward and futures markets for short-term rates appears out of keeping with my assessment of the Committee's intentions, given its forecasts. The June SEP shows that 15 of 19 participants see the first rate increase happening in 2015 or 2016. The path of rates will ultimately depend on the path of the economy, and the Committee has said that the first rate increase will not happen until a considerable time has elapsed after asset purchases have been concluded. Thus, to the extent the market is pricing in an increase in the federal funds rate in 2014, that implies a stronger economic performance than is forecast either by most FOMC participants or by private forecasters.』

ああだこうだと書いていますが、要するに「利上げはまだ先」という説明で、5月以降の金利上昇は先走りと言う説明です。

『We have made significant strides in communication in recent years. The unemployment and inflation thresholds I discussed earlier, as well as the communication around asset purchases, are all designed to improve public understanding of the Committee's intentions. But communications are bound to be imperfect, and changes in the outlook can still lead to adjustments in asset prices. Thus, some volatility is unavoidable, and indeed is a necessary part of the process by which markets and the economy adjust to incoming information.』

つーことで、正常化過程におけるリスクを防ぐために今後もコミュニケーションポリシーの工夫を行う必要がありますよという話っすな。


・先行きの金融政策は「データ次第」だが労働市場の改善を評価、ただし説明には市場への相当の配慮がみられます

『The Path Ahead for Monetary Policy』というのが最後の小見出しで、最初の部分は逆さ絵先生のFOMC後の会見と同じ説明をしているので割愛しまして。

『I want to emphasize the importance of data over date. If the Committee's economic outlook is broadly realized, there will likely be a moderation in the pace of purchases later this year. If the performance of the economy is weaker, the Committee may delay before moderating purchases or even increase them. If the economy strengthens faster than the Committee anticipates, the pace of purchases may be moderated somewhat more quickly. The path of purchases is in no way predetermined; we will monitor economic data and adjust our purchases as appropriate.』

と、まあ時期が6月末ですからこの「データ次第」を強調しておりますが以下パウエル理事の見解。

『In my view, there has been real progress in the labor market.』

ほほう。

『The Committee first adopted the "substantial improvement" test at the September 2012 meeting, so it is appropriate to measure the economy's progress against economic conditions at that time. When the Committee met in September, the unemployment rate stood at 8.1 percent. Today, just nine months later, the unemployment rate is 7.6 percent--a larger decline than most FOMC participants expected in September. At the time of the September meeting, nonfarm payrolls were reported to have increased at a monthly rate of 97,000 over the prior six months.9 Today the trailing six-month average payroll growth is 194,000.』

と言う風に改善しているとな。

『Other labor market indicators also show moderate progress, including aggregate hours worked, initial unemployment insurance claims, the duration of unemployment, and the share of long-term unemployment.』

しかも雇用者数や失業率以外の指標も改善している。という話をしておりますので、これどう見てもQEの方は縮小方向だろと思うのですけれども、まあ時期的に米国債券市場がマーライオンであったことから話をここで切っておりまして、時期がどうのこうのとか縮小が正当化されるというような話をしないというのが中々チャーミングという所です。

一応最後の所も引用しますね。『Conclusion』から。

『There are many signs that the economy is healing. If the Committee's economic outlook is broadly realized, and we do see the first moderation in the pace of purchases later this year, that would be good news. The first reduction in purchases, when it comes, will be an acknowledgement of the economy's progress and a sign of the Committee's confidence in the path to full recovery. 』

『In all cases, the path of policy will remain fully data-dependent. If economic growth, unemployment, or inflation do not meet the Committee's expectations, or if financial conditions evolve in a way that is inconsistent with continued recovery, the Committee will respond.』

うむ、金利が跳ねないように配慮してるなという所(ただし6月末の講演ですので念の為)ですな。

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2013/07/29

○FOMC前なのでまたまた虫干しFED高官講演ネタでパウエル理事の先月末の講演から

先月のネタなのですが(汗)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20130627a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/powell20130627a.pdf
Governor Jerome H. Powell
At the Bipartisan Policy Center, Washington, D.C.
June 27, 2013
Thoughts on Unconventional Monetary Policy

題名にありますように、非伝統的政策に関する考察というお題でして、基本的な論点を一通り抑えた話をしていますので、パウエル理事のスタンスが概ね見えてくるという代物であります。中身は結構長いのですけれども、文章が比較的平易な表現になっている(BOEの上級ジョンブル英語と違いましてFEDの中の人のスピーチは基本的に皆さんジャパンの皆様的に平易な表現での説明ですが)のでまあ量の割には読むのが苦にならないと思います。

『It is great to be back at the Bipartisan Policy Center. I will comment briefly on the outlook for the economy and then turn to monetary policy.』

ということで経済の見通しと金融政策の話ですが。

・経済見通しはFOMCの中間的な見通しと同じだが労働市場に割と強気

経済見通しの一発目は「回復しているけれどもペースが遅い」とかましております。

『Our economy has grown at an average annual rate of only about 2 percent since the recovery began exactly four years ago. That modest pace is notably weaker than the experience of past recoveries would have predicted, even accounting for the depth and duration of the Great Recession. Since 2009, the question has been when the recovery will decisively take hold and begin to deliver the higher levels of growth that are needed to put people back to work more quickly.』

つー話をしておりますが、その後にSEPの話をしておりまして、パウエル理事の見通しは中心的な見解の範囲内にありますとのお話が。

『FOMC participants generally expect an acceleration of the recovery through 2013 and 2014 and continued strong growth in 2015. While I make no claim to special forecasting skills, my individual projections are within the so-called central tendency of the projections.』

で、今後の見通しですが、これまでは回復が本格化すると思わせてやっぱりダメというのが続いて居ましたが・・・・・・・・・・

『Of course, the economy has looked to be poised for a breakout several times since 2009, only to disappoint. Will this time be different?』


・今回の回復は直近の途中で失速した回復とは違うそうな

今回は違うのか?というと違うと思われる理由があるとの事ですよ。

『There are, in my view, good reasons to believe that the economy will continue to gain strength.』

その要因は住宅市場の回復だそうな。

『I would point in particular to the housing sector, which in prior recoveries has been an important engine of growth. For the first two years of the current recovery, housing contributed nothing to growth, as housing investment hovered at extremely low levels. House prices declined sharply through most of 2011, wiping out about half of home equity and restraining consumer spending. But the housing market finally began to recover in early 2012, and that recovery seems to be proceeding strongly. Single-family housing starts have risen by more than 40 percent over the past two years, albeit from a low base. House prices are up more than 10 percent over the past 12 months. A better housing market has helped boost consumer attitudes from very low levels and supported consumer spending.』

『The housing sector is still being held back by limited credit availability for less-creditworthy homebuyers and tight conditions for homebuilders. But overall trends suggest to me that the housing recovery can continue for many years and become an important contributor to growth.』

ということで、最初に持ってきた理由が住宅市場ということで、住宅市場の回復に関してポイントとしているようですな。

『The labor market has also made real progress, as I will discuss in a moment. Auto sales have nearly returned to pre-recession levels. Our financial system is far healthier and better capitalized than it was before the crisis. And after losing one-half of its value during the financial crisis, the stock market now exceeds its pre-recession peak in nominal terms.』

その次のパラグラフではその他の要因を列挙していまして、労働市場だの自動車販売だの金融システムだの株価だのという並べ方ですが、住宅市場の説明があれだけ長かったのでまあポイントは住宅ですな住宅。


・足を引っ張る材料は財政だが消費が強いのが好材料

『Growth would be higher this year but for U.S. fiscal policy. The Congressional Budget Office (CBO) estimates that federal tax increases and spending cuts will slow the pace of real gross domestic product (GDP) growth about 1-1/2 percentage points this year. Tight fiscal policy may also be preventing faster reductions in unemployment.』

まあ財政へのコメントは順当。

『I have been surprised by how well consumer spending--and private domestic final demand more generally--have held up in the face of this pronounced fiscal drag.』

『In the first quarter of this year, consumer spending and private domestic final demand rose at an annual rate of just above 2-1/2 percent. More-recent indicators of household and business spending suggest that private demand is continuing to advance at a reasonable clip despite the fiscal tightening.』

ということで消費が強いのが驚きですよという話でして・・・・・・・

『This strength is a reason for optimism.』

消費が強いのが経済見通し強気の理由の一つとな。

『Indeed, even if real GDP rises only 2 percent or so this year--which is at the bottom end of the range of projections from the June SEP--it would still represent a solid performance in the face of these fiscal headwinds.』

ただまあ景気の最後の部分では「完全な回復には時間が掛かる」ということで締めていまして、最初と最後の所でぶちかましておくのに余念がないという構成になっておりますな。

『There is still a long way to go before we achieve a full recovery. The healing process will take time, but we continue to make real progress.』

つーことで次。

『Let's turn to monetary policy, starting with the dual mandate, pursuant to which the Congress directs the Federal Reserve to conduct monetary policy so as to foster stable prices and full employment.』

キタコレということで、次が『Dual Mandate--Inflation』、『Dual Mandate--Full Employment』という小見出しが続きます。


・物価に関しては足元の低下は一時的と言う見解

まあ中心的な見解ですけどね。

『Inflation is currently running below the FOMC's 2 percent long-term objective for personal consumption expenditure (PCE) price inflation, and these readings have our attention. But inflation often fluctuates for transitory reasons. We generally try to look through such transitory movements, whether above or below our objective. There is some reason to think that the recent low readings partly reflect transitory factors.』

まあそうですな。

『Other factors point to a gradual increase in inflation. While some measures of longer-term inflation expectations have moved down, others remain more stable. Most FOMC participants anticipate that inflation will gradually move up to the FOMC's 2 percent target over coming years.』

ほほう。

『Continued low or falling inflation could, however, raise real concerns. Inflation can be too low as well as too high. I have no doubt that the Committee will monitor this carefully and defend the inflation goal "from below," if necessary.』

ただまあ最後に物価が低水準での推移が続く場合は対処が必要、という話はしているのですが、全体のトーンは物価警戒派ではないというニュアンスですな。


・労働市場は構造的な問題はあるが何気に強めかなと思われる

『The employment side of the dual mandate is a different story.』

ほう。

『From payroll employment's peak in January 2008 to its trough in February 2010, the U.S. economy lost nearly 9 million jobs, while the unemployment rate rose from an average of about 4-1/2 percent in 2007 to a high of 10 percent in October of 2009. As the economy has recovered, we have regained only about three-fourths of those lost jobs. Unemployment was 7.6 percent in May and so has come down about 2-1/2 percentage points from its peak. A broader measure that includes those who can only find part-time work, as well as those who want a job but have stopped looking, was 13.8 percent last month; in 2007, this measure averaged 8-1/4 percent.』

数字は良くなっているけれども、内容的にはパートタイム比率があがっているとな。

『In addition, long-term unemployment remains very high--4.4 million Americans or about 37 percent of the unemployed have been out of work for six months or more. These numbers represent tragedy and hardship for these workers and their families, of course, but they also represent a crucial economic challenge. The longer workers are unemployed, the greater the likelihood that their skills will erode and workers will lose attachment to the labor force, permanently damaging the economy's dynamism and potential output.』

長期失業者やスキルの低下などの構造問題を指摘。

『To summarize, although inflation is below target, it is expected by most observers to return over time to the Committee's 2 percent objective. The Committee will continue to carefully monitor inflation developments. But we are still far from full employment. The case for continued support for the economy from monetary policy is strong.』

というのがデュアルマンデートの状況についてのまとめですな。つーことでここまでが経済に関して。


・金融政策に関する説明キタコレでありますがまずはフォワードガイダンスから入ります

でまあこの次が『Implications for Monetary Policy』というお題でして・・・・・・・・・

『The federal funds rate has been near zero since late 2008, and since then the FOMC has been providing accommodation through two relatively new policy tools. These tools are "forward guidance" about the future level of the federal funds rate, which is the interest rate charged on overnight loans between banks, and large-scale asset purchase programs ("asset purchases," or LSAPs).』

つーことで、これはFOMC参加者全員共通の説明なのですが、現在のFEDの政策のコンポーネントを「ゼロ金利政策という金利政策」「フォワードガイダンスによる先行きの金融政策予想への働きかけ」「大規模資産買入(LSAP)」という分け方をしておりまして、さらに(ここだけ見ても判らんですけど)他の連銀高官も共通しているのは、最近の金融政策に関する説明をするのにフォワードガイダンスをLSAPの前に持って行ってまして、明らかに金融政策の軸足をフォワードガイダンスにしているというのが判るというものです(^^)。

でまあフォワードガイダンスとLSAPの説明をしているのでその辺を。

『I see the first tool, forward guidance about rates, as really an extension of traditional central bank rate-setting policy. By stating an intention to hold rates low and linking that intention to the path of the economy, forward guidance affects the path of longer-term rates and allows the market to make adjustments to these rates as economic conditions evolve.』

『The second tool is large-scale asset purchases. By purchasing and holding large amounts of Treasury securities and MBS, we put additional downward pressure on term premiums and so on long-term rates. Asset purchases are an innovative, unconventional policy. Their likely benefits may be accompanied by costs and risks, the nature and size of which remain uncertain.』

つーことで、フォワードガイダンスは金利誘導政策の延長だが、資産買入に関しては従来の政策と違う非伝統的政策なので、コストとリスクがありますよという話をしていますな。

『These two policies are complementary but play somewhat different roles. Asset purchases are being deployed to add near-term momentum to the economy. After those purchases are eventually completed, the purchased assets will remain on the Fed's balance sheet for some time and continue to put downward pressure on rates. The Committee will continue to use interest rate policy, including forward guidance about short-term rates, as we return to full employment. Provided inflation remains in check, the Committee will begin to assess whether to increase short-term rates when unemployment reaches 6.5 percent.』

資産買入はより近いタームの刺激があるという整理になっていますが、しかし近いタームでの刺激効果の後に残高効果もあるというのも何か妙な説明になってますなあという風に思うのでありました。

いずれにせよ、金融緩和政策の効果としては金利の引き下げという話で、金利政策およびフォワードガイダンスは短期金利の引き下げおよび予想短期金利の引き下げによる効果、資産買入に関してはタームプレミアムの引き下げによる効果という話をしております。

『Two important considerations are likely to arise at that time. First, if inflation remains low, as expected, that would be a signal that there is still significant slack in the economy. Second, a variety of other information will shed further light on the health of the labor market, including the labor force participation rate, flows into and out of employment, and other measures of labor slack. After the Committee first raises short-term rates, it will take a balanced, and in all likelihood gradual, approach consistent with its longer-run goals of full employment and inflation of 2 percent.』

金融政策を判断する際には色々な要因を勘案しますよとか、仮に利上げをすることになっても今回はかなり緩やかな引き上げになりますよ、という話をしておりますが、この辺の説明の背景には講演が行われた時期が6月末で、FOMCの後の逆さ絵会見で米国債券市場がゲロゲロマーライオンになったという流れを受けての火消しもあったりしますな、うんうん。

で、さっき申し上げた政策効果の話はこちらに。

『Both forward guidance and asset purchases work by lowering longer-term interest rates and contributing to an easing of overall financial market conditions. Lower rates increase economic activity through a variety of channels. Businesses and households react to lower rates by investing and spending more. Lower rates also support the prices of housing and financial assets such as stocks and bonds. Higher asset prices increase wealth and, with a lag, induce higher spending.』

と、低金利の効果をこれでもかと話をしているのもこの講演を行った時期の市場動向を受けて牽制するという意味も入っています。

『In all likelihood, the current LSAP program will continue for some time. It is therefore appropriate to ask how well asset purchases have worked, and whether they are still working today.』

という事で、現在のLSAPプログラムは今後も暫く継続されますので、そのLSAPプログラムのプロコン分析が必要ですよね、という事でプロコンの話キタコレ!!となるのですな。


・LSAPの効果:QE3は1や2よりはやや弱い効果だが効果はあるとの認識

『Benefits』という小見出しキタコレ。

『Most research has found, and I agree, that the first round of purchases of longer-term securities, which began in November 2008, contributed significantly to ending the financial crisis and preventing a much more severe economic contraction. The second round of purchases that began in November 2010 also appears to have been successful in countering disinflationary pressures.』

QE1とQE2は効きましたということで、QE1は金融危機とそれによる経済の急落への対応、QE2はデフレ圧力の回避に効きましたとな。

『Now that the financial crisis has receded and the economy is recovering at a moderate pace, are asset purchases still effective? In my view, the evidence across the channels is mixed, but positive on balance.』

つーことでQE3についても相対的にはポジティブとな。

『Economic models are used to provide a necessarily uncertain estimate of the effect on the economy of the FOMC's asset purchases. The Fed's workhorse macro model is FRB/US, which estimates a reduction of about 20 basis points in the unemployment rate after three years in the wake of $500 billion in purchases of longer-term securities.』

おー懐かしいこんな分析あったわ。

『There are reasons to think that this estimate may be too low; for example, FRB/US does not include any direct channel for LSAPs to boost house prices. There are also reasons to think that the estimate might be too high, since some of the channels by which lower rates spur economic activity could be attenuated in current circumstances, for example, by lower credit availability for small businesses and less creditworthy households, or corporate and household risk aversion.』

まあその分析が過大とか過少とかゆー意見もありますが・・・・・・

『My view is that the LSAPs continue to provide meaningful support for economic activity but perhaps less than what the FRB/US estimates suggest. Although the channels may not be working perfectly, it is unlikely that they are not working at all. Beyond these model-predicted effects, it also seems likely that the economy continues to benefit from the knowledge that the Federal Reserve is committed to supporting growth as long as necessary.』

パウエル理事はFRBのスタッフによる分析よりも効果が小さいとみているようですな、ほっほーという所ですが。


・そしてコスト分析の部分がやたら長いのであるが時間が無いので続きは明日とかインチキにも程があるあたくし

この次が『Costs of LSAPs』になりますが、PDFバージョンで見ると一目瞭然なのですけど、ベネフィットの話は1ページと4行分なのですけれども、コストの部分は2と3/4ページ分使っておりまして、コストの話の方がやたら長いという大変に素敵な内容。

で、この部分ですけれども、まあ結論からすると色々とコストはあるけれども、現在問題になりそうなのは何かという話では、一番の問題であるファイナンシャルスタビリティーの問題に関して、クレジット市場の不均衡という点ではスタイン理事の見立てに同意しているようで、その他の株価や住宅などに関してはまだバブルどころか適正な価格で無問題という見立て。

あと、気にしているのが巨大なバランスシートの出口政策でして、出口におけるコミュニケーションポリシーの困難さという説明をしている中で足元(6月後半)の金利上昇に関する言及があるのがチャーミングでして、なるほどFED内部ではFOMCの後米国債券市場がゲロゲロマーライオンになった事について、金利の上昇がケシカランというだけではなく、出口政策におけるコミュニケーションポリシーという観点からも問題視していたんでしょうなあ、というのが伝わる内容がございましたので、まあお暇な方はその辺をご覧くださいませませ。明日続きを(何もなければ)打ち込みます。

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2013/07/26

○FOMCプレビューというほどのものではないが

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MQIA3C6TTDSQ01.html
米国債:下げを埋める、FOMC控え当局のガイダンス観測
更新日時: 2013/07/26 05:02 JST

『7月25日(ブルームバーグ):米国債 相場は下げを埋める展開。来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で米金融当局は、利上げを急いでいないことを市場に理解させようとするとしたウォールストリート・ジャーナル紙の記事に反応した。』(上記URLより)

ま た W S J か ! ! !

という事で、そういや日銀のリークガーとか普段から罵っておられる方々におかれましては何故バーナンキ大僧正様のおられるFRBについてリークガーという話をなさらないのかと極めて不思議ではございますけれども、まあそんなどうでもよい話はさておきまして、来週のFOMCでは会見とかSEPの公表がありませんので、基本的には「大きな動き」というのは(特段急がなければいけないような状況では無い限り)やり難いと思われます。

特に、正常化政策方面で何かを出す、という事になりますと、その後の説明チャンスが無いのですから市場が超大慌てになってマーライオンとかになり兼ねませんので、そーゆー点からしても次回のFOMCで「先の方向感を明確に出す」みたいなのはやり難いでしょう。

でまあWSJの記事を細かく読んでいる訳では無いですが、今後の正常化過程において利上げペースがかなり遅くなる、という見通しを声明文でより強めに打ち出してくるというのは如何にも有りそうな話で、とにかく「利上げとオープンエンドQEの停止は別問題」「今の経済状況が見通し通りに推移すれば正常化過程のペースはスローになる」という説明は今までもしているものの、そこの所を更に強調するような声明文の内容になる可能性はありそうですね。

つまり、その辺りであればタカ派委員相手でもコンセンサスが取りやすい訳でして、なんとなれば先般のSEPで先行きのFF誘導金利見通しの中でタカ派の人たちが出しているFF金利予想が全体的に結構下がっていましたし、(昨日ネタにしたプロッサー総裁は別として)タカ派委員の中でも資産買入縮小はプロコン分析、景気見通しはそんなに強くない、という向きもあるので、利上げをゆっくりただし今の見通しを前提、というのであればまあいざとなったら後で反故にもできる(状況が変わったので変わったと言える)し、まあ良いでしょという話になりそうな予感。

ただまあ「金融の不均衡ガー」という論点で言えば、資産買入政策の拡大を止めたからと言ってゴルディロックスヒャッハー相場が終わる訳では無く、実際問題としては「経済状況を逸脱した低金利政策が長期化するという予想の定着」が金融不均衡ガーの元になる訳ですからして、今回そのような声明文が出ても実際のQE縮小議論になってくるとまたぞろややこしい事にはなるんでしょとは思いますけどね。


○ということで虫干しネタではあるのですがラスキン理事のバブルと金融規制と言う講演から雑感でも

サラ姐さん、と言いましても茶会ではありません(^^)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/raskin20130717a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/raskin20130717a.pdf
Governor Sarah Bloom Raskin
At the The Exchequer Club Luncheon, Washington, D.C.
July 17, 2013
Beyond Capital: The Case for a Harmonized Response to Asset Bubbles

見事に全部本文でして、PDF版だと講演本文貫録の16ページ。

『In my remarks, first, I will briefly review how asset bubbles form, and I'll highlight certain features of asset bubbles so we can discern how regulatory policy might respond to them.

Second, I'll assert that regulatory tools, including those related to capital, only work if part of a system of prudential supervision for all financial institutions.

Third, I'll ask whether capital and other regulatory requirements have meaning without a prescriptive and individualized analysis of risk for individual financial institutions. In this regard, I'll suggest several other considerations that financial institutions and regulators should consider in the regulatory context.』

ということで、前半のアセットバブル発生のメカニズムの話もございますが、バブルに対処する話の辺りから少々拾ってまいりたく存じます。

・その前にこの辺りの表現を見てふーんと思うあたくし

前半の『Asset Bubbles』という所の冒頭から。

『In order to think about regulatory policy from the perspective of leaning against excesses and vulnerabilities created by asset bubbles, or from the perspective of strengthening resilience to asset bubbles, we need to understand how financial institutions participate in the creation of bubbles.』

「regulatory policy from the perspective of leaning against excesses and vulnerabilities created by asset bubbles」ってえ事で、この「leaning against」という表現を見るとつい「BISビューVSFEDビュー」というのを思い出してしまいますが、さすがのFEDも今は「clean up the mess」ビューは引っ込めるわな(アセットバブルが発生したら莫大なものになるので)という所で。

この辺のBISビューとFEDビューに関連する話は翁邦雄さんのこのペーパーが分かりやすくまとまっておりますので、つーかだいぶ前に話題になってたと思うのでご存知の方も多いとは思いますがオヌヌメ。
http://www.esri.go.jp/jp/others/kanko_sbubble/analysis_02_01.pdf

話を戻しまして。

『The story of asset bubbles, for me, is one in which there is usually explicit and purposeful financial institution involvement. It used to be believed that asset bubbles emerged spontaneously, or perhaps came from sunspots or other mysterious causes. Now we know more and we know better, and, while we may not be able to predict bubbles, we understand them to be a product of particular actions and choices by financial institutions and their regulators.』

つーことで、さっき引用した所にありますように、金融機関の行動がバブルの発生にどのように寄与するのか、という事に対する理解から、その行動そのものを規制することによって「leaning against the wind」な動きをしましょう、という話で、そのツールキットについての話に繋がるという感じでありまする。

で、この後バブルの発生に関する説明が延々と続くのですがその辺はまあ読んでちょ(文章は長いが表現は平易なのでそんなに読んでて苦にならないと思う)。


・資産バブルへの対処は「規制によるleaning against the wind」ストラテジー&金融政策の使用は消極的

中段の『Responding to Asset Price Bubbles』の項が短い(2パラグラフ)なのですが重要なお話。

『The good news is that I believe that regulatory policy, when part of a system of effective prudential supervision, has the potential to address asset price bubbles and their consequences. Regulatory policies can lean against emerging asset bubbles and the vulnerabilities that attend them by restraining financial institutions from excessively extending credit. In addition, such policies can build resilience in the financial system, enhancing its ability to absorb and shrug off unexpected losses from any source, including sharp asset price declines. 』

ということで、金融規制と資本増強措置によって資産バブルの発生を事前に防ぎ、さらに金融機関の資本バッファーを増強することによって損失のバッファーになるという説明ですな。

『Of course, monetary policy also has the power to lean against the growth of asset bubbles. While there could be situations in which monetary policy might be needed to try to limit the growth of a bubble, in my opinion such use would represent a failure of regulatory policy, which represents a more tailored response than the flattening out of aggregate demand that would likely result from contractionary monetary policy.』

一方で金融政策によって資産バブルの事前対処をする件については、その有効性がある場合と言うのも認めているものの、ラスキン理事の見解としては基本的に否定的で、この辺に対する見解はスタイン理事の見解とはだいぶ温度差がありそうです、というかスタイン理事の見解の方がFED的には異端であって、FEDの中心的見解としては「金融規制で資産バブルに事前対処」という話になっているという事ですな。


・金融規制でバブルに事前対処というのもこれはこれでアレな物がありまして

その次が『Regulatory Tools』というお題でして・・・・・・・

『Some of the significant regulatory tools for addressing asset bubbles--both those in widespread use and those on the frontier of regulatory thought--are capital regulation, liquidity regulation, regulation of margins and haircuts in securities funding transactions, and restrictions on credit underwriting.』

ということで具体的に列挙していますが、資本規制、流動性規制、証券ファンディングの際におけるマージンやヘアカットに関する規制、クレジットの引き受けに関する規制、などが挙がっております。

『 Without plumbing the depths of each type of tool, I'll say a few words about each as it relates to the curbing of excess credit growth that fuels asset bubbles and to mitigating the effects of a bubble's collapse. 』

てなわけで、この先にツールキットに関して説明しているのですが、その前に雑感。

基本的に現状のFEDの中心的な見解はこのラスキン理事の講演にありますように、「金融規制でバブルに事前対処」ということなのですが、(引用していませんが)前段にあったバブル発生のメカニズムの中で、リーチフォーイールドの動きが高まって来た場合に発生する動きをああだこうだと説明しておりまして、その中で「運用調達のミスマッチによる流動性問題」というのを強調している(日本の昭和恐慌における台湾銀行の過度なコールローン依存問題もそうですけど問題が大爆発するのは流動性ですから当然ちゃあ当然なのですが)のがまあ気にはなる所。

つまり、流動性規制とか上記のヘアカットみたいな話とか、その辺の規制をバブル事前抑制という観点で縛って行きますと、今度は金融市場における仲介業者としての証券ブローカーとか、資金の仲介業者としての役割を一面では果たしている投資信託のような業態に対して過度に厳しい規制を強いるような話になってしまいますと、BISビューとは別の意味で経済の拡大を阻害しやせんかと思う次第で、どうも米国の規制に関するビューは「金融規制によって事前対処」というのに力点を置きすぎる余り、規制の方を厳しくし過ぎるんじゃネーノというような懸念ががががと言った所ではありまする。

いやまあそうなった場合は資本バッファーとか流動性バッファーが厚い業態的にはあまり痛くはないのかもしれませんけれども、業態の特徴として相対的にそれらのバッファーが薄くなるのが仕様でありますブローカーとか資金仲介業者にとっては「FEDの金融規制ビュー」(今勝手に命名)というのは相対的にみて厳しい罠とか思いますなという雑談でありました。


・時間が無いので(汗)途中を飛ばして最後の部分へ

この後はこれらの規制のツールキットについての説明と、そのツール利用におけるプロコン(まあ要するに規制のやりすぎの弊害)説明とかがあって、これはこれで大ネタなのですが時間が無いのと引用していると大変な事になりそうなので割愛して最後の纏め部分を引用しておきます。

『Concluding Thoughts』

『Even within the regulated sector, crafting appropriate financial regulation to address asset bubbles is challenging. In reality, it is hard to know in real time when asset prices have deviated sharply from fundamentals. Asset price increases often initially reflect improving fundamentals and may only subtly and gradually change into reflections of speculative excess. Prior to the peak of housing prices, interest rates were low, making mortgage payments affordable; real incomes were rising; population was growing; and household formation was high--all "fundamental" determinants of the demand for housing and house prices. 』

バブルの発生と簡単に言いますが、資産価格上昇の初期は当然ながらファンダメンタルズの改善を背景に起こっているので、バブル発生の時はバブルと認識されないものですよねとは仰せの通り。

『At some point, however, house prices were driven less by these fundamentals and more by speculation and weak underwriting. Ultimately, this drove house prices to unsustainably high levels. Regulatory intervention was much too late.』

で、住宅バブルに関しては規制が遅れましたと。

『The U.S. regulatory system is fragmented, and, hence, it takes time to choose and implement policies and calibrate them appropriately. It takes time to cooperate, coordinate, and harmonize responses. But such is today's imperative. We must complete in a timely fashion the post-Basel III and Dodd-Frank requirements.』

で、これはその前に説明があったのですが、各種規制をバラバラに行うのではなくて、統合的にプルーデンス政策として運営するという論点でありまして・・・・・・・・

『 It is particularly important to increase the amount, and improve the quality, of required minimum capital; to continue stress testing and capital planning; and to reduce overreliance on unstable short-term wholesale funding. These reforms will build resilience to whatever shocks may come, and will reduce the potential for asset bubbles and excessive credit growth, leverage, maturity transformation, reliance on unstable short-term wholesale funding, and, thus, the potential for future financial crises.』

『Still, if regulators become fixated on the tools at the expense of compliance and enforcement, the tools themselves will be meaningless. Only when such tools--be they capital-focused, liquidity-focused, margin--and haircut-focused, or underwriting-focused--are fully embedded into a comprehensive system of prudential regulation will they reach their potential in mitigating the growth of asset bubbles and providing resiliency against the awful consequences attendant to their destruction. 』

でまあこれらの各種規制に関して、ツールを決め打ちして使っていくのではなく、色々な規制を統合的に使っていって資産バブルの発生のような問題に事前対処したい、という話なんですけれども、まあこういう話を見ますと金融規制の影響が金融市場やら金融機関(というよりも仲介業者)に与える影響についてはもっと研究しないといけなせんなあと思いました、というありきたりな結論になるのでした。

#内容について殆どスルーしましてすいませんすいません

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2013/07/25

お題「7月にして夏枯れ相場なのでプロッサーとかブラードの講演ネタをば」

昨日の債券先物の出来高11860枚ェ・・・・・・・・・・・・

輪番があっても先物売買高が今月最低と申しますか、もう最近は輪番でどの年限が幾ら入るかとかいうような事くらいしか話題にならないという実に残念な展開にも程がありますので、本日は目先を変えて最近のFEDの人の発言からタカ派で著名なプロッサーさんの直近講演から雑談でも(^^)。


○プロッサー総裁のタカ派は背景が直球で景気に強気&フォワードガイダンスのコミットメント化を主張

直近7月12日の講演から。
http://www.phil.frb.org/publications/speeches/plosser/2013/07-12-13_assessing_monetary_policy.cfm
http://www.phil.frb.org/publications/speeches/plosser/2013/07-12-13_assessing_monetary_policy.pdf
Assessing Monetary Policy
Global Interdependence Center’s Fifth Annual Rocky Mountain Economic Summit
Jackson Hole, WY
July 12, 2013

今回の講演、最初に『Highlights』というのがあるのでとりあえずそこを読むのが吉。

『President Charles Plosser outlines the Fed's policy tools and offers three steps for a more systematic approach to policy.』

ということで、今回のもう一つの雑談ネタは出口政策に関してのアプローチはどうするのかという話になるんですけどね。

『The Fed's policy tools include the traditional federal funds rate, which has been near zero since December 2008; the purchases of longer-term Treasuries and mortgage-backed securities to put downward pressure on longer-term interest rates, since the fed funds rate cannot go below zero; and the FOMC's forward guidance about policy, which has been an attempt to manage the public's expectations.』

FEDの金融政策ツールとして、政策金利操作(ただし既にゼロ金利制約に到達して長期に渡っている)、資産買入、フォワードガイダンス、の3つに整理する。という所は既にご案内の通りですが、さすがにこの部分は全てのFEDの高官による説明において共通であります。

『In June, the FOMC reaffirmed that policy will stay accommodative for some time to come. Fed Chairman Bernanke said in his press conference that if incoming data are broadly aligned with the central tendency of the Summary of Economic Projections, the Committee anticipates that it would moderate the pace of monthly purchases, perhaps ending them around mid-2014.』

6月FOMCでは緩和的な政策を暫く継続することを再確認したうえで、FOMC後の会見で資産買入政策の今後の見通しについて示しましたと。

『Plosser's forecast is more optimistic, especially for the unemployment rate, which he sees approaching 7 percent by the end of 2013 and 6.5 percent before the end of 2014.』

で、プロッサー総裁の経済見通しは2013年末には失業率7%、2014年中には失業率が6.5%になるということでFOMCの中心的な見解よりも特に労働市場に関して強気の見方です。

『Plosser notes it is important that we end purchases before we reach 6.5 percent; otherwise, this threshold for considering an increase in the funds rate target will lose meaning.』

キタコレ。

『Plosser emphasizes that forward guidance can change expectations and affect the current economy only if policymakers credibly commit to follow that path.』

つーことで、プロッサー総裁は現在のスレッショルド方式のフォワードガイダンスをコミットメントにすべきとの主張をしています。

『Plosser offers the FOMC three steps for a more systematic approach to monetary policy:

1. Wind down asset purchases by the end of 2013 in a gradual and predictable manner.2. Commit to the forward guidance on the fed funds rate path by treating the 6.5 percent unemployment rate and the 2.5 percent inflation rate as triggers rather than thresholds.3. Explain how policy will evolve after the trigger is reached by committing to a robust policy rule.』

ということで本文の方ですが、途中をすっ飛ばして景気の見方と今後の金融政策に関しての部分を。


・経済見通しは強め

先程のまとめをもうちょっと詳しくした説明が『My Economic Forecast and Policy Views』の部分に。

『My own forecast is in fact a bit more optimistic than the central tendency projections, especially as it pertains to the unemployment rate. Specifically, I see the unemployment rate falling somewhat more quickly than the central tendency projection. My forecast has the unemployment rate approaching 7 percent by the end of this year and 6.5 percent before the end of 2014. I also see inflation returning to our 2 percent target sooner than some do, as I believe the current period of low inflation is transitory and expectations remain relatively stable.』

ということで失業にも物価にも強気ということですが、他のタカ派(というかオープンエンドQE早期終了派)のFED高官ではラッカー、スタインの両名が先行きの経済について弱気な中で資産買入政策のプロコン比較を考量の上タカ派なスタンスを取っている、という形なのですが、プロッサー総裁の場合はもうちょっと普通に「景気が強いのだから買入拡大停止すれば良し」というロジックですな。


・利上げのスレッショルドに到達する前に買入拡大は停止しないと意味が無いとな

『In my view, it is important that we end purchases before we reach the 6.5 percent threshold for considering an increase in the funds rate target. If we don't, I believe the 6.5 percent threshold will lose meaning.』

『Would anyone believe we would raise the fed funds rate at the same time that we are increasing the size of the balance sheet through asset purchases? Thus, consistent with my forecast and with the Committee's forward guidance, I favor starting to reduce the pace of purchases and ending the asset purchase program by year-end.』

そらまあ利上げ検討のスレッショルドに到達した時点で買入拡大が継続してたらそもそも利上げ検討どころの騒ぎじゃないから話にならんのでということで、その上景気見通しが上記の通り強くて来年中には失業率6.5%に到達するという読みならば買入ペースはとっとと下げて年末には買入拡大停止すべきとなります罠。


・今後の政策のチャンレンジとな

『Policy Challenges Going Forward』という小見出しの所から。

『I believe the recent efforts to clarify the state-contingent nature of the asset purchase program are a step in the right direction, but the Fed still faces significant challenges going forward.』

足元でのコミュニケーションポリシーについては評価してますな、まあタカ派だから当たり前だが。

『The challenges arise as much, if not more, from the policy choices that the Fed has made, rather than from a failure to communicate or a misunderstanding by the market.』

市場とのコミュニケーションの失敗よりも重要な問題は政策手段の間違いですよとな。

『Let me begin by recapping some of the issues that have concerned me for some time.』

ふむ。

『There is ample commentary about the risks of removing accommodation too soon. I believe there is too little discussion about the risks of keeping too much accommodation in place for too long.』

早すぎる緩和縮小についてのコメントは良く聞かれるが、一方で緩和を必要以上に長期に維持する事のリスクについての議論が少なすぎるとプロッサー総裁は指摘、ということですがいやそうじゃないって人もいるんですけどねえという所ですが、まあこの部分はプロッサー総裁のポジショントーク部分を差し引いて考えたとしても、FEDの中心的見解は「緩和政策を早期に終了する事へのリスクを警戒」という主張の方がメジャーである、というFEDにおける議論の状況を示すものではないかと思うのですけどどうですかね。

『Unwinding from a very large and growing balance sheet of long-duration assets will be difficult, potentially disruptive, and pose significant risks. 』

つーことで、先ほど申し上げましたように、プロッサー総裁は基本的には景気に対する強気というのが背景にあるのですが、他には緩和政策の長期化や、出口政策の困難化というリスクも見ている、というのがここで示されています罠。


・ということでプロコン分析の概念から

『Failing to execute a graceful exit and falling behind the curve could risk significant inflation or a rapid increase in interest rates that may be counterproductive.』

緩和のし過ぎによって出口政策が遅れる事は、インフレのリスクや、急激な引き締めを行う必要性の発生という宜しくない結果を招きますとな。

『I have often said that financial markets are unlikely to be patient as we unwind from this extraordinary accommodation. The recent volatility in interest rates may be a taste of things to come. It illustrates just how difficult the task will be when we truly begin to unwind.』

一方で金融市場は現在の異例の緩和の縮小に対しては我慢強くないでしょう。だからこと足元で金融市場が暴れている訳で、とはまあそうっすな。

『Aside from these challenges, some have argued that the prolonged period of near-zero interest rates and our direct intervention in the financial markets through our purchases could be contributing to the misallocation of capital and other distortions that could result in financial instability.』

長期化するゼロ金利政策は金融不均衡を招き金融の不安定化に繋がるという見解もあります、ということですけれども、「some have argued」ってひとごとのように言ってますのでプロッサー総裁はその点をメインにはしないのかね?

『Growing threats of this nature are extremely hard to identify before it is too late - so we need to be wary of the unintended consequences of our actions and stay vigilant. Just because financial markets like what we are doing at the moment does not necessarily mean that it is the best thing for the long term.』

金融不均衡の観点というのは計測するのが難しく、見つかった時には時既にお寿司になっているので、緩和政策の副作用に関してはより注意深くあるべきとかまあそういう話をしていますな。

『As I have mentioned on many occasions, the risks associated with unwinding a very large balance sheet and with the potential financial distortions caused by extremely low interest rates have led me to conclude that our current asset purchase program fails the cost-benefit test.』

ふむ。

『The benefits have been meager at best. A great deal of the impact seems to have manifested itself in various forms of financial reengineering or capital structure arbitrage; it has yielded little in the way of real business investment that would translate into greater labor demand. It is time to exit from the asset purchase program in a gradual and predictable manner.』

今後の資産買入政策のプロコン分析をすると資産買入は早期に緩やかに縮小すべきというのが結論。


○でもってフォワードガイダンスのコミットメント化に関連する雑談なんぞを

ちょっと飛ばして先のほうにこのような説明がありましてですな。

『While the FOMC has offered some forward guidance on future policy, it has been unwilling to make a clear commitment to its forward guidance. Instead, the FOMC has offered a variety of changing targets or signals about future behavior.』

フォワードガイダンスはスレッショルドであってトリガーでは無いし、6.5%の数値に関してもそれだけで判断するのではない、という風にFEDが説明している訳ですけれども・・・・・・・・・・・・

『Although the aim was to clarify our policy intentions, I believe the repeated changes have likely caused more confusion than illumination.』

その「総合的判断」というのはコミュニケーション上の問題を起こすのではないかというのがプロッサー総裁の指摘。

『In August 2011, the Committee began using dates to signal when the policy rate might increase, but it changed those dates at subsequent meetings.』

2011年の8月に導入したフォワードガイダンスですが、ガイダンスに関する文言を何回か変更していますよね。

『The FOMC then opted to formulate its forward guidance in terms of thresholds for unemployment and inflation.』

で、直近はスレッショルドにしましたと。

『This is preferable to calendar dates because it is state contingent. Yet, the FOMC has specifically said that the thresholds are not triggers - they are not firm commitments and they may change. The Committee has repeatedly opted for language that allows a great deal of discretion to behave as it chooses, depending on the circumstances.』

カレンダーデート方式よりも経済データ紐付けの方が好ましいのだが、現状は「そうは言いましてもこれに完全に紐が付いている訳では無いですよね」という指摘。

『But effective forward guidance demands commitment.』

有効なフォワードガイダンスはコミットメントを必要とします(キリッ)。

『When the Committee stresses the general flexibility of its policy decisions or makes vague references to data dependency, it does little to clarify the FOMC's intentions about future policy, even though clarity is what the FOMC wants to provide to the markets through its forward guidance. Thus, there is a fundamental tension between wanting to provide clarity as to the forward course of policy and wanting to maintain complete discretion. The Committee has failed to address this tension, which undermines the effectiveness of its policy.』

一方で現状ではFOMCは金融政策の柔軟性を強調する為に、結局のところ先行きの金融政策に対する見方に対して混乱を招いており、それによって金融政策の効果を削いでいる(だいぶ端折りましたが)という説明をしていて、結論としてはスレッショルドではなくてトリガーにすべきである、とまあそういう結論になるのでした。


・・・・・・・・・つーことでまあそれはそれで政策論としては判るのですが、じゃあ実際問題としてスレッショルドをトリガーに変える事が出来るのか、という点についてはまあ難しいんじゃないのという風にあたくしは思います。

つまりですね、そもそもデュアルマンデートという制約があって、しかも比較的景気に遅行しやすい物がそのデュアルマンデートで示されている、という状況の中で政策の自由度を縛るというのは中央銀行としてはやり難い政策だろうなあと思うのですよ。

更に、市場の期待安定化という意味では、プロッサー総裁の言う理屈もこれはこれで判る、というかフォワードガイダンスの文言をカレンダーベースにしたのがそもそも変だったという事になるのですけれども、一方で特定の経済指標に思いっきり紐を付けた形の金融政策コミットメントを行うと、コミットメントの閾値にその経済指標が近づいてきた時に、市場の期待が極端に振れやすくなるという弊害もありまして、目先という点ではプロッサー総裁の指摘が有効かもしれないのですが、将来の出口に近い状況になった時を考えた場合、逆に政策の有効性が損なわれるようにも見えるのですな。

とまあ色々と考えますと、時間軸政策というのも中々難しい面があって、出口が遠いうちから期待が振れやすい状態が良いのか、手前はど安定していて出口でクソ振れるというのが良いのか、と考えますと中々難しい面がありますなあとか思うのでありました。

でまあ話は違いますが、政策技術論でもそうですし、「先行きの金融政策の柔軟性を阻害する」という意味でもそうなのですが、オープンエンド型のQE政策、という現在のFEDの政策は出口の設計が出来ていない、という点からして明らかに設計ミスでしたなあと改めて思うのでありました。


ということで、プロッサー総裁のいうような「コミットメントの強化」というのは理屈では判るのですけれども、中央銀行のDNA的に難しいでしょうねというのが結論であります。


○おまけですがブラード総裁の直近講演メモ

http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/BullardRockyMountainEconomicSummit12July2013Final.pdf
Recent Developments in Monetary Policy

ということで、講演というかブラード総裁ネタの場合よくあるのがこのスライドショー攻撃でして、まあこのスライドショーをちょっと斜め読みしたのですが、メインの内容は現在の市場の反応についての考察になっていてブラード総裁の景気見立てとか先行き見通しがそれほど詳しくなかった(基本的には「以前より見通しは改善」だが「先行きの政策決定には慎重であるべき」です)のでQE3継続に対するハト派状態のブラード総裁ネタは投入断念ということで、他のネタがありましたら改めて投下予定です。

3ページ目のスライドと、33ページ目のスライドを見るのが吉。

『This talk』(3ページ目)

『I will discuss some recent developments in U.S. monetary policy.

・Recent FOMC policy announcements have been followed by a substantial rise in Treasury yields.
・Has such a rise been justified?
・I will review several possible justifications.
・I will conclude that a key justification is that there is currently more optimism about future economic performance than previously.
・However, we should be careful: Optimistic forecasts have consistently been wrong during the last several years.』

>Optimistic forecasts have consistently been wrong during the last several years
>Optimistic forecasts have consistently been wrong during the last several years
>Optimistic forecasts have consistently been wrong during the last several years

・・・・・・・・・ワロタ。

『Conclusions』(33ページ目)

『・Recent FOMC decisions have met with a substantial rise in Treasury yields.
・I have suggested that a possible justification for the rise in yields is increased optimism concerning future U.S. macroeconomic performance.
・However, given recent forecasting performance, we should be careful in using an optimistic forecast to justify current policy decisions.
・A more prudent approach would be to wait to see if better macroeconomic outcomes materialize in the months and quarters ahead.』

つーことで基本的には「景気は改善しているように見えるけれども先行きの政策運営には慎重であるべきだ」というお話で、まあハトですなハトという所です。

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2013/07/22

○BOE議事要旨に見る「量で勝負」の終了モード(ただし日本を除く)について

今回何故か資産買入拡大の提案が無かった7月MPC議事要旨である。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2013/mpc1307.pdf

経済に関する話の所はとりあえずスルー致しまして、『The immediate policy decision』の議論部分を読むわけですが、中々味わいがありますな。


・経済に関しては国内が想定通り、海外にやや懸念とな

第21パラグラフはまあいつもの見通しの話なのですが。

『The Committee set monetary policy to meet the 2% inflation target in the medium term, and to do so in a way that avoided undesirable volatility in output in the short term.』

というのはいつもの話。

『There had been further signs during the month that a recovery was in train, but it remained weak by historical standards and a degree of slack was likely to persist for some time. Twelve-month CPI inflation had increased to 2.7% in May and was set to rise further in the near term. Thereafter, inflation was likely to fall back towards the 2% target as external price pressures faded and a revival in productivity growth curbed domestic cost pressures.』

回復は継続しているが水準はうんこで、物価は暫く高めだけれどもその後は2%のターゲットに戻るでしょう、というのが基本的な見通し。

国内景気に関してが次のパラグラフ。

『Developments in the domestic economy had generally been positive and broadly in line with the recovery laid out in the May Inflation Report projections. The composition of spending in Q1 looked to have been more favourable than in the previous data release, with larger contributions from consumption, dwellings investment and net trade. The activity surveys had continued to pick up, signalling stronger growth in Q2, and it might well be the case that this momentum would continue into the second half of the year.』

国内景気は5月インフレ見通しにオンラインで、消費とか住宅投資とかネット貿易などが第2四半期の成長に寄与すると。

『There were also greater signs that the gradual reduction in uncertainty and improvement in credit conditions over the past year were feeding into household spending, with increases in a wide range of spending categories, some rises in house prices and a pickup in housing transactions.』

金融環境やクレジットコンディションの改善が消費をサポートしており、住宅価格の上昇も好影響とな。

『But ONS estimates of business investment had been weak, and looked even more so on the latest vintage of the data. The latest outturns had helped to explain some of the unusual weakness in earnings growth, with some pay likely to have been postponed to Q2 to take advantage of the reduction in the top rate of income tax at the beginning of April. But pay pressures remained muted, and earnings continued to rise more slowly than during the first half of 2012.』

一方で企業の投資が弱くて企業収益の伸びとか弱いとか、支出の先送りの動きがあるとかという話ですな。

でもって海外経済に関しては米国がやや弱いという認識と、EM諸国の原則が明確になったという認識を示しておりまして、まあどこぞの中銀なんぞはあまりこの辺の弱さを強調していないのですが、普通に認識するとこうなるんじゃネーノという気がする。つーことで第23パラグラフ。

『The news on foreign demand conditions was more mixed. US activity indicators had been a little weaker on the month, but the outlook remained very similar to that at the time of the May Report.』

とは言っても米国については一応5月インフレレポートの見通しに似ていると。

『The slowing in activity growth in the major emerging economies was becoming more apparent and it was possible that this reflected in part a gradual re-evaluation by households and businesses of the success of structural reforms in raising future incomes and rebalancing demand.』

大きなEM諸国って中国の話かねとか思う訳ですが、家計や企業の構造改革とかリバランスとかによる影響がこれらの明確になりつつある減速に対して寄与している可能性があると。

『Activity indicators in the euro area had been a little more encouraging, and there had been further steps taken towards constructing a banking union. But the challenge of reducing debt levels in the periphery economies to more sustainable levels remained daunting, and political developments in Portugal and Greece had indicated the fragility of the political consensus. The depressed level of activity in the euro area would weigh on the UK recovery for some time to come.』

ユーロエリアについては銀行同盟に対する進展を評価するものの、周縁国の問題が拡大している点が懸念で、当面は厳しい状態が続くという見通し。


・市場金利上昇に関して:短期金利上昇による金融引き締めがケシカランという認識

第24、25パラグラフがその話。

『Market interest rates had risen sharply internationally and asset prices had been volatile and generally lower. The rise in interest rates in the United States had probably reflected a change in perceptions of the path for monetary policy there, rather than news on the month about the economic outlook. UK gilts were to a certain extent substitutes for US Treasuries. It was understandable, therefore, that movements in longer-term gilt yields might be correlated with those of Treasuries. But it was less clear why shorter-term interest rates had increased in the United Kingdom in tandem with those in the United States. That said, given the volatility in the market, it was not obvious that current forward curves were a fair reflection of market participants’ expectations.』

金利が上昇したのは米国の金融政策見通しの変化によるものが大きくて、まあUKの国債金利も米国の影響を受けて動くのは判るのだが、長期金利は兎も角短期金利が上昇して英国国債市場における先行きの政策金利予想パスが上昇するのは意味が分からんわどうなっとるんじゃヴォケとご認識です(^^)。

『Taken in isolation, this increase in interest rates represented an unwelcome tightening in monetary conditions that, were it to persist, would risk hampering the emerging recovery.』

つーことでUKの金利が上昇するのは「マネタリーコンディションの歓迎できない引締め」であり、これが継続すると英国経済の回復が始まっている傾向に対する阻害となるリスクがあるとかキタコレでありまする。ってまあこの部分は声明文で示されていましたけどね。

『Given that, the Committee agreed that it was important to communicate that the implied rise in the expected future path of Bank Rate had not been warranted by the recent developments in the domestic economy.』

つーことで、MPCは現在の市場における先行きの政策金利予想パス(上記の話)が現在の英国経済の状況に対して正当化できない(had not been warranted)となという事で、要は「市場の予想する政策金利パスを下げたい」という話。


・フォワードガイダンスの導入に関して

第26パラグラフになります。

『The latest remit letter to the MPC from the Chancellor had requested that the Committee provide an assessment, alongside its August Inflation Report, of the case for adopting some form of forward guidance, including the possible use of intermediate thresholds.』

英国財務相からのご依頼って奴ですかそうですか。

『This analysis would have an important bearing on the Committee’s policy discussions in August, although there was no presumption that this would go hand in hand with a change in the policy stance.』

8月インフレレポートに向けて検討を重ねるようで。

『Against that backdrop, the Committee considered the case for additional monetary stimulus at this meeting.』

で、その一方で今回追加緩和をするかというお題があったのですが・・・・・・・・・・


・資産買入拡大不要論の中で「プロコン比較」のメンバーが示されている件について

第27パラグラフが今回の白眉。

『For most members, the current policy setting was appropriate and the onus on policy at this juncture was to reinforce the recovery by ensuring that stimulus was not withdrawn prematurely, subject to keeping inflation on track to hit the 2% CPI inflation target in the medium term.』

早期の緩和縮小はしませんというのはまあそらそうやろ。

『The recent rise in market interest rates, were it to be maintained, would represent such a premature withdrawal, but the proposed statement from the Committee should help to prevent that.』

でまあ市場が早期緩和縮小で先走った事に対して今回の声明文では抑制できるでしょうと。

『Developments on the month had signalled that the recovery was becoming more firmly established, with further rises in business survey indicators of activity and employment, signs of a greater willingness to spend on the part of consumers, and a continuing recovery in the housing market. The current rate of growth was not yet sufficient to begin to close the economy’s margin of spare capacity, but there was reason to believe that the recovery might gain pace in the second half of the year as confidence improved. There had been little news about the near-term prospects for inflation, which would remain well above the target for some time to come, and the downside risks to pay growth had diminished. Productivity growth continued to be weak and, given the impairment of the financial system, it was by no means clear that productivity growth would match any recovery in demand.』

景気回復の状況は良くなっているものの、その水準とかはまだまだ経済のスラックを解消するには至らず、物価に関してはそんなに上がらず、生産性の伸びは相変わらず弱いということで、まあ景気回復過程にはあるもののその勢いとか水準はダメダメですよねという話。

『For some of these members, asset purchases remained an effective tool with which to inject more stimulus, although an expansion in the purchase programme was not warranted at this meeting.』

『But for others, the benefits of further asset purchases were likely to be small relative to their potential costs. In particular, further purchases could complicate the transition to a more normal monetary policy stance at some point in the future.』

ということで今回ここがほほうという所なのですが、資産買入の拡大が不要という人の中でも見解が分かれていて、資産買入の拡大が今後も追加緩和には有効だが今回はその時期では無い、という人もいるのですが、その一方で「プロコン比較をした場合、特に将来の正常化を考えた場合に、これ以降の資産買入拡大はその効果よりも潜在的なコストの方が高まっている」という指摘をしている人がいるというのが今回の白眉。

つまりですね、米国のオープンエンドQE3の買入規模縮小の議論でもそうなのですが、タカ派と言われるラッカーとかスタインとかの経済見通しって別に強い訳では無くて、じゃあ何で縮小論を唱えるのかというと基本的にプロコン比較でこれ以上のバランスシート拡大は効果よりも潜在的なコストが大きい、特に正常化過程の阻害になる、という話をしている所と思いっきりオーバーラップする話でもありまして、まー方向性としてやはり「量で勝負」からの脱却モードに英国もなっておりますなってえ所で、非伝統的金融政策の方向性が日本だけ別ですが、量から時間軸という方向になっているという事なんでしょうかねという風に思いましたですよ、はい。


・追加緩和が必要だけれどもまあ今回はフォワードガイダンスの話があるしバランスシートも大きいしという見解

第28パラグラフから。

『For the other members, further stimulus was warranted.』

mostメンバーは追加緩和不要でしたが、他のメンバー(複数)は追加緩和必要という事ですが、そらまあ前回3名(うち1名はキング総裁)が資産買入拡大を提案していたので。

『Domestic activity was recovering as quickly as envisaged in the May Inflation Report, but the pace remained too slow to begin to close the economy’s margin of spare capacity. Moreover, there remained significant headwinds to growth in the United Kingdom, including the effects of the fiscal consolidation, risks from the euro area and an impaired banking sector. Although the impact of administered and regulated prices meant that inflation was above the target, upward pressures on pay and profit margins were weak, and an expansion in demand would probably initially be associated with a strengthening in productivity growth rather than higher costs. Indeed, if faster growth in demand boosted productivity sufficiently, cost pressures could even be lower. Commodity prices were lower and the downside risks to them had increased with the slowing in emerging economies.』

国内経済は回復基調になるものの、水準はうんこだしリスクは色々とあるし、一方で物価上昇圧力はここから経済回復がより強めになっても低い訳だから追加緩和は必要でしょという事ですな。

『An expansion of the asset purchase programme remained one means of injecting stimulus, but the Committee would be investigating other options during the month, and it was therefore sensible not to initiate an expansion at this meeting.』

よって追加緩和が必要だけど、まあ今回はフォワードガイダンス導入の話がありますから良しとしますかと。

『Given the already large size of the asset purchase programme, there was merit in pursuing a mixed strategy with regards to the different policy instruments at the Committee’s disposal. The Committee’s August response to the requirement in its remit to assess the merits of forward guidance and intermediate thresholds would shed light on both the quantum of additional stimulus required and the form it should take.』

でまあここもほほーなんですが、BOEのバランスシートが既に大きくなっていることもありますので、他の手段も考えていくというのも重要であって、フォワードガイダンスのスレッショルドの検討などもしていきたいとゆーことで、追加緩和が必要と言うメンバーでも必ずしも「量で勝負」一本槍でもないというのも中々味わいがあるというものです。

#まあその一方でジャパンの場合は・・・・・・・・・・・(^^)

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2013/07/19

○FOMC議事要旨ネタ(今さらでスイマセン)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20130619.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20130619.pdf

つーことで第3弾ですが。

・労働市場に関して

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から以下だいたい参りますが、まずは労働市場に関して。

『Participants generally agreed that labor market conditions had continued to improve, on balance, in recent months; many saw the cumulative decline in the unemployment rate and gains in nonfarm payrolls over the past nine months as considerable.』

ということで労働市場は改善継続なのですが、相変わらず「昨年9月からの累積的な改善状況」という話が出て(この部分以外でもそうなのですが、QE3実施した昨年9月を起点にした改善という論点が多うございますな)いますなという所で、「past nine months as considerable」ですわよ奥様。

『Reflecting these developments, participants' forecasts for the unemployment rate at this meeting were lower than those prepared for the September 2012 meeting.』

そらそうよという所ですが、わざわざこうやって記載されている辺りが「労働市場の顕著な改善」→「QE3の拡大停止」というイメージを与える訳で、まあこの辺りを読むとタカ派っぽい印象を思いっきり与えますなあという所だと思うのですよね。

『Among the encouraging aspects of labor market developments since then were the step-up in average monthly gains in private employment, the breadth of job gains across industries, the decline in layoffs, and a rise in voluntary quits in some industries.』

で更に追いオリーブを投下するかのように「encouraging aspects of labor market developments since then」と来たもんだという所ですわ。

『However, some participants discussed a number of indicators that suggested that the improvement in broad labor market conditions was less than might be implied by the decline in the unemployment rate alone. Some pointed out that the rate of hiring still fell short of the pace that they saw as consistent with more-noticeable progress in labor market conditions, that a portion of the improvement in payroll employment since the September meeting was due to data revisions, or that there were no signs of an increase in wage pressures. Others expressed concern about the still-elevated level of long-duration joblessness and the weakness in labor force participation.』

先程まで無暗矢鱈と威勢の良い話をしていましたが、However以降は複数名(最初がsomeで、その後に複数の他の人(Othersなので複数)が)がそうは言ってもまだまだ労働市場が本格的に強くなったとは言い難いですよねという指摘や懸念を示しています。

『Most participants still saw slack remaining in the labor market, although they differed on the extent to which the progress to date had reduced that slack and how confident they were about future labor market improvement. 』

今後は引き続き大きな労働市場のスラックがどのように縮小するかと言うのが重要ですよねという話については大方が一致という事のようですな。

つーことで、恐らくこの議事要旨を見ていて一番「タカ派キタコレ」となるのはこの部分でして、何せ資産買入のペース見直しに関して必要となるのは「労働市場の顕著な改善」でありますので、今回の6月ミニッツでやたらこの部分が強気化している点についてはそらまあ市場があばばばばーとなる罠という所でございまする。


・インフレに関して

『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』から物価に関する討議の部分を。

『Inflation was low in the months prior to the meeting, with the trends in all broad measures remaining below the Committee's 2 percent longer-run objective.』

物価が低いキタコレ。

『Several transitory factors, including a one-time reduction in Medicare costs, contributed to the recent very low inflation readings. In addition, energy prices declined, and nonfuel commodity prices were soft.』

足元では一時的要因が効いているという話ですが・・・・・・・・

『Over the past year, both core and overall consumer price inflation trended lower; participants cited various alternative measures of consumer price inflation, including the trimmed mean PCE and CPI as well as the sticky price CPI, that suggested that the slowing was broad based.』

一方で色々な物価指数を見ても物価上昇が幅広いベースで低下傾向にある、という指摘がキタコレであります。

『Market-based measures of inflation expectations decreased over the intermeeting period but remained within their ranges over the past few years.』

市場ベースのインフレ期待は前回FOMC以降低下しているものの、これは過去数年のレンジ内にいると。

『Most participants expected inflation to begin to move up over the coming year as economic activity strengthened, but many anticipated that it would remain below the Committee's 2 percent objective for some time.』

で、大方の委員は物価はそのうち戻るでしょただし2%まで行くのはちと時間が掛かりますなという見解。

『One participant expressed concern about the risk of a more rapid rise in inflation over the medium term, given the highly accommodative stance of monetary policy.』

ジョージ総裁かプロッサー総裁のどちらか(ラッカー総裁かも)だと思うのですが、まーたこの理屈キタコレではあるのですが、どうもこの見解に対して他の皆様が砲撃をしたようですね。

『In contrast, many others worried about the low level of inflation, and a number indicated that they would be watching closely for signs that the shift down in inflation might persist or that inflation expectations were persistently moving lower.』

many othersはインフレのレベルが低くなっている点への懸念を表明していまして、その低下が基調的なインフレの低下傾向の定着やインフレ期待のシフトダウンにつながらないか懸念しているとの事ですな。

つーことで、物価の方を見ると、声明文や逆さ絵会見の冒頭説明で強調されていた「足もとの低下は一時的要因」だけではなく、懸念部分も結構示されている、という事からしますとややハトっぽくみるつーことでして、まあバランスアプローチと言ってしまえばそれまでですけれども、それこそ逆さ絵先生の議会証言でもそうですが、労働市場の改善の話をウェイト置けばタカ派に聞こえるし、物価の話にウェイトを置けばハト派に聞こえるという事なのでしょうかねと思います。


・市場動向について

『In their discussion of financial market developments over the intermeeting period, participants weighed the extent to which the rise in market interest rates and increase in volatility reflected a reassessment of market participants' expectations for monetary policy and the extent to which it reflected growing confidence about the economic outlook.』

最近の金利上昇やボラ上昇は市場参加者の金融政策に関する見方や、経済見通しに関する見方の変化を反映したものである(キリッ)とな。

『It was noted that corporate credit spreads had not widened substantially and that the stock market had posted further gains, suggesting that the higher rates reflected, at least in part, increasing confidence that moderate economic growth would be sustained.』

何となれば、金利やボラは上昇しているけれども社債のスプレッドの拡大などは発生しておらず、株価も更に上昇しておりまして、つまり上記のようなことが背景にある、という見方でヨロシと思われます(キリッ)。

『Several participants worried that higher mortgage rates and bond yields could slow the recovery in the housing market and restrain business expansion. However, some others commented that any adverse effects of the increase in rates on financial conditions more broadly appeared to be limited.』

その長期金利上昇に関して、複数(Several)はモーゲージ金利や長期金利の上昇が住宅市場の回復を遅くしたり、企業の拡大を阻害したりすることへの懸念を表明するも、他の複数(some others、だがこの前ネタにしたようにどうも頭数的にはSome>Severalっぽい希ガス)はそれら悪影響の顕在化は限定的ではないかとの指摘とな。

ということで、まあこの部分に関して言えばやはりタカ派的、とまでは言いませんが、市場金利上昇に関してまあシャーナイナイみたいな話をしていて割と放置プレイ的な感じですな。

で、この後はファイナンシャルスタビリティーの話とコミュニケーションポリシーの話ですが、そこに関してはミニッツ出た翌朝にやりましたので、まあポイント部分となるとあたくしが勝手に思っている箇所はこんな所でカバーできていると思います。

#うむ、今日は全部引用ネタでしたな(汗)

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2013/07/18

○逆さ絵先生議会証言はいつもと同じ話の繰り返しのような気がするが構成を工夫して配慮しています

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/mpr_default.htm
Monetary Policy Report

議会証言のテキストは上記URL先の右上のボックスにリンクがあります。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20130717a.htm
Chairman Ben S. Bernanke Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Before the Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives, Washington, D.C.
July 17, 2013

でまあ昨日の夜割と早い時間に出ていたような気もするのですが、ぐうたらのあたくしは寝起きなので手抜きで『Monetary Policy』の部分を超斜めして、まあ案の定の内容だったので資産買入に関する部分、つまりこの小見出しの後半部分だけを引用するのでありました。

とは言え金利の所を全然引用しないと話が繋がらないので前半でフォワードガイダンスで金利政策が云々という部分もちょっと引用。

『Monetary Policy』の冒頭にこのようにぶちかましてとりあえず早期利上げウギャーとかならないようにする配慮が入ったのは把握した。

『With unemployment still high and declining only gradually, and with inflation running below the Committee's longer-run objective, a highly accommodative monetary policy will remain appropriate for the foreseeable future.』

ということで、最初にこういうのをかましているものの、まあここの説明が曲者というかロジックに無理はあるだろと思うのですが、「highly accommodative monetary policy」という中身を金利政策と資産買入に分離している訳ですな。金利政策の部分は途中飛ばして結論の所をば。

『We are relying on near-zero short-term interest rates, together with our forward guidance that rates will continue to be exceptionally low--our second tool--to help maintain a high degree of monetary accommodation for an extended period after asset purchases end, even as the economic recovery strengthens and unemployment declines toward more-normal levels. In appropriate combination, these two tools can provide the high level of policy accommodation needed to promote a stronger economic recovery with price stability.』

ということで、実際問題としてはゼロ金利政策状態の元でバランスシートが大きい状態であれば「highly accommodative monetary policy」である、という説明をしているのもいつもの通りだったりします。まあそうは言いましても政策技術論的に言ってもそうですし、市場がフォワードルッキング的に動くという事を考えればやはりそうなのですが、一旦方向性として「QE3停止」となってしまうと「じゃあ次は」という話になってしまうので、中々その「量と金利は別」というロジックは実際に買入拡大停止となった時には難しいと思われますな。

でまあ脱線しますと、そういう事を考えますとQE3における「オープンエンド方式」というのは政策技術という意味から考えますと上手く無い手段であったという事が足元でのコミュニケーションの混乱を見れば明らかでしたなという風に思いますけどどうっすかね。

つまりですね、QE1やQE2の時のように額はでかくても期限を切っていれば「自動的に出口に到達する」訳ですし、出口が近づいてきた時に再延長すれば新たな緩和姿勢みたいなのを見せられるという仕組みになっていたのですが、オープンエンド方式の場合はそもそも当初の時点で明確な出口のスレッショルドでも作っていれば別ですが、まあそうじゃない訳ですからして、そもそも「緩和拡大を延々と続ける」というのがデフォルトになってしまう分だけ「拡大を一旦停止します」というだけでも多大なエネルギーを要するという残念なことになる訳ですよね。

通常ベースの金利政策と違って名目ゼロ金利制約のある中でのいわゆる非伝統的政策というのは、その政策の効果と副作用とか、波及経路とかに対して知見の蓄積が乏しい訳ですから、そもそも非伝統的な政策をローンチする際にはそれら政策効果などの検討もそうですけれども、非伝統的政策を終了させる方法の設計もそれなりに考えておかないといけませんよね、というのが名目ゼロ金利制約下における所謂非伝統的政策の設計において重要なポイントとなるのですが、その意味からして「拡大が続くもののペースを下げようとするだけで大騒ぎになってしまう」というオープンエンド政策というのは明らかに出口政策を難しくしているので設計としては失敗に近かったんじゃネーノとゆー風に思うのですけどにゃ。

・・・・・・・脱線しましたすいませんすいません。

『In the interest of transparency, Committee participants agreed in June that it would be helpful to lay out more details about our thinking regarding the asset purchase program--specifically, to provide additional information on our assessment of progress to date, as well as of the likely trajectory of the program if the economy evolves as projected. This agreement to provide additional information did not reflect a change in policy.』

6月に申し上げたアレは政策の変更では無くて現状の政策の延長においてより透明性を増すものでありますとな。

『The Committee's decisions regarding the asset purchase program (and the overall stance of monetary policy) depend on our assessment of the economic outlook and of the cumulative progress toward our objectives. Of course, economic forecasts must be revised when new information arrives and are thus necessarily provisional.』

で、今後の政策はデータ次第攻撃キタコレ。

『As I noted, the economic outcomes that Committee participants saw as most likely in their June projections involved continuing gains in labor markets, supported by moderate growth that picks up over the next several quarters as the restraint from fiscal policy diminishes. Committee participants also saw inflation moving back toward our 2 percent objective over time. If the incoming data were to be broadly consistent with these projections, we anticipated that it would be appropriate to begin to moderate the monthly pace of purchases later this year. And if the subsequent data continued to confirm this pattern of ongoing economic improvement and normalizing inflation, we expected to continue to reduce the pace of purchases in measured steps through the first half of next year, ending them around midyear. At that point, if the economy had evolved along the lines we anticipated, the recovery would have gained further momentum, unemployment would be in the vicinity of 7 percent, and inflation would be moving toward our 2 percent objective. Such outcomes would be fully consistent with the goals of the asset purchase program that we established in September. 』

でまあこの辺はこの前の逆さ絵会見での能書きと同じっすな。

『I emphasize that, because our asset purchases depend on economic and financial developments, they are by no means on a preset course.』

私は強調したいのですが、資産買入は経済と金融の状況次第でありますので、この前申し上げたことは既定路線ではありません(キリッ)。

・・・・・・・・・って当たり前なんですけどね、でも「経済状況がこのまま順調なら」そのスケジュールになるんですけれどもね(^^)。

『On the one hand, if economic conditions were to improve faster than expected, and inflation appeared to be rising decisively back toward our objective, the pace of asset purchases could be reduced somewhat more quickly. On the other hand, if the outlook for employment were to become relatively less favorable, if inflation did not appear to be moving back toward 2 percent, or if financial conditions--which have tightened recently--were judged to be insufficiently accommodative to allow us to attain our mandated objectives, the current pace of purchases could be maintained for longer.』

これまた当たり前ですな。

『Indeed, if needed, the Committee would be prepared to employ all of its tools, including an increase the pace of purchases for a time, to promote a return to maximum employment in a context of price stability.』

さよですな。

『As I noted, the second tool the Committee is using to support the recovery is forward guidance regarding the path of the federal funds rate. The Committee has said it intends to maintain a high degree of monetary accommodation for a considerable time after the asset purchase program ends and the economic recovery strengthens.』

ここでしらっと「経済が強くなって買入拡大が終わっても緩和的な金融環境です」という声明文にある話をしておりますな。

『In particular, the Committee anticipates that its current exceptionally low target range for the federal funds rate will be appropriate at least as long as the unemployment rate remains above 6-1/2 percent and inflation and inflation expectations remain well behaved in the sense described in the FOMC's statement.』

また金利政策のスレッショルドの話に戻っております。

『As I have observed on several occasions, the phrase "at least as long as" is a key component of the policy rate guidance. These words indicate that the specific numbers for unemployment and inflation in the guidance are thresholds, not triggers. Reaching one of the thresholds would not automatically result in an increase in the federal funds rate target; rather, it would lead the Committee to consider whether the outlook for the labor market, inflation, and the broader economy justified such an increase.』

この金融政策のパートについて、最初に金利の話をして、最後にまた金利の話をする、という構成にすることによって「政策金利は低い状態を相当の長期間続けます」という部分を強調するという形にしてまして、タカ派色を前面に出さないように構成を考えてますなあと思うのでした。

『For example, if a substantial part of the reductions in measured unemployment were judged to reflect cyclical declines in labor force participation rather than gains in employment, the Committee would be unlikely to view a decline in unemployment to 6-1/2 percent as a sufficient reason to raise its target for the federal funds rate. Likewise, the Committee would be unlikely to raise the funds rate if inflation remained persistently below our longer-run objective. Moreover, so long as the economy remains short of maximum employment, inflation remains near our longer-run objective, and inflation expectations remain well anchored, increases in the target for the federal funds rate, once they begin, are likely to be gradual.』

で、金融政策のパートの最後はスレッショルドが自動的なトリガーなのではなく、経済の全体の状況がデュアルマンデートに向かって進んでいるかというような内容も十分に確認するし、中長期的なインフレ期待が十分にアンカーされている状況においては金利の引き上げを行う場合でもその過程は緩やかなものと強調(従来の米国では正常化過程での利上げペースが中立金利に向けてホイホイ上昇していたので)ということで。

でまあこの部分だけ読みますと結局の所従来の話をしているに過ぎないのですけれども、文章構成を考えてタカっぽさを前面に出さないようにしているなあという所だと思うのですけどどうでしょ??


○7月BOEは全員一致とな

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Pages/mpc/pdf/2013/mpc1307.aspx
Minutes of the Monetary Policy Committee Meeting held on 3 and 4 July

最近このページに最後の結論部分だけ載せるようになっていますが。

『The Governor invited the Committee to vote on the propositions that:

・Bank Rate should be maintained at 0.5%;
・The Bank of England should maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion.

Regarding Bank Rate, the Committee voted unanimously in favour of the proposition.

Regarding the stock of asset purchases, the Committee voted unanimously in favour of the proposition.』

資産買入に関して「unanimously」とな何ぞという所でして、前回の6月会合ではこうなっていた訳ですな。

『Regarding the stock of asset purchases, six members of the Committee (Charles Bean, Paul Tucker, Ben Broadbent, Spencer Dale, Ian McCafferty and Martin Weale) voted in favour of the proposition. Three members of the Committee (the Governor, Paul Fisher and David Miles) voted against the proposition, preferring to increase the size of the asset purchase programme by a further £25 billion to a total of £400 billion.』(BOE6月MPCのMinutesより)

今回はご案内の通りフォワードガイダンスの導入を次回インフレレポートまでに行うという事になったという変化がありまして、それによって資産買入拡大提案が引っ込んだのだというのは外形的には分かりますが、はてさて何でそうなったのかというのはMinutesを見れば判るかもしれないし判らないかも知れないのですが(BOEのMinutesは早く出るのは良いのだが妙な端折り部分とかがあって話が分からんわというケースが多々ある)、まあそれは週末に詳しく読むということで勘弁。

明らかに「量で勝負」路線から「フォワードガイダンス」路線に変化という事になったんでしょうかね。

ミニッツ本文はこちらになるのですが、さすがにこれを寝起きで読む根性と語学力は無いorz
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/Documents/mpc/pdf/2013/mpc1307.pdf

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2013/07/17

○FOMC議事要旨である(時間がアレなので多分明日に続く)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20130619.htm
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20130619.pdf

今日は(あたくしの寝起きの関係上)時間配分を明らかにしくじってしまいミニッツネタを延々とやる余裕がなくなってしまいましたので、まあ個人的にほーと思った中でもしかするとしょうも無いかもしれませんがあたくし的には気になった所から最初に参りますぞなもし。

・連銀スタッフによる「金融不均衡の点検」はSEPのタイミングに実施しているようで

今回読んでて実は「へー」と思ったのがありまして、『Staff Review of the Financial Situation』の一番ケツのパラグラフになるのですけれども。

『The staff reported on potential risks to financial stability, including the stability of banking firms, nonbank financial intermediaries, and asset markets.』

前回のミニッツには実はございませんで、あれ??と思ったのですが、今回は入っていまして点検はちゃんとしているんだと思った次第。

『Most market-based measures of the health of the banking sector--such as banks' stock prices, credit default swap spreads, and equity correlations--pointed to an improvement in the stability of the banking sector, in part because of rising levels of liquidity and capital as well as diminished concerns about downside risks.』

で、今回のリスク認識で最初にレビューされているのが何故か「金融システムの安定」という方で???なのではありますが、クレジットスプレッドなどの各種指標を見ますと銀行セクターの安定性は高まっているとかそんな分析をしています。ちなみに金融状況のレビューに関してはドルファンディングの状況とかクレジットコンディションの状況とかの話もございます。

『However, a number of indicators pointed to a modest increase in risk-taking and leverage that was largely being intermediated through the shadow banking system. Signs of upward pressures on the valuations of some risky assets were also noted.』

でまあその次に過剰なリスクテイクの話が出ていまして、こちらに関しては「リスクテイキングやレバレッジの緩やかな拡大がシャドウバンキングを仲介として進んでいいるという数多くの指標がある」とか「リスクの大きい資産の価格形成に価格上昇圧力が掛かっているサインもある」とかキタコレな指摘をしておりますの。

『Overall, the risks to financial stability were viewed as roughly unchanged since March.』

とは言いましても、全体的には3月の状況とファイナンシャルスタビリティーのリスクは大きく変わっていませんとかそういう話になっていますが、ここで「3月と」という形で示されているということは、すなわち3月のFOMCで点検したのの再点検という事で、こちらに関しては毎回のFOMCではなくSEPの回に基本的には報告されるものという位置づけなんだなあというのを認識しました。


・先行き金融政策の見解

いきなりワープして『Committee Policy Action』の最終パラグラフ。

『Regarding the outlook for policy, members agreed that monetary policy in coming quarters would depend on the evolution of the economic outlook and progress toward the Committee's longer-run objectives of maximum employment and inflation of 2 percent.』

今後の金融政策は経済データ次第である、という所ですが、ちなみにこの件に関しては今回の議事要旨の中でまあ何度も何度も書いてありますのでとにかくそこは強調したいのよねというお話ですな。

『While recognizing the improvement in a number of indicators of economic activity and labor market conditions since the fall, many members indicated that further improvement in the outlook for the labor market would be required before it would be appropriate to slow the pace of asset purchases.』

資産買入ペースの削減には今後の労働市場の見通しの更なる改善が必要であると多くのメンバーが見解を示したということですが、しかし「去年の秋(=QE3導入)からの改善」としているのが曲者というか、まあここもとのオープンエンド削減地均しモードになってからというもの皆さん「去年の秋以降の改善が顕著」って話をしますなあという所で。

『Some added that they would, as well, need to see more evidence that the projected acceleration in economic activity would occur, before reducing the pace of asset purchases.』

ただまあここで更に「need to see more evidence」と言っている人が数名いるとか書いてあるところを見ると、このまま順調に回復を続ければ縮小オッケーという人がそれ以外という事になるんでしょ、と思ったのだがどうっすかね。

『For one member, such a decision would also depend importantly on evidence that inflation was moving back toward the Committee's 2 percent objective; that member urged the Committee to modify its postmeeting statement to say explicitly that the Committee will act to move inflation back toward its goal.』

これはブラード総裁ではないかと思われますが、物価がピックアップしてこないうちに資産買入ペースを縮小させるのは如何なものかという指摘をしている人が1名いて、この人は「もっと物価に関して強調すべき」と主張とまあどう見てもブラードです本当にありがとうございましたという風情。

『A couple of other members also worried that the downside risks to inflation had increased, with one of them suggesting that the statement more explicitly reflect this increased risk.』

他にも2名がインフレのダウンサイドリスクを指摘して、1名はインフレのダウンサイドリスクについて声明文でより明確に言及すべきと指摘。

『However, several members judged that a reduction in asset purchases would likely soon be warranted, in light of the cumulative decline in unemployment since the September meeting and ongoing increases in private payrolls, which had increased their confidence in the outlook for sustained improvement in labor market conditions.』

その一方で「several members」はさっさと買入を減らすべきという主張をしていまして、労働市場の顕著な改善が進んでいるとの認識を示しています。

『Two of these members also indicated that the Committee should begin curtailing its purchases relatively soon in order to prevent the potential negative consequences of the program from exceeding its anticipated benefits.』

とっととやめろという人のうちの2名の見解は「今後の資産買入政策のプロコンを考えたら反対」というものだそうです。他の人はどうなのかねとは思いました。

『Another member pointed out that if the program were ended because of concerns about such consequences, the Committee would need to explore other options for providing appropriate monetary accommodation.』

ここのAnotherというのがさっきのSeveralの中の人なのかどうかがいまいち謎なのですが、もし入るのであればSeveralって2+1で3人の事かとも思うのですが、この人の指摘自体が上記の2名の人に対する反対意見的な指摘にも読めるのでどっちなのか判らんぞなもしという所で。

というのはともかくとして、もしプロコン分析的に追加の買入を止めるのであれば、別の手段で適切な金融緩和の追加を行うべきではないか、という指摘をしている人が居るというようですね。

『Many members indicated that decisions about the pace and composition of asset purchases were distinct from decisions about the appropriate level of the federal funds rate, which would continue to be guided by the thresholds in the Committee's statement.』

多くのメンバーは資産買入のペース縮小と利上げの問題は別ということを強調すべきであると指摘。

『In general, members continued to anticipate that maintaining the current exceptionally low level of the federal funds rate was likely to remain appropriate for a considerable period after asset purchases are concluded. 』

ということで、声明文にもある文言ですが、資産買入が止まってもFF金利の引き上げには時間が掛かりますという想定は継続しますというのが一般的な結論となりました、という所です。

つーことで、まあここの最終パラグラフ(と先日ご紹介したメンバーの議論の最終部分)での見解の割れ方が何というかもう凄いですねという所でありまして、この状況で金融政策をまとめて行きましょうってんですからバーナンキおじちゃんもてーへんなもんですなというか、この調子で次に引き継がれたら次の議長も難儀ですなあと思うのでありました。

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2013/07/16

○ブンデスバンククオリティキタコレ

海外ネタと言えば本当はFOMC議事要旨ネタなのですが、盛大に引用大会をしていたら時間がアレになって参りましたので別件の海外ネタ。

ドイツ連銀の英語版サイトはこちら。
http://www.bundesbank.de/Navigation/EN/Home/home_node.html

えー、今朝の時点ではバイトマン先生のご尊顔と共にデカデカとあるお題がこれ。

>No sea change in monetary policy communication
>No sea change in monetary policy communication
>No sea change in monetary policy communication

どう見てもドラギ総裁を後ろから銃撃しています本当にカムサハムニダ。

http://www.bundesbank.de/Redaktion/EN/Kurzmeldungen/Current_issues/2013_07_11_weidmann_gvb.html
No sea change in monetary policy communication
Munich 2013-07-11

『According to Bundesbank President Jens Weidmann, the comments of the ECB Governing Council on longer-term interest rate developments have not set a rigid course for the ECB’s future monetary policy.』

>have not set a rigid course for the ECB’s future monetary policy

それはそうなんだがドラギが色々と強調しているのを台無しにするブンデスクオリティワロタ。

『They do not lay out an "unconditional, fixed path for key interest rates", he said at the conference of the Bavarian Association of Cooperatives (Genossenschaftsverband Bayern) in Munich. "This forward guidance should not, therefore, rule out a timely rise in key interest rates if there are signs of increasing price pressures in the future", Weidmann explained.』

何もそこまで言わんでも・・・・・・・・・・

『The ECB Governing Council had not simply tied itself to a mast like a modern-day Ulysses, he said.』

セイレーンの歌の物語って前も見たことあるなと思ったらシカゴ連銀のエバンス総裁が(奇しくも)フランクフルトで以前フォワードガイダンスに関する講演してましたな。

http://www.chicagofed.org/webpages/publications/speeches/2012/03_16_12_frankfurt.cfm

その中に『In particular, I would like to see our forward guidance take a different form-one that explicitly ties liftoff in the funds rate to observable economic outcomes (You can think of this as a Ulysses-type forward guidance: We tie ourselves to the mast to avoid the siren calls of premature tightening.)』なんてえのがありましたのですが、この辺でネタにしました^^;

更に続く。

『According to ECB President Mario Draghi, the Governing Council expects the ECB key interest rates to remain "at present or lower levels for an extended period of time". At the conference in Munich, Weidmann emphasised that this statement did not constitute a change of strategy.』

>this statement did not constitute a change of strategy
>this statement did not constitute a change of strategy
>this statement did not constitute a change of strategy

・・・・・・・・・・ドラギ総裁を後ろから銃撃というよりは最早殲滅しているように見えますが。

『 "It is an attempt to explain our monetary policy stance even more simply and clearly - so that it is understood, as far as possible, by all market participants", he said. Weidmann added that the comments were intended to provide more monetary policy guidance in times of heightened uncertainty.』

そうなのか・・・・・・

『Weidmann believes that the sustained period of low interest rates holds the risk of side-effects. "It leads to the temptation to delay reforms and necessary structural changes", he said. Weidmann stressed that risks to financial stability could also build up, while side-effects would also increase the longer the phase of low interest rates continued.』

長期間における低金利政策の弊害とかもうね・・・・・・・・・

でまあ後半は銀行同盟とかそっちの話のようですな。本ちゃんの講演はドイツ語みたいですな。これなのかな?
http://www.bundesbank.de/Redaktion/DE/Reden/2013/2013_07_11_weidmann.html

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2013/07/11

○超寝起きで超斜め読みにもなっていないがFOMC議事要旨

これで終了なら「議事録」でも良いのだがFRBの場合transcriptが後日出るのだから「議事録」では無く「議事要旨」と言う方が日本語の用法として正しいだろと思うのですが(しつこい)まあ正直各パラグラフの頭の数語だけ見て面白そうな気がする所を引用しておく。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20130619.htm(HTML)
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcminutes20130619.pdf(PDF)

・冒頭に正常化云々の小見出しを持ってきて・・・・・・・・・

冒頭の小見出しがいきなり『Discussion of Guidelines for Policy Normalization』でワロタですが、これはまあ以前より一応こういう話を年に1回(だか2回だか忘れたが)しているのでその一環だと思うがわざわざ小見出し付けて冒頭に持って来たのですが・・・・・・

『In light of the changes in the System Open Market Account (SOMA) portfolio over the past two years, the Committee again discussed its strategy for the eventual normalization of the stance of monetary policy and the size and composition of the Federal Reserve's balance sheet that was released in the minutes of the Committee's June 2011 meeting.』

とありますように、以前出口がどうのこうのの話が有った2011年の時のお話を再検討という話であるのですが・・・・・・・・・・

『Although most participants saw this review as prudent longer-range planning, some felt that the discussion was premature.』

とは言いましても、そもそも殆どの人はそらまあ慎重に長期計画で行くべという認識だし、数名はそもそも出口の議論自体が早過ぎじゃヴォケという見解ですよ、つーことで「QEの方はともかくとして本格的な正常化には時間が掛かりますよ」というのを冒頭でガツンとアピールする、という中々味わいのあるプレイに出ていますな、うんうん。

『Meeting participants, in general, continued to view the broad principles set out in 2011 as still applicable.』

でまあ2011年の時の考えは概ね妥当と。

『Nonetheless, they agreed that many of the details of the eventual normalization process would likely differ from those specified two years ago, that the appropriate details would depend in part on economic and financial developments between now and the time when it becomes appropriate to begin normalizing monetary policy, and that the Committee would need to provide additional information about its intentions as that time approaches.』

つーても状況も違うのでその辺は勘案しませんとねと。

『Participants continued to think that the Federal Reserve should, in the long run, hold predominantly Treasury securities. Most, however, now anticipated that the Committee would not sell agency mortgage-backed securities (MBS) as part of the normalization process, although some indicated that limited sales might be warranted in the longer run to reduce or eliminate residual holdings. A couple of participants stated that they preferred that the Committee make no decision about sales of MBS until closer to the start of the normalization process. Participants agreed that the Committee's focus continued to be on providing appropriate monetary accommodation to promote a stronger recovery in the context of price stability and so judged that additional discussion regarding policy normalization should be deferred.』

バランスシート縮小の際には国債の売却はする可能性あってもMBSの売りはまあせんでしょという見解が多いですよねという毎度の話ですが、まあこの辺は先の話ですからおいおい検討しましょう的な感じっすなあ。

・「Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook」の後半がオモロイ

でまあ慌てて読むときの(あたくしの場合限定ですが)コツとしては、「Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook」の最終パラグラフとその手前を読む→冒頭に何かオモシロ小見出しが無いか→「Committee Policy Action」を読むという感じなのですが(寝起きだと大概最初の所で終了)、今回は念の為Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook」の各パラグラフ冒頭数語を見て、とりあえず経済の方はスルーしてそれ以外の言及部分を見る、という訳判らんプレイにでたらほほーというのがあったのですな。

・市場動向の評価だがまあ懸念している感じというほどでも無い

『In their discussion of financial market developments over the intermeeting period, participants weighed the extent to which the rise in market interest rates and increase in volatility reflected a reassessment of market participants' expectations for monetary policy and the extent to which it reflected growing confidence about the economic outlook.』

足元の金利上昇とボラ上昇に関する議論とな。

『It was noted that corporate credit spreads had not widened substantially and that the stock market had posted further gains, suggesting that the higher rates reflected, at least in part, increasing confidence that moderate economic growth would be sustained.』

でまあ金利上昇に関しては金融政策と経済見通しに対する市場の再考が行われた結果でありますが、その一方で社債のクレジットスプレッドには著変が無く株価は堅調推移しているということで、これはまあ少なくとも市場ちゃんでは経済の先行きに関する信頼度が上がったということでよろしゅおすえという評価になっとるようで。

『Several participants worried that higher mortgage rates and bond yields could slow the recovery in the housing market and restrain business expansion. However, some others commented that any adverse effects of the increase in rates on financial conditions more broadly appeared to be limited. 』

モーゲージ金利および長期金利の上昇によって住宅市場の改善や企業の投資行動拡大(で良いのかな?)が抑制される懸念を示す人がいるものの、そんなに懸念するほどの事もないでしょという人もいる、という両論併記モードになっていましてこれはまあベースの景気が違うから当たり前だが欧州とは全然違うニュアンスになっていますね。


・ファイナンシャルスタビリティーへの懸念が増えてるのですが何か微妙

でもってその次のパラグラフの冒頭を見ていきなり目が覚める。

『A number of participants offered views on risks to financial stability.』

>A number of participants offered views on risks to financial stability.
>A number of participants offered views on risks to financial stability.
>A number of participants offered views on risks to financial stability.

・・・・・・・・・・・キタコレ、とゆー所なのですが、その次を読むとこれがまた微妙。

『A couple of participants expressed concerns that some financial institutions might not be well positioned to weather a rapid run-up in interest rates. Two others emphasized the importance of bolstering the resilience of money market funds against disorderly outflows.』

えーっと、金利が上昇して金融機関の資産劣化ガーとかMMFなどからの無秩序な資金流出ガーという懸念というのは(しかも総勢4名)そもそも出口だのQE縮小だのというプレトークしているから発生している話だと思うのだがナンジャコラ。

『And a few stated their view that a prolonged period of low interest rates would encourage investors to take on excessive credit or interest rate risk and would distort some asset prices.』

まあこちらの毎度お馴染み低金利長期化で過剰なリスクテイクガーの話は分かるが。

『However, others suggested that the recent rise in rates might have reduced such incentives.』

市場金利が上がってガス抜きできたやん、と他の人たちは指摘。

『While market volatility had increased of late, it was noted that the rise in measured volatility, while noticeable, occurred from a low level, and that a broad index of financial stress remained below average. One participant felt that the Committee should explore ways to calibrate the magnitude of the risks to financial stability so that those considerations could be more fully incorporated into deliberations on monetary policy.』

ボラは盛大に上昇したけどまあ水準は過去対比そんな無茶でも無いよねとな。で、最後に1名が金融政策の判断においてこれらのファイナンシャルスタビリティーに関する考慮をしましょうねとかそんな話をしているように見える。


・QE3縮小に関して:コミュニケーションポリシー

その次から3パラグラフがQE3縮小に関するお話。

『Participants discussed how best to communicate the Committee's approach to decisions about its asset purchase program and how to reduce uncertainty about how the Committee might adjust its purchases in response to economic developments.』

QE3に関するコミュニケーションポリシーとな。

『Importantly, participants wanted to emphasize that the pace, composition, and extent of asset purchases would continue to be dependent on the Committee's assessment of the implications of incoming information for the economic outlook, as well as the cumulative progress toward the Committee's economic objectives since the institution of the program last September.』

今後の経済データを見ながら、といのはまあ当然ですが、9月以来の買入の累積的効果を見てとかまあ大勢の方向性としては減らす気満々なんでしょうなあというのは把握した。

『The discussion centered on the possibility of providing a rough description of the path for asset purchases that the Committee would anticipate implementing if economic conditions evolved in a manner broadly consistent with the outcomes the Committee saw as most likely.』

で、このコミュニケーションポリシーの議論のポイントは最もありそうな経路の呈示というまあ要するに逆さ絵会見での説明で示されたアレに関してとな。

『Several participants pointed to the challenge of making it clear that policymakers necessarily weigh a broad range of economic variables and longer-run economic trends in assessing the outlook. As an alternative, some suggested providing forward guidance about asset purchases based on numerical values for one or more economic variables, broadly akin to the Committee's guidance regarding its target for the federal funds rate, arguing that such guidance would be more effective in reducing uncertainty and communicating the conditionality of policy.』

QEのフォワードガイダンスを導入するという手もありますなということですが・・・・・・・

『However, participants also noted possible disadvantages of such an approach, including that such forward guidance might inappropriately constrain the Committee's decisionmaking, or that it might prove difficult to communicate to investors and the general public.』

一方でそのような数値を出すとQE縮小における自由度を損なうので却ってイクナイという事も指摘しているようで。


・QE3縮小に関して:更にコミュニケーションの話である

『Since the September meeting, some participants had become more confident of sustained improvement in the outlook for the labor market and so thought that a downward adjustment in asset purchases had or would likely soon become appropriate; they saw a need to clearly communicate an intention to lower the pace of purchases before long.』

some participantsはとっとと縮小が吉なので買入ペースを近いうちに落としますという話を今回するのがコミュニケーションポリシー上適切ですよと。

『However, to some other participants, this approach appeared likely to limit the Committee's flexibility in adjusting asset purchases in response to changes in economic conditions, which they viewed as a key element in the design of the purchase program.』

some other participantsはそのアプローチはその後の経済データの判断を放棄して政策の自由度を下げるのでよろしくないと。

『Others were concerned that stating an intention to slow the pace of asset purchases, even if the intention were conditional on the economy developing about in line with the Committee's expectations, might be misinterpreted as signaling an end to the addition of policy accommodation or even be seen as the initial step toward exit from the Committee's highly accommodative policy stance.』

Othersは買入ペースを落としますよという話をするのは、その決定がその先の状況によって変化し得るものであり、経済がFOMCの考えるオントラックで推移しているとしても、今後の追加緩和という選択肢が全く無くなるとか、出口政策の最初のステップであるとか、そういう誤解を与えるのではないかと懸念。

『It was suggested that any statement about asset purchases make clear that decisions concerning the pace of purchases are distinct from decisions concerning the federal funds rate.』

で、FFレートとQE3縮小は別だということを明確にすべきという結論とな。


・QE3縮小に関して:更にコミュニケーションの話で逆さ絵会見での説明関連

『Participants generally agreed that the Committee should provide additional clarity about its asset purchase program relatively soon. A number thought that the postmeeting statement might be the appropriate vehicle for providing additional information on the Committee's thinking.』

でまあ逆さ絵会見での説明という話になったようだが・・・・・・・・

『However, some saw potential difficulties in being able to convey succinctly the desired information in the postmeeting statement. Others noted the need to ensure that any new statement language intended to provide more information about the asset purchase program be clearly integrated with communication about the Committee's other policy tools.』

会見での説明というのも難しいという指摘(some)とか、それだったら声明文に付け加えて新たなコミュニケーションポリシーとすべき(Others)とか、そんな見解もあるようで。

『At the conclusion of the discussion, most participants thought that the Chairman, during his postmeeting press conference, should describe a likely path for asset purchases in coming quarters that was conditional on economic outcomes broadly in line with the Committee's expectations.』

で、何故か「FOMCの想定通りに経済が進行した場合の今後数四半期における資産買入のもっとも可能性の高いパスを示す」ということになったようですな、途中が飛んでいるので何でそうなったのかがイマイチワカランチ会長、つーか逆さ絵が強引にまとめた疑惑が漂うのだが・・・・・・・・・

『In addition, he would make clear that decisions about asset purchases and other policy tools would continue to be dependent on the Committee's ongoing assessment of the economic outlook. He would also draw the distinction between the asset purchase program and the forward guidance regarding the target for the federal funds rate, noting that the Committee anticipates that there will be a considerable time between the end of asset purchases and the time when it becomes appropriate to increase the target for the federal funds rate.』

で、会見の時にはあくまでも「今後のデータ次第」であることと、「利上げとQE3ペース縮小は別問題」という説明をしましょうというのをちゃんとしないとね、とまあそんな結論になってああなったという所です。

#他の部分は週末に確認します、なお逆さ絵講演は(ニュースヘッドラインだけ見たら)そんなに凄い話でも無かったらしいのでこれまた後日確認

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2013/07/09

○低金利継続は継続でしょうが約束はしていないと思う(ECB)

さっきニュースチェックして違和感があったヘッドライン。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MPMI7V6S972901.html
ドラギ総裁:ECBは低金利約束でコミュニケーションを強化
更新日時: 2013/07/09 00:33 JST

約束はせんだろと思ってロイター日本語版見たらこうなっていますな。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE96701D20130708
ECB総裁、低金利の長期間継続を再表明 フォワードガイダンスの効果は見守る必要
2013年 07月 9日 04:06 JST

まあどっちもニュースの本文を見ると「見通しを示した」であって約束とは書いていないのでブルームバーグの日本語ニュースヘッドラインを書いているお方の日本語能力なのか前提の把握状況なのかがアレである可能性があるのか、判っていてアクセス稼ぎにオモシロヘッドラインを打ったのかは本人じゃないから分からんですが、いずれにせよ商売にしてるんですから約束とか変な日本語使わんで頂きたいものです。

では議会証言はどうなのかと申しますとこちら。

http://www.ecb.int/press/key/date/2013/html/sp130708.en.html
Hearing at the Committee on Economic and Monetary Affairs of the European Parliament
Introductory statement by Mario Draghi,
President of the ECB,
Brussels, 8 July 2013

欧州議会での議会証言のようですが、金融政策に関する話はそのうち最初の『1. Economic and monetary developments』で、その頭の所にあるのですけれどもその前に経済に関してのショートコメントみたいなのがあるから最初の方からその辺まで念の為引用。

『At this time, it is worth taking stock of progress over the past 12 months. Clearly, financial conditions in the euro area today are more stable and resilient than they were last summer. This is partly due to our determined monetary policy actions. Governments and parliaments have also played a key role in the relative return of confidence and stability by undertaking courageous reforms, at both the national and European levels.』

とまあ掴みは景気(というかファイナンシャルコンディションだが)のイイハナシダナーを。

『Yet despite this progress, the euro area still faces considerable challenges. The economy is still weak. Financial fragmentation remains. This challenges the very concept of the Single Market. Small and medium-sized enterprises (SMEs) can find it difficult to access credit, particularly in countries under strain; and several key steps remain to be taken to complete the banking union. These are the three topics that I will address in turn today.』

ということで、景気に関しては「The economy is still weak」ということで、会見でもその辺は説明されていましたけれども経済は「依然として弱い」(先行きに関しては年末にかけて徐々に回復に向かうけどペースは緩慢という見通しが基本)となっていますな。で、3つのポイントというのは『1. Economic and monetary developments』、『2. Financial fragmentation and SME financing』、『3. Banking union』とありまして、まあ2番と3番は良いとしまして1番の所だけ少々。

『Let me first briefly discuss our recent monetary policy decisions. In May, the Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided to lower the interest rate on the main refinancing operations by 25 basis points to 0.50% and the rate on the marginal lending facility by 50 basis points to 1.00%. The rate on the deposit facility was left unchanged at 0%. These policy decisions took account of subdued underlying inflationary pressures over the medium term and they are expected to improve funding conditions across the whole monetary union.』

というのはまあ兎も角として。

『Following its July meeting, the Governing Council stressed that the monetary policy stance is geared towards maintaining the degree of monetary accommodation warranted by the outlook for price stability and promoting stable money market conditions. 』

まあ元から緩和的なスタンスは「必要とされる期間までは実施」という説明は入っていたのですよね(次の所にもある)。

『It reiterated that its monetary policy stance will remain accommodative for as long as needed. Furthermore, the Governing Council sharpened its communication by announcing that it expects the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time.』

キタコレ、ではあるが「コミュニケーションを研ぎ澄ました」とはゆうとるが約束したとはゆうとらんようにしか見えませんが。

『This expectation was based on the overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness in the real economy and subdued monetary dynamics. In the period ahead, we will monitor all incoming information on economic and monetary developments and assess any impact on the outlook for price stability.』

っていう事で、まあ当たり前なのですが先般の会見での冒頭説明と同じ説明をしておりました。

『The accommodative stance of our monetary policy, together with the significant improvements in financial markets since mid-2012, should help to support prospects for an economic recovery later in the year and in 2014.』

で、その金融政策スタンスと金融市場のテンションの改善によって経済がサポートされて年末に向けて経済が回復するでしょう、という見通しについては今回の会見でも説明されていましたが、見通しそのものは前回のECB理事会時点とそんなに変わっていません。

ということで、まあ引用するまでも無いと言ってしまえばそれまでですけれども、ニュースヘッドラインを見て「それは無いと思うのだが」と思って念の為確認しましたので皆様におかれましても変なヘッドラインに騙されて「ECBはコミットメントしている」とか勘違いしないのが吉(さすがに出た後のレポート類を見ていると「弱いフォワードガイダンス」という評価が多いようですが)かと。つーかあの会見での言質を与えない発言の連発を見たら普通にそうだ罠と思いますよね。まあつまり出来るだけ玉を打たないで長期金利を抑制しようという発想がベースにありますよね、という事だと思いますので・・・・・・

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2013/07/08

○ドラギ総裁会見Q&Aを見ると何ともこれ解釈に幅がありそうなのですが・・・・・・・・・

ということでドラギ先生の会見である。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2013/html/is130704.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 July 2013

・このQ&Aは読みようによって解釈に幅がありそうな希ガス

んーっとですね、今回のドラギ総裁の会見なのですが、まあ「ドラギマジック」と言ってしまえばそれまでなのですが、説明が微妙に狸でこれは解釈のしようによって何ともかんともという気がします。

でですね、明らかに解釈に差が起きない部分としては「今回の決定の背景として「市場金利の低下」を促したかった」というのはまず衆目の一致する所なんですけれども、肝心の今後の金融政策運営に関してはじゃあどうするのかという話については読み方によって微妙に解釈に幅がありそうだなと言う風にあたしゃ思うのですよ。

まあいつもの「ドラギマジック」で「1銭も使わずに市場の金利上昇を抑えましょう」というのが今回の決定(?)の一番の狙いなんじゃネーノという風にあたくしなんぞは解釈したくなるのですけれども、まあ今回に関しては読み方がかなり幅が出そうなのであたくしの俺様解釈という事でご理解頂きたいと存じます。

つーことで何でそう思ったのかという辺りから引用をしますぞな。A4の紙に印刷すると上記URLの3ページ目のケツ位からの質疑がオモシロス。

・期間の明示化はしないの?いつまで継続するかの目安とか無いの?

まあ当たり前ですがこういうツッコミがあるのですが、金曜は朝寝起きで質疑の頭だけ読んで爆笑しておりましたが、何か質疑の流れを見ると最初に質問した人もわざと「お前さんこれ本当にフォワードガイダンスなの??」という嫌味をぶつけようとして質問をしたんだなあという風に思うのでございましたです(^^)。

『Question: When you refer to an extended period of time, could you give us a little bit more firm guidance as to how long that will be? Is it at least six months, at least twelve months, could it be much longer or could it be years?』

つーのが期間の明示化しないの??ですね。

『Also, what would really have to happen for you to drop that policy and how will we know that you are about to drop it?』

低金利政策継続の目安に関しては何なの??ですな。

『In this regard, was this decision unanimous and why did you think that this was the best possible way of giving forward guidance of all the many ways you said you discussed today?』

でまあ答えが中々ワロスワロスとしか。

『Draghi: Well, I said an extended period of time is an extended period of time: it is not six months, it is not twelve months - it is an extended period of time.』

ワロタが更にワロエルのはこの次。

『Question: It is longer ・・・ Draghi: No, I didn’t say that. 』

いつもだと質疑と応答って必ず改行しているのですが、ここだけ改行していないのはまさに瞬殺モードだったということですねわかります(^^)。でまあその続きがあるのだ。

『Together with the sense of the length of time, you also have to look at three sets of economic variables, namely the medium-term outlook for inflation, the economy and monetary dynamics.』

金曜も引用しましたけれども、最初のIntroductory statementの所で「The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. This expectation is based on the overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness in the real economy and subdued monetary dynamics.」と言っていた部分の繰り返しでして、冒頭の質疑(これまた金曜に引用しましたが)でも冒頭説明で申し上げましたような状況を勘案します云々という説明をしておりましたが、ここで改めて説明しております。

・・・・・・でまあ説明しているのは良いのですけれども、中期的なインフレ目標と経済及びマネタリーのダイナミクスを勘案して判断とかナンジャソラという所ではありますな。

『Monetary dynamics means monetary aggregates and credit flows.』

マネタリーダイナミクスにはマネーの全体量とクレジットフローという話ですが、まあ主に見るのは後者になりますかね。ECBでは毎回マネタリーがどうのこうのという分析をしていますのでその辺も踏まえての話ではありますが。

『What the Governing Council did today was to inject a downward bias in interest rates for the foreseeable future linked to its assessment of these three sets of variables. The decision was unanimous, which is also quite important.』

で、何がどうなっていますねんという質問に対して明確に示しているのはここで「to inject a downward bias in interest rates for the foreseeable future」と思いっきり市場金利の低下を狙っていますというのを明言キタコレとなっておりまして、この次の質問でも思いっきり金利を下げたいというのを示しているのが何とも。


・市場金利を下げる為にやるやる詐欺の本領発揮キタコレ、というのはだいぶ意地悪な読み方になりますが・・・・・・・

上記質疑の続きです。

『Question: First, was the “unanimous decision” just on the forward guidance or also on interest rates?』

金利の決定は全員一致だったのですか?

『Second, does this new forward guidance policy change the extent to which your mind is open about other policy measures, in particular the negative deposit rate. Is this still on the table? Is your mind still as open as it used to be? What does forward guidance change about that?』

今回のフォワードガイダンス導入によって他の政策の導入に関してはどうなんでしょうか例えば預金ファシリティのマイナス金利とか?

『Draghi: With regard to the first question, we had an extensive discussion about a possible interest rate cut. We went through a series of arguments, some in favour and some not so in favour.』

利下げの議論が熱心に行われましたキタコレ。

『To mention some of them, on the one hand we had some monetary tightening in the main monetary variables. As I mentioned in the Introductory Statement, we also had weak monetary developments both in M3 and in the credit flows.』

別の質疑で「前回と今回の間に何の変化があったのか」というのもありまして、そこでも同じ事を説明していたのですけれども、「前回の会合以降some monetary tighteningが生じている」という話をしておりまして、ではそれは何ですねんというとどう見ても市場金利上昇です本当にカムサハムニダという事ですからして、ここでも「市場金利の上昇がケシカラン」という認識を示すという念の入れようで、ドラギ先生「市場金利低下に向けたサービス発言」に熱心ですなあという所な訳ですよ。

『On the other hand, we have seen that our baseline scenario, which foresees a gradual recovery by the end of the year, seems to be gradually being confirmed by a variety of soft indicators coming out on the positive side.』

でまあこれはIntroductory statementでの説明(めんどいので引用しませんが)の中身を見るとまあそんな感じなのですが、経済の現状認識や先行き見通しはベースラインシナリオ通りで前回の会合後の説明と特段の温度差は無いのですよね。

『There were several reasons one way or another and, after this extensive debate, we basically came to a unanimous agreement on the forward guidance.』

はあそうですか。

そしてこの後に更に金利が下がるかのごときサービス発言が乱発されます!

『Let me also add that 50 basis points is not the lower bound. I was asked about that by someone before. And as to whether this leaves our minds open about cuts in other key rates, I think I have hinted at this before. The sentence mentions: “Key ECB interest rates” - including the rate on the deposit facility.』

金利を下げたり預金ファシリティマイナスにしたりする選択肢もありますし・・・・・・・・

『Also, I should add that liquidity will remain ample and I confirm what we said last time and what some of us have also said in various public statements that, all in all, our exit is very distant.』

我々の出口は大変に遠くにございますとかまで言うとかもうサービスしまくりですな!!!!

『Question: ・・・ and my second question on the negative deposit rate. 』

『Draghi: I think I said that. Ok, I say it once more. I said The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at present or lower levels. One of the key ECB interest rates is the interest rate on the deposit facility. So this decision, this forward guidance, does not preclude any decision on that. We are keeping an open mind. We are technically ready and it has been included in the options we will have in the future.』

ということで、サービスしまくってまた「We are technically ready and it has been included in the options we will have in the future.」と仰せなのですが、実は他の質疑でもそうなのですけれども、この「We are technically ready」はドラギ先生の常套文句と化している感が今回の質疑応答では見られる訳でございまして、「テクニカリーには準備していますよ」と言いつつ何だかんだと言ってやらないというやるやる詐欺感が段々伝わるようになってきたような気がしますし、質疑応答のツッコミでもやるやる詐欺じゃネーノ?という疑問を半身に構えながらしているようなツッコミとあたくしは勝手に解釈しましたが、そんなニュアンスを感じるものが幾つか散見されるような希ガス。


・何故「今」実施したのでしょうかという質問とその質問に関連した話から

でまあ素直にECBの言う事を受け止めつつ質問をする人も当然いるのですが、そこの質疑を見ておりますと不肖このアタクシなんぞは「やるやる詐欺の本領発揮キタコレ」とか読んでしまう所が性格に問題がありますかそうですか。

『Question: I feel this is quite a historical moment today, because we have been told for ten years or more “we never pre-commit”. Your predecessor said this and you too have used the same expression. You explained to us the underlying reasons for this decision. But why make this move today? Why this timing? We are not now in an acute crisis.(2番目の質問はギリシャに関する質問ですが引用割愛)』

危機でも無いのに何でですねんと。

『Draghi:(ギリシャに関する2番目の質問部分は割愛します)On the first point, we believe that the outlook for inflation in the medium term is such that it justifies this new way of communicating, this forward guidance. It justifies this new way of communicating a downward bias in interest rates.』

ということで、相変わらず「金利に低下バイアスを掛ける」という話はしていまして、市場金利の上昇がケシカランというのと市場金利を下げたいですよねという話をしているのですが、ここであたくしが読んでいて「ふーん」と思ったのはフォワードガイダンスに関して「this new way of communicating, this forward guidance」という風に「コミュニケーション」であってコミットメントとは一言も言っていない(質疑全部を通してもコミットメントとは言ってません)所であります。

でまあ質問者が言うように従来のECBは「we never pre-commit」とは言っていたので確かに先の方まで「見通し」ではあっても示すというのはコミュニケーションポリシー的に大きく変わってはいるのですけれども、一方でトリシェ時代では冒頭のステートメントで金融政策に関して「今の金融政策は適切」(appropriate)とか「注意深く今後の動向を見守る」(closely monitor)とかその辺の文言をいじる事によって近い先行きの金融政策変更なりスタンスなりを織り込ませに言っていた「トリシェ文学」というのが存在しておりまして、FEDのフォワードガイダンスっぽい言い方とこれまでのドラギマジックによって何となく超画期的なスタンス変更に見えますけれども、でもこれってコミットメントじゃないですよねというのはあったりする訳ですけどどうっすかね。


・やるやる詐欺ではないか的なツッコミシリーズ

最初の所ではABS市場お助けに関してあれどうなったの?という質問とOMTってドイツが首を縦に振らないと効かないのではないのか大丈夫か?という質問がががが。

『Question: Mr Draghi, I have two questions. First, can you give us any update on the consultations regarding the ABS market?

And second, several economists have been speculating that the OMT programme is dead or is limited in its effectiveness because an EFSF/ESM programme that would trigger OMTs would never be approved by the Bundestag. This could lead to the question: Does your commitment to do whatever it takes to preserve the euro go beyond the OMT programme or is the OMT programme just an expression of that commitment? Perhaps you could comment on that.』

『Draghi: With regard to the ABS market, the ECB now has an advisory role. As I have said on other occasions, the ECB is part of a task force with the European Investment Bank (EIB). There are several aspects of the ABS market that need to be taken care of before it becomes a realistic possibility, and both institutions are actively working on that. We will see what comes out of this work and then we will make up our minds.

With regard to the OMT programme, it is ready to be activated. The conditions are known and it is as effective a backstop as ever.』

まあOMTの方は兎も角として、ABSに関しては「私らアドバイザーの立場ですもんね〜」といつの間にやらしらっとEIBやEUに玉を分投げておりますな(^^)。

そしてOMTの方ですが何気に鋭いツッコミがががががが。だいぶ後の方になるのですが。

『Question:(前半は別の面白ネタなので後で)Second question, I think you already know it. It is becoming traditional. OMT legal documentation. I can read to you what you said last month, but I am sure you can remember, so where is it?』

OMTの実施要綱とか見たことないのですがどちらにおいでなのでしょうかとかワロタ。

『Draghi:(前半割愛)The second point is that OMT legal acts will be ready when OMT is ready to be activated. What is the benefit of having it now? People are working on that by the way. So I am giving you the same answer as last time. It is going to be ready when OMT is ready to be activated.』

何か開き直っているように見えますが・・・・・・・

『Question: That is a valuable clarification. So you will publish it when someone applies for OMT and not before?』

『Draghi: Yes, probably. You have been very good at making a dull question a sexy one, but in fact it is not a question that really comes first in our priorities. Rather, the answer to your question is not one of our priorities now. So when OMT is ready to be activated the documentation will be published.』

何じゃこの「You have been very good at making a dull question a sexy one」ってw


・今回何で実施したのかという質問&米国のせいでしょ?という質問

先程もそんな質問を引用しましたが面白いのでもう少し引用。

『Question: Can you just give us a little bit more of a flavour of what has happened in the last month in order for you to change this assessment and implement this new communications strategy?』

ふむ。

『A month ago you were talking about what a conservative central bank the ECB is. You were talking about the benefits of low inflation: you can buy more stuff. And now you are kind of going in a different direction, at least on the communications front. And to what extent did the activity in the bond market, especially since the Federal Reserve System’s tapering discussions, affect your decision-making?』

ワロタ。

『And is there a risk that central banks around the world, including the ECB, are going to be too influenced by developments in financial markets, when maybe the markets need to be finding a new equilibrium, given the recovery in the global economy?』

(;∀;)イイシツモンダナー

で、その答え。

『Draghi: What happened in the last month is the monetary tightening that has taken place in various segments of the interest rate curve, in the presence of a by and large continuing weakness in the economy, in spite of the new soft indicators which seem to point not towards a dramatic improvement, but towards a slower pace of worsening of the economy.』

『I mean a slower pace of worsening of the indicators themselves. In other words, the economy is still shrinking, but it is doing so at a slower pace. This is what happened and this is what made us think about it.』

経済がまだ弱い状態なのに金利が上昇してケシカランとな。

『We are not reacting to other central banks’ monetary policy decisions.』

ワロタ。

『We want to clarify as much as possible our assessment of the medium term outlook for inflation and what our reaction functions are. 』

反応係数を明らかにするってあれじゃあただの「総合判断」ではないかという気がするんだが・・・・・・・


と思ったら次にもう一発ツッコミ(質問の2番目はさっき引用しました)が。

『Question: Mr Draghi, just following on from that, the statement does explicitly say, and you have just repeated that the recent tightening of global money and financial market conditions and related uncertainties may have the potential to negatively affect economic conditions.』

経済が強くもないのに金利が上昇したのはケシカランというのは分かりました。

『So, maybe I am being simplistic here, but given that that was all caused by the Fed’s communication on tapering it now seems that you are reacting with your own communication to the communication of another central bank.』

でもそれってFEDのせいですよねえとかまあそう突っ込みが入るのは正しい態度(^^)。

『To me that looks a bit like you are following on from them, which is not to ascribe any kind of blame or agency, but purely to look at what is happening. I mean that is the only thing that has economically changed in the markets. They have reacted to that and now you find yourselves having to react to that, it seems to me.(2番目の質問は先ほど引用)』

(・∀・)ニヤニヤ

『Draghi: On the first question, we are acting in the euro area monetary policy jurisdiction, we look at what the monetary developments have been, we look at the inflation outlook in the medium term, we look at the state of the economy, we look at credit flows which continue to be weaker and weaker.』

ほう。

『And we take our decisions. It is not that we react to other central banks’ communications; we simply react to what we see as the changes in our medium term outlook.』

(・∀・)ニヤニヤ

『One of the points of discussion is how we best react to any increase in volatility, not caused by our own actions, but by something else that is happening in the rest of the world.』

我々の決定のポイントはボラティリティーを高めることなくどのように最適な政策を実施するかとかそんな事ゆうとるのけ??

『Is it going to be a transitory change, is it going to be just short term volatility, or are we in the presence of significant, permanent changes? And that is what justifies our forward guidance today. So that is the answer to your question. And as I said before, during the discussion about whether or not to cut interest rates today, many of these arguments came up. And that is why the decision to give this unprecedented forward guidance was unanimous.』

はあそうですか。


・政策を指標で紐付けるという発想は今の所なさそうですなあ

こんな質問がありましてですな。

『Question: Going back to the three pillars that you said would be guiding monetary policy, would I be mistaken in thinking that you are putting more emphasis on the economy than maybe you have in the past? It seems that for years we have heard about inflation, inflation, inflation and now you are talking a little bit more about the economy.

And, second, what would be the economic indicators that perhaps would be most important to you? Unemployment? GDP? Maybe you could elaborate on that a little bit.』

『Draghi: I would stress that our objective is to maintain price stability in the medium term. I stressed several times that price stability goes in both directions. The economy is in a sense part of this. We at the ECB have always viewed growth as being based on price stability. We look at inflation, we look at the real economy and we also look at monetary dynamics. And this has always been part of our monetary policy structure. It is what used to be called the two-pillar structure. I would not want to dwell at this point in time on which indicators and which precise figures we look at.』

つーことで、物価重視という話はするものの、一番重要な経済指標は何ですかという質問については「総合判断」という言い方を崩さないというのがまあ今回のフォワードガイダンスの「弱さ」というものを示されていますなあという所でもあろうかと存じます。


ということで引用大会で恐縮至極。

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2013/07/05

お題「欧州も時間軸政策(っぽい政策)ですかそうですか」

時代は実物資産!金!じゃなくて時代はフォワードガイダンス!ということで、量で勝負の時代から変わって参りましたなあという中で量で勝負している中央銀行ですかそうですか一周遅れですねといえばよいかというとそれはそれでまた別だと思われる所もございますな。

と申しますのは、BOE、ECB、FEDの場合は物価についてはマンデート水準達成状態(どころかBOEの場合は足元の数値が延々と上振れしているですが)の中で、それはそれとして経済の回復が遅いですねという状況であって、一方の日本の場合はそれ以前の問題として物価目標に全然届かない水準にいる、という切り口で考えますと、そもそも金融政策のステージが一周遅れなので政策が一周遅れなのは整合的、とも言えますので、単純に他の主要国が後から日銀のかつての時間軸政策導入してるのに時間軸じゃなくて量で勝負プギャーと言えば良いのかというとそういう単純な話でも無いように思えますな、うんうん。

・・・・・・ということで、もともと本日はさくらレポートネタに加えて総裁あいさつネタとかTBが重めという話を書いた途端にTB入札が堅調でショートカバーだか何だか知らんけどセカンダリーで強いのが出合ってたみたいで何という呪いパワーとか、まあそういう話をするつもりでしたが、BOEとECBが華麗にフォワードガイダンスの打ち込みを行いましたので予定を変更しましてBOEとECBのネタで参ります。


○BOEの声明文が珍しく長いと思ったらフォワードガイダンス導入とな

http://www.bankofengland.co.uk/publications/Pages/news/2013/007.aspx
Bank of England maintains Bank Rate at 0.5% and the size of the Asset Purchase Programme at £375 billion

『The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion.』

とまあいつもだとここで終了するのですが、今回はこの後に長々と文章が。

『Since the May Inflation Report, market interest rates have risen sharply internationally and asset prices have been volatile.』

いきなり市場金利の急上昇と資産価格のボラ上昇という話をしています。5月インフレレポート以降ですかそうですか。

『In the United Kingdom, there have been further signs that a recovery is in train, although it remains weak by historical standards and a degree of slack is expected to persist for some time.』

英国では回復が軌道に乗っていることに関する更なるサインがありますけど、相変わらずその水準は過去平均よりも弱くて、経済のスラックは長期間に渡って継続するでしょう、というのはまあ前から言われている話ですな。景気認識自体は(この後にありますけど)見通しに概ね整合的という事ですな。

『Twelve-month CPI inflation rose to 2.7% in May and is set to rise further in the near term. Further out, inflation should fall back towards the 2% target as external price pressures fade and a revival in productivity growth curbs domestic cost pressures.』

物価に関しての話もまあ従来通りで、しばらくは高めに推移しますがそのうち下がって目標の2%に近づくでしょうという毎度のお話。

『At its meeting today, the Committee noted that the incoming data over the past couple of months had been broadly consistent with the central outlook for output growth and inflation contained in the May Report.』

足元までの経済データは5月インフレレポートの見通し通りと。

『The significant upward movement in market interest rates would, however, weigh on that outlook; in the Committee’s view, the implied rise in the expected future path of Bank Rate was not warranted by the recent developments in the domestic economy.』

しかし市場金利の上昇は景気見通しに影響を与えます(=景気にマイナス)。MPCは足元の市場金利上昇によって示される市場の政策金利見通しは、国内景気の最近の状況に対して正当化されません(=金利の上昇がやりすぎである)。というようなこういう露骨な市場介入ちっくな物の言い方するのって(あたくしも過去のBOEの文書を全部読んでいるわけでも無いので自信は全然ないのですが)あまり見たことが無いような気もするのだが元々そういう体質でしたっけ??

『The latest remit letter to the MPC from the Chancellor had requested that the Committee provide an assessment, alongside its August Inflation Report, of the case for adopting some form of forward guidance, including the possible use of intermediate thresholds. This analysis would have an important bearing on the Committee’s policy discussions in August.』

てなことで、スレッショルドを中間目標的にしたフォワードガイダンスの実施をしますので、その検討結果は8月のMPCでリリースしますよ、との事ですが、まあどういう形のフォワードガイダンスになるのかはお楽しみなのですが、物価に上限スレッショルドをつけるのを幾らにするのやらとか、そもそも何をフォワードガイダンスにするのかとか、元々物価水準自体がマンデートを上振れて推移している状況の中でどういうフォワードガイダンスを持ちだして市場金利を下げようというのかが正直言ってよく判らん、つーかインフレターゲットのますますの形骸化に繋がるような気がするんですけどインフレ期待のアンカーに失敗する(MPC議事要旨を見ていますと英国のインフレ期待に関しては長期はまだアンカーされていますが短めの所は上昇しているという認識が示されていますからねえ)リスクはどう整理するんだろうと興味シンシン。

『In the light of these considerations, the Committee voted to maintain the size of its programme of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £375 billion. The Committee also voted to maintain Bank Rate at 0.5%.』

そんなこんなで政策の方は現状維持ですよということで。

『The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 17 July.』

どういう内容なのか議事要旨を拝読したい訳ですが、議事要旨ってやたら話を簡略化しているので時々(結構)イミフな記述になっている時もあるので注意という所ですな。


○ECBも(自称)フォワードガイダンス政策導入

http://www.ecb.int/press/pr/date/2013/html/pr130704.en.html
4 July 2013 - Monetary policy decisions

『At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 0.50%, 1.00% and 0.00% respectively.』

政策据え置き。

『The President of the ECB will comment on the considerations underlying these decisions at a press conference starting at 2.30 p.m. CET today.』

とまあここまでは通常運転ですな。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2013/html/is130704.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 4 July 2013

最初のご挨拶は割愛してその次のドラギ先生のお話から。

『Based on our regular economic and monetary analyses, we decided to keep the key ECB interest rates unchanged. Incoming information has confirmed our previous assessment. Underlying price pressures in the euro area are expected to remain subdued over the medium term. In keeping with this picture, monetary and, in particular, credit dynamics remain subdued. Inflation expectations for the euro area continue to be firmly anchored in line with our aim of maintaining inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. At the same time, recent confidence indicators based on survey data have shown some further improvement from low levels. Our monetary policy stance is geared towards maintaining the degree of monetary accommodation warranted by the outlook for price stability and promoting stable money market conditions. It thereby provides support to a recovery in economic activity later in the year and in 2014.』

金利を据え置きましたぞなということで、経済に関するアセスメントの話を説明しておりますが、基本的には従来の流れと見通し通りの展開となっておりますな、うんうん。

『Looking ahead, our monetary policy stance will remain accommodative for as long as necessary. The Governing Council expects the key ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time. This expectation is based on the overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness in the real economy and subdued monetary dynamics. In the period ahead, we will monitor all incoming information on economic and monetary developments and assess any impact on the outlook for price stability.』

でまあここがキタコレという話ですが、ここに該当する部分の前回(6月)定例理事会後のドラギ総裁の会見での冒頭説明ではこのように説明しています。まあ従来こういう感じだったのですよね。

『Against this overall background, our monetary policy stance will remain accommodative for as long as necessary. In the period ahead, we will monitor very closely all incoming information on economic and monetary developments and assess any impact on the outlook for price stability.』(6月ECB定例理事会後のドラギ総裁のIntroductory statementから)

ということで比較すれば分かりますように、どこの逆さ絵だよという文言「for an extended period of time」が入って、「理事会は政策金利を現状水準またはより低い水準に長期間維持する事を予想する」というフォワードガイダンスっぽい文言が入っていて、その「予想する」ことについて「この想定は全体的に抑制された物価上昇率が中期的に維持される見通しに基づいており、幅広いベースの実体経済の弱さと抑制されたマネタリーの動きを背景としています」というまあ予想の前提条件を示しています。

つーことで「at present or lower levels」という説明をして、まずは利上げせんぞな利下げもあるでよと言っているのでまあ市場が利下げ示唆と取るでしょうなあというのと、長期間継続すると予想されますとかFEDのフォワードガイダンスの初期段階みたいなファジー時間軸みたいな言い方をして、効果としては時間軸政策的な中短期金利の抑制効果を狙っていますよねというのがキタコレという所でございまする。

で、この後は経済状況のアセスメントとかリスク認識の話になりまして、こちらをザクザクと斜め読みした所、まあ前回とトーンはあまりカワランチ会長のような気がするが真面目に読まないといけないのでそこはパスしてQ&Aの冒頭の応酬がオモシロスなのでそいつを引用するだよ。

『Question: Mr Draghi, as you were meeting, another central bank in London was also having a meeting of its policy members and, in a break with previous tradition, we have had a very clear forward guidance from Mr Carney, the new governor. I wonder if, because the Bank of England has now changed its style on guidance, it is time for the European Central Bank (ECB) to also step forward with a new policy on guidance. It is clear for Mr Carney’s comments and the market reaction that he has moved the gilt market, he has moved the Sterling curve. Is it time that you put aside the pre-commit barrier to more detailed and specific forward guidance?』

BOEは明確な形でのフォワードガイダンス政策を今後導入をすることを決めて英国債の市場やイールドカーブなども反応しておりますが、ECBもこのような事前にコミットした閾値を使ったフォワードガイダンスを導入すべき時なのではないでしょうか?という質問が来てまして・・・・・・

『Draghi: If you are asking this question, you have not really listened to my statement.』

ワロタ。これマジ質問なのか、わざとこういう答えをださせようとして質問しているのか興味ありますな(^^)。

『Question: It sounded a lot like the statement I listened to when I was here in June.』

確かに(超斜め読みしかしてないけど)経済に関するアセスメントとかリスク認識に関する部分がそんなに前回とトーンが違っている感じではないっす。

『Draghi: Yes, that is why I said you haven’t listened carefully. The Governing Council has taken the unprecedented step of giving forward guidance in a rather more specific way than it ever has done in the past.』

我々もフォワードガイダンスと言う前例のないステップを行いました(キリッ)。

『In my statement, I said “The Governing Council expects the key…” - i.e. all interest rates - “…ECB interest rates to remain at present or lower levels for an extended period of time.” It is the first time that the Governing Council has said something like this. And, by the way, what Mark Carney said in London is just a coincidence.』

ということで、今回の例の文言がフォワードガイダンスという新たな試みである、と強調していますな。

『Question: So maybe you can help us out with that. When you say “an extended period of time”, is that a 12 to 18-month period?』

今度は「an extended period of time」の定義について質問でして、まあFEDと文言同じようなもんですからFEDみたいなイメージで1年〜1年半ですかとか聞きたくなるのは当然ですな。

『Draghi: It says an “extended period of time”.』

ワロタ。

『Question: Did the Governing Council discuss during its meeting the possibility of offering a more concrete forward guidance, perhaps linking the monetary policy path to certain economic indicators? And in your view would such a more formal guidance only really be effective once interest rates have hit bottom?』

今回の政策委員会ではもっと明確な経済指標にリンクしたようなフォワードガイダンスの導入を論議しなかったんですか??それからドラギ総裁としては政策金利の引き下げ余地がなくなった場合はよりフォーマルな形のフォワードガイダンスのみが有効な施策と考えていますか?

『Draghi: The answer to your first question is “yes”. We discussed several forms of forward guidance and I think my statement says what we will look at in the forward guidance.』

より明示的、というか経済指標紐付け型のフォワードガイダンスを導入すべきかどうかの議論も行った結果として今回のフォワードガイダンスの導入になりましたよと。

『I can read it again.』

何でまた読みますねん。

『It says “The Governing Council…”, as I said before, “… expects the key ECB interest rates…” - i.e. including the rate on the deposit facility - “… to remain at present or lower levels for an extended period of time. This expectation is based on the overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, ...” - so we will look at the inflation outlook for the medium term - “… given the broad-based weakness in the real economy…” - so we will look at the weakness in the real economy - “… and subdued monetary dynamics.”』

本当に読んでますぞな。

『We will look at these three things, which is basically consistent with our two-pillar strategy and perfectly consistent with our reaction functions. These are the things we looked at and which led us agree on this fairly specific forward guidance. And incidentally, the Governing Council was unanimous in this formulation.』

two-pillar strategyって久々に聞いたわとか思いますが(ちなみに日銀の「第一の柱、第二の柱」よりもこっちの方が古かったと記憶してますが)それはそれとして、ドラギ総裁の冒頭説明の中でフォワードガイダンス文言の次にあった「This expectation is based on the overall subdued outlook for inflation extending into the medium term, given the broad-based weakness in the real economy and subdued monetary dynamics.」というのがECBの政策反応関数で有る事を説明しています、という説明をしていますな。

そして今回のフォワードガイダンスについては全員一致なのですが、だったら何故声明文に書かないという気もするのですが、そこについては少々イミフでもありますな。

で、しらっと2番目の質問にはお答えしていないのがチャーミングなのですが、さてはさっきの朗読コーナーで時間を稼いで煙に巻く事によって2番目の質問を有耶無耶にしやがったなこの狸オヤジとか思ったのは邪推ですかそうですか(^^)。

で、後の方にも色々と質疑があるんじゃないかと思います(さすがにQ&A全部読むのは斜めでも読めませんすいませんすいません)けれども、冒頭の一連の質疑がまあ丁度追加説明になっているので引用した所で本日はこの辺でご勘弁。

しかしまあ何ですな、今回のECBのフォワードガイダンスですけれども、BOEの場合はどう見ても本当の意味でのガイダンス文言ですけれども、ECBの場合は「今はこう思う」という話に過ぎないので、そういう意味では「画期的」とか言われましても別にいつでも反故にできますよねという代物なのがチャーミングで、今回は「or lower levels」で利下げの示唆をした方がよっぽど効果があるような気がせんでも無いわなという気がします。まあ時間軸とかフォワードガイダンスというには弱いには弱いですにゃ。

#Q&Aについては週末に読む所存

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2013/07/04

○逆さ絵先生のFOMC後プレコンネタのおまけ

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20130619.pdf

おまけ状態ではあるのですが、若干オモシロネタがあったので追加のおまけである。

・市場の予想との差と現実にやっている事と

小見出しの付け方に悩んだのですが(^^)。質疑応答の20ページ目位になります。

『GREG ROBB. Thank you, Mr. Chairman. Greg Robb, MarketWatch.com. I was wondering if you could go back over your-what you said about the plans for tapering later this year. And why isn’t tapering a tightening? It seems that many people in the markets just as soon as you talk taper-will taper-are just going to push forward when you-they think that first rate hike will come. Thank you.』

Taperingが何故引き締めでは無いのか、Taperingの先には利上げがある事は明らかなのだから一種の引き締めだろオメー説明しろやこのハゲ(私家版超意訳)というツッコミに対して。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, as I tried to explain in my opening remarks, our plans depend on the economic scenario and how it evolves.』

ということで、まず「データディペンデント」であるという話を(この会見で何度もしているのですけれども)しております。で、しばらくその説明が続くのですけどね。

『And what I tried to do is explain how our asset purchases would evolve if, sort of, the modal, the most likely forecast, were to, in fact, take place, which, of course, it won’t exactly take place, something else will no doubt happen. But again, our basic forecast is one which is basically, as was pointed out earlier by Mr. Hilsenrath, a moderately optimistic forecast, where growth picks up as we pass through this period of fiscal restraint; where unemployment continues to fall at a gradual pace as it has been since last September-and we have made some progress since last September; and inflation rises slowly towards 2 percent.』

『Those are the conditions that define this sort of baseline forecast. In that case then, as I described it, we would expect probably to slow or moderate purchases some time later this year, and then through the middle of-through the early part of next year, and ending, in that scenario, somewhere in the middle of the year.』

でさっき説明したシナリオならば最初の説明通りの日程表になりますよと。

『Again though, it’s very important to understand that that’s-if we do that, that would basically say that, you know, that we’ve had a relatively decent economic outcome in terms of sustained improvement in growth and unemployment. If things are worse, we would do more. If things are better, we will do less.』

別にダドリーがどうのこうの言う前に逆さ絵先生も「必要ならば増やすことも減らすこともある」という話をしているんですよね、だからダドリー講演とかも最初は反応してたけど良く良く考えたらこれ別に逆さ絵も言ってるし当たり前の話ジャン、という受け止めになったんじゃないのかねと思います。

でまあそれはそれとしてオモシロスと思ったのは以下の部分。

『I think I would-to answer your other question-I would draw the analogy:』

ほうほうアナロジー(たとえ話、で良いんでしたっけ?)とな。

『If the Federal Reserve in normal times lowers the federal funds rate by 25 basis points, but some traders think that-were expecting 50 basis points, then there might be a sense that the financial conditions have tightened somewhat. But nevertheless, I think you would say that if the Fed cut the funds rate by 25 basis points, that that was an easing of policy.』

市場が50bpの利下げを予想している中で我々が25bpの利下げを実施したらファイナンシャルコンディション的には幾分かのタイトニングという認識になるかも知れないけれども、現実問題として25bpの利下げを実施したらそれは金融緩和でございますがなとか、どこぞの前総裁が同じ事言ったら全力でブーイングが来そうな話(^^)。

『And, by the same token, as long as we’re buying assets, we are adding to our holdings. We do believe-although, you know, there’s room for debate-we do believe that the primary effect of our purchases is through the stock that we hold, because that stock has been withdrawn from markets, and the prices of those assets have to adjust to balance supply and demand.』

Taperingをしてもストックの積み上げはあるのだから緩和効果は続いています(キリッ)。

『And we’ve taken out some of the supply, and so the prices go up, the yields go down. So, that, seems to me, consistent with the idea that we’re still adding liquidity, we’re still adding accommodation to the system.』

ということで、まあこの理屈の宣伝をダドリーとかも行っている、とまあそんな感じですが、先週末はタカ派の皆様の方を先に色々読みましたが、今週末はハト派とかの発言とかブラード先生の怒りの反対とかをもっと読み込みたいと思いますお。

ちなみにオモシロネタはあと2つほどあったような気がするのですが、時間が無くなったのでまあそのうち出すかもしれないし出さないかも知れません。

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2013/07/03

○スタイン理事講演から少々

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130628a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/stein20130628a.pdf
Comments on Monetary Policy

火消し講演みたいなヘッドラインもありましたけれどもそんなに火消しかね??とは思うのでありまして・・・・・・・・・

・データディペンデントであるという強調

冒頭でこういう話を。

『It's useful to start by discussing the initial design and conception of this round of asset purchases.』

のっけから(最初にご挨拶はあります、為念)いきなりQEネタを突っ込みに行くと言う直球ストレート。

『Two features of the program are noteworthy. The first is its flow-based, state-contingent nature--the notion that we intend to continue with purchases until the outlook for the labor market has improved substantially in a context of price stability. The second is the fact that--in contrast to our forward guidance for the federal funds rate--we chose at the outset of the program not to articulate what "substantial improvement" means with a specific numerical threshold. So while the program is meant to be data-dependent, we did not spell out the nature of this data-dependence in a formulaic way. 』

労働市場の見通しの「顕著な改善」というのはあくまでも経済データを見ながらですよという話をしていまして、カレンダーベースの話では無い、というのは一昨日ネタにしたラッカー先生であっても言う訳で、緩和的金融政策の運営に対してはタカ派なスタイン理事もこういう説明をするのでありまする。


・一方で資産買入のコストを考えて買入についてはフレキシブルであるという話

次のパラグラフはそんな話をしています。

『To be clear, I think that this choice made a lot of sense, particularly at the outset of the program. Back in September it would have been hard to predict how long it might take to reach any fixed labor market milestone, and hence how large a balance sheet we would have accumulated along the way to that milestone. Given the uncertainty regarding the costs of an expanding balance sheet, it seemed prudent to preserve some flexibility. Of course, the flip side of this flexibility is that it entailed providing less- concrete information to market participants about our reaction function for asset purchases.』

ただまあそのフレキシブルな部分というのは市場に対して資産買入政策の遂行に関する反応関数が分かりにくくなる、というのは欠点としてある、という話をしておりまして、その部分が後で出てくるバーナンキ会見での説明に対する解説の前振りになっています。


・昨年9月からみたら顕著な改善をしているではないかという理屈

その発想で押してくるとは。

『Where do we stand now, nine months into the program? With respect to the economic fundamentals, both the current state of the labor market, as well as the outlook, have improved since September 2012. Back then, the unemployment rate was 8.1percent and nonfarm payrolls were reported to have increased at a monthly rate of 97,000 over the prior six months; today, those figures are 7.6 percent and 194,000, respectively. Back then, FOMC participants were forecasting unemployment rates around 7-3/4 percent and 7 percent for year-end 2013 and 2014, respectively, in our Summary of Economic Projections; as of the June 2013 round, these forecasts have been revised down roughly 1/2 percentage point each. While it is difficult to determine precisely, I believe that our asset purchases since September have supported this improvement.』

昨年9月のQE3実施から見たらこんなに「労働市場の顕著な改善」をしているではないか(キリッ)と言われますとまあそうですねという話になるのだが元が悪いからじゃネーノという気もするんだが。


・足元までの資産買入政策はコストよりもメリットの方が多かったと

『For example, some of the brightest spots in recent months have been sectors that traditionally respond to monetary accommodation, such as housing and autos. Although asset purchases also bring with them various costs and risks--and I have been particularly concerned about risks relating to financial stability--thus far I would judge that they have passed the cost-benefit test.』

ご案内の通りスタイン理事は金融緩和政策の長期化によってクレジットバブルのような資産市場の歪みが生じて結果として金融の不安定化に繋がるリスクがあるという警告をしておりまして、それに対する評価をここでしているのはほほうという感じ。


・反応関数についてのコミュニケーションについて

でまあさっきの前振りの続きが次に。

『However, this very progress has brought communications challenges to the fore, since the further down the road we get, the more information the market demands about the conditions that would lead us to reduce and eventually end our purchases. This imperative for clarity provides the backdrop against which our current messaging should be interpreted.』

柔軟性の反対側にある「市場に与える不確実性」に対してのコミュニケーションが必要になります罠とな。

『In particular, I view Chairman Bernanke's remarks at his press conference--in which he suggested that if the economy progresses generally as we anticipate then the asset purchase program might be expected to wrap up when unemployment falls to the 7 percent range--as an effort to put more specificity around the heretofore less well-defined notion of "substantial progress." 』

この前の逆さ絵の説明はそのコミュニケーションとして「顕著な改善」の具体的な状況を示したものであるという認識になっています。

『It is important to stress that this added clarity is not a statement of unconditional optimism, nor does it represent a departure from the basic data-dependent philosophy of the asset purchase program.』

つーことで、今回のプレコンでの説明は「this added clarity」と説明していまして、資産買入に関するコミュニケーションポリシーの一環で、政策反応関数を明確に示すという意図だ、と定義していますな。

でもってこれは無条件の楽観でも無く、資産買入プログラムがデータディペンデントじゃなくなったという事を意味するものではありません、という説明をしているのですが、何かニュースで出ていた時はここの部分が妙な解釈されていたように思えるのだが。

『Rather, it involves a subtler change in how data-dependence is implemented--a greater willingness to spell out what the Committee is looking for, as opposed to a "we'll know it when we see it" approach.』

それよりも政策反応関数を明確に示すためのものです、とのことで。

『As time passes and we make progress toward our objectives, the balance of the tradeoff between flexibility and specificity in articulating these objectives shifts. It would have been difficult for the Committee to put forward a 7 percent unemployment goal when the current program started and unemployment was 8.1 percent; this would have involved a lot of uncertainty about the magnitude of asset purchases required to reach this goal. However, as we get closer to our goals, the balance sheet uncertainty becomes more manageable--at the same time that the market's demand for specificity goes up. 』

顕著な改善のゴールが近くなってきたので7%という数字を出しやすくなったとは結構斬新な説明のような気がするが気のせいっすかねえ。


・資産買入ペースの上げ下げで足元の数字に過度に反応しないとな

『In addition to guidance about the ultimate completion of the program, market participants are also eager to know about the conditions that will govern interim adjustments to the pace of purchases.』

ペースの上げ下げについての情報も市場は知りたいでしょうなあとな。

『Here too, it makes sense for decisions to be data-dependent. However, a key point is that as we approach an FOMC meeting where an adjustment decision looms, it is appropriate to give relatively heavy weight to the accumulated stock of progress toward our labor market objective and to not be excessively sensitive to the sort of near-term momentum captured by, for example, the last payroll number that comes in just before the meeting. 』

資産買入自体はそのストックによって効果を与えるものですからして、買入のペースの上げ下げについて足元の労働市場データを見ながら調整を細々と行うというようなことはしません、という話ですな。


・一応まとめの部分

この調子で引用していると少々のつもりが全文引用になりそうな勢いなのでこの辺までにしておきますがまあ話自体はご案内の通りで普通の話をしているのですが、最初の方にあったように「去年の9月からの改善ガー」とか「失業率がここまで下がってきたので7%という数字を出せました」というような話をしている位ですので、スタイン理事としてはまー基本的にはQE3縮小上等というスタンスですし、労働市場も改善していますよーってスタンスなんでしょうなあというのは把握できるというものです。

まあ元々金融不均衡に着目しているタカ派系の人なのでタカ風味なのはあまり驚く話でも無いですけど。

『In sum, I believe that effective communication for us at this stage involves the following key principles: (1) reaffirming the data-dependence of the asset purchase program, (2) giving more clarity on the type of data that will determine the endpoint of the program, as the Chairman did in his discussion of the unemployment goal, and (3) basing interim adjustments to the pace of purchases at any meeting primarily on the accumulated progress toward our goals and not overemphasizing the most recent momentum in the data.』

てな訳で、資産買入政策の今後の進め方は経済データ次第で、どのように運営するのかに関する透明性をこの前の逆さ絵プレコンで示しましたよということで、買入ペースの上げ下げに関しては足元のデータに過度に依存しないという、まあ普通なんですがつまりそれは「予定通りに雇用環境の改善が進んだらQE3は終了ヒャッハー」ということですねわかりますという所でして、「データ次第」と言いつつもまあ日程はあのような感じなんでしょうなあという所なんですかね。


・9月から減額を開始するのが云々という部分

実はこのまとめの前の部分にその記述がありまして順番をひっくり返しましたが引用です。

『Thus both in an effort to make reliable judgments about the state of the economy, as well as to reduce the possibility of an undesirable feedback loop, the best approach is for the Committee to be clear that in making a decision in, say, September, it will give primary weight to the large stock of news that has accumulated since the inception of the program and will not be unduly influenced by whatever data releases arrive in the few weeks before the meeting--as salient as these releases may appear to be to market participants.』

キタコレ。

『I should emphasize that this would not mean abandoning the premise that the program as a whole should be both data-dependent and forward looking. Even if a data release from early September does not exert a strong influence on the decision to make an adjustment at the September meeting, that release will remain relevant for future decisions. If the news is bad, and it is confirmed by further bad news in October and November, this would suggest that the 7 percent unemployment goal is likely to be further away, and the remainder of the program would be extended accordingly.』

データディペンデントですよと強調しながらもさっきのような話をして、そしてまとめではその上にありましたように書かれますと、まあこれはどう見ても「QE3減額する気満々」というのは把握できるというものでありますな。


○ダドリー講演、と思ったがどうもこの前と同じようです

こんなニュースがあったのですが。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE96102620130702
米FRB、景気回復大きく減速すれば緩和拡大の可能性=NY連銀総裁
2013年 07月 3日 04:11 JST

へーと思いましたら講演テキストがありました。

http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2013/dud130701.html
The National and Regional Economy
July 2, 2013

でまあ何か新しい話でもしているのかと思ってざくざくっと超斜め読みをしたのですが、どう見てもこの前の講演での経済の説明(はネタにしてませんなすいません)と金融政策に関する説明とまるで同じにしか見えませんので、金曜のあたくしの駄文でもご参考下さい。

ちなみに先週の講演はこちら。
http://www.newyorkfed.org/newsevents/speeches/2013/dud130627.html
Are Recent College Graduates Finding Good Jobs?
June 27, 2013

前半部分が今回の講演と同じような話をしています(と思います)。

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2013/07/01

○連銀高官の人が色々と解説をしているので過去のネタになった訳だが逆さ絵会見補足

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20130619.pdf

・金利ガイダンス、スレショルド、資産買入に関して

まあ今回の会見ですが、延々とこの3点に関して「そうは言ってもこれは引き締め効果があるでしょ」「いえいえなにを仰る兎さん」というのが続くのですが、説明としてはこちらの質疑を見るのがヨロシアル。

『BINYAMIN APPELBAUM. Binya Appelbaum, New York Times. Following up on that, so I understand the 6.5 percent is a threshold, but you’ve just talked about a 7 percent line for asset purchases. That sounded less like a threshold than like a target.』

まあこう言われる罠。

『You said if you’re at about that level, you’ll stop with the asset purchases mid next year. You talked about wanting to see substantial improvement in the labor market before you did suspend those purchases. It’s very easy to imagine a situation in which we get to 7 percent without seeing labor force participation increase.』

と言われますわ。ちなみに(引用しませんけど)一つ前の質問で同じように「スレショルドを追加したのか」と聞かれて逆さ絵先生は「その時の状況を見て判断します」という説明をしているんですけどね。

『The employment rate’s been at the same level for three years now. Has something changed in your thinking about the value of asset purchases? Why are you cutting them off before you see that “substantial improvement”?』

ということで、何でそんなに急に強気になっているのだ7%がターゲットに見えるぞなと。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, “substantial” is in the eye of the beholder. I think going from 8.1 percent and a stagnant rate of improvement to 7 percent and stronger economic growth is a substantial increase.』

キタコレ。

『I think it’s important to explain that, you know, we view ourselves as having two tools. One of them is rate policy, and that includes both setting the rate and providing guidance about future rates. That’s our basic tool, that’s the one that the Federal Reserve and other central banks have used forever. Asset purchases are a different kind of thing. They’re unconventional policy, they come with certain risks and certain uncertainties that are not necessarily associated with rate policy.』

ということで、金利ガイダンス政策を「伝統的政策の一環」として資産買入を「非伝統的政策」という形で分離している所がまあ「金利と量は別」という話ではございます。

『So our intent from the beginning, as I’ve been very clear, was to use asset purchases as a way of achieving some near-term momentum to get the economy moving forward into a sustainable recovery. And then, essentially, to allow the low interest rate policy which-to carry us through. So what I-so let me just make two, I think, very important points.』

どうもこの説明によりますと資産買入については金利政策と比較してより短いタームのモメンタムに影響するというような感じの整理になっている希ガス。

『The first is, our target is not 7, it’s not 6-1/2, our target is maximum employment, which, according to our projections, most people on the Committee think is somewhere between 5 and 6 percent unemployment, and that’s where we’re trying to get to. The 7, the 6-1/2-these are guide posts that tell you how we’re going to be shifting the mix of our tools as we try to land this ship on a, you know, on a-in a smooth way onto the aircraft carrier.』

ちなみにこの着陸に関する例えを使ったら後の質問で別の人から「飛行機って良く着陸でやらかすよね」という意地悪な質問があったのだがそれは兎も角として(^^)、色々と出しているスレショルドの数字はあくまでもガイダンスであって目標では無く、ガイダンス自体は金融政策をどうするのかというような部分のコミュニケーションポリシーだよという話ですな。

『The-sorry. So, the other thing I wanted to say was that stopping asset purchases, when that happens, and I think we’re still some distance from that happening, but when that happens, that won’t involve ending the stimulus from asset purchases because we’re going to hold on to that portfolio.』

買入拡大を停止しても緩和終了からは程遠いキタコレなのですけど、まあこの辺は金曜にネタにした先週木曜のダドリー講演での説明と同じ(つーかこっちの方が先ですけど)ですな。

『And if the stock theory of the portfolio is correct, which we believe it is, holding all of those securities off of the market and reinvesting and still keeping the, you know, rolling-over maturing securities, will still continue to put downward pressure on interest rates. And so, between our commitments to a low federal funds rate and the large portfolio, we will still be producing a very large amount of stimulus-in our view, enough to bring the economy smoothly towards full employment without incurring unnecessary costs or risks.』

しかもFEDのバランスシートは大きい状態で維持されているのであれば、金融緩和の状態は引き続き緩和的ですよ、という話ですな。まあこの辺をコンパクトに説明したのが金曜引用したダドリーの講演ですなという所でありまする。


・物価に関するツッコミに関しては「一時的ですが何か?」で終始する

物価に関するツッコミも何回か来ているのですが、全てこの調子での答えなのでまあ最初に来た物価に関する質疑を引用すればヨロシアル。

『VICTORIA McGRANE. Hi, Chairman. Victoria McGrane with Dow Jones Newswires. You, in your statement before the press conference and in the policy statement, acknowledge that inflation readings have been low. But you maintain that inflation expect-longer-term inflation expectations have remained stable. But actually, certain bond market measures of these things have fallen in recent weeks.』

長期物価期待は安定していると仰せですがBEIとか下がってますよと。

『Is that of any concern, and if not, why? What would you need to see for the Committee to start being more concerned that longer-term inflation expectations are, in fact, falling?』

ロンガータームのインフレ期待についてあんさんらが懸念するのはどういう時なのよ?と言う質問に逆さ絵先生のお答え。

『CHAIRMAN BERNANKE. Well, this is something we watch very carefully. There are a number of, as I mentioned in the statement, there are a number of transitory factors that may be contributing to the very low inflation rate.』

一時的要因とな。

『For example, the effects of the sequester on medical payments, the fact that nonmarket prices are extraordinarily low right now. So these are some things that we expect to reverse and we expect to see inflation come up a bit.』

この辺が一時的要因の実例ね。

『But, first, on inflation expectations, it is true that the breakevens from the inflation-adjusted-inflation-indexed bonds have come down. To this point, they still remain within the historical range that we’ve seen over the past few years.』

BEIは確かに下がっているけれども依然として過去数年のヒストリカルレンジの中にいる、というのは中々斬新な説明だなおいおい。

『And moreover, other measures of inflation expectations, be it forecasts by professional forecasters, whether it’s survey measures from firms or households, those are all still pretty much in the same places they were.』

他のサーベイなどでは安定です(キリッ)。

『Now that being said, and as I said in my opening remarks, we don’t take anything for granted. And one of the preconditions for the policy path that I described is that inflation begin, at least gradually, to return towards our 2 percent objective. If that doesn’t happen, we will obviously have to take some measures to address that. And we are certainly determined to keep inflation not only-we want to keep inflation near its objective, not only avoiding inflation that’s too high, but we also want to avoid inflation that’s too low.』

ということで、物価の上昇率が想定よりも落ち込み2%の目標を達成できない見通しになった場合には必要な措置を取ります、という説明もこちらではしておりまして、これまたダドリー講演のベースと同じような説明になっていると思うのですが、やはりこの時のプレコンは「スケジュール呈示」という衝撃の事態があったので、そっちに引っ張られている感じがするのと、あと一つあるとすれば物価に関する質疑(この後でもあるのだが)で妙に「今の低下は一時的で2%に戻りますから」というのをやたら強調しているので、その点から強気感というかシナリオに関して所与っぽい雰囲気を与えたのかなあとか思いました。

#あと少し質疑ネタあるっちゃああるのだがまあネタに困ったら繰り出します



○ヘッドラインリスクにマジで注意した方が良いと思う今後の連銀高官発言

これは27日(実質26日)のニュースですけど。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MP0M356VDKHW01.html
リッチモンド連銀総裁:数年間は失望する成長が続く見通し
更新日時: 2013/06/27 04:46 JST

ほうほう火消しですか、と思われるのですが、28日に

http://www.richmondfed.org/press_room/speeches/president_jeff_lacker/2013/lacker_speech_20130628.cfm
http://www.richmondfed.org/press_room/speeches/president_jeff_lacker/2013/pdf/lacker_speech_20130628.pdf
Economic Outlook, June 2013

こういうのが出ていまして、確かに「数年間は失望する成長が続く見通し」という説明を延々としているのですよ。この講演PDFバージョンで見ると5ページちょっとあるのですが、その「失望する成長が云々」という話が延々4ページ半近く続くのよ。

で、この説明部分なのですが意外にどこをどう引用するのかがめんどいのですがたぶんこの辺かなと思いますのでまあちょっとだけ経済に関する引用部分。

『To summarize then, the slow growth in real GDP in this expansion is related to both lower productivity growth and lower employment growth. While economists understand the principles underlying productivity growth, it’s quite difficult to parse the causes of medium-term swings in productivity growth, particularly as they are happening. At this juncture, low productivity growth has persisted long enough that I think the best guess is that it will remain low for an extended period.』

最初の所でGDP成長に関して「雇用の伸び」と「労働生産性の改善」という要因分解をしてああだこうだと説明しているのですが、その辺については引用スルーしますが、過去の20世紀後半のトレンドと比較した話をしていまして、リーマンショック以降雇用は伸びないわ労働生産性の改善は遅いわという話をしています。

『Some of the shortfall in employment could be due to the lingering effects of the Great Recession on labor force participation, but at this point, four years since the recession ended, I doubt this effect is very large. I think longer-run structural trends, such as an aging population and higher school attendance among young people, are important drivers of the falling participation rate. And other persistent structural impediments, which I will discuss in a moment, seem to be depressing growth as well.』

で、これらの問題には構造要因がありますというのがラッカー先生の認識。

『Thus, the combination of relatively low productivity and employment growth leads me to conclude that real GDP growth will fluctuate around a 2 percent trend for the foreseeable future.』

結論は実質GDPはかなり長い間に渡って今後とも2%程度で推移する、という結構弱気な物なのですけれども、これは構造要因によるものである、というビューなのですな。

『This view, based on medium- to long-run structural factors, contrasts with the views of some leading economic forecasters that I mentioned earlier. They believe that after a brief period of sluggish growth, real GDP will accelerate significantly. They see growth as being temporarily restrained by “headwinds” that limit spending and will dissipate relatively soon. A few years ago I subscribed to that view as well, and I would routinely predict that growth was about to accelerate after a quarter or two. Year after year though, our forecasts of acceleration were proven wrong, and growth remained near 2 percent.』

循環回復をしたらもっと成長が加速する、という見方があったがどうもそうなっていないと。

『Eventually I started feeling an affinity for Charlie Brown, trying time after time to kick the football that Lucy kindly offers to hold for him, only to yank it away. I began to re-examine my basic premise that growth would soon accelerate behind my forecast, and I came to appreciate the structural factors that appear to be persistently limiting growth.』

で、ラッカー総裁も上記の考えに賛成していたが宗旨替えした。ということで、こんな感じでまああまりパッとしない見通しの話が続くのですが、この「構造要因」ビューと言うのが曲者で・・・・・・・・


・最後の所で金融政策の話をしているのですが全然火消しになってNEEEEEEEE!!!!!!

『At this point in discussing the outlook, you may have noticed that one topic is missing, and so I’ll conclude with some thoughts on monetary policy.』

キタコレ。

『Federal Reserve policy is exceptionally accommodative right now, with short-term interest rates near zero and our balance sheet about four times the size it was before the financial turmoil began in 2007. Moreover, the balance sheet continues to expand, consistent with Fed Chairman Ben Bernanke’s announcement last week that the Federal Open Market Committee anticipates reducing the pace of asset purchases later this year and ending purchases around mid-year 2014, provided incoming data are broadly consistent with the Committee’s forecast.』

逆さ絵コメントに関してキタキタ。

『This means that over the course of the next 12 months, the Committee will be reducing only the pace at which it is adding accommodation. In other words, the Federal Reserve is not only leaving the punch bowl in place, we’re continuing to spike the punch, though at a decreasing rate over the next year.』

逆さ絵の話だと買入ペースを減らしても緩和の拡大は続いていますよという説明をしています。ではラッカー怒りの反対先生のビューはと言いますと・・・・・・・・

『A highly stimulative policy was the appropriate response to a severe recession of 2008 and 2009, in my view.』

リセッションの時にはこの大規模緩和は効果的でしたと。

『Growth has resumed, however, and it appears as if it’s limited, in large part, by structural factors that monetary policy is not capable of offsetting.』

しかしこれが構造問題ビューの曲者たる所以でありまして、成長が戻ってきた中で構造問題が成長を低めに抑えている要因であったらば、緩和的な金融政策の効果は限定的となるとキタコレですな。

『In this situation, the benefit-cost trade-off for further monetary stimulus does not look promising. I seriously doubt additional monetary stimulus can provide much impetus to real growth right now. But further stimulus does increase the size of our balance sheet and correspondingly increases the risks associated with the “exit process” when it becomes time to withdraw stimulus. That is why I have not supported the current asset purchase program.』

ということで、効果が限定的となる中で買入の拡大を行う事は出口政策をより困難にするので俺様はラッカー怒りの反対(投票権があるのは去年です)となっているんだよと。

『I did, however, think it wise of Chairman Bernanke to clarify the Committee’s expectations regarding how the pace of asset purchases is likely to evolve. Bond and stock markets fell sharply in response, but that should not be too surprising.』

市場の反応はtoo surprisingではないとな!

『The Chairman’s statement forced financial market participants to re-evaluate the likely total amount of securities the Fed would buy under this open-ended purchase plan - in other words, how much liquor would ultimately be poured into the punch bowl.』

ワロタ。

『Market participants also had to reconsider their estimate of when the Federal Reserve would begin to remove the punch bowl by raising interest rates. These reassessments appear to have warranted price changes across an array of financial assets. As market participants gain additional insight from the words of Federal Reserve officials or by policy actions in coming quarters, further asset price volatility seems likely.』

FEDの緩和政策がどこまで続くのか、といような話を市場が再考するようになったら市場における資産価格のボラティリティは拡大するでしょうとな!!!

『This type of volatility is a normal part of the process of incorporating new information into financial asset prices and should not interfere with the moderate-growth scenario that I have presented today.』

This type of volatility is a normal partでnot interfere with the moderate-growthとな!!!

『And I would emphasize that keeping inflation low and stable is within the capability of any modern central bank. On that score, the recent behavior of inflation has been heartening. Measures of inflation expectations remain within ranges consistent with price stability, and the low current inflation readings are likely to be transitory. Inflation is likely to remain well contained, and that is the single most important contribution a central bank can make to economic growth.』

ということで、まあ見事に全然火消しになってNEEEEEEEEE!!!!!!!という事でありますが、最初にネタにしたニュースワイヤーのヘッドライン(講演が別ですけれどもまあ極端に違う話はしてないでしょ)だとラッカーが火消しをしているようにも見えてしまう(と思ったらこっちの講演に関する記事は講演を踏まえているのか)所でして、結構ベンダーの変なバイアスに引っかかる可能性が高まっているのでマジで注意した方が良いのかなあと思いました。

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