金融政策概観(2004年度下期分)


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2004年下期

2005/03/31「須田委員の謎の議論」
2005/03/28「来期の日銀キーワード、それはCPIの定義いじりとクレジット市場」
2005/03/16「いつか見た亡霊、それは低金利の家計への影響論」
2005/03/15「金融政策決定会合はいいとして・・・・」
2005/03/08「福井総裁、それは冗談でしょう?と言いたくなる発言」
2005/03/07「岩田副総裁も『財の価格がゼロ』発言」
2005/03/04「当座預金残高30兆円割れ危機一髪」
2005/03/03「相変わらずキャンペーンに勤しんでいるようで」
2005/03/02「またまた火消しオペ/福井さんの内外情勢調査会一問一答より」
2005/03/01「内外情勢調査会における福井総裁講演で大騒動」
2005/02/28「豪快な理屈が炸裂する福間審議委員講演」
2005/02/24「オペ札割れ問題続き」
2005/02/21「期間9ヶ月の手形オペ実施」
2005/02/18「金融政策決定会合あれこれ」
2005/02/17「またまた輪番オペに意図?/西村氏次期審議委員内定報道」
2005/02/16「昨日の補足メモ」
2005/02/15「当座預金残高目標減額問題に関するあたくしの意見」
2005/02/09「日銀OBたるもの金融政策でいい加減な話を吹聴してもらっては困る訳で」
2005/02/04「当座預金残高維持困難→??」
2005/01/24「福井総裁の良い意味での曖昧さについて」
2005/01/19「金融改革プログラム続編/当座預金目標引き下げに関するアンケート」
2005/01/18「金融庁『金融改革プログラム』について」
2005/01/17「当座預金残高目標維持が厳しいようですが」
2005/01/13「債券相場に対するありがちな誤解について」
2005/01/07「福井総裁講演に関するメモ」
2005/01/06「国債市場特別参加者に関る発表を見て思ったこと」
2004/12/30「来年の金融政策のテーマは?」
2004/12/28「理解に苦しむ陰謀論を唱える某日銀OBエコノミスト」
2004/12/24「ペイオフ解禁無事通過後に当座預金残高引き下げ??」
2004/12/20「オペ騒動始末記」
2004/12/17「オペの打ち方が妙ですな」
2004/12/16「3ヶ月ものFBの落札価格が100円!」
2004/12/15「短期国債売却オペの実施」
2004/12/10「牽強付会が習い性だと困るわけですが」
2004/12/09「調査統計局の牽強付会レポートウォッチング」
2004/12/08「武藤副総裁=日銀事務方の代表者?というお話」
2004/12/03「国債管理制度にスワップ取引登場なのですが・・・(その2)」
2004/12/02「国債管理政策にスワップ取引登場なのですが・・・(その1)」
2004/11/30「国債入札制度に関するドラめもん的雑感」
2004/11/25「『宴の後』感が残る10月12〜13日の決定会合議事要旨」
2004/11/22「総裁記者会見に見る市場との対話の困難さ」
2004/11/19「ダム論が消えた金融経済月報」
2004/11/18「当座預金残高目標維持が大変になってきている、というメモ」
2004/11/16「金融経済月報には注目が必要かも」
2004/11/15「非伝統的金融政策はやりたくなかったの?」
2004/11/12「時間軸の思わぬ効果(と言うかただのメモですが)」
2004/11/11「参議院財政金融委員会での総裁強気発言」
2004/11/08「田谷さんの後任に水野温氏さん内定」
2004/10/29「総裁の不規則発言が炸裂する国会」
2004/10/27「26日の続き」
2004/10/26「正しい政策は正しい現状認識から」
2004/10/21「展望レポートリーク?記事」
2004/10/19「9月決定会合議事要旨に見る景気論議」

アーカイブ

2004年上期
2003年下期(未完成)


2005/03/31

お題「今度は須田審議委員なんですが」

2004年度も最終日となりました。来年度もドラめもんをよろしくお願い致します。

本日は須田審議委員の寄稿した日本経済新聞「経済教室」をサカナに。3月30日の日本経済新聞の同記事をご覧下さいませ。

○昔は結構良い事言う人だと思ってたんですが・・・・

というのが結論です。かつて景気判断を上方修正しながら当座預金残高目標の引き上げを行うという決定に「政策としての筋が通らん」と反対票を投じていた頃は「政策の筋論を通す人なんですなぁ」とあたくし的にはポイント高かったのですが、最近の氏の主張は何と言うかもうダメダメ状態になって誠に残念です。

本稿で述べている事は最近須田さんが講演等で折に触れて主張していることを纏めたような形になっているのですが、相変わらずそのご主張が我田引水解釈というか何と言うか。


『この間(引用者注:量的緩和政策による当座預金残高目標の引き上げ)に生じたことの中で、少し長めの視点から今後の金融政策を考えるに当たり筆者が重要と考えることを三点指摘しておきたい。』

と言うことで3つの点について論じているのですが、その3点というのは悉く「量的緩和政策が意図していたことの結果」だと思うんですが・・・・・


○日銀券の見合い資産が長期国債なのがそんなに悪いの?

『一つ目は日銀のバランスシートの拡大である。』

って事で日銀のバランスシートが拡大して、長期国債の買入が増加しているというのを量的緩和政策解除後の懸念材料らしく論じているのですが、記事中に掲載されている99年9月末と04年9月末との比較をみたら、長期国債の増加額が銀行券の発行残高の増加額に見合っている(ともに概ね20兆円増加)訳でして、発行銀行券が減りまくるというのであれば話は別ですが、理屈の上では別に長期国債の増加は無問題というお話になるんですが。

当座預金が29兆円増えていて、その見合いになっているのは買入手形と短期国債で十分間に合っている形になっており、このバランスシート見るだけでは別に問題ないでしょうに。

まぁ須田委員としては流動性を回収した時の出来上がりの形として「日銀券」という日銀から見ると短期債務に対して「長期国債」という長期資産を持っているのがバランス悪いって言いたいんでしょうが、一般の事業会社や民間金融機関じゃないんですからその論点はどうも良く判らんのですよ。

確かに日本銀行券は短期債務(須田さんは流動性負債と言ってますがまぁ同じ意味で使ってると思ってちょ)なんですが、別に履行を求められる債務でもないですし、そもそも日本銀行券が現象したらベースマネーが縮小して経済が縮小しませんでしょうかと(無茶苦茶乱暴な言い方で経済学をちゃんと勉強している人から怒られそうですが)小一時間問い詰めたい訳ですが。(銀行券が例えば電子マネーなんかに化ける場合は銀行券の減少に見合って民間銀行部門の預金が増えますが、最終的にはその分は日銀に帰ってくるとおもいますがどうなんでしょ?頭があまり良くないのでうまく説明できませんが)

と言うわけで、バランスシートが拡大して長期国債の買入残高が増えているのがどうのこうのという論点はどうも変なのではないでしょうかと思いますわな。だいたいからして「日本銀行のバランスシートが悪化」っつーのを問題視するんなら、どうせ満期になれば償還される長期国債の評価損などというどうでもいい事を問題視するんじゃなくて、適格担保とか特融とかでしょうに。。。。。


○押し売りしておいてそれはないでしょ

『二つ目は民間金融機関が資金を融通し合う短期金融市場(コール市場)の縮小である。日銀が潤沢に資金を供給したため、各金融機関はコール市場から資金を取る必要がなくなり、金融機関は日銀を頼りにするようになっている。』

別に頼るもへったくれも無い訳で、そもそも預金超過になっている所に日銀が押し売りの如く(笑)資金を供給してコール市場の存在意義を潰している訳でして、それを「金融機関は日銀を頼りにするようになっている」とか言われても激しく困るんですけど。

須田審議委員は市場機能の回復がどうのこうのという主張を折にふれてしておられるんですが、量的緩和政策を継続する限りにおいては短期金融市場の市場機能とか言われましても「それじゃあ須田さんは量的緩和解除熱烈キボンヌなんでしょうか」という風に解釈されるだけの事ですわな。あっはっは。



○量的緩和政策の効果な訳でして

『三つ目は、短期資金供給オペの期間の長期化である。(中略)その結果、長めの金利も限りなくゼロに近くなり、自然な金利形成がゆがめられているように思う。』

そもそも量的緩和政策実施の時に速水総裁は「CPI時間軸の効果によって長めの金利に対しても影響を与える」という趣旨の発言をしておりまして(その割には需給問題やら国債30兆円枠がどうしたこうしたと言った事で瞬間激烈フラットニングしたイールドカーブがスティープしちゃったんですが)、同じ理屈で短期金融市場の金利がゼロに近づいても無問題という解釈になるんですがどうなんでしょ?何をもって自然な金利形成って言っているのか良く判らん。

ちなみに、須田委員はこの中で何故か短期資金供給オペの期間に関して突然『(欧米では一週間程度)』というフレーズをぶちこんでいるのですが、やっている金融政策が全然違うのにそこで欧米と比較するというのは何ちゅうかもう涙が出てきちゃいます。



○政策委員が現状認識を我田引水するのはどうかと思うぞ

福間委員も同じような事を言っていてこの点に関しては物凄く懸念をいだいているところでありますが・・・・・

『足元、コール市場に復活の兆しが見られるが、その背景には、金融システム不安後退の影響による資金の需要と供給の増加などがある。こうした芽をつぶさないで育てていけば、資金偏在調整の担い手を日銀からコール市場に戻す際の混乱は少なくて済むと思う。』

コール市場の復活と金融システム不安後退の因果関係は相当怪しいところ。現状では企業のバランスシート調整っつーか要するに借入金絶賛大返済と、不良固定化貸付金の絶賛償却処理によって企業部門の資金需要が減退した(物凄く乱暴に言うとその分政府部門が真っ赤になっているのでしょうが)事もあり金融機関は基本的にどこも預金超過状態。単に短期金融市場でひところイールドカーブがそこそこ立って、資金ディーリング的な妙味が発生したからターム物取引が出来るようになったのではないかと言う可能性も否定できないっすな。つーか先ほど申しあげたように、、コール市場潰したのは量的緩和政策の効果なんですが。

で、コール市場に「資金偏在調整の担い手」という昔むかしの機能をイメージしているようなんですが、当面金融機関が預金超過状態にあるんですから資金偏在調整(昔は大手銀行は概ね貸出超過状態で毎日コール市場で資金繰りをしてました。だから97年に大騒ぎが起こった訳ですが・・・)じゃなくて単なる足元の需給調整と短期資金ディーリングだけの世界になると思いますが。(大手金融機関が貸出超過になるような頃にはとっくの昔にデフレ脱却してるでしょ)


どうもこの市場機能云々は福間さんと須田さんが主に主張しているようなのですが、そもそも前提としている認識に物凄く違和感を受けるものでありまして、何か大丈夫かと思ってしまうわけです。


○その他細々突っ込むと色々ありそうなんですが

まぁこんな所で。昨日の伊藤先生に関しては「うーん」という感想ではありましたが、日本銀行政策委員会審議委員というお仕事をしているお方にしてこのお話というのは大幅に血圧が上昇するものでありまして甚だ遺憾としか申しあげようがありませんな。

で、最後にとってつけたように「いずれにせよ現在の量的緩和政策を粘り強く続けていきたい」って書いているのがまた血圧急上昇ですよ。それなら延々と主張していたのはただのノイズですか?


・・・・と血圧も上がったところで本日は終了(^^)。

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2005/03/28

お題「週明けは雑談で」

本日は期内最終受渡になります。朝のニュース番組でも顔ぶれが変っている局なんかもありまして、何か既に新年度っぽい雰囲気ですなぁって感じ。今期も色々と訳の判らん相場ではありましたが、さて来期のテーマは何なんでしょうな。

○来期の金融政策テーマ

・当座預金残高目標の引き下げ

ま、よくよく考えればテクニカルにはど〜でも良いお話なんですが、そもそも当座預金残高目標に意味があって、その増額は緩和の強化だというロジックを使っていた訳ですから、日銀の政策に対する信用を確保するためにはなぁなぁで済ますのはどうかと思います。ってあたくしが思っていてもなぁなぁコースになりそうな悪寒もする訳でして、一番懸念されるところかと。当座預金残高目標を少々引き下げても足もとの金利は全然動かないとは思いますが、これだけ事前に大騒ぎしてしまうと、ただの技術的な問題で済まされなくなっている以上は、何らかの総括をしていただきたいと思いますが。

ということは、恐らく総括すると「量的緩和政策」は「時間軸つきのゼロ金利政策」だったという話になってしまうんですが、それはそれでこの先景気が悪化した場合に打つ手がややこしくなるという問題(量に意味がある事にしておけばとりあえず当座預金目標引き上げで対応して他にやる手を考える余裕がある訳で)があるんで、残念ながらこの調子でダラダラと思惑だけが出たり引っ込んだりという感じでしょうなぁ。


・CPIの定義問題(というのをネタにして騒ぐ)

まあ相変わらず政策委員会の皆様におかれましては脇が甘いと思うのですが、物価に対する見方として「財の価格がゼロ近傍」なる発言が審議委員の皆様から連発されている訳ですわな。既に須田、福間、福井、岩田、中原の各氏から指摘されているということは、政策委員会としては現状の消費者物価に関して「公共料金等の引き下げによる特殊要因を除くと既にゼロ近傍まで改善してきている」という見方をしているってぇ話ですな。

グリーンスパン議長の真似っこをしたのでは無いかと思しき福井総裁講演での相場火付けショックで一騒ぎした相場だったので今の所スルーされているんですが、本件に関しては所詮足もとの短期金利に影響がない(と市場では思っている)当座預金残高目標引き下げ問題よりも話としてはデカイですわな。何せ現状における金融政策の基本部分が消費者物価指数ですんで、そのうちこの「コアCPIの定義を日銀がいじって、特殊要因抜きのコアCPIを重視するようになる」ってのをネタにして一騒動やるんじゃないですかね。

常識的には自分で作った定義を目標達成前にいじる(しかも事実上の目標引き下げですわな)というのはその前に物凄い勢いで総括と自己批判が必要になるとおもうんですが、まぁ上記当座預金残高目標問題での一部政策委員の「技術的な問題攻撃」と同様でして「何を言い出すかワカラン」という評価が政策委員会さまにある以上、この問題をネタにして騒ぎを起こすというのはやりそうですな。恐らく平均株価の上昇に合わせてこのネタを持ち出すとは思いますが。



○「クレジット市場の発展に関する一考察」ですかそうですか

先日(24日)に出てきた日銀レビュー・シリーズに上記お題のレポートがございました。(http://www.boj.pr.jp/ronbun/05/rev05j04.htm)URLの先にペーパー本文があるんですが、まぁ毎度お馴染みの頭の宜しいお方が頭の宜しいご考察を為されておられますんで軽く突っ込み。

・冒頭でノックアウト(^^)

『「市場価格が得られないために、リスク計測の高度化が図れない」、「リスク計測が高度化しないから、銀行がリスクが移転されず市場が育たない」。国際決済銀行(BIS)のグローバル金融システム委員会のある作業部会において、このような議論が交わされた。』

いや何と申しますかどこをどう突っ込んでいいのか悩んでしまうお話でございますなぁ。保有する貸出債権を売却しない日本の銀行はリスク管理が出来ていない低レベルの人たちなので日銀様が教えて差し上げるとでも言うのでしょうかねぇ。ふ〜ん。

・前提がどうかと思うんですが

で、本文なんですが、まぁ大体「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」市場を発展させましょうってお話で終始しているんですが、その論理展開に関しては頭の悪いあたくしは突っ込むと返り討ちにあうだけ(誰から??)なんでもっと根源的疑問をば。

本文1ページ目の「はじめに」って所でこんな記述が。

『報告書作成の過程において、こうした観点から繰返し議論されたテーマのひとつに「クレジット市場の発展とリスク計測の高度化」がある。具体的には、特定の企業や業種の信用リスクを過度に抱えているという計測結果が示されることによって、金融機関は融資の売却や、クレジット・デリバティブ取引などを通じたリスクの削減という経営判断を機動的になし得るのではないかといった論点である。』

世の中の色々な産業にあまねく資金需要が存在しており、各金融機関はそれぞれの産業に融資を行っているが、金融機関ごとに融資先の産業構成に凸凹があって、クレジット・デリバティブ取引を利用する事によってその偏りを直す事ができるんよ素晴らしいじゃありませんか。と書いているように読めるのですが、そもそも将来碌でもない問題債権が発生するような場合はその前にバブルらしきものが発生してアフォのように資金需要が発生していると思うんですが。それに、特定業種が問題になる時なんかは皆そろって融資の売却熱烈キボンヌだと思いますがねぇ。

まぁ別にクレジット市場イラネとは全然思わないんですが、そういう崇高な使命感で市場の育成とか言われても困るんですが。


・図表に下らない突っ込み(追記:この部分は読者様からのご指摘によりましてよくよく読み直してみると何を言ってるのかさっぱり意味不明なので全面削除しますが、無かった事にはしないポリシーによって取り消し線にて対応)

1ページ目に(図表1)としてCDSの市場規模(残高)推移ってのがありましてまぁ確かに日本は市場規模が小さいですなぁというのは判るのですが、そのグラフを一見すると「グローバル市場では物凄い勢いで市場規模が発展しているのに対して、日本市場(レポートでは本邦市場)では全然拡大してなくて誠にケシカランって印象操作してませんか?」っていう軸の取り方になっております。

まぁ確かに真面目に見ると市場規模拡大してないというのはその通りなんですが、印象操作っぽく見えるグラフの書き方は如何なものかと(^^)。

(追記その2:まぁここのグラフなんですが、あたくし的には折れ線グラフの方が見やすいというか日本市場での拡大が遅々として進んでいないと見せやすいとおもうんですが、まぁこれは主観問題ですわな。と汗かきながらフォロー)


・まぁそれ以前の問題として

企業を整理する際に本来優先劣後の関係と思いっきり逆の事態(株式は紙くずにならないのに貸出は債権放棄とか、社債は保全されるのに貸出は債権放棄とか)が発生してみたり、国営債権塩漬けじゃなかった買取機構があったりという国をグローバル比較する事自体がそもそもどうかと思うのでして、そういう面に関しての考察を求めたいと思うのですが。と珍しく建設的な(本当か?)お話をしておりますが、折角頭の宜しいお方が寄ってたかって立派な論文をだされておられるのですから、是非そーゆー根源的な問題に切り込んで頂きたいと切に祈念する次第であります。

と、結局本論には突っ込んでませんが、まぁ概ねそんなにややこしい話はしてません。日本銀行の「金融高度化支援」という新しい政策の柱(何だかな〜)に関るお話なんで一応ご一読されておいた方が吉かと。4ページなんですが図表入りまくりで実質2ページくらいなんですぐに読めます。

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2005/03/16

○これは懐かしいフレーズ

相場話のあとはまたまた日銀ウォッチャーウォッチャーであります所のあたくしの日銀ネタしかも同じ話になってしまいますが(^^)。

昨日の時事メイン(12時28分)でどこぞの証券会社のシニアエコノミストという人が「家計にやさしい金融政策が必要」などというのが出てました。すんげぇ昔懐かしくかつトンデモな理屈を思い出しますなぁと思いながらその記事を拝見しましたらやはりそのトンデモが爆裂している訳で。

まぁ要するに「今までは企業部門の構造調整を促進するために緊急避難的に家計から企業へ富の移転を行っていたが、企業収益が好転した現在は企業部門から家計部門への所得移転を加速させる為に金利を引き上げることが必要。わずかな金利上昇なら構造調整を終えた企業は耐える事が出来る」って話なんですが、何ですかこれは?って感じのお話。

と、思ったら当座預金残高目標引き下げ絶賛キャンペーン中の某短期金融市場レポートにも「ここのところ永田町では、ゼロ金利が預金者に負担を強いていることを憂慮する態度が散見されるようになってきている。」というようなお話が出てまして、はぁはぁそうですかと思っていたら、実は金曜から日経金融新聞で「福井総裁の2年」を聞く、というお題でインタビュー記事が連載開始しておりまして、与謝野馨自民党政調会長のインタビューの中でインタビューワーが「金利生活者のための利上げを求める声もある」って質問しておりまして、何だか大昔の亡霊が復活してきた感がありますわなぁ。(ちなみに与謝野政調会長は「日本の経済が成長しない時代、高い予想収益率がない時代に市場で金利を決めたらやっぱりいまの水準で決まってしまう」っていう言い方で明確な答えはぼかしてますが、まぁさすがに賛意をしめしてはなさそう)

もしかして上記のシニアエコノミストさまにおかれましては、その永田町方面から流れてくる空気(実は永田町ではなくて某新聞社とかが雰囲気せっせと作っているのではという気もしないでもないが)を感じて早速お墨付き用資料を作成したのではないかというのは余りにも意地の悪い読み筋ですかそうですか。

あたくしが物凄く漠然と思いまするに、企業部門の構造調整を促進するために企業部門の問題部分を財政にツケ送りしたという方が正確な話ではないかと存じますが、そうなりますとツケ回しを食らっている財政に対しては低金利の状況がやはり必要。それで資金超過セクターが割を食うから金利を上げろってのは構造改革シバキあげ論をも上回るシバキあげ論ではないかと存じますがどうなんでしょうかねぇ。と、なりますと次の課題は大儲けしておられます企業部門からどうやって財政部門にツケを返済させましょうかという話になるのかも知れませんし、それではちと違うのかもしれませんが、まぁ企業部門が利潤上げてるけどキャッシュ溜め込んでいるんだったらあんまり意味がなさそうだなぁとは漠然と思っております。

企業から家計への所得移転を促進する為に金利を上げるってのはちとトンデモではなかろうかと思いますけど、何か本当にそんな「世論」とやらが復活するのはあまりと言えばあまりって感じなんですが、はぁ(ため息)。

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2005/03/15

○金融政策決定会合な訳ですが

現状維持の可能性120%といったところですんでそれは無問題。で、あたしゃー最近他の業者さんのレポートをあんまり見ない(知人のだけしか見ない)のですが、どうも経済ニュースやら情報ベンダーを見ておりますと短期市場の人(って該当者1名しかいませんが^^)だけではなく債券系のストラテジストでも「5月とか6月に当座預金残高目標の引き下げを技術的な対応として行う」と言っている人が多いようです。

これはまさしく「市場関係者が日銀の意図を忖度する」→「市場の声を聞いた日銀が市場の意図だとして理解する」→最初に戻るっていう循環というかバンドワゴン効果が発生しているようにあたくしには思えるのですが、まぁどうなんでしょうねぇって思う次第。日経公社債情報の今週号の「日銀ウォッチ」コーナーの筆者は「武闘家」氏でしたが、まぁあたくしの意見に割と近いものを感じる次第でございます。著作権問題がモロにある物件ですんで趣旨を敷衍しつつ申しあげると・・・・

正直、現在の状況で当座預金残高が30兆円を切ったからといって金利が上昇する訳ではない(同意っす)。ただ、当座預金残高目標の技術的引き下げは日銀の政策ロジックの崩壊を意味するのでやるべきではない(これも同意)。政策ロジックが崩壊すると、将来における政策への信認が低下する訳で、時間軸の短期化につながり(そうそうその通り)、長期金利の急上昇に繋がるリスクがある(長期金利よりも中短期金利の上昇が厳しいし、中短期金利の上昇は企業の資金調達コストにモロに響くと思いますが、まぁ同意)。政策ロジックを崩壊させずに当座預金残高の減額を行うのであれば、今まで「量を増やす=金融緩和」と言っていた「まやかし金融緩和」についての効果についての清算を行い、改めて「ゼロ金利政策+1年までのターム物金利を低位安定」のコミットメントという政策の枠組みを作るべきではないか(まぁだいたい同意。細かい点ではちょっと見方が違うけど基本的には同じっす)ってお話でした。

どうもここの所金利がそこそこ安定しているんで「時間軸が外れる脅威」がどこかへ逝ってしまったようですが、政策ロジックの崩壊相場は2年前にやった筈なんですけどねぇ(画一的なVAR管理のせいでもあったが)って感じではあります。まぁその方が業者は相場が動いて商売のネタにはなりますが、あまり乗せられるのはどうかとおもうぞ日本銀行。

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2005/03/08

お題「それはひょっとしてギャグで言っているのか?」

日銀ネタはいったん終了したはずなのですが、天性のネタ芸人ではないかと言いたくなる人の発言に反応してしまう因業なあたくしなのであります。

○福井総裁の困惑(?)

えー、スイスはバーゼルにてBISの定例中央銀行総裁会議がございまして、会議前に福井総裁が記者団に対しましてこんな発言をしたそうですな。以下ソースは時事メイン。

福井総裁は先の講演で金融緩和政策の継続を過度に織り込んで長期金利が低下する事を牽制したことについて、「市場に警告発したつもりはない」と指摘した。(記事を端折ってます)

・・・・・・・・・(-_-メ)

まぁ確かにグリーンスパン氏の議会証言と違いまして、講演と言う事で原稿なんかもかなり前から準備して吟味しているのでしょうからタイミングがずれてしまいましたな〜ってお話なのかもしれませんなぁというのは弁護として成立するお話ではあるのですが、それにしても市場ってぇのはそのタイミングが悪いと思いっきり反応するものであります。先週末の国債市場参加者特別会合でも市場動向に関する意見交換の場でこんな指摘が。

日銀総裁の発言は、景況感が改善し、マーケットが弱気に傾いている時に出たことから、タイミングも良くなかった。特に、海外のファンド等は日銀の量的緩和がいつまで続くかをテーマにしており、日銀総裁等の発言が売りを誘った面がある。(議事要旨より)

ま、そういう事ですんで発言のタイミングをよーく考えて頂きたいものでありますが、どうも福井総裁におかれましては、副総裁時代の「ジャストタイミング」発言という至高の迷言を筆頭に市場に燃料を注ぐというか、消防車が放水したら水じゃなくてガソリンだった(どんな例えだ)という感じではありますな。困ったもんです。

で、どうも福井総裁(だけではなく日銀の偉い人全体において)におかれましては先ほどのバーゼルでの「市場に警告を発したつもりはない」というのは何気に素で言っているらしく、市場が大騒ぎしているのを見て「はぁ??」と思っている節があるのがこれまた困ったものです。意識してマッチポンプをしている訳ではないのがより質が悪い。


○改めてグリーンスパン議長議会証言との違いを愚考(^^)

グリーンスパン議長の議会証言における「長期金利の低下は謎」という発言は市場に大騒ぎを巻き起こしましたが、先日はちゃんと火消しの議会証言をするという芸の細かさを見せてくれました。まぁ口先介入もあまりやりすぎない方が吉だとは思いますがそれは兎も角。

そもそもグリーンスパンさんの場合は、FRBに金融政策の自由裁量がある状態でして、その上金融引き締めを行っている真っ最中でもありますんで、市場に警告を発した上でアクションを起こすことが可能。で、金融を引き締め中で短期金利が上昇しているのに長期金利が碌に下がらないという事象は、市場が「金融引き締めがオーバーキルとなって先行きの景気に対して懐疑的になっている訳ですなあっはっは」と言っているような物でして、そ〜ゆ〜意味ではグリーンスパン議長の金融政策運営ちと引き締めすぎじゃネーノって言っているとも取れる状態。そりゃグリーンスパン議長不快感示しますわなって事であります。

翻って我らが日銀総裁様なんですが、そもそも量的緩和政策はコアCPIにペッグしておりますので金融政策のフリーハンドは持っていない(持っていないから時間軸効果が発生する)のでして、いくら市場動向がケシカランと文句言っても手を出す道具が無いですわなぁ。従って意味の無いノイズを発信しているだけというのがグリーンスパン議長との違い。グリーンスパンさんに倣ったのでしょうけどね。

市場に手出しをする手段を封じられている人が市場に口を出しても本来意味が無いのですが、何せ金融政策は日銀の専決事項ですから、いざとなったらCPI時間軸だって反故にする事は可能(物理的に可能というだけですが)な訳でして、「財の価格はゼロ近傍」だとか、(これはその前の福間審議委員講演からになりますが)「コアCPI除く特殊要因の物価指数は着実にゼロに向かっている」などというお話をされた所で「量的緩和政策の継続を過度に織り込んで長期金利が低下することに注意」などと言われてしまえばそりゃ市場は反応しちゃいますわな。

で、後から「市場に警告発したつもりない」とか言われても市場としては「いい加減にしろ(-_-メ)」という感想しか出てこないのですが、まぁ兎に角そこらでテキトーな話を吹聴するのは勘弁して欲しいものがあります。どうも福井総裁はその場の勢いでお話をする傾向がありますんで特に注意されたい訳でして、市場がど〜見てますかってのは是非ドラめもんを読んで参考にして頂きたいものですな。(嘘です。血圧が上がるだけですな^^)

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2005/03/07

○岩田副総裁も「財の価格ゼロ近傍」

岩田副総裁が金曜の午後に大阪で講演をしたそうなのですが、講演テキストが日銀Webに見当たらなかったのでブルームバーグのニュースから拾ってみます。

まぁ岩田副総裁は前々から景気に関しては強気な見方を示しつつ先行きの金融政策については「CPI時間軸の延長」論ということを提唱しているお方なので、景気に関して強気な意見が出てきてもさほど世の中驚かない(というかそもそも金曜の午後のニュースで今更反応のしようも無かったのですが)のですが、引き続き景気に関しては強気ですなぁ。(以下『』内はブルームバーグニュースによる岩田副総裁のコメントです)


『再びデフレに戻らないことを条件にした金融政策と、ゆっくりだが、財政健全化に向けた財政政策の組み合わせはデフレ幅の縮小に貢献してきた。あとワンストロークかなと思っている』

何だか福井総裁の「ラスト1マイル」みたいで微笑ましいのですが、このお話は前々からの岩田副総裁が展開している理論(頭の悪いあたくしには良く判らん部分があるのですが)なんですが、ど〜も腑に落ちないのは「財政健全化に向けた財政政策」って奴なんですけれども。現象として見えるのは財政が全然健全化していないというのと、そもそも資産価格の下落が止まったきっかけはりそな銀行救済スキームとか問題企業の産業再生機構送りとか絶賛ドル買い介入非不胎化攻撃とか結局財政パワー(というか財政に民間部門の問題を飛ばしているというか)によるものだったように思えるのですが。(ペイオフ解禁も実質骨抜きですしねぇ)


『基調的な動きを見ると、財は02年の初めぐらいから一貫してマイナス幅を縮小してきており、足元ではかなりゼロにちかいところに来ている。サービスはほぼゼロ%近傍で動いている』

まぁ物価に関しても岩田副総裁は強気見通し(というかGDPギャップの縮小とかを見ていたような気がする)の人なんですが、ここの所福間審議委員、福井総裁と「消費者物価は足元ゼロに近い数字」って話が出て相場が大騒ぎした話と同じような話が出てくる訳でして、なるほどなるほどと思うのでありました。

で、岩田副総裁はご存知のように「再びデフレに戻らない糊代の物価上昇率が達成されるまで量的緩和政策を継続(で、その糊代数値を明示すべしというのがキモなんですが)すべし」という主張を行っている人なんで、岩田副総裁が「物価の基調は足元ゼロ」って話をしても「はあはあそうですか」程度の反応しかしないんですが、その話を別の人が当座預金残高目標減額議論と絡めてしだすといきなり「ひぇ〜」ってことになるという諸刃の剣。市場との対話と言う意味ではちとお勧めしにくいものがございますなぁ。


日銀政策委員会として審議委員の意見が異なるのは当然の話ではあるのですが、何と言うか現在の政策に関する枠組みに関して審議委員の意見がバラバラになっているんじゃねーのかっていう状態で色々な情報発信を行われても市場の方としては困ってしまいますなぁって感じですな。

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2005/03/04

○当座預金残高30兆円割れ危機一髪

昨日は9時20分の即日オペタイムで手形買入5000億円(しかし期間が来年の1月18日ってえれぇ長いですなぁ)実施。こえがないと当座預金残高が予想から何らかのぶれが生じた時に結果として30兆円割れになる可能性がありましたのでまさに危機一髪。

つい先日(2月17日)の記者会見で売り言葉に買い言葉モード(笑)で福井総裁さまが『当面30−35兆円の当預目標が維持不可能になるとは全く予見できない』と大変に素晴らしい発言をされていた訳ですが、早速30兆円割れになったらもう総裁のメンツ丸潰れなんで、まぁ無事でよかったですねぇって感じなのですが、どうも昨日の時点で「ノーオペ」を予想していた人も結構いたらしいと聞いてビックリでありました。やるに決まってるじゃん。

ま、「福井ショック」(笑)を意識したのか財務省筋から金利上昇牽制発言が出てみたりと、不期遭遇戦のお好きな日本銀行政策委員会の皆様に振り回されて大変ですねぇという朝の調節でした。

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2005/03/03

お題「絶賛キャンペーン」

で、相変わらず当座預金残高問題ばかりで恐縮ですが、まぁだいたいあたくしの愚意見まとめって感じなんでそろそろこの話題も打ち止めですな。

○雰囲気を盛り上げている感じですなぁ

あたしゃー某経済新聞をろくすっぽ見ないという人なもんでついついそのあたりの事情に疎くなるのですが、昨日の某経済新聞系の某金融新聞を見ると「何かまたやってますなぁ」的印象を深く持つものであります。

昨日の日経金融新聞(って結局名前書いてるじゃん)は「日銀当座預金残高目標引き下げキャンペーン」状態ですなぁってところですか。一面の「ベンチマーク」という滝田編集委員のでかいコラムでは「日銀もグリーンスパン流」というお題で、中には「リチャード・メドレー氏が『日銀の当座預金残高目標は4月のペイオフ解禁後5〜7月後に引き下げられるだろう。技術的な問題で金融引き締めとは別だ』というような感想を述べた」とか「金利操作という手段を封じられた総裁にとって、市場の信認は貴重な財産だ」などとまぁいい感じで当座預金残高目標の引き下げを煽っておりますわな。

ちなみに、当座預金残高目標の引き下げのお勧めをしてますが、金融引き締めはいかがなものかって言ってますんで、まぁ滝田(あるいは日経新聞)さんとしては「当座預金残高目標の引き下げは技術的な問題」という理屈で通してしまうってところなんでしょうなぁ。


で、2面の「ポジション」ってところがもっと凄いのですが、そのお題は何と「時間軸効果消滅に期待」であります。もう腰が抜けちゃいますよ先生って感じでして、まぁうだうだ書いてありますが要するに記事の趣旨は「生命保険会社などの機関投資家は長期金利上昇で運用環境が改善することを期待している」ってお話で、こっちは「長期金利の上昇は全く問題ございません」というキャンペーン絶賛進行中って感じでありますわな。


○「ゼロ金利解除キャンペーン」にも似ているんですか?

最近ここぞとばかりに上記のようなお話が日経新聞社さまだけでなく、あちらこちらの市場関係者の本職の方々からのレポートやらという形でも出ているらしく(あまり見てないが)、福間審議委員や福井総裁の記者会見で散々「政策の筋論」を立てて食い下がっている記者さま若干名の皆様に同感しているあたくしのような主張が何かまたまた少数派になってきているかのような雰囲気を感じる訳であります。

これって何かいつぞやの「ゼロ金利解除キャンペーン」にも似ているのではないかという示唆を頂いております。実はゼロ金利解除の時にはあたくし金融市場にいなくて、事業会社にいたもんで「ハァ?」と思った(ちょうどアイテーバブル絶賛大破裂の影響が出てきた所だったんで)訳ですが、案の定その後は景気腰折れ。正直、ゼロ金利が0.15%になったからといってもその数字自体に鬼のような直接影響があるとは思わんので「ゼロ金利解除しなかったら景気腰折れしなかったか?」と問われると「???」という気もしますが、まぁ心理的効果としての「引き締め」というのは影響大ですし、もう物の見事に日銀責任論が浮上してしまった訳でありますわな。

で、今回は「日銀当座預金残高目標引き下げ」という実際問題で言えば禿しく意味に乏しいけど、政策の筋論としてそれはちょっともう無茶苦茶ではないでしょうかっていう問題に関してキャンペーン活動が開始の図となっておりまして、「ああこうやって雰囲気盛り上げて日銀がそれに乗せられるのね〜」と痛く感心するというか呆れる次第の今日この頃でございます。


○で、あたくしの意見は筋論なんですが

当座預金残高目標を引き上げる時は「量的緩和の強化」で下げる時は「技術的対応」なんて理屈はちょっと変ですし、「いや今までの量の拡大は金融機関の流動性ニーズに応える量の拡大だったんだよ」って言うのだったらプルーデンスの世界だから金融政策決定会合じゃなくて通常の政策委員会で決定しなければいけなかった話なんでやはり理論的に禿しく崩壊している訳ですな。あっはっは。

某読者さまと話をしていた時に出てきたのは「量を増やす時は緩和の強化で減らす時は技術的対応。まるで『敗北による撤退』を『転進』と言って欺瞞していたどこかの人たちみたいですなぁわはははは」というものであります。もう政策の筋もへったくれもなくなりますわな。

じゃぁお前は当座預金残高目標を引き下げるのはケシカランというのかと言われるとそれは違う人でありまして、だいぶ前からあたくしの駄文を送りつけている人はご存知だと思いますが、「SARS問題」「りそな問題」あたりが片付いたあたりで一回「緊急対応分の量は引き揚げる(=残高目標を減らす)」とやっておけば良いのではって話をしていた(これもまぁ理屈としてはやや変なのですが)くらい(よって昨年の追加緩和も何じゃこりゃなんですが)ですんで、「筋を通せ」と申しあげている訳ですな。

どう筋を通すかと言うとそりゃもう簡単な話でして、日銀が「『量的緩和政策』と言って量に意味があるような話をしていましたが、実際にやってみたら量には直接の意味はありませんでした。本当はこの政策は『ゼロ金利政策+時間軸効果』だったんです。」と認めれば話は全て丸く収まると思うんですよね。

要するに「CPI時間軸」さえきちんとしていれば当座預金残高はゼロ金利を維持できる水準になっていれば無問題なんで、資金需要があるときは多めに出すし、需要が無いときは短期金利が上がらない程度に減らしておけばよいと。思いっきり政策が「金利ターゲット」に戻るという話で、今までの「当座預金残高目標の量に意味がある」と言っていたのが壮大なる茶番だったって事になっちゃうから大変に認めにくくて苦渋の決断になるとは存じますが、勇気ある「撤退」も必要じゃないんでしょうかって思う所であります。「技術的対応」という「転進」をするというのは止めて頂きたいと切に願うものであります。

ま、それで理屈がグダグダになって焼け野原になってしまうのも一興ではありますがね。(とまた身も蓋も無い事を言うあたくし)


○ポジショントークもほどほどに

以下また暴言。

まぁそういうわけで徐々に「筋論派」の周囲からは楚の歌なんかが聞こえて来るような展開が絶賛進行中な訳でございますが、正直申しあげて日銀の政策が筋として(もともとかなり理屈が破綻している政策ではありましたが)崩壊するような「技術的対応」論を勧めるというのはいかがなものかと思う訳ですよ。そりゃ相場が動いて金利が全体的に上昇してくれりゃぁ市場参加者としては商売繁盛だし運用環境も改善するし結構な話なんですが、だからと言ってもポジショントークというのにも限度があると思うんですよね。

景気がそんなに絶賛大回復していて金融引き締めにも無問題ってぇ話だというのなら別に結構なんですが、「技術的対応」って言ったってアナウンスメント効果って物もある訳ですし、それなりに長期金利やら貸出金利に響いてくる中期ゾーンの金利やらが上昇して経済やら財政やらに悪影響を与えないんでしょうかねぇと思うんですよ。「それよりも俺様の明日のメシの種が大事だ」って話ならまぁそれはそれで一つの考えですし、いちトレーダーとしては当座預金残高目標問題で相場が盛り上がった方が収益チャンスもありますが。

ただねぇ。一応「市場の声」として機能しているマーケットエコノミストだとかマーケットストラテジスト(などという表現が適切かどうか判りませんが、ニュアンス汲み取って頂けると幸甚)だとかの人が「技術的対応論」を支持するのは如何な物かと思いますよ。そういう事を言っているから「市場の人間はポジショントークばっかりしている」と言われてしまうのではないでしょうか
ねぇ。

以前ご紹介したバーナンキ氏講演集「リフレと金融政策」(日本経済新聞社)の書評を書いた時に、訳者の高橋洋一(訂正及びお詫び:高橋洋一さんです。高橋「進」じゃ日本総研ですわなbewaad様ご指摘ありがとうございました)さんが解説で書いた「ボンドトレーダーなどの金融市場関係者はインフレ目標が採用されるとフィッシャー効果によって名目長期金利が上昇して保有債券の評価損が生じると信じられている」という部分に「市場関係者はそんなポジション上の理由で反対しているんじゃない」と散々悪態をつきましたが、謹んで撤回して深くお詫び申し上げたい(って高橋さんが見ている訳ではないのでお詫びもないが気持ちの問題)と存じます。ええ、市場関係者はどうも「政策は如何にあるべきか」などと言うことは考えてないようですわ。ポジショントーク全開なんですな。


ま、四面楚歌もまた楽しですけどね(半ばヤケクソ)。

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2005/03/02

お題「マッチポンプですか?」

相変わらず日銀ネタばかりで甚だ恐縮ではございますが。

○火消しオペリターンズ(か?)

昨日の日銀の金融調節は「ほほう」と思わせるものが2本ございました。

まず10時10分に行われた国債買入。最近ややパターンが崩れているというのはありますが、基本的には月曜か水曜に実施されるというパターンが目立つオペだったのですが、昨日はいきなり月初の火曜に実施。あまり市場としては予想をしていなかったせいかちと不意打ちになったようで先物が少々戻りましたな。で、これがまたお笑いなのですが、昨日の前場引けはバイカイ食い合いの引けもうさずになってしまい、引けで先物のヘッジが出来なくなるというスカポンタンな事になりました。そのために事前予想より長期債がオペに吸収されなかったようですな。

先日来指摘しておりますように、ここの所妙にオペのタイミングに「オペを打つ人の意思らしきもの」が感じられるようになっている訳ですが、金融政策決定会合直前に実施しない国債買入が「決定会合に配慮して結果待ち」というものを感じさせるのに対しまして、昨日の場合は「福井総裁の内外情勢調査会における講演にショックを受けた金融市場の火消し」という意図があるんじゃぁねぇかというそこはかとないものを感じさせてくれました。


もう一つのオペは13時に行われた全店手形オペ。3月3日スタートで何と来年1月11日エンドとGWに半期末2回に年末越えという314日の資金供給。この前久しぶりに長期間のオペ実施などと言っていたものからいきなり50日ちょっとの期間延長。もう何だかヤケクソになっているのじゃないかと何か心配(^^)。

これもまた「市場に配慮」って奴なのかなぁという感じでして、まぁ当然ながら一昨日の福井総裁講演によってユーロ円金利先物市場なんかでも金利先高感が台頭しているかのような価格形成が行われておりましたんで、「まぁお前ら落ち着け」というオペだったのかもしれませんな。

「かもしれない」という言い方になったのは別の見方もある訳でして、とりあえず今回資金供給期間を長くしたのは先日期間259日の供給オペが見事に札割れしていたんで、「資金供給への努力をしておりますよおっほっほ」という姿勢をみせているとも言えるのでございますな。

この場合は「資金供給オペの期間を長くして工夫してみました」→「(そのうち)どうも札割れが発生しますなぁ」→「やっぱり流動性を減らした方が良いんじゃねーの」→「当座預金残高目標・・・・」という連想が働いてしまったりする次第でございまして、そうなりますとやっぱダメダメじゃんってことにもなりますので、まぁ正直真意がどこにある(何も考えないで単に札割れ回避したかっただけかもしれませんが)のか判らんところですな。


手形オペの場合はイマイチよー判らんところがあったからなのかどうかは不明ですが、債券市場ではそれまでどちらかと言えば超長期ゾーンなどが堅調に推移していたのですが、オペオファー後にはイールドカーブがスティープ気味に推移しました。あまり関係は無いかもしれませんが、「長めの短期金利の安定化」というようなオペに対してイールドカーブがスティープで反応というのも自然と言えば自然なのかな?

ちなみに、全店手形オペ結果は1兆円の予定額に対して応札は目出度く22273億円で札割れ回避なんですが、応札サイドは見事に日銀の足元を見透かしているようでして(笑)、一発目から下限レートの0.001%の札しか入っていなかったようですな。落札10008億円で按分比率44.9%って言う事は全部の札が0.001%に入っていたと容易に逆算できる訳でして、次回以降のオペ大丈夫かな〜と不安になりますわな。


いずれにせよ、いつの間にやら「シグナリングオペ」という古き時代のオペレーション手法が局地的にではありますが絶賛大復活中となっているということでしょうな。何だかな〜。


○内外情勢調査会で気になった福井総裁語録

ソースは相変わらず時事メインですが、一昨日の内外情勢調査会での福井総裁の一問一答で気になったところを少々。

・財政問題に関して

『この日本の場合のように諸外国に例を見ない大幅な財政赤字解消のプロセス』(本間正明氏との一問一答より)

『今後残っている最大の課題は公的部門の構造調整だ。なかんづく先進国では世界一悪い財政状況を良くしていく必要がある』(斎藤精一郎氏との一問一答より)

まぁ今に始まったことでは無いのですが、財政再建問題に関しては相変わらず熱心にご主張。強調して言いたいのは判りますが、いつものように表現が強いですなぁというのは兎も角として、激しく不思議なのは、そんなに財政事情が悪い悪いと言い、財政再建へのプロセスをサポートしようって意思があるんなら別に「イールドカーブの過度なフラットはケシカラン」なんて話をする必要はなかろうにって思う訳ですな。

まぁ総裁としては「過度なフラットの後に反動が来て金利急上昇するのが良くないから」という風に思っているんだと解釈してますが、昨日も申し上げたようにこ〜ゆ〜発言はタイミングが悪いと本来発言者が意図するように解釈されないというのが市場の困った所でありますんで、もうちょっとその辺に配慮した発言をされたいって感じですな。

「そもそも金融政策のフリーハンドが無い日銀には相場を牽制しようとしても政策対応が出来ないのだから、グリーンスパン議長の真似をするのはいかがなものか、というか政策を縛っている日銀に市場牽制の資格は無いでしょ」って趣旨の昨日の時事メインコラム「金融観測」に関しては全く同意するものであります。


・インフレ警戒??

『一足飛びにはインフレに行かないと言う意味では、日銀としては時間的余裕をもってこれに対処していける。がまん強く緩和を続けると言っているのは、そういう意味だ。』(斎藤氏との一問一答より)

まぁ前もそんな話をしていましたが、その割りには講演では「量的緩和政策のデメリット」の話をしておりまして、コアCPIが相変わらずマイナスだというのにどうなっているんでしょ?って感じですわな。そういえば「コアCPIから特殊要因を除く」物価指数を持ち出しているのも福間さんに福井さんなんですけど。

どうもこう言っているものの、ここのところの言行を見ていると「がまん強く緩和を続ける」と言っているのは「量的緩和はやりやくないけど我慢している」と解釈したくなりますし、「インフレに行かない」というのは「コアCPIがゼロになったらもうインフレを警戒しだすんじゃないか」と解釈したくなってきちゃうのは深読みのしすぎでしょうかね??


ま、いずれにせよ政策委員会メンバーがノイズを撒き散らすのは勘弁願いたいところでございますな。相場は動くから面白いには面白いが。

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2005/03/01

お題「やってくれましたよ福井ショック(-_-メ)」

昨日の債券相場、鉱工業生産は足元の数字が良くて先行きは慎重っていうことで良いには良い数字ながらって感じだったので何となく重い展開ながら長期化期待で20年あたりがまるで下がらんという展開だったのですが・・・・・・

内外情勢調査会における福井総裁の講演要旨がフラッシュで伝わると「あれれ?」という感じになってしまいまして、先物に大き目の売りが断続的に入るの図。何と138円割れまで売られてしまうの巻となってしまいました。で、どんなフラッシュに反応したかというと、景気にやたら強気な部分もあるかもしれませんが、(1)物価に関するコメント(2)量的緩和の弊害とイールドカーブへの言及(3)当座預金残高目標の引き下げへの言及という3点に反応したって感じでしょうか。

まぁコメントするのはするで結構ではありますが、そりゃあんたつい先日の金融政策決定会合後の記者会見で言っていた事と思いっきりニュアンスが違ってませんですかって所でして、まぁ総裁お得意の「サービス発言をして後から梯子を外す」という大変に遺憾な展開が炸裂してしまいました。ではこの3点に関して引け後にアップされた講演要旨を読みながら悪態でも(^^)。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0502c.htm


(1)物価に関するコメント:福間理論リターンズ

前半の景気に対するやたらと強気な見解は省略(というかいつもの事なので驚かない)しまして物価に関して何ですが、先日の福間審議委員の講演で披露された「総合除く生鮮食品から更に特殊要因を除く消費者物価」という我田引水まるだしの話が蒸し返されております。

『一時、1%にまで達していた消費者物価の前年比マイナス幅は、需給環境の改善に伴い、生鮮食品を除くベースで、現在、0.2〜0.3%程度まで縮小しています。』

はいはいそうですね。

『内訳を仔細にみると、景気動向に感応的な「財」の価格については、前年比マイナス幅が徐々に縮小し、足許ではほぼゼロ近傍となっています。』

はぁ?そうでしたっけ??

『幾分恣意的な要素は否めませんが、石油製品価格や公共料金、米価格といった特殊要因を除いたベースでみても、下落幅は緩やかな縮小傾向を辿っています。』

ほほう、石油製品価格が特殊要因ですかそうですか。何ですかそりゃ??

ちなみに、フラッシュでは引用した2番目の部分「ゼロ近傍」というのにはそりゃ先生反応しますわなって感じでございますが、昨日のドラめもんで何じゃそりゃと突っ込みを入れていた「コアCPIから特殊要因を除く消費者物価指数」という何と言うか強引な理屈を総裁までもが言い出すというのは一体全体何なんでしょうねぇ。量的緩和政策のコミットメントの根本に関して「この人本当に守る気あるんかいな」という疑問がまたまた(前回は一昨年の初夏ね)発生するの図ですわな。ちなみに前回「時間軸への信頼の揺らぎ」が発生した時は物の見事に5年国債が1%まで叩かれる中短期国債大暴落相場をやってくれてしまい、日銀は「量的緩和政策のコミットメントの3条件の明記」という甚だ情けない行動に追い込まれた訳ですが。


(2)量的緩和の弊害とイールドカーブへの言及

『こうした異例の緩和政策のもとでは、行き過ぎが生じていないかといった点に注意が怠れません。ここで言う「行き過ぎ」とは、経済の持続的な成長と整合的ではない経済行動・現象のことです。米国では、長期に亘る低金利が流動性を著しく高め、これが、極端に小さい信用スプレッド、住宅市場での投機的需要の顕在化といった過度なリスクテイキング行動につながっているのではないかという議論がなされています。』

はぁはぁそうですか。

『信用スプレッドの縮小は世界的に共通して起こっている現象ですが、わが国の場合、それがやや目立っており、リスクに対する認識は希薄化していないかどうかという観点が欠かせなくなってきています。』

それ以前に信用スプレッドが気が遠くなるほど拡大していたのが縮小したという面もあるかとは思いますが、まぁそれに関してはとりあえずはぁさようでございますかと申しておきましょう。次の部分が呆然。

『また、長期まで含めたイールド・カーブのフラット化についても、市場が緩和の長期継続を過度に織り込むような価格形成を行っていないかという目を常に持っておくことが必要と言えましょう。こうした観点から十分に注意を払いつつ、政策運営を行っていく必要があることは言うまでもありません。』

1ヶ月前の10年1.3%割れ20年1.9%割れとかいう時に言うのならまぁタイミングは宜しゅうございますなぁって話になるんですが、既に米国のフラットニングも一服して「グローバルフラットニング」的な流れもひとまず片付き、どちらかと言えば反動で金利に上昇ドライブが掛かりやすいこのタイミングでの発言というのは相場に燃料を投下するという機能しか果たさないという事はまぁ当然ながらお判りじゃ無いんでしょうなぁと心底思うあたくしでございます。

当たり前ですが、こういうときは現物債を売ろうとしても相場の変動が激しいのでオファービットのスプレッドが瞬間的に大拡大しちゃいますんで、とりあえず売りやすい債券先物が集中的に叩かれる格好となってしまい、あれよあれよと言う間に先物138円割れまで売られてしまいましたな。

何か暫く前のグリーンスパン議長様の議会証言「長期金利の低下は謎」というのを意識したかのようなコメントではあるのですが、同じような話をしてもタイミングというのは物凄く重要な訳でして、折角の「金融市場牽制発言」もただ単に何となく置き火が燻る市場へ可燃性燃料を投下するだけの結果を招くので、繰り返しになりますがタイミング考えていただきたい。今に始まった事ではないのですが、この方の場合はとにかく何かに魅入られたかのごとくタイミングが悪すぎて涙を禁じえません。

まぁアレですな、真似をするには過去のパフォーマンスと信用を(以下暴言)。


(3)当座預金残高目標引き下げへの言及?

講演本文には無かったのですが、フラッシュでは出ていた部分。ソースは時事通信ニュース「時事メイン」ですが、本間正明大阪大学大学院教授の質問に対する回答の中に問題の部分がございました。

『我々は今30−35兆円程度という非常に膨大な量の当座預金残高を供給し続けているが、このこととマーケットにおける資金需要の後退が実質的に平仄の合わないものになるかどうかは、まだ私どもは見極めついておりません。』

『(金融システムの安定に言及した続きで)イールドカーブの形成が変れば日本銀行に対する資金需要の出方もまた変わってまいります。そこまで含めて今後現実的に現在の数字の上での供給ターゲットというものが現実性を失うかどうかが現実性を失うかどうかは慎重に判断していきたい。』

「基本スタンスは変えない」という話もしておりますが、こーゆー事を言えば当然マーケットとしては「総裁はペイオフ解禁後に当座預金残高目標の引き下げに着手する意思がある」という風に解釈するわけでございますが、つい先日の定例記者会見で「30〜35兆円程度という当座預金残高目標を維持していく」と仰せでございましたがあの発言は一体全体何だったんでしょうか。と言うか、それ以前の問題として何で前回の決定会合は全会一致なんですかって小一時間・・・・

まぁここのフラッシュでも思いっきり驚きって感じでしたな。確かにこのお方の場合政策スタンスの話と一般論をごっちゃにして話すという禿しく困った傾向が昔からある(ので10年金利が0.5%だとかの時に「国債は株と違って満期には償還されるのでバブルという言い方はちと変でしょ」みたいな事をいっちゃったりするのですが)わけですが、一般論を言っているのか政策スタンスを言っているのかを明確に切り分けていただかないと、総裁の仰る「市場との対話」にノイズを撒き散らすだけの結果になる訳でして、まぁ言えば言うほど墓穴を掘る結果になるというものですわな〜って所であります。

ちなみに、フラッシュには出てませんでしたが、本間先生との質疑応答の中で総裁はこんな事も仰せでございました。ソースは同じく時事メイン。

『金融市場の中で、金融機関同士がお互いに市場を通じてお金を融通しあってもそんなに心配ないという状況にだんだんなってきている、ということは、日本銀行に対する流動性需要が相対的に減り始め、あるいは市場全体に流動性の過剰感が強まる、ということで、全体にこれまた整合的な動きであります。』

またお得意の相対性緩和論ですな。



しかし何ですな、確か量的緩和政策ってのは「コアCPI縛りの政策」であって、「ビハインド・ザ・カーブを辞さず」という政策であった筈。だからこそ「時間軸効果」がその役割を発揮するというお話なんですが、一昨年の失敗にも懲りずにまたまた調子に乗って自ら時間軸効果をぶち壊しに掛かる日銀政策委員会(全員がそうではありませんが)ってぇのは一体全体何なんでしょうと思ってしまう次第でございます。

困ったもんです。

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2005/02/28

お題「福間審議委員の講演と記者会見なんですが・・・」

先週木曜日に行われた福間審議委員の講演&記者会見でありますが、何といいますかもう突っ込みどころ満載と申しますか、ちとアレなものがございまして。

講演→http://www.boj.or.jp/press/ko0502b.htm
会見→http://www.boj.or.jp/press/kk0502b.htm

この講演なんですが、図表付きになっておりまして、この図表もまた中々オモロイので図表(講演のアドレスにリンクがあります)もご覧頂くことをお勧めします。

○同床異夢の量的緩和政策??

講演で注目されていたのは金融政策に関るお話でして、当座預金残高目標をどうしましょって問題に絡んで堂々と「危機管理の為に実施した当座預金残高引き上げ」という理屈の展開が行われてしまいました。まぁいいけど。後半の「日本銀行の金融政策運営」の3−1−2「日本銀行当座預金残高目標値の引き上げ」であります。

量的緩和政策のそもそも論について。

『量的緩和政策については、まず図表20-1をご覧下さい。これは量的緩和政策を導入した際の対外公表文を基に作成したものです。いわば量的緩和政策の「枠組み」を纏めたものです。その「目的」や「内容」欄にあるように、量的緩和政策は、第一に、日本銀行当座預金残高という量をターゲットにして金融市場へ潤沢な資金供給を行うこと、第二に、コア消費者物価が安定的にプラスとなるまでじっくりと潤沢な資金供給を行い、その時間軸効果を通じて、より長めの短期金利の低下を促すこと、第三に、補完貸付制度を無制限に利用できるようにすることで無担コール・オーバーナイト物レートの上限を現在0.1%となっている公定歩合に画すること、それらによりゼロ金利政策の有する金融緩和効果をさらに浸透させ、デフレからの脱却を図るという政策です。』

何かどさくさに紛れて「量的緩和」の説明の中に「ゼロ金利政策」が入っているところが既にそもそも論を理解していないのではないのかという疑問あり。ちなみにこの図表20−1ってのは量的緩和政策導入時の対外公表文を基に作成した事になっているのですが、量的緩和政策実施時に政策を説明した資料がありまして、そこにはゼロ金利政策という文言は入っておりませんなぁ。

http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319a.htm(公表文)
http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319b.htm(参考説明)
http://www.boj.or.jp/seisaku/01/pb/k010319c.htm(Q&A)

まぁ確かに量的緩和政策のキモが「ゼロ金利+時間軸」ではないかというお話はよく言われている話ではあります(たぶんそうではないかとあたくしも思うのですが)が、一応曲がりなりにも「量」に金融緩和効果があるという名目で金融政策をこれまで運営しているのにあれれ?って感じですが、これは後に続く福間さんの主張に繋がるマクラな訳ですよ。



量的緩和政策の拡大は危機管理でしたという理屈

『このような危機的な状況を受けて、日本銀行は、金融市場の安定確保のためのいわばクライシス・マネジメントとして市場に一段と潤沢な資金供給を行い、銀行の流動性不安とそれに伴う日本銀行当座預金に対する予備的需要の増加に応えることとしました。』

まぁ確かに「金融システムの安定」って言葉はありましたが、速水総裁時代は勿論ですが、福井総裁になってからも途中までは「経済への悪影響を緩和する」というのが一応の大義名分だったと思いますし、「量的緩和政策の強化」って言い方だったのですわな。そもそも単なる危機管理で流動性を追加したのなら「りそな銀行処理問題」を名目にし実施した量は処理問題にメドが付いたら回収しないと話が変なのに回収してないでしょ。



何か銀行に関して妙な理解をしてそうなこの続き

『只今ご説明したような当時の極めて厳しい金融経済情勢を踏まえると、97〜98年の金融危機のときのように銀行の流動性不安が「貸し渋り」や「貸し剥がし」を引き起こし、それによって経済にさらなるデフレ・インパクトが及ぶ事態は何としてでも回避する必要がある――そうした強い危機感があったからです。日本銀行は、この当座預金残高の引上げに加えて、コール市場でターム物取引が成立し難くなった状況にも対応して、オペを通じて1〜2週間という短期間の条件で市場から資金を吸収し、3〜6ヶ月あるいはそれ以上の長めの期間で市場に資金を供給しました。結果的に日本銀行は金融市場の「ブローカー役」となり、銀行のALMにも配慮した格好となりました。』

てめぇの流動性に不安があるから貸し渋りや貸し剥がしが起きるというのは理屈として話が通っているように見えますが、短期の流動性問題が起きたからと言っていきなり回収できるほど貸し出しってのは流動性があるものではないですし、大体貸し渋りだの貸し剥がしだのって問題になったのは中小企業の話でしょと思うのですが。

話の後半では短期金融市場でのツイストオペの話をしているのですが、足元で資金の吸収をしてたら流動性危機対応になりませんが何か?という話もあるのですが、どうも以前ドラめもんで指摘したこのお方の誤解「ターム物取引が出来ないのは金融システム不安があるから」という珍理論に基づくお話になっているのが実に???であります。そもそもツイストオペを打つ破目になったのは足元の短期間の資金供給では金利がゼロに張り付いてしまい「イラネーヨ」状態になったのでより長期間のオペを実施して資金供給(というか当座預金残高維持)を円滑に行ったというのが真実に近く、日銀の資金大供給が原因でターム物の金利がゼロにはりつきだし、結果ターム物取引が出来なくなったというべきではないでしょうかねぇ。

おまけに「銀行のALM」って言いますけど、短期資金の1週間とか6ヶ月とかの世界はALMでも何でもなくてただの資金繰りの問題でしょ。何でALM??


○ということで量を減らしても良かろうという結論になる訳ですが

そんな訳で、福間審議委員のお話は「量的緩和の拡大はクライシスマネジメント」というような方向に話が進む訳ですが、その辺は端折りまして結論らしき部分。

『こうした金融環境の改善が進む下で、このところ資金供給オペの「札割れ」が頻発するなど、図表26が示すように、オペのパフォーマンスが低下しています。これは、銀行の流動性リスクや金融システム不安が後退し、コール市場での取引が成立し易くなる中で、日本銀行当座預金に対する銀行の予備的需要が減少しつつあること、また銀行が、ROEと並んでROAを向上させ、自らの格付けのさらなる向上を図るため、総資産の圧縮に動き始めたこと、これらの影響が大きいと考えられます。私としては、こうした市場の地合いも十分に踏まえながら金融政策運営に当たっていく必要があると考えています。』

銀行の流動性リスクだの金融システム不安だのというのはりそな銀行絶賛大救済財政大盤振る舞いスキームが確定したあたりから既に無問題状態になっておるのですが、どうも何かこの結論に持って行きたいらしい。

『現在までのところ日本銀行は、札割れが頻発するという状況の中で、さらに長めの資金を供給するなど金融調節上の工夫を凝らしながら現行の目標値に基づく資金供給に努めています。こうした政策運営に対して、「実体経済や金融環境の変化と整合性を欠くものであり、市場への資金供給が自己目的化している」といった批判を頂くようになりました。』

この批判は誰がしてるのか存じませんが、だいぶ的が外れていませんかねぇ。量的緩和政策は「CPIにコミットメント」している政策で、実体経済をあらわす指標の一つでもあるCPIは絶賛マイナス継続中ですが何か??

『ただ、日本銀行が、過去、金融市場の安定化に配慮して目標値の引上げを行った経緯を踏まえると、私としては、少なくとも金融システムの安定化が確認されるまでは現行の「30〜35兆円程度」という目標値に基づいて資金供給を行っていくことが適当であると思います。そしてその金融システムの安定化の試金石となるのは、これまでこのような場で繰り返し申し上げてきたとおり、4月のペイオフ全面解禁ではないかと考えています。』

会見でも「金融システム安定化の説得材料はペイオフ全面解禁」というような話をしている訳でして、要するに「4月以降も金融システム安定が確認できたら危機回避の為に出した流動性の吸収を検討できるのではないか」って話をしておりますわな。マーケットの常識として「今は考えないが」って言っても、「4月以降の動向を見て考える」というのは「絶賛大検討中です」と言っているのと同じだというのは判って言ってらっしゃるのだとは思いますがどうなんでしょうね〜。



○「特殊要因を除く分析」って何よ?

福間審議委員の講演でもう一つ「????」だったのは消費者物価に関する分析。先ほどの金融政策云々の前に消費者物価の分析があるのですが、これが何というか我田引水的な香ばしさを感じるものがございます。

『一方、コア消費者物価は小幅のマイナスが続いていますが、企業間競争と規制改革の成果として新たに固定電話通信料や電気代の引下げ等の物価押下げ要因が加わったため、来年度中も「コア消費者物価が安定的にゼロ%以上」と判断される状況に至るかどうかは微妙であると思っています。』

『ただ、一時的な物価押下げ要因を除くベースで消費者物価の推移をみると、図表17が示すように、徐々にそのマイナス幅が縮小しています。これは景気回復を背景とした需給ギャップの縮小による物価の押上げ効果が、企業のユニット・レーバー・コスト引下げによる物価の押下げ効果を僅かながらも上回り、その結果、物価の下落率が徐々に縮小しているためと思われます。』

図表17ってのは上記講演のアドレスから講演テキストに当たりますとその最初に図表へのリンクがありますので、それをご覧頂くとしまして、物価の一時的な押し下げ要因を物凄い勢いで並べて「総合除く生鮮食品(←ここまでが金融政策のコミットメントで言うコアCPI)から更に特殊要因を除く」という素晴らしい物価指数の推移を並べておりまして、「総合除く生鮮食品から更に特殊要因を除く」消費者物価(笑)が順調にゼロに向けて上昇してきているというグラフがあります。

・・・・・・何というかまぁお遊びとしては面白いかもしれませんが、それに何の意味があるのか小一時間問い詰めたい分析です。ちなみにその中にある「特殊要因」には何故か「石油製品」とか「米類」と言った(ちなみにコメは保存が利くので物価統計上の生鮮食品には含まれません)それは特殊要因じゃねぇだろうと言いたくなるようなものが混ざっているのですが。


ま〜何というか他にも突っ込みどころは満載なのですが、とにかく激しくアレなお方ですなぁという感じであります。

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2005/02/24

お題「相変わらずオペ札割れ問題」

まぁこの話ばっかで恐縮なんですが・・・・・

○手形オペの札割れなんですが

昨日実施された期間264日間(2月25日〜11月16日)の手形買入オペが1兆円の実施予定に対して9297億円の応札しかなく見事札割れ。まぁ先日の総裁記者会見を受けた(?)259日の手形オペをやったのが金曜日で、そんなに間をおかずに長期間のオペを打ったというのも何なんですが、とりあえず札割れは札割れでございます。

期間のながーい手形オペを実施したのですがいきなり札割れって事でして、「またまた札割れ」と札割れがクローズアップされそうではありますが、これは基本的にオペの打ち方が(札割れさせない積りなら)あまりお上手ではなかったのではないかって感じです。

と申しますのも、短期国債市場のほうでは一頃の100円落札祭り状態は沈静化しておりまして、手形買入じゃなくて短国買入とか債券買現先オペを実施すればそうそう札割れにもならんと思う状況らしいようなんで、そう長期間の手形オペを連発する必要があったのかね〜って感じです。

もともと銀行は資金調達意欲が乏しいですし、どっちかと言えばオペ札割れ→当座預金残高目標維持困難→無理に資金供給する位なら当座預金残高目標維持に拘らない→短期金融市場の市場機能の復活という方向性をの望ましいと考えている人が多そうな短期金融市場のメジャープレーヤー様に「足もとを見透かされた」格好にもなってしまったの図って事で実に香しい。益々本質から外れそうですが(^^)、札割れさせたくなかったら相対的に資金調達能力が劣る(預金という究極の無担保調達が出来ないから)証券会社が参加しやすい債券系のオペを打ちますと吉ではないかと思いますがね〜。

一回札割れしちゃうとまぁ余程資金需給が逼迫する(ということは基本的にありえませんわな)事が無い限り「所詮前回札割れですし」って話になっちゃって、益々応札が消極的になるという楽しい悪循環が待っておりますんで、そう簡単に札割れになってしまわないようにもうちょっと慎重(1兆円も打たないとか)になったほうが良かったのではないかと、後出しじゃんけんながら思うのでありました。

まぁ最近の「意図だしオペ(か?)」に見られるように、今回のオペは実は調節担当部門で「とっととオペ札割れして当座預金残高維持問題を再燃させなさい」という隠れた意図があって、以心伝心で応札側が乗った結果が札割れでした、な〜んて話だったら物凄い勢いで感動する(何に?)のですが・・・・・・


○財務金融委員会での総裁発言

昨日の衆議院財務金融委員会に出席した福井総裁は公明党の谷口委員(って事は昔の財務副大臣でしたっけ)から札割れ議論に関して質問を受けたらしいですな。国会の会議録ってのは直ぐにアップされるものではないんで、後で見るときは兎も角とりあえずは情報ベンダーのニュース記事を参考にする(インターネットの国会審議中継を見て文字起こしするという手はあるんですが、そこまで細かくチェックする時間が無いのでゴメンナサイ)事として本日はブルームバーグニュースを参考にしつつ(以下総裁発言のソースはブルームバーグニュース)。

まぁ当然ながら「量的緩和政策の堅持」については強調しているのでそのあたりは安心できますな。

『いずれの委員にも共通することは、金融政策の基本的なフレームワーク、つまり量的緩和政策の枠組みと実態的な緩和の度合いに修正を加えようということでは全くない』

ただ、札割れを受けても当座預金ターゲットを堅持するのかという点に関しては報道される限りにおいてはだいぶ怪しげなところがありますな。まぁ最終的には「本当は何言ってるの」という検証が必要だったりしますけれども。

『4月以降ペイオフの全面解禁後、まず経済情勢がどう展開するか、それと金融システムの安定度合いはさらにどの程度、どのようなスピードで確立していくか。その関係のなかで、金融市場でイールドカーブがどういう形状で形成されるか。それらによって実態的な流動性需要の出方そのものが大きく変ってくる。そこをまず見極めていくことが先決』

『そのうえで初めて、札割れという現象と、30−35兆円程度のターゲットとが現実的な整合性という点でどれくらい問題が生じてくるか、正確に認定できる。そこのところを正確に認定しながら、技術的な対応を加味していくことがより望ましいのかどうかは、その時点で判断できるだろう』

・・・・・何か雲行きが怪しい答弁に見えますわな。

『そこのところ(技術的な対応が必要かどうかとかいう話だと思われます)は今からその先を見通して議論は始まっているが、まだ具体的な結論に向かって収束していく段階ではない。まず前段階の諸情勢の変化をこれからもしっかり見極めながら必要な議論を進めていきたい』

ということで、あくまでもペイオフ解禁後の状況を見るって言ってはおるのですが、市場というのはいわゆる自己実現ってぇのをするものでありまして、「ペイオフ解禁後には当座預金残高目標の見直しが必至」だという認識が共有されれば市場の方としては勝手に織り込みに行くものですし、織り込みに行く事によって多少懐疑的な人もついていかざるを得ないという話になるという点に関して少々配慮が不足しておられるのではないかという感じですな。今に始まったことではないですが。

まぁ当座預金残高目標割れに関して「技術的対応」をする気だというのであればそれはそれで政策判断なんですが、少なくとも前回会合時点で当座預金残高目標維持が全員一致だったのにそれはどうよって思うのはケチのつけすぎですかねぇ。反対票が入っているのならまだ判るが。


で、札割れそのものに関しては以前国会内での多分ぶらさがりインタビューで答えた事と同じ話をしております。

『(資金供給オペの札割れは)経済、金融システムが次第によい方向に向かってきていることの市場のメッセージであり、好ましい方向としてポジティブに受け止めている』

「企業金融の円滑化」「資金の出前持ち」を標榜して福井総裁就任から間もなく鳴り物入りで導入された資産担保証券の買入が全然実績を上げていない事について参議院財政金融委員会(だったと思います)で突っ込まれたときにも同じような答弁(=そもそも日銀は資産担保証券市場の育成のためにオペの導入をした。円滑に資産担保証券市場が機能すればオペが機能しなくても結構というかより好ましいって趣旨です)をしていたのを思い出す答弁。

まぁ何というのかそう言ってしまえばそうなのかもしれないけど、その理屈は何か「じゃあ元々そんな事やる必要があったんですか?」という突っ込みをしたくなるお話でもありますわな。「それは見込み違いでした」っていうのも一つの勇気ではないんでしょうかと思うんですがね。まぁそもそも「ゼロ金利解除は見込み違いじゃ無かった」という理屈の元に量的緩和政策を「金利ターゲットではない」と言って始めた時点で理屈が妙になっている所へ来て、速水総裁時代にあった「当座預金残高目標の引き上げ=中長期国債買入オペの増額」というある意味判りやすい話も福井総裁になってからは無くなってしまったので益々話がややこしくなっているんですけどね。

ま、あまり突き詰めて考えないのが吉なんでしょうが、それではあまりにも中央銀行の金融政策として情け無いって感じではありますわな。

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2005/02/21

○唐突に9ヶ月もの手形オペ

昨日の短期金融市場ですが、午後の定例オペのお時間に実施されたのが2月22日〜11月8日(期間259日)の全店手形買入でした。この259日というのは一昨年の夏に金融市場が早期の量的緩和解除モードになった時に市場沈静化のため(とは日銀は言ってませんが)に行った期間260日並みの長さでして、まぁ「やたらと期間の長いオペ」という事であります。

金曜日にご紹介して、この後にも会見要旨をご紹介する木曜日の金融市場決定会合後の日銀総裁記者会見で「当座預金残高目標30兆円維持問題」に関してやたらと強気姿勢で「懸念全く無し」という福井総裁発言が出た翌日に「資金供給オペの期間延ばし攻撃」を行うというのは、もうそりゃー意図を忖度するなと言っても勝手に意図を忖度したくなるものですわな。

で、まぁこの意図は直ぐに判ろうという物でして(^^)、総裁様の鶴の一声を受けまして「当座預金残高目標維持への資金供給に工夫してみました〜♪」って話としか思えませんな。金融政策決定会合の期間中になると輪番オペの日程を微妙にずらしてみたり、総裁発言に呼応するかのように久しぶりに「長期間のオペ」というある意味伝家の宝刀を抜いてみたりと中々最近の調節は「意図がございますかそれは」という動きが徐々に増加中でありまして、昔の「日々の金融調節で意図を出す」という職人芸の世界が復活しつつある気がしてまぁそれはそれで楽しいですな。

で、今回の「オペの出すシグナル」ですけど、「当座預金残高目標維持は無問題でっせ〜」というシグナルと共に出されていると勝手に推測するのは、「資金供給問題で無理をするときには短期金融市場に皺寄せが行きますんでそこんとこヨロシク」というものでしょう。先日来申しあげておりますように、当座預金残高目標維持でやや無理をしないといかんという状況では、結局どこかにある程度無理をかけないといけない訳ですが、案の定現在手持ちの道具で簡単にできる措置を行うという作戦にでることになったようですな。短期金融市場の皆様ご愁傷さまです。

まぁ後でもご紹介しますが、目標の引き下げもしないし、輪番増額もしないと総裁が言い切っちゃってますからまぁ仕方ないですわな。

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2005/02/18

お題「金融政策決定会合あれこれ」

目の前でやっている某経済ニュース番組の報道によりますと、どこぞの巨大ソフトウェア企業さま@米国が最近アンチウィルス業界への進出(というか侵略)を狙って企業買収して安値攻勢を掛けたりしているそうですな。いやあんさんの所がアンチウィルス業界へ進出って悪い冗談というかマッチ(自主規制)。

文章書きながら某ニュース番組が続いているのですが、量的緩和政策に関してどこかの誰かさんが解説しているんですけど、その内容が何というかもう聞くに耐えない説明でして、可及的速やかに黙っていただきたいとか書いていたらやっとCMになってくれました。あの会社はタレント経済解説者プロダクションとして機能しとるとですか?・・・血圧が朝から上昇したのでチャンネルを東京MXテレビに変更。

んな話はともかくとして金融政策決定会合話。


○まずは金融経済月報

金融経済月報の基本的見解が出ました。今回の月報の特徴(と言えるのかどうか)は「景気に関してではなく物価に関しての見通しがやや弱気方向になっている」という所でしょうか。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0502.htm

毎度毎度お馴染みの『わが国の景気は』から始まる景気の現状判断と先行き見通しなのですが、1月に発表(1月19日ですな)された金融経済月報の基本的見解とまるっきり同じという素晴らしい内容です。景気の現状認識部分と先行き見通し部分って大体の場合4つの部分に分けてかいてあるのですが、物の見事に一言半句違いなしであります。

で、物価に関して何気に先行き見通しを弱含みさせている感じで、1月分と比較しながら読んでみるとこんな感じになりますわな。

・国内企業物価の現状

(2月)『国内企業物価は、昨年末にかけての原油価格の反落などから、足もと弱含んでいる。』
(1月)『国内企業物価は、原油高の一服等により、上昇テンポが幾分緩やかになっている。』

・国内企業物価の先行き見通し

(2月)『国内企業物価は、内外の商品市況次第であるが、当面、弱含みないし横ばいで推移する可能性が高い。』
(1月)『国内企業物価は、商品市況の騰勢一服を受けて、目先、頭打ちとなる可能性が高い。』

「頭打ち」→「弱含みないし横ばい」でございますよおほほのほ。国内企業物価の上昇傾向が川下でありますところの消費者物価に波及してきて珍重珍重という流れが見えてくる前にこの有様になっておりまして、まぁ何と申しますか益々出口が見えない量的緩和政策ですなぁというお話ですわな、こりゃ。

・消費者物価の先行き見通し(現状判断は変化無)

(2月)『消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、公共料金引き下げの影響などもあって、小幅のマイナスで推移すると予想される。』
(1月)『消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、小幅のマイナスで推移すると予想される。』

先日の須田審議委員の講演で述べられていた「広義公共サービス価格」について触れてまたまた消費者物価下落弱含みの特殊要因(?)を並べておりますが、まぁしかし肝心の川上が弱含みになっていてさてどうなるのよという気はしますな。


物価見通しに関しては判断が後退している訳ですから、まぁまたまた出口はどっちだってなもんでしょうなぁ。



○全員一致ですかそうですか

現状の金融政策の維持を「全員一致」で決定したそうなんですが、んじゃあてめぇら当座預金残高目標維持問題についてどういう議論をしていたんだと小一時間問い詰めたいところであります。てめぇらじゃなくて須田審議委員およびあと一人(当座預金残高目標下限割れ問題に関して議論していた人)についてですが。

「今回もまたまた単に議論しただけ」って事なんでしょうが、それならまぁわざわざ先日の講演で当座預金残高目標維持問題に関して下限割れ容認のような話をして世間様を騒がせたですかという話になる訳ですな。

ま、実際問題としては須田さんの講演で騒いでいた訳ではなくて、「当座預金残高目標の下限割れ容認ネタで相場をきゃあきゃあ」というのに使われてしまったに過ぎないのですが、まぁ本件はそういう神経質なネタでもある訳ですから、あまり本気度が低いときに論じるのはいかがなものかと言う教訓にしていただきたいものです。まぁあちこちから不規則発言が飛び出すのが政策委員会クオリティでもあるのですけど。



○何か喧嘩腰じゃあありませんか

金融政策決定会合も終わり、金融経済月報も出たところで日銀総裁の定例記者会見になるのですが、今回の記者会見は何だか情報ベンダーに総裁発言として出てくるフラッシュが妙に喧嘩腰に見えるわけですな。内容に関しては日銀Webに今日アップされる会見要旨を待ちたいのですが、例えばロイター日本語版でのニュースフラッシュを見ますとこんな感じ。

『当面30−35兆円の当預目標が維持不可能になるとは全く予見できない』
『長期国債買入枠、全く変えるつもりはない』
『量的緩和政策の出口を模索する時期とは全く思わない』
『ボリュームに政策ターゲット置くのが緩和政策の枠組み』

フラッシュはこれ以外にも一杯あったのですが、まぁこの「全く」が3度も出て来たのには「もしかして福井総裁怒ってませんですか?」というざわめきが起きるというものでして(^^)、先日須田審議委員の講演後に行われた記者会見でも何か痛烈な質問をしている人がいましたが、まぁ今回も何だかんだと福井総裁様の逆鱗に触れるような急降下爆撃的質問が行われたのでしょうかね〜って感じであります。

福井総裁になってからの記者会見ってまぁ平和だったのは最初だけで、何か途中から会見で火だるまになっている事が多く、その後は「この人は何でもありだから突っ込んでもしょうがない」という諦観モードが流れていたという経緯があるのですが、ここへ来てまた火だるま合戦となっていただきますと観客としては大変に楽しいものを感じますので今後とも是非宜しく。

しかし何ですな。また上記のように自分の手足をガチガチに縛る発言をしておる訳で、まぁ福井総裁おちつけ(某掲示板用語では「もちつけ」)と言ったところであります。

自分の手足を縛りながらも、緩和政策の効果について「景気が回復基調にある中では量的緩和の効果は高まるので、同じ量を出していても効果がより高い事になる」というお馴染みの判ったような判らんような理屈についても言及しているようですので、まぁ必ずしも落ち着いていない訳ではないようでございますがね。


ではでは。

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2005/02/17

○これで2度目ですが・・・・(輪番オペ肩透かし問題)

昨日は「まぁあるでしょう」と思われていた輪番オペが実施されませんでした。となると今日か明日に実施(多分明日)という事になるんでしょうが、今回は金融政策決定会合の期間中な上に、当座預金残高目標下限割れ問題がどうのこうのという話が盛り上がりモードになっている最中でありますので昨日の輪番見送りは「あれれ?」という感じでした。

債券相場では「福井総裁になってから輪番の増額を行っていない」という点を重く見ている人が多いんで、昨日の輪番見送りで「すわ輪番増額か」という騒ぎにはならなかったような感じでした(ただ、債券先物の当日安値が「輪番オペ無し」が明らかになった直後の10時12分で、その後先物が上昇してますんで、もしかしてアオリイカはいたのかもしれませんが)が、今までひたすら淡々と機械的にオペを打っていた日銀の調節がちょっと変化している兆しなのかもしれないと考えるあたくしは考えすぎですかそうですか。


輪番問題では昨年12月にも同じようなことがありまして、この時は12月15日(水)に輪番が実施されずで、金融政策決定会合が16〜17の日程。結局16日も17日も輪番が実施されずで、日程的に17日に輪番やらねぇと月末までの日程がタイトになるから(というのと、基本的に週に1回実施するという慣例もあるので)輪番やるでしょってコンセンサスだったので債券市場ビックリの図。おまけにそのとき実施したオペが短国売却。「輪番見送り」→「絶対ありえない筈なんだけど決定会合で輪番減額されたらシャレにならん」という不安がよぎる中、タイミング良く債券先物を売り叩く人がいたので債券先物が30銭くらい売りたたきの図となった訳です。

12月に引き続き今回も金融政策決定会合を前に「日程的にはやるでしょ」ってタイミングで輪番オペを見送って下さいましたので、まぁこっちとしては「金融政策決定会合の週は輪番オペのタイミングに注意しますか」って事になる訳ですが、このタイミングのずらし方は意図があるのか何も考えてなくて単に資金需給だけみている(3000億くらいツイストで吸収打てば何とでもなると思うんですが・・・)だけなのか良く判りませんが、まぁ今後もちょっと気にはしておく必要があるのかもしれませんね。



○西村清彦先生が次期審議委員に起用されるとの事ですが

GDPの発表があり、相場の方は相変わらずイールドカーブが良く動くという展開で西村さんの(というか東大のWebというか)派手派手Webの中をあまり読んでいる余裕は無かったのですが、さすがに東短リサーチの加藤さんが早速西村さんの発言、主張を整理したレポートを出してましたんで、まぁその辺を参考にしながら。

西村さんの近著は「日本経済・見えざる構造転換」って本だそうで(市場関係者が慌てて買いに走るだろうなぁと思う訳ですが^^)、先生のWebには著書の目次が紹介されておりました。で、そこを見ますと「モルヒネ経済からの脱却」というお話をしているようでして、それがど〜ゆ〜趣旨かと言いますと加藤さんのまとめレポートによれば「痛みを和らげるためにモルヒネを打ち、それで問題を先送りしてきたことが、痛みの原因の解明とその除去を遅らせた」ってことらしいですな(週末に真面目に著書読みますが→と言いつつこの編集時点の2月21日現在まだ著書の購入もしていなかったりする訳ですが)。

まぁそりゃそうなんでしょうけど、じゃあ今の経済状況でモルヒネ投与とやらを止めていきなり退院させたらどうなるのよっていう疑問はあるんですが。現在の景気回復だってそもそもの発端はそれまでの基準だったら(後から発表された不良債権新規償却を見れば)債務超過認定コースだったと思われるりそな銀行への公的資金絶賛大投入という政策転換と、産業再生機構(しかもここに不振企業の債権をぶちこむと何故か残りの債権が正常先債権になるという素晴らしい仕掛けもありますし)の大活躍やらペイオフ解禁の骨抜き大作戦やらと、色々な方法で財政出動しているんですからねぇ。

まあ良くも悪くも柔軟なお方のようですので、実際に就任されてからどういうスタンスを出してくるのかを見ないと良く判らんって所もあるのですが、いきなりモルヒネ投与解除はどうかと思いますけどねぇ(そりゃ投与しないで済めばそれに越したことは無いですが)。

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2005/02/16

○金融政策決定会合が実施される訳ですが

本日と明日の決定会合に関連した東短リサーチの加藤出さんのレポートを拝読する機会がありましたので「ほほう」と思いながら読んでおりましたが、「当座預金残高のテクニカルな下限割れ問題は短期金融市場では金融政策の変更ではないというコンセンサスになっているのに、他の市場および政府などでは反対の意見が多いですなぁ」というようなお話しがございまして、偶々(というか時期的に重なるのは当然ですが)昨日愚意見を申しあげたあたくしとしては中々参考になりました。

まぁ当座預金残高目標をせっせとあげてしまったら気が付けばやり過ぎモードになってしまった(詳しく勉強してないのでちとアレなのですが、政府部門の預金がちと増えすぎで民間の金を吸い上げてしまっている問題があるようなんで、日銀だけが悪いって事でも無い様なんですが)分のツケをどこに回すかって話しになってしまっている感が強い当座預金残高問題でございまして、最早トランプのババ抜き状態になっているっちゅうところでしょう。昨日も申しあげましたが(^^)。

まぁ目先30兆円の当座預金残高を維持するのは可能なようですので、今回の会合では当座預金残高目標問題が議事にあがるのは間違いないですが、とりあえず何も無しという結論に落ち着くのではないでしょうか。少なくとも岩田副総裁が反対しそうですしね。で、「公開される議事要旨に注目しましょう」っていうのは既に加藤出さんのレポートで書かれていたので受け売りになっちゃいますが、ど〜ゆ〜議論になったのかは注目って事なんでしょうな。明日の会議終了後の記者会見でも質問あるかもしれませんが(明確な答えはしてくれないでしょうけどね)。


まぁそういうことで。

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2005/02/15

お題「当座預金残高目標減額問題に関するあたくしの愚意見」

まー相変わらずしぶとく当座預金残高目標の維持が大変になっているだろうって話しからお題の議論が今週の金融政策決定会合で出るんではないかとかいう話題が盛り上がっているようです。

まぁ今回の金融政策決定会合で実施されなければ次回以降も同じ話題で盛り上がる事が出来ますので、ど〜せなら今回いきなり当座預金残高のテクニカル的な減額を容認するような決定がなされない法がネタとしては美味しいって事なんでしょうな。

まぁ水野さんのインタビューやら須田さんの講演やらとここの所このネタが話題の材料となってまして、色々と受け売りをしておりますが、んじゃぁお前の意見はどうよ?って事でここのところ意見交換をしながら何となく纏まってきたあたくしの愚意見をば。


○政策の筋論としては当座預金残高目標を守るべきである

まず、一番有力視されている「なお書き(またはそれに類するもの)の追加によって当座預金残高目標の下限を一時的に割り込む事を許容する」というやり方ですが、これはやはりどうかと思う訳です。

当座預金残高をターゲットにして金融政策を行っているという手前、この目標レンジを更に拡大する(当初は「○兆円前後」だったのが「○兆円前後だが流動性に問題が生じたような場合は、その必要に応じてより多く供給する」になってその後の改定を経て「30兆円〜35兆円」になった訳ですが)というのは「当座預金残高目標という量」の意味を更に希薄にさせるという事に他ならない訳です。

「量」をターゲットにして金融政策を行っているという原則がある以上はそのターゲット額をなし崩し的に曖昧にするという選択は、政策の筋が通っていませんわな。もちろん「今までの量的緩和政策における「量」は実は(ある一定以上を超えた段階で)意味が無く、幾ら増やしても同じだったんですよゴメンナサイ」と日銀が認めればそれで勘弁される訳ですが、猛批判にさらされる事が火を見るより明らか。


じゃぁ思い切って当座預金残高目標を引き下げるのはどうよって事になりますが、これは須田さんや水野さんも言及しているように、今までの当座預金残高目標引き上げを「金融緩和」らしく位置づけ(正確に言えば「量的緩和政策の強化」なので微妙に違うという事になるのですが、そういう言葉尻を使って言い逃れするのは詭弁でしょうな)ておりましたので、当座預金残高目標引き下げ=金融引き締めって事になる訳ですので、これまた同じ理由で、今までの量的緩和政策における「量」の問題に関しての棚卸が必要になりますわな。


と、言う事で、政策の筋論としては「当座預金残高目標を維持するように努力すべきである」というのがあたくしの結論ですし、政策の筋が通らないことをしてしまうのは中央銀行として如何なものかとも思うわけであります。



○残高維持のためには・・・・

で、あたくしの結論は「当座預金残高目標を維持すべき」という事になるのですが、じゃあどうするのよ?って問題になる訳です。


まず考えられるのは「手形オペなどの期間を長くするなどのオペ実施方法の工夫によって資金供給を行う」というもの。折角手形オペの期間を最大1年までにしているのに、現状ではそんなに長い期間のオペを実施しておりません。とりあえず長い期間のオペを実施する事によって資金供給を行うというのが本筋というかややこしい政策措置も不要で現場の裁量で出来ることでしょう。

この場合のデメリットは「長めの短期金利のイールドがゼロに張り付いてしまう」ということでして、須田審議委員などがよく言う「量的緩和政策による市場機能の阻害」って事になるわけです。



次に考えられるのは「中長期国債買入(要するに輪番オペ)」の増額。もちろん福井総裁になってからは輪番増額を行っていないという事もあり、福井総裁としては政策判断として実施したくないってことなんでしょうけれども。そもそも他のオペは「短期金融市場の資金繁閑を均す」ために行っており、中長期国債の買入は「ハイパワードマネー(成長通貨)の供給」という区別がされているのではありますが、じゃぁ短期国債の買入はどうなっているのかと言いますとこれは「資金調節」になっておりまして、短期国債の最大期間が1年ものになっており、中長期国債の買入に関しては日銀の保有国債残高を見ればお分かりのように「残存1年半程度の2年もの中期国債」が毎月の買入実績の大体半分くらいを占めている訳でございます。

そう考えますと、短期国債の買入と中長期国債の買入を方や単なる金融調節で、もう一方がハイパワードマネーの供給だというのはどうなのよって議論になってくるわけでございまして(6ヶ月と1年半の違いにどんな意味があるのかという話しですな)、そうなりますと中長期国債の買入の増額に関して排除するのは如何なものかという議論になる訳です。

この場合のデメリットその1は昨日のドラめもんでも申しあげた通りでありまして、量的緩和政策からの本格的な出口が出てきた場合に、今まで資金供給していた分の吸収のために日銀保有の中長期国債の売却を行う必要があるという話。結果として中長期金利の乱高下を招く事になりますし、それ以前の問題として輪番の増額をした時点で中長期金利の低下を促す可能性(増額の仕方によりますが)がありますわな。デメリットその2はマーケットインパクトの問題でして、短期金融市場で必要とされるような資金額全部を輪番増額で対応するとなりますと、今まで1兆2千億円/月である輪番オペをいきなり1兆円引き上げるとかいう世界になってしまいますが、それは各回のオペレーションでのマーケットインパクトがでかくなりすぎます。

その1、その2でもありますように、資金供給不足分を輪番増額で対応するとなりますと、輪番対象になっている中長期国債の市場を歪める(=市場機能の低下)事になる訳ですな。


で、まぁ書いているうちにふと気が付いたのですが、それなら例えば2年もの中期国債だけを対象にした中期国債買入オペを新設して、輪番増額の影響を2年までで遮断するというせこい技も考えられるのですが、そうなってきますと今度は「輪番はハイパワードマネーの供給」って話がどうなのよとか、何で2年(じゃなくてもいいけど)で分けるのよとかいう話になってくるのですが、単純に輪番をまともに増額するよりはマシかもしれません。


その他の方法としては、政府預金とか特別会計(外為とか)の残高がちと多すぎなのでこれをどうにかするとか、ブンデスバンクなどが実施していた外国為替直先スワップ取引の活用などがあるようなのですが、この辺に関しては受け売りの世界になりして、正直まだ勉強途上なのでとりあえず省略。

まぁ色々とやろうと思えばまだまだ当座預金残高目標維持は出来るということのようですが。


○要は政策のトレードオフでしょ

とまぁつらつら書き並べましたが、まぁいずれにせよやや無理気味に資金供給を行うというのはどこかに歪みを生じさせる(大体からして、日々の資金繁閑を均すという行動が「公開市場操作」という市場介入なんですから仕方ないですわな)のでありまして、当座預金残高目標の維持のために何か工夫をするということになりますと、どこかで市場に歪みが発生してしまうのは致し方ない事でございます。あとはどこを取る(犠牲にする)かという話しで、それは政策判断という事になるのではないでしょうか。

勿論、政策の筋論よりも市場機能の方が大事だというのであればそれもまた政策判断なのですが、まぁ政策の筋は通すべきではないでしょうかというのがあたくしの愚意見な訳です。

少々手厳しい事を申し上げますが、「テクニカル的には何の問題もないから当座預金残高目標の下限の事実上の引き下げもよいのではないか」ってのは政策の筋論というものを軽視したポジショントークに類するものではないかと思いますけどね。当座預金残高目標を維持しようとすれば手っ取り早く犠牲(=市場に益々介入される)になるのは短期金融市場でありまして、当座預金残高目標引き下げというか「なお書き」によるレンジ割り込み容認論が主に短期金融市場から出ている訳ですし・・・・・って短期市場の読者様が不愉快に思われそうなことを書いてしまったあたくし。また読者を減らすような暴言をしてしまった。

ではでは。

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2005/02/09


○「整合性欠く日銀の量的緩和」だそうですが・・・・

ブログはジャーナリズムだとかメディアだとか偉そうな言説を散々吹聴した挙句、その主張の矛盾(というか論理破綻)を突かれて自爆してしまい、ついに自分のブログは「仲良しコミュニティー」だと宣言して言論人としての資質に対してネット界隈の評判を激しく下落させた日銀OBの木村剛さんというお方がいらっしゃいます。で、最近の木村さんのブログ「週刊!木村剛」は何かスノッブの香り漂う毒にも薬にもならないウンチク話(しかも木村さん以外の執筆者が輪番で書いているんですが)ばかりだったのですが、何を思ったのかいきなり日銀の量的緩和がどうのこうのという話題をエントリー。

本来どうでもいい人といえばそれまでなんですが、何だかんだと言いましても「日銀OBの金融専門家」としてメディアで言説が取り上げられる事が多いお方なんで、この先生がどういう主張をして一般ピープルを教育(笑)しようとしているのかというのをチェックしてみましょうと。

http://kimuratakeshi.cocolog-nifty.com/blog/2005/02/post_5.html

「整合性欠く日銀の量的緩和」ってお題でお話をしているのですが、何と申しますか、これで日銀OBなのかよ!って言いたくなる部分がちらほらと見受けられる訳です。著作権がどうのこうのとか逆ねじを食らわされる(本人が知らんところでこっそりといちゃもんつけているだけなんですがね)かもしれないので引用は最低限に止めます。この先読む前に軽く上記URL先に目を通すのも吉かと(^^)。

・量的緩和政策の効果に対する説明が乱暴すぎなんですが

『もっとも冷静にみれば、量的緩和の効果は甚だしく疑問である。日銀からの資金供給量は増えているものの、その資金は銀行の手元にそのまま残るだけなのだから、それで「金融緩和の効果があると信じろ」と主張する方に無理がある。』

量的緩和政策の効果って「ゼロ金利+時間軸効果による長期金利の低位安定」をパスとしているというのは金融市場関係者の常識なのですが、あえて「資金のフロー」という話だけして「効果は疑問」というのはいかがなものかと。量に関しては流動性危機回避の下支え効果程度はあるでしょうしね。


・信用創造のメカニズムって・・・・・

『本来であれば、「日銀→銀行→企業→銀行→企業…」という信用創造のメカニズムの中で、経済の血流としてマネーが還流すべきところだが、すでに手元資金が潤沢にある銀行は、日銀の助けがなくとも信用創造を働かせるには十分な資金準備を持っている。』

えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!「信用創造」でGoogle先生をサーチすると、例えばこんな(http://www.findai.com/yogo/0016.htm)のが引っ掛かってきますが、そこには「信用創造とは、銀行が預金と貸出しを連鎖的に繰り返すことで、お金(通貨)が増えていくことをいいます」って書いてますし、あたくしが高校の政経の授業でも(苦笑)信用創造って銀行→企業→銀行・・・としか教わりませんでしたが、日銀→銀行って線は何よ??

そもそも日銀は特別融資のような場合は別ですが、基本的に有担保貸出じゃなかったでしたっけ??

まぁこの件はあたくしの知識もアレでございますので、書いている本人も自分の言ってる事が正解なのか不安はありますが・・・・誰かご教示を。

(以下2月10日の追記と言うか補足です)

・昨日の補足:信用創造に関して

高校の政経(高校生当時一番の得意科目でしたが、当時政経で受験できる東京の国公立大学があまり無かったのはありゃ何でだったんでしょ)の授業以来久しぶりに「信用創造がどうのこうの」などと話をしたので、書いた自分もちょっと不安があったのですが、やはり昨日申しあげた木村剛さんの信用創造に関する話は妙であるというご教示を頂きました。ありがとうございます。

という訳で昨日の補足。木村さんは信用創造のメカニズムに関して『本来であれば、「日銀→銀行→企業→銀行→企業…」という信用創造のメカニズムの中で、経済の血流としてマネーが還流すべきところだが、すでに手元資金が潤沢にある銀行は、日銀の助けがなくとも信用創造を働かせるには十分な資金準備を持っている。』と話している訳ですが、基本的に「信用創造」っていうのは「銀行→企業→銀行」という形で銀行がバランスシートを膨らませるプロセスのお話だというのはやはり正解でした。じゃあ「日銀→銀行」ってところは何の意味があるかと言いますと、「銀行がバランスシートを拡大するためのハイパワードマネーを供給する」という点で日銀の存在意味はある(だいたいからして日本銀行券が無かったら話が始まりませんしね^^)訳ですな。昨日申しあげたように、日銀の資金供給ルートってのは別に市中銀行に対して無担保融資している訳では無いんで、「日銀→銀行」ってラインでの信用供与は起きていないって事でございますわな。やはり話がおかしい。

で、信用創造のメカニズムが働かないのは銀行がケシカランというお話しを木村先生よくする訳なのですが、そりゃ銀行が無理矢理にバランスシートを拡大すれば信用創造のメカニズムは発生するかも知れませんが、それは罷りならんって事になっている状況で銀行悪玉論を唱えられても困るというものではないかと思うのですがね。

(以上追記終了)

・勝手に事実を作らないようにしましょう

『2002年秋に(金融担当相の)竹中プランが策定された当時には、「中小企業に資金需要はない」と断言していた大銀行が、しかもベンチャー企業にまで貸し出し始めたという現状に一種の感慨を覚える向きも多いだろう。』

中小企業に資金需要はないなんていつ銀行が言ってましたっけ?大体からして当時の金融庁のご指導は「貸し出しの査定を厳しくしろ」って事でしたが何か?金融検査マニュアル中小企業編をその後出しませんでしたっけ?

まぁこの先生は毎度毎度「大銀行はケシカラン」という誠に扇動的な論調が目に付くお方なんでこの程度の話はデフォではあるのですが、休日のニュース解説バラエティ番組(見てると血圧が急上昇するのであたくしは見ない)などでもまたこんな話してるんでしょうなぁ。


・話が矛盾してますが

『もし、銀行システムが正常化し、通常の信用創造機能が働き始めるのならば、経済の血流たるマネーはそれこそ勢いよく循環し始めるかもしれない。しかしそうなったとき、30〜35兆円という日銀当座預金残高は、大きすぎるようにも思われる。量的緩和は、あくまでも非常時の金融政策。信用創造メカニズムが機能不全であるときの異例の政策である。金融システムが正常化したときに、現状の量的緩和がそのままということは、整合性を欠く。』

あのー、さっき「量的緩和の効果は甚だしく疑問」って言ってませんでしたっけ??


・話の誇張は如何なものか

『デフレ対策というムードを醸し出すためのデコレーション(=量的緩和)が長らく続いたために、最近では公開オペレーションの札割れという形で日銀からの資金供給を拒否する銀行すらでてきた。日銀マンが銀行に「何とか借りてください」と頼み込んでいたりする。』

「拒否している」とか「何とか借りてください」ってのはどう見ても話の誇張でしょうな。世間に専門家として影響力を持っているお方としてはもっと冷静にモノを書いていただきたい所ですな。まぁこ〜ゆ〜刺激的な言い方をする人をメディアが求めているってぇのが問題だとも言える訳ですがね。

『その一方で、短期国債の買入でGDPの6倍近くの入札をするという事件も起こる。異常としか言いようがない。』

短期国債の買入じゃなくて入札でしょ。専門外の話をする時に事実関係や用語の使い方が妙になるのはある程度仕方ない面はある(正確は期すべきですが、まぁ個人的雑感を書くような場合もありますし)んですが、日銀OBという看板で金融政策を語るのにこうまでいい加減なことを書くのは如何なものかと思う次第。ネットで書いたものを広めるんですから(書き終えてから気が付いたのですが、上記エントリーって2月7日の「フジサンケイビジネスアイ」というまるで話題になっていない新聞に掲載した記事なんですね。益々たちが悪い・・・)テキトーなことを書かれても困りますなぁ。(あたくしも時々間違えますが必ず追記で訂正するようにしております。あたくし如きですら・・・)


・出身母体の評判が・・・・

まぁそ〜ゆ〜訳で、変なモノにいちゃもんをつけるという余り物の参考にならない話をしちゃいまして誠に申し訳ございません。ちょっと前に「日銀OBの某社ストラテジストが『タカ派の水野さんを次期審議委員に推薦したのは、量的緩和政策の早期解除を日銀にさせて失敗する事によって日銀の独立性を失わせる財務省の陰謀だ』などとアフォな話をしているそうですな〜」ってな事をドラめもんで申しあげましたが、この某ストラテジストと言い、木村先生と言い、もうちょっと何とかならんものかと思うのでありました。そういえば昨年「日銀OBの民主党議員」(結構若い人)の国会における質疑を取り上げて「アフォですかこの人は?」って話をした事もありましたが、ちょっと如何なものかと思われるお方が目に付く訳で、日銀の対外的評価もまた下がるのではないかと他人事ながら憂慮に堪えないものでございます。

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2005/02/04

○当座預金残高問題

昨日の衆議院予算委員会では量的緩和政策の堅持を改めて表明していた福井総裁。その足もとでは資金供給オペがあっぷあっぷ状態になっておりまして、当座預金残高目標30兆円の維持でヒーヒー言っているという状態になっておりますな。

で、報道によりますと予算委員会終了後のぶらさがりインタビューで当座預金残高維持問題に関して「資金供給オペへの応札が少なくなっているというのは、金融システム不安が後退しているという事なので大変結構でありますなぁ」などと言う趣旨のご発言をしていたようであります。

案外こ〜ゆ〜所に福井総裁の「日本銀行生え抜き」としてのホンネが出ているなぁと思うあたくしでして、「当座預金残高目標30兆円なんて縛りを何とか骨抜きにして量的緩和政策から徐々にフェードアウトしたいもんですなぁ」と腹の底では思っているのではないかと勝手に推測する次第でございます(^^)。と申しますのは、以前ドラめもんでもご紹介しましたが、衆議院だか参議院だか忘れましたが、財務金融委員会(参議院だと財政金融委員会って言うんですよこれがまた)で野党委員から資産担保証券の買入実績が上っていない事について突っ込みを受けた時に、福井総裁は「資産担保証券の買入は市場育成の一助となる為に実施したものであり、買入実績が上っていないが市場規模は拡大しており、政策の意図は達成される方向に向かっており大変結構」という趣旨の答弁をしておりまして、「福井総裁は本当は資産担保証券の買取なんかはやりたくないんでしょうなぁ」という印象を受けたことがございまして、何だかんだと言っても福井総裁は「伝統的な日銀マン」なんですなぁと思っているあたくしなのであります。兎に角デフレ脱却までは猫をかぶっておきましょうって事なんでしょうな。


で、まぁ当座預金残高問題に関しては昨日もあちこちの情報ベンダーで「当座預金残高目標を引き下げましょう」という短期金融市場方面からの悲痛な叫びが当然ながら出ておりまして、またぞろ問題になりそうなのですが、昨日のドラめもんで申しあげたように、当座預金残高目標をあからさまに引き下げるのは今までの政策との整合性の観点から言って無理がありますわな(下げたいのならりそな銀行だのSARSだの訳の判らん言い訳で当座預金残高目標を引き上げた後にちゃんと引き下げを行えば良かった訳ですが今更時既に遅し)。ペイオフ解禁後に何とか言い訳をつけることは出来そうな気もしますが、何せペイオフ解禁後に何かすると言ってもどう考えてもその時期は5月以降のお話ですんで足もとの30兆円維持問題に関しては意味無し状態。困ったもんですなぁ。

で、オペの札割れが続くのでこの際ヤケクソで長期国債買入(輪番オペ)の増額をという煽りネタがど〜せ出てくるのは昨日申しあげたように必定というものでありまして、このネタは後に申しあげるように「ありえね〜」ってネタなのですが、何せ長期国債買入に関してはどう考えても増額余力があるという素晴らしい状況になっておりますんで、理屈の上からは一番やりやすいお話になっておりますわな。ど〜も金融政策ネタに疎い債券市場関係者というか海外の人あたりが引っ掛かりそうな煽りネタの優秀な種でございますので、ひっかからないように注意されたいものであります。

「ありえね〜」の理由ですが、まず最大の理由は「福井日銀になってからは当座預金残高目標の引き上げと長期国債買入が全然リンクしていない」という事。兎に角この点は福井総裁たいしたもんだと思うのですが、最後に長期国債買入を増額したのは速水さんの時ですな。次の理由なのですが、「長期国債買入は日銀の政策理屈上は他の公開市場操作と違う」という点でございますわな。速水さんの時に当座預金残高目標引き上げと長期国債買入増額がリンクしていたので妙な話になっているのですが、基本的に長期国債買入は「日銀券見合いの成長通貨供給」が政策目的という事になっているので、話として「当座預金残高目標の維持が困難だから輪番増額」というのはヘンだという事になりますわな。

ま、そうは言いましても、煽りネタとしては秀逸なので色々と楽しい話が出てくるんでしょうなぁという感じであります。精々お楽しみにって感じですな。

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2005/01/24

お題「積極的な曖昧さ・・・・なんでしょうか」

まだまだ出口は遠いような気もしますが福井日銀の棚卸も必要なのかな〜って思う今日この頃。

○当座預金の「量」の意味付けに関して

金曜日にご紹介した福井総裁の定例記者会見で質疑がありましたが、当座預金残高目標を引き上げる時に色々な言い訳を駆使していた事もありまして、「当座預金残高目標のうち、緊急避難の流動性供与の分が引き下げても良いんじゃネーノ」という理屈が成立するのは先日来ドラめもんで申しあげているとおりでございます。

再掲になりますが先日の定例記者会見ではこんな感じで聞かれていた訳ですな。

『当座預金残高目標に関しては、今までの引き上げの過程の中でもすべてが追加的な緩和ではなかったと思うが、当座預金残高目標の引き下げに関しても、コミットメントの条件をクリアすることが必要なのか。』

短期金融市場の関係者にはこの理屈が十分に浸透しているようでして、量的緩和政策の出口をどうのこうのって話になる前に徐々に当座預金残高目標を減らしていくのが吉ではないかってのがコンセンサスになりつつあるようでございます。


ところがそう世の中上手くいかないわけでございまして、当座預金の量に関しては岩田副総裁が2003年10月2日の記者会見でこんな話をしております。(http://www.boj.or.jp/press/03/kk0310a.htm)

『(2003年)8月18日の記事についてであるが、先週、内閣府の国際セミナーでも同様のことを申し上げた。すなわち、今年に入ってからの為替介入額は、財務省の発表によると、現時点では13.5兆円、先月までは9兆円程度であった。一方、年初からの日本銀行の追加的な流動性の供給額は計10兆円──3月2兆円、4月5兆円、5月3兆円──で、偶然ではあるが、為替介入額と追加的な流動性の供給額がほぼ同額であった。このように、国内の流動性の供給と介入を併せて行うと、事後的には、「非不胎化政策」と呼ばれる政策を実行したのと同じ効果が出る。また、これも結果的にはであるが、日本銀行が米国債を購入するのと同じ経済効果が生じる、ということを申し上げた。』

『次に、介入額の増加と量的緩和の拡大についてであるが、日本銀行は、今年に入ってからの10兆円の追加緩和を実施した過程でも、あるいは99年からのマネタリー・ベースを大幅に増やしてきた過程でも──現在も前年比+20%程度増やしているが──、為替レートを目的として緩和政策を採ってきたわけではない。あくまでも、国内金融市場の安定化あるいは国内景気回復の足取りを確実にして、最終的にはデフレを脱却し、物価の安定を図ることを目標に金融政策を行っている。したがって、追加緩和額と介入額が同じでなければならない、ということではないと認識している。』


ビミョーな言い方なんですが、「事後的に非不胎化介入を実施している」という風に述べている訳でして、短期金融市場から遠くなりますと概ねこういう認識になって来るようですので、テクニカルに当座預金残高目標を引き下げると言っても中々厳しいものがあるという事になるでしょう。

ちょうど今岩田規久男さんの「日本経済を学ぶ(ちくま新書)」を読んでいる(書評は後日)のですが、岩田規久男先生も同じような認識をお持ちのようでして、著書の254pでこんな話をしております。

『福井総裁就任後、次第にデフレ脱却にコミットするようになった日銀は、財務省の円安誘導の為替介入政策をきっかけに、いっそうの量的緩和に踏み切り、為替介入政策を支援しました。』

と、まぁ日銀がそもそも当座預金残高の意義付けに関して曖昧にしていた事もありまして、取りようによって色々解釈できるある意味便利な当座預金残高の「量」でもありますので、まーやはりこの辺に関しては量的緩和政策を継続している限りにおいては「どうとでも取れる状態」にしておいたままにしておくのが吉なんでしょうな。そう考えますと、当面当座預金残高目標という「量」を増やす事はあっても減らす事は(解除すれば別ですが)考えにくいと見るのが宜しいかと存じます。


○量的緩和政策の継続に関するスタンス

この岩田規久男さんの本を読んでいて思ったのは「福井総裁ってのは上手に立ち回っているんだなぁ」という事です。同書の同じ部分で岩田規久男さんはこう書いています。

『福井総裁の方針が評価できる点は、第一に、総裁就任までは、デフレの原因を世界のグローバル経済化に求め、もっぱら日本の構造改革の必要性ばかり主張していたため、金融政策によるデフレ脱却には消極的であると予想されたのですが、総裁就任後はその予想をよい意味で裏切り、ことあるごとに量的緩和の継続に言及して、市場の「量的緩和出口論」を封じ込めてきたことです。』

まー確かに量的緩和政策を早く脱却してくれという人は市場(というか短資会社あたり)にはおいででございますが、そもそも量的緩和出口論が早々と出てきたり、量的緩和政策のコミットメント3条件なんぞが打ち出されるようになったのは、日銀の蒔いたタネだったと認識しておりますが、どうもそのような話は伝わっていないようでございまして(^^)、このように福井総裁の評価は日銀直下のインターバンクなんかよりはエコノミストというか経済学者なんかから高いものをいただいているようであります。

先日の記者会見における「量的緩和の量の問題」の質問に対して福井総裁は(金曜日のドラめもんで申しあげましたが)さらりとかわしておりますわな。

『量的緩和に踏み切って以降、ターゲットとする流動性の目標を数次にわたって切り上げてきた。全体として、流動性の供給枠の追加は、信用秩序というか金融システムの安定化を図るということも包摂しながら、究極的には、デフレ脱却という目的を最終的に念頭に置きながら実施してきたものだ、とまとめることができる。従って、量的緩和の枠組みとは、所要準備額を超えて市場に対して思い切った流動性を供給する枠組みのことを言っている、と思って頂きたい。』

これだけ見ると当座預金残高の引き下げに関しては留保状態であるとも言える訳ですが、量的緩和政策の量を潤沢に供給するとも言っておりまして、マネタリストの皆さんへのお答えにもなっており、自分の手足を縛るような「量的緩和の量を減らす事は無い」というような発言もしておりません。巧みな答弁ではあります。


とまぁそういう訳でして、風邪引いて死にそうな中(追記:これ書いたの日曜の夜だったのですが、月曜からインフルエンザの高熱で即死しました)、ここの所の量的緩和政策の「量の問題」について昔の記者会見なんぞも持ち出しつつ考えてみた訳ですが、やはり結論としては福井日銀の「積極的な曖昧さ」によってとりあえずCPIがゼロ以上になるのを待ちつつ、量的緩和政策に関するレビューは避けておこうって感じになるのかと思います。その間に局地的な資産バブルが発生すると色々問題がおきそうなのが怖いのですが・・・・・・

たぶん、量的緩和政策が終了(一体何時になる事やら・・・・)した1年後とか2年後くらいにこっそりと「量的緩和政策は実はゼロ金利+時間軸だったので、量に関しては意味が無かった」とか「量を増やしたのは実質的な非不胎化介入だったんだけど、認める訳に行かないから黙っていた」といったレビューのレポートがこっそりと出るのではないかと勝手に想像しております。

#しかし風邪は辛いですなぁ

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2005/01/19

お題「昨日の続き/とある記事から」

例によってまとまって無いのですが。

○金融改革プログラム(続き)

昨日ドラめもんでご紹介した金融改革プログラム。最後の方でこんな事を申しあげたのですが。

<昨日のドラめもんより>
この「金融改革プログラム」に出ている施策ってやたらと個別具体的な「偽造カード犯罪等の金融犯罪防止のための対策の強化・徹底」などという話があると思えばその並びに「金融商品・サービスにおける情報の有用性に配慮しつつ、情報の適正な保護を図る具体的な個人情報保護ルールの明確化」と何の事かよ〜わからん漠然としたお話があったりと、何かこう「?」なものを感じてしまいますな。どうもそういう点も含めまして、このプログラムって妙に読みにくいんですよね。

↑何で読みにくいのかについて読者様から鋭いご指摘を受けました。この金融改革プログラムのアクションプログラムなんですが、書いてある事(施策)が「とりあえずこれをやっておくべきでしょう」というようなものをてんこ盛りに盛り込んでしまって、施策の総合的な整合性といった面への配慮が欠けているのではないか?というご指摘でして、確かに言われて見ればそんな感じが致します(^^)。

よくよく考えれば、繰延税金資産の計上とその否認に関る「梯子外し攻撃」もやっている事の一つ一つはそれなりに理由のあるご尤もな施策ではありましたが、全体を通してみると「金融庁に突如梯子を外された」という話になっていた訳ですわな。ま〜繰延税金資産に関してはその間に金融庁の基本方針がだいぶ変わっているので「途中でこりゃヤバイと思えよ」とは思いますけど。

暫く前のドラめもんで「官製の罠ですか?」などと悪態をついたように、不良債権処理をはじめとして金融庁から色々な施策は出てくるのですが、出てくるガイドラインが何とも曖昧でして、その上後から「先端の金融技術を使った取引に関して重点検査」と重点検査を示唆するような話が日経新聞あたりで報道されちゃったら金融機関経営サイドとしては「梯子外し」を恐れてよー手を出しませんわな。大勢に影響がない案件以外では。

だからこそ金融機関がややこしい債権を産業再生機構にぶちこみに行くのかな〜などと思う次第であります。


○「当座預金残高目標引き下げに関するアンケート」を見て

昨日ロイター通信が市場関係者(債券、短期、株式、為替の各市場)とエコノミスト合計29人に「日銀の当座預金残高目標引き下げに関するアンケート調査」を行ったそうで、その内容が日本語版ロイターの14:03発の記事として配信されました。

で、内容に関しての詳細はロイターのニュースを見ていただきたい訳ですが、この結果を見た印象をいくつか。

・やっぱり「引き締め」扱いにされるわな

「当座預金残高目標を引き下げた場合、市場は金融引き締めのステージ入りと判断するか」という問いには「する」が17票で「しない」が9票となっておりまして、記事によりますと「しない」と見ている人のほとんどが短期金融市場関係者だようです。

記事では大和総研の奥原主任研究員のコメントとして「当座預金残高の引き上げは緩和措置と解釈されているので、その逆の当座預金残高の引き下げは引き締め措置と解釈される」というのがございましたが、ま〜当然の解釈ですわな。残高目標引き上げのときに緩和措置の振りをしながらやっていったツケがここへ来て回ってきている訳でして、誠に香しいものを感じる次第であります。

あちこちで指摘されてますが、もともと当座預金残高目標の引き上げに関る言い訳もその度ごとに違う(イラク戦争だのSARSだのりそな問題だののショックに対する流動性供給強化ってのと、郵政部門の公社化に伴うテクニカルな引き上げと、景気が回復しているのに残高目標引き上げっていう「押し上げ介入」がございます^^)ので、言い訳を今度も使い分けて説明するんでしょうが、残念ながら短期金融市場以外では「引き締め」という解釈をするようで、日銀さま残念無念と言ったところでしょうか(^^)。

このニュースが出た後に読者様にもお伺いしたのですが、やはり「引き締め」と解釈する人が債券市場関係者やら海外投資家などには多いでしょうというのが結論のようでして、テクニカルに残高を減らすのも一苦労のようですな。

元々やっている政策の意味を曖昧にして外部(というか官邸というか)からの政治的圧力をかわしたり、原則を曲げていないように見せかける(最後の方の当座預金残高目標引き上げは岩田副総裁が指摘するように「非不胎化介入」でしょと思うのですが、それは認めたくないらしい。東短リサーチの加藤氏のレポートを見ても再三再四「これは非不胎化介入ではない」と主張してる所をみますと^^)のが良くも悪くも福井日銀クオリティだったのですが、上で申しあげたように、量的緩和政策の出口をどうやってつけていくかというこの時期になって今までの曖昧にやってきたツケを払っていただこうではないですかってなもんですなぁ。


・相変わらず誤解している人がいる訳ですが

ロイターの当該記事によりますと、債券市場関係者である都銀の人のコメントとして「引き下げの延長線上として国債買い切りオペの減額がイメージされ、そのリスクプレミアムが上乗せされる可能性が大きい」というのがあったのですが、債券市場の中でもアクティブに動くためにマーケットインパクト最大級の都銀のお方(全員がそうではないでしょうか)がこ〜ゆ〜理解でおられますと益々当座預金残高目標をいじるのが大変ですなぁという印象を強くすると同時に、「こういう認識ではちょっとCPIが上ったら債券慌てて売りに出すわな」ってちょと納得しちゃいました(^^)。

ご存知のように、福井日銀体制になってからは当座預金残高目標の引き上げに長期国債買い切りがリンクしておらず、速水日銀時代に引き上げた「月額1兆2000億円」から増えておりませんわな。という事は速水さん時代の(確か)5兆円+郵政事業の公社化に伴うテクニカルな引き上げ分5兆円であります「当座預金残高目標10兆円」までは当座預金残高目標の引き下げに長期国債買い切りリンクさせる必要なしという事になりますな。それ以前の問題として成長通貨の供給が命題の長期国債買い切りなので当座預金残高目標とリンクさせるのがどうかと思う訳ですが。

まぁこのあたりの経緯も量的緩和政策の長期化ですっかり忘却のかなたに去ってしまったようですな。ついでに悪態をつけば、これもまた「政策にあえて明確な意義付けを行わなかった福井日銀クオリティ」のツケが回ってきたって事なのかもしれ
ませんな。


・正直すぎるのも如何なものか(^^)

ど〜でもいいのですが・・・・・

記事でバークレイズ銀行資金証券部の箙氏のコメントとして「短期ゾーンのイールドカーブが立つのは、収益機会の創出と市場活性化につながり、短期資金関係者には歓迎される」ってのがご紹介されておりました(^^)。

いやまさにその通りなんですが、そ〜ゆ〜事は思っていても公衆の面前ではコメントしないのがオトナの対応というものでして(笑)、ただでなくさえ「市場関係者は金融政策に関してポジショントーク(と言えばまだ良いのですが、普通は自分たちの利益のために・・・って言い方されます)をして誠にケシカラン」と学者先生(特にリフレ派と言われる人)たちに言われている訳でして、まぁ如何なものかと(^^)。



・結局テクニカルな訳で

このアンケートで一番ウケたのは、「当座預金残高目標を引き下げた場合、各市場への影響は」って部分でして、複数回答可になっているのですが、円高、円安のどっちになるかというところの回答が、円高円安どっちも3票と同数(^^)。

まぁ要するに解釈がムツカシイというかその時の外部要因によって反応が違うでしょってことなんでしょうが、意見が真っ二つな上に、そもそも29票中6票しか為替市場の反応にコメントしていないって事は、「よーわからん」という事なんでしょうね。


ま、当座預金残高目標の引き下げをテクニカルに実施するだけでも相当の困難がありそうですな〜というのが良く判るアンケート記事ではありました。

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2005/01/18

お題「ちと古い話ですが金融改革プログラム」

年末(12月29日)に金融庁ネタとして何か「それのどこがどうリレバンなんでしょうかねぇ皆様作文ご苦労さん」としか申しあげようが無い「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況」をご紹介して、ついでに「ああ相変わらず金融庁様は各銀行横並びでやらせるのね」という「決済用預金の導入に向けた金融機関(業態別)の準備等の状況の公表」ってのをご紹介しましたな。

で、よくよく思い返してみるとあたしゃー「金融改革プログラム」に興味があって金融庁のWebにお邪魔した訳でして、「金融サービス立国」といういきなり「立国」ですかと素晴らしいキャッチフレーズが出ている資料をちょっとだけ拝見しましょう。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/16/f-20041224-6.html

○心意気は壮大で文章が妙に硬い(^^)

『これからの金融行政は、「安定」から「活力」へというフェーズの転換を踏まえつつ、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られるような金融システムを「官」の主導ではなく、「民」の力によって実現するよう目指す必要がある。我々はこのような取組みを敢えて「金融サービス立国への挑戦」と名付け、そのためのプログラムをここに策定した。』

さすがに「金融サービス立国」というのは現状からの乖離が激しすぎるので「敢えて名付けた」という事のようでして、ちょっとだけ安心。でまぁそれはそれで良いのですが、この「はじめに」の文章が妙に生硬な印象を受けるのは(単にあたくしが金融庁作成の文書を読みなれていないせいなのかもしれませんが)気のせいでしょうか??

「はじめに」の冒頭部分を引用しますとこうなるのですが、ど〜も硬い気が。

『わが国の金融システムを巡る局面は、「金融再生プログラム」の実施等により不良債権問題への緊急対応から脱却し、将来の望ましい金融システムを目指す未来志向の局面(フェーズ)に転換しつつある。「金融システムの安定」を重視した金融行政から、「金融システムの活力」を重視した金融行政へ転換すべきフェーズと言っても良い。また、金融のIT 化が進むとともに、経済社会全体においてもインターネット取引の比重が高まっている。今後の少子高齢化、経済のグローバル化の更なる進展に的確に対応し、わが国経済の持続的成長に資するためにも、構造改革の一環としての金融改革の具体的プログラムを以上のようなフェーズの転換に即して考える必要がある。』

今気が付いたのですが、上記段落内での各文が一つ一つ完結していて、話がブツ切れになっている(ように思える)のが読みにくい原因かと(^^)。英語版の方が読みやすいとはこれいかにという感じですな、あっはっは。

それはともかく。


○「リスク管理の高度化」ねぇ・・・・

まぁ細かく読もうとすると色々と債券市場にも宿題がありそうなプログラムではありますが、とりあえず目に付くのは「バーゼルU」に関する言及でございますな。

日本語資料の7ページ部分に『金融機関のガバナンスの向上とリスク管理の高度化を通じた健全な競争の促進』ってお話がありまして、「ああまたリスク管理ですか」ってものなんですが、その辺にこんな事が書いてあります。

<ここから引用>

金融機関のリスク管理の高度化を促すとともに、不良債権問題の再発防止のためのルールを整備し、主要行の不良債権比率が17 年3 月末時点の水準以下に維持されるよう、最善の努力を求める。また、各金融機関において収益性や健全性を示す財務指標や外部格付けが一段と向上することを目指す。

○バーゼルU(新しい自己資本比率規制)の導入に向けた金融機関のリスク管理に関するルール・態勢の整備及び検査・監督当局の体制整備

○ 早期警戒の枠組みの一層の活用
・銀行勘定における金利リスク等、自己資本比率の算定に含まれないリスクの適切なモニタリング等

○ 主要行のリスク管理の高度化
・バーゼルU導入を踏まえ、主要行に対しリスク管理高度化のための計画の策定を要請
・大口与信管理態勢や債務者企業の再建計画の検証
・主要行の自己査定と検査結果の格差に係る業務改善命令の発動等・繰延税金資産の自己資本への算入適正化ルールの検討

○ 証券会社・保険会社のリスク管理の高度化
・証券会社の自己資本規制の算定方法の見直し
・保険会社のソルベンシーマージン比率の見直し、新しい保険商品に係る責任準備金積立ルールや事後検証の枠組み等、財務関連ルールの整備

<引用終了>

まー結局のところ「バーゼルUの考えを金融機関全部に適用していき、ついでに皆様をせっせと監督しますので一つよろしく」と言っているように読めますな(^^)。


んじゃあ「バーゼルU」が導入されるから金融機関のリスク管理がより精緻になるかと言いますと、確かに表面的には精緻になるんですが、実態を反映した精緻さになるかというとこれがまた疑問のかたまり。以前から悪態をついておりますように、バーゼルU自体色々と政治的妥協のようなことをやっていると思しき節がありまして(昨年の6月30日のドラめもんで申しあげた事の繰り返しになりますが)、中小企業向け貸出金に対する所用(追記:「所要」ですな)自己資本が何故か少なくなってしまうという不思議なことがある訳ですな。

『バーゼルUの枠組みは、信用リスクがより高いと考えられる債務者についてはより高い水準の所要自己資本額を課すという手法を全般的に適用することにより、信用リスクに対する自己資本の枠組みの感応度を高める。』

ってのがバーゼル委員会のプレスリリース「編集者のための解説」って所にあるのですが、何故か中小企業向け貸出金は「小口分散によるリスク軽減効果を考慮して、所要自己資本額を軽減」(日銀あんど金融庁の出した「新BIS規制案の概要」って資料のあたりに説明があるのですが)という不思議な扱いになっておりまして、http://www.boj.or.jp/intl/04/data/bis0410c.pdfあたりの資料の3ページ目くらいを見ますと、「標準的手法」によってリスクウェイトを算出すると大企業向け貸出金のリスクウェイトの方が中小企業向け貸出金(追記:一件あたりの上限額が設定されています)のリスクウェイトが高いという極めて意味不明の状況が発生しておりますわな。

債券ポートでも同じような訳のわからん事態が発生しておりますのは皆様ご存知の通りで、何故か変動利付債券の金利リスクが「利息変更サイクル期間が満期の固定利付債と同じ」という状況になってまして、長期金利にフロートしてようと短期金利にフロートしてようと金利リスク量が同じとなっているという実に心の温まる規定がございまして、本日入札が予定されている変動利付国債の人気が絶賛大沸騰しっぱなしとなっている訳ですな。既に市場に「制度による歪み」が発生している好事例(というか悪事例)となっているのが実に素晴らしい。


○地域金融機関にも「バーゼルU」だそうで

「U.地域経済への貢献」って所に「中小・地域金融機関の経営力強化」って部分があるのですが、そこを見ますとこんな件が。

○ 中小・地域金融機関のリスク管理の高度化やガバナンス向上に向けた取組みの促進
・バーゼルUの導入、選択制の下での内部格付け手法の採用

っつー訳でして、何で地域金融機関に対してバーゼルUを適用してどうのこうのという話をするのか相変わらず理解に苦しむ(国際展開する訳でも無いのに、わざわざそんなややこしいものを適用する必然性はあるのか?)のですが、こ〜ゆ〜事を言っておる(まぁ大体こうなるのは方向性として以前から打ち出されておりましたが)とすれば、中小・地域金融機関に対しても金利リスクの計測だの標準的な金利ショックに対する想定損失の算定だのといった七面倒くさいことが求められる事になる訳で、誠にご愁傷様でございます。

面倒になってフローター債ばかりがアフォのように売れるような事態になりそうな悪寒が致しますわな。


○余り関係ないですが・・・・・

まぁおまけなんですが、この「金融改革プログラム」に出ている施策ってやたらと個別具体的な「偽造カード犯罪等の金融犯罪防止のための対策の強化・徹底」などという話があると思えばその並びに「金融商品・サービスにおける情報の有用性に配慮しつつ、情報の適正な保護を図る具体的な個人情報保護ルールの明確化」と何の事かよ〜わからん漠然としたお話があったりと、何かこう「?」なものを感じてしまいますな。

どうもそういう点も含めまして、このプログラムって妙に読みにくいんですよね。ついでに申しあげると、金融庁のWebってのもまた読みにくいデザインになっておりましてなれない人には情報探しにくいったらありゃしないので改善をお願いしたいものです。

ちなみに、バーゼルU関係資料はhttp://www.boj.or.jp/intl/05/intl_f.htmのあたりに資料が纏まっております。

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2005/01/17

○当座預金残高目標維持大丈夫?

まー既にあちこちで話題になっておりますが、年明けから日銀の行う公開市場操作のうち、短期市場に資金供給をするオペレーションで「札割れ」が連発しておりまして、年明けから既に6回も札割れ。短期国債買入まで札割れになってしまい、恐らく手形オペ以外では何でも札割れしちゃうんじゃね〜のって勢いでございます。

年末年始に運用を控えていた資金が短期市場に流入したり、新規の運用資金が入ってきたりしているのも有るんですが、まー要するに当座預金残高目標の維持が益々しんどくなっているという有様ですが、4月にペイオフ完全解禁(抜け穴ありですが)を控えてまさかここで当座預金残高目標を減らす訳にも行かないでしょうから、ご苦労な事ですなぁとしか言いようがありません。

じゃあ4月のペイオフ解禁を通過した時点で景気腰折れ懸念が無ければ当座預金残高目標を引き下げられるかと言いますとこれがまたムツカシイ。

と申しますのも、相変わらず「デフレは通貨的な問題」(いやそれはそうだけど金融政策単体でデフレ解消できないから困ってるんでしょ)と毎度毎度同じお話をする竹中大臣並びに岩田副総裁がででーんと構えておりまして、この「そもそも意味の無い超過準備なので目標を引き下げても全く問題が無い」という当座預金残高目標引き下げの実施も政治的説明が物凄く困難ではないかと思う訳です。所謂「リフレ派」の巣窟になっている某匿名掲示板(有名な某巨大掲示板ではありません)での論議をROMっておりますと、「デフレはマネーの現象だからデフレ解消は金融政策で」という人たちを説得するのは(前提になっている「デフレはマネーの現象」が正しいだけに)大変だと思う次第。

日銀としては、恐らくマーケットが「当座預金残高目標を引き下げすべし」という大合唱状態になって雰囲気を盛り上げて「援軍」になってくれないと当座預金残高目標の引き下げがど〜のこ〜のって話を持ち出しにくい所でしょう。いざ当座預金残高目標引き下げたら長期金利大上昇の株価下落なんて話になったらシャレにならないですしねぇ。

って事で、まー相場が動意付いてくれないと業者としては商売があがったりだし、少々の金利上昇の方が商売やりやすいし運用サイドも投資環境の改善になるでしょうから、この調子で債券相場がうだうだと値持ちしていると、次の商売ネタとして「当座預金残高目標引き下げ議論」が盛り上がって来るかと存じます。結局空騒ぎに終わるのでしょうが今年前半はこの話が何度か浮上してくると思いますよ(^^)。

ただ、当座預金残高目標引き下げは@技術的に言えばまぁ意味が無い(為替介入をまたおっぱじめれば話は別だが)し、Aそもそも竹中大臣をどうやって説得するかという政治的問題があり、B間違って景気腰折れのトリガーを引いてしまうとシャレにならない、という大いなる問題点がありますので、そもそも実施困難であり実施しても無意味だという事を忘れずに対処したいものです。

ではでは。

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2005/01/13

○債券市場に対するよくある誤解

一昨日のことですが、別のお笑い記事(いやまぁ日経さまにおかれましては真面目に書いているんでしょうが)を見るために日経金融新聞1面コラムの「複眼独眼」を拝読したのですが、執筆者の「一葉」氏が「郵政民営化と国債消化の調和」ってお題でコラムを書いておりまして、郵政民営化と国債消化の配慮をどうするのって話がありました。書いてある論理展開が何を言いたいのかさっぱり判らんという突っ込み所満載コラムなのですが、それはともかくとしてこのコラム執筆者も債券市場に関してこんなコメントをしている訳です。

『債券市場関係者は、不景気になって金利が低下することを喜び景気回復による金利上昇を嫌うという「あまのじゃく」だ。彼らは、郵政民営化によって国債相場が弱くなると困るだろう。』

随分前にご紹介したバーナンキ氏の講演録「リフレと金融政策」でも高橋洋一氏による解説部分でも『彼ら(=金融・市場市場関係者)がインフレ目標に反対する理由は、インフレ目標が採用されると名目長期金利が上昇(フィッシャー効果)し保有債券の評価損が生じると信じられているからであるといわれている。』というような件があるように、この説は恐らく外部の方々(リフレ政策を提唱するお方に目立つのは気のせいかもしれませんが)の間ではまず「定説」化している話でございます。

でも本当にそうなのかと申しますと、これがまた違うんですよって話でございますわな。以下債券市場関係者には「あたりめ〜だろ」って言われそうな話ですが・・・・

保有債券の評価損がど〜のこ〜のって話は勿論問題なのですが、株式のような資産と違いまして、現在国内で流通している債券っつーものは基本的に満期が来れば(発行体が破綻しない限り)償還されるものでして、正直「保有債券の評価損は時間が解決する」ものでありまして、これが株式だの不動産だのといった投資対象と根本的に違うところ(株や不動産ではバブル崩壊以降「耐えていれば何とかなる」と耐え抜いた挙句に再起不能になったお方が沢山おいでな訳ですが)でして、破壊的な金利上昇(連日債券先物ストップ安とか)でも起きれば話は別ですが、少々の含み損などというものは「そのうち何とかなるだろう」ってなもんです。

でですな、債券と言う商品は期限が来ると償還されて現金が返ってくるという(おまけに保有期間内に利息がチャリンチャリンと入って来る)商品特性上、常に債券での運用には「再投資リスク」っつーのがある訳でして、少々の金利上昇が起きると「運用環境が改善された」という話になるのでございます。基本的に「利息をつけて預かっている資金の運用」を行っているので、運用利回りというものを叩き出さないといけない訳でして、相場が上ったからといって手持ち債券を全部売って利益確定するなんて事はできん訳ですよ。

そんな訳で、債券市場関係者と致しましては、金利上昇必ずしも困る話ではなくて、正直その速度がのんびりであれば無問題だし、却って有り難いと言うのが普通の見方でございましょう。大体からして量的緩和政策の長期化で国内債券市場の(使わないといけない資本に対する)収益率が甚だ低下したせいで海外系の業者さまにおかれましては国債(とか金利)部門に対してあちこちで業務縮小の刑を執行して下さったというのもあって正直、金利が上って相場が少々動いてくれないと業者も困る訳ですな。

どうも「金利上昇」→「債券価格下落」という部分にばかり注目されるのは仕方ない面はあるとは言え、誠に遺憾なことでございますなぁ。

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2005/01/07

○福井総裁の講演

がニューヨークで行われたそうでして、MXテレビで見たブルームバーグニュースによりますと「量的緩和政策のCPIコミットメント」に関して強調するようなお話をして、最近話題に乗りまくっている「量的緩和のコミットメントの条件変更論」を一応否定するようなお話をしたと言う事のようです。この文章書いている時点では日銀のWebにまだスピーチ内容がアップされていないので詳しいことは判りませんが。

とりあえず当然の話をしている訳ですし、内容をちゃんと見ているわけではないのでアレなわけですが、条件変更がどうのこうのって話が折角市場で「有り得るかも」くらいの雰囲気になっているのにわざわざそれを大々的に否定せんでもよかろうにって気もするところでして、これでまたぞろ「条件変更話」が浮上してくると「日銀政策委員会はマッチポンプですか?」って事になっちゃわないかという懸念があるわけでございます。

まぁあたくしが勝手に憶測するに、福井総裁さまにおかれましては念願の量的緩和解除に向けて雰囲気を盛り上げてみたり盛り下げてみたりしながら地合いをみていくという作戦なのかな〜って感じなんですが、やりすぎると発言が全く信用されなくなるという諸刃の剣でございますので、不規則発言の目立つ福井総裁のキャラクターではあまりやらない方が吉かと思うんですが。

まぁムツカシイ所ではあるんですけどね。総裁が出張る機会が多すぎなんじゃないかと思う今日この頃。(追記:本文に関するコメントは福井総裁発言を纏めた12日付ドラめもんを御参照下さい)

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2005/01/06

○国債市場特別参加者に関る発表

国債市場特別参加者に1月から東海東京証券が加わる事になりまして、誠に慶祝の極みでございます。で、財務省さまにおかれましては今回「落札・引受額ランキング」「応札額ランキング」なんぞを公表されましたが、これが中々笑えますわな。

国債の落札・応札順位について(平成16年7月〜12月)http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/jgbsp/050104a.pdf(財務省のWebはPDFのアドレスを直接入力すると何故か見えない傾向にあるので、元アドレスを念の為申しあげますとこちらであります→http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/jgbsp/jgbsp.htm)

大変に楽しめるのはその資料の2ページ目と4ページ目あたりでございまして、「超長期国債(30年、20年、変動15年)」の落札額順位と応札額順位を見るとランキングの順位が全然違う訳でございます。何せ落札額ランキング上位5社は日系大手(と大手銀行)が占めているのに、応札額ランキングの上位5社中3社が外資系(どこなのかはリンク先の資料を見ましょう^^)。

超長期国債で「按分狙いの過大入札」ってのはちょっとリスキーでしょうから(15年だと少々有りえるけどやっぱリスキー)、まぁ応札順位が落札順位よりだいぶ上のお方はいずれ「入りもしない札」をせっせと入れておられるものかと存じます。まぁそりゃ入ったらラッキーな札を下のほうまで流すのは結構ですが、もしかして(最近はあまり気にされなくなってきたとは言え)応札倍率を大きく見せかける為(応札倍率が高い→ニーズが高い→販売順調という連想が働きやすい、最近は余り騙されなくなっているが)に応札だけしているのではないかという疑惑も(^^)。

まぁ何ですな。要するに「応札倍率は低い場合以外は材料視しても全く無意味」という事ですわ。一つ宜しく。

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2004/12/30

お題「来年のテーマは?」

今年もありがとうございました。

○来年の課題:量的緩和政策の軟着陸をどうするの?

昨日の日経金融新聞の1面は産業再生機構のミサワとダイエーへの支援に関連して「国の関与はこれで終了にして普通の状態に戻るようにしましょう」ってなお話が書いてありました。今の今まで国の関与を散々奨励して一転してそれかよって気もしますが、まぁそういう野暮な突っ込みは置いといてですなぁ・・・・・

どうも来年は景気の実態がどうのこうのとか物価指数がどうのこうのという話は別にして、量的緩和政策をどうするべぇという雰囲気に持っていくとゆ〜流れがそこかしこから表面化してますんで、とりあえず来年は「ペイオフ全面解禁(実は抜け穴だらけですが)」→「金融不安の払拭」→「過剰な流動性供与の見直し」というお話が最初に出てくるという見方が強くなってきていると思います。

で、まぁその為には「量的緩和の量の意味をレビューしましょう」って話になるのですが、実質的に意味は無くても「意味があった」という事にしないと間違って景気が失速した場合に打つ手が無くなる(というか国債の買入拡大とかの福井日銀として望ましくない政策を打たざるを得なくなる)ので、無理矢理意味が有る事にするというのが予想される結論かと思います。

じゃあ「政策効果として意味がある」当座預金残高目標という「量」をどういう理屈をこねて減らすかというのは先日も申し上げたように、「デフレスパイラルに陥る懸念が払拭され、金融システム不安も払拭されており、下支え部分は不要になりつつあるので量を減らしましょう」って事になると思います。


問題はそうすると「量的緩和政策のコミットメントを変更して早期に量的緩和政策が解除してくるのではないか」という思惑(何せ水野審議委員まで言っている訳ですし)が働き、実際には意味の無い程度の当座預金残高目標減額(30〜35兆円を20〜25兆円に下げると言った程度の話)であっても、市場が勝手に反応して早期量的緩和解除を織り込みに行って大暴れモードになるという事でしょう。(そう考えますと水野さんが「量的緩和の条件変更」を示唆したのは却って当座預金残高目標減額の実施を難しくしている訳でして、水野さんの元気なご発言もまた諸刃の剣かと存じますって感じですな。)

もちろん、量的緩和早期解除を勝手に市場が織り込んでくれて日銀が市場追認の形で量的緩和の解除条件達成前に緩和政策を終了させてしまうというシナリオをそれで良しと日銀が思っているのであれば話は全然別なのですが、あれだけ大騒ぎして設定した「時間軸のコミットメント」という梯子を有耶無耶のうちに外すというのは「お前は繰延税金資産という梯子をいきなり外す金融庁か」ってなもんで、それはどうなのよって思う次第ですわな。と、書いておりますと(その当時は金融市場におりませんでしたが)日銀が「ゼロ金利解除ありき」という前提で雰囲気作りをせっせと行って市場にゼロ金利解除を織り込ませた2000年の再来という悪夢も思い出される訳でして、まぁどうなんでしょうねって気は致します。


どちらにしても、来年は「量的緩和解除の条件達成」の話をさておいた形での「量的緩和政策の軟着陸」って話が出てくる事でしょう。


○しかし本当に量的緩和政策を解除できるのかというと・・・・

正直、やってみないと良く判らんという所が沢山あるのですが、現状の金融市場は「量的緩和政策を前提とした」状態で回っていると思しき箇所が沢山ございまして、大丈夫かね〜って部分は多々ある訳です。思いつくものを適当に並べますと例えば・・・・

・国債のRTGS決済がちゃんと回るのか
→一応RTGSのスタート時点では通常の金利(って言ったって低金利でしたが)体系の下にありましたが、その時点から見て国債(特に短期国債)の発行量が莫大なものになっており、日中流動性の問題がちゃんと回るんでしょうかって疑問が少々。

・同じ理屈で資金のRTGS決済がちゃんと回るのか
→決済がちゃんと回るのかと言う点で懸念している理由はもう一つあります。大手銀行を始めとして、金融機関が物凄い勢いで集約化されておりますので、以前に比べまして「どこかで決済が止まった場合のシステミックリスク」の与える影響がでかくなっているのではないかと思う訳でありますが、これもまた「通常の金利体系」である「所要準備カツカツの当座預金残高」の世界でのテストが無い訳でして、さて今の太平楽な状態で大丈夫なんでしょうかって気が。

まぁこの辺は当初混乱する程度で済んで欲しい話ですが。

・短期国債の消化はどうなるのよ
→莫大なる外為特会のバックファイナンスを担う短期国債は正直言って量的緩和のお蔭で無事消化されているようなものでして、まぁ今の所は少々当座預金残高目標を減額しても無問題とは言え、通常レベルまで外した場合にどうなのよってのはこれまた「やってみないとわからない」面がありますわな。

・中期国債の消化はどうでしょ
→量的緩和の時間軸と金余りを前提にして大手銀行を中心に2年債やら5年債やらは絶賛無事消化されているのですが、この前提条件が崩れた場合にちゃんと消化できるのか。特にあたくしが懸念するのは2年債でして、量的緩和政策実施前の発行額から比較して2倍とかの発行をしている訳でして、これが無事に消化できるかというと甚だ疑問。大手銀行の資金ポジションが大きく変った場合に5年債もちゃんと消化できるのかも謎ではありますが。

最終的には「金利で調整する」って話になるので全く消化できない話ではないのですが、今のままの発行ペースで量的緩和政策を外してしまうと、長めの短期金利から2年あたりの金利が物凄い勢いでスティープニングが発生して、イールドカーブ上中期ゾーンが思いっ切り膨らむ形になるのではないかと思うわけです。中期債ディーラー受難の時代が始まるわけです。


・ペイオフ解禁の抜け穴が一部塞がる訳だが
→ペイオフ解禁って言っても「決済性預金の保護」という大いなる抜け穴がありまして、まぁ要するに付利ゼロの預金にぶち込んでおけば預かり賃も(今のところ)取られずに全額保護なので、他の預金に置いていても大してちがわねぇのなら別に預金シフトする必要もなかろうってお話。これが金利が上りだした場合にそのまま決済性預金に無事にお金がいてくださるのかどうかは「やってみないと判らない」訳でして、実は4月のペイオフ全面解禁よりも、ペイオフ全面解禁が金利上昇局面に耐えられるかという方が重要だと思う次第。

・運用難マネーが突っ込んでいるお金が減ると・・・・
→これも良く判らんのですが、まぁ水野審議委員が就任記者会見で指摘したように、量的緩和政策の長期化で行き場を失った運用マネーが訳のわからん仕組債やら不動産証券化商品やらに大挙して絶賛大流入を継続しておりますので、この流れが止まった場合にどうなっちゃうのよってのは誠に遺憾に存じ奉る次第であります。特に懸念されるのは不動産証券化商品(のうち、借り入れでレバレッジ効かせまくった心温まる商品群でしょうかねぇ)でございます。もうちょっと証券化バブルは続いていただかないと困る向き多いんじゃネーノ?

・「外為特会ルート」が途絶して大丈夫か米国の財政赤字?
→双子の赤字などと言われながらも援蒋ビルマルートよろしくせっせと米国の財政バックファイナンスを支えた外為特会ですが、量的緩和政策で無事に消化されていた短期国債(というか正確には政府短期証券ですがまぁ同じ話)が無事消化されなくなって(というか調達コストが絶賛上昇して)平気なのかね〜何てのもある訳です。まぁよーわからんが。


とまぁあたくしの無い知恵で適当に思いつくものを並べただけでもうじゃうじゃと出てくるくらいに量的緩和政策というものが、あちこちの「前提条件」になってビルトインされている状態になっている訳でして、この「サステイナブルでは無いけれども妙に安定している」という状態が量的緩和政策の解除によってどういう遷移状態を形成するのかという点は興味があると同時に大丈夫かね〜って思うわけです。と言っても結局「やってみないと判らない」ので、まぁ色々と起き得る事を想定してくださいねって事なんですが。


○年末なので口上

というわけで今年もあたくしの与太話にお付き合い頂きまして誠にありがとうございました。皆様にとって来年が飛躍発展の素晴らしい年になりますように祈念致します。来年も宜しくお願い致します。

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2004/12/28

○「BOJウォッチング」ウォッチング

債券市場関係者しか読まない「日経公社債情報」という週刊誌(誌と言うほどの厚さはないのですが)がありまして、その中に毎回「BOJウォッチ」というコラムが1ページ分あり、数名の筆者がペンネームで寄稿しています。

著作権がどうのこうのって問題があるから詳説は避けますが、今週号の記事のネタは水野審議委員でして、その中で3分の2位をあてて「実は水野審議委員を招聘したのは武藤副総裁であって、武藤さんの思惑はこんなものである。と言われている」という感じで色々な憶測を並べた後に「でも筆者は水野さんに政策委員会の政策論議の活性化を期待したい」と締めておりまして、前半の憶測ご紹介はただの字数稼ぎですか貴方はって感じでありました。

「憶測」はいくつか紹介されていましたが、その中で最初に紹介されていたのは「日銀プロパーから警戒されている武藤副総裁が次期総裁就任を睨んで日銀の内部が考える『量的緩和政策の早期解除』に積極的といわれる水野さんを起用する事によって日銀プロパーへの受けをよくしようと考えた」ってのがありまして、それはちょっとどうなのよって思っちゃいましたが。

あたくしつらつら拝見するに、武藤副総裁は残り2名の執行部の面々と比べてあまり(というか極端に)表だって講演やら記者会見をしない傾向にあるのですが、出てくる場所が結構重要というか日銀として「これから重要だ」と思っているポイントのセミナーとか講演会とかでして、しかも武藤さんの話は「日本銀行はこれからこの問題に関してどう考えているのか」という事をきっちりと話してくれているという印象が強いです。

日銀の内部的には武藤副総裁って頼りになる存在なんじゃないかな〜と思いますがね。トップダウンで突っ走るわ不規則発言は連発するわの福井総裁と所構わず自説を遠慮なく開陳して国会で危うく「執行部内不一致」を露呈しそうになった岩田副総裁と比較すると安定感が全然違うと思いますが。


まぁそれはそれとして、以前この記事で別の人が書いていたものには仰天しました。と言いますのは、同じネタで「水野さんを政策委員に推薦したのは財務省で、財務省は日銀が量的緩和政策の早期解除を行うように仕向けて、時期尚早の解除が失敗したあとに政策の失敗をネタに日銀を支配下に置こうと陰謀を画策している」という事を書いている人がいる訳ですな。数週間前の記事でしたが。

で、この記事(後日追記:「財務省陰謀論」の方の記事です)だれが書いているんでしょって聞いたらどうもあちこちでこの説を吹聴している人がどこぞの外資系証券のアナリストとしておられるらしく、おまけにこの某センセイはもと日銀のお方だそうで。

まぁ何考えても自由ですから、どんな陰謀論を唱えるのも個人の勝手であることは勿論なんですが、「財務省は国民経済を犠牲にしてまで省益を追及しようと陰謀を企んでいる」って説を堂々と唱えるとそれは自分にも降りかかってくるお話しでして、「日銀内部では自分の立場の強化の為には国民経済を犠牲にしても良いと考える人間がいるのか」という印象を与えちゃうんじゃねえのかねって思っちゃうあたくしはひねくれ者ですかそうですか。

まぁ日銀OBとしてあまりレベルの低い陰謀論を唱えるのは、出身母体の名を汚す事にならんかね〜などと裏でコソコソと悪態をつく路傍の石のあたくしでございました。しかし「発言は自分に降りかかってくる」何てのは「オマエモナー」と思いっ切り言われそうなのでこの話しはこの辺で^^。

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2004/12/24

お題「当座預金残高目標の減らし方」

○当座預金残高目標維持が困難なのは・・・・

火曜日(追記:同じく水曜日の間違い)には10月29日と11月17、18日の金融政策決定会合の議事要旨が発表されました。まぁ色々と読むところはあるのですが、今朝は11月17、18日の議事要旨の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」をネタにしましょう。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g041118.htm

『このところ、年度末越えのオペを含め、短期資金供給オペにおいて札割れが発生していることについて議論が行われた。多くの委員は、金融システムに対する不安感の一段の後退などから、市場の資金余剰感が一層強まっている、との見方を示した。』

金融システムに対する不安感の一段の後退っつーのも何か微妙に違和感があるのですが、恐らく格付け機関の格上げ祭りを指しているのではないかとは思います。そもそもりそな救済スキーム発動以来「金融機関は最終的に国がケツを拭く」という暗黙の理解が強化されておりまして(減資はあってもデフォルトは無し)、不安感自体は既に無い筈。ただ、「無い筈」と言う形で断言モードにならないのは、肝心のインターバンク短期金融取引が長期化する量的緩和政策の副作用で死んでしまっているので、「金融システムに関する不安感の後退」が「市場の洗礼を受けていない」状況が背景にありますわな。

『そのうえで、委員は、今後の金融市場調節の運営について、短期資金供給オペの運営上の工夫によって、当座預金残高目標を達成していくことが必要であるとの認識を共有した。』

まぁそりゃ政策の運営目標ですから当たり前ですわな。


○ペイオフ解禁後に当座預金残高目標減額??

『ある委員は、少なくとも来春にペイオフ解禁が完全に実施されるまでは、金融市場や金融システム面の動向を注意深くみていく必要があると述べた。この点に関連して、何人かの委員は、金融システムに対する不安感の解消が一段と進んだ場合には、流動性に対する需要がさらに低下する可能性もある、と指摘した。』

この文章を素直に読みますと、ペイオフ解禁を無事通過→金融システムに対する不安感の後退→量的緩和政策の「量」の必要性の低下→当座預金残高目標額の減少って流れに繋がると思うのですが、まぁ議事要旨に最後の「目標額減少」を堂々と記載すると市場が予期せぬ暴れを起こす可能性もありますし、そもそもが思考実験の状態に過ぎない話しなので敢えて書いて騒ぎを起こす必要は無しという事なんでしょうかね。

ま〜ペイオフ解禁って言ったって、「決済性預金の全額保護」という素晴らしい抜け穴がある訳ですから、付利金利が屁の様な状態にあるうちは実質的にペイオフ解禁は尻抜け状態もいい所で、そうそう大規模な資金シフトは起きないでしょうし、資金シフトが起きなければ「輪の中の弱い鎖」も切れることにはならないと思います。屁でもいいから金利が欲しいっていう資金は既にCPだの現先だのに入っていますし。

とは言いましても、まぁ上記のような論理展開を持って「ペイオフ解禁は無事に通過し、金融システム不安は殆ど払拭されました」って大本営発表じゃなくてお話しになるのは思いっきり予想できる動きですので、ペイオフ解禁通過後に当座預金残高目標の減額が検討課題に上るのかも知れませんな。


○当座預金残高目標減額の障害は?

まず技術的な面を申しあげますと、これは短期金融市場関係者の意見がほぼ一致する筈なんですが、技術的な問題点は(30兆円を5兆円まで一気に落とすとかいう極端なことをしない限り)発生しないと思います。市場で資金需要が一時的に発生した場合の「なお書き」の余地を残しておけばよろし。ただし、またまた為替市場で円売り介入を物凄い勢いで実施しだすとこの限りではありませんので念の為。まぁ25兆円か20兆円位までは無問題ではないかと。

問題は毎度毎度あたくしが申しあげているように「政策の論理的整合性」という部分。まぁ「何でもありだから別にしれっと下げてしまえば」っていう考えもあたくしの頭をかすめちゃったりするのですが(^^)、やはり中央銀行の金融政策が「何考えてるんだかわからん」という状態にしてしまうのは「政策への信認」が失われる結果を呼び込む懸念が思いっ切りあるのでさすがに却下でしょうな。

で、あたくしがいつも申しあげているように、量的緩和政策における「量の意義」をレビューするのが本筋だとは思うのですが、何せ「量を増やす」=「緩和政策の強化」という理屈で突っ走っているので、「量を減らす」=「緩和政策の弱体化」→「金融引き締めですかぁ??」って話しになっちゃうので債券市場大騒ぎになる懸念は大有り。個人的には海外勢の方がこ〜ゆ〜ネタに反応しやすいという印象なんですけれどもね。

ではどうやって話しを有耶無耶にしつつ量を減らす(というのはやはり論理崩壊の上塗りなのであたくしとしてはあまり実行して欲しくは無いスキームですが・・・)にはどうしたらいいかという話が議事要旨の次の部分にしれっと書いてあるように思えるのは気のせいでしょうか??

『ある委員は、量的緩和政策には、金融市場の安定確保や緩和的な企業金融環境の維持を通じて企業のバランスシート調整をサポートするという効果があり、その成果は企業の資本収益率の向上というかたちで着実に現われてきている、と評価した。』

つまりですな、量的緩和政策の「量の効果」については「景気の下支え」「デフレスパイラルに陥らない為のサポート」「金融システム不安に対するアンカー」としての役割があったという理屈を持ち出して、「経済情勢を判断した結果、下支え部分を少しだけ減らしても大丈夫でしょうと判断」と言ったようなお話で当座預金残高目標を減らすって話しはやってきても何らおかしくは無いでしょうなって事でございます。まぁ増やすときは「金融緩和」と言っておきながら減らすときには「さっきの増額は支え効果を狙ったものに過ぎない」ってのも随分ご勝手な理屈だと思いますが・・・・・

議事要旨はこの一文の後にいきなり話題が変わっておりまして、妙なところでこの話題が終わっている事になっているのですが、どうなんでしょうかね〜??

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2004/12/20

お題「オペ騒動始末記」

年末になって突然話題を提供する日銀ってポイント外しませんな。

○債券市場で起きた事

金曜日の債券市場ではご存知のように日銀による長期国債の買入が実施されませんで、時あたかも金融政策決定会合をやっている日でしたので、「もしかして輪番(長期国債買入ね。以下輪番と表記^^)減額を決定か?」などという噂も流れたようです。まぁ誰も「そりゃあり得ないだろう」と思っていても実際に先物が売られちゃったりすると「間違って何かあったら・・・・」と不安にもなるものであります。

2日制の決定会合にしては終了時間も遅くなっていたので、終わるまではあり得ないとは判っていても、ちょっと不安は不安(2日制何もないと12時前に終わるので)ではありましたが、まぁ前場引け前に一気に買戻しが入ってさすがにその時点で不安心理は解消という感じではありましたが。まぁ人騒がせなオペ(見送り)でありました。

以下本件に関する論点整理。


○マーケットの誤解その1:金融調節で意思を出すかどうか

金曜日のドラめもんであたくしはこう書きました。

「昔の日銀営業局的手法」を大変に遺憾だとお思いになっておられるらしい福井総裁がトップにいる関係上、「日々の金融調節で日銀の意思表示を行う」というのは基本的にやらない事になっている(昨年の債券市場超越大暴落の最終局面で期間9ヶ月の手形オペを実施したのが唯一の例外)。

現在の金融調節の枠組みにおいては大体からして意思の出しようも無い上に、そこまでマーケットを細かく日銀の方がヒアリングしていないのでして、日銀と市場の阿吽の呼吸というよりは要するに日銀が短期金融市場をガチガチにコントロールしていた時代と現在では前提条件がそもそも全然違うのですが、何故か昔の感覚で「調節姿勢に変化が見られる」などという意見が出てくるのが理解致しかねる所であります。

まぁ調節に変化があって量的緩和政策の解除でもやってくれた方が相場が動いて結構だという人も世の中大量にいらっしゃるので、その手の見方をしたくなるというお気持ちは理解できますけどね。

(説明不足と指摘されましたので翌日に補足説明した部分を以下記載)

昨日の補足:日銀オペレーションの政策意図とは?

昨日のドラめもんで「金融調節で意図は出さない」という話をしましたが、よくよく見ればあたくし全然説明しないでさも自明で有るかのごとく話を展開しておりました。で、補足説明ですが。

日銀法の改正および組織改正によって現在の日銀において金融政策を決定する機関は「日本銀行政策委員会」という事がより明確化して、政策委員会がより重要になりました。旧法下では政策委員会が「スリーピング・ボード」などと揶揄されまして実質的に執行部主導での金融政策決定が行われたので、まぁ名目は兎も角大いなる変化ってぇ事でしょうな。

で、その政策委員会のうち金融政策について決定する会合の事を「金融政策決定会合」という訳ですが、とにもかくにもこの政策委員会が金融政策を決定するのであって、日々の金融調節は「政策委員会が決定した事を粛々と実行する」というのがお仕事になります。現在の金融政策(量的緩和)の枠組みにおきましては、金融政策の目標が「日銀当座預金残高」ですので、当座預金残高が一定の数値(今なら30〜35兆円)に収まるように金融調節をすることになります。

金利(無担保コール翌日物金利)を目標にした通常の金融政策の枠組みにおいては同じ理屈で日々の金融調節は市場で値段が付く無担保コール翌日物金利が目標数値近辺に収まるように調節を行う訳でして、コールレートが上下に振れた場合に日銀が「金融調節で牽制する」ってのはあくまでも「政策委員会の決定事項に則って行う意思表示」でありますが、上記したように現在の量的緩和政策の枠組みでは「当座預金残高の繁閑を均す」という調節しか出来ないので、意思も糞も無いという話になる訳でございます。

とは言いましても、「最近の調節姿勢に変化が見られるのは何らかの意思表示でしょ」って見方もあるとは思いますが、「金融政策は政策委員会で決定し、決定した政策は即公表」という現在の制度に則りますと、金融調節を行う担当部署が「将来の金融政策を予想させるような行為をする」というのは越権行為も甚だしい訳でありますし、日銀内部のもっとエライ人であっても、政策委員会で決まってもいない将来の金融政策を織り込ませるというのは同様に越権行為でございます。

てな理屈でございまして、「金融調節によって将来の金融政策運営の意思表示を見る」というのは現在の制度上ありうべからざる事と言うわけでございます。



○マーケットの誤解その2:輪番減額は可能かどうか

輪番オペの拡大は速水総裁時代に行われていたものですが、この時に買入額を拡大するたびに金融政策決定会合で決定しておりまして、輪番オペの月間買入額の拡大には必ず当座預金残高目標の引き上げを伴っておりました。

従いまして、政策のロジックから行きまして、輪番オペの減額は当座預金残高目標の引き下げを伴う訳ですな。で、現状の量的緩和政策の枠組みにおきましては、当座預金残高目標の引き上げを行うときに「量的緩和政策の強化」という触れ込みになっていますので、当座預金残高目標の引き下げは量的緩和政策の減殺、即ち金融引き締めを意味する訳でして、量的緩和政策の解除に直結するというお話になる訳です。

即ち、「輪番減額」→「当座預金残高目標減額」→「金融引き締め」というロジックが成立するというのが現在の金融政策の枠組みでありますので、量的緩和政策のコミットメントが成立している現状において輪番の減額は(当座預金残高目標の減額も)あり得ないというのが論理的帰結になるわけであります。


○マーケットの誤解その3:当座預金残高目標の減額に関する誤解

とは言ってもマーケットには当座預金残高の減額があるのではないかという見解はありますわな。現実問題として現在の当座預金残高の30兆円を維持するのが技術的にしんどいというのがある為にそういう議論が行われているというのもありますし、「量的緩和政策のコミットメント3条件を変更するのはどうよ」って言ってしまった水野さんが審議委員に就任したというのもそういう見方を後押ししているという面もあるかと。

しかしながら、先ほど申しあげましたように、現在の量的緩和政策においては「量」に意味があるという理屈で政策を展開しておりますので、「量の減額が量的緩和政策の引き締めに当たる」という結論が導かれる訳です。従って当座預金残高目標の減額を行いたいというのであれば、量的緩和政策における「量の意味」についてレビューを行う(というか要は「量には意味はありません。ゼロ金利+時間軸に意味があったのでした。」って認めやがれって事ですが^^)べきものでありまして、それ無しで当座預金残高目標の減額を行うのは、論理崩壊の上塗り状態でして、中央銀行としてそれで良いのかよって話になるでしょうな。



とまぁ上記のようなロジックを市場関係者が熟知していれば本来「輪番減額」などという想像は起き得ないものでありまして、「そんな訳ね〜だろ」と言いながらも現実に相場が下がっちゃうのは(マーケットが何となくロング気味だったとか他の要因があったにせよ)日銀の不徳の致す所としか申しあげようがございません訳です。で、日銀のチョンボについて何点か。

○日銀のチョンボその1:輪番は資金繁閑の調整じゃないでしょ

日銀のWebってのは物凄くよく作りこんでありまして、「わかりやすい金融経済」などというコーナーに金融調節に関する解説が書いてあったりします。そこには各オペレーションの説明がありまして、輪番オペに関しての説明はこういう風になっております。(http://www.boj.or.jp/wakaru/seisaku/wkinqn1.htm)

国債買入オペ:日本銀行が利付国債を買い入れる事によって資金を供給する。長い目出見た日銀券の増加トレンドにほぼ見合うように行うという考え方のもとに実施。

つー訳ですんで、輪番オペは短期市場における日々の資金繁閑の調整では無い訳でして、オペを月4回3000億円づつ実施するというのであれば基本的には淡々と実施すべきものであって、国債入札日程との調整は必要(市場への介入に限りなく近くなるから)でしょうが、足もとの資金が余剰だから実施を先送りするとか不足だから連日実施するとかいう性格の物では無い筈。

先週来資金需給的に大余剰状態になっているというのはよーーーく判っておりますが、それとこれとは別問題な筈なのですが、何か勘違いしていないかと思ってしまう訳ですわな。しかも金融政策決定会合の日に「当然実施するでしょう」と誰もが思っていた輪番オペを打たないのは「思惑を生んで下さい」と言っているような物でして、まさに日銀による身を切ったギャグの世界という感じですな。


○日銀のチョンボその2:TB売却の政策的意義?

TB買入オペの導入は1999年10月13日の金融政策決定会合で決定されたものでありまして、そのときに日銀はこう言いました。(http://www.boj.or.jp/seisaku/99/pb/k991013b.htm)

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、「ゼロ金利政策」の継続に当たり、金融市場調節手段の機能強化を進めるとともに、その弾力的な活用を図ることにより、金融・為替市場の動向も注視しつつ、金融緩和効果の一層の浸透に努めていくことを決定した。こうした方針のもとで、今般、以下の諸措置を講ずることとした。

という事で、TBアウトライトオペは「金融緩和効果の一層の浸透」のために行うものでして、導入当時当然ながら日銀の買入方向(=資金供給)として実施していたものですわな。で、売却も大昔にやったらしいのですが、まぁこの時期にいきなりTB売却を復活させれば(先週は超久しぶりにやったと思ったら翌々日にも実施)「金融緩和効果の浸透の逆ですか?」という発想が起きても不思議ではない訳ですわな。

まぁ元々99年に実施した時に単に「金融調節の円滑化を図る為に導入」とでも言えば無問題だったのでありますが、実施に当たってさも「金融緩和効果がある」と言わんばかりの触れ込みを行ったのが宜しくなかったという事で、今の人たちに文句言う筋合いではないのかもしれませんが、まぁ論理的整合性を取らないで政策運営をしていると次々と碌でもない事になるって話でしょうな。

下手な言い訳をするとその言い訳の為に更に下手な言い訳をしないといけなくなって無駄なエネルギーが費やされるというお話でしょう。


まぁ市場も市場なら日銀も日銀って事でして。もうちょっと論点があったようにも思えるのですが、話が上手く繋がらん。。。で、金融経済月報に関しては明日にでも触れたいと思います。第一印象は「日銀往生際が悪いな」って感じですが。

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2004/12/17


○タイミングが妙な??輪番オペ

水曜日に実施されると思われていた国債買入(現在は輪番形式じゃないので輪番オペというのは不適当なのですが、昔からの俗称なので年寄りのあたくしもこの用語を時々使います)が実施されずに「???」という感じだった債券市場。月4回のオファーを行う事を考えると、年末進行でもありますのでいつものように水曜に実施するんじゃね〜のって思っていた人は多かったので、昨日もオファーなしで「何かタイミングが変調気味ですな〜」という印象を強くしている人がちらほら。先月も(不覚にも手控え帳面に書いてないのいつだか申し上げられないのですが)皆が「今日はあるでしょう」って身構えモードだった日に輪番オペが実施されずに「あらら?」って事があったのですが、今回も「???」という印象。

まぁ昨日に関して言えば、その前の日にFB3ヶ月もので100円入札事件(えーこれは公取マターにはならないんでしょうかと言ってみるテスト^^)がございましたので、もう一発TB売却オペを実施するタイミングでもありまして、TB売却がある意味「予定通り」実施されております。TB売却は資金吸収にあたりまして、同日に輪番オペを打ちますと「これはもしかしてイールドカーブのフラット化を企図しているのではないでしょうか(短期債売りの長期債買いだから)」などという思惑が発生しちゃったりするので、輪番オペが打ちにくかったというのも確かにあるのですが、それにしても今までまるで機械のように同じようなタイミングでオファーしていた輪番オペの日程がほんの気持ち程度ですが読みにくくなっております。

ま〜ほぼ何も意図は無い、といいますか「昔の日銀営業局的手法」を大変に遺憾だとお思いになっておられるらしい福井総裁がトップにいる関係上、「日々の金融調節で日銀の意思表示を行う」というのは基本的にやらない事になっている(昨年の債券市場超越大暴落の最終局面で期間9ヶ月の手形オペを実施したのが唯一の例外)のですが、ともかくも別に調節をやっている方は特段の政策意図を込めては居ないと思います。あたくしはそう思うのですが、世の中がどう思うかというのはまったく別の問題。

特に組織改革前の日銀における「営業局的手法」というまぁ「あうんの呼吸」と言うのか「調節に意思を込めた職人芸的手段」というのが訳判らんと文句を付けまくるのが得意であった海外投資家の皆様におかれましては、ここもとの「タイミングが良く判らないオペ復活の兆候??」状態にはナーバスになる可能性も高いのではないかと思料される所でございます。で、そ〜ゆ〜見方が流布されだすと、債券市場業界にいる日銀ウォッチャー業務も行っている事になっている方々の中でもあたくしに言わせりゃ〜トンチンカンというかまるで見当はずれの事を言い出す人も存在してますので、「最近の日銀のオペレーションに政策意図か?」みたいな事を言い出す人が出てくるものと推察されます。

そうなるとそれはそれなりに妙な事も起きる可能性があるので一応心の準備をしておくのが吉かと。でもあたくし思いまするに何も考えて無いと見られるので、本件に関する変な思惑に関してはちょっとどうなんでしょうな〜。何せ6月には「海外での武藤副総裁のスピーチを意図的だか意図的じゃないかは知りませんが(っていうか意図的にやってるだろうよイェスパー君よって感じですが)誤訳して『武藤ショック』と言い出したのが債券相場の下落を加速させた事件」ってのが有った位でして、日銀に関するネタに関しては債券市場関係者って意外に「乗せられやすい」という傾向にあるんで、まぁご注意ありたしって事でしょうな。


○短期国債売却オペまたも実施

と言う訳で昨日も短期国債売却オペが実施されたのですが、今まで実施していなかったオペをいきなり実施しだした事に関しても上記の話と同様に「政策的な意図」を気にする向きが出てくるかと思います。

「長期国債の買入はベースマネーの供給で、短期国債の買入はただの短期金融市場での資金繁閑調整」という理屈の根拠もイマイチ「ハァ?」って感じではありますが、一応そ〜ゆ〜事になっている以上、特段の政策意図がある訳ではないかと存じます。手形オペ(売出手形)よりはTB売却の方が売ってるものと買ってるものが同じ短期国債という商品になりますんで、売ったり買ったりをバカスカ実施しても玉不足という事態になりにくい(勿論別の事情で流通市場が玉不足の場合は話は別ですが)ので使いやすいという側面もあります。ただし証券決済のタイミングにあわせてオペを実施する必要があるので3営業日後決済じゃないとワークしないという問題点はあるのですが。

ところで、この短期国債の売買オペレーションなのですが、実施が正式に決定されたときに単に「短期金融市場におけるオペレーション手段の拡充」と言えば何の問題も無かったのですが、実は導入時に「金融緩和効果をより高めるために」とかいう意味不明の屁理屈をつけておられたようでして、導入を決定した金融政策決定会合において「政策意図がおかしい」といった理由で当時の中原伸之審議委員と篠塚英子審議委員という「過激な金融緩和派」と「過激な金融引き締め派」の両巨頭が反対していたそうで、いかにその理屈というか屁理屈が牽強付会なこじつけであったかという事が判ろうかと言うものです。

その屁理屈を援用すると短期国債売却オペは「金融緩和効果を阻害する」という話になりますので、これまた当時のロジックをまともに信用していたり、量的緩和政策における「量の効果」について結構大真面目に信用している人が多いと思われる海外投資家の皆様におかれましては、変な思惑を発生するきっかけになる可能性もある訳でして、まぁこの面からもご注意が必要かと存じます。

なお、この「短期国債売買オペレーションの政策意図云々」という部分に関しましては、昨日の時事通信社提供の「時事メイン」コラムの「金融観測」に書かれております記事を思いっ切り参考にさせていただいております。いつも示唆に富み勉強になるコラムでございますので、読者様におかれましては情報ベンダーに時事メインを導入されているのであれば見逃す事の無いようにされるのが吉かと存じます(^^)。


○日銀ネタ残りは雑談

余談その1:余談じゃないんですが、今日の金融経済月報でどの位日銀が白旗を揚げるかは注目しませう。福井総裁や水野審議委員のお話を聞いているとまだまだあきらめないモードでしょうし、短観も全面悲観ではないですし。

余談その2:神戸支店の新札すり替え攻撃ですが、諭旨免職になった発券課長様におかれましては日銀内部の特別調査チームの聴取に対して「虚偽の説明を行い、交換が行われたことを否定した」(日銀Webの「日本銀行券の不適正な取扱いに関する特別調査結果等について」より)そうですな。で、懲戒解雇じゃなくて諭旨免職ですかはあそうですか。銀行業界では監督官庁の検査忌避行為で刑事告発だの逮(以下略)。

まぁしかし世も末ですな。失った信頼はそう簡単に戻らんよ。

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2004/12/16

○もうね、アフォか馬鹿かと

昨日実施された3ヶ月FBの入札。まぁ一昨日の短期国債売却オペだの何だのという話からして強い入札になるんじゃネーノって話はあったのですが、何と発行量5兆円が丸々100円落札。この時点で利回りは当然の如くゼロ%というのも無茶な話ですが、事務経費考えたらどこからどう考えても利回りがマイナスになってしまう訳で。

まぁ4半期末で公社債の残高が必要な人がいたり、足もとの資金が潤沢過ぎるので運用するための玉が枯渇しているとか、まぁそうは言っても落札実績だとか店頭売買高を稼ぐのが営業政策上必要だとか色々と言い訳はあると思いますが、利回りゼロってどうよって感じでしょう。唯一の救いは今回の100円落札の按分比率が90%以上あったことでして、皆で気が触れたように99兆9999億9000万円の応札を100円にしている訳ではないことくらいでしょうか。

まぁ為替がらみから起きるマイナス金利というのはあちこちで既に発生しておりまして、コールレートがマイナスになるというケースもちょくちょくありますが、まぁこのマイナス金利はそんなに沢山出来ている取引でもなくまぁ局地戦のお話だったという感じです。ところが今回はいきなり5兆円ですよ先生って感じでございまして、もう全面火の海状態という感じでございます。まさに地獄の火の中に投げ込まれる者たちとはこの事かと。

で、もっと間の抜けた話はその後の業者間取引でプラス利回りでの売買が行われている事ですか。まぁ落札しなかったあるいは落札額が少なかった業者が嫌がらせで叩いているのかもしれませんがね。

為替市場での介入の為(とは岩田副総裁以外の日銀は死んでも認めませんが)に豪快に当座預金残高目標を引き上げてしまった弊害が見事に発生している訳でして実に香しいものを感じますわな。何やってるんだか。正直、金余りがどうのこうのとか言う問題ではなくてこれは単に量的緩和政策の量の出しすぎ状態なだけですんで、だからどうなのって話ではないと思いますよ〜ん。


余談ですが、市場観測では野村證券さまにおかれましては今回落札ゼロだそうで、業者としての矜持みたいな物を感じましたな。

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2004/12/15

○短期国債売却オペ

昨日は何年振りだったか忘れましたが(ていうか単に記録手元に無いだけです、スイマセン)、短期国債の売却オペが実施されました。で、売却オペ実施された瞬間にあたくし激しく痛恨だったのですが、実は一昨日の時点で日本証券業協会が発表する売買参考統計値のうち短期国債の複数銘柄で「利回り0%(=単価100円)」という大変に美しい事態が生じていた事は気がついていたので、話のネタにしようかな〜と思っていたので、ネタにする前に「やられた!」って感じです。

売買参考統計値って奴は日本証券業協会のWebから誰でも閲覧できまして、算出方法もそこに書いてあるのでまぁネタバレにならないと存じますが、協会会員のうち報告会社ってのがありまして、この人たちが「今日の価格(利回り)は幾らざます」と報告をしたものを集計しているのですが、以前は「利回り0%というのはあり得ない」という前提に立っていたようで、報告値に利回り0%だのマイナス利回りだのというものを混ぜると協会の担当から「何じゃこりゃ」というチェックが入っていたのですが、短期国債市場での玉無し無し状態を反映してついに)0%もオッケーって事になったのでしょう。

で、日本銀行による短期国債売却オペという事になるのですが、まぁ売買参考統計値で「利回り0%」ってのが出た銘柄が物の見事に売却対象銘柄になっていましたので、今回のオペ実施にあたっては「利回り0%はどうよ」っていうメッセージもこめられているとは思います。また、売却額が3000億ぽっちと相場を壊す事も無く(というか干天の慈雨状態なのですが)、オペの打ち方としては中々宜しかったのではないでしょうか。

ちなみにご存知かと思いますが、短期国債の売買オペは長期国債の売買(というか買いしかないが)と政策意図が全然違いますので、「償還手数料込み利回り」という無茶苦茶(ではなく合理的ではあるのですが)な利回りで売買されたりする事もある期近の長期国債(市中残存量が少なく高クーポンの銘柄群)の売買参考統計値をゼロとかマイナスにしても、売却オペはやってくれません。残念!(というか一瞬考えたのですが・・・・^^)

ちなみに、相変わらず日銀的には「金利ゼロはありえん」という事になっていますので、短期国債だろうと長期国債だろうと、日銀との売買取引において「利回りゼロ以下」という仕切り価格は存在しておりません。

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2004/12/10

○「結論先にありき」の姿勢が見られるような気がするのですが・・

昨日は小難しい論文シリーズでありまする「日本銀行ワーキングペーパーシリーズ」をご紹介しましたが、先日発表された今月の論文は2本とも雇用者所得がどうのこうのとかのお話になっておりまして、もう一本をざっと斜め読みしますとこれがまた昨日ご紹介した論文と同じような印象を受けました。

と申しますのは、「これってまた『結論先にありき』じゃね〜の?」って印象でして、何というかまぁ研究するのは結構でございますが、アプローチがあまりにも「結論先にありき」的であるというのに福井総裁以来の「謎の金融政策」にも通じるものを感じまして、「大丈夫かな〜」と激しく懸念しちゃう訳であります。

福井総裁就任後に実施された「金融政策の新企画」では「企業金融が目詰まりしてるから資産担保証券市場の拡大が必要であり、日銀が資産担保証券の買入を行う」というのが一番派手でございましたが、ご存知のように結局実績はろくすっぽ上らず、国会でその点に突っ込みを受けると「実績が上っていなくても無問題」と楽しい開き直り(まぁ元々失敗してるんだから開き直るしかないですが^^)をかましておりましたが、この政策もまた、「企業金融が目詰まり」って時点で日銀短観の資金繰りDIとか貸出態度DIとかと全然整合が取れていない上に、当初買入対象にしていたのが、誰もが購入意欲のあるシニア部分という訳でして、そりゃ実績は上らんわなってなもんです。

そういえば「債券流通市場の整備に資する」と言い出して折角作った「補完的貸付制度」も結局申し訳のように9月末に一回やっただけという実にしょぼい状態。何せ(要綱が出た時悪態つきましたが)使う側からしたら見事なまでに使いにくい制度でございまして、これまた見事な張子の虎。


まぁ鳴り物入りで作った「新制度」が事実上使いものにならないって話でしたら別に毒にも薬にもならないお話なので無問題なのですが(「この新制度はつまらん!(大滝秀治風に^^)」と考えた日銀の事務方が、内容をわざと使い物にならないものにして骨抜きにするという巧妙なサボタージュをしてるんだったら神認定ですが^^)、これから量的緩和解除がどうのこうのって話になった時に、判断の材料を「結論先にありき」ってアプローチをされると誠に如何なものかと思うわけです。

先日の水野審議委員の就任記者会見で『中央銀行は──企業から直接ヒアリングしている分だけ、データは市場参加者よりも多少持っているとは思うが──』って発言がありましたが、まぁ日銀としてはそ〜ゆ〜自信というか自負というか認識を持っているって事なのでしょうから尚更たちが悪いっていうのはちょっと口が悪すぎるかもしれませんが、「良く判っている」と自負されながら「結論先にありき」攻撃をされるとまさに最強かつ最凶となってしまいますんでご注意ありたしって所でしょう。

#財政再建問題で大暴れモードが入りつつある財務省にも言えると思いますがね。


それでは〜(^^)

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2004/12/09

お題「突っ込みどころ満載の調査統計局発レポート」

「日本銀行ワーキングペーパーシリーズ」ってのがありまして、概ね調査統計局のお方が色々と研究成果を出しています。正直、読むのが面倒なものが多くてスルーしちゃう事が多いのですが、何せ調査統計局っていうのは政策判断に重要な影響を与えるお仕事をしておりますので、レポートの表紙に『論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。』と書いてありますが、それはそれとして「調査統計局ではこんな事を考えている」っていう参考にはなるのかと思います(だって調査統計局から見て無茶苦茶な研究だったら日銀から発表しないでしょ)。

ちなみに、『日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。』という事のようですので、あたくしのような無識者のコメントはど〜でも良いという事で、まぁ世界の片隅で悪態を呟いてみましょう。結構長いしムツカシイのでほんのさわりしか突っ込めませんが。

URL直リンだと多分表示されませんので、日本銀行のWebから辿って下され。今朝だとまだトップページのWhat'sNewにあると思います。ペーパーのお題は『製造業における熟練労働への需要シフト:スキル偏向的技術進歩とグローバル化の影響』であります。

ちなみに、このペーパーに関しては『商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。』ってありますので、商用でもなんでもないあたくしの駄文ですが、以下引用(『』内)部分の出所を改めて申しあげますと、日本銀行ワーキングペーパーシリーズNo.04−17、2004年12月の「製造業における熟練労働への需要シフト:スキル偏向的技術進歩とグローバル化の影響」、執筆者は調査統計局の佐々木仁さんと桜健一さんです。


○SBTCとは??

いやまぁ冒頭から何か凄い話の展開を予想されるのですが・・・

『米国をはじめとする主要先進国では、1980年代から1990年代にわたって、熟練労働者(ホワイトカラー)と非熟練労働者(ブルーカラー)の賃金格差が拡大した。その背景には、非熟練労働者から熟練労働者への需要シフトが指摘されている。こうした熟練労働者への需要シフトが、近年わが国でも生じてきているのではないか、というのが本稿の問題意識である。』

まぁ術語の定義問題なんで突っ込むのも何ですが、ここで使っている「熟練労働者」と「非熟練労働者」って、学術的にはそう使うのが正しいのかもしれませんが、何かこの時点で違和感を感じるお話であります。

『その熟練労働への需要シフトを引き起こす最も有力な要因とされているのが、スキル偏向的な技術進歩(skill-biased technological change:以下「SBTC」)である。SBTC とは、特定のスキルを有する労働者を相対的に多く用いるような技術変化を指しており、具体的には、コンピュータやソフトウエアの使用に必要なIT 関連技術、高度な技術・熟練度を要する製造設備の導入、或いは研究開発などが含まれる。』

というお話でして、まぁ言って見れば「付加価値の高い産業」って事のようなのですな。まぁアイテー業界のお仕事って特定のスキルが必要といえば確かにそうではありまして、あたくしなんぞしょぼい某アイテー会社で総務経理やってましたが、正直技術はよー判らんかったですな。熟練が必要。

しかしですな、アイテー業界で熟練を必要とするお仕事っていうのは本当にホワイトカラーか??っていう突込みが既にここで入る訳でしすな。まぁ研究部門とかになると上記の言いたいことも判らんではないのですが、何っつーかこの辺で前提が強引ではないかという悪寒が漂って来るわけです。


○豪快な前提条件

でもって、冒頭にそんな話をしつつ色々と書いてあってまぁお暇な時にでも読んでいただけると吉なのですが、このペーパーで分析をする前提がちょっと豪快ではないかと思ってしまう訳です。曰く、

『本稿における分析対象であるが、産業は、経済グローバル化と熟練労働への需要シフトとの関係を検証するという観点から、非製造業は分析の対象とせず、製造業に限定する。』

まぁここまでは良い(つーか直感的に申しあげまして、SBTCがど〜のこ〜のとか小難しい話じゃなくて、製造業における国際分業状態の結果付加価値の高い部門の比率が高くなっただけではないか思うが)としまして、

『また、近年サービス業を中心に非正規雇用が拡大しているが、製造業では非正規雇用のウエイトが依然低いことから、本稿で扱う労働者は正規労働者に限定する。』

うーむ、何となく違和感あるがあたくしの頭ではコメント不能。この次が中々良い感じで腰が砕けます。

『最後に、労働者スキルの分類は学歴を基準とし、大卒労働者を熟練労働者、その他学歴労働者を非熟練労働者と位置付ける。』

(゜д゜)ハァ?(゜д゜)ハァ?(゜д゜)ハァ?



○豪快な前提条件に豪快な論理展開あり

ってな訳でして、上記の時点で予想されるように、物凄く簡単にこのペーパーの論理展開をあたくしなりに読みますとのですが、

「大卒労働者とその他学歴労働者の賃金格差が拡大」(これは統計的事実)

「非熟練労働から熟練労働の賃金格差が拡大」

「非熟練労働から熟練労働への需要シフト」

『「SBTC やグローバル化により、それぞれの業種内で大卒労働者に対する需要がその他学歴労働者に比べて相対的に高まっている」』

『非熟練・熟練労働者間における資源配分の調整が、製造業に含まれる業種内では、それなりに進展してきたことを示唆している。』

『』は例によってこのペーパーの纏め部分から引っ張ってきたのですが、はぁはぁそうですかって感じです。

で、まぁ色々と書いてあって紹介しきれないのですが、どうも国際分業みたいな動きが高まると労働生産性が高まりまして、熟練労働者(=高学歴な労働者)への需要が益々高まります。って事らしいのですが、本当に高学歴だから高付加価値の労働をやってるの??って話になると激しく?がつくのですが。


○よー判らん理論なのですが

あたくしごとになりますが、アイテー業界の川下の会社、と申しましても当時はとある技術では有名な(中身が伴っていたかどうかは別として)企業であったのですが、まぁその企業にいた時(従業員20人ちょっとでしたが)に製造開発をやっていた10数名の従業員で大学出ってひとりだけだったと記憶しておる訳でして、研究開発って言ったって学校で勉強したものが役に立つ世界もあれば役に立たない世界もあるわけでして、職業による訓練ってのもあるのでは無いかと思うわけですな。

と、思っていたら、このペーパーの中でもこんな話をしているのですが、

『人的資本理論によると、教育は、その投資効果として労働者の人的資本を蓄積し、結果的にそれが生み出す賃金を向上させる。その教育には、学校教育だけでなく、職務をつうじた職業訓練も含まれる。』

『こうした人的資本理論をベースに導出されたのが、「ミンサー型賃金関数」である(Mincer[1974])。その「ミンサー型賃金関数」によると、労働者の時間あたり賃金の対数値は、その労働者の教育年数と勤続年数およびその二乗値の関数として示される。』

だそうなのですが、どうもその後の論理展開を見ていると結局はサンプルデータの厚生労働省「賃金構造基本統計調査」からの統計処理に使っているだけのようでして、何だかな〜って感じです。まぁその式を使って出てきた結論は、

『こうして計測された学歴間における時間あたり賃金格差の推移を1985年から2003年までプロットしたのが、図表3 である。推計誤差の問題などもあって結果は幅を持ってみる必要があるが、大卒労働者とその他学歴労働者の格差(「大卒−高専・短大卒」、「大卒−高卒」、「大卒−中卒」)は、いずれも1985年から2003年にかけて、僅かながら拡大していることが読み取れる。』

だそうです。


○直感的に違うんじゃね〜のって話が続くのですが

ということで、賃金統計からの推計結果から・・・・

『近年の高学歴化に伴う大卒労働者の供給拡大は、大卒労働者の時間あたり賃金を相対的に押し下げる方向に作用する筈である。しかし、以上の計測結果は、そうした供給要因による時間あたり賃金の下落圧力を打ち消すのに十分な程、大卒労働者への相対的な需要が拡大してきたことを示唆している。』

って言ってるのですが、それは単に散々不景気が続いた結果、製造業の中で主要大企業と中小以下の企業の業況格差が拡大して、相対的に高学歴の雇用者が多い大企業と中小以下の企業の賃金格差が拡大しただけの話ではないのかと思うのですが。まぁそれが「大卒労働者への相対的な需要が拡大」だと言ってしまえばそれまでなんですが、何だかな〜って感じです。

で、まぁこんな話になっているのですが、どうも浅学非才のあたくしはどう突っ込んで良いのかさっぱり判らん。判らんがどうも違和感のある表現だ。

『以上を纏めると、大卒向け賃金支払い比率は、「国際競争力を喪失した業種から高い競争力を有する業種に向けた大卒労働者の業種間シフトを伴いながら、主に同一業種内で大卒労働者が増加する業種内シフトによって上昇してきた」と結論付けられる。こうした動きは、「SBTC やアウトソーシングの拡大を背景に、業種内における大卒労働者への相対的な需要が拡大している」という本稿での仮説と整合的である。』

・・・・・・・・・・??


○全然突っ込み不足ですがあたくしの感想

いやまぁいいんですけど、何か単に不景気に伴い企業間格差が拡大しているのを物凄い勢いで礼賛しているように読んでしまうのは、あたくしが負け組だからなのかもしれませんが、何と言うか「そりゃどうなのよ」って印象が全編に渡って感じられる所であります。まぁ物は試しにご覧下さい。何と言うか浮世離れしすぎではないかと思いますな。

浮世離れしてても研究ってのはそれはそれで重要ではありますが、日銀の調査統計局というところでこ〜ゆ〜「お研究」をしてて良いのかな〜って違和感は残るのでありました。もっと勉強して読みこなさないといけませんな。

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2004/12/08

お題「武藤副総裁講演に関して思う」

月曜日にご紹介した先週末の武藤副総裁の講演ですが、ご紹介の中で触れまなかった部分に重要な示唆があったようであたくしの目の節穴振りに大変恐縮至極なのでありますが、その点に関しては東短リサーチのウィークリーレポートとか、昨日の時事メインコラム「金融観測」などで指摘されておりますんでそちらをご参考に。要するに「今後日銀が決済システムの構築に関して色々と考えている」って事を示唆してますよって話。東短のレポートでは「武藤さんの量的緩和が決済制度の改革を遅らせているって指摘は武藤さんが量的緩和長期化に対して否定的になりつつある」という話もあったのですが、それはちと読みすぎのような気も。


で、まぁそちらの話は兎も角として(というか二番煎じをするのも何ですし、まだあたくしがちゃんと理解できていない部分があるので)、別のお話を致しますと、「この講演もまた日銀事務方(というか企画というか)の意見を忠実に語っているな〜」って印象が起こる訳でございます。何せ今回の決済システムに関る話は超マニアックなお話でして、いくら武藤副総裁が優秀なお方だとしてもここまでの話(月曜にご紹介したときに「よく出来た講演要旨」と申しあげたと思いますが)をする為には、事務方から相当に事前準備をしてもらわないと厳しいかと存じます。というか恐らく事務方が原稿を用意した上でレクチャーをしたのだと思いますが(^^)。

てな訳でして、以前からドラめもんで指摘しておりますが、武藤副総裁が外部でモノを言う時は毎回「日銀事務方の意向を忠実に外部に向けて発信している」という印象が強うございます。この点に関して対照的なのは日銀執行部の残り2名でありまして、無闇やたらと出番が多く、特に記者会見や国会などでよく言えば「自分のお言葉」、まぁ要するに「不規則発言」というか「情緒的な表現」が多くマーケットに燃料を投下して下さる福井総裁や、相変わらず自説の開陳にご多忙で時に「ええっ!!」と言いたくなるご発言(国会で同席している福井総裁と違う見解を堂々とご披露して下さったり、リフレ派経済学者大集合のセミナーで訳の判らん「ETF転換型国債の発行」などという話をしてみたり)をして下さる岩田副総裁という2名の「暴れん坊将軍ズ」とは大違いですな〜って感じ。


まぁ次期総裁含みで格下の副総裁に就任したなどとゆ〜話をしては良くないのですが、(財務事務次官と日銀副総裁を比較したてどっちが格上かど〜かは旧官制というふる〜い話を持ち出すと判り易いと思うのですが、日銀副総裁の位置づけがわからんかったので。ちなみに各省次官は勅任官になりますので「閣下」と呼ばれます。)まぁそうでしょうな〜と世の中的に推測されている武藤副総裁が日銀事務方の意向を一番良く汲み取り、「量的緩和政策を直接に国債管理政策にリンクして緩和政策を延々と続けるような事はしませんよ」と言った趣旨のお話もして下さる訳でして、まぁ暴れ馬コンビ(というかお互いにタッグを組んで暴れているわけではないのでコンビではないですが)の福井総裁あんど岩田副総裁よりも日銀内部から見ると遥かに「頼りになる存在」になりつつあるのではないかと存じます。

何故か暴れん坊将軍ズのお二方と比較して外部で情報発信をする機会が極端に少なく、またその場も先日の講演は「金融情報システムセンター」というまぁ一般ピープルというよりはマニアックな専門家っぽい会合であるように、割と「専門的な場所」。国会に出てくるときに武藤副総裁が出てくるというのもあまり印象がありませんし、大体ドラめもんでネタにした武藤副総裁の前回の出番は6月18日の石川県での金融経済懇談会でありました。その前は現在過去の作品の未整理箱に入ってますので少なくとも半年は遡ると言う事でして、外部から見ると妙に印象というか影の薄い存在になっているように見える武藤副総裁。


しかし偶に出てくる時に発信される情報は日銀事務方の意向を忠実に代弁してくれますし、激しく地味なのですが結構重要な話をしている事も多いと来ておりますので、着々と内部の掌握を進めているのかもしれませんね。まぁ官僚機構のトップに立たれるようなお方ですからそ〜ゆ〜事はお手のものだと思う訳ですが、まぁともかくとして、浮き上がっているという感が強い暴れん坊将軍ズよりも地味ながら武藤副総裁の偶に出てくる情報発信は注目していきたいと思います。



昨日あまりにも超大作を作りすぎてしまったので疲れましたって事で(というのはウソで、ちょっと昨日は突発の会が入ってしまったので、やろうとしていた準備が出来なかったというのが事実です、スイマセン。)本日は甚だ簡単なお話になってしまいました。恐縮至極。ちなみにこの分量はやたらと同じ話を繰り返してくれるので引用するのがややこしかった水野審議委員のインタビューネタで過去最高の分量になってしまった昨日の4分の1です^^。








2004/12/03

○財務省の金利スワップ取引続き

あたくしの悪態が聞こえたのか(わけはね〜って)財務省さまにおかれましては一昨日の懇談会「国の債務管理のあり方を考える懇談会」の議事要旨と資料を早速財務省Webにアップしました。第1回の議事要旨のアップまでの時間と大違いなのはちと微苦笑って感じでしたが。

で、昨日悪態をついた金利スワップに関しての資料もあったのですが、それに関して(あまり深く調べてないので印象的なお話ですが)愚考というか感想。


・スワップ取引でコストコントロール?

資料(は財務省のWebから「審議会一覧」ってのがメニューの中にあるので、そこから辿って下さいませ)をみるとCaR分析とかいう訳のわからん概念がございまして、「将来の金利変動パターンについて確率的なモデルに基づきシミュレーションを実施、利払費用の平均値(コスト)や利払費用の分布の幅の大きさ(リスク)を計測、定量的な把握を行う分析」である。などと書いてありまして、どうも大真面目にコストをコントロールするような書き方になっております。

そもそも将来の金利変動パターンって景気動向だの財政状況だのに依存するお話でして、景気が良くなって金利が上昇すれば財政的には税収が増加するから別に無問題というか却って目出度し目出度しですし、財政状況に関しては政治マター(と言いつつも財務省さまの力にも大きく負う所はありますが)ですからコントロールも糞も無くて、「財政再建を頑張りましょう」で終了のような話ではないかと思ってしまう訳です。

だいたいからして、毎年国債発行計画見直してるんだからそうそう「不測の事態でもう駄目ばい」って事はないでしょうに・・・・・

昨日も申しあげましたが、鳴り物入りで法案まで通した(そういえば審議中に「こんなこと必要なのか」と衆議院財務金融委員会で何と共産党の佐々木委員に突っ込まれていたと記憶しておりますが^^)以上、何かやらにゃーいかんって話ですので、大真面目にやっているのか仕方がないからやっているのかは正直判らん(当時の人は理財局にいるわけでもなかろう)ところでして、まぁ渋々やっているのであれば、財務省の皆様にもご同情申しあげたい所ではございます。


・諸外国の例

資料には諸外国に於ける金利スワップの活用ってのがありまして、欧州諸国の例が挙げられているのですが、どうもこの諸国ってユーロ導入の縛りがあって財政赤字の削減をしないといけない人たちであって、日本と状況が違うような気がする訳です。

特に大物のフランスとドイツのスワップ取引の目的に「資金調達コストの削減」ってのがある訳でして、要するに国債発行年限をスワップ取引を用いて事実上短期化するって話になっておりますわな。日本の場合は年々国債発行額が絶賛爆発中(福井総裁に言わせれば地雷源ですな)であって、どちらかと言えば低金利のうちに調達コストを長期で固定化しましょって方向性になっているので話がだいぶ違うと思うんですが。

まぁこの辺に関しての知識はあまりないのでイメージ話で甚だ恐縮ですが、どうも妙な違和感を感じたので・・・・・・


それでは〜(^^)/~~

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2004/12/02

お題「やる必要あるの?・・・」

10年入札を前に米国株式大上昇という心温まる展開でございますが、まぁ下がった方が入札自体はやりやすいでしょうな。というわけで今日もまた相場に関係が微妙にあったり無かったりする小ネタで。そういえば昨年も一昨年も12月って書き物のネタが無かったりしたな〜などと思ってみたりするわけです(^^)。


昨日は第2回になる財務省「国の債務管理のあり方に関する懇談会」が実施されまして、報道によりますと席上来年度の国債管理政策の新たな施策として新型個人向け国債(5年もの固定利付債)導入、国債の海外説明会の実施、国債の金利スワップ取引の実施っていう3本建てが予定されているそうです。まぁ固定利付5年債の発行は結構なお話だと思いますが・・・・・

国債の金利スワップ取引に関してはブルームバーグの報道によりますと「2008年度に大量の国債償還が発生する状況のなか、情勢次第では借り換えに伴う調達コストが大きく上振れするリスクがある。このため財務省では。2008年度を超える長期の『固定払い・変動受け』と2008年までの中期の『固定受け・変動払い』の金利スワップを組み合わせて実施する。実施時期は2005年度下期以降の予定、取引規模は2000億円ー3000億円(想定元本ベース)と見込んでいる」との事。

まぁわざわざ法律まで通してやる事にしちゃった「スワップ取引」なのでやらない訳には行かないというのはよーーーく判るのですが、この程度の話であれば「借換債を長期ゾーンで発行増」+「買入消却の増加」で楽勝でお釣りが来る話ですし、どう考えても市場の厚みが国債の方がでかいでしょうから、マーケットインパクトも小さいと思う次第でございます。

ついでに申しあげますと、国債の発行だの買入消却だということであれば、その場(というか受渡が終了した段階で)取引関係は終了なのでややこしい話はございませんが、スワップ取引という事になればスワップ取引の期限がやってくるまで取引関係は終了しない訳でして、相手方の信用リスクってぇものまで管理する必要があるという面倒なお話。

信用リスク自体はそれなりに担保を取ったりしてカバーするんでしょうが、取引再構築コストまで全部完璧にカバーできるかという話になると、こればっかりは「その時になってみないと判らない」って面がございますし、取引相手方が日本撤退するとかお陀仏さんになるとか色々と世の中あるでしょうし、一夜にして金利が数%飛んでしまえば取っていた担保で取引再構築コスト賄えない(そこまでカバーする担保まで出せと言われたら誰もやらんでしょ)でしょうし、まぁ来年度下期からスタートらしいですが、どうなるのかお手並み拝見でございます。



他に代替手段が無いなら仕方無いのですが、どこをどう考えても従来の「買入消却」で間に合う話(唯一意味があるとすればオフバランス取引なので予算措置が不要って事ですかねぇ)をわざわざ手間隙掛け、しかも従来施策よりも後処理が面倒くさいという「新施策」をやるというのはどうも「???」でございます(なんて事は会社の看板背負ってたらだと書けないよな〜)。

福井総裁みたいに鳴り物入りで「資産担保証券の買入」という「新施策」をおっぱじめておいて、買入実績が伸びない事を国会で突っ込まれて「これは買入実績が伸びないで市場が拡大するのが最もあるべき姿である」と堂々と表明する(ちなみにあたくしは「中央銀行が資産担保証券を買い入れるのはいかがなものか」って主張してますんで、この福井総裁の開き直りには結構感動しちゃいましたが^^)勇者も世の中にはおいでですが、ど〜考えてもこのスワップ取引は大真面目に国債管理政策に組み込まれるようですので、上記したような事が色々と気にかかる所です。再度申しあげますが、他に代替手段があり、しかもそちらの方がスムーズに機能するのですから、法案をわざわざ通したから云々というような建前は気にしない方が良いのではと思うわけです。


ええ、将来このスワップ取引を「償還の平準化」以外の目的に使い出すって意思があるのであれば話は別ですけどね〜をっほっほ。


あたしゃーこのスワップ取引問題見てると、城山三郎さんの小説「官僚たちの夏」の中にある登場人物のせりふを思い出すわけですよ。

『役人は、とかく新しい幟を立てたがる。法律をつくれば、点数も上るし、マスコミにとり上げられ、後々まで有名になるかも知れん。だが、よく考えてみれば、本当に新しい法律がなければ動かぬような事柄はほとんどないはずだ。むしろ法律づくりに熱を上げれば、枝葉のことにとらわれて、問題の解決をおくらせる心配がある。行政官としては、たとえ地味でも、ひとつひとつの問題を実際的な形で解決することに努力すべきだ。』

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2004/11/30

お題「国債入札制度に係わるドラめもん的雑感」

物凄く真面目に取り上げだすととても重いネタなんですが、ちゃんと考えが纏まっているわけではないので雑談的に。

議事要旨を見てないのですが、報道によりますと昨日の国債投資家懇談会では国債引受シンジケート団の廃止がどうのこうのという話題が出ていたようですな。まぁ国債市場特別参加者制度が本格稼動している訳ですからシ団の廃止も検討しても宜しいかと思います。で、そんなこんなで国債の入札制度に改善の余地は無いでしょうかって話はここ最近のネタでもあったりするようです。

○応札価格の刻みの問題

応札価格の刻みがちと荒いな〜と思うのは10年国債。何せ昔のように豪快なディーリング相場では無い昨今において、応札価格の刻みが5銭というのは如何にも荒すぎ。5銭というのが0.5bp以上と言うことでして、業者間の呼び値公称刻み幅以上であります。ついでに申しあげれば、最近はあまりにもAsk-Bidがガチガチになっていたり、相場自体が全然動いて無い時なんぞには0.25bpなんぞで堂々売買しておりますので、まさに呼び値幅よりもデカイ応札価格の刻み幅であります。

現在のように常に入札が過熱してくれる(ただし10年国債に限って言えば最近あまり過熱しない傾向にあるのですが)のであれば「按分になりそうな価格の上にも応札しなきゃ」などという動きも出てきますので発行体ウハウハではありますが、相場が何となく弱くなるとこの刻みが逆効果として作用しそうな悪寒がする訳でして、まぁ改善の余地があろうかと思う訳でございます。

ちなみに、2年国債も本当は刻み1銭ですと値段としては荒いのですが、ゼロ金利がいつまでも続く訳でもなし(と言いつつまだまだ続くと思っているあたくし)、まぁ短期金利がそれなりに動くようになれば無問題かとは思います。0.5銭刻みにでもなるとまぁ便利は便利ですが。


○落札限度額の問題

先ほど「ここ最近の10年国債入札はあまり過熱していない」と申しあげましたが、この「あまり過熱しない入札」に貢献しているのが落札限度額の存在ではないかと思っております。

特に2年国債入札で思いっきり顕著に見られるのですが、どこぞの大手業者が代わる代わる発行量の7割くらいを落札するというアホウな状態が毎月のように発生した挙句、先月の入札のように過熱しすぎで7割落札組が手を引いたら「そんなに入れたくはね〜けど7割落としてくる人がいるから多めに応札するしかありませんな〜」ってなもんで多めに応札した人が叩き投げモードになってしまうわけでして、落札限度額が無い入札で特定業者の買占めが行われるというのも如何なものかと思うわけです。

まぁ目先的には入札が過熱したから発行体としてはオイチイですが、より長い目でみれば馬鹿入札の連発は国債の安定消化を阻害するものでございまして、入札はあまり馬鹿馬鹿しく過熱しすぎず、かといって毎回入札が割安になるというのも変な訳でして、その辺のバランスはムツカシイですが、特定業者が毎回のように買占める入札(2年の他には短期国債もその傾向あり)というのは制度改善の余地があろうかと思います。

10年国債の場合は落札限度額がありますので、1社で発行額の殆どを抑えるという荒業ができません。その為に「そんなに馬鹿馬鹿しい高値で応札しなくても買占め攻撃にはならないでしょう」という心理が働いて比較的まともな入札になるという結果になるという事でして、まぁ応札限度みたいな発想も必要ではないかという気はする訳です。あるいは米国債みたいに自己勘定と顧客勘定での応札を分けて自己勘定だけ落札限度だか応札限度だか忘れましたが、リミットを設けるとか、まぁやり様はありそうですな。


○応札限度額の問題

同じような理屈なのですが応札限度額問題。現在の国債入札では応札限度額がございませんでして、応札を行う日銀ネットでの入力可能額が事実上の応札限度額になっております。で、どういう事が生じているかと言うと、短期国債なんかでは99兆9999億9000万円などという応札をする人が続出しちゃうわけですわな。まぁ短期国債の場合は極端ですが、「多分この価格が最低落札価格になって按分がかかるんでしょう」って価格に10兆だの20兆だのという応札が入るケースも相変わらずありまして、お蔭で応札倍率が幾らかという事が何の意味もなくなる(応札倍率が低いときだけ参考になりますが)という弊害も生じております。

ちなみに、現物株式のディーラーもやったことがあるという債券市場では珍しいあたくしは株式のディーラーやっている時に取引に関する諸規則が債券と全然違う(極めて厳しい)のにビックリ致しましたわな。例えば現物株式でストップ高買い気配になりますと、あまりにもバイカイが極端に偏っている場合は値段がつかないのですが、まぁ普通にバイカイが偏っている場合は多い方の注文が比例配分されて取引が成立する訳なんですが、この時に「比例配分狙い」ということで大目の注文(買い気配なら買い注文ですな)を入れると「作為的相場形成」に該当いたしますのでタイーホでございます。

ついでに申しあげますと、ブックビルディング方式での売り出しあるいは新株発行の際に多くの配分を得る為に行う「カラ注文」も違反(公正慣習規則違反)でございます。いつぞやのドラめもんで指摘しましたが、日経新聞あたりでも勘違いしているようで、サンデーニッケイのマネー指南みたいなコーナーで「人気の新規公開株の配分を受けるためには複数の証券会社で注文しましょう」というようなFPのアドバイスをそのまま掲載しちゃったりする訳ですなこれがまた(^^)。ちなみに、同一人物が複数の証券会社で同じブックビルディングに申し込むのも規則違反。他人名義でやるのは名義借りなので証券取引法違反ですわな、うひょひょのひょ。


で、国債入札におきましては発行予定額がなんぼかある訳でして、全部落札しないのが判っていて過大(発行予定額を大きく超過するような)な応札をするというのは現物株式市場に直しますと「過大注文」にどう考えても該当する訳でして、まぁ如何なものかと思うわけですな。もうちょっと何とかならんかと思う訳です(まぁ落札限度額があれば無問題かもしれないですが)わな。



ちなみに、この手の「株式市場の規制と比べて何でこう債券市場は無法地帯なんだ」という話を債券市場関係者の前で堂々とすると(ドラめもん推定で)10人中7人位はいやーな顔をしまして、そのうち2人くらいから「債券市場はプロの市場で株式市場と参加者層が違う(以下省略)」という猛反論を食らいますので注意が必要なわけでございます。

で、ドラめもんも債券市場関係者向けに書いているんでしたな。また読者が減るような事を書いてしまったではないかと思いつつも、既にお時間が無いので今更全部書き直す訳にも行かず(というのは大嘘で元々直す気ありませんが^^)という事で本日は債券市場関係者のご機嫌を損ねる部分があったことをお詫びしておきますねm(__)m。


ちなみに、本日は国債決済制度(というか来年始まる事になっている国債決済機関)に関しての愚意見も書くつもりだったのですが、こちらに関してはまた改めて。

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2004/11/25

お題「夏草や・・・・」

こういうのを「つわものどもが夢の跡」とでも言うのではないかと(^^)。

と申しますのは、相変わらず平均株価くらいしか材料の無い債券市場なわけですが、昨日は10月12日、13日開催分の金融政策決定会合議事要旨が公開されて、世の中に20人ほど存在すると思われる(ドラめもん推測)日銀マニアの間にどよめきが起こりました。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g041013.htm

で、昨日17時23分に配信された時事通信社の時事メインコラム「金融観測」で『決定会合は放談的?=「とりとめのない」議論』というお題で今回発表された議事要旨を斬っておりまして大変に面白いので時事メインをお持ちの方は必見ですな、と書くと話が終わってしまいますが、冒頭のところだけ勝手に引用します。

『日銀が24日発表した10月12、13日の金融政策決定会合・議事用紙は、「とりとめがない」(銀行系証券アナリスト)と受け止められた。政策ロジックの喪失により、同会合が放談的になるのは否定できないが、意味不明の市場機能論がなお浮上する傍らで、それを諭す委員。そして、解除イメージの必要性を叫ぶ威勢のいい声も上がるなど、確かにとりとめがなくなっている。』

今回公表された議事録は指摘のように「とりとめがない放談状態」でもありますし、あたくしが最初にさらっと見た印象では「まぁおまえら落ち着け」とでも言いたくなる「景気楽観でお祭り状態?」というものもありまして、わずか1ヶ月半前には随分と景気回復、というか景気拡大で大喜びしていたんですな〜と思ってしまうわけでして、今月になって内閣府は景気判断を下方修正するし、日銀も金融経済月報で「前向きの循環も明確化」という文言を削っている現在から振り返ってこの議事要旨を拝読いたしますと、あたかも「宴の後」的な風情を感じている訳であります。


○景気回復感を強調しているように見える執行部報告

まず最初に「金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要」というのがありますが、こちらで発表される現状(10月初旬現在ですが)報告はちょうど10月の頭にどこぞの経済新聞が突如景気回復大キャンペーンを張り出したのと同じような感じで景気回復感を強調しているような感じです。

・海外金融経済情勢

『米国経済は、家計支出や設備投資などの国内民需に支えられて、景気の拡大が続いている。ただし、雇用者数や資本財受注など、景気拡大テンポのスローダウンを示す指標もみられている。』

『中国は、内外需ともに力強い拡大が続いており、固定資産投資の年初来累計の前年比は、政策当局が景気過熱抑制策を講じているもとにあっても、引き続き高い伸びとなっている。』

『ユーロエリアでは、景気の回復が続いている。ただ、輸出の増勢が幾分頭打ちとなっていることもあって、企業コンフィデンスの持ち直しは一服している。』

ちょっとずつヘッジクローズが入っているのですが、まず最初に「拡大傾向」を強調しておりますな。で、国内経済に関してはもっと威勢が良いよのこれが。

・国内金融経済情勢

『設備投資は、増加を続けている。資本財出荷(除く輸送機械)は、4〜6月に続いて7〜8月も堅調な増加を続けた。9月短観で、設備投資を取り巻く環境を確認すると、企業収益が増加を続けているほか、企業の業況感も着実な改善を続けている。そうしたもとで、2004年度の設備投資計画は、中小企業を中心に、順調に上方修正されている。この間、先行指標の一つである機械受注(船舶・電力を除く民需)は、4〜6月に大幅に増加した後、その反動が出るかたちで7〜8月は減少したが、もう一つの先行指標である建築着工床面積(民間非居住用)については、このところ増加傾向が明確となっている。』

いやまぁこの設備投資に関する所に関しては強気な見方が思いっきり感じられてしまう訳でして、思わずこの部分だけは全部引用してしまいました。この時点で機械受注は減速していたのですが、建築着工面積を持ち出して設備投資の増加傾向に関して言及しておりますわな。うーむ。

引用しだすときりが無いので上記URLの先にある文書をご覧いただければと思う訳ですが、雇用環境、個人消費に関しても強気の印象を与える内容となっております。


○で、肝心の委員会の検討概要ですが・・・・

まぁ直前に発表された日銀短観も特に設備投資なんぞが良い数字を示してましたし、執行部の報告も強気な現状判断ってことでして、大変に良い感じの検討状況だったのでしょうな〜って感じです。正直、今の時点で景気減速傾向が見られていなかったらこの部分だけでも見事に債券売り材料になったのではないかと思う次第で、いつもながら「まぁお前らおちつけ」であります。

『足許の経済情勢について、委員は、輸出の伸び鈍化が引き続き生産面等に影響を及ぼしているが、(1)9月短観において、素材や機械をはじめ、幅広い業種で業況感の改善がみられ、前向きの循環が引き続き働いていることが確認された、(2)個人消費指標は引き続き強めの動きであり、消費者心理を示す指標も改善を続けている、などの点を指摘した上で、景気は回復を続けているとの認識を共有した。先行きについても、景気は回復の動きを続け、前向きの循環も明確化していくとの見方が共有された。』

「前向きの循環も明確化していくとの見方が共有された」でございますよ先生って感じですが、どうも9月短観が強気の見方を随分後押ししたと思われます。

『海外経済に関して、委員は、世界経済を全体としてみれば、これまでの高い成長からより持続的な成長ペースに速度を落としつつも、着実な拡大を続けていくとの見方を共有した。』

まぁこの時に限らず、海外経済に関しては今月の金融経済月報でも強気の見方は継続なんでこんなものでしょう。要因分析部分は引用割愛致します。


『設備投資について、多くの委員は、2004年度の設備投資計画が9月短観においてさらに上方修正されたことを指摘し、設備投資の増勢は、業種・企業規模の広がりを伴いつつ、力強さを増していると述べた。複数の委員は、能力増強投資に踏み切るなど、攻めの経営に転じる企業が増えてきているように窺われるとの見方を示した。先行きについても、委員は増加を続けるとの認識を共有した。』

『生産について、多くの委員は、7〜9月の鉱工業生産指数は、一時的に横ばい圏内の動きにとどまる見込みであるが、10〜12月は、内外需要の回復を背景に再び増勢を取り戻すとの見方を示した。その上で、基調判断として、生産は増加傾向を続けているとの認識が概ね共有された。』

『個人消費について、委員は、やや強めの動きが続いているとの見方を共有した。そうした動きを下支えする要因として、何人かの委員は、消費者コンフィデンスの改善傾向を指摘した。』

『雇用・所得面では、委員は、求人関連指標や失業率、短観の雇用判断DIなど労働需給を反映する諸指標が改善を続けている中で、雇用者数が増加傾向にあるほか、賃金も概ね下げ止まりつつあり、雇用者所得は下げ止まってきているとの認識を共有した。ある委員は、企業収益の増加が雇用者所得に与える好影響は今後明確になり、いずれかの時点で、個人消費の強めの動きが雇用者所得の裏付けを伴ったものとなるとの見方を示した。』

最後の「ある委員」ってもしかして福井総裁かな〜何て思う訳ですが、まぁ基調としてもうとっても強気。

で、この辺の文章も引用元にあたって頂けるとわかる(全部引用していると時間と量が多くなりすぎるので・・・)のですが、何だか「この間、複数の委員は」とか「また、ある委員は」などというフレーズが妙に多い気が致します。まぁ過去の要旨と並べて比較しているわけではないので本当に多いのかは未確認ですが、毎度毎度見ている人の印象としてそう思うわけでして、冒頭でご紹介した時事メインコラム「金融観測」にあるように、今回の議事要旨は「とりとめのない放談的」な印象を与えるものとなっています。


○金融政策運営の検討は益々放談化

時事メインコラムと思いっきりかぶるのですが、やはりご紹介しない訳にはいかないでしょう(^^)。

『当面の金融市場調節に関して、複数の委員は、量的緩和開始後初めて「なお書き」を発動しないまま半期末越えを迎えるなど、金融市場はきわめて落ち着いた推移を辿っていると評価した。そのうち一人の委員は、こうした状況では、金融機関の当座預金に対する需要が減退しがちであるため、当座預金残高目標の達成は必ずしも容易でないと指摘し、引き続ききめ細かい調節に配慮する必要があると付言した。』

この「こうした状況では云々」の部分が何を言いたいのか良く判らない(原因と結果を混同してね〜か?)のですが、まぁ要するに当座預金残高目標額を達成するのが困難化しつつあるというのは現実としてありますわな。恐らく介入資金の絡みでは無いかと思うのですが。。。。。

『他の一人の委員は、現在のように金融システムに対する不安感が後退しているもとでは、現行の当座預金残高目標を維持するとともに、市場機能復活の芽を摘まないという観点も必要ではないかと述べた。』

えーこれはもしかして福間さんでしょうか。以前あたくしがドラめもんでボロカスに書いた気がするのですが、福間委員は「ターム物取引が活発化しないのは銀行間のクレジットラインが復活していないからであって、金融不安のあるうちは量的緩和政策が必要である」という因果関係を見事に取り違えた怪論を発して、日銀ウォッチャーの間に「おいおい」という声が上がっていたわけですな。

ちなみに市場機能復活がどうのこうのって話は須田さんも得意なのですが、須田さんの場合は「当座預金残高目標を拡大しすぎた為に目標達成の為に日銀がターム物資金を出しすぎてしまい、市場機能(量的緩和の導入時は「市場機能を残しながら緩和効果を出すのでゼロ金利とは違う」って理屈になってました)が損なわれている」という認識だった筈なので、須田さんのご意見では無いと思うのですが。

まぁそんな間の抜けた意見に対しては「おいおいおい」と突込みが入ったようで(^^)、

『これに対し、別の委員は、当座預金残高目標の達成と同時に市場機能の回復の芽を摘まないということは、大変難しい要請であるとした。』

つーか無理だって(-_-メ)。

『さらに別の委員は、少なくともペイオフが完全に実施されるまでは、金融市場の動きを注意深くみていく必要があるとの考えを述べた。』

もしかしたらこれが福間さんかもしれませんな。まぁどうせ10年後にならないと判らないので判明した頃にはどうでもいい事になっているでしょうが、10年後にあたくしが同じようなことやっていたら興味本位で全部検証してみましょう。


『複数の委員は、次回の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示される2005年度の消費者物価見通しに市場参加者の関心が改めて集まりつつあることに言及し、見通し計数などに過剰な反応がみられる可能性もあるので、引き続き、市場の動向を丁寧に確認していくとともに、日本銀行としての経済・物価情勢の見方や政策運営についての考え方を市場に対して分かり易く示していくことが重要である、との考えを述べた。』

まぁアレですな。まずは「市場機能の回復をしながら当座預金はスーパーじゃぶじゃぶにする」などというような「おまえ本当は何も判ってないんじゃね〜のか」とあたくし如き人間に突っ込みを食らうような意見を平然と語るようなお方にもっと勉強をしていただかないと、「市場に対して分かり易く示していく」も糞もねぇと思うのですけどねぇ。


○まぁ落ち着けと

で、最後の一文が今回の議事要旨の白眉でして、もしかして事務局は狙って最後にオチをつけたのでは無いかと思っちゃうくらい面白い(^^)。

『この間、一人の委員は、将来のいずれかの時点では、日本銀行当座預金残高を金融市場調節の主たる操作目標とする現在の金融政策の枠組みから移行することになるので、移行のイメージについて十分に議論しておくことが必要ではないかとの意見を述べた。』

時事メイン「金融観測」での指摘はこんな感じです。あたくしも全く同感。

(引用開始)そもそもビハインド・ザ・カーブの政策運営では事前のイメージは「市場との対話」においては雑音となりかねない。恐らく「改善を示した日銀短観直後の昂揚感が言わしめたもの」(都銀)と推測されるが、この点はやはりと言うか、『展望リポート』の「余裕をもって対応を進められる」との文言が必要なのは日銀だったわけだ。(引用終了)


景気減速の指標が出ているときに公表されたのが不幸中の幸い(本当か?)としか言いようの無い議事要旨でして、もし10月初旬の「株価とかは上がらないけど、まぁ何となく景気回復は持続してるんでしょうな〜」という雰囲気が継続しているような状態でこの議事要旨が出たら、昨年の債券相場を髣髴させる暴落を演じてもおかしくはなかったでしょう。

10月の議事でこんなに威勢のいい話をしていた訳で、こうなりますと11月の議事要旨が早く見たくなりますな。どんな雰囲気で話をしてたんでしょう??


ではでは。

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2004/11/22

お題「機嫌が悪いのかもしれませんけど・・・・」

先週木曜日の金融政策決定会合では「前向きの循環」が削られた金融経済月報が決定されまして、その後の定例記者会見の要旨が金曜日に日銀Webにアップされたのですが、どうもこの行間を見ていると「今回の月報採択に関して福井総裁はご機嫌が悪いのではないか」と思わせるような雰囲気が漂ってくるのですよこれがまた。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0411c.htm


○市場の認識をコントロールしようと意識しすぎなのでは?

景気判断自体は若干後退モードではあるのですが、最近少々話題になっている「当座預金残高維持問題」ってのがありまして(先日のドラめもんでほんの少し触れましたが、資金供給オペを打っても札割れ連発で、最近はついに発行された短期国債をすかさず買い入れてしまうという荒業で凌いでいるという話)、短期市場関係者の一部では「当座預金残高目標(現状は30兆円〜35兆円)の下限を引き下げてくるのではないか」という話があります。そのせいか今回の記者会見では「当座預金残高をどうするの?」って質問が手を変え品を変え行われました。その中の一節。

『(問)量的緩和政策を解除するという場合、一般的にイメージするひとつのあり方は、当座預金残高目標を今の水準から徐々に減らし始めて、ある段階で操作目標を金利に戻すという姿が想定できる。この場合、量的緩和政策の解除とは、当座預金を減らし始める時点を言うのか、あるいは減らした後に、操作目標を金利に戻した時点を言うのか、その点を伺いたい。』

『(答)今の緩和政策のフレームワークの修正プロセスということについては、具体的に何も詰めていない。従って、正確にはお答えできないとしか申し上げようがない。言えることは、私どもが申し上げている3つの条件、すなわち、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで今の量的緩和の枠組みを堅持する、市場にとって非常に過大とも思えるような流動性を供給し続けるという、この基本的なフレームワークを堅持し続ける、ということである。それ以外に、量的な意識とかそのようなところまでは、まだ何も詰めた話ではない。』

今回の記者会見ではこのような質疑がやたら多うございまして、「量的緩和解除の場合のプロセスはどうよ」とか「当座預金残高目標を減らすのどうします」とかの質問が飛んで、「具体的に何も詰めてねぇんじゃヴォケ」というお答えが返ってくるという応酬が連発されているのが印象的であります。

で、まぁこの質問の前にも同じような質疑があった為に「非常に過大とも思えるような流動性」という発言をしたのが突っ込まれているのですが、よく読むとこの「量的な意識とかそのようなところまでは、まだ何も詰めた話ではない」ってのも言いたい意味は判らんでも無いのですが、量的緩和政策で目標にしてるのが「当座預金残高目標」なんだから、もうちょっと丁寧な言い方をしたほうが良いのでは無いかと思う訳ですな。全くもう。


で、まぁ上記のように抽象的(というか感情的というか^^)な発言をすると当然の如く突込みが飛んでくる訳でして・・・・・

『(問)先程の量的緩和の枠組みの説明として、「過大とも思える流動性を供給することだ」というご指摘であった。そうすると、例えば、25〜30兆円というレベルが市場にとって過大ということであれば、そうした範囲で当座預金残高目標を減らすこともあり得るのか。』

という風に突込みが来るのはある意味当然でありまする。

『(答)先程は少し文学的に表現したのであって、市場が過大と思うかどうかといったことは認定できないことだと思う。現在は、所要準備額の約6倍という多額の流動性を供給しているわけであり、その数字の大きさからみて「過大とも思える」というような表現をしたまでのことである。(後半割愛)』

「文学的表現」っつーのも随分楽しい表現なのですが、どうもその次の言い方って「俺様が過大だと思えば過大なんだよヴォケ」と読んでしまう訳でありまして、何というかアレな応答な訳です。まぁこの質疑応答はある意味「語るに落ちる」って奴でして(何か段々あたくしの言い方がきつくなってますが^^)、どうも総裁の心の中では「俺様が考えること」=「市場が考えるべきこと」となっているのではないかと邪推したくなってしまう発言な訳です。


○当座預金残高削減問題

という訳でひとくさり悪態をついた所で当座預金残高削減問題に係わる質疑応答に関して引用しておきます。やたらと今回はこの件の突っ込みが多かったのよ。

『(問)本日の金融政策決定会合では当座預金残高目標を30〜35兆円に据え置いたが、金融調節が非常に難しくなっているのではないかとの見方から、上限を35兆円にとどめても、下限をいずれ30兆円から下げるのではないかとの見方がある。緩和の方針は維持しつつ、金融調節上の自由度を高めるために、下限を20兆円台に下げる可能性もあるのではないかとの見方も市場では出ており、プライス面では出ていないが、心理面では多少のたじろぎがあるように見受けられる。今後の選択肢として、そういうことがあり得るのか伺いたい。(後半割愛)』

『(答)まず、第1のご質問のほうであるが、もちろん金融調節の現場では、その時々の資金需給の状況、そして市場の地合いの変化に合わせて調節しようと様々な工夫を凝らしながら、流動性供給目標を日々達成していく努力をしている。私が聞いている限り、調節が困難に逢着しているというようなことはない。様々な工夫を凝らしながら円滑に必要な流動性を供給するという目的は達成し続けているということであって、お尋ねのような点については、私どもは何も今念頭に置いていない。その必要は今何も感じていないということである。』

これが最初の質疑応答部分でして、「市場では金融調節が大変ですよ」と質問しているのに「技術的に困難にはなっていない」というお答えになっていてどうも質問と回答が噛み合っていない訳ですな。そもそもこのある意味答えになっていない質疑応答が記者会見会場に燃料を投下したのではないかと思う訳ですが(^^)。


で、最初にご紹介した質疑に繋がっていったのですが、その後も会見ではスッポンのように(^^)本件について香しい質疑応答が交わされるのでありました。

『(問)「所要準備額の6倍ある」ということであるが、これを5倍にしても「過大」かどうかという議論もあるかと思う。審議委員の中には、当座預金残高目標を減らすことはやはり「引き締め」と取られる可能性があるから、それはなかなか難しいという意見もあるが、総裁はどうお考えか。 』

結構この質問はキモの部分でして、当座預金残高目標を増やすときに「量的緩和政策の強化」と称していたというロジック(まぁそもそもそのロジック自体が怪しいという突っ込みはさておいて)になっていた事を考えると、当座預金残高目標の減額は「量的緩和政策の緩和(って書くと何か変ですな、弱体化ってのも変ですし・・・)」であるので論理的には「引き締め」になっちゃう訳ですな。ここのところを上手く切り抜ける理論武装を期待したい所なのですが・・・・

『(答)今の時点でそのようなことは、およそ議論の対象にはならないと思う。具体的な状況を前提にしないで、量を減らしたらどうかというのは、およそ金融政策の議論にならない。全くお答えできない質問だと思う。』

何というか総裁から湯気でも出ているのではないかと思わせるようなお答えでございますな。あなたそこまで言うことないでしょって感じですが、このような豪快なお答えが返ってくる背景を勝手に憶測しますと・・・・

@当座預金残高問題の質疑ばかりが延々と続いているので「同じこと何度も聞くなヴォケ」とトサカに来た。A実は本件に関してちょっと議論になっていて全然意見集約が出来てないので「痛い所を突かれてお怒りモード」。B月報で景気の現状判断後退だけでなく、総裁お気に入りの「前向きの循環」が削除されておかんむり。

などと勝手に想像したくなるのですが、どうもこの問題に関して全般的に質問と答えが噛み合っていない印象ですんで、政策委員会(なのか日銀執行部なのか知りませんが)内部で量的緩和政策における「量」の問題に関して総括が行われて議論になっている最中なのかな〜なんて思う訳です。以前ご紹介した山口前副総裁の時事通信インタビューにありますように、量的緩和政策の出口を考える際には当然この政策の総括をしないといかん訳ですし。


○市場への説明とは?

『(問)10月29日に発表した展望レポートで、「金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明していく方針である。具体的な説明の内容や方法については、さらに工夫を重ね、市場参加者が金融政策の先行きを予測する上で参考になる基本的な判断材料を適切に提供していく」、と書かれている点について伺いたい。今後、量的緩和政策が解除された後も、日銀の政策に関して市場が誤解をすることはマイナスだと思うが、市場の安定化を念頭に置きつつ金融政策の運営をしていく──主眼としては、政策変更にあたっての市場の安定を維持する──という目的で、今後もこうした情報を提供していくということなのか。(後半は別項で)』

『(答)どういう状況のもとであれ、金融政策を運営していく場合には、市場および広く世の中の方々の理解を求めて、期待の安定性ということを十分確保しながら政策効果の浸透をより良く図っていくという原則に変わりはない。従って、如何なる状況のもとにおいても、我々は政策変更する場合にもしない場合にも、状況説明は十分やっていきたいということである。展望レポートの中であえてそこのところを強調したようなかたちで書かせて頂いた。消費者物価指数のマイナスの動きがもう何年も続いており、量的緩和政策も既にかなり長い期間やっているといういわば異例の事態から次の局面に移っていく過程においては、様々な期待の不安定性というものが出てくる心配がある。そうした局面においては、なおさら我々が取ろうとする行動について正しい理解を求める努力をしていく必要がある。そうした認識で、あそこのところをあえて強調させて頂いているというふうにご理解頂きたい。』

と言っている割にはどうも今回の記者会見全般を見ますと「理解を求める」というよりは「俺様の考えが判らんのはケシカラン」という雰囲気が漂って来るのは気のせいでしょうか??まぁ良いけどさ。

まぁこの言葉の端々にも「量的緩和政策は継続したくない」ってのが伝わって来るのですが、じゃぁ過剰流動性が物価に向かわずに資産バブル(まぁ既にアイテーというか新規公開バブルのような気はするんですがね)に向かったらどうなるのよって質問がでてまして・・・・


○資産価格の上昇が起きても放置という明確なスタンス(^^)

『(問)(さっきの質問の後半部分です)もう1点、量的緩和政策解除の3つの条件のうち、仮に1つ目と2つ目の条件をクリアしつつも弊害というか歪みが生じたような場合でも、適切に対応していくという理解で良いか。市場が政策の解除を予想していようが、あるいは反対に予想していない場合でも、日銀としては金融政策に影響するようなものに関しては丁寧に説明していくという理解で良いか。 』

『(答)まず後者の質問に関して、3つの条件というものは個別ばらばらの条件ではないということを前回の会見でも申し上げた。消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上というただ1つの条件を、強いて因数分解して3つの側面から見ればこうなるということで申し上げた。従って、3つがばらばらに理解されることによって、2つは満たしたけれども1つは満たしていない、といった組み立て方のものではない。あくまで3つの側面から見て1つのことを判断していくということであるので、「経済に歪みが出ても金融政策は放っておくのか」という議論は成り立たないような性格のものだと思って頂きたい。』

ここのスタンスだけは相変わらず明確(というか約束させられているのだから仕方がないのですが)でして、結局政策スタンスはこの部分に集約されるのだから余計な情報発信というか心情吐露は人心を惑わすだけではないかと思ってしまう訳であります。



本当は今回の記者会見で景気に関する質疑ももっと見たかったという気もするのですが、どうも当座預金残高問題に関して燃料が投下されたせいか話がそっちの方に進んでしまい、景気に関してはあまり面白い質疑が見られませんでした(と思うのですが)ので引用省略。まぁ総裁としてはあまり「判断後退」を強調されるような発言はしたくないって雰囲気は伝わってまいりました。

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2004/11/19

お題「金融経済月報」

やはり話題はこれでしょって事ですな。昨日あっさり12時前に終了した金融政策決定会合は当然の如く全員一致で現状維持なのですが、注目は金融経済月報でありまして、さてどうなったかと申しますと・・・・・

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0411.htm

○「前向きの循環」は?

話題の展開の都合上現状判断の前に先行き見通しをご紹介。今回は何気に注目の月報だったので既にあちこちで指摘されていると思いますが、先行き見通しの中で登場した「前向きの循環」という文言が消えてしまいました。

この「前向きの循環」が「ダム論復活!」とゆ〜ことで日銀の景気への強気な見方を象徴していた訳ですな。ちなみにこの文言が最初に出てきたのは今年4月の金融経済月報で『先行きについては、景気は当面緩やかな回復を続ける中で、前向きの循環が次第に強まっていくとみられる。』という風にご登場した次第です。で、今回惜しくも消えてしまったのですが、念の為10月と比較してみましょう。

(11月)『先行きについても、景気は回復を続けていくとみられる。』
(10月)『先行きについては、景気は回復の動きを続け、前向きの循環も明確化していくとみられる。』

先月の月報の決定が10月13日でしたので、先月からの1ヶ月で「前向きの循環」という文言が消えてしまったという事になる訳なのですが、福井総裁的にしてみれば散々ご紹介したように月末月初あたりに国会でも景気強気発言を続けていた所ですので・・・・・残念!って感じですな(^^)。という訳でダム論消滅・・・なのか一時引っ込めているのかは存じませんが、何の解説もなく「前向きの循環」が消えているというのは景気の先行き方向性について日銀として懐疑的になっているという解釈をされても致し方なしと言った所かと存じます。

あたくしの大予想は日銀絡みでは外さないのが自慢だったのですが、今回は足元の現実数字が現実数字ですんでそのあたりは認めるにしても、まぁ何とでも言える先行き判断に関してダム論をこうさっさと引っ込めたのは意外感がありました。月例経済報告を先日発表した内閣府に気を使ったのでしょうか???(まぁ使ってないと思いますけどね^^)


○景気の現状判断は「足もとの一服感」に言及

冒頭のお言葉を前月と比較しましょう。

(11月)『わが国の景気は、輸出、生産の増勢に足もと一服感がみられるものの、全体として回復を続けている。』
(10月)『わが国の景気は、回復を続けている。』

6月に「緩やかな回復」から「回復」と判断から「緩やかな」を外して8月には上記10月を同じく余計な言葉を加えずに直球剛速球で「わが国の景気は、回復を続けている」とぶち込んでいたのですが、今回は「足もと一服感」に加えて「全体として」という言葉が入っております。文章の流れ上入れないと表現として変だから入れたのかもしれませんが、前月の直球剛速球と比較すると印象として抑制的にも見える訳ですな。どっちだか判らんけど。

上記文言に続く表現はこうなっておりまして、

(11月)『輸出や鉱工業生産の増勢には、このところ一服感がみられる。一方、設備投資をみると、足もとのペースは緩やかながら、企業収益が改善するもとで、引き続き増加している。また、雇用面での改善傾向が続き、雇用者所得も下げ止まる中で、個人消費は底堅く推移している。この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しており、公共投資は減少している。』

10月との相違点はこの中の最初の部分でして、10月は『輸出、鉱工業生産は、伸びがやや鈍化しつつも増加傾向を続けており』となっており、輸出と鉱工業生産の一服について言及しておりますが、他の部分は判断据え置きになっています。まぁ出てくる経済指標がそ〜ゆ〜事になっている(と記憶してます)のでまぁこんな物かも知れませんが、まぁ他の部分据え置きという事でまだまだ頑張っているなという感じでもあります。


○先行き見通しの要因分解は・・・・

海外経済に関してはここの所の中国経済無事軟着陸観測(本当かよとあたしゃー思うのですが)と米国株価の底打ち観測を反映したのか若干判断を微妙に上方修正しているのですが、何故か雇用に関して判断を微妙に下方修正しています。ってゆ〜かあたくし的には雇用判断こんなもんだと思いますがね。

長いですが11月と10月を並べてご覧下さい。

(11月)『すなわち、海外経済の拡大が続き、内需も増加を続けるもとで、輸出や生産は基調的には増加していくとみられる。企業の過剰設備・過剰債務などの構造的な調整圧力も和らいできている。また、企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いとみられるが、企業収益の増加や雇用過剰感の緩和が続くもとで、雇用者所得は緩やかな増加に向かう可能性が高い。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。』

(10月)『すなわち、海外経済の拡大が続くとみられるもとで、輸出や内需の増加が続き、生産も引き続き増加基調を維持していく可能性が高い。企業の過剰債務など構造的な要因が企業活動に及ぼす影響も和らいできている。また、企業の人件費抑制姿勢は維持されているが、雇用過剰感が緩和するもとで、生産活動や企業収益から雇用者所得への好影響は次第に明確化していくと考えられる。この間、公共投資は減少傾向をたどると見込まれる。』

海外経済の拡大について『拡大が続くとみられる(10月)』→『拡大が続き(11月)』という事で海外経済が国内景気を牽引してくれるでしょうって見方をより鮮明にしております。

しかしその一方で暫く強気(というか回復を楽観的に)に見ていた雇用情勢に関して『生産活動や企業収益から雇用者所得への好影響は次第に明確化していくと考えられる(10月)』→『雇用者所得は緩やかな増加に向かう可能性が高い(11月)』とここでも「ダム論」的な「企業収益増加」→「雇用者所得増加」というあたくし的には甚だ実感に乏しい(-_-メ)見通しを引っ込めておりまして、雇用に関して判断をこっそり後退させています。

もしかして海外経済の判断を上方修正させた隙を狙ってバランスをとりつつこっそりと現状追認をしたのかもしれませんが、まぁ先行きの景気回復に関する「上振れ、下振れ要因」の柱である「海外経済」と「国内最終需要(を支える個人消費の基本となる雇用情勢)」に関してビミョーな匙加減が入っているようですな(^^)。


○IT関連にも言及

この次に毎度毎度原油価格上昇に関して「なお書き」をしているのですが、今回はIT関連需要に関してのコメントが追加されました。

(11月)『なお、IT関連需要や原油価格の動向と、その内外経済への影響については、引き続き留意する必要がある。』
(10月)『なお、原油価格の動向と、その内外経済への影響については、引き続き留意する必要がある。』


○物価面、金融面は判断変らず

まぁこのあたりは判断をいじりようが無いのですが、物価に関しては見事に全文一致。

(11月と10月共通^^)『物価の現状をみると、国内企業物価は、内外の商品市況高や需給環境の改善を反映して、上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナス基調で推移している。物価の先行きについて、国内企業物価は、原油高の影響もあって、当面、上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、需給環境が改善方向にあるとは言え、当面なお緩和した状況が続くもとで、基調的には小幅のマイナスで推移すると予想される。』

「物価の先行き云々」の前のところで実際は段落が分かれております、念の為。

金融面に関しても引き続き変化なし。銀行券発行残高が紙幣改刷の影響で伸びがやや高まっているってコメントが「ほほう」と思うくらいでありまして、特にコメントすることは無いと思います。


○まとめ(のつもり)

まぁ今回は「ダム論(と言うと日銀からいや〜な顔をされるらしいのですが)を引っ込めた」というのが最大トピックスですが、あたくし的にはこのタイミングで雇用情勢に関して判断を微妙に後退させているのも少々気になるところといった感じです。まぁ債券市場に対して売り材料にはならないでしょう。総裁記者会見の方も気になりますが、こちらは日銀Webに会見要旨がアップされてからと言うことで一つよろしくです。

しかし何ですな。前進していた判断(ここ3ヶ月全くの据え置きでしたが)を若干とは言え後退という事ですから向きが変るって話なのに、決定会合はあっさり昼前に終わってしまいましたな。この内容だったらもうちょっと長引いても良かったのではないかとゆ〜気もしますが、実際に会合でど〜ゆ〜感じで議論しているのか良く判らん(この前の須田さんの講演はその意味でも面白かった)のでアレなのですが、何となくね。

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2004/11/18

おまけメモ:短期金融市場の話(ただしメモ)

昨日実施された短期国債買入オペは何と短期国債入札との同日実施。記憶によればこのケースは初めてだと思いますし、このオペの対象銘柄に前日に入札の行われた短期国債だか政府短期証券だか忘れましたが、まぁ兎も角「昨日入札やったものを今日買いましょう」状態になってしまっております。

資金供給オペを打てども打てども札が集まらないという状況なので、最後の手段という事で発行した短期国債を次の瞬間に買入するというマッチポンプのような事をしないと当座預金残高の目標が維持できないという訳でして、まぁ過去の介入やり過ぎの後遺症がこんな所にも出ているということなのでしょうか。よーわかりませんが。

そんなこともあって、「それは金融引き締めを意味する事になってしまっているからやる訳は無い」と日銀ウォッチャーが指摘する「当座預金残高引き下げ観測」が浮上しちゃったりする訳で実に香しい訳ですが、そんな中天の助けのように米国様が相変わらず減税大盤振る舞いだのドル安放置だのという雰囲気を醸し出しております。

ここで大規模円売り介入をすれば当座預金を大きく引くことが出来る訳でして(^^)、是非この際ヤケクソで円売り介入をお勧めしたいと思います。何のためにやるのか最早支離滅裂ではありますが・・・・・

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2004/11/16

○俄かに注目される金融経済月報

先日来ご紹介しているように、福井総裁はウォッチャーも驚く物凄い勢いで景気強気を提唱しております。何せ先週木曜日のきさらぎ会での講演後の会見だか質疑応答だかではご丁寧にも「来年度CPIの見通しが+0.1%だが、年平均で+0.1%だと言う事は年度前半は低いが年度後半になればCPIが高くなるはず」というような趣旨の発言までするという有様。(追記:実は11月2日の参議院財政金融委員会で同趣旨の発言あり)


そんな福井総裁も当然出席して行われる政策決定会合が17〜18日の日程で行われます。金融政策に関しては何も無いので相変わらず無関係なのですが、今回の決定会合では11月分の金融経済月報が公表される予定になっておりまして、会合終了日の18日、月報の基本的見解の公表時間は15時という段取りになっております。

昨年秋以降「景気判断前進」か「景気判断据え置き」しかやっていない日銀の景気に関する考えはどうなのかという事は激しく注目材料ではあるかと思います。まぁつい3週間前にカンカンの強気見通しの「展望リポート」を出したばっかりなのにいきなり先行き見通しを後退させるというのも中々恥ずかしい訳でして(-_-メ)、まぁ「苦渋のまるで同じ文章攻撃」になるのではないかと思いますが。原油価格下がってるし。


まぁこの月報で日銀が景気の現状判断あるいは先行き見通しに関して判断を後退させてきた場合は最近俄かに増えてきた「景気ベア組」の後押しならびに債券市場の炙り出し相場にいい感じで燃料投下になるかな〜とは思っております。今までの流れから考えますと可能性は低そうですが、一応リスクシナリオという事で。

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2004/11/15

お題「非伝統的金融政策はやりたくなかったのね〜」

何と申しますか日銀総裁ここのところへ来て絶好調というよりは一人で突っ走っているような印象を与えております。現実にCPIがゼロになってもいないのにそんなに量的緩和解除の話を熱心にするのは如何なものかって感じでして、金曜に申しあげたように、CPI時間軸のコミットメントがなかったらとっくの昔に「量的緩和解除モード」になっていたと思います。

景気の減速傾向が経済指標ででてきたり、有価証券報告書の虚偽記載がどうのこうのって話が何時の間にか飛び火してアイテー方面での架空売り上げ経常がどうのこうのという光景を見ていますと、速水総裁時代にアイテーバブルが崩壊している中でゼロ金利解除を実施した頃とダブるものを感じまして、CPI時間軸があって本当に良かったな〜と思うわけです。

そんな訳で最近の福井総裁という訳で木曜日にご紹介した参議院財政金融委員会での総裁答弁を見てみます。


○資産担保証券に関する驚愕の答弁

福井総裁就任以来の日銀は当座預金残高は大盤振る舞いで拡大するわ、資産担保証券の買取という施策をぶち上げて、当初は銀行の貸出債権を証券化したものまで買いますよって話までおっぱじめて、あたくしなんぞ「日銀はついに震災手形を復活させたか」と激しく嘆いた事を思い出すわけであります。

証券化市場に関しては日銀が「証券化市場フォーラム」なんかを作ったりして熱心に関与していたのですが、よくよく考えたらこの辺りの証券化市場がど〜のこ〜のって話は速水さんがやたら熱心でして、今にして思えば証券化云々は速水さんの遺産だったのかもしれませんが、それは兎も角として、大々的にぶち上げてスタートした資産担保証券の買入が全然実績が上がらずでして、その後日銀は買入資産の対象を緩和(緩和とは言ってませんが、実態ベースは緩和)し、「相変わらずやる気満々なのか・・・・・」と思わせてくれまして、この時も随分悪態をついていた記憶がございました。

ところが、11月2日の参議院財政金融委員会では福井総裁驚愕の発言をしているわけです。資産担保証券の買入スキームが全然機能していない事に関する民主党大久保勉委員からの質問に対してこのように答弁しています。

『詳しいことは担当の理事からお答えを申し上げますけれども、ポイントになりますところだけ私にお答えをさせていただきたいと思いますが、少しお言葉を返すようになって恐縮なんでございますけれども、資産担保証券の買入れ措置を決定しました直後から、私、たしか国会でも御説明申し上げたと思うんですが、これは、新しい市場に対して中央銀行がむしろ介入をしていく措置なので、余り多くの介入をすると健全な市場の発展を逆に妨げるリスクがあると。したがって、中央銀行はある決意を持って市場介入に踏み切るけれども、実際の介入は少なければ少ない方がいいと。それが口火となって人々が市場の中で出合いが円滑に付くようになり、市場の発展のその出発点が形成されれば、それが最も望ましい結果だと。』

『買入れ実績は、残高としては非常に小さくとどまっているというのは、私どもとしては理想的な姿にとどまっていると。実際、私どもがこういう資産を買入れ適格だと認定することによって、むしろ市場の中では非常に活発に出合いが付いているという状況でございまして、相当程度私どもはねらいが果たせつつあるんではないかというふうに思っております。』


○実は「見せ金」だったのか?

あたくしとしましては、日銀が所謂非伝統的政策を採用して何でもかんでも買ったり、企業金融に関与するような「震災手形」的政策に走るのはいかがなものかと相変わらず思っている人ですので、こういう話をしていただけますと結構安心しちゃうんですけど、確か資産担保証券買入スキームを導入する際には『資産担保証券市場を通じる企業金融活性化のための新たなスキームの提案』と謳っておりまして、まぁこの時点で企業金融活性化という施策を打ち出す必要があったのかは謎ですが、どちらかと言えば「量的緩和政策の効果が企業金融部門で目詰まりを起こしている」っていう「目詰まり論」からこの政策を打ち出した訳でして、そりゃ話が違うんじゃね〜のって気もする訳であります。

この答弁だけ見てますと、資産担保証券の買入スキームは何を隠そうただの「見せ金スキーム」であったという話になるようです。前任の速水さん時代からの流れもあったし、日銀に対するプレッシャーがどんどん拡大してなし崩し的に長期国債買入の野放図な拡大から国債引受に繋がらないようにする為に、このスキームを利用したという事だという話になりそうで。

と申しますのは、同じ大久保委員から財政問題と日銀の関わり(要するに日銀が財政ファイナンスに協力するのはケシカランという事のようですが)に関して「財投機関債を買う可能性はあるのか」という質問がありまして、その答弁でこんなお話をしております。

『少なくとも、現時点におきまして日本銀行が金融市場に潤沢な流動性供給を行っていく、このための手段として財投機関債を買い入れる必要というものは全く感じておりません。』

『将来どうなるかと。将来の可能性というのは全く今のところは具体的には想定できませんので、あらゆる可能性をこの段階で排除するというわけにはいきませんけれども、しかし、方向としては、先ほども申し上げましたとおり、デフレを脱却し、そして金利を中心とする本来的な金融政策の姿に戻っていくということを今展望しているわけですので、そういう展望の方向に沿って金融の姿がうまく展開していけるということになりますれば、流動性の供給の量はおのずと削減されていくということであります。つまり、日本銀行のバランスシートは小さくなっていくということであります。』

『銀行券につきましても、今非常に大きく膨れた状況でございますが、今後の金利水準いかん、そして金融システムの安定に対する人々の認識が更に強まっていけば銀行券の発行残高も落ちていくと。これまた日本銀行のバランスシートが小さくなる方向でございますので、財投機関債を買い入れなければ金融調節が全うできない可能性というのは今のところほとんど予見できないと思います。理論的にこれを排除して、初めからこれだけは排除してしまうという必要も感じないぐらい今は予見できないということでございます。』

という事で、中央銀行として手も足も出せない量的緩和政策をとっとと終了させたいってぇ話を福井総裁が熱心に行っているというのも注目されておりますが、このあたりの答弁を見ますと、福井総裁は実を言えば所謂非伝統的な金融政策に関しても激しく否定的であって、通常ベースの短期金利をターゲットにした金融政策に戻した暁には非伝統的金融政策はもうやんね〜よ〜ってなもんなんでしょうな。


○結局のところ自信満々なんでしょう

この参議院財政金融委員会での福井総裁の答弁を仔細に見ておりますと、やたら景気に強気でして、しかもデフレ脱却にも自信満々(先週のきさらぎ会での講演では尚パワーアップしてましたが)。おまけに本日ご紹介したように、所謂非伝統的政策に関しても過去の施策が骨抜きになるのも無問題と言わんばかりの勢いで答弁しておりまして、もうタカ派というか本来の日銀マン的発言が満載でございます。

まぁ就任以来資産担保証券は買うわ、当座預金残高は大盤振る舞いするわで、随分と「何でもあり」的な雰囲気を演出していた総裁ですが、ここへ来ての「日銀マン全開モード」を見ておりますと、就任以来の姿は「世を忍ぶ仮の姿」だったんでしょうか?って言いたくなります。確かに当時からそういう見方をしている人もおいででしたが、正直者のあたくし(^^)は「なんという無原則な総裁だ」と勝手に憤慨しておりましたが、実は作戦としての演出だった訳ですな。福井総裁恐るべし。

・・・・・と、いつものあたくしらしからぬ気味悪い褒めようですが、どっちかと言いますと、本音を出すのは本当にCPIがゼロ以上になってからの方が吉ではないかと思いますが。景気回復というかデフレ解消に関して自信満々なのが最近の強気発言に繋がっているのだとは思いますが、これで景気が腰折れしたら「言わなきゃ良かった」って事になるとおもうのですが・・・・・


ま、そんな訳で、当面は「日銀(というか福井総裁)の景況感」と「市場の景況感」のギャップが相場のかく乱要因になるんだろうな〜などと漠然と思っております。

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2004/11/12

○ますますタカの本領発揮のようですな

福井総裁がここの所絶好調のようです。昨日ドラめもんでご紹介した参議院財政金融委員会における答弁でも、景気に関するお話ではもう景気回復絶好調〜!って感じでしたが、昨日の講演およびその後の記者会見でも景気に関してはチョー強気だったようです。

講演のほうは既に内容が日銀のWebに乗っていますが、概ね「展望リポート」の内容に即したものとなっているようです。それよりも好調だったのはその後の記者会見だったようでして、例によって記者会見内容が日銀のWebにアップされてないので、報道を脳内メモリーから書き出しますと曰く、

「12月の展望レポート中間レビューで景気の見方を下方修正する可能性はゼロだと確信している」
「今のCPI見通しからすれば来年度後半には消費者物価のゼロ%以上が達成できるのではないか」

みたいな感じでして(正しくは日銀Webをご覧下さい。正確性については担保致しかねます)、まぁとにかくここへ来て強気モードに益々拍車が掛かりまして、今まで猫をかぶっていた福井総裁もセントラルバンカー本来の面目躍如と言う感じです。


ま、こうなってきますと、政策の枠組みに「CPI時間軸」っていう「ビハインド・ザ・カーブ強制装置」が組み込んであるのが効果を発揮して来るわけでして、フォワードルッキングな金融政策をやっていたら今頃既に「すわ量的緩和政策解除」って騒ぎになっていたかと思います、まぁその装置があるから安心してタカ派全開モードになっているのかもしれませんが。


このあたりに関しては改めて纏めます。本日は激烈マーライオンなので簡単メモで恐縮です。

追記:この日はチョー二日酔いなのでこのようにしか書いてませんが、まぁ皮肉にも「フォワードルッキング政策」といういつものパターンを封印しているお蔭で「日銀の暴発リスク」が抑えられているって事が言えるのではないでしょうか、って事ですな。(2004/11/13)

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2004/11/11

お題「いろんな意味で読みごたえのある会議録」

11月2日〜3日にかけて参議院財政金融委員会で「財政及び金融等に関する調査のため」という事で、日銀からは福井総裁、岩田副総裁や理事3名が参考人として出席して質疑と言うか議論が行われておりまして、この時の福井総裁の景気に関する強気スタンスが報じられてちょっと話題になっていたことは記憶に新しいかと存じます。

で、その時の会議録が参議院会議録情報にアップされましたので、これを読もうとしたわけですが、全編に渡って福井総裁を始めとして日銀に対する質疑応答が連発しておりまして、読んでいるだけで結構なボリュームになります。という訳で、今日は11月2日分(質疑を紙に打ち出すと33ページになる)の前半3分の2くらいまで何とか読んだので、そのあたりから適当にご紹介したいと思います。なお、当該会議録は参議院Web(http://www.sangiin.go.jp/)から「会議録検索」→「財政金融委員会」から検索できます。

○「デフレ脱却にインフレターゲッ」ト論者の限界か

自民党からの質問者はお馴染み舛添要一先生です。インタゲというよりはもう日銀は実物資産でも何でも買えやという話をするお方で、昔のバーナンキ先生の影響を受けているのでしょう。肝心のバーナンキ先生はFRBの理事になってからすっかり普通の事しか言わなくなっているというのはまるで気にしていない所が実に香しいのですが。

基本的に質疑がやたら長いのが難点なのですが、変に割愛するのも何なので舛添委員の質問からまる引用です。まぁこのあたりがはしなくも「インフレターゲットを導入してデフレを脱却しましょう」論者(=インフレ抑制の為にインフレターゲットを導入するという話とは本質的に違うという点にご留意ください)の限界を示したのかな〜と思わせてくれました。

以下舛添さんの質問。

『次に、デフレをどう克服するかということについて議論したいと思いますけれども、この点に関しては、日銀もいつどこでと、これ明確に言えない状況だと思いますし、依然としてデフレは続いていると思います。』
 
『そして、その政策手段として、これは私どもがずっと日銀を批判してきたことでありますし、私はやっぱりインフレターゲットということをもっと明確に掲げるべきであるということをずっと申し上げてきました。』

『ただ、消費者物価、このCPI、全国規模で生鮮食料品を除いて前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続するということですから、ある意味でこれはもうインフレターゲットだと私は見て、それでしようがないかと、しようがないかというか、ないよりはいいと。』
 
『ただ、私の立場からいうと、今の段階でも二とか三とかいう数字をやってくれていればもっとうまくいったし、今でもそうじゃないかなという感じがするんですが、出口論との、いつこの量的金融緩和をやめるかという出口論との関係もありますが、この今の私の考え方に対して、総裁、どういうふうにお答えになりますか。』


第3段落まではまぁ良いとしまして、最後の段落の質問のあたりが要するにインタゲ導入しろやゴルァという訳ですな。ところがこの最後の段落で舛添先生が仰せなのは、現在の量的緩和政策のコミットメントであります「CPIが安定的にゼロ%以上になるまで量的緩和政策を行う」という「ゼロ%」を「プラス2%とか3%」にしたらより早くデフレから脱却できるのではないかという意見であるとしか読めない訳です。

現実問題としてデフレ絶賛継続中(というか物価が上がらないというのが現在をあらわす言い方としては正しいわけだが)なのですが、コミットメントの数字をゼロからプラスなんぼかにしても、結局日銀が打てる手は同じようなものな訳ですから、ど〜考えてもその数字をプラスなんぼかにしても結果は同じであろうかと思うわけです。

「デフレ脱却の為にインフレターゲット政策の導入」という政策提案をする人が世の中結構多くて、なぜだか知りませんが官庁系のお方(経済官僚のキャリアのお方なんかは特に)に多かったりするのですが、この人たちの最大の弱点は「じゃあ具体的に何をすればいいのよ?」という質問に対して処方箋が出てこない所です。苦し紛れに出してくる処方箋は大体が本質的に「ヘリコプターマネー」だと言うところが如何なものかと思いますな。


ちなみに、福井総裁の答弁もやたら長いのですが、インフレターゲットに関する部分だけ抜粋しますとこんな感じです。

『委員御指摘のとおり、私どもは、いわゆる明確なインフレーションターゲティングの政策は取っておりませんが、取りあえず物価が下落し続けるという異常な事態から脱却するために消費者物価指数がゼロ%という、これは私は一つの通過点と申し上げております。通過点において明確なターゲットを掲げ、そして人々の限りなきデフレ心理というものを修正しながら、つまり限りなく物価が下がるんだというふうな、そういう期待は修正しながら、そして企業、金融機関の構造改革努力を背後からサポートして、とにかくおっしゃるとおり出口に早く到達して、出口の後の正常な経済運営、そして金融政策の運営の局面に早く移りたいと、こういう作戦を取っているわけでございます。』

『私自身は、インフレターゲティングというものは、いつも申し上げておりますとおり、中央銀行の政策手段の一つの重要な選択肢としてこれを一度も排除して考えたことはございません。将来もしあり得るとすれば、局面に応じては一つの選択肢として十分考えたい、本当にこれが採用できるかどうか。米国の場合にも、やっぱり連銀はなかなかインフレターゲティングを採用しておりません。世界経済の中で非常に重要な位置付けを占める通貨の、通貨政策の場合に、その透明性を上げるという要素とフレキシビリティーを保つという要素、この利害得失の関係を最終的にどう判断するかという難しい問題が残っているというふうに思っています。』


「デフレ脱却の為に行うのではなく、インフレ抑制という意味でのインフレターゲットは検討に値する」という総裁の答弁は何度も聞いて(見て?)おりますのでお馴染みではあるのですが、ひところ情報ベンダーからは「日銀総裁インフレターゲット導入も選択肢と語る」みたいな言い方をされて「???」という印象を与えてみたり、「すわインタゲ導入」などという動きをされてみたりしておりましたが、さすがに最近はこの福井総裁の言い方も世の中で周知されているようです。


○オモシロ質問というかトンデモ質問というか

1回分の多分3分の2位の質疑応答というか論戦をざーっと読んだのですが、色々な面白い応酬がありまして、何といいますか激しく楽しめます。特に今回は質問する側も自信満々で登場しているようですので大変に結構です。

とは言いましても何か激しくスカタンな質問もある訳でして、本日は(この会議録は正直小ネタの宝庫という感じですので、またネタに使う可能性大^^)質問者の方にのみ注目してイチャモンをつけてみましょう(^^)、という事で「そりゃ何ですか〜」って質問列伝をば。

・舛添要一委員(自民党)

『それで、最初、お札の経済学のような話をお伺いしたいんですけれども、低金利でたんす預金が非常に増えていると思いますが、日銀総裁、どれぐらいたんす預金あると思われていますか。』

→この先の質疑応答を見ても意味がある質問とは思えん。ちなみに福井総裁も『たんす預金というのは、厳格に言いますと本当にたんすの中に入っているお金ですので正確にはつかめませんが』と返しながら銀行券発券残高の話をしてました。ちなみに舛添先生この後に続けて質問というか意見を言ってますが、

『この新札発行を機にたんす預金が外に出て少し世の中の金巡りがよくなるんじゃないか、そういう意味でマネーサプライ増えるんじゃないかと、こういうふうに期待していますけれども、そういうことはございませんかね。』

→言いたい意味はわかりますが、たんす預金が外に出てきてもマネーサプライに変化は無いとおもいますが何か?

で、まぁ新札発行だのマネーサプライだのの話を延々としているのですが、こんな質問をしても答えられないというか、そもそも新札発行は経済対策でも何でもないのに何を聞いているのでしょうって質問もありまして・・・・

『それと、この新しいお札はサイズは前のと同じなんで、自動販売機なんかを総取替えということはないと思いますけれども、少なくともソフトを替えないといけない。そうすると、この内需拡大効果というのは、総裁、どれぐらいになると見通しておられますか。これも難しい質問ですが、お見通しで結構です。』

→お見通しも何も答えようが無いので、総裁は一般論でかわしていました(^^)。

で、この話の続きでマネーサプライの伸びが2%台なのは少なすぎでケシカランという話になっていくのですが、その辺は割愛します。ちなみに話は逸れますが、その流れの中で日銀総裁の景気強気発言として注目された「銀行貸出はこれから増加に転じる云々」の発言もでていましたが、会議録を見る限りではどっちかというと話の勢いで強気カンカンの発言をしちゃいましたって印象をうけました。そのほかにも舛添さんとの質疑の中では景気見通しの話なんかもあったのですが、やはり総じて言いますと日銀の公式見解というか展望リポートの内容に即した強気の見通しになっています。

で、どうでもいいのだが舛添先生そんなこと聞くなよな〜っていう質問が。

『アメリカ経済についてですけれども、正に今日、アメリカ大統領選挙ということでありますが、ブッシュさん勝利の場合は、これは基本的な政策、継続すると思っていいんでしょうが、ケリーさんになった場合に、例えば最悪のシナリオを描きますと、ドル安に意図的に持っていく、したがって日本の輸出に対してマイナスのダメージを与える可能性がある。ドル安、裏は円高ですから。これどちらが勝つかはなってみないと分かりませんが、仮にケリー政権となった場合に、日銀総裁としては、こういうことになったら困るなとか、こういう政策を取ることは懸念だなということを他国の内政に干渉しない範囲でお答え願いたいと思います。』

→そんな答えようの無い質問をしないように。しかし福井総裁の偉いな〜と思えるところは、このようなしょうも無い質問に対しても丁寧に答弁しているところでして(といっても結局何も答えてはいないのですが^^)、これが別人だったら「誰が当選したら良い悪いというようにとられるような質問についてはお答えできません」と言ってもおかしくないかと。


・平野達男委員(民主党)

こちらの先生は延々と量的緩和政策のコミットメント部分に関して同じような質疑を長々と繰り返していまして、まぁ質問全体が「この人何でここまでしつこく同じ事を聞いてるんだ」って感じです。とにかく引用しているとアホのように長くなってくるのでどれがどうという話は今日は割愛ですな。総裁の答弁の方が面白かったり示唆に富んだりしているのですが(^^)。


・大久保勉委員(民主党)

某外資系証券のマネージングダイレクターから候補者公募で当選したお方だと記憶しておりまして、まぁ民主党お得意の「専門家」ってお方なのですが、頼むからそんな事聞かないでくれという質問が爆裂するわけです。

『まず、日本銀行のバランスシートに関して質問します。この五年間で日本銀行のバランスシートが二倍に、そして過去十年間では三倍に膨れ上がっています。具体的な数字を申し上げますと、一九九八年が八十兆、これはGDPの一六%です。これが二〇〇三年では百五十兆、GDPの三〇%になっています。国際比較をしますと、米国連銀は七%、欧州中央銀行一二%。この数字に比べても極めて日本銀行のバランスシートが急激に拡大している、また絶対的な金額も大きいと。このことに関して日本銀行総裁に質問します。』

『日銀の資産のアセットサイド、資産の七割が国債ということに関して、日本銀行が事実上、政府の国債管理政策に組み込まれていると、こういった懸念があります。また、このことによりまして政府の財政の規律をそいでいると、こういう指摘もあります。このことに対して総裁はどのようなお考えでしょうか。』

もうね、アホか馬鹿かと。量的緩和政策で日銀当座預金残高を拡大しているのだから、日銀のバランスシートが拡大するのは当たり前であって、日銀当座預金という負債サイド(銀行の預金は銀行から見れば外部からの債務ですな)が拡大している反対側の資産サイドが国債なのがどこがどう悪いのかと。一番安全じゃねーのかと思うわけでして、日銀当座預金の見合いがどこの馬の骨ともわからない所への貸出だったり、どこぞの原野だったりしたらそっちの方が危ねぇじゃねぇかと小一時間問い詰めたいところです。

総裁もこうとしか言いようが無いわけでして、

『日本銀行のバランスシート、資産、負債ともに非常に大きくなっておりますのは御指摘のとおりでございます。これは、ひとえに、量的緩和政策によって市場に流動性をたくさん供給する政策目的から結果として起こったことでございます。市場にたくさん流動性を供給するということは、市場の中から日本銀行が資産を買い入れて、対価として流動性を供給すると、こういう形になるためでございます。』

多分「お前はそれでも某証券のMDかよ」って言いたかったでしょうな〜。で、この話の流れで総裁も言わずもがなの話をする訳で、その答弁の部分がフラッシュとして打たれてしまいました。

『様々な資産を買っておりますけれども、おっしゃいましたとおり、長期国債の金額も非常に大きく増えていると、このことは確かでございますが、今申し上げましたとおり、これは政府の国債管理政策の一環として行っているわけではないと。ましてや、先ほどからも御質問に出ておりましたけれども、長期金利を経済の実勢以上に人為的に低く抑えると、あるいは抑え続けるということを目的にやっているものではございません。』

その通りなのですが、別にそこまで言う必然性があったのかと。今年2月に量的緩和政策の効果について「金利に蓋をする」と言ったのと同じものを感じる次第です。



#延々と書いていたらもう一つのネタであるFOMCステートメントの話を書く暇が無くなってしまいました。基本的な枠組みは変らず、景気には依然として強気であります。

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2004/11/08

お題「田谷さんの後任」

金曜日のニュースといえば田谷審議委員の後任人事。CSFBの水野温さんが後任に内定という事でして水野さんの最近のレポートどうなってましたっけなどという話題で盛り上がっておりました(^^)。

田谷審議委員はこのへんhttp://www.boj.or.jp/about/basic/pb/taya.htmにあるように、経済学者というよりはエコノミストっぽい所ではありますが、今度の水野さんはもろに市場関係者ですので、まぁエコノミストっつーよりは市場関係者って感じですな。で、まぁ本日は水野さんがどうのこうのって話しは本職の方もするでしょうから、ちょっとだけ別の視点を交えながら。


○比較的まともな主張をする人のようですが

水野さんのレポートを精読したわけでは無いのですが、野村證券時代にはよく拝見していたレポートは至極まっとうなお話が多うございましたし、最近はレポートを時々しか拝見しておりませんが、まぁ偶に拝見したときの印象は引き続き「バランスの取れた真っ当な事を言うお方」という所です。最近ではどちらかと言うと量的緩和政策からの脱却について言及しておられるようですが、(本人に聞いたわけではないから勝手な憶測ですが)まぁ審議委員入りがどうのこうのという話もあったのでしょうが、それよりも「量的緩和政策の長期化」ばかりが話題になっている風潮に一石を投じている(そもそも日銀総裁の最近の国会答弁にあるように、日銀総裁は別に量的緩和政策を延々と引っ張る気はない点に注意)という面があったのではないかな〜なんて。

まぁ極端な事は言い出しませんし、主張もあまりぶれないお方だと記憶しております。で、金融政策についてコメントする際には金融政策の論理的整合性っつーかアカウンタビリティを重要視していたような気がしますんで、まぁ色々と考えますと、年がら年中日銀やら金融政策のウォッチをしているお方なのですから、あんなお方やこんなお方よりは遥かに適任なのではないかと思ったりするわけですな。

元々市場関係者から審議委員を選ぶって事が所与だったとしたら、まぁ水野さんが最も順当な人事だったと思います。というか順当過ぎという話もあるようですが。


○田谷さんの後任という意味では

田谷さんはご存知のように「金融政策の論理的整合性」を重要視していて、景気が方向として回復に向かっているという認識をしているのに当座預金残高の目標額を引き上げる(=量的緩和政策の枠組みの中では金融緩和扱い)という支離滅裂な金融政策(だから当時は「円売り介入のサポートの為の追加緩和」と散々な言われようでしたが)に堂々の反対票を投じておりました。この時は須田さんと(途中までは)植田さんも反対していまして、一時は「執行部以外の票決が半々」という素晴らしい状態になっておりましたが、岩田副総裁を除く経済学者系の審議委員が全員反対票という香しい状態になっておりましたな。

で、そういう意味ではまぁ審議委員の中では「非主流派」であり「原則論重視」でもあるので本来的に言えば「正統派」でもあると思うのですが、そういう田谷さんの後釜に座る水野さんは、まぁ割と「バランスの取れた人」となりますので、政策委員会におけるバランスはやや執行部よりになるんでしょうが、それほど極端な変化は起きないように思えます。

まぁあたくし的には田谷さんみたいにある意味「執行部に対して耳が痛い」発言をしていただきますと実に面白いのですが、そこまで期待するのは無理があると致しまして、今後のご活躍に期待したいと思います。


○変化がなさそうではありますが・・・・・

さて、そんな感じで(同業者のレポートを引用するのも何ですので具体性に乏しい記述になってしまいましたが)まぁ水野さんになったからと言ってそんなに極端な変化がおきるとも思えないのですが、相場に与えるインパクトっつーのはまた別の問題であります。

と申しますのは、あたくしがこのように「まぁ順当な人事で、そんなに極端な話にはならないでしょう」などとしたり顔で能書きを垂れていましても、世間様がどういう解釈をするかと言うのは別問題(何てったってあたくしが「それは量的緩和政策の自己否定に繋がるから有り得ない」と言い切っていた「量的緩和のあとにゼロ金利政策が延々と続く」といういわゆる2段階解除論が債券市場で主流の見解だった(今でもそうなのか?)りした事ありましたし・・・・)でして、じゃぁ世間様はどうよ?ってのを考えませんと日々のちょこまかとした相場変動できゃあきゃあ言うのを正業としているあたくしとしては困る訳でございます。

てな訳で、まずまともに英文ニュースで出てきたのがあたくしの知る限りではDowJonesNewswiresの金曜午前11時2分のニュースでして、水野さんの金融政策に関する最近のレポートに関してこのような記述がありました。

In one fo his most recent reseach reports, Mizuno said that the central bank could opt for an early shift to a more normal interest-rate targeting monetary policy from its ultra-loose quantitative easing.

でもって、ブルームバーグ同日午前10時19分のニュースでは日本語ニュースですが、水野氏の審議委員就任(の方向)に関して「日銀に力強い援軍、CSFB水野氏が次期委員の報道」という題で記事がありまして、まぁその中から拾ってみますとこんな感じです。

「民間エコノミストより強気と言われる日銀だが、水野氏はその日銀と同じ強気派に属している。」
「水野氏の起用には、福井総裁自身の意向が強く働いた可能性がある。その福井総裁は最近、出口政策について踏み込んだ発言を繰り返している。」
「福井総裁が展望リポートに前後して強気な発言を増やしていることが、来年度の量的緩和解除に向けた「地ならし第1弾」だとすれば水野氏の起用はその第2弾に当たるのかもしれない。」

ついでにこの記事の小見出しを並べると「福井総裁の強気と軌を一にする起用」「来年度の解除に向けた「地ならし」」となっております。


あたくしが読まない日経新聞なんかでもど〜せ似たようなお話はでているでしょうが、まぁ水野氏起用という事で出てくる解説記事としてはこんな感じのものが多いでしょうから、そ〜ゆ〜意味で言えばまたも「量的緩和政策の早期解除がどうのこうの」って思惑が浮上しやすい展開になってきていると見るのが妥当だという事になるでしょう。

特に、ダウジョーンズの英語ニュースとかブルームバーグのニュースなんかは海外投資家というか投機家がいの一番に読むでしょうから、こ〜ゆ〜のを読んで何をおっぱじめるかとかを想定しておくのもまた宜しいかと。今年の6月ごろに武藤副総裁の海外でのスピーチを無茶苦茶に曲解したレポートがどこぞのストラテジストから出されて相場のとんでもない下落を招いたという事件は記憶に新しい所でありますので、まぁ注意するにしくはなしと言ったところでしょうな。


それでは〜

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2004/10/29

お題「国会は鬼門?」

本日は諸事情(寝坊ではない)により簡単に。

相変わらず国会にせっせと日参させられる日銀福井総裁様、昨日は参議院財政金融委員会で6月国会に提出した平成15年下期分の「通貨及び金融の調節に関する報告書」の概要説明の為に参議院に出席されておられました。で、例によって例の如く会議録が直ぐに出てこないので情報ベンダーのニュースとあたくしの脳内メモリーから発言を拾いますと、またまた妙な発言をしているようなのですよ。

時事メインだか日本語版ロイターだか忘れましたが、ちょうど2年国債入札をどうしましょって話をしているときですから11時半過ぎなんですが、質問に答える形で「金利を無理に押さえつけるような政策は行わない」という発言をしていたようであります。(別のベンダーのニュース記事を取ったら、発言じゃなくて概要説明の公開文書を記事にしただけのものでがっくりですよ先生、って記事読んでからコピーしろよですな)

どういう文脈でその発言が出たのかイマイチ良く判らんのですが、これが英語のフラッシュになりますと(ってこれもまたあたくし入札その他で忙しくて肝心のフラッシュを正確に記憶してないのですが)、「金利」が「long term rate」に化けてしまう訳でして、海外投資家(投機家?)がフラッシュを見ると「日銀総裁は長期金利の上昇を示唆している」ってな思いっきりミスリードな話になっている懸念がある訳です。なお、概要説明の文書として日銀Webにアップされている文章は下記URLでして、まぁ特に目新しい話をしているわけではありません。
http://www.boj.or.jp/press/ko0410e.htm


どうも福井総裁というお方は副総裁時代(懐かしい話だ)の「ジャストタイミング発言(=景気回復期待で金融引き締め懸念があったなどという事が有った時に、何故か連合の人たちとの会談の席で「金融政策についてはジャストタイミングで対応を考える」とかいうような発言をしたと報じられて債券相場瞬間大暴落したという伝説の発言)」を始めとして、誤解を招く発言が多いようでして、これを最近の債券市場関係者は「サービス発言」などと称しております。

新日銀法の下、「開かれた日銀」を標榜する中央銀行さまにおかれましては金融政策に対して広く国民に理解を求めるというわけでして、福井総裁さまにおかれましては恐らくご本人の意識として率先垂範の精神で「わかりやすい言葉で金融政策の説明をしていこう」という意識が働いているのだと勝手に想像する訳ですが、どうも「わかりやすい言葉で説明をしよう」っていう意識が空回りしているのでしょうな〜と思うわけです。

折角わかりやすい言い方をしても、それを言うタイミングとか言い方があるっていうのはどうもご理解頂いてないようでして、債券相場が上昇しまくる今となってはただの馬鹿相場だった昨年の5月だか6月には「国債は株式と違うので国債バブルという言い方は適切ではない」と言って暴騰祭りにガソリンをぶち込んでみたり、その後の暴落時には「景気回復で金利が上昇するのは自然な姿」と言ってまたも燃料投下をしてみたという実績がございました。最近では年初だか何だか忘れましたが、ちょうど長期金利が低下している時に「金利に蓋をする」という迷言で10年金利1.2%割れへと燃料投下して、その後の債券下落での怪我人を増やす原因の一端を担ってみたりと困ったものでございます。


今までの言行を見ますと日銀総裁様におかれましては「原稿の無い場所」で発言をするとその場の勢いで誤解を招くような言い方をしてみたり、余計なサービスフレーズをつけてみたり、心情を吐露したかのような言い方をしてみたりと、どうも市場に余計な燃料を投下する傾向にあるようです。で、講演やら記者会見なんかでは遅くても翌日に発言内容が日銀のWebにアップされますので言ってみれば「公式発言」を確認する事によって冷静に読み直して「ああ、この発言の真意はこういうことだったのね」と確認できるのですが、国会の場合は会議録として閲覧できるタイミングが(その時々で違うのですが)1週間〜2週間かかりまして、その間に相場はどっかに逝ってしまっておりますので、改めて会議録をチェックして発言の真意を確認しようというような物好きはあたくし位しかいない訳ですな。

よって情報ベンダーのフラッシュやら新聞報道だけが駆け巡って終了と言う事になるのが国会という事になる訳です。そう考えますと、前も同じことを申しあげましたが、日銀仮バージョンでもいいですから「日銀総裁の国会答弁概要」に関して日銀からタイムリーに発表するような(多分法令か政令をいじらないといけないと思いますが)環境整備をした法が宜しいのではないかと思う次第であります。

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2004/10/27

お題「まぁ建前なのでしょうけどねぇ・・・・・」

昨日の続き。

ご存知の通り福井日銀総裁というお方は生え抜きの大物総裁でして、(この言葉好きじゃないんですけど)「カリスマ総裁」として絶大な権威をお持ちだという風に言われております。でまぁ福井総裁になってからの金融政策を振り返ってみますと、よく言えば「機動的に対処」「市場整備の為に新しい政策に取り組む」となるのですが、現場から見た率直な印象は「自分たちの脳内現実を基に政策を打ってませんかねぇ」と言いたくなるわけであります。

何と申しますか、目の前に起きている現象は現象として把握しているらしいのですが、その現象の因果関係を何か妙に解釈していたり、そもそも現象をちゃんと把握しているのか謎な場合もあったりする訳でしてアレな訳でございます。現場との乖離をそのままにして突っ走られるとそのうち碌でもないことになるのではないでしょうか。

という事で福井総裁発言チェックなのですが、昨日の続きの前にまた国会でサービス発言をしていた話を。

○インフレターゲット論議

昨日の(たぶん)衆議院財務金融委員会に福井総裁が出席(しかし何でそう何度も何度も国会に呼び出すんでしょう。つい先日の国会開会以来3回目ですが。)しまして、金融政策に関して答弁したようであります。国会の会議録がアップされるのは少々お時間がかかりますので、情報ベンダーのフラッシュを脳内メモリーから書き出しベースで書きますと・・・・

どうも「インフレターゲットの導入を検討すべきではないか」というどこぞの委員(議員)の質問に対しまして、福井総裁は「正常な経済状態になった時にはインフレターゲットの導入は大いに考えられる」というような趣旨の答弁をされたようです。

で、この問答が今朝あたりのメディアに取り上げられる(上げられないような気もしますが^^)と、まぁ多分「福井総裁、インフレターゲット導入に含み」みたいな書き方をされると思うのですよ。今までのパターンから言いますと。

しかし、上記の問答を良く見ますと(ってそもそもこの問答が情報ベンダーのフラッシュを見たあたくしの脳内メモリーから書き出しているのでまぁ本当の所は会議録で確認すべきですが)、「インフレターゲット」の意味が質問者と福井総裁との間で違っていると思われる訳です。すなわち、質問者がインタゲを「デフレ脱却の為にインフレターゲットという物価目標を設けるべき」という文脈で使っているのに対し、福井総裁はインタゲを「正常な経済(っていうのは要するにデフレ脱却後という意味)下においてインフレを制御する目標値としての物価目標」という意味で答弁している訳でして(少なくとも今までの福井総裁の言動からするとそういう意味になる)、この辺は福井総裁の「政治性」の面目躍如といった所かと思います。

まぁ質問者の質問をまともに相手にせずに上手にかわすというのは国会の参考人としては一つの作戦でもありますし、そもそも「デフレ脱却にインフレターゲット導入」っつーのがあまり意味が無い(色々議論は続いているのですが、どうも日銀単独の金融政策で一般物価を直接コントロールのはまぁ不可能に近く、目標達成ツールが無いのに「目標」を設定すると言うのはどこかの頭の悪い営業現場で行われている無意味なアレのような^^)という話を延々としだすと委員会質疑が永遠に終わらないっすから仕方ない面はあるのですが、この辺の議論を福井総裁は敢えて避けている面があるのかと思う訳です。

まぁそれも一つの知恵なんでしょうが、用語の定義を曖昧にしたままでこの論議を進めるってのもどうかな〜と思うわけでございます。


○微妙に「それは違うんじゃないかな〜」と思うのですが

というわけで前置きが長くなってしまいましたが昨日の続き。

『大量に発行された国債は、これまでのところ、発行市場において、概ね順調に消化されています。流通市場でも、国債利回りは、歴史的にみて極めて低い水準にあり、景気回復が明確となった昨年夏場以降も、多少の振れを伴いつつも、1%台で推移しています。国債金利はやや長い目でみると、経済・物価情勢を反映して変動するものです。』

『この点、現在、国債金利が低い水準で推移している最も基本的な背景としては、何よりも物価が落ち着いていることが挙げられます。これに加えて、幸いにも、財政赤字の増加から国債金利にプレミアムが上乗せされるといった事態を回避できていることも挙げられるかもしれません。』

前半はその通りなのですが、後半は「物価」じゃなくて「量的緩和政策の効果」であり、「ゼロ金利」+「時間軸」が長期金利の低位安定を促しており、その量的緩和政策が消費者物価指数にペッグしているから「物価が前年比微減」→「量的緩和政策の長期化」なのではないかと。勿論この位は日銀総裁としては当たり前でしょうが、こーゆー言い方はミスリードを招く懸念無きにしも非ずかと。

ちなみにこの「財政リスクプレミアムがなぜついていないのか」という話をした部分を昨日ご紹介しましたが、その解釈として『財政の状況は現在は確かに悪いが、政府が将来は財政収支の改善に向けて着実に取り組んでいくことに投資家は信認を置いている』って話が出てくると「ちょっとそれはどうよ」って話になってくるわけですな。話としては美しいのですが、何時の間にやら結論が「美しい結論」になってしまうのが懸念される訳です。


で、まぁ財政収支均衡に向けて頑張りましょうというようなお話をしているのはまぁあたくし的には所々「え〜」ってのも無くは無いのですが、この辺はイメージ的なお話になってしまうので省略しまして、国債流通市場の話をしているのですが、どうも結論に向けて話を展開している為だと思うのですが、「おまえさんそれはないでしょう」と言いたくなる発言が「国債の保有層の多様化をしましょう」という話の中に出てくるわけです。

『問題は、このように(国債の)保有主体が一部に偏る(金融機関の国債保有比率が極めて高いという状況の事です)と、皆が同じような行動をとりがちになるため、市場の厚みがなくなり、利回りが大幅に振れる可能性が高まりやすくなることです。実際、昨年の夏には、景気が次第に回復する中で、それ以前の金利低下局面で過大なリスクテイクを行っていた金融機関が一斉に国債を売却し、さらに価格下落と評価損失の発生ないしその懸念が、金融機関の国債売却を招くということが起こりました。』

そもそも現在の金融政策と財政やら経済運営、金融行政なんかを総合すると、国債の保有主体が金融機関になるのは政策運営の結果として必然的に生じる自体な訳でして(まぁそれらしいことはその直前で総裁も言及してますが)、それをケシカランと言われてもリンダ困っちゃう〜って感じでしょうな。で、それよりも血圧急上昇なのは「過大なリスクテイクを行っていた金融機関が」っていう件でして、そもそも「過大なリスクテイク」をせざるを得ない状況に債券市場を煽ったのはどこの誰だと小一時間問い詰めたいわけでございます。当時の記録を引っ張り出したいところですが、ドラめもん過去ログ整理が進んでいないので惜しくも具体的事例が出てきませんが(-_-メ)。

で、結論としては『こうした出来事を踏まえても、国債は、個人、非居住者を含め、できるだけ幅広い投資家に保有されることが望ましいことは言うまでもありません。』って言ってます。どうも講演やら会見やらで妙な横文字を多様する(指摘されてから急に使わなくなったのがまたお笑いなのですが)のがお好きなだけに、「非居住者の国債保有」にえらく御執心のようで、わざわざ『米国では、個人が約10%、非居住者が40%強の保有となっています。』などとお話をしているのですが、そもそも経常収支が黒字の国と赤字の国の国債保有比率を同じ土俵に並べる事自体がおかしな話だと思うんですが。経常収支が大黒字で政府部門が大赤字だったらISバランスがどうのこうのと言わなくても、政府部門の債務は民間部門が保有することになるのは初歩的な簿記の知識だけでも判りそうな気がするわけでして、外貨準備で持ってもらう分は兎も角として、それ以外に非居住者に国債を沢山保有してもらわなければいけない理由が意味不明でございます。(勿論将来の事を考えているのでしょうけど)

どうも「国債保有主体の多様化」という結論を持っていくために強引な論理展開をしているように見えまして、この論法が拡大していくと次第に現実と遊離した「脳内現実」を基にした「こうあるべきだ政策」が炸裂してしまうのではないか(既にしているという気もしますが)と懸念される次第であります。


#うーん、今日も話が発散してしまった。

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2004/10/26

○正しい判断をするためには正しい認識が必要ではないかと

これも実は重い話題なので続編を書くかも(^^)。

仲間内の議論で「日銀の政治からの独立」って話題が出てきたのですが、まぁ「日銀が金融調節や金融政策を行うにあたって正しい判断を行うためには独立性は不可欠であって、正しい判断をする為には色々な意見を聞く開かれた日銀という姿勢が大事でしょう」ってなまともな結論に落ち着いた訳ですが・・・・・・

昨日日銀のWebにアップされたのは福井総裁の財政制度等審議会における日銀総裁発言「わが国経済と財政について」というお話。
http://www.boj.or.jp/press/04/ko0410d.htm

さらっと読んだだけなので突っ込みもさらさらなのですが、どうもこの講演って建前で言ってるのか本音で言ってる(本音で言っていると言えば財務省の日本経済の将来ビジョンに関する審議会に勝る物はないでしょう。だいぶ前にご紹介しましたがあれは白眉^^)のかよー判りませんが、思わず「そいつはどうかな」と突っ込みを入れたくなるご高説が少々。


『現在、わが国の景気は回復を続けています。ここ数年、実質成長率に対する政府支出の寄与はマイナスを続けていますので、2002年から始まった今回の景気回復は、「民需主導」と表現することができます。』

この政府支出ってのに金融機関に対する公的資金(預金保険機構だか何だかの特別会計)突っ込みだとか莫大な円売りドル買い介入(外国為替特別会計)による米国経済下支え攻撃というのが含まれているのでしょうかと思うと頭の中に「?」が百万個くらい飛び交ってしまう訳ですな。ついでに申しあげますと、りそな銀行救済スキーム以降の「銀行への見せ金」とか、そこにぶちこむと要管理債権が突如通常債権に化けるという銀行お助けスキームの官営債権管理会社の産業再生機構なんてものまでありますわな。

確かに統計上の「政府支出」は減少してますが、その代わりに各種の問題点を政府部門に飛ばしまくっているという現実もある訳でして、こう堂々と「民需主導」とか言われると非常に違和感を感じる訳でありまする。大体民需主導で本当に景気が回復してるならGDPギャップがもっと縮小してデフレなんぞとっくに脱却してると思いますがねぇ。

企業部門の回復って企業部門全体で見た政府部門への飛ばしと家計部門への配分減少が結構寄与しているんじゃねーのかと言う気もするのですが、こーゆー分野の分析は苦手というか出来る人が近くにいないので、勉強するっきゃ無いのですが、とほほのほ。

念のため付け加えますと、総裁はこの続きとして要因を「海外経済の好調さによる輸出拡大」と「企業の過剰投資、過剰債務、過剰雇用の調整が進んだ」と挙げているので、「民需主導」ではあってもまだ「前向きの循環」進行中という認識のようですが(^^)。



『すなわち、財政収支は悪化し国債残高も多額に上っているにもかかわらず、国債は順調に消化され、リスク・プレミアムもみられていないという状況はどのように解釈すべきでしょうか。一つの解釈は、「財政の状況は現在は確かに悪いが、政府が将来は財政収支の改善に向けて着実に取り組んでいくことに投資家は信認を置いている」というものです。もう一つの解釈として、「投資家である金融機関は、将来の財政の状況をにらみつつも、当面の収益確保を優先して、取り敢えず安全な運用手段として国債に投資をしている」という見方もあるかもしれません。』

まぁ概ねよろしいといえばよろしいのですが、そんなに信認を置いているかというとその辺はちと判りかねる面がございますな。国債の投資主体の殆どが国内の機関投資家であって、この人たちは何だかんだと言っても「利息をつけて返さないといけない金」を使って運用しているので、財政収支の改善がどうのこうのというよりは当面の収益を重視するって事になるでしょう。それに(そう言っちゃあ身も蓋も無いのですが)将来のインフレで資産価値が毀損するリスクは金主(銀行なら預金者、保険会社なら契約者)が負担してる訳ですから、あまり一つ目の解釈に重きを置くのは如何なものかと思う訳ですよ。

まぁ実際問題として皆様がどう思っているのかはよ〜知りませんし、あたしゃ思いっきり財政のサステイナビリティ(持続可能性)に悲観的なので、もっと信頼をしている方の意見が耳に入りにくいという問題点があるのですがね(^^)。


ま〜この程度しか突っ込みませんが、さらっと見ただけでも「ちょっとそれはどうよ」ってのが見当たるわけでして、まぁ世の中どこでも「偉い人」には下々の真相が伝わりにくいという話はあるんでしょうが、正しい判断をする為には正しい現状認識(ただし現場というのはその現場だけの視野狭窄になる訳で、視野狭窄モードでは正しい話でも全体俯瞰した場合どうよってのもありますが、と一応謙虚な姿勢も見せるあたくし^^)という事で、建前だけではない話もお願いしたいと思うわけです。

どうも過去の「役立たず金融調節新手法」とかの実績を見ると「本当に状況を判っているのか」が禿しく不安になる訳ですし、名指ししちゃうと偶に講演をする度にとてつもない珍説を披露してくださる福間審議委員なんかを見ちゃいますと「はて本当に大丈夫なのか」と思っちゃうんですよね。


○時にこれは良いお話

と、総裁の講演で意外に長くなって時間がなくなったので、続きはまたいずれなのですが、講演中に大変結構なご発言がございましたので余計な茶々を入れずに引用します。

『なお、終戦直後のわが国の経験などを踏まえ、多額の国債負担を解消するためには、インフレ率を上昇させるしかないという考え方が、あるいはあるかもしれません。仮にそうした議論があるとすれば、金融市場の姿が終戦直後と現在とでは全く異なっているという現実を忘れているように思えます。何よりも、現在は、市場が発達し、しかも、その市場がグローバルにリンクされるようになっています。そのため、国債負担の軽減を目的としてインフレ率を無理に高めるような政策をとると、国債利回りが急上昇し、既存債務の借換えや新規の借入れに支障をきたすことになります。また、金利の上昇により、企業や家計のコンフィデンスが毀損され、経済活動が収縮してしまうおそれがあります。中央銀行は物価の安定や経済の持続的な発展と整合的な金融政策を運営することによって安定的なマクロ経済環境を維持し、そのことによって、財政再建にも寄与することになると思います。財政再建は、そうした安定的なマクロ経済環境が維持される中で、歳出入両面での見直しに取り組むとともに、地道に中長期的な経済の潜在力を高めることによって、実現していくしかありません。』

それでは〜(^^)/

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2004/10/21

お題「来年度物価見通し+0.1%記事が出ましたが」

まずは昨日の訂正。30年国債の話してた時に、20年ー30年スプレッドがど〜のこ〜のという能書きを垂れていましたが、思いっきり数字間違えてましたな(超大汗)。スプレッド30じゃ今の水準よりも縮小ではないですか。40の間違えです。誠にお恥ずかしいことで、賠償はしませんが謝罪いたします。


さて、昨日の債券相場といえば、朝っぱらから日本経済新聞の1面トップに「展望レポートでの来年度物価見通しがプラス0.1%になる見通し」というような記事が出たそうで(何せ日経新聞を読まない人なのでモーサテで見落とすと日経独自記事は判らんのよこれがまた)して、とりあえず朝は「これは織り込み済みなのかどうか」という話題でもちきりでありました。

当該記事を日経新聞のWeb判「NIKKEI NET」ではこの辺に掲載。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20041020AT1F1901D19102004.html
まるっきり引用するとアレですのですが、まぁ最初の一言はこんな感じ。
『日銀が29日に公表する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、政策委員が予測する2005年度の消費者物価が前年度比で小幅の上昇に転じる見通しとなった。』

展望レポートの「見通し」が報道されるのは今に始まったことではありませんで、前回の展望レポートの時も1週間前に同じようなリーク記事なのか観測記事なのか一見すると良く判らん(というか真性リークだったらタイーホですので当然ながら体裁は上記引用にあるように「見通しとなった」と観測記事ではありますが)記事が出まして、結果は記事と同じ物となったという実績が既にあります。実はリークなのではないかという議論も無くは無いのですが、ま〜その辺りの話はスルーしまして。


○そもそも三者択一でしたから

展望レポートにおける来年度の物価見通しに関して既に世の中で言われていた(と思う)ことは、っていうか来週の頭あたりにあたくしの大予想でも書きたかったので日経新聞迷惑この上なしという所でありますが(^^)、来年度見通しかいくらかといえばまぁ3択問題みたいなもんでして・・・・・

まず「景気判断として回復基調」というのがある訳ですから見通しを足元の基調数字以下におくのは自己矛盾。よってマイナス0.1%が下限となりますわな。

で、先日ご紹介した9月の金融政策決定会合議事要旨にあるように、『複数の委員は、物価動向と景気動向との乖離が改めてはっきりしてきたのではないかとの認識を示した。これらの委員は、もともと7〜9月中には、消費者物価の前年比がプラスになる可能性も視野に入れていたが、その後の展開をみると、その可能性はかなり小さくなっており、景気回復に物価が反応し難い姿が鮮明になってきているのではないか、との見方を示した。』なんて事になっているというのを認めている訳ですから、足元の基調数字から大きく強気な数字も出せませんわな。

それにあまりにも高い数字(+0.5%とか)を出すと、量的緩和のコミットメントのうちの「先行きの物価見通しも継続的にプラス」って条件が成就されるというお話になりますので、足元のCPIがプラスの数字をマークした暁にはこりゃ大騒ぎって事になりますから、その意味からも強い数字を出すわけにも行きませんわな。

と考えますと、結局は▲0.1%〜+0.1%の三者択一状態になりますし、マイナスに設定すると今までの金融政策の流れを踏襲すれば(って散々支離滅裂なパフォーマンス路線を驀進していましたので論理的整合性を期待するのが間違っているのかもしれませんが)、論理的必然は追加的金融緩和(ただの当座預金残高拡大なので実効性という意味は無いのですが)をしましょうよって事になる訳で、結局は実質2択みたいなものだった訳です。


○総合判断の方が大事だとしたいのか?

で、まぁその見通し数字がゼロなのかプラスなのかで大騒ぎしているという説を唱える人もいたようですが、待てど暮らせど足元のCPIが上がらない方が問題になってきている(って言うか、景気が順調に推移して物価が上がらないんだからこれほど良い事はないだろうと思うのですがまぁそれは兎も角)ので、上記したような余程のとんでもない高い予想数値でない限りは先行きがゼロだろうがプラス0.1だろうがど〜でも良いとと思う訳です。

まぁ「最終的には総合判断」っていう方向に金融政策を持って行きたいというのが日銀の本来の意識(ただし岩田副総裁のように機械的金融政策を提唱したがる変な人もいますが)でしょうから、あたくしが勝手に想像する日銀としての理想的な流れとしては、「景気は順調に推移」→「景気順調で先行きのデフレ脱却見通し」→「足元のCPIもマイナスから脱却」→「総合判断をした結果量的緩和政策解除」って所なんじゃないかな〜って思っている訳でございます。

ま、それ以前の問題として、以前ちらっと書きました(で、まとめた物を作るとか言ってましたがその前に昨日の記事によって証文の出し遅れモードになってしまいましたが)各審議委員の講演などから伺える「物価見通し」と「金融政策のスタンス(というか量的緩和をどこまで続けるのか)」を比較すると、「物価見通しが強気の人は量的緩和継続期間を延ばそうとしている」「物価見通しが強気じゃない人は量的緩和のコミットメントを遵守しようとしている」というコントラストを見せておりまして、結局のところそう簡単に時間軸が縮まるとは思わない方が吉ではないかと存じ奉る次第でございます。


○相場への影響は?

昨日の債券市場は朝っぱらは株価指数の下落(と米債の堅調さか)を受けた先物買戻し攻撃で先物独歩高だったのですが、その後20年、30年ゾーンを中心に午後2時前くらい(もうちょっと早かったかな?)からイールドカーブが猛烈に変化するという攻撃が炸裂して終わってみれば脅威のブルフラット。まぁこういう動きの時は大体どこぞに新規資金がやって来たと想像されやすい所ではありますが、まぁ兎に角20年だの30年だのに買いが入るという豪快な相場をやってくれました。

昨日1日の動きだけで判断するのも早計でしょうし、大体昨日の動きが引け前1時間攻撃みたいな感じでもありましたので何ともアレなのですが、とりあえず結果から見れば「市場は織り込み済み」という事だったのでしょう。大体今月頭に読売新聞も「物価見通しがプラス」などと読売とは思えん経済観測記事書いてましたし。

勿論実際の展望レポートがでてこないと始まらないのですが、とりあえず債券市場は織り込み済みだったという事にしておきますが、一番懸念されるのは「時間軸がこれで一気に短くなった」などと勘違いする「偉い人」が出てくることくらいでしょうか(笑)。まぁ無問題という事で。


○しかしこの手の記事は如何なものか

と思うわけですな。リークなのか観測記事なのか知りませんが、金融政策の方向付けに大きな影響のあるモノに関してあたかもリーク記事であるかのような観測記事が流れるというのは福井総裁さまが常々仰っている「市場との対話」というのとは違うと思うんですが。

まぁ金融政策に関しては先日は日経新聞さまやたら熱心に「2段階解除論」を提唱してみたりしてまして、債券市場が妙に一喜一憂して意味不明な暴れを展開して下さいまして大変に香しい日々が続いておりましたが、どうもこの新聞社はリークなのか観測記事なのかよ〜判らん記事を出して下さりまして、余計なことに市場関係者の「偉い人」がこの記事に一々反応して下さるので市場が勝手に反応してしまうという困った傾向があるように思えます。

せっかく日銀が「市場との対話」をしようとしてWebサイトに講演要旨をその日に直ぐ発表したり、翌日には記者会見がアップされると言う素早いディスクローズをして下さっているのですが、ど〜もあたくしが見ているとこの新聞社が訳の判らん解釈をおっぱじめて妙な報道をするので日銀の意図しない所でリアクションが発生することが有るのではないかと思う訳でございます。

別に観測記事書くなとは言いませんが、何か微妙に「その書き方は無いんじゃね〜の」って思う今日この頃でございます。

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2004/10/19

お題「日銀政策委員会での景気議論」

昨日公表された9月8、9日の金融政策決定会合の議事要旨。まぁ政策変更は全然ありませんので金融政策に関する議論は最近めっきり平穏無事になってきております(ついこの前までは所謂2段階解除論を巡って議論があったのでそちらの部分を読むと中々香ばしい物を感じたのですが)が、景気に関する議論は盛り上がってきているようですな。

まぁ景気に関してというか特に物価に関しては先日来ご紹介しているように、各審議委員の講演やら記者会見やらを見ますと意見が結構割れているように見えるのですが、公表された9月の議事要旨を見ると、やはり景気の見通しにかかわる部分で盛り上がりを見せております。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g040909_f.htm

この中の『U金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』

というのが景気見通しなどなどにかかわる部分なのですが、その各項目について意見が色々と出ているの図であります。

『経済情勢について、委員は、(1)幾分減速感がみられている海外経済の動向をどう評価するか、(2)わが国経済に関しても輸出・生産や賃金などで弱めの指標が幾つか発表されているが、これらが景気回復基調の変化を示唆するものであるかどうか、という点を中心に検討を行った。』


○海外経済

・米国経済

『米国経済について、多くの委員は、第2四半期のGDP成長率が低下したことについて、ガソリン価格の上昇や減税効果の一巡等を背景とした個人消費の伸びの鈍化を主因とした上で、その後の動きをどう評価するかがポイントであると指摘した。』

で、意見がいくつか出ているのですが、全部引用しているときりが無いので端折って纏めますと、要は「原油価格の影響をどう見るか」「雇用状況をどう見るか」という点でして、多くの見解は、

『多くの委員は、原油高や地政学的リスクが引き続き根強いこと、企業部門から雇用・所得への波及が遅れていることや、金融政策が利上げ局面に転じていること等から、今後の米国経済の動向は丁寧にみていくことが必要であるとの認識を示した。』

という感じのようです。後で触れますが、基本的には強気というか景気は巡航速度に入っているという認識なんですが、留保条件付きって言うかやや警戒心を持ちながら先行きを見ているって所なんでしょう。個人消費の先行きに関して9月の頭から「クリスマス商戦」に言及している人がいたのには笑えましたが。そんな先まで判断留保かよ!

・中国経済とかEU経済

あまり大した話はしてませんが、EUに関して

『ひとりの委員は、賃上げを伴わない労働時間の延長の取り組みの開始を指摘し、構造調整の進展に期待が持てる状況になってきた、と付け加えた。』

ああそうですか労働者はもっと働けと。別に働かねぇつもりはねぇけどよ。それにしては労働者に皺寄せさせるだけで働いた積もりになってる経営連中多すぎやしませんかと。・・・・おっと、全然関係ないところで取り乱しました。

ま〜中国経済に関しては結構これがまた強気っぽい意見のみという感じでして、EUに関しては輸出拡大で回復観が強まっているということのようです。

ということで海外経済の総括はこうなります。

『海外経済に関して、委員は、世界経済を全体としてみれば、これまでの高い成長からより持続的な成長ペースに速度を落としつつ、着実な拡大を続けているとの見方を共有した。』


○国内景気・企業部門

・生産関連

『国内経済について、7月の輸出、生産が4〜6月に大幅に増加した後、ほぼ横這いとなったこと、また電子部品関係が在庫調整局面に入ったようにみえることをどう評価するかを巡って意見を交換した。』

で、結論は「ITとかデジタル家電が減速しているのが懸念材料だけど、今のところ腰折れの雰囲気は無いのでまぁ先行き良く見ておきましょう」という感じです。

・設備投資

『多くの委員が、法人企業統計調査において、企業収益が大幅な増加を続けるもとで、製造業・非製造業ともに本年度の設備投資が大幅に増加していることを指摘し、設備投資の増加傾向が当面続くとの見方を示した。』

『ただし、複数の委員は、法人企業統計調査における非製造業の設備投資は、短観等の調査結果と比較しても、かなり強い数字となっている点を指摘し、サンプルの変更が影響している可能性もあることから、今後、10月初に公表される短観でも改めて確認していく必要があると付け加えた。』

で、先日の金融経済月報の基本的見解は9月発表分と変化が無いということは、10月短観で確認した結果、判断を変更する必要なしという事になったと言うことですな。


○国内景気・家計部門

・家計部門

『家計部門に関しては、多くの委員が、求人関連指標や雇用者数は改善を続けており、企業収益の増加の雇用面への波及が次第にはっきりしてきている点を指摘した』

というのはいつも同じなのですが、この後出てくる「ただし」以下がまた意外に(^^)見方が慎重。まぁ非製造業○け組に属するあたくしの実感と同じなので全然違和感がございませんが(^^)。

『ただし、賃金に関しては、パート比率の上昇などから、一人当たり賃金の減少傾向が続いていること、伸びが期待されていた夏期賞与について、毎月勤労統計における6、7月の特別給与が前年比−3.1%となったこと等から、賃金面への波及はなお限定的であるようであるとの認識を述べた。』

・個人消費

という話の流れで行きますので、この部門も見方は割と慎重です。

『この間、個人消費については、何人かの委員が、消費者コンフィデンスの改善にも支えられ、やや強めの動きが続いているとの見方を示した。』

と言いつつも・・・・・

『一方、複数の委員は、猛暑やオリンピックによる消費の押し上げ効果は当初予想よりも弱かったようであり、先行き税制改正や年金制度改正による家計負担の増加が予想されることもあって、今後も個人消費が強めの動きを続けていくかどうかは注意が必要であると述べた。』

税制改正というか要するにまた勤労者から巻き上げる政策へと突き進むのは如何なものかというご指摘ですな。誠にごもっとも。

こういう話になると昔の社会党が懐かしく思えるのですよね。「労働者の負担増の前に○○優遇税制やら○○法人への課税を」とか言ってくれたと思うんですが、最近は(以下激しく自粛)。


○国内景気・物価

物価の現状に関してはまぁいつもどおり。先行きに関してはこんな感じ。

『多くの委員は、9月に実施されたガソリン価格の引き上げ等が、消費者物価の押し上げに寄与する一方、豊作が伝えられる米価格の下落が見込まれ、基本的には、7月の中間評価に沿った動き、すなわち小幅の下落基調で推移する可能性が高いのではないか、との見方を示した。またひとりの委員は、この先電力料金の引き下げが、消費者物価の押し下げに寄与するとみられると述べた。 』

何かしょーもないテクニカルな話をしてるように見えますが、その前に現状認識として、

『消費者物価について、多くの委員は、(1)マクロの需給環境は改善方向にあるが、なお緩和した状況にある、(2)原材料価格の上昇が企業段階でのユニット・レーバー・コストの低下である程度吸収されている、という点に変わりはなく、その結果、前年比小幅の下落が続いていると指摘した。』

と言ってますんで、基本的な流れは変っていないということです。興味深いのは岩田副総裁などが指摘したと思われるこの部分。

『この間、複数の委員は、物価動向と景気動向との乖離が改めてはっきりしてきたのではないかとの認識を示した。これらの委員は、もともと7〜9月中には、消費者物価の前年比がプラスになる可能性も視野に入れていたが、その後の展開をみると、その可能性はかなり小さくなっており、景気回復に物価が反応し難い姿が鮮明になってきているのではないか、との見方を示した。』

というかあたくしは日頃から小さい声で申しあげているように、景気は単に循環的に浮上しているだけで本格回復しているだけでしょって認識なんで、物価が上がらないのは当たり前だと思ってますが。大体ここまで浮上させるのに財政(ただし預金保険と外為特会)を幾ら使っているんだと。まぁいいけどさ。

原油価格の影響に関しては所々で触れられてますが、まぁ日本の場合は原油価格の上昇がまともに効いてこない要因(そもそも日本が主に使っているのは軽質油じゃないとか石油依存度が全然違うとか原油から使える状態まで持っていく間に税金だの輸送コストだのが高くついているのでそっちがでかいとか)があるのでまだ懸念するに及ばずだが注意していくという感じのようです。


○国内景気総括

ということで、総括判断は「とりあえず認識を改める必要は無いが、ちと留保付き」という感じであります。まぁあたくしの解釈だけで終わらせると何ですのでこの部分は丸々引用。

『委員は、輸出や生産の伸びが足許幾分鈍化しているほか、賃金面にも注意すべき動きがあり、今後の動きは丁寧にみていく必要があるものの、企業部門の好影響が家計部門に波及していく中で、前向きの循環が明確化していくという基調判断をとくに変える必要はない、との認識を共有した。』

『何人かの委員は、景気拡大ペースの減速がやや早く訪れた感じもあるが、昨年10〜12月、本年1〜3月の高い成長から、持続的な成長が可能な巡航速度になりつつあると評価して良いのではないかと述べた。』

『ただし、複数の委員は、基調判断に大きな変化はないものの、賃金面の動向などをみると、企業部門の好影響が家計部門に波及するスピードが、やや遅れている可能性もある、と付け加えた。』


総じて言えば基本的判断を変えないものの先行きに関する警戒をする必要があるのではないかという総括になっておりまして、今までの景気回復進軍ラッパ吹きまくり状態からやっと冷静になって下さったという事では無いかと思う次第であります。


○おまけ

ちと苦笑したのは(今回はスルーしましたが)金融面に関わるこの辺の件。

『先行きの金融政策運営について、何人かの委員は、金融市場において景気の見方がやや分かれていることに改めて言及し、このような場合には、市場参加者の期待が振れ易くなり、金融市場の変動も大きくなりがちであることから、市場の動向を丁寧にみていくとともに、日本銀行としての経済・物価情勢の見方や政策運営についての考え方を市場に対し、分かり易く示していくことが重要である、との考えを述べた。』

そもそもお前らの意見が分かれているだろうと言いたいですな。またマッチポンプかと小一時間(略)。

ま、金融政策に関しての話は盛り上がってなかったようです。

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