金融政策概観(2005年度下期分)


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2005年下期

2006/03/28「3月10日の国会答弁から(岩田副総裁、福井総裁答弁&出来の悪い質問者)」
2006/03/23「火消しのコラボレーション(福井総裁と与謝野経済財政担当大臣)」
2006/03/20「日銀のウェブサイトがリニューアル」
2006/03/17「総裁の火消し国会答弁なんですが微妙に落とし穴もあります」
2006/03/16「連続利上げ織り込み状態の2年ゾーン/日銀文学じゃなくて・・・」
2006/03/15「地味に当座預金30兆円割れ」
2006/03/14「日銀ウハウハの展開?/水野審議委員講演/あざといレポート」
2006/03/13「芸の細かい調節とぶっ飛ばしの総裁記者会見」
2006/03/10「低金利長期化というのはどう見ても勘違いです(量的緩和解除)」
2006/03/09「解除前提で読み筋を披露してみます」
2006/03/08「さあ決定会合初日です」
2006/03/07「首相の国会答弁と福井総裁の国会答弁」
2006/03/06「3月解除のようですね」
2006/03/03「今度は物価参照値もどきが出ると言う報道ですよ」
2006/03/02「日銀の金利抑制策・・・として日経が報じたんですが」
2006/03/01「強引な地均しをコミュニケーション論と政策論の両面から考える」
2006/02/28「どうも日銀擁護派の市場参加者も怒っているようですよ」
2006/02/27「地均しをやりすぎて地割れ」
2006/02/24「日銀中曽金融市場局長のちょっと不用意な発言?」
2006/02/15「やたら強気な総裁会見(9日の定例記者会見です)」
2006/02/14「今度はいきなり連続利上げを織り込みに逝ってるマーケット」
2006/02/10「金融経済月報と総裁記者会見、やる気が満々ですなあ」
2006/02/08「経済財政諮問会議における成長率と長期金利論争」
2006/02/06「記者会見も低金利長期化決め打ちはしにくい内容」
2006/02/03「武藤副総裁講演で低金利長期化の連想が働いたようですが・・・・」
2006/02/02「次期議長にフリーハンドを渡したFRB声明文」
2006/02/01「緩和解除に関する種種雑感」
2006/01/30「都区部CPIがプラス/日銀のご指導/次期審議委員の記事」
2006/01/27「26日の補足」
2006/01/26「結構重要な論点の多い12月14,15日の決定会合議事要旨」
2006/01/25「制度で下駄を履いた商品は・・・(変動利付国債と物価連動国債)」
2006/01/24「強気発言に終始した総裁記者会見」
2006/01/23「判断をまた前進させた1月金融経済月報」
2006/01/16「量的緩和解除して金融緩和になるという騙し絵的雑談」
2006/01/13「またまた変動15年国債の惨状/道しるべ雑感」
2006/01/12「準備しろと言うお告げですか?」
2006/01/10「与太記事は勘弁して欲しい(買入消却関連)」
2006/01/05「国債市場特別参加者の落札順位雑談」
2005/12/27「何か無茶な論理が横行してますな」
2005/12/26「来年のシナリオを妄想する」
2005/12/20「トーンを抑えているようで抑えていない総裁記者会見」
2005/12/15「日銀短観チェック」
2005/12/14「珍しくFOMC声明文について/国債市場懇での情け無い意見」
2005/12/13「経済財政諮問会議のバブル論議」
2005/12/08「コンセンサスは2段階解除論」
2005/12/01「日銀から出ているネタリスト」
2005/11/30「投資家懇談会続き/OECDのレポートに?」
2005/11/29「たまには国債投資家懇談会でも」
2005/11/28「経済同友会の提言その他」
2005/11/25「アウトライヤー規制メモ」
2005/11/24「早期解除を囃し立てるのが日銀応援団か」
2005/11/21「18日エントリーの補足」
2005/11/18「変動15年利付国債の悲劇何度もリターンズ」
2005/11/17「日銀は政治的に自縄自縛に陥りましたなあという話」
2005/11/16「だから言わんこっちゃ無い/バーナンキ氏インフレ目標を語る」
2005/11/15「政府のけん制発言大爆裂」
2005/11/14「展望レポートの解説をした総裁講演」
2005/11/11「甘いささやきに乗ってませんか?」
2005/11/10「長期国債買入と金融調節の柔軟性」
2005/11/08「また何か金融政策レポート出てますが/物価上昇に黄信号か?」
2005/11/04「白塚氏レポートへの突っ込み(読者様のメールから)」
2005/11/02「地均し理論編、企画局白塚さんのレポート」
2005/11/01「量的緩和解除事前宣言の展望レポート」
2005/10/27「バーナンキ雑感なお続き」
2005/10/26「バーナンキ新議長雑感」
2005/10/25「バーナンキ議長/フラットニングのインプリケーション」
2005/10/24「総裁答弁に関して/国債市場参加者特別会合」
2005/10/21「あちこちで逝ってよし!」
2005/10/12「2005年10月版審議委員のスタンス小まとめ」
2005/10/06「フラットニングとビハインドザカーブ」
2005/10/04「福井総裁と中原審議委員」
2005/10/03「総裁記者会見(9月29日)続き」



2006/03/28

お題「今更ですが3月10日の衆議院財務金融委員会」

つーかまあ相場の方が月末の買いくらいしかネタ無いのでちと古いですが量的緩和解除の翌日に行われた衆議院財務金融委員会での質疑応答から少々。

さすがにこの日はあたくしも衆議院インターネットTVを聞きながらお仕事をしてましたが、まあまともに読んでいるとかなり長いので(結構長時間でした)ほんのさわりだけ。

衆議院のウェブサイトから会議録→財務金融委員会で3月10日の分をクリックすると出てきますが、一応URLも置いておきますね。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516420060310007.htm


○岩田副総裁もフォワードルッキング

最初に質問をした越智隆雄委員に対する岩田副総裁の答弁。

『これでは、ただいま時間軸効果についてのお尋ねがございましたので、お答えを申し上げたいと思います。(途中省略)具体的には、消費者物価、除く生鮮食品の前年比が安定的にゼロ以上となるまで継続するという、これは政策持続効果とかあるいは時間軸効果というように申し上げておりますが、こういう効果を通じまして市場の金利を低目に安定させる、こういう効果が生まれたというふうに考えております。』

『しかしながら、金融政策というのは、本来、十分長い先行きの経済、物価の動きをいわばフォワードルッキングな形で予測しながら、弾力的かつ機動的に運営すべきだというふうに考えられます。したがいまして、今回の新しい枠組みのもとにおきましては、現時点におけます政策委員の中期的な物価安定の理解を示す、それから、二つの大きな柱に従いまして経済、物価情勢を点検していく、さらに、これを前提といたしまして、当面の金融政策運営の考え方を整理して公表する、こういう新しい枠組みのもとで市場との対話を円滑に行っていきたいということであります。(以下省略)』

ということですので、岩田副総裁のこの発言から行きますと、量的緩和解除後には金融緩和政策をビハインド・ザ・カーブで運営するリスク(量的緩和政策のコミットメントには本来ビハインドの運営になるリスクが内包している)は取らないというお話になるかと思います。

でね、岩田副総裁って物価に関してはかなり強気の人でして、量的緩和政策を実施している時から「これだけ量を出しているのだから物価が上らないのはおかしい」という趣旨のお話が時折聞かれたと思うのでして、物価に関して強気で、金融緩和政策の政策効果がかなり有効だと思っている人が金融政策は本来フォワードルッキングという話をすると・・・・何かタカになっちゃうかもしれませんな。

この答弁を聞いた時にあたくしは「岩田副総裁フォワードルッキング発言キター!」と勝手に盛り上がっていたのですが、特に反応していなかったかも知れません。まあ一応こう言ってますんで念の為。


○福井総裁の説明

まあ当然ながら色々と説明しているのですが、まあ代表的な部分はこの辺りかと思います。同じく越智委員からの質疑応答部分です。

『量的緩和政策のときと違います一つの点は、先ほども申し上げましたとおり、コミットメントによって日本銀行がみずから手足を縛るということはしない、フリーハンドでタイムリーな金融政策をできるようにした。』

『コミュニケーションの仕方も変わってまいります。これが二番目でございます。我々は、政策委員の一人一人が持っておられる物価観というものを正直に出して、世の中の人々の物価観と十分すり合わせができるようにした、これは大きな透明性のバックグラウンドでございます。(途中省略)』

『第三の違いがございます。それは、量的緩和政策のときは市場金利の動きは原則的には封殺されている、特に短期金融市場でございますね。今後は、金利が生きてくるということでございますので、マーケットとのコミュニケーションという場合に、金利の動きというものが仲介項になってまいります。言葉のやりとりだけがコミュニケーションではない、本来のマーケットとのコミュニケーションでございます。我々が情勢判断について見解を述べ、市場の理解するところは市場が先行きのレートということで示し出してこられる、見解のすり合わせの中でそういう市場レートが敏感に動くということで、市場レートを仲介項としてダイナミックなコミュニケーションが行われる、これが本来の中央銀行とマーケットとのコミュニケーションでございます。そういうふうに変わっていくということでございます。』

まあそうですかって感じですが、どうみましても「我々が情勢判断について見解を述べ」以下の部分ちゅうのは現状では政策委員による市場の口先介入あるいはアラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「自分の尾を追う犬」状態にしか思えませんな。


で、その次の質疑応答でこんな発言がありまして、「いつまでも低金利と言うのは勘違いじゃねーのか」ということになったわけですな。

『金利と申しますものは、経済、物価の情勢に見合った金利水準というところにセットされて初めて金利機能が最大限その効用を発揮する、資源の再配分機能というのを最も有効に発揮することによって経済の活力を最大限引き出し、いい経済のパフォーマンスを実現していく道につながる、こういうことになります。したがいまして、いずれは日本の金利も日本の経済、物価の状況に見合った水準に段階的には引き上げていく必要があるわけでございます。(途中省略)』

で、この続きでこういう発言も一応しております。念の為。

『この両面を考慮しながら、しばらくはゼロ金利ないしは極めて低い金利水準というものを保てる期間があるのではないか、こういうふうに想定しております。しかし、いずれは中立的な金利水準に徐々に戻すということがこれからの日本の経済の活力を真に引き出す道につながる、こういうふうに考えております。』

前半の部分と後半の部分両方のうちどっちを強調するかによって与える印象は違ってくるでしょうなあってお話ではございます。



○中盤以降の質疑はどっちかというと・・・・・

自民党越智隆雄委員による質疑応答の部分は日銀が説明しやすいような内容になっていますので、まあその部分だけ読んでれば大体日銀の説明が判るというところですわな。中盤以降はイマイチ。

・佐藤ゆかり委員

2番打者の自民党佐藤ゆかり委員の質疑応答なんですが、「インタゲ導入しろ」という話をしたいのは判るのですが、物の見事に話が噛み合っていませんですな。自分の土俵に話を持っていけないようで。

『ただ、せっかく御回答いただいたんですが、諸外国でインフレターゲットを導入して、そのルールの上にのっとって裁量を使いながらうまく運営をされている中央銀行は多々あるわけでございます。日本銀行の今回御回答された形では、ルールなしに裁量だけが前に出ているという気がしてならないわけですけれども、やはり金融市場にとりましても、それではなかなか期待が収れんしにくいという問題がありまして、期待が収れんしにくいということであれば、ますます最終的な物価の目標も達成しにくいということになるのではないかと思います。』

「ルールか裁量か」ってお話をするのであれば、日銀から「今回の新しい運営方針はルールか裁量か」って所を重点的に突っ込む方が良いのではないかと思うのですが、話の流れで「ルールの上の裁量」って方向に行ってしまいますと、結局裁量が重要ですなって日銀の土俵に見事に乗せられていますなあ。

ま、ご本人も質疑の最後の方では『議論がやや平行線のような印象を受けるんですけれども、ぜひともやはり期待の収れんに向けて、期待が発散しないように、ある程度明確なメッセージをぜひとも金融、経済に向けて出していただいて、そして早期の安定的なインフレ経済の実現に向けて御努力いただきたいというふうに思います。』と言ってますんで話が噛み合ってない点に関してはご機嫌斜めだったものと思料。

最後に変な話をしてましたな。

『実際のところ、短期の金利がかなり金融市場では、金先を含めて、ことし利上げを既に織り込んでしまっている状況ですが、短プラ、短期プライムレートが上がりますと、当然ながら今後貸出金利が上がってくるという状況になると思います。その一方で、利上げあるいはこの当預の引き下げのペースが速いと、預金金利の方はなかなか上がらないというラグの問題が出てきますが、その結果、貸出金利が上がって預金金利はそのままというような、やや国民生活にとってマイナスとも思われるような状況もあり得るのではないかと思われますが、このあたりのペースについて少しお伺いしたいと思います。』

白川理事が答弁してましたが、当然ながらこの部分に関する答えは華麗にスルーしております。まあ答えようがないですわな。


・小沢鋭仁委員

民主党小沢委員なんですが・・・いやまあこの人の質疑は凄くて、15回質問をしているのですが、何を言いたいのかさっぱり判らないという代物です。どうも「日銀は責任を取れ!」という話をしているような気がするのですが、その話をしたいがため何でしょうが、量的緩和政策に対する評価が質問の中でコロコロ変ったりしてるのも凄いのですが、メディアの報道でこういわれている(具体的にどこの新聞で書いてあるじゃなくて「どこの新聞でもこう言ってる」って言いかた)って散々言ってるのに最後には「報道が変にとりあげる点については自分も同じ事を考える」みたいな言い方をしていて、じゃあ今までの質問はいいがかりかよ!と言いたくなるくだりありと、こりゃまあ答える方も相手しててうんざりするだろうなあって感じでした。

まあ質疑になってませんわな。何だかなあって感じです。その中で腰が思わず砕けたのはこのあたり。

『その一つの例として、日本銀行はかつてよいデフレ論という話を言っておりました。これは今、撤回されているんですか。』

まあ勿論日銀はそんなこと言ってませんが何か?でかわされていますが、良いデフレという話に文句を言うなら、まずお前の党の参議院議員でありますところの大塚耕平議員に言えと(笑)。


#ということで本日は引用ばかりで恐縮でした。

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2006/03/23

○火消しのハーモニーですが・・・・

昨日は参議院財政金融委員会に福井総裁が出席。しかしまあいつも申し上げてますが、なんでそう毎度毎度委員会に日銀総裁を呼び出さないといけないのかさっぱり判らんですな。出席すりゃ不規則発言も出るわけで困ったもんですわなあというところです。

で、昨日はまたまた火消し発言。そりゃまあ解除即利上げみたいな思惑で金利が上がりだすと何言われるか判らんのでとりあえず目先は火消しをしておいて経済状況が予定通りに行くのを見るということですわなあとは思いますが。昨日のブルームバーグニュースのヘッドラインやニュース記事などを見るとこんな感じですか。

「しばらくゼロ金利、その後も極めて低金利続く可能性」
「時間軸効果は不要になった」
「目先の金融調節上、国債買入額の変更必要ない」

ということで、まあ昨日も火消しっぽく発言しているのですが、与謝野経済財政担当大臣の答弁のヘッドラインを読んでいるとまあ福井総裁と良くコラボレートできてますなあという感じである意味感心。

「まだゼロ金利政策の解除を議論するシーズンではない」
「量的緩和政策もゼロ金利政策も他国に例をみない異常な事態における止むを得ない選択だった」
「金融政策自体は、日本経済の再生とともに、徐々に正常な道に戻らなければならないと思う。」

小泉総裁の後継総裁は誰でしょうって話が次のテーマであって、どうも竹中路線への対抗として与謝野さんが妙に日銀に理解を示しているのではなかろうかっちゅう気もする訳でして、そう考えますと何か金融政策が政争に巻き込まれるんじゃねえのかという悪寒もする今日この頃。

まあ大体べき論は兎も角として予想屋として先行きの金融政策を読むと言うことになると経済状況の前に政治スケジュールを気にしちゃったり、政府のデフレ脱却宣言が出ると利上げ〜なんていう発想が起きちゃうので今更なのかもしれないけど、ちょっと気になるところです。

で、与謝野さんこんな発言してたらしいのですが、どうもこの預金者の金利収入がどうのこうのって話はマジで金融政策正常化(!)の大義名分にされそうで誠に遺憾でございます。ブルームバーグニュース記事より引用。

『さらに経財相は、「一般国民が銀行で定期預金をした時に、ほとんど取り分(金利収入)がゼロということは異常なこと」と述べ、「定期預金の金利、預金者の金利を含めて資金を提供している側になにがしかの配分のある社会の方が正しい社会だと思う」と語った。』

好意的に解釈すれば「上記のような状態になってしまうデフレ経済という事態はあってはならない」という事を言ったとも取れますけど、だったらデフレに戻ることの無いような金融政策運営をって話になってくると思うのですが、話が金融政策の正常化に向っているので、どうも金融政策が先にありきという雰囲気が漂って参りますな。

ま、政府がデフレ脱却宣言をするのに日銀にゼロ金利をやらせるわけにも行かないでしょうから、そういう意味では極めて政治的に「金融政策の正常化」プロセスが進行していくって事なんでしょうな、はあ〜。

#ということで雑談で勘弁でした。

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2006/03/20

○日銀のウェブサイトがリニューアルオープン

金融経済月報のお話をしようと日銀のウェブサイトを見に行ったらサイトがリニューアルオープンしておりました。前のデザインに慣れているので少々慣れるまで時間が掛かるかもしれませんが、過去の政策決定会合での発表文書が一覧で探しやすくなっていたり、「教えて!にちぎん」コーナーがトップのど真ん中に昇格してたりと大変に意欲的というか突っ込んで下さいというのか、何か金融政策に関して多くの人に知ってもらおうと言う意気込みは伝わって来ましたよ。

で、後でご紹介しますが、金融経済月報を見ようと思ったら、URLの名前が変っていたのは何でよ〜と思わずツッコミ。まあ「このページは移動しました」ってのが出てちゃんと新しい行き先にジャンプする(環境によってはジャンプしないのでURLをクリック)仕様になっているからまあ良いんですが、過去の駄文で日銀の文書にことごとくディープリンクしているんでどうしようかと。とほほ。

もちろんトップはhttp://www.boj.or.jp/です。

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2006/03/17

○火消しご苦労様です(総裁の国会答弁)

昨日は福井総裁が都内で講演を行いましたが、そちらよりも相場を動かしたのは参議院財政金融委員会での答弁だったようですな。ブルームバーグニュース16日14:49のニュース(第1報はもっと早くでてます。この時間に出てるのはまとめ版みたいなもんです)から引用するとこんな感じだったようですな。曰く、

『具体的にゼロ金利を修正する時期がいつかを考えるには、まだ量的緩和の枠組みに終止符を打った直後なので、それを論じるにはあまりに早すぎると考えている』

『私どもが意図しているのは、直ちに金融引き締めに向うことではない、日本経済が最終的に物価安定の下で持続的な成長の実現に向けてしっかり軌道を歩んでいくように、引き続き金融面でしっかりとサポートしたい。緩和的な金融環境を維持することで、経済に対するサポートをしていきたい、というところに主眼がある』

で、まあ債券先物はこのあたりの報道を受けて20銭くらい上昇したようですが、まあたった20銭ぽっちしか上らなかった(笑)という印象もあるようでして、まあさすがに今まで総裁のハト派っぽい発言を信じて何度も足を掬われている経験が量的緩和解除直後ということで効いているのかなあなどと思ってしまいました。

水野審議委員が過激発言をしてその後福井総裁が火消し発言をするという構図は昨年も似たような組み合わせがあった(直ぐにいつだったか思い出せませんが、汗)ように記憶しておりますが、さてその後はどうなったでしょうかなどと言う所ですが。


まあやや解釈にタカ派バイアス(あたくしがタカ派なのではなく、福井総裁をタカ派と見立てて少々バイアスが掛かるって意味です、為念)が入りますが・・・・

この発言もよくよく見ますと、最初の部分だって「早すぎる」のタイムスパンがどの位なのか判らんですし、次の発言に関して言えば「金融引き締め」局面入りを否定はしてますが、だから利上げが無いと思うのは実は早とちりでございます。

と、申しますのは、同日の別の答弁(講演でも同じような話もしたようですが)や先日の記者会見にも見られましたように、『金利が一定水準の下で経済が良くなり、物価上昇率が上れば、刺激効果は逆に強まる。』とか『現在(の金融政策)もビハインド・ザ・カーブの状態』というようなお話を福井総裁は行っている訳でして、景気刺激的な金融政策から中立的な金融政策への転換」をする場合には必然的にゼロ金利状況からの脱却、即ち利上げを行う事になりますわな。

ということで、「金融引き締め局面に入らない」というのは「利上げをしない」と同義にはならないのですが、さすがにこの辺りの表現の微妙な違いもだいぶ人口に膾炙してきたようで誠に結構な事でございます。

ま、これが英訳されてニュースになるとまたニュアンスがちゃんと伝わっているのか甚だ疑問ではありますが、笑。

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2006/03/16

○3か月物は落ち着き2年はヘロヘロ

昨日の3か月ものFB(政府短期証券)は落ち着いた展開。前日はWI取引で0.075%あたりまでやってましたが、まあ冷静に考えて3か月くらいの間に政策金利が上るようなことも無いですし、まあ先行きの金利上昇リスクを考えると短い所に資金を逃避させておきたいという考えも出てくるでしょうって事で先週までの入札利回り上昇攻撃がストップした形。

最低落札価格こそ利回りベースで0.07%乗せになりましたが、平均落札価格(市場の呼び値ベースで0.0695%とかになります)よりも価格上昇利回り低下水準になりまして、まあ堅調と言って問題ない動きになりました。ここ2週間ほどは落札が大いに弱くてその後大いに戻るという極端な展開が続いていましたが、今回はあまり無茶な動きにならずで、ようやく落ち着きましたねえって感じでございます。


で、長いところはヘロヘロ。2年カレント物の利回りが0.56%で引けているんですが、ハーコリャコリャという感じですなあええ金曜から3日で0.47%→0.56%ですよトホホ。

ちなみに1年TBの利回りがだいたい(というのは手元のメモのデータソースが売買参考統計値なのでちょっとアレなのですが)0.27%とかになっておりまして、これが大体「向こう1年間で1回半の利上げを織り込む」って感じです(1回半とか訳判らん言い方でスイマセン)が、2年の0.56%となると「向こう2年間で2回半の利上げ織り込み」って感じですかねえ。

物凄くざっくりとした計算になりますが、向こう2年間の運用をするって話になったときに2年債を買えば0.56%確定で、1年債を買うと手前0.27%確定だとしますと残り1年幾らで運用すれば良いのでしょうって話をすると(0.56*2−0.27)ですから1年後の1年もの金利が0.85%以上になると間尺に合うってお話ですわな(ちなみにこれは再投資だの複利だのという観点を一切無視してます。そんなに厳密な計算じゃないんでその点お含み置きを)。そんなわけで「まあ向こう2年間で2回半」って話になる次第。

いやあもう福井総裁様が『これから市場と日本銀行のコミュニケーションは非常にダイナミックになる。ある意味では本来の姿になる。』と9日の記者会見で仰せでございましたが、早くもひじょうにだいなみっくでほんらいのすがたになってすばらしいですなあ(棒読み)という所でございまして、しかも水野審議委員様が13日の講演で『ターム物金利に上昇圧力がかかり、早期利上げを催促する展開も想定されます。』と仰せになられましたように、マーケットでは連続利上げを織り込みに逝ってますので適正金利水準とやらへのきんりへんこうをさっさとおやりになるのもしじょうとのたいわなんでしょうねえ(またも棒読み)。

もう疲れたよパトラッシュ。何だか眠くなってきちゃったよ。パトラッシュも眠いのかい?



○気を取り直して(笑)その他色々と

・熟読すべし

昨日ご紹介した本石町日記さんの「金融政策“糊しろ”論の陥穽」はコメント欄での議論も大変に参考になるかと思いますので改めてこちらにURLを置いておきますね。→http://hongokucho.exblog.jp/4261074/

で、その次に投入されたエントリー「解除の論点整理A=日銀史上初めてフリーハンドを握ってまとな対話できるのか」は尚の事読むべきであるかと思いますので読むべし。→http://hongokucho.exblog.jp/4265947

でね、最後の「そこで提案」以降。特に最後の4行は政策委員の皆様にも熟読して欲しいものです。


・「日銀文学」ではなくて・・・・・・

で、その本石町日記さんの解除の論点整理の方を読んでいて、追伸の所に『日銀内部の声を代弁する側面もある。』ってのがありまして、日銀内部でも現在の謎の対話路線に関して疑問視する人もいるのかなあなどと思っているうちに、今般の金融政策で出てきた訳の判らん目安を「日銀文学」と称したのは日銀全部ダメって言ってるようで中の人に悪かったかなあと。

きっとあの文学は「日本銀行政策委員会文学」なんですよ(笑)。

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2006/03/15

○当座預金残高

それから地味な話ですが、昨日の日銀当座預金残高は前日の時点で30兆円割れ確定状態で当日スタートの即日オペ無しで、終わってみれば29兆9600億円。本日の予想は日銀から昨日公表されていますが、今日は即日オペ実施しなければ前日から9100億円減りますので29兆500億円まで減少の見込み。まあ無担保コール翌日物金利自体特に上昇してないので減少しても別に無問題だし、方向性は減少なんですから別に突っ込むほどのものでも無いのですが、記者会見でわざわざ福井総裁が「3月は30兆円」とか言ってたのは何だったのかなあって感じですな。

別に厳密に遵守するものでもない事柄に関してわざわざ特定の数字を出して話をするから話がややこしくなる(わざわざほじくり返してややこしくしているのはお前だろうというツッコミは勘弁^^)訳でございます。質問での答だから仕方ないちゃあ仕方ないのかもしれないけど、このときだって別に「短期金利が跳ね上がる事の無いように当座預金残高を注意して調整する」とでも言えば良い訳でして、殊更30兆円という数字を出す必要はなかったんじゃないでしょうかねえ。

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2006/03/14

○これは日銀ウハウハの展開ですか?

昨日の債券市場ですが、後でご紹介する水野審議委員の講演やら記者会見が出る前から中期債主導での相場下落。一方で株式市場ではゼロ金利政策がまだ続く(って技術的に2ヶ月くらい続くの当たり前なのですけれども・・・)ということで威勢良く上昇。どうも昨日朝ブルームバーグテレビでやっていた福井総裁BISでのぶら下がりインタビューと言うか突撃インタビューでの英語での受け答えが「ゼロ金利長期化」と取れるような(少なくともあたくしにはそう聞こえたんですが)ニュアンスになっていたので海外のお投資家さまも好感したのかなあ何て勝手に妄想。ちと利上げを舐めているような気もしますがねえ。

まあそんなわけで、金利は「適正水準」とやらに向って上昇し、株式市場も上昇とはこりゃまた日銀ウハウハのてんかいでじつにすばらしいですなあ(棒読み)と逝った所でしょうか。ふ〜ん。

まあユーロ円金利先物やら中短期債券(というかどうもスワップの払いのようですが)がドカドカ売られて長期債はそれなりに確りっちゅうのはまたまた「景気実態よりも利上げのペースが速い懸念あり」っていうのがインプリケーションという事になる訳でして、日銀それでいいのか(いいんでしょうが)と思うのでありました。

ちなみに、本日入札予定の1年もの短期国債(TB)のWI取引の最終気配は0.23%−0.25%で、同償還(2007年3月20日)の2年230回債の居場所が0.26%あたりのようですので、本日の入札は普通に考えると0.25%から下に流れるということになるんでしょう。冷静に考えると半年後0.25%利上げなら手前半年勝てるのですが、まあそれこそ当預引いた後にサクサク利上げでもされたらアレでございますので、プレミアムついちゃってるって事なのでしょうか。

ちなみに3ヶ月物FBは0.05%が居場所のような感じでして、こちらは先週末対比であまり変っていませんので、「とりあえず3ヵ月後までは大丈夫でしょう」って感じなんでしょう。ついこの前は当預引く間の「ゼロ金利」に関しても「ロンバート金利(0.10%)までの金利上昇を容認するとなると0.03%から0.05%あたりに足元金利があるのではないか」などという人までいたのが嘘のようですな(苦笑)。

ただ、3月までは足元押さえつけてくるという雰囲気は昨日の手形オペでも垣間見られました(全店買入手形3月15日〜3月28日を6000億円実施)のですが、このオペの足をあたくしは「4月以降はシラネーヨ」とも読んでしまうという大変に性格がねじくれた人間でして、まあ期末前に金利が跳ねる事は避けてくる(期末日ピンポイントは別)としても、4月以降当座預金を引いていくと無担保コール翌日物0.01%割れが恒常的という光景が継続してくれるかに関してちと疑問を感じるのでありました。



○で、やっと水野審議委員の講演になるのですが時間がないので・・・

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0603c_f.htm

まあ詳しくはまた明日ですが、全体を通しての感想は「日本銀行政策審議委員としての立場を弁えない発言が多すぎ」でありまして、そういう発言は証券会社のストラテジストがするもんでしょうという所です。あたくし一人がそう言ってる訳ではございませんので念の為。

で、ストラテジストが相場に対して話すような事を言ってるんですが、お前がその状況を作るように持って行ってるんじゃねえのかと小一時間という所で、マジでこんな言いたい放題を審議委員が言って良いのかと甚だ疑問に思うのでございます。もしかしてこのお方は自分の発言で債券相場が動くのに酔ってるんじゃないかって疑いたくなりますね。

山のように突っ込みどころがありますが、ちょうどbewaadさんが突っ込み(最近金融政策の話にそんなにスペースを割いてなかったbewaadさんが突っ込みを入れたのはよほどのことで)を入れておられましたのでそちらもご参照頂くと致しまして(と人のふんどし)、鶏並みの記憶力を誇るあたくしのトサカに来たくだりを。

『今後、当座預金残高を引き下げ始める場合、(1)資金供給オペの頻度の減少、規模の縮小、期間の短縮、(2)将来の政策金利引上げ時期に関する憶測に伴う金利先高観、(3)RTGS(Real-Time Gross Settlement、即時グロス決済)導入後初めて金利先高観がある局面であるためターム物での資金調達に動く金融機関が増える可能性、という3つのルートに加え、テクニカルな要因から、ターム物金利に上昇圧力がかかりやすい状態になります。中短期セクターの債券相場のボラティリティーは量的緩和政策の解除後も暫く高止まりすることが予想されます。』

1と3はまあ良いとして、2番の憶測ってのはあんたらが地均しして強引に織り込ませに逝ったものですが何か?ボラティリティーは高まりやすいってその原因は強引な地均しによる政策金利早期引き上げ観測によるものですが何か?証券会社のストラテジストが言うなら兎も角、金融政策を決定する9票のうち1票を持つ人間がしらっとこんな話し方をしてるのを見るとかなり頭に来ますな。

で、ボラティリティーが高まるとまあさっきも申し上げましたが、自己売買のディーラーみたいな人たちは大喜びかもしれませんが、自己売買で相場を張るような人じゃなくて、フツーに経済活動をしている人にとっては、資金の調達コストにまともに跳ね返ってくる中短期セクターの金利がボラタイルになるというのは迷惑なお話だと思うんですが他人事ですかそうですか(怒)。

どうも市場機能の回復というのは市場の一部の方を見てのご発言なのではないかと勘ぐりたくもなっちゃいますなあ。

#いかん、また悪態の限りをついてしまった。

まあ悪態が多くて誠に申し訳ございませんが、またまた市場の不評を買っている(相場が無駄に動くとウハウハな人を除く)と思うんですがねえ。マッタクモウ。

(追記:この続編は水野審議委員の発言コーナーこの辺をご覧下さい)


しかしまあ「利上げもできないような環境で量的緩和解除しても仕方ない」って趣旨の発言を以前してたのが水野審議委員ですので、無茶苦茶タカ派な発言が出てくるというのはある程度想定の範囲内だとは思ったのですが、まあ地均し路線の先鋒剣士みたいな人ですので、先鋒が吼えたらその次が出てくるって警戒感が強くなったんでしょうかねえ。後場の一段下げに関しては(ちなみに記者会見ではもっと金利上げます金利上げます発言が出てました)。

つーかあの結果で「ゼロ金利長期化」と読む方が勘違いなのですが。向こう3ヶ月のゼロ金利をゼロ金利長期化とは申しませんですし、そもそもさっき申し上げたように3月はともかく4月以降の無担保コールがいつまでも0.005%以下だと思うのもどうかって気はしますけどねえ。


○ところでこんなんあるんですが

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/ron0603a_f.htm
「近年における個人消費の底堅さとその背景」

という論文(上記URLの先にリンクがあって、70ページの論文がございます)が出ているようなのですが、当然中身を読む気力は無く(おい)、要旨を見ただけなのですが、「シニア層の消費」という言葉に思わずピクピクしてしまうのは預金金利上昇で個人所得に効果とかいうメルヘンなお話が最近妙に気になっているあたくしがナーバスなっているからですかそうですか。

意図は無いって言いたいんでしょうが、最近この手のレポートが出るタイミングが実に嫌らしい。どう見ても意図があるとしか思えません。本当にありがとうございました。

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2006/03/13

○オペがやたら芸細かいです

金曜日には国債買現先オペが行われました。このオペなんですが、期間が3月14日から20日となっていまして、3・9月の利払銘柄の振替停止期間をちょうどまたぐ形での資金供給となっております。

ところがですな、3・9月利払い債の在庫ファンディングの為に行われるGCレポ取引は既に前日の時点で終了しているので、証券業者の在庫ファンディングのニーズはこの時点で無し状態。要するにこのオペは打っても札が集まりにくい期間設定になっていまして、レポ取引関係者的には「これはわざと札割れになるオペを打ってきたな」というお話になります。

結果は案の定予定額4000億に対して応札が3640億円と未達と相成りまして、「未達オペを打って金利が上ってないってのを見せようとしたんでしょうかねえ」という思惑大当たりでおめでとうございます。そんなオペでしたが、何となく笑ってしまったのは平均落札利回りでして、どう考えても未達必至のオペなのに何故か平均落札利回りが0.002%というのは、上の札を入れた人間が札読みのできないスカでない限り、未達必至オペに対する嫌がらせの応札だったんじゃネーノなんて穿った読みをしてしまいました(笑)。


また、金曜日には短国買入も実施されまして、額が3000億円に減額になりました。まあいきなりゼロにすると騒動になるので(予想している人はあたくしを含めて結構いたのですが)これも芸が細かいですなあと感心することしきり。

ついでに、今回から短期のオペレーションに関して落札限度額が設定されまして(というか限度が復活したのかな?)、1社で落札できる限度はオファー額の半分になりました。時々「1社が実勢よりも高いところに札を入れて全部落札」っていう事件があって「あらら」ってケースがあったのですが、そのような「金利上昇大作戦」は許さんという事でしょう。

そんな訳でして、日銀の短期市場オペレーションに関して言いますと、変に金利が跳ねないように色々と気を使っているなあってのはよく判る金曜日の動きでございました。



○そんなわけで日銀総裁記者会見

総裁記者会見の前に国会での説明に関して気になったのが一点あったので付け加えておきます。事実関係は会議録を見ないと判らんのですが、インターネットでの国会中継を見ていたら、金融政策に関して岩田副総裁が「政策はフォワードルッキング」という事を発言してたように聞こえたのですが、岩田副総裁ってビハインド路線じゃなかったのかなあと思いまして、いつの間に宗旨変えしたのだろうと思いつつ、こりゃ政策委員会の止め役は中原審議委員しかいないようですなあとちょっと不安。

時間も長く量も多いのであたくし的に気になった部分を。多分明日に持ち越しになるものと思われます。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0603a.htm


・フォワードルッキングでありルールベースではありません

最初の説明の部分で早速発言してますが。

『「中長期的な物価安定の理解」を示し、それを念頭に置いてこれから金融政策を行っていくが、いわゆるインフレーション・ターゲティングというものと違って、ルール・ベースの金融政策の運営をするわけではない。物価についての理解を念頭に置いて金融政策を行っていくが、金融政策運営そのものはフォワード・ルッキングであり、総合判断でやっていく。』

別の質問に対する回答ではこんな感じです。

『それから先程、皆様のご理解を頂くためにわざわざ、ルール・ベースの政策運営をするわけではない、フォワード・ルッキングで総合判断でやっていくとわかりやすく申し上げた。各国の中央銀行の政策運営のやり方をみても、ルール・ベースに近い運営とか裁量による運営など、概念的な整理を試みることはある程度可能である。しかし実際には、例えば、インフレーション・ターゲティングを採用している国の中央銀行でも、文字通り、機械的なルール・ベースの政策運営をしている中央銀行は殆ど存在しないと認識している。』

フォワードルッキングで、物価安定の理解が総合CPIで0−2%って組み合わせは物凄い勢いでインフレバスター政策になるようにしか思えないんですが。

「参照値でも無い」と最後の質疑で言ってますんで念のためそちらも引用しておきますね。

『政策委員の認識を数字で表すと、こういうことになる、ということである。これは金融政策の透明性と機動性の両立を真剣に考えて出てきた新しい知恵のようなものであり、私ども自身が出した知恵を私ども自身が活かしていくことによって、おっしゃるような懸念を払拭していくことができると思われる。そのためにも、「理解」というものの概念を、皆さん方からもきちんと報道して頂きたい。「参照値」と同じようなものだと報道されると、世の中に混乱をおこすと思われる。「理解」については、英語で言えばunderstandingという言葉を私どもは使用していく。そういうunderstandingを政策委員会のメンバーでbroadly shared(広く共有)するというものである。新しい概念なので、日本だけでなく海外においてもきちんと理解してもらうためには、しばらく努力がいると思うが、こうした新しい知恵がきちんと理解されれば、そういうリスクは減っていくであろう。数字が一人歩きする心配を私どもも持っているが、それを打ち消していく努力をこれからもやっていかなくてはならない。』


・経済物価情勢に見合った金利水準

という言葉を福井総裁はよく使います。で、質疑の最初の方ではこんなことを言ってたのですが・・・・・

『それでは、所要準備額までの調整が終わったらすぐゼロ%でなくなるのかというと、私どもはそういうことを言っているわけではない。つまり、準備を削減していく過程は基本的にゼロ%で、おそらくその後もしばらくはゼロ%で、その次に極めて低い金利となり、さらには経済・物価情勢に見合った金利水準への調整過程となろう。』

ほほうゼロ金利長期化ですか・・・・と思いたくなるのですが、最後の質疑ではこんな表現をしております。

『量的緩和政策の枠組みからの脱却によって、イールドカーブのショーターエンド(オーバーナイト物)以外のところにまで強い下方プレッシャーをかけるというディストーション(歪み)は一応なくなる。この意味では、金利機能を封殺している度合いは少し緩和されると思う。しかし、経済・物価情勢に見合った金利水準という意味では、まだかなり離れた状況にあるのではないのか。これから相当時間をかけて、ギャップを埋めていくことになるので、本当の意味での金利機能が生きて、資源再配分機能を本来金利が持っているキャパシティの通りに機能を発揮していくということと比較すると、極めて低い金利を続けている以上は、そこに何がしか犠牲が生じていることは否めない。』

どうもここを読むと福井総裁がイメージする「経済物価に見合った水準」はゼロ金利じゃあないと思うんですけどね。

それから、金曜もご紹介しましたが、こんな事も言ってますんで。

『量的緩和政策そのものも、極めて大幅なビハインド・ザ・カーブの金融政策である量的緩和の枠組みを脱出してゼロ金利からスタートするが、消費者物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率がかなりのプラスを続けている状況のもとでは、これはかなりビハインド・ザ・カーブのところを出発点にした金融政策である。この金融政策との組み合わせで、緩和のしすぎのリスクが中長期的にあるということを指摘しており、一方を強調しているということにはならない。』

現状で既にビハインド・ザ・カーブ状態だそうです。それで政策をフォワードルッキングにした場合に何が起きるのでしょうかねえ。



・別にダイナミックにならなくて結構なんですが

『これから市場と日本銀行のコミュニケーションは非常にダイナミックになる。ある意味では本来の姿になる。市場は市場の見方を市場レート、特に先物の市場レートの中に反映するだろうし、私どもは毎月の金融政策決定会合の後、あるいは展望レポートの中で私どもなりの先行きの見通しを出していく。それが市場の見通しと合っているか合っていないか、合っていない部分については市場が改めてレビューしながら、市場金利の変動というかたちで映し出してくる。私どもはそれを読み取りながら、私どもの情勢判断を更に磨いていく。こういう市場金利の動きを仲介項としながらのコミュニケーションになっていく。量的緩和政策のもとでは、市場機能を封殺していると申し上げていたが、封殺している限りはそういう仲介項がないために、さかんに日本銀行の言葉のみを探るということがあった。これから先はそういうことはなくなり、よりダイナミックになっていくと思う。』

いやあの日銀がもうちょっと黙って頂ければ別に言葉を探る必要もないのですが、そうするとドラめもんのネタも無くなるという諸刃の剣(笑)。今までも経済状況とか見ながら相場が動いてた面もあると思うんですが、自分で書いた駄文を週末せっせと読み直しながら整理してると、やっぱ日銀の偉い人喋りすぎ(喋らされすぎの面もありますが)ではないかと思いますけどね。まあ頑張ってくださいね〜。

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2006/03/10

○ゼロ金利長期化?どう見ても勘違いです。本当に(ry

で、この結果に関してですが、どうも「物価の安定化」についての明確化という所を「ゼロ金利政策が長期化される」という香ばしい解釈をした人が多く平均株価上昇。債券先物は上昇したあと「物価水準の下限0%ってどうよ」と思う人もいたようでやや上昇を打ち消しました。で、ユーロ円金利先物市場は一旦上昇して反落したあと、夜間取引でまたまた上昇。

色々なマーケットストラテジストの見解をざっと斜め読みしたのですが、とりあえず最初からいきなり冷水ぶっかけ系の「ゼロ金利長期化は誤解でしょ」ってレポートは2本か3本位しかみつからず、「これでまたゼロ金利長期化ですよウェーハッハッハ」というものの方が圧倒的に多かった印象。

まあね、今回の文書ですけど、読めば読むほどよく出来ていまして、日銀文学の最高傑作のひとつに挙げられるんじゃないのって思いますよ。市場(と政府)に妙な期待はさせているものの何のコミットもしていないというとても凄い内容でございます。まずは決定内容部分に相当する「金融調節方針の変更について」という部分をば。


○金融市場調節方針の変更について
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309_f.htm

順序が逆ですが、最後の「当面の金融政策運営の考え方」の部分から先に。

・時間軸は存在してませんが何か?

『量的緩和政策の経済・物価に対する効果は、現在、短期金利がゼロであることによる効果が中心になっているため、今回の措置により非連続的な変化が生じるものではない。』

えーっと、これは「本件の措置は金融引き締めではない」と言ってるのですが、同時に「別にゼロ金利にコミットはしてませんよ」ということも意味してますわな。コミットすれば時間軸が発生するわけですから。


・景気過熱リスクに言及

『先行きの経済・物価情勢については、物価安定のもとでの持続的成長を実現していく可能性が高いと評価できる。ただ、企業の収益率が改善し、物価情勢も一頃に比べ好転している状況下、金融政策面からの刺激効果が一段と強まり、中長期的にみると経済活動の振幅が大きくなるリスクには、留意する必要がある。』

景気が悪化するリスクには言及してません。そりゃまあ悪化するリスクが極めて少なく言及する必要も無いって判断で量的緩和政策を解除した(んですよね?)のですから書かないって事なのかもしれませんが、本件に関しては記者会見で突っ込みを受けてまして、それに対する福井総裁の答えはこんな感じだったようです(9日19時19分配信のブルームバーグニュース記事より)。

『量的緩和政策そのものも、きわめて大幅なビハインド・ザ・カーブな金融政策だ。量的金融緩和の枠組みを脱出して、ゼロ金利からスタートする、消費者物価指数がプラスの領域に動き、実質経済成長率がかなりプラスを出している状況のもとで、これはかなりビハインド・ザ・カーブを出発点としてスタートしているので、金融政策との組み合わせで、緩和のし過ぎのリスクは中長期的にあるということを指摘しているのはフェアだ。』

『ビハインド・ザ・カーブの金融政策でも、物価上昇率に圧力がかからない限りは、なお当面かなり緩和的な環境が維持される可能性が高いと言っている。両面フェアに記述している。一方にウエートをかけて書いているという理解はされないでいただきたい。』

どうみても量的緩和解除をビハインド・ザ・カーブで実施しているとのお考えにしか見えません。本当にありがとうございました。


・短期のターム物金利は下がりにくいというか上昇圧力かかりやすいというか

『当座預金残高の削減は、短期の資金オペレーションにより対応する。長期国債の買入れについては、先行きの日本銀行の資産・負債の状況などを踏まえつつ、当面は、これまでと同じ金額、頻度で実施していく。補完貸付については、適用金利を据え置くとともに、2003年3月以降、利用日数に関して上限を設けない臨時措置を実施しているが、この措置は当面継続する。』

まあ予想通りちゃあ予想通りですが、これはFBの素晴らしい発行残高とあわせますと、やはりターム物の短期金利は需給関係で下がりにくいというか上りやすいという状態が続くと思います。一応ロンバート(補完貸付)のキャップはありますが、ロンバートに使えない担保では意味がないですし、政策をいじればロンバートの金利も変化するでしょうからそこまでの金利に何となくキャップが掛かりますなあって感じですな。勿論翌日物金利はそれなりにキャップがかかるでしょうが、何せロンバートは有担保貸し出しですんで、限界的な部分での無担保コール翌日物金利が上昇することはあるでしょうね。


○新たな金融政策運営の枠組みの導入について

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/k060309b_f.htm

・「物価の安定」で言われてるのはコア指数じゃないですよ〜

「物価の安定」についての考え方の後ろの方をみませう。

『消費者物価指数の前年比で表現すると、0〜2%程度であれば、各委員の「中長期的な物価安定の理解」の範囲と大きくは異ならないとの見方で一致した。また、委員の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散していた。』

「消費者物価指数」としか書いておりません。コア指数ではないんですが(記者会見でもその部分の質疑はあったらしいが手元に記事なし)、最近のCPIの推移がこの辺http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htmにありますが、総合の前年同月比を見るとここ1年は前年同月比マイナスの月の方が多いような気もするんですけど(苦笑)。まあ解除しても緩和状態だっていうことだからいいでしょって理屈なのかなあと思いますが。

で、その前の部分ですが。

『本日の政策委員会・金融政策決定会合では、金融政策運営に当たり、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率(「中長期的な物価安定の理解」)について、議論を行った。上述の諸要因のいずれを重視するかで委員間の意見に幅はあったが、現時点では、海外主要国よりも低めという理解であった。』

ってことなので、やはり物価に関しては低めを見ていますって話ですわな。しかし下限0%ってのには引っ掛かりますなあ。せめて1%〜3%なんじゃないかと思うのですが。

で、中心が1%にあるからゼロ金利が長く続くぜウエーハッハッハとう見解が出てくるのですが、あたくし思いまするにこのレンジだと現在のCPI0.5%(総合もコアも)でも「物価水準は現在中立的な状況にある」といえる訳ですから(だってレンジ内だもん)「今後の過熱を予防する為に中立的な金利水準に戻しますが何か?」といっても思いっきり政策ロジックに整合性が取れていると思います。


・これはリフレ政策提唱の皆様への燃料でございましょうか

何か後ろから戻ってくるような書き方で恐縮ですが。

『わが国の場合、もともと、海外主要国に比べて過去数十年の平均的な物価上昇率が低いほか、90年代以降長期間にわたって低い物価上昇率を経験してきた。このため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は低くなっており、そうした低い物価上昇率を前提として経済活動にかかる意思決定が行われている可能性がある。金融政策運営に当たっては、そうした点にも留意する必要がある。』

世の中の「物価上らないマインド」を十分に留意するということですかそうですか。。


・この部分今の時点での小まとめ

これは物価水準の話をしているのですが、現在の物価水準は既にここで述べているレンジ内に入ってますし、だいたい0%でも安定範囲内って話だと、まあ制約条件なしに等しいですわな。これを見てCPIが1%になるまでゼロ金利が続くと理解するのはもうすこしがんばりましょうって判子を押したくなりますわな。もし2%を抜けそうになったらもう一大引き締め大会になるんですけどねえ。

という訳で大いなる勘違いをしているようですが、まあ暫く日銀さまにおかれましてもおとなしくして長期金利が上昇するのは避けるように動くとは思いますんで、変な期待が蔓延するようなことになるんでしょうなあ。で、また金利上げようって話になると地均し一座の公演を見る事が出来ますので乞うご期待(吐息)。

しかもこの参照値(もどき)は政策運営に関して何のコミットもしてませんので、まあアレですな、政府への「おみやげ」って奴でな。

で、この2つの公表文書に関してもまだ読むべきところあると思いますし、記者会見に関しては重要な発言が色々とあったようです。また金融経済月報の公表も同時に行われていますので、そのあたりも盛りだくさんなのですが、さすがに時間と労力がそこまで回りませんので、週末にも書き物をしようかなどと言うと将来の予定を縛ることになって休日の柔軟性を阻害致しますので注意しましょう(笑)。

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2006/03/09

お題「安定化策で不安定化はご勘弁を」

まあさすがに今日解除でしょ。という前提で色々とお話を。

○FB入札乱高下

昨日のFB入札(そういえばまたまた訂正ですが、FBの発行額は毎週4.1兆円じゃなくて4.4兆円でした)も大暴れ。前日のWI取引0.08%レベルからスタートして前場引けは0.085%ヒットのビット残り。で、入札はと申しますと平均99.9782円で0.0874%(財務省方式だと0.0865%)となり最低落札価格は99.9762円で0.0954%(財務省方式だと0.0944%)とまたまた流れました。しかしそこで相当の買いがあったようで、0.085%あたりのオファーは瞬間で捌けてしまい、落札が少なかった人がちとショートにでもなったのかショートカバー的な買いで何と0.055%まで上昇。最終的な居所は0.06%くらいなんで結局先週の入札とあんまり変らないのですが、よくもまあ派手派手に動いたものです。

入札最低落札0.095%から30分くらいで0.055%まで動くとはこりゃまたキングオソロシスですが、まあこんな動きをすることも多くなるのではないかと。いやはやめまぐるしい。

でですな、何か勘違いしてないかと思うのはこの買い上げ方。まあカバーで仕方なく買った面もあると思う(それなら0.09%くらい札入れられるだろうと思うんですが、ちなみにあたくしは勝手予想でせいぜい0.09ひげ位じゃないのかと思ってましたが)んですが、量的緩和解除したら当座預金残高を引く事になるというのを忘れていないかという感じですわな。

長期国債買入は減らせないですし、いきなり売出手形を打ってくるのはちと3月末という事を考えると刺激的なので避けるとなれば、どう考えても短国買入は削減対象。3月後半に向けて資金は余剰になりますので、ただで無くさえ吸収をしないといけない状況下で売出手形を派手に打てない(オペレーションに急に注目が集まるから。ノーケアー状態ならそんなに話題にならないのでまあオペ打てるでしょ)となると今週分から短国買入が無しになっても何らおかしくは無いので5000億円×4回分で2兆円となるとFB発行2分の1回分になるんですけど、大丈夫でしょうかねえ。


○これは凄い期待ですね

昨日はスワップ市場のほうで相当のレシーブがあったらしく中期債やらユーロ円金先やらが派手派手に上昇。まあここまで散々売り込んでいましたので戻りも派手になるんでしょうが、しかしまあ「安定化策」に関しての期待が政府の一連の牽制発言によって盛り上がっているちゅうことでもあるのでしょうな。

で、その期待がどう盛り上がっているかと言いますと、昨日のブルームバーグニュースの債券市場概況解説記事(8日16時55分配信)をみますと、どこぞの誰かさん(名前はここでは出さん)の指摘として「日銀は少し厳しい環境のなかで解除に踏み切るのであれば、時間軸が短くならないように配慮するであろうし、市場もそのへんを先読みしてこの日の相場急騰につながったと分析」なんて出てました。いやはや「時間軸が短くならないように配慮」ですよ何ですかそりゃ。

いやまあ確かに緩和解除してもまたビハインド・ザ・カーブに戻してゼロ金利引っ張るという選択肢はあるんですが、それなら何で量的緩和解除を行ったのか意味が判らんですわな。まあ日銀がそんな逆戻りみたいな事をするとは到底思えませんが、そこまで期待が盛り上がると何だかなあって感じです。まあこのお方の見立てであってマーケットのコンセンサスかどうかは別ですが、スワップの強烈な受けは何かそんな感じもしますわな。あ、この記事は「」書きの記事じゃないんで記者さんがコメントを端折って書いた可能性が高いので、このコメントした人は別の意味で言ってるかもしれません。念の為。


○変なリップサービスなら出さない方が良いと思うんですが

まあそんな感じで盛り上がっているようですが、昨日も申し上げましたようにあたくしの予想はそんなに時間軸を縛るようなものが出る訳無いと思います。ただし、解除と同時に長短金利が上られても困るので、何となくゼロ金利を引っ張るような雰囲気を漂わせるようなモノが出てくる可能性は大だと思います。

で、そうなりますと市場の方はまたまた「ゼロ金利が引っ張られる」と勝手に期待して金利形成を行いだしますんで、我儘放題の市場ちゃんは「延々とゼロ金利じゃねーのかよ利上げなんてしらねーよー」状態になってしまい、さて金利の引き上げでもしましょうかって時にまたぞろ地均しをしないといけないっていう悪循環になりそうな悪寒が致します。で、そこの時点で強引な論理展開で今までの妙な期待をぶちこわしにかかるといつまでたっても市場との対話とやらも達成できないと。

市場の期待安定化とか対話がどうのこうのとか言いますが、要は一貫した論理で政策運営をしていけば経済物価情勢を市場のほうが適宜判断して右往左往じゃなかった動く訳でして、ビハインド・ザ・カーブの筈がいつのまにかジャストタイミングになり前傾姿勢になるというようにスタンスが変化するからそっちの読みの方が金融政策予想のキモになってしまうというのはご勘弁願いたいものですな。

どうも市場との対話と言いつつその場その場で火付けと火消しを繰り返しているようにしか見えませんし、一々何か言ってくれみたいな状態で日銀の一挙手一投足を見る市場も市場ってところかと思いますが、正直言って。


米国でもついこの前までは利上げあと1回だの利上げ打ち止めだの言ってたのにここの所はいきなり利上げ3回でFF金利の予想が5.5%まで上昇しちゃうという位で、市場にメッセージ出さなくても散々右往左往するのが市場クオリティ。まあこういう感じで市場の期待が極端から極端に振れる時ってのは色々な意味で転換点を迎えているのかなあとは思うんですが、中央銀行が一々それに併せて何かメッセージをだしていたら、それこそアラン・ブラインダー元FRB副議長が言う「自分の尾を追う犬」状態になってしまうと思うのでありました。



○まあだいたい大まかな読み筋

いやまあ読み筋どおりに行くわけは無いのですが一応。

とりあえずは何か市場が買い材料と勘違いするようなものと一緒に量的緩和解除を行うのでとりあえず一旦買われて金曜の5年国債入札となるざますか。まあ「市場は皆が困る方向に行く」の法則どおりの展開になりそうですわな。解除直後かつ雇用統計前で週末の入札とはご愁傷様でございます。

まあ足元の金利は運用側も足元にシフトしている関係で上り難く、期末越えもそう波乱は起きないでしょう。問題は今月末(ですよね)のCPIとか来月の短観とかの数字という感じになって、またまた注目はファンダメンタルズに回帰してくると思います。というか思いたい。

政治日程とあわせた読み筋という点では、政府のデフレ脱却宣言に合わせて金利の引き上げって目はある(デフレ脱却しているのにゼロ金利を引っ張っているのは変という理屈が出てくるでしょう)と思いますんで、そうなると勿論物価情勢次第ですが、夏の利上げ懸念は続くと思います。今回出るであろう安定化策もどきで変な期待が発生すると話がややこしくなるんですが、既に量的緩和解除でお約束を見事に骨抜きにしたのに、リップサービスでまたまた期待が発生したら市場も随分お人好しですなあって感じですけど、笑。

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2006/03/08

○で、政策決定会合ですが

NHKの7時のニュースでは2番目の扱いでしたが、解説つきで大きな扱いになってます。で、焦点は「物価見通し」という話になっているようでして、まあ話は解除を前提になってますな。ご参考までに。

2日制の初日は昼過ぎから1時間ちょっとしかやらないようなのですが、今日はさてどうなるのでしょうという話はさておいて、一応予想をしておくと、量的緩和は解除して、金利政策のディレクティブは「ゼロ近傍」という表現になるかと思います。道しるべ云々に関しては良く判らないですが、時間軸再設定みたいな話は出てこないと思います。ただし、市場が勝手に時間軸再設定と解釈して反応するような書き方をしてくる可能性は大いにあると思います(そうやって市場の期待を目先安定先行き不安定化させるわけだが、笑)。

まあ色々と読み筋は披露されるのですが、結局は物価情勢次第なのでして、量的緩和解除にもめげずに物価が順調に上昇してたら政府は堂々デフレ脱却宣言をして、日銀も短期金利を0.25%まで持っていくという話になるんでしょう(ベストシナリオですが、果たして上手く行くものか?)し、そうじゃなかったら結局ゼロ金利を引っ張るしかないですわな。

毎度毎度のことですが、結局今回も市場では政治的な読み筋の話で大盛り上がりになって、本来の物価の話が霞んでしまった(ちゃんとCPIの分析とかしている人たちは市場にもいますんで市場の名誉の為に念のため申し添えますが)のは日本の伝統芸能なのでしょうか。と書いてる自分が率先して新聞記事の意図読みとか要人発言の意図読みとかに走ってるんで人の事は全く言えないというまさにブーメラン発言とはこのこと(自爆)。何か今回もまた「結論ありき」でさてどうなるのやらという話になっちゃいましたな。まあ地均しから始まっているので仕方ないということで勝手に責任転嫁(こらこら)。

日銀の考えていることを表明して透明性を確保するってのはまあ頑張ってねとは思うのですが、日銀総裁があっちこっちで講演したり国会にやたらめったら呼び出されて話をさせられたりとお喋りにならざるを得ない状態になっている上に、審議委員の皆さんにも何かこう不意規則発言が多い人が散見される状態でこれ以上「透明性」に熱心になられても困るなあというのが正直な印象でございます。

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2006/03/07

○微妙な答弁が続きますが

参議院予算委員会のインターネット中継を何となく聞いていたのですが、結局ソースはブルームバーグニュースで参ります。

・小泉首相の牽制だか牽制じゃないのか判らん発言

『デフレ脱却の兆しはみえてきたものの、このまま脱却といっていいのかどうかという点については慎重的な立場だ』
『仮に金融緩和を解除した場合には、二度と、失敗したら元に戻すというようなことがあってはならないと考えている』(以上ブルームバーグニュース)
『賢明な日銀総裁のことですから、私の発言も含めて、状況を見極めて判断すると思います』(ここの発言だけ自分のメモ書きベースです)


特に賢明な日銀総裁がどうのこうのってのは民主党の平野委員に何度も「首相は日銀に申し入れることは無いのか」と念を押されて、そのたびに「賢明な日銀総裁」を繰り返してました。

これを聞いているときは「ひえーこわいよー」などとと思ったのですが、世の中には冷静に聞いている人はいるわけで、「量的緩和の解除」じゃなくて「金融緩和の解除」と言ってるので、これは実は量的緩和解除を牽制しているのではなくて「利上げの牽制ではないか」という意見も聞きました(いやまあネタバレしちゃうと本石町日記先生に言われて気が付いたんですけどね、あっはっは)。確かにそれなら別に量的緩和解除しても良いけど利上げは駄目よって読めるので話がだいぶ違う。

まあ小泉首相の場合は素で言い間違えているだけとか、量的緩和解除と金利引き上げの違いを判って無いんじゃネーノとかいう気もしますが。

それと2番目の「失敗したら二度と元に戻うようなことがあってはならないと考えている」ってのも、まあ多分小泉首相は何も考えてないとは思いますが、意味持って言ってたらそれはそれで示唆深いお言葉(^^)。と申しますのは、この「元に戻すようなことがあってはならない」ってのがまさに量的緩和政策のコミットメント3条件にある「再びデフレに戻らないという見通し」そのものである訳でして、デフレ脱却という重要なテーマを抱える日銀が「ビハインド・ザ・カーブも辞さず」で行っていた筈の量的緩和政策のキモだったんじゃないんでしょうかねえという感じですわな。

ま、市場的には牽制が入ったという反応にはなっていると思いますが。


・福井総裁本当に安定化策とやらを出すのか??

『今週8、9日に3月の金融政策決定会合を予定しているが、ここにおいても、経済、物価情勢を総合的に点検したうえで、金融政策運営について適切な判断をしていきたいと思っている。(中略)会議の討議を通じて、創造的な結論を出すプロセスを出していきたい』(ブルームバーグニュースより)

まあ以前から散々それらしい話をする上に新聞各紙でリークだかアドバルーンだか上げているので、本当になんか出てくるのかもしれませんが、正直こっちも白紙で臨むしかないなあという感じです(笑)。インタゲみたいなものが出てくるとは到底思えませんので、展望レポートのおまけみたいなものがちょろっと出てくるだけではないかと思いますが。

ま、これだけ言ってるんだからおためごかしみたいな物になる気はしますが、何か出てくるんでしょう。まあ日銀の先行きの行動を縛るようなものは出てこないでしょうし、そもそも量的緩和政策コミットメントに見られるように最終的には色々理屈をつけて空文化するでしょって思いますけど、市場はそこまで意地悪じゃないからちゃんと反応してくれると思いますよ。おっほっほ。


○以下与太話ですので話半分に聞いて下さい

で、まあ何で3月解除を猛スピードで地均しして解除することになった(かどうか確定してませんが)のか未だに良く判らんのですが、この際政府に嵌められたという陰謀論を元に(笑)、日銀が責任を取らされない経路を妄想すると・・・・

(1)解除しても景気の腰折れも物価の下落も発生しない

→まあこれが普通に何とかなって欲しいシナリオですが、今般の解除強行(?)によって「いざとなったら日銀のせいにできる」ということで暫く大人しくなっていた財政再建路線が大強化されると困りますな。景気失速しても日銀のせいで、ついでに日銀法改正しちゃったらなおオイチイですかそうですか(まさかそんなあくどいことは考えて無いと思いますが、と一応付け加えておかナイト^^)。


(2)解除を延期して日銀の信認が低下となって・・・・

→で、プチ日本売りみたいになってしまうとこの場合は政府のせいですなあ。「金融引き締めをしても低インフレ」ってシナリオだからこんな金利の中でもフラットニングしている訳でして、これが逆回転して長期金利が上昇でもしたらそっちの方が大騒ぎになるでしょう。陰謀論を元にしておりますので(笑)、これで「予期せぬ長期金利上昇」が発生して政府が泣きを入れるのも大笑いなので許す・・・・ってかなり冗談なシナリオですが。そもそも解除延期してそういう動きになるかというとそれ自体が怪しいですな。どうせ4月に解除するんだし。


(3)解除して時間軸再設定

→その結果、再度ビハインド・ザ・カーブの政策運営に戻って、インフレ期待の醸成と共に長期金利が上昇する形での金利上昇が発生すれば、もともとの「出口は市場が連れて行ってくれる(by植田前審議委員)」の図になるのですが、まあそれをすると何のために量的緩和政策を解除したのか(解除した側にとっては)訳判らんでしょうから残念ながらその可能性は殆ど無いとは思いますが、やったら驚く。

#この部分はおまけ与太話で書いてみただけですので、あまり真に受けないようにお願いします(^^)。

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2006/03/06

お題「3月解除のようですが」

自分の書き物を整理(12月分まで分類終了)してたら、11月から12月頃は「2段階解除(量的緩和解除してもその後の利上げに時間がかかる)ならば3月解除したって無問題」って書いていたのですな。とは言え今の解除は2段階解除っぽい動きじゃないんですがね。

それにしても福井総裁の講演やら発言やらが多すぎだなあと過去の駄文を整理していて思うのでありました。市場との対話というよりはマッチポンプにしか見えないんですが、笑。


○コアCPI+0.5%

まあ形式要件としての「数ヶ月ゼロ以上」は満たしましたが、先行きデフレに戻るリスクは無いのかとか言う話に関しては何せ福井総裁におかれましては「先行きの見通しがプラスなのにデフレに戻るリスクってある訳無いでしょ」的なご発言を繰り返しておられますので無問題って事なんでしょうな。

でも、展望レポートでの先行き見通しって「量的緩和解除後の金融政策推移」を考慮しないで出している数字だったと理解しているのですが、解除した後の影響を加味した上でなお大丈夫だっていう話を聞いたことは無いですなあ(さすがに解除する時には解除した後の状況での先行き予想を出して下さると思いますが、何せ「政策に非連続的な変化が無い」という事になってますんで気にしないかも)というツッコミは野暮ですかそうですか。

まあ市場予想の+0.4%以上だったら3月解除でしょって話になってますんで解除は解除になるんでしょうが、市場に折角織り込ませた4月解除をかなり強引に1ヶ月前倒しして市場から総スカンを食って(そういやロイターがストラテジストなどに緊急アンケートして日銀の市場との対話に100点満点で何点?ってのをしたら平均が71点らしいのですが、そりゃまあ名前を出されるのに0点とはつけにくいだろうな。完全匿名でそれをやって同じ点数が出るんでしょうかねえおっほっほ)まで突撃する意味はどこにあったんでしょうかねえ。

なお、相場神であらされるところの某証券のM先生は量的緩和解除で株式市場は悪材料出尽くしになるそうです。ガクガクブルブル。


○ただのアリバイ作りかそれとも・・・・

想像垂れ流しで恐縮ですが。

CPIの数字を受けまして閣僚の皆様をはじめとして小泉首相までが「まだ極めて緩やかだがデフレ状況ではないかと思うんですが」というような発言が連発。与謝野さんや谷垣さんと言ったどっちかというと日銀寄りと目される人たちの発言が真っ先にヘッドラインに出てきたのには「ああこの人たちアリバイ工作してるんだろうなあ」などと意地の悪い見方をしておりましたが、小泉さんまでそう来るのかとちとビックリと言うほどでも無いですがやや意外。

日銀寄りと見られている人たちが釘をさしておくのは、今回の解除が上手く行かなかった時に日銀の巻き添えを食らわない為に重要な事でしょうが(笑)、小泉首相やら自民公明の幹部まで「ちと早いのでは」と合唱しちゃってるのはこりゃまた何なんでしょう。

まあアリバイ工作なのかもしれませんが、何かそれ以前に「日銀さまどうぞ解除をおやりなさい全然お止めしませんよ」って雰囲気が政府方面に流れていたことを考えると、もしかしてこれは日銀をその気にさせて「前倒し解除」に踏み切らせておいて梯子を外す大作戦の一環だったりしたらキングオソロシスでございますな。解除がうまく行ったら別に良かったですねで終了だし、景気が何らかの事情で減速したらここぞとばかり「皆がまだ早いと言ってるのに解除を強行した日銀はケシカランので日銀法改正」という作戦だったりして。もしや日銀は嵌められたのではないかという悪寒もするのでありました。


○そんな訳で短期ゾーンは相変わらず動いてますが

水曜日に入札が実施された3ヶ月ものFBは、ご案内のように入札前日からは0.06%から売り込まれて0.08%の入札最低落札価格となり、さすがにそれは安いだろうという買いがゴッソリ入ってショートカバーを巻き込んで0.065%に戻った後、木曜日には「金利安定化策」や「物価参照値」の話もネタにして0.06%近辺となり金曜は何と0.06%割れの水準まで買い進まれました。

ところがその後、何か大口の売りがあったらしく、金曜の夕方になってみるとまた0.07%近辺まで売られてしまったようですな。いやまあ水曜に買ったものもう利食いですかそりゃまた節操ございませんなあって感じですが、それだけ短い所も動くようになってしまったという事でもありましょうな。ちと無節操っぽいが。

そんな訳で、3ヶ月ものだけじゃなくて残存1年近辺とか如何にも利上げの直撃弾を食らいそうな地帯にも売り物があるのか業者の在庫が重いのかしりませんが、終わってみれば債券相場はブルフラット(というのも株が下がっているからとかあるんでしょうがそれはそれでどうなのよと思うが)してますが、1年だの2年だのというゾーンはヘロヘロになっておりますわな。

今週は火曜に6ヶ月TB、水曜に3ヶ月FBの入札がございますが、何故か6ヶ月ものは品薄気味で妙に利回りが低いのであまり参考にならないんで、参考にするのはまあ3ヶ月FBっちゅうことですわな。次回債は発行日が来週の月曜ですので保有期間全期間が量的緩和解除(したらの話ですけど)後にあたりますんで、解除後の現先金利水準とかをどの位で読んでいるのかとかが見えるかなと楽しみにしております。ただまあ期末にGWに6月2日の税揚げという資金需要が高くなりそうな3発のイベントを越える債券ですんで、プレミアムはちとつくんじゃないかと思いますが。


#まあそんな訳で本日もまた雑談で恐縮至極でした。

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2006/03/03

○で、物価参照値の公表がどうのこうのという話ですが

一昨日の「金利安定化策」報道に続いて昨日メディアから報道されたお話は「物価参照値の公表」というものです。まあ報道されている内容も微妙にまちまちでして判断しにくいですな。ちなみにこのニュースを最初に出したのが時事通信ですが、大和SMBCの白石さんがその前(1日午後)に同趣旨のレポートを出してます。

いくつかの見方があるようですが、一応私見をば。

・望ましい物価イメージを上回る状況まで低い金利を保つという趣旨

日経新聞の報道によるとどうもそんな感じになっているようですが、仮に「時間軸の再設定」という話になるのであれば、今まで何のために量的緩和解除の地均しをやってきたのか全く意味が判らなくなります(以前「金融引き締めして金融緩和」などと申し上げたと思いますが)わな。まあそういう「誤解」を市場に与えて金利を安定化させるという作戦を取るのかもしれませんが、それは筋がかなり悪いですわな。

「低い金利を保つ」と言いながら「別に翌日物金利1%は高くありませんが何か?」ということで堂々利上げするという手もあるでしょう(と言うかどうせそうなるでしょう、苦笑)が、申し訳ございませんが現在の日銀はグリーンスパン流をやる為のトラックレコードが不足しておりますので、そういう運営をすると「話が違うじゃないか」ということになるかと存じます。やらない方が吉かと。


・望ましい物価上昇率の数字を一定のレンジで公表する

大和SMBCの白石さんによれば1%を挟むレンジあたりの数字を政策運営を縛らないようにやや広めに(0%〜2%とか)出すのではというではないかとのこと。確かに今までの日銀偉い人発言から類推するとそんな感じの数字になるんでしょうな。

で、その数字内にあれば金融政策をいじらないという訳では無いのでよろしくって話になるのかもしれませんが、これまた市場が妙に誤解しそうでして、市場が誤解しちゃうとその反動もまた凄まじい物になりますんでまあ生煮えで出すのはどうかなあと思いますが。

それからCPIの先行き見通しを示すというというのも出てたらしいのですが、展望レポートとどこがどう違うのか意味判らん。またお馴染みの「今までやってるものを新施策でございって出す作戦」ですかな?



で、これらの話は基本的に債券の買いなのかどうかって話になりますが、まあ売りになるような出し方をする訳は無い(売りになったら大笑い)のは当然として、本当に買い材料になる内容なのか、それとも目先の目くらまし物件を市場の誤解を利用して買い材料らしく仕立てるかって話になりますと、あたしゃー後者を予想しますがね。

例えば望ましい物価上昇率が0%−2%とでもしたら、コアCPIがレンジの中心の1%になるまで利上げ無しと市場が勝手に解釈するかもしれませんが、例えば0.5%になっても別に金融政策をいじる事は可能なので、勝手に「時間軸が設定されたぜベイベー」と喜んでいると足を掬われるの巻になるかもしれませんな。BOEなんて住宅価格の上昇をネタにCPIがレンジの下限にあるのに金融引き締めしたことある訳で、そのあたりは日銀の中の人は念頭においていると思います。


まあ何と申しますか、あまり議論が練れてないのではないかと思われるこの段階で、量的緩和解除のバーターのような形で玉虫色のものを出すというのは(目先は良いかもしれないけど)将来ややこしいことになるだけなんで、もうちょっと議論を深めてからぶち上げて頂きたいものです。

まあ時間軸でビハインド・ザ・カーブとか言ってたのにいつの間にか「ライトタイミング」になり、気が付けば「失敗を恐れずリスクを取って」とかフォワードルッキング状態の発言が炸裂してしまうような人が本当に「約束」を守るのでしょうかねえという突っ込みをしたくなる所でもありますが。結局語句の解釈問題で先行き骨抜きになる予感。


ま、これもアドバルーン大作戦の一環なのかなあって思うのですが、それにしてもこういうやり方はあたくし的には何か物凄く政治的な感じがしてどうも如何なものかと。あたくしはこのやり方が日銀の総意だとは思いません(関東軍みたいな人がやってるんじゃないかと邪推)です。出すなら出すで決定会合で深く論議したというのを見せて(議事要旨は1ヶ月〜2ヶ月後に公表されるんだし)スパッと出せば良いじゃんと思うんですがねえ。何で直前になって観測気球リークみたいなことをするのかなあ。

しかしまあ火付けと火消しの繰り返しってのは勘弁願いたいです。と、今日もまた雑感で恐縮至極。

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2006/03/02

○金利抑制策検討???

昨日の日経新聞1面トップには「日銀が金利抑制策検討」という記事がありまして、そんなものは露知らずのあたくしはドラめもんのネタに当然使わなかったんですが・・・・なんじゃこの記事は??

えー、まあ色々と書いてあるのですが、一応項目別に撃破してみますね。

・翌日物金利0.1%上限に

ロンバード貸し出しというのがございまして、担保があれば日銀は公定歩合で個別に貸し出しをします(一般人には貸してくれませんよ^^)。従って基本的には短期金利(オーバーナイトなのか数日物のタームなのかというのは解釈が微妙ですが)の上限は0.1%になるというのは公定歩合とロンバード貸し出しの枠組みが今のままであれば当たり前の事です。ただし担保が無い場合は無担保で市場から取りに行かないと行けませんから高くなる場合もありますが、それは限界的な話。

つまりこれは安定化策でも何でもなくて、既に実施されている施策をただ説明しただけのことです。

それ以前の問題として、(この前も同じことを書きましたが)量的緩和解除をしたら日銀の金融政策の誘導目標は「当座預金残高」から「無担保コール翌日物金利」になるのですから、その時点で無担保コール翌日物金利の誘導目標が呈示されるので、「翌日物金利0.1%上限に」というのは金利抑制策でも何でもなくて、日銀が当然やる事(上限金利を明示的にディレクティブとして呈示するかは別問題ですが)でありますわな。

量的緩和政策と金利政策の違いを理解しているとは思えない大変頭の良い記事で、1面トップでこんなことを書く新聞に金を払ってなくて良かったと心の底から清々しい気持ちになった朝のひとときでした。


・長期国債買い入れ額維持

長期金利の急上昇を抑えるために日銀は長期国債の買入を維持という記事もあるのですが、現状ではこの前もお話したように2年債とかがじゃんじゃん買われてまして、その分償還もじゃんじゃん来ますので、日銀券ルールに抵触する気配は今のところ無し。

その上、福井総裁時代になってからは当座預金残高目標はじゃんじゃん増やしましたが、長期国債買い入れ額は維持しっぱなしですので、少なくとも速水総裁時代の15兆円(でしたっけ?)まではそもそも減らす大義名分がございませんわな。長期国債買入は当面維持してもそれほどややこしいことにはならないんじゃないかと思料されます。

なおもそれ以前の問題ですが、長期国債買い入れは別に長期金利の安定化のためにやっているのではなく、成長通貨の供給のためにやっておりますので、これを「金利安定化策」として公表するのは無理筋です。もっと勉強しましょう。


・短期金利の跳ね上がり防止

当座預金残高を削減する段階で翌日物金利が跳ね上がりそうになった場合には削減のペースを落としたり資金供給オペを行って市場の過熱を防ぐ案を軸に検討する。などという記事に関してはもうアホかと馬鹿かと。

そんなのは当たり前であって、金利政策をやっている最中に機械的に当座預金残高を落として金利の跳ね上がりを放置したらそりゃ本末転倒。どうも当座預金残高の数字のことばかり頭にあって、金利政策をご存じないお方が書いているのではないかと言いたくなるような低レベルの記事でございます。


・で、そもそも論なんですけど

この記事のお題が「日銀が金利抑制策検討」なんですが、翌日物金利に関しては抑制も糞もなく誘導目標なんですから日銀が主体的にコントロールするもの、というのは先ほども書きましたとおり。で、それ以外の金利に関してもコントロールするかのような書き方にも見える記事でございますが、そもそも量的緩和解除をするのは、金利の正常化によって市場機能を復活させることではなかったでしたっけ?何で(翌日物金利や短めのターム物金利は兎も角)市場に手を突っ込むような「施策」を検討するって筋が出てくるかなあって思うのよ。

量的緩和解除後にそんなに市場に手を突っ込まないといけないんだったら何のために解除するんだかって感じですし、記事にある話の範囲内であれば・・・既に存在する施策と、金利政策に移行した時には当たり前となる施策を並べて「金利安定化の施策でござい」って目くらましをするのは政策を行う者としての誠意に甚だ欠ける行動ではないかと思うんですが如何でしょうか。



○ところでこの記事は何のために?

と考えますと、まあ何かやらかす時に何故か日経あたりに変な観測記事が出てくるという日銀クオリティが以前からございますので、この記事見た瞬間にあたくしは「ああこれで3月解除確定だなあ、とほほ」と思った訳ですが、まあ毎度お馴染みのアドバルーンなんでしょう。

それにしても今回の記事は金利関連の市場関係者のかなりの人が「何だこのピンボケ記事は?」と突っ込む内容でして、誰に向けて書いた(書かせた??)記事なんだかって感じでございます。ちょっと幾らなんでもこれは如何なものかと。

でもまあ今朝のブルームバーグニュースの後講釈が正しければ「ゼロ金利状態が継続するという見方から対円でドルが上昇しました」ってんですから、何も判っていない海外のとうしかさんにめくらましができてよかったですね(棒読み)というところですかねえ、あっはっは。



・・・・もう何か3月解除先にありきでグダグダになってますな。

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2006/03/01

お題「もうちょっと落ち着いて考える訳だが」

昨日のドラめもんでは(昨日申し上げましたように)債券市場の中の人たちが今までになく憤激モードだったのであたくしも脊髄反射不機嫌モード全開で書きましたが、早速冷静に分析してくださったメールも頂戴しまして(ありがとうございます)色々と新聞記事なども出てきましたので、まあ昨日の続きという感じで。

○「コミュニケーション論」と「政策論」(頂きましたメールより)

ネタバレしますとこの部分は頂きましたメールからお話をしているのですが、というか誠に仰る通りなのでメールそのままですが。

『先週の国会以降の一連の発言が、(1)4月解除を前提としたものであれば、これはコミュニケーション戦略のミスの可能性がありますが、(2)3月解除を前提としたものだとすると、これは(コミュニケーション戦略以前の問題として)政策判断のミスの可能性がある、という違いがあるのではないかことです。(頂きましたメールより)』

昨日は脊髄反射モードで書いていましたのでその辺がごちゃごちゃになっておりましたが、こうやって切り分けていただくと頭の中が整理できて大変に助かります。

(1)4月解除前提だった場合

昨日の日経金融新聞2面の「ポジション」記事に一連の強気発言に関して「市場の量的緩和解除時期が4月解除一点張りになっているのでその予想を散らす」「強硬姿勢を見せて3月解除の振りをして、政府に譲った形で4月解除という元々の予定通りの行動をする」というような読み筋が披露されていたのですが、確かにまあそんなことがあってもおかしくはないですなあという感じですね。べき論で言えば無茶苦茶な話ですが。

しかしまあそれは何というか意味のある事ではないとメールを下さった方もご指摘しておられましたように、「また余計なノイズか!」と市場参加者大怒りと言うところでしょうね。今回の解除はマーケットを荒らさず(という訳でもなく、9月から11月に掛けてのフラットニングで怪我人は続出したので別に荒れなかった訳ではない)に行くかと思ったのですが。

(2)3月解除前提だった場合

先ほど申し上げたように市場が4月解除1点張りでそれを前提に動いている訳でして、3月解除をする事を前提に一連の強気発言が飛び出したのであれば、こりゃもう明らかな話でして「今から3月解除を徐々に織りこませるのは困難なのでブルドーザーを持ち出して地均しをしました」ということでしょう。このコミュニケーション方法もどうかとは思いますが、まあ3月解除するのに当日奇襲攻撃をするよりはマシという考えに立てば話としてはまあ一億歩譲って有りということにしましょう。

でこの場合ですが、こちらは政策論のお話になる訳でして、「わざわざ(市場が織り込んでいる)4月じゃなくて3月にする理由は何なんだ」という話になりますわな。

4月でも3月でも同じじゃんと凡下のあたくしは思うのでありますが、まあその1ヶ月を引っ張ることによって悪影響があるという政策判断が働いたというのが正しいのであれば3月解除を前提としたブルドーザー地均し攻撃もやむなしということでございましょうな。

そうなりますと、昨日「3月解除の意味する所は」などと書きましたが、3月解除を急がないといけないほど量的緩和政策の副作用(?)があるのか、はたまた物価安定の観点から3月解除を急ぐ必要があるのか。物価安定の観点で急ぐということであればその後の金利引き上げも急ぐという連想が起きますわなあ。

でも、2月9日の記者会見で総裁はこんなことを言ってた訳でして、あの発言はどこへ行ったのかと小一時間です。

『物価はプラス基調を強めていくと思うが、日本の物価に固有の粘着性、そして経済全体から見て物価が上がりにくい環境が当面続く可能性が高いと思っているので――そういう見通しが外れれば別であるが――、この前の展望レポートでお示しした通り、金利のレベルを修復していくプロセスはなお余裕を持って進められる可能性が強いと判断している。(2月9日福井総裁定例記者会見)』


#と、ここまで書きましたが、もしこれで「別に深い意味はありませんが何か?」という話ですと、まあ市場関係者揃って「逝ってよし!」と言い出すでしょうな。


○いやあの何だかな〜って感じの記事

昨日の日経金融新聞2面の左上にある囲み記事「BOJウォッチャー」。何か微妙にアレな記事が多く、血圧が上昇したり茶を噴いたりと読んでて忙しい代物なのですが(笑)、昨日の記事で「ハァ?」と思ったのは「当預残高削減ペースの思惑に日銀の中の人が困惑している」という趣旨のお話。

手元に当該記事が無いので記憶で書いちゃって大変恐縮ですが、要するに「早期の金利引き上げを織り込みだした市場に日銀困惑」って話でして、その内容ですが、「当座預金残高を所要額近辺まで削減する作業は市場動向をみながら慎重に行い、とりあえず10兆円程度(所要+4兆円)まで落としたところで様子を見るつもりでいた(日銀が)ようだ」「しかし、先日の国会答弁で福井総裁が『数ヶ月かかる』と発言したのが英語で報道された時に『2、3ヶ月』と解釈されて利上げペースが思ったより早いという思惑を産んだようだ」「従って日銀も困惑している」って話の展開だったと思います。

でも「6兆円」発言したのは中曽金融市場局長(と時事で報道されているらしいのですが、手元に時事通信のベンダーが無いので時事の記事を直接確認はしてませんスイマセン)ですから、残念!

まあ実際に調節をやる人は短期金利が無駄に跳ね上がらないように当座預金残高の縮減を行うと思うんで、間違え記事と断言するほどのことも無いのですが、まあ「6兆円」という数字を出したのはまずかったですな。



○で、まあこちとら3月解除でも何でもしてくれとヤケクソですが

一応悪態をつきまくりながらも日本銀行に置かれましてはちゃんと政策運営をして頂きたく思うあたくしとして一つだけ申し上げておきたいのは・・・・・

「市場は量的緩和解除を既に織り込んでいるので解除しても以前から申し上げているように非連続的な変化が生じているわけではない」というような趣旨の発言を3月解除(するならば)にあたって総裁が行うことだけは何とかして避けていただきたいなあと。

勿論個人的な感想であって、全体が皆そう思っているかどうかは別問題ではありますが、「市場が物価動向を見て解除を織り込みに来たんで後追いで解除しただけだぜベイベー」と取られるような発言をすると恐らく債券金利市場関係者のかなりの人たちの血圧が急上昇して机を叩いたりゴミ箱を蹴ったり悪態をついたりする人たちが続出するのではないかと思料されますので、そのような趣旨の発言だけは何とかして逃げてくださいませ。

だってかなり強引に織り込ませに行ったんですから・・・・

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2006/02/28

お題「今日は少々脊髄反応気味でお送りします」

悪態はつけども一応日銀を応援しようかなあというあたくしもさすがにこの一連の流れは如何なものかと。

○利上げまで地均ししてどうする

週明けの一部新聞報道では「3月(=来週)」の量的緩和解除になっても政府は止めません」ということで、3月解除は期末前だしやらねえだろうという意識で動いている人が多かっただけに、「サプライズ」となって中短期ゾーンの債券がなおも売られる有様。その後の動きよく見てなかったのですが、前場は10年あたりを支点にしてイールドカーブがツイストしながら平坦化するという銀行業態のポートが傷みまくるような展開で、後場はその巻き戻しで今度は若干のスティープ。

まあ巻き戻したのにはホッとしましたが、前場の時点では2年国債が0.52%になったり、ユーロ円金利先物06年12月限が99.39(=今年12月のTIBOR3ヶ月もの金利が0.61%!)となったりと「年内0.25%利上げ、その後来年の早いうちに更に0.25%の利上げ」を完全に織り込みに逝く豪快な相場展開になったことには目を丸くしちゃいました。


まあ市場的には4月の量的緩和解除に関しては、今までの地均し効果によって「どうぞどうぞ」という状態になっていた(あたくしはその地均し如何なものかと噛み付いてきましたが、日銀の目論見通りにここまで進行していて地均しも効果を発揮した事は認めます)。

しかしそれでは何がご不満なのか知りません(というのは嘘で、緩和解除しても低金利が継続するっていうマーケットコンセンサスが不満なんでしょう、何だかな〜)が、ここもとの前のめりな姿勢やらフォワードルッキング(失敗を恐れず云々のような発言)な姿勢やら、金利への言及(解除後に金利が上がる方向云々とか中立金利水準がどうのこうのとか、結局全て先週の木曜金曜の福井総裁国会答弁なんですが)やらが相まって「量的緩和解除後、当座預金残高を所要水準まで下げたあと早い時期に利上げをするんじゃないか」という話になってしまったのがここもとの相場かと。

まああたくし以前は「解除と利上げはセットでしょ」などと申し上げていましたが、それは量的緩和政策をビハインド・ザ・カーブ的に継続する事によって、世の中にインフレ期待が醸成されて中長期の金利が先行して上昇するという「出口は市場が連れて行ってくれる」路線としてでして、量的緩和解除の地均しをやっている時は「現在の経済物価情勢であれば量的緩和解除(枠組み修正)後の金融政策についても余裕を持って対応できる」とか言っておきながら、政府から量的緩和解除の邪魔立てが入らないと見たらいきなり「金利引き上げ」のような話を始めるような騙し討ち大作戦でセットにするというのは如何なものかと。


○などと急に手厳しい物言いになりましたが

・・・昨日までと比較して随分キツイ言い方になりましたなあと思われる方も多いのではないかと存じますが、これはまあアレですわ、市場の雰囲気をお伝えしようかと思って口調がキツクなっている訳でして(-_-メ)、さすがにこの「3月量的緩和解除への積極姿勢?」に関しては今まで日銀の地均し路線を応援していたマーケットの人たちからも「何で1ヶ月待てない(4月の解除ならマーケットは「ああ解除できてよかったですね」で目出度くシャンシャンだったのに)のか」とか「幾らなんでもしゃべり過ぎ」というような疑問や批判の声がかなり上っているようですよ。

ただでなくさえ従来の地均し路線でイールドカーブがベアフラットして「金利上昇への備え」をした筈のポートフォリオがヘロヘロになっている(原因は15年変動利付国債と中期ゾーンへの厚めの投資配分)銀行業態はさすがにここまで来ると頭が相当痛いでしょうし、ここ連日の相場の荒れっぷりはまさに「壊れちゃいました」って感じになってますわな。

まあちょっとこうまた市場に燃料投下しちゃいましたなあという感じですが、これが確信犯でやっているのなら(確信犯の審議委員もいそうな気がしますが)まだ救いがある(ないけど)かも知れませんが、恐らくそんなことまで考えてないのではないかってのが悲しいです。

ま、あたくしの場合は地均し路線突入の頃に悪態の限りを尽くしてましたので、この「利上げ地均し??」も「まあそんなことをやるかもね」ってなもんで何だか諦観モードなのですが(苦笑)、地均し路線応援組を失望させるこの動きはどうだったんでしょうかねえ。


○「3月解除」の意味すること

いやまあ3月解除って資金需要の高まる期末を前に当座預金残高を引いて行くってのも中々チャレンジャーな話ですが(だからさすがにやらないとは思うんですが)、もうひとつの意味は「3月に解除すると7−9月期に利上げが可能」ってところでしょう。

当座預金残高を所要近辺に落とすのはだいたい3ヶ月程度かかると予想されていますが、3月に解除すると6月から7月にかけては所要近辺での運営となりますわな。ところがご存知のように「平成17年基準への切替えは,平成18年8月の公表日とし,その際に平成17年1月以降の遡及結果を同時に公表します。(http://www.stat.go.jp/data/cpi/keikaku.htm)」というのがあるので、8月末に公表されるであろうCPIには下方圧力がかかりますわな。

となりますと、例えば4月の末に解除となると所要に落とした後にCPIの改定にぶつかりますんで、当預引くのに思ったより時間がかかるとなるとちょっと7〜9月の利上げはどうよって話になることが想定されますが、3月の頭に解除しておけば当預引くのに時間がかかっても問題ないぜってことで、7〜9月期の利上げもその気になれば可能(大義名分どうするんだと思うが)と言うことで、マーケットも俄かに大騒ぎってお話でございますわな。

従来は市場の予想で一番早めの人でも10月利上げだった訳ですから・・・・



○どうみても燃料投下です。本当に(略

昨日の日銀ワーキングペーパーシリーズがまた素晴らしい燃料投下。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/wp06j04_f.htm

お題は「バブル崩壊後の日本の金融政策 ――不確実性下の望ましい政策運営を巡って――」ということで、上記URLから論文のPDFファイルにリンクが貼ってあるのですが、図表を含めて56ページもある大作(本文は34ページ)でございますので、最初の方をパラパラ斜め読みしただけです。ちゃんと読まないといけませんな。

で、URL先には「要約」があるのですが、そこにはこんな一節が。

『日本経済の大型マクロモデルであるJEM(Japanese Economic Model)を用いた確率シミュレーションによると、政策効果(政策乗数)の不確実性を考慮した場合には、当時の日銀の政策運営はほぼ最適なものであったとの結果が得られた。』

はあそうですか。

『一方、インフレ過程の不確実性を重視した場合には、実際の政策よりも積極的な対応が望ましかったとの結果が得られた。このように、どのような不確実性を重視するかによって結論は大きく異なるが、結果的に、1990年代後半以降デフレ克服が重要な課題になった点を踏まえれば、90年代前半においてインフレ過程の不確実性をより重視し、積極的な金融緩和を行うべきであったとの議論は可能であろう。』

ふーん。

で、あたくしの場合はこちらの要約を見る前に本文スーパー斜め読み(式の部分は全部飛ばしてキーワードしか拾わないで読む、というより眺める)したのですが、そこの13ページから14ページには中々結構な一節がございましてあたくしの心を大変に触れて下さいました。

『1990年代前半の日銀の政策運営について、テイラールールをベンチマークに評価した先行研究をみると、使用するGDP ギャップによって、実際の金利がテイラールールに比べて引締め的であったのか、あるいは中立的であったのか異なる結果が得られている。政策評価を行う分析者が、当時の日銀にとって利用可能でない――とりわけ「後知恵」による――情報を用いて、「日銀は本来こうすべきであった」と言っても、意味のあることではない。日銀が、当時利用可能な情報に基づいて、何ができて、何ができなかったのかを明確に区別しておくことは重要である。』

あえてこの部分に関して感想は申すまい。

ま、しかし何でまたこんなタイミングで出すんでしょうねえ。調査統計局様におかれましてはもちろん市場に喧嘩を売るつもりは全く無いのでしょうが、どうみても燃料投下です。本当にありがとうございました。


#という訳で、本日はやや脊髄反射モードでお送りしたことをお詫び致します。

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2006/02/27

お題「織り込みすぎですがな」

「地均しをやりすぎて地割れ」って感じっすか。

○継続的な利上げを織り込んでいるような・・・・

先週末の債券相場ですが、海外の方が福井総裁の国会答弁に反応しちゃったようで円高+中期ゾーンのスワップ払い攻撃。で、金曜日もまた国会(金曜は衆議院財務金融委員会)でやる気満々発言(のように取られる)答弁をしちゃったようで、後場からはスワップ発だと思うんですが中期ゾーンがとんでもない売り売り状態になってしまい先物と中期債大幅下落。

何せイールドカーブ上一番売り込まれていたのが5年の40回債近辺という状況でして、残存4年ちょっと切るくらいという妙に半端な所がダメダメってことは実弾も出たんでしょうかねえってところでございます。折角水曜日あたりにスワップの受けが入って相場が落ち着いたと思った所だったので、まあやってる人としてはちょっとがっくりという感じではございます。どう見ても相場が壊れています。本当にありがとうございました。

昨日の3ヶ月ものFBは板気配がヤケクソで無くなってしまったようですけれども概ね0.04%〜0.045%で量的緩和解除が3月にあるリスクを十分に意識した水準。というか解除しても当座預金がいきなり減りまくる訳ではないので現先レート勘案でそんなに上る事も無いと思うんですが、3月解除して期末越えの金利が気になるとか色々とナーバスになっているのでしょう。大体発行量が多いのもアレですし。

2年国債は0.48%くらいまで売られたらしく、引けは0.47%(大和SMBCの引けですが)となりました。まあ足元金利から積み上げていく方式で考えてしまうあたくしから見ますと、これって向こう2年間で政策金利が1回どころか2回上昇して0.5%に上昇しているって状況を織り込みに行っている感じでございますわな。5年カレント物も1.1%まで叩かれたらしいのですが(引けは1.095%)、中短期ゾーンは継続的な金利引き上げを織り込みに行く勢いになってしまいました。ついこの前まで「量的緩和を解除してもゼロ金利が長く続く」とか言ってたのがどこへ行ったのやら。極端から極端に振れるのが債券市場の伝統芸能ではありますが、それにしてもちょっとこれは・・・・


○短期国債買入でちょっとビックリ

金曜日の短期国債買入。どうせヘロヘロの結果になるんだろうと思ったら、平均落札が前日比+0.014%となりまして、つい3週間前まで3ヶ月FB利回りが0.007%だとか言ってたのが嘘のような数字。あまりにも弱い結果なので腰を抜かしそうになったのですが、よくよく聞いて見ますとここもとの短期国債金利急上昇に対して、公社債売買参考統計値の方がおいついていなくて実勢よりも遥かに強い数字になっていた為の数字のマジックだったようです。ちなみに落札されたと思しき銘柄はFB373回〜375回のあたりかと。

まあ人騒がせな落札結果でしたが、買入予定額5000億円に対して応札2兆4432億円というのもここ数回では最大でして、ディーラーの在庫が結構大変なのねっていうのは判るオペ結果ではございました。


○ベシャリも程々にしていただかないと・・・・

金曜日の衆議院財務金融委員会でも福井総裁がまた変なヘッドラインを打たれるような答弁をしていました。もう頼むから勘弁してくれというのが正直な感想でございます。

ブルームバーグニュース(24日12:16配信)より:

『日本銀行の福井俊彦総裁は24日午前、衆院財務金融委員会で、「政府の経済政策全般との整合性を常に念頭に入れながら政策を行う」と述べる一方で、「失敗を恐れてばかりはいられないところもある。先行きの情勢を読みながら、リスクを取って政策行動をしていく。真剣勝負だ。」と語った。また量的緩和政策の解除について「条件は少しずつ成立しつつあると判断している」と述べ、解除の時期が極めて近いという認識を改めて示した。』

で、この記事のお題は「日銀総裁:政府と整合性図るが失敗恐れずリスク取る、真剣勝負」と書かれてしまうわけで、こう書かれると今まで発言から日銀総裁はもうフォワードルッキングで解除後の早期利上げまでやる気満々ですわなあと取られてしまうでしょう。特に事情を何となくしか判ってない海外の投資家さんなんかは益々。

で、まあ衆議院インターネット中継を聞いてみたんですが、どうもこのくだりは民主党の小沢鋭仁議員が「日銀は政策の責任をどう取るのか」みたいな言い方でやや挑発的な質問をしていたのに対して「日銀は別に無責任体制で政策をやっているんじゃない!」ってニュアンスで答えていたら上記のような答弁になったように(あたくしもその部分だけしか聞いてませんが)思えます。まあまた釣られちゃいましたなって感じ。ちなみに実際は福井総裁「失敗を恐れずと言っても(自粛)撃ちではない」ともお答えしてました(ようにあたくしには聞こえました)が、不適切用語が混じっています(あたくしのヒアリングが正しければ)ので報道しにくい(こういうのは議事録にどう載るの?)でございますわな。残念!

とは言え、今までの総裁の発言が基本的に量的緩和解除とその先の金利引き上げに前のめりに取られる発言が多いわけでして、まあ釣られたというよりは「やはり総裁は金利を早く引き上げたいんだなあ」と思わせてしまうところでございますわな。あまりそのような心情を発言するのは如何なものかと思いますが。本来は量的緩和解除後の金利政策に関しては基本的にその時の物価情勢とか経済状況次第なので決め打ち禁物な筈ですけど、こうやって方向性を出してしまうと市場としてはドンドン先の方を織り込みに行きます。で、上記したような連続利上げ織り込みモードになると。

まあそんな事は考えていないと思いたいのですが、もしかして量的緩和解除をした後に市場金利が跳ねると何言われるか判らんから先に口先介入をして金利を上げておこうとか、(この前似たようなニュアンスの発言を水野審議委員がしていましたが)市場を煽っておいてから「市場は利上げを催促しているので市場追認で利上げ」とか言い出す練習でもしているのではないかと(今回の量的解除ではさすがに利上げをいきなりする訳には行かないでしょうが)いう邪推までしたくなってしまいます。

いずれにせよ、昨日も申し上げましたが、情報発信のやり方にどうも疑問がありますなあという所ではございます。中央銀行総裁がむやみやたらと国会出席させられる状態も何だかなあと思いますし。

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2006/02/24

○ちょっと気になった報道

日銀の中曽金融市場局長が「量的緩和解除後の当座預金残高は6兆円程度に」と発言したという報道があったと仲間から聞いた(おい)んですがって要するに当該情報ベンダーを見ていないって事ですが(笑)。

この発言自体は「量的緩和解除後の当座預金残高は所要近辺で運営する」というごく当たり前の事を言ったに過ぎない(所要準備は全国銀行4兆の日本郵政2兆で6兆円と言ったところです)のですが、このヘッドラインだけ見せられると「えっ?」となってしまう人もいるかと思います。

と申しますのは、現在言われていることとして、「解除後に当座預金を引くとしてとりあえずどの辺がメドなんでしょう」って時に、「量的緩和の世界が長かったんで、暫くは日中資金繰りが慎重になる人も多いだろうか8兆円とか10兆円とかで運営するのかなあ」何て見方が多いんですな。

そういう雰囲気が漂っている時の「6兆円」というのは「バッファー無しにいきなり持っていくのかよ!」という印象を与えかねない言い方でして、発言するならもうちょっと気を使うと申しますか、どういう報道のされ方になるかを考えた物言いをしていただきたいものだと存じます。

今まで日本銀行から出ていた表現ベースで説明するのであれば、上記発言は、「当座預金残高は最終的には当然ながら所要額程度になるが、政策決定会合で決定する金利水準近辺で短期市場金利(無担保コール翌日物金利)が推移するように運営を行う」というような表現にしないと。

大体からして、量的緩和政策を解除したら日銀が誘導目標をおくのは「金利」であって「当座預金残高」はその「金利」を操作させるための道具として調整されるものでございますので、当座預金残高がいくらという数字に殊更意味を持たせる必要は無い(そりゃまあ日々の調節で所要対比いくら準備預金が進捗しているかというのは意味がありますが)のであって、「6兆円」という言葉が一人歩きしだすような可能性だってあるので、まあもうちょっとその辺の微妙な機微についてお勉強ありたいです。

つーか市場についてコメントする時はあまり具体的な事を言わない方が良いと思うんですよ。昨日軽く悪態をついた日銀総裁の輪番がらみ発言(「中期ゾーンの国債の需給が引く手あまたで、民間でさばけているのだろう」)に関しても、総裁は最近のイールドカーブのフラット化傾向とか中期ゾーンが売られているとか言う話は先刻承知の介だと思ってたんですが、瞬間的な需給のよさ(というか売られすぎの巻き戻しというか)を切り取って「引く手あまた」と表現すると「総裁に債券市場の現状がちゃんと伝わっているのだろうか??」って市場の現場にいる方としては懸念しちゃうんですよね。

色々とコメントしてくれるのはそれはそれで有り難いのではありますが、まあ一般的な話をしておいた方が無難ではないかと思います。「引く手あまた」なんて「サービス発言」をしないで「当日のイールドカーブ変化によって発生した偶発的な事だと理解している」とでも言っておけば良いのよ。

なお、このお話は報道されている内容が事実であるという前提ですから、実は記者が端折って書いたというのであればスイマセン。

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2006/02/15

お題「今更ですが総裁記者会見」

今朝のモーサテ東京スタジオの最初のお話。「」は本村ゆっこさんのお話で()内はあたくしの声ですが^^;

「量的金融緩和の解除がマーケットの注目を集めていますが、気になるニュースがありました(ほほう何でしょう)。時事通信が有力エコノミスト10名にアンケートを行った結果(量的解除で流動性縮小から株が下げるとでも出たのかねえ?)、10名中8名が4月の量的金融緩和の解除を予想しています(いやあの市場でとっくに織り込み済みの話をマーケット情報番組で大ニュースのように言われても。一般ニュースならともかく)。」

いやまあ本村キャスターは言わされているだけでしょうから別にゆっこ様のせいでも何でも無いんですが、朝から物凄い勢いで脱力するのでありました。この番組の編成をしている人間を捕まえて小一時間問い詰めてみたい(そんなことは時間の無駄だが)ものでございます。今朝も「2月15日水曜日です」っていう矢吹さんの声のトーンを聞いただけでNY株式大幅上昇を予想したらその通りだし(笑)。まあお笑い番組だと思って見てるんで余程とんでもない話でも出てこない限りは血圧も上がらないのですけれども、やはり朝は仕事モードで脳内活性化したいですからねえ。

そんな訳で、最近6時からはMXテレビ(と南関東UHF3局でやってる)ブルームバーグテレビの方がまだマシなのでそっちに切り替えてしまうのでありました。まあそもそも日経新聞を定期購読してないんでそれ以前の問題ではありますが(苦笑)。


という訳で遅くなりましたが2月9日の総裁記者会見。質疑応答を読むと中々オモロイのですが、オモロイ部分を引用してると結構長くなりそうな気がするのでテキトーに。それから金曜にブルームバーグニュース記事から引用させてもらった分は今回割愛。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0602b.htm

○明示したコミットメントは取らないという見解ですな

政策枠組みの透明性や期待の安定化をしていくための施策について。

『(前半割愛。一言で言えば「現在検討中」って感じ)従って、今ここで何がしかの方向性、イメージを申し上げることはできない。ただし、毎回申し上げている通り、量的緩和政策は、消費者物価指数を軸にして日本銀行自身の手足を縛ることに意味を持たせた政策として行ってきたが、量的緩和政策解除後は透明性確保と、金融政策の機動的・弾力的な運営つまり柔軟性とが明確に両立するようなメッセージの出し方でなければならない。この点は非常に明確なポイントとして、各委員とも揃って重視しながら検討を続けている状況である。』

ということで、明示的なコミットメントを設定して政策を行うと言うのはあまり採用したくないらしいですなあ。


○今後の情報発信について:展望レポートなどに関連して

展望レポートを今後どうするかという質問がでましてその回答部分。

『もう一つ重要な話であるが、展望レポートについて皆様がどのように評価されているかわからないが、私どもとしては展望レポートの中の特に金融政策に関する部分において、私どもの先行きの政策径路について、できる限りのメッセージ、最大限のメッセージを盛り込んできているつもりである。量的緩和政策の枠組み修正のタイミングについても触れてきているし、枠組み修正後の金利政策の運営についても、私どもとしては相当程度のメッセージをそこに既に盛り込んできているつもりである。』

『今後の私どもの作業としては、仮に枠組み修正後ということになると枠組み修正までのプロセスは終わるわけであるが、その後の金利をターゲットとする通常の金融政策の運営について、既に書いている部分もある。それを今後の新しい経済のアウトルックとの対比において、これで十分かどうか、さらに追加的に情報提供できる部分があれば惜しみなく情報提供していくことになると思う。ごく自然体に考えて、経済の見通しと政策の径路について、できる限り整合性のとれたかたちでメッセージを出していくということであり、ここで離れ業的なことをするつもりは全くない。』

どうもこの辺りのコメントを聞いて(読んで、ですけど)いると引っ掛かってしまうのですが。と申しますのは、どうも今までの実績を勘案するに、これからも「日銀は経済の先行きがこうなると思うから今後の金融政策は引き締めだよ(または緩和だよ)」とかって言い出すんじゃないかという風に思ってしまうのであります。今の「地均し」路線と同じことを今後もやりだすんじゃないかという漠然とした不安が。。。。

昨日ご紹介した(というか記事の引用ですが)水野審議委員の寄稿がまさにそうなのですが、日銀の審議委員が一々市場に手を突っ込むような話をして、それをもって「市場との対話」とか言われても甚だ迷惑。何か日銀が情報を発信してそれに市場が反応するのを見て「期待の安定化をしないと」となって更に情報発信っていうようなアホアホな事態が発生するのは勘弁していただきたいものです。まあ余計な話をするなと思うのだが。

でも福井総裁はこういうコメントをしているのですが。別の質問に対する答え。

『私どもの頭の中に最後に残る長期金利の姿は、基本的には将来の経済や物価に関する市場の見方を反映して、市場そのものが決めるというものである。理論が決めるものでもないし、誰かパワフルな人が決められるものでもない。市場そのものが、将来の経済や物価に関して貪欲なまでのエネルギーを注いで眺め尽くした後、市場自身が判断して決まると思っている。』

その割には地均しとかしちゃうってのがどうもよく判らん。イールドカーブの見通しまでコメントする水野審議委員は論外ですけど。


○ビハインド・ザ・カーブは反故ですかそうですか

今更驚かないけど、総括しないで有耶無耶のうちに反故にするというのは甚だ遺憾でございます。

『毎回申し上げているが、金融政策は、経済・物価情勢の流れの中でもっとも適切なタイミングを、遅からず早からずという意味で適切なタイミングを掴んでいかなければならないので、情勢判断を離れたイベントが、金融政策の判断のタイミングを決める上で、非常に重要なウエイトを占めるということはない。』

ほほうそうですか。


○景気と物価の見通しに関してはいつもどおりの強気です

まあこういうコメントになるのはいつものことですが、益々意気軒昂と行った所で。

『ご説明した通り、日本経済については、理想的とまでは言わないが、どの角度から見ても比較的バランスの良い経済の姿になっている。生産が強く、企業投資、企業所得がしっかりし、それが家計部門にも均てんして雇用者所得も増え、消費も底堅い。つまり国内経済の循環メカニズムが上手く作動しているが故に、着実な回復、持続性を強めながらの回復になっている。別の言い方をすると、外からのショックに対しても、かつては脆弱性を持っていたが、脆弱性の少ないあるいはショックに対してより強い経済になりつつあると思う。しかし、引き続き、特に外から来るショックに対して、日本経済が本当にどれくらい吸収していける力があるかを、十分見定めていかなければならないと思っている。』

そのショックの中で挙げているのが一次産品や原油価格の上昇と、地政学的リスク(イラン問題が日本に対する地政学的リスクなのかよというツッコミはさておいて)です。

『物価は既に3か月連続でゼロ%以上になっており、見通しとしては、1月分以降はより明確なプラスの数字が出るであろうということである。その背後にある経済情勢の分析を加えて判断していけば、物価のプラス基調がより強く定着していくという合わせ技の判断が出てくると思う。その根底は、経済の持続的な拡大の中で需給が改善し、ユニット・レーバー・コスト(単位当り労働コスト)が物価を押し下げる方向に働く力が減衰していくというように、物価形成の基礎がしっかりしてくるということであり、そこが非常に重要な判断の土台である。消費者物価指数自体が、特殊要因、一時的要因で多少上下することはいつでもあるが、その一時的要因で上下するという物価指数の表層部分の動きをそれほど重視して考えなくても、基調がしっかりしてきたという判断があれば、それは私どもの「安定的にゼロ%以上」という判断に結びつきやすいと考えている。』

いやまあ強気ですなあ。

その他、物価安定目標に関する見解とか(金曜日に引用しましたが)のあたりもまあ読んでおくと吉かと。要するに最初に引用した所にあるように、福井総裁としては数値目標を出すのは相当抵抗あるようですな。そう考えるとまあ(ビハインド・ザ・カーブの反故もそうですが)福井総裁は今まで随分一生懸命に猫をかぶっていたんですなあと思ってしまうのでございました。

では。

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2006/02/14

お題「いきなり今度は連続利上げ織り込み???」

本日はバン・アレン帯のお誕生日ですか(元ネタ知ってる人は同世代)。


○またお前か!

昨日の債券相場では2年国債金利が一時0.4%をマーク。5年国債は1.045%をマークしまして、2003年の安値を切りました(2年はとっくの昔に切りまくっていますが)。その後株式市場がヘロヘロになった(新興の下げがきつい)ので相場全体は思いっきり戻ったのですが、2年は前日比2毛甘の0.385%の引けと大変に香ばしい状況になっております。

で、まあ昨日は衆議院予算委員会での福井総裁の答弁もあったのですが、それよりも話題になったのは水野審議委員が時事通信の雑誌(会員制)に寄稿した文章の内容が報道されたことでしょうかねえ。この雑誌は「金融財政」と言いますが、会員制なもんであたくしも現物は残念ながら見ておりませんで、仕方が無いのでブルームバーグニュース(13日15:20)の記事から。詳しくは時事通信まで。

まあ要するにまたまた毎度お馴染みの「水野ストラテジストの景気見立て」をご披露しているのですが、そういう景気見立ては公式の講演や政策決定会合で行っていただきたい訳ですわな。以下同記事より『』内は記事中の水野氏ペーパー引用部分です。


『ゼロ近傍に据え置きが適当と考えるほど景気の先行きに自信が持てなければ、そもそも(量的緩和は)解除されないはず』

まあ確かにそれは正論ですが、現在の地均し路線と全然違う話ですな。そこまでいうなら前回の決定会合で量的緩和解除と金利引き上げを提案したら如何でしょうか?今まで公表されている決定会合の議事要旨には「解除即利上げ」という意見がでているとは読めませんが?


『このところの株価上昇は潜在成長率の上振れを示唆している可能性がある』
『潜在成長率の上振れは、均衡水準の実質金利の上振れを意味するため、期待インフレ率上昇に伴う実質金利の低下と相まって、金融緩和効果を増幅していく』

おっちゃん頭が悪いから良く判りませんが、潜在成長率が上振れしたら需給ギャップの縮小が想定よりも進まないので物価が上り難くなるという面もある(http://hongokucho.exblog.jp/4075394)ような気がしましたが、まあ要するに期待成長率の上ぶれって事なんでしょうか。ってここは教えて君なんですが(汗)。


『ゼロ金利が長期にわたって続くという期待が過度に強まってしまうと、需要刺激効果が強まり過ぎて、景気の振幅が大きなものになり、それを受けた政策金利の変動も大幅なものになってしまう可能性がある』

えーーーーーーもうバブル警戒ですかそうですか。で、この文章が世の中に認知された週初は株価続急落なのがお前は北浜かと言いたくなりますが。それは兎も角として、バブル警戒って言ったって物凄く局地的な話(つーか新興市場はPERとか見るとやり過ぎ感ありありですが)だと思うんですが。まあそりゃ水野さんやお友達さまのような外資系金融のお方は景気回復を思いっきり享受しておいでかと存じますがねえ(とまた無用な悪態をついてしまった)。


『中央銀行は、低金利政策が長期化するとの「期待」が過度に強まらないように政策運営すべきである』

なら金利に関してごちゃごちゃお前らが言うなと。まず結論ありきでその結論に向けて市場への配慮(当座預金残高引下げもその趣旨で提案していると理解してますが)して地均しだのご指導だのをしている訳ですが、そーゆー事をやってるから市場参加者が日銀の方ばかりを見るようになるというのは昨日も同じ悪態つきましたな。

まあアレだ、日銀政策審議委員として発言するなら場所と内容を弁えて言えと思う訳でして、「またお前か!」という反応になりますわな。この人何だかんだと言って相場に変な燃料を投下するのがお好きのようで非常に困ったもんです。今までの議論の前提を無視した話をよくするし。「マーケット出身者はこういうもんだ」という評価になりますと次期「マーケット枠」は期待できませんなあ。



○しかしまあ2年0.4%って何よって感じですが

2年国債の最終は0.385%でして、1年TBの最終出合いはWI取引で0.15%となりました。ということで、このイールドを見ておりますと年内の遅い時期か来年に利上げがありそうな予想になりますが、どう見てもその後もう1回の利上げを織り込みに逝っております。おいおいどうなっているんでしょうか??

ということで、まあオーバーシュートの域に入っているのではないでしょうかという気は思いっきりしますが、勢いがついているというのと、そもそも2年国債のゾーンは需給的に最もダメダメな部分になっているというのがありますので、中々この割安(と自分では思ってますが)は解消されないかもしれません(と書くと解消されすのがドラめもんクオリティですが、爆)。

以前から何度も申し上げているので読者の皆様には耳タコかもしれませんが、減ったとは言え現在の2年国債の毎月1兆7千億という発行額は基本的に量的緩和状態を前提にしないと安定消化が厳しいんじゃネーノってお話。しかもこの2年国債ってのは大手銀行がかなりの部分保有している(その他の預金吸収機関も基本預貯金見合いで保有します)商品でして、大手銀行といえば昔も今もやたら売ったり買ったりするのがお好きな人。基本的に順張りで入ってくるので、下を叩き出すととんでもないところまで叩くのは2003年のVaRショックを持ち出すまでも無く毎度の行動です。

(最近は銀行の保有する国債が5年とか2年とかが主になった(あとは変動15年)為に、相場が動く時には「ポジションの踏み投げ」が発生する中短期の方がアホのようにぶれるという現象もあるわけですがその考察はまた別の機会に)

まあそんな訳でして、正直2年国債の発行はもっと減らして超長期とかに回した方が良いんじゃネーノと心の底から思うのですが、短期金利がぶれるようになるとヘッジが難しい(5年ならまだ債券先物が使えるが、ユーロ円金先はちょっと2年とは遠いです)この商品は短期金利の見通し次第でやたらめったらオーバーシュートするようになりかねませんわな。今のままの発行量だと。



○おまけの雑談:3月の解除はどうでしょう?

http://www.boj.or.jp/about/grand/grand0602a_f.htm
学生向けコンテスト「日銀グランプリ〜キャンパスからの提言2006〜」決勝の実施

だそうです。で、この決勝なんですが、こちらにあるように3月10日金曜日の午後丸々潰して絶賛実施されるようでございます。平日の午後じゃ見にいけませんなあと思ったらそもそもプレスと参加者関係以外の一般人は見にいけませんでした。

・・・・で、この前日まで金融政策決定会合を実施しておりまして、この日は5年国債の入札が予定されております。そんな日に副総裁に審議委員が堂々このようなのんびりとした会にご出席ということは3月の決定会合での解除は無いですかねえ??

ええもちろん暇ネタの冗談ですけど(笑)。


#あ、総裁記者会見が・・・・・

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2006/02/10

お題「2月金融経済月報/総裁記者会見をちょっと」

本題に入る前に昨日のエントリーの訂正を致します。と申しますのは、昨日「次回の展望レポートは4月上旬の決定会合で公表」と書きましたが、展望レポートが出るのは4月28日でございました(大恥)。ごみんなさいごみんなさい。ちなみに4月上旬の決定会合で公表されるのは4月分の金融経済月報でございました。ご指摘有難うございます。

よく考えるとこの日程の組み方は去年と殆ど同じですな。


○2月の月報は前月比穏当に

というか既にカンカンの強気になっているのですが。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0602.htm

前回の月報と毎度お馴染みの如く比較する訳ですが、よくよく見ると変っているのは生産の現状判断部分と、消費者物価指数の現状判断部分なのでありました。

・生産の現状判断

(2月)『輸出や生産は増加を続けており、』
(1月)『生産も増加の動きが明確になってきている。』

ということで、「増加の動き」だったのが「増加」ということで判断前進。


・消費者物価指数の現状判断

(2月)『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、若干のプラスで推移している。』
(1月)『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、若干のプラスに転じている。』

ええまあ確かに事実関係を書いているだけと言えばその通りなのですが、2ヶ月目のプラスでさっくりと「転じている」が「推移している」という言い方になっていることに関してはあたくし的には一応ブックマーク(^^)。まあ先月末に公表された物価統計で1月の東京都区部消費者物価指数(除く生鮮)がプラスになったんで自信満々ってことなんでしょうな。プラスに転じて2ヶ月目であっさり「プラス推移」というのは中々。

これだけ見ると、量的緩和政策のコミットメントのうち「コアCPIが安定的にゼロ以上」ってのが満たされていると取ろうと思えば取れない事も無いですなあ。言葉の上では、ですけれども(ちなみに記者会見ではさすがに『今日もなお安定的にゼロ%以上とは言えないという判断となった(ブルームバーグニュースより)』という発言を福井総裁がしておりますので念の為)。


○総裁記者会見

日銀発表の会見要旨は本日午後にでもアップされますので、とりあえずブルームバーグニュースのURLを置いときます。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=a9QUtHHxukFM&refer=jp_news_index

最近は諸般の事情(でも何でもなく単にそんなに情報ベンダー持っててもしょうがないでしょって理由ですが)により、同時に複数の情報ベンダーのニュースフラッシュを見ながら画面に向うなどというような器用なことをしておりませんので、人に聞いて回った結果なのですが、各情報ベンダーのフラッシュの打ち方を見ると「強気の記者会見」という印象を与えるものと、「配慮をした記者会見」という印象を与えるものと微妙に違っているようでございました。まあどっちとも取れるような会見だったんでしょうね。

で、ブルームバーグニュースの上記記事にあります一問一答から引用致しますが。

――前回の会見で、量的緩和の解除について「冷静かつ適切に判断していく重要な局面に入っている」と述べられた。解除を判断するにあたって、後は何が必要か。

「日銀の姿勢は極めてクリアだ。コアCPIの前年比が安定的にゼロ%になるまで(続ける)というのが、量的緩和導入時に公表した明確な約束だ。それにそって緩和政策を継続しているわけで、枠組みの変更にあたっては、まさにこの条件が満たされたかどうか、それは、経済・物価情勢全体を十分点検したうえで、この約束が満たされたどうか、ということをきちんと判断していく。予断を持たず、冷静に判断していく、ということに尽きる」

「何か後1つ、具体的なものが加われば、というようなことではない。CPIとか、いろいろな経済指標そのものは、いちいち重要な判断材料だが、背後にある経済全体の動きをきちんと点検することが一番大事なことだと思っている。毎回そうした観点から政策決定会合では議論を重ね、判断を続けてきているが、今日もなお安定的にゼロ%以上とは言えないという判断となった」

「今後はどうかと言うお尋ねなので、1月分以降の消費者物価指数は比較的はっきりとしたプラスになると見込んでいる。したがって、次回の会合以降のこうした経済全体を見据えた指数の判断ということは、より重要になっていると考えている」


――3月の決定会合で量的緩和の解除を判断する際、たとえば年度末が近くて金融調節が難しいとか、国会の会期中だとか、自民党の金融政策に関する小委員会の報告書がまだまとまっていないとか、解除の障害になり得るような要素はあるとお考えか。

「来月に限らず、あるいはそれ以降も、年末であるとか、いろいろ政治的なイベントであるとか、いろいろなことは常にあるわけで、そうしたことは毎回申し上げているが、金融政策は経済、物価情勢の流れの中で最も適切なタイミングを、遅からず早からずという意味で、適切なタイミングをつかんでいかなければならない。情勢判断を離れたイベント事項が金融政策のタイミングを決める非常に重要なウエートを占めることはない。これは明確にないと申し上げる」


まあ3月以降のあと3回ある決定会合のうちのどこかで解除になるんでしょうなあ。CPIがいきなりマイナスとかになっちゃったら話は別ですが。

いやまあ今のところ日銀の裸単騎突撃は順調に行っておるようでございますが、読者様からは「裸単騎よりもオープンリーチの方が感覚的に近い気がします」とお話が(^^)。確かにそうですなあ。そういや学生の時に5面チャンで8巡目リーチしたら実はフリテンで、ハイテイで発単騎の緑一色に振り込むという素晴らしいことをした事がございますが(意味の判らない人は周囲のロクデナシに聞いて下さい)、まあ色々と悪態はつきまくっておりますが、事ここまで到ったら「何とか日銀のシナリオ通りに経済が推移して下さいますように」と申し上げるしかございませんな、と言ってる側からハイテイで役満振込などと書くあたくしは性格が悪いですかそうですか。まあ最も遅くても5月の決定会合までに解除しないと流局の悪寒が致しますが。

今後のことを考えますと、まあ全局オープンリーチされても困りますんで、あまり決め打ち勝負しないで金融政策運営を行っていただきたいのと同時に、今回の決め打ち大作戦に関しても「結果が良かったからプロセスは無問題」ということにならんようにお願いしたいものです。まあ当然ながら中の人たちは皆様よく考えておられるものと信じています。

それから、本日は引用してませんが、上記の会見記事にも「解除後に関してはまだ白紙」というニュアンスの発言があったようですので、さすがに解除後の短期金利引き上げに関しては決め打ちを行わないものと期待(?)しておりますです。


インタゲ等に関しては相変わらず否定的でありまして、望ましい物価上昇率に関しても欧米よりも低いのではないかという発言もありまして、その辺ちとオーバーキルの不安もあるのですが・・・・・・

同じく記者会見記事より。

「多くの識者の方でさえ、簡単に海外ではインフレターゲットは2%くらいではないかとか、2%から3%くらいではないかとおっしゃる。これは私にとっては非常に不思議なことだ。日本の国民の物価観はどうですかということは、われわれは本当は正しく知りたい。そういうことを共有しなければ、正しいメッセージを作ることは難しい。概要を言ってみればそんなことだが、まだ具体案は持っていない」

「望ましい物価上昇率ということを簡単に言う人も多いが、そんなことがアプリオリに(先天的に)あるわけはないし、何かこう計算上すぐに出てくるものではないと思う。要するに、金融政策は人々に物価に関して、余計な心配をしていただかなくて、100%経済活動にいそしんでいただくためにやっている。そういう意味での経済的なウエルフェアー(福祉)を確保するために金融政策をやっている」

「人々が物価に対して心配される領域をもし仮に数字で表せば、ひょっとしたら日本の場合は過去の系譜から言って他の国よりは低いのではないかという感じを私自身は持っていると申し上げた」

だそうです。

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2006/02/08

本日のネタは2月1日に行われた経済財政諮問会議の議事要旨からでござる→http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2006/0201/shimon-s.pdf


○相変わらず成長率と長期金利の関係の話をしておりますが

議事要旨の10ページ目あたりから竹中議員が本件について話をしております。本来は全部引用しないといかんのでしょうが、今回の議事要旨は全体で17ページもありますので、あたくしが「本件はこの辺で議論になってるんだろうな」などと勝手に理解した所を引用しちゃいます。

竹中議員の成長率と長期金利のお話。

『では、まず長期的なファクトはどうかについて。私が経済財政政策担当大臣をしていた時のアメリカのCEA委員長で、今、ハーバード大学教授のマンキューという有名な経済学者がいる。マンキューがCEAに入る前に、「デフィシットギャンブル」という大変有名な論文を書いているが、その中でマンキューは過去120 年、過去70 年、過去50 年のアメリカの国債金利と名目成長率の関係を整理している。答えは簡単で、過去120 年の場合も、70 年の場合も、50 年の場合も、いずれも成長率が国債金利を上回っている。ミシュキンが、国際的な比較を行っているが、他の主要国についても、成長率の方が金利より高かったということを明らかにしている。』

で、そのあとより理論的な話をしてますが、そこまで引用すると長くなるので割愛。この竹中さんの指摘に対して吉川さんはこのように指摘しております。

『最後に、個別の問題になるが、長期的に名目成長率と名目金利がどのような関係になるのか。これについても竹中議員からお話があったので、私の考えを述べておきたい。まずは長期の平均をとってみる。竹中議員の御指摘のとおり、アメリカだと成長率の方が少し高くなる。しかしイギリスだと、逆に金利の方が高くなるという関係が出てくる。いずれにしても私が指摘したいことは、多くの国で長い時系列をとると、国債市場で規制がきつい時期があった。例えば、日本の場合だと、戦後かなり遅くまで規制市場であった。民間のシンジケート等が国債を保有して、国債をマーケットで売却するようなことを禁じていた時代もあった。要は、規制金利でそれが低くなっていた時期がかなりある。そうした時期を参考にするのは適当ではない。繰り返し話しているとおり、「官から民へ」ということは、マーケットを尊重することであり、まさか規制金利の時代に戻ろうということはないはずであって、そうなると、自由市場で決まる金利ということになり、データの扱い等に注意が必要だと考える。』

で、議論のあとの方で本間議員からの指摘がございまして。

『その上(引用者注:これは議事要旨の16ページになりますので、「その上」が何を指すのかはそちらをご参照と手抜き)で金利と成長率を分離して議論できるかどうか。この点は幾分私も吉川議員に賛成であり、これはやはり連動するだろう。全くそれを分離することが金融政策でできるのだろうか、あるいはその他の手段でできるのだろうか、この辺も整理していく必要性があるという気がする。これはシミュレーションの段階で、また相当詰めなければならないテーマだと思うが、論点だけ指摘させていただいた。』


で、竹中議員はこの要旨をみるとどうもたじたじの図に見えるのですが。

『手短にするが、我々は成長モデルを議論するためにここに集まっているのではない。これから10 年、20 年の財政健全化と経済成長をどうしようかという観点から議論している。したがって当然のことながら、国債残高が発散するかというときは、国債金利を我々は議論してきたわけで、これからも議論していかなければいけないと思う。』


昨日のブルームバーグニュースによりますと、27日に行われた財務省の財政制度審議会では長期金利が名目成長率を上回ることが自然との見方で一致したそうですな。まあ長期金利の見込みを高く置いたほうが緊縮財政路線をやるのに都合が良いというのもあるので色々と政治的というか思惑も入るのかなあという気がしないでもないですが、どうも竹中先生分が悪そうですなあ。


○竹中先生やや混乱しているような気も

その金利と成長率論議の中で竹中議員はこんな話も。

『長期の金利はマーケットで決まる。しかし同時に中央銀行は、それに対して影響力を与える。極端に言葉尻をとらえるつもりはないが、金利はマーケットで決まると言ってしまえば、これは中央銀行の存在意義が問われてしまう。ここに対して金融政策というのは、なにがしかの影響を与えることはできるわけだ。』

で、最後の方では(成長モデルを議論するために云々発言の続き)このように話をしているのですが・・・・

『それと、今日の私のペーパーは1つの考え方の整理として出しているから、当然、それによってどの程度の歳出の増加があるかとか、そのときにプライマリー・バランスがどう変わっているかということは、時系列の中でダイナミックに議論するのは当たり前の話。無理に資源配分を歪めるように名目金利を低くしろなどということは全く申し上げていない。私が申し上げているのは、名目成長率と名目金利がほぼ同じぐらいの自然の運営ができるはずであるということ。』

どうも中央銀行に長期金利のケツを持って行こうというように読めて仕方ないのはあたくしが竹中さんを嫌いだからですかそうですか(笑)。

まあこの論議は正直経済学の素養が無いあたくしには難しいのでどんな本を読んで勉強すりゃよいのか教えて。計算式の入って無い本を激しく希望するのですが(←あほです)。


どうもこの議事要旨を見ていると竹中先生激しく劣勢に見えるのですが、どこぞのレポートでは首相は竹中さんに軍配みたいな事を書いていたような気がしましたが、あたくしにはそう読めませんでした。


○ところで今更気が付いたのですが

経済財政諮問会議はわざわざドメインを別に取っていまして、あたくしも久しくhttp://www.keizai-shimon.go.jp/をブックマークしていて気が付かなかったのですが、今年に入って内閣府のWebページがリニューアルされていまして、内閣府のトップページにおける経済財政諮問会議の場所が随分と引っ込んでしまっております。トップページから直接行けなくなってまして、「内閣府の政策」の一番最初に「経済財政」ってのはありますが、そのリンク先にいくと諮問会議へのリンクがあるという状態でございます。

以前は内閣府のトップページに並んでいる中で一番最初に経済財政諮問会議があり、いきなり諮問会議のドメインに行けたのですが、まあ何と申しますか担当大臣が与謝野さんに変ってちょっと位置づけが変化してきてるのかなあ何て思っちゃったりするのは深読みのしすぎでしょうか(笑)。

#引用だらけの手抜きで恐縮。

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2006/02/06

○武藤副総裁記者会見

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0602a_f.htm

・道しるべ云々に関して

『講演でも申し上げたように、展望レポートの見通しに沿って先行きの経済が進展すると仮定すると、2006年度にかけて、金融政策の枠組み変更の可能性が次第に高まっていくと思われる。そういう状況の中で、どのような透明性向上のための対応をしていくか、そしていつそれを行っていくかということは、コミュニケーションポリシー、あるいはマーケットとの対話といった観点から大変重要であるという基本認識を持っている。これが、「道しるべ」という言葉を使って申し上げたかったことである。』

『具体的にどういう枠組みが、金融政策の透明性を向上させるのかということについては、中央銀行を取巻く環境によっても異なり、従って国によっても異なり、様々なバリエーションが存在していると思われる。そういう中で、よく言われるフォワード・ルッキング・ランゲージといった言葉・文章の方法が良いのか、なんらかの数値的なものがあり得るのかという点については、これからの検討課題であると申し上げたことは、今でも変っていない。特に、「道しるべ」という言葉の中身について、現時点で予断を持っているということではない。』

ということで、「道しるべ」に関しては武藤副総裁はイメージをもっているのかも知れませんけども、何をどうするという話に関しては明言を避ける格好でございますな。で、引用し続けると長くなるのでインタゲに関してですが、『私は、現時点で申し上げれば、インフレーション・ターゲティングについては検討すべき多くの課題があるのではないかと思っている。』だそうです。


・先行きの政策に関して

『(問)先ほどの透明性の向上について、フォワード・ルッキング・ランゲージという言葉があったが、透明性を向上させるために、その時点時点の日銀の考え方を説明するだけでなく、将来の金融政策の予測可能性を高めるという観点で、検討する必要があるという考えを持っているのか。(他もう一つ質問がありましたが)』

『(答)フォワード・ルッキング・ランゲージと申し上げたことに対するご質問の趣旨は、その時々の状況ではなく、将来の政策の方向性を具体的に示すかどうかということを尋ねられているものと理解した。将来の政策の方向性について、どこまで言えるか、何が言えるか、ということを含めて、検討されることだろうと思う。FRB(米連邦準備制度理事会)がこれまで行ってきたことをイメージされながらのお尋ねかもしれないが、それを排除するつもりもないものの、それとは違うものもあるかもしれないので、予断を持っていないと申し上げた次第である。何らかの透明性向上のための配慮は必要だということを基本に、どうしたら良いか考えていくが、中身については今後の検討課題と申し上げさせて頂きたいと思う。』

まあいずれにせよ、金融政策の予測可能性を高めるために何らかのアナウンスメントを政策決定会合で行うというお話なんでしょう。それが何か「地均し」になられても困るのですけれども。

何か時事メイン報じるところによりますと、日銀の金融市場局長様が量的緩和解除に向けて各金融機関は準備しましょうねってコメントをしているとか聞きましたが、そういう「予測可能性」はどうでもいいんで、つーか一々手取り足取りやってたらいつまで経っても金融機関の経営の中の人たちが経済状況じゃなくてお上の方を向いたままになっちゃうんで、本当にそれが長い目で見て金融機関のためになっているのか考えた方がよいのではないかと存じますが。ってまたいつもの話になってしまった(汗)。


・量的緩和解除後の金利に関して

『講演で申し上げたのは、新しいことを申し上げたつもりはなく、この考え方は、基本的に展望レポートで既に述べられていると思っている。お尋ねの1月の中間評価において、上振れて推移するという評価の部分との関係ということであれば、確かに経済全体についてはそういう評価もしているが、消費者物価については大体展望レポートに沿った展開であると評価している。この点、特に上振れたとは私どもは考えていない。そういうことを前提として、量的緩和政策解除後、ゼロ金利がどのくらい続くのか、あるいはどのくらいの時点で、経済物価情勢に見合ったということで金利が引き上げられていくのかということについては、今の展望レポートの中間評価の段階で、そのお尋ねに答えるだけのデータは揃っていないと言うべきだと思う。ここにあるように、「まさに経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存する」というのは、これから毎月出る経済・物価のデータ、金融情勢に依存するのであって、今暫くこの状況を観察するということである。そこから先のことは、「経済がバランスのとれた…」以下の一文に全て集約されていると自分は思っている。』

えーっと長くなりましたが一つの質問に対する答をまるまる引用しちゃいました。

要するに、(1)量的緩和解除と同時の政策金利引き上げ(0.25%とか)は現状段階では無い、(2)将来の金利政策に関しては全くの白紙。ということでしょう。CPIに関して「特に上振れたとは私どもは考えていない」という事ですので、まあもともとの見通しが強気っちゃあ強気ですけど、現状では引き締め方向に傾斜しているという訳でも無さそうな感じ。まあ結局将来に関してはあくまでもその時次第ちゅうことですわな。量的緩和解除だけは既成路線のようですが(笑)。

とまあそういうことで。物価や景気に強気じゃないのなら判りますが、何かちょっと債券市場はゼロ金利の長期化見通しに傾斜気味なんじゃねえのかという気がややするのではございますが(って先週後半は金利上昇しましたけど)。

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2006/02/03

お題「武藤副総裁講演」

えーっと、株を大量取得した人が経営陣(と従業員)に「MBOを提案」すると言うと横文字使っているから格好良さそうに聞こえるんですけど、それは「買占め屋が会社に株の肩代わりを要求している」というのとどこがどう違うのかと小一時間問い詰めたいですなあ。

などという悪態は兎も角本題ですが。

10年国債入札の日に講演とは困ったもんですが、武藤副総裁だけに物凄い勢いで手堅く纏まった講演テキストです。しかしあのテキストを読んで「低金利長期化」に決め打ちするのはどうなんでしょ?とまず結論を先に申し上げて。

武藤副総裁講演テキスト
http://www.boj.or.jp/press/05/ko0602a.htm
その後の記者会見関連ニュース(ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aMU2SxYqgJ5g&refer=jp_news_index


○受け取られるニュアンスが「ハト派」に聞こえたのでしょうか

講演テキストを読んだ限りではどう見ても「決め打ち禁物」にしか思えないのですが、日経クイックでは講演に関して「当座預金残高引下げは情勢を見ながら」というフラッシュを打ってましたし、上記ブルームバーグの記事のお題が「量的緩和解除まだ判断するのは早い」となっています。その場で講演や記者会見を聴いた人が受け取るニュアンスが「ハト派」に見えたということなのかなあとは思うんですが、雰囲気わからず字面を見ていると、そんなにハト派発言をしているようにも思えず。

と申しますのは、昨年6月23日に「武藤副総裁ハト派の旗幟鮮明に!」と思わせる講演を行って(昨年6月24日と27日のドラめもんでネタにしましたのでご参照を)たのですが、9月2日のブルームバーグニュースとのインタビューでは「何かこの前と勝手が違うんですけど」ってお話になって(こちらは昨年9月5日のドラめもんでネタにしてます)ましたな。この時には武藤さん『わたしとしては、6月の会見でそれほど難しいことを言ったつもりはない。あの時申し上げたかったのは、4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)の見通しだけに基づいて量的緩和政策解除の時期を予断するのは適当ではない、ということだ。現実の政策判断は、今後の経済、物価情勢を十分見極めたうえで判断していくものだということを申しあげたかった』ってお話をしております。

まああの時は金融政策論議は無茶苦茶(というか今も論理は破綻してますが)だわ、何か複数の審議委員が超前のめりになっていた(ので相場の方疑心暗鬼になっていた)ので、それを抑えるというニュアンスもあったんでしょうかねえとは思いますが、結構武藤さんもタヌキはタヌキだなあとこの時に思った訳でして。まあ市場との対話って言ったってメディアとの対話もうまくなきゃあいかん訳でして、そーゆー意味では武藤さん上手いのかなあとも思いました。



○先行きの金融政策に関して−良く見りゃとにかく「フリーハンド」ですな

こちらの講演ですが、内容はかなり網羅的で、しかも日銀が何をどう考えているのかというのを丁寧に説明しておりまして、まあ勝手な想像をすると日銀の企画部門の人たちによる渾身の作品ではないかと思うのですが(ってちなみにそれは別に武藤副総裁がオリジナルの意見で言わないと文句を言っている訳ではないので念の為)、色々と読むポイントがございます。何かちとそれは日銀さま何となく我田引水チックじゃネーノか(貸出約定平均金利の低下を金融政策効果と絡めてるようにも感じられるところとかね)つーのもありますけど。まあとりあえず今朝は一番市場が気にする「先行きの金融政策」に関る部分に関して。

講演後半の「日本銀行の金融政策運営」という部分に関して。

『枠組みの変更に当たっては、金融調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更するとともに、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減していくこととなります。各金融機関は、量的緩和政策のもとで、長期間にわたって多額の当座預金残高を前提として資金繰りを行ってきています。短期金融市場の機能はいずれ回復するとしても、枠組み変更後しばらくの間は、金融市場における円滑な資金の運用・調達という点から注意が必要になると考えられます。それだけに、当座預金残高の削減にあたっては、金融市場の状況を十分に点検しながら行う必要があると考えています。』

で、この部分に関してクイックがフラッシュを打っていたのは先ほど申し上げた通り。別にややこしい事を言っている訳ではなくて、字面だけみているとごく普通の話をしているに過ぎません。過大評価するのは禁物。

『ここまでは、所要準備を上回る当座預金が存在することになりますので、ごく短い金利は、多少の振れはあるにせよ、基本的にゼロ%となります。量的緩和の効果は、現在、短期金利がゼロ%であることが中心となってきていますので、枠組みを変更すること自体、政策効果の面では大きな変化がないと考えています。』

これは最近お得意の理論。それに関するツッコミをするのは疲れたので略。

『むしろ、物価が上昇していく中で、実質金利はさらに低下することになります。つまり、こうしたプロセスの間、短期金利がゼロ%であることを考えると、景気・物価に対する刺激効果は一段と強まっていくことになると考えられます。』

ということで、ここも最近の公式見解でございます。

『その後、極めて低い金利水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序を辿ることになりますが、この過程における金利水準や時間的経路は、まさに経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存します。』

ということでして、まあ先行きの金利に関しては経済物価情勢次第ですわなあという感じでして、特に決めうちをしていないです。ただ、今回の講演でも同様に述べていますが、物価が上がりにくいというのであればそんなにガンガン利上げをする事はないのでしょうなあということですかな。

『この点、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって、物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、引き続き極めて緩和的な金融環境を維持していけると思っています。』

ただまあ「低金利の刺激効果が一段と強まっていく」というのが正しいのであれば、物価の上昇圧力が抑制された状況と両立したままって訳にいくのかなあという疑問は個人的にはあるんですが。


○その他としては・・・・

箇条書きで。

・物価動向に関しては強気、雇用環境の改善(本当なのかという話は置いて)に伴うマインド好転に触れ、また大都市圏の一部の地価に関して「経済の先行きに関する人々の見方が好転しつつあることを示唆するものとして注目」と指摘

・日経新聞インタビューで言及のあった政策運営の「道しるべ」に関しては特に言及なく、インタゲなどの導入に関しては否定も肯定もせず

・記者会見では「金融政策が目指すべき物価上昇率が何%かというのが重要なファクターになるが、そういうことがなかなか明確に決めがたい」「わたし自身は現時点で申し上げれば、インフレターゲッティングについては検討すべき多くの課題があるのではないか」(ブルームバーグニュースより)と発言しており、まあ消極的なニュアンス

・ブルームバーグニュースのニュースのお題にある「まだ早い」はよくよく記事を見ると「確かに昨年10月にゼロ%、11、12月にプラス0.1%の上昇となったが、これをもって条件が満たされたかと言うことであれば、今申し上げたようなデータなので、まだわたしは判断をするのは早いと思う。引き続き状況の推移を見ていく必要があると考えている」という発言であり、今すぐに解除する状態では無いと言っているに過ぎないので、ちとアレですな。

といった所で。まだまだありそうですが。。。。

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2006/02/02

○まあ一応FOMCステートメント

一日遅れですので既に皆様ご存知かと思いますが、あたくしの備忘録代わりに。

金融政策をどうしますかってくだりのコア部分。

(1月)『The Committee judges that some further policy firming may be needed to keep the risks to the attainment of both sustainable economic growth and price stability roughly in balance. 』

(12月)『The Committee judges that some further measured policy firming is likely to be needed to keep the risks to the attainment of both sustainable economic growth and price stability roughly in balance. 』

measuredを外して、likely to be neededをmay be neededに入れ替えたという英語の試験のような変化ですが、まあ要するにこれって次期議長にあまり手かせ足かせを嵌めないようにしようってことでしょうな。

景気の見方に関する部分。

(1月)『Although recent economic data have been uneven, the expansion in economic activity appears solid. Core inflation has stayed relatively low in recent months and longer-term inflation expectations remain contained. Nevertheless, possible increases in resource utilization as well as elevated energy prices have the potential to add to inflation pressures.』

で、実を言うと最初の1文以外は12月と同じですので、12月分は最初のところだけ。

(12月)『Despite elevated energy prices and hurricane-related disruptions, the expansion in economic activity appears solid.』

経済指標がunevenですかそうですか。ということで、景気に関する見方に関しても決め打ちを避けた格好になっています。こちらも景気への見方がどうのこうのと解釈するよりはバーナンキ氏にフリーハンドを渡したと見るのが自然な解釈のような気がする。

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2006/02/01

お題「量的緩和解除雑考」

という話を書こうと思っていたら本石町日記さんが昨日の夕方に詳しいエントリーを投入していた事に寝坊した朝に気が付き、只今物凄い勢いで焦っているあたくし(汗)。

まあ量的緩和解除してゼロ金利継続する位なら別に緩和解除せんでもええんじゃねえのとは今でも思うのでありますが。(市場が本命視する)4月に解除してもゼロ金利を年内引っ張る位なら、あまり根拠のない物凄いドタ勘話で恐縮ですが、量的緩和を夏辺りまで引っ張れば解除即利上げができるような気がしますし、物価動向が予想に反した場合はそのまま引っ張ればいいんだから無問題。


ま、今となっては引き返せないんでしょうが・・・・


○本石町日記さんのご指摘に関連して

だいたいドラめもんをご覧になる方は本石町日記さんもご覧かとは存じますが、最新のエントリー→http://hongokucho.exblog.jp/4098219

いやもう大変に良く纏まっています。何か補足することがあるかなあと思って考えますと、この中にある「資金放出側のクレジットライン問題」というのと「日中の資金偏在」は結構ややこしいかもしれませんな。クレジットライン問題に関しては、数年前までの信用問題で大騒ぎモードの影響によって資金放出側で格付けでガチガチに縛っていたりするのがそのままになっているというケースが多いのではないかと思料。

まああとは別の問題になりますが、主戦場を最近短期にシフトしておりますあたくしが7年ぶりとかに真面目にヲチしてますとですな、何というかお前ら横並び丸出しでやってねえかと思う次第。大手銀行が集約されてみずほ2行とあと2行体制になっちゃったというのが影響してるのか、若い衆しかいなくなって相場になって無い時代しか知らないせいか判らんが。金融機関経営という点で言えばメガ化も仕方ないのでしょうけれども、市場って観点だと、参加者の集約化はあんまり宜しくはございませんなあと思うのでありました。

本件、興味深いネタですのでまたいずれ別の機会に。



○2年国債入札を見ると「2年間で利上げ1回」」か

昨日の2年国債入札。前場から2年国債だけじゃなくてスワップの払いだとか中期ゾーンの売りだとか何か今更「おいおい」って感じの状態だったようでして、前場の終了時点では2年新発債の入札前取引の気配は0.32%−0.325%。ところが入札結果はと申しますと、最低落札価格が99.965円と、0.317%相当でして、何のこっちゃという感じでございました。市場推定では大和証券SMBCが5000億近くの大量落札のようで。

で、まあこの入札を真面目に評価すると、やっぱり「年内の政策金利引き上げ」はまだまだ市場コンセンサスになってないんですねえというのと、「2年間で利上げ1回、2回あっても2回目は2年後にかなり近い段階」という読みになっているんでしょうなあという所ですな。理由は昨日書きましたので(ってあのざっくりした分析でよいのかという議論は華麗にスルーしておいてください^^)割愛。

もうちょっと不真面目に分析しますとですな、先週末に掛けて2年が急に売られているわけで、昨日も申し上げましたが、0.23%とかやっておいて0.3%まで売りこむとはよーやりますなって感じですが、実弾売りも出ていたそうですし、まあどこかの投資家様が頑張って売って今回の入札で拾いなおしということでございましょうか。まるでディーラーですなご苦労な事ですなあという所で。

ま、もしあたくしの想像が正しくてでかいポジションを利用して「ポートディール」みたいな事をやってるんだったら、個人的感想としては「それやってるといつの日か相場からしっぺ返し食らうから程々にしといたら」と思いますけどねえ。



○本命は4月28日らしいのですが

量的緩和解除の本命として市場が考えているのは4月28日の決定会合らしいです。(ちなみに決定会合の日程はこちら→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/s051216.htm)で、このコンセンサスにあたくしは「???」なのですが。

と申しますのは、4月28日だと月末な上にその後がゴールデンウィークになる訳で、解除やった翌日が実質月末なのにその週が2日しか営業無いという事で銀行の現場的にはかなりてんてこまいな時ですし、為替決済や手形交換も物凄い勢いで件数のある日がぶつかりますわな。

その点で申し上げますと、4月10日、11日であれば、その当日以降の決済がそんなに忙しくない時期にぶつかりますんで、実務的な問題を考える(というのが邪道と言えば邪道ですが、爆)と、4月にやるなら11日じゃネーノと思うんですがどうでしょう???ちなみにあたしゃー3月にやっても全然おかしくはないとは思いますが。今月末に発表になる全国CPIはコアで+0.4%とかが予想されてますが、その数字だったら今までの日銀の話の進め方だと解除あっても不思議ではない。

ここまで量的緩和解除で盛り上げて(?)おいて4月末までやらないとなると、日銀はまたマッチポンプかと悪態をつかれる事必定でございますので(本当か??)、5月というのはやや考えにくいですが、まあそこまでなら引っ張れるかなあ。



○確かにこれは新手のネタですな

田中秀臣先生のブログ「Economics Lovers Live」で気が付いたのですが・・・・

http://reflation.bblog.jp/entry/269773/【新手のネタか】須田氏再任

結局竹内氏の審議委員就任話は毎日新聞飛ばしちゃいましたなあということだったようなのですが、エントリーで記事中の再任理由を引用して田中先生が『一時の微苦笑をあなたに。』と。あたくしは微苦笑どころか飲んでいた紅茶で霧吹きをやらかしそうになりましたが、危うく踏みとどまり鼻に・・・・(^^)

いやあのこれまでの議論を骨抜きにしているのでは・・・・

ということで、これはきっとニュースソースに話をした政府筋の人が皮肉を言っているんですよ。と思ったのですが、よく見るとソースが毎日新聞か・・・・・orz

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2006/01/30

○CPI雑感

全国CPIは市場予想通りで「何だつまらん」と思っていたのですが、同時に「1月東京都区部CPIがプラス」という久しぶりに見た(98年8月以来だそうで)数字でさすがにサプライズとなりまして、金曜の債券市場はさっくり下落しました。ただまあ例によって例の如くで押し目買い軍団登場で節目で一旦反発した形になったようですが。

まあさすがにこれで4月(ひょっとしたら3月かも知れないけど)の量的緩和政策の解除に関しては織り込んだと思うのですが、問題はその後の短期金利がどうなるかって話。まだ意見は色々あるとは思いますが、少なくとも今年一杯はゼロ金利じゃねーのかというのがコンセンサスっぽいと思われます。よって前倒しになるという観測が広がる方が恐らくインパクトが出るんでしょうな。

それは兎も角として、思わず笑ってしまったのは竹中様の強力な肝いりにより(かどーか知らんが)前回発表からご参考として公表された「食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合」という指標。もうついこの前は「この数字は絶賛マイナス継続中だぞ」と言ってた数値があっさりプラスに転換しておりまして、折角企画したのに残念でしたねえあっはっはという所でしょうか。量的緩和政策の早期解除に関する是非問題はその辺に置いといて(たまたまシナリオ通りに行ってるから良いようなものの・・・とは今でも思うあたくし)笑っちゃいました。時系列データはこちら(エクセルです)→http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/zuhyou/0581h8.xls


○また地均しか!

CPIに先立って金曜の朝に出てた新聞記事。毎日新聞曰く、
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/seisaku/news/20060127ddm008020107000c.html (多分過去ログはリンク切れだと思うのでリンクしません)

『日銀は26日、量的緩和政策の解除に備え、大手行などに対し、短期金融市場での資金取引体制の整備を促す方針を明らかにした。』

リリースはどこにも見当たりませんがどこで明らかにしたんでしょう(って実はありましたというのであればあたくしの不明でございます)かよく判りませんなあという所ですが、毎度申し上げているようにこのような話は各金融機関の経営判断の世界であって日銀が一々手取り足取り指導するものでは無いと思います。いやまあ何も言わないと金融機関がその時になって初めて混乱して大騒ぎになるという話も判らんではない(と言うか大いに判る^^)のですが、これってニワトリが先か卵が先かって話になるんですが、日銀などが一々懇切丁寧(?)に手取り足取りあれこれ「ご指導」するから金融機関がそれに甘えているという面もありまして、正直どっちもどっちだと思います。

まあ言える事としては、お前ら結局横並び意識が全然抜けてねえだろうってところですかねえ(苦笑)。

しかしまあこれって意地悪く捉えますと、日銀自らが「これから量的緩和政策を解除するからお前ら準備しやがれコノヤロー」と言ってるのを、一部の市場参加者にだけリークしている(物凄く意地悪な言い方ですけどね)とも取れる訳でして、何だかなあって感じ。まああれだ、地均しも甘やかしもはいい加減止めた方が良いんじゃないのって思うんですけど。15年変動利付国債ではミソつけたんだしさあ。


○もう一丁毎日の日銀関連記事

金曜は日銀関連記事がもう一発毎日から出ているのですが・・・・

http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060127k0000e010083000c.html (多分過去ログはリンク切れだと思うのでリンクしません)

『政府は27日、日銀政策委員会の審議委員に、世界銀行エコノミストの竹内佐和子氏(53)を起用する方針を固めた。』

で、ご高名は存じておりますが、はてどんなお方でしょうかと調べてみようかと思ったら早速bewaadさんが記事を書いていましたので、さっくりと人のふんどしをご利用させていただきたく存じます(またか!というツッコミがきそうですが)。

http://bewaad.com/20060128.html

どうもまだ確定ではなくて、須田審議委員再任の方向もあるようですが(エントリーのコメント欄をご参照下さい)、エントリーの中でbewaadさんが『審議委員に「金融政策」を専門に研究している人間が誰もいないってのは勘弁して欲しいもので。そればっかりじゃまずいでしょうけれど、何も執行部の人間だけにすることはないでしょうに。』と指摘していますがあたくしも同感でございます。(追記:実は本件は毎日新聞の飛ばし記事だったようです。須田審議委員再任になりました)

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2006/01/27

お題「議事要旨の補足を少々」

きゃあ寒さで寝坊!で昨日の補足で勘弁ですが、その前に雑感。

ふと気が付けばやっと月末ですが、月末と言えば物価統計。本日はCPIが発表されますが、コアCPIの市場予想は横ばいの+0.1%ですので、今回に関してはどっちにぶれてもインパクトがあるのではないかと勝手に想像中。米国の株式相場は何をテーマに動いてるのか良く判らん動きで、値幅以上に「何か荒いですね」ってのが個人的印象です。

まあ日本株もさっくり戻った上に、ソニーの決算が珍しく良い方でぶれたようですので平均株価で16000円奪還ですかそうですか。これじゃ調整にも何にもなってませんな。昨日とかだと証券決算が良いから証券株が大幅上昇(いきなりストップ買い気配になってたのもありましたが)してたとかいうのを見ると、早速またまた調子に乗ってるんじゃないの(証券決算が良いなんちゅうのはこの市況なら当たり前でしょうが)って気もせんでもないっす。


○実質金利の低下に関する議論

今回発表されたのは12月15、16日の議事要旨ですが、「III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」の中で実質金利がどうのこうのって議論がこのように書かれています。

『何人かの委員は、経済・物価を巡る環境が好転する中で、実質金利が低下し、株高、為替円安が進行するなど、金融環境の緩和度合いは実態的に強まっているとの認識を示した。』

これが11月17、18日の決定会合議事要旨ではこのように書かれております。

『何人かの委員は、物価見通しの改善により実質金利が低下していることが、株高や円安の進行をもたらしている面があり、金融の緩和度合いは足もとで一段と高まっている可能性があると指摘した。』

そりゃまあCPIがプラス転換してるから当たり前って言われてしまえばそれまでかもしれませんけど、このようなロジックで「実態的な緩和度合いが高まっている」と政策委員会で認識がされてきているという事に関して債券市場も短期金融市場もちと楽観視してるんじゃネーノという気は致します。まあ「世界的に生産能力が上っているから物価が上がりにくい」ってロジックが最近の流行でもありますので、そうは言っても物価は上がりにくいから金利は上がりませんよっていう理屈もあるのですが、何だかんだと悪態つかれながらも日銀はここまで意思を通し続けている(良いか悪いかの問題は別にして)という印象は強いので、その辺をあまり軽く考えるのはどうなんでしょうというあたくし。

ちなみに、実質金利云々という話に関しては11月の決定会合議事要旨にまとまった形で出てきた筈ですので念の為。


○各種の物価指標の扱いについての議論

議事要旨を見るとこの話も結構スペースが割かれていますが、CPIの何を使うかという話が妙に盛り上がったのでしょうか。

『消費者物価の動向を判断する上で、総合指標を見るべきか、一時的な要因を除いたコアベースの指標を見るべきかについて、ある委員は、一時的な変動要因を除くことで基調が見やすくなる一方、その結果として、消費者物価全体に占めるウェイトがあまりに小さくなると、全体の動きが見えなくなるという問題もあると指摘した。また、多くの委員は、一時的な変動を除くという観点からは、エネルギー価格を除外するか否かも論点となり得るが、このところのエネルギー価格の上昇はエマージング諸国の需要増に起因するところが大きく、必ずしも一時的な要因とは言えないため、これを除外して見ることは適当ではないとの見方を示した。』

そんな中にさらっとGDPデフレーターの話が一言入ってます。

『一人の委員は、GDPデフレーターを点検する場合には、GDP統計の改訂の際に、同デフレーターは何度もかつ大幅に改訂される可能性があることも十分踏まえる必要があると指摘した。』

まあ実際にどういう議論が行われていたのかは知る由もありませんが、この議事要旨の書き方を見ておりますと、金融政策運営の関係で見る物価指標はCPIであって、内閣府方面から毎度毎度出てくるGDPデフレーターについては勿論見ない訳じゃないでしょうが、指標あるいは物差しとしての優先順位は低いですが何か?って事なんでしょうなあと思わせてくれる書き方だなあと読みました。


○そういやうっかりしてましたが

どうでもいいのですが、前回の決定会合から「当預引下げ提案コンビ」の議案が揃ったんですね。今回読んで前回分を見直していたら気が付くとは不覚でした(笑)。

しかし何ですな、この「VI.採決 」のところも『以上の議論を踏まえ』って踏まえたら引き締めそうな勢いなんですがとか、水野委員の当預下げ議案提案理由の『金利を通じた市場との対話』ってのは(言いたい趣旨はわかりますけど)、それは量的緩和政策の今までの政策ロジックとまるっきり整合性取れてないんじゃねえのかとか突っ込みたくなりますが(笑)、寝坊したので以下省略。

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2006/01/26

まずは議事要旨。色々とあるのですが、ざっと見て目立ったのは3点。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g051216_f.htm

○物価見通しに関する部分ですが

「III.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要」の部分です。

『中長期的な物価の動向に関して、複数の委員は、短期的な振れはあるにせよ、物価の基調としては、(1)需給バランスが改善していること、(2)賃金が上昇方向にあること、(3)人々の物価見通しも改善していることを踏まえると、上昇を続けるとみられると述べた。』

まあこれが一応の大勢見解のようですが、次の「ある委員」は中原さんか岩田副総裁かどっちなんでしょう?

『ある委員は、潜在成長率が足もと高まっているとすれば、予想したほどには需給ギャップが縮小していかない可能性もあるのではないかとコメントした。』

えーっと、この部分しれっと流されていますが、パンドラの箱を開けるようなお話でもございまして、潜在成長率を上回る経済成長により需給ギャップ改善って話で一家団欒している所でちゃぶ台ひっくり返す類のもの。で、詳しくは本石町日記さんがエントリーを上げてますのでそちらをどうぞ(人のふんどしで手抜き)。
http://hongokucho.exblog.jp/4075394


○バブル警戒問題

同じく金融経済情勢に関する検討部分から。

『金融・資本市場の動向について、多くの委員は、最近の株式市場や為替市場の動向には、わが国経済が改善する中で、わが国投資家のリスクテイク能力・リスク選好の高まりや、内外金利差を巡る思惑が影響しているとの見方を示した。このうち一人の委員は、わが国の超低金利が長期化するとの予想が過度に強まれば、為替市場等における価格形成が不安定になる可能性も否定できないと指摘した。また、別の委員は、株式市場において投資家のリスクに対する認識がやや楽観的になっているのではないかと指摘した。』

低金利継続の弊害のお話をしている人が最低でも2名いる訳ですが・・・・

『この間、複数の委員は、最近の株価の上昇は、企業収益の上方修正などを受けたものであり、資産バブルというような状況ではないとの見方を示した。別のある委員は、そうした見方に同意しつつも、一般物価が安定していても、景気が力強さを増す中で、超緩和的な金融環境が継続すれば、資産価格の大幅な上昇を招きやすくなり、そのような状況になれば、リスク、リターンのバランスを欠いた投資が増加し、経済の過熱とその後の反動が生じる可能性があることには留意する必要があると述べた。』

と、こう並べられるとざっくり字面をおってますと何となく資産バブル警戒のように見える並び順ですが(^^)、資産バブルというような状況ではないという人が複数委員というあたりも拝見すると、今のところそこまで気にはしてないでしょうし、さすがに資産バブル潰しに金融政策を使うってのは現状の物価上昇率ゼロ近傍段階でやらかす事はないと思いますが。資産価格の上昇が物価に悪影響与えそうだって話になれば別でしょうけれども、一般物価の状況が全然そうなってませんわな。

ということで、あたくしは、このくだりに関しては「日銀のバブル警戒というのはちょっと読みすぎ(=まだ警戒してないでしょ)」と見立てをしておきます。



○インタゲ等に関わる議論

「IV.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要 」の半分くらいのスペースを使っているのが『さらに、金融政策運営との関係で各種の物価指標をどう扱うかについて、意見が出された。』って事でインタゲ等に関わる議論。

色々な話が書いてあってまあ意見が錯綜したんでしょうなあと思われるところです。是非このくだりはご一読ありたいです・・・・・で、終わらせると意味無いのでそのまた後半部分が一応まとめらしくなっています。多分岩田副総裁の見解と見られる所から話が始まります。

『この間、一人の委員は、経済・物価の先行き見通しにアンカーを提供し、市場における安定的な期待形成に資する観点から、日本銀行が望ましい物価上昇率を示すことを検討すべきとの見解を示した。』

で、これに対する反論がわんさか登場。

『これに対して、ある委員は、インフレーション・ターゲティングとは中長期的に物価目標値の実現を目指すものであるが、こうした点が十分理解されないまま導入されれば、金融政策の機動性を犠牲にする面があるほか、目標を高いところに設定すれば、期待インフレ率やリスク・プレミアムの上昇を通じて、長期金利が上昇する可能性もあると指摘した。』

それの理屈だと「ちゃんと説明して理解されるのであれば導入しても良い」という事になるような気がする諸刃の剣(^^)。

『また、別の一人の委員は、インフレーション・ターゲティングと言っても、諸外国で実施されている内容にはかなり幅があり、金融政策の透明性向上のための枠組みについては、わが国の実情に合わせて考えていく必要があると指摘した。』

・・・・・うーむ。。。。

『さらに、複数の委員は、わが国経済は、物価安定のもとでの持続的な成長に至る途上にあり、経済・物価の形成メカニズムが変化しているため、現段階で中長期的に望ましい物価上昇率を見極め、公表することは難しいとの見解を示した。』

いやあの経済や物価形成のメカニズムって常に変化してると思うんですが、それは要するに絶対やんねーよーと言うことでございましょうか?他にはどんな議論があったのかは10年経たないと判らないのは残念無念。

現状では量的緩和政策解除の後でもインタゲ等の導入の実現性は低そうですなあ。


○政策の非連続的変化という話に関して

3点と言ってた割には4点目が出てくるのは気にしないように(笑)。

この話の前に毎度お馴染み情報発信論議がございまして、どうも個人的に引っ掛かるのはこの部分でございます。

『これに関連し、一人の委員は、金融市場関係者に加え、企業関係者や国民においても、量的緩和政策の解除が経済に非連続的な変化をもたらすものではないという点について理解が十分に浸透するように、丁寧な説明を続けていく必要があると述べた。』

この「非連続的変化をもたらさない」ってのは量的緩和解除の話をする時に政策委員の皆様が揃ってこの話をするのですが、金融政策の変更ということに関してこの「非連続的な変化をもたらさない」ってのをあまり意識しすぎるのはどうなのかなあって思いますのでこの際一言。

まあ確かにマーケットが先行きの経済状況を正確に反映して価格形成されているって事であれば、適切な将来の金融政策を全部織り込みに行くから「市場容認型」みたいな金融政策の変更によって「経済に非連続的変化をもたらさない」という結果になると思いますが、市場なんてえのは基本的には年がら年中間違えているものだというのがあたくしの経験的感覚(なので科学的根拠はございません。悪しからずご了承下さい^^)でございまして、その市場を意識して「非連続的な変化を与えないようにしよう」と考えると「地均し」の発想が出て来るのではないかと推測するのはあたくしだけでしょうか?

政策運営で無用のショックを与えないようにするという事は誠に結構ではございますが、その配慮もやりすぎると「地均しやって予定が狂ったらどうするのよ」って落とし穴が待っているように思えます。過度にその点を意識しない方が良いのではないでしょうか??

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2006/01/25

○変動15年国債・・・・・

特に銀行業態の皆様が金利上昇ヘッジ商品の振れ込みでひところ全力買いしたものの、金利上昇前にこっちが先にいかれてしまった悲惨な商品変動15年国債の入札が昨日実施されました。

入札前の前場引け時点で99円60銭のビットだったのですが、平均落札価格は99円59銭。最低落札価格は99円40銭ということで、まあ今回もテールは流れるわ、前場引けのビットサイドの向こう側が平均落札になるわと大変に香ばしい結果になってしまいました。

さすがに押し目買いらしき動きもあったらしいのですが、引けに掛けてまたまた既発債に売り物もあったようで(発行αの小さい銘柄を入れてでかい銘柄を外して損切りしつつ利回りの改善へって事のようで)して、どうにもヘロヘロな状況は継続のようです。

いやまあ入札に関しても(市場推定ベースで)野村證券が3000億ほど落札してくれたから(あと多かったのは「不明分」でしたが)この辺で止まったという感じでして、誠に涙を禁じ得ない結果かと。最悪期は月初に脱したような雰囲気が漂っていたのですけどやっぱり冴えませんな。

まあ「市場の要望」に押されて発行をバンバン増やしたら突然ヘロヘロになってしまった訳ですが、発行当局様におかれましては、市場との対話も諸刃の剣と申しますか、所詮は自分たちに都合のよい話をしたがる人たちの集まりでもあるし、何か皆で共同幻想の如く誤解(今回なんかまさにそう)している事もございますんで、(寂しい話ですが)何でもかんでも要望を聞く(そりゃ誤解だって言われそうですな、とヘッジクローズ^^)のも如何なものかって教訓になったのではないかと存じます。


○そういえば物価連動国債

会計指針が変って投資しやすくなりましたって話で盛り上がってましたが、物事が盛り上がると早速冷水を掛けたくなるのがあたくしの性格の悪いところでございます(笑)。

最近はどうなのか余り聞かない(というか個人的興味があんまり無い)のですけれども、ひところは将来の消費税増税論議と絡めまして、「消費税が増税になるとCPIが上昇するので買っておきましょう」みたいなセールストークがあったと聞いております。そのせいか量的緩和政策の出口はどこにあるんでしょうって頃に突如買われて見たりしたこともあって、これじゃ先行きの物価見通しじゃなくて消費税問題の意識を測るベンチマークかよ!って状況になったりもしてましたな。

でですな、身も蓋も無い話をして恐縮なんですが、消費税が上昇しますよって話が始まる頃にCPIの算定ルールが今のままであるという保証はどこにも無い訳でして、それこそ金融政策にCPIのターゲットとかが設置された時に消費税増税分をCPIに反映させちゃうと絶好の金融引き締めのネタをご提供する事になるから何か手を打ちゃしませんかねえなどという妄想が沸き起こるあたくしなのでありました。

いやまあ真っ正直に物価見通しでどうのこうのっていうのならそれはそれで結構なお話なんですが、まあ消費税がどうのこうのって言ってる人がいるうちはその分下駄を履いている(いやまあ上記がただの杞憂なら別に下駄でも何でもないですけど)可能性もあって、その下駄部分がどのくらいなのかを考える必要がございませんですかねえなどと思うのでありました。

15年変動国債に関してはバーゼルUでのアウトライヤー規制に関連してリスク値が過小計上されるという(プレーンな短期金利フロートだったらそんな事は無いのですが、為念)制度上の抜け穴といえば抜け穴みたいなものから下駄を履いていた訳ですが、まあそんな感じで制度に関連するニーズが発生して下駄を履いている商品に手をだすのは(割り切り系でやるのなら兎も角)ポートの長期投資(銀行ポートが本当に長期投資スタンスなのかという話はここでは自主規制^^)としてはどうなのよってのがあたくしの正直な感想。

いきなり個人投資のレベルに話が飛びますが、バブルの頃に「給与所得と損益通算できるから節税できます」って振れ込みで期間損益が赤字のマンション投資をした人たちが制度改正で枕を並べて討ち死にしてしまったとか、その手の話はもう限りなくあちこちで発生しますわな。節税するのはまあ頑張ってねという所ですが、「節税目的の金融商品(に限らんが)投資」ってのは税効果控除後のリターンが間尺に合う(というか自分で耐えられる)のかをよく考えて手を出さないと大変に香ばしい事態を生じる恐れがありますので注意しましょう。

いやまあ似たような話だとおもうんですけどね。

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2006/01/24

20日の総裁記者会見を今更。タイミングがライブドア強制捜査と重なったので一部しょうもない質問もございますが、総じて興味深い応答(ただしネタ的にオモロイかというとそれは別問題か^^)ではございます。http://www.boj.or.jp/press/05/kk0601a.htm


○「重要な局面」発言部分

ブルームバーグでフラッシュを打たれてた部分は質疑の最初の部分。

『消費者物価指数(除く生鮮食品)が11月にプラスになったが、これから先、経済・物価情勢を十分点検しながら、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比が安定的にゼロ%以上となったと言えるかどうかを、かねてからお示ししている基準に沿って、冷静かつ適切に判断していく重要な局面に入っている。従って、いつ頃、量的緩和政策の枠組み修正ができるかについて、予断を持って臨んでいないことは前回までと変わっていない。現時点において言えることは、現在の枠組みを変更する可能性は2006年度にかけて高まっていく、とかねがね申し上げている通りであり、この点についての見方は少しも変わっていない。』

ということで、発言の前後も読むといつもと同じ話をしているのですが、まあわざわざ「重要な局面」とか言っちゃうのが福井総裁のお茶目な所でして、本人のやる気というか心が伝わって来る発言ではございます。

まあ何ですな、今から直せって言っても無理な話なんですが、今後の政策枠組みで裁量を重視するって事になったらあまり「私はこう考えてます」って「やる気」があまり表に出ないようにした方が良いんじゃねえかと思うのですが。裁量でやるなら「何考えてるか判らん(「何しでかすか判らんで」はない)」風にしておかないと将来の自分の手足を縛る破目になるし、意思を出しまくった見込みが外れたら洒落にならん。

上記応答の続き。

『私どもは枠組み変更の時期について予断を持って臨んでおらず、これからが冷静に判断していく重要な局面だと申し上げたが、枠組み変更後の短期金利の水準や時間的経路についても、言うまでもなく、今後の金融経済情勢や金融市場の状況次第、すなわち全くオープンであり、この点についても何ら予断は持っていない。現時点で申し上げられるのは、10月の展望レポートでも記述した通り、概念的整理に留まっている。』

『枠組み変更後のプロセスは、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序を辿るということである。かつ、経済がバランスのとれた持続的な成長過程を辿る中にあって物価の上昇圧力が抑制された状況が続くと判断されるのであれば、枠組みの変更やその後のプロセスは、余裕をもって対応を進められる可能性が高いということである。』

まあここで市場とて気にになるのは「極めて低い短期金利の水準」がどのくらい続くかという話になるのですが、この点に関して債券市場はどうも楽観しているのではないかと思うのでありました。この次の質疑で賃金の上昇問題に関して話がありますが、そこまで引用しているときりが無いので引用割愛しますが、雇用者所得や賃金の上昇がどういう風に転んでいくかは気にした方が良い気がする(けど、昔みたいに自分の周り見てると全体の感じが掴めるって世の中じゃないから中々判りにくいのかもしれないが)。

で、「余裕をもって対応を進められる可能性が高い」とか、欧米でのイールドカーブのフラット化とかインフレ懸念があまりございませんなあとかいう辺りから、量的緩和解除後にもゼロ金利が相当期間続くという見方が多いのですが、そもそも欧米でインフレ懸念が加速しないで金利がフラットとか言ってる金利水準と日本の水準は全然違うんですけどねえ。

ま、3月だか4月だか知りませんが、量的緩和解除したとして物理的に当預引く時間は足元金利がゼロ近辺になっちゃう(いやまあ即時利上げすれば話は別だが、これだけ言って置いていきなり利上げ攻撃はやらないでしょう)でしょうからそれが1ヶ月程度は継続するとして、その後どこまでゼロ金利?ってのは微妙な気もする。。。。


○インフレ参照値等(等って便利な言葉だ^^)に関する発言

『以前にもお答えしたが、この点(引用者注:インフレ参照値など)については、この先の金融政策の透明性向上のための枠組みを、どのように構築していくかという幅広い議論の中で位置付けながら考えていけば良いと思っている。繰り返し申し上げると、異例な金融政策を実施することによって日本経済がデフレ・スパイラルのリスクに陥るのを身を呈して防ぐという局面から、先行きはより正常な金融政策の枠組みに移っていき、民間のよりダイナミックな動きを引き出して日本経済の実力を底上げしながら、振幅の小さい景気拡大過程を築き上げたいということである。』

『この先、金融政策にとってもっとも重要なことは、情勢判断に即応できる、つまり機動性の高い金融政策であり、何か特定のことに縛りを受けている──ストレート・ジャケット(拘束服)を着たような──金融政策は必ず害が出るということである。従って、金融政策運営の透明性とフレキシビリティーの両立というポイントは欠かせないと思う。』

身を呈して防ぐってのはまた大袈裟な(^^)。まあそりゃ兎も角として、基本的に福井総裁は「量的緩和解除後の金融政策に縛りは要らん」というお話。このあたりの議論が今後具体化していくのでしょうな。

『物価に関して特定の参照値という形で何かを示すことが、今後の日本経済情勢とか日本経済を巡って人々が抱いている期待との関係で本当に良い手法なのかどうか、よく検討しなくてはならない。議論としては極めて単純にターゲットだとか参照値だとか出ているが、過去のパターンをそのまま引用したような議論が多く、私どもとしては多少閉口している。実は、透明性の議論の幅は非常に広い。皆さんも心にゆとりを持って、どんなものが出てくるのかというぐらいで楽しみに待っていて頂きたい。』

最後の一文、釣りがお上手ですなあという話は兎も角と致しまして、字面と今までの福井総裁の発言を並べて考えると「そんなんやるかよへっへー」と読んでしまいますが(笑)。



○不動産融資の質疑応答2題

やはりこの点に関しては質問が出ますわな。

『(問)本日公表の月報でも銀行貸出の増加幅が拡大しているという記述がある。その中で不動産向け融資も増加してきているが、これに対して日銀としてどのように見ているのか。また、昨年末、一部の報道で日銀として監視を強化していくとの報道があったが、そのようなことを考えているのか伺いたい。 』

『(応答の最初の部分割愛します)それでも現状はなお、住宅関連あるいは不動産関連の資金需要が、家計および企業部門両方から強いということも事実である。東京都心部等一部の土地を中心に、土地の値上がりとの関連で資金需要が出ているという傾向も否定できないと思うし、土地から期待し得る先行きの収益についての評価が楽観的になり過ぎていないかどうか、将来のバリューを現在価値に引き直す時のレートが甘くなり過ぎていないか等、様々に心配する声もちらほら聞こえるようになってきていることは事実である。しかしながら、私どもは日本経済全体、全国各地の動きまで総合しながら判断しているが、今のところ経済全体として不健全な軌道に踏み込むリスクを感じさせるという所まではいっていないと思っている。』

ということでして、特にそういうことはしませんがなというのが公式見解。ただ公式見解は公式見解として考査やら通常のモニタリングの方ではどうなのよってのも気にかかりますが。

『(問)日銀として、ここにきて不動産融資の監視強化をするということは特にないということで良いか。』

『(答)実際のところ、私どもの考査では、取引先金融機関の経営実態を把握するため、様々な業務に伴うリスクの管理状況等を検証している。その中で、融資についても、信用リスクの実情や管理状況等をつぶさに検証しているということも事実であり、幅広いチェックを通じて、もし管理体制等の面で問題ありということであれば、個々の金融機関に対して改善を要請している。これは私どもの通常のアクションである。しかしながら、一部報道にみられたように、ここにきて考査で特に不動産融資に対する監視にフォーカス(焦点)を当てて強化しようという方針を決めたことはない。執行部においても、独自にそういう方針をプラクティスとしてとろうとしているということもない。不動産融資に限らず、広く与信行為全般についてのリスク管理状況をつぶさに把握し続ける。不動産融資についても、当然その中に含まれているということである。 』

だそうです。それはそれとして気になったのは最初の質問に対する答えの最後の部分でして、不動産融資とは関係ない話ですけれども・・・・・

『先程も申し上げた通り、これから本当に物価がデフレ的と言われた状況から安定化局面に入り、それと交錯しながら経済が着実に上昇するにつれ実質金利が下がるという局面に入っていくと、様々な交錯した現象が出てくる。ここをしっかり読み分けていくことが重要な局面に入っていると思う。』

どうも実質金利マイナス(何をもって実質金利というのかという問題に関しては議論が分かれる所ですが、その点は置いておくと致しまして)での政策運営に関して福井総裁は結構リスクを感じているのではないかと思われる節のあるこの発言でございます。今後「実質金利マイナス運営も辞さず」というスタンスとの政策論争が楽しみでございます。

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2006/01/23

○という訳で月報

例によって12月と比較。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0601.htm(1月)
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0512.htm(12月)

・総括判断に文言が追加されましたよ〜♪

(1月)『わが国の景気は、着実に回復を続けている。』
(12月)『わが国の景気は、回復を続けている。』

景気回復の足取りが着実だそうです。これって判断前進ってことでしょうな。


・生産の現状判断を前進

で、総括判断の次に現状判断があるのですが、この中では生産の判断が前進。

(1月)『生産も増加の動きが明確になってきている。』
(12月)『生産も振れを伴いつつ増加傾向にある。』


・先行きの判断もこりゃ前進なんでしょうな

(1月)『先行きについても、景気は着実に回復を続けていくとみられる。』
(12月)『先行きについても、景気は回復を続けていくとみられる。』

自信度が上っているということで宜しいでしょうか(^^)?その内訳に関しては文言同じでございます。先行き見通しの総括部分だけ前進ってのも珍しい気がしますが。


・物価の先行きに関して「円安の影響」を追加

物価の現状に関しては当たり前ですがプラスに転換したって話をしてますが、そこは当たり前の部分なので引用省略。で、物価の先行きに関して、国内企業物価のところで、将来の上昇要因として円安というのを挙げています。ただし、この円安に関してはここもとの国内企業物価上昇の要因としても挙げていましたので、まあ現状程度の円安であればそれほど気にはしない(継続的に強含み要因になるんでしょうけれども)のかなあ。


・金融面に関しては前月と同じです

強いて言えばマネーサプライの数字だけですが、これは実績数値の話なので前月と違いが出る時には違っているのは当たり前ですんで引用割愛。


ということで、総括しますと判断が前進と申しますか、景気の先行き拡大に関して自信をより一層深めているという風に読むのが吉かと存じます。


○総裁記者会見要旨は本日ということで

一応ブルームバーグニュースなどでも報道されてますが、まあ景気には益々強気のようでございますな。ヘッドラインには「冷静かつ適切に判断する重要な局面に」ってありましたが、瞬間2銭くらいしか反応してませんで、もう福井総裁の強気発言には慣れてしまったのか、週末で今更反応する気力が涌かなかったのかは知りませんが(笑)、全体を通して読まないと何とも。

まあ本日の会見要旨のアップを待ちたいと思います。

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2006/01/16

○金曜日の続きですが

金曜日に書いた「需給以外の理屈でイールドカーブのフラット化は景気への見方以外で説明しにくいんジャマイカ」というお話。そのキモとなるのは「量的緩和解除してからゼロ金利に移行したときにゼロ金利の時間軸が示される訳はないでしょ」って理屈でござんした。

念の為繰り返します。現在の日銀の公式見解としては「現在の量的緩和政策はデフレ脱却期待が高まっていることから、時間軸効果が弱くなってきており、ゼロ金利の効果が中心になっている(ので、量的緩和政策を解除して金利政策に移行しても、低金利を継続する分には金融政策に不連続な変化は発生しませんよ)」と言う事になっている訳ですわな。従いまして、武藤副総裁が言うような金融政策の「道しるべ」を採用するにしても、ゼロ金利政策のコミットメントが採用される訳無いでしょう。量的緩和政策の現状における政策効果が「ゼロ金利+時間軸」と言い、時間軸が外れている状態だと認識している状況から「量的緩和政策を解除するけど、ゼロ金利のコミットメントを採用する」という事になりますと、時間軸が復活するのだから金融緩和になっちゃいます。

・・・で、こちらについて早速ツッコミと申しますかご指摘を頂戴致しました。しかも同じような見解でございまして(^^)、その趣旨はと申しますと・・・・

まあ何だ、理屈ではその通りになるのだが、何せ日銀の政策ロジックが破綻をしているので、理屈どおりには動くとは限らないだろうし、結局の所政府からの圧力の強さ次第で時間軸入れてくるんじゃねえのか?

・・・・確かにそりゃそうですわな。

まあ普通に考えるとFRBみたいに「緩和的スタンス」と言いながら小出しにやっていくというような話になるんでしょうが、政府からのプレッシャーが強くなったらまあやりかねませんわなあという感じは致します。

もともとあたくしはご存知のように、「量的緩和政策を解除したら金利がゼロって事はねえだろう多分0.25%もしかしたら0.10%(当座預金残高削減中は別として)」って言っていたクチでして、現状は「量的緩和解除してもゼロ金利が継続する」というニュアンスで福井総裁などもお話をしていまして、市場のコンセンサスもその線ですんで、予想屋(いつ予想屋になったんだ?)としては見事に大外しでございます。何でそんな予想をしたのかと申しますと、日銀としては量的緩和解除してもゼロ金利のままでは、金利政策への移行が実質できない状況な上に、物価が下がったり景気が失速した時に責任を取らされるだけ日銀は損じゃねえのかというのがあたくしの理屈の根幹にあった訳ですな。

結局は「量的緩和政策は解除するけど、ゼロ金利は当面続くから勘弁」という方向になったような感じですけれども、これって何の事はない「実を捨てて名を取りました」っていう結果になっちゃってるんじゃネーノ。と、なりますと政府との妥協の産物としてもしかすると「量的緩和政策を解除したのに、実は緩和政策の強化を行う」という無茶苦茶な施策が出てきても何らおかしくはないという結論にも落ち着く所が恐ろしい話でございます。

変な地均しをしなけりゃこんな事にも成らなかったのにとは思いますが、地均しのシナリオ通りに経済状況は今のところ進行しているので結果オーライって言えば結果オーライなのかもしれません。何か余計に頭を出して要らん妥協をしたようにも思えますが。

日銀はここからまた「実を捨てて名を取りに行く」のでしょうか??

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2006/01/13

○変動15年国債の悲惨

昨日の債券市場は途中から20年を中心に反発してまたまたフラットニングしまして、前回入札のあった変動15年37回債は98円割れとなってしまいまして、理論価格から2円くらい安くなってしまいました。

まあ昨年8月9月あたりまでは理論価格から1円くらい高くなっていたのにここ3ヶ月ちょっとで2円安いところまで逝ってしまうとは幾らキャリー収入が入ってくると言ってもさすがにエライコッチャになるでしょう。しかもこの商品を持っている主体って銀行セクターなので、ある程度やられだすと投げるという素晴らしい傾向がございまして(困ったもんだ)、投げスパイラルが始まると逝き過ぎになるのはVaRショック以来の年中行事。今回は変動国債ですかそうですかと言った所。

どうもやられの投げの為に「合わせ切り」をやっているようでございますが、何というか金利上昇ヘッジの積り(実は勘違いもいい所ですけど)で買った商品をここまで下がってから投げるなよと小一時間問い詰めたくなるのですが。ま、何と申しますか自己責任は自己責任ですが、「金利上昇への備えはできているでしょうか金融機関の皆様」などというメッセージを出して変動利付国債を買えば貴方も幸せって雰囲気を醸し出していた(これ以上の直接的表現は自粛^^)人たちに対する金融機関の怨嗟の声も聞こえて徽宗皇帝といった所ですわな。ええ、聞こえているとは申してませんので念の為。


まあアレですな。プレーンじゃない国債でヘッジが難しい(理論どおりにヘッジしようとしたら流動性の低い超長期既発ゾーンでややこしいロングショートをリバランスしないといけない筈)ので、需給が一方方向になる商品なのがこの商品の特性ですが、一方通行恐るべしといった所でございますわな。で、相変わらず銀行業態の皆様に於かれましては横並びがお好きと申しますか何と申しますか、どうしてそう揃いも揃って同じ方向でやりたがるのやら。参加者の殆どが横並び行動様式の人になっていると市場に止め役がいないので毎度毎度ソロスの言う「市場の帝国主義的循環」が起きてしまうという感じですわな。

こういう状況になると業者も下げに立ち向かわないのでして、こうなったら変動15年国債を買ってくれそうで止め男になってくれるのは某系統金融機関親分しかいないのではないかと思料される今日この頃でございます。


○で、フラットニングしてるのですが・・・・・(まだ考え纏まってないメモっす)

フラットニングの理由としては上記の変動利付国債の叩き売り激安相場の他には、イールドカーブがフラットしてない主要国ということで海外から見たヘッジつき外債投資の対象になるとかございます。

そんな中で「量的緩和解除をするけどゼロ金利の長期化」という文脈も買いのネタになっているような気がするのですが(本当はどうなのか良く判らん)、この発想の落とし穴に関してつらつら考えている今日この頃のあたくしなので、メモ程度の考え叩き台で恐縮ですがちとメモメモ。

まあ物価が上らないという見込みでゼロ金利長期化ってのなら正統派の発想で、それは経済見通しの話ですからまあ良いと致しまして、それ以外の発想を持ってくる場合の落とし穴ですが・・・・

毎度申し上げているように景気が好調な時にゼロ金利みたいな低金利を続けていれば、景気刺激効果が強くなるので将来の金融引き締めの際にはよりきつめに運営しないといけませんですってのはございます。で、ちと別角度から考えます。金利政策に戻ってゼロ金利になってからまた新たなコミットメントが出てくるという思惑があるようでして、武藤副総裁の「新たな道しるべ」発言がインパクトあったようでございます。

でもちょっと考えると量的緩和解除をしましょうと言ってる段階の昨今、福井総裁が何度も言っているのは「時間軸効果が無くなって来て、単なるゼロ金利状態になっているから、金利政策に移行しても低金利維持していればマーケットにショックを与えない」というものでして、その伝で行きますと、量的緩和解除後に「ゼロ金利のコミットメント」を設置するというのはありえ無い話ではないかと。だって「ゼロ金利の」時間軸を再設置したらそれは金融緩和になっちゃうでしょ。

「道知るべ」ってのが何になるのかとかそもそもそういうのを導入するのかは何とも言いがたい話ですが、債券市場の方で勝手に楽観というか都合よく解釈しているという節がございますが、まあそういう訳であたしゃー普通なら「ゼロ金利のコミットメント」を新たに設置するのはちょっとねえだろうと。

「慎重なスタンス」とか「緩和的な状況」とかいう言い方をするので政策金利が上らないというのもまあ都合のよい誤解のような気がする訳で、そんなことを言いながらFRBはFFレートを延々と引き上げ続けて今は4.5%ですからね。

#ま、まだまだ雑感のレベルですけど

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2006/01/12

お題「準備しろと言うお告げですか?」

後継指名ですかそうですか。何だあなた様も院政をやりたいということですか。権力の座ってのは結局そういうもんですか。>誰かさん

○昨日のFB入札

昨日は10年国債入札でしたが、そっちの話はさておいて(おい)、政府短期証券の入札がございまして、先週木曜日の入札とは一転(まあ火曜から雰囲気は変ってましたが)した結果になってしまいました。

先週の入札(4月12日償還)では平均落札価格(の利回り換算)が0.0027%で最低落札価格が0.0035%となりましたが、セカンダリーの消化は順調で値を戻したのですけれども、昨日の入札(4月17日償還)は平均落札0.0047%で最低落札0.0059%と(単に心理的なものですが)何となく目処にしてた0.005%をあっさり抜けました。セカンダリーも低調で(というか既発債に売りものが出たらしく)、終わってみれば0.0065%あたりまで気配が切り下がる形。価格に直せば屁のようなミクロの世界ではございますが、利回りで言うと2倍とか3倍とか(^^)。

んでまあ何でこんな話になっているかと言いますと、MUFGの銀行統合に伴い足元の資金放出が渋られているとかいう話もありますけれども、年初から何だか資金吸収と供給を両建で行うツイストオペ(と言われる事が多い。どっちかというとマッチポンプと言った方が気分的にはしっくりくるのはあたくしの性格の悪さを反映^^)が絶賛実施中でございまして、売出手形だの国債売現先などが実施されてどうも需給の悪化傾向を後押ししている悪寒。

昨日に関しては、入札日だというのに国債売現先オペを打つという何と申しますか「入札するのに日銀まで玉出すなよ(ちなみに現先の期間は1月13日〜1月25日、落札結果は平均最低とも0.004%)」状態で、ここもとの足元金利だのGCレートだののサガランチ会長モードがまだ続きますかということで入札のやる気がだいぶ削がれたものと思料。


○というわけでツイストオペが多いのですが

今月になってからのオペレーションを見ますと、5日は国債買現先(実質的にはレポオペですな)と売り出し手形を実施し、10日には13日スタートの短国買入を実施しているのに昨日は13日スタートの国債売現先を実施と(ちなみに10日はCP買現先+全店買手と売手のセットも)何か資金需給を単純に均しているのかコリャという雰囲気が何となく漂う今日この頃。

まあ各オペのオペ残をいじらないようにしながらやっていくと資金余剰月にはこういう変なオペレーションをしてくる必要が出てくるというのも何となく判らんではないのですが、当然乍ら(?)早速ネタとして出て来たのは「これは何か意図があるのではないか」というお話。てな訳でまあ以下どんどん脳内妄想の世界に入りますので、その積りで読んで頂くとありがたいですが・・・・・

(以下妄想ワールド。市場の一般的な見方かどうかは保証対象外^^)

少々長い資金供給と足元の資金吸収のセットを行っているという事ですが、これは1つには「市場の先行き金利見通し(=市場の予想する量的緩和解除時期)を見ておきたい」っていうのがあるのかも知れませんですな。ちなみに3月(あたしゃ3月解除もありうると思ってますけど)の決定会合が3月8、9日でして、4月は10、11日と28日。5月が18、19日ですんで、まあその辺に足が掛かるものとかに関しては微妙になるんでしょうな。

他に考えられるのは「日銀も練習中ですか?」というネタでして、資金の供給と吸収をする事によって需給をぶらして短期金融市場に緊張感を与えておきましょうというお話ですかな。いざ量的緩和政策を解除という段になっていきなり慌てられても困るということでしょうなあ。まああたくしのような年寄りに言わせますとそんなの準備しないで慌てる参加者が自業自得と思うのですが、まあ市場全体を見ている日銀様におかれましてはどこかのアホウが混乱して市場全体が混乱したらそりゃ困るって思いたくなるのも判らんではない。その為にロンバートとか日中流動性とか債券市場なら補完貸付とか色々と手は打ってあるから心配ないぜって思うんですが、まあ「やってみたら全然臨戦態勢になってない奴のせいで一時的に混乱」ってケチが付くのは避けたいのでしょう。そんな訳で短期市場に向って「おまいらそろそろ準備せえよ」と言っているのかもしれない。

もっと妄想を逞しくすると、この調子で短期の吸収と長期の供給をツイストしていくことによって足元の短期金利を何となく持ち上げ気味にして、量的緩和解除による足元金利上昇(するかどうか判らんが、0.001%−0.002%って事はないでしょう)のインパクトを緩和するという事だったりするとかなり笑えてしまうのですが、これをやると解除後に吸収オペレーションをせっせと打たないと当預を所要+α(あたくしのドタ勘では目先10兆円弱8兆から10兆くらい??)の金利コントロールレベルまでに落とすのに時間が掛かる副作用もある諸刃の剣っぽいですが(^^)。



えー、日銀の短期金融市場調節にはそのような「意図」は無い事になっておりまして、本来こういう想像をするのは時間の無駄なのですが(^^)、まあこんな妄想をせっせとしてしまうのも、供給しようと思えば供給できた筈なのに当預残30兆円割れをわざわざやらかしたとしか思えない昨年6月2日というのがございましたんで。ええ、あたしゃーしつこく覚えてますから(笑)。

#来週は1年TBとFB入札ですな、おっほっほ。

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2006/01/10

○この欄はどうにかならんのか

毎度お馴染み日経金融新聞。2面に「ポジション」という欄があって、編集委員の方が交代で執筆されていまして、結構な記事もあるのですが(と一応フォロー)、先週金曜の記事に関してはそりゃあーた如何なものよって感じ。

記事のお題は「国債買い入れ消却変身 財務省が金融緩和」となっていまして、要するに買い入れ消却が長期金利の押し下げ効果がありますよってお話になっております。そりゃまあ財政特会の準備金取り崩して長期国債買うのですから効果は無いとは申しませんが、その効果に挙げている3つのうち2つ目と3つ目には「???」が涌いて来ます(1つ目にもちと?なのですがそれは兎も角)。

『二つ目は買い入れ消却対象の多様化により利回り曲線への影響だ。』という事で長いのを買えば事実上の金融緩和効果が大きくなるという話をしているのですが、財務省は国債発行を長期化(市場の要望でもありますが)しているという話をスルーして買入消却の増加の話をしますですかそうですかという感が致しますが。だいたい日銀の長期国債買入残高を銘柄別に見れば判るように、普通に市場から買い入れを行うと残存2年以下の国債がやたらめったら入ってしまいますけど(ってどういうやり方をするのかはまだ確定してないから何とも言えないけど)。

記事には『買い入れ対象の調整で、特定の期間の利回りの上昇を抑える効果も期待できる。』ってあるのですが、そんなモロに露骨な介入は市場重視で(市場の人々からは)評判のよろしい財務省が行うとは思えませんが。今の買い入れ消却は買い入れ対象年限が最初から判っているのですが、買い入れ消却の時にいきなり「今日は残存○年の国債対象」とか言い出したら、その年限を誰がどのように決めるのかという問題が物凄い勢いで発生すると思いますが。

市中以外からの買い入れ消却って日銀と財政融資資金から5.5兆円ずつなんですけど、これって結局のところ統合政府の中での付け替え(というか両建解消)に過ぎないお話ではないかと思いますが。


『三つ目は、日銀へのけん制だ。十二兆円のうち、五兆五千億円は日銀から買い入れる。保有国債の圧縮につながり、その分、日銀の国債買い入れ余力が増す。量的金融緩和の解除をめざす日銀に、国債買い入れ余力が増す。量的金融緩和の解除をめざす日銀に、国債買い入れを減らさないよう促す狙いがある。』というお話なのですが、国債買い入れ余力が無いから量的緩和を縮小するというような議論は誰もしてないと思いますが。まあ敢えて混同して書いているんでしょうが、量的緩和解除と国債買い入れの論議は実際問題としてはリンクせんでしょうし、日銀の買入銘柄って2年未満のものがやたら多いので償還もそれに併せてやたら多く、そう簡単に余力が無くなるという話にならんと記憶してますが。

で、話が何故か『問題は買い入れ消却に原資が伴うのは一年の期間限定であることだ。』となって、今後も買い入れ消却の原資を見つけないといけないという話になって、『高度なリスク管理の導入で財政特会の金利変動準備金の余剰をあぶりだしたような工夫がほかの特別会計に求められるだろう。』と仰せなのはギャグか何かでしょうかと小一時間問い詰めたくなりますな。

署名記事をあたくし如き三下が名指しでいちゃもんつけるのもまあアレですけど、正直この記事書いている編集委員のO氏がこのポジション欄を書くと何と申しますか「何でもとにかくセンセーショナルに」って感じが非常に強く漂って参りまして、何か記事書く前にストーリー作り上げてから材料を拾ってきてませんですかと思いたくなってしまう香ばしさがございます。もうちょっと何とかなりませんか?

同日の紙面の隣(3面)の「視点論点」でみずほ証券の高田さんが「債券運用の局面転換」というお題で、「金利上昇はリスクか」と金利上昇すると金融機関の経営が大変でエライコッチャと囃し立てる人たちに対して「それはいかがなものか」と提言しているコラムに深く頷いてから、ポジション欄を読んだので激しくコケてしまいましたわな(^^)。

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2006/01/05

○国債市場特別参加者関連の雑談

昨日財務省から発表されたのは国債の落札・応札順位でございます。何故かPDFファイルで発表されているのですが、デュレーション換算値とか区分別順位とか出ているのでそれはそれで楽しめます。

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/jgbsp/060104b.pdf

で、毎度毎度お約束のように「落札額ランキング」と「応札額ランキング」を比較する訳ですが、公表当初は特に超長期国債のカテゴリーで落札額のランキングに出てこないのに応札だけはランキングに出てくる所とかが少々おいでだったのですが、今回眺めると超長期国債の落札額では9位に位置しているのに応札額では堂々の1位という相変わらずの会社様が一社ございます。どこなのかは上記URL先を見ましょう(^^)。

いやこの会社はこの順位公表が行われても全く臆する所無く堂々と応札と落札の乖離をし続けているので、まあその根性はある意味見上げたもの(入らないような所に客注が沢山入っているとか言うんでしょうけど)ですけれども、こういう輩がいると応札倍率とかの公表が意味無くなるので勘弁願いたいと思うのもまたございますわな。

http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/jgbsp/060104.htm

ドレスナーが特別参加者資格を返上してます。まあ撤退話は暫く前にあって既定路線なのですが、債券部門強化する所あれば撤退する所もありということですなあと。まあどうでもいい感想ですけど。

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2005/12/27

お題「無理が通れば道理引っ込む?」

○因果関係が逆ですが

実は日経新聞読んでない人なので(読むのはネタ拾いの時だけ)気が付かなかったのですが、昨日の日経新聞「経済教室」では「預金金利が3%になると個人金融資産1000兆円に対して30兆円の所得増効果があって経済が活性化」という信じ難い理論が展開されていたようですな。(本石町日記さんのエントリーで初めて知ったという日経ヨクヨマナイなあたくしでありました)

経済が活性化した結果として金利が上昇するというのであればまあ良いのですが、どうしてそういう理屈になるのやら。まー確かにあたくしも昔は預金金利が上ると個人所得が増えてどうのこうのって理屈に対して激しく同意してたというような恥ずかしい時代もあったので、こういう理屈による宣伝(というかプロパガンダ)には一定の訴求効果があるのは理解できるのですが、それにしても論がお粗末でございますわな。

預金金利が3%になって個人金融資産に所得増効果って時には、個人金融資産の反対サイドにある負債部門に負担が発生しているんですが、そちらはスルーとは素晴らしいゆんゆん理論ですな。ここもとの不良債権整理局面において政府部門に物凄い勢いでケツを拭かせているからこその景気回復であると理解しているあたくしとしては、「金利上昇で経済活性化」という意味の判らん議論は「政府部門を見てから言え」と申したくなりますわな。


と申しましても、この素晴らしい理屈は暫く前にご紹介した経済同友会の提言だのでも似たようなお話が出ていたりする訳で、どうも「金利を正常化すると経済が正常化する」という凄い理屈で一般向けに量的緩和解除の妥当性を訴求する作戦に出ているのかと思うと実に嘆かわしいものがございます。

昨日ご紹介した経団連での福井総裁挨拶にも実はおなじようなゆんゆんフレーズがございまして、紹介の際にはめんどいので華麗にスルーしちゃったのですが、呆れてしまったのでご紹介しておきます。昨日引用した部分の続きになるのですが。

『現在、量的緩和政策の効果は、短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきており、枠組みの変更自体によって、政策効果の面で大きな変化は生じないと考えています。むしろイールド・カーブが市場の中で自然に形成されるようになり、経済の活性化を促す方向に働くようになると思われます。』

別に量的緩和政策をやっていても10年金利は0.5%になったり1.9%になったりしてましたがそれらの動きは自然な形成ではないですかそうですか、という突っ込みは兎も角として、こちらでも「金利が正常化(とは何のことですか?と言い出すと長くなるわな)すると経済が活性化する」という因果関係を思いっきり逆にしたお話を絶賛展開中。


○この手の話が多すぎやしないかと思うんですが

まず結論先にありきで、その為に訴求するアピールを考えて宣伝するってスタイルが世の中横行しているような気がする訳ですよ。暫く前にご紹介した「霞ヶ関改革プロジェクト」では目的と手段をひっくり返した素晴らしい決意表明が行われていましたが、政策全般に渡ってその調子でやってるとその場その場はトンデモ理論でアピールして物事が進行するのかもしれませんが、将来のことを考えた場合にそれで良いのかよと思うあたくしは政治を判っていませんですかそうですか。

事実関係やら因果関係やらを無茶苦茶にしてその場を通しても先々にひずみがくると言うか何というか。過去の説明を正当化しながら理論を構築していくので、先へ行けば行くほどロジックが無茶苦茶になって来ているのは現在の日銀のロジック崩壊ぶりを見れば明らかなんですけど、常にいきあたりばったりなのは日本の伝統芸能ですかそうですか。

で、ふとだいぶ前のbewaadさんのエントリーを思い出したのですが、今年8月26日のエントリー「構造改革原理主義の誤りを具体的に指摘してみると」ってのがございまして(http://bewaad.com/20050826.html)、構造改革原理主義を支える理屈の拠って立つものが事実を意識的にか無意識的なのか捻じ曲げて説明してませんでしょうかねえということを判りやすく論じています。まあご一読ありたし。

その中で取り上げられていたブログの人(それなりに有名な人で、自民党の機関紙に論文を出したりする人です)がでコメント(http://bewaad.com/20050826.html#c04)してたのですが、そこを読むと中々良い感じで腰が砕けるのでありますわな。

『尚、政治の世界の論理からすれば。「本当に政府は大きいのか」よりは「政府が大きいと思われている」ことのほうが重要かもしれません。「外交官は六千人なのに、郵政は二十数万人。多過ぎると思わないか」。小泉総理の演説の一節ですけれども、こうした訴え掛けは、かなり強烈でしょう。』

有権者に対して実態を説明しないプロパガンダによるアピールを持って判断させる政治手法を容認する政治学者ってのも実に香ばしい。事実は兎も角アピールが訴求すればそれで良しってのは全く困ったものです。


○まあそういうのがスルーするというのも問題なのですが

でもまあアレですわな。そーゆー理屈になってないプロパガンダが通ってしまうのはマスメディアにも問題が大有りな訳でして、日経新聞のくだんの「経済教室」にしたって(日経がアフォを晒し上げする意図で掲載してるのなら話は別ですが)掲載段階で「いや先生、この理屈は幾らなんでも勘弁していただけませんでしょうか」って話にならないんですかねえということですわな。

「大きな政府」議論もそうですけど、政策をやろうって人たちの宣伝に対して実態はどうなんですかってのを検証するのが「社会の木鐸」としての役目ではないでしょうかと思うあたくしは商売を判ってませんですかそうですか。は〜。鳴り物入りで実施された政策の後検証も全然してる気配無いですし(先日郵政公社の国際送金手数料が引き上げ(窓口で行う国内送金も)になってましたなあ、利用者サービス向上するんじゃなかったのかなあ)。

今更メディアの猛省を促しても蛙のツラに何とやらって奴でしょうが(吐息)。

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2005/12/26

お題「来年のシナリオを妄想する」

みずほ証券に業務改善命令発動。で、リリースを拝見いたしますと「株式部門の拡大に組織手当てが追いつかなかった」という事のようでして、まさに事故のあった週の月曜日に発行された日経公社債情報のみずほ証券株式部門絶賛大躍進記事がいつもの法則発動という事で恐るべき物を感じます。

なーんて言ってますが、日経公社債情報に大特集記事を組ませると言う事はある意味自他共に「絶好調」モードであったとも言える訳でござんして、得てしてそーゆー時に「魔坂」が待ち受けてるのよね。

有馬記念も超越大本命無配じゃなかった無敗の三冠馬が取りこぼしましたが、大本命が圧勝するというシナリオが崩れるのが来年なのではないかというのはひねくれもののあたくしの考えすぎでしょうか。建築物構造強度偽装問題なんてえのもその流れのような気が。


○総裁講演における金融政策運営のフレーズ

やや注目度低下でありますが福井総裁が経団連で講演(正しくは挨拶)を行いました。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0512e.htm

まあ相変わらず強気の講演なのですが、報道されているヘッドラインを見て「おお!」と思ったのは「来年度にかけて量的緩和政策の変更を迎える可能性が高まっている」という所でした。で、その部分に関しては早速本石町日記さんが採り上げてますので、まあそちらをご参照ありたし。→http://hongokucho.exblog.jp/3937497

講演の当該部分はこんな感じ。

『当面の金融政策運営については、この目的を達成するため、消費者物価指数に基づく明確な「約束」に従って、量的緩和政策の枠組みを継続していく所存です。もっとも、景気回復の持続性が高く、消費者物価上昇率も次第にプラス基調が定着していくことが展望される中、量的緩和政策というデフレ・スパイラル阻止のための異例の政策運営枠組みは、来年度にかけて変更を迎える可能性が高まっています。その際には、経済・物価情勢を十分に点検し、「約束」で示した条件、すなわち「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上」が満たされたかどうかを確認していくことになります。』

まあ何ですな、話している相手が経団連だからなのかも知れませんが、福井さんのホンネっぽいものが文面から窺えるというのは読みすぎかいな。

第1文はまあ普通なのですが、第2文目を見ますと量的緩和政策に関して「デフレ・スパイラル阻止のための異例の政策運営枠組み」と言ってますが、それでは今までの量的緩和政策における量を増やした事の意味は何だったんでしょうかと小一時間。いやまあなし崩し的に「ゼロ金利+時間軸」だと言う事にしているんですけども、それでは過去において「量的緩和の強化」という題目の下に当預残高目標を増やしていったのは只のプラシーボだったんでしょうかそんなことで金融政策って良いんですかって思うあたくし。

結果よければ全て良しって評価も勿論あるんでしょうが、今後の金融政策という面を考えますと、ちゃんと分析をしていただかないと、将来の経済において似たような事が起こった場合にどう対処すべきかという知見の蓄積が出来ないと思うんですが。まぁ当然中ではちゃんと検証してるんでしょうが、変に政策の正当化を図るような大本営発表的な検証ならしないほうがマシですので、それだけは勘弁していただきたいものです。

と、つい悪態が長くなってしまいましたが、2番目の文には「量的緩和はデフレ・スパイラル阻止」という「あれそうでしたっけ?」という定義(?)が入っておりますので、裏を返せばデフレスパイラルにならなければ量的緩和政策は用無しだと言ってる訳ですな。

で、その文の後半部分は本石町日記さんのご指摘の通りで、「高まると考えられます」ってのが「高まってます」という風に(ここはヘッドラインで見た時に個人的にはちとビックリしました。マーケットへのインパクトは無かったけど)なっているので、合わせますとまぁ強気の進軍ラッパですわな。


第3文目では、量的緩和政策解除の判断に何を考えるかということですが、上記(だいぶ上になっちゃいましたが)にありますように、消費者物価指数の一点張りでして、「再びデフレに戻らない事を重視」といった(岩田副総裁と中原審議委員が提唱中ですが)フレーズは全くございませんですわな。

まあ先日来強気な姿勢が目立つ福井総裁ですが、ここのフレーズを見ておりますと、CPIのプラスがある程度続いたらもう量的緩和政策は解除するってのは明白で、その時期は今年度末から来年度入りくらいですかって所ですわな。

金融機関の決算があるから政策変更を3月に行わないという説もあるのですが、金利引き上げを伴わない限り、枠組み変更は特にその辺気にして行うとも思えませんな。


○という事で来年の政策を妄想

ちょっと株価が上昇してくるとすぐ大喜びで財政再建路線だの金融引き締め路線だのという話になるのは困ったもんですが、まあ予想屋(でも何でもないが)としては政策シナリオを妄想しておく事としましょう。

まあ今回の総裁講演でも判るように、CPIがプラス転換して(明日のCPIは概ねプラス転換予想だと思いましたが)3ヶ月も経てば量的緩和政策自体は解除と言う事になるんでしょう。そう考えると2月までのCPIを見た後に3月の決定会合で解除と考えるのが妥当かな。2月の目も残ってるとは思うけど。

で、政府と言うか与党がおとなしいのは量的緩和政策の解除をしてもゼロ金利を継続するという事で話がついているというのがあたくしの勝手読み。金利を上げるのはCPIが0.5%くらい(あくまでも勘です)になってから検討するって所になるんじゃないでしょうか?まぁ量的緩和解除してもO/Nの金利が現在の0.001%から精々0.01%に上る位(短期にとってはそれでもまあそこそこインパクトあるけれども、長期にはそんなに影響なかろう)の話ではないかと思います。

ちと気になるのは、今朝のブルームバーグテレビでも言ってたんですが、米国のインフレ(と住宅バブル)警戒モードですかな。米国の金融当局では、日本の過剰流動性資金が米国に流れてきてインフレを招いているのではないかという意見が云々というお話がございました。てめえが金融緩和しているときは日銀もっと出せ出せみたいな話で、為替介入も散々やらせておいて金融引き締めモードになったら過剰流動性ですかそうですか随分とご都合のよろしいお話でなどと思うのですがそれは兎も角として、そーゆー論議が回ってくるとなると、日本政府様におかれましても急に静かになってしまうかもしれませんな。

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2005/12/20

お題「トーンを抑えているようで抑えていない総裁記者会見」

ということで金曜の総裁記者会見を生暖かくヲチ。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0512e_f.htm

○これは笑うところでしょうか?

冒頭は総裁による決定会合と月報の説明でして、その次の質疑でいきなりずっこけるあたくしなのでありました。

『(問)金融政策のスタンスについて伺いたい。8日の講演において、総裁は量的緩和政策の解除に向けて改めて意欲を示された。一方で、政府はそれを強くけん制する発言を続けている。今後の金融政策運営における政府と日本銀行の関係について改めて見解を伺いたい。』

『(答)意欲を示すとか、示さない、という話ではない。毎回申し上げている通り、あらゆる経済・物価の動きを冷静に点検して、経済の実勢に見合った金融政策を施すことによって、結果として、物価安定のもとでの持続的な成長を実現していきたいという方向性に一切のブレはない。』

『そして消費者物価指数(除く生鮮食品)が現実に前年比ゼロ%の水準になってきて、今後同指数が安定的にゼロ%以上になるかどうかを、冷静かつ真剣に見極めていかなければならない段階であるので、意欲先行ということは私にとっては全くない。今後とも冷静に判断していきたい。(後半割愛)』

意欲先行では無いそうです。いやまあ奥が深いご発言でございますが(苦笑)、好意的に解釈しますと、「何も解除に前のめりではありませんよ」という言い方をする事によって政治との余計な軋轢を避けるという発想になっているんでしょうな。政府の方面がおとなしくなったのは先日の総理との懇談会が影響しているのではないかと勝手に想像中(罠かもしれんが)。


○望ましい物価上昇率に関して

2回ほど本件について質疑応答がありますが、結局明言は避けておりますわな。まあ元々インフレターゲットみたいな政策に関しては福井総裁は導入する気は無さそうな感じでして、仮にそれらしい政策を導入しても、あまり物価上昇率の期待の安定化という本来の機能が効くような形には持っていかないんじゃないかとは想像してますが。

『(問)先程、物価安定のもとでの持続的成長という点で、政府との間に認識のズレなどありようがないとおっしゃった。その物価安定の中身について、最近何人かの審議委員が、講演等で望ましい物価上昇率のあり方を示すことについてやや前向きの発言しているように思うが、総裁はこの点についてどのようにお考えか。』

『(答)私自身と言うよりも、日本銀行においてももちろんであるが、どの国の中央銀行においても、金融政策運営の責任を担い、かつ実際に運営している立場からは、望ましい物価安定とは何かということを、その国の経済構造の変化等も下敷きにしながら、発見努力を常に行っている。』

ということでこの後色々と理屈が続いているのですが、だいたい長々と理屈が出てくる時ってのは、ややこしい問題(誰が見ても答が明快って訳に行かない問題)に関して持論を述べる時だと思うんですが、福井総裁の会見にもその傾向はあるような気がする。で、そこの理屈部分を変にカットして引用するとミスリードしそうなので結論の所を引用。

『一言でインフレーション・ターゲティングとか望ましい物価安定目標の定義とか言っても、そこに至る思考プロセスに、各中央銀行の創造的な過程が前提となっている。単に、他の国の中央銀行はこういう姿をとっているからといったテキストブック・アプローチでこれを持ってくれば良いというような軽い考え方で、インフレ率のターゲットを置いている中央銀行は一つもないと信じている。』

『そうした状況(引用者注:経済のグローバル化状況だそうです)の下では、あまり先見的に数値のイメージを持たずに、物価形成メカニズムの新しいプロセスを深く分析しながら、私どもは次の新しい透明性の戦略に辿り着くほうが望ましいと思っている。インフレーション・ターゲットに積極的とか消極的とか言うことではなく、そういう事前のプロセスが大事な段階に日本経済は入りつつあると考えている。』

要するに「やらん」と言っている訳ですな。経済に新しい状況が起きるから云々って言い出したら、常に「昨日と同じ今日は無い」んですから、永遠に「望ましい物価水準の設定」は出来ないという話になるという恐ろしい理論。

別の質問に対する答えではこんな感じで話をしております。

『世界では、インフレーション・ターゲティングというか、一つの大くくりで言えばその範疇に入るような色々なやり方をとっている国がいくつもあるが、仔細に見ると国毎にその性格は違っている。日本の場合、どこかにテキストブックがあって、それをそのまま模写すればよいということは絶対にない。よそ見をする前に日本の経済・金融の構造がどう変わるかといった足許の状況をよく見て、日本人特有の国民心理あるいは気持ちにぴったり沿うような透明性確保の方法でなければならない。隙間があれば、必ずそこに便乗した違った思惑が入ってくるので、真似事はいけないということだけは明確に申し上げておく。』

「隙間があれば、必ずそこに便乗した違った思惑が入ってくる」というのは地均しの事でしょうかなどと無粋な突っ込みをしてはいけません(笑)が、物には言い方ちゅうのもあるのではないかと思うんですが、日本の例を参考にしてデフレ回避に成功したどこぞの国の中央銀行ってのもある訳でして、「よそ見」も必要なんじゃないですか?(勿論日銀の中の人たちは先刻そんなことはご承知でしょうし、ちゃんと研究してると思いますが)

まあ要するにインタゲは導入する気無しと。福井総裁になってから当預目標は景気良く上げていきましたが、中長期国債の買入額は速水総裁時代の月1兆2000億円からびた一文引き上げなかったように、「これ」と決めた物に関してはかなり頑固と思われる福井総裁の在任中は物価安定目標の具体的な数値が出てくるってのは難しそうな気がします。


○本日の釣り質問(笑)

本日の釣り質問はこちら。

『(問)先日、FRBのFOMCで再び利上げが決定されて、ステートメントにも若干インフレ警戒的なトーンが出てきた。ECBも利上げをしており、世界的にインフレ警戒とか金利上昇傾向が出てきているように思う。こうした世界経済の環境について、総裁はどのようにお考えか伺いたい。』

答えは会見要旨をご覧下さい(手抜き)。やや釣られ気味ですな。


○最後に結局やる気が出てたりするのですが

今年を振り返ってどうでした?って質問に関して答えをしているのですが。

『(答)あまりうしろは振り返らないのが私の性分であるといつも申し上げており、振り返ってどうかという質問が最も苦手である。』

ここはいつも悪態をついてますが、政策に関してはちゃんと振り返ってね(はあと)。

『特に感想はないが、強いて言えば春のペイオフ解禁という関門を順調にクリアでき、その後日本経済の足取りが、リズム感のいいものになってきたと思う。その時点で、消費者物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になることが次の大きな関門、あるいは通過点だと申し上げた。その通過点も、4月の時点で想像していた状況よりは少し良い状況で近づいてきている。10月の展望レポートを、4月の展望レポートに比べ若干中身を上方修正して皆様にお示しすることができたので、そう申し上げている。次の通過点の展望が、遠ざかるよりはより近付いてくる方向で推移しているので、今後ともそうした方向性がより確実になるように十分目配りをしながら適切な金融政策を行っていきたい。』

ということで、景気に関しては思いっきり強気であることは変りありません。

『私どもが正確な情勢判断を持つということが大前提であり、その情勢判断を基に市場とより濃密な会話を繰り返していきたい。これは非常に真剣かつ冷静なプロセスである。』

どうもこう引っ掛かるんですよね。こういうのを見ると元来ひねくれ者のあたくしは「日銀様の情勢判断を市場に押し付けますが何か?」と読んでしまうのであります。

『皆さんも、これをできるかぎり静かに見守って頂ければ、私どもとしては幸いである。』

えーっと、ここも笑う所でしょうか?地均しモードをおっぱじめたのはどこの誰だと。


○最後の最後は何か微妙な話

デフレ脱却がどうのこうのって問題に関して、「デフレを克服したということがきっちりとわかるように、わかりやすい数字を日銀と一緒に共有したいという考えをお持ちの先生方が多いように思うが」という質問が最後にまた出たのですが、デフレ脱却の観測について福井総裁はこのように述べています。

『デフレがいつ脱却したかという時点の観測についても、例えば景気の山谷に関し、今が山である、今が谷であるということを誰もわからず、山や谷を過ぎてしばらくしてから振り返って専門家が山谷を判断し、皆が納得する。なぜ納得するかといえば、専門家の分析に納得しているのではなくて、多くの人々が振り返ってみて、確かにあの頃は頂点だと感じながら私どもは経済活動をしていた、あの時はやっぱり谷底だったと納得がいき、合点がいく。デフレがいつ脱却したかは、経済が良い方向に進んでしばらく経って振り返ってみると、やっぱりあの時に脱却したと皆が納得できる時点というのはきっとあると思うが、前もって、これがデフレ脱却の時点だと言うと、それは嘘じゃないかという人が多いに違いないと思う。』

「専門家の分析に納得しているのではなくて」云々は内閣府に喧嘩を売っているのでしょうかと思わず突っ込みをしたくなりますが、字面でみる印象と会見のニュアンスは往々にして違う(今回は会見の録画まだ見てません)のでまあ良いとしまして。

「後になったらデフレ脱却が判る」と言い、(この会見では言ってませんが)「現在の景気動向では量的緩和政策解除の後の政策は余裕をもって対応する事ができる」と表明しているのであれば、これを二つあわせると「フォワードルッキングあるいはジャストタイミングでの量的緩和政策解除をする必要は現在はございません」って突っ込みが飛んできませんかねえと思いますが。


#意外に突っ込み所が多かったですな

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2005/12/15

○日銀短観

大企業製造業の業況判断DIが+21だったんですが、もっと良いって話が直前は出てたような気もします。でもあたくし的には毎回毎回ちと違う所から見るのでございまして・・・・

・業況判断DIの「前回予想からの達成度合い」

実際に出てくるDIの数値が一番注目されるのは当然の話ですけれども、あたくしが毎回見ているのは「3ヶ月前に回答していた先行き予測と今回のDIはどう乖離してますか」って話。

この数値を見ますと、「9月短観時点での先行き予想DI」よりも今回のDIの数値は概ね改善しております。

大企業製造業+18→+21、非製造業+16→+17
中堅企業製造業+6→+9、非製造業+2→+1
中小企業製造業+4→+7、非製造業▲12→▲7
(左が9月調査時点での先行き見通し、右が今回の業況判断)

この中では、9月の業況判断DIに対して先行きのDI数値が低かった(=先行きに慎重な見方)大企業製造業と中小企業非製造業の12月DIが9月対比改善しております。今回の短観では全体的に先行きの予想DIが12月対比低い数値が出ておりますが、ここまでのパターンを見ているとその「先行き慎重」ってのは毎度お馴染みの高値警戒感みたいなもんではないかと存じます。

で、これだけ株価が堅調であられます昨今ですが、それを考慮に入れてこのDIが思ったほど伸びてませんなあと見るのか、引き続き堅調と見るのかはあたくしよー判らんのでそーゆーものは本職の人が書いたものを参考にしませう(おい


・雇用判断DIは・・・・

日銀さまが単位労働コストがどうしたこうしたとコメントしている訳でして、雇用関係のDIは気にしない訳には参りますまい。雇用関係の数値は短観(概要)の6ページ目になります。

で、雇用判断DIを見るんですが、ややこしい事にこの雇用人員判断DIってのは「過剰」−「不足」で出してくるので、ここはマイナスになっている方が良い数字ですわな。この手の結果をまず斜め読みする人間にとっては一瞬「あれどっちだったっけ」と固まるので困るんですが(苦笑)。

で、この雇用判断DIなんですが、さっきと同じ見かたをするとこちらは案外な内容だったりするんですよこれが。

大企業製造業▲1→+2、非製造業▲8→▲6
中堅企業製造業▲3→▲2、非製造業▲10→▲9
中小企業製造業▲4→▲3、非製造業▲6→▲7
(左が9月調査時点での先行き見通し、右が今回の業況判断)

前回対比で言えばプラス幅縮小かマイナス幅拡大となってはいるものの、9月時点で予想していた「先行き見通し」ほど雇用判断が良くなっていないという次第。こーゆー辺りが業況判断先行きDIの慎重姿勢に影響を与えているのかもしれませんなあと思いながら。


ちなみに、どうでも良い話ですが、7ページ目にあります金融機関の業況判断DI等を見るとまあ証券業の業況がよろしいようで誠に結構でございますな(笑)。


別に悪い数字でも何でもないですけど、全体的には事前に囃されていたほど良くもないけど、かといって先行きを懸念するほどのものも無いという感じではないかと思うのでした。

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2005/12/14

○珍しくFOMC声明文

http://www.federalreserve.gov/boarddocs/press/monetary/2005/20051213/

前回までの声明文にあった表現『With underlying inflation expected to be contained, the Committee believes that policy accommodation can be removed at a pace that is likely to be measured.』ってのが削除されたのですが、「policy accommodation」が無くなった→「現状の金利が緩和的ではないとFOMCが言ってる」→「利上げ打ち止めワッショーイ」って反応をしたと言う事になっている様なんですが、それはちょっと違うんジャマイカと。

上記表現に替わって今回入っている表現は何かと申しますと(しかし声明文が短くて半分二日酔いの朝起きて読んでも対応可能なのはありがたい)こんな感じ→『The Committee judges that some further measured policy firming is likely to be needed to keep the risks to the attainment of both sustainable economic growth and price stability roughly in balance.』

「measured policy firming」って言ってるんですが何故そっちに反応しないのか意味判らんというか、まあ市場として「利上げ打ち止めワッショーイ」ってやりたかったという事なんでしょうけれども、なんちゅうか変な反応ですなあと思うのでありました。まあてめえに都合よく解釈するのは万国共通なんですな。

そもそもFEDはデフレ突入阻止の為に実質マイナス金利とかを延々と続けてていた訳でして、デフレ突入阻止を確認してから緩和解除局面に入ったのですから、中立的な金利水準と思われるところで止めるだけではそこまでの緩和政策の刺激効果を相殺するには足りないと思う(また物凄くシロートっぽい感覚的なお話で恐縮ですが)訳でして、インフレ抑制のためと言う事になるとここから軽く引き締めをしてから打ち止めになるんじゃないかと勝手に考えております。


○市場懇(国債市場参加者特別会合)での何か情けない議論

先週金曜に行われた市場懇の議事要旨がでたのは月曜なんで、ちと出遅れなんですけど→http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/c171209.htm

このWebページのタイトルって言うんでしたっけ、IEで表示した時に一番上の青い枠の中に出てくるお題のところが今朝6時に見た時点で「国債市場特別参加者会合(第8回)議事要旨(2005.6.24)」になっているのは財務省にしては珍しく手抜かりですな、何て事はどうでも良いのですが(笑)。

今回のお題は来年度の国債発行計画と、国債買入消却がメインでした。何か変動15年国債を減らせという話とか、物価連動国債増やせというようなお話ではございますが、別に何でもかんでも諸外国にあわせる必要ねえだろうと思いつつ単に「ふ〜ん」と思って読む次第。

本邦の場合は残念ながら物価連動国債が機関投資家でそんなに必要とされる状況にはなってないと思います。と申しますのも、基本的に本邦の機関投資家はインフレリスクを資金の出し手(銀行だったら預金者、生保だったら契約者)に負担させるような形を取っている(まだ確定給付物の方が圧倒的に多いでしょ)訳でして、インフレヘッジをしなきゃいけない機関投資家がそんなにいるとは思えませんわな。

今後の期待としては確定拠出型年金とかの個人の年金資金(はインフレヘッジが必要でしょ)でして、これ自体は規模的に大きなものになる話ですんで、DC資産の増加に期待したいものでございますな。

ま、そんなに慌てて増やす必要は無いんジャマイカという気が。増やしても一部の投資家のおもちゃになるだけじゃネーノという希ガス。


と、前置きが妙に長くなりましたが、今回読んでいて目がテンになったのは買入消却に関する中であったご発言でして、まぁ「この正直者!」って所なんですが。


『日銀の買切りオペを利用して、入札後にポジション調整をする場合、直近発行2銘柄がオペの対象から外されていることから、それ以外の既発債を入れざるを得ず、新発債の需給はますます緩み、既発債の需給はますます締まるといった形になることがある。既発債と同じ日に受渡しが可能なものであれば、新発債も対象に加わる方が、オペレーションはやりやすくなる。』

お前は日銀が買い切りオペで新発債を除外している理由(理由自体に意味があるかどうかという話は別の論点ですので気にしないように)を判ってその意見を言っているのかと小一時間問い詰めたくなるようなご意見。しかも「日銀の買切りオペを利用してポジション調整」ってそりゃまあそういう事はありますけど、そこまで露骨に言うかよって感じですな。

「ポジションのケツ持ちが最後は日銀です」って堂々と発言してお前は「プライマリーディーラー」として恥ずかしくねえのかと思うのは大手業者が債券市場をきっちり仕切って大口の売買フローとかが市場に露骨に出なかった古き(良いか悪いかは知らんが)時代の化石ジジイですかそうですか。

そもそも日銀の買い切りオペは本来業者のポジション調整の為にやっている訳ではありません。結果的には確かにそういう面も思いっきりありますが、それと買い切りオペの本来持っている政策的目的は別問題でして、業者の為に日銀が国債買い切りを行って無いのに、そーゆー論点が出てくる事が驚異的我がままというかお上頼りの姿勢と言うか。

ここから先は勝手な想像ですけれども、上記の意見に対応するような事態が生じているのって2年国債(10年国債は確かに新発債の需給は既発債対比で常に悪いですが、別に困ったから買い切りオペにぶち込みまくられている訳ではない)のことでしょうなあと思うと、その辺の商品をやたらめったらお取扱の人たちのご意見なのかと存じまして、この意見で見るべきものがあるとすれば、「日銀の国債買入が減額になると今のペースでの2年債消化は困難になりますよ」って事でしょうな。


しかしまあ他にも本件に関してはオモロイなあというのがあったのですが、

『流動性供給入札の対象となっている12年から15年までの年限のセクターについては、買入対象外とすることを検討しているとのことだが、16年、17年近辺についても流通量が非常に少なく、買入対象になってしまうとさらに流動性が乏しくなってしまう可能性もある。これらのゾーンについては、流動性供給入札による追加発行の対象とはしないまでも、買入対象とはしないでいただきたい。』

買い入れに応じるのは業者なんですから別に皆さんが入れなければいいだけのことではないかと思うんですが、そこまで細々要求する意味がさっぱり判らん。

『発行体として当該年度に発行した銘柄を買い入れるのはどうかという気もするが、理財局が構わないのであれば、我々としては、対象は広い方がよく、日銀がオペ対象から外している直近発行2銘柄も除外せず、チーペストも含めて原則的に全銘柄でやった方が良いと思っている。』

「どうかという気もするが」って所に良心を感じる発言ですな(^^)。

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2005/12/13

○経済財政諮問会議のバブル論議

本石町日記さん(http://hongokucho.exblog.jp/)のところで2本エントリーがございます。論議の中身もオモロイと思いますが、あたくし的にはその他2点ほど感じたのでそちらを。

1.量的緩和解除+ゼロ金利継続の2段階解除論で手打ちですか

バブル論議で議論が進んでいるというのは、ここの所日銀総裁方面やら水野審議委員方面から良く出てくる量的緩和政策の副作用論に相通じるものがございます(あたくしは「ようやくポートフォリオ・リバランス効果が発揮されてきたんじゃネーノ」と思うのですが・・・・・)。で、議事要旨を見る限りではバブル警戒方向で議論がリードされていて、竹中先生出る幕無しのすけの雰囲気ですわな。先週水曜日の日銀あんど政府の懇談会後に急に福井さん燃料投下発言をしたものの特に波乱を呼んでいない所も勘案すると、量的緩和解除してゼロ金利は継続という玉虫色の金融政策で落ち着くんでしょうなあ。ま、ゼロ金利に必要な量って事になるとそれなりに量は出しておく必要はあるんでしょうけれども、まあどうなる事やら。。。。

2.麻生さんと細田さんがいない会議は・・・・・

時々ご紹介する経済財政諮問会議話ってのは大体麻生さんの突っ込みか細田さんの突っ込みをネタにしてました。このお二方は結構本質を突いた突っ込みをしてくれまして、お話が斜め上の方向で驀進しだしてトンチンカンな論議が続くと冷静に「君たちそれはちょっとおかしくないか」と言って、脳内ユートピア話を現実に引き戻してくれるのでありました。

で、このお二方が諮問会議の議員じゃなくなってしまったので、とうとう小泉首相が止め役にならなければいけなくなったんですかねえと本石町日記さんのエントリーを見て吐息するあたくしでありました。

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2005/12/08

○2段階解除論がコンセンサスって感じですかね

昨日ご紹介した岩田副総裁の記者会見にもございましたが、まあ金融市場的なコンセンサスってどの辺にあるのかよって事になりますと、来年度入りする前後までには(勿論その間のコアCPI次第ですが)量的緩和政策を解除して金利政策への移行をするものの、ゼロ金利(言い方としては「ゼロ金利」とはならないでしょうが、誘導目標はゼロ近傍になるんでしょ)政策を継続する事によって政府筋との折り合いをつけるって感じになるんでしょうって所ではないかと。

問題はそのゼロ金利がいつまで続くかって話になっている感はありまして、まあ正直それは判らんとしか言いようが無く、要するにコアCPIがプラス転換した後にどのような上昇カーブを描いていくかって事に依存するだけのお話でしょう。で、その点について日銀があまりごちゃごちゃと言うのは「ノイズ発信」になるんじゃないでしょうかねえという所です。

政策ロジック重視派のあたくしとしては、量的緩和解除をしてゼロ金利継続というのであれば解除もしなくて良いのではって思うんですけど、まあこれだけ騒動モードになってしまうと解除をやっぱ遅らせますって訳にも逝かないでしょうから現実解としては2段階解除という政策ロジックとしてそりゃ如何なものかというのになるんでしょうな。

その割には相変わらずイールドカーブが下がってフラット上ってスティープという展開が続いている(昨日はブルフラットしましたが、それは買入消却に30年債が入るとかの影響もあったでしょう)件に関しては市場の内部需給的な別の問題に起因すると思われますが、まだ考え中なのでいずれ。

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2005/12/01

○本題の前に積読状態のネタを少々

日銀方面からだけでも昨日は大注目の岩田副総裁講演(正確には挨拶)以外にもネタが投入されておりますので一応そのリストをば。

http://www.boj.or.jp/set/05/set0511a_f.htm
日本銀行当座預金決済における次世代RTGSの展開

→RTGSにネッティングもどきの機能をつけた次世代RTGSを作りましょうってお話。現在のように超過準備を保有するコストがまあバラスシート使用代程度しか掛からん間は兎も角、コストが無視出来ない状況になった時に今のままでどうなのよって事は重要。昔々から思うのですが、それよりもシステミックリスクと言う観点から申し上げれば、日本銀行の決済システムという一番根っこの部分に山のように直接参加者がいる現状も何とかした方がってのは永遠の課題でもありますが。

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j17_f.htm
日銀レビュー・シリーズ (不確実性下の金融政策)

→式が沢山出てくる時点で数学の出来ない理系(おい)のあたくしは死亡確定ですが、まぁ何と申しますかこの時期に出すと燃料投下扱いにならないかねぇとちと心配ですわな。

http://www.boj.or.jp/seisaku/05/mpo0511a_f.htm
「金融調節に関する懇談会」における白川理事スピーチ「短期金融市場と日本銀行」

→そんなにややこしい話はしていないようですな。

その他、先般の経済財政諮問会議でのオモロイやり取りとかもあるんですが、本業が忙しいので時間が(汗)。ということで言い訳のように積読リストを作って置くの巻。(そうしないと時間の経過と共にネタを忘却するドラめもんクオリティ)

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2005/11/30

○昨日ご紹介した投資家懇談会の続き

続きと言うよりはご紹介し忘れたところなんですが、何と申しますかまぁ「この正直者!」でもあるのですが、トホホ感漂う意見のオンパレードがあったんですな。

30年債の増発問題についてこんな意見がござんした。

『30年債については、投資家層がまだ限られているものの、買入消却の対象にする等の環境整備が行われるのであれば、多少の発行増は可能かもしれない。』

「市場環境整備」ってのはあれかい、「最後はお上がケツを持ってくれる」ってえ担保が無いと出来ないってえのかい?という印象を与えてくれるご意見で、誠に頭の下がる思いでございます。現実はそうなんだけどぬけぬけと発言が出てくるところが正直者と申しますか・・・・

まー確かに現在の国債流通市場でも日本銀行の国債買入の対象銘柄になっているものとなっていないものでは「最終処分場」の有無ということで価格形成が妙だったりします。あんまり表に出てこないけど、2年国債なんかはその傾向が顕著で、一頃は平気で銘柄間で逆イールド(当然オペ非対象銘柄が嫌われて利回り上昇)となる(引値は揃えるんですけど、笑)ような事態が起きたりしておった訳ですな。

そんな事ですから、最終処分場(失敬)があると流通市場が整備されるってのは現実に即しますとその通りではありますが、その「お上頼り」ってのを堂々と表明しちゃう所が何ともこう情け無いお話ですなあって思うのでした。

つーか昔は日銀の国債買入って全銘柄対象じゃなくて、一部の銘柄(指標と旧指標銘柄主体)だったんだぞ。何でもかんでもケツ持ちしてくれって何だかな〜と年寄りのあたくしは思うのでございました。


ついでに申し上げますと、発行が始まって20回債しか出てなくて市中流通額も大したことの無い債券を何で財務省が買入消却しないといけないのかが意味不明。意見を言うのは自由でしょうが、一応投資家の中から厳選された代表として出席してるんだから、買入償却制度の趣旨を考えた意見をお願いしたいものでございます。

ちなみにこの人だけ叩くのは一方的になりますんで、同じ議事要旨の中で理財局の中の人からこんな話があった事を伝えておきましょう。何でもかんでも「お上頼みかよ!」って感じですなあ。

『実際にマーケットメイクに当たっている証券会社の間には、マーケットメイクする際の最終的な担保として30年債も日銀国債買入オペの対象とすることを求める意見が強く、市場の立ち上げ時期にある30年債をバイバックや日銀オペの対象とすることが、流動性の向上に寄与する面があることも踏まえて対応していく必要があると考えている』

いやはや。


○OECDの話に??

と言っても報道を聞いて脊髄反射しているので、実はトンチンカンな突っ込みをしているかもしれません。その節は平にご容赦を。

朝のブルームバーグテレビでOECDの経済報告に関して報道されていましたが、その中で量的緩和政策の解除に関して「早期解除は長期金利の予期せぬ急上昇を起こすリスクがあり慎重に対処すべき」というお話になっていたそうな。CPIが1%くらいになるまで解除待てって話に関してはまあ兎も角として、その長期金利云々の理屈はちと違いわせんか?

短期金利を低位で押さえつけている間に景気が拡大してインフレ懸念まで起きるようになってくれば長期金利はより上昇しやすくなってイールドカーブはスティープしやすくなりますんで、解除を遅らせる方が本来長期金利の上昇リスクを残す事になりますわな。

で、「出口は市場が連れてきてくれる(by植田前審議委員)」のキモはその辺にある訳で、景気拡大+インフレ懸念って状況下で緩和政策を続けてれば長期金利上昇。政府方面からは「長期金利を下げてくれ」ってなもんで長期国債買え買えとか日銀に言うでしょうが、それをすると財政規律喪失懸念あるいは更なる流動性供給によるインフレ高進懸念(後者の方がでかいんでしょう)で益々長期金利上昇という素晴らしい展開が待っている(瞬間的には抑えられるかもしんないけど)ので、最後は泣きながら「日銀様長期金利上昇を冷やす為に金融引き締めして下さいお願いします」という話になって堂々金融引き締めとなる訳ですな。

ま、それは極端な例ですけど、早すぎる解除は景気減速やらデフレに戻るリスクやらを意識させるんで長期金利の予期せぬ急上昇ってのは起きないと思うんですけどねえ。OECDも何言ってるんだか・・・・

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2005/11/29

○国債投資家懇談会議事要旨

http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyousi/b171125.htm

国債市場特別参加者会合の議事要旨と比較しますと、毎度思うのですがポジショントークの見本市のような内容(いやまあ特別参加者会合も然りなんですけれどもね、あっはっは)でして、まぁ正直っちゃあ正直ではありますが、これじゃあ財務省としても参考になるんですかねえっていう気も少々致しますです、はい。

今回のお題は国債発行計画関連でして、長期超長期の発行額と変動国債や物価連動国債の発行額をどうするよって話。

長期、超長期ゾーンの増発に関して色々と意見が出ているのですが、ものの見事に意見がバラバラ。まあ意見がバラバラなのは投資家層が多様化しているということで誠に結構なのですが、もうちょっと長期的に国債発行のあり方はどうよって意見を読んでみたい気がしますな(そういう趣旨の会合だとは思って無さそうだけど^^)。

という訳で、そんな中であたくしの心に響いた意見を少々。

・『また、日銀の金融政策の変更が、今後の金融市場に対するリスクとなっていくことを考えれば、短期のイールドカーブが上昇するなかで、10年から30年にかけてのイールドカーブがフラットニングする可能性が高く(以下割愛)』

正直なご意見かと存じます。しかし量的緩和政策コミットメントの本来の枠組みを忠実に実行していれば「日銀の金融政策の変更がリスク」などと言われる事は無かった筈でございまして、まぁ何とも申しますか実に涙が出るのでございました。


・『中短期ゾーンについては、基本的には全てのゾーンについて、現行の発行額を据え置き、減額の必要があるのであれば、他のゾーンを減らすべきと考えている。』

中短期ゾーンの国債発行額に関しては、あたくしが想像(というか懸念)しているほど気にしていない意見が多く、2年債を減額しても良いのではって意見も2008年の償還集中問題と絡めて話をするケースが多いですな。

まぁ短期金利がまともに上らなくなって久しいですし、その間に中短期ゾーンの発行量が増えてきてますんで割と慣れているのかもしれませんが、過去に景気回復で政策金利の上昇懸念が起きたり、信用不安で長めの短期金利が跳ね上がったりというような時に中短期ゾーンの債券を主に受け持っていて死にそうな思いをしたあたくしから見ると、5年債は兎も角、現在の2年債の発行量はゼロ金利継続を前提にしないと消化がしんどいのではと思います。

今回もやややり過ぎ感はありましたが、2年カレント物は0.3%台まで売り込まれてしまいました。イールドカーブの手前だけ金利上昇となってくれれば発行側はそんなに痛くはないかも知れませんが、やはり起点に近い所の金利が上昇しやすいのは良くないと思うし、中短期金利は貸出金利とかにも影響するし、あんまり宜しくないと思いますがどうでしょうか。



で、もう一つのネタである15年変動利付国債関連のお話。

・『超長期債については、消化に懸念がある訳ではないが、15年変動利付債の価格形成に影響を及ぼす面があり、安定的に発行していくのがよいと考える。』

何か本末転倒の香りのするご意見ですが、まぁ15年変動沢山持ってるのね。


・『15年変動利付債 の価格下落は、イールドカーブの攪乱要因になっている面もあり、月0.2 兆円程度の減額が必要。』

そもそも15年変動利付国債自体がイールドカーブにフラット化圧力をかける商品であるという事を判ってるのか判って無いのか謎な意見でありますが、似たような感じでちと???感を催すコメントがちらほら。


・『諸外国のマーケットと比較すれば、日本国債のマーケットに占める15年変動利付債と物価連動債を合わせた変動金利物のシェアは低く、引き続き着実に増やすことが必要。』

単純フローターの検討をしていただいた方が宜しいのではないかと思うのですが、CMTなんて発行増えれば増えるほどイールドカーブがフラットして本質的に長短スプレッド(と信用スプレッド)で勝負する債券運用者の首を絞めると思うんですけれども、気が付いて無いのかな?(まぁインデックス対比でどうのこうのって話で言えば別に良いんでしょうが、インデックス自体の収益性が下がるでしょ)


・『15年変動利付債は、昨今のイールドカーブの平たん化により、価格が大きく下落し、変動利付債でありながらボラティリティも高いということを投資家は身をもって体験することとなった。一方で、証券会社が出すアスクとビッドを見ると非常にタイトなマーケットメイクがされており、市場の育成は進んでいる。』

身をもって体験することになったって正直で結構なのですが、商品性をちょっと見ればイールドカーブのスペキュレーション商品だって気が付きませんかって申し上げたくもなりますが。まさかどこぞの証券会社の推奨レポートを鵜呑みにして監督官庁うわ何おするやめrくぁwせdrftgyふ

で、証券会社が出しているアスクビットが狭いのは証券会社が過当競争モードになっているのと、何だかんだと言っても短期金利がぶれてないのが大きいと思うんですけど。そんなの相場が本格的に荒れだしたら当てになりませんぜ。


で、最後に心を打った意見は「その他」の二つの意見です(^^)。

『国債を発行していくにあたって重要なことは、長期的に低コストで出せる間に長いところにシフトしていくべきということではないか。』

『国債投資家懇談会や国債市場特別参加者会合等において、市場参加者の意見を聞くことは非常に良いことではあるが、各社の意見には、業務的なバイアスや短期的なビューに基づくものもあることから、発行体としてこれに耳を傾けすぎない方が良い部分もあるとも思っている。』

誠に仰るとおりでございます。

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2005/11/28

お題「雑感を少々+同友会の提言を肴に」

土日は基本的に緩みまくって呆然モードなので、月曜の朝はどうもこう調子が出ませんですなぁ。


○日銀法改正で恫喝ですかそうですか

えーっと、中川政調会長が話をしているのもアレでございましたが、竹中大臣様も日銀法改正がどうのこうのというご発言のようで、まぁ調子乗りすぎじゃネーノと思うのでございますが。

量的緩和政策のコミットメントをさておいて「利上げありき」でせっせと地均しを行った事が政治からの干渉大爆発を招いたという訳でして、3月とか4月辺りから文句垂れまくっていたあたくしどもの危惧が大当たりしたのは当たっても全く嬉しくないお話でございます。

しかし政府の経済成長目標達成の為に日銀が協力っていうのもちとそれは中央銀行が何で政治から独立性を付与されているかってのを判っていない(というか竹中センセイのことだから何でなのか判って言ってるでしょう。だからこそ悪質なんですが)お話でして、実に困ったものだと思う今日この頃。

金曜日は全国コアCPIが前年同月比ゼロになったわけですけれども、その数字が出た後で各閣僚から日銀叩き総攻撃モードになっている訳でして、ポスト小泉の政争ネタとして皆から叩かれるとひねくれ者のあたくしとしては何とかして日銀をフォローしたいと思うのですが、はてどうなる事やら。


○歳出削減連呼に関してどうも素直に頷けないあたくし

増税の前に徹底的な財政支出削減をしてからどうのこうのという2年後の参議院選挙を意識しつつポスト小泉の大騒ぎという風情を醸し出している昨今の騒動。いやまぁ不要不急の歳出は削減して逝きましょうというのは正論なだけに反論しにくいのですが、反論しないでいると金曜日にご紹介した日経金融コラム大機小機の風説氏のような『郵政改革の論理に従えば、郵貯簡保が集めても、税金で集めても、無駄にお金が使われると考えるのが正しい。』などという驚くべき理屈まで飛び出す訳で(苦笑)。

で、まぁ無駄な歳出を削減しろってのはその通りであっても、素直にそのキャンペーンに頷けないのは、上記のような無茶苦茶論理展開に関する違和感(というか正直言うと嫌悪感ですが、爆)と共に、昨今の小さな政府キャンペーンへの違和感もあったりする訳でございますわな。

小さな政府を標榜して先般は道路公団が民営化されて分社化された訳ですが、その間に何が起きているかと申しますと、道路公団その他の発行していた債券(財投機関債)は「債務返済に対する政府の関与がより明確になった」という理由でS&P社では承継機関の債務格付けを道路公団時代よりも引き上げている訳ですなこりゃ(日本道路公団がA+に対して日本高速道路保有・債務返済機構はAA-)。

いやー民営化して高速道路保有部門の格付けが引き上げってのが何とも香ばしい訳でして、この格付けが付与された時はまぁそういう結果になるでしょうなって話にはなってましたが、それにしてもギャグですわなあなど市場の一部では話題になってましたにゃ。

ま、一事が万事って奴で、歳出削減とか小さな政府で民営化とか標榜してはいるんですが、何と申しますか結局単に付け替えやってるだけじゃネーノとか思っちゃうので増税の前に歳出削減って話に対してはどうもこう何だかね〜って眉に唾モードなあたくしなのでありました。


○経済同友会の提言について今更ですが

「量的緩和政策からの転換に向けて」http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2005/051121b.htmlにあるのは目次だけで、そこに提言の全文があるPDFファイルへのリンクがありますのでそこから読んで下さいませ。

先日もちょっと書きましたが、日銀応援団の積りなんでしょうが、こーゆーのは贔屓の引き倒しと申しまして、まぁ困ったもんだなというところですけれども、よく中身をみるとこれがまた「???」な提言だったりするのでちょっと肴にしてみましょう。

最初の方もちとアレですが、4ページ目の「量的緩和政策の副作用」というあたりから香ばしくなって参ります。曰く、

『日本経済が正常化に向けて動き出し、金融のシステミックリスクやデフレスパイラル懸念が大きく後退したなか、緊急避難的に導入された量的緩和政策はその目的をほぼ達成したと見られ、最近では、むしろ副作用が将来の日本経済に与える悪影響が懸念されている。』

ふーんそうですか。

『すなわち、経済が正常化しつつあるにも拘らず、それに相応しい適正な金利が金融市場で形成されない状況、あるいは金利がリスクに応じた水準より低位に止まる状況を生み出していることである。金融市場における価格機能が低下していることから、資金調達者・供給者いずれにも与せず、公平であるべき金融市場のポジションが、調達者に偏る状況が生じていると考えられる。』

いやあの世の中絶賛景気回復してインフレ期待が高まり、投資需要も大発生って状況であれば短期金利がゼロというアンカーは兎も角、中長期の金利はそれなりに上昇するんですが。つーか別にそれならゼロ金利政策を実施してても正常な状況では無いという話になるんですが。

で、「公平であるべき金融市場のポジション」って何ですか?以下微妙に途中をスキップしつつ肴にしましょ。

『第1 は、債権・債務者間あるいは債務者間における、不適正なリスクシェアリングである。短期金融市場では金融機関の信用力に応じたレートが付いておらず、銀行貸出市場や資本市場でも信用スプレッドは異常とも言える縮小状態が続いている。』

それは信用収縮が一段落した後に民間分野の資金需要に対して相変わらずオーバーバンキング状態になっているとかの問題であって、金利を上げたから信用スプレッドが拡大するという議論にはならないと思いますが。

『第2 は、適正な金利収入の喪失である。経済が正常化する状況でも従前どおりの量的緩和政策と超低金利が継続され、金利水準が適正水準より低位に止まるのであれば、企業・家計にとって本来得られた金利収入が失われる恐れがある。これは、リスクに応じた適正なリターンが得られないことでもあり、上記で指摘した不適切なリスクシェアリングの一つの側面でもある。』

で、世間ウケを狙ったのか、この後に「家計部門の利子所得と利子支払いの推移」ってグラフが出ているのが笑えるのですが、いやまぁ民間セクターの不良債権問題をせっせと政府部門に押し付けて自分たちが資金余剰セクターになった途端に金利よこせと主張するその清々しいまでのツラの皮の厚さには敬服するしかございませんですわな。

だいたいからして金利を低位に抑えることによってポートフォリオ・リバランス効果を狙うってのが量的緩和政策導入当時にはございまして、その点で言えば信用収縮とデフレ期待がまぁ終了しつつある現在に到ってやっとその効果が顕在化してきたんじゃネーノって思うんですけど、そっちに関してはスルーですかそうですか。

『第3 は、財政規律の低下に伴い財政状態がより悪化することで、国債利回り、ひいては長期金利が急騰する恐れが高まることである。』

この理論が素晴らしい。

『量的緩和政策によりもたらされた長期金利の低位安定により、国および地方公共団体など公的部門は、個々の財政状態にあまり左右されず極めて低金利での資金調達(国債、地方債の発行等)が可能であった。』

『今後、財政改革を進めていくにあたり、公的部門が資金調達する際には、そのリスクに見合った金利が付される必要があるが、今のままでは、金利を通じた財政規律が不十分となる恐れがある。これによって財政赤字の削減が遅れ、わが国財政、ひいては国債に対する信認が低下する場合には、金融市場において長期金利が急上昇し、経済を混乱させる恐れがある。』

金利を通じた財政規律っていうその理屈は、銀行をシバキアゲると不良債権問題が片付いて景気が回復するという清算主義と相通じるものがあるんですが。

おまけですが、「公的部門が資金調達する際には、そのリスクに見合った金利が付される必要があるが」って件ですが、各種民営化のお話であればさっき申し上げたように格上げ現象も発生してますけどって感じですわな。


『第4 は、資産価格について、実体経済と乖離した上昇を加速させる懸念である。』

まぁここに関してはヲチが必要なのは同意しますが、そもそもポートフォリオ・リバランス効果ってそういうもんなんですし、そもそもが下げすぎだったという見方もあるでしょうし、まぁ難しいところなんじゃネーノ。

『第5 は、日本銀行の今後の政策転換が、よりドラスティックなものになる恐れが高まることである。将来、原油価格の高騰によるコストプッシュなど物価上昇圧力が高まることも想定されるが、その場合、超低金利から金融引き締めの方向へと急激な政策転換を強いられる可能性がある。』

金融引き締めができるような状況になればそれはそれで日本経済の為にめでたいと思うのですが、どうもこう心配のしすぎというか、要するにフォワードルッキングのやり過ぎではないかと存じますが。

ま、全部で11ページになるものですんで、悉く紹介していると時間も量も大杉になってしまいます。よってその他突っ込みどころは皆さん是非ご覧いただければと。

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2005/11/25

○バーゼルU関連(メモ)

22日付けで金融庁から「バーゼルU第2の柱(金融機関の自己管理と監督上の検証)の実施方針について」っていうペーパーが出ておりました。これをネタにすれば良かったのですが、不覚にも気が付きませんでしたごみんなさいごみんなさい。

昨日の債券市場では後付け理屈として、「アウトライヤー規制関連が思ったほど厳しくなかったので債券買いを誘った」みたいな話がありました。まぁ確かに思ったほどガチガチの規定じゃ無さそう(まだ全文精読できてませんすいません)ですけど、結局こーゆーのって監督官庁の運用次第でもあったりするので、だから債券買いってのもちと???かと。

それよりは、今まで早期緩和解除+金融引き締めで盛り上がっていたポジションの解消の動きの継続って所かと思いますけど、板に張り付いている訳ではないので、まーよー判らんとだけ申し上げておきましょう。

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2005/11/24

○早期解除を囃し立てるのが日銀応援団なのか

昨日は週の真ん中にある祝日というせいか、ネットを徘徊しておりますと議論があちこちで盛り上がっていまして誠に結構でございました。あたしゃー参戦しないで見るだけですけど。

で、まぁ毎度お馴染み本石町日記さんが、前田全銀協会長(みずほFG社長)の「量的緩和早期解除はいかがなものか」発言に関連したエントリーを挙げていまして、「前田発言を採り上げて経済同友会提言を採り上げないのは日銀批判の為ですか(意訳)」という突っ込みに関連して議論が(休日なのに)盛り上がっていて中々でございました。→http://hongokucho.exblog.jp/3809042/

その中で頷くコメントはハンドルネーム「dosanko」さんのものでして、勝手に引用しちゃって申し訳ないけど、心に染みたので。

Commented by dosanko at 2005-11-23 23:09
私自身もそうですが、日銀のためを思えばこそ批判的にならざるを得ないという局面もあるということだと思います。じっさい、いまの局面で解除を囃し立てることが日銀のためになるとはとても思えません。失敗したときのリスクがあまりにも大きいからです(それこそ日銀法再改正もありうる)。その意味で同友会などただのおっちょこちょいとしか思えません。
(引用終わり)

いやまったくその通りです。早期解除を囃し立てる日銀応援団の皆様は如何お考えでしょうか?


話は全然変りますが、火曜日に久々に総裁会見突っ込み砲撃を行っておられたbewaadさんのエントリーに銀行ALM関係者を自称する人が妙な突撃の仕方をしておりまして、何と申しますか、ろくに理解しないままでただのアンチリフレだった昔の自分もあんな感じだったのかなー(ブログなんて便利なものは普及してなかったので突撃する場所もあんまりなかったけど)と思うと別の意味で何というかムズムズ感がするのでありました(^^)→http://bewaad.com/20051122.html

ま、あちこちで盛り上がっておりますわな。またぞろ日銀に注目が集まっている証拠でもあるんでしょう。

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2005/11/21

○15年変動利付国債続き

金曜に実施された国債市場特別参加者会合(昨日懇談会とか書いちゃいましたが間違いです)。議事要旨に関してはおそらく今朝の9時前にはアップされるのではないかと思います。

で、ヘッドラインだけ見たんですが、案の定15年変動利付国債に関しては「ニーズが減衰しつつあるとの見方で一致」ということになったようです(正確には議事要旨参照されたし)。まぁ現象としては全くその通りなのですが、金曜も申し上げたように前回また増額したばかりで今回減額ちゅうのも何というかトホホ感を催しますわな。

しかも前回の会合では『15年変動利付債については、引き続き全体の発行の中の一角を占めるのは間違いないはずであり、今後どういったマーケットに育てていくのかという点を明確に示していくことが必要。』なんて勇ましい意見も(イールドカーブ考えるとここから先ちょっとやばいんじゃネーノという意見もありました。為念)出ていたのに、1ヵ月後には全員一致でニーズ絶賛大減衰という有様。まぁ市場はいきものと言えばそれまでですが、市場参加者ちゅうのはまぁ勝手なポジショントークの集団でもありますわなあと、お前が言うなといわれそうですが(爆)、思うのでありました。市場の声を全然聞かないのも困りますが、全部を全部聞いてあげる必要も無いと思うんですけどね、あたしゃ。

金曜日は余りにも悲惨な15年変動国債入札に呆れてつい勢い余って導入当時の人たちをやり逃げ呼ばわりみたいな発言しちゃいましたが、当時のメモとか資料とかを引っ張り出すと、別に導入当時には「金利上昇ヘッジ商品」とは銘打って無かったようで(あたりまえですが)関係者の方には大変失礼致しました。

どこぞの業者が勝手に宣伝したとか、その後(ここ1年くらい)のご指うわなにおするくぁwせdrfとか、バーゼルU対応とかで「経済的に必ずしも正しくないニーズ」がアフォのように発生して、今般のような発行量になってしまった訳ですが、まぁ買った人の自己責任ではあるのですが、ご指導云々に関してはちょっとどうにかならなかったのかと思う次第。

イールドカーブにスペキュレーションをするという商品性格上、バカスカ発行増額して良かったのかとか、金利上昇ヘッジ商品という変な誤解をしたまま走っていて良かったのかとか。まぁ商品というか制度の運用面には問題なしとは言えない訳でして、設計した時にその辺までちゃんと後に伝える必要はあったんでしょうな。おなじみの「前後不接連」って奴ですわな。

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2005/11/18

お題「変動15年国債の悲劇(何度も)リターンズ」

昨日「トピが1500抜けませんなあ」と言った途端に1500抜けということで、誠に結構なお話なんですが、もしかしてあたくしが相場神への道を歩んでいるのではないかと思うとそれはそれで困るというものでございます(笑)。

華麗にスルーした15年変動利付国債の入札なんですが、入札は「おーのー」状態でございましたので、あまり細かい値動きまではフォローしてませんが状況メモに雑感なんぞを。

○安値99円40銭ですかそうですか

前日引け時点でα値ベースで73くらいだった新発変動国債ですが、また例によって例の如く事前の先回り買いだか何だか知りませんが、少々仕掛けっぽい動きがあったらしく前場の引けでは発行α=75に対して100円の出合い。

で、まぁさすがに何ぼなんでも買いが来ますわなぁって事で入札の事前予想は100円からちょっと下くらいっすかねーって感じでやっていたのですが、平均落札価格99円96銭はまぁ良いと致しまして、最低落札価格が99円80銭で按分が95%ちょっとと80銭の札が殆ど入っちゃいました状態というヘロヘロの結果。

落札結果発表直後から99.90−99.80と平均落札価格なんぞはさっくりと陥落しているのはまぁ仕方無いとして、最低落札価格の80銭も割り込んでしまうと「ああしょーがねーなー」ってなもんで一旦外しの動きがでてしまって、何と安値99円40銭。そんなにイールドカーブがバタバタ動いた訳でもございませんが、まー需給って事で勘弁なんでしょうが、それにしても一日で上って下がってかよって感じです。さすがに50銭割れからはもう一段の実需買いもあったようなんですけれども。(引けは70銭近辺だったような気がする)


○お腹一杯だったのですね

何度か申し上げているように、この商品は「長期金利上昇への備え」というお話になっておりまして、一昨年、昨年とあった「景気回復期待で早期量的緩和解除観測相場(あるいはVaRショックに捏造された武藤ショック相場とも言うのですが)を受けて「銀行ポートは金利上昇への備えをしましょう」モードとなった上に、バーゼルUにおけるポートフォリオの金利ショックに対するoutlier銀行認定のメソッドも影響して銀行業態中心にニーズ大爆発。量的緩和政策のコミットメントがビハインド・ザ・カーブの性格を持つ事から「景気回復での金利上昇は長期金利から」という意識もあったかと思いますが。

ところが、2ヶ月前の前回入札以降ご案内のように地均しモードになってしまい、債券相場が中短期金利主導での金利上昇でイールドカーブはベアフラット化というこの商品にとって最悪の展開。もともとが「ヘッジ商品」という触れ込みでもあるのでそうそうぶん投げる訳にも逝かなかったんでしょうな。どーせポートでもリスク管理上は時価評価してるんでしょうから持ってる中短期国債中心のポートはいかれた上にアンダーパフォームだわ変動国債はいかれるわと涙涙の展開であったんでしょう。

で、まぁそれなりに警戒モードではあったんでしょうが、結局入札は思ったより低調で入札後ボロボロという状態(最後は少し持ち直しましたが)になっちゃいまして、この入札がそーゆー形にならなければ(例えば低調であってもそこから買いが来て下がる事も無しとかね)良かったのですが、この入札あんどその後の状況で「おーのー」感が漂う形になってしまいましたわな。

ということで、どうも投資家の皆様におかれましてはお腹一杯でございますかそうですかって感じ。まぁそもそもこの商品って始まって日が浅く、発行はあれども償還は当分(10年以上)ございませんので(^^)、今の時点でお腹一杯とは困ったもんでございますなぁ。


○で、発行減額の話になるんでしょうが

本日は国債市場特別参加者懇談会(昔の国債市場懇)が実施されますので、15年変動国債の発行を云々って話が出てくるかと存じます。いやまぁ投資家さんはもうお腹一杯だから発行減額してくれって話が出まくるのは間違い無い所です(というかそういう話をする会合だし)し、まぁ市場の強い要望があれば来年度の発行計画に反映されるって話になるんでしょう。

それはそれで致し方ない事ではございますが、この前発行を増額(まあずっと増額が続いてたんですが)しておいて今回はおもむろに減額とは何というか大変に脱力感爆発の流れでございます。おまけにこの商品の触れ込みは長期金利上昇への備えでもありますわなってお話でもあったのに、いざ量的緩和政策の出口がどうのこうのって話になり、今までの話だったらこれからまさにニーズが高まるって時に発行減額の話になる訳で、もうこれは悪い冗談としか言いようの無い展開ではございます。

まー以前から折に触れて申し上げてますけど、そもそもこの商品の変動利付部分って10年金利を基準にして決定されるので長短金利スプレッドに対するスペキュレーション商品という性格あって、もともと金利上昇に対するヘッジになっているのかというと甚だ怪しい性格を持っておりましたが、それが爆裂した格好でご愁傷様としか言いようがございません。今後もイールドカーブと相場の位置によって発行が増えたり減ったりする事になっちゃうのかと思うと涙無しでは見ていられませんですな。正直、ワケワカメ商品のお守をする破目になっている理財局国債課の中の人たちには同情を禁じ得ません。

いやまぁ組織って面で言えばまぁこんな変な商品設計にしたから自業自得じゃんと言う所ですけど、(出た頃から市場の一部では囁かれていた)問題が噴出するまでに時間が随分経っているので中の人は入れ替わっている(と思う)のがどこぞの中央銀行の自業自トークショー(ってフレーズがツボに嵌ってしまった^^)とは大いに違う所でして、中の人カワイソスって所でしょうか。ど〜せこの商品導入した人は「画期的な新型の国債の設計を行った」っていう「素晴らしい業績」を上げたことになっているんでしょうから、まるでバブル時代の逃げ切り経営者VSケツ拭き世代の対比のような風情を醸し出して甚だアレな物を感じるのはバブル崩壊と共に金融業界に入って(その時点で相場観が悪いから自己責任ですかそうですか)ケツ拭き仕事をした(あたくしは大してしてませんが)世代の僻みですかそうですか。


○シンプル・イズ・ザ・ベスト

しかしまぁ何度となく申し上げておりますが、フローターの国債発行するのに何でしょっぱなから「イールドカーブのスペキュレーション」というような商品を発行したんだか。確かにまあゼロ金利状態の中で短期金利フロート商品を作ると要求されるスプレッドがでかくなるでしょうなって事はありましたし、短期国債の入札って奴も色々と妙な挙動をするのでリファレンス金利が難しかったという事情も判るんですが、だからと言って何もヘッジのやりようが難しく、しかも固定利付債で組んだポートのヘッジ商品にもあんまりなっていないという商品を作るこたあねーだろーにと言う事で。

何と申しますか、日銀の「金融高度化」じゃないですけれども、頭のよろしいお歴々によくある傾向なのかもしれませんが、単純化すりゃあ良い事をわざわざややこしくして「レベルの高い事をやっている」という風にしたくなるのは出来ればご勘弁頂きたいものだと思う今日この頃でございます。

いやね、やっぱりシンプルイズザベストだと思うんですよ。泥臭いかもしれないけれどもあたくしはそう思いますよ。

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2005/11/17

お題「昨日のエントリーに関連して」

昨日は「だから言わんこっちゃない」とお話をさせていただきましたが、そのお話の続きと申しますか、人の褌で絶賛大相撲と申しますか(謎)。

○政治的過ぎて自縄自縛、まさに・・・・・

田中秀臣先生のブログ「Economics Lovers Live」であたくしの拙文をとりあげて頂きまして誠に恐縮です。ってブログにコメントする前にこっちで書くのは申し訳ないのですが(汗)、思うことがコンパクトに纏まらず、結局ここでうだうだと書いてしまうの巻でございます。

当該エントリーはこちら→http://reflation.bblog.jp/entry/248259/

で、今回俄かに巻き起こった日銀をめぐる大騒動(って程でも無いかもしれませんが^^)に関して田中先生は『政治巧者の福井日銀、政治的すぎて自縄自縛へ?』というお題をつけているのですが、禿しく同感でございます。明快かつコンパクトな内容で、勢いでうだうだと冗長になるあたくし、もっと勉強しなければいかんと思う今日この頃。まぁ上記URLを読んで頂戴ませ。

『ま、日銀の政治好きな傾向が招いた自作ジエーン、あるいは自業ジトークショーということですな。』

本石町日記さんも指摘していましたが、そろそろCPIのプラス転換が見えてきたかな〜くらいの段階でおもむろに中央銀行としてのインフレファイター振りを発揮して「量的緩和解除先にありき」状態になったのが間違い(ええまあそりゃこのまま絶賛大回復して結果として正解になるかも知れませんけどね)の元としか申し上げようがございませんですな。


しかしまあ今回の一騒動ですが、以前にも申し上げたかも知れませんが、現場のトレーダーお仲間的には「日銀エエカゲンにせえ」という意見が多い(ただし、類は友を呼ぶという点をディープディスカウントしていただくと誠に幸い^^)わけでして、「期待の安定化」とか日銀が言い出すと「ひょっとしてそれはギャグで言ってるのか(AA略)」という反応(というのか?)になっておりますよってのは日銀様ご理解頂きたいものだと存じますです、はい。


○中央銀行の独立性に関連して

毎度お馴染みbewaadさんのブログ(http://bewaad.com/)の昨日のエントリーの中で中央銀行の独立性と今回の騒動に関連したコメントがございました。非常に判りやすいので思わず引用させていただきます。

『そもそも日銀などの中央銀行に独立性が一般に要請されているのは、通常の民主的政策決定過程は金融政策の決定には不向きであって、限られた専門家が国民の多数の意向に逆らってでも経済学により導き出される「正しい」政策を実施すべきと考えられているからこそ、中央銀行の独立性は多くの国において認められているわけです。』

やはりまぁ「常に」政権と政策一致云々という中川政調会長のご発言はちとスピード違反と申しますか、勢い余りすぎでございますなあと思う次第。

ただまあその後に出てくる安倍官房長官の発言やら小泉首相の発言やらというのは、昨日(安倍さん)と一昨日(小泉首相)にあたくしコメントしたように、ちゃんと読んでみると「CPIがマイナスなうちから量的緩和解除話が盛り上がるのはどうよ」程度のお話のように思える次第でして、最初の中川政調会長発言が「政策目標の独立性無し」「日銀法改正」という点でセンセーショナルだったので、騒動好きの人たちが後続発言を益々盛り上げたんでしょうな。ポスト小泉を巡るさやあて合戦もあるのかも知れませんけど。

ま〜昨日の債券相場はあっさり下落で、ドル高円安+株価指数絶賛上昇(日経高いけどトピが終値ベースで1500行かないで弾かれた形のままなのがとっても気にかかるんですけど・・・・ま、いっか)という要因はあったにせよ、そんなに盛り上がって無さげなんで、案外冷静に受け止めているのかもしれませんね(でも今朝は米債大爆騰してますからまた違うかも)。


とここまで書いてふと気が付いたのですが・・・・・

中川政調会長発言として伝えられた中に「政策目標の独立性」って話なのですが、中央銀行の政策目標ってどこでも総括的な表現(物価の安定とか)で法的に定めてますんで、そもそも「政策目標を独立して定める」という事例は有りえませんわなぁなどと下らぬツッコミを考えてしまいました(笑)。

それにしても「国民主権の下での中央銀行は、常に国民が選んだ政権と政策目標を合致させていく責任がある。」ってのは勢いで言ったにしてもさすがに如何なものかですわな。


ま、そうは申しましても、今回の問題はbewaadさんがご指摘のように、

『とはいっても現に独立性のある中央銀行が失敗したらどうするのよ、というのが今の日本の直面する状況でして、』

という事に尽きるのかと思います。


○べき論を離れて予想屋さんとしてどうよ?って事ですが

じゃあ本件のお年頃じゃなかった落とし所は如何に?って話でございますが、今の経済情勢の延長線上ということで考えた場合は・・・・昨日のエントリーで申し上げた「量的緩和解除を行ってもゼロ金利が続く」という日銀的には不利なオプション売り状態が妥当な線になるんでしょうなぁって感じです。

オプション売りと申し上げても行使されなければ丸儲けな訳(ただし本件オプション料がタダなのが泣き所ですが^^)ですから、世の中が無事にインフレ期待が沸き起こって物価がそれなりに上昇してくれれば堂々利上げできる(でも急ぐべきではないと思いますが)ので、そうなる事を天に祈るしかございませんな。政策のロジックという観点で言えば茶番以外の何物でも無いですけれども。

ま、ゼロ金利にして別の時間軸を設定するという選択肢も無くは無いですが、それでは日銀としては却っててめぇの手足を縛る話になりますし、大体からして「解除が遅れるリスクと早すぎるリスクを天秤に掛ければ早すぎるリスクの方が問題」とか言っておきながら、いざデフレ脱却が展望できそうになったらいきなり「解除!解除!さっさと解除!」と大声で連呼(元ネタ判りますよね)しちゃった素晴らしい「実績」があるので市場の方も「ど〜せまた時間軸設定してもフォワードルッキングになるんでしょ」って半身に構えると思いますし(笑、だけど笑えない)。



一番困るのは、量的緩和政策解除モードあるいは解除後に景気が循環的に減速して、何らかの要因が重なってまたデフレ傾向が強まる事でして、何せ当座預金残高の効果についてこの前の展望リポートで「危機対応の流動性需要」と言い切ってしまっただけに、打つ手が無いわけですな。またありもしない「流動性懸念」を捻り出して流動性供給しますかね(苦笑)。そういえば「鳥インフルエンザ」という絶好の言い訳が!(ちなみに、かつて日銀が当座預金残高目標を引き上げる名分に「SARS問題がアジア経済に与えるショックに対応」というようなものがございました)

しかし「ひとたびCPIがプラス転換するともうマイナスに戻るリスクなんか無いですよ景気は拡大してるんですよ何言ってるんですかあなたたちは(意訳)」というご発言(以前紹介したと思いますが)をする福井総裁様におかれましては、一番困る場合のリスクとか対策って考えてるのかな〜って心配になります。

この前の講演でも「景気の上振れ要因」に関して延々と話をしてましたが、あーた本来この状況での上振れは歓迎すべき話じゃネーノということで(-_-メ)。

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2005/11/16

○日銀叩き大会になってますが・・・・・だから言わんこっちゃ無い

昨日の安倍官房長官は量的緩和政策コミットメント3条件について「どう判断するかについては、政府・日銀でしっかり対話をしていくこと、協調していくことが必要だ」と発言したようでございます(ブルームバーグニュースより)。

13日の中川政調会長による「日銀法改正」まで持ち出して「常に」政府と一致すべしとか言い出したそりゃ恫喝じゃネーノかと言いたくなる発言よりはまぁマシですけれども、「日銀が判断する事に関して政府は当然干渉」っぽいフレーズが飛び出したという報道が出てくるのもまぁ何だかな〜。

で、なんで「という報道が出てくる」って言ったかともうしますと、同じニュースを真面目に見ていると、安倍官房長官の発言には「日銀は3条件を示しているので、そのなかで、当然、日銀が判断されていくのだと思う」っていうのもありますんで、報道する方が趣旨を微妙にアレしているのではないかという気もしますんで、判断は保留って所でしょうか。

非常に困るのは、官房長官記者会見のテキストを内閣官房のWebで見ようと思っても、肝心の質疑応答部分に関して掲載されていないこと(あたくしの調べ方が悪いのかもしれませんが)です。折角始まった「政府インターネットテレビ(正式な名前は忘れた)」の官房長官記者会見でも質疑応答部分はカットされているんで、誠に困ったものでございます。


まぁそれは兎も角と致しまして、何か消費税問題からここの所急にポスト小泉の政争モードが始まっているのではないかという感じでして、微笑の貴公子政府税調石会長が煽りを食らって抵抗勢力呼ばわりされましたが、日銀も見事に叩きの対象になってしまったという事で。

まー何ですな、変にやる気満々になって「地均し」なんぞをおっぱじめるから強烈牽制球が飛んでくる訳でして、量的緩和政策コミットメント本来の姿であるビハインド・ザ・カーブ体制でやっておけば何の問題も無かったはずでございますな。

当座預金残高目標下限割れ明文化のあたりから始まり(その前からお前は悪態をついているだろうろいうと言われそうですが)、ここもとの地均し全開モードに関してもう無茶苦茶に悪態をついておりましたが、まぁ懸念していた通り(ちとタイミングが変な気はしますが、それは政争と絡んでいるからか)のことになってしまいました。

本石町日記さんのところで、植田前審議委員のかつての発言として「出口は市場が連れていってくれる」という表現があったというエントリー(本石町日記さんの過去ログをご参照ありたし)がございましたが、量的緩和政策の解除は日銀が地均しするのではなく、あくまでも物価も上昇しだしてインフレ期待(というかこの場合は懸念という感じですが)が醸成され、誰が見ても引き締めやむなしって所まで引っ張る方が良かったですねぇという感じではあります。

一連の動きで益々日銀動きが取れなくなりましたな。ここまで拳を振り上げておいて下ろすのは権威失墜もいいところですし、緩和解除を強行して(除く生鮮食料品CPIが前年比プラスになったら強行するでしょうが)景気が減速したり、再びコアCPIがゼロとかマイナス転換したら、中川政調会長じゃないですけど日銀法改正まで逝きかねません。


こーゆー事を言うのは甚だ品が無いと承知して敢えて申し上げますが、日銀の地均しモード突入を散々煽っていた日銀周りの関係各位の皆様におかれましては、福井総裁以下の意向を尊重あるいは忖度して日銀のために良かれとお考えになられたのではないかとは存じますが、日銀のために本当に良かったんでしょうかそれはって申し上げたくなってしまいますわな。

量的緩和解除を行ってもゼロ金利が続くのであれば、「量的緩和解除をした」という結果だけ残って、経済効果としては変らず(と日銀は言ってますよね)で何かあったら日銀のせいにされるという、まるでタダでオプションを売っているような悲惨な状況になるだけなんですけど。量的緩和解除するなら短期金利を少なくとも0.25%、普通に考えれば一気に0.5%くらいまで上げても無問題って状況になってからやるもんじゃネーノって思うのですが(これは毎度記者会見で噛み付いているブルームバーグニュースの日高記者の受け売りでもございますが)、何だかね〜って感じです。

ま、CPIの安定的プラス転換まだ時間はありますので、日銀が傷つかないように何とか上手いこと一時撤収していただければと存じますが・・・・・難しいでしょうな。


○バーナンキ氏インフレ目標設定を語る

ということで、テキストを読まないといけないのですが、そんな話は朝起きてから気が付いてますので当然ながら本件はパス。インフレ目標の設定なんですが、目的は当たり前ですが物価安定であり、インフレ期待の安定化なのでありますんで、何でもかんでも金融緩和するというものではございませんわな。デフレ脱却あるいはデフレ回避に関する政策提言に対する印象が強烈なんでインタゲ導入=緩和的金融政策という妙な理解が罷り通っているのが米国市場での債券上昇の原因だったりして(苦笑)。というよりは、同日に発表されたPPIのコアが前月比▲0.3%になったこと(とかGMのクレジットがどうのこうの)の方が効いているのではないかと存じますが。

インフレ懸念とか言っている状況でのインフレ目標設定はごくフツーのインフレ抑制モードだと思うんですけど。まぁ日本の場合はCPIがマイナスのうちから量的緩和解除するぞ解除するぞと言い出す中央銀行がいるので、緩和継続の時間軸が伸びますなあって事になるんですが。

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2005/11/15

お題「盛り上がってまいりました(ただし妙な方向で)」

○要人発言で債券反発

量的緩和解除時期尚早というコメントが自民党政調会長から出たと思ったら今度は安倍官房長官が昨日午前中の記者会見で量的緩和解除時期尚早発言。

まぁ先週後半あたりからちょっと中期債の売りすぎ感がございまして、中短期ゾーンが反発モードになっていた所でもありましたので、日本株価指数の弱含みも相まって先物と中期が引っ張る形で大戻し。2年カレントものも気が付けば0.265%とほぼ3週間前の水準を回復しておりますわな。

まぁ政府キターって所で売り込んでいた人が買い戻したのもあるでしょうし、そもそも月末に出てくるCPIの数字が相当良くなるとでもいう見方でもあるのなら兎も角、ちょっと目先これ以上売り込む理由も無いんで「売らないのなら買い」って話なんでしょうな。

まぁ問題は戻った後の今日でございまして、特に週初のようにややエアポケット的な時に大動きすると、その翌日になってから会議室から売りや買いが出てくる(笑)という動きが近年目立つようでございます。戻った所で「やっぱり量的緩和解除は直ぐにはできないから中期買い」と言って大手銀行あたりが買いに来るのか「とりあえず利食い」とか言ってエクスポージャーを軽くしに来るのか次第のような気が致しますな。って当たり前ですが。


○これで債券市場が反発してしまうのは・・・

中川政調会長の発言の本来の趣旨は量的緩和政策解除に前のめりになる日銀に対して牽制するって事ではあるのでしょう(が、ここまで日銀をやる気満々モードにする前に何らかの牽制をした方が良かったんでネーノと思うのですが、まぁ日銀やる気満々モードでもう大変ですよなんて言ってるのは今までは債券市場と日銀ヲチャーだけだったって事かもしれませんな)。でも「政策目標の独立性がない」として「場合によっては日銀法改正も視野」ってのはさすがに勢いで言ったのかも知れませんが、乱暴な発言かと思われます(理由は後で)。

そういう話もあるのですが、昨日の債券市場で「おいおい」となったのはその反応(まぁ勢いというのがあるのですけどね)。政権与党から「日銀の独立性?ハァ?」「場合によっては日銀法改正!」などという発言が出てくるのは本来債券に対しては売り要因になる筈でして、まぁイールドカーブはスティープ致しましたが、何と債券相場大反発となった訳ですわな。

まぁ今までの中期売り売りベアフラット相場の反動が日柄的にも需給的にもそろそろ来るという所で発言が後押ししたというのはあるのですが、それにしても本来的に債券市場の売り材料になっても全然おかしくない発言で債券が買われるというのは、政策委員会の中の人たちはちょっと考えて頂きたいものでございます。

日銀様の熱心な地均しによって中短期債を中心に債券相場(と短期金融市場)は量的緩和解除待機モード(利上げ待機モードに関してはまだ半信半疑っぽい)になっていた訳ですが、本来の量的緩和政策のコミットメントを実施していれば、コミットメントが達成そうな時になって政府からこんな発言が出たらもう債券市場はインフレ高進懸念で売り売りですよ先生って事になる筈でございますわな。

然るに、昨日の反発にありますように、日銀が地均しをして雰囲気を自ら作っていくという、こっちから見ればジサクジエーンなのですが、政策委員会の中の人から見ると「経済・物価情勢に応じた価格形成が円滑に行われるよう配慮(総裁の講演要旨その他)」するという動きによって形成されたイールドカーブなので、昨日のような本来そりゃねーだろっていう反応を債券市場が示したという事ではないかと存じます。

ま、ここまで拳を振り上げておいていきなり梯子を外された日銀ですが、先日は政府税調石会長が抵抗勢力呼ばわりされておりまして、まぁその辺の流れからみるとちと同情を禁じ得ない(早期量的緩和解除もこの時点での課税強化策にも賛成は致しかねますが)所ではございますわな。


○中川政調会長の発言なんですが

「政策手段について日銀の独立性は認めるが、国民主権の下での中央銀行は、常に国民が選んだ政権と政策目標を合致させていく責任がある。その意味で政策目標の独立性なんてない」(実は孫引きなんですが)との事ですが、一般的に政権党が短期的視野で財政拡大→通貨膨張を指向して歯止めが効かなくなる事に対してチェックアンドバランスということで独立性を持った中央銀行が長期的視野で政策目標(物価の安定だったり、雇用の安定だったり、通貨価値の維持だったりお国によって微妙に違いますが)の達成を図るってのが、「中央銀行の政治からの独立」ってことだとあたくしは理解しております。

その理解(誤解だったら指摘してください)によりますと、政調会長の「常に政権の言う事聞きやがれコノヤロー(と言ったとは中川さんもさすがに言わないとは思うのですが、そう取られそうな報道ではありました)」というのは如何にも暴論ではないかと思うのですが如何なもんでしょうかねぇ。だいたい今の政権ですらいざ財政再建路線を始めようかと思ったら、急に政府税調を「抵抗勢力」扱いしてみたりする次第ですから・・・・・

まぁ何ですな。何度か引用してますが、この「日本経済の将来ビジョンを語る懇談会」議事要旨でも読んで財政問題の本質(民間の問題点を財政に寄せているのが景気回復の重要なファクターの一つ)でも考えましょう。

http://www.mof.go.jp/singikai/vision/gijiyosi/a160601.htm

と、いつの間にか話が変ってしまった(苦笑)。


○で、小泉首相も時期尚早発言ですが・・・・

ドル円が反応したらしいのですが、ニュースはこんな感じ

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20051114AT1E1401H14112005.html(現在はリンク切れです)

『小泉純一郎首相は14日、日銀の量的金融緩和政策の解除時期について「まだ早いんじゃないですか」と述べ、現在の経済情勢では解除すべきではないとの見解を示した。そのうえで解除の条件について「物価が(前年比で)ゼロ以上ないとね。まだデフレ状況だ」と指摘した。首相官邸で記者団の質問に答えた。』(NIKKEI NET)

よく読めば「物価が前年比プラスになってデフレ状況が解消されたら解除してよし」とも取れるので、文脈だけでは判断しずらいのですが、ど〜せ小泉首相のことですから、そんなに強力に緩和解除遅くしやがれコノヤローって言ったわけでは無いものと思われます。ニュースの出た時間が海外市場タイムで、海外市場ってのはどうも日本語での発言ニュアンスを汲み取れずに反応する傾向がより強い(国内市場でも変に反応する事があるのだから当たり前ですが)ので、まぁそれはどうなんでしょうねって感じです。

いずれにしても今日の中期債動向、注目ですな。

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2005/11/14

お題「もう完全に既定路線化ということで」

「政策目標で日銀に独立性は無い(中川自民党政調会長)」ちゅうのもまぁ金丸さんを思い出しますなぁってもんで、そりゃ一体どういう事なのよって気もしますけど、今月の月刊現代にあった論説(ちょっと人に貸与中なので詳しく覚えてませんが)にあるように、日銀の独立性が獲得されるまでに「政府に抗して狂乱物価を止めた」みたいなことがあったら、ここまで言われるこたぁ無いのかもしれませんな〜などと思いつつ。


先週金曜日には福井総裁の講演がまたまたございましたが、基本的に金融政策に関しては「量的緩和を解除する」というのが既定路線状態になっている訳でして、金融政策に関しては緩和政策解除を前提にした話になってますわな(ブルームバーグテレビ見てたら量的緩和解除してからもゼロ金利継続って言ってる人がいたのですが、まだその見方のほうが強いようですな)。まぁ何だかなと思いつつ。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0511a.htm

○量的緩和政策を総括してますが

今回の講演は基本的に前回の展望リポートを踏襲したような内容になっておりますので、展望リポートのレビューだと思って読むと吉ではないかと思います。で、展望リポートでも話題になっていた量的緩和政策の総括をまた行っております。

『潤沢な資金供給は、金融システムに対する不安感が強かった時期──大手行の不良債権処理がピークを迎え、ペイオフの部分解禁を控えた2001〜02年や、りそな銀行への公的資金注入が行われた2003年頃──においては、金融機関の流動性需要に応えることによって、金融市場の安定や緩和的な金融環境を維持し、経済活動の収縮を回避することに大きな効果を発揮しました。』

コミットメントの方はまあ良いとしまして、展望リポートではここまで個別具体的な言及は無かったような気がしますが、まぁこういう事のようですな。で、その頃に金融機関の流動性需要ってそんなにございましたっけ?というとどう考えても個別要因以外でんな物はありませんでしたがという結論。

で、このように口喧しく悪態をついておりますと、「結果的に景気が回復しているのだから無問題」というご批評を頂くのですが、例えば実験でも生産でも良いんですが、プロセスの分析が不正確なままであれば、幾ら結果が出ても「後に繋がる」事にはならんと思うのですわな。特に経済なんてのは毎度毎度前提条件(化学実験だったら反応条件ですな)が違うのですから、今まで行った政策のプロセスをちゃんと分析しておかないと、新しい前提条件に適切な対応が取れないと思うのですが。

ということで、先日の展望リポートの後に本石町日記さんがご指摘していた事と重なりますけど、いつの間にか「2003年頃には金融機関の流動性需要があった」という事に「なってしまっている」という事に関しては懸念を感じるあたくしなのでした。


○金利上昇はデフレ脱却インフレ期待によるものでしょうか?

『そもそも、「約束」に伴う量的緩和政策の継続期間は、市場参加者の物価見通しによって伸縮するという性格を有しています。最近のように消費者物価の前年比が近い将来にプラスに転じるとの見方が増加するもとでは、市場参加者が予想する量的緩和政策の継続期間は短縮しており、その結果、やや長めの金利形成において「約束」の果たす役割は徐々に後退しつつあります。このことは、「約束」の性格上、自然なことと言えます。』

まぁ何ですな、デフレ脱却からその先の物価上昇期待が醸成されれば、金利は量的緩和政策の出口を展望するので足元金利がゼロであっても上昇するってぇお話ではございますわな。

ところで、最近確かに金利は上昇しておりますが、国債市場におきましてはイールドカーブは思いっきりフラットニングしておりますわな。このインプリケーションは上記のような総裁様の話と整合性が取れませんが如何でしょうか?もしかしてやや長めの金利形成って2年金利くらいまでの話をして10年以降の長期金利に関しては華麗にスルーなんでしょうか???

ど〜みましても、2年あたりの金利は早期利上げを織り込みながらも長めの金利に関してはそこまでの物価上昇期待(懸念)を持って動いていないというお話になりそうな気がするんですけど、イールドカーブの中で自分に都合の良い部分だけ取り出して見てませんかぁ??


○ということでやる気もへったくれも無く

『今後、量的緩和政策の枠組みの変更に当っては、経済・物価情勢を点検し、「約束」で示した条件──「消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上」──が満足されたかどうかを確認していくことになります。枠組み変更の可能性は、経済・物価情勢が今回の展望レポートの見通しに沿って展開していくのであれば、2006年度にかけて高まっていくと考えられます。より具体的な時期については、今後の金融経済情勢次第であり、予断を持つことなく、適切に判断していきます。』

やる気満々というよりは最早やる事を前提に淡々と話をしているという感じでございますわな。

『将来、量的緩和政策の枠組みを変更する場合には、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、金融調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更することになります。現在も、量的緩和政策の効果は、次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきていますので、枠組みの変更それ自体は、政策効果について非連続的な変化を伴うものではありません。その後は、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済の実勢に見合った金利水準に調整していくことになると考えられます。』

で、まぁこの期間についての見方が色々と分かれている所だというのが現在の金融市場といった所ですわな。で、ゼロ金利政策が暫く続くという見方も多いのですけれども、最終的に金利水準がどうのこうのという話をしている事を踏まえますと、そんなにゼロ金利が続くと考えるのはどうかと思いますし、量的緩和終わってもゼロ金利だったら何のために解除したのか(日銀的に)訳判らんと思うのですが。

で、実はもう一つ気になってるのは前回の展望リポートからそうなのですが、「経済の上振れ要因」に関してやたらと事細かに言及するようになった事。もちろん展望リポートは毎回先行き見通しに関して「上振れ、下振れ要因」に関して言及しているのですが、前回のレポートでやや上振れ要因を強調しだしたなぁと思って見ておったのですが、今回の講演でも上振れ要因に関して細かく話をしております。細々とはご紹介しませんが。


○うーん

物価見通しに関連して。

『ただ、2003年度以降、既に2年以上の間、潜在成長率を上回る成長が続き、需給バランスが改善してきたとみられる割には、物価の反応は小幅なものにとどまっています。生産性の上昇と賃金の抑制のもとで、製品やサービスを作り出すために必要とされる単位あたりの人件費──ユニット・レーバー・コスト──が低下し、物価を上がりにくくする方向に作用してきたことが主な要因と考えられます。ユニット・レーバー・コストの先行きについては、賃金は上昇するものの、生産性の上昇による低下圧力は続くとみられるため、近い将来、明確な上昇に転じるとは考えにくい状況にあります。このため、物価の上昇ペースが加速していく可能性は低いと考えています。』

この後こちらでも上振れ要因について言及してますが、「加速していく可能性が低い」のであれば何も急いで量的緩和政策を解除しなくても良いと思うのですが、まぁ福井総裁としては、インフレ期待が加速してから引き締めに転じる為には今のうちに金利政策に戻しておいた方が後でやりやすいっていう意識なんでしょうな。

それはそれで一つの考え方だと思うんですが、それはCPIがプラスに転じてから考えればいいことであって、何もマイナス継続中の時にそんな話をするこたぁねぇだろうと思う次第。つーかゼロ近傍のプラスだったら何かの拍子にまたマイナスになるかもしれないんですけど。


そういえばしょうも無い雑談の類ですが・・・

『以上が、景気の見通しに対する下振れ要因ですが、上振れの可能性についても頭に置いておく必要があります。』

で、マインドの話になるのですが。

『日本経済の先行きに関する国内の見方は、10年以上にわたる低成長の経験もあって、どうしても悲観的になりがちですが、海外では、英国のエコノミスト誌が『日はまた昇る』と題する特集記事を掲載するなど、日本経済の先行きに対する楽観的な論調が目立ってきているように思われます。』

つい数年前には日本は滝壷逝きとか何とか言ってた雑誌様がこの期に及んで「日はまた昇る」とか言い出すと「えー後追い指標ですか〜持ってあと1年かな」などとつい思ってしまうあたくしはひねくれ者ですかそうですか(笑)。


まぁそんなことで。今回の講演は先ほど申し上げたように、展望リポートの判り易い説明って感じですので、まぁ現在の日銀を見る上では読みやすくて良いと思いますよ。

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2005/11/11

○甘いささやきに乗ってませんか?

という小見出しで反応できる貴方は日銀ストーカーの資格十分です。

最早「年末から年始に掛けてコアCPIがプラス転換」→「先行きのCPIは既にプラス予想なので3条件成就」→「解除!解除!さっさと解除!」というのが織り込まれてしまっているので実にアレなのですが、どうも不気味なのは谷垣さん以外が妙に物分りが良さそうに見えること。

経済財政諮問会議には出席してますが、竹中さんは金融絡みの政策ラインからは外れた格好ですし、与謝野さんは福井総裁と日銀法改正時代の「同士」だそうですし、何か日銀に対する風当たりが妙に弱い(一部ヲチャーと、地均しに振り回されている現場のディーラー始め担当者からの評判はどうでも良いので^^)気がするわけですなこりゃ。

でも消費税上げがどうのこうのとか定率減税廃止(年末調整見た瞬間にガックリ来るんだろうな〜)とか楽しい財政再建路線はせっせと実行方面に向かっている訳で、下手打つと金融緩和解除と財政健全化で国民負担増路線のダブルパンチの悪寒も。

ま、それだけ景気の回復に自信があるという事なのでしょうが、ここでどっかの誰かさんじゃないですけれども、陰謀論を逞しくするとこうなる訳ですな。「日銀に量的緩和解除をさせる」→「増税(減税縮小)路線は継続」→「景気失速」→「緩和解除のせいだ!日銀の独立性はケシカラン!」→あんまり想像したくない結末・・・・

というようなアフォなことは無いと思うのですがねぇ・・・・・

ちなみに、さっきの「甘いささやき」ってのは2004年7月13日の総裁記者会見でのお言葉でございます。昨年7月15日のドラめもんでご紹介致しましたんですが。

(昨年7月13日の総裁記者会見より)
『(問)先程、何としてでもデフレ克服が必要だとおっしゃっていたが、景気の実態は非常に良いし、短観も非常に良い数字が出ている。デフレと言ってもCPI変化率はマイナス0.1%程度の状況で推移しているのだが、「デフレを克服しなければならない」とそこまで強く言うほどの問題を抱えているとお考えか。』

『(答)その甘いささやきには決して乗らない。やはり、将来のことを深く考えると、物価がマイナスに陥って国民の皆様が苦しい状況を再度経験しなければならないという不幸な状況をもう見たくないという気持ちが非常に強い。』
(ここまで)

ちなみに、昨年7月16日のドラめもんではあたくしこの記者会見に関してこんな事を申し上げておりました(^^)。

(昨年7月16日に書いたドラめもんより)
自分の発言意図を強調したいためにやたらと形容詞や副詞を多様する傾向にある日銀総裁のホンネはやはり「今の量的緩和はやりたくないけど我慢してやっている」って事なんでしょう。別に淡々と説明すればいいと思うのですが、自分の意図が市場にきちんと伝わっていないという認識があるために、自分の発言意図を強調しようとして却って裏読みされるという状態。

「市場との対話」ってのは市場を自分の意図する方向に持っていこうとする事ではないと思うんですが、どうも市場に対して何か働きかけたいという意思が見え隠れするんですよ、日銀総裁の言動を見てますと。
(ここまで)

ま、CPIがプラス転換したからって直ぐに飛びつくのはどうかと思いますが、日銀オープンリーチ状態になっておりますんで、今さら後戻りもできない状況になってますんでどうなる事やら。まだインフレ期待って状態までにはなってないと思うんですけどねぇ。。。。

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2005/11/10

お題「長期国債買入と金融調節の柔軟性(昨日の補足)」

今日の話はかなりマニアックな気がする。マニアックな割には自分で書いていて完全にクリアカットになっていない自覚症状がありますので突っ込みキボンヌ。

○長期国債買入と金融調節の柔軟性

昨日になって遅ればせながらご紹介した先月31日の福井総裁記者会見に関してあたくしこんなことを書いてみたのですが・・・・(以下昨日の再掲)

『しかし、その際に重要なことは、金融調節の柔軟性を確保する観点である。その観点から、銀行券発行残高を上限としてオペレーションの額に制限を設けてきた。引き続き、こうした考え方に沿って実施していく方針である。』

成長通貨供給だから銀行券発行残高が上限(その説明もアレですがまぁ兎も角)であるという話じゃなかったっけと思いますが。柔軟性確保するなら上限設けない方が良いんじゃないでしょうか(苦笑)?

(以上昨日書いた話ね)

で、何か別の理屈があった気がするとか思いなおしまして、人に聞きつつ考えてみたのですが(汗)、この柔軟性確保って意味は「本来短期のオペレーションで対応すべき物を長期のオペレーションで対応すると、オペレーション上不都合が生じる可能性がある」って事なんですな。謹んで昨日のあたくしの発言を撤回致しますが、その理屈はちゃんと説明してくれんと理解されないと思う希ガス(日銀ストーじゃなくてヲチャーを詐じゃなくて自称するあたくしもついうっかりの巻ですから、ってそりゃあたくしの頭が弱いからですか)。

ということで、何がどう不都合なのかというお話をば。正直、妙に単純化している嫌いがあるので、変な点はご指摘下さいませ。

日銀のB/S(という話を始めるとまた以前ややこしく論議を呼んだお話になるのですが、本石町日記さんの過去ログでもご参照下さいと書いて華麗にスルー)で考えると銀行券(日銀券)ちゅうのは日銀の長期負債になってまして、その長期負債の見合い資産として長期国債を持っているという次第であるというお話になりますわな。

で、その日銀が長期負債以上に長期資産を持つと言う事になりますと、その分短期負債(だから今だと売出手形とかになるんですかな)を発生させるという理屈になるのですが、まぁそこまでは良い(やや良くなさそうだが華麗にスルー)と致しまして。

何らかの事情でこの状況から吸収オペレーションが必要になった場合(インフレ高進で引締必要とか銀行券が減るというテクニカルな場合とかですか)に何をするかちゅう事を考えますと、

1.短期の調節で回収するとただで無くさえ銀行券オーバー分の売出手形がある所で回収となるので、短期回収オペレーションのロールオーバー大会になって短期金利の乱高下要因になりそう(つーか、長期国債買いながら短期の回収というのも間の抜けた話)

2.長期の調節で回収を対応するとなると、それは長期国債売切(または買切をいきなり停止)なんで、長期金利が乱高下要因

という事が想定されるので、機動的に動かしやすい短期のオペレーションで対応すべしってことから「柔軟性の確保」って言ったんですな。資金の短期的繁閑を調節する事を考えると、最初に述べたように資産に長期国債が沢山あって負債に銀行券と売出手形が入っているという段階で、短期のオペレーションに制約を受ける形になるのでそもそも柔軟性が確保できていないのですけれども。

普通の会計と一緒くたにして説明するのはかなり乱暴ですけれども敢えてなおざっくりと概念的な話をしますと、、日銀券見合い以上に長期国債を保有しているという図は、保有している長期資産に対する長期負債が不足していて短期負債まで食い込んでいる状況と言う事になるので、言ってみれば設備投資のファイナンスを短期借り入れのロールオーバーで対応しているの図(あっしが昔勤務していた銀行では「固定長期適合率が100%未満」って言い方してたですな)ということで・・・・却ってややこしくなったか??


とまぁこういう事を書きますと、日銀が国債を買いまくった分を回収する必要がどこにあるのかとか、日銀が国債を買い捲れば銀行券は増えるのではないかとかいう指摘もやってくるのですが、それに関するお話は、だいぶ前にbewaadさんとマーケットの馬車馬さん(http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/)がブログで議論をしておりましたのでそのあたりをご参照ありたしとまたもスルーするのでありました。

#うーん、考えながら書いていたので、他の雑談を書く時間がまたもなくなってしまった。だいたいこれってネタとして突っ込みだすとややこしいですな。

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2005/11/08

○その先まで周到に用意しているようで

先日の日銀レビューでは「CPIの上方バイアスは以前よりも大したことがありませんな」というのが出ておりましたが、その次に出てた日銀レビューは「新しいケインズ経済学の下での最適金融政策分析:裁量とコミットメントの意義」というお題でして、またまた企画局のお方(三尾仁志さん)のお名前で2日に日銀Webにアップされています。
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j15_f.htm

で、こちらの内容なのですが、恥ずかしながらにあたくしの理解能力ではご説明致しかねますので(滝汗)華麗にスルーしますが(おい)、どうもここの所何回か日銀レビューの形で出ている金融政策の理論的なお話をしているようですな。まぁ色々と先を見据えて企画局におかれましては理論武装に余念が無いという所なのでしょうか。本ペーパーの末尾にはこんな記述がございます。

『こうした限界を意識しつつ、政策運営上の諸問題を理論的に整理し、現実の政策運営に役立つアイディアを抽出する努力を重ねることは、金融政策運営の理論的基礎を固める作業の一環として重要であると考えられる。』

願わくば結論先にありきの理論固めという事になりませんように。


○物価に黄信号(か?)

というネタになると早速反応する某大手証券の有名ストラテジスト(あたくしはこのお方が自分の経済というか相場見通しに都合の良い話が出ると物凄い勢いでレポートを出す姿がまるでネタ芸人状態なんである意味感心してるんですけど^^)様が昨日すかさずレポートを出していた(顧客向けレポートで一般公開されてませんので悪しからず)のですが、本石町日記さんのところでも電力料金や診療報酬のお話が(^^)。

http://hongokucho.exblog.jp/3739484/

まぁエントリーをご覧いただければと。で、あたくしも日銀の勢い見てるとCPIが年末から来年にかけてプラス転換しようものなら(市場で言われている3ヶ月じゃなくて)2ヶ月くらいであっさり量的緩和解除しちゃいそうで非常に懸念している訳です。何せ暫く前の記者会見で福井総裁は「足元の物価がプラスで先行き見通しがプラスならマイナスに戻るって事は無いでしょうあんた何言ってるのアフォですか(激しく意訳)」というようなコメントをしていた(ご紹介したと思いますが)位ですからねぇ・・・・・

#コメント欄で「家賃が上昇」ってあったのが激しく「?」なのですけれども


そんな訳でまたまた先週月曜(31日ね)の総裁記者会見レビューが後回しになってしまいました。こりゃ証文の出し遅れもいい所なんですが、バーゼルで何か話をしてたみたいなんでその話と一緒に(^^)。

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2005/11/04

さて本題。総裁記者会見のお話の前に水曜日にご紹介したCPI上方バイアス問題に関する日銀レビューシリーズに関しまして、読者様からメールを頂きまして大変勉強になりました、ありがとうございます。で、ご本人の許諾を頂きましたのでメールの内容をご紹介したいと思います。


○以前のレポートはこうなっていた訳ですが

以下『』は頂きましたメールからの引用でございます^^

『いささか血圧が上がったのは、CPIの上方バイアスについて「10年以上過去の1990年基準指数について、筆者自身が行った0.9%という推計値がある」などと、遠い過去のように書いていること。』

ということで、文体まであたくしと同じようにしていただきまして(^^)、大喜びのあたくしなのでありました。って話じゃなくて、水曜にご紹介した日銀レビューはまさに白塚さんが書いていまして、CPI上方バイアス問題に関しては先日の国会で山本幸三議員が過去の白塚さんのペーパーなどにも言及してましたですね。で、その辺は「遠い過去」にして早速新しいペーパー(結論は「CPIの上方バイアスは絶賛縮小ですよ先生(意訳)」ですわな)を出したちゅう事なんでしょうね。

『ちなみに、この分析はhttp://www.imes.boj.or.jp/japanese/all99/abst/me17-3-3.htmlで、アップデートされているようです(0.9%の結論は変更なし)が、言及なし。』

このimes.boj.or.jpというあまりお馴染みでないドメインは「日本銀行金融研究所」のものでして、良く見ると過去の寄稿論文や講演なども掲載されてます。http://www.imes.boj.or.jp/japanese/fkouen_index.htmlに出ている過去のお題を見ていると「おうおう」と思うものが転がってますが、それはまた後で読むとしまして。

で、上記の分析なんですが「Measurement Errors in the Japanese Consumer Price Index」というお題で本文は英文34ページ(表紙含む)ですのでまぁ要旨だけ目を通すということで。

『この分析をもとにこんなことhttp://www.imes.boj.or.jp/japanese/kouen/ki0103.htmを書いたりして当時の総務庁統計局を論難していたhttp://www.stat.go.jp/data/cpi/3.htmのに、急に遠い過去のことのように言うのは何とも...』

こちらのリンク先資料はどちらも日本語ですのでご安心下さい(^^)。


○で、色々とツッコミ

『だいたい、0.9%という推計値は正しかったのか。2000年基準への変更の際の乖離が0.26%だったことをどう考えるのか。今回は「上方バイアスは縮小している」などと定性的なことしか書かずに数字を出さないのは何故なんだなどと問いつめたいところです。』

皆で小一時間問い詰めにいかないといけませんな。正直この辺のことに関してはあたくし思いっきり不勉強もいいところでして、あのペーパーを単独で読むと「ふ〜んそうなんですか」と思わず納得しかねない(何となく怪しげだと思ったからご紹介したんですが^^)ので、突っ込んでいただける人がいると非常に勉強になりますです。感謝感激。


『くだんの論文は読み返すたびにムムムなのですが、1点だけ』

ということでとりあえず突っ込み場所その1について。

#代替効果によるバイアスは、相対価格の変動が大きくなるほど拡大する。インフレ率が高いほど、相対価格の変動も大きくなる傾向があるため、一般論として言えば、低インフレ国は高インフレ国に比べ、代替効果によるバイアスは小さくなる傾向があると考えられる#

という部分が当該論文にございましたが、この点について色々と疑問というかツッコミをして頂きましたので、以下ご紹介します。『』でくくるとちと読みにくいので頂いた形式そのままで行きますね。

?高インフレ国ってどんな国?過去20年間、ディスインフレという言葉しか聞かないんだけれども。デフレでなければ高インフレということでしょうか。

?インフレ率が高いほど相対価格の変動も大きくなるって本当
?まあ、そういうことは言えるとは思うけれども、インフレ率が高くなったら相対変動などゴミみたいなもの

?そもそも、CPIバイアスの大部分(0.9%中0.7%)は品質変化要因だったはずなのに、何で代替要因がトップにくるの...。
 
ちなみに品質変化は最近こそ激しいはず。それ故に、代替要因もある。

(ここまで頂いたメール)

ちゅうことで、まぁツッコミどころ満載のようですので、一つ宜しくです(誰に?)。


○結論先にありきですからねぇ

『平成11年当時、CPIがマイナスに沈んでいるときに、これでもCPIには上方バイアスがある(もっと下がっているはずだ)と言っていたのですから、当時の日銀の物価観たるや。。。(今も本質的には変わっていないようなので尚更ですが。)』

ということで、結論先にありきで理屈後付けの香りが漂いまくる今日この頃でございますが、それはそれとして、日銀はどうも望ましい物価水準が本当にコアCPIベース(もしかしてコアじゃないのか??)でゼロと思っているのではないかという気もしてきました、おー恐ろし。

ってあたくしも昔は「ゼロインフレ」という言葉というか宣伝文句にに幻惑されて「物価上昇率がゼロなのは良い事だ」など思っていた時代もありましたので、インフレを極端に忌避するメディアとかを何とかしないと行けないですなぁなどと考えるとちょっと大変だなぁと思う次第です。






2005/11/02

お題「地均し理論武装編」

いつものパターンですと今日は総裁記者会見なのですが、今回は既に展望リポートを見た瞬間に「既定路線キター」状態になってしまい、本質的な興味は失せてしまった(ネタとしての意味はあるが)ので、記者会見分析(笑)は明日じゃなかった明後日にでも。

何せ昨日ご紹介しましたように、4月の展望リポートで量的緩和政策の時間軸効果について「より強い緩和効果を発揮していくと考えられる」と言ってたのに地均しはするわ、公式文書で堂々(記者会見などでは何度もその話になっていましたが、こうやって公式文書になったのは初見の筈)と「量的緩和は現状では実質的にただのゼロ金利」というコメントをしちゃうくらいですから、まぁ量的緩和解除をやりますよ話しかど〜せ無いんでしょって所ですか。


○今度は消費者物価指数の上方バイアスに関して

で、毎度お馴染み日銀レビューシリーズで昨日投下された燃料もといレポートは企画局の白塚氏執筆によるものでございます。で、毎度の事ですが、「レポートで示された意見は執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません」ってヘッジクローズ入り(そりゃ日銀の最高決定機関は政策委員会ですから当たり前ですが)なんですけど、調査統計局とかの人が書くならまだしも、企画局という肩書きで「日銀レビュー」ってだされて「それは日銀の見解かどうかは存じませんが」と言われましても思惑は呼ぶでしょうなぁ。

http://www.boj.or.jp/ronbun/05/rev05j14_f.htm

上記URLはサマリーのご紹介となっておりまして、そこの先に全文のPDFファイルへのリンクが張ってあります。7ページしかございませんので、ご覧になるとヨロシアルね。

で、あたくしはさっくり手抜きでサマリーを拝見。

『消費者物価指数(CPI)は、消費者の購入する財・サービスの価格変動を捉えるための総合的な物価指数として広く利用されている。現行CPIは、すべての家計が基準時点の財・サービスのバスケットを購入し続けると仮定して、物価変動を捉えようとするものである。このため、相対価格の変動や新製品の登場・旧製品の消滅などに伴う消費者行動の変化を十分的確に反映させることが難しく、上方バイアスが存在すると指摘されてきた。』

ふむふむなるほど。

『しかしながら、わが国では近年、2000年基準改定においてパソコン等新製品の取り込みが行われ、またその後も、プリンタ、インターネット接続料等が新たに採用されるなど、統計作成当局による指数精度向上への対応が続けられている。』

ということで言いたかった結論。

『そうした結果として、上方バイアスは、縮小方向にあると考えられる。もっとも、CPIの上方バイアスについては、その大きさを固定的なものと考えることは適当でなく、統計作成法の改善、基準年からの時間的経過や経済環境の変化によって変動するとの視点を持つことが重要である。 』

サマリー部分(=Webで思いっきり目に付く所)に書くのは刺激が強いとご判断したのかど〜かは知りませんが、本論の「おわりに」という部分ではこのように結論付けております。

『CPIは2000年基準改定において、指数精度の改善に向けて意欲的な対応がなされた結果、上方バイアスも縮小している。このため、上方バイアスの存在自体は、物価情勢の判断にさほど大きな影響を与えるものではなくなってきていると考えられる。』


暫く前に「テーラールールがどうしたこうした」って日銀レビューがでて「適正金利論議キター」と一部の日銀ヲチャー界隈(そんなものがあるのかどうかは知らんが)で大いに話題になっておりましたが、今回は「CPIの上方バイアス物価情勢の判断にさほど大きな影響はございませんが何か?」という事で、CPI基準改定を物ともせずに我往かんという所(とは関係ないというのが日銀のご回答でしょうけど)でしょうな。実に勇壮すぎて涙が出てしまいます。

ちなみに本石町日記さんの所では展望リポートにあった「適正な金利水準」というくだりに関して2000年と同じ事やってますとご指摘が。


本論に関しては本文の方をご覧頂ければと。基本的にあっしのような初心者が読んでも判るように書いてあります(と思う)ので日銀レビューシリーズは毎回読むようにはしております。


○ところであたくしのシロート考えなのですが

もともとがトレーダーのあたくしは興味はあっても結局シロートなので物価統計がどうのこうのって話になるとあまり突っ込めないのが悲しいのですが(ってちゃんと勉強しやがれということですな)ちょっと気になった所。

CPIの上方バイアスの他にある問題として、統計作成技術上の問題点として、なお残るものを列挙しているのですが、その中で家賃の問題に関して触れております。この部分読んでいると「うーむ」と思ってしまうのですが。

・民営家賃には継続賃料のみを対象としており、新規賃料が含まれていない
・帰属家賃の価格データは民営家賃の調査結果が使用されているが、民営借家と持ち家では平均的な質が違う
・しかも帰属家賃はCPIに占めるウェイトが高い(2000年基準ベースで13.6%)

ほほうなるほどと思うのですが、あくまでも個人的体感的なお話をすると、民間借家の家賃ってここの所下がってきてるような気がするんですけど。個人的に一番判りやすいと思うのは入退去コストが比較的安いので結構出入りの多い公営(や公団、家賃が中位以上の物件の方が観測対象としてはオモロイ)住宅の空室状況ですが、これは別にデータが公表されている訳でもないので定点観測あるいは中古住宅空室募集状況(公団はネットで受付してます)を見るんですが(笑)。ご存知のように家賃をあまりいじらない(最近は都心の高額物件中心に家賃を少々下げたらしいのですが)ので、周囲の相場が動くと入居率が動くと言う判りやすい構造になっております。

どうも家賃が下がっているのか需給バランスが崩れているのかは良く判りませんが、まぁ最近は都心の物件を中心に空きが絶賛増加中です。確かに都心部では土地価格は上昇してるんでしょうけれども、そりゃ高度利用によって上っているという面もあると思うのでして、個別家賃はどうよって気もしますわな。

だからどうだと言われると漠然とした感覚で恐縮なんですが、ちと気になったもので自分の備忘録代わりに書いてしまいました。

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2005/11/01

お題「量的緩和解除事前宣言ですかそうですか」

ある意味予想通りではあるのですが、これはやって欲しく無かったという展望リポートが出てしまいましたな。

今回の展望リポート(正式名称は「経済・物価の展望」)の基本的見解が発表されました。いつもだと前回分と比較検討するという感じでご紹介と言いたいのですが、今回は前回と思いっきり違ういわば「量的緩和政策の事前解除宣言」となってしまいました。にちぎんのおもわくどおりにぶっかがちゃんとじょうしょうするといいですね(棒読み)。

今回の展望リポートはこちら
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/gor0510.htm
ちなみに前回(4月)は
http://www.boj.or.jp/seisaku/pb/gor0504.htm
ですんで両方見ると一目瞭然。

○量的緩和政策解除の具体的手順キタ---------!

経済・物価情勢の見通しも何か実に自信満々な内容になっていて実に微笑ましいのですが、そっちまでご紹介しているといつまで経っても終わりませんし、だいたい本職の人が解説してるでしょうから金融政策運営に関する部分を例によって例の如く拝見。

『今回の展望レポートの経済・物価見通しが実現することを前提とすると、現在の金融政策の枠組みを変更する可能性は、2006年度にかけて高まっていくとみられる。』

まぁそうですね物価がちゃんと上昇するといいですね。

『枠組みの変更は、日本銀行当座預金残高を所要準備の水準に向けて削減し、金融市場調節の主たる操作目標を日本銀行当座預金残高から短期金利に変更することを意味する。』

枠組みの変更=量的緩和解除という意味ですが、どうも「ゼロ金利解除」でミソをつけたせいで「解除」という言葉は縁起が悪いとお感じなのでしょうなぁ(苦笑)。

『当座預金残高の削減に当たっては、長期にわたって量的緩和政策が続けられてきただけに、金融市場の状況を十分に点検しながら行う必要がある。もっとも、前述のように、物価見通しの好転とともに、量的緩和政策の効果は次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきていることを踏まえると、政策の枠組みの変更自体は、政策効果について非連続的な変化を伴うものではない。』

もっとも云々のところは最近日銀が言い出している「時間軸効果が無くなってきているからただのゼロ金利になっている」という理屈。CPIがまだマイナスなのに時間軸効果が無くなっているとはこれ如何にって感じですが。

『枠組み変更後のプロセスを概念的に整理すると、極めて低い短期金利の水準を経て、次第に経済・物価情勢に見合った金利水準に調整していくという順序をたどることになると考えられる。』

『こうした枠組みの変更やその後の短期金利の水準・時間的経路については、言うまでもなく先行きの経済・物価の展開や金融情勢に大きく依存する。日本銀行としては、経済がバランスのとれた持続的な成長過程をたどる中にあって物価の上昇圧力が抑制された状況が続いていくと判断されるのであれば、全体として、余裕をもって対応を進められる可能性が高いと考えている。』

ということで、具体的にどうするという話まで延々としている訳で、まぁ量的緩和政策を解除するぞ解除するぞと大変に威勢良く宣言しているという所ではあります。緩和解除は既定路線ですんでよろしく。


○しかしまぁ舌の根も乾かぬうちにとはこのことで

先ほど申し上げた「時間軸効果が無くなってきている云々」という部分ですが、今回の展望リポートではこのように書いております。

『また、物価が下落から上昇に転じるとの見方が増加し、市場参加者が予想する量的緩和政策の継続期間も短縮しており、その結果、やや長めの金利形成において「約束」の果たす役割は徐々に後退する方向にある。そうしたもとで、量的緩和政策の経済・物価に対する刺激効果は、次第に短期金利がゼロであることによる効果が中心になってきている。』

市場参加者が予想する継続時間の短縮が皆様の地均しが原因ではないでしょうかなどというツッコミをするのはお約束すぎるので省略(笑)。前回ではちゃんとコミットメントの効果について言及してたんですけどねぇ。

『(4月の展望リポート「基本的見解」より)さらに、消費者物価に基づく量的緩和政策継続の「約束」は、景気回復が続くもとでも企業が低い金利で資金調達することを可能としており、先行き、企業の将来に対する自信が強まっていくにつれ、金利を通じてより強い緩和効果を発揮していくと考えられる。』

と4月には言ってたのに、自ら「地均し」して約束を事実上空文化するという大技を使う日銀に涙を禁じ得ません。


○それはひょっとしてギャグで言っているのか

『資金需要が極めて弱い場合には、調節運営上の対応により当座預金残高目標を維持するとしても、その方法如何によっては、自然な金利形成からの乖離をもたらし、市場機能が十分に発揮されなくなる可能性も否定できない。』

量的緩和政策というのは「緩和効果を出すために金融機関がイラネという位に量を出す」のでは無かったでしたっけ?相変わらずレビューしないでなし崩しで政策を転換するのがお得意ですなぁ。

『最近では、景況感が改善するもとで、期間が長い資金供給オペレーションに対する金融機関の応札が増加しており、このため、本年初以降大幅に長期化したオペレーションの期間を幾分短期化しても、当座預金残高目標の達成が可能となっている。これらの対応は、金融市場において経済・物価情勢を反映した自然な価格形成がある程度回復することに寄与している。』

地均しの効果が出ているのを「景況感が改善」って言われましても「まっちぽんぷ」という言葉しか思い浮かばないあたくしはきっと景気実態をよく理解していない認識不足な人間なんですよきっと。

でまぁ最後の一節も悪い冗談にしか見えないあたくしは素直さに欠けるわけですよ。そういえば小学校の時に担任の先生が産休入りして、代打でやってきた超厳格超真面目なオバハンセンセイが通信簿に「態度が不真面目」と酷評してたという大変に懐かしい思い出(虎馬とも言う)が。PTSDになったので謝罪と賠(ry

『量的緩和政策の導入と同様、枠組みの変更も先例のないものであるだけに、金融市場において経済・物価情勢に応じた価格形成が円滑に行われるよう配慮することが重要である。日本銀行としては、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現していくため、金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方を丁寧に説明し、期待の安定化に努めるとともに、今後の情勢変化に応じて適切かつ機動的に対応していく方針である。』

ま、確かに市場っちゅうのは放置しておくと暴走する傾向がございますが、「経済・物価情勢に応じた価格形成」ってその「情勢に応じた」というのを誰が判断するのでしょうかと禿げ上がりすぎてテレビCMでハッピーニューイヤーって言うユル・ブリナー(歳がばれるがな)状態になりそうでございます。で、結局は「優秀な叡智を結集して調査分析をして、ポジショントークとかに無縁であらされる所の日銀様による分析に応じた価格形成をしやがれ」という理解で宜しいのでしょうか?(などと書くから怒られるのですが^^)

まぁそこまで悪態をつくのもアレですが、そりゃ「期待の安定化」じゃなくて「期待の誘導」でしょうね。

まぁそんな感じで。


○内閣改造雑感

いやまぁあんまり興味なかったんですが、竹中さんが金融行政絡みから外れたのはちょっと驚きました。で、与謝野さんが後任なのですが、金融政策的な話になると割と日銀よりな人が金融担当大臣になったんで、日銀としては量的緩和政策の解除(とは言ってはいけません、枠組みの見直しです^^)に対するプレッシャーがちょっと弱くなるでしょうなって感じですか。やや金融市場的には早期解除というか早期の金利引き上げへの思惑が強くなりそうな気がします。

どっちかというと「銀行シバキアゲ」政策が(りそな救済で事実上政策転換しているとは言え)終わってくれるのを期待したいのですが、既に銀行に対する大昔の産業政策状態路線は確立されているともいえるのでまぁどうなんでしょうかねぇという所です。

やたら論功行賞が目立ちますなぁという所でしょうか。ところであの記念撮影で赤い絨毯にやたらと映える青い服を着ていた人がいましたが、あの場所にドレスであの色は(以下自主規制)。

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2005/10/27

○バーナンキ新議長で話題が盛り上がっております

まぁ読者の皆様におかれましては普段からあたくしがネタ元としてご紹介しているbewaadさんのブログもチェックしておられるかと存じますが、そちらのエントリーでバーナンキ関連ネタの論考を行っているネット上の記事をご紹介しています。リンク先をポチポチとクリックして色々と読むのが吉かと存じます。またいつもの本石町日記さんの所では「日本の金融政策はエコノミクスじゃなくてポリティックスなのか」というエントリーからコメント欄でこれまた興味深い議論が。

で、そんな高度なお話でも何でもないのですが、ふと思った雑感で昨日書いているうちにすっかり忘れた事を少々。

・アカデミックな世界からのご就任といえば・・・・

バーナンキ氏のご紹介に絡んで言われるのが「学者出身」というお話でございます。学者出身でボード入りして実際の政策対応で手腕を発揮しつつ生き物であります経済との折り合いをつけていっているという事で評価が高いのでしょう。

で、今の日本ではどうなのよって話ですが、そこで植田和男前審議委員ですよ先生ということで(^^)。当座預金残高目標引下げ論議において金融政策としての筋を通すべしという主張は、現在の何でもありというか結論先にありきで理屈後付け(何せ水野審議委員に到っては「政策委員会のメンバーが変っていけば政策が変るのは当たり前」という何となくはぁそうですかと言ってしまいそうな理屈から「ゼロベースで金融政策見直し」という大変に素晴らしい提唱をしちゃったりする訳で)状態の日銀政策委員会を見ておりますと大変に懐かしく思われますな。

という訳で、植田和男総裁・・・とまでは日本では難しいんでしょうけど、副総裁になって頂きたいものですなぁと思うのですが(^^)。


・実務経験がどうのこうのと言いますが・・・・

メディアの報道を見ておりますと、どうも「実務経験がどうのこうの」っていう点でツッコミを入れている人もおいでのようです。グリーンスパン議長はその前はいわゆる民間エコノミストだったんですかね。

んじゃあその実務経験とやらがどうなのよという話なのですが、世に「生兵法は怪我の元」などという大変に素晴らしい諺がございして(-_-メ)、マーケット出身者だからマーケットを熟知しているので・・・・というお話がアテにならないというのは、「量的緩和解除を円滑に進め市場にショックを与えない為には当座預金残高目標を3条件達成前に引き下げないといけません」(この「コミットメント3条件の達成前に解除準備をする」という時点でコミットメントの意味が無くなっている上に結論先にありき。で、経済状況が見通し外した時におまいらどうするんだと小一時間だという話は皆様耳にタコだと思いますが)という怪電波絶賛発信中の提案を行っているお二方が「マーケット出身者」である時点で大変にアレな訳でございますな。

まー「マーケット出身者」だけに経済動向に関してもつい相場観が強く入ってしまい、「将来はこうなる筈だから事前にポジションを組む(=量的緩和解除の事前準備とかね)必要がありますな」って発想についついなってしまうのでしょう。トレーダーの相場観が外れりゃ大損(まぁそうなる前に軌道修正するんですが^^)という結果になりクビ、大外ししたエコノミストやストラテジストは評価を下げて(稀に百発百中で外す為に絶賛大人気になる人もいますけど^^)これまたクビになれば済む話なのですけれども、日本銀行政策委員会審議委員というお立場でそんなに相場観入れまくる必要はないんじゃないのかなあって思うのですが。

いやまぁ勿論先行き見通しを考えると言う事に関して否定する訳ではないのですが、その辺のバランスが何だか悪いように思えるですよね〜。うまく言い表せませんがそういう感じっす。

#しかし「生兵法は怪我の元」って我が身にも当てはまりますな。

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2005/10/26

お題「バーナンキ新議長雑感」

ネタはまぁこれでしょって所で(^^)。実は夜中には既にバーナンキ氏の後継指名ニュースはあったらしいのですが、あたしゃそんな時間にニュースを見ない人なので昨日は起き抜けにいきなり書いたという感じでした。で、当然ながらもう皆さんが論じていただいているのでそれを読みつつ講演本を読みつつ。

と言ってもまとめでも何でもなくて(おい)単にあたくしの雑感を書きならべるだけですが。


○期待されてスタート

グリーンスパン氏がボルカー氏の後任に指名された時ってのはあたくしまだ学生だったんでそんなに詳しくは無いのですが、「ボルカーさんのような偉大な人の後釜にしちゃあ小物ですなあ」みたいな評判だったと記憶してまして、そ〜ゆ〜点では最初から期待されているというか輿望を担ってというか、まぁある意味大変ではございますな。「論功行賞人事かよ!」などと悪態ついていたら実は中々の大臣だったというどこぞの爺さんみたいな方が楽かも知れませんね。


○金融市場というか債券市場的な見方

まぁだいたい皆さん同じような見解に収斂されているようでして、「FRBのボードメンバー入りしてからは現実的な対応をしているんで良いんじゃないでしょうか」って所のようですわな。あと結構同じ指摘が多かったのは「インフレターゲット」に関してでして、「米国の現状を考えれば物価水準重視ってのは別にハト派じゃねーだろ」って所ですな。あたくしも同感でして、バーナンキ副議長(当時)といえばデフレ突入阻止のために緩和政策を矢継ぎ早に打って来た時の印象が強いのですが、物価水準重視という意味で言えば資源価格高騰がまともに影響する現状の米国経済においては逆にインフレファイター振りを発揮する局面が発生するかもしれませんな。

昨日は米国市場の動きを見て「バーナンキ氏になってちょっと緩和的になるって評価なんですかねぇ」と書いてみたものの、まぁ今日というか昨日の米国金融市場が特に継続的じゃないところをみますと、必ずしもそうでも無かったようで、やはりこーゆー長期的な影響のあるネタはその瞬間だけ見てインプリケーションをしてもあまり意味無しと言ったところですか。そもそもサプライズは無い人事でしたしね。

しかし米国の材料で米国をも超える上昇を示した日経平均というのはそりゃ何なんのよという感じですが(苦笑)。


○でまぁインタゲなんですが

日本におきましてインタゲ導入という話になると、「リフレ政策の実施」→「金融緩和」という連想から「とにかく金融緩和」っていう風なイメージが先行している訳ですが、別にインタゲ導入論者の皆様におかれましても物価上昇率が10%や20%になるまでリフレをやれと言っているのでは無い訳でして、あくまでも現在のデフレを止めて「マイルドなインフレ」を企図してるって事ですわな。逆に資源価格高騰がモロに物価に跳ねて来る米国では「マイルドインフレに保つ為には引き締め汁(というよりは以前の緩和政策を元に戻しているだけのような気もするが)」という話になるようですし。(ってこのくだりはあたくしの勝手な解釈なので、本当はどうなのよってのをご指摘キボンヌです)。

まぁ確かにCPIゼロが展望できるようになった(まだマイナスなのに!)らいきなり量的緩和解除モード全開で地均しあるいは根回しを開始してしまう日銀様の動きを見ておりますと、どうも根本的にマイルドインフレ状態に持っていこうという発想に乏しいのではないかなどと思いたくなってしまいます(内部的には必ずしもそんなにガチガチのゼロインフレ原理主義じゃないと信じたいですが)んで、物価目標あるいは参照値の導入って話も日本ではまだ先の話になりそうですな。インフレになってから(っていつの話だ?)導入するって話になりそうな予感。


まぁ同じインタゲどうのこうのって話でも、経済状況の条件が違う米国と日本ではその結果として出てくる金融政策の方向性は違って来る(物価上昇水準が全然違うのだから当たり前ですが、つーか日本は下落ですな)のであって、別に馬鹿正直(?)に米国と同じようにイールドカーブが動く必要は無い筈なんですけど、さてこれからどうなるんでしょうかねぇ(とひとごとモード)。

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2005/10/25

お題「バーナンキ議長!/フラットニングのインプリケーション?」

○次期FRB議長にBernanke氏が内定

寝ぼけ眼でテレビをつけたらこのニュースで見事に起きてしまいました(^^)。早速以前購入して3回くらい読んだ講演集「リフレと金融政策(高橋洋一訳、日本経済新聞社)」を今日は読まないといけませんな。つーかFRBのWebには過去の講演が出てますので真面目に読む必要があるか。(上記の本に出てた奴は思いっきり読みましたが)

でもって米国市場は株高債券安になっているらしいのですが、このインプリケーションは正直某地上波テレビ番組を見ててもワケワカメ。と思ったらブルームバーグテレビをみたら株高は大型企業買収案件の方が効いてそうですな。わはは。

まぁ前日引け対比という意味ではややベアスティープニングしているようでして、そりゃまぁこの一日だけでどうこう言い出すのは即断もいい所ですが、グリーンスパン議長よりはもうちょっと緩やかにやっていくのではないかという予想なんでしょうか。そのために中短期債より長期債の方が売られたということかな??


でまぁ日本に対してど〜ゆ〜影響があるかと言いますと、これもまた蓋を開けてみないと判りませんが、まぁあたくしが思うに「日銀は物価水準目標あるいは参照値の導入をする事になるでしょう」→「量的緩和解除が先送り」→「今までのフラットニングから反動ですなぁ」という所で、カーブはスティープですが、上下は正直良く判らん。中短期が買われるような気がするのですが、さすがにダウナスが上昇して米債売られてるから買いちゅうのもむりむりですかね。

2003年5月31日に日本金融学会で行われた講演(を高橋洋一さんが訳した上記の本を読んでいるのですが)では日銀に対して「物価水準目標の採用」(インフレ目標ではない)を提言してます。

あたくしが誤読していなければ、過去のデフレ期間において仮に1%の物価上昇が起きたと考えた場合(デフレを取り返すって意味でしょうな)の物価水準(2003年時点では1998年の実際の物価水準から約5%高い水準)を目標にして景気刺激的な金融政策を継続(すると時間軸効果も発揮されますわな)しましょうってお話になっておりました。

バーナンキ氏はこの講演で日銀の量的緩和政策(この時はコミットメント3条件は公表されていませんでした。コミットメントが出たのは2003年のVaRショック後です)に対して「日銀の声明は、測定されたインフレ率がゼロに戻るやいなや現行水準の政策的刺激を取り下げる、ということを意味していると解釈できます。特に、長期的にインフレ率をプラスはおろかゼロに維持するという明示的なコミットメントはなされておりません」(「リフレと金融政策」122p〜123pより)と異論を述べていました。で、折角コミットメントを導入したのに結局今の状況って日銀の地均し(本石町日記さんに言わせると「根回し」だそうで^^)が効果を発揮してバーナンキ氏の指摘に近い展開になっているのが何ともアレですな。


ま、どちらにしても景気刺激的な金融政策が採られるでしょうって思惑にはなると思います。暫く市場はそんな感じで動くんでしょうけれども、実際問題としては現実と折り合いをつけながらやっていく人ではないかと漠然と思っておりますので、そう極端な変化は無いと思いますけどね。



○フラットニングのインプリケーション(なんちゃって)

今日どうなるかは知りませんが、ここの所円債のイールドカーブは絶賛フラットニング。下がっている時は「金融政策の早期引き締め観測」とまでは言いませんが、ほとんどそんな勢いで中短期が売られるのは兎も角として、戻る時にも20年だの30年(特に30年のようですけど)が戻ってブルフラットってそりゃどうよと思う次第。金曜の先物3銭安で30年5毛強には呆れました。

まぁ中短期に関してもだいぶ落ち着いてきたようですけれども、どうもこう何度も申し上げてますが、この絶対水準かつ金融緩和余地が無い状態でイールドカーブがフラットニングするってのは幾ら米国などの主要国のイールドカーブがフラットニングしてるからって言っても、そりゃちと変じゃネーノって思う訳ですが。

でも思ってばかりいても相場がそう動くのでは後付けでも何でもいいから理屈だけは作っておかないと精神的安定が得られないのが市場参加者というものでして(笑)、後付け理屈を考えるとこうなりますわな。

「CPIプラス転換」→「2、3ヶ月したら量的緩和解除」→「2000年の再来で逆噴射」→「景気腰折れ懸念」→「長期金利は上らない」と言う事でして(本当かどうかは兎も角、そういう理屈付けもできるという話で聞いて下さいな、はぁと)現実に日銀の金融政策の影響を受ける中短期ゾーンは日銀のアクションを見ながら、長期ゾーンは景気先行き見通しを見ながら動くのでこ〜ゆ〜ワケワケメな動きになっているんでしょうなぁと言う事ですな。

そういえば「市場との対話」とか言っている人たちがいましたが、この緩和しようの無い金利水準にしてイールドカーブのフラットニングが起きるというのはど〜ゆ〜意味なのかということは日銀の審議委員様はいかようにお考えなのでしょうかねぇ。

単なる需給にしてはちょっとここの所トレンドになっているような感じですし、ど〜にもこ〜にもこんな理屈でもつけないとって感じではございます。

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2005/10/24

○総裁国会答弁続き

金曜は前日の国会(参議院財政金融委員会)答弁に対しまして(あたくし的には)久々に勢い良く「もうね、アホか馬鹿かと」を連発しましたが、続々と(というのはオーバーですが)ご意見を頂きまして大変ありがとうございました。

で、ご本人の承諾によりまして、頂きましたご意見ご感想メール(の一部)をご紹介します。

『ところで、昨日の国会答弁で、福井総裁が「長期的には買入額は減らすよ」と発言してお叱りを受けている件ですが、率直に申し上げて、「そんなことも織り込まれてなかったの??」というのが印象です。冷静に日銀のB/Sの状況を考えれば、すごく当たり前のことのように思われるのですが。。。』

金曜日に米国市場で株安債券高をやってくれたので救われた面がございまして、木曜のイブニングの急落は何だったんだって感じにはなりました。市場が冷静になったのかどうかは正直良く判らん(ちゃんと見て無いし)所で、相変わらず先物3銭安で5年が5糸甘なのに10年が5糸強(273回だけ1毛強)で20年2.5毛強に30年5毛強って過激なイールドカーブを見るに相場がどうも落ち着いていない悪寒が致しますが。まぁそれは兎も角。

量的緩和政策の解除後の輪番オペの扱いに関しては、現在の状況がそのまま引っ張られると上記のご指摘通りで「買入減額ですがな」ということになろうかという所(あたくしもそう思う)なのですが、この点に関してはまだ意見が分かれている所ではないかと思います。

まぁそういう事を申し上げるのもアレですが、審議委員の皆様の地均し発言の中で、地均ししながらも市場に衝撃は与えたくないって考えからなのか「量的緩和解除後も低金利が続く」という趣旨のフレーズが多いのも変に輪番が減らないという期待を与えているのではないかという気も致します。微妙なところですが。


まー確かに発言の全部を見れば単に一般論を語っているのに過ぎないのですが、一般論を言うにもタイミングというのがある訳でして、福井総裁の「一般論」話は妙にタイミングの悪いものが多いという印象で(まぁスルーされるようなのは印象に残らないのだから当たり前ですが^^)す。過去においても大昔の債券日々絶賛連騰相場時代に「国債は償還されるものであって株式バブルと同列にして国債バブルというのはちょっと変です」などと一般論を言って益々燃料投下をしたり、その他色々と楽しい(楽しくないのだが)発言をして下さる訳です。

正直、もうちょっと当たり障りのない言い方(金曜も言ったけど「輪番の扱いはその時の経済状況で適切に判断する」とか)をして頂きたいというのが要望(??)でございますわな。何でそう黒白つけるような言い方をしちゃうんでしょうかねぇ。>総裁

ま、それ以前の問題として、今までの総裁以下各審議委員が地均しモードになっているので、それらしい発言が出ると「すわ地均しか」という風にマーケットが捉えてしまい、妙に反応しやすくなっているというのがございますが。


で、まぁそれはそれとして輪番オペにつきまして、あたくしの勝手な印象で話をすると、輪番オペが「その日イールドカーブ上一番安いゾーンの中長期国債買入」になっている為に、2年債などの中期ゾーンの吸い上げ装置として働く事が多く、輪番減額をすると中短期ゾーンの需給が悪化する悪寒が致します(発行量を減らせば別ですが)。中短期の金利が上昇しやすくなるとイールドカーブがすげぇフラット化でもしてくれれば別ですが、やはり全体の金利水準にも影響するでしょう。そもそもイールドカーブがあまりにもフラット化すると投資家も困りますし。


○プライマリーディーラー(国債市場特別参加者)制度雑感

先日の国債市場特別参加者会合で10年債の引受シ団がどうしたとか参加者制度がどうしたとかいう話がございました。で、まぁ特別参加者を集めて会合をやって「この制度はどうしようもない」などというアホウがいる筈が無いので「誠にケッコウケッコウ」という議事要旨になるのはある意味当たり前なのですが(笑)。

『10年債の入札日の値動きだけを見ると、強めの入札となった後、引けにかけて弱くなるというケースも少なくないが、入札日一日の値動きではなく、その前後一週間といった少し長いスパンで見れば市場は安定していると考えられるのではないか。』

まぁそうとも言えますが、その事前準備を狙って変に買いを入れたりするような動きをする意地悪ディーラーみたいなアクティブ投資家もあり、まぁ何とも言いがたいですな。ただ明らかにこりゃちょっと・・・っていう時は事前に調整するようにはなりましたな。

『特別参加者制度においては、各社が応札責任等を負うことにより、参加意識の高いマーケットが形成されてきている。』

それはちょっとヨイショですな。

『マーケットでは入札の過熱感が指摘されることも、ままあるが、特別参加者制度の導入から時間が経過すれば、徐々にこなれてくる面が大きいのではないか。』

次にご紹介する意見の方が妥当と思います。1年の間に何回入札したのよ。

『また、「入札の過熱」については、特別参加者のメンバーである各社が、一定のコストを覚悟で続けて行くのか、メンバーから外れるのか、自社の経営上の問題として判断することであり、制度の問題という形で議論するのは筋が違うのではないか。』

ということで、まぁこの人の意見が妥当な所かと。毎度毎度の割高入札をみると、証券会社の人たちはど〜してそんなに身を切ってるのでしょうかと思うのですが。残存者利益でも狙っているのかも知れませんが、国債なんてのは(参入するには資本は必要ですけど)参入障壁が他の商品比低いものですから、本質的に残存者利益がどうのこうのってのは見込み難いと思いますけどね。

まぁその他の売買で儲けようってのかもしれませんし、その辺は毎度毎度割高入札をする人たちのホンネがどの辺にあるのかは判りませんがね。


いまさら10年国債の引受シ団ちゅうのもアレですから廃止は時間の問題でございましょうなぁと思いますけど。

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2005/10/21

お題「逝ってよし!」

という話の前に、昨日ネタにした経済財政諮問会議資料の「4つの経験則」の1と2について毎度お馴染みbewaadさんが解説をしてますというご紹介をば。http://bewaad.com/を是非ご覧下さい。しかしあの諮問会議は・・・・・


○国債市場特別参加者会合での指摘

本当はプライマリーディーラー制度に関する雑感も書きたい所でございますが、次の話があるので(月曜分のネタを温存してるんだろうという指摘をしてはいけません)ここでは日銀袋叩きの図という部分に関して引用をしておきますね。

『9月の初めからの長期金利の上昇は、株高や景況感の改善等による面もあるが、日銀からの極めて積極的な情報発信が市場の大きな反応を招いたという面もあるのではないか。特に時間軸効果の影響の大きい5年ゾーンにおいて0.5%から0.9%程度まで金利が上昇したが、これは、市場のコンセンサスが急速に一方向に動いた結果と考えられる。日銀による情報発信は、金融政策の先行きの透明性の向上を意図したものとは思うが、今回のケースでは市場のボラティリティを著しく高めることになったと考えている。(途中割愛)日銀は、これらの点(CPIはプラス転換するかもしれないけど、全体的な景気動向はどうよって話です)を配慮し、今後、十分慎重な情報発信を心がけて欲しい。』

別のお方(だいたいどこの誰かは予想できますけど^^)はより手厳しい指摘です。

『量的緩和解除の3条件が明示されているのだから、その条件が満たされていくかどうか及びそのタイミングをマーケットが判断していくのが本筋であり、日銀はビハインド・ザ・カーブで政策変更をすることが想定されていたにも関わらず、最近の一連の発言で、いわゆる「地ならし」をしてしまい、それがマーケットに対してサプライズとなったことが足元の金利上昇の一因。』

『ただ、今までのところ、むしろ市場のほうが冷静になったためか、長期金利の上昇は限定的であり、足元では少し金利が下がってきている。これは、もちろん株安ということもあるが、2年債利回りで0.3%近くという水準は、フォワードレートから計算すれば、2年後に3ヶ月金利が0.6%〜0.7%まで上がってこなければ概ねペイできる水準であって、そこまでの政策変更は行われないだろうという判断が市場でなされており、その結果、5年で0.9%、10年で1.6%に迫ったところで水準感からの買いが入ったということだったのではないか。』

冷静になっているのかどうかは少々アレですが、確かに昨日朝の時点では「やっと下げ止まったですねよかったですね」という雰囲気が市場に流れていたものと思われ。

『ただし、日銀が量的緩和解除に更に前のめりになるようなことになれば、冷静だったマーケットが懐疑的になりかねない。例えば、可能性は少ないとは思うが、連続利上げが行われ、さらには毎月1兆2000億円行われている長国買入が減額されることまであり得るという想定に立てば、スパイラル的に長期金利が上がるリスクもあるかもしれない。こうした余計なリスクの芽は予め摘んでおくべきであり、ゼロ金利を長く継続して欲しいというつもりはないが、日銀の情報発信については、これまで決定会合で議論されている通りにやっていただきたいというのが正直な印象である。』

で、問題の国会答弁になるのですが・・・・・・


○もうね、アホかと馬鹿かと

昨日の午後2時から行われた参議院財政金融委員会(どうでもいい話だが、衆議院と参議院で同じ事をやってる委員会の名前を変える必要があるの?)に福井総裁がご出席。最初ちょっとだけストリーミング放送聞いたのですが、別の「逝ってよし」案件(後述します)がありまして一気に聴取する気力が萎えたらその後に爆弾投下ですよ先生。

2時半過ぎから債券先物が下がりだした(で、相変わらず超長期ゾーンが強いらしいです。ナンノコッチャ相場ですな。)のは、財政規律問題に絡めて長期金利に言及した部分で打たれたフラッシュが原因のようです。以下ソースは昨日のブルームバーグニュース「福井日銀総裁:長期金利は非常に低いーリスクプレミアム小さい(7)」って奴です。

『ご承知の通り、世界的に長期金利は低いが、日本の市場においても、長期国債の金利は非常に低い水準にある。おそらく今は、国民の財政規律に対する不信感がむしろなくて、リスクプレミアムが非常に小さい状況になっている』

で、まぁフラッシュはさっきのお題のように打たれる訳でして、日頃から日銀が地均しに余念が無いことを勘案すると「また地均しか!」と市場が考えるのは当然のことでございます。金利水準がどうのこうのって言い出すなよアフォと思う訳ですが。


そんな訳でそれまで137円50銭台で落ち着いていた債券先物は引けに掛けて見事に下げて137円20銭割れまでやって25銭引け。で、その後に出てきた答弁がイブニングセッションでなおも下げの原因となったようで、誠に遺憾極まりない(ちなみに安値137円77銭!)答弁ですわな。

量的緩和を終わらせるのであれば長期国債の買入額も減らすべきではないかって質問をした民主党の大久保勉委員に対してこんな答弁をしたそうな。

『将来を見渡したとき、長い方向性としては当然減らしていくことになると思うが、これもまた一瀉千里に早めに調整することが本当に市場に対して円滑な調整になるかどうか、やはり市場条件を大事にしながら、われわれとしてはできるだけスムーズな調整を図っていきたい』

で、まぁ「長国買入は長期的には当然減らす」って事でまさにゲロゲロ。おまいは昨日の国債市場参加者特別会合の議事要旨を読んでないのかと、オブザーバーで日銀の人間が出席しているらしいのだが、その報告は聞いてないのかと小一時間問い詰めたいものであります。もうね、アホかと馬鹿かと。

だいたいからして成長通貨供給がそもそものお題目なんですから、その時の経済情勢次第で長国買入はどうなるか判らん筈なのに、もう決め打ちで発言する所が、「従業員が働かないのが悪い」とどこぞの経済誌のインタビューで言及して日本中(除く当該企業関係者)を爆笑の渦に巻き込んだ某経営者を彷彿させる率直なご発言(笑)と言ったところでしょうな。そんなの「その時の経済情勢次第」と言えば済む事じゃん。


○そもそも「期待の安定化」と「市場誘導」は違います

このコメントに続いて総裁様はこんな事を仰せです。

『いわば、市場関係者に十分予見可能性を与えながら調整を進めていくのがわれわれの責任ではないか』

別の質問に対してこんな事も仰せのようです。

『本当に消費者物価指数がわずかでもプラスの世界に入って以降は、市場はもっとさまざまな経済の変動や、将来の政策の構図に対して敏感に反応するようになると思う。したがって、金融政策も期待の安定化に相当努力しなければならない』

根本的に「期待の安定化」というのを間違えています。さっき引用した国債市場特別参加者会合での指摘をよく読めと。大体からして経済の将来状況が100%予見可能じゃないのに金融政策の予見可能もへったくれもあったもんじゃ無いでしょ。

この調子で日銀が熱心に「地均し(笑)」を行った結果として市場金利が利上げ前提状態になった後で「市場も景気回復を織り込んで金利が形成されており、利上げも無問題」とかいい訳をして利上げをするのを自作自演と言わずして何と言うのでしょうか?

ちなみに昨日は輪番云々発言の後、激怒激怒大激怒モードの知人ディーラーから「あの総裁は何とかならんのか」というコメントを頂いたり、別のディーラーからは「もう速水(前総裁)状態だなありゃ」というコメントを頂いたり。全然期待の安定化になっていないという事を理解して頂きたいものです。

2000年のゼロ金利解除の時は諸般の事情(謎)で金融市場ヲチをしていなかった為にイマイチ雰囲気は判らないのですが、上記コメントにあるように、速水優さまの生き霊(ここで「あ〜る田中いきりょう」というネタを思い出したあたくしは漫画の読みすぎですかそうですか)でもとりついているのか、それとも日本銀行のDNAなのか知りませんが、先日中原伸之前審議委員が指摘した「5年前に良く似ている」状態全開と言ったところでしょう。




○おまけ:もう一人の「逝ってよし!」はもっと酷いです

そんな質疑応答が行われた参議院財政金融委員会ですが、途中でストリーミング放送を聴く気がなくなったのはその前にメガトン級の大馬鹿野郎が大馬鹿質問をしていた為です。

途中から聴いたので話の流れはちと判らんのですが、昨今の企業買収(というかただの株式買占めなのだがそれは兎も角)の話をした後に、ジャスダック上場の日銀株(本当は出資証券)のお値段がここの所大幅に上昇していると言う指摘をしてこんな趣旨の質問をしておった人がいたんですよこれが。

「日銀はそれこそ輪転機があって通貨を発行できる訳ですが、株を大量購入して日銀資産を有効に活用するように要求する株主が現れた場合の企業防衛策というのはどのように考えているでしょうか(思いっきり意訳ですが、まぁそんな質問)」

お前は国会を子供電話相談室と勘違いしているのかと小一時間。というかその位下調べしてから質問しねぇのかこの馬鹿はとしか言いようが無いです(ちなみに当然ながら総裁の出る必要もなく小林理事が説明してました)。

以前民主党(の一部議員)が乱発する質問主意書をつらつらと眺め、「その質問内容は公開情報で判る範囲内のことで、お前が自分で調べろよ政策秘書だっているんだろうに」などと思った事があるのですが、自民党にもこんなのがいるとはもう今の国会は情け無い限りでございます。「田村君」とか呼ばれてたんで、はて誰でしょうと思ったらこの人でした。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/profile/335.htm

ま、プロバイダー経由で訴状が来ても困りますので(それはそれで身を張ったネタになるが^^)この華麗な(笑)経歴を何じゃこりゃなどと言う気は毛頭ございませんが、あなた証券会社にいたら「日銀株」ネタって話のネタに使いませんかって思うのですが、この人は一体全体何をやっていたんでしょうかねぇ。

頼むから国会では下調べをして質問して欲しいものです。「日銀政策」とかいう新語を編み出す人が衆議院にいるかと思えば参議院はこの有様。何かどっちも業界出身な所に激しく情け無いものを感じます。

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2005/10/12

お題「審議委員の小まとめ」

いや昨日は随分と平均株価が強かったですな。債券も後場から下げていたようですが、例によって昨日もまた相場あんまり見てないので、見てきたかのような後講釈は致しません(汗)。

審議委員の講演などが一巡(西村審議委員の講演は最近無いようですが)したようなのであたくしなりに纏めてみようかと思い、あたくしが勝手にポイントかな〜と見ている部分に関してどうなのよってのを並べてみました。一応正確を期したつもりですが、発言の字面を見ているとニュアンスが微妙な所もあるので解釈が変な所もあるかもしれません。念の為・・・・

○最近の講演等のタイミングはこんな感じです

福井総裁=9月30日定例記者会見10月3日衆議院予算委員会
武藤副総裁=9月5日ブルームバーグインタビュー6月23日講演
岩田副総裁=9月15日講演
須田委員=9月28日講演
中原委員=10月3日講演
春委員=10月4日講演
福間委員=9月14日講演
水野委員=9月20日講演
西村委員は特に最近講演無かったですが、インタビューがあったかも知れない。

ということなので、念の為この辺にあたって確認される事が吉かと存じます。また、以下のリストに西村委員が入ってないのでまだ出来が悪い事を予めお断りしておきます。(最後に補足訂正あり)


○CPIのプラス転換時期について(以下一部敬称略)

今年末にかけて=福井、岩田、福間
年末頃=中原、春
来年度にかけて=武藤、須田?、水野?

須田委員は強気っぽい言い方をしておいて記者会見で「特定した訳では無いが」みたいな発言でしたが、まぁ強気なんでしょう。水野委員は時期については特にコメントはないですが、「展望レポート通り」という見通しのようです。まぁ要するに皆揃って遅くとも来年度にはプラテンと。


○量的緩和政策の解除時期

福井=来年度にかけて
岩田=「出口は近づいている」
中原=2条件達成後も慎重な対応が必要
春=来年度初以降に

須田委員はCPIの強気と同じく解除時期についても前のめりっぽいニュアンス。福井総裁は国会答弁などで「急にそこから引き締めるというふうなことを一度も申し上げたことはないわけでして」と言ったり、その前の記者会見でも量的緩和政策を解除してもかなりの低金利(もしかしたらゼロ金利)をするという言い方。

福間、水野の両委員は解除前に当預目標の引き下げを提案していますが、これは解除に時間を掛けるというお話でもありまして、解除後に関しても漸進的な対応という感じです。


○量的緩和3条件達成前の当預目標引下げ

引下げの提案中=福間、水野
技術的対応を否定しない人=福井、武藤、春
否定的な人=岩田、須田、中原

で、この中で武藤副総裁は「解除前提の引下げは不可(6月の講演でしたが)」というコメントで、須田委員は「別に技術的に必要ないので不要」というコメントなので、もしかしたらこの二人の位置関係は逆なのかもしれませんが一応こうしてみました。当預目標の引下げが引き締めを意味しているので否定というのは中原委員。


○緩和解除後に新たなコミットメントを設けるかという話

否定的な人=福井、須田、水野
「望ましい物価目標」設定を推奨する人=岩田、中原

この中で須田委員が講演で思いっきり否定してますんでまぁ一番強硬なのでしょうが、福井総裁も国会答弁なんかを読んでいるとどうも否定パワーが強そうですな。水野委員は否定的というよりは慎重対応という感じですか。


○量的緩和政策の「量」の意味

この部分に関しては最近の講演などから拾ってはいますが、「いや他にも意味を認めていますが」とか言われちゃったりして(大汗)。

福井=流動性対応
武藤=企業金融の緩和、物価下落防止
岩田=流動性対応、景気下支え
須田=流動性対応
中原=景気下支え
春=流動性対応、物価下落防止
福間=流動性対応
水野=流動性対応

まぁ金融不安に対する流動性対応というのは全員認めているのですが、それ以上の積極的な意義はどうなのよって話ですな。最近まっきり言わなくなりましたが、以前は岩田副総裁は「事後的に為替介入の非不胎化になっている」という指摘をしておりました。


とまぁそんな感じで作ってみましたが、まだまだ完成品とは言いがたいものもございますのでご指摘などいただければ誠に幸いです。

○審議委員のまとめ(12日)の補足訂正

CPIプラス転換時期に関して武藤副総裁のブルームバーグインタビューを改めて読み返してみると、文脈としては「今年末から来年初にかけて、特殊要因が剥落していく結果プラスに転じる」「来年度にかけては、安定的にゼロ%以上と判断できるようになる可能性が高くなってきている」という風になっておりましたので、まぁ物価の見通しに関してはちと書き方間違いでしたな。謹んでお詫びいたしますが賠償は致しません。

ちなみに、西村審議委員に関しては基本的に福井総裁と同じ見方という所でほぼ問題ないようです。



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2005/10/06

○上ってフラットニングしてるのですが

昨日の債券相場は前日の入札後に大下げした反動がいきなりやってきて大反発。米国株式が何となく下がって平均株価も何となく下がったというのもありますが、まぁ昨日の入札の結果に対しての売り込み方がやり過ぎでしたなぁという事なんでしょうが、ちょっと節操無さ過ぎではなかろうかと思うのですが、まぁそれは兎も角。

んじゃあ昨日のイールドカーブはどうよってことになりますと、中期から先物に掛けては確りだったのは今までの下げの裏返しなので戻るならそういう形になるのですけど、超長期ゾーンが相変わらず強く、下げでも相対的に確りしていた超長期が上っても強く、中期や先物よりも超長期の方が強いと。

えー、まぁグローバルフラットニングでどうのこうのとか言われる訳なのですが、昨日申し上げた事の続きになりますけど、主要国のイールドカーブがフラットニングしているから日本もフラットニングと言われましてもそれ別問題じゃネーノと愚考する次第。米国では相変わらず金融引き締め局面な訳で、もしかしたら引き締めが打ち止めになるのかならないのかって状況ですわな。方向が相変わらず引き締めだけどインフレはコントロールされてますってな話だからフラットニングしやすいんでしょ。

然るに日本の場合は、今のところでは仮に量的緩和政策解除という話になっても金融引き締めが別に打ち止めになる訳ではないと思うのですが、もしかしてちょっとだけ金利が上ったら打ち止めになるという解釈なんでしょうか。そうとでも考えないと金利がこの絶対水準にいるのに上っても下がってもフラットニング(まぁ昨日のフラットニングは一時的現象かもしれませんが)するというのはどうもよー判らんですわな。


○どうも出口は市場が連れて行ってはくれないようで

植田前審議委員のお言葉らしいのですが、あたくしの思うべき論で申し上げますと、量的緩和政策に関しては景気が上向きになっている(らしい)現在のような状況でこそより効果を発揮すると思います。従って単にコアCPIがプラス転換するという事象面で解除するのではなく、インフレ期待が醸成されて、長期、超長期ゾーンの金利が上昇する形でイールドカーブがベアスティープ化するまで待てば、そりゃもう財務省様あたりでも「頼むから金融引き締めして昂進したインフレ懸念を冷やしてくれ」って話になるでしょうにと思う訳で。まぁその前に弊害が見え見えになってくれば同じようなことになるでしょう。

でも現実には日銀がせっせと「地均し」をして市場の金融政策に関する期待に対して方向性を与えちゃってるので、逆に「早期解除期待」がインフレ期待の前に醸成されるという有様。だからこそイールドカーブがフラットニングしているわけですな。元々はこの量的緩和コミットメント3条件は「ビハインド・ザ・カーブ」を前提にしていた筈でしたのですが、いつの間にやらそんな話はどこへやら。一昨日ご紹介した中原審議委員の講演で久しぶりに聞きましたよって感じです。何せ福井総裁を筆頭に本来のDNAを発揮?して「予防的金融政策モード」になって地均しをはじめてますからねぇ。

以前(だいぶ前、景気回復もCPIのプラス転換も「ハァ?」って感じだった時ね)あたしゃービハインド・ザ・カーブの上塗りになるような政策(例えば、当初の条件に対して糊代をつけて第1条件を先送りするような提言)に対して「ビハインド・ザ・カーブが前提の政策やってるのに、それをより強化するような政策変更をするのは如何なものか」と噛み付いていた訳ですが、何の事はありませんでしたなぁという感じです。

出口は市場が連れて行ってくれるのではなく、日銀がせっせと出口への道を整地しておりますが、大丈夫でしょうかねぇ。。。。

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2005/10/04

お題「福井総裁と中原審議委員」

短観に関しては改めて。まぁ横ばいで先行きも横ばい圏内ですが、要するに「6月からあんまり変ってない」というのが結論ですわな。市場の方が6月時点から比べて現在の方がより実体経済に近くなってきたと勝手に後講釈をしておきましょう。

○また言っちゃいましたな

福井総裁といえば国会に呼び出されて答弁する時に時々やっちゃうお方なのですが、昨日も衆議院のどこぞの委員会(忘れた)で山本幸三氏に対して、『(量的緩和政策という)異常な政策をいつまでも続けろ)からというご意見にはわれわれは断じて屈することはできない』(ブルームバーグニュースより)って言っちゃいましたな。

いやまぁお気持ちはそうなんでしょうなぁってのは既に皆さんに思いっきり伝わっていますけど(笑)、それを言うのはどうよって所でしょうか。実際の質疑応答を見てませんけど、まぁまたお得意の「売り言葉に買い言葉」だったのでしょうか。相手が山本幸三さんだし。

と、言う訳で3条件のうち何故か3条件目が達成されていて、先行き見通しもだいたい毎度毎度プラス予想になっていて2条件目が達成となりますと形式要件のCPI安定的プラス推移が達成されたら解除したいんですかそうですか。

かつて「金利に蓋をする」と国会で答弁して信じる者たちの足元を見事に掬ってくれた事がございましたが、まぁ今回に関しては足元が掬われるような経済状況にならない事を祈りたいとは思いますが、しかし困ったお方ですわなぁ・・・・としか言いようの無い発言でした。


○慎重派発言の目立つ中原審議委員講演

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0510a_f.htm

詳しくチェックしているとちと長くなるので激しく端折ります。

・景気の先行きに関するリスクとして外需を

講演の中で経済の現状認識と先行き見通しに関連して「先行きの不透明感が強い外需」というお題で一項を設けています。

『日本経済の力強い回復を達成するためには、内外需のバランスのとれた成長パスが必要であり、その意味で外需の果たす役割は引き続き大きいと考えます。これまでのところ、海外経済は総じて潜在成長率程度の緩やかな成長を維持していますが、足許では、特に米中両国経済の先行きにつきまして不透明感が高まっている点が心配です。』

ということで、このあと色々と指摘しているのですが、ざっくりまとめると原油価格の上昇と、米国の長期金利上昇および今までの利上げの効果、米国のハリケーン被害に伴う財政支出問題などという所でしょうか。米国に関しては楽観しすぎじゃネーノと言ったところかと。


・当座預金残高引下げ問題に筋論が久々に出てきましたよ

「量的緩和政策の評価と今後の金融政策運営」というお題で話をしていまして、内容は結構あるのですが、今朝は寝坊した関係上(おい)ちと簡単に。

まず現状に関して中原審議委員はこのように。

『日本経済は景気の「踊り場」をほぼ脱しつつあるとはいえ、数多くの構造問題を抱える中、慎重な企業行動が続いていることなどもあって、その回復は依然として緩やかです。また、先行きの外需の動きに振らされる可能性も否定できません。企業の資金需要は弱く、信用創造によるマネーサプライの増加も当面期待できません。消費者物価の前年比伸び率も、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じていくと予想されていますが、様々な特殊要因の動きに左右される中で、将来のデフレ脱却の時期が必ずしも明確に展望されている訳ではなく、インフレ期待も依然として低いままです。』

消費者物価指数に関しては実は講演の中で見通しについて詳しく話しをしていまして、その中で『新たな物価下押し要因が発生しない限り、年末頃にかけて消費者物価はゼロ%ないし若干のプラスに転じていく可能性はあるでしょう。』と述べていますのでこの物価見通しに関してはまぁあまり他の審議委員と見方は変りません。念の為。

で、久々にこの理屈を聞くことが出来て誠に結構ですなぁというのがこの先。

『こうした中で、当座預金残高目標の引き下げというプロアクティヴな政策変更は、これまでの当座預金残高目標の引き上げを実体経済の更なる悪化を抑えるための追加緩和措置として行ってきた経緯を踏まえますと、少なくともモーメンタムとしては、金融をより引き締めることを意味することとなり、現状では適当ではないと考えます。』

確かにそうなのですが既に先週福井総裁が「流動性需要に対応」とかしれっと言っていたところが実にアレでございますわな。

『当座預金残高目標の引き下げ論では、現在の当座預金残高目標を維持した場合に生じる副作用、例えば、「短期金融市場での取引減少や市場機能の低下」、「財政規律の低下」、「資産インフレ・リスクの高まり」、「量的緩和政策を変更する際のコストの大きさ」といった点なども問題視されています。しかし、こうした副作用はそもそも政策の導入時からある程度想定されていたものであり、ここに来て無視し得ない程深刻化している訳でもありません。』

まぁ仰るとおりだと思います。で、この続きの部分があるのですが、そこに関してはちと??なので引用割愛。


・直球投げてきましたが・・・・・

今後の金融政策運営に関してってところで中々強烈な直球を投げています。

『まず、第一に、市場の期待の安定を図るためのポイントとして最も重要なのは、中央銀行として、政策運営の軸をぶらさないこと、政策の一貫性を維持するということだと思います。言うまでもなく、経済や金融は生き物であり、時々刻々環境が変化し、また不透明要因が数多くある中で、将来の金融政策を具体的にイメージすることは難しく、現実に政策の副作用が大きくなり、国民経済に損失が生じたり、資源配分に大きな歪みが発生するような場合があるかも知れません。その場合には、当然ながら機動的な政策の修正や変更が必要なことは言うまでもありません。しかしながら、先程も申し上げましたように、現在および先行きの経済にとって大きな副作用が生じないと見込まれる限りは、これまでの政策変更を行ってきた経緯を反故にし、政策の一貫性や中央銀行としての説明責任を放棄するような場当たり的な政策運営は中央銀行の信認を著しく傷つけ、その後の政策運営に支障を来たす惧れがあることには十分に注意しなくてはなりません。』

いや全くですわな。「人が変ると政策もゼロベースで変る」みたいなこと言ってる人と思いっきり対極にございますな。まぁ審議委員の大勢というか日銀の中の人というか、ちょっと株価上昇で浮かれすぎなんじゃないでしょうかとあたくしも思いますもんね。

ま、そういうことで。

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2005/10/03

お題「総裁記者会見続き」

金曜にご挨拶したように、あたくし本日からは運用部門の中の人ざんす。フォローするのは相変わらず債券の予定ですので引き続き自分の勉強(と本人は一応思っている)を書き散らしていきたいと存じます。

ま〜金曜もそんな訳で相場を全然見て無いので人のフンドシで相撲を取るあたくしなのですが、先日ネタにした須田審議委員の講演に関してbewaadさんが日曜にエントリーをアップしておられます。いつもいつも「なるほど」と頷くことが多いですが、今回もまた勉強になりましたので(散々参考にしてますんで皆様既にURLご存知だと思いますが)是非ご一読を。→http://bewaad.com/20051002.html

さて、総裁記者会見要旨は日銀のWebhttp://www.boj.or.jp/press/05/kk0509f.htmにございます。会見の質疑応答の量自体は多くは有りませんが、まぁ内容は本石町日記さんが「長距離砲発射」というように量的緩和の量の効果をいつの間にか単なる流動性危機対応にすりかえるわ、量的緩和政策の終了時期を高らかに決め打ちするわともうエライコッチャですわな。これで間違って景気が失速したら日銀打つ手無くなるんですが(国債引受とかヘリコプターマネーとかならありますが)本当の本当に大丈夫なんでしょうか??


○量の効果がいつの間にか・・・・

冒頭の質疑応答で「量的緩和政策の持つ意味は、次第にゼロ金利に近づいてきている」という発言の意味について聞かれた福井総裁はこう言いました。

『量的緩和政策の実態的な中身が、次第にゼロ金利政策そのものに近付いていくことを申し上げたのは、量的緩和政策の枠組みを修正する将来いずれかの時点で、金融緩和の度合いがガタンと階段をつけるように不連続に変化するわけではないことを申し上げたかったからである。』

合ってるかどうか責任は取りかねますが、勝手に総裁のコメントを補足しますと、景気実態と物価動向によって量的緩和政策の時間軸期待は短くなるので、量的緩和政策の終点が近くなった時には時間軸効果がなくなっている(ので不連続な変化にはならない)という事を言いたいのでしょうな。で、この続きのコメントはまた自分で自分の首を絞める結果にならんことをお祈りしますよ。

『つまり、今日に至るまでの段階でも、金融機関における信用不安を背景とした流動性の予備的需要は趨勢的に減ってきているわけで、それが最後の段階までずっと続いていく。そうだとすると、流動性の予備的需要が減衰する中で、量的緩和の枠組みで最後までコアとして残るものはゼロ金利そのものということである。そのように、量的緩和政策は、実行し続けている過程で中身が次第に煮詰まってきている。』

量的緩和政策の量の効果に関して「金融機関における信用不安を背景とした流動性の予備的需要」という話に持ち込んでいますわな。いやまぁ量の効果に関して為替介入の非不胎化効果以外に何かあったのかと言われると、正直あたしゃーよー判らんのですが、そうは申しましても今まで「量の増大は金融緩和であって、経済への効果がある」って言ってやっていた政策を何の公式なレビューもなしに(審議委員が講演で言うのはあくまで審議委員個人の意見)「流動性の予備的需要」って話に持ち込むのは如何なものかと。

というか、そのあたりに関してはデフレ脱却が完全に展望できて量的緩和政策を解除した後になってから「いや〜♪どうも流動性の予備的需要としての効果しか無かったみたいですね〜♪」(あたしゃそれだけしか効果なかった訳ではないと思うけど)ってレビューすれば良いのにと思う訳ですが、今から総裁がそんなこと言い出してどうする。

つまり、当座預金残高目標の「量」の効果に関して流動性予備需要以外の効果を認めないのであればデフレ脱却前に景気が失速した場合に打つ手はまぁ長期国債の買入拡大(福井体制になってから拡大してない)しか無くなりますけど、そこまで勝負を掛けるほどの物かよって思うんですな。それに量的緩和政策導入時に、「量的緩和政策はゼロ金利政策と違う」と日銀として公式に表明している訳でして、そこのところの落とし前もつけて欲しい訳ですな。

まぁ本石町日記さんの言葉を拝借すると「日銀の運が良いといいですね」って感じです。しかしわざわざ勝負する事は無いと思う。


○緩和解除の方法は決め打ち無用でしょうな

次の質疑の一部は金曜にご紹介した部分ですが。

『(問)お話を伺っていると、今の枠組みが終わった後、まだゼロ金利政策があるということのようであった。しかし、海外の一部では、量的緩和が終わること自体がゼロ金利の終わりという見方がある。今の景気の底堅さがさらに増し、将来、量的緩和を解除した時に、純粋なゼロに近いゼロ金利政策というものより、もう少し乖離した形で、ややそれよりも高い金利を目指すということはあり得るのか。』

答えは長いので最初の段落だけ引用。

『(答)今のこの段階ではそこまでは予見出来ない。量的緩和の枠組みの修正のタイミングがいつ頃になるか、まだ明確に予想し難い段階にある。その先の金利の操作について、何か予断を持ち得る状況かと言うと、それは全くない。そういう予断は一切持たないで、今後の経済情勢・物価情勢にきちんと符合するような政策をしていかなければならない。それは非常に真剣な課題であり、「何かしたい」とか、「こうあるべきだ」とか、「こうなるだろう」という絵を予め画用紙に描いて、それに沿って我々が政策の中身を詰めていくという態度は採りたくないし、採らない。情勢判断に忠実でありたいと思っている。』

本石町日記さんがhttp://hongokucho.exblog.jp/3546386/のエントリーで話題にしたように、今後は解除方法がどうなるかって事に関して色々な予想が出てくると思います。上記エントリーのコメント欄でも議論になっていますが、まず最初に話題になるのは「当座預金残高を所要くらい(たぶん6兆円とか7兆円とか)に下げるのにどのくらいの期間が掛かるか」って話だと思います。

で、現状だと1ヶ月から3ヶ月くらいかかるとかもうちょっとかかるとかいう話で、そのために「量的緩和終了後にゼロ金利」って話になるのですが、どうも議論に混乱があると思うのはこの「ゼロ金利」って言葉でして、「短期市場金利の誘導目標がゼロ」という意味の「ゼロ金利政策」なのか、「当座預金残高を所要残に落としていく過程で結果的に短期市場金利がゼロになっている」という意味の「結果としてのゼロ金利」なのかが曖昧のまま論議が始まっている気がします。

で、「結果としてのゼロ金利」に関しては、今の時点で量的緩和政策を解除すれば最低でも1ヶ月くらいはゼロ金利になるかもしれませんが、現状のように市場の期待時間軸が短期化している時には資金供給オペの期間を短くできますので、順調にオペ期間の短期化を図ればその分だけ当座預金残高を引くのに必要なエネルギーが減るので、将来はもっとスムーズに金利政策に移行できる訳ですな。そう考えますと、現時点での延長で「当座預金残高を所要に引くのに何ヶ月掛かるから云々」という議論は必要かもしれないけど、それを参考にして「結果としてのゼロ金利が何ヶ月続くから」という決め打ちはイクナイと思います。先週の物価統計もマイナスだったんだし時間はまだあるでしょ。


で、総裁の記者会見に話は戻りまして、総裁の答えにあるように「情勢判断に忠実でありたいと思っている」というのが正しいでしょうな。で、その直前に結果ありきで政策を詰めていく態度は取らないとも仰せですが、その割には何で量的緩和政策解除の地均しをするですか皆様はと小一時間問い詰めていると初日から遅刻するので本日はこの辺で(^^)。



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