金融政策概観(2010年度上期前半分(2010年04月〜06月))

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2010/06/30「米国長期債金利が勢いをつけて低下中/国債決済期間短縮関連」
2010/06/29「末初のGCレート上昇/フェイルチャージ導入雑感」
2010/06/28「BOE6月議事要旨より、物価上昇に悩むBOE」
2010/06/25「連日の派手派手上昇相場ですが、さて海外要因ってどうなんでしょう」
2010/06/24「FOMC声明文:そんなに激しく買いで反応するないようでもないと思うのだが・・・」
2010/06/23「ECBスマギ委員の講演から:市場機能強化の話が金融規制につながるとな」
2010/06/22「ECBのスマギ委員の講演から:金融政策には市場安定化が必要という話」
2010/06/16「決定会合レビュー」
2010/06/15「金融調節雑談」
2010/06/14「ECBトリシェ総裁のMPC終了後の会見がオモシロイ」
2010/06/11「決定会合プレビュー/バーナンキ議会証言から」
2010/06/10「米国でも国債買入の話がグダグダの中では輪番の拡大は難しいのかもしれません」
2010/06/08「コールレートが覆面利下げ状態/トリシェ総裁のルモンド紙のインタビューが中々オモシロス」
2010/06/03「菅さんが次期首相有力とな/成長基盤強化関連の記事が出ています」
2010/06/01「BOEの議事要旨から、下振れリスク意識しまくり&国債買入の意味不明状態」
2010/05/31「パニックは一旦落ち着く/バーナンキ講演から、長期国債買入の位置づけが訳判らん」
2010/05/28「要するに欧州市場次第という所ですが」
2010/05/27「バーナンキ議長の東京での講演から」
2010/05/26「スペインの小さな金融機関のネタで欧州市場が大揺れ」
2010/05/24「決定会合レビュー」
2010/05/21「決定会合プレビュー/FOMC議事要旨より資産売却に関して、基本は慎重対応」
2010/05/20「ドイツ謎の空売り規制/短国が強い/FOMC議事要旨は基本的に景気に慎重」
2010/05/19「ECBの吸収オペ/日銀ドルオペは札僅少/コーン副議長講演から(その3)」
2010/05/18「ECBの吸収オペ/田谷さんのフリーダム解説/コーン副議長講演から(その2)」
2010/05/17「コーン副議長の講演からまたまた(その1)」
2010/05/14「今回の積み期間のコールが思いっきり0.09%になっている件」
2010/05/13「3か月TB入札は0.11%台前半/ドルオペはとりあえず1本実施/バーナンキ議会証言」
2010/05/12「短国がやたらと強くなっているようです」
2010/05/11「ECBの信用緩和炸裂ですな」
2010/05/10「ギリシャ危機を受けて即日オペ実施」
2010/05/07「展望レポートの内容は循環と構造のバランスを取っています」
2010/05/06「不思議な指示が出た決定会合」
2010/04/30「FOMC声明文は循環と構造のバランスを取っています/では日銀展望レポートは?」
2010/04/28「3月BOE議事要旨からメモ:量的緩和の効果については華麗にスルー」
2010/04/27「コーン副議長の講演から(その6)プライスレベルターゲットについては否定的」
2010/04/21「オペのバランスに関する雑感/コーン副議長の講演から(その5)物価目標に関して」
2010/04/20「展望レポートで構造的な話をしてくれるかな/当預残17兆円/コーン副議長講演から(その4)通常の金利操作を資産価格の変化に割り当てるべきかという問題について」
2010/04/19「3月FOMC議事要旨に特にホーキッシュな場所は無く」
2010/04/16「コーン副議長の講演で敢えてスルーしている財務省証券買入の効果について」
2010/04/15「コーン副議長の講演から(その3)超過準備の意義と効果」
2010/04/14「コーン副議長の講演から(その2)資産買入プログラムの意義と効果」
2010/04/12「コーン副議長の講演から(その1)流動性供給プログラムの必要性と監督の重要性」
2010/04/09「金融経済月報と総裁会見の強気度が全然違う件について」
2010/04/08「声明文と総裁会見のあいだに妙なギャップがございます」
2010/04/07「短観のCP参考系列は使える/新型オペはもう増やせない件/FOMC議事要旨斜め読み」
2010/04/06「2月と3月の間で話にギャップの大きいBOE議事要旨」
2010/04/05「決定会合プレビューと言うより雑談/オペ買入ペースは平常運転」
2010/04/02「短観&生活意識アンケート、景況感は改善も物価見通しにやや暗雲が/共同通信が謎の金融緩和観測記事」
2010/04/01「イエレン講演ネタの続き」

2010/06/30

お題「今日もまたまた市場雑談中心に雑談」

米国10年2.95%に2年0.6%ですかそうですか。

○市場雑談とか

・何だか良く判らんが米債が妙に走っている件について

いやまあ月曜の夜も別に大した事も無い(コアPCEデフレーターが落ち着いているとかいう後講釈を報道ベースではしてたけど、コアPCEデフレーター前年比+1.9%ってFRBの言う適正水準が+1.5〜+2.0だった筈だから落ち着いてはいるけれども債券を買うようなネタでも無い筈なんですけどね、タイミング的にそこで買われたみたいだけれども)のにいきなり米債が10年で3.02%まで低下しやがるから何がどうしたのよと思ったのですが、昨日は東京の午後から米債が走りやがりまして東京の後場に10年3%割れとかになるでござるの巻。

いやまあ後場に何で動くのかよー知らんですが(海外からの売買だとしたらおまいら朝早過ぎ^^)、東京昼休み時間の上海株の急落と円高進行から何かもう時空が歪んでいるのかというような感じで相場があちこちで走るのがオソロシスでして、まあ明確なこれと言う材料が無い中で米債がいい感じで走ったのが正直ワケワカランのですが、要するに相場がそっちに行きたがっていたという所なんでしょ。

#いやまあ足元の世界景気の回復が中国様次第というのはあるけど

で、まーこーゆー動きは後講釈をするのは別に適当にでっち上げる事はできるのですが、何かの材料というよりはこれは「米債が買われたがっている」という非科学的な状況なんでしょうかねえという気がする次第でありまして、それが単なる四半期末要因なのか、それとも今年に入ってからの上振れ気味の景気拡大で米国市場で景気楽観的な見方がワタクシたちが想像する以上に広がっていた反動が来ているのか、もうちょっと長い見方をした場合は一連の金融規制によって(特に預金受入機関の)商業銀行がリスク資産の購入に慎重になっている(貸出は相変わらず削減モードのようですし)から国債に恒常的に買いが来るのか、とかまー色々と考えられるのですが、こーゆー時は資金循環じゃないけれどもマネーのフローとかを見ないといかんのでしょうな。

と書いておきながらその結論はどうせどっかで本職の人がレポート書いていますからそれでも見てちょという恐ろしく手抜きな結論。


しかしまあ何ですな、米国経済って財政支援が切れたら踊り場入りなのは前から判っている話だと思ったのですが、何でこうまで反応するのかというと、何か季節性の要因とかが妙に加速しているのではないかという気がせんでもないが、よくわからんちんでございまする。


・期末越えになっているのにTIBORが動かない件について(笑)

インターネット経由のソースを探すのが面倒なのでソースは付けませんけれども昨日の全銀協TIBORリファレンスレート公表には微苦笑。

つまりですな、TIBORって2営業日スタートの各種期間のターム物金利を呈示する(オファーレートね)訳ですが、昨日の2営業日後と言えば7月1日になりますので、即ち3か月物TIBORが昨日から期末越えになる訳ですな。で、その昨日の3か月TIBORですが・・・・

日本円:0.39000%(前日0.39000%)
ユーロ円:0.38385%(前日0.38385%)

・・・・どう見ても同レートです本当にありがとうございましたorz

まあCPレートとかTBレート見ても(昨日は期末越えの3か月TB入札が0.12%乗せの足切りになったけど、それは恐らく別の要因によるものです)期末越えのプレミアムって何でしたっけ状態になっておりましたので、まあ動かないでしょうなあとは思っていたのですが、改めてこの結果を見せられると何だかなあ感が激しい勢いでやってきていい感じで脱力する所ではございまする。


・GCレートは無事低下

昨日は何か知らんがトモネ(つまり末初)の国債買現先なんぞを実施しましてちとビックリだったのですが、オペ攻撃が効いたのか元々資金が見えてきていた(月曜にT+1の所のGCは下がっていたので)のかは知らんですけど、いきなりレートがワープして前日の0.145%レベルからさっくり0.115%レベルに低下。

いやどちらかと言いますとトムスタートの共通担保を打つのかなあとか思っていたのですが、末初は下げたいけれども資金不足になる前にタームを打ち過ぎて当座預金残高が積み上がるのを避けたのか(2日以降に財政の揚げ超がポツポツ入るのですが、その前に打つと積み上がりっぱなしになってしまう)スポネを打って翌日にトモネとは面白い展開。まあ要するに必要以上にジャブジャブにはしたくないというのと、そうは言ってもあんまり四半期末でレートが跳ねるのもマズーという所なんでしょうかねえというバランスを取ったという所なのでしょう。


○金融庁から国債決済関連の話が

こんな行程表が出ている訳だが。
http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20100629-1.html
国債取引の決済リスク削減に関する工程表について

まあこの件に関しては日銀と金融庁が妙に熱心のようですが、書いてある話には微妙にツッコミどころというか何と言うか。

まず決済期間の短縮化ですけれども、アウトライトT+2にするのはまあ何とかなるでしょうけれども、T+1にするとなりますと、レポが実質T+0になるというのもありますし、同じ理由で資金管理もT+0になるわけで、そらまあ業者さんはそれでも対処できると思うのですが、そもそもベースがファンディングになっていない投資家サイドはそんな資金管理をするような業務フローにもなっていないしシステム手当もできていない訳でして、そうホイホイと参加できるものでもなし(つーか時差の関係上アウトライトT+1というのは海外から見たら実質T+0になると思うのですが、受渡とか大丈夫ですかね)。

決済リスク削減は判るのですが、資金管理とかの問題が今度は生じるのでありまして、その辺のバランスをよーく考えて推進して頂かないと部分最適が全体最適にならないというような制度デザインになり兼ねないので、ご当局の関連部署様におかれましては、決済リスク削減の1点でゴリゴリ特攻されるのではなく(いやまあそうじゃないとは思うのですが・・・・)バランスを考えて頂きたしという所でしょうか。

つーか、証券決済を短縮するという話になると、リテールの株式売買とか、投資信託の設定解約とかにも影響してくる話で、結構重い話になると思いますからね。


それからJGBCCの態勢強化に関してですが、確かにまあJGBCCに決済を集中するとネッティングとかの効率は良いと思うのですけれども、システムの頑健性という観点からすると何でもかんでも国債決済をJGBCCに集中させるよりは、カストディーの信託銀行などでも決済を行っているという状況になっていた方が、JGBCCに何か事故があった場合に全取引がいきなり止まるというようなトンデモナイ事態を起こさなくて済むのではないか(まあ日銀が止まったらしょうがないですけれども、日銀の場合はJGBCCなんぞと比較にならない位に強固に作ってありますから)と何となく思うのですけれども、違ってたらすいません。

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2010/06/29

○末初のGCレートが高い件についてなど

昨日は久々にスポネ(つまり末初)の国債買現先が1兆円オファーされまして、結果は平均0.141%で足切り0.14%の按分74.2%となりましたが、0.14%ですかそうですかという状況でありまして、昨日も末初のGCレートは0.14以上の水準で推移してたようですな。

今の所ですけれども、月末の当座預金残高が19兆円弱となると思われます(今日オペを実施すると更に増える)し、そもそも今日の当座預金残高も19兆円弱ということで、おカネそのものはマクロ的に見て沢山ある筈なのですけれども、どうも例によって例の如く国債償還要因での余剰地合いの時の仕様になっておりますが、またまた四半期末お馴染みの資金偏在が生じているのですかねえという感じで、GCの金の回りが悪いでござるの巻となっています。

でまあそれに対してさすがに先週の資金余剰の所から当座預金残高はやや多目にしていますが、朝8時発表の準備預金残高予想数値を見ると週前半は12兆円台前半で推移で、後半になって12兆円台後半になって昨日は13兆円乗せということで、まあ一応供給は必要な分は行っている感じですが、そうは言っても別にまあ無理くりジャブジャブにする程でもありませんなあという感じ(さすがに昨日辺りからは多目になったようですけど)ではございます。ま〜「タームは抑えるけれども足元の需給は市場での調整に任せる」という日銀の現在のスタンスがそのまま市場に出たと言ってしまえばそれまでなのですけれども、5月は欧州金融問題に対応(またはお付き合い)してやたらジャブジャブにしてきたのとはちと違いますなあという所でしょうか。とりあえず5月は危機対応(のお付き合い)モードだったのであれは特殊事案とゆーことで、何も無ければ現状のような「足元だけは自然体でタームが跳ねなければそれでよし」という調節が続くと考えるのが妥当なのではないかと存じます。


で、ターム物金利の方ですけれども、3か月TBが暫く延々と0.115%割れという素敵な状況が続いて入札が毎度毎度そんな水準でしたが、先週の入札が0.115%を久々に上回る利回りになったという所ですが、そうは言ってもど〜せ上がって0.12%という所ではございますので、こちらは全体的に潰さないといけないキャッシュがうじゃうじゃあるという状態になっているのと整合的ですわなという感じです。

で、今後の見通しもへったくれも無いのですが、今月のオペ状況を見ておりますと、まあ普通に資金余剰月になると短いオペが減って、資金が偏在しやすくなる(特に国債償還要因の場合)ため、GCレートがやや上昇する場合もありますよってな事が見えてきたと思われますので、そうなりますと平均のGCレートは資金不足月なら0.11%台前半とかで見ても良いのかもしれませんけれども、余剰月だとその水準で見るのはちと無理がありそうですので、短国のレートに関しても若干は強含みになって(と言っても上がって0.12%だと思いますけど)も良いのかなあとは思う今日この頃。

#などと書くといきなりGCが下がったり短国が下がるのがドラめもんクオリティという事はキニシナイ!!

それから足元で3か月短国は発行が減額になってまして、ピークの1回5.7兆円から足元では1回5.1兆円と何気に減っておりまして、この分というのって実質的には資金供給になっているのと同じですから、ここもオペ残高を減らす方向に寄与しているんでしょうなあとも思われる部分でございます。減額分のロールオーバーが始まると少し需給バランスも変わってくるのかもしれませんけれども、いずれにせよ20兆円の固定金利オペで食われてしまった短期オペの打ち余地は少ないままなのが続くんでしょうなあという所で。



○フェイルチャージがどうのこうのの話

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j09.pdf
わが国フェイル慣行の更なる定着に向けた見直しについて
― 日証協WG最終報告を踏まえた市場慣行見直しの動き ―

内容は先般ご紹介した日証協のWGの最終報告(そういやパブコメ出そうかと思ったけど諸事多忙で出せませんでしたなorz)の内容紹介なので、まあツッコミどころってあんまり変わらないのですけれども。

で、微妙に勘違いされていそうな部分なのですが、この制度導入の目的って「国債の決済処理を円滑に行う」のが目的であって、別にチャージ制度があるからどんどんフェイルしますよという話では無い筈で(まあ3%のチャージを払ってホイホイとフェイルするアホウもいないと思うが)、ど〜もその辺が毎度この件の話になると妙に論点になるのもどうなのかと思われる所ではございます。

正直言って自己勘定の方はこの手の話って割と何とでもなると思われますし、フェイルになった場合に取引を回復する為の自己調達が可能な人にとってみればちゃんとチャージが取れる話というのは話が明確化して良いと思うのですけれども、他人勘定系統の人の場合、フェイルチャージをどの時点での受益者につけるのかとか、自己調達での取引再構築が事実上できないような状態(フェイルは基本モノが入らない(金が入らないのはデフォルトなので話が別レベル)という状態なので敢えて取引再構築をしなくても良いのですけれども、そのまま放置していると売るに売れないのでポジションの自由度が下がるという問題が、いやまあこっちが売り方でフェイルすれば良いのかもしれませんが・・・)でフェイル食らった時に本当に事務的に問題無いのか(たぶん決済事務的な問題は無い筈だが、計理上の処理とかが特に短期公社債投信の場合きちんと決めないとややこしい事が起きそうな予感)とか、まあその辺は気になる所ではありますけれども、それは他人勘定系の業界団体などの方で何とかしましょうねという所です。

従って、日銀様におかれましては「とにかく完成系がこれだから、それに沿ってやっていきやがれ」と銀行証券などのケツを叩くだけではなく、実際問題として制度をいじる場合に「日銀当座預金先以外の所も含めて」「実務に落とし込んだ場合に」どういうフリクションがあって、どういう所のボトルネックを解消しないといけないか、というのを前広に意見聴取を行うべきではなかろうかとは思うのですけれども、どうも証券決済系に関しては当座預金先だけ集めて出来上がりの完成系のべき論を進めようとするのにちと急なんじゃねえのという懸念はせんでもない。

いやまあケツ叩かないと動かないというのもその通りなので、一々全部聞いてられっかというのもありますけれども、去年いきなり証券決済の翌日化のニュースが出て腰を抜かした(さすがにT+2で再来年実施という落ち着きどころになったので良かったっすけど)ように、どうも何か知らんが妙にやる気満々モードなのが微妙に気になる所でございます。

ということで、決済関連につきましては超地味な話ではあるのですが、いざ走り出してみると色々な所に影響(うっかりすると価格形成にも影響)する話でもありますので、フロントの皆様におかれましては良く判らん別世界の話とか思わずにご興味を持たれる事を推奨致したく存じます。

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2010/06/28

お題「BOEのお悩み」

ということで6月9、10日のBOE議事要旨から。

#予告しますが、今日は引用大会で結構長くなりますので・・・・

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1006.pdf

○今回のMinuteは比較的読みやすいです

BOEの議事要旨って速く出てくるのは大変結構なのですが、論点がホイホイと飛んでしまうので読みにくいったらありゃしないというのが難点なのですけれども、今回の議事要旨は中々読みやすいのでありました。

というのもですな、今回は(前回からそんな感じでしたが)量的緩和政策の効果に関する議論がすっかりスルーされておりまして、景気認識とインフレに関する議論に話が集中しているので、まー論点が割と集中していて読みやすい、というのがあるのですよ。ということでまあ一応全部読んでみましたが、引用とかすると長くなるので基本的にインフレに関する所を主に。


○金融市場と世界経済

最初がFinancial marketsで次がThe international economyになりますが、英国での環境はやはり厳しいようです。つまり、金融市場に関しては、緊張が継続しており、安全資産のイールドは低下し、銀行のファンディング環境やクレジットスプレッドは拡大という話になっています。また、世界経済に関しては「世界的な回復は継続しているが、その動きは一様では無い」ということで、ユーロエリアの回復が「財政と在庫サイクルによるもの」で先行き不透明で、米国に関しては民間需要は強いが住宅は弱い、アジアは力強い成長が続く、という認識を示しています。

金融市場に関する部分の最初の方から。

『3 The stresses in financial markets had been triggered by concerns among market participants about the ability of some euro-area countries to achieve necessary fiscal consolidation and had been only partially offset by the announcement of a package of measures by the EU, IMF and ECB on 10 May. The spread between yields on German government bonds and those of some peripheral euro-area governments had remained elevated over the month.』

財政問題に端を発したユーロエリアの緊急施策はリスク回避を一部閉じる効果はあったものの、引き続き厳しい状況にありますよということで、以下市場状況に関して色々と説明がある(ドルを中心にしたファンディングとかOISの低下とか)のですが引用すると長くなるので割愛。


世界経済の冒頭。

『8 Heightened concerns in financial markets about sovereign indebtedness had resulted in a renewed focus on faster fiscal consolidation among policymakers. Additional measures to tighten fiscal policy had been announced in a number of countries. This was likely to dampen prospects for demand growth in key UK export markets, unless offset by other actions to raise demand.』

ここでは財政回復への各国の動きが英国の輸出先(ってEU)の需要回復を阻害して輸出が落ちる可能性について話をしているのが何気にチャーミング。

世界経済の話はさっき書いた通りですが、最後に英国の部分がありまして。

『12 As in the United Kingdom, headline inflation around the world had been boosted over recent quarters by the impact of the increase in oil prices. But, excluding food and energy, inflation had been falling in the euro area and the United States, probably reflecting the downward pressure on wages and prices from excess capacity. Oil prices had fallen during the month, possibly reflecting the impact of recent financial market turbulence on expected global demand. If sustained, these developments could lead to lower headline inflation in due course.』

何で英国の話をしているのに途中からユーロエリアと米国のインフレの話になっているのかと言いますと、後の方で英国のインフレの見通しに関する議論でこの部分が一つのポイントになっているからなのですが、原油価格上昇で物価が上昇する中に英国も入っているが、一方でユーロエリアや米国では賃金や過剰生産力によって起きる価格低下圧力があり、その結果として食糧エネルギーを除く物価は下落しているという話をしているのですな。


○クレジットがタイトなのに耐久消費財の消費が強いのは不思議だそうな

Money, credit, demand and outputの所では、M4が弱いとか名目GDPが強いけれどもデフレーター上昇と一部VATの引き上げ(2008年12月に景気対策で15%に下げたものを17.5%に戻した)によるものだとか、実質GDPは引き続き緩やかに上昇(1Qで+0.3%)という話がございますが、消費の部分でここはほほーと思ったのでまあ比較的ど〜でも良い話ですが引用。

『19 Consumption was estimated to have fallen by 0.1% in the first quarter. The weakness was likely to have reflected the impact of the snow in January, the restoration of the standard rate of VAT to 17-1/2% at the start of the year, and the declining impact of car scrappage schemes. Even after allowing for the impact of the car scrappage schemes, the share of durables spending within total consumption had remained higher than during previous recessions. That was puzzling given that tight credit conditions and lower income expectations could be expected to have acted as a particular drag on durables spending. The retail sales data for April had pointed towards a stronger profile for consumption in the second quarter.』

クレジット環境がタイトな中で耐久消費財の消費におけるシェアが高いのは何ででしょという話をしてますが、まあ謎という事で片付いているのですが、自動車買い替え減税措置の部分を除外しても上記の状況だそうで、確かにこれは謎ではございますな。

それはそれとして。

『20 A key determinant of the outlook for activity over the medium term remained how public sector borrowing and private sector saving would evolve. The Government had announced measures on 24 May to reduce public spending by £6.2 billion within the 2010/11 financial year. More detailed tax and spending plans would be unveiled in the Budget on 22 June. It was not clear how private sector saving would respond to news in the Budget. That would depend in part upon the extent to which the sharp rise already seen in private sector saving had reflected anticipation of future fiscal consolidation.』

中期的な経済活動の見通しのキーになるのは、公的セクターの借入と民間の預金が拡大するかどうかとか書いているみたいですが、それから22日に出る予算に注目という事になっていましたが、ここでVAT引き上げのネタが出て益々インフレが加速しそうなところがチャーミングな訳ですが。


○で、物価ですが

Supply, costs and pricesの所ですが。まず現状はこんな感じでして。

『21 CPI inflation had picked up to 3.7% in April, mainly reflecting contributions from clothing, food, beverages and tobacco. Following the usual pre-release arrangements, an advance estimate for CPI of 3.4% in May had been provided to the Governor ahead of publication. A detailed breakdown of the May data was not yet available. Also in line with the pre-release arrangements, the Governor informed the Committee that producer input prices had fallen by 0.6% in May, in part reflecting the fall in sterling oil and commodity prices. But they remained over 11% higher than a year earlier. Producer output prices had risen by 0.3% in May, a slower rate of increase than in the preceding two months.』

ということで、現状は被服、食品、飲料、タバコなどが寄与してCPIが3.7%上昇しているとか、生産投入物価とか産出物価とかの話もございますな。

『22 Despite having fallen in May, CPI inflation was likely to take several more months to return to around the target, as downward pressure from spare capacity was offset by the impact on the price level of the past increases in oil prices and indirect taxes, and depreciation of sterling. It remained likely that inflation would moderate later in 2010 as the impact of those temporary factors wore off. But the pace at which it would do so remained highly uncertain.』

足元の原油やVAT引き上げ、ポンド下落のなどCPI引き上げの一時的な要因が剥落した後は、今後は生産設備の過剰によって打ち消されて、ターゲット近辺に戻るでしょうという話をしているのですが、毎度毎度この予想が段々自信無さげになってきているのが誠にアレな所です。で、この次の部分がまた実にBOEの悩ましい所ですが、さすがにパラグラフが長いので途中で切りつつ。

『23 The outlook for inflation in the medium term would depend materially upon the evolution of households’ and firms’ inflation expectations. The most recent readings from the various household surveys indicated that expectations for inflation one and two years ahead had risen markedly to their highest since 2008. It was likely that these expectations measures had been influenced by the recent outturns for inflation itself.』

ということで、中期的なインフレの見通しに関しては、家計と企業の中期的なインフレ期待の動向に大いに依存する。という話なのですが、そのインフレ期待は足元のインフレに影響されて、足元では各種統計によると家計と企業の中期的なインフレ期待が大きく上昇し、2008年以来最大の水準になっているという中々お洒落な状況になっているのですな。

『There was less clear-cut evidence from longer-term measures of inflation expectations, which might matter more for underlying inflationary pressure. While the Barclays BASIX survey measure of households’ longer-term expectations of inflation had risen, the Bank/NOP and Citigroup measures were little changed. Measures of longer-term inflation expectations inferred from gilt prices had edged down over the month. These measures had shown little clear pattern over recent months and they remained somewhat higher than their averages since 1997, although it was hard to know to what extent they had been affected by the current condition of financial markets. Measures inferred from derivatives contracts implied that market participants had continued to place more weight on elevated inflation in the medium term than on deflation.』

より長期的なインフレ期待に関しては、あまりクリアカットなデータは無いという事のようですが、データとしてはロンガータームのインフレ期待は上昇しているという統計とあまり変わっていないという統計があるようですな。中々この辺が悩みの種でして、以下の政策決定の話になるのだ。


○で、本当に物価はこうなってくれるのでしょうか

The immediate policy decisionの所ですが、基本的には5月のインフレーションレポートに沿った景気回復であって、やや平均以下の回復ペースではあるけれども、在庫回復のサイクルでの回復なだけでは無いという話をしていますが、クソ長くなるのでその辺はスルー。

ついでに、この先のリスクに関する話もこれまた長いので、インフレ上昇の方だけ引用しますが、財政再建路線によって需要が全体に減るリスクがあるという話をしていますが、これまたスルーしてインフレ上昇の方についてですが、ここで色々と論点が。

『28 Second, this month’s data had brought into sharper relief the recent resilience of inflation in the United Kingdom. Although CPI inflation had fallen in May, near-term inflation prospects remained elevated. This followed a period over recent years in which inflation had been above target for a majority of the time. It was likely that inflation would take some time to return to around the target. The near-term outlook for inflation might be further affected by measures announced in the forthcoming Budget, including possible changes to indirect taxes.』

『Against that background, there was a risk that inflation would have a further tendency to remain above the target if the private sector’s expectations of inflation over the medium term also rose.』

ということで、中期的なインフレ期待が高止まりするリスクがありまして・・・・

『That might necessitate tighter policy than would otherwise be the case.』

その場合は金融引き締めを余儀なくされるという指摘を。

『Survey-based measures of households’ short-term inflation expectations had risen sharply on the month, but the evidence regarding longer-term measures was more mixed.』

これはさっきの所と同じですが、足元のインフレ期待は大きく上昇しており、長期的なインフレ期待に関してはまちまちとな。

『It seemed unlikely that an increase in inflation expectations would raise the medium-term outlook for inflation without also being associated with a sustained rise in pay growth. While total pay growth had picked up, much of this had reflected a contribution from bonus payments that was unlikely to persist. Whole-economy regular pay growth had picked up by much less.』

ただ、賃金が継続的に上昇しない状況下において、このインフレ期待が上昇し続けるというのがあるのだろうか、というのは論点になるかと思います。つまり・・・・・

『29 The Committee’s central view remained that the substantial margin of spare capacity was likely to persist for some time and would bear down on inflation into the medium term.』

中期的に見た場合には、生産設備の大きな過剰がインフレ抑制効果として働くというのが引き続きの中心的なビューです。

『But there were considerable uncertainties about the margin of spare capacity and the strength of its influence on inflation, and about the extent to which continued above-target inflation would impinge upon the public’s expectations in the medium term. The resilience of inflation had raised the possibility that the impact of that spare capacity on inflation might be weaker or operating more slowly than in the past.』

しかしながらそれにはかなりの不確実性があって、過去における例のようになるかどうかがやや不確実だったりするという見方のようですな。

『 For some members, the recent downward trends in inflation, excluding energy and food, in the United States and euro area were evidence that a substantial margin of spare capacity would cause inflation to fall back in the United Kingdom as the impact of temporary factors wore off. Other members were concerned by this divergence in inflation outturns.』

ということで、ここで意見が分かれているのですが、米国やユーロエリアでは経済の過剰生産力の大きさによって食品エネルギーを除いたインフレが低下しているという先程出ていた話を持ち出して、英国も同様になるだろうという話をしているのですけれども、他のメンバーはそのようにならない可能性について懸念しています。


○ということで利上げの提案が出ていた訳ですな

んでまあそんな訳で今後のリスクに関する意見は分かれた訳ですが、インフレの状況に関するリスクを見ている人と、それよりも金融市場の状況が経済に与えるダウンサイドリスクを見るべきだという意見がございます。で、結果として1名の委員が利上げを提案したのは金曜日に引用した通りです。リスク認識の所を引用。

『30 In the light of recent developments, there was a range of views among Committee members about how the balance of risks to the outlook for inflation in the medium term had changed since the time of the May Inflation Report.』

『For some members, there was little change in the overall balance of risks, but the probability of inflation being either materially above or below target in the medium term had increased.』

『For some other members, developments in inflation indicated that the balance of risks had moved marginally to the upside.』

『Other members placed marginally more weight on developments in financial markets and, for them, the balance of risks had shifted slightly to the downside.』

とまあそういうことです。いやあ英国は景気のダウンサイドリスクもある中で物価だけは上昇してエライコッチャという状態でして、「うちはよそと違ってホンマモンの量的緩和政策をやっていますよフフン」というあの勢いはどこへという感じですわな、合掌。

#引用大会でどうもスイマセン

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2010/06/25

お題「何か高値更新しているので色々と雑感」

事前には全然期待されてなかったサッカー日本代表が何と予選リーグ突破と超ポジティブサプライズでございますな♪

これでNY株安を無視して日本株が上がれば流石なのですが(^^)。

#問題はサッカー騒ぎで選挙のことがスルーされることで、今朝もサッカー以外のニュースを見るのが大変で遂に東京MXTVを見る破目に(笑)


○さて気がつけば絶賛高値更新中な訳ですが

いやまあ気が付くも付かないも無いのですけどね(汗)。

まあ元々「4−6月は金利上昇」という謎のジンクス(?)があって、その上3月短観は白川総裁が歓喜の景気認識上方修正モードになる強さだわ、出てくる経済指標は悪くは無いわということで、どうにもこうにも買うのもちょっとねえという感じになっていたというのは認めざるを得ませんで、それに対して欧州の金融問題がどうしたこうしたでちょっと金利が下がった訳ですが、足元では菅内閣になって財政再建路線とか、米国がいきなり2番底懸念とかいう話になってこの有様という所で、まあ金利が何となく下がるのはシャーナイナイとは思いますが、ふと気がつけば水準的にどうよという所になっておりますわな。

しかも火曜の後場あたりからは「金利があるものほど金利低下」という中々こう香ばしい状況になっておりまして、何ですかこれは踏みですかエイヤーのロング大勝負ですかという動きになっているのが落涙を禁じ得ませんが、まあ延々とじりじりとしか動かない変態相場だったので、ヒャッハー状態っぽくなってきたのは相場らしくて結構ではないでしょうか、と無責任発言。


という感想はどうでも良いのですが、足元何でこんなにヒャッハーになっているかというのを勝手に(あたしゃ人の懐具合は想像するしかないですからね)妄想しますと、要因としては(1)そもそも最初に書いたような感じで、ファンダメンタルズを見るとあまり積極的に買う気が起きなかったによって、時間の経過とともに投資家のロングが足りなくなってきた(ので買うパワーが増えた)、(2)欧州が危機対応でアホウにも程がある動きを繰り返しておりこいつら大丈夫かというのが足を引っ張っている、(3)米国が突如2番底懸念とか訳判らんことを言い出した、というような感じで、まあ何気に内部の需給要因がある(ちょうどこの時期は国債の四半期大量償還がありますし)中に外部要因が火をつけてヒャッハーとなってしまったという所でしょうなあ、で、更にこの外部要因に関して愚考してみるでござるの巻。

#正直言って今こそ発行年限をドカン(平均で1年ちょっとかなあ^^よー知らんがもっと伸ばせるもんなの??)と伸ばして頂けますと将来の為になるんじゃねえのかと思いますが(^^)


○どうもこう欧州の対応がアレな訳で

先日引用したECBのスマギ(と読むそうな)委員の講演がございましたけれども、あちらでは「金融政策が有効に作用するためには短期金融市場の中核になっているレポなどのファンディング機能が大事」という話をしているのですが、その話が何故か「その市場機能を安定的にさせる為には金融監督の強化によってレバレッジやらポートフォリオミスマッチの監督を行うべき」というような話になっている訳ですな。

まあ特に最近ECBの偉い人が色々と講演をしているようで(あまりに多いので全部読んでない、週末読めたら読む)すけれども、これがまたどうも「おまえそれは正論だが今そこで火がボーボー状態なのに言うな」というテイストを醸し出している訳でして、その上英国とドイツとフランス当局は「銀行税」とか金融システムが弱っている時にアホウにも程があることを言い出すしと、どうにもこうにも対応がアレとしか思えません。

こうなって参りますと欧州の銀行ストレステスト結果がどうのこうのというもんがそのうち(来月でしたっけ)出るという話になりますが、これが吉と出るか凶と出るかというのがヒジョーにアレな部分があってオソロシスという所でございます。

即ちですな、米国であの大甘前提の茶番出来レースとしか申し上げようが無いストレステストで市場が安定化したのは、別にストレステストの内容が評価されて安定化した訳ではなく(いやまあ評価されたことにはなっていると思いますが)、実際には背後に「で、駄目な所はコカしたりどっかに引き取らせたりするけど、システミックリスクになるような場合は当局がケツ持ちをする」という政策パッケージが背景にあって、TARPだの何だのを用意してFRBも流動性を出して短期金融市場の流動性枯渇させませんよという姿勢を出したから安定化したのでありまして、例えば日本においては過去公表不良債権額が毎期のように発表されて「これだけ引当しました」というような話をしても、常にケチをつけられていたように、当局の方で強力ケツ持ちスキーム(綺麗に言えば「金融システム問題を財政に付け替える措置」となる)を用意しないと、欧州のストレステスト発表って却ってヒャッハー状態を煽る懸念もありまして、まあこの辺りに関して欧州当局大丈夫ですかねという気もこれまたするのですけどね。

ところで、欧州ストレステスト絡みと言えばこんなんありましたが。
http://www.spainbusiness.jp/icex/cda/controller/pageGen/0,3346,4928839_36772709_36778639_4335041,00.html
サンタンデール、BBVA2行が欧州優良行に

スペインの場合は不良債権問題ってBSCHやBBVAの国際絶賛展開の大手行ではなくて貯蓄金融機関などの地域金融機関中心ですから、足元で地域金融機関がバタバタ潰れている米国と話は同じじゃねえのかという気もするのに、一方の米国での金融機関破綻祭りは問題にならないのに、そんなに大きくもないコルドバのCajaが飛んだからと言って大騒ぎとか訳判らんにも程がありますけれども、まあ不安モードの時と言うのはそういうもんでありますから、欧州当局におかれましては火消しに役に立たないくだらん正論を言ってないで火消しに何が重要かを考えて頂きたいものでございます。とこんな所で言っても意味が無いけどね(−−)。


○米国2番底懸念ってあまりに極端な変化でして

足元で住宅関連の指標が悪いということで、俄かに米国2番底懸念が盛り上がっておりまして、そんな中に昨日ご紹介したFOMC声明文が出たのがまた妙に背中を押す格好になって米国も何か10年トレジャリーが3.1%とかお洒落な展開になっている訳でございますが。

えーっとですな、そもそも米国(だけじゃなくて主要国どこでもそうなのだが)景気に関しては、危機対策で打ちこまれた各種財政措置が切れる頃なのですから、この夏に掛けて一旦踊り場入りするというのは元々のコンセンサスだった筈でございまして、足元住宅着工が弱く出るのは仕方ない話ジャマイカと傍目で見ていると思うのでありますが、どうも危機後の戻りが鋭角ターンだったのにすっかり気分を良くするのがメリケンクオリティというのが単純としか申し上げようが無いですわな。で、今度は急に2番底懸念とかおめでてーなという感じですが、ま〜過剰反応なんじゃネーノという気がとってもするのでござる。

だいたいですな、昨日も書きましたがFOMC声明文で「海外の展開の影響で金融環境が景気回復に対してless supportiveになる」というコメントだって、そもそも前回のFOMCが4月28日でギリシャ問題が盛大に爆発する前なんですから(例の措置が出たのは5月になってから)、その位の文言が入るのは当たり前ですし、景気に関してだってそもそも「財政サポートが切れたら徐々に回復の勢いが弱くなるが、回復傾向は変わらない」というのは前からFEDの高官とか多分FOMC議事録とかにも出ていた話でありまして、それを踏まえて「景気の水準は上がっているけれども回復の角度は鈍化しました」みたいな表現を見てガックリするとか意味判らんとしか(以下悪態が続きそうなので自主規制^^)。

ま、足元ちょっと景気回復ヤッホーとやり過ぎたからという事なのでしょうが、それが2番底懸念まで行くのがメリケン恐るべしという所でしょうか(^^)。


○英国はこりゃ大変だわ

昨日の朝はFOMCステートメントだけではなくてBOEの議事要旨も出ているのでありました。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1006.pdf

まあまだ全部読んでないのですが、物価は上がるは景気は回復しているけどそんなに力強い訳でもないわ金融システムはうんこだわバランスシート調整は終わらないわというジョンブル野郎の皆様は如何お過ごしでしょうかと超斜め読みした訳ですが。

『33 The Governor invited the Committee to vote on the proposition that:

Bank Rate should be maintained at 0.5%;

The Bank of England should maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £200 billion.

Seven members of the Committee (the Governor, Charles Bean, Paul Tucker, Spencer Dale, Paul Fisher, David Miles and Adam Posen) voted in favour of the proposition. Andrew Sentance voted against, preferring an increase in Bank Rate of 25 basis points.』

ええええこの経済状況で25bp利上げ提案っすかああああああ。

・・・・と言いたい所ではございますが、確かに物価状況があの調子で、(まだ今回のMinute読んでないからアレですが)MPCの度に徐々にインフレ抑制の見通しが怪しくなっているという状況ですので、足元でインフレターゲットを上回って推移する物価情勢は「中長期的にはアンカーです」と詫び状書いてお茶を濁しきれないとなった場合には金融を締めないといけないという大変に香ばしい展開が待っている訳で、遅れるよりは今やっちまった方が良いというのも一つの考えではございます。という事になりますわな英国の現状は。

おまけに新政権がVATと17.5%から20.0%に引き上げとか抜かしている訳でして、んな事になったら益々above target状態が長期化するざますわ奥様という事になる訳でございまして、そらまあ大変なので金融界の東京スポーツと勝手にあたくしが命名しているロンドンの赤い新聞はああでもないこうでもないと他国にケチ付けて放火報道を一生懸命したくなるわなと思う今日この頃でございました。

#Minute詳しくは週末に読んでみる所存

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2010/06/24

お題「FOMC声明文」

本日も諸般の事情につきFOMC声明文一発ネタで勘弁(汗)。

前回の定例会合は4月28日でした(5月のは臨時会合)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100623a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100428a.htm(前回)

○景気の現状認識に関して

あのですな、目の前のモーサテ様が「景気に対する慎重な表現」となっているのでそうなのかもしれませんし、あたくしは日銀文学は得意な積りですけれども英語は大学受験英語レベルしか無いのでよーわからんのですけど、これってそんなに景気認識下がっているとも思えんのですけど、こーゆーのは英語が得意な本石町日記先生に解釈をお願いしたいものです。

#以下引用文の後で「」付きの日本語で書いているのはあたくしのヘタクソ日本語解釈でございますので、ヘタクソだのアホウだのというご指摘(正しい解釈付きで^^)を頂きますと甚だ有難く存じます(^^)。


・総括判断と労働市場に関して

『Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that the economic recovery is proceeding and that the labor market is improving gradually.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that economic activity has continued to strengthen and that the labor market is beginning to improve.』(前回)

「経済活動が強まっている」→「景気回復が進行している」
「労働市場の改善が始まっている」→「労働市場は徐々に改善している」

ということなのですが、これって別に判断下げてなくて回復という見通しのオンラインじゃねえのかと思うのですけど、さっきから延々と目の前のモーサテ様に出ている方々が話をしているのを聞きますと、米国市場を見てる人達ってもしかして米国経済V字回復だぜヒャッハー!とでも思っていたのでしょうかという感じではございます。

急激な落ち込みからの戻りが一服したらその後はちっとペースがゆるくなるのって普通だし、もともとFOMCが毎度毎度指摘しているように、リソースのスラックがどうのこうのという問題もあるから、そんなにヒャッハー回復はせんじゃろうと思うんだが、やはり楽観ベースのメリケンクオリティはさっぱりワカランチ会長である。

#追記:その後色々な人が説明をしているのを聞いているのですが、どうもやはり力強い回復だぜ早期利上げだぜヒャッハー!!というのが米国様のコンセンサスだったのでしょうかね。それならまあこの話も判るのですが、別にこれがそんなに(この部分だけで言えば)慎重な話とも思えないとは思うのです。そもそも景気に慎重で利上げなんてまだまだですよってえ話はバーナンキさんもイエレンさんも議会証言や講演でずーっとしていると思うのですけど・・・・・・(おまけに物価も落ち着いているし)


んでもって総括判断の次の個別項目(労働市場の話も総括判断にありますけど)に関してもちょこちょこと表現の変化がございまする。



・家計に関して

『Household spending is increasing but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.』(今回)

『Growth in household spending has picked up recently but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. 』(前回)

家計消費に関する表現も「has picked up」から「increasing」になっていて、これもまあ回復のオンラインだと思うのですが、恐らく「pick up」というのが表現として強いからどうのこうのっていうのでしょうかねえ。4月と6月だと最初に履いているゲタが違うでしょと思うのだが、後半の表現(家計消費が各種の要因で束縛されているという話)が同じだからちゅうことなんでしょうかねえ、良く判らんけど角度だけじゃなくて水準も重要だと思うのだが。


・企業支出に関して

『Business spending on equipment and software has risen significantly; however, investment in nonresidential structures continues to be weak and employers remain reluctant to add to payrolls.』(今回)

『Business spending on equipment and software has risen significantly; however, investment in nonresidential structures is declining and employers remain reluctant to add to payrolls. 』(前回)

企業の支出行動に関しては、建設関連(ですか?)への投資に関して「減少している」から「弱い状態が続いている」になっている以外は同じで、相変わらずここの表現は弱いです。


・住宅着工に関して

『Housing starts remain at a depressed level.』(今回)
『Housing starts have edged up but remain at a depressed level. 』(前回)

住宅着工に関しては判断を下げていますね。



・金融環境に関して(まあこの部分が大ネタね)

ということでここの部分が大ネタなのですが。

『Financial conditions have become less supportive of economic growth on balance, largely reflecting developments abroad.』(今回)

『While bank lending continues to contract, financial market conditions remain supportive of economic growth. 』(前回)

金融環境が従来「景気回復に対してサポートとなる」という表現だったのが、今回は「海外での変化を反映してサポートとなる力がやや弱まる」という表現になっていまして、欧州金融問題が米国の金融環境の足を引っ張る事を新たに入れました。

いやまあ普通に考えてこれ位入れるの当たり前だと思いますし、良く良く見るとこの部分って「金融環境」に関する話であって、別に欧州の金融問題が実体経済に反映した結果として米国の回復を阻害するという所まで踏み込んだ話でも何でもないのですが、どうもベンダー様がインターネット経由で報じている解説記事とか反応とかを見ていると、米国様におかれましては結構早期利上げがどうのこうのとか思ってたんですねえという感じで、それならまあ瞬間反応するわなという所でしょうか。

あと、金融環境に関して銀行貸出の部分は今回と前回は同じ表現です。一応追加。

『Bank lending has continued to contract in recent months. 』(今回)


・FOMCの先行き見通しに関して

『Nonetheless, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a time.』(今回)

『Although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a time, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability. 』(前回)

語順が変わっているのにどういう意味があるのか微妙なのですが、書いてあること自体は同じですな。「当面の景気回復パースは緩やかなものになるでしょう」という話です。


○何気にインフレの方を下げているような気がするんだが

続いて第2パラグラフ。

『Prices of energy and other commodities have declined somewhat in recent months, and underlying inflation has trended lower. With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time. 』(今回)

『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time. 』(前回)

ということで、今回は前回の文章に加えて「エネルギーおよび商品価格がここ数か月幾分か下がっており、物価のトレンドも下がっている」という表現が追加されていまして、まあ確かに足元の物価動向がそうなっているのでこういう表現になるのでしょうけれども、きっちりとこの辺を入れているのがチャーミングかと。


○例の表現は変わらず、異例の政策に関する話は無事終了

もはや水戸黄門の印籠状態のこの表現は今回も不変です。第3パラグラフから。

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』(今回)

ここの表現は見事に今回も同じなので前回部分の引用は割愛します。念の為確認したい方は4月FOMC声明文を(^^)。

それから、今回何故かパラグラフ分けして書かれているのが次の部分なのですが、これまた前回と同じ表現です。これが第4パラグラフ。

『The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to promote economic recovery and price stability.』(今回)


で、今回ばっさり削られたのは以下の表現。前回声明文だと第4パラグラフ相当。

『In light of improved functioning of financial markets, the Federal Reserve has closed all but one of the special liquidity facilities that it created to support markets during the crisis. The only remaining such program, the Term Asset-Backed Securities Loan Facility, is scheduled to close on June 30 for loans backed by new-issue commercial mortgage-backed securities; it closed on March 31 for loans backed by all other types of collateral. 』(前回)

何故か目の前でさっきやってたモーサテで解説してたどこぞの誰かさんは出口政策に関する話が無くなったのはサプライズとか言ってたのですが、それは単に予定通りに危機対応措置が終了して、まあある意味で通常の中での景気回復が死ぬほど遅くて失業が中々改善しない景気の悪い状態での金融政策運営になったからではないかと思う次第で、FRB的には無事に危機対応終了して良かったですね的な意味あいではないかと思うのですが、出口モードから追加緩和へとか謎の解説にちょっと耳を疑ってしまうあたくしなのでありました。いやまあこの先悪化すれば緩和したって別におかしくはないけど現状の表現でそこまでは読めないと思うのだが・・・・


○ホーニッグさんの反対理由も見事に同じ

第5パラグラフは票決の話でして、例によって例の如くホーニッグさんが反対したのですけれども、この理由が見事に前回と一言一句変わらずの巻。一応引用します。

『Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted because it could lead to a build-up of future imbalances and increase risks to longer-run macroeconomic and financial stability, while limiting the Committee’s flexibility to begin raising rates modestly.』(今回)

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2010/06/23

○市場機能論が規制監督強化に繋がりそうな悪寒

昨日ご紹介したECBのLorenzo Bini Smaghi委員の講演の続きです。
http://www.ecb.int/press/key/date/2010/html/sp100614.en.html

『4. Collateralised finance and the transmission of monetary policy』ってところから。

『In some respects the transmission mechanism is weakened through the loss of control over some financial aggregates - such as credit formation - and the declining coherence between credit and money. In a world of shadow banks the money multiplier might become a will-o’-the-wisp which central banks find difficult to use as a steady instrument of policy.』

『The reserve basis - which in the inverted-pyramid representation of the financial system sustains the creation of total leverage in the economy - becomes an even thinner support for finance. As the famous “conundrum” episode has demonstrated, a central bank’s intention to impose limits on credit can be resisted and offset by an endogenous expansion in leverage. While the base of the pyramid remains narrow, growing leverage can still expand the whole edifice of finance. 』

つーことで、リザーブベースを積み上げても肝心の市場機能がぶっ壊れていると意味がなく、しかもその市場機能というのがレポなどの市場であるというお話ではございます。

『Regulation is an answer to the weakening of central bank controls over the size of finance.』

『It will be especially important to extend regulatory oversight to those market segments that, before the crisis, had escaped the attention of regulators. The prime focus of attention here will be - once again - the shadow banking system. Here, of course, there is an issue of relative scale. If we want central bank control over leverage to be stronger in the future, shadow banks need to be part of what we consider ‘banks’ tout court. In fact, by 2007 the size of the official and shadow banking systems, measured by the total amount of assets, had become essentially the same.』

とまあこんな話をしているのですが、どうもECB的には所謂BISビュー(というかブンデスバンク方式というか)をオフサイトモニタリングの世界でも突っ込みましょうという感じがプンプンするのですが、それって思いっきり金融の縮小に繋がりそうなのでどうなのかなあという気がせんでも無いのだが。

まあ流れとして金融監督の強化という話はあるのですが、ECBはその中でもガチガチの話をしだすんですなあというのは把握した訳ですが、銀行監督とかの話になりますと、日銀の金融システムレポートも必見だったりする(割には3月の金融システムレポートをネタにしてなかった気がする、汗)のでして、英国および欧州での銀行税がどうのこうのという話もありますけれども、どうも金融に関しては制度的なデレバレッジの動きが続いて景気の足を引っ張るんジャマイカというのはひじょーに気になるのでありまする。

#日本の場合金融システムレポートで書かれるのは「持ち合い株を減らしましょう」なのですが、まーそれがホイホイできれば苦労はしないのでして、日本的慣行に切り込むという話になるかと思料。まあそのうちそのネタも。

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2010/06/22

○金融政策のトランスミッション・メカニズムに関するお話から

何気にここもとECBのボードメンバーが色々な話をしています。この前チェックした物は試しに1本(軽かったので)読んでみた訳ですが、どうもここもとECBでは各種金融政策の論点整理期間にでも入っているのか、その手のお題の講演がうじゃうじゃ並んでいます。リストはこの辺をご参考(これはボードメンバーの講演リスト)。
http://www.ecb.int/press/key/speaker/bm/html/index.en.html


で、お題に引かれて読んでみたのは6月14日のLorenzo Bini Smaghiさん(どう読めば良いのでしょうか)の講演でございます。

http://www.ecb.int/press/key/date/2010/html/sp100614.en.html

まあ最初と最後だけ読んでも内容としては「ふ〜ん」という感じだとは思いますけれども、あたくしが端的に勝手に纏めてしまいますと・・・

いわゆる証券化市場の発展に伴い、金融システムが従来的な預金貸出から、シャドウバンキングと言われる証券化市場に拡大し、ファイナンスの卸売みたいな形になりました。で、その証券化市場の拡大によって、ファンディングが預金からレポ市場などの市場調達へと変化しました。

このレポ市場は、担保証券の価格が急激に低下したり、流動性確保のニーズが高まった場合に、急激に市場機能を低下させ、結果として証券のファイヤーセールなどに繋がってしまう恐れが高く、今般ECBが実施した市場への介入策はこれらの市場機能確保の為のものであります。

ただし、中央銀行が市場機能を果たすという事が行き過ぎるとそれはそれで問題がありますよって話もしています。で、最後はソブリン債の発行が多いという問題に触れてます。

と、とりあえずヤケクソで相当端折ってみましたが、この中で「ほほー」と思った所をてきとーに引用してみます。

・ECBの証券買入に関する説明部分から

『Our enhanced credit support measures were taken to preserve the integrity of the transmission mechanism of monetary policy at a time when banks showed a tendency to withdraw in a disorderly way from their intermediation function. A functioning transmission mechanism is the pre-condition for the central bank to be able to accomplish its mandate of maintaining price stability in the medium term.』

『The same policy intention underlies our Securities Markets Programme, which we started on 10 May this year. We intervene in euro area public and private debt securities markets in order to ensure depth and liquidity in those market segments which have proved dysfunctional. As government securities are the basis for pricing all private debt instruments, our action in the sovereign bond markets aims to create the orderly conditions necessary for lenders to provide a steady flow of credit to the private economy.』

ということで、各種オペレーションに加え、国債買入も「市場機能の回復の為」実施したという事です。まあ米国の国債買入とはちょっと違いました(米国では国債市場は普通に機能してた)わなということで。

『Overall, through its enhanced credit support measures, the ECB has replaced ill-functioning segments of the financial market and acted as an “intermediary” between banks with a liquidity deficit and banks with a liquidity surplus. At the same time, and with a slightly longer-term perspective, the measures have contributed to a more stable situation in various segments of the financial markets during the crisis. For example, easier access to central bank refinancing meant that banks could refinance their money market activities more easily if needed. This, in turn, has reduced the risk of lending out liquidity in the money market and thereby lowered the liquidity risk premia.』

ということで、市場機能回復という話は、最初は各種のファシリティーを作ったFRBが言いだしていましたが、ECBもすっかりこの説明をしているというところでして、まあ今般の金融危機で主要各国の金融政策対応のロジックとかが随分と似ている(まあ各国で同じような問題が生じたのだからある意味当たり前なのかもしれませんが)なあと思うのでありました。

で、その最後の所に「へ〜」と言う部分が。

『In crisis times, banks the world over learnt what Japanese banks learnt back in the 1990s: that they could manage their liquidity requirements - perhaps more comfortably and at lower cost - through central bank intermediation rather than via their traditional money market activities. Central banks - for their part - have seen that their collateralised lending has made them key market makers at a time when markets were disappearing.』

ということで、日本のケースが何故か出ているのですが、90年代後半の危機では流動性拡大と利下げをしてましたなあと思いつつ、あれこんな理解でいいんだっけとちと微妙なテイストがせんでもない。


・中央銀行の市場機能代替が拡大し過ぎる場合の問題について

『First, the larger the intermediation offered by the central bank, the smaller, ceteris paribus, the incentives are for banks to reduce liquidity risk (for example, to reduce the maturity mismatch of assets and liabilities). After all, they can turn to the central bank if they need to.』

ceteris paribusって辞書みたら「他の事情が同じならば」だそうです(^^)。で、中央銀行が市場機能を代替し過ぎると市場参加者が流動性リスクを無視してミスマッチポジションを拡大させてしまうという話ですわな。一応続きを引用。

『Of course, while central bank intermediation increases the incentives for banks to take liquidity risk, it also increases the liquidity insurance available to banks. That is, as long as a bank does not adjust its balance sheet when the central bank offers more intermediation, its net liquidity risk exposure may in fact decrease due to the increased liquidity risk insurance provided by the central bank. But which effect is stronger: the incentive or the insurance effect?』

もう一つの問題ですが。

『Second, larger central bank intermediation can crowd out market activities. This might be perceived as a cost-reducing development by private banks.』

まあ日本の短期市場って中銀のオペ様に絶賛大依存状態になっているので、こういう指摘が当たっている面もあるし、1番目に指摘したような「ミスマッチポジションの野放図な拡大」は起きていないですから、その辺は自制が効いているとも言えますし、中々難しい論点ではございますが。

『If the central bank lends larger volumes in longer-term operations, this might provide a boost to private lending at the same maturities: some banks might consider offering funds in the term money market only if they themselves can refinance such activities by participating in longer-term central bank operations.』

という指摘をしていますが、それはまあ市場参加者が引き続き強欲豚状態になって中銀のオペレーションによる流動性確保に乗っかってガツガツと行動した場合にそうなるかも知れないですけれども、その辺はバランスシート制約とかを活用することによって管理ができるのではないかと思われます(というかその類の話もしてます)し、もう低金利が牛の反芻状態のように延々と続き、バランスシート制約がうるせえニホン的な市場感覚からすると、この指摘は「そうかいな?」
という気がせんでもない。

『This may make term money markets more liquid in the end. However, this is not what the Japanese authorities observed in the first half of this decade.』

ほほう。

#ということでちょっとだけ引用したら量は増量だわ時間は無くなるわなので終了

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2010/06/16

お題「決定会合レビュー」

まあ市場ちゃんの反応は特に無かったんですけどね(^^)。

○景気認識の文言がまるで同じっす

まずは声明文。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100615.pdf(今回)

例によって前回と比較するのだ。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf(前回)

・・・・と思ったのですが、今回の特徴は「前回と認識がまるで変わっていない」ということであります。で、その前回というのは、白川総裁の説明的に言えば「緩やかな回復というメインシナリオに沿った展開に乗っているだけですよ」という事にはなっていますが、5月24日の駄文でご紹介したように、内容そのものは結構あちこちで上方修正をしている、というモノでしたので、よーするに前回の上方修正状態をそのまま継続という内容なのですな。

と書くとそれで終了してしまいますので、一応中身を引用引用。


・現状認識ではこの前削除した雇用所得環境に関する文言が

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』

『すなわち、新興国経済の高成長などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。そうしたもとで、設備投資は持ち直しに転じつつある。雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にあるものの、その程度は幾分和らいでいる。個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。』

で、ここの部分ですが、前回は「雇用・所得環境」に関する文言がばっさりと抜けていて「これはどうした事ぞ」という話をしたと思うのですが、今回は声明文上にこのくだりが復活です。

でですな、この場合は金融経済月報の本文の方をみないといかんのですが、月報本文を比較しますと、5月の金融経済月報の本文8ページ(PDFファイルだと10ページ)にはこのような記述があります。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1005.pdf

『雇用・所得環境は、引き続き厳しい状況にあるものの、厳しさは幾分和らいでいる。』(5月金融経済月報本文より)

で、4月の金融経済月報(同じく本文8ページ)ですけど。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1004.pdf

『雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にある。』(4月金融経済月報本文より)

ということですので、今回の声明文での雇用所得環境の現状認識は5月の状況とほぼ横ばいというようなイメージかと思います。詳しくは金融経済月報を見て確認したいと思いますです、はい。

で、以下の部分ですが一応引用しますね。

『公共投資は減少している。この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、基調的にみると下落幅は縮小を続けている。』

この部分で前回と違うのは物価の認識に関して「基調的にみると」という文言が入っている所ですが、これは「高校授業料無償化の影響をスルーした場合に」という事ですのでまあ技術的な改変。

・・・・・で、いつもだと前回との比較を載せるのですが、今回は何せ文言の変更がまるで無いと言う素敵な状態になっています(とあたくしは思うのですけれども、違ってたらゴメンナサイ)ので比較は入れません。


・先行き認識も文言同じ

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。』

『物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小していくと考えられる。』

まあこのあっさり味ぶりは先行きの回復に自信ありということなんでしょう。確かにここもと出てくる経済指標は総じて良い内容の物が揃っているので、そーゆー点から考えても先行き回復シナリオを引っ込めると言う訳にも行かないでしょうなあというのは判りますけどねえ・・・・


・リスク要因もこれまた同じ

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。この点、一部欧州諸国における財政状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』

相変わらず上振れも下振れも同じ。明日ネタにしますけど総裁会見では新興国の上振れについて言及してたみたいで、何か麿が偽りの夜明けまっしぐらでおじゃるという感じがするのは心配性ですかそうですか。

『物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』

というのも変わらないので今回は前回と比較するのは割愛。


・おまけに決意表明部分も同じとな

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』

で、その後に今回導入措置の説明がありますが、まあそこはテクニカルな話なので特に関係なく、ここの部分もまたまた同じ文言という感じです。


○ということで(声明文ベースで)下振れリスクが増えないとな

てな訳で今回の決定会合声明文は物の見事に内容が同じという結果になっていまして、報道ベースを見てますと総裁記者会見における景気認識も特に下振れリスクを増やすような話は無いように感じましたが、まあこれは今日出てくる会見要旨を見てまた判断しようかとは思います。

まー3月短観以来すっかりと景気回復モードになってますなあという感じがしますけれども、審議委員の皆様の講演とかを見てますと結構下振れリスクを意識していますし、大体からして欧州のソブリン問題って金融機関不良債権問題になってきて、しかもこの金融機関不良債権問題って日本の状況にも似た部分があって、米国のようにぶん投げてさっさと解決という流れにはならずに、ダラダラと引っ張りそうな構造の香りがする訳ですが、そういうのは(・∀・)キニシナイ!というのが白川総裁クオリティーでおじゃるという所でしょうか。

何かね、昨年の4月に「偽りの夜明けに注意」とか米国に乗り込んで行って話をした人が、いざてめえの話になると下振れリスクに注意しましょうねって他の審議委員までが話をする中で、堂々の景気回復全開モードになっているのではないかと思われても仕方ないような感じになっているのが、何と申しますか「人の振りみて我が振り直せ」というようなテイストが漂って来る今日この頃でありますことよという所ですわな。いやまあ杞憂なら結構なんですけどね(^^)。


で成長戦略ですが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100615.pdf
の3ページ目以降と

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1006b.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給基本要領」の制定等について

にございます。声明文の方から大体引用します。

○理念は禅問答成分が高いですなあ

一応理屈は通ってはいますけどね。

『1.現在、日本経済が直面している最も重要な課題は、潜在成長率や生産性を引き上げていくことである。この点では、企業や金融機関などの民間経済主体の果たす役割が大きい。政策当局も、民間経済主体の革新的な経済活動を促す環境を整備するため、それぞれの立場で役割を果たすことが必要である。日本銀行としては、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点を踏まえつつ、こうした面でどのような貢献を果たし得るか検討してきた。その結果、本日、成長基盤強化に向けた民間金融機関の自主的な取り組みを金融面から支援するため、新たな資金供給の枠組みを時限措置として導入することとした(概要は別添の通り)。』

・・・・どう見ても禅問答です本当にありがとうございました。

『2.本資金供給は、民間金融機関による成長基盤強化に向けた融資・投資の取り組みに応じて、当該金融機関に対し、長期かつ低利の資金を適格な担保を裏付けとして供給するものである。本措置を利用する金融機関に対しては、生産性の向上や新たな需要の創出に資する事業などへの融資・投資を広げていく契機として、本資金供給を適切かつ効果的に活用することを期待している。』

後の概要に出ているのですが、これって貸金を担保に取ってくれるわけでは無くて、共通担保を担保に取るというのが何と申しますかという感じです。

『3.本資金供給の狙いは、金融機関が成長基盤強化に向けた取り組みを進めるうえでの「呼び水」となること、また、金融機関が自らの判断で行う多種多様な取り組みをできるだけ幅広く後押しすることにある。同時に、本資金供給の枠組みを決めるにあたっては、日本銀行自身が個別の企業や業種への資金配分に直接関与しないこと、ならびに資金供給の規模や期間の点で、金利政策や金融調節の円滑な遂行に支障を来たさないことに留意した。』

貸出金を担保に取らないで共通担保を取るという形式なので、そういう意味ではまあ貸金そのものは単なる「通常の資金供給オペの延長」でもありますので、個別企業や業種への直接関与じゃないですよ、という理屈になるのでしょう。でもまあ「成長分野」を列挙したり、「呼び水になること」と期待したりという話ですし、そもそも「成長基盤強化」と言っている時点でそれは何らかの配分が伴うものではないかという気がするのですけどねえ。

でですな、後半の部分にさらっと書いてあるのもまあポイントちゃあポイントでございまして、今回の資金供給が「ターム物金利を押し下げるような物にならないようにする」という事を意図してますよ、という話になりますので、つまりは供給額総額が後にありますように3兆円で、しかも1行辺りの貸出限度額が1500億円ぽっちになるという話になるのでしょうな。あんまりドバドバ出すとそれはそれでターム物金利押し下げ要因になっちゃいますからね。

『4.本資金供給については、本年8月末を目途に開始できるよう、準備を進める。日本銀行としては、本措置の実施を通じて、企業や金融機関などによる日本経済の成長に向けた取り組みが、一段と活発化することを期待している。また、成長基盤強化に資する金融市場の整備などに向けて、中央銀行として引き続き貢献していく方針である。』

だそうです。


○新施策は「ターム物金利に働きかける」気は無いというのは把握した

声明文4ページに『成長基盤強化を支援するための資金供給の概要』がございます。


・金融機関の申し込み受け付けベースじゃないのかよ!

いやまあ既にそういう話になっていたんでしょうけれども、あたくし的には当然ながらこれって金融機関からの申し込み受け付けベースで実行するもんだと思っていましたが、これは管理上面倒で死亡するからという面はあるのでしょうけれども、また微妙に使いにくくしてやがりますなあというイメージが。

『3.貸付期間、借り換え可能回数

・ 貸付期間は原則1年とし、3回まで借り換えを可能とする(最長4年)。

―― 新規貸付は、四半期に1回のペースで実施する予定。』

新規貸し付けは云々というところで「へ〜」と思った次第でありまして、しかも、

『5.貸付限度額

(1)貸付総額

・ 貸付総額の残高上限は3兆円

―― 1回当りの貸付総額は1兆円を限度とする。

(2)対象金融機関毎の貸付限度額

・ 対象金融機関毎の貸付残高の上限は 1,500 億円
・ 各対象金融機関は、1.の取り組み方針のもとで行った各四半期の融資・投資の実績額の範囲内で、借入れを行うことができる。』

ということですので、1回に1兆円で仮に20行が1500億円とか応札してくると何と按分比率が33.3%になってしまうというお洒落な結果になってしまうという話で、いやまあそんなに札が集まるとも思えないのですが、受け付けベースにしない所が微妙な物を感じます。

#単に申し込みベースだと事務が回らないという事だとは思うのですが


・で、1行あたり1500億円っていう件について

いやね、正直言って全体額はある程度決めるのかなあとは思ったのですが、そもそもこーゆー融資が出ると言う話になると、それこそ大手銀行さんという話になると思いますし、まあこの対象貸出っていうのは理念的には新規貸出を対象にということでしょうけれども、まあ既存の借換に関しても元が成長基盤関連の融資案件だったら話としてアリでしょという事になれば、まあそれなりに数字を出そうと思えば出せそうな話でもあるので、実績を出したいっていうのであれば1行ごとの限度額を設けるのもどうなのという気がせんでもない。

#そもそも金融機関の規模に関係なく応札限度が同じというのも何だかなという気がしますけれども、普通の市場取引じゃないこういう案件の場合は・・・

いやまあもうちょっとメガさんが色々とネタ出しして、メガさんだけで1兆円ちょっと位積み上げるような豪気な話になるのかなとちょっと期待してたあたくしが期待のし過ぎでしたな。

#実際には内容を詰める段階で恐らくこの手の話はあったでしょうから、まあ関係者的にはそんなに期待外れのものでも無いのでしょうけれどもね

まー確かに実施したらいきなりメガあたりからわさわさと案件が出てきたという話になりますと、「銀行優遇は如何なものか」とか「そんなら一般の貸金も金利下げろ」とか「そんなに出来るのなら今まで銀行は何やってたんだ」とか逆に言われかねない気もするので、そーゆー意味ではこのくらいの数字であまり派手でもなく、でも「3兆円」という総額は見せて、という辺りがバランスの取れた所なんでしょ。


・実際は共通担保ですからねえ

で、この資金が入ってウハウハなのかという話ですが、要項にありますように、本件って「共通担保オペで期間がクソ長いもの」という形でもありますので、この資金が入った分っていうのは共通担保の担保繰りに影響を与えますなという話になります。

もちろん、いまどきの銀行さんは普通は担保繰りに余裕がありますので、これを入れる為の担保が足りないですよということは無いと思います(全部入れても1500億円ですからね)けれども、まあ限界的な話をしますと、このオペに入れる為の担保繰りでじゃあ1年借りれるのだから1年TBを買いますかという話になった場合、そのTBのレートって0.13%程度なのですから、貸出の方は兎も角として、ファンディングレートと担保繰りで買ったものの利回り差で言えば3bpという話になって、限界的な部分でどの位コスト削減になるのかっていう話になると怪しさ抜群。

しかもですな、メガさんあたりなら兎も角、地域金融機関さんなんかになりますと、現状でも資金が余っていて超過準備のブタ積みちゃんがあると思われますのでありまして、何も手間暇かけて0.10%で金を借りてこなくてもよかですタイと言う話になるんジャマイカと思料されます。

もちろん、そういう作りになっているのは「この政策は金利政策やら流動性供給の一般的な金融政策ではありません」と言う事を担保するための措置だと思われますので、そこに突っ込んでもまあしょーがないと言えばしょーがないのですが、ターム物金利に働きかける気が1ミリも無いという趣旨だという点は良く覚えておかないと勘違いの元になるかと存じます。

正直、あたくし的にはもうちょっとそのあたりをファジーにしてどうとでも取れるような感じにするのかなあとも思っていましたので、その点では期待はずれの面がありましてどうもすいませんという所ですが、存外この辺りに関しては(理屈としてワケワカメな成分はだいぶありますが)「これは金融政策とは違いますよ」という所を強調したなあと思います。


とりあえず思いついたのはこの辺りまで。また会見要旨見ながら考えたいと思います。

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2010/06/15

お題「金融調節に関する雑談で」

緊縮財政措置を取れば格下げ(ギリシャ)、財政悪化懸念で格下げ(かつて日本をA2まで格下げした理由は「現在の経済政策では政府の債務状況の悪化に歯止めがかけられない」でしたなあ)とは格付け会社の理屈が良く判りませんなあ(いやまあ長期的な経済推移の予想なんでしょうけど)。

○固定金利オペ残高が20兆円になりますな

昨日は共通担保固定金利オペがオファーされましてこれでめでたく(かどうか知らんが)固定オペが20兆円になる(のはスタート日になる明日ですけど)ということで3月の会合で決定した通りに残高が20兆円になりました。その一方で(固定オペのスタートを特オペの落ちにぶつけているのでそうなるのですが)同じく明日に特オペの残高が目出度くゼロになりますので、これで企業金融支援関連という名目で一昨年の12月から色々と実施した各種措置が一通り終了した格好になります。

とは言っても企業金融の臨時措置を解除した傍から固定金利オペを実施したり(そして更に拡充)、今日の決定会合では出るのであろう成長基盤強化の臨時貸出制度というのが実施されていまして、何かよくよく見れば問題はよりおおごとモードになっているような気がせんでも無い訳ですが(^^)。

でですな、ここからオペで何をやるのかという話ですが、固定金利オペを含めたオペ残がここの所35兆円程度で推移している(財政の不足のピークになった2日のオペ残が39兆円弱)のですけれども、固定金利オペをこれ以上増やすと足元の微調整ができなくなるので、(今は固定金利オペが20兆だけどこれを30兆円にするとベースで固まる部分が多くなり過ぎ)足元で吸収を打ちながら調整という事になるのでしょう。ただまあそれをやるとすぐに「引き締めするとはケシカラン」という実務上のテクニカルな調節技術の話と金融政策の話の区別がつかない人達(そこに日経あたりが含まれそうな所が誠に遺憾なのですが)が大騒ぎするでござるの巻となるんでしょうなあというのはこの前も書いた通り。

ただまあ、もしかするとここから先は仮に固定金利オペの拡大を実施する時には吸収オペもやる事になるのかなあというのは何となく金融市場レポートを見て思ったのですにゃ、という事で金融調節に関する日銀レポートネタ。


実は数日前に出ていたのですが(汗)。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron1006a.htm(概要)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron1006a.pdf(本文)


○足元の上下を放置してもタームは上がりません

んで概要(HTM)の方にこんな事が書いてありますが。

『12月には、やや長めの金利のさらなる低下を促すことを通じて金融緩和の一段の強化を図るため、新しい資金供給手段として固定金利方式の共通担保資金供給オペを導入した。3月には同オペによる資金供給額を大幅に増額し、やや長めの金利の低下を促す措置を拡充した。この間、短期金融市場における市場機能の維持にも配慮する観点から、オペでは、長めのタームでの資金供給の割合を増やす一方で、日々の資金偏在については、市場で調整する余地を残す運営とした。』

長目のタームでの割合を「増やす」というよりは政策決定会合で勝手に「増やされた」だけのような気もしますが(^^)、まあ長目のタームの供給が増えた分の足元の微調節はあまりきっちりとファインチューンニング(というか押さえ付け)をしませんわなという所です。

つまり、今の状態でも本当にファインチューニングしましょって事になったら、吸収オペを交えながら資金供給をするとファインチューニングができるという事になるのですが、それをやってしまうと1から10まで全部日銀オペで運営という話になってしまうからそこまでの事はしませんよというのが現状の金融調節ですよという事なのでしょう。ちなみに足元では積み最終日(今日)に向けて足元のGCレートが若干上昇した(と言っても0.12%とか0.125%とかですが)のですが、タームのレポレートは全然反応せずということで、東京レポレート集計値を見ても足元のレートやら1週間物のレートは上昇してますけれども、1か月とか3か月のレートは微動だにしないというのは、まさしく上記のような調節に対する認識が市場にも浸透しているという事ではなかろうかと存じます。


○金融調節の概要のあたりはオモシロイですよ

本文(PDF)の方は中々良い読み物なのですが、短期金融市場に興味の無い人が読んでも眠気を誘うだけなのであまり万人にお勧めできるものでは無いですけれども、短期市場に興味がある方は一度熟読される事をお勧めします。中々過去の状況の良い整理です。

で、まあマニアには最初の日銀券要因と財政等要因(特に一般財政以外の部分)の辺りから実に面白いと思うのですが、まあ一般的に読むならその次の『2.金融市場調節運営』(本文6ページ、PDFファイルだと8ページ)からがお勧め。

『2009 年度中のわが国短期金融市場の動きを振り返ると、2008 年度末にかけては期末越えに対する警戒感が強い状況が続いていたが、2009 年度入り後は、日本銀行が潤沢な資金供給を続ける中、このような期末越えに対する警戒感は徐々に後退した。すなわち、四半期末越えのターム物レートやGCレポレートは、6月末や9月中間期末にかけて若干上昇したが、上昇幅は2008 年度に比べて限定的であった。』

年度末って警戒感が強いというよりは単に3月の国債償還に関わる資金余剰の山を越えるオペが不足してたのと、末初オペばっかり打って肝心のタームオペが少なく、23日(国債償還日)以降足元のGCが逼迫して、ウィーク物の現先オペの金利上昇からGC市場での資金不足(というか回らない状態)が顕在化したと言う所ではないかと思料されますがまあそれはともかく。

2009年度入り後は確かにまあ短期の金利はじりじりと低下という展開になりまして、GCはそこそこ振れる場面もありましたが、何せ短期市場の金余りモードが出てきているというのはやはり効きましたわな。企業金融特別オペの効果がジャンジャン出てきたのが(最初は2月の終わりくらいからCPレートの低下が始まりましたが)年度替わり後からで、5月の連休明け以降は暗黒時代(運用とかトレーディング的に言えばです)となってきましたなあという感じですな。

『12 月に金融緩和を一段と強化したあとについては、年末や年度末とも、ターム物レートやGCレポレートの上昇は、ほとんどみられなかった。また、CP・社債の発行環境をみると、低格付社債を除けば改善の動きが続き、良好なものとなった。ドルの資金調達環境も改善傾向が続いた。この間、コール市場では、資金余剰感が一段と強まった12 月以降、資金の出し手が外国金融機関等向けの資金放出を再開する動きが一部にはみられた。もっとも、全体としては、外国金融機関等に対するカウンターパーティリスクへの警戒感が完全には払拭されない中、コール・レポ・為替スワップ等の各市場の流動性は、長めのタームの取引を中心に低下した状況が続いた。』

なるほど。また最近はこの辺の状況に変化があるんでしょうかねえ。



で、その後はど〜ゆ〜オペを打ったかという話をしているのですが、これはまた中々興味深い記述があちこちに点在していて、何となく金融市場局的な気持ちのようなものを感じてしまったような気がせんでも無いのは深読みのし過ぎですかそうですか(^^)。


○09年度は補完当座預金が下限機能を維持しているという表現は・・・・

引用部分の続きから。

『こうした動向を受けて、2009 年度の金融市場調節は、2008 年度に続き、金融市場の安定確保に配慮し、市場の状況を踏まえた機動的な運営とした。この間、無担O/N コールレートは、概ね「0.1%前後」で推移した。これは、潤沢な資金供給を受けて日銀当座預金残高や準備預金残高が高水準となるもとでも、補完当座預金制度の適用利率(0.1%)が無担O/N コールレートの下限金利を画する機能がよく発揮されたことによる。こうしたことから、手形売出等の資金吸収は、2009 年度を通じて実施しなかった。』

と言う風に書いてあるのですが、さて最近はコールレートちゃんの方は安定的に0.09%近辺で推移してますし、今月に入ってからは0.09%割れという素敵な推移が続いたりしました(足もとちょっと上昇して9bp台回復)けれども、これはもしかして「預金ファシリティがコールの下限金利を画する機能を十分に発揮できていない」ということではないかとも言えそうな気がするのですが、はてさてどうされるのでございましょうかねえ(ニヤニヤ)。


○これは確かに仰る通り

で、その続き。

『また、補完貸付制度の利用は2008 年度に比べて少額となった。こうした点を含め、わが国短期金融市場は、総じて安定的に推移した。ただし、日本銀行の金融市場調節が市場取引を代替する状況が続いたとも言える。』

これは仰る通りというか、GCレポ市場の構造的な問題でもあるのですが、資金の出し手の中で一部の大手銀行の占める割合が高いので、結局の所市場での調節と言っても限界があって、日銀の金融市場調節が必要不可欠という状態には変わらないという所かと存じます。ちょっと前だったらECBなんてMROを週1で打ちこむ以外には金融調節らしきものをしないで市場が回っていた(今は見る影も無いですが)というのがまあ市場としては美しいのでしょうが、一度こういう状態になってしまうと中々難しいのかもしれませんね。


○出来上がりの0.08%台前半だと低下したという認識なんですね!

で、その後は具体的にどういう時にどういうオペを打ったのかという説明が詳しく書いてありまして、マニア必見の物ではございますが、その辺は華麗にスルーしまして、読んでて「おお!」と思った所をば。

本文12ページ。

『年末日である12 月30 日には、市場参加者の大半が既に資金調達に目処をつけていたことから、無担O/N コールレートは0.094%となった。』

ふむふむそうですな(そういえば「年末年始のプレミアムを織り込んでいない価格形成になっている12月〜1月タームのOIS利回りは低い」という面白レポート(OISの値付けは実際のオーバーナイトレートを使うのですから、末初プレミアムが事前になんぼついていても、当日には下がってしまうという考察がすっぽり抜けているという事は素人ですな)を出している人がいましたなあというのを思い出した)。

本文13ページ。

『年度末日である3月31 日には、市場参加者の大半が既に資金調達に目処をつけていたことから、無担O/N コールレートは大きく低下し0.082%となった。』

つまり、0.082%は「大きく低下」だが、0.094%はちょっと下がった程度の認識という事になるのですね。では6月の頭から延々と0.09%割れ水準で推移していますが、もしかして四捨五入して0.09%になっていればコールの水準としてはディレクティブの0.10%からはそれほど逸脱していないという認識でいるという事になるのでしょうか????

という事をたった一言の文言を見ただけでつらつらと考えてしまうあたくしの方が粘着質ですかそうですか(^^)。


なお、こちらのレポートは色々と読むと実に面白い(ただしマニア限定^^)です。特に短期金融市場に関してはそらまあ日銀の金融市場局が色々と把握できる話が極めて多いですから、内容も詳細なのは当然ちゃあ当然なのですが、マニアとしては実に楽しいレポートでございます。また気が向いたら(またはネタが無かったら)ご紹介するかもしれませんが、興味のあるかたは読むのが吉と思うんじゃがの〜。

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2010/06/14

ということで月曜につきヒマネタ状態ですいません。

http://www.ecb.int/press/pressconf/2010/html/is100610.en.html

○まずは経済の基本的な認識に関して

前半は説明部分でして、まあこれはこれで読む所はあるのですが、この会見は後半の質疑応答の方がおもろいのでサラサラと。

・基本的な景気認識は「金融市場の緊張の中でも」変化無し

まあそういうしか無い面はありますけれども、大騒ぎの震源地の割に平然としているようにも見える所がにゃんとも。

『Based on its regular economic and monetary analyses, the Governing Council decided to leave the key ECB interest rates unchanged. The current rates remain appropriate. Taking into account all the new information which has become available since our meeting on 6 May 2010, we continue to expect price developments to remain moderate over the policy-relevant medium-term horizon. Global inflationary pressures may persist, while domestic price pressures are expected to remain low.』

現在の金利水準が適正で、物価に関しては安定しており、インフレ期待に関してもアンカーされているというのはいつも通りの話です。


『The latest information has also confirmed that the economic recovery in the euro area continued in the first half of 2010, but quarterly growth rates are likely to be rather uneven. Looking ahead, we expect the euro area economy to grow at a moderate pace, in an environment of continued tensions in some financial market segments and of unusually high uncertainty.』

金融市場の緊張や先行きの不確実性の中でもユーロエリアの経済は緩やかに拡大とな。

『Our monetary analysis confirms that inflationary pressures over the medium term remain contained, as suggested by weak money and credit growth. Overall, we expect price stability to be maintained over the medium term, thereby supporting the purchasing power of euro area households. Inflation expectations remain firmly anchored in line with our aim of keeping inflation rates below, but close to, 2% over the medium term. The firm anchoring of inflation expectations remains of the essence. 』

インフレ率およびインフレ期待はアンカーされていますという話。ちなみにECBとは全然違いますが、BOEの場合は資源価格上昇とポンド安がモロに響いて消費者物価がターゲットを堂々の上振れで詫び状を書いていますけれども、今回のMPCではその辺りに関する議論がどうなっているのかが非常に気になる所であります。まあMPCの結果自体は先週出てましたが、毎度お馴染みのあっさり味の声明文しか出ませんので、3週間後位に出る(かなり雑な)議事要旨を楽しみにしております。どうせ「中期的にはインフレ期待はアンカー」で話を済ませてしまうのではないかとは思いますけれども、MPC議事要旨みていると段々その「中期的なインフレ期待アンカー」が怪しくなっておりまして、どう見てもスタグフレーションです本当にありがとうございましたという状態なのですよねえ。

・先行きリスクはバランスと言いますが・・・・・

と、余計な話が長くなりましたが、個別項目については「EUの見通しと我々の見通しは整合的」という話が多うございまして、リスクに関してはバランス、インフレのリスクもバランスとなっていますが、正直景気のリスクがバランスという説明の意味が判らん。

『In the Governing Council’s assessment, the risks to the economic outlook are broadly balanced, in an environment of unusually high uncertainty.』

『On the upside, the global economy and foreign trade may recover more strongly than projected, thereby further supporting euro area exports.』

『On the downside, concerns remain relating to renewed tensions in some financial market segments and related confidence effects. In addition, a stronger or more protracted than expected negative feedback loop between the real economy and the financial sector, renewed increases in oil and other commodity prices, and protectionist pressures, as well as the possibility of a disorderly correction of global imbalances, may weigh on the downside.』

どう見てもダウンサイドリスクが多いですし、そもそも今回増えているダウンサイドリスクがあるというのにリスクバランスがbroadly balancedとはこれ如何にという感じです。


・財政問題と構造改革問題

財政健全化に関するEU各国の動きを歓迎するという話と、構造改革が重要という話をしているのですが、構造改革の中では銀行の財務リストラの話と賃金引き下げの話を重要視しているのが「ほー」という感じ。

財政問題ですが。

『As regards fiscal policies, the Governing Council welcomes the recent decision by euro area countries to formally establish a European Financial Stability Facility. This needs to be accompanied by decisive action at the level of governments. It is essential that all countries stick to their commitments to correct high budget deficits and government debt and reduce fiscal vulnerability. To this end, the concrete adjustment measures needed to achieve the budgetary targets should be fully specified.』

めんどいので以下引用割愛ですが(^^)、まあ財政問題の解決が重要とな。

構造改革ですけど。

『For all euro area countries, structural reforms leading to higher growth and employment are crucial to support a sustainable recovery. Existing competitiveness problems, as well as domestic and external imbalances, need to be urgently addressed by the countries concerned. To that end, wage-bargaining should allow wages to adjust appropriately to the competitiveness and unemployment situation. Likewise, measures that increase price flexibility and non-price competitiveness are essential.』

こりゃ何ですかと思ったら、(引用は割愛しますが)後の質疑応答の中で「ユニットレーバーコストを下げることが国際競争力強化の為に重要」という話をしているので、その流れだと思われます。

『Finally, an appropriate restructuring of the banking sector should play an important role. Sound balance sheets, effective risk management and transparent, robust business models are key to strengthening banks’ resilience to shocks and to ensuring adequate access to finance, thereby laying the foundations for sustainable growth, job creation and financial stability.』

ということで銀行の財務リストラの重要性というのが構造改革のもう一本でした。

#サラサラとって言う割には長くなってしまいました


○国債買入措置の突如の決定はQKKですかそうですか

で、Q&Aですが、最初からいきなり「お前は何で急に意見を変えたのか」から始まるのが実にこう心温まるものがございます。で、それに対する長い答えですが(^^)。

『As regards your first question as you know, I have had a number of occasions to explain why we embarked on the Securities Markets Programme, not only in the communique and also in speeches and interviews, but I repeat the reason.』

何回も説明しとるだろうがヴォケと言う事ですかそうですか(その前に「質問は一人二つまでなのに三つ質問するんじゃねえ」というのがあるのですよね^^)。

『The Securities Markets Programme is designed to ensure the effective functioning of the monetary policy transmission mechanism by helping to resolve a malfunctioning of some segments of the euro area debt securities market. This malfunctioning became very acute in the afternoon of the Thursday following our Governing Council meeting on 6 May and during all of Friday, 7 May.』

「急に危機が来たので」国債買入を決定したと言う事ですが、そもそもQKKになったのはおまいが「国債買入なんぞ全然考えてませんよフフン」と決定会合後の会見で話をしたのが直接の引き金になったのではなかったのかと小一時間問い詰めたい。

『This was not only observed by us, by market participants or by financial institutions in Europe, it was observed the world over as a major event that was threatening the functioning not only of the European economy and market but also of the global financial markets and the global economy. And that is the reason why, as you know, not only were a number of decisions taken by us and by others, but there was also international support through a communique of the G7 and a communique of the G20.』

だそうで、話を大きくしてそもそもテメーが引き金引いたのは華麗にスルー。

『A second important element of this decision was that we did not change the monetary policy stance, just as we have not changed the monetary policy stance today.』

次のポイントは「金融政策スタンスは変えていない、買入で出した流動性は引く」という部分ですが、これはまあ説明部分の引用を割愛。

『This is my third point: Finally, I would say that as far as we are concerned, as you heard me say a moment ago, we are inflexibly attached to price stability. We have the best track record on price stability over 11-1/2 years that you can find in Europe ? including among the legacy currencies ? since the Second World War. You also know how proud I am, together with all the members of the Governing Council, that our inflation expectations are exceptionally well-anchored in comparison with all comparable currencies and comparable economies. So this is something which is of the utmost importance. 』

最後のポイントみたいなのが謎なのですが、インフレ制御に今までも成功しているし、今後もインフレの制御が重要ですという話をしているんですな。この話がこの後もやたら出ますし、先般引用したルモンド紙でのインタビューでもやたら強調されていますが、まさか英仏海峡の向こう側を意識してるのでは無い・・・ですよね(^^)。


○国債買入の明細に関しては教えませんよ/売出手形の検討について

国債買入の明細を教えてという質問と、流動性吸収に関して売出手形のようなもの(質問ではdebt certificates)を発行する計画はあるかという質問に対して。

『On your first question, as you know, we are withdrawing the liquidity that we are injecting, and each week you can see what we are doing. We don’t give any additional information. But you could see that the first week we withdrew approximately 16.5 billion euros, the second week 10, the third week 5.5, then 6.5. So you have this information. We withdraw exactly the level of liquidity that we inject. No other indication.』

ということで明細は教えないよというスタンス。

『As regards your second question, we are looking at all possible instruments, but there is absolutely nothing immediate in this domain.』

ということで、現状ではまだ特に具体的にどうこうという話では無いですが可能性が無い訳ではないと。

ちなみに、後の方で更に「明細を出す事は市場参加者および一般向けにも重要かつ必要ではないか」と突っ込まれましたが、同じようなゼロ回答を繰り返すのみでした。


○国債買入の効果が出ていないのではないかという質問に対して

これは質問も引用しますね。

『Question: On the bond purchases: we have seen spreads in some countries widening, which has led some people in the market to question the ECB’s commitment to the purchases, given that there does appear to be some discordance on the board about the effectiveness of them.』

一部の国ではスプレッドが拡大しているのだが、これは国債買入の効果が出てないちゅうことではないかというツッコミ。

『Trichet: On your first question: again, there is one decision, one institution, one currency ? and I already responded to a similar question. We are pursuing the exact objective that I mentioned earlier. We are not changing the monetary policy stance and we are helping to restore the appropriate functioning of a number of markets that were disrupted, and that were hampering the monetary policy transmission.』

・・・・・・全然答えになってNeeeeeeeeeee!!!

で、この時は2番目の質問(インフレに関する質問)に対して延々と答えて誤魔化すトリシェ総裁様なのでありました。


○1年物LTRO終了後には新しい流動性を供給するのでしょうか

これは意地の悪い質問。

『Question: You said in your Introductory Statement that overall liquidity provision will be adjusted as appropriate. Does that mean that you are considering additional liquidity operations, especially in light of the expiry of the 442 billion one-year loans?

And also, once these loans are being paid back, do you expect banks to compensate for that by the upcoming three-month tender or do you expect the liquidity conditions to tighten significantly? 』

んでもってその答えですが、前半があんまり説明になっていない禅問答的な話ですが、後半は「とりあえず3か月物のLTROをフルアロットメント方式で出してますがな」という決定した話の説明をするだけで、(トリシェ総裁の今回の会見は特にそうなのですが)先の話を全然しないというのがトリシェクオリティ。

『Trichet: Let me only say that, when we say “as appropriate”, we really mean “according to the market situation” and with the inflexible needle in our compass aimed at delivering price stability, which ? again ? is our major asset. In all circumstances, also when we face major difficulties, I believe it to have been extremely important that the anchoring of inflation expectations could work against inflation, but also ? in the period we experienced after the collapse of Lehman Brothers ? against the materialisation of inflationary risks. So, a solid anchoring is something that is absolutely of the essence for us.』

ここまでが禅問答。

『Now that having been said let me tell you that the Governing Council decided today to adopt a fixed rate tender procedure with full allotment in the regular three-month longer-term refinancing operations to be allotted on 28 July, 25 August and 29 September 2010, i.e. for a full quarter. So, this is a decision taken by the Governing Council today. It is a response also to your second question, it seems to me.』

だそうです。


○ユーロ安に関しては論評を避ける

これはまあ当然ちゃあ当然の措置ではありましょう。「ユーロ下落は経済成長を引き上げる理由になりますか」という質問に関してはこのように説明。

『As regards your third question on the exchange rate of the euro with the US dollar or vis-a-vis other currencies, I will only say that the euro is a very credible currency, with an exceptional track record in preserving price stability, and that this capacity to preserve its value over time in an very credible way is a major asset for domestic and external investors.』

で、他の質問では「ここもとのユーロは貿易加重ベースで11%下落と、2000年の下落と同じ程度だが、この動きはファンダメンタルズを反映しているのか市場が暴走しているのか」という質問がありまして、それに対してもこのような返事を。

『As regards your first question I have already responded on the issue of the foreign exchange market. The euro is credible, keeps its value and is a major asset for external and domestic investors. I have no other comment.』



○質問で演説する人がいますな(^^)

銀行規制に関しての質問ですが、質問で延々と演説しているのが何とも。

『Question: At the last press conference, Mr Trichet, you might remember, I asked you a question on the separation of banking activities.』

前回もその質問をした人のようで(^^)。

『So I was very happy to see that in the Financial Stability Review of the ECB there is one chapter dedicated to the issue. It is called “Separating banking and securities business: Glass-Steagall revisited”. Then I read it and I was disappointed because basically you reject it on the basis of two arguments, one of which I consider ideological and the other one is technical.』

グラススティーガル法的な考えに関する考察があって喜んで読んだらダメ出し状態の内容だったのでがっかりしたよと言うことですかそうですか。

『So the ideological argument is that this is not in the European tradition of universal banking.』

ユニバーサルバンキングは欧州の伝統としてダメ出ししてますが・・・・

『Well, traditions can be changed. Before Glass-Steagall was introduced this was also the tradition in the United States. And before firewalls were eliminated in Europe in about 1995 or 1996, so more than ten years ago, we had this tradition.』

そんなに「伝統」というものかとまずはツッコミ。

『So, the technical argument which you are making in the report is that separation of banking activities between commercial banks and investment banks might disturb the functionality of the market and might also hamper the integration of the markets.』

商業銀行と投資銀行の機能分離は市場に混乱をもたらすとダメ出ししてますが・・・・

『Now you said a few minutes ago that the markets are not perfectly functioning now, which I think is an understatement. Therefore, the main point which is missed here is that through a separation the issue of protection is clear.』

別に今だって市場機能がちゃんと動いてないじゃねえかとツッコミ。

『Governments can protect deposit-taking banks and commercial banks and the rest is not protected. So, we have all these toxic assets, we have an open-ended guarantee for quadrillions now. How are we going to solve this?』

政府は貯蓄金融機関と銀行を保護できるが、それ以外を保護しようとした莫大な政府支出が必要になるではないかという話ですな。

で、延々と引用しましたが、ここまでが質問者の質問、というより演説でして、その答えがいい感じで突き放しているのが味わい深いものがございます。

『Trichet: I know your position because you expressed it last time, and I have already said that one can defend that position. This is a debate that has been going on in the United States for a very long period of time. The position of the ECB, which you reflected very well, is that this is not something that we consider urgent or even appropriate in our present situation. But I do not deny that you are entitled to your opinion. You have your opinion, we have ours.』

・・・・・・・(;∀;)イイコタエダナー

#ということで引用大会で大増量恐縮至極でしたが、質疑応答は面白かったです

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2010/06/11

○日銀の施策は来週出るのかな???

記事の引用元が全部東京新聞なのは仕様です(^^)。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010061001000579.html
日銀、成長強化へ2〜3兆円供給 14日から政策決定会合

これは共同通信の転電記事ですけど。

『日銀は14日から2日間の日程で金融政策決定会合を開き、日本経済の成長基盤強化に向けた新貸出制度の詳細を決める。環境など成長分野の事業を手掛ける企業に投融資する民間銀行に対し、総額で2兆〜3兆円の資金を供給する方向で調整している。7〜8月に制度を開始する見通しだ。』(上記URLより)

この前は「総額5兆円」という報道もありまして「そんなにあるのかよ!」と思ったのですけれども、2〜3兆円でもそら結構ありますなあというイメージですが、「環境など成長分野の事業を手掛ける企業に投融資する」というのをもうちょっと幅広に捉えれば(前も書きましたが)電力やら原油元売りなんかでも入ってしまいそうですから、そこそこ数字を作る事はできるんでしょう。

で、市場の中の人的な興味は成長分野がどうのこうのという話よりも、これが市場金利に影響を与えるかってえ話ではありまして、まあ0.1%の金が2兆だか3兆だか(恐らくはメガバンク中心に)供給されますという事なので、それはそれで市場の運用資金余り状況に燃料追加ではありますが、額的にそんなに巨大という程でも無いと思いますので、マネーフロー的に(5兆だの10兆とかにでもなればインパクトありそうですが)そんなに金利押し下げの話になるとも思えません(そもそもこの施策は市場金利押し下げを意図してないし)。

でですな、本件に関しては日銀的には「ぶち上げたは良いけど全然実績ない」という状況だと日銀マズーだと思うんですよ。つまり、以前の企業金融関連臨時措置は「市場が正常化したら使われなくなるべき」という建付けの物だったし、本来的な意義からもそれがあるべき姿なので、「作ったは良いけど使われない」という使わずの宝刀で問題無かった訳ですが、今回は「成長基盤強化」という前向きな施策になっているので、前向きな施策を作ったのは良いけど使われないのは良く無いという事ですわな。

そして一方の金融機関的には(めでたくうるせえ大臣が辞任して下さいましたが)融資そのものはしたい状態なのに借りて欲しいような資金需要が無いという状態だというのに、やたらと「貸し渋りはケシカラン」とか言われる(正直、貸し渋りとか10年近く前の話だろうがと思うのだが)次第で、こちらも日銀様の「成長基盤強化」というお題目が渡りに船にも程がある話で、これに協力して実績を積み上げれば、「ご覧の通り当行は成長分野への資金需要にお応えしています!!!」とアピールする事が出来る訳ですなというのは以前もお話した通り。

てなわけで目出度く額がそれなりに集まるのですが、実はもう一つ考えているというか妄想しているのは、本施策の導入によってTIBORが下がるかどうかという点でありまして、上記のようにマネーフロー的にはこの程度の事で市場金利が下がる程の量的なインパクトは無いと思うのですが、何せTIBORはリファレンスバンクのご申告を集計したものでありますので、もし「日銀の成長基盤強化策の導入によってTIBORが低下した」となると話が美しいですなあなどという阿吽の呼吸があったりすると(←かなり妄想成分入り)現在のTIBOR金利が下がるというような美しい展開も無くは無いかなとは思わないでもない(←超憶測につき当たり外れに全く責任を取る気もありませんので外れても謝罪も賠償もしません^^)という所でしょうか(まあここから下がって0.35%を切るかどうか程度でさすがに0.3%割るとかしたら銀行の首が絞まるだけの話なので第一勘0.3%台前半、よー知らんが。


○バーナンキ議長の議会証言からメモメモ

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100609a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100609a.pdf(PDF版)

景気に対して強気の見通しとかベンダーが言ってたので本当はどうなのかを斜め読みしてみた(PDF版で本文が6ページということでそんなに量は無い)。

・確かに景気に関しては「回復の経路に乗っている」という話のようで

PDF版では本文1ページの冒頭部分から。

『The recovery in economic activity that began in the second half of last year has continued at a moderate pace so far this year. Moreover, the economy--supported by stimulative monetary policy and the concerted efforts of policymakers to stabilize the financial system--appears to be on track to continue to expand through this year and next.』

appears to be on track to continue to expandと来ましたかそうですか。

『The latest economic projections of Federal Reserve Governors and Reserve Bank presidents, which were made near the end of April, anticipate that real gross domestic product (GDP) will grow in the neighborhood of 3-1/2 percent over the course of 2010 as a whole and at a somewhat faster pace next year. This pace of growth, were it to be realized, would probably be associated with only a slow reduction in the unemployment rate over time. In this environment, inflation is likely to remain subdued.』

失業率の改善が緩やかに進み、インフレーションは抑制されるでしょうという話ですので、その間も金融緩和政策は継続されますよという話になる訳ですな。


・今後の景気動向に関するサポート材料と抑制要因

その次には景気のサポート材料と抑制要因の話がありますが、サポート要因の部分では「財政政策効果による成長は減るものの、経済指標から観測される所では、民間最終需要が経済活動を支えるでしょう」という話をしています。また、個人消費に関しては「雇用と所得の緩やかな改善、消費者信頼感の大きな改善、クレジット環境の若干の改善」によって今後も拡大するでしょうという話になっています。で、企業部門に関しては「企業のバランスシートの健全化、借り入れコストが比較的低いこと、景気回復の持続性に対する信頼感、ヴィンテージ設備の更新ニーズ、売上見通しの改善」によって企業の投資活動もサポートされるでしょうという話になってますな。長くなるので引用は割愛しますが1ページ目から2ページ目です。

一方で成長抑制要因もあるというのをこんな表現で示してます。

『At the same time, significant restraints on the pace of the recovery remain.』

で、その中身としては住宅セクター、商業不動産、連邦政府および地方政府のこれ以上の財政支出に関する財政的制約と言う辺りを挙げています。また、労働市場に関しては改善しているものの、下値不安解消的な状況という感じのようですな。


・インフレは抑制されているということで

で、本文3ページですが。

『On the inflation front, recent data continue to show a subdued rate of increase in consumer prices.』

ということで、インフレ期待が抑制されているという話をしていますが、長期的なインフレ期待の抑制はサーベイデータにもあらわれているが、米国財務省証券価格にもあらわれているように見えますという話をして、その中で「ただこれは欧州市場の混乱によるものでもある」という話をして、その次の欧州問題に続けています。

『To date, long-run inflation expectations have been stable, with most survey-based measures remaining within the narrow ranges that have prevailed for the past few years. Measures based on nominal and indexed Treasury yields have decreased somewhat of late, but at least part of these declines reflect market responses to changes in the financial situation in Europe, to which I now turn.』


・欧州問題に関してはそんなに突拍子もない話をしている訳ではない

まあ欧州問題に関しては一般的な話をしていて、この間に米国債の利回りが低下した事に関しては『primarily as a result of safe-haven flows that boosted the demand for Treasury securities.』という説明(当たり前だが)してますな。

で、これはまあその通りだなあと思った部分。

『More generally, our ongoing international cooperation sends an important signal to global financial markets that we will take the actions necessary to ensure stability and continued economic recovery.』

国際的な協力体制を示す事によって決意を示す事にもなりますよと言う事ですな。

『The actions taken by European leaders represent a firm commitment to resolve the prevailing stresses and restore market confidence and stability. If markets continue to stabilize, then the effects of the crisis on economic growth in the United States seem likely to be modest.』

という部分が昨日のモーサテ辺りでは「欧州問題の影響は限定的とバーナンキ議長が発言」とか言ってたような気がしますが、これを見る限り「安定化策が効を奏したら米国への影響は小さい」という当たり前の話をしているだけのような気がしますが、そこはまあ常にポジティブ思考なメリケンクオリティなんでしょうかね(^^)。実際は「今後の動向は十分に注意」と言ってるんですけどね。


・で、最後は財政問題

『Ongoing developments in Europe point to the importance of maintaining sound government finances.』

ということで財政問題の話になるのですが、まあいつもの話をしています。で、バーナンキ議長(だけじゃなくて他のFRB高官も含めて)が指摘しているのは、今後の人口構成の変化(要するに高齢化)による財政支出の恒常的な拡大に対する懸念であります。

『Among the primary forces putting upward pressure on the deficit is the aging of the U.S. population, as the number of persons expected to be working and paying taxes into various programs is rising more slowly than the number of persons projected to receive benefits. Notably, this year about 5 individuals are between the ages of 20 and 64 for each person aged 65 or older. By the time most of the baby boomers have retired in 2030, this ratio is projected to have declined to around 3. In addition, government expenditures on health care for both retirees and non-retirees have continued to rise rapidly as increases in the costs of care have exceeded increases in incomes.』

正直こういう心配をしている余裕がある米国ウラヤマシスという所なのかなあと権丈先生のページをみていると思う今日この頃でございます。

#メモの割に長くなってしまいましたな

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2010/06/10

お題「改めて長期国債買入の雑談」

米国市場までユーロの外国為替レートを見ながら動いているようなのでネタ無し。

#来週の会合のプレビューを考え中なのですが、頭の中が纏まらないので華麗にスルー

○バーナンキ議長の先般の東京での講演では良く見りゃ話がグダグダ

まあ以前にネタにした話ですが。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.pdf(PDF版)

何日かに分けてバラバラに紹介したからまとめなおそうと思ったのですけど、長期国債の買入に関して言ってる事が支離滅裂状態になってやせんかと思うのですよ。

PDF版で言えば本文1ページ目。

『In the United States, we lowered the federal funds rate target to a range of 0 to 1/4 percent to help mitigate the economic downturn; we expanded the scale, scope, and maturity of our lending to provide needed liquidity to financial institutions and to address dislocations in financial markets; we jointly established currency swap lines with foreign central banks (including the Bank of Japan) to ensure the global availability of dollar funding; and we purchased a large quantity of longer-term securities to help improve the functioning of financial markets and support economic recovery.』

ということで、最初の所ではFRBが長期国債を購入したのは「金融市場の機能を改善させて経済の回復をサポートする」という話をしています。

ところが本文7ページ目ではこんな話になっておりましてですな。

『Rarely employed outside of Japan before the crisis, central banks in a number of advanced economies have undertaken variants of quantitative easing in recent years as conventional policies have reached their limits. In the United States, the Federal Reserve has purchased both Treasury securities and securities guaranteed by government-sponsored enterprises.』

こっちでは「名目ゼロ金利制約に達した後の金融政策としての量的緩和政策として長期国債の購入を行いました」という話をしてて、さっきと話が違うじゃねえかという事に成ります。しかもその後(同じページ)で量的緩和政策の効果に関してこのような話をしておりますわな。

『Because the effects of quantitative easing on growth and inflation are qualitatively similar to those of more conventional monetary policies, the same concerns about the potentially adverse effects of short-term political influence on these decisions apply.』

量的緩和政策は伝統的な金融政策(=金利引き下げ)と同様に成長やインフレに影響を与えるという話をしている訳でして、自分の所の政策に関する説明が同じ講演の中で話が違ってくるという素敵な状態になっているように見えるのは学者様とも思えない状態でございまする。まあこういうのを見てもバーナンキさんが狸政治家状態になっているんですなあという所ではありますが、良く良く考えたらこりゃどういう事やという感じでございます。


○話がワープしていると思われる部分をコーン副議長の講演で繋いでみる

・・・・とツッコムだけでは芸が無いので、この話の飛躍部分をどうやって埋めるかという理屈を考えてみるあたくしでして、そのヒントはコーン副議長の3月24日の講演(4月の半ばにネタにしました)にありそうな気がする。

ということで先般のコーン副議長の講演。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

FRBの長期国債買入について「金利を引き下げる為」という説明をしているのをご紹介しました。つまりここでの話はバーナンキ議長の話を違いますがなという事になるのですが、その前の部分から読んで理屈を無理矢理通してみようというのが今回の企画なのだ(^^)。

『The Federal Reserve and other central banks reacted to the deepening crisis in the fall of 2008 not only by opening new liquidity facilities, but also by reducing policy interest rates to close to zero. Such rapid and aggressive responses were expected to cushion the effects of the shock on the economy by reducing the cost of borrowing for households and businesses, thereby encouraging them to keep spending.』

『In addition, the Federal Reserve and a number of other central banks have provided more guidance than usual about the likely future path of interest rates to help financial markets form more accurate expectations about policy in a highly uncertain economic and financial environment. In particular, we were concerned that market participants would not fully appreciate for how long we anticipated keeping interest rates low. If they hadn’t, intermediate- and longer-term rates would have declined by less, reducing the stimulative effect of the very low policy rates.』

『Given the severity of the downturn, it became clear that lowering short-term policy rates alone would not be sufficient. We needed to go further to ease financial conditions and encourage spending. Thus, to reduce longer-term interest rates, like those on mortgages, we purchased large quantities of longer-term securities, specifically Treasury securities, agency mortgage-backed securities, and agency debt.』

つまりですな、金利引き下げの効果が市場機能の不全によって浸透しないとマズーなので、「金融市場の機能改善を行う」事によって「金利を引き下げる」為に長期資産の購入を行いましたよという理屈になる訳ですな。で、金利引き下げの効果を出す為である、という事からすると、この政策は伝統的な金融政策と同じ事を狙っている、って理屈にならんことも無いという所ですわな。



○つまり量的緩和は量では無くて金利に働きかけるという事なのかなあ????

・・・・とまあ書いてみましたが、やはり理屈に無理矢理感は拭えないと思われる所でありまして、その時点で確かにMBSのような市場はイカレポンチになっていたと思われるので、そっちの方の買入には「市場機能回復」「金利引き下げ」という理屈も判るのですが、長期国債市場に関しては何の機能不全も無かった訳でして、その長期国債市場に介入したのはFRB的には結局何をどう考えて突っ込んだんだという話になるとやはり答えが難しい所ですわな。


それから、上の方にありますように、バーナンキ議長は長期資産の購入を量的緩和政策のカテゴリーに入れてインフレへの効果をという話をしていますが、現状のFRBのコンセンサスは「大量の長期資産購入が直接的にインフレに影響を与えているかどうかは不明」という辺りではないかと思われる訳で、コーン副議長の講演でも、

『Central banks have lots of experience guiding the economy by adjusting short-term policy rates and influencing expectations about future policy rates, and the underlying theory and practice behind those actions are well understood. However, the economic effects of purchasing large volumes of longer-term assets, and the accompanying expansion of the reserve base in the banking system, are much less well understood.』

『So my second homework assignment for monetary policymakers and other interested economists is to study the effects of such balance sheet expansion; better understanding will help our successors if, unfortunately, they should find themselves in a similar position, and it will help us as we unwind the unusual actions we took.』

ということで(あたくしのヘタクソ訳付きのは4月16日前後の過去ログをごらんください)、資産買入によってもたらされた民間銀行のリザーブ拡大の効果に関しては検証途上という所ですし、そもそもリザーブ拡大したからインフレ期待が盛り上がったかというと米国でそんな雰囲気も無いですし、まあこの辺りを考えますと、バーナンキさんは「量的緩和政策」という表現を使っていますが、実際の所は「実際の企業や家計のファンディングコストの引き下げ」ルートによる景気の影響というのを考えているのではないかとゆー話になりますわな。

てなことを考えますと、現在の拡大したリザーブに関してはあくまでも資産買入政策の副生成物であって、現状の環境下ではその超過リザーブ自身が単独でインフレに影響を与える訳では無いので、超過準備の吸収に関して急ぐ必要は無いという理屈になっている、という事になりますので、まあ何となく無理矢理成分がありますけれども一応理屈は通っているという話になりますわな。


そう考えますと、日銀が12月以降に実施した各種施策に関しても、これは企業や家計のファンディングコストの引き下げを図っていると言えばそうも言えそうな施策(ターム物金利が低位安定すれば銀行貸出金利が下がる)ですし、それ以前の企業金融支援の各種措置はモロにその措置でありましたので、そういう論点で言えば何とバーナンキのFRBが実施した「量的緩和政策(バーナンキの東京講演ベースでの意味ね)」は日銀が現在までに実施している施策と同じ方向を見ているという何だか判ったような判らないような結論になるのですな。書いてる本人も自分で自分の文章に煙に巻かれそうですが(^^)。

と、謎理屈を最後に展開しましたが、つまりこの理屈を推し進めていきますと、日銀が国債の買入を更に増やすのは(発行銀行券残高が増えてくれば話は別ですが)あまり政策的に意味が無いという話になりそう(あくまでもこの理屈上という事であって、実際の話はまた別問題)なので、理屈重視の白川総裁的には中々ハードルが高いという結論になりそうですわな。という当たり前の結論を出すために色々と話をああでもないこうでもないと捻ってみました(^^)。


#ほとんど雑談でどうもすいませんでしたm(__)m

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2010/06/08

○見た目覆面利下げでも話題にならないですな

昨日は当座預金残高が連日の15兆円割れという調節になっているのですが、コールレートの方は0.086%となりました。先週は月曜の0.089%から延々と0.08%台後半で推移して、4日は0.091%になりましたけれども、昨日もまた0.09%割れ。まーそれ以前の問題として5月に入ってからのコールレートって恒常的に「下を四捨五入すると0.09%状態」が続いている(そうじゃ無かったのは14日の0.102%の時だけ)のですが、0.09%割れが定着という感じになって参りましたので、こらまあディレクティブがちがちに運用していた時期から考えれば覆面利下げみたいなもん・・・・の筈なのですが、あたくしがこうやって場末でうだうだ申し上げておりますだけで、世の中であまり話題にもなっている節が無い(一部あたくしの仲間内では話題にしてますが、笑)のが残念な所。

えーっと、どう残念なのかと申しますと、よーするに無担保コールの金利水準が覆面利下げだろうとど〜でも良いというのが現状の金融市場の有様という所だという話ですわな。別にどうでもいいちゃあどうでもいい話ですがね(汗)。

元々無担保コール市場で都銀が取ると(平均が0.10%乗せてた時でも)0.10%を普通に割っているような時が多々あったので、そーゆー意味で実質的にどの位レートが下がったのかって良く判らん節がありまして(まあ都銀の人は知っているでしょうけれども)、もしかしたらその辺があまり変化無いから話題にならないのかも知れませんし、それ以前の問題として無担保コール市場の金利よりも短国などの全体的な金利水準という意味ではGCレポレートの水準と安定性の方が重要なのでコールの実効レートはそんなに問題じゃないという事なのかもしれませんし、まあ正直良く判らないのですが、一昨年のいつぞやにコールで0.08%のビットとかに成った時に売出手形で資金をさっくり引いたようなオペレーションをやってた時から比較すると随分と変わった観がありますな。

で、まあこの調子でコールの実効レートが0.09%割れが続くという状態になっているのを特にディレクティブ的に問題無いという話なのでありますと、それは実質的には金利付きの量的緩和状態というか、FRB状態で預金ファシリティのフロア機能が今一歩効いていない(本当に効かなくなると米国のようなカオス状態になるがそこまでの話にはならないですね、短期国債は0.10%から下には下がらないですし)状態というか、まあそういう状況になるのですが、その辺政策委員会ではキニシナイ!ということなんでしょうかねえ。まあ細かい話でどうでもいいと言われればそれまでですが(大汗)。


○これはまたアレなインタビュー

http://www.ecb.int/press/key/date/2010/html/sp100531_1.en.html
Interview with Le Monde

先月末に行われたトリシェ総裁のルモンド紙でのインタビューがECBのサイトにも載っていた訳ですが、内容はまあ正直どうでも良いのですが、質問が中々直球だったり無理筋だったりしてテラオモシロス。

何せ最初の質問が。

『Is the euro in danger?』

ってテラ内角ストレートwww

『The euro is a very credible currency which keeps its value. Since its introduction 11-1/2 years ago, average annual inflation has been below but close to 2%, in line with our definition of price stability. The euro’s capacity to maintain its value is absolutely essential for the confidence of investors both inside and outside the euro area. 』(「11と2分の1」の所だけ表記を機種依存文字から改変しました)

とまあこんな感じの答えが続くのですが、中々こう直球質問が多くて答えるのも大変ですなという感じです。

『Economists have underlined the positive impact on growth of a lower euro. Do you share this view?』

という質問がありましてですな、

『As I just said, the euro is a credible currency which inspires confidence. Confidence is the most important ingredient for the consolidation of Europe’s economic recovery.』

まあそう答えるしか無いのでしょうが、本当はユーロ安で財政再建のサポートをしないといけませんなあとは思いっきり考えていると推測されるので、そーゆー点では明確な答えをしてない(通貨の信認が重要という本来の質問の意味を微妙にずらして答える方式を取っている^^)のはまーそーゆー事なのでしょうなと。

あと、これを読んでてカフェオレ吹きそうになったのはこの質問。

『Sometimes, one imagines a sort of Anglo-Saxon plot against the euro. What do you think of this?』

・・・・・さすがおフランス様としか言いようがありません(^^)。

で、この質問の答えですが、話を変えて「通貨統合だけではなくFiscalな部分でのunionみたいなもの(統合なのか強力な監督なのかは兎も角として)が必要」という答えをしているのは中々。

『No, one should be wary of any conspiracy theories.』

まあそれは当たり前や。でも「何でもコミンテルンの陰謀」とか言い出すようなのが空軍のとても偉い位置にいたという国が極東のどこかの島国にあったりするので、まあ人の事は笑えないのですが(吐息)。

『I simply believe that some international investors struggle to understand Europe and its decision-making mechanisms. They have difficulty in gauging the historical size of the European construction and in anticipating the capacity of Europeans to take decisions that are just as important as those taken a few days ago. Having said that, one should not be complacent: we have some very serious problems and we need to draw some serious lessons. The supervision of fiscal policies, of developments in competitiveness in the euro area economies and of structural reforms needs to be radically improved. We are a monetary union. We now need the equivalent of a fiscal union in terms of monitoring and supervising the implementation of policies on public finances.』

ということで、その「the equivalent of a fiscal union」に関しての質問が発展するのですが、めんどいので質問だけ引用するという暴挙に。

『Can this be achieved by creating new institutions? 』

thisってのは「the equivalent of a fiscal union」の事ですな。

『Would you like to be able to inspect Member States’ budgets prior to their adoption by national parliaments as the Commission proposes to do?』

『Can non-democratically elected bodies grant themselves a supranational inspection right? 』

ということで、参加各国の財政を縛る話に関してEUがホイホイしゃしゃり出てくる件に関してはツッコミが飛ぶんだなあというのは把握した。なお中身は上記URLを読んで味噌という所でございますが、トリシェ総裁はその手の「the equivalent of a fiscal union」的なものができることに関しては「我々はそのように進んで行くことができるだろう」っぽい話をしていまして、まあEU的にはそういう流れにしたいのですかねえ(参加各国の国内的な考えは別にして)という事なのかなあと思いました。


で、最後に(実際は最後の質疑では無いが)国債買入の件に関して。

『When the ECB decided on 9 May to purchase government bonds that had found no takers in the market - a decision criticised notably by the President of the Deutsche Bundesbank - did it endanger its independence? Does it run the risk of becoming a kind of "bad bank"?』

なんちゅうストレートな質問wwww

『As you know, I never comment on what my colleagues have said. On the basis of our decision, which was taken by the Governing Council with an overwhelming majority, I would like to emphasise the following points.』

『First, we are totally independent of governments and pressure groups of any kind. It is not by chance that we have guaranteed price stability, but by taking decisions which have pleased neither governments nor lobby groups.』

別に政府やら特定のロビー活動の影響ではないとな。

『Second, our mandate is price stability. From 1999 to the present we have delivered average annual inflation of 1.98% for 330 million European citizens. We are unswervingly committed to price stability.』

ECBの物価安定という目標に変化は無いとな。

『Third, we re-absorb all of the liquidity that is injected through our interventions. We are not printing money and there is no change to monetary policy.』

プリンティングマネーをしているのではないですよと。

『Fourth, the aim of our interventions is to enable certain markets to function more normally, in order to ensure the correct transmission of our monetary policy, which is unchanged.』

国債買入は金融市場の正常化を図り、金融政策の波及効果を機能させるための物であり、金融政策のスタンスそのものには変化が無いですよ、と言ってますな。

『Fifth, we have taken note of the decision by governments not only to strictly comply with their undertakings to reduce deficits, but also, on the part of a number of them, to step up their budgetary consolidation efforts. For us, this is absolutely of the essence.』

国債買入によって財政削減の為のサポートになるとか何とか言ってるようですな。

ということで、前からそうなのですが、国債買入は量的緩和でも財政マネタイズでもありませんというのをやたらめったら強調するのはここでも同じですな。うーむ。

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2010/06/03

○床屋政談的雑談

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aajb8TISjagE
菅財務相、財政再建路線の旗振り役に−鳩山退陣表明で後継に浮上

やっと辞めやがったかという感じのぽっぽちゃんですけれども、最後の最後まで俺は悪くない国民が理解しないとか、どういう精神構造をしているのか頭を割って調べてみたくなるようなお方ですが(まあ空なのかもしれませんけどね)、無能な善人で働き者というのがこれだけの破壊力があるとは思いませんでした。

まあ菅さんは経済にそんなに興味ないかも知れないですけど、叩き上げ系でここまで来ているのですから、まあ勘は悪く無いでしょうし(カイワレとかお遍路とか自爆属性があるのが懸念されますが)、最近の政策新人類系にありがちな「現実的に落とし込む事を全然考えていない脳内政策メーカー」でもないでしょう(同じ文脈であたくしは金融業界的には評判が良いという話のみんなの党に関しても「実装技術が全く無い製造会社」みたいなイメージしか持っていないので、基本的に物凄くネガティブな評価をしている訳だが)。

とは思ってますが、いざ政権についてみたら全然当初予想と違ってましたというのがここもと延々と続いているので正直期待値は下げておく(−−)。

でまあ市場予想的に言えば、菅財務大臣が後継総理ということでしたら、まあ普通に財政再建路線の堅持という予想になりますので、財政再建しつつ金融緩和は延々と継続という話になるでしょう。ただしその財政再建なのですけれども、来年度予算を編成する頃になると「そもそも前の政権公約実施で出来る訳ねえじゃん」的な現実に戻るような気がしますが(^^)、とりあえずそれまでは「財政再建路線ネタ」でやっていくのかなあという感じですかね。

まあ本来は財政再建路線やりながら円安路線ができると大変に結構なのでございますが、円安路線ったって露骨に実施したら(お前らだって自国通貨安路線で景気回復目指しているだろうにと思うのですが)他の主要国から苦情が出てくるのは必定ですので、そこは上手い事やって下さいねと思う次第であります。何か財務大臣就任時の為替水準発言のイメージをネタに為替市場が反応とか後講釈になっていましたが(ホンマカイナと言う気がするけど)、まあその辺りのイメージをてきとーに何とか使ってくんなましと言った所でしょうか。

このどさくさで郵政法案が廃案になってついでに国民新党を追い出したりすると無茶苦茶オモシロイ展開になるのですが、それはまあ無理でしょうな。

#良く考えたらギャグで亀井首相にしたら超円安になりませんかね、日本売りになるような気もするので超越的諸刃の剣ですが(笑)

まあ菅さんの財務大臣の方の後釜は野田さんが持ちあがるちゅう感じで宜しいのではないかと思いますけど。菅さんは最初のうちは「何の対策も用意しないでデフレ宣言」というような馬鹿かアホかという感じでしたが、ここもとの発言がどんどん普通になってきているので、お得意の自爆属性を出さなければそこそこやってくれるのじゃないかなあ、と一応期待だけはしておきます。


○日銀謎政策に関して

東京新聞ですが元ネタは共同通信ですな。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010060201000829.html
日銀、新貸出制度で数兆円供給へ デフレ克服に、7月にも

『日銀が、日本経済の成長基盤強化に向けて検討中の新たな貸出制度で、貸付総額を数兆円規模とする方向で調整に入ったことが2日、分かった。14、15日の金融政策決定会合で詳細を正式に決め、早ければ7月にも実施する。』

まあ金融機関に色々とヒアリングして、大体このくらいの額になるでしょうみたいな話をしているんだなあというのは判るのですが、そもそも論で言えば今回の貸出制度って最初に「幾らにする」という話があるのではなくて、成長基盤強化への融資がこのくらいあるから貸付額が後付けで決まるってえ話なんじゃないのかなあと思うのだが。何かこの記事の書きっぷりを見ると予算消化みたいなテイストを感じちゃいますわな。

『本格的な景気回復やデフレ克服のためには、環境やエネルギーなど成長分野への思い切った資金供給が必要と判断。銀行などの民間金融機関が新制度を活用することで、こうした分野への投資や融資拡大につなげる。』

一方、白川総裁は先日の講演で『この仕組みは、時限を区切って金融機関の自主的な取り組みを資金面で支援するものであって、日本銀行自身が個別産業や個別企業への資金配分に関わるものではありません』(5月31日の日本記者クラブでの講演より)と言っている訳で、共同通信が曲解しているのか日銀の説明がヘボいのかは知らんですが、白川さんの出している理屈と世間の理解の乖離が入口の時点から起きているというのが落涙を禁じ得ません。(まあそもそも成長基盤融資の話を最初にした時に白川総裁が想定される成長分野の質問に具体的な答えをしているので、その時点で訳判らん状態に成っているのだが)

しかしあたくし的にビックリなのは「数兆円規模」という所でして、そんなにその手の貸出とかあるのかよというのが結構な驚き。いやまあエネルギー分野への融資ということで、それこそ東京電力さんとか電源開発さんとか新日本石油さんとか(思いついた順に並べただけで他意はありません、為念)の設備資金融資を「成長基盤強化関連融資」と言ってしまえばそれこそ結構な額は稼げるとは思うのですけれども、そういう大企業さんは社債市場でもCP市場でも低利で潤沢に調達ができるのでありまして、そこで銀行へのファイナンスを付ける必要があるんかいなというのは微妙ではございますわなあ。

いずれにしても数兆円程度の話で、しかも金が入ってくるのがそもそも金余りで運用に困っている銀行という事になる(たぶん運用難の金融機関としては「急に押し売りが来たので」位のイメージではないかと思料^^)ので、市場金利に対する影響は無いに等しいんじゃねえのとは思います。ただまあ金融機関的には小うるさいどこぞの大臣が「銀行は貸出をしろ」だの何だの言いますので、本件に協力して色々と成長基盤強化融資の実績をでっち・・じゃなかった積み上げるのは、やかましい外野からの圧力を避けると言う点でもオイシイ話ではありますし、何かこう予定調和的に数兆円の数字とかが積み上がるんでしょうなあ、よー知らんけどね!!

あたくし前にも書いたと思うのですが、どうせなら設備投資関連の制度融資とか保証協会付融資とかのような中小零細向け融資を特別に担保として取れるようにした方がエエンチャウノとゆー気がしますが、事務的に回らない(証書貸付債権を担保に出す時の法律的な問題もあります)んでしょうなあとも思いますけど・・・・

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2010/06/01

○虫干しネタ雑談

いや実は暫く前に読んだのですがネタにするの忘れてました。

5月7日と10日に実施された(何故土日挟み)BOEのMPCから。
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1005.pdf

いやまあ読書用としては結構面白かったのですが、じゃあ政策インプリケーションが何かありますのんと言われますとちと困るのでありまして、とりあえず「BOEの金融政策は動くに動けない状態になっていて大変にご愁傷様でございます」という感じでございます、ナムナム。

まずざっと読んだ感想としては・・・・

・欧州金融危機の影響を注視(丁度スワップラインをやってる時ね)
・インフレは上振れ、英国ポンドの下げと原油価格の上昇が要因だが、企業の価格設定にも上昇圧力が掛かっている
・経済指標は割と良い、ただしドライブは米国とアジア(中国など)
・財政問題への言及(まあ欧州がアレですからね)

というのが目に付いたのですが、下押し要因がここから出てくるという中で物価が上振れているので緩和の拡大はしにくいし、かといってとてもとても利上げとかする状況にも無いですし、まあ大変にエライコッチャですなあというのは良く把握した。

つーことでまずはインフレーションレポート(12日に出た)の元となる見通しの議論の部分と言う事で第23パラグラフから。

『23 The Committee reached its policy decision in light of its projections to be published in the Inflation Report on Wednesday 12 May. The considerable stimulus stemming from the highly accommodative monetary policy stance, together with a projected expansion of world demand and the past depreciation of sterling, was expected to underpin the emerging recovery in economic activity.』

ここまでの超緩和的な無金融政策スタンスと、世界経済の需要拡大および英国ポンドの下落によって英国景気も回復基調という話をしているのですが・・・・

『But the pace of that recovery would be dampened by several factors: the need for a substantial fiscal tightening at home and abroad; needed further strengthening in the balance sheet of the UK banking sector; and the private sector’s desire for higher savings in an environment of increased uncertainty.』

ということで、先行きの景気抑制要因として、「世界的な財政均衡化への圧力」「英国銀行セクターの財務リストラ圧力」「経済の拡大する不確実性に起因する民間セクターの貯蓄拡大」を挙げていますわな。でまあ後者2つは英国要因ではございますが、最初の「世界的な財政均衡化への圧力」を先行きの景気抑制要因ということできっちりと上げているのがまあ当然ちゃあ当然ですが、傾注ですな。

で、次のパラグラフでは「経済の回復の力強さに関しては不確実」という話をしていまして、金融緩和の効果が測り難いという話をしているのがチャーミング。

『24 The strength of the recovery remained uncertain. It was difficult to assess with precision the impact of the unprecedented loosening in monetary policy. 』

で、何でそんな話をしているかと言いますと(話がそれて恐縮ですが)、経済の現状認識の議論の中の第14パラグラフにこんな記述があるのですよ。

『14 Nominal demand had risen at close to its ten-year average rate in 2009 H2, reflecting above-average increases in the GDP deflator and below-average growth in real activity. Despite the unfavourable mix, this was encouraging in that one of the objectives of the asset purchase programme had been to arrest the collapse in nominal spending that had occurred around the end of 2008. The latest indicators suggested that nominal demand growth had continued during the first half of 2010.』

で、その『this was encouraging in that one of the objectives of the asset purchase programme had been to arrest the collapse in nominal spending that had occurred around the end of 2008.』というのが何かこうアレでございまして、資産買入(BOEの場合は国債購入をして「うちは量的緩和ですから」と思いっきり銘打った訳だが)の目的に「名目消費の極端な落ち込みを阻止する」というのがあったのかよ!!!というのにちとビックリいたしまいたですたい。

で、話を戻しますと、英国景気回復は結局の所ユーロ圏次第の所が大きいですねというような話をして、景気の先行きに関してはメインの「回復基調」は変えないものの、リスク認識でのダウンサイドリスクの拡大を示しています。

『25 As in its February projections, the Committee judged that the recovery in economic activity was likely to gather strength over the next year or so. But the downside risks to growth in the near term had increased somewhat, reflecting the heightened market concerns about the prospects for fiscal consolidation in a number of euro-area countries.』

当然ながらその要因はユーロ問題ですわな。

で、まあ延々と引用するのも何ですので以下スルーしますが、先行きに関して「需要が金融危機前の水準に戻るのは相応の時間を要する」という話もしていまして、まあ中々慎重な見方(当たり前っちゃあ当たり前ですが)をしている中で、インフレの先行き見通しについて「近いタームのインフレ見通しは上昇し、年内のインフレはターゲット以上で推移」「ただしより長いタームでのインフレ見通しは変わらない」としつつ、「インフレがモデレートになる程度については不確実性が高い」という指摘をしていまして、中々こう金融政策が難しいですねという所かと思います(第27、28パラグラフになりますが引用割愛)。

で、さっきサラッと流しましたが、「国債買入で量的緩和をしています、うちは他の中銀とは違うんですよフフン」と言ってた資産買入プログラムの件に関してMPCの度毎にどんどん話がフェードアウトしてきて、効果とか目的の話がすっかりスルーされているのがジョンブルクオリティですなあという風に思うのでありました。

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2010/05/31

お題「バーナンキ議長の東京講演とか」

○とりあえずパニック的な動きは落ち着いたような

足元では欧州市場というか欧州のドルファンディング市場にひたすら振らされる相場が続いておりましたが、先週の火曜あたりをピークにして取り敢えず急性症状は収まった感じのようで何よりではございます。まあ以前より周知状態だった筈のスペインでの小規模な地域金融機関の再編問題で大騒ぎとかパニックにも程があるという所でしたが、ちったあ冷静になってくれたようですわな(ただしスペイン格下げの件はまだ影響がこれから)。

まー取り敢えず急性ショック症状の方は一旦収まったという事ではござますが、じゃあ問題は解決したのかというと話は残念ながらそういう訳にはいかないですし、米国にしろ欧州にしろ規制の流れとかそもそも金融機関の行動の流れとかが、レバレッジの解消方向に進んでいるというのは変わらないのでありまして、そーなりますと急性症状は起きないかも知れませんけれどもダラダラとリスク解消方向のポジション閉じという流れになるんじゃないですかね。

ユーロとか足元落ち着いているように見えますけど、これってよーするにユーロのショートポジションがアホのように積み上がっていたのがポジション閉じの方向になったからという気が凄くするのでございまして(気のせいかも知れないけど)、まあそんなこんなを考えると長期戦になるんでしょ。で、その長期戦中に欧州では徐々に無担保のファンディングがしんどくなる(先日はBBVAがCPのロールがどうしたこうしたとかいう記事が出てましたが、別に大した額でも無いのにネタにし過ぎ)でしょうし、ショートファンディングは溜まって来て益々ECBのオペ頼みになってくるでしょうから、何かがあった時にECBの機敏かつ適切な対応が無いとエライコッチャになるリスクもまた拡大という所かと。

ということでまあ今月の相場は何だかんだと言って欧州に振り回されたような気がするのですが、良く良く考えると実は欧州もそうですけど、実は超長期入札前後の動きでいきなり相場の位置が変わったというのもあったりしますな。まあその時に株も動いているので何がどうなって反応したのかは難しいですけどね。


で、バーナンキ議長講演に関して少々。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.pdf(PDF版)

○全体的には一般論の話です

本文2ページ(PDF版ベース、PDFファイルの3ページ目です)から。

『In my remarks today, I will outline the general case for central bank independence and review the evolution of the independence of the Federal Reserve and other major central banks. I will also discuss the requirements of transparency and accountability that must accompany this independence.』

ということで、基本的には一般論とFRBの話が多いのですが、その中での話は普通にオーソドックスな話をしてまして、どうもバーナンキ議長というとヘリコプターベンのイメージが強いですけど、実際には(まあ本来元々からそうなので驚く話では無いのですが)高インフレは経済に良くないとか、金融政策は短期的な成果に過度にフォーカスすべきではないとかいう話をしていまして、別に常に緩和しろという主張をしている訳では無いのですな。

例えば本文3ページから(この前も引用しましたが)。

『In contrast, policymakers in a central bank subject to short-term political influence may face pressures to overstimulate the economy to achieve short-term output and employment gains that exceed the economy’s underlying potential. Such gains may be popular at first, and thus helpful in an election campaign, but they are not sustainable and soon evaporate, leaving behind only inflationary pressures that worsen the economy’s longer-term prospects. Thus, political interference in monetary policy can generate undesirable boom-bust cycles that ultimately lead to both a less stable economy and higher inflation.』

短期的な成果を求め過ぎると緩和のやり過ぎになってバブル発生と崩壊のサイクルになって、高インフレを招いて経済に良くありませんとな。で、その次には中央銀行がインフレファイターとしての信認を得れば、経済社会が自己実現的に適切な低インフレを実現するようになるという話をしていますが、その辺も引用したような気がするので華麗にスルー。

で、その後にはこれまた先日引用したと思いますが、政府が中央銀行をコントロールする場合には中央銀行の紙幣印刷の力を財政穴埋めに使う恐れがあり、その懸念がある事から中央銀行の独立が必要という話をしてますけど。

で、今回の講演のもう一つのお題にもなっている中央銀行の透明性についての話が続きますが、まあこの辺りに関する説明は微妙っちゃあ微妙な部分がございます。


○中央銀行の透明性とプルーデンス政策

中央銀行の独立性は無制限ではないよという話をしている本文5ページ目から。

『Second, the independence afforded central banks for the making of monetary policy should not be presumed to extend without qualification to its nonmonetary functions. For example, many central banks, including the Federal Reserve, have significant responsibilities for oversight of the banking system. To be effective, bank regulators and supervisors also require an appropriate degree of independence; in particular, the public must be confident that regulators’ decisions about the soundness of specific institutions are not unduly influenced by political pressures or lobbying.』

マネタリー以外での政策というかプルーデンスに関する部分では中央銀行がその矩を超えないようにという話をしているようで、説明は米国のケースにも続くのですが、そこは引用割愛。また、中央銀行の「最後の貸し手」機能における与信行為は極力最小限にすべきであり、金融機関を救済するかどうかという話は財政が決定すべきという話をしていますが、引用すると長いのでその辺は割愛しますね。


○金融政策と財政政策の区分け問題、量的緩和政策に関して

本文7ページから。

『The issue of the fiscal-monetary distinction may also arise in the case of the nonconventional policy known as quantitative easing, in which the central bank provides additional support for the economy and the financial system by expanding the monetary base, for example, through the purchase of long-term securities.』

ほほう。

『Rarely employed outside of Japan before the crisis, central banks in a number of advanced economies have undertaken variants of quantitative easing in recent years as conventional policies have reached their limits. In the United States, the Federal Reserve has purchased both Treasury securities and securities guaranteed by government-sponsored enterprises.』

はて、米国の危機対応は「日本のような量的緩和政策では無い」という話では無かったでしたっけと疑問が起きるのですが(後でもう一回ツッコミを)。

『Although quantitative easing, like conventional monetary policy, works by affecting broad financial conditions, it can have fiscal side effects: increased income, or seigniorage, for the government when longer-term securities are purchased, and possible capital gains or losses when securities are sold.』

長期債証券を購入するとインカムとシニョリッジが増えて、売却した場合には損益が発生するから財政的な意味があるという話をしているようですが、それはまた随分と金融政策と財政政策の間をガチガチに見てますなあという感じがするんだが。

『Nevertheless, I think there is a good case for granting the central bank independence in making quantitative easing decisions, just as with other monetary policies. Because the effects of quantitative easing on growth and inflation are qualitatively similar to those of more conventional monetary policies, the same concerns about the potentially adverse effects of short-term political influence on these decisions apply.』

『Indeed, the costs of undue government influence on the central bank’s quantitative easing decisions could be especially large, since such influence might be tantamount to giving the government the ability to demand the monetization of its debt, an outcome that should be avoided at all costs.』

ということで、量的緩和政策は通常の金融政策の延長線上でもあるので、短期的な政治的な関心によって実施すべきでは無く、財政マネタイゼーションに使うのは持っての外という話をしていますわな。


○中央銀行の独立性の歴史とか、金融政策の透明性とか

その次には中央銀行の独立性とか金融政策の透明性の話をしていますが、めんどいのでその辺は引用スルーします。米国FRBの従来からの流れの説明はちょうど良い勉強になるので読んで味噌という感じです。

で、その中ではボルカーのインフレファイターぶりに関する評価と、ボルカーの政策を一貫して支持した当時の政権(カーターとレーガン)を高く評価していまして、単なるヘリマネの逆絵オヤジでは無いという事ですわな。


○ところで長期債購入に関する説明が支離滅裂なんだが

この講演、まあ一般的な話をしているのですけど、FRBの長期債購入に関する説明が講演の中で違っているのが実に味わいの深いものを感じます。

本文1ページ目から。

『In the United States, we lowered the federal funds rate target to a range of 0 to 1/4 percent to help mitigate the economic downturn; we expanded the scale, scope, and maturity of our lending to provide needed liquidity to financial institutions and to address dislocations in financial markets; we jointly established currency swap lines with foreign central banks (including the Bank of Japan) to ensure the global availability of dollar funding; and we purchased a large quantity of longer-term securities to help improve the functioning of financial markets and support economic recovery.』

ということで、長期債購入に関しては「金融市場の機能を改善し、景気回復をサポートする」という話をしているのですが、先程引用したように、後の部分では米国の長期債購入が「量的緩和政策」という話をしていまして、いやまあ導入した時点での市場環境からすると「何か派手にぶち上げないとテラヤバス」という状態だったからヤケクソで実行したという感じだと思いますけれども、未だにこの政策に関しては(特に国債購入の方に関しては)どういう位置づけでどういう効果だったのかというのがグダグダになっているのだろうなあとは思います。

MBSの購入に関してはまあ露骨に市場介入だったので、あれはあれでという感じはします。まああっちは要するに生ゴミを腐らせる前にグルグル巻にして冷凍庫にぶち込んでおくという施策でして、問題点としては冷凍庫の容量をあまり拡大すると別の点で不具合が生じる(拡大そのものは出来る)のと、ゴミの日が来るまでの時間が呆れるほど長い(償還までですから)ことだという所でしょうか、朝からしょうもない例えでスイマセンが。

一方で長期国債購入に関しては、派手派手花火ではあったものの結局何がどうなってどういう効果があったのか意味不明という事のようで、FRBのエライ人の講演とか議会証言とか見てても未だに説明が二転三転するのがテラオモシロスという所でしょう。

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2010/05/28

○要するに目先の注目点は欧州ということで

昨日ちょっと書いたECBのドルオペの件ですが。

http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/USD10004_all.en.html

昨日はとりあえずメモ状態でしたが、その後まあ聞いてみたりしたところ、上記URLにある詳細のように、応札してた参加者が『Tot Number of Bidders: 3 』ということで3社だったという事もございまして、まあそんなにややこしい話にはなっていないというのが判るかと存じます。

で、今度は「ドルオペがあるから安心安心」という話が逆に蔓延しだしているような気がするのですが、それは「ロンバート貸出があるから大丈夫」と言ってるのと同じレベルの話でございまして、冷静に考えたらロンバート貸出があっても無担保のファンディングが回らなくなった時に飛ぶというケースもありますので、そこまで安心しまくるのもどうかという感じはせんでもない。

つまり、長目のドルファンディングがしんどくなってくれば、当たり前ですけれども市場のファンディングが徐々にショートファンディングに傾いて来るのでありまして、長目のファンディングのロールが来る傍からそのショートファンディングが溜まってくるという構造になる訳ですから、金詰まりが起きた時のストレスが拡大するのでありまして、まあ長期戦になるんじゃねえのと思いつつ、とりあえず目先急にどうのこうのという話は一旦(何で後退したのか判らんが)後退という事で宜しいのかな??

まあ何ですな、後は欧州の問題が欧州金融機関のリスク資産圧縮というルートから始まって金融が実体経済に悪影響を与えます流れになるかどうかが問題になる訳ですし、その流れが欧州から全体に波及するかどうかという話を考えましょという事でしょうか。いやまあ欧州域内だけヒーヒー言って不景気ですなあという状態で勝手に虫の息になって頂くのであれば世界的には関係ねえという事になるんでしょうけれども、さてそうなってくれますかなと言った所で。

しかしECBのドルオペって市場混乱モード時にはこれ使いたければ使えばっていうような設定(金利にしても担保のヘアカットにしても)になっているので、応札が増えるとそれはそれで「ああドルファンディング市場が北斗の拳状態になっているのですなあ」というシグナルになってしまうのも逆に言えばどうなのかという気もするのでして、個別機関のstigma問題とは違いますが、何かこう微妙なテイストを感じないわけでもない。でもまあ市場がピーピー言うと直ぐに餌が出てくるという風にすると、毎度毎度市場が催促するというそれはそれで一種のモラルハザードの温床に成りかねませんし、匙加減は難しいですわな。

まあいずれにせよ、まだ取り敢えずは余裕があるようなので一息とゆー所なのでしょうかね、ただまあ別にそれで財政問題が解決するわけでは無いのですが、市場の催促によって欧州各国の財政赤字縮小に向けた動きが加速してきた観があるのでそれはそれで結構なお話でございます。

なお、さっきも書いたように、この調子だとたぶん欧州のショートファンディングが拡大していく傾向は変わらないと思いますので、時間の経過とともに何かのショックに弱い状態が拡大はする点には注意が必要なんジャマイカと思いまする。

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2010/05/27

○バーナンキ議長の東京での講演

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20100525a.pdf(PDF版)

一応ざっくり読んでみたのだが、色々と論点があって結構な大ネタ。

まあ大ネタなので今日はとりあえずちょっとだけ。

『The Case for Central Bank Independence』という小見出しの所から。

『In contrast, policymakers in a central bank subject to short-term political influence may face pressures to overstimulate the economy to achieve short-term output and employment gains that exceed the economy's underlying potential. Such gains may be popular at first, and thus helpful in an election campaign, but they are not sustainable and soon evaporate, leaving behind only inflationary pressures that worsen the economy's longer-term prospects. Thus, political interference in monetary policy can generate undesirable boom-bust cycles that ultimately lead to both a less stable economy and higher inflation.』

短期的な成果を求める政治の介入は宜しくないと仰せのようですな。

『Undue political influence on monetary policy decisions can also impair the inflation-fighting credibility of the central bank, resulting in higher average inflation and, consequently, a less-productive economy. Central banks regularly commit to maintain low inflation in the longer term; if such a promise is viewed as credible by the public, then it will tend to be self-fulfilling, as inflation expectations will be low and households and firms will temper their demands for higher wages and prices.』

望ましく無い高インフレを抑制する中央銀行の姿勢が物価ならびに経済の安定に寄与するっちゅう話をしているようですな。

『However, a central bank subject to short-term political influences would likely not be credible when it promised low inflation, as the public would recognize the risk that monetary policymakers could be pressured to pursue short-run expansionary policies that would be inconsistent with long-run price stability. When the central bank is not credible, the public will expect high inflation and, accordingly, demand more-rapid increases in nominal wages and in prices. Thus, lack of independence of the central bank can lead to higher inflation and inflation expectations in the longer run, with no offsetting benefits in terms of greater output or employment.』

ということで、まあこの辺りを見てますと「通常のインフレ目標値を引き上げてゼロ金利制約へののりしろを作るべき」というブランシャール論文の意見には(まあコーン副議長が講演でケチョンケチョンに駄目出ししてますけど)与しないということですかな。

『Additionally, in some situations, a government that controls the central bank may face a strong temptation to abuse the central bank's money-printing powers to help finance its budget deficit. Nearly two centuries ago, the economist David Ricardo argued: "It is said that Government could not be safely entrusted with the power of issuing paper money; that it would most certainly abuse it.…There would, I confess, be great danger of this, if Government--that is to say, the ministers--were themselves to be entrusted with the power of issuing paper money." Abuse by the government of the power to issue money as a means of financing its spending inevitably leads to high inflation and interest rates and a volatile economy.』

ケチャップ先生のお言葉とも思えませんが、まあこの話は「高インフレを阻止する」という論点によるものでありまして、デフレ脱却の為にどうのこうのという話とは別だということなのでしょうなあとは愚考しますが、中央銀行が財政ファイナンスを行うべきではないという話を「デフレ脱却の時はしても良いが通常は駄目」というような器用な事が本当にできるのかと言う問題はあるんジャマイカ(蟻の一穴という奴でございまして)という気もするのでありました。

んでまあ話は中央銀行の独立性の重要さから始まりまして、中央銀行のアカウンタビリティーとか、中央銀行の独立性確立の歴史とか、そんなに長文という程でも無いと思うのですが、大ネタは大ネタですのでじっくり読んでみたいと思います。

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2010/05/26

○スペインがどうしたこうした関連の俺様備忘録

まあ俺様備忘録なので特に考察は無い。正直スマンカッタ。

今般お飛びになられたCajaSurをWikipediaで検索したら英語版だとスペインアンダルシアのツーリングチームが出てくるのだが(^^)、さすがにスペイン語だとちゃんと出てくる(^^;

http://es.wikipedia.org/wiki/CajaSur

冒頭にあるこの銀行の沿革の説明にこんなのがあるが。(追記:下の文章ってスペイン語表記なので本来は色々な記号があるのですが、ホームページビルダーおよびテキストファイルの都合上、単純にアルファベット表記だけになっている点はご容赦ありたし)

『Surge en 1995 de la fusion del Monte de Piedad y Caja de Ahorros de Cordoba, vinculada a la Iglesia Catolica, y la Caja Provincial de Ahorros de Cordoba, vinculada a la Diputacion Provincial.』

まあ何だ、スペイン語は判らんのだが、Iglesia Catolicaってカトリック教会って意味の筈だから(そのくらいなら判らんでもない^^)、要するに物凄い地域金融機関で何かもう地元のしがらみの佃煮のような金融機関ではございますな。で、まあ元々この手の金融機関が不良債権のデパートのようになっているという話はあったようで、スペイン中銀の金融システムレポートのようなものが今年の3月に出ていてですな。

http://www.bde.es/informes/be/estfin/completo/estfin18e.pdf(1MBあるので注意)

これは英語なのでまあ何とかという感じですが、ここのPDFだと19ページ(本文も19ページ)から『Deposit institutions and other financial market participants』のコーナーになっていて、貯蓄金融機関の経営状態の香ばしい話が書いてあるようでありんす。

んでもって21ページの頭にBOX 2.1ってのがあって『BANCO DE ESPANA ACTION IN CAJASUR』というお題で、そもそも経営に問題があるので、同じアンダルシア州の貯蓄金融機関のUnicajaとの経営統合がどうのこうのという話が書いてある訳で、まあ昨日ニュース見て想像した通り、そもそも本件って昔から判ってた話(今回はCajaSurが経営統合を拒否して中銀送りを選んだ)であって、何でそれが急に売り材料になるのかさっぱり判らんというのはまあ昨日の朝の想像通りでしたわなという所です。

なお、28ページの所に貯蓄金融機関の不動産建設業向け融資の状況について書いてあるように読めるのですが、潜在的な不良債権が同業向けの貸出の25%とかいう落涙を禁じ得ない数字が載っておりますな、まあオソロシスですが日本の時ってどうでしたっけな。

んでもって、これまた昨日書いたことの繰り返しばっかで恐縮ですが、まあここって別に金融システムに影響を及ぼす訳でもないです(全体としてスペインの金融機関の不良債権問題がどうのこうのというのはありますが)し、そもそも上場とかいうレベルと隔絶しているような小さい金融機関なので、これをネタに欧州市場が動揺っていうのは話としてはアリエネーという所なのですが、それでも動揺する所に欧州市場がうんこ状態でどうにもこうにもという事になっているというのが判るというものですな、ナムナム。

で、昨晩もこの有様ですよ。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=aZE8j2PdNZpU
Libor for Dollars Rises for 11th Day on Debt Concern (Update2)

『May 25 (Bloomberg) -- The rate banks say they pay for three-month loans in dollars climbed for an 11th day as concern mounted that Europe’s debt crisis will prompt financial institutions to question one another’s creditworthiness.』

はあそうですかという感じですが、まあ欧州市場の(ユーロじゃなくて)ドルファンディングが問題になるちゅうのはコマッタモンデスなという所でございます。いやまあスワップ協定は入りましたのでオペは出そうと思えば出せるのでしょうけれども、ECBってどうもケツが重くて、いざ動くといきなり強烈に動くというのがここまでの仕様だと思う(急に超大量オペやら無制限オペを打ってみたり、急に1年固定オペを打ってみたり、買わないと言ってた国債を急に買ってみたりとか)ので、どうなるかはよー判らんとしか申し上げようが無いですが、このまま週末まで放置すると催促相場状態が続いて遺憾としか申し上げようが無いですな。

いやまあただの催促相場状態でファンディングそのものは回っているという状況なら別にまあ最終的には何とかなるのですが、これが欧州系金融機関の資産圧縮という流れになりますと、ファンディングがどうのこうのという問題では済まなくなるので宜しくありませんわなと思うのでありまして。

という大した考察も無い俺様備忘録でどうもすいません。

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2010/05/24

○テクニカルとは言ってるけど随分と強くなってますなあ

まずは決定会合声明文
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100407.pdf(前回)

今回は謎政策に最初に注目が集まりますが、良く良く見れば決定会合声明文の方があちこちで上方修正されているのがこれまたアレでございますです。

・景気の基調判断が「回復」に昇格

『わが国の景気は、海外経済の改善を起点として、緩やかに回復しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(前回)

さあ回復ですよ回復♪ということですが、会見(詳しくは今日出る)によりますと「これは景気が緩やかな回復をするというシナリオのラインに沿った中でのテクニカルな表現変更」という事らしいのですが、会見のニュアンスとして情報ベンダーから出ていたヘッドラインを見ると、白川さんはマジで先行きの回復に自信があるっぽいような印象を受けるのでして、それは如何なものかという悪態は後ほど(^^)。


・現状判断の個別項目では設備投資と雇用・所得を引き上げ

雇用・所得の引き上げが結構ビックリしたでおじゃるよ。

『設備投資は持ち直しに転じつつある。』(今回)
『設備投資は下げ止まっている。』(前回)

まあそうですなという所ですが、今回ばっさり抜けたのが前回まであった雇用・所得に関する表現です。

『個人消費は、各種対策の効果もあって、耐久消費財を中心に持ち直している。』(今回)
『個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。』(前回)

ということで、早くも「厳しい雇用・所得環境」というのが抜けるって何か随分と強気だなあ(ECBはあんまり詳しく見てないからアレですが、FRBにしろBOEにしろ雇用の部分に関しては随分と厳しい見方をしているのですが、それと比較して日本がそんなに好調なのでしょうか)と思ってしまう訳ですが。


・で、先行きもストレートに「回復」とな

前回までのああでもないこうでもないという表現からいきなり直球に。

『先行きの中心的な見通しとしては、わが国経済は、回復傾向を辿るとみられる。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。』(前回)


なお、物価に関しては同じ表現(言い回しが微妙に違うが)です。



・リスク要因も何か微妙なのですが

下振れリスク要因のメインに国際金融市場の動向が入ったのは当然なのですけど・・・

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、国際金融面での動きなど下振れリスクもある。』(今回)

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。』(前回)

国際金融面に関しては前回はリスク要因のリスク要因(表現がヘタクソでどうもすいません)だったのがメインに昇格したのですが、そのどさくさに紛れて「米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向」が抜けているのはどうなのかと。いやまあ企業の成長期待の動向に関しては今回成長力強化の新施策を打ちますっていう事で外すのかも知れませんが、国際金融情勢は単なるギリシャのソルベンシー問題ではなく、リスクリダクションの動きになってきているのではないかと思われる部分が多く、そう考えると欧州のバランスシート調整はこれからなのではないでしょうか。何で外しちゃうのか意味が良く判らないんですけど。

『この点、一部欧州諸国における財政状況を巡る動きが、国際金融や世界経済に与える影響に注意する必要がある。』(今回)

『また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。』(前回)

ということで、まあここは国際金融面がリスク要因のメインに昇格した影響。

なお、物価面のリスク要因とデフレ脱却に関する決意表明みたいな文言に関しては同じ表現となっています。



○総裁会見では先行きに自信があるようですがそうなのかなあという市場雑感

総裁会見は今日出ますが、ロイターニュースから。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK041248420100521

『世界経済のマクロ展望については「現状、新興国を中心に世界経済が改善するとの中心シナリオは変わらない」と強調。国内については4月30日に日銀が公表した展望リポートの見通しに沿って推移している、とし、「国内民間需要に自律回復の動きがみられる」と強調。国内民間需要について「前回までは自律的回復は弱いと判断していた。今回自律的回復が『強い』と判断していないが、(各種経済指標などで)芽を確認でき、従来の表現を一歩進めた」、「個人消費も耐久消費財以外での投資も少しずつ改善している」と指摘。「まだ十分なものでないがそうした方向に一歩進んできている」と述べた。』(上記URLより)

ということのようですが。

>芽を確認でき、従来の表現を一歩進めた

って何かこう「偽りの夜明け」という話を米国に行ってしてた人の同じ口が言うのかと思うのですけれども、とりあえず白川総裁の判断としては回復に自信があるのは把握した。

ただですな、さっきからチョロチョロ申し上げているように、ここもとの海外市場の動きって、単なるギリシャ問題だけではなく、ユーロ圏全体のソルベンシーの話になり、それがドイツの謎施策の辺りから今度は市場全体のリスクリダクションのようになっているように思えるのですよね。

つまりですな、問題がユーロ危機云々だったら先週後半のユーロの戻しと、円の強さって何なのよという話ですし、一方で商品価格がゲロ下げしている中で資源国通貨が下落するとか、米国の物価連動国債が売られている(日本も影響受けてますが)とか、ど〜も動きが「リスク許容度の低下」あるいは「ポジションの解消」方向になっているのがアレなのでござんす。欧州系はドル建てで外向けのエクスポージャーをそれなりに抱えている(だからドルファンディングが大変でどうのこうのという話が出て来ざるを得ない)ようなのですが、これを閉じる方向という事になると、新興国とかのクレジットアベイラビリティの低下方向という話になるでしょうし、その一方で世界的に「財政の維持可能性」がテーマになっている中では、リーマンショック後のような威勢の良い財政出動がしにくいという点で、リーマンショックの時とはバッファーが違うようにも思えます。

ま、あたしゃ現在は債券屋ですし、その上日本人と来てますので心配症なのよという事なのかも知れませんけれども、足元の循環的な回復よりもど〜にもこ〜にもこっちの流れの方が気になる次第でして、そらまあ杞憂なら別に問題ないのですが、欧州にリスクリダクションの動きという中で「新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因」という見方が堂々維持されているのも(いやまあデータ上はそうなんでしょうけれども)そうなのかなあという感じでありまして、まー詳しくは今日の会見要旨を見ないとですけれども、白川総裁の会見トーンが強めな気がするのが懸念される所ではございます。


ということで、まあ結果出た当初は次の「施策」の方が気になったのですけれども、良く良く考えたらこっちのネタのほうが気になってきたのでありました。以下は謎施策に関連して雑感少々程度。



○謎の施策に関して

3ページ目の「別紙」に注目。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100521.pdf

わけわからんから全部引用という暴挙に出る。

『成長基盤強化を支援するための資金供給の骨子素案

1.対象先
共通担保オペ(全店貸付)の対象先のうち希望する先

2.資金供給の方式
共通担保を担保とする貸し付け(共通担保オペと同様の方式)

3.貸付期間
原則1年とし、借り換え(ロールオーバー)を可能とする。

4.貸付利率
貸付時の無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標水準

5.対象先毎の貸付額
対象金融機関から成長基盤強化に向けた取り組み方針の提示を受け、そのもとで行われた融資・投資の実績に基づき、当該金融機関に対して貸し付けを行う。

6.貸付総額、貸付受付期限等
成長基盤強化に向けた融資・投資への金融機関の取り組み状況等を踏まえ本措置の開始時に、、貸付総額、貸付受付期限(新規に貸付を受け付ける期限)、借り換え可能な回数を定める。』


まず最初にあたくしが思った事を少々。

その1:昭和脳のあたくしは(前も書いたかもしれないけど)「傾斜生産方式」というのを思い出しましたが、ここはどこの昭和20年代かと小一時間問い詰めたい

その2:金融機関が出した案件に関して、日銀が判断できるんですか???何せ「日銀+成長分野への資金供給」というお題を並べると(略)

その3:これって恒常的な措置になるのかねえ

で、会見記事(実際にあたくしが参考にしている記事は共同通信が金曜の夕方に配信した「会見詳報」(一問一答形式)なのですが、共同のサイトを見ても見当たらないので引用しない)によりますと、まあ1番に関しては兎も角として・・・

その2の答え:どうも日銀はそのへんの個別判断は特にしないようですな

その3の答え:どうもこの措置は臨時措置になるらしいですな

と言う事のようですが、まあ詳しくは会見要旨が出てから改めて書きますし、そもそも内容がまだ詰まっていないと思われますので何ともかんともなのですけれども、現在は「貸出はしたいけど肝心の貸したくなるような資金需要が無い(貸したく無いような資金需要ならあちこちにあるでしょうけれども)」という状態になっているのでして、そんな状況の下で臨時措置として実施というのも何かどうなんですかねえという気が思いっきりするのであります。

でもまあそうは言っても日銀様が施策を出して、銀行にヒアリングして回るという話になるでしょうから、銀行も手ぶらという訳にも行かないでしょうと考える訳ですが(−0−)、まさかいきなりの新規先への貸出に対して「成長基盤強化支援融資でござる」と持ちこんで貸出があぼーんと言う訳にも行かないでしょうから(たぶん持ちこみという話になると頭取とは言わないけどかなりの上の方にもお話をするでしょうから、「日銀に持ちこんだ案件の貸金コケた」って訳にはいかない(実際の貸出担保は共通担保だから関係無いっちゃあ無いけど)でしょ)、そうなると最後はヤケクソで今流行りの「スマートグリッド」あたりを「成長基盤強化支援」と称して、東京電力様辺りへの貸金を「成長基盤強化支援」とか言って持ちこむに100ドラクマ(^^)。

5番にあるように、この貸出は「融資または投資を実施した分に対しての実施」となりますので、まあ「この日銀施策をあてにして貸出ましょう」というような直截的な行動には金融機関は出にくいのではないかと思いますけどどうなんでしょうかねえ、金融機関の行動原理からすると。


あ、それから(略)の所で「一萬田総裁のぺんぺん草発言」と言われるネタを思い出した方も多いかと存じますが(^^)、」von_yosukeyanさんの過去のエントリーでこういうのがありまして、まあ当時の背景としては当然の発言(発言したのかどうかは不明らしいですが)とも言えるので、そう単純なものではないという説明がございますので御参考までに付け加えさせて頂きたく存じます、と最後はいつものように人のふんどし(^^)。

http://slashdot.jp/~von_yosukeyan/journal/400504
一萬田総裁と「ぺんぺん草」

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2010/05/21

お題「金融政策決定会合ですが/FOMC議事要旨から資産売却関連」

最近は寝てる間(というか夜に飲んでる間というか)に相場ネタが爆裂するので甚だ遺憾と申しますか何と申しますか。

○決定会合の直前に逆風とな

http://jp.reuters.com/article/jpmarket/idJPnJT866106220100520
欧州株式市場=続落し2週間ぶり安値で引け、規制強化懸念で金融株売られる

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=aW_.OpTfhlDA
米国債:上昇、10年債利回り年初来の低水準−欧州危機の悪化を懸念

ということで、本日はど〜せ株安に円高とかになると思われますが、日経1万円割れとかドル円90円割れとかになりますと、暫く静かだった政治方面からああでもないこうでもないという話が出てくるに1万ドラクマな訳でございまして、そのタイミングがまさにこの金融政策決定会合というのが様式美の世界。

ここの所は割とその流れが無かったのですが、昨年末くらいからは政策決定会合前になると急に為替やら株価がアンフェーバーな方向に動いて日銀にああでもないこうでもないという人達大騒ぎの展開でござるというのが毎度毎度の決定会合で示されていた訳でして、今日はまた久々にこの動きをやってくださっているのが中々香ばしい所ではございます。

・・・じゃあ今日の会合で何かあるかというとそれは昨日の今日とかなので何か出るという訳にも行かないのでしょうけれども、何かこういう感じで足元できな臭い状態になっている時に「成長戦略の為の資金供給がどうのこうの」という長期的なネタを出すのは何と言うかタイミングとしてとーーーーーってもアレというのが何だかなあって感じが致しますが、微妙に間が悪い事が多いのが白川日銀の仕様でもあるので致し方無しということで。

ま、ユーロの問題ってとりあえず足元の政府債務の支払いという点での流動性に関しては何とかなりますよという状況にはなっているとは思うのですが、じゃあ財政再建がサステイナブルなのかというような、ソルベンシー問題に関しては1ミリも解決されていない(そらまあ1日や2日で解決される問題ではないが)のが問題という話になって来ると、まあ足元の動きに対して外野の中央銀行ができる事って特に無いのですから、そーゆー点で言えば日銀が何かやりますって言う話は無いのですけれども。


○とりあえず注目してないけど成長戦略向けの資金供給雑感

何をやるのでしょうと色々と妄想をたくましくしているのですけれども、結局の所思いつくのは「政策投資銀行とか政策金融公庫に貸付けをすればいいじゃん」という結論しか出てこないのですが(汗)、まあ経産省あたりが成長戦略関連の制度融資に関するネタを作って、それに関連する貸付債権に関しては日銀が担保適格とするとか、その貸出債権に関してはより長い期間の融資を行うとかいうような事くらいでしょうか。

まー常に足元の話でヒーヒー言ってる市場の皆様(ってあたくしもその上がりをかすめて生きているのだが)的にはマーケットインパクトのあるような話にはならないのでありまして、それよりも足元の円高株安でまた追加緩和観測とか出てくるのかねという方が気になる所ではございますけれども、いずれにせよ今回出るであろう成長戦略がどうしたこうしたというネタは金融政策として出すようなネタとしてはだいぶ筋違いな気がします。

いやまあ「デフレ脱却には経済の潜在的な成長力を高めることが重要」という話に力点を置いたからこーゆー事をやらないと話として整合性が取れない(「成長力を高めるという事は金融政策の仕事ではない」とかばっかり言ってたら、金融政策の存在意義を問われるという話になりますからねえ)という事になったんですなあとは思うのですが、白川さんらしくああでもないこうでもないという説明をせっせとやっている内に、その理屈が自分の首を絞めて今回の謎政策に至るという感想を受けるのでございました。

毎度比較してカワイソスではありますが、あの学者様バーナンキ議長が今般の金融危機以来すっかり福井の俊ちゃんみたいにインチキロジックを駆使して気合でイカサマ説明を繰り返しつつ、結果として(リーマンをこかして危機を招いたのはトンマというか戦犯モノではございましたけれども)最悪の事態は回避して回復軌道に(とりあえずは)乗せたというのを見ますと、やはり危機モードでは中央銀行が財政の領域に入ってみたり、政治などからの軋轢が起きたりというような事が起こるのでありまして、そーゆー時には白川総裁はイカサマパワーが足りないことがちょっと惜しいかなと思います。政治だのなんだのというような所に出る時にはイカサマパワーが必要とされるので、本来的に言えばそっちを武藤さんにやって貰って、より「本来はどうあるべきでどういうロジックで動くのが正しいのか、効果をちゃんと分析できるのか」というような冷静な部分を白川さんがやって行けば役割分担がきっちりと出来たんでしょうなあと思うと民主党の罪の重さは政権獲得前から始まっていたと言う事ですな。

じゃあ白川さんがダメダメなのかというとそういう訳ではなく、イカサマパワーでその場を何とかするのは良いのですが、インチキロジックで色々とやってしまうと、その後始末というのがひじょーに難しいのでありまして、米国であればMBSだのエージェンシー債だの長期国債の買入だのの後始末が将来的には問題になりますなあという話がFOMC議事要旨にありましたなという所で。


○んな訳で昨日の続きでFOMC議事要旨の資産買入関連の部分

最初の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』コーナーのケツ(というか真ん中以降)の方にその話が。

『Meeting participants agreed broadly on key objectives of a longer-run strategy for asset sales and redemptions. The strategy should be consistent with the achievement of the Committee's objectives of maximum employment and price stability. In addition, the strategy should normalize the size and composition of the balance sheet over time. Reducing the size of the balance sheet would decrease the associated reserve balances to amounts consistent with more normal operations of money markets and monetary policy. Returning the portfolio to its historical composition of essentially all Treasury securities would minimize the extent to which the Federal Reserve portfolio might be affecting the allocation of credit among private borrowers and sectors of the economy.』

と、FEDのバランスシート問題に関連して、買入を行った各種資産の規模を経済の正常化に合わせて縮小していくと、利上げなどを実施する時にオペレーション上やりやすいってな話が最初にある訳ですが。

『Most participants expressed a preference for strategies that would eventually entail sales of agency debt and MBS in order to return the size and composition of the Federal Reserve's balance sheet to a more normal configuration more quickly than would be accomplished by simply letting MBS and agency securities run off. They agreed that sales of agency debt and MBS should be implemented in accordance with a framework communicated in advance and be conducted at a gradual pace that potentially could be adjusted in response to changes in economic and financial conditions. 』

償還まで待ってのうのうとするよりは売却した方がFEDのバランスシート縮小が早くなるのはそらまあそうなのですが、実際に行うとなると事前にどういう方法で売るのかとかをきっちりと公表して実施します(どっかの国の国債買入のようなダマテンスキームではないという事ですな^^)ちゅうような話ですし、それに関しても経済と金融環境を見ながらということのようで。

『Participants expressed a range of views on some of the details of a strategy for asset sales.』

で、実際の作戦について。

『Most participants favored deferring asset sales for some time. A majority preferred beginning asset sales some time after the first increase in the Federal Open Market Committee's (FOMC) target for short-term interest rates. Such an approach would postpone any asset sales until the economic recovery was well established and would maintain short-term interest rates as the Committee's key monetary policy tool.』

ということで、まあ実際の利上げを行うまでは資産売却せん方がよかろうというのが大勢の見解ということで、その辺りは妙な逆噴射リスクが低いという点で安心して見てられる話です。

『Other participants favored a strategy in which the Committee would soon announce a general schedule for future asset sales, with a date for the initiation of sales that would not necessarily be linked to the increase in the Committee's interest rate target.』

『A few preferred to begin sales relatively soon. Earlier sales would normalize the size and composition of the balance sheet sooner and would unwind at least part of the unconventional policy stimulus put in place during the crisis before conventional policy firming got under way.』

まあ正直このA fewなメンバーさんの見解には同意致しかねる。

『Some participants saw advantages to varying the FOMC's holdings of longer-term assets system-atically in response to economic and financial developments. However, others thought that a pre-announced pace of sales that was unlikely to vary much would provide a high degree of certainty about sales, helping to limit disruptions in financial markets. 』

まあいきなり売却というよりは徐々に売却するとして、そのスケジュールもかなり慎重にやるべきではないかと、インフレ大スパークという話になればまあ当然別ですけど、主要国がどこもかしこもコアベースではディスインフレという状況なんジャマイカという状況でしたらね。

『The views of participants also differed to some extent regarding the appropriate pace of asset sales. Most preferred that the agency debt and MBS held in the portfolio be sold at a gradual pace that would complete the sales about five years after they began. One possibility would be for the pace to be relatively slow initially but to increase over time, allowing markets to adjust gradually.』

『A couple of participants thought faster sales, conducted over about three years, would be appropriate and felt that such a pace would not put undue strain on financial markets. In their view, a relatively brisk pace of sales would reduce the chance that the elevated size of the Federal Reserve's balance sheet and the associated high level of reserve balances could raise inflation expectations and inflation beyond levels consistent with price stability or could generate excessive growth of credit when the economy and banking system recover more fully. 』

そらまあ最終的にはインフレ動向次第だとは思いますが、現状での大勢意見は資産売却急がないという話になるでしょう。これって実は今みたいな状況が続く方が出口戦略が楽という流れなのは皮肉は皮肉ですわな、と思う。

『Participants saw both advantages and disadvantages to not rolling over Treasury securities as they mature. On the one hand, redeeming Treasury securities would contribute to a more expeditious normalization of the size of the balance sheet and the quantity of reserves. On the other hand, such redemptions could put upward pressure on interest rates and would tend to work against the objective of returning the SOMA to an all-Treasuries composition.』

財務省証券に関しては、まあ償還乗り換えを止めるのが現実的な解決法だと思うのですけれども、そうすると今度は償還乗り換え分の財務省証券が市中消化に回る事になりますので、結局の所資金需給調整上買入を行わないとバランスが悪くなるような気もせんでもない(^^)。まあ売ると言うのは難しいでしょう。

で、結論は無いと言うのが結論。

『No decisions about the Committee's longer-run strategy for asset sales and redemptions were made at this meeting. For the time being, participants agreed that the Desk should continue the interim approach of allowing all maturing agency debt and all prepayments of agency MBS to be redeemed without replacement while rolling over all maturing Treasury securities. Participants agreed to give further consideration to their longer-run strategy at a later date.』

引用大会でどうもすいません。まあFRBの資産売却に関しては当面は懸念する必要は無さそうだと思うのですけどね。

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2010/05/20

お題「今日も小ネタ雑談とメモとかクリップで」

材料が欧州から来るので朝のうちに消化できずに困りますぅ。

○ドイツがどうしたこうしたのクリップ

URLが長いよ・・・

http://www.bafin.de/cln_161/nn_720788/SharedDocs/Mitteilungen/EN/2010/pm__100518__cds__leerverkauf__allgemeinverfuegungen__en.html

どうもこの辺りに例の空売り規制に関するリリースが出ているようで、何かこのリリースって昨日の(日本時間の)昼間には出てなかったような気がするんだが、大体からして欧州時間帯の取引終了後にこの話が出て、地球を一周してから下げスタートで始まるとかドイツの当局者何考えているのかサッパリ判らんですな(話が出た時は「結局の所詳細が判らんのでとりあえずポジションを閉じとくか」状態だったんじゃないかと)。

ついでに申し上げますと、空売り禁止がどうのこうのというのはまあ良いとして(良くないが)、銘柄を限定列挙するとか更に意味判らん。こーゆーの列挙したらマーケット感覚的には「この銘柄から逃げて〜」といってるようなもんなんですけど、何を考えているんだか。

でですな、あまりにも斜め上なドイツ当局の対応にも程があるので、もしかしたらドイツは斜め上の対応を取る事によってユーロ安誘導を行って、財政問題を通貨安で解決しつつ、自国の輸出産業はウハウハになるのでドイツ大勝利とか考えているのかと妄想を入れたくなってしまうのですが(^^)、昨晩はユーロ防衛介入的な思惑が出ていたらしいのでそれはさすがに考え過ぎで、単に何かヤケクソになって斜め上の話をおっぱじめたという事なんでしょうかねえ。まあよー判らんですな。

たぶん一般的と思われるマーケット感覚として、何か唐突に妙な施策が出ると、その背景に何かとんでもない事が起きているのではないか!と思うのが仕様だと思われますので、まあ正直ゲルマンさんの国がどうのこうのとかさっぱり判らんのですが、ひじょーに気になる所ではございます。


○一方日本では短国利回りが相変わらず低い訳だが

昨日の3か月TB入札結果。
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/tbill/tbillnyusatu/resul220519.htm

平均0.1119%の足切り0.1123%となりやがりました。

先週水曜の3か月TBの入札が平均0.1139%で足切り0.1143%だったのですが、それよりも堅調という事でございます。その後の業者間では0.11%の出合いとかだったらしいので、まあ5兆4千億円の打ちこみがあっても堅調堅調。さすがに0.105%だの0.10%だのという事になると、そこまで行くと日銀の預金ファシリティに置いても同じでしょという事になりますので、預金ファシリティと関係ない人(非居住者とか)が「円建て安全資産としてのTB」という「モノ」としてのニーズだけで発行量全部充足という訳にも行かないでしょうと思うので、ここから先の金利低下は逆に行ったら行ったで結構腰を抜かす事態のような気がするざますわよ。

ま、それはそれとして、昨日の入札結果を見ましても、ま〜市場のベースの部分で円の安全資産へのニーズがやや増えているんジャマイカと思わせるような感じっすねえというメモでありました。なお、今日は2か月TBの入札があるのですが、どっからどう見てもニーズが強いという話になるんでしょ。よー知らんが。


○水野前審議委員発言メモ

http://jp.reuters.com/article/foreignExchNews/idJPnTK040989820100519
UPDATE2: ユーロはまだ下をトライする可能性=水野・前日銀審議委員

『日銀の成長基盤強化の取り組みについては「あまり市場で話題になっていない」としたうえで「(決定には)いろいろな政治的背景もあったろう」「非常に危ない橋を渡っているという感じがある」などと述べた。取り組みへの評価については「出てからにしたい」としたものの「必要なものかどうかと考えた場合、絶対なければいけないものかといえば、私自信は、そういうものはない」と述べた。』

・・・・・・いやまあそうだと思うのですが、先日の田谷さんと言いもう皆さんそんなキビシイ事を仰らなくても(^^)。



○FOMC議事要旨(寝起きで読むのは無理ですすいませんすいません)

4月28日の議事要旨が公表されました。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100428.htm

何かロイター見ると(というかモーサテでも言ってたが)こんな話があるそうなのですが。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT865880620100519
モーゲージ関連証券はいずれ売却が必要との見方、経済見通しは引き上げ=米FOMC議事録

とりあえず最後の最後の部分だけ見るのだ。最後の所って『Committee Policy Action』からのパラグラフです。

『In the members' discussion of monetary policy for the period ahead, they agreed that no changes to the Committee's federal funds rate target range were warranted at this meeting. On balance, the economic outlook had changed little since the March meeting. Even though the recovery appeared to be continuing and was expected to strengthen gradually over time, most members projected that economic slack would continue to be quite elevated for some time, with inflation remaining below rates that would be consistent in the longer run with the Federal Reserve's dual objectives.』

3月会合から景気認識には大きな変化は無く、景気回復のペースが遅くて経済のスラックが高水準で当面の間推移すると見込まれ、インフレは低い状態が続くと。

『Based on this outlook, members agreed that it would be appropriate to maintain the target range of 0 to 1/4 percent for the federal funds rate. In addition, nearly all members judged that it was appropriate to reiterate the expectation that economic conditions--including low levels of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations--were likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period.』

(ホーニッグさん以外の)殆どすべての委員が「for an extended period」の文言継続で見解一致と。

『As at previous meetings, a few members noted that at the current juncture, the risks of an early start to policy tightening exceeded those associated with a later start, because the scope for more accommodative policy was limited by the effective lower bound on the federal funds rate, while the Committee could be flexible in adjusting the magnitude and pace of tightening in response to evolving economic circumstances.』

前回会合の議事要旨にもあった「早すぎる引き締め転換のリスクは、引き締めが遅れる弊害よりも大きい(ので現在の異例の緩和的な金融政策を継続すべきである)」という指摘に関してもご丁寧に言及しています。

『In light of the improved functioning of financial markets, Committee members agreed that it would be appropriate for the statement to be released following the meeting to indicate that the previously announced schedule for closing the Term Asset-Backed Securities Loan Facility was being maintained. 』

金融市場の環境改善に伴い、各種流動性供給プログラムは予定通りに出口へ向かうとな。


とまあこの辺を読んだだけの感想としては、まあ予想の範囲内ではございますが、出口政策に関してはあくまでも「緊急対応の流動性供給プログラム」部分の出口の話だけで、利上げだの引き締めだのという話では全然ございませんですよ〜ってなイメージを受けるのですが、当然ながら(と威張っても仕方ないですが)この前の部分を全然読んでいないので判断は保留。


『Mr. Hoenig dissented because he believed it was no longer advisable to indicate that economic and financial conditions were likely to warrant "exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period."』

ということで今回もホーニッグさんはガイダンスの文言に反対ですが、反対の理由がまたまた変わっていますな。

『Mr. Hoenig was concerned that communicating such an expectation could lead to the buildup of future financial imbalances and increase the risks to longer-run macroeconomic and financial stability, while limiting the Committee's flexibility to begin raising rates modestly in the near term.』

というのは前回と同じなのですが。

『Mr. Hoenig believed that the target for the federal funds rate should be increased toward 1 percent this summer, and that the Committee could then pause to further assess the economic outlook. He believed this approach would leave considerable policy accommodation in place to foster an expected gradual decline in unemployment in the quarters ahead and would reduce the risk of an increase in financial imbalances and inflation pressures in coming years. It would also mitigate the need to push the policy rate to higher levels later in the expansionary phase of the economic cycle. 』

これは新しい説明!!FFを一旦1%に引き上げて金融の不均衡拡大と先行きのインフレ圧力拡大のリスクを抑制するということですか。

ちなみに前回のホーニッグさんの反対理由を引用しておきますね。

『Mr. Hoenig was concerned that communicating such an expectation could lead to the buildup of future financial imbalances and increase the risks to longer-run macroeconomic and financial stability. Accordingly, Mr. Hoenig believed that it would be more appropriate for the Committee to express its anticipation that economic conditions were likely to warrant "a low level of the federal funds rate for some time." Such a change in communication would provide the Committee flexibility to begin raising rates modestly. He further believed that making such an adjustment to the Committee's target for the federal funds rate sooner rather than later would reduce longer-run risks to macroeconomic and financial stability while continuing to provide needed support to the economic recovery. 』(3月FOM議事要旨より)

ほほーという感じですが、予定調和的な考え方をすれば、バーナンキさんやコーンさん、イエレンさん(は今はFOMCメンバーではないですが)などが割と「ハト派」的に見られていると思われるので、鉄砲玉としての意味もあるのかなあとか思っちゃったりもするのですが、まあそれは考え過ぎでしょう(^^)。

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2010/05/19

○ECBの吸収オペレーション

まず最初に訂正しますと、ECBの吸収オペレーションの概要に関してはECBのウェブサイトに思いっきり掲載されていましたです。とは言いましても、トップページに載せないでオペレーションに関する所に載せているのが何だか不親切感を受けるのですけれども。

こちらのページ(トップページの「金利が幾らです」の下にある『Open market operations』をクリックすると出る画面だよ)の真ん中あたりにあるタブの『Ad-hoc communications』というのをクリックすべし。
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/index.en.html

『17/05/2010 Fine-tuning operation

As decided by the Governing Council on 10 May 2010, the ECB will conduct specific operations in order to re-absorb the liquidity injected through the Securities Markets Programme. In this regard, the ECB will carry out a quick tender on 18 May at 11.30 in order to collect one-week fixed-term deposits with settlement day on 19 May. A variable rate tender with a maximum bid rate of 1.00% will be applied and the ECB intends to absorb an amount of EUR 16.5 billion.』

ということでこのアナウンスに伴い昨日吸収オペが実施されただよ。

『The latter corresponds to the size of the Securities Market Programme, taking into account transactions with settlement at or before Friday 14 May. The benchmark allotment amount in MROs takes into account the liquidity effect of non standard measures, assuming an unchanged size of the Securities Markets Programme and full sterilisation of this amount via the above mentioned liquidity-absorbing operation. Fixed term deposits held with the Eurosystem are eligible as collateral for the Eurosystem´s credit operations. The ECB intends to carry out another liquidity-absorbing operation next week.』

1%(=通常の1週間オペおよびまたフルアロットメント方式になった3か月オペの資金供給金利)を上限として吸収を行うのですが、その吸収した預金は資金供給オペの担保として使えるという中々良く判らんシステムではございます。まあ通常のオペに使うと逆鞘になりそうな気がするからもし使うのだったらドルオペの担保にでも使うのかいな??何かユーロシステムのオペレーション関連はあたくしの不勉強のせいで良く判らんので誠に申し訳ないのですが。

ちなみに、この下の方にも『Fine-tuning operation』というのが載っていますが、その説明を見ていると、Fine-tuning operationというのは準備預金の積み最終日に大きな積み上が残りそうな資金需給になった場合に、調節の為の吸収オペレーションを実施する(実施しないとオーバーナイト金利が預金ファシリティ金利(現在は0.25%)まで低下してしまうから)というオペレーションのようで、今回の吸収オペも名前が同じという所からしますと政策的な位置づけは同じようなもの、ということになるんすかね。

で、そのオペの結果は、さっきの画面の『Tender operations 』タブをクリックすると出てきます。オペ番号20100037番のOTって奴ですな。

オペ実施明細
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20100037_ann.en.html

落札結果
http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20100037_all.en.html

7日間のオペレーションで、平均落札利回りは0.28%で足切り利回りは0.29%だそうですな。高いのか低いのかは良く判らんが、まるっきり同じ期間のMROが実施されているのですよね。何がどうなっているのか教えてエライ人!!!!

#と最後はただの自分のアホぶりを晒しているのが悲しい所です



○日銀のドル供給オペレーション

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100518.htm

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba100518.htm

2億1000万ドルですかそうですか。ということは200億円くらいのオペという事になるのかと存じますので、まあ坊主じゃなかったけど実質的には坊主みたいなもんという感じ。これはこれで予想通りの展開(東京市場でのドルファンディングに大きな支障をきたしているという人はいないでしょうと思われるので)ではございました。

まあこの結果を受けて、次回のオペはのんびりと実施するとかいう話になるのでしょうなあとは思いますが、こーゆー物はとりあえず置いておく事に意味がある(ただし、コーンFRB副議長が指摘する(あとで引用します)ように、それを常設化するのは、「最終的にオペ頼り」という流動性リスク管理を生みだすリスクもあるので、必ずしも常設化が正しいとは言い難いというのもその通り)ので、とりあえずドルスワップ協定の延長有無があるかどうかにもよりますけど、協定が生きている内は実施をいつでも可能という状態にしておくという感じっすかね。



○そういえば決定会合ですが

先週金曜に産経が報道してましたな。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100514-00000510-san-bus_all
金利0.1%前後、期間3カ月以上 日銀の企業金融支援

まあこちらの記事だと要するに企業金融支援オペを焼き直しみたいな話なのですけれども、あたくし的にはどちらかと言えばそういう良く判らんオペよりも、普通に政策金融公庫とか政策投資銀行が「成長分野への支援制度融資」みたいなのを実施するとか、金融機関に代理貸し付けさせて、それに対してバックファイナンスを日銀が付ければ良いんじゃねえのと思うのですが・・・・・

この記事だと短期の支援オペになっちゃいますよね。まあやるのは良いけど長期には引っ張りたくないって事なのでしょうかなあとは思うのですけれども、例えば6か月なり1年なりの時限措置で優遇金利でファンディングできるからって言って設備資金みたいな長期貸しに対するインセンティブになるのかねというのは普通に疑問符が100個くらい頭の中を飛び回るんですけど。

まー雰囲気的に今回の会合で決まるとは思えないので気にしないことにする。



○目を付ける所は同じですなという話(一発ネタ)

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp10j11.htm
金融政策が投資家行動に及ぼす影響:社債の発行条件形成における検証

http://www.bis.org/publ/work298.htm
Does monetary policy affect bank risk-taking?

まあ時期的に見て丁度同じ時期に別の人達が同じネタでああでもないこうでもないと研究してたんですなあと思うと中々楽しいですな(^^)。

まあ要するに低金利だと社債などのような市場でのクレジットスプレッドが縮小しますよって話ですが、そらまあベース金利が3%の時に社債の対国債スプレッドが20bpくらいあっても誤差の範囲内ですけれども、ベース金利が0.1%になったら20bpあったら金利3倍になっちゃいますからね、単純に言ってしまえば(^^)。

あとまあ長期停滞モードになると期待収益率も下がって、「低リスク低リターン」が嗜好されるようになるんジャマイカと思うのでして、そーゆー意味で低金利政策の長期化期待が期待インフレ率の上昇とか期待成長率の上昇を伴わない場合はスプレッド縮小(ただしこの場合全体で見たスプレッドは縮小するかもしれないけれども、リスク回避方向に動くような気もするので弱い部分に対してどうなのかという気がする)するんじゃねえの、などと上記の2本のペーパーの全文をちゃんと読んだ訳ではないが(おいおい)何となく思うのでした。



○コーン副議長講演ネタを更に引っ張って

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.pdf

『It is certainly too soon to fully assess all the lessons learned concerning the conduct of monetary policy during the crisis, but a few observations seem worth noting even at this early stage.』

最後の部分『Lesson from Conducting Monetary Policy in a Crisis』からですが、引用すると長くなるので勝手にまとめてみたでござるの巻。本文15ページからになりますのでご興味のある方は読むべし。6点あるのですが・・・・

(1)「時間軸政策(のようなもの)の効果はある」という話を最初にしています。時間軸というか金融政策の将来パスに対する期待を作る事によってより長目の金利形成に影響を与えるという話で、その中でカナダ中銀のケースも説明しています。

(2)「確実に安定化されたインフレ期待は常に重要である」という話をしています。最初何のこっちゃと思ったのですが、そこから延々と1ページ分を使って説明しているのは「金融ショックのような事態になった場合にゼロ金利制約に引っ掛からないようにする為に、通常時のインフレ目標を引き上げる方法が考えられる」というIMFのブランシャールさんのペーパーなどで言われている論点に対して全力でダメだしをするでござるの巻でした(^^)。

ここの部分が一番長いので、相当この件に関してはコーン副議長が力入れているんでしょうなと思いますが、この論点については先日ご紹介したコーン副議長の別の場所での講演での説明と同じ(当たり前だが)です。

(3)「金融政策のゼロ金利制約に達した時に実施する大規模の資産買入は金融環境(financial conditions)を緩和する」という話をしています。ただしここでの金融環境の話は社債やモーゲージ債などのような信用スプレッド縮小の話をしていまして、「金利の低下」とは言ってますがトレジャリーの買入による金利の低下(って低下してないのだが)に関しては華麗にスルーしているのがチャーミング。

(4)「中央銀行は自らのバランスシート拡大が潜在的に持つインフレ期待の引き上げ効果に対して注意深くあるべきである」という話をしています。つまり、現状のような状態では大丈夫だけれども、経済が通常の状態に戻った場合にはインフレ期待に火を付ける可能性があるちゅうことですので、まあこの辺りは出口戦略におけるバランスシート縮小あるいは流動性吸収手段活用の重要性という所でしょうな。

(5)「中央銀行は必要な時が来た時に、異例の政策を巻き戻す政策ツールを持つことが必要である」という話で、これは現在のFRBの出口政策ツールに関する説明も兼ねています。まあ4番目の論点と同じかと。

(6)で最後ですが、これまた先日ご紹介した講演でも論点になっていましたが、「金融の不均衡を抑制するのに金融政策を割り当てるべきか」という論点に対して、コーン副議長は「プルーデンス政策を割り当てるべき」という、日銀では白川総裁が良く指摘するいわゆる「マクロプルーデンス」の観点が重要という話をしています。ただ、プルーデンス一本やりというのは理想的だが難しいですねとか、プルーデンスで追いつかない不均衡には金融政策適用も必要、というようにまあ柔軟というかケースバイケースな面もしてきしています。

ということでそのパラグラフだけ引用しますね。本文18ページ。

『Finally, let me close with some comments on a “lesson learned” that some observers have emphasized--that long periods of low interest rates inevitably lead to financial imbalances, and that the Federal Reserve should adjust its policy setting to avoid the buildup of such imbalances.』

『As I have indicated at other times, I don’t think we know enough at this point to answer with any confidence the question of whether monetary policy should include financial stability along with price stability and high employment in its objectives. Given the bluntness of monetary policy as a tool for addressing developments that could lead to financial instability, given the side effects of using policy for this purpose (including the likely increase in variability of inflation and economic activity over the medium term), and given the need for timely policy action to realize greater benefits than costs in leaning against potential speculative excesses, my preference at this time is to use prudential regulation and supervision to strengthen the financial system and lean against developing financial imbalances.』

『I don’t minimize the difficulties of executing effective macroprudential supervision, nor do I rule out using interest rate policy in circumstances in which dangerous imbalances are building and prudential steps seem to be delayed or ineffective; but I do think regulation can be better targeted to the developing problem and the balance of costs and benefits from using these types of instruments are far more likely to be favorable than from using monetary policy to achieve financial stability.』

ということで、一応あたくしの読んだので合ってますよね(^^)。

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2010/05/18

お題「各種雑感/またまたコーン副議長講演ネタ」

昨日になって口蹄疫の対策本部設置とか遅いにも程があるだろう鳩山内閣。

○各種雑感

・その前に昨日の訂正

サルコジがユーロ離脱云々と言うElPaisの記事ですが、読者様からこれですよとご教授賜りました。ど〜もです。で、これなら(スペイン語は「ビール一杯ちょうだいな」程度の旅行用会話しか出来ませんが^^)何となく字面でそういう話なのは把握した(^^)。
http://www.elpais.com/articulo/espana/Zapatero/Sarkozy/amenazo/salirse/euro/elpepuesp/20100514elpepinac_2/Tes


・ECBが吸収オペをアナウンス

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15351220100517
ECB不胎化計画、ターム物預金で165億ユーロ吸収へ

『ECBは、ロイターの情報ページで明らかにした文書で「ECBは5月10日の理事会での決定に従い、証券市場プログラムを通して供給した流動性を吸収するために特定のオペを実施する」とした。』

は良いのだが、その肝心のアナウンスはECBのホームページだと見当たらないという情報開示姿勢として如何なものかというのが欧州クオリティなのは今に始まった事では無いのですが。

で、目の前のテレビ番組では「国債買入の不胎化オペレーションを行うからユーロが上昇」というニュースになっていますが、そもそもユーロ安はユーロシステムへの不安によって発生しているのであって、別に流動性がどうしたとか利下げがどうしたという話じゃなく、国債買入を不胎化したらユーロが買われるとか嘘でしょ(そもそも国債買入のアナウンスでギリシャ危機後退期待でユーロは買われただろうと小一時間問い詰めたいのだが)と思うのだが、ブルームバーグはマジでそういう後講釈してるのか、幾ら後付けでも従来の流れと全然違うんじゃねえのかと思うのだが。

http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aqFonw6DMgAA

なお、ロイターは全然別の理由を説明してます(^^)
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPnJT865446220100517

まあこの措置は「うちはジョンブル野郎とは違うんですよ、フフン」という以外の意味があるのかは謎でございます。



・そ、それはゆうてはならんことじゃあああああ

元審議委員の田谷さんのロイターインタビューから一発ネタ。

http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPJAPAN-15341520100517
財政再建は消費税の2─4倍引き上げ必要=田谷元日銀審議委員

まあ財政再建がどうしたこうしたという話は良いのですが。

『日銀が検討を表明した「成長基盤強化支援策」は、企業の資金需要が伸び悩むなか金融機関の貸し出しを強く促す施策が打ち出される公算は大きくないとして、信用創造面で「あまりインパクトはないだろう」との見方を示した。ただ、政府から量的緩和政策を強いられるよりは「まし(な施策)だ」として、日銀の立場に理解を示した。』

・・・・・いやあのそれはたぶんオトナとしてはゆうてはならんことではないかと思うのですけれども(^^)。


・短国が相変わらず強いけれども短い所限定な件について

昨日の1年TB入札は概ね0.13%をちょっと切る水準で落着。まあこちらの方は概ね0.13%辺りで安定して推移しているのですけれども、その一方で3か月以内の短期国債は強いわ強いわということで、多分BBさんの引けは3か月カレントで0.115%とかになっているような気がするのですが、実力はどう見ても0.11%という水準(つーか絶対金利の水準がここまで低い状況なのに引けと実勢が違うのは勘弁してくれと思うのだが、その悪態はまた後日^^)ですし、より短い所もまあそんな感じなのかもうちょっと強いのかという感じです。

まあ何ですな、短国のうち期間が3か月以内程度(たぶんニーズが伸びて半年程度かなあ)という状況っていうのは、「運用商品」というよりも「キャッシュの置き場所としての安全資産」というような意味合いの買いが強い時のお話(これが利下げ期待とかだと更に長い期間まで低下しやすくなりますよね)でございまして、まあそれこそユーロ懸念でユーロから金引っこ抜いてきて他通貨に振るって事になった場合、そらまあ最近の地合いだとカナダだのオージーだのにも人気が出るでしょうけれども、それなりにロットを捌くとなるとどうしても円だのドルだのという所を使わない訳にはいかないでしょという流れなんですかねえ、と妄想。

今週は明日3か月TB、明後日2か月TBの入札がありまして、この水準がどの程度まで行くかという話ですが、短国の短い所が強くなった影響で運用商品的な面も考えている投資家が足元の強さで弾き出されている面があり、その金がGCに流れていたり、一部ではCPに流れていたりという雰囲気は感じる(感じるだけで本当の事は知らんので念の為)のですが、そうは言っても何週間も買わないという選択肢は基本的に無い(何せ長期債投資と違って短期はターンオーバーが物凄い勢いでやってくるので待つという時間もそれほど取れない)筈ですので、そのあたりの人達の動きがどうなるのか次第ですかね、よー知らんが。



んでもってコーン副議長の講演の続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.pdf

○時間軸の話とか資産買入の話とかに関して

10ページ目が『Monetary Policy and the Zero Bound』というコーナーですが、まあそこの話は前回ご紹介したコーン副議長の講演と同じような話なので基本的にスルーですが少々。

まず時間軸(のようなもの)に関する話をしてまして。

『After short-term rates reached the effective zero bound in December 2008, the Federal Reserve also acted to shape interest rate and inflation expectations through various communications. At the March 2009 meeting, the Federal Open Market Committee (FOMC) indicated that it viewed economic conditions as likely to warrant “exceptionally low” levels of the federal funds rate for an “extended period.” This language was intended to provide more guidance than usual about the likely path of interest rates and to help financial markets form more accurate expectations about policy in a highly uncertain economic and financial environment.』

まあこれはコミットメントがついている訳ではないので、日銀がかつて実施したような強力時間軸とは違う(ちなみにカナダ中銀がより長期に渡った低金利維持の説明をした件に関してコーンさんも説明しています)のですが、まあ先行きの金融政策のパスに関する説明をして足元の金利を下げられなくなった所での新たな金利への働きかけ手段と。

本文11ページ目から。

『To provide the public with more context for understanding monetary policy decisions, Board members and Reserve Bank presidents agreed in late 2007 to prepare more frequent forecasts covering longer time spans and explain those forecasts. In January 2009, the policymakers also added information about their views of the long-run levels to which economic growth, inflation, and the unemployment rate were likely to converge over time. The additional clarity about the long-run level for inflation, in particular, likely helped keep inflation expectations anchored during the crisis.』

ということで、より長期間の経済見通しに関する公表を行うことによって、金融政策の将来パスに関する期待を醸成し、一般ピープルのインフレ期待を安定化させましたとな。ふーむ。

んでまあそれだけでは足りないので資産買入をしたという話をしているのですが、その目的に関しては「金利の引き下げ」と言っているのですな。同じく11ページ目。

『Indeed, once the Federal Reserve reduced the federal funds rate to zero, no further conventional policy easing was possible. The Federal Reserve needed to use alternative methods to ease financial conditions and encourage spending. Thus, to reduce longer-term interest rates, like those on mortgages, the Federal Reserve initiated large-scale purchases of longer-term securities, specifically Treasury securities, agency mortgage-backed securities (MBS), and agency debt.』

でもそれで下がったのはスプレッドであって、国債利回りは上昇したんですよね。


○時間軸とか資産買入の効果に関して

でまあその説明に関しては相変わらず資産買入の説明がロジックが怪しげですなあというのはあるのですが、その効果に関するコーン副議長の説明が中々。

まずは短期金利引き下げと時間軸に関して本文12ページより。

『Central banks have lots of experience guiding the economy by adjusting short-term policy rates and influencing expectations about future policy rates, and the underlying theory and practice behind those actions are well understood.』

さよざますな。

『The reduction of the policy interest rate to close to zero led to a sharp decline in the cost of funds in money markets--especially when combined with the creation of emergency liquidity facilities and the establishment of liquidity swaps with foreign central banks that greatly narrowed spreads in short-term funding markets.』

金利が下がるとスプレッド縮小という話に関しては先般日銀から実証研究のペーパーが出ていましたが、BISからもこの前そんな実証研究のペーパーが出てまして、まあ信用スプレッドがどうのこうのというのはちょうどネタとしてタイムリーなんでしょうな。余談ですけど。

『Event studies at the time of the release of the March 2009 FOMC statement (when the “extended period” language was first introduced) indicate that the expected path of policy rates moved down substantially. Market participants reportedly interpreted the characterization of the federal funds rate as likely to remain low for “an extended period” as stronger than the “for some time” language included in the previous statement.』

なるほど。で、一方で資産買入に関する効果に関してはまあ当たり前ですが、従来そんなに例がある訳ではないので良く知られていないと。

『By contrast, the economic effects of purchasing large volumes of longer-term assets, and the accompanying expansion of the reserve base in the banking system, are much less well understood.』

で、買入に関するFRBのロジックに関してはこの前ご紹介した講演と重なりますが、大事な所なので今回も引用(^^)。

『The theory behind the Federal Reserve’s actions was fairly clear: Arbitrage between short- and long-term markets is not perfect even when markets are functioning smoothly, and arbitrage is especially impaired during panics when investors are putting an unusually large premium on the liquidity and safety of short-term instruments. In these circumstances, purchasing longer-term assets (and thus taking interest rate risk from the market) pushes up the prices of the securities, thereby lowering their yields.』

で、コーン副議長は「FRBの考えはクリアです」と言っているのですが、ここでの説明は「市場機能が働いて、マーケットの裁定機能が働けば、短期金利を引き下げた事による波及効果が経済全体に影響する」というロジックだと思うのですよね。「だから買入の時に『金利を下げる』というような言い方をするんだ」と言ってしまえば、そらまあそうなのですけれども、一方でマーケットの機能不全が伝統的金融政策(=短期金利の引き下げ)の政策効果を阻害するから資産買入を行うというのであれば、当時市場機能に不全状態というようなものは全く無かった国債市場における買入を実施したのは何だったんでしょうか、という話になりますわな。

#その点で言えば欧州中銀の国債買入は一部市場機能不全の国債市場があったので「量的緩和じゃないですよフフン」というのはまあロジックは通っているにはいる

で、その疑問に対する説明は残念な事に華麗にスルーされているのはFRBの中のエライ人達の仕様でありまして、コーン副議長の今回の講演でも説明は無いのでございました。


で、買入そのものが市場に与える効果として、買入のフローが重要なのか、買入を行った累積としてのストックが重要なのかという考察に関しての話が続くのですが、こちらはこの前ご紹介したコーン副議長講演と同じ話なので結論だけ、本文13ページ。

『My presumption has been that the effect comes mainly from the total amount we purchase relative to the total stock of debt outstanding.』

その後は「買入によって生じた莫大な超過準備の効果」という話になりますが、こちらもまた先般の講演と同じ話をしていまして、リザーブの拡大はあくまでも買入の副産物であって超過リザーブ自体が単独で効果をもたらす訳ではないという話をして、まあこれもこの前引用した事と同じですが、また引用しておきましょ(^^)。

『This view, however, is not consistent with the simple models in many textbooks or the monetarist tradition in monetary policy, which emphasizes a line of causation from reserves to the money supply to economic activity and inflation.』

『According to these theories, extra reserves should induce banks to diversify into additional lending and purchases of securities, reducing the cost of borrowing for households and businesses, and so should spark an increase in the money supply and spending. To date, this channel does not seem to have been effective: Interest rates on bank loans relative to the usual benchmarks remain elevated, the quantity of bank loans is still falling, and money supply growth has been subdued. Banks’ behavior appears more consistent with the standard Keynesian model of the liquidity trap, in which demand for reserves becomes perfectly elastic when short-term interest rates approach zero. 』

まあモロにこの前ご紹介したのと同じ話ですけどにゃ(^^)。

あとまとめ部分があるのですが、時間と量の関係で後回しだす(汗)。

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2010/05/17

ということでコーン副議長の講演ですが。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100513a.pdf

PDF版で本文が19ページになる結構長いモノですが、先般ご紹介した講演と内容的には共通の部分もあるのでその辺りに関しては引用やら拙訳やらはスルーの方向で(^^)。

○FRBは他の中銀以上に新しい施策を実施したのですがその背景は・・・・

冒頭の部分で「金融危機の規模とその悪影響が大きく、FRBは色々とチャレンジングな事をしました」という話をしているのですが、その中(PDF版の本文1ページ、PDFファイルでは2ページ目になります、以下同様)にこんな話が。

『Many central banks made substantial changes to traditional policy tools as the crisis unfolded. But the epicenter of the financial shock was in U.S. mortgage markets, with severe effects on many of our financial institutions, and our financial markets had perhaps evolved more than many others. As a consequence, no central bank innovated more dramatically than the Federal Reserve.』

FRBが最もドラマティックに新しい施策をしたということですがその次に・・・

『We traditionally have provided backup liquidity to sound depository institutions. But in the crisis, to support financial markets, we had to provide liquidity to nonbank financial institutions as well. Just as we were forced to adapt and innovate in meeting our liquidity provision responsibilities, we also needed to adapt and innovate in the conduct of monetary policy.』

ということで、従来FRBは通常の資金供給やらディスカウントウィンドウのような流動性供給を預金金融機関に対して行っていたというのがミソでございまして、その後の流動性供給プログラムの説明をしている本文3ページにこのような説明がございましたです、はい。

『At the Federal Reserve, we had to adapt somewhat more than most, partly because the scope of our activities prior to the crisis was fairly narrow--particularly relative to the expanding scope of intermediation outside the banking sector--and partly because the effect of the crisis was heaviest on dollar funding markets.』

ということで、FRBは元々流動性供給の対象が狭かったので、それに対して色々と供給措置を取らなければいけなかったという話をしている訳でありまして、その点で言えば日本の「共通担保資金供給」というのは最強ツールというか超便利ツールというか、まあそういう物だと思うのですが、地味なだけになかなか一般的(というか短期金融市場以外の市場関係者も含めて)に評価されませんですなあとか思うのでありました(^^;


○これは新しい理由づけ

またまた本文1ページに戻りまして、ここを見て「これは新しい」と思った部分を引用するのだ。

『Very early in the crisis, it became evident that lowering short-term policy rates alone would not be sufficient to counter the adverse shock to the U.S. economy and financial system. We needed to go further--much further, in fact--to ease financial conditions and thus encourage spending and support employment.』

短期金利を下げただけでは不十分なので色々な非伝統的政策を実施しましたという話なのですが、その次が「ほほー」という感じで。

『We took steps to reinforce public understanding of our inflation objective to prevent the development of deflationary expectations; we provided guidance on the possible future course of our policy interest rate; and we purchased large amounts of longer-term securities, and in the process created unprecedented volumes of bank reserves.』

一般の皆様のデフレ期待の拡大を防ぐために私たちの物価に対する目標に対する理解を深めてもらうステップを取ったというのは初見の説明のような気がする。

ただ、この後での話ではインフレ期待がどうのこうのという話はあまり無かったりするのでして、まあ定量的にどうのこうのというよりは「一般の不安心理を鎮静化させる」という意味なのではないかなあと勝手に想像するのでありました。


で、前振り部分の最後(本文2ページ目)はこのように締めています。

『My discussion today will focus on innovations in both our role as liquidity provider and in our monetary policy tools: their motivation, their effectiveness, and their lessons for the future.』

ワクワクテカテカして読むべしという所ですが、どのような背景で実施したのかという話に関しては先日ご紹介したコーン副議長の講演をもう少し丁寧に説明した感じになっていますので、基本的には(面倒なので)その辺りはスルーしますし、まあ市場の中の人的には「はあはあそうですか」というような説明のような気がします。金融政策ネタが面白いという変人的には論点整理として詳しいので超お勧め。


○金融危機の教訓のうち動的な面は中々認識されないんですねという雑感

『The Federal Reserve’s Liquidity Tools』の部分ですけれども、先日ご紹介した講演と同じく、資産買入以外の各種流動性供与に関しての背景とかの説明でして、まあいつもの話が多いので基本的にスルーなのですが、この辺を読んでいてあたくしが勝手に思った件がありましてですね。

本文4ページから。

『Why couldn't the Federal Reserve maintain its routine lending practices and rely on lending to commercial banks, which in turn lend to nonbank firms? The reason is that financial markets have evolved substantially in recent decades--and, in retrospect, by more than we had recognized prior to the crisis. The task of intermediating between investors and borrowers has shifted over time from banks--which take deposits and make loans--to securities markets--where borrowers and savers meet more directly, albeit with the assistance of investment banks that help borrowers issue securities and then make markets in those securities. An important aspect of the shift has been the growth of securitization, in which loans that might in the past have remained on the books of banks are instead converted into securities and sold to investors in global capital markets.』

FRBは危機が来る前には(さっきも引用したように)預金金融機関限定の流動性供与ツールしかなかったが、証券化市場の発展によって金融市場の仲介機能が証券市場にシフトしていて、金融仲介機能の維持という意味では預金金融機関に限定していたFRBの流動性供与ツールが不十分だったというよいうな話ですわな。

でですな、あたくしこの辺読んでてふと思ったんですが、リーマンをこかした時も現在のユーロ危機状態の時も思うのですけど、日本の1997年における金融危機の教訓のうち、マーケット(インターバンクと債券取引市場)の流動性消滅が如何に大きな問題かという点については、実際に食らってみないと判らないという面がやっぱりあるのかなあと思うのですよ。つまり、マクロ的な不良債権問題の影響とか、資産デフレの問題とかって随分と研究されている(計量データだってありますし)から「金融政策は危機において一気に緩和」みたいな教訓は広く認識されていると思うのですが、実際問題として97年の金融危機で債券市場で無担保コール取引のデフォルトから一気に「フライトトゥーリクイディティ(あるいはキャッシュ)」みたいな動きが起きて資金繰りが詰まる連鎖が起きたり、流動性の低い債券が大変な事になったり、カウンターパーティーリスク意識が超高まったりとかってのが起きた(時には何か債券ディーラーやってた気がする年寄りですが何か?)のが非常に大きな問題だったと思うのですけど、今般の欧米の動きをみていますと、どうもそっちの方への考察が不十分だったのではないかと思うんですな。

いやまあ本論とは違いますけれども、何となくそんな事を思った次第であります。


○流動性供給と資本の供給は別の主体が実施すべきと

本文6ページから。

『Importantly, lending against good collateral to solvent institutions supplies liquidity, not capital, to the financial system. To be sure, limiting a panic mitigates the erosion of asset prices and hence capital, but central banks are not the appropriate authorities to supply capital directly; if government capital is necessary to promote financial stability, then that is a fiscal function.』

流動性供給は中央銀行マターで資本供給は政府マターということですが、同じことを白川総裁あたりが言うと思いっきり「庭先論」扱いされて批判されるのがカワイソス。

『This division of responsibilities presented challenges in the crisis. The securitization markets were impaired by both a lack of liquid funding and by concerns about the value of the underlying loans, and broad-based concerns about the integrity of the securitization process. To restart these markets, the Federal Reserve worked with the Treasury in establishing the Term Asset-Backed Securities Loan Facility (TALF): The Federal Reserve supplied the liquid funding, while the Treasury assumed the credit risk. The issue of the appropriate role of the central bank and fiscal authority was present in other contexts as well.』

ということで、FRBの流動性供給の施策に関しては(まあご案内の通りでしょうが)TALFを始めとしたプログラム共通で、「流動性はFRB、クレジットリスクは連邦財務省」という分担をしているという事ですが・・・・

『We were well aware that we were possibly assuming a risk of loss when we lent to stabilize the systemically important firms of Bear Stearns and American International Group (AIG). Unfortunately, at the time, alternative mechanisms were not available and we lent with the explicit support of the Secretary of the Treasury, including a letter from him acknowledging the risks.』

ベアスターンズとAIGに対する融資に関しては毀損のリスクがありますが、これは当時の状況で止むをえなかったという話で、今後の状況を注視しますという話ですな。まあこの辺りコーン副議長は中央銀行としての矩を結構意識していると思います。


○流動性供給プログラムの将来に関して

本文8ページ目から『Lessons for Handling Future Liquidity Disruptions』という話になるのですが、ここに関しては先日ご紹介した講演と概ね同じ話をしています。

で、勝手にあたくしが解釈しますと(本文は長くなるので引用しない)、

(1)米国の金融システムは証券関連市場に大きく依存する部分があり、FRBは銀行だけではなく、より幅広い主体に向けた「健全な対象に向けた優良担保を確保した流動性供与手段」を確保すべきである

(2)広い範囲の市場参加主体を対象にした流動性供与プログラムの常設化は、参加者に対して「流動性プログラムをあてにした安易なリスク管理」を促すリスクがあるので、対象者の流動性管理やリスク管理体制の監視が必要である

(3)金融システム安定などの理由で参加者を救済する判断は中央銀行ではなく政府が行うべきである

(4)異例の政策を行う場合には特に一般公衆向けの説明が重要である

(5)流動性供給プログラムの設計においてはいわゆる「stigma問題」への配慮を行う事が重要である

という所です。で、金融政策やら資産買入やらの話と言うメインイベントに来る前に例によって例の如く時間切れになってしまったのはあたくしの仕様です。どうもすいませんすいません。

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2010/05/14

お題「相場が海外次第にも程があるので無担保コールに関する雑談で」

何か昨日は東京の夕方6時ごろにいきなりユーロが下がったのでナンジャラホイとか思っていたのですがorz

○無担保コールに関して雑談

今回の積み期間(4月16日から今日(正確には明日)まで)の無担保コール翌日物金利ちゃんでございますが、預金ファシリティレートであります所の0.10%を恒常的に割った状態で推移しているのはまあここもとの仕様なのですが、四捨五入して0.09%という状態が延々と続いていまして、加重平均金利が0.095%以上になったのが4月16日(0.095%)と20日(0.096%)と30日(0.096%)の3営業日だけ(ただし16日は週末で30日は5連休前なので日数に引き直すとちょっと多目にはなる)という状況。おまけに今週に入ってからはギリシャ問題の火消しの為に即日オペをどどーんと実施して準備預金の進捗をおさえなかったことでもありますので、加重平均金利は0.08%台に低下して推移という誠にお洒落な展開になっております。

ということで、まあ普通に0.09%が定着というのがここもとの無担保コールでございまして、預金ファシリティの金利を下回るという楽しい状態になっているのですが、今回の積み期間に関してはちょうど都合良く「ギリシャ問題に対応して大量供給したからねえ」という言い訳もできるのですが(実際はその前から0.09%定着だったのですけどね^^)、こ〜延々と0.09%となってしまうと参加者の目線が変わってしまうのではないかと思う次第でして、次の積み期間も貫禄の0.09%とかになるんジャマイカと思料。


この背景ってどうなのというと、まあ人様の懐具合は良く存じませんので勝手な想像モードになりますけれども、やはり新型オペの額が大きくなっているのが効いているんじゃないかなあと思います。即ち、以前から粘着質状態になって申し上げておりますように、3か月オペの額が増えてきた分だけ足元のオペの打ち余地が減り、「ターム物金利を抑制する」という政策方針がある(そもそも新型オペの導入はそういうお題目)関係上GCレートの上昇を放置する訳にも行かない(GCレートがホイホイ上昇すると債券ディーラーが低い金利の短期国債を保有するのがしんどくなるので、結果として短期国債のレートが上昇しやすくなる)ですから、供給の方はきっちりやる事になり、コールの方が金余ると。

まあ何ですな、大昔(90年代)のようにターム物金利と言えばCD3か月とかターム物のコール取引みたいに、銀行のファンディング中心の無担保市場だった時代であれば、無担保コール市場とターム物市場が密接にリンクしていた訳ですが、現在は短期国債(政府短期証券)の市中公募もそうですが、そもそもの短期国債の発行量がアホのように増えて、ターム物取引での運用として3か月TBの方が安心安全な上に一発でロットも捌けるという超便利な商品になってしまいましたので、ターム物金利と言えば3か月短期国債金利ですな、という事になった訳ですよ(ターム物はTIBORではないかとか銀行さんから言われそうですが異論は認めようか審議中^^)。電子化になってより使い勝手が良くなったCPのレートも投資家の目線って短国対比でどうのこうのというのが普通だと思いますしね。

つまりですな、金融政策の波及効果とゆー意味では当然ながらターム物の金利が重要になるのですけど、そのターム物金利が銀行中心の無担保取引市場の金利じゃなくて、債券市場の金利の方がベンチマーク状態になっている訳でして、そ〜なりますと無担保コール市場でそんなに資金を取る訳にもいかない債券ディーラー(証券会社は商業銀行と違って預金を受け入れてないから無担保市場での資金取引のクレジットラインが銀行よりも少ない)の資金繰りレートであるGCレポ市場のレートがポイントになるという事で、銀行のファンディング主体の無担保コール市場の金利と必ずしも1対1で対応する訳ではないというのがムツカシヤという事でござんすな。

まあコール市場とレポ市場で市場間裁定するから対応はするのですけれども、かならずしもその裁定が効く訳ではないですし、資金需給のブレも国債発行要因でのブレと財政資金の受け払い要因でのブレでは証券と銀行のどっちに影響するのかとかも違ってくる訳でして、まあほったらかしておくと短期金融市場全体での資金需給は余剰状態になっているけれども、個別業態(あるいは個別参加者)ごとの資金偏在があってGC市場では資金がタイトというような事は起きえる訳ですな。

で、そういう時は本来はツイストオペを実施して、資金余剰の参加者から資金を吸い上げる一方で資金不足の参加者には資金を供給するというようなオペレーションを実施すれば、同じ資金需給の状態でも資金偏在を均す事によってコール市場とレポ市場間の価格形成の関連性を強めることができるのですけれども、うっかり吸収オペを実施するとまたぞろ「金融引き締め」とか言うアホウが多い(いやさすがに国内の金利市場系の人間でそう言うのはリアルのアホウだと思いますが、為替市場様などや経済新聞様などがギャーギャー言うのは間違いないに1万ドラクマ)ので、吸収オペがやり難いというのが困りものという所だと思われます。

特に、ここもと期間の長いオペ(新型オペ)の資金供給に対するシェアが上がって来ている事もありまして、足元の短い資金出入りに対応するオペが減ってしまい、GC市場の金利を跳ねさせないようにする為にはそれなりに短いオペも実施して当預残を多目にしておかないと(ツイストを実施できないので)、となりますと、無担保コール翌日物金利とGCレポ金利のスプレッドが微妙に開いてくるんでしょうな。で、ターム物金利を上げる訳にも行かないので無担保コールが下がっちゃうと。


とまあそうなってきますと、無担保コール金利を精密誘導していた過去の流れと微妙に話が違ってきますなあという事になる訳でして、うっかり新型オペをこれ以上拡大ということになりますと、更に無担保コール金利とGCレポ金利のスプレッドが開きやすくなり、結果としてコールのディレクティブ0.10%が維持しにくくなりますなあと思うのですよ。いやまあもちろん金融政策の波及効果を考えたら、ターム物金利を跳ねさせる訳にいかないですから、その結果としてコールだけ見ると低め誘導ちっくになってくるという事なのですが、従来の精密誘導状態からすると黙ってそういう流れになるのはちと微妙な気がするんですけどどうでしょう。

米国みたいにFF金利アンコントローラブル上等モードでやっている国ですと(ついにヤケクソで0%〜0.25%というような誘導目標になってしまいましたが^^)元々市場がそれを前提に価格形成をしているのでそれはそれで市場のお作法としてアリなのですが、日本の場合は精密誘導が仕様でしたから話がヤヤコシヤではないかと存じます次第でありまする。

まあこのまま今月末くらいまでこの調子で推移するとどこぞの経済新聞あたりが「コール金利の低下を容認」とか書きだすと思うので先にネタにしてみたでござるの巻でございましたとさ。うだうだと話がウシの涎のような書き方でどうもすいませんでした。

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2010/05/13

お題「市場雑談と虫干しネタで勘弁」

ああでもないこうでもないと言いながらも結局欧州ネタ一発で相場の風景が変わってしまうのであまり悩まないことにする(^^)。

#ところで、ハングパーラメント打開案として、ヤケクソでスコットランドを独立させればどうでしょうか(嘘)
ご参考→http://news.bbc.co.uk/2/shared/election2010/results/


○3か月TB入札は0.11%前半

ということで昨日は3か月TBの入札があったのですが、入札前に0.114%を近辺の水準で業者間をやっていたようなのですが、落札結果は平均0.1139%で足切りが0.1143%と言うことで、こちとらまあ0.11%台前半だったら覚悟の上だったのでこんなもんかなあとは思いましたが、やはりまあ冷静に考えると強めの入札のようで。

昨年12月の固定金利オペの導入が決定された以降の3か月TB入札はまあ大体0.12%近辺となっていましたが、0.11%台前半というのは今年の1月半ば辺りにもありました。この時は年末越えのオペがドバドバと出た余波で足元のGCファンディングがやたら軽くなって、GCレートが0.105%(まあ下限のようなもの)で安定するわCPレートはAA格の発行体さんで3か月が0.11%を割るわという物凄い素敵な状態になっていました。

ちなみに1月27日の3か月TBの落札結果が平均0.1112%の足切り0.1125%というオソロシスな強さだったですので、昨日の入札はそれ以来の強さという感じですが、今回の場合はそもそもの足元GC水準が当時のようなベタベタの0.105%水準という訳でもないので、印象としてはやはり強いなあという感じですな。

ま、海外の状況が落ち着いてくればオペをそうドバドバ出す必要も無いので、固定金利オペの長いのが多い関係上、ショートタームのオペの入れ余地が減るということもありますから、GCレートがそうベタベタと0.105%とかに張り付くことも無い(今回の積み期間は低かろうと思ってたのだが昨日は0.11%水準っすかね)とゆー所でござんすので、まあそんなこんなを勘案すると昨日の入札は中々強いですが、これが0.11%を切って更に強いという話になって来ますと「短国のモノ化」という奴ですのでその背景を良く考える必要がございますねという所っすな。


○とりあえず一発実施ですかそうですか

早速ドル資金供給オペの実施日程が。
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1005b.pdf

とりあえず一本実施してその応札状況を見ながら2回目以降をどの程度の頻度でやるかを決めるという感じでしょうか。まあ根本的には東京市場でドル資金の流動性が枯渇している訳でもなく、欧州市場でのドル資金ファンディングの為にわざわざ東京市場でドル資金を取らないと行けないというようなことも無い(取りたきゃECBで取ればよい)でしょうからそんなに札が集まるとは想像しておりませんけど。


○例によって虫干しネタ

1か月前の今更ネタですが4月14日のバーナンキ議会証言
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20100414a.htm

お題は「Economic outlook」ということで、まあそんなに長い物ではないのですが、この時の証言の流れを小見出しで追うと、「The Economic Outlook」→「Financial Market Developments」→「Fiscal Policy」という流れになっていまして、金融政策の話よりも財政政策に関する話をしているのがチャーミングなのでその辺りから。

『In addition to the near-term challenge of fostering improved economic performance and stronger labor markets, we as a nation face the difficult but essential task of achieving longer-term sustainability of the nation's fiscal position.』

経済のパフォーマンスを改善させ、労働市場を改善させる為には、長期的な財政の維持可能性(サステイナビリティ)を確保するという困難だが本質的な問題に我々は直面しています。という事で、その次には現状の具体的数値です。

『The federal budget deficit is on track this year to be nearly as wide as the $1.4 trillion gap recorded in fiscal year 2009. To an important extent, these extremely large deficits are the result of the effects of the weak economy on revenues and outlays, along with the necessary actions that were taken to counter the recession and restore financial stability. 』

現在の財政赤字に関しては経済のリセッション回避と金融安定化の為に実施した支出増加と、経済の落ち込みによる税収の現象によるものですけれども・・・・

『But an important part of the deficit appears to be structural; that is, it is expected to remain even after economic and financial conditions have returned to normal. 』

ということで、構造的な財政赤字問題があって、経済金融情勢が通常レベルに戻ったとしても赤字問題があるという点について以下で説明しています。

『In particular, the Administration and the Congressional Budget Office (CBO) project that the deficit will recede somewhat over the next two years as the temporary stimulus measures wind down and as economic recovery leads to higher revenues. Thereafter, however, under the Administration's budget, the annual deficit is expected to remain high through 2020, in the neighborhood of 4 to 5 percent of GDP.』

緊急財政対策終了と共に赤字は減りという試算になるのですが、向こう10年は年次ベースの財政赤字がまだまだ高い状態が続くでしょうとな。

『Deficits at that level would lead the ratio of federal debt held by the public to the GDP, already expected to be greater than 70 percent at the end of fiscal 2012, to rise considerably further.』

ほほう12年度で政府債務がGDP比70%とな。

『The CBO baseline projection assumes that most discretionary spending grows more slowly than nominal GDP, that no expiring tax cuts are extended, and that current provisions that provide most taxpayers relief from the alternative minimum tax are not further extended. Under an alternative scenario that drops those assumptions, the deficit at the end of 2020 would be 9 percent of GDP and the federal debt would balloon to more than 100 percent of GDP.』

で、各種の減税だのなんちゃらクーポンみたいのなのを継続した場合には向こう10年間で財政赤字がGDPの9%という状態になるという話っすな。

ということでこの議会証言のトリの部分になるのですが。

『Although sizable deficits are unavoidable in the near term, maintaining the confidence of the public and financial markets requires that policymakers move decisively to set the federal budget on a trajectory toward sustainable fiscal balance.』

目先に関してはかなり大きな財政赤字は避けがたいものの、金融市場や国民の信頼を維持するためには連邦予算の財政維持可能性を確保するために政策当局が動くというのは重要だという話のようで。

『A credible plan for fiscal sustainability could yield substantial near-term benefits in terms of lower long-term interest rates and increased consumer and business confidence.』

まあ当然のことですけれども、ここに出ている「A credible plan」という部分はわが国の状況を眺めると実に身につまされる話ではございます(−−)。いやまあバーナンキ議長は別に嫌味言ってる訳ではないですけれども(^^)。

『Timely attention to these issues is important, not only for maintaining credibility, but because budgetary changes are less likely to create hardship or dislocations when the individuals affected are given adequate time to plan and adjust.』

ということで、「財政支出構造に手を付けるということは、それにとって影響される人々に痛みや混乱を与えるものなので、早くに着手すればそれらの人々にとっても対処の為の時間ができる」というような話をしているのが更に現在の日本の状況を見ると身につまされるにも程があるのでございます(−_−メ)。

『In other words, addressing the country's fiscal problems will require difficult choices, but postponing them will only make them more difficult.』

いやもう更に耳が痛いです。まあこの時点でもギリシャ問題はギリシャ国内でああでもないこうでもないとゴネゴネモードになっていたと思う(ゲバ棒モードでは無かったとは思いますが)ので、そーゆー意味では良い(というか良くない)見本もございますなという所だったのかもしれませんね。


なお、経済見通しに関してはいつものように労働市場問題に詳しく言及していまして、更に(これは昨今のFOMC議事要旨や先般のイエレン次期副議長講演などでも何度も言及されていますが)長期間の離職者が増えることによる労働者のスキルの低下から来る労働生産性低下懸念とかを示しています。


金融市場に関しては金融監督が経済活動の足を引っ張らないようにというようなあたりが「ほほー」と思いましたが、その金融市場に関する部分では「またまたご冗談を」というのがあったので引用するだよ。

『Last spring, the Federal Reserve and other banking regulators evaluated the nation's largest bank holding companies under the Supervisory Capital Assessment Program, popularly known as the stress test, to ensure that they would have sufficient capital to remain viable and to lend to creditworthy borrowers even in a worse-than-expected economic scenario.』

えーっと、あのストレステストの前提のマクロ経済環境が「worse-than-expected economic scenario」とはこれまたご冗談を(−−;

『The release of the stress test results significantly increased market confidence in the banking system. Greater investor confidence in turn allowed the banks to raise substantial amounts of new equity capital and, in many cases, to repay government capital.』

正直言って、あのストレステストを例えば90年代後半の日本で日本の政策当局が実施したら飴公どもは「インチキお手盛りストレステスト」とか騒いで更に状況を悪化させたでしょとか思うに、何だかなあ感は思いっきりするのですが、まあ大狸政治家へと成長されたバーナンキ議長の狸ぶりを示す部分だなあと思ったので、狸鑑賞の一環として引用しただけでございます。政策インプリケーションは無い(^^)。

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2010/05/12

○今日の3か月TB入札にちょっと注目(メモ)

昨日は6か月TBの入札があったのですが、堂々の0.12%割れとなりました。連休前は3か月TBが0.12%辺りにいたので、まあ足元で強くなっていますなあという所なのですが、何でも昨日は残存1か月程度のTBでは業者間で0.10%の出合いもあったようで、ここに来て短国が妙に強くなっています。

もともと業者の在庫が軽めの所に来て、何か知らんが買い意欲が高まってという所ではあるのですが、日銀当座預金に放り込んでおけば0.10%で回るのですから、まあそういうのと関係ない買いが無いと中々0.10%までレートは下がらないと思うのでございまして、3か月TB入札のレートがどの辺で収まるのかはちょっと気になる所でございます。まあ残存1か月とかですと業者の在庫がスカスカの時は見事に無かったりするので0.10%とかがいきなり出合うというのはアリエールなのですが、5兆4千億(今月の入札分から何と減額ロール)の入札がどどーんと出てくる中でレート形成がどうなるのか、既発並みに強いのならほほーという感じでございます。

と、判ったような判らんような書き方で誠に恐縮至極でございます(汗)。

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2010/05/11

お題「ECBの信用緩和キタコレ」

ということで大幅反発ですが、それだけ先週金曜のメルトダウンが凄かったと言う事だったのですな。

で、まずはそこに至るまでのメモからあたくしの備忘も兼ねて。

#なので何か勘違いがあったら是非ご教示頂きたく


○先週末は欧州のドル短期調達がエライコッチャみたいだったのですかね

いやね、一旦片付いてから申し上げるのも何なのですが、どうも金曜の2兆円即日臨時供給を見た時に「これは何としたことぞ」と嫌〜な予感がしてましたのですが、やはり金曜の欧州のドル調達がメルトダウンに近い状況で、まあ日本の円調達がどうのこうのという話では無かったので日本の円金利市場的にオペが必要だったかは兎も角、「まあ落ち着け」というのと「各国で協調しないとこりゃやばいですよ!」という意味もあったのではないかというオペでございましたなというのが結果から後付けすれば言えたっちゅう所なのですかな。

だから昨日はロールした筈の即日オペをご丁寧にもう一発打つという動きになったのでしょうなあ、と思うのですがどうっすかね。

ということで今更先週のニュースですがやはりこうだったのねとゆーところで、まあだからこそ昨日は欧州が寄る前に色々な声明がドバドバと出たと言う所でしょうな。
http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK040655820100507
〔焦点〕ドル不足が深刻化、欧州財政危機が金融危機に転化する兆候(先週金曜時点)

ということでスワップ協定復活とECBの渾身の欧州国債買入攻撃(ただしマネーの供給ではなく信用緩和ですので念の為)となったのですが、そもそも先週の木曜時点では・・・・・・


○先週木曜には国債買う話は華麗にスルーだったのでして

http://www.ecb.int/press/pressconf/2010/html/is100506.en.html#qa

先週木曜のECB定例理事会後のトリシェ総裁の会見から(上の方に行くと決定会合の内容説明部分になります)。

『Question: Mr Trichet, I have three questions for you.

The first one is: is the purchase of government bonds an option to fight the consequences of Greece’s fiscal crisis on financial markets? Did you discuss this option today?(2番目以下割愛)』

『Trichet: On your first question, we did not discuss this option. (2番目以下割愛)』

その他延々と似たような質疑応答があって国債買入の議論はしていませんのオンパレードだったのですがとりあえず話が長くなるので割愛。

いやまあこの辺りが市場の失望を呼んで急速にエライコッチャになったということのようですが、何せこちらは国内ドメスティックな人間でございますので、どうもこの辺りに関しては直接欧州でドルファンディングをやっている訳でも無いのでどうにもこうにもという感じではございますが、まあ過去何度か調達市場が急にシュリンクしたのでというのを体験した(信用不安がどうしたこうしたというのは大きいので3回位っすかねえあっしの場合)身としては何か金曜の東京も気持ち悪かったですわなと。

で、それが欧州時間で案の定出てしまい、週末に何とかしないとおそロシアな事になってしまうのでこらどうにかせねばという話だったという所ですかな。

まあどっからどう見てもトリシェ先生初動で市場の暴走リスクがここまであるとは思って無かったのか、そらまあ国債買入は最終兵器にも程があるから使いたくないというのがあったのか、まあどうなのか知らんっすけど、国債買入の議論はしてませんよと言ったのが木曜で、月曜の朝には君子豹変して対応というのはまあ取り敢えず物凄いにも程がある豹変ですが、豹変しないよりは良い事なので良かったねという所で。

#なのでECBの対応は迅速は迅速でしたが、その前に地雷を盛大に踏んだから火消しに走らないと行けなかったというマッチポンプな面もありまして、リーマン破綻後の対応が迅速と評価する前にリーマンを突然コカした措置がうんこだったというのと流れは似ている(いやもちろん現実にリーマンこかして大混乱を呼んだのに比べれば100億倍マシですけど)と思われますがどうでしょう


○各国中銀でスワップラインの復活と日本は早速ドル供給オペの実施

まあそんな事でスワップライン復活(先週金曜の時点で「どうせ欧州でまたまたドル調達の問題って話になるんですからスワップライン復活でしょ」というような観測は言われてましたけど)となったので日銀のリリースを。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005b.pdf
中央銀行の協調対応策について

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005d.pdf
米ドル資金供給体制の整備について

『日本銀行は、本日公表した「中央銀行の協調対応策について」に基づき、臨時の政策委員会・金融政策決定会合を開催し、米国連邦準備制度との間で米ドルスワップ取極めを再締結すること、および米ドル資金供給オペレーションの実施体制を改めて整備すること、を決定した。日本銀行としては、今後とも、適切な金融市場調節の実施を通じて、金融市場の安定確保に努めていく方針である。』

まあしかしこれに関しては別に使わない状態でも何かの為に使えるようなセーフティーネットというか保険の為にスワップラインを残しておいても良いんじゃないかなあとか金融危機を何度も見せられた日本人的には思うのですが、本件に関しては米欧(なのか米国様なのか知らんが)の方が出口政策による危機対応終了というのに拘っておられたようで。日本の場合は何故か知らんがこの手の決定をするのに(引用文にもありますように)臨時でMPCを開かないと行けない(他の中銀はMPCマターでは無いみたい)のでヤヤコシヤ。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1005c.pdf
金融政策決定会合の臨時招集について

このヘッドラインが出た瞬間に追加緩和と勘違いした人が債券先物に買いを入れて先物が20銭近く(だったかな?)持ちあがったのは実に香ばしい反応でした(^^)。


んでもって日本ではドル資金供給の復活と。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1005a.pdf
「米ドル資金供給オペレーション基本要領」の制定等について

基本的には東京でのドル調達が欧州のようにエライコッチャになってという話ではなかったですし、そもそも国内勢はサブプラだのリーマンショックだのという流れの中で外貨資産も相応に圧縮しているんじゃねえのという所ですので、まあそんなに応札が爆発的にやって来るという話にはならんのでしょうが、そうは言ってもご時世がご時世ですので東京にも安全網を張っておかないとっつー所でしょうな。


http://jp.reuters.com/article/jpeconomy/idJPJAPAN-15216420100510?sp=true
今回の日銀措置、市場の困難などの封じ込め期待=日銀副総裁

『そのうえで、日銀の今回の措置については「米欧中央銀行との協調行動の一環として、国際金融市場の状況の改善に資する。わが国金融市場の安定確保に万全を期するもの」として「わが国金融機関のドル資金繰り支援を意図したものではない」と説明した。』

まあそうでしょうね。


○欧州の国債買入ですが・・・・・

日本時間の月曜午前中(なので欧州だと日付は月曜の早朝というか)に出た順で。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510.en.html
10 May 2010 - ECB decides on measures to address severe tensions in financial markets

『The Governing Council of the European Central Bank (ECB) decided on several measures to address the severe tensions in certain market segments which are hampering the monetary policy transmission mechanism and thereby the effective conduct of monetary policy oriented towards price stability in the medium term. The measures will not affect the stance of monetary policy.』

ということで、各種措置は金融緩和スタンスに影響を与えないとわざわざ言っているので、あくまでも「市場機能の代替を中央銀行が務めます」といういわゆる信用緩和の話ですと銘打ってますな。

『In view of the current exceptional circumstances prevailing in the market, the Governing Council decided:』

『1. To conduct interventions in the euro area public and private debt securities markets (Securities Markets Programme) to ensure depth and liquidity in those market segments which are dysfunctional. The objective of this programme is to address the malfunctioning of securities markets and restore an appropriate monetary policy transmission mechanism. The scope of the interventions will be determined by the Governing Council. In making this decision we have taken note of the statement of the euro area governments that they "will take all measures needed to meet [their] fiscal targets this year and the years ahead in line with excessive deficit procedures" and of the precise additional commitments taken by some euro area governments to accelerate fiscal consolidation and ensure the sustainability of their public finances.』

つまり財政再建に向けて努力する国の国債買入を実施して市場機能の回復を図り、それらの国の市場ファイナンスを確実なものにするという話をしていると思われます。

『In order to sterilise the impact of the above interventions, specific operations will be conducted to re-absorb the liquidity injected through the Securities Markets Programme. This will ensure that the monetary policy stance will not be affected.』

ここがまたチャーミングで、国債買入で供給した流動性はその分吸収オペで吸収しますよということで、この施策は「量的緩和」ではなくて「市場機能の回復の為のオペレーションですよ」というのをわざわざ銘打ってますな。英仏海峡の向こうで「国債買入による量的緩和」(波及効果に関する検討がいつの間にかスルーされながら買入は終了しちゃいましたが)を実施していた中央銀行があるので、それとは違いますよフフンという話でもありますな。

『2. To adopt a fixed-rate tender procedure with full allotment in the regular 3-month longer-term refinancing operations (LTROs) to be allotted on 26 May and on 30 June 2010.』

『3.To conduct a 6-month LTRO with full allotment on 12 May 2010, at a rate which will be fixed at the average minimum bid rate of the main refinancing operations (MROs) over the life of this operation.』

LTROsを固定金利のフルアロットメントで出すのでその傍から結局無制限供給をするのがなおチャーミングな所であります。まあさっきの吸収する云々はあくまでも「ジョンブル野郎の量的緩和とは違うんですよ」と言いたいだけなんでしょう(^^)。

『4. To reactivate, in coordination with other central banks, the temporary liquidity swap lines with the Federal Reserve, and resume US dollar liquidity-providing operations at terms of 7 and 84 days. These operations will take the form of repurchase operations against ECB-eligible collateral and will be carried out as fixed rate tenders with full allotment. The first operation will be carried out on 11 May 2010.』

ドルスワップラインを復活させて7日物と84日物のドル資金供給オペを11日から実施しますと。

んでまあその各国中銀がドル資金供給をしますよという話のECB版は次のURLで、こちら。

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510_1.en.html
10 May 2010 - Reactivation of US dollar liquidity providing operations

http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100510_2.en.html
10 May 2010 - ECB announces details regarding the reactivation of the US dollar liquidity-providing operations


○さて今後はどうなるのやら

で、何だかにゃあと思うのはどうも買入の状況が良く判らんところで。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15222020100510
ユーロ圏の中央銀行が政府債買い入れ開始、購入規模は未定

ということで買入をしているようなのですが、このへん→http://www.bundesbank.de/index.en.phpとかこのへん→http://www.ecb.int/home/html/index.en.htmlを見ても何がどうなっているのかよく判らんのですんが、誰かどこかにリリースされているのとかご存じないっすかお願いしますお願いします。

しかし米国にしろ日本にしろ、こーゆー時には「このような方法で買入(なり新しいオペレーションなり)を行います」って実施要項と参加要項を世間一般向けにもリリースして対象先に打ち込むというのが仕様だと思うのですが、世間一般へのリリースとか無いのにさっさと実施というのは何と言う欧州的不透明さという所で、さすがはいざとなると不透明にして有耶無耶にする欧州クオリティと感心するものであります。


でまあ国債買入をするのは良いのですが、当然ながらECBなのか加盟国の中央銀行かは知らんですが、楽しい国債を抱えることになりますので、肝心の参加国の国債の発行に対するサステイナビリティーに疑問がありますよという状況が続いたら問題の先送りにしかならないですし、それどころか将来的に問題が放置されてしまうと今度はユーロシステムが通貨としてどうなのよというようなことになるんでしょうな。

つーか、安定化基金をどどーんと作るのは良いのですが、その金を加盟国が負担するったってあーたスペインとかポルトガルとかそんな金どこにあるのよという気がせんでもないですし、IMFが出すという話になった場合に何でうちらが出さにゃならんのよという意見が飴公あたりから出てきたり、英国ちゃんとかも出すという話みたいですし、ノルトライン=ヴェストファーレン州の選挙ではCDU負けちゃうし・・・・とまあ色々と冷静に考えるとここからも中々アレな話ですな。

しかし、この期に及んでこういう事を言うのはもう何だかねえと思うのだが。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15222920100510
ポルトガルを格下げの可能性、ギリシャはジャンク級も=ムーディーズ

・・・・・全く首吊りの足を引っ張ると言うか何と言うか(−−)


なお、あたくしがうだうだと書く駄文よりも毎度お馴染みの厭債害債さんのエントリーの方が参考にするのは吉かと存じます(自爆)。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201005/article_1.html

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2010/05/10

○即日資金供給実施とな

金曜のオペですが、即日オペ定例時間じゃなくてわざわざ9時5分に即日オペをオファー。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of100507.htm

資金需給的に金曜は財政の揚げがちょっと多目で何も無いと当座預金残高が15兆を切る勢いだったのですが、まあギリシャだのNY瞬間株価急落だのが無ければ積み進捗も進んでいるので従来の平常ペースだと少々当座預金残高を削ってくるのかなあという感じでしたので、今回の即日供給はまあ市場向けに「落ち着いてくんなまし」と言った所でしょう。GCが急に跳ねられても困るという所なんでしょうかね。

で、1兆5000億程度の募入となったので札割れは札割れなのですけれども、T+0で割と実需があったという事は、丁度連休絡みでショートファンディングをT+1とかT+0とかまで引っ張って(先日付が若干下げ渋っていたので手前で資金が余るまで頑張るメリットはあったのですな)いた向きもそれなりにあったというところでしょうか。

9時20分の定例時間ではなくわざわざ9時5分にやって「緊急オペ」とする所がチャーミングでして(^^)、2008年の時にはGCレートなどが上昇してロンバートに張り付いて現先レートは上昇するわCPレートは上昇するわって状態なのに妙に普通のオペばっかりしていたというのに、今回はまた逆の意味で妙に気の効くオペですな(^^)。

で、金曜のオペの更に気が効いているのは上記URLの一番下にある13時にオファーされたトムスタートの1兆2000億円のオペでございまして、これは即日オペのロールオーバーも兼ねているのですけれども、2週間物に乗り換えてショートファンディングを少し軽くさせるというのと、即日オペで多目に出した分をちゃんと維持しますよというのが伝わってくるので、これを見ると「今回の積み期間は最後に調整で当座預金を絞ってくる訳では無さそうですな」という連想になってGCも下がるというものであります。まあ実際には市場が変な動揺をしなくなったらそれなりに絞っては来ると思いますが、自然体でレートが上昇してもこういう時には変な憶測を生みかねないので、余程あほみたいにレートが下がらない限りは16兆円程度でこのまま行くのかなあとは思いますが。

まー根本の問題はユーロ圏で、ど〜せややこしい事になるのはユーロ圏のドルファンディングでしょうから、別にまあ日本でどうしたこうしたという話には直接はならないのですけれども、そうは言ってもこーゆー時ですので「緊急で2兆円供給」というのは良いアピールだったですな。ちょうど財政が下ブレして打ちやすかったのもラッキーちゃあラッキーでしたね(^^)。

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2010/05/07

お題「展望レポートから」

ダウの瞬間の謎の1000ドル下げはともかくとして、為替市場とか見事にヒャッハー状態ですなあ。いやーあっはっはorz

#本当は総裁会見の補足もしたかった(要するに「追加緩和はしとうないでおじゃる」という話です、で、その話の直後にバルカン半島方面が欧州の火薬庫の名に恥じない働きをしているのが更にチャーミングなのでございます)のですが時間と量の関係で今日はスルーですm(__)m


○冒頭に構造問題を強調した展望レポート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1004a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0910a.pdf(前回=昨年10月)

基本的見解の冒頭部分を前回と今回で比較するとだいぶトーンが違うというのが判るかと存じますので比較引用。

まずは今回分。

『わが国も含めた世界経済は、金融危機に起因する急激な落ち込みから脱出し、昨年後半以降は回復基調を辿っている。』(今回)

と回復の話をしていますが、その後は構造的な話を。

『もっとも、世界経済は、危機以前の状態に戻る過程にあるわけではない。この間、世界経済の構造に大きな変化が生じていることや、よりバランスの取れた持続的成長に向けて各国が新たな課題に直面していることも、明らかになってきている。すなわち、新興国や資源国の世界経済に占めるウエイトが大きくなるとともに、それらの国々における経済活動が、資源価格の変動やグローバルな資金の流れに大きな影響を与えるようになってきている。わが国も含め先進国では、大規模な財政支出の結果、公的債務残高が未曾有の水準にまで達している。また、金融危機の経験を踏まえて、金融の規制や監督の見直しの議論が進んでいる。』(今回)

新興国どうのこうのというのが微妙に謎なのですが、先進国での政府債務問題の話までしてますな。

『わが国においては、少子高齢化・人口減少などを背景とした国内需要の減少が見込まれる中、実質成長率や生産性を引き上げていくことが、重要な課題となっている。』(今回)

この結果謎の指示が出たということのようですが。

『以下では、世界経済およびわが国経済におけるこうした中長期的な変化や課題を念頭に置いた上で、わが国の経済・物価情勢の展望について、先行き2年程度の中心的な見通しと、リスク要因の双方を検討することとする。』(今回)

ということで、構造的には問題含みという話をしているのですが、これを読んでいてもう一つチャーミングだと思うのは、日本のデフレ状態に関する問題の話を構造部分に入れていない事ですな。まあ物価見通しが一応先行きにプラスになるからというのを入れたように、そのうち上昇しますよという話をしているのと、そもそもそこの部分を入れてしまうと「じゃあ追加緩和しろ」と言われるからという所ではないかと思いますけどね。


ではまあ前回の当該部分を引用してみます。

『わが国を含め世界経済は、昨年秋以降の金融危機がもたらしたパニック的な経済・金融活動の収縮という深刻な事態からは脱出しつつある。国際金融資本市場には改善の動きが拡がり、世界経済は持ち直している。もっとも、これまでの国際金融資本市場や世界経済の安定化は、民間部門における様々な調整の進捗に加え、各国当局による大規模な政策発動に支えられている面も大きい。』(昨年10月)

『今後の世界経済は、米欧におけるバランスシート調整の帰趨、世界経済の持ち直しに大きく貢献している新興国経済の動向などに左右される。これらに関する不確実性は、一頃に比べ低下したとはいえ、依然高い状況にある。こうした点を踏まえ、先行きの経済・物価情勢を展望するに当たっては、中心的な見通しと様々なリスク要因に十分注意を払って点検を行うことが必要である。』(昨年10月)

前回と違うのは先程申し上げた件に加えて、欧米のバランスシート調整がどうのこうのという部分が抜けています。これは今回の見通しの中で、今後の欧米でのバランスシート調整に関して「着実に進捗する」という見方をメインにおいている所が影響していると思います。

ということで、まあ構造問題を強調しているのは強調しているのですが、その内容がモロに下押し方向でのデフレとかバランスシート調整とかの部分だけでも無い所が微妙は微妙な感じはします。ただまあ前回のトーンよりも「回復していますが危機以前とは違います」というのを冒頭に入れた部分で構造問題を強調してますなあという感じでしょうか。


○循環的には回復を更に強調

で、その次の経済情勢の見通し部分。

『2009年度後半のわが国経済は持ち直しを続けた。すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりを背景に、輸出・生産は増加を続けた。また、企業収益の回復に伴い、設備投資は下げ止まりに向かった。個人消費も、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直した。この間、公共投資は減少に転じた。』(今回)

というのがレビューでして、その次は見通し。

『先行き2010年度から2011年度を展望すると、わが国経済は回復傾向を辿るとみられる。』(今回)

これが前回はこうなっていたのですな。

『先行き2009年度後半から2011年度を展望すると、わが国経済は、他の先進国と同様、世界経済の動向に引き続き大きく左右される展開を辿る可能性が高い。』(昨年10月)

どう見ても上方修正です本当にありがとうございました。

『耐久消費財に対する各種対策は、その需要刺激効果が次第に薄れていき、2010 年度中には完了すると見込まれる。もっとも、新興国・資源国の力強い成長を背景に輸出は増加を続けるほか、企業収益の回復に伴い設備投資も持ち直す可能性が高い。』(今回)

『また、企業活動が活発化するにつれて、雇用・所得環境の改善も次第に明確化していくため、個人消費や住宅投資の伸び率は高まっていくと考えられる。これらを踏まえると、2010年度のわが国の成長率は、潜在成長率を上回る水準となると見込まれ、2011年度には更に高まる見通しである。』(今回)

どう見てもダム論です本当にありがとうございました。ちなみに前回はどうなっていたかと言いますと。

『現在、わが国の景気は持ち直しつつあり、2009年度後半は、海外経済の改善と経済対策の効果を背景に、景気は持ち直していくとみられる。2010年度もこの傾向は維持されるものの、世界経済の回復のペースが緩やかなものに止まるとみられること、国内においても需要刺激策の効果が減衰する中で、雇用・賃金面の調整圧力が残存することなどから、年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースも緩やかなものとなる可能性が高い。』(昨年10月)

『その後は、米欧におけるバランスシート調整が相応に進捗するとともに、わが国においても、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられる。このため、2011年度には、わが国の成長率は、潜在成長率を明確に上回るペースまで高まる見通しである。』(昨年10月)

で、潜在成長率が実質で『0%台半ば』(この数字は前回と同じ)となっている中で実質GDPの見通しが2010年度で+1.6%〜+2.0%(前回は+1.2%〜+1.4%)となり、2011年度で+2.0%〜+2.2%(前回は+1.7%〜+2.4%)となっている(2011年度の見通しが前回より若干下がっているのは、単に2010年度の見通しを引き上げた分だけ11年度の発射台が変わっている為で、実際には10年度の見通しが0.5%ほど上方修正されているので11年度も上方修正になっていますな)という強い数字を出していまして、そ〜ゆ〜状況だと物価もそのうち上昇するでしょという見通しになりますわな。うーむ。



○項目別展開の企業部門と家計部門

項目別の話はサラサラと流しますが、まずは企業部門の今後の見通しから。

『今後、世界経済に関する企業の中長期的な成長期待が維持される中で、生産は増加基調を維持し、企業収益も回復を続けると考えられる。こうした動きに加え、後述のように金融環境が改善していくことから、設備投資も持ち直していくことが見込まれる。』(今回)

前回との比較で目が行くのは「ヘッジクロースが抜けた事」です(^^)。

『今後、在庫調整の影響が後退していくほか、内外における需要刺激策の効果が減衰するにつれ、生産の増加ペースが一時的に弱まる局面はありうるが、世界経済の緩やかな回復傾向が持続する限り、生産の増加基調は失われないものとみられる。また、グローバルな需要に関する企業の中長期的な成長期待が大きく下振れするという事態が生じない限り、生産の増加や企業収益の復調に伴い、設備投資も徐々に回復していくと見込まれる。』(昨年10月)

前回のヘッジクローズ入りまくり状態からいきなりのヘッジ解除ですよ先生。

『非製造業や中小企業については、製造業におけるコスト削減努力の継続などから、業績の改善は相対的に遅れる可能性があるものの、輸出関連製造業における業績回復の影響は、徐々に波及していくと考えられる。』(今回)

『一方、非製造業や中小企業については、製造業におけるコスト削減努力が需要の押し下げ圧力として働くほか、後述するような家計部門の厳しさを踏まえると、回復は製造業より遅れる可能性が高い。』(昨年10月)

どう見てもダム論全開です本当にありがとうございました。


で、家計部門ですが。

『雇用環境をみると、所定外労働時間が増加を続けているほか、有効求人倍率も緩やかに上昇するなど、一頃に比べ、改善の動きがみられ始めている。こうした状況のもとで、個人消費は、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。これらの対策は、2010 年度中に完了すると見込まれるため、個人消費の回復ペースは一時的にやや鈍化するとみられる。』(今回)

ふむふむ。

『もっとも、生産増加の影響は、徐々に雇用・所得環境に波及していく方向にある。また、企業収益の回復を背景に、株価も上昇してきている。今後、企業活動が活発化するにつれて、雇用の回復もさらに明確化するほか、賃金にも改善の動きが出てくるため、個人消費の自律的回復の動きも次第に現れてくるとみられる。また、雇用・所得環境の改善などを背景に、住宅投資も緩やかに回復していくと考えられる。』(今回)

いやあこちらもダム論みたいな話ですな。しかも株価上昇まで(^^)。こちらの前回はこんな話になっていましたです。

『個人消費は、各種対策の効果により耐久消費財で持ち直しの動きが続くとみられるものの、厳しい雇用・所得環境が続く中で、全体としては弱めの動きが続く可能性が高い。』(昨年10月)

『最近では、輸出・生産の増加を背景に、所定外労働時間が増加しているほか、新規求人倍率も下げ止まるなど、雇用指標の一部に変化がみられる。もっとも、労働需給の緩和基調は当面続くとみられるほか、賃金も特別給与を中心に厳しい状況が続くものと考えられる。雇用・所得環境の改善は、企業収益の回復に遅れる傾向があるため、個人消費の持続的な回復が展望できるのは、見通し期間の後半となる可能性が高い。』(昨年10月)

いや〜こちらも強いですなあ。


○ということで循環的には回復を強調するわダム論みたいな話はでるわ

ってな感じでして、企業部門と家計部門をサラサラと(といいつつ殆ど引用したのですがorz)比較してみましたが、昨年10月時点とは随分とトーンが違っていますなあというのが見えて参ります。逆に言えばこちらばかりを強調すると無茶苦茶強いという印象ばかりが目立つ次第なのですが、それを冒頭の構造問題で中和したという感じになってますなあという所ですか。

そんなに強いかねという気もするがとか思ったら5月1日の東京新聞社説が中々良い感じでしたな(^^)。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010050102000068.html
日銀リポート デフレ脱却はまだ先だ

『日銀は現状で資本と労働を過不足なく稼働した場合に実現できそうな潜在成長率を0%台半ばとみている。したがって、一〇年度は潜在成長率を上回る成長を実現し、一一年度はさらに加速するというシナリオになる。

 だが物価も成長見通しも、いささか手前みそにすぎないか。潜在成長率を低めに見積もったうえで、現実の経済を楽観視したきらいがある。そうすれば景気は過熱気味の形になるから、物価上昇という予想が出てくるのは当然だ。』(上記URLより)

・・・・・・(^^)


○ところで金融環境なんですけど

今回の展望レポートで金融環境の部分ではこのような説明がございます。

『一方、資金需要面をみると、企業収益の回復に伴いキャッシュフローが増加することに加え、これまで手許資金を潤沢に積み上げてきたこともあり、企業の外部資金に対する需要は弱い状態が続くと見込まれる。こうしたもとで、設備投資の回復が本格化するまでは、企業の資金繰りの改善と、銀行貸出やCP発行残高の減少とが、並存していく可能性が高い。』(今回展望レポートより)

・・・・・えーっと、では何で今回成長戦略を資金面から支える施策を実施する必要があるのでしょうか???????????????

#という悪態で引用大会終了ということで(汗)

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2010/05/06

お題「謎の成長戦略でぽかーんでござるの巻」

展望レポート全文と会見要旨を1日に公表したので、微妙に色々と素材があって困りますな。

○謎の指示がでました

決定会合声明文で市場がぽかーんだったのですが。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100430.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注))。無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。』

『2.本日の政策委員会・金融政策決定会合では、「経済・物価情勢の展望」に関する検討を行なった。会合では、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であるとの認識のもと、金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく方針が確認された。』

で終了すれば別に何の問題も無い予想通りの話だったのですが・・・・

『併せて、現下の日本経済の状況を踏まえると、成長基盤の強化を図ることが必要であるとの認識が確認された。こうした認識に基づき、日本銀行としても、成長基盤の強化に資する新たな取り組みを行うことが必要である、との考え方が共有された。このような議論を受けて、議長は、成長基盤強化の観点から、民間金融機関による取り組みを資金供給面から支援する方法について検討を行い、改めて報告するよう、執行部に指示した。』

・・・・・・?????

ナンジャソリャという感じですけど、「成長基盤強化」の為って全く持って意味判らん(いやまあ意味は判るが)ものでございまして、最初「何かあったっけ」と思って人と話をしていたらこんなものがあったのね。

1998年11月13日
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako01/k981113a.htm
最近の企業金融を踏まえたオペ・貸出面の措置について

1998年11月27日
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji/kako01/mok9811b.htm
企業金融支援のための臨時貸出制度基本要領

すっかり忘却の彼方ですが、これは年末と期末の金詰まり対策という面もあって、貸出を伸ばしたらその半分をバックファイナンスしますよという趣旨で、期末に掛けての時限措置としての貸出制度でございましたようです。

でですな、今回の総裁会見でもそのような話が出ていますので、まあそんな感じの物が出るのでしょうかねえ。よー知らんが。

今回の総裁会見から。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1005a.pdf

『資金供給面から支援する方法と申し上げましたが、これについては成長基盤の強化を支援するという狙いが円滑に実現できるように、民間金融機関や企業のご意見・ご要望を十分踏まえるとともに、日本銀行がこれまで実施した措置を通じて得られた経験も参考にして、検討していきたいと思っています。ちなみに、日本銀行では、これまでも、その時々の経済金融情勢や政策目的に対応して多種多様な資金供給の方法を採用してきており、この点では、日本銀行は先進国の中央銀行の中でも、最も豊富な経験とノウハウを有していると思っています。例えば、1998 年から1999 年にかけて実施した「企業金融支援のための臨時貸出制度」のような枠組みは、民間金融機関の自主的な融資努力を資金供給面から後押しするという点で、今回の検討においても参考になると考えています』(上記URLより)

はあはあそうですか。

ちなみに、あたくしがあと勝手に予想した措置としては(1)保証協会保証付の証書貸出を全部適格担保にする(もともと適格だったら勘違いです)、(2)日本政策金融公庫や日本政策投資銀行の制度融資にバックファイナンスをつける、という程度のものですが、はてさて何をやるのやら・・・・・・

ちなみに市場ちゃんの反応はと申しますと、債券市場は「ぽかーん」状態で反応の仕様もなく、金先が「これはもしかしてTIBORが下がるような動きになるのではないか」という事で若干買いで反応したのですが(1ティックほど)、総裁会見を見ると追加緩和する気無さそうなのでまた元の木阿弥に(^^)。


○ところで企業金融オペを終了したばっかの筈ですが

とまあそういう事で内容が良く判らんのですが、98年の臨時措置みたいなものが出ますという話なのですけれども、えーっとあのその3月末で目出度く企業金融関連の措置を終了して、企業金融特別オペは新規の実行が無くなって後は落ちるだけとなり、行きがけの駄賃でCP買現先オペの残高がゼロになったのですが、いきなりそれと整合性の取れないようなネタが出てくるのは何ということぞという所ですわな。

いやまあこの点に関しては「従来は危機対応の流動性対策で、今回の措置は成長戦略なので話は違う」という理屈で説明してくるとは思うのですが、それにしても話として何だかなあ感は払拭できませんわな。


○日銀が個別企業への資金配分に関与するのですか???

日銀様におかれましては、先般(昨年1月)CPやら社債の買入を公表した時にはこのような文章をわざわざ公表しているのですよね。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/un0901d.pdf
企業金融に係る金融商品の買入れについて

ええ今回の措置は買入じゃなくて金融機関への融資だから関係無いと言ってしまえばそれまでですけれども、この中には中々良い指針が出ていますよねえ(^^)。

『3.実施に当たって留意すべき事項

(1)個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること

? 日本銀行による買入れの実施が個別企業への恣意的な資金配分となることを回避しうるよう、例えば、@発行体からの直接買入れではなく日本銀行の取引先である金融機関等を通じた買入れとすることや、A入札方式による買入れとすることなど、適切な買入れ方式を採用する。』(上記URLより)

>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること
>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること
>個別企業への恣意的な資金配分となることを回避すること

いや勿論今般の措置は買入でも無いですし、どうせ金融機関への貸出なり担保政策なりという話になるので個別企業への恣意的な配分にはならないですという言い訳になると思うのですけれども、今回の総裁会見ではこのような話をしていますよね。

『それから、成長力の強化ということ自体は第一義的には民間経済主体が取り組むことですし、基盤という点については政府が果たす役割が大きいということはその通りです。政府でも昨年12 月に成長戦略をまとめ、現在その肉付け作業を急いでいると認識していますし、民間企業も様々な取り組みを行っています。その意味では、今も様々な主体が取り組んでおり、日本銀行も自らの行動を通じてこうした動きにさらに弾みをつけていきたいという思いがあります。ただし、これは政府に対して要請することが主たる目的ではなく、日本銀行として、日本銀行の持っている機能を使って民間を後押ししたいということです。』(4月30日総裁会見より)

・・・・・はてさて、政府の成長戦略と言いますと、この辺になるのかなあと思いますけれども。
http://www.meti.go.jp/topic/data/growth_strategy/index.html
「新成長戦略(基本方針)〜輝きのある日本へ〜」について

その中に色々と書いてあるのですが、そこの2番目にあるプレゼン用の資料のようなものを見ますと、2ページ目(というか表紙の次のページ)に『新需要創造・リーダーシップ宣言』というのがあって、新たな成長戦略の「第3の道」とやらにこのような事が。

『第3の道 「需要」からの成長
→環境・健康・観光で100兆円超の需要
→国民生活の向上に主眼』(新成長戦略(基本方針)のイメージ資料から)

・・・・・この辺を見てますと、何か日銀が成長戦略に協力という話になると、上記のような分野に対する融資の後押しをしますよというような話にも見えて来る訳でして、確かに個別企業がどうのこうのという訳ではないですけれども、特定の産業分野に対して日銀が融資の後押しをしますよというような話になりますと、ど〜考えても去年言ってた話と違いわせんかなという感じですな。

#「傾斜生産方式」という言葉を思い出したのは昭和脳ですかそうですか


でまあ会見でもその点にツッコミが来る訳でして(^^)。

『(問)(前半割愛)2点目は、今回、中央銀行としての矩(のり)を超えてしまうのではという懸念も与えかねない行動に出ようとしているのは、成長戦略を考える上で、政府から日本銀行に何か新しく政策を出してほしいという要望があってのことなのかを伺います。』

『(答)(前半割愛)オーソドックスな中央銀行の業務ではないという意味では、ご指摘の通りと思いますが、現在、日本経済の最も本質的な問題が生産性の低下である以上、その問題に対して何がしかの貢献をしていくということは必要なことだと思います。』

で、日銀がそういう貢献をするというのは違和感が。計画経済じゃ無いんですし。

『ただ、繰り返しになりますが、中央銀行としての矩を超えることはあってはなりません。何が矩を超えることになるのかと言いますと、1つは個別産業や個別企業に対するミクロの資源配分への介入となることは避ける必要があると思っています。』

成長戦略だの生産性だのという話をしている時点で恣意性が入ると思うのだが。

『また、日本銀行が金融政策を行っていく上で、資産の健全性がしっかり確保されていないと、将来の金融政策の遂行能力に対して信認が低下してしまいます。その2点は少なくともしっかり意識し、矩を超えることのないような制度設計を考えていきたいと思っています。』

資産の買入じゃなくて銀行向け与信だったら別にまあそんなに懸念する話でも無いと思うのだが。

『また、政府の方から要請があったのかということですが、そのような要請があったわけでは全くありません。』

はあそうですか(棒読み)。


○しかし現状の問題は別に金詰まりでも貸し渋りでも無いのだが

金詰まりというのは流動性の問題で、貸し渋りというのはバランスシートの問題でございますが、現状の金融機関の状況を勘案すると、どちらにも問題は無い筈でございまして、巷間貸し渋りがどうのこうのとか言われますけれども、そもそも前向きの資金需要でそれなりにちゃんとした企業さん相手だったら銀行は貸出をしたくて仕方ない状態になっている筈でございますので、そんな中で日銀が何をするのよというか、日銀の変なアピールのダシに使われる金融機関カワイソスという感じがするのですけどねえ。

総裁会見より。

『(問) 成長基盤強化について2点お伺いします。まず、政策の発表を聞いた際に、政府系の金融機関でしっかりやればよいことではないかと感じました。また、民間の金融機関に聞くと、先程おっしゃった1998年の企業金融支援の臨時貸出制度は貸し渋りの改善を促すものであり、今は、成長力のあるところには貸したいけれども貸し出し先がないというジレンマがあると思います。その中で日本銀行が出ていく余地はあるのか、違和感があり理解できないのですが、お考えを伺います。(2点目は先程引用したので割愛)』

どう見ても正論です本当にありがとうございました。

『(答) 政府系の金融機関も、様々な取り組みを行っていると思います。ただ、政府系金融機関の場合には、自らが企業に貸し付けることが業務のベースになるわけです。今回、日本銀行が検討しようとしていることは、日本銀行自身が直接企業に貸し付けようというわけではありません。あくまでも、民間金融機関の取り組みを支援していこうということであり、政府系金融機関とは役割が異なっていると思います。』

?????

『それから、先程も申し上げました通り、日本銀行の出す資金の量によって勝負をしていこうというものでは決してありません。』

ますます意味判らん(ちなみに、この部分って今回の会見でのもう一つのポイントでもあるのですが、「追加緩和はしたくないでおじゃる」という話に繋がるのですな)・・・・

『今、おっしゃったように、金融機関から見ると、資金需要がない状況だと思います。ただ、何か障害があり、工夫をすれば様々な資金需要の芽がもっと生きてくる、という可能性はあると思います。』

いやだからそれは補助金とか予算の世界ですから。

『だからこそ、民間金融機関もこうした面の取り組みを始めているのだと思います。従って、あまり大きなことは言えませんが、日本銀行としても、民間金融機関の業務を見ている立場から、また、中央銀行として資金を供給する立場から、日本銀行がどのような工夫をすれば民間金融機関の努力が後押しできるのかをしっかり考えていきたいと思います。』

これで考えた結果特にありませんでしたという回答が執行部(事務方)から来たら理事や局長の皆様を神認定して毎日崇めたいと思うのですけれども(^^)、まー従来の流れから常識的に判断すると何か無理矢理にでもネタをひねり出すんでしょうな。


○いずれにせよ意味は謎ですな

他にもまあ謎な点は多々あるのですが、本件が(1)マジで日銀が成長戦略を実施するんじゃああああ、といきなり産業金融もどきの話を始める意欲満々なのか、(2)単に日銀の謎のアピールあるいは政府への「御接待」なのか、がさっぱり判らず、実際に出てくる施策を見ないと判断のしようもない所なのですけれども、いずれにせよ上で引用したように「実際には金融機関に貸出のボトルネックがある訳でもない」という状態なのに謎施策の指示を出したと発表するとか、特に量を出したり金利を下げたりという話でも無さそうな時点で、まー今回の対話もまた「市場との対話」ではない所との対話ですなあという感じでございます。

#だからすっかり置いてけぼりとなった市場は反応できずにぽかーんだったのですが

まあしかし市場からすると(つーか市場じゃなくてもですが)企業金融措置を終了させた(企業金融特別オペは残高残ってますけど)直後にいきなりこの施策(指示しただけですが)というのは謎としか申し上げようがございま千円ですなあ。

それとね、会見でも質問されてましたけど(今日は引用割愛)、成長戦略だの生産性向上だのという話になってきたら、本政策が臨時措置で済ませる訳にもいかなくなる(臨時措置如きで成長だの生産性だのが向上したら誰も苦労はしない訳で)と思うのですけれども大丈夫かねという感じもするのでございますがどうなんすかね。


○1998年の決定にあたって中原伸之審議委員(当時)が反対しているのだが

さて、昔話ネタになりますが、さっきURLを乗っけたように98年11月に臨時貸出制度の創設を公表したのですが、まあそれを実施しましょうというのを先行して発表した回の決定会合で当時の中原伸之審議委員が反対しているのでして、その理由が中々読み応えがあるので最後に引用しますね。

1998年11月13日の金融政策決定会合議事録(超どうでもいいけど、この辺りの決定会合には谷垣禎一大蔵政務次官が出席してますな)から。

採決前の各委員の意見表明部分(議事録84ページ)より。

『中原委員

私はCPについては賛成であるが、他の二案については十分に検討し、議決した度毎に公表すべきだと考える。まずCPについては、昨年から一年間オペを行ってきておち、非常に実績もある。今回の措置を採れば、民間の方でも先程2兆円と説明していたが、然るべき反応はあるだろうと思う。また、CPオペの積極化は先般の提案の延長線上としても捉えられるので、賛成である。

他の二つについては、方針自体をここで発表しない方が良い。やはり、実施するのか実施しないのかを確りと詰めたうえで、出来たものから発表すべきである。何か予約の発表のようなやり方が果たして良いのかどうかに疑問を持っている。そもそも今回の議案を企業金融の円滑化として直接打ち出すことにも反対する。やはりセントラルバンキングである以上、まず銀行に対し一般的な形でのオペを行い、先程山口副総裁が言われたようにそれが滲み出る格好であるならば結構であるが、セントラルバンキングの立場として筋を通すべきではないか。特に、証書貸し付けを担保化することは十分考えられるが、現段階で行うことになると、例えば企業のリストラ、再編成の動きに対し、それを緩めるようなことになりはしないか。あるいは、世の中からみて日本銀行は最後の信用の砦であるにもかかわらず、何でもありとなってしまうのか、と受け取られる反応も恐れる訳である。現在の段階で行えることはCPオペの積極的な活用であると思っている。』

もうね、「実施するのか実施しないのかを確りと詰めたうえで、出来たものから発表すべきである。何か予約の発表のようなやり方が果たして良いのかどうかに疑問を持っている。」とか「あるいは、世の中からみて日本銀行は最後の信用の砦であるにもかかわらず、何でもありとなってしまうのか、と受け取られる反応も恐れる訳である。」とかイイハナシダナーと申し上げるしか無いですな(^^)。

また、採決後の中原さんの反対理由部分(議事録106ページ)も内容がだいぶ被りますが引用しますね。

『中原委員

反対の理由を申し上げる。基本的な反対理由は中央銀行としての在り方に関係するものである。中央銀行は主要目的に専念し、その他の機能については出来るだけ保守的に機能すべきであると思う。銀行に対する流動性の供給は一つの大きな業務であるが、企業金融は元々民間銀行の領域であり、そうした仲介機能には極力踏み込まない方が良いというのが基本的な理由である。

具体的に申し上げると、第二の貸出制度は昔の制度が復活する印象を世間に与える。最も懸念すべきは、銀行に対する直接貸出が今後拡大されていくのではないかという危険性をはらんでいることである。第三の社債、証書貸付等については、一つはこれが仮に恒久的な制度になるとするならば、十分考える必要があり、時期尚早だということであるが、もっと根本的には適格の社債が限定されてくるということである。これがエスカレートすると、社債を買え、さらには株式を買えといった要求に発展しかねない。また、証書貸付等については、債務者の承諾が必要な訳であり、むしろ方向としては極力印紙代を200円にして手形に切り替え、その手形をオペに活用するのが正しいと考えている。いずれにしても、CPオペのように実績があり、限られた分野で日銀が重要な役割を果たしてきたものを拡大することは意味があると思うが、現時点において貸出制度を臨時に創設したり、社債、証書貸付等を担保としてオペを行うことについては非常に疑問があるし、日銀の中央銀行としてのイメージを傷つける恐れがある。日銀も信用の最後の砦ではなく、何でもありかと、それならばさらにやれということになりかねない点を危惧する。』

「これがエスカレートすると、社債を買え、さらには株式を買えといった要求に発展しかねない。」と言う部分がスバラシス(^^)。

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2010/04/30

お題「FOMC声明文/展望レポートですな」

水曜の引け後(欧州の朝方)のギリシャ国債は中々のヒャッハー状態でしたな。


○FOMCは予想通りガイダンス文言の変更無し

FOMC声明文。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100428a.htm

ちなみに前回3月の声明文はこちら
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100316a.htm

・労働市場の「改善」を指摘

まあ今回の声明文変更の中で「ほほー」というのは労働市場の改善に言及しているところですわな。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in March suggests that economic activity has continued to strengthen and that the labor market is beginning to improve.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in January suggests that economic activity has continued to strengthen and that the labor market is stabilizing. 』(前回)

「安定している」→「改善を始めている」という事ですのでこれはこれはという感じですわな。じゃあこれで利上げが早まるかと言うとその辺りは以下でご紹介するように、ガイダンスの文言とかを変更しないことによってバランスを取っているという感じですな。


・消費も判断引き上げているけれども、背景の認識を変えない

『Growth in household spending has picked up recently but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit.』(今回)

『Household spending is expanding at a moderate rate but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. 』(前回)

家計消費支出に関しても「緩やかなペースの拡大」から「成長が引き上がっている」というような説明になって判断上方修正しているのですが、抑制されている理由に関しては変化無しと。

・企業支出とか住宅セクターとか銀行貸出とか

『Business spending on equipment and software has risen significantly; however, investment in nonresidential structures is declining and employers remain reluctant to add to payrolls. Housing starts have edged up but remain at a depressed level. While bank lending continues to contract, financial market conditions remain supportive of economic growth.』(今回)

『Business spending on equipment and software has risen significantly. However, investment in nonresidential structures is declining, housing starts have been flat at a depressed level, and employers remain reluctant to add to payrolls. While bank lending continues to contract, financial market conditions remain supportive of economic growth. 』(前回)

新築住宅の判断が若干引き上げられていますが、その他に関しては変わらずと。


・現状判断のまとめ

『Although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a time, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability.』(今回)

ここの文言は前回と全く同じです(^^)。


・インフレに関する文言も同じとな

『With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time. 』(今回)

これまた前回と全く同じで。かなりの資源活用のスラックが物価上昇圧力とより長い期間のインフレ期待を安定化させるので、インフレは暫くの期間抑制されるでしょうというのは見事に変わりませんな。


・で、ガイダンスも変更無し

『The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. 』(今回)

まあ予想通りですけれどもガイダンス文言の変更はございませんでした。異例の低金利が相当の期間に渡って維持されるでしょうという理由に関しても資源の活用の低さ、抑制されたインフレトレンド、安定したインフレ期待という3点セットには変化無しということで。

以下は流動性プログラムに関する部分で比較的どうでも良いので割愛。


・ホーニッグさんの反対理由に「利上げ」に関する文言が

でまあ今回もホーニッグさんはガイダンス文言に関して反対したのですが。

『Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted because it could lead to a build-up of future imbalances and increase risks to longer run macroeconomic and financial stability, while limiting the Committee’s flexibility to begin raising rates modestly. 』(今回)

『Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted because it could lead to the buildup of financial imbalances and increase risks to longer-run macroeconomic and financial stability. 』(前回)

前回の反対理由は「ガイダンス文言の維持を行う事は、金融の不均衡を積み上げ、より長い期間におけるマクロ経済や金融の安定に対するリスクを拡大させる」となっていましたが、今回はその後に「FOMCが金利を徐々に引き上げる事を開始する事に対する柔軟性を制限する」というのを付けまして、反対のトーンが強くなっていますな。


○循環と構造のバランスのとり方

んな訳で今回のFOMCではガイダンスの文言を変えないのは普通に予想通りの世界ですけれども、上でご紹介しましたように、現状判断を引き上げながらも、より改善に時間のかかりそうな構造的な部分に関しては従来の判断を継続するという形になりましたな。

まあギリシャ問題の方が目先は大きいのかも知れませんが、何となく後付け講釈だとFOMCの低金利継続期待とイニシャルクレームの改善を債券と株とで好感しているという反応らしいものを示している所が実にこう楽観的なメリケンクオリティとも思いますが(^^)、まあその辺りは確かに見せ方が難しいですねという感じです。

一方、日銀ちゃんは今日の展望レポートという大ネタ(は良いのだが5連休前しかも月末の引け後(15時)に出すんじゃなくて28日に出して頂きますと有難く存じますのですが)がございますが、こちらでは白川総裁が物凄い勢いで循環的な回復の話をするという先般の記者会見にありますような有様なのがひじょーに懸念されるのでありますが、日本の場合はレバレッジ拡大し過ぎて不良資産問題というのは確かに軽いかもしれないけど、物価の方が相変わらずうんこな状態になっているという問題はあり、財政は楽しく発散過程入りっぽいわ、成長期待は全然盛り上がらないわという事ですし、それ以前の政治的な問題を考えたら、またどこかで追加緩和カードを切らないと行けないと思われる状況でもあります。

というような状況をつらつら考えると、まあ展望レポートでそんなに上振れを強調する必要があるのかよという気はしますわな。大体からして現状で金融緩和を継続していても日本の場合は(残念ながら)経済の不均衡拡大とかいうような場面でも無いでしょうし、まーそーゆー事を考えると日本は金融緩和政策を引っ張り易い環境にあるのですから、あまり循環的な回復を強調する必要もないと思うのですが・・・・・・


ということで、まあその辺りのバランスのとり方が変だとまた対話(誰との対話なのか良く判らんが^^)で苦労するんじゃないですか、という気がしますけど、先般の西村副総裁の講演&会見ではその辺バランス取ってたような感じがするので、多分出てくる公式文書は大丈夫なのでしょうけれども、何かまた総裁会見で飛ばしてくれるかもしれないなというのがリスクではないかと・・・・

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2010/04/28

○BOEの議事要旨から(ちょっとだけ)

雑談をしてたら長くなってしまいましたが(汗)。

http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1004.pdf

4月MPCの議事要旨なのですが今回に関しては、

・景気に関しては特にユーロ圏の下振れを強く警戒している・ポンド安に関しての評価は「景気にポジティブ」だが「物価上昇」や「交易条件の悪化」のデメリットも指摘していまして、ポンド安を一時は一方的にウハウハですよと言ってたのとトーンは異なる

というのがあるのですが、最も「あちゃー」と思ったのは「私は皆さんとは違うんですフフン」と言わんばかりの勢い(かどうか知らんが)で堂々「量的緩和」を銘打った量の話に関して物の見事にスルーされている所ですな。

んでもってスルーされているだけに引用のしようも無いのですが、まあ関連する部分をちょっと引用してみますとこんな感じです。

『The immediate policy decision』の第26パラグラフから。

『For many members, the developments at home and abroad over the two months since the publication of the February Inflation Report had helped ease concerns about some of the downside risks to the near-term economic outlook for the United Kingdom. Output looked more clearly to have begun to recover at the end of 2009 and, abstracting from the effect of erratic factors, with a momentum that appeared to have been carried forward into the beginning of 2010. That was broadly as had been anticipated as the most likely outcome in the Committee’s February projections. Moreover, short-term interest rate expectations had fallen. And, notwithstanding this month’s appreciation, the sterling effective exchange rate index was lower than two months ago. Those factors should also support growth.』

ということで、先行き見通しの中で国債買入による効果の話はすっかりスルーとなっていて、(この前のマネーに関する討議部分でもそうなのですが)金融面においては「市場の短期金利予想が低下している」という話は出てくるのですが、すっかり量の話はスルーという状況になっているのでありました。

んでまあ27パラグラフと28パラグラフは先行き回復のメインシナリオに対するリスクの話でして、ダウンサイドリスクはユーロ圏経済とソブリンリスク、そしてインフレのアップサイドリスクについては商品価格の上昇と、足元のインフレ率上昇が現在アンカーされている一般のインフレ期待を押し上げるリスク、という風に指摘しています。で、その結論の29パラグラフ。

『Looking ahead, there remained a number of factors restraining activity and inflation. These included the impairment of the banking sector, the need for fiscal consolidation in the United Kingdom and elsewhere, and despite some recovery in activity, the continuing degree of spare capacity in the economy. Offsetting these downside factors were the past depreciation of sterling and the exceptional degree of monetary stimulus. There was a range of views among Committee members about how the balance of risks to inflation and activity had altered over the past few months. But, overall, the Committee agreed that it was appropriate to maintain the current stimulatory stance of monetary policy at this meeting.』

ということで、先行きのダウンサイドリスクや、景気回復を阻害する要因(銀行セクターのバランスシート調整、財政支出によるサポートが必要な点、経済全体の過剰生産力)に対してカウンターになるのは以前から継続しているポンドの下落と異例の規模の金融緩和という話になっていますので、まあここでは金融緩和政策の効果の話をしているのですが、国債買入がどうのこうのという話はどうも華麗にスルーされているっぽいのが実に味わい深いものを感じるのでございます。

BOEはどう総括するんでしょうかね(^^)。

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2010/04/27

○コーン副議長講演の更に続き:プライスレベルターゲットに関して

どうも引っ張ってすいません。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

講演の13ページから。この前の部分ではインフレ目標の設定に関連して、「ゼロ金利制約の糊代を作る為に通常のインフレ目標を4%のような高めの数値にするのはどうか」という意見に対する砲撃を行っていたのですが、その次は所謂プライスレベルターゲットに関する意見です。

『Another approach to this problem is for central banks to target a gradually rising price level rather than a constant inflation rate. Imagine a plot of the consumer price index (CPI) from today onward increasing 2 percent each year. Central banks would commit to adjusting policy to keep the CPI near that line.』

グラフでも描いて張り付ければ良いのですが(時間とスキルが無い)書いて説明すると、「物価安定の目標の安定化の為に「年率2%の上昇になるようなレベルでのターゲットを設定」するという方法。つまり前年比ではなくて先行きまでのレベルが1次関数のグラフみたいに示されるという話ですわな。

『The advantage of this approach, in theory at least, is that when a negative shock drives prices below the target level, people will automatically expect the central bank to increase inflation for a while to get back to trend. In principle, that expectation would lower real interest rates without the central bank changing its inflation commitment, even if nominal interest rates were pinned at zero. It could also make it easier for people to make long-term economic decisions because they could anticipate that inflation misses would be reversed over time, reducing uncertainty about the future price level.』

で、このアプローチのメリットとして言われるのは、まず第1に「前年比」ではなくて「具体的なレベル」を目標にしているので、何らかのショックで例えば前年比の物価上昇が少なかった場合には、「プライスレベルに戻すために」金融緩和を継続するという形になるので、結果としてその後の前年比ベースで見た物価上昇期待が高まる(逆ゲタを履く分を挽回しないといけないから)ので、実質金利をより引き下げることができるという言ってみれば「前年比ベースで見たインフレ目標の自動修正装置」が付くというものと、「人々の経済活動における物価変動期待の安定化」という観点からすると、将来の物価水準をターゲットにしているので期待が安定化しやすいという事ですな。

『While I appreciate the elegance of this price-level-targeting idea, I have serious doubts that it would work in practice.』

ということで、アイデアとしては非常に美しいのだが金融政策運営の実務としてワークしないという話をしています。ポイントは以下の通り。

『Central to the idea is that the Federal Reserve would be committing to hit a price level that was growing at a constant rate from a fixed point in the past. The specific inflation rate that could be expected in the future would change over time, depending on the inflation that had been realized up to that point. You could know what inflation rate to expect only if you knew both the current consumer price index and the Fed’s target for the index in the future. In addition, the inflation rate that you could expect would be different for different horizons.』

『 Moreover, central banks are able to control inflation only with a considerable lag and even then only imprecisely, so the process of hitting a target would likely involve frequent overshooting and correction and consequently frequently shifting inflation objectives.』

正直、前半部分の途中の意味が何となくは判るのだがちゃんと訳せない(あほです)のでスマンカッタのですが、プライスレベルの固定はいいのだがそれによって物価上昇率のターゲッティングという点では色々な期間を取るとぶれてくるとかいう指摘をしているような気が(汗)。まあそもそもプライスターゲットのアイデアのキモは過去の一時点からコンスタントな上昇率での物価上昇にコミットすることができるという話ですが、後半部分にありますように・・・・

(後半だけ拙訳^^)中央銀行は物価を制御するにあたって、かなりの時間的なラグを伴い、そして精密調整というには不十分なレベルでしか行えません。従って、プライスレベルのターゲットをヒットさせるような金融政策運営を実施した場合には、金融政策の頻繁なオーバーシュートを招く結果となり、インフレ目標が頻繁にぶれることになるでしょう。

『Contrast this approach with the communications required of central banks when targeting a specific inflation rate. For example, central banks targeting a 2 percent inflation rate typically put that target prominently on their webpage. If those banks were instead targeting a price level growing at 2 percent, their webpages would have to provide a table of inflation rate targets for a variety of horizons, and the targets would change each month. I fear that rather than anchoring people’s expectations about prices, it could leave them perplexed.』

(拙訳)プライスレベルターゲットとインフレ目標を中央銀行のコミュニケーションという観点から比較してみます。例えば、中央銀行がインフレ目標を2%に置いた場合には中央銀行のホームページに目立つように掲載すれば済みます。一方でプライスレベルターゲットで2%の目標を設定した場合、中央銀行は将来の様々な期間に関するインフレ目標値を掲載しないといけなくなり、しかもその数値は足元のCPI数値によって毎月変更しないといけなくなります。私はそのようなコミュニケーションによって、プライスレベルターゲットによって価格推移のレベルが安定化するよりも、インフレ期待を混乱させることになることを懸念します。

『As you can tell, I see compelling reasons why central banks should stick to their current inflation objectives. Those reasons relate most importantly to the effect of a central bank’s communications and behavior on its credibility and on the public’s expectations.』

(;∀;)イイハナシダナー(皮肉じゃなくて)って要するにここでは「中央銀行の物価などの期待安定に関するコミュニケーションとクレディビリティの観点から現在のやりかたが適切ですよ」と仰っているようですな。うんうん。

『More study leading to a better understanding of the linkage between central bank actions and expectation formation should improve the ability of central banks to achieve society’s inflation and output objectives more effectively under a variety of circumstances, including in a severe negative shock of the type we recently experienced.』

ということで、最後のまとめはもう引用だけ。

『Conclusion

Many central bankers and economists, myself included, were a little complacent coming into the crisis. We thought we knew enough about the basic structure of the markets and the economy to achieve economic and price stability with relatively minor perturbations. And we thought we had the tools necessary to deal with liquidity shortages and maldistributions.』

『The reality is that we didn’t understand the economy as well as we thought we did. Central bankers, along with other policymakers, professional economists and the private sector failed to foresee or prevent a financial crisis that resulted in very serious unemployment and loss of wealth around the world. We must learn from our experience.』

『The questions I’ve posed are tough, but addressing these issues successfully should enable central banks to reduce the odds of future crises and respond more effectively to any bouts of instability that still might arise.』

ということで(^^)。先日の白川総裁の米国での講演はコーン副議長のこの講演に呼応するようなテイストがございますね(^^)。

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2010/04/21

お題「オペに関するマニア雑談/しつこくコーン副議長ネタ」

GSがどうのこうのってやってますけど、金の卵を産む鳥を潰す訳無いんですから(金融以外で米国が新たに稼ぐネタをでっちあげるというなら別だが)ど〜せガス抜きの域を出ないんでしょ、などという事をつらつら思う今日この頃。

#しかし相場が1.3%台だとヒャッハー感が無くてどうもねえ

○オペのバランスに関する雑感

という程の話でも無くて単なるマニア雑談なのですが(汗)。

えーっと、昨日当座預金残高が17兆円だという話をしておりましたが、ここもとというか今回の積み期間に入ってから当座預金残高が17兆円台で推移するようなオペレーションになっております。でもGCレートちゃんは0.12近辺で推移しているようで、昨日も資金供給オペの足切りが全部0.12となっていた(新型オペは別ですが)ですわな。

何でGC下がらんかなあとか思うのですが、良く良く見ると朝8時前に日銀が公表する当日需給見込みで出てくるベースの準備預金残高が相変わらず12兆弱で推移しているので、一部に資金が妙に偏在しているという状況がありますのと、もともと資金不足時期に沢山あったオペ残が資金余剰の為減って来ている上に、最近では固定金利の期間が長目のオペが増えている事から短いオペに皺寄せがきている面があるのかなあなどとつらつら思うのでありました。

つまりですな、資金不足期のピークで49兆とかあった供給オペ残高ですが、直近では32兆レベル(先日は30兆割ってました)となっているので、そもそも債券ディーラーの在庫ファンディングとしてオペで調達している分がマーケットに出てくるようになり、一方で財政の入り払いの関係で資金は余剰と言っても基本的に債券ディーラーにその金が回ってくる訳でもない(市中で余剰になっている部分ってまずは預金受け入れ金融機関に入るから)ので、その分だけ足元での市場調達が増えるのでGCレートが下がりにくくなるという話。

その上、固定金利で3か月というオペが徐々に増えてきている訳でして、これが直近で12.8兆円まで増えた(明日は13.6兆円)ので、これが短いオペの実施余地を食っている格好になって、出来上がりとして当座預金残高は積み上がっていても短いオペはそんなに増えずとなってGCレートは下がり難くなる(ので財政要因での揚げが出てくるとオペは自然に増えてGCも下がるのですが)一方で資金そのものは当座預金残高17兆円というように全体としてはあるので、コールレートはしらっと下がっているって格好になっているのですな。


で、まーそんな感じの推移なのですが、ここもとコールの加重平均が0.1%を割るのが平常の風景になって参りまして、そりゃまあディレクティブでは0.10%近辺ということですからまあ別によろしゅおすのですが、従来やたらめったら精密誘導していたのが、固定オペが増えたり、ターム物金利がどうのこうのということでGCレートを気にしたり(っていうか短国の金利に影響してより長い所にも効いてくるのだから気にするのは当たり前なのですけれども)という事をやっていく中で、吸収オペによるツイストを併用しないとなると、徐々に精密誘導がしんどくなってくるんじゃないですか、という感じがするのであります。それを決定会合的にどうするのでしょ、ってツッコミは今の所そんなに出てないと思うのですが(まあ月中平均でそんなに大きくはずれていないから)、なんちゃって緩和を強化するという事になると益々調節担当課の方はやりにくくなるでしょうな、と思います。

あと、それはそれとしてもう一つ思ったのは6月末問題でございまして、6月って年金の払い月な上に国債の4半期大量償還がある(けど法人税やその他の税揚げもあるから3月と比較してどっちがより余剰地合いなのか良く判らんが)ので、またまたオペが打ちにくくなる中でやってくる4半期末というのもど〜なんでしょうね、というのを忘れないうちに申しあげておきたく存じます(^^)。



○コーン副議長の3月24日講演ネタはまだ続く(しつこい)

ではまたコーンさんのネタで(引っ張ってどうもすいません)。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

本文11ページの『Inflation Objectives』というの所は、まあ論点としては他の人も扱っているネタでそんなに特殊な話を展開している訳でも無いのですけれども、これはこれで中々興味深かったです。

『The final homework assignment concerns the inflation objectives of central banks. Central banks have widely chosen to target inflation rates near 2 percent. The Federal Reserve is required by law to conduct monetary policy to achieve maximum employment and stable prices.』

『We haven’t announced an explicit inflation rate target consistent with that dual mandate, but the Federal Reserve governors and Reserve Bank presidents publish our individual forecasts for inflation over the longer run, conditional on our individual views of appropriate monetary policy. Those forecasts indicate that most of the FOMC participants believe that inflation should converge to 1-3/4 to 2 percent over time.』

ということでインフレ目標の話ですが、多くの中央銀行は2%近くのインフレ目標を設定していまして、FRBは明示的なターゲットを示してはいないですが、地区連銀総裁やらFOMCのボードなどが個人的なビューとして表明していて、その数値は1.75%〜2%に収斂してますよと。

というマクラの次に出てくるのがインフレ目標に関する最近のトピックに関するお話です。


○ゼロ金利制約を逃れる為に平時にインフレ目標を引き上げる件について

IMFの人が個人的見解として出していた論文で一時話題になっていましたが。

『Recently, some prominent economists have called for central banks to raise their inflation targets to about 4 percent. Shifting inflation targets up would tend to raise the average level of nominal interest rates and thus give central banks more room to lower interest rates in response to a bad shock to the economy before running against the zero bound.』

(拙訳)最近、一部のエコノミストが「中央銀行がインフレ目標値を4%近辺に引き上げる」という事を提案しています。その考えによりますと、インフレ目標値を引き上げる事は、平均的な名目金利水準の引き上げに繋がり、それによって経済にショックが起きて金利を引き下げる場合に、名目ゼロ金利制約に到達するまでの糊代を作ることができるということです。

で、その件に関してコーンさんの見解ですが、結論から申し上げると否定的見解です。

『Although I agree that hitting the zero bound presents challenges to monetary policy, I do not believe central banks should raise their inflation targets. Central banks around the world have been working for 30 years to get inflation down to levels where it can largely be ignored by businesses and households when making decisions about the future. Moreover, inflation expectations are well anchored at those low levels.』

(拙訳)名目ゼロ金利制約は金融政策運営を難しくする点に関しては私も同意しますが、中央銀行がインフレ目標値を引き上げることは反対です。中央銀行はこの30年間に渡って、家計や企業が物価上昇を気にしないで経済活動を出来るような水準にインフレを引き下げるように努めてきていました。また、インフレ期待もこの低い水準で落ち着いています。

『Increasing our inflation targets could result in more-variable inflation and worse economic outcomes over time.』

『First of all, inflation expectations would necessarily have to become unanchored as inflation moved up. I doubt households and businesses would immediately adjust their expectations up to the new targets and that expectations would then be well anchored at the new higher levels. Instead, I fear there could be a long learning process, just as there was as inflation trended down over recent decades. 』

『Second, 4 percent inflation may be higher than can be ignored, and businesses and households may take inflation more into account when writing contracts and making investments, increasing the odds that otherwise transitory inflation would become more persistent.』

(拙訳)中央銀行がインフレ目標値を引き上げることは、インフレ率の振幅の拡大を招き、先行きの経済の悪化をもたらすでしょう。

まず第一に、現在安定しているインフレ期待は実際にインフレが進行すると安定化しにくくなるでしょう。また、家計や企業のインフレ期待が新しい4%のインフレ率にシフトして安定するかという点にも疑問があります。その代わりに私が懸念するのは、インフレ期待のシフトに長い時間が掛かることです。現在のようにインフレ期待が安定状態に至るまでに10年以上の時間が掛かっています。

第二に、4%という物価上昇率は経済活動において無視できない数値であり、家計や企業の経済活動において、物価上昇を考慮に入れないとならなくなり、その結果として一時的なインフレがより持続的になる可能性を高めると考えられます。


・・・・とまあそういう事で、長期的なインフレ目標を引き上げる件については否定的で、より大きな物価変動を招くだけですよという話なのですな。

『For both these reasons, raising the longer-term objective for inflation could make expectations more sensitive to recent realized inflation, to central bank actions, and to other economic conditions. That greater sensitivity would reduce the ability of central banks to buffer the economy from bad shocks. It could also lead to more-volatile inflation over the longer run and therefore higher inflation risk premiums in nominal interest rates. It is notable that while the economic arguments for raising inflation targets are well understood, no major central bank has raised its target in response to the recent financial crisis.』

(拙訳)これらの理由によって、中央銀行がインフレ目標数値を引き上げる事は、最近の安定したインフレや金融政策や経済状況に対する期待をより過敏なものにするでしょう。そのようによって引き上げられたセンシティビティーによって、中央銀行が経済のショックに対して行動する為のバッファーを引き下げることにもなるでしょう。また、長期的な物価上昇幅がより大きくなれば、名目金利に対するインフレリスクプレミアムを引き上げることになるでしょう。中央銀行がインフレ目標値を引き上げる事に対しての経済学的な議論内容は広く認識されているにも関らず、世界の主要な中央銀行の中で最近の金融危機に対応してインフレ目標値を引き上げた所が無いという事は注目すべきことです。


○プライスレベルターゲットについて・・・・は時間切れ

どうも時間配分が悪くて(涙)ノリノリになってくる頃に時間切れという誠に遺憾極まりない状態が最近多くて困ります(早起きするか前日に作れというツッコミは認可する^^)。

一応冒頭部分だけ引用しておきますが続きはまたそのうち(汗)。

『Another approach to this problem is for central banks to target a gradually rising price level rather than a constant inflation rate. Imagine a plot of the consumer price index (CPI) from today onward increasing 2 percent each year. Central banks would commit to adjusting policy to keep the CPI near that line』

『The advantage of this approach, in theory at least, is that when a negative shock drives prices below the target level, people will automatically expect the central bank to increase inflation for a while to get back to trend. In principle, that expectation would lower real interest rates without the central bank changing its inflation commitment, even if nominal interest rates were pinned at zero. It could also make it easier for people to make long-term economic decisions because they could anticipate that inflation misses would be reversed over time, reducing uncertainty about the future price level.』

所謂プライスレベルターゲットの議論に関してのアプローチに関するコーンさんの話がこの後に出てくるのですが、その前にプライスレベルターゲットのメリットについての説明ですな。「期待の安定化」という意味で言えばプライスレベルターゲットの方が優秀じゃないのかねという話はまあそれはそうかもしれませんが・・・・・

『While I appreciate the elegance of this price-level-targeting idea, I have serious doubts that it would work in practice.』

超意訳するとすれば、「プライスレベルターゲットの考えってお話としてはとっても美しいけど、実際にワークしないですよねえwwww」と言った所ですが、じゃあ何でそう考えるかの話は後日(まあ上記URLの本文18ページ以降に書いてあるので読んでちょ)。

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2010/04/20

お題「すっかりFED虫干しネタばっかで恐縮です(汗)」

と言いつつ最初は展望レポート雑談(^^)

○展望レポート関連余談(^^)

まあ展望レポートというのは待っていますが、それで追加緩和のようなものが出ても債券市場にどういう影響が出るかというと結局他市場次第な面があるので何だかねって所もございまする。

まあつらつらと今考えている所なのですが、時々展望レポートで物価見通しがどうなるというような観測報道が出ていると思いますが、まあ腰折れは無いにせよ別にこのまま順調に回復するかどうか怪しいという中で循環的な回復をやたら強調する白川総裁の定例会見でのスタンスはどう見ても調子に乗り過ぎ。

そもそも足元は何となく円高が止まって株も比較的順調ですし、政府閣僚の皆様もやっと現実というか市場がどう見るのよという点を認識してきたようで、そこまで露骨な政治圧力発言をしなくなったのでだいぶ落ち着いてはいるのですが、ど〜せ今の内閣支持率とか見ておりますと「困った時には誰か叩く」という事で日銀を叩く圧力がまた出てきても何らおかしく無い。

そうなった時に、今の調子で総裁様が循環論による回復を強調していると、その後追加緩和のようなものをやる破目になった場合(というか6月に今の内閣が持ちこたえていれば^^出てくるであろう新成長戦略とセットで追加緩和のようなものをするのは絵として美しいですし)にまたまた言ってることとやってる事の整合性が取れずに、「ああまた日銀は差し込まれたのね」という見方が広がり、更に日銀の言動に対する市場の信用が無くなるという話になりませんかねえと。

それから、政治的な面もさることながら、12月以降の一連の緩和のようなものによって「デフレ脱却への強い姿勢」を示した訳でして、その中で今年度の物価見通しがマイナス(さすがに今年度は高校授業料無償化を差し引いてもマイナスでしょ)となるというのであれば、「向こう1年程度のデフレ継続を予想するのであれば、そのデフレを脱却するために何か追加措置を取らなくて良いのか」というツッコミが来ても何らおかしくは無いのでありまして(−−;)、そう考えた場合もやはり循環的回復の強調ばかりするのも間抜けだと思うのですよね。


ということで、まあ展望レポートですが、足元の循環的な回復は回復なのですけれども、そればかりを強調すると「じゃあデフレの方はどうなの」という話になってくるのでありまして、そういう点を考えるとあたくしが思いますに、デフレの問題に関する問題意識の強調というのは相当強いトーンでやっておかないと、将来の日銀の金融政策に関して変な意味で展望レポートが足かせになってしまう(展望レポートで上方修正したのに追加緩和をしたのは政策コミュニケーションとして整合性が取れていないでしょ、というコミュニケーションの問題)のでございまして、その辺りをノーガードで回復ばっかり出してこられるとまた6月に向けて楽しい不協和音という感じになるのではないでしょうか。

#と何となく考えている事をつらつらと雑談で


○当座預金残高が17兆円ペースな件について(メモ)

昨日は共通担保12000億円実施。なんか金曜の資金供給もちょっと多目の感じがしましたし、昨日も昨日でどちらかと言えばスポットで新型オペを打って8000億円かなとか思ってたら1兆2000億のトム共通担保。まあ月曜火曜の資金需給がちょっと短資各社の事前予想よりも若干下ぶれしたのはあるのですが、新しい積みに入った所なので最初からそんなに当座預金残高を上振れさせてこないかなあとか思っていたので、オペ実施によって今日も当座預金残高が17兆円に乗ったのはあたくし的には「ほー」という感じです。

今年は連休が5連休になるので、大型連休前にあまり進捗を進めてしまうと連休明け後にバランスとるのが大変なような気もするのですが、足元のGCレートが先週強めだったから配慮しているのでしょうかねえ。

というメモでした。



相変わらず引っ張りますがコーン副議長の3月24日講演ネタ続きの続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

○資産バブルのような金融市場の不均衡に金利操作を割り当てるべきか

PDFだと本文9ページ目から。

『The past few years have illustrated two lessons about the relationship between macroeconomic stability and financial stability. First, macroeconomic stability doesn’t guarantee financial stability; indeed, in some circumstances, macroeconomic stability may foster financial instability by lulling people into complacency about risks. And second, some shocks to the financial system are so substantial, especially when they weaken a large number of intermediaries, that decreases in aggregate demand can be large, long lasting, and not quickly or easily remedied by conventional monetary policy.』

ここ数年の教訓ということですからサブプラ問題発生以降の教訓ということで、マクロ経済の安定と金融の安定に関する点に対する教訓が2つですと。で、その1つ目は「マクロ経済状況が安定しているからと言っても、金融が安定するかというと必ずしもそうではなく、ある種の状況の下では、金融機関のリスクテイク行動が拡大して金融の不安定さを蓄積していく場合もある」という点で、2つ目としては「金融システムに大きなショックが起きた場合、特に市場参加者の多くに影響するような場合には、そのショックによって市場が大きくシュリンクして影響も長く続き、伝統的な金利操作だけでは不十分である」というような事を書いているようですな。

ということは、いわゆるBISビュー対FEDビューってのが気になる所ではございますが、まあ「バブル崩壊してから積極的な金融緩和で何とかなる」というのはダメだというのは身を切って証明されたと思われますが、じゃあ事前対策に関する方法についてのお題がコーンさんの3番目の研究課題なのでございます。

『Given the heavy costs of the financial crisis, the question naturally arises as to how it could have been avoided. My third assignment is to reexamine whether conventional monetary policy should be used to lean against financial imbalances as well as aim for the traditional medium-term macroeconomic goals of maximum employment and price stability.』

(拙訳)金融危機のコストが大きいと言う事は、それを防ぐための方法はどうすべきかという問題が浮上します。私の3番目の研究課題は、通常は中期的なマクロ経済の安定に対して割り当てるべき伝統的な金融政策を、金融の不均衡拡大に対して割り当てるべきかどうかを再検討することです。

と言う事ですが、その先にあります回答は結論から先に言っちゃうと「金融の不均衡に伝統的な金融政策(=金利操作)」を割り当てるのは不適切ではないかという話です。

『One key question is whether we are likely to know enough about asset price misalignments and the effects of policy adjustments on those misalignments to give us the confidence to deliberately tack away for a time from exclusive pursuit of our macroeconomic objectives. Obviously, reducing the odds of financial crises would be very beneficial, but we need to balance that important objective against the potential costs and uncertainties associated with using monetary policy for that purpose.』

めんどい(+書いててヘタクソな日本語なので我ながらこっぱずかしい)ので拙訳をしないのですが(^^)、よーするに資産価格のミスプライスというかバブル現象と言われましても、そもそもがそのミスプライスがいかほどの物なのかというのを正確に計測する事は難しいですし、中期的なマクロ経済の安定とのバランスを取るのも難しいですし、金融の不均衡に金利操作を割り当てる事のコストもあるという話ですな。

『One type of cost arises because monetary policy is a blunt instrument. Increases in interest rates damp activity across a wide variety of sectors, many of which may not be experiencing speculative activity.』

(拙訳)金融の不均衡に金融政策を割り当てる場合に起きる問題は、金融政策が経済全体に幅広く効く事によって引き起こされます。金利の引き上げは投機活動だけではなく、経済活動に対して広範な抑制効果をもたらします。

『Moreover, small policy adjustments may not be very effective in reining in speculative excesses. Our experience in 1999 and 2005 was that even substantial increases in interest rates did not seem to have an effect on dot-com stock speculation in the first episode or on house price increases in the second. And larger adjustments would incur greater incremental costs.』

(拙訳)更に言えば、少々の金利引き上げを行っても投機活動を抑制する効果は低いでしょう。99年と05年における私たちの経験によれば、かなりの金利を引き上げた場合でも、それぞれの時期に起きたITバブルや住宅バブルの抑制に有効だったとは思えません。そして、更に大きな金利調整を行えばより大きなコストを招く事になります。

『As a consequence, using monetary policy to damp asset price movements could lead to more variability in output and inflation around their objectives, at least in the medium term. Among other things, greater variability in inflation could lead inflation expectations to become less well anchored, diminishing the ability of the central bank to counter economic fluctuations.』

(拙訳)結果として、金融政策(金利操作)を資産バブルに割り当てることは、生産活動や物価の中期的な安定などを阻害する結果になるでしょう。さらにより物価変動が大きくなった場合には、現在安定しているインフレ期待が不安定化し、その結果としてFRBが経済の安定に対する能力を弱めることになるでしょう。


ということで(実は寝坊したので量が少ないのですが)、ここまでがコーンさんの基本認識でございます。ではどうすれば良いかという話なのですが、後で引用するかもしれない(一々本文にしないで週末にこっそり書いてこっそりアップするのが妥当ですかそうですか)のですが取り敢えずあたくしが読んで何となく把握したのは・・・・・

「基本的には金融の不均衡(資産バブル)問題に関しては金融政策ではなくて、監督行政を割り当てるべきである」、というのがコーンさんの認識。

では中央銀行は単純にプルーデンス政策をやってりゃ良いのかというとそれだけでもなくて、コーンさんは実質金利が極めて低い状態が継続した場合には、より高い利回りを求める行動によって資産バブルが発生しやすくなるという指摘を受けて、貯蓄と投資のバランスや実質金利、更に実質長期金利に関する考察も重要であると指摘しています(ような気がします、詳しくは本文を見てちょ)。

ということですが、4番目のお題が中々大ネタですので明日以降にまた(ネタの無い時に)参りたいと存じます。

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2010/04/19

まずは虫干しでFOMC議事要旨。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100316.htm

○特にホーキッシュな話は無く

全体的にざざーっと読んでみたのですが、景気見通しに関する部分のトーンでタカ派的な部分ってまあ無くて、基本的には「景気は回復しているけれども、色々と足かせになる要因はあるよね」という話です。

で、最近FOMCの声明文で必ず出てくる「相当の期間にわたって異例の低金利政策を実施する事が正当化される」という所に出てくる条件、つまり『continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. 』って事で、資源の利用状況の低さ、インフレのトレンドの抑制、インフレ期待の安定という3本柱に関しても特に懸念なしという感じですな。

で、その辺に関しては『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の最初のパラグラフにインフレの見通しを示している文言があるのですが、そこに見事に見通しが書いてあります。

『Participants saw recent inflation readings as suggesting a slightly greater deceleration in consumer prices than had been expected. In light of stable longer-term inflation expectations and the likely continuation of substantial resource slack, they generally anticipated that inflation would be subdued for some time.』


ということで、引き続き実際のインフレが抑制されているという話と、より長い期間のインフレ期待に関しても「リソースのスラック」ということで、まあ様するに資源の利用状況の低さという話でして、結論としてはインフレも暫くの間抑制されているって事で、特にガイダンスの文言をいじる雰囲気も無しという感じではないでしょうか。


また、先行きに関してですが、その2つ先のパラグラフにありますけれども、「先行きに関しては経済活動が強まるという見通しに一致するデータが出ているが、回復を阻害する要素がありますよ」という話を並べています。

『While participants saw incoming information as broadly consistent with continued strengthening of economic activity, they also highlighted a variety of factors that would be likely to restrain the overall pace of recovery, especially in light of the waning effects of fiscal stimulus and inventory rebalancing over coming quarters. 』

では何ですかというと、

『While recent data pointed to a noticeable pickup in the pace of consumer spending during the first quarter, participants agreed that household spending going forward was likely to remain constrained by weak labor market conditions, lower housing wealth, tight credit, and modest income growth.』

労働市場に関しては一応改善という話にはなっているのですけれどもね。

『For example, real disposable personal income in January was virtually unchanged from a year earlier and would have been even lower in the absence of a substantial rise in federal transfer payments to households. Business spending on equipment and software picked up substantially over recent months, but anecdotal information suggested that this pickup was driven mainly by increased spending on maintaining existing capital and updating technology rather than expanding capacity.』

『The continued gains in manufacturing production were bolstered by growing demand from foreign trading partners, especially emerging market economies. However, a few participants noted the possibility that fiscal retrenchment in some foreign countries could trigger a slowdown of those economies and hence weigh on the demand for U.S. exports.』

とまあ今の回復に関しても必ずしも万全でない、というのをアピールしているのでございまして、米国で年内(どころか下手したら秋とか)利上げとかいう話が出たり出なかったりするのはナンナンデショという気がするのですけどね。

それから労働市場に関しては「改善の動きがみられる」ものの、それは今の所フルタイム労働などには及んでおらず、サーベーイによる企業の行動はまだ大規模な新規設備投資や新規雇用にまでは及んでいないという話をしています。その結果として、

『A number of participants pointed out that the economic recovery could not be sustained over time without a substantial pickup in job creation, which they still anticipated but had not yet become evident in the data.』

ということで、「労働市場の回復無くして景気回復なし」(どっかで聞いたセリフだなおい)ってな話になっていまして、これまたそんなに簡単に引締めモードにならないんじゃないかなあとか外野的には思うのですが。

また、住宅セクターに関する懸念に関しても言及されていまして、こちらに関しては住宅減税関連措置が切れた所でどうなるのかという点を指摘していますな。なお、商業用不動産に関してはどうしようもないのですが、こちらに関しては現状の景気認識に関するところで散々書かれていますが割愛。

で、ここの最後の部分でもう一回インフレ見通しに関する話をしているのでして、「大事なことなどで2回言いました」ってなもんでしょう(違)。

『In discussing the inflation outlook, participants took note of signs that inflation expectations were reasonably well anchored, and most agreed that substantial resource slack was continuing to restrain cost pressures.』

『Measures of gains in nominal compensation had slowed, and sharp increases in productivity had pushed down producers' unit labor costs. Anecdotal information indicated that planned wage increases were small or nonexistent and suggested that large margins of underutilized capital and labor and a highly competitive pricing environment were exerting considerable downward pressure on price adjustments. Survey readings and financial market data pointed to a modest decline in longer-term inflation expectations over recent months.』

ただまあ一部の委員からはこのような指摘も。

『While all participants anticipated that inflation would be subdued over the near term, a few noted that the risks to inflation expectations and the medium-term inflation outlook might be tilted to the upside in light of the large fiscal deficits and the extraordinarily accommodative stance of monetary policy.』

ということで、財政支出の大幅拡大と金融政策の緩和的なスタンスが中期的なインフレ期待を引き上げるのではないかという指摘をしている人がまあいるのですが、先般来引用していますコーン副議長講演(もうちょっと引用すべき所が残っているのですが、現状の金融政策運営に関するインプリケーションとしては先週までに引用した部分でネタはほぼ終了しています)にありますように、現状では超過準備が直接的にインフレに作用していませんという話になっているので、先行きの景気見通しがそんなに強くないうちは中期的インフレ期待も引き続き抑制、というのが少なくとも議長とか副議長とかの認識なんじゃネーノって思うのでありました。


○償還乗り換えの変更に関して

前半の『Developments in Financial Markets and the Federal Reserve's Balance Sheet』というまあ要するに事務方報告みたいな部分の最後の方に「ふーん」という話が。

『The staff also briefed the Committee on potential approaches for managing the Treasury securities held by the Federal Reserve.』

ほいな。

『To date, the Desk had been reinvesting all maturing Treasury securities by exchanging those holdings for newly issued Treasury securities, but an alternative strategy would be to allow some or all of those Treasury securities to mature without reinvestment.』

これは「償還乗り換え方法の変更」という話ですな。ちなみに日銀では償還された買入中長期国債は1年物の短期国債に乗り換えて、それを更に1回短期国債に乗り換える事もできるし償還する事もできる(どちらにするのかは年度ごとに決めてたと思うのだが)のですが、まあそういう方式。以前は新発10年国債に乗り換えていたのですけどね。

#結果として日銀の長期国債買入は「成長通貨の供給」というよりは「長期の資金供給オペレーション(買った長期国債の残存期間+1年か2年の資金供給オペ)」的な性格が強まったのですがその話は以前もしましたよね

『Redeeming all of its maturing Treasury holdings would significantly reduce the size of the Federal Reserve's balance sheet over coming years and hence could be helpful in limiting the need to use other reserve draining tools such as reverse repurchase agreements and term deposits.』

そらそうなのだがその場合には財務省証券の市中消化が増えるのですけどね。

『Redemptions would also lower the interest rate sensitivity of the Federal Reserve's portfolio over time.』

FEDのポートフォリオの金利感応度を減らすっていうのは要するに「長期金利が上昇したらFEDのバランスシートが毀損する」という論点だと思いますが、そーゆー指摘をするんだと「ほほー」と思いましたですよ。

『Nevertheless, the initiation of a redemption strategy might generate upward pressure on market rates, especially if that measure led investors to move up their expected timing of policy firming.』

償還乗り換え方式の変更によって市場で金融引き締めの思惑から金利が上昇するんでネーノという指摘もしているのですが、それはまあはっきり言ってしらっと実行したら誰も気がつかないというのが日本の例だと思います(^^)。

『Participants agreed that the Committee would give further consideration to these matters and that in the interim the Desk should continue its current practice of reinvesting all maturing Treasury securities.』

ということで、まあ今後の検討課題という事ですけれども、結構ネタにしちゃったからこの件でも変な思惑が浮上する可能性もあるのかも知れませんね(少なくともFOMCではその辺を気にしているんですな)。


ということで虫干しネタ恐縮至極。よーするに「特にホーキッシュな話は無いっすけどねえ」という話でございました。

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2010/04/16

○コーン副議長が敢えてスルーしたと思われる論点。

今日は昨日の続きでは無く、ちょっと話を戻してみますね(^^)。

さてさて、一昨日と昨日引用したコーン副議長の講演の「長期資産購入の効果」に関する部分でございますが、何気に華麗なまでにスルーされている論点があるのをお気づきになられている方も多いのではないかと存じます。

つまりですな、「ところで長期財務省証券の買入の目的と効果はどうなっておられるのでございましょうか????」という論点でございまして、こればっかりはどうもコーンさん(というかFOMC的にというか)説明が苦しいので敢えて説明せずにスルーしたと言うことろでしょうか。

即ち、一昨日引用しましたように、長期資産買入の目的と効果をコーンさんは、

『Given the severity of the downturn, it became clear that lowering short-term policy rates alone would not be sufficient. We needed to go further to ease financial conditions and encourage spending. Thus, to reduce longer-term interest rates, like those on mortgages, we purchased large quantities of longer-term securities, specifically Treasury securities, agency mortgage-backed securities, and agency debt.』(3月24日講演)

という事で、長期金利を下げると思いっきり言っているのですが、じゃあ財務省証券の買入によって長期金利が下がったかと言えばその結果は皆様ご案内の通りで、アナウンスした瞬間は金利が下がりましたが、その後金利は絶賛上昇して、結局の所10年金利は買入のアナウンスをする前よりも上昇した状態が継続となっています。しかもコーンさんは同じ講演の中で買入の動機および効果として、

『One question involves the direct effects of the large-scale asset purchases themselves. The theory behind the Federal Reserve’s actions was fairly clear: Arbitrage between short- and long-term markets is not perfect even when markets are functioning smoothly; and arbitrage is especially impaired during panics when investors are putting an unusually large premium on the liquidity and safety of short-term instruments. In these circumstances, reducing the supply of long-term debt pushes up the prices of the securities, lowering their yields.』(3月24日講演)

通常の状態であれば、政策金利(=短期金利)の操作によって長期国債金利や長期のその他社債などの資産の金利に影響を与える事ができるが、通常の長短金利差などの鞘取りを市場参加者が行わないという状態になった場合に、直接的に金利を引き下げるということで買入を実施しました。で、その買入の効果は金利低下で測られますというような話が続くのですな。

然るに当時の状況を考えますと、確かにまあMBS市場とかどうしようも無い状態にあったのはその通りですが、一方で財務省証券市場は何の問題も無く普通に市場機能が堂々とワークしていた訳でございまして、その点からも何で長期財務省証券を購入したのかは全く持って意味判らんという話になります。

まあその辺を当然ながら自覚しておられるでしょうから、MBSやエージェンシー債の買入と財務省証券の買入を敢えて「Large-Scale Asset Purchases」の一言でごっちゃにするという荒業に出ているのではないかと存じます。


で、話をもっと昔に戻しますと、買入決定した時のFOMC議事要旨の時点ではどういう話をしてたかという事になりまする。

『In the discussion of monetary policy for the intermeeting period, Committee members agreed that substantial additional purchases of longer-term assets eligible for open market operations would be appropriate. Such purchases would provide further monetary stimulus to help address the very weak economic outlook and reduce the risk that inflation could persist for a time below rates that best foster longer-term economic growth and price stability. 』(2009年3月18日のFOMC議事要旨より、以下同様)

から始まる議論の部分なのですが。

『One member preferred to focus additional purchases on longer-term Treasury securities, whereas another member preferred to focus on agency MBS. However, both could support expanded purchases across a range of assets, and several members noted that working across a range of assets and instruments was appropriate when the effects of any one tactic were uncertain.』

まあそもそもかなりヤケクソ気味に突っ込んだというのは把握した。

『Members agreed that the monetary base was likely to grow significantly as a consequence of additional asset purchases; one, in particular, stressed that sustained increases in the monetary base were important to ensure that policy was consistently expansionary. 』

『Members expressed a range of views as to the preferred size of the increase in purchases. Several members felt that the significant deterioration in the economic outlook merited a very substantial increase in purchases of longer-term assets. In contrast, the potential for a large increase over time in the size of the balance sheet from the TALF program was seen as supporting a more modest, though still substantial, increase in asset purchases.』

最初の方で買入によるマネタリーベース拡大の話をしているのですが、まあ結局のところ、コーンさんの講演ではその直接的な物価や経済に与える効果は限定的って話になっているのがチャーミングという感じで、まあ再掲(去年の4月10日と13日にネタにしております)部分も多いのですが(汗)、結局財務省証券の買入に関する話が、従来の(この時までに行われていたFOMCにおける)ロジックであります所の、「機能不全に陥った市場の回復を行う」という個別市場介入理由とは違う点については結局華麗にスルーしたまま特攻したという感じですな。

でまあ特攻したのは良いのですが、それを引く時になってさてどうしましょというのが昨日引用したコーンさんの講演の最後の部分でありまして、講演の中では「経済が正常になってきた場合には超過準備を引く」という話をしているのですが、じゃあ本当にそれが可能なのかという話になると、まあ正直言って大丈夫かねという感じは思いっきりするのでございます。

まさか無理無理長期債売る訳にもいかないでしょうから、超過準備を持ちながら金利引き上げて、しかも実効FFレートが誘導難しいとか中々お洒落な事になるのかもしれませんね。とりあえずはバーナンキ講演にありますように(週末に読みます)景気見通しは厳しいですから当面その話にはならないのでしょうけれども、物価「だけ」上がって来ると中々お寒い気がします。

#ごちゃごちゃとあまり纏まって無くてどうもすいません

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2010/04/15

ではコーン副議長講演(虫干しネタ)の続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

○資産買入によって拡大したリザーブの効果についてが次の論点です

『A second issue involves the effect of the large volume of reserves created as we buy assets.』

ということで「資産買入によって形成された」巨額のリザーブの効果に関する論点にやっと辿り着きました^^(段取りが悪いだけというツッコミはしないように)。

『The Federal Reserve has funded its purchases by crediting the accounts that banks hold with us. Those deposits are called "reserve balances" and are part of bank reserves.』

さいですな。


○リザーブの拡大は副次的な話でメインの経路やはり金利引き下げ

で、その次の説明ではコーンさんこんな事を。

『In our explanations of our actions, we have concentrated, as I have just done, on the effects on the prices of the assets we have been purchasing and the spillover to the prices of related assets.』

これは昨日ご紹介した中にもあったと思いますが、FRBが資産買入によって想定した政策パスは「対象資産の金利を引き下げること」という直接的なものに加え、低金利による所謂「ポートフォリオリバランス効果」によって他の資産クラスにも価格上昇の効果が及ぶという形、即ち基本的に「金利」パスによる効果を見込んでいるという話ですな。


○特定の経済状況においてはリザーブ拡大の効果は単独では乏しいという見解

『The huge quantity of bank reserves that were created has been seen largely as a byproduct of the purchases that would be unlikely to have a significant independent effect on financial markets and the economy.』

(拙訳)FRBによる大規模な資産買入プログラムによって形成された巨額の銀行リザーブは主として買入の副産物として作られたものであり、それ単独で意味のある効果を金融市場や経済に影響を与えるという事では無さそうです。

#えーっとですね、この文の2番目のthatが関係代名詞なのか接続詞なのか良く判らんのですが(あほ)、以下引用する文章の流れからするとthatは購入じゃなくてリザーブにかかるような気がするのでそう読んだのだがどうでしょ

『This view is not consistent with the simple models in many textbooks or the monetarist tradition in monetary policy, which emphasizes a line of causation from reserves to the money supply to economic activity and inflation.』

(拙訳)この見方は多くの教科書やマネタリストの伝統的な金融政策に関する見解にある単純なモデルが示す、リザーブの形成が直線的な因果関係をもってマネーサプライや経済活動やインフレに影響を与えるという考えとは一致しません。

『Other central banks and some of my colleagues on the Federal Open Market Committee (FOMC) have emphasized this channel in their discussions of the effect of policy at the zero lower bound. According to these types of theories, extra reserves should induce banks to diversify into additional lending and purchases of securities, reducing the cost of borrowing for households and businesses, and so should spark an increase in the money supply and spending.』

(拙訳)他の中央銀行やFOMCの数人のメンバーなどにはゼロ金利制約の下でのリザーブ形成の直線的な因果関係の効果を強調する人もいます。このタイプの考えでは、銀行に超過準備があることによって、銀行が追加の貸出や証券購入を行うように仕向けられる為、家計や企業の借り入れコストの引き下げに繋がり、それによってマネーサプライや消費の拡大につながるであろうという事になります。

『To date, that channel does not seem to have been effective; interest rates on bank loans relative to the usual benchmarks have continued to rise, the quantity of bank loans is still falling rapidly, and money supply growth has been subdued. Banks' behavior appears more consistent with the standard Keynesian model of the liquidity trap, in which demand for reserves becomes perfectly elastic when short-term interest rates approach zero. But portfolio behavior of banks will shift as the economy and confidence recover, and we will need to watch and study this channel carefully.』

(拙訳)今日では、上述した経路による効果は乏しいと見られます。銀行の貸出ベンチマーク金利は上昇を続けていますし、銀行ローンは依然として急速に減っています。そしてマネーサプライの増加は抑制されています。銀行の投融資行動は、標準的なケインジアンの示す流動性の罠のモデル、短期金利がゼロに到達した場合にリザーブへの需要が完全に弾力的になる(直線的な因果関係がなくなる)という状態により近いようにみられます。しかし、銀行の投融資行動は経済状態やコンフィデンスが回復してきた場合には今日の状態からシフトすると思われますので、我々はこの超過ザーブの効果についての注意深い研究および観察をしないといけません。


とまあそういうことで、超過準備に関する話ですが、米国の現状においては資産買入によってもたらされた超過準備がそれ単体でマネーサプライを通じて効果を与えるというマネタリスト的な経路で効く訳ではなく、現状ではケインジアンモデルの流動性の罠状態に陥っているという話をしていますが、経済状況が好転した場合にはその限りでは無いという話をしていまして、この辺りに関しては銀行の投融資行動を見ていく必要があるという話ですな。

つまり、その辺りの活動がどう動いているのかによって、将来の出口政策における流動性吸収の速度(ちんたら吸収するのか過激に吸収するのか)も見えてくるのではないかというのが政策インプリケーションとなるのではないでしょうか。



○長期資産を沢山買った場合の期待形成に関する話

リザーブの話の次は別の論点。

『Another uncertainty deserving of additional examination involves the effect of large-scale purchases of longer-term assets on expectations about monetary policy.』

長期資産を大規模に購入した場合の金融政策への期待形成に関する論点とな。

『The more we buy, the more reserves we will ultimately need to absorb and the more assets we will ultimately need to dispose of before the conduct of monetary policy, the behavior of interbank markets, and the Federal Reserve’s balance sheet can return completely to normal.』

より多くの長期債を買うと平常に戻す時により多くの吸収や資産の売却などが必要になると。

『As a consequence, these types of purchases can increase inflation expectations among some observers who may see a risk that we will not reduce reserves and raise interest rates in a timely fashion.』

(拙訳)結果として、長期資産を大規模に購入した場合、中央銀行がバランスシートをタイムリーに平常状態に戻す事が困難になるリスクを意識する向きに対してインフレ期待を引き上げる効果があります。


『In fact, longer-term inflation expectations generally have been quite well anchored over the past few years of unusual Federal Reserve actions. And we are developing and testing the tools we need to remove accommodative monetary policy when appropriate. I am confident the Federal Reserve can and will tighten policy well in advance of any threat to price stability, and successful execution of this exit will demonstrate that these emergency steps need not lead to higher inflation.』

(拙訳)実際問題として、ここ数年のFRBによる異例の金融政策の実施にも関わらず、長期的なインフレ期待は一般的に非常によくアンカーされています。そしてFRBは適切な時点で緩和的な金融政策を終了させる為のツールを作り、テストしている所です。私はFRBが望ましくないインフレが発生する前に十分に金融引き締めを行うであろうし、それは可能だという事を確信しています。そして、この出口政策の成功によって、FRBがこれまで実施した緊急措置が高インフレを招かない事の証明となるでしょう。


てなわけで、後半でこのような話があるという事は、リザーブ(あるいはFEDのバランスシート)拡大によるインフレ懸念の拡大に水を差そうという意識もあるのではないかという気もせんでもないので、前半における「リザーブの効果」の話もやや「効果は単独では無いですよ」の強調に軸足を置いているという可能性もあるのかなあとも思うのでありました。


#なお続くのですがまた後日(汗)

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2010/04/14

コーン副議長講演(虫干しネタ)の続き。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf


○資産買入の話の前にしらっと時間軸の話

本文5ページ(PDFファイルの6ページ目)の『Large-Scale Asset Purchases and the Buildup of the Reserve Base』(大規模な資産購入と超過準備の積み上がりに関して)というお題の部分が中々興味深く読めたのでありましてその部分から。

まず最初に資産買入に至るまでの経緯に関しての簡単な話があります。こちらでは、利下げで短期金利をゼロ近くに下げ、その後は金融政策の先行きのパスを示すことによって更に緩和的な金融環境を作るという時間軸っぽい話をしらっとしているのがチャーミング。

『The Federal Reserve and other central banks reacted to the deepening crisis in the fall of 2008 not only by opening new liquidity facilities, but also by reducing policy interest rates to close to zero. Such rapid and aggressive responses were expected to cushion the effects of the shock on the economy by reducing the cost of borrowing for households and businesses, thereby encouraging them to keep spending.』

ここまでが金利を下げた話。

『In addition, the Federal Reserve and a number of other central banks have provided more guidance than usual about the likely future path of interest rates to help financial markets form more accurate expectations about policy in a highly uncertain economic and financial environment.』

時間軸ですなあ。で、その次も同じくその説明の続きです。

『In particular, we were concerned that market participants would not fully appreciate for how long we anticipated keeping interest rates low. If they hadn’t, intermediate- and longer-term rates would have declined by less, reducing the stimulative effect of the very low policy rates.』



○資産買入は金利引き下げを目的にしたとな

で、その後が資産購入を行いましたという話ですが、ここまでのマクラから判るように、資産買入は金利の引き下げを目的にしているという説明をしているのでありました。

『Given the severity of the downturn, it became clear that lowering short-term policy rates alone would not be sufficient. We needed to go further to ease financial conditions and encourage spending. Thus, to reduce longer-term interest rates, like those on mortgages, we purchased large quantities of longer-term securities, specifically Treasury securities, agency mortgage-backed securities, and agency debt.』

ということで、政策金利(=短期金利)の引き下げだけでは不十分になったので、我々は財務省証券やエージェンシーMBSやエージェンシー債を大量に買いましたって言ってるので、やっぱり資産買入は金利引き下げを目的にしたとな。


○次の課題は資産買入の効果およびリザーブの拡大の効果の検証とな

『Central banks have lots of experience guiding the economy by adjusting short-term policy rates and influencing expectations about future policy rates, and the underlying theory and practice behind those actions are well understood. However, the economic effects of purchasing large volumes of longer-term assets, and the accompanying expansion of the reserve base in the banking system, are much less well understood.』

(拙訳)中央銀行が短期金利を調節したり、先行きの政策パスへの期待を示すことによって実体経済に影響を与える効果については多くの実績および理論があります。しかし、中央銀行が大量に資産を購入し、その結果をして民間銀行のリザーブが拡大する事に関する効果についてはあまり経験も無く理解も不十分です。

『So my second homework assignment for monetary policymakers and other interested economists is to study the effects of such balance sheet expansion; better understanding will help our successors if, unfortunately, they should find themselves in a similar position, and it will help us as we unwind the unusual actions we took.』

(拙訳)従いまして、金融政策担当者や、金融政策に関連するエコノミストにとっての2番目の研究課題は、これらのバランスシート拡大の効果を検証することです。より良い理解をする事によって、将来不幸にも似たような事が起きた場合の助けにもなりますし、我々が行った政策を通常に戻す場合の参考にもなるでしょう。

ということで、この課題なのですが、実は2つのパートに分かれていまして、最初に、

『One question involves the direct effects of the large-scale asset purchases themselves.』

と、買入そのものに関する直接的な効果についての検証が課題になっておりまして、その後、

『A second issue involves the effect of the large volume of reserves created as we buy assets.』

と、買入によって引き起こされたリザーブの拡大の効果の検証が課題になっているのです。


○買入の直接効果は市場の新規供給量対比なのか市場残高対比なのか

『One question involves the direct effects of the large-scale asset purchases themselves. The theory behind the Federal Reserve’s actions was fairly clear: Arbitrage between short- and long-term markets is not perfect even when markets are functioning smoothly; and arbitrage is especially impaired during panics when investors are putting an unusually large premium on the liquidity and safety of short-term instruments. In these circumstances, reducing the supply of long-term debt pushes up the prices of the securities, lowering their yields.』

まず最初に買入をして金利を下げる理屈についての説明がありますが、ここでは流動性供給プログラムを実施する時と同じような背景の説明を行っています。即ち、上の文中にありますように、「短期金利と長期金利の間の鞘を取りに行く動きよって短期金利が長期金利に影響を与えるのだが、金融危機によって引き起こされた市場機能低下の中においては、その動きが機能しにくくなるので、長期資産の購入を行う事によって、当該証券の価格を引き上げ金利を下げる」という話をしています。

でですな、それってFRBが流動性供給プログラムを次々実施していく中で「市場が機能しなくなっている所にFRBが市場機能の代替をする」という理屈をだしていたので、それはその通りなのですが、では何故機能が喪失している訳でもない財務省証券の購入を行ったのよ???というツッコミをしたくなる所ではございますけれども、その部分に関してはこの先でもごにょごにょとした説明になっています。

それから、上記説明の中で「長期資産のサプライを減らせば金利は下がる」という話をしてまして、そらまあ需給だけ見たらそういう話になりますし、極端にサプライを減らせばそらまあ金利も下がるのですが、少々の変化の場合は需給だけではなく、別のファクターが効いてくるのではないかと思われるので、単純に「買入をすれば金利が下がる」というもんでも無いと思います。

まあそんな話がその次に。

『But by how much? Uncertainty about the likely effect complicated our calibration of the purchases, and the symmetrical uncertainty about the effects of unwinding the actions--of reducing our portfolio--will be a factor in our decisions about the timing and sequencing of steps to return the portfolio to a more normal level and composition. Good studies of these sorts of actions are sparse. Currently, we are relying in large part on studies that examine how much interest rates dropped when purchases were announced in the United States or abroad. But such event studies may not be an ideal means to predict the consequences of reducing our portfolio, in part because the economic and financial environment will be very different, and also because event studies do not measure effects that develop or reverse over time. We are also uncertain about how, exactly, the purchases put downward pressure on interest rates.』

では効果を量的に考えた場合どうなのよという事ですが、これがまた効果を測定するのは難しいですなという話ですけど、一つの考え方として、買入のアナウンスを行った時にどの位金利が低下したかというものがあるでしょう、と指摘しています。ただし、環境が違うのでそれを出口に当てはめる場合には当てはまるかどうかは不明確ですし、将来に行う場合にも当てはまるかどうかは不明確ですね、という前提をおきつつ何となくのコーンさんのまとめがその次に。

『 My presumption has been that the effect comes mainly from the total amount we purchase relative to the total stock of debt outstanding. However, others have argued that the market effect derives importantly from the flow of our purchases relative to the amount of new issuance in the market. Some evidence for the primacy of the stock channel has accumulated recently, as the prices of mortgage-backed securities appear to have changed little as the flow of our purchases has trended down.』

(拙訳)私の推測では、資産購入による金利引き下げ効果は、主に当該資産の市場残高に対して我々の資産購入額がどのくらいの割合であったかによって、その度合いが決まっていたのではないかと考えています。しかしながら、当該資産の市場残高ではなく、新規に発行される額との対比で効果が定まるという意見も別にあります。ただし、最近の市場動向を見ますと、我々がモーゲージ債の買入を減らして行く中で、モーゲージ債の価格に大きな変化が見られていませんので、前者の推測の方が正しいのではないかという見方ができるかもしれません。


ということで、本当は次の拡大したリザーブベースの話がメインイベントなのですが、例によって前座で終了してどうもすいませんすいませんm(__)m

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2010/04/12

今日はこれまた昔のネタですいません。

http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/kohn20100324a.pdf

URL見れば判りますように、3月24日の講演なのですが、これが読んでいると非常に面白くて、マジになって読んでいたら(あたくしの頭がアレなので)中々読めなくて時間が掛かった(というかまだ精読が最後まで行けていない)のであります(汗)。

お題は『Homework Assignments for Monetary Policymakers』ということで、金融政策に関する幾つかの論点についてコーン副議長の見解を示しているのですが、ひじょーに興味深いのです。で、PDFで16ページ(本文は実質14ページ程度)と結構量があるので、多分1回では無理だと思います(と最初から言い訳)ので念の為申し添えます。


○主要な4つのお題とは

『The events of the past few years have raised many questions for central bankers.』から始まるこの講演ですが、4つの課題を挙げられるということで、最初にその4点について説明しています。

『I’ve titled my presentation “Homework Assignments” because I don’t think the answers are clear, though I will venture some tentative thoughts. I have four assignments on my list; I could easily have more. And others would have yet a different list. I recognize that the complexity of these questions could keep us profitably engaged for a whole semester, but let’s see if I can outline some of the challenges and possible responses in an evening.』

ということで、その4つの宿題となる研究課題のポイントですが、

『The first two assignments concern the policy actions the Federal Reserve and other central banks took during the financial crisis.』

ということで、最初の2つは金融危機下に実施した政策に関するポイントですが、1つ目が各種流動性供給プログラムに関しての話、2つ目が資産購入プログラムとそれによって起きた超過準備の効果に関する話で、この2つ目に関する話は後で出てきますが中々面白いです。

『One assignment is to evaluate the implications of the changing character of financial markets for the design of the liquidity tools the Federal Reserve has at its disposal when panic-driven runs on banks and other key financial intermediaries and markets threaten financial stability and the economy.』

『My second assignment involves improving our understanding of the effects of those purchases and the associated massive increase in bank reserves.』

んでもって3番目と4番目は平常時における金融政策に関する問題でして、3番目は「資産価格の不必要な変動に対して伝統的な金融政策を割り当てるべきか」という話で、4番目は「政策金利のゼロ下限制約到達を避ける為にインフレの目標数値(でも参照数値でもいいけど)を調整すべきかという話ですな。

『The third and fourth assignments relate to whether changes to the conduct of monetary policy in normal times could make financial instability and its wrenching and costly economic consequences less likely. 』

『Number three involves considering whether central banks should use their conventional monetary policy tool--adjusting the level of a short-term interest rate--to try to rein in asset prices that seem to be moving well away from sustainable values, in addition to seeking to achieve the macroeconomic objectives of full employment and price stability. 』

『The fourth and final assignment concerns whether central banks should adjust their inflation targets to reduce the odds of getting into a situation again where the policy interest rate reaches zero.』


○流動性供給プログラムの今後の課題について

で、最初の所では各種流動性供給プログラムの実施の話がありまして、その中の経緯としては「市場機能が喪失して通常の金利政策が効かなくなっている」為に実施したとか、ディスカウントウィンドウのStigma問題から各種プログラムを工夫したというような話がありますが、まあこの辺はバーナンキ議長の議会証言などでも示されている話なので割愛しまして、さてまあ各種流動性措置を終了して行く中での今後の課題というのを最初の課題にしています。

講演4ページ(PDFだと5ページ目)の後段のパラグラフからになりますが、(拙訳)というのはあたくしが勝手に辞書引き引き訳してみたもの(自分が読んで判るように適当に補足も入れているので一部余計な文言があるかも)でして、正直全然本文のテイストが出ていないと思うのですが、まあ「おまえここがおかしい」とかいうのあったら指摘して下さると誠に幸いでございますので一つ皆さん宜しく(汗)。

『The homework assignment is to think about the design of liquidity facilities going forward. I’ve tentatively concluded that the recent crisis has demonstrated that in a financial system so dependent on securities markets and not just banks, we need to retain the ability to lend against good collateral to certain groups of sound, regulated, nonbank financial firms.』

(拙訳)今後の研究課題は今後の流動性供給プログラムの設計の検討です。私が試みに纏めてみると、直近の金融危機は金融システムが銀行ではなく、証券市場に過度に依存した為に引き起こされた面があり、我々は銀行だけではなく、内容が優良な銀行以外の金融市場参加者に対して、優良担保を取った上での貸付手段を保持する必要があります。

『I’m not suggesting that we establish permanent contingency liquidity facilities, just that the Federal Reserve retain the authority to create the tools necessary to meet liquidity needs of groups of nonbank institutions should a panic impair the ability of securities markets, as well as banks, to function and the Board of Governors find that the absence of such functioning would threaten the economy. The collateral would have to be of good quality and the institutions sound to minimize any credit risk to the Federal Reserve.』

(拙訳)私は緊急的な流動性供給プログラムを永久的に実施すべきという訳ではありません。FRBは金融パニックが発生して金融市場などの流動性が枯渇して市場機能が喪失し、実体経済を悪化させる事の無いように、銀行同様に証券市場参加者の銀行以外の主体に対しても流動性供給手段を保持すべきであるという見解です。FRBのクレジットリスクを極小化する観点から、その流動性供給においては優良担保で、かつ優良な主体に対して行われるべきでしょう。

なお、この部分で脚注がありまして、AIGへの貸付に関する説明があります。AIG自体は優良かというとこれがまた微妙なので、「AIGを破綻させると金融市場がとんでもなく混乱するから救済した」という話をしています。

『Holding open this possibility is not without cost. With credit potentially available from the Federal Reserve, institutions would have insufficient incentives to manage their liquidity to protect against unusual market events. 』

(拙訳)FRBがそのような手段を保持する事はコストが無い訳ではありません。FRBからの流動性供給が潜在的に確保されているという認識があると、それら金融市場参加者は自分たちの流動性(が最終的にFRBに担保されるので)をマーケットのイベントリスクから守る事に対するインセンティブが低下します。

『Hence, the emergency credit would generally be provided only to groups of institutions that were regulated and supervised to limit such moral hazard. If the Federal Reserve did not directly supervise the institutions that would potentially receive emergency discount window credit, we would need an ongoing and collaborative relationship with the supervisor. The supervisor should ensure that any institution with implicit access to emergency discount window credit nevertheless maintained conservative liquidity policies. The supervisor would also provide critical insight into the financial condition of the borrower and the quality of the available collateral and more generally whether lending was necessary and appropriate.』

(拙訳)それゆえに、緊急対策としての流動性供与を行う相手としては、一般的には各種の規則や監督に服する主体に対して限定して行うようにするのが望ましいでしょう。もし、FRBが緊急連銀貸出制度を受ける事のできる主体に対して直接的な監督を行わない場合には、関係する監督当局と常時継続的な協力体制を結ぶ必要があるでしょう。監督当局は、緊急流動性供与を受ける事のできる主体に対しては、その流動性プログラムへのアクセスとは別の流動性確保のポリシーを持たせるべきでしょう。そして、監督当局は同時に、流動性供給プログラムの借入人の金融市場における状況や、担保余力、また一般的にその貸出が必要かつ適切であるかについて、常に批判的な見方を忘れずに精査をすべきでしょう。


・・・・とここまでヘタクソ訳をしたら時間が無くなったのですが(汗)、最初の課題に関する部分はここまでであります。今後の展開という話ですが、各種流動性供与措置を銀行以外にも供与する(日銀はそーゆー意味では日銀当座預金取引先が証券会社やら地域金融機関やらと多いので、既にそれは可能となっていますな)事の重要性についての説明と共に、その流動性供給措置が一種の制度ただ乗りを引き起こさないようにする為に監督が必要(日銀はそーゆー意味では当座預金取引先への検査やらモニタリングやら行っていますな)だという話をしているのが、中々興味深く読めましたです、はい。

#あと3つも課題があるのにこんな調子でいつ終わるのやら(大汗)

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2010/04/09

お題「月報と総裁会見のトーンが違うのだが・・・・」

まずは月報(ただし概要部分のみ)比較から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1004.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp1003.pdf(前回)

○月報のトーンを見ると「判断前進」とは普通言わんと思うのだが

という小見出しで正直話は終了しているのですが(^^)、例によって例の如く比較するとこれがまた全然変わらんのよ。

・現状判断

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(今回)

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(前回)

というのは声明文の比較で申し上げたのと同じですが、ここの所持ち直しって言ってるのが「続けている」と入ったのでそりゃまあ表現としては少し強くなったっちゃあ強くなったのですが、これを判断前進というのかよという論点については本石町日記さんがブログネタにしていますのでご参照ありたし(^^)。

その次の需要項目に関しては設備投資の所だけが変わっているのでして・・・・

『輸出や生産は増加を続けている。企業の業況感は、引き続き改善している。設備投資は下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりつつある。この間、公共投資は減少している。』(今回)

『輸出や生産は増加を続けている。設備投資は概ね下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。住宅投資は下げ止まりつつある。この間、公共投資は減少している。』(前回)

えーっと、ここでは設備投資が「下げ止まりつつある」から「下げ止まっている」に変化したのと、短観を受けた企業景況感に関する言及だけ変化しているのですな。まあ声明文と同じですが。


・先行き見通し

で、先行きに関してですが、昨日ご紹介した声明文比較では、前回あった「2010 年度半ば頃までは」というのが「当面」に変わっているのはどういう意味でしょうなという事を書きましたが、月報ベースでの表現は前回も今回も同じですな。

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものとなると考えられる。』(今回)

『先行きについては、景気は持ち直しを続けるが、当面そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。』(前回)

いつもは並べないのですが、念の為並べてみました(^^)。全く同じでございますので、これはやはり声明文の違いは単に「2010年度半ば頃」という時間が手前にやってきた事によるものと解釈するのが妥当のようですね。

項目別判断も同様に全く同じですので今回分だけ引用。

『すなわち、輸出や生産は、増加ペースが次第に緩やかになっていくとみられるが、海外経済の改善が続くもとで、増加基調を続けるとみられる。設備投資は、収益が回復しているものの、設備過剰感が強いことなどから、当面はなお横ばい圏内にとどまる可能性が高い。個人消費も、各種対策の効果が下支えに働くものの、厳しい雇用・所得環境が続く中、当面、横ばい圏内で推移するとみられる。この間、公共投資は、減少を続けるとみられる。』(今回)


・物価の現状判断

これまた前回と全く同じです。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、製品需給緩和の影響が続く一方、国際商品市況高の影響から、足もとは強含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)

先行き判断に関しては、消費者物価の判断を若干引き上げていますね。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、基調的にみれば下落幅が縮小していくと予想される。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、強含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面は現状程度の下落幅で推移したあと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、下落幅が縮小していくと予想される。』(前回)

ということで、消費者物価の部分で「現状程度の下落幅で推移」という部分が抜けた所が判断を引き上げになっています。なお、「基調的にみれば」という部分は高校授業料無償化によるCPI押し下げ(▲0.5%弱)を意識した部分ですな。


・金融環境が謎なのだが・・・

金融環境に関してですが、市場の価格動向はまあ事実関係であって判断項目ではないのでスルーして、金融環境の総括判断に関して。

『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが強まっている。』(今回)
『わが国の金融環境は、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(前回)

というのは声明文にあったように変化しているのですが、各項目を見ると特に表現に変化が無いのが謎でございます。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは、低下傾向が続いている。実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』(今回)

『資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、なお厳しいとする先が多いものの、改善している。CP・社債市場では良好な発行環境が続いており、低格付社債の発行環境にも改善の動きがみられている。資金需要面では、企業の運転資金需要、設備資金需要とも後退しているほか、一部に、これまで積み上げてきた手許資金取り崩しの動きもみられている』(今回)

とまあこの部分なのですが、前回と変化しているのは低格付社債の発行環境だけでございまして、今回は「改善の動きがみられている」と前回の「CP・社債市場では、低格付社債を除き、良好な発行環境が続いている」から判断を前進させていますが、まさかこれを持って「緩和方向」という事では無いと思いますのでどこでどう「緩和方向」としたのか謎でございます。

まあ本文中身をもっと読み込めば良いのかもしれませんが(汗)


・ということで

ま、そんな訳でして、月報全体でみるとそんなに前進をしているようには見えないので、声明文を最初に見た時の印象とそんなに変わらないという所でございます。問題は総裁会見なのよね・・・・・・


白川総裁会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1004a.pdf

○たぶん短観の数字が良いからやたらと強気のトーンになっているのではないかと

報道ベースでも強気ヘッドラインが並んでいましたが、会見要旨でも妙に強気な物言いっぷりが並んでいますが、現在の問題は循環的部分での景気がどうこうではなくて、ベースとなっているデフレに対しての戦いをしているのでは無かったか(つまり循環要因が回復しているからと言って肝心のデフレ脱却姿勢の手を緩めるような事をしちゃダメでしょという意味ね)という所ですな。

何せ最初の所で「判断を一歩進めました」ですからねえ・・・・

『こうした決定の背景となる経済・物価情勢についてご説明します。まず、わが国の景気については、「国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている」と判断しました。景気持ち直しの持続傾向がより明らかになってきたことを踏まえて、先月から一歩判断を進めました。』

で、本石町日記さんのブログによりますと想定問答では「心もち前進」だったようなので、短観を見て大喜びした総裁様大喜びで強いトーンの話をしたという事でしょう。まあのっけから上記のような状態ですので先行きの説明でもこのような感じです。

『先行きについては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高いとみています。一頃は市場等の一部で、二番底を懸念する見方もありましたが、そうした懸念はかなり薄れたと判断しています。また、その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるため、成長率は徐々に高まってくると予想しています。』

まあ確かにここもとの指標など見てると2番底懸念はかなり後退しているというのはその通りでござんすがね。


○展望レポートで上方修正するんでしょうな

判断を前進させたということは上方修正ですかという質問に対して。

『1月に実施した中間評価との関係でみると、概ね想定の範囲内、あるいは幾分上振れているなど、人によって評価には若干ニュアンスの差がありますが、いずれにせよ、私どもは今、当初想定していたシナリオを確認できています。今回、その中心的な見通しを上方修正したのかというご質問ですが、そのことについての点検は、次回の展望レポートを議論する金融政策決定会合で行いたいと思っています。』

どう見ても上方修正です本当にありがとうございました。いやまあそれは市場的にも想定されている(景気ウォッチャーも良かったですし、本職の皆様がGDP予想を引き上げてますよね)次第。で、その理由ですが。

『先程、判断を一歩進めたと申し上げた意味を、今一度ご説明します。第1に、景気の持ち直しの持続性について明確になってきた、特に、一頃言われていた二番底の懸念はかなり薄れたということです。第2に、個別の需要項目をみると、今回、設備投資については、従来の「概ね下げ止まり」から、一歩進めて、「下げ止まり」と判断しました。それから、先行きの自律回復の芽、萌芽がいくつかみられます。そうしたことを念頭に置きながら、次回の展望レポートを議論する金融政策決定会合で、包括的に点検していきたいと思います。』

まあ何か良く判らんがここもとの環境改善で総裁がご機嫌になっているというのは把握した。


○物価に関するツッコミにも妙に元気な切り返し

短観の販売価格判断DIが改善していない件について(ちなみに仕入価格判断は上昇しているのでマージンが悪化方向なのですが)質問されたのですが、妙な答えになっている気がする。

『(答) ご質問の通り、先般公表した短観では、企業の販売価格判断DIはやや大きな下落超となっています。こうした動きは、製商品あるいはサービスの需給判断DIが引き続き大きな供給超となっていることにも現れています。つまり、需給バランスが悪化した中での厳しい競争環境などを背景に、販売価格の引き上げがこれまでのところ限定的であることを示していると思います。もっとも、この下落超幅の大きさ自体は2002〜03 年頃に比べると小幅にとどまっている上、このところは緩やかな縮小もみられます。』

いやあのそんな時期と比べてマシだからマシとか言われましても。

『この先の物価の基調をどうみるかということですが、需給バランスの動向と人々の予想物価上昇率が重要になります。この点、中長期的な予想物価上昇率に大きな変化がみられない中で景気は持ち直しを続けており、これに伴う需給バランスの改善は時間的なラグを伴いつつも物価に波及してくると判断しています。そのため、今後の物価下落幅はさらに縮小し、販売価格判断DIも徐々に改善していくとみています。』

えーっと、先般日銀が実施した生活意識アンケートで先行き5年間の物価見通しは順調に低下(9月、12月、3月調査の平均値がそれぞれ+3.9%、+3.5%、+3.0%)しているのですが・・・・と思ったらさすがに後ろの方でツッコミがありまして、それに対する答え。

『1年前に比べ物価が下がったとみる割合が約4割まで増えたということですが、これは現実に消費者物価が前年に比べて下がっているわけですので、物価が下がっていると答える家計が多いということは、そうしたマクロのデータと整合的だと思っています。予想物価上昇率については、この先向こう1年間、向こう5年間がどうかということが問題になってくるわけですが、先々については、中央値の低下は観察されていません。』

『これは多少技術的なことになりますが、物価上昇率に関するアンケートの個別の回答結果をみると実に散らばりが大きいです。今、現実に消費者物価指数がマイナスになっていますが、現時点での評価でも大変高いプラスという回答の方もいれば、大変に低いマイナスという回答の方もいます。平均値では、ある程度上下の極端な値を調整しないとなかなかみにくいと思います。私どもは、平均値のほかに中央値を注意してみていますが、中央値では、向こう1年、あるいは向こう5年の変化は特にないという結果です。その意味では、「生活意識に関するアンケート調査」の数字はこれはこれとして注意してみていますが、様々な指標を含めて注意してみていきたいと考えています。』

・・・・いやあのまた物価に関する非対称性のやぶれですかそうですかという感じなんですけど。だったら最初から平均値公表すんなやボケという感じでございますが何なんでしょこの言いくるめモードは。


○まあ景気に関してはやたら回復感強調していますね

全体のトーンとして強いですねというのはありますが、特に5ページ目の所での説明を見ると「こりゃ公表文より総裁の方が上方修正モードだわ」というのが伝わって来る感じっすな。長いけど全文引用します。

『(答) まず、景気の自律回復の芽とは何であるかについてです。今回、企業部門については、企業収益が改善していることが確認されました。3月短観はちょうど決算月でもあり、最終的に収益の数字が固まっていないという時期の数字ですので、2009 年度の最終的な数字や2010 年度の見通しは、多分上振れる可能性が高いとみています。そうした過去のパターンやこの景気局面の中での企業収益をみると、企業収益が着実に改善してきていると思います。』

『設備投資については、今はまだ下げ止まった段階にありますが、既に設備投資の水準が相当下がった水準であるだけに、企業収益が改善し、世界経済が全体として持ち直していることを併せて考えると、今後増えてくることも想定されます。』

『今回の短観は、2010 年度の設備投資計画のスタート時点でしたが、前年比伸び率は過去の平均並みのスタートでした。景気が悪い時にはもちろんここから下方修正されていくことになりますが、景気が上向いていくときにはここから上方修正されていくことになります。過去の平均的なパターンからすると、数パーセントのプラスになってきますし、景気の回復がもう少し着実なものになれば、さらに上乗せされてくることも考えられます。』

とりあえず短観を見て物凄くご機嫌になっているのは把握した。しかもよくよく読むと先行きに関しては「ここもとの上向き傾向が続くから大丈夫大丈夫」ってな感じで、相場が強くなると強気になる人みたいなテイストですな。

『次に消費、家計部門について考えてみます。消費を規定する最も大きな要因は雇用および賃金の動向です。これまでは非常に大きな雇用不安があり、現実に雇用情勢が悪化してきたわけですが、ここ数か月の動きをみると、雇用の悪化には明らかに歯止めがかかってきたと思います。雇用関係、労働関係の統計は振れが大きいため、ある程度の期間をみて判断する必要がありますが、これが下げ止まりから少しずつ改善してきているということは、消費を規定する最も基調的な要因が改善しているということです。ただ、この点も含めて包括的な点検を展望レポートを議論する次の金融政策決定会合で行いたいと思っています。』

はいはい強気強気。

『それから2点目の物価についてですが、先程申し上げたことに特に加えることはありません。物価については、景気が全体として持ち直しており、マイナスの需給ギャップが縮小していく方向にあるわけですから、ラグを経て物価の下落幅が縮まっていくというのが現在のシナリオです。それが正確にどの程度のものになるかということについては、次回の展望レポートで包括的に点検してお示ししたいと思っています。』



○で、例の副作用発言

これは見事な引っ掛け質問。

『(質問の前半部分を割愛)3つ目は、景気についてです。予想の範囲ということなのかしれませんが、幾分上振れしているという話もあります。5月下旬に公表されるGDPも相当強いものになるだろうという予想が出てきていますが、そのような中で量的緩和も含めた緩和政策を持続する必要がどうしてあるのか、あるいはそれに伴う副作用はないのかをお聞かせ下さい。例えば、足許の円安に表れているように円キャリートレードのような動きが出始めているとみる向きもあると思いますが、金融緩和の長期化による副作用はないのでしょうか。』

・・・・・これ狙って質問してるでしょ(−−)

で、対応する回答部分。

『3つ目の、現在の金融緩和を持続することによって弊害・副作用がもたらされるのではないかという点についてです。まず、私どもはいわゆる量的緩和政策を採用しているわけではありません。量は潤沢に供給していますが、当座預金残高をターゲットにして金融政策を運営しているわけではもちろんありません。』

まあここまでは良い。

『しかし、現在のように世界で最も低い金利で量を潤沢に供給していると、今後もこのような状況がずっと続くという予想が生まれ、これが副作用をもたらさないのかということは大事な論点です。』

大事な論点かもしれないが今はデフレ脱却最優先じゃなかったんですか????

『ご質問にありました円キャリートレードについては、若干の動きはありますが、これが大規模に起きているわけではないと認識しています。ただ、この点も含めて金融緩和が長く続いた場合に経済に様々な不均衡をもたらし、それが少し長い時間をかけて蓄積し、最終的に大きなショックを経済にもたらすことがないかどうか、これは大事な論点だと思います。』

もうね、足元の経済の問題は循環的な問題じゃなくてデフレだってこの前あんたら言ってませんでしたっけ?????

『だからこそ、日本銀行はいわゆる2つの柱の枠組みの中で点検を行っているわけです。第2の柱は、様々な金融的な不均衡についても明示的に点検をして、そうした点検を踏まえた上で金融政策を運営していくということです。そのような必要性があるということについては、今回の決定会合を含めていつも認識されている点です。』

いやまあそれはその通りなのですが、何も今言う事じゃないんでは無かろうかと。



○という訳でまた様式美の世界がやってくるに1万ドラクマ

とまあそういう事で、今回の総裁会見はやたらめったら強気でして、月報や声明文のトーンと明らかに違うというのがシュールな所でありますが、暫く前にあたくしが申し上げたと存じますが、これはまた昨年末以来の様式美の世界に突入しているのではないかと存じます。つまり・・・・・

(1)白川総裁が原則論を披露する

(2)政治方面からの差し込みが来る

(3)あっさり陥落

というのが11月末以来見られた世界でして、様式美の様相を呈しているのでございますが、まあ米国金利上昇とか米株高とかギリシャ問題の何となくインチキ先送りという欧州得意のスキーム発動(がここの所怪しげなので困りますが)という外部要因のラッキーパンチもあって、株は上昇するは為替は円高一服して反転するわと、まあやっと良さげな流れになって、菅さんあたりもご機嫌モードになってようやく「政府VS日銀」みたいな不毛な話も収まりつつあるという中でございますわな、今の所。

で、折角良い流れが続いているのですから別に「緩和長期化の副作用」なんぞは言わなくても良い話だというのに、いきなりこの有様でございまして、まあ今の所米国が調子良いからそんなに問題になってなさそうですけれども、まあしかし総裁会見以降は今の所流れが止まった感じでもありますよね、ユーロも怪しくなってきましたし。

となりますと、上記の様式美にあります(1)にまさに今到来したというひじょーにいやーな予感がするのがあたくしの仕様なのでありまして、毎度繰り返される様式美というか吉本新喜劇というか何だか存じませんが、またぞろ為替とかが逆転しだしたり株価がヘナヘナになってきたりしたら同じ騒ぎが起きるのではないかという方に1万ドラクマと言った所でございます。


大体ですな、物理的に金利を下げるというネタがほぼ尽きていて、おまけにターム物金利だって下がっていて、テクニカルに言えばこれ以上の下げ措置のような物を発動すると却って足元金利のボラが上昇してターム金利は下がるのか上がるのか訳判らんという状態になっているのであって、金融緩和をどうのこうのと言っても、表面上は兎も角として、金利村の理屈からするとここから先はアナウンスメント効果の世界になるとしか思えないのですよね。

然るに、そのアナウンスメント効果に対して「緩和長期化の副作用は重要な論点」とか発言するのはどこからどう見てもアナウンスメント効果を減殺あるいは否定するような効果しかもたらさないのでありまして、今まで政治(および市場)に差し込まれて涙目になりながら追加緩和した行動をいきなりパーにしてもおかしくない(たまたま米国が良いからあまり目立たないけど)発言をするとか何を考えとるんじゃと申し上げたくなりますが、まあきっと「麿はこんな追加緩和はしとうなかったでおじゃる」といった所なんでしょう。でも、そういうのは緩和解除できるような外部環境になってから言いなさいという所でありまして、今の状況で利上げとか有り得ないのに言わないでちょと存じます次第でございます。

まあ様式美リターンズは見たくないのでこの予想外れることキボンヌ。

#悪態成分が足りませんかそうですか(^^)

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2010/04/08

お題「詳しくは会見要旨を見ないといけませんが・・・」

決定会合結果自体はまあこんなものでしたけど・・・・

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100407.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf(前回)

○声明文はやや判断前進で展望レポートで上方修正ですかね

前回と例によって比較した時に、一番気になったのは金融環境の部分でござんした。まあとりあえず最初の部分から比較しますです。

・現状判断では新興国経済を引き上げ

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、海外経済の改善や各種対策の効果などから、持ち直しを続けている。』(今回)

『わが国の景気は、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直している。』(前回)

ということで、持ち直しを「続けている」になってますので、流れの中ですから継続してという所ではありますが、表現としては強くなっていますわな。で、項目別に見た場合には、海外経済というか新興国経済に関しての表現を引き上げています。

『すなわち、新興国経済の高成長などを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(今回)
『すなわち、内外の在庫調整の進捗や海外経済の改善、とりわけ新興国経済の強まりなどを背景に、輸出や生産は増加を続けている。』(前回)

でもって、今回は短観を受けて企業の景況感に関する指摘が入っているのが前景と違いますが、後の部分に関しては同じですな。ということで今回分だけ引用です。

『企業の業況感は、引き続き改善している。設備投資は下げ止まっている。個人消費は、厳しい雇用・所得環境が続いているものの、各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直している。公共投資は減少している。』(今回)


・それより重要なのは金融環境かなと思います

今回真っ先に目が行ったのはこちらです。

『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、緩和方向の動きが強まっている。』(今回)
『この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、改善の動きが続いている。』(前回)

・・・・・えーっと、これはどういう話かと申しますと、先般の短観にも出ていましたが、企業収益環境が改善する中で金融緩和の効果がより強まるようになっているという話ですわな。金融経済月報(概要)ではそのあたりを説明していますよね。例えば先月の月報では『実体経済活動や企業収益との対比でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面があるものの、その度合いは、企業収益の改善などを映じて低下している。』という表現になっていますが、この部分が改善している結果として、緩和政策の効果は更に強まって来ているという説明になっていると思います。よく福井総裁が量的緩和継続する中で景況感が回復するステージでこういう話してましたな(^^)。

つまり、12月以降の日銀の緩和強化+デフレ脱却への姿勢強化という流れからすると、この説明は「緩和政策の効果も強まって来たのでデフレ脱却への効果も強まりますよ!」という事で、ここに「引き続きデフレ脱却の為に粘り強く金融緩和を継続」って姿勢を出しているので、セットとしては「緩和政策の継続で景気押し上げ効果を高めますよ」という話になって、「デフレ脱却に向けて頑張る日銀」という姿勢を明確にできるのですけど、会見で総裁様が何か微妙にぶち壊し発言をしているように見えるのが如何なものかと思ったのですが、その話は後ほど。


・物価判断に変化無し

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給が緩和状態にあるもとで下落しているが、その幅は縮小傾向を続けている。』(今回)


・先行き見通しは一言だけ変化

『先行きの中心的な見通しとしては、当面、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものとなる可能性が高い。』(今回)

『先行きの中心的な見通しとしては、2010 年度半ば頃までは、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものに止まる可能性が高い。』(前回)

ここは単に「2010年度半ば」というのが時間的に近くなってきたから「当面」に差し替えたのか、それとも「緩やかな回復から順調な回復への進化が前倒しになった」のかは良く判らんのですが、展望レポートでより詳しい話が出てくると思います。ただまあ会見報道を見る限り、やたらめったら回復をアピールしているみたいですから後者なのかもしれませんな。会見報道見る前は前者だと思っていやのですけれども。

『その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるとみられるため、わが国の成長率も徐々に高まってくるとみられる。物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる(注2)。』(今回)

で、(注2)というのは高校無償化のCPI低下分は(・∀・)キニシナイ!という話をしていますので、今後原油価格上昇でCPIが上昇しても気にしないんですよね、ウッシッシ。

という悪態は兎も角、こちらは同じです。


・リスク認識も同じ

『リスク要因をみると、景気については、新興国・資源国の経済の強まりなど上振れ要因がある一方で、米欧のバランスシート調整の帰趨や企業の中長期的な成長期待の動向など、一頃に比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある。また、最近における国際金融面での様々な動きとその影響についても、引き続き注意する必要がある。物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

前回と全く同じです。


・決意表明文では1か所だけ違います

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。そのために、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。今回のやや長めの金利の低下を促す措置の拡充もこうした方針に基づくものであり、金融政策運営に当たっては、今後とも、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』(前回)

緩和措置追加に関する文言部分はさておきまして、どこが違うのかと言いますと、最後の一文でして、『金融政策運営に当たっては、きわめて緩和的な金融環境を維持していく考えである。』って所で先月にあった「今後とも」というのが抜けているので、一瞬「ええ?」と思うのですが、2月の時点ではこの「今後とも」という文言が無かったので、前回追加緩和措置を実施したから「今後とも」というのが入ったのかなあという気はするのですが、こういう所微妙に変化させられると気になって困りますな。


とまあそういうことで、正直言ってこの声明文が出た時にはまあ想定通りですなあ程度だったです。月報ではもう少し強い話を書くのかなあとか思った次第でして。



○会見に関してだいぶ気になる部分があったのですが・・・・

で、会見なのですが、ブルームバーグのニュースだとこんな感じで。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=akmxIYhlxPUA
日銀総裁:景気は着実に持ち直し、自律回復の芽−判断前進(Update3)

時事通信ではこんな感じ。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010040700769
経済・物価見通しを上方修正へ=「自律的回復の萌芽」−日銀総裁

ヘッドラインでやたらめったら判断前進の話が出てくるのが「うーむ」という
感じだったのですが、ロイターではこんなヘッドラインの打ち方を。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities4/idJPnTK039404820100407
UPDATE2: 景気判断を3月より一歩進めた、緩和長期化で不均衡蓄積しないかが大事な論点=日銀総裁

・・・・・orz

で、これロイターだけかと思ったらクイックも似たようなフラッシュを打ってまして、共同通信は会見詳報の中の最後の方(会見の詳細を何本かに分けて流す記事)の題名に同じような話を入れているので、まあ発言はしてるんでしょうと思います。

まあブルームバーグとか時事のニュースではスルー気味なので、恐らく話としてはメインの話でも何でも無くて、単に一般論として答えたと思うのですが(詳しくは会見要旨を見ないと何とも言えませんが)、それにしてもこれはまたロイターはバイアスの掛かったヘッドラインを打ちやがるという感じです。一時ブルームバーグが妙に「政府VS日銀」みたいなヘッドラインの打ち方をして如何なものかと悪態をついてましたが、ここへきてロイターがまた本領を発揮してバイアス入りまくりのヘッドラインを打つ始末。ロイターの記者とデスクは何考えとんじゃという感じでございますわな。


とまず悪態をつきましたが以下白川総裁向け悪態。

ただね、例え一般論であったとしても白川総裁は今「緩和長期化の副作用」というような話をすべきではないと思うのであります。現在日銀は「デフレ脱却の為に戦う」という姿勢を12月以降更に明確にしているのでありまして、その為に追加緩和(のようなもの)を実施し、物価安定の理解の明確化を行い、声明文にあるように『きわめて緩和的な金融環境を維持していく』と言っているのですよね。

折角12月以降にそのような姿勢を強化している中で、肝心の総裁がいきなり「緩和長期化の副作用がどうのこうの」とか言い出したら、12月以降の日銀の施策が全部パーになる位の逆効果になり兼ねないものでありまして、そらまあ白川さんとしては政治やら市場やらに押しこまれて緩和政策を追加する破目になったという思いがおありになるのでしょうけれども(あくまでも憶測)、実際に緩和政策を実施して「緩和継続してデフレとの戦いをする」という事を日銀の組織として行っているのですから、それを日銀のトップとしてアピールしないでどうするんだと小一時間問い詰めたい訳でございます。


最近の良い例というか悪事例というかで例えると、ローゼン麻生太郎さんがまだ首相だった時に「あの時は郵政民営化に賛成したけど実は反対でした」とか言い出して支持率を死ぬほど下げたという実績がありましたけれども、今回なんか過去の話じゃなくて現在やっている「金融緩和を続けてデフレとの戦いをしますよ」に対して能天気に「緩和長期化の副作用」とか言ってるので、ローゼン以上にタチが悪いとも言えそうですわな。

いやね、今朝のモーサテとか日経のネット版とかを見た感じでは、この発言がさほどおおごと扱いされなさそうなのでややホッとしているのですが、うっかりしたら「緩和打ち止め」どころか「出口政策」とまで言われだしか兼ねない不用意にも程がある発言ですし、先程申し上げた通り、12月以降の日銀の努力をいきなり自己否定するような発言をするようでは困ったお方だと申し上げたくなって参ります。


いやまあ勿論「第1の柱」「第2の柱」の点検という意味では緩和長期化の副作用についても点検しますし、そりゃまあ緩和長期化には副作用があるのも当たり前なのですし、質問されたから答えたと思うのですが、そもそも論として12月の2回目の会合で「中長期的な物価安定の理解の明確化」を行ったのは「日銀のデフレ脱却に対するスタンスに対する誤解を払しょくするため」に実施した筈なのでありまして、またぞろそのスタンスを誤解されるヘッドラインを打ちこまれるリスクのある物の言い方は無いですわな。

例えば「全ての政策には作用副作用があるが、現在日銀はデフレ脱却に向けて粘り強く金融緩和を続けている所であり、緩和政策長期化の副作用について論ずるのは時期尚早である」とか何とか言えば全然違うと思うのですけれど・・・・・・


#と、悪態大会になりましたが、会見要旨を見て悪態に取り消し線が入る事を希望


ま、とりあえず今回はやたら強気っぽいヘッドラインが多かったのにはちょっと何だかなあという感じで、「偽りの夜明け」とか言ってたのあんたじゃないのかよとかあたしゃ思いましたですよ。

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2010/04/07

○短観のCP発行環境

この前(3月2日)こんなリリースがありまして、
http://www.boj.or.jp/type/release/nt_cr10/nttk30.htm

その時に過去分の発行環境判断DIに関して「実際に発行している企業ベース」数値も公表されていまして、3月3日の駄文で過去の計数確認をしたら「やっぱり市場環境をきっちり反映してるわ」と感心した訳ですけど、さて今回はと言いますと。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/ref/tkref1003.pdf

    (発行企業ベース)(全企業ベース:従来の公表値)

2010年03月  +32      ▲6
2009年12月※ +24      ▲9
2009年09月  +23     ▲11
2009年06月  +15     ▲14
2009年03月  ▲22     ▲24
2008年12月  ▲55     ▲20
2008年09月  +13      +1
2008年06月  +18      +3
2008年03月  +17      +3

※2009年12月は調査対象企業の旧ベース(今回より見直し)の数値で、新ベースに直すと全企業ベースの数値が▲10になります。

でこの数値ですが、12月の新型オペで3か月TBの金利が低下して、主に3か月以内の発行が多いCPレートに関してもその分きっちりと低下しましたし、そもそものCP発行が減ってきた事から投資家の要求する銘柄間較差も無くなって来て、何かもう同じようなレートが並ぶでござるの巻という状況になっていましたので、ここでのDI上昇は市場の金利環境をきっちちと反映しています。

つーことで、中々この参考計数は備忘録として有益(実際にCP市場の中にいる人としては発行状況をレート推移を毎日見てますから状況は判りますが、そうじゃない人とか、後からどうだっけと思った時にはこの数字は便利だわという事ね)ですなあという所で。



○新型オペを増額するのはテクニカルにややこしいと言うオペ雑談

3月の大幅財政払超の影響で、準備預金は絶賛進捗して当座預金残高も期末前に随分積み上がった訳ですが、今週には当座預金残高を15兆円台に戻したのですが、その時点で資金供給オペ(除く買入系のオペ)残高が30兆そこそこになって参りました。

日銀のオペ落札公表数値ベース(なので額面ベース)の数値を手元でヘコヘコ集計したあたくし謹製の数値によりますと(ということなので間違ってたら教えてちょ)今週に入ってのオペ残高は、5日が31.5兆円、6日が30.5兆円、今日が30.5兆円となっています(即日オペは無いと思います)。で、明日はこのままトムスタートのオペが実施されなければの話ですが29.8兆円となる予定(トムスタートはあるかもです)。

ということは、新型オペを30兆円に増額しますと、完璧に他のオペが打てなくなるような場面が財政要因次第では生じてしまうという話になる訳でございまして、まあその場合どういう事になりますか申しますと、債券ディーラーの足元の資金繰りのブレを日銀のオペを利用して調整をしにくくなりますので、その分が市場に出てくるという事になり、その結果として足元のGCレートが振れやすくなるという話になる訳ですな。

#ここまでの説明で判らなかった場合は近所にいる短期デスクの人間に聞いて下さいませです(^^)

足元のGCレートが振れやすくなるとその分ターム金利に要求されるリスクプレミアムが上昇するので、ターム物の金利も微妙に影響を受けるというのが奥の深い所でございまして、即ち(この前からしつこく申し上げているように)ターム物金利の押し下げという名目での新型オペなのですが、打ち過ぎると却って逆効果になるという大変に味わいのある事が起きる訳ですな。

いやまあ勿論足元で吸収オペ打ちながらツイストを行って、足元でのファインチューニングをする余地を作ればその問題は解消されるのですけれども、吸収オペを打つとそれがテクニカルであっても「日銀が引締を行ってケシカランですムキー!」とファビョった報道をする人や勘違いする他市場の皆様がおいでになりますので、まあ現在の地合いでそのような事は出来ないと言うのが惜しい所です(−−;)

#まあそんなのもあってか、昨日もCP買現先オペのロールは行われずに、CP買現先は撤収の方向のようですね。

ということで、新型オペに関してはここから先は残高を積むよりは期間を伸ばす方が話としては本線になると思うのですが、まあ敢えて新型オペ30兆円攻撃にして足元の市場調達を促進するという荒業も無い訳ではなく(^^)、その場合は市場機能とやらも動くという(ただしレポ市場のみ)何か判ったような判らんような不思議展開になるのですかね(謎)。

#足元の短期オペが苦しくなってくるとすると短国買入を減らすともう少し足元の供給オペが楽になるという気もするが(長国買入は減らせないですからね^^)今思いついただけの話なのでよーわからん


でですな、これって丁度今回新型オペという実例が出たから判り易くなりましたが、長期国債買入と短期オペとの関係も同じようなフレームで理解出来るかと存じます次第。

つまり、長期国債買入をジャンジャン増やした場合、その分って当然ながら資金供給要因になっていますので、短期オペでの資金供給余地をその分食う形になってしまいますわな。で、短期オペでのファインチューニングが難しくなってくると、足元金利がその分不安定になり、特に銀行券にしろ財政にしろ出入りが巨大で足元の資金需給がぶれやすい日本の短期金融市場においてはその弊害が大きくなりますよという話。まさに身をもって説明という感じになっておりますが、身をもって説明状態でもその点について「うんうんなるほどそうですね」と共感してくれるのが短期市場でキャッシュをいじっている人しかおいでにならないというのが実に残念な話ですので、こうやってマニア話を延々と書くのでありました。

#だから国会で白川総裁が「長期国債の買入をやり過ぎると、どこかで売却をしないと行けない場面が生じる」と説明するのですが、まあそんなテクニカルな話をしても世間様には普通に理解してくれないと思います。今後FRBが保有有価証券の売却をおっぱじめてくれると中々お洒落な展開が生じて「あれが実例です」と説明もしやすくなるとは思いますが(^^)。



○FOMC議事要旨(週末に真面目に読む所存)

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20100316.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20100316.pdf

まあどちらでもどうぞという所で。

何か市場の反応は「低金利政策維持」という元々そうでしょという話を確認したと言う事になっていますが、議事要旨の読書は中々オモロイのでこれは週末にヒーヒー言いながら辞書片手に読みたいと存じます。

で、最後の方にインフレ期待に関してはこんな記述がありますな。最後の最後のCommittee Policy Actionの手前のパラグラフから。

『In discussing the inflation outlook, participants took note of signs that inflation expectations were reasonably well anchored, and most agreed that substantial resource slack was continuing to restrain cost pressures.』

インフレ期待はアンカーされてて、潜在的な資源のスラック(要するに俗に言う需給のギャップみたいな話ですわな)が価格上昇を抑制していると。

『Measures of gains in nominal compensation had slowed, and sharp increases in productivity had pushed down producers' unit labor costs. Anecdotal information indicated that planned wage increases were small or nonexistent and suggested that large margins of underutilized capital and labor and a highly competitive pricing environment were exerting considerable downward pressure on price adjustments.』

えーっとシンプルに要約できないのですが(あほ)、稼働が上昇する中でもまだ賃金は上がらない(ので結果として労働生産性が上がっている)上に、依然として全体としては過剰生産力があるので価格設定行動にも上昇圧力は掛かり難いと。

『Survey readings and financial market data pointed to a modest decline in longer-term inflation expectations over recent months. While all participants anticipated that inflation would be subdued over the near term, a few noted that the risks to inflation expectations and the medium-term inflation outlook might be tilted to the upside in light of the large fiscal deficits and the extraordinarily accommodative stance of monetary policy. 』

んでもってサーベイや市場データからは長期的なインフレ期待はここ数カ月低下しているとして、全ての委員はインフレは近いタームでは抑制されていると予想するものの、数名の委員はインフレ期待や中期的なインフレ予想が、財政の大きな赤字や前例のない緩和的な金融緩和によって上昇するリスクがあるという話ですな。

という話はまあここの所毎回行われているには行われているのですが、最近この辺の指摘がどう変わっているのかというような面まで読む時間はさすがに無いので勘弁。

で、最後の部分でたぶん話題になっていたと思われる所を備忘的に引用しておきますが、時間が無いので引用だけという超手抜き状態。

・ホーニッグさん反対の理由は「低金利継続が金融市場のインバランスを招く」

『Nearly all members judged that it was appropriate to reiterate the expectation that economic conditions--including low levels of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations--were likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period, but one member believed that communicating such an expectation would create conditions that could lead to financial imbalances.』

・ガイダンスの文言に縛られるべきではないとか何とか言ってる部分

『A number of members noted that the Committee's expectation for policy was explicitly contingent on the evolution of the economy rather than on the passage of any fixed amount of calendar time. Consequently, such forward guidance would not limit the Committee's ability to commence monetary policy tightening promptly if evidence suggested that economic activity was accelerating markedly or underlying inflation was rising notably; conversely, the duration of the extended period prior to policy firming might last for quite some time and could even increase if the economic outlook worsened appreciably or if trend inflation appeared to be declining further.』


・引締めが遅れるリスクよりも早いリスクの方がまずかとうという指摘を「数名が」行う

『 A few members also noted that at the current juncture the risks of an early start to policy tightening exceeded those associated with a later start, because the Committee could be flexible in adjusting the magnitude and pace of tightening in response to evolving economic circumstances; in contrast, its capacity for providing further stimulus through conventional monetary policy easing continued to be constrained by the effective lower bound on the federal funds rate.』

ということで、確かにまあ市場の一部が妙に警戒しているようなホーキッシュな面は出てませんわなという所だったんですかね、よー知らんが。

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2010/04/06

で、、まあネタとしては超今更なのですが、折角あたくしがヒーヒー言いながら読んだBOEのMPC議事要旨の2月と3月分に関して備忘メモを残しておかないと調べた物がゴミと共に去ってしまい兼ねないという超個人的理由からBOEネタから参ります。

3月の議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1003.pdf

2月の議事要旨
http://www.bankofengland.co.uk/publications/minutes/mpc/pdf/2010/mpc1002.pdf


○話の流れが3月と2月で全然違う件について

BOEの議事要旨ってMPCから2週間くらいで出てくるのですげーと思っていたのですが、最近読むようになったら思うのは、議論の途中を端折り過ぎていて話の筋が飛んでいる事が多い上に、前回の議論を踏まえた話を飛ばしていきなり今回の話題になるので、ここもとのように資産買入を一旦止めましたという時になると前後の比較をした場合に話題がワープしている感がして「???」となる事多し。

ということで、今年は1月〜3月の間でインフレに関する話とかがだいぶ変わってきた(足元のCPIがインフレターゲットを大幅に上振れしてきてるのだから当然なのかもしれませんが)のが非常に興味深い所であります。まあ全部引用してるとキリがないのでその辺をてきとーに拾いながら参りたく存じます。

主に3月のMPCを中心に(2月も読んだのですけどね)参りますね。


○ポンド下落の評価について

『Supply, costs and prices』の辺りから。

3月議事要旨の第18パラグラフから。

『CPI inflation had increased to 3.5% in January. The Governor’s open letter to the Chancellor had identified three factors driving up the CPI measure of inflation temporarily.』

ではその3点とは。

『First, the restoration of the standard rate of VAT to 17?% had raised prices relative to one year ago. Second, over the past year, oil prices had increased by around 70%. That was pushing up petrol price inflation, which, in turn, had raised overall CPI inflation. And third, the effects of the sharp depreciation of sterling in 2007 and 2008 were continuing to feed through into consumer prices.』

で、特に最近のポンド下落について、

『The depreciation of sterling since the start of the year was likely to put additional upwards pressure on inflation over coming months.』

という話をしています。まあこれはこれで良いのですが、2月の議事要旨では同じ第18パラグラフでこのような切り方をしています。

『Against the background of a substantial, and growing, margin of spare capacity, it was notable that CPI inflation outturns had tended to surprise to the upside during the past year. CPI inflation had increased by 1 percentage point to 2.9% in December ? chiefly the result of higher petrol price inflation and the effects of the reduction in the standard rate of VAT a year earlier dropping out of the twelve-month comparison. It was likely that inflation had risen further in January, as the standard rate of VAT had been restored to 17.5%. 』

BOEは「margin of spare capacity」って言い方をしますなあというのはこの前も書きましたが(^^)、3月では17.5%を17と2分の1%と書いていたり、何だか微妙に見てくれ重視なのか何だかしらんが、ジョンブル様たちの書き英語は難しいですなあと思いますがそれは兎も角。

2月にはCPI上昇に関して石油価格上昇と付加価値税の暫定引き下げの廃止による要因と書いていまして、ポンドの下落に関する話はここには無く、その次の第19パラグラフにございます。

『Excluding food and energy prices, and abstracting from the effects of changes to the VAT rate, CPI inflation had been broadly stable since the beginning of 2009. That was most likely because the upward pressure on firms’imported costs and prices from sterling’s depreciation had acted to counterbalance the downward pressure on inflation from the margin of spare capacity.』

これだと大幅な通貨安が経済の生産余剰による物価下落圧力を相殺したという話をしているように見えますな、というか従来この線で話を進めていたのがBOEでありまして、自国通貨安の効果を決定会合議事要旨でここまで堂々と評価しているのも中々(米国だってそんな話はせん)チャーミングだと思っていたのですけれども。

『But it was difficult to judge the size of the impact of each of those two forces. Other advanced economies, including those that had not experienced significant currency depreciations, had also seen inflation hold steadier than might have been expected given the reduction in activity. This suggested that there might be other common factors helping to offset the downward impetus to inflation from weak demand. A smaller effect of a given change in demand on inflation had been observed across the major economies even prior to the crisis.』

でも本当にそうなのかというのについては正直難しいという評価もしているのですけれども、この話が3月になるとさっきのようにポンド安でインフレという話になっている所が話題のワープにも程があるのですが、まあ現実のデータを見て修正してきたと言えばそうなのかも知れないですし、その辺りに関する内容がもうちょっと見えると「どこからどこまでポンド相場を気にしたら良いのか」(って別にあたくしは外野だからどうでも良いけど)という点なんかも見やすくなるような気がしますな、と極東の国で日本語でBOEに文句言っても仕方ないですかそうですか(^^)。


○資産買入効果

話は戻って『Money, credit, demand and output』になりますが、第12パラグラフ(さっき悪態は付きましたが、基本的にはパラグラフごとの話題は同じものを使っていまして、その中の要因分解などが全然違うので話がワープした印象が強いのだ)の書きっぷりが3月と2月で違うのでした。

まずは3月。

『The latest data from the ONS suggested that nominal GDP had grown by 1.1% in the fourth quarter. In the past, these data had been subject to sizable revisions, but this rise was similar to that recorded in the previous quarter, reducing the likelihood that the pickup in nominal demand growth was erratic.』

一応そういう数字だけど後からの改定もありますという話をしてますな。

『Taken at face value, that was encouraging given that the MPC’s policy actions were aimed at increasing nominal demand sufficiently to meet the inflation target. But it was a concern that the pickup in money spending was largely associated with a rise in the GDP deflator rather than in real activity.』

てな話をしてるんですが、2月はこの辺りに関して資産買入プログラムなどの金融政策に関する話をこういう言い方をしてます。


『The latest data for 2009 Q3 indicated that nominal GDP had begun to expand again, at a quarterly pace of 1.1%.』

まあ2月でもそんな数字でしたが。

『Taken at face value, these data were promising given that the objective of the accommodative stance of monetary policy, including the MPC’s asset purchase programme, was to increase nominal demand sufficiently to meet the inflation target. It was, however, possible that the increase in nominal demand was being absorbed by higher prices, and lower real output, than the Committee had anticipated.』

で、このencouragingとpromisingってどっちがエライのか良く判らんのですが(こういうのは本石町日記先生に聞かないと判らんので教えてちょ)、まあとりあえず資産買入プログラムが終了した事から資産買入の話を抜かして単なる「金融政策」としているのかどうかは謎なのですが・・・・・


3月議事要旨では、資産買入(停止)に関する部分は物凄く端折られていまして、『Financial markets』の第4パラグラフでこんな話をしているだけだったりするのでした。

『Yields on UK government bonds had risen. Ten year ahead nominal forward rates had increased by around 30 basis points, while real forward rates had risen by rather less. Uncertainty about UK fiscal prospects could have contributed to that rise. The suspension of the MPC’s asset purchases had not had much impact on the gilt market.』

ということで、最近の英国長期金利の上昇は財政の維持可能性問題に関する思惑が寄与していて、BOEの資産買入を停止した事は長期金利に大きな影響を与えなかったという話をしています。

ちなみに2月には資産買入終了に関して『The immediate policy decision』という所の頭になる第29パラグラフでこのような指摘をしています。

『During the month, the Bank had completed the MPC’s programme for purchases of £200 billion of assets financed by the issuance of central bank reserves. That stock of past asset purchases would continue to impart a substantial degree of monetary stimulus for some time to come. The completion of the previously announced purchase programme had resulted in little immediate impact on market yields, consistent with the fact that market participants almost uniformly expected the size of the asset purchase programme to be left unchanged at this MPC meeting.』

まあその流れで3月の金利上昇について話をしているから、上記のような話になるんでしょうけれども、資産買入はマネタリーの刺激策という話なのかというとその辺がまた微妙でしてですな、これは以前ご紹介したと思いますが、2月の議事要旨では「キャッシュフローの増加や低金利によって社債などへの投資意欲が高まり社債のスプレッドが縮小」というような「ポートフォリオリバランス効果」チックな話をしてたりしてまして(引用割愛、第5パラグラフです)、何かこう結局BOEの資産買入に関して、どのような経路でどのように効いたのかという点について有耶無耶のうちにしらっとフェードアウトした感じですな。

特にここもとの議事要旨では、その辺の話が前回からいきなりワープしたりして、かなりヤケクソになっているのではないかという気がせんでもない。


○当たり前ですが3月はインフレに関する話が多い

2月はちょうどインフレーションレポートを出すタイミングということもあって、経済見通しに関する話がより多くなっています。でもってその中で2月では3QGDPが11月のインフレーションレポート時点での見通しより弱かった(のに堂々資産買入を停止したというのも何だか良く判らなかったですけど)理由に関して延々と書いてありますが、さすがに引用するのは何ですのであたくしの貧弱な英語力で勝手にまとめますと、(1)生産などは強いのでそもそものONSのGDP推計値が先行き上振れするかも、(2)金融環境における逆風は依然として強い、特にクレジットのタイトな状況とバランスシート調整問題、(3)先行き経済の不透明感が依然として高いので投資や消費よりも貯蓄傾向を強めている、(4)輸出と製造業は回復しているが、その効果が国内に波及するのが遅れているかも、というように読みましたが、違っていたらゴメンナサイ。

一方、3月はインフレ数値が更に上に振れた事から、延々とインフレに関する話をしていまして、ああでもないこうでもないという話をしているのですが、金融緩和とポンド安に関して諸刃の剣的な指摘もしています。第27パラグラフから引用。

『The significant degree of policy stimulus and the substantial past depreciation of sterling were two factors supportive of growth, and both the expected near-term path of official interest rates and the exchange rate had fallen further over the month.』

ほほう。

『The scale and timing of the impact of the monetary stimulus remained highly uncertain. Some boost to net trade was likely as a result of the depreciation. However, it was not obvious, against the backdrop of increased uncertainty about demand growth in some of the United Kingdom’s main exports markets, how quickly this would happen.』

ということで、結局の所その辺の影響度合いは中々計測が難しい(そらそうだが)って話になっておりますけど、ポンド安と金融緩和に関する話では1月辺りから「金融緩和の長期化で期待インフレ率の上昇リスク」という話をしていたので、その流れからすると不思議では無いのですけれども、まあ3月の議事要旨ではちょっとこの辺りに関するトーンが強くなっています。基本的には経済の余剰生産力による物価押し下げ圧力があって、経済活動に関してもそれほど水準が高まっている訳でもないので、中長期的なインフレは抑制されるだろうという見通しですが、足元のインフレ率上昇による期待インフレ率上昇を懸念するという感じのようです。


○で、結論部分もちょっと違う

時間が無くなってきたので3月と2月の最後の部分だけ引用するだよ。

まずは3月議事要旨の第30パラグラフ。

『Although different inferences could be drawn from recent data, all Committee members agreed that the monetary stance should be left unchanged at this meeting. That would allow the Committee to continue to assess the effects of the cumulative loosening of monetary policy since September 2008, alongside emerging evidence on the upside and downside risks to inflation.』

ふむふむ、全員一致でも微妙に見方は違うと。


2月議事要旨の第35〜37パラグラフ。

『In addition to those arguments, maintaining the current stance of monetary policy, without adding further stimulus, would allow the Committee an opportunity to judge more thoroughly the effects of the cumulative loosening of monetary policy that it had implemented since September 2008. In particular, while Committee members agreed that the stock of past asset purchases would continue to impart a significant monetary stimulus for some time, views differed about the precise duration and size of that stimulus. It would also enable the Committee to assess the strength of the emerging economic recovery as more reliable data became available.』

『The Committee would be able to provide further monetary stimulus should the outlook for inflation in the medium term warrant it.』

『Taken together, all members felt that the arguments in favour of leaving the size of the asset purchase programme unchanged at this meeting were more persuasive. But for some members, the arguments were very finely balanced.』

ということで、2月は買入停止を決めたものの再開に含みを残していますが、3月はインフレの話が多くなっている所からしても、買入の再開に関するイメージの湧かない内容でして、この1か月で随分と話が飛びやがりましたなあというのが結論であります。

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2010/04/05

○そう言えば今週は決定会合なので雑談的論点整理

ちょうど読者様からご質問も頂きましたので(どうもです)うだうだと論点を整理してみるのでありました。

・この前緩和したばかりなのに追加緩和ってどうよ

金曜もうだうだ書きましたが、金融政策ってそんなにホイホイと変更するものなのかという話をつらつら考えますと・・・・

例えばの話インフレが昂進してて物凄い勢いで引き締めをしないといけないとか、何らかのショックが生じて急速に緩和しないといけないとか、緩和あるいは引き締めをやり過ぎたので中立金利に戻す為にホイホイと金利を動かす場合とか、まあそういうのはあるとは思います。

でもって、先般の金融危機のように金利政策じゃなくて市場機能が崩壊した部分に中央銀行が突っ込んで行って流動性を供給するという話になりますと、これまた手探りの部分がありますし、市場のパニックって連鎖するから一発で全部解消という訳にもいかずにホイホイと追加で流動性供給策を打たないと行けないという事もあるでしょう。

・・・・でですな、じゃあ現在の日本の状況ってどうなのよと言いますと、金融市場で特に流動性枯渇してエライコッチャになっていて実体経済に悪影響を与える所があるという訳でもなく(まあ資金繰りという点で言えば全部が全部流動性あるかというとそこは違いそうだが)、景気の動向に関しては(少なくとも循環的には)回復基調でどちらかと言えば上振れしているし、おまけに株式市場も上昇と、まあ切迫した話は無いでござるの巻。

そんな中で何で追加緩和を打たにゃあならんのよという話になるのですが、理屈の話に関しては12月の緩和2連発から話としてはグダグダになっておりまして、もうロジックでも何でもない状態になっている所に来て、3月の緩和措置とか金利市場的には知らんがなという内容の物となっており、今や本来相手にすべき金融市場ではなくて、為替市場やら株式市場やら政府(というよりは民主党政権)やら日経などのメディア対応で緩和をするという有様でございますので、正直申し上げて追加緩和のある無しというのはあまり理屈で考えても仕方ない面がございますなあと思うのでございます。


・でも理屈をつけるならどういう風になるか

まあ正直言って福井の俊ちゃんのようにSARSで当座預金残高を拡大するような豪快なスキームがございますので、理屈何ちゅうのは後付けで何とでもなると言ってしまえば身も蓋も無いのですけれども(^^)、まあ何となく美しく作ろうとすれば、(1)物価安定の理解で「中心1%」をもう少し強調する事によって何となく消費者物価指数が戻ってきた時の金利正常化路線への復帰の目線を引き上げなんちゃって時間軸を強化する、(2)次回の展望レポート(って今月末ね)で先行きの物価見通しを弱めに出して「循環的には景気は回復しているが、物価下落による構造的な下押し要因は強いので、物価下落の悪影響を緩和する為に追加緩和政策を実施する」として追加緩和実施(新型オペの長期化か増額がメイン)、(3)6月の政府の新成長戦略および中期財政フレームの発表に合わせて「政府の戦略を金融面から下支えする為に緩和政策の一層の強化を行う」として追加緩和実施(輪番拡大がメイン)、という感じでしょうかねえ。

ただし、上記のうち(1)はそもそも一般的にウケるかどうかが微妙な上に、物価安定の理解が「中長期的なフレーム」として置いたものですので、そう簡単にホイホイと変えて良いのかという話はありますので、やや微妙な気はせんでもない(岩田前副総裁が内閣府ナントカ研究所のセミナーで「中心1%」を強調した方が判り易いと指摘してたんですけど)所でございまする。(2)と(3)はあり得る話だと思うのですが、さて外部環境が改善する中で実施するのかはよー判らん。

ただまあ従来白川総裁が妙に原則論の話をしやがって、その後差し込みが来て結局訳判らん理屈で緩和強化を行うというのが連続している状況でございますので、ここらで日銀が何となく緩和強化について積極的な姿勢を見せることによって、どうもウケの宜しく無い状況を打開するというのはアリだと思うのですがどうでしょ。

ついでに言えば、米国が出口モードとか言ってる(まだ早いにも程があると思うし、今やったら2000年のゼロ金利解除と同じ結果になると思うが)ので、日銀が逆行して緩和強化と言えば為替市場が円安に振れやすくなり、デフレ脱却にとっても有益だと思うのですけどね。


・ところで3月の追加緩和って効果あったの??

えーっとですな、金利市場的には全然意味が無くて、例えば3か月TBの金利は全然下がらないですし、2年以降の金利に至っては上昇しているという有様ですが、為替が円安に振れたり株式が上昇しているので効果があったように見えない事も無いのがオソロシス。

まあ正直言って海外要因がラッキーに働いたからだとは思うのですけれども、確かにまあ「日銀の緩和姿勢が明確になった」とか為替市場とかがネタにする(バーチャル金利であります所のLIBOR比較とかいい加減にして欲しいものだと金利村の住民的には思うのですが)所を見ると、金利市場的にはなんちゃって時間軸政策はすっかり浸透していましたが、為替市場あたりでは日銀の今の政策金利がどう見ても2年近くは続くんじゃネーノという従来から金利市場が見ているモノが伝わっていなかったのではないかという気もするのであります。

つまりですな、その辺FRBは上手いというか、バーナンキさんが狸オヤジで政治家にも程がある(中身が福井の俊ちゃんの生霊なのではないかと思う位でございますが)ので、金利村だけではなくてより一般にアピールしないと話にならんという事を重視している中で、日銀はと言えば12月の新型オペ導入に際してどこぞの電気屋の安売りチラシのようなキャッチーなフレーズまで使ってプレゼンの工夫をする傍から、肝心の誰かさんが「麿は意味が殆ど無い政策を意味があるように言うのは嫌でおじゃる」とばかりに微妙な発言をするもんだから「渋る日銀を政治家と新聞報道と為替市場や株式市場が追い込む」みたいな図に外野から見えてしまうのが残念って感じですか。

なお話がそれますが、じゃあバーナンキ方式が全部正しいかと言うと、それはそれで問題がある訳でして、資産買入やら超過準備に関する説明が二転三転するFRBは出口戦略の説明がどんどんグダグダになって来ているのでありまして、そういう意味ではツケを払わされモードに向かっている所ですし、過去の自分達の説明によって変に追い込まれると出口の政策判断において異常に早すぎたり異常に遅すぎたりするリスクが高まるので、FRBが本当に難しいのはここからだと思われる所なのであります。

とりあえず、「展望レポートと中長期的な物価安定の理解を踏まえれば日銀が金融緩和の出口戦略とか言うのは相当先の話ですよね」という金利村的に極めて当たり前の話をやっと為替市場ちゃんが理解したと考えれば、そういう点で3月の追加緩和も効果があったという話になるんでしょうかねえ、何だか訳判らんが。まーそれより米国がラッキーな事に出口戦略がどうのこうのと言い出したラッキー要因の方が大きいと思うのだが。


#てなわけで、つらつらと従来書き散らしている話の蒸し返しになった上に、結局うまく纏まっていないというのがテラアホスな所でどうもすいません



○ここの所短い所の打ちこみが安定してますなあ

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei1003.htm

例によって例の如く手元のエクセルでへこへこ集計したら、3月の買入総額が17629億円で、うち2年以内が7895億円(1年以内も含め)増加しています。

総額がいつもとあんまり変わらなかったのは、当月償還銘柄の打ちこみがそんなに派手じゃ無かった事に起因すると思われますが、2年以内で見た場合の打ちこみ額がここの所見ていると大体6000億円から8000億円のあいだ位で推移(12月は償還の関係で良く判らん)していまして、そこだけ見てますと割と安定した感じになっています。

で、その前の昨年秋くらいまではこの額が1兆円ほどで推移していた事を勘案致しますと、安易に結論を付けるのも何ですが、やはりまあ長目の所の需給が昨年の秋以降は若干悪化したということで、その要因として無理矢理理屈をつければ増発とか景気回復とか民主党政権のリスクプレミアムとか色々とこじつける事は可能ですけれども、まあそこはこじつけずにもうちょっと真面目にデュレーションとかの推移も見たい(どっかで本職の人が分析してるでしょ)という所でございましょうか。


#つらつらと雑感を考えながら書いていたら時間が無くなってしまったので雑談大会でご勘弁ねがいとうございますですm(__)m

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2010/04/02

○短観与太分析

まずは短観ですが。

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka1003.pdf

大企業製造業DIが▲14ってよくよく考えたら強い結果ですし、市場予想通りではあったのですが、予想じゃなくて期待ベース(^^)では、あたくしも調子に乗って「マイナス一桁あるで♪」とか勝手に盛り上がっていたので数字が出た瞬間はどちらかというとしょぼーんという感じでした(^^)。

ということで、いつもの不真面目なチェックをば。

・業況判断DIの達成度合い

前回は「9月時点ではもうちょっと改善するつもりだったのにあんまり改善しませんでしたね」という感じだったのですが、今回はどうなったかと申しますと・・・・


        (12月時点)      (3月時点)
        現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業  ▲24→▲18     ▲14→▲8
製造業中堅企業 ▲30→▲31     ▲19→▲20
製造業中小企業 ▲40→▲42     ▲30→▲32

非製造業大企業  ▲22→▲19    ▲14→▲10
非製造業中堅企業 ▲29→▲33    ▲21→▲21
非製造業中小企業 ▲35→▲41    ▲31→▲37

今回は12月の予測DIよりも全セクターで改善という素晴らしい結果。特に企業規模の小さい所で先行き見通し対比大幅に改善しているのはまあいい感じなんじゃないでしょうか。

先行き予測数値が中堅以下で横ばいまたは下向きに出ているのですけれども、これはまあ12月時点でも同じ(9月は中堅以下が横ばいで出ていた)でしたので、改善状況の下でのアンケートの仕様だと思われますが、まあ次回コケなげれば堅調継続なんじゃないっすか。


・雇用判断DI

前回は「9月調査時点で改善が頭打ちになりやがったけれども、今回に関してはお先真っ暗みたいな話が出ている程悪くは無いですね、先行きも判断タイト化してるし」という結果でしたが。


        (12月時点)      (3月時点)
         現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業  +21→+18     +17→+13
製造業中堅企業 +26→+23     +18→+16
製造業中小企業 +29→+27     +20→+17

非製造業大企業  +8→+7      +9→+6
非製造業中堅企業 +9→+9      +7→+8
非製造業中小企業 +9→+10     +8→+13

まあ一見するとこりゃまあ改善してますねという所ではないかと。予測DIよりも好転しているセクターが多く、特に製造業が全規模で改善しているのは良いお話ではないかと思うのですが。前回の時は「へ〜意外に落ち込まないもんなのですね〜」と心強く思った(何故かと言うと金融市場と報道ベースがお先真っ暗っぽい話だったから)とか書きましたが、やはりそういう事でしたという結果ですな。

とはいっても相変わらず「過剰」超なのは変わりませんが(−−)


・証券業業況判断DIを見ようと思ったら・・・・・

証券業の業況判断DIというのは足元のブレっぷりと、先行き予測数値の外しっぷりの豪快さに定評があるので長期的に楽しんでいたのですが・・・・・

『8.金融機関の業況判断等』の箱を見たら、その中の業種分類に見慣れない文言が。

『金融商品取引業』

・・・・orz

金商法改正がどうしたこうしたの影響があるのですけれども、案の定12月計数を確認したら前回出ていた12月計数と今回出ている12月計数が違ってまして、良く良く見たら前回まで『貸金業・投資業等』というのが『貸金業等』になってまして、こちらも修正になっているのでまあカテゴリーの見直しがあったんでしょう。

ということで、証券業の楽しいDIのブレっぷりを見る事が出来ないというのは実に残念な所でありまする。今回は一回パスということで。


・資金繰り判断DI

      (12月時点) (3月時点)
大企業    +6     +9
中堅企業   ▲3     +1
中小企業  ▲16     ▲14

中堅企業までプラスに(^^)。


・貸出態度判断DI

      (12月時点) (3月時点)
大企業    ▲1      +2
中堅企業   ▲5      ▲1
中小企業   ▲11     ▲8

大企業の+2ってもっと良いだろと思うのだがまあこれも改善と。


ということで与太分析でございましたが、証券業のカテゴリーが変わってしまったので正直しょんぼりしちゃいますなという感じです、とほほ。


○生活意識アンケート

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki1004.pdf

これまた細々見ると味わいが非常に深いのですけれども、とりあえず政策インプリケーション的に重要なのは物価に関する所でしょう、ということで物価に関する部分を見るのだ。ちなみに()が前回調査の数値ですので念の為。

『Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、
「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが
購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった    3.4  ( 4.4 )
2 少し上がった     20.2 ( 24.4 )
3 ほとんど変わらない  36.0 ( 35.1 )
4 少し下がった     35.9 ( 31.5 )
5 かなり下がった    3.9  ( 3.4 )』

ということで下がっているというのがまた増えているのですが、前回調査の期間以降に益々デフレがどうのこうのという話が出たという事も勘案すると(前回調査は11月12日〜12月8日が調査期間で、政府様が対策皆無のままデフレ宣言をするという意味不明な供述じゃなかった行動をしたのが11月20日)シャーナイナイという所。

で、問題は先行き見通しだと思う訳ですが。

『Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる    2.1 ( 3.0 )
2 少し上がる     30.1 ( 30.8 )
3 ほとんど変わらない 50.2 ( 46.2 )
4 少し下がる     16.2 ( 17.3 )
5 かなり下がる    0.7 ( 1.1 )


Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値 +1.7 ( +1.7 )
中央値 0.0 ( 0.0 )


平均値:極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は +1.8 (前回調査<21/12月実施>:+1.7)。
中央値:回答を順番に並べた際に中央に位置する値。』

(注釈部分や表記部分を引用の都合上改変していますが数値は表記のままです)

・・・・ほほう、意外に悪化していないですな。

『Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる    10.2 ( 12.4 )
2 少し上がる     53.6 ( 49.8 )
3 ほとんど変わらない 24.0 ( 23.4 )
4 少し下がる     8.6 ( 10.2 )
5 かなり下がる    1.5 ( 1.6 )


Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と
   思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値 +3.0 ( +3.5 )
中央値 +2.0 ( +2.0 )

(なお、この数値は5年間トータルではなく「毎年平均何%ですかという設問です)

平均値:極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は +3.2 (前回調査<21/12月実施>:+3.6)。
中央値:回答を順番に並べた際に中央に位置する値。』

(注釈部分や表記部分を引用の都合上改変していますが数値は表記のままです)

・・・・・うーむ、平均値が下がっているというのを重視すべきなのか、それとも見通しの向き(Q16)が上昇しているのを重視すべきなのかが微妙。

で、基本的にここで出てくる物価数値っていうのはヘドニックが掛かっていませんので(^^)、実際の物価指数より上にぶれるのは当たり前にも程があるので、そこはフィルター掛けてみないといかんですけれどもね(^^)。


あと、これは何の意味がと思ったのですが、今回からアンケート項目に『電子マネーに関する利用状況等』というのが入りまして、その代わりに『日本銀行に関する認知度、信頼度等』というのが抜けています。まあ最近は電子マネーとかの話って日銀レビューでも出てましたし、この前なんぞあたくしの趣味でRiksbankの副総裁がカード決済に関するスピーチをしていたのをご紹介しましたように(^^)、まあこの点に関しては益々重要性を増してくると言う事でしょう。


なお、景況感に関して言えば、これもまた若干の改善となってまして、雰囲気的には少しはマシになってきたという所でしょうか。


○追随報道は無さそうですけれどもナンジャソリャ報道

まあ何と申しますか、海原雄山状態になって「この記事を書いたのは誰だ〜!」と厨房に乗り込みたくなる(厨房に乗り込んでも記者はいませんが)レベル。

共同通信(47NEWS)から。
http://www.47news.jp/CN/201004/CN2010040101000833.html
日銀、追加緩和論が浮上 景況感改善もデフレ懸念

いやまあ憶測するのは勝手(憶測記事なんだか取材記事なんだか判らない書き方はどうかと思うのだが)ですけれども、記事の中身にあるコメントとか、これ書いた人意味判ってるのかねという感じでして、どこの素人が書いたのかと小一時間。

『このため、日銀内には「景気に過熱感があるわけではなく、追加緩和は検討対象」(幹部)との意見が出ている。具体的には、新型オペで供給する資金の返済条件を現行3カ月から6カ月程度に延長することなどが検討対象となっているもようだ。』

????????∫dx

えーっと、景気に過熱感って何のギャグかと。そもそも過熱を心配するような景気だったら引き締めが検討対象になると思うのだが、幹部とか言われる人がマジでこういう言い方をするとは思えず、記者が脳内変換したのか、記者がおちょくられているのかのどっちかだと思うのだが。

で、新型オペで供給する資金の「返済条件」とか用語の使い方が金融市場関連取材する人の使う言葉として有り得ない(そりゃまあ新型オペは共通担保資金供給でして、形式は日銀による担保付貸出ですので返済っちゃあ返済ですけれども)ので、ど素人が取材しておちょくられたのかなあという気もしてきました(当初は脳内変換で変なこと書いていると思っていたのですけど^^)。

つーか、この前決定した「新型オペ増額」がまだ始まったばかりなんですけどねえ(ま、あたしゃ追加緩和そのものはどこかであると思ってますので念の為^^)。

#そりゃまあ常に金融政策の変更は検討対象でしょ。変更するかしないかを毎回議決しているのが政策決定会合なんですから・・・・

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2010/04/01

○今更ですが1か月以上前のイエレン講演ネタの続き

期初だと言うのに棚卸しネタでどうもすいませんm(__)m

http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.html
http://www.frbsf.org/news/speeches/2010/janet_yellen0222.pdf

だいぶ前にご紹介した時には労働市場に関する話を詳しくやってるという部分を引用しましたが、本文11ページ目(PDFの方で)からインフレと金融政策の話になるのでございます。(初回が3月15日、2回目が3月23日ね)

・財政赤字とFedのバランスシート拡大がインフレには直結しないという話

『Let me move on to the outlook for inflation nationwide. You can get into quite a debate on this topic. Some people worry that sustained federal budget deficits and the huge increase in the Federal Reserve’s lending and stimulus programs could eventually lead to high inflation. Others take the opposite view, arguing that economic slack and downward pressure on wages and prices are pushing inflation down. I would put myself squarely in the second camp.』

米国のインフレ見通しについて(nationwideって言ってるのは、その直前までサンディエゴの経済に関しての話をしているからだと思う)、持続的な財政赤字とFedのバランスシート拡大がインフレを起こすという見解と、経済のスラックや賃金の引き下げ圧力が物価引き下げ圧力に働くという見解があるが、「私はきっぱりと後者の陣営に与する」と仰せでありますので、まあ普通にハト的(とらすとみーではない)だと思いますイエレンさん。

では財政赤字無問題かというとそうではなく、問題点について言及してもいるのでして。

『I’m no fan of persistently large budget deficits. I’ve warned against them throughout my career. But the real danger I see from them is not inflation.』

財政赤字の継続の問題はインフレでは無いと言う事ですが、では何かと。

『Rather, they may be harmful once the economy recovers because they are apt to boost interest rates and absorb private savings that would otherwise finance productive investments.』

『This is potentially a serious problem in the long term that could reduce investment and lower living standards, although, in the short run, federal deficits have cushioned the blow from the financial crisis and recession.』

短期的には財政拡大は金融危機やリセッションへの緩衝材として機能するというメリットはあるけれども、財政部門が個人の貯蓄を吸収してしまい、景気が回復する段階において、金融仲介機能によって生産性の高い分野に資金が流れるのを阻害するという問題点があるという話をしているようですな。

市場の現場労務者的にはホンマカイナ(回復した時にはどうせレバレッジ効かせたりして金は回るんじゃネーノという素人考えですが)という気もせんでもないですが、仰る話はなるほどと思ったです。

で、次の説明部分に吹いた。

『As far as inflation is concerned, there’s no evidence that big government deficits cause high inflation in advanced economies with independent central banks, such as the Fed. Japan is a case in point. Japan has run enormous fiscal deficits for many years and its government debt has risen to very high levels. Yet is has suffered from persistent deflation, not inflation.』

・・・・・いやはや(涙)。


・ということでインフレに対する見通しは弱気ですな

で、次のパラグラフではインフレの見通しを述べています。

『I believe that the more worrisome challenge for price stability over the next few years stems primarily from the sizable amount of slack in the economy.』

経済のスラックがかなり大きいとな。

『Whether measured by the output gap, the unemployment rate, the manufacturing capacity utilization rate, or whichever measure you like, the economy is running well below its potential. As a result, inflation is already very low and trending downward. Over the past 12 months, the personal consumption price index, excluding volatile food and energy prices, rose a modest 1.5 percent. This increase in core inflation was below the 2 percent rate that I and most of my fellow Fed policymakers on the Federal Open Market Committee (FOMC) consider an appropriate long-term price stability objective. And, with slack likely to persist for years and wages barely rising, it seems quite possible that core inflation will move even lower this year and next.』

超どうでもいい話ですが、FRBは「the manufacturing capacity utilization rate」という言い方をするので字面を見ただけで何を言いたいのか判るのですが、BOEはこの事を「the margin of spare economic capacity(economicが抜ける場合もあったと思う)」と書いてあるので、ネイティブじゃないあたくし的にはBOEの文書の方が読むのにホネでございます。まあどっちもホネなんですけどね(爆)。

まあそれは兎も角として、最後の一文にもありますように、スラックが暫く続き、賃金はちんたらしか上昇しないのでコアインフレは来年くらいまではより低い状態が続くでしょうと言う話。

と言うのを見てると早期利上げ観測ってナンジャソリャと思ってしまうのですけどねえ・・・・


・ここの所の説明は微妙に違和感が

『So where does all this leave Federal Reserve policy? Traditionally, the main tool of Fed monetary policy is the federal funds rate, which is what banks charge each other for overnight loans. The Fed controls that rate by varying the amount of reserves it supplies to the banking system and we have pushed that rate to zero for all practical purposes. This is as low as it can go.』

まあ説明としてはそうなるのかもしれないですけど、実際問題として政策金利の上げ下げにマネーの量は後付けでついてくるものであって、政策金利を変更した瞬間には別に金融市場のマネーの総量は変わらないと思いますけどどうなんでしょ。

つーか単に超過準備出し過ぎてFF金利のコントロールが出来なくなったから0〜25bpというお洒落な金利ディレクティブにしているのじゃないかと。いやまあ細けぇツッコミっちゃあその通りなんですが。

それは兎も角。

『Such accommodative policy is appropriate, in my view, because the economy is operating well below its potential and inflation is undesirably low. I believe this is not the time to be removing monetary stimulus. Consistent with that view, the FOMC has repeatedly stated that it expects low interest rates to continue for an extended period.』

ということで、イエレン姐さんは緩和的な金融政策の長期化に対しては親和的な態度ですし、まあここまでの話しっぷりからして(労働市場の改善に時間が掛かるという話も含めて)緩和的な金融政策の長期化上等というスタンスであるというのは見えるかなあと思います。


・保有証券売却による流動性吸収には消極的

で、その後は出口政策の説明になるのですが、それは従来Fedのあちこちから言われている話なので華麗にスルーしますが、保有証券売却に関する流動性吸収に関してはこのような話をしています。

『In normal times, the Fed raises interest rates by reducing the size of its balance sheet, say by selling Treasury securities to the public.』

さっきも細けぇいちゃもんを付けましたが、別に中銀がバランスシートを無理くり縮小しなくても「政策金利を引き上げますのでよろしく」と言えば普通は金利が上昇すると思うのだが、さっきの説明と言い何か微妙に現場労務者的には違和感がございますがまあそれは兎も角。

『This draws in cash from the economy, or, as we say, reduces the supply of bank reserves, which in turn causes the price of those reserves, that is, the federal funds rate, to go up. Since the fed funds rate is the benchmark for banks’ cost of money, other short-term market interest rates tend to follow suit. Higher interest rates in turn help slow the economy and reduce inflationary pressures.』

まあこの辺の説明は一般的な話ですが、では現在はどうなのよと言いますと。

『But these aren’t normal times. Our securities purchases have caused the quantity of reserves in the banking system to swell to something like $1 trillion?far above the pre-crisis level of around $50 billion. If we were to follow our standard approach of selling securities to raise interest rates, we would have to sell off many hundreds of billions of dollars of securities to reduce the supply of reserves enough to have any chance of pushing rates higher.』

バランスシート縮小を企図して保有証券を売却するとなるとエライ量の証券を売らないとマズーという状態でござるの巻ですと。

『The problem with doing that is that such massive sales of mortgage-related and Treasury securities could be disruptive to markets and cause mortgage interest rates and other long-term rates to shoot up when we are still in the early stages of the recovery and the financial system, although improving, is still not at full health.』

従って、そのような売り方をしたらモーゲージ債市場が崩壊したり、長期国債金利がアホのように上昇して、回復中の経済が爆死してしまうという話をしていまして、それは正に仰る通りだと思います。

一部の連銀幹部からは保有証券売却の話も出てますが、まああれはリップサービス(というのかどうか知らんが)の類であって、市場環境を考えたらまともに売って来るような話は起きないと思った方が良いのではないかと存じます。


・最後の止めにハト発言

で、講演の最後の部分を引用します。

『The bottom line is that we are already unwinding the emergency programs we set up during the financial crisis. When the day comes to start raising rates again, we have tools at the ready. But, for the time being, the economy still needs the support of extraordinarily low rates. Thank you very much.』

経済は現状では依然として例外的な低金利によるサポートを必要としています、という言葉で締めていますね(^^)。


#てなわけで随分前の講演ネタでどうもすいませんでした

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