金融政策概観(2011年度下期後半分(2012年01月〜03月))

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2012/03/30「ソロスチャートの話をするアホ発見/謎の独自物価統計」
2012/03/26「次期審議委員候補にBPパリバの河野龍太郎さん/日経謎のチョンボ?報道で1名候補者消える」
2012/03/16「米債相場を見て長期金利コントロールの困難を思う雑感など」
2012/03/15「米債ミニマーライオンで円債も1%の一方で短期国債はニーズ集まる」
2012/03/14「決定会合関連雑談:決定会合の時間が長い件とか小沢鋭人議員の不見識振りとかクレクレの件とか」
2012/03/13「決定会合当日に見通しを話す馬鹿副大臣/決定会合プレビュー悪態」
2012/03/12「決定会合直前の3か月基金オペは札割れ回避/決定会合プレビュー雑談」
2012/03/09「不胎化QEってナンジャソリャ/前原民主党政調会長の不勉強ぶりに呆れる」
2012/03/07「3か月基金オペついに全取になってしまうというオペ技術の限界に早くも到達」
2012/03/06「外準を財源とかアホか馬鹿かと/政治主導のカイカク派の本性見たりのがれき処理議連」
2012/03/02「ニュース雑感/民主党の円高対策研究会さんよ、円高対策で欧米よりも高い物価目標だすとか無茶過ぎじゃボケ/ロイターの金融関連記事のレベルが最近あまりに壊滅的な件について」
2012/03/01「3年LTRO結果メモ/期越えオペが札割れて短いオペに応札沢山/引き下げデモクラシー」
2012/02/29「基金買入オペの銘柄増やすと「日銀が消極的」とか馬鹿ですか/2年入札低調/コア&総合」
2012/02/27「AIJ投資顧問事件とばっちりキター」
2012/02/24「物価2%を目標とか言うけどその時にインフレ大変だとかなりませんように/謎の投資顧問事件」
2012/02/22「ロールの6か月オペも札割れ/復興債の金貨/証券界出身民主党木内議員の相当のアホ言説」
2012/02/21「FC議事要旨から:フォワードガイダンスの文言が今後変更になりそうな件」
2012/02/20「明確に前向きの緩和スタンスを表明した重要な総裁講演(2/17)」
2012/02/17「堅調にも程がある5年国債入札/6か月固定金利基金オペが札割れ」
2012/02/16「基金国債買入を早速5000億円オファー/今回のスタンスは違うぞ/その他雑談」
2012/02/15「色々な事のあった金融政策決定会合レビューですが一言でいえば俊ちゃんメソッド導入である」
2012/02/14「物価連動国債WG/基金オペ雑感」
2012/02/13「決定会合プレビュー雑談/安住大臣の失言キタコレ/海外ネタとかその他雑談系」
2012/02/10「決定会合プレビュー雑談」
2012/02/08「インフレーションターゲット関連雑談」
2012/02/03「何か知らんのだが国債暴落煽り報道が妙に目に付くんですが・・・・・」
2012/02/02「FOMCレビューの続き(追加の資産購入に関してコンセンサスが取れてい無さそうな件に関して)」
2012/01/31「FOMCレビューの続き(インフレーションターゲットに関して)」
2012/01/30「中日新聞の馬鹿社説/FOMCレビューの続き(時間軸に関して)」
2012/01/27「引き続きFOMCレビューの続き」
2012/01/26「色々と重要なのでFOMCネタをこちらにも^^」
2012/01/23「基金短国札割れ/2MTB入札は0.10%割れ/株式売却先送り等/これ東電に何で賠償させるの?」
2012/01/20「ボルカールールに関してデューク理事の議会証言から」
2012/01/19「ニュースから雑談を少々」
2012/01/18「1年TB入札がセカンダリーで0.085%までショートカバー」
2012/01/17「業態別当座預金残高で何故か信託銀行が増えている件/権丈先生の叱咤」
2012/01/13「金融庁と日銀がボルカールールに意見書
2012/01/12「フィッチが妄言を吐いておられるようです/短国入札は0.10%で需給が極端に変化とな」
2012/01/11「バーゼルUの流動性基準/個人向け復興国債販売順調/年初の短国入札/期末越えドルオペ」
2012/01/10「IMFが日本のストレステスト??」
2012/01/06「JCR内海社長の年頭所感が実にいい感じです」
2012/01/04「年初雑談」

2012/03/30

○今さらソロスチャートかよ!!!!

ということで先ほどの宮尾審議委員会見ですが、その中で馬鹿質問が1件。

『(問) 2点お伺いします。(まあ前半の質問は良いのですけれども割愛しちゃいます)また、マネタリーベースが、3月にかけて、伸び率が急激に下がっています。こういう数字をもって、日銀が強力な金融緩和を推進してくれると期待している市場参加者その他は、「日銀はやる気が余りないのではないか」と思う可能性があります。この点についてご説明下さい。』

いやあのそんなの普通に金融調節とか資金需給とか判っている人は「やる気が余りない」とか言いませんからねえと思う次第。

『(答) (前半割愛)2点目は、マネタリーベースの変化についてのご質問ですが、この2月、3月では、当座預金の変動に伴った動きが一つの要因として考えられます。財政資金の変動等によって、当座預金が比較的大きく変動したので、その結果がマネタリーベースの短期的な動きに現れた可能性があると思います。いずれにせよ、そうした動きの要因も含め、マネタリーベースの動き、マネー指標の動きについても、注意深く点検していきたいと思います。』

大体からしてソロスチャートと言われるものって貨幣乗数が安定している時に成立する話で、予備的資金需要やらによる超過準備とか、量的緩和して超過準備が資金需給によってぶれるような状態になっている時には当然ながら当てはまり悪いだろと思う訳でして、まあソロスチャート持ち出しますと4月は当座預金残高が今の数値(ちなみに今日は34.4兆円の残高になる予定だが)から更に増えそう(お蔭で基金固定金利オペ6Mがまた札減ってカツカツの応札になっているのですが^^)な勢いでございますので、「日銀は4月は強力な金融緩和を推進してる」とか言うのかねと思うのでありますがどうなんでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

まあ資金需給の事も理解しないで「4月になったら当座預金残高は15兆円水準、もしかしたら8兆円(=ほぼ所要準備並み)近くまで低下するかもしれない」(キリッ)とか馬鹿レポートを出すのが債券の何とかストだったりするので、まあそういう意味では「市場関係者」のうちその手の話をちゃんと把握していない人も多いとは思いますけどね。

と申しますのは、最近もどこぞのレポートで見たのですが、「株式市場や外為市場を牛耳り、大抵がソロスチャートの信奉者である大多数の外国人投資家から理解を得られるようにしないといけない」とか何とか抜かしている馬鹿レポートがあって腰を抜かす訳ですが、お前はそもそもソロスチャートで短期売買している投資家がいるのかと小一時間問い詰めたい訳で、単月の資金需給の振れによる動きで一々「緩和が足りない」とか言うとか頭大丈夫かというかお前ら早く引退して後進に道を譲れやドアホと思いますけどね。

まあ本職の何とかストでもそういう手合いが存在する、というくらいまあ金融政策ネタを実務のレベルまで落とした場合にアジビラ並みのへんてこレポートが横行するのは別に日本だけもなさそう(海外金融政策ネタを書いている海外レポートはたまにしか見ないですけれども、一部やはり変なのを見かける訳で)ではございますが、まーマニアックにも程がある世界なので理解されませんわなあとか思うのでございました。

#いかん変な悪態になってしまった


○どうでも良いがこれは微妙に?????

こんなのがあったんですが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1MDTO07SXKX01.html
日銀の物価上昇1%達成でも真のデフレ脱却と言えず−渡辺努東大教授
更新日時: 2012/03/29 09:10 JST

『3月29日(ブルームバーグ):東京大学大学院の渡辺努教授はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、真の物価は総務省の消費者物価指数(CPI)前年比上昇率より1ポイント以上低い可能性があるとし、日本銀行が目標として掲げる1%に達しても、デフレから脱していないという事態が起こり得ると述べた。』(上記URLより、以下同様)

はあそうですかという感じですが、この先を読んでいると微妙にアレ。

『渡辺教授は日銀出身で一橋大学教授を経て現職。インタビューは26日に行った。教授が現在取り組んでいるのは、総務省と異なるCPIの算出。同省は調査員をスーパーに派遣し、サンプル調査で集計する。これに対し渡辺教授らは、スーパーのレジにあるスキャン(データ読み取り機)で記録された全ての値段と数量を400店舗分ほど集めた上で、同省と異なる基準でサンプルを抽出する実験を行った。教授は「サンプル抽出の方法を少し変えることで、出てくる数字がどのくらい振れるのか、総務省の数字をどの程度幅を持って見る必要があるか評価しようとした」という。CPIは過去10−15年ほど毎年1%前後下落しているが、「抽出を変えると物価がより大幅に下がる傾向があり、一番大きいケースだと2%下落になる」という。』

・・・・・・・・・何かこの研究ネタ以前見たような見なかったような気がするのですが、POSデータ使って物価集計とかするとそらまあ閉店前の特売価格とか、客寄せ用の特売価格とかも含まれるから低めに出るわなという気がするんだが。

それにPOSの所だけやたら精緻にデータを取っても他の所はどうなのよとか思いますし、大体からして第2種兼業主夫であるところのあたくしの生活実感的にスーパーでの物価ってここ数年下がっている気がしないのですえけど、つーかここ数年は若干上昇してるだろ(前年比でみたら去年と今年では3月とと4月は下がるでしょうけど)と思うのですけどねえ。

『渡辺教授は「1%の根拠は何かをもっと明確にすべきだ。誤差と言っても、私たち以上に踏み込んだ研究をしている例は、私の知る限りない。日銀は何を根拠に、どの数字を見て、どの程度の誤差があるかという説明を一切していない」と語る。』

いやあのスーパーの価格うんぬんよりも多分家電製品のヘドニックが効きすぎている方を問題にした方が良いような気がするんですけど・・・・・・・

『渡辺教授が取り組むもう1つの研究は、金融政策が物価に与える影響。「スキャナーデータにより、これがベストと思えるようなCPIの指数を作った」と指摘。「スーパーだから毎日データが上がってくるので、金融政策の変更により、実際にスーパーの価格や販売数量が動いているかどうかをデイリー単位でみることができる」という。』

はあそうですか(棒読み)。

『渡辺教授はブルームバーグが日銀ウオッチャーを対象に行っている金融政策予測調査を活用。「政策変更が予想通りなら既に織り込み済みなので、スーパーの経営者も価格を変えることはないが、予想外の変更であれば価格付けが変わる可能性がある」と指摘。「何らかの金融緩和が行われ、しかもそれが予想外だった場合、物価が反応するという結果が暫定的ながら得られている」という。

えええええええええ!!!!!!それは相関あっても因果関係は「風が吹けば桶屋が儲かる」の世界じゃないかと思いますけど・・・・・・大体からしてスーパーで値付けする人間がブルームバーグの金融政策予測調査見てるかよと小一時間問い詰めたいですけれども、何かこのセンセイはインタビュー記事だけで判断するのも誠に恐縮ながら思い込みが激しそうな気がするので問い詰めると疲れそうなのでやっぱいいです(笑)

・・・・・・・ということで謎の記事でしたが一応メモ代わりに。そのうちちゃんと勉強したいです。

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2012/03/26

○日銀次期審議委員候補関連である

まあ金曜は関連ネタが色々とあった訳ですのでかいつまんで少々(と言いつつちょっと長いかも)。

・これは日経新聞の粗相なのか他に意味でもあったのか

http://www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C93819591E0E0E2E3808DE0E0E2E1E0E2E3E09797E0E2E2E2
日銀審議委員に伊藤忠の渡辺氏 政府が調整
2012/3/23 2:00 情報元 日本経済新聞 電子版

『政府は22日、日銀審議委員に伊藤忠商事の渡辺康平相談役(62)を起用する方向で調整に入った。亀崎英敏(68)、中村清次(69)両審議委員が4月4日に任期を迎えるため、その後任の1人に充てる。衆参両院の同意を得たうえで任命する。(以下の記事は有料版になります)』(上記URLより)

・・・・・・まあ例によって例の如く日経本紙を購読していない(本当です)あたくしなので(つーか駄文書いていると朝刊読む暇はない^^)このニュース河野龍太郎さんのノミネートのニュース出てから気が付くというアホウな事態だったのはさておきまして(汗)。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BFUN6JTSE801.html
自民・鶴保氏:渡辺氏の提示はあり得ない−日銀審議委員(訂正)
更新日時: 2012/03/23 11:20 JST

『3月23日(ブルームバーグ):鶴保庸介自民党参院議員(議院運営委員長)は23日午前、4月で期限が切れる日本銀行の審議委員2人の後任候補のひとりとして一部報道で伝えられた伊藤忠相談役の渡辺康平氏について、提示はあり得ないと述べた。その上で、残りの審議委員人事は来週中に提示があってほしいと語った。』(上記URLより)

ということで、前回の総裁人事で散々ゴタゴタした教訓だか何だか知りませんが、「日銀審議委員の人事に関して(なのか国会同意人事全般なのかは存じませんが)、国会提示前に候補者名が報道されるようなのは以ての外であって、そのような事が有った場合にはその人事の提示は行わない」というような話になっていた筈でございまして、まあ今回鶴保さんがこのように指摘したのはその辺りを踏まえての事となっているようです。

ちなみに渡邉康平さんと表記する方が正しいようですが、昨年の3月末まで取締役副会長でいらっしゃったようです。副会長時点での役員プロフィールが伊藤忠商事さんのサイトに載っていたのでその時のリンクと役員退任時のリリースのリンクを。

http://www.itochu.co.jp/ja/ir/doc/disclosure/files/2011/pdf/ITC110202_j.pdf
http://www.itochu.co.jp/ja/about/officer/watanabe.html

まあ何ですな、伊藤忠商事で副会長までお勤めになられた方からしたら罰ゲームにも程がある処遇でのお仕事で、まあ財界の方からしたら懲罰召集だろうにというのをよくぞお引き受け下さいましたという所だったのですが、今回の日経新聞の先走り報道で全ておじゃんになってしまいました罠。

まあ普通こういうの仮に聞いても上記のような事情があるんだから報道自粛するだろと思う次第でして、日経新聞がこの人事を潰そうという意図をもって書いたにしても、単にそういうのすっかり忘れて「スクープだ!!!」と喜び勇んで絶賛勇み足だとしても、まあいずれにせよこれは罪万死に値する行為でありまして、この記事書いた記者とデスクと整理部(になるのか?)は可及的速やかに豆腐の角に頭をぶつけて(以下罵倒文言が続くので自主規制)。


・しかし財界の候補が2名出なかったとはこれまたヒドス

でまあ残りの1名が河野龍太郎さんというのは既に皆様ご案内の通りで、河野さんに関しましての雑感その他は後で書きますが、今回の人事案のニュースを見て一番驚愕したのは「財界で日銀審議委員を引き受けて下さる方がそんなに居ないのかよ」という所でございます。

そらまあ資産は全部公開させられて株やら売買出来ない(信託して凍結モードにするかその前に全部売ってしまうかの2択)とか、通常の政策委員会がこれまたアホのように忙しく(通常の政策委員会が毎週実施されていてその決定事項とかも日銀のサイトに出てたりしますけど通常の日銀の業務執行に関する細かい話が多いんじゃなかったでしたっけ)こき使われるわ、好き勝手言い放題という訳にも行かないわ、おまけに国会に呼び出されたりして何だかんだと言われるわ。しかもそれこそ大企業の経営トップに近い位置にいる人が普通に受けている待遇から見たら半値以下(つーか3分の1以下とかでしょ)の年俸だわとか、そらまあ色々とアレな待遇ではございます。

さらに最近は政治家方面から難癖つけるのがいて叩かれまくるわとなれば、よほど金融政策に興味でもない限り普通は尻込みするわと思うのですが、それにしても今回1名の候補者が河野さんになったというのは、よーするに財界人で引き受け手がろくすっぽ居ないという事で、何だかそれも残念というか困ったもんだという感じではございます。河野さんがどうのこうの(駄洒落では無い^^)という以前に、あたくし第一報を見た時にそっちを先に思ったのでございますよ、はい。


・で、河野龍太郎さんとな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BEFE6KLVR601.html
日銀審議委員にBNPパリバの河野龍太郎氏提示−国会同意人事 (1)
更新日時: 2012/03/23 18:11 JST

河野さんと言えば「金融政策の理論と実践」(アラン・ブラインダー著、河野龍太郎、前田栄治訳、東洋経済新報社 ISBN4-492-65260-4 C3033たぶんもう絶版、初版は1999年12月30日)っつーのをあたくし昔購入した(のは良いのだが弟子の誰かに貸したまま行方不明なのでこれ読んだ身に覚えのある弟子は良い子だから返しに来なさい^^)のでお名前を存じ上げていたりしますし、まあ当然ながらBNPパリバに現在いらっしゃるのでレポートなどは拝読したりしとりますです、はい。

でですな、河野さんはまあ「リサーチ系」という感じで、そらまあ市場の中の人ではございますが、市場現場労務者的な感じとはまた対極にいらっしゃるという印象でございまして(あくまでもあたくしの印象なので違っていたら謹んで訂正しますが)、市場からノミネートされたというよりは総研みたいな所からノミネートされた的なイメージの方を感じますです、いやまあ別にそれは文句言ってる訳では無くてそういう感じですねえというだけの話ですけど。

んでもって河野さんのレポートではそのまあオペの細かい話だとか調節技術の話だとかというのに関しては基本的にスルーという感じだったと思いまして、同じ「証券会社のストラテジスト・エコノミスト」の範疇として以前いらっしゃった水野温氏元審議委員とはまあタイプが違うかなあという所でございます。まあ非伝統的政策を実施とか、危機対応とかの場合って結構この調節技術の細かい話とかのようなオペレーショナルな部分ってひじょーに重要な話になってくるのですが、まあそもそもエコノミスト・ストラテジストという範疇の人で調節技術の細かいマニアックな話に興味および土地勘のある方の方が珍しいのでまー普通ちゃあ普通なのですが、金融政策の技術論で執行部と対抗できるような人も居てほしいかな(ちなみに言うと昔の決定会合の議事録(議事要旨では無い)を見ると過去においては武富さんとか技術論になった時の発言内容が凄い^^)とは存じますけどにゃ。

まーレポートとか拝読する限りにおいて、普通にちゃんとした話を展開する方との印象がございますので、まあ無難な所に落ち着いたという感じではあるのですが、いわゆる市場の何とかストの皆様の中ではやや若い(つーか上の人が全然変わらないから昭和62年の河野さんが若い部類になるのですが)のでほほーという感じですな。

ちなみに、『河野氏は1964年生まれで愛媛県出身。1987年に横浜国立大学卒業後は大和投資顧問や第一生命経済研究所などの民間金融機関でエコノミストとしてキャリアを積み、2000年より現職。』(さっきのブルームバーグ記事より)ということですが、昭和62年住友銀行入行で、これで何と審議委員に住友2名(ってまあ河野さんを捕まえて住友銀行という人はいませんか^^)ですかそうですかというのもアレですが、亀崎審議委員が横浜国立大学出身でして、ついに審議委員に横国の系譜が出来ましたかという事で胸熱(違)。


・ところでこの人たちはいったい何をやっておられた&おられるのかしら

ちょっと前のニュースでネタにもしましたが。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M071551A74E901.html
民主・馬淵氏:次期日銀審議委員にリフレ派登用を−インタビュー(1)
更新日時: 2012/03/01 17:27 JST

何かこの時は物凄い鼻息でいろいろな提言(どう見てもただの金融政策に関する難癖と干渉にしか見えなかったか)をした上に『審議委員に望ましい人としては、これまでの研究会での議論で、「社長経験者、円高や世界経済の中で輸出を中心にやっている産業で痛みの分かる人」という意見が出たという。』(上記インタビュー記事より)とか何とかご人選をしたかのようなお話をしておられたようなのですが、そもそも新聞に記事出たから潰れちゃいましたが渡辺さんにしても商社の方ですから「輸出を中心にやってる産業」という訳でも無いですし、結局おまいら言うだけ番長で自分たちが審議委員候補としてふさわしい人(「やりたい」人ではありません)を探して来て説得するとかいうような最も大事だけど面倒かつ大変なプロセスは自分たちでやらないで文句だけ垂れる評論家かよという所で、まあ何だかなという感じです。


で、まあ何か反対している人もおいでのようですが、さっきの河野さん提示のニュース記事の真ん中辺りなんですけどね(URL再掲します)。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M1BEFE6KLVR601.html
日銀審議委員にBNPパリバの河野龍太郎氏提示−国会同意人事 (1)
更新日時: 2012/03/23 18:11 JST

『河野氏は9日付の同記事で、日本経済が停滞しているのは、@少子高齢化に伴う働き手の減少でトレンド成長率そのものが低下しているA社会保障制度の持続可能性に対する疑念から現役世代が消費を抑制しているB財政赤字拡大で民間の貯蓄が食い潰され、設備投資が抑制されている−ことなど構造問題が主な原因であると指摘。その上で「日銀が政策目標として『物価安定』が与えられている以上、これらの構造問題や円高が引き起こすデフレ圧力を可能な限り吸収することは日銀の責務であるが、構造問題の解決そのものは金融政策で対応できるわけではない」としている。』(上記URL記事より、以下同様)

『安易な追加緩和は不適切』

『河野氏はさらに、「ゼロ金利政策や国債購入政策の長期化・固定化が、銀行行動を通じ、財政赤字のスムーズなファイナンスを可能にすることで、間接的だが、金融政策もトレンド成長率の回復を阻害している可能性がある」と指摘。「大きなデフレショックが訪れた際には金融政策で対応しなければならないが、そもそも政策を長期化・固定化させることの副作用は無視し得ないし、またショックが小さい場合、安易な追加緩和も不適切」とコメントしている。』

という話をしていまして、まあ追加緩和を安易に拡大するのはどうなのか、というような話をしているのですが、何故か山本幸三先生に掛かると・・・・・

『自民党の山本幸三衆院議員は河野氏について、ブルームバーグの取材に対し「量的緩和やインフレ目標政策に否定的な人だから、自民党は反対しなければいけない。参院で否決すべきである。いま日銀審議委員に必要な人材はリフレ派だ」と述べた。』

となるのですが、前半の河野さんの主張のまとめを読んでも「量的緩和やインフレ目標政策に否定的」とするのはちょっと乱暴な端折り方に見えます罠。

ちなみにまあ河野さんの2月20日のレポートとか引っ張り出して読んでみましたが、「積極的な金融緩和の継続に対する副作用が大きくなっている」という話はしていますが、じゃあ今の緩和政策を減らすのかという話をしているかと言うと、別に今すぐそうしろ的な話をして居る訳でも無く。『構造調整を先送りするための言い訳として追加緩和が要求されているように思われてならない。』という結語でレポートを締めているので、まあそういう意味では政治家先生には耳が痛いような気もしますがね(^^)。

現状「安易な追加緩和を野放図に拡大、固定化するな」という話と「量的緩和に否定的」というのは話の次元が合ってないだろと思う次第で、反対するにしてもあーた人の主張の一部を拡大解釈して反対というのも何ですなあと言う所ではございます。

#まあ積極追加緩和前のめり派が必要と言いたいんでしょうけれども

つーか「リフレ派が必要」なら中原伸之元審議委員の著書によりますと審議委員の打診をかつてされたものの「70歳まで大学教授をやっていたい」と言って審議委員をお断りされたとの事であらさられ、そうやってお断りはしながらも著書などでは日銀が極悪で社会の敵で死んで良しみたいな言説だけは熱心にしておられるという大変に立派なお方でいらっしゃられるどこぞの大学の先生の首に縄つけて引っ張ってこられたら良いのではないでしょうか。

『同党の財務金融部会長で「シャドウ・キャビネット(影の内閣)」財務相を務める西村康稔衆院議員も「反対の声が出ているので、慎重に検討したい」と語った。』

この方も何か以前日銀総裁の給与と財務事務次官の給与を比較して高いだの安いだのという話をするというようなアレなお方(これまた昨年の11月にネタにした訳ですが)ですが、何だか自民党もこの調子となると、民主党はもとよりダメでみんなの党は論外で大阪維新とかこっちに来んなと考えますと次の選挙投票する政党が益々あの辺とかその辺とかしか残らなくなって来てるんですけどねえ(吐息)と話が逸れましたが、まあ何なんでしょうねえという感じ。


・本職のレポートで電波浴とな

という事でまあ審議委員人事でひとしきり世間話一部悪態成分も無い訳では無いという感じでございますが、そんな金曜のひとときに本職のリサーチレポートで電波浴が出来るとは思わなかったのでご報告。

・・・・・・と申しましても、まあ本職の投資家向けレポートで別にインターネット上に展開されている訳でも無い(と思う)ので引用とかするのは控えますけれども、何かまあ凄いのよ。まあ趣旨は「日銀の追加緩和はそんなに続かない」という感じのお題で、まあそれだけ見たらふーんという感じなのですが、その中の説明が酷いのよこれが。

まずね、日銀の当座預金残高が震災直後の30兆円前後から今年の3月に入って25兆円程度に低下しているのが懸念材料(資産買入基金の増額を相殺して日銀の純資産の拡大ペースを鈍化させるとかいう話らしい)とかいう話をしているのですけれども、それ単に震災直後は予備的な資金需要が高まったという話とかの話だし、確かに3月2日〜19日は季節的な資金需給要因も相まって当座預金残高は25兆円程度で推移してましたが、その後21日時点で31.2兆円になっていますし、今日(26日)の見込みベースだと31.8兆円になっているわけで、3月23日付けのレポ―トで4日前の話を前提にされましてもアホか馬鹿かという感じなんですけどね、つーか株式レポートで4日も前の株価を前提にして「3月に入って株価は〜円に低下している(キリッ)」とか出したら誤認勧誘モノなんですけどねえ。

なお、そのお告げによりますと3月末にかけての季節的な追加資金供給によって一時的に残高が拡大しても(ちなみに足元では「追加資金供給」どころか金利入札オペ方式の供給オペのロールを打っていないので、その時点で状況認識能力の欠如を伺わせますが・・・・・)、4月から当座預金残高が減少して15兆円前後とか、もしかしたら8兆円前後まで日銀当座預金が低下する余地が残っているらしいとの事ですが、誠に残念なことにそれは物理的に有り得ません。詳しくは2月17日に東短リサーチの飯田上席研究員がレポート、というか淡々と資金需給とオペ推移の今後の予想をしたものをグラフでビジュアルに判りやすくしていますのでそちらにお問い合わせを(^^)。

しかも資産買入基金に関して2012年末以降拡張されないというのが前提になって、だから物価の安定の実現が難しいとかいう話もしているのですが、そもそも日銀は中長期的な物価安定の目途達成まで実質ゼロ金利政策と(FEDのフォワードガイダンスは金利政策だけですが日銀の場合はご丁寧というか馬鹿正直に)資産買入政策の継続を行うと表明している訳で、資産買入基金が拡張されないで保有資産がロールオーバーされないから物価の安定の実現が難しいとか、もはやお前は日銀の声明文を読んでいるのかと小一時間問い詰めたくなるような強力電波が発信されていて、過大出力で電波法に抵触するのではないか(嘘)というレベル。まあ確かに「第二の柱」に抵触するというようなケースだと途中で止める可能性もあるのですけど、別にそういうのを意識しているような書き振りにも見えませんしねえ。

#てな感じで特に調節に関する部分が大変にアレでツッコミどころ探しの試験問題向けの素材ですので資金部門の若手にでもテストさせたらどうでしょ(ニヤニヤ)

さらに電波浴をすると、どうもこちらの某会社様のレポート(って同じ人が執筆しているのですが)によりますと、日銀当座預金、マネタリーベース、M2いずれでも10兆円増やすとCPIが2年間で0.2%ポイント上昇するとかいうお説がかつて提唱されていたらしゅうございまして、そういやしばらく前にネタにした民主党の木内議員のアレの元ネタもこの辺だったんでしょうかねえ。

いやまあマネタリーベース云々は兎も角として、日銀当座預金がどうのこうのとかの話とか無知蒙昧のあたくしでも簡単にツッコめるような無茶な前提で論を立てるとか、中々強力電波でございまして、もしかしてこの方々は先ほどネタにしたセンセイ方の推薦でも貰って日銀審議委員狙いですかそうですかとか邪推したくなるような曲学阿世(というか曲学阿"政"という方が良いのかも知れませんが^^)な電波浴で先週の仕事の最後を締めくくるという誠に遺憾の極みではございました。

まあ電波浴したい人は金曜に出た各社のセルサイドレポートを丹念に探したら該当すると思われるレポートがどこかにあると思いますので自力で探してください。全然おすすめしないけど。

なお、そんなに当座預金残高「だけ」拡大したければ必殺技は一応調節技術的には思いつくものがございますが、それは技術的には意味があっても実体として誰得(というかあたくしのアイデアの場合オペ先が得してその他大勢が割を食うというオペ先のポジショントーク丸出しのアイデア、と書けば何だか判るでしょ?)な話なのでまあ何でしょうかねという感じですにゃ。

・・・・・・・ということで、いつの間にか審議委員人事の話が電波浴になっている所がドラめもんクオリティなのでありますた。

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2012/03/16

○何となく雑談

・米債マーライオン動向とかの雑感

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0XXJM6S972A01.html
米国債:下げ止まる−10年債は4カ月ぶり高利回りから反転
更新日時: 2012/03/16 04:40 JST

『3月15日(ブルームバーグ):米国債相場は下げを消す展開。10年債利回りは約4カ月ぶり高水準から低下した。テクニカル指標で、国債が短期間に下げ過ぎていた可能性が示唆されたことが手掛かり。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・・・??????というような理由になっておりまして、本当はどうなんですかねえという気もしますが、まあ経済指標は強いわ株価は上昇するわという中で引けでは前日比あまり変わらず近辺となったのはふーんという感じではございます。

でまあそれはそれで良いのですが、どう見ても最近の米国ミニマーライオン相場って「市場期待のコントロールの難しさ」を示しているのだと思います。

特に昨日の日本時間での米債の売られっぷり見てますと、2年が0.40%に乗ってみたり5年が1.10%に乗ってみたりと、どうも円債を見慣れているあたくしから致しますと金が落ちてるようにしか見えない水準に見えてしまうのですが(^^)、フォワードガイダンス文言の「2014年遅くまで低金利政策を継続」というのと全然整合しない(特に2年の)金利水準とか素敵なミスコミュニケーションという感じでございますわな。

まあ2年に関しては「長期債購入+資金吸収」というセットが行われた場合にGCや実効FFレートが上昇する事も織り込むとこうなるのかもしれませんけれども、いずれにせよ「長期金利をマニピュレート可能である」という理屈に基づいたFRBのコミュニケーションポリシーに無理が生じてきている、ということだと思われます。

結局ね、時間軸政策とかのようなもので市場金利をコントロールすると言っても、コントロールできるのは所詮は「政策金利の先行きが読める範囲内+少々」という期間の金利であって、期間内の政策金利の定積分みたいなイメージでブレークイーブンは何ぼですねんというような発想で金利の計算ができそうな所まで、という事なのでしょう。

長期金利のコントロールが出来る、というのはやはり幻想であって、FRBも一時長期金利コントロールしていたようには見えますが、それは逆に緩和政策やってもまだまだ景気回復しませんよねというような認識が続いている時だったからこその長期金利コントロールだったのではないかという風に思うのであります。

つーことで、まあ今後米国経済が調子よく回復するのであれば、益々コミュニケーションポリシーが難しくなって特に長期金利とかが本格的マーライオン相場とかもやってくれそうな風情ではございますが、まー現実的にはただの偽りの夜明け第3弾のような気もしますので、この程度の金利上昇でドヤ顔でコミュニケーション云々言うのもちょっと先走りではないかと存じますが(^^)、今のうちに言っておかないと(相場が戻って)言いそびれると困るので書いてみますた(−−)。


・引け際(引け後?)謎の超長期売り???

昨日の債券市場はまあ先物が親の敵のように売られておりましたが、その一方で超長期とか入札もあったのにその入札までもが堅調という、絵に描いたようなベアフラット相場になりやがる状態。

で、昨日中短期が強いですなあとか言ったのが何かの呪いになったのかどうか存じませんが、上がったり下がったりしているうちに5年の気配の方が10年の気配よりも弱くなるとかこちらも何かアレでございましたが、結局どこに実弾の売りが出ているとか今一歩ワカランチ会長(先物が売られているのだけは間違い無いですが^^)でしたがまあよー売ってましたな。

でですね、昨日の債券市場ちゃんの謎というかアレだったのは最後の最後にあった超長期の挙動でして、引け前15分辺りでは先物が前日比70銭とか下がっている中で10年が+3.5/+4.0とかの水準で20年が+1.5/+2.0の水準とか(しかも新発は1.80ビット)というようにやたら底堅くて栄耀栄華を誇っていたのでありますが、引け直前なのか直後なのかよー知りませんが最後の最後に急に20年とかの気配がゲロゲロになってしまい、終わってみれば引値ベースで10年カレントと20年どっちも5毛5糸甘(先物は85銭安)とかになりやがりました。引け前後の一瞬で2毛5糸気配が変わるとか、どう見ても売りが出ているのですが、誰の売りか存じませんが嫌がらせというか品の無い売り方してるなあと思いながら見るのでありました。

いやね、超長期入札が強くてその後売りが出てゲロゲロマーライオンというと超長期62回の入札(2003年のお話^^)を思い出すあたくしなのですが、まあ昨日に関しては「入札強かったけど誰も買わなくて相場崩壊」という話でもなさそうではございます(と言ってるけど本当にそうだったらオソロシス)けど、一瞬ちょっとびっくらこきました。まああの時は何せ絶対水準が0.8クーポンのオーバーパーでして、今回は別に最終投資家が全員ドン引きするような絶対水準ではありませんからだいぶ違いますけどね!


・消費税が予想通りの展開

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120316/k10013760341000.html
消費税率引き上げ 意見集約の行方は
3月16日 5時8分

『民主党の前原政策調査会長は、消費税率を引き上げるための法案について、16日、党内の意見集約を図りたいとしていますが、閣議決定への反対も根強く、執行部の中からも16日中の決着は避けるべきだという意見が強まっています。』

『15日までの議論では、経済状況によっては引き上げを見合わせることができるとした「景気弾力条項」について、政府が経済の成長戦略で掲げる名目3%を上回る経済成長率など、具体的な数値を明記するよう求める意見が相次ぎました。また、消費税率を10%に引き上げたあとの税制改革の方針を、法案の付則に「平成28年度をめどに必要な法制上の措置を講じることとする」と明記していることに対し、「将来の増税を示唆するような付則は容認できない」として、削除を求める意見も出されました。』(上記URLより)

・・・・・・・・・・・やはりこう来るかという感じですが、元の話だって別に今すぐ消費税引き上げやれという話でも無いのにこの揉めっぷりとか財政健全化やる気はないとしか思えませんなあ。

いやね、今日は米債がいったん止まった感じだから特にネタになりにくいですけれども、海外金利が上昇する中でこの辺のネタが復活すると時期的に期末の空白期間ですからねえとかいうのはあるんですけどね。

ただまあ足元の金利上昇って実はそんなに困っている人が少なさそうなイメージ(あくまでもイメージ)なので、そうそうオモシロ相場にはならないとは思いますけどね(相場は基本的に「皆が困る方向」に動くものです^^)。

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2012/03/15

さあ米債マーライオン相場盛り上がってまいりました!!!!
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html

米国10年国債 2.270 0.144 97.609
米国30年国債 3.407 0.141 94.719
(東京朝6時近辺の数字です)

○市場雑談

・米債(ミニ)マーライオンキタコレ

ということでFOMCの経済見通し引き上げを受けてなのかどうかは知らんのですけれども米債マーライオン相場キタコレなのですが、昨日のFOMC声明文に関しても、よくよく考えると「景気の現状認識」の引き上げは結構あちこちにありますけれども、先行きの回復に関してはそんなにバリバリの強気になっている訳でも無い(速度が若干変わっているが)ですし、フォワードガイダンスの文言は変わらず、という状態で、そこまで売るか????という気もするので何かそれ以外の要因があるんじゃないかとゆーイメージがございますがどうなんでしょうかねえ。

物価に関して燃料関連の上昇に言及しているのもありますけれども、でもまあその燃料価格上昇って実質購買力の悪化に繋がるという話をしていた筈だからそんなに債券売りの話になるとも思えないのですし、どちらかというと所謂「政治的配慮」っぽい香りもするんですけどねえ。

などと思いつつもまあ米債が軽めにマーライオンとなっておられる訳ですが、こりゃまたバーナンキ先生としては困ったちゃんになってきたなあとは思うのでございまする。何だかんだ言っても米国市場は長期金利が上がられると困るというスタンスでやっている筈ですので、ここで先走って金利が上昇されるとどうするんでしょうねえ、謎の不胎化QEとかどうするんですかねえという感じですが、QE3期待剥落だけでこれだけ売るのかというのも????ですので、米債マーライオン相場の進展について生暖かく見守りたいと存じます。


・久々の1%越えですなあ

ということで円債ちゃんも昨日は金利上昇。ここもとは米債売られても貫録のサガランチ会長でナンジャソラな日本債券市場ちゃんでしたが、朝から先物売られて下がって0.990%〜0.995%辺りで10年カレントの投資家買い絶賛到来となりましたが、後場になるともう一発売られて14時10分過ぎとかに1%台乗せて一旦抵抗したものの引け際もう一発下がって終了。

と、10年を基準に書きましたが、まあそれより売られていたの先物ちゃんでございまして、引値ベースだと10年カレント3.5毛甘VSチーペスト5.5毛甘とかでございまして、まあやや大きめに下がる時のお約束のようなもんですが、先物がホイホイ下がっていまして、まあ今年に入って50銭とかの値幅つけて下がるの初めて(20銭程度なら何回か)なので比較対象が難しいのですが、ただまあ20銭程度下がった日などと比べると先物(または先物回りの現物なのかも知りませんがよー判らん)の相対的売られ感が強かったような気がしますけどどうなんでしょ>詳しい人

まあ一方で中短期は(強力時間軸に追加緩和の目もあるのですから当たり前ですけれども)貫録の安定感で5年カレントの引けが2毛甘でしたので5年7年が3毛5糸スティープニングですかそうですかという風情。

まあだから何なのと言われると困るのですがとりあえずメモメモ。


・短期国債春の大感謝安売り祭り終了のお知らせ

国庫短期証券(第265回)の入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240314.htm

(3)募入最低価格 99円97銭4厘5毛
(募入最高利回り)(0.1023%)

(4)募入最低価格に 25.7502%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭4厘5毛
(募入平均利回り )(0.1023%)

・・・・・・ということですが、こちらの債券の発行日は来週月曜であります19日なのですが、その翌営業日の21日には国債の絶賛大償還祭りがございます(上田八木短資さんの資金需給日足予想だと21日の財政は89000億円の払い超(←この予想には発行分でのマイナスが含まれますので念のため)となっています)ので、まあその資金の入ったお方は直ぐに運用するかどうかは兎も角として、運用のニーズが高まるでござるの巻。

つーことで、この先にニーズが見え見えであるというのも勘案しますと在庫取っておいた方が吉という判断が普通に働くので、最低落札が流れる事もなく、というか0.1023%の按分が薄くなるという平常運転クオリティーに戻って来るような落札結果に。

まあ当然ながらセカンダリーの販売も順調なようで、たぶん居場所は0.100%とかいう所で、まあすっかりキャッシュ潰しのお金が来ましたよモードとなってしまいまして、そらまあ資金需給考えたら想定通りにも程があるのであまり驚かないのですけれども、どちらかというと約定ベースで21日になった所でどどーんと買いが来るようなイメージもありましたもんで、ちょっと早目かなあとか思うのですけれども、まー時間の問題ではございましたのでシャーナイナイという事ですな。

てなわけで、短期国債大安売り(と言っても0.105%では買えないと思いますのでそれを大安売りというのかと言われるとかなり大袈裟なのですが^^)祭りは終了の巻となった訳ですが、さてそうなってきますとまた基金短国買入とか基金固定オペとかの札の入り方にも影響してくるんでしょうなあとニヤニヤするあたくしなのでございました。

つーてもまあ足元では0.10%割れを突っ込んで買う人のニーズという訳では無いので、そんなに過激な話にはならないと思いますけれども、期末なので期末特有のニーズとかどうなってくるんでしょうね。

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2012/03/14

○決定会合関連雑談:時間がなげえよ

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2012/index.htm/
金融市場調節方針に関する公表文 2012年

『2012年 3月13日 当面の金融政策運営および成長基盤強化支援の拡充等について(14時07分公表)』

ということで今回の決定会合終了は14時7分と結構長かったです。

で、皆様ご案内のように、それだけ遅くなるという事は何か期待以上の物が出てくるのではないかという思惑が高まる(政策変更の時に遅くなる、というのが仕様なので)わけで、為替市場では円安が進行(と言っても30銭かそこらですが)し、平均株価は上昇(1万円に届いたり届かなかったりとかだったような希ガス)し、債券先物は瞬間芸ですが何か妙な上昇をしたりもしたという動きがありましたが、まあ結果はそもそもの予想の範囲内(ドル何とかとか小口特則とか面白いネタもありましたが)で、まあスパイスとして宮尾審議委員の追加緩和提案があって否決されましたという話でした罠。

で、その結果どういう話になったかというとこんな感じ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0SNWO0UQVI901.html
円が反発、日銀追加緩和見送りで買い圧力−対ドルで一時81円台

『3月13日(ブルームバーグ):午後の東京外国為替市場では円が反発している。日本銀行はこの日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定。一部で追加緩和期待が出ていたため、失望感から円を買い戻す動きが出ている。更新日時: 2012/03/13 14:51 JST 』(上記URLより)

つまりまあそういう事で、変に決定会合の時間が長くなってしまったので無用に思惑を生んでしまい、その結果失望とか言われましても困りますがなとは言いたいでしょうが、市場が(特に海外とか外野で)妙な期待をしていた向きもあっただけに、今回の時間の伸びっぷりはちと罪作りでしたな。

もしこの決定が13時前とか遅くとも13時の第1四半期(?)辺りに出ていれば、予想通りですねで終了で、もしかしたら宮尾審議委員の緩和提案をもうちょっと評価するような動きになったかも知れませんが、先に過大な期待をして余計なものを織り込んでしまった為にその反動が起きましたねという結果。

まあ何ですな、今回は決定事項が多かったのでロジ的に時間が掛かったんだろうなあというのは判るのですが、前回の決定会合であれだけのネタを打ち込んでも決定会合の結果発表が12時43分であった事を勘案しますと、ちょっと時間が掛かり過ぎ。ロジ的にチョンボがあって遅れたとかはまあ無いでしょうけれども、ロジに改善の余地があるのであれば改善して頂きたいものです。

いやまあ何かで議論が揉めたんでしょうねえとは思うのですが、ちょっと議事の段取り的にどうだったのかなというように思える訳でして、決定会合終了時間によってこういう変な思惑を呼ぶ、というのもちょっとどうかと思いますので、公表時間は一定にする方がやはり宜しいのではないかというのがこういう事案がある度に思うんですけどねえ。勿論議論を尽くすのが大事だというのも判るのですが・・・・・・・・・


○決定会合関連雑談:片思いはほどほどに

さっきのニュース再掲

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0SNWO0UQVI901.html
円が反発、日銀追加緩和見送りで買い圧力−対ドルで一時81円台

『3月13日(ブルームバーグ):午後の東京外国為替市場では円が反発している。日本銀行はこの日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定。一部で追加緩和期待が出ていたため、失望感から円を買い戻す動きが出ている。更新日時: 2012/03/13 14:51 JST 』(上記URLより)

ちなみに為替市場ニュースですがその後更新された時にはこうなっています。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0T7DW0YHQ0X01.html
円反発、日銀追加緩和見送りに失望−対ドル一時2営業日ぶり81円台

『3月13日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では円が反発。日本銀行がこの日開いた金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定したことを受け、一部で出ていた追加緩和期待の反動から円を買う動きが強まった。更新日時: 2012/03/13 16:12 JST 』(上記URLより)

「失望」のヘッドラインは同じですが、記事内容的には「追加緩和期待の反動から」という言い方に変わっていまして、表現がやや穏当に(^^)。


・・・・・・・しかしまあ何ですな、昨日の何とかストの皆さんのレポート見てますと、結構多くの人が「追加緩和見送りに失望」という上記の最初の方の記事トーンみたいな感じのが出ていて、何かまあ見苦しいっつーかお前らクレクレ前提で何の話をしているんだ大体金融政策が物価に効くまでのラグ考えたら2か月連続利上げするのかねという風に思う(あたくしは昨日も申し上げたように、経済が下向きに成らない限りにおいては中長期的見通しの更新(=展望レポート)のタイミングでの追加緩和(のようなもの)がスマートでしょFRBだってそうしてるんですしと思いますが)のですが、すっかりまあクレクレモードなのがはいはいワロスワロスという感じ。

まあ昨日に関しては決定会合が妙に長引いてしまったので、変に期待した(あたくしも「基金オペの期間延長と買入額増加をセットにするのか」とか「6か月固定オペを基金国債買入に振り替えるのか」とかいろいろと妄想を逞しくしておりましたので同じですけど^^)結果空振りっぽい感じだったのでその反動で日銀に文句を言いたくなったという気持ちも分からんでは無いですが(^^)、このクレクレ前提報道やクレクレ前提コメントを見ていますと、「片思いの女の子に勝手に思いをつのらせたのに、相手にされなかったので逆切れして怒り出すキモい男」みたいな感じが致しまして、それが嵩じるとおまわりさんこいつですという事に成りかねませんので片思いは程ほどにという所でしょうか、あっはっは。


○決定会合雑談:政治圧力はこっそり掛けるものではないでしょうか

いやまあそもそも政治圧力自体がどうかとは思いますというのは念の為申し添えますが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0TF761A74E901.html
民主デフレ脱却議連の金子氏:日銀の追加緩和見送りは「大変残念」

『3月13日(ブルームバーグ):民主党の金子洋一参院議員は13日、日本銀行が同日の金融政策決定会合で追加の金融緩和を見送ったことについて「大変残念だ」との認識を示した。ブルームバーグ・ニュースの取材で語った。金子氏は民主党の有志議員でつくる「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連)の事務局長。同氏の決定会合に関する発言は以下の通り:

(途中割愛)

「民主党内の有志で3月2日、西村副総裁に金融緩和を2カ月連続でやってくれと申し入れたが、聞き入れてもらえなかったのは大変残念だ」

(以下割愛)』(上記URLより)


・・・・・・えーっとですな、こんなに財政が真っ赤っ赤の国で中央銀行が政権与党の圧力で金融緩和を実施するというのが大宣伝されると、そらまあ経常収支が基調的に黒でいるような目先いきなり何か影響するかというと影響しないかもしれませんけれども、当然ながら将来的にギリシャモードのリスクを抱えるような話でありまして、まあ中銀がヤケクソにでもならない限りそんな露骨に政治圧力掛けたら却って金融緩和しにくくなるわヴォケという事にこの人たちは気が付かない
のでしょうか。

なんつーかね、国の為に本当に金融緩和が必要と思うのなら、上記のような露骨な政治圧力を掛けるのではなくて、もっとスマート(というかこっそり裏でという事ですが^^)なやり方というのがあると思うのでございまして、たとえば小泉首相なんかはそういう話をしなかったですよねとか思うのでして、もうちょっとやり方工夫しろと思うのですが、それでは自分の手柄にならないからこういう風にパフォーマンス込みでやっちゃうんでしょとか邪推したくなるあたくしなのでございます。


○決定会合関連雑談:宮尾委員の緩和提案

決定会合声明文脚注より。

『(注1) 本日の金融政策決定会合では、宮尾委員より、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、70 兆円程度とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:宮尾委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員、森本委員、白井委員、石田委員)。』

ということですが、何をどう提案したのかは議事要旨を見るとして、まあ宮尾さんは前も一人で緩和提案したりしてたので、鉄砲玉キャラになってきている感じではございますけれども(^^)、どういうロジックで緩和提案したのか、その内容とかも含めて興味がございます。

まあしかし今回はこの緩和提案があったので、「まあそうは言っても先行きどこかで追加緩和あるでしょ」という認識になったの(かどうか知らんが)債券市場は結局若干のブルフラットとなっていたのがチャーミングでした。決定会合の時間が長引いて変な期待とその反動が起きた分のクッションに結果的にはなった感じですにゃ。

しかし、昨日の何とかストの方々のレポートを見ておりますと「これで追加緩和が遠のいた」的なコメントも散見されて、まあ昨日の決定会合の時間が妙に伸びて妙に期待を高めたことによって何とかストの皆さんもちょっとトサカに来ていたのかもしれませんね!!!!

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2012/03/13

お題「決定会合プレビュー雑談の続きである(海外ネタ書く時間が無くなったorz)」

昨日の東京市場の株価指数が殆ど寄り天井だったのは朝早々(だと思います、前場見たらこのコメントが出ていた)にお告げがあったからだという説に1万ドラクマ。
http://www.musha.co.jp/3699

○これは酷い

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0R2C46KLVR501.html
石田内閣府副大臣:今回の日銀決定会合で追加緩和はない(2)

『3月12日(ブルームバーグ):石田勝之内閣府副大臣(国家戦略、経済財政担当)は12日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、日本銀行が12、13の両日に開く政策決定会合では、2月に発表した金融緩和の効果を注視する姿勢で、追加緩和には踏み切らないとの見通しを示した。』(上記URL記事より、以下同様)

えーっと、内閣府副大臣ということは・・・・・・

『石田氏は1955年1月生まれの57歳。衆院埼玉2区選出で現在4期目。昨年9月の野田佳彦政権発足に伴って副大臣に就任する前は、民主党の有志議員で作る「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(デフレ脱却議連)の中心メンバーの1人として日銀に金融緩和を求める論陣を張ってきた。2月の日銀会合には政府側のオブザーバーとして出席している。』

あのー、金融政策決定会合に(オブザーバーだけど)出席しうる立場にある人間が決定会合1日目に決定会合の見通しの話をするとか何考えてるんでしょうか??日銀の政策委員の皆さんは「ブラックアウトルール」を順守(ただし国会に呼び出すアホウがいるので金融政策に関する話を国会ではさせられるが)しておりまして、そらまあ政府側にはその手の明文化されたルールは無いのかも知れません(公表されているのは見たことないっすな、情報管理に関する内規とかはあるかもしれないけど)けれども、普通に考えて「金融政策決定会合に出席しうる立場の人間」が「決定会合当日に結果の見通しについてコメントする」とか有り得ないと思うんですがねえ。

まあね、この石田さんというお方はきっと金融政策の枢要に近いお立場になってご指名でやってきたブルームバーグニュースの単独インタビュー(ですよね?)に対してご機嫌も麗しく舞い上がってドヤ顔で取材に応じられたのかとか勝手に邪推致しますけれども、そんな調子でペラペラ喋られますと何つーかこの政権の情報管理とか大丈夫かよとか思ってしまいます罠。

ついでに申し上げますと、この副大臣様におかれましては「デフレ脱却議連」にご参加のようですが、確かデフレ脱却議連およびその周囲の皆様って「日銀は事前に金融政策の動向をリークしてメディア操縦をしてケシカラン」とか良く仰っておられたと存じますが、このように金融政策決定会合に出席しうるお立場の議連のお方がホイホイとまさにその日から始まる決定会合についてコメントしてしまうというのを思いっきり見せつけられますと、あれは筋論で批判していたのではなくて、「自分たちが政策決定過程に加わってその暁には権力を誇示するためにリークをするのだが、お前らのリークはケシカラン」という話だったのですねえさすがですなあとかこれまた邪推したくなってしまうお話ではございます。

大体からして内閣府の副大臣で金融政策決定会合に出席しうるような人をブラックアウト期間中にインタビューで読んで金融政策決定会合に関して話をさせるブルームバーグニュースも大概に如何なものかと思う訳で、お前らブラックアウトルールとか知らない訳ないだろと思うのでございまして、仮にコメントが出ても報道しないとかいう良識は働きませんかそうですかそりゃ自分の所の報道が売れる方が国益よりも大事ですからねえと思うのでありました。

などとのっけから悪態ですいませんすいません。


○追加緩和の物理的にフィージブルなメニューを愚考してみる

まあ先週一瞬微妙に外野が盛り上がっておりましたと言いますか、あの金融政策に関する為替市場とか株式市場の無責任お祭りチックなコメントとか何だかなあとか思うのですけれども、よくよく見ておりますと金利方面の何とかストの皆様におかれましても、どう見ても「目立ってナンボ」とばかりにフカシ予想をする向きも散見される今日この頃であります。

まあ何ですな、昨今の世知辛い世相を反映致しまして、まあ色々と目立ってウケを取っておかないと色々とアレだというのもあるのかも知れませんが、本職の皆様におかれましては本職らしくフカシとかするのご勘弁頂きたいと思うのでありまして、大体からしてメディアも最近は目立ってナンボ的な報道をする(のがロイターだったのですが最近はブルームバーグまでその傾向が見受けられるのが困るのですけれども何とかして下さいな)ので、そういうフカシを大々的に取り上げて、上記の副大臣インタビューに見られるように政治家の皆様におかれましても目立ってナンボということでそういうのに乗っかるみたいなバンドワゴン効果爆裂みたいな拡大再生産モードになっているのは非常に遺憾としか申し上げようがない、つーか金融政策に関する冷静な議論ができねえだろと思うので、フカシばっかりしてる人は可及的速やかに引退してあたくしにその席空けろ(違)と思う所でございます(^^)。

・・・・・・・などと肝心の話の前にまた悪態を書いてしまいましたがorz

まず今回決定会合で追加緩和どうのこうのという話ですが、成長基盤強化オペに関しては直近のオペでも新規分の申し込みが按分に掛かるという結果になっておりますし、成長基盤強化は物価安定の達成に向けた施策の一環という事ですから、まあこれは延長でしょう、というのは全員織り込み済みでしょ。

じゃあ他の施策あるかと言いますと、まあ普通に考えると先月に実施した追加策を実行している途中ですし、そもそも金融政策が物価に対して影響を与えるという話になりますとそれは1か月やそこらでホイホイ効果がでるものではないですからして、追加緩和のおかわりとかするのって理屈として変だろとか思うのでございますけれども、まあ確かに何か急に自棄を起こしてやる可能性が無い訳では無いとは思いますけどね。

ただまあ2か月連続で実施とか、いわゆる危機対応での流動性供給でもやっているのなら兎も角としてそんな状況でもないし、欧州問題は一段落してるし米国経済は足元の指標はとりあえず順調っぽいですし、国内の経済指標もそんなに悪くないしという中で実施すると、それこそ市場が毎月のようにクレクレ催促というか最早恫喝状態になって、怖い人の黒塗りの車にでもぶつけた状態になってしまい、結果的に政策の大盤振る舞いのし過ぎとなるリスクがありますわな。

つーことで、まあ普通に考えて展望レポートのタイミングで「先行きの見通しを考えた場合に物価安定の目途の達成まで時間が掛かりそうなので緩和の強化を行います」というのが筋として通っている、つーかFRBはSEPの改定タイミングを狙ってガイダンス文言の延長を行ったわけですし、まあそういう風にするのが筋ちゅうもんでしょうな。それが4月なのか10月なのかは兎も角(まあ本来ですと見通し対象期間が延びる10月の方が良さそうですけど、そうも言ってられないのなら4月とかですかねえ、まあ状況次第でしょうけれども)として、そのタイミングで何か行うというのはスマートな話でしょうな。


では何をやりますかという話なのですが、ご案内の通りで固定金利オペに関しては6か月物が毎回札割れとなって残高が増えにくくなる所か減りそうな勢いになっていまして、明らかに長い資金供給(買入も含め)の打ち過ぎで物理的にこれ以上の拡大は困難になっているのでフィージブルではない(3か月を拡大しても結果は同じで資金余剰時期に札割れ連発になりそう)と思われます。

CPに関しては発行自体はやや増えたようなので札割れ云々は回避しそうですが、これもまあ落札レート見るとどう見ても限界。社債に関しても同様(札割れ回避の為に残存1年以内もオッケーにするという可能性はあるかも知れませんが)。REITは市場規模的にもう無理でしょうし、ETFはあたくし的にはお勧めなのですけれども、あまり「量」が稼げないのでアピールが(誰に対してのアピールかという論点はありますが敢えてスルー^^)弱い。

つーことで、まあ普通に国債系の拡大という話にならざるを得ないと思いますけれども、現在の「月に1兆5000億円」という買入が始まったばかりの中で今後どういう影響が出てくるのかがイマイチ読みにくい(6か月固定オペの札割れ連発という結果を見るに既に影響が出ているような気もしますが)中でいきなり拡大するとその後どうなるのやらというのが結構アレ。

でまあ何ですな、買入拡大すると同時に買入実施期間の延長というのはあって、月1.5兆円を半年拡大すると9兆円の拡大が出来るので、切りの良い所でおまけして10兆円の拡大(残り1兆は短国でも何でも)とかしておくと、「量の拡大」に加えて「時間軸の延長」っぽくなるのでまあ見栄え良さそうな気がします(が、そうなった時の中短期債券市場のレート形成はあまり見たくない・・・・)。

あと、買入対象銘柄の年限拡大の方ですが、これは買入が物理的に限界に達しそうな状態が見えてきたらやはり実施せざるを得ない話かなとも思いますので、この際財務省様におかれましては2年国債の絶賛大増発でもしていただけると誠に恐縮至極に存じます。え?償還の山が出来る上に平均残存年限が短くなるだろヴォケでございますか、こら失礼いたしました(^^)。

まああまり長いの買うのも何ですけれども、以前より「企業の借入金の年限が3年程度」などというような話もあるように、3年くらいまでの金利に影響を与える(一応基金オペは長めの金利に影響を与えるのと、クレジット等のリスクプレミアムを縮小させるのが直接的な政策目的ですので念の為)という名目のもとに3年まで延長というのはどこかのタイミングでこれはまあ好むと好まざるに関わらず物理的制約で実施せざるを得なくなるかと存じます。

んでもってこの3年を4年なり5年なりにする(4年とか半端な所まで伸ばすなら新発のある5年まで伸ばした方が単に買入の事だけ考えたらやりやすい)とどうかという話ですが、まあ正直申し上げまして金融正常化の過程で中短期国債金利または短期市場金利が跳ねるのも辞さずという話であれば、5年位まで伸ばしても何とかなるのかもしれませんが、あまりその辺まで伸ばしてしまいますと、流動性吸収の際に無理気味のオペレーションを実施しないと行けなくなる可能性がありますわな。恐らくは短期で無理無理の吸収オペを打つ&供給オペが足りないという形になって、GCレートなどの短期市場金利が跳ねやすくなるという風になるのか、それとも基金で買った5年国債(その時は残存2年とか3年とかでしょうけれども)の売り切りオペを実施することになって中期ゾーンの金利がやたら跳ねるとか、まあそういう感じになり得るので、調節技術的に言えばあまり長いのを買い過ぎるのもイクナイと思います。

ただまあ今回ある意味ラッキーなのは、FRBが人柱状態になるというのが明白な事でございまして、FRBはどこかのタイミングで出口政策という話になる(物価がサガランチ会長になるとそもそも足元の物価がターゲット越えなのでBOEくらいに開き直らないと大変でしょうな)でしょうが、その時には買いまくった長期債の落とし前をどうつけるのかという点で色々と大変だと思われますので、その辺を参考にできるのはラッキーかなとか思います。どう見てもFRBの方が大変そうですし・・・・・・・・・

#とかうだうだしょうもない雑考を書いていたら虫干しネタ書きそこなったわorzorzorz

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2012/03/12

○3か月固定オペ札割れせずとな

木曜と金曜に基金資金供給オペ3か月物が実施されたのですがね。

3月8日の結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120308.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月12日スタート分) 10,680 8,006 75.0

3月9日の結果(該当部分のみ)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120309.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月13日スタート分) 12,990 8,009 61.7

ということで、先週は前半に3か月基金オペが全取となるという大変にお洒落な事になって、1か月経たずして基金65兆円の積み上げが技術的な限界を露呈しましたねという話をしたのですが、8日と9日のオペに関しては無事に札が入ったでござるの巻。まあ先日の札割れ寸前から全取という流れを受けまして、かどうかは存じませんが(^^)、オペの1社当たりの応札限度額が拡大されたり、金利入札オペのロールを行わなかったりとまあそういう動きもありまして無事に札が入って良かったですね(棒読み)という所でございまする。

ただまあ6か月オペは札割れ連発ですし、基金オペに関してはご丁寧な事に各オペ毎に幾ら実施しますという話をしている手前、この6か月オペどうしますねんという気はするのですが、まあこの際6か月TBでも増発したらどうでしょうか(^^)、って多分増発しても札が入るかどうか分からないけど。

まあ何ですな、国債買入の方はまだ何とかなるにしても、6か月の基金オペという今となっては一番中途半端でニーズの無い年限ものをどうするのかはムツカシヤという所で、それを国債買入に振ったら振ったで、今度は2年ゾーンまでのモノが段々怪しくなってくるような気もしますし(6か月→2年を追加緩和と強弁するのは可能でしょうけれども)、大体からして今のペースをもっと上げるとかさすがにどうよという感じもしますわな。

ま、何はともあれ決定会合直前の3か月基金オペが札割れとかにならなくてよかったですねという事で。


○その他雑談

・決定会合プレビューのような雑談のような

まあ何ですな、妙に外野が追加緩和がどうのこうのとか言ってまして、今朝のモーサテの為替コメンテーターも「追加緩和や追加緩和を強く示唆する話が無いと失望」とか、おまえらこの前のバーナンキ議会証言もそうだけど、ロジックとか何も理解しないで勝手に自分たちで期待して盛り上がって失望するんじゃねえよヴォケとか思うのでございますが、これがまさに「クレクレは甘え」と申しますか、毎度申し上げておりますように、アラン・ブラインダー元FRB副議長の言う「市場の尾を追う犬」となる中央銀行という困った状態になっているという所ではあろうかと存じます。

まあ何ですな、プレビューもへったくれも無いのですが、いやまあ今回何か追加やったって別に良いのですけれども、金融政策の効果にタイムラグがあるのにそう毎月何かやれやれ言うとか頭おかしいんじゃネーノとか思いますけれども、まあ中の人を随分とさせていただいておりますあたくしが言うのも何ですが、市場というのはそういうもんでございまして、雰囲気で追い込んで行くとか得意技でございますのでまーこうなりますわな。

今回はとりあえず予想してもシャーナイので予想はしませんけど、債券市場などの金利市場以外がアホのように盛り上がっているのがどうもねえという感じで、それこそ今朝のモーサテの為替コメンテーター(というか電話で話していた人)が「海外投機筋はここへ来て日本の追加緩和期待で円売りポジションを拡大させているので追加金融緩和または先行きの緩和を強く示唆する話が無いと失望で巻き戻しもあるでしょう」(正確には覚えていないが大体そういう話をしていた)とかお前は誰の為を思って追加緩和期待のコメントをしているんだとか思うのでありますがねえ。マッタクモウ。

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2012/03/09

○不胎化したらQのEにならんじゃろ

昨日の朝出ていたのですがイマイチ何が何だか分からなかったので敢えてスルーしたニュース。引用先は毎度のブルームバーグですがニュースの出元はWSJのようで。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0J8CN6K50XW01.html
FRBが「不胎化」QE検討、新たな措置必要な場合−WSJ

『3月8日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)の当局者は、景気てこ入れへ新たな措置が必要と数カ月先に判断される場合に備え、将来のインフレに対する懸念を抑える形で債券購入を行う新たな種類のプログラムを検討している。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が事情に詳しい関係者の話として伝えた。』(上記URL先記事より、以下同様)

事情に詳しい関係者の話キタコレという感じですが、何かこの手のネタが毎度WSJ経由でお漏らしとなるのって、どう見ても「先に市場の反応をみてみたい」という地均しにしか見えなくて、何ちゅうか非常にケシカランというか遺憾極まりないというか、こういうのやって何が政策の透明性だよアホか馬鹿かと残念感漂うのでございます。

#日銀の政策決定が事前に出る事を口を極めて罵っておられる皆様におかれましては当然FRBも口を極めて罵るんでしょうね!!!!

『同紙によると、この「不胎化」量的緩和(QE)では、FRBの長期債購入で供給された資金に対し、リバースレポを実施することで実質的に縛りをかける。QEが将来のインフレにつながるとの懸念を和らげることが目的という。』

そもそも長期債購入した資金を吸収して「量を増やさない」のであればそれはQEじゃないだろという事で、不胎化QEとはこらまたネーミングセンスとして最悪だろという感じで、あーた販売用資料でこんな書き方したら誤認勧誘と指摘されても不思議じゃなさそうなレベルじゃネーノと思いますけどねえ。

という話は兎も角として、何か意味があるのか無いのかワカランチ会長な案で、そもそもまあ本当の話なのか分からない中でああだこうだ言うのも何ですけど、ちょっと雑考してみた。

・すっかり「量的緩和」から金利コントロールにフレームが変化してますなあ

そもそも何でそんな話になるのかと言えば、ツイストオペやってる売りのタマが無くなって来る中で長期債購入をするのにこういうのをするのでしょうけれども、こうやって「量を増やさない」というのに拘るのに意味があるのかという感じであります。まあFRBの理屈によりますとFEDのバランスシートの構成を変化させることによって資産市場の価格形成に影響を与え、政策効果が働くという事になっていますので、バランスシート政策の一環っちゃあ一環なのですけど、別にブタ積みさせておけばいいじゃんと思うのですけどねえ。どうせFF金利目標は0〜25bpにしているんだし、じゃぶじゃぶに出している(実効レートで言えば米国オーバーナイトのレポ金利は0.1近辺で推移している筈)んですからここで引く意味がわかんね(つーかまあ判るけど)。

でもって、今回は長期債の購入を拡大して長期金利を下げることによって政策効果を出したいという話かと思いますが、まあ需給に手を突っ込むことによって景況感が改善した際の金利上昇はある程度抑えられるとは思いますけれども、そーは言っても物価上昇とかになった時に長期金利の上昇をそう簡単に抑え込む事ができるような市場規模ではない(昔のアコードだの長期金利抑制政策だのが効いたのはそもそも金融市場規模が全然違うから)と思うのですが、どうもバーナンキ議長におかれましては「中央銀行は長期金利をマニュピレート可能」と思っている節がありまして、そらまあ緩和継続モードのときは良いのですけれども、出口政策の時に中々おそロシアな事になりそうで誠に心配なところではございます。

まあ何ですな、この前のバーナンキ議会証言であたくし一番のけぞったのは「フォワードガイダンスで示す政策金利引き上げ時期が市場予想よりも先の期間になった場合には市場金利に影響を与えて効果を出す」云々という部分でございました(2014年遅く、というガイダンス文言がSEPの金利予想分布から見て不自然に設定された理由がFF金利先物を見て決まったと思いっきり言ってるようなもんですからねえ)が、QE2実施直前にNY連銀が「ところでおまいら国債買入幾らを予想してるんだ」というオモシロアンケートを実施したりというのもありましたように、どうも今回出てきている(本当なのかフカシなのか知りませんけど)謎のオペレーションに関しても何かどうも「市場の尾を追う犬(byブラインダー元FRB副議長)」とバーナンキ議長がなってしまい、その「市場の尾を追う」蟻地獄モードに入っているのではないかと思われて誠に遺憾な所です。


・短期金利は上がるかどうか良く判らん

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0JTAT6S974101.html
米FRBの不胎化QE、短期金利の上昇招く恐れ−RBC

『3月7日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレを抑制しながら景気を刺激する新たなプログラムを検討中だと報じられたことについて、RBCキャピタル・マーケッツの米金利戦略責任者マイケル・クロハティ氏は、短期金利押し上げにつながると警告した。』(上記URLより、以下同様)

クロハティというお名前をクロマティーと空目するのは年寄りの証拠です(^^)。

『クロハティ氏はインタビューで、FRBが維持している低金利の恩恵の多くを相殺することになりかねないと分析。「この政策を実行すれば、かなり大きなゆがみが生じ、FRBが望まない幾つもの問題が発生するだろう。利益よりも害の方が大きいのではないか」と語った。同氏は7日の顧客向けリポートで、将来の資産購入を不胎化するこの動きについて、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標0−0.25%を上回る最大0.27%の水準までレポ金利を押し上げるとの見通しを示した。』

まあ米国短期金融市場の状況にそんなに土地勘が無いのでアレでございますが、現状では(先ほども申し上げたように)翌日物レポ金利が0.10%近辺(ちなみにブルームバーグのTickerコードRPGT01Dで見た数字なので参照するもの間違えていたらスイマセンです、ただまあ現在の市場状況からするといずれにせよ付利金利よりもレポや実効FFレートが低い筈です)ということで、市場の実効金利が準備預金および超過準備の付利金利よりも結構低いという状態になっておりまして、相当のジャブジャブ状態になっているものと思料されますので、少々の吸収をしても実効レートがいきなり跳ねるイメージは無いのですが、まあ物にも程度というのがありますので、そらまあジャンジャン長期債購入してその分引いたらどこかで短期金利が上昇するかもねと思います。

しかしまあ何ですな、吸収するのは良いのですが、どうやって吸収しますねんと思うのですよ。リバースレポでもターム預金ファシリティーでも道具自体はあるのですけれども、指値方式で実施したら25bpよりも上で指値しないと誰も応札しないでしょうし(準備預金対象外までリバースオペの対象を拡大するという事を米国はやっていたと思うので、準備預金対象外の投資家が幅広く応札という可能性はあるけど)、金利入札方式にしても準備預金対象機関からすると25bp以下での応札する意味ないですし、はてさてどうなるんだろと思いますけどね。

まあいずれにせよ、これやり過ぎると長短の資金供給のバランスが狂う、というか短期の資金吸収が変な影響を与えて実効FFレートなどに影響を与えそうなお話ではありますな、という風に思いますけど、何かそこまでして長期金利操縦したいのかねという感じです。もしかしたらバーナンキ議長が俊ちゃん化している事を踏まえると「とりあえず次にやった振り緩和をしないといけないからどうしましょ」という一環での目くらましなのかもしれませんけどね。


・とりあえずこの人は「裏を取る」という習慣を身に着けた方が良いと思います

昨日爆笑の発作を禁じ得なかったニュース。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE82704S20120308
緩和継続が大事、日銀の国債買い入れは積極性欠く=前原氏
2012年 03月 8日 16:39 JST

『[東京 8日 ロイター] 民主党の前原誠司政調会長は8日の定例記者会見で、日銀の金融政策について、2月の追加緩和は一定の評価をするが、やり続けることが大事だとの認識を強調。2月会合では資産買い入れ基金が増額されたものの、「国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない」と述べ、日銀の取り組みは不十分だとの見方を示した。』

>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない
>国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない

・・・・・・・・・えーっとですね、日銀のホームページでちょっと確認すれば、基金国債買入を10日に5000億円のペースで行っていて、12月末での残高目標達成に向けて着実に購入を行っていますし、この5000億円という額は(当たり前ですが)追加緩和実施前の購入ペースから見たら物凄いハイペースになっているのですけれども、何をどう見ると「国債の買い入れが積極的に行われた形跡はない」となるのでしょうか????

そういや以前あたくし悪態つきましたが、2月28日のモーサテで為替市場の電話コメントをしてる人が「日銀は国債の買入枠を拡大したが購入ペースが拡大したわけではない(キリッ)」とか言ってたという事案がありましたが、もしかして前ナントカさんにおかれましてはモーサテのコメントを聞いたか又聞きしたかして、それをそのまま鵜呑みにしておられるのでございましょうかという位の盛大な事実誤認。

つーかですな、こんなの先ほども申し上げた通り、容易に入手できる公表資料で直ぐに裏が取れる話なのですが、どうもこの前ナントカさんは「情報の裏を取る」という習慣が無いようでございまして、偽メール事件の教訓を1ミリも生かしていないという反省とか成長とかをしないお方でありますことよと思う訳で、これでは亡くなられた永田さんも浮かばれませんわなあと存じます次第。

ま、かつてはあたくしもこの方に期待していた時期もありました事を深い反省と共にカミングアウトしておきたいと存じます。いやもう何なのこの学習効果の無い人はと思いますし、そもそも民主党(最近は民主党だけではなさそうだが)の皆様にはまともな知恵袋ついてないのかよと思う次第でございます。まあ政策新人類(笑)系の議員の皆様は自分の主張に都合の良い話は聞くけど不都合な真実は無視する的なアレなのがあって、それが嵩じるとこのようなアホウ丸出しになる、という感じのような気もしますけどね。

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2012/03/07

お題「資産等買入基金オペの調節技術的な件に関する各種雑談」

昨日予告したネタがあるわ、西村副総裁の講演はあるわで、盛りだくさんの予定だったのですが、基金オペに関する雑談をああでもないこうでもないと書いていたらダラダラと分量は増えるわ時間は無くなるわとなりまして誠に申し訳ございません。

つーか以下マニア向け雑談ですので、その辺お含み置き下さい。マニアすぎて内容が????の場合は近くの席にいる短期デスクの人間に聞いてちょ。


○基金3か月固定金利オペにも早くも限界ががががが(と関連雑談)

昨日駄文で申し上げましたが、基金オペの3か月物の方が札割れ寸前ですなあとか言ってたら早速にも昨日の基金3か月オペがこの有様。

昨日のオペオファー(のうち基金オペ部分だけ引用)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120306.htm

共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年3月8日 2012年6月8日

んでもってその結果(のうち基金オペ部分だけ)。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120306.htm

共通担保資金供給(資産買入等基金)(3月8日スタート分) 8,200 8,200

・・・・・・・全取はいいとして8000億円のオファーに対して8200億円も落札させるとかこらまたどうしたんですか(別に按分でも良いじゃんとか思う訳よ)とか思って、残高稼ぎに涙ぐましい努力でもしているのかなあでも3か月後にロールになるから今頑張ってもシャーナイナイなんだけどなあとか思って「?????」感溢れていた昨日のあたくし。

ところがですな、これはまた不覚にもあたくしその存在をすっかり見事に失念しておりまして、人から教えて貰った(教えてくれたネタ元様の許諾済^^)のですが、オペの按分だの全取だのに関する基準が1998年の6月に出ていたのですな。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_1998/mok9806a.htm/
マーケット・オペレーションにかかる透明性の向上について
1998年 6月12日
日本銀行

この時ってその直前のレポオペ導入の際に、従来の日銀のオペ対応実績とかからすると何か微妙ですなという先が多く採用されて一部で物議を醸した(レポ取引に関する取組を重視したので、当時の資金構造からレポ必要なかったのであまりやって無かったという所が外されたというのが実態なのですが、従来のオペ先分布からするとちょっと顔ぶれが違っていたとかまあそんな感じでしたな)件を引っ張っていたとか、まあ透明性向上というか裁量行政的な物を減らしましょう的な流れが当時あって、その中でこういうのが出たと記憶しているが、何せ14年も前の話なので記憶違いだったらスイマセン。

まあそんな背景は兎も角として、こちらの(別添1)にあります『オペレーション結果の開示について』に今回の謎の8200億円全取の理由が書いてありまして、単に通常のルール通りに実行しただけという話でした。正直マニア以外にとってはどうでも良い話ですが(ってお前の話はいつもそうだというツッコミはしないように^^)、マニアのみ向けにオモロイので引用。

『2.落札総額の決定方法の公表

○ 各オペの落札総額は、原則として以下の方法により決定します。

(1) 特定の応札レートにおける応札累計額がオファー額の上下200億円以内に含まれる場合は、当該レートにおける応札累計額の全額を落札(全取り)します。但し、a)オファー額の上下200億円以内に複数の応札レートが存在する場合は、オファー額に対してより近接した応札レートにおける応札累計額の全額を落札(全取り)するほか、b)オファー額の上下200億円以内においてオファー額を挟んだ等距離に2つの応札レートが存在する場合は、オペの応札者が不利を被ることがないよう、オファー額よりも大きい応札累計額の全額を落札(全取り)します。

(2) 特定の応札レートにおける応札累計額がオファー額に対して200億円超となる場合は、当該レートにおける応札額を按分して落札総額を決定します。  

― 但し、CPオペについては、券面構成の制約が存在するため、通常の方法で按分額を算出した後、その範囲内で、入札時に連絡を受けた券面で構成可能な10億円単位の最大額を当該レートでの落札額とします(この場合、公表する按分比率は券面構成を勘案する前の比率とします)。

(3) 応札総額がオファー額に対して200億円を上回る未達を来した場合は、原則として応札総額総てを落札(全取り)します。

○ なお、このようにして決定された全取りレートまたは按分レートが、その他の応札レートや市場実勢レートから著しく乖離している場合、日本銀行は上記(1)〜(3)の原則に対する極く例外的な対応として、これを排除すべく落札総額を調整することがあります。但し、その場合、日本銀行は排除した応札レートを併せて公表します。』

いやあこんなの有りましたっけ位の話で、見つけてきたマニアの方におかれましては、そのマニア振りに頭が下がりますが、なるほどこちらにある通りの扱いですわなあという所です。

つまり、今回の8200億円全取攻撃というのは、上記の(1)の事例に該当しまして、かつこのオペはそもそもレートが指値なので、応札レートという概念が存在しませんから、そのまま「当該レートにおける応札累計額の全額を落札します」という事になったという訳で、別に足元で固定金利オペの6カ月物が連続札割れ劇場となり、固定金利のオペ残高を維持しようと涙ぐましい努力をしている訳ではありませんでした、というオチでした(^^)。


しかしまあ何ですな、ルール通りに淡々とやっただけなのですが、今回の200億円ルール(とでも言うのか??)にぴったり嵌る事案が発生するタイミングがちょうど春のオペ札割れ祭りが始まろうかという所であって、結果を最初に見た市場(のごく一部の)関係者の皆様におきましては「残高維持に必死だなwwwww」とか第一感で印象を受けてしまうような結果になる、というまあ普通にやっているだけなのになぜか芸のようになってしまうという毎度おなじみの「間の悪さ」って所に日銀の非常に残念というかオモシロというか皮肉というか、まあそういう芸風が表れておりまして実に香ばしいものを感じます(^^)。

なお、どうでも良いのですが、上記説明文の中で(1)の後半部分がどういうシチュエーションを想定していたのかが今となっては良くワカランチ会長ですが、当時を知っている人(いやまああたくしも知っているのですが、汗)誰か覚えていたら後学の為に教えて下さいお願いしますお願いしますm(__)m


○調節技術上のネックがこんなに早く来るとは・・・・・・・

まあそんなマニアネタは兎も角として、問題となるのは小見出しの方でございます。

まあ先日来の流れからしてまあ3か月固定オペの札割れも近くなっていますかねというようなイメージはあった訳ですが、正直申し上げてこんなに早い時期に固定金利オペの札割れ(まだ3か月は割れてませんが)モードになってくるとは思ってませんでして、21日の国債償還の後、しばらくしてから(というのは、国債償還で金が入ってくるのは債券ディーラーではなくて投資家なので、そこの金がレポ市場や短国市場や債券市場に回ってくるまでに一定のタイムラグがあって、その間は「当座預金残高は高水準だけどレポ市場での資金繰りはタイト」という状態になるから)徐々に固定オペのニーズが落ちてきて、まあ4月か5月にアチャー状態になるんでしょとか思っていたのであります。

しかし足元で当座預金残高水準がそれほど高くない時期なのに6か月は兎も角として、3か月物の固定オペまで札割れしそうな勢いになるというのはかなーり早いなという印象でして、基金オペの今の枠組み上で65兆円を積み上げるという事に関して、調節技術上の問題に早くもぶち当たる(そもそもどこかで問題が出るだろうなという認識は短期市場の人なら普通は持っているのですがその時期が異常に前倒しになっているなあという事ですな)の図と(何せ1か月経っていない)なっておりまして、はてさて今の枠組みではオペ残高を宣言通りに積み上げるのが難しいという中、65兆円の公約達成に向けてどうするんでしょうねという所で、誠にムツカシヤな状態になっているかと思われます。

固定金利オペの場合、大体按分がこのくらいになるでしょうというような予想の元でオペに応札するという関係上、按分率が高まる(応札が減る)となってくると、「期せずして余計に落札するのを避ける」という行動をオペ参加者が全員で行う事になりますので、ある時点を閾値として急速に応札が減ってくるという傾向になります。で、全取札割れ恒常化となると当然ながら必要最低限しか応札してこないので恒常化が長引く(その間に資金需給が変化すれば変わるけど、どう見ても買入を拡大する中で資金需給は緩むことはあってもタイトにはならない)という結果に。

大体からしてですな、3か月固定だけで24本だか25本だかの8000億円のオペが回っている訳でして、たとえば業者がファンディングのベース部分で3か月の固定を使うとしても、ベースで要る金が例えば5000億円としても1回に200億も入れれば十分という話(期日を分散しておかないと担保繰りで死ぬから期日分散は必須)ですし、まあ大手さんでもそのベース部分精々1兆あるかないかでしょとか考えると、じゃあ他に銀行さんがどのくらいニーズあるんですかと言うと、3か月なり6か月から先のイールドカーブがモロ潰れしている中で運用サイド的な発想でこの「固定金利0.10%でのファンディング」に経済的なメリットがあまりある訳でもないっつー所ですな。

これつまり昨日もちょっと書きましたが、資金供給オペ(買入含む)の長短のバランスがおかしくなってしまっているという事の表れなのですが、とはいえ包括緩和や基金買入の政策目的からすると、この長短のバランスを直して短いオペを増やして固定オペを廃止するという訳にも行きません(長めの金利に働きかけるという政策目的の逆だから)ですし、まあ現状がそもそも政策目的をある程度達成した結果として生じている歪みのようなもんですから、まあシャーナイナイな所でもございます。

今は固定金利オペの札割れで済んでいますが、この調子で進んで行くとそのうち国債やら短国の玉の吸い上げによって基金買入オペも札割れするんじゃネーノという大変にアレな事になってくる恐れありとか思うのでございます。つーかまあ前からその話はありましたが、足元の(追記:編集時に消し漏れた部分です)


つーことで、65兆円というのがフィージブルでは無かったですねという風に言ってしまえばそれでおしマイケルという訳にも参りませんので、65兆円をぶち上げた手前どうにかしないととあたくしも無い知恵を絞って人と雑談(知恵を絞ってとか申してますが、まあ雑談という所に外野の無責任ぶりが出ていて誠に恐縮ではございますが^^)すると色々とネタが。

まず最初に思いつくのは「資産買入のレートのフロア撤廃」ですが、まあ0.09%で買入を実施してその金を日銀当座預金で0.10%で付利というのも何ですな(ただし付利は超過準備部分につき、法定準備部分にはつかない)という話ですが、じゃあと言って当座預金付利金利を下げると、単にレート水準がパラレルシフトして同じ事が起きるだけな上に、ここまで積み上げてきた固定金利オペで供給を受けていた分が大損になってしまうのでこれはこれでどうかという感じ。

で、「固定金利オペの短縮化」が本当は一番フィージブルな気がするのですが、それは先ほど申し上げた理由からやりにくく、もしやるならLTRO方式にして「6か月物でフルアロットメント実施、途中1か月ごとに期限前返済を容認」とかして、期間は6か月だけど実際は1か月物としても使えるというような事をするとお互いウマーかなあとか思ったのですが、この問題点は固定金利オペの残高積み上げに対して不確実性が生じるので、残高目標を設定しているのに能動的なコントロールが出来ないというのはちと困る。つーかそもそも札が集まるのかどうかも怪しいけど。

となってきますと、やっぱり買入銘柄の対象拡大で、現在は1〜2年としているものの拡大となりますと、そらまあ短い方に拡大するのは先ほどと同様に変なので長い方向になりますわなあというような想像が起きやすいですねえという所ではございますが、はてさてどうなる事やら・・・・・・・・・・・

まあ他に何かやり方ないかなとか考えるのもマニア向けの思考実験としてはオモシロスではあります(ただし思考実験の中で必ずフィージビリティーを考慮に入れるのがマニアの矜持(?)です^^)ので、まあ妄想してみますがな。


#などとマニア雑談をしてたら量と時間がががががが。しょうもない雑談にお付き合い頂きまして誠にありがとうございましたm(__)m

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2012/03/06

○ニュース雑談

・外準の引当を崩したらFBを償還(正確には発行減かな??)しないとねえ

ニュースヘッドラインを見て腰が砕けたニュース。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0EDSE0UQVI901.html
五十嵐財務副大臣:外貨準備売却すれば円高になる−慎重姿勢示す (1)

『3月5日(ブルームバーグ):五十嵐文彦財務副大臣は5日午後の衆院予算委員会第3分科会で、外国為替資金特別会計が運用している外貨準備を売却し、一般会計に繰り入れた場合は「円高になる。慎重に考えざるを得ない」との認識をあらためて示した。橋本勉氏(民主)に対する答弁。五十嵐氏は「外貨資産を1ドル=81円で換算すれば実質的に16兆円の債務超過。積立金を取り崩せば、さらに債務超過が拡大する」と指摘。積立金の取り崩しについても「政府短期証券により調達した資金を一般会計の財源として使うことは財政制度の根幹に触れる」と否定的な考えを明確にした。』(上記URLより)

という事で、昨日は国会でまたまたアホウ質疑が展開されていたようでございますな。

まあ外準を売却したら円高になりますよねという件もそうなのですが、よりアチャーなのは(詳しく国会質疑を聞いていないので聞いた人からの又聞きおよび記事解読ベースで恐縮ですが)外準での引当のようなものが過剰になっている分を一般会計に使うというような主張の方。

えーっとですね、それって五十嵐財務副大臣(ちなみに国会での質疑応答などでの報道を見てると五十嵐さんって答弁内容が安定していてガソリンプールよりは安心感があるんですけどねえ)がお話しているように、特別会計の目的外流用に繋がる話でして、まあ要するに裏口赤国発行みたいな話にも繋がります罠という風に思うのであります。そもそも引当が過大だというのであればその分FB償還すれば(たぶん正確にはFBの発行が減るという話になるのではないかという気がするがどうも特別会計のキャッシュフローに関しては腰を据えて勉強しないと良く判らんところがある)と思うのだが。

引当が多いならその分該当する特別会計の規模を縮小する方向に話を進めないとそもそもおまいらが言ってる事業仕訳だの特別会計改革だのの方向に話がすすまねえんじゃネーノとか思いますけれども、それ以前の問題として、五十嵐さんが言うように特別会計の目的外流用で一般会計にドンドン使っちゃえという発想って、設備投資資金と言って借り入れてきた資金を思いっきり運転資金に流用するようなもん、つーか誤差を押して言えば自動車ローンで金借りて買った車を右から左に売り飛ばして(実際は割賦販売で買った車の場合車検証に乗ってる所有者は自動車ディーラーでしたっけ?まあ色々とややこしいのですがそこはちょっと置いてちょ)飲み食いに使ってしまうようなイメージで、まあ極端な言い方を致しますとどこの取り込み詐欺だよ盗人だよという話じゃないかと思うのですけどねえ。

なんか休眠預金接収の話もそうなのですが、どうもこの手の発想が全般的に盗人ちっくな香りがするのは気のせいですかそうですか。


・汗は人が流し手柄は我々ですかそうですか

東京新聞では先週、公共放送では昨日出てた奴なんですがその後の続報が無いようなので。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012030202000040.html
がれき処理促進へ議連 民主、発起人50人程度
2012年3月2日 朝刊

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120305/k10013476431000.html
がれき処理推進 議員連盟発足へ
3月5日 5時50分

しかしまあ民主党の皆様って議連作るの好きですねえとか思いましたが、今回のネタは震災からの復興復旧ネタという所で、震災のがれき受け入れに関する話ですかそうですかと思ってニュースとか見てたんですけど、こちらの記事にもありますれどもね。


しかしよく記事をみたら・・・・・

『発起人は五十人程度で、六日に設立総会を開く。各自治体や広域組合の焼却施設の処理能力を調査してから、それぞれの地域選出議員らが、市町村長や知事に受け入れを働き掛ける。』(上記東京新聞記事のURLから)

『自治体側から放射性物質による汚染を懸念する声が出た場合は、環境省の専門家らを同行させて説明する。』(同じく上記東京新聞記事のURLから)

とありまして、更に公共放送のニュースでも同じ事を言ってまして・・・・・・

『高木氏らは、環境省に対し、がれきに含まれる放射性物質の詳細な情報を全国の自治体に積極的に提供するよう求めるとともに、各議員の地元自治体などに対し、焼却施設の処理能力に応じて、がれきを受け入れるよう働きかけていくことにしています。』(上記NHKニュース記事のURLから)


・・・・・・えーっと、つまり地方自治体の処理能力から自動的に割り当てて議員様が首長に押し付けようということですかね。しかも説明は環境省の役人が行うという事のようですが、本当にがれき処理を促進したいならまず最大のネックになっている地元の有権者をおまいらが説得するもんじゃないの????文句言われそうな事は役人と自治体任せでがれき処理をしましたってアピールだけしようって事ですかそうですか。

がれき処理問題って最大(というか唯一最大というか)のネックが受け入れ側の地元住民の反対であって、そこをどうクリアにするのかというのが重大な話ではないかと思います訳で、その地元住民の説得という一番重要な話をするのが「がれき処理推進議連」なんじゃないんですかねえ。まずてめえらの選挙区で地元の反対する有権者の皆様の説得をして、がれき処理受け入れの実績を作って、その実績を基に他の地域の反対する住民の皆様を説得して回るというキャラバンでもやるというのであれば高く評価しますが、上記の記事を読んでいるとどう見てもそうじゃなくてさっき書いたように「仕事は環境省の役人と自治体だけど手柄は俺様にも寄越せ」という浅ましい議連に見えてしまいますよねえ。

ま、もちろんこれは新聞等の記事という一面だけを切り取った報道によってあたくしが誤解しているだけであって、当然ながら議連の皆様におかれましては、一番大変な地元の有権者の皆様の説得という有権者ウケしなさそうな大変な事を一緒にするんですよね!!!!!!!!!!

・・・・・と思わないとやってらんねえわというニュースではございましたとさ。

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2012/03/02

○ニュースメモをその前に

・原子力損害賠償支援機構負担金の話

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120302/k10013423111000.html
原発賠償 年間1630億円拠出へ
3月2日 6時32分

『東京電力を含む全国の原子力事業者は、政府との間で、福島第一原子力発電所の事故への賠償を支援する原子力損害賠償支援機構に対し、1年間に総額で1630億円を負担金として拠出する方向で最終的な調整を進めていることが明らかになりました。』(上記URLより)

年間1630億円っすか。


・AIJ関連

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120301/k10013402661000.html
AIJに運用委託 一部企業基金公表
3月1日 12時35分

まあ誠にお気の毒としか申し上げようがございませんが、何ぼなんでも半分をこんなわけわかんない運用に突っ込むとかちょっとねえ・・・・・・という感じはしますが、それに関連してこのニュースには腰が砕けた。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120301/k10013411351000.html
日商“投資運用会社 国が監視を”
3月1日 17時46分

『今回の問題について、岡村会頭は、「非常に驚いている。規模の小さい企業などで作る組合などが、運用を委託していたケースが多く、そういう組合がAIJの運用状況や経営の実態を把握できていなかったことが、一番のポイントだ」と述べました。そのうえで、岡村会頭は、「年金の運用を委託している組合が、投資運用会社の経営に立ち入って運用状況などをチェックできる能力があるかというと非常に難しい。国が投資運用会社をどう監視していくか考えざるを得ない」と述べ、再発を防ぐため、国が投資運用会社の運用状況を監視するなどの対応をとる必要があるという考えを示しました。』(上記URLより)

・・・・・・・いやそうじゃなくて「内容の分からない物には投資しちゃだめ」っていう投資する時の基本を抑えれば良いという話で、こうなる側から「セイフガー」とかいうのに「規制緩和が重要」「官僚主導はケシカラン」とかいう(岡村さんが普段そう仰せなのかは存じませんが)のってお前は何を言ってるんだ(AA略)としか思えんのですけどねえ。


○何かねえというニュースに突っ込んでみる

昨日は何か民主党の研究会が

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M06V586TTDS601.html
民主・円高対応研究会が金融政策に関する提言を前原氏に提出


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M06WOU6TTDSE01.html
民主円高対応研究会:物価目標は2%超に設定を−提言


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M06X6W6TTDS101.html
民主研究会:日銀は3月の決定会合で本格的緩和の実施を−提言

で、そのまとめが馬淵さんのインタビュー記事とな。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M071551A74E901.html
民主・馬淵氏:次期日銀審議委員にリフレ派登用を−インタビュー(1)

まあ一連の記事を見て色々と思いましたので軽く悪態を。


・「円高対策」如きの為に「欧米よりも高い水準の物価目標」というバランスについて

まず最初のツッコミ所としては、「円高・欧州危機等対応研究会」っていうまあ個別事象の対応に何でまた欧米の水準よりも高水準の物価目標数値を出すという話になるのかという所でございますわな。

別に円高対策だったら他にも色々な方法があると思うのですが、円高と欧州危機対応を全部金融政策でやるという話で、いきなり欧米の中銀が出しているよりも高水準の物価目標数値を出すって、そらまあ購買力平価がどうのこうのという話を持ち出せば自国通貨建てのインフレ率が高い国の通貨が長期的には安くなるという理屈になるから、円高対策にはなると思いますが、それって円高対策になるのは兎も角として、その物価目標数値を出す事が国民厚生的にどうなんですかという全体のバランス感がさっぱり見えてこない所ですわな。なんっつーか近所のドブさらいをするのにユンボ持ち出してくるようなイメージがするんですがね。

何かね、円高対策で物価目標数値を欧米よりも高くしましょうとか、どうも目的に対して割り当てる手段があまりにも部分最適しか考えていませんよねという感じですけどねえ。物価目標数値を高めに置く事が経済全体をいた結果として購買力平価がどうのこうので円安になるというのならまだしも、目的と手段が逆じゃねえのという所ですわな。

・・・・・まあこちらの皆様におかれましては、円高対策は口実として使っているだけだとは思うのですけれども、何っつーか「復興支援」と言えば何でも通せるとばかりに火事場泥棒のような施策を打ち出してくる人たちとか、更には子供をダシにして自分の政治的主張を通そうとするアレな人たちとか、そういう方々と同じような香りを感じる訳でございまして、何だかなあという所ではございますわな。


・2%超なら2%超でも良いけど最後まで貫徹してくれないと困りますよねという話

でですね、まあ2%超なら2%超でも良いのですが、つーかそんなのは政治家の皆様が責任を持って日銀法改正でも何でもして頂ければ、普通に日銀はそれに向けて無理筋の政策(=物価は上がるかもしれないけれどもそれは国民厚生的にどうよというような政策とかですわな)でも何でも打つべく努力する(無理筋でも何でもいいからとにかく物価上げろ!とミッションが出ればそうしますがな)とは思いますけど、問題はそれが実現しそうになった時になった時に選挙民の皆様が物凄い勢いで「物価上昇で生活が大変なのに低金利で庶民の暮らしが大変」とか言い出した結果として、政治家の皆様が手のひら返しをするのが最悪中の最悪の展開でございますよね。

そしてその時には本来そのミッションを与えた政治が責任と批判を受けるべきなのに、「何でもいいから物価上げろ」とミッションを与えられて「しょーがねーなーじゃあ無茶やりますかねえ」と無理筋政策を打ち込んだ日銀に対して批判が来るという豪快な梯子外しが起きるというのが目に浮かんでくる訳でして、まあそういう政治的な問題をすべてクリアして下さいね、その場の円高対策だけで欧米よりも高い物価目標水準出すとかあまり軽く考えないで下さいねという所でございます。


まあそうじゃなくて実際に物価が上がってまたまた日銀法改正とかになった日には「この国では物価安定目標がコロコロ変わる」という事になりますので、中長期的な期待インフレ率の安定もへったくれも無くなって、それこそ国民厚生的にどうしようも無いカオスが訪れる訳でありまして、いきなり欧米よりも高い物価目標数値を置くというのはメリットとリスクのバランスとして、リスクを軽視し過ぎじゃネーノという感じがするんですけどねえ。あんまり「試しにやってみるか」というようなレベルで済ませられない物だと思うので。



・次回決定会合で本格的緩和の実施をとかこれはまた随分な

しかしまあ何ですな、『民主研究会:日銀は3月の決定会合で本格的緩和の実施を−提言 』ってお前ら野党の時に散々っぱら「与党が金融政策に干渉してケシカラン財金分離だ」とか言いまくっていた事と整合性どう取るつもりだとか思いますが、まあこの人たちはそれこそ権丈先生が最近も仰っておられるように、政権奪取の為に嘘でもなんでもついて選挙に臨んだ正統性に欠ける人たちなのですからそういう批判は屁とも思わないのでしょうなあと存じます次第で、面の皮の厚さに呆れ果てる次第ではございます。
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/

なお、何度も引用してて今さら耳タコだとは思いますが、かつて本石町日記さんが予想していた民主党の日銀に対するスタンスがここまで見事に当たるとは実に卓見であると存じます次第で。

http://hongokucho.exblog.jp/6974947/
民主党はワンボイス主義を=金融政策論議で考える党戦略

『特に、日銀を与党に抑圧された存在とみなす戦略は、仮に与党になれば日銀を抑圧するのが見え見えで、薄っぺらな感じである。』(上記URLより)

まあそれ以前の問題として「本格的緩和」って何をどうしますねんという感じではあるのですけど。この前アナウンスした追加緩和を今実施中で、さてフィージビリティー大丈夫かという話もあったりする状況なんですけどねえ。いやまあ追加緩和って何をどうするのかイマイチ見えない(馬淵さんのインタビューの方に何となくあった)ところでして、民主党政権の得意技として「アイデアはあるけれども実装技術が無いから出来上がった物が使い物にならない」という、出来の悪い製造業者みたいな事をあちこちで行った挙句に何もかもぶちこわしとなる、というのがございますけれども、金融政策の提言は提言で結構ですが、実装技術の無い人たちが適当な聞きかじりの生兵法で何かをおっぱじめると碌なことにならんので勘弁して頂きたいと存じます次第。

つーかさ、最近金融関連でああだこうだ言ってる議員先生方って生兵法は怪我の元を地で行くような向きが多く(その意味であたくしは渡辺喜美金融担当大臣の時にさんざん悪態ついていた次第で)何だかなあという感じでございます。まあ今の自見金融担当大臣は割と安心して見てるんですけどね。


・該当者いるのかね

馬淵さんのインタビュー見てて思ったんですけどね。

『馬淵氏は後任人事について「インフレ目標政策導入に強い決意を持つ」「リフレ政策をしっかりと腹に持っている」人物が任命されるべきだとの見解を示した。』

『審議委員に望ましい人としては、これまでの研究会での議論で、「社長経験者、円高や世界経済の中で輸出を中心にやっている産業で痛みの分かる人」という意見が出たという。』(上記ブルームバーグ記事中の馬淵氏インタビュー記事より)

・・・・・・・・まあ該当者がどんな人なのか判りませんけど、そもそもそれなりの企業の社長クラスやってた人からしたら日銀の審議委員なんて罰ゲームみたいな待遇で散々こき使われるポストなんですけどねえ。その手のクラスの人たちからしてみたら社会奉仕精神でもないと大変だと思いますけどにゃあ。



○これは酷い出来の記事発見

ちょっと最近ロイター日本語版の記事レベルの劣化が凄まじいんですけど・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK074560220120229
再送:〔BOJウオッチャー〕金融緩和は物価引き上げ秘めた能動的政策、総裁が踏み込んだ見解
2012年 03月 1日 08:01 JST

いやね、どこをどう突っ込んでよいのやらという感じなのですけど・・・・・・

『[東京 29日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は29日午後の衆議院財務金融委員会で、山本幸三委員(自民)の質問に対して、日銀の金融政策は、「物価上昇率を引き上げるという要素を内に秘めた能動的な政策だ」と説明、「景気が良くなっていっても物価上昇率1%が見通せない時は、ゼロ金利を続け、資産買い入れを行っていくことを約束するものだ」と明言した。』(上記URLより)

『従来、日銀は円高や株安など景気の下振れリスクが高まるときに追加緩和してきた。このため14日の会合後の記者会見でロイターは、今後は景気の下振れリスクがなくても物価を引き上げるために追加緩和するのか、と白川総裁に質問したが、明確な回答は得られなかった。これに対して、きょうの衆院答弁で初めて公式な見解を示したとみられる。』(上記URLより)

えーっと、そもそものツッコミ所は前半部分と後半部分(途中部分割愛していますが、趣旨は損なわないような割愛になっております点はURL先の記事をご確認ください)で話がちゃんと繋がっていない事であります。つまり、白川総裁は今般の発言では「ゼロ金利を続け、資産買入を行っていく」とは言ってますが、それは現在の政策継続をするというだけの話であって追加緩和するという話とはこれまた別でしょと思うのですよ。いやまあ資産買入を「継続する」というのが「追加緩和」扱いとされるのでしたら、この際輪番オペも半年ごとに「今後半年間で国債買入を10.6兆円実施します」ってアナウンスすれば半年ごとに追加緩和実施って報道されて日銀ウハウハですよ!!!!!


でまあそれはそれとして、もっと肝心なアレなのは「初めて公式な見解を示した」とか仰っている事でありまして、17日の日本記者クラブでの白川総裁の講演テキストをお前はどう読んでいたのかと小一時間問い詰めたいですし、そもそもそれ以前の問題としてですな・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202b.pdf
の13ページに上記記事に該当する質疑応答がありますが。

『(問) これまで日本銀行は、景気見通しが下振れた時に追加緩和を実施することが多かったと思います。今回、「中長期的な物価安定の目途」により日本銀行の意思を明確化したということは、極端な例ですが、非常にファンダメンタルズが良くても物価が上がらないというような時でも、緩和する時には緩和する、という意味合いがあるのかご説明下さい。』

『(答) (冒頭割愛)そうした状況の中で、今、内外で少し明るい動きが出てきていることを考えると、この明るい動きを何とか確かなものにしていくことを考えることは、先程申し上げた標準シナリオの実現可能性を高めていくものだと思います。そうした考え方で、今回の措置を採りました。過去の金融政策について振り返ってみた場合、今申し上げたような考え方の意味合いを込めながら金融緩和を行ったことも、何回かあったように思います。もちろん、一般的には景気が悪くなっていく時に金融緩和を強化するというのがオーソドックスですが、今申し上げたような形で、より確かなものにするという思想でやったことも無いわけではありません。それから、今回、「中長期的な物価安定の目途」を出すという形で私どもの姿勢を示す時に、言葉だけでも目的を達成できるのではないかという議論もありますが、言葉と併せて政策的な行動を採った方が、言葉にもより重みが出てきて、金融緩和の効果も高まってくると判断したわけです。』(以上、上記URLにある2月14日の総裁定例記者会見より)

・・・・・・・・いやあのここ読んだら普通に「景気が悪くなっていくから緩和という訳ではなくて、景気を押し上げるという意味合いで緩和を行う事もありますよ」って発言しているようにしか読めないのですが、ロイターの記者さんは日本語がお分かりにならないのでしょうかねえ。

更にそもそも論を出しますと、この質問者の質問って「中長期的な物価安定」と「足元の物価数値の推移」の話を分けないでいる時点で悪い質問でして、「足元での物価数値はまだ目標に行って無い状況でも、経済のファンダメンタルズが非常に良ければ、常識的に考えてそれは中長期的な物価安定という観点から行けば物価が目標(でも目途でもいいけど)数値を上回って上昇するだろう(=だから追加で緩和とかよーせんわな)」というのが普通ですよね。

まあ記事でこんなの書いてるくらいですから上記の質問したのロイターのこの記事を書いた人なのですかねえとか勝手に想像しちゃうわけですが、今申し上げたように、質問者が足元の物価数値が低い上昇を意識して質問しているかのような物言いをしていたらそらまあ答え難い罠と思うのでありまして、その中で白川さんは結構積極的に発言したのが上記記者会見での質疑応答だと思うのですよね。

これが質問者が「中長期的に物価上昇の見通しが中々立たない状況が長期化する、という見通しの元では、足元で景気がやや上向きであっても追加緩和を行う事がありますか?」と質問すれば「その場合は追加緩和も選択肢に入るでしょう、と申しますか今回がまさにそれですよ」というような答えが返ってくると思われる次第ですわな。


つまりですな、結局の所金融関連とかで専門記者とやらを張っている筈のロイターさんですら、この物価に関するどうのこうのに関して「中長期的な話」と「足元での推移の話」を明らかに混同したような報道をしたりしている訳でありまして(質問しているのは誰だか判りませんけど)、そんな中で「ターゲット」という文言を使ったらそらまあ短期的な足元の推移に関して金融政策の上げ下げで調整しますと世間様が誤解するだろうからその用語は使いたくありませんとか麿が言うわなと思う次第でございます。

つーかさ、そこらのタブロイド新聞じゃないんだからロイターさんとかがもっとちゃんとこういう辺りを整理して世間一般の理解を深めるような報道をすべきであると思うのでございますよね。

さっきの政治家先生の場合はどうせまあ選挙民の皆様に受ければ良し的な所があって、金融政策なんてそもそも力を入れて勉強するような件でも無いでしょうから、今はたまたま「デフレ」「円高対策」という選挙民受けするネタに金融政策が使えるから使ってみました的な軽薄な面が出てしまうのはある程度シャーナイナイではあると思うのですよ。で、そういう所に対して(特に専門性があったり、クオリティーペーパーとして自認しているような)メディアの皆様が、きちんとした(というのはセンセーショナルだったりいい加減だったりするような受ければ勝ち報道ではないきちんとした)報道をすることによって世の中の理解を深めるという機能を担って頂きたいと思うのでありまして、そういう意味ではやはり経済記事での日経とかも含めてロイターのような専門性が高いと目されているメディアにはきちんとして頂きたい物だと思うのでありますよ。

つーかね、そういう機能が果たせない専業メディアとかマジで要らないというか弊害垂れ流し状態なんですけどねえ、全くもって困ったものでございます。

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2012/03/01

3年LTROですけれども、欧州時間では応札が多かった事をネタにしてユーロが売られましたとかいう講釈をされていたような気がするのですが、朝になってみたらモーサテ様はLTROの結果を好感してという話になっていてマジでさっぱりワカランチ会長です><;

○ということで一応LTROのメモ

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M05H8S6K50Y901.html
ECBの3年物オペ2回目、5295億ユーロ応札−過去最大の供給に

つーことでECBのサイトの方をメモしておきませう。落札結果ですけど。

http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20120034_all.en.html

Longer Term Refinancing Op.-Allotment

Reference Number: 20120034
Transaction Type: REVERSE_TRANSACTION
Operation Type: LIQUIDITY_PROVIDING
Procedure: STANDARD_TENDER
Tender Date: 29/02/2012 11:15:00
Start Date: 01/03/2012
Maturity Date: 26/02/2015
Duration (days): 1092
Auction Type: FIXED_RATE

Tot Amount Allotted: 529530.81 mn
Tot Bid Amount: 529530.81 mn
Tot Number of Bidders: 800


ちなみに前回の3年LTROはこちら。

http://www.ecb.int/mopo/implement/omo/html/20110149_all.en.html

Reference Number: 20110149
Transaction Type: REVERSE_TRANSACTION
Operation Type: LIQUIDITY_PROVIDING
Procedure: STANDARD_TENDER
Tender Date: 21/12/2011 11:15:00
Start Date: 22/12/2011
Maturity Date: 29/01/2015
Duration (days): 1134
Auction Type: FIXED_RATE

Tot Amount Allotted: 489190.75 mn
Tot Bid Amount: 489190.75 mn
Tot Number of Bidders: 523

まあ前半はオペのオファーの方で結果は『Tot Amount Allotted:』以降になりますけれども、前回よりも応札増えてるわ応札者数は増えてるわという事で、これをどう評価するのか正直よー判らんですけれども、とりあえず適格担保拡大して中小金融機関のアクセスを拡大しました(キリッ)という施策の目的は達成できたものかと思われます。まあこれが「何だまだまだ金が要るんじゃネーノ」という解釈になるのか、「3年間のファンディングを付けて流動性リスクを下げちゃいましたよ凄いですねえ」という解釈になるのか(まあ両方ともその通りなのかもしれませんが)良く判らんでございまする。

ちなみに、3年間の低利資金供給ではあるのですが、レート自体は「期中のMROの平均金利」でございますので、途中で利上げをしたらそのまんまスライドでこの借入金利上昇しちゃいますから、これでリスクフリー方面の金利が下がるのかというとそれはそれで別問題であるというのだけは念の為注意しておきませう。


○3か月TB入札とか資金供給オペとか

昨日の落札結果。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240229.htm

(3)募入最低価格 99円97銭4厘0毛
(募入最高利回り)(0.1043%)

(4)募入最低価格に 8.3368%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭4厘1毛
(募入平均利回り )(0.1039%)


・・・・・・ということで昨日は「按分厚めになるかも」などと申し上げたら大外れになってしまいましてどこの北禿先生だよという風情でございますが、ええまあ今回は前回よりも平均が0.01銭下がっていますのでそういう意味では一応あたっていなくもないという事でニュアンスを把握して頂ければとか言い訳してますが(汗)、まーよーするに99.9745にちょっとだけ入れて99.9740にドカーンと応札した人が多かった為にこんな感じになったという事で、さすがにこの下(0.106%レベル)に金利上昇とか無理無理無理という所だったっつー事ですな。

とりあえず21日の大量償還以降は金が余って来る筈なので、まあ短国のレートがこんな感じになっているのも今のうちだとは思いますけどにゃ。


でもって昨日の資金供給オペ

オファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120229.htm

共通担保資金供給(本店)<金利入札方式> 10,000 2012年3月2日 2012年3月23日
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 10,000 2012年3月2日 2012年4月4日

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120229.htm

共通担保資金供給(本店)<金利入札方式>(3月2日スタート分) 22,610 10,006 0.100 0.100 44.3
共通担保資金供給(全店)<金利入札方式>(3月2日スタート分) 7,710 7,710 0.100 0.100

つーことで昨日は金利入札オペ2本実施されたのですが、3月23日足の本店は2倍の応札が入り期末越えの4月4日足の全店は札割れという結果になりました。まあふーんという感じですが、3月21日に国債償還による財政要因から金が余ってくるでしょうから、別に期末越えを意識して気にする必要がなく、まあとりあえずGCがややタイト目になっている所だけ取っておけば良いかという話になるんでしょうかねえ、良く判らんけど。

ま、ちょっと対照的な結果だったのでメモ。何かあたくしが見落としている要因がありそうな気もするので詳しい人教えてジェネラル。


○バーナンキ議会証言は後で読む

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/bernanke20120229a.htm
Chairman Ben S. Bernanke Semiannual Monetary Policy Report to the Congress
Before the Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives, Washington, D.C.
February 29, 2012

ということですが、さすがに今朝はここまで手が回らないので後で読む(キリッ)宣言で勘弁。

反応はこうだったようで。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M067QO6VDKHT01.html
米国債:下落、FRB議長の議会証言で追加緩和期待が弱まる

『2月29日(ブルームバーグ):米国債相場は下落。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の議会証言を受け、金融当局による追加の国債購入を通じた量的緩和拡大の見通しが弱まったことが背景。』(上記URLより、以下同様)

ほほう。

『ジェフリーズ・グループの国債エコノミスト、トーマス・サイモンズ氏(ニューヨーク在勤)は「バーナンキ議長が言及しなかったということで市場が反応している」と指摘。「バーナンキ議長は量的緩和第3弾(QE3)についてもっと明示的に語るだろうとの期待があった」と述べた。』

・・・・・・・・えーっと、足元の経済指標が強めに出ている中で明示的にQE3の話が出るとか思う方がちょっと理解に苦しむのですが、つーかFOMCのMinuteを見たら追加緩和の必要性を示唆する人が減ってるんだからそこでいきなりQE3示唆とか何ぼバーナンキ議長がハト派でもせんでしょ、つーかこんな所で勝負してもしょうがないと思うのですけれども、どーしてそういう反応になるんだか米債市場もイミワカンネ。つーかクレクレは甘えという奴ですな、うんうん。


○その他ニュース雑談

・引き下げデモクラシー炸裂でござるの巻

http://www.asahi.com/politics/update/0229/TKY201202290157.html
国家公務員給与カット法案が成立 参院で可決

『参院本会議で29日、国家公務員の給与を新年度から2年間、平均7.8%減らす法案が可決、成立した。削減される人件費約5800億円は、東日本大震災の復興財源となる。2年間は人事院勧告(人勧)を実施のうえで、削減幅を上積みする。今年度については、平均0.23%減らす人勧に従い、去年4月にさかのぼって引き下げる。』(上記URLより)

・・・・・・いやあ何かさ、給与の問題って「震災復興」とは全く筋の違う話で、こういう筋違いのロジックで政策を実施するというのは全くもって遺憾にも程がある訳ですがな。この前も「震災復興」を持ち出して長期不活動預貯金の接収の話が出てましたけれども、お前ら震災復興を錦の御旗にすれば何やっても良いとか勘違いしてるんじゃねえかふざけるなというところで、ニーメラー師の詩(何度も引用していますが)を思い出すのである。

てか(この記事だと詳細が書いてませんが)本省課長補佐級係長級で7.77%削減ってちと削減キツくねえかって思うのですが、実動部隊で散々こき使われている階層が補佐と係長クラスで、補佐はまだしも係長とかそんなに給与高くないと思うのですけれどもねえ。よー知らんがの(俸給表見れば判りますかそうですか)。

てかさ、これ民主自民公明が賛成したそうでございますが、おまえらこういうデフレ要因になるようなネタを打ち込んでいる側から日銀総裁を連日国会に呼んで毎日毎日インフレ目標ガーとかデフレ脱却ガーとか同じ話をしている訳ですが、そっちとの整合性はどうなのよとか小一時間問い詰めてみたい所ではございますがな。

#あ、公務員給与のあり方を考えるなという話ではありませんので念の為。

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2012/02/29

○基金オペがああたらこうたら雑談

月曜の基金オペに関連して昨日ああだこうだと書きましたが、他に補足すべき事もあったっぽいので更に雑談メモである。

・対象銘柄の拡大に関連して

月曜の基金国債買入の対象銘柄は以下の通りでした。

2年302〜313回
5年70〜80回
10年247〜257回
20年22、23回

つーことで、今回は残存1年超2年以内の全銘柄が対象になるという結果になりました。そらまあ前回(2月15日)の基金国債買入の応札が(対象銘柄を増やしたのに)1兆円程度しか無くてあちゃーな感じでしたから、それなら普通に1年超2年以内に拡大しましょうという話になるのは当然ちゃあ当然ですわな。

つーかこれまで何で輪番みたいに1年超2年以内の全銘柄対象とかになってなかったのかという方がアレっちゃあアレなのですが、基金国債買入(というか基金による資産買入等のオペレーション)は「買入を実施する」というフローの話ではなくストックの残高を積み上げるのが目的という建付けになっております。もちろん残高積むためには買入のフローを行わないといけませんがけど・・・・

FRBやBOEの資産買入のロジックによりますと、「買入を実施するフローの効果」よりは「買入の残高のストックの効果」を重視するという風になっていまして、買入の残高そのものに意味がありますよ的な話をしていますが、まあ日銀はその辺の話については微妙にスルーしている節がありまして(輪番に関しては実際問題としては「期間の長い資金供給オペ」的な性格の方が強そうな気もするのですが、結局の所この辺をギリギリ詰めてもロジックの思考実験としては面白いけれどもじゃあ市場の実際の価格形成に何のファクターが効いてるのよという話って正直どうでも良いという気がするのであまり突っ込む人もいないんでしょうな)一応例の銀行券見合いの輪番オペの話と、資産買入基金に関してはまあそれはそれ的なお話になっています。

と、話がずれましたが、まあそういう事で従来(今般の買入拡大前)は基金買入の対象銘柄を残存2年近辺の直近2銘柄だか何だか忘れましたがまあ要するに2年近辺の銘柄を購入するようにしていたのですが、その心は「あまり短いのを買ってしまうと償還が来たらその分を残高維持の為に買わないといけなくなるからメンドクセ」(単にメンドクセなだけではなくて、打ち込まれた銘柄の状況によって買入のオファーのペースがずれてくるので市場に妙な不確実性要因を与えるのも嫌だというのもある)という話かと存じます。

然るに、今回買入の拡大を行って、ペース的にこれから10日毎に5000億円とかいうような豪快なペースの買入を実施しないと行けなくなってしまい、実際に最初に5000億円の買入オファーをしたらいきなり応札が1兆しか無くてテラヤバスとなったのでまあ今回は1年超2年以内(まあ正確には2年未満ですかね)全部の銘柄を対象にしましたよという実に単純な話ではあるかと思います。

あとですな、従来「暗黙の30%ルール(でしたっけ?)」とかいう話で基金買入の際に日銀保有残高が発行額の30%になると対象から外す(市場の流動性を日銀が枯渇させることによって市場をアヒャヒャヒャヒャにしないようにという配慮っちゃあ配慮)ような運用をしていたようですが、それに関しても今回華麗にスルー(ただまあ輪番でそうなっていますが、発行額の50%を日銀が購入するととりあえず対象から外れるんでしょうな、超長期21回が対象になっていない所からすると)となったのですが、まあこれも単純に「オペレーションの技術的問題」であろうかと思います。


まあ何ですな、これって普通に「基金オペの残高を積み上げて行こうという姿勢の表れ」であって、札割れ上等みたいはスタンスではないですよって事だと普通に理解したので昨日は特にその辺何も書かなかったのですけれども、どうも色々なレポート類やらコメントやらを拝読しておりますと、対象が増えた件について微妙に変な解釈をしている向きもあるみたいなので、ナンジャソラと思ったついでに雑談ネタにした次第。

まあどうでもいい話ですが、(武士の情けで名前は伏せますが)どこぞのレポート見たら「日銀は買入対象銘柄を拡大することによって札割れを回避し、札割れによって起こる「買入銘柄の年限を伸ばせ」的な圧力を回避しようとしていて消極的だ」みたいな見解があって椅子から落ちそうになりましたがな。あんさん買入オペの札割れを回避するように努力するののどこが消極的な姿勢という結果になるのかと小一時間問い詰めたい訳で、そこまで悪意で日銀の行動を解釈できる位なら大嫌いな日銀の発行している券なんかお持ちにならない方が良いと思いますので全部私に下さいなというところで(^^)。

あとですな、1年以内を対象にしなかったのは基金短国買入とゾーンがバッティングする結果短国ゾーンの現物需給を無駄にタイトにして短国買入の方に影響与える可能性があるというのと、そもそも長めの金利(と言っても長期金利ではないので念の為)を下げるという政策目的なので短いのを買うのも何か行為に矛盾が生じますよねという事になろうかと思います。勿論短いのを買うとすぐ償還するというのもありますにゃ。


○2年国債入札がどうしたこうした

昨日の2年国債入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2011/resul077.htm

(3)募入最低価格 99円97銭5厘
(募入最高利回り)(0.112%)

(4)募入最低価格における案分比率 51.8739%

(5)募入平均価格 99円97銭7厘
(募入平均利回り)(0.111%)

とゆーことで、昨日の駄文で「2年の0.11%なんて何ぼでも買いが来るでしょ」とか言ったあたくし涙目の展開。

第U非価格はボウズでした
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2011/resul077a.htm

本日の2年利付国債(第314回)の第U非価格競争入札に対する応募はありませんでした。

第U非価格が貫録のボウズということはつまりセカンダリーもろくなもんではなかったという事でございまして、実際問題として市場推計の落札分布見ても不明が7000億円程度とそんなに多くなく、しかも落札した先を見てもどこかがドカンと落札したという事では無くて2000億円台の落札業者が多めに分布という事で、これはつまり誰かの所で強いニーズがあったというような入札ではありませんでしたねという話ではございますわな。

まー何ですな、足元ではGCレポがやや重いのもあって(金利入札オペがここもと何本か入ったので少し軽くなったようですが、そもそもの当座預金残高水準が21日の償還による財政大幅払い超を前に抑制気味なのでタイト目なのはタイト目)0.11%とは言えども2年債イラネという事なのかも知れませんが、買入が進んで行きますと普通に2年以下の現物債需給は締まってくると思いますし、当座預金残高に関しても金利入札オペを全く入れない状態でも大きく上振れしていくのは時間の問題ですから、別に2年買って持ってりゃいいじゃんとか思うのですけれども、まあその2年買うならもっと利回りの良い後ろを買った方が良くてこんなのバランスシートの無駄遣いというような考えもあろうかと思いますし、まあ現状はそんな所なのかもしれませんね。

前日の基金国債買入で出来上がり0.107%に確信犯で突っ込んでいた人がいて、市場的に地合いが妙に悪くなってしまったのですが、当然この人は2年で突っ込みに行くのかと思っていた人も多く(つーかあたくしも当然そうだと思っていますたorz)ちょっと意表の展開かつ落札分布&セカンダリー低調でございました。

やはり足元のGCがやや重めで推移し続けているのが影響しているのかというところでございますが、今日の3か月TB入札では前回同様に0.104%レベルの足切りになるのでしょうけれども、按分率がどうなるのか(常識的に考えると按分がやや厚めになる可能性が高まったという話だと思いますけど)とかは超マニアで正直皆様的にはどうでもヨロシかと存じますがそういう事で。


○コアと総合について(金融政策での物価目途の数値に関して)雑談

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214b.pdf
「中長期的な物価安定の目途」について

『この「中長期的な物価安定の目途」について、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることとした。』

えーっとですな、こちらで出ております「中長期的な物価安定」として見る消費者物価指数なのですが、あたくし当初から「この数字は総合ね」という話をしているのですけれども、相変わらず世の中のレポートを見ておりますとコア(=除く生鮮食品)だとかゆー話があちこちで散見されまして、それが結構自信満々に出ているので、あたくしも思わず調べなおしたり、リアル知り合いからもお問い合わせが来たりという事ですのでちょっとだけ。


えーっとですな、そもそも「中長期的な」という話の場合は当然ながら総合の数値を使うのでありまして、足元の短期的な推移をみるときにコアを使ってみたり刈込平均を使ってみたり、他の物価指数を見てみたりというようなのを組み合わせて基調を判断するという話でありますので、「中長期的にコア物価指数を目標」というのは基本的に有り得ない話なんですよね。

大体ですな、何でコアを見てどうのこうのという話をするかと言えば、総合に含まれる要素の中で一時的な価格要因(天候とか市場での一時的な騰落とか)によって振らされる項目を除外して基調的な物を見るという為に生鮮食品を除外してみたり、エネルギーも除いた指数(いわゆるコアコア、米国の場合コアは食品エネルギー除外)を出してみたりという話なのですが、じゃあ常にその要因を排除していて良いのかというとこれまた別の話で、たとえば世界的な需要の拡大によって食料品の価格が基調として上昇していますよとか、原油の価格が基調として上昇していますよとなった場合は当然ながらそれは「基調的な物価の変化」に繋がる物ですから金融政策として考慮した扱いをしなければいけないわけですわな。

んでまあその辺に関しては2006年(なので最近の変化分は皆様読みながら補完して頂きたく)にこのようなペーパーが。

金融政策の説明に使われている物価指数
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2006/rev06j02.htm/

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2006/data/rev06j02.pdf

まあこれを読むのが吉という所でございます。

でまあ何ですな、総合を含めるから原油価格が一時的に上昇した時の物価上昇で中長期的な物価の安定の目途が達成できたと判断するのかとかいうような質問を日銀にぶつけるのは、上記ペーパーを見れば愚問であることには気が付くとは存じますし、目途に関しても短期的な話では無くてあくまでも中長期の話ですからして、物価の上昇における背景によっては直ぐに正常化政策を行わない可能性もあるし、現在の欧米のように足元の物価指数が目標値を上回っていても緩和的な金融政策の拡大を行う事もありますよ、という話でございます罠、というのがあたくしの頭の整理でございましたですことよ。

なお、上記のURLだけだと日銀理論ケシカランアルヨという方もおられると存じますので、そういう方には今般のFRBの金融政策をインフレ―ションターゲッティング導入ですよウェーハッハッハとお話をしたセントルイス連銀のブラード総裁が昨年4月に行った講演のURLでも(ちなみにあたくしも昨年5月に駄文のネタに致しました)。

http://www.stlouisfed.org/newsroom/displayNews.cfm?article=984
APRIL 18(2011年です)
St. Louis Fed’s Bullard Discusses Economic Outlook and Recent Monetary Policy Developments

上記URLが講演の概要でして、講演でのプレゼンテーション資料(パワーポイントみたいな奴)は上記URL先の中にありますが、まあ概要の方を読んでいただければ大体ヨロシカバイという感じだと思います。一応PDFのURLを置いときます(長い)。
http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Bullard_KY_Day_with_the_Commissioner_18_April_2011_Final.pdf

ということで今日は雑談大会でした。

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2012/02/27

○早速大騒ぎキタコレ

ヤフーニュースのヘッドライン一覧を見るだけでゲップが出そうですが。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/economy/aij/news_list/
AIJ投資顧問の企業年金資金消失問題
ニュース 45件中1〜45件を表示

まあ何ですな、厭債害債さんがエントリーを上げておられますのであたくしがああだこうだ申し上げる必要も無さそうですのでとりあえず厭債害債さんのエントリーを張るだす。
http://ensaigaisai.at.webry.info/201202/article_2.html

纏めの所の・・・・

『やはり気になるのは規制当局との関係です。今回はまた慌てて投資顧問に一斉に調査が入っているみたいですが、所詮当局がどんなに頑張っても普通の世界で詐欺犯を完全に排除するのは無理だと思います。むしろ、こういう事件をきっかけに妙な規制ばかり増えてくるのが怖いのですね。もうリスク管理の世界では実際に起こっている話ではありますが。』(上記厭債害債さんのURLより)

というのが全くもって同意でありまして、早速このような動きが。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20120224k0000e040165000c.html
投資一任業者:全263社を調査へ…金融担当相
毎日新聞 2012年2月24日 11時57分

http://www.jiji.com/jc/c?g=ind_30&k=2012022401043
来週にも一斉調査=投資顧問対象、AIJ問題受け−金融庁
(2012/02/25-00:37)

ということで早速ヒアリングがどうのこうのとか言う話が金曜日の時点で出た次第でございますが、はっきり申し上げて今回の事案って特殊事案のような気がするんですけど、まあこういう特殊事案で急に大騒ぎされますと普通に法令諸規則を遵守して運用やってる運用会社さんには飛んだとばっちりにも程がある訳で、早速あちこちの新聞では運用会社全てが無茶苦茶かのようなミスリード記事が乱発されているのがアレでございます(まあ毎日と産経という金融経済記事に関してはアレの2大巨頭みたいな所ですが)。つーか普通に考えてこの事案が特殊とか思わないのかね最近のメディアの皆さんは。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120224-00000089-mai-bus_all
<企業年金>揺らぐ信頼 投資顧問会社調査へ
毎日新聞 2月24日(金)21時41分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120225-00000119-san-bus_all
企業年金 揺らぐ土台 ずさん運用、高まるリスク
産経新聞 2月25日(土)7時55分配信

・・・・・・・えーっとね、そもそもこの会社の内容とか見ればアレ感爆発で普通の事案じゃないとかゆー感覚にならんのかねと思うのですが、最近のメディアは一々大げさに騒ぐのを仕事と勘違いしているんじゃないですかねえ。こんな特殊なインチキくさい会社の事案捕まえて「企業年金揺らぐ土台」とか、イカサマ未公開株投資詐欺があるから株式取引が全部胡散臭いとか言うのと同じくらい極端な話だろとか思うんですけどねえ。

で、尻馬に乗るのが得意な言うだけ番長(とか言うと出禁になるんでしたっけ)の前ナントカさんがこのように仰せのようで。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120226-00000050-jij-pol
年金消失で政府に提言=民主・前原氏
時事通信 2月26日(日)16時14分配信

・・・・・・・・ああまたかという感じでございます。

しかしまあ何ですな、許可制にすると官僚のナントカがどうとかとか言って登録制にして事後的に厳罰主義というような流れにしたらまあ言っちゃあ何ですがこのような事案というのが起きる可能性はそらまあ高くなるでしょと思うのでありまして、いざ問題事案発生して大騒ぎして今度はまたいきなり規制とかゆー事になりますと、許可制で官僚の権限ガー天下りガーとか喚いていたオメーら政治家およびメディア連中は従来の主張との整合性を良く考えなさいませと存じます次第ではございます。

まあこの事案に関しては、最初から詐欺のチャリンコ経営だったのか、入口は単にヘタクソなだけでそのヘタクソを誤魔化すためにチャリンコになったのか(いずれにせよ途中からはチャリンコ経営でインチキしないと全額飛ばすとか無理だと思うのだが)判りませんが、厭債害債さんのおっしゃるように、『ニュースを見ればすでに一部では過去に「第二のマドフ」とささやかれていたらしいのですがそれでも評価が高かったという声があったようですし、そういうところに対してもほとんど監督が働いていなかったという点を考えると、暗澹たる気持ちになります。日本でも悪意を持ってだまそうとしたら、これほどまで簡単に引っかかってしまうということで、もうこれは監督の限界を感じざるを得ないのではないかと思います。』(先ほどの厭債害債の所のエントリーより)というのに同意なのでありまする。

まあ何はともあれ調査する方もされる方もお疲れ様でございます。外国投信でFOFとかになってるのとかの調査がどうのこうのとか大変そうですよね。

#国内資産の場合は普通に牽制効いているとは思いますが、運用成績の報告をした結果「どうやると毎年ベンチマークに負けるんでしょうか御社って随分ヘタクソですね」とか言われたらそれはそれでorzですなあ(違)

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2012/02/24

○ニュース雑談大会

・またこれか

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120223/t10013247201000.html
提言“日銀は物価目標2%超に”
2月23日 23時47分

『民主党の小沢元環境大臣や馬淵元国土交通大臣らは、日銀が、今後、目指していく物価上昇率を1%としていることについて、「他国より低い水準を掲げることは、円高容認のシグナルと受け止められかねない」として、2%を超える数値に引き上げることなどを求める提言をまとめました。』(上記URLより)

・・・・・・・まあ最初「中長期的な物価安定の目途」を見た時には1%だとどうなのかねえとかあたくしも思ったのでこーゆー話を言い出すのも判らんでも無いのですけれども、実際には(この前ネタにしたように)日本記者クラブでの総裁講演で「とりあえず今の経済状況で行けそうな数字という事で1%を出すけれども、経済が持続的な成長を続けるようなれば、つまり基礎的な成長力が高まれば、この1%という数字は見直す」という話をしていますわな。

で、今の状況でいきなり2%目指すっていうのは先が遠すぎる上に成長力の弱い中で2%ってのもどうよという事で1%に置きましたんですけど、という事ではないかとゆー風にその後の諸々の説明を受けて理解しましたし、まあ市場も徐々にそういう認識になってきて為替市場も反応しているとゆー感じなのではないでしょうか。

つーことでですな、「円高容認のシグナルと受け止められかねない」とか言うのは「私たちは日銀の説明を全然聞いておりません」と言ってるのと同じです罠という感じでございまして、逆にあんさんらがそういうことによって日銀の政策意図の邪魔してるだろとか思う次第で何とも残念という所ですが、まあこの人たちに取っては自分たちの経済無策のケツを日銀に回す為には日銀ケシカランを言い続けた方がお得なので、日銀の政策姿勢の変化に対しても反応しないでこういう話をしておられるのでしょうね、とあたくしも陰謀論で纏めてみた(^^)。

つーかさ、円高対策だけで「他国よりも高い物価上昇水準を容認」とか政策としての優先度のバランス意識おかしいんじゃねえのと思うのですが。おそらく今のヘドニック掛かりまくりの物価統計の中でCPIの2%上昇って生活者的な物価上昇がかなりしんどくて、低所得者とか相当苦しくなると思うのですけど、そういう事理解して「2%超」とかFRBもECBもBOEもそこまでの数字出していない水準だすかねとか思いますが。

大体お前ら「ガソリン値下げ隊」とか「消費税上げケシカラン」とか「公務員の給与削減」とか「電力料金引き上げケシカラン」とか物価が上がらないような政策の話ばっかりしてるのに日銀には物価上昇率2%超目指せとかお前は何を言ってるんだという所なんですけどねえ。


・なんぞこれ


日経新聞のニュースより、(URLがクソ長いので記事へのリンクはニュースヘッドラインに貼ります)
http://www.nikkei.com/(←こちらはトップページです)
受託年金2000億円、大半が消失 AIJ投資顧問
「高収益」と虚偽 金融庁、きょう業務停止命令
2012/2/24 2:01 情報元 日本経済新聞 電子版

『国内独立系の投資顧問会社、AIJ投資顧問(東京・中央、浅川和彦社長)が企業年金から運用受託していた約2000億円の大部分が消失していることが23日、証券取引等監視委員会の検査でわかった。長期にわたって高い運用収益を上げているとの虚偽の情報を顧客に伝え、実態を隠していた疑いがあるとして、金融庁は24日、AIJに業務停止命令を出す。年金運用会社のずさんな実態が判明したことは、企業年金の運営に深刻な影』(上記URLより、以下有料記事なので引用不能^^)

年金運用会社のずさんな実態が判明したことは、企業年金の運営に深刻な影(強調は引用者ね^^)

・・・・・・・・?????????????????

さて、この記事だと肝心の文末が判りませんが、基本的にこの文脈だと語尾が「深刻な影響を与えそうだ」となっていると決めつけて以下悪態を書きますけれども、間違っていたら深く陳謝して当該悪態部分に訂正線を入れさせて頂きたく存じますので教えてちょ。

えーっと、これって単に個別企業の問題でしょ。何で『「年金運用会社」のずさんな実体が「企業年金」の運営に深刻な影響』って普通名詞の扱いになるの????日経新聞さんは年金運用会社に何か恨みでもあるんすか???

つーかこれ何をどうすると虚偽の情報を顧客に伝えるように出来るのかがさっぱり判らんのですが、ちゃんと牽制機能がワークしていれば虚偽の情報を長期に渡って報告とか出来ない筈ですよね。

と思ったら公共放送ニュースはこのように
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120224/k10013250411000.html
AIJ投資顧問 業務停止命令へ
2月24日 6時12分

『金融庁では、証券取引等監視委員会とともに、運用の実態や年金資金の損失の状況などを詳しく調べることにしていますが、顧客の企業年金などへの影響が懸念されます。』(上記URLより)

うん、普通の報道である。これはあくまでも個別企業の事案であって、被害が起きているのもこの会社に委託していた個別の顧客企業の話でありますからして、こういう話であれば穏当であります。

つーことで、この手の報道する時はもうちょっと用語の使い方を丁寧にして頂きたいと思うのでありまして、これじゃあ知らない人が見たら「年金運用会社」というものはずさんであるという印象操作に与する事になりかねませんわな、と思うのでございます。まあ一事が万事でこの手の丁寧さに欠ける報道によって起きるミスリード(金融機関の休眠預金問題で金融機関が批判されるとかもあれは報道の仕方がミスリードにも程があるからそうなる)によって「世論」とやらが変な風に沸騰してしまう事は国民経済的にも益に繋がらないのではないかと思うのでございます。

でまあ何ですな、さっきの民主党の皆様の話にもつながるのですが、説明する方は(自分を省みても思うのですが)普段の話をするときって共通の前提認識があるからその前提認識部分をすっ飛ばして話をしがちなのの延長を対外説明時に行ってしまうという事になりがちだと思いますので、自戒も含めて対外説明時には良くその辺を注意しながら説明したいものだなどとふと思うのでありました。

#長期不活動口座の問題にしたって「私たちは時効の援用をせずに、いつまでもお客様の預金であると認識してお預かりしているのですが、税務当局から利益扱いするようにと指導されているのでやむなく(というとどうせ税務当局が怒るので「やむなく」が使えないのが困るのだが・・・・・・・)利益扱いします。口座が復活したら損失扱いして通常の預金口座と同じ形に戻りますので、お客様の預金を勝手に懐に入れている訳ではありません」とか丁寧に説明してちゃんとそういう風に報道されているか確認する、って所になるんでしょうかね。よーわからんけどさ。

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2012/02/22

○ロールの6か月基金共通担保オペも札割れ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120221.htm

共通担保資金供給(全店)<金利入札方式> 10,000 2012年2月23日 2012年3月22日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年2月23日 2012年8月29日

落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120221.htm

共通担保資金供給(全店)<金利入札方式>(2月23日スタート分) 35,810 10,010 0.100 0.100 28.0
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月23日スタート分) 6,255 6,255

・・・・・・ということで今回の6か月基金共担オペも札割れなのですが、今回のオペはロール分でして、つまりそもそも23日に8000億円の固定金利オペ6か月物の期落ちがある筈なのですが、そのロール分のニーズすら未達という大変に素晴らしい状態となっている訳でして、前回新規で実行した時はまあ新規だからニーズ無いものは無いわなという話でしたが、当然の如くロールのニーズも低下というお洒落な状態(しかも前回よりも札割れ規模が大きくなっている)となっておりまして、これはもう6か月物固定金利オペの残高が目標達成への積み上げどころか残高維持にも黄信号となっておられる訳で誠に遺憾に存じます。

一方で同日に実施された金利入札方式の1か月物の共通担保全店オペは1兆円のオファーに対して3.5兆円の応札があったという事で、こちらはニーズがあるという状態ですので、つまり6か月のオペに札が入らないのは金が要らない訳では無くて、「6か月という期間の資金供給というものにニーズが無いだけです」という事でありまして、まあ長いオペのやり過ぎでバランスがおかしくなっているという事ですな。

んでまあ現状ではこんな感じで短い金利入札オペに札が入っていますが、今後更に買入等の残高が拡大すると当座預金残高自体も(国債大増発でもしない限り)拡大していくようですので(詳しくは2月17日に東短リサーチの飯田上席研究員がレポートにしておられますのでお問い合わせは東短リサーチまで^^)、そうなりますと「期間的にニーズ無し」に加えて「そもそも金イラネ」状態になるという事になりますので固定金利オペの残高コミットどうするんでしょうかねえとしか申し上げようがありません。

ということで益々テクニカルな限界に近づきつつある包括緩和の基金オペはこれからどうするんでしょうかねえというテクニカルな雑談でございました。


○復興債の金貨がどうのこうの

ただのメモである。

http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p240221.pdf
個人向け復興応援国債の発行条件等


http://www.mof.go.jp/currency/coin/commemorative_coin/earthquake_reconstruction/kk240221a.html
東日本大震災復興事業記念貨幣(第一次発行分)の形式等(イメージ)

『平成27年度に発行する記念貨幣(プレミアム型)のうち、第一次発行分の形式等については、以下のとおりとする予定です。』

まあふーんという感じではございますが、金貨目当てと「復興」というのにホイホイ釣られてどの位の買いが入るのやらという感じであります。まあ今は銀行金余りですから預金を少々吸収されても屁でも無いでしょうけれども、遠い(かどうか知らんが)将来に「愛国国債」みたいなノリでどんどん出てくるとクラウディングアウトだの民業圧迫だのという話になるんですかねえ、よー知らんが。

ただまあこの前の復興国債の売れ行きも好調だったようですし、個人向け国債の定着という意味では今の所はあるべき流れのような気もするし、かと言ってバカ売れされて他の金融商品が売れなくなるとやはり勘弁的なイメージもあって金融業界の中の人としては中々ムツカシヤです(^^)。

http://www.mof.go.jp/currency/coin/commemorative_coin/earthquake_reconstruction/kk240221.html
東日本大震災復興事業記念貨幣の発行決定及びデザインの公募を開始します

『3.第二次発行分から第四次発行分の図柄につきまして、財務省及び独立行政法人造幣局は、別紙2の要領で記念貨幣のデザインを募集します。なお、デザイン募集の詳細な要領については、官報及び造幣局ホームページに掲載することとします。』

だそうです。まあ絵心の無いあたくしなのでイメージそのものが湧かないのが残念でございます。まあ震災復興だから後藤新平でもデザインに使ったらどうですか(違)。


○これはホンモノの風格を感じます

代議士さんなので直リンは自主規制しますが、民主党の木内孝胤さんのサイトにこんなのが。

ttp://takatane.com/blog/2012/02/15_1945/
デフレ脱却に向け、日銀はインフレ目標を導入しましたが・・・・・・

まあ何ですな、物価目標が1%じゃなくてもっと上にしろという意見はそれはそれで1つの見解(ただまあこの後に行われた白川総裁の日本記者クラブでの講演ですと1%というのはとりあえず達成可能性のある数字を出してみたという感じで、日本経済が持続的に成長するならば1%の数値を引き上げるような話をしていて、別に1%になったら満足という物ではなさそうにも見える(もちろんそれはリップサービスなのかもしれないけど)のですけれどもね)ですのでまあ良いとしまして、ホンモノの風格はその後にあります。

『めどが1%であるために、結果として追加緩和の額が10兆円少なく、本来であればを目標2%として緩和を40兆円規模とする必要があります。あるいは3%の目標で60兆円程度緩和するべきです。』(上記木内代議士サイトより、以下同様です、なお原文ママ)

まあタイポはご愛嬌ですけれども、それはそれとして追加緩和20兆毎に1%の物価上昇となるというその積算根拠が物凄い勢いで良く判りません。つーか本当に20兆追加緩和して何の副作用も無く間違いなく1%物価上昇するなら日銀だってあっさり20兆円追加緩和しますがな・・・・・つーか今までの拡大部分に対してこれから20兆円拡大すると1%物価上昇するとかいう斬新な理論との整合性とかをとっくりとお聞かせ頂きたく存じます。

『何故日経が毎回日銀を評価するような記事を書くのか。日経の記者から聞いた話では、日経では日銀キャップとならないと出世できないとの事。即ち、日銀の提灯記事を書かないと日銀キャップになれないからです。更には、各御用学者も提灯記事を書かないと重要情報から遮断されるからです。』(木内代議士サイトより)

出たな陰謀論。つーかそんなに日銀に力があるなら日経の社説や記事であんなにケチョンケチョンに言われないと思うのですけれどもと思いますし、日銀キャップになるならないは日経新聞の人事の問題じゃないのかね。つーか「出世するような人が日銀キャップになる」っつー事じゃないのですかねえ。で、もっと訳判んねえのは御用学者云々の話で、重要情報から遮断って学者で日銀から「重要情報」とやらが必要になる場面があるとは思えませんし、大体からして各種データはすべて日銀のサイトで公表されているし、公表できない物は公表できないし、そもそも「公表できない重要情報」とやらがあるとして、研究論文でそんなの使ったらお縄コースじゃん。意味判んねえ。

『日銀が追加緩和に消極的な理由は、追加緩和をしてもデフレは脱却できないと説明しているためであり、デフレ脱却してしまうと困るからであると推察しています。』(木内代議士サイトより)

何か意味が良く判らない「推察」が飛び出しておりますけれども、デフレ脱却して金利の上げ下げで金融政策をやるような正常化できた方が日銀的には良いに決まっていますし、大体からしてそうなれば日銀総裁がああも年がら年中国会に呼び出されて馬鹿だアホだ言われなくて済むので日銀としてはどう見てもデフレ脱却した方がお得だと思いますが。

つーか、「追加緩和してもデフレは脱却できないと説明」ってどこでそんな話をしているのやら。だったら追加緩和してないと思うのですけどねえ・・・・ってまあ「金融政策単体での脱却は困難」という話を受けている事だと思いますが、どうも文脈を雑に解釈した結果「追加緩和でデフレ脱却すると日銀が困る」という不思議な結論に達しておられるものだと「推察」させていただきましょう(^^)。

『4月3日に任期をむかえる日銀の審議委員もリフレ派を選ぶべく努力して参ります。』(木内代議士サイトより)

だそうでありまして、いやまあリフレーション政策提唱の方が審議委員になられるのは論議の活発化という意味でも結構な話だとは思うのですけれども、上記のような粗雑にも程がある(別に1から10まで精密にやれっていう話ではないですし、そもそもやってみないと判らないというのが非伝統的金融政策ではありますが、上記の話はあまりと言えばあまりに雑な議論でしょうよ・・・・・・)ような政策提唱をされたり、わけのわかんない陰謀論を展開されるような方ですとただのノイジーキャラクターにしかならないんですけどねえ。

まあこういう威勢の良い話をする政治家先生に限って実際に物価が上昇基調になると「インフレはケシカラン物価対策しろ日銀は何やってるんだ」とか言い出すんじゃネーノというのに1万ドラクマ。

・・・・・・・・でですな、何でこんなネタを出したかと申しますと、こちらの代議士先生のプロフィールを拝読して愕然とした次第であります。いやあこれでコレド日本橋牛印証券(仮名)のIBでMDだったんですかそうですか。はあ・・・・・・

何と申しますか、「金融業界出身」の議員先生(石原さんとこの三男坊みたいな世襲系じゃないお方ね)って最近増えた気がするのですが、あたくしが金融政策方面から気が向いた時に限りその方々の言動を眺めておりますと、あくまでもあたくしの個人的印象で大変に恐縮でございますが、甚だアレなお方が多うございますという感じでして、これって正直金融業界のレピュテーションにも関わる話ではないかなどと懸念したくなってくる今日この頃でございまして、極めて遺憾に存じますです、はい。

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2012/02/21

お題「FOMC議事要旨ネタですがフォワードガイダンスの議論が盛り上がっている件について」

1月議事要旨ネタである。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomcminutes20120125.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/fomcminutes20120125.pdf

今回はSEPのコーナーはあるわ、年次改定項目の決定事項はあるわで全部で31ページもありやがるのですが、手抜きのあたくしは通常の論議をしている本文部分(7ページから17ページ)しか読んでいないので3分の1しか目を通しておりませんが何か?

○再掲だが金融政策の長期的なゴールに関するステートメントに関して

冒頭にございます件、この前ちょっとだけ引用しましたが再掲。

『Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy』から。

『Following the Committee's disposition of organizational matters, participants considered a revised draft of a statement of principles regarding the FOMC's longer-run goals and monetary policy strategy. The revisions reflected discussion of an earlier draft during the Committee's December meeting as well as comments received over the intermeeting period.』

ということで12月のFOMCでドラフトがあってそれをリバイスしたみたいですな。

『The Chairman noted that the proposed statement did not represent a change in the Committee's policy approach. Instead, the statement was intended to help enhance the transparency, accountability, and effectiveness of monetary policy.』

これまたFOMCの時にも強調されていましたが、「これによって政策アプローチを変更した訳では無く、透明性や説明、金融政策の有効性を高めるための物である」とバーナンキ議長が強調している訳でございまして、つまり今回のこれを持って「FRBがインフレ目標を導入した」というのであれば日銀の先般の施策もインフレ目標を導入したという話でしょと思う次第で、中日新聞様辺りがFRBはインフレ目標を導入しているのに日銀は導入していない的な批判を相変わらずしているみたいなのですが、そら随分と議論に偏りがありゃせんですかと思うのですよ、そらまあバーナンキさんは神様で日銀はダメで白川さんはしょうがねえとかいう先入観があるんでしょうけれども、先入観で報道とか社説とか展開されたらたまらんわ。まあしつこくなるからこれ以上細々書かないけど。

『In presenting the draft statement on behalf of the subcommittee on communications, Governor Yellen pointed out several key elements.』

この施策に関する小委員会の仕切りをやってたイエレン副議長が今回の文案の説明に際してキーとなる要素を指摘しました。

『First, the statement expresses the FOMC's commitment to explain its policy decisions as clearly as possible.』

コミットメントというのがこことその後に出てくるのですが、どうもこれはデュアルマンデートの達成に対するコミット的な話で、数値に関しては当たり前ですがフレキシブルターゲットですし、そもそもコミットっつーてもそれをどのくらいの期間で達成して達成しない場合にどうなりますとかいうような話がある訳ではござーませんわな、まあ現在の金融政策の枠組みの潮流を考えた場合当たり前ちゃあ当たり前ですけど。

『Second, the statement specifies a numerical inflation goal in a context that firmly underscores the Federal Reserve's commitment to fostering both parts of its dual mandate.』

FRBのデュアルマンデートの双方を達成するためのコミットメントを強調するという文脈において、数値的なインフレのゴールを特定しますとな。

『Third, the statement is intended to serve as an overarching set of principles that would be reaffirmed during the Committee's organizational meeting each year, and the bar for amending the statement would be high.』

まあこれも当たり前っちゃあ当たり前ですが、年次でこのステートメントの見直しを行いますが、その変更へのバーは高くなるべきであるって事ですな。まあこの辺に関しては公表文書にもございましたのですが改めて。

で、議論がどうのこうのという話は無くていきなり結論になってしまうのがちょっと残念ではございますけれども。

『All participants but one supported adopting the revised statement of principles regarding longer-run goals and monetary policy strategy, which is reproduced below.』

公表文書部分は割愛します(公表文書そのまんまです)。

『All FOMC members voted to adopt this statement except Mr. Tarullo, who abstained because he questioned the ultimate usefulness of the statement in promoting better communication of the Committee's policy strategy.』

この前引用しましたが、タルーロ理事はこのステートメントがFOMCのコミュニケーションポリシーの改善に対する有用性に対して疑問があるという理由で反対したのですけれども、具体的にどのようなケースを想定して反対したのかを聞くチャンスが欲しいなあとは思うのであります。


○インフレの見通しに関する見解が思いっきりスプリット

んでまあ途中の連銀スタッフのレビュー部分とか全部スルーしまして(一応読んだのでネタが無かったらネタに使うかも^^)『Participants' Views on Current Conditions and the Economic Outlook』の思い切りケツの方から(つまりインスタント手抜き法での読みと結果的にネタとして使っているのが同じという残念な状態に)参ります。

インフレに関するパラグラフの後半から。

『Looking farther ahead, participants generally judged that the modest expansion in economic activity that they were projecting would be consistent with a gradual reduction in the current wide margins of slack in labor and product markets and with subdued inflation going forward.』

大勢の見方自体は引き続き同じで、経済見通しに関して緩やかな改善を想定している事から、現在の労働市場および生産市場の大きなスラックの改善も緩やかにとどまり、先行きのインフレも抑制されるでしょうという話ではあるのですが・・・・・・・

『Some remained concerned that, with the persistence of considerable resource slack, inflation might continue to drift down and run below mandate-consistent levels for some time. However, a couple of participants were concerned that inflation could rise as the recovery continued and argued that providing additional monetary accommodation, or even maintaining the current highly accommodative stance of monetary policy over the medium run, would erode the stability of inflation expectations and risk higher inflation.』

ということで、数名(some)のメンバーはスラックの大きさによってインフレがマンデートでの望ましい水準を下回って推移する可能性を指摘し、一方で2名(a couple of)のメンバーは経済が回復過程にある中において追加緩和の実施を行うような場合もさることながら、そのような時に現在の緩和的な金融政策を維持した場合であっても、インフレ期待の上昇やより高いインフレの招来のリスクがある、と指摘していまして、少数意見がスプリットでござるの巻という所であります。


○フォワードガイダンス文言はこれ早晩また変わるかもね

その次のパラグラフがどう見てもカオスです本当にありがとうございましたという風情。

『Committee participants discussed possible changes to the forward guidance that has been included in the Committee's recent post-meeting statements. Many participants thought it important to explore means for better communicating policymakers' thinking about future monetary policy and its relationship to evolving economic conditions.』

つーことでフォワードガイダンスの議論が行われたのですが、多くの委員は各委員の考える先行きの経済予想に紐付けて各委員が考える先行きの金融政策パスを示すより良い手段を考える事は重要ですと考えている(で訳合ってますかな??)とかいう話になるのですが、この先の意見羅列を見ると色々と議論があった事が予想されます。

・フォワードガイダンスが金融政策の約束とミスリードされているよ

『A couple of participants expressed concern that some press reports had misinterpreted the Committee's use of a date in its forward guidance as a commitment about its future policy decisions.』

2名の方がこのように懸念しておられます。


・期間ではなく「失業率とインフレ率に紐付けたガイダンスにすべき」という見解が出るの巻

この話が出てから議論が盛り上がって参りましたという感じになるのですが、

『Several participants thought it would be helpful to provide more information about the economic conditions that would be likely to warrant maintaining the current target range for the federal funds rate, perhaps by providing numerical thresholds for the unemployment and inflation rates.』

まあこれは先般シカゴ連銀のエバンス総裁が(結構ハト派的に見える)閾値を持ち出して「失業率ターゲット、ただしインフレ高進の場合はその限りではない」という時間軸政策の導入を講演で提言してましたが、その数値の置きは兎も角として、複数名(Several)の委員がこの点を提言しているのね、うんうん。

『Different opinions were expressed regarding the appropriate values of such thresholds, reflecting different assessments of the path for the federal funds rate that would likely be appropriate to foster the Committee's longer-run goals.』

んでまあそれに対して色々な意見が出ているのがいい感じでカオスである。


・紐付け時間軸は金融政策のフォワードルッキングアプローチを損なうのでは派

まあそらそうなんですけどね。

『However, some participants worried that such thresholds would not accurately or effectively convey the Committee's forward-looking approach to monetary policy and thus would pose difficult communications issues, or that movements in the unemployment rate, by themselves, would be an unreliable measure of progress toward maximum employment.』

で、小見出しがアホウのように長くなるので割愛しましたが、後半にあります意見はもっとそもそも論で、雇用に関して「最大雇用」を示す数値自体がそもそもピンポイントでの置きができない(経済状況によってNAIRUが変わり得るから)のにそんな数値おいて良いのかという意見ですわな。


・今後はSEPで金利パスの見通しを出すからフォワードガイダンスはもっと単純化しろ派

『Several participants proposed either dropping or greatly simplifying the forward guidance in the Committee's statement, arguing that information about participants' assessments of the appropriate future level of the federal funds rate, which would henceforth be contained in the Summary of Economic Projections (SEP), made it unnecessary to include forward guidance in the post-meeting statement.』

それもまあ一理以上ありそうな感じですが、更にそれに反論が。


・SEPの見通しは投票権の有無に関するウェイトを無視しているからダメだろ派

『However, several other participants emphasized that the information regarding the federal funds rate in the SEP could not substitute for a formal decision of the members of the FOMC.』

これはまあFOMCの後にああでもないこうでもないと書きましたが、SEPでの見通しはFOMCの投票権の有無のウェイトが無いので実際のFOMCでの投票行動と一致しないでしょという反論でこれはこれでご尤も。

つまりですな、そもそもSEPの方式自体もちょっと改善の余地があるのかもしれませんよねというか、まあそれ以前の問題として政策パスの数値予想を出すのはやはり話として無茶ではネーノという話になるんでしょうな。


・ということで、フォワードガイダンスそのものが変わる可能性もありそうですな

『Participants agreed to continue exploring approaches for providing the public with greater clarity about the linkages between the economic outlook and the Committee's monetary policy decisions.』

というのが結論でして、この調子だとおそらくは出口政策を意識しないといけなくなるような前にはこの辺のガイダンスとかのあり方がしらっと変更になるでしょう、という感じがしますわな、と思います。

#ということで肝心の「追加緩和の云々」に関する部分をスルーして趣味の世界に走りどうもすいません

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2012/02/20

お題「これは重要な講演です(2月17日白川総裁講演より)」

当日はあまりネタにはなっていなかったような感じですが、改めて読んでみたら重要な講演に見えるので本日はこちらのネタで。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120217a1.pdf
デフレ脱却へ向けた日本銀行の取り組み
── 日本記者クラブにおける講演 ──

○さきにまとめを

『本日は、まず前半では、今回の決定の狙いや考え方をご説明します。後半では、こうした政策の目的であるデフレからの脱却という政策課題に焦点を当て、デフレの原因や、デフレ克服のために必要な対応の考え方などを申し述べることとします。わが国を含め主要国の短期金利が実質的にゼロ金利になってからは、金融政策の運営手法が、伝統的な「金利の上げ下げ」から、様々な金融資産の買入れなど「非伝統的政策」といわれる領域に拡大しているため、話がどうしてもやや専門的、技術的になる部分があるかもしれませんが、この点はご容赦頂ければと存じます。』

こちらの講演なのですが、先日の追加金融緩和に関する説明が前半で後半は日本経済の課題がどうしたこうしたの話で、まあ後半の方はいつもの話なのですけれども、前半の追加金融緩和に関する話については金融政策決定会合後の総裁記者会見での説明をよりクリアにして日銀の今回の緩和に関するスタンスを示しています。

でですね、そのスタンスなのですが、決定会合翌日のレビューで「俊ちゃんスキーム」などというお題で駄文を書きましたが、声明文、会見を見るとまあそんな感じ(従来の「下振れ対応、リスク対応」ではなく「景気判断を引き上げながらの景気後押し」という積極的な緩和という事)ですなあとか思ったのですが、今回の講演ではその辺りの説明をより踏み込んで判りやすく行っているという印象です。

つーことで、まあ日本記者クラブ相手という事ですから後半の方も白川総裁的にはメッセージなのでしょうが、金融市場的には後半の話は散々聞いておりますし、特段テーマに変化がある訳でもございませんので、ほぼ前半部分をネタにするでござるの巻です。


○物価安定の目途に関する部分から:時間軸の強化とな

『まず初めに、「中長期的な物価安定の目途」からご説明します。これは、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断できる状態を物価上昇率の数字で示したものです。具体的には、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とする」こととしました。』

さいですな。

『日本銀行の行う金融政策運営の目的は、日本銀行法上、「通貨及び金融の調節の理念」として明確に定められています。それは「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」というものです。その際の「物価の安定」とは、後ほど詳しく説明しますが、中長期的に持続可能なものでなければなりません。』

ふむふむ。

『それでは、この「物価の安定」とはどのような状態を指すのでしょうか。概念的には、「家計や企業などが物価水準の変動に煩わされることなく、経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」ということができますが、金融政策運営に当たっては、これを数字で表現することが必要になります。各国の中央銀行は、名称は異なりますが、物価安定の数値表現を有しています。例えば、イングランド銀行は「目標(target)」、欧州中央銀行やスイス国民銀行は「定義(definition)」、米国FRBの場合は、これまで採用していた「物価の長期的な見通し(longer-run projection)」、あるいは先般新たに導入した「長期的な目標(longer-run goal)」が、物価安定の数値表現に該当します。』

で、その次が「じゃあ何で目途にしたのか」という話ね。

『日本銀行も、今から6年前の2006年3月に、「中長期的な物価安定の理解」という名称で、物価安定の数値表現を導入しました。その後、何回かの表現の変遷を経て、最近では「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度」というものとなっていました。』

ですな。

『この「理解」という表現を選択したことには、明確な理由がありました。』

ほほう。

『当時は、2001年以降5年間続いた量的緩和政策を終了するという段階にあり、新しい局面における物価安定の考え方については、政策委員の見解にかなりばらつきがありました。それでも、政策委員会としておよその数値的イメージを伝える必要性は全員認識していました。この結果、物価が安定していると各委員が理解している物価上昇率を個別に提示してもらったうえで、それらを包含する範囲で数値表現を行い、これを「理解」と命名し公表するという方法をとることにしました。』

ふむふむ。

『しかし、各委員の見解の集合体という位置づけであったため、日本銀行としての判断がわかりにくいという声が、時が経過するにつれ、多くなってきました。また、「理解」という言葉の語感からは、物価安定の実現、現在の状況に照らしていえばデフレ脱却に向けての日本銀行の政策姿勢が読み取りにくい、といった意見も出ていました。』

上記引用部分から先が今回の変更ポイントです。

『今回、そうした様々な意見も踏まえ、新たに導入した「中長期的な物価安定の目途」について、これまでの「理解」との違いを整理しますと、』

キタコレ。

『第1に、今回の「目途」は「各政策委員の見解」ではなく、「日本銀行としての判断」であるということです。』

『第2に、物価安定の領域として「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス」としたうえで、「当面は1%を目途とする」ことを明確にしました(図表2)。』

つまり「当面は1%を目途とする」は「日銀の機関決定である」ということです。

『第3に、後で詳しく申し上げますが、実質的なゼロ金利政策などの強力な金融緩和政策の継続期間に関する約束、いわゆる時間軸政策との結びつきを強めました。』

>時間軸政策との結びつきを強めました
>時間軸政策との結びつきを強めました
>時間軸政策との結びつきを強めました

・・・・・・・・!!!!で、この部分は後で出てきますが、今回の声明文とか決定会合後の定例会見よりも踏み込んだ言い方に見えます(いやまあ決定事項の話をしているのですから本当はそこら辺にも含まれているのですけれども、汗)が、それは後ほど。


○物価安定の目途に関する部分から:目途はもしかしたら通過点なのかと思わせる表現も

んでその続き。

『さて、ここまでご説明すると、なぜ「目標」あるいは「ターゲット」という表現を使わなかったのかというご疑問が生じるかもしれません。今回の「目途」は、中央銀行の使命と整合的な物価上昇率を数値的に示し、それを中長期的に目指していくという点では、「ターゲット」という表現を使っている国の中央銀行と、考え方そのものに大きな違いはありません。』

まあ最近のターゲットって中長期的に云々であって、金融政策の自動運転装置では無いですからね。

『しかし、わが国では、「インフレ目標」という言葉が、一定の物価上昇率と関係づけて機械的に金融政策を運営することと同義に使われることも未だ多いように思われます。』

まあこれはそうだというのはこの前晒しあげした中日新聞2月15日社説を見れば一目瞭然ですな。

『実際には、後ほど詳しく述べるように、インフレーション・ターゲティングの採用国を含め、金融政策運営は、そうした機械的な運営ではなく、中長期的にみた物価や経済の安定を重視して行われるようになっています。私どもとしては、そうした金融政策運営の実態にもっとも相応しい日本語の言葉は、「中長期的な物価安定の目途」であると判断しました。』

・・・・・とまあここまでは先日の総裁会見と一緒なのですが、この先の部分がこれまた踏み込んでいるというような感じですよ。

『また、日本の場合、これまで、長期間にわたって低い物価上昇率が続いてきている一方、将来は成長力強化への取り組みの成果が挙がっていけば、持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります2。』

>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります
>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります
>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります
>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります
>持続可能な物価上昇率が次第に高まっていく可能性もあります

・・・・・・・・・・!!!!!!!!!

で、その2というのは脚注なのですが。

『2 政府が今年1月に公表した「経済財政の中長期試算」においては、消費者物価上昇率の試算結果について、@内外の経済環境について慎重な前提を置いた場合は「1%近傍(2020年度までの平均1.1%)」、A堅調な内外経済環境の下で、「日本再生の基本戦略」において示された施策が着実に実施され、2020年度までの平均的な成長率が2%程度まで引き上げられる場合は「2%近傍(2020年度までの平均1.7%)」という計数が示されている。』

となりますと、この次の説明−この文言自体は金融政策決定会合で示された「この数値は1年ごとに見直します」という話を説明しているのですが−に関しても、ちょっと踏み込んだ説明をしている事からニュアンスが違って見えるものであります。

『こうした構造変化の可能性や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きいことを踏まえますと、中長期的に目指すべき物価上昇率について、固定的なイメージの強い「目標」という表現を使わずに、「目途」と位置づけて、原則として1年ごとに見直していくことが適当と考えました。』


という風にありまして、つまり「今回、中長期的な物価安定の目途で示した1%の数値はまず実現に向けてあまりにも遠くならない物を示しましたが、将来的に日本経済が持続的な成長軌道に乗った場合には物価安定のこの数値を2%近傍に引き上げる事も検討課題となるでしょう」という事をこの部分では示唆しているという風に読めます罠。

勿論この辺りの話は単なるリップサービスなのかも知れませんけれども、「世界的に先進国の金融政策の手法が収斂していく」的な話をしている白川総裁なのでこの部分は結構マジで話しているのではないかと思うのですけれども。つーかですね、どこぞの俊ちゃんや逆さ絵のおじさんのようにハッタリを効かすのがとてもとても得意とは思えない麿先生がこういう事を言い出すとは却ってそのやる気っぷりに何か変なもんでも食ったのかとか思ってしまいますけれども、麿の方向性としては望ましい流れになっているような気がする。

ということで、まずこの部分では「物価上昇率を引き上げたい」という麿先生のマジ振りが示されているという所でして、何をどう開き直ったのか知りません(つーかまあ従来からデフレ脱却に熱心だったのでしょうけれども、少なくとも従来こういう言い方をして積極性をアピールしているとは言い難いものがあった)が、まあ頑張った発言をしているように見えます。


○時間軸政策の強化とな

『次に、2番目の措置として、先ほど少し触れた時間軸政策の強化についてご説明します。』

ふむふむ。

『時間軸政策と呼ばれる政策は、将来の金融政策運営方針を何らかの条件に結びつけて約束する手法です。短期金利がほぼゼロ%まで低下し、それ以上の引き下げ余地がなくなると、伝統的な短期金利操作に代わる方法を使って、長めの金利を含むイールドカーブ全体に働きかけることが必要になります。』

さいですな。

『一般に、長期金利は、市場参加者による将来の短期金利の予想にリスク・プレミアムを乗せて形成されると考えられます。したがって、中央銀行が金融緩和政策を長期間にわたって継続すると約束し、政策金利である短期金利の低い状態が長く続くという約束が市場参加者に信頼されれば、それによって、長期金利を引き下げる力が働くことになります。』

まあリスクプレミアムが上昇して長期金利が上がる事もあるけどな。

『日本銀行は、1999年以降のゼロ金利政策時代や2001年以降の量的緩和政策時代にも、時間軸政策を活用していました。最近では、先ほどご説明した「中長期的な物価安定の理解」に基づき、「物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく」という方針を明らかにしていました。この方針も長期金利の安定的な形成を図るうえで一定の役割を果たしてきましたが、今回、日本銀行のデフレ脱却に向けた政策姿勢をより明確にするという観点から、2つの点で見直しを図りました。』

まあ良く考えてみたら時間軸に対して各政策委員の見解の集合体に過ぎない「理解」というのに基づいているというのも変な話っちゃあ変な話でしたわな。

『第1に、時間軸の条件として、「中長期的な物価安定の目途」で示した当面の目途である1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました。』

>1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました
>1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました
>1%という物価上昇率に明確に結びつけることとしました

ほほう。

・・・・いやまあ前から結びついてはいましたが、従来は「中心は1%」というだけでしたので、別に1%じゃなくてもそれこそ安定的に0.5%でも「中長期的な物価安定の理解」の範囲内でございましたからねえ。

まあこの物価上昇率が「中長期的な物価上昇率」なのが論点的に微妙な面がありますけれども、何はともあれ「経済指標の一定の数値に紐付け」というのを明確に示したという事で、これはFRBのガイダンス文言よりも実は強い表現(そういや米国市場もさすがに気が付いたのか、ガイダンス文言出た直後に金利低下したFF先物とか2年国債とかの金利は足元で低下した分全部吐き出して上昇してますよね)となっているんですよね。

『第2に、具体的な政策運営指針については、実質的なゼロ金利の継続だけでなく、それ以外にも実際に行ってきた政策措置を踏まえて、より能動的な表現とすることが適当と判断しました。』

>より能動的な表現
>より能動的な表現
>より能動的な表現
>より能動的な表現
>より能動的な表現

「能動的」キタコレという所でして、これがハッタリ全開の俊ちゃんがいうのではなく、ハッタリの効かない(と思われている)麿大先生が仰せなのですからその気合の入り方が違うのではないかと期待される所ではございます。いやまあもしかしたら麿の精巧な着ぐるみの開発に成功して中に俊ちゃんを押し込んでいるとか、麿がこっそり修行して逆さ絵おじさんの生霊でも召喚しているとかだとただのハッタリなのかも知れませんが、そんな感じでもなさそうですのでね(^^)。


『この結果、新しい時間軸政策として、次のような方針を採用しました。すなわち、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」というものです。』

まあ第2の柱自体は残っているのですけれどもね。

『ただし、わが国のバブルの発生と崩壊や、近年の世界的なバブルや金融危機などの経験を踏まえ(前出図表2)、物価が安定している場合であっても、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを条件とすることとしました3。』

んでまあここの脚注3には・・・・・

『3 バブル期の日本の消費者物価上昇率(除く生鮮食品、消費税調整済み)をみると、1987年度は0.4%、1988 年度は0.6%、1989年度は1.6%であった。』

などとしらっと書いてあるのは従来の麿クオリティーの残っている所ではございますし(^^)、まあそもそも字面的にそんなに従来のと大きく変わったという訳でもなく、そもそも論で言えば金融政策の枠組み自体に大して変化はないのですが、同時に実施された追加緩和のスタンスとか、定例記者会見でのスタンスとかに変化があり、かつ今回のこの講演での説明、ということでして、字面云々ではなくその中のスタンスの変化というのが市場的には重要ですよね、という話ですわな。


○インフレターゲットとお呼びになりたければどうぞどうぞ

んでもってその次は結論の所がポイントなのでその途中はサラサラ流す。

『それでは、以上のような「中長期的な物価安定の目途」と「消費者物価上昇率に結びつけた強固な時間軸政策」の組み合わせは、いわゆるインフレーション・ターゲティングとの関係でどう位置づければよいでしょうか。』

『まず指摘したい点は、各国とも、日本のバブルや近年の世界的な金融危機の経験を含め、そこから得られる教訓をお互いに学び合いながら、金融政策運営の枠組みの改良に努めてきているということです。その結果、各国中央銀行の金融政策運営の枠組みは以下の3つの点でかなり収斂してきています。』

『第1に、自らの責務と整合的と考えられる物価上昇率を数値で示すことです。先ほど述べたように、イングランド銀行の「ターゲット」、欧州中央銀行やスイス国民銀行の「定義」、FRBの「ゴール」、日本銀行の「目途」など、言葉は異なりますが、いずれも同様です。』

『第2に、より重要な点として、今申し上げた物価安定の数値表現を政策運営において活用する際に、短期的な物価動向ではなく、中長期的にみた物価や経済・金融の安定を重視する度合いを強めてきていることです。』

まあそうですな。

『多くの場合、バブルは物価の安定を謳歌している時期に発生し、結局、バブル崩壊後には経済活動や物価の大きな変動をもたらします。また、原油価格の変動といったサプライ・ショックを短期的にコントロールしようとすると経済活動に大きな負荷がかかり、結局、長期的な物価安定が実現できません。これらの近年の経験は、すべて、持続可能な物価安定を中長期的な視野で達成することの重要性を裏打ちするものです。英国のように、金融政策の枠組みをインフレーション・ターゲティングと称している国であっても、実際の運営については、物価目標を短期間で無理に実現するのではなく、経済や金融の安定を図ることを意識して物価目標を中長期的に達成していく、という色彩が強まってきています。』

バブル云々の部分は毎度のアレですけど(^^)。

『第3に、それとの関連で、主要中央銀行が公表する経済・物価見通しは、従来よりも幾分長い期間を視野に入れたものになってきています。ただし、見通しは遠い将来になるほどその信頼性は低下しますので、見通しの数値そのものを過度に強調するのではなく、見通しの背後にあるメカニズムについての考え方やリスクの評価において、中長期的な観点をより重視するようになってきています。』

で、小見出し相当部分がこちら。

『このように、主要中央銀行の間で金融政策運営の枠組みが収斂してきていることを踏まえますと、それぞれがインフレーション・ターゲティングに当たるかどうかという分類学は、本質的な論点ではなくなってきています。実際、FRBが今回採用した「ゴール」についても、バーナンキ議長自身は、インフレーション・ターゲティングではないと言っている一方で、論者によっては、これをインフレーション・ターゲティングと呼んでいます。そのうえで申し述べれば、もし、今回のFRBの金融政策運営の枠組みをインフレーション・ターゲティングと呼ぶのであれば、日本銀行の方法もそれに近いと言えると思います。』

つーかFRBの枠組み自体が日銀の枠組みをベースにして作られたとしか思えん(政策金利の予想パスとかちょっと斬新というかやり過ぎな追加トッピングもありますけど)ですが、まあそういうことでインフレターゲットと呼びたければどうぞという話ですな。


○資産買入と低金利政策の継続に関してはそんなに凄く新しい話をしている訳でも無い

のでまあ引用は各小見出し部分の最後だけにしておきます。途中では「諸外国と比較しても日本の金融環境は緩和的」という話をしていますが、その辺は毎度の話なのでスルーという事で。

『国債買入れの10 兆円増額』の最後の所から。

『これほどの大規模の国債買入れですから、それに伴って一段と留意しなければならない点もあります。すなわち、中央銀行による国債の買入れが、金融政策運営上の必要性から離れて、財政ファイナンスを目的として行われていると受け止められると、かえって長期金利の上昇や金融市場の不安定化を招きかねないということです。日本銀行としてこれまでも繰り返し申し上げてきていることですが、財政ファイナンスを目的とした国債買入れは行いません。』

まあそうは言ってますがどう見てもここまで買入が来ると「期間限定、中短期国債限定」の財政ファイナンスって感じですけどね(ニヤニヤ)。

『緩和的な金融環境の確保』の最後の所から。

『さらに、今回の国債買入れの思い切った増額により、長めの金利を含むイールドカーブ全体ヘの影響を通じて、金融緩和効果は一段と強まるものと見込んでいます。』


○最後の部分ね

で、ワープしてまとめの部分ですが。

『振り返ってみると、消費者物価(除く生鮮食品)の下落率は、最近では、2009年半ばに、−2.4%と近年でもっとも大きな下落を記録しました。その後、緩やかではありますが景気が回復基調をたどり、需給ギャップが縮小する中で、物価の下落率も小さくなっており、ようやく、前年比でゼロ%近傍まで到達しました。その意味では、デフレ脱却に向けての歩みは進んでいるのですが、「中長期的な物価安定の目途」で示した当面の目途である1%を見通せるような状況までには、まだまだ距離があると言わざるをえません。』

>1%を見通せるような状況までには、まだまだ距離がある
>1%を見通せるような状況までには、まだまだ距離がある
>1%を見通せるような状況までには、まだまだ距離がある

『さらに、日本経済を取り巻く環境には様々な不確実性が存在します。欧州債務問題の今後の展開によっては国際金融資本市場の緊張を通じて日本に影響が及ぶ可能性は排除できません。国内要因をみても、電力需給や円高の影響に加え、復興関連需要の増加ペースなど、多くの不確実性が存在します。』

というのは今までと同じですが。

『しかし、同時に、このところ内外経済に明るい兆しが出始めていることも見逃せません。欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいます。米国経済では、バランスシート調整の重石はあるものの、このところ雇用情勢などに改善の動きがみられています。国内に目を転じても、公共事業と民間需要の両面で震災復興関連の需要が動き出していますし、昨年の震災後の支出抑制の反動もあって、このところ個人消費が底堅さをみせています。』

で、今回の追加緩和は「明るいものが出ている中での押し上げ介入だよ」というのをこちらの講演でも改めて示しています。

『今回の私どもの金融緩和強化策も、こうした前向きの動きを金融面から後押しするという狙いを込めて実施したものです。』

ということで、従来は「下支え」というニュアンスが強かった緩和強化が今回「後押し」になったのはまあスタンスの変化ですよね、というのはここもと申し上げた通りかと存じます。

#以上引用大会でありました(大汗)

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2012/02/17

○5年国債入札キタコレ

昨日も昨日とて相場ネタがあってここまですっかりウゴカンチ会長になっていた市場の中の人たちとしては色々と動きがあって何より(なのか??)でありまふ。

えーっとですな、一昨日の日銀基金国債買入さっそく5000億円打ち込み攻撃によりまして中短期ゾーンの気配がまあ強くなっておった訳でございますが、昨日は5年国債入札を前に海外市場の債券高もあって前場からきっちり堅調推移したでござるというアヒャヒャヒャヒャの展開。

で、前場引けで142円82銭(+17銭)で5年カレント(新発はリオープン)は2毛強/1毛5糸強の0.300/0.305の板で、絶対水準的にどうよという説もあるものの、やはりニーズありありという事で落札結果は100.02/100.01で按分88%となりやがりまして、100円届かずですかそうですかという結果。

市場推計だと不明札少なくて業者主体の落札っぽかったですけれども、別にその後売られるでもなく堅調推移しやがりまして、その後何か知らんが引けにかけてカーブの後ろの方が強くなった影響もあったのか、やや先物が持って行かれる感じで引けは0.295%でしたが先物が6銭持っていかれてましたので前場引けのバランスからは同じですが入札レベル的には微妙に先物上に持っていかれという感じですが、落札結果発表後は0.295/0.300の気配のまんま推移という感じじゃなかったかなと思われます(が子細に見ている訳では無いので間違ってたら教えてくんなまし)。

ちょうどですな、この次に申し上げます「固定金利基金共通担保オペレーション札割れ事件」というのが14時10分に発生しやがりまして、これを見て中短期ゾーンの現物がさらに強くなり、2年以内のJGBの気配が揃いも揃って0.105%ビットとか大変に素敵な事にもなってしまいまして、3年とかのゾーンとかも当然のように強いでございますわよとなりまして、日本相互証券さんの引けベースで残存3年ゾーンの5年88回(2015年3月償還)とかで前日比1毛5糸強の0.165%とか大変に素敵なレートになっておられまして、そこから見ると5年の0.30%が普通に見えてしまうというおそロシアな状態になります罠という事ですな。

まあ何ですな、そらまあ銀行業態さんがALMマッチングとか言って2年だの3年だのとかを買うと言いましても、このレートではコスト賄えないですわなという話になって、まあつまり金利難民の皆様が大量にイールドカーブの後ろの方になだれ込んでいる訳で、避難民の皆様が只今絶賛到来中という風情なのでしょうなあ。


○基金オペの6か月資金供給絶賛札割れキタコレ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120216.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年2月20日 2012年8月22日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120216.htm
共通担保資金供給(資産買入等基金)(2月20日スタート分) 7,010 7,010

はーい、6か月固定金利資金供給オペ札割れ来ましたね〜♪アヒャヒャヒャヒャ♪

・・・・・・・えーっと、今回のオペは新規で行った分(つまり基金オペの6か月オペ分の積み残し分の消化)なのでそもそも札が入りにくいものだったのですが、ついに札割れしやがりましたかという所で、何がマズーかと言いますと基金オペって基本的に残高にコミットしている所にある訳で、札割れするとなると目標未達という事になるのでどう落とし前つけるんでしょうねえ(ニヤニヤ)という事になるのでございますな、うんうん。

でね、まずオペの札が割れる要因を考察するとこれがまた色々と面白いというかマニア的には興味の尽きない話ですが、正直言って短期の一部市場の技術的な問題がかなーり多くなるのでまあ興味のあるかただけ読んでちょ。

暫く前からあたくし「6か月オペイラネ」と申していましたが、そら何ですねんと申しますと、これはもう資金供給全体のバランスと、現在の短期市場というかレポ市場における資金の調達運用構造によっての話ですよね、という事になります。

つまりですな、レポ市場で資金の調達サイドに回るのって基本的に債券ディーラー(銀行がオーバーローンの時代じゃないから)になるのですが、債券ディーラーの資金ポジションというのは当然ながら債券の売買で動くものですし、更に現在のように短期国債がアホのように発行されていると、その資金ポジションのぶれも相当のものになる(新発の落札とか見れば判るように兆円単位でぶれるディーラーだっている訳ですから)のでして、その在庫ファンディングを全部オーバーナイトで実施すると流動性リスクがあるのである程度の長期ファンディングも必要になりますけれども、物には限度というものがありまして、逆に長期ファンディングをやり過ぎちゃうと在庫状況によっては資金調達過多になってしまい、今度は自分がいりもしない資金調達の担保不足になってGCレポの買い手(資金供給)に回らないといけなくなるリスクが生じます罠。

で、まあ往々にしてそうなのですが、ディーラーが資金調達過多状態になっている時というのは普通は「マーケットに玉が無い」という状態ですので、そういう時にGCを買いに行くととんでもない低い金利水準で資金出さないと行けなくなるというのが一般的で、そんなアホウな事態を避けるために普通の神経している債券ディーラーというかレポ担当は長めの調達と短めの調達のバランスを取る訳ですよ。

つーことで、資金取引的にはクソ長い期間であります所の6か月なんぞ要るかヴォケという事になる訳でございまして、債券ディーラーの札は入らん罠という事になる次第。まあ新規でこれから打ってもニーズが無いものにはニーズがありませんですし、これってGCのスポネが0.105%だから6か月の0.10%を取るというようなトレードオフにはそう簡単にはならない(資金調達のマッチングの問題だから。そらまあスポネが0.20だったら話は違うかもしれないけどそんな事したら今度はコールが上昇するから誘導目標のディレクティブ違反になりますし、そもそも緩和政策やってる意味がないわな^^)のでありまして、大変にアレな話でございます。


で、調達サイドの観点じゃなくて運用先にありきの観点から考えた場合、6か月の固定金利オペに応札するメリットとしては、「それよりも後ろのカーブが立っている事によって長短スプレッドを享受する」というのがありますよね。例えば1年金利が0.13%で6か月固定が0.10%で取れるのであれば、1年の0.13%を買って半年分は固定の0.10%でコストを確定させれば後半の調達が0.16%でブレークイーブンって奴であります。

しかしですな、まあ足元で基金買入の短期国債を増やし、もう増やせなくなったから今度は2年までの国債の買入も増やすという形で、2年までの金利が0.10%カツカツまでカーブ潰してしまっているので、6か月などという中途半端な期間の調達に対するメリットが運用サイドの観点からしても無くなっている訳でありまして、そらまあニーズが無くなる罠と思うのでありまして、この前6か月固定の拡大を行った時にレポ市場関係の皆様からは「これは余計」という指摘が多かったたに記憶しておりますが、まあその通りの展開になっておりますにゃ。


つまりですね、導入した時点では6か月の固定資金供給にはそれなりにメリットがあったのですが、より長い期間の資金供給(国債買入も一種の資金供給ですわな)が拡大して運用サイドから見ると短すぎてメリット無しとなり、一方で3か月、6か月の資金供給が多くなりすぎてショートファンディングとのバランスが崩れたという要因によって、調達サイドから見ると長すぎてメリット無しとなったという事です。


で、調達サイドからするとショートタームの資金供給は欲しいのに基金オペ優先になるからオペが打たれずとなると、ショートファンディングはGC1日物でというような話になりますから、GCは0.105%になってしまい2年カレントとどう見てもインバートです本当にありがとうございました状態になってしまう訳ですが、これって「長期債の買入をやり過ぎた場合のオペレーション上の技術的な問題」を具現化しているような感じでもありまして、米国様が正常化局面になった場合にはもっと素敵な短期のインバートが起こるのかなあとか考えると胸が熱くなってまいります。


・・・・つーことはつまりこれ打開策は正直言ってないと思うのでありまして、技術的にオペの限界に達しているという話ですが、じゃあどうしたら良いのよと考えますと、明らかに6か月のオペが要らなくて、一方で短いオペはニーズがあるのですから、固定の6か月のオペを少なくとも5兆は落としてショートタームのオペに振る(本当は10兆落とした方が良いと思う)とオペレーションがやりやすくなると思いますが、それだけだと基金残高が減ってしまいますので、これはもうヤケを起こして「長めの短期市場金利の低下という目的は現状でも達成できているので、より長い期間の金利に働きかけるべき」とか何とか言って6か月固定オペを減らした分を全部国債買入拡大に回すという話ですが、先般申し上げたように既に2年までの買入では今の残高が限界ですので・・・・・・・ニヤニヤ。

ということで、まあ何と申しますか、基金の拡大と期間長期化で日銀としてはオペレーション技術上の問題に引っ掛かって自分の首を絞めてどんどんやる事をエスカレートさせないと回らなくなる、という何ともかんとも香ばしい事態になっておられまして、オペレーション部隊および企画部隊の皆様におかれましては誠に同情の念にたえないと存じます次第であります(棒読み^^)。

まあ残高維持だけで良かったら基金共通担保固定オペの期間を例えば2週間物と1か月物というような調達サイドのニーズにマッチしたような形にすればまだニーズ集まるんじゃないですかねえと思いますが、そもそも固定オペが大杉勝男なのが行かんですからねえ。

ということで、ひたすら技術的なネタで大変恐縮至極。

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2012/02/16

お題「決定会合レビューシリーズと雑談少々」

急に話題になった休眠口座の件、もと金貸しの手先としては書きだすと止まらなくなりそうなので敢えてマクラで簡単にという感じにしますが、銀行の雑益勘定に入るのを捕まえて銀行を盗人呼ばわりしている識者(笑)とかちゃんと勉強しやがれ(実際はご案内の通り何年経っても銀行は時効の援用しないで払い戻しに応じています)とか思いますし、「本人じゃない場合に確認作業が非常に煩雑でケシカラン」とか言う人には「じゃあ正当な権利者かどうか判らない人にホイホイ払い出して良いのか」と反問したいですわな。

まあ「海外がこうだから」とか言ってるみたいですが、日本のリテール金融というか決済って世界標準(笑)から見たら凄まじいまでのオーバースペックで運営されているのですけれども、そっちは世界標準になるのはケシカランとか言って都合のいい所だけ世界標準持ち出すなやと思いますけどね。つーかそれ以前の問題として私有財産を平気で接収しようという発想そのものがどこのスターリンだよという所ですわ。

枝野官房長官(当時)の無法発言の時に懸念して引用したマルティン・ニーメラー師による詩のようなことが波及してますなあという感じです。http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/illegalDPJ.html

と、無駄に朝から血圧を上げつつ決定会合レビューおよび雑談。

なお、本当はこっちも注目のFOMC議事要旨に関しては日銀ネタの方で手一杯につき今日は勘弁ということで(すいません)。


○基金国債買入オペ5000億円オファーキタコレ

昨日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120215.htm

国債買入(資産買入等基金) 5,000 2012年2月20日

キタ-------------(・∀・)------------------!

ということで、昨日はきっちりとやる気元気井脇な基金国債買入が5000億円打ち込まれまして、このオペ見て2年ゾーンとかは(元々堅調でしたが)0.105%出合いキタコレなどとやっておりまして、まあ昨日はこのオペを見て「何だ日銀やればできる子じゃないの」という感じでしたな、うんうん。

ちなみに今回から買入対象銘柄が拡大して、従来は残存1年9か月位の所から2年の所が対象だったのが、1年6か月位の所から2年の所まで拡大(本当はあまり短い所を買うとちゃっちゃと償還が来てしまうので基金国債買入によって残高を積むというのにやや都合が悪いのですが、そんな事言ってると札が集まらない可能性がありますから)したでござるの巻。

落札結果はこの通り。
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120215.htm

国債買入(資産買入等基金) 10,677 5,003 0.002 0.005 57.7

とりあえず応札が倍入って良かったですねという感じですが、出来上がりの買入レートは平均が0.105%ですけど0.102%まで入っているという結果になりまして、いやまあこの調子で買っていくと2年カレントが新しく入った時は兎も角として、徐々に玉が薄くなってくると0.100に近い所まで入るような流れになるんでしょうなあとか思うのでありまして、やはり流れとしては2年カレントが1年短国並みになるというイメージになるんでしょうなあという感じです。

まあいずれにせよ、(後の総裁会見にあるように)今回の追加緩和については従来の「下振れリスク対応」だけではない「押し上げ介入」的なニュアンスがある(物価目標がどうのこうのよりも市場的にはそっちの方が重要なポイントでしょ常識的に考えて)のですが、昨日早速基金国債買入を実施(するでしょうとは恐らく全員が予想していたとは思いますが)したのは「姿勢を見せる」という意味では期待通りの動きでしたね、という所かと存じます。

しかし昨日は3MTBの入札が0.1028%の按分率上昇してまして、やはり海外勢の買いが止まる(ネタにしてませんでしたが今週の1週間物ドルオペは久々の応札ゼロでした)と毎週6兆円はさすがに重いようで、この調子で行くとうっかりすると2年と3MTBが瞬間インバートとか楽しい事になってくれるかもしれませんな。

#まあ2年の金利潰して銀行業態憤死ですから3Mに妙味が出ればそっちに買いがわんさかやってくるでしょうからそう極端な話にはならないでしょうが


○その他雑談

・まさかのお告げ

兜町のユリ・ゲラーとして名高い某北ハンマー先生が日銀の追加緩和にまさかの評価をされておられましたので大先生のボログより。

http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51888374.html
2012年02月14日
日銀の物価上昇率のメドとは何か

『市場はそれを歓迎日経平均株価は52・89円高したのですが、私にいわせると疑問ありです。』(上記北浜大先生のお告げURLより)

・・・・・ほほう。

で、昨日もこのように仰せ。

http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51888474.html
2012年02月15日
東京株式市場、今日は次のようになりそうだ[2月15日朝刊 ]

『昨日の日銀発表を受けて、日経平均は続伸が見込めるものの、水準が9100円に乗るようなことがあれば、当然戻り売りが出やすくなります。上げても高値掴みになりやすく、警戒する投資家も増える。こう見ています。このところ自動車、海運などが強く、今日もそんな流れに変化はないでしょうが、やはり目先上げ過ぎは気になるところです。』(上記北浜大先生のお告げURLより)

・・・・・ほうほう。

http://blog.livedoor.jp/orion3/archives/51888511.html
2012年02月15日
焦りは禁物

『今日のように急騰すると、買い遅れた感じがして焦ってしまうことも。これはもちろん危ないので、焦りは禁物ですよ。株だけじゃありませんけどね(笑)』(上記北浜大先生のお告げURLより)

・・・・・・・ほっほー。

えーっと、ただ単にあたくしは「このような見解があります」とご紹介しただけですからね!!


・これはケシカランですな(半分以上ギャグ成分ですので念の為)

これは実にけしからんニュースである(^^)。
http://www.asahi.com/business/update/0215/TKY201202150162.html
主要労組、ベア見送り 自動車各社、春闘の要求書提出

『自動車各社の労働組合が15日午前、経営側に今春闘の要求書の提出を始めた。産業別労組の自動車総連は今春闘でベースアップ(ベア)などの統一的な賃金改善を要求しないことを決めており、主要労組は軒並みベア要求を見送る。相場の牽引(けんいん)役を期待される自動車や電機の交渉は厳しいものになりそうだ。』(上記URLより)

・・・・・・・・今般の日銀の声明文にも『デフレからの脱却は、こうした成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。以上を念頭に、民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが、重要である。』とありますように、物価上昇率1%を目指すというのであれば当然ながらベア1%要求をして頂きたい訳でありまして、政府・日銀がデフレ脱却に向けて取り組もうという中でベア見送りなどと言う自動車労連の皆様に置かれましては国策を理解しておられないと存じます(念の為再度申し上げますがギャグで書いてますのでよろしく^^)。

つーか労使交渉の場で「日銀が物価上昇1%を目指すと言っているのにベアゼロとはケシカラン」と言ったらどういう話になるんでしょうかねえ特に経済団体の偉い人がいる会社ではwwww

#まあ「寝言は寝て言え」で終了でしょうし、「日銀の来年度の物価上昇率予想は+0.1%だから今年のベアはゼロだろ常識的に考えて」と言われるとぐうの音も出ないといってしまえばそれまでですがorzorzorz


まあ上記のはギャグですけれども、金融政策として2年金利にブルドーザーを導入して絶賛イールドカーブ潰し攻撃をして、銀行がALMマッチングで買いをするとただのやられんジャーという状態を作っておいて、金融機構局様がノコノコやってきて「ところで御行は金利上昇リスクにどのように対応しておられますか」とか質問するとか冗談でも行わないようにして頂きたいと存じます次第であります、つーかそんな質問したらうんこぶつけられても文句言えないレベルだろオメーという話ではございまして、政策として国債買って中期のカーブ潰していく中で銀行に金利ギャップがどうのこうのとか言ったらそれこそおまいら政策の整合性とれねえだろとか思う今日この頃でございました。

#しかしどうでも良いがせっかくの機会なので80円台まで介入しやがれやとか思うのですけどねえ。「おまいらが物価目標よりも高い物価なのに緩和続けるからこっちは迷惑しとるんじゃハゲ」位言ってyou介入しちゃいなよ!


・節子、それはバブルや

えーっとまあ例によってレポートをてきとーに見てたのですが、昨日見てて吹いたのはどこぞの株式レポートでして、セクター分析みたいな話で不動産業界の怪推奨ネタだったのですが、題名が『CPIが1%上昇すれば、六大都市の地価は10%上昇』とかいう物で、中身を読んだら2001年からのCPIと不動産価格指数のプロットして題名のような結果になりますよとかいう代物。

いやあの分析期間とか大丈夫かというのもありますが、それ以前の問題としてCPIが1%上昇して仮に実質GDPが2.5%成長(ってかなり高い置きだ)としたって、六大都市の不動産価格がその間に10%上昇したらどう見てもバブルです第2の柱発動です本当にありがとうございましたという話になりますがなと思い、こんなんで務まる何とかストって素敵だなあとか思う昨日のひとときでございました。お蔭で紅茶一杯無駄にしちゃいましたよ(−−)。


などと余談が長くなりましたが決定会合レビュー編の続き(国債買入打ち込みの話はレビューですな^^)。


○総裁会見もまあ色々とありますがポイント(と勝手にあたくしが思った部分)だけ少々

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202b.pdf


・今回の追加緩和は従来とスタンスが違いますなという件

4ページから。

『(問) 今回資産買入れ等の基金を増額した背景について、もう少し詳しくお聞かせ下さい。』

『(答) 先程の説明と多少重複するかもしれませんが、足許のわが国の経済情勢は、海外経済の減速や円高の影響などから横ばい圏内の動きとなっています。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は概ねゼロ%です。先行きを展望した場合には、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きいわけです。ただ、前回会合以降の変化という意味では、これから申し上げるような前向きな動きもみられています。(途中割愛)本日の会合では、先程申し上げた、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、こうした最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、日本経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものにすることが必要であると判断しました。』

ということで声明文でもそんな感じでしたが、ここでも「明るい材料のある中で追加緩和を実施した」と言っていますな。


質疑応答の13ページの所からですがこれは良い質問。

『(問) これまで日本銀行は、景気見通しが下振れた時に追加緩和を実施することが多かったと思います。今回、「中長期的な物価安定の目途」により日本銀行の意思を明確化したということは、極端な例ですが、非常にファンダメンタルズが良くても物価が上がらないというような時でも、緩和する時には緩和する、という意味合いがあるのかご説明下さい。』

例によって麿の答えがクソ長いのですが。

『(答) 私どもの経済の見通しは、足許、横ばい圏内の動きですが、この先は、新興国・資源国の景気回復あるいは復興需要に支えられ、緩やかな回復経路に復していくというのが基本的な見通しです。この見通しは不確実性が大きいということはかねがね申し上げている通りです。そうした状況の中で、今、内外で少し明るい動きが出てきていることを考えると、この明るい動きを何とか確かなものにしていくことを考えることは、先程申し上げた標準シナリオの実現可能性を高めていくものだと思います。そうした考え方で、今回の措置を採りました。』

ということで、今回はやはり「押し上げ緩和」ですな、うんうん。

『過去の金融政策について振り返ってみた場合、今申し上げたような考え方の意味合いを込めながら金融緩和を行ったことも、何回かあったように思います。もちろん、一般的には景気が悪くなっていく時に金融緩和を強化するというのがオーソドックスですが、今申し上げたような形で、より確かなものにするという思想でやったことも無いわけではありません。』

つまり俊ちゃんスキーム発動と。

『それから、今回、「中長期的な物価安定の目途」を出すという形で私どもの姿勢を示す時に、言葉だけでも目的を達成できるのではないかという議論もありますが、言葉と併せて政策的な行動を採った方が、言葉にもより重みが出てきて、金融緩和の効果も高まってくると判断したわけです。』

まあだいぶこの辺は頑張ってサービス発言してるなあという感じで、つまりは物価がアガランチ会長となれば基金買入の期間を延長して買入を続けますというニュアンスを込めていますな、うんうん。



・台無し発言は無かったようで何より

まあ台無しのレベルは論者によって違うと思いますが、一般的に市場ががっくり来るような発言はございませんでしたなという話です。質疑の最後の方で17ページ以降。

『(問) 先程、政策委員会としての意思を示すという話がありました。安住財務相も「事実上のインフレ目標」というように発言していますが、これが達成できなかった時、中央銀行の信認が低下したり、政府の関与が強まったりという副作用については、どのようにお考えでしょうか。』

『(答) インフレーション・ターゲティングを採用している各国の運営をみても随分変わってきています。例えば、ニュージーランドは、目標インフレ率が達成されなかった場合の規定が入っていますが、多くの国では、物価上昇率が目標等から乖離した場合に、なぜそれが乖離しているのかを、しっかり国民に対して説明していくとともに、政策の決定過程を明らかにしていくことを通じて、責任を果たしていくというのが今の主流になっています。日本銀行もそうした努力をこれからもしっかり続けていきたいと思っています。』

『(問) 英語の表記では、物価安定の目途は「goal」としていますが、先程、各国の表現を「definition」とか「goal」とか、それに日銀は「目途」とおっしゃっていました。英語では「goal」となると、FRBと同じになると思うのですが、この「goal」の方が「目途」よりも若干言い方が強いような気がするのですが、その辺りはどのような考えで「goal」になったのでしょうか。』

『(答) 各国の言葉に、完全に対応している言葉がないわけです。私どもからすると、一番、私どもの思いに近い言葉は「目途」です。「目途」に対応する英語、100%それに対応する英語がない以上、それに一番近い言葉は何だろうかと考えた場合に、「goal」という言葉が近いと判断しました。もっと良い言葉があれば、その言葉をもちろん採用します。』

・・・・・まあ何ですな、要は「目標」というと、従来「インフレ目標導入しろ」と言っていた論者の皆様が良く言っておられた「金融政策を裁量で実施するのはケシカラン」的な話とか、「インフレターゲットによる金融政策はサーモスタット付けた空調みたいなもん」とか例えをしていた(最近さすがにそういう人は減ってるようですが)時のイメージがどうも残っていて、現在のフレキシブルターゲットのイメージがちゃんと伝わるかという懸念があった、というのはまあ判らんでも無いので、目標という言葉を避けるのはまあシャーナイかなという気はする。

ただまあこちらの質疑にあるように「まあインフレーションターゲットと言いたければどうぞ」的なニュアンスで話をするようになっているのは改善ちゃあ改善かなあとは思うのでございまして、今回そういう意味で市場が「あちゃー」となるような発言は特段無かったのは結構結構。

#まあこれでCPIが1%になったころになってこれまでデフレデフレ言ってた「インフレだケシカラン」とかメディアや政治家が言い出したらそいつら全員ラーゲリ送りな


・ということで目標という言葉に関してを見たらちょっと「おお!」という論点が

3ページ目にまあその話があるんですけどね。

『(問) 今回、物価安定の「目途」という言葉にされましたが、これは、これまでの「理解」と何が違うのか、また、金融政策はどう変わっていくのかについてお聞かせ下さい。また、「目標」という言葉を使わなかった理由についてもお聞かせ下さい。』

『(答) まず、「中長期的な物価安定の理解」と、今回の「目途」との違いですが、物価安定の理解については、各政策委員が、それぞれ中長期的にみて物価が安定していると理解している数字、これを政策委員会に提出し、その数字を集める形で範囲を示していました。その数字は2%以下のプラスで中心は1%程度でした。しかし、この数字は、個々の委員の数字を集めているもので、必ずしも、日本銀行という組織、日本銀行政策委員会としての意思、判断を表すものになっていないのではないかという批判がありました。これに対し、今回の「目途」という数字は、日本銀行政策委員会としての判断を示したものであり、そこが大きな違いです。』

・・・・・・・これは見落としていましたが重要な論点。つまりここはFRBのデュアルマンデートにおけるLonger Runにおける望ましい物価水準の置きと同じでして(ちなみに蛇足ながら申し上げると、失業率の中長期的な望ましい水準は従来通りSEPによって示されるFRB理事と各地区連銀総裁の集計によって示されるcentral tendencyの数値であって、FOMCとしての機関決定として示した意志ではありません)、今回は「機関決定した」というのがもう一つの重要な論点でしたな。

とまあ考えますと、やはりこれはFRBの方式と同じ(1%と2%という数字の置きの問題はひとまずスルーしてくらはい)という話になりますなあという所ではございます。うっかりしておりましたです、つーか無意識のうちに機関決定なのかどうかをスルーしてたわ(大汗)。


『それから、「目標」との違いについてのご質問ですが、金融政策の「目標」は、日本銀行法に則して言うと、物価の安定を通じて国民経済の発展に資することです。海外の中央銀行における金融政策の目的も、表現は多少違いますが、要すれば、物価の安定であり、持続的な経済の成長に貢献していくということです。物価安定と整合的な物価上昇率をどのような言葉で呼ぶかは、それぞれの中央銀行の置かれた状況によって異なると思います。FRBは、今回、「longer-run goal(長期的な目標)」という言葉を導入しました。ECBあるいはスイス国民銀行は「definition(定義)」という言葉を使っています。BOEは「ターゲット」という言葉を使っています。日本銀行は「目途」という言葉を使っています。』

ほうほうそれでそれで?

『わが国では、「インフレ目標」という言葉が、目標物価上昇率との関係で金融政策を機械的に運用することと同義に使われることが――もちろんそれだけではありませんが――多いように思います。しかし、実際の金融政策運営は、いわゆるインフレーション・ターゲティングを採用している国を含めて、物価の変動と目標との関係で機械的に金融政策を運営するのではなく、今は、中長期的にみた物価や経済の安定を重視した政策運営をするようになっています。日本銀行は、そうした金融政策の運営の仕方を表すのに最も相応しい言葉は何かを考え、「中長期的な物価安定の目途」という言葉を今回使いました。』

まあ何ですな、確かに天下の中日新聞様がインフレ目標について下記のように仰せでございますので、白川総裁が上記のように言うのもシャーナイナイと言う所ではないでしょうかねえww

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2012012702000014.html
インフレ目標 日本も導入に決断を 2012年1月27日

『いまのように物価が継続的に下落するデフレ状況なら金融緩和を徹底し、逆に物価が目標値を上回って上昇するようなら迷わず引き締める。』(上記URLより)

いやいやいやいや、各国中銀(日本以外ね)それなら今頃引締め合戦ですよwwwwwなどと悪態ついていたら時間が無くなったorzorzorz


○一応メモ

総裁会見に関してはあとは「政治圧力」の話とかが中々こう味わいというか悲しみのある質疑応答で大変アレでございましたなというのがありまして、それからそれから金融経済月報なんですが、2月の基本的見解は1月とほとんど変わらずという素敵な状態になっていまして、決定会合声明文では今回細かい個別需要項目別の現状認識や先行き見通しに関する話がスルーされていましたが、やはりまあ予想通りで今回は「景気認識を下げない(どころか若干上げている)中での追加緩和」というこれまでとは違う追加緩和でしたなという事で、上記の総裁会見で示されたような事と整合性が取れますよねという話がございますが時間が無くなったので明日にでも(大汗)。

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2012/02/15

○その前にロイターさんすいませんすいません

先週「追加緩和も」とロイターが報道した時に「何をアホな」という勢いで書き物でdisりましたが、何とビックリ追加緩和実施というのが今回の落ちでございまして、謎記事とか悪態ついて大変恐縮至極でございまして今回に関しては素直にお見それ致しましたm(__)mと

・・・・・・・とひとくさり赤恥大会を致しましたが、まあそれはそれと致しまして今回の決定会合は色々とネタを大量投下して頂きましたので、大量投下されたネタを料理するでござるの巻という事であります。


○それに関連してリーク報道合戦をするメディアは如何に国益を損ねているかが判ったの巻

今朝の公共放送ニュース(5時半)の「今朝の主なニュース」の2番目がこれ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120215/t10013023911000.html
NY市場 3か月半ぶり円安水準 2月15日 5時22分

『14日のニューヨーク外国為替市場は、日銀が一段の金融緩和に踏み切ったことを受け、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は1ドル=78円台半ばと、3か月半ぶりの水準まで値下がりしました。』(上記URLより)

このWeb版だと題名は上記のようになっていますが、公共放送の本チャンの見出しは「日銀の金融緩和で円安に」(6時半では「日銀緩和で円安進む」でした)となっていましたが、今回は上述のように事前のリーク報道みたいなのが全然出なかった(情報管理がちゃんとできて良かったですねという所ですがそもそもそれが当たり前ではある)結果市場がサプライズで動いてくれた訳でして、つまり事前リークをするアホウは腹を切って死ぬべきであり、唯一ネ申又吉イエスによって地獄の火の中に投げ込まれるべき存在である、という件が今回の市場の反応を見て明らかになるのでありました。

ということで、不毛な上に国益を損ねる事前リーク報道合戦は厳に慎んで頂きたい訳でして、報道機関と銘打っているのに自社の営業>>>>>国益とかいうなら報道機関の看板を下ろして「当社はアジビラを印刷して販売しております」ときちんと説明して頂きたいと存じます次第であります(まあ事実認識がどう見ても間違っている記事や社説を堂々出すアジビラ新聞が既に散見されるという説もありますが・・・・・・・)。


とまあそんな前置きは兎も角として・・・・・・


声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf

「中長期的な物価安定の目途」について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214b.pdf


ではまずは「中長期的な物価安定の目途」の方から参りますね(^^)。


○時間軸とか金融政策の枠組みとかには何ら変更はないのですけどね・・・・・・・(物価安定の目途関連)

改めて今回の公表文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214b.pdf

『「中長期的な物価安定の目途」について

1. 日本銀行は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念として、金融政策を運営している。その際の「物価の安定」は、中長期的に持続可能なものでなければならない。

2. 本日の政策委員会・金融政策決定会合では、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けた日本銀行の姿勢をさらに明確化する取り組みの一環として、「中長期的な物価安定の目途」を新たに導入した。

3.「中長期的な物価安定の目途」は、日本銀行として、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を示したものである。この「中長期的な物価安定の目途」について、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることとした。従来は、「中長期的な物価安定の理解」として、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を示していた。』


では従来の中長期的な物価安定の理解はどうだったでしょうか。こちらに過去の推移がございますのでこれをポチポチと見ればよろしある。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/transparency/index.htm/
金融政策の透明性

元々はこちらにある
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/mpo0603a.htm/
「物価の安定」についての考え方(背景説明含む)

とかこの時に公表されている
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/k060309b.htm/
新たな金融政策運営の枠組みの導入について

の所にああだこうだと書いてある訳で、こちらにある『「物価の安定」についての考え方』が元々あったものなのですな。

つまり・・・・・・

『2.「物価の安定」についての考え方

「物価の安定」とは、家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況である。

「物価の安定」は持続的な経済成長を実現するための不可欠の前提条件であり、日本銀行は適切な金融政策の運営を通じて「物価の安定」を達成することに責任を有している。その際、金融政策の効果が波及するには長い期間がかかること、また、様々なショックに伴う物価の短期的な変動をすべて吸収しようとすると経済の変動がかえって大きくなることから、十分長い先行きの経済・物価の動向を予測しながら、中長期的にみて「物価の安定」を実現するように努めている。

物価情勢を点検していく際、物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを対象とした指標が基本となる。中でも、統計の速報性の点などからみて、消費者物価指数が重要である。

「物価の安定」とは、概念的には、計測誤差(バイアス)のない物価指数でみて変化率がゼロ%の状態である。現状、わが国の消費者物価指数のバイアスは大きくないとみられる。物価下落と景気悪化の悪循環の可能性がある場合には、それを考慮する程度に応じて、若干の物価上昇を許容したとしても、金融政策運営において「物価の安定」と理解する範囲内にあると考えられる。

わが国の場合、もともと、海外主要国に比べて過去数十年の平均的な物価上昇率が低いほか、90年代以降長期間にわたって低い物価上昇率を経験してきた。このため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は低くなっており、そうした低い物価上昇率を前提として経済活動にかかる意思決定が行われている可能性がある。金融政策運営に当たっては、そうした点にも留意する必要がある。

本日の政策委員会・金融政策決定会合では、金融政策運営に当たり、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率(「中長期的な物価安定の理解」)について、議論を行った。上述の諸要因のいずれを重視するかで委員間の意見に幅はあったが、現時点では、海外主要国よりも低めという理解であった。消費者物価指数の前年比で表現すると、0〜2%程度であれば、各委員の「中長期的な物価安定の理解」の範囲と大きくは異ならないとの見方で一致した。また、委員の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散していた。「中長期的な物価安定の理解」は、経済構造の変化等に応じて徐々に変化し得る性格のものであるため、今後原則としてほぼ1年ごとに点検していくこととする。』(以上、2006年3月9日公表の『新たな金融政策運営の枠組みの導入について』より)


で、その後2009年12月18日の金融政策決定会合でこの「中長期的な物価安定の理解」の明確化ということでこのリリースが行われた訳ですよね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0912c.pdf
「中長期的な物価安定の理解」の明確化

『(明確化のポイント)
・ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない
・中心は1%程度
消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている』
(以上、2009年12月18日公表の『「中長期的な物価安定の理解」の明確化』より)


・・・・・・・でですね、改めて今回の公表文書を読みますと(再掲します)、

『「中長期的な物価安定の目途」について

1. 日本銀行は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念として、金融政策を運営している。その際の「物価の安定」は、中長期的に持続可能なものでなければならない。

2. 本日の政策委員会・金融政策決定会合では、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けた日本銀行の姿勢をさらに明確化する取り組みの一環として、「中長期的な物価安定の目途」を新たに導入した。

3.「中長期的な物価安定の目途」は、日本銀行として、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を示したものである。この「中長期的な物価安定の目途」について、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることとした。従来は、「中長期的な物価安定の理解」として、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を示していた。』(今回公表された『「中長期的な物価安定の目途」について』より、以下同様)

で、この続きにこれでもかとうだうだと説明が続きまして・・・・・・

『4. 「中長期的な物価安定の目途」の背後にある「物価の安定」についての基本的な考え方については、以下のとおり、これまでと同様であることを確認した。

@概念的定義:「物価の安定」とは、家計や企業等が物価水準の変動に煩わされることなく、経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況である。

A時間的視野:十分長い先行きの経済・物価の動向を予測しながら、中長期的にみて「物価の安定」を実現するように努めるべきものである。

B中心的指標:物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを対象とした指標が基本となり、中でも、統計の速報性の点などからみて、消費者物価指数が重要である。』

この部分は2006年3月に公表された『「物価の安定」についての考え方』の説明文の冒頭から4パラグラフまでの内容と合致していますわな。

『5.「中長期的な物価安定の目途」を具体的な数値として示すに当たっては、これまでの点検と同様、@物価指数の計測誤差(バイアス)、A物価下落と景気悪化の悪循環への備え(のりしろ)、B家計や企業が物価の安定と考える状態(国民の物価観)、の3つの観点を踏まえて検討した。その際、日本経済の構造変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きいことに留意する必要がある。このため、「中長期的な物価安定の目途」について、現時点では、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にある」とある程度幅を持って示すこととした。そのうえで、「当面は1%を目途」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。

6. 「中長期的な物価安定の目途」は、今後も原則としてほぼ1年ごとに点検していくこととする。』

この部分は先ほどと同様の『「物価の安定」についての考え方』の説明文の5パラグラフから最後までの内容に相当する部分ですわな。

で、今回ちょっと違うのは「のりしろ」について明確に記述している事(物価安定の明確化の時ものりしろについては明言しておらず、2006年の段階では『物価下落と景気悪化の悪循環の可能性がある場合には、それを考慮する程度に応じて、若干の物価上昇を許容したとしても』という分かったような分からんような言い方しかしていない)が違うのと、『金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。』と言う表現をして、その水準が1%という事なのですが・・・・・・・・



えーっとですな、そもそも論で申し上げれば、以前の『「物価の安定」についての考え方』の記載してある『新たな金融政策運営の枠組みの導入について』(2006年3月公表)の冒頭に『日本銀行法は、金融政策の理念として、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と定めている。日本銀行はこの理念に基づいて適切な金融政策運営に努めている。』とあって、その物価の安定を図るという「物価の安定」って何ぞやという事で、それを「中長期的な物価安定の理解」という形で明示していた訳ですよね。

つまりですよ、今回「金融政策において目指す物価上昇率を明確にした」とドヤ顔(かどうかしらんが)で書いてある文章って、そもそも従来の話と同じであって、しいて言えば従来は「中心が1%」だったのが「当面は1%を目途」に表現が変わっただけの事であって、金融政策のフレームとしては全然変わっていない訳ですよ。

即ちですな、従来の枠組みにおいては、「中長期的な物価安定の理解が達成できるまで、現在の超緩和的な金融政策を継続する」と言ってまして、その中長期的な物価安定の理解で示す物価水準が「中心1%で2%以下のプラスの領域」ってなっていたのが「1%を目途」となっただけの話で、結局の所「中長期的にCPIが1%となる事が展望できるまでは現在の金融政策を継続しますよ」というのは何ら変化が無い訳ですよ。

よってこれを単体で捕まえて時間軸が伸びた縮んだというのはナンセンスにも程がある話ですし、まあ日銀的には今回の「明確化」を持って「インフレ目標導入」とか言われましても「いやあの以前からフレキシブルターゲットとしてのインフレ目標のようなものは出していまして、今回は単に従来出していたものを素人の皆様にも判りやすくくどくど説明したものなんですけど」というような所なのでしょうが、まあそれはそれで政治家の皆様やメディアの皆様、株式市場や為替市場の皆様が喜んでくれればよろしかばいという感じなんでしょうかね。


しかしまあ何ですな、こんなの出せるならとっとと出せばよという感じでして、今回は「検討指示」となるかと思ったのですが、まあ今回出すことによって政治的な圧力云々の問題は思いっきりありますし、そういう意味では結構アヒャヒャな所もありますが、出している物自体は単に縦書きの看板を横書きにした程度のものでありまして、実質的に何の変化もしていない、という意味で実は確保しているちゅうのが日銀的な結論になろうかと存じます。

#まあこの結果見て内閣の皆さん大喜びなのですからチョロイもんですなという感じですが、さすがに「何で2%じゃないんだ」とご指摘の方もいるのはまあ当然ちゃあ当然ですわなと存じます

こちらに関するその他のネタはまた後で。続いて追加緩和の方につきまして。


○追加緩和の方はちょっとビックリである

改めてURLを
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf

『金融緩和の強化について

1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下の決定を行った。

(1)中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として、「中長期的な物価安定の目途」を示すこととする(注1)。日本銀行としては、「中長期的な物価安定の目途」は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とする。

(注1) 「『中長期的な物価安定の目途』について」を参照。

(2)当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを条件とする。

(3)資産買入等の基金を55兆円程度から65兆円程度に10兆円程度増額する。買入れの対象は長期国債とする(注2)。現在、資産買入等の基金の残高は43兆円程度であるため、今回の増額分と併せ、本年末までに残高は22兆円程度増加することになる(注3)。

(注2) 基金の内容等については別紙参照。
(注3) 日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。』

という所までがまあ今回の追加緩和の話ですが、1.については先ほどああでもないこうでもないと書いた通りでして、要するに別段実体ベースで言えば変化がある話ではなく、日銀の時間軸(これは展望レポートでの物価見通しとのセットですね)にも変化のある話ではございませんな。

で、2.につきましては・・・・・・・・

『当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。』(再掲)

とあるので、何となくインフレ目標っぽく見えますが、そもそも先ほどから申し上げている通り、従来の金融政策の枠組みにおいても、金融政策は「中長期的な物価安定の理解」を達成することを目指して運営していたのでありまして、それは「中長期的に消費者物価の前年比+1%が中心」という事でありますので、そこには実質的な変化はありません。

ただまあこの表現は割とペテン的な所があって、1%という数字が足元の数字なのか中長期的な数字なのかが敢えて曖昧になっているので、インフレターゲットっぽく見せていますけれども、そもそも現在の先進国の金融政策運営において「足元の物価指数」のみを見ながら運営するようなリジッドなターゲットで運営している中銀なんぞございません(あったらFRBもBOEもECBも現在はターゲット水準を上回っているのだから金融緩和政策を終了しないといけませんがな)で、普通に「中長期的な水準」としての数字を示している、と考えるのが本来は妥当なのでございます。大体からしてここでも「それが見通せるようになるまで」と書いてある訳で、つまり足元1%という話じゃないよね、という事でありますが、まあそれ自体は普通の話ですな。

んでもって、後半にある「実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」っていうのはまあ何と言いますか景気づけに言ってるようなものでございまして、そもそも「強力な金融緩和の推進」というのは別に今回初めて言い出した訳でも何でも無いというのに注意すべきかと存じます。すなわちですな・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/outline/sgp.htm/
物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営

『概要

日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けている。』(上記URLより)

ということで、そもそも従来やっている政策自体が「強力な金融緩和の推進」(ここにただし自称、などと付けてはいけません^^)でありますという建付けになっておりますので、そういう意味では今回の声明文における「追加緩和をしましたお!」といううちの最初の2つの部分に関しては「はいはいそうですかそうですか(棒読み)」と読むのが本来の正しいお作法なのですが、まあ福井の俊ちゃん時代にはその点に関して散々悪態を付きましたが、麿の場合は今回そういう意味ではやっとこさ福井の俊ちゃんスキームを導入したともいえますなあという感じで、まあ何か努力の跡がみられる(何という上から目線>自分)ので、棒読みとかはいはいワロスワロスなどとは言わないのが大人としての正しいあり方ではないかと思うのであります(散々棒読みしてますかそうですか^^)。


つーことで、問題は「基金買入10兆円増額」でございまして・・・・・・


○これから毎月1.5兆円の購入キタコレ

先ほどの声明文の別紙にありますように、今回長期国債(2年以内ですが)を10兆円購入拡大という話で、しかも別紙にありますように『2.2012 年末を目途に増額を完了する。』というのに変化なし、ということですので、これはすなわち今年末に基金国債買入の残高を19兆円にするのですけど・・・・・・

ちょうど昨日は営業毎旬報告の日だったのでその数字を。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120210.htm/
営業毎旬報告(平成24年2月10日現在)

別表2の所に『「資産買入等の基金」の内訳』というのがありますので、それを見ると宜しいのですが、基金国債買入の残高って直近時点で3.8兆円しかないのですよね。

つまり、今年の12月までですからざっくり言って10か月の間に、今3.8兆円の国債買入残高を19兆円にしないといけませんという話ですから、15.2兆円を10か月で買うという話になるので単純に計算して月に1.5兆円とかの基金国債購入をする訳ですから、週3000億円ペースで買ってやっとカツカツとかいう素敵な話ではございまして、どう見ても2年債が1年TB状態になります本当にカムサハムニダという風情でございまする。

つーかですな、2年ゾーンを月に1.5兆円購入するという事はですよ、現在の2年新発国債の毎回の発行予定額が2.7兆円(第U非価格競争入札の状況によって発行総額はぶれる)という状態ですので、2年ゾーンの新発債の発行額の半分以上を買うような勢い(実際には2年以内の複数銘柄を買う事になるのでそういう単純な話ではないですけど)というおそロシアな展開になりますので、そらまあ現在1年TBがだいたい0.1025オファーの0.1038(月曜の入札のアベレージ)ビットとかだと思うのですけれども、 それこそ2年ゾーンがそんな感じになってしまうんでしょうなあという所でございます。

まあ元々2年ゾーンは月曜の引けベースでも0.120%の引けとか(引けはオファーサイドでした)でしたので、それが0.105/0.110になってSo What?という意見もあろうかとは存じますが、ただまあこの調子の買いが少なくとも年末まで続くのですし、その時点でまだ物価安定の理解達成の目途が立っていなければ少なくとも残高維持の為に買いは続くという事になるでしょうからとか何とか考えますと、すなわち2年カレント近辺の金利がその程度である事あと10か月継続という事ですからして、3年とか4年とか5年とかの金利ってそれにどのくらい影響されるかなという所ではございます。まあいずれにせよ月1.5兆円というのはいい感じでヤケクソの香りも漂う勢いの良さでございまして、1年どころの金利がぐっちゃり潰れているのが2年まで全部波及という事で、全くのウゴカンチ会長状態で瀕死状態の短期市場の皆様から致しますと、まほうの緩和で楽しい仲間がぽぽぽぽ〜ん♪という所でございますなという所でもございます。

今の所イマイチイメージつかみにくいですけれども、2年の金利が1年の金利位になるとしますと、そのゾーンをその金利で買ってどないしますねん誰が買いますねん(って日銀が買うのですが)という事で後ろに波及となるんでしょうなあというのが昨日の引値だったかなあ(それにしては2年とか5年とかをオファーサイドで引値付けないあたりに往生際の悪さを感じますが)という所でしょうか。


というのがまあ今回の新規イベント(^^)に関するあたくしなりの後講釈という所でございますが、以下その他諸々の周辺論点とか

○声明文比較

声明文比較ってのは周辺論点ではないですけれどもね(^^)。

今回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf
前回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120124a.pdf

まあ今回は「金融緩和の強化について」というお題になっているようにそもそもが書き方違っているので比較しにくいのですが・・・・・・

・現状認識は少なくても下がってはいなさそう

『わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。一方、わが国の金融環境については、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

ということで、個別項目に関しては割愛攻撃になっているので、本日の金融経済月報(そういや1月の月報比較してないので12月以降の推移を含めて比較しますね)を見ないといけませんな。

『わが国の経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。(途中割愛)この間、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

ということで現状判断は少なくとも下がってはいない見るのが妥当っぽい。


・先行き見通しは不確実性を強調するも・・・・・

『わが国経済の先行きについては、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きい。もっとも、最近では、欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいる。米国経済では、バランスシート調整の重石はあるものの、このところ改善の動きがみられている。わが国についても、内需は震災復興関連の需要もあって底堅い展開を辿っている。』(今回)

「不確実性が大きい」というのを強調したのは判断下げではありますが、その後を見ると欧州債務問題、米国経済についての状況判断が上がっており、復興関連の需要云々の部分でも「底堅い展開」という表現になっていて、そういう意味では現状判断の方が実際問題としては上がっている可能性もあるなあとは思われます。まあ復興需要云々に関しては従来の先行き見通しにある「復興関連の需要が徐々に顕在化」という見方の反映でもあるかと思いますが。

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)


・じゃあ何で追加緩和したの???

ということで次の所になるのですが。

『日本銀行は、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとすることが必要と判断した。』(今回)

今回は不確実性対応でもあるけれども、「押し上げ介入」っぽい物言いになっているのが従来の追加緩和と違う所でありまして、俊ちゃんスキーム発動と試しに書いてみたのはその辺りでもあったりしますが後ほど。

『このため、今回、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化することを決定した。日本銀行としては、引き続き強力な金融緩和を推進していく。併せて、わが国経済の成長基盤強化にも、中央銀行の立場から取り組んでいく。この間、欧州債務問題がわが国の金融市場ひいては金融システムの安定を脅かすことのないよう、万全を期していく。』(今回)

成長基盤強化とか金融システムの安定(先ほど出しましたURLの中に『物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営』というのがあったと思いますが、そちらにあります話でもあります)といういつもの話をしています。

この辺り従来はこう書いてありました。

『日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針である。また、日本銀行は、資産買入等の基金の規模を累次にわたって大幅に増額することにより金融緩和を強化してきており、そのもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めている。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。』(前回)

ということで、まあこの辺はいつもと同じような所ですが・・・・・


・展望レポートの最終パラグラフ相当部分を敢えて今回入れたのは・・・・・・

最後のパラグラフに日銀の意地みたいなのを見た。

『わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面している。この課題への取り組みは、わが国経済の新たな経済成長の基礎を築いていくうえで不可欠である。デフレからの脱却は、こうした成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。以上を念頭に、民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが、重要である。』(今回)

展望レポートでもこの話をしていまして、昨年10月の展望レポートの「基本的見解」の最後の部分にこのような記述がございます。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110a.pdf

『日本経済が直面している問題は、リーマン・ショック後の大幅な需要の落ち込みからの回復という短期・循環的な問題にはとどまらない。より根源的には、中長期的な成長期待の低下という、長期的・構造的な要因が重要である。すなわち、わが国経済は、これまでも、急速な高齢化や労働生産性の伸び悩みなどを背景とした経済成長率の趨勢的な低下という基本的な課題に直面してきた。加えて、日本経済は、震災からの復旧・復興という新たな課題にも直面している。対GDP比で先進国中最大の政府債務を抱えるもとで、市場からの信認を確保し続けていくため、中期的な財政健全化への展望を明確にする必要にも迫られている。こうした課題を克服し、先行き、新たな経済発展の基礎を築いていくためには、日本経済が置かれている以上の状況を正しく認識しつつ、政府、中央銀行、金融機関、民間企業とも、中長期的に持続可能な成長力の強化に向けて、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくことが重要である。』(昨年10月公表の展望レポートより)

ということで、このパラグラフは「ワシらは押し上げ介入ちっくに追加緩和したんですから特に政府はうだうだしてないでちゃんとして下さいね」という風に政府に球を投げかけているという部分でもあると解釈致しましたがどうでしょうかねえ。


○俊ちゃんスキームと呼んだ訳

今回の決定に関してですが、先ほど申し上げたように「押し上げ介入」ちっくでもあり、「姿勢を見せる」というような決定という意味では福井総裁時代の当座預金残高拡大の最後の局面に似ているのではないか、というような話を識者の方々(^^)としておりました次第でございまする。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2004/k040120.htm/(2004年1月の当座預金残高目標拡大)

で、まあここにありますように、この時は経済見通しに関しては景気回復についての見通しは強めとなっている中(ただし物価の見通しは弱め)「政策スタンスを明確に示す」という最早何が何だか判らない「姿勢を見せる」追加緩和という俊ちゃん節爆裂の措置でございましたわな。

『わが国の景気は緩やかに回復しており、先行きについてもその持続が見込まれる。ただ、回復のテンポは、過剰債務など構造的な要因が根強いもとで、なお緩やかなものに止まると考えられる。消費者物価は、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況の中、引き続き小幅の下落基調を辿るものと予想される。この間、金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。日本銀行は、以上のような情勢を踏まえ、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨から、当座預金残高の目標値の引き上げを行うことが適当と判断した。』(上記URLより)


また、今回の基金買入の「10兆円拡大」に関しては2009年3月に実施された輪番オペ予想外の拡大にも似ている所があるなあとも思うのです(この時の総裁は麿なので俊ちゃんスキームではないが俊ちゃんっぽい香りがしました)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/k090318.pdf(2009年3月の輪番拡大)

まあこの時は輪番の拡大はあるかもねという話ではありましたが、従来輪番の増額を行う際には月2000億円の拡大を行うというのがパターン化されていましたけれども、この時は従来の刻みをいきなり増やして4000億拡大で市場が「おお!」と反応したのですよね。

『金融市場における年度末越えの資金調達は概ね目処がつきつつあるが、年度明け後も、後述するような厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張が続く可能性が高い。このような状況下、日本銀行は、金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要であると判断した。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため、長期国債の買入れを以下の通り増額することとした。

これまで年16.8兆円(月1.4兆円)ペースで行ってきた長期国債の買入れを、4.8兆円増額し、年21.6兆円(月1.8兆円)ペースで実施する(当月より実施)。』(上記URLより)

この時はまあ経済見通し自体はそんなに強くは無かったですが、どうせ2000億円やるなら折角だから4000億円どどーんとやってサプライズにしましょうや、的な動きになって居た訳ですが、今回に関してもそんな雰囲気は濃厚に漂う所ではございます。何せ10兆円拡大しましたので、買入実施時期のエンドを延長しない限りここからの残高拡大はさすがに物理的に厳しい事になる(新発を殆ど吸収するような状況になったら2年ゾーンあたりの中短期ゾーンの投資をそれなりに行っている銀行業態憤死してしまいますがな)と思われますので、そーゆー意味では今回は刻まないでどどーんと10兆円増額したのは結構思い切っている感じではあります(物理的制約という意味で)。

今後は増額するなら買入を実施する期間の延長をする(例えば月1.5兆円の買入をその先半年継続すれば償還来る分の落ちもある可能性が出てくるが、とりあえず単純計算では9兆円近く増額が出来る)か買入対象銘柄の足を長くする(ただし残存3年に延ばしても3年新発債というのは無いので極端に買入対象銘柄が増える訳では無い、ただ中短期の金利はどどーんと下がるので次にやらなければいけなくなった時のタマですな)という感じで、いずれにせよ物理的にはこの辺りがほぼ今の形では限界っぽいので、限界まで一気に打ってきましたよんというのも以前の輪番サプライズ拡大を彷彿させる感じですなあという所であります。


○まあ為替と株価に効いたからよかったんではないですか

昨日の反応としては、最初は為替も株も債券もあまり動かず、債券はちょっと上昇しましたが、その後謎の買いで1円高まで上昇して(何故サーキットブレーカーが発動しなかったのかが意味不明、どういうシステムになってるんだ)下落しましたけれども大体20銭高位に上昇してカーブはブルスティープ(中期の引値が全部スーパービットサイドでついているような気がするのですが・・・・・)となりました。

んでもって為替は最初反応してなかったのですが、その後円安進行してて、その流れの中に謎の買いもあったので、まあこの手のネタが好きな海外さんが反応したのではないかという風情。円安進行を見て平均株価も上昇と中々素敵な展開ではございました。

まあ何ですな、株価と為替に効いたからとりあえず日銀的にはしてやったりという感じでございましたが、その時間にまあ仲間内で話していたのは「これで麿が会見でダイナジーな発言をしたらテラアホスなのでもう今日は会見しなくていいよ」とか「精巧な麿の着ぐるみを福井の俊ちゃんに着せて・・・・」などというような碌でもないネタでございましたが、どうもその後のヘッドラインを見ておりますとさすがの麿もぶち壊し発言は殆ど無かったようで(イブニングセッションでは債券先物は上昇していました)誠に結構と申しますか、失礼な事を仲間内で話していて麿様どうもすいませんという所でございます。


○米国がインフレターゲット導入というなら日本のこれもインフレターゲット導入ですわな(水準の問題はあるが)

まあ何ですな、今回決定した物価安定の目途云々に関してですけれども、まあどう見ても従来の延長線上であまり大きな変化があるとは見えないのですが、それは米国が先般のFOMCで示したデュアルマンデートの理解(とあたくしが勝手に命名しているもの)に関しても従来の延長線上で大きな変化があった訳では無い(最早大杉勝男なので引用しませんが以前バーナンキ議長の会見を引用した時にその部分ありましたよね)のでございまして、米国の措置を「インフレターゲット導入」というのであれば、今回の日銀の措置に関しても「インフレターゲット導入」というべきであり、これを「米国はインフレターゲットだが日本のはターゲットではない」とかいうのは何ぼなんでも議論としておかしい。

いやね、当然ながら水準の1%の方に対する批判というのはあると思いますが、枠組みそのものに関して米国は褒めるが日本はdisるとかいう人がいたらそれはちょっとバイアス掛かりまくりだと思いますよ。

ちなみに、あたくしはそもそも米国の先般の措置がリジットなインフレターゲット導入じゃない(フレキシブルターゲットと言えばフレキシブルターゲット)と思っていますので(デュアルマンデートなのだから当然だし、大体からしてLonger runの2%にコミットしている訳でも無いフレキシブルターゲットでしょこれって)、日銀の決定に関しても従来から行っているフレキシブルターゲットの中で1%を強調しただけでしょとしか認識しておりませんでありますが、まあ数字の問題という大問題はありますが(^^)、枠組み自体は(展望レポートでの経済見通しの数値化なども含め)日本と米国の建付けが更に似てきてますなあというのはございます。


ま、日本と米国の違いはそもそもの物価水準がアレというのに加え、政治圧力として掛かっているのが日本の場合は「緩和ヤレヤレ」の一方で米国の場合は「物価が上昇しているのに緩和継続とはケシカラン、銀行や証券会社優遇か」というような話でございまして、米国の場合の明確化は政治的に「中長期的に2%を目指しているんですよ」というアピールも必要という意味では日本と逆方向なのがチャーミング。そらまあ物価水準が違いますから当たり前っちゃあ当たり前ですけどね。


○政治家の反応メモ

とりあえずいいからお前は喋るなと。

http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPTYE81K3IO20120214
日銀のCPI1%メド、実質的インフレターゲット決定と認識=財務相
2012年 02月 14日 15:15 JST

・・・・・・・・いやだから以前からそういう意味では実質的インフレターゲットは実施しているのでありまして、財務大臣がいきなりこういう話をすると残念無念という感じではございます。従来の枠組みを理解してませんでしたと言ってるのと同じじゃわ。

『物価政策でも消費者物価の前年比上昇率1%を目指すと明確な表現に変更したことについて「実質的にインフレターゲットを決定したものと受け止めている」と述べ、「10兆円の長期国債の買入増を表明したことは1%の物価上昇実現に向けた日銀の具体的な強い意志の表れだ」と語った。』(上記URLより)

ただまあ後半にある「日銀の意志の表れ」というのがレクの跡を感じさせる所でございますので、まあ日銀的にも今回「実質的インフレターゲット」という話をされる件に関しては敢えて無駄に突っ込まないという方針を取っているなあという雰囲気は感じました。


えーっとね、球はそっちに行ってるんですけど・・・・・

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities/idJPTK073213420120214
UPDATE1: 日銀の追加緩和「大事なのは結果」、株・為替・物価への効果を注視=前原民主政調会長
2012年 02月 14日 18:41 JST

いやあの「大事なのは結果」というのは正論なのですが、経済に関しては与党の皆さんも重大な責務を負っておられるのですが、何ですかその他人事のようなコメントは・・・・・

ちなみに、インフレ目標導入と報じていたのはあたくしの記憶によると朝日、共同とかで、インフレ目標導入とは書いていなかったのは読売(読売は追加緩和をヘッドラインにしていた)だったかなあとか思いますが、ちょっとURLとか集めるの面倒だったのでとりあえずメモだけね。

あとですな、そういや昨日は色々なレポートを斜め読みしましたが、インフレ目標インフレ目標連呼でいやはやという感じでございました。いやまあ米国のアレがインフレ目標なら以下同文という感じですけど・・・・そういや武士の情けで名は伏せますがどこぞのレポートで米国の物価安定の理解の2%の数値に関して「コアPCEデフレーター」とか思いっきり間違えてレポート書いている人がいてあまりの残念さに泣きそうになった(足元の参照なら兎も角、中長期的な目標にコアを使うのは理屈からしておかしい。コアを使うのは足元のブレを排除してトレンドを見るための便宜的な扱いであって、中央銀行が本来目指す物価は当然総合物価指数である)ことだけ付け加えさせて頂きたく存じます(^-^)。


○その他論点は気が付いたら書きます

ということで(さすがに今日は下準備してますので^^)延々と書いて誠に申し訳ありませんでしたが、英文公表分の比較とか、いろいろとまだまだネタがあるっちゃあありますけれども、まあとりあえず会見とかも続きますので続きは明日ということで(^^)。

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2012/02/14

○物価連動国債WG第一回会合

まんまの審議会名ですが。

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_ilbe/index.htm
物価連動債の発行再開に関するワーキング・グループ

金曜の会議の議事要旨等が昨日の夕方遅くに出ていましたです。
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_ilbe/proceedings/120213.html

議事要旨はこちら
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_ilbe/proceedings/outline/20120213.html

配布資料はこちら
http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/meeting_of_ilbe/proceedings/outline/120213siryou.pdf

でまあ議事要旨の方を見てもこんな質問がありました系の話だけで、肝心のお答えについては書いていないのか持ち帰りになっているのか判らんが(まあ常識的に考えると持ち帰りになっていると思われる)、まあこんなのが(以下上記議事要旨より引用しますが画面デザインを鑑み引用部分に『』はつけません)。

(引用開始)
○事務局より、物価連動債の商品性や発行方法等に関し、資料に基づき説明を行いました。出席者から出された主な意見は以下のとおりです。

・現状、利子源泉徴収対象者(個人及び事業法人等)に対して譲渡制限が付されているが、個人にも潜在的なインフレヘッジニーズはあると思われることから、これを見直すことは検討しないのか。

・元本保証の付与の方法について、期中を含め連動係数が1を下回らない商品設計とすることは考えていないのか。

・国債市場特別参加者の落札義務の対象となるのか。この場合、当該落札義務はどの年限に含まれるのか。

・既発債の流動性にも十分に配慮した対応をお願いしたい。

・新しい物価連動債について、発行後どれぐらいで買入消却の対象とするのか。

・新しい物価連動債がベンチマークとして採用されれば、年金等投資家の需要があると思われる。

・新しい物価連動債の入札と買入消却の組み合わせではなく、スイッチオークションそのものの導入は検討しないのか。フロアプレミアムについてマーケットのコンセンサスができれば、同一年限の新しい物価連動債と既発債を交換することも考えられるのではないか。

・発行再開にあたっては、流動性が十分に担保される商品性・発行方法とすることが重要である。
(引用部分終了)

ということですが、まあ何ですな、譲渡制限の問題に関しては税制上の問題があって、現在の方式だと元本が変動するのでその分の所得認識の問題があって、利子源泉徴収と別件管理という話になってヤヤコシヤなので無理という話だったかとあたしゃ認識している訳ですが、元本変動しないで単純に利子がフローターという方式にしないと利子所得源泉徴収と別建てになるという時点で事務的にしんどいんじゃないかなと思いますんな。

あと、スイッチ方式のオークションに関連する雑感なのですが、配布資料にあった同日オークション方式の新発債発行と既発債の買入消却って業者的な発想だと普通に問題なく出来る話なのですが、投資家の場合通常「受け渡しベースどころか約定ベースで金が無いのに先行して買いを入れる」という行為は普通できない(現物の買いの話で、先物買うというように支配残ベースでキャッシュショートにならない買いは別問題)ので、入札で応札する分のキャッシュが無い場合(フルインベストしてなくて金があれば無問題だが)そもそも入札の方の応札をしにくいという残念な問題があるので、技術的には検討の余地がありそうな気がします。そういう意味ではスイッチオークション形式で売りと買いのチケットが同時に切れる形になった方が既発債を持っていている投資家のニーズに対応しやすいと思います(が事務が回るのかは正直知らん)。

とか何とかまあ微妙にこの先の議論には興味が尽きませんが、何はともあれ物価連動国債そのものにニーズが全然ない訳では無い筈ですので、今後の展開が期待されるというものです。


○基金買入オペェ・・・・・・

金曜の基金短国買入
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120210.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120210.htm(結果)

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 6,397 2,005 0.000 0.001 4.6

昨日の基金CP買入
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120213.htm(オファー)
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120213.htm(結果)

CP等買入(資産買入等基金) 7,698 2,912 0.013 0.015 49.1

ということで、直近の国債以外の買入系のオペは一応無事(?)に応札が集まるでござるの巻となっておりますが、まあ基金短国に関しては1年入札の前だというのにオファーするとはいつもとパターン違うじゃんという所でもありまして、基金買入系のオペに関して「札の入りそうな市場動向を見て打ってくる」という感じになってきたのかなあとか勝手に妄想を逞しくするあたくし。

いやまあ何ですな、足元でGCレートが0.100%を上回る(と言っても0.105%までしか上がらんのですが)状況で推移しているというのもあって、直近の短国の入札が基本的に0.10%オーバーで推移していますから、とりあえず0.100%で日銀に打ち込んでもいいかな状態になっているというのが背景としてある訳ですが、海外でのドルファンディングやらベーシススワップやらの要因に加え、日銀当座預金残高がしらっと減っているのもGCレートが0.10%を割って下に突っ込んでいかない原因でもありますので、そーゆー意味では以下自主規制。

ただまあ当座預金残高自体は12月20日の国債大量償還によって資金偏在が生じていた分に対応して大目に出していた分(足元と比較して目の子で5兆から6兆程度の偏在があったと思われます)で年末とかは下駄をはいていた分がありまして、まあ当座預金残高を単純に比較して全部が全部絞っているとか考えるとこれまたミスリードになるのですが、まあそんな事まで気を付けないで比較しだす人がそのうち出てくるに1万ドラクマ(マニアすぎてそんな話誰もしないか)。

CPに関しては最近体感的には発行がやや復活傾向という感じ(ただしショートタームがやたら多い気も)ではありますので、札は入るんでしょうが、こちらはどうせクソ短いものばかり入るので買入した側から償還が来るというハツカネズミもビックリのオペ無限輪廻状態になっているかと存じまして、買入額目標を作ったのは誰だ(ガラッ)と金融政策決定会合に怒鳴り込みたい心境の方はおいでではないかと存じます次第で、誠に同情の念に堪えません(なぜか棒読み)という所で(^^)。

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2012/02/13

公共放送では金融政策決定会合の議論の焦点が物価水準目標をどうのこうのという話をしているようですな。

○ということで世間話ですが

・物価水準目標の明確化ねえ

でまあ物価安定の理解が分かりにくいから分かりやすくしろという話が今回検討されますとか何とか公共放送が仰せですが、肝心の公共放送のサイトにそのニュースがまだうぷされてないのでブルームバーグニュースから。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LZ9XFD07SXKX01.html
古川経財相:日銀は物価目標の「わかりやすい伝え方の検討を」

『2月12日(ブルームバーグ):古川元久経済財政兼国家戦略担当相は12日午前、NHK番組「日曜討論」に出演し、物価目標について日本銀行は国民に対し「分かりやすい伝え方はないか検討してほしい」と述べた。日銀は「中長期的な物価安定の理解」として、CPIの前年比で「2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度」という数値を示している。』(上記URLから)

という事で、今回は「物価安定の理解が分かりにくいので改善しろ」的なお話になると思われますが、まあ今回の会合で変わるとかになったらそれはまあお笑なんですけど、せいぜい検討指示して表現を変えるとかいう話になるかもしれませんけど、現状の物価安定の理解をより明確化すると1%が数値化されてしまうんですけど良いんですかねえ。

まあそれを入れたからと言って何か変わるのかというと実際問題としては日銀の出している「中長期的な物価安定の理解」と「展望レポートにおける経済物価見通し」のセットからすると米国よりも日本の方がどう見ても低金利長期化です本当にありがとうございましたという形には成るのですが、まあ日銀も「市場との対話」をする相手として短期金融市場だけという訳にもいかんでしょうし、ワカランチンの為替市場とかメディアとか政治家とかを相手にするという事を考えた場合にプレゼンが不十分ってのはまあそうです罠という事でありますので、ここは一発俊ちゃん状態でてきとーに目くらましでもしておけばよろしかばいという感じではないでしょうかにゃあ。

今の物価安定の理解をそのまま平行移動した場合って数値が1%になりますし、じゃあ2%というのを出せるかっていうとそれはそれでメディアとか政治家とかが「そんなインフレはとんでもない」とか言い出さず、実際に2%位の上昇になっても誰も文句言わない、というのであれば日銀だってホイホイ2%の数字を出してくると思いますけれども、本当にそうなのかというのは何か非常に疑問なんですけどね。べき論云々の問題よりも、その2%という状況が全然起きていないという状態が変化した場合に本当に世間様が適応できるのでしょうかねえという方がちょっと。


まあ何ですな、しかし直近はどこぞの何とかストランキング投票期間中なせいか、足元では何とかストの皆様が妙に「日銀の物価安定の理解は分かりにくい」というレポートをここぞと出して目立とうとしておられるように見受けられますが、そもそも物価安定の理解が出たのは福井総裁の時ですし、その後の2009年12月に明確化というのをしたのでありまして、何とかストとして本職でやっておられる皆様におかれましては、世間様に向けてこの物価安定の理解と展望レポートでの経済物価見通しのセットによって将来の金利パスに対する市場への働きかけを行っているというような説明をもっと従来より行っておけば、現状のように「ワカラン」という大合唱になる事がある程度防げたのではないかと思う次第でございまして、何を今さらメディアや政治のケツに引っ付いて「ワカラン大合唱」に加わるのでしょうかねえそれでもあんさんら本職の何とかストなんですかねえとか思いますなどと書いてまた読者を減らすような行為に出るあたくしなのでありました(-_-メ)。

とは言いましても、金融政策の第一の柱、第二の柱とかも正直あたくしも当初思いっきり誤解していたりしてまして(だからその後ドヤ顔であたくしのサイトに『金融政策の「第1の柱」「第2の柱」を正しく理解するために』というコーナーを作ったのですが^^)、まあ何と申しますか日銀様におかれましてはもうちょっと相手方の理解力というのを忖度して作文をされるという点に配慮をされたいと思うのであります、とお前が言うなですかそうですか(汗)。



・状況が良く判らないのでまあ何ですがあずみんネタ

http://mainichi.jp/select/biz/news/20120211k0000m020062000c.html
安住財務相:介入水準発言 火消しに躍起、市場騒然

『安住淳財務相が10日の衆院予算委員会で、円売り・ドル買いの為替介入の際の相場水準に言及したことが、波紋を広げている。相場に大きな影響を与えるため、当局は具体的な介入水準を明らかにしないのが通例だからだ。安住財務相や財務省幹部は同日夕「介入水準は一切言っていない」「質問者が用意したパネルの数字を読み上げただけ」と火消しに走ったが、野党は「介入効果を損ないかねず、国際的な信用を失う懸念もある」(公明党)と批判。今後は日本の単独介入を快く思わない欧米当局の批判も予想される。』(上記URLより)

市場騒然とか言ってますが、10日にその発言出て別に為替市場反応してないですし、債券市場とかは「ああまたやっちゃいましたねえプゲラッチョ」程度の感想しかないと思いますのでどう見ても過剰報道です本当にありがとうございましたという所ではございますな。

まあ何ですな、これ状況が判らないので何とも判断し難いですけれども、報道にありますように質問者の方が介入した日の為替市場のチャート出してきてどういう介入をしたのですかみたいな趣旨の質問してるのであれば、答える方も答える方だが、質問する方もどうかと思いますよ。

いやね、相手の失言答弁を引き出そうとして誘導質問したのかも知れませんけれども、結果として国益に反する馬鹿発言をさせるような質問をするというのは国会戦術としてもあまり行儀が良いとも思えない訳で、質問に答えたのに批判するとか何ぼなんでもマッチポンプにも程がある(質問した党と批判している党はこの記事だと違うけど)と思いますので、あずみんが大臣として駄目過ぎ(こんなの「個別の介入取引に関してはお答えできません」と言えば終了じゃん、というか事務方は何をレクしてますねん)ですけれども、質問者にも何だかなあとか思ったので駄文を書いてみるの巻でした。


・東洋経済で電波浴とな

行動ファイナンス学者・小幡績の視点
http://www.toyokeizai.net/money/investment/detail_column2/AC/b52c0897bff917f3b12d4310acefb903/
FRBはペテン師か無責任?――論理矛盾が明らかなインフレターゲットの議論(1) - 12/02/10 | 00:04

いや別に論理矛盾とかしてないんですけどねえとか思いながら拝読しようと思ったらのっけから何だかなあなアレ。

『まず、事実関係だが、報道でインフレターゲットと呼ばれているものは、声明文と同時に公表されたFOMC各メンバーのFF金利予測。そこでは、長期的に妥当なインフレ率の水準についてのFOMCのメンバーの意見分布が示され、そこが最終的なゴールにはなるとは言っている。しかし、これがインフレターゲットとはいっていない。』(上記URLより)

・・・・・・・・SEPでのプロジェクションマテリアルの中で「ロンガーラン」のPCE物価指数の望ましい水準が公表されていてそれが2%だというのは半分あっているのですが、その説明としては別に説明文が出ていて、そっちの方が今回の眼目じゃなかったっけ??

まあその後もああだこうだと物価連動国債がどうのとかいう話をしているのですが、何が強力電波と申しまして上記URLから辿れる最終ページにある辺りが電波である。

『しかし、それは無理な話である。なぜなら、これまで金融政策が有効であったのは、金融政策を動かしても、短期的には期待インフレ率は動かないことが前提にあったからだ。』(上記URLのリンク先にある上記文書の4ページ目)

・・・・・・・??????じゃあ金融政策は何のために実施してるのよとブラード総裁辺りに言われそうですなあ。

『にもかかわらず、ゼロ金利下という金融緩和政策が決定的に限られてしまっている中で、突然、サーカスのように、あるいは魔法のように、期待インフレ率を変えることができる、いや、そうしろ、と議論したり、要求したりすることは、明らかな論理矛盾であり、現実に起こりえないことなのだ。』(上記URLのリンク先にある上記文書の4ページ目)

・・・・・・・・??????いや別に突然変えろとは言ってないと思いますが、QE2の実施って足元のインフレの低下が望ましくないデフレ均衡に陥るのを防ぐために導入したという経緯があった筈なのですが、何をどう解釈するとこういう話になるんだか・・・・・・


いやあのですな、東洋経済にしてこれですかという感じなのでありますが、電波浴とかするのはネタとしては楽しい(血圧が上昇する場合もある)ですけれども、そもそも論としてメディアとかに金払って(ってネット版をタダで見ている人間が言うのも何ですが)報道されている物を読むっていうのは先日も申し上げましたように、世の中の言説のフィルタリングをして貰うのに金を払っているようなもんだと思っているあたくしと致しましては、やはり東洋経済ともなりますとネット版でもそれなりにまともな物を拝読したいと思うのでありまして、編集は何やってますねんとか思うのでありました。



・武者先生キタコレ

節分天井とはよく言ったものですorzorz

http://www.musha.co.jp/3560(←どうも今朝からページリニューアルのようで、下のURLの方がよさそうです)
http://www.musha.co.jp/report/bulletin_j_20120209.pdf
2012年2月9日ストラテジーブレティン (63号)
この米株ラリーは本物、6%の株式利回り(配当+バイバック)は無視できない

>この米株ラリーは本物
>この米株ラリーは本物
>この米株ラリーは本物
>この米株ラリーは本物
>この米株ラリーは本物

・・・・・・誠に残念ですが米国株式市場終了のようです。で、小見出しを拝読いたしますと。

・株式市場ルールが変わった、リスクオン・オフから長期価値投資へ
・説得力失う超金融緩和批判
・好業績=株式投資に思い至らぬグロス氏
・株高を正当化するシュワブ氏の楽観経済観測
・日本の失われた20年とは全く異なる

と、ビルグロス先生を盛大にdisるという事で、これは太平洋を隔てた竜虎対決という風情を示しておられて誠に風雲急を告げる訳ですが、米国株式市場をこれだけ盛大に怪推奨キタコレという事で、米国市場逃げて〜という所ですな、うんうん。

・・・・・・と思ったら最後の小見出しがこれ

・悲観から急改善する日本投資環境

・・・・・・・????????

えーっと、『2012年01月26日 (62号) 何故日本はダメなのか 〜 株価格差の背後にある政策格差 〜』というのがストラテジーブレティンの前回号のお題だったのですけれども、いくらブレティンだからってブレ過ぎなんですけど。


○などと馬鹿話をしていたら時間が無くなってしまったのでドラギ総裁の会見から一つだけ

http://www.ecb.int/press/pressconf/2012/html/is120209.en.html
Introductory statement to the press conference (with Q&A)
Mario Draghi, President of the ECB,
Vitor Constancio, Vice-President of the ECB,
Frankfurt am Main, 9 February 2012


・この質問をしたのは誰だあ!!(またまた海原雄山状態で)

この質問してる人間はマジで日本入国禁止処分もんだろ。質疑応答の最後の方になりまして、紙に打ち出すと9ページ中8ページ目とかになると思います。

『Question: My first question is: so far the LTRO seems to be working very well, like a magic stick, or something like that, and people may think that the ECB might prefer this further LTRO to a rate cut. What is your comment on that?

My second question is: this week, the Japanese Government announced that it has been intervening in the foreign exchange market for several days, from the end of October of last year, and without announcement. Your predecessor, Mr Trichet, said last August that such interventions need to be done on the basis of multilateral agreement and that that was not the case with the actions of Japan. The US Treasury has also made a similar critique. What do you think about that?』

LTROの変わりに利下げは考えてますかという質問もお前その前の質問を聞けよ(その前に質問があって「追加の金融政策についてはノーコメント」という話をしていますし、別の質問で「伝統的金融政策と非伝統的金融政策の違いについてトリシェ総裁はコメントしていましたが、まだドラギ総裁のコメントは聞いていないので話してください」というのがあって、「伝統的政策と非伝統的政策を区別して使う点や、その論点については前任と同じ考えです」というコメントしているので質問にはある意味回答済み)という感じですけれども、質疑応答の流れおよびECBの金融政策の流れと全然関係ない第2の質問とか何考えてますねん、つーかこの質問する記者はとりあえず日本とスイスには永久入国禁止な。

『Draghi: In answer to the first question, there is no trade-off between the two measures. The LTRO addresses the quantitative shortages and liquidity constraints of certain parts of the euro area financial and banking system. The interest rate changes address pricing conditions, assuming that the euro area banking and financial conditions are working well, that the circumstances are normal. In that case you change the price of assets; you change the price of short-term rates, and so on. So they are two different things in the sense that they address different situations, different problems.

Regarding the Japanese interventions, I can confirm what my predecessor said on that occasion: the interventions, if they are needed, should be done in a multilateral framework - they should not be unilateral.』

まあ前半の方は(その前の質疑と)同じ話を繰り返しておりますし、2番目の質問だって質問されたらこう答えてくる罠という話で、日本を貶めようという質問にしか思えんわこりゃという所でございますな。


#ということで、真面目なネタは明日以降である(汗)

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2012/02/10

○でまあ日銀ちゃん決定会合プレビュー雑談ですけど

昨日ネタにしたロイターさんの謎ニュースは結局誰も追随報道が無くどう見ても飛ばしです本当にカムサハムニダという残念な風情を漂わせておりますが、そうは言ってもこの週末にギリシャ問題が爆発した結果ユーロ暴落円急上昇とかにでもなった日には雰囲気はまた変わるでしょという所なので何ともはやという所ではございます。

でですな、まあ各国追加緩和祭りですので日銀も追加緩和どこかでやらないといけない事になるでしょうなあとかいう話になりますが、何せ社債・CPはこれ以上どう買いますねんという状況ですし、短国に関しても先般ネタにしたように下手するとテラヤバスという状態。何せ先日の6か月TBも0.10カツカツという状況ですから札入らんがなという所でございます。

・・・・・・と考えますと、まあ何かやれという話になったらETF買うか(REITはどこをどう見ても買ってもどうしようもない)国債買うかという話になるとは思いますが、気合の押し上げ介入でもする気があるならETFというのも有りかもしれませんが、まあケロローンと買うのであれば為替市場とかに対するウケ的にどうなのよと思われる所でもありますし、大体からして各国中銀が時間軸だの量だので勝負しているので、(ECBは信用緩和だけど「3年」オペというのでアピール中ですもんね)ETFを買うとか言ってもイマイチ為替市場とか向けのインパクトが足りんように見える。

つーことで、フィージビリティーと目立ち方を考えますと、やはり基金の国債買入拡大に加えて買入対象期間を1年延ばすとかそのような話になるんでしょうな。まあそうやって中短期のイールドカーブ潰されると(その瞬間だけは儲かるけど)憤死する投資家続出という感じなので債券市場的にはあまりウマーな話でも無いような気がしますが、どーせならこの際「短期国債の買入は金利の低下で初期の目的を達成しましたので、短期国債の買入残高は現状で維持して、元々の目標部分への残りに関しては基金国債買入の方に回します」ということで、インチキツイストもどきみたいな話をするのってどうですかね???

などと雑談位しかプレビューと言っても出てこないのが残念な所でございまする(−−;

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2012/02/08

お題「インフレ―ションターゲットがどうのこうののネタで少々」

少々と言いつつネタ自体は色々とありますのでちゃんと全部書けるかどうかがアレ。つーかここもとネタが色々と出てちゃんと考えをまとめたり書いたりするのが追いつかないのですがorz


○インフレ目標ねえ・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPTK072539820120207
UPDATE1: 日本経済は厳しいと認識、デフレ脱却に「最大の努力」=白川日銀総裁
2012年 02月 7日 10:21 JST

『白川総裁は、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ目標として2%という数値を設定したことに関連し、日銀も「中長期的な物価安定の理解」において、2%以下のプラスで中心を1%程度としていると紹介。こうした数値は、1)物価指数の誤差、2)物価の下落と景気悪化の悪循環が生じないような「のりしろ」の確保、3)家計や企業の物価観──を踏まえたものと説明した。その上で、物価安定の水準に日米で開きがあることについて、日本の物価観はバブル期を含めて「一貫して(米国よりも)日本の方が低い」とし、「長く続いた国民の物価観から大きく離れて物価上昇率を設定するのは難しい」との見解を示した。』(上記URLより)

記事によりますと公明党の魚住委員からの質問に対してのようで、まあ最終的には会議録見ないと話の流れは判らないのですが、米国の出しているデュアルマンデートに関する理解と日銀の物価安定の理解の違いがどうのこうのとかの話をしても正直どうでも良い話で、米国の今回の2%だって「中長期的なゴール」としての数値だし、その間に例えば今のように物価水準がゴールを上回っていても総合的な判断によって緩和政策継続とかしているのですから、そーゆー意味では米国の今回の2%という数値の明示によって金融政策運営に恣意性(というと表現が悪いが敢えて使います)が無くなったかと言えば別にそういう話でも無し。BOEだってそうですからねえ。

つーことでですな、質問全体の流れは良く判らんですが、魚住委員の質問はおそらく「米国が2%なのに日本が1%なのはどういうことですか」という点に話が行っておられると思う訳でして、まあ話をするならこっちだろと思う次第でありまして、魚住委員の着眼点は中々結構ですなあとか思いますです、はい。


でですね、

『物価安定の水準に日米で開きがあることについて、日本の物価観はバブル期を含めて「一貫して(米国よりも)日本の方が低い」とし、「長く続いた国民の物価観から大きく離れて物価上昇率を設定するのは難しい」との見解を示した。』(再掲)

って話なのですが、「それではデフレ長期化の後付容認ではないか」という論点が思いっきりあります罠という所ではあるのですが、まあ確かに生活意識アンケートとかを見ると相変わらず「物価上昇するのはイクナイ」というような結果がアホほど多い訳ですし、そもそもついこの前原油価格上昇した時に大新聞やテレビ局の皆さんが物凄い勢いで「原油価格上昇で大変ですよ」の大合唱という風景を見たりしますと、実際に日銀が「中長期的には消費者物価が前年比2%の上昇で推移することが望ましい」と言い出した時にそれが大新聞やらテレビ局的にどうなのというような所を考えるとややこしい話になるんでしょうなあという想像もできる次第。

つまりですな、2%の物価安定の理解でも中長期的な目標でもゴールでもまあ良いのですけれども、その2%という数字を突っ込みたければ、「デフレはケシカラン」と言いながらちょっと特定の物価が上昇すると鉦や太鼓を鳴らして大騒ぎする現在のメディアなどの現状を何とかする、つーか国会で日銀法改正でも何でもやれば良いと思うのですけれどもね。

ちなみに、2%の物価安定の理解とかを国会で突っ込むとなりますと、実は予算とか社会保障の設計とかの設計書にも影響してくる話でありましてですな、たとえば最初に思いついたのがこれなので財務省のサイトへお出かけしますけど。

http://www.mof.go.jp/budget/topics/outlook/sy2401a.htm
平成24年度予算の後年度歳出・歳入の影響試算

真ん中より下の方にありますけれども、ここの名目消費者物価指数の推移とかも当然変化していく話ですし、消費者物価が中長期的に1%なのと2%なのでは特に社会保障費に関する部分とかではもっと影響出て来るでしょとか、まあ日銀はそういう事を忖度する必要は無いんじゃネーノというのは理念的にはそうでしょうけれども、ただまあ世の中そう単純なもんではないような気がするんですけどね。


ちなみに、米国で2%の物価目標がどうのこうのという件に関してこんな論点からの質問もありまして、バーナンキ議長の先般のFOMC後会見から引用しますと・・・・
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120125.pdf

31ページ目から。

『Scott Spoerry: Scott Spoerry, sir, from CNN. My head is full of questions, but I'm going to try and limit it to two related questions.(何でPCEを使うのかという質問部分を割愛します) Because criticism of the Federal Reserve, criticism of you, but the institution itself has been so intense this year because it's a political year. There are people out there who are going to say the Federal Reserve have finally just admitted it. Their policy is to destroy 2 percent of the value of my dollars every year. How are you going to respond to those people and also could you answer the question about the CPI and the PCE. Thank you.』

まあこの会見を見てて思うのは、バーナンキ議長に良い説明をさせようとしてうまく質問を記者の人たちが選んでいるなあという事でありまして、このCNNの記者も真面目に「2%のインフレ目標は我々の持つドルから2%の価値を盗んでいく」というような事を思っているとは想定しにくいですが、まあ一般的にこういう質問が来るという話になるんでしょう。

バーナンキ議長の答えですが、該当箇所の所を引用します。メインは33ページ目になります。

『Chairman Bernanke: (前半部分割愛)On the 2 percent, again, that's where the United States has been for many years. That's where most Central Banks are around the world. There's a very good reason for it which is to avoid deflation which is very negative.』

2%は世界のほとんどの中央銀行がおいている数値ですとか麿涙目、というのは兎も角として。

『I think the argument that, you know, the value of your dollar, the declines at 2 percent a year is not really a very good one unless you're one of those people who does their lifetime saving in the mattress. Most people invest in various kinds of instruments receiving rate of interest. And now it's true as been pointed out that for the moment that interest rates are pretty low they're still positive but over a longer period of time if you--even if you have money in a CD or some other investment vehicle, the interest rate will compensate you for the--for inflation. I mean the two will be tied together. And so, they really shouldn't be, you know, levels of inflation this low, interest rates should pretty much fully compensate for the losses to savers. But I would reiterate that we are not unaware of the problems that low interest rates cause for savers, cause for pension fund contributions, insurance companies, and other parts of the economy and we do try to take that into account as we think about other ramifications of our policy.』

ということで、2%の物価上昇でそらまあ銀行預金だけ持っている人は毎年2%保有資産の価値が下がるという話になりますけど、資産価格が上昇したり経済が良くなったりという事でより広くの恩恵があるでしょ、ってな説明をしていまして、まあそれはご尤もではございますな。

ま、米国でもインフレに関連しては色々と議論というか批判があるなあとここの質疑応答を見て思うのでありまして、PCE物価指数が足元中々下がらないという事になって来た場合に、先行きデュアルマンデートをどうバランス取っていくのかというのはムツカシヤという話になるんじゃないかなあ(特に物価指数が3%越えてきたりすると)と思うのでありました。



○インフレターゲット慶祝とかスピーチをするブラード総裁の過激派クオリティは平常運転とな

セントルイス連銀のブラード総裁と言えばQE2の前に「国債買入をするのは良いが、低金利政策の長期化をすると経済が望ましくないデフレ均衡に陥るリスクを高める」という話をしてみたり、昨年は「コアインフレではなく総合インフレを重視すべき、つーかコアを重視するのはおかしい」という話をしてみたり、最近では"Death of a Theory"とかいうお題のペーパーを出してみたり(まだちゃんと読めていないorz)とか、大体過激派と申しますか先端を行く人と申しますか、まあヲチャー的には大変においしい方ではございますのでセントルイス連銀のページチェックは必須(^^)。

つーことで、ロイターもこんなニュースを報じていますが。
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPJT808974920120206
UPDATE2: 年内に利上げ開始を、超低金利の長期化は成長見通し損なう=セントルイス連銀総裁
2012年 02月 7日 07:30 JST

『[シカゴ 6日 ロイター] 米セントルイス地区連銀のブラード総裁は6日、米連邦準備理事会(FRB)は2013年に利上げを開始する必要があるとの見解を示した。事実上のゼロ金利政策を長年継続しても、米経済がリセッション(景気後退)以前の水準に戻る公算は小さく、むしろ長期的な成長見通しを損なう恐れがあるとの考えを示した。総裁は記者団に対し「緩和策の解除に乗り出すことが重要だ」と指摘。フェデラルファンド(FF)金利の水準について「1%、もしくは1.5%まで引き上げても、依然として金融政策は緩和的だ」とし「適切な時期に金利を正常化するということだ。すべてが見通し通りになるまで待つことが望まれているとは思わない」と述べた。』(上記URLより)

そらまあ中立金利が4%近辺だったらFF金利が1.5%でも緩和的だという話になりますなあとかどこの日銀だよという感じの話に見えますが、(記事にもありますが)ブラード総裁の理屈の背景についてはスピーチが出ているのだ。


http://research.stlouisfed.org/econ/bullard/pdf/Bullard_Inflation_Targeting_in_the_USA_06Feb2012_final.pdf
Inflation Targeting in the USA 1
Union League Club of Chicago, Breakfast@65West
Chicago, Ill.
Feb. 6, 2012

何でここに1という数字が不自然に引用されているかと申しますと、ここに脚注があるというのがかなりのチャーミングというかハハッワロスという感じであります。まあ当然ながら脚注はこれなんですけどね。

『1 Any opinions expressed here are my own and do not necessarily reflect those of others on the Federal Open Market Committee. I thank my staff for helpful comments, including Riccardo DiCecio, Cletus Coughlin, Karen Branding, Chris Waller, Dan Thornton and Marcela Williams.』

そらまあバーナンキ議長自らが会見で

『Following careful deliberations, Committee participants have reached broad agreement on a statement that sets forth our longer-run goals and policy strategy. This statement should not be interpreted as indicating any change in how the Federal Reserve conducts monetary policy. Rather, its purpose is to increase the transparency and predictability of policy.』(先ほどのバーナンキ議長会見の1ページ目から)

『So I don't think there's really any central bank or a very few at least that focus only on inflation. But again, in terms of terminology, I guess, I would reject that term for the Federal Reserve because we are going to be evenhanded and creating--treating the price stability and maximum employment parts of our mandate on level footing.』
(先ほどのバーナンキ議長会見の27ページ目から)

って言っているのに、ブラード総裁ったらのっけから

『The FOMC Sets an Inflation Target

At the January meeting, the Federal Open Market Committee (FOMC) took an important step forward by naming an explicit, numerical inflation target for the U.S. of 2 percent, as measured by the personal consumption expenditures (PCE) price index. In taking this action, the Federal Reserve has joined many central banks around the world that have set explicit inflation targets over the past two decades. This step has been a goal of Chairman Bernanke’s since he joined the Fed nearly a decade ago. I want to congratulate the Chairman on this accomplishment, which I believe will serve the nation well for years to come.』

とかもうお洒落なんですから全く。

・・・・・まあ何ですな、バーナンキ議長としては従来からデュアルマンデートの実施に当たって物価の長期的なゴールに関する数値を明確化しつつも、デュアルマンデートのバランスを考えながら政策運営していくみたいなフレームワークを考えていたと思われますので、そーゆー意味ではブラード総裁の祝辞(?)もまあむべなるかなという感じではあります。

ちなみに、セントルイス連銀の場合はインフレーションターゲッティングという点についてはこれまたいい感じで入れ込んでいまして、こんなコーナーもあります(^^)。
http://www.stlouisfed.org/inflation-targeting/


話が逸れましたが講演の続き。

『In a targeting context, inflation means headline inflation. It does not make sense to ignore some inconveniently volatile prices, like those for gas or food, when discussing the inflation rate actually faced by U.S. households.2』

ここでブラード総裁も強調している(つーかSEP見りゃ判りますが)長期的なゴールとしての数値はヘッドライン(総合)のインフレ指数でありますが、「コアよりも総合が大事、つーかコア重視は間違い」とか言う講演はそこの脚注にもありますが、

『2 For more on this theme, see James Bullard, “Measuring Inflation: The Core is Rotten,” Federal Reserve Bank of St. Louis Review, July/August 2011, 93(4), pp. 223-233.』

という所で主張されていてあたくしもネタにした覚えが(^^)。もうブラード総裁のドヤ顔が目に浮かぶわけですが・・・・・・

『Inflation targeting emphasizes control over inflation as the key long-term goal of monetary policy. This makes sense because the central bank can only influence inflation and not any real macroeconomic variable in the long run.』

中銀は中長期的なインフレ率に「のみ」影響を与える事ができて、他の実体経済に対する中長期的な影響力はございませんとはこれまた大きく出ましたな、というかデュアルマンデートをマッコウクジラで否定するようなブラード総裁のインフレターゲッティングLOVEの発言は中々痺れますな(^^)。

『As is well known, the actions of the FOMC can also temporarily influence the direction of the economy in the short run, but only temporarily. This influence can be used to help mitigate short-run gyrations in economic activity, thus smoothing out an otherwise bumpy ride for U.S. households and businesses. This is often described as monetary stabilization policy. The amount of smoothing that can actually be accomplished through this channel is meaningful, but not particularly large, a fact which is often lost in contemporary discussions.』

何か更に大きく出ていますが、そらまあ金融政策によって経済の上げ下げのスムージングはできますけれどもそれは一時的な話であって、中長期的には(´・ω・`)知らんがなとは中々清々しいお話ですがどう見てもデュアルマンデート(の失業の方を)disです本当にありがとうございましたという所ですな。

『Putting an explicit inflation target together with a sensible stabilization policy is often called flexible inflation targeting.』

まあそういうことで、デュアルマンデートよりもフレキシブルターゲット(インフレターゲットにスムージング政策をセットにする、ということですから、まあガチガチのターゲット政策ではなく、そこはそこで経済状況とのバランス取りましょという話ではあるのですが、失業の方は目標ではなくあくまでも数多くの経済ファクターの一つとして扱いますよ、という事ですな)が良いというのがブラード総裁の主張だというのは把握した(ような気がする)。

『This is the policy that has been adopted by the FOMC and that follows the practice of many other central banks around the world during the last twenty years.』

ふむふむ。で、フレキシブルターゲットの話はさらに続く。

『Flexible inflation targeting enables central banks to conduct a stabilization program and make it as effective as it can be made without departing from the longer-run goal of keeping inflation low and stable. This reflects a conventional wisdom borne of the 1970s, namely, that allowing inflation to rise and accelerate not only is not helpful for the macroeconomy, but is actually very damaging. During the 1970s, U.S. inflation eventually rose to double-digit levels, and this was accompanied by especially poor macroeconomic performance on the real side of the economy. The lesson for U.S. policymakers and many others around the world has been that high inflation just causes problems and does nothing to help address fundamental macroeconomic issues.』

ということで、1970年代の経験って話をしてて、更に最後の所で「望ましくない高インフレは経済に対して問題を引き起こし、経済のファンダメンタルズの問題解決に対して何の解決ももたらさない」とこらまた大きく出まして、シカゴ連銀エバンス総裁(は失業率改善の為には一時的にインフレ目標対比の少々の上振れは容認(2%の上方乖離まで容認)すべきで失業率改善まで異例の低金利政策を継続すべきという話をしてましたな)の真逆のような話をしているのがとってもチャーミングであります。


では、何でそのような話になるかと言いますと、米国経済の見立てにあたっての話の前提が現状のFOMCの中心的な(というか執行部のというか)考え方と微妙というか結構違っているのですよ。

つまり、生産ギャップ(Output Gap)が大きい状態が続いている事から、物価は上昇しにくく、一方で失業は中々改善しませんよという考えは間違っていて、これは「資産価格の一過性のショックの影響」と考えるべきである、という話がここから始まるのですが、当初あたくしが想定していた通りに時間が無くなったので以下明日にでも(大汗)。

#講演原稿自体はそんなに長くないのでまあその気になればちゃっちゃと読めると思います

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2012/02/03

お題「今日はただの雑談で勘弁である」

今朝もいきなりモーサテが「日本国債暴落の可能性について」とかいうお題でゲスト解説者にお話をさせようとの事ですかそうですか。

#モーサテの兄さん曰く、「マーケットでは欧州の次は日本だと思っている人が多いようですが」ってどこのマーケットだよと思うのですが・・・・・・・

ということで何か最近の報道が変ですねという雑談で昨日の新聞だのベンダーだのの記事から2つほどクリップしながら世間話で勘弁の一日でございまする。


○朝日新聞の「国債暴落」ネタのイミフ記事

昨日の朝最初に話題になっていたのが朝日新聞の記事。

http://www.asahi.com/business/update/0202/TKY201202010846.html
数年後の国債急落を想定 三菱UFJ銀が危機シナリオ

『銀行最大手の三菱東京UFJ銀行が日本国債の価格急落に備えた「危機管理計画」を初めて作ったことがわかった。数年後に価格が急落(金利が急騰)して金利が数%にはね上がり、損を少なくするために短期間に数兆円の国債を売らざるを得なくなることもある、としている。国債の有力な買い手がいよいよ「急落シナリオ」を想定し始めた。』(上記URLより、以下同様)

ふーん。

『計画は昨年末にまとまった。日本の経済成長率や経常収支、為替など30指標をチェックし、国債急落につながる変化があれば損失を軽くするために売却などの対応をとる。』

ということなのですが、詳しいのは昨日の朝日新聞本紙にあるみたいですが、それを受けたニュースベンダーの報道とか見てますと、2016年度で3.5%に金利が上昇したらどうのこうのという話らしいですな。

・・・・・・・・・・・えーっと、基本的に金融政策が正常化できるような状況になっていて、政策金利が1.5%だの2%だのというような水準になっていたらごくごく普通にその位の金利になっていると思いますので、これって「危機管理計画」でも何でもなくて、大きな企業様におかれましては何とか企画部門とかの仕事づくりの為に良く作成される鉛筆なめなめ「中期経営計画」の中での普通の「景気楽観シナリオ」じゃねえかと思うのでありまして、これって朝日新聞がBTMUのリリースに何か俺様フィルター掛けて解釈しただけの話なんじゃネーカと。

大体ですな、景気楽観シナリオで金利が上昇する時ってそもそも民間部門の資金需要が拡大している訳で、銀行としてはバンキング部門で貸出が伸びてウハウハですし、そもそも投資に金が回る訳ですから銀行の資金の調達運用構造が今のままの訳ではなく、そうなる段階において減らしたくなくても銀行の証券投資が勝手に減るでしょとか思うのでありますし、一万歩譲ってギリシャ状態になって金利が急上昇するとしたら3.5%とかで止まるかよヴォケという感じではございますな、うんうん。


しかしまあ何ですな、昨日はちょうど10年国債入札の日だったのですが、この記事見て最初にあたくしが思ったのは「10年入札で安く買いたいんですかそうですか」という所でございますが、どうも人の話を聞いて回ったら同じような印象を受けた方が多く、おまけに昨日の10年国債入札は事前予想よりも堅調な結果になって後場債券市場上昇ときたもんで失笑を禁じ得なかったという所ではございますが、ダシにされたBTMUさんもいい迷惑でしょうな、うんうん。

まあ朝日新聞の場合は以前より何か変なもんでも食ったんではないかと言うような勢いで増税キャンペーンをやっているようで(稀に読むと何かもう増税しないと大変ですよ日本オワタですよという論調が凄いです。消費税増税の閣議決定の前後とかの記事見ててビックリしたわ)、その一環なのかなあとか思うのですけれども、わざわざ10年入札の日の朝刊に(別にいつ記事にしてもよさそうな)この記事を入れることによって「朝日新聞さんって債券市場を動かしたいんですね何て下品なんでしょ」と金利市場様の評価がガタ落ちしたという事はまあ否めませんなあという所で。


○ブルームバーグのヘッドラインが意味不明だった件

でまあその10年入札の応札タイムであります11時過ぎには山口副総裁が高松で講演をしておりまして、その講演に関連したヘッドラインが11時20分過ぎに流れたのですけれどもね。

・・・・・・つーかさ、とりあえず日銀は国債入札の日、というと制限が多くなりすぎますからせめて10年入札で良いと思いますけれども、国債入札日に政策委員の講演を打ち込むのはヤメレと思うんですけどねえ。10年国債入札の日にどうのこうのと言えば10年国債入札の前場引け直後に「臨時政策決定会合の実施」をアナウンスして国債ディーラーの憤激を買ったという事案も以前にございましたが、「市場との対話(キリッ)」とか言うならせめてその程度の最低限のロジを考えろやと思うのでありまして、国債入札の日程よりも先に金融経済懇談会の日程が決まるのかもしれませんけれども、大体月初は10年国債入札があるとか普段のスケジュール見てたらアホでも予想ができる話なんですから「市場との対話」とか抜かすなら考えろと思いますけどにゃあ。

財務省はちゃんと金融政策決定会合のアナウンス日と国債入札日が重ならないようにスケジューリングしている訳でして、そういうロジの感覚に微妙に残念な所が見受けられるのが日銀(まあ財務省の場合この手の話で関連するのが理財局という専門部署であって、日銀の場合金融市場局以外の部局がありますからねえというのはありますけれどもね)の微妙な麿クオリティという所かとか思うのでありました。


しまった。思わず話が横に逸れて何時の間にかあたくしの手が勝手にキーを叩いて悪態をついているような気がしますがそれは兎も角として本題に戻ります。


山口副総裁の講演はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120202a.pdf

で、この講演に関してブルームバーグニュースが速報ヘッドラインを出していたのですけどね(関連ヘッドラインのみ抜粋)。

JBN 11:22 *山口副総裁:長期金利の低位安定はやや不可思議
JBN 11:22 *日銀の山口副総裁は高松市内の講演で語った
JBN 11:23 *山口副総裁:万一の場合も市場安定化期す
JBN 11:23 *山口副総裁:何らかのきっかけで財政の信認一気に崩れる可能性も

・・・・・・・10年国債入札の応札タイムに何じゃそらという感じなのですが、肝心の講演(正確には挨拶なんですがまあそれは兎も角)テキストにはこの最初の「長期金利の低位安定はやや不可思議」というような話はどこにもないのですよ。

基本的にここに出てくるテキストって講演の原稿でして、アドリブがホイホイ出てくる人って速水総裁か福井総裁くらいで、山口副総裁がそういうアドリブ的不規則発言をするタイプじゃないので本当にそんな事言ったのか(この時間帯は挨拶だけの筈だから挨拶の中でアドリブ言わない限り講演テキストと違う物が出てくるのは不自然)とゆーのもアレですけれども、まあ仮に山口副総裁がそういう発言したとしてもですなあ・・・・・

この次に出てくるヘッドラインを見るとどう見ても日本の話をしているようにしか見えず、債券ディーラー的には「何で入札の日にこんな話がでるんだ?」とまあ怒り心頭滅却されておられる方もいれば、そもそもスルーされていた方もいたかと存じますが(^^)、いずれにせよ仮に発言しているとしたら10年入札の日になんちゅう不用意な・・・・・・・・と思って講演テキスト見たらこうなっておりました。


JBN 11:22 *山口副総裁:長期金利の低位安定はやや不可思議

日本の長期金利どうのこうのの話をしているのはテキスト12ページ(PDFファイルの13ページ目)の部分しか見当たらないのでそこを引用するのですが。

『こうした成長力の強化と並んで、財政の持続性確保に向けた取り組みも着実に進めていく必要があります。わが国の政府債務残高は対名目GDP比で200%を超えており、先進国の中で最も高い水準となっています。それにもかかわらず、国債金利が低水準で安定している最も基本的な理由は、わが国には財政健全化に向けて取り組む強い意志があり、したがって日本国債は安全な資産であり続けると、市場が信頼しているためだと考えています。』

・・・・・・うーむ、まあ不規則発言している可能性はあるけどこの文脈で「不可思議」とかなるのかなあ????


JBN 11:23 *山口副総裁:万一の場合も市場安定化期す

テキスト14ページ(PDFファイルの15ページ目)より。

『このほか、欧州債務問題については、その確率が低いとは言え、金融市場が大きく混乱するようなまさかの事態にも備えておかなければならないと申し上げました。この点、日本銀行は、金融システムや決済システム、金融機関経営の状況をしっかりと把握し、政府や各国中央銀行とも緊密に連携をとりつつ、万が一の場合にも金融市場の安定を確保するよう、万全の体制を整えておきたいと考えています。』

どう見ても欧州問題関連です本当にありがとうございました。



JBN 11:23 *山口副総裁:何らかのきっかけで財政の信認一気に崩れる可能性も

テキスト12ページ(PDFファイルの13ページ目)より。

『そうは言っても、国の借金がなお増え続けている現状では、何らかのきっかけで国債市場の信認が一気に崩れるリスクは排除できません。仮にこれが現実のものとなった場合、金融システムや実体経済に大きな影響が及ぶことは、欧州の実例が証明しているとおりです。』

これはまあ一般論的ですわな。


・・・・・・・という事で、まあ最初の「不可思議」が謎なのですが、それはそれとしてヘッドラインで出てくる印象だとまるで日本の長期金利が財政問題で急上昇した場合の市場安定化をきちんと考えていますと山口副総裁が発言したかのようなヘッドラインになっているのは何ですねんという所でございまして、狙ってやってるのかただ単に配慮不足なのか知らんですが、あさいちの朝日新聞記事とも相まって、何かメディア使って国債暴落キャンペーンでも画策してポジションウマーとか言う人でもいるんじゃないかとか邪推したくなる展開ではございました。

ちなみに、これがまたアレな事に英語のヘッドラインだと・・・・・

BN 11:22*BOJ'S YAMAGUCHI SAYS EUROPIAN DEBT CRISIS BIGGEST RISK FOR JAPAN
BN 11:22*YAMAGUCHI:BOJ READY TO TACLE EMERGENCY WITH OTHER CEN BANKS
BN 11:23*YAMAGUCHI CAN'T RULE OUT JAPAN LOSING TRUST OVER DEBT
BN 11:23*BOJ DEPUTY GOVERNOR YAMAGUCHI SPOKE IN TAKAMATSU, WESTERN JAPAN
BN 11:23*YAMAGUCHI SAYS LOST CONFIDENCE WOULD HAVE BIG IMPACT ON JAPAN

という風になっていて、この流れだと普通に欧州債務危機の悪化懸念と、日本の財政健全化の重要性を話しているというように読めるのでありまして、さっきの日本語ヘッドラインと印象が違うのでありまする。

まあ何だ、今朝のモーサテもそうだが、ここへ来て急に「国債暴落ヒャッハー」の煽りネタが出てくるのって何ですねんという所でありますな。まあオモシロ見出しを出して売れれば勝ち的などうでも良い週刊誌などは勝手にしろという感じですけれども、朝日新聞まで煽りだすとかどうなってるんでしょうかねえ。何だかなあという所でありまする。


などと今日はしょうもない雑談ネタになってしまいましたが、何か一生懸命日本国債暴落ネタを煽ろうというような動きがあるのか、単にこの話が最近キャッチ―だからと言ってメディアの皆さん何も考えずにその動きに乗っているだけなのか存じませんけれども、大体からして国債暴落煽って誰得ですねんとか思う(財政健全化の主張をするならまあそれはそれで良いのですが)次第でありまして、もうちょっと後先を考えた報道をして頂きたいとは存じますが、そもそも後先を考えた報道をしていたら詐欺フェストを掲げた政党による政権交代とか(以下悪態なので割愛)。

ということで肝心の山口副総裁講演とか市場雑談とかすっかりスルーして申し訳ないですが時間と量の関係上勘弁。

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2012/02/02

○バーナンキ記者会見より:次の追加策はバランスシート政策なんでしょうが・・・・・

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120125.pdf

今日は時間の都合上(単に寝とばしただけ)バーナンキ会見ネタの続きが一発ネタになりやして恐縮ですが。

28ページにこんな質問がありまして。

『Zachary Goldfarb: Thank you, Zachary Goldfarb from the Washington Post, two questions. First, can you clarify whether if actual economic conditions match their projections, that's an acceptable future course or that would require additional easing? And secondly, in the past a number of times you said that even when interest rates are at the zero bound, the Fed can still have a significant impact on influencing economic growth. Do you still believe that the Fed has the capacity to deploy tools that would have a significant impact on bringing down unemployment at a faster pace than we see in these projections if it chose to do so?』

どのような状況になったら追加緩和するのかという話と、追加緩和するにしてもゼロ金利制約があるなかでツールってあるんですかという話を質問していまして、まあこの会見見てて思うのですが、バーナンキ議長が説明したいと思っている事について質問をしていくという感じで中々いい感じなんですよね。

『Chairman Bernanke: On the first question, I--I--you know, this--as was pointed out by Steve, for example, we've had some good data recently. I think there's some uncertainty about where the economy is going and we want to continue to observe how the economy is developing. But I would say that, as I've said on several--in several answers, that if recovery continues to be modest and progress on unemployment very slow and if inflation appears to be likely to be below target for a number of years out so the configuration we're talking about in the projections then I think there would be a very strong case based on our framework for finding different additional tools for expansion--for expansionary policies or to support the economy. So we'll continue to look at the different options and try to decide what might be most effective.』

まあここにもありますように、何回か同じ説明している部分があるのですが、バーナンキ議長はこの時の会見で「物価上昇率の低下傾向が顕著になって、一方で失業率が下がらない状態となった場合には追加緩和も辞さず」という話を強調していまして、まあその辺が今回のFOMC後の「QE3期待」になっていると思われます。

『We are in a difficult situation in terms of effectiveness of policy tools.』

ふむふむ。

『My own view thinking about the effects, for example, of additional purchases, additional securities purchases, I'm--I've been pretty satisfied in the sense that, in the following sense, that purchases do seem to have the desired effects on financial conditions. They tend to ease financial conditions, they tend to lower interest rates, they tend to strengthen asset prices and those are exactly the kinds of things that monetary policy normally does in order to try to provide stableness to the economy.』

資産買入の効果に関しての話をしていますが、ここで「My own view」とか出ていまして、まあ他の所でも散々バーナンキ「委員」の意見をいってるんじゃねえのとか思う節が多々あるバーナンキ先生独演会なのではございますが、追加資産買入の効果の件についての効果の話をするときにわざわざ「私個人の見解」とか言っている辺り、資産買入に関してはどうもコンセンサスがちゃんと出来ていないんじゃないかと思われるのではないかと思ったのですがあたくしの読み過ぎですかね。

『What has been a bit more uncertain is the effectiveness of the transmission mechanism. And we have seen some developments in the economy that have probably weakened the effectiveness of policy including notably the housing sector where one would expect with mortgage rates below 4 percent, one would expect to see more activity than we've been seeing and the problems in housing finance and so on are part of the reason that that--that this expansionary stimulus is not feeding through as much as we would like to the real economy.』

ただまあその一方でモーゲージレートも低下してたり、住宅借入に関する動きはやや活発化しているものの、住宅市場に関しては金融緩和の効果の効きが悪いですなどと仰せのようですので、まあ次の金融緩和はこの辺りかなという風に考えるのが妥当なのですが、先ほどありますように、この部分についての頭に「My own view」とわざわざ断っているのが曲者だと思う(まあ「My own view」が文章のどこまで掛かっているのかという解釈論もあると思いますけれども、あたくしはこの辺までもかかっているんじゃないのと思ってます)のですよね。

つまり、追加緩和でMBS買入なり何なりの住宅お助け策とかが出るのかなという風には思うのですけれども、そのコンセンサス(何をするかという点とか、そもそも実施するのかという点とか)は取れていないのかなという風に感じましたです、はい。

#そもそも今回声明文で「時間軸効果(のようなもの)」を前面に出す形でパラグラフの入替を実施しましたので、そういう意味ではQE3と言っても量を前面に押し出すような買入では無くて信用緩和(=住宅市場お助け)的なものになると思うのですけれども

『I would not say though that our policies are--that we're out of ammunition. No, I think we still have tools but we need to further analyze and study those tools and try to make comparisons in terms of effectiveness, risks, and the likes, so I think we still have a process to figure out what is the most effective approach. Does that--Yeah, okay.』

最後の部分は「私たちは追加緩和のツールを色々と持っている(キリッ)」という話で、「それらのツールの有効性とか副作用とか諸々について現在点検している状況であります(キリッ)」というのが結論ですので、まあ次回に何かの追加策が出るのかという件については中々微妙な所があると思います。

ただまあ(これはまたネタにするときにしますが)バーナンキ議長は引き続きバランスシート政策に関して「バランスシートの量や、内容の構成を変化させることによって緩和的な効果を与える事ができる」というアプローチを引き続き取っていると説明していますので、まあ次回の追加策はバランスシートを何かいじってくる話になる(policy duration effectは今回実施しましたので)という事になるのかなあとは思います。

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2012/01/31

お題「諸般の事情で日本ネタスルー状態で勘弁」

日本ネタをスルーした状態のままですいませんが決定会合レビュー(総裁会見とか月報とか)や12月議事要旨ネタに関しては明日にでも打ち込みますので今日もFOMCレビューネタで勘弁。

#にちぎんかんさつにっきの筈なのにどうなってるんだ自分

それはそれとして昨日の朝は何故か重くて読めなかった権丈先生のページが復活しているので読んでみましたが、こちらで紹介されている谷垣さんの代表質問とか実に良いのに何で報道でこういう話が出てこないんでしょうかねえ、全くもってメディアの劣化ですなあ。
http://kenjoh.com/


○インフレターゲットがどうのこうのという件に関して(FOMCレビュー)

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LYM5PY1A74E901.html
米個人消費支出:12月は前月比変わらず、実質ベースは0.1%減(1)

『PCE価格指数は前年比で2.4%上昇。食品とエネルギーを除くコア価格指数が前月比で0.2%上昇、前年比では1.8%上昇だった。』(上記URLより)

11月が+2.5%で今回リリースされた12月が+2.4%で確か事前予想の中心はブルームバーグのサーベイによると+2.3%だったので事前予想ほど落ちていないという結果になりますが、さてこうなった時には中日新聞社様の社説での解説によりますと「迷わず引き締め」ないと不味いんじゃないですかねえ(棒読み)。


・・・・・というのはまあアレなマクラではございますが、今回のFOMCでの決定が「インフレターゲット導入」だというような話に関してまあ35ページの記者会見(^^)を引きながら雑考してみるの巻であります。

えーっとですな、そういう話はとりあえず債券市場というか金利市場的に何か直接のインプリケーションがあるのかと言われますと、その辺の話なんぞどうでもいいから利上げするのか緩和するのかを考える方が相場屋さん的には建設的なので、以下あたくしの趣味状態になるかと存じます次第、と先にヘッジクローズを入れておきます(笑)。

以下引用部分は断りの無い限り
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120125.pdf
にあるバーナンキ会見の文字起こし(1月31日現在は初稿版ですのでそちらより)より。

・まずは冒頭の説明部分から

1ページ目の後ろの方から「デュアルマンデートの理解」の説明が始まります。

『Following careful deliberations, Committee participants have reached broad agreement on a statement that sets forth our longer-run goals and policy strategy. This statement should not be interpreted as indicating any change in how the Federal Reserve conducts monetary policy. Rather, its purpose is to increase the transparency and predictability of policy.』

ここに述べられているように、今回の決定は「FRBが金融政策をどのように運営するかについての新しい決定を行ったと解釈されるべきではありません」と思いっきりバーナンキ議長が断っていまして、そらつまりどういう事かと言いますと、いわゆる「インフレターゲット政策導入」と報道されてデュアルマンデートのうち物価のマンデートに今後より傾斜する政策の枠組みを作ったと解釈されると困りますがなという話でありますわな。

それよりも、今回は「金融政策の透明性と事前予測可能性を高める」のが目的ということで、まあナンジャラホイという所でしょうけれども、従来のデュアルマンデートを意識した運営は「物価の安定と最大雇用」といいつつもまあその時々でホニャララという感じだったのをもう少し明快にしてみましたというものだと思われます。ただし、この後にあるように、その運営に関しては「インフレターゲット」という言葉で想像されるようなある種のメカニカルな運営をする訳では無く、双方のバランスを取った裁量的なアプローチになるようですので、まあ数値を「goal(targetではない)」という形で示しましたというのが新しいちゃあ新しいですが、従来よりSEPで「longer run」の望ましいPCE物価指数とか出していましたので、そこのレンジがピンポイントになったですという所なんでしょうけれどもね。

と分かったような判らんような話ですが、この先は中銀のコミュニケーションが重要ですとか、説明文の方にもあった「これらのゴールはlonger-runでそれに対する我々の中期的な見通しやリスク認識を反映して金融政策を実施します」と単純なターゲット政策ではありません(つーかきょうび単純なターゲット政策している中銀はいませんでしょ)という話をしております。

で、内容の説明部分がその後に続くのですが、これまた説明文にあるのと同じですが麿涙目というフレーズがあるので折角だから引用(説明文にもありましたけれどもね)。

『With respect to the objective of price stability, it is essential to recognize that the inflation rate over the longer-run is primarily determined by monetary policy, and hence, the Committee has the ability to specify a longer-run goal for inflation.』

どう見ても麿涙目です本当にありがとうございました(^^)。って声明文その他のセットが出た時にも書いたのですが折角ですので嫌味ったらしくもう一度引用してみますた。

『The Committee judges that inflation at the rate of 2 percent as measured by the annual change in the price index for personal consumption expenditures, is most consistent over the longer-run with our statutory mandate.』

これまた声明文その他セットの出た時に引用しましたが、同時に出たSEPにおいて「longe run」の数値として2%という数値が出ていたのはコアではなくて総合のPCE物価指数となっていましたので、当然ながら「中長期的なゴール」としての数値はコアPCE物価指数です。

何でコア使わないのというツッコミもあるかと思いますが、そもそもコアの概念って総合の物価指数の中では一時的要因での振れが大きいものがあって、足元の一時的要因における振れによって過剰反応しなくて済むようにその影響を排除した数値を出しましょうというのがそもそもの概念でありますので、つまり「中長期的に見た場合」にゴールを置く場合はコアではなく総合ですよね、という話ですし、そもそも論として(これはバーナンキ議長の会見質疑応答の中でもありますけれども)一般的な消費者の消費行動に対する物価推移の影響に対して金融政策で影響を与えたい、という事を考えた場合は総合の方が適切になるのですから、当然ながら「長期的なゴール」となれば総合になるのが当然なのですな。

#つーか日銀の「中長期的な物価安定の理解」での「CPI前年比1%程度」のCPIもコアじゃなくて総合なんですけどね


で、その後にまあ高インフレと低インフレの弊害の説明があって、「中長期的にPCE物価指数2%」という金融政策運営のゴールが「長期金利の安定化(これもマンデート)」に繋がり、最大雇用の達成にも寄与するという話をしておりますので後者部分を引用。

『Clearly communicating to the public, this 2 percent goal for inflation over the longer-run should help foster price stability and moderate long-term interest rates. It will enhance the Committee's ability to promote maximum employment in the face of significant economic disturbances.』


で、ここで重要なのは「だからと言って雇用を軽視している訳ではない」という話が続くところでありまする。うだうだ引用しているうちに3ページ目に突入してます。

『Maximum employment stands on an equal footing with price stability as an objective of monetary policy.』

で、何で最大雇用の数値を出さないのかという件に関しては「金融政策以外のファクターがある上に、そもそ自然失業率そのものがタイムリーかつダイレクトに算定できず、しかも経済の環境変化に応じて変化するものなので、ゴールの数値を置くのは『どこの中央銀行であろうとも』フィージブルではない」と説明しています。概ね声明文セットの中にあった説明文どおりなのですが、最後の所だけ引用する。

『Because monetary policy does not determine the maximum level of employment that the economy can sustain in the longer term, and since many of the determinants of maximum employment may change over time or may not be directly measurable, it is not feasible for any central bank to specify a fixed goal for the longer-run level of employment.』

ただまあ推計が出来るので、その数値に関してSEPにおけるLonger runの数値としてレンジで示した(今回は中心的見通しとして5.2-6.0)という話ですな。


・金融政策の運営における運用はかなり裁量的な余地を残す

という意味でこの政策っていわゆる「インフレターゲット」とかで想像されるような政策とは違いますがなという所ではあるかと思うのですけれども、つーか単純に物価だけターゲットにすると足元の運営が中々大変です罠。4ページ目辺りになります。

『In setting monetary policy, the Committee seeks to mitigate deviations of inflation from its mandate consistent rate, and deviations of employment from our assessments of its maximum level. These dual objectives are generally complementary.』

と、ここまでは声明文セットの中にあった説明文(の第6パラグラフ)どおりですが、ここではより詳しい話をしているのが重要。

『For example under present circumstances, in which the unemployment rate is elevated and the inflation outlook is subdued, the Committee judges that sustaining a highly accommodative stance of monetary policy is consistent with promoting both objectives. And in the longer-term, low and stable inflation can help promote healthy growth in output and employment.』

まず、現在のように失業率が高止まりしていてインフレの先行き見通しが抑制されている場合には、極めて緩和的な金融政策を維持するのが適切ですよと。

『Of course, circumstances may sometimes arise in which the dual objectives are not complementary. In such cases, the Committee follows a balanced approach in promoting these two objectives, taking into account the magnitude of the deviations and potentially different time horizons over which inflation and employment are projected to return to levels judged consistent with our mandate.』

『In other words the Committee always treats its primary objectives on price stability and maximum employment symmetrically, and the stance of policy at any given time is determined by the size, social cost, and expected evolution of the deviations of each of the Committee's policy objectives from its desired level.』

ということで、物価の安定と最大雇用の確保というデュアルマンデートに対してのアプローチは「色々なバランスを勘案しながら行っていく」という話をしておりますので、まあデュアルマンデートの理解(というか長期的なゴールか)に近づけるべくその時々の状況によって、金融政策の取り方もバランスを取りながら行っていく、ということで、ケースバイケースでの対応ということで、まあそんなにシステマティックな金融政策をする訳では無いというのを強調すると共に、ここまでの間延々と「デュアルマンデート」というのを強調しているのがポイントではないかと思われます。


・ということで重要な質疑がこちらに

まずは10ページ。

『Craig Torres: Hi, Mr. Chairman, Craig Torres from Bloomberg News. Congrats on the inflation target or goal. That's a big achievement for you, I'm sure.(以下割愛)』

ブルームバーグニュースの記者が「インフレーションターゲットまたはゴールの設定おめでとう!」と思いっきりおめでとうと言う話をしているのですが、これに対しては敢えて完全スルーを決め込んだバーナンキ議長ですが・・・・・・・・


26ページ。

『Patrick Welter: Mr. Chairman, Patrick Welter from the Frankfurter Allgemeine Zeitung. I have two short questions. Your predecessor, Mr. Greenspan, once said about his personal inflation, long-term inflation goal that it would be, zero percent if appropriately measured and I would like you to compare the inflation goal you told us about today with that statement, and the second question is comparing what you did today, are you approaching more some kind of inflation target just like the Central Bank of Sweden or Norway or are you approaching more the European Central Bank, for example, which has some kind of inflation goal but is not really an inflation target.』

前半の「グリーンスパンがかつて「正確に測定できるのであれば長期的なインフレーションのごーえうはゼロとなるべき」と言った事と今回の数値の対比についてお伺いしたい」という質問もドイツらしくてとっても素敵なのですが(^^)、そちらは今回はさておきまして、後半にあるように「今回の決定はインフレーションターゲットに近づこうとしているのか」という質問に対する回答が重要。

『Chairman Bernanke: Excellent questions.』

キタコレ。

で、前半の質問に対する答えは今回スルーして後半部分をば。27ページ目の中盤から。

『Now, are we inflation targeters if by inflation targeters you mean a central bank that puts top priority on inflation and other goals like employment as subsidiary goals then the answer is no.』

ということで、いわゆるインフレーションターゲット導入国と同じような方向に進んでいるのかって質問に対しては明確にNoと答えています罠。

『We are a dual mandate central bank, we put equal weight on price stability and maximum employment, those are the goals given to us by Congress. And so, in that respect, as I've mentioned earlier I think to Greg, we're not absolutists.』

その理由としては当然ながら「デュアルマンデート」を強調している訳でして、物価に対して絶対主義者として行動するという訳には行かないという事ですわな。

『If there's a need to let inflation return a little bit more slowly to target in order to get a better result in employment then that's something that we would be willing to do. Having said all that, I think it's worth noting that even banks that--central banks that call themselves inflation targeters typically pay at least some attention to other parts of the economy, employment growth, financial stability and the like. So I don't think there's really any central bank or a very few at least that focus only on inflation.』

という事で、先ほどの説明部分でもあった「バランスのとれたアプローチ」というのを強調していますが、この点に関して言えば参照数値であります所のPCE物価指数が下がらない状態が続いて失業の水準が高めに推移するというような英国的なアチャーな状態になった場合にはその「バランス取ったアプローチ」をどうするのかというのは中々難しくなると思います。まあその論点自体は今に始まった事では無いですけれども、物価の定義の所で思いっきりPCE物価指数を前面に出した(まあSEPを出すようになった時点でその辺は出ているちゃあ出ているのですが)のでほにゃほにゃとはぐらかす訳にも行かんですからねえ。

『But again, in terms of terminology, I guess, I would reject that term for the Federal Reserve because we are going to be evenhanded and creating--treating the price stability and maximum employment parts of our mandate on level footing.』

ということで、インフレ―ションターゲット(that termってのは誰がどう読んでも質問者の中にあるinflation targetですからね)というのは「術語的には」否定しますよという話で、デュアルマンデートをこれでもかと強調しているのが目立つ所です。


つまりですな、物価の中長期的見通しに関して「先行き物価の上昇は抑制されるでしょう」となっている限りにおいては、足元の金融政策はより雇用重視的になる、というのが今回の「デュアルマンデートの強調」でもあるので、そういう意味では物価上昇にウェイトを掛けて早すぎる出口政策というアプローチには今の所ならないでしょ、という点からすると、まあハト的ちゃあハト的でもあるのですが、先ほど来申し上げておりますように、一番困るのはスタグフレーション的な状況になった場合でありまして、流動性相場と言われる雰囲気が商品価格を思ったより下げない場合にはややこしい舵取りを強いられる可能性があるなあ、とか思うのでありました。

#どう見てもあたくしの趣味のコーナーです本当にすいませんすいません

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2012/01/30

お題「日本ネタを差し置いて更にFOMCレビューが続くあたくし」

マクラ程度の価値しかないと思うので出端の悪態をマクラ代わりに・・・・・・

○まあこうやって日銀にはプレッシャー掛かるでしょうなあ

えーっとですな、金曜の中日新聞(東京新聞)の社説で案の定の物が出てたんですけどね・・・・・

http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2012012702000014.html
インフレ目標 日本も導入に決断を

以下上記URLから。

『日本では「インフレ目標を導入すると、どんどんインフレが進むのではないか」とか「インフレを目標にするとは論外だ」といった誤解に基づく批判があった。』

いやまあさすがにそういう批判は最近は無いと思いますがまあ一般的にはそんな事もありそうな話なのでよしとしまして。

『これには言葉の問題がある。インフレ目標は「インフレをめざす政策」ではなく、物価上昇率を一定に管理する目標を定めた政策である。だから「物価安定目標」と言い換えてもいい。』

ふむふむ。

『いまのように物価が継続的に下落するデフレ状況なら金融緩和を徹底し、逆に物価が目標値を上回って上昇するようなら迷わず引き締める。そういう政策運営態度を内外に事前に宣言するのだ。』

>物価が目標値を上回って上昇するようなら迷わず引き締める
>物価が目標値を上回って上昇するようなら迷わず引き締める
>物価が目標値を上回って上昇するようなら迷わず引き締める

・・・・・・・・orz

えーっと、米国様が今回物価の中長期的なゴールとして示された物ってPCE物価指数で、11月の前年比って確かゴールの2%を上回る2.5%だったのではないかと・・・・

とか言うまでも無く、インフレターゲット先進国(?)の英国様におかれましては延々とCPI物価指数がターゲットの2%を上回って推移する中で追加金融緩和として国債買入の拡大を行っていまして、インフレ目標において「目標値を上回って上昇するようなら迷わず引き締め」とかどこもやっていないと思うのですけれどもねえ(つーかバーナンキ議長の会見でもそう言ってますけど)。

#今回のFEDのリリースがインフレ目標かというと「言葉の定義的にはそうではないです(=デュアルマンデートなのでインフレと失業のバランスを取りながら運営するということだから)」と会見でバーナンキ議長が発言しているのはさておき

ということで、「誤解に基づく批判」と言ってるその口が誤解しているという盛大なブーメランにも程があるという大変に素敵な話なのですが、これが日本最大級の地方ブロック紙の事もあろうに「社説」(どこかの馬鹿記者あるいは馬鹿評論家の書いた記事とかではなくて)という所が実にこう残念というか情けない次第であります。

東京新聞(中日新聞東京本社謹製)って経済記事は中々読み応えがあったのですが、最近はこの社説に見られるようにすっかりワカランチン化してしまってますし、それ以前に震災以来の反原発記事の書きっぷりに呆れていた所にこの社説と来て、その他で唯一見どころのあったちびまる子ちゃんの4コマ漫画も今月で終了するので、そろそろ読むの止めるかという所でございまする。

という悪態はどうでも良いですが、まあ日銀に対してまたインフレ目標やれだのという話は増えてくるとは思いますが、文句言うにしても上記社説のようにそもそも批判のベースとなる事実関係とか背景とかをきちんと勉強して頂きませんと、どこぞの市長の批判本には名を連ねているのに全然相手のロジックを理解しておらず、結果テレビ対決してフルボッコになったどこぞの馬鹿学者(ちなみにこの学者先生東京新聞でコラム書いているのですが話の前提がいつも「おれさまのかんがえたじじつ」となっていて見苦しいにも程があるのですがね)の如くとなる(まあ日銀は別に相手を論破しても自分の益にならない(どころか損)からボコりはしないでしょうが)だけのように思えますので、FRBのリリースを関連する所一通り読む位の事はして頂きたいものだと思います。

まあここまではどうでも良いネタ。


で、どこまでもネタが尽きない今回のFOMCでの各種リリースでしたので、今日も今日とてレビューの続きをするのであります。

○「デュアルマンデートの理解」について再掲(話のベースになるので)

小見出しが長いですかそうですか。

さてさて、今回の「デュアルマンデートの理解」みたいなもんですが、再度URLをつけるとこちらになります。

Federal Reserve issues FOMC statement of longer-run goals and policy strategy
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120125c.htm

一応木曜の朝にざっと流して読んだ(というか引用しただけではないかとかいうツッコミは良い子の皆さんはしないように^^)訳ですが、改めてこの内容についての論点を雑考してみるのであります。

第2パラグラフより。

『The FOMC is firmly committed to fulfilling its statutory mandate from the Congress of promoting maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates. The Committee seeks to explain its monetary policy decisions to the public as clearly as possible. Such clarity facilitates well-informed decisionmaking by households and businesses, reduces economic and financial uncertainty, increases the effectiveness of monetary policy, and enhances transparency and accountability, which are essential in a democratic society.』

今回の決定の背景にある理屈としては、「金融政策決定における考え方についてより透明性を高めることによって、家計や企業の投資行動などの決定において、経済や金融の先行き不確実性を軽減し、金融政策の有効性を高め、更に言えば民主主義社会において重要な中央銀行の透明性と説明責任を高める事に資する」というのがありますよという事ですわな。


第3パラグラフより。

『Inflation, employment, and long-term interest rates fluctuate over time in response to economic and financial disturbances. Moreover, monetary policy actions tend to influence economic activity and prices with a lag. Therefore, the Committee's policy decisions reflect its longer-run goals, its medium-term outlook, and its assessments of the balance of risks, including risks to the financial system that could impede the attainment of the Committee's goals.』

インフレ、雇用、長期金利(インフレと長期金利の安定、雇用の最大化がFRBのマンデート)は経済や金融のその時々のノイズに応じて振れ、更に金融政策は実体経済や物価の動きに対して時間的なラグをもって影響を与えるため、FOMCの金融政策の決定は「長期的なゴール」「中期的な見通しや先行きのリスクバランス、それには長期的なゴールの達成を妨げる金融システムのリスクも含まれる」を反映して行うものでありますという話ですな。

第4パラグラフが物価の所ね。めんどいから引用だけ。

『The inflation rate over the longer run is primarily determined by monetary policy, and hence the Committee has the ability to specify a longer-run goal for inflation. The Committee judges that inflation at the rate of 2 percent, as measured by the annual change in the price index for personal consumption expenditures, is most consistent over the longer run with the Federal Reserve's statutory mandate. Communicating this inflation goal clearly to the public helps keep longer-term inflation expectations firmly anchored, thereby fostering price stability and moderate long-term interest rates and enhancing the Committee's ability to promote maximum employment in the face of significant economic disturbances.』

でまあここでも「inflation goal」と言ってまして、いわゆるターゲットとしての数値では無いというのもさることながら、これはまあデュアルマンデートであるからして当然ちゃあ当然なのですが、じゃあこの数値からどの程度ぶれが生じたら金融政策がどうなるかというような話に関しては「デュアルマンデートやその他の状況を見ながら総合的に判断」という話になっていまして(あとで引用するバーナンキ会見に詳しい)、そういう点からしてこの2%数値は別に金融政策に直接的にリンクしている訳では無く(まあ極端に外れるとなったら何かするでしょうから無関係という事でも無いが)、あくまでも上記パラグラフの後半にある「Communicating this inflation goal clearly to the public helps keep longer-term inflation expectations firmly anchored, thereby fostering price stability and moderate long-term interest rates and enhancing the Committee's ability to promote maximum employment in the face of significant economic disturbances.」という事で、「長期的なインフレ期待をアンカーさせるためのコミュニケーションツール」であるという建付けになっている訳で、一般的に「ターゲット」とか「目標」と言われるものと必ずしも一致しないと考えるのが妥当に思われます。

ただまあこの出し方が与えるヘッドライン的な第一印象もそうですし、バーナンキ議長の過去の主張とか(まあ議長も元々の主張から徐々にその辺り変化しているのですが)からの印象からすると、その「2%」という数値が「インフレターゲット導入」と読めてしまう所は否めなく、というか恐らく執行部はその辺りの印象操作も狙って敢えて表現を微妙にしている感じかなと思います。

必ずしも物価重視に傾斜したターゲットではない、という話は会見の方で何度も強調されておりまして、targetというよりはperspectiveという感じですし、targetとしてもconditionalなものという所ではないでしょうか。


第5パラグラフは雇用。

『The maximum level of employment is largely determined by nonmonetary factors that affect the structure and dynamics of the labor market. These factors may change over time and may not be directly measurable. Consequently, it would not be appropriate to specify a fixed goal for employment; rather, the Committee's policy decisions must be informed by assessments of the maximum level of employment, recognizing that such assessments are necessarily uncertain and subject to revision. The Committee considers a wide range of indicators in making these assessments. Information about Committee participants' estimates of the longer-run normal rates of output growth and unemployment is published four times per year in the FOMC's Summary of Economic Projections. For example, in the most recent projections, FOMC participants' estimates of the longer-run normal rate of unemployment had a central tendency of 5.2 percent to 6.0 percent, roughly unchanged from last January but substantially higher than the corresponding interval several years earlier.』

このパラグラフなげえよという感じですが、まあここの字面だけ見ていると「長期的な物価水準は金融政策で決定できるので長期的なゴールを示すが、雇用に関しては金融政策以外のファクターも長期的な完全雇用水準に関係してくるので長期的なゴールを示すのは困難」という事で、デュアルマンデートのうち物価を重視する姿勢(すなわちインフレーションターゲット政策)に転換したかのように見えてしまう(のでそういう報道が目立つのだが)のですが、その後の会見でとにかく強調しているのは「インフレ重視なのではなく、あくまでも雇用との両睨みで金融政策運営を行い、それに関しては色々なバランスを考えて実施する」と、雇用についてもイコールで重視するという点を繰り返し説明していますが会見ネタの所でまた詳しく。


第6パラグラフではその辺を説明しているのですけどね。

『In setting monetary policy, the Committee seeks to mitigate deviations of inflation from its longer-run goal and deviations of employment from the Committee's assessments of its maximum level. These objectives are generally complementary. However, under circumstances in which the Committee judges that the objectives are not complementary, it follows a balanced approach in promoting them, taking into account the magnitude of the deviations and the potentially different time horizons over which employment and inflation are projected to return to levels judged consistent with its mandate.』

まあ会見で強調したのはこの部分でありまして、恐らくここのパラグラフの趣旨をくみ取らないで、FRBは物価重視に傾斜したという風に受け止められるのは不本意ということなのでしょう。

即ち、金融政策は「インフレの長期的なゴール」および「FOMCが考える最大雇用レベル」からの逸脱を和らげるように設定するようにするのですが、この目的は一般的に補完的であるものの、仮にそれが補完的にならないケースであった場合には、どちらの逸脱がより経済に対して問題が大きいかという点や、物価、雇用それぞれの望ましい水準からの逸脱に関しての時間軸を検討し、それに対してバランスを取ったアプローチをとります。とか何とか言っているのですが・・・・・・・


つまりですね、まあ先週金曜に申し上げたように、金融市場的な観点で言えば、今回の「透明性向上」の中で如何なものかと思うのってあの「金融政策の先行き見通しの公表」と「フォワードガイダンス文言」のセット販売でありまして、現在はそのシステムがワークするから低金利政策の長期化期待みたいな感じになってウマーではありますが、期待が思いっきり反転した場合に債券市場がゲロゲロマーライオン相場になるリスクがありますね、って話なのですけれども、まあそれは債券市場で怪我人が続出するだけの話で実体経済的にはその時は望ましい状態にあるので、債券市場の人間が「あの逆さ絵オヤジは飛んでもねえわペテンハゲ許すまじ」と湯気を出すだけの話で、世間様的にはどうでも良いですわな。

しかるに、今回の表現明確化というパートに関して言えば、金融政策というか中央銀行のクレディビリティやアカウンタビリティという観点からすると、今回のデュアルマンデートの表現明確化は、望ましくない物価上昇と望ましくない雇用の悪化が同時に起きた場合に、そのどちらを捨ててどちらに注力するかという問題が生じた場合に、変に明確化してしまった手前、そうそう一刀両断にできなくなっている、という意味で先々の金融政策運営にリスクをもたらす可能性がある、という風にも思える次第です。

まあこの論点に関しては議長の記者会見では「あくまでもリスクバランスを見ながら適宜適切に運営する」というような感じで、決め打ち不能ですが何かという話をしていまして、要するに「ターゲット」などという言葉でイメージされるようなシステマティックな金融政策運営を行う、というような事ではないというのはほぼほぼ明確ではないかと思うのですけれども、どうせまあ世の中ってえのは公表文書を読むのではなく、ニュースのヘッドラインおよびニュースベンダーの話をそのまま読んで、「日本もインフレ目標導入を」社説のようなトンチキ話(別にインフレ目標導入するのがトンチキという訳では無く、その話のベースが全然FEDの発表内容を押さえていないという意味でのトンチキね)が横行するというのがハポンクオリティなのでありました。


○バーナンキ議長記者会見、堂々の35ページである

会見の映像もFRBのサイトのトップにありますが、再生するとどうも1時間かかるようです。
http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120125.pdf

あたくしが読んだのは初稿です(日本時間の1月30日の朝現在では上記URL先はまだ初稿になっていますが、最終的にはFINAL版に差し替えになる筈です)ので、引用等も初稿版で行います。

さてさて今回の会見ですけれども、まあ堂々の35ページ(会見映像は全部で1時間6分56秒ございまする)なのですが、まあとりあえず読むと大口叩いた手前読んでみた(つもり)のですが、いや実にこう面白いというかなんというかでありまして、この会見を細かく真面目にああだこうだとネタにしだしたら1週間分位平気で使いそうな勢いとなっております。

ということで、どこからどうネタにするかというのも難しいのですけれども、まずはこの会見全体的な印象とかでも。


・冒頭説明部分と記者への質疑応答部分で微妙に立ち位置を変えているバーナンキ議長

この35ページのうち、冒頭の説明が7ページ(14分弱)ありまして、その後が質疑応答になるのですが、質疑応答部分でのバーナンキ議長の受け答えは「FOMC議長としての答え」というよりは「バーナンキ委員個人としての意見表明」となっている部分が多々あるという感じでありまして、明らかに説明部分とトーンが異なるというような場面が見られました。

まあだからこそハト派っぽい内容の会見を受けて「追加緩和で資産買入(たぶんMBS購入)拡大ありうべし」という市場の認識になったと思うのですし、それはそれで狙ってやっているのだとは思いますが、翻って考えてみますと、例の金融政策の見通しチャートに見られるようにFRBの中では一部(というほど一部ではなく、2012年と2013年の利上げ開始を主張するのが6人もいる)の地区連銀総裁とボード(はハト派)の意見が必ずしもそろっていないという状況にあるのは明らかなので、コンセンサスの取れていないままの中で「FOMC議長」として会見に答えるというのも難しかったという事になろうかと思います。

いやまあ意見自体が分かれるというのはそらまあ普通にある話なのですが、利上げ時期見通しのあの豪快な分散っぷりもそうですし、2014年末の政策金利水準に関する予想の分かれっぷりがこれまた酷くてコンセンサスもへったくれも無いですし、大体からして(これは質疑応答で出ていましたが)平均値を取っても中央値を取ってもどう見ても利上げ開始済みです本当にありがとうございましたという数値になる中で「late2014」まで「異例の低金利」が継続されることが正当化されるというガイダンス文言の説明とかどうなってるのという話をおっぱじめた場合に、「議長」として話がしにくいのでしょうなと思うのでありました。

ま、このような「個人的見解の披露」が良いのか悪いのかという話ですが、こればっかりは今後の推移を見ていかないといけないと思うのですが、そもそも今回のように先行きに関する部分でのコンセンサスがちゃんと取れていなさそうな状況では話がしにくいっすからねえ。まああまり良い話では無いような気もするけど。


・声明文のガイダンス文言に関する謎について

声明文ではガイダンス文言のケツが従来のmid-2013からlate 2014になった訳ですけれども、その説明に関してはこれまた微妙に曖昧となっています。

金曜も引用しましたが、説明部分ではこのようになっています。7ページ目より。

『For example, based on current information, 11 participants expect that the appropriate federal funds rate at the end of 2014 will be at or below 1 percent while 6 participants anticipate higher rates at that time. In effect, those judgments are reflected in today's meeting statement in which the Committee indicated that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate at least through late 2014.』

金曜も申し上げましたように、これではガイダンス文言の期限が「現在の実質ゼロ金利政策の継続に対するガイダンス」ではなくて「1%以下のFFレート水準となっている期間に対するガイダンス」となっているという話になりまして、まあ確かに今までこのガイダンス文言における「exceptionally low levels of the federal funds rate」の定義を誰もしていなかったのでそういう意味ではほぼ全ての人(と思われますが)が勝手に誤解していたと言ってしまえばそれまでなのですが、普通こういうガイダンス文言が出た時には「実質ゼロ金利政策に対する時間軸政策のようなもの」というのを想像すると思われる訳で、なんちゅう衝撃の事実というか今までペテンに掛けていたんかいな(どうも米国市場はその辺を華麗にスルーしているのではないかという節があるのだが・・・・・)という話ですわな。

で、バーナンキさん個人の意見が多いと評判の(?)質疑応答コーナーではこんな話をしています。まずは19ページにこんなのがあります。これはバランスシート政策に関してどうなるのかの話が今回の発表でなかったのですがどのようになるんでしょうかという質問(質問は18ページ)に対する回答の一部になるのですけれども。

『And so one implication of our extension of our expected point of take-off to late 2014 is to imply that the initial sales from our balance sheet, which are again far down the road but--that begins that will be later than previously thought. That will be presumably in 2015. So we do expect to hold our balance sheet at a high level for a longer period.』

ということで、ここでは「離陸」がlate 2014になるので、バランスシートの最初の縮小(保有資産の売却)は従来の想定よりも遅くなり、恐らく2015年になるのではないでしょうか(だからバランスシートは長期間にわたって拡大した状態を保つ)、という話をしていまして、ここでの話ですと「late 2014までは利上げに着手しない」って発言しておりますので、先ほどの説明部分と話の整合性が取れていません。

更に20ページではこのような質疑があります。

『Robin Harding: Robin Harding from the Financial Times. Mr. Chairman, while I look at these forecasts for 2014, the median of the forecast is I think 0.75 and the mean is 1.12 percent. If I were to draw a line for these--these dots, how should I draw it so I best understand what the FOMC is most likely to do? And the second part, in the minutes, you say that the Committee will consider further options for improvements to the SEP, the economic projections. Could you tell us a bit more about what further you might do? Thank you.』

ということで、2番目(SEPの改善云々に関して)の所は引用をスルーしまして(一応申し上げますと、まだこれからも改善の余地があるか検討を続けますが今は特段のプランはありませんという話をしています)、前半の「2014年末の政策金利予想分布をみると中央値は0.75%で算術平均は1.12%に見えるけどFOMCはどういう政策をすると理解すればよいのか教えてください(つまり利上げってlate 2014よりも早くねえかっつことでしょ)とかいう質問に対しての所を引用するだよ。

『Chairman Bernanke: Well, again, I want to first I want to emphasize that there is no mechanical relationship between these projections and the outcomes of the FOMC decisions. Of course, they're a big input into those decisions but it's a collective decision. If you want to draw lines, my guess I would--I guess my suggestion would be to look at the median, the middle of the--of the distribution because we do have a democratic process in the Committee, and so the median will give you some sense of where the weight balances against the higher--in favor of higher or lower--lower rates.』

まず最初に先行きの金融政策について現在出している経済見通しに紐付けで行動する訳では無い(ので予想はコミットメントに非ずという事)という事を断りまして、このインプットはあくまでも集計物であるという話をしていますわな。で、算術平均と中央値のどちらを見るかと言えば、FOMCでは多数決で政策を決定するのですから中央値を見るのが適切です。その数値が低いのか高いのか−今回は低い金利を示していますけれども−を基にバランスシートの推移を想定するのが適切でしょう、という話をしています。

『Again, we did note that in support of our assessment of late 2014, which is a Committee decision and of course there was a 9 to 1 vote in favor of that, but that is supported by the observation that 11 of the 17 participants expect the funds rate at the end of 2014 to be 1 percent or less. And so presumably the take-off would not be much earlier than that.』

で、今回はlate 2014へのガイダンス文言の変更を行いましたが、これは「FOMC」の決定であり、9対1(リッチモンド連銀ラッカー総裁の反対が1票)によって決定されたものです。とまずは「17人の分布と声明文は別物ですがな」という話をしていますが、「そうは言いましても17人中11人が2014年末までの政策金利水準を1%以下と想定しているという事もこの声明文は受けているので、利上げ開始時期はlate 2014より極端に早くなるとは想定できませんよね」という風に付け加えています。


・・・・・・・ということでですな、何だか判ったような判らんような話なのですけれども、FOMCの決定でのガイダンス文言における「exceptionally low levels of the federal funds rate」が「現政策の継続期間」なのか「1%以下の低金利」なのかが結局曖昧なままになっているというのが見てとれる訳であります。

しかしですな、後者の理屈ってまさしく日銀が前回の量的緩和解除をした時の言い訳というか何というかの時にも使われていた話で、「量的緩和解除を行ってゼロ金利解除も行い、政策金利水準を0.25%にしましたが、この金利水準も十分に緩和的でありますので緩和的政策が継続されています」というような説明を思いっきりしていた事などを思い起こしますと、逆さ絵おじさんに福井俊彦先生が勝手に増殖して生霊が乗り移っているのでは無いか(水野審議委員(当時)とかも言ってましたな)と思ってしまう所でもあります(ここで「R田中いきりょう」とゆーネタを出して反応するのはオッサンの証拠^^)。

特に、中立金利水準が4%近辺という風に多くの委員が推測している、という米国の場合、「中立金利と比較したら今の金利は十分に緩和的」という理屈を前面に押し出して来ると明らかに市場との対話がおかしくなって来てしまいますので、そういう意味からするとこの説明はだいぶリスクを孕んでいるように見えます。

一方で「全員の分布は分布で、今回のガイダンス文言については10名のFOMC投票権メンバーで決めたものですから別物」という理屈を前面に押し出した場合、投票権メンバーのタカ派とハト派の分布が年に1回の輪番投票権の地区連銀総裁メンバーの交代の時期に大きく変わる可能性があるというFOMCの特徴からして、市場に期待させようとする時間軸効果のようなものが、急速に伸縮するリスクがあり、その度に金利市場のボラティリティ―を高めるリスクを孕んでいるように見えます。

つーことで、まあバーナンキさんとしてはこの点に関して曖昧なままにしておいた方が無難(曖昧にしておけばリスクが顕在化しそうになった方に関して「そんな事言いましたっけウフフ」ととぼけるという技が使えるでしょう)という所なので、敢えてこの辺をワケワカランチ会長な状態になるような説明になっているのかと思いますがどうでしょうかね。


・インフレ「目標」に関連する論点は明日にでも

・・・・・・ということで、上記のネタをああでもないこうでもないと書いただけで見事に時間が無くなったので本命の「デュアルマンデートの理解」に関する部分については残念ながら明日以降送りと相成るのでありました。どうもすいませんすいません。

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2012/01/27

お題「FOMCレビューのレビュー」

dongfang99さんの最新エントリーに同意。というかどうもあたくしが書くとただの悪態になってしまうんですよねえこの手のネタで(汗)。

http://d.hatena.ne.jp/dongfang99/20120126
2012-01-26 「身を切る姿勢」は泥沼の道

そもそも全国的な大メディアとかがこういう主張をすれば「身を切る姿勢」みたいな政治家の動きって起きないと思うのであります。

さてさて、日本の金融政策決定会合のレビューが全然進んでおりませんが、そういう所はスルーしまして(つーかBOEの議事要旨も出ているのですが、汗)今回のFOMCネタはあまりにもオモシロスで、ツッコミネタで1週間くらい駄文のネタになりそうな勢いでありますので、まあ今日はFOMCレビューの続き。

でですね、今回は会見がかなりのポイントになるのでTranscript早く出てほしい(会見は全部聞くと1時間あるのでさすがにあたくし趣味とは言え無理無理)と思ったら、昨晩のうちにTrancriptの初稿が出たようでございますので、使える所が見つかったら適当に引用してみます。

http://www.federalreserve.gov/mediacenter/files/FOMCpresconf20120125.pdf
35ページあって冒頭説明部分が9ページ、残りが質疑応答なので正直これは週末のんびりと読む用である(汗)。


○全員の金融政策見通しを出すのはどう見てもやり過ぎです

例のこれ↓ですが。

http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120125.pdf
Economic Projections of Federal Reserve Board Members and Federal Reserve Bank Presidents, January 2012

まあ昨日もああだこうだ申し上げましたが、やはり今回の「透明性の向上」はどう見てもやり過ぎです本当にありがとうございましたとしか申し上げようがございません。

つまりですね、昨日も申し上げましたように今回は2014年の遅くまで「異例の低金利政策」が継続するというガイダンス文言があるのですが、一方で利上げ見通しを見ると2012年利上げの人間が3人いるという状況になっていますわな。まあ大体その3人って誰ですねんと言うとガイダンス文言のmid-2013変更時に反対していた3人じゃネーノとか想像できる(あとタカ的というか物価重視の人としてはラッカー総裁(今回反対票を入れた人)とかジョージ総裁(セントルイスのホーニッグ総裁の後釜)とかもそんな感じですかな)のですが(^^)、何だかなあという感じですよね。

まあ何ですな、今回どうせ手前の利上げ予想出したのは投票権のない地区連銀総裁連中でして、投票権がある人のトータルで言えば2013年の利上げ予想がいるかいないか程度の世界だと思われますので、金融政策の決定および声明文の作成という意味では、「Late2014」までの「異例の低金利政策」継続(で、この「異例の低金利政策」の定義が実は微妙なのかもしれないというオソロシスな事案があるのですがそれはあとのほうで)というのと整合的ではあるのですが・・・・・・・

・論点その1:これメンバーが変わったらどうなるの??・

まあこれは皆様予想すると思いますが、例えば去年これを出した場合にガイダンス文言が変更できたのか、というとかなり怪しいという事になりますよね。つまり、投票権をもつ地区連銀総裁のローテーション次第で先行きの見通しは変わってくるという話で、その先行き見通しに基づくガイダンス文言はメンバーの入れ替わりの際にぶれる可能性が出る、ということですわな。

ある意味当たり前っちゃあ当たり前なのですが、足元の金融政策決定に関してはそれなりに皆さんの意見って揃うと思うのですが、先行きに関して言えばこの前引用した地区連銀総裁の講演とか(ウィリアムスとラッカーは途中でしたが)を見ますと、そもそも現在の経済状況、物価状況に関する背景メカニズムに対する認識も違うのですから先行き見通しのブレは大きくなります罠。

で、今回の先行き金融政策見通しの分布をみれば明らかなように、その地区連銀総裁の意見を全然集約していないというか纏めきれていない中で、ハト派執行部(バーナンキ、イエレン、ダドリー)が今回押し切った(というか出す出す詐欺状態だからそろそろ行かざるを得なくなったというのもあるでしょうが)結果今回の公表となったのでしょうが、これですとメンバーが入れ替わる度に、先行きのガイダンス文言がぶれる可能性がある訳ですよね。

つまりですな、そもそも先行きの政策金利パスについて金融市場の期待を安定化させようというのがフォワードガイダンス文言の設定とか、金融政策見通しの公表とかという事だと思うのですが、そのベースにはFOMCとしての見方がある程度集約されていてブレが少ないというのが前提として有った方がどう見ても良い訳ですよ。つまり先行き見通しがホイホイとぶれるとなった場合って、当然ながら見通しって先に行けば行くほどブレが大きくなるのですから、市場の期待安定化じゃなくて却って不安定化になってしまうリスクを大きく孕んでいると思うのですよ。


・論点その2:この建付けって今だけしか使えないんじゃないの?

ということでありますので、そもそも他の中銀のように毎月のように決定会合をやっている訳では無いFRBで、しかも景気見通しが思いっきり変わる(去年の出口モードから緩和モードへの豹変やるや凄まじかったですわな)という人たちが「先行きの見通しを出して市場の期待を安定化させるお!」とか言うのは、まあ時間軸政策を身を切って体験しているあたくしどもからすると「はいはいワロスワロス」という感じでありまして、これ現在の「まあ経済はそうホイホイとは立ち上がらないし物価は上がらないでしょ」という低位安定状態と思われる状況ならばワークしますけれども、たとえば物価が上昇してみたり(つーか11月のPCE物価指数って前年比+2.5%なんですけど)した場合とか、ちょっと良い感じの経済指標が続いた場合(まあ所詮バランスシート制約のある中では「偽りの夜明け」なんですけど)とかに、足元の見方がぶれるのの数倍の振幅で先行き見通しがぶれる可能性が高いというのが従来のFRBの仕様ですからからして、何かエライコッチャのゲロゲロマーライオン相場が起きそうな悪寒。

つまりですな、この建付けって今の「低金利政策継続」フェーズではワークすると思いますが、正常化モードに入ろうとなった場合には出口モードの際に期待が思いっきり反転する結果としてボルケイノーがエクスプロージョンして素敵なゲロゲロマーライオン相場を誘発する楽しい未来が起きそうで、「足元の安定化の為に先行きのリスクを蓄積する」という金融政策的にどうなのよという形になりそうな悪寒がするんですけどねえ。

よって「これで市場の安定化」とか言っている人は目先しか見えてませんがなという話なのですが、まあマーケット的に言えば別にその先のゲロゲロマーライオンの話をしても話が早過ぎであって、目先は確かに安定するんでしょうけれども、中央銀行の政策フレームの建付けとして「目先だけワーク」というのは如何なものかと思うのですよね。

まあ出口を意識しだした途端に「コミュニケーションポリシーの改善(キリッ)」とか言っていきなりこの政策フレームを平然と反故にするに1万バーナンキなのですけれども、FEDの信認低下につながらないかという気はする。


・論点その3:そもそも17票を同等に扱う必要があるのか

まあ皆様ご案内の事とは思いますが。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomc.htm

『Structure of the FOMC』から。

『The Federal Open Market Committee (FOMC) consists of twelve members--the seven members of the Board of Governors of the Federal Reserve System; the president of the Federal Reserve Bank of New York; and four of the remaining eleven Reserve Bank presidents, who serve one-year terms on a rotating basis. The rotating seats are filled from the following four groups of Banks, one Bank president from each group: Boston, Philadelphia, and Richmond; Cleveland and Chicago; Atlanta, St. Louis, and Dallas; and Minneapolis, Kansas City, and San Francisco. Nonvoting Reserve Bank presidents attend the meetings of the Committee, participate in the discussions, and contribute to the Committee's assessment of the economy and policy options.』

ということで、FOMCは理事7名(現在2名欠員)とNY連銀総裁がレギュラーの投票権者で、残りの4名が地区連銀総裁で、12の地区連銀のうちNY以外の11の地区連銀から4名がローテーションで回るので、まあ大体3年に1回(私信:ローテーションの組み分けが4つあるとか書いてあるので昨日はついうっかり4年に1回とか勘違いして世間話してたわ、リアルのお知り合いの皆さんどうもすいませんすいません)投票権が回ってくる訳でして、つまりNY以外の地区連銀は実質3分の1票しか票決としての力は無いのですよね(議論には参加する)。

つまりですね、BOEやECBや日銀みたいに、MPCに参加する委員が同等の投票権を持っている訳では無いというのがFRBの建付けになっている訳でして、17人(理事の欠員が補充されれば19人)の中でも票の重さが違う訳ですから、金融政策決定という事を考えた場合には、本来はこの17のドットに対してウェイトのコントロールが必要なのですよね。

然るに今回は全員の見解を同等に扱っている(まあそうしないと個人が特定されやすくなってそれはそれで不味いのですが)ので、そらまあ声明文あるいはFOMCの政策決定として出すリリースとこの分布表が違ってくるわなという話ですよね。特にボードのグリップが弱い現在のFOMCでは。

となりますと、ミスリードもさることながら政治的にいちゃもんつけられるリスクもある訳でして・・・・・・・


・論点その4:ウォールストリートVSメインストリート

これね、要するに地区連銀総裁全員の意見を平等に扱うと必ずしも現在のFOMCのハト派的なスタンスではないですよ(そらまあボードの3人がハトなのだから当たり前ですけれども)という話になるのですが、もしあたくしが共和党タカ派でもやっているとしたら、「地区連銀というメインストリートに接している人たちの意見を現在のFRBのボードメンバーは軽視している!!メインストリートが物価上昇を懸念しているのにウォールストリートは金融業界の利益の為に低金利政策の長期化やバランスシートの拡大を実施している!!!ケシカラン!!!!」とか何とか難癖つけるのに絶好の素材としか申し上げようがない訳ですよ。

そらまあ米国は多様で、地域によって色々と経済の状況も構造も見方も課題も違って来るんでしょと思う所でありますので、最終的はやはり全体を見て決定するのが妥当だと思いますからして、別に現在のFOMCの建付けが悪いとは思わないのですけれども(少なくとも今までそれでワークしてるんですし)、こうやって「地区連銀VS執行部」みたいな構図をあからさまに出してしまうのは政治的にあまり良策とは思えないのですけれどもどうなんでしょうね、と思いましたです、はい。


などと書いていたら時間がアレになったのでさっきちょっと申し上げた件に付いて。



○ガイダンス文言の「異例の低金利」って1%以下なのか????

Transcriptの最初の所を超斜め読みしてて何か微妙な物に気が付いたのだが・・・・・

バーナンキ議長の冒頭説明部分になりますが、さっきのTranscriptの7ページ目に今回の「政策金利パス」への説明があるのですけれども。

『In the chart labeled appropriate timing of policy firming, each shaded bar indicates the number of Committee participants who judge that the initial increase in the target federal funds rate would appropriately occur in the specified calendar year shown below the bar.』

さいだすな。

『Six participants anticipate that policy firming is likely to commence in 2015 or 2016 while five others depict policy firming to commence in 2014. The remaining six participants judged that policy lift-off would be appropriate in 2012 or 2013.』

これは棒グラフの分布についての説明ですわな。

『In that chart, the dots depict the distribution of participants' assessments regarding the appropriate level of the target federal funds rate at the end of each of the next several years and over the longer-run.』

これは金利水準のドットが打ってある方のグラフの説明ですな。0.5%越えが過半数なのに何で「2014年の遅くまで異例の低金利を続ける」なのか意味判らんと昨日悪態を申し上げた件ですにゃ。

『For example, based on current information, 11 participants expect that the appropriate federal funds rate at the end of 2014 will be at or below 1 percent while 6 participants anticipate higher rates at that time.』

・・・・・・・・・1%だと???????

『In effect, those judgments are reflected in today's meeting statement in which the Committee indicated that economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate at least through late 2014.』

ちょwwwwwおまwwwwwww何というペテン説明。1%以下は全部「異例の低金利」(いやまあ中立金利水準が4%〜4.5%だと言うのであればそらまあそうでしょうけれども)だったらガイダンス文言がそもそも「ゼロ金利政策の継続を示唆」じゃねえじゃねえかよ市場を思いっきり誤解させてるじゃねえかよおいおいおいという感じですが、他の質疑応答とかも読まないと良く判らないのでそれは週末に読むとしてとりあえず判断保留。


#ほかにも色々ネタがあったのですが時間が無いので勘弁(残念)

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2012/01/26

お題「FOMCレビューですが中々ツッコミどころがありますなあ」

市場の反応はとりあえず株高債券高ドル安ですが・・・・・
http://www.bloomberg.co.jp/markets/index_americas.html

日本時間朝6時にこの画面から取った数字です。

NYダウ 工業株30種 12,776.10 100.35 0.79
S&P 500種 1,326.06 11.41 0.87
米国10年国債 1.993 -0.067 100.062
米国30年国債 3.135 -0.014 99.797
EURUSD 1.3117
USDJPY 77.6820

#なお、東電関連の記事が日経に出ているとモーサテが言ってましたが見ている暇はないのでスルー

まずは声明文から。
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120125a.htm(今回)
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20111213a.htm(前回)

○声明文比較:経済認識部分ではやや下方修正&インフレの安定を指摘

今日の比較は(他の出し物があるので)結構ざっくりと書いてしまうので正直申し訳ないですが(汗)、第1パラグラフから。

『Information received since the Federal Open Market Committee met in December suggests that the economy has been expanding moderately, notwithstanding some slowing in global growth. While indicators point to some further improvement in overall labor market conditions, the unemployment rate remains elevated. Household spending has continued to advance, but growth in business fixed investment has slowed, and the housing sector remains depressed. Inflation has been subdued in recent months, and longer-term inflation expectations have remained stable.』(今回)

『Information received since the Federal Open Market Committee met in November suggests that the economy has been expanding moderately, notwithstanding some apparent slowing in global growth. While indicators point to some improvement in overall labor market conditions, the unemployment rate remains elevated. Household spending has continued to advance, but business fixed investment appears to be increasing less rapidly and the housing sector remains depressed. Inflation has moderated since earlier in the year, and longer-term inflation expectations have remained stable. 』(前回)

パラグラフいきなりまる引用で恐縮ですが、まず基本的な経済認識に関しては「economy has been expanding moderately」というのを変えておりません。

前回との変化を順にみると、まずは海外経済に関しては「apparent slowing」所のapparentが抜けていますがまあ比較的それはどうでも良さそう。労働市場の改善に関して「some further improvement」とfurtherというのを加えて改善が進んでいる事を示しているのは上方修正。その一方で企業の投資活動に関して「growth in business fixed investment has slowed」としているのが下方修正です。

でまあ今回一番あたくしがこのパラグラフで注目したのはインフレの部分で、「インフレはこの数か月は抑制されている(has been subdued)」としておりまして、まあこちらはFOMC的には結構な傾向という所でしょう。


第2パラグラフは先行き見通し。

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee expects economic growth over coming quarters to be modest and consequently anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. Strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. The Committee also anticipates that over coming quarters, inflation will run at levels at or below those consistent with the Committee's dual mandate.』(今回)

『Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee continues to expect a moderate pace of economic growth over coming quarters and consequently anticipates that the unemployment rate will decline only gradually toward levels that the Committee judges to be consistent with its dual mandate. Strains in global financial markets continue to pose significant downside risks to the economic outlook. The Committee also anticipates that inflation will settle, over coming quarters, at levels at or below those consistent with the Committee’s dual mandate. However, the Committee will continue to pay close attention to the evolution of inflation and inflation expectations.』(前回)

長くて正直スマンカッタですが、ここについては途中までは微妙な表現の変化(意味では無くて語順のすわりの関係とか)はあるものの、前回と同じでして、「今後数四半期に渡って米国経済は緩やかに成長し、失業率のマンデートと適合する水準に向けての低下は極めて緩やかとなるでしょう」「グローバルな金融市場のストレスは経済の先行き見通しに顕著なダウンサイドリスクを与える」となっています。

で、こちらも1パラと同じですが、物価に関しての表現が、前回の「インフレは今後数四半期に渡ってマンデートで適正とされる水準あるいはそれ以下に落ち着くでしょう(will settle)」という部分が「インフレは(以下同文)推移する(will run)でしょう」となって、インフレが落ち着いているという事を強調しています。

更に今回は「FOMCはインフレの動向およびインフレ期待の動向に細心の注意を払っています」という一文を削除しまして、インフレに関する懸念文言を削除した格好となっておりまして、インフレが落ち着いているという認識を示しているのが経済部分でのポイントになるかと思います。


○声明文比較続き:バランスシート政策中心から時間軸(のような)政策へ+ガイダンス文言1年延長だが・・・・

で、ここで大きく変わっているのは第3パラグラフと第4パラグラフの構成でして、従来は第3パラグラフで「資産買入がどうのこうの」という話をしていまして、第4パラグラフで「FFレートを維持して低金利政策をガイダンス文言で示す期間継続するものと予想しています」という時間軸もどきを入れていたのですが、今回は第3パラグラフと第4パラグラフの順番をひっくり返してきました。

つまり、今回の目玉政策は時間軸政策(のようなもの)である、という事ですな。

よって第3パラグラフの比較は途中から前回の第4パラグラフとの比較になります。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with the dual mandate, the Committee expects to maintain a highly accommodative stance for monetary policy.』(今回)

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with the dual mandate, the Committee decided today to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September. 』(前回)

前半の所はエイエイオーみたいな文言なのでどうでも良いのですが、後半にありますように、従来は「このためにFOMCは資産買入をどうのこうの」という表現だったのが、すんなりと「FOMCは極めて緩和的な金融政策スタンスを維持するでしょう」と変更しています。で、その次が今回から「金利」の話になりまして、ちょうど日銀の決定会合でも最終パラグラフの語順に変化があったのに侘び寂びを感じましたけれども、ちょうど同じ事やってて朝からニヤリであります(^^)。

『In particular, the Committee decided today to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through late 2014.』(今回)

ここは前回の第4パラグラフの相当する部分から比較します。

『The Committee also decided to keep the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and currently anticipates that economic conditions--including low rates of resource utilization and a subdued outlook for inflation over the medium run--are likely to warrant exceptionally low levels for the federal funds rate at least through mid-2013.』(前回)

ガイダンス文言の「資源の活用状況の低さや、中期的なインフレ見通しが抑制されているという経済状況から、異例に低いFF誘導水準の維持がいついつまでに続く事が正当化されるとFOMCは予想している」という部分は同じなのですけれども、そのケツが今回「2014年の遅い時期まで」となりました。


・・・・・・でですな、まあ今回は時間軸効果(のようなもの)を出して市場金利を低めに維持したいからという事なのでしょうが、FF先物とかを見た感じだと市場の推計で利上げ時期は2014年の前半という風に計算される事を勘案して、(これはFOMCが最近何か出す時のいつものパターンですが)それよりもちょっと緩和的な数値として出してきた、という結果になっていると思います。

しかしですな、これ酷いと思うのは、本日同時に出ているもう一つの目玉商品である所の「利上げ予想時期」「FF誘導レートの予想水準」という内容と全然整合性が取れていませんで、何考えてるんだこれとしか申し上げようが無いんですけど、その点に関してはまあ後で。


第4パラグラフから。

『The Committee also decided to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September. The Committee is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate to promote a stronger economic recovery in a context of price stability.』(今回)

前回の第3パラグラフを引用します。

『To support a stronger economic recovery and to help ensure that inflation, over time, is at levels consistent with the dual mandate, the Committee decided today to continue its program to extend the average maturity of its holdings of securities as announced in September. The Committee is maintaining its existing policies of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction. The Committee will regularly review the size and composition of its securities holdings and is prepared to adjust those holdings as appropriate.』(前回)

まあ強いて言えば最後の部分に「to promote a stronger economic recovery in a context of price stability」というのが入っているのが違いですが、ここに関しては前回あった第5パラグラフがばっさり削除されていまして、大体まあこの部分を一文にしましたちゅう所でしょうか。一応今回公表された「デュアルマンデートの理解」を意識したのかもしれませんが。

『The Committee will continue to assess the economic outlook in light of incoming information and is prepared to employ its tools to promote a stronger economic recovery in a context of price stability. 』(前回)



○声明文比較さらに続き:反対票はラッカー総裁でガイダンス文言に反対

前回まで追加緩和を主張していたシカゴ連銀エバンス総裁は投票メンバーから外れています。

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Dennis P. Lockhart; Sandra Pianalto; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; John C. Williams; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Jeffrey M. Lacker, who preferred to omit the description of the time period over which economic conditions are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate. 』(今回)

『Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; Elizabeth A. Duke; Richard W. Fisher; Narayana Kocherlakota; Charles I. Plosser; Sarah Bloom Raskin; Daniel K. Tarullo; and Janet L. Yellen. Voting against the action was Charles L. Evans, who supported additional policy accommodation at this time.』(前回)



○経済見通しはやや下方修正かなあ(???)利上げ見通しは・・・・・・

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120125b.htm

『The Federal Reserve Board and the Federal Open Market Committee on Wednesday released the attached table and charts summarizing the economic projections and the target federal funds rate projections made by Federal Reserve Board members and Federal Reserve Bank presidents for the January 24-25 meeting of the Committee.』

ということで付表がこちら。
http://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/files/fomcprojtabl20120125.pdf
Economic Projections of Federal Reserve Board Members and Federal Reserve Bank Presidents, January 2012
Advance release of table 1 of the Summary of Economic Projections to be released with the FOMC minutes

ということで、この表をさっさとペタペタ貼るスキルが無いので(すいません)まあ表はURL先を見てちょという所ですが(汗)。


・経済見通しはやや下方修正ちゃあ下方修正かな

経済見通しに関してですが、前回(11月頭)との比較が書いてあるから大体わかるかと思いますが、2013年の所の見通しではGDPがやや下がって失業率もやや下がってインフレはほぼ変わらずという感じ。全体および中心的な見通しのバランス(数値でも良いし次のページのファンチャートの方を見ても良い)とGDP見通しは前回がレンジ内でやや下方寄りだったのが中心に揃った感じで、失業率は全体のレンジは下がりましたがファンチャート的には中心が上に寄る形に変わっているのでそういう意味ではそんなに強気になった感は無いです。インフレに関してはレンジの上の方が抜けていましてこちらは落ち着いているという認識でしょうな。

・長期的な物価水準がピンポイントに

これは次にネタにする「デュアルマンデートの理解」の部分に繋がりますが、従来こちらで示されている「Longer run」のPCEインフレーション前年比がレンジだったのですが、今回から2.0%とピンポイントになりまして、「長期的に望ましい物価水準」をピンポイントで示すようになったという所です。詳しくは後で。


・政策金利見通しが声明文のガイダンス文言と全然整合性取れないのですが・・・・・・(-_-メ)

つまり逆に言えば、ガイダンス文言で2014年遅くまでとかいうのを入れなかったら今回米国債券市場絶賛ゲロゲロマーライオン相場になっていた可能性がオオアリクイだと思うのですけどね。

PDFの3ページ
Figure 2. Overview of FOMC participants’ assessments of appropriate monetary policy

Appropriate Timing of Policy Firming & Number of Participants

2012:3
2013:3
2014:5
2015:4
2016:2

・・・・・・ちょwwwwww2012年利上げが3人で2013年利上げが3人って17人中6人が2013年中の利上げを予想していて何でそのガイダンス文言になるのよ。

Appropriate Pace of Policy Firming

2014年末時点での分布をみると0.5%以下になっているのがどう見ても8人(2015年以降の利上げの人が6人に2名がプラス)しか居ないようにしか読めないのですが、これで何であのガイダンス文言になるのか訳わかんないんですけど。

あとこれもややびっくりしたのは「Longer run」のFFレート水準でして、3.75%なのが1名で残り16名は4%〜4.5%の水準を示していまして、まあこの水準って要するに「中立金利」という数字だと思うのですが、精々3%程度だと思っていたのでちとビックリでありましたが、まあ米国市場は今回こっちの数字はあんまり気にしていないようですけど、またぞろ景気強気モードになった時に話がややこしくなりそうな悪寒も。

・・・・・ということで、FF金利水準に関する数値は何か結構強いの出てないか、と思いました。


○デュアルマンデートの理解ですかそうですか

http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20120125c.htm

『Following careful deliberations at its recent meetings, the Federal Open Market Committee (FOMC) has reached broad agreement on the following principles regarding its longer-run goals and monetary policy strategy. The Committee intends to reaffirm these principles and to make adjustments as appropriate at its annual organizational meeting each January. 』

最近のFOMCにおける慎重な討議の結果、デュアルマンデートでの長期的な目標に関して幅広い合意が取れました。この内容に関しては毎年1月(地区連銀の輪番投票メンバー交代時期)に見直します。

・・・・・ということですので、ロイターが今回「インフレ目標導入を発表」とか言ってますが(ちなみにブルームバーグはスルーしています)、どちらかと言えば「コンディショナルコミットメント」とかに近い従来の延長線上のもので、「インフレ目標導入」というヘッドラインで想像されるものとはちと違うと思うのですけどね。ロイターのニュースはこちらです(『米FRB、2%のインフレ目標導入を発表』2012年 01月 26日 04:30 JST)


でまあそちらの記事はどうでも良いのでリリースの続き。

『The FOMC is firmly committed to fulfilling its statutory mandate from the Congress of promoting maximum employment, stable prices, and moderate long-term interest rates. The Committee seeks to explain its monetary policy decisions to the public as clearly as possible. Such clarity facilitates well-informed decisionmaking by households and businesses, reduces economic and financial uncertainty, increases the effectiveness of monetary policy, and enhances transparency and accountability, which are essential in a democratic society.』

マンデートをより明確にする事が良い事ですというような話でありますな。

『Inflation, employment, and long-term interest rates fluctuate over time in response to economic and financial disturbances. Moreover, monetary policy actions tend to influence economic activity and prices with a lag. Therefore, the Committee's policy decisions reflect its longer-run goals, its medium-term outlook, and its assessments of the balance of risks, including risks to the financial system that could impede the attainment of the Committee's goals.』

インフレにしても雇用にしても短期的には振れのあるものですので、我々が政策決定の中で考えるのは「経済のリスクバランスなどを踏まえた中期的な見通しに基づき、長期的な目標を達成できるか」ということです。と、まあ普通に当たり前の話をしていますが、これはつまりまあコンディショナルなターゲットって感じでありまして、そんなにリジットな話をしている訳ではありません。まあそんなのインフレターゲットやっててインフレ数値がターゲットから上振れていても追加緩和しているBOEの政策とか見れば世界標準ではありますけれども。

で、インフレに関して。

『The inflation rate over the longer run is primarily determined by monetary policy, and hence the Committee has the ability to specify a longer-run goal for inflation. The Committee judges that inflation at the rate of 2 percent, as measured by the annual change in the price index for personal consumption expenditures, is most consistent over the longer run with the Federal Reserve's statutory mandate. Communicating this inflation goal clearly to the public helps keep longer-term inflation expectations firmly anchored, thereby fostering price stability and moderate long-term interest rates and enhancing the Committee's ability to promote maximum employment in the face of significant economic disturbances. 』

長期的な(つまり足元の一時的な変化ではない)インフレは金融政策によって主に決まるものであるからして、FOMCは長期的なインフレのゴールに対して特定する能力があります(つまり足元の一時的な変化ではない長期的なインフレは金融政策によって決定される、という白川総裁涙目の指摘ではありますな、ニヤニヤ)。

ということで示された数値は「PCE物価指数」(コアでは無くて総合ですけど、長期的な観点で言えば総合の方が一般的でしょう。コアって要するに短期的な変動の大きい項目を除外して考えるという為のものですから長期的な観点となると総合の方が普通となる訳)で「前年比2%の物価上昇率」が「長期的な望ましい水準」である。と今回明示した形になっていますが、まあこれは先ほど申し上げましたように、SEPにおける「Longer run」の物価水準と同じになりまして、従来この数値がレンジで示されていた物がより明示的になったという事ですが、ただまあFEDの高官からの発言としてほぼ全ての委員からPCE物価指数で前年比2%という数字は示されていたので、そういう意味では現状追認という所ですな。


失業率に関して。

『The maximum level of employment is largely determined by nonmonetary factors that affect the structure and dynamics of the labor market. These factors may change over time and may not be directly measurable. Consequently, it would not be appropriate to specify a fixed goal for employment; rather, the Committee's policy decisions must be informed by assessments of the maximum level of employment, recognizing that such assessments are necessarily uncertain and subject to revision.』

一方で最大雇用のレベル(要は自然失業率)に関しては金融政策以外の労働市場における構造要因などにもよって変わりますし、その水準に関してはその時々で変化し、しかも直接に測定できませんので、雇用に関する明示的なゴールを設定するのは適切ではありません。

『The Committee considers a wide range of indicators in making these assessments. Information about Committee participants' estimates of the longer-run normal rates of output growth and unemployment is published four times per year in the FOMC's Summary of Economic Projections. For example, in the most recent projections, FOMC participants' estimates of the longer-run normal rate of unemployment had a central tendency of 5.2 percent to 6.0 percent, roughly unchanged from last January but substantially higher than the corresponding interval several years earlier. 』

ということで、こちらの数値に関してはSEPで示す「Longer run」の数値を見て下さいとなっていまして、今回で言えば5.2%〜6.0%ですが、SEPでのFOMCメンバーの見通しを見れば判りますように、向こう数年間(というか2014年までは)この水準よりもかなり高い水準にあるという予想になっています(ので緩和的な金融政策を継続するのが妥当であるという話でしょうな)。

『In setting monetary policy, the Committee seeks to mitigate deviations of inflation from its longer-run goal and deviations of employment from the Committee's assessments of its maximum level. These objectives are generally complementary. However, under circumstances in which the Committee judges that the objectives are not complementary, it follows a balanced approach in promoting them, taking into account the magnitude of the deviations and the potentially different time horizons over which employment and inflation are projected to return to levels judged consistent with its mandate.』

ああだこうだと仰せですが、デュアルマンデートに関してはどちらが主でどちらが従と言うものではなく、この双方のバランスを取りながら運営していきますよという話をしているようで、物価に関してピンポイントな数字を出して失業の方で出さないからと言って失業をスルーして物価専念するというような事ではありませんよ。という説明をしているように読めますがどうでしょうかね。

ということで、まあ確かに数値をどどーんと出したのは新しい変化ですが、今回の「明確化」に関しては従来の延長線上であって、「インフレ目標を導入!!!」というような感じで報道するのはちと違和感がありますな。つーかこの辺に関する「理解」みたいなものってほぼほぼ先進国では共通っぽい気がするんですが(出来上がりの実績は兎も角として^^)。

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2012/01/23

金曜にネタが無いのでとか言ったのが何かのフラグになったようで(^^)。

○基金短国買入が盛大に札割れ

金曜日のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120120.htm

で、その中の
国庫短期証券買入(資産買入等基金) 2,000 2012年1月25日

がアレでございましたのよね。その結果はこちら
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120120.htm

国庫短期証券買入(資産買入等基金) 323 323 0.000 0.000

・・・・・・2000億円の買入予定に対して応札が323億円しか入らず貫録の札割れとなっている訳ですが、そもそも火曜日に実施された1年TB入札が投資家と思われる応札がドカンと入って業者が玉不足になってショートカバーの買いで火曜日に0.085%だの何だのというレートまで買われる事態になったというのはこの辺にも書いた話でして、水曜の3MTB入札だってテールは0.10%乗りましたけれども按分6%とかでして(その時のメモはこちら)、短国が悉く普通に市場で0.10%割れで売れるという状況になっている状況であったんですよね。

で、基金買入はご案内のように0.10%という利回りからの利回り較差入札(ただしマイナス応札は不可)という仕切りになっておりますので、そうなりますと「市場で普通に0.10%割れで売れるものを何で売りますねん」となって札が323億円しか入りませんでした、つーかまあ入っただけアリガタヤという感じでございますが、そもそも市場実勢から考えたら応札入らなくて派手に札割れするのって入札オファーするまでも無く見え見えだったので、正直あたくしそもそも金曜日に基金短国買入があるとは思ってなかった位でありまして、市場的にも打たなくても別に誰も驚かなかったと思うのですよね。

・・・・・とまあそういう事で、わざわざ盛大に札割れするのが見え見えのタイミングで基金短国買入を打ち込んで来た理由というのを一々妄想したくなるのがドラめもんクオリティなのでありまして、まあいくつか考えてみる訳なのよ(^^)。

(1)札割れタイミングに堂々打ち込んで札割れさせることによって「これだけ買入を行っても市場が要らないって言うんですよ基金拡大も限界ですねえ」とアピールしたい

(2)本当は札割れするのも困るのだが、基金短国買入をそもそもオファーしないのもスケジュール的に問題なのでダメ元でオファーしてみたらやっぱり割れた

(3)特にその辺気にせずにいつも通りに1年TB入札の後にオファーをした

・・・・・つまり「わざと割った」「割れると思ったけれどもオファーした」「素でやっちまった」の3択のような気がしますが(^^)、まあまさか素でやっちまったという事は日銀のヒアリング能力的に有り得ないですから、わざとかどうかは兎も角として玉砕オファーをしたんでしょうなあとは思いますが、しかしまあ週明けに金融政策決定会合がある所で短国とは言え基金の買入オペの国債モノで盛大に札割れ発生とかタイミング的にお洒落にも程がありますわな。


さて、そもそも基金買入ってどういう仕切りになっていましたっけという話でございますが、直近では10月27日に買入の拡大を行っていまして、その時のリリースの別紙(下記URLの3ページ目)にありますように、
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111027a.pdf

国庫短期証券は4.5兆円の買入で『2012 年末を目途に増額を完了する。』となっています。

つまりですな、基本的には(輪番オペと違って)この買入自体は別に定例で買入を行わなければいけないとかゆー話では無くて、今年の年末時点で国庫短期証券の買入残高を4.5兆円に持っていくのが目標という事になっています。

ただですな、現状でこの残高どーなってますかと申しますと、これは営業毎旬報告を見ると残高は判る(銘柄後毎なら月次)わけでして、

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120110.htm/
営業毎旬報告(平成24年1月10日現在)

の別紙2の所を見ると『「資産買入等の基金」の内訳』っつーのがありますな。

(単位:千円)
長期国債 2,909,238,406
国庫短期証券 2,682,462,304
コマーシャル・ペーパー等 1,817,434,794
社債 1,529,821,137
指数連動型上場投資信託 829,099,465
不動産投資信託 66,013,825
共通担保資金供給オペレーション 32,024,900,000
合計 41,858,969,933

ということですので、短国の買入残高って2.68兆円しか無いのですよね。そしてそもそも短国は償還まで1年以内なのですからして、実を言えば1月10日時点での短国の残高って全て1年以内に償還になる物でして(この時点で一番長いのが12月償還物だから)、これからせっせと4.5兆円買っていかないとならない(しかもその間に年内償還物が打ち込まれたら再度買わないといけない)という中々素敵な状況になっている訳ですよね。

そして初の2013年償還物が打ち込まれる基金短国買入が貫録の大札割れとなるという事で、基金オペの目標未達への暗雲がモクモクと入道雲状態となっているというのが金曜のオペ結果でしたなあという事で、それを何も年初一発目の決定会合直前にやらんでもと思う訳で、札が入りそうもないのはほぼ自明というタイミングでわざわざオファーをする必要があったのかね(さっき申し上げたように別にオペを定例的にオファーしないといけないというコミットをしている訳では無くて、コミットしているのは今年の年末の買入残高だから)と思うのでありました。


つーことでですな、基金短国買入残高積み上げ大丈夫かねとかなっちゃいますと、ではどうすれば残高積みあがるんでしょという話になるのですが、ご案内の通り直近では3か月TBを毎週9000億円絶賛大増発しているのにこの有様ということですから、財務省にお願いして(??)もっと絶賛増発して貰うとか、1年TB(普通にやっていると基金短国買入の対象銘柄は1年TBになる)をもっと増発して貰うとかしないと話が始まらんですなあ(ニヤニヤ)という感じですわな。

まあ短国買入の積み上げの為にレギュラーの資金供給オペを絞るとか本末転倒ですし(つーかそもそも基金オペの固定金利打っているだけで結構積みあがってしまう)、短国で積みあがらないとなると(基金残高が目標数値になっているだけに)じゃあ長期国債買った方が良いんじゃないか(さすがに2年国債ならばまだ積み上げ可能でしょう、10日時点で2.9兆円ですけど)とかいう話が飛んできても何らおかしくは無いですがなという話になりかねません罠。ちなみに基金短国買入のシーリングを0.10%から下げると買入は増やせるでしょうが、その分だけ短国の市場金利が低下するでしょうからまあ利下げみたいな話になりますし、補完当座預金よりも低い金利で短国買いますよとなると補完当座預金制度が収益プレゼント制度みたいになってしまいますがどうですかね(だからと言って補完当座預金の金利を下げると最初に戻るになってしまって基金買入の残高が積みあがらない・・・・・)という結果。

まあ何だ、雉も鳴かずば撃たれまいと申しますか、今回盛大に基金短国買入が札割れとなって頂いたので、趣味で金融政策ストーじゃなかったヲチャー状態になっておりまするこのあたくしがああでもないこうでもないと雑談を書く事が出来まして誠に結構でございますな(ニヤニヤ)。

いやね、これがさっきの(1)で実は調節担当が(あるいは金融市場局と企画局が手を組んで^^)わざと札割れをぶつけてきましたとかだと超オモシロスではあるのですがね(^^)。


○2か月TB入札でしたが

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240120.htm

(3)募入最低価格 99円98銭4厘5毛
(募入最高利回り) (0.0975%)

(4)募入最低価格に 19.7373%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円98銭4厘8毛
(募入平均利回り ) (0.0956%)


・・・・足切りレートも0.10%割れキタコレではありますが、まあそもそも金曜の入札は入札の段階から0.10%割れ致し方なしという風情でありまして、期内償還物の短国の在庫が払拭した状態で、そらまあ端物なら兎も角、ちゃんとしたロットで買おうとなるとそもそも玉がありません状態となっていましたので、ロットで玉を確保できる今期最後の機会ですから0.10%割れになるでしょうなあという認識ではございましたので入札結果自体はああ予想通り強かったですねえという感じです。

ただまあ今回は市場推計による不明玉が発行2.5兆円に対して4600億円程度とそんなに多い訳でも無かったのは、端から0.10%割れが見え見えだったのでプライマリーでの投資家ニーズが様子見モードになってしまったという所でしょうか。落札分布的には推計される落札上位に偏っていますので、最終的にはそちらさんに買いに行かないとまともなロットの玉が出てきませんので買いたければ上を買うしかないと思うのですが、後は業者のGCレポのネガティブキャリーとの絡みという感じっすかね。

あと、0.10%割って買う人という意味では海外要因があると思いますが、海外のファンディング市場の緊張緩和が効いているのかどうかは存じませんけれども、スワップ絡みでバンバン安い金が出ているという感じでもなさそうではありますな。


○色々と微妙なものが出ておりましたが

・銀行保有株を買い取った分の売却延期ですかそうですか

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120120b.pdf
2012年1月20日
日本銀行が金融機関から買入れた株式の売却延期について

『日本銀行は、本日開催した政策委員会において、「株式買入等基本要領」の一部改正等について別紙のとおり決定しました。日本銀行が金融機関から買入れた株式については、2012年3月末までは原則として売却を行わない扱いとしてきました。今回の決定では、内外金融資本市場の動向等を踏まえ、その期限を2年間延長し、2014年3月末とすることとしました。』

まあ仕方ないですな。

『あわせて、従来と同じ売却期間を確保する観点から、売却を完了する期限についても、2017 年9月末から、2019 年9月末まで2年間延長することとしました。また、これらの実施に関し、日本銀行法の規定に基づき、財務大臣および金融庁長官に認可を申請しました。』

ということで、ETFも将来こうなるんでしょうなあとか思うと誠にアレではございます(話は全然違うがこの前某どこぞの業者の株式レポートで「日銀のETF買いは高ベータ株式のアウトパフォームを助長するから市場を歪める」とか言うのがあってずっこけましたですわ。買え買え言ってクレクレしてたのはどなたさんでしたっけと思うのでありまして、そんならお前らは日銀がETFを今売れば良いとでも言うのかヴォケと思いましたわ、まあどうでも良いけど金融政策レポート出してる部署と調整してから出せよと思った^^)けれども、誠にこう残念感というか悲しみを感じさせる決定(決定自体は残念でも何でも無くてこれしかないのですが)ではございましたよ。


・ほほう

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120120c.htm/
支払・決済システム委員会および証券監督者国際機構専門委員会による「店頭デリバティブデータ(取引情報)の報告および集約の要件に係る報告書」最終報告書の公表について

『支払・決済システム委員会(CPSS)と証券監督者国際機構(IOSCO)専門委員会は、1月17日、「店頭デリバティブデータ(取引情報)の報告および集約の要件に係る報告書」(原題:Report on OTC derivatives data reporting and aggregation requirements)の最終報告書を公表しました。詳細につきましては、以下をご覧ください。』

つーこってプレス・リリースの仮訳はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120120c1.pdf
CPSS-IOSCOによる店頭デリバティブデータ(取引情報)の報告および集約の要件に係る最終報告書の公表について

『両委員会は、TR が上記のデータを集中的に収集することで、当局および公衆に対して店頭デリバティブに関するより正確な情報を適時に提供できるようになるとの見解を支持する。このことを通じて、市場の透明性の向上や、市場における不正行為の防止が図られるとともに、金融の安定が促進される。』

てな話で、まあ流れとしてそういう話になっているのはシャーナイ所ではあるのですが、店頭取引を何でもかんでも公表すれば良いのかというとこれまた別問題だと思いますし、特に金融市場にストレスが掛かっているような時にはお家の事情的な取引も増える傾向にある訳で、そういうのを1から10まで公表していると所謂Stigma問題とかの絡みになってどうなのよ、とか何とか思う訳で、こういう話は基本的に金融市場が落ち着いてから実施しろよと思うのですよね。

つまりね、何でもかんでも透明にすれば「安定が促進される」かというとそれはまた別の問題であって、逆に不安定化を促進するケースも有り得るっちゅうことで砂。



・これは具体的にどうなるのかしらん??

直近の行政刷新会議の議事資料(どうでも良いが行政刷新会議のホームページは誰がデザインしたのか知らんがゴテゴテしてて超読みにくいんですけど)から。

http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi24.html
行政刷新会議(第24回)議事次第

資料3-1 特別会計改革の基本方針(工程表)について (pdf:221KB)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi/d24/pdf/s3-1.pdf

資料3-2 特別会計改革の基本方針 (pdf:131KB)
http://www.cao.go.jp/sasshin/kaigi/honkaigi/d24/pdf/s3-2.pdf

まあ全体的に特別会計に関しては国庫資金繰りに影響して実は資金の流れとかにも影響すると思われますが、何せ一般会計だって部外者には良く判らん世界(あたくしが不勉強だからですかそうですか)なのに特別会計となると最早どう見てもワカランチ会長です本当にありがとうございましたとなるのですが、そんな愚痴は兎も角として資料3-2の方の3ページ目に国債整理基金と外為特会の話も書いてあるので一応クリップ。

『B 国債整理基金特別会計については、基金残高について、オペレーショナルリスクの観点も踏まえつつ、国債の早期償還(平成24 年度においては3兆円程度の買入消却による繰り上げ償還)に活用するとともに、その性質及び水準に関する適切な説明・情報開示を行うなど所要の措置を講じるものとする。また、平成25年度より、事務費を一般会計へ移管するほか、特別会計に関する法律第47条に規定する借換国債(前倒債)の発行収入金についての会計上の整理を行うこととし、平成24年の通常国会に法案を提出するものとする。』

ふむふむ、などと言いつつ良く判らんのですが(笑)、工程表(資料3-1)の3ページを見ると要するに国債整理基金の規模縮小と一般会計への移管をするみたいなのですが、それってまあ両建て解消ではあるのですが、両建てが落ちるなら別に問題は無いのですが、何故か両建ての解消にならないで国債整理基金を埋蔵金発見とか言って使い込んでしまってバランスシートが悪化するに100腕時計。

『D 外国為替資金特別会計については、平成25年度より、繰替使用ではなく財投預託金(資産計上)を減額し、それにより政府短期証券(負債計上)を償還することを通じた資産・債務残高の縮減、また、外為特会に留保する剰余金相当額について、円貨資産として保有し続けないで済む等の対応を図るものとし、平成24年の通常国会に法案を提出するものとする。』

・・・・・やべえ用語が分かんねえ(アホです)とか思うのですが、円建てになっている部分の資産債務の縮減(つーか不勉強にして剰余金相当額を円貨で持っているとは存じませんでございましたorzorzorz)は良いのですが、剰余金を国庫繰り入れする時にその分を短国発行するという流れになるのでしょうかね。ストックの話とキャッシュフローの話の関係が良く判らんです(ただの不勉強)が、これがまた剰余金を埋蔵金(以下同文)。


○どうでもよい雑談

このニュースマジでわけわかんないんですけど。

http://jp.reuters.com/article/kyodoPoliticsNews/idJP2012012001001796
砕石問題、東電に損害賠償指示へ
2012年 01月 20日 14:23 JST

『放射性物質に汚染されたとみられる福島県内の砕石場の石がコンクリートなどに使われた問題で、高い放射線量が測定された新築マンションがある同県二本松市の三保恵一市長が20日、枝野幸男経済産業相と会談した。経産相は「速やかに損害賠償の手続きに入るよう、東京電力に指示したい」と述べた。三保市長が東電と政府に対して、住民の健康対策や移転費用を含む損害賠償の全額負担を求めたのに答えた。』(上記URLより)

・・・・・・・・えーっと、この事案の経緯についてはそんなにあたくしも詳しくはありませんけど、このケツが東電に来るというのが訳わかんね。

ちなみにこんなインタビュー記事はあるけど
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120116-OYT1T01361.htm
砕石会社社長「影響出ると思わなかった」

これって経済産業省が賠償するとかいうならまだ判るのですけれども、こんなのまで東電に押し付けるもんなの????何か東電を財布か何かと思っているのか、それとも大企業は悪の権化だから懲らしめないと行けないので何でもかんでも負担させやがれという事なのでしょうかねえ?????何かさっぱりわからんわ。

ちなみに、さすがに新聞記事などにはなっていませんが、民主党の一部の議員様がガソリン値下げ隊ならぬ「電気料金値下げ隊」とかいうのを結成したとかツイッター方面で話題になっておられましたが、お前ら脱原発して事故の収拾して被害者への賠償しながらがら電気料金どうやって下げるのよとか思う所でありまして、どこのポルポトだよという感じでございますな、うんうん。

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2012/01/20

○ボルカールールに関する議会証言があったですが勢いで全文引用したので以下長いですお

http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/tarullo20120118a.htm
http://www.federalreserve.gov/newsevents/testimony/tarullo20120118a.pdf
The Volcker Rule
Before the Subcommittee on Capital Markets and Government Sponsored Enterprises and the Subcommittee on Financial Institutions and Consumer Credit, Committee on Financial Services, U.S. House of Representatives, Washington, D.C.
January 18, 2012

ということで議会証言があったので斜め読みしてみましたお。

・プロップトレーディングはするなという話ですがさて・・・・・・

『Summary of statute and proposal』というのがまあボルカールールの話ですわな。

『The statutory provisions that make up the Volcker Rule generally prohibit banking entities from engaging in two types of activities: 1) proprietary trading and 2) acquiring an ownership interest in, sponsoring, or having certain relationships with a hedge fund or private equity fund (each a covered fund).』

銀行業態はプロップトレーディングするなヘッジファンドやプライベートエクイティファンドのスポンサーになるなというのがボルカールールというのはまあ今に始まった事ではありませんが、こう思いっきりFRBの中の人に言われるとなんだかなあという感じがして参ります事よ。

『These statutory provisions apply, in general, to insured depository institutions; companies that control an insured depository institution; and foreign banks with a branch, agency, or subsidiary bank in the United States, as well as to an affiliate of one of these entities. 』

そんな規制はお前らだけでやってろと思うのですが、米国に拠点を置く海外の金融機関も規制しますという事で、まあ最近は欧州や日本からふざけんなヴォケという指摘が徐々に出ているということですな、うんうん。

で、定義ですが。

『Under the statute, proprietary trading is defined as taking a position as principal in any security, derivative, option, or contract for sale of a commodity for future delivery for the purpose of selling that position in the near term or otherwise with the intent to resell to profit from short-term price movements.』

まあこの後に延々と出てくるのですが、こんな定義するのはいいけどそんな事したらおめー証券業やるなちゅうことかよという話になりますわな。で、後の章というか、この証言の後半ほぼ全部が延々と「行う事が許されるマーケットメイクと禁止されるべきプロップトレーディングの区別をどうするのか」という話をしていまして、まあFRB的にはボルカールールを変に運用すると金融取引自体が死んでしまって米国の打ち出の小槌が死亡するという事くらいは先刻ご承知で、さてどうしたもんかという事で今回の議会証言でもどう説明するかという風情になっているようではございまする。

『The statute applies only to positions taken by a banking entity as principal for the purpose of making short-term profits; it does not apply to positions taken for long-term or investment purposes. Moreover, the statute contains a number of exemptions, including for underwriting, market making-related activities, and risk-mitigating hedging activities. The implementing rule proposed by the agencies incorporates all of these statutory definitions and exemptions.』

でどう運用するんでしょうねえ(棒読み)。

『The statute also authorizes the relevant regulatory agencies to permit additional activities if they would promote and protect safety and soundness of the banking entity and the financial stability of the United States.』

とか何とか言ってますが、議会のアホウVS金融ロビー活動という流れになるのでしょうかねえとか思いつつ、ちょうどまたこれが大統領選挙時期にあたるという点で大衆迎合的な「強欲金融機関ケシカラン」的な話になるとアレですなあと思う今日この頃であります。

『The second major prohibition in the statute forbids any banking entity from acquiring or retaining an ownership interest in, or having certain relationships with, a covered fund.』

ふーん。

『Again, the statute contains a number of exceptions, including for organizing and offering a covered fund, making limited investments in a covered fund, sponsoring and investing in loan securitizations, and risk-mitigating hedging activities. The statutory definition of a fund covered under the Volcker Rule is quite broad.』

これらの例外規定をどういう運用するのか次第なんでしょうけれども。

『The statute also quite broadly prohibits any banking entity that serves as the investment manager, adviser, or sponsor to a covered fund, or that organizes and offers a covered fund, from engaging in certain transactions with the fund, including lending to, or purchasing assets from, the fund.』

まあ要するに銀行は商業銀行だけやってろという話ですかそうですか。

『The statute also prohibits otherwise permissible trading and investment activities when there is a material conflict of interest with customers, clients, or counterparties, or when the activity results in an exposure to high-risk assets or trading strategies. These are significant provisions and the agencies have specifically solicited comment on disclosure requirements and other approaches to implementing these parts of the statute.』

マーケットメイクやヘッジなどの「許可されている取引」であっても顧客と顕著に競合(というか利益相反というか)するような取引をするのは禁止するとか言われましても、そもそもあーた自己勘定で相対取引のマーケットメイクすると必ずその瞬間は顧客とコンフリクトしますねんと思うのですが、このルールどういう運用されるかによってロクでも無い話になるんでしょうな。

でですな、まあロクでも無い話になるのは米国だけにしてくれりゃ別にいいのですが、米国でビジネスやっていると引っかかるとかいう話をしていると、結局その米国ルールがそこら中に押し付けられますよねという話でございまして、そうした場合に「既に米国以外ではそんな事してませんがな」というような事案に関しても「ボルカールールに則ってこのようにしなさい」とか言うようなへんちくりんな規制とか報告義務とかルールとかが出てくると金融屋カナワンチ会長という所なのでありまふ。


・まあ結局運用次第なのでしょうが・・・・・・

その次が『Differentiating proprietary trading from market making』である。

『One of the more difficult tasks in implementing the statutory prohibitions is distinguishing between prohibited proprietary trading activities and permissible market-making activities. This distinction is important because of the key role that market makers play in facilitating liquid markets in securities, derivatives, and other assets.』

そらそうよ。

『At the ends of the spectrum, the distinction between pure proprietary trading and market making is straightforward.』

ほうほうそれでそれで?

『At one end, for instance, trading activities that are organized within a discrete business unit, and that are conducted solely for the purpose of executing trading strategies that are expected to produce short-term profits without any connection to customer facilitation or intermediation, are not difficult to identify.』

そうっすかねえ・・・・・・

『These "internal hedge fund" operations existed at many bank affiliates for quite some time before the Volcker Rule was enacted. Firms that either are or were engaged in these non-client-oriented, purely proprietary trading businesses can readily identify and wind down these activities. Indeed, some have already done so for a number of reasons, including anticipatory compliance with the Volcker Rule. 』

対顧取引やらない商品勘定部門とかならまあそういう話でしょうけれども、それこそ日本の銀行のALMみたいなのだとプロップなのかヘッジなのかとか言われても困るでしょうにとか思うのですけれどもねえ。

『At the other end of the spectrum, a textbook example would be a pure agency-based market maker that acts as an intermediary, instantaneously matching a large pool of buyers and sellers of an underlying asset without ever having to take a position in the asset itself. Profits are earned either solely by charging buyers a higher price than is paid to sellers of the asset, or in some cases by charging a commission. Buyers and sellers willingly pay this "spread" fee or commission because the market maker is able to more quickly and efficiently match buyers with sellers than if they were left to find each other on their own.』

というような単純な話で済まないというのは当然その次に出てくる。

『I refer to this as a textbook example because instances of such riskless market making in our trading markets are rare. In actual markets, buyers and sellers arrive at different times, in staggered numbers and often have demands for similar but not identical assets. Market makers hold inventory and manage exposures to the assets in which they make markets to ensure that they can continuously serve the needs of their customers.』

実際問題としては、いわゆる「社内ヘッジファンド的なプロップトレーディングデスク」みたいな例とか「単純なブローカー業務」というような例とかは例としての端っこになる訳で、世の中そんなに単純ではありませんよこちらのテキストご覧あれという事ですかそうですか。

『Accordingly, in the broad middle that exists between these two clear examples, the distinction between prohibited proprietary trading and permissible market making can be difficult to draw, because these activities share several important characteristics.』

自己勘定でマーケットメイクをやるという存在が金融市場において重要である、と議会の石頭どもに対してタルーロ理事が説明するのである。

『In both activities, the banking entity generally acts as principal in trading the underlying position, holds that position for only a relatively short period of time, and enjoys profits (and suffers losses) from any price variation in the position over the period the position is held. Thus, the purchase or sale of a specific block of securities is not obviously permissible or forbidden based solely on the features of the transaction itself.』

結局の所金融市場は取引が色々と飛び交うものなので取引単体だけで見るのは無理がありまっせという説明ですな。

『The statute instead distinguishes between these activities by looking to the purpose of the trade and the intent of the trader.』

そう来たか。

『These subjective characteristics can be difficult to discern in practice, particularly in the context of complex global trading markets in which a firm may engage in thousands or more transactions per day. A similar challenge attaches to efforts to distinguish a hedging trade from a proprietary trade. 』

そらそうよ。


・更に説明は続く

『Implementation framework』という小見出しになるが。

#つーかこの調子だと全文引用になっていまいますな(汗)

『The agencies have proposed a framework for implementation of the Volcker Rule that combines: 1) an explanation of the factors the agencies expect to use to differentiate prohibited activities from permitted activities, 2) a requirement that banking entities with significant trading activities implement a program to monitor their activities to ensure compliance with the statute, and 3) data collection and reporting requirements, to facilitate both compliance monitoring and the development of more specific guidance over time.』

ということで、許容できる取引と禁止される取引の定義とかはまあ兎も角として、監督とか報告とかの話が出てきてこれが米国活動している主体の親会社まで適用とかになったら内容および運用次第では相当の負担になるでしょうなあと思うのであります。

『In addition, the agencies will use their supervisory and examination processes to monitor compliance with the statute. 』

さいですか。

『The third element of the interagency proposal bears some additional comment. In order to help differentiate between permitted market-making activities and prohibited proprietary trading activities, the agencies have proposed to collect data from trading firms on a number of quantitative measurements.』

取引のデータを集めて「単純なプロップトレーディングとは何ぞや」というのを定義していくんだとさ。

『These metrics are designed to assist both the agencies and banking entities in identifying the risks and characteristics of prohibited proprietary trading and exempt activities. The proposal makes clear that metrics would be used as a tool, but not as a dispositive factor for defining permissible activities. The agencies instead propose to use metrics to identify activity that merits special scrutiny by banking entities and examiners in their evaluation of the activities of firms.』

ふーん。

『The proposed rule does not include specific thresholds to trigger further scrutiny for individual metrics, but requests comment on whether thresholds would be useful, and notes that the agencies expect to propose them in the future. The proposal also makes clear that the agencies expect to take a heuristic approach to metrics, revising and refining them over time as greater experience is gained in reviewing, analyzing, and applying these measurements for purposes of identifying prohibited proprietary trading.』

まあ変に厳格適用とかされるとややこしい事になりそうな感じですなあ。

『Additionally, since some banking entities engage in few or no activities covered by the statute, the proposal also includes a number of elements intended to reduce the burden of the proposed rule on smaller, less-complex banking entities. In particular, the agencies have proposed very limited compliance programs and have reduced or eliminated the data collection requirements for these banking entities.』

中小金融機関には細かい報告とかの義務を軽くするっぽいですな、そらそうだろ。


・Potential effects of the proposalとな

最後の小見出しが『Potential effects of the proposal』である。

『The proprietary trading prohibition in the Volcker Rule statute itself will undoubtedly affect the trading behavior of banking entities.』

どう見ても規制やり過ぎの方向に変化させそうな気がするんだが。

『Indeed, that is what Congress intended in enacting these provisions. Congress has itself made the judgment that this prohibition will enhance financial stability and is socially desirable. The task of the agencies is to implement Congressional intentions, as manifest in the statute itself, as efficiently and effectively as possible.』

行間から「FEDとしては勘弁と思っているのだがお前ら議会の石頭どものせいでこういうの作ることになっとるんじゃ」というようなのを感じたのは気のせいですかそうですか。

『The approach taken in the proposed rulemaking is concededly not a simple one. But, at least to date, it has seemed the most feasible.』

そうなの????

『Two alternative approaches have been suggested, and we considered each prior to issuing the proposed regulation.』

ほう。

『One considerably simpler approach would be to articulate high-level principles for differentiating prohibited and permitted activities and then leave it to the firms to self-report violations based on internal models or other devices, presumably with compliance and systems monitoring by regulatory agencies. While having the virtue of simplicity at the outset, this approach would provide little clarity about whether an activity is permitted or prohibited. It seems quite likely that, either formally or informally, the regulatory agencies would regularly be asked to offer guidance or approve specific practices. Otherwise, this approach would essentially rely on self-policing by banking entities. 』

何かまた面倒な内部モデルがどうのこうのとか金融機関の負担が増えそうな。つーか投資銀行業務やるには物凄い面倒な投資が必要とかいう話になりそうな気がすんだが、次のアプローチよりはマシかね。

『A second alternative would be to establish definitive bright lines for determining whether an activity is permitted or prohibited. This approach would be very difficult in practice, at least with current information and data, because of the many asset classes, business models, and transaction types covered by the statutory provisions. Hard-and-fast rules would also run the risk of being either too restrictive, and thus inadvertently classifying legitimate, customer-driven market-making or hedging activity as prohibited, or too narrow, and thus failing adequately to capture the full range of activities that are prohibited under the statute. 』

取引を一々細かくプロップトレーディングかどうかと線引きをボルカールールのレギュレーションで定義するのは難しいですし、そうなると金融取引が極端に規制強化的になり過ぎたり、逆に規制がザルになったりという事になるのでちょっとどうよという事です罠。

『The more nuanced framework contained in our proposal was designed to realize some of the advantages of both of these approaches while minimizing their potential adverse effects. The Dodd-Frank Act provides a long conformance period for firms that are subject to the Volcker Rule. The agencies have proposed to use that conformance period to study the effects of the statutory prohibitions on the activities of banking entities before the Volcker Rule is fully implemented.』

『To assist in this undertaking, the agencies have proposed to begin collecting and reviewing trading data that should help firms subject to the statutory provisions, as well as the agencies in our efforts, to monitor and understand the contours of the activities that are prohibited, permitted, and affected by the statutory provisions that make up the Volcker Rule.』

もうあと少しになってしまった(つまり全文引用している)ので引用続けますが、まあ最後は纏めの部分なので特段へんてこな話をしている訳でもないですな。ただまあこの証言だけ字面を追っていると、議会の石頭に対してFRBとしてどういう風にして金融市場を殺さないかという事は考えているっぽいようには見える(あたくしの希望的観測バイアスが入っている可能性は多分にありますが)ので、後はどういう運用になるのかなという所でございましょ。

ただまあ最近の米国が何となく内向きっぽくなっている感もするので、本件に関しても米国が内向き排外的スタンダードを突っ込んでくるというリスクがあるとははあるのだが。既に日本がこの前文句垂れたように「米国債取引は適用除外だが他国は適用」みたいな話があったりするようですので・・・・・・・・

『As I mentioned earlier, we are hopeful that the data collection and reporting required in our proposal will eventually facilitate more specific guidance on market-making, hedging, and other exemptions from the general prohibition. After the Volcker Rule becomes fully effective, we would continue to monitor the effects of the rule and look for opportunities to refine it.』

『Having said all this, the Federal Reserve is more than open to alternatives that would be superior to the approach proposed. Indeed, the agencies requested comment on alternative approaches in the Federal Register notice.』

ということで、この前日本も文句垂れていた訳ですな。

#つーことで今日は量だけ多い(そら全文引用してますから)引用手抜きバージョンでどうもすいません

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2012/01/19

○ニュース雑談ですが

・水準感決め打ち介入は難しいとな

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LXZBBG6TTDS201.html
安住財務相:行き過ぎた投機的な動きには断固たる措置取る−講演(1)

『1月18日(ブルームバーグ): 安住淳財務相は18日午後、都内で講演し、欧州の政府債務危機を受けた円高について「行き過ぎた投機的な動きに対しては断固たる措置をいつでも取る」と述べ、介入も辞さない考えをあらためて示した。一方で、スイスが昨年9月、フラン高の阻止のため為替レートに上限を設定したことを受け、「ある範囲を決めて恒常的に介入するという方法を日本が取るのは難しい。スイスフランと円の供給量も違う。円はドル、ユーロに次ぐ基軸通貨。そこまではできない」と述べ、慎重な姿勢を示した。』(上記URLより)

>ある範囲を決めて恒常的に介入するという方法を日本が取るのは難しい
>ある範囲を決めて恒常的に介入するという方法を日本が取るのは難しい
>ある範囲を決めて恒常的に介入するという方法を日本が取るのは難しい

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-L8RNWI6TTDS001.html
仙谷氏:円高の問題は看過できない、介入で−82円台が防衛線
更新日時: 2010/09/15 11:21 JST

・・・・・・いやまあ安住さんの話の方が普通で仙谷発言は当時でもアホか馬鹿かと大変に低い評判で笑わせてくれましたが、昨日ベンダーでこのニュースが出た時に、ヘッドラインに上記のある範囲を決めて云々というのが出て仙谷発言を思い出して盛大に紅茶噴いたわ。


・まあ既に皆様ご案内のニュースですが

皆様ご案内のニュースネタで恐縮ですが俺様備忘録につき備忘メモとして残して置くだよ。

http://www.asahi.com/business/update/0118/TKY201201170695.html
オリンパス上場維持へ 東証、悪質性は低いと判断
2012年1月18日3時5分

『東京証券取引所は17日、過去の決算でうそ(虚偽記載)があったとして上場を廃止(取り消し)するかどうか審査していたオリンパス株式について、上場を維持する方針を固めた。赤字を黒字と偽るほどの悪質さはなく、株式市場に重大な影響を与えたとまでは言えないと判断した。』(上記URLより)

>赤字を黒字と偽るほどの悪質さはなく
>赤字を黒字と偽るほどの悪質さはなく
>赤字を黒字と偽るほどの悪質さはなく

??????????


・ふーん

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-LXZPIJ0UQVI901.html
IMF:5000億ドルの資金増強を目指す−必要額1兆ドル視野に (1)

『1月18日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)は18日、融資能力の増強へ最大5000億ドル(約38兆4000億円)の調達を目指すと発表した。欧州債務危機の悪化から世界経済を守るため、資金を必要とする国に同基金が融資するための原資を拡大する。』(上記URLより)

ほほーと思ったら最後にこんな話が。

『米国は先月、追加拠出の意思はなく、欧州主導で解決するべきだとの姿勢をあらためて表明。』(上記URLより)

・・・・・・・・大統領選挙の絡みなのか最近米国が微妙に変調な気がするのは気のせいですかね。

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2012/01/18

○1年短国入札ェ・・・・・・・

昨日の1年TB入札結果
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240117.htm

(3)募入最低価格 99円89銭5厘
(募入最高利回り) (0.1045%)

(4)募入最低価格に 26.8656%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円89銭6厘
(募入平均利回り ) (0.1035%)

前場引けの時点で最終出合いが0.1045%とかだったと思いますが、平均が0.1035%となっている所からしてテールよりも強い札が結構入ったのねとか思っていたらその後あれよあれよと言う間に買われるのでした。

で、市場推計の落札分布ですが所謂不明札が2兆円ちょっと切る(19600億円)という結果となっていまして、何せ発行総額2兆5000億円の中で不明だらけですから業者の皆さんが空振りになってしまった(投資家の方が強めの所にどどーんと札を差して突っ込んで来たと想像される)という結果ですわな。

短国をショートしてもレポコストがタマランチ会長ですからそらまあ空振りした分はショートカバーをさっさとした方が良いという事もありまして、その後の業者間取引では0.085%だのというような水準が出合った(もう少し強かったかも)とか言う大変に遺憾なショートカバーが入っておりましたようで、ナンジャソラという感じではございますけれども、不明札が想像通りにどこかの投資家さん(いやまあどこかの業者さんがドカンと落として黙っている可能性だってありますが順当に想像した場合の話です)が2兆近く1年TBを落札しているという事は、単なる短期資金の運用でドカンなのか、それとももうちょっと長い所の債券買う待機資金なのかとか色々と妄想が膨らむというものです(^^)。

しかしまあ何ですな、今日は今日とて3MTBの入札がありまして、さすがに先週に入札3連発があって3か月TBが0.09%だとかいうのも緩和されたのではございますけれども、0.10%を超えた所にはニーズがあるというおそロシアな流れであるというのが判明したのでどうせ0.10%カツカツ入札とかにされるんでしょうな。しかしですよ、3MTBって足元では償還に対しての発行額が毎週9000億円増発されるという大変に素敵な流れになっている(3月12日償還の241回から発行額が5.7兆円になるのですが、そこまでは5.1兆円の償還なので、当面償還額に対して発行が9000億円増えるというのが続くのですよ)というのにこのニーズとかさすが貫録の金余りであるという所でございます。

まあ入札段階で0.09台になるといきなりニーズが無くなるの法則は生きているとは思いますけれどもまた強くなったらアレですなあという所でorz

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2012/01/17

○ちょっと気になった件(業態別当座預金残高)

毎月の準備預金の積みが終わると翌営業日に出てくるこの資料ですけれども。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/cabs/jcabs.pdf
業態別の日銀当座預金残高

直近のは12月積み期間分なのですが、そこの月中平残(どうでも良いが平残末残とかいうのは金貸しやっていると普通に使うので「ゲッペイ」と言った場合に最初に脳内変換されるのは餅ではなくて月中平残である^^)を見ますと、「その他準備預金制度適用先」と「信託銀行」の超過準備がどどーんと増えていますな。

でまあ「その他預金制度適用先」さんに関しては四半期の国債償還と重なる期間で超過準備が増えるのは仕様なのでまあ毎度の年中行事なのですけれども(それにしても超過準備の末残多いですなあ)、今回????なのは「信託銀行」さんのところで妙に超過準備が増えていることで、この市場的あるいは構造的インプリケーションが良く判らんのですが何なんでしょ?????


○その他雑談

人のふんどしですが、最近権丈先生の斬れ味が更に鋭い件について。

http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/

1月15日の所から。

『「年金など社会保障制度の財源として消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%まで引き上げるとする政府・与党案・・・」 内閣支持率37%に下落 yomiuri.com

財務省は、この手法を使いすぎると、一里塚の次のステップ、つまり、高齢者三経費のスキマが埋まった後に必要となる増税の時、どう考えても手詰まりになるな。消費税に頼らないでPBの黒字化ができるはずもなし。まぁ、この流れは、2008年12月の中期プログラム――否、その前年11月の財政改革研究会の中間報告書からはじまってるんだけどな・・・いやいや、2005年10月の財政改革研究会の「中間とりまとめ」の中に、すでに「消費税のすべてを社会保障目的税化する」の文言があるな。

僕は、2015年ではなく、2020年以降も視野に入れた中長期計画派なんだよね。そうした方が、隠し事なく正直に語ることができるし、むしろ当面の2015年のことも、実現可能性が高まると思ってるんで。次でもどうぞ。 』(上記URLより)

1月14日の所から。

『ここで、ひとつの疑問が出てくるな。僕は、「公的年金論議のパラドックス」で、財政検証のための経済前提専門委員会の議論を観察・評価すべしと論じている。一方、「誰が何を間違えたのか」の「1経済前提が甘い」のところで、年金局は、民主党の山ノ井氏たちの要求により前代未聞の前提で試算を行っている。なぜ、経済前提専門委員会を通さない年金試算を年金局は行ったのか?

この問への説明は、時々、年金の話としてではなく、政治ってのはねぇという話題の中で、授業の雑談で話すところだが、昨日は、「誰が何を間違えたのか」を勝手に読んどきなと言って、年金とはまったく関係のないマルサスだケインズだという経済政策の話をしたということで、上記の問、なぜ、年金局は専門委員会を通さずに年金試算をしたのかについて、若干説明しておく。』(上記URLより)

などなど色々とありまして、色々とリンクもあるのでご興味のある方はどうぞ^^;

そのURL先のちょっと下の方にリンクがありますがこちらの権丈先生のインタビューも。
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/nenkinjidai120101.pdf
インタビュー「大切なことは考え抜いた制度を作ること」『年金時代』2012年1月号

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2012/01/13

○ボルカールール関連

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120112a.htm/
ボルカー・ルール(案)に関する米国当局宛のレターについて

『金融庁及び日本銀行は、2011年12月28日、米国の金融規制当局が公表したボルカー・ルール(案)の市中協議文書に関して、米国当局宛に連名でレターを発出しました。内容については、以下をご覧ください。』

ということで内容はこちら。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120112a1.pdf(原文)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120112a2.pdf(抄訳)

めんどいので抄訳から。

『このレターは、ボルカー・ルール(案)に関する我々の懸念に対して、適切な考慮を求めるものである。2点指摘したい。』

『第一に、金融規制の国境を越えた影響について適切な考慮を行うことの重要性と、影響を受ける国との協調の必要性について指摘する。金融規制の域外適用に関して、母国当局が規制・監督の主要な責任を負っていることについては、米国も異論はないものと確信している。日本市場に対する悪影響が潜在的には深刻であること及び日本の銀行における関連取引のコストが大きく増加することを踏まえると、ボルカールール(案)の域外適用を控えるか、「支配」及び「関連会社」の定義を修正し、外国の銀行グループに支配される米国外のジョイント・ベンチャーや現地法人を含まないようにしていただきたい。』

いや全くでございます。

『我々としても、監督の質を更に高めるよう鋭意努めており、米国における日本の金融機関の活動について、綿密かつ効果的な監督を継続していく所存である。』


『第二に、我々は、ボルカールール(案)が、日本国債の取引に悪影響を及ぼすことを懸念している。』

ほほう。

『ボルカー・ルール(案)は、日本国債の取引コストを増加させ、米国の銀行の日本における現地法人の撤退につながるおそれもある。日本の銀行の中には、米国業務からの撤退や業務の大幅な縮小を強いられるところが出てくる可能性もある。このような反応により、日本国債の流動性や価格に更なる悪影響が及び得る。』

ふむふむ。

『現下の情勢において、世界のソブリン市場で同様の事態となる可能性がある。これを踏まえ、規制適用除外対象の証券を大幅に拡大し、日本国債を含めるようにしていただきたい。』

全くですな。

『我々の意見の詳細は、別添を参照されたい。別添においては、ボルカー・ルール(案)がもたらす以下の点に言及している。』

『1. 外国の銀行グループに属する米国外の拠点に対して、ボルカー・ルール(案)が直接に適用される点。

2. 規制適用除外証券が米国債等に限定されているため、日本国債及び他のソブリン債市場に対して深刻な悪影響が生じ得る点。

3. 短期の為替スワップ取引に対する規制により、米ドルの資金調達が困難になる点。

4. 米国外のファンドに対する投資決定に対して不確実性を生じさせる点。』

『また、この場を借りて、ドッド・フランク法716 条のいわゆるスワップ・プッシュアウト条項に関して、米国内銀行と比較して外国銀行が差別的な取り扱いを受けることとなっている点を再度指摘したい。本条項の起草者も、預金保険の対象となっていない外国銀行支店等を本規制の適用除外条項から除いているのは、意図しない結果だという議会証言を行っている。法案提案者が当初意図していたように、預金保険の対象となっていない外国銀行支店等についても、免責条項を含め、米国内銀行と同様の取り扱いがなされることを確保していただきたい。』

ということで結局抄訳を全部引用してしましましたが、こういうのはガシガシやって頂きたいと存じます次第で、金融庁と日銀の健闘を希望致します。

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2012/01/12

ECBが国債買入を拡大したら「財政マネタイズ」とか言って今度はEFSFとかを格下げするんですねわかります。

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE80A00V20120111
ECB、ユーロ崩壊回避へ国債買い入れ拡大すべき=フィッチ
2012年 01月 12日 00:46 JST

『ユーロ崩壊はフィッチの基本シナリオではないものの、イタリアが債務問題への解決法を見い出せない場合、起こり得る可能性があると警告。』

『同氏は、ECBがイタリアなど債務問題に陥ったユーロ圏諸国の国債買い入れ拡大に消極的であることや、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)によるECB資金の利用に抵抗を示していることについて、このような姿勢を改めるべきと主張。「ECBの積極的な関与なしにどうやってユーロを救済するのか。率直に言って救済できるとは思わない」と述べ、ECBにはバランスシートを拡大する大きな余地があると指摘した。』(上記URLより)

ECBの財政ファイナンスはそもそも債務問題の赤字縮小に役立つものではなく、それどころかECBの財政ファイナンスが入ったら解決が遠くなるだけで、対処療法で買入拡大しても「イタリアが債務問題の解決法を見いだせない」なら逆にECBが買入したらユーロ崩壊回避よりも共倒れリスクが高まるだろうと思うのですけどねえ。つーかECBのバランスってLTRO連発でドンドン拡大してるんだが。いやまあ所詮フィ(以下罵倒文言の為自主規制)。

#まあECBの最近の動きに関しては微妙に色々とネタが無い訳でもないのですが色々と確認しないといけない事もあるのでアイデアどまりである

で、本日は白川総裁講演ネタがオモロイのでエバンス講演ネタ(と予定していたダドリー講演ネタ)を後回しにして総裁講演ネタに変更である(汗)。


○その前に市場メモ

昨日の3か月TB入札
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240111.htm

(3)募入最低価格 99円97銭5厘0毛
(募入最高利回り) (0.1002%)

(4)募入最低価格に 21.7679%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭5厘0毛
(募入平均利回り ) (0.1002%)

0.1002%一本値キタコレという感じですが、0.10%に乗るとニーズが出るの法則に準拠しておりまして、市場推計の落札分布を見ても先週金曜の0.10%割れ入札では不明札が6000億円チョイだったのに対して昨日の入札では2兆円ちょっととなっていたとの由で、なんちゅうお約束の展開という所ですが、10に乗って入札をするとセカンダリーも堅調であったりするという大変に素敵な流れで最終的には10割れが居所だったようでございますが、では入札が10割れるかというと、10割れると初動での買いの量が減ってしまうので業者の在庫になってしまうの法則になるので入札で10はよー割りません(まあひっさつ分は入るかもしれませんが)という流れになるんでしょうな。

つまり真面目に買いに行くと10割れだし真面目に売りに行くと10という事で、どう見ても固定相場です本当にありがとうございましたという事でしょうな、うんうん。

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2012/01/11

○とりあえずバーゼルV関連ネタのメモ(後で改めて読むかも)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120110b.htm/
中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループによるプレス・リリース「中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループがバーゼルIII流動性基準及び基準実施状況の評価についての戦略を承認」の公表について

『バーゼル銀行監督委員会の上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループは、1月8日、バーゼルIII流動性基準及び基準実施状況の評価についての戦略について、プレス・リリースを公表しました。詳細につきましては、以下をご覧ください。』

ということで、詳細はこちらだが後でくわしく読んでみる所存。まあ流動性規制に関しては今年の金融市場にも影響を与える話になる筈だと思っていますので(あとは短期金融市場に関する規制(流動性規制と被る)および資本規制に加えて中央銀行の担保政策)本件は要確認かなあと。

バーゼル委員会のリリース
http://www.bis.org/press/p120108.htm
Basel III liquidity standard and strategy for assessing implementation of standards endorsed by Group of Governors and Heads of Supervision
8 January 2012

仮訳はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120110b.pdf

一応ちょっとだけ引用しておく。

『バーゼル委は、バーゼルIIIに加え、バーゼルII及びバーゼルII.5(すなわち、2009年7月の市場リスク及び再証券化の取扱い強化)の実施を評価する予定である。また、総裁・長官グループは、評価結果を公表するというバーゼル委における合意を承認した。バーゼル委は、結果公表に関する手続きを議論し、定義する予定である。総裁・長官グループはまた、最初のピア・レビューは、欧州連合、日本、及び米国における実施評価とすることにも合意した。これらのレビューは、2012年の第1四半期に開始される。』

ほう。

『流動性カバレッジ比率に関して、総裁・長官グループのメンバーは、銀行は安定的な資金調達構造と、ストレス時に流動性ニーズを満たすために利用可能な高品質の流動資産を保有するべきである、との中心的な原則を改めて確認した。流動性カバレッジ比率が実施されれば、その100%の閾値は、平時における最低基準となる。しかし、ストレス期には、銀行はその流動資産プールを利用することが予想され、結果として最低要件を一時的に下回ることもあり得る。バーゼル委は、平時に積み上げられた流動資産は、ストレス時に利用されることが意図されていることを明示的に定め、流動性カバレッジ比率のルール文書を明確化することにより、この原則を更に説明することを求められた。また、バーゼル委は、流動性プールの利用が正当化される状況について追加的な指針を提供する予定である。更にバーゼル委は、流動性カバレッジ比率の働きが中央銀行の政策を阻害したりこれと抵触したりすることがないよう確保すべく、ストレス期において中央銀行が銀行といかに関わり合うかについて調査する。』

中々お経ちっくでアレでございますが(単にあたくしの頭が悪いだけ)、まあ要するに流動性カバレッジの比率が高めの所に設定されそうな話で、そうなりますと即ち金融機関のレバレッジが掛けにくくなりますよねと思うのですが、それで良いのか金融業界と思う面もだいぶあったりする。まあバーゼルクオリティだからこうなるのですけれども。

『また、総裁・長官グループは、流動性カバレッジ比率を最低基準として2015年に導入することへのコミットメントを再確認した。メンバーは、ネット資金流出の水準についてのいくつかの調整とともに、高品質の流動資産プールに関する個別の懸念に対応することにより、流動性カバレッジ比率の鍵となる側面を最終化することに向けた、バーゼル委の焦点の当て方、作業の道筋及びスケジュールに係る提案を完全に支持した。現在検討されている修正は、いくつかの鍵となる側面にのみ適用され、規制枠組みの根本的なアプローチを大きく変更するものにはならない。』

まあ規制強化になりそうな悪寒。つーか流動性カバレッジどうのこうのとか言われると、商業銀行というか預金金融機関はそらまあそもそも流動性バッファがあるから良いけど、投資銀行とか証券業者とかの場合はそもそもが商品有価証券を在庫に持ってクルクル回すのがお仕事であって、そういう人を捕まえて流動性カバレッジとか言われると商売するのに大変ですがなという話になるような気がするんだが、要は投資銀行なんぞするなという事ですかねえ。

『総裁・長官グループは、バーゼル委に対し、これら3つの点についての提案を2012年末までに最終化の上で公表するよう指示した。キング総裁は、「流動性カバレッジ比率の狙いは、銀行に平時には健全な資金調達構造と十分な流動資産を確実に保有させることで、中央銀行が、最初の貸手ではなく最後の貸手としてのみ役割を果たすことが求められるようにすることにある。流動性カバレッジ比率はいくつかの銀行にとって大変な課題となるかもしれないが、強固な流動性の枠組みがもたらす便益は、これに伴う実施コストを上回る。」と述べた。』

そうですかねえ。何かバーゼルの庭先論になって金融が委縮する結果経済の停滞を招いたりしませんかねえ。

ということでとりあえずメモでした。


○個人向け復興国債とな

http://www.mof.go.jp/jgbs/individual/kojinmuke/houdouhappyou/p240110.htm
個人向け復興国債の応募額(平成23年12月)

『平成23年12月5日から30日まで募集を行った個人向け復興国債の応募額は、前回、3銘柄を募集した9月の応募額の約二倍(1.9倍)の7,454億円となりました。なお、個人向け復興国債の種類別の応募額は、下記のとおりとなります。また、発行日については、平成24年1月16日を予定しています。

個人向け利付国庫債券(変動10年:第37回)  4,051億円
個人向け利付国庫債券(固定 5年:第25回)  2,369億円
個人向け利付国庫債券(固定 3年:第19回)  1,034億円』

コクサイ先生もお喜びのようです。
http://twitter.com/#!/kokusai_sensei/status/156697885969362945

・・・・・・でまあこれはこれで結構なのですが、一方で12月の株式市場の売買代金が泣きそうな状態とかいうのを拝見しますと個人の資金が国債にしかマワランチ会長となっておるとは甚だ遺憾な展開で国債買うなら株買ってくれよおおおとか思うのはただのポジショントークですかそうですか。


○そういえば短国入札3連発

すっかりネタにしていませんでしたが金曜日から3打席連続短国入札。

金曜の3か月TB
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240106.htm

(3)募入最低価格 99円97銭6厘0毛
(募入最高利回り) (0.0995%)

(4)募入最低価格に 1.5395%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円97銭6厘7毛
(募入平均利回り ) (0.0966%)

昨日の6か月TB
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/tbill/tbill_nyusatsu/resul240110.htm

(3)募入最低価格 99円95銭0厘
(募入最高利回り) (0.1020%)

(4)募入最低価格に 15.3925%
   おける案分比率

(5)募入平均価格 99円95銭0厘
(募入平均利回り ) (0.1020%)

先週は何せその前に短国の入札があったのが12月19日でございまして、しかも年末の所で当座預金残高が積みあがっていましたので、年末年始にかけては見事なまでに玉不足になって12月の最後に入札のあった3か月短国が平気で0.09%だの0.085%だのというようなレートが出合ったりしてたみたいで、6兆円に増発された3か月TB貫録の0.10%割れという入札になったのですが、例によって例のごとく0.10%割れのニーズは海外と日銀当座預金の外側の人と期末でのバランスシート調整以外に無いというパターンで0.10%割れの売れ行きはイマイチさんだったようですな。

でもって昨日の入札は0.10%に乗った訳ですが、乗ったら乗ったで今度は日銀の超過準備付利よりもレートが高いなら買いますの人たちが金余っているのでニーズがありありになって、平均落札レベルは瞬間蒸発という大変に素敵な展開。

どう見ても固定相場です本当にありがとうございましたという風情ではございますが、まあこんな感じで今日の入札もやるんでしょという所で、市場機能もへったくれもあったもんじゃないですが、まあ金利があるだけマシということでorz


○ところでドルオペ

昨日のオペ
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120110.htm

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120110.htm

米ドル資金供給(固定金利方式)(1月20日エンド分) 2,961 2,961
米ドル資金供給(固定金利方式)(4月5日エンド分) 12,556 12,556

3か月ドルオペ125億ドルキタコレという所でありますが、前回に実施された3か月物ドルオペが47億ドルの応札でしたので応札がどどーんと増えましたなという所ではあります。まあ9日のドルLIBOR3か月が0.58ちょいとかで、オペのレートが0.59%ですからレートそのものも良いですし、3月期末を越えるのでニーズもあったんでしょうかねえ、という事にしておきます。よー知らんけど。

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2012/01/10

○金曜に微妙にネタになっていたネタ

WSJより(全文は有料記事だが検索エンジン経由の場合見れる場合もあり)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203471004577142400394236924.html
Japanese Banks Get 'Stress Tests'

ということで何でまたこの時期にストレステストよという感じですが。

『TOKYO-The International Monetary Fund is conducting "stress tests" on Japanese banks to gauge how vulnerable they are to a potential drop in the value of their huge holdings of Japanese government bonds, people familiar with the matter said. The move could sharpen investors' focus on the risk to Japan's economy from its ballooning debt.』

『Credit-ratings firms, investors, and even Japan's central-bank governor have expressed concerns about the growing debt, now equal to about twice the country's annual economic output, but much of the attention has been on the government's ability to sustain its large budget deficits. 』(以上上記URLより、以下は有料記事)

以下は有料記事の為引用しませんけど、まあ話としては日本の財政がアレで金利が急騰したら日本の銀行がエライコッチャであることを懸念するのでストレステストをするでしょうというような記事ですが、まあこの手の記事によくある毎度おなじみのソース、『people familiar with the matter』って奴なのが実にこうアレな上に書きっぷりがどうも日本に対して悪意ある記事だわとか思う訳で、日本の心配する前にお前らの心配しやがれや雨公はと思ってよくよくこの記事のクレジット見たら『By TAKASHI NAKAMICHI』って海外メディアに良く存在する反日あるいは侮日日本人ですかそうですかこんなの日本入国拒否モンだろこんなのという感じではございましたです、はい。

ちなみに、IMFでは「Financial Sector Assessment Program (FSAP)」というのをやっていまして、過去のレポートとかこちらを見ると出ています。

http://www.imf.org/external/NP/fsap/fsap.aspx
Financial Sector Assessment Program (FSAP)
Last updated: Monday, November 14, 2011

んでもって年ごとのソート(デフォだとそうなっている)と国ごとのソート(Sort By: Date | Countryという所をクリックするあるよろしある)ができますが、日本の場合は2003年の9月に実施されています。

http://www.imf.org/external/pubs/cat/longres.cfm?sk=16865.0
Japan: Financial System Stability Assessment and Supplementary Information
Published: September 5, 2003

でまあURL先にテキストへのリンクがあったりしまして、まあこれを読むと前回は不良債権問題がどうのこうのというような話と、この時も金利が上昇するとどうのこうのという話をややしているように読めた(超斜め読みなので違ってたらゴメン)訳ですが、IMFクオリティで庭先掃除的というか他人事というか、まあ何だかそういう話は平常時にしておけやヴォケというようなレポートのような風情を感じるのでありました。


なお、どうでも良いがその関連でIMFのページ見てたらこんなのがあるのに気がついたので、暇だったら読んでみようかと存じます(まあサマリー見た所で何となく内容は想像できるので暇なときに)。

http://www.imf.org/external/pubs/cat/longres.aspx?sk=25483
Bank of Japan’s Quantitative and Credit Easing: Are They Now More Effective?

『Summary: This paper asks whether the BoJ’s recent experience with unconventional monetary easing has been effective in supporting economic activity and inflation. Using a structural VAR model, the paper finds some evidence that BoJ’s monetary policy measures during 1998-2010 have had an impact on economic activity but less so on inflation. These results are stronger than those in earlier studies looking at the quantitative easing period up to 2006 and may reflect more effective credit channel as a result of improvements in the banking and corporate sectors. Nevertheless, the relative contribution of monetary policy measures to the variation in output and inflation is rather small.』

ほうほうそうですか。

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2012/01/06

○イイハナシダナー(;∀;)な雑談:JCR内海社長の年頭所感

日本格付研究所様の社長様の年頭所感が素晴らしいので引用。

http://www.jcr.co.jp/top_cont/report_desc.php?no=2012010410&PHPSESSID=a213d0243dd4fe4a999491694415a73a
【年頭所感】格付会社のあり方
日本格付研究所代表取締役社長 内海 孚 2012年01月04日

『2011年ほど、格付が市場とメディアを賑わせた年はなかったろう。それによって、格付について、その根元から考えさせられることになった。』

全くでございます。

『その先頭に立つのが、1格付会社による米国国債の格下げであった。』

キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

『米国の行政府及び議会の財政赤字削減についての交渉の難航が、この国の政策立案の機能不全という認識を生み、それが格下げにつながったということであろう。しかしながら、米国経済が破綻したら、この世界で破綻を免れる国も、多国籍企業も存在しないという事態になるだろう。その意味で、米国債の格付は、少なくとも現段階ではこの世界における格付の基軸となるべきものである。従って、その格下げには、慎重な上に慎重であることを要すると思う。』

イイハナシダナー(;∀;)

という感じでバッサバッサと他の格付け会社を斬る様はまさに講談の荒木又右衛門状態ですので、その辺は上記URL先の全文をご覧いただくと吉かと。

で、まとめの部分。

『格付会社は、格下げによって国や企業の資金調達を困難にし、その命運を絶つことができるという意味で、慎重な上にも慎重な配慮が必要である。少なくとも、市場の動きに便乗したり、これを徒に加速したりすることは厳につつしまなければならない。』

>市場の動きに便乗したり、これを徒に加速したりすることは厳につつしまなければならない
>市場の動きに便乗したり、これを徒に加速したりすることは厳につつしまなければならない
>市場の動きに便乗したり、これを徒に加速したりすることは厳につつしまなければならない

『その意味で、格付会社は私企業であるが、公共財としての側面を併せ持つという認識に立って行動することが求められる。』

『JCRの行動基準を振り返るとき、我々と他社との基本的姿勢の違いは、上記マンソー教授の云う「格付先のSurvival」について可能な限り配慮するかどうかというところにあったのではないか。その意味で、この論文によって力づけられるところは大きい。今後も、混乱が続くであろう市場の中で、今や、米国の証券取引委員会(SEC)及びEUの格付規制当局のいずれにも登録を認められ、欧州主要国によって適格格付機関として認定されているわが国唯一の格付会社として、我々はその基本的姿勢を、確固として守って行くことが重要であると痛感される。』

まあ何ですな、マジレスしますとこの辺りって賛否の分かれる論点ではあるとは思いますが、少なくとも金融に関連する規制などのあり方がプロシクリカルに事態を悪化させるように作用するという流れの中に現在の格付け会社の行動もある、というのはご指摘の通りではございますので、これは中々良い論点のお話ではあろうかと存じます次第。

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2012/01/04

○年始雑談

・年始からモーサテ雑談と貫録のテレ東Love

何かモーサテ見たらどこの温泉旅館のお迎えだというようないでたちの方がおられるのですが、それよりも大納会も大発会も貫録の出勤となっておられる何とか暇無しの人たち(あたくしを含む)がムキーッとなっていたのは大納会の日にモーサテが貫録の休日という事実(-_-メ)。コスプレ登場の演出なんぞどうでも良いので経済番組を自称するなら大納会まで放送しやがれと。

で、モーサテ様におかれましてはFOMCのMinuteを捕まえて「議事録」というのはどうもねえ。前も申し上げましたが、本当のTranscriptとしての議事録は後日出てくるもので、Minuteはその前に出る「要旨」としての扱いだと思うのですが。いやMinuteしか出て来ないのなら「議事録」という言い方でも良いかもしれないけど、後で出るものとの整合性考えると「議事録」というのはミスリードだと思うのですけれどもねえ。

#新年早々細かい事にうるさいですかそうですか

#年始から「今年の株のキーワードは売り」とかいう人をゲストに呼んだという事は株は期待が持てるかもしれませんな(^^)


・大納会に東証イブニングセッションがあるですと???

いやあのですな、先週末の大納会で後場があるというのは認識していたのでございますけれども、まさかイブニングセッションが普通にあるとは不覚にも存じませんで(冷静に考えたら先物オプションの取引最終日が大納会になった時点で気が付かないといけないのですがorz)、15時半回って先物の値段が動いているのに唖然としたあたくし。しかも普通に23時まで取引とか東証は何考えてるんだという所でございます。

とりあえず新システム導入に関連した役席以上と経営は全員大納会の23時まで残業でもしてみろやヴォケと心底思う歳の瀬でございましたけれども、先物オプションの権利行使も最近は17時になっていて、納会の風情が無い事夥しい訳ですけれども、グローバルスタンダード(キリッ)とやらの為にシステムを導入した結果ですので仕方がありませんね!!!

#海外にも短縮取引とかあったと思うのですけれども・・・・・・

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