金融政策概観(2015年度上期前半(2015年04月〜06月))

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2015年度上期前半の見出し

2015/06/29「追加緩和の有無に関して雑感」
2015/06/26「前田調統局長が帰属家賃の品質調整を総務省に要請とな!!」
2015/06/22「2016年からMPMが年8回、展望レポートが年4回に」
2015/06/17「参議院での半期報告で総裁は前回の為替発言の釈明/岩田副総裁の答弁が頭おかしいレベルで速記が何度も止まる」
2015/06/11「黒田総裁国会答弁で円安けん制っぽい発言をして市場が大騒ぎ」
2015/06/09「学者ではなく道中師以外の何者でもない伊藤隆敏先生が円安けん制とな」
2015/05/25「2年と短国がインバートしていますな/そんな状況で付利下げをする意味あるの??」
2015/05/18「MPM前にブルームバーグが追加緩和ネタを打ち込むがだんだん内容が劣化していますな」
2015/05/14「佐藤審議委員講演からレポとかT+1とかその辺の話を」
2015/05/12「自民政調会長が追加緩和不要論/早川前理事毎度のケチョンケチョン攻撃だが森田長太郎さんが更に凄い」
2015/05/07「企画局がQQEの効果についてレポートを出したのですがMBの定量的な話は無かったりする」
2015/05/05「展望レポート基本的見解を鑑賞」
2015/04/28「池尾先生が金融政策をケチョンケチョン&山本幸三先生更に吠える/金融政策の枠組みどうするんでしょうね」
2015/04/27「山本幸三さんはまたも追加緩和を吠える/ブルームバーグのしょうも無い釣り記事はいい加減にしてほしい」
2015/04/24「サプライズ緩和を非難された国会のやり取りをサルベージ(共産党大門議員VS黒田総裁編)」
2015/04/22「森本さんの後任にトヨタ自動車元副社長の布野さんをノミネート/展望レポートプレビュー雑談」
2015/04/21「本日は森本さんの後任人事提示ですが日経の馬鹿スクープは無い様です」
2015/04/15「一橋物価指数宣伝のニュースが却ってレピュテーション下げている件/浜田先生が麿状態キタコレ!」
2015/04/10「読売新聞社説でも2%達成を急ぐなと政府サイドの梯子外しが来ています」
2015/04/08「決定会合は一応微妙な追加期待もありますよね(特に他市場)」
2015/04/06「決定会合プレビュー雑談」
2015/04/02「官邸リフレ派が追加緩和を唱えだしましたよ」

2015/06/29

○CPIが出ていましたが追加緩和とか政策見直しに関する与太雑談も含めて雑談

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL3N0ZC06M20150626
UPDATE 1-消費者物価5月は0.1%上昇、エアコン・コーヒー指数押し上げ
2015年 06月 26日 10:23 JST

『<上昇品目数拡大、外国旅行プラス転換・ガソリンマイナス幅縮小>

コアCPIは昨年の原油価格下落の影響によりことし2月以降、消費増税の影響を除きゼロ近傍で推移している。5月の民間予想中央値(ロイター集計)も前年比横ばいだったが、実績は小幅ながら予想を上回った。前年比で上昇した品目数は332と4月の321から増え、総務省は基調として物価は緩やかな上昇を続けているとみている。品目別ではインスタントコーヒー(前年比10.9%上昇)やコーヒー飲料(同3.3%上昇)など生鮮食品を除く食料のプラス幅が4月と比べ拡大した。曜日の並びが理由で4月は前年比4.8%下落していた外国パック旅行が5月は0.2%上昇した。エアコンやテレビの新製品切り替えによる値上げも指数を押し上げた。ガソリンは前年比15.2%下落したが4月の同15.9%下落と比べマイナス幅は縮小した。一方、電気代は前年比の上昇率が4月の5.3%から5月は0.5%に縮小。都市ガス代も4月の5.7%上昇から5月は0.1%の下落に転じた。』(上記URL先より)

ということでCPIが出ていましたが、市場の予想よりも若干強くて何とかストの皆様の先行き予想もこれを受けて微妙に(気持ち程度ですが)強くなっているような感じになっていましたな。

・・・・・・でまあそうなりますと木曜にブルームバーグニュースが打ち込んで話題になりましたし、ミーもネタにしたこのニュース↓

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQHFA86JTSE801.html
家賃の品質調整で物価0.2%上げ−日銀が総務省に見直し要請
2015/06/25 21:14 JST

であります所の、黒田ピーターパン物語にティンカーベル調査統計局長が登場して魔法の粉を振りかけるとあーら不思議CPIの数字が上乗せされてしまっているじゃないですか攻撃というのが炸裂して、という辺りも本職の皆様のレポートに影響しているのか、ここに来て何とかストの皆様におかれましては追加緩和待ったなし的なトーンがだんだん弱くなっている感じがせんでもない(あくまでもアタクシの主観で真面目に集計取っている訳ではないので誰か取っていたら教えてジェネラルなのです、と図々しいアタクシ)訳でして、「この粉で空が飛べないなら地面を掘り下げれば良いじゃないか」攻撃の効果がボディーブローのように効いている可能性も微粒子レベルで存在している気もせんでもない。

しかしCPIの基準改定って普通は下にぶれる話になる(連鎖方式じゃないから、でしたっけ)のですが、今回はそんなこんなでちょっと債券売りモードになると(今日はギリシャデーですけど)金融政策の枠組みがどうのこうの的なお話ってのも後付で出やすくなって、CPI改定で更にヒャッハー的なネタになりそうな感じではありますな。

しかしティンカーベル魔法の粉は良いのですが、粉の振り掛け方によっては魔法の言葉でCPIがぽぽぽぽーんで債券市場がぽぽぽぽーんになるんですがそれはという所でして、今後に影響出そうですなあというのは金曜のCPI受けた後の何とかストさんのコメントを拾って読んでて思うのでした。



なお、更に与太話をしておきますと、「だから追加緩和が無い」というのもこれまた修行の足りない発想でございまして、物価がいかないから追加緩和をするよりも「物価が行きそうなので追加緩和をする」という荒業に打って出ますと、その追加緩和自体が何の効果があるかという事はさておきまして、追加緩和自体が物凄い勢いで効果を出したかのような錯覚(いやまあ事実かも知らんがこれだけMB出してこの程度なのに追加で10兆円出してどれだけ効くのかと小一時間)を与えて、買入政策自体の効果が凄くあったかのように見せかけることが出来るので、実は「自信がついたところで追加緩和」というのは、その追加緩和自体が実はそんなに効果が無いと思っているときなどにはテクニックとして使えるのですよ。

その実例としては、狸でおなじみの福井の俊ちゃんが2004年1月に行った追加緩和がありましてですな。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2004/k040120.htm/
金融市場調節方針の変更について(2004年ですよ!!)
2004年 1月20日
日本銀行

この時は景気見通しを下げた訳でもなんでもなく、回復シナリオ通りに順調に推移していますから現状は良くなっていますよ的な判断なのに追加緩和をするという大技を打ち込んでいまして、以前もご紹介したかもしれませんが、俊ちゃんのこの時の会見とか最早禅問答というか完全に煙に巻きまくっているのが良くわかって今となっては笑うしかない代物です。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2004/kk0401a.htm/
総裁記者会見要旨 ( 1月20日)(2004年ですよ!!)


最後に追加緩和を打ち込んでCPIの上昇確度が良くなったところで・・・・・・という自信があるならその全くロジカルではないですがイカサマ手法はあり得ますが、ただまあ黒田さんは俊ちゃん程の大狸ではなくて、結構真面目だと思うので手段として考えるかどうかはまた別問題ですが、短期勝負での勝算があるならこの手は最後のヤケクソ大作戦としては使える(ただし外れたら悲惨)。

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2015/06/26

○CPI基準改定に向けた動きキターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーー!!!!!

第一報はブルームバーグで確か昨日の引け近辺に登場していましたがヘッドライン見た瞬間に吹いた。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQHFA86JTSE801.html
家賃の品質調整で物価0.2%上げ−日銀が総務省に見直し要請
2015/06/25 21:14 JST

>日銀が総務省に見直し要請
>日銀が総務省に見直し要請
>日銀が総務省に見直し要請

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

いやーブルームバーグさん超キャッチーなヘッドライン打つんだからもう!とゆー所なのですが、記事を拝読。

『(ブルームバーグ):日本銀行の前田栄治調査統計局長は、消費者物価指数の2割を占める家賃について、老朽化による品質の劣化を調整すれば、CPI全体を最大0.2ポイント押し上げる可能性があるとの見解を示した。来年予定されるCPIの基準改定を機に、パソコンなどに用いている品質調整の導入に向けて議論を行うよう要請した。』 (上記URL先より、以下同様)

さ あ 盛 り 上 が っ て ま い り ま し た !!!!!

『前田局長は25日、内閣府で開かれた統計委員会で、「日本では高齢化・人口減少によって住宅ストックの老朽化が進んでいる」と指摘。「こうした環境下において、現時点では家賃について、住宅が時間を経るごとに劣化するという品質変化を考慮していないため、指数に下方バイアスが発生している」と語った。』

ほほう。

『その上で、日銀が公表している企業向けサービス価格指数の事務所賃貸と同程度の品質劣化が生じていると仮定すると、家賃は「消費者物価(CPI)全体を0.1ポイント以上、場合によっては0.2ポイント」押し上げるとの試算を示した。前田局長は統計委員会のメンバーで、個人的な意見と断った上で述べた。』

キタコレ!!!

・・・・・・・まあこの帰属家賃の問題に関しては石田審議委員が以前より「帰属家賃除く総合物価指数の方が消費者の実際の支出に近いのだから国民厚生的に考えたらもっと重視するというのも手(意訳)」的な指摘をしていましたように、確かにこの話って前からあるのはその通り。

ではあるのですが、「CPIの基準改定時に指数が上がる方向での計測見直しを『日銀が要請』した」と来ればそれは当然のことながらかのマリー・アントワネットも仰るように(大嘘)「目標が達成できないならば物差しを変えれば良いじゃないか」という新手の荒業が炸裂しやがったという発想が出て来るのは全く不思議ではない訳で、そういえば黒田総裁は折に触れて「2%目標達成の為に必要な事は何でもやる(キリッ)」と仰せでしたが、まさか金融政策ではなくて物価統計の方をいじって目標達成とか、まあ債券市場や短期市場の中の人たちがギャグで言う事はありましたが、まさか現実に出てくるとは思わなかったぜヒャッハー!!!!

ええもちろんアタクシといたしましては「統計に働きかける」という新手の金融政策を開始した訳ではなく、あくまでもピュアに物価測定をより実態にあった精緻化をして行こう、という中でこういう話が持ち上がったものであり、その一環としての動きであり、そのような邪な話ではないと思っておりますけれどもね!!!!!!!!!!!!!


さらに上記記事より。

『総務省は来年8月、5年に1度のCPIの基準年改定を予定しており、近く意見募集を行う。日銀は来年度前半に生鮮食品を除くコアCPI 前年比が物価目標である2%に到達するとしている。総務省が家賃の品質調整を導入すれば、CPI全体を押し上げることになるため、量的・質的金融緩和の出口論にも影響を与える可能性がある。』

でもってまあアレですな。やはりこの17年4月に消費増税が控えている訳で、そんな中で現在の日銀の中心的見通しですと上記記事の指摘のように16年度前半に物価2%到達という話をしているのですが、現在の民間エコノミストの中心的な見方は16年度に入って1%前後にはなるけど2%は無理だろという話になっている筈でして、まあそうなった場合に今度2%到達時期についての見通しを「基調」で粘って再度の手形ジャンプというのは消費増税の所に入って来るので最早訳分からなくなるし、ワンタイムエフェクトがかかると安定的に達成とかの判定が困難になるし、とかなんとか考えると、やはり今設定されている「2016年度前半に2%到達」という見通しをもう一回先送りというのは難しいと思われるのですよね。

そこでCPIの改定で帰属家賃が下がるのを止めて0.2%くらい上昇して、ついでに家電とかのヘドニックが掛かり過ぎじゃネーノとかそんなのでちょいちょいいじるとどうしたことでしょう!1.0%近辺だと思っていた物価が1.5%近くまで上がっているではないですか!!目標達成ですよ素晴らしいですね!!!!と必殺奥義炸裂でQQEってどうなるの????というような思惑まで出てきても不思議はないので1万ドラクマと言ったところではありますな。


・・・・・とは言いましてもですね、そもそも論として基準改定の時に品目バスケットが変わってとかそういう理由なら実際の消費バスケットを反映した変更だから分かるのですが、帰属家賃の品質調整をいじってCPIが上昇したから出口云々というのは本来話の筋がおかしい訳でして、2013年に目標として掲げたCPI2%というのは「その時の」CPI2%なのだから、帰属家賃の品質調整をいじって上昇した分は目標を当然上にあげるべきではないかとか、過去に遡及して帰属家賃を再計算して今までのCPIを見たら実はデフレデフレ言ってたのが間違いだったのではないかとか、そっちの方にも話が波及することになりますし、0.1%程度の変化ならともかくとして、それなりに有意な動きがあった場合には「過去ベースのCPIで考えたらそもそも白川総裁時代の「とりあえず1%を目指す」という目標設定の方が正しかったのではないか、QQEでのアジェンダセッティングが間違っていたのではないか」というようなオモシロ展開にもなってくるようなお話でございまして、CPIの基準改定で金融政策が変わるというのはそもそも論として本末転倒にも程がある話なので、本当はこういうのが金融政策に影響するという考えっておかしいんですよね。

で、本来は国民厚生的に望ましい物価の安定を目指すという話で金融政策をやるものであるからして、物価に関しても総合的に色々と勘案して安定的な物価水準とか安定的に推移とは何ぞや、という事を考えながら運営するものだから、それこそ除く帰属家賃の総合CPIとかも考えながら物価情勢の点検を行う、というのが正しい建付けだと思う(で帰属家賃除くならそもそもそこを変えても影響なしでしょ)ので、基準年改定によって金融政策ガーという話が出てくること自体がおかしいというのは今申し上げた通り。とは言いましても何せ今のQQEの建付けというのはやたらめったら「CPI2%」というその数字を重視していて、しかも達成への期限を明記した形で、昨年10月の追加緩和に見られたようにリジッドに近い特定指標ターゲット政策であるというような見せ方をしている(日銀にその意図が無くてもどう見ても世間はそういう見方をしているでしょと思うのだが間違ってないですよね?)のですから、そらまあCPI改定で数字が動くという話になると金融政策にも変化がというような思惑が浮上しても仕方ないところですわ、マッタクモウ。

まーこういう話で基準改定で金融政策ガー的な話になる前に、「本来金融政策で目指すべき物価の安定とは何ぞや」というようなそもそも論が先に盛り上がって欲しかったなあとは思うのですが、本件「要請」記事によって不毛な方向に話が盛り上がってしまうと何だかなあとゆー所ではございます。


しかしまあ何ですな、

『前田局長は家賃について「時間の経過につれて品質が低下する分、仮に表面の価格が横ばいでも、品質調整後の物価指数は上昇ととらえるべきだろう」と述べた。「仮に品質調整が実施されれば、家賃は指数を押し上げることになるが、こうした品目でも品質調整に取り組むこと自体がCPI全体の精度を向上させるために大切ではないか」と語った。』

ということなのですが、おじちゃん頭悪いから良くわからないのですが、家賃の品質調整という話であれば、昨今の都心部では鉄道の整備(複々線化とか)やら相互乗り入れの拡大やら新線の建設やらで鉄道の輸送力の拡大やら利便性の向上が進んでいたり、道路の整備が進んだり、人口集積に伴う商店などの充実とか、そういうような事が起きている訳でして、そーゆーのってヘドニックをゴリゴリ掛けると実は東京近辺は実質的に家賃が低下していましたとかそういう話になったりせんのかとか、帰属家賃の品質調整って色々とヤヤコシイ話になるような気がせんでもないのだが・・・・・・・・・

つーかまあその手の特殊要因が色々とある統計から物価安定を判断する際には特定の指標にコミットするのではなくて云々とか結局さっきも申し上げた「物価の安定をどう定義するのか」という話になって、そうなると「グローバルスタンダードだから2%(キリッ)」というのは何だったのかとかみたいな中々深遠な話になってきそうで今後の展開が楽しみになってまいりましたというこの傍観者丸出しコメントでスイマセンスイマセン。

ま、しかしそもそもこの話って上記の記事での記述にありますように、基準改定に伴うパブコメを近日募集の筈ですので、その辺りから徐々に「基準改定でどういう感じになるのか」的な話が盛り上がって来る(徐々に最近本職の方の仮置き分析は出ているけど)という所だったと思うのですが、「日銀が総務省に要請」というこのキャッチーにも程がある記事が出て思いっきり妙な方向に盛り上がりそうでして、何でこんなの記事になっちゃうのかなあとは思うのでありました。

なお、「また要請か!(以下の部分は内務省検閲により削除されました)。

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2015/06/22

○MPMの回数削減は方向性として結構な話だが微妙にもにょるというかツッコミというか

声明文の後にこれが出て、どうせ声明文変化ないだろと思ったら案の定声明文は上記のとおりだった訳ですが、ここでMPMの回数削減が出るとはこれはまた。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150619a.pdf
金融政策決定会合の運営の見直しについて


・施策としては何ら文句はないが理由説明のセンスが最悪なのですがこれは

『本日、日本銀行は、政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策に関する審議と情報発信を一層充実する観点から、金融政策決定会合の運営を、以下のとおり見直すことを決定した(全員一致)。関連政令の改正を条件に、2016年1月から実施する。』

どうせ今ならOISとかにも影響しないでしょうから速攻実施でもええんやで。

『これらの見直しによって、政策決定の基礎となる経済・物価見通しを、より高い頻度でより詳しく示すとともに、会合後速やかに会合における主な意見を公表することとする。』

回数が減ってより高い頻度とはどういう事やというのと、主な意見を公表というのは後に出てくるが、まあここまではイイハナシダナーな件なのですが・・・・・・・・・・


『このように、@四半期毎に、経済・物価見通しを公表した上で、Aその中間の会合を含めて、金融政策を決定する会合を年8回開催し、B会合終了後は速やかに情報発信を行うという枠組みは、近年、主要中央銀行で主流となってきているものである。』

・・・・・・・・・・orzorzorz

えーっとですね、方向性は別に出されている話で悪くないというか改善方向なので誠に結構なお話ではあるのですが、この「グローバルスタンダード(キリッ)」というのは置物マネタリーベース理論に始まり、黒田日銀における「2年で2%」の根拠説明などでも、エビデンスに基づいた実証的科学的な説明を放棄する為に使われている代物になっている上に、肝心のグローバルスタンダード(キリッ)の「2年で達成」が出来なくなったら「原油価格低下で物価が伸びないのはグローバルスタンダード(キリッ)」と今度は達成できないときの言い訳にまでグローバルスタンダードを出してくるという有様という現状を踏まえますと、もうちょっとモノの言い方というのは無かったのかというお話ですよ。

それからグローバルスタンダード(キリッ)と言えば国債決済T+1への短縮の話にしても、決済リスクの削減と比べて事務コストの拡大が間尺に合うのかとか、現状の国債市場の流動性の低さ(それも金融政策による国債大量購入が原因)の中で結果として国債市場の流動性にストレスを掛ける事になる証券決済期間の短縮化をこの時点で強硬する必要があるのか、というような疑問に対してもそういえばグローバルスタンダード(キリッ)で済ませようというのが濃厚に漂ってくるように、なんちゅうかこう説明放棄をして押し切りたい時に出てくるのが「グローバルスタンダード(キリッ)」って奴なんじゃネーノという感じですな。

でまあ本件に関しては合理的な説明が他にやろうと思えばできる筈で、ついでに海外とのタイミングがあうとそれはそれで便利とか、まあそういう説明にでもしてくれば良いのに、「隣の太郎ちゃんの所がファミコン買っているんだからボクにも買ってよね〜ね〜」というような風情を醸し出す文書になっているのが今回の公表文を見てズッコケ三銃士状態になるところですな。しかもこの文言の辺りが文書1ページ目の中央部分にドドーンと来ているので悪目立ちしてしまうのが更に印象を悪くするので、出来上がった時の文書構成をもう少し考えた方がよかったと思う。



・「主要な意見」の書き方如何で決まると思われる

ということで内容ですが。

『(1)「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の年4回化

「経済・物価情勢の展望」(以下、「展望レポート」)の公表を従来の年2回から年4回に増やし、1月、4月、7月、10月の金融政策決定会合(以下、「決定会合」)終了後、直ちに公表する。』

金融経済月報が出てこなくなる訳で、従来月次で出ていた月例経済報告とタイミングがずれる事になって比較検討ができなくなるなあというのはあるのですが、まあそもそも月例経済報告と金融経済月報では判断のタイムスパンや判断変更の基準が違うので単純に横に並べられても・・・・・というのはあるにはあると思いますが、良く月例と金融経済月報を横で並べて比較するというのはあった(アタクシはそこまで手を回せるほどの本職ではないので月例はせいぜい斜め読みでしたけど、大汗)ので、その点ではありゃーというのもあるかもです。


『(2)政策委員全員の経済・物価見通し及びリスク評価の公表

展望レポートにおける政策委員の経済・物価見通しについて、従来の政策委員の大勢見通しに加えて、全ての政策委員について各委員の見通しとリスク評価を公表する1(別添の公表例を参照)。』

脚注1は『1 これに伴い、現在公表している政策委員の見通し分布チャートの作成は取り止める。』です。

でまあこちらは図表がありますが要するにドットチャートにするという事ですかそうですか。


『(3)「主な意見」の公表

決定会合における「主な意見」を作成し、決定会合終了後1週間を目途に公表する2。』

脚注2は『2 決定会合の「議事要旨」は、従来と同様、次回決定会合で政策委員会の承認を受けた後に公表する。』

となっていまして、議事要旨に関しては政策委員会・金融政策決定会合での議決事項であると日銀法に規定されているので、これは動かしようがなくて、そうなると決定会合の議事要旨が出るのが更に遅くなるのでコミュニケーション上問題になるのは明らかなのでこれが出ると。

でまあこの「主な意見」の所でどの程度まで踏み込むのかが悩ましいですな、と申しますのはあまり踏み込み過ぎて議事要旨と同じようなモノが出てくるとそれは脱法状態になってしまうから、読む方としては出来るだけ詳しいのを見たいのですが・・・・・・・・・・・

そしてここの「1週間」というのはミニッツが出てくるのが無暗矢鱈と早いBOE(ただし論点がやたら端折られているので何が何だかよくわからなくて、継続して読まないと流れが分からない・・・・・で思い出したが最近ネタにしていませんなすいませんすいません)もビックリの速さになるのですが、期間の速さは素敵ではあるのですけれども、内容がペラペラですとそれはそれで困るというか、コミュニケーションの後退にならんかというのもあるので、まあここの内容に期待です。


『(4)金融政策決定会合の開催頻度の見直し

展望レポートを議論・公表する会合を年4回開催し、その間に経済・物価情勢の変化などを議論する会合を開催することで、金融政策決定会合を年8回開催する(従来は年14回程度)345。』

脚注は以下の通り。

『3 既に公表済の2015年7月から12月までの決定会合等の日程は変更しない。2016年1月以降の決定会合の日程は後日公表する。』

『4 金融経済月報の作成・公表は取り止め、年4回公表される展望レポートに集約する。』

『5 米国連邦準備制度、欧州中央銀行においても、決定会合の開催頻度は年8回となっている。また、イングランド銀行も、年8回に変更する方針を明らかにしている。』

5番が余計なのですがそれは・・・・・・・・・・・・・・・

ということで、月報が無くなって展望レポート4回になるのですが、ロジとか手間的に言えば月報減って集約する方がやりやすいでしょうし、MPMが14回から

なお、MPMが14回(最初は20回とかあった)の根拠はこちらです。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09SE385.html
日本銀行法施行令
(平成九年十二月二十五日政令第三百八十五号)

『(政策委員会の招集)

第九条  政策委員会の議長(議長に事故があるときは、法第十六条第五項 に規定する議長の職務を代理する者。以下この条において同じ。)は、法第十五条第一項 各号に掲げる事項(以下この条において「金融調節事項」という。)を議事とする会議を、一月に二回、相当な間隔をおいて招集することを常例としなければならない。』

ということで、これ以上減らすのは明らかにアレというのと、政策委員会の日程に関してはここにあるように政令対応なので、日銀法改正をしなくてもヨロシという事ですが、まあ回数減らすとはどういう事やと政治方面から言われたら困るのと、下手にツッコミを受けても嫌だから錦の御旗の「グローバルスタンダード(キリッ)」なんでしょうけれども、やはりこう説明面倒くさいから錦の御旗を持ち出すというのも如何なものかという感は拭えませんですなあとは思います。

なお、サラリーマン的に申し上げますとこの手の「反論しにくい錦の御旗攻撃」というのは実にこう便利な(以下自主規制^^)。



・ところで何でこのタイミング?????

という質問は会見でもあったと思いますが、まあ「2年で2%」の足かせが無くなった上に、物価目標達成時期は盛大に後ずれさせるわ、物価だけがホイホイ上昇しても困るという認識が広がるわと、目先直ぐに物価が上がらなくてもいちゃもんつけられない上に、物価が上昇しだすかどうかの判定時期まで時間がある(これが秋以降になると物価が上がらないとなった場合に見通しがどうなのとかまた炎上しだす)というのがあったのでしょうなあと。

まー裏を返して言えば政策課題が無いのでここぞとばかりに長年の懸案を出してきたという所でして、つまりこれは次回展望レポート中間評価では当然の如く何もなく無風で通過することが(天変地異の無い限り)確定的という事を示していると思います。


しかしまあ何ですな、執行部様の見通しに沿って経済物価情勢が進展すると2016年度前半になると物価が2%に到達している筈でして、そうなりますとQQEの出口政策をどうするのか、という時期になる筈でありますので、そんな大事な時期に入って経済物価情勢を点検して政策判断を行う金融政策決定会合の回数が減るとはこれはまた大丈夫なんでしょうか寧ろ回数増やした方が良いんじゃないですかねえ(盛大に棒読み)。

・・・・・・・・・という気はするのですが(しません)、これはまあつまり執行部の皆様におかれましては「来年になって出口政策で必死に何度も会合をやらなければいけない事態」と「物価目標が全然達成できなくて決定会合の度に言い訳をしなけばいけない事態」というのの発生可能性を天秤にかけた場合に後者の方が可能性が高い場合の事を考えて今回入れられる時に会合減少攻撃を入れたという事ですね!!!!!!!!!!!


まあしかしこれで毎回の会合の度に追加緩和がどうのこうのというネタが飛ばなくなって、年4回に集約されるとなりますと振り回されなくて結構ですが、悪態ネタが無くなるので寂しい気もしますな(ゲス顔)。


まータイミングとしては真面目に考えるとさっき申し上げたように単に「とりあえず政策課題の空白期間なのでここを先途とぶち込んだ」という事なのだと思いますがね。内容そのものは「主な意見」の所次第ですが方向性として回数が年8回程度に減るのは結構なことで。必要なら臨時会合やればよいのですから(それで臨時会合だらけになったらそれはそれで困るけど^^)。

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2015/06/17

○国会答弁で色々と

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150616a.htm
通貨及び金融の調節に関する報告書
参議院財政金融委員会における概要説明

昨日は毎度おなじみの国会半期報告があったのですが、そちらで色々とお話ががががが。

・黒田総裁の為替レート云々

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NQ0LDT6S972901.html
日銀総裁:「金融政策に深い意味はない」−実質実効レートで
2015/06/16 13:08 JST

もうちょっとこの記事の題名何とかならんのかと思うのですがそれはともかくとして。

『(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は16日、為替相場を動かした10日の発言について国会で聞かれ、「このところの名目為替レートについての評価や予測として申し上げたわけではない」と述べるとともに、実質実効為替レートは「金融政策に非常に深い意味はない」と語った。こうした発言を受けてドル円相場は円が値下がりしている。』(上記URL先より、以下同様)

ということで国会で問い詰められて説明しているのですが・・・・・・・・・

『黒田総裁は参院財政金融委員会で、10日の発言について「あくまで理論的な説明をした」とした上で、「2国間の名目為替レートの水準や動きについて、先行きを占ったり、評価するものではない」と発言。「名目ベースでの円安を望んでないとか、円安にならないだろうと申し上げたわけではない」と述べた。 』

という説明なのですが、ブルームバーグニュースはその先がイヤミでワロタ。

『黒田総裁は10日の衆院財務金融委員会で、「実質実効為替レートでみると円安になっているのは事実」と指摘。実質実効レートでは「ここからさらに円安はありそうにない」などと述べた。これを受けて、それまで124円台半ばで推移していた円相場は直後に一時122円台まで円高が進んだ。』

参議院インターネット中継だと質疑の過去ログも一定期間は見れる筈なのですが、何かこう説明しているのですが何が何やらという感じでの話をしている感はありまして、結局何を言いたかったのかとゆーと「先日の発言は円安けん制ではありません」ということだったのではないかというのだけは把握できましたが・・・・・・・・・

『黒田総裁はまた、無所属クラブの中西健治氏の実質実効為替レートの評価について聞かれ、「実質実効レートが最初に開発されたのは国際通貨基金(IMF)で、私はその当時IMFに勤務していたので、それをめぐる議論やその論文等を読んだことがある」と述べた。』

『その上で、「その後40年くらい経って、これから何かを読み取るのは非常に難しいものであり、金融政策にはすぐには役に立たない。非常に迂遠(うえん)なものだ。為替の動きを占う面でも、直接的に含意がはっきりしているものではない」と指摘。』

『「この理論を開発した人を私はたまたま知っているので、全く無意味だ、一顧だにするな、と言われると、そこまで言う必要はないと思うが、金融政策にこれが非常に深い意味や縁はないということには全く同意見だ」と語った。』

しかしまあ何ですな、これ説明すれば説明するほどドツボに嵌るというか、わけがわからなくなって来るので、単純に「具体的な為替レートには言及しない」「経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」という説明を一貫して行えばよいだけだと思うのですけどねえ。

ということで実質実効為替レートの話はやっちまいましたなというだけの話でしたという所で、まー10日は前原さんの質問に答えようとして、自分の得意分野だという認識があるから余計な話をして口を滑らせた、というだけの話だったという評価でよろしいんじゃないですかね。もちろん背景として円安誘導ばっかりしてケシカランとか、そもそも円安コストプッシュで物価あげても誰得じゃネーノというような批判が外交方面や政治方面から飛んできているのはあるんでしょうが。


・それより色々とやばかったのは師匠なのですが・・・・・・・・・・・・

とまあそれはそれで良いのですが、昨日の参院財金での質疑ではニュースネタにあまりなっていない、と言うかニュースネタにするのもヤバいというのが置物大師匠の答弁。

民主党・新緑風会の風間委員(だったと記憶しているが間違っていたらすいません)からの質問が置物大師匠に飛ばされまして、質問の趣旨は日銀が剰余金を多めに留保したこの前の決算から始まり、「緩和政策によって大量に買入を行った資産について出口政策などで多額の損失が出た場合に通貨の信認という意味で大丈夫なのかという点について置物副総裁の認識如何」という話だったのですけれども、質問されたことと全然違う説明をおっぱじめたり、答弁の途中で「ところで何の質問でしたっけ」とか言い出したりで、まあそんなに国会マニアじゃないから委員会質疑を熱心に見る訳ではないアタクシなのですが、いちいち速記が止められてしまうという凄まじい展開になっておりまして、マジで大丈夫かという感じでしたので、中継録画見るなら最初の方が実はオヌヌメだったりします。

でまあその答弁の中で財政ファイナンス云々に関してかなりやばそうな言い間違えをして質問した民主党の方がびっくりして大塚耕平さんが立ち上がって理事席に行って議事止めるというこれまた珍現象が発生しておりまして、いやあの置物師匠大丈夫かという所でございましたですよ。

詳しくは会議録が出たらという所ですが、速記が何度も止まっているので様子を見るなら会議録よりも録画映像を見た方が良いかもしれません。

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2015/06/11

○黒田総裁の国会答弁があばばばばー

俺様メモなので皆様ご案内のニュースですがこいつを。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPPOPA6JIJUY01.html
日銀総裁:「ここからさらに円安はありそうにない」−実効レートで (2)
2015/06/10 15:21 JST

昨日は半期報告だったのですが、午前の時点でも微妙にアレな発言をしているなあとか思ったのですが、あちゃーとなったのは午後の部での答弁(なお場所は衆院財務金融委員会)でして、ヘッドラインで言いますと反応したのはこの辺りだと思われます。引用はブルームバーグからですが他のベンダーも同様に出していて、さすがに今回は一部切り取り系のヘッドラインではなくて普通のヘッドラインになっていました(国会の委員会質疑は秘密会じゃなければ基本的にインターネット生中継されるから恣意的なヘッドラインは出てこないのが普通)。

BFW 06/10 13:12 *日銀総裁:実質実効為替レートでみると円安になっているのは事実
BFW 06/10 13:14 *日銀総裁:ここからさらに円安はありそうにない−実行為替レートで

でまあこれが出て為替が124.50辺りから4円割れて3円後半とかになったのですが、日本語ヘッドライン出て振れて英語ヘッドライン出てまた振れるみたいな動きになっていたのですが・・・・・・・・・

BFW 06/10 13:48 *日銀総裁:永久的な量的・質的緩和は考えていない
BFW 06/10 13:52 *日銀総裁:付利金利の引き下げは検討していない
BFW 06/10 14:00 *日銀総裁:日銀券ルール一時的停止、量的・質的緩和終了時点で復活

(以上ブルームバーグニュースヘッドラインより、当然ですが関連ヘッドラインの一部です)

まあこちらの方は当然の発言ではありまして、そらまあ永久にQQEするのだったらそもそもQQEの効果が無いちゅう話ですから当たり前ですし、付利金利に関してはMB積み上げを建付けにしているので難しく(MB理論から離れれば別だが今更変えられないでしょ)という所。

いわゆる銀行券ルールに関しては色々と言われますが、実際問題として一番重要なのは調節技術上の問題(短期市場金利の誘導政策を実施する際に長期での資金供給をし過ぎると短期で吸収しながら調節しないといけないので難しい&逆鞘発生の恐れがある)だったりするのですけれども、「QQE終了時点で日銀券ルール復活」はちょっと口が滑り過ぎで、それを額面通り受け止めると「QQE終了時点では日銀保有国債の残高は市中売却によって減らす予定ですが何か?」と言っているように見えてしまう(実際問題としてそのような乱暴なことは難しいけど)ので、それはマズイだろという発言だったりしますが、まあこれ単体で市場が反応した訳ではなくて、上記のようなヘッドラインが五月雨式に出てきて、さらに海外勢が目を覚ました順に為替市場に登場して反応という図だったのかなという感じではありました。


でですね、ついこの前タカ&トシ先生が同じように実効為替レートで歴史的円安という話をしていたり、もうちょっと前にはジンバブエ審議委員が円安はいいところまで来ている的な話をしていたりという一連の発言がありーの、本当か飛ばしか良くわからんオバマさんの為替がらみ発言報道を巡る一連のドタバタがあったばかりでしたので、そらまあ普段「為替水準については言及しない(キリッ)」と言ってた黒田さんがこのオモシロ発言をすれば、「これは何かあったのでは」となって盛大に反応するわこりゃという所でしょうな。


全般的な雰囲気としては一段の円安誘導をしても誰得という感じはしますし、G7だかに行ってきたばかりでその時も何か言われたりはしてるだろうなあという想像はありますので、そういうベースがある中でつい言ってしまった的なお話なのでしょうが、そもそも日銀の経済物価見通し的に言えば円安が今後ドンドン進むかというのは兎も角としても、少なくとも円安修正起きて円高モードになってくるみたいなことになると、期待の輸出や国内設備投資回帰にも悪影響を与える可能性がある話であって、そうなりますと物価の基調がコケるという事になりかねませんので、日銀執行部としては基本的に円高に振るような事は歓迎しないとなる筈(そうじゃないなら今までの話の整合性が取れない)ですから、まー今回はやっちまったなあおいという話だと思うのですが、先般のピーターパン発言と言い、ちょっと足元で黒田さんネジが外れてきているのではないかとそちらの方が懸念されるところではあります。


しかしまあ何ですな、円安けん制みたいな発言をしてきちんと円高に振れるというのは別の考え方をすれば「まだ当局者の介入が市場に効いている」という事ですから結構なお話でもある訳で(^^)、これが「円安はケシカラン」と言っているのを材料に更に円安一段の進行とかになりますと、それはもう為替市場が糸の切れた凧状態かつ虐殺モードに入っていることを意味する訳でございますので、当局の威光がまだまだ強く反映するというのは結構な事ですよ、などとおバカな事をいってポジティブに考えてみる(笑)。

・・・・・・・てのは半分冗談ですが、まーこの前のドラギのボラ上等発言といい、昨日の黒田さんのこの発言といい、中銀総裁の市場への言及が市場のボラを高めて大変動をさせてしまうとか迷惑千万にも程があるので可及的速やかにご両者に恵方巻きを献上したいと存じますです。しかもドラギのおっちゃんは金利の話だからまだしも、日本の場合為替は中銀が口出すものではないので更にマズーとしか。


しかしまあ何ですな、為替と株があばばばばーなのは分かるが、あばばばばーを見てちょっと戻るかと思った債券の戻りが弱いと思ったら結局先物叩き売りというのがお洒落ですが、これはこれで別の要因なのかなという所ではありますな、うんうん。

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2015/06/09

○為替に関して色々と出ていますな(メモ)

またこいつか。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPLFI06JIJUO01.html
伊藤教授:すでに歴史的超円安、急落続かず−円買い介入なら驚き (3)
2015/06/08 16:19 JST

この「言うだけ言って引っ掻き回すけど最終的にケツ持ちは誰かにさせて逃げ切って燃えた頃には全く別の所に突っ込んでいる」という嗅覚の大変鋭い学者というよりは世間師とか道中師とかそんな感じの大先生ですが。

『伊藤教授は、最近の為替相場は「ドル高だ。あらゆる通貨に対して上がっている。円安で日本が責められるとか、日本売りではない」と述べた。ただ、現段階での円買い介入の可能性については、「今したら皆驚くだろう。過度の変動がなければ、正当化は難しい」と語った。均衡レートからの乖離(かいり)がさらに急激に拡大していけば、「全くないとは言えない」が、「125円から130円まで2、3日で」急落した場合などに限られると言う。 』(上記URLより、以下同様)

最近のというのは足元の話で、円高是正に関してはこんな話。

『伊藤教授によれば、超円安なのに貿易収支 が黒字基調にならないのは原発の停止や生産拠点の海外移転、人口減を見越した国内投資の低迷などが要因。「いずれにせよ、身の丈に合う形で生活水準が落ちているのは確かだ。国際競争力の低下は紛れもない事実で、ゆゆしき問題だ。ただ、円高になったら状況はもっと悪くなるだろう」と述べた。 』

てな感じですので、要はこの辺で落ち着けという話なのですが、この嗅覚鋭くハイエナのようにキャッチーな所に飛びついて適当に好き放題言って回る大先生がこのように仰せというのは、まあ官邸方面とかの「空気」がそういうことなんでしょと思うのでありました。


しかしもっとウケたのはこちら。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NPMW8CSYF01T01.html
米大統領:強いドルへの懸念表明せず−仏当局者の発言を否定
2015/06/09 01:54 JST

『(ブルームバーグ):オバマ米大統領は、主要7カ国(G7)首脳会議の非公式の場で強いドルに懸念を表明してはいないと述べ、フランス当局者の発言を否定した。オバマ大統領は8日の記者会見で、「特定されていない人物の引用を信用してはならない」とし、「私はそのようなことは言っていない」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

クソワロタ。

『仏当局者は8日、オバマ大統領がG7首脳らに対しギリシャなどの地政学的リスクが金融市場のボラティリティ(変動性)を高め、金利や為替相場に影響していると述べたと語った。この文脈で強いドルは問題だとオバマ大統領が発言したという。この当局者は、協議内容が非公開だとして匿名を条件に語った。この当局者発言に反応し、ドルはユーロと円に対して下落した。』

ということで、昨日はまさかのオバマ発言が出る→全力否定というコンボまで出てきまして、まー為替ネタはしばらく色々と飛び出すんじゃないですかねえ、と妄想。

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2015/05/25

○本日は短国買入とかですが

・固定金利オペ謎の残高増加が続く&今日は短国買入

金曜のオペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba150522.htm
共通担保資金供給(全店)<固定金利方式>(5月26日スタート分) 7,210 7,210

ということですが、5/26の落ち分の固定金利オペの期落ちは3860億円でして、今回もまた増額ロールになっておりまして、ここもと微妙に謎ながら固定金利オペが連発で増額ロールされていまして、今月固定金利オペが落ちたら落ちた分だけ短国買入に皺寄せが来るわと思っていたのですがあにはからんやで推移しておりまして誠に結構なのだが謎は謎。

まあこの辺は個別のオペ先さんの懐具合(担保繰りとか商品在庫繰りとか)によるものだと思うので何とも言えないのですが、これで6月は6月で貸出増加支援貸出が実行されますからこちらも(全体の担保繰りはその分厳しくなるのですが)短国買入的には買入の減る要因キタコレという所です。

しかしまあ何ですな、短国3Mもカレント部分のBB引けは0.2bp(新発WIの引けは0.5bpとかになっているがWIは全然あてにならないので無視)となっておりまして、これは普通に今日は短国買入の玉がある訳ですが、本来入るべき本命の1年カレントちゃんの引けは普通にマイナス1.5bpとかになっておりまして、こちらは平均落札がマイナス0.79bpだったのでこちらが堂々の落札という事になって3Mカレントは入らないという事になる筈なのですが、そこで急に「あるだけ買うオペ」を実施されるとまた日銀トレード万歳状態になってヒャッハーとなってしまいますので油断も隙もありませんな。


・ところで2年がマイナス継続なのですが

ここもと2年の金利がマイナス推移している時間が長くて、なぜか超長期と連動しているような局面もあって一時プラス圏に浮上したと思ったのですが、先週もちゃっかりマイナス推移で金曜の引けもカレントでマイナス1bpとかの水準ですのでここに来て明らかに3Mとインバート。

以前は「短国マイナス」→「1年以内の利付国債」→「そんなことも言ってられないのでより長い中短期利付国債」という形でのヒャッハー相場になっていて、短国の需給が緩むと中短期の需給も緩むという図もあったのですが、ここに来ての2年とかのマイナス金利状態ってえのは明らかにこのゾーン独自の需給要因によるものでして、そうなりますと短国の金利がプラスに浮く(普通に考えると四半期末の買い要因が巨大でない限りにおいて6月は末近辺以外は短国の需給はそんなにタイトにならない筈)中で2年マイナスでインバート状態継続という事になりそうな悪寒。

となりますと毎度おなじみの思惑としては来月の輪番で3年以下を削ってどこかを増やすのではないか疑惑はあるのですが、そもそも論として買入そのものの総額の問題があって、3年以下の輪番を減らしても総額のバッファーが無いので他の年限の買入を増やすしかなくて、仮に減らすなら1回500億円は減らすことになるとその分振る先が無いという残念な事になりますので、まあ今月も普通に枠の変更なしで進むしかないのではないかと存じますがこればっかりは末の引け後にならないと分からないのでよー知らんけどなという事で。



○しかし相変わらず付利下げの話多いですけど「それによって何をどうしたいの」かが分からん

という雑談な訳ですが、相変わらず「追加緩和で付利下げ」という話が多い訳ですが、そもそも論として付利もクソも現状で2年はマイナスだし5年は新発以外10bp割っているという状態な訳でございまして、付利を下げて何をしたいのかという事について付利下げ連呼している何とかストの皆様はどうお考えなのか小一時間問い詰めたい訳ですよ。

つまりですね、金融政策の効果としての日銀の説明自体がまあインチキ臭いにはインチキ臭いですけれども、それはともかくとしましても効果としてのルートが「実質金利」のルートであって、最近はすっかり転向された師匠の説明においても「MBを短期国債などで出すのではなくて長期国債を買う事に意味がある」というお話になっている訳ですからして、そういう文脈で考えれば短期ゾーンの金利をこれ以上下に掘るよりも、別の方法が無いのかねという風に思うのですよ。


でまあMBに関してもすっかり転向者となられた置物師匠も仰せのように、短期のオペでMB積み上げをするのではなくて、長期国債を大量購入することに意味があるというお話をしており、そういう建付けになっているのがこの前の日銀企画のペーパーだったりしますので、資産買入をやりにくくする(ECBは今の所マイナス金利との組み合わせでもワークしているではないかと言われているがそもそも連中は開始してから2か月そこらの話で、日銀は既に2年継続した上に物価見通しからしたら最低でもあと1年近く続ける破目になりそうなので全然比較にならない)付利下げをして短期の所を数ベーシス深堀りするだけの意味があるのかよとしか申し上げようがありません。

ちなみに、金利フレームに転向するのでしたら敗北宣言とならないようなインパクトが必要で、そのインパクトはマイナス金利とかではなくて、アタクシが最近勝手に妄想しているのは「無制限買入」というキーワードでして、では何を無制限買入するかと言うと、たとえばの話「残存5年までの中長期国債は出来上がり金利0.10%の水準で無制限に購入するのでいつでも日銀にお持込下さい(キリッ)」というような感じにしておけば、5年の国債金利が(政策が継続されると思われる限りにおいて、なので時間軸と組み合わせると効果を出しそう)0.10%から1ミリも上昇しなくなるのでそらまあその先の金利にも効くでしょうと思いますし、「国債無制限購入」で「金利ペッグ」ですから異次元買入並みのインパクトはあると思うのですけどね。単に利下げとかだと「政策の限界」とか「政策の枠組みが失敗」みたいな話にならんかねと思います。

なお、5年0.10%だとただの現状追認だったりするし、短期の金利が上がるのではないかという説はだいぶありますので(^^)、あくまでも単なる妄想ですからね妄想。

#まあもうちょっと色々と考えてはみます

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2015/05/18

○ブルームバーグの釣りヘッドラインが更に劣化が禿しい件について

金曜の引け後にまたこれ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NODT2V6JIJVX01.html
日銀:付利金利引き下げ含むあらゆる手段排除せず、追加緩和
2015/05/15 18:25 JST

またこの「関係筋」かよと思う訳で、こういうのにリンクをつけると見た目注目記事になっておそらくブルームバーグの社内評価的には良い記事という扱いになるのですが、どう見ても劣化の度合いがドンドン酷くなって見るも無残な出来になっている訳ですけど、まあ良く考えたらこういうクソ記事の評価が高まることによってブルームバーグ記事の信頼が更に下がったらメディアとして駆逐されるので災い転じて福となりませんかねえ位の悪態を申し上げたくなる状態ですわホントに。

『(ブルームバーグ):日本銀行は当面追加緩和は必要ないとの姿勢を維持しつつも、追加緩和が必要な際には、日銀当座預金の超過準備にかかる0.1%の付利の引き下げや撤廃を含め、あらゆる手段を排除しない方針であることが複数の関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより)

ということで複数の関係者とやらに取材しているのですが、単なる何とかストに対するコメントを集めているだけですし、もう何だかね(ちなみにそこのコメントについてどうのこうの的な話はしようと思ったけど自主規制)という感じでございまして、単にヘッドライン詐欺狙いの記事ですし、出すタイミングが金曜の引け後とか板の薄いところで出しているとか何の狙いがあるんでちゅかねえ(銃声)という所ではございますな。猛省を促したい。

#そら手段は全て検討対象ですよ、やるかやらないかについての可能性が問題でしょ

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2015/05/14

○佐藤審議委員の講演は金融政策的には特段の話ではないがトピックとしてはマニア向け

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko150513a1.pdf
東京金融市場のさらなる発展に向けて── レポ市場改革の取り組みを中心に ──
(FIAジャパン金融市場会議2015における講演の邦訳)

めんどいので日本語版をネタにします(汗)。

・お話自体は金融政策とは関係ないです

『わが国のレポ市場は、国債の先物市場がそうであるように、国債の発行・流通市場に対して流動性を供給し、円滑なマーケットメイクと価格形成に貢献するという非常に重要な機能を果たしている。その意味で、国債の先物市場とレポ市場はいわば車の「両輪」の関係にあり、レポ市場の発展は、国債市場の流動性向上を通じて、先物市場のさらなる発展にも繋がると考えられる。そうした金融市場間における相乗効果を期待しつつ、レポ市場を巡る国際的な議論の動向や市場の発展に向けた市場関係者の取り組みについて、日本銀行の考え方や役割なども交えながらお話したいと思う。』

という話ですので、金融政策とは関係ない短期金融市場とか債券市場とかの市場整備の話になっております。本件に関しては何で今この時期に推進をするのか意味が分かりかねる国債決済T+1化に向けた取り組みに対して、国債決済T+1を実施するにはレポ市場において現状の取引手法ですと事務が回らないのが明白(そもそも今の時点でも債券ディーラーの事務が繁忙)であって、この点を回すためにはトライパーティーレポのような形で業務の効率化を業界全体ではからないと無理ですから、そもそも論としてT+1実施の前提にレポ市場改革があるという話。

なお、確かに取引未決済リスクの削減とかの為にはT+2よりもT+1取引の方が良いに決まっているのですが、そのリスクというのは参加者が個別にコントロール可能なものであって、そこの削減に伴って発生する膨大なシステム投資や事務的な人的含めたインフラ整備のコスト、(取引に慣熟するまでの)事務リスクの高まりといったコストとの勘案でみた場合に、今のように短期市場金利がゼロ近傍になっていて、かつ日銀による大規模資産購入で債券現物市場の流動性が大きく低下しているときに、そのようなストレスのかかることをするというのはどう見てもダメだろと言うのは昔から申し上げている通りです。この件って大昔からある「取引のDVP化」から始まる一連の流れではあるのですが、国債決済期間の短縮化の為にレポ市場改革という流れになっているのもどうなのかというか、そもそも市場環境が変わっているのに当初の計画を碌に見直さないで突き進もうというのがどうなのかと思うのですがその辺のそもそも論はこの辺にしておいて先に逝きます。


・残高自体はまあそうなのですが短期市場の実質的な主力”運用”商品は別だと思うの

『さて、皆さんご承知のとおり、レポ取引は、資金と証券を一定期間交換する取引であり、多くの主要な金融市場において、資金や証券の運用・調達を行うための重要な取引手段となっている。わが国のレポ市場の残高をみると、2008年のリーマン・ショックの後一旦減少したが、足もとにかけては一段と増加しており、短期金融市場の約半分を占める中核的な存在にまで成長している(図表1、2)。』

何せQQEの前から預金金融機関は基本的に全てがローンポジション状態になっている上に、足元ではQQEの拡大により各行とも超過準備をこれ以上積めるのか、という状態になっていて、無担保コール取引自体は勿論あるのですけれども、そらまあ恒常的にマネーポジションの銀行というのが(一時的にマネーになっているとか、超過準備積み上げのご協力的なマネーという話は別)原則として居ませんがな、という状況において、無担保コール取引自体がそもそも指標性に欠けるし、その市場自体も重要性が落ちているのはその通り。

でまあ現状マネーポジション的になっているのはどこかと言えばそらもう国債大量発行を背景にして取扱高が大きくなっている国債のマーケットメーカーという事になりまして、在庫ファイナンス分は(資本勘定とかCP発行などの無担保調達もありますが)在庫の国債使って有担保調達になりますし、日々在庫は動くのでトランザクションも多いですしということで、まあ残高が大きいのはその通り。

おっちゃんが小僧の頃は都市銀行などが恒常的にマネーポジションでコール市場などで恒常的に資金を取っていて、しかもそのブレを毎日調節しないといけないので必然的にコールへの依存度が高くなり、そういう調達サイドの事情がある一方で農林系とか地域金融機関が恒常的にローンポジションとなっていましたが、調達サイドのニーズがそこにあるから運用サイドも必然的にそちらに向かうという構造で、ターム物に関しては短期国債市場では発行残高が不足していたので常に公定歩合よりも大幅に低い金利で取引されていて運用商品としての妙味がなくて、銀行発行のCDが大きかったとかそういう時代ではありましたな。

然るに、現状では短期金融市場の恒常的なマネーポジションってそういう意味では国債ディーラーが一番大きくて、そちらのニーズとしては当然レポ調達という話になるから図表の2にあるように資金調達サイドのニーズがそこにあるという話。

でまあそらそうなのですが、良く良く考えてみると短期市場で昔から比較して爆発的に調達を拡大しているのは政府もそうなのでありまして、短国市場の残高がこれだけあって、3か月物国庫短期証券が毎週5.4兆円ペース(今の所)で発行されている、という事になるとそらまあ運用サイドはそっちに逝ってしまいます罠という話で、レポ取引自体の残高が大きいのはその通りなのですが、では取引の参加者の広がりとか深みという点で特に資金取引サイドがどうなんでしょうというのは毎度ながら微妙ですなと思うのよね。

『このレポ市場について、わが国では、「市場改革」ともいえる取り組みが、国際的な議論も踏まえつつ、市場関係者の間で進められている。今、「市場改革」と申し上げたが、私なりにこの「改革」でポイントとなる視点を整理すると、「透明性」、「安定性」、「効率性」、「グローバル化」の4 つになると思っている。』

ということで先に進む。


・FSBのレポ改革

『レポ取引については、リーマン・ショックを契機とするグローバル金融危機の経験も踏まえ、G20 のイニシアティブのもと、FSB(金融安定理事会)などの国際的なフォーラムにおいて、その「透明性」や「安定性」を一段と高めるために、さまざまな改革に向けた議論が行われており、日本銀行のスタッフもこうした議論に参画してきている(図表3、4)。』

『こうした議論の背景には、主として米国において流動性の低い証券化商品を対象とするレポ取引が大きく増加し、いわゆる「シャドーバンキング」としてレバレッジの拡大や過大なリスクテイクが生じていたことが、金融危機をより深刻なものにしたのではないか、との問題意識がある。』

後の方で説明がありますが、そもそも日本のレポ取引というのは国債発行額の拡大と共にショートセールのカバー取引と在庫ファイナンスの為に拡大した市場であって、流動性の低い金融商品のファイナンスによってレバレッジを高める取引として使われている訳ではないので、FSBの問題意識を日本にそのまま持ち帰りされても迷惑以外の何物でもないので、FSBにおける議論においては関係各位の奮闘に期待します。

『FSB の議論では、こうした「行き過ぎ」を防ぐためには、まず、金融当局がグローバルなレポ取引の動向を適切にモニターする必要があるとされた。また、適切なヘアカットを導入することでレポ取引のリスク管理をより強化していくことも求めている。つまり、グローバルな金融安定上のリスクに対応するため、プルーデンス政策の観点から、レポ取引の「透明性」と「安定性」を更に高めて行くことが国際的に合意された。』

なお後にありますが国債はヘアカット義務がありませんので中曽副総裁でも安心です(違)。


『(「透明性」の向上に向けた改革<データ収集体制の構築>)』

『FSB は、レポ取引の担保となる証券などの詳細なデータを収集し、レポ取引によるレバレッジの積み上がりのほか、満期ミスマッチの状況、特定の市場参加者へのリスクの集中度合いといった金融安定上のリスクを把握することを狙いとして、レポ取引に関するデータの収集体制を各国およびグローバルの2 段階で整備していく方針を示している。現在、FSB 内の専門家グループにおいて具体的な検討が進められており、日本銀行もメンバーとして議論に参加している。』

しかし在庫ファイナンスとショートセールの在庫確保という観点からするとファンディングがオーバーナイトになってSC借入がタームになるのですが、それを捕まえて「期間ミスマッチが拡大しているのでご指導」とか飛んできたら困るので「国債市場が巨大だから自然に起きている現象」というのと「レバレッジの積み上がりによって起きている現象」というのは良く良く考えて規制をかけていただきたいものです。

『昨年11 月には、データ収集の項目等の詳細を示した市中協議文書が公表され、この市中協議の結果を踏まえて、本年末までに最終的なデータ収集の枠組みが取り纏められる予定である。』

それは良いのですが、いちいち取引データ出せという話になったら只で無くさえ事務面が煩雑な今のレポ取引に対して「単なる余裕資金運用の一環」としてしか考えていない恒常的な資金の出し手が面倒を避けてGCレポ運用から手を引くようなことが起きないようにお願いしたいものです。そらまあ調達サイドは調達できないと困るから当然こういうのは頑張るでしょうけどね。


『今後を展望すると、本年末にかけて、グローバルレベルでのデータ収集に関する議論が深まるもとで、わが国においても、各国レベルでのデータ収集をどのように行っていくか、といった議論が徐々に本格化していくと思う。その際、円滑なデータ収集を行うためには、当然のことながら、システム対応など市場参加者の負担や取引実務にも十分な配慮が必要である。』

と思ったらちゃんと言及している所を見ると相当言われてますな(^^)。

『そのうえで申し上げると、政策当局の間では、今回のデータ収集プロジェクトは、レポ市場、さらに言えば、銀行システムの外側にあるシャドーバンキングの「透明性」を高める効果的な手段であり、金融安定上のリスクを抑制していく上で、とても重要な政策対応であると広く認識されている。』

言いたいことは分かるが米国だけでやってくれとしか申し上げようがない。

『従って、今回のデータ収集プロジェクトにしっかりと対応することは、わが国金融市場に対する国際的な信認を確保し、グローバルな金融市場間の競争力を高めるだけでなく、グローバルな金融安定への貢献といった観点からも大切なことだと思っている。日本銀行としても、レポ取引のデータ収集体制の円滑な構築に向けて、内外の関係者と協力しながら、引き続き積極的に貢献していく考えである。』

そもそも米国様が無茶な取引をしてチョンボをしたのに対して、そういう事を全然していない他国がそのチョンボの後始末に巻き込まれて、無茶をしてないのにわざわざ手間暇かけて(もとより実施していない)無茶取引をしていませんというのを疎明しないと国際的な信認を確保できないというのが話の筋として何だかなあという感じでして、それよりも「まずこれらの取引を行っている米国に対して厳しい開示を求める」という話を他国と組んでやった方がよろしいんじゃないでしょうかとか言うと米国ではドットフランクでという話になるんですかね。


『(「安定性」の向上に向けた改革<適切なリスク管理の実施>)』

『レポ取引における「ヘアカット」とは、担保となる証券の価格変動リスクを反映した「掛け目」をかけたうえで資金のやり取りを行うことで、取引の安全性を高めるリスク管理の仕組みである。金融危機の際には、レポ取引の担保となっていた証券化商品の価格が急落し、そのヘアカットが急激に引き上げられた結果、証券化商品の価格下落や流動性の低下がスパイラル的に加速し、レポ取引の「安定性」が著しく低下したとの指摘がある。』

それはそうだが日本はそもそも国債レポばっかりなのですけど。

『こうした経験を踏まえて、FSB では、各国当局に対し、中央清算機関(CCP)で清算されない全てのレポ取引について、「ヘアカット」に関連した2 つの政策対応を求めている。』

つーことだがそもそもCCPで取引飛んだ時にちゃんとCCPが補填してくれないのであればCCP清算とそれ以外を分ける意味がないのだがその辺はどうなっているのでしたっけ。

『まず、一つ目が、レポ取引のヘアカットに下限値を設定する「最低ヘアカット規制」である(図表5)。景気が良い時には、市場参加者がレポ取引の担保となる証券の価格変動リスクを過小評価し、過度に低いヘアカットを設定する傾向が指摘されている。この規制の狙いは、レポ取引を行う際に、過度に低いヘアカットを適用するインセンティブを抑制することで、好況時の行き過ぎたレバレッジの拡大や、不況時の急激なデレバレッジ、いわゆる「プロシクリカリティ」(景気循環性)を防ぐことにある。』

まあ趣旨は分かる。

『なお、現在の政策提言では、国債を対象とするレポ取引は「最低ヘアカット規制」の対象外とされている。これは、国債の価格動向は景気循環的でない傾向がみられることや、国債のヘアカットは多くの取引でゼロ、あるいはゼロに近いためとされている。この点、わが国のレポ取引は、証券化商品を担保とするレポ取引のウエイトが相応にある米国などとは異なり、その殆どが国債を対象としており、ヘアカットを行わないものが大部分を占めている(図表6、7)。このため、「最低ヘアカット規制」が、わが国のレポ市場に与える影響は、現時点で、全体としてそれほど大きくならないのではないかとみている。』

ということで、順当な話がやっと出てきたわけですが、そこまでの話が米国市場において発生した問題を軸に展開されていて、日本の事情に関する話をここに持ってきているのって、講演の相手が外国の方を念頭に置いている(もともと英語だし)からそれでも良いのかもしれませんが、こうやって邦訳テキストに落とされると文章構成的に先に「なんか日本市場と関係ない話をしていますが」という印象を与えてしまいますので構成上宜しくないのではと思うのですが何とかならないのですかねえ・・・・・・・・・・・・

『さきほど申し上げた通り、わが国のレポ取引は、その殆どが国債を対象としており、ヘアカットを行わないものが大部分である。もっとも、十分な信用力と流動性を備えた国債であっても、金融商品である以上、価格変動のリスクがあることは否定できない。』

『このため、ヘアカットのメソドロジー基準のあり方も含め、レポ取引の安定性を確保していくうえで、どのようなリスク管理が望ましいのか、市場参加者間で議論を深めながら、共通の認識を作り上げていくことが大切だと思う。』

そらまあそうなのですが、図表5の最低ヘアカット基準って担保の残存期間と種別の概念があるのですが、レポ取引そのものの期間の概念がないのが変でして、今の日本のレポ市場みたいにT+1スタートの翌日物取引が主体とかになっているときに、3か月ものとかの取引と同様のヘアカットを適用するのが適切なのかどうかとか(マージンコールの問題もありますが)、その辺の概念って無いのかねとは突っ込みたくなるのでありました。

『この点、FSB では、法域間の規制裁定を抑制する観点から、最低ヘアカット規制の実施状況を定期的にモニタリングする枠組みを導入する予定である。このモニタリングの結果によっては、将来的に、現在国債を対象とする取引をグローバルな規制対象から除外している最低ヘアカット規制の「適用対象」や「最低ヘアカット水準」の見直しを検討する可能性があるとしている。』

日本国債格下げでどうのこうのという話がありましたな。ドメ取引における自国国債担保取引にヘアカット掛けるというのは何だかなあという感じはしますが(価格変動リスクという観点でかけるのなら取引期間やマージンコール適用の有無も勘案して欲しい)。

『日本銀行としては、2017 年末までの導入が予定されている最低ヘアカット規制が、グローバルなレポ市場の流動性などに「意図せざる影響」を与えることがないかどうかにも留意しつつ、今後とも、最低ヘアカット規制の枠組みの検討に関する国際的な議論に積極的に参加していく必要があると思っている。』

自国ソブリンに関しては除外の方向でお願いします。ECBに関しては「財政統合していないからお前らはソブリンじゃない」という事で(^^)。


・国債決済期間短縮化の話は毎度のお話ですがレポ市場と絡めて

次が『3.「効率性」の向上に向けた改革(国債取引の決済期間短縮化)』のコーナーキタコレ。

『以上申し上げたレポ取引に関する国際的な議論と並行して、国内では、国債取引(アウトライト取引)の約定から決済までの期間を2 日(T+2)から1 日(T+1)に短くする取り組みが進められている。』

進めさせられ(銃声)。

『国債決済期間の短縮化は、リーマン・ショック後の国債市場におけるフェイル急増の経験を踏まえた取り組みであり、未決済残高の圧縮を通じて決済リスクの削減を実現するものである。』

それは分かるがカウンターパーティーリスクを厳格に管理すればそんなのは削減できるのであって、しかも各種金融規制により金融市場参加者の資本バッファーが強靭化された中でこの未決済リスク削減を急ぐ必要があるのかというのが甚だ疑問で、市場環境の変化に対応しないで当初決めたからそのまま続けるというのはどこぞのマネタリーベース目標政策のようで実にジャパン的であります。

『しかし、金融市場インフラの整備の観点からみると、国債決済期間の短縮化は、わが国のレポ市場に大きな変革をもたらし得る重要な取り組みであることに気付く。』

つーかT+1するのに今のままだと事務が回らんという話。

『国債のT+1 決済を実現するためには、国債のアウトライト取引等の結果として生じる資金や債券の過不足の調整に用いられるGC レポ取引について、T+0 決済(即日決済)を実現することが大前提となる。そのためには、レポ取引にかかる事務処理の一段の効率化を進める必要がある。これが3 つ目のキーワードである「効率性」の向上である。これを実現するため、わが国では、GC レポ取引に係る「銘柄後決め方式」の導入、そして、そのための担保管理サービスを行うインフラの整備が予定されている。』

『レポ取引における「銘柄後決め方式」と「担保管理インフラ」の導入、つまり、レポ市場における効率化の一層の進展は、わが国の短期金融市場に大きな変革をもたらす可能性がある。なぜならば、それが大規模な即日資金市場の創設を意味するからである。』

・・・・・・・だと良いのですが、そもそもこれらのインフラ整備に金がかかる上に、担保管理サービスに対してもフィーを払わないといけない訳でして、そのフィーが少なくともコール媒介手数料などの現状のコール取引に関するコストと同等かそれ以下じゃないと資金運用サイドの積極参加が見込めないと思うのですがそれは。

つーかですね、このレポT+0の話って国債決済T+1の方から話が先に来ているので、そらまあそうなったら国債のマーケットメーカーは対応するために色々と動くのが必然なので、資金調達市場としてはT+0レポ市場ってのが出来るのですけれども、運用サイドのニーズは特段斟酌して話が進んでいる訳でもないので、運用サイドとしては参加するだけの運用面での有利性が必要で、このウルトラハイパー超低金利の中でシステム対応の投資が必要でフィーが安いのかどうかとかレートが有利なのかどうかとかが分からない上に事務面でどうなるか分からない取引に参加するのかよと言いますと、先ほども申しあげましたように偉大なる3か月もの国庫短期証券市場があり、保振で超便利になったCP市場があり、事務周りがあっという間のSTPで回る短資約確システムに乗るコールローン取引がありとなっているのがどうも。

まあそうは言いましても決済がたくさんある銀行業態もシステム対応はしないといけない口でしょうから、銀行業態と国債ディーラーの所で取引は回るでしょうし、残高も当然ながら積みあがるとは思うのですが、ロット的にそれほどではないにせよ安定的な余資放出主体が参加しやすいような取引になる事によって取引の厚みが出ると思いますのでその辺は宜しくお願いしますというか、日銀のこの手の講演とかを聞いて(見て)おりますと、資金調達サイドの事情については良く把握しているようですが、運用サイドの話になると途端に疎くなる傾向が見られるのでして、まあそちらへの考慮もして頂きたいものです。


・レポ市場の将来の展望に関して

『かなりざっくりとした見積もりだが、現在T+1 決済で行われている翌日物GCレポがT+0 決済に単純に全て移行すると想定すると、その市場規模は20〜30 兆円に達することが予想される(図表8)。一方で、例えば、翌日物の無担保コール市場(短資経由)の残高は、現在2〜3 兆円程度である。つまり、わが国のT+0決済のGC レポ市場は、将来的に、コール市場の規模を大きく上回り、東京短期金融市場において最も大きな翌日物の即日資金市場となる可能性がある。』

そもそも銀行業態が全部ローンポジションの中では翌日物コールというのはマージナルな取引にならざるを得ないのですが、レポ市場に関しても資金調達プレーヤーが「証券会社」に偏ってしまうので、それはそれで残高は大きいにしても本当に指標性のある取引なのかというのは微妙な気がします。まあ将来にわたって無担保コールを政策金利にするというのもどうかと思いますが。

#一番指標性が高いのは今や3か月もの国庫短期証券利回りだと思いますけど

『冒頭に申し上げたとおり、わが国のレポ市場の残高は大きく伸びているが、金融危機以降の資金市場の動きを振り返ってみると、無担保の資金取引が世界的に縮小している一方で、有担保の資金取引は相対的に活発である。これには、金融危機後のインターバンク取引における信用リスクに対する意識の高まりや、無担保の短期資金取引の増加をディスカレッジする金融規制の導入といった、構造的な要因が影響しているように思う。』

まあそれはそうですが、金融緩和によって恒常的なマネーポジションが縮小しているというのもあるような気がします。

『こうした大きな流れを踏まえると、T+0 決済のレポ市場という即日資金市場が創設されることは、既存のコール市場における資金取引への影響のみならず、中央銀行が行う金融調節オペレーションにとって重要な市場である短期金融市場全体に構造変化をもたらす可能性があると思う。』

つまりレポ金利を誘導目標にしたりレポ市場向けオペをすることを正常化後の展望として考えていると。

『この点、現在のコール市場とGC レポ市場の参加者を比べると、資金調達面でのプレゼンスは、前者は「銀行」や「短資会社」が高い一方、後者は「証券会社」が高くなっている(図表9)。』

さっきも申しあげたが何故この話を先に持ってこない・・・・・・・・・・

『また、将来を展望すると、即日決済のレポ市場が発展することによって、即日資金市場の厚みや参加者の多様性が増し、短期金融市場全体の活性化に繋がる可能性もある。』

まあどうなんでしょうね。将来にわたって銀行全部がローンポジションであるという訳でもないでしょうからそうなった時にはまた変わるのでしょうね。


・新現先の話はマニアすぎるので割愛します

『4.「グローバル化」に向けた改革(レポ取引の新現先取引への移行)』という所で新現先方式への移行という話があるのですがこちらは時間の関係もあってスルーしておきます。

ただ、このグローバル化に関する話では日本国内の破綻法制との整合性というのをどう担保するのかも重要で、一括精算条項とか入れても保全命令との関係って実際に誰か勇者が裁判起こしたら本当に大丈夫なのかという法律的整合性がどうなっているのかとか、その辺がどうもよくわからん(アタクシの不勉強で本当はちゃんと破綻法制の改正が行われているのだったらすいませんとしか申し上げようがないのですが)次第なので誰か詳しい人教えてジェネラルという所です。

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2015/05/12

○追加緩和とか政策の枠組みとかいう外野からのお話が2題ほど雑談

・自民党も追加緩和不要とな

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0NT11720150511
インタビュー:現時点で追加緩和は必要ない=稲田自民政調会長
2015年 05月 11日 10:31 JST

『[東京 11日 ロイター] - 自民党の稲田朋美政調会長は、ロイターのインタビューに応じ、足元コアCPIはゼロ近辺からマイナス圏に陥る可能性が指摘されるが、現時点で「追加緩和は必要ない」と述べた。2%物価目標の達成時期の後ずれは「許容の範囲」とも語り、デフレ脱却に向けて順調に歩みを進めていると評価した。』(上記URLより、以下同様)

えーっと何の権限でそういう話になるんだという感じですが、ヤマモトコーゾー先生が追加緩和を盛大に吹いた挙句に国内債券市場以外の人たちのうちの一部が真に受けてポジション作った結果あの有様となっていたという事例もありましたので最早どこから話が飛んできてもおかしくないという所ですな。

『一方で、追加緩和を行った場合に懸念される円安の加速に関しては「円安は、大企業やグローバル企業には有益だが、円安が加速することによる中小企業や地方に対する弊害はある。資材高騰など、マイナス面を指摘する声が地方では大きい。十分配慮していかなければならない」と指摘。「これ以上の円安には、きちんと目を向けていかなければならない」と警戒した。』(上記URLより)

ということで、統一地方選挙が終わったらその話をしないのかも知れないんじゃネーノとか思っておりましたが、普通に円安加速のコストプッシュイクナイという話になっておりまして、既に最近マズーと思ったのかあまり言わなくなりましたが、「コストプッシュでもなんでもいいから実際の物価が上昇したらアダプティブに期待インフレが上昇するんです(キリッ)」という日銀の理屈に対してダメだしを食らっているのが実に心温まるものを感じます。つーかまあ追加緩和を実施して円安に振った結果がそうなったのですけどね。

『物価目標達成時期は後ずれしているが、日経平均株価は安倍政権下で8000円程度から2万円台まで上昇し、47都道府県すべてにおいて有効求人倍率は1前後に上昇。稲田氏はさらに、日本経済が好転するとのマインドの変化などをあげ、「デフレからの脱却は順調に進んでいる」と述べた。』

・・・・・・・デフレとは物価のことなんですけれどもそれは。

まあいずれにせよこれ以上円安に振るなとか言ってますが、円高になったらなったで泡吹き状態になると思いますのでその時は追い込まれ追加緩和あるでとは思いますがね。


・早川さんマイナス金利は長期的に続けられる政策じゃないんですけど

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NO074C6K50Z201.html
日銀は3つの呪縛で狼少年に、緩和は限界で修正必須−早川氏
2015/05/11 06:00 JST

相変わらずのケチョンケチョンですが。

『早川氏は「物価がゼロ近辺に戻った理由としてはともかく、2%に行かなかった理由に原油価格を挙げるのは無理がある。エネルギーを除くコアコア消費者物価も0.5%以下にとどまっており、ほとんど理由にならない」と言う。黒田総裁はコアコアにも原油下落の影響がそれなりに出ていると述べたが、「コアコアに対する原油の影響は極めて小さい。円安の影響の方がはるかに大きい」と反論する。』(上記URLより、以下同様)  

『そして、「結局、2年で2%達成の約束はどうなったのか。16年度前半だから3年以上かかる。普通に考えればできなかったということだが、黒田総裁は所期の効果を上げているとひたすら言い続けるだけで、『できなかったけど、できた』みたいな答えになっている」と言う。』

ケチョンケチョンワロタという所ですが。

『3つ目は、マネタリーベース(日銀券、日銀当座預金、貨幣)を目標にしたことだ。「私自身は今すぐ追加緩和すべきだとは全く思ってないが、欧州や中国情勢などを考えると何が起こるか分からないので、常に緩和手段を持ってなければならない。ところが、マネタリーベースを目標としている結果、もはや有効なカードがなくなっている」と言う。 』

という話をしてMB目標という建付けを変えろという話をしているのですが・・・・・・・・

『逆に言えば、マネタリーベース目標さえ捨てれば、「追加緩和の手段はいくらでもある。ETF1兆円でも追加緩和だし、地方債や社債でもいい。貸出支援基金の枠を増やすという手もある。現在0.1%の付利の引き下げはマネタリーベース目標をやっている限りできないが、これをゼロ、あるいはマイナスにするという選択肢もある」としている。 』

という話をしている辺りが惜しいところでして、マイナス金利政策の実施というのは「短期的に」ショックを与える政策として使うのであればまあ有りかも知れませんが、実社会との関係で言えば一般向けの預金金利を名目でマイナス金利にすることが出来ない以上、政策金利のマイナスと実体経済におけるゼロ金利制約の間に生じる差分というのは金融システムに対する負担になってしまいます。となりますとその負担を長期化させるというのは単に金融システムに対して無駄な負荷をかけるだけの話で合って、システム全体の健全性という意味でも問題の大きい政策であるとしか申し上げようがありません。

いやね、短期的なショック政策としてマイナス金利にしてショックを利用して短期間で脱却しましょうという話をして、その文脈でマイナス金利政策の実施というような話をするのでしたら分かるのですが、早川さんのこの説明って「2年での達成を取り下げて中長期的に政策を続けよう」という話なのですから、中長期的にマイナス金利政策というのは話として筋が悪いとしか思えないのですけれども、どうも最近はECBのせいかマイナス金利と言うとモダンで格好の良い話をしているように見えて頭が良いけど金利市場現場から遠い所にいる人ほどそういう話をしたがりますなと思ったので愚感想を申し上げてみましたとさ。


・なおケチョンケチョンという意味ではこちらの方がはるかに面白いですよん

http://toyokeizai.net/articles/-/68600
「日銀は政治に支配され、動けなくなった」
ストラテジストの森田長太郎氏に聞く
大崎 明子 :ニュース編集部長 2015年05月02日

こちらはまあURLだけ置いておきますのでご案内の方も多いとは存じますがご覧になっていない方はどうぞ。

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2015/05/07

○企画局謹製のQQEの効果検証レポートは「マネタリーベース」の効果が見事に皆無な件について

金曜にこげなものが出ていますた。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j08.htm/(要旨)
「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証
2015年5月1日 企画局

全文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j08.pdf(全文)
「量的・質的金融緩和」:2年間の効果の検証
2015年5月1日 企画局

でまあ今回はクレジットが「企画局」ですので、毎度おなじみの「これは個人的見解です」というのではなくて、企画局が堂々と出してきたというのはまあ評価したいところではありますが、内容については何ちゅうかアレという所ですけど出さないよりはかなりマシな話ではありますな。

なおこの内容は展望レポートの背景説明の方に思いっきり記載されておりますのでそちらでも読めます。


まずは要旨から引用してみませう。

『要旨』

『日本銀行が2013年4月に「量的・質的金融緩和」を導入してから2年が経過した。本稿では、「量的・質的金融緩和」が金融・経済に与えた政策効果についての定量的な検証を試みる。』

定量的検証キター!!

『「量的・質的金融緩和」の効果の波及メカニズムは、(1)2%の「物価安定の目標」に対する強く明確なコミットメントとこれを裏打ちする大規模な金融緩和により予想物価上昇率を引き上げると同時に、(2)巨額の国債買入れによってイールドカーブ全体に下押し圧力を加えることで、(3)実質金利を押し下げることを起点とする。』

物価は貨幣的現象であってマネーの量で決まるという置物リフレ理論はどこに????????

・・・・・・・・ということで、まあこの検証云々ペーパーにおける最大のインプリケーションは「マネタリーベースの量そのものに効果がある」という理屈を全く持ち出していないことでありまして、政策効果をインフレ期待の引き上げと国債買入による金利低下効果としている事です。

まあ理屈を言えばそのインフレ期待に対してマネタリーベースの量が効果があるという話であって、「これを裏打ちする大規模な金融緩和」って所にそれが含まれるちゃあそうなのかも知れませんが、その説明に「マネタリーベース」という文言が無く、定量効果の所でも(本文にありますので後程)マネタリーベースの話が無いのであって、これはつまり置物直線理論とかマッカラムルールとかその辺の話を盛大に「無かったこと」にしようとしている布石であるという可能性があるということですな。

でまあ「コミットメント」でインフレ期待を上げて、「国債買入」で「名目金利」に押し下げ圧力をかける、というのであれば、コミットメントに関しては先ほどの総裁会見での説明(や展望レポート基本的見解の記述)にもありますように「強力なコミットメントに変わりはない」と言ってるのですから、長期金利を低位安定させるためのオペレーションという意味では別に今のような国債馬鹿買入をするよりもより効果的な方法があるんじゃネーノとは思うのですが、その手段云々の雑談は色々と思考中につきまた後日。


『このことを踏まえて、効果の検証は2段階で行った。まず第1段階として、実質金利がどの程度低下したかを計測した。次に、第2段階として、この実質金利の低下がどの程度実体経済や物価に影響を与えたかを計測した。』

ほうほうそれでそれで???

『計測の結果、(1)「量的・質的金融緩和」は、実質金利を▲1%ポイント弱押し下げた、(2)実際の経済・物価は、概ね「量的・質的金融緩和」が想定したメカニズムに沿った動きを示している、と評価できる。ただし、最近では、原油価格の下落を主因に消費者物価上昇率は低下しており、これが人々の予想物価上昇率の形成との関係でどのような影響を与えるか、注視していく必要がある。』(ここまでの引用は要旨、または本文のサマリー部分から)

と、ここまでが要旨(本文のエグゼクティブサマリーと同文)でありまして、えーっとすいませんその実際の経済物価への影響とQQEの実質金利引き下げとやらの相関は分かるのだがそれ本当に因果関係あるのかよとか思ったりするのですが、まあそこはともかくとして本文の2ページと3ページから少々。


まずは本文2ページから。

『(観察アプローチ)』

って所から。

『まず、名目長期金利の低下幅は、10 年物で▲0.3%ポイント程度である。予想物価上昇率は、用いるアンケートによってかなり幅があり、0〜+5%ポイント程度である(図表2)。仮に、エコノミスト(ESP フォーキャスト)や市場参加者(QUICK 調査)による長期の予想物価上昇率(+0.4〜+0.5%ポイント)を用いれば、実質金利の低下幅は、▲0.7〜▲0.8%ポイント程度である。』

ということで、予想物価上昇率の変化に関しては結果だけの話になっていまして、その間にマネタリーベースがどう効いた的な話はもちろんの事、そもそもマネタリーベースがどうなったかという話も皆無。


でもって3ページなのですが。

『(回帰分析アプローチ)』

ということで・・・・・・・・・・

『日本銀行の国債買入れの実質金利押し下げ効果を、10 年物長期金利を被説明変数とする回帰分析を用いて推計すると、累積の買入れ効果は、10年物金利換算で▲0.8%ポイントとの結果が得られた(図表4)5。』

ということで、まあそんなもんですかねえという感じですが、そこの図表4というのが中々味わいがあります。図表を貼り付けるスキルが無いので箇条書きチックに改変しちゃいますが。

『【図表4】国債買入れの長期金利押し下げ効果

2013/3月末から2014/12月末までの変化

日本銀行の長期国債保有残高の増加額:+110兆円
日本銀行の国債保有割合の上昇幅:+19.3%ポイント
長期金利の押し下げ効果:▲0.8%ポイント

(注)日本銀行の国債保有割合は、対発行総額ベース。日本銀行の保有国債の平均残存期間の変化(変動利付債、物価連動債は除く)を勘案して算出。
(出所)Consensus Economics、QUICK、日本銀行、Bloomberg 等』

・・・・・・・ということで、マネタリーベースのマの字も出てこないというのが実にこうチャーミングでありまして、だったらMB拡大とかやるよりもツイストオペでもやればとか注記にある「日本銀行の国債保有割合は、対発行総額ベース。日本銀行の保有国債の平均残存期間の変化(変動利付債、物価連動債は除く)を勘案して算出」というのが効果があるのだったら、そもそも論として日銀が買入をしなくても財務省が発行を短期化すれば済むだけの話ではないでしょうかとか、だったら中短期買わなくても良いのでではとかそういうツッコミが出てくると思うのですが。

#念のため申し上げますと、長期金利を低位安定させたければイールドカーブを潰しすぎるのは良くないと思いますので、さっき申し上げた「金利にフォーカスした効率の良い政策」というのはこれとは別になると今は思ってます


なお、順序逆になりますが2ページ目に定性的な話がありまして。

『「量的・質的金融緩和」導入後の金融経済の動き』

ってのですけどね。

『「量的・質的金融緩和」の導入以降、金融市場、実体経済面、物価面それぞれにおいて、大きな変化がみられた。上記@〜Gの点に即してみると、少なくとも定性的には、「量的・質的金融緩和」によって、何らかの変化が生じたことは、各種の指標や経済現象によって確認できる。』

ほう。

『例えば、予想物価上昇率は各種のサーベイや市場指標で上昇しているほか、2 年連続の賃上げなど企業の賃金・価格設定行動も変化している。また、イールドカーブ全体に強い下押し圧力が加わっていることは市場金利から明白であり、したがって、実質金利も大きく低下し、マイナスで推移していると考えられる。こうしたもとで、需給ギャップが改善していることは、人手不足などから、広く実感されている。』

賃上げ要請ェ・・・・・・・・・・

『物価面では、マイナス圏内にあった消費者物価(CPI、除く生鮮食品、消費税の直接的な影響を除くベース)前年比は、2015 年1 月まで20 か月連続でプラスとなった(最近は原油価格の急落の影響でゼロ%程度となっている)。』

はいはい特殊要因特殊要因。

『金融面をみると、株価は大幅に上昇し、為替市場では円安方向の動きが進んだ。貸出も、同政策の導入前は前年比マイナスから若干のプラス程度の伸びであったが、現在では中小企業向けを含めて前年比プラス幅が拡大している。以下ではこれらを定量的に検証する。』

なんちゅうかほかの政策の効果もあったと思いますし、大体からして金融政策の効きにタイムラグがあるのだったら過去における金融緩和の累積的な効果だってあるだろとか思いますが、まあそれを言い出すと宣伝にならないですから仕方ないですね!!!!!!!

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2015/05/05

お題「展望レポート基本的関係にツッコミを入れてみるの巻(休日特別編)」

GWももうすぐ終了の巻という状況になってえっちらおっちらアップするの巻であります(汗)

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1504a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410a.pdf(前回)

でまあとりあえず基本的見解の逐語ツッコミを恒例なので(?)せっせとやってみます。

○最初に概要を読む前に少々

まずは最初に鏡の部分で『概要』というのがありまして箇条書きになっている(そういやこの箇条書き部分はアタシの言った文章構成なのよ!と言ってる白井さんという方がいましたな)のですが、その話は金曜に簡単に引用しましたから基本スルーしますがその前に少々追加で。

・3人の審議委員は更に見通し期間が後のようですな

えーっとこちらだと微妙に記載されていないのですが、さすがにこれは重要な論点なので総裁記者会見の冒頭で『なお、展望レポートについては、消費者物価が2%程度に達する時期に関し、白井委員から「2016年度を中心とする期間に」とする案が、また、佐藤・木内両委員からは、見通し期間中には2%程度に達しないことを前提とする記述の案が提出され、それぞれ否決されました。』とありまして、審議委員6人のうち3人が思いっきり2%達成の見通しが後になっています。

でまあ木内さんは毎度のTaperingちっくな提案をしていますが、白井さんと佐藤さんは2%の物価目標達成時期が白井さんの場合は微妙に後というのがナンジャソラという感じではありますが、佐藤さん(と木内さん)はそもそも2017年度中にも2%に達しないという事を前提に考えるべきだという話をしている訳でして、その前提の元ででは金融政策はどうなるのかというと、白井さんにしても佐藤さんにしても順当に追加緩和提案ではない訳でして、白井さんの方は少々謎ですけれども佐藤さんの場合は「フォワードターゲット」としての物価安定目標を提示していますし、「タイムコミットメント」ではなくて「2%は目標として掲げるけど実際の物価が2%に行くかどうかを重視するのではなくて、経済物価情勢が中期的な見通しとして2%に向けた動きになっているのか(上や下にぶれるのではなく)」という話を講演などでしているので、そもそも少なくとも木内さんと佐藤さんの場合は見通しが後ずれしても追加緩和にはならんわな(そもそも見通し弱かったし)というお話で。白井さんはイマイチその辺の整理がよく伝わってこなくて、この見通し期間が「2年を念頭にできるだけ早期に」と整合的と考えているのかどうかは分からないです。

つーことで何ですな、そもそも論として6名の審議委員のうち3名が実はこの見通しに対して反対しているというのが中々お洒落でして、執行部は3名で1名ですから何のことは無いこれ実質4対3でして、執行部の見解はこの通りなのでしょうが政策委員会の総意というよりは多数派見解(しかも少数派が結構多い)という代物になっているという事でございますな。


・なお今回はロジックだけは堅牢にできている観がありましてですな

更にツッコミの前に前座ではありますが、今回の展望レポートなのですけど、なんか知らんけどやたらめったらこの基本的見解部分の作文が良くできていまして、前回10月の展望レポートでは結構ロジックが崩壊していてツッコミ甲斐があったわけですが、今回の展望レポートは相当に作り込みが出来ていて、ロジックだけでみると中々攻め所が難しくなっております。

これはつまりどういう事かと申しますと、まあアタクシが勝手に妄想しますに、前回展望レポートにおきましてはご存じの騙し討ち追加緩和が実施されましたが、この追加緩和は我々もすっかり騙し討ちに遭いましたけれども、展望レポートのロジックのあちこちに穴があったのは「敵を欺くにはまず味方から」ということが背景にあったのではないかと妄想したくなる訳でございまして、今回については別に何か特別なイベントがあったわけでもないので、従来の政策ロジックをより堅牢に説明しましょうということで(全文および金曜に出た企画局ペーパーなどもありましたように)ヒジョーによく練られた理屈が展開されている訳です。

とまあそういうことでして、ロジックが非常に堅牢にできております関係上、現時点で何かツッコミを入れてもきっちり想定問答が返ってくる、というのが今回の仕様になっていますが、まー最大の問題は相変わらず「QQEは所期の効果を発揮している」という話をしている所でして、足元に関しては原油価格の一時的要因で物価は伸びていないだけ、ってな説明になっておりますし、これからご紹介しますけれども、先行き見通しの各コンポーネントに関しては前回の展望レポートよりも強い説明になっておりまして、実はこれ年度後半以降の物価上昇というシナリオに対して実際の物価が上昇しないとロジックが完全に崩壊するという結構危険な内容なんですよね。

まあ何ですな、つまりどういう事かと申しますと、結論が先にあってその結論に整合的なロジックを緻密に構成しているからこういう内容になるのであって、おまいら本当に経済見通しとかからの積み上げで作ってねえだろこの基本的見解という事で、そらまあ逆算でロジック構築すれば堅牢にできますけど、結果がついてこない場合にどういう言い訳をするのでしょうかねえ。あの執行部は中々意地汚く粘るので色々と言い訳を繰り出してくるのかも知れませんけど。


などと悪態をつきながら基本的関係のまずは最初の部分の1ページ目『概要』については1日に駄文でツッコミを入れましたが、せっかくなので前回と比較してみましょう。


・成長見通しは概ね不変ということだがこれ下がってるだろうよ・・・・・・・・・・・

『2017年度までの日本経済を展望すると、2015年度から2016年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。2017年度にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると予想される2。』(今回)

『2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(前回)

前回との違いは見通し期間なのは兎も角、次回の消費増税時期について今回は17年4月、前回は15年10月になっていまして、前回の見通しでは15年度の実質GDP見通しの中央値が+1.5%になっていましたので、消費増税の駆け込みと反動を年度でツーペーでみているんだなあという感じだったのですが、今回に関しては17年4月に消費増税になる筈なのに16年度の見通し中央値が+1.5%になっていて17年度の見通し中央値が+0.2%になっています。

この点は良く考えたら1月の時点であまり深くツッコミを入れてなかったのですが、16年度の見通し中央値が前回+1.2%→+1.6%になっているのですが、消費増税の時期が後ずれして駆け込み需要が見れる筈の所で+0.4%しかその分を見ていなくて、さらに今回はその16年度の見通しが1月の+1.6%→+1.5%と下がった上に、その後の反動が来る17年度の方はきっちりと見通しが低いというのもナンジャラホイという感じではありまして、見通しは変わっていないという触れ込みにはなっているけどいやおめー下がってるだろと小一時間ではありますな。

あと、1月対比という点では14年度と15年度の見通しに関しては前回対比で今回は14年度も15年度も中央値が下がっていまして、その点も加味するとGDP見通しは下がっているとしか思えないのですが、物価見通しに関しては達成時期自体は後ずれしているけど年度後半から上昇という絵になっているのですよね、という事でその次。


・物価見通しはさすがに誤魔化せなくなったので先送りなのだがロジカルには妙

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる3。2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(今回)

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い。その後、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(前回)

ということで見通し期間が後ずれしましたが、原油価格の置きを入れたのは前回の中間評価からになりますので、1月の見通しと比較するのがヨロシアル。


『3 各政策委員は見通し作成にあたって、原油価格の前提を次の通りとした。すなわち、原油価格(ドバイ)は、1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル台前半に緩やかに上昇していくと想定している。その場合の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比に対するエネルギー価格の寄与度は、2015年度で−0.7〜−0.8%ポイント程度、2016年度で+0.1〜+0.2%ポイント程度と試算される。また、寄与度は、当面マイナス幅を拡大した後、2015年度後半にはマイナス幅縮小に転じ、2016年度前半には概ねゼロになると試算される。』(今回)

『2 今回の中間評価では、原油価格が大幅に変動していることを踏まえ、政策委員は、見通し作成に当たって、原油価格の前提を次の通りとした。すなわち、原油価格(ドバイ)は、1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル程度に緩やかに上昇していくと想定している。その場合の消費者物価指数(除く生鮮食品)におけるエネルギー価格の寄与度は、2015年度で−0.7〜−0.8%ポイント程度、2016年度で+0.1〜+0.2%ポイント程度と試算される。』(1月中間評価)

ということで原油価格の置きは同じでして、まあ実際問題としてどこまで下がるのかと思わせてくれた原油価格も見通し通りに推移しているのに何で物価見通しが下がってるのですかねえ(棒読み)という所ですし、そもそも論としてその次の所で「成長率見通しは概ね不変」って言ってて、要因として大きい原油価格の置きも同じ状態になっているのに見通しが今回先送りになる理由が訳分からん(なお総裁会見でナイスなツッコミが入っていたのによりますと「足元までの消費が予想より弱かった」からだそうですよ)ですな。


・成長率見通しが概ね不変とは????

『2016年度までの見通しを従来の見通しと比べると、成長率の見通しは概ね不変である。物価の見通しは、やや下振れている。』(今回)

『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから、2014年度について幾分下振れている。物価の見通しは、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(前回)

成長率の見通しは概ね不変とは何ですねんという話で、ちなみに潜在成長率の推計部分は変わっていないと思いますが、どう見てもさっきの部分的には下がってるだろと思うのですけどまあ概ね不変だそうですがな。それで何で物価見通しが下がるのかが訳分からんですよね(棒読み)。


・所期の効果云々は別途オモシロペーパーが出ているので後程

『「物価安定の目標」のもとで、以上の中心的な見通し(第1の柱)と、これに対する上下双方向のリスク要因(第2の柱)を点検した4。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

『「物価安定の目標」のもとで、以上の中心的な見通し(第1の柱)と、これに対する上下双方向のリスク要因(第2の柱)を点検した3。金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回)

ということで全文一致ですが、所期の効果を発揮しているのに何で物価がゼロ%なんでちゅかねえというツッコミに関しては企画局謹製のペーパーが金曜に出たのと、同時に展望レポート全文の方でもコラム形式でその部分の記載がありますのでそれはまた別途。

しかし所期の効果を発揮した結果が見通しの先送りな訳で、本当は2015年度に入ったころ、あるいは当初の置物マネタリーベース理論だとそれよりも早くに達成しているはずの物価がゼロ近傍な訳で、その上後程ご紹介する企画局謹製ペーパーでも展望レポート全文でもマネタリーベースの定量的効果に関しては何も触れていないという時点で置物師匠は目標未達に対して焼き土下座をすべきだと思うのですが全くその気配が無いという辺り人間としてどうなのかとは思ってしまいます。


ということでここまでが1ページ目である。


○展望レポートメインシナリオに関して(経済):経済のコンポーネントは強くなっているのよね

ということで2ページ目の『1.わが国の経済・物価の中心的な見通し』となりまして最初は『(1)経済情勢』である。

・まずは全体感:内容的には強くなっていますよ

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで、そもそも論として最初の部分で現状認識が強くなっている(変なヘッジクローズがなくなったから)というのがまず強いのですよね今回は。

『企業部門では、輸出、生産が持ち直すとともに、収益は過去最高水準まで増加しており、前向きな投資スタンスが維持されている。家計部門については、雇用・所得環境の着実な改善が続き、個人消費も全体としては底堅く推移している。』(今回)

『4〜6月における成長率は、自動車などの耐久消費財を中心に駆け込み需要の反動の影響が大きかったことや輸出が弱めの動きとなったことなどから、大きなマイナスとなった。また、夏場には天候不順も、個人消費の一時的な下押し要因として作用した。もっとも、駆け込み需要とその反動といった振れを均してみれば、潜在成長率を上回る成長が続いている4。また、今回の景気回復は、雇用誘発効果の大きい国内需要に主導されていることもあって、雇用の増加と労働需給の引き締まりは、着実に進んでいる。』(前回)

つーことで前回は最初のヘッジクローズに合わせてああでもないこうでもないという説明が有った部分が全般的にスッキリとした形になっていまして、今回は前回よりも素直に景気が回復基調で云々という話になっています。

でまあそれはそれで良いのですけれども、企業の投資スタンスが前向きだの個人消費が底堅く推移だのというのは何ですかそれは(消費増税の影響がどうのこうのはともかくとして)という感じでして、そもそも論として足元の見通しとかも下がっているというのに何がどうなるとこういうスッキリ表現になるのか小一時間という所ではあります。

で、先行き見通しですが。

『先行きを展望すると、国内需要が堅調に推移するとともに、輸出も緩やかに増加していくと見込まれ、家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続すると考えられる。』(今回)

『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかな増加に向かっていくと見込まれ、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続すると考えられる。』(前回)

国内需要が「堅調さを維持する」から「堅調に推移」となったり、前向きの循環メカニズムの部分の助詞が「は」から「が」になったのですが、見た感じですと今回の方が全体的に先行き見通しを強めにしている感じがするのですがどうでしょうか。

『そうしたもとで、わが国経済は、2015年度から2016年度にかけて潜在成長率を上回る成長を続けると予想される5。2017年度にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動などの影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると予想される。』(今回)

『このため、わが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(前回)

見通し期間が1年度違っているので17年度の所が新たに入っているのと、消費増税の予測時期がずれている(昨年10月の展望レポート時点では15年10月増税)のでそのあたりは違いますが、今回は「基調的に」というのが抜けていまして、一方で17年度の見通しはあまり強くないという感じになっていまして、見通しの内容は強いのに計数があまり強くないとは何ですかこれはという所で。

つーかですね、そらまあ16年度に2%の物価になってその後安定的に持続する経路に移行するんですから、そうなったら17年度は潜在成長みから若干下でも2%という図にしておかないと話の整合性が取れないというのは分かるのですが、どう見てもその最後の図から逆算して見通しの計数作ってるだろうと小一時間問い詰めたいというのが今回の展望レポート基本的見解の図でもありまして、まあそういう形で出来上がりに対して逆算でロジック組んで作っているからそらまあロジックは整合的だし説明もしやすいわなとは存じますけど、実際にそういう風に推移するのかよゴルァというのはヒジョーに不思議なんですけどねえ。


・見通しの背景について:微妙なのが幾つか

『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。』以下の部分を比較してみる。

『第1に、日本銀行が、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続する中で、金融環境は緩和した状態が続き、景気に対し刺激的に作用していくと想定している6。』(今回)

『第1に、日本銀行が今般拡大した5「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる6。』(前回)

今回は「緩和度合いは一段と強まっていく」じゃないのは何でですねんと思いますが、さては物価の見通しパスが弱まったから緩和度合いは一段と強まるというのが図々しいからかねとか思ってしまいましたが実際の所どうなんでしょう。

ちなみに脚注6の『6 各政策委員は、既に決定した政策を前提として、また先行きの政策運営については市場の織り込みを参考にして、見通しを作成している。具体的には、短期金利について、市場は、見通し期間を通じて、実質的にゼロ金利が継続することを織り込んでいる。長期金利について、市場は、見通し期間を通じて、低位で推移すると予想しているが、これは、展望レポートに比べて低い市場参加者の物価見通しを反映している。各政策委員は、こうした市場の見方を踏まえ、物価見通しの違いも勘案して、長期金利の先行きを想定している。』というのは前回も今回も同じです。

しかしまあ毎度思うのですが、展望レポートの見通し通りだったらどこからどう考えても遅くとも17年度の所ではQQEが出口政策に向かっていないと物価安定の目標と整合性が取れないのになんで先行きの政策運営の置きをQQEの出口と関係なく作れるのか良くわからんですけど、もしかしてそのツッコミを避ける事もあって「一段と強まる」という表現にしなかったのかなとも思いました。

つまりですね、16年度前半に2%になって、その後の見通しを見れば17年度の時点でどう見ても物価安定が1年以上続いた形になっているのに、その時点で「緩和度合いが強まっている」金融政策を継続したら緩和政策のやり過ぎであって、物価が望ましくない上振れをしてしまうだろうよと思うのですが、そのあたりも勘案して上記の表現にしているとか、その前にありますような17年度は成長率落ちるよ(だから緩和的な政策が続いていますよ)という表現が入っていることによって中和されているという実にニクイ作りになっているのですよねこの見通しって、イヨッ、ニクイねえ!!


『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(今回)
『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(前回)

次が海外ですが同じですな。

『主要国・地域別にみると、米国経済については、民間需要を中心とした成長が続くと予想される。欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、暫くの間低インフレが続くとみられるものの、個人消費の回復や輸出の増加などに支えられ、緩やかに回復していくと見込まれる。中国経済については、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組んでいく中で、成長ペースを幾分切り下げながらも、概ね安定した成長経路をたどると想定している。』(今回)

『主要国・地域別にみると、米国経済については、家計支出を起点とする前向きな循環に支えられながら、徐々に成長率を高めていくと予想される。欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、物価上昇率の低下傾向もみられるものの、個人消費の底堅さや輸出の増加などに支えられ、緩やかな回復を続けると考えられる。中国経済については、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組んでいく中で、僅かに成長ペースを鈍化させながらも、概ね安定した成長を続けると想定している。その他の新興国・資源国経済については、国・地域によるばらつきはあるが、先進国の景気回復の波及と、緩和的な金融環境を受けた内需の持ち直しから、成長率を緩やかに高めていくと見込んでいる。』(前回)


米国の表現では成長ドライバーを家計から民間需要とより幅広になっているのと、欧州は低インフレという表現に物価の表現を弱くしている点、中国は成長ペースを切り下げると下方修正、新興国資源国の話が抜けとなっていて、多分米国上げの中国新興国下げで欧州は横ばいとかでしょうかね。

『第3に、公共投資は、現在の高めの水準から緩やかな減少傾向をたどった後、見通し期間の終盤にかけては下げ止まっていくと想定している。』(今回)
『第3に、公共投資は、経済対策の押し上げ効果から高水準で推移してきたが、本年度下期中には緩やかな減少傾向に転じていくと想定している。』(前回)

ここの見通しは前回と基本的に同じ。

『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどが続くとともに、デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)

『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率は、緩やかに高まっていくと想定している。』(前回)

で、ここの第4の部分がしらっと色々と変わっているのが非常に気になるところです。

まず最初に今回わざわざ「デフレからの脱却が着実に進んでいくにつれて」という文言が入ったのが謎でして、従来日銀の目標は2%の物価安定目標であって、デフレからの脱却というのはあくまで通過点に過ぎないという建付けのはずでしたが、今回こうやってデフレ脱却云々というのを入れてるのはもしかしたら近い将来にしらっと「デフレ脱却したからいいじゃないかにんげんだもの」という2年で達成からの離脱手段を考えているからここでデフレ脱却云々を書いたのか、というのはちと穿ちすぎですかそうですか。

あとですね、今回見ててほえ?となったのはここの部分で「企業や家計の中長期的な成長期待」は緩やかに高まるという話なのですが、今回そこに潜在成長率という文言が入っていなくて、一方で潜在成長率に関する説明がある2ページ目の脚注の文言では潜在成長率は見通し期間の後半に掛けて上昇という話は維持されているのが謎でございます。

まあ見通しの潜在成長率を上げてしまうと実質GDPと潜在成長率との関係で言えば同じ実質GDPであっても潜在成長率を高めに見てしまうと需給ギャップの改善が遅れるという話になるので、潜在成長率は実際の経済見通しからしたら強くできないというのもあるっつーことでこういう風になっているのでしょうかねえ。まあ謎の部分その2ではあります。


・年度展開部分

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2015年度から2016年度にかけては、輸出は、海外経済が回復し、これまでの為替相場の動きも下支えに働くことから、緩やかに増加すると考えられる。設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに作用する中、国内生産強化の動きなどもあって、しっかりと増加するとみられる。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続き、賃金が増加していくほか、2015年度にはエネルギー価格下落による実質所得の押し上げ効果や駆け込み需要後の落ち込みからの回復も見込まれることから、伸びを高めると予想される7。こうした内外需要を反映して、鉱工業生産も、緩やかに増加するとみられる。』(今回)

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2014年度下期については、個人消費は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響がしばらくは残るものの次第に減衰し、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、底堅く推移すると見込まれる7。設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに働くもとで、長年の投資抑制による設備老朽化に対応した更新投資や、労働需給の引き締まりを受けた省力化投資、為替相場の動きも踏まえた国内拠点の再構築などの投資ニーズの高まりがみられることから、しっかりと増加するとみられる。この間、輸出は、海外経済が回復するもとで、為替相場の動きも下支えとなり、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は、在庫調整の進捗もあって、緩やかな増加に復していくと予想される。

2015年度から2016年度にかけては、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、@緩和的な金融環境と成長期待の高まりを受けた国内民間需要の堅調な増加と、A海外経済の成長による輸出の増加に支えられて、前向きの循環メカニズムは維持され、潜在成長率を上回る成長が続くと見込まれる。』(前回)

ということで、16年度までの所を前回と比較してみますが、そもそも展望レポートなのに何で10月のでは高々半年先である14年度下期の説明が長いんだという話はさておきまして、ここも直前の所と話が似ているのですが、先行き見通しの中に「成長期待が高まるから消費や投資が伸びます」的な表現がなくなっているのがチャーミングでして、それってもう「期待に働きかける金融政策」の限界点に近いんじゃなかろうかという気がしますな(^^)。

でまあそれはそれとして、今回の説明は先行きの設備投資に関しての説明が従来の更新需要の話があったのですが、その点ではなくて国内生産強化と大きく出ていますのと、消費ついては「賃金の上昇」を明記した上でエネルギー価格下落のプラス影響についても記載し、「実質所得がプラスになる」というのをアピールとなっていますので、実質的に設備と消費について上向きの修正が行われてメカニズムの説明としてはより強力になっていると見た方が良いと思います。

なお、そのようにメカニズムの基本となる部分での説明がより強くなっているという事ですから、ロジック的に言えば今回の展望レポートでは説明というかロジック構築がより強固なものになっているので、総裁会見でもそうでしたが説明という意味では説明がしやすくなっているという事に繋がっていると思います。

ただし、説明はより整合性を強めていますが、実際に経済情勢がそう推移するのかという問題につきましては知らんがなという感じで、この説明は説明としては分かりやすくなっているものの、その説明するロジック通りなのかはちょっと???感が漂うという代物になっていますな。

なお、17年度の説明は以下の通りです(これは前回との比較はない部分)。

『2017年度にかけては、2回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、設備投資の増加ペースが資本ストックの蓄積に伴って低下していくとみられる。』(今回)

そもそもそんなに手前で設備投資が出るのかよとは思いますが。

『もっとも、海外経済の成長などを背景に輸出が緩やかな増加を続けるとともに、緩和的な金融環境と成長期待の高まりなどを受けて国内民間需要は底堅く推移すると予想される。この間、潜在成長率は、見通し期間を通じて緩やかな上昇傾向をたどり、中長期的にみた成長ペースを押し上げていくと考えられる。このため、わが国経済は、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると見込まれる。』(今回)

ということで先ほどの先行きの説明の中での4番目の中で削除されていた潜在成長率の上昇自体はここにありますように記載は続いていたのですが、先ほどの部分で抜けていたのが気になります。

『2016年度までの成長率の見通しを1月の中間評価時点と比べると、概ね不変である。』(今回)

概ね不変って下がってるだろと思いますし、メカニズムの説明に関する部分は今申し上げたように強くなっているのに成長率見通しそのものはやや下になっているというのが何とも。


○展望レポートメインシナリオに関して(物価):数字は弱いがメカニズムは強いとな

次が『(2)物価情勢』です。

『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、このところ0%程度で推移している。』(今回)

というのはまあ前回と比較とかする話でもないので良いとしまして。


・構造失業率の推計値が下がっている件について

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、着実に改善傾向をたどっている8。すなわち、失業率が緩やかに低下し3%台半ばになっているなど9、労働需給は引き締まり傾向が続いている。』(今回)

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、雇用誘発効果の大きい国内需要の堅調さが雇用の増加をもたらすもとで、労働面を中心に着実に改善傾向を続けている8。すなわち、失業率は3%台半ばとみられる構造的失業率近傍で推移しているほか、現在職探しをしていないが求職意欲を持つ人々なども含めた広義の失業率も低下傾向を続けるなど、労働需給は着実に引き締まり傾向が強まっている9。』(前回)

ということで、これまた今回は前回のゴテゴテした説明からスッキリ系になっていまして、その背景には今回の表現にあるように労働需給が「着実に改善傾向」というために必要な話として賃金動向が強めに推移しているのと、暫く前から散々言っていた春闘のベアが(その水準で本当に2%物価安定目標に整合的かという話はさておき)前年よりも伸びているというのがあって、表現が強くなっているという訳ですが、その一方で今回の脚注9番には、

『9 労働需給の引き締まり度合いを測る際のひとつの目安として「構造失業率」がある。労働市場では、求人と求職の間にある程度のミスマッチが常に存在するため、好況時であっても、一定の失業者が存在する。こうしたミスマッチに起因する失業の存在を前提に、過剰労働力が解消した状態に対応する失業率が構造失業率と呼ばれている。構造失業率を一定の手法で推計すると、このところ3%台前半から半ば程度であると計算される。ただし、構造失業率の推計値は、時間の経過などに伴って変化する性格のものである点には留意が必要である。』(今回)

とありまして、構造失業率の水準自体は前回3%台半ばだったのが今回3%台前半から半ば程度に引き下げになっています。ナンジャソラという感じではあるのですが、雇用改善している割には物価の方はこの調子ですから構造失業率が下がっていないと整合性が取りにくいのもあるのかなと。


・需給バランスの改善メカニズムの説明は強くなっています

需給バランスの説明には続きがあるのだ。

『こうしたもとで、所定内給与が増加するなど、賃金の改善も続いている。また、駆け込み需要の反動の影響が収束してきたことから、設備の稼働率も高まっている。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度前半にプラス(需要超過)に転じた後、2016年度にかけてプラス幅が一段と拡大し、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。その後、2017年度には、マクロ的な需給バランスは、プラスの水準で横ばい圏内の動きになると見込まれる。』(今回)

『企業は、駆け込み需要の反動による需要の落ち込みを一時的とみているとみられ、前向きな雇用スタンスを維持している。こうしたもとで、所定内給与がはっきりとした増加に転じるなど、賃金の改善も続いている。また、非製造業を中心に設備の不足感も強まってきている。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度後半にプラス(需要超過)基調が定着し、それ以降、プラス幅が一段と拡大していくと考えられる。そうしたもとで、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(前回)

という事で、前回よりも需給バランスの改善メカニズムの説明が自信満々という感じになっていまして、これまた物価の達成時期が後ずれしているので今回の展望レポートは敗北宣言かと思いきや全然そんな話ではなくてメカニズムの話で言えば勝利への確信度が高まる進軍ラッパになっているというのが実にこう味わいが深い訳で、したがって追加緩和も必要ではないという話にもなっていくというのがまあ今回の展望レポートからは読めますなというお話。


・はいはい賃金上昇賃金上昇

次が予想物価上昇率の話。

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。こうした予想物価上昇率の動きは、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼしていると考えられる。例えば、労使間の賃金交渉においては、企業業績などに加え、物価動向を賃金に反映する動きが拡がりつつあり、本年のベースアップを含む賃上げは昨年を上回る伸びとなる見込みである。先行きも、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみられる。』(今回)

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。こうした予想物価上昇率の動きは、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼしていると考えられる。例えば、労使間の賃金交渉において、企業業績などに加え、物価上昇率の高まりも意識され、ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施された。企業の間でも、従来の低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略へと切り替える動きがみられている。先行きも、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』(前回)

ここでは「本年のベースアップを含む賃上げは昨年を上回る伸びとなる見込みである」と思いっきり今回の春闘実績をここぞとばかりに入れているのがドヤ顔という感じですが、どさくさに紛れて企業の価格設定行動の部分がしらっと抜けているのは、後のリスク要因でも片鱗がありますが、まあちょっとそこまで図々しくなれるのかという話なんでしょうな。

つまり、価格上げた→消費が落ちたというのが消費増税も含めて円安などのコストプッシュで物価が上昇した時の実際の動きであって、単に価格が上昇するだけでは消費が伸びないからいわゆる実質値上げ的な動きになって数量が出なくなるという問題があって、企業がそこまで強気の価格設定ができるのかというのは今後物価が戻っていく中での懸念材料でしょと思われますし、まあさすがにそこはリスク要因で触れていますので後程。


・輸入物価に関しては同じです

『第3に、輸入物価についてみると、これまでの為替相場の動きが、輸入物価を通じた消費者物価の押し上げ要因として作用していく一方、原油価格をはじめとする国際商品市況の下落は、当面物価の下押し圧力となる。』(今回)

為替に関して「ここのところの」が「これまでの」になった以外同じなので前回分は引用しません。まあこれはこうとしか言いようがない。


・物価の先行きは「基調が強い」という話ですな

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調が着実に高まり、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。2%程度に達する時期は、原油価格の動向によって左右されるが、現状程度の水準から緩やかに上昇していくとの前提にたてば、2016年度前半頃になると予想される。その後は、平均的にみて、2%程度で推移すると見込まれる10。』(今回)

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い10。その後は、中長期的な予想物価上昇率が2%程度に向けて収斂していくもとで、マクロ的な需給バランスはプラス幅の拡大を続けることから、強含んで推移すると考えられる。』(前回)


『2016年度までの消費者物価の見通しを1月の中間評価時点と比較すると、やや下振れている。』(今回)
『2016年度までの消費者物価の見通しを7月の中間評価時点と比較すると、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(前回)


ということで、今回は2%到達時期についてご案内の通りで後ずれさせているのですが、上記にありますように「物価の基調が着実に高まり」というのが入っていまして、ではその物価の基調とは何ぞやというと需給ギャップと予想物価上昇率な訳ですが、需給ギャップの説明は今見ましたようにメカニズムとしては前回の展望レポートよりも明らかに強くなっていて、予想物価上昇率に関しても賃金の上昇が継続しているというサポート材料をもってメカニズムが強くなっているという話になりますので、結局の所今回の展望レポートは「メカニズムはより強固になっている」という強気のシナリオがメインシナリオとなっているという事ですな。

でもって需給ギャップにしろ予想物価上昇率にしろ、その場ですぐにわかる話ではなくて後にならないと分からない代物で、足元の話をする分には鉛筆を盛大に舐め舐めできますから、その分ロジック構成をするという意味ではやりやすいのでロジックは堅牢、ただし実際にそうなるのかという話はどうですかねえという内容になっているというのがメインシナリオ編でした。

メインシナリオの次は上振れ、下振れ要因です。

○リスク要因を鑑賞の巻でまずは経済に関してだが輸出の表現がやや違うのみ

『2.上振れ要因・下振れ要因』の『(1)経済情勢』』である。

・輸出に関して構造要因の話が抜けてきているのはどうしたのかね

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、海外経済の動向に関する不確実性がある。』(今回)
『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、輸出動向に関する不確実性がある。』(前回)

ということで、今回は輸出動向ではなくて海外経済の動向という表現になっているのですな。

『先行きの海外経済を巡るリスク要因としては、米国経済の成長ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、新興国経済における持続的な成長に向けた構造調整の進展度合い、資源価格下落の影響、地政学的リスクなどが挙げられる。』(今回)

『輸出の伸び悩みが続いている背景には、新興国経済を中心とする海外経済のもたつきや世界的な投資活動の弱さに加え、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も影響している。先行きの海外経済を巡るリスク要因としては、米国経済の回復ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、新興国経済における構造調整の進展度合い、地政学的リスクなどが挙げられる。また、わが国企業の先行きの内外生産ウエイトについても、為替相場の影響や生産移管のペースなどに伴う不確実性は高い。なお、海外生産の拡大は、輸出を抑制する要因であるが、子会社からの配当など、企業収益の押し上げを通じて成長に寄与する面もある。』(前回)

とまあそういうことで、今回は輸出の先行きについて強めで見ているせいなのか、足元で輸出が出てきている感があるので楽観視しているのか知らんですが、輸出ガーという言い訳大会がなくなっているのが特徴的であります。


・消費増税、成長期待、財政に関しては基本的に同じです

『第2は、2017年4月に予定される消費税率引き上げの影響である。駆け込み需要とその反動の影響や実質所得減少の影響は、消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(今回)

『第2は、消費税率引き上げの影響である。1回目の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や実質所得減少の影響はなお残存しており、引き続き見極めていく必要がある。また、2回目の消費税率引き上げがどのような影響を及ぼすかについても、その時点の消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(前回)

ということで、消費増税に関しては基本的に同じ話をしているのですが、反動減の影響に関してはスルーされています(まあ1年もたっているのですから当たり前ですが)が見通しという意味では基本的に同じですな。

『第3に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革の今後の展開や企業部門におけるイノベーション、家計部門を取り巻く雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。』(今回)

『第4に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』(今回)

ここは前回と同文なので前回分を引用しませんが同じです。まあ将来不安が軽減されれば経済が上振れるってのは別に財政再建への信認で軽減される訳は無くて、そうなって欲しいなら終身雇用と定期昇給を復活させれば将来不安は軽減されると思いますけどねえ。



○リスク要因物価編

次が物価のリスク要因。

・予想物価上昇率では賃金をリスクから外すもバックワードのリスクを高めるとな

『上述のような経済の上振れ、下振れ要因が顕在化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。』(今回)

ということで。

『中心的な見通しでは、賃金の上昇を伴いながら実際の物価上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇し、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく姿を想定しているが、その上昇ペースには、実際の物価の動きやそれが予想物価に及ぼす影響の度合いなどを巡って不確実性がある。この点では、エネルギー価格下落の影響から現実の消費者物価の前年比が当面0%程度で推移することが、予想物価上昇率の上昇ペースに影響するリスクがある。』(今回)

『中心的な見通しでは、実際の物価と賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、その上昇ペースには、実際の物価の動きやそれが予想物価に及ぼす影響の度合いなどを巡って不確実性がある。この点では、来年度に向けた労使交渉において、過年度の物価動向や先行きの物価見通しが賃金にどのように織り込まれていくかが重要である。また、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が物価の下押し要因として働いているが、この下押し圧力が残存する場合、予想物価上昇率の改善が遅延するリスクがある。』(前回)

ということで、賃金動向がリスク要因の説明から外れて賃金が上昇する中でちゃんと物価が上がるかどうかの不確実性という表現になっているのはリスクとしては弱くなっていますが、一方で実際の物価がゼロ近傍まで下がっているので、さすがに下がった物価がバックワードに効いてくる可能性についてをリスクとして明記しない訳にも逝かないという事になりましたな、ニヤニヤ。

とは言いましても、そもそもこれだけ物凄い勢いでプレッシャーがかかる中で何となくベアだけは実施していますが、本当の本当に総賃金上がっているのかとか、パーヘッドの賃金はどうなっているのとか、そういうの気になりますし、大体からしてもう来年度のベアは確実で賃金はこれから毎年上昇みたいな見通しになっているようにしか見えませんが、16年度に本当にベアが継続するのかとか甚だ疑問な所でございます(これが15年10月に増税だったら16年度も賃金改定しておかないと実質所得的にマズーですから賃金上がるのでしょうが)し、大体からしてバックワードルッキングのインフレ期待を気にするなら10月に追加緩和して今回追加緩和しないのは何故かという話。

なお、追加緩和しないのは先ほどのメインシナリオにありましたように、景気の判断自体は計数はともかくとしてその内容自体が上がっているから、という摩訶不思議な状態になっているので、そもそも景気判断的に追加緩和はイラネという話になるのですな、うんうん。


・需給バランスについては構造失業率の低下に伴って?表現変更あり

『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。』(今回)

『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。とくに、通常の失業率に加え広義の失業率も低水準となっているだけに、人手不足感が一段と強まる可能性がある。』(前回)

今回構造失業率の水準を下げまして、そのために人手不足感云々の所が抜けておりまして、まあここは労働需給が強いと言ってる割に全然物価に跳ねてこないのでさすがに説明に無理があると思ったのでしょうな。


・価格や賃金が需給バランスの改善に対応しないリスクに一片の良心を発見

『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が財・サービス需給や労働需給の引き締まりに応じて、販売価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて留意する必要がある。』(今回)

『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が需給の引き締まりに応じて価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて留意する必要がある。』(前回)

しらっと「労働需給の引き締まり」というのが入っているのが労働市場の強さを受けて自信モードな部分。

『この点、労働需給の引き締まりを背景として賃金の改善ペースが上振れ、物価にも影響を及ぼす可能性がある一方、消費者の物価上昇に対する抵抗感が強い場合や企業の賃上げに対する姿勢が慎重な場合、販売価格や賃金の引き上げがスムーズに進まない可能性もある。』(今回)

『この点、消費税率引き上げ以降の消費動向が、先行きの企業の価格設定行動にどのような影響を及ぼすか不確実性が高い。』(前回)

つーことで、さすがに今回「消費者の物価上昇に対する抵抗感が強い場合や企業の賃上げに対する姿勢が慎重な場合、販売価格や賃金の引き上げがスムーズに進まない可能性もある。」と入っている所だけには堅牢な逆算ロジックの中で辛うじて良心を感じるところでして(^^)、先ほども申しあげたように2012年度後半から2013年度にかけての動きって賃金上昇期待やら将来の期待などが伴わない中で物価だけ上昇しても最終的に需要が伸びなくなって、名目ベースの数量が落ちてしまうと生産も落ちてしまうとか、そういう弊害がモロに出たから個人消費の伸び悩みが長くなったという話であって、その点に関してはさすがにここでリスクとして触れているだけまあ結果から逆算した展望レポートにしては一応良識も残っていますなという所ではあります。つーか普通に考えてここから見通し通りに物価が上がったら消費がまた落ちるだけのような気がするんですけどねえ。


・輸入価格に関してはいつも通り

『第4に、原油価格といった国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振れ双方の可能性がある。』(今回)
『第4に、国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振れ双方の可能性がある。』(前回)

原油価格を前面に出した以外は同じ、というかまあこれはこうとしか書きようがないですからね。



○金融政策運営の第一の柱、第二の柱に関して

『3.金融政策運営』である。

『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。』(今回)

ということで。

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、2016年度前半頃に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(今回)

『まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(前回)

ということであっさりとこの見通し先送り。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向などを巡る不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、海外経済の動向などを巡る不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(前回)

ということで第2の柱の前半(というか後半もですが)は全文一致とな。

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない11。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、漸減傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない11。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、漸減傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(前回)

後半も文言は一致なのですが、FSRに関連してもうちょっとこうツッコミがあっても良かったような気もしないでもないのですが、まあ第二の柱的に何だかんだとは中々言いにくい面もあるのは分かるので、そこは表に出す出さないはともかくとしても問題意識は持ってほしいのですけどね。もちろんFSRだけではなくて金融市場の流動性低下とかそっちの方も問題ですけど。

あと、金融機関の国債保有残高云々という話なのですが、政府が国債発行年限を長期化する中で日銀が統合政府の負債デュレーションをせっせとオーバーナイトに切り替えているという状況に益々拍車が掛かっていく方の方がよほど大きなリスクではないかと思うので、あまりこのネタを毎度書いていると「オマエガナー」と言われるだけのような気がします。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

ところで所期の効果を発揮しているのに何でゼロ%なんでちゅかねえ、という点についての説明が企画局から出ているようなのでその辺でも鑑賞しないといけませんね!!!!!!

なお、この最後の部分は毎度同じです。


まあ何ですな、今回の展望レポートは前回の無理繰りというかロジックが崩壊していた追加緩和とのセットになっていた展望レポートほどはネチネチと突っ込む場所が基本的見解部分ではなかったというか、メカニズムを強化している上に物価の2%到達時期を後ろに倒しているのだから当たり前ちゃあ当たり前ですが、説明そのものはそれらしくなっているという所ではありますな。

以上連休も終わりが近くなってきました(つーてまだ1日あるが)が休日をこんなのに費やすアタクシもまあアレでございますな。

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2015/04/28

○金融政策ニュース雑感

・池尾先生身も蓋もない指摘(^^)

先週末のロイターインタビューから
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0NF04H20150424
インタビュー:リフレ派理論実現せず、日銀の自縄自縛に=池尾教授
2015年 04月 24日 11:54 JST

『[東京 24日 ロイター] - 池尾和人・慶応大学教授はロイターのインタビューで、日銀の量的・質的金融緩和(QQE)の理論では、一般物価は貨幣量で決まるため原油安には左右されないはずと指摘。足元で物価上昇率が鈍化しているのは理論が当てはまっていないためであり、日銀はロジックを総括すべきだと語った。』(上記URLより、以下同様)

(;∀;)イイハナシダナー

『QQE導入から2年が経過、現状をみると、消費税率引き上げの影響を除いた物価上昇率は再びゼロ%程度で低迷している。池尾氏は「QQEの理論が現実には当てはまっていないことが明らかだ」と指摘。実現していない理論が2つあるとみている。』

ほうほう。

『まず、「岩田規久男副総裁が提唱していたロジックでは、原油安というのはあくまで相対価格であり、一般物価水準は貨幣数量で決まるという主張だったはず。現在、物価上昇が鈍化している背景について原油安を言い出すのであれば、総括が必要だ」と指摘する。』

全く持っておっしゃる通りでございますな。

『いわゆるリフレ派の理論は、原油価格が下落すればその分余裕のできた支出を他のモノやサービスに回すことで、全体の物価水準は下がらないとされる。この物価水準を規定するのはあくまでマネーの量だとする。岩田副総裁が就任前に主張していたのは、ベースマネーの供給量を80兆円程度に増やすことで、物価上昇が可能になるというものだった。』

しかし今は原油価格ガーと説明しておりましてそれを想定外と言って言い訳をしているのですが、一次産品の鉱物燃料の価格なんぞ市場でホイホイ価格が動くのでいちいち想定外で済むなら最初から物価目標とか何の意味があるのかと小一時間という話ですな。

『もうひとつは、「消費税率引き上げによる景気低迷も、追加緩和によりキャンセルできると言っていたはずだが、これも打ち消せたとは言えない」という点。「論理を一貫させるのであれば、緩和が足りないということになる」と指摘する。』

ですな。

『池尾氏は以前から「ゼロ金利制約のもとでは、量的緩和の追加的な効果は乏しい」と主張してきた。「日銀は、QQEは有効だと主張してきたが、実際には反証されたということ。貨幣供給量を増やせば物価を動かすことは容易だという理論が誤っていたのなら、変更するべき。株価が上がったからそれでいいという話も理解できなくはないが、それで済まされないのではないか。そこは論理を再点検してほしい」と語る。』

まあそういうことですな。


・山本先生ちょっとあの・・・・・・・・

昨日はこんなヘッドラインが出ていてキャッチーなタイトルにワロタ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NNEXE46K50XS01.html
自民・山本氏:日銀は反リフレの「伏魔殿」、総裁は初心に戻れ
2015/04/27 12:10 JST

『(ブルームバーグ):自民党の山本幸三衆院議員は、日本銀行の黒田東彦総裁についてデフレと戦う姿勢が「揺らいでいるのではないかと心配している」との懸念を表明。物価上昇率2%の目標達成にあらゆる手段を講じるとの初心に戻り、30日の金融政策決定会合で追加緩和に踏み切るよう促した。24日のブルームバーグのインタビューで語った。』(上記URLより、以下同様)

先生何様ですかという話はさておきまして、このくだりは吹いた。

『日銀が第2次安倍晋三政権誕生前は物価上昇率の目標設定など山本氏らが提唱した政策の導入に消極的だったことから、黒田氏が日銀の「伏魔殿」に「侵されつつあるのかな」と述べた。白川方明前総裁時代の日銀についてはインフレに対する「過度なまでの懸念」や、金融政策の「小出し、後出し対応」を取る体質があり、現在も白川時代の「遺伝子がまだ残っているのではないか」と語った。 』

ぽかーん。

えーっとすいません、伏魔殿呼ばわりするなら副総裁という大変に高い地位においでな上に国会では2年で2%未達状態に対して「原油価格ガー」と繰り返すだけの鶴光師匠もとい岩田副総裁や、先般鳴物入りでボードに入られたジンバブエ原田先生などを伏魔殿呼ばわりすべきであって、日銀自体は無慈悲買入を継続して債券市場のライフはゼロよ状態にしても平気の平左という状態になっております次第ですからどう見ても文句を付ける場所を間違えています。

まあ何ですな、リフレ派の皆様の理屈ってある意味最強理論で、その場その場で問題があったら何か適当な生贄探してそのせいにして自分たちの理論は悪くない攻撃をするし、そもそも主張が首尾一貫していないのを全然気にしない上に身内擁護だけは徹底していると来ていますので、何となくその場その場では正しいように見えてしまうし、自分の自己矛盾は棚に上げて何かのせいにするから常に正しいように見えてしまうという三百代言モードですなあと。でまあ何も動こうとしない岩田副総裁だったり原田審議委員だったりはリフレ仲間なので叩かない所か伏魔殿によって発言も主張もできない囚われ人とかそういう扱いなんでしょうかね。


ということで同じブルームバーグニュースからサルベージサルベージ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MSV7TQ6K50Y501.html
自民・山本幸三氏:消費増税先送りならアベノミクス吹き飛ぶ (1)
2013/09/10 17:52 JST

題名だけでおなかいっぱいですがせっかくなので前半をノーコメントで引用しておきましょう。

『(引用者追記:一昨年です)9月10日(ブルームバーグ):自民党の山本幸三元経済産業副大臣(党税制調査会幹事)は「デフレ脱却と消費税率引き上げは関係ない」と述べ、安倍晋三首相は予定通り2014年4月からの税率8%への引き上げを早期に決断するよう求めた。』(上記URLより、以下同様)

>デフレ脱却と消費税率引き上げは関係ない
>デフレ脱却と消費税率引き上げは関係ない
>デフレ脱却と消費税率引き上げは関係ない

『先送りすれば外人投資家が日本株や日本国債の売りに走り、株安・債券安・円高を招いてアベノミクスが市場に与えた効果が「吹き飛んでしまう」と警鐘を鳴らした。』

『9日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで語った。山本氏はデフレ脱却のために日銀が通貨供給量を増やすよう長年主張してきたリフレ派の代表的論客で、安倍首相とは野党時代に金融政策の勉強会を重ねてきた。首相のブレーンである浜田宏一内閣官房参与らはデフレ脱却途上での8%への増税に慎重な発言を繰り返しているが、山本氏がこれに異論を唱えた形だ。』

『山本氏は「デフレは貨幣現象であり、貨幣を増やせば自動的に脱却する。日銀が一生懸命にやっているのでそれを進めればいい」と増税慎重論をけん制。』

>デフレは貨幣現象であり、貨幣を増やせば自動的に脱却する
>デフレは貨幣現象であり、貨幣を増やせば自動的に脱却する
>デフレは貨幣現象であり、貨幣を増やせば自動的に脱却する

『その上で、「何かショックが出てきそうだったら日銀の追加緩和、それが基本だ。日銀が十分にお金を出しさえすれば経済が悪くなっていくことはない」とも述べた。同氏は8日、首相に電子メールを送り、早期の増税決断を求めたという。』

>日銀が十分にお金を出しさえすれば経済が悪くなっていくことはない

とまあそういうことでコメントは特段しませんけどね!!!!!!!!


○フレーム変更の場合にどうなるかというのは考えれば考えるほど割と難しい

とまあそんな話はさておきまして、昨日の玉が出た攻撃(かどうか知らんが)で直ちに輪番ウヒョー化は無いのかもしれませんが、まあそうは言いましても日銀の買入が拡大する中でいつまでたっても物価目標が無理じゃんとなった場合にはどうするかという思考実験叩き台。

・・・・・・・・でまあ物価目標が達成できれば問題はないのですが、どこからどう考えても2%の物価目標って今の時点では無理があって、実際問題として年後半に日銀が言うように物価が上昇してきた場合って、足元で物価が低いからプラスになっている実質賃金の伸びが止まってそのうちマイナス傾向になってくるとかいう話であり、そうなった場合に消費が落ち込んで結局生産もダメとかそういう話になる、というのが今回消費増税と物価上昇が同時にやってきた前後での動きの結果だと思うのですけどね。

と考えますと、結局の所「2%目標は掲げたままだが、2年で達成とかそういうのは諦めて、中長期的に経済の実力をつけていく間にデフレにならないように金融政策でサポート」という話になるしか落ち着き所は無いので、そうなると今の短期決戦政策自体が運営上間違いであり、「中長期的に実践可能な金融緩和政策」をするしかないという話でしょと。

でまあその時に金利政策という話になって、そこで付利下げだのマイナスだのという話が飛び出してくるのですけれども、そもそも欧州のやっているマイナス金利だのというのは「インフレ期待が中長期的に2%でアンカーされる中で金利ルートで政策効果を上げるために名目ゼロ金利制約以下に金利を下げる」という政策を実施している訳で、日本の場合はそもそも論として「実質金利を下げるためには現状2%でアンカーされていないインフレ期待を2%に引き上げる」という政策を実施している訳で、名目金利を下げるよりも重要なのはインフレ期待の引き上げなのですな。

んでもってそのインフレ期待上昇時のフィッシャー効果を軽減して実質金利の引き下げをするというのがキモであるので、日本の場合は「金利を下げればよい」というよりは「インフレ期待を上げながら金利を上げない」というのが実践されないといかん訳で、金利が下がって喜んでいるのはシロウトという訳でごじゃりますな、うんうん(異論はだいぶあると思う)。

でまあその金利ですけど、マイナス金利とかやって市場の流動性を落とすよりも、中短期の金利をアンカーさせる時間軸政策の方が筋が良いですし、中短期の金利を強力にアンカーさせておくのと、市場機能を残しておく方が無駄にボラが上がらずに済みますとは思います。

ただし、元々やっている今の政策が十分に過激なので、普通の政策を打ち込むと緩和後退と言われてしまいますから、じゃあどうするのという所で話は止まってしまうのですが、まあ基本は「中短期の金利を強力にアンカーする」ということではないかという話で、いくつかネタがあるのですが書いたのを読み直して見たらあまり面白くないのでいったん消してもうちょっと考えてみます。たぶん「長期金利を安定させる」「イールドカーブは残しておく」「中短期の部分を強力にアンカーする」という3点セットが一番長持ちする緩和政策だと思いますけどね。

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2015/04/27

○微妙なヘッドライン系のニュース雑談

・山本幸三先生

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NNAMZF6JTSEC01.html
自民党の山本議員:日銀何もしないこと「あり得ない」−30日会合で (2)
2015/04/24 16:55 JST

『日銀の姿勢について山本議員は、物価がマイナスになり物価見通しを下げるという状況の中、それを許さないという姿勢を示さないのは「あり得ない」とも述べた。そして追加緩和をしない場合については、円高や日本株売りになる懸念を示して16年のデフレ脱却宣言も難しくなるとしている。』(上記URLより)

まあそもそも日銀は今の建付けだとデフレ脱却宣言というたぐいのものは行わないのですがそれはともかくとして、足元の物価見通しが下がったら先の物価見通しが下がらなくても即緩和、というのは昨年10月に示した話からしますとそうですねとは思いますが、追加緩和要求は分かりましたがだったら先生「2年で2%未達」に対する責任追及を行って、総裁副総裁の自発的な辞任を求めて人心一新してから改めてフレーム考えて追加緩和をすべきって話をしないのは何ででちゅかねえと思う訳でして、その理屈なら置物師匠のクビを要求をセットにして欲しいものです。

しかしまあ何ですな。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150423b.htm/
金融高度化セミナー「金融機関のガバナンス改革 ― グローバル・スタンダードの実現に向けて ―」を開催
2015年4月23日 日本銀行金融機構局 金融高度化センター

金融政策運営に関して「私の金融緩和」とか言われてしまっていたり、上記のような話がポンポンと飛び出すという状態の中でこのような金融高度化セミナーが開催されるという辺りに風情を感じるのはアタクシだけでございましょうか(銃声)。


・なんだこの意味不明ヘッドラインは

まああんまりリンク張ってアクセスに寄与するのもシャクなのだが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NN942L6JIJV001.html
日銀は2年連続で物価2%を展望、異次元緩和の出口を視野に
2015/04/24 17:23 JST

『(ブルームバーグ):日本銀行は30日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2016年度、17年度と2年連続で物価が2%程度上昇するとの見通しを示す。複数の関係者への取材で明らかになった。 複数の関係者によると、15年度の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI )見通し(政策委員の中央値、増税の影響除く)は1月の1.0%上昇から小幅下方修正される可能性があるが、その先は対照的な見通しとなる見込みで、実現すれば、17年度までの見通し期間中に量的・質的金融緩和からの出口戦略をめぐる議論が始まる可能性がある。』(上記URLより)

なんだこの意味の分からん書き方はというか、そもそもヘッドラインが無茶苦茶な詐欺ヘッドラインで、記事だと「2017年度までの見通し期間中」という話なのに「出口を視野に」というのがまるで「2年連続2%の見通しをだすので早速出口が視野に」というような印象を与えるという低劣クオリティとなっておりますが、記事の評価に対してアクセス数が重視されてしまいますからこういうゲロかうんこかというヘッドラインでも評価されてしまうんだろうなあというのが実に遺憾な話で、ブルームバーグも炎上商法でアクセス稼ぎというのはあまりやっていると「お前の所は分析機能だけでいいわニュースいらん」とかいう話になるのではないかと心配ではあります。

そもそも日銀は2%物価に対して2015年度を中心とする期間に達成すると言っている訳でして、それから考えますと当然ながら来年度のどこかあるいは今年度の終わりにはQQEからの出口がという話になる筈なのですから、上記記事の説明そのものが何の意味もない話をしているに過ぎないのでして、もうアホか馬鹿かとと思いますが、そういう阿呆記事に名前を出される何とかストの皆さんも貰い事故っぽくてとても素敵ですが、とりあえずそういう記事に名前を連ねられるのはレピュテーションの問題になる、というのをもうちょっと普及して頂きたいものだ(実際は阿呆記事や阿呆レポートでも目立つ方がお得的な何とかストの金融政策解説は良く散見されるし、そういうのがランキングに出てくるのを見ると泣きたくなる)と思うのでありました。

しかしまあ何ですな。

『複数の関係者によると、仮に15年度の物価見通しが下方修正されても、物価の基調は着実に改善することから、16年度、17年度と2年連続で物価が2%上昇するとの見通しが示される見込み。日銀内では、見通しが実現すれば、17年度までの見通し期間中に、量的・質的金融緩和の縮小、いわゆるテーパリングが始まる可能性が意識されているという。 』(上記URLより)

ってことですが、そもそも2015年度を中心とする期間に達成するという話をしている中であれば、そもそもそこのタイムフレームに2017年度を入れて話をするのがおかしい訳ですよ。確かに展望レポートでは今回2017年度までの見通しをだすのですから、展望レポートの見通し期間中では2017年度までのという話になりますけれども、現在2015年度を中心とする期間に物価目標を達成すると言ってるんですから2017年度の見通しなんてそら2%台のどこかになるのは明らかですし、その時点でQQEが終わってないと今度は物価が上に振れて大変なことになるのか金融不均衡で大変なことになるのかのどちらかでしょとゆー話で、何という無意味記事とは思います、というかこういう下らん記事書くなよと思いますけどね。

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2015/04/24

○何か国会で面白い問答が行われて居たようなので過去の素敵な質疑応答をご紹介してみましょう

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko150423a.htm/
【概要説明】
通貨及び金融の調節に関する報告書
参議院財政金融委員会における概要説明
日本銀行総裁 黒田 東彦
2015年4月23日

ということで昨日は参議院の財金で黒田総裁と置物師匠が呼ばれてああでもないこうでもないとやっていたようですが、オモシロヘッドラインが流れておりまして、ついでに質疑応答もかなりのオモシロプレイだったようですので後日会議録のアップを楽しみにしたい訳ですがとりあえずロイター記事から。

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0NE0BY20150423
物価2%達成の遅れは原油安、説明責任果たしている=岩田日銀副総裁
2015年 04月 23日 13:41 JST

『[東京 23日 ロイター] - 岩田規久男日銀副総裁は23日午前の参議院財政金融委員会で、量的・質的金融緩和(QQE)は労働市場を中心に実体経済に好影響を及ぼしており、現行政策の継続によって物価2%目標への基調は維持できるとの考えを示した。また、就任前に目標が達成できなければ辞任すると表明したことに関して、現在の物価低迷は想定できなかった原油価格の急落が要因だとし、「説明責任は果たしている」と語った。』(上記URLより)

参議院ホームページ
http://www.sangiin.go.jp/

こちらの真ん中あたりにある「参議院審議中継」というのをクリックしてカレンダーの昨日の日付をクリックして財政金融委員会を選択すると録画が見れる(IEだとアドビのフラッシュプレーヤーが必要です)のでまあ超お暇なら鑑賞ありたい訳ですが、質問者は「私たちが辞任しろといっていた訳ではなくてもともと岩田副総裁自らが言ってたのにどういうことですか」と素敵なツッコミをしておりましたし、そもそも論として「リーマンショックガー的な言い訳は許さん」というのが置物リフレ理論の決意であり、さらに言えば「安価な輸入品との競合ガー」という話に対して「個別物価の話と一般物価は別(キリッ)」としていたのが置物リフレ理論の真髄だった筈なのですが、どうも日銀に入ってすっかりお頭の方がお花畑のハッピーモードなのか過去の主張がなかったかのような「説明責任」とはヘソが茶を沸かしますな。


なお黒田総裁の答弁ですが、

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0NE0AD20150423
金融政策は円安あてにせず、原油安が期待に影響すれば対応=日銀総裁
2015年 04月 23日 12:38 JST

こちらの記事ではあまりその辺の話が無いのですが、2%の達成時期について2016年度の頭みたいな話が出ていて達成時期どうなっているのよ的な答弁があったり、詳細未確認ですが「物価以外達成している」というような斬新にも程がある答弁があった(いやあの目標達成しなかったからと言って後付で勝手に目標変えて達成とか詐欺師かよと小一時間)りとか、中々素敵な質疑応答が展開されていたようなので後日の会議録を楽しみに。

#しかし「物価の基調が強くて足元は原油によるもの」+「物価以外達成」を組み合わせるとQQEはもう目的を達成しているのだから出口政策をはじめないといけないという理屈になるはずなんですけどねえ(棒読み)


・・・・・・・・というのはマクラでして(^^)

国会会議録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/

こちらから2月26日の参議院財政金融委員会の会議録を鑑賞する訳です。

[001/001] 189 - 参 - 財政金融委員会 - 2号 平成27年02月26日

さっきのURL先から「簡易検索」→「開会日付と院名と会議名を選択」→「検索」とやると当該会議が出てくると思います。

でまあ他の質疑応答も面白いのですが、毎度おなじみ大門実紀史委員の金融政策に関するツッコミが実に見ごたえがあるので国会ネタついでに鑑賞しませう。

以下引用は平成27年02月26日参議院財政金融委員会会議録からとなります。発言番号の94番以降が該当箇所になります。

『○大門実紀史君 大門でございます。

 私は、もう一貫して日銀の異次元緩和は間違いだと。だから、今までは良かったじゃなくて、最初から良くなかったと思っておりますし、良かったと思う分のツケは必ず来ると、そういう政策だと思っております。

 後々、先ほど出口戦略もありましたけれども、大変な事態になるということの懸念を示してきたわけでありますけれども、今日はその議論の前に、ちょっと本題に入る前に、この日銀報告と国会質疑との関係について疑問に思うことがありますので先にただしておきたいと思うんですけれども。』

ということで始まるのだ。

『 前回の参議院の財政金融委員会の日銀質疑というのが十月の二十八日でございました。その三日後に、先ほどから議論になっております追加の金融緩和を発表されたわけですね。二十八日で、三十一日に発表されたわけであります。あのときの審議は私も参加しましたので覚えておりますけれども、その審議の中身、答弁と三日後の発表された中身が余りにも乖離があると、あのときの日銀の審議は何だったのかと、国会の審議って何なのかということを、三日後ということもありましたから大変驚いたわけでありますので、その点ちょっとただしておきたいと思うんですけれども。』

(・∀・)!!!

『  議事録に基づいて言いますけれども、二十八日のこの委員会で、例えば民主党の大久保さんに対する答弁などでは、総裁はこうおっしゃっているんですね。要するに、この量的緩和は所期の効果を発揮している、日本経済は二%の物価安定の目標の実現に向けた道筋を順調にたどっております云々とありまして、今後も継続していきますと。ただし、仮に何らかのリスク要因によってこうした見通しに下振れ、変化が生じたら、必要になればちゅうちょなく調整を行っていく方針ですということは加えられておりますけれども、二十八日時点の国会答弁としての現状認識としては、道筋を順調にたどっておりますと、二%に対してですね。』

『 ならば、なぜその三日後にあんな大胆な追加緩和策を出されたのか、ちょっと説明をしてほしいんですけれども。』

(;∀;)イイシテキダナー

つーことで以下質疑応答が続きます。最初途中まで引用しようと思いましたが結局大門委員のパートを全部以下引用します。って手抜き引用企画とか突っ込まないように(^^)。

『○参考人(黒田東彦君) 御指摘の量的・質的金融緩和の拡大、これは昨年の十月三十一日の金融政策決定会合においてその実施を決定したものでありますけれども、この会合におきましては、それまでに入手した金融経済情勢についての情報を総点検いたしまして、二〇一六年度までの経済、物価の見通しを展望レポートとして取りまとめたわけでございます。

 そうした経済、物価の現状及び見通しを基にしまして、金融政策運営について政策委員会で委員の間でかなり掘り下げた議論をいたしまして、先ほど申し上げたような量的・質的金融緩和の拡大を決定したわけでございます。』


『○大門実紀史君 総裁、それはおかしいんじゃないですか。

 議論したのは、むしろ総裁が提案されたことに反対の人が多かったから議論になったわけで、総裁はこの国会で、この委員会で自分の考えを述べておられないんですよね。決定会合で述べて反対が多くて、おっしゃったように、いろんな議論になったというのは承知しておりますけれども。

 だから、僅か三日で総裁の認識変わるとは到底思えませんから、二十八日にここに出られたときに、やっぱり追加緩和の必要性があると。もちろん、何やるかということは、さすが国会でもそういうことを求めませんし、言えないと思いますよね。しかし、国会ですから、遊びでやっているわけじゃありませんので、わざわざ来てもらっているわけだから、現状認識ぐらいきちっとおっしゃるべきじゃなかったのかと思うんですよね。

 今言ったことは後の話でしょう。思っていらっしゃったことを、決定会合で総裁が提案された現状認識をなぜここでは一切言われなくて、順調に推移しておりますということになったんですかということを聞いているんです。簡潔にお願いします。』

これは!!!

『○参考人(黒田東彦君) この点は、実は合議制で金融政策を決定しております、日本だけでなくて米国や欧州もそうでございますけれども。

 あくまでも政策委員会の議長としての役割としては、政策委員会で経済の見方を議論し、政策を決め、そしてそれを公表しているわけでございます。日本の場合は、年に十四回政策決定会合をやっております。そういう中で、その間でいろいろな議論に参加する場合に、やはり個人的な意見をいろいろ申し上げるのは適切でないと思います。と申しますのは、やはりあくまでも政策決定は政策委員会で行われます。それも合議制で行って、多数決で決めるということでございます。したがいまして、政策委員会の議論を先取りして何か申し上げるということはやはり適切でないと思います。

 なお、十月三十一日の政策委員会での議事の概要は公表されておりますけれども、委員も指摘されたとおり、議論の中でいろんな意見が出、そしてその中でああいった拡大ということが、これももちろん多数決ですけれども、決まったということでございます。』

ふーん(ニヤニヤ)。

『○大門実紀史君 大事なことなので、国会審議に関わりますので、同じことを繰り返さないでほしいんですよね。

 手段として何をやるかと、何兆円やるかなんということをここで言えないのは分かります、幾ら国会審議でも。そんなことを求めているわけではございません。情勢認識として日銀がやっていらした枠の金融緩和策が順調にいっておりますと、だったら追加する必要ないんですよ。このまま進めればいいと。このまま進めますという答弁もおっしゃっているわけですね。

 もっと言えば、その前の記者会見、十月のをずっと見ますと、ずっと追加の緩和の必要性はありませんというようなことまで記者会見でおっしゃって、国会では慎重におっしゃっていますけれども、少なくとも追加があるなんて誰も思わないような、うまくいっている、推移していますという答弁をされている。』

(・∀・)さすが大門先生。

『  この現状認識について申し上げているわけで、その中に難しい議論があるとか総裁が思ったとおりみんな賛成してくれなかったとか、そういうことを言っているんじゃないんです。総裁のお考えを聞くために呼んでいるわけだから、来てもらっているわけだから、総裁として、なかなかこのままいくと難しいものもあるかも分かりませんとか、それぐらい言われないと、国会でせっかく来てもらっても、何も言えない前提で来られているんだったらば、この日銀報告の質疑をやる意味が、ないとは申し上げませんけれど、相当、何のためにみんなこうやってやっているのかとなると思うんですよね。

 情勢認識ぐらいもう少しきちっと報告されるべきじゃないかと思うんですけれど、国会に対する対応のことを聞いているんです。いかがですか。』

国会軽視というのは厳しいツッコミどころですな。報告義務あるんですから。


『○参考人(黒田東彦君) 委員の御趣旨はよく分かります。

 私も十分努力してまいりたいと思いますけれども、何度も申し上げますが、現状認識といいましても、それが政策の変更を示唆するようなことを申し上げるというわけにはいきませんので、その点は是非御理解いただきたいというふうに思います。』

さすがに言い逃れが出来なくなって参りました。

『○大門実紀史君 なぜこれを申し上げますかというと、FRBのことを御存じですよね。バーナンキ・ショックと言われまして、バーナンキさんが量的緩和の第三弾のときの縮小のときに中途半端なことを言われたものだから、どうするのか分からないようなことを言われたものだから乱高下するというようなことがありましたですよね。それで、FRBは反省して市場との対話ということを非常に力を入れたわけですよね。

 それはサプライズを狙うとかそういうことではなくて、そうしないと、何といいますか、中央銀行が本当に大事なことを発信したときに信用してもらえないと。サプライズばっかり狙っている、私は、そもそもこのアベノミクス、量的緩和は最初からサプライズ狙いだなと、これは危ないなと思うんですよね。サプライズは、もうみんな慣れてくると驚かなくなりますから、更にサプライズを求められるようになっちゃいますよね。これがこの間の経過だと私は見ているんですけれども、そういうことをやっていくと、結局、日銀が一番重要なことを発信したときに、あのオオカミ少年じゃありませんけれども、市場もどこも耳を傾けてくれないというか信用しない、違うことを考えているんじゃないかと、こうなることがあるんですよね。』

共産党国会議員にサプライズ狙いの弊害や市場との対話を問われる中央銀行総裁とな!!

『  そういう点で、この国会に、当たり前のことなんですけれども、言えない部分はあるかも分かりませんけれども、少なくとも、大丈夫ですと言っておいて違うことをやるみたいな、手のひら返すような情勢認識の報告というのは、私は間違いだと思うんですよね、国会対応として。その点、もう一度ちょっと一言、反省していただきたいなと私は思っているんですけれど、いかがですか。』


『○参考人(黒田東彦君) 委員の御趣旨はよく分かります。

 ただ、また繰り返しになって申し訳ないんですが、合議制の委員会で金融政策が決定されるという形、しかも年に十四回やっているという形、そして毎回、公表文書で経済金融の見方、そして金融政策についてかなり詳細なステートメントを出していますので、その間にそれと違うことを申し上げるというのはかえって混乱を市場に招くおそれがあるということも御理解いただきたいと思います。

 ただ、委員の御意見はよく分かりました。』

委員のご意見は分かりました的なのが3回も出てくるとは中々の圧巻。

『○大門実紀史君 本題に入ろうと思うんですけれども、なかなか入れないんですけれども。

 私思うんですけれども、そうじゃないんじゃないかと。結局、黒田さんは、やっぱりサプライズ、やっぱりあれだけ市場が反応したというのは驚きましたよね。誰も追加緩和をやると思っていないときにやったものだから、慌てる、慌てふためいて急激な反応でしたよね。おかげで株高になったかも分かりませんけれど、円安になったかも分かりませんけれど。

 やっぱりそういうサプライズ効果を狙って国会でも黙っている、記者会見はもちろん黙っていると。決定会合でちょっと反対が出たのでちょっと驚かれたかも分からないけれども、元々サプライズ狙いだから、そういう経過で黙っておられたということではないんですか。それ以外考えられないんですけれど。』

(:∀:)イイシテキダナー

『○参考人(黒田東彦君) サプライズを狙って何かやるということは、中央銀行としてはございません。あくまでも、その時々の経済金融情勢を十分点検して、適切な政策を合議制で決めるということに尽きると思います。』

>サプライズを狙って何かやるということは、中央銀行としてはございません
>サプライズを狙って何かやるということは、中央銀行としてはございません
>サプライズを狙って何かやるということは、中央銀行としてはございません

という話を国会でしてしまった後にまたサプライズ政策対応をするというのはさすがに色々とマズーではあるというお話ではあるのですよね〜。思いっきり国会会議録に残ってしまいましたし。

『○大門実紀史君 もう時間がないので本題は次回に譲りますけれども、やっぱりFRBのあのときのバーナンキ・ショックのことを日銀はよく考えられた方がいいと思うんですよね。後々、先ほど申し上げましたけれども、本当に、サプライズ狙いじゃないと言ってもみんなサプライズだったわけだから、効果としてはサプライズ効果になったわけですよね。これは人々をやっぱり惑わせますし、いざ日銀が大事なことを言ったときに信用されないということを自らつくっておられるという点は重々肝に銘じられたらどうかと思うんですね、今後のことも含めて。

 今日はもう時間ないので、このことを指摘して質問を終わります。  以上です。』

ということで一連の質疑応答を引用するという引用手抜き企画恐縮至極ですが、ここで「サプライズはしません」と思いっきり言ってしまっているのは中々こう微妙なところでして、昨日の国会であの調子で答弁しているとさすがに来週の追加緩和というのは難しいでしょうなあとは思いますがどうでしょうかね。いやもちろん屁理屈のつけようは幾らでもありますし、どうせ追加緩和に追い込まれるのであれば早めに行った方がまだマシという考えであれば4月でも5月でも追加緩和すれば(その場合は国債買入ペースを10兆円拡大でしょ)とは思いますけど、経済物価情勢の説明がそうなっていないですからね。

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2015/04/22

○森本審議委員の後任候補も産業界からで目出度い事です

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NMXDY76K50XZ01.html
日銀審議委員にトヨタ相談役の布野幸利氏、森本委員の後任
2015/04/21 11:40 JST

『(ブルームバーグ):政府は衆参両院の議院運営委員会理事会で、6月30日に任期が満了する日本銀行の森本宜久審議委員の後任にトヨタ自動車相談役の布野幸利氏を起用する人事案を提示した。衆参両院の議院運営委員会の配布資料で21日明らかになった。任期は5年間で、国会の同意を経て任命される。』(上記URLより)

これから5年間とかQQEで広げた風呂敷をどう無事に畳むのか(間違って2%行くにしろ順当に2%行かないにしろ)というどう見ても赤紙という中で審議委員就任をよくぞお受けになられたとゆー所でございますが、メーカーからの審議委員となりますと新法以降ですと三木審議委員(新日鉄副社長)以来という事になりますな(追記:なお中原伸之さんは東燃ですからメーカーですけど2代目オーナーなのでだいぶ違う)。

ちなみに三木審議委員で過去の講演を見たらこんなのがあって最初の所が新法施行から1年経っていない時期の講演で中々でした。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_1998/ko9812b.htm/
栃木県金融経済懇談会(12月3日)における三木審議委員挨拶要旨
---- 平成10年12月3日、於宇都宮グランドホテル
1998年12月8日 日本銀行

こちらでの説明でもございますが、審議委員って通常の業務執行に関して言えば日銀の取締役みたいなもんですので、まあ置物副総裁のような浮世離れした学者が何人も揃いますと結果としてそういう管理ができる人の所に加重負担ということになってしまいますので、変な置物学者がこれ以上増ますと、もうやめて!中曽副総裁のライフはゼロよ!!という事になってしまいかねませんので日銀的にもホッと一息という所ではないでしょうか。

でまあトヨタ自動車出身だから円安政策に賛成云々というようなコメントも散見されますが、そらまあ出身母体が輸出メーカーですから経済を見るときにまずはその視点になるというのはあるとは思いますが、企業でトップのレベルに立つ方ですので日銀審議委員という役職にご就任された場合にはより広い視点での政策判断を行う、というその職務に忠実な行動をするもんだと思いますので「トヨタ出身の方が審議委員就任なので円安ヒャッハー」という反応って(まあそういう反応したくなるのは分かるけど)布野さんに対して失礼じゃないのそれとは思うのでございますけどねえ。

まあいずれにせよ変な置物副総裁理論の人が来てクソの役にも立たないジンバブエ理論の亜種とかを振り回された日には日銀政策委員会が益々のお笑い劇場になってしまうと懸念しておりましたのでめでたしめでたしという事で。リフレ派をまたねじ込んでくるのかと思ってましたからねえ。


○来週は展望レポートな訳だが

ほほう(と言っても無料で読めるのは最初のほんのちょっとだけ)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO85980740S5A420C1EE8000/
日銀、15年度物価見通し下方修正 0%台後半で検討
2015/4/22 0:49 情報元 日本経済新聞 電子版

『日銀は30日公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2015年度の物価上昇見通しを従来の1%から、0%台後半に下方修正する検討に入った。原油価格の低迷が続いているほか、個人消費の持ち直しのペースが想定よりも鈍いことが大きい。ただ、やや長い目でみた物価の基調は堅調とみており、金融政策は現状維持を含め慎重に判断する。』(上記URL先より)

ということで展望レポートなのですが、今年度の物価見通しが0%台後半というのは年度前半3か月位はゼロとかマイナスとかって見通しになっているみたいですからまあ仕方ないという所ではあるのですが、何せ昨日ネタにした黒田総裁のオモシロ講演でも「強力なコミットメント」(キリッ)という話をしているだけに、2年2%は引っ込めているけど何せ強力なコミットメント(笑)ですからして「2015年度を中心とする期間」とやらに2%達成という絵は描き続けないといけないということですから、こうなってくると「前半は弱いけれども秋以降に急回復して平均がゼロ%台後半」とか言い出して、実はこういうヘッドラインではあるものの、うっかりすると大本営発表モードで2016年度の物価見通しを上方修正してくるかもしれませんなと思いまする。

まあそういう場合は目先追加緩和は無い(も蜂の頭も展望レポート出る前に追加緩和あるかどうかは判明するが)上に、そのイカサマピクチャーを使えば7月中間の時点では「これから急回復」(キリッ)という言い逃れが出来るという代物になりますので、絵に描いた餅が絵に描いた餅であることが判明する時期というのが次の展望レポートまで猶予があるという事にはなるものの、逆に「これから急回復」という絵をかいてしまうと目先はオッケーだけど先の時点では急回復しないと説明が厳しくなるので、そのあたりをどう調整してくるのかを楽しみにしたいと思います。

・・・・・・・って良く考えたらこの駄文自体が執行部の出してくる展望レポートの物価見通しが政策意図から逆算して出しているというのを前提にしていまして、当然展望レポートの見通しはピュアに経済物価見通しに基づいて出しているのですから失礼な妄想でしたね(棒読み)。

いやまあサプライズ狙いに来るなら今回の決定会合で追加緩和をするというのも可能性はありますし、そもそもベイズなんちゃらとかいう昨日ネタにした黒田総裁のオモシロ講演の理論を援用しますと、現実の物価がマイナス転するような場合はバックワードルッキングなインフレ予想形成における正のフィードバックループが途切れるという話になる訳ですから追加緩和をするという方がどう見てもロジカルに正しいということになりますし、大体からして「年度の後半から物価が急回復(キリッ)」という絵を(角度に関する程度の差はあれども)書かないといけないという状況でありますので、そういう意味ではもう残された時間はせいぜい半年かそこらとなっている訳で、それならヤケクソで追加緩和をここらで打っておかないと「2015年度を中心とする期間」のコミットメント的にもラストチャンスのようには思えますので、そういう文脈から追加緩和が出てもおかしくはないと思います。

ただまあここで追加打ってもそもそもタマが無いですし(国債買入拡大におまけでETFつける位でしょ)、大体からして国債買入の方がすでにオペレーション的にかなりキツイ所まで来ていて、普通に今のペースでやっていても来年はどう見ても持たないという状態なので、オペレーションの限界が来るという意味での意図せざる出口(というかオペ爆発)の時期を手前に持ってくるだけの話でもあります(なお基本的に「MB拡大が効果ある」という置物理論を展開している関係上、追加緩和を打つ際にはMB拡大ペースを10兆円のオーダーで拡大しないと追加緩和にならないというのは忘れないようにしましょう)から、今の政策枠組みで打てる追加緩和はあと1回だと思いますので、「基調」を連呼しているのはそのせいだという事で見ておけば良いんじゃないですかね。


なお、そんな見通し云々よりも、今回の展望レポートでぜひ出して頂きたいが絶対に出てくるとは期待しておりません事項といたしましては「ところでここまで2年間実施したQQE政策の定量的な政策効果に関するレビューと、その波及メカニズムの検証」でありまして、2年間延々と「MB拡大して予想インフレを引き上げて、フィッシャー効果で上昇する長期金利を買入で抑えるから実質金利が下がってその結果としてウハウハですよ」という導入当初の説明から全然進歩していない置物リフレ理論に関しましての具体的な検証コーナーというのを設置して頂きたいものであります。どうせそんなの出るわけないから1ミリも期待していないけどイヤミよ届け日銀新館へという所でございますな。

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2015/04/21

よし!日銀審議委員人事の事前報道はないようだな!!
http://www.nikkei.com/

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20150417-00000036-bloom_st-nb
日銀新審議委員、21日に人事案を国会提示−森本氏の後任で政府
Bloomberg 2015/4/17 14:03

ということで今日出るようですが、まあジンバブエ先生が就任早々にジンバブエ理論を披瀝して面白い話でもするのかと思ったら何もせずに、リフレ派だったらこの物価状況を見て追加緩和持ち出すのだが筋だろと思ったら早速執行部追随というフニャフニャ振りですし、そもそもリフレ派の追加緩和や物価目標達成時期やその水準、ついでに言えば財政に対するスタンスとかも四分五裂状態になっているのでまあ誰が来てもねえという感じではあります。どうせ日銀執行部に丸め込まれて置物化するだけだと思いますよ。

なお本来的に言えばちゃんと内部管理のできる(審議委員は役員でもあるので)企業経営出身者が就任された方が望ましいのですが、まー今から審議委員とかどう見ても赤紙ですからねえ。

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2015/04/15

○ニュース雑談など

・実質値上げがどうしたこうしたで意外に話題になっていたので一言ツッコミ

この話なんですけどね。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NMKX9X6K50YA01.html
実質値上げ犯人か、物価指数と実感の差−鍵は「一橋物価指数」
2015/04/13 09:51 JST

『一橋大学経済研究所の阿部修人教授は人々の実感と消費者物価指数のギャップについて「既存の商品の値上げではなく、新しい商品に入れ替えて、たとえばアイスクリームを120ミリリットルから110ミリリットルに減らしたり、ヨーグルトを85グラムから75グラムに減らすなど、そういう値上げをしていたというのがわれわれの見方だ」という。 』(上記URLより)

いやあの総務省のCPI統計だって対象商品の量目が下がったらその分を調整して対象品目の価格が上昇したという認識をする筈なんで、こういう書かれ方されると「一橋物価指数の中の人は総務省CPIは量目の変更部分を調整かけないトンデモ物価指数であると誤解している」って読めてしまうんですよね。

ま、これってインタビュー受けたブルームバーグがミスリードされて記事書いているだけだと思うのでして、

『同教授によると、平均的な小売店では半数近い商品が1年前に販売されていない新商品だが、「公式CPIでは、次々に現れる新商品の情報はほとんど含まれていない」という。 』(上記URLより)

って言ってるので、おそらく一橋物価指数の中の人は「総務省方式のCPIだと品目改定が遅くて新商品が多い日常品の価格改定動向をきちんとフォローできていない可能性がある」というような話をしたかったと勝手に思ったのですが、この記事のままですと何か先生の説明が?????に見えてしまうので記事訂正した方が一橋物価指数のレピュテーション的に宜しいのではないかとお節介ながら申し上げておきますので物価指数の中の人知らないけど誰か教えてあげてくださいなのです。



・浜田先生絶好調ですな

いやもう昨日は浜田先生デー(というか東京時間でほかにネタも無し)でしたな。

昨日の日経朝刊。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS13H4Q_T10C15A4EE8000/
金融政策、物価偏重に懸念 浜田内閣官房参与に聞く
2015/4/14 0:06 情報元 日本経済新聞 電子版

『安倍晋三首相の経済政策の助言役を務める浜田宏一内閣官房参与は13日、日本経済新聞の取材に応じ、日銀は物価目標に加え、雇用情勢にも目配りすべきだとの見方を表明した。』(上記URLより、以下同様)

『――物価上昇率を2年で2%にするとした日銀の目標をどうみますか。

 「インフレ目標はそんなに重要ではない。インフレを起こすのは国民に対する課税だからできるだけ避けたい。日銀も我々も2〜3年前に石油価格が半分以下になるとは思っていなかった(以下の部分は有料会員向け)』

>インフレを起こすのは国民に対する課税だからできるだけ避けたい

・・・・・(゚д゚)

でまあ日経新聞の昨日の朝刊記事を拝読しますと「2%というのはどちらかといえばインフレの上限とみるべき」というようなご発言もありまして、これは白い麿さんとしか申し上げようがないお話が登場しておりましてビックリにも程があります。

もしかして麿が浜田先生の着ぐるみを着用してインタビューに答えていて実は浜田先生はどこかに隠されてしまっているのではないかと心配する位の話ではありますが、まあそもそも論からしたら落とし所として妥当なのは「インフレ目標の早期達成に固執して無理して2%目指すよりも、掲げる目標は目標としておくとしても重要なのは経済の好循環が持続的安定的に維持できているかどうかである」というお話でありますので、そういう意味ではついこの前までインフレ目標3%が望ましいとか適切な緩和政策で数か月でデフレ脱却とか置物リフレ理論を提唱していた時期に変な生霊に取り憑かれていただけで、本来の正しいお姿に戻られたという事なのかも知れませんね!!!!(白目)

などという与太話はともかくとして。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NMRWS66K50YE01.html
浜田氏:円安は徐々に限界に近づいている
2015/04/14 11:13 JST

『(ブルームバーグ):内閣官房参与の浜田宏一・米エール大名誉教授は14日、ブルームバーグの電話取材に対し円安は徐々に限界に近付いており、日銀は無理に2%の物価目標を達成する必要はないことを示唆した。「120円からどんどん円安になるとみていないということか」との質問に対し、浜田氏は「この辺で円が売りたたかれているところの限界にだんだん近づいているんだというシグナルを流すことは悪いことではないと思っている。しょせん、為替、株は分からないから、誰も確固たるビューはない」と答えた。』(上記URLより)

ということで、昨日は場中にブルームバーグの電話インタビュー記事が登場してまたまた為替が120円割れとなってじりじり円高という風情ではございましたが、浜田先生も置物リフレ理論から撤収されるとはこらまあ日銀ドンドン梯子を外されて、気が付いたら下の建物が盛大に燃え盛る中で一人で屋根に上がったままで置物リフレタコ踊りを続けるという丸焦げ必至という事態になってきた感がありまして、どういう収拾をするのかが見ものとなってまいりました。


しかしまあ何ですな、リフレ理論で物価が上がれば投資は増えるわ消費は増えるわウハウハですよという話だった筈なのですが、肝心の物価は上がらない(なお個別価格であるところの原油価格のせいにするなという話を盛大にしていたのもリフレ理論の人たち)わ資産価格は上がったかも知らんが実質賃金伸びなくて消費はコケるわ投資は中々出てこないわという状態で、そもそもの置物リフレ理論説明の謎フローチャート(2013年京都金懇講演の22枚目)を見ると実にこう味わいが深いというものでして、この図表のどこがどう効いて、どこが効いていないのかをきちんと定量的にレビューしてほしいですが、すると大変なことになるのでどうせ企画屁理屈を駆使して誤魔化すのでしょうな。

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2015/04/10

○読売新聞からの梯子外しキターーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー!!!!!

昨日の読売新聞社説である。
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150408-OYT1T50159.html
日銀異次元緩和 「物価2%」の達成を焦るな
2015年04月09日 01時36分

・・・・・(゚д゚)

『日銀が昨年10月、意表をついて追加緩和策を打ち出した後、円安が急速に進み、輸入食品の値上がりによる家計の負担増など、金融緩和の負の側面が顕在化した。日銀が2%達成を焦り、機械的に追加緩和を繰り返すようだと、円安によるコスト高が「悪い物価上昇」を招き、景気を悪化させるリスクが、一段と高まろう。』(上記URLより、以下同様)

お、おう・・・・・・・・

『無論、デフレ脱却は日銀だけの責務ではない。政府は、潜在成長力の強化を目指し、新規ビジネスへの参入規制緩和など、構造改革を推進する必要がある。』

>無論、デフレ脱却は日銀だけの責務ではない
>無論、デフレ脱却は日銀だけの責務ではない
>無論、デフレ脱却は日銀だけの責務ではない

・・・・・・・・・おいおまいら金融政策だけでインフレ目標達成しろとか言いまくってたじゃねえかよ今までの主張はどこに逝ったんだよと小一時間問い詰めたい。

しかしまあ何ですな、この社説の中に『今春闘では昨年を上回る賃上げが相次いだ。当面は、こうした明るい動きが物価にどう波及していくか、見極めるべきだ。』ってのがありますが、足元で起きている現象って「所得が増えないのにインフレ期待だけ上がったってそれは単に消費を委縮させて需要を減らすだけの事でした」というのを壮大な政策の実施でようやっと理解できたって話でして、経済の実力をつけないで強引に物価だけ持ち上げたって、一時的には前年対比で良くなったように見えるけれどもそれが一巡したら実質購買力が下がった分だけ需要が数量ベースで落ちるのだから生産が下がって結局逆回転になりますでしょというようなお話であって、それって強引な物価引き上げだけじゃあイクナイと言っていた人たち(麿とか)が指摘していたまんまの姿が出ているだけのことでしょと。

まあ確かにデフレマインド自体はかなり弱くはなっていると思いますが、じゃあ物価がこれからも上がりそうですねとなっているから消費を前倒しでするのかというと、そんなこたあ無いというのが示されている訳で、それどころか実質賃金上がらないから節約志向が高まるんじゃねえかというような図もちらほらという感じな訳で、「実質金利を引き下げると投資や消費が高まる」という置物リフレ理論の根本部分に話が無理があったというか机上の空論だったという話で、それはきちんと認めて総括した上で落とし前というのをつけないと政策論としていかんでしょと思う次第。

・・・・・・・てな置物リフレ実質金利一本足打法理論への悪態はともかくとして、この前は日経さんの社説でもほぼ同じ話が出たところに来て、政府サイドに近いと思われる読売さんもこの日銀にタオル投げというか黒田日銀梯子外しキタコレでございまして、2%目標マンデートだし物価目標さえ達成すれば全てうまく行くのだから(というのが置物リフレ理論の根幹なのでここは動かしようがない)というロジックで突っ走るしか無い日銀を後ろから羽交い絞めにしていく政府の図というのが見えてきたように思える(ええ思えるだけでただの妄想ですよ妄想)辺りが実にこう味わいの深いところです。

まあ最後に何故か『日銀は既に約270兆円の国債を保有している。中央銀行による財政赤字の穴埋めという誤解を受けないよう、政府が財政健全化に道筋をつけることも不可欠だ。』というのがあるのもアレで、おまいら2年前には異次元緩和を盛大に賞賛してた筈でその時にそんな話してなかっただろというのも味わいがありますな。

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2015/04/08

○なおMPMですけど・・・・・・・・・・・・

まあここまで申し上げた通りでして、日銀が梯子外され攻撃に対してブチ切れてランボー怒りの追加緩和というのはアリエールかもしれませんけれども、足元で円高が進行したり株安が進行している訳でもない状況でランボー怒りの追加緩和というのは打つだけ無駄タマなので打たないでしょと思われます。

前回の追加緩和はロジックの飛躍というのはありましたが、まあちょうどあの時期円安も株高も頭打ちでこれからコケるのではないかという感じがプンプンと漂っていた訳で、そういう意味での追加緩和炸裂というのがあったと考えますと、ってかなり無茶苦茶な政策反応関数を持ち出しておりますけれども、何せ今の執行部普通じゃないので普通の考えを持ち出しても予想が出来ないという状況なのでそういう考えをするのですよね。

でまあそう考えますと、株にしても為替にしてもまあ特段問題が無いという状況で追加緩和をしないという事になって、恐らくそれで4月30日もスキップしてくる、となると海外勢は聞く話を総合するとやたらめったら追加緩和を期待、というよりは「そろそろやるだろ」位の勢いになっているようですので、4月の2回目MPMを通過した辺りであらら?となって為替や株に変調が始まって・・・・・・となると、その辺が順調におかしくなってくると泡を吹くのが7月中間レビューという事になるかもしれませんね!!!!!

いやね、10月の追加緩和ロジックとその後の「基調的に問題ない」ロジックが真逆なので(日銀的屁理屈を華麗に展開して話の筋は無理やり通しているのですが)手のひら返しクルクルーの可能性が否定できないのがもう何だかねという所ですが、さすがにここまで基調基調言ってて「今度発表辺りのCPIがマイナスになりそうだから追加緩和」とか言ったらコミュニケーションもへったくれも無いのでさすがに人間としての普通の恥の感覚があったら追加緩和しないだろとは思いますが、「2年で達成できなければ辞職」と言っているのにもう2年と4日ほど経過している中で辞職のじの字も出てこない置物副総裁のような感覚の執行部なだけに何が起きるかは知らんがなとしかさすがにこのアタクシも申し上げようが無いっすなあ。

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2015/04/06

○決定会合プレビュー雑談

ということで今週は決定会合でございますが。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NM69A36K50Y501.html
日銀は経済の先行きに自信、原油下落でも物価の基調変わらず
2015/04/02 19:06 JST

『(ブルームバーグ):日本銀行は足元の景気情勢の先行きに自信を持ち始めており、原油価格の下落にもかかわらず、物価の基調にも大きな変化はないとの見方を強めている。関係者への取材で明らかになった。』(上記URLより)

まあ相変わらずの謎の関係者記事ではありますが、ブルームバーグのほかでもちょっとこんな感じのが出ていて、暫く前に山本幸三先生が追加緩和しろ的な話をしていたのが出た後に立て続けにこの手の観測記事が出ている時点でお察しという所ではないかと思われますがどうでしょうかね。


でまあ短観やら生活意識アンケートもど〜見ても物価期待って上がってないどころか下がり気味だろと思いますし、そもそも生活意識アンケートの結果は「物価が上がって消費が抑制されているし、それは消費税のワンタイムでは済まない」というのを示唆していると思う訳で、そういう状況下で2%の物価上昇目標を短期間で目指すというアプローチが正しいのかという話にならんのかねと。


しかしまあ何ですな。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NM7W5L6NKMX501.html
2月の現金給与額、所定外労働時間(時系列表)
2015/04/03 15:17 JST

もう毎度毎度の実質賃金マイナスでございまして、そらまあ消費を控える人が増えるし、生活意識アンケートにおける被雇用者のマインドが悪化する罠と思うのでありまして、物価上昇を目指しての宣伝を日銀としてはしないといけないのですが、実質賃金がこう延々とマイナスとなっていると、実は日銀が余計なことをしているとか、物価上がって何か良い事ありましたっけ的な話になってくる訳で、かえって将来のデフレマインドを作るんじゃないかねと。


・・・・・・・・とまあそんな状況で迎える金融政策決定会合ですが、どこからどう見ても今回は「物価の基調は堅調」という話をして言い逃れの巻となるのですが、まあ注目されるネタとしては3つほどございまして、

その1:2年で2%の落とし前について(基本誤魔化すのだが)

まあ「2015年度を中心とする期間」であって「原油のせいだから仕方ない」という話をするのは明らかなのですが、盛大に大口をたたいていた置物大師匠についての所感を決定会合後の会見で質問されて、「それは岩田副総裁のことになりますのでお答えいたしかねますが一般的に申し上げて無問題」というような話になると思うのですが、せっかくの機会ですので、今回の決定会合後の総裁記者会見で「国会でもご説明されていたお話ですので、ぜひ共同記者会見の場を設けて頂きたい」という要望を出して頂きたいものだと思います。

そらまあ置物先生があの調子だったからジンバブエ先生は余計な事言わない攻撃で就任記者会見スルーしましたが、ジンバブエ理論に関するツッコミがろくすっぽできない腰抜けなのか無能なのか知らんけど役立たずぶりを発揮して下さったばかりですので特に期待はしませんがね!!!!!

まー今回の会合で落とし前について質疑はあると思いますが、ひたすら「基調」と「期待の改善」で逃げると思いますし、じゃあその基調は何なんだとか期待の改善とは何なんだと言われても都合の悪い数字は出さずに都合の良い方を一面的に出してきて終了という奴でしょうな


その2:原田審議委員はどう動く(多分置物化する)

リフレ派という扱いで入ってきているのですが、まあジンバブエ理論の方はともかくとして、初回から追加緩和の提案とかしてくれるかが楽しみで、もし追加緩和提案とか入ると原田さんの追加緩和VS木内さんの緩和縮小提案となって、1対7対1になるので中々面白い。

・・・・・・・・のですけれども、まあ先般ご紹介した就任記者会見において「学者ですから細かい事は分かりません」という逃げ口上を連発(しかも純然たる学者とは到底思えない人なのに)していたことからしますと、まー普通に何の提案もしないで執行部翼賛機関としてしか機能しないでしょうなあとは思いますし、大体からして就任記者会見で金融政策に関する何らかの考え方を示してくるかと思ったら、質問に逃げ口上気味に答えるだけで、独自の見解を滔々と述べるような場面は皆無という時点でまあオワットルなとは思います。


その3:木内審議委員のQQEアセスメント(まあ出ても影響はないけどな!)

「QQEは2年間の集中対応措置」という提案をしている木内審議委員ですが、まさに今回の決定会合で2年間の集中対応措置が終了しますので、今回は木内さんが筋を通した場合には「2年間の集中対応機関が終了したのでQQEの成果について検討をする」という作業が木内さんのみに発生して、その「検討をした結果、QQEの続きに実施すべき金融政策のフレームワークは以下のようになります」というのが出てくる筈。

でまあそれが出たからと言っても別に急にどうにかなる話ではないのですが、ここで木内さんが出すフレームワークが「QQE政策の落としどころをうまく提示できる」ようなものだったりすると話が素敵にややこしくなってくるので楽しみではあります。特にうまいのを出されますと執行部としても困るでしょうなあ(木内さんの提案に乗りに行くとQQEとは何だったのかという話になってくるのでメンツ的においそれと乗れないでしょ)と思うので。


まあその3つくらいが注目なのですが、どうせ会見ではコアCPIのゼロ%に関する質問が集中するんでしょうなあと思われますです、はい。

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2015/04/02

○その他ニュース雑談ネタ

・山本幸三先生とな

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0MS37M20150401
インタビュー:追加緩和必要、月末日銀会合が好機=自民・山本氏
2015年 04月 1日 17:06 JST

『物価がマイナスに転じる可能性も展望し、日銀による追加緩和が必要との認識を示した。追加緩和に
よって円安が加速する可能性を否定し、国際的に批判されることはないとの見通しも示した。 』(上記URLより)


ここで2か月半前の山本先生の発言を確認してみましょう。

http://jp.reuters.com/article/economicPolicies/idJPL4N0UY1JA20150119
当面、追加緩和は必要ない=自民・山本幸三氏
2015年 01月 19日 17:43 JST

『日銀が掲げる「2%の物価安定目標」達成は、2016年度に後ズレするが、消費税率引き上げによるマイナスの影響が強すぎた結果だとして十分説明可能と述べた。今後の金融政策運営では、昨年10月の追加緩和の効果が、今年夏以降に出てくるとし、「よほどそのほかの外的ショックがなければ様子をみてよい」とした。』(上記URLより)

なるほど前回実施した追加緩和の効果を確認する前に追加緩和を実施するんですね!!!!!!!!!!!



・問題はそこではない筈なのですが・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPKBN0MS3EW20150401
国債買い入れ、財務の健全性に留意=黒田日銀総裁
2015年 04月 1日 15:38 JST

『総裁は長期金利急騰の有事への対応を問われ、「国債買い入れは日銀の財務に影響を与えるが、必要な政策」と指摘。「長期金利が急上昇しても、日銀の決算上評価損失は計上されない」と説明した。』(上記URLより)

えーっと、国債なんだから償還時にはきちんと元本戻ってくるわけで、評価損なんぞは屁だと思うのですが、問題になるのは金融政策を正常化する際に保有する国債を売却して出るキャピタルロスあるいは、国債を売却しないで保有する為に必要な超過準備の非不胎化によって発生するコスト(要するに超過準備への付利)が保有国債の利回りを上回ることによって発生する期間損益のマイナスであって、質問する方もそのくらい勉強して質問しろやという事ですよ。

で、国債買入を拡大するというのはジンバブエ先生の大好きな統合政府でという面で言えば、国の債務の金利リスクを物凄い勢いで金利上昇に耐えられない状態にしていることに他ならない訳で、インフレ目標が達成できて金利を正常化した際に統合政府でみた場合の利払いコストが急激に上昇するリスクを日銀買入でドンドン拡大しており、その財政負担に耐えられないとなると、結局インフレ目標達成後も金融緩和を継続して望ましくない高インフレを維持しないといけなくなるリスクが生じますね、というのが日銀が足の長い国債をバカスカ購入する際の問題であって、評価損とかマジどうでも良い話(売らない限り)で、またわざと話の筋をそらしているようですが、これ真面目に考えているのかどうかはものすごく気になる所ではあります。ダラダラと緩和政策が長期化しそうなだけになおさら・・・・・・・・・

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