金融政策概観(2015年度上期後半(2015年07月〜09月))

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2015年度上期後半の見出し

2015/09/30「直近の日銀広報誌では為末大さんの「諦める力」という言葉が(笑)」
2015/09/28「安倍黒田階段で株式市場などで追加緩和期待とな」
2015/09/25「アベノミクス新三本の矢で金融政策はどうなるのでしょうかねえ」
2015/09/17「日本ソブリン格下げ/金融政策万能論と一線を画すECB理事発言/総裁会見は順調さを強調するがかなり無理矢理感強い」
2015/09/16「”全部新興国のせい”で現状維持の9月決定会合」
2015/09/15「市場は追加緩和モードだが物価の上昇で消費減退を警戒する論調が政府筋から増えていまして」
2015/09/14「家計負担を減らすために携帯電話料金引き下げを指示って物価目標達成でハッピーの話は?」
2015/09/11「山本幸三さんから追加緩和煽り発言」
2015/09/09「GDP2次速報と景気ウォッチャーもアカン/MPMプレビュー世間話」
2015/09/07「毎勤統計もアカン/米雇用統計は微妙な結果」
2015/09/01「中期輪番の1-3増額3-5減額/SLFを短国に拡大/生産も弱くて物価目標大丈夫ですかねえ」
2015/08/31「消費指標が弱く物価目標の強引な達成にまたまた疑問符が付く格好」
2015/08/25「安倍首相も2%目標達成遅れを容認発言」
2015/08/21「トヨタ自動車が下請けに部品価格値下げ要請という反リフレ(?)の動きキタコレ」
2015/08/18「GDPを受け日常品物価上昇について甘利さんが正論コメントをして日銀の梯子を外す(?)」
2015/08/17「GDPが多分マイナスになるが追加緩和ネタに走るのはどうかと思う」
2015/08/10「久々に日経新聞に日銀トレードに関する記事が出ていましたな」
2015/08/05「毎月勤労統計6月実質賃金がマイナス2.9%(ボーナス要因)とな!!!!」
2015/07/30「四半期末でもないのに7月末のGCレポが突如モノ無し(運用できない)状態に」
2015/07/23「西村前副総裁が2%を無理に目指さないようにとの発言」
2015/07/21「内閣支持率が更に低下とな」
2015/07/14「内閣支持率低下ですが追加緩和でもしますかね(しないけど)」

2015/09/30

・これは奥が深い(違)

http://www.boj.or.jp/announcements/koho_nichigin/backnumber/43.htm/
「にちぎん」No.43 2015年秋号/2015年9月25日発刊

にこんなのが。

http://www.boj.or.jp/announcements/koho_nichigin/backnumber/data/nichigin43-3.pdf
インタビュー/扉を開く [PDF 1,053KB] 自分を生かすための「諦める力」
元プロ陸上選手 為末大

小見出しなどに実にこう味わいがありますな(^^)。

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2015/09/28

○安倍黒田会見で(株式市場などで)追加緩和期待ということのようですが・・・・・・・・・・・・

金曜はこんなんありましたが。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/25/boj-kuroda-abe-idJPKCN0RP0C420150925
Business | 2015年 09月 25日 14:20 JST
首相と会談、金融政策で要請「ない」 物価基調はしっかり=日銀総裁

でまあこのニュース出て追加緩和ヒャッハーという話も出ているらしい(たぶん株の方がメインだと思うけど)のですがちょっと待てやという感じもする訳ですよ。

元々新三本の矢に金融政策の言及が無い訳で、2%物価目標について2年で達成という話がすっかり無かったことになっておりまして岩田副総裁は何で辞任しないんでしょうかというような事は兎も角としましても、「2%」自体は残るのでしょうが2年とか早期達成とかいうようなお話は無かったことになっている訳ですよね。

一応旧第一の矢は新第一の矢に含まれているらしいのですが。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/25/idJPL4N11V1G020150925
News | 2015年 09月 25日 12:14 JST
再送-UPDATE 1-新3本の矢の「強い経済」、大胆な金融政策など集約=麻生財務相

『そのうえで新たな3本の矢における財政・金融政策の位置づけについて、物価目標2%達成の必要性は第2ステージでも変わらないとの認識かとの質問に「新たな3本の矢の1本目(強い経済)に、(大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の)今までの3つが集約されている」と説明し、旧3本の矢は引き継がれていると強調した。』

『一方で「物価面だけから言えば、2%目標は大きな目標であって、われわれがPB(基礎的財政収支)目標きちんとしていくうえでも、ある程度インフレ率確保は重要。関心を持っていかなければならない」と語った。』(上記URL先より)

という話は麻生さんもしているのですが、良く良く見ると「大きな目標」とか「達成の必要性」という文言はあるけれども「2年で達成」の話はすっかり抜けている訳でして、まあ普通に考えてこれは「2年で2%」を強調しすぎるとそもそも2年での達成が無理(というか既に過ぎている)となると失敗という話になってしまい、それは見栄え上問題があるので、失敗という話が広がる前に戦線を転身して「2年」の話をスルーするというのはまあ作戦としてはありそうな話。


しかもですよ、さっきの安倍黒田会談後の黒田さんのコメントを見てあららと思ったのですけれども。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/25/boj-kuroda-abe-idJPKCN0RP0C420150925(再掲)
Business | 2015年 09月 25日 14:20 JST
首相と会談、金融政策で要請「ない」 物価基調はしっかり=日銀総裁

『総務省が25日発表した8月の全国消費者物価指数は、指標となるコアCPIが前年比0.1%下落となり、2013年4月以来2年4カ月ぶりのマイナスとなった。この点について総裁は、コアCPIからエネルギーを除いた指数は「1.1%くらいになっている」と説明。コアCPI下落の影響はエネルギー価格の下落によるものとの認識を示し、「物価の基調はしっかりしている」と強調した。』(上記URL先より)

ということで、「コアCPIからエネルギーを除く指数は1.1%」というヘッドラインがニュースに出ていて反応しているのかと思ったら逆に株式市場方面では追加緩和期待という辺りがわけわかんねーと思うのですが、この「除くエネルギー」を強調するっていうのは政府の「デフレ脱却宣言」という盛大な助け舟に乗って2年で達成を誤魔化す気満々というのをまたまた示した、としか思えず、そこで追加緩和期待とはどういう事やと思いますし、特に株式市場が大喜びするのは(気持ちは分かるが)今後の政策枠組みを考えた場合に正直訳分からんとしか申し上げようがない。



・・・・・・・・・つまりですな、どう見てもこの流れは「2年で達成」というのは無かったことにして、日銀と言うか旧第一の矢的に言えば「このようにデフレ脱却が出来ましたのでQQEの所期の効果が現れましたよ良かったですね」という第一の矢大勝利宣言をするという流れな訳ですよ。そうしないと第一の矢が大敗北となってしまってアベノミクスがそもそも大敗北という事になる(つーかまあ元々のベースにあるトリクルダウンも起きないし物価が上がったら景気が良くなる置物リフレ理論もダメなのですが、そういうのもスルーするためにも戦線の変更は必要な訳で)ってな感じでここらが潮時という状況ではないかと思うのではございますよ、うんうん。

でもってですね、そういう事になりますと、まあ大勝利宣言するには「基調の物価はこんなに強い」だけではなくて、何らかの特殊要因(ということに出来そうなもの)を除く物価数値が1%を超えていないとさすがにデフレ脱却宣言するのに無理があると考えますと、先ほどの黒田総裁の「1.1%」という数字も中々味わいがありますけれども、まあ何かの数値で1%台に乗っている数字を出さないと格好がつきませんよね。

その大勝利宣言はまー宜しいとしまして、大勝利宣言後の政策枠組みを考えますと、「2%」の看板自体を下ろす必要は無い(というか下ろすと円高に振れるのでそれは無い)のですが、達成時期に関しては超曖昧になって、デフレにまた戻らないようにしながら緩和政策を粘り強く続ける、という話にならざるを得ないのですよね。

・・・・・・・・・そうなりますと、今のMB拡大資産買入規模拡大政策というのは明らかに中長期的な継続可能性という意味で無理がある訳で、中長期的に継続する緩和政策として何をやる、という話であれば「時間軸政策を思いっきり長くする」というのと、「長期金利があまり上昇しないようにする、というかイールドカーブがあまり立たないようにする」というのをセットにするのが一番妥当だと思うのですよね。

でもってそういう枠組みの中で資産買入ってどうなるのかというと、長期金利が跳ねない程度に買入は継続するけれどもマネタリーベースは目標から外して今のような持続性大丈夫かというようなペースからはフローが落ちることになるでしょうし、中長期的に継続するということになったらETFのような満期の無いものの買入をジャンジャン続けるわけには行かないですから、持っているものを売るような話は無いにしても買入の継続そのものが無理という話になると思うのですよね、株式市場の皆様的には残念な話ではありますけど。まあ元々QQE政策自体が「2年を念頭に達成する」ことを前提にしている政策であって、超ハイペースなLSAPに関しても「短期勝負」を前提にした政策の作り方になっている訳ですから、それがそのまま中長期的に続くと思うのはロジを無視した発想な訳ですけどね。

あと金利政策に戻った場合にマイナス金利、という話も良く聞かれるのですが、「中長期的に継続する」という政策の枠組みを前提にした場合にはこのマイナス金利というのもちょっと無理がある話。と申しますのは、名目ゼロ金利制約の問題がある中で例えば超過準備をマイナス付利したとしますと、そのマイナス付利分を金融システムのどこかが負担しないといけないという話になる(または預金者に転嫁される)という話になりますので、これまた中長期的な持続性という意味では無理のある政策ではないかと思うのですがどうなのでしょうかね。

じゃあ追加緩和が無いのかと言えば先般も申しあげたかも知れませんが、「最後のダメ押し緩和」みたいなスキームで、2004年の俊ちゃんみたいに「景気判断を引き上げているのに追加緩和」というような意味不明緩和を実施するという手が無くは無いと思いますが、それはその後に君子豹変の大勝利宣言と共に2年で達成の話がどこかに逝って政策フレームワークの変更が伴うという話になると思うのですけどね・・・・・・・・・


とまあ日々微妙に言ってる話が変化しているような気もしますが、まあ考え方のたたき台というか何というかな感じで見立てを更新中という事で宜しくお願い致します。

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2015/09/25

○アベノミクス第2ステージで金融緩和や2年で2%はどこに逝くのでしょうか

http://jp.reuters.com/article/2015/09/24/abe-new-three-arrows-idJPKCN0RO14820150924
2015年 09月 24日 20:27 JST
安倍首相、新3本の矢で「1億総活躍社会」 GDP600兆円目標も表明

『[東京 24日 ロイター] - 安倍晋三首相は24日、自民党本部で記者会見し、新たな「3本の矢」の政策で全ての人が活躍できる「1億総活躍社会」を目指すと表明した。』(上記URL先より、以下同様)

元々の「第三の矢」はどちらに????

『経済最優先の姿勢を鮮明にし、具体的な目標として名目国内総生産(GDP)を600兆円に増やすと明言。雇用や所得環境の改善をさらに進め、確実にデフレ脱却を実現する意向を示した。』

600兆円の達成時期が分からんのですが、そもそも日本のトレンドグロースが0%台うっかりしたら前半という状況の中で持続可能な成長を続けて今からGDPが2割上がるまでどの程度のお時間が必要なのかと考えるとだいぶ絶望的になるのですが。

『新3本の矢は、1)希望を生み出す強い経済、2)夢を紡ぐ子育て支援、3)安心につながる社会保障──で、「介護離職ゼロ」のほか、出産を望む女性のみを対象に算出する希望出生率を1.8まで引き上げる目標などを打ち出した。』

希望出生率というのが何だか微妙ですなあ。

『急速な高齢化を背景に社会保障費用は増加を続けているが、「生涯現役社会」の構築を目指し、高齢者の活躍推進を強化する考えも示した。』

「安心につながる社会保障」なのに「生涯現役社会」ってそれ年金払う気ありませんというスローガンにしか聞こえないので却って将来不安を煽ると思うのですけどねえ。それに「1億総活躍社会」で「生涯現役社会」という中で子育てはどうするんでしょうか、とか具体策が何もなさそうなので????感が強いですな。


http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NV67H56TTDS801.html
安倍首相:GDP600兆円達成を−「1億総活躍社会」目指す (1)
2015/09/24 21:01 JST

『(ブルームバーグ):安倍晋三首相は24日、国内総生産(GDP)を600兆円に拡大することを目標に掲げ、今後も経済最優先で政権運営に当たる決意を表明した。達成する期限は明言していない。強い経済、子育て支援、社会保障を「希望と夢と安心のための新3本の矢」と位置付けて取り組む考えも示した。』(上記URL先より、以下同様)

『安倍首相は自民党本部での記者会見で「本日、この日からアベノミクスは第2ステージへと移る。目指すは1億総活躍社会だ」と宣言。その上で、「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も人口1億人を維持する。その国家としての意思を明確にしたい」と語った。』


とまあそういう事で今回のアベノミクス第2ステージでございますが、先程のロイターの記事の中にもあったのですけれども『足元の経済情勢については「もはやデフレではない状態まで来た。デフレ脱却は目の前だ」と強調。』(ひとつ前のロイターの記事から)というお話までしておりまして、金融緩和政策に関しては「デフレ脱却で大勝利」という事で済ませようという風に見えてしまう辺りが実にこう味わいが深いものがございます。

まあ敗北とか撤退とかいう言葉を「転身」とか「進化」とか置き換えてしまうのがジャパンの伝統芸能でありますので別に驚く話でもないのですが、第一の矢におかれます所の金融緩和に関しては「2年で2%の物価目標」というのがどこからどう見ても達成不可能だし、2年どころか目先暫くダメでしょという状態になっているわけでして、ここをゴリゴリと突っ込まれるとややこしい事になるので華麗に「QQEの進化」への助け舟が登場したという事でしょうな、うんうん。

まー2年で2%に関しては2%が早期に達成できないでしょというのもありますが、それ以前の問題としてトレンドグロースが0%台前半とかの状態で全然上がってこない経済において、コストプッシュ中心に2%に物価を無理繰り押し上げたとしても持続性がありませんし、消費に悪影響というのが明らかになりまして、「2%物価目標で世の中バラ色」な宣伝をしておられました置物リフレ理論そのものが現実と乖離していたという事を政治サイドでもご認識されてきているのかねとか思うと胸が熱い訳で、アベノミクス第2ステージが進行するなかでデフレ脱却宣言と共にQQEの「進化」が起きるというのもあながち変な話ではなくなって来ましたなあという風に思いますがどうなるでしょうかね。

でもってその時には除くエネルギーとか色々と「基調としての物価はこのように堅調に推移していて問題ありません」と言えるようなネタを次々と繰り出してきて目晦ましイリュージョンと共に「QQEの第1ステージは所期の効果を発揮したのでこれからはQQE第2ステージ」とか何とか言いながら緩和政策をもっと長期的に継続できるような手法と共に、マネタリーベースターゲットからの脱却(をしないと今のペースでのMB拡大は持たない)をして来るというお話になるんでしょうかねえとか妄想は広がるのでありました。


・・・・・・・・まあその「進化」ネタは日銀から言い出すわけには行かないのであくまでも政府サイドの方が何を言い出すのかという所に掛かっている辺りが読み筋に組み込みにくい所ではありますが、少なくとも今回の第2ステージでは金融政策の話が全然出ていないという事でもありますので、まあ政権的に金融政策に関する部分は従来のようにメインで押し出すようなものではなくなった、と受止められ易くなると思いますので、その中で追加緩和を打ってくるのかねという点についてもちょっと????的になって来たのではないかとは思うのですが、まあ黒田日銀は何をしでかすか良く分からんので日銀が梯子外され掛かっているのにトサカに来てランボー怒りの追加緩和とか言い出しても不思議ではないのがオソロシスな所ではあります。

#高度な狸技として今から追加緩和を打っておいて来年の1月だと早いかも知れんが3月とか4月辺りに「基調としての物価はこのように推移しているのでQQE大勝利宣言」をして第2ステージに移行するというのもありそうですが、そこまで先読みしても先でひっくり返ると死ねるので難しいでしょうな


まあこういう記事もありますし今後どうなるかは良く分からん。また元の3本の矢に戻るかも知れんし。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO92065770V20C15A9MM8000/
「新3本の矢」問われる具体策
2015/9/25 2:00
日本経済新聞 電子版

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2015/09/17

○日本ソブリン格下げとな&置物理論的金融政策万能論に寄りかかり過ぎなんでしょうなあと

・S&P格下げですかそうですか

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NURMSS6S972N01.html
日本を「A+」に格下げ、アウトルック「安定的」に変更−S&P
2015/09/17 00:00 JST

『(ブルームバーグ):米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は16日、日本の格付けを1段階引き下げると発表した。S&Pは、日本経済がソブリンの信用力を支える効果が過去3、4年低下し続けていると指摘。当初は奏効する兆しがみられたアベノミクスでは「経済が今後2、3年で信用力を好転させるまで改善する可能性は低い」と判断している。』(上記URL先より、以下同様)

『S&Pは発表文で、「日本の財政状況は極めてぜい弱」と指摘、消費増税効果や税収増を勘案しても一般政府純債務残高の対GDP比は18年度には135%に上昇するとの見方を示した。また、異次元緩和を続ける日銀が出口政策に踏み切れば金利が上昇し、財政をさらに圧迫するとも指摘した。』

本チャンの説明文を見ないで言うのもアレなのであまり申しませんけど、「出口政策で金利が上昇すると財政が圧迫される」というのは何か随分と雑な説明じゃろと思う訳で、経済が信用力を好転させる位に良くなっている中での出口政策での金利上昇のどこに問題があるのかと小一時間なのですけれども、まあ報道ベースの方にいちゃもんつけても不毛な可能性はあったりしますけどそれはともかく。


・金融政策万能論に寄りかかっているのが問題のような気がするという雑談

まあそもそも論として金融緩和に頼り過ぎなんじゃネーノというお話ですし、最近の非伝統的政策の進展というか短期名目ゼロ金利制約に引っかかる状況の長期化というのってベースにトレンドグロースの低下があって、そういう中で金融政策だけで何とかするという話に無理があるんじゃないですかねえという事なんじゃないのとは思う次第。でもってその間に本邦では2%のインフレ目標を掲げてそれを達成すれば全てめでたしめでたし、という非常に簡単なソリューションを提供した置物副総裁リフレ理論によって金融政策(というか資産価格と為替価格ルート)に依存しすぎた結果として時間を空費しているのがアレというような事なのではないかと。

2%物価目標がグローバルスタンダード(キリッ)という説明は黒田日銀のお得意技なのですが、その一方でトレンドグロースが低下するなかで金融政策だけでの対応では不十分的な認識って海外でも普通に出てきていて、かつてのインフレ目標政策によってマクロ金融政策は万能です的な考え方からの転換が進んでいると思うのですが、そちらはスルーというのが置物リフレ理論っぽくて誠に遺憾に存じますという所だったりしますわなと思うのですが、相変わらず金融政策万能論で押してきている感があるのですよねえ黒田日銀って。


ところで、ネタにしようかと思っているうちにすっかり積みネタになってしまっているECBプラート理事の暫く前の講演があるのですが(大汗)、こちらの冒頭でこんな話がありましてですな。

http://www.ecb.europa.eu/press/key/date/2015/html/sp150910_2.en.html
The low interest rate environment in the euro area

Keynote speech by Peter Praet, Member of the Executive Board of the ECB,
at a Pension Funds Conference organised by De Nederlandsche Bank in Bussum, The Netherlands,
10 September 2015

冒頭のちょっと後くらいの所からですが、お題のように話し相手が年金ファンドのコンファレンスでして低金利直撃弾を食らっているところ向けの話なので、冒頭に低金利が長期化する環境についてのお話をマクラとして置いているのですな。


『My answer can be summarised as follows. Very low interest rates are not so much a choice of the central bank as a reflection of economic malaise in the global and euro area economy.』

別にワシらが下げたいから下げている訳ではないぞな経済物価状況に即した金利政策したらこうなりますねんと。

『Some of the drivers of that malaise are secular, which are more challenging for public policy to affect. But others are related to demand conditions that appear weak even when compared with a long-term potential growth rate that is already disappointingly low.』

『Such persistent economic slack relative to potential can be reversed through targeted measures. That includes tackling the cyclical headwinds that are dragging on aggregate demand; facilitating the process of balance sheet repair; and removing the structural barriers to higher real growth prospects, which can itself reinvigorate demand through expectation and confidence channels.』

ということで、トレンドグロースの低下をもたらしている経済の(循環要因に対する意味での)構造的な問題に関してはそれに対応した政策が必要ですがなという話をしておりましてですね。

『The role of monetary policy is mainly to provide countercyclical stabilisation while the economy goes through this transition.』

金融政策の役割はこれらの構造対応の政策を実施する間において経済の循環的な後退に対して経済を安定化させる事がメインである、というお話をしている訳でして、どこぞの置物リフレ理論のようにインフレ目標2%達成すると色々なものが上手く回るぜヒャッハーという金融政策万能論とはだいぶ違う次第で。

『When the economy is weak, after all, disinflationary pressures increase, which we have to counter to deliver on our mandate. The monetary policy measures currently in place in the euro area follow from this: they were decided as a direct result of a euro area inflation rate well below comfortable levels and persistent weakness in the economy. And in meeting our objective, we support growth and inflation, which in turn creates the conditions for interest rates to “normalise” once more. Of course, the level that rates will return to in the future is dependent upon the degree to which the secular drivers, currently depressing rates, can be reversed.』

でもって経済が弱い時にディスインフレ圧力が強まるので金融政策はそれに対応しないといけませんなあ的なお話は当然おこなっているのですが、トレンドグロースが高まる政策によって金利が「正常化」できるような環境が整う、という説明をしている訳でして、一方でどこぞではすっかり消えた第三の矢でないかという状況なのが泣けるというお話ではありまして、非伝統的政策を投下せざるを得ない構造的な問題がある中で金融政策単体の有効性が以前のインフレ目標政策でグレートモデレーションな時代に認識されていた状況とは異なっているんじゃネーノという流れになっているのに日本は1周回遅れの置物理論で勝負している辺りがイカンのではないかという雑談でございました。まあ異論はだいぶあると思いますけど。

○総裁会見は順調さを強調するが説明の中身はかなり無理矢理感が漂う

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1509c.pdf

なお今回の質疑ですが、追加緩和示唆のような発言は(ベンダー報道の通り)特に無く、メカニズムは回っていますよ大丈夫ですよというトーンになっているのはご案内の通りです。でも説明がだいぶ無理矢理な感じがするのでその辺を簡単に鑑賞しませうなのです。

・予想物価上昇率が上昇しているとはどういう事やという質問

ちなみに金融経済月報でも例によって1行コメントでして、図表を見るとどこからどう見ても上昇しているように見えないというお洒落な予想物価上昇率なのですが月報鑑賞が時間の都合上間に合わなくなった(自分の段取りが悪いからですすいませんすいません)ので興味のある方は昨日出た金融経済月報の図表30をご覧になると吉かと。

『(問) 冒頭のご発言で、予想物価上昇率は長い目でみれば全体として上昇していると言われましたが、新興国の景気減速や資源価格の下落もあって、日本だけでなく欧米も含めてブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は低下傾向にあると思います。BEIだけで予想物価上昇率を測れるものではないのは承知していますが、現状程度のBEIの低下は許容できる範囲なのか、これ以上低下した場合にはインフレ期待全体に与える影響が出てくるのか、ご見解をお聞かせ下さい。』

BEIの質問に絞っているのが惜しい。どうせ質問するなら「全体として上昇しているとのことですが、ではどこで観測される予想物価上昇率が上昇しているのかを具体的に呈示して頂きたい」とすべき。

『(答) 物価の基調を判断する上では、需給ギャップやその他色々なデータとともに、予想物価上昇率の動きが非常に重要な要素であることはその通りです。』

予想物価上昇率が本当に上昇しているのかという質問なのに物価の基調の話をおっぱじめている時点で既にインチキの香りが漂って参ります。

『予想物価上昇率を把握するための指標としては、ご指摘のBEIのほか、各種のアンケート調査やその他色々なものがあります。そうした諸指標をみますと、足もとBEIのように弱含んでいるものもありますが、総じてみると概ね横ばいです。』

全体として上昇していないじゃないですか!!!!

『BEI自体は──資源価格の下落傾向を反映したものかは市場関係者に聞かないと分かりませんが──欧米とともに若干下振れているものの、予想物価上昇率を把握するための色々な指標全体としてみると、概ね横ばいの状況ではないかと思っています。』

BEI低下のインプリケーションを「市場関係者に聞かないと分かりませんが」って強含みの時にはあれだけ鬼の首を取ったようにBEI上昇をアピールしていた(置物副総裁の方がその傾向が強かったけど)のに何じゃその言いぐさはとしか申し上げようがない。

『また、そうしたもとで、企業の価格設定行動も非常に重要です。企業は将来の物価動向などを考えながら価格設定をしているわけですが、』

今後の物価動向を考えて価格設定???????????

『ご承知のように、消費者物価指数を構成する色々な品目のうち、上昇している品目から下落している品目を引いた数ははっきりと拡大しており、幅広い品目で価格が上がってきています。日次や週次の日用品、食料などの価格指数を見ても、特に 4 月以降、前年比プラス幅が拡大しています。』

特に日常品に関しては円安によるコストプッシュがラグを持って効いてきているという要因があるようにしか思えんのですがねえ。ディマンドプルだったら消費がこんなに弱くないだろと小一時間。

『こうした企業の価格設定行動も、予想物価上昇率を知る上での 1 つの手がかりになるのではないかと思います。さらに、昨年、今年とベアを含む賃上げが続いています。』

ということで予想物価上昇率も「基調」攻撃になっておりましてもう鉛筆なめなめですよ。

『企業の賃上げは、労働市場が非常にタイトになっていることや、企業収益が過去最高水準にあることも反映していると思いますが、企業としては、今後の物価がどのように動くかということも勘案しながら賃上げを認めているわけです。』

今後の物価動向を勘案して賃上げするとは斬新な説明。

『そうした点からみても、全体としての予想物価上昇率の動きは、長い目で見れば上昇していると言っていいのではないかと思っています。』

何ちゅうかもう無理矢理な説明ですな。「予想物価上昇率は足元横ばいで推移」とは言えないというのだけは良く分かりましたが(−−;


・一般物価と個別物価とか物価上昇が消費にマイナスになるのではという話とかに関連して

『(問) 今の物価の話と関連しますが、先日、安倍総理が、携帯電話料金の値下げを進めるべきだというお考えを示されました。政府の方では、物価の上昇が消費全体を弱めているのではないか、あるいは、物価の上昇に賃金が必ずしもついてきていないのではないか、という認識もあるようですが、これが、今お話があった総裁の考えと齟齬をきたしていることはないのか、物価と消費、賃金の関係をどうみているのか、改めてお考えをお聞かせ下さい。』

昨日ネタにした部分の質問ですが改めて。

『(答) 全く齟齬をきたしているということはないと思います。』

『携帯電話の料金が、消費者物価指数の中で占める割合が上昇していることは事実です。一方、電話料金は、かつての電電公社の 1 社独占の時代から変わってきて競争が導入されていることは事実ですが、極めて少ない会社の寡占状態にあります。そのもとで決まってくる携帯電話料金について、おそらく色々な形で競争を刺激して、消費者にとってより使い易い料金体系になることは、消費者の選択の余地を広げ、電話料金が下がることによって実質所得を引き上げ、その他の様々な消費支出を増やしてくれるという面もあります。』

昨日ネタにしましたが、これは一般物価と個別物価の話を混同してはいけません(キリッ)という話なのですけれども、では原油価格の下落で物価目標達成時期を先送りしているという状態とこの説明との整合性はどうなっているのかと小一時間というのは昨日申し上げた通り。

『私どもが狙っている 2%の「物価安定の目標」の早期達成という場合には──当然、需要・供給様々な要因の中で物価が決まってくるわけですが──、主として、金融政策を通じた需要の刺激、需給ギャップの縮小、さらには明確な物価安定目標へのコミットメントを通じて、予想物価上昇率を底上げしていくことにより、経済の好循環のもとで物価が上がっていくことを目標としています。個々の物やサービスの価格について、より生産性の向上を図るとか競争条件を整備する等によって引き下げ、消費者の選択の余地を拡大し、実質所得を増やすことは、長い目でみて、物価を好循環のもとで 2%に向けて引き上げていく面でもプラスになると思っています。』

というこの説明もこの説明単体でみれば話の筋は通っているのですが、ここまでの日銀の説明やらロジックやらとの整合性という点で考えた場合に、今申し上げたように原油価格の下落で目標達成時期を先送りしている件との整合性はどうなっているのかというのがありますし、更に言えば最近すっかりだんまり状態になっていますが、「インフレ期待の形成には実際の物価動向によるアダプティブな要因があって日本の場合はその傾向がまだ強い」(ので物価がとにかく上がるのは期待インフレの引き上げに良い話)という説明との整合性はどうなっているのかというお話で、個別物価の低下によって即座にその分の需要がシフトして他の個別物価が即時に上昇する訳ではないのですから、その間に個別物価の積み上げによる物価指数というのは現実問題として低下圧力が掛かる訳で、それがアダプティブな物価上昇期待の形成に悪影響を与えるという話をしない、というのならまだ大人の事情として理解するのですが、2%目標達成に「プラスになると思っています」とまで言うのは図々しいにも程がありますな。


ちょっと先の方ではこんな質疑も。

『(問) 日用品や食料品など色々な物の値段が上がっていますが、そのほとんどが円安による輸入インフレで、賃金上昇によるインフレにはなかなかなっていないのではないかと思います。今、為替は 1 ドル 120 円近傍で昨年 12 月とほぼ同水準になり、前年比が剥落してくると、物の値段は、輸入インフレが多い中で上がりにくくなるのではないかと思います。そうした場合、総裁の言う物価の基調は、高まってくるというよりは弱まってくるのではないかと考えますが、如何でしょうか。』

うむ。

『(答) 物価の基調を考える場合に、重要なポイントはいくつかあると思いますが、1 つ目は需給ギャップです。これはご承知のように、雇用状況がどんどんタイトになってきていますし、色々な指標でみてもこのところ基本的には需給ギャップが縮まってきて、計算の仕方によっては、もはやマイナスでなくてプラスになっていることもあり得るということですので、需給ギャップの面から言えば、物価の基調の判断についてはポジティブだと思います。』

質問で「物価の基調」と言ったのが惜しい訳で、もっと単純に「コストプッシュで物価が上がることは将来の物価低下要因ではないでしょうか」という聞き方の方がよかったと思う。

『それから 2つ目が予想物価上昇率です。これは先程申し上げたように、足許、若干弱含んでいるBEIのような指標もありますが、そうではなくしっかりした動きを示す指標もありますし、全体として長い目でみれば、予想物価上昇率は上昇してきていることに変わりはないと思います。』

何と図々しい。

『3 つ目は、そのようなことを反映して賃金がどうなるかですが――賃金の動きを表す統計には、ご承知のように毎月勤労統計調査や家計調査など色々な統計がありますが――、1 人当たり賃金と雇用とを掛け合わせた雇用者所得はこのところ 2〜3%ぐらいで伸びてきています。これは、雇用の伸びによる分もありますが、所定内賃金が上がっており、1 人当たり賃金自体も基本的な趨勢として上がってきていると思います。』

ものは言いよう。

『そして 4 つ目には、先程申し上げたことを反映して、企業の価格設定行動がどうなっているかということです。これも、特にこの 4 月以降、明確に企業の価格設定行動がはっきりと価格の引き上げの方にきています。』

だからそれがコストプッシュだと質問しているのですけどねえ。

『物価の基調は今言ったような要因を全体として反映していますので、為替レートが物価に一定の影響を与えることは事実ですが、為替レートが円安になったら必ず物価が上がるかどうかは、また別の問題です。要するに、輸入品のコストだけ上がり、他のものに対する消費が減ってしまえば、他の価格が下がるわけです。また一定の期間をとれば、どんどん円安になるとか、どんどん円高になるということはあまりないわけでして、やはり、先程申し上げたような需給ギャップ、予想インフレ率、賃金、企業の価格設定行動等々が、物価の基調をみる上で重要だと思います。』

『今、為替レートが 120 円程度ですけれども、仮にこれで変わらないとしたらもう物価が上がらなくなってしまうということにはならないと思っています。』

という辺りを見ますと「為替を強引に円安に持って行く」というスキームはもう使えないのではないかと思うのですがどうでしょうかね。


・7−9GDPについて

『(問)(前半割愛)もう 1 点は、4〜6 月期に続いて、仮に、7〜9 月期もGDPがマイナスになりますと景気後退ということになってしまうのですが、総裁はこのリスクについてどうご覧になっているのか、また、そうした状況になると日銀のシナリオに何らかの影響がでないのか、見解をお聞かせ下さい。』

『(答)(前半割愛)4〜6 月の成長率は──年率マイナス 1.2%だったと思いますが──下落しているわけですが、ご承知のように、1〜3 月が年率 4.5%のプラスだったということとの関連でみる必要もあると思います。また、4〜6 月のマイナスの中には、輸出がかなりマイナスになったということもありますし、消費が 4 月とか 6 月の天候不順等の影響もあって、若干マイナスになったということもありますので、基本的には一時的な要因が多いと思います。』

へえへえそうですか。

『7〜9 月は、9 月のデータはまだ出ていないわけですし、8 月のデータも全て出ているわけではありませんので、7〜9 月のGDPを予測することは難しいわけですが、先程申し上げたようなことからプラスに戻ってもおかしくないと思います。7〜9 月はマイナスを予測するエコノミストもいるようですが、私はおそらくプラスになるのではないかと思っています。』

これはまた大きく出ましたなという所で、ここに関しては7−9マイナス待ったなしという事になりますと、追加緩和大合唱が始まるのは間違いないですし、日銀も追い込まれやすくなる(一時的ですと言い逃れをする可能性もありますが)と思います。


・二つほど無駄な質問があるのですが・・・・・・・・・・・・・・・

ネタが何もない会見だったらこういうヒマネタみたいな質問をするというのもアリかもしれませんけれども(そういえば福井総裁に阪神タイガースの快進撃について質問した記者が今や国会議員様という辺りにいやまあ何でもありません)、経済物価情勢が微妙な状況にある中で金融政策に関するインプリケーションが皆無の質問だわ中身がヨイショっぽいわという質問をするアホウを晒しておく。


『(問) 総裁は 10 年程前に「元切り上げ」という本をお書きになられていますが、中国のこの 1 か月間の金融の舵取り、切り下げと介入による維持について、ご所見をお伺いできればと思います。特に、外貨準備を潤沢に使って維持されていまして、これの国際金融市場へのインプリケーション等、どういう覚悟が必要なのかお願いします。』

お前は何を言ってるんだ。

『(問) 通貨についてお伺いします。IMFは、人民元をSDRの構成通貨に入れるかどうかの結論を年内に出すと言っています。元建ての貿易決済は世界的にみると円建て決済に迫っていて、とりわけアジアでの比率は高いようです。交換性の観点からまだ課題はあるようですが、人民元のSDR構成通貨入りについて、ご所見をお伺いしたいというのが 1 点です。もう 1 点ですが、総裁は財務官でいらっしゃった時に、アジアを舞台にした円の国際化を推進されていました。12 年前に書かれた著書で――また本を出してきて申し訳ないですが、――「通貨外交―財務官の 1300 日」という本を読ませて頂いたのですが、究極の為替政策は円の国際化だと主張されていらっしゃいました。大変重視されていたようなのですが、円の国際化は最近めっきり聞かれなくなっています。元の国際化がアジアで進む中で、円の国際化の現状評価と今後の展望について、ご所見をお聞かせ下さい。』

円の国際化の話は日銀の政策課題としてもあるからまだ分からんでもないが、人民元のSDRどうのとか全然関係ないだろいい加減にしろ。

このネタってそもそも論として日銀総裁がどうのこうのいう話ではないネタな訳でございまして、足元の経済物価情勢を踏まえればこのような重要な時期の会見のリソースを消費する価値のあるネタとは到底思えない質問をする意味について小一時間問い詰めたい次第ではあります

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2015/09/16

○今回の声明文は「全部新興国のせいだ」ですかそうですか

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150915a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150807a.pdf(前回)

まあ現状維持自体は兎も角として景気認識に関する部分が注目される訳ですが・・・・・・・・・


・良く良く見ると現状判断に一部上方修正個所があるとか

例によって現状判断部分であるが、まず見れば分かるのは「量が増えている」ということでして、現状判断の文章量が8行→10行と2行も増えておりますが、当然のごとくこの文字数の増加というのは「判断に対する言い訳文言が増えている」っつーお話でございますので、それだけ日銀としては経済物価の見通しシナリオに対する現状の判断について「マズー」という認識があるというのはそういう事でしょうな。自信満々だったら文章がシンプルになりますもん。


『わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。』(前回)

ヘッジクローズの方に目が行ってしまいがちですが、総括判断は「緩やかな回復」のままであるというこの大本営発表モード恐るべし。


『海外経済は、新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。』(前回)

ということで、これ新興国の影響という部分が目立つのですが、全体としての評価は「回復」が「緩やかな成長」となっていて、「成長」という文言自体は強め表現(の筈)なのですが、そこに「緩やかな」というのが入っているという上方修正しているのか下方修正しているのか訳のわからん全体評価になっているのがヤヤコシヤです。まあ海外経済の全体水準については上方修正しているけれどもモメンタムが下方修正という事だと思いますが、そもそも輸出と生産を新興国のせいで下方修正しているのですから、全体的には強いというトーンではないのですけれども、回復→成長という辺りに往生際の悪さを感じます。

ちなみに当該部分の英文はこちらです。英文見ても微妙としか申し上げようがない。

『Overseas economies -- mainly advanced economies -- have continued to grow at a moderate pace, despite the slowdown in emerging economies. 』(今回)
『Overseas economies -- mainly advanced economies -- have been recovering, albeit with a lackluster performance still seen in part.』(前回)


需要項目別の展開について。

『輸出や鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響などから、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は、振れを伴いつつも、持ち直している。』(前回)

輸出と生産の判断を下げているのですが、さっき出てきた新興国経済の減速というのをわざわざまた持ち出していまして、「全部新興国のせいだ」というアピールに余念がない辺りにも曳かれ者の小唄的なサムシングを感じるという味わいの深い出来栄えになっております。

『一方、国内需要の面では、設備投資は、企業収益が明確な改善を続けるなかで、緩やかな増加基調にある。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。』(前回)

しらっと企業収益の現状判断を上方修正しているのがお洒落です。まあ企業収益が上がっても投資や労働分配に反映されていないという経済財政諮問会議のお墨付きが出ていますけどね!!!!!!!


『また、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。この間、公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(今回)

『雇用・所得環境の着実な改善を背景に、個人消費は底堅く推移しているほか、住宅投資も持ち直している。この間、公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向に転じている。』(前回)

今回は接続詞がさっきのと含めて入っているのも味わいがありまして、先ほどの「一方」に関しては輸出と生産の判断を横ばいにした次の増加という話なので「一方」というのが入るのは普通なのですけれども、威勢の良い話を続けようという中でここでわざわざ「また」と付け加えるような文言を入れているのも味わいがありますな。

でもってそれ以外の文言というのは変化が無いということでして、直近の展望レポートで示されている日銀の物価上昇達成へのメカニズムというのは輸出ドライブというよりは「雇用環境の改善によって賃金が上昇して、所得から消費の流れをメインのドライバーとして経済の好循環と需給ギャップのプラス化が進展していく」というお話でありますからして、「国内に関する景気判断が強気のまま」というのはつまりは「日銀の基本シナリオには特段の問題は発生していません(キリッ)」という事を言いたい、っつーのが今回の声明文の特色であります。

なんちゅう往生際の悪さとは思いますが、そらまあここのメカニズムがやっぱり駄目ですなという話になったら追加緩和するのか、それとももっとそもそも論に立ち戻ってQQEのメカニズム自体がどうなのよというようなお話になって行く訳でして、そう簡単には折れないだろうなあというのは分かるのですが、それにしても賃金とか消費とかマインドとか色々なものがアチャーという感じになってきているのにこの強気判断継続ってもう「やりたい金融政策があってそこから逆算で景気判断をするの巻」というのが強化されている感じで誠に遺憾の極みではありまする。


でもって金融環境と物価環境に関して。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『また、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

ところでどこの予想物価上昇率が上昇しておられるのか小一時間問い詰めたいのですが、何せ金融経済月報の方を見ましても同じように「全体として上昇しているとみられる」だけしか表現が無くて、どこのどの数値が具体的に改善しているかという解説は入っておらず、単にグラフが巻末に掲示されているだけという代物ですので小一時間問い詰めても「このグラフをご覧ください」で終了するのが残念な所です。


・先行き見通しやリスク認識は変化なしとな

どうせそうだろうとは思いましたがその通り。

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(前回)

ちなみにこの「当面」というのは目先数か月程度の期間という前提の筈なのですが、いつまで経っても「当面」となっているということは物価2%への到達見込時期がドンドン後ずれしていることを意味する筈なのですが当然ながらその話も華麗にスルー状態なのは今に始まった事ではありません。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

また変化なしか・・・・・・・・・・・・・・


・QQEは所期の効果を発揮だのの話や木内さんの提案も同じです

比較するのも面倒だから今回のを貼るだけにしておきます。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。(今回)

『(注2)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、2つの「柱」に基づく柔軟な政策運営のもとで、資産買入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続するとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、原田委員、布野委員)。』

まあ順当。


○ということでレビュー雑談

・現状維持は想定通りとしても声明文の内容があまり下がっていないのは・・・・・・・

つーことで先ほども申しあげたように、今回の声明文って輸出と生産の所の判断を下げているものの、総括判断は下げていないですし、国内要因に関しては企業収益の所を上げるという荒業に出ているという中々往生際の悪い判断になっているのがナンジャソラという所ではあります。

まあこうなってきますと政策判断の方が先にあって景気判断の文言が後付になっているのではないかと小一時間問い詰めたくなる所ではあるのですが(当たり前ですが日銀はそんなことは無いと断言しますので念のため申し添えます)、所得とか物価目標達成に対して考えたら力不足にも程があるだろとか、消費の方も全然伸び足りないだろとか、その手の部分何も変えていないというのは、将来の時点でいきなりこの辺を変えてくるという騙し討ちの可能性は勿論ありますが、少なくとも今回の時点では追加緩和の思惑を思いっきり否定する方向にいますので、とりあえず今の時点で追加緩和というのを選択肢に入れるという事すら無い、というのが今回は示されたと思います。


実際の景気情勢という意味では、今の時期って「所得から消費、投資への前向き循環メカニズム」がポッキリと折れてしまうかどうかきわどい所に来ているようには(アタクシ的には)思うので、まあ物価目標の達成時期云々以前の問題として経済情勢から追加的な金融緩和措置を行うという話だってもうちょっと情勢見た所であってもおかしくは無いとは思いますが、問題は追加緩和をしたからと言ってそのメカニズムがワークするのかというお話ではないかと思うのですよね。

つまり、追加緩和でどういう政策波及ルートに効かせて効果がでるのか、という話になりますと、昨日ネタにした経済財政諮問会議の討議資料ではありませんけど、アクチュアルの物価を円安ドライブのコストプッシュで引き上げてバックワードの物価上昇期待を引き上げるというのは、物価上昇期待が上がったとしても将来の実質所得への期待が下がってしまうので消費にマイナス、という答えが出てしまっている以上、どういうルートで効かせるのかという話になると思うのですよね。

実質長期金利のルートという話になると思いますが、名目の金利の方は散々下がっている訳でして、期待インフレも無理に上げようとするのは効果があるのか無いのか良く分からん(まあいざとなったら強弁するんですけど)という話でして、そうなるとまた「実際の物価が低迷しているので期待インフレの低下を防ぐため」という話になるのでしょうが、肝心の実際の物価に関して最近では東大や一橋大謹製の物価指数を持ち出して「ほれ物価の基調は強いですがな」という話をしているのに急に話を変えるとかもう政策反応関数がグチャグチャにも程があるという事になるのですが大丈夫ですかねえと。


ただまあ何ですな。

http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/idJPT9N10A03C20150915
2015年 09月 15日 18:03 JST
日銀の景気判断に「大きな変化ない」、2%目標実現に期待=菅官房長官

『[東京 15日 ロイター] - 菅義偉官房長官は15日午後の記者会見で、日銀が量的・質的金融緩和(QQE)の継続を決定したことを受け、「引き続き経済・物価の情勢を踏まえながら、2%の物価安定目標を実現することを期待したい」と語った。』(上記URLより)

まあいきなりこういう所で助け舟出すわけには行かないのはその通りなのですが「2%の物価安定目標を実現することを期待」と言いましても物価だけホイホイ上昇するというのは中長期的に見たら安定的な物価上昇に資する訳ではない、というのに近い話を前日の経済財政諮問会議でやってませんですかねえという所で、政府の方もそういう点で言えば過去との整合性と、現実問題としての選択肢という所で悩んでいるのかなあという所で、元々は物価上昇して2%目標達成すれば何もかも上手く回転しますという置物リフレ理論が現実と乖離していただけの話ではあるのですが、まあどういう形で着地させるのかという事を真剣に検討しているのであれば、政策の枠組み自体の変更が伴う話になるので今の時点で追加緩和を実施するのは近い将来の日銀の手足を縛る話になるのでよーやらんのでは、というのも先日も申しあげたとおりなので、まずはここでは下手に追加緩和の思惑を煽らない方が利口ではあるのでしょうなあとは思います。

従って死んだふりしていきなり追加緩和するのか、突如政府と共に大勝利宣言して緩和政策は継続するけれども短期決戦前提のQQEから離脱するのかというようなデジタルな変化の方がありそうだなとは思うのですが、このままダラダラ現状維持でそのままオペの限界に突入というのがアチャーではありますな。


・中期ゾーンとかの金利の動きは何だったのかと小一時間

http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/idJPL4N11L2CA20150915
2015年 09月 15日 15:22 JST
〔マーケットアイ〕金利:国債先物が続落で引け、長期金利は一時0.380%に上昇

『<12:40> 国債先物は下落幅を拡大、追加緩和なく失望売り

国債先物中心限月12月限は後場に入って下落幅を拡大している。足元の12月限は前営業日比13銭安の147円90銭近辺で推移。市場では「一部に期待があった追加緩和がなかったことで、失望売りが出ている」(国内金融機関)という。』(上記URL先より)

昨日の債券市場ですが、MPMの結果が出た後場に先物がギャップダウンして始まったと思ったらその後中期と長期(と先物)がヘロヘロになって、5年カレントとか一時8.5bp水準まで上昇(引けは8.0bp)となっておりまして、それは先週金曜の引けが5.5bpだった(ちなみに月曜の引けは6.5bp)のですが何ですかそれはという展開。ちなみに先物安値は147.78(25銭安)ね。

しかも相場の動きをみておりまして何とも残念だなあと思ったのは(会見期待があったというのは有ると思いますが)株と為替に関してはMPM何もなしの初期反応ではガックリの動きをしていたもののその後やや戻すという中で、債券市場は後場粛々と中長期の叩き料理状態になっていたなあという辺りでして、しかも前週木曜の5年入札がヒャッハー入札になってから金曜に更に盛り上がってまいりました状態になった後の反応なだけに何だかなあという感じではありました。

まあ何と申しますか、今回は追加緩和で付利下げネタが煽られて、ちょうどそこに5年入札という格好のネタが入って相場が自己実現的に付利下げを織り込むようなヒャッハー相場になって、勝手にそれが剥落するという展開ではあったのですが、いつもは株式市場や為替市場の追加緩和期待をクレクレだの何だのと言って悪態をついております所の債券市場無力参加者であります所のアタクシなどから致しますと、昨日の後場の「債券だけひたすら失望売りが続く」というのを見ておりますと穴があったら入りたいという言葉がこれほどピッタリ来る展開もありませんなあという相場展開ではございましたので、忘れないようにメモをしておく次第ではございまする。

まあどうせ展望レポート前にまた追加緩和ヒャッハーとかやるんでしょとか思うのですが、今回ってFOMC前のこの時期にやる訳ねえだろというのがコンセンサスだった筈なのにこの展開ってもう何が何やらワカランチ会長ではありましたな、あー情けない。


・会見に関して詳しくは要旨出てからですが

http://jp.reuters.com/article/2015/09/15/boj-kuroda-presser-cpi-idJPKCN0RF0W020150915?sp=true
2015年 09月 15日 18:42 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
原油次第で目標達成後ずれ、2%目指し政府とそごない=日銀総裁

『携帯電話の通話料金引き下げについては「携帯料金のCPIに占める割合が上昇しているのは事実」としつつ、政府との間で2%の物価目標の早期達成をめぐり「全くそごを来しているということはない」と強調。「携帯料金が下がり可処分所得が上がれば支出が増える」と指摘した。』(上記URL先より)
会見自体は追加緩和示唆などのような市場の喜ぶことはしない(そらまあうっかり示唆しようものなら追加緩和しないと行けなくなって先行きの選択肢が無くなるし、騙し討ち緩和をした方がお得感があるという判断なんでしょ、それって金融政策のクレディビリティとして如何な物かと思うし、市場との対話じゃなくて市場を驚かせる政策とかアホかと思うけど)のは当然ですが、ここの部分はワロタとしか。

まあこれは「個別物価の話と一般物価の話を混同してはいけません(キリッ)」という話で、そういや昔置物師匠が説明していた(最近すっかりその話をしていませんけど)お話でもあるのですが、個別物価が下がったとしても一般物価として見た場合には話は別ですというのはそらまあそういう理屈もアリエールなのですが、だったら原油価格の影響で物価2%達成時期が後ズレするという今日銀が行っているエクスキューズとの整合性がどうなっているのでしょうかねえとしか申し上げようが無いのですが何なんですかこのああいえばこういう状態は・・・・・・・・・・・・

ということで、まあ今回の会見は強弁成分を鑑賞するのが主なポイントとなりそうではありますな。

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2015/09/15

○市場ネタは追加緩和モードになっているが実は追加緩和のハードルは相当上がっているのではという件

まあ市場ちゃんの方は金曜の引けが5年カレント5.5bpという付利下げ織り込みレートになっておりまして自己実現的に盛り上がると、ゆーかジャパンの金融政策ネタで久々に乗るしかないこのビックウェーブに状態になっているのか何とかストの皆様が揃いに揃ってビックウェーブに乗る辺りが実にこうアレなサムシングを感じる訳でございますが、昨日の債券市場では(単に輪番スキップのせいかも知れんが)5年1甘とかになっておられましたけどそれは兎も角。

http://jp.reuters.com/article/2015/09/14/idJPL4N11K29B20150914
2015年 09月 14日 15:35 JST
携帯電話3社の株価大幅安、安倍首相の料金値下げ検討指示を嫌気

という例の話なのですが、経済財政諮問会議の要旨を読みますとこれがまた中々味わいがありますなあという風に思うのでして・・・・・・・・・・・・

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/agenda.html
第15回会議資料:会議結果 平成27年
第15回経済財政諮問会議
開催日時:平成27年9月11日(金曜日)17時15分〜18時15分
開催場所:官邸4階大会議室

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/interview.html
甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨

『<家庭の情報通信費の引下げについて> 』という所から。

『(問)家庭の情報通信費に関して官房長官が引下げを指示したという御説明がありましたが、もう少し具体的にどのような内容の趣旨だったのか教えていただきたい。また、総理も問題意識を持っていらっしゃるようですが、総務大臣から何かございましたか。』

『(答)厳密に言えば総理指示です。総理から引下げについて検討せよという指示が出ました。総務大臣は事前にこの指示が出るということを承知して前向きな姿を事前に示されたということであります。』

ほほう。

『(問)これは携帯の通話料や通信料を引き下げるように指示したということでいいのかというのと、その方策としてどのようなことを通じてそういったことを実現するのかというのを今念頭に置いてらっしゃるのか。あと、今後の議論としては、高市大臣が総務省に持ち帰って検討するということなのか、引き続きまた諮問会議でもやるということなのか。その3点をお願いします。』

『(答)携帯通信料が家計支出に占める割合が拡大をしていると、それだけいろいろなアプリの開発等々あるのだと思いますが、それに対してある種、三社体制で固定化してしまっていて競争政策が働いていないのではないかという指摘もあります。それを含めて総理は料金引下げについて対応せよということを総務大臣に指示をされたわけであります。総務大臣はこれを受けてきちんとした回答を持ってくると思います。 』

思いっきり引き下げ指示とか価格統制するの好きですねえ安倍ちゃんというのはさておきまして、資料の方を見ますと更に味わいが出てくるのですな。話の都合上ネタに出す順序が微妙に逆な気もしますがまずは『資料3−1 経済の好循環の拡大・深化に向けたアジェンダ(有識者議員提出資料)』というのを見ます。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/shiryo_03-1.pdf
経済の好循環の拡大・深化に向けたアジェンダ

『中国経済に弱い動きと不透明感などがみられる中、我が国としては、アベノミクスに強力に取り組むことにより、内需、とりわけ民間需要主導の持続的成長への動きを加速し、デフレ脱却・経済再生を力強く進めることが一層重要となっている。政府が一丸となって、課題突破のための構造改革の優先課題に取り組むべきである。』

てなことで最初の項が『1.内需主導経済に向けた優先課題』でして・・・・・・・・・

『経済の好循環を拡大・深化するとともに、それが生産性や潜在成長率の向上に結び付くよう、最優先で取り組むべき以下の事項を「民間需要構造強化プログラム(仮称)」として掲げ、官・民・政が一丸となって課題突破に取り組むべきである。』

ということで4点の項目があって、その最初が『雇用・所得環境の改善や子育て支援・少子化対策の強化を通じて、家計を元気にし、消費を活性化する』と「家計への配慮」が思いっきり出ている訳ですよこれが。

『現状における優先課題は、民需主導の持続可能な好循環を確かなものにすることで海外経済リスクにも強靭な経済構造を構築するとともに、国民の視点からアベノミクスの先に広がる将来展望を明確にすることである。こうした観点から、デフレ脱却・経済再生に向け、思い切った構造改革を推進するとともに、海外経済リスクが顕在化する場合など、アベノミクスの円滑な実施に必要となる場合には、機動的に対応する。』

と来て『(1)家計を元気にし、消費活動を活発化する』の3番目の項目が例の、

『B 家計支出に占める割合が高まっている情報通信の競争環境の整備』となっていまして、これが値下げ指示キタコレとなっているという話ですから、そんなに軽い指示でもないようで。


でまあ有識者資料だけではなくて、内閣府のクレジットが入っている方の資料であります所の『資料1 経済の好循環の拡大・深化に向けて(内閣府)』というのを見ると更に味わいが。

http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2015/0911/shiryo_01.pdf
経済の好循環の拡大・深化に向けて

スライドの1枚目の『2015年度4−6月期GDP2次速報の概要』ではこんな記述が。

『○4−6月期の実質GDPは、中国や米国向けの輸出の減少、個人消費や設備投資が前期比マイナスとなったことから、前期比年率マイナス1.2%、名目GDPは499.9兆円(前期比年率0.2%)。企業等のデフレマインドは完全に払拭されておらず(企業収益の増加が設備投資や賃金に十分には行き渡っていない)、消費者マインドも持ち直しに足踏み。』

>企業収益の増加が設備投資や賃金に十分には行き渡っていない

うむ。

>消費者マインドも持ち直しに足踏み

うむ。


スライドの2枚目は『個人消費・設備投資の動向』ですが消費の方ではこんな記述が。

『○個人消費は総じてみれば底堅い動き。 ただし、身近な食料品等の物価上昇が相次ぐ中、低所得者層等の消費活動に影響を与えている可能性。』

アイヤー!!

でまあそこのスライドに『消費者物価(コアコア)の分類別寄与度と変動要因』てのもありますが、まあその辺は上記URL先の資料を読んでちょというお話ですな。


・・・・・・・・・・とまあそういう訳で何を言いたいのかと申しますとですな、先般のネタってポッと出の話という訳ではなくて、「所得環境の改善ペースに見合わない物価の上昇は経済の好循環を阻害する」という良く良く考えたら当たり前の話について政府というか官邸サイドというか、まあそちらの方での共通の問題意識になっている、という話ではないかと思われるのですよね。

となりますと、債券何とかスト界隈では乗るしかないこのビックウェーブに状態で追加緩和ネタがすっかりと盛り上がる中ではあるのですが、上記の問題意識からすると「2年を念頭に出来るだけ早期に2%の物価上昇を達成」という話って経済好循環に対してどうなのかっつー話の方が優勢になっていませんですかねえとゆー事なのですから、(既に2年で達成の方はすっかり無かったことになっている割には置物副総裁は辞任しませんけど)2%の目標そのものがもっとフレキシブルになってくる可能性が高まっているというお話じゃネーノという風に思えたりもするのですがどうなんでしょうかねえと。

つまりですね、今月でも来月でも追加緩和ってえのは、2016年度前半に物価2%到達という日銀の見通しがどう見ても厳しいので追加緩和、という文脈からしたらそらまあ話として分からんでもないのですが、一方で政府サイドの方が成長期待や所得の増加ペースに見合わないペースでの物価上昇が起きると内需主導の経済好循環が回らなくなる、という認識をもっているのであれば、早期の物価上昇を狙う追加緩和政策とは相入れないという事になりますので、追加緩和実施でとにかく物価をホイホイ上げようというのはハードルがしらっと上がっているという事ではなかろうかと。


そうなりますと、昨日もネタにしたと思いますが、麿ドクトリン成分がこっそり入っている(今でも生きている)政府と日銀の共同文書が脚光を浴びる訳でして(^^)、2%の目標自体は当然ながら継続するものの、それは経済の実力というかポテンシャルグロースを引き上げる中で達成していくものであって、その間日銀は緩和的な政策を行って経済の下支えを行う、というような話にしつつ、QQEについては「デフレ状態ではなくなっており、デフレマインドの払拭ができたので大成功」といつの間にやら話を誤魔化して大勝利宣言をして(どう見ても置物リフレ理論とは違いますが)華麗に転身という名の(内務省検閲)という事にすればヨロシがなというのがやはり方向性としては現実的だし、更に政府サイドの認識が経済財政諮問会議の上記資料のようになっているというのがメインストリームなのであれば、実際問題としても方向性はそっちなんじゃないですかねえとか思ってみたりするんですけどどうでしょうかねえ、とまあそんな事で。

でまあQQEによるスーパーAPP政策って短期決戦を前提にしているスキームですから、粘り強く金融緩和を継続するという話には不適にも程があって、そらもう当然ながらスーパーAPP政策は見直すでしょうし、それで金利が上昇したとしてもそらまあ長期金利が2%越えて3%だのになったらアレですけれども、時間軸が強力に効くような政策やって長期金利が(瞬間は跳ねたとしても)そこまで上昇せんのでしたら大問題にはならん(なお債券市場的には長期金利がいきなり50bpも上がったら大問題ですが実体経済という意味で)でしょとか思うのですけどねえ、と追加緩和ネタで妙に盛り上がってしまっているのですが思いっきり逆の話をするアタクシなのでありましたとさ。

しかしまあ何ですな、そうなって来ますと「インフレとインフレ期待が上昇すれば全て解決」的な置物リフレ理論の壮大な実験とは何だったのかというか2年半の期間は何だったのかというような話ではあるのですが、まあ置物一派の皆様におかれましては仮にそういう方向になるのであれば手柄顔するのではなくてとっとと不明を認めたうえで(以下の文言は削除されました)。

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2015/09/14

○2%物価安定目標実施のリフレ政策で全てめでたしめでたしという話は何だったのかというネタ

これはwwww

http://jp.reuters.com/article/2015/09/11/idJPL4N11H3TR20150911
2015年 09月 11日 20:20 JST
UPDATE 2-携帯料金引き下げを首相が指示、家計負担増を懸念=諮問会議

ヘッドラインで吹いてしまったのだが。

『[東京 11日 ロイター] - 安倍晋三首相は11日開かれた経済財政諮問会議で、携帯電話料金の家計負担軽減が大きな課題だとして、高市早苗総務相に対して料金引き下げの検討を指示した。甘利明経済再生相が、会議終了後の会見で明らかにした。』(上記URL先より)

・・・・・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、物価が安定的に2%程度に上昇して世の中の期待もそういう風になった社会では消費も投資も進んでその結果経済は活性化して色々な問題は楽に解決できるようになる、というのが置物リフレ理論だったりこの前サルベージしておいたデフレ脱却国民会議様の結論だった筈なのですが、「家計負担軽減をするために携帯電話料金を下げろ」となりますとそれ思いっきりデフレ政策になるのですが・・・・・・・・・・・・・・

つーかですね、そんな話している側から消費増税は行うし次の増税も実施しますし、大体からして社会保険料この秋からまた上がるとか、そっちの方の家計負担が絶賛拡大するなかで携帯料金をどうのこうのというのが何ともまあという所ではございますな。

携帯料金が下がるとCPIに思いっきり効いてきますから、それは確かに家計の負担に対しては結構なお話で、そういう意味では話は分かるのですが、とにかくインフレ目標で物価2%への引き上げをしようという政策を日銀が推進するなかで物価に盛大に下押し圧力のかかる政策が経済のために妥当、ということであれば、そもそも物価目標とな何ぞやという話になってくると思うのですよね。


でまあ今回の携帯電話料金云々が単なるその場のお話になるのかも知れませんけれども、官邸方面の置物リフレ一派の方はさておきまして、実際の問題意識として「経済に対する実力以上に物価をコストプッシュで引き上げても、それは一時的にしかすぎず、却って経済にマイナスになる」という認識が広がった結果として今回安倍ちゃんの発言が出ている、という事であればそれはそれでインプリケーションはある話とも取れるのがお洒落ではあります。

つまりですね、QQEでは「2年で2%を達成する為になんでも投入」という政策ではあるのですが、そもそも論としてその前に政府と日銀との共同文書というのが麿の最後の時にありまして・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130122c.pdf
デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について(共同声明)


『2.日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。その際、物価は短期的には様々な要因から影響を受けることを踏まえ、持続可能な物価の安定の実現を目指している。』

持続可能な物価の安定ですからね。

『日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で2%とする。』

もともとは2%の目標というのは「今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。」ということで、グローバルスタンダードだから2年で(全然達成していないが)2%(全然達成していないが)という話ではないのですな。

『日本銀行は、上記の物価安定の目標の下、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す。その際、日本銀行は、金融政策の効果波及には相応の時間を要することを踏まえ、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。』

でまあできるだけ早期にという文言はあるものの、経済の状況によって持続可能な物価上昇率が上がってくるという話になっているので、実際は次の政府の取り組みに対して日銀は本来文句垂れるべきなんですよね。まあいう訳ないですけど。

『3.政府は、我が国経済の再生のため、機動的なマクロ経済政策運営に努めるとともに、日本経済再生本部の下、革新的研究開発への集中投入、イノベーション基盤の強化、大胆な規制・制度改革、税制の活用など思い切った政策を総動員し、経済構造の変革を図るなど、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた取組を具体化し、これを強力に推進する。』

『また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。』

ということで財政構造改革という話なのですが、ご案内のようにそっちの方はどうなっているのやらという所だったりするのはご案内の通りで、しかも携帯電話の料金下げようとかデフレ政策が来る始末ではあるのですが、まあ個人消費の事を考えたらそらまあコストが下がる分には結構なお話ではありまして、そういう文脈から置物リフレ理論が机上の論議であって、重要なのは2%を急いで達成させるために円安誘導をしてバックワードルッキングの物価上昇期待を狙うのではない、というお話になってきていると、にわかに昔のこの文書が復活(復活もクソも今でも生きている文書ではありますが)して脚光を浴びるのかも知れませんですよね、という想像(妄想成分も相当入っていますが)も起きるわけですよ。

でまあそんなことまで妄想成分を入れて考えると、益々今の延長線上での追加緩和という話ではなくて、中長期的に持続可能な金融緩和政策の実施というような方向にどこかで転換する方がリーズナブルでしょという話になると思うのですが、そこまで視野に入る場合にはここで今の延長の追加緩和ってよーやらんとも思えますがね。

なおどうでも良いですが。
http://jp.reuters.com/article/2015/05/27/boj-iwata-idJPKBN0OC0I520150527
2015年 05月 27日 16:24 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
電気代値下げによる予想インフレ率への影響注視=岩田日銀副総裁

携帯電話が首相の指示で下がっても同じことを言うのでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

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2015/09/11

○追加緩和ネタねえ・・・・・・・・・・・・

ご案内のようにこんなのが出てました訳で。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NUG3SR6TTDSV01.html
自民・山本幸三氏:追加緩和、日銀の10月30日会合が「いい機会」 (2)
2015/09/10 18:37 JST

『(ブルームバーグ):自民党の山本幸三衆院議員は、日本銀行の金融政策に関し、経済・物価情勢の展望(展望リポート)を策定する10月30日の金融政策決定会合に合わせて追加の金融緩和に踏み切るべきだとの認識を示した。具体策として、現在は「年間80兆円」のペースで行っている長期国債などの資産買い入れを最低10兆円規模で拡大することが必要と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

はあそうですか。

『山本氏は10日、ブルームバーグのインタビューで語った。2016年度前半ごろの2%の物価目標達成は「至上命題」と述べ、日銀は「必要な措置を考えるべきだ」と語った。』

MB拡大を実施したら物価が2016年度前半に2%達成確実になるのでしたらそれで良いのかも知れませんが、元々マッカラムルールだか何だか知らんけど最初のQQEの規模で2年程度で楽勝で達成するMB拡大規模とかいう話だったのがそれを超える買入ペースになるわ、MBの額も最初の想定以上に拡大(そらペースは上げるわ2年を超過するだわだから当然)するわという展開になって物価動向がこの状況なのに、更にMBを拡大する場合の政策効果の波及パスについてご教授賜りたいものであります。

『展望リポートに関しては「どういう見通しをするかによる」としながらも、経済や物価に関する見通しは「どうせ見直しをしたら落ちるだろう。その時に何もしないというのはおかしい」と指摘。10月30日の会合は追加緩和の「いい機会だ」と語った。』

いやあ無責任な所から無責任に発言して都合が良くなると手柄顔して登場して都合が悪くなるといちゃもんつけてとか中々結構なご身分でございますなあとは存じますが、まあこういうタイミングでございますので市場が反応してヘッドライン流した方もニッコリという展開ですなあ(棒読み)。

・・・・・・・というのは兎も角として、追加緩和→結局見通し下方修正→またまた追加緩和、となりますと、それはどう見ても逐次投入の追い込まれ緩和な上に、そもそもMB目標という建付け自体に問題があるのではないかと普通は反省する方向になるもんじゃないですかねえと考えますと、本来的に言えば(物価2%達成の見通し時期がまたまた先送りになるのであれば)政策の建付けを再構築すべき時期で、それってまあQQEのマネタリーベース直線一気理論というか、物価は貨幣的現象一本槍というのが敗北でしたねという話になりますけれども、そこは日本語で便利な「転身」とかいうお言葉がある訳でして(−−;、オペレーションの限界を迎える前にQQEの転身というかリニューアルというかQQEレボリューションというか何だか知らんですけれども、そっちに向かう方がまだ妥当だとは思うのですけどねえ。


しかしまあ何ですな、今の政策の延長での追加緩和をするならMB拡大ペースの引き上げと長期国債買入規模の拡大に買入平均年限の長期化(あるいは長い方のレンジを延長)という辺りになるのでしょうが、タイミング的にサプライズの無い形でやってしまうと無駄玉になりそうなので、こうやって事前の煽りが入ってしまうと益々やりにくいようには思えるのですがねえとは思います。

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2015/09/09

・GDP2次速報とな

http://jp.reuters.com/article/2015/09/08/idJPL4N11E08420150908
2015年 09月 8日 11:15 JST
UPDATE 1-GDP4─6月期改定値は年率‐1.2%、民間在庫増で上方修正

『[東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日に発表した2015年4─6月期実質国内総生産(GDP)2次速報値は、前期比マイナス0.3%(1次速報値マイナス0.4%)、年率マイナス1.2%(同マイナス1.6%)と小幅に上方修正された。民間在庫の寄与度はプラス0.3ポイント(同プラス0.1ポイント)で、全体を押し上げた。ロイターの事前予測調査(前期比マイナス0.4%、年率マイナス1.8%)を上回る結果となった。』(上記URL先より、以下同様)

ということですが、内容はご案内の通りで・・・・・・・・・

『民間在庫はフローベースでプラスに転換。「原材料在庫」と「仕掛品在庫」が減少傾向を示す一方、「製品在庫」と「流通在庫」が増加した。在庫増は統計上プラスに寄与するが、内容を見ると、製造したものの売れ残りが積み上がっている状況がうかがえる。一方、設備投資は1次速報のマイナス0.1%からマイナス0.9%へと下振れた。財務省が1日発表した法人企業統計で、食料品や鉄鋼業などが減少したことを反映した。』

残念という所で。

『甘利明経済再生担当相は、GDP発表後の記者会見で「設備投資が期待ほど伸びていないのは、経営者が決断していないからだ」と指摘した。』

・・・・・・・・・・・(−−;

ということですが、当日午後に出た景気ウォッチャーがこれですからねえ・・・・・・・・・・


・景気ウォッチャーがあばばばばー

http://jp.reuters.com/article/2015/09/08/idJPT9N10E00U20150908
2015年 09月 8日 14:15 JST
現状判断DIは49.3、前月比2.3ポイント低下=8月景気ウォッチャー調査

『[東京 8日 ロイター] - 内閣府が8日に発表した8月の景気ウォッチャー調査では、景気の現状判断DIは49.3で、前月比2.3ポイント低下となった。横ばいを示す50の水準を7カ月ぶりに下回った。企業動向関連、雇用関連、家計動向関連がいずれも低下した。』(上記URL先より)

という事で内閣府のサイトはこちら。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2015/0908watcher/menu.html
平成27年8月調査(平成27年9月8日公表):景気ウォッチャー調査

調査結果抜粋はこちら。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2015/0908watcher/bassui.html
平成27年8月調査結果(抜粋):景気ウォッチャー調査

まずは『今月の動き(8月)』から。

『8月の現状判断DIは、前月比2.3ポイント低下の49.3となった。

家計動向関連DIは、小売関連などが低下したこと等から低下した。企業動向関連DIは、製造業及び非製造業が低下したことから低下した。雇用関連DIは、小幅に低下した。

8月の先行き判断DIは、前月比3.7ポイント低下の48.2となった。

家計動向関連DI、企業動向関連DI及び雇用関連DIは低下した。

今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、中国経済に係る動向の影響等がみられるが、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、シルバーウィーク、プレミアム付商品券への期待等がみられる一方、中国経済の情勢や物価上昇への懸念等がみられる」とまとめられる。』

でまあ数値の方を見ますと、企業関連動向DIの部分では現状判断DIの非製造業が辛うじて50を維持していますが、製造業では現状、先行きとも50を割っていて(ただし製造業は現状が46.4で先行きが48.3なので辛うじて上向き)、非製造業の先行きは50割れとなっているのでぐぬぬという感じですの。

あと、この「物価上昇への懸念」って昨年の11月調査結果以降思いっきり記載されている話だったりするのですが(その前はエネルギー価格上昇への懸念というのがありましたが)、CPIの水準が今のような状況で物価上昇の影響が「懸念」方向で出ているという時点で日銀置物リフレ理論であるところの「物価上昇期待および物価上昇によって投資や消費が促進される」というのが根本的に変じゃネーノというのが(今に始まった訳ではないのですが)示されていますのうとしか申し上げようがない。

つーかまあハードデータは兎も角マインドの方は何とかなっているので、というのが「基調は堅調」ということで意地汚く粘る為の支えだったように思えるのですが、この先どうやって粘るんでしょうかねえ。


○つーことでMPMプレビュー雑談というか何というか

てな状況となっておりますが来週は日銀決定会合という事で一応雑談ではありますが。

まー今の時点で追加緩和がどうのこうのというのはさすがに時期が早いという感じだと思いますが、(今朝は海外株が戻ってきたので一息なのでしょうが)株はズルズル下がるわ為替は微妙に円が上がっているわ(これもまあFOMC次第の面がありますが)という状況になる中で最近はまたまた追加緩和ネタが浮上しやすくなるのはまあそうでしょうなと思われます。

とは言いましても、政策の建付けとして「マネタリーベースの拡大ペースに意味がある」という風になっている以上、追加緩和をやるにしても手段がそれほどないというのが残念な所でして、国債買入のペースを拡大しても良いのでしょうが、出来るのはせいぜい10兆円が限界ですし、ペースを拡大するのは「短期決戦で大勝利可能」という自信がないと中々難しい、というのはペースを拡大すればオペレーション上の技術的限界を手前に寄せることになるのですから当然のお話だと思うのですけどどうでしょうかね。

でもって最近ときどき聞かれたりするのが付利金利の引き下げという話ですが、これに関しては仮に実施するにしても一番最後の手段だと思われます。付利金利下げても別に今のMBが減る訳ではない(日銀が自主的に吸収しなければ良いので)のですが、そもそも金融規制とかの流れの中で無駄な超過準備を積むインセンティブが今後減ることはあっても増えることが無いという規制上の影響がある中で超過準備付利金利を引き下げてしまいますと、MB拡大の反対側にある「誰が超過準備を持つのか」という点において誰も持ちたがらないという事態が発生するので、資産買入オペを実施しながらMB拡大するのが困難になって、こちらの方がオペレーション上の技術的限界を更に手前に引き寄せる効果が抜群なので、これは中々難しいと思うのですよね。

ただ、付利金利の引き下げって見た目としては分かりやすいので、この説が出てくるとやたらと気にする人が(特に上記のようなメカニズムを良く分かっていない海外の人中心に)出てくるというのもこれまた有るので(もしかしたら6MTB入札が堅調だった時にIOERネタが背景にあるのかと一瞬思ったのですが、引値はそんな感じでもないので違うかなとは思います)、どうもこのネタはいつものように出ますなあという感じです。

なお、何故海外の方がやたらIOERネタに反応しやすいかと言いますと、そもそも論としてECBにしてもFRBにしても「資産買入政策」に関してはあくまでも「買入資産」の方をメインに置いていまして、「マネタリーベース目標」は併用していないので、資産買入を行う中でマネタリーベースが増えなくても極端に言えば気にしない(まあそんな事にはなりませんので結果としてはMBも拡大しますが)というお話(ただしドラギ総裁は国債買入を実施する前には「ECBの資産規模を2012年の頭まで拡大」というような話をしていましたが最近はその手の話はスルーしておりますな)なので、「誰が超過準備を持つのか」的な話ってどうもピンとこないのでしょうなあ、というか日本でも短期から遠くなるとその辺の感覚は通じにくいと思われますのでまーそうなるのは分かるのですが。


では国債買入以外に何の追加緩和があるかと考えますと、あとは買入年限の長期化とか、ETFの買入拡大になるかと思われます。地方債買入だの住宅ローン担保証券買入だのという話もお話としては出てきますが、現状でマーケットの流通玉が碌すっぽなくて投資家のポートに沈んでいるものを買入というのは何ぼ何でも実務的に無理があるのであまり考えにくいですわな。

でもって買入年限の長期化ですが、これは理屈としては通しやすくて、「実質金利の低下が効果がある」とか「長期のイールドカーブにより一層の低下圧力をかける」という説明で緩和ですよウヘヘヘヘとやりますと長期国債買入拡大が10兆しかないのかよと言われてもまあ何となくセット販売で使えそうではありますが、これやりますと出口以降の政策が益々ややこしい事になるのが最大の難点でございますけれども、後は野となれ山となれの精神で特攻すればまあ普通に行けるでしょう。

ETFの買入拡大ですが、こちらだけやる説とかもあるようですけど、さすがに「株価が下がって来たのでETF買入だけを拡大します」とかやると品が無いにも程があるので国債買入のMB拡大とセットでおまけっぽく出す方が格好は付くでしょうという風に思います。しかも日銀砲の打ち過ぎで残りのタマが少なくなっているのも買入拡大を後押しするネタに使えるというものです(というかそもそも現在の金融政策決定会合では「次回会合まで」の方針を決めているのに、どこからどう見ても年間3兆円の買入拡大ペースより1か月以上前倒しの勢いでETFを買っているのはディレクティブとの整合性を事務方が逸脱していないのかというのを次回会見で誰か効いて欲しいものです)。

ただまあこちらに関しては出口政策、というか出口あるのかよという感じの政策ではありますので、品がある無いの問題だけではなく、日銀保有資産の毀損リスクが更に高いお話ではあって、平和に出口に向かえれば良いのですが、それよりも出口無しという中で株価がホイホイ下がってしまうと更にマズーな話になって、財政との兼ね合い問題が一層大きくなってくるのでそんなにハードルが低い話でもないと思うのですよね。


・・・・・・・・・とまあつらつら考えると、国債買入10兆円程度拡大と買入年限の長期化とそこにおまけを付けるかのような感じでETFの残高拡大ペースをちょっと引き上げるというのが妥当な線としか思えませんが、今度はそれを行う理屈はどうなるのでしょうねという所です。

つまりですね、どこからどう見ても今のMB直線一気理論を元にした場合にはオペレーション上の技術的限界がそんなに遅くない時期に来る訳でして、それをわざわざ手前に引き寄せる政策というのはそもそも論として実施しにくい面がある、というのはさすがに執行部や与党政策委員の皆様も分かっている(なお師匠やジンバブエ先生を除く)と思いたいので、そうなると「出来るだけ引っ張ってから追加緩和を行う」という話になるとまあ順当に考えると思うのですよね(なおそうでないケースはちょっと後で申し上げます)。

となりますと、どちらかと言えば「日銀がどこまで判断を変えずに意地汚く粘れるか」という方がポイントになると思われまして、まあ今回の景気ウォッチャーにしても「製造業の先行き判断は上向き」とか「雇用関連DIはやや悪化したとは言え50超をキープ」とか色々と意地汚く粘る事は可能ですし、原油価格が反転上昇しないうちは「原油価格ガー」で粘れるし、東大物価指数とかのように順調に堅調な物価数値もありますし、などなど考えるとまだまだ粘ることは十分に可能だと思うのですよね。

つーことで、前も申しあげた気がしますが、日銀の示すメカニズムそのものがダメだろ的なものが出てくるまでは粘るという話になると、原油価格が上昇に転じた場合に物価が上昇しない(というのは今の感じだとなさそうですが)とか、ヘッドラインやコアの物価が目出度く上昇したら消費が大コケして景気の方がコケてしまう、という方がどう見ても日銀的には苦しい筈で、原油が上がらないでヘッドラインの物価が弱めで推移している方が(足元の円安の勢いが修正されるのも輸入物価上昇の勢い修正に繋がりますし)消費がそこまで落ち込まないという点で日銀にとっては想定する景気のメカニズムが試されないという意味で粘る期間が長くなると思います。てな訳ですから、原油価格がアガランチ会長でウダウダして、物価があまり上がらないで実質賃金がプラス水準で推移して消費が持ちこたえると延々と今のままという感じになるんでしょうなと思います。


ただ、これで引っ張っていく事の問題点としては、引っ張り過ぎた挙句に追加緩和の実施となると明らかに「追い込まれ追加緩和」になりますし、それこそ「戦力の逐次投入」となってしまうのが悩みどころでありまして、そもそもMB直線一気理論そのものの波及経路が怪しいなかで追加緩和も結局MB拡大な訳ですから、だったら「サプライズを狙う」という方がまだ効く可能性がある、という考え方も成立しないでもないので、いきなり訳の分からんタイミングで打ち込むというのも思考実験としては考えておく必要があるとは思います。

なお、円安誘導して何か良い事ありましたっけというツッコミは当然ありますし、この前の追加緩和に関して「サプライズ狙いではないか」とか国会で大門先生に追及されて「サプライズ狙いは行っていませんし行いません(キリッ)」とか黒田総裁が答えたという過去の経緯がある中でサプライズ追加緩和を行うというのはこれまたハードルは高いのですけれども、追い込まれて追加緩和をする破目になる位ならフォワードルッキング的(?)に追加緩和のタイミングでサプライズを狙うというのは魅力のある話ではあるとは思います。まあリスクシナリオみたいなもんですけどね。


・・・・・・・・・・とか何とかあまり纏まってないのですが追加緩和のネタを考えてみた訳ですが、基本的に追加緩和というのは負けているから追加緩和な訳ですので、物価が適当に上がった所で勝ち逃げをするのが一番望ましいのでしょうがそれは厳しそうな感じがプンプンですからね。

となりますと、本来は先日来ネタにしている木内さんの話の方がごもっともでありまして、麿ドクトリンに近い方に戻す方が妥当としか申し上げようがないのですが、木内さんの説明って先日来ご覧になってお分かりのように、現状の建付けに対するダメ出しがあまりにも強烈なのと、出している政策提案がいきなり買入拡大ペースの大幅削減となっているので、今の政策建付けからの歩み寄りようが無さすぎるのが最大の問題点であります。

てな訳で、石田審議委員や佐藤審議委員辺りでもうちょっと歩み寄りが出来そうな政策案を作って木内さんも含めて金融三人衆で新提言という形になるとかなり美しいようには思えるのですが、まあ中々そうはならないのかも知れませんけれども、このまま引っ張っても何か良い事があるようにも思えない(さっきも言ったように短期決戦で勝利できるのであれば別に問題はないがそういう状態になっているとは思えん)ので、本来的なべき論で言えばもうそろそろ置物リフレ理論の無理を認めて総退場して頂いて、でも緩和的政策は長期的に行う中でもう少し長いスパンで物価上昇の環境づくりをする、という風にしないと無理がドンドン重なるだけだとは思うのですけれどもねえ・・・・・・・・・・・

#などと延々と雑談ばかりでどうもすいませんでした

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2015/09/07

・毎勤統計ェ・・・・・・・・・・・・・・

統計本チャンページははこちら。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/27/2707p/2707p.html

ですが手抜きでロイターニュースから。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/idJPT9N10700920150904
2015年 09月 4日 16:12 JST
訂正-7月実質賃金は前年比+0.3%、27カ月ぶりプラス=毎月勤労統計

『[東京 4日 ロイター] - 厚生労働省が4日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報)によると、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比0.3%増となり、2013年4月以来27カ月ぶりのプラスとなった。ボーナス支給の遅れで6月には大幅なマイナスとなったが、再びプラス圏に浮上。物価を上回る賃金の伸びがかろうじて維持された。現金給与総額(事業所規模5人以上)は前年比0.6%増の36万7551円だった。増加は2カ月ぶり。

厚労省では「6月は特別に支払われる給与(ボーナス)に振り回されたが、名目賃金はプラス基調で推移している」と判断した。』(上記URL先より)

ということですが、6月が特別に支払われた給与▲6.7%が影響して現金給与総額▲2.5%に落ち込んだ分が戻ってくるようなプラスにならないと帳尻が合わないと思うのですが(従って市場予想は現金給与総額の予想が+2.0%位で、+0.6%では市場予想よりも低いという結果)、6月に支給がズレた筈の給与はどこに逝ってしまったのでしょうかねえという所ではございます。

まあ何ですな、アタクシが勝手に唱える珍説としては「政府がうるさいので世間体もあるからおまいらの基本給を2年連続で引き上げてみたが、その分賞与の支給原資が無くなったから今年の賞与は総額を削減な」というような感じでは無いかと思うのですが、消えた夏季賞与とはこれまた薄ら寒い夏の日の怪談ではありますな。

つーかですね、この程度の実質賃金上昇ってことは2%の物価上昇になったら盛大に実質賃金がマイナスになりますし、大体からして1%程度の物価上昇にも耐えられるのかよという悲しい状態な訳でして、企業収益が最高水準を絶賛更新するなかで設備投資の伸びはまだパッとしないわ実質賃金はこの有様わということで、そもそも論として企業が高収益を上げたらトリクルダウンという話は一体全体なんだったのかと小一時間問い詰めたい結果になっておりますな。


・雇用統計

またまたロイターより。
http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/usa-economy-fed-idJPL4N11A3TA20150904
2015年 09月 5日 05:14 JST
米8月雇用統計、9月利上げへ決定打欠く 今後の市場動向が左右か

『[ニューヨーク/リッチモンド(米バージニア州) 4日 ロイター] - 8月の米雇用統計は強弱まちまちの内容となり、連邦準備理事会(FRB)が9月利上げの是非を判断する決定打を欠いた。そのため今後数週間の金融市場のボラティリティーが、利上げの行方を左右する可能性がある。雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比17万3000人増と、予想の22万人増を下回った。だが6月と7月は当初発表から合わせて4万4000人の上方修正となり、賃金の伸びも予想を上回った。失業率は7年半ぶりの水準となる5.1%に低下した。』(上記URL先より)

ということで雇用統計はNFPのヘッドラインだけ見た時は弱いのかなと思いましたが、良く良く見ますと実にこう中途半端な結果になっておりまして、利上げしようと思えばできるし、先送りしようと思えばできますが、どっちにするにしても「その次」以降への対処まで考えてある程度整合性のある説明をしないといけないと思われますので、これは悩みますなというか腹の括り方次第かなあという結果。

まあ25bp如きの短期金利引き上げでコケるというのも違和感あるのですが、中国辺りが諸々のコントロールを回せないような流れになって勝手に自爆とかした時に米国利上げのせいとか言われるのもシャクですし、かと言ってここで利上げしないとなると先行き更に利上げの理由をでっち上げるのが難しくなるので、結果としてはまたまた低金利緩和政策長期化相場ヒャッハーでサーチフォーイールドが金融不均衡という話(すでにそうですという話はさておき)だったりするので、どちらにしてもリスクはあるなあとは思います。

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2015/09/01

○輪番微調整とかSLFとかその他雑談

・輪番買入の微調整来ました

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150831c.pdf

『(注4)2015 年 9 月 1 日以降の最初のオファー金額は、残存期間 1 年以下 700 億円、残存期間 1 年超 3 年以下 4,000 億円、残存期間 3 年超 5 年以下 4,000 億円、残存期間 5年超 10 年以下 4,000 億円、残存期間 10 年超 25 年以下 2,400 億円、残存期間 25 年超 1,400 億円、変動利付債 1,400 億円、物価連動債 200 億円とする予定です。』

前月はこちら。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150731e.pdf

『(注4)2015 年 8 月 3 日以降の最初のオファー金額は、残存期間 1 年以下 700 億円、残存期間 1年超 3 年以下 3,750 億円、残存期間 3 年超 5 年以下 4,250 億円、残存期間 5 年超 10 年以下 4,000 億円、残存期間 10 年超 25 年以下 2,400 億円、残存期間 25 年超 1,400 億円、変動利付債 1,400 億円、物価連動債 200 億円とする予定です。』

今回の変更点は買入明細の中での中期輪番の内訳部分だけが変更になっていて、1回当たりの買入を1-3で+250億円、3-5で▲250億円となっておりまして、トータルではツーペー。他の年限には変更がなくて、全体の買入概要で示している数値やレンジに関しても変更なしとなっています。

・・・・・・・でまあこれで月間に直すと1500億円の割り振り変更になるのですが、中期に関してはまあ辛うじて買入の余地はあるのかも知れませんが、2年とか相変わらずゼロ金利近辺で中々プラスの金利が出ないという時期も結構あるという状態だと思うのですけれども、この辺は投資家のポートに沈んでいたものが出てくることもあるので、3-5よりは買入しやすい可能性もあるとかそういう事でも考えているんですかねえ、よー知らんけど。

あと、ここに来て5年カレントの金利が10bpをそこそこ割った水準で推移していてちょっと強いなあというのもあって、そっちの事も勘案したのかねとか。


・SLFを短国に拡大のようだがワークはするのかね&関連雑談

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150831d.pdf
国債補完供給の実務運用の変更について

『日本銀行は、国債の市場取引や決済に係るストレス要因を緩和することにより、金融調節の一層の円滑化を図るとともに、国債決済の円滑確保にも資する観点から、以下の通り、新たに国庫短期証券を国債補完供給の対象に加えることとしました。』

まあ散々無慈悲買入をして市場にストレス掛けまくっている主体からこのように言われますとマッチポンプという言葉が喉まで出かかってしまいますが(^^)、まあやらないよりはやる方が良いのでそこは歓迎して内容を確認しましょう。

『1.売却対象銘柄
日本銀行が保有する国庫短期証券のうち、日本銀行が適当と認める銘柄とします。』

そらそうだ。

『2.銘柄別の売却上限額、連続利用日数および最低品貸料

国庫短期証券の銘柄別の売却上限額および同一銘柄を連続して売却(注1)できる日数等については、想定される利用形態等を踏まえ、以下の取扱いとします。』

とあるのですが、上限が

『日本銀行が保有する残高(オペ等で売却が決定している金額を除く)の 100%または 1,000 億円のいずれか小さい額』

となっておりまして、えーっとすいません1000億円ですかそうですかあの隣に書いてある長期国債の方が4000億円になっているのですが市場での通常売買ロットから考えたら短国の方が上限額高くする方がバランスとれませんかねえという所ではあります。

まあそもそも論として中長期国債と違って短国は日銀買入の話がこうなる前から基本的にショートセールというのはホイホイと実施出来ないという仕様になっていて(持ちきりの投資家が多いから新発近辺以外でモノが出にくい)ショートセールそのもののが一般的に行われない上に日銀の無慈悲買入が進んでいる訳でして、そらまあ余程のケースじゃないとショートはせんのでニーズがあるのかこれ???とは思う次第。

などと書きながら思ったのですが、期末の債券現先ニーズに対してSLFから物を借りてきてニーズのあるところに売現先かませばニーズはあるかいなとか思ったのですが、そもそもマイナスレートでの買現先取引にどの程度のニーズがあるのかが良くわからんし、手間暇かかる割にワークしない(前日からSLFで借りて置く位にしないと決済がバタバタになりそう)ようにも思えますがどうなんでしょ良く分かりません。


つーことで、この「1000億円」という謎の中途半端な上限金額といい、連続適用可能日が中長期国債の15営業日に対して5営業日とか、作ったのは良いけれども利用者が(BCPのお試し以外で)発生するのかいなという気はするのですれども、まあ無いよりはマシとかそんなイメージなのですけれども、これをローンチしたことに関してまたドヤ顔で「このような施策を行い短国市場の流動性を高めました(キリッ)」とか言われましてもちともにょる所ではありまする。


でまあ話はワープするんですけど、短国市場の流動性とか市場に掛かるストレスというのであれば、より画期的な方法をちょっと提案して置こうかと思うのですよね。

現状の短国買入って6Mと1Yがバカスカ打ち込まれていくようになってきたので、償還ロールの額が相対的に減ってきて今月の短国市場はだいぶ流動性が改善されるのではと期待されている訳でございますけれども、この際QQEでMB目標を置いている時限定で短国に関しては1Yと6Mについては全額日銀引受で発行(発行価額は直近の3M短国入札と2年国債入札の利回りからカーブを引っ張って決めればヨロシ)して貰いますと、日銀の所に1年短国が30兆円、6M短国が21兆円入りまして、合計51兆円の買入が勝手にできます。

で、このままですとMB積み上げ過ぎという事になりますので、資金需給動向を見ながら適宜売りオペ、というと聞こえが悪いので「TAP方式での国債発行」とか「短期国債流動性供給オペ」とか何とか売りという言葉を入れないでMB積み上げで余る分だけ売りに出す、という作戦で調節して頂きますと日銀トレードとかそういうしょうもない取引も駆逐されましてより市場の価格形成が普通になるのではないかねとか思う次第。何せ今の短国市場は6Mと1Yを見ればお察しの通りで「日銀の短国買入を前提にした価格形成」が普通になっていまして、いやまあそれが単にリスクプレミアムを下げるとかいうのであれば文句も無いのですが、「普通の投資家を投資機会を奪うような価格形成を行う」のが本当に日銀のやることなのかよというのはだいぶあると思いますがねえと。

でまあポートフォリオリバランスとかいう話になるのかもしれませんが、そもそもポートフォリオリバランスするにしても純粋な自分の手金なら兎も角、基本お預かりしている金をどうしますかとやっている金利系の市場の皆様におかれましては、運用における制約だってあるし、制度における制約だってある(本当に短期国債市場の資金を全部外に出したければ流動性規制無くせとか、決済担保を取るなというような極端な話をしないといけませんがな)訳でして、短国金利のマイナス定着ってポートフォリオリバランスにおける収益性云々によるリバランスのインセンティブを発生させるとかいうレベルを超越した状態になっているので、もうちょっとそういう問題認識を政策委員会に上げてほしいものだと思いますけど、MPMの議事要旨を見ると毎度毎度どなたかの委員様が「副作用は理論的にも実際にも発生していない」とか堂々と発言するという時点で血圧が急上昇してしまう次第ではございますという事で。


・生産もアチャー

さあもりさがってまいりました!!!!!
http://jp.reuters.com/article/2015/08/31/july-industrial-output-idJPKCN0R000320150831?sp=true
2015年 08月 31日 10:57 JST
鉱工業生産、7月は予想に反し低下 先行き在庫調整継続で一進一退

『[東京 31日 ロイター] - 経済産業省が31日発表した7月鉱工業生産指数速報は、電子部品や自動車部品を中心に前月比0.6%低下した。2カ月ぶりの低下となった。事前予測の前月比0.1%上昇を下回った。在庫指数はやや低下し調整は進んだが、水準はまだ高い。先行き予測指数は、IT投資や電子部品の需要回復期待がけん引する一方で、中国経済減速や国内消費の低調を背景に、建設機械や原材料需要の停滞から一進一退が続く見通し。』(上記URL先より)

先週の消費も弱めだわ生産もパッとしないわという事で、輸出は毎度の出る出る詐欺だし、本当の本当に前向きの循環メカニズムが回っているのかよと小一時間問い詰めたい状況となっておりまして、これは今週の毎勤統計がやたら注目される地合いになってまいりましたな!!!!!!


・・・・・・・・・・・でまあ毎勤もクソだったとして、日銀が循環メカニズムの不具合を理由に追加緩和をするのかと言いますとこれがまた中々ネタが難しくて、MBこれだけ増やして循環メカニズムが回らないのであれば、そもそも論として置物MB直線一気理論とか、物価を上げれば経済が良くなるといった置物リフレ理論について「効かないならもっとやればよい」で済むのかと何ぼ何でも2年も大幅に経過する中でツッコミが入ってくるのは必定ですし、大体からして物価を無理繰り上げても需要が減退するだけというのが明らかになった(需要が増えて物価が「結果として」上昇するというメカニズムになっていない訳ですな)中で政策どのルートで説明しますねんという話は大いにある。

となりますと、まあ普通にロジカルに迫るのは無理ですので(元々の置物理論が机上の空論だから仕方がないのだが)「気合ルート」という最早何が何だか分からない説明をするのが合理的という結論にしかならないと思うのですが、はてさてどうなることやらとは思うのでした。なお、足元で原油が戻ってきていますが、これ原油が戻ってくると(1)本当にヘッドラインやコア物価が上昇するのか、(2)前項がクリアできたとして物価上昇で消費が腰折れしないのか、という所が白日の下に晒されるのでこれはこれで面白い展開になるかと思います。

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2015/08/31

・消費がぐぬぬ

http://jp.reuters.com/article/2015/08/28/consumption-s-idJPKCN0QX0SI20150828?sp=true
2015年 08月 28日 17:41 JST 焦点:夏場も期待外れの消費回復、低所得層拡大に政府も危機感

『[東京 28日 ロイター] - 4─6月の落ち込みから反発が期待された7月の消費関連統計は、天候回復や所得増にもかかわらず、目立った回復が見られない結果となった。平均所得以下の世帯が6割を占めるなど、社会構造の変化の中で、必需品の値上がりが低所得層の財布を直撃しているためだ。政府内では低所得層の消費支援策の必要性を指摘する声が広がってきている。

 <「夏こそ回復」、いまだ見えず>

今年の夏こそ好条件がそろい、必ず消費は回復するーー誰もがそう予想していた7月の消費統計だが、相変わらず動きは鈍かった。昨年を上回る伸びとなった春闘賃上げ、ボーナス支給、バブル期以来の高水準となった求人倍率、公的年金支給額増、ガソリン価格下落、プレミアム付商品券など、所得環境をめぐるプラス材料には事欠かない。しかし、7月の実質消費支出は2カ月連続で前年比減少。耐久消費財の動きが鈍かった。7月小売業販売額も気温上昇の効果で夏商材が押し上げ、前月比で増加したが、やはり耐久消費財の動きが鈍い。』(上記URL先より、改行一部割愛して引用)


・・・・・・・・ということで先週末の指標は物価が強めに出てマイナス回避とかになっている一方で消費が事前予想よりも弱いという数字になっておりまして、そらまあ黒田総裁がNYでドヤドヤ言いながら宣伝している東大とか一橋の物価指数上昇やケチャップ上昇などに見られますように日常品(特に食品)の値上がりって昨年の消費増税の時よりも今年の方が凶悪化している(最近は値段が上がって量目が減るとかいうのまで登場してやがる)ように見える訳で、そらそうなりますとどこか削らないと厳しいわなという話になりますからねえとは思う次第。


でまあ消費が相変わらずの状況、というお話になっている中で日銀の金融政策的にどうなのよという話になりますと、まず第一に問題になるのは「日銀の示す回復メカニズムが回っているの?」というお話になる訳でして、日銀の最近の説明は所得の上昇が消費の拡大を促し、それにより生産の拡大に繋がり投資にもつながる、という循環メカニズムの説明をしている訳ですが、肝心の消費が出ない、しかもその原因が今程度の物価上昇である、という話になりますと、そもそも論として日銀の金融政策のベースにある「兎に角物価とインフレ期待を上げれば経済が好循環する」というリフレ派の皆さんが散々宣伝して前の日銀執行部を口汚く罵倒しておられた置物一派の皆様の主張が根本的な部分で誤りがありましたねという事でもありますなあと。

んでもってその置物リフレ理論が机上の空論というのもさることながら、日銀的に困るだろうなあと思うのは「では追加緩和」という話になった時に追加緩和がどう効くのかという話が難しいというのが日銀の政策運営的に厳しいでしょうなあと思われる点。つまり「追加緩和をやるのは分かったがそれがどのように効くのか」という説明が非常に難しくなっている所ではないかと思います。今更MB拡大ペースを更に上げてインフレ期待に働きかける(キリッ)とか言いましても、すでに開始して2年半掛けてMBをアホウのように拡大している中でインフレ期待ってどうなっていましたっけという話がそもそもある上に、大体からして日銀の言うようにインフレ期待が徐々に上昇しているというのであれば、置物リフレ理論に基づけばそれによって消費が促進されている筈ですが、肝心の消費は出ていませんがなという所で。

追加緩和で一段の円安に振って何か良い事あるのかと言うとこれまた円安コストプッシュしたら消費が一段と落ちるだけでしょうし、企業マージンだって苦しくなるでしょう。株を上げてもそらまあ暴落するよりは良いかもしれませんが、それが消費とか投資に回る効果って考えた場合に政策として実施しているコストから考えた費用対効果が無駄玉にも程があると思うのですけどねえ。

でもって金利に関しては長期金利をもう散々下げてこの状況な訳で、もう一段下げた時に設備投資などが出るのかと考えると????でもありますし、クレジットチャネルに関しては日本はすでに散々金融環境が緩和した状態になっていて今更何をするという状況な訳ですな。


とまあそう考えますと、まあ追加緩和するという話になれば長期国債買入拡大と買入年限の長期化のセットでお茶は濁せると思いますけれども、そのルートの説明というのは今回の消費を見ると益々難しくなりましたなあ大変ですなあと思うのでありました。

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2015/08/25

○2%未達容認キタコレで陰謀脳成分が高い雑談

キターーーーーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーー!!!

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NTKRET6K50XX01.html
安倍首相は日銀の目標未達に「理解」示す、市場では追加緩和期待も
2015/08/24 16:41 JST

『安倍首相は24日の参院予算委員会で、原油価格下落は消費者物価指数(CPI)に影響する一方、「同時に経済にはプラスの影響を及ぼす。その中において、目標達成が事実上難しくなっていることについては、われわれは日銀側の説明を理解している」と述べた。』(上記URLより)

キタコレ!!ということでして、そもそも2%2%やかましかったのは置物リフレ理論に影響された安倍ちゃんな訳でして、その安倍ちゃんが未達容認(ただし現状では特殊要因によるもので行かないという説明を容認しているだけですが)ということでこれはもう日銀ニッコリで今からせっせと「直ぐに2%には逝かないけれども出来るだけ早期に2%を達成するから足元のコアCPIが低くてもいいじゃないか、ああそういえばCPIにはこんなのもありましてこの計算だと+1%台前半で今も上昇傾向ですから2%みたいなもんですよウヘヘヘヘヘ」というイカサマ説明を持ってして政策が大勝利したことにする攻撃の準備に余念がないものと邪推する今日この頃という所ではあります。

まあそういう意味では日銀の説明が苦しくなるのって原油がさっくりと戻ってくる(ついでにその影響で物価が上がった時に消費が一段コケるとなお苦しい)というコースと、商品価格下落などは経済プラス(キリッ)とか言っているうちに実は国内経済がズブズブと沈んでくる(なおしらっと先月の毎勤統計が下方修正されていたように、所得環境がとても怪しげな中で消費が伸びるのかが甚だ疑問)という景気後退コースの場合の2点が主にある訳でして、今みたいに原油価格ガーとか言っているうちは割と粘れるんですよね。


ただまあ何ですな、今回は国会の質問で質問されたから答えたという面があるので(まさかそこで2年で2%達成していないからケシカランとは言えないから)、本当の本当に安倍ちゃんが2%諦めても問題ないと思っているかというと非常に良くわからんところではなるのですが、陰謀脳を逞しくしますと株価が上昇して経済も世界的にまあ確り目という事でニヨニヨしていた政府の皆様におかれましては、直近の中国やFRBのヒヨヒヨ状態などからあばばばばーとなる上に、国内の所得や消費が本当に大丈夫なのかというリスクなども考えると、そろそろアベノミクス大勝利宣言をして勝ち逃げしておかないと、いろいろなものが下を向いてきたときに「そもそもアベノミクスとは何だったのか」的な話になって一気に足元を掬われるリスクというのを意識してきたのではないかなどとも考えたりするのですが、まあただの陰謀脳ですので気にしないでください。

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2015/08/21

・ニュース雑談

昨日話題になっておりましたのでご案内の通りだと思いますが。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO90737970Q5A820C1TI1000/
トヨタ、部品各社に値下げ要請再開 競争力確保へコスト減
2015/8/20 2:00日本経済新聞 電子版

『トヨタ自動車は部品メーカーを対象とした値下げの要請を1年ぶりに再開する。取引先の経営支援と景気回復の後押しを狙い、2014年度下期(14年10月〜15年3月)から一律で据え置いてきたが、一定の効果があったと判断した。16年3月期に過去最高となる2兆8000億円の連結営業利益を見込むなど業績は好調だが、競争激化に備えて一層のコスト削減をめざす。』(上記URL先より)

いやまあ色々と思う所が無いでもないが保身の為に自主規制ということですが(^^)まあ何ですな、官製春闘と揶揄されるような茲許の流れというのって、経済やら企業業績やら企業の考える先行きの見通しなどからして無理があるようなモノというのはそうそう続けられるものではないという事で宜しいのではないでしょうかと。

置物リフレ理論にありますような「物価を上げれば経済がうまく回る」とかいう話も、結局の所コストプッシュで物価を上げているだけで、しかもそのコストが輸入価格上昇という形で海外に漏出しているのであれば、フローベースでの国全体のパイって減る話なんですからそら「要請」攻めもいつまでも続けられるもんじゃないというかそもそも官の要請で経済を回すってどこの社会主義だよハラショーという所で。

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2015/08/18

○GDPェ・・・・・・・・・・・

ぐぬぬ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NSL8BX6KLVRA01.html
4−6月期GDP3期ぶりマイナス、消費と輸出低迷で1.6%減
2015/08/17 10:31 JST

『(ブルームバーグ):今年4−6月期の実質国内総生産 (GDP)速報値は前期比年率で1.6%減と、3期ぶりのマイナス成長となった。個人消費と輸出の低迷が主因だが、ブルームバーグによる事前の予想は上回った。』(上記URL先より、以下同様)

つーことで皆様ご案内の通りで消費と輸出が弱くて投資もイマイチの中で住宅はまず良かったけど在庫増加と公共投資で支えて駅上がりは予想よりも良かったとはいえまー普通にこれあばばばばーという数字ですなあ。

『甘利明経済再生相はGDP発表後の談話で、成長率がマイナスになった要因として、「中国を中心としたアジア向けや、米国向けの輸出が減少したことに加えて、消費者マインドの持ち直しの動きが緩やかになる中で、天候不順の影響や4月からの軽自動車税の引き上げの影響もあり、個人消費が前期比マイナスになったなどが挙げられる」と述べた。』

ほうほう。

『甘利氏は会見で、消費者の間に「食料品の値上がりが大きいので、実質収入が減っているという肌感覚がある。肌感覚の物価上昇があるにせよ、賃上げがそれを凌駕(りょうが)するという期待が持てる経済にすることが重要だ」と語った。』

(;∀;)イイシテキダナー

とまあそういうことで、この調子ですと原油価格戻ってきてガソリンやら灯油やらの価格が上昇してしまったら7月に期待されている賃金(というか賞与)のプラス寄与も減殺されてしまうというお話になる訳で、そもそも2%物価上昇達成したら世の中バラ色のウハウハでという大宣伝をしていた置物リフレ理論におかれましてはどう見てもお前発想の順序が間違っていただろうというのを認めてそろそろ首からすみませんでしたと看板をサンドイッチマンの如く掲げて霞が関から日本橋まで行進して頂きたいと存じますが、未だに「消費増税ガー」で済ませているようでその往生際の悪さに呆れるしかございませんな。

つまりですな、別に2%の物価上昇を目指す、ということ自体は看板としてというか象徴としての目標として置くのは別に良いのでしょうけれども、そもそも論として2%物価上昇は「継続的な若干程度のインフレが起きるような経済状況を達成した結果」としての2%物価上昇ということであって、「物価の数字を上げれば他の問題も一気に解決」というような置物リフレ理論の皆様が説明していたのは原因と結果を取り違えたペテン議論であって、世の中そんなに単純な話じゃないですよねという事でしたな、というのが社会的実験を盛大にやった結果として見えてきましたよねというのが上記のあまりんさんの発言でも見えていると思うのですがねえ。

まあ何ですな、「目指すべき経済状況とは何ぞやというのを端的に示すものが2%の安定的な物価上昇が出来る社会」なので、そういう経済状況を達成する為に金融緩和でサポートしますよ、という話であって、そういう意味では別に「2%の物価上昇が安定的に達成できるような経済を目指す」という看板自体を下げる必要はないのですが、それを2年で実施するとか、為替を無理矢理円安に振ってコストプッシュで物価を上げる(なお円高是正の話は別に考慮が必要だが)とか、そういうのをしてもしょーがないという事じゃないですかねえとは思うのでありました。


ということで昨日も少々申し上げましたが、日銀の金融政策も徐々に八方塞がりというか手詰まりというかな詰んできているなあという状態になっておりますよねと思う次第。

いやまあ一応日銀執行部シナリオによりますと夏以降は所得の増加が消費の増加に繋がって内生的な物価上昇メカニズムと景気拡大メカニズムがワークするという話になっておりまして、原油価格が戻って来るにしたがって物価も相当程度上昇してくる、というのがそもそもナローパスなのだがより一層のナローパスになった感が強い。

でですね、よく「原油価格が低迷していて苦しい」という指摘をする人がいる(というか多い)のですけれども、確かに物価目標2年(すっかり無いものになっていますが)で達成というような話からするとこれはこれで困る話ではあるのですが、その点に過度にフォーカスするのは修業が足りないとしか申し上げようがなく、日銀ヲチャー道(そんなものは無い)の求道者(大嘘)として申し上げますと、原油価格云々はこの前の総裁定例会見でも出ていましたが、純粋に供給能力の拡大によるものであれば消費国である日本にとってはプラスしかない話であるということですから、まあその背景にグローバル経済の減速があるかというのを見る必要がありますね、という話になるのですよね。

でまあグローバル経済が予想以上に減速している、という背景が確認できればそれは勿論マズーな話なのですが、日銀執行部の現在のシナリオって輸出がドライバーになって景気が拡大するというのではなく、あくまでも「所得増加が消費の拡大に繋がって、それが設備投資にも好影響を与えるという形の内生的な前向きな循環メカニズム」をメインにおいている訳で、もちろんそこで輸出が足を引っ張ったらダメじゃんというのはありますが、原油価格下落=物価低迷=日銀追加緩和、という流れではなくて、今確認すべきは日銀シナリオが示す「所得から消費のメカニズム」が本当にワークしているのか、という話なのですよね。

ついでに申し上げると、そういう点で言えば原油価格って下手に上がりださない方が日銀的には物価目標の達成時期をまたまた後ずれさせる言い訳になるのでやりやすい(とは言えコアCPIが延々と1%割れ状態が続いているとそれはそれで段々苦しくなってくると思うが)ですし、極端に言えば海外が誰がどう見ても大コケしてくれた方が大手を振って追加金融政策を打ち込む事が出来て、しかも「海外ガー」と置物リフレ理論がそもそも立脚するところに問題があったというのを誤魔化す事ができるのである意味助かる(経済は助からんが)のではないか位の勢い。それよりも日銀が困るのはメカニズムそのものがワークしない場合で、そうなった場合は昨日も申しあげたように「追加金融緩和政策の手段自体は目くらましを含めないではない」のだが(良く考えたらツイストオペという手もあった)、「その追加措置がどのように効くのか」という波及ルートの説明が非常に苦しいので、そういう点で八方塞がりにも程があるわと思うのでした。

まあタチが悪いなと思うのは、この流れって何らかの外的ショックやら外的変化で起きているというよりは、生活物価が上昇して消費が弱くなる(ちなみにこういう時に身の回り体感の話をしてもしょうがないが、生活物価という意味では昨年の消費増税時のどさくさよりも直近の方が上昇がきつくなっている印象があるのだが)とかいう形で徐々に来ているのが「損切り」を遅らせる要因になりそうですし、今の日銀執行部は「正しい政策を実施しているのだから行くんです(キリッ)」という大変に素敵な聞く耳持たず理論となっておりますので、更に損切りを遅らせそうな感じがしますなあという所で。

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2015/08/17

・本日はGDPということで追加緩和に関する雑談(考えのたたき台的に)

まあGDPマイナスなのはさておきまして、ここに来て中国のアレとかから日銀追加緩和ネタがまたぞろ出てきているかなあという今日この頃ではあるのですが・・・・・・・・・

いやまあ追加緩和したければああそうですかという感じではあるのですが、追加緩和する場合の問題として(1)手段はどうするの、というのと(2)そもそもどうやって説明するの、というのがあると思うのですよ。

つまりですね、手段に関してはまあ皆様ご案内の通りで、MBに効果があるという話をしている以上はMBをある程度の規模で増やさないと追加緩和とは言えませんので10兆円ロットでMB拡大ペースを上げないといけないのですが、そうなると10兆円規模で買えるのは長期国債しかなくて、でもそれをすると輪番の限界が来るのが早くなるので自分で自分の首を絞める格好になりますわな。

ETFとかREITに関してはREITは5%ルールがあってそもそも論としてそろそろ限界に近くなっている筈でして、ETFに関してはせいぜい1兆とかそういう拡大は出来るかも知れませんが、こちらも量はそこまで積めないですし、大体からしてそんなに買ったら日銀の財務的にどうなのというのもさすがに問題になるでしょと思うんだがどうなっているのかねその辺(あまりMPM議事要旨見ていてもその話が無い、というかあまりそこをクローズアップすると地雷にも程があるのでスルーしている可能性が微粒子レベルで存在)。地方債とかそういう指摘する人居るのだが兆円単位で買えるものなのかということについてはお前ら業者間市場の板とかオファーシートとか見てから言えと小一時間。

とまあそんな感じで手段もまあだいぶ手詰まりなのですが、説明の方もだいぶ苦しくなっているなあと思うのですよね。

つまりですな、追加緩和をしたとして「期待インフレの低下を未然に防ぐ」というのを去年説明してた訳ですが、一応「期待インフレは維持されていて更に全体として上昇」という認識を延々と示しているのにその理由で緩和とはどういう事ですねんというのもありますし、それ以上に「波及ルート」の説明が難しいというか苦しいですよねという風に思うのだ。

前回の追加緩和は何だかんだと言っても円安に振って何とかしましょうということで実際に円安に振れましたけれども、今回もう一段円安に振ってどうなるのかというと、すでに前回円安に振った結果として株は上がったかも知らんですけど、輸出がバカスカ増える訳でもなく(円建換算の収益は増えるけど)、コストプッシュで食品とか上昇して消費の伸びが悪くなるという事案が発生している次第ですし、株高になって資産効果ガーとか言いましても別にそれで消費がバカスカ強くなるかと言えばお察しの状態な訳でして、為替をこれ以上の円安に振って物価が上がって前向き循環メカニズムという話にはならんというのが苦しい所。

良く良く考えてみれば昨年の追加緩和の時はTaperingの後に利上げが実は来年(2015年な)できないのではないか的な話が盛り上がったりしているような展開でしたが、今回は米国の金融政策がまあ普通に考えると利上げ方向であるのは動いていない、というのがありますから、そーゆー意味では米国が当分(1年とかのタームで)利上げ方向に行けないのでは、というような話にでもなって円高に振れない限りはちょっと追加緩和をやるのは良いけど無駄打ちになりそうな悪寒がしますがどうでしょうかねえ、とかまあそんな風に思うのでした。

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2015/08/10

・今日は短国買入ですが

金曜はMPMがあったので輪番も短国買入も実施されずということで輪番も短国買入も本日実施。


・・・・・・という中で金曜は中々味わいのある記事が日経新聞朝刊の「ポジション」欄に。

http://www.nikkei.com/markets/column/position.aspx?g=DGXLASGF05H0C_05082015EN2000
「日銀トレード」再び 国債落札し即転売、緩和長期化にらむ
2015/8/6 2:00

『債券市場で「日銀トレード」と呼ばれる取引が息を吹き返している。証券会社などが金利の急上昇は起こりづらいとみて、財務省から積極的に国債を落札し、すぐに日銀に転売して値ざやを稼いでいる。』(上記URLより、全文は会員登録していないと読めませんよ)

てなことですから話は輪番の方がメインではあったのですが、金利の急上昇が起こりづらいので云々というのは短国買入いや何でもないですが、まあ日銀トレードとか言われて思いっきりこういう風に日経新聞様のようなメジャーな所に堂々書かれてしまうのって、まー日銀舐められてます罠というのもありますし、大体からして何の為にオペを実施しているのかとか、そういう風になるんだったらそもそもオペの運営方法を再考した方が良いんじゃないか、とかまあ色々とツッコミも出てきそうなお話ではあるなあと思うのでした。

でまあ今日の短国はどういうオファーしてきてどういう入札になって、結果はさてどうなるのでございましょうかねえ、というのは朝の10時10分から始まり、最後の検証は買入残高の公表で検証するの巻という所で。

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2015/08/05

○ニュース雑談メモ

・毎勤統計キタコレ

あちゃーでしたなこいつは
http://jp.reuters.com/article/2015/08/04/idJPL3N10E2BN20150804
6月実質賃金は前年比-2.9%、ボーナス除けば横ばい=毎月勤労統計
2015年 08月 4日 10:30 JST

『[東京 4日 ロイター] - 厚生労働省が4日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報)によると、現金給与総額(事業所規模5人以上)が前年比2.4%減と大幅に減少した。減少幅は2009年12月(同6.0%減)以来の大きさ。夏季賞与が大半を占める特別に支払われた給与が大幅に落ち込んだためだが、厚労省では、ボーナスが5月に前倒しで支給されたことなどが影響した可能性があるとして、賃金の基調は「緩やかな上昇傾向に変化はない」としている。この結果、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比2.9%減となったが、ボーナスを除く所定内給与と所定外給与を合わせた決まって支給する給与(定期給与)対比では前年同月比横ばいだった。』(上記URLより)

そら6月の消費が弱いわという所なのですが、7月はどうなるんでしょうかねえと思いつつも、そらまあコストプッシュで物価が上がっているんだから企業だってそっちのコスト上がっているから労働分配増やしにくいよねとか思いますし、海外分が為替円安で円ベースによって嵩上げされたではそう簡単に増えんですなあという話なのかね、よー知らんが。

まーこれをもっと扇情的に言えば「トリクルダウンなんか最初から無かったんや(血涙)!」という事になるのでそもそも円安に振って物価を上げようという話が正しかったのか的な所に一般の皆様のイメージが移っていくと色々な意味でアカンヤツやということになると思うのだが。

基本的には説明の通りで7月のトータルで見ないといけませんなという話だと思いますが、なにせ7月の数字が出るのが9月の頭になってしまうのが実にアレな所でして、それまでは実質賃金が伸びて消費がウハウハというシナリオについていちいち頭に??を付けながら考えないといけないということになりますので、日銀シナリオ達成ヒャッハーの方向から相場に向かう意欲がそがれるというものですな、ナムナム。

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2015/07/30

○市場メモ雑談

・四半期期末でもないのに月末のレポ市場がががが

えーっとですね、たぶん今日の東京レポレートのGCレポT/N取引のレート辺りで出てくるんじゃネーノと思うのですが、四半期末にバランスシート要請上レポ取引がシュリンクするとか現先やらGCのレートが低下(というか最近はマイナスに突っ込むとか)というのは最近(昔は半期だったのが今や四半期)すっかり仕様になっておりますが、なんか昨日のスポ末の所でレポが妙にシュリンクしたようで、四半期末でもないのにそういう事になるのかと。

でまあ背景は制度会計的なサムシングでしょとしか申し上げようがないですが、その辺に関しては勉強が追いついていなかったりするので(すいません)どこのどういう制度がヒットしてただの月末なのに四半期末チックな話になったんでしょうかねえというのは何となく幾つかの想像は出来るけど不勉強なのでこれから要研究ですな(人はそれを泥縄という・・・・・・・・・・)。

しかしまあ何ですな、金融機関のバランスシート制約が強くなってくる、というのはバーゼルだのボルカーだのその手の規制攻撃によって方向性としては今後も強まる話ではあるのですが、そういう状況ってえのは「量的金融緩和」を実施している中央銀行にとっては中々痛い話でございまして、国債買って中銀がバランスシートを膨らませて政策効果を出しましょうとしますと、必然的に中銀のカウンターパーティーたる民間金融機関のバランスシートも拡大してしまう訳で、その中でバランスシート制約が厳しくなってくる、と言う話になりますと、そもそも論として中銀がバランスシートを拡大する為のカウンターパーティーis何処?という事になって、それはつまり量的馬鹿拡大が技術的限界を迎えるという事になるんですがそれは。

とかなんとか考えますと、バランスシートを拡大しつづける政策というのも金融機関のバランスシート制約を強化する金融規制というのは本質的に相性が悪く(なおリスク資産の買入というクレジットイージング政策を実施するのだったら親和性があります、念のため)て、そちらからもQQEを今のままで継続するのって難しくなりますけど、物価がアガランチ会長という中でどうこの政策落とし前つけてくるんでしょうねえ。


・本日は3M入札ですが・・・・・・・・・・・・・・

ここもと短国は入札がぶっ飛んだり短国買入の前の日に突然特定銘柄がぶっ飛んだりとか相変わらずの貫禄の板スカスカぶりを発揮しておりますが、今回の短国買入もどうせ流れて100円とかそういう話になるんでしょうなあともうてきとうなコメントしか申し上げようがありませんですが、とりあえずこの銘柄自体は発行日が月末を跨ぐものの、月末の現先とかレポがシュリンクしたという位ですから在庫が重いとは到底思えずで、まー普通に強いんでしょうね。入札よりも短国買入のオファーとその結果の方が読みにくいので(苦笑)、金曜の方が注目だったりするような気もします(−−;

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2015/07/23

○西村前副総裁のブルームバーグインタビューから雑談を

先週こんなんがありました。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NRGGGS6KLVR401.html
西村東大教授:「2年あり得ない」、無理に2%目指すとゆがみ
2015/07/16 06:01 JST

西村さんってもともとはミクロ経済の人でしたな。なお本1冊は読みました。

『(ブルームバーグ):前日本銀行副総裁の西村清彦東大教授は、消費者物価(CPI )の家賃には計測方法に問題があるほか、構造的に下押し圧力がかかっているため、物価2%を短期間に目指そうとすれば、他の品目が2%よりずっと高く上がらなければならなくなり、スパイラル的な物価上昇やバブル的現象が起こる可能性がある、と述べた。』(上記URL先より、以下同様)

物差し変更キタコレ。

『「退任後、『2年』で達成するという公約を聞いたときはさすがに驚いた。CPIの構造的な問題を考えれば、2年というのがいかにあり得ないか、ということが分かる。これは恐ろしく大胆なことをやるなと思った。しかし、出てきた政策は新しいものは何もなく、ただ単にたくさんやるというだけだったので、大丈夫なのかなと思った」と語る。』

いやきっと「今までとは違って期待に直接働きかけているんです」という事だと思いますよ(棒読み)。

『その上で、「2年がたち、人口減少の下で潜在成長率、生産年齢人口当たりの生産性を上げるという根本的な問題がこの間できたかどうか問い直す必要がある。これは金融政策の範囲を超えるが、金融政策も全体の政策の1つなので、そういう面での評価は避けられない」という。 』

ということですが。

『西村教授は「今のCPIで2%を短期間で達成するためには、帰属家賃が上昇しないなら、他の品目が2%よりずっと高くないとできない。2年で2%という約束をしたときに想定されていた、多くの品目が2%前後で上がるという姿とは異なってくる。本当にそういう高いインフレ率を目指しているのか、きちんとした説明が必要だ」と指摘。』

『「2%を目指しているはずが、結果的にそれを大きく超えるところを継続的に目指すことになると、さまざまな副作用、金融市場でバブル的なものが起きる可能性もある。人々の予想インフレ率も日銀の想定以上に上昇し、スパイラル的な物価上昇が起こる可能性もある」という。』

まあ何ですな、結局この辺の所が問題なのであって、物価安定目標っていうのは「安定して推移させる事の出来る水準」に置かないとそれは持続的に維持できないのですが、その水準が他と全く独立で特定水準に設定できるものなのかというのってえのは考えないといかんのではないかと思ったりします。

でまあ物差しというか統計の精緻化の問題はそれとは別に話をしていかないと、水準への考察と精緻化の話がごちゃごちゃになって話がややこしくなるというか複雑骨折を起こすだけの話になるのでこれがまたヤヤコシイのですけれども、来年の基準改定に向けて精緻化の話を金融政策枠組みの話に絡めてくる人がいたりしますと(ってそれで大喜びで記事書いている最右翼がブルームバーグなんですけどね)、それはそれで誠に遺憾に存じますという感じでもありますが、まあ金融政策ネタの潜在的な地雷ネタになりそうではあります。



『物価上昇率を2つの国で同一にしていないと、為替相場に一方向の圧力が継続的にかかり続けるという購買力平価の考え方は、長期的にみれば正しい、と西村教授はいう。しかし、「そもそも、欧州連合(EU)の消費者物価指数(HICP)には、持ち家の帰属家賃は含まれていない。各国で比較すると言っても単純に比較はできない」と指摘。さらに、「日本の場合、帰属家賃に制度的な下方バイアスがある下で短期間に2%を目指すことが、本当に他の国の通貨との関係が安定するような金融政策運営になるのか、という問題が生じる。結果的に、逆に円安圧力を過度に加えてしまうことになるかもしれない」と語る。』

ここがまた微妙というか区分けが難しい話で、看板としての「2%」を維持するのは特に為替レートに対する長期的な影響と言う話からしてそらそうよという所なので2%を取り下げるのは難しいと思いますけれども、看板としての2%というのは良くても、その持続的維持が難しいと思われるというか維持するのに無理がありますよという状況に置いて、「2年で」という例のコミットメントが(だいぶ空文化しているとはいえ)生きているのがこの先の運営をややこしくしますなあと思ったりします。

まーそもそもは2%ピンポイント的なリジットなターゲットにしているかのようなQQE当初の説明に色々と無理があったという話で、だんだん現実的に収拾すべく「基調」とかの話を繰り出しているのですけれども、どうも黒田総裁の説明では「2年という期間を区切るのも重要」と言うのを下げる気はなさそうでして、年末だか来年だか知らんですけれども、「基調はそのまま強いですし原油のベース効果剥げてほら物価が上がってきたでしょ」という辺りのワンチャンスがある筈なので、そこで何らかの落とし前を付けに逝かないと現実的な収拾が出来なくなって金融緩和インパール作戦状態になるんじゃネーノとか思うのでありました。


なお、余談にも程がありますが、原油が下がると「追加緩和ガー」という論者も相変わらず多いのですが、今の日銀の企画屁理屈を敷衍して考えますと、原油が下がって物価が上がらん分には「基調の物価はご覧の通り上がっていまして、今弱いのは原油のせいです」「おまけに原油価格が弱い分には企業コストや個人の燃料費などにプラスなので経済にプラスだぜヒャッハー」と言う話になりますし、まあ消費者サイドとしても実質賃金に正の影響を与えて大変に心地よい状態になる、とまあそういう事を考えますと、原油が下がって追加緩和ガーというのは今の黒田会見やら展望レポートやらで堂々展開されている日銀の理屈に全然乗ってないですよね、とまあそういう結論になる筈です(と思います)。

もっとどうでもよいのですが、昨日ネタにしていて思ったのですが、企業の価格設定行動どうのこうのの話でよく言われるポジティブネタで「付加価値を高める形で価格の引き上げを行う行動が」みたいなのがあって、まあもちろんそれってネガティブな話ではないのはその通りなのですが、良く良く考えたら付加価値上げて価格上げても物価統計的にはヘドニックが掛かってツーペーなのではないかという気がしたりしまして(−−;何ちゅうかこうこの手の経済物価賃金とかの話をするときって名目値と実質値を無意識のうちに適当に使い分けてしまって良く良く詰めて考えると????になったりするのはアタクシが頭が弱いからですかそうですかorzorzorz

で、最後の小見出し『出口について対話が不可欠』はまあ仰せのとおりですわ。

『西村教授は黒田総裁が量的・質的金融緩和の出口を議論するのは時期尚早と言い続けていることにも懸念を示す。「皆、量的・質的金融緩和には本当に出口があるのか心配している。金融政策決定会合で出口について議論し、それを公にしないといけない」と語る。その上で、「昔であれば『民は由(よ)らしむべし、知らしむべからず』で良かったかもしれないが、今は市場があるので知らせなければ混乱が生じる。市場と対話することが大事だ。何度か失敗するかもしれないが、お互いにそこで学習していくわけで、対話もせず、お互い学習もしないと、混乱が起こった時に対応しようがない」としている。』

ま、昨日と同じことになるのですが、2年程度を原油価格のある意味神風で1年先送りできましたけれども、何ぼ何でもそれをまた先送りという訳にも逝かなくなる中で、物価目標の定義にしろ、金融政策がどう効いたのかという話にしろ、色々な諸々を「気合」で有耶無耶にしているツケが何倍か返しで回ってくる時期がだんだん近くなってくると思うのですが大丈夫かねとアタクシも思うのでありました。

#諸般の事情で本日は雑談メモちっくに簡単になってしまいまして誠に恐縮至極

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2015/07/21

○内閣支持率がアイヤーとな

共同通信と毎日新聞は17、18で実施

http://www.47news.jp/CN/201507/CN2015071801001351.html
安倍内閣支持急落37% 不支持過半数で逆転 
2015/07/18 16:51 【共同通信】

http://mainichi.jp/shimen/news/20150719ddm001010170000c.html
毎日新聞世論調査:内閣支持、急落35% 不支持51% 安保強行採決「問題」68%
毎日新聞 2015年07月19日 東京朝刊

朝日新聞とフジサンケイは18、19で実施

http://www.asahi.com/articles/ASH7M5DC3H7MUZPS008.html
内閣不支持46%、支持37% 朝日新聞社世論調査
2015年7月19日23時37分

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150720-00000519-san-pol
本紙・FNN合同世論調査 内閣支持と不支持が初めて逆転
産経新聞 7月20日(月)13時55分配信

でまあ数字には微妙に差はありますが大体傾向は同じようなもんで、しかも18、19でやってる方も傾向同じという事は新国立見直し効果込みやんという所で(まあそうだわなあと思うが)、こんな展開になるんだったら憲法解釈の変更で云々というよりも憲法第9条2項にイシューを絞って憲法改正を正面切って出せばよかったような気もしますが、どうせ9条2項以外にも色々と余計なものを出してきてややこしい事になっていたかも知れませんけどね。


でまあここらで安保じゃなくて経済に目を向けてと言いたいところですが、事ここまで至ると引くという訳にも逝かないですからねえ・・・・・・・・・さてどうなるのやら。

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2015/07/14

日曜にはこんなのがありましたが、

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20150712-00000035-nnn-pol
NNN世論調査 安倍内閣支持率が逆転
日本テレビ系(NNN) 7月12日(日)21時15分配信


昨日は朝日新聞は兎も角(なお朝日だからと言って極端に違う訳でもない)国営放送もこれですか。

http://www.asahi.com/articles/ASH7F3FZDH7FUZPS001.html
「安倍内閣不支持」が「支持」を逆転 朝日新聞世論調査
2015年7月13日12時24分

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150713/k10010149381000.html
安倍内閣 「支持する」41%「支持しない」43%
7月13日 19時00分

・・・・・・・・・こうなったらアレです。ここで政権浮揚の為に追加金融緩和(銃声)

まあ日程考えたらここらでやっておくという事なのでしょうがさてどうなるのか。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150714/k10010149831000.html
安保法案 与党側 あす委員会採決の方針
7月14日 4時59分


○金融政策決定会合プレビュー雑談

今日明日と7月MPMでして、まあ微妙に難しい時期にぶつけられましたなという所ですけれども、とりあえず明日の段階でまだギリシャ問題がどちらの方向にしろ片付いている訳でもなく、まだ流動的と言う状態ですから、まーギリシャを理由に何かするというのもちょっと。

しかも足元では短観が別に悪い訳ではなくて、支店長会議の結果に関しても現状判断は微妙な引き上げという状態になっている、とまあそういう状況にある中ですと動く理由というのが無いなあという所です。

日銀の現在の金融政策の建付けからしますと、「追加緩和=マネタリーベース拡大ペースの拡大」、というのが最初にあって、それに加えて「長期国債買入残高の拡大」というのがセットになっている、という説明になっています。すなわち「マネタリーベースの量」と「日銀のバランスシートで保有する長期国債」に意味があるという建付けになっておりまして、両方を相応の規模で拡大することが出来る政策としては、市場のキャパから考えて「長期国債残高拡大ペースの10兆円拡大」しか無いですねという話になります。

ついでに言えばこの長国10兆円拡大に関しても今の輪番オペのインパクトからしまして、ペース拡大を実施するのはオペの限界をより速めるだけとなりますので、後に来れば来るほど物理的に施策打ち込み自体が難しくなってきます。

なおETFだけ拡大、という選択肢も無くは無いでしょうが、先ほどのように主な政策パスが「マネタリーベースの拡大で期待に働きかける」「長期金利への低下圧力で実質金利を引き下げる」という物がメインになっているだけに、MB拡大ペースが有意に伸びてこない施策の場合は説明が付きにくいですし、そもそも論として白川さん時代の当初に打ち込んだETF、REITの買入の実施というのは「市場のリスクプレミアムの縮小を目指す」という代物で、黒田さんのQQEの時にこれらの資産買入の意味合いがファジーになって誤魔化されているものの、さすがに「特定の資産価格を適正水準よりも高値維持することによって政策効果を出す」という話はよーせんでしょうから、株価やREITが暴落しているならともかく、相応の高水準に居る中で株やREITだけの購入拡大というのは筋が中々通しにくいと思います。

・・・・・・・・・というのがまあ常識的な見方になると思いますが、ちょっと円高株安に振れるとすかさず追加緩和ネタを出してくる面白い人もおいででありますように、内閣支持率が下がってアイヤーという事になると政治的資源の確保にいきなりサポート的な緩和を打ち込んでも別に不思議ではないというのが今の黒田さんというのだけは気になります。まあそれで追加やって本当に債券は買いになるのかというとこれまた怪しげですけれども・・・・・・・・・・・・

なお実際問題として、政策ロジックのうち政策のどの部分がどう効いているかの説明に変更を加えない限り、追加緩和で切れるカードはあと1枚しかない(付利下げやマイナス金利は量的政策とコンフリクトが起きるので「MBの量」に対する政策目標を放棄しないといけない)という大事なカードですので、そのカードはFEDが金融正常化を断念してコリャダメだ状態になった時に温存せざるを得ないと思いますがはてどうなるのやら。

まあ今回やったら思いっきりサプライズですし、幸か不幸か今回は直前の国会答弁なども無いので、後から某大門先生に「だましうち」とか言われなくても済みますよどうでしょうかねえ(棒読み)。

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