朝のドラめもん

2018/06/20

お題「総裁会見ネタ補足/物価目標0%の提言とはそれはさすがにちょっと・・・・・・・」

これは狙ったわけではないのはわかりますが結果的にお見事。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2018/rel180619a.htm/
(7月25日)金融高度化セミナー「金融機関の働き方」の開催について
2018年6月19日
日本銀行金融機構局
金融高度化センター

『日本銀行 金融機構局 金融高度化センターでは、「金融機関の働き方」と題するセミナーを下記の要領で開催します。』

ということですが、その中を見ますと・・・・・・・・

『経済環境にそぐわない数値目標は、「プロダクト・アウト」的な行動を強め、中長期的な顧客本位の姿勢や「カスタマー・イン」的な発想を失わせています。』

「経済環境にそぐわない数値目標は良くない」とはまったく仰る通りですな(−−;


#本来はFEDとECBのネタがあって、そろそろシントラ(ポルトガル)でやってるECBの中央銀行フォーラムがあって、ドラギ先生の「シントラショック」が記憶に新しいくらいですので、まーた誰かが何かやらかしてくれるかもしれませんという海外中銀ネタを全部積読になっておりまして誠に恐縮なのですが、今日も今日とて国内ネタなのでありました



〇総裁会見ネタですが見落としがありましたので補足を(超大汗)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2018/kk180618a.pdf

・出口の説明に微妙なトラップがあるとのご指摘をいただきまして補足を

見落としがありましたので、じゃなくてお前指摘されてから補足しているんだろうと言われると全くその通りで、今回は複数の読者様から「ここもポイントになりうるのでは」とご指摘賜りまして汗顔至極。ご指摘誠にありがたく伏して御礼申し上げますm(__)m


こんな質問がありました。

『(問) 今週はFRBもECBも正常化に向けて一歩踏み出しました。そういう中で、改めてなのですが、今、現時点でお考えはないとおっしゃるとは思うのですが、出口戦略についての日本銀行としての考え方について、例えば、まだ出口ではないとお考えでも事前に色々市場との対話という形で説明していかれるのか、もう少し詳しくご説明頂けたらと思います。』

『(答) 出口戦略については、何も語っていないということはなく、出口での課題には 2 つのことがあると申し上げています。それは、短期の政策金利をどのようにしていくかということと、拡大したバランスシートをどうするか、という 2 つです。FRBの金融政策の正常化をみても、あるいはECBが今後正常化していく際のポイントについても、この 2 つが具体的な課題になると思います。私どもが正常化する際にもそうなると思いますが、どのような手段で、どのような手順で、いつ具体的にそのようなことをするかは、あくまでもその時の経済・物価・金融情勢を踏まえたものになります。 』

『現時点では、今回の公表文にも示している通り、生鮮食品を除く消費者物価の上昇率が 0%台後半という状況で、まだ 2%の目標には距離がありますので、正常化あるいは出口の具体的な手法やプロセスについて語るのは時期尚早であり、あくまでも 2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するために、最大限の努力をする時期だと思います。適切な時期に市場とのコミュニケーションを取ることは必要だと思いますが、そういう時期に差し掛かっていない中で具体的な話をするのは、却って市場を混乱させるおそれがありますので、適切な時期にそういったコミュニケーションを行うことになると 思います。』

ということで、後半部分はいつも通りなのですが、前半にトラップが仕込んであります。つまり、出口政策において、

「出口での課題には 2 つのことがあると申し上げています。それは、短期の政策金利をどのようにしていくかということと、拡大したバランスシートをどうするか、という 2 つです。」

ということで、「短期の政策金利正常化(引き上げ)」と「バランスシートの正常化(縮小)」という話をしておりまして、そこにはよく見るとYCCのもう片方にある「長期金利目標」の文言がしらっとスルーされているんですな。

まあ勿論今すぐどうこうという話にはなり得ない(物価の伸びが鈍化している中では今の延長線上の理屈では言い訳がしにくい)のですが、これは正常化論において、長期金利目標の引き上げに関しては正常化と切り離した「YCC政策の中における水準調整」というカテゴリーでの変更が可能、というトラップでして、「長短金利水準」と言ってないのがチャーミング。

まあ実際問題として昨日も申し上げた通りで、総括検証の結果としてのYCCってのは均衡イールドカーブに対する適度な緩和度合いを維持するためのものなので、均衡イールドカーブの水準自体がインフレ目標や物価水準によって変化しうるものと考えますと(幅が相当ある概念なのであくまでもお話の上なんですけど)、別に正常化と関係なく金利水準を上げることは可能、という建付けに(実際にそれができるかはともかくとして)概念上はなっているので、正常化の説明の中で「長短金利目標水準」と言わずに「短期の政策金利」と言っているのは、長期金利目標水準を切り離す場合に使えますし、まあこの「短期の政策金利」ってのは出口だからYCC終了後の話という拡大解釈をすると、マイナス金利の所の調整だってスコープにいれられる、という点で、YCC継続の元での金利水準変更の可能性を残すような言い方になっていますね、というのは指摘されてみますと全くそうですな、と思いますので追加させていただきました。




〇学者って・・・・・・・・・(東大渡辺先生の物価目標0%論???)

昨日の朝はブルームバーグさんのこのニュースヘッドラインに吹いた。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-18/P9W6FH6JIJUR01
物価統計の第一人者も2%を断念、日銀は金融正常化を−目標0%適当
日高正裕、藤岡徹、竹生悠子
2018年6月19日 5:00 JST

いきなりこのヘッドラインを見てナンジャソラと思いましたが、インタビューを元に構成した記事みたいで見ると何とも。

『物価研究の第一人者で、1990年代後半から物価目標の導入を主張してきた渡辺努東大大学院教授が、てこでも上がらぬ物価にしびれを切らし、ついに2%目標の断念を日本銀行に提唱した。異次元緩和に物価を押し上げる効果はないとして、日銀は物価目標を2%から0%に引き下げ、金利引き上げなど金融政策の正常化に向かうべきだと訴える。』(上記URL先より、以下同様)

はあああああああ(語尾の口調が裏返りながら)????????

『今月のインタビューで、日銀は量的・質的金融緩和やマイナス金利により需要を逼迫(ひっぱく)させて物価を上げようとしてきたが、「全然効かないことはこの5年で確認できた」との見解を示した。異次元緩和の延長線上にデフレ脱却はなく、「どこかでやめなければならない」と語った。』

うーんこの。

『渡辺教授は日銀出身で、物価と金融政策が専門。2013年に速報性の高い東大日次物価指数を開発し、15年にビックデータの分析・提供を行うナウキャストを創業した。長く物価目標を提唱し、最近は賃金目標の導入を主張していたが、2%の物価目標は支持してきた。』

とまあこの記事内容にありますように、ついこの前までは賃金目標とか仰せだったのに突如0%にしろとか何ですかそれは。

でもって途中を飛ばして、

『渡辺教授は、効果のない異次元緩和は手じまいが必要だと指摘する。2%物価目標の旗を降ろして0%にすれば、現在の物価上昇率で達成されるため「さらに緩和が必要という理屈」も生じず、超低金利政策を「続ける理由はない」と語る。』

いやあの目標0%で本当に良いんですかそれだったら別に「中長期的な目標」にして緩和の規模を副作用が出にくいけれども緩和は緩和というような状態(マイナス金利やリスク性資産の買入などを中止して、中長期的な緩和政策にコミットして長期金利の上昇を抑制するけれどもYCCのような極端な介入政策は行わない)で済む話で、これ「0%」というのは何かたとえ話みたいなのでヒョロっと出たのをブルームバーグの方で盛って書いたんだったらまだ分からんでもないのですが、もしまともに渡辺先生が仰せだったら、さすがにこれは置物大師匠と同等程度にヤバイじゃろと思います。

まあ何ですな、このブルームバーグのインターネット版のサイトでもサイト内検索というのが出来るのですが、そこの検索窓に先生のフルネームをぶっこむと過去記事がサルベージ出来ますので(嫌な世の中ですなあ)それを見るだけでもなかなか腰が砕けますが確認してみましょう。



つい最近、と言ってももう2016年の頭ですから2年前になるのですが大先生の「賃金目標」ネタ。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-01-25/--iju3ovuj
黒田日銀は賃金目標にくら替えを、「天と地ほど違う」−渡辺東大院教授
野沢茂樹、Kevin Buckland
2016年1月26日 0:00 JST 更新日時 2016年1月26日 15:42 JST

『渡辺教授(56)は21日のインタビューで、「サービス分野を中心に、約5割のウエートを占める品目がゼロ%前後で動かない。物価が2%上昇するには他が4−5%も上がらないといけないので、仮に達成しても持続性がない」と指摘。人件費の割合が高いサービス分野の価格を上げてデフレを完全に脱却するには、物価目標から「賃金目標」に切り替える意義があると語った。』(上記URL先2016年1月26日記事より)

意義があるのは分かるのですが、何をどうすると日本銀行の金融政策で民間企業の設定する賃金を引き上げることができるのでしょうかその具体的な手法とメカニズムをディスカッション用のたたき台だけでも良いですから何か出していただけませんかねえという所でして、いやまあ貴殿がおとぎ話の語り手さんとかなら別にそれでも結構なのですが、最初のブルームバーグ記事の方で思いっきり「物価研究の第一人者」と称している(第一人者は他にいるのではなどというツッコミは行わないけど)「東大大学院教授」様な訳で、しかも「日銀出身で、物価と金融政策が専門」だそうなのですが、具体的にどうやったら良いのかというような考えもなしに政策提言って何なんでしょうね、と当時も思った次第。

ちなみにロイターさんの記事ですと、
https://jp.reuters.com/article/boj-watanabe-tokyo-univ-idJPKCN0V012I
2016年1月22日 / 19:23 / 2年前
金融政策に4%の賃上げ目標を、物価目標より利点=渡辺・東大教授

ということで同じ話ですが「4%賃上げ」って金融政策の何がどうするとそのようにできるのでしょうかというお話だし、だいたいからして4%の賃上げがサステイナブルに継続するとかこの成熟経済で出来るのかと小一時間で、MB直線一気理論も裸足で逃げ出すお話ではあります。


・・・さてここでその1年前の2015年の説明をブルームバーグさんの検索窓で出てきた記事で確認してみましょう。、

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2015-03-27/--i7qwj1ta
【クレジット市場】黒田目標あと2−3年、価格ギャップ鍵−渡辺教授
野沢茂樹、Chikako Mogi
2015年3月27日 9:03 JST 更新日時 2015年3月27日 11:11 JST

『日本銀行の黒田東彦総裁が目指す2%の物価 目標はあと2−3年で達成。消費者物価の実証分析で知られる東京大学大学院の渡辺努教授は、その鍵を本来あるべき水準と高止まりした価格とのギャップ縮小にあるとみている。』(上記URL先2015年3月27日記事より、以下同様)

ということで説明があるのですがそこは飛ばしまして、

『同時に渡辺教授は、価格ギャップは異次元緩和によって「それなり に埋まってきている」とも指摘。消費者物価が上昇する中で「予想インフレ率が持続的に2−3%にアンカーされるには、あと2−3年はかかる」と読む。「金融政策では価格ギャップのほうが需給ギャップより重要」であり、「解消するまで辛抱強く待つしかない」と語る。』

なるほど。ところで直近の説明(一番最初のブルームバーグ記事ですな)だと「価格ギャップ」というユニークな分析についての言及が一言半句とも無いように見受けられますが、「金融政策では価格ギャップのほうが需給ギャップより重要」とまで仰っていたのはどちらに行かれたのでございましょうか??????


・・・でまあ何と申しましても大先生におかれまして白眉なのは黒田日銀の1年前の2012年3月のお話。ちなみにブルームバーグの検索窓でもヘッドラインは出てくるのですが、URL先がリンク切れになっていまして、記事のお題あたりを適当に別の検索エンジンにぶっこむと過去記事のサルベージができましたので貼っておく。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2012-03-29/M1MDTO07SXKX01
日銀の物価上昇1%達成でも真のデフレ脱却と言えず−渡辺努東大教授
日高正裕
2012年3月29日 9:10 JST

>物価上昇1%達成でも真のデフレ脱却と言えず
>物価上昇1%達成でも真のデフレ脱却と言えず
>物価上昇1%達成でも真のデフレ脱却と言えず

そのまえに「日銀の」とありますが(記事にもあるけど)当時は日銀が当面の物価安定の目途というのを出して、「最終的には2%を目標にするけど当面は1%を目指す」ってなのがあった訳でして、日銀ご出身の大先生様はこれを受けて華麗に白川日銀を砲撃しておられた訳ですな、ということで記事を確認。

『東京大学大学院の渡辺努教授はブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、真の物価は総務省の消費者物価指数(CPI)前年比上昇率より1ポイント以上低い可能性があるとし、日本銀行が目標として掲げる1%に達しても、デフレから脱していないという事態が起こり得ると述べた。』(上記URL先2012年3月29日記事より、以下同様)

とまあそのように仰せだったのでして、そうなりますと一番最近に仰せになっておられる0%目標に変更すべきというのは敗戦思想をも超越してデフレ容認という事になりますな。おー凄い凄い。

しかしまあこの過去記事を見ると色々と味わいがありますな(めんどいのでごく一部しか引用しないけど)。

『渡辺教授は「1%の根拠は何かをもっと明確にすべきだ。誤差と言っても、私たち以上に踏み込んだ研究をしている例は、私の知る限りない。日銀は何を根拠に、どの数字を見て、どの程度の誤差があるかという説明を一切していない」と語る。』

物価目標を0%に変更する根拠は何かをもっと明確にすべきだ、ということですね!!!!!


・・・・・・・とまあそういうことでして、いやあのすいませんこれはもう岩田木久扇置物大師匠とかなりの好勝負を演ずることができそうですが、ジャパンにおかれましては金融政策に絡んでくるような経済学の学者先生ってのはこういうのしか居ないのかよ!!!!!と泣きたくなる(先般のタカ&トシ大先生の「全然現実を踏まえない計算」にも腰が砕けましたなそういや)訳でございまして、もう情けないったらありゃしないという所ですな。全員がそうだと言っている訳ではないけど、こういうの淘汰のメカニズム働かないのかねと思ってしまいますわ。

いやまあ別に0%の物価目標を提唱して頂いてもそれはそれで1つの主張ですから一向に構わないのですが、学者として偉そうに白川日銀に砲撃を散々加えておきながら、白川日銀時代よりも低い物価目標を良しとするのであれば、「全然効かないことはこの5年で確認できた」とか日銀のせいにするんじゃなくて、自分だってリフレ理論っぽい話をしていたし、政策は効くとか(しかも導入当初ではなく2015年に)言ってたわけですから、まずはその理論のどこに問題があったのかという自己批判と総括をしていただきたいですし、それは無しでいきなり最初の話ということになると、置物大師匠の別バージョンにしか見えないんですよねえ・・・・・・・・・

つーことで、何だかなあというヘッドラインを見つけてしまったのでついついイカって日銀の政策委員とかでもない人に向けて強めに悪態入れてしまいましたな(大汗)。







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