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2004/12/30

お題「来年のテーマは?」

今年もありがとうございました。

○来年の課題:量的緩和政策の軟着陸をどうするの?

昨日の日経金融新聞の1面は産業再生機構のミサワとダイエーへの支援に関連して「国の関与はこれで終了にして普通の状態に戻るようにしましょう」ってなお話が書いてありました。今の今まで国の関与を散々奨励して一転してそれかよって気もしますが、まぁそういう野暮な突っ込みは置いといてですなぁ・・・・・

どうも来年は景気の実態がどうのこうのとか物価指数がどうのこうのという話は別にして、量的緩和政策をどうするべぇという雰囲気に持っていくとゆ〜流れがそこかしこから表面化してますんで、とりあえず来年は「ペイオフ全面解禁(実は抜け穴だらけですが)」→「金融不安の払拭」→「過剰な流動性供与の見直し」というお話が最初に出てくるという見方が強くなってきていると思います。

で、まぁその為には「量的緩和の量の意味をレビューしましょう」って話になるのですが、実質的に意味は無くても「意味があった」という事にしないと間違って景気が失速した場合に打つ手が無くなる(というか国債の買入拡大とかの福井日銀として望ましくない政策を打たざるを得なくなる)ので、無理矢理意味が有る事にするというのが予想される結論かと思います。

じゃあ「政策効果として意味がある」当座預金残高目標という「量」をどういう理屈をこねて減らすかというのは先日も申し上げたように、「デフレスパイラルに陥る懸念が払拭され、金融システム不安も払拭されており、下支え部分は不要になりつつあるので量を減らしましょう」って事になると思います。


問題はそうすると「量的緩和政策のコミットメントを変更して早期に量的緩和政策が解除してくるのではないか」という思惑(何せ水野審議委員まで言っている訳ですし)が働き、実際には意味の無い程度の当座預金残高目標減額(30〜35兆円を20〜25兆円に下げると言った程度の話)であっても、市場が勝手に反応して早期量的緩和解除を織り込みに行って大暴れモードになるという事でしょう。(そう考えますと水野さんが「量的緩和の条件変更」を示唆したのは却って当座預金残高目標減額の実施を難しくしている訳でして、水野さんの元気なご発言もまた諸刃の剣かと存じますって感じですな。)

もちろん、量的緩和早期解除を勝手に市場が織り込んでくれて日銀が市場追認の形で量的緩和の解除条件達成前に緩和政策を終了させてしまうというシナリオをそれで良しと日銀が思っているのであれば話は全然別なのですが、あれだけ大騒ぎして設定した「時間軸のコミットメント」という梯子を有耶無耶のうちに外すというのは「お前は繰延税金資産という梯子をいきなり外す金融庁か」ってなもんで、それはどうなのよって思う次第ですわな。と、書いておりますと(その当時は金融市場におりませんでしたが)日銀が「ゼロ金利解除ありき」という前提で雰囲気作りをせっせと行って市場にゼロ金利解除を織り込ませた2000年の再来という悪夢も思い出される訳でして、まぁどうなんでしょうねって気は致します。


どちらにしても、来年は「量的緩和解除の条件達成」の話をさておいた形での「量的緩和政策の軟着陸」って話が出てくる事でしょう。


○しかし本当に量的緩和政策を解除できるのかというと・・・・

正直、やってみないと良く判らんという所が沢山あるのですが、現状の金融市場は「量的緩和政策を前提とした」状態で回っていると思しき箇所が沢山ございまして、大丈夫かね〜って部分は多々ある訳です。思いつくものを適当に並べますと例えば・・・・

・国債のRTGS決済がちゃんと回るのか
→一応RTGSのスタート時点では通常の金利(って言ったって低金利でしたが)体系の下にありましたが、その時点から見て国債(特に短期国債)の発行量が莫大なものになっており、日中流動性の問題がちゃんと回るんでしょうかって疑問が少々。

・同じ理屈で資金のRTGS決済がちゃんと回るのか
→決済がちゃんと回るのかと言う点で懸念している理由はもう一つあります。大手銀行を始めとして、金融機関が物凄い勢いで集約化されておりますので、以前に比べまして「どこかで決済が止まった場合のシステミックリスク」の与える影響がでかくなっているのではないかと思う訳でありますが、これもまた「通常の金利体系」である「所要準備カツカツの当座預金残高」の世界でのテストが無い訳でして、さて今の太平楽な状態で大丈夫なんでしょうかって気が。

まぁこの辺は当初混乱する程度で済んで欲しい話ですが。

・短期国債の消化はどうなるのよ
→莫大なる外為特会のバックファイナンスを担う短期国債は正直言って量的緩和のお蔭で無事消化されているようなものでして、まぁ今の所は少々当座預金残高目標を減額しても無問題とは言え、通常レベルまで外した場合にどうなのよってのはこれまた「やってみないとわからない」面がありますわな。

・中期国債の消化はどうでしょ
→量的緩和の時間軸と金余りを前提にして大手銀行を中心に2年債やら5年債やらは絶賛無事消化されているのですが、この前提条件が崩れた場合にちゃんと消化できるのか。特にあたくしが懸念するのは2年債でして、量的緩和政策実施前の発行額から比較して2倍とかの発行をしている訳でして、これが無事に消化できるかというと甚だ疑問。大手銀行の資金ポジションが大きく変った場合に5年債もちゃんと消化できるのかも謎ではありますが。

最終的には「金利で調整する」って話になるので全く消化できない話ではないのですが、今のままの発行ペースで量的緩和政策を外してしまうと、長めの短期金利から2年あたりの金利が物凄い勢いでスティープニングが発生して、イールドカーブ上中期ゾーンが思いっ切り膨らむ形になるのではないかと思うわけです。中期債ディーラー受難の時代が始まるわけです。


・ペイオフ解禁の抜け穴が一部塞がる訳だが
→ペイオフ解禁って言っても「決済性預金の保護」という大いなる抜け穴がありまして、まぁ要するに付利ゼロの預金にぶち込んでおけば預かり賃も(今のところ)取られずに全額保護なので、他の預金に置いていても大してちがわねぇのなら別に預金シフトする必要もなかろうってお話。これが金利が上りだした場合にそのまま決済性預金に無事にお金がいてくださるのかどうかは「やってみないと判らない」訳でして、実は4月のペイオフ全面解禁よりも、ペイオフ全面解禁が金利上昇局面に耐えられるかという方が重要だと思う次第。

・運用難マネーが突っ込んでいるお金が減ると・・・・
→これも良く判らんのですが、まぁ水野審議委員が就任記者会見で指摘したように、量的緩和政策の長期化で行き場を失った運用マネーが訳のわからん仕組債やら不動産証券化商品やらに大挙して絶賛大流入を継続しておりますので、この流れが止まった場合にどうなっちゃうのよってのは誠に遺憾に存じ奉る次第であります。特に懸念されるのは不動産証券化商品(のうち、借り入れでレバレッジ効かせまくった心温まる商品群でしょうかねぇ)でございます。もうちょっと証券化バブルは続いていただかないと困る向き多いんじゃネーノ?

・「外為特会ルート」が途絶して大丈夫か米国の財政赤字?
→双子の赤字などと言われながらも援蒋ビルマルートよろしくせっせと米国の財政バックファイナンスを支えた外為特会ですが、量的緩和政策で無事に消化されていた短期国債(というか正確には政府短期証券ですがまぁ同じ話)が無事消化されなくなって(というか調達コストが絶賛上昇して)平気なのかね〜何てのもある訳です。まぁよーわからんが。


とまぁあたくしの無い知恵で適当に思いつくものを並べただけでもうじゃうじゃと出てくるくらいに量的緩和政策というものが、あちこちの「前提条件」になってビルトインされている状態になっている訳でして、この「サステイナブルでは無いけれども妙に安定している」という状態が量的緩和政策の解除によってどういう遷移状態を形成するのかという点は興味があると同時に大丈夫かね〜って思うわけです。と言っても結局「やってみないと判らない」ので、まぁ色々と起き得る事を想定してくださいねって事なんですが。


○年末なので口上

というわけで今年もあたくしの与太話にお付き合い頂きまして誠にありがとうございました。皆様にとって来年が飛躍発展の素晴らしい年になりますように祈念致します。来年も宜しくお願い致します。







2004/12/29

お題「昨日思った徒然なるお話って要は雑談ですが」

○雇用は改善するも・・・・

昨日朝一発目に発表された経済指標は雇用関連と個人消費関連の指標でしたが、失業率(4.7%→4.5%)と有効求人倍率(0.88→0.92)が結構改善しているのに、勤労者世帯消費支出が▲0.7%となっておりまして、この数字を見た最初の印象は誠に複雑なものがございますわな。

「雇用のトータルは改善してるけどパイは減っとるんかいな」と思ってよくよく見たら現金給与総額は+0.4%で3ヶ月振りに増加している(この辺の数字って実はど〜ゆ〜意味なのか良く勉強してないので数字の字面だけの印象なんですけど)ので必ずしも労働分配が悪化しているわけでは無いんでしょうが、どうも最初の数字を見ていると「労働者は文句を言わずに働けということですかはぁそうですか」ってなもんで、先日ドラめもんで悪態をついた「安全に金ケチってね〜か」って問題と相まって労働環境は昭和の御世へと徐々に戻りつつあるのではという悪寒が激しくなって来る物でございまする。

昭和の御世のように「明日は今日より豊かになる」って希望があって現実に経済のパイがトータルで成長してくれりゃぁ厳しい労働環境もまた楽しいのかもしれませんが現状はねぇ・・・・・


○リレーションシップバンキングねぇ・・・・(-_-メ)

昨日朝の某経済ニュース番組で「金融庁の金融制度改革がどうのこうの」って話しがありまして、「金融改革のポイントが利用者重視に」とかいうごたくを「また寝言か・・・」などと思いつつ金融庁のWebを見に行きましたら別の物を拾って参りました(^^)。

http://www.fsa.go.jp/news/newssj/16/ginkou/f-20041127-2.html

「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラムの進捗状況について」ってのを拾って参りまして、まぁざっと読んでみたのですが、相変わらず「机上の何ちゃら」という感が拭えない訳でございます。細かい突込みをしだすとこの話もとんでもない大作になっちゃうんですが、そこまで突っ込んで読んでおりませんのでまぁ思いついた突っ込み所を少々。

今回は金融機関の取り組みぶりのご紹介とその評価って話になっておりまして、別紙資料ってのに色々と内容が紹介されております。で、そこを見ると「それのどこがリレバンなのよ」って突っ込みを入れたくなる事例が並んでいて、「作文っていうのは大変なことですなぁ(棒読み)」ってなもんです。

量も沢山あって中々楽しめるのですが、幾つかの項目だけ拾って眺めると致しましょう。

・早期事業再生に向けた積極的取組み

って所(3番目の項目)の最初に中小企業の過剰債務構造の解消・再生の取り組みがどうたらこうたらってのがありまして、その最初の事例としてご紹介されているのを見たらこんなものが。

『本支店の法人営業担当者全員がそれぞれ1社以上の支援企業を選定し、経営改善計画の策定・実行を支援する「一人一社運動」と展開。』(東海財務局管轄下の銀行)

・・・・・あたくしも昔々銀行員って商売をやった事があるので実に良く判る行動様式でして、苦笑を禁じえないのですが、確かリレバンってのは地域金融機関が顧客との長期的な関係ときめ細かいモニタリングによって中小企業金融の活性化を図りましょうって話だった筈なのですが、「一人一社運動」という実に銀行らしい「とりあえず全員一件何かやりやがれこの野郎」という本部主導のローラー作戦のどこがどうリレーションシップバンキングなのかあたくしにはさっぱり理解致しかねるものでございます(-_-メ)。

まぁこのあたりの部分は正直どこがどうリレバンなのかさっぱり判らない「広域企業再生ファンド」だの「DES、DDSの実施」だのという事例が並んでいるわけで、結局「お前ら新しい事をやりやがれ」と言って、ノウハウを導入すると言う名目で余計な負担を地域金融機関に増やして差し上げているだけのような気が激しくするわけでございます。

・新しい中小企業金融への取組みへの強化

って部分(4番目の項目)はアクションプログラムが出た時点で既にあたくし「何ですかこれは」と悪態をついた覚えがあるのですが、こちらに関してはそもそもが変なだけに、金融庁様におかれましては何で表を作りながら気が付かんのかよって言いたくなる表現が(-_-メ)。

上記項目の事例紹介の最初の項目は『(1)ローンレビューの徹底、財務制限条項やスコアリングモデルの活用等、第三者保証利用のあり方』ってなっているのですが、この時点ですでにダウトな訳ですわな。

ローンレビューの徹底ってのはモニタリングとか事前審査の精緻化ってお話の筈。然るに、スコアリングモデルの活用ってのは貸出審査の簡素化って話な訳ですし、財務制限条項の活用ってのも基本的にはモニタリングを精緻化していれば必要ない(財務諸表に問題が出てくる前に気が付くことだから)筈のことでございますので、こういう項目を作っている時点で「矛盾する概念を包含するとは新しい取組みだわこりゃ」と金融庁様の慧眼に大変感服して顎が外れる思いであります。

まぁ当然ながら並んでいる事例も大変に心温まるものが多うございまして、例えば・・・・

『担保制限条項及び財務制限条項を活用した、原則、担保・第三者保証人不要の新規取引先向け低利融資商品を取扱開始』(関東財務局管轄の銀行)

→そもそもリレバンって「顧客との長期的密接な関係を基にする」って概念ではなかったでしたっけ??

『スコアリングモデルに、業種別(建設業)モデル及び個人事業主用モデルを追加し、精度を向上』(中国財務局管轄の銀行)

→個人事業主の財務諸表なんてあてにならねぇだろうという突っ込みもさることながら、「精度を向上」って開始後半年そこそこで精度が上ったかどうかって結果が出るという素晴らしいレビュー能力に大変に頭の下がる思いでありますなぁ。ワカルワケネェダロ

まぁ何ですな。この「取組み」とやらは結局役に立つのかとっても疑わしい「スコアリングモデル」だの何だのという物を地域金融機関に売り込む「最先端の金融技術」をお取扱になられる方々を大変に潤すだけのお話ではないでしょうかって気が物凄い勢いでする訳でございます。

まぁ地域金融機関(だけじゃなくて大手銀行もそうなんですが)の皆様に置かれましては、この手の「尤もらしい金融工学」に頼ることなく、本来のノウハウを磨いていただきたいものであります。

突っ込みだすときりがない上に血圧が急上昇するのでこの辺で。


○プルーデンスの「机上の・・・・」傾向は何とかならんのか

時々日銀の要路の皆様が「金融の新しいあり方」といったお題で講演やら何やらを行うと「なんじゃそりゃ」って突っ込みをあたくしやっておる訳ですが、直接監督を行う金融庁の方がこの傾向は酷いと痛感する次第で、時間の経過と共に少しはましになっているかと思って(期待してませんでしたが)今回の金融庁の資料をチェックしましたが、どうも益々脳内思考モード爆裂の方向に向かっているようで、誠に遺憾でございます。

昨今の金融行政というかプルーデンスに関る政策立案に大きな影響を与えたと言われる(実情は知りませんが)木村剛氏が鳴り物入りでおっぱじめた「新しい金融のあり方」であります「日本振興銀行」がまぁどうも大コケの雰囲気を醸し出しているという大変に判りやすい事例が目の前に展開されているという昨今でありますし、いい加減「頭で考えた金融行政」から脱却して頂きたいと思うものであります。

あたくし銀行の現場で金貸しをする時間はほんの短期間(2年ちょっと)しか無かったのですが、そんなヘボいあたくしの目から見ても「ちょっと今の方向はおかしいんじゃネーノ」って思っちゃう状態な訳でして、どうにかならないものかと思っちゃう訳ですよ。昔のお客さんを思いだすと益々ね。

まぁ身を切って「新しい金融への取組み」が砂上の楼閣であったことを実証して下さりつつある木村剛さまはある意味貴重な天然資源とも言えるのですが、何だか彼の執筆活動状況を見ていると、ビジネスモデルの失敗を認めずに辞めていった幹部社員たちのせいにしそうな気配なので、それはそれで実に残念なことでございますわな。

まぁ「プルーデンス政策=木村剛氏」と言うのは例えとして極端すぎるとは思いますが、何だかそんな感を深くする昨今でございました。







2004/12/28

お題「年末でネタが無く雑談を少々」

週明けと共に見事なまでの年末モードになっている訳ですが(^^)。

○昨年も謎の下落だったわけだが

下げてからこ〜ゆ〜事を書いても見事なまでの証文の出し遅れで誠にアホーとしかいいようがありませんが、昨年の年末をあたくしの手控え帳というエエカゲンなもので振り返りますと、年末渡しが終了した12月26日に謎の下落を演じておりまして、大納会に向けての3営業日で先物ベースで80銭ほど下落しております。

昨年の下げは(あたくしの帳面によりますと)外部要因がどうのこうのとなった訳ではなく、市場の内部需給要因というかよーするに大手投資家さまのポジション調整売りで下落の図って形になっておりまして、昨日の債券市場もまた然りという感じかと。

総じてこの時期は取引の薄い中一方方向に振れる傾向があるのですが、大きく振れた後に多くの投資家さまが相場に復帰する新年明けになりますとあっさりと相場が元に戻ってしまうというかトレンドに戻る(2001年の年末は天井をつけて年始から格下げ騒動で先物大暴落しましたが2002年は平穏なじり高相場と記憶してますが)の図という感じかと勝手に後付けへ理屈をこねておきましょう(^^)。

ちなみに昨年は年末に謎の下げをやったあと年始大発会でも下げをやりまして、あららって感じだったのですが、その後見事に相場は反発しております。


○「BOJウォッチング」ウォッチング

債券市場関係者しか読まない「日経公社債情報」という週刊誌(誌と言うほどの厚さはないのですが)がありまして、その中に毎回「BOJウォッチ」というコラムが1ページ分あり、数名の筆者がペンネームで寄稿しています。

著作権がどうのこうのって問題があるから詳説は避けますが、今週号の記事のネタは水野審議委員でして、その中で3分の2位をあてて「実は水野審議委員を招聘したのは武藤副総裁であって、武藤さんの思惑はこんなものである。と言われている」という感じで色々な憶測を並べた後に「でも筆者は水野さんに政策委員会の政策論議の活性化を期待したい」と締めておりまして、前半の憶測ご紹介はただの字数稼ぎですか貴方はって感じでありました。

「憶測」はいくつか紹介されていましたが、その中で最初に紹介されていたのは「日銀プロパーから警戒されている武藤副総裁が次期総裁就任を睨んで日銀の内部が考える『量的緩和政策の早期解除』に積極的といわれる水野さんを起用する事によって日銀プロパーへの受けをよくしようと考えた」ってのがありまして、それはちょっとどうなのよって思っちゃいましたが。

あたくしつらつら拝見するに、武藤副総裁は残り2名の執行部の面々と比べてあまり(というか極端に)表だって講演やら記者会見をしない傾向にあるのですが、出てくる場所が結構重要というか日銀として「これから重要だ」と思っているポイントのセミナーとか講演会とかでして、しかも武藤さんの話は「日本銀行はこれからこの問題に関してどう考えているのか」という事をきっちりと話してくれているという印象が強いです。

日銀の内部的には武藤副総裁って頼りになる存在なんじゃないかな〜と思いますがね。トップダウンで突っ走るわ不規則発言は連発するわの福井総裁と所構わず自説を遠慮なく開陳して国会で危うく「執行部内不一致」を露呈しそうになった岩田副総裁と比較すると安定感が全然違うと思いますが。


まぁそれはそれとして、以前この記事で別の人が書いていたものには仰天しました。と言いますのは、同じネタで「水野さんを政策委員に推薦したのは財務省で、財務省は日銀が量的緩和政策の早期解除を行うように仕向けて、時期尚早の解除が失敗したあとに政策の失敗をネタに日銀を支配下に置こうと陰謀を画策している」という事を書いている人がいる訳ですな。数週間前の記事でしたが。

で、この記事だれが書いているんでしょって聞いたらどうもあちこちでこの説を吹聴している人がどこぞの外資系証券のアナリストとしておられるらしく、おまけにこの某センセイはもと日銀のお方だそうで。

まぁ何考えても自由ですから、どんな陰謀論を唱えるのも個人の勝手であることは勿論なんですが、「財務省は国民経済を犠牲にしてまで省益を追及しようと陰謀を企んでいる」って説を堂々と唱えるとそれは自分にも降りかかってくるお話しでして、「日銀内部では自分の立場の強化の為には国民経済を犠牲にしても良いと考える人間がいるのか」という印象を与えちゃうんじゃねえのかねって思っちゃうあたくしはひねくれ者ですかそうですか。

まぁ日銀OBとしてあまりレベルの低い陰謀論を唱えるのは、出身母体の名を汚す事にならんかね〜などと裏でコソコソと悪態をつく路傍の石のあたくしでございました。しかし「発言は自分に降りかかってくる」何てのは「オマエモナー」と思いっ切り言われそうなのでこの話しはこの辺で^^。


○結局読みきれなかった本の書評もどき

・経済論戦の読み方(田中秀臣、講談社現代新書)

野口旭さんと共著の「エコノミスト・ミシュラン」でこの方の文章構成には辟易していたのですが、ご本人のブログで宣伝していて(ブログの中では)評判も宜しいようでしたので購入したのですが・・・・・

自説が正しいって話しをしたいのは良く判りますし、新書と言う形式で字数が取れないから仕方が無いのかもしれませんが、自分と対立する説は「教科書的にも間違いが明らか」であり、自説はアプリオリに正しいという風に読める部分が随所に見られて非常に読みにくく、第2章の「構造改革とマクロ経済政策」の説明で漸進的改革がビックバン型改革に勝るって説明の部分で挫折してしまいました。正直基本的な素養に欠けるあたくしには手に負えない。

最初の方でも「世間知に対抗したい」という意識の現われなんでしょうが、「???」の理屈が展開されている箇所がありました。GDPの説明をしている部分で「純輸出の対GDP比率はわずか1割に過ぎず、『貿易立国』という日本のイメージにはほど遠い。米国、イギリス、中国などに比較するとかなり低い割合である。」って記載があるんですが、貿易立国かどうかって議論はネットの純輸出だけじゃなくてグロスの輸出入も見ないといけないんじゃねーのかよと思わず突っ込んでしまいました。

という訳で、読みかけで挫折した本の書評というのは誠に遺憾なのですが、とりあえず書いてしまいました。わけのわからん件を読み飛ばしてまた先を読む事としたいと思います。誰かリフレ派といわれる人たちの説を判りやすく解説してくれる書籍をご紹介賜りたいのですが・・・・・

ISBN4-06-149760-X \720







2004/12/27

お題「金融政策決定会合議事要旨をもうちょっと読む」

偉そうな題名ですが、基本的に年末進行で簡単に。

まぁ昔の話ではありますが、先日公開された10月29日と11月17〜18日の金融政策決定会合議事要旨からちょっとトピックスを拾ってみます。正直気が付いた順なので順不同。

10月http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g041029.htm
11月http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g041118.htm


○「当面の金融政策運営に関する委員会の検討」の量

10月の金融政策決定会合では、展望レポートを決定する日であった(のに何故日程が一日なのか理解に苦しみますが)事もあり、金融政策に関する話はあまりウェイトが置かれなかったようです。いつもなら必ず何かの話しがある「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」がやたらとあっさり味になっておりましております。

で、11月の決定会合では「当座預金残高目標の引き下げ」に関して議論が行われた形跡があるのは先週末にご紹介した通りでありまして、どうもこの時点での日銀政策委員会は金融政策の出口に向けたお話ししか頭にないようですな。(というのは読み方が浅く、実は別の話しもあります。2つ先のトピックスをご覧下さいませ、って内容直せって言われそうですが)

ちなみにこの時点で市場はどの辺にいたかと言いますと、例によってざっくりですが、10年新発債の終値ベースで10月29日が1.490%で11月18日が1.430%と、当然ながら現在の水準よりは金利は高いのですが、徐々に「やっぱ景気ちょっとどうよ」モードになりつつあるの巻って状況でしょうか。


○ペイオフ解禁を気にしすぎなんでしょうな〜

10月29日の決定会合では上記のように展望レポートの検討で時間を大きくとられているようですが、その中で足もとの金利情勢に関してこんなコメントがあり、ちょっとホッと致しました。

『短期金融市場について、何人かの委員は、引き続き安定しているとの見方を示した。ある委員は、ペイオフ解禁を控えた年度末越え金利が低下していることについて、金融システムに対する不安感の後退を表しているとの解釈も聞かれるが、実際には量的緩和政策の時間軸に対する見方がやや強固になっている可能性もあると述べた。』

どうもペイオフ解禁に関して日銀(というか政策委員会)は妙にナーバスになっている(実際は尻抜け解禁なので無問題でしょうというのは何度も申しあげていますが)ようで、短期金融市場で金利が跳ねる(最近は全然跳ねないが)と「すわ金融システム不安か」となるようで、ちょっと違うんじゃネーノと思っていたのですが、この記述を見ますと、ちゃんと理解している方もおいでのようで一安心といった所です。


○量的緩和政策の逃げ水化を提唱する人も相変わらずいるんですね

10月29日の決定会合ではこんな議論もありました。

『これ(引用者注:展望レポートで05年度のCPI見通しがプラスになる事)に関し、ある委員は、量的緩和政策継続の第2の条件について、「ゼロ%を超える」という基準より高めの数値を示してはどうかと述べた。』

『別の委員は、第2条件の明確化ないしは中長期的に達成すべき望ましい物価上昇率を示してはどうかと述べた。』

まぁ10月時点でしたので、まだ景気の先行きに関しては大勢が強気って感じでしょうから仕方が無いのかもしれませんが、どうも量的緩和政策の解除に関して激しく懸念している人が最低でも2名存在すると見てよいのかと思います。中原さんと岩田副総裁ですかね〜?

『さらに、同じ委員は、量的緩和政策を解除する際の金融市場調節の基本的なスタンスとして、当座預金残高縮小のテンポや国債買入オペを含めた各種調節手段の発動の仕方に関する基本的な考え方を示すことも考えられるのではないかと付け加えた。』

まぁこの点については結局ケースバイケースになるでしょうし、そもそも以前ご紹介した山口前副総裁のインタビューにもありましたように、量的緩和政策における「量の意義」がどこら辺にあるのかという事が問題になるでしょうな。たぶんどこかの閾値を越えた時点で量に意味が無くなっているのではないかと直感的に思いつつも、実質的な非不胎化介入(懐かしや)の実施という効果もあったのではないかと思うわけで、やっぱ訳判らんですな(汗)。


○11月時点でもまだ景気の先行きに強気なのは凄いなぁと思う訳で

10月末の時点で景気に強気なのは判るのですが、11月時点でも結構強気が継続されています。確かにこの時に発表された金融経済月報に関しても、足もとの景況についての減速は認めながらも、先行きに関してはまるっきり変化なしという強気継続で「はぁそうですか?」って感じだったので、こう書かれても違和感が無いと言えば無いのですが(^^)。

『何人かの委員は、展望レポートに対する市場の反応についてコメントした。これらの委員は、展望レポート公表以降、長短金利が落ち着いた動きとなっていることを指摘し、同レポートで示した日本銀行の金融政策運営の考え方は、市場において特段の違和感なく受け止められているとみられる、との認識を示した。』

いや、そうじゃなくて・・・・・日銀の先行き強気見通しはそれとして、足もとの景気原則を示す経済指標に反応していたんだと思うのですが・・・・(汗)

『このうち、複数の委員は、現在、金利が落ち着いている背景には、市場では、景気の先行きについて日本銀行に比べて慎重にみている参加者が多く、金融政策の枠組みの変更に関する議論が差し迫った課題として受け止められていないという面もあるとして、今後、景気回復が進んでいく過程において、情報発信のあり方について引き続き工夫を重ねていくことが重要である、と指摘した。』

ご指摘その通りですわな。この「複数の委員」が指摘しているのは要するに「日銀の景気見通しと市場の景気見通しに乖離が生じつつある」って事だと思われます。乖離しているときこそ日銀からの情報発信がムツカシイという訳でして、『工夫を重ねていくことが重要』って事になると思います。

それに関連して、GDPデフレーターの連鎖方式への移行に関してコメントが。

『ある委員は、GDPの改訂が足許における景気の減速感と結び付けて理解されることがないよう、情報発信に当たっては十分に留意する必要がある、と述べた。』

散々ドラめもんで悪態をついているのが聞こえたのかどうか知りませんが(^^)、まぁ日本銀行さまに置かれましては不用意な情報発信(というか誰かさんの不規則発言ですけど)によって相場に燃料を投下する事の無いように一つお願いしたいというところでございます。

まぁこの件を見ておりますと、「足もとの景気が減速している為に長短金利が低下している」という事に関して、政策委員会がちょっと懸念しているという事が読み取れると思います。確かに下手に金利の低下が進行するとその後の反動で余計な金利上昇をしてしまうっていう事例をこの2年間で2度派手にやっておりますんでナーバスになりますわなって所です。


それでは〜(^^)。






2004/12/24

お題「当座預金残高目標の減らし方」

またも出だしは火曜日(12月16日追記:水曜日の間違い)の補足と訂正であります。とほほ。
(以下22日のエントリーに当該部分を転載したため、こちらはカット致します)
それにしても福井総裁の説明はちょっと不親切というか紛らわしい言い方で、取りようによっては「輪番減額も議論としてはオープン」と取れてしまうような言い方をするのは如何なものかと思う訳です。福井さんってどうも「発言のガードが甘い」んですよね〜。

それでは本題。本日はクリスマスイブですんで簡単に(謎)。


○当座預金残高目標維持が困難なのは・・・・

火曜日(追記:同じく水曜日の間違い)には10月29日と11月17、18日の金融政策決定会合の議事要旨が発表されました。まぁ色々と読むところはあるのですが、今朝は11月17、18日の議事要旨の「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」をネタにしましょう。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/g041118.htm

『このところ、年度末越えのオペを含め、短期資金供給オペにおいて札割れが発生していることについて議論が行われた。多くの委員は、金融システムに対する不安感の一段の後退などから、市場の資金余剰感が一層強まっている、との見方を示した。』

金融システムに対する不安感の一段の後退っつーのも何か微妙に違和感があるのですが、恐らく格付け機関の格上げ祭りを指しているのではないかとは思います。そもそもりそな救済スキーム発動以来「金融機関は最終的に国がケツを拭く」という暗黙の理解が強化されておりまして(減資はあってもデフォルトは無し)、不安感自体は既に無い筈。ただ、「無い筈」と言う形で断言モードにならないのは、肝心のインターバンク短期金融取引が長期化する量的緩和政策の副作用で死んでしまっているので、「金融システムに関する不安感の後退」が「市場の洗礼を受けていない」状況が背景にありますわな。

『そのうえで、委員は、今後の金融市場調節の運営について、短期資金供給オペの運営上の工夫によって、当座預金残高目標を達成していくことが必要であるとの認識を共有した。』

まぁそりゃ政策の運営目標ですから当たり前ですわな。


○ペイオフ解禁後に当座預金残高目標減額??

『ある委員は、少なくとも来春にペイオフ解禁が完全に実施されるまでは、金融市場や金融システム面の動向を注意深くみていく必要があると述べた。この点に関連して、何人かの委員は、金融システムに対する不安感の解消が一段と進んだ場合には、流動性に対する需要がさらに低下する可能性もある、と指摘した。』

この文章を素直に読みますと、ペイオフ解禁を無事通過→金融システムに対する不安感の後退→量的緩和政策の「量」の必要性の低下→当座預金残高目標額の減少って流れに繋がると思うのですが、まぁ議事要旨に最後の「目標額減少」を堂々と記載すると市場が予期せぬ暴れを起こす可能性もありますし、そもそもが思考実験の状態に過ぎない話しなので敢えて書いて騒ぎを起こす必要は無しという事なんでしょうかね。

ま〜ペイオフ解禁って言ったって、「決済性預金の全額保護」という素晴らしい抜け穴がある訳ですから、付利金利が屁の様な状態にあるうちは実質的にペイオフ解禁は尻抜け状態もいい所で、そうそう大規模な資金シフトは起きないでしょうし、資金シフトが起きなければ「輪の中の弱い鎖」も切れることにはならないと思います。屁でもいいから金利が欲しいっていう資金は既にCPだの現先だのに入っていますし。

とは言いましても、まぁ上記のような論理展開を持って「ペイオフ解禁は無事に通過し、金融システム不安は殆ど払拭されました」って大本営発表じゃなくてお話しになるのは思いっきり予想できる動きですので、ペイオフ解禁通過後に当座預金残高目標の減額が検討課題に上るのかも知れませんな。


○当座預金残高目標減額の障害は?

まず技術的な面を申しあげますと、これは短期金融市場関係者の意見がほぼ一致する筈なんですが、技術的な問題点は(30兆円を5兆円まで一気に落とすとかいう極端なことをしない限り)発生しないと思います。市場で資金需要が一時的に発生した場合の「なお書き」の余地を残しておけばよろし。ただし、またまた為替市場で円売り介入を物凄い勢いで実施しだすとこの限りではありませんので念の為。まぁ25兆円か20兆円位までは無問題ではないかと。

問題は毎度毎度あたくしが申しあげているように「政策の論理的整合性」という部分。まぁ「何でもありだから別にしれっと下げてしまえば」っていう考えもあたくしの頭をかすめちゃったりするのですが(^^)、やはり中央銀行の金融政策が「何考えてるんだかわからん」という状態にしてしまうのは「政策への信認」が失われる結果を呼び込む懸念が思いっ切りあるのでさすがに却下でしょうな。

で、あたくしがいつも申しあげているように、量的緩和政策における「量の意義」をレビューするのが本筋だとは思うのですが、何せ「量を増やす」=「緩和政策の強化」という理屈で突っ走っているので、「量を減らす」=「緩和政策の弱体化」→「金融引き締めですかぁ??」って話しになっちゃうので債券市場大騒ぎになる懸念は大有り。個人的には海外勢の方がこ〜ゆ〜ネタに反応しやすいという印象なんですけれどもね。

ではどうやって話しを有耶無耶にしつつ量を減らす(というのはやはり論理崩壊の上塗りなのであたくしとしてはあまり実行して欲しくは無いスキームですが・・・)にはどうしたらいいかという話が議事要旨の次の部分にしれっと書いてあるように思えるのは気のせいでしょうか??

『ある委員は、量的緩和政策には、金融市場の安定確保や緩和的な企業金融環境の維持を通じて企業のバランスシート調整をサポートするという効果があり、その成果は企業の資本収益率の向上というかたちで着実に現われてきている、と評価した。』

つまりですな、量的緩和政策の「量の効果」については「景気の下支え」「デフレスパイラルに陥らない為のサポート」「金融システム不安に対するアンカー」としての役割があったという理屈を持ち出して、「経済情勢を判断した結果、下支え部分を少しだけ減らしても大丈夫でしょうと判断」と言ったようなお話で当座預金残高目標を減らすって話しはやってきても何らおかしくは無いでしょうなって事でございます。まぁ増やすときは「金融緩和」と言っておきながら減らすときには「さっきの増額は支え効果を狙ったものに過ぎない」ってのも随分ご勝手な理屈だと思いますが・・・・・

議事要旨はこの一文の後にいきなり話題が変わっておりまして、妙なところでこの話題が終わっている事になっているのですが、どうなんでしょうかね〜??








2004/12/22

お題「市場との対話・・・・/債券発行における『直接金融』」

絶賛年末進行中ですが、心なしか街の人出が少なめですなぁ・・・

○ちょっとだけ気になった質疑応答

金曜日の日銀総裁記者会見は結構長かったのですが、まぁ「新札すり替え事件」に絡む質疑応答が多くて、その件に関してもあたくしも少々言いたい事もありますが、ま〜今更ですんでその話は省略。

で、それ以外の話としては当然ながら金融経済月報に絡んで景況感に関する質疑応答が多かったのですが、これに関しては昨日ご紹介した金融経済月報にあるように「足もと判断をだいぶ弱くしているのに先行き見通しは強気のまんまで全く変化なし」というそれで良いんでしょ〜か?っていう話しに終始しております。

もう一つ気になったというか象徴的だった質疑応答は「オペ見送り」に関る質疑でして、その部分について引用致します。やたらと質問が長いので適宜改行を致します。
(http://www.boj.or.jp/press/04/kk0412c_f.htm)

『本日、市場では長期国債の買い切りオペがあるのではないかという予想が強かったが、予想に反してなかったということで、市場は長期金利が上昇する、債券相場が下がるという反応を示した。』

『そもそもどうしてこういうことが起るのかということを考えると、現在、月1兆2,000億円となっている長期国債の買い切りオペは、もともと金融政策決定会合のディレクティブ(金融市場調節方針)には何も書かれておらず、現場の金融市場局の裁量で動かしうるものだという不安というかそういう認識があるためで、もしかしたら今月は1兆2,000億円やらないのではないかという不安も市場にあると思う。量的緩和政策を解除するまでこの1兆2,000億円というのを引き下げることがないのか。』

で、この質問に関して福井総裁の回答が(質問がやたら長かったせいで)またやたらめったら長くなってまして、適宜省略しながら引用します。

『個々の長期国債のオペをいつ具体的にやるかというのは、短期のオペレーションと同様に金融市場調節担当者が、資金需給の状況や市場の地合いを見ながら機動的に決めていっているものである。』

『それ(引用者注:量的緩和政策の解除)以前にどういう(金融政策の)ステップを踏むか、いつからどういうステップを踏み始めるか、踏み始めた後どういう内容でどういうテンポでそれをやっていくかということは、今は全くオープンだとこの前もお答えした。従って、その過程で長期国債のオペをどうするか、あるいは流動性供給量をどうするかということは全くオープンである。』


・・・・・これ質疑とも問題有りなんですが、まぁ現在の「市場との対話」のお寒い状況をよく象徴しているなぁと思った次第です。


まず、質問が根本的に間違っております。どこの記者が質問しているのか判りませんが、現行政策の前提というかそもそも論が量的緩和政策の長期化によってすっかり忘却のかなたに逝ってしまったという事なんでしょうな。どこが間違っているかというと「長期国債の買い切りオペは、もともと金融政策決定会合のディレクティブには何も書かれておらず、」という件。最後に長期国債買入額の引き上げが「金融政策会合で決定された」のは何と02年の10月30日でございまして、そのとき発表された「金融市場調節方針の変更等について」には(http://www.boj.or.jp/seisaku/02/pb/k021030.htm)このように書かれております。

『(2)長期国債買い入れの増額  これまで月1兆円ペースで行ってきた長期国債の買い入れを、月1兆2千億円ペースに増額する。』

という事で、この記者の質問が根本的に間違っている訳ですが、記者様が質問の中で「金融市場局の裁量で動かしうるものだという不安というかそういう認識がある」と言うのは、記者様の脳内現実で話している訳ではないでしょうから、誰かがこの記者様にそんな内容を吹き込んでいるとしか思えませんですわな。まさに市場に流布されたといわれる憶測がそんな感じだったんでしょうな〜ってな事なんですが、かくのごとくとんでもない誤解に基づいた憶測が流れるというのがいつもながら困ったものであります。

(12月24日追記:取材の結果質問者は「わかっているが敢えて聞いた」だけだろうとの事が判明しましたので、以下24日に書いた訂正謝罪文を挿入)
火曜日(水曜日の間違い小)は「この質問は何でしょう」って話しをしましたが、関係者様にお伺いしたら(って文章書く前に取材しなさいって言われそうですが)質問した人はベテランの記者さんで、質問のニュアンスは「市場ではこんな話しもでているそうだが大丈夫っすか?」って事だったそうですな。要するに判っていて念の為質問したというパターンであって、誘導質問でも素で判っていない質問でもなかったようです。

という訳で火曜日(同様に水曜日の間違い)は質問者に対してもうアホか馬鹿かという勢いでいちゃもんつけましたことを謝罪いたします。
(挿入終了)


で、この福井総裁の回答もちょっとお寒いものがあります。引用した中での1文目はまぁ大体仰せの通りですが、長期国債の買入は成長通貨供給というか日銀券見合いオペなんであまり「市場の地合いを見ながら機動的に」
やりすぎても困りますわな。

で、もっと「おいおい」なのは2文目でありまして、「量的緩和政策解除にいたる過程で長期国債のオペをどうするか、あるいは流動性供給量をどうするかということは全くオープン」という趣旨に思いっ切り取れる回答な訳でして、これでは「量的緩和政策の解除を行うだいぶ前から長期国債買入額の引き下げやら当座預金残高の引き下げを行う事もオープンです」って報道されちゃったらどうなっちゃうのよって事であります。

まぁ聞いた話ではこのお答えを福井総裁がした際に瞬間日銀の事務方様が凍っていたそうですな。変なフラッシュの打ち方(「長期国債買入の先行き減額を示唆」なんて感じ)をしたら週末のイブニングセッションなだけに相場がエライコッチャになっていた可能性が大な訳でして、さすがに報道各社の方が自制したようで誠に結構でございました。

そもそも質問が思いっ切り誤解に基づくものだったのですから、まず福井総裁としては「長期国債買入額は金融政策決定会合で決定している事項で、金融市場調節方針に書いてある」とご面倒であっても一言添えるべきでありまして、このあたりの軽率さ(言い方がキツイですが)が福井総裁の真骨頂でもあるのですが、市場をご自身で撹乱する要因になっているとお気づき頂きたい所です。


で、まぁこの質問した記者がどこに所属しているのかはマジで知らんのですが、どうもあたくしが普段全く読んでいないので話題の新聞小説も存じ上げないどこぞの経済新聞の金融政策に関する記事では、金融政策の枠組みに関して誤解をしてるでしょって記事が結構な頻度で出てくるようですので、まぁ猛省を促したい所ではありますが、猛省されてしまうとあたくしのドラめもんのネタが無くなってしまうという諸刃の剣でありますな(^^)。まぁ総裁もうちょっと丁寧に。



○大企業金融の「直接金融」は幻想かも知れないというお話

あたくし昔々とある銀行の支店で金貸しの手先をやっておったのですが、まぁこの時期になると当時の支店長様を囲む会なんかをやったりする訳です。で、昨日はそんな会の一つに逝ってきたのですが、当時の親分は現在某事業会社の財務担当役員をやっておられてまして、企業金融に関して興味深いコメントを拝聴致しました。脳内メモリーから書き出しますとこんな感じ。

「直接金融がどうのこうのと言うが、企業の資金需要の太宗は銀行借入で賄っているわけで、間接金融というか銀行の貸出が何と言っても重要」
「金を貸さない銀行というのは企業として取引を継続する意義は低い」
「そもそも社債発行しても、直接個人が買っている訳ではなく、購入者は金融機関であって、財務状況のプレゼンを金融機関に行っているのであれば結局銀行借入とやっている事は本質的に変らない」
「個人の投資行動が一朝一夕に変るものではなく、これからも金融機関に資金が集まる流れは続くから、直接金融の衣は纏っても資金の流れは間接金融という状況は続く」
「銀行の集約化も進んでおり、これからは銀行の役割は益々重要になる」


まぁ元銀行員が現役銀行員(あたしゃー違いますが)を鼓舞する為のお話でもあったので話しは少々割り引く必要があるかもしれませんが、まぁ「銀行がバランスシートを減らす事を考えるのはおかしい。もっと貸出業務を頑張れ」ってお話でして、妙な米国モデル崇拝によってやたらと直接金融崇拝を行う現在の金融行政のあり方に対する批判にもなっているお話。

だからどうなのよって言われるとまだあたくしの頭の中で整理がついてませんが、ちょっといい話だな〜と思ったので思考のネタとして一つよろしくです。整理ができていないだけにあたくしの思うところが上手く表現できているのか少々心もとないのですが・・・・・

(12月26日追記)要するに「現在の資金の流れは一旦金融機関を通過しており、直接金融の進展とか言ってるが、結局は最終投資家が直接社債を買ってるわけじゃ無いでしょ」ってご指摘なわけですな。当然ながらこの方もIRの意義とかは認めてるんですが、金融機関が投資家になっている直接金融って真の意味で直接金融っていえるのかいなってことでしょう。投信には直接金融の担い手として期待してるみたいですが。(以上追記終わり)


で、その後当時の小僧だけで2次会に行きまして、今や傍観者のあたくしは皆様のお話しを諸々お伺いして「ほうほう」と中々勉強になりましたが、そっちのお話はまぁ追々。皆さん偉くなられてまぁ色々と大変ですな。あたくしは貧乏暇あり(汗)。







2004/12/21

お題「よく見りゃ泣きが入ってる金融経済月報」

今週は年末進行のためネタが少々小出しモードになります。本題の前に「説明不足じゃネーノ」とご指摘賜りましたので昨日の補足説明をば。

(以下の補足説明部分は20日分に移動しました)

長くなっちゃいましたが以上が昨日の補足。



今更ですが、先週金曜日に発表された金融経済月報の12月分を例によって例の如く11月分とダラダラと比較してみる訳です(^^)。

http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0412.htm(12月)
http://www.boj.or.jp/seisaku/04/pb/gp0411.htm(11月)


○「基調としては」ってのは弱気転換への一歩でしょうね

冒頭の基調判断はこんな感じ。

(12月)『わが国の景気は、生産面などに弱めの動きがみられるものの、基調としては回復を続けている。』
(11月)『わが国の景気は、輸出、生産の増勢に足もと一服感がみられるものの、全体として回復を続けている。』

「全体として回復」→「基調としては回復」という変化でして、回復への自信が弱くなってきているって感じでしょうな。「基調としては」って言い方にはどうも「距離を置いた表現」というものを感じるのですがどうでしょうか??


○現状認識も多くの部分で判断後退してますなぁ

当たり前といえば当たり前なんですが、景気の現状認識に関る部分もあちこち判断後退しておりますな。いつも同じ順番で話をしてるんで、各部門に関して並べてみましょう。『11月』→『12月』という書き方です。

・輸出:『増勢にはこのところ一服感』→『横ばい圏内で推移』
・生産:『増勢にはこのところ一服感』→『弱めの動きがみられる』
・設備投資:『引き続き増加している』→『引き続き増加傾向にある』
・雇用面:『改善傾向が続き、雇用者所得も下げ止まる(変らず)』
・個人消費:『個人消費は底堅く推移(変らず)』
・住宅投資:『横ばい圏内で推移(変らず)』
・公共投資:『減少している(変らず)』
・おまけ:日銀短観をうけて『企業の業況感にも一部に慎重さが窺われる』

この設備投資のあたりなんかは実にウォッチャーが喜ぶ所でして、この「傾向」って言葉が一つ入るか入らないかってのが微妙な匙加減を感じるのですな。絶賛景気回復モードの頃は毎月せっせとこの「傾向」と言ったヘッジクローズ(笑)が外れて景気回復に自信を深めているの図でしたが、今回はちょっと泣きが入っているという風情でございますな。


○先行き判断が全然変化無いですが・・・・・

まぁこれだけ現状判断を弱くしているのに先行き判断に関してはまるっきり同じという素晴らしい内容でして、「この意地っ張り!」と声をかけたくなる訳です(^^)。

11月と比較して変化があるのは、『当面はIT関連分野の在庫調整の影響が残ると予想されるが』って一言が入っているだけで、基本的な部分は物の見事に全て同じでございます。いや〜意地っ張りですなぁ。


○物価は原油価格の影響に関してだけ変化あり

物価の現状は先月と同じです。先行き見通しに関して今月は『国内企業物価は、原油高の一服等により、上昇テンポが緩やかになるとみられる。』というところが変化ありでして、先月までは「当面上昇を続けるとみられる」って感じでしたのでやや先行き判断を弱くしています。その割には直前での景気先行き判断部分では「原油価格の動向と内外経済への影響は要注意」みたいな話はしているので、まぁ手放しで原油価格おちついて良かったねって状態でも無いようですな。


○民間資金需要がどさくさに紛れて判断後退??

金融危機とやらがどこかへ逝ってしまってからはあまり省みられる事も無い金融面に関してですが、よくよく見れば(ってよく見なくても気が付くが)民間資金需要の部分が微妙にこれまた判断後退なのかどうか微妙な表現変化です。

(12月)『民間の資金需要は回復方向の動きに足もと一服感がみられる。』
(11月)『民間の資金需要は減少テンポが幾分緩やかになってきている。』

どっちの方が判断として「強い」のか甚だビミョーな表現ではありますが、文脈をみると「足もと一服感」のほうが弱そうに思えますがどうでしょうかね〜?

まぁ民間資金需要に関しては景気回復傾向が持続するのよって話にも繋がる話だと思いますんで結構重要なのではないかと思う今日この頃。


という訳で、本日は前置きが長くなったので引用部分を少なめに。詳しくはお手数をおかけしますが、上記のURLをご覧くださいませ。


ではでは。






2004/12/20

お題「オペ騒動始末記」

年末になって突然話題を提供する日銀ってポイント外しませんな。

○債券市場で起きた事

金曜日の債券市場ではご存知のように日銀による長期国債の買入が実施されませんで、時あたかも金融政策決定会合をやっている日でしたので、「もしかして輪番(長期国債買入ね。以下輪番と表記^^)減額を決定か?」などという噂も流れたようです。まぁ誰も「そりゃあり得ないだろう」と思っていても実際に先物が売られちゃったりすると「間違って何かあったら・・・・」と不安にもなるものであります。

2日制の決定会合にしては終了時間も遅くなっていたので、終わるまではあり得ないとは判っていても、ちょっと不安は不安(2日制何もないと12時前に終わるので)ではありましたが、まぁ前場引け前に一気に買戻しが入ってさすがにその時点で不安心理は解消という感じではありましたが。まぁ人騒がせなオペ(見送り)でありました。

以下本件に関する論点整理。


○マーケットの誤解その1:金融調節で意思を出すかどうか

金曜日のドラめもんであたくしはこう書きました。

「昔の日銀営業局的手法」を大変に遺憾だとお思いになっておられるらしい福井総裁がトップにいる関係上、「日々の金融調節で日銀の意思表示を行う」というのは基本的にやらない事になっている(昨年の債券市場超越大暴落の最終局面で期間9ヶ月の手形オペを実施したのが唯一の例外)。

現在の金融調節の枠組みにおいては大体からして意思の出しようも無い上に、そこまでマーケットを細かく日銀の方がヒアリングしていないのでして、日銀と市場の阿吽の呼吸というよりは要するに日銀が短期金融市場をガチガチにコントロールしていた時代と現在では前提条件がそもそも全然違うのですが、何故か昔の感覚で「調節姿勢に変化が見られる」などという意見が出てくるのが理解致しかねる所であります。

まぁ調節に変化があって量的緩和政策の解除でもやってくれた方が相場が動いて結構だという人も世の中大量にいらっしゃるので、その手の見方をしたくなるというお気持ちは理解できますけどね。

(説明不足と指摘されましたので翌日に補足説明した部分を以下記載)

昨日の補足:日銀オペレーションの政策意図とは?

昨日のドラめもんで「金融調節で意図は出さない」という話をしましたが、よくよく見ればあたくし全然説明しないでさも自明で有るかのごとく話を展開しておりました。で、補足説明ですが。

日銀法の改正および組織改正によって現在の日銀において金融政策を決定する機関は「日本銀行政策委員会」という事がより明確化して、政策委員会がより重要になりました。旧法下では政策委員会が「スリーピング・ボード」などと揶揄されまして実質的に執行部主導での金融政策決定が行われたので、まぁ名目は兎も角大いなる変化ってぇ事でしょうな。

で、その政策委員会のうち金融政策について決定する会合の事を「金融政策決定会合」という訳ですが、とにもかくにもこの政策委員会が金融政策を決定するのであって、日々の金融調節は「政策委員会が決定した事を粛々と実行する」というのがお仕事になります。現在の金融政策(量的緩和)の枠組みにおきましては、金融政策の目標が「日銀当座預金残高」ですので、当座預金残高が一定の数値(今なら30〜35兆円)に収まるように金融調節をすることになります。

金利(無担保コール翌日物金利)を目標にした通常の金融政策の枠組みにおいては同じ理屈で日々の金融調節は市場で値段が付く無担保コール翌日物金利が目標数値近辺に収まるように調節を行う訳でして、コールレートが上下に振れた場合に日銀が「金融調節で牽制する」ってのはあくまでも「政策委員会の決定事項に則って行う意思表示」でありますが、上記したように現在の量的緩和政策の枠組みでは「当座預金残高の繁閑を均す」という調節しか出来ないので、意思も糞も無いという話になる訳でございます。

とは言いましても、「最近の調節姿勢に変化が見られるのは何らかの意思表示でしょ」って見方もあるとは思いますが、「金融政策は政策委員会で決定し、決定した政策は即公表」という現在の制度に則りますと、金融調節を行う担当部署が「将来の金融政策を予想させるような行為をする」というのは越権行為も甚だしい訳でありますし、日銀内部のもっとエライ人であっても、政策委員会で決まってもいない将来の金融政策を織り込ませるというのは同様に越権行為でございます。

てな理屈でございまして、「金融調節によって将来の金融政策運営の意思表示を見る」というのは現在の制度上ありうべからざる事と言うわけでございます。



○マーケットの誤解その2:輪番減額は可能かどうか

輪番オペの拡大は速水総裁時代に行われていたものですが、この時に買入額を拡大するたびに金融政策決定会合で決定しておりまして、輪番オペの月間買入額の拡大には必ず当座預金残高目標の引き上げを伴っておりました。

従いまして、政策のロジックから行きまして、輪番オペの減額は当座預金残高目標の引き下げを伴う訳ですな。で、現状の量的緩和政策の枠組みにおきましては、当座預金残高目標の引き上げを行うときに「量的緩和政策の強化」という触れ込みになっていますので、当座預金残高目標の引き下げは量的緩和政策の減殺、即ち金融引き締めを意味する訳でして、量的緩和政策の解除に直結するというお話になる訳です。

即ち、「輪番減額」→「当座預金残高目標減額」→「金融引き締め」というロジックが成立するというのが現在の金融政策の枠組みでありますので、量的緩和政策のコミットメントが成立している現状において輪番の減額は(当座預金残高目標の減額も)あり得ないというのが論理的帰結になるわけであります。


○マーケットの誤解その3:当座預金残高目標の減額に関する誤解

とは言ってもマーケットには当座預金残高の減額があるのではないかという見解はありますわな。現実問題として現在の当座預金残高の30兆円を維持するのが技術的にしんどいというのがある為にそういう議論が行われているというのもありますし、「量的緩和政策のコミットメント3条件を変更するのはどうよ」って言ってしまった水野さんが審議委員に就任したというのもそういう見方を後押ししているという面もあるかと。

しかしながら、先ほど申しあげましたように、現在の量的緩和政策においては「量」に意味があるという理屈で政策を展開しておりますので、「量の減額が量的緩和政策の引き締めに当たる」という結論が導かれる訳です。従って当座預金残高目標の減額を行いたいというのであれば、量的緩和政策における「量の意味」についてレビューを行う(というか要は「量には意味はありません。ゼロ金利+時間軸に意味があったのでした。」って認めやがれって事ですが^^)べきものでありまして、それ無しで当座預金残高目標の減額を行うのは、論理崩壊の上塗り状態でして、中央銀行としてそれで良いのかよって話になるでしょうな。



とまぁ上記のようなロジックを市場関係者が熟知していれば本来「輪番減額」などという想像は起き得ないものでありまして、「そんな訳ね〜だろ」と言いながらも現実に相場が下がっちゃうのは(マーケットが何となくロング気味だったとか他の要因があったにせよ)日銀の不徳の致す所としか申しあげようがございません訳です。で、日銀のチョンボについて何点か。

○日銀のチョンボその1:輪番は資金繁閑の調整じゃないでしょ

日銀のWebってのは物凄くよく作りこんでありまして、「わかりやすい金融経済」などというコーナーに金融調節に関する解説が書いてあったりします。そこには各オペレーションの説明がありまして、輪番オペに関しての説明はこういう風になっております。(http://www.boj.or.jp/wakaru/seisaku/wkinqn1.htm)

国債買入オペ:日本銀行が利付国債を買い入れる事によって資金を供給する。長い目出見た日銀券の増加トレンドにほぼ見合うように行うという考え方のもとに実施。

つー訳ですんで、輪番オペは短期市場における日々の資金繁閑の調整では無い訳でして、オペを月4回3000億円づつ実施するというのであれば基本的には淡々と実施すべきものであって、国債入札日程との調整は必要(市場への介入に限りなく近くなるから)でしょうが、足もとの資金が余剰だから実施を先送りするとか不足だから連日実施するとかいう性格の物では無い筈。

先週来資金需給的に大余剰状態になっているというのはよーーーく判っておりますが、それとこれとは別問題な筈なのですが、何か勘違いしていないかと思ってしまう訳ですわな。しかも金融政策決定会合の日に「当然実施するでしょう」と誰もが思っていた輪番オペを打たないのは「思惑を生んで下さい」と言っているような物でして、まさに日銀による身を切ったギャグの世界という感じですな。


○日銀のチョンボその2:TB売却の政策的意義?

TB買入オペの導入は1999年10月13日の金融政策決定会合で決定されたものでありまして、そのときに日銀はこう言いました。(http://www.boj.or.jp/seisaku/99/pb/k991013b.htm)

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、「ゼロ金利政策」の継続に当たり、金融市場調節手段の機能強化を進めるとともに、その弾力的な活用を図ることにより、金融・為替市場の動向も注視しつつ、金融緩和効果の一層の浸透に努めていくことを決定した。こうした方針のもとで、今般、以下の諸措置を講ずることとした。

という事で、TBアウトライトオペは「金融緩和効果の一層の浸透」のために行うものでして、導入当時当然ながら日銀の買入方向(=資金供給)として実施していたものですわな。で、売却も大昔にやったらしいのですが、まぁこの時期にいきなりTB売却を復活させれば(先週は超久しぶりにやったと思ったら翌々日にも実施)「金融緩和効果の浸透の逆ですか?」という発想が起きても不思議ではない訳ですわな。

まぁ元々99年に実施した時に単に「金融調節の円滑化を図る為に導入」とでも言えば無問題だったのでありますが、実施に当たってさも「金融緩和効果がある」と言わんばかりの触れ込みを行ったのが宜しくなかったという事で、今の人たちに文句言う筋合いではないのかもしれませんが、まぁ論理的整合性を取らないで政策運営をしていると次々と碌でもない事になるって話でしょうな。

下手な言い訳をするとその言い訳の為に更に下手な言い訳をしないといけなくなって無駄なエネルギーが費やされるというお話でしょう。


まぁ市場も市場なら日銀も日銀って事でして。もうちょっと論点があったようにも思えるのですが、話が上手く繋がらん。。。で、金融経済月報に関しては明日にでも触れたいと思います。第一印象は「日銀往生際が悪いな」って感じですが。





2004/12/17

お題「ネタの玉切れだけは年末進行(-_-メ)」

どうも年末進行っぽくならないのは陽気のせいでしょうか?

○タイミングが妙な??輪番オペ

水曜日に実施されると思われていた国債買入(現在は輪番形式じゃないので輪番オペというのは不適当なのですが、昔からの俗称なので年寄りのあたくしもこの用語を時々使います)が実施されずに「???」という感じだった債券市場。月4回のオファーを行う事を考えると、年末進行でもありますのでいつものように水曜に実施するんじゃね〜のって思っていた人は多かったので、昨日もオファーなしで「何かタイミングが変調気味ですな〜」という印象を強くしている人がちらほら。先月も(不覚にも手控え帳面に書いてないのいつだか申し上げられないのですが)皆が「今日はあるでしょう」って身構えモードだった日に輪番オペが実施されずに「あらら?」って事があったのですが、今回も「???」という印象。

まぁ昨日に関して言えば、その前の日にFB3ヶ月もので100円入札事件(えーこれは公取マターにはならないんでしょうかと言ってみるテスト^^)がございましたので、もう一発TB売却オペを実施するタイミングでもありまして、TB売却がある意味「予定通り」実施されております。TB売却は資金吸収にあたりまして、同日に輪番オペを打ちますと「これはもしかしてイールドカーブのフラット化を企図しているのではないでしょうか(短期債売りの長期債買いだから)」などという思惑が発生しちゃったりするので、輪番オペが打ちにくかったというのも確かにあるのですが、それにしても今までまるで機械のように同じようなタイミングでオファーしていた輪番オペの日程がほんの気持ち程度ですが読みにくくなっております。

ま〜ほぼ何も意図は無い、といいますか「昔の日銀営業局的手法」を大変に遺憾だとお思いになっておられるらしい福井総裁がトップにいる関係上、「日々の金融調節で日銀の意思表示を行う」というのは基本的にやらない事になっている(昨年の債券市場超越大暴落の最終局面で期間9ヶ月の手形オペを実施したのが唯一の例外)のですが、ともかくも別に調節をやっている方は特段の政策意図を込めては居ないと思います。あたくしはそう思うのですが、世の中がどう思うかというのはまったく別の問題。

特に組織改革前の日銀における「営業局的手法」というまぁ「あうんの呼吸」と言うのか「調節に意思を込めた職人芸的手段」というのが訳判らんと文句を付けまくるのが得意であった海外投資家の皆様におかれましては、ここもとの「タイミングが良く判らないオペ復活の兆候??」状態にはナーバスになる可能性も高いのではないかと思料される所でございます。で、そ〜ゆ〜見方が流布されだすと、債券市場業界にいる日銀ウォッチャー業務も行っている事になっている方々の中でもあたくしに言わせりゃ〜トンチンカンというかまるで見当はずれの事を言い出す人も存在してますので、「最近の日銀のオペレーションに政策意図か?」みたいな事を言い出す人が出てくるものと推察されます。

そうなるとそれはそれなりに妙な事も起きる可能性があるので一応心の準備をしておくのが吉かと。でもあたくし思いまするに何も考えて無いと見られるので、本件に関する変な思惑に関してはちょっとどうなんでしょうな〜。何せ6月には「海外での武藤副総裁のスピーチを意図的だか意図的じゃないかは知りませんが(っていうか意図的にやってるだろうよイェスパー君よって感じですが)誤訳して『武藤ショック』と言い出したのが債券相場の下落を加速させた事件」ってのが有った位でして、日銀に関するネタに関しては債券市場関係者って意外に「乗せられやすい」という傾向にあるんで、まぁご注意ありたしって事でしょうな。


○短期国債売却オペまたも実施

と言う訳で昨日も短期国債売却オペが実施されたのですが、今まで実施していなかったオペをいきなり実施しだした事に関しても上記の話と同様に「政策的な意図」を気にする向きが出てくるかと思います。

「長期国債の買入はベースマネーの供給で、短期国債の買入はただの短期金融市場での資金繁閑調整」という理屈の根拠もイマイチ「ハァ?」って感じではありますが、一応そ〜ゆ〜事になっている以上、特段の政策意図がある訳ではないかと存じます。手形オペ(売出手形)よりはTB売却の方が売ってるものと買ってるものが同じ短期国債という商品になりますんで、売ったり買ったりをバカスカ実施しても玉不足という事態になりにくい(勿論別の事情で流通市場が玉不足の場合は話は別ですが)ので使いやすいという側面もあります。ただし証券決済のタイミングにあわせてオペを実施する必要があるので3営業日後決済じゃないとワークしないという問題点はあるのですが。

ところで、この短期国債の売買オペレーションなのですが、実施が正式に決定されたときに単に「短期金融市場におけるオペレーション手段の拡充」と言えば何の問題も無かったのですが、実は導入時に「金融緩和効果をより高めるために」とかいう意味不明の屁理屈をつけておられたようでして、導入を決定した金融政策決定会合において「政策意図がおかしい」といった理由で当時の中原伸之審議委員と篠塚英子審議委員という「過激な金融緩和派」と「過激な金融引き締め派」の両巨頭が反対していたそうで、いかにその理屈というか屁理屈が牽強付会なこじつけであったかという事が判ろうかと言うものです。

その屁理屈を援用すると短期国債売却オペは「金融緩和効果を阻害する」という話になりますので、これまた当時のロジックをまともに信用していたり、量的緩和政策における「量の効果」について結構大真面目に信用している人が多いと思われる海外投資家の皆様におかれましては、変な思惑を発生するきっかけになる可能性もある訳でして、まぁこの面からもご注意が必要かと存じます。

なお、この「短期国債売買オペレーションの政策意図云々」という部分に関しましては、昨日の時事通信社提供の「時事メイン」コラムの「金融観測」に書かれております記事を思いっ切り参考にさせていただいております。いつも示唆に富み勉強になるコラムでございますので、読者様におかれましては情報ベンダーに時事メインを導入されているのであれば見逃す事の無いようにされるのが吉かと存じます(^^)。


○日銀ネタ残りは雑談

余談その1:余談じゃないんですが、今日の金融経済月報でどの位日銀が白旗を揚げるかは注目しませう。福井総裁や水野審議委員のお話を聞いているとまだまだあきらめないモードでしょうし、短観も全面悲観ではないですし。

余談その2:神戸支店の新札すり替え攻撃ですが、諭旨免職になった発券課長様におかれましては日銀内部の特別調査チームの聴取に対して「虚偽の説明を行い、交換が行われたことを否定した」(日銀Webの「日本銀行券の不適正な取扱いに関する特別調査結果等について」より)そうですな。で、懲戒解雇じゃなくて諭旨免職ですかはあそうですか。銀行業界では監督官庁の検査忌避行為で刑事告発だの逮(以下略)。

まぁしかし世も末ですな。失った信頼はそう簡単に戻らんよ。





2004/12/16

お題「日銀短観/利回りゼロ%」

○どうとでも取れる日銀短観

昨日発表された日銀短観に関してはエコノミスト、ストラテジストの意見がまちまちで結構楽しいものがございました。あたくしなりにいい加減に纏めるとこんな感じかな。正直「概要」の1ページ目しか騙っていませんが。

・中小企業の業況判断DIが案外悪くない

中小製造で+5というのは9月時点と変らず。しかも9月時点での「12月の予想」が+3だったので「9月に思っていたより悪くない」という結果。同様に中小非製造で▲14は9月の▲17よりも好転しており(って言ってもマイナスはマイナスですが^^)、9月時点での見通し数値の▲16よりも好転の巻。中小企業の数値がもっとズタボロになるという見方もあった中では「意外に健闘してるじゃん」というところかと存じます。

・製造業から非製造業への「回復の波及」か?

製造業の業況判断DIがやや悪化していますが、非製造業の業況判断DIはほぼ変らずという感じ。製造業の回復過程に遅行しているという事になっている(実は分断されているのではないかという気もしますが)流れからしますとこれはこれで一応理屈どおりの話かと。

・「業況判断DIの先行き見通し」は当てにならないのでは?

ドラめもん書くようになってから真面目に短観を見るようになったので短観チェックも9回目になりますが、この間毎度毎度思うのが上記の事です。基本的に「先行き見通し」の数字は足もとの数字に依存しやすく、おまけに基本的に弱めに出るという傾向がありまして、過去の景気回復局面と言われる時期においては毎度毎度の如く「業況判断DIの先行き見通しの数字よりも実際に3ヵ月後に出てきた数字が大幅改善」って結果になっておりますのでご注意ありたし。

今回の短観に関しても「先行きの見通し数値が思いっ切り悪化していますな〜」という見方も出ている(というか普通そう読む)のですが、上記したように、この「先行き見通し」数字は先行指標として全然使えないという素晴らしい数字であって、あくまでも一致指標としての意味しかない(下手したら遅行指標かも)と割り切って見たほうが吉かと。

・個別業種を見ると・・・・

あまり真面目に見ているわけでは無いのですが、前回の業況判断DIから今回の業況判断DIが派手派手に変化している業種(ただし大企業)を見ますと、製造業において改善著しいのが精密機械(+18→+31)。で、悪化が中々なのは紙・パルプ(+25→+13)、電気機械(+28→+11)、造船・重機等(+16→0)でございます。

でもって、上記したようにあまり当てにならない「9月時点での先行き見通し」と比較するというご都合主義的分析(自爆)を致しますと、この中では製品製造サイクルが長くて先行きが読みやすそうな造船・重機等の皆様は12月時点での大幅悪化を読んでいたようですし、電気機械も割と先行きは悪化するでしょうと読んでいたようですが、紙・パルプに関しては予想以上に大幅悪化しているというように読めますな。だからどうしたといわれると困るのですが(汗)。

非製造業に関しては元々9月時点で先行きのある程度の悪化を見ていた通信(+13→+2)はまぁそうですかって感じですが、何気に派手派手悪化をしていて、しかも9月時点では碌に悪化を予想していなかった業種があります。それは飲食店・宿泊(+7→▲4)でして、もしかしてこれは個人消費が悪化しているという事ではないでしょうか何てことも思っちゃったりする数字だったりしますわな。

・結局どうなのかといいますと・・・・

正直「思ったほど悪くない」というのが全体的印象なのですが、上記のように個別を見ると何だか怪しいものもありまして、決め打ちは致しかねますという実に日和った結論になる訳ですな(滝汗)。



○もうね、アフォか馬鹿かと

昨日実施された3ヶ月FBの入札。まぁ一昨日の短期国債売却オペだの何だのという話からして強い入札になるんじゃネーノって話はあったのですが、何と発行量5兆円が丸々100円落札。この時点で利回りは当然の如くゼロ%というのも無茶な話ですが、事務経費考えたらどこからどう考えても利回りがマイナスになってしまう訳で。

まぁ4半期末で公社債の残高が必要な人がいたり、足もとの資金が潤沢過ぎるので運用するための玉が枯渇しているとか、まぁそうは言っても落札実績だとか店頭売買高を稼ぐのが営業政策上必要だとか色々と言い訳はあると思いますが、利回りゼロってどうよって感じでしょう。唯一の救いは今回の100円落札の按分比率が90%以上あったことでして、皆で気が触れたように99兆9999億9000万円の応札を100円にしている訳ではないことくらいでしょうか。

まぁ為替がらみから起きるマイナス金利というのはあちこちで既に発生しておりまして、コールレートがマイナスになるというケースもちょくちょくありますが、まぁこのマイナス金利はそんなに沢山出来ている取引でもなくまぁ局地戦のお話だったという感じです。ところが今回はいきなり5兆円ですよ先生って感じでございまして、もう全面火の海状態という感じでございます。まさに地獄の火の中に投げ込まれる者たちとはこの事かと。

で、もっと間の抜けた話はその後の業者間取引でプラス利回りでの売買が行われている事ですか。まぁ落札しなかったあるいは落札額が少なかった業者が嫌がらせで叩いているのかもしれませんがね。

為替市場での介入の為(とは岩田副総裁以外の日銀は死んでも認めませんが)に豪快に当座預金残高目標を引き上げてしまった弊害が見事に発生している訳でして実に香しいものを感じますわな。何やってるんだか。正直、金余りがどうのこうのとか言う問題ではなくてこれは単に量的緩和政策の量の出しすぎ状態なだけですんで、だからどうなのって話ではないと思いますよ〜ん。


余談ですが、市場観測では野村證券さまにおかれましては今回落札ゼロだそうで、業者としての矜持みたいな物を感じましたな。



ではでは。







2004/12/15

お題「色々と・・・・」

さあ、日銀短観です(^^)。

○短期国債売却オペ

昨日は何年振りだったか忘れましたが(ていうか単に記録手元に無いだけです、スイマセン)、短期国債の売却オペが実施されました。で、売却オペ実施された瞬間にあたくし激しく痛恨だったのですが、実は一昨日の時点で日本証券業協会が発表する売買参考統計値のうち短期国債の複数銘柄で「利回り0%(=単価100円)」という大変に美しい事態が生じていた事は気がついていたので、話のネタにしようかな〜と思っていたので、ネタにする前に「やられた!」って感じです。

売買参考統計値って奴は日本証券業協会のWebから誰でも閲覧できまして、算出方法もそこに書いてあるのでまぁネタバレにならないと存じますが、協会会員のうち報告会社ってのがありまして、この人たちが「今日の価格(利回り)は幾らざます」と報告をしたものを集計しているのですが、以前は「利回り0%というのはあり得ない」という前提に立っていたようで、報告値に利回り0%だのマイナス利回りだのというものを混ぜると協会の担当から「何じゃこりゃ」というチェックが入っていたのですが、短期国債市場での玉無し無し状態を反映してついに)0%もオッケーって事になったのでしょう。

で、日本銀行による短期国債売却オペという事になるのですが、まぁ売買参考統計値で「利回り0%」ってのが出た銘柄が物の見事に売却対象銘柄になっていましたので、今回のオペ実施にあたっては「利回り0%はどうよ」っていうメッセージもこめられているとは思います。また、売却額が3000億ぽっちと相場を壊す事も無く(というか干天の慈雨状態なのですが)、オペの打ち方としては中々宜しかったのではないでしょうか。

ちなみにご存知かと思いますが、短期国債の売買オペは長期国債の売買(というか買いしかないが)と政策意図が全然違いますので、「償還手数料込み利回り」という無茶苦茶(ではなく合理的ではあるのですが)な利回りで売買されたりする事もある期近の長期国債(市中残存量が少なく高クーポンの銘柄群)の売買参考統計値をゼロとかマイナスにしても、売却オペはやってくれません。残念!(というか一瞬考えたのですが・・・・^^)

ちなみに、相変わらず日銀的には「金利ゼロはありえん」という事になっていますので、短期国債だろうと長期国債だろうと、日銀との売買取引において「利回りゼロ以下」という仕切り価格は存在しておりません。


○量的緩和政策の弊害についての総裁コメント

月曜の総裁記者会見は基本的に中京地域がどうしたこうしたという質疑が多く、さすが(以下自粛)ではありましたが、量的緩和政策の弊害についての質疑がありまして、総裁の見解を見ることができましたので弊害部分について述べた部分をご紹介します。ちなみに、メリットについてはいつもと同じでして、「景気回復期において低金利を続けると景気刺激効果がある」って話です。でもそれって「量の効果」じゃなくて「ゼロ金利+時間軸の効果」じゃね〜のと思う訳ですが、それは兎も角としてデメリット部分。

・市場機能がどうのこうのという点

『しかし一方で、副作用はどうかというと、一番の副作用は金融市場において金利機能をかなり封殺しているということだと思う。その副作用が実際にどの程度の大きさになっているのかを目を凝らしながらみているが、まだ正確には掴みかねている。時の経過とともにこの副作用が大きくなるリスクがあり得るということを頭の中に置きながらみているが、今のところ副作用が目立って顕現化しているとは受け止めていない。』

いやあなた「封殺」しちゃったら幾ら「目を凝らしながらみている」って言って見たって見えないものは見えないのではないかと突っ込みを入れたくなる訳ですが。不毛の地を「この不毛状態の副作用が大きくなるかどうか」って見たって判らんでしょ(^^)。しかし相変わらず福井総裁は文学的というか曖昧というか情緒的な表現がお好きですな。

市場機能が損なわれているのが問題といっても、これはゼロ金利+時間軸という政策をやっている以上当たり前に発生するものでして、これをことさら問題視するのは自己矛盾も甚だしい所です。要するに取ってつけた理由って奴。

・資産価格問題

『また、別に資産価格の点も非常に注意してみているが、フローの物価上昇率の変化の前に資産価格の面で異常な現象が出ていないかということも我々の関心事である。別に量的緩和でなくても、今までの米国や英国では低金利状態の下で物価よりも資産価格のほうが若干早く問題になるというケースを目の当たりにしている。』

米国や英国の前に日本じゃねーのかよって言いたくなるのですが、まぁいいか。

『日本の場合、ゼロ金利または量的緩和ということであるからそのリスクが将来全くないとは言い切れない。最近における都市部の不動産価格の上昇などについてもそういうリスクの走りがないかと注意してみている。これまでのところ、土地の値段の決まり方が収益還元価格による、キャッシュフロー見合いにセットされるように、従来とは違った価格形成メカニズムができあがっていることは明確に認められるが、それを超えて、バブル的な値段形成になっているとは今のところ判断できる状況にはなっていない。』

水野審議委員はその「収益還元価格」の期待利回りが低下しすぎていませんかって指摘をしております。先日のドラめもんでも申しあげましたが、私募投信やら何やらで不動産証券化商品が大変ご好評を博しているようですが、どうも聞く所によりますととても不動産とは思えないような利回り水準まで利回り低下しておるようで、深く静かにバブルは潜行中という所でしょうか。福井総裁におかれましてはそこまでの懸念は持っていないようですな。

『それに限らずいろいろな面をみているが、今のところは副作用のほうが上回り始めたという状況とは判断していない。』

はぁそうですか。まぁ兎も角として、この2点に関する今後のニュアンス変化に関しては一応目を通しておくのが吉かと存じます。


○ディスカウントショップの火災事件

人間の記憶ってのは土地とか人間とかに付くものらしく、転勤族サラリーマンの親を持つあたくしは小さい頃の記憶というものが確実に消失しつつあるのですが、それでも大昔の記憶として、「大型ショッピングセンターで大火災が発生して死者多数」って事件は昭和40年代とかには何度かあったというのがございます。で、昨日の痛ましい火災事件でございまして、店員とアルバイトさんが避難誘導していて逃げ遅れたのではないかと思うと実に悲しいお話です。(ニュース報道によれば客の安全確認の為に奥に改めて入って逃げ遅れたそうですね。何とも悲しい。)

まぁここの店舗って一度だけしか行った事がないのでよーわからんのですが、何かわざと無茶苦茶な商品配列をしてどうのこうのって話を時々メディアが「画期的な陳列方法」の如くヨイショしているのを見ておりますので大方の想像は出来るのですが、まぁ無茶してるな〜って印象はあった所です。過日「納入業者に対して優越的地位を濫用して業者に役務を提供させているのはケシカラン」と公正取引委員会の立ち入り検査だか何だかが入っていたのもこちらでございまして、まぁ「安売りの殿堂」を築く為に頑張ってコスト削減をしていたようですな。

そんな中でどこをどう考えても火災避難という面を軽視した商品陳列方法が仇となって火災の犠牲者が出るって話を見てしまいますと、過日ドラめもんでご紹介した「労働市場に関する適正資源配分がどうのこうの」って日銀のレポートを思うと何だかちょっと「・・・・・」って感じであります。

労働問題ってのは何だかんだと言っても最終的には「人」に繋がるものですがら、日銀調査統計局さまのレポートの如く経済的な面だけで割り切れる物ではなく、社会的というか政治的というか、まぁ確かに調査統計局の範疇を超える話ではあるのですが、そ〜ゆ〜面も考えますと、あまり経済面の話ばかりに終始するようなレポートを出してますと「それはどうよ」って反応になるんじゃね〜のって思うところではあります。記憶と知識がごちゃごちゃになっていますが、「エネルギー転換がどうのこうの」って事で三井三池の大争議とか色々とあったのはあたくしが小さい頃だったような気がする(記憶違いかも)のですが。

工場で起こるとんでもない爆発事故なんかでもそうですが、どうもこの手の事故だの事件だのってのが、まるで高度成長時代に本卦帰りしたかのようでして、安全部分へのコスト削減が随分と来ているって事になっているのではないかと思う(高度成長時代のこと良く存じませんが^^)のでございます。そういえば昔は神風タクシーなどという言葉もあったそうですが、大通りでもない道で時速50キロで一時停止無視して突っ込んできたタクシーと衝突事故というのを実践させられたのはあたくしでございます。

景気回復は結構ですが、その内容が社会的コストの増加というか安全の低下に繋がるものならば、そんな景気回復ってどうよって思うあたくしでありました。






2004/12/14

お題「まぁ想定どおりのご挨拶でしたが」

最近年末進行というわけでも無いのですが、さすがに夏並みの早起きがしんどい(やはり思いっ切り夜明け前に起きるのは自然の摂理に反しますな。このトシになりますと^^)ので少々遅めに起床しております。

さて、昨日は福井総裁の講演というか挨拶が名古屋で行われたのですが、まぁ何と申しますか相変わらず景気に強気なのは良いと致しまして・・・・・

http://www.boj.or.jp/press/04/ko0412b.htm

○挨拶の構成

まぁここの所GDP2次速報やら鉱工業生産に機械受注とヘロヘロの発表が相次いでいるのですが、総裁は挨拶でこのように言及してます。

『わが国経済は、昨年夏頃から回復過程に入っていますが、最近では、輸出や生産を中心に弱めの経済指標がみられています。このため、市場などでは景気の先行きに対して幾分慎重な見方が広がっているように見受けられますが、私どもでは、足許の減速は一時的なものであり、わが国経済は次第に持続的な成長軌道に移行していく可能性が高いとみています。本日は、こうした金融経済情勢や金融政策運営に関する私どもの考え方を中心にお話したいと思います。』

という事で、この後「海外経済の動向」「わが国景気の現状と回復の持続性」「景気回復をサポートする構造的な調整の進展」と景気に関する話が続くのですが・・・・・

○海外経済〜強気見通し

簡単に纏めると「米国経済は着実な拡大、中国経済は景気過熱感が根強く、10月の政策金利引き上げの効果に注目」ってお話です。中国経済の過熱抑制がどうのこうのって言う位ですから、海外経済に関しては相変わらず強気継続。海外経済に関しては11月の金融経済月報でも判断を上向き加減にしておりますし、他の審議委員も揃って強気に見ていますのでこの辺はこんなもんかなと。

○国内景気〜個人消費の先行き楽観視が気になります

『わが国経済については、夏場以降、輸出や生産の伸びに一服感がみられるほか、第2・第3四半期の実質GDPも横這い圏内の動きとなりましたが、以下に申し上げる通り、景気回復のメカニズムは引き続き働いているとみています。』

『第一に、輸出や生産は、先行き増加基調に復すると見込まれることです。このところの輸出や生産の一服感の背景としては、海外経済の一時的な減速が多少の時間的なラグをもって影響していることに加え、IT関連財の生産・在庫調整がグローバルな規模で行われていることが指摘できます。』

『第二に、好調な企業収益を背景に、設備投資が増加を続けると見込まれることです。確かに、足許の動きをみると、第3四半期のGDP統計において設備投資の伸びが鈍化したほか、設備投資の同時指標である資本財出荷の増加テンポも緩やかなものになってきています。しかしながら、上場企業の中間決算などにもみられるように、企業の収益は引き続き好調であり、製造業を中心に積極的な設備投資計画を維持しているようです。』

『第三に、企業部門から家計部門への波及が、緩やかながらも着実に進んでいることです。雇用者数は引き続き増加しており、企業における雇用の過剰感も払拭されつつあります。企業の人件費抑制姿勢は引き続き根強いものの、一人当たりでみた賃金の減少幅は次第に縮小してきています。こうしたもとで、雇用者所得は下げ止まっており、今後は、企業収益の増加や雇用過剰感の緩和が続くもとで緩やかな増加に向かう可能性が高いとみています。』

とまぁ基本的に「足もとの経済指標は弱い数字になっているが、先行きはもう全然問題ないですよ」ってお話になっているのですが、激しく気になるのは、この第3点であります。と申しますのは、この挨拶ではこの後に景気の下ぶれ要因として『IT関連需要や原油価格の動向など、景気の下振れ要因には十分注意していく必要があると考えています。』って言い方をして景気の下ぶれ要因に言及しているのですが、どうも個人消費に悪影響を及ぼしそうな「増税論議」はものの見事にスルーしている訳ですな。

まぁここで政府に楯突くのもオトナの対応ではないってぇのもよーーーく理解できますが、どうも個人消費に関しての先行き見通しが楽観的過ぎやしないかと思うところです。


○構造調整がどうのこうのという話については一言だけ

まぁ正直「はぁそうですか」という感想しかない話なのですが、この辺のお話は如何なものかと思うわけですな。

『来年4月には、ペイオフ全面解禁を控えていますが、各金融機関がさらなる経営改善に向けて努力していくことにより、金融システムが一層健全化・安定化し、さらには活性化していくことが期待されます。その際、ノンバンクや外資も含む幅広い金融サービスの提供主体が、個々の特性を活かしつつ、多様な金融サービスを競っていくことにより、多様な顧客ニーズに的確かつ効率的に応えていくことが重要です。また、そうした取組みにより、様々なプレーヤーが多様な金融仲介チャネルを構築し、金融システム全体が一層イノベーティブで、外的なショックにも強い体質になっていくことが望まれます。』

はぁはぁそうですか。

『日本銀行としても、考査やモニタリング機能も活用して、これらの課題に向けた金融機関の対応を支援すること等により、民間金融機関の創造的な金融サービスの展開、ひいては金融仲介機能のさらなる強化・高度化に向けて、精一杯後押ししてまいりたいと考えています。』

いやまぁ別に考査やモニタリングで「支援」しようなんて事は有難迷惑なんですけどね〜。総裁お気に入りのもと日銀マン某氏肝入りのどこぞの銀行ではビジネスモデルがそもそも無茶だった事もあって開業半年で絶賛大内紛状態という涙を催す展開になっているようですが。あまり頭でっかちの観念論で動かれても困るんですよね〜。


○金融政策

金融政策について最後に述べているのですが、どうも一生懸命「低金利政策を長く続けますよ」っていう言い方をしながらサービスしているという節が見られますな。

『もちろん今後の経済・物価情勢次第ではありますが、物価が反応しにくいという状況が続くのであれば、政策選択の余地は大きく、状況に応じて適切な対応を採ることができると考えています。例えば、量的緩和政策をできるだけ続けるという選択肢もあれば、量的緩和政策を解除した後の利上げのペースを緩やかなものにするということも考えられます。』

「例えば」で列挙しているのがどっちも「低金利政策の長期化」でありまして、それは普通「政策選択の余地は大きく」とは言わないと思うわけでして、福井総裁の景気に対する思いっ切り強気の見方からすると、この中の「物価が反応しにくいという状況が続くのであれば」という状況が変ったら話は違いますよってことを言外に込めているのではないかというのは裏読みしすぎですかね。

しかし相変わらず今回の挨拶でも『いずれにしても、こうした一連のプロセスについて、あわてて対応しなければならなくなることはない、と思っています。』って話をしておりまして、どうも「このままのCPI縛りを続けていると緩和解除を慌てて行わないといけないのではないか」という不安を総裁がお持ちなのではないかと勝手に憶測する次第でございます。

というかあまり金融政策に絡んで話をするときにやれ「金利に蓋をする」だとか「我慢強く緩和政策を続ける」だとか「あわてて対応するようなことはない」だとか「余裕をもって」とかまぁ色々とあるのですが、あまり「文学的」な表現を用いるのは如何なものかと思うわけです。政策はロジックでしょ。


#というわけで、超長期国債入札に関してはスルーです。割高入札の悪寒がしますが。





2004/12/13

お題「相場雑感その他」

フツーは土日という余裕があるので月曜のドラめもんってパワフルになりそうなもんですが、どうもあたくしは週末となりますと見事に腑抜けモードに突入しますので、月曜はどうもね〜って感じです。

○下がりにくい相場でしたが・・・・・・

先週末の債券市場は10年1.4%の壁をものともせず上昇なのですが、日中の値動きを見ますとこれまた物の見事に先物独歩高の展開になっておりまして、まぁ要するに「先物の踏み上げ相場」って形になっている訳です。どうもユーロ円金利先物相場でも踏み上げの動きが目立つようでして、今更ながらに売り方の撤退があるってことのようです。しかも昨日の債券市場に見られますように、現物債の上昇が全然追いついていないという事ですので、現物債に強力な買いが入って相場を牽引しているというよりは正しく先物の売り方撤退モードとなっております。

まぁ限月交代した瞬間に先物のヘッジを買い戻すってのもどうも違和感がある話でして、どっちかというと現物ではなくて先物でポジションを組んでいる人(要するに海外のファンドみたいな人)が買い戻しモードに入っているという見方が多いようです。まぁそ〜ゆ〜市場観測が正しいとしますと、海外ファンドの皆さん今の今まで日本経済にカンカンの強気だったんですね〜って事になる訳でして、甚だ理解に苦しむお話ではありますが、海外から見た日本経済ってのはそんなもんなのかも知れませんな。

まぁ確かに外から見れば国際的に評価が高くて日銀ウォッチャーからは政策論理が破綻しているなどと酷評されるという「世界で使えて自宅で圏外」みたいな日銀福井総裁様におかれましては記者会見などで相変わらずカンカンの景気強気スタンスですし、債券市場関係者から政策委員に就任した水野さんは早期の量的緩和解除を示唆する始末ですから、外から見れば「日本債券市場の下落も近いぜよ」って事になるんでしょう。おまけに政府からは色々と美名はつけてますが要するに「景気が回復してきたことだしこの際増税キャンペーン」ってのが絶賛実施中でして、まぁ普通政府が増税しようって言ってるのですから景気は上向きだと思いますわな。大本営発表に乗せられた皆様におかれましては誠に哀悼の念を禁じえないところでございます。

まぁ福井さんと言えば、本日名古屋で記者会見が予定されているらしいので、福井さんが最近の経済指標についてどうコメントするか一応注目したいと思います。まぁそう簡単に白旗はあがらないと思うので、降参系の発言があったら驚愕という事になるでしょうな。


てな訳で、先物が一人旅で上昇の債券市場ですが、何せ現物の上昇が追いついておりませんでして、昨日も超長期国債あたりは引値ベースでも先物21銭高に対して5糸(=0.005%、同じイールド変化を先物に直したら4.5銭くらい)しか上昇しておりません(しかも売り残り状態)でして、現物債の買いが特に超長期ゾーンになるとどうもぱっとしない状態が続いております。明日20年国債の入札が予定されておりますので、入札前に頑張って割安にする攻撃なのかもしれませんが、どうも相場水準がこのあたりに居る時の20年国債入札ってどうも追随が無い傾向にあります(瞬間は強くなるのですが)ので、今回償還が延びてどうなるのよってのが注目されるところではあります。というか今から頭が痛いんですが。


○ニュース雑感

・台湾立法院選挙

個人的思い入れは兎も角としまして、先だっての総統選挙の時と似たような「バランスを取る結果」になりました(本年3月の総統選挙では陳水扁総統が再選されたものの、与党連合が提唱していた公民投票に関しては否決)。まぁとりあえず台湾海峡が軍事的に緊張するという事態は少し遠のいたという解釈になると思いますが、台湾独立の動きに一定のブレーキが掛かった(熱烈独立派の李登輝前総統率いる政党「台聯」がどうも伸びなかったようですし)ことから大陸が政治的に攻勢に出やすくなるとあたしゃー勝手に想像しちゃう訳でして、日本との関係において大陸中国が政治的攻勢に出やすくなるんじゃね〜のって思うところであります。

なお、台湾の主要メディアは国民党(現在の野党、外省人系)の系列のものが非常に多うございますので、海外メディアの情報をそのままだだ流ししたがります日本メディアで報道される台湾政治がらみのネタはその分割り引く必要がありそうな感じ。まぁ陳総統体制が続いてきてやや変化してきてるのかも知れませんが。


・ウクライナの野党大統領候補

いや〜警察国家っつーのは恐ろしいですな〜。毒殺という発想が出て来るところが凄いですが、毒物だと摂取量がコントロールできるだけに大統領側の言う「ジサクジエーン」も必ずしも否定できない訳でして、まぁこの手の「疑惑の何ちゃら」というのは最後はどうなのよって感じですわな。本年3月の台湾総統選挙でも投票日前日だかに総統が銃撃されるという事件がありましたが、まぁ腹部銃創を命に別状無くわざと外すのは技量が必要でしょうが、この時も自作自演説がありましたわな。まぁ真相は神の味噌汁。

しかしリアルに食い物にダイオキシンぶち込んで毒殺しようとしていたのでしたらその発想に降参ですな。大統領派はバックにプーチン大統領さまがおいでのようですので、プーチン先生もご了承だったりして。


・木村剛VS切込隊長@山本一郎

別に世間的なニュースではありませんが、ネットウォッチャー的には今思いっきり大炎上モードの事件。まぁ詳しくはご当人のブログを見ていただきたい(「週刊!木村剛」「切込隊長BLOG」のキーワードで検索かければ間違いなく引っ掛かります)のですが、日本振興銀行の内紛をネタにして山本氏が木村氏に切込中。まぁ色々と背景があるとは思いますが、以前からの経緯をマターリとウォッチしておりましたあたくしが思いまするに・・・

最近では夕刊紙なんかでも紹介されちゃう位に「ブログ」が大流行状態でして、このツールはネット界の新しいコミュニティーの場になる期待もされております。で、その中でも有名人ブログとしてパワーのある木村氏の「週刊!木村剛」が、その影響力をコミュニティーのツールではなく彼の政治的というかまぁ本人の功利的プロパガンダの場として利用されだしてきている印象が強くなっております。で、@nifty時代からコミュニティを大事にしていた山本氏にとっては、そのやり方に物申すって事になったのではないかと思う次第。

まぁ中々な大炎上状態ですので、また触れるかもしれません。





2004/12/10

お題「相場の雑感とそれ以外の雑感と」

○またも壁にチャレンジ

昨日は先物の当限最終日と5年入札と機械受注の発表がぶつかると言う実に楽しい一日でしたが、入札前から威勢良く買いが入りまして入札時点で何と5年新発債のレベルが0.56%−0.565%という状況。落札平均価格は0.56%でして、さすがにちょっとやり過ぎ感のある入札だったので「先物を下げて販売促進しましょう攻撃」で先物を叩きながら5年ゾーンはあまり値が下がらずという中々美しい展開になりました。

で、ちょっと下がってちょっと新発債が捌けた所で機械受注が前月比▲3.1%という香しい結果になってしまいまして、今度は先物買戻し攻撃で先物独歩高になってしまい、気がついたらいつもの入札のパターンに戻ってしまい、先物が138円74銭の高値(前場の引けは63銭)だったのに平均落札価格の0.56%にはオファーが置かれっぱなしで誰も買わずというおなじみの展開になりました。(その割には第U非価格競争入札が80億ちょっとだか何だか落札している人がいるのですが、相変わらずひねくれ者がいるようですな。)引けに掛けてはやや無理矢理先物を叩いたのですが、結局先物が一番強いというお馴染みの展開で、後場スタート時点の状態から比較すると現物債が弱くなっておりまして、とても5年債の販売が順調という感じは受けませんでしたな。って言うか、高値更新した所で売りが出たんじゃね〜のって感じです。


で、まぁ米債が売られても米株が底堅くても堅調に上昇しているLiffeの円債先物(時差の関係で米債が安い時に引けているような気もしますが)でして、ロンドンの引値が138円85銭ってなもんでして、限月交代で3か月分利回り上昇(=価格低下)する筈のギャップを勝手に埋めに逝っております。先物ってぇのは心理的に「お値段」で見るために「ほうほうそうですか」ってなものなのですが、現物債の利回りってぇのは正直(?)なものでして昨日の引け時点で「新発10年国債利回りが1.4%」「新発5年国債利回りはあと0.015%で0.55%」って状況になっておりまして「さてどうでしょ」って状態でございます。

まぁロンドンの引けを信じますと、今日は10年と5年の壁に到達致しますんで、ここでまたまた売りが出てくるのか、ヤケクソで買いが入ってくるのかというのが本日の見ものかつあたくしがどっちに張るかの材料ですなってなもんであります。

なお、来週を前にボロボロになっている20年国債ですけれども、この20年国債も来週の入札で3か月分の利回り上昇がありますので、目先2%割れはちょっとどうよってのもあります。まぁあと0.015%ありますので10年よりもバッファがありますが(前回は2%割れのところで相場が止まってしまいました)。


しかし何ですな、日銀短観の悪化をこれから織り込みに逝くとして、肝心の短観が発表された時にサプライズになるのはどっちよって議論になりますと、火曜日に20年国債の入札があって日銀短観が水曜日の寄り付き前に発表ってのも中々アレでございますな。入札日程をイベントにぶつけるのは勘弁と言いたいのですが、如何せん入札が沢山あるのでどうしてもイベントにぶつかってしまいますわな。とほほのほ。



○「結論先にありき」の姿勢が見られるような気がするのですが・・

昨日は小難しい論文シリーズでありまする「日本銀行ワーキングペーパーシリーズ」をご紹介しましたが、先日発表された今月の論文は2本とも雇用者所得がどうのこうのとかのお話になっておりまして、もう一本をざっと斜め読みしますとこれがまた昨日ご紹介した論文と同じような印象を受けました。

と申しますのは、「これってまた『結論先にありき』じゃね〜の?」って印象でして、何というかまぁ研究するのは結構でございますが、アプローチがあまりにも「結論先にありき」的であるというのに福井総裁以来の「謎の金融政策」にも通じるものを感じまして、「大丈夫かな〜」と激しく懸念しちゃう訳であります。

福井総裁就任後に実施された「金融政策の新企画」では「企業金融が目詰まりしてるから資産担保証券市場の拡大が必要であり、日銀が資産担保証券の買入を行う」というのが一番派手でございましたが、ご存知のように結局実績はろくすっぽ上らず、国会でその点に突っ込みを受けると「実績が上っていなくても無問題」と楽しい開き直り(まぁ元々失敗してるんだから開き直るしかないですが^^)をかましておりましたが、この政策もまた、「企業金融が目詰まり」って時点で日銀短観の資金繰りDIとか貸出態度DIとかと全然整合が取れていない上に、当初買入対象にしていたのが、誰もが購入意欲のあるシニア部分という訳でして、そりゃ実績は上らんわなってなもんです。

そういえば「債券流通市場の整備に資する」と言い出して折角作った「補完的貸付制度」も結局申し訳のように9月末に一回やっただけという実にしょぼい状態。何せ(要綱が出た時悪態つきましたが)使う側からしたら見事なまでに使いにくい制度でございまして、これまた見事な張子の虎。


まぁ鳴り物入りで作った「新制度」が事実上使いものにならないって話でしたら別に毒にも薬にもならないお話なので無問題なのですが(「この新制度はつまらん!(大滝秀治風に^^)」と考えた日銀の事務方が、内容をわざと使い物にならないものにして骨抜きにするという巧妙なサボタージュをしてるんだったら神認定ですが^^)、これから量的緩和解除がどうのこうのって話になった時に、判断の材料を「結論先にありき」ってアプローチをされると誠に如何なものかと思うわけです。

先日の水野審議委員の就任記者会見で『中央銀行は──企業から直接ヒアリングしている分だけ、データは市場参加者よりも多少持っているとは思うが──』って発言がありましたが、まぁ日銀としてはそ〜ゆ〜自信というか自負というか認識を持っているって事なのでしょうから尚更たちが悪いっていうのはちょっと口が悪すぎるかもしれませんが、「良く判っている」と自負されながら「結論先にありき」攻撃をされるとまさに最強かつ最凶となってしまいますんでご注意ありたしって所でしょう。

#財政再建問題で大暴れモードが入りつつある財務省にも言えると思いますがね。


それでは〜(^^)






2004/12/09

お題「突っ込みどころ満載の調査統計局発レポート」

「日本銀行ワーキングペーパーシリーズ」ってのがありまして、概ね調査統計局のお方が色々と研究成果を出しています。正直、読むのが面倒なものが多くてスルーしちゃう事が多いのですが、何せ調査統計局っていうのは政策判断に重要な影響を与えるお仕事をしておりますので、レポートの表紙に『論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見解を示すものではありません。』と書いてありますが、それはそれとして「調査統計局ではこんな事を考えている」っていう参考にはなるのかと思います(だって調査統計局から見て無茶苦茶な研究だったら日銀から発表しないでしょ)。

ちなみに、『日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をとりまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴することを意図しています。』という事のようですので、あたくしのような無識者のコメントはど〜でも良いという事で、まぁ世界の片隅で悪態を呟いてみましょう。結構長いしムツカシイのでほんのさわりしか突っ込めませんが。

URL直リンだと多分表示されませんので、日本銀行のWebから辿って下され。今朝だとまだトップページのWhat'sNewにあると思います。ペーパーのお題は『製造業における熟練労働への需要シフト:スキル偏向的技術進歩とグローバル化の影響』であります。

ちなみに、このペーパーに関しては『商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。』ってありますので、商用でもなんでもないあたくしの駄文ですが、以下引用(『』内)部分の出所を改めて申しあげますと、日本銀行ワーキングペーパーシリーズNo.04−17、2004年12月の「製造業における熟練労働への需要シフト:スキル偏向的技術進歩とグローバル化の影響」、執筆者は調査統計局の佐々木仁さんと桜健一さんです。


○SBTCとは??

いやまぁ冒頭から何か凄い話の展開を予想されるのですが・・・

『米国をはじめとする主要先進国では、1980年代から1990年代にわたって、熟練労働者(ホワイトカラー)と非熟練労働者(ブルーカラー)の賃金格差が拡大した。その背景には、非熟練労働者から熟練労働者への需要シフトが指摘されている。こうした熟練労働者への需要シフトが、近年わが国でも生じてきているのではないか、というのが本稿の問題意識である。』

まぁ術語の定義問題なんで突っ込むのも何ですが、ここで使っている「熟練労働者」と「非熟練労働者」って、学術的にはそう使うのが正しいのかもしれませんが、何かこの時点で違和感を感じるお話であります。

『その熟練労働への需要シフトを引き起こす最も有力な要因とされているのが、スキル偏向的な技術進歩(skill-biased technological change:以下「SBTC」)である。SBTC とは、特定のスキルを有する労働者を相対的に多く用いるような技術変化を指しており、具体的には、コンピュータやソフトウエアの使用に必要なIT 関連技術、高度な技術・熟練度を要する製造設備の導入、或いは研究開発などが含まれる。』

というお話でして、まぁ言って見れば「付加価値の高い産業」って事のようなのですな。まぁアイテー業界のお仕事って特定のスキルが必要といえば確かにそうではありまして、あたくしなんぞしょぼい某アイテー会社で総務経理やってましたが、正直技術はよー判らんかったですな。熟練が必要。

しかしですな、アイテー業界で熟練を必要とするお仕事っていうのは本当にホワイトカラーか??っていう突込みが既にここで入る訳でしすな。まぁ研究部門とかになると上記の言いたいことも判らんではないのですが、何っつーかこの辺で前提が強引ではないかという悪寒が漂って来るわけです。


○豪快な前提条件

でもって、冒頭にそんな話をしつつ色々と書いてあってまぁお暇な時にでも読んでいただけると吉なのですが、このペーパーで分析をする前提がちょっと豪快ではないかと思ってしまう訳です。曰く、

『本稿における分析対象であるが、産業は、経済グローバル化と熟練労働への需要シフトとの関係を検証するという観点から、非製造業は分析の対象とせず、製造業に限定する。』

まぁここまでは良い(つーか直感的に申しあげまして、SBTCがど〜のこ〜のとか小難しい話じゃなくて、製造業における国際分業状態の結果付加価値の高い部門の比率が高くなっただけではないか思うが)としまして、

『また、近年サービス業を中心に非正規雇用が拡大しているが、製造業では非正規雇用のウエイトが依然低いことから、本稿で扱う労働者は正規労働者に限定する。』

うーむ、何となく違和感あるがあたくしの頭ではコメント不能。この次が中々良い感じで腰が砕けます。

『最後に、労働者スキルの分類は学歴を基準とし、大卒労働者を熟練労働者、その他学歴労働者を非熟練労働者と位置付ける。』

(゜д゜)ハァ?(゜д゜)ハァ?(゜д゜)ハァ?



○豪快な前提条件に豪快な論理展開あり

ってな訳でして、上記の時点で予想されるように、物凄く簡単にこのペーパーの論理展開をあたくしなりに読みますとのですが、

「大卒労働者とその他学歴労働者の賃金格差が拡大」(これは統計的事実)

「非熟練労働から熟練労働の賃金格差が拡大」

「非熟練労働から熟練労働への需要シフト」

『「SBTC やグローバル化により、それぞれの業種内で大卒労働者に対する需要がその他学歴労働者に比べて相対的に高まっている」』

『非熟練・熟練労働者間における資源配分の調整が、製造業に含まれる業種内では、それなりに進展してきたことを示唆している。』

『』は例によってこのペーパーの纏め部分から引っ張ってきたのですが、はぁはぁそうですかって感じです。

で、まぁ色々と書いてあって紹介しきれないのですが、どうも国際分業みたいな動きが高まると労働生産性が高まりまして、熟練労働者(=高学歴な労働者)への需要が益々高まります。って事らしいのですが、本当に高学歴だから高付加価値の労働をやってるの??って話になると激しく?がつくのですが。


○よー判らん理論なのですが

あたくしごとになりますが、アイテー業界の川下の会社、と申しましても当時はとある技術では有名な(中身が伴っていたかどうかは別として)企業であったのですが、まぁその企業にいた時(従業員20人ちょっとでしたが)に製造開発をやっていた10数名の従業員で大学出ってひとりだけだったと記憶しておる訳でして、研究開発って言ったって学校で勉強したものが役に立つ世界もあれば役に立たない世界もあるわけでして、職業による訓練ってのもあるのでは無いかと思うわけですな。

と、思っていたら、このペーパーの中でもこんな話をしているのですが、

『人的資本理論によると、教育は、その投資効果として労働者の人的資本を蓄積し、結果的にそれが生み出す賃金を向上させる。その教育には、学校教育だけでなく、職務をつうじた職業訓練も含まれる。』

『こうした人的資本理論をベースに導出されたのが、「ミンサー型賃金関数」である(Mincer[1974])。その「ミンサー型賃金関数」によると、労働者の時間あたり賃金の対数値は、その労働者の教育年数と勤続年数およびその二乗値の関数として示される。』

だそうなのですが、どうもその後の論理展開を見ていると結局はサンプルデータの厚生労働省「賃金構造基本統計調査」からの統計処理に使っているだけのようでして、何だかな〜って感じです。まぁその式を使って出てきた結論は、

『こうして計測された学歴間における時間あたり賃金格差の推移を1985年から2003年までプロットしたのが、図表3 である。推計誤差の問題などもあって結果は幅を持ってみる必要があるが、大卒労働者とその他学歴労働者の格差(「大卒−高専・短大卒」、「大卒−高卒」、「大卒−中卒」)は、いずれも1985年から2003年にかけて、僅かながら拡大していることが読み取れる。』

だそうです。


○直感的に違うんじゃね〜のって話が続くのですが

ということで、賃金統計からの推計結果から・・・・

『近年の高学歴化に伴う大卒労働者の供給拡大は、大卒労働者の時間あたり賃金を相対的に押し下げる方向に作用する筈である。しかし、以上の計測結果は、そうした供給要因による時間あたり賃金の下落圧力を打ち消すのに十分な程、大卒労働者への相対的な需要が拡大してきたことを示唆している。』

って言ってるのですが、それは単に散々不景気が続いた結果、製造業の中で主要大企業と中小以下の企業の業況格差が拡大して、相対的に高学歴の雇用者が多い大企業と中小以下の企業の賃金格差が拡大しただけの話ではないのかと思うのですが。まぁそれが「大卒労働者への相対的な需要が拡大」だと言ってしまえばそれまでなんですが、何だかな〜って感じです。

で、まぁこんな話になっているのですが、どうも浅学非才のあたくしはどう突っ込んで良いのかさっぱり判らん。判らんがどうも違和感のある表現だ。

『以上を纏めると、大卒向け賃金支払い比率は、「国際競争力を喪失した業種から高い競争力を有する業種に向けた大卒労働者の業種間シフトを伴いながら、主に同一業種内で大卒労働者が増加する業種内シフトによって上昇してきた」と結論付けられる。こうした動きは、「SBTC やアウトソーシングの拡大を背景に、業種内における大卒労働者への相対的な需要が拡大している」という本稿での仮説と整合的である。』

・・・・・・・・・・??


○全然突っ込み不足ですがあたくしの感想

いやまぁいいんですけど、何か単に不景気に伴い企業間格差が拡大しているのを物凄い勢いで礼賛しているように読んでしまうのは、あたくしが負け組だからなのかもしれませんが、何と言うか「そりゃどうなのよ」って印象が全編に渡って感じられる所であります。まぁ物は試しにご覧下さい。何と言うか浮世離れしすぎではないかと思いますな。

浮世離れしてても研究ってのはそれはそれで重要ではありますが、日銀の調査統計局というところでこ〜ゆ〜「お研究」をしてて良いのかな〜って違和感は残るのでありました。もっと勉強して読みこなさないといけませんな。







2004/12/08

お題「武藤副総裁講演に関して思う」

月曜日にご紹介した先週末の武藤副総裁の講演ですが、ご紹介の中で触れまなかった部分に重要な示唆があったようであたくしの目の節穴振りに大変恐縮至極なのでありますが、その点に関しては東短リサーチのウィークリーレポートとか、昨日の時事メインコラム「金融観測」などで指摘されておりますんでそちらをご参考に。要するに「今後日銀が決済システムの構築に関して色々と考えている」って事を示唆してますよって話。東短のレポートでは「武藤さんの量的緩和が決済制度の改革を遅らせているって指摘は武藤さんが量的緩和長期化に対して否定的になりつつある」という話もあったのですが、それはちと読みすぎのような気も。


で、まぁそちらの話は兎も角として(というか二番煎じをするのも何ですし、まだあたくしがちゃんと理解できていない部分があるので)、別のお話を致しますと、「この講演もまた日銀事務方(というか企画というか)の意見を忠実に語っているな〜」って印象が起こる訳でございます。何せ今回の決済システムに関る話は超マニアックなお話でして、いくら武藤副総裁が優秀なお方だとしてもここまでの話(月曜にご紹介したときに「よく出来た講演要旨」と申しあげたと思いますが)をする為には、事務方から相当に事前準備をしてもらわないと厳しいかと存じます。というか恐らく事務方が原稿を用意した上でレクチャーをしたのだと思いますが(^^)。

てな訳でして、以前からドラめもんで指摘しておりますが、武藤副総裁が外部でモノを言う時は毎回「日銀事務方の意向を忠実に外部に向けて発信している」という印象が強うございます。この点に関して対照的なのは日銀執行部の残り2名でありまして、無闇やたらと出番が多く、特に記者会見や国会などでよく言えば「自分のお言葉」、まぁ要するに「不規則発言」というか「情緒的な表現」が多くマーケットに燃料を投下して下さる福井総裁や、相変わらず自説の開陳にご多忙で時に「ええっ!!」と言いたくなるご発言(国会で同席している福井総裁と違う見解を堂々とご披露して下さったり、リフレ派経済学者大集合のセミナーで訳の判らん「ETF転換型国債の発行」などという話をしてみたり)をして下さる岩田副総裁という2名の「暴れん坊将軍ズ」とは大違いですな〜って感じ。


まぁ次期総裁含みで格下の副総裁に就任したなどとゆ〜話をしては良くないのですが、(財務事務次官と日銀副総裁を比較したてどっちが格上かど〜かは旧官制というふる〜い話を持ち出すと判り易いと思うのですが、日銀副総裁の位置づけがわからんかったので。ちなみに各省次官は勅任官になりますので「閣下」と呼ばれます。)まぁそうでしょうな〜と世の中的に推測されている武藤副総裁が日銀事務方の意向を一番良く汲み取り、「量的緩和政策を直接に国債管理政策にリンクして緩和政策を延々と続けるような事はしませんよ」と言った趣旨のお話もして下さる訳でして、まぁ暴れ馬コンビ(というかお互いにタッグを組んで暴れているわけではないのでコンビではないですが)の福井総裁あんど岩田副総裁よりも日銀内部から見ると遥かに「頼りになる存在」になりつつあるのではないかと存じます。

何故か暴れん坊将軍ズのお二方と比較して外部で情報発信をする機会が極端に少なく、またその場も先日の講演は「金融情報システムセンター」というまぁ一般ピープルというよりはマニアックな専門家っぽい会合であるように、割と「専門的な場所」。国会に出てくるときに武藤副総裁が出てくるというのもあまり印象がありませんし、大体ドラめもんでネタにした武藤副総裁の前回の出番は6月18日の石川県での金融経済懇談会でありました。その前は現在過去の作品の未整理箱に入ってますので少なくとも半年は遡ると言う事でして、外部から見ると妙に印象というか影の薄い存在になっているように見える武藤副総裁。


しかし偶に出てくる時に発信される情報は日銀事務方の意向を忠実に代弁してくれますし、激しく地味なのですが結構重要な話をしている事も多いと来ておりますので、着々と内部の掌握を進めているのかもしれませんね。まぁ官僚機構のトップに立たれるようなお方ですからそ〜ゆ〜事はお手のものだと思う訳ですが、まぁともかくとして、浮き上がっているという感が強い暴れん坊将軍ズよりも地味ながら武藤副総裁の偶に出てくる情報発信は注目していきたいと思います。



昨日あまりにも超大作を作りすぎてしまったので疲れましたって事で(というのはウソで、ちょっと昨日は突発の会が入ってしまったので、やろうとしていた準備が出来なかったというのが事実です、スイマセン。)本日は甚だ簡単なお話になってしまいました。恐縮至極。ちなみにこの分量はやたらと同じ話を繰り返してくれるので引用するのがややこしかった水野審議委員のインタビューネタで過去最高の分量になってしまった昨日の4分の1です^^。







2004/12/07

お題「水野審議委員の就任記者会見」

情報ベンダーなどでは内容がちょいと出てましたが、12月3日の水野さんの就任記者会見が日銀Webにアップされましたのでこちらを見ましょう。

http://www.boj.or.jp/press/04/kk0412a.htm

○全体的にはまぁ穏当にって感じかな?

冒頭でこんなコメントをしています。

『本日付で審議委員に就任した水野と申します。今まで日本銀行というものを外から見ていた人間が中に入って意見が変わったというと怒られるが、多少物言いが変わってくるかも知れない。ただ、なるべくフランクに正直に、もし日本銀行と自分の考えに違いがあればできるだけわかりやすく言っていこうという点は変わらない。従って、今までマーケットにいた時に言ったことから急に意見を変えることはないと思う。ただ、基本的に日本銀行の考えているスタンスは押えて話をさせてもらうので、多少歯切れが悪くなるところはご容赦頂きたい。』

うんうん、模範解答ですな〜(^^)。

『今まで日本銀行を外から見ていたマーケット参加者が、こういうかたちで政策委員会メンバーとして入っていくことについて、私が適任かどうかは本当にわからないが、今回引き受けた一つの理由は、マーケット参加者が一人入っていくのも悪くないかな、という思いである。これからもこういう人間が入れるように、私がつまずいてしまうとまたそういう道が途絶えてしまうので、しっかりやらせてもらえればと思う。』

私がつまずいてしまうと云々の部分は、「次はひょっとして俺の番か?」と思っているあんな人やこんな人をはじめとした市場関係者が口には出さないけど激しく感じている所でしょうな。ちょっと苦笑。

水野さんは今まで「量的緩和はとっとと解除しましょう大体来年の前半位に」と主張していたと記憶しておりますが、さすがに就任記者会見で具体的時期の言及はしておりません。まぁ当たり前ですが一応気は使ってますな(^^)。

で、この先もご紹介しますが、のっけから飛ばして躓かないように、かつマーケット参加者として「市場の声を伝えないと」っていう意気込みは伝わって来るというのが全体的な印象ではありますな。



○タカ派的発言の意義(?)について

本日は趣向を変えて(る訳でも無いですが)、質疑応答を順に追わないで見ます。

と申しますのは、この記者会見では散々タカ派っぽい発言を繰り返しておりまして、最初は「水野さんのっけから飛ばしてますな〜」って印象を受けたわけですが、会見をよくよく見ると最後の最後に妙(と言ったら失礼ですが)なコメントがあったりする訳でございます。最後の質疑をいきなり見てみましょう。

『(問)先程審議委員に就任した抱負の中で、マーケットのメッセージを伝えることが1つの役割だと認識されているとおっしゃっており、私もその点に非常に期待を持つが、過去の日銀の金融政策運営を振り返った時に、マーケットのメッセージが上手く伝わらなかったゆえに不都合が生じたようなケースについて、例えばどういうところを外からご覧になっていたのか、具体的に伺いたい。』

金利に蓋をするとかまぁ色々な迷言もございましたし、CPI時間軸が変更になるのではないかというような勢いの早期量的緩和解除観測があったりと、まぁこの2年くらい碌な事がありませんでしたが。

『(答)こうした立場になると言い難いが、例えばマーケット自身も超低金利政策が続くがゆえに、金利が上がらないことを前提に物事を考えている人が多い。ある意味で、将来の政策を考えることが無駄である、だから債券運用において将来の金利上昇をあまり考えなかった。その結果、債券相場は昨年急騰した後に急落したということが起きているわけである。』

『そういった意味では、例えば今年──足許、長期金利は放っておくと金利が下がりやすい環境にあると思うが──、景気が減速してくる、足許の景気指標もどちらかというと失望的なものが多いのに対して、福井総裁が多少楽観的な景気の見方を出して、ある意味でインフレタカ派的な発言をしているのは、それをけん制しているという意味で、評価して良いのではないかと思う。』

『そういった意味では、マーケットが昨年発したメッセージ──債券市場から発しているメッセージがマーケット自体の多少のオーバーシュートであったりするわけであるが──に対する経験は、実は今年のそうした発言等をみていると、かなり生きてきている可能性はあるのではないかという気がしている。(より遡った話になる後半部分は割愛)』

という訳で注目は第2段落部分なのですが、この言い方ですと福井総裁は債券市場のオーバーシュート(この場合は相場上昇へのオーバーシュート)への牽制の意味もこめてタカ派スタンスを継続しているかのように取れるのですが、本当にそうなんでしょうかってのは「???」ではあります。福井総裁は単にここ1年半くらい延々と景気に強気なだけではないかって気が思いっきりする訳で(^^)。

まぁ水野さんが質疑の最後で敢えてこういうものの言い方をしているのですが、その前には(この先で紹介しますが)量的緩和政策の弊害(というか単に低金利の弊害のような気はしますが)について散々言及して、「まぁこれはインフレファイターですな」と瞠目するような発言を連発しております。これらのタカ派的発言と上記の質疑応答をリンクして考えますと、水野さんのタカ派的姿勢は(勿論元々タカ派的言動が多かったので、まぁ素だとは思いますが)穿った見方をすれば『足許、長期金利は放っておくと金利が下がりやすい環境にあると思うが』といみじくも仰せの市場環境に対する牽制で敢えて緩和政策の弊害を連呼しているのではないかと思ったりしちゃう訳であります。

深読みしすぎだとは思いますが(^^)。



○量的緩和政策の弊害に関して

で、まぁ上記のような「量的緩和政策の弊害強調」ですが、いくつかの質疑で弊害に言及してているために、トーンとして「随分と量的緩和政策の弊害を強調しているな〜」って印象になるのですが。まず最初の質問「抱負はどうよ?(意訳^^)」に対する答えの一節。

『マーケットのメッセージをもう少し政策委員会の中でも言っていきたいと思っている。特に、今年のマーケットを見ているとボラティリティが非常に低いが、これは決して良いことではないと思っている。例えば、クレジット・スプレッドが非常にタイトになっている、あるいは債券市場が動かない、株価も動かない、為替もちょっと年始に動いてまた足許は動いているが、基本的に落ち着いている。こういう時には、その後に何か大きな動きが起きることが多いので、きめ細かく見ていく必要があるというのが今の気持ちである。』

はぁそうですか。クレジットスプレッドがタイト化するのは企業収益の好転とか、相変わらずの銀行の貸出過当競争とかという要因もあろうかと思いますが。現に格上げラッシュですし。まぁ言いたかったのはマーケットのベタ凪が続きすぎって事なんでしょうが、「ふ〜ん」という感じ。


次の質問は「量的緩和の出口論に関してどう考えますか」って物なのですが、ここではこんな話をしております。

『量的緩和政策の副作用についてである。今までは量的緩和の副作用よりもメリットのほうが大きいということで動いてきた──日本銀行の基本的な立場は私も理解しているところである──が、一つの副作用として言えることは、金利が低いということもあるが、金利が動かないことを前提に世の中の金利体系が決まってしまっているということである。例えばいろいろな仕組み債がどんどん人気化して、それが地域金融機関に買われていく。あるいはボラティリティがないことが将来の大きな変動をもたらすということも起きてくると思う。』

弊害言うなら貴殿の出身会社は仕組み債を売ってねぇのかよ等と言う様な野暮な話は全く申しあげる気は御座いませんが(^^)、まぁあんな仕組み債やこんな仕組み債が売れており、目先の期間利回り確保の為に訳の判らんリスクを取ってしまっている商品が人気化しちゃっているのは「低金利政策」の弊害の一つではあろうかと思います。

ただ、低金利政策だけに文句をつけるのもアレでして、よーするに民間部門の資金余剰という資金循環上の問題もある(というか民間が資金余剰じゃないと低金利にならんが)のでどうなんでしょって感じではあります。


別の質問に対する答えでは聞かれもしないのに懸念をもう一発述べています。

『先程も少し触れたが、私が非常に気にしているのは資産インフレの問題である。例えば、クレジット・スプレッドがタイトになっているが、これは実は量的緩和の1つの副作用ではないか。実際の価格が必要以上に割高になっている可能性があるのではないか。それから、もう一つの弊害としては、例えば、不動産のマーケットが非常に割高に取引されており、これも一つの資産バブルの兆候なのではないか。』

最初にもクレジットスプレッドについて述べてますが、資産バブルと来ましたな(^^)。



○資産価格の割高化って??

ということで、先ほどの発言にあります「不動産の割高化」っていうのは何か物凄く違和感を受けるのですが、恐らく水野さんがイメージしているのは、不動産証券化商品でありますREITとか不動産私募投信とかが「不動産」という括りで考えた場合にありうべからず利回り(5%以下とか)まで買われている状況だって事だと思います。確かに証券化商品がらみの不動産は大活況だと聞いてますが。

個人的にはIPO絡みのバブルというのは判らんでもないですし、不動産に関しては証券化商品がらみのバブルってのも判りますが、じゃぁその他の不動産はどうよ?って話になるとまぁ新築の大規模開発案件以外はどっちかというと駄目駄目って印象なんですけどね。

まぁ訳の判らん仕組み債が売れると言うのもバブルと言ってしまえばバブルなのですし、クレジットスプレッドがタイト化するというのもそういう面もあるかもしれませんが、そもそも量的緩和政策の目的の中に「企業金融の円滑化」というのもあった筈ですから、まぁ政策効果が上っているという事なのかもしれませんな。このコメントの前に『量的緩和政策を導入した当時の経済環境が変わり、所期の目的が達成された後に、日銀自らがある意味で異例あるいは異常として緊急避難的と認めているような政策を続けることが、説明責任の観点から正しいかどうか』って言ってますんで、要するに政策効果が十分に上っているからそろそろ出口を考えろ事を言いたかったのでしょうが。

『低金利政策を続けた後には、一般物価が上がらなくても、必ず何らかの資産価格が──今はおそらく局所的だとは思うが──ある意味で「バブル」と言われるような状況になるということは、実は後になってからでないとわからない。』


○出口政策論その1〜量と金利は一体

この記者会見は一つの質疑で色々な話をしているので引用がやたらとめんどくさいです。金利と量の関係についてはこんなことをコメントしています。

『30〜35兆円という目標の下限を例えば27兆円というように下げていくことをどう思うかという話だが、量的緩和の拡大後に、量的緩和の枠組みの中で量的なターゲットを引き下げていくと、市場は、次の一手としておそらく量的緩和の枠組みの解除、それから将来の短期金利の上昇を織り込んでいくであろうから、おそらく量と金利を一緒にコントロールすることは不可能であると考えておいたほうが良いと思う。 』

『例えば、量的緩和の枠組みを維持しながら、数兆円目標額を下げるというのは可能であると考えられるかもしれないが、おそらく市場参加者が先行きの金利の引き上げを予想すれば、当座預金残高にお金を積むことをおそらく意味のないものと考えているので、当座預金残高目標の位置付けはまた難しくなってくる。結果的には、当座預金残高目標の引き下げというものは、金融政策の先を読むマーケットのさらなる動きの中で、当座預金残高目標のさらなる引き下げに追い込まれることになる。従って、理論的には──机上の議論としては──可能かもしれないが、現実に予想されるマーケットの動きからすると、テクニカルな面で非常に難しいのではないかと考えている。』

よーするに量を減らすと「量的緩和の出口」って話に直結するから技術的にムツカシイのではないかって話でして、この辺はあたくしも同じような意見でございます。


○出口政策論その2〜ビハインド・ザ・カーブのリスク

こんな質問が出ております。

『水野さんは、最近のレポートなどでも、消費者物価指数というのは、景気の遅行指標であって、それにあまり縛られた金融政策するのは、ビハインド・ザ・カーブに陥るリスクがあるという論陣を張られていたと思う。そういった考えは、日銀に入られても変わらないか。今後もそういった主張をされていくということでよいか。』

『ビハインド・ザ・カーブを承知で今の枠組みを続けているという発言は、その他の審議委員の方からも出ている話であり、それ自体は、日本銀行も理解しながら今の政策を続けてきていると考えている。私の理解では、量的緩和の枠組みというのは、ある意味で構造改革、構造問題に対する対応、先程お話した不良債権問題、あるいはデフレ・スパイラルのリスクに対する緊急避難的措置である。だから、多少のビハインド・ザ・カーブのリスクは承知で行っていると考えている。ただ、ビハインド・ザ・カーブのコストが、デフレからインフレにすぐなるならともかく、デフレからせいぜいディスインフレの世界になる程度であるなら、大きな問題はないのではないかというのが、政策委員会の基本的な考え方として、たぶん今の政策枠組みの大きな根底にあるのではないかと思う。』

『私自身は、その先をもう少し見ていて、量的緩和を続けることがビハインド・ザ・カーブになる、その結果、資産価格が──これは広い意味で、いろいろな資産価格、先程お話した社債の価格、あるいは長期金利も下がり過ぎているとか、いろいろなことがあると思うが──、将来、なんらかの政策変更を伴った時に──金融引き締めということになるが──非常にボラタイルな動きをもたらす可能性がある。従って、資産価格の安定という観点からすると、若干、将来に問題を残してくるのではないかという懸念を持っている。』

緩和解除が遅れた場合に、緩和政策のやりすぎの弊害が出る為にその後の引き締めを過剰にやらないといけない破目に陥るので、却って逆効果(80年代後半から90年代初頭の金融政策ですわな)になるっていうまぁ「カタパルト効果」みたいな指摘をしている訳ですな。で、この点に関しては岩田副総裁や中原審議委員と対極を為すので今後の論争が注目されるところであります。ってまぁ論争になるのは岩田副総裁だけだと思いますが。

で、資産価格がバブルだの何だのと散々指摘しておりますので、当然ながら水野さんとしては量的緩和政策の長期化によって物価はまだですが資産面には効果どころか弊害が出ているという認識で、既に現時点でちょっとどうよって話なんでしょうな。


○出口政策論その3〜コミットメント3条件の改変論

さっきの質疑応答に若干かぶりますが。

『(引用者注:量的緩和政策のコミットメントの)「3条件」については、日本銀行が昨年コミットしたところであり、今の日本銀行の政策の基本的な枠組みは言わずもがなである。これが達成されるまでは基本的には今の枠組みを変えたくないということは私も理解している。ただ、先程も申し上げたように、量的緩和政策を導入した当時の経済環境が変わり、所期の目的が達成された後に、日銀自らがある意味で異例あるいは異常として緊急避難的と認めているような政策を続けることが、説明責任の観点から正しいかどうか。将来かなり先になってからだと思うが、量的緩和政策の枠組みを導入したこと、あるいはこれを続けたことが、結果的に正しかったかどうか、これは非常に注目すべきことだと思う。』

という事で、量的緩和の3条件をいじる可能性について言及してますが、水野さんの場合は文脈から判断するに3条件を達成する前に量的緩和を解除しちゃいましょってお話でしょうから(岩田副総裁と正反対ですな)、ますますタカ派のお話なのですな。そのあと上記したビハインド・ザ・カーブがどうのこうのという話の後にこんな発言を。

『質問に対するお答えとしては、「3条件」を変えるときには、相当時間をかけて丁寧に説明していく必要があるが、債券市場に参加していた者の一人として思うことは、この説明を上手くすれば、量的緩和の「3条件」の枠組みを変えても、おそらく日本銀行にとってはがっかりするくらい債券市場はクールな反応を示すのではないかとの感触を持っている。ただ、日本銀行の説明責任の観点から、一度コミットメントしたことを変えることは如何なものかという議論と併せて考えると、非常に慎重な議論が必要であり、時間をかけて議論をする必要があると考えている。』

それはそうかもしれないけれども、債券市場が反応しないから無問題というのはそれこそ如何なものかと。本人も「説明責任の観点」を持ち出してますから勿論判った上で言っているとは思いますが、市場オリエンテッドもやりすぎないほうが吉かと。

大体ですな、政府債務が絶賛発散中なのは債券市場関係者誰でも認識している話でして、そんな中でも債券相場が政府債務問題をネタに暴落しない(下がった事もありましたが)のはど〜してよって話と同じだと思うわけです。たまに「債券市場が暴落しないのは政府の財政問題に対する取り組みを高く評価して、財政再建への信頼が高いから」などという人がいますが、それは大分違うと思うぞってな訳で。

ま、水野さんですからその辺は理解してるでしょうが。



○蛇足ですがちょっと気になったこと

質疑応答の中では「量的緩和の意義をちゃんとレビューしましょう」的なコメントもあったのですが、本当にそういう意味で言っているのかよー判らんのでちと省略。で、ちょっとこの水野さんの話を見ていて気になったのは「妙に循環的回復の方に力点置いてやせんでしょうか」って事であります。

『日本銀行の場合は、構造調整圧力の緩和の中で、少し景気循環的な明るいものが見えてきているので、構造改革に対応した政策の枠組みから景気循環に合わせた政策の枠組みに変えていく準備をそろそろしていく必要があるのではないか。景気循環の局面で今どこにあるかということを、もう少し市場参加者に言っていく必要がある。』

ってな話もしておりまして、要するに構造要因はだいぶ解消されており、それどころか資産バブルが発生してますよって認識をお持ちのようです。

でも、その認識ってのは現状思いっきり2極化と言われる物が絶賛進行中の中において「勝ち組」と言われる一握りのお方が感じる認識なのではないでしょうかねっていう印象を受けるのですわな。勝ち組ではない(というか負け組ですが)カテゴリーにおりまするあたくしの目から致しますと。

ちょうどアイテーバブル大崩壊中のさなかに「景気は絶賛回復中」とか言ってゼロ金利解除して、当時アイテー業界でヒーヒー言っていたあたくしをして「えぇぇぇぇぇ!」と言わしめたときの事を思い起こさせる物がございまして、その辺がちと気になる所ではございます。まぁ蛇足ですけど、どうもこの質疑応答を見ていると「タカ派」的な印象と共に、「何だか勝ち組の論理が横溢してるな〜」っていう印象を受けたので余計な感想を述べさせていただきました。


ではでは。

2004/12/06

お題「ちょっと重いネタに関して掴みだけ・・・」

本題の前に水野審議委員就任記者会見に関して簡単に。

田谷審議委員の後任として就任した水野温さんの記者会見が金曜日に行われました(他の人だと正直ど〜でもいいが、田谷さんに関しては退任記者会見というのも聞きたかったですが)。会見要旨は本日日銀Webにアップされると思われますが、情報ベンダーで出てきたフラッシュを見た印象は「まぁ予想通り」という感じでして、質疑の順番のせいなのかもしれませんが、「前半やたらと威勢が良い(タカ派的)話をしてたけど、後半にトーンダウンしてますな」っていうのが感想です。

情報ベンダーのフラッシュを見てたベースでは、量的緩和政策の弊害(つーか低金利の弊害)を強調しているものの、量的緩和解除に関しての時期その他の明言は避けたようで、低金利政策の弊害を強調する段と量的緩和政策の出口に関する段での雰囲気がちと違うように見えました。まぁ総体としては「量的緩和政策は弊害の大きさが目立つようになってきましたが、そうはいっても量的緩和の出口はさて・・・・??」ってところだったかと。

まぁ会見要旨を改めて見たいと思います。


○決済システムに関して

という重いネタに関してはあたくし昔々に日本国債のレポ取引市場の立ち上げ時期に某会社でレポ取引の立ち上げっつーお仕事をした事がありますので、何気にこのネタに関しては興味と関心がございます。そんな中で武藤副総裁が先週末に金融情報システムセンターとかいうところで講演をしていたようで(全然話題になって無かったので、あたくしも気がつきませんでしたが)、「決済システムと日本銀行」というお題で紙に打ち出すと11ページにもある講演でございます。

で、まぁこーゆーネタに関しては土日にのんびりと書いておけば良かったのですが、まぁ例によってサボっていたので今朝は講演で触れられている話に関してあまり体系的ではない雑感を。ちゃんとした考察は後日で勘弁して下さい(汗)。

講演はこちら→http://www.boj.or.jp/press/04/ko0412a.htmでして、見出しを並べると以下のようになります。量が多く読みではそこそこありますので、ちょっとだけ拾って行きます。

1.はじめに
2.決済と日本銀行
3.安全で効率的な決済システムを目指して
4.小口資金決済
5.大口資金決済
6.証券決済
7.BCPの強化
8.決済のオーバーサイトと民間の努力
9.おわりに


・決済業務は重要ですな(2.決済と日本銀行)

『日本銀行は明治15年に設立されましたが、大蔵卿である松方正義が三条太政大臣に提出した「日本銀行創立の議」及びその付属資料である「日本銀行創立旨趣の説明」によれば、日本銀行設立の大きな狙いの一つは、「銀行のコルレス網を整備し、全国各地の金融の繁閑を調整・平準化する」ことにあるとされており、全国的な金融市場と効率的な決済システムを作り上げていくことが設立当時から大きな政策目的とされていたことがみてとれます。』

そういえば絶賛内紛中と伝えられるどこぞの銀行は「金融維新」などと仰せでしたが、決済業務は実質的にやってないのと同じで既存インフラにただ乗りという大変虫のいい事をしてますが、それは普通「銀行」とは言わずに「無尽」というのが正しいのではないかと思いますな。話が尚も逸れますが、決済業務をやっている訳でもない銀行の預金を預金保険で保護するのは預金保険制度の趣旨に半分くらい合致していない(小口預金の保護には合致してますが、そもそも何の為に小口預金を保護しているのかと考えると、小口決済が止まりまくって経済に混乱を与える事を防ごうって話でしょ)と思いますが。

・小口決済における現金に関する考察(4.小口資金決済)

小口決済に関して日米比較を交えながらお話をしております。で、この手のお話をしだすと日米比較をしながら「日本はキャッシュレスが進んでおらず、現金好きの日本人は誠にケシカラン」という論調になりがちなんですけど、この講演では日米比較をしながら「日本の小口決済で現金が使われるのはそれはそれで良い事である」という感じで話をしておりまして、「おお、ちゃんとした話じゃん」と思ってしまった訳です。

『銀行券は広く利用されています。随分昔から「キャッシュレス社会の到来」が言われてきたことを考えますと、不可解な動きに映るかもしれません。このようにわが国で現金の利用が多い背景としては、「日本人の現金好き」といった、言わば、文化論的な説明がなされることがありますが、それだけでなく、もう少し実体的な理由もあるように思われます。』

『わが国で現金が使われるのは、使われるだけの利便性、安全性が備わっているからであり、その背後には、日々幅広い関係者がそのための努力を払っている側面も無視できないと思っています。例えば、CD・ATMの設置台数は国際的にみても非常に多く、ネットワークが充実しており、そのお陰で現金の入手が容易になっています。また、治安が良いために安心して現金を持ち歩ける、といった事情もあると思われます。』

で、現金を使わない方のシステムに関しても全銀システムの優秀さについて触れておりまして、正直こ〜ゆ〜話は「銀行ケシカラン」ばかり言っているマスメディアやそこらのインチキコメンテーターにでも聞かせてやりたい訳ですが。

『銀行振込等に利用される内国為替制度においては、わが国のほとんどすべての金融機関の店舗をカバーしているオンラインのネットワーク・システムである全銀システムが1973年に構築され、今日に至るまで、日本の小口決済システムにおいて中心的な役割を果たしてきました。このように小口の銀行振込等を、全国何処にでも当日中に実行できる効率的な決済システムは他国にあまり例はありません。わが国の消費者は、日頃はあまり意識することがないかも知れませんが、世界に冠たる決済システムとして誇ってよいと思います。』


・問題は大口資金決済と証券決済ですが、ネタが重いのであたくしの雑感

まぁここまでは前振りみたいなもんでして、現在絶賛改革中なのはこの辺の話でございます。で、この辺に関してはあたくしめも色々と思うところがあるのですが、この講演を敷衍しながら話をしていくのにはさすがに色々と考えないと書けませんので、思いっきり竜頭蛇尾なのを覚悟いたしまして以下あたくしの愚考をば。


まぁ世の中欠点の無いシステムなどというものは存在しませんが、現在の日本における証券決済、というか債券決済に関する問題点としてあたくしが思いますのはまずは「決済方式が混在している」という事ではないかと。

講演でもあるのですが国債決済に関してはDVP(資金と証券の同時決済)が導入されて将来のSTP(約定から決済までの一貫した処理)化を睨んでいるのですが、肝心のDVP決済が全てに行き渡っているかと言うとこれが必ずしもそうではない所が日本的といえば日本的なのですが如何なものかという所であります。

と申しますのは、多くの取引がDVP化されていますが、一部の市場参加者は相変わらず国債と資金の決済をバラバラに実施しておりまして、この取引が決済の中に混在すると、その取引分に関しては国債決済と資金決済のタイムラグが発生する為に日中資金繰りという問題が生じてしまいますし、国債決済に関してもRTGS(即時グロス決済)と別に動く事になる(この辺の知識はうろ覚えなのですが、何せRTGS導入の頃には債券業務やってませんでした)ので物の受渡もまたややこしい話になる(らしい)ようです。

決済制度として導入するならそれこそ全銀システムのように決済の基本的な部分は一本で確定させないと非常にややこしい事になるのではないかと思いますが如何でしょうか(って質問してますけど、質問内容がマニア過ぎますな^^)。


並べだすと幾つも問題点を出せるのですが、もう一つだけ挙げますと「合成の誤謬が決済制度に負担をかけているのではないか」という(偉そうな)点でございます。

DVP決済導入に伴い大口取引において一発で決済できなくなるリスクを考えて、取引を小口化(1000億なら50億*20本とか)してみたり、これは決済制度とは関係ないですが、資産運用業務での合同運用の廃止といった施策によって、債券の決済がやたらめったら小口化しておりまして、国債決済業務のおおもとであります日銀さまの決済業務負担も大変に増大していると仄聞しております。

取引の小口化とか合同運用の廃止とか、一つ一つを見ると御尤もな話なのですが、それらが回りまわって全部決済制度に皺寄せがきているように思える訳でして、まぁ市場取引慣行の整備も大事ですが、慣行を整備した結果「合成の誤謬」にならないようにしていただきたいものです。


というわけで、予定通り(汗)話が発散したまま以下明日以降に続くという事で宜しくお願い致します。





2004/12/03

お題「例によって雑談系小ネタ」

相も変らず12月独特の相場ですが、米国雇用統計前の本日は果たしてどうなる事やら・・・・・

○10年国債入札レビュー

昨日の10年国債入札。元々先週末あたりからせっせと10年ゾーンを叩く動きがありまして「頑張って売ってますなぁ」って感じではあったのですが、その間に米債が売られてみたりしてたのでそれなりに債券市場意気消沈って雰囲気にしておりました。

で、一昨日はさすがに「事前の売り」にやり過ぎ感が出てきていたのですが、神風のように(?)NY市場で株価は上るは米債は売られるわという事になったので、あたくしも昨日朝のドラめもんで「10年入札を前に米国株式大上昇という心温まる展開でございますが、まぁ下がった方が入札自体はやりやすいでしょうな。」などと言いつつもやっぱり雰囲気に飲まれて自信が無かったので(自爆)それ以上のことは書かなかった訳でございます。

だいたいこ〜ゆ〜パターンですと前場から皆でせっせと先物にヘッジ売りをかましまして相場を押し下げるものの、相場が下がるにしたがって段々「そんなに下がるなら入札まで待たないで買いまひょ」とゆ〜お話になってきて先物の下げに対して(今回のケースだと)10年ゾーンの下げにブレーキが掛かりながら入札(前場の引け)を迎えて、入札でドテン大ロングって感じになる訳でございます(まぁ落札したのにまだショートってのは入札読み間違えて空振りになるケースを除きかなりのへそ曲がりだと思いますが)。

ところが、昨日の場合は事前に散々売り込んでおり、一昨日にも既に「そんなにさがるなら・・・」って買いを誘発していた事もありまして、海外要因が「債券売りモード」であった事をネタにして10年ゾーンをもう一発売り込もうとした動きが一瞬ありましたが見事に「事前の買い」で返り討ち。前場引けの時点で何とか先物は前日比1銭安でしたが、肝心の10年国債は前日比利回り低下気味という事になってしまった訳ですな。


で、入札の結果は毎度のように事前のプライストーク通りでしたが、運良くドル安が進行しちゃった事もありまして相場は威勢良く上昇してくれたのですが、先物との関係を見ると実は上昇しながら先物の方が前場の引け段階から強くなってきております。という事は入札後の上昇は必ずしも10年新発国債が牽引車だった訳ではなく(勿論10年国債に買いが入ったとは思いますが)、途中からは「先物持ち上げ攻撃」の方が相場のエネルギーになっていた可能性が高いのではないかと思われるところです。とゆ〜か、多分後場の高値近辺で先月発行の10年264回債が1.4%まで上昇したわけですから「まぁラッキー」ってな感じで売りが出たというのが実情だとは思いますが。

てな訳で、今回の10年国債入札は事前に投資家様の買いターゲット(新発国債の1.5%近辺)まで散々売り込んだ効験あらたかと言ったところかと思います。後場の上昇のせいで政地債の条件が売り難いものになってしまって一般債のディーラーの血圧が大変上昇しているような気がしますが、まぁ国債の方は無事でしたな〜って事で(^^)。

何か短観前に米国雇用統計でひと暴れあるかもしれませんが、基本的にはこれで15日の短観まで特にな〜んもないって事で宜しいのではないでしょうか。などと書きますとドラめもん良く外れるの法則で相場大荒れになったりして(汗)。


○財務省の金利スワップ取引続き

あたくしの悪態が聞こえたのか(わけはね〜って)財務省さまにおかれましては一昨日の懇談会「国の債務管理のあり方を考える懇談会」の議事要旨と資料を早速財務省Webにアップしました。第1回の議事要旨のアップまでの時間と大違いなのはちと微苦笑って感じでしたが。

で、昨日悪態をついた金利スワップに関しての資料もあったのですが、それに関して(あまり深く調べてないので印象的なお話ですが)愚考というか感想。


・スワップ取引でコストコントロール?

資料(は財務省のWebから「審議会一覧」ってのがメニューの中にあるので、そこから辿って下さいませ)をみるとCaR分析とかいう訳のわからん概念がございまして、「将来の金利変動パターンについて確率的なモデルに基づきシミュレーションを実施、利払費用の平均値(コスト)や利払費用の分布の幅の大きさ(リスク)を計測、定量的な把握を行う分析」である。などと書いてありまして、どうも大真面目にコストをコントロールするような書き方になっております。

そもそも将来の金利変動パターンって景気動向だの財政状況だのに依存するお話でして、景気が良くなって金利が上昇すれば財政的には税収が増加するから別に無問題というか却って目出度し目出度しですし、財政状況に関しては政治マター(と言いつつも財務省さまの力にも大きく負う所はありますが)ですからコントロールも糞も無くて、「財政再建を頑張りましょう」で終了のような話ではないかと思ってしまう訳です。

だいたいからして、毎年国債発行計画見直してるんだからそうそう「不測の事態でもう駄目ばい」って事はないでしょうに・・・・・

昨日も申しあげましたが、鳴り物入りで法案まで通した(そういえば審議中に「こんなこと必要なのか」と衆議院財務金融委員会で何と共産党の佐々木委員に突っ込まれていたと記憶しておりますが^^)以上、何かやらにゃーいかんって話ですので、大真面目にやっているのか仕方がないからやっているのかは正直判らん(当時の人は理財局にいるわけでもなかろう)ところでして、まぁ渋々やっているのであれば、財務省の皆様にもご同情申しあげたい所ではございます。


・諸外国の例

資料には諸外国に於ける金利スワップの活用ってのがありまして、欧州諸国の例が挙げられているのですが、どうもこの諸国ってユーロ導入の縛りがあって財政赤字の削減をしないといけない人たちであって、日本と状況が違うような気がする訳です。

特に大物のフランスとドイツのスワップ取引の目的に「資金調達コストの削減」ってのがある訳でして、要するに国債発行年限をスワップ取引を用いて事実上短期化するって話になっておりますわな。日本の場合は年々国債発行額が絶賛爆発中(福井総裁に言わせれば地雷源ですな)であって、どちらかと言えば低金利のうちに調達コストを長期で固定化しましょって方向性になっているので話がだいぶ違うと思うんですが。

まぁこの辺に関しての知識はあまりないのでイメージ話で甚だ恐縮ですが、どうも妙な違和感を感じたので・・・・・・


それでは〜(^^)/~~






2004/12/02

お題「やる必要あるの?/経営って・・・・」

10年入札を前に米国株式大上昇という心温まる展開でございますが、まぁ下がった方が入札自体はやりやすいでしょうな。というわけで今日もまた相場に関係が微妙にあったり無かったりする小ネタで。そういえば昨年も一昨年も12月って書き物のネタが無かったりしたな〜などと思ってみたりするわけです(^^)。


○新しい事をやるのもいいですけど・・・・

昨日は第2回になる財務省「国の債務管理のあり方に関する懇談会」が実施されまして、報道によりますと席上来年度の国債管理政策の新たな施策として新型個人向け国債(5年もの固定利付債)導入、国債の海外説明会の実施、国債の金利スワップ取引の実施っていう3本建てが予定されているそうです。まぁ固定利付5年債の発行は結構なお話だと思いますが・・・・・

国債の金利スワップ取引に関してはブルームバーグの報道によりますと「2008年度に大量の国債償還が発生する状況のなか、情勢次第では借り換えに伴う調達コストが大きく上振れするリスクがある。このため財務省では。2008年度を超える長期の『固定払い・変動受け』と2008年までの中期の『固定受け・変動払い』の金利スワップを組み合わせて実施する。実施時期は2005年度下期以降の予定、取引規模は2000億円ー3000億円(想定元本ベース)と見込んでいる」との事。

まぁわざわざ法律まで通してやる事にしちゃった「スワップ取引」なのでやらない訳には行かないというのはよーーーく判るのですが、この程度の話であれば「借換債を長期ゾーンで発行増」+「買入消却の増加」で楽勝でお釣りが来る話ですし、どう考えても市場の厚みが国債の方がでかいでしょうから、マーケットインパクトも小さいと思う次第でございます。

ついでに申しあげますと、国債の発行だの買入消却だということであれば、その場(というか受渡が終了した段階で)取引関係は終了なのでややこしい話はございませんが、スワップ取引という事になればスワップ取引の期限がやってくるまで取引関係は終了しない訳でして、相手方の信用リスクってぇものまで管理する必要があるという面倒なお話。

信用リスク自体はそれなりに担保を取ったりしてカバーするんでしょうが、取引再構築コストまで全部完璧にカバーできるかという話になると、こればっかりは「その時になってみないと判らない」って面がございますし、取引相手方が日本撤退するとかお陀仏さんになるとか色々と世の中あるでしょうし、一夜にして金利が数%飛んでしまえば取っていた担保で取引再構築コスト賄えない(そこまでカバーする担保まで出せと言われたら誰もやらんでしょ)でしょうし、まぁ来年度下期からスタートらしいですが、どうなるのかお手並み拝見でございます。



他に代替手段が無いなら仕方無いのですが、どこをどう考えても従来の「買入消却」で間に合う話(唯一意味があるとすればオフバランス取引なので予算措置が不要って事ですかねぇ)をわざわざ手間隙掛け、しかも従来施策よりも後処理が面倒くさいという「新施策」をやるというのはどうも「???」でございます(なんて事は会社の看板背負ってたらだと書けないよな〜)。

福井総裁みたいに鳴り物入りで「資産担保証券の買入」という「新施策」をおっぱじめておいて、買入実績が伸びない事を国会で突っ込まれて「これは買入実績が伸びないで市場が拡大するのが最もあるべき姿である」と堂々と表明する(ちなみにあたくしは「中央銀行が資産担保証券を買い入れるのはいかがなものか」って主張してますんで、この福井総裁の開き直りには結構感動しちゃいましたが^^)勇者も世の中にはおいでですが、ど〜考えてもこのスワップ取引は大真面目に国債管理政策に組み込まれるようですので、上記したような事が色々と気にかかる所です。再度申しあげますが、他に代替手段があり、しかもそちらの方がスムーズに機能するのですから、法案をわざわざ通したから云々というような建前は気にしない方が良いのではと思うわけです。


ええ、将来このスワップ取引を「償還の平準化」以外の目的に使い出すって意思があるのであれば話は別ですけどね〜をっほっほ。


あたしゃーこのスワップ取引問題見てると、城山三郎さんの小説「官僚たちの夏」の中にある登場人物のせりふを思い出すわけですよ。

『役人は、とかく新しい幟を立てたがる。法律をつくれば、点数も上るし、マスコミにとり上げられ、後々まで有名になるかも知れん。だが、よく考えてみれば、本当に新しい法律がなければ動かぬような事柄はほとんどないはずだ。むしろ法律づくりに熱を上げれば、枝葉のことにとらわれて、問題の解決をおくらせる心配がある。行政官としては、たとえ地味でも、ひとつひとつの問題を実際的な形で解決することに努力すべきだ。』



○日本振興銀行の内紛?に思う

別のところで書いたものを大幅加筆してこっちに書いちゃいますが。

日本振興銀行が報道やらリリースやらを見てるともうズタボロの状態になっているようでして実に香ばしい状態になっているようです。どうも創業メンバーが続々と辞めた挙句(振興銀行のWeb見ても役員退任のリリースが無いのですが、役員構成を見てると、設立時の主要メンバーで残ってる社内の人間って小穴社長@もとDKBだけのような気がするのですが・・・)に、設立時には社長に擬せられていた落合さん@オレガを取締役会議の内容を外部漏洩したとかいう理由で懲戒解雇などという豪快な事をして、落合さんからは当然の如く不当解雇と騒がれているようです。懲戒解雇なんぞされたら履歴に傷つきまくりですから当然ですわな。

で、まぁこのドタバタを傍観者としてみておりますと、昔々にあっしがとある会社の経営の真似事をした時の経験がオーバーラップしてくる訳です。

今にして思えばあっしとしてもちょっとやり様があったと反省する事しきりではありますが、まぁあたくしが絡んでいた会社の社長ってぇのは、切込隊長氏が激賞する(って判り難い例えですが)非凡かつ優秀なアイデアマンでして、後から振り返るとその着眼点の筋が非常に良いお方でした。しかしこのお方は残念な事に、アイデアを商業ベースに乗せる段階における能力がやや不足しておられまして、折角のアイデアが実務段階で実らないという傾向にあったんですな。

で、まぁ能力の高い人にありがちなパターンなんですが、物事が思ったように進行しないと生来のやんちゃ振りが現れてつい暴れて(色々な意味で)しまって物事ぶち壊しモード。折角の業務パートナーだったり、部下だったりに対してやんちゃ振りを発揮しちゃったり(お相手さまもまだビジネスやってますのであたくしの立場から見た一方的な意見であると一応申しあげておきましょうね。微妙な表現で恐縮)して、まぁあたくしもそんなこんなで結局半年ちょっとで喧嘩別れみたいになってしまったんですな。

木村剛氏および最近の日本振興銀行を見ていると似たような物を感じてしまうんですね〜。

振興銀行始めるにあたって創業メンバーがずらっと並んだ写真を表紙にした「金融維新」なんて楽しい本を出してましたが(当然読んでません)、1年経たずにメンバーがほぼ総入替状態といっても過言では無い状況。そういえばNiftyのココログで木村さんがやっているブログ「週刊!木村剛」でも始めた頃に積極的にトラックバック(意見)を送っていた人たちの多くは何時の間にか去っているようですし、まぁ組織の中で高い能力を発揮しても、経営者となるとまた別の能力が必要だという当たり前の結論なのですが、ものの見事にその状況を実演してくださる木村剛さんの勇者ぶりには感服しますが、そろそろ敗戦処理した方がよいのではないかって気もしますな。

ディーラーやってた効用かもしれませんが、負けに気がついたときの負け方というのはものすごーーーーく大事でして、再起不能になるような下手な負け方をすると金や名誉だけでは済まない事になっちゃったりするんで、木村氏を生温かく見守るヲチャーのあたくしとしては「経営というものの反面教師ですな〜」と思いつつ先行きを懸念しているわけです。

#何だかんだと言って結局キムタケのファンなんですな>自分



2004/12/01

お題「例によってあまりネタもないので雑談を少々」

○相場の材料棚卸し

昨日の債券相場はまぁ上昇いたしまして、相場としては「ほっと一息」という感じ。先週末に10年以降、特に20年とか30年とかが激烈に売られ、月曜には中期や先物が売られるという展開でして、昨日なおも下げる展開になりますと結構雰囲気的には悪化の一途をたどってもおかしくないという流れでした。予想より悪い結果に終わった鉱工業生産指数やら株価の下落がによって債券相場は踏みとどまった格好ですが、まぁ昨日の場合は目先筋は上記の理由で売りポジションだったという感もありまして、買戻しというか踏みも入った気もしますにゃ。まぁどちらにしても一息つけましたわな。

どうもゼロ金利で年末越え金利がどうのこうのというような短期金融市場初の相場かく乱要因が無くなってからというもの特にその傾向があるのですが、12月ってのはイマイチ相場の材料がなかったりする訳なのですが、相場の材料を並べてたたき台にでも。

・国内景気動向

ま〜ここの所出てくる足もとの経済指標はあまり宜しくございませんし、(ちゃんと検証してませんが)鉱工業生産指数に見られる「先行き予測」っつーのもまるで当てにならないという思う(だいたい主要製造業は絶賛勝ち組ですから先行き見通しが威勢の良い内容になるでしょ)のですが、まぁ一応現時点で「足もとの景気減速を織り込んでいる」というのが世の中のコンセンサスらしいので、この先少々弱めの経済指標が出てきてもそうそう爆発的に相場が反応するってぇ感じでもなさそうですな。大体「国民負担増キャンペーン」を絶賛実施中な訳ですから大本営としては景気失速懸念なんて雰囲気を作らせるわけにも(自主規制)。

12月短観で方向性が屈曲しだすと大騒ぎになるかもしれませんが、そこまではちとトレンドにはならない雰囲気。

・需給要因というか国債発行計画

織り込み済みというか最近はめっきり材料になりませんな、無問題。

・ドル安問題

ドル安円高→債券買いという意見はお馴染みなのですが、今回のドル安は所謂「双子の赤字」をネタにしている(しかし何ですな、基軸通貨国としては世界経済を引っ張るために双子の赤字っつーのはある程度必要な気がするんですが・・・)事もありまして、ドル安と同時に米国長期金利の上昇もアピールされる為に、米国長期金利上昇→日本の長期というか超長期ゾーンの金利上昇という流れもある(円高で景気失速がアピールされれば話は別だが)とおもうのですよ。特に円投外債に積極的な姿勢を見せている国内生保業態様なんぞにおかれましては、そんなに金が余りまくっているという感じもしません(あくまでも印象)ので、円投するとなるとまぁ国内債残高を見合いで落としてくる可能性もある(そもそも円投外債は日米金利差を享受するためにやる事だから)と考えるのはちと考えすぎかな?

という訳で、ドル安円高が米国長期金利の顕著な上昇を伴う場合は、国内債券市場に対して必ずしも買いだけで反応するものではないでしょってのがあたくし的結論。特に長期以降の長い年限の債券に関して。

・という訳で結局は国内株式市場

いつもの結論に落ち着くわけですが、国内株式市場が株価インデックスベースではこう着状態(まぁ新規公開とか新興市場関係は毎度毎度乱高下してて1999年〜2000年のあの頃を彷彿させるのですが、あの時と違って物色対象がやや分散気味なので思ったより持ちこたえているというのが個人的印象。まぁ信用収縮が起きてないというのがでかいと思いますが。)にある訳でして、債券市場に関しても反応の仕様が無いという感じではあります。

で、どうも他の外部要因が12月15日だかに発表される日銀短観まではパンチのあるものが無い以上、あまり動きそうも無い国内株式市場、しかも日経平均を見て動くって事になりそうですねっていう毎度お馴染みの結論に達してしまい、「一味変った(またはひねくれた)視点」というドラめもんのウリと全然違うごく平凡な結論になってしまい、誠に遺憾に存じます。


○全然相場と関係ないですがFP協会如何なものかという与太話

FP試験を真面目に勉強中あるいは修了された方(って読者様の過半数ではなかろうか・・・)に怒られそうなネタなのですが・・・・・

まぁあたくしの仕事場でも「とりあえずAFP資格は必須」みたいな話がありまして(あたくしは9年だか10年前に証券アナリストを取っているので無問題。資格は若いうちに取りましょ〜ってなもんですな^^)、弟子がヒーヒー言いながら試験を受けるために必要な通信テスト課題を休み時間に見ているわけですな。

でもって「実技試験課題」みたいなのがありまして、まぁモデル家庭に対してFPとして資産をどうするだの何だのという「ライフプラン提案書」を作れみたいな物がある訳でございます。興味本位で提案書を見ていて「???」と思って「ちと問題見せてくれ」って事で問題を拝見したらそこには驚愕の「モデル家庭」が(-_-メ)。(以下脳内メモリーから書き出しているので大筋は合ってますが、必ずしも課題と一致しておりません事をお断りいたします)

このモデル家庭、世帯主は40代の会社員で税込み年収が730万だかそこらで、妻がパートで年収60万だからだいたい合計で年収800万。4人家族で子供が中学生とか高校生とか要するにそんな時期。4年前に頭金1000万円弱で家を購入して3000万円ほどの住宅ローンを抱えているって設定なのに、何故か預貯金が1600万とかあって、ゴルフ会員権だの何だのと金融資産が2000万ほどあるという話になっております。

で、もっと凄いのは生命保険を夫婦で月に6万円払ってるわ、自家用車は持っているわという状況で、住宅ローンの返済が月に15万円あってどうやって資金繰りが回っているのか意味不明・・・・・と思ったら、設問のキャッシュフロー表の「前年実績」数値を見ると、税込みベースのキャッシュフローが入り800万の払い1100万で300万円の赤字(^^)。

もうこれはFPがどうのこうのという以前の問題で、家計がこの時点で破綻しているとしか思えない設定でして、何でこんな破綻した家計なのに金融資産が2000万円あるのかと問題を作った人間を小一時間問い詰めたくなるような設問。普通この時点で典型的な「住宅ローン破産」の状態でしょう。

提案書を作る以前の問題で「とりあえず貴方の家計は破綻しているので、世帯主さん車を売ってゴルフもやめて。月額掛け金6万円の保険なんぞ入る必要皆無だから思いっきり減らしてから人生分相応に生きて下さい。」と言った方が相談者の為になるのではないか(多分客は怒って帰るでしょうが^^)と思ってしまう次第でして、このような無茶苦茶あり得ない状態を設定して「ライフプランの提案書を作れ」って問題を出すFP協会とやらの脳みその構造を拝見したくなる次第でありますな。

・・・・ただの通信テスト課題にそこまで突っ込むあたくしの方が変ですかそうですか。


と、FP協会をボロクソにけなしたので最後にフォローしますと、FP資格試験っつーのは物凄く色々な知識が必要で、とてもとてもあたくしの手に及ぶ物ではありませんわな。特にCFPってどうやりゃ受かるのよ??って思う次第でして、あの試験を合格するというのは大変なことですな。

何を言いたいかと申しますと、FP協会の出してる課題は???だけど、合格して資格をとっている人は偉いですって事です。あたくしは面倒臭いので取る気ないですが。