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2006年下期の福井総裁発言インデックス

2007/03/23「総裁記者会見は先行きに関する自信は崩してませんが」
2007/03/13「2月22日参議院財政金融委員会での総裁答弁サルベージ」
2007/02/26「総裁記者会見続き」
2007/02/23「利上げ後の総裁記者会見」
2007/02/14「G7後の記者会見に関して追記」
2007/02/13「どうもぶら下がり会見で不用意な発言をしてたみたいですね」
2007/01/22「総裁記者会見では賛成と反対の差が少ない事を強調するものの・・」
2007/01/15「支店長会議の挨拶は公式見解どおり」
2006/12/26「今回も穏健な講演(経団連評議会での講演)」
2006/12/22「トーンダウンの総裁記者会見(その3)」
2006/12/21「トーンダウンの総裁記者会見(その2)」
2006/12/20「トーンダウン?総裁記者会見(その1)」
2006/11/30「3連発最後の講演も穏健、名古屋での会見も穏やかに言葉を選んで対応」
2006/11/29「講演後の会見で総裁は丁寧に答えるも利上げを煽る質問多し」
2006/11/28「福井総裁も福間さんに引き続き資産バブルに言及」
2006/11/20「定例会見続:やはり落ち着いた内容でした」
2006/11/17「落ち着いた内容の総裁記者会見」
2006/11/13「金曜日の福井総裁発言メモ」
2006/11/08「地均し全開の福井総裁講演@共同通信きさらぎ会」
2006/11/06「福井総裁記者会見補足」
2006/11/02「福井総裁記者会見」
2006/11/01「福井総裁記者会見(予告編)」
2006/10/24「全国信用組合大会での挨拶:信用組合にも金融高度化のようで」
2006/10/17「福井節復活の香りがする総裁記者会見」
2006/10/16「年内利上げの可能性を否定しない発言で相場反応(定例記者会見)」
2006/10/13「ファンド出資問題で進展」


2007/03/23

○総裁記者会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0703c.pdf

・フライング報道関連

何か半分くらいフライング報道の糾弾会をやってるようで、国会ネタ恐るべしと言うところでもありますが、会見ビデオ見てないですが何となくどこぞの誰かさんが粘着して突っ込んでいるような気もしますな。まあこの質疑部分は正直国会の追及とあんまり変らん話っぽいですから先日このネタやったんで簡単に。

いやまあNHKが毎回実況中継(笑)するのもふざけた話でして、しかも日銀・政府サイドでは「憶測報道」としてNHKでは「取材に基づく確実な情報によって行った」(上記質問者によると)そうでして、その差がどうにもこうにも釈然としませんが、まあ双方に聞いても埒が明かないでしょうなあ。

でも、ここを突っ込み出すと、そういえば量的緩和解除前に新しい金融政策の枠組みに関して物凄く丁寧な内容を報道していたどこぞの新聞社はどうなるとか、なかなかオモロイ話になってくるようにも思えますな。


・岩田副総裁の賛成票

岩田副総裁が現状維持に賛成した件に関する質疑から抜粋。

『あえて今のご質問に一言だけ答えるならば、前回岩田副総裁が利上げに反対された理由の柱は、物価の先行きについて透明性のある説明が必要だということであったと思います。岩田副総裁は、本日も今後展望レポート等で、より透明性のある物価に関する説明ができるよう、日銀として努力すべきである旨を述べておられました。そういう意味では、基本的な主張に変わりはないと理解して良いのではないかと思います。』

引き続き物価に関する説明を行うようにということですので、まあ来月出る議事要旨を見ればより詳しく判るでしょうが、物価が目先ゼロ近傍で推移し、岩田副総裁としては先行きに関して不透明な部分がある中での利上げは時期尚早というスタンスはスタンスとしてあるという事でしょうか。ただまあ利上げで却って中長期金利は低下してるので別に利下げする程のこともないということ・・・・なんでしょうか。勝手な想像ですが。


・一部の地価上昇だけ見て利上げは無いようですが・・・

不動産価格等資産価格と金融政策に関する質疑から抜粋。

『大都市の中心部における地価上昇のスピード、あるいはREITの取引をみても、キャップ・レート(不動産の収益を現在価値に割り引く際に適用する還元利回り)の下がり方等、色々な視点からみています。確かに、一部の大都市中心部の地価上昇についてはスピード感を伴なっていると思うことがあります。しかし、全体としてみれば、地価は、その土地を利用して将来生み出すであろうキャッシュ・フローの割引現在価値の範囲内での変動から、著しくはみ出すリスクを感じるというところまではいっていないと思っています。』

ということですので、一部の資産価格上昇をとっ捕まえて全体に影響が掛かる金利政策で対応するという攻撃はしないものと存じます。ただし・・・・・

『金融政策運営上は、実体経済と物価の先行きの動向が政策判断の中心命題となりますが、地価あるいは為替市場の動きなども、頭のどこかにはしっかり置きながら、全体としてバランスのとれた政策判断をしていかなければならないというスタンスを、今後とも堅持したいと思っています。』

まあね、こういうこと言うから「日銀は何を判断材料にしてるのかその時々でコロコロ変る」と悪態をつかれる(つくのはお前だろうというツッコミは華麗にスルー^^)んで、それは言わずもがなだと思うんですけど、要は全体的な上昇がバブル的な場合は対処もと言いたいんでしょうな。実際問題としては「バブル的なときは対処するぞ」というのは「抜かずの宝刀」って奴で、そういう風に見せておけばバブルの野放図な拡大を抑える事が出来るってイメージだと思うんですが・・・・・


・物価に関して

物価の見通しに関する質問より。

『国内の物価について――消費者物価指数を中心にお尋ねになっていると思いますが――、消費者物価指数(除く生鮮食品)をみると、2月ないし3月という目先、前年比でおそらく若干のマイナスになる可能性が――ならないかもしれませんが――あると思っています。いずれにしてもゼロ近傍で推移するということです。』

マイナスの可能性に言及キタコレ。

『原油価格の落ち着きは良いことですが、消費者物価指数の面では表面的な物価上昇率の押し下げ要因として働く結果、そのような現象が起こる可能性があると思っています。この場合の理解としては、経済全体が着実な回復過程にあり、先程申し上げました生産・所得・支出の前向きな循環メカニズムが働いている限り、原油ないしガソリンを含む石油関連商品の価格下落はある意味で交易条件の改善ですので、経済にとってはマイナス要因ではありません。従って、表面的な物価がマイナスになったからすぐ経済がデフレに走るというようなものではないということは、ご理解頂けると思います。』

原油価格が上昇した時の理屈と話が違うのは仕様です(-_-メ)

『さはさりながら、より長い目でみて経済の回復力の強まりとともに消費者物価指数(除く生鮮食品)が着実にプラス基調を持続していくかは、フォワード・ルッキングな金融政策を考える上で非常に重要な点であると思っています。(中間割愛)全体の需給ギャップが緩やかではあっても着実に需給がタイト化する方向に経済の拡大が進むということであれば、物価の基調もよりしっかりとしたものとなっていくという方向性自体は間違いないと思っています。(以下長いので割愛)』

ということで、先行きに関して上昇は「間違いない」ということで(まあそうじゃないのに利上げされても困りますが)すが、そのあたりの話は展望レポートで示されるものと思われます。

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2007/03/13

○今更ですが利上げ直後の福井総裁の国会発言

2月22日の参議院財政金融委員会の会議録はこちら
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/166/16602220060002a.html

福井参考人(総裁)の出番は冒頭の峰崎直樹委員(民主党・新緑風会)の質疑の部分でございます。

・可能な限り金利を引き上げる云々発言の部分

『経済財政諮問会議で私が一貫して主張申し上げておりますことは、まず第一に、人口が減る日本経済の中で将来にわたって持続的な望ましい成長経路を確保しようと思えば、まず第一に潜在成長能力を上げていかなきゃいけないこと、日本銀行はこれをフルに支持いたします。潜在成長能力が上がったとして、それを実際の成長率に絶えず実現していかなきゃいけないと。つまり、波の少ない経済成長ということを実現していかなきゃいけない。この点についても日本銀行はしっかりと貢献させていただきますと。それに加えて、名目成長率というのは結果として出てきますということを私は申し上げています。日本銀行は名目の成長率を保証することはできませんということも明確にいたしております。』

『したがいまして、日本銀行として、潜在成長能力を上げる、かつそれを持続的に現実のものとして実現していくためには、いつも金利機能が十分資金及び資源を最適のところに配分するという機能を働かしていかなければ実現しないと。そこが日本銀行の最大の責任負担の部分でございますので、そこをしっかりやっていくと。当面はかなり低い金利で緩和環境を維持しながら経済をサポートするんですけれども、徐々に、可能な限り金利を引き上げて金利機能の働き方をより強くしていくと。こういう、ある意味で微妙でかつ難しいバランスをねらった政策パスを歩みつつあるということでございます。』

うーむ、このくだりをよんでおりますと、金利の正常化路線にしか見えないのですが、その割には先日の記者会見で正常化という単語が出ると物凄い勢いで否定しておるわけでして、このあたりがワケワカメと申しますか、「ホンネが正常化路線だから一生懸命否定してるんですかねえ」と勘ぐりたくなる次第でございまして(笑)。

で、前半部分で「名目の成長率を保証することは出来ません」という風に言ってるのは何気にこれってインタゲ導入をしらっと否定してるような気がするんですが気のせいかしらん?(追記:この問題に関して苺BBSなどで話題になってまして、bewaadさんもネタにしております。名目について否定するコメントに引っ掛かるものがあったのは正しい直感でしたな^^)

ただまあ「可能な限り金利を引き上げ」は前後の部分も含めて読みますと、これって要するに展望レポートで示されている「緩和的な金融環境を保ちながら経済物価情勢に見合った金利水準に徐々に調整する」というのと同じと言えば同じ話ですので、市場としては「また言ってますなあ」ってな反応しか出来なかったのかと思います。


・G7の議論は第2の柱?

G7とかキャリートレードとかに関する質問に対する総裁の答弁。(段落分けをいじってます)

『G7で議論されましたことは、実体経済としては世界経済全体として地域的な広がりを持って順調な拡大が今後とも展望できると。ただし、実体経済の好ましい回転というのは、金融市場を通ずる資金の望ましい配分ということが常に伴って本当に実現できると。金融市場はこれまたグローバル化が進みまして、国境を越えて資金が自由に移動するようになっていると。』

『今おっしゃいましたヘッジファンドによる媒介機能も含めてそうでありますが、これはプラスとマイナスの両面があると。プラスの面は、やはり国境を越えて自由に資金が移動するということは、より効率の高いところに資金が流れて世界経済を一層活性化させると、こういうことでありますが、一方で、世界経済が順調だと、先行きインフレのリスクもほどほどにうまく何というか抑制され続けていくという楽観的なムードが市場に蔓延し過ぎると、市場の中でリスク感覚が少し甘くなってポジションが一方的に偏って形成されるリスクがあると。』

『そうすると、あるとき何かのショックで急激に巻き戻されると、市場に混乱が起こるというだけではなくて、せっかく好ましい状況にある各国の実体経済にまで悪い影響を跳ね返してくる、そこまで心配しながら世界経済を運営しましょうというのがG7の議論のポイントでございます。(以下のキャリートレード云々部分割愛します)』

ということで、割愛した後半部分では「モニターする」「監視能力を強める」という表現になっておったので、基本的にはそういうことだと思うのですが、上記部分までの話を見てるとまんま「金融政策の第二の柱」っぽい話になっておりまして、まあこのあたりから見てると、バブル懸念(どこにあるんだ)で利上げしたんですかあ?とツッコミを入れたくなる気がしてまいりますというものです。

国会会議録にしてはそんなに量はございませんのでご一読される事をお勧めしたく存じます。

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2007/02/26

○市場との対話ねえ・・・・

市場との対話に関する質問に対する総裁のお答え(3ページ)より。

『(前半割愛)こうした枠組み(注:合議制での決定)において、具体的な政策のタイミングを予め示唆することはあり得ないし、そうしたことをすると、市場の持つ経済・物価観を読み取ることができなくなってしまいます。つまり、私どもとして、双方向のコミュニケーションをしようとした場合、私どもからみて市場はもはや鏡ではなくなってしまうわけです。市場との対話を双方向の有意義なものとするためにも、是非こうした仕組みであることの理解が一層浸透して欲しいと思います。』

ほほうなるほど。確かに政策の「タイミング」につきましては決め打ち発言はしていないかも知れませんが、どう見ても過去の実績においては「地均し」のような発言などあったと存じますが、そのあたりはまあ相変わらず都合よく話しますなあという感じです。

『私の個人的な感想をあえて一言付け加えさせて頂くと、本日の決定に至るまでの直前の状況まで市場は、憶測に振り回されることなく、懸命に織り込むべきところは織り込んでこられたと感じています。』

織り込みようが無かったので(0.25%+0.5%)÷2とかやっていたんですけど。そもそも政策決定のロジック構成が明快なら憶測もへったくれもございませんですけどねえ。

『政策措置の決定以降、まだ時間的経過が非常に短いのでよくわかりませんが、市場の不規則なリアクションは今のところまだ出ていないということからも、そのことが窺えると思います。』

債券先物の21日の日中足でもご覧になられたほうが吉かと。


16ページ目の最後の方でまた質問がありまして、それに対する総裁の答があるのですが、質問が中々ふるっているの質問から引用します(^^)。

『(問) 市場との対話についてお伺いします。総裁は先程、「経済指標を受けて市場が金利形成をしていくことが日本銀行にとって鏡となる」というお話をされましたが、今回の金利形成をみていますと、今回やるかやらないか五分五分という程度であったと思います。出てきた経済指標が決め手を欠くものであったからだと思いますが、実際にフタを開けてみると、金融政策決定会合の多数決は8対1と圧倒的な多数で利上げに賛成されました。このところ、日本銀行と市場との間で、経済・物価情勢に対する見方にズレが生じてきているのではないかという印象を受けますが、総裁のご意見を教えて下さい。』

『(答) 私も市場のすべてを知り尽くしているわけではありませんので、正確性を欠くことを惧れますが、重ねて申し上げると、それぞれの市場参加者が持っておられる経済・物価情勢の判断と私どもがお示しする判断との擦り合わせの中で、願わくば市場金利の形成を進めてもらいたいと思います。(この段落部分以下割愛)』

『(前の部分割愛)しかし、経済指標が強弱入り乱れる中で市場参加者の判断が全く欠けていたかというと、やはりそれぞれお持ちであったのではないでしょうか。その証拠に、私どもが本日結論を出した後、市場が非常にサプライズしたかというと、おそらくそうはなっていないのではないかというところにも、もしかしたら現れているという気がします。先程も申し上げました通り、措置を発表してからまだ時間の経過が短いものですから、そこまで私が踏み込んで良いかどうかわかりませんが、とりあえずそのような感じを持っています。』

いやあのそうじゃなくて全く読みようが無かったから短い所の金利は織り込みが半々だったんですし、長いところの金利はどっちかというと「利上げしたらその次上げられないからプギャー」って感じになってたと思うのですけど。


ということで、どうも「市場との対話」に関しては我田引水の香りが物凄い勢いで漂って来るのが福井総裁クオリティ。相変わらずでございますなあという感じです。

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2007/02/23

会見要旨はPDFで23ページの大量物件でして、全部読んだのですが、紹介箇所大杉ですがな(悩)。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0702c.pdf


○一応第1の柱で政策変更したことになっております

昨日ご紹介したように、公表文を読みますとどうもこう第2の柱の説明の方が利上げの理屈として話が通っているように見えるのですけれども、さすがに会見を読みますと第1の柱で政策変更したことになっております、そりゃまあ当然ですわな。4ページ目の質問で「1月と2月にどういう変化があったんですか」という趣旨のツッコミに対して。

『1月と2月の間に出てきた新しいデータだけで判断したのではありません。決定会合の都度、その時点で入手可能なすべてのデータ、情報をもとに判断を積み重ねていくと申し上げています。(中間割愛)これまでの丹念な分析、検討の積み重ねの結果としての本日の判断ということであり、1月と2月の間の新しいデータだけで大きく判断が左右される度合いは相対的に小さいと思います。』

『ただそうは言っても、新しいデータについて申し上げると、海外経済の面では、米国経済がソフト・ランディングに向かう可能性が幾ばくか高まったことは、おそらく世界共通の認識だろうと思います。(以下内訳部分割愛)』

『国内については、2006 年第4四半期の主な指標が出揃いました。(これまた内訳部分割愛)なお、物価面について申し上げると、消費者物価、特に生鮮食品を除く消費者物価は、原油価格の動向などによっては目先前年比ゼロ近傍で推移する可能性がありますが、より長い目で消費者物価の動きをみると、設備や労働といった資源の稼動状況は高まっており、今後も景気拡大が続くと考えられることから、基調として上昇していくと判断しました。あくまでも、こうした判断は、それ以前のデータとつなぎ合わせて先行きの経済を描き直してみる、そういう判断のプロセスを経て本日の結論に至っているということです。』

ということで、冒頭の説明でもそうでしたが(そこまで引用すると長くなりすぎなので割愛します)、会見のテキストを読みますと第1の柱にもとづいて利上げをしましたという風になっておりますわな。


○でもホンネはどうなんでしょ?

素晴らしいツッコミが12ページ目にございます。

『(問) 今の質問とも多少関係しますが、2つの柱についての質問です。ゼロ金利を解除した7月の場合は、2つの柱のうち、主に第1の柱にもとづいて行われたものと理解しています。(長いので途中割愛)今回の2度目の利上げについて、今回は第1の柱なのか、あるいは第2の柱なのか、どちらにもとづいてなされたのかというのが質問です。(また割愛)今回については第1の柱なのか、第2の柱なのか、明確にお答えするのは難しいかもしれませんが、仮に第2の柱だとすると、今後の金融政策についても市場の関係者は「次からはこういう考え方をするのか」という参考になると思います。』

『(答) 今の質問には、ややフェアでない部分があると思いますが、先程のお尋ねは市場の歪み、ないしは円キャリー・トレードに関連した質問でしたから、第2の柱の範囲内で答えたまでで、第2の柱に絞って今回判断したということを申し上げたわけではありません。今回の政策変更は、あくまで2つの柱による点検を踏まえたものです。(以下割愛)』

『(問) 確認ですが、2つの柱の両方とも踏まえたということでよろしいでしょうか。』

『(答) その通りです。本日の公表文「金融市場調節方針の変更について」において、基本的に第1の柱、つまり「先行きを展望すると、生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持されるもとで、緩やかな拡大を続ける蓋然性が高い」と述べています。そしてまた、「仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、行き過ぎた金融・経済活動を通じて資金の流れや資金配分に歪みが生じ、息の長い成長が阻害される可能性がある」と、この2つのことを述べています。そして日銀としては「2つの『柱』による点検を踏まえた上で」と明記しておりますので、この公表文でも明確にさせて頂いたつもりであります。』

ということで、まあ一応原則論に話を引き戻しておりますが、やっぱ「第2の柱」ですかそうですかと申し上げたくなるのはあたくしの意地が悪いからですよきっと。


○正常化路線というのを物凄い勢いで否定

いやあのあたくし思うに中立金利水準への正常化路線(かつてのFRB方式)でメジャードペースの利上げって方がこの際すっきりすると思うんですけどねえ(ただしその理屈だと何でこのタイミングで正常化開始するのと言われるから出せないというのも判らんではないのですけど)・・・・

6ページ目の最後からしつこく正常化について質問するあたくしのような人がいます。

『(問) 昨年の量的緩和政策の解除の際には、消費者物価(除く生鮮食品)でプラスが維持されるといったわかりやすい目途があったのですが、今回はそのようなわかりやすい指標がありません。本日の利上げは、いわゆる金利の正常化を優先したための判断と考えてよろしいのでしょうか。』

『(答) おっしゃった金利の正常化が一体何を意図されておられるのかわかりませんので、直接的にはお答えしにくいのですが、(途中の大部分を割愛しちゃいます)。やはり、フォワード・ルッキングに先々の経済の展望は何かということを明確につかみながら、より望ましい金利水準を遅からず早からず設定していくという、量的緩和政策を続けている時よりも、はるかにダイナミックな判断が必要な状況になったということではないかと思います。』

『(問) 望ましい金利水準の設定というのは、正常化を模索するプロセスと考えてよろしいですか。』

『(答) 正常化という言葉で何を言っておられるかよくわかりません。』

『(問) 中立金利と想定される水準まで引き上げる過程とした場合です。』

『(答) 経済は日々変わっておりますので、何か固定的に計算式をもって事前に中立的な水準を想定し、それを目指して一定のスケジュール感をもって金利を引き上げるというようなお尋ねであれば、そういうことはないということです。』

何かここのやり取りを見てますと、正常化路線ってロジックは日銀総裁が福井さんのうちは出てこないように見えますな。


えーっと、他にも読むところあるんですが、時間(すいません昨日呑み過ぎて寝坊しました)と量の都合上ちょっと本日はこのあたりでご勘弁ありたし(ネタの温存という説もありますが^^)。

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2007/02/14

○G7の総裁記者会見追記

昨日もご紹介しましたが。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0702b.htm

質疑応答の最後は今月の決定会合で意見の収斂(要するに利上げ方向での意見一致って意味で聞いてるんでしょうが)があるかという質問に対してのコメント。

『合議制本来の性格を良く理解して頂きたいと思います。そこであらゆるデータを全て新しく点検し、きちんと議論をして結論を出すので、その合議制の議論の結果として出てくる結論を、前もって私が読むということ自体弊害があるわけです。そういう読みをしないで、丹念に冷静に議論し、分析し、討論し結論を出していく。この創造的なプロセスをそういう事前の憶測で乱したくないと、これは私の強い気持ちです。』

一説にはこの「丹念に冷静に議論し、分析し、討論し結論を出していく。この創造的なプロセス」という辺りを捕まえて「総裁の利上げに対する強い意志」という解釈をする人もいた(というか債券市場が売られたので後付けで言ってるだけだと思いますが、笑)のですが、これはまあ最後の部分「事前の憶測で乱したくないと、これは私の強い気持ちです」ってのが「事前報道があれこれ出るんじゃねー」という意思ということで宜しいんじゃないでしょうか。

まあそもそも将来の金融政策を予想するのに選挙がどうのこうのとかいうファクターが堂々と出てくるような本邦の状況下で欧米と同列のレベルでの「市場との対話」を模索すること自体が時期尚早であって、まずはだんまりの方が宜しいんじゃないでしょうか(オイシイネタがなくなるのである意味困りますけど、苦笑)と思うあたくしなのでした。何か自虐的ですが。

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2007/02/13

○G7後の尾身財務大臣と福井総裁の記者会見

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0702b.htm

『【問】昨日のぶら下がり会見で、G7で説明したいという内容について、日本経済について世界経済の安定的な成長により良く貢献できるような方法を強く意識しながら金融政策運営をしたいとおっしゃいました。これは具体的にはどのような金融政策運営を指すのか、どういう方向性を念頭においておっしゃったのかということをお聞きします。』

というのはまあ良いとして、その続きを見て「あらま」と思ったあたくし。

『G7の議論が2月の金融政策決定会合に影響するのかという質問に対して、密接に関連してくるというふうにもおっしゃいました。G7の議論自体が2月あるいは2月以降の金融政策決定会合にどのような影響を及ぼすのかというのが質問の趣旨です。』

いやあこのぶら下がりが市場が開いてる時間帯じゃなくて(開いてる時間だったのかもしれないが報道は見なかった)よかったですねえとしか申し上げようがございません。まさに「為替是正で金融政策をいじるかもしれません」と受け止められかねない発言ですなあ。

『【答】昨日のぶら下がり会見のときに、私はG7の会合が2月の金融政策決定会合の帰趨に直接影響するというお話は一切致しておりません。もしそう受けとられたとしたら、そのような受けとり方はなさらないで下さいと申し上げざるを得ないと思います。(後半略)』

ですからもう百万回くらい悪態ついてますが、会見とか国会答弁なんかで「判りやすいように」ってサービス精神を持って発言をすると却って誤解を招くというのが何で治らないんでしょうこの人はと思ったのでした。

#尾身さんの記者会見が最近不規則発言モードから脱却してきてるようでして、今回の会見でも中々いい感じですが、その話はまた後日。

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2007/01/22

お題「総裁記者会見」

捏造ばれたら売れ残る、
ハイッ!ハイッ!ハイ!ハイ!ハイ!

・・・スーパーの納豆売り場における土曜と日曜の風景の余りの違いっぷりに思わず爆笑を禁じ得ず、某テレビ番組を鵜呑みにして踊らされる連中プギャーとか思ったのですが、ふと思えば今般の利上げ騒動で市場の人たち(あたしも含む^^)や外野の皆さんは気持ちよく踊りましたので納豆に群がった人たちを笑えませんな、あっはっは。

#中川幹事長の「提案」に関しては趣旨にどうもきな臭いものを直感的に感じるのですが、とりあえず保留(てか書いたものを全部消したんですが)。まあいずれにせよ権力はそれが強大であればあるほど行使は慎重に行うべきであるというのがあたくしの基本思想なもんで辛口バイアスはかかりますな

と、いう前置きはともかくとして総裁記者会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk0701a.pdf


○フォワードルッキングとは

金利を引き上げるべきという提案も出たようですが、さて利上げすべきの人たちと据え置きの違いはいずこということでして・・・・

『経済・物価情勢の変化をこれまでのシナリオに照らしてみた場合、少なくとも現状を出発点として先行きをみた場合、生産・所得・支出の前向きの好循環なメカニズムが変わっていない、その蓋然性が高いという点では一致しています。しかし、さらに追加的に情報を蓄積し分析を重ね、全体を再構築してその判断をより確かなものにするために、さらに丹念に今後の見通しを追求するかどうかという点で、もう今回でその判断は十分できるという方と、さらにもう少し丹念に検討を加えようという方との差ということです。そういったところから差が出ているとご理解頂ければと思います。』

ということは、利上げの人はフォワードルッキングという話なんでしょうかという質問が出てくる訳で、次の質問でこんなくだりがありました。

(これは質問の一部)『今のお話だと、フォワード・ルッキングという基本方針と、足許を丹念に点検するといういわばバックワード・ルッキングとの整合性について、日銀の外部からみると、その都度その都度、日銀の主観的な判断で優先順位が左右されているのではないかと受け止めてしまいます。』

で、もうその答えが落涙モンですな。長いので抜粋。

『フォワード・ルッキングなスタンスには、いささかも揺らぎはありません。記者会見の場でも何回かお答えした覚えがありますが、フォワード・ルッキングは、手前の指標を一切無視してただ遠眼鏡で先々を想像によって判断するということでは絶対にありません。』

『市場でも個々の指標をみながら様々な判断が形成され、あるいは実際に取引をされる場合にも、先々の経済を直接写し出す経済指標があるわけではありませんので、市場参加者も結局は私どもと同じ思考経路を組み立てながら、将来の経済を予測し、決断をもって様々な取引をしておられます。私どもの姿勢と市場の姿勢が基本的に異なっているわけではありません。』

『私どもがスケジュール感をもって政策行動を予定していることはなく、その点について示唆的な情報を日本銀行から一切差し上げていないことも事実です。そこは市場参加者自らが判断されることで、そこには明確な峻別があると思います。』

まあいつもの公式見解ですけど、どうも分裂気味の回答ですな。


○CPIと金融政策

これまた厳しい(というかまあ普通は普通ですが)ツッコミが。

『総裁の今のお話と、本日の展望レポートの中間評価を拝見していると、かなりの方が追加利上げの環境はもう整っているのではないかという印象を持つのではないかと思います。さらに丹念に点検を続けていくとすれば、総裁は、どのポイントに焦点を当てて今後点検していくのでしょうか。例えば、CPIも、今後原油の動向次第では一時的にマイナスになるのではないかとの予想が出ていますが、例えば単月でマイナスになるような事態になれば、追加利上げは困難になってしまうといったことが起き得るのでしょうか。現在、市場は総裁が何をご覧になって政策を判断しているのか、非常に分かりにくくなっている状態だと思いますので、是非説明をお願いします。』

で、まあ説明は当然の如く長いので抜粋するのですが・・・・

『繰り返しになりますが、何か特定の指標が出れば、あるいは、特定の指標が強ければ即政策判断に結びつく、ということではないという点を、もう少し市場関係者と私どもとで理解を共有したいと思います。』

『CPIのことをおっしゃいましたが、CPIの数字的な伸び率が仮にある程度下がった場合に、このインプリケーションは、数字としての物価上昇率が低くなったから利上げが遠のくというような単純なものではありません。』

とはいえ、CPIが前年同月比ゼロとかマイナスとかって話をしてる時に利上げをする中央銀行っつーのもそれはそれで変な気もしますけどね。BOEは確かにCPIがインフレ目標レンジの下にいる時に利上げしましたが。

『原油の値段が上がったら経済は悪くなると心配しますが、原油の値段が下がったらやはり心配するのでしょうか。そうではなく、原油価格が上がった場合にも下がった場合にも、将来の経済に対しては様々な角度から再構築してみないと本当の姿はわからないという部分があります』

原油の価格が上昇してCPIが上昇した時は「この上昇が一時的なものなのか継続的な上昇定着になるのかという事を考えないといけません」っていう話をしてたような気がするんですが・・・・・


○ロンバートだけ引上げることあり得るのかな??

補完貸付金利に関しての質問がありまして、その答えの中で。

『当初のように市場参加者がいつも資金の取り入れに不便を感ずるという状況がだんだんなくなってきて、出し手、取り手相互間での資金のやり取りもかなり円滑になってきていると感じています。そういう意味で、今の0.25%と0.4%というレンジの中で市場機能の回復、向上も徐々に進んできたと思っていますが、この0.25%と0.4%の幅が今後とも適当かどうかということは、引き続き検討課題として残しています。』

まあ日銀渾身の金融調節によって足元金利はあまり跳ねない(積み前半が高くて後半が低いとか何だかなあって部分もありますが)ようになっておりますので、ロンバートだけしらっと上げておいても別に問題ないとは思うのですが、そもそもロンバートの位置だけ変えることはありませんとか7月に言ってたのは総裁だったような気も。

まあ次回の利上げ(いつだか知らんが)で幅を広くするって意味での話だとは思うのですが、この言い方だと利上げの前にロンバートの「正常化」(?)をしようという話なのかも知れず。



○事前協議とか圧力とか

これは当然とは言えキツイ質問。

『民の関心も高いですが、今回の金融政策決定会合前に政府・与党の間で、利上げするのではないかということについて反対意見がかなり出ました。一部市場関係者の中には、今回の政策維持が政府・与党からの言わば圧力というか、そういうものに対して何らかの配慮もあったのではないかという思惑も出ています。こういった見方について総裁自身はどのようにお考えですか。また、日銀の独立性について改めてお伺いします。』

んでまあ回答は長いのですがまたも抜粋。

『思惑は思惑であり、思惑に対してお答えする立場にありません。繰り返し申し上げれば、今回の決定も従来と全く同じであり、経済・物価情勢を丹念に点検した上で、かつ委員の間で十分議論を戦わせて最終的には多数決で決まったということです。そこに経済・物価情勢の判断以外の要素が入り込む余地は全くありません。それ以外の要素を入れて議論した形跡は全くないということです。』

いやあ実に心のこもった回答です(棒読み)。

『つまり私どもの判断と責任において適切な金融政策運営に努めて参る所存です。判断誤りなきを期し正しい政策を行っていくということが、日本銀行の独立性に対して国民の皆様から信を置いて頂ける結果につながり、それ以外にそこにつながる道はないと思っています。』

まあそういうことで、トラックレコードを積み上げるしかない訳でして、もうちょっと慎重にやっていただいても宜しいんじゃないでしょうかと思うのですけどね。

別の質問でTBS報道について質問されておりますわな。

『色々な報道がされましたが、直前の週明けに、政府の方に今回利上げをしないという連絡があったという報道が一部でなされています。それに象徴されるように、市場としては、今回の一連の色々な騒動といいますか、結果についても非常に日銀に対して不信が渦巻いています。こういう不信に対してどのようにお答えなさるか、お願いします。』

『今週になって政策措置をしないと日本銀行から連絡したというのは、全くの事実無根です。こういうことで日本銀行に不信感を持たれるのは非常に遺憾なことです。事実がないということですので、私どもの方からは如何とも仕様がありませんが、そのような事実はなく、何も連絡はしておりません。』

まあ雲の上の人同士の間でどういう話をしてるのかは存じませんが、全くの事実無根だというのであれば、例のTBS報道は日銀法によって定められている政策決定プロセスに対して不信感を激しく呼び起こす内容であり、強い言い方をすれば国益に反する国賊的報道であると存じますが、如何とも仕様がありませんとはこれいかに。


○審議委員の票が割れる場合の話続き

質疑の後半では審議委員の票決が割れたことに関して、現状維持派と利上げ派の意見の相違について個人消費、物価、経済のグランドデザインなどについてどのような議論があったのかという話が多くて、これもまあ読んでてオモロイのですが、「大きな差はないんですよ(><;)」という回答に終始している印象を受けました。最初に引用した部分と同じような話を手を変え品を変えしているようですので引用を割愛しちゃいますが、気が付いたらまた書きますね。

で、票決に関する質問が最後の方にもありまして、審議委員の票が2対4になったりしたらどうすんのよという問いに対する総裁の答のまたまた抜粋。

『今回はたまたま総裁、副総裁の3人は現状維持の方向で揃っておりましたが、理論的に言えば、この3人の意見が違うということも将来的にはあり得ます。従って、執行部であるとか、その他の審議委員であるとかといった色分けなしに議長としては公平に議論をさばいていきたいと思います。』

『本日のように結果的に意見が分かれる場合があると思いますが、究極の場合には4対4に分かれます。その時には最終的に議長が決めなければなりませんので、私自身判断をいっそう研ぎ澄ましながら臨んでいかなければならないと思っています。』

ということで、まあ外から見れば票決が割れた方が色々な意見が出てるというのが伝わってきて面白いんで、今回の議事要旨をワクワクしながら待ちたいと思います。執行部の票が割れたっていいじゃないかかいごうだものって感じですな。

#引用が多くて恐縮でございました

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2007/01/15

○支店長会議での総裁挨拶

http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/siten0701.htm

支店長会議の挨拶なんつーのは基本的に華麗にスルーなのですけれども、金曜はこの挨拶もネタにしてた節が少々あったようですわな。

『(2)物価面では、原油価格反落の影響がなお残ることから、国内企業物価は、3か月前対比でみて、目先、弱含みないし横ばいで推移するとみられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、プラス基調で推移しており、先行きについても、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』

基本的には展望レポートならびに金融経済月報の通りの話をしておりまして、要するに基本シナリオに変化が無いというのが挨拶内容。まあ当たり前といえば当たり前なのですが、景気見通しに関しても強気で、物価に関しては原油価格反落の影響ということで「一時的要因」の話にするんですなあという感じ。何か原油価格が上昇してた時と話が違うような気もしますが・・・・・(-_-)

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2006/12/26

○最初からそういう話をしておけば・・・・

昨日は福井総裁の講演が行われました。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0612e.htm
お題は『日本経済の本年の回顧と来年の展望』

総じて極めて穏当な内容でして、11月のきさらぎ会でのやる気満々講演はどこに逝ったんでしょうかという風情ですけれども、まあ本来はこういうトーンで淡々と話をしていけば、経済指標の好転と共に勝手に相場の方が利上げを織り込みに逝く筈だったんですがねえ。

講演自体は量もそんなに大きくなく、個別項目ごとに簡単にまとまってますので、まあ全部お読みいただくのも吉かと存じますが、一応ピックアップ。

・設備投資は過熱していません

『企業部門の動向』の部分から。

『ただし、企業が、国内市場のみではなく、拡大する海外市場からの収益機会も意識して、供給体制を強化していることを考えれば、現在の設備投資の増勢は「過熱」という状況ではないと考えています。』

『企業は、資本市場からの規律が高まっているもとで、個々の投資案件の採算性を厳しく見定める姿勢を堅持しておられます。緩和的な金融環境の中にあって、こうした規律の効いた投資活動が今後も維持されていくことは、日本経済が持続可能な安定成長の経路を辿っていくうえで、たいへん重要なポイントだと思っています。』

ということで、第2の柱である将来のリスク要因としての「設備投資の過熱」には全然至ってないという話ですな。まあどう考えても当たり前なんですけど。


・個人消費をや消費者物価を丹念に検討とな

『家計部門の動向』の部分から。

『賃金の上昇がより明確化していけば、所得の伸びは高まり、個人消費の増加基調の持続性を高めていくものと考えています。このところ、個人消費の関連指標には、天候要因や新製品投入前の買い控えなど一時的な要因もあって、やや伸び悩みの動きがみられます。今後とも、その動向は注視する必要がありますが、所得が伸びていくと展望できるのであれば、個人消費も増勢を維持するというのが基本的な見方だと思っています。』

ということで、今後の消費関連の指標に注視する必要ありと。

『このように、企業部門がやや強め、家計部門がやや弱めとなっている点はありますが、生産・所得・支出の好循環という景気拡大の基本的メカニズムは崩れていないと考えています。ただ、このところ、個人消費や消費者物価などの面で弱めの指標が出ていることも事実であり、今後公表される指標や様々な情報を、引き続き丹念に点検していきたいと思います。』

ということで、丹念に点検と言うのが立て続けに出てくるあたり話してる相手が経団連評議会ということもあると思いますが、「慎重に」ってのを見せてますな。まあ本来そういうもんだったと思うのですけどね。


・物価に関して

企業物価は上昇基調って話をしてますが、消費者物価について。

『消費者物価の前年比は、プラス基調で推移していますが、経済の改善に比べると、その上昇率の変化はごく緩やかなものにとどまっています。経済活動に対する物価の感応度が従来に比べて低下している可能性があります。こうした傾向は、近年、わが国だけでなく海外を含めて観察されています。』

『その背景としては、規制緩和や情報通信技術の発達といった要因に加え、経済のグローバル化が影響していると考えられています。例えば、新興諸国から輸入される製品との競合が強まれば、物価上昇圧力は高まりにくくなります。また、先ほど述べたように、激化するグローバルな競争に直面して、企業が賃金の引上げに慎重になれば、物価にも影響を及ぼすと考えられます。』

左様でございますか。ふーん。

『特にわが国の場合には、消費者物価上昇率がマイナスの状況から改善してきている過程にありますので、他の主要国に比べても、消費者物価の前年比は低い水準で推移しています。先行きは、経済が息の長い拡大を続ける中で、消費者物価上昇率のプラス幅は徐々に拡大するとみていますが、物価上昇率の拡大テンポがどうなっていくか、引き続き注意してみていく必要があると思います。』

ということで、ここでも「注意してみていく必要」と言及しております。


・てかまあ元々この話だけしてれば良いのでして

『新たな金融政策運営の枠組み』の中でこういう話をしてまして。

『こうした点検結果を踏まえ、先行きの金融政策運営としては、見通しに沿って経済・物価情勢が推移していくと見込まれるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えています。』

『もとより、フォワード・ルッキングと言っても、特定の政策金利の水準やタイミングを予め念頭に置いているということではありません。経済や物価情勢に関する情報は毎日新しく加わってきます。それらを丹念に点検したうえで、先行きの日本経済の姿を虚心坦懐に見通して、最善と考えられる判断を下していきたいと考えています。』

まあアレですな、本来この線でぶっきらぼうに話をしてればそれで無問題ではないかと思う次第でして、福井総裁の場合は自分の言葉で丁寧に説明しようとしてドツボに嵌まるという展開が多いと存じます。何と申しますか、中途半端に丁寧と言いますか・・・・


ということで、全体のトーンとしては慎重な姿勢に終始してる感じでございますわな。

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2006/12/22

お題「総裁記者会見続き」

サハリン2の結末は「また露助か!」でございますな。まあそれはともかく総裁記者会見の続きを。

○個人消費の先行き見通しについて

先行きの個人消費に関してどう見てますかという質問への福井総裁の説明。

『私どもは、個人消費は基調的には増加を続けているという判断をベースにしています。賃金が伸び悩んでいるという話をよく聞きますが、企業部門から家計部門への所得の移転という目でみると、雇用が一貫して着実に増えており、賃金面でも、時間外、ボーナス、あるいはパートタイマーや契約社員の賃金という順序で増えています。』

『所定内賃金の伸びが十分みられないということですが、賃金を離れても配当とか、最近は団塊世代の退職が次第に増え始めていることによる退職金の支払い増加も、かなり目立っています。色々なかたち、幅広いルートで所得が家計部門に流れており、基調的には、これらを背景として個人消費が伸び続けているとみています。』

うーむ、ちょっと説明として苦しい気もするんだが・・・で、続き。

『しかしそうは言っても、現実の経済は生き物であり、個人消費も生き物であり、いくらか波を打ちながら動いていくだろうと、前もってそういう目で個人消費についても追いかけています。最近は、天候不順の影響があったり、あるいはいくつかの新製品の登場に伴ってその前後のやや不規則な動きが入ってきているとか、個人消費に関する統計データについても、――統計上のノイズという言葉は悪いのですが――非常に読みにくい数字が出ているという要素もあります。そこで、先々につなげて個人消費の基調をよりしっかりと確信を持って判断していくために、もう少し丹念に見極めたいということです。』

ホンネがどの辺りにあるのか、公式文書の方を見てると先に強気をぶち上げている手前、依然として強気の旗を降ろしてはいませんが、このあたりのトーンを読んでいると、個人消費に関してちょっと弱気というか、思ったより良くない状況が続いてちと困ったなってニュアンスを感じるところではございます。

で、いわゆるダム論の実現という点で見るとちょっとシナリオ通りに行ってないんじゃネーノってところなんでしょうが、まあそのあたりと利上げ時期が必ずしもリンクしないと思われるのがまたややこしい所でございます。


○追加利上げと個人消費

ということで、その後でこんな質問が。

『(問)(前半割愛)10 月に出した展望レポートでは、金利の調整、あるいは追加利上げを予定ないし模索している内容だったと思います。追加利上げをする際に個人消費が持ち直すことを確認する必要があるのか、もしくは、それが重要な要素になるのかという点についてどのようにお考えでしょうか。』

『(答)(前半割愛)次の政策変更につながるかどうかについて、個人消費あるいは物価の動きだけでなく、経済全体の動きを常に総合的に点検しながら判断していくことになると思いますが、足許やや弱めの指標が出ている個人消費あるいは消費者物価指数の動きについて、新しい指標に基づいてより深い分析を加えたいという気持ちは当然持っています。』

ということで、こちらでの答えのように「個人消費が持ち直さないと利上げができないわけでは無いけれども、個人消費とCPIに弱めの数字が出ているからちょっと先行きを見極めたい」という理解で良いのではないでしょうか。

でね、個人消費の方が経済情勢という点では気になる話なんですけれども、政府与党の経済見通しも強気に設定されているという点からすると、利上げ判断はやっぱりCPIの方に縛られやすいとあたくしは思うのでございます。即ち、政府との政策協調で云々と言われる中で政府というか与党サイドから利上げに反対する論拠として使われ易いのは「デフレ再突入懸念」だと思われる訳でして、(将来の効果はともかく、短期的には個人負担増大で個人消費を冷やす蓋然性が高い税制改正をしてるので個人消費ネタは使いにくいでしょ)結局のところはCPIが再度上向きトレンドになってきましたよってデータが無いと利上げを政府与党に納得させるのは難しいんじゃないですかね。

んな訳で来週のCPI注目してるんですが。


○「徐々に」とか「ゆっくりと」のタイムスパンについて

次の政策変更に対してどのような時間感覚を持っていますかという質問に対する総裁のお答え。

『マスコミの皆様方からよくそういう質問を受けますが、私どもとしてはこれに答える材料を持っているとしたら、私どもが判断を間違うケースではないかといつも心配しながらお答えしています。経済・物価の動きを将来につなげる形で十分分析して判断していきますが、「ゆっくりと」というのは、日本経済の現状は私どもがゆっくり分析する時間的余裕を与えてくれているという意味です。』

『従って、カレンダー的に7月から何か月経ったから残りの期間が短くなったのではないか、もうあと1か月か2か月か、という発想に立っておりませんので、ご質問と私どもの答えとの間にはギャップが存在するし、それはやむを得ないと思っています。(以下割愛)』

最初からこの話だけしてりゃ良いんですよね〜マッタクモウ。

ということで、全体のトーンに関しても強気丸出しモードからは後退した感が強い会見ですなあという所だと思います。ただまあ経済指標が好転してきたら利上げをするだろうなあというのもまた感じられますので、結局のところは今後出てくる物価と家計関連の指標が好転するかどうかという話ではないでしょうか。


以下おまけ。

○村上ファンド問題

この質問は大変に結構でございます(^^)。

『(問) 今年1年を振り返るお話の中で、村上ファンドの投資問題についての言及がなかったのでお尋ねします。改めて世論から厳しい批判を受けたあの問題をどう振り返られますか。また、現在の村上ファンドの解約状況についてお伺いします。』

『(答) 前回の記者会見でご報告した拠出金の返戻のプロセスにつきましては、前回ご報告申し上げた以降進展はみておりません。そして私自身振り返って、様々なご批判を謙虚に受け止め、深く反省しているという点について重ねて申し上げます。』

私募ファンドだから色々なやりかたがあるんでしょうが、基本的に上場されてる株式を投資対象にしている(と理解してるんですが)ファンドなのに解約申し出してから10か月経過してまだ全部返金されないファンドってあたくしの理解の範疇を超えるとっても不可思議なファンドでしたなあ。

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2006/12/21

○総裁記者会見は盛りだくさん

盛りだくさん過ぎて明日に続きそうな予感。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0612c.pdf
PDF13ページなのですが、比較的しょうもない質問が少なくて、結構バシバシ突っ込まれてた感じをこの要旨からは受けます。

・冒頭の説明部分での個人消費への言及

冒頭で総裁が金融経済月報(基本的見解)をベースに景気判断の話をしまして、基本的にこの部分はスルーしちゃうんですが。

『個人消費は、天候要因や新製品投入前の買い控えなど一時的な要因もあり、足許はやや伸び悩んでいますが、基調としては増加していると判断しています。』

ということになっておりまして、その辺りに関しては月報基本的見解を読みましても載ってないのですが、先ほどご紹介した月報全文の個人消費に関する部分を読みますと(本文7〜8ページです)、上記発言のような趣旨の分析がございますのでご参考までに。

まあ「足許個人消費が弱いのは一時的要因」ということで、強気は強気というのは継続してるようですが、ちと確信持てるかというとそれはどうかなっていうニュアンスなのかなと読みました。


・市場との対話について

地均しした挙句にこれですがどうですか(意訳)って質問に対して。

『(答)私どもは、毎回、私だけではなく他の政策委員の皆さんも、政策決定について予断を持って臨まないとの姿勢で一貫して本日まできており、今後もその方針です。つまり、政策変更のタイミングを予め示唆するということは、これまで一度もしていないということです。市場もそのところは十分おわかりの上で行動していると私どもは理解しています。』

梯子外し発言キター!!という所でございまして、いやまあ確かに具体的時期に関しては何も言ってませんでしたが、あのトーンを並べられたら「早期利上げに前のめり」としか取れないんですけどねえ。もともとの方針の「経済物価情勢を点検しながら必要になれば利上げする。そのペースは今の情勢だとインターバルは兎も角としてまあゆっくりとなるんでしょう」という話しかしなければ、経済指標を見ながら市場は動くと思うんですがねえ。

変に対話を意識して、バランサーみたいな発言(市場が利上げ無しで盛り上がると第2の柱を持ち出して、早期利上げで盛り上がるもまだ様子見たい時は火消しに回る)が出てくるから話がややこしくなると昨日も似たようなことを申し上げましたが、市場なんて極端から極端に振れやすいものなんですから、変にバランス取りに行くと却って振り子の振れが大きくなるって事なんでしょうな。

まあ7月の利上げが上手くできたんでそれが過信に繋がったということっすかねえ。今とあの時では外部環境が違うということで。


・消費者物価指数発言について

昨日ご紹介したときに、企業物価じゃなくて消費者物価の弱含みに総裁が言及しましたねって話をしましたが、会見場で突っ込まれておりました。

『(問) 今回の現状維持の背景として、(内容部分省略)ということをおっしゃいました。その後、個人消費だけではなく消費者物価も些か弱めということをおっしゃっていますが、一致した点については、個人消費だけではなく消費者物価についても若干弱いという認識で一致されたのかどうか、というのをまずお伺いします。(以下割愛)』

『(答) 最初にお尋ねの点は、先ほども個人消費や消費者物価などで弱めの指標が出ていると申し上げました。しかし、今後点検していく材料というのは何もこの2点にだけ絞るということではなく、これらも含め引き続き様々な指標を丹念に分析していき、政策変更を行うことが適当だという十分な確信を得られるところまでの点検結果が結論として出てくるかどうかということであります。(以下割愛)』

えーっと、どうも回答を回避してますなこりゃ。ちょっとサービスしちゃったかなって所なのかも知れない(^^)。


・定率減税の影響について

これはまた素晴らしい質問。

『(問)1月から定率減税が全廃になり、家計部門にとってみれば実質増税になると思いますが、個人消費が少し弱い中でその影響について、どのようにお考えですか。』

『(答)そう単純ではないと思います。定率減税によって受けていた家計部門のメリットがなくなるというのは、確かに負担が増えるということになるわけです。しかし、経済が今後とも息の長い成長を続けていけば、民間部門内での所得の増加は当然期待できるわけですので、併せて考えますと、やはり息の長い成長が続くということが、家計部門にとっても将来のコンフィデンスをより強めていくことになるだろうと思っています。』

まるでこれでは答えになっておりません(^^)。ということは「悪影響あるんだよな〜、でも政府与党の庭に特攻する訳にもいかないからな〜」というのがホンネでは無いかと勝手に総裁の心を妄想するあたくしなのでありました(^^)。

その他幾つか論点というかネタらしきものがあるのですが、時間と量の関係上とりあえずこんなところでご勘弁下さい。続きは明日。

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2006/12/20

○総裁記者会見

詳しくは例によって日銀発表の会見要旨が本日出るでしょうからそれを真面目に読む必要が物凄い勢いでありますので、本日は諸般の事情(最終報出る前に呑みに逝ったからですが^^)で最終報を見てないブルームバーグニュース(プロフェッショナル)ではなくて、珍しくネット上のブルームバーグニュースから簡単に。リンクはどうせ暫くすると切れると思うんですがこちらです。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003017&sid=aL4W2pscI1kA&refer=jp_news_index

上記URLから引用致します。

・利上げ見送りになった背景は?という質問に対して

『本日の決定会合で現状維持を決定した。政策の先送りとおっしゃったが、先送りではなくて、諸情勢を丹念に点検し続けた結果、今回は現状維持となった。背景となる経済・物価情勢は、短観やGDP統計を含め、前回会合以降明らかになったいくつかの指標を踏まえて、丹念に検討した結果、日本経済は引き続き緩やかに拡大していることを確認した。先行きについても生産、所得、支出の好循環の下で、景気は息の長い成長を続けていく可能性が高いと判断した』

『ただ、このところご承知の通り、個人消費や消費者物価などの面で弱めの指標が出ているということも事実だ。今後公表される指標やさまざまな情報を引き続き丹念に点検していくことが適当である、という点で意見が一致した』

ということで、まあ月報で個人消費と国内企業物価に関しての言及があったのですが、会見では消費者物価に関しても弱めという話をしております。月報要旨との整合性はどうなのよという気もします(ちなみに消費者物価指数については『生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)前年比上昇率は、石油製品価格の影響によって伸びが鈍化しているが、なおプラス基調で推移している。』と言及してます)がそこは追及せずに(^^)別の質疑を。


・フォワードルッキングと足元の数字について

実に素晴らしいツッコミをする人がいます。質問も引用。

(問)『日銀はこれまでフォワード・ルッキング(先見的)な政策、先手を打つ政策を標榜されてきたが、今回は足元の指標を重視したかのように聞こえるが。』

で、これに対する答え。

『フォワード・ルッキング・アプローチというのは、先々まで経済・物価の状況を深く読みながら、必要とする政策を早めに適切なタイミングでやっていく。この点はおっしゃった通りだ。ただ、フォワード・ルッキング・アプローチと言っても、手前の現実に出てくる経済指標、物価指標を無視して、これを飛び越えて、遠眼鏡で先だけ見ているというアプローチではない』

いやあ第2の柱を全面に押し立てて「手前の指標が強弱あっても必要な時は判断する」というような趣旨の講演要旨をここんところ何回か拝読しておりました愚昧なあたくしから致しますと、何を今更言い出すんだという感は拭えない(べき論で言えば当たり前のことをやっと言ったかという所ですが、笑)ご発言でありますな。

その続き。

『やはり刻々と出てくる経済指標、あるいはさまざまな情報、データを先につなげる形できちんと分析しながら、先を判断していく。先々の経済の姿が指標で出てくるわけではないので、やはり現実に出てくる情報を丹念に分析し、将来の展望という形で組み立てながら政策判断につなげていく、そういうやり方をとっている』

『したがって、手前に出てくる情報に乱れがなく、整斉と一定の方向で出てくる場合と、つい最近のように強い指標、弱い指標が入り乱れて出てくる、あるいは過去の数値が改定される、こういうふうなときには、手前の指標の丹念な分析が一層必要になる。そうでなければ、確信を持って先を見にくいという面が出てくる』

GDP改定まで言及しておりまして、何と申しますか「データ重視」と逝ってみたり、将来のリスクを重視してみたり、その時々で言うことに一貫性がないから結局のところ市場は「ロジックじゃなくて政策委員の意向重視」になるんじゃないでしょうかねえ。これじゃあ市場の対話とか言わないでルール重視でやってもらった方がよっぽど動きやすいんですけどねえ。更に続き。

『そういう意味で、手前の情報をより重視しているように見えるが、実際にはわれわれはたんたんと同じペースでいろんな情報を分析し続けている。今後もそうしていく』

どう見ても転向です。本当にありがとうございました。

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2006/11/30

○昨日の講演は特に地均し的部分も無く

昨日も福井総裁は講演。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0611h.htm

お題は前半が「グローバル化」後半が「市場との対話」でございまして、まああまり変った話はしてないのですが。実体経済活動のグローバル化というお題では毎度の話ですが、世界的なディスインフレがいつまでも続くわけではないという点を指摘。

『先進国では、ディスインフレの傾向が1980年代後半から観察されますが、1990年代後半以降には、新興国を含め世界的な規模でのディスインフレの進行がみられます。一方、より最近では、新興国の台頭に伴って、原油など一次産品の価格が高騰する動きもみられており、実体経済活動のグローバル化が、今後とも物価の抑制要因として働き続けるかどうかは、明白ではないように思います。』

これ自体は特に新味はござませんが念の為引用しときました。で、市場との対話の話に関してもどっかで聞いた事のあるお話でして、特に新しい話ではございませんでした。

『この枠組み(引用者注:現在の金融政策の「枠組み」です)を作るうえでは、各国の中央銀行が採用している枠組みも参考にしました。(各国の枠組み説明部分の運用割愛)こうした各国の事例をみると、「市場とのコミュニケーションを緊密にしつつ、政策運営に必要な柔軟性を確保する」という考え方は共通になってきており、そのもとで、具体的にどのような枠組みを採用するかは各国ごとに工夫がなされていることが分かります。』

『日本銀行は、「新たな金融政策運営の枠組み」を導入した後、本年7月には、5年以上の長きに及んだゼロ金利を解除しましたが、その際にも、金融市場は安定的に推移しました。それは、市場と日本銀行の対話が円滑に行われたことの証左だと考えています。日本銀行としましては、この枠組みにさらに磨きをかけながら、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向けて、努力していきたいと考えています。』

だから7月の時は先行きの利上げまで最大限織り込ませてからやったんだから解除後に安定推移するのは当たり前だと小一時間。お願いだから次回やる時は「先行き連続利上げを最大限織り込ませてから利上げ」ってのは勘弁していただきたく存じます。

と、悪態はつきましたが、まあこの講演の内容は特に地均しとかの内容はございませんで、非常に落ち着いた講演だったと思われます。


○火曜日の会見も穏やかなものでした

火曜日の講演(月曜と同じ内容)の後に行われた記者会見。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0611e.pdf

「設備投資が積み上がっているリスクを意識すべきなのか」という質問がこちらでも出まして、しかもそれが一番最初に出てましたが、その部分に対する総裁の応答。

『従って、目先、設備投資の行き過ぎリスクを私どもが感じ始めているわけではありません。ただ、金融が著しく緩和された状況がいつまでも続くという感覚を企業が過度に持ち過ぎると、将来、行き過ぎた投資、ひいては資本ストックの調整を招く、そういう循環を呼び込むリスクは、先々のリスクとして一応念頭に置いておかねばならないと申し上げているわけです。』

月曜日の質疑応答と同じ趣旨の答え(当たり前ですが)になっていますな。まあ「第二の柱をクローズアップして利上げをするのはちょっと変じゃネーノ」という批判があちこちから出ている(とあたくしは思うのですがどうでしょう)訳でして、さすがに足元の経済情勢より先行きリスクにウェイトかけまくって政策変更というのは無理筋とご認識されたのであれば誠に結構。ただまあそれはあたくしの希望的観測のような気もするけど(爆)。


「12月の利上げは難しいんじゃないですか」という直球質問に対して。

『カレンダー上のスケジュールを意識し、その後で経済情勢判断に必要な材料を考えるという順序ではなく、いわば連続線上の変化の中で、経済・物価情勢の点検を行っています。すなわち、新しい指標が毎日のように大小取り混ぜて出てくるわけですが、それを常に日本銀行が示している標準的な経済・物価の見通し、シナリオに照らして、基調判断を一歩一歩固めていく、そしてその都度過去に出た経済指標・データについても、改めて振り返ってどういう読み方が本当はできるのかということを、基調判断の中に染み込ませながら判断を前進させていき、固まれば結論を出すということです。(以下割愛)』

と、経済指標を見ながら判断をするという立場を改めて強調。普段からこういう話しかしなけりゃ撹乱要因にならないのにと思うのですけれどもねえ(そうするとこっちは駄文のネタが無くなるが、笑)。


インタゲに関して

『(前半長いので割愛)インフレーション・ターゲティングといわれるものの仕組みの良い点、悪い点は今後ともキャリーオーバーし、私どもの金融政策の透明性向上を図っていく上で、引き続き重要な検討対象材料として活用していくということであります。インフレーション・ターゲティングに的を絞って、もうこれは採らないという狭い意味での検討の結論ということではないことを、ご理解頂きたいと思います。』

前半まで引用すると長くなるので割愛しましたが、今回の答えのトーンはインタゲに対する否定的なニュアンスの言い方を避けているように見えました。まあ福井総裁は言葉を随分選んでますなあという印象を受ける会見ではございます。逆に考えれば、利上げに向けて今更波風を立てる必要もないし、市場も1月利上げだったらかなり織り込んでる状況(ただし連続利上げに関してはまるで織り込んでませんが)なんで余裕ぶっこいているのかもしれませんが。

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2006/11/29

昨日は名古屋で各界代表者との懇談での挨拶がありましたが、前日の大阪での挨拶とまるっきり同じ要旨ですのでそっちは割愛。大阪での記者会見要旨が出たのでそのあたりから。

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0611d.pdf

○利上げ時期に質問が集まるの巻

冒頭から年内利上げの可能性の質問があったのですが、総裁は利上げ以外の話をしてたので改めて質問(^^)。

『(問)年内の利上げの可能性についてお答え頂けなかったので、ここは講演の中であった通り、金利の調整はゆっくり進めていくということでしょうか。』

『(答)申し訳ありません。もしかしたら大事な点をお答えしなかったかもしれませんが、意図的に外したわけではありません。いかなる時期も、タイミングとして頭から排除して考えていないということですが、逆に、具体的なタイミングを既に念頭においているということもありません。』

『最近まで出てきた指標は、若干強弱が入り混じっており、それがマーケットの中のボラティリィティをいくらか高めているのではないかと思っています。従って、これから出てくる新しい情報やデータ等について、さらに丹念に分析を加えていく必要があると考えています。併せて、これまで出てきた指標についても、経済の基調判断との関係でどうかということを詰めながら考えていきたいと思います。自然に良いタイミングがつかめるように、分析に力を入れて経済・物価の動きを見極めていきたいと思っています。』

ま、ここを見ると(字面からの印象としては)記者会見での総裁のトーンは落ち着いた感じを受けると申しますか、時期をピンポイントで特定して利上げ期待を煽る、という表現が悪ければ利上げ時期を強く示唆するような、まあそんな物の言い方を避けているというのが読み取れると思うのですが、如何でしょうか?量的緩和解除直前や前回の利上げ直前における総裁発言とは雰囲気が違うように見えますが。

全部は紹介しきれないと思うのですが、この後も延々と利上げ時期に関する質問が続きまして、それらの質問に対しても概ねこんな感じの答えになっておりました。

ということで、「データを見ながら対処する」というのはまあホンネであって、総裁様のお考えを勝手に憶測致しますと、現時点で総裁としては次回の利上げ時期は決まってないってことなんじゃないかと思うんですけど。


○資産バブル云々の話

『(問) 設備投資についてお伺いします。総裁は先程の講演において、現状では設備投資には過熱感はみられないと、今までのご見解を繰り返されたと思いますが、先行きについては、このまま低金利が続くと行き過ぎが生じるリスクを意識する必要があると言われたと思います。これまでよりも先行きに対する懸念を若干強められたような印象を受けましたが、現状をどうご覧になっているのでしょうか。』

良い質問ですな。で、答が例によって長いので、勝手に大幅割愛して結論部分と思われる所を。

『現在、何かが予見されているということではありません。資産価格の動き等も含めて、企業が安易な行動に出る種となるものを金融政策から生み出すことがないようにという、やや一般的・抽象的なリスクとして考えています。今日講演で申し上げましたのも、その範囲内であり、より踏み込んで何かを申し上げたというつもりは全くありません。もしそう受け取られるとすれば、私の言い方のどこか表現が良くなかったとも思います。』

いやあのそれなら別に小見出しつけて話さなくてもと思うんですけれども・・・・まあ答を全部読みますと言いたいことも判らんでもないっすけどね。

『(問) そうしますと、講演の中で資産価格の動向を注意しているとおっしゃられた点は、一般論的なことということになるのでしょうか。』

『(答) 今日、講演の中で申し上げたのはそういうことです。(中間割愛)従って、何かリスク要因が具体的にみえているというようなことを、まだ私は申し上げているつもりはありません。先々のリスクとしてそういうことを念頭に置き、バブルの再来は絶対に許さない金融政策をしなければならない、という点だけは非常に明確だと思います。』

現時点での資産バブル発生を懸念をしている訳ではないが、日銀としてそういう話をしておかないと市場に余計な楽観ムードが蔓延し、資産バブルが発生するかもしれないから言っておくんですよ、と言いたいと見ました。まあその理屈は判らないでもないんですが、展望レポートによる「第二の柱」に絡めて話をされると「まず利上げありきで、足元の経済物価情勢を軽視して動くんじゃねえのか」という風に見られやすいと存じますが。過去の日銀の実績から考えますと。


#以下徐々に今日のお題に話の方向が逝くのである。


○まあそう煽るなと

質疑応答の中でこんな質問をする人がいました。

『(前半割愛) 展望レポートでは、既に4月の段階で息の長い景気回復が続くという見通しを出されていて、その見通しのもとで徐々に金利を調整していくという考え方が既に4月の段階に出ています。それが10 月の展望レポートでまた確認されているわけですが、その10 月のレポートを中間評価する来年1月を過ぎてもなお、この金利の調整がずるずるとできないような状況が仮に続いた場合には、日銀が示しているメイン・シナリオの信憑性、市場からの信頼性が問われるのではないかと思いますが、この点について、どのようにお考えでしょうか。』

答えは面倒なので(というか別にいつもの話なので)引用しませんが、正直申し上げまして、あたくしとしては「利上げをしなかったらシナリオ通りじゃない」っていう発想は誰かに言われるまで全く思い浮かばなかった発想ですし、まあ(母集団に偏りがあるんですが^^)あたくしの周囲でも(最近はこの理屈が人口に膾炙してますんで皆知ってはいますが)その発想は無かったわという感じです。だってシナリオはシナリオだけど、経済がそのシナリオどおりに動くかどうかなんてその時になって見ないと判らないじゃん。

という訳で、「市場からの信頼性」ってよく言われるんですが、シナリオだってそもそもが利上げペースについて明示してる訳じゃないですし、シナリオよりもいわゆるダム論の具現化が遅いんだったら無理に利上げしない方が「市場からの信頼」は高まると思う次第でして、まあお前らそんなに日銀を煽るなと。

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2006/11/28

お題「福井総裁は別の角度から資産バブルに言及」

昨日は午後遅い時間から福井総裁講演が2本。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0611e.htm
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0611f.htm

URL名を見れば一目瞭然ですが、上の方が先に行われた講演でございます。市場的には「福井総裁はタカ話が出るのは仕様です」という状態になってきている今日この頃でありますが、金曜の福間審議委員に続いて資産バブルの話が出たのは随分タイミングが良いですなあ(棒読み)というところではございます。ま、福間審議委員さんにしても福井総裁にしても資産バブル懸念の話は折に触れてしているので、急に目新しい話をした訳ではございませんが、

ということで、バブル懸念の話をした2本目の講演、大阪大学金融・保険教育研究センター設立記念講演の要旨からその部分を。


○切り口を変えた資産バブル話

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0611f.htm

講演の最後の方にやや唐突感のある流れで『(繰り返してはならないバブル)』という小見出しのコーナーがございます。

『さて、90年代以降、グローバル化、情報化が進行し、金融ビジネス革新の好機とも言えた時期に、日本の金融界が不良債権に縛られて前に進めなかった事実を思い起こすと、バブルとその崩壊の歴史は二度と繰り返したくない、という気持ちが強くなります。バブルは所詮、弾けてみるまではわからない、という面は否定できませんが、結果的にあれほどのバブル膨張を許してしまった80年代の市場システムに、改善すべき点が多々あったことも事実です。』

ということで、『バランスシートの透明性が不十分であったこと』『資産価格を期待キャッシュフローの割引現在価値で考える、という経済計算の習慣(がなかったこと)』について指摘してまして、んじゃあ現在は改善しているかというと「改善してるけど必ずしもそうじゃない」とこんな指摘を。

『ディスクロージャーの透明性が向上したとは言え、金融イノベーションが進む過程では、相対的に開示規制を受けにくい新たな取引手法やプレーヤーが出てきます。また、いくら資産価格を経済価値から計算すると言っても、90年代末の世界的なハイテク株の高騰にもみられたように、計算の前提を甘く見積もり過ぎてしまう「判断の誤り」は、どの市場でも起こりえます。』

まあそれはその通りでございますな。で、この部分の直前にこんな話をしておりまして、何と申しますか、一般論っぽい話をしながら「今だって将来のバブルの種が蒔かれているかもしれません」って話をしているようにも読めますな。

『この点、近年は、資産価格を経済価値と結びつけて判断する国際標準の考え方が、日本でも定着しつつあり、ディスクロージャーの透明性向上と併せて、80年代と同じようなバブルの再来を防ぐ環境は、かなり整えられてきたのではないかと考えられます。しかし、歴史上のあまたの例を引くまでもなく、次のバブルは形を変えて忍び寄ってくる可能性があります。』

この話、「リスク管理の高度化」という話の流れからきた話なのですけれども、そこまでの話からちょっとテーマが飛んでる感じで読んでて「おや?」と思った次第。まあ今回のバブル云々話は一般論としての世界なんですけれども・・・・・


○いわゆるダム論の具現化度合いに注目

最初の講演から。

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0611e.htm

『最近の経済指標をみると、家計調査や機械受注など弱めの指標が続いた後、7〜9月期のGDP速報値が前期比年率+2.0%と市場予想比強めとなるなど、強弱双方の指標が混在しています。そうした中、市場の景況感も振れやすくなっているように窺われます。重要な点は、こうした指標が全体として、経済・物価の基調を形成するメカニズムの変化を示唆しているのかどうかを判断していくことです。』

ということで、まあいつも通りの話をしてますが、じゃあどの部分を注目しているのかというのが3点ありました。『世界経済、特に米国経済の動向』、『企業部門の好調が続くかどうかという点』という2点に加えまして・・・

『3つめは、企業部門から家計部門への好影響の波及がどう進むかという点が重要です。』

と、この点にだけ「重要」とついてますな。もしかしたら一々「重要」とつけるのはくどいのでここにだけ「重要」とつけたという単純に話法上の問題なのかもしれませんけれども、文章を一読した時に受ける印象としては「ああこの点が重要なんだなあ」と思わせますね。

で、先ほど3点と書きましたが、よく読むと4点ですか、この次に指摘しているのは・・・・・

『最後にこの点に関連して、賃金と物価の動きが大事な注目点です。』

実質的にはこの注目点と企業部門から家計部門への好影響の波及は根っこが同じ話ですので、実質的には3点を指摘しているという形。で、講演要旨にも言及がありますし、そもそも今回の講演を待つまでも無く、金融政策決定会合議事要旨やら他の政策委員の講演などでも指摘されておりますように、最初の2点に関しては「先行き見通しは今後も順調ですよん」って認識になってます(それが大丈夫なのかというツッコミは華麗にスルー)ので、この3点目が重要ってことなんでしょう。

『もっとも、過去の経験則とは異なり、景気拡大の長期化にもかかわらず、生産性の上昇が継続し、賃金の上昇が遅れる場合には、物価が上昇しにくい状態が続くことも考えられます。(中間割愛)今後も、景気が拡大を続ける中で雇用者数の増加が続いていけば、マクロ的な労働需給の引き締まりは避けられません。こうしたもとでは、所定内給与を含め、賃金に徐々に上昇圧力がかかってくると考えるのが自然です。ただ、これがどの時点で生じるかは明らかではなく、賃金の動向や物価の基調的な動きについては、引き続きよくみていきたいと思います。』


○金融政策に関してはあっさり味

『以上のような経済・物価情勢の判断を踏まえて、金融政策運営の考え方をご説明したいと思います』

から始まる金融政策運営の話が短いんだこれが。

『先行きの金融政策の運営方針については、展望レポートで示した「経済・物価情勢の見通し」に沿って、経済・物価が推移していくと見込まれるのであれば、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を当面維持しながら、経済・物価情勢の変化に応じて、徐々に金利水準の調整を行うことになると考えられます。これまで繰り返し申し述べてきているとおり、金利の調整はゆっくりと進めていくということです。このことは、決して景気拡大の芽を摘むものではなく、むしろ息の長い拡大を実現していくことにつながるものです。』

いつも通りの話です。

『具体的な時期については、毎回の金融政策決定会合で、経済・物価情勢を丹念に分析し、委員間で十分議論を尽くした上で決定していきます。その際には、個々の指標や様々な情報を、展望レポートで示した経済・物価のメカニズムに即してしっかりと点検し、経済・物価が見通しに沿って展開していくと見込まれるかどうかを、確認していきたいと考えています。』

ごく一般的な話ですな。というか普段から後半部分の話だけしてればいいと思うんですが、どうも地均しは有効だと皆様がご認識しておられるようですので、中々難しいんでしょうが。


ということで、2本の講演ですが、あまり刺激的なことを言わないように注意しているというのは把握致しました。以下余談。


○余談ですがリレバン(笑)

すっかりその話題も聞かなくなったリレーショナルバンキングでございますが(と言っても施策自体は継続してると思いますが)、2番目の講演で「新たなビジネスモデルの模索」って小見出しでお話をしてる中にこんなのが。

『第三に、一般企業向けの貸出形態も多様化しています。(シンジケートローンの部分割愛)これとは別に、中小企業向けには、財務データが徐々に蓄積されてきていることなどを背景に、クレジット・スコアリング・モデルという統計的な審査手法に基づく、小口の無担保ビジネスローンも提供されるようになっています。』

いやー確かにさようでございますし、御当局様でもこの「統計的な審査手法に基づくローン」を推進しましょうってやってましたんで成果が上っているのは結構なことでございますが、一方で金融庁様におかれましては「リレーショナルバンキング」なる中小企業融資への取組みも推進しておられました(ってか今でも継続中だと思うが)が、この「統計的な審査手法でのローン」と「リレバン」が矛盾した話であるというのが改めて良くわかる説明でございますな。

いやまあこの批判は日銀というよりは大風呂敷の右端と左端で思いっきり矛盾するような施策を取ってたりする金(以下自主規制^^)。

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2006/11/20

○総裁記者会見

まずは総裁記者会見
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0611b.pdf

景気に関する質疑が多かったのですが、基本的なトーンは景気に対しては依然強気を維持しているものの、あまり全面に強気を打ち出してはいませんって感じでしょうか。

・政府から言われる「ダウンサイドリスク」に対して

『私どもは、ダウンサイド・リスクに限らずあらゆる方向性のリスクについて、いつも十分かつ丹念に検討し、全体の経済情勢の基調的判断に努めているところです。このところ、家計調査その他で幾ばくか弱めの指標がみられるのは事実です。この点についても、十分掘り下げながら先行きの見通しにつなげる努力をしています。ただ、今のところ、これらの指標が、展望レポートでお示しした経済のメカニズムについての評価を変えるものとはみておりません。』

ということで、基本的には強気ですが・・・・

・電子・デバイス部品の在庫調整に関して

『その部分(ゲーム機関連の国内要因による在庫増です)を取り出して、そうだと決め付けることは難しいのですが、かなりその影響があるのではないかと推察されます。それだけであれば一過性ですが、一過性であってもひと月で消えるというものでは多分なく、少し尾を引くかもしれないというくらいにはみておいた方が良いと思います。』

・家計への波及に関して

『賃金への波及については、私どもは少なくとも雇用者所得でみている限り、企業収益が緩やかながらも着実に家計部門に還元され続けていると考えています。これが、色々言われながらも個人消費が基調的に増加を続けている大きな背景になっていると思います。』

『極めて緩やかですが、家計部門への還元は着実に進んでおり、今後は雇用が一層タイト化すればその傾向はさらに強まっていくでしょう。展望レポートでは、2006 年度、2007 年度という長いタイムスパンでみていますので、毎月毎月どの位のペースでというところまでは厳密に詰めていませんが、少しタイムスパンを広げてみれば、シナリオにそれほど狂いなく動いていく可能性の方が強いとみています。』

この辺のくだりを読んでいると、様子見っぽく読めてしまい、12月に利上げって雰囲気は漂ってこない訳なんですが、利上げそのものは「金融政策の正常化」というカテゴリーに(いつの間にやら)組み込まれているのが要注意でございますわな。

・金融政策に関して

金曜も引用しましたが、基本的に「オープン」というスタンスで話をしておりまして、この前の講演は何だったんだという感じですけれども、まあ上でも書きましたように、いつの間にやら次回の利上げに関しては「金融政策の正常化」なので、「景気が展望レポートの基本的な判断通りにいってれば金利の調整」というお話になってますんで、あたくしには余裕綽々だという風に読みましたけど。

何度か「スタンスはオープン」という話を繰り返しておりますが、最後の質疑から総裁答弁を引用致します。

『経済・物価情勢を丹念に点検した結果、自然に金利の調整を行っていくのであれば、その結論が12 月に至った場合、来年1 月に至った場合、あるいはさらにその先に至った場合、おそらく違いはないと思います。しかし、経済・物価情勢を点検した結論以外の何かの要素を持ち込んで判断をするとか、あるいは、カレンダーで年内と来年といったスケジュール的にものを考えることをした場合には、そういうことをすればむしろ悪くなるという意味で結果が大いに違ってくると思います。私どもは、あくまでも経済・物価情勢を丹念に点検した結果として自然に結論を出したいし、そうでなければ市場とのコミュニケーションもきっと上手くいかないだろうと思っています。』

ということで、経済・物価情勢以外の云々という所で政治的なご意見にチクリと釘というか針程度をさしている感じはしますが、「あくまでも自然に結論を出したい」ってあたり、短期市場が12月から1月の追加利上げを織り込みに行っているので余裕かましているなあと思います。地均ししたり自然体になったり大変ですなあという感じですが。

ま、総じて「おとなしい」会見だったんじゃないですかね。

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2006/11/17

○総裁記者会見

昨日は総裁のスケジュールの関係上会見時間が短かかったので、ブルームバーグの会見中継録画(というか実質音声だけですが)を放送を全部聴く時間がございました。

で、聴いた印象ですが、「総裁随分おとなしいな」というところでございました。まあさすがにこれだけ散々事前に注目注目と言われただけに変な話をしなくて良かったですねという所ではございますが、別の言い方をすれば金利市場の方が既に12月か1月の利上げですなあっていう価格形成になっているのでこれ以上地均ししても軋轢だけ増える結果になるので、余裕綽々という心境なのかもしれませんし、その辺までは判らん(のは当たり前ですが)。

で、会見内容が流れている間に債券先物はちょっと上昇(その後下がったりして結局小動きだったんですが)したようですが、まあそれだけ総裁のタカ発言に警戒が強かったということなんでしょうか。どうもよく判らんです(てかそもそもイブニングセッションですから板薄いですし)。

記者会見を聞きながら適当に取ったメモと、16日18時05分配信のブルームバーグニュースからまあ気になったくだりを少々。

・12月利上げの可能性について

『いかなるタイミングも排除して考えない、というのが、われわれは予断を持たない、ということの定義と一番平仄が合っている』

・財政健全化のスケジュールに絡めて、金融政策正常化のスケジュールのタイムスパンはどうなっているかという趣旨の質問に

『多分、金融政策というのは、そういうカレンダーをにらんで、日にちをにらんで見通しを立てると必ず失敗するのではないか。経済は本当に生き物で、そんなに予定通り動いてくれない。だから、それはやはり情勢を丹念に点検しながら、十分フレキシブルに対応していかなければならない。そうでなければ、予定表の通り行動すれば、景気の芽を摘んだり、逆に景気を過度に刺激したりするリスクの方が大きいのではないか。』

まあこんな感じの質疑応答で、金融政策のタイミングという問題に関する言及は恐らく意識して控えめにしてたんでしょうな。つーか地均しとかすんじゃねえと思うのですけど、苦笑。でもまあ景気に関しては「基本シナリオのままよん」って言ってるのですな。

・金先市場を引き合いにだして、「市場が日銀のシナリオ通りに動いてきたと考えてますか」という質問をした人がいたんですが(^^)

『市場は新しい指標にいろいろ反応しながら、引き続き基調判断を固めようとして、市場自身も努力を続けている状況だと思う。日銀の方では、これまでのところ、さまざまな現象を分析して、展望リポートでお示ししている基本的なシナリオから経済・物価の動きがずれ始めているとは、われわれはみていない。市場の方は今後とも新しい指標にかなり敏感に反応しながら織り込んでいくということだと思うので、市場が判断を固めつつあるとはまだ言えないのではないかと思う』

何か判ったような判らんようなお答えではございますが、ここの発言とか聴いて(って結構聞き流しながらでしたが、爆)た感じだと、まあ総裁余裕モードって印象をあたくし的には受けましたが。


とまあ(非常にちょっとだけですが)総裁記者会見の一部を拾いましたけれども、まあベンダーのヘッドラインと債券先物の反応を見ても判るように、当初の印象は「思ったほど突っ込んだ話が無かったですねえ」というものだったのですが、一晩明けてモーサテを見ると「日銀総裁、年内利上げを否定せず」ってなってまして、「12月の決定会合までこんな経済指標が出ますが、この数字を見て12月に利上げをするのではないか」というようなトーンのお話になっておりましたですな。メディアがせっせと鉦や太鼓を打ち鳴らすの図になっているような気が致しますが・・・・

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2006/11/13

お題「金曜日の福井総裁発言メモ」

今日はメモ書き程度のお話で恐縮至極。まあ金曜日は総裁発言よりも機械受注統計発表前に出された髪のご託宣の方がキングオソロシスでございましたけれども(笑)。

○福井総裁の国会答弁

金曜の衆議院財務金融委員会に福井総裁が出席。ニュースベンダー的に扱いが大きかったのは、「円キャリー取引」に関するコメントでして、ブルームバーグニュースでは総裁発言ニュースのお題が『福井日銀総裁:「大変警戒」−円キャリー取引の拡大を巻き戻し』という風になっておりました。ということでソースは10日14時31分配信のブルームバーグニュースです。

・円キャリー取引

『これ(円キャリー取引)が非常に膨れている場合には、先行きの金利観に急激な変化が生じれば、急激な巻き戻しが起こり、さまざまな歪みをもたらす。このリスクが非常に大きいので、私どもは大変警戒してここを見ている』

いやね、それだけ見ているとご尤もな話をしてるかもしれないですけど、「急激な巻き戻しが起こり大変ですよ」っていうのならば、2003年に長期金利が豪快に低下した後に大反転する過程で完全放置プレイ(どころか煽ってたんじゃないかと言いたくなるような言動もありましたが)をしていたのは一体全体何だったんでしょうかと粘着質のあたくしは小一時間問い詰めたいわけですな。日本の投資家よりも海外の投資家が大事なんですかと言いがかりの一つも言いたくなりますな。

巻き戻しが起きて為替が急激に動いたらそれこそ介入でもすりゃいい話だし、欧州あたりの不動産バブルが崩壊したって「景気の牽引役は外需から内需へバトンタッチされてバランスの取れた成長をしている」のが日銀様のシナリオなんですから別に大きな問題ではないって筈じゃあございませんでしたかね(そもそも海外の不動産バブル心配する前に日本の景気を心配して欲しい訳で)。

『金融政策の運営にあたって、市場とのコミュニケーションを綿密にやらないと、非常にサプライジング(驚くよう)なことになれば、そういう現象−−まず円キャリー取引が異常に膨らみ、逆にまた巻き戻しが大きくなるという、往復のリスクがあるので、常日ごろから市場と政策運営をめぐるコミュニケーションを濃密にやっていく』

円キャリー取引をバブルと捉えるのかというそもそも論があるのはとりあえずスルーしまして、バブル(というか過剰な期待による特定資産価格の異常な上昇というか)に関してはマーケットで色々とやってる以上は局所的に発生するのはある程度止むを得ない話でして、モニターするのは結構ですけど、バブル潰しで金融政策をどうのこうのっていう理屈になる(この答弁ではそういう話をしているわけではないですが)のは如何なものかと思いますけど・・・・

どうも直前のやる気満々講演と重ね合わせると、円キャリー取引の拡大を懸念して金融政策の正常化をするとかいう理屈が出てくるのではないかと懸念したくなりますわな。


・金利調整に関して

『情報技術(IT)関連部品などの在庫が急に上っていることがいったい何を意味しているか、丹念に点検していく必要がある。家計調査も一番最近の数字は、私どもから見ても少し弱い数字になっている。これらについても、先行きの経済にどのような意味があるのか懸命に分析している』

『こういうふうに今後とも新しい指標が出てくるが、良い指標であれ、必ずしも良くない指標であれ、1つ1つ丹念に分析しながら、経済の基調に狂いがないかどうか確かめて、そこに確信が持てれば、やはりゆっくりと金利を調整していくことが、景気の芽を摘むものではなくて、逆に息の長い成長を確保する道に通じることができる』

ちゃんと丹念に分析してくれれば利上げ先にありきで特攻するような事態にはならないと思うのですが、この発言でも「良い指標」と対比しているのが「必ずしも良くない指標」という風に、とにかく「悪い」という言い方を避けているのが福井総裁の心象風景を示しているようでございまして、懸念されるところであります。

福井総裁や水野審議委員におかれましては、「徐々に金利水準の調整を行うのが適切」と言っている日銀の公式見解に変に縛られて、「利上げしないと日銀のシナリオが達成できず、日銀の信認に関わる」などいうような理解が涌いているのではないかという気がするんですけれども、別に「ちょっと踊り場入りしてるから金利水準調整ペースは落とします」で何の問題もないし、信認問題なんて発生しないと思うんですが(金先の売り方は火あぶりだから困るでしょうが)。

ま、一応普通の話をしているようではありますが、どうもあたくしには「利上げ先にありき」の発想があるようにも見える次第でしてちと気になるのでした。


○読売新聞の福井総裁インタビュー記事

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20061110i201.htm
日銀・福井総裁、利上げは「早め、小刻みに」

日本銀行の福井俊彦総裁は9日、読売新聞のインタビューに応じ、今後の金融政策について「先行きの景気の振幅を大きくしないように、金利水準は徐々に調整していく。金利を上げないリスクを分かっていただきたい」と述べ、利上げへの理解を求める考えを示した。

政府・与党内で早期利上げに慎重論が根強いが、福井総裁は「(米国経済の動向など)様々なリスクを読みながら早めに小刻みに対応する。景気のダウンサイド(下ぶれ)リスクばかりに目を奪われて必要な政策調整をしないと、リスクを作り出す」と強調した。(以下略)

URL先はいずれリンク切れになりますので上記URL先の記事を一部引用させて頂きましたが、何ともうしますか「福井総裁、世間一般に利上げの理解を求めるの図」って感じが致しますな。

先週のきさらぎ会での講演以降、連続してこの話が続くところがどうもねえって感じでございますです。はい。

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2006/11/08

お題「この地均しはいかがなものか」

先月の記者会見あたりから福井節が戻ってきた感じがして非常にいやーな予感はしてたのですが、村上ファンド問題逃げ切り濃厚になったらもう福井節復活ですかそうですか。

で、まあ本日は金先あたりの売り方が喜ぶ水野審議委員の講演がございまして、昨日の講演とコンボで地均し大作戦でもやらかすんでしょうかねえ(怒)。

ということで講演要旨はこちら
http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0611a.htm

○本石町日記さんのところから

既に皆様ご覧になっているかもしれませんが本石町日記さん→http://hongokucho.exblog.jp/6001100/
『フォワードルッキングは「やりたいようにやる」の方便=利上げのための景気過熱論』

で本石町日記さんがご指摘されているように、あたくしめも自分の理屈に引きずられて理論倒錯の利上げをぶちかますリスクが恐ろしいと感じております。

何かね、それこそ「市場が○月利上げを織り込んでいるのに日銀が利上げをしなかったら日銀の信認が問われる」とかいうような無茶苦茶な話をしだす人が出そうですよね。この俺様理論を敷衍していきますと。それに地均しがコンボになるのですからもうハチャメチャとしか言いようが無くなると思うのですが、いかがなもんでしょうか。

でですな、上記エントリーで本石町日記さん(正確にはbank.of.japanさんね)がコメントしているように『景気がその後下降した場合に、日銀が結果責任を負わされるリスクが大であることです。今度失敗すると2度目ですので、下手すると法改正のリスクがあります。』という危惧をあたくしも持っている次第。

昨日おっぱじまった政府税調の話のように、いわゆるダム論の展開にフォローどころかアゲインストになりそうな路線が進みそうな状況の中で利上げをすると景気が下降した時の全責任が日銀逝きとなるのですけど良いんでしょうかと総裁様を問い詰めたくなる次第。



○経済に関する見立ては展望レポートよりも強気のトーン

前半は経済の現状に関して世界経済、日本経済に関して話をしておりますが、その日本景気に関する最後の部分でこんなお話をしております。

『わが国の景気は、生産・所得・支出の好循環が働くもとで、緩やかに拡大しています。外需の動向が強い追い風となってきていることは間違いないと思いますが、日本経済の現状について、単なる「外需の恩恵」によりもたらされたものと評価することは適当でないように思います。』

でもその前でど〜ゆ〜話をしているかというとちょっとねという感が。

好循環とやらの生産に関してはこんな見立てになっています。

『最近の設備投資の積極化は、製造業から非製造業へ、大企業から中小企業へと、より広い範囲でみられるようになってきていますが、現時点での主役は、引き続き製造業です。その背景には、企業が、海外における収益機会の増大を意識しつつ、設備増強による供給体制の強化に努めていることがあります。』

どう見ても外需の恩恵です。本当にありがとうございました。


所得はと言いますと・・・・

『労働需給は引き締まり傾向を続けています。新卒採用の回復もあって、雇用者数は着実に伸びていますが、そうした中にあっても、これまでのところ、賃金の伸びは緩やかなものとなっています。』
『企業と労働者の行動は次第に変化し、所定内給与を含め賃金の上昇圧力は徐々に高まっていくと想定されます。』

好循環はどう見ても先行きへの願望です。本当にありがとうございました。


支出(消費でしょうか)はと言いますと・・・・

『百貨店売上高やスーパー売上高といった指標は、天候が不順であった7月までは弱めの動きとなっていましたが、8月、9月は落ち込みを取り戻しています。家電販売やサービス関連支出などは、引き続き良好に推移しています。』
『恒常的な所得の変化と認識されやすい所定内給与が上昇していくにつれて、耐久財やサービスの支出を中心に、個人消費の持続性はより高まっていくと考えられます。』

好循環はどう見ても先行きへの(以下同文)。


ちなみに、都合のいい所だけ切り出したからこうなっているというのではないかというツッコミが飛んできそうですが、景気の見立てに関する部分を読んでも、外需が引っ張って生産が好調だけど、国内民間需要に景気の牽引役がバトンタッチするというシナリオには至っていないとしか読めないんですけど、どこがどう『生産・所得・支出の好循環』なのかと小一時間問い詰めたいところでございます。


○さて金融政策に関して

経済の上振れ下振れ要因の話はとりあえずパスしまして金融政策運営に関するお話に関して。

日銀の描く経済のシナリオには利上げが必要という理屈。

『こうした見通しは市場や企業が先行きの政策変更を織り込んだ上で意思決定していることを前提としたものですので、経済・物価が今後とも見通しに沿った動きを続けていくためには、政策金利水準の調整を行っていくことが必要となってくると考えられます。』

市場金利(そもそもその市場金利がスペキュレーション玉が入りまくってやたらぶれまくる上に、清算金利がTIBOR3か月という今やバーチャルマーケットでありますユーロ円金先市場を参考にしているらしい時点で変じゃないかという話は昔書きましたが)で示される先行きの政策変更を前提にしてシナリオを書くのであれば、逆に市場の金利がぶれた場合はシナリオを書き換えないといけないと思うんですが、その割には「市場の短期的な見方と日銀の見方は違う」とかいう話をしたり(先日の総裁記者会見)する訳でして、まあ屁理屈はいくらでもつけられると思いますけれども、どう見てもてめえの都合の良いときだけ「市場」を錦の御旗にしているとしか思えませんなあ。

大体からして、もし上記の理屈を出すんだったらBOEみたいに先行きの政策金利不変の場合の先行きシナリオも示せと申し上げたいのですけれども(それは上振れリスクで言及してると言い返してきそうですが)。

これだとアラン・ブラインダーFRB元副議長が指摘する中央銀行の「自分の尾を追う犬」化そのものじゃねえのかと思いますがね。


また自画自賛の市場との対話ってお話を最後の最後でしています。

『「新たな金融政策運営の枠組み」においては、日本銀行の金融経済情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方について、丁寧に対外説明していくことが、非常に重要です。』

経済を語るのは結構ですが、金利の上げ下げについて語る必要があるんでしょうか。

『7月に、5年以上の長きに及んだゼロ金利を解除した際にも、金融市場は安定して推移しました。この点は、海外の中央銀行や国際機関からも高い評価を得ているところですが、情報発信を通じて日本銀行のメッセージが市場参加者に浸透し、「新たな金融政策運営の枠組み」が市場との対話において有効に機能していた証左だと思います。』

例えば新発3か月ものFBの平均落札利回りは7月12日の0.404%(財務省方式だと0.3998%)が一番高くてそこから金利下がってますし、(ちなみに現実に足元金利が上昇して追加利上げがどうのこうのという話になっている先週や先々週よりも利回りは高い!)2年カレント国債の引け利回りは7月6日、10日の0.900%が一番高くなっております。利上げを行ったのは言うまでもなくその後でございますから、この事が何を意味するのかと言いますと、地均し路線によって利上げ効果を余計に織り込ませておいてから実際の利上げを行ったということではないかと。『金融市場は安定して推移した』とは片腹痛い。

言うなれば無茶苦茶に償却とか除却とかしまくっておいて大赤字を先行して出しておいてから後から関連会社の含み益などを持ち出して「V字回復」とかいうようなもんでして(別に具体的な事例を意識している訳ではありませんので念の為^^)、地均しで市場に織り込ませる段階で金融市場が荒れたんですから、利上げ後に安定して推移したとかいうのは単なるペテンでしかありませんですな。

『新たな枠組みのもとで、しっかりと情報発信を行っていくことは、市場とのコミュニケーションの活性化ということにとどまらず、金融政策の有効性を十二分に引き出していくことからも、重要であると考えています。』

はいはい自画自賛自画自賛。


○このベンダーのヘッドラインの打ち方はいかがなものか

手元にロイターが無いので人から聞いた話ベースで恐縮ですが、昨日の債券先物市場ではロイター日本語版の打ったヘッドラインのうち、

「短期金利は経済・物価の水準から見て極めて低い水準」

というの(聞いた話をメモ書きしたので正確性は保証致しかねます)に一番派手に反応したらしいですな。で、その部分なんですが、講演要旨の中を見ますと経済の上振れ・下振れ要因の中で言及している部分に確かにございました。

『景気の緩やかな拡大が続く中で、金融環境は極めて緩和的な状態が続いてきています。短期金利は、経済や物価との関係からみて、極めて低い水準で推移しています。また、為替レートは、円安基調で推移しており、(中略)ます。そのように極めて緩和的な金融環境のもとで、企業が、(中略)投資を一段と積極化する場合には、成長率が一時的に大きく上振れる反面、その後は(中略)反動が生じ、調整を余儀なくされる可能性があります。』

・・・と全部を読むと(長いので趣旨を損なわないように割愛してます)これって展望レポートと同じ話をしてるだけなんですが、あえて上記の部分だけ切り取ると、あたかも特定水準に対して言及したように見えてしまうのが文章切り取りマジック。ちなみにブルームバーグニュースでは当然のことながらこの部分だけ切り取ってヘッドラインを打つなどという下品な事は行っておりません。

総裁の記者会見におけるヘッドラインの打ち方もそうなんですが、 どうもロイターは発言とか講演とかを作為的にセンセーショナルに見えるように切り取ってヘッドラインを打つ傾向にあるのではないかと思う次第でして、営業政策なんだか存じませんが、下品な行為はほどほどにして頂きたく存じますわな。

#アドリブ発言に関しても書きたかったんですが時間の都合上この辺で

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2006/11/06

○総裁記者会見補足

だいたい先週木曜にご紹介したあたりが金融政策絡みになる景気への見立て&基本的な金融政策スタンスに当たるかと存じますが、その余の部分を少々補足をば。

・ニュアンスの差ですかそうですか

冒頭の展望レポートなどの総裁からの解説部分にこんなんが。

『今回の展望レポートでは、4月時点の見通しと比べて、日本経済はこれまでのところ企業部門は幾分強め、家計部門は幾分弱めとなっており――ほとんどニュアンスの差ですが――、全体として概ね見通しに沿って推移しているということが改めて確認されました。』

ニュアンスの差ってどころじゃない状況と思うんですが・・・

まーアレですな。木曜にご紹介しましたし、展望レポートでもありますように、『低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合』(展望レポートより)というのをリスクで見ているので、白旗モードになる訳にも行きませんよって事だとは思うのですが(と一応好意的解釈をしていますが、リアルで大したことないぜベイベーと思っているのかも知れませんなorz)。


・リスク要因が妙にフレームアップされますが

『リスク要因は第2の柱と言っていますが、大事なことは第1の柱、つまり標準的なシナリオ――望ましいシナリオとして出しておりますが――、これがシナリオ通り推移するかどうかということが、私どもが見定める視点の最も重要なポイントです。そして第1の柱がいかに振れないかという時に、第2のリスク・ファクターが判断の基準になります。』

リスク要因の上振れ、下振れのどっちを重要視してるかという質問に対する答えの一部です。前後の流れを読んでも実はどっちに解釈していいのか判断難しいんですが。と申しますのは、「今は第1の柱がちゃんとシナリオ通りに推移しているのかを見極めないといけない」(=今は見極めの時期って感じですか)と言ってるのか、「第1の柱はシナリオ通りなので第2の柱のリスク要因を見極めないといけない」(=リスク要因次第では早速利上げですよって感じですか)と言っているのかがど〜も解釈致しかねる次第で。

展望レポートでのトーンダウン(とあたしゃ思うのですが、「この内容だといつでも利上げがあってもおかしくない」という解釈をするレポートもあるんですな、一応ご参考までに)から前傾姿勢解除っぽい雰囲気を感じているあたくしとしては、この発言自体はあたくし前者だと解釈するのですが、よくよく考えると後者の解釈も可能ですんで。


・「かったるい」のは景気拡大ペースかそれとも・・・

賃金動向を注視してますかって質問に対して物価について絡めて詳しく回答している部分がございます(総裁記者会見の9ページ目から10ページ目に掛けて)が、その最後の部分でちとオモロイ発言がありました。

『従って、生産性はできるだけ高く上がった方が良いのですが、その範囲内で賃金の上昇がモデレートに(緩やかに)進むということ、物価上昇もモデレートで景気も長持ちし、私どもも何時までも「ゆっくり」という言葉を使える、これが一番望ましいシナリオです。少しかったるいのですが、望ましいシナリオというのはそういうものです。』

望ましいシナリオは「少しかったるい」だそうですが、「ゆっくり」とした金利調整が「少しかったるい」のかも知れませんな(苦笑)。


・村上ファンド資金拠出問題は逃げ切りですかそうですか

いわゆる村上ファンドに関しては最後の質問にございましたが。

『村上ファンドの件は、前に寄付をしたということを一度報告させていただきました。10 月半ばにもう一度追加的な払い戻しがあり、それも寄付をいたしました。まだ全部終わっていないということであります。』

国会で質問されて答えるのが報告って言うんですかと思うのですけれども、まあ総裁からの報告という形式じゃなくて国会で質問された時に答えたという形式にすると質問した委員もニュースで取り上げられて一粒で2度美味しいとかいう打ち合わせでもしてたのかもしれませんから(と思いっきり妄想陰謀論丸出しですが)あまりそこに執着するのも止めときましょ。

野党が追及するようですけれども、何か見ると追及ポイントが外れている感じですんで、まあこりゃ逃げ切りなんでしょうな。

ところで当初は金融政策に関係ないとして総裁の進退に言及してなかったのに、問題が大きくなったら急に総裁辞任すべき論を自身のメルマガでぶちあげたのに、何故かご自身のサイトにはそれを掲載しないという不思議な行動をしてた人がいましたが、ご感想は如何なもんかと小一時間。

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2006/11/02

お題「総裁記者会見」

http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0611a.pdf

○会見内容の前にあたくしの見立てでも

昨日展望レポートをご紹介したときに申し上げましたが、ここもとの経済指標を受けて「現状の金利水準が長期化するという見方が固定化するのはイクナイ!」というニュアンスが一貫しているように見えました。ということで、あたくしの見立てとしては(1)10−12がマイナス成長とかになったら話にならない(追記:よく考えたら3QのGDP出るのはずっと先ですね)ので年度内利上げはかなり難しい、(2)先月末に出た経済指標の水準だと、さすがに目先の利上げは難しく、(3)年末に掛けての経済指標がそれなりにちゃんと好転して短観が横ばい圏以上だったら「日銀の標準シナリオに則った金利水準の調整」って話で1−3に利上げできるかなあ、くらいに考えております。

リスク要因としては昨日も申し上げましたが、外部から妙な茶々が入ることでして、変に「利上げしたい日銀」VS「利上げ許さんという政府与党」などという対立をフレームアップされちゃうと、中央銀行の独立性を守るとか変な方向に話が進んで、無理気味な利上げをしないと「政治圧力に屈した」となるような状況に追い込まれるなんて最悪の事態は一応妄想しているあたくしなのでした。

それではまあそんな妄想はさておいて会見から。


○最近の経済指標について

最近の経済指標についてどう考えるかという質問に対して2ページ半ほどの量の回答がございまして、まあこの辺が景気に関する見立てとしてのポイントかと存じます。会見要旨の6ページ目から8ページ目あたりです。

『短期的には、米国経済の特に住宅市場を中心とする調整が現実に始まり、少なくとも住宅市場については事前の予想よりも早く調整が進んでいるということをどう理解するか、あるいは国内的にも、最近の消費者物価指数、生産、あるいは家計調査の指標は、少し弱めの数字が出ているのではないか、これらのことが私どもがより短期的に経済・物価の動きをみるときの判断に強い影響を及ぼすものであるかどうか、この面からも十分な点検が必要です。』

十分な点検が必要ということで、まあ余裕を持って対応の感じが出ているとは思うのですが、何で金先は火曜日の引け後に下がった所から戻らんのかなあ。まあ色々見立てはあるだろうけれども・・・・


『米国経済については、先程のご質問に対して答えたことにほぼ尽きています。GDP統計が低く出ましたけれど、今のところ米国経済のソフト・ランディング・シナリオの枠内で動いており、このシナリオが全うされる可能性がまだ相当程度残っているということであります。』

先ほどの質問の引用は割愛しますが、住宅投資の落ち込みについて事前想定よりも厳しいという認識をして、今のところは軟着陸シナリオとしながらも、『現実の軟着陸のシナリオを、これから歩きながら描き直さなければならない部分が残るかもしれないと思います。』としておりまして、割と慎重。

そのため「このシナリオが全うされる可能性がまだ相当程度残っている」という必ずしも先行き楽観じゃない表現になっていると存じます。


国内に関しては、直近の指標についてコメントしてます。

『9月の消費者物価指数の数字が+0.3%から+0.2%に0.1%ポイント下がりましたが、石油製品や帰属家賃の寄与度が下がったということであります。しかし、東京の指数がひと月先取りしながら出ています。東京の10 月の計数などから類推しますと、物価のトレンドに変化が生じたというようには見ていないということです。』

ということで物価についてはまあフツーのコメントかと。生産に関してのコメントは長いのですが、電子部品に関する部分を付け加えたのが注目される所かと。

『あえてひとつ付け加えれば、9月の計数の中で特に電子部品・デバイスの在庫が若干跳ね上がっています。経済全体としては出荷と在庫のバランスは比較的良くとれたまま推移していますが、電子部品・デバイスに限定してみれば、9月は出荷と在庫のバランスが若干崩れ、在庫が跳ね上がったという印象を持っています。これは一体どういうことが背景にあるかということはもう少し詳しく突きとめたいと思っています。』

『特殊要因であれば特殊要因として理解すればよいのですが、いわゆるITの循環的調整サイクルみたいなものがこの中に潜んでいるとすれば、景気判断の中で重要なファクターとしてとり入れていかなくてはなりません。』

IT関連の調整サイクルという話は、金融経済月報などでもリスクシナリオとして時々登場するものですんで、本件に関しては見極めをしたいということなのかと思いますが。

家計調査に関しては率直に判断に迷うとコメントしてますな。

『本日公表された家計調査については、世帯の支出額の前年比が−6%と、率直に言って、私どもにとって若干パズリングな(判断に迷う)難しい数字が出たと思います。公表されたばかりで内容をよく分析できておりません。今後、きちんと分析したいと思っております。』

『ただし私どもは、これまでの色々なデータを全部総合してみると、個人消費がそんなに弱いとは思っていませんし、逆にそんなに強いとも思っていません。(中間割愛)本日公表の家計調査の数字がそうした私どもの判断を根本的に塗り替えるものであるとは今のところ思っておりませんが、よく分析したいと思っています。』

と基本判断は変えないで済むとは思いますがとなっていますが。

最後のまとめのところではこうなっておりますので、まあ白旗モードではございませんですよって言いたいんでしょうな。

『そうしてみますと、物価、個人消費、鉱工業生産、米国経済をはじめ、短期的にみても私どもの情勢判断を今のところ大きく塗り替えなくてはならないような要素は出てきていないと考えています。』



○でもまあ「政策金利の調整」スタンスは不変でありますので

こんな質問がありました。

『(問)上振れリスク、下振れリスクともに等しいという趣旨のご発言がありました。リスク・バランスがとれているとすれば、今後政策変更で追加の利上げを検討する際には、例えば上振れリスクが少しでも強まった時に政策変更を具体的に検討するのか、それともリスクが均衡している状態とは切り離して金利水準を調整することがあり得るのかについて、お考えをお聞きしたいと思います。』

回答はこのようになっています。

『(答) リスクの均衡が崩れ始めるということは、私どもが第1の柱でお示ししている標準的なシナリオが狂う可能性が出てくるということですので、その場合には、先々の金融政策の運営方針についてより深い検討を重ねていく必要があります。』

ここまでは当たり前の話。次の部分は展望レポートの第2の柱にリスク要因として挙げられていた「経済実態を反映しない低金利が長期化するという認識が発生する」という点を考慮に入れればこういう話が出てくるのは当たり前だけどこれもポイントですな。

『それでは、両サイドのリスクがずっとバランスのとれたまま推移すれば金利の変更の必要性がないのかというと、そうではなく、やはりあります。なぜならば、私どもの標準的なシナリオは、物価安定のもとで息の長い景気回復が続くとしていますが、政策金利がある程度上昇するということを前提としたシナリオだからです。政策金利のある程度の上昇については、市場関係者も程度の差こそあれ、それを市場金利で表現しており、その中で先行きの経済を見極めようとしています。』

『従って、望ましいシナリオ通り、つまり展望レポートの第1の柱でお示ししたシナリオ通りに経済が推移する場合に、ゆっくりと金利水準の調整を行っていくことは整合的です。むしろ調整をしないと、政策的に不突合な部分を生じさせることになると思って頂きたいと思います。そういう意味では非常に長い時間をかけてゆっくりと、と今まで申し上げてきた政策スタンスの基本的な考え方は変わっていないということです。』

ということですんで、まあ今後は「日銀の描いている標準的シナリオ」がその通りに進んでいるのかってのを経済指標見ながら判断していく作業が大事じゃないかと思うのでした。その点検のポイントがどこかという話は本職の方が詳しいと思うのですが(と、肝心な所で逃げを打つあたくし)。

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2006/11/01

総裁記者会見に関してはブルームバーグニュースの31日19時51分配信の記事から(展望レポートが多くなったので)簡単に。

○また発言に反応しちゃいましたな

昨日は中短期債が強くて長期ゾーンパッとしないという展開だったのですが、引け後は総裁会見を受けて金先や債先下がって、2年だの5年だのも2.5毛〜3毛甘くらいになってたらしいですな。その一方で超長期だの30年だのビット確りという真逆の展開。

反応したヘッドラインは恐らく『市場と日銀の判断、いずれ一致−追加利上げ』(ブルームバーグニュース16時39分)あたりだと思うのですが、特に英文でどう報道されてたのかなあって所もありまして、まあ日本語のヘッドラインでも「利上げ積極姿勢」と解釈されてもおかしくない(あたくしには強がりに見えますが、笑)状況なんで、英文報道だと売りたくなるんでしょうな。

当該発言は「市場が年内や来年1月あたりの利上げ困難と見ている動きに関してどう考えるのか」という質問に対して出たものでして、発言部分以降をブルームバーグニュース記事から引用させて頂きますと、このようになります。

『したがって、強い指標が出たから市場が一時的に金利の引き上げを手前に引き寄せてみる、あるいは弱い指標が出たから一時的に市場は金利の引き上げのタイミングを先ずれさせてみる、こういうことを繰り返しながら、いつしか日銀の基調判断と市場の基調判断が次第に擦り寄ってくる可能性、それは常にあるのであって、今もその事情に変わりはないと思う』

『8月のCPIの基準改定でいったん市場が非常に弱気になり、その後の短観その他の動きを見てかなり修正し、またこの最近の一連の指標で少し弱気に修正し、市場としては非常に自然な動きをして、その中で基調的な判断にいずれ行き着くであろうし、われわれも今申し上げたようにこれから勉強しなければならない材料もいろいろあるので、両方の判断が一致する時期が必ず来る。それが遅いか早いか、今のところ分からない。オープンだ。こういうことだ』

強気な前のめりという感じは致しませんですな。というかどっちかと言うと「必ず来る」の後に「だと良いなあ」ってつぶやきが入っていそうな気がするのは展望レポートのトーンに幻惑されているのかな?

その他論点がございまして、個人消費の指数が悪い話とか、電子部品の出荷と在庫バランスが変調という話とかの話もあるんですが、その余の話は明日にでも。

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2006/10/24

○全国信用組合大会における総裁挨拶

http://www.boj.or.jp/type/press/koen/ko0610c.htm

景気に関する話とか物価に関する話は毎度のお話なのでどうでも良いのですけれども、金融システム面に関する項目があって、そこでこんな話をしております。

『こうした期待に応えていくうえで、今後予想される金融経済環境の変化を踏まえつつ、金融業務に付随する様々なリスクを適切に管理していくことが一段と重要になっています。なかでも、金融市場の状況が変化する中で、金利や流動性に関するリスク管理の重要性が高まっています。』

信用組合の経営規模(勿論大きい所もありますので一概には言えませんが)で「金利や流動性に関するリスク管理」とか言われましても。精緻なリスク管理するよりもストレステストをする方が重要だと思うんですけど。流動性に関するリスク管理とかまでやらせようって方向なんですかねえ。管理するなとは言わないけれども、管理すべき方向が違うような気がする。

金融高度化もほどほどに、と思うあたくしは高度化路線と程遠いドブ板現場労働者の僻みが濃厚に入ってますかそうですか。

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2006/10/17

お題「福井総裁記者会見(その2)」

会見テキストが出ましたので昨日の続きを。
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken/kk0610b.pdf

基本的に景気に対する見立てについては先日ご紹介した(ものの全部はご紹介してませんが)武藤副総裁の記者会見(と講演)の線から外れていませんので、実を言えば武藤さんの講演テキストと記者会見要旨を見た方が役に立つ(簡潔だし)と思われます。

・・・・だと話が終わってしまうので、まずはちと別の点から。

○何かいつもの調子が戻って来やがりましたな

本石町日記さんが既に話題にしてましたので屋上屋を重ねるとはこの事ですけど、口が滑らかになってきましたなあって感じを受ける箇所が少々。

最近の相場動向にというか「質への逃避現象が起きているように見えますが、景気の見立てとの関係はどうなんでしょうか」言う質問に対してこんなお話を。

『株式市場の価格を含め、マーケットの中で形成される相場については、世界中の数えきれないくらい多くの市場参加者の経済に対する見方、あるいは思惑、期待が最終的に総合されて、ひとつの相場として浮かび上がってくる、あるいは相場の変化として浮かび上がってくるものです。そのため、今のご質問にクリアー・カットに答えると間違うリスクが非常に高いと思いますが、あえて整理して申し上げれば、(以下超長い)』

「そのため」の前の部分ですが、んなこたあ総裁様に言われるまでもないお話かなあとか思っちゃうんですが、どシロート向けに丁寧な説明するようなマクラをつけるあたりが福井節復活ですなあって感じです。多分ご本人は親切丁寧に話をしてる意識で言ってると思うんですが、テキストで見るとどうもこの部分は言わずもがなというか慇懃無礼というか、まあいいけど。

で、この「あえて整理して申し上げれば」以降がやたらめったら長いのですが、まあ色々と見解をご披露されております。中身はよく読むと両論併記みたいな感じですが、基本的には今まで商品とか新興国市場にいってた資金が先進国のブルーチップ銘柄に行ってますなあってお話になってまして、あまり奇をてらった話ではないです。

ただまあ言えるのは、テキストから読むと質問者としては「質への逃避が起きてるけど日銀の強気見通し大丈夫なの」って聞いてるように見えますが、それに対しては先行きへの「期待」という言葉で日銀の強気見通しをフォローしているという印象を受けました。


○基調はやっぱり強気ですなあ:「慎重に」をしらっと否定

『(問)先程、総裁は金利水準の調整はゆっくりと進めていくことに尽きるとおっしゃられましたが、昨日の国会では「慎重に」という言葉を挟まれました。それを受けてマーケットでは、より慎重に今後の追加利上げを行っていくのではないかという憶測も聞かれました。昨日の国会答弁において「慎重に」という言葉を使われた真意をお聞かせ下さい。』

『(答) そういう報道を拝見し、最近のマーケットではあまり材料がないのかな、と率直に感じました。私は、特に新しい意味を込めて答弁をしたつもりは全くありません。』

最初の「材料がないのかな」というのはちとウケましたが、新しい意味を込めて答弁したつもりが無くても、マーケットというのはそういう反応をするのですから、言葉遣いは慎重にしていただきたいと思いますですよ福井総裁様。いつもと違う言葉、特に総裁の場合アドリブで妙な形容詞や副詞(や英単語^^)が入る傾向があるんで、そう思うのならば余計なフレーズは付け加えないように願いたい物です。

とは言え、福井節復活の香りは先ほど申し上げたように濃厚でございますので、マーケット的にはヘッドラインに戦々恐々の日が復活というところでしょう。いやあ引け後にのんびりできませんなあ(笑)。

『いつも申し上げているのは、諸情勢の変化を丹念に点検しながら、ゆっくりと必要な調整を進めていくということです。「慎重に」と言ったとすれば、それは「丹念に情勢を点検しながら」と言ったのと同じ意味だと理解して頂いて良いと思います。』

正直、国会中継見てなかったのでどういう言い方したかあたくしも判らんのですけど、まあ特にテキストが翌日とかに出てこない国会答弁はヘッドラインによって印象が完全に作られてしまう(講演だとその場でテキスト出るし、会見だと翌日にはテキストが出る)んで、特に慎重を期して頂きたく存じます。つーか国会に呼びすぎ。


○基調はやっぱり強気ですなあ:「下振れリスク」の質問に対して・・・

『(問)米国経済の関係でもう一点お伺いします。日銀は、現時点では米国経済がソフト・ランディングのパスにあるとみていると思いますが、展望レポート等で言われているような、起こる可能性は低いが仮に起こった場合の日本経済への影響が大きいという観点からすると、』

変な所でぶった切って恐縮ですが、この質問の仕方に感心してしまった(誰がしたのか知らんが)ので変な所で切りますね。「起こる可能性は低いが仮に」云々って以前利上げ早期化ロジックを補強する時に言われてましたわな。それを逆手に取って下振れリスクに対する質問をするのが中々。

『米国が仮に予想外に悪化した場合の日本経済に関する最大損失をどのように見られていますか。また、現在の日銀の金融政策運営に関して、そのリスクはどういう位置付けにありますか。日本の経済・物価が想定範囲で動いているのであれば、ゆっくりと金利を調整していくということでしたが、それに対して、米国のリスクが金融政策にどのように影響しているのかを教えて下さい。』

で、この質問に対する答えも長いのですがダウンサイドリスクに関しては要するにこういうことだそうです。

『(前半部分割愛)米国経済のダウンサイド・リスクが、ゆっくりと金利水準の調整を図っていくという私どもの基本スタンスにまで響くほどの強い影響になるかはまだ分かりませんが、具体的に今後の金利調整を進めていくペースそのものを調整することによって吸収できる幅は十分あると思っておりますので、シナリオが少し狂った時に金融政策運営のシナリオまで一挙に塗り替えるというリスクは、それほど大きくないのではないかと思います。』

で、まあそれは良いのですが、この質疑応答の後半部分は聞かれもしないのに「米国経済のアップサイドリスク」に言及してます(驚)。

『一方、米国経済について、アップサイド・リスクも考えておかなくてはなりません。(以下長いのですが割愛^^)』

テキストを読んでいたあたくしが目を丸くしたのは言うまでもありません。


○インフレターゲットに関して

インフレターゲットに関する質問に対する答えからかいつまんで引用致します。

『インフレーション・ターゲティングを唱えられている内外の識者の方々のお話を聞いてみますと、それぞれの言葉がインフレーション・ターゲティングであっても、中身には随分幅があると感じています。現実にインフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行の例を見ても、実際の金融政策の運営の仕方は、インフレーション・ターゲティングというアンブレラ(傘)のもとで、それぞれその国の経済情勢に即して実情に合う金融政策を行っているという意味で、非常に幅があると感じています。』

『私どもは3月に量的緩和政策を終え、金利レジームに戻った時に、新しい金融政策のフレームワークを公表しました。(中間割愛)インフレーション・ターゲティングと言われているものの共通項と比較すれば、より柔軟なやり方を私どもは採用したと思います。柔軟とはいい加減という意味ではなく、ここから先、日本経済が目指すべき方向とより良く合うように、という意味で申し上げたのです。』

だそうです。どうも福井総裁は「インフレーション・ターゲティング」はお嫌いなようですな。


で、物価安定に対する理解に関する評価ですが、同じ答えの中から。

『7月にゼロ金利からの脱却という大きな政策変更も行いました。この時は3月に新しく打ち出したフレームワークをフルに活用しながら、市場とのコミュニケーションを強化することを通じて、この政策を行ってきました。新しいフレームワークのもとでの政策運営の経験は乏しいわけですが、この1回だけの経験からみても、このフレームワークは結構使えると率直に思っています。これからもっと上手く使っていかなくてはならないと考えています。』

「フレームワークを使って」って活用してたんかいなと思わずツッコミを入れざるを得ませんが、この調子では次の利上げの時も地均しですかそうですか、何だかね。


○村上ファンドですが

同じ質疑の中でおまけのように村上ファンドについて質問がありまして、その後の追及が何もないとはどういう事なのかと存じますが、福井総裁のご説明はこれだけでございました。

『私としては解約の手続きは終わっていますので、戻るものはなるべく早く一括して戻してもらいたいと思っていますが、先方の事情はよく分かりません。部分的に戻ってきたということでございます。今後どうなるのかちょっと分からないでおります。』

精算の明細が判らないのに一部だけ金が返ってくるなんて金融取引の常識的に有り得ないと思うんですが、どういうファンドなのよ???

ってか、どう見ても「私のせいじゃないですよ」モードになってますな。こんなエエカゲンな事で終了で良いんでしょうかねえ(まあしぶとく粘着するあたくしもあたくしではありますが)。

#他にもネタがありそうなのですが、時間の都合上今日はこの辺で

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2006/10/16

○総裁記者会見(詳しくは明日にも)

総裁記者会見で相場がぶれたのはニュースベンダーのヘッドラインで「年内の利上げの可能性は否定できない」というようなモノが流れた時。またこりゃ引っ掛け質問みたいなのをしやがったなという風に思ってましたが、案の定発言の前半部分だけを切り取っていたヘッドラインという事でした。

あのね、そういうことやって相場が動くと営業上は「うちのニュースは相場に影響が高い」ってことになるのかも知れないけど、現場のトレーダー(ディーラー)には無茶苦茶迷惑なんすよね。マジな話ヘッドラインの編集やってるデスクの人が顔出ししたら吊るし上げモンですよ。

まあ武藤副総裁の英文スピーチをどう考えても誤訳したアナリストレポート書いた(おかげで債券市場はショック安しましたなあ)人間が何も無かったように堂々と今でも営業活動するのが東京市場クオリティなんですから一々湯気ポッポーとなっていると体が持ちませんな。でも悪態は一々つけておくのがドラめもんクオリティ。

と、前置きが長くなったのですが、件の発言部分をブルームバーグニュース配信の一問一答から(13日18時14分配信のニュースより)引用します。

『(問)先日の武藤敏郎副総裁の京都での記者会見などを受けて、金融市場で年内利上げの可能性が浮上しているが、どうお考えか。』

これね、質問する方も質問する方だと思うんですが、どっちかというと今まで来年の1−3月期の利上げもないという風に金融市場の方が盛り上がってしまったのの修正が起きていると見た方がより状況を正確に表現してると思うんですよ。CPI改定から始まった一連の経済指標と平均株価ヘロヘロ状態で利上げなんぞ出来ませんがなってなってた雰囲気が、平均株価は戻るわ(新興とか中小型株はゲロゲロですがまあそれはともかく)短観は案外悪くないわと10月になって雰囲気に変化が生じてるってことかと。

で、その答えなんですが、前置き部分から引用してると長いので、肝心な部分の段落を引用いたしますとこのようになります。

『(答)(前半3分の2をとりあえず割愛)こうした基本的な考え方(引用者注:現在の日銀の基本スタンス)の下で、具体的な政策のタイミングや金利水準については、経済・物価情勢次第であり、これ以上に言いようがないが、お尋ねの中にあった年内の追加利上げの可能性を問われれば、これを否定することはできないと思う。しかし、かと言って、現時点で利上げの時期を特定して考えているわけでもない。従来通り極めてオープンである。毎回の政策決定会合において経済・物価情勢を丹念に点検した上で、適切に判断していきたいと思っている』

この発言の「年内の追加利上げの可能性を問われれば、これを否定することはできないと思う。」だけ切り取ってフラッシュニュース打つなよなと思うのですが、まあ可能性を否定するという発言をすることは有り得ないので(世の中何が起こるのか判らないのだから断言はせんわな)、東京市場クオリティを勘案すればこの程度のヘッドラインが出るのは有り得る話かとは存じますけど、まあ反応したくなる人もいますわな。

割愛した前半部分を読まなくても、この段落を見ていただければ結局は今までどおりの「経済・物価情勢次第でオープン」ということでしょう。まあ利上げできる状況になればスパッと利上げするんでしょうけど、今の所前のめりになっているような見せ方はしていませんわな。

#ところで、村上ファンドに関する質問は誰かしたんですか?

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2006/10/13

○さてさてファンド出資問題

えー、昨日の参議院予算委員会に出席した福井総裁は村上ファンドへの資金拠出問題に関して「日銀総裁就任時に拠出を続け、結果として利殖行為ではないかという批判をいただいたのは、不明の致すところであり深く反省している」と答弁したそうですな(ブルームバーグニュースより)。で、朝のテレビを見てて「はあ?」と思ってNIKKEI NETをチェックしたらこんな記事が。

http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061011AT2C1102W11102006.html
村上ファンド拠出金、返還の1400万円寄付・日銀総裁
日銀の福井俊彦総裁は11日の参院予算委員会で、自身が村上ファンドに拠出した資金について「まだ全部は戻っていないが、部分的に戻ってきた資金については今般、寄付を実施した」と明らかにした。民主党の広野ただし氏への答弁。(以上上記URLより)

反省云々も広野氏への答弁なんで同じ話の中と存じますが・・・・

えーっと、9月8日の定例記者会見で福井総裁はこのように仰せになっておられました(20日のドラめもんで触れました)。

『村上ファンドについては、解約を申し出たのは2 月で、実際の解約は6月と申し上げておりましたが、最終的にファンド側からいくら戻されるのか連絡を受けていません。こんなに時間がかかると思っていませんでしたが、そういう状況ですので、いずれまたきちんとご報告したいと思います。』

上記URL先の関連記事にこんなニュースもありました。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20061011AT3L1106011102006.html
日銀総裁、日赤などに1400万円寄付・村上ファンドの資金戻る
日銀は11日夕、福井俊彦総裁による村上ファンドへの資金拠出問題に関し、総裁が約1400万円の払い戻しを受け、うち1000万円を日本赤十字社(東京・港)に、約400万円を留学生支援のための慈善団体に寄付したことを明らかにした。(以上上記URLより)

全部解約してるのに出資金の一部だけ先行して戻ってくる(配当分はまあさておきまして)ってどういうファンドなんだよという疑問が激しく沸き起こりまして、益々訳の判らん不透明なお話ですなあというのもあるのですが、それ以前の問題として、「きちんとご報告したいと思います」ってのは資金が戻ってきた事に関して黙って寄付をして、参議院予算委員会で質問されたからお答えすることだったんでしょうか。上記ニュースの書き方だと、日銀の政策広報は福井総裁の答弁を受けて明らかにしたという風に読めますが、どう見ても遅れた事後報告です。本当にありがとうございました。

あのですな、そういう「何がどうなってるんだか良くわからんぞ」っていう不明瞭あるいは不透明なことが多過ぎなのが本件で福井総裁が非難される一因(というか個人的には大きな原因だと思うんですけど)だというご認識は全然持って無いでしょうと小一時間問い詰めたくなるんですけど。

下衆の勘ぐりはしたくないですが、このタイミングで公表に至るというのは、政治日程を勘案してタイミング測っていたんじゃネーノとか、北朝鮮の問題で世間の話題がそっちに行くから今がチャンスだといきなり公表したとか色々と下らない妄想を逞しくしたくなるんですよね。如何にも話題としてスルーされそうなタイミングを狙ってるとしか思えないのはあたくしが下衆だからですかそうですか。

福井総裁は「深く反省している」とご答弁なさっていたようですが、反省しているなら「一部が返戻される運びになりましたのでご報告します」って事前に報告するもんじゃないのかと思う次第でして、実は総裁様におかれましては「いやあ何か事故にあっちゃったよ不運不運♪」程度のご認識しかお持ちになっておられないのではないかと申し上げたくなる次第でございます。

本件に関してカリスマ(苦笑)総裁様を問い詰める訳にも行かないで、結果として後出し報告になってしまっている(という光景は容易に想像できるのですが、もしそうじゃなくて日銀の中の人たちもこの件を知ってて公表タイミングを測っていたのならセンスを疑う)日銀政策広報の中の人が不憫でございますな。などとあたくしのような片隅に棲息する下衆に言われたくはないですかそうですか(笑)。

しかしまあ話は戻りますが、解約の損益が確定しないのに資金だけ一部が戻ってくるって言うのもワケワカランですな。それじゃあ税務処理困ると思うんですが、そんなファンドに出資してた機関投資家大丈夫かってまた同じ話に戻る次第です(笑)。明細も判らないで資金だけポンと返って来るなんて金融の常識からして有り得ないんですが(概算で返還するってのあるのかね??)。そういう点に関してもご説明賜りたい所ではございますな。プロ中のプロ(笑)の運営するファンドとしておかしいだろ・・・・

#どうも本件に関してはどこまで行ってもグダグダですなあ。

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