黒田東彦総裁
(〜2012年度下期)


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2013/03/29「参議院の半期報告の発言はまた威勢良くなっていて自分の発言で追い詰められるリスクを感じる」
2013/03/27「衆議院の半期報告での発言(麻生さんの発言もついでに)」
2013/03/25「就任会見は比較的手堅くまとめる」
2013/03/22「就任記者会見をベンダー記事からメモ」
2013/03/12「参院での所信聴取では市場をマニュピレートする気が満々なのを把握し、一部に電波成分あり」
2013/03/05「所信聴取でより長い期間の国債購入について発言(した結果相場はブルフラットしました)」
2013/03/04「もう所信聴取するんかい!」
2013/02/26「市場の反応と今後の懸念についての雑感」
2013/02/25「黒田総裁&岩田規久男副総裁ノミネートとな」

総裁ノミネート前の発言
2013/02/14「急に無責任発言をしだした黒田ADB総裁は日銀総裁にノミネートされないフラグですなこりゃ」


2013/03/29

○参議院での半期報告で追加ネタ投入をしたのかベンダーが煽っているのか

火曜日の衆議院に続いて昨日は半期報告が参議院財政金融委員会で実施されまして、大門先生の質問とかもあったようですが、イマイチベンダーがバカスカヘッドラインを打ってくれないので残念無念という所ですが、衆議院も含めまして会議録が後日出るのでかなり楽しめそうでございます。

んでまあしょうがないのでブルームバーグニュースから引用してネタを拝見する訳ですけれども、黒田総裁におかれましては最近笛吹けど為替市場と株式市場が踊ってくれないせいなのかどうかは存じませんがネタを投入したのか、ベンダーが発言内容を煽り方向で強い書き方にしているのかが良く判らんのでその辺は判断を留保した方が良い気もするのですが(だから会議録のテキストを当たってちゃんと前後の文脈をみないといけないのですけれども・・・・・・・・)気になるのが2か所ほどあったのでニュースベンダーベースの発言を少々ネタに。

つーことでブルームバーグニュース。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKCKKH6KLVSF01.html
黒田日銀総裁:実現されるまで金融緩和を続ける−2%の物価目標 (2)
更新日時: 2013/03/28 13:52 JST


・自分の尾を追う犬になっちゃうの???

『黒田総裁はさらに、「何よりも、この2%の物価安定目標を達成するというコミットメントを強く意識しながら、必要なことは何でもやるという対応で行きたい」と表明。「市場の期待を裏切らないように、実際にも大胆な金融緩和を行っていく」ことが不可欠と述べた』(上記URLより)

「市場の期待を裏切らないように」云々というのはベンダーのヘッドラインで思いっきり出ておりまして、えーっと総裁それは市場のクレクレに対応して追いまくられるというアラン・ブラインダー氏のいう「自分の尾を追う犬」になっちゃうんですかとか、為替とか株式市場からしてみれば「この総裁は催促相場をすると催促通りにモノが出てくるぜヒャッハー」という印象を与えるヘッドラインでそれは中央銀行のトップとして脇が甘かろうとは思ったのですけれども、そもそも黒田総裁この前の就任会見ではこういう話をしていた訳で。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf
12ページ目にありますが。

『(黒田総裁) 1 問目の「市場との対話」ということですが、これは、別に大げさに何か宣伝をするとか、あるいは、市場関係者が色々と言っていることを、ずっと全部、金融政策がフォローしていくとか、そういうことではないわけです。あくまでも、市場の状況をよく把握する、市場関係者の議論はよく把握すると同時に、政策委員会で決めた金融政策は分かり易く市場関係者に浸透させていく、それを助けるということが――英語ではfacilitate と言います――、市場との対話を強める意味で非常に重要だと思います。その点については、私ども3 人は最大限の努力をしていきたいと思っています。』(上記URLにある総裁就任記者会見から)

という風に話をしたのがつい先週でして、まあこの「市場の期待を裏切らないように」というのは「市場のクレクレに対応しますよ」という話では無くて、単に気合というかやる気の表明をしただけだとは思うのですが、調子に乗って変な言い方をしちゃってますなあというような所なのか、やっぱり市場のクレクレに弱いのかはこのニュースワイヤーだけではニャンとも。


・2%を「達成するまで」緩和を続けるとな????

もう一つえーとなったのは思いっきりヘッドラインにもありました部分ですが・・・・・・・

『3月28日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は28日午前、参院財政金融委員会で「通貨及び金融の調節に関する報告書(半期報告)」の概要説明を行い、その質疑の中で、2%の物価安定目標について、「それが実現されるまで金融緩和を続ける」と表明した。』(最初のブルームバーグニュースのURLより、以下同様)

てな感じで思いっ切り報道されていまして、ブルームバーグが参考になるようにという事でその続きにこんなのが。

『日銀は1月の金融政策決定会合で、2%の物価安定目標の実現を目指し、「実質的なゼロ金利政策と金融資産の買い入れなどの措置を、それぞれ必要と判断される時点まで継続する」ことを決定した。これに対し、宮尾龍蔵審議委員は同会合以来3回連続で、実質的なゼロ金利政策を「消費者物価指数の前年比2%が見通せるようになるまで継続する」との議案を提出したが、1対8の反対多数で否決され続けている。』

ということで、そらまあこのヘッドライン見たら「コミットメント文言でこういう言い方になるのか?」ってな連想が出るぞなもしという所なのですが、これまたさっきと同様で単に気合というか決意というかやる気の表明をしているにしてはちょっと調子に乗り過ぎですぞなもしという話。

つまりですね、金融政策を実施したら即座に物価が上がったり下がったりするというのであれば「2%を達成するまで緩和継続」でも良いのですけれども、当然ながら金融政策が物価に効果を与えるまでにタイムラグがある訳でして、目標値が2%だったらその手前から金融緩和政策の正常化に向けた施策をしないと、今度は目標を上振れて目標未達になると思うのですが大丈夫でございましょうかとゆー話でして、まあそもそもこの通りに発言したのか、前後の文脈がどうなのか、というのはあるのですが、このニュースワイヤー通りの発言だとちょっと脇が甘い罠という感じですな。

まーそれ以前に2%という数値はアクチュアルの数値なのかそれとも見通し数値なのかとか、金融緩和を継続するというのは別にそれは金融緩和の拡大を継続するという意味では無いから、途中でその金融緩和を縮小するというのも含めているんだろうとか、ここに出ている話だけだとその辺の細かい話がワカランチ会長ですのでこれまたニャンとも言えないのですけれども、少なくともベンダーヘッドラインベースではこういう報道のされ方をするというのがうーむという感じですな。


・ベンダーヘッドラインが無駄に威勢が良くなるリスクですな

てなわけで昨日の参議院での半期報告では黒田さんの発言が威勢の良いトーンでベンダーヘッドラインに踊っていた訳ですが(ただし市場はあまり反応して居る節は無かったが)前任の白川総裁の時には発言を捉えて一々「白川総裁はやる気が無い」「緩和を求める政府サイドと対立しまくり」というようなニュースフローになるべくヘッドラインが打たれていたのですが、黒田総裁の場合はその逆で、昨日の発言に関してもまあ気合とかやる気を見せるだけの発言だったのかも知れないのに、その発言が思いっきりニュースの題名になってしまって「威勢の良い発言」がやたらフレームアップされるという傾向ですなあというのはまあ今に始まった事では無いですが、今回の一件を見てて思いました。

んでもってそうなりますと、先ほどの「市場の期待を裏切らない」じゃないですけれども、ベンダーなどが発言のうちの「勇ましい部分」を強調して煽る→為替市場や株式市場が「勇ましい政策」を期待するとなって結局無駄に期待が高まる分反動のリスクもでかくなりますし、一方でそれこそ今朝のモーサテに出ていたどこかの誰かさんじゃないですが、クレクレが嵩じて「中央銀行が不動産購入基金に金を出せ」とかナンジャソラとしか申し上げようがない(だったら国の不動産売却止めさせた方が良いんじゃないですかニヤニヤニヤ)話をおっぱじめて期待にワクワクテカテカで、期待に答えりゃ筋悪政策答えなければ失望相場となり催促クレクレ相場が始まるとか、大変にアレな事態になるリスクというのが高まっておりますなあという気がするのでありました。

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2013/03/27

○黒田総裁国会半期報告

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130326a.pdf
「通貨及び金融の調節に関する報告書」概要説明

まあ前半はどうでもよいので黒田さんの意向を反映していると思われる後半から。

『(金融政策運営)』

『次に、日本銀行の金融政策運営について、ご説明申し上げます。日本経済は、15年近くも、デフレに苦しんできました。これは世界的に見ても異例なことです。物価が下落する中で、賃金・収益が圧縮され、投資・消費が減少することで、更なる物価下落に陥るという悪循環は、日本経済を劣化させています。デフレからの早期脱却は、日本経済が抱えている最大の課題です。』

ほうほう。

『物価安定は中央銀行の責務であり、デフレ脱却における日本銀行の役割は極めて重要です。日本銀行は、これまでゼロ金利政策や量的緩和政策を行ったほか、最近では、包括的な金融緩和政策を通じた金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援といった様々な取り組みを行ってきましたが、デフレ脱却には至りませんでした。』

ほうほう。

『もとより、わが国の物価の低下圧力を与える要因としては、海外からの安値輸入品の増加、規制緩和などに伴う流通の効率化、それらと相まって生じた企業の低価格戦略や家計の低価格指向の拡がりなど、国内外に多々あります。しかし、そうした影響に対抗して物価の安定を実現するのが中央銀行としての日本銀行の責務です。実際、世界中で、これほど長期間にわたってデフレが続いている国はほかにありません。』

とまあこの辺は就任記者会見での話と同じですの。

『政府が「大胆な金融緩和」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」から成る「3本の矢」でデフレ脱却と経済再生を実現する方針を明らかにし、緊急経済対策などの対応を迅速にとったことが好感され、景気回復の期待を先取りするかたちで株価も回復し始めています。』

ふーん。

『なかでも、本年1月の「共同声明」は、政府・日本銀行が、それぞれの課題を明確に設定し、責任を持ってそれを実現することを宣言したものであり、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向けた大きな一歩です。日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%という「物価安定の目標」を導入し、この目標のもと、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指すことを決定しました。日本銀行としては、この「物価安定の目標」を一日も早く実現することが、何よりも重要な使命であると考えています。』

『これまで、日本銀行は、デフレ脱却に向け、国債だけでなく、社債、CP、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(REIT)など様々な資産を買い入れてきました。これは中央銀行の伝統的な手法を踏み越えたものですが、その規模や具体的な買入対象等については、「できるだけ早期に2%の物価上昇を実現する」という強いコミットメントを実現するために十分なものとは言えません。』

量の方はまあ判りますが買入対象も十分ではないと仰られましても何を買いますねん?????

『量的にも、質的にも大胆な金融緩和を推進していく必要があると考えています。』

まあこの辺も従来通りの話。

『また、金利引下げ余地が乏しい現状では、金融政策運営において、市場の期待に働きかけることが不可欠です。市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向け「やれることは何でもやる」という姿勢を明確に打ち出していきたいと考えています。』

ということでこれもまた期待に働きかけるという話を強調。

『さらに、政府との連携確保も重要です。金融政策は、政府の経済政策と整合性をもって運営することで、より高い効果を発揮できるものです。政府と日本銀行の「共同声明」では、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向け、政府および日本銀行の政策連携を強化し、一体となって取り組むことを明記しています。また、政府は、機動的な財政政策、成長力・競争力強化、中長期的な財政健全化に取り組むこととされています。もとより、日本銀行は、自らの責任において、「物価安定の目標」の早期実現を目指して金融緩和を推進するものです。ただ、金融緩和と並行して、政府が「実需」を作り出し、消費・投資の拡大を通じて賃金・雇用を改善することができれば、そこから更なる物価上昇につながる好循環も期待できます。その際、財政運営への信認低下による金利上昇を避けるため、中長期的な財政健全化に取り組むことも重要です。「共同声明」に沿った政府の取り組みを期待したいと思います。』

ということで、一義的には日銀の責任という話をしていますが、政府の役割や責務に関して言及をちゃんとするようになっていますな最近は。

『今後の具体的な金融政策運営については、政策委員会・金融政策決定会合において、経済・物価情勢の点検を通じて市場への影響なども見極めつつ、日本銀行が持つ全ての機能を最大限に活用し、何が最も効果的であるかを検討して参ります。』

ということですが、28日に参議院で同じような半期報告が行われまして、その後4月3、4日にMPMがある訳ですが、さてこの日程で本当に4月3、4日に間に合うのかねというのは正直言ってロジ的に甚だ疑問がありますぞなもしという所です。


○関連して報道された総裁発言など

・黒田総裁の答弁をベンダーベースで

この半期報告に関しては質疑応答が後日国会の会議録として公表されますので、後日忘れないように確認したいと思いますが、とりあえずベンダーの報道ベースで。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MK8SCZ6KLVS601.html
日銀総裁:2年念頭に必ず日銀の責任で達成したい−物価目標2% (2)
更新日時: 2013/03/26 13:08 JST

『3月26日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は26日午前、衆院財務金融委員会で「通貨及び金融の調節に関する報告書(半期報告)」の概要説明を行い、関連質疑に臨んだ。この中で、日銀が掲げる物価上昇率2%の目標について「2年を念頭に置いて、必ず日銀の責任において達成したい」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

ということで、まあこちらもいつもの通りですが2年という点についての話は「行かなかったらまず説明責任」とか微妙なご発言を打ち込まれるどこぞの誰かさんとは違って今の所あまり日和りませんですなあ。まあコミットメントを強調して期待に働きかけるってえんですからそう簡単に日和られても困りますが(^^)。

『総裁は「これまで以上に大胆に質的、量的な金融緩和をする」と強調。日銀による市場の期待への働き掛けについて「デフレ期待から2%のインフレ期待に変えることで、設備投資や個人消費にもプラスに効いてくるのではないか」と指摘し、「期待外れにならないように量的、質的な緩和をする」と述べた。また、「マネタリーベースの拡大は必要だが、それだけでは十分ではない。質的な緩和も重要だ」と述べた。』

とのことですが当座預金80兆円いやまあどうでもいいですけど、まーこの辺りの話をしている分には従来通りなのですけれども・・・・・・・

『また、「毎月グロス(総額)でいくら買うかも金融調節上は重要な要因だが、金融政策の効果という面ではストックで見ていく必要がある」と指摘。「長期国債にしても短期国債にしても、ストックがどう動くかがイールドカーブを下げる、あるいは指標となる金利を下げる上で重要な要素だ」と述べた。』

・・・・・・・・・うーむ、ストックビューにするならストックビューでも宜しいのですけれども、その場合はオープンエンド買入に関しての作り込みとかも考え直さないといけない(短い所の償還がバカスカ来る事を前提にして買入のフローが大きくなるような作り込みになっているので、長期主体に変えた場合に今のフローベースをそのまま拡大した上に長期化とかしちゃうと日銀のバランスシート拡大ペースが相当速まる筈なので、途中に残高目標のような形で一旦止めをいれないと気が付いたらエライコッチャになるリスクが高まるし、かといってフローを減らすと積極緩和かどうかが見えにくくなるというジレンマ状態になる)のでその辺はムニャムニャと曖昧にしておいた方が吉のような気がします。

『その上で、来年から毎月13兆円の資産を購入する「期限を定めない資産買い入れ」についても、「うち10兆円は短期国債で、3−6カ月で償還されるので、グロスでいくら買っても残高はすぐにフラットになる。それに対し、長期国債は残存期間が長いので、ストックが増加する」と述べた。』

まあ長期債の人は国債の2兆円しか気にしていないのですけど、この辺をどうするのかというのは実は結構設計に苦労するでしょうなあとは思いますね。

『さらに、「日銀のバランスシートの負債側は非常に分かりやすい。マネタリーベースも日銀券と日銀当座預金が大宗なので分かりやすい。しかし、資産側は輪番オペで買っている部分と資産買い入れで買っている部分がどういう状況になっているか、一見分かりにくい」と指摘。「量的、質的緩和を進める上で負債側のマネタリーベースも重要だが、資産側も重要だ」とした上で、資産買い入れ等基金における長期国債買い入れと輪番オペを統合する案について「検討に値する」と述べた。』

ということですので、あながち昨日申し上げた「当座預金残高目標」と「基金と輪番統合して長期国債買入中心」のセット料理というのも外れていないかもとワクワクテカテカ。


『一方で、「マネタリーベースと物価の関係はかなり遠くなっている。マネタリーベースを増やすだけで直ちに物価が反応することは相当難しい」と指摘。その上で「量的、質的にさまざまな工夫を行うことによって実体経済に金融緩和を浸透させるとともに、強いコミットメントで期待に働きかけることが必要だ。そうしたことによって、1日も早く物価安定目標を達成したい」と述べた。』

当座預金残高を70兆円〜80兆円にしたらインフレ率2%は来年半ばに達成可能との高度な理論がどこぞの誰かさんが展開されていたように思えますが(^^)。


・麻生さん貫録の発言

でまあそんな中異彩を放つのが麻生財務大臣。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MK8SHX6KLVR901.html
麻生財務相:焦って奇をてらう必要なし−物価2%は日銀・政府連携で
更新日時: 2013/03/26 10:11 JST

『3月26日(ブルームバーグ):麻生太郎財務相は26日午前の閣議後会見で、黒田東彦日銀総裁就任後初めて開かれる金融政策決定会合を来週に控え、政府・日銀の共同声明に明記された物価目標2%について「焦って急に奇をてらって何でも前倒ししてやるというようなことを期待しているわけではない」と述べ、「確実に実行していただく施策をやっていただければ良い」との姿勢を示した。』(上記URLより、以下同様)

・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

『麻生氏は、デフレ下のインフレ目標の設定は容易ではないとした上で、「日銀にすべてお任せすることでうまくいかなかったのは経験として知っている」と述べた。また「政府として第2、第3の矢を確実に実行することで2%達成となる。日銀だけで2%達成なんて最初から思っていない」と述べ、財政出動や成長戦略の実施も併せた政府・日銀の連携の重要性をあらためて強調した。』

うーむ何というバランスの取れた発言(^^)。

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2013/03/25

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf

○黒田総裁編:積極緩和の話をしているのだが意外に穏当かつ原則論は概ね普通

そらまあ財務官まで勤めているのですから当たり前なのかも知れませんが、就任会見でもっと突拍子の無い話でもするかと思ったのですが意外に普通の話をベースにしながら当初の威勢の良い話も維持しているという所で、原則論は殆ど外していないし従来の日銀の説明も上手く取り込んでいる感じで、短期間でこれだけの受け答えをするとは正直感心しました。

・冒頭のご挨拶では組織としての立場、金融政策のアピール、金融システム安定を示す

冒頭の挨拶ですが、これがまた何気に普通というかちゃんとしているというかで、黒田さん恐るべしと思いましたぞなもし。

『(黒田総裁) この度、日本銀行総裁を拝命しました黒田でございます。なお、先程開かれた政策委員会において、委員の互選で議長に選任されました。よろしくお願い申し上げます。総裁就任に当たって、一言申し上げたいと思います。日本経済は、過去15 年近くもの間、デフレに苦しんでいるわけであり、このデフレから脱却して2%という物価安定目標をできるだけ早期に実現することが、日本銀行として果たすべき一番大きな使命であると思っています。』

とまあ最初に2%物価目標の話をしまして、

『従って、両副総裁とチームを組んで、その大きな目標に向けて最大の努力をしていきたいと思っています。もちろん、金融政策は政策委員会で決定されますので、具体的な金融政策の内容等については、政策委員会で十分審議をし、まさに審議を尽くして、適切な政策を打ち出していきたいと思っています。その際、私の経験や、色々な人的なネットワークなど、お役に立てるものがあれば、もちろん何でも活用してやっていきたいと思います。』

早速政策委員会での協議による意思決定という部分を次に入れる所が組織のヘッドとしての立場を強調していますの。

『何と言っても、物価の安定、それから、もう1 つの使命はもちろん金融システムの安定ですが、日本銀行がそういう中央銀行の役割を十分果たしていく上で──具体的に仕事を進めていく上で──、特に2 つの重要な点を考えていかなければならないと思っています。1 つは、金融や経済が非常にグローバル化しているわけですので、日本銀行の行う金融政策について、広く対外的にも、また市場関係者にも、十分クリアに説明するということ、また、金融システム安定の面で、中央銀行間で色々な連絡・協調が重要性を増していますので、そういった面でもさらなる努力をしていくことが必要だと思います。そうした面で、先程申し上げた通り私の経験や人的なネットワークがお役に立てばと思っています。』

と、ここで金融システムの安定と政策のアピールというか説明を述べていますな。

『もう1 つは、日本経済と言っても、東京・大阪・名古屋だけで経済が成り立っているわけではなく、全国津々浦々、様々な経済活動があるので、そういった各地域の経済・金融動向を、日本銀行が持っている、全国に張り巡らされた支店あるいは事務所の力を最大限活用して、地域経済や中小企業の状況をよく把握し、それを金融政策に役立てていくことが重要ではないか、そういった面での努力もさらなる強化が必要だろうと思っています。(以下単なる決意表明なので割愛)』

ということで地方支店の調査の充実みたいな話もしているとか良く考えていますな。


・物価安定目標関連や追加緩和に関して

2%達成の為に具体的にどうするのか、臨時会合を実施するのかという質問に対して。

『(黒田総裁) 白川前総裁のもとで、政策委員会が、既に2%の消費者物価上昇率を目標・ターゲットと定め、それをできるだけ早期に実現するよう、金融緩和を推進することを決めているわけですから、当然、これに沿って、最大限努力することになると思います。』

とまあこれは良いとしまして、

『この2%という物価安定目標は、政府と日銀との共同声明に明記されているわけですが、共同声明の中では、金融緩和とともに、機動的な財政運営あるいは成長戦略、そして中期的な財政健全化の取組みが、政府の役割として示されています。』

この辺ひじょーに微妙な物言いをしていますが、まあこういうテキストですと基本的には共同声明の中で物価目標の達成は日銀の責任、政府は成長戦略と中期的な財政健全化に責任、というようなニュアンスで喋っているように見えます(後の質疑で物価目標の責任についての話がある)。

『日本銀行としては、2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現することに尽きると思いますが、その場合、各国の状況をみると、物価安定目標の達成に向けて2 年程度を一種のタイムスパンと考えている中央銀行が多いようです。そうしたことも十分勘案し、2 年程度で物価安定の目標が達成できれば非常に好ましいと思っています。』

楽勝で出来るみたいな威勢の良い話はさすがにトーンダウンしていますな。

『次に、そのための手段ですが、これはまさに、さらに量的ならびに質的な緩和を進めることに尽きると思います。量的な緩和が不可欠であることは事実ですが、単に、マネタリーベースを増やすことにとどまらず、資産側で、イールドカーブ全体の引下げや、必要に応じてリスクプレミアムの引下げを促していくことを通じ、量的ならびに質的な両面から大胆な金融緩和を進めていくことで、2%の物価安定目標を達成すべきであるし、達成できると確信しています。』

ということで、この「イールドカーブ全体の引下げ」というのがこの会見では後でも何度も言われていまして、まあ既に大概引き下がっているイールドカーブですが、この辺りを受けまして引き続き金利は絶賛低下中で超長期つえええよという所ですな。

『それから、政策委員会等の会議の運営については、今、私から特にコメントするべきではないと思っています。』

んでもってこちらに関してはそんなに積極的にやるという感じではない、というのは金曜にベンダーに出ていた通りだと思われます。


んでもって次に似たような質問があって、2%の達成時期に関する質問がありまして、そこではこのような説明が。

『(黒田総裁) 1 点目のご質問については、先程申し上げた通り、2%の物価目標が定められており、できるだけ早期に実現することが中央銀行の責務と思っていますので、当然これまでお話したようなタイムスパンを念頭に置きながら全力を尽くしていくことに尽きると思います。この物価安定目標──総合消費者物価で2%の前年比上昇率──というものは、政府との共同声明という形で出ていますが、中央銀行として、日本銀行政策委員会が決定したものですから、日本銀行として、当然責任をもってその早期実現を図るということに間違いはありません。(後半割愛、というか次で引用)』

ということでまあ物価目標達成の責任については割とクリアに明言している形ですね。


・早速細かい事について色々と勉強が進んでいるようで何より

確かにまあ具体的な金融政策、というよりは調節実務に関する質問は飛んでいないというか、そういう答えはしないようにしているのですが、まあ概念的な部分での細かい話(というのも変な言い方ですが)のご理解が進んでいるようでこれまた何よりです。

物価連動国債で期待インフレを見るのかという質問に対して。

『(黒田総裁)(前半別の質問に付き割愛)物価連動債の話はご指摘の通りですが、米国あるいは英国では、物価連動債がかなりの程度、発行されています。しかし、量的には、通常の固定利付国債に比べると発行残高が小さいと思います。それでも、それを使って債券市場のインフレ予想を計算することはよく行われます。日本も、一定量の物価連動債が発行されているわけですが、量的に極めて小さいので、それも1 つの参考としつつ、その他にマーケットのアンケート調査であるとか、様々な指標を通じてインフレ予想を知ることも金融政策の運営の面で重要なことだろうと思っています。』

うむ、普通の答えである。

でまあ包括緩和と量的緩和に関するやや質問者の脳が足りないと思われる質問がありまして(ちなみに今回の会見テキスト見てて思ったのですが、明らかに知能が不足していると思われる質問をしているのが数件ございましたので最後に晒し上げしておこうかと思います)、それに対する説明が物凄い勢いで普通の話をしているので(良い意味で)ビックラこいたあたくし(^^)。

『(黒田総裁) 先程来申し上げている通り、量的・質的な両面で大胆な金融緩和を進めていく必要があることは、以前から申し上げている通りです。総裁として、そのような観点から金融緩和を進めていきたいと思っています。』

とまあそれは良いとしまして、

『ご質問の「量的緩和」が何を意味するかは色々な議論があるところです。例えば、米国のQE1、QE2、QE3は、量的緩和1、2、3とも言われています。ただ、FRBは、QE1を始めた時、「クレジット・イージング(信用緩和)」という言い方を使って、アセット・バック・セキュリティ(資産担保証券)などを大量に購入することによって、リーマン・ショック後のいわば凍りついた状態になっている資産担保証券やその他の市場の機能を回復させ、金融緩和の効果がよりスムーズに実体経済に波及していくことを考える、と言っていたと思います。』

まあエージェンシーモーゲージ債と言った方がより細かいのですがそれはそれとしましてこの説明は仰せの通り。

『このように、「何が量的緩和なのか」は色々な議論があると思います。ただし、量的緩和が、単にバランスシートの負債側の量を増やすことだけで、資産側で何が増えているのかを考慮しないことだと言われると、それは多くの学者が言うように、金利がほとんどゼロである政府短期証券によって資産側をどんどん増やし、負債側で、マネタリーベース、金利がゼロ近い日銀当座預金を増やしていっても、一体どのくらい効果があるのかと思います。』

これは単に当座預金残高目標にするだけではなく資産サイドの構成も考えないといけない、というFEDおよび日銀が現在行っているLSAPあるいは包括緩和の説明と同じですが、いやもうその通りでございますのでこの際短期国債の必要以上の大量購入とか無意味にも程があるので是非減額してその分長い方に回してください(というのは単にあたくしの懐勘定の話ですが、笑)。

『もちろん、量的緩和によって流動性が非常に大きくなることが、他のアセットにスピルオーバーしていく、あるいは実物投資や消費に代替していく効果――これをポートフォリオ・リバランス効果と呼ぶのかどうか分かりませんが――もあり得ます。この意味で量的緩和は必要です。しかし、それだけで良いのかというと、やはり、資産側の質的な中身をみて、より長期の金融資産の購入によってイールドカーブをもっと下げていくことが必要です。』

ということでイールドカーブを下げる話また来たという所ですが。

『どのような資産を購入していけば良いかについては、より効果的な金融緩和になるよう、市場への影響や経済の動向などを十分勘案して、政策委員会で決定していく必要があると思いますが、端的に言って、量的な面と質的な面との双方が相俟って、2%の物価安定目標の達成に向けて、大胆な金融緩和を進めるということに尽きると思います。』

つーことで、まあ買入資産の構成がややアグレッシブになるかも知れんが、実際問題として政策のフレームワーク的には従来の包括緩和と同じ事になるでしょう、というかそもそも包括緩和がCEとQEのハイブリッドなのですから当たり前ではあるのですが。


・戦線整理が先決なので臨時会合はまあ普通に考えると無いでしょうなという件

これは鋭い質問なので質問も引用します。後で晒し上げにする能無し質問とは大違い。

『(問) 現在の包括緩和の仕組みは、資産買入等の基金という形で「量」と「質」の両方を目安として表すような政策になっており、今の黒田総裁のご発言を聞くと、それでも構わないのかなという印象を持つのですが、現在の資産買入等の基金という枠組みに何か不都合な点、あるいは不十分な点があるのであれば教えて下さい。(2番目の質問割愛)』

『(黒田総裁) 1 点目について、日本銀行としても色々なことをやってこられたのでしょうが、その結果――先程、中曽副総裁も言われたように――、非常に分かり難くなっていると思います。バランスシートの負債側と資産側で、どのような動きになっているか、それをどのような方向に向けようとしているのかということが、もっと端的に分かるような金融政策を運営することが、やはり市場との対話を強化する意味でも重要だと思います。』

ということですので、現在の金融政策の枠組みに関して戦線整理をする必要があると黒田総裁は(だけではなく後で引用しますが中曽副総裁も)認識しているようでして、そうなりますと何か慌てて臨時金融政策決定会合をやってどうのこうのとかいう話にはならないように思えますがどうでしょうか。

でまあちょっと話はずれますけれども、この黒田総裁の言う「バランスシートの負債側と資産側で、どのような動きになっているか、それをどのような方向に向けようとしているのかということが、もっと端的に分かるような」というのが非常に良いポイントでありまして、先般ネタにした2月決定会合議事要旨ではAPPでの国債や短期国債買入に関して「買入レートが実勢からかい離して低下しているのではないか、調節部署はもっと工夫白」というようなスットコドッコイにも程がある指摘をしていた審議委員様がおいででしたように、どうも現在のAPPその他の枠組みに関して既に政策委員の皆様の中でも何をどういう風にしたいからこのオペレーションを行っている、という整理がちゃんとついていないのではないかという金融政策が新宿駅もビックリのダンジョン状態になっている件についての問題意識というのもついでに含めているのであれば更に素敵ですね、とまあそう思う次第。

『それを超えて、どのような内容の金融緩和策をとるべきかについては、あくまでも、これから政策委員会で議論して決めることだと思います。ただ、量的、質的な緩和を大胆に進める必要があることは間違いなく、また、2%の物価目標をできるだけ早期に実現するということは、日本銀行にとって最大の使命になっていると思います。』

ふむふむ。直ぐにホイホイ何かつぎはぎで出すのではなさそうな点は期待が持てますね。


・市場のクレクレを牽制とな

市場との対話という意味で何が足りなかったのかという質問に対してスマートな受け答え。

『(黒田総裁) 1 問目の「市場との対話」ということですが、これは、別に大げさに何か宣伝をするとか、あるいは、市場関係者が色々と言っていることを、ずっと全部、金融政策がフォローしていくとか、そういうことではないわけです。あくまでも、市場の状況をよく把握する、市場関係者の議論はよく把握すると同時に、政策委員会で決めた金融政策は分かり易く市場関係者に浸透させていく、それを助けるということが――英語ではfacilitate と言います――、市場との対話を強める意味で非常に重要だと思います。その点については、私ども3 人は最大限の努力をしていきたいと思っています。』

実に仰る通りで参りました。


・デフレの原因は何でしょうという質問に対して

ここの説明がこれまたよろしゅうございます。

『(黒田総裁)(前半割愛)次に、2 点目のデフレの原因についてです。私は、以前から、物価に影響を与える要素は一杯あると言っています。デフレに影響した要素としては、90 年代以降、金融機関の問題によるデレバレッジがあり、円高があり、さらには新興国からの安い物資の輸入の増加があり、ある時は石油価格が下がったりと、色々な要素が、その時々の物価上昇率に影響してきたことは間違いありません。その中に、金融政策の失敗もあったかもしれませんが、あらゆる要素が物価上昇率に影響していることは事実です。』

で、ここで止めないのが黒田さんのまあ素敵な所。

『ただ、それは原因の問題であって、物価安定を確保する責務が誰にあるか、となると、これはどこの国でも中央銀行にあるわけです。従って、様々なデフレの要因があったら、それを克服するように様々な緩和策を採って、デフレが続かないようにする責務が中央銀行にはあります。デフレの原因を、色々な要素を測って研究すること自体は意味があると思いますが、中央銀行としては、「色々な原因でデフレになっています」と言っても――先程、岩田副総裁も言われたように――、責任を阻却することはできないと思います。』

うむ、中々の大口でありましてまあこりゃ2%行かなかったら総裁副総裁揃って辞任もんでしょうなあとか思うのでありますが、ちなみに岩田副総裁コーナーは黒田さんコーナーの次に突っ込みますが、ここの黒田総裁の話にありますように、岩田副総裁は「あまり言い訳をしない事が重要」と威勢の良い話を先の方の質疑でしていたのですが、何か後の方の質疑では微妙に往生際が悪いと申しますか、早速逃げの布石入ってますなあ今まで散々大口叩いてたの何なんでしょうかという部分があるのでお楽しみに。


・資産バブル懸念とか金利急騰懸念に関する質問に対して

まあこれは引用するまでも無いのですが、資産バブル懸念に対してとか金利急騰懸念に対してどうですかというような微妙にアレな質問に対してはごく普通に答えています。資産バブル云々に関する質問に対して。

『(黒田総裁) 非常に重要な論点だと思いますが、現実的な可能性を勘案しながら議論していくべきと思います。そのような観点からみると、現在、日本の資産市場に何か大きなバブルが生じているとか、生じそうである、その懸念がある、とは考えていません。』

全くおっしゃる通りです。

『むしろ、現在の課題は、15 年続いたデフレからどう脱却するのかということです。消費者物価上昇率は、最新時点でもまだマイナスです。それが一番大きな課題であり、今ご質問された、常にあり得るけれど、当面は余りありそうにない仮定のことを議論しても、金融政策の当面の課題に対応することにはなり難いのではないかと思います。』

とまあこうやって「当面はあまりありそうにない」というのを明確に言うのが重要で、前任の麿総裁の場合、この第二の柱に関する点検の事を妙に強調するもんだから・・・・・・・・

『ただ、中央銀行は、常に色々なことを慎重に勘案していますので、資産価格を勘案しない、物価安定目標だけで消費者物価しかみないということはありません。雇用やその他国民経済の健全な成長に資するものになっているかどうかをみています。日本銀行法でも、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」とされているので、当然、その中で、資産価格などもみていくことは間違いありませんが、資産価格をターゲットにするわけでもありませんし、今、バブルの懸念があるという状況にはなっていないと思います。』

とゆーことでですな、これ言ってる趣旨は従来の日銀の「第二の柱による点検」と同じ事なのですけれども、物は言いようとはまさにその通りでありまして、麿前総裁の場合はここの点検の重要性を妙に強調しちゃうもんだから「物価も上昇していないし株価も上がっていないのにバブル懸念とか言うのは金融緩和に消極的だからだ」とか言われてしまい、その結果としてその前任者よりも格段に凄い勢いで緩和政策をしており、かつ他の中銀が買わないような株式だの社債だのまで買っているというのに、全然やっていない呼ばわりされるという骨折り損にも程がある政策運営になっておった訳でして、そーゆー意味では黒田さんは威勢の良いトーンの発言をしながらもちゃんと原則としてそこを逸脱するのはまずかろうというような部分は逸脱しないようにしっかり押さえているというのが今回意外に感心してしまった次第です。まあ次のコーナー(ということで引用がクソ長くなってすいません)の岩田副総裁の発言がやっぱり危なっかしいのに対して想定していた以上に安心感があるわという所でございます。


・財政ファイナンスに関連して

財政ファイナンス懸念に関しては2か所ほどで質問がありましたが、基本的には手堅い受け答えをしているのですが、ちょっとここに関しては不安が無い訳では無い。

『(黒田総裁) 主要国の中央銀行は、いずれも、基本的には国債を引き受けることはしないということになっています。日本の場合も、財政法によって、日本銀行は原則として国債の引受けはできないということになっています。一方、市場でのオペレーションの対象として、どういった債券、金融資産が適切かということは、中央銀行が一番よく知っているわけです。』

オペレーションとしての対象が国債なんですよ、という趣旨ですな。

『中央銀行が、自主的に市場の動向をみながら、金融調節の手段として何が一番適切かを考えて選択してきています。現時点で言うと、日本だけではなく欧米のほとんどの国が、オペレーションの対象として国債を使っているわけです。これは、国債の市場が一番広く深く流動的だということで、それを活用しているということだと思います。従って、中央銀行が、自主的に、金融政策の手段として国債を市場から買い上げるということは、中央銀行として当然のことで、特別に財政ファイナンスであるということにはならないと思います。』

ベンダーでのヘッドラインだけで判断すると黒田総裁の発言が「自主的に買っているから財政ファイナンスではない」というトートロジーみたいな話をしているように見えましたが、こうやって文脈から辿ればまあ仰る通りの話をしてるという事でした。

『ちなみに、ご承知かと思いますが、300 年以上の伝統のあるBOEも、昔はほとんど民間の手形の買入れ、売却で金融調節を行っていたわけですが、そのうち政府短期証券に移り、このところはBOEも他の中央銀行もそうですが、長期国債を含む幅広い国債を、さらには――FRBなどが一番大幅にやっているわけですが――、資産担保証券その他各種の民間の金融資産も大量に購入する形になっているわけです。これは、あくまでも、金融政策を自主的に運営する上で適切な金融資産を選択し、それをマーケット・オペレーションの対象にしているということだと思います。』

『なお、国債自体の問題、あるいは財政規律の問題、これはあくまでも政府・国会の責任です。先般の共同声明でも、政府は当面景気刺激策を採るわけですが、中長期的な財政再建に対する姿勢は全く変えないで財政規律を守ると言われているわけであり、これは極めて重要なことと思っています。』

とまあこちらの方は手堅いのですが、別の質問に対する答えの結論を見ますとちょっと不安もあります。

『2 点目の財政ファイナンスについては、何度も申し上げますが、中央銀行が、自主的に金融政策の調節手段として、市場から様々な金融資産を買入れたり売却したりするマーケット・オペレーションは、中央銀行にお任せ頂くということになっています。そういうものでなく、政府が赤字を出して国債を発行したら、中央銀行がそれを引き受けるということは全く考えていないわけで、法律で原則として禁止されています。』

ということで全くおっしゃる通りなのですが、何せそもそも市場が大騒ぎになったのは安倍ちゃんが「国土強靭化の財源に建設国債を発行してできればそれを日銀が全部買って欲しい」というようにそれは金融市場の人間がヘッドラインを見たら普通に新規財源国債の財政ファイナンスを求めたというような発言をした(まあその後さすがに中央銀行の財政ファイナンスと取られる発言をしたと報道されたのはマズイだろと言う事で火消しが行われましたが、そもそも岩田規久男さんだって震災復興財源に日銀の国債引受とか平気で言ってたわけですし)のが物の始まりである、という点は忘却されると困る訳でございまして、本来就任記者会見の席上で何で岩田副総裁にその件を問いただす記者がいないんだよヴォケとか思うのですけれどもね。

『従って、そういう中で、中央銀行が――日本銀行だけでなく、FRBでもECBでもどこでも――、自主的に金融緩和の手段として国債を購入するのは、何ら財政ファイナンスでもないし、全くそういう問題はないと思います。また、日銀券ルールのようなものがないと財政ファイナンスになるとか、その懸念があるということはないと思います。FRBもECBも、現在、そういうルールを持っているとは承知していません。』

ただ、それは「無いと思います」というだけでは駄目で、そもそも中期的な財政健全化に対する取組を政府がやっているのかという問題、とにかく政権与党の中で国債引受みたいな事を言い出す人が普通にいたりするという状況、つーか安倍ちゃんがそもそも当初それに限りなく近い話をしていた訳ですし、自分のおひざ元の副総裁が以前新規財源債の日銀引受すべしという発言をしていた訳ですし、大体からして他の主要国対比で日本の財政がそもそも論として真っ赤っ赤にも程があるとか、そういう問題がある訳でして、こんなのは数値的にどうのこうのではなくてコンフィデンスの問題でありますので、そこはちゃんと褌を締めて頂かないといかん話であって、ちょっとまあこの点については今すぐどうこうという問題は無いでしょうけれども、ちょっと黒田さんの発言だけを見ると安易に上滑りしているような懸念はあるのですけれどもどうっすかね。

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2013/03/22

○就任会見詳しくは今日出る要旨を確認ですな

ブルームバーグから
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MK0C096JTSER01.html
更新日時: 2013/03/22 00:00 JST

『3月22日(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は21日夜、就任会見を行い、物価上昇率2%の目標について「達成すべきであるし、達成できると確信している」と述べるとともに、「達成できるまで可能な限りあらゆる手段を講じていく」との決意を示した。目標達成の期間については「2年程度で達成できれば非常に好ましい」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

ほうほうそうですかそうですか。ちなみに消費税で上昇したから達成は駄目ですし、まさか物価連動国債のBEIが2%になったからアクチュアルの消費税部分除いた物価上昇が全然行かないのに達成とか言い出すのも駄目ので念の為(^^;

『4月3、4日の金融政策決定会合の前に、臨時会合を開くかどうかに関しては「もちろん、事情に応じて臨時会合も過去に開かれたこともあるし、不可能ではないが、いずれにせよ、臨時会合があるかないかを私から特に申し上げるべきではない」と語った。』

まあ無理でしょうなあ。

『さらに、「日銀はいろいろなことをやってきたが、非常に分かりにくくなっている」と指摘。「もっと端的に、バランスシートの負債側と資産側でどういう動きになっているか、それをどういう方向に向けようとしているのかが分かるような金融政策を運営することが、市場との対話を強化する上でも重要だ」と語った。』

まあここの部分は期待でして、ここまで色々と施策を突っ込み、それを拡大していく中で金融政策の枠組みがダンジョン状態になってしまっている感がございますので、この際良いタイミングですので戦線の整理をお願いしたい、というのは先日来申し上げている通りです。


ロイターから
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE92K00M20130321?sp=true
黒田日銀新総裁は2年で2%へ「何でもやる」、大胆緩和を強調
2013年 03月 21日 22:50 JST

『日銀が買い入れる資産として国債以外に「REIT(不動産投資信託)を含め様々な金融資産の購入も市場状況など踏まえ議論する」とした。「長期の資産を買いイールドカーブ自体を下げていく」とも述べ、基金で買い入れる国債の対象を、現在の3年よりも満期の長いものに広げる考えを示した。2014年初めに予定している期限を定めない国債の買い入れについては、「前倒しであろうとなんでも検討する」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

『大量の国債購入を続けても「日銀が自主的に金融調節のため資産を買い入れるのは、国債の引き受けとは違う」と強調。財政ファイナンス(穴埋め)懸念を生むことはないとの見方を示した。日銀はこれまで、保有している国債の量を紙幣の総量以内に抑える「日銀券ルール」を定めていたが、「日銀券ルールがなくても財政ファイナンス懸念はない」と語った。』

REIT買うのは良いのですが市場規模対比の買入額、、、、、、、

まあ何となく方向性は見える感じではあるのですが、ただまあ先に現行の政策を継ぎ足しから入ってしまうと後の収拾がややこしくなると思いますので、オープンエンドの前倒しあたりで時間を稼ぎつつやる気を見せて間を持たせながらロジック再構築とかが吉のような気がしますが、、、、、


http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE92K02520130321
円高進み94円台後半、黒田日銀新総裁発言で=NY外為市場
2013年 03月 22日 03:09 JST

『[ニューヨーク 21日 ロイター] 21日のニューヨーク外為市場で、ドルが対円で1%を超える下げとなった。日銀の黒田東彦新総裁の発言をめぐり、一段と積極的な緩和姿勢を期待していた一部投資家が失望したという。』(上記URLより)

ということで、先ほどのロイター会見記事の中では『一方で、「市場との対話は市場関係者の言う通りではない」と述べ、過度の緩和期待に対するけん制とも取れる発言もした。』(ひとつ前のロイターの黒田総裁会見記事より)との事ですが、既に市場ちゃんを散々煽ってここまで来ておりますので、そう簡単に為替市場や株式市場が許すのか(ちなみに債券市場は国債買入増えれば買いだし株式市場などが失望しても買いなんじゃネーノとか考えると頭が痛い)ニヤニヤしながらお手並みを拝見したいと存じます。

#会見詳細については本日の要旨を見てから改めて

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2013/03/12

臨時会合説が今日は日経でも出ているようですが、何故か知らんが5時台に偶々TBSの朝ズバをみたら解説というかお勉強コーナーみたいなので日経の清水編集委員のコメントもまじえまして金融政策がどうなるみたいな話をやっていまして(TBSついに自分のリソース使うの諦めたのかとワロタです)TBSの方では10年前の俊ちゃんの「イラク攻撃で臨時決定会合」という攻撃が例として出て比較されていました(結論は「臨時会合を行って追加緩和をする可能性が」という風になっていました)が、あの時と今回の決定的な違いは、「俊ちゃんの臨時会合の時は「ポーズ満々中身は実は・・・・」だったのですが、黒田さんの場合は弾を撃つ気が満々という所でありますな。

つまりですね、弾をろくすっぽ出さずに見せ方で大きくしながらやる気を見せるというのと、市場の期待に威風堂々答える形でヒャッハーヒャッハーと無い弾を撃ちまくるというのではだいぶ話が違ってきますが、まあ黒田さんは「まだ緩和が足りない」と仰せですのでヒャッハーと(いうかどうかは知らんが)弾を打ってくる訳で、弾も少ない中さてこれをどこで演技モードに切り替えるのかというのは難しいなあと思うのですが・・・・・・・・

○黒田さんの所信聴取関連から:市場をマニュピレートする気満々なのは把握した

昨日は黒田さんの所信聴取が参議院で挙行された訳ですが、まあ株式市場と為替市場は特段反応しない、つーか所信聴取が基本的にこの前と同じような話が多くて、その上外債購入に関しては全力否定ということでしたので、30銭程度円高に振れてみたり円安に戻ってみたりとかやっておりましたが、まあ昨今の為替市場はどうみても海外ドリブンなので黒田さんの所信聴取自体は他の市場はあまり関係なしという所で、債券市場は朝下がっていたのがやや持ち直しかという感じですが、何か知らんが金曜の後場に打ち込みでもあったのか20年が糞弱くてイマイチな相場でしたなという所でした。

というのは兎も角として、まずは一番色々書いてあるブルームバーグニュースから。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MJGZXA6TTDS201.html
日銀総裁候補・黒田氏:物価目標実現へデリバティブの活用も検討 (2)
更新日時: 2013/03/11 13:47 JST

『黒田氏は「日銀はこれまでもいろいろな措置を取ってきたのは事実だが、15年続いたデフレを是正できなかったことという意味では、明らかに不十分な金融緩和だった」と言明。「現時点の日銀の金融緩和の状況では2%の物価安定目標を早期に実現することは難しいと思うので、当然、さらなる金融緩和が必要だ」と語った。』(上記URLより、以下同様)

というのはまあ今に始まった話では無いのでど〜でも良いのですが、今回所信聴取やら質疑応答やらのヘッドラインを見ますと、あたくし思ったのは「市場をマニュピレートする気満々だね」という所であります。まあこのおじさん元々財務官として為替市場の平衡操作をしていた訳で、弾を打ってヒャッハー為替市場は地獄だぜ〜♪ってやっていた(かどうか知らんが^^)というご出身の方という印象がこちらにはある訳で、そういう方が市場を自分で動かす気満々というのは微妙に微妙な気はするなあと思います。

つまりですね、外国為替市場の平衡操作みたいに目的もやる事もはっきりしていて、しかもその結果は為替市場の取引価格として瞬時に出る上に、まあ弾もホイホイ撃てるというような政策と違いまして、金融政策、しかも非伝統的政策の場合は何せ過去の例(または人柱)が少ない上に色々と当初想定しなかった影響が時間的ラグを伴って現れる上に、場合によっては不可逆変化またはそれに近いような戻すのに多大なエネルギーを必要とするような事も起きうると思われるものに対して、その中で異次元政策とやらを実行してヒャッハーとかやってさてどうなるんでしょというのはあるのですが、どうも上記記事で紹介されているような発言やら昨日のヘッドラインやらを見ておりますと「市場マニュピレートする気満々」というのが垣間見えるようなイメージになっておりまして、何か色々と今後の金利市場は大変ですのうという感じがしますです。

ただし、これヘッドラインのせいでそういう印象を受けている可能性はあり、そもそも報道する方が黒田さんは財務官だったので市場を動かすのに長けている系のイメージを持ってヘッドラインや報道を構成している可能性があるので、その点は割り引く必要があるかもしれない(残念ながらこれは会議録が出ない筈なので1次資料に当たって確認ができない筈)とは思いますです、はい。


・長期国債を購入するのは判るがリスクプレミアムを縮小とな

引き続き先ほどのブルームバーグニュース記事から。

『具体的には、「国債についてどんどん長期を購入していって、長期金利への影響を強めていかなければならない。あるいは、民間の資産についても、リスクプレミアムが過大なところは縮める。そういう意味では量的、質的に大胆な金融緩和をしていく」と述べた。』

長期国債をバンバン買って長期金利の影響を強めるとかどう見ても力技発言に見える訳で、その辺もマニュピレートする気満々という所ですが、このやり方って当初は上手くいくでしょうし、まあ上手くいけばそのまま行けるかもしれませんけれども、2%の物価上昇目標を達成し、更に言えば現在のゼロ近辺の望ましくない均衡状態をぶち破るという事で2年間という比較的短めの期間で達成しようというような力技をかまそうとしているのですからして、これが本当に物価が上昇すると思いだした時は本来は出口政策に向かうべきステージであって、その場合にどうしますねんというのが今から大丈夫かいなというのが気になるですわ。米国だって何気に資産買入と低金利政策を分離したりしてモデレートな足抜けを検討するというのに、どどーんと最初にどんどんやって市場金利マニュピレートみたいな話をしちゃうと梯子の外し方が難しくなるなあとは思いますけどね。

ただまあこの調子だと出口政策が必要になる時(があると良いですねという感じですが)には今度は国債をバンバン売って来そうな感じでして、運良く出口政策みたいな話になった時には債券市場がオモシロ相場になりそうな悪寒。まあそれよりも望ましくない形での出口を強いられた場合の方が更に恐ろしいですけれども。

で、更に「民間の資産」についても仰せですが、今どこにリスクプレミアムが過大な所があるのかはさっぱりワカランチ会長でございまして、まあ以前大口を叩いた風呂敷のせいで「色々な資産の購入」についてもコメントしないといけないのでしょうなあというのは判りますが、何だかねえという気は致しますです。中に入ってちゃんと金融市場見たら認識を変えるのかもしれませんけど。


・デリバティブ市場に出る意味はたぶんありませんが

さらにブルームバーグニュースから。

『さらに、具体的施策の一環として「スワップ、その他のデリバテイブ市場に出ていくのがいいのか、よくないのか、いろんな議論があるが、十分ご提案をうかがい検討していく」と述べた。』

この部分に関してはクイックのニュースの方がちと詳しいのでURL置いときますね。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL110IH_R10C13A3000000/
黒田氏、金利スワップの活用「十分検討したい」
2013/3/11 10:44

『日銀総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行総裁は11日午前、参院議院運営委員会の所信聴取で金利スワップの活用で金利低下を促す政策について「具体的にスワップやその他デリバティブ(金融派生商品)市場に出て行くのがよいのかよくないのか、いろいろな議論のあるところ」と述べた。そのうえで「十分検討させていただきたい」と付け加えた。みんなの党の中西健治氏への答弁。〔日経QUICKニュース(NQN)〕』(上記日経新聞サイトより)

ということで、金利スワップで「金利低下を促す政策」とか仰せなのですが、国債を買えば済むものをわざわざ流動性も国債市場より低いわオファービットスプレッドも国債市場より大きいわポジションある間中カウンターパートのリスクがあるわという金利スワップに突っ込んで行く意味がさっぱり判らんと思うのだが、何なんでしょうね。


・付利金利の引き下げ検討するのは良いがそれは買入の大幅拡大とフリクションが起きると何度言えば・・・・

つーてもまだその話は聞いてないでしょうし、この話って金利市場の何とかストの皆様でも平気で勘違いしている人が未だに居そう(さすがに最近は散々この話が言われるようになって理屈が人口に膾炙してきているようですがあくまでも金利市場の中だけに理解は留まってるでしょう)ですし、そもそも何でそうなるのかという話って実際のマネーマーケットのうち、キャッシュそのものというかバンキングの所を触っていないとワカランだろうなとは思います。

ということでまたまたブルームバーグニュースの記事の方から。

『日銀当座預金の超過準備に適用される0.1%の付利の引き下げ、ないし撤廃については「短期金融市場が機能しやすいというメリット」がある一方で、「短期金利が実際にゼロになることを妨げている」「金融緩和をより進めるためには障害になっている」「ゼロにするどころかマイナスにすべきだ」など、賛否両論あると指摘。その上で、「現時点で直ちに付利を下げるとか、マイナス金利を付けるとかは考えてないが、十分議論されるべきだ」と述べた。』(最初のブルームバーグニュースのURLより)

ということで「短期金融市場が機能しやすいというメリット」というコメントは兎も角、「金融緩和をより進めるためには障害になっている」というコメントなので理解して居ないんでしょうなあというのは把握したのでこの辺は今後勉強してくれという所です。

ちなみにこの質問に関してもクイックの記事によりますと・・・・・・・

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL110ID_R10C13A3000000/
黒田氏、付利引き下げ「賛否両論あり、十分審議したい」
2013/3/11 10:41  

『日銀総裁候補の黒田東彦アジア開発銀行総裁は11日午前、参院議院運営委員会の所信聴取で日銀に金融機関が預ける「超過準備」に付けている金利(付利)を引き下げる政策について「賛否両論あるところなので十分政策委員会で審議したい」と語った。「今この場で付利を辞めるとかマイナス金利を付けるとか申し上げる立場にはない」と述べるにとどめた。みんなの党の中西健治氏への答弁。〔日経QUICKニュース(NQN)〕』(上記日経新聞サイトより)

という事で、質問しているのまたみん党中西かという所でして、どうもこの人個別の政策について一々微妙な質問をするのが仕様という中途半端に詳しい人に良くありがちの悪事例パターンのようで、何だかなあという感じではございます。


・それは正論だがお前が言うな

またまたブルームバーグニュースの記事に戻りまして、『方向性が間違ったら「大胆に変化」』というアレな小見出しの部分から。

『自身の方向性が間違っていると考えられたら、持論を捨てて方向転換する勇気はあるか、と問われ、「もとより、そういった覚悟でいる」と言明。「経済の実態、金融の状況が変化すれば、当然、政策も大胆に変化させていくことになる」と述べた。』(最初のブルームバーグニュースのURLより)

・・・・・・・・えーっとですね、それはそうでして状況の変化に応じて政策は変化させて頂きたいのですけれども、岩菊先生ほどでは無いですけれども黒田さんもここまで大概に日銀のこれまでの政策をケチョンケチョンにけなしていた訳でして、その面下げて大胆に変化していく(キリッ)とかいう前にすることがあると思いますけどねえいやまあそんな事は起きないんでしょうけど(棒読み)。

何かね、自民党政治ガーとか言って何でもかんでも言いがかり付けた挙句に夢のような政権公約を持ち出して選挙で大勝利したけど以下皆様ご案内の通りという政党がついこの前あった(いやまあ今でもあるけど)なあとか思いますとニヤニヤ感がぬぐえない人間性の出来ていないあたくし。

さらにこんなのもありました。これはロイターの記事ですが他のベンダーでもこういうヘッドラインが出ていたのでまあそうなんでしょ。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPT9N0BW01Y20130311
日銀だけで日本経済健全に発展させるの難しい、政府の役割きわめて大きい=黒田・日銀総裁候補
2013年 03月 11日 11:24 JST

どうした事でしょう!インフレ目標2%を達成することが一丁目一番地という話だった筈なのですが!!


・意味不明発言が出ているのも少々アレ

これまた別のベンダーでも同じようなヘッドラインが出ていて結構のけぞりましたが。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPT9N0BW01U20130311
長期国債大量に買うと金利下がりデフレ期待減らす=黒田・日銀総裁候補
2013年 03月 11日 09:24 JST

『また、日銀が長期国債を大量に買うと金利下がり、デフレ期待減らすとの見解を示した。』(上記ロイター記事URLより)

>日銀が長期国債を大量に買うと金利下がり、デフレ期待減らす
>日銀が長期国債を大量に買うと金利下がり、デフレ期待減らす
>日銀が長期国債を大量に買うと金利下がり、デフレ期待減らす
>日銀が長期国債を大量に買うと金利下がり、デフレ期待減らす
>日銀が長期国債を大量に買うと金利下がり、デフレ期待減らす
>日銀が長期国債を大量に買うと金利下がり、デフレ期待減らす
>日銀が長期国債を大量に買うと金利下がり、デフレ期待減らす


・・・・・・・・・・この意味、百回読んでも1ミリも理解できない(力技成分を置きますと普通はデフレ期待の高まりで金利が下がると思うのだが普通に考えて・・・・・・・)のですが、いつの間にこのような画期的な金融理論が発生したのでしょうか、つーかこの発言まさか英訳されて報道されてないですよね!!!!!!!!


とまあそういう事で、特段砲撃だの悪態だのという気もサラサラございませんが、とりあえず黒田さんは市場を振り回す、という言い方が良くなければ従属させようとしているというのと、今後もうちょっと実際の金利市場を理解して下さいね(はぁと)というのがあるなあというのは把握しました。

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2013/03/05

○黒田さんの所信聴取関連メモ

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MJ42ID6S972F01.html
日銀総裁候補・黒田氏:可能なことは何でもやる姿勢明確に−所信 (3)
更新日時: 2013/03/04 15:26 JST

『3月4日(ブルームバーグ):政府が先に次期日本銀行総裁候補として国会に提示した黒田東彦氏は4日午前、衆院議院運営委員会で所信聴取に臨み、これまでの日銀政策は2%の物価目標の達成に不十分とした上で、デフレ脱却へ向け可能なことは何でもやると表明し、大胆な金融緩和を進める意向を示した。物価目標の達成は2年を目指すとした。』(上記URLより、以下同様)

という事で色々とヘッドラインは出ていましたが、より長期の国債購入云々の所で市場が反応したようなのですが、基金国債の買入年限延長とか輪番の拡大とかは普通に本命(ただしその辺をするには意見集約が必要で就任したら翌日にいきなり実施とか無理だと思いますが)の筈なので何でそこまで反応しましたねんという所ですが、まあ先週からの財政マネタイズ相場の初期反応としてのブルフラットニング相場がドンドン盛り上がって参りましたという流れの一環であり、ついでに言えば輪番が絶妙のタイミングであばばばばばーな結果を出してくれたので大ブルフラット相場をやって下さいました。

しかしまあ子細に見ても従来の話をしているのと気合を見せているという所でして、特段新味が無いと申しますか、この辺見てておいおいというのもあったんですけどね。ベンダーのニュース報道ベースだから何ですが。

『物価目標の実現時期では「いろいろな要素で物価は動くので、多くの中央銀行は直ちに2%というのをピシッと達成するのは不可能だし、そういうことにコミットしているわけではなく、あくまで中長期的に近づくよう金融政策を運営していく」と言明。』

『その上で「多くの中央銀行は2年程度というのを念頭に置いていると思うし、私自身もそういったものを念頭に置くのは正しいと思う」としながらも、「あくまでも物価安定目標は経済状況を踏まえつつ、できるだけ早期に達成するというもの」と指摘。「2%の物価安定目標自体が毎月毎月2%ということはどこの国でも求めてないし、適切でもない」と語った。』

『さらに、「いつ達成できるか分からないということでは物価安定目標にならない」とし、「2年というのがグローバルスタンダードなので、当然それを目指すということになると思うが、15年続いたデフレを打破することは大変なことも事実だ」と言明。「あくまで政府・日銀の共同声明、それから日銀の政策委員会の決定を踏まえてできるだけ早期に達成できるよう全力を挙げたい」と述べた。』

という事で、えーっと確か以前はもうちょっと大口を叩いていたように見えるのですが、何か2年で達成というのに関して工程表も出さないし、具体的に何をするのかの話も微妙(ついこの前「日銀が買う事のできる資産は国内に何百兆円もある」と仰せでしたけれどもあれはどうなったんでしょうか)で、さてこれから現実問題を考えた場合にどういう話になって行くのかが楽しみではございますが、何せ2年で達成して頂けるということですので、正常化の際の出口政策も責任を持ってやって頂けることを期待しております(棒)。

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2013/03/04

○正副総裁候補者の所信聴取がはええええよ

http://www.47news.jp/CN/201303/CN2013030301001464.html
衆院、4日に黒田氏の所信聴取 日銀総裁人事で
2013/03/03 17:25 【共同通信】

『衆院議院運営委員会は4日、政府が次期日銀総裁候補として提示した黒田東彦アジア開発銀行総裁(68)の所信を聴取する。人事案提示後、黒田氏が公式に意見表明するのは初めて。2%の物価目標達成に向けて金融緩和を強化する方針を説明する見通しだ。与野党の質疑に応じる。』(上記URLより)

ということで今日が黒田さん、明日が岩田さんと中曽さんの所信聴取でございまして、まあ中曽さんは別に問題が出るような発言は出ないでしょうから良いとしまして、黒田さんと岩田さんに関してはまあちょっと勉強する前に所信聴取かよという所で大丈夫かという所ではございます。

まあ何ですな、変にハードル上げまくる勇ましい発言をしてから実際に現実問題として出来ることとできない事を把握した後に顔真っ青とかになって悶絶して頂いた方がこうなりますと面白いので精々悶絶しろやとは思いますし、日本のためにという点で言えばここであっさり穏当になった方がコストは低いのでしょうが、悶絶の結果社会にコストを与えた事が明らかになることによって事実関係も踏まえないで適当な与太話を吹くような輩が絶滅した方がより長い将来を見据えた際に世のため人のためになると考えたりしてはいかんのでしょうけれどもねえとか色々と考えてしまう今日この頃。

でもまあ岩菊先生の場合は例えば付利下げたら資産買入が札割れになるかもしれませんよとかいう話をしても「それはお前らの説明がおかしい」と言い出しそうな所がお洒落でありまして、まあポイントは岩菊先生がネタ要因になるのかどうかでしょうなあとは衆目の一致する所ではないかと存じます。

つまりですな、岩田さんがああだこうだ発言するのに一々市場が大反応してたらそらもうエクストリームな市場展開が想定されますし、はいはいおじいちゃん満州の話はさっきもしたでしょお薬の時間ですよという反応になりますとそれはそれでナンダッタンダという話になるのですが、はてさて今後どうなるのかというのが実にこうあまり嬉しくは無いものの外野的には興味津々と言った所で、中の人におかれましては誠にご愁傷様としか申し上げようが無い所ではございますな、うんうん。

#何かダイヤモンドオンラインで岩菊先生が先般のゆかしメディア系でのインタビューと同じような話をしていたようなのですが、肝心の部分が会員限定記事なのでスルー致します

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2013/02/26

○とりあえず市場メモ(黒田総裁ノミネート関連)と雑感

黒田総裁に岩田規久男副総裁ノミネートな上にTPP参加もおまけに出た事からとりあえず株高で反応しましたが為替は朝は94円台後半とかまでやっていましたけれどもその後は押して94円台前半で推移。

んでもって債券市場は全年限堅調の巻となりまして、まあ要は国債または短期国債の買入が更にどどーんと実施されるでしょうという順当な予想に基づくものなのと、まあ極端に円安にぶれなかったので(最近株高を受けてもあんまり債券が反応しない)まずは買いで反応という形になりましたな。

とりあえず国債とか短期国債の買入が拡大されるというのは予想されるのですが、それがAPPの買入国債の5年までの延長を伴う買入の拡大とかになるのか、それとも更に短期国債を買うという事になるのか、はたまた輪番拡大でより長い所の買いになるのかというような事を考えた上で、「まあ細けぇこたあいいんだよ!」と言う結論になった(のかどうかは知りませんが^^)風情で5年は0.120%(1毛強)になるわ、3MTBは0.70%になるわ(先週末は0.7%台後半)、10年は0.705%(2毛強)の引けだけど場中は0.700%まで出合うわと堅調で、超長期も引けは1.5毛強とかでございましてまあブルフラットまでは行きませんでしたが超長期も付いて行きましたぞなもしとゆー展開。

まあ何ですな、黒田さんに岩菊さんという事で国債の買入は増えるでしょうなあという話になりますので、ますます財政マネタイズの様相が濃くなる訳ですが、これが武藤さんだと同じ国債買入拡大にしても比較的マイルドに行くのかなあとは思われたのですが、黒田さんの場合どう見ても金融政策および調節の実務的な面を把握しているとは現状では思えませんので、制約条件を無視して突っ込んで行くかのような話をするリスクはありますので、当初反応としては財政マネタイズって債券市場としては買いで反応してイールドカーブはブルフラットという事になるのでしょう。ただまあ問題はその賞味期限でありまして、賞味期限のあるうちに明確な形での景気上向きとか成長戦略の示現とかが無いと、無限に財政マネタイズは出来る訳では無いのでどこかで爆発する訳ですが、その爆発へのパスが速まるリスクはあるでしょうなあと言う事で。


○さらに雑談は続く

ではまあその辺のリスクってどの辺にあるのかねという所ですが、ポイントとしては新任のうちお二方が明らかに金融政策の実務的な問題とか調節の技術上の問題とか短期金融市場とか全然ご理解頂いているとは思えん(大体からして金融市場の人間だって分かっていないで適当な与太をほざいている何とかストが続出している位ですから、黒田さんが判っていないのは仕方ないのですが、金融政策論をぶっている学者先生が理解しているように見えないのが極めて残念なのですが岩菊さんは岩菊さんなので致し方なし)とゆーのがリスクの1番目で、もう一つのリスクは「市場の期待が異様に高い」ということではないかと思うのですよ。


・ということで第一のリスク顕在化は「実務を知る前に下手にハードルを上げること」でしょうなあ

と言う事でしつこく申し上げておりますように、大体からして黒田さんにしても岩菊さんにしても金融政策に関してああだこうだ仰せの話を見ますと金融調節の実務的な話とかフィージビリティーとか全然考えてないだろうという話を平然とするところを見ますとその辺の話って当然のごとくご存知ではない訳ですな。


でまあ黒田さんがその辺ご存知では無いのは(岩菊さんは何とかならんのかと思うが)現時点では致し方ない事なのでまあそれはそれで今後理解して頂ければとは思うのですけれども、問題はその辺を理解する前に実務的にこれは出来る出来ないという話ってえのがある中で、それを丸無視して変に市場の期待に応えようとして無茶振りな事を言い出してハードルを高めてしまい、無理な事をするようになり、それが更に市場の無理無体な期待を呼んで無理を重ねて・・・・・・・という事になりますとマズーな話になる訳でしな。

まあ最初のうちは先程も申し上げたようにゴルディロックスよろしく無事に回るかも知れないのですが、いつまでもあると思うなゴルディロックスでございまして、どこかで爆発した場合には恐らく取り返しのつかない事になってしまうでしょうなあとゆー所で、その辺のハードルを自分で上げてしまって自分の首を絞めるとナローパスが更にナローパスとなってキャットウォーク状態になるんじゃねえのという所ですな。



・大体からして「自分の尾を追う犬(byブラインダー元FRB副議長)」の傾向が既にある訳で・・・・・・・

大体からして安倍ちゃん登場からの流れって、まあ良く言えば市場の期待を盛り上げながら進めているという事ではあるのですが、一歩引いて見ますと市場の反応に一々振り回されている節もある訳でございまして、何かとにかく市場に円安燃料を投下しないと!ってな感じで発言がホイホイと飛び出してしまうという傾向があるように見えるのですよね。まあ最近はG7やG20で五寸釘を思いっきり差されたようでやっと大人しくなりましたが。

でまあその安倍ちゃんご指名となられます所の黒田さんと岩菊先生ですけれども、何かこのお二方も市場の期待とやらに応えながら期待をコントロールして行こうってえ事になった場合に、既に「自分の尾を追う犬」になりつつある状況が更に加速され、その結果として将来において金融の大きな変動要因を作ることになるというのもこれまた懸念される所でございます。

大体からして市場のクレクレというのは一旦はじまると留まる所を知らないですし、大体からして市場がクレクレする事が本当に国民厚生的に望ましい事なのかというと市場はそんなこたあ碌に考えないでクレクレをする訳でありますから、そのクレクレに一々付き合っていたらあらぬ方向に政策を加速させてしまい、気が付いた時には取り返しのつかない事になってしまうリスクというのがこれまたオオアリクイとなる訳で、魔弾の射手の終幕を迎えるとかそんな事にならないように願いたいものです。


・「見せ方」とか「気合の出し方」が上手い組み合わせになって役割分担できると良いですね(棒読み)

まあなんですな、総裁が金融政策実務に関しても金融調節実務に関しても堪能で安定感抜群の武藤さんだったら岩菊先生がやんちゃな発言やら信念(ただし金融調節実務的に無茶振りにも程がある^^)の発言を少々行ってもネタで済みますし、黒田さんとて賢いお方でしょうからちゃんと実務を把握すればその実務と政策のべき論とのバランスを取りながら、岩田さんをある意味で鉄砲玉として使いながら「気合」を見せて行く、という形での政策運営が出来るとは思う(というか思いたい)のであります。

まあ気合とかやる気とかその辺の見せ方がはがゆいはがゆい博多人形(などというネタを知っているのはジジイの証拠)であったというのはその通りでありますので、まあその辺ってキャラの作り込みよう(とか言うとやや言い方が不謹慎ですが)で上手く回せると良いなあとか思うのですが、黒田さんがそういう所をうまい事やってくれるのかどうかは今後に期待したいものの、先ほども申し上げたように市場の期待が下手に高い上にそれを当事者が自覚しているというか意識しているだろうなあとか思うと、そううまい具合に行くのかと言えばカオスになるんじゃネーノという懸念がある(あるからさっきからああだこうだと思いついた順に悪態を書いているのですが)次第ですし、大体からして岩菊先生がその辺の役割を理解してある意味プロレス的に突っ込んで行く、というような芝居の出来るような腹の黒い方では無いと思われる訳でして・・・・・・・・・・

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2013/02/25

武藤総裁で規久男副総裁ならまああるかと思いましたがこれはちょっと債券市場的にアレな話ではありますが。

○黒田総裁に岩田規久男副総裁とな・・・・・・・・

昨日の夕方時事通信。
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013022400093
日銀総裁、黒田氏起用へ=積極緩和派の元財務官−政府(2013/02/24-17:50)

はあそうですかという所ですが、今朝の公共放送と毎日新聞では以下の通り。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130225-00000007-mai-bus_all
<日銀人事>次期総裁に黒田東彦氏固まる 民主内に容認論
毎日新聞 2月25日(月)2時32分配信

『政府は24日、3月19日に退任する日銀の白川方明(まさあき)総裁(63)の後任に、元財務官でアジア開発銀行(ADB)総裁の黒田東彦(はるひこ)氏(68)を起用する方針を固めた。白川総裁と同時に退任する山口広秀(61)、西村清彦(59)両副総裁の後任には、日銀の中曽宏理事(59)と、物価目標論者で学習院大教授の岩田規久男氏(70)を充てる方針。安倍晋三首相は25日の公明党の山口那津男代表との与党党首会談で説明し、週内に国会に提示する。』(上記URLより)

これは中曽さん罰ゲームですなナムナム。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130225/t10015750521000.html
首相 日銀総裁に黒田氏起用の意向
2月25日 4時51分

『安倍総理大臣は、日銀の白川総裁の後任に、アジア開発銀行総裁を務める黒田東彦氏を起用する意向を固め、与党の幹部に伝えました。また、副総裁には学習院大学教授の岩田規久男氏を充てる意向で、25日にも本人から就任の承諾を得て、国会への人事案の提示に向けて、調整を本格化させることにしています。』(上記URLより、以下同様)

とのことですが・・・・・・・

『安倍総理大臣は、日銀の総裁について、大胆な金融緩和を実行するとともに、「国際金融マフィアになり得る能力も重要だ」などと述べ、各国の金融当局のトップなどと渡り合える能力が重要だという考えを示しており、黒田氏が適任と判断したものとみられます。』

だそうですが、先日ネタにしたように黒田さんこんな話をしておりまして、えーっとすいませんこういう発言って基本的に世界の中央銀行におけるメインストリームとだいぶ違うと思うのですけれども本当「各国の金融当局のトップと渡り合える」のでしょうかという懸念ががががが。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE91A01B20130211
ADB総裁の職に満足、日銀人事については答えられない=黒田氏
2013年 02月 11日 17:22 JST

『日銀をめぐっては「グローバルスタンダードである2%の物価目標を掲げたのは非常に画期的で正しい」と評価した。2%達成までに要する期間については「2年ぐらいが適切」との見方を示した。「日本国内に日銀が買うことができる金融資産は何百兆円もある」として金融緩和の手段は豊富にあるとの持論を改めて強調した。なお外債購入は「為替政策であり中央銀行の所管でない」として否定的な見解を述べた。』(上記URLより)

まあ何ですな、岩田規久男先生によれば当座預金残高77兆円だかで期待インフレ率2%が達成できるようですし、黒田さんによれば2年で物価2%達成できるそうですので、まあその叩いた大口を早速履行して頂きたいと存じます(ただしスタグフレーションで達成は却下)が、そんな中で日銀から副総裁になる方は大変です罠と思いますし、大体からして政治との対話とか誰がするのやらとか思うとこりゃまあ前途多難にも程があるわと思うのでした。

#しかしまあ何ですな、モーサテに出ている「債券ディーラー」が黒田さんのことを「バランス感覚」という評をしているのに朝から相当のけぞったんですがorz

岩菊先生はまあずーっとあの調子でしょうけれども、黒田さんの場合はそうは言いましても官僚でいらっしゃいましたので、実際に現実の壁にぶち当たった場合に現実に合わせてどうすべきかという事は考えて無茶苦茶路線に走るという形にはならないんじゃネーノといういうのがまあかすかな期待ではある(岩菊先生は現実がおかしいとか日銀が悪いとか言い出しそうですが^^)のですが、国債管理政策が重要な中で黒田さんのキャリアに理財局がろくすっぽ見当たらないというのも何だかなあ(国際と主税中心)という感じですし、まあ色々と先行きが思いやられる人事呈示ではありますぞな。

景気伴わないで物価だけ輸入インフレで上昇とか、国債管理政策がアチャーになってあばばばばばーとかいうのに成らないようにとか考えると結構なナローパスなのですが、言う事がかなーり極端な方が少なくとも2名執行部に入るという時点で先行き嫌な予感しかしませんですけれども、杞憂である事を心から望みたいと存じますです、はい。


○まあそれは良いが次に何が出来るかと言いましても・・・・・・・という雑感メモ

まあ何ですな、それはそれとして何をしますかという点ですが、これから黒田さんと岩田さんに「現実問題としてこのようになっています」という説明を一からしないといけないとか日銀の中の皆様ご愁傷様でございますとしか申し上げようがございません(しかも岩田さんとか「そのような日銀理論は要らん」とか聞く耳持たなさそうでオソロシス)が、現実問題として何をするんでしょうねえというのを現実問題に落として愚考。

・APPの拡大は「量」を出すなら国債しかないのですが・・・・・・・

まあ量を出せ出せと仰せの岩菊先生などにかかればAPPの拡大という話になると思うのですが、量を出すという話になったらまあ短期国債か長期国債。ただし短期国債は固定金利オペの札割れがあってその分の穴埋めに買入を拡大しないといけない(あたくしの目分量では5兆から10兆程度は固定金利オペの残高が減ると思うのだが)上に、既に金利水準から見るとここから10兆円規模での拡大とかすると短期国債市場自体が壊滅しそうな希ガス。

つーことでまあ長期国債の買入拡大の方がまだマシだと思うのですが、こちらもまた金利水準は中々大変な事になっておりまして、付利下げの思惑があるというのも理由ではあるのですが、2年が0.04%だの基金買入の金利が0.049/0.046だのとこちらもこれまた素敵な状態になっておりまして、こちらはこちらで2年国債市場が壊滅状態。

となりますと物理的に新発のある5年までAPP拡大とかいうのがこの前の1月議事要旨でも出ていましたが、何か5年まで拡大する理由も無理矢理になりそうではありますが、それよりも既に0.13%まで低下している5年を買うんですかそうですかという所な上に、現在の2年国債市場の壊滅状態が5年まで伸びるという事になりますと、つまりは中短期国債市場が壊滅モードになるというお話。

市場が壊滅するとワシらの食い扶持がどうのこうのというおとなのじじょうもありますけれども、まあそれよりも将来的な問題として、市場壊滅によってオファービットが思いっきり開くような市場の流動性壊滅モードになるのがアレな訳でございまして、市場の流動性が落ちると将来の出口政策に無茶苦茶困難が発生する、というか要は出口が出れない=インフレを適正な水準で止めることができないという問題が発生するでしょという話。

かつての量的緩和政策の場合は短期市場は見事に死んでいましたが、そうは言いましても2年だのというような中期国債市場の金利は死んでいなかった(一番潰れている時は瀕死でしたが)上に、まあそもそも物価がゼロからプラスになる段階という時期なのであまり上方に慣性のついていない時点(というのが早かったのではないかという話はさておきまして)での解除だった上に、オペが短期物だったので拡大した流動性を引くのもスムーズだったのですが、今度は足元から今のところは3年、もしAPPを5年まで拡大するとなると5年までイールドカーブが日銀の買入で歪みまくるとゆー状態になるので出口の時に相当ショックを与えないと厳しいでしょうねという希ガス。


・ということで個人的には輪番の方がまだマシとは思っていたのですが・・・・・・

てなわけで、5年までの債券市場を壊滅状態に追い込むよりは、より長い国債の買入である輪番の拡大と銀行券ルールの一時撤廃(条件として物価目標の達成のメドが付くまでというのと、財政健全化への取り組みが継続する事を入れる)と言う方が「より長期の国債を買う」という点と、「銀行券ルールの一時撤廃」という点でインパクト出せるので、少ない量で効果が出るんじゃないでしょうかというのと、5年まで国債市場を壊滅させるのはマズイでしょという事から考えて居た訳ですが、問題は新執行部のうち名前が挙がっている人が債券市場的にあまり常識的とは思えない話をすぐにおっぱじめてしそうな所でして、まあ輪番拡大はこの執行部ですと諸刃の剣どころか村正の妖刀にも程があるので(やるんじゃねーかとは思いますが)少々アレではございますな。


・リスク性資産の購入に関してはどうでしょうかねえ

ETFとかREITとかの買入拡大という話はあるのですが、これは量が稼げないので岩田先生的にどうなんでしょとか思う(つーかそういうのあまり肯定的じゃなかったような気もするんだが)所ではございますが、黒田さんだったらETFの買入拡大とか言い出すかもしれませんな、よー判らんけど。


・まあ問題は付利下げの方ですが

付利を下げますと資産買入の残高を100兆に積み上げるとかゆーのが物理的に困難になりますし、大体からして一旦下げて打ち止めとかそういう訳にも行かない(いったん下げたらゼロになるまで下げの思惑が続く)訳でして、付利の下げというのはまあやったらやったで今度は金融政策の枠組みを全面的に組み替えないといけないのですけれども、まあ問題はその事情についてこれからちゃんと説明してご理解頂けるかという話ですなあという所で。


・オープンエンドの前倒し実施とかですかねえ

他にあるとすればオープンエンド買入の前倒し実施という事くらいしか想像がつかないのですけれども、本当はコミットメントを途中で反故にするのってどうなのかという気はしますが、まあそこは適当にネグってしまうしかないですかねえという所です。ただまあ短国月10兆買入とかやられますと短国市場の金利がどうなるかとか想像したくないのですけれども・・・・・・・

などという所でしょうかね、良く判らんが。

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2013/02/14

○えーっと、これは黒田さん外れフラグですか???

そういや休み中にこんなんでてましたぞな。

http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE91A01B20130211
ADB総裁の職に満足、日銀人事については答えられない=黒田氏
2013年 02月 11日 17:22 JST

『[東京 11日 ロイター] アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁は11日、都内でロイターなどの記者団に対して、次期日銀総裁候補に名前が挙がっていることについて「ADB総裁の任期が4年近く残っており、今の職に十分満足している。仮定の話には答えられない」と述べた。』(上記URLより、以下同様)

と言う最初の部分はまあ社交辞令の類だと思うのですけれども・・・・・

『日銀をめぐっては「グローバルスタンダードである2%の物価目標を掲げたのは非常に画期的で正しい」と評価した。2%達成までに要する期間については「2年ぐらいが適切」との見方を示した。「日本国内に日銀が買うことができる金融資産は何百兆円もある」として金融緩和の手段は豊富にあるとの持論を改めて強調した。なお外債購入は「為替政策であり中央銀行の所管でない」として否定的な見解を述べた。』

2%達成が2年とか、買う事が出来る金融資産は何百兆円もあるとか、どうみてもそれ日銀総裁になったら自分で自分の首を絞める発言であって(だいたい何百兆円も買うということは当座預金残高が何百兆円も積みあがるという事なんですがどうみてもフィージビリティー丸無視にも程がある)、普通に日銀総裁就任を意識していたらその辺の話は適当に誤魔化すだろと思いますし、大体からしてそういうフィージビリティー丸無視の話を平気でするような中央銀行総裁が「国際金融マフィアのインナーサークル」とやらに入れるとは思えませんけど(少なくとも中銀サークルでは馬鹿にされるでしょ)どうしちゃったんでしょうかねえ。

とか考えて思ったのですが、これは黒田さん総裁就任の目が無くなったのを自覚したので無責任発言モードになったのではないかという推測をしてみましたが、実際にその予想が正しいかは存じませんので念の為申し添えます(^^)。つーかこれだけ大口叩いて(しかも買入できる資産が何百兆円というのは無理ゲーにも程がある)日銀総裁就任して2年で2%行かなかったので辞任しますとか恥ずかしいにも程があるので、逆にちゃんと考えているのかと不安になるのでございまするが・・・・・・・・

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