黒田東彦総裁(2015年度下期)

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2016/01/25「ダボス会議出張中の黒田総裁「必要なら追加緩和」発言」
2016/01/20「参議院予算院会でまたも発言だが春闘不発で躊躇なくを連発の特攻モード」
2016/01/18「黒田総裁参議院予算委員会で追加緩和否定答弁とな(機嫌悪そう)」
2016/01/15「黒田総裁12月の補完措置が裏目に出たせいで政策の限界について益々意地張りがヒートアップの感じ」
2016/01/13「またも黒田総裁意地張っているとしか思えん講演である」
2016/01/06「連合会合での発言が報道されたが黒田総裁意地になってねえか」
2015/12/25「今年の年末経団連講演は「転換点を迎えて」だそうですがさて」
2015/12/22「補完措置導入の定例会見はどうも会話がかみ合っていない感」
2015/12/02「名古屋公演の会見では一応ファイティングぽーすはとるもののだいぶ話が混乱しつつある」
2015/12/01「名古屋講演では大本営発表と威勢のいい話はするものの手詰まり感強し」
2015/11/25「総裁会見続き」
2015/11/24「定例記者会見ではロジック崩壊&質問にまともに答えないというグダグダ状態」
2015/11/10「総裁講演では2%に向けた進展ではなくデフレ脱却をアピールしつつ賃金上昇期待を強調」
2015/11/09「総裁講演では賃金上昇への期待を強調(予告編)」
2015/11/03「物価見通し先送りと現状維持の従来からの整合性の説明がまるでハチャメチャな総裁会見」
2015/10/21「WSJのインタビューで追加緩和やマイナス金利を否定」
2015/10/19「信組大会でのあいさつは物価1%超えを妙に強調」
2015/10/09「総裁会見の質疑応答は暖簾に腕押し糠に釘」
2015/10/08「総裁会見は往生際悪く(ロイターヘッドラインより)」

2015/01/25

○ということで引き続き緩和関連与太メモ(編集時追記:ダボス会議出席中の黒田総裁が追加緩和示唆発言、ご案内の通り帰国後の決定会合でまさかのマイナス金利投下になったんですよね)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160124/k10010383061000.html
日銀総裁 必要であれば追加緩和も
1月24日 6時32分

『スイスで開かれていた世界経済フォーラムの年次総会、「ダボス会議」に出席した日銀の黒田総裁は23日、現地で記者団の取材に応じ、ことしに入ってからの市場の動きは注視している、としたうえで、目標としている物価目標の達成に向けて「必要であればちゅうちょなく追加緩和だろうと何だろうと金融政策を調整する用意がある」と述べました。』(上記URL先より)

会見テキストとか講演テキストとかで出てくるときって「必要であれば躊躇なく金融政策を調整」とは言ってますが、「追加緩和」という言い方はあまりしていなかったように記憶しているのですが、追加緩和という文言キタコレですな。

・・・・・・・・とは言いましても、「金融市場の動揺がインフレ期待の低下や実体経済への悪影響を与える蓋然性が極めて高い」という理屈を繰り出せるのでなければ、ここで追加緩和するのってロジック的にはかなり無理がある(春闘に向けてマインド鼓舞するから追加緩和というネタはあるかも知れんがそれをやるならどんなに遅くとも昨年末にやらないと意味がなくて今更理由に使えないし、さくらレポートだって別に悪くは無いし名古屋なんぞは判断引き上げをしていますし・・・・・・・・)とは思えます。

#これで適当に逐次投入してガス抜きができるのなら逐次投入なのでしょうが

でもってまあ思ったのは、結局の所米国様の所が利上げ正常化一時凍結みたいな話になってくれれば日銀別になにもしなくても行けるんじゃネーノという話で(もはやロジカルでもなんでもないが)、今回のFOMC声明文で金融市場の動向についての懸念みたいなのを昨年9月のように打ちこんで頂ければ3月利上げ無し→金融市場ニッコリ→株高ドル安資源価格下落一服という図になるんですかねえとは思うのですが、問題のFOMCちゃんが今回日和声明文を出してしまうと3月利上げが絶対的に困難になってしまうという問題を抱えていて(1月やったら3月までFOMCが無いから)ここでいきなり旗を降ろすような動きに出るのかと言うとそこも微妙っつーか旗下ろしたくないんじゃネーノと思われる所です。

とまあ直前まで色々な要素があるのですが、全て金融市場マターの要素で、本来は金融政策は足元の金融市場動向云々ではなくて、経済物価動向をフォワードルッキングで運営するものなので、どうもこうドラギ先生が相変わらずドラギマジック扱いされていますが、あのおっちゃんが毎度足元の金融市場に振り回されるっちゅうか、金融市場の動きを何とか自分でコントロールさせよう(単に時間を稼いでいるだけのようにも思えますが)としているのが話をややこしくしているんじゃないかなあなどとも思うのでありました。




2016/01/20

○春闘期待薄でBBGお得意の関係者ネタ登場

既に散々報道されていますが
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO96311520Q6A120C1EA2000/?dg=1
賃上げ、市場動揺が逆風 春季交渉が事実上スタート
2016/1/20 1:11日本経済新聞 電子版

『2016年の春季労使交渉が19日、事実上スタートした。経団連は同日発表した交渉の指針で15年を上回る「年収ベースでの賃上げ」を検討するよう企業に求めたが、昨年とは異なり、基本給を一律に底上げするベースアップ(ベア)には慎重姿勢をにじませた。年明けから円高・株安が進み企業業績の先行きに不透明感が増したことも賃上げの逆風になっている。』(上記URL先より)

ということで正式に経団連の指針が出ておりますが、まーどこからどう見ても2%物価目標に向けて力強く賃金が上昇するような状態ではなくて、この前まで春闘春闘言いまくっていた日銀涙目ということでブルームバーグの毎度おなじみの「関係者」ソースでの日銀政策記事登場となりますな。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O16GMC6TTDS101.html
日銀:春闘に失望感強める、物価見通し再度の下方修正を検討−関係者
2016/01/19 19:03 JST

『(ブルームバーグ):2016年の春闘に対する失望感が日本銀行の中で強まっていることが複数の関係者への取材で明らかになった。黒田東彦総裁が強い関心を寄せている春闘が期待外れの結果に終わる公算が大きい中、来週にも追加緩和が行われる可能性が出てきている。』(上記URL先より、以下同様)

ということで関係者と言ってもどういう関係者だか分からない記事キタコレではありますけれども、まー賃金と春闘の所を強調しすぎたらいきなりこうなってしまいましたぞなという事で日銀残念無念。

『「高水準の企業収益と労働需給のひっ迫からすると、賃金上昇はやや鈍い」と黒田総裁は国会で15日答弁した。関係者によると、こうした懸念は日銀内で共有されつつある。賃金交渉が不発に終われば2%物価目標の実現に不可欠な期待インフレ率の上昇にも黄信号がともる。日銀は29日に公表する新たな展望リポートで、物価見通しをさらに下方修正し、2%の達成時期を再度先延ばしすることを検討している。』

ということでさらっと書かれていますが、これ問題なのは「何のせいで見通しを下げるのか」という部分なんですよね。すなわち、単にエネルギー価格要因でヘッドラインや日本版コアの物価がアガランチ会長なのが元々の置きよりも長くなったので下方修正、というのであれば、それ単体では政策変更にかかわるものではない(ヘッドラインの物価低迷がインフレ期待の低下をもたらすリスクがある、という話はここでは措く)のですが、春闘がイマイチさんで期待インフレの上昇が遅れそうだから見通しの下げ、というのであればそれは由々しき問題でありまして、日銀の標榜する「2年程度を念頭に出来るだけ早期に」に背馳しますし、「期待に働きかける金融政策」的にも働きかけが足りないというお話になりますから、これどういう理屈で話が展開されるかによっても全然話が違ってくると思いますけどね。


でまあ国会では引き続き黒田さんが躊躇なく対応と吠えている訳ですが。
http://jp.reuters.com/article/kuroda-idJPKCN0UX0CJ
Business | 2016年 01月 19日 14:35 JST
物価2%実現に必要なら何でもやる、手段も十分ある=日銀総裁

『[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日午後の参院予算委員会で、日銀が掲げる2%の物価安定目標の実現に必要ならば何でもやるとし、政策手段も十分にあると強調した。大久保勉委員(民主)の質問に答えた。日銀は2013年4月に導入した現行の量的・質的金融緩和政策(QQE)の下で、大規模な国債買い入れを進めており、QQEの限界を指摘する声も出ている。これに対して黒田総裁は「2%の物価安定目標を実現するために必要であればできることは何でもやる」と目標達成にあらためて決意を示すとともに、「そのために必要な政策手段は十分に有している」と限界論を否定した。』(上記URL先より)

ということですが、問題は追加緩和するとしても「メカニズム」的にその追加緩和の何がどうなって2%物価達成時期を早める効果があるのか、という説明が全くできない状態になっている事と、現在の金融緩和の枠組みが「緩和継続を現状維持」と言っても実は緩和をバンバン拡大しているので物理的な限界(バーナンキの背理法よろしく財政インフレになる出口または限界発生という意味な)がそう遠くなく起きるということですが、もうここまで来たら変に今の国債馬鹿買入を続けて全員が息出来なくなる前に追加緩和を特攻して盛大に焼け野原になって頂けると、今なら燃やされる前に家財持って一時防空壕に逃げる位の体力が円債市場の皆さんあると思うのですが、今の状況を1年も継続して「やっぱり燃やします」とか来られるとその時は足腰も立たなくなっていてそのまま日銀空襲で焼かれてしまうのでは無いかと懸念されるので、どうせ焼け野原にするなら早い方が良いのですけど、と最早ヤケクソの暴論を申し上げておきましょう。

本来ならばアベノミクス第2弾によって中長期的な成長力強化の政策が実施されて、それに合わせて金融緩和も中長期的に粘り強く実施して政府の成長力強化のサポートを行うというように政策フレームを中長期でも持つ金融政策にするのが筋だったと思うのですが、政府サイドは選挙モードの目先ネタばかりですし、一方で日銀は12月の補完措置によって「今の枠組みはだいぶ限界がありそうだけどもとりあえず延命装置つけとくわ」と公表した挙句に追加緩和に対するトーンアップをして、「中長期的に金融緩和を行う」という政策転換をよりやり難くなるような話の持って行き方をしていまして、中長期的な取り組みで成長力強化でトレンドグロースが上がるような政策なので構造改革的なシバキも入るから緩和的な金融環境で中長期的にサポートするという姿に急速に持って行き難くしてしまいましたな。これ12月の補完措置をこんなに大々的にプレゼンしないでしらっと技術的な話として出せば「今の枠組みをさらに継続しようとして時間稼ぎに来た」という印象を与える事もなかったのですけどねえ・・・・・・・・・・・・

まー黒田総裁のこのやる気満々ぶりは戦況が悪化してヤケクソになって本土決戦とか言い出している状態以外の何者でもないですが、政策が爆発した時の後始末が大変なことになるので爆発する前に回避、となるよりも後は野となれ山となれとなって黒田日銀のメンツの為だけに大爆発して一面の焼け野原にするという政策担当者として無責任にも程があるプレイに出ても何らおかしくないという風情ですので、後はどこからか「止め」が入るかどうかだけの問題じゃないですかねえ。

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2016/01/18

○国会で黒田総裁追加緩和否定チックな発言とな

金曜の参議院予算委員会ですが、音出さないで中継を見るともなしに見ていたので表情だけ見てましたけれどもちょっと黒田さん機嫌が麗しくないように思えましたが・・・・・・・・・・・

http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-idJPKCN0UT0BV
Business | 2016年 01月 15日 14:16 JST
現時点で追加緩和考えない、賃金上昇やや鈍い=黒田日銀総裁

『[東京 15日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は15日午後の参院予算委員会に出席し「現時点で追加緩和の考えない」が「物価の基調に変化があればちゅうちょなく政策を調整する用意がある」との従来見解を繰り返した。同時に「史上最高の企業収益とひっ迫した労働需給の割には賃金上昇はやや鈍い」との懸念を示した。民主党の石橋通宏委員への答弁。』(上記URL先より)

この前ロイターの記事引用した時にもありましたが、最近ロイターが妙に「従来見解を繰り返した」と一々説明を入れているのが妙な感じでして、いやまあ確かに実際に聞いてないからどういう文脈とニュアンスで説明しているのかは良く分からんのでロイターのいう事の方が正しいのかもしれませんけれども、総裁発言の中でテキストが出ている部分を見ますと12月の補完措置以降の黒田さんの発言って一段トーンアップしたと読む方が自然だと思うのですよね。

そういう中で今回「現時点で追加緩和の考えない」と来たのは(機嫌が悪そうだっただけに)売り言葉に買い言葉で出てしまったのかもしれませんが、従来のトーンアップ路線とちと違う感じです。まあ記事にもありますように、その後「躊躇なく調整」というのを入れていますので、多分「言っちまった」という奴で躊躇なく調整を後から入れたという感じに思えるのですよね。

と申しますのは、黒田さんって(その是非は別として)基本的に説明を単純化するようなアプローチをこれまで採っていて、どこぞの麿大先生のようにきっちり両方の説明をするから情報ベンダーが片方の部分だけで慌ててヘッドラインを打って何が何やら分からなくなるというようなアプローチを採らないというイメージ(イメージで語っていますので念のため)な訳でして、こういう形での両論併記モードは珍しいだけに、追加緩和に関して(1)本当に相変わらず目標行くと思っているから別に知らんがなという意味で追加とかしなくてもヘーキヘーキと思っているのか、(2)12月の補完措置以降緩和の限界とか言われたのでトーンアップしてみたものの、今度は追加期待が高まってきそうになって、これでは追加やるにしてもやらないにしてもあまり良い結果にならない可能性があるので一旦火消をしたのか、どっちなのか良く分からないのですが、まあ一旦追加緩和否定的なのが出て為替が何となく反応(なお国内債券は何ら反応せず)しましたが、その後の海外原油と米国指標のせいということになってしまいましたのでうっかり忘れそうになりますのでメモということで。

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2016/01/15

○黒田総裁の発言が引き続きヒートアップしているのだが

昨日もこんなの出てましたな。
http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-2percent-idJPKCN0US09F20160114
Business | 2016年 01月 14日 12:50 JST
金融市場、やや騒がしい=黒田日銀総裁

題名の方はどうでも良いのですが。

『[東京 14日 ロイター] - 日本銀行の黒田東彦総裁は14日、都内で開かれた第二地銀協会賀詞交歓会であいさつし、年初来「金融市場がやや騒がしくなっているが注視する」と述べた。その上で、金融政策運営をめぐり「2%の物価目標達成のためには何でもやる」と従来見解を繰り返した。』(上記URL先より)

ということで、こちらですと従来見解を繰り返したとサラッと流していますが、ベンダーに出ていたヘッドラインの印象とか、ここもと黒田総裁が賀詞交歓会的なイベントに出席して話をしているのが流れてくるのを見ると、12月の補完措置が結果的に微妙な結果を招いた以降、特に今月になって黒田総裁の発言がヒートアップというかエキサイトという感じを強めておりますな。

「期待に働きかける政策」という今となっては最早謎政策の世界になりつつあるモノを実施しているだけに、「現在の緩和政策の限界」と言われるのが政策効果を減殺するというお気持ちは分かるのですが、ヒートアップすればするほど市場が追加緩和を催促して追い込んで行くという流れになって、これ益々自分で自分の首を締めに行っているように見える訳でございまして、どうもリズムが悪くなって来ているようにしか見えないので正直心配になって来ましたですよ。

相場でも負けリズムになると一々動くたびに全部逆に行くというのがあると存じますが(存じますもへったくれもなくてお前もそうだろと言われると仰せの通りですがそこは華麗にスルーして下さいお願いします^^)、どうもここに来てドテンしてテンコシャンコになるの巻という風情を醸し出しているのが実にアレなのですが、何せ今の枠組みで追加緩和をすると出尽くし感が出る上に、そもそもMB拡大ペースを上げて長期国債買入ペースを拡大したとしても金利が無くなっても別にそれで設備投資が出たり消費が出たりする訳でもなく、増してや物価が上昇する訳でもなさそうという状態なのに神州不滅とか言って追加緩和特攻してどうするんでしょうねとは思いますが、このヒートアップ振りを見ているとヤケクソになって何をしでかすか分からんですな、ナムナム。

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2016/01/13

・黒田総裁何か意地というかヤケクソになってないか

こんなんありました。短いので簡単に。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160112a.pdf
ゼロ金利制約の克服:日本の経験


でまあ簡単に参りますが最初からアレ。

『本セッションのテーマは「ゼロ金利制約を超えて:金融政策へのレッスンは何か」ということです。このトピックを語るうえでは、私はおそらく世界中で最も資格のある人間の一人ではないかと思います。というのも、私は、10 年以上にわたりゼロ金利制約と格闘し続けてきた日本銀行を率いているからです。本日は、我々の経験と、我々の金融政策運営がどのように変化を遂げてきたのかという点についてご説明したいと思います。』

「ゼロ金利制約の克服」って確かに政策手段的には克服しているけど黒田さんが打ち出した物価目標達成に程遠い状態で出口が全然見えないのに何が克服だと小一時間問い詰めたい訳でして、確かに以前の福井総裁時代にはいったんゼロ金利制約を克服する場面がありました(リーマンショックであえなくおじゃんになりましたけど)けどその時代の日銀を散々批判してませんでしたっけあんさんとしか申し上げような無い。

・・・・・・などと血圧を上げても健康に悪いだけなので今の政策の説明部分を鑑賞。

『日本経済はなぜ「流動性の罠」から抜け出せずにいたのでしょうか。事後的に考えてみると、2000 年代の日本経済では、インフレ期待の低下と潜在成長率の低下が同時進行していました。名目金利が低下し、ひとたびゼロ制約に直面すると、インフレ期待の上昇が生じない限り、実質金利は低下しません。一方、いわゆる「ヴィクセル的」観点によれば、潜在成長率の低下は、「自然利子率」の低下を招きます。これら2つの事象が同時に生じたことにより、日本銀行は、実質金利を自然利子率よりも大幅に低い水準に誘導することができませんでした。このことは、日本銀行が、金融政策の最も重要な経路を失ってしまったことを意味します。


だったら置物リフレ理論のように金融政策が強力なので大丈夫という理屈で金融緩和をするのはちと変ではないでしょうかと思いますがそこは気にせず予想される次の所に。

『この状況を本格的に打開するため、日本銀行は、私が総裁として着任した直後の 2013 年4月に、「量的・質的金融緩和」(QQE)を導入しました。QQEがそれまでの試みと異なるのは、それがインフレ期待に直接的に働きかけるものであるという点です。』

期待に働きかける結果としての春闘ェ・・・・・・・・・・

『具体的には、QQEは2つの柱で成り立っています。一つ目は、2%の物価安定の目標を実現することへの強く明確なコミットメントです。二つ目は、コミットメントを裏打ちするための、前例のない規模での資産購入です。』

問題はこの「コミットメントを裏打ちするための資産購入」が実際のコミットメントにどう効いているのかという経路が3年近くたってもさっぱり分からず、今や「始めてしまった以上やめると失敗を認めたことになるのでやめられない」という典型的なアレ組織状態になっている事であって、そろそろオペレーションの限界も近くなってきましたので、「今の政策で当初考えていた政策経路のどこがどう効果あって足りなかったのは何か」というのをきちんと総括して頂きたいものです。

『このうち、前者は日本に特有の要素です。後者は、グローバル金融危機後に主要先進国の中央銀行が採用した非伝統的金融政策の間で、多かれ少なかれ共通する要素ですが、その規模自体はまさに前例のないものです。実際、マネタリーベースの名目GDPに対する比率は、米国や英国では 20%〜30%程度である一方、現在の日本では 60%を超えています。』

それで何故物価が上がってこないのかというのも中々の謎ではあるのですが。

『QQEを導入してから2年半以上が経過しました。QQEは、所期の効果を発揮しています。物価の基調は着実に改善しています。』

????

『例えば、生鮮食品とエネルギーを除いたCPI上昇率は、26 か月連続してプラスとなっており、これは1990年代後半以降初めてのことです。その最新の値は、11 月に 1.2%となっています。こうした改善傾向は、非常に良好な雇用環境によって支えられています。失業率は3%近傍まで低下し、わが国の完全雇用状態に相当すると考えられる水準まで低下しています。賃金も緩やかに上昇しています。』

円安効果はスルーですかそうですか。

『この点に関連して、デフレの時期には長いこと生じなかった、ベースアップの慣行が、労使間の年次賃金交渉の中で復活したということは、強調に値すると思います。こうした環境のもとで、小売業者によるマークアップ確保の動きが、消費者に受容されるようになってきています。』

という講演原稿が出来てドヤ顔(かどうか知らんが)で講演している直前に労働側はベア要求を昨年より下げるわ、経営側はベースアップをしないで年収ベースで済まそうとする(しかも増益企業のみ)わという素敵な話が出ている上に日銀謹製の消費者意識アンケートの結果も素敵だわというのが最早笑ってしまうしかありません。

『もっとも、日本銀行による2%の物価安定の目標達成に向けた取り組みは、依然として途半ばにあります。日本経済のデフレ状態は 15 年続きましたので、人々の間に染み付いたデフレマインドを転換することは、もちろん簡単ではありません。しかし、誰かが断固たる決意を持って行動しなければなりません。問題が物価である以上、その役割を果たすのは中央銀行です。』

ということで「問題が物価である以上」と言い出しているのが黒田さん意地になってませんかという感じでございまして、経済の力の結果として物価に出てくるので、経済にサポーティブな政策を継続して行けば物価が上昇する、というような白日銀ドクトリンに対して全面的に宣戦布告をしているのがこの「問題は物価である以上」という部分なのが中々お洒落というものです。

つーかまあ白日銀ドクトリンというよりは、最近すっかり梯子を外しまくっている置物リフレ一派の皆様やら、物価だけ上がれば良いというものではないとか言い出している政治方面に対してのメッセージでもあるようで、「物価が上昇すれば全てが上手く回りだしてハッピーハッピー」という当初の置物リフレ理論の原点を黒田さんが強硬に主張する姿に黒田さんのドグマ強すぎぃ!と思ってしまう訳ですが。

まあしかし何ですな、先般の生活意識アンケートとかもそうですけど、置物リフレ一派の皆さんは自分の理屈をプロモーションする際に「デフレ脱却イコール皆さんの生活が良くなる」とか「物価上昇イコール色々な問題が解消される」というように、デフレ脱却や物価目標に対する過大な幻想を振りまきすぎましたなあと思う訳で、夢が現実になってみた時に軌道修正すれば良いのに黒田さんがあの調子というのが何とも困った話ではありまして、ここまで言うなら本来1月に追加緩和しないと話がおかしいでしょという位の勢いで説明していて次の政策決定は何かをするにしても現状維持にしても説明どうするんだよと思うのでした。

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2016/01/06

○黒田総裁が意地になっているような気がする件について

お、おぅ・・・・・・・・
http://jp.reuters.com/article/kuroda-idJPKBN0UJ0JT20160105
Business | 2016年 01月 5日 17:55 JST
必要ならばさらに大胆な措置=連合で黒田日銀総裁

また市場は反応していないのですけれどもね。

『[東京 5日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は5日、昨年に続き日本労働組合総連合会(連合)の新年交歓会に出席し、日銀が進める大胆な金融緩和の必要性に対して理解を求めるとともに、必要ならば「さらに大胆な措置を取る用意がある」と強調した。』(上記URL先より、以下同様)

今度は連合にお出かけしてお話し。

『黒田総裁は「(物価)2%目標の早期実現を目指し大胆な金融緩和を進めている」が、それは「日本経済がデフレ均衡から抜け出し持続的に成長し、子供や孫の世代まで生活水準を落とさず暮らすために必要だから」と説明した。』

何か大きく出たな。

『日銀は「物価だけ上がればいいと考えているわけでなく、2%の物価上昇は見合った賃金の上昇がなければ持続可能でない」と強調。「歴史的にも物価と賃金は連動しており、賃金上昇は日本経済の持続的な成長のため不可欠」と呼びかけた。』

という事ですが、別のベンダーだとまた「2%は必ず達成」とか言っていまして、どうも周囲から梯子外される中で意地になっているんじゃないかと心配になる次第。12月の補完措置以降これまではオペレーションの限界とか政策の限界とか言っても債券市場の変なマニアが何か下らんことを言ってる位の扱いしか受けていなかったのがだいぶ変わったという状況を受けて単にブラフで言ってるだけなら良いのですが。

つーかまあ賃金春闘言い過ぎで、これ見通し通りに行かなかったらどうするんだとしか思えん・・・・・・・


http://jp.reuters.com/article/boj-kuroda-idJPKBN0UJ18320160105
Business | 2016年 01月 5日 21:55 JST
バズーカと呼ぶかはともかく、追加緩和いつでもできる=黒田日銀総裁

『[東京 5日 ロイター] - 日銀の黒田総裁は5日放映されたNHKとのインタビューで、2%の物価目標を達成できなくなるようなリスクが顕在すれば「バズーカと呼ぶかどうかは別として、必要があれば十分な追加緩和はいつでもできる」と述べた。インタビューは2015年12月28日に収録された。』(上記URL先より、以下同様)

というのもやっていたようですが、

『追加緩和の有無を問われ「現行の政策で十分物価目標を達成できる」と答えたが、同時に「色々なリスクが顕在化すれば、日銀としての約束がある」とし、必要ならば追加緩和を辞さない姿勢を改めて示した。』

現行の政策で十分物価目標を達成できるのに何で追加緩和を強調する説明をあちこちでしているのかが最早何が何だか分からない状態になっておりまして、ちょっと黒田総裁大丈夫かという感じまで漂って来るのですけれども。

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2015/12/25

○MPM議事要旨ネタの前に総裁講演ネタである

昨日は議事要旨ネタと総裁講演があったのですが、どちらもあまりネタがないなあと思いつつ、総裁講演の方を先にネタとして投下の所存。

#FOMCネタの続きはどうしたというツッコミを良い子の皆さんはしないようにお願いします

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151224a1.pdf
転換点を迎えて── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──

・今回も企業に向けて行動しろ攻撃ですが・・・・・・・・・・・

こちらも年末恒例みたいな講演ですが、今回一番言いたいのは最後の方にある企業に向けた行動をしろ云々のお話なのは、最近の経済団体向けの講演と同じではあります。

でまあそれは別に良いのですが、「転換点を迎えて」というお題は転換点だからもっと企業はマインドセットを変えろ、と言いたいのでしょうが、そもそもQQEは「2年」で物価目標を達成するという触れ込みだった筈で、2年どころかもうすぐ3年になろうという時間が経過しているのに未だに「転換点を迎えて」とか言っている時点でおまいらは企業に説教している前に自分たちのQQE政策のレビューを謙虚に行って何で未だに「転換点を迎える」などというのんびりとした寝言を言っているのかという点を反省して頂きたいと思うのですよね。

企業に対して行動しろマインドセット変えろと言ったって、それを言っている日銀が「2年で2%」をドンドン後ずれさせている時点で、企業の生き死にを掛けて企業行動について決断している経営者に対するアピールが出来るのかと小一時間問い詰めたいと思いますし、あたしゃ経営者でもなんでもなくて一介の市場の片隅にいる無力参加者ですから経営者様の考える事は妄想しかできませんけど、それにしたって「やるやる詐欺」をやっている人から「世の中変わるのだから行動しろ」とか言われても「お前は何を言ってるんだ」状態になるんじゃネーノとしか思えませんがどうなんでしょうかね。

つーことでですよ、もしマインドセットを変えたいのであれば、「2%達成」の旗を降ろす必要は全くないと思いますけれども、少なくとも今のQQEのやり方をやって行って現実問題として(デフレ脱却はしたかも知れんが)いつまでたっても2%の目標は遠いままという時点で「目標は正しいけれども戦術に問題が無かったのか」というレビューを謙虚に行い、「基本的な考え方には問題は無かったものの達成に向けた戦術を転換します」と緩和後退と思われないようなアピールを十分に行いつつ戦術転換をした方がマインドセットの転換が早くすすむんじゃないですかねえってのはそんなに無茶な話ではないと思っているのですけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・

という悪態はともかくとして講演本文から少々。


・まあ仕方がないのだが成果の説明が超一面的でワロタ

『3.拡大する経済の復活』という小見出しから。

『まず、図表4をご覧ください。ここ 15 年間の消費者物価と名目所得の推移を示したものです。』

お、おぅ・・・・・・・・・・・

『左のグラフは、消費者物価の推移を水準で表したものです。これをみると、15 年にわたって下落を続けてきた消費者物価の水準が、「量的・質的金融緩和」導入とともに反転上昇したことが一目瞭然です。右のグラフは、名目ベースの国民所得──大まかに言えば、企業収益と雇用者所得の合計と考えられます──の推移を示したものです。名目所得は、リーマンショックによって大幅に落ち込みましたが、消費者物価と同様、「量的・質的金融緩和」導入以降、明確な増加に転じていることがみてとれます。国内で生産された付加価値を表す名目GDPは、はっきりとした増加に転じました。海外の事業活動から国内に還元された所得も含んだ名目GNI(国民総所得)については、企業の海外展開の拡大と円高の修正を受けて、より顕著に増加しています。』

『これらの事実から明らかなように、「量的・質的金融緩和」導入以降の日本経済においては、「企業収益や雇用・賃金の増加・上昇を伴いつつ、物価が上昇する」という日本銀行が目指している姿が、まさに実現しつつあります。このように物価と名目所得の両方が上昇・増加するもとで、実質所得も増加を続けています(図表5)。重要なことは、物価、名目所得、実質所得のいずれもが上昇・増加する姿に転換したということです。GNIでみると、デフレ期には、実質所得は増加傾向を辿っていましたが、物価が下落を続けるもとで、名目所得は増加していませんでした。その結果として、企業や家計の支出行動が消極的なものになっていたことは、これまで繰り返し申し上げてきた通りです。』

という話をしているのですが、これパーヘッドの実質所得の話とか、実質GDP成長率の話とかは華麗にスルーしていて、消費増税で個人消費が落ちたということは、それすなわち将来の所得期待が盛り上がらない中で外的コスト要因で物価が上がってもそれは誰得物価上昇という話だったりするとか、まあそこらの話は割愛して説明に都合の良さそうな話を並べてくるのが想定通りですが何だかなあと。

んでもってその結果として

『このように経済政策によって景気や物価のトレンドが大きく転換することは、歴史的にみてもそう頻繁に起きることではありません。』

と大きく出ているのですが、後ろの方では、

『設備投資と人材への投資をどう組み合わせて、経営資源の最適な配分をグローバルに実現していくのか、これは皆様が日々深く考えておられる経営戦略そのものだと思います。私に付け加えられることは多くは無いのですが、ひとつだけ申し上げるならば、私には、世界の情勢と日本の環境は、「今、決断すべき時期になってきているのではないか」と、私たちの全てに迫っているように思えてなりません。』

『私は、日本の企業や家計がデフレ期のマインドセットの中に沈んだままで動いていないとは全く思っていません。「量的・質的金融緩和」のもとで、デフレマインドは着実に転換してきています。海外子会社の投資やM&Aなどを含めれば積極的な投資を実践している企業や業種もみられます。皆様の中にも、既に行動を起こされている企業はたくさんあると承知しています。むしろ、日本経済の置かれた状況を考えれば、そうした積極的な動きをさらに拡げていくべき重要な時期、クリティカルな時期にある、と申し上げたいのです。』

てな感じで結局は「企業の皆さん賃金上げて設備投資してちょ」という話になっておりまして、(今日ネタにする時間がなくてスイマセンが)11月MPMでも実際には「労働市場がタイトで企業収益は高水準なのに何で賃金上昇や設備投資が伸びないのか」という議論が行われている次第な訳で、まあ威勢の良い話をして企業経営者のマインドセットを鼓舞したい、というのは分かりますし、それくらいしか日銀総裁としてやることも無い、というのは理解できるのですが、先ほど申し上げましたように、そもそも物価目標達成が最初に大口を叩いて前任の総裁副総裁を石もて追い出すまでした人たちが結局できない事の言い訳を繰り返して漫然と同じ施策を継続している訳ですから、そら時間の経過とともに信認されなくなるわなと。


・12月の措置についての説明部分で緩和の香りも出してみるものの・・・・・・・・・・・

『5.量的・質的金融緩和を補完するための措置』というのが後ろの方にありまして、各種措置について説明しているのですが、説明そのものはまあ大体日銀の公表文書と総裁会見での説明と同じなので途中は盛大に割愛します。

『こうした一連の措置は、それ自体は所謂「追加緩和」ではありませんが、資産買入れを一層円滑に進めることを可能にすることで、先行き「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、また、必要と判断した場合に「調整」することができるようにするものです。


というのが結論でして、これまでだったらこの部分を見て「よーし追加緩和期待」という感じになる(債券は兎も角として為替や株式は特に)方が普通の反応だった気がしますが、昨日の講演ヘッドラインを見ても別に市場が反応した訳でもなく(全般的に板が薄いのはあるでしょうが)という結果。

元々最初の会見で「調整であり緩和ではない」を連呼してしまったのも効いてしまったようにも思えますが、今回の措置って一つ一つは(ETFは正直ナンジャソラなので別ですが)趣旨としては別に変な話でもなんでもなくて、担保拡大とか長い目で見て(日銀が指定する信託化のスキーム次第ではありますけれども)結構なお話ですし、買入年限の長期化もどうせ実施しないといけない話だったりします。REITの10%については微妙な気もしますが継続するなら止む無し(継続するのが如何な物か的な問題はあるけど)。ETFについてはナンジャソラなのですが、設備投資に積極的な企業への融資への支援オペはまあ話の筋は分かります。

つーことで、今回の措置の何が悪かったかと言えば「色々と細かいのを出して合わせ技一本」みたいなプレゼンをしたのが間違いで、おかげで急にあちこちから「オペレーションの限界」とか「QQEの限界」というコメントがバカスカ出るようになって、正直こんなに早くにそこら中から限界論が噴出してくるとは思わなかったというイメージでして、限界論を市場が意識しだすと自己実現的に限界が近くなってしまうというのが市場の仕様である以上、ここまでの市場の反応だけで言えば(今後どう変化するか分からんので最終的な評価はできないけれども)変なプレゼンをした結果として却って政策の寿命を縮めてしまっている可能性が出てきたかなと。

この施策は淡々と1本ずつ別の機会に出して「ああちょっとした修正ね」で済ませれば良かった話ですし、ETFの所は単に金融機関保有株式購入分の売却を延期すれば良かっただけの話で、変な見せ方して最初追加購入と誤認させてしまったのが却って失望を呼ぶことになってしまったと思います。


ということで、黒田総裁講演の上記の下りというのは、今のQQEに関して限界論が盛り上がってしまうのを火消している、という部分なのですが、あまりここが注目されていないというのがちょっと残念な所でして、これは勝手な想像ですけれども、限界論みたいなのが言われるようになればなるほど日銀としてはそれを否定して回らないといけなくなりますので、今後の執行部からの講演などでは「必要ならば追加緩和」節がより強めにアピールされてくるのではないかとは思うのでありました。なお実際に追加緩和をするかと言えば10月の時点で追加緩和していないのでお察しという所ではあるのですが。


#てな訳でただのアタクシの雑感で全然総裁講演ネタじゃなかったですどうもすいません

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2015/12/22

○総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1512d.pdf

・追加緩和ではないとの説明

『(問) 今回の補完措置についてですが、これは金融緩和つまり黒田バズーカの第 3 弾というような、そんな位置付けでいらっしゃるのかどうかをお聞きしたいと思います。それに関連して、おそらくこの措置によって、金融緩和をより長い期間続けていくことが可能になるかと思いますが、それは金融緩和の長期化というものを見込まれているのか、逆に言うとなかなか 2%達成は時間がかかると考えていらっしゃるのか、その考えをお願いします。』

『(答) 日本銀行は「量的・質的金融緩和」に関して、従来から、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うと述べています。今回の措置は、経済・物価見通しの下振れリスクの増大あるいは顕現化に対応するものではありません。』

かつて「景気判断を引き上げながら当座預金残高目標の拡大を実施」というオモシロ政策を打った(ちなみにその時の会見要旨は今見てもハチャメチャなので鑑賞用にお勧め)福井俊彦という方がいらっしゃいました(遠い目)。

『輸出については判断を上方修正していますし、その他についても、短観では業種・企業規模にかかわらず、収益が上方修正されており、経済・物価見通しが下振れるリスクが増大するとか、顕現化したという状況ではありませんので、そうした意味での「必要な調整」という追加緩和には当たらないと思っています。』

追加緩和ではありません。

『むしろ、資産買入れを一層円滑に進めることを可能にするということで、「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、物価安定目標の早期実現のために必要と判断した場合には、迅速に調整ができるようにするための措置であるということをご理解頂きたいと思います。』

謎の説明をしていますが、つまり追加緩和をやりたくないけれども今の政策はできるだけ延命したいからその措置を取りまして、ついでにちょっと見栄えを良くして出してみましたよ、ということですね。

『物価安定目標については、先程申し上げた通り、来年度の後半頃に 2%に達する見込みが高いとみています。いずれにしても、「量的・質的金融緩和」については、2013 年 4 月に始めて以来、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続できるようになるまで継続するということを申し上げて 2%の「物価安定の目標」の実現に強くコミットしています。その点はまったく変わりがありません。』

2年という文言が無いのはご愛嬌(?)としましても、今回引用していませんがこの質疑の前の所でも思いっきり「物価2%は達成しますよ何言ってるんですか」的な説明をしていまして、現行の政策のまま粘っていると本当に物価がホイホイ上昇して2%に向けた経路をたどる、という建付けで頑張っているようなのですよ。

この日銀執行部の謎認識に対して市場的にはどう見ても行かないどころかここから先行き上昇が鈍化してくるんじゃないか(コアコアとかが)という認識になっているのですが、既に2%達成時期が2回も先送りされている時点で黒田総裁の説明が「もうすぐ天から天兵が降りてきて包囲軍を成敗してくれる」というレベルになっているようにしか見えないのが誠に残念な所です。


・説明が長いのは説明が苦しい証拠です

お前の駄文も無駄に長いじゃないかというツッコミを良い子の皆さんはしないように。

『(問) (前半割愛) もう 1 点は、今回設備投資や人材投資に取り組む企業をサポートするということで、かなり踏み込んだ印象がありますが、なぜこういった企業を対象にしたETFを買うということになるのか、むしろこういった企業が積極的に人材投資や設備投資を増やすために、経営環境を良くすることこそが日銀がやるべきことではないかと思うのですが、なぜこれがETFを買うということにつながるのか、お伺いします。』

『(答)(前半割愛)2番目のご質問は、この第2の点(引用者注:前半の答えの中で今回の措置について「2 つ目は「量的・質的金融緩和」の効果が企業部門をはじめとする実体経済に、より効果的に浸透していくようにすることです。」と答えています)について関連していると思いますが、「量的・質的金融緩和」のもとでの金融の緩和は極めて大幅なものであり、最近の短観その他の指標にも表れている通り、企業側からみても金融機関側からみても、金融は極めて緩和された状況にあるということです。そうしたもとで、ポートフォリオ・リバランスを含めて様々なことが行われ、企業収益は今回の短観でもさらに上方修正され非常に良好な企業環境になっています。』

長いので途中で段落分けしますよ。

『そうした中、実際に設備投資や人材投資に積極的に取り組んでいる企業も多いと判断していますが、やはり業種あるいは個社ごとに色々なばらつきがあり、全体としてさらに広がっていくことが望ましいということも事実です。』

それはつまりこれだけのコストを掛けた金融緩和が実体経済というか企業行動や企業の期待に対しての働きかけというか効果が弱いという事を意味しているのではないでしょうか。

『企業を巡る環境は極めて良好な状況になっていますが、まだ、今申し上げたようなばらつきがあって、全体としてはさらに広がっていくことが望ましいということを踏まえ、日本銀行としてできる限りのサポートを行うということにしました。ETFについて特別の枠を設けて、設備、人材投資を進める企業の株式を盛り込んだETFが組成されれば、遅滞なく支援しますし、当面はJPX日経400連動型に投資していきますが、これでは上場企業に限られてしまいますので、現在ある成長基盤強化のための貸出支援策を新たに拡充して、設備、人材に積極的に投資する幅広い企業に対する支援も行うことにより、両面からサポートを行うことにしました。』

単に貸出支援策の拡充だけで良かったのではないでしょうかねえ。つーかJPX400ってROE経営的に優秀な企業群(定量項目で3年平均ROEのウェイトが40%ってのがありますがな)だった訳で、設備・人材投資って話になると将来的な企業の力を高めるためには重要だけどROE的な即効性のある話じゃないので、そもそもJPX400とこの話を同列に並べるのも微妙で、ROEはROEで重要な話なのだから本件とは別の話にした方が良かったのではないでしょうかねえ。

『おっしゃるようにある意味踏み込んだと言えると思いますが、それは企業を巡る環境がよくないということではなくて、日本銀行として既に十分によい事業環境になっていると思っており、そうしたもとで企業の努力もみえてきていますが、業種ごとのばらつきもあり、さらにこれを広げていくことが望ましいということに鑑みて、中央銀行としてできる限りのサポートを行うということにした、とご理解頂きたいと思います。』

何か苦しい説明をしていますが、要するにマネタリーベースを引き上げてインフレ期待を引き上げて実質金利が下がると消費や投資が自動的に出てきてウハウハですよというナイーブにも程がある理論が棄却されたという話なのでしょうが、そこは否定する訳には行かないのでああだこうだと苦しい説明をして、過去の理論は無かったことにして頬被りするという手段に出ています。


・限界は否定していますが・・・・・・・・・・

『(問) 今回の補完措置の趣旨についてと、もう 1 点お伺いします。念のための確認なのですが、巷で言われている「このままQQEを進めていても、いつかは限界が来るのではないか」という限界をむしろ意識されているからこそ、この限界を取り払うという措置を導入されたのではないかと見受けられるのですが、このまま行っても限界が来るのではないかという点についてご見解をお伺いしたいと思います。(後半割愛)』

この説明もまた長い、というのが手詰まり感を示していますな。長いのでまた段落分けします。

『(答) 前から、「量的・質的金融緩和」について、当面、何か限界があると思っていないと申し上げており、今でもそう思っています。ただ、先程申し上げたように、「量的・質的金融緩和」で大量の国債を買っていく中で、金融機関によってはもう国債をすっかり売ってしまって、その他の担保が必要な先もちらほらとあるようです。トータルで限界があるとは全く思っていませんが、そういう声もあることを踏まえて、適格担保の範囲を広げることにしました。』

限界があるという話をしているようにしか見えません。

『また、長期国債の買入れについても、今の時点で何か限界があるとは思っていませんが、来年にかけて日銀が保有している国債の償還がかなり増えますので、80 兆円をネットで増やしていくことになりますと、グロスでの買入れ額がかなり増えることにもなります。』

そんなのはだいぶ前からわかっている話なのですが。

『そうしたもとで、イールドカーブ全体を引き下げていくという「量的・質的金融緩和」の観点から言うと、短いゾーンに集中してイールドカーブを下げるのは適切ではなく、全体を下げていこうということですので、自ずと買入れの平均残存期間がだんだん長くなっていきます。』

???????????????????意味がわからん。

『7 年〜10 年というところをすぐに超えるわけではありませんが、もっと幅広くイールドカーブ全体を引き下げられるように、7 年〜10 年ではなく 7 年〜12 年に広げて、より柔軟に、弾力的に国債買入れが進められるようにしたということです。いずれも、限界があって何かできなくなるから云々ではなくて、買入れをより円滑に行い、イールドカーブ全体を下げていくという意味で、「量的・質的金融緩和」の趣旨に合うように緩和を進めていく観点から、こうしたことを予防的に進めていくことが望ましいと考えて実施したわけです。』

黒田さん的にはこの手の技術的問題に興味は多分無いと思うのですが、「予防的に」とか口を滑らせていますので、事務方の方から「今の枠組みのままで急にオペが爆発したら緩和政策の限界と言われて明らかに問題が発生しますので問題が起きる前に対応できる糊代を作りたい」と説明があったのは明らかでして、つまりは今の政策に関してひたすら粘っていれば天から天兵が降りてきて2%は達成するという見込みの元で出来るだけ粘りたいという日銀の意思だけは良く伝わってきます。


・勝負は4月ですかね

『(問) 今回の補完的措置についてですが、実際に買入れを増やされるのは2016年4月からと書かれていますが、このタイミングで打ち出されたのは、ちょうど春闘がこれから始まりますが、労働組合の要求も若干慎重な感じになっている中で、その辺のマインドを転換させるというようなお考えはあるのでしょうか。』

質問はどうでもよいのですが答えの方が今後の日銀的な関門を分かりやすく示しているので回答を鑑賞。

『(答) 春闘の前にまずは冬のボーナスの話がありますし、来年の春闘に向けての労使の色々な話し合いもあるでしょうから、私どももその行方を大変注視しています。それは事実ですが、それと今回の補完的措置を決定したこととは、直接的な関係は全くありません。』

まあ補完措置ですから関係ないでしょうが、その前に春闘に加え冬のボーナスとというのを思いっきり出してきまして、つまりは賃金動向超重視という事ですから、そういう点でも4月には一つの決着なり落とし前なりが必要になりそうです。

『この時期に決定する必要があったのは、まず第 1 に、来年にかけて貸出支援基金等の制度がこのままでいくと受付期間の終了を迎えてしまいますので、これをどうするかを決める必要があるということで、今回、それぞれ1 年延長することにしました。それから「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れについても、銘柄別の買入れ上限に達するJ−REITが増加しつつあること、さらには先程申し上げたように、本行保有国債の償還が増加してグロスベースの国債買入れ額が増加する見込みがあること、そういった点も踏まえて、この際、より円滑に「量的・質的金融緩和」を実行するために対応したということです。』

この辺はどうでも良い。

『「量的・質的金融緩和」のもとで、企業のデフレマインドは転換してきているとは思いますが、この動きをさらに広げていく必要もあると思っています。そういった意味で、本日の金融政策決定会合において、来年以降も「量的・質的金融緩和」のもとでの資産買入れを円滑に遂行するとともに、その効果を実体経済により効果的に浸透させるということで、今回の措置を決めました。』

でもってその企業のデフレマインド云々というのは、今後の賃金動向と、来年に入ってからの価格設定行動と、投資動向に現れる訳でして、投資の方は少々お時間掛かるかも知れませんが、物価という意味では賃金と価格設定行動に関して来年入ってからの傾向が見えてくるのが4月の展望レポートの時期になりますし、選挙までの日程考えると政府のデフレ脱却宣言的な物(が出来ればの話ですが)とかも想定されたりしますし、色々なものが来年4月に向かって集約されてくるように思えてきますがどうでしょうかね。


ということで質疑は長いのですが今一歩話が噛み合っていなくて面白くないので本日はこんな所で勘弁。

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2015/12/02

○総裁会見の説明が微妙に混線しているなあと思うのですがファイティングポーズだけは妙に旺盛

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1512a.pdf

・確かにこの辺りは気になりますよね

『(問) 講演の内容について質問させて頂きたいのですが、講演の中で、2%の目標の早期実現ということで、いくつかの力強い言葉が入っていたかと思います。』

まあ現実には白川ドクトリンの方が正しかったんじゃネーノという話がジャパンのみならずあちこちで出ているように思えますので、その線から悪態を申し上げた訳ですけれども、昨日も申しあげましたように「経済の実力にあった物価上昇水準」という白川ドクトリンを否定する所から始まっている黒田ドクトリンを前提に考えた場合、昨日のこのあたりの言葉って別の取り方になる訳ですよ。つまり・・・・・・・・・・・

『例えば、動くのは日銀であるとか、早期実現のために必要と判断すれば躊躇なく対応するという姿勢を示されたわけですけれども、1 点教えて頂きたいのが、先の10 月末の決定会合では、2%の物価安定目標の達成時期を半年後ずれさせたにもかかわらず、政策は据え置かれた。その行動と、今回ここでおっしゃっている早期実現のために必要と判断すれば躊躇なく対応するとおっしゃっていることとの関わりがちょっと分かりにくい部分があるので、どういう意図なのかを教えて頂きたい。16 年度下期は必ず守るという、そういう表明なのかどうかも、併せてお聞きできればと思います。』

ですなあ。

『(答) 10 月末に新しい展望レポートを示して、従来申し上げていた、2016 年度前半頃に 2%に達するという予測を半年後ずれさせて、2016 年度後半頃に 2%に達するという予測を示したわけです。その際にも、物価の基調自体はかなりしっかりと着実に改善してきていると申し上げました。』

で?

『いわゆる生鮮食品とエネルギーを除く物価上昇率が(以下延々と講演で出ている「あれも良くなったこれも良くなった」という話をしていますが長いので途中割愛)そういう判断のもとで、現在の「量的・質的金融緩和」を継続していくことで、いわば累積的に緩和効果が効いてくるわけですが、それを着実に進めることによって、2%の「物価安定の目標」を早期に実現できるという確信を持ったことから、引き続き「量的・質的金融緩和」を遂行していくという決定に至ったということです。』

まあすげえ長い説明(面倒になって途中を割愛していますが)をしているのは説明が苦しいということでしょうな。

『その時にも申し上げましたが、これでは早期に 2%を達成するということはできないというように物価の基調が変わった場合には、躊躇なく、追加緩和であれ何であれ政策を調整します。』

ということなのですが、そもそも基調がどうのこうのという話をしている時点で早期達成と話の整合性が怪しい訳でして、早期達成というのがあくまでもただの気合とかスローガンだというのでしたら基調がどうのこうのという話は分かるのですが、本当の本当に期限を切って達成したくて何が何でもやるのでしたら基調がどうのこうのというようなのんびりとした話をするのではなくて、円安に思いっきり振ってコストプッシュでもなんでも良いからもう一段ステージの変更が必要ではないかと思うのですよね。それが経済全体にとって良いのかどうかは別にして。

『今回の私からの挨拶では、この東海地方という、景気が着実に回復し、賃金も設備投資も伸びている地域での懇談ということも踏まえ、特に従来申し上げたことを繰り返し、かつ、強調しました。その際のポイントは、既往最高水準の利益をあげている東海地方の企業部門に対し、引き続き賃上げ、さらには設備投資に積極的に取り組んで頂きたいという希望を述べるとともに、日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」を早期に実現するというコミットメントは不変であり、必要があればいつでも躊躇なく政策を調整するという強い姿勢をお示しした、ということです。』

ということで企業にそういう話をしているのですが「2年で達成」というコミットメントを全然達成していないのに「コミットメントは不変であり(キリッ)」とか言われても説得力というのが無い(からうっかり「2年」を言わないようにしているでしょうけれども)訳で、2年で2%達成のコミットメントを達成しなくても基調とか言い出して言い逃れできる日本銀行の皆様に対しまして、経営判断を誤った場合にそれこそ大きな場合には生きるか死ぬかという話になる企業経営の皆様が「達成もしていないコミットメント」を盾に賃金上げろ投資しろと言われてそう簡単にホイホイ動く訳ないでしょと思いますし、昨今のお願い行脚(かどうか知らんが)にはその辺の認識がヌル過ぎですと宣伝して回っているのか、そうでないなら統制経済国家の夢でも見てるんですかと小一時間ではございますな、うんうん。


・追撃質問である

『(問) 10 月 30 日の決定について、このまま継続することで 2%の物価目標を早期に実現できると確信していたから、現状維持でよしとしたということをおっしゃいました。同時に 11 月の会合後の会見などでは、やはり賃金が極めて重要であると、非常に強い関心をもってみておられるとおっしゃっておられました。』

ですなあ。

『その意味では、2 年連続のベアは実現したのですが、3 年目の来春の春闘では、今年並みの賃上げ・ベアで十分なのか、2016 年度後半に 2%の物価目標を達成する上で、今年並みで十分なのかどうか、それをまず 1 つお聞きします。』

ベアは実施するが賞与は減るとかそういうオモシロ展開の可能性もありますけどね。

『その上で、連合については、今年は 2%以上の賃上げ・ベアを要求したわけですが、今度は 2%程度と若干トーンダウンしています。もし来春の春闘のベアが、黒田総裁が目論んでいらっしゃるというか、期待していらっしゃるような水準に達しない場合には、やはりこれは物価が上がらなければ、賃金も上がらない、賃金も上がらなければ、物価も上がらないと、11 月の会合の時におっしゃったように、やはり物価 2%目標というのは遠のくのは必至ではないかと思います。』

『その場合には、それが明らかになるか、あるいはそれが明らかにそうなるであろうと見越された場合には、追加緩和というのは、これはもう避けられないのではないかと思いますが、如何でしょうか。』

連合のベア水準云々もそうなのですが、そもそも給与というのには生活給という面もある訳ですから、ヘッドラインの物価が0%前半でフラフラしているんだったらそら賃上げそんなにせんでも良かろうという話になりますわな少なくとも経営側だったら、と思いますから、そういう意味からも「基調ガー」とか言ってほらこの数字が上がっていますよ凄いでしょうとか言われましてもそれはちょっと違うんじゃないのと存じますし、やっぱり円安に振ってヘッドラインの物価を上げないと話が始まらないんじゃないの(円安に振るべきとは言ってない)的なツッコミも聞いてみたかったりしますな。

ではお答え。

『(答) 本日の懇談の中でも、資料の図表 9 で賃金上昇率と物価上昇率のグラフによって、賃金と物価は中長期的にみれば、賃金が上がる時は物価も上がり、物価が上がる時は賃金も上がる、物価が下がる時は賃金も下がり、賃金が下がる時は物価も下がるという意味で、いわば同調して動くということを、統計的な事実として示しました。』

経験的な事実じゃないの?

『他方で、賃金が物価と同じペースでは上がらないので、物価だけ上げても仕方がないから、賃金がもっと上がるのを待とう、というようなことは全く考えていません。』

講演の方では一方で「賃金と物価がバランスよく上昇する状況が良い」と言ってみたりしていて、そちらの方はどうせ政府の方から梯子外された上に釘を差されている状態なので言わない訳にも逝かない(しかも沈没船から逃げ出すかの如くドブネズミの人たちまでもがそういう話を最近している次第だし)ですな。

然るに、黒田さんとしては最初に「とにかく物価を上げて期待インフレを引き上げて実質金利を下げれば全て上手く行く(そのためにはMBを直線一気理論で拡大すればよい)」という話で始まっており、一度その方向で走り出したものは経済にとってどうだととか言われても知らんがなというようなもんで、御聖断が下らなかったら本土決戦国土丸焼けになるまで戦争を続けたとしか思えない昭和軍事官僚の趣を感じさせる風情になっているのが今回の講演やら会見の直近引用部分だったりするのですよね。となりますと、黒田さんとしては梯子をドンドン外されるわ置物リフレ一派はドンドン逃げ出すわという状態の中で、ランボー怒りの追加緩和とか打ち込んで来る勢いになってもおかしくないですし、講演の中での勢いとかはそういう成分もだいぶ今回濃いですよねとも思ったりするのですよ。

まあ黒田さんの意地と体面の為に無理矢理円安に振って輸入物価だけ上げられても誰得物価上昇にも程があるので、お前の意地と体面で日本経済を巻き込まないでくれとしか思えんけど。

『日本銀行としての目標であり、最も強く働きかける対象というのは物価ですので、先程来申し上げている通り、物価が 2%の目標に向けて着実に前進していくということが重要です。』

講演の方でもこういっていましたが、この辺りだけフォーカスするとヤケクソ追加緩和を打ち込んでくるとかいう目も考えられますが、「物価だけ上昇して生活が苦しくなっただけ」という話になるのを恐れる政府方面も止めに掛かるでしょうし、審議委員とかでも止めに掛かるのが出てくるでしょうから、執行部が爆弾三勇士となって敵陣の鉄条網に向かう前に自陣で爆弾が爆発するというコミック展開になるかも知れませんけどね!!!!

『2%の「物価安定の目標」を早期に達成することが難しいということであれば、何回も申し上げますが、躊躇なく追加緩和であれ、何であれ、金融政策を調整するという姿勢に全く変わりはありません。』

この「何であれ」ってナンジャラホイという所ですが、実は政策の調整と称して金利政策への移行と低金利政策の長期化のどさくさにTaperingをする(しないと今の政策が早期に爆発するから仕方ないのだが)というのも調整かも知れませんが、追加緩和じゃなくてヤケクソ物価上昇政策をするとなりますとまさかの外債購入構想浮上とか突っ込む気なのかとかギャグをかましておきます(なお米国様がお怒りになる模様なのでギャグ以上にはならないでしょ)。


『そうしたもとで、物価と賃金は同調的に動くわけですから、当然、私どもとしても、そういう物価のパスを考えていく上では、賃金も上がっていくことを期待しているということです。ただ、何度も申し上げますが、私どもは賃金をコントロールできるわけでもありませんし、賃金をターゲットにしているわけでもなく、あくまでも、2%という「物価安定の目標」をターゲットにして、金融政策を進めているということであり、従来通り、2%の「物価安定の目標」の早期達成のために必要であれば、躊躇なく政策を調整するという考えに全く変わりはありません。』

賃金が上がらないと物価が上がりにくいのか、物価さえ上げてしまえば賃金は上がるのかという話が混線して分かりにくいのですが、さっき申し上げたようにそもそも論として「物価も上がっているので従業員の皆さんの生活水準の維持のためにも賃金を上げないと皆様に逃げられてしまいますがな」というので見る物価はあくまでも総合物価水準じゃネーノとしか思えないので、色々なコア指数を出して「この通り基調は上がっています(キリッ)」とか言われましても、それはエコノミストや市場関係者に意味があっても、企業行動に対してという意味では話が別のような気がする訳で、ここの説明の中で言っている「物価」がふわっとしているのが説明をややこしくしている(ゴリゴリやってしまうとヘッドラインの物価を上げる為に円安誘導すべしという一点に答えが集約されちゃうので困るんでしょうが)のでしょうなと存じます。

しかし「躊躇なく政策を調整するという考えに全く変わりはありません」を連発している訳で、黒田さんとしてはランボー怒りの追加緩和をやりたかったんじゃないのかと思わせてくれるような感じの物言いで、この前までは追加緩和もしませんし政策の見直しもしませんという物言いだったのに、先般の10月30日議事要旨もそうですが、説明トーンには変化がありますよねと思うのです。

逆に「追加緩和はもうできない(実際にこの調子だと来年のどこかで追加とか物理的に大爆発確定なのだが)」という認識になったので、せめて威勢良くファイティングポーズをとらないとマズーという考えの元で意味不明なまでに急にファイティングモードになっているという考え方もありますので、まあどっちなのかというのはワカランチ会長ですが、短国ゾーンがこの調子でマイナス継続されていきまして、中短期の金利が浮上しない状態が続くと、来年のかなり早い時期に輪番が大爆発(札割れ頻発とかとんでもないマイナスの買入連発とか)しても不思議ではなくなってきますので、どうするにしても結構残り時間は短い訳で、2017年消費税見極めてから政策見直しとか言っているような時間軸では無いと思いますがどうでしょうかね。


・賃金と物価がパラレルに上昇すると言っているのにこの答えは何ぞ?

『(問) 賃金に関連して 2 点お伺いします。(前半割愛)もう 1 点、賃金も今後上がっていくということを期待しているということをおっしゃっていますが、実際にはその押し上げていく要因となっている、原油安を除いた物価が上がっていけば、それに見合った形で賃金は上がっていくということを考えていらっしゃるのでしょうか。』

うむ。

『(答) (前半割愛)それから、賃金上昇──ベアを含む賃金上昇──が、何によって決まってくるのかということは、色々な研究がありますが、マクロ的にいえば、需給ギャップがどんどん縮小し、プラスになっていくと、その過程で労働市場がどんどんタイトになっていきます。現実に労働市場がタイトになっていることは、数十年来の高さになっている有効求人倍率とか、数十年来の低さになっている失業率をみても間違いないですから、その面から賃上げの圧力が効いてきていることはあると思います。』

その割には上昇が不十分だと思うのですけど。

『もうひとつは企業側の収益、そして今後の製品価格の上昇のテンポそれ自体が、収益に影響してくるわけです。足許の収益や将来の収益見通しは、企業側からみればベアを含む賃上げの決定要因になっていると思われます。』

という話だったら物価を上げたからどうのこうのではなくて、経済の成長力を引き上げて成長期待を上げないとダメであって、物価だけ上げても売り上げが下がったら意味無いんですけどねとならんかね。

『そのもう少し背後をみると、価格が今後どのくらい上がっていくであろうかということは、一方で、働いている人からみれば、当然それをコンペンセイトする(埋め合わせる)ような賃上げになって欲しい、という賃上げ要求になると同時に、企業側からみれば、価格が上がっていけば賃上げ分を吸収できる面もありますので、両方にとって、将来の物価上昇予想も影響してくると思われます。』

まあここはそうでしょうなと思うけど、その場合の物価とは企業側からしたら自社の製品・サービス価格であって、労働側からしたら総合物価だと思いますけどね。

『従って、足許の具体的な賃上げだけが価格に影響するとか、賃上げは価格だけで影響されるといったことではなく、マクロ的な、相互的な中で決まってくると思います。』

おうさっきは賃金と物価がパラレルに動くので日銀は早期に物価を上げるって言ってたのにここでは経済全体を見て考える(つまりヤケクソ円安誘導をしても誰得状態なのであれば物価上昇の為だけに円安誘導してもしょうがない、という結論になるのですよね)という話になっとるじゃんけと言う説明。

『ベアを含む賃上げについては、やはり何といっても労働需給の状況と企業の収益の状況が具体的には効いてきますし、その背後にある物価上昇の予想も、当然寄与してくるだろうと思っています。』

とまあそういう説明になっている訳で、白川ドクトリンを思いっきり否定してスタートして物価が上がって期待インフレさえ上がってしまえば好循環が絶賛回転するという風が吹けば桶屋が儲かる置物リフレ理論で政策運営をしていて、そういう線から「追加緩和を含む政策の調整も辞さず(キリッ)」とは言っているものの、いざ具体的に「じゃあ賃金ってどうやって上がるの」という話になると風吹けば桶屋が儲かるとは言えない訳で、その乖離がドンドン拡大して行って股裂き状態になりつつあるのが昨今の説明であるという事なのかも知れませんな。あるいはもはや黒田さんが一人で風吹けば桶屋が儲かるので2%を早期達成と突っぱり続けているのかという所なのでしょうか、よー知らんけど。

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2015/12/01

○黒田総裁の名古屋講演は毎度の状態なのですが・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151130a1.pdf

『このところの経済情勢をみますと、中国をはじめとする新興国経済の減速の影響が、わが国の輸出や生産に現れています。しかしながら、これからご説明するように、日本経済のファンダメンタルズはしっかりしており、わが国の企業や家計を取り巻く環境は、数年前に比べて大きく好転しています。また、物価の基調も着実に改善しています。日本銀行が一昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、デフレの脱却に向けて所期の効果を発揮していると考えています。』

『本日は、日本銀行の経済・物価見通しや金融政策運営の考え方をご説明するとともに、デフレ脱却に向けてわが国経済に残された課題についてお話ししたいと思います。』

ということで講演である。

・経済の説明はいつも通りだが賃金の所で吹いた

経済の説明はもういつもの話なのでさておこうかと思ったら賃金の説明が大本営状態で中々香ばしい。

『企業収益が過去最高水準で推移し、労働需給のタイト化が継続するもとで、賃金には上昇圧力が生じています。所定内給与は、2年連続でベースアップが行われたこともあり、年初来3四半期連続で前年比プラスとなっているほか、各種のアンケート調査などをみると、夏のボーナスも、大幅な増加となった昨年の水準を更に上回ったようです(図表3)。』

ということで図表3が上記URL先の巻末にあるのですが、左の『所定内給与』というグラフの折れ線を見ると足元では頭打ちしているように見えますし、もっとお洒落なのは右の『夏季賞与』という表でして、毎月勤労統計の方で賞与に相当する部分の数値が悲惨な事になっているのを完全に表示しないという辺りに大本営発表の香りが漂うのが実に味わいが深いというものです。

でまあ景気づけで大本営発表をするために都合の良い数字を出してくるというのであればまだよい(実際は全然良くないが)のですが、この都合の良い数字を持ち出して大本営発表クオリティというのが別の方向に発揮されますと、物価数値に関して都合のよい数値を取り出して「ほらこんなに物価の基調が改善しているからQQE大勝利で2%達成したも同然」とか言い出して勝ったことにするという粉飾目標達成攻撃で政策の収拾を図るという荒業に出られるリスクがある点についての留意が必要でございますので念のため。

『こうした雇用・所得環境の着実な改善を背景に、7〜9月の個人消費は前期比プラス成長となりました。より最近のヒアリング情報なども合わせてみますと、個人消費は底堅く推移していると判断しています。』

だそうだが消費弱かったんじゃネーノ。なお経済のまとめは以下の通り。

『以上のような企業・家計の両部門における前向きの循環メカニズムのもとで、先行きのわが国経済は、本年度から来年度にかけて、1%台前半から半ば程度の実質成長を続けると予想しています。これは、現在、「0%台前半ないし半ば程度」とみられる潜在成長率を上回る水準です。』

そんなんで2%達成できるんでしたっけという感じですけどね。


・物価の説明も相変わらずの大本営

『(物価情勢)』に参ります。

『次に物価情勢です。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入直前の−0.5%から、昨年4月には消費税率の引き上げの影響を除くベースで+1.5%まで高まりました。』

なにこの「2%上昇しました」と言わんばかりの説明ですが、この伏線は後程回収されます。

『しかし、昨年夏以降、原油価格の大幅下落などが生じた結果、消費者物価の前年比上昇率は低下し、このところ0%程度で推移しています(図表4)。


これも相変わらずのインチキ説明で、消費増税前の駆け込み需要による需給ギャップの一時的な改善の効果と、消費増税前後における便乗値上げの動きについては全て「QQEの初期の効果」にしていて、反動で落ちているはずの部分に関しては「原油のせい」としている時点でお前は何を言ってるんだと。

『もっとも、エネルギー価格の影響を除いてみると、物価の基調は着実に改善しています。たとえば、生鮮食品とエネルギーを除くベースでみた消費者物価の前年比は、「量的・質的金融緩和」導入以前はマイナスで推移していましたが、13 年 10 月にプラスに転じました。その後は 25 か月連続でプラスを継続しており、今年 10 月には+1.2%まで上昇しています。このように物価上昇が持続するのは、90 年代後半に日本経済がデフレに陥って以来、初めてのことです。』

都合の良い数値キタコレ。

『また、東大や一橋大が食品や日用品などの価格を集計し、日次や週次で速報している価格指数をみても、』

去年は「一部を反映しているに過ぎない」とか言ってたのにね。

『本年4月以降、プラス幅の拡大傾向が続いています。さらに、消費者物価を構成する品目のうち、上昇した品目数から下落した品目数を差し引いた指標は明確に上昇するなど、価格改定の動きには、拡がりと持続性がみられています(図表5)。』

なお、ここで図表5を見るとどう見てもトレンドが頭打ちになっているように見えるのが味わいがあります。

『なお、このところの物価上昇について、エコノミストなどの間で「もっぱら既往の為替円安に伴う輸入物価の上昇を通じた一時的なものに過ぎず、物価の基調が改善しているとは言えない」との声も聞かれます。』

といって反論するのが毎度の仕様なのですが、それよりも現在の物価の基調が確りできているのは実はエネルギー価格が下がった水準で維持されている結果としてヘッドラインの物価が落ち着いていることによって、実質賃金が低下しないでいるから消費が何とか持っているだけであって、エネルギー価格が日銀の見通し通りに上昇に転じてヘッドラインの物価が上昇に転じた時に家計の購買力が低下して需要が落ちて物価上昇の基調の腰が折れてしまうのではないか、という方が心配のような気がするんですけれども、そこの話をついぞ聞いたことがありませんな。

『円安に伴う輸入物価の上昇が消費者物価の上昇に寄与していることは確かですが、先程申し上げた通り、価格改定の動きは、こうした品目に限定されている訳ではなく、拡がりがみられています。また、このところの物価上昇のサイズと持続性は、ともに円安の効果だけで説明できるものではなく、その背後には、雇用・所得環境の改善と、企業や家計の物価観の変化があると考えるのが合理的です。』

といういつもの説明をしているのですが、問題はそこではないと思うのですけどねえ。



・最後にまた大きなお世話キタコレ!

この後『3.新興国経済の動向と日本経済への影響』という小見出しがあるのですがどうでも良いので割愛しまして『4.ポスト・デフレ時代を展望して』という所である。

『以上をまとめますと、日本経済は緩やかな回復を続けており、物価の基調も着実に改善していますが、新興国経済の動向などのリスク要因には十分注意する必要があると考えています。金融政策運営の面では、「量的・質的金融緩和」は、所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。』

今の枠組みがいつまで持つのかね。

『今後とも毎回の金融政策決定会合において、経済・物価の現状と先行き、様々なリスク要因、金融資本市場の動向などを十分吟味し、政策判断を下していきます。そして、2%の「物価安定の目標」の早期実現のために必要と判断すれば、躊躇なく対応します。』

じゃあなんで追加緩和しないでしょうかねえという話は兎も角として。

『さて、最後に、デフレ脱却と企業経営について、申し述べたいと思います。』

大きなお世話キタコレ!!

『先般の大阪での経済界の皆様との懇談の場や、東京での講演などで、私は「程度の問題として、企業収益が歴史的な高水準となっている割には、設備投資や賃金の伸びがやや鈍いという印象が否めません」と申し上げました。』

さいですな。

『誤解のないように付け加えますが、私が申し上げているのは、それが日本経済全体のために必要だというだけではなく、自社の利益に繋がるはずだということです。』

大きなお世話です。

『すなわち、日本経済がデフレを脱却し、2%の物価安定のもとでの持続的成長という新しいステージに入っていくのであれば、今のうちにデフレ期のマインドセットを転換し、人材や設備への投資を進めることが勝ち残るための必須の条件になります。』

>入っていくのであれば
>入っていくのであれば
>入っていくのであれば

そういうのは達成してから言えと思うし、達成しそうならお前に言われんでも皆やるわヴォケ。

『この文脈で日本銀行が申し上げたいことは、ただひとつ、「デフレからの脱却と2%は確実に実現する」ということです。それも「できるだけ早期に」です。』

どうみてもやるやる詐欺です本当にありがとうございました。

『私どもは、賃金上昇を伴うかたちで物価がバランスよく上昇する姿を実現したいと思っています。しかし、そのことは、賃金が上がるペースをみながら物価の上昇に向けた手を緩めたり早めたりするということを意味しません。』

全く持って意味がわかりません。

『物価と賃金は、理論的にも実証的にも概ねパラレルに動くものです(図表9)。物価目標の実現をゆっくりやっていれば、賃金の調整もゆっくりになるだけです。これは結局は、「卵が先か鶏が先か」という問題であって、デフレという「竦み(すくみ)」の状況を打破するには、誰かが断固たる決意を持って物事を変えなければなりません。』

ということでコストプッシュでもなんでも物価が上がればバックワードで予想インフレが上がって経済が好循環するという置物リフレ理論をやったら実質賃金が下がって消費がコケて物価の基調がコケたというのが実証済みな上に、たまたまエネルギー価格が下がって実質所得にプラスの影響が出たから何となく持ち直している、というラッキーパンチが入っているのが今の状態じゃないですかねえ。

『そしてそれが、物価の問題である以上、まず行動すべきは日本銀行です。』

ということですが、物価の問題なのではなくてそもそも経済の成長力が弱い中で2%を早期に目指すのはそれこそ物価と賃金のバランスとかそういうのを崩すだけであって、そうではなくて経済の成長力を付けるという取り組みの中で金融政策はその取り組みを推進する為に緩和的な環境をもってサポートし、経済の実力に見合った物価上昇を目指して最終的には2%程度の物価上昇が整合的になるような経済を作って行きましょう、というのが白川ドクトリンなのですが、黒田さんはここだけは絶対に認めようとしませんよね、そらまあ認めたら過去の自分全否定になるから認められないのですが、ここまでに起きた事って結局白川ドクトリンの方が妥当じゃねえかという流れにしか見えませんけどねえ。


・最後の最後に目を疑うような新手の説明

『日本銀行は、「物価安定の目標」の実現のため「できることは何でもやる」という姿勢のもと、「量的・質的金融緩和」を推進してきました。その結果、株価、為替相場などの金融市場の状況や、企業収益の環境、失業率をはじめとする労働市場の状況などは大きく変化し、物価の基調は明確に変わりました。』

あらそう。

『「量的・質的金融緩和」導入前の 2013 年3月との対比でみると、この 10 月の消費者物価の前年比は、除く生鮮食品・エネルギーで+2.0%ポイント、除く食料・エネルギーで+1.5%ポイント上昇しています。このように、日本銀行は、2%の物価安定を早期に実現する強い意志とそれを実現する能力を持っています。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

ついに物差しの起点を変えるという凄まじい荒業に出ました!!!!!!!!!!!!!!!!!


・更にお願いというか何というか

『2%という物価全体の「ものさし」は提示されているわけですから、個々の価格や賃金は、それを前提として調整されることになります。』

「ものさし」の起点がインチキなのに提示もへったくれもあるかよ。

『実際に2%の物価安定が実現した場合、デフレ期の考え方で投資や雇用の判断、価格設定などを行っていた企業は、競争に出遅れ、不利になります。また、賃金の上昇については、労働需給や企業収益など賃上げの環境は既に十分に整っているとみていますが、この先2%の物価上昇を前提として、それにふさわしい賃上げを実現していくのは、まさに労使の役割です。』

大きなお世話です。

『私自身、実は個々の企業の中には、新しいステージに向けた動きは既に拡がってきているとみています。特に当地は、わが国初の純国産乗用車が開発された地であり、従来から、進取の精神に富んだ経営風土にあると理解しております。折しも先日、わが国初の国産ジェット旅客機であるMRJが初飛行に成功し、新たなレジェンドが生まれました。是非、当地から前向きな企業行動の風が吹き立ち、日本経済がデフレ脱却後の新たなステージへと力強く飛び立って行くことを期待しています。』

何かとりあえずキャッチーな事を言って話をまとめたようなのですがちょっと・・・・・・・・・・


ということで、とりあえず賃金上昇と設備投資をお願いして回っていかないと如何ともしがたいという手詰まり状態だという所ですが、これは「企業のマインドを鼓舞する為に行っているので、期待に働きかける政策の一環である(キリッ)」という事であって、ただのお願い行脚ではないということなんですねきっと!!!!!!!!!!!

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2015/11/25

○総裁会見ネタの続きを少々

上記の検算してて自分で計算間違いに気が付いて時間を空費したので(汗)ネタが溜まる中消化が追いつかないの巻ですが昨日の続き。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1511c.pdf

・そもそも原油安はグローバルの需要減退ではないかという質疑

『(問) 2 点お伺いします。1 点目は原油安と物価の関係についてです。先般公表された展望レポートでは、原油の想定レートを引き下げられましたが、足許ではドバイが 40 ドル程度になっており、さらに現在の想定を大きく下回って推移しております。この背景には、中国経済、新興国経済の減速の影響もあると言われていますが、そうであれば需給ギャップという面を通じて、日本の物価の基調、先行きに対する一段の下押し圧力になるという要素も含むと思います。今の原油価格を念頭に置いた場合、2%の達成時期がさらに遅れるリスクをどのように考えているのか、その場合、こういう状況の中で原油要因と言いきれるのか、総裁はどのようにお考えでしょうか。(後半割愛)』

「と言われていますが」じゃなくて背景がそういうことだったらマズーなのですがそういう点は考えていないのでしょうか、という質問の方が端的な答えが出たと思いますが。

『(答) 1 点目については、2 つ関連した質問をされているわけですが、1 つは、「ドバイ原油が1 バレル 50 ドル程度と言われていたものが 40 ドル程度になってきていることの原因として、例えば中国経済の減速というのが効いているのではないか、そうだとすれば、それ自体として、日本経済等に影響が出るのではないか」ということだと思います。』

うむ。

『今の時点で、40 ドルになっていることの原因を需要・供給で細かく分析するのはなかなか難しいと思いますが、中国の経済自体は、ご承知のように、IMFも今年の成長率を 6.8%とみていますし、中国政府も 7%程度の成長をするだろうと言っているわけですが、そうしたもとで、中国自体の原油の輸入量は依然として着実に伸びています。従って、中国が原油の輸入を大きく減らして、それが例えばドバイ等の市場に大きく影響しているという指摘は、あまり当っていないのではないかと思います。』

現実に減らさなくても先行き減ると思ったら価格下がるだろいい加減にしろ。

『ただ、その他の新興国とか世界の経済の動向が影響しているかもしれません。一方で、イランその他からの石油の供給が増えるのではないかという見方もあり、供給面が原因かもしれないということで、必ずしも 40 ドルになったということが中国の減速が原因であるという指摘はあまり当っていないと思っています。』

要するにゼロ回答。

『そうした上で、もう 1 つの「50 ドル程度から緩やかに上がっていくと想定していたのが、足許 40 ドル程度まで落ちているではないか」ということですが、想定はあくまでも一定の期間をとってみた場合であり、ドバイもWTIも、それからブレントも、日々あるいは週毎にもかなり振れていますので、もう少し長い目でみてどうなるかをその時点で考えればいいと思います。』

はいはい人のせい人のせい。

『足許で短期的に振れているからといって、直ちに 2%の「物価安定の目標」の到達時期が後ずれすると今から決める必要は全くないと思います。元々展望レポートの前提には、原油の先物価格を使っていますので、今後もその市場の動向には十分注意していく必要があると思いますが、ごく短期の動きで何か直ちに変える必要はあるとは思っていません。(後半割愛)』

ということで全然答えになっていないのですが別の質問から。

『(問) 総裁が就任される前の金融政策運営においても、GDPが 2 四半期マイナスだとかCPIがマイナスになることについて、やはり、人々の期待がアンカーされていないから、ということも言われていたと思います。今までのところ、金融政策は所期の効果を発揮しているということですが、金融政策の所期の効果と成果というのは違うような気がしていて、金融政策の所期の効果が発揮されているのであれば、様々な原油安や海外経済の減速等もありますが、2 四半期連続のGDPマイナスやCPIもマイナスという状況は避けられたのではないかと思います。所期の効果と成果は違うのかどうか、その辺をお伺いします。』

中々イヤミなツッコミなのですが、回答はと言いますと・・・・・・・・・

『(答) 「量的・質的金融緩和」について、考えていたところの所期の効果は発揮していると思っています。ただ、これはどこの中央銀行でも政府でも同じですが、日本銀行にとっても、例えば、原油価格が昨年の夏以来 6 割程度下落するなど、予想していなかった状況が起こって、それが物価上昇率にかなり大きな下押し圧力になっているということは事実です。』

はいはい原油のせい原油のせい。

『物価上昇予想、期待が 2%程度の目標にアンカーされている米国でも、足許の物価上昇率はほとんど 0%ですし、欧州でも同じです。具体的な足許の物価上昇率は様々な要因によって影響されますので、金融政策の効果がないということでは全くないと思っています。』

効果が無いという質問をしているのではなく、達成できていないのだから成果が無いのではという質問をしているのに効果の方に話を変えて答える藁人形論法というか想定問答丸読みというか。

『それから、GDPの 1 次速報値が前期比マイナス 0.2%となり、2 期連続のマイナス成長であることは事実ですが、この 7〜9 月期は 4〜6 月期と違って、最終需要はかなり大きく伸びています。GDPのベースで小幅のマイナスになったのは、主として在庫投資がかなり大きなマイナスになったことによるものですので、4〜6 月期とはかなり様相が違っているのではないかと思っています。』

はいはい在庫在庫。でも本当にロバストだったら在庫調整ですかさずマイナスになるような経済にはならんのと違いますかねえ?

『いずれにしても、物価安定を目標として、具体的にはほとんどの国で2%の物価上昇──これはどこの国でもそうですが、総合指標で物価が 2%程度上昇するということ──を目標にして、金融政策を運営しています。そういう点についても、日本銀行と他の中央銀行との違いはないと思います。』

ということでやはり説明になっていないのでした。


・これは質問がダメダメ感なのでさらしておく

こんなのがありました。

『(問) 2 点お伺い致します。(前半割愛)もう 1 点は、それと関連してドルの調達コストが上がることで相対的に円を調達するのが有利になった海外投資家が日本の短期国債に非常に入ってきていて、それによって短期金利が非常に大きく下がってマイナスが深くなっています。この点について、イールドカーブが一部の年限だけ非常に下がるということについて、何か問題等をお考えになっていらっしゃるかどうか教えてください。』

一部の年限だけじゃないし、問題なのは最終投資家が買えないような金利水準まで低下していることによって市場の頑健性が損なわれる懸念なんですけど何か質問の時点で「一部の年限だけ」とか本質的な問題になっていないような聞き方をしている時点でダメダメにも程があるので質問者の猛省を促したい。

『(答)(前半割愛)2 番目の短国の金利が一部マイナスになったことの原因については、ご指摘のことも含めて色々な指摘がありますが、短国の金利がマイナスになっているというのは、ある意味「量的・質的金融緩和」が相当効いているということでもありますので、現時点で特に何か問題があるとは考えていません。』

とまあそう答えるわなという所ですが、実際にはこの翌々日に短国買入を大幅減額している辺りが色々と味わいがあるというものです。

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2015/11/24

○11月会合の総裁会見ですがロジックは混乱するわ質問に答えないわでもうグダグダ

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1511c.pdf


・のっけから全然質問に答えていないの巻

最初の質問から。

『(問) 月曜日に発表された 7〜9 月期のGDPは 2 期連続のマイナス成長という結果が出ました。企業が投資を先送りする姿勢が強く出ていまして、景気の停滞感が強まっているという見方もあります。以前、総裁は生産等の低迷は一時的で、7〜9 月期はプラス成長になるとの見通しをおっしゃっていたかと思いますが、今回の結果を踏まえて、国内の景気認識と今後の回復の道筋について、改めてご所見をお願いします。』

設備投資出る出る詐欺に関しての所感をうかがいたいという事ですが・・・・・・・・・・・

『(答) ご指摘の通り、7〜9 月の実質GDP成長率の 1 次速報値は、前期比マイナス 0.2%、年率マイナス 0.8%と、小幅ながら 2 期連続のマイナス成長となりました。』

『内訳をみますと、マイナス成長の主因は在庫投資であり、個人消費は底堅く推移しているほか、輸出も増加に転じるなど、最終需要は全体として増加しています。こうした内容は、わが国の景気が緩やかな回復を続けているとの評価に沿ったものと考えられます。』

そういや(今日ネタにしている暇はないが)ダラス連銀のカプラン総裁が米国の在庫減に関して「先行きへの懸念があって在庫積み増しを止めている動きもみられるようだ」的な発言をしていたりしましたなあ(なおカプランさんはダラス連銀クオリティでタカ派的講演でしたけど)というのを思い出す。

『先行きについては、先程申し上げたように、企業収益が過去最高水準まで増加していることなどを背景に、設備投資が緩やかに増加すると考えられるほか、個人消費も、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移すると考えられます。』

考えられるじゃなくて現実に設備投資の足取りが期待外れな事に関しての質問なんですが。

『輸出や鉱工業生産は、当面横ばい圏内の動きを続けた後、緩やかに増加に転じていくと考えています。従って、わが国の景気は、企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムが持続して、緩やかな回復を続けていくと考えています。最初に申し上げた通り、マイナス成長の大きな原因は在庫投資のかなり大きなマイナスですので、在庫調整が進んでいることを示していると思われますし、在庫投資を除く内需と輸出を加えた最終需要は、全体としてかなり増加していると思います。』

ということで質問に答えるのではなくて想定問答を丸読みしているのが良く分かる質疑が冒頭に出るもんだから(妙に質疑が長いわと思ったのだが)その後の質疑も結構突っ込まれるの巻。


・再度突っ込まれて渋々認める設備投資出る出る詐欺

ちょっと先帆の方で設備投資について更に質問が来るのだ。

『(問) 設備投資についてお伺いします。先程の話でも前向きな投資スタンスという表現を維持されていますし、企業の収益が過去最高の水準まで上がっているということで、緩やかに回復するだろうという見立てでしたが、9 月短観で出ているような設備投資計画に比べると、先日出たGDPの数値は非常に悪くて、かなりギャップがあると思います。企業収益は上がっていますが、人口減少であったり、マーケット・シュリンクという中で、将来展望がなかなか開けないということであれば、いくら儲かっても投資をしないというのが、今の企業のスタンスではないかと思います。総裁がおっしゃる通り、緩やかにでも設備投資が回復していくためには何が必要なのか、そこがなかなか増えないというようなご懸念が今のところないのかどうか、その点についてお願いします。』

うーんこの。追加緩和でマインド上げさせる的な質問をしているつもりなのかも知れませんが、それよりも先行き見通しは兎も角何でここまで上がっていないのかについての説明を求めた方が良いような気もする。

『(答) ご指摘の通り、今回のGDPの 1 次速報値をみますと、7〜9 月に設備投資が若干減少したということは、その通りでして、先行指標である機械受注をみても、7〜9 月は前期比マイナスになっています。』

どうも2度突っ込まれると認めるようだ。

『ただこの機械受注も、4四半期連続で増加した後ですので、均してみると、緩やかな改善の基調が続いていると言ってよいと思います。』

だから緩やかな改善如きで2016年度後半に物価2%行くような需給ギャップの改善が進むのかと小一時間。

『ご指摘の通り、9 月の短観でも、多くの業種、企業規模で設備投資計画がむしろ上方修正されてかなり強いものになっています。それに比べると 7〜9 月期のGDPの 1 次速報における設備投資が小幅のマイナスになったのは、やや意外とまでは言えないかもしれませんが、強めの計画に比べると設備投資の出方がやや遅れているとの印象を持っています。短観その他のアンケートでの設備投資計画は、年度の初めは非常に高くて、後半にかけて少し下方修正されて着地する傾向があるのですが、そういった傾向を踏まえても、設備投資は年度全体ではかなり大きな伸びになる可能性があると思っていますが、今後設備投資がどのように出てくるのかを十分注視していく必要があると思っています。』

結局ただの願望。

『中国をはじめとする新興国の経済の動向などのリスク要因があり得るわけですし、あるいは企業マインドなどの動向も十分注視していきたいと思っていますが、基本的には史上最高の企業収益のもとで、かなり強い設備投資計画となっていますので、若干遅れがあっても設備投資は出てくると思っています。ただ、今申し上げたようなリスク要因も今後とも十分みていきたいと思っています。』

リスクは海外のせいだそうだがマインドの為に去年は追加緩和したんじゃなかったでしたっけ????


・予想物価上昇率が一部で弱いという文言に関連して

そらこうくるわ。

『(問) 今日の公表文の中で、予想物価上昇率について、「このところ弱めの指標もみられている」と書かれていますが、予想物価上昇率は、足許悪化しているというご認識なのかどうかを確認させて頂きたいのと、そうであれば、予想物価上昇率は非常に重視されている指標なわけですから、必要な措置を検討しなければならない局面が近づいているのではないかと想像されるのですが、この点についてのお考えをお聞かせください。』

『(答) 今回の公表文の中では、予想物価上昇率について、「このところ弱めの指標もみられているが、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。」としています。「このところ弱めの指標もみられているが」と付け加えたのは、各種のアンケート調査あるいは物価連動国債を用いたBEIなど、様々な指標の中で、原油価格下落の影響などもあったかもしれませんが、いくつか弱含んだ動きがあることを率直に認めたものです。』

今まで認めていなかったのを率直に認めるとかヘソが茶を沸かしますな。

『ただ、こうした指標だけでなく、企業の価格設定スタンスや家計の支出行動も、予想物価上昇率の動きを反映したものです。ご承知の通り、消費者物価を構成する品目のうち、上昇した品目数から下落した品目数を差し引いた指標は、はっきりと上昇しています。それから、食品や日用品などについての日次あるいは週次の物価指数も、4 月以降、プラス幅の拡大傾向が続いています。こうしたことは、本年度入り後、企業の価格改定の動きがかなり進んでいるほか、家計でも、雇用や所得環境の改善を受けて、以前よりも値上げを受容するようになっていることを示していると思われます。従って、「やや長い目でみれば、全体として上昇している」という評価を変える必要はないと考えています。』

だったら何で急にここに来て書いたんですかねえというのと、プリエンティブに政策対応をするんじゃ無かったですかねえという感じですが、つまりは昨年10月の追加緩和のスタンスは完全に放棄するに至った、というのがこの説明のインプリケーションですな。

さらにどうでも良いのだが、ここらの引用を見てもお分かりのように、最近の総裁会見は説明がやたら長くなっていて、しかも言い訳成分が高めという形になっておりまして、これはつまり説明が苦しいので想定問答を丸読みするような感じでああでもないこうでもないとやらないと持たない、という状況に有ることを示しているのでしょうな。


ちなみに関連して賃金の質問が後の方にありましてですな、

『(問) 春闘関連で 2 問伺います。(前半割愛)その春闘の要求額が弱めになる背景として、やはりCPIの弱めの動き、0%近傍で推移しているということが理由としてあるようです。そういう意味では、原油安という一時的な要因が理由だとしても、将来の予想物価上昇率に原油安も含めたCPIの弱さも影響してしまうのではないかと思うのですが、その点についてご見解を教えて下さい。』

『(答)(前半割愛)2 番目の点は、個々の家計や賃上げ交渉をされる方の考え方等にもよると思いますが、原油価格の下落は無限に続いていくわけではなく、あくまでも一時的なものですので、それが剥落すれば当然、それによって物価が上がるといったことも十分考えておられるとは思います。』

質問の答えになっていない・・・・・・・・・・・

『確かに足許で物価上昇率が0%程度で推移していることは、今後の物価あるいは賃金に対して、何らかの影響を与えている可能性はあり、幾つかの予想物価上昇率の指標は、このところ若干弱めになっていますが、企業の価格設定行動やその他をみていると、予想物価上昇率は長い目でみれば上昇していることに間違いはないように思います。』

思いますじゃなくてそこについて補強する為に追加緩和、というのが昨年だったのだがさっきと同様で昨年のスタンスは完全に放棄されていますな。

『具体的に来年どのような春闘の結果が出るかは十分注目していきたいと思いますが、足許で原油価格の下落の影響で消費者物価の上昇率が 0%程度になっているということが、来年の春闘に決定的に効くとは考えていません。ただ、この辺りは十分よくみていきたいと思っています。』

おお去年言ってたことと全然違うじゃないかよこれで物価がこの先落ちだしたり春闘ぱっとしなかったら後追い緩和実施かよ大丈夫かという所ですな。


・オペの限界に関しての質問ですが

『(問) 2013 年に大規模緩和を始めた当時、日銀の方も含めて「この政策は、4 年も 5 年も続けられるような政策ではない」という声を聞きましたし、現在もそのような認識の方がいらっしゃいます。一方で、2016 年度の後半頃という物価上昇の達成、それ以降も安定的になるまで続けるということですので、そうするとやはり 4 年、5 年経ってくるだろうと思います。総裁は、この大規模な金融緩和を 4 年、5 年続けても問題ないという認識をお持ちだと思うのですが、その辺りのお考えを教えて下さい。』

ですなあ。

『(答) 2013 年の 4 月に「量的・質的金融緩和」を導入して以来──昨年の10 月にはこれを拡大していますが──2 年半強です。今後、原油価格下落の影響が剥落するにつれて、物価上昇率が 2%に段々近づいていくと思っていますが、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、それを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を続けるという考え、つまり、元々、カレンダー・ベースで時間を限った政策ではなく、アウトカム・ベースといいますか、2%の「物価安定の目標」を実現することを期限にしているということです。どのくらい続くのかは事前には言えません。』

おいこらてめえ2年で達成する為に必要な政策を全部投下したんじゃなかったのかよふざけるな。

『現在の見通しでは 2016年度の後半頃には 2%に達するのではないかとみていますので、今の「量的・質的金融緩和」を続けることに何ら問題が生じるとは思っていません。2%に達する時期がそれよりももう少し延びたら何か問題が生じるかというと、おそらく生じないと思います。』

まあ立場上そう言うしかないけどな。

でもってこの質疑の奇怪なのはここで終わりにすれば良いのに何故かこの後延々と説明があること。

『「量的・質的金融緩和」を続けることの問題として、幾つか議論がされていると思いますが、1 つは国債の買入れ自体について限界が来るのではないかということです。最近、IMFのペーパーが出て以来、そうした議論が活発ですが、私どもはそうした限界に直面するとは全くみていません。』

根拠がないというかお前全部買えないっていってたじゃねえか先月は。

『それから、日本銀行の財務に対する影響については、従来から繰り返し申し上げている通り、財務を考慮はしますが、それに影響があるからといって 2%の「物価安定の目標」を早期に達成するための金融緩和を続けないとか、やらないといったことは全くありません。』

緩和を継続するのはそらそうですけれども、203高地に延々と肉弾突撃するのではなくてやり方に工夫というのがあってしかるべきではないか、というのが副作用論の人たちの見解なのだが、相手の懸念の論旨を挿げ替えてこういう反論するのはジンバブエ先生お得意の藁人形論法ですね!!!!

『しかも、そのうえで引当金の拡充という形で、市場の一部にある日銀の財務に対する懸念を払拭して、「量的・質的金融緩和」に対する信頼感を高めしっかりしたものにしようとしているわけですので、問題が生じるとは思っていません。』

問題はそれだけじゃないんですけどねえ。

『さらに、金融システムに影響が出ないかということですが、これも、半年毎の「金融システムレポート」で詳しく分析して示していますが、これまで金融システムに何か問題が生じていることは全くありませんし、今後も現在の「量的・質的金融緩和」を続けることによって問題が生じることは予想していません。』

いや国債100%買ったら問題生じるだろ。

『もちろん、金融システムの状況については、常に十分分析し把握して、問題があれば適切に対処していきたいと思っています。いずれにしても、現在の「量的・質的金融緩和」を続けることによって何か問題が生じる、あるいは限界が来るとは考えていません。』

ということで、何か知らんが聞かれもしないのに延々と説明しているのは怪しい。


・つーことでローリングターゲットへのツッコミキタコレ!!!

『(問) 2 つ前の方の質問と重なりますが、目標達成までの期間というかスケジュールについて、総裁のご発言は、「最初から state contingent(状況に依存)で、別に 2 年ということではない」と理解してよろしいでしょうか。それとも、ある程度成果が出てきたこと──日本人のデフレ・マインドからの脱却が成功したということ──で、「2013 年から 2 年」ということではなく、「毎回の会合から 2 年程度」という、世界的な、普通のインフレ・ターゲットに少しずつシフトしてきたという理解でもよろしいのでしょうか。』

(;∀;)イイハナシダナー

『(答) そういうことではありません。あくまでも、2013 年 4 月に「量的・質的金融緩和」を導入した際に申し上げた通り、「2%の『物価安定の目標』を、2 年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」ことにコミットして、それに沿って「量的・質的金融緩和」を続け、また拡大してきたわけです。』

ワロタ。

『それと共に、2013 年 4 月に「量的・質的金融緩和」を導入した際にも明確に申し上げた通りに、元々きっちり 2 年という期間を限ってその間だけやるということではなく、あくまでも 2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで続けるという、アウトカム・ベースの「量的・質的金融緩和」であると申し上げているわけです。』

安定的に持続も糞もその前に達成時期がドンドンずれているのですが。

『これは米国のQE3もそうですし、他の中央銀行、多くの中央銀行の量的緩和も同様だと思います。』

ちなみにこれまたネタにしていないのですが、先々週にシカゴ連銀のエバンス総裁が物価ターゲットの到達時期に関して「経済にスラックがあってヘッドウインドがある状況においては物価ターゲットに達する時期が2年程度というよりは4年ほど掛かるというのも念頭に入れる必要がある」的なお話をしていたりしまして、アウトカムベースは兎も角として「2年」というのは同様じゃないんですがそれは。

『目標については、あくまでも 2 年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するというコミットメント──2013年4月のコミットメント──は変わっていません。一方で、いつまで続けるかについては、これも 2013 年 4月に申し上げた通り、2%の目標の実現を目指し、それを安定的に持続するために必要な時点まで続けるということで変わっていません。』

という説明になっていない説明ですなあという所です。


今回の会見、もうちょっとツッコミ部分があるのですが時間の関係で続きは明日ということで(汗)。

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2015/11/10

○黒田総裁講演である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko151106a.htm
2%の「物価安定の目標」実現に向けた課題
―― 内外情勢調査会における講演 ――

ちなみに昨年の内外情勢調査会の講演は8月1日に行われています。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140801a1.pdf
最近の金融経済情勢と2%の実現に向けて
―― 内外情勢調査会における講演 ――

ということで・・・・・・・・・・・・・・

・2%達成進展アピールからデフレ脱却進展アピール????

挨拶冒頭部分から。

『しかしながら、これからご説明するように、日本経済のファンダメンタルズはしっかりとしており、企業や家計を取り巻く環境は、数年前に比べて大きく好転しています。また、物価の基調も着実に改善しています。日本銀行が一昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、デフレの脱却に向けて所期の効果を発揮していると考えています。』(今回)

ほほう。では昨年ですけれども・・・・・・・・・・

『前回、当調査会でお話しさせて頂いたのはちょうど1年前でしたが、私はその場で、「量的・質的金融緩和」の導入後、3つの好転がみられているとお話しました。金融の好転、期待の好転、経済・物価の好転です。その後も、「量的・質的金融緩和」が所期の効果を着実に発揮する中で、これら3つの好転は着実に続いており、日本経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっています。』(昨年8月)

つーことで何ですな。別に2%の看板自体は下げていない(そもそも題名が上記のようになっていますから)のですが、QQEの効果に関する話をする時には最近すっかり「デフレ脱却」を連呼するようになっています。

まあこの辺りは政府がデフレ脱却宣言して景気づけしましょうとか賃上げ進めさせようとかいう流れを受けているのかなあとも思うのですが、そうなりますと益々政府のデフレ脱却宣言とかの流れを受けて日銀の大勝利宣言とかが出てきそうな焦げた感じをしないでもない。

などといきなり前回と比較してみましたが、比較しないで鑑賞もします(^^)。


・一応その後に2%の話はあるので念のため

さきほどの続き。

『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」を着実に推進し、緩和的な金融環境をしっかりと継続していきます。そうしたもとで、企業や家計の経済活動は活性化し、日本経済は潜在成長率を上回る成長を続けるとともに、2%の「物価安定の目標」は、必ず達成できると考えています。』(今回)

そもそも潜在成長率並みの成長で2%になっていないと物価安定目標が達成しているとは言えないのではないかというツッコミはさておきまして、一応こういう説明はしているので念のため申し添えます。


・とは言いましても・・・・・・・・・

一旦最後の方にワープしますが、最後に企業の成長期待が足りなくてケシカラン(意訳)的な話をしている中での結論部分なんですけどね。

『この2年半、2%の「物価安定の目標」の実現を明確に約束し、「量的・質的金融緩和」を進めてきました。日本経済は着実に改善し、その実現に向かっています。日本銀行は、引き続き、2%を目指し、過去に例を見ないこの大規模な金融緩和を続けていきます。本日お話してきた通り、現時点で、日本銀行は、現行の政策を継続することで、2%を達成できると考えています。ただ、同時に、新興国経済の減速の影響など、経済・物価の下振れ要因も認識し、注意深く点検を続けています。今後とも、毎回の金融政策決定会合において、経済・物価の現状と先行き、様々なリスク要因、金融資本市場の動向などを十分吟味し、政策判断を下していきます。そして、2%の早期実現のために必要と判断すれば、躊躇なく対応します。』(今回)

てな話で最後纏めているのですが、昨年は・・・・・・・・・

『日本銀行としては、我々の2%実現への取り組みと並行して、成長力強化の動きが着実に進展していくことが望ましいと考えています。ただし、潜在成長率がどのようなペースで上がるにせよ、2%の「物価安定の目標」はできるだけ早期に実現すべきだと考えています。これは「物価さえ上がれば良い」と思っているからではありません。2%の物価上昇を早期に実現し、そこにアンカーすることは、企業や家計の積極的な行動を促し、それ自体として、成長力を高めることに貢献すると考えるからです。』(昨年8月)

とか

『日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することで、企業や家計が前向きな経済活動に取り組みやすい環境を作りたいと考えています。そのもとで、日本経済が活力を取り戻し、再び力強く成長することを期待して、本日のお話を終わらせて頂きたいと思います。』(昨年8月)

とか何とか話をしておりまして(ちなみに付け加えるとこの時は「何で2%なのか」というテーマの説明も入っていた)、とにかく早期に物価を2%に上げてバックワード的に期待形成という話をしていた訳なのですが、ここに来てその手のバックワードというかアダプティブな期待形成の話を思いっきりトーンダウンした格好になっています(そらまあトーンダウンさせないと追加緩和という話になるからというのもありますが)ので、まーこの2%の達成時期に関しては事実上のローリングターゲット状態になっていまして、後は政府との握りの文書をどう弄って(または解釈して)話をまとめて「2年」という無駄な看板から名誉ある撤退を果すかというステージになっていますなあと眺めているのですがどうでしょうかねえ(ニヤニヤ)。


・メカニズムの話は苦しいですなあ

ここは前年と比較する部分ではないので今回のを鑑賞しつつ。

『(高水準の企業収益と積極的な設備投資スタンス)』という小見出しですが・・・・・・・・・・・

『はじめに、日本経済の現状と先行きについてお話します。ご承知の通り、このところ、中国をはじめとする新興国経済の減速が明確になってきており、これがわが国の輸出や生産にも影響を及ぼしています。また、今年の4〜6月期は、天候不順の影響などから個人消費も幾分弱めの動きとなりました。こうしたことを受け、展望レポートにおいても、2015 年度の実質経済成長率は、7月の中間評価時点の1.7%から1.2%に下方修正しています(図表1)。』(以下暫く今回から)

という書き出しと上記の小見出しェ・・・・・・・・・・・

『もっとも、企業収益は過去最高水準で推移しており、雇用・所得環境の改善は続いています。企業部門・家計部門ともに、所得から支出への前向きな循環メカニズムはしっかりと作用しており、日本経済は緩やかな回復を続けていると判断しています。』

下方修正しているのに改善が続き循環メカニズムが働いているとな。

『このように、輸出や生産のもたつきにもかかわらず、企業収益が増加を続けるというのは、わが国の過去の景気回復局面ではあまりみられなかった現象です。その背景としては、2つの点を指摘できます。』

ほうほう。

『第一は、内需がしっかりしていることです。過去の景気回復局面では、輸出の増加を起点として、製造業の企業収益と設備投資が増加するという展開が一般的でしたが、今回は、内需の底堅さを背景に、非製造業の回復が目立っています。この点は、短観の業況判断DIや企業収益で、製造業よりも非製造業の改善がよりはっきりしていることからも確認できます(図表2)。内需を中心とした景気回復では、海外経済の減速から輸出の伸びが鈍化したとしても、それに対する景気全体の耐性は、過去のパターンと比べて相対的に高くなっていると考えられます。』

って言ってるんですけど図表の方を見るとその内需が確りしているという話の中で出ているのって「短観のDI」というサーベイ数値と企業利益の数値で、肝心の内需に関するハードデータじゃないんですよねえ。

『第二に、新興国経済の減速もあって原油をはじめとする資源価格が下落していることが、交易利得の改善を通じて、価格面から収益の押し上げに寄与していることです。すなわち、数量面でのマイナスを価格面のプラスが相殺するという、一種の自動調整が働いています。それに加えて、為替円安にも支えられた海外からの配当・利息の受取増加なども、このところの企業収益の改善に寄与しています。』

円安はともかくそれは資源価格が見通し通りに上がったら価格はマイナスになるし、別にそれによって数量が出るとは限らないと思うのだが。

『このように好調な収益環境のもとで、企業の設備投資スタンスは積極化しています。9月短観における2015 年度の事業計画をみると、全規模全産業の設備投資計画は前年比+6.4%と、6月短観における+3.4%からさらに上方修正され、高めの伸びとなっています。』

ということで、まーた短観かという感じでして、結局アンケートかよという所なのですが、一応後の方で図表9というのがあって、そこで設備稼働率の話が出ているのが救いと言えば救いではありますけれども、機械受注とかそういうのは出てこないのがチャーミングとしか申し上げようがない。


・雇用は威勢の良い話をしていますが・・・・・・・・・・

『(雇用・所得環境の改善と底堅い個人消費)』に飛びます。

『次に、家計部門の動向についてご説明します。家計支出の重要な決定要因となるのは、言うまでもなく雇用・所得環境です。この点、労働需給は引き締まり傾向が続いています。有効求人倍率が、足もとでは1.24 倍と1992 年以来の高水準となっているほか、失業率も3.4%と1997 年以来の水準まで低下しています(図表4)。特筆すべきは、輸出や生産のもたつきにもかかわらず、労働需給に引き緩みがみられないことです。実際、短観の雇用判断DIをみても、企業の人手不足感は一段と強まっており、労働市場は「完全雇用」と言って良い情勢にあります。』

賃金ェ・・・・・・・・・・・・

『企業収益が過去最高水準で推移し、労働需給のタイト化が継続するもとで、賃金には上昇圧力が生じています。毎月勤労統計で賃金の動きを確認すると、所定内給与は、2年連続でベースアップが行われたことなどから増加しています(図表5)。各種のアンケート調査をみると、夏のボーナスも多くの業種・企業で昨年を上回った模様です。』

ここで昨日の統計に関するニュースを確認しましょう。

http://jp.reuters.com/article/2015/11/09/idJPL3N1302F520151109
News | 2015年 11月 9日 10:30 JST
9月実質賃金は前年比+0.5%、夏季賞与が2年ぶり減=毎月勤労統計

まあ毎勤は色々と議論がありますけれども、「ベースアップしたから賞与の原資が減ったのでボーナスは減額な」というような話が出ても不思議ではないような気もしますがががが。


『このように、雇用・所得環境は着実に改善しており、昨年の消費税率引き上げ後に落ち込みがみられた消費者マインドは、全体として改善傾向にあります(図表6)。4〜6月の個人消費は、軽乗用車の販売不振や、長雨などの天候不順の影響から幾分弱めの動きとなりましたが、各種の販売統計などをみると、7月頃からは多くの分野で増加に転じており、全体として底堅く推移していると判断できます。』

この辺は今後の統計を見ないと何とも言えませんけれどもそんなに盛り上がっている気もしない。


『以上のような企業・家計の両部門における前向きの循環メカニズムのもとで、先行きのわが国経済は、本年度から来年度にかけては、足もと「0%台前半ないし半ば程度」とみられる潜在成長率を上回る成長を続けると予想されます。2017 年度にかけては、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響を受けるとともに、景気の循環的な動きを映じて、潜在成長率を幾分下回る程度に減速しつつも、プラス成長を維持すると予想されます。』

という結論になっていますが、まあ説明は相当苦しいようにしか見えませんがどうでしょうかねえ。


・2%達成の説明は需給ギャップとインフレ期待なのは前回と同じですが・・・・・・・・・

『3.物価動向と2%の「物価安定の目標」実現への道筋』という小見出しは見事に去年と同じでして、そこの小見出しも『(物価の現状と見通し)』『(需給ギャップの動向)』『(中長期的な予想物価上昇率の動向)』となっていて途中までは今回も同じです。

でまあ説明の路線自体は相変わらずなのですが、昨年のこの部分を見ておりますと実にこう侘び寂びの世界というものを感じてしまうのでサルベージして鑑賞しましょう。

『「量的・質的金融緩和」を導入した当初、ここまで物価上昇率が高まってくるとは多くの方が予想していなかったと思いますが、日本銀行の物価見通しは、導入直後の昨年4月の見通しから、ほとんど変わっていません。「量的・質的金融緩和」が、所期の効果を発揮し、ほぼ見通しどおりに物価が上昇してきているということです。導入時に私どもが想定したメカニズムは次のようなものです。』(昨年8月)

・・・・・・・・・・・・・・・(−_−;


ちなみに予想物価上昇率に関しての記述はこう変化しています。

『次に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられます。予想物価上昇率を把握する方法としては、まず各種のマーケット指標やアンケート調査などがあります。これらについて最近の動きをみると、幾分弱含んでいるものもありますが、総じてみれば、原油価格の大幅な下落にもかかわらず、横ばいとなっています(図表11)。また、実際に経済活動を行う企業や家計がどのような「物価観」に基づいて行動しているのかという点も重要です。』(今回)

『次に、人々の中長期的な予想物価上昇率は、全体として上昇してきているとみられます(図表13)。このことは、賃金や価格設定などの行動にも影響を与え始めています。例えば、春闘でもみられたように、労使間の賃金決定において、物価上昇率への意識は高まっています。また、企業の価格戦略をみても、デフレ下では消費者の低価格志向が強かったことから、コストカットを優先した低価格戦略が多くみられました。しかし、最近では、価格に見合う物であれば多?値段が高くても受け入れる消費者が増えており、品質や機能面などで付加価値を高めながら販売価格を上げるといった動きもみられています。』(昨年8月)

ということでまあ徐々に話が「基調」に寄っているのが(実際の物価がアレなのですから当然ちゃあ当然ですが)味わいがありますな。


・賃金上昇の話キタコレだが物価目標は日銀だけで達成するのではなかったのか?????

でもって今回の違いは『(賃金と物価の関係)』という小見出しがある所です。

『この点に関して、賃金と物価の関係について、もう少し詳しく申し上げたいと思います。わが国の過去のデータをみると、賃金上昇率と物価上昇率は概ねパラレルに動いていることが分かります(図表12)。』

なおこの図表12の物価上昇率が何故か日銀の目標の総合物価指数ではなくて「総合除く生鮮食品、エネルギー」という日銀コアコアになっているのがお洒落な所です。

『しばしば、「物価だけが上がって、賃金上昇がそれに追いつかなければ、実質所得が低下し、消費にマイナスの影響を与える」といった意見が聞かれますが、?なくとも経済全体としては、そうした事態が持続的に生じることはありません。』

そらそうだがアダプティブな期待形成ェ・・・・・・・・・・

『物価上昇に賃金が追いつかなければ、消費が減?し、値上げを維持することが困難になります。逆に、賃金が上昇すれば、企業は利益を確保するため、値上げを行う必要が生じ、物価は上がります。つまり、実際に生じるのは、「賃金も物価も上がる」状況か、「賃金も物価も上がらない」状況のいずれかです。賃金上昇と物価上昇は、いわばコインの裏表のようなものです。日本銀行が現在行っている「量的・質的金融緩和」は、決して無理に物価だけを引き上げる政策ではなく、経済のメカニズムに従って、賃金の改善を伴うかたちで緩やかな物価上昇を実現しようとするものです。』

それは分かったのだが置物師匠はミルトン・フリードマンの「物価はいかなる場合でも貨幣的現象」というのを持ち出して日銀の政策だけで物価目標を達成するという話をしていましたし、それが2年とか言う話ではなくて長期的という文脈であれば黒田総裁もそういう話をしていましたが、その辺はどうなったのでしょうか??????

『先行きの物価情勢については、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向を辿り、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとみられます。企業の賃金・価格設定スタンスも積極化し、賃金上昇率の高まりを伴いながら、物価上昇率も次第に高まっていくとみています。』


とは言っているものの、最後の『4.経済・物価の先行きに関するリスク要因』の物価の部分では、

『この点に関して、物価への影響という意味では、来年度にかけての賃上げの動向に注目しています。賃金上昇率と物価上昇率は概ねパラレルに動くこと、基調的な物価上昇率が既に明確に上昇していることは、既に申し上げた通りです。』

『家計が実質的な賃金や所得を維持するためには、足もとの表面的な消費者物価上昇率の低下にかかわらず、こうした基調的な物価上昇率が賃上げに反映されていくことが重要であり、蓋然性の高いシナリオでは、相応の賃上げが行われると考えています。』

ふーん。

『もっとも、新興国を中心とする海外経済の動向によっては、企業が不透明感を強く意識して、賃上げに対しても慎重になるリスクが考えられます。また、賃金上昇率が十分に高まらない場合には、消費者の物価上昇に対する抵抗感が強まり、物価の上昇ペースが下振れることになるリスクがあると考えられます。』

海外以前の問題でそもそも日本の成長期待が高まらないとダメなんじゃないですかねえ。


ちなみに経済のリスクに関してはアジア新興国と中国の話に集中していますが引用はパスしまして最後の所になるのですが・・・・・・・・・


・企業向けに「いいから動けよ」というトーンが更に高まるの巻(気持ちは分かる^^)

『5.デフレからの脱却に向けた課題』という小見出しがあってまた「デフレ脱却」ですか(ちなみに昨年はそういうのはない)という感じですが、

『以上、日本経済は、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて着実に歩みを進めていますが、まだ途半ばであり、新興国経済などのリスク要因にも目配りする必要がある状況です。そこで最後に、デフレからの脱却と2%の実現に向けて、「企業行動」と「金融政策運営」の課題について述べたいと思います。』

と言ってますが金融政策の話は「この通り実施していますので達成しますし必要なら調整します」以外の話はないのでどうでも良くてですな、

『繰り返しになりますが、現在、企業は過去最高水準の収益を上げており、労働市場は完全雇用の状態にあります。経済のメカニズムからすれば、こうしたもとでは、企業は将来に向けた設備投資を行うとともに、更なる生産活動を行うための労働力を確保するべく、賃金の引き上げを行うことが期待されます。実際、企業は前向きな設備投資スタンスを示しているほか、賃金についても、ベースアップの実現もあり、緩やかに上昇しています。しかし、程度の問題として、企業収益が歴史的な高水準となっていることと対比してみた場合、これまでのデータで確認される設備投資や賃金の伸びがやや鈍いという印象は否めません。企業が高水準の収益を獲得しながらも、なお支出活動に慎重さを残していることは、企業の現預金の保有がこのところ一段と高い水準に積み上がっていることからも確認できます(図表16)。』

図表16ワロタ。


『企業が高水準の収益を、設備投資や賃金支払いなどの支出に必ずしも十分振り向けず、その多くを手許の現預金として保有していることの背景には、現状においても、広い意味での「デフレマインド」が必ずしも払拭されていないということがあると思います。別の見方をすれば、企業が現在の高収益を一時的な追い風によるwindfall profit であると捉えており、なかなか積極的な活用に踏み出せないでいるということかと思われます。』

まあそうじゃろ。

『このような状態から抜け出し、企業がこれまでのマインドセットを大きく転換することは、デフレだった期間の長さを考えれば、もちろん簡単なことではありません。しかし、やるべき方向性は明確です。要は、「日本経済はデフレから脱却しつつある」という見通しを踏まえ、ポストデフレ時代の新たな経営戦略をしっかり立ててもらうことです。』

でその結果2%目標が全然達成できなくて当てが外れても日銀がケツ持ちしてくれる訳でもないのですけどねえ(というかデフレ云々よりも自分の事業分野に関する成長期待だろ常識的に考えて)。

『こうした見通しを持った企業にとっては、デフレのもとでは報われなかった「前向きの行動」が全く違ったものに見えるはずです。そうした行動なしには、将来の収益を生み出し、現在の企業価値を高めることは難しいと認識されるでしょう。全ての企業が一度に変わる必要はありません。そうした見通しを持つ企業の数が増えるに従って、経済は活性化していきます。そして、この流れは積極的な企業を中心に既に進行していますし、これが定着すれば先に流れに乗った企業が勝ちます。』

・・・・・・・・・・・・(−−;

でこの後日銀の金融政策の話をしていますがそこはさっき申し上げた話なのでパスしますが、ちなみに昨年12月に経団連で『「2%」への招待状』という講演していたのですがね。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141225a1.pdf
「2%」への招待状
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──

『要するに今の過渡期的な状況を利用するかどうかは、早い者勝ちの面があるということです。デフレのもとでの「縮小均衡」の経済と、2%の物価上昇のもとでの「拡大均衡」の経済とでは、企業を取り巻く環境は全く異なります。企業経営のルールブックが変わるということです。進化論を唱えたダーウィンは、「生き残るのは、強い生き物ではなく、変化に対応できる生き物だ」と言ったと伝えられています。いち早く環境変化を先取りし、「拡大均衡」の経済に対応できた企業こそが競争の「勝者」となり、新しい時代における繁栄を享受できることになるのだと思います。ご清聴ありがとうございました。また、企業経営者の皆様にとって、言わずもがななことを申し上げた点ご容赦ください。どうか、良いお年をお迎えください。』(昨年12月)

まあ昨年も大概な話はしているのですが、今回の方がもっと「てめえら動けよゴルァ!」という感じが出ていて大変に結構ですな(−−:

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2015/11/09

○肝心の総裁講演ネタを満を持して投下しようとしたら時間が足りないことに気が付くアタクシ(アホです)

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151106a1.pdf

時間がないので(すいません朝の起動がボケボケでしたので)明日に続きますが今回は全体的な感想と最初の部分から少々。


・冒頭のお話

『このところの経済情勢をみると、中国をはじめとする新興国経済の減速の影響から、わが国の輸出や生産に鈍さがみられています。また、物価面では、原油価格の大幅な下落の影響などから、消費者物価の前年比は0%程度まで低下しています。』

原油と新興国。

『しかしながら、これからご説明するように、日本経済のファンダメンタルズはしっかりとしており、企業や家計を取り巻く環境は、数年前に比べて大きく好転しています。また、物価の基調も着実に改善しています。日本銀行が一昨年4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、デフレの脱却に向けて所期の効果を発揮していると考えています。』

デフレ脱却??物価目標2%達成のためにやっているんじゃなかったでしたっけ????

『日本銀行は、「量的・質的金融緩和」を着実に推進し、緩和的な金融環境をしっかりと継続していきます。そうしたもとで、企業や家計の経済活動は活性化し、日本経済は潜在成長率を上回る成長を続けるとともに、2%の「物価安定の目標」は、必ず達成できると考えています。本日は、「展望レポート」の内容を紹介しながら、日本銀行の経済・物価見通しや金融政策運営に対する考え方について、お話したいと思います。以下ではまず、経済・物価見通しについて、最も蓋然性の高いと考えられる中心的なシナリオをご説明し、その後、このシナリオに対するリスク要因をご説明したいと思います。』

ということで話が始まるのですが、2%の目標に関しても「達成の時期」の話がしらっと抜けておりまして、元々はデフレ脱却がどうのこうの聞かれると日銀は「デフレ脱却は2%物価目標達成の通過点に過ぎない(キリッ)」ってな感じで、デフレ脱却を定義づける事について特段重要視するような事もなく、そんなもん達成するじゃろ位の勢いだった筈だったのに、先ほどの所では「デフレの脱却に向けて」所期の効果という形での説明になっておりまして、段々「デフレを脱却したので所期の効果が上がりましたよQQE大勝利!!!!」という話をしだすのではないかというか、そういうモノの布石のような気もしないでもない。


・内容については明日で勘弁(大汗)

でまあ内容の方ですが、基本的には「賃金」に物凄い勢いで期待しているのですが、その賃金上昇のメカニズム的には需給ギャップをベースにしておりまして、労働需給がひっ迫するにつれ賃金が上昇する筈でしょというのがベースになるんですな。

ただ、それだけだとフィリップス曲線的に見た場合に相当のプラスの需給ギャップが無いと賃金との関係での物価2%というのは難しいので、インフレ期待の引き上げでフィリップスカーブを上方にシフトするという話になると思いますが、まあいずれにせよ「企業のマインドが上がって労働分配を増やすとか投資を増やすとかしないと前向きの循環メカニズムで2%達成が難しい」という認識のもとで、企業にお願いしているんだか鼓舞しているんだか分からん話になっておりますな。

まあ何ですな、元々マネタリーベースを拡大したら2年で2%の物価目標を金融政策だけで達成できる、と置物リフレ直線一気理論が大口を叩いたのでただの自業自得にも程があるのではありますけれども、ここから先のメカニズムを回すためには金融政策で何かするという話ではない状態になっていますよね、という事なので、こういう説明だかお願いだか恫喝だか知らんけど、営業活動(?)をしないといけないってのにもやや同情の念は起きて参りますな。いやー説明が苦しい苦しいとしか申し上げようがないです。

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2015/11/03

お題「総裁会見が色々とアレな件について」

朝のドラめもんなのですが文化の日の夕方に書き出して夜にのうのうと更新となりまして、早い時間にお越しになられた方(がいたかどうか知りませんが)には誠に申し訳ございませんでした。

ということで今回の総裁定例会見なのですが・・・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1511a.pdf

まあ今に始まった話ではないのですが、総裁会見に関しては最近質疑が噛み合わないケースが多くなっておりまして、そらまあ2年で2%と言っておきながらこの有様なのですし、昨年の追加緩和の時と今回の現状維持との間のロジックが飛んでいる(正確に言えば昨年の追加緩和のロジックが飛んでいた)わですから、そらまあロジックの整合性で攻めてもそもそも整合性を無視しているのですから仕方ないのですけどねぇ・・・・・・・・・・・といいつつ鑑賞するのでした。

・いきなり「2年で2%」と見通しの先送りの整合性ツッコミキタコレ

『(問) 展望レポートで、物価上昇率が2%程度に達する見通しが、従来の「2016年前半頃」から「2016年度後半頃」に変更されています。一方、「2年程度で2%」という従来の表現について維持するのであれば、その理由についてご説明下さい。』

(・∀・)ニヤニヤ

『(答) ご承知の通り、日本銀行は2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することにコミットしています。「2年程度」という表現は、物価安定目標の実現に関するこのコミットメントにおいて、「できるだけ早期に」という際に念頭に置いている期間を示したものです。』

ほう。

『実際の目標達成時期は原油価格の動向などによりある程度前後するわけですが、だからといって、「念頭に置いている期間」を変える必要があるとは考えていません。』

念頭に置いている期間は変えないけど実績評価は期間を気にしないんですね!!!

『こうしたコミットメントによって、人々のデフレマインドを転換し、予想物価上昇率を引き上げることは、デフレ脱却という目的そのものであると同時に、「量的・質的金融緩和」の政策効果の起点でもあります。そのもとで、実際に、企業や家計の物価観は大きく変化してきています。』

当たり前なのですがコミットが達成できていないのに予想物価上昇率が上がるのかという質問はこの直後に飛んできておりますので後程。

『今回の展望レポートで、2%の達成時期が「2016年度前半頃」から「2016年度後半頃」に後ずれしましたが、これは主としてエネルギー価格の下振れによるものです。物価の基調は着実に改善しており、先行きについても、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、2%を実現していくとみています。』

はいはい原油のせい原油のせい。

『もとより、今後とも、毎回の決定会合において、経済・物価の現状と先行き、様々なリスク要因、金融資本市場の動向などを点検したうえで、物価の基調的な動きに変化が生じ、「物価安定の目標」の早期実現のために必要になれば、躊躇なく調整を行う方針です。』

ああそうですか。


・次の質疑が何せ凄い事になっているのですよ

次の質疑は聞いていて途中で呆れた記憶があるのですががががが。

『(問) 先程のところに絡むのですが、2年程度で2%というお話は変えられない、政策の効果の起点であるというお話がありましたが、総裁がご就任されてから2年半が過ぎて、少なくとも半年前に16年度前半とおっしゃり、今度は16年度後半とおっしゃり、2回先延ばしされています。先延ばしをされていけばいく程、先程おっしゃった企業や家計の物価観の変化とか、日銀はそう言っているけれど、どんどん延びていっているではないかということで、信じられなくなっていくのではないかという懸念があると思います。それであっても、この枠組みは変えないということでよいのか、むしろ形骸化しているのではないかと思うところもあるのですが、そこを改めてお伺いしたいのが1点です。(後半割愛)』

そらそうよ。後半の方も中々イヤミな質問なのですが前半部分の質疑だけでも凄いので鑑賞ありたし。

『(答) まず第1点ですが、先程申し上げたように、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現するというコミットメント自体は、2013年の1月に金融政策決定会合で決定し、政府・日銀の共同声明でも謳われています。それを踏まえて、2013年の4月に「量的・質的金融緩和」を決定するに際して、2年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するということで、「量的・質的金融緩和」を導入して、それをずっと実行してきました。』

結果は2年で達成の筈が達成時期見通しが4年になってしかもその2016年度後半に達成できると思っているのは日銀だけなんですけどね。

『そうしたもとで、もちろん内外の様々な変動というものは予想外のものも起こるわけでありまして、特に昨年の夏以降のかなり大幅な原油価格の下落、それが予想物価上昇率にマイナスの影響を与え、デフレ脱却を遅らせるという懸念から、昨年の10月に「量的・質的金融緩和」を拡大したわけです。その結果をみますと、原油価格は引き続き下落し、生鮮食品を除く物価上昇率も下落してきたわけでして、足許0%程度になってきていますが、幸い、予想物価上昇率はさほど変化なく、長期的にみれば予想物価上昇率は上昇するという傾向は維持されています。原油価格は足許で、今年の初めあるいは7月頃予想していたよりさらにどんどん下がるということではないのですが、その頃予想していたレベルから緩やかに上がっていくということは、まだ確認されていません。また、先程も申し上げたように、天候不順の関係で、4〜6月に消費が弱かったということも事実です。「量的・質的金融緩和」自体は、2013年の4月に導入され、昨年の10月に拡大され、所期の効果を発揮していると考えていますが、今申し上げたようなことの影響、特に原油価格のかなり大幅な下落という影響によって、足許の物価上昇率自体は0%くらいまで落ちて、まだそこから上がってきていないということは事実です。ただ、今朝発表されました消費者物価の動向、これは9月の数字ですが、生鮮食品を除くところでは確かにマイナス0.1%で横ばいでしたが、生鮮食品とエネルギーを除いたものではプラス1.2%と、前月よりさらに上昇しておりまして、先程ご説明したように、あるいは展望レポートの中で詳しく書かれています通り、物価の基調は確実に改善してきていると思っています。』

これ文字でみても呆れる位にひたすら答えになっていないのですが、会見の中継聞いた時でもひたすら長話をして誤魔化す気が満々というか答えになっていないと思った次第ですし、日銀コアコアの1.2%を今回も強調しているのですが、これが頭打ちとか下げだしたりした日にはどこからどう見ても申し開きが立たないのですが、その時は別の指標でも出してくるのでしょうか???

『従って、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、物価上昇率も原油価格のマイナスの影響が剥落する来年度の後半頃には2%程度に達する可能性が高いとみていますので、「量的・質的金融緩和」政策に対する信認が崩れているとか、あるいはそれが低下する惧れがあるとは今のところ考えていません。いずれにしても、物価の基調に変化が生じて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するために必要があれば、躊躇なく追加緩和であれ何であれ、金融政策の調整をするということに変わりはありません。(後半割愛)』

ちなみにここで黒田総裁も同席している2013年3月の正副総裁就任記者会見での岩田副総裁のお言葉を確認してみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1303e.pdf

『2つ目は、そういう意味で、2年くらいで責任をもって達成するとコミットしているわけですが、達成できなかった時に、「自分達のせいではない。他の要因によるものだ」と、あまり言い訳をしないということです。そういう立場に立っていないと、市場が、その金融政策を信用しないということになってしまいます。市場が金融政策を信用しない状況で、いくら金利を下げたり、量的緩和をしても、あまり効き目がないというのが私の立場です。』(2013年3月21日岩田副総裁の発言)


・そもそも原油のせいだけではないのではという質問

さっきの質問には後半がありまして(だから質問も答えも合わせると上記の倍くらいある)・・・・・・

『(問) (前半割愛)もう1点は、先程から物価の下振れは原油の影響だとおっしゃっているのですが、展望レポートを詳細にみると、前回中間評価の7月時点では、オイルの影響が寄与するのはマイナス0.7〜0.8%であるとおっしゃっていて、今回の展望レポートではマイナス0.9%と、ほとんど原油のマイナス寄与度が変わっていないにもかかわらず、出来上がりの消費者物価の予想は大きく下げられています。』

なるほど。

『つまりこれは、原油以外の他の要素が随分効いているから物価が上がっていないのではないかと思わざるを得ないと思います。それは、例えば賃金とかそういうものが上がっていないということであれば、原油にしても賃金にしても、日銀が追加緩和したら急に上がるものではないわけで、そうすると、日銀が金融緩和しているから物価が上がるのだというところと齟齬が出てくるのではないかと思うのですが、この2点をお願い致します。』

この答えがまたアレ。

『(答)(前半割愛)それからもう1つ、原油価格だけでなく、他の要因もあったのではないかという点につきましては、展望レポートをよく読んで頂ければ分かると思いますが、まず、成長率については、2015年度は下方修正していますが、2016年度、2017年度はほとんど変わっていません。2016年度は、0.1%ポイント下方修正になって、2017年度は逆に0.1%ポイント上方修正になっています。物価については今年度と来年度と下振れして、2017年度は前と変わらないということです。』

ほうほうそれでそれで?

『物価見通しの修正の背景には、基本的には原油価格が圧倒的に大きな要因であったと思いますが、今申し上げたように2015年度については成長率も下方修正していますので、そのことの影響もあったと思います。それは、先程申し上げたように、例えば4〜6月の成長率がマイナスになっていますが、消費が弱かった、あるいは第1四半期の米国の成長率が低かったということ、あるいはアジア諸国の成長率が減速していたということもあって、第2四半期の輸出が弱かったというようなこともあります。このように、成長率自体、今年度について若干下方修正したという影響も、物価には何がしかの影響を与えていると思います。物価の基調を判断する上で一番大きいのは、もちろん需給ギャップと予想物価上昇率ですが、需給ギャップは引き続き改善していますし、予想物価上昇率も長い目でみれば上昇しているということに変わりはありません。』

展望レポートの説明見れば分かるのですが、需給ギャップの改善については4月の展望レポートから比較しますと思いっきり改善が後ずれしていまして、4月の見通しでは今年度は途中から需給ギャップがプラスに転じてその後も堅調に推移するという触れ込みになっていたのが、今回の見通しでは今年度中は需給ギャップがマイナスからゼロ近傍で推移という見通しになっておりまして、そもそも論として需給ギャップの改善が遅れている、というのがあるのですよね。

然るに、需給ギャップの改善が遅れているという話をしないで「引き続き改善」とかお前は何を言ってるんだという説明でもう何だかねという所。

『そうしたもとで、賃金も2年続きのベアが実現し、雇用・所得環境も改善しています。今申し上げたように、足許の実質成長率が下方修正されたことなども影響はしていますが、2016年度前半頃に2%程度に達するという見通しが、2016年度後半頃に半年くらい後ずれしたことの1番大きな要因は、やはり原油価格であったと思っています。』

いや需給ギャップの改善が遅れているんですけど。

『なお、賃金につきましては、企業収益が史上空前の水準にあり、労働市場は極めてタイトになっていて、人手不足が拡がっていますので、今後さらに上昇していくだろうと思っています。』

でも展望レポートでは賃金の伸びが弱いという話をしていて、それって要するに期待に働きかけるルートの効きが弱いという事なんじゃ無いですかねえ。まあいずれにせよ質問に対してあまりまともに答えていないなあという印象。


・物価だけ上がっても仕方がないという説明を丁寧にさせるというナイスな質問

ちょっと先に行きますがこの質問は素晴らしい。

『(問) 総裁は、物価の基調は高まってきていると繰り返しおっしゃっています。そして足許で原油安により物価が下押しされていますが、一巡すればこの直接的な下押し効果がなくなるのは客観的な事実と思います。その上で、今回、追加緩和は実施されませんでしたが、それは今、逆に追加緩和をしてしまうと2%を目指す上でやり過ぎになる、行き過ぎてしまうリスクも懸念されているのでしょうか。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) そこは非常に微妙な判断がいるところだと思いますが、従来から申し上げている通り、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に実現することが私どもの目標ですが、その場合、物価だけ上がればよいのではなく、賃金も上がっていく、企業収益も増えていく、経済全体がバランスのとれた形で目標を達成するのでなければ、持続的・安定的に達成することは非常に難しいと思います。ですので、早期に達成するために必要であれば躊躇なく調整する用意はありますが、その場合も、物価の基調、あるいは経済全体をよくみて、総合的に判断して決めていくことになると思います。』

元々は物価目標の水準は潜在成長率などとは関係なく決まるものであって、それの水準としてはボスキンバイアスだの政策金利の発動余地だのを勘案して2%というのが適切という話をしていたはずなのですが、この答えですと「何が何でも2%」なのではなく「バランスの良い形で達成すべき」という木内さんや佐藤さんや石田さんの説明のような話をしているように見えるというのが実にチャーミングで、こういう答えを出させた質問者ナイスです。

『今回、展望レポートで示している通り、また金融政策の決定についての公表文にもある通り、物価の基調が着実に改善しているもとで、現在の極めて緩和的な金融政策を維持し、今後とも着実に実施していくことによって2%が達成できるという判断になったわけです。従って、ご指摘のようなことも委員方の頭には色々あったと思いますが、基本的には、先程申し上げたように、物価の基調は着実に改善している、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮している、従って、今の政策を維持していくことによって、物価安定の目標が達成できる、という判断です。』

まあこちらはふーんとしか申し上げようがない。


・基調が強いと言ってるけど所詮日銀コアコアで+1.2じゃないかというツッコミへの応答が見苦しい件

まあ当然ですが今回の質疑応答は質問がだんだん辛辣にはなっているものの、何せ答える方が相手の質問に対して(回答に困る質問の場合)まともに答えないという態勢になっているので文字になったものの鑑賞物としては楽しいのですが、会見中継聞くと話が同じところをグルグルと回るメリーゴーラウンドかコーヒーカップかという風情でして。

『(問) 総裁は物価の基調が着実に改善しているとおっしゃって、その根拠として「除く生鮮エネルギー」の数字が足許1.2%まで上昇しているとおっしゃっています。確かに足許上昇傾向にあるのですが、それでも「除く生鮮エネルギー」でも、目標とする2%には遠く及んでいない1.2%にしかまだ上がっていません。』

(;∀;)イイハナシダナー

『2年半過ぎて、しかも昨年10月に追加緩和までして、まだ「除く生鮮エネルギー」でも1.2%しかきていないというのは、逆にいえば、そもそもQQEの波及メカニズムが想定通り働いていないのではないか、または、そもそも2年という期間に無理があったのではないか、という考え方もできると思うのですが、その点どのようにお考えでしょうか。』

(;∀;)イイハナシダナー

『(答) 前段については「量的・質的金融緩和」を導入し、また昨年10月に拡大してきた時の波及メカニズムというのは、詳しくご説明していますけれども、その通りに所期の効果を発揮していると思っています。ただ、その一方で、昨年の夏以来の大幅な原油価格の下落であるとか、あるいは新興国の経済の減速であるとか、その他、色々な状況があったことも事実です。メカニズム自体は基本的に所期の効果を発揮していると思いますが、様々な要因が重なって足許で、生鮮食品を除く消費者物価の対前年比がマイナス0.1%という状況になっています。物価の基調を判断する場合には、もちろん基本的には需給ギャップと予想物価上昇率が重要であり、さらには賃金の上昇率であるとかその他様々な指標を総合的に勘案して判断する必要があると思いますけれども、物価の基調が着実に改善しているというのは変わりないと思います。』

何と見苦しい(というか聞いているときは聞き苦しかったです)説明。だいたいからして、マネタリーベース直線一気理論だかマッカラムルールだか知らんけど、最初に言っていた寝言じゃなかった理論を遥かに超えるMB拡大を行っているのに、需給ギャップの方は兎も角として、期待インフレ率が2%でアンカーされていない(アンカーされているなら目標達成ですがな)というのは何故なんでしょうかねえ。

『また、2年程度を念頭において「量的・質的金融緩和」を導入し、今日に至っているということでありまして、結果的に2年半経ってまだ2%に達していないということは事実ですが、先程申し上げたような状況ですので、そもそも2年程度を念頭に置くことが無理であったとか、無駄であったというようなことは全く考えておりません。』

「2%に達していない」とかもうすぐ達成しそうなレトリック使っていますが都合のいい数字出してきてやっと1.2なのであって、元々言ってた数字はゼロ近辺のままですし、達成見込み時期がドンドン後ずれしているのですけどねえ。


・賃上げに期待という部分の質疑ですが・・・・・・・・・・・

『(問) 展望レポートを拝見すると、来年の賃上げに向けた期待というのが非常に強く窺われるのですが、今後賃上げが可能な経済物価情勢の環境を整備するという観点から、場合によっては日銀として政策対応を行う可能性というのはあるのか、日銀として何ができるのかということも含めて教えて下さい。』

これは露骨には言っていませんが、前回の追加緩和を評価するときにはマインドに働きかけて企業の賃上げにも寄与云々というのをしている訳でして、そういう実績がある中で今後の賃上げ動向が重要というのであれば、またこのタイミングで追加緩和すべきなのではないか、という意味が込められていると見ました。

『(答) 先程申し上げた通り、物価だけ上がれば良いということではなくて、賃金も上がり、物価も上がり、企業収益も改善していくという経済全体が好循環を遂げる中で、物価が着実に2%に向けて上昇していくということが一番望ましいわけです。その観点から、当然、賃金も上昇していくことが望ましいわけです。』

実際にはそうなのですけど当初の置物理論だと起点が予想物価上昇率の引き上げで、それが進むと勝手に賃金も物価も上がるという話じゃなかったでしたっけ?????????

『足許、企業収益が史上空前の水準に達しており、労働市場は有効求人倍率でも完全失業率でも、どの指標でみても大変タイトで完全雇用状況になっており、色々なセクターで人手不足と言われる状況にあります。企業収益が好調で労働市場が極めてタイトということですので、現に賃金も上がっていますし、今後さらに上がっていくということは当然予期できるところです。ただ、確かに足許の賃金は上がってはいるのですが、労働市場が極めてタイトな割には、あるいは企業収益が史上空前のレベルにある割には、賃金が上昇していないことも事実ですので、今後さらに上昇していくことが十分期待できると思います。』

その場合政策当局者としては単純に期待するのではなくて、何で想定通りに賃金が伸びないのかということについて考察して、金融政策で何らかの対策が取れるようならば取るようにする、というのがお仕事であって、理屈の上では賃金が上がるはずだからこれから上がる、というので良いのでしょうかねえ。

『日本銀行として、賃金引き上げに何か直接働きかけるということは、日本銀行の機能、権限、責務と離れていますので、そういうことは考えていませんが、色々な機会に今申し上げたような分析であるとか、考え方は申し上げていきたいとは思っています。』

期待に働きかけることによって賃金引き上げにも寄与するんじゃなかったんでしたっけ???????


・これは華麗な藪蛇答弁

この質疑聞いている時に「7割ってフローとストックを間違えているんじゃないのか??」とは思ったものの、資料にあたって確認している暇がなくて????のままだった件ですが・・・・・・・・・・・

『(問) 先程、総裁は、手段には限界がないというお話をされましたが、今、国債の購入が日銀の金融緩和の主な柱になっていると思います。国債の市場規模は無限に広がっていくわけではなく、規模があります。これだけの大量の国債買入をしていくと、これを続けていくことによって、買入れの余地が少なくなっていくと思います。この点について総裁は、どの程度懸念を持っていらっしゃいますか。(後半割愛)』

でもって問題の答弁ですが。

『(答) まず1点目については、もちろん、国債をどんどん──特に新規発行額を超えて──買っていけば、いずれ買入れに限界がくるだろうということは観念的にはその通りですが、これまで大量に買ってきましたが、今の時点でも、実は国債の発行残高の3割弱です。確かBOEは、国債発行額の7割ぐらいまで買い進んだと思いますが──別に、7割まで買うと言っているわけではありませんが(注)──、今の時点で買入れに限界がすぐ来るとか、考慮しなくてはいけないということにはなっていないと思います。いずれにしても、2%程度に達するのが2016年度の後半頃とみていますが、そうした意味で国債の買入れが困難になって、2%の「物価安定の目標」が達成できなくなるようなことにはならないと思っています。(後半割愛)』

この回答は「2016年度後半ごろに物価が2%程度に到達するという前提の下では」国債買入が構造的に壁にぶつかるような事は考えていない、という話をしたかったようなのですが・・・・・・・・・・・・・

『(注) BOEの国債買入れ額は、正しくは、国債発行額の約4割でした。』

この「でした」ってのが狙った訳ではないのでしょうがやっちまった感が伝わるチャーミングな語尾ですがそれは兎も角として。

・ここで突然ですが藪蛇の検証をしてみましょう(超イイカゲン版なのは勘弁)

えーっとですな、物凄い雑な計算になりますが・・・・・・・

http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/gbb/data.htm
統計表一覧

こちらにある『最近5年間の国債及び借入金並びに政府保証債務現在高の推移 Excel』の数字を見ると普通国債と財政投融資特別会計国債で6月末で843兆円(普通国債のうち短期国債を除いています)になっていまして、年間30兆円弱(四半期展開でみると直近は28〜29兆円程度)ほど増えている計算のようですな。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2015/ac150930.htm/
営業毎旬報告(平成27年9月30日現在)

こちらの『資産項目中の「国債」の内訳』を見ますと長期国債の日銀保有額が9月末で263兆円弱となっていまして、さっきの840兆円を850兆円に補正(四半期で7兆円の計算として)したとして現在の日銀保有長期国債が発行の30.9%程度となります。

でもって日銀の買入は四半期ごとに20兆円(年間80兆円)残高が増えるのですから、物凄くざっくり言えば、来年の9月末の時点で長期国債発行残高がここから30兆円増えている間に日銀の長期国債買入残高が80兆円増えるのですから、その時点でほぼ4割に到達(39.0%とかになった)という大変にセクシーな事になるのですな。

つまりですね、買入の限界についての話でBOEのネタを出したのは良いのですが、7割じゃなくて4割という数字を出したせいで「これだと来年の秋には限界ですか!!」というような話になってしまいますし、なるほどそういう事だから買入の増額も出来ませんわな(単純に年間80兆円を100兆円にすれば来年9月の比率は堂々の41.3%になるので2016年度後半になる前に40%を軽く超えてしまうがな)というような意地悪なツッコミまで出来てしまうという華麗なる藪蛇と相成ったのでございました。

ちなみに短国の場合ですけれども、短国金利がホイホイ下がりだしたのって昨年の4〜5月で、マイナスに突っ込んでしまったのが昨年9月となっていまして、この間って国庫短期証券の市中発行額に対して日銀の買入(償還乗換等の市場を通らないものを除く)残高が25%程度から30%程度に上がる過程で発生した事象となっておりましたので、まあここもと債券市場がすっかり需給だけでアレな相場になっているのもむべなるかなという感じですが、なるほどストックベースで4割とかになるとそらもう大変ですな、などというような計算をしている人が月曜および文化の日には債券市場の中で軽く100人くらい出て居そうで、これはまた黒田総裁やっちまったなという感じですが、恐らくこういう話でオペの限界がという話があちこちで言われ出すとムキになって強気の情報発信が飛んでくるに1万戦時国債。


・置物理論に対するツッコミには正面から答えません

ということで今回の会見の後付白眉の部分を通過してしまいましたが、

『(問) 先程から総裁は、物価だけが上がる形ではなくて、賃金とともにバランスよく上がることが必要と繰り返していますが、そもそも異次元緩和を導入した際には、物価が上がれば企業収益も改善するし、実質金利が下がり、企業の行動も前向きに変わり、ひいては賃金も上がっていくという姿を描いていたと思います。なぜ今、物価の基調は改善しているにもかかわらず賃金が上がりにくい状況が続いているのでしょうか。それを上げるためには、金融政策ではない他の政策が必要だということなのでしょうか。』

置物disキタコレ。

『(答) 先程申し上げた通り、昨年、確か20数年振りだと思いますが、ベアが実現し、今年はさらに業種や企業規模の拡がりを伴って、賃金は上がってきています。2%の「物価安定の目標」が達成される時には当然、賃金もそれに見合って十分上がっていなければなりません。そうでなければ、物価が持続的に2%程度の上昇を続けることはできないわけで、あくまでも賃金と物価は車の両輪といいますか、賃金が上がれば物価も上がる、物価が上がれば賃金も上がる――逆に言うと、物価が上がらないと賃金も上がらないし、賃金が上がらないと物価も上がらない――という関係に中長期的にはあるわけです。』

確か浜田先生は雇用の拡大の改善の為には実質賃金が一時的に低下する事が重要とのお話をしていましたが何時の間にパラレルという話になったのでしょうか。

『その意味で、物価が上がっていくに際して、やはり賃金もバランスよく上がっていく必要があるし、現に上がってきてはいるのですが、先程申し上げたように、史上空前の企業収益と極めてタイトな労働市場・雇用状況に比べると、若干、上がり方が鈍いかなと思っているわけです。ただ、今後、そこは上がっていくだろうと思っています。』

その「思っています」は聞き飽きましたし、大体からして思っていますで2年の目標が2年ほど後ずれしているんですけどねえ。

『日本銀行としてできることは、従来から申し上げている通り、労働市場も含めた需給ギャップを改善していくとともに、将来の物価上昇予想を2%の「物価安定の目標」に次第に近づけて行き、そこにアンカーすることを通じて、賃金も十分に上昇していく環境を実現するということだと思います。政府は政府で、従来から政労使会議や官民対話とか色々なことをやっておられますが、そうしたことも重要な要素であると思っています。ただ、日本銀行としてできることはあくまでも金融政策を通じて、賃金や物価がバランスよく上がっていくことを期待する、ということに尽きると思います。』

期待に強力に働きかけるという話で去年は追加緩和をして、今年まだ賃金の上昇が望ましい水準より低いのでしたら追加緩和なのではないですかねえ。

・・・・・・・そろそろ誤解する人が出てきそうなので申し上げますが、あたくしは追加緩和なっしー予想をしていましたし、短期勝負を前提にしている作りになっているとしか思えないこの政策を続けるのがそもそも無理があって、より長い期間維持可能な緩和政策を打ちながら、2%の物価安定と整合的な成長経済にしていきましょうという政策の建付けに変更しないと無理があるし、マネタリーベース直線一気理論とかマッカラムルールとかアホかと馬鹿かと思っておりまして、上記の追加緩和何でしないの悪態は昨年の追加緩和との整合性という意味で悪態ついているだけですのでアタクシの思うべき論とは別ですから念のため申し添えます。


・最後の質疑も質問に対して全然答えていないのでその酷さを鑑賞しましょう

最後の質疑(実は最後のあとに質問しようとした記者が居たが華麗に時間切れ攻撃で却下されて居たはず)がこれまた質問と答えが全然合っていない典型なので見物しましょう。

『(問) リーマン・ショックの後に展望レポートをみていて、日本の潜在成長率は緩やかに上がっていくとずっと言われているのですが、ここ何年か、潜在成長率が下がっていて、そのため経営者が企業収益が最高であってもなかなか賃上げや設備投資をしないというふうに言われています。』

『日本の場合、やはり潜在成長率が上がらないと期待もなかなか上がらないので、さらにお金を使おうというインセンティブもなかなか上がらないと言われます。現状、設備投資は計画ではすごく強いのですが、工作機械受注や先行きの指標をみていると、設備投資がすぐに出てくる様子はないです。その辺のところ、先行きの設備投資動向と、金融政策で潜在成長率を上げることをサポートすることができるのかどうかをお伺いします。』

この質問の惜しいのは「そもそも展望レポートでは毎回先行きの潜在成長率が徐々に上がるパスを置いているのにそうなっていないのは、見通しの前提が根本的にダメなんじゃないの」という切り口で突っ込んだ後に後半の質問をすれば面白かったと思うのですがそれは兎も角。

『(答) 今ご指摘の点は、2つ全然別なことを言っておられると思うのですが、一つは潜在成長率が下がっていく、あるいは下がっていると、なかなか企業は設備投資をしないのではないかという話です。』

『これは、日本で言われているだけではなく、リーマン・ショック後の米国や欧州でも色々言われていますし、最近の新興国の状況についても言われています。そうした要素はあるとは思いますが、潜在成長率がリーマン・ショック後に下がってしまったかなり大きな理由は、いわゆる全要素生産性がガタンと落ちたのではなく――純粋に技術進歩率が低下したというよりも――、労働力人口がずっと減ってきたということと、リーマン・ショック後に企業が設備投資をだいぶ控えたので、資本の貢献がプラスからマイナスになってしまったということです。』

だったらそもそも潜在成長率が上がるという見通しをずーっとしているのはどうなんでしょうかねえ。

『しかし足許では、女性の就業率がかなり上がっており、労働の貢献もずっとマイナスではなくなっていくと思いますし、資本については、設備投資が少しずつ出てきていますので、企業の生産の国内回帰もあり設備投資自体も国内に少しシフトしてきています。従って、潜在成長率が今後少しずつ上がっていくことは十分想定できることだろうと思います 。』

いやそれマイナスカバーしてプラスになるほどに寄与しないと直感的に思うjのだが。

『2番目の点は、日銀の短観や、各種の設備投資計画のアンケート調査の結果は大変強いのです。足許これまでのところ計画が極めて強い割には、まだ十分に設備投資が出てきていないことは事実ですので、今後出てくるとは思います。また、新興国の減速状況がどうとか、マーケットのボラティリティーが高まったとか、色々な不確実性を指摘される人もいますので、計画通りに全部出てくるかどうかはもちろんわかりませんが、9月の短観では、その6か月前の状況が上方修正されるくらい強いので、その計画自体は当然、各企業の売上や利益の予想、究極的には潜在成長率の動向なども踏まえたうえで出てきている計画ではあると思います。ただ、計画が強い割に、まだ足許では十分設備投資が出ていないことは事実ですので、今後とも企業の設備投資がこの計画に沿ってどの程度出てくるのか、十分注視していく必要があると思っています。』

・・・・・・・結局肝心の「金融政策で何をするの」という質問には答えずじまいなのでした。

とまあそういう訳で、引用大会で無茶苦茶長くなってしまいましたので休日更新したのだが更新時間が夜なのでただの前日下書きと変わらんことになってしまって正直スマンカッタ。

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2015/10/21

○こんな記事出てましたようで(黒田総裁のインタビュー?記事@CNBC)

http://www.cnbc.com/2015/10/11/bank-of-japan-governor-kuroda-says-inflation-in-line-indicates-october-easing-unlikely.html
(URLが長いのでリンクは途中までで貼っています)

BoJ's Kuroda hints October stimulus is unlikely
Geoff Cutmore | Nyshka Chandran
Sunday, 11 Oct 2015 | 10:50 PM ET

ということで先週頭の記事なのでちと古いのですけれども。

『In an interview on the sidelines of an International Monetary Fund meeting (IMF) in Peru, Kuroda told CNBC that Japan's inflation rate was in line with the central bank's expectations.』(上記URL先より、以下同様)

ということなのでインタビューみたいですけど。

『"If necessary, we can further ease our monetary policy but at this moment the inflation dynamics is as we anticipated. So, at this stage we just continue QE, but if necessary we can adjust."』

物価の基調は予想通りに推移しているそうです。でまあちょっと飛ばしまして先の方に。

『Kuroda, however, continued to be a cheerleader despite rising evidence of a weaker economy, insisting that current policy was paving the way for strengthening underlying inflation.』

微妙にCNBCの悪態を感じる。

『"If you look at it [headline inflation] carefully, energy items may be declining by about 1 percent or reducing the CPI rate by 1 percent, but non-energy items are raising CPI by about 1 percent, so they are cancelling out," he told CNBC .』

はいはい原油のせい原油のせい。

『"Unless oil prices decline further, the negative impact from oil will eventually dissipate, fade out, disappear and then 1 percent inflation is quite likely to come and because of the reduced output gap, and tight labor market conditions, I think we can approach 2 percent inflation sometime next year."』

しらっと「sometime next year」になっているのがチャーミングでして、2016年度前半だったのではないかと小一時間なのですが、まあ年度と言われても説明しにくいからこういう言い方で表現したという事で一応従来と同じ話をしていると整理しておきましょう(棒)。

あと黒田総裁のコメント部分(この記事は””で括られている部分が幾つかあるのですが、黒田さんのコメントじゃないどこぞの何とかストとかのコメントがあって紛らわしいので注意)は最後の所にございます。

『Commodity prices are a double-edged sword for Japan. The nation is one of the world's biggest oil importers so it benefits from cheaper prices but at the same time, its exports suffer because lower oil prices hurt emerging Asian nations dependent on commodity exports. Those emerging markets buy more than 50 percent of Japan's exports.』

ここはCNBCのコメントでして、微妙にさっきのもそうですが悪態成分が入っていまして「黒田総裁は原油が戻ればというけどそれ経済にマズーじゃないのですかねえ」としているのですが・・・・・・・・・・

『On oil, Kuroda refuted speculation that a price recovery would hurt Japan, saying it would instead reflect a stronger global economy.』

ということで、そこは問題ない(原油価格上昇=世界経済の拡大なので)的な話をした模様。

『He also ruled out taking a page from the European Central Bank's book, saying he wasn't considering using negative interest rates on bank deposits as a way of stimulating the economy.』

マイナス金利否定キタコレ!!

『"We don't think it's necessary. The ECB certainly introduced negative interest rates but after that, they embarked on QE and we have been implementing a large-scale asset purchase program for more than two years, so I don't think it's necessary to make interest rates negative."』

ここの黒田さんの説明は確かにそうですよねという所で、そもそもECBの場合はマイナス金利の方が先にあって、あれをやった時には「ああLSAP政策方向じゃないのね」と思われたのですが、なぜかそのあとLSAP政策を打ち込んでくるという謎プレイをしておりまして、単にマイナス金利やっても思うように効かなかったからつぎはぎで突っ込んできた感が強いのですが、まあ他の話についてが適当に誤魔化すことも多いのですが、マイナス金利とかの付利をいじってくる政策に対しては妙に威勢よく否定してくる黒田日銀という所ですな。

テクニカルな論点からすればQE政策でMB拡大政策をする場合には、超過準備を積み上げやすくしないとそもそもAPPに対する売却インセンティブが下がってしまうので、そのためには超過準備に一定のメリットを与えないといけない、という話ですから付利はいじれないという事なので、皆さんがそれを強く認識しているのでしょうねえとは一応額面通りに取るとそうなります。これだけ否定するから騙し討ちあるでという意見も別に否定はしませんが、ただそれよりもMB拡大政策とのフリクションという技術的な問題の方が大きいのでやらんとは思いますけどね。

ただまあ何ですな、利息払って集めている超過準備って日銀が売出手形なりのような形で資金吸収しているのと経済的にどこが違うのか(要求払性の違いとかはあるけど)と考えますと、そもそもそのMBの意味は何なんですかという話をしたくなりますがそのようなことを言ってはいけません(^^)。

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2015/10/19

○総裁の挨拶は例によって例の如くいつも通りですが

全国信用組合大会における挨拶
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/ko151016a.htm/
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151016a.pdf

『最近の金融経済情勢と日本銀行の金融政策運営』というのを拝見。

『このところの金融経済情勢をみますと、金融市場では、夏場以降の中国株価の下落などを背景に、グローバルに振れの大きな展開となりました。また、海外経済については、中国を始めとする新興国経済が減速しています。もっとも、先進国経済は堅調に推移しており、世界経済全体としては、緩やかな成長が続いています。』

はあそうですか。

『わが国経済については、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかな回復を続けています。』

>所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで

ふーん。

『企業部門については、今月初めに公表した短観をみますと、製造業の一部にやや慎重な動きもみられますが、業況感は総じて良好な水準が維持されています。また、史上最高水準の企業収益が予想されるもとで、設備投資計画が上方修正されるなど、積極的な設備投資スタンスが維持されています。』

短観が良くて日銀歓喜という所ですが、設備投資に関しては出る出る詐欺ではないか疑惑がががががが。

『家計部門でも、労働需給の引き締まり傾向が続き、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、家計支出は底堅く推移しています。個人消費は、各種の統計で7〜8月は4〜6月対比で増加しており、天候不順の影響などによるひと頃の弱さから脱しつつあります。』

実質賃金の伸びが弱いという話は華麗にスルーですねわかります。

『先行き、輸出は、当面横ばい圏内の動きを続けた後、新興国経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかに増加していくとみられます。』

9月議事要旨での議論ですと新興国経済の減速からの脱出には少々時間がかかるとのことですが。

『また、国内の企業部門・家計部門については、今申し上げたように、前向きの循環メカニズムがしっかりと働いており、内需は増加基調を辿ると考えられます。このため、わが国の景気は緩やかな回復を続けていくとみています。』

・・・・・・・・・・・

『物価情勢をみますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、0%程度となっています。昨年度後半以降、上昇率が低下している背景には、エネルギー価格の大幅な下落があります。もっとも、エネルギー価格の影響を除いたベースでみますと、生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価の前年比は1%を上回る水準まで上昇するなど、物価の基調は着実に改善しています。先行き、物価の基調が着実に高まり、エネルギー価格下落の影響が剥落するに伴い、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めていくと考えられます。』

この「1%」を超えているというのが説明的にはキモでして、1%超えた状況でないと「デフレではない」と言い難い(上方バイアスと糊代の関係上)ので、この1%を上回るを連呼するのは(最近の仕様ですけれども)ややきな臭い訳ですよ。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、今後も2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続していきます。その際、これまでも申し上げているとおり、経済・物価情勢については上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行っていく方針です。』

といういつもの話で締めているのですが、最近の金融政策決定会合などで示されている内容から特段変化がない(まあ有ってもビックリですが)という強気一辺倒な訳で、これをまともに読めば10月展望レポートでは「エネルギー価格の影響ガー」と言って物価2%到達時期の先送りが実施されるものの、基調は改善しているので何ら問題はありません(キリッ)となって政策変更ナンデスカソレという話になるというのが妥当なのですが、何せ昨年の前科があるので誰も信用していないという事で。

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2015/10/09

○総裁会見である

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2015/kk1510a.pdf

・物価見通しはどう見てもこれは後ずれだが知らんがなというスタンス

『(問) 生産、輸出関連の統計で最近弱い動きがみられ、マーケットでは 7〜9月期のGDPがマイナスになるのではないかとの見方も引き続きあります。国内景気の足取りのもたつきが需給ギャップの改善を遅らせ、物価の基調に与える影響をどうお考えになりますか。また、16 年度前半頃としている 2%の物価目標の達成時期が後ずれするリスクが高まっていないのか、ご見解をお聞かせ下さい。』


『(答) 先程申し上げたように、わが国経済は、確かに輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられていますが、先日の短観でも確認されたように、過去最高水準の収益を背景に、企業の前向きな投資スタンスは維持されています。また、雇用・所得環境が着実に改善する中で、個人消費は底堅く推移していますし、住宅投資も持ち直しており、景気は全体として緩やかな回復を続けているとみています。また、これも様々なデータ、さらには日銀短観でも確認されたことですが、企業の人手不足感がさらに強まるなど、労働需給の引き締まり傾向も続いており、マクロ的な需給バランスは、労働面を中心に、着実に改善傾向をたどっているとみています。』

『こうしたもとで、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落に伴って 0%程度になっていますが、生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価の前年比は、既に 1%を上回る水準まで上昇していますし、その他様々な指標をみると、物価の基調は着実に高まってきているとみています。』

こういうのを暖簾に腕押し糠に釘という。

『先行きの消費者物価の前年比は、物価の基調が着実に高まるもとで、原油価格下落の影響が剥落するに伴って、「物価安定の目標」である 2%に向けて上昇率を高めていくと考えており、2%程度に達する時期は、2016 年度前半頃になると予想していますが、原油価格の動向によっては多少前後する可能性はあると先程申し上げたところです。』

『いずれにしても、先行きの具体的な消費者物価上昇率の見通しについては、次回の決定会合で十分に議論して、「展望レポート」でお示しすることになります。』

どう見ても次回展望レポートで後ずれする気が満々です本当にありがとうございました。


・暖簾に腕押し暖簾に腕押し

『(問) 2 点伺います。1 点目は先程も言及があった短観ですが、販売価格判断DIや翌日発表になった企業の物価見通しをみると、かねがね価格設定行動が大事だと言われているその辺りが少し弱いのではないかという気がします。今回、物価の見通しについても判断は変えていないのですが、短観の結果を踏まえた上で、なぜ最終的に変化しなかったのかをもう少し細かく教えて下さい。(後半割愛)』

『(答) ご指摘のように、短観で企業の販売価格の見通し、あるいは仕入価格の見通しも若干下がっていることは事実です。仕入価格の見通しの方がやや下がっており、その背景には石油その他輸入原材料の価格が低下していることが影響しているようにも思われます。販売価格の下がり方よりも仕入価格の下がり方が大きいので、企業収益はさらにそこから増えることになってくるわけです。』

出ると思った。でもそれって物価には低下圧力ですよね?

『将来の価格の動きをみるためには、足許の需給ギャップの動向、企業や家計その他の予想物価上昇率の動き、企業の価格設定行動、あるいは賃金の動向といった各種の指標をみながら考えていく必要があると思います。全体としてみると、先程申し上げた通り物価の基調が着実に高まっていることは事実ですので、そうしたことを踏まえて、今回の公表文にも示した通り、従来の考え方を踏襲したわけです。もとより、物価の動向、特に物価の基調については、引き続き十分注視していきたいと思っています。(後半割愛)』

「全体として見ると」というフワフワの前提を置いて「事実です(キリッ)」とか言われましても何が何やらとしか申し上げようがないですが、まあこうやって言い逃れを続けるという事ですな。


・昨年との違いについて

『(問) 予想物価上昇率について、市場のBEIとか、今回の短観の企業の物価見通しなどのサーベイをみても、結構下がってきている指標が増えてきていると思うのですが、その中で今回も全体として上昇しているとみられるという判断をされた背景を教えて下さい。また、市場などでは、予想物価上昇率が下がってきているので、昨年同様 10 月末に追加緩和をやるのではないかというような見方が増えています。総裁からみて、昨年の 10 月と比べて何が違うのかまたは同じなのか見解を教えて下さい。』

うむ。

『(答) 前段の点については、確かにBEI、ブレイクイーブン・インフレーション・レートは、若干下がってきている──これは実は欧米でも同じなのですが──、そういう状況があることは事実ですし、日銀の短観でも、それ程大きなものでないにしても、販売価格や仕入価格あるいは、CPIの見通しについて若干低下しているということは事実です。』

欧米のBEIが下がったから日本のBEIも下がって良いという理屈は無いと思いますが。

『他方で家計の物価見通しというか、物価の予想は全く変わっていません。』

それ昔から大体同じなんですが。

『また、企業の見通しやエコノミストのフォーキャスト、その他の色々なものをみても、足許は若干下がっていますが、先行きだんだん上がっていくという見通しは変わっていないようです。』

それは原油価格や商品価格の影響が剥落する分を見ているかも知れんが絶対水準で2%行くとかいう予想はよほどの変態仮面じゃないと居ないと思うのですけれども・・・・・・・・・・・・・

『さらには先程申し上げたように、企業の価格設定行動が、日次物価指数や週次物価指数などをみますと、昨年とかなり様変わりで、価格の引き上げが続いています。』

さてここで昨年9月に行われた定例記者会見での総裁発言を確認してみましょう。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1409a.pdf

『東大物価指数につきましては、日次であり、先行的な意味があると理解していますが、しかもカバレッジが2 割弱ということでもありますし、ごく短期的なセールス等の動きをよく反映するということもありますので、消費者物価の動きとは必ずしもパラレルではないという面もあります。』(昨年9月4日の総裁定例会見より)

・・・・・・・・・東大物価指数はこの1年で長足の進歩を遂げてしまわれたようで慶賀の念に堪えません(棒読み)。

というイヤミを垂れつつ更に続く。

『賃金についても、今年の春闘で昨年以上のベアその他が決定されたわけでして、そういったことを全体としてとらえると、予想物価上昇率も長い目でみれば全体として上昇しているという判断は変える必要はないと思っています。』

なお金融経済月報(ちょっとそこまで今日は時間がなさそう)の図表26から33辺りを見て何でそういう答えになるのかは意味プーではあります。

『追加緩和云々ということにつきましては、従来から上下双方向のリスクを点検して、「物価安定の目標」の達成のために必要とあらば、躊躇なく政策の調整を行うと申し上げていまして、この考え方には全く変わりはありません。』

はあそうですかという所ですが、この「違っている所」ってそう簡単にひっくり返しには来ないネタなので意地汚く粘る理由としては結構強力だと思いますけどね。



・日銀は政府の助け舟に乗るのでしょうか?????????

アタクシは追加緩和がどうのこうのというよりは、どうせ追加緩和しても2%に直ぐ行くわけではないですし、そもそも円安で強引に持って行くのを封印されてしまっている以上「デフレ脱却」で「第一の矢は強い経済を作る」という政府の話に乗ってしまって2年2%理論からの撤退を図らないとダメでしょと思っておりますので、まあ政府の最近の動きは「梯子外し」ではなくて「助け舟」だと思っているのですが、さてそこに乗るのか乗らずに屋根の上で一人裸踊りをして気が付いたらおまわりさんこの人ですと自爆してしまうのかは黒田さん次第なんでしょうなあとスタンスがどうなるかを見て判断するしかないですねとは思うのですよね。

ということでこんな質疑から。

『(問) デフレ脱却に関して教えて下さい。日銀関係の方に色々と話を聞いている中で、「デフレマインドはまだ払拭されていない」と言われます。総裁もそのような話をされていると思います。デフレマインドが払拭されないということは、まだデフレ脱却には時間がかかるのだろうなと考えてはいたのですが、先般、安倍総理が会見の中で「デフレ脱却は目の前だ」ということを話されました。デフレ脱却は目の前なのでしょうか。』


回答はご案内のようにヘッドラインになっていました。

『(答) デフレというのは「物価の持続的な下落」です。消費者物価あるいはその他の色々な物価指標でみても、90 年代の後半から─―消費者物価等で言うと 1998 年以来だと思いますが――、ずっと基調的にマイナスだったわけですが、この 2 年半くらいの「量的・質的金融緩和」のもとで、物価の基調がかなり変わってきていることは確かだと思います。』

キタコレ。

『ただ、足許では、原油価格の大幅な下落等の影響もあって、生鮮食品を除く消費者物価の対前年比は 0%程度、生鮮食品とエネルギーを除いたところでみて 1%をちょっと超えたくらいですので、2%の「物価安定の目標」の達成およびそれを持続的に安定的に維持するという目標からみると、まだ道半ばだと思いますが、長きにわたって続いたデフレとデフレマインドは、この 2 年半くらいの間にかなり変わってきたと思います。』

ほう。

『ベースアップも長らくなかったわけですが、昨年、今年とこの 2 年間、ベースアップもありましたし、色々なデータからみていわゆるデフレ状況ではなくなったと思いますが、私どもの 2%の「物価安定の目標」との関係で言えば、まだ道半ばであるということだと思います。』

ということで、デフレは脱却しているという事のようですな。2%目標の時期を中長期的とかローリングターゲットにすれば「短期勝負の政策スキーム」といういつまで経っても未達呼ばわりでいずれ政策がテクニカルに爆発するという問題を軽減できると思いますが、これだと乗るのか乗らないのかはまだ良く分からんですかね。


・生産が弱いがキニシナイという斬新な発言部分

昨日もネタにしましたので引用だけ。

『(問) 2 点お伺いします。1 点目は、鉱工業生産は横ばいとのご認識かと思いますが、数字をみるとかなり下降トレンドにあるようにもみえます。マクロ的需給バランスという点で、人手不足なので生産下振れはさほど影響はないということでよろしいのでしょうか。(後半割愛)』

『(答) 鉱工業生産指数は、4〜6 月が若干のマイナスで、7〜9 月はまだ分かりませんが、7 月、8 月をみる限りでは若干のマイナスで、全体としては横ばい状態だと思います。ご承知のようにGDPに占める鉱工業生産の影響、シェアは多分 2 割ぐらいだと思います。経済全体としての需給ギャップはやはり、全体の労働需給や企業の設備の稼働状況あるいは不足状況を勘案してみていく必要があろうと思います。鉱工業生産は重要ではありますが、それが大半を決めるという状況ではないと思います。(後半割愛)』

ふつうそれは前向き循環メカニズムが生産の所で切れている状態と定義されると思うのですが、黒田さん的にはそこを言い出すと敗北宣言な上に、今の枠組みだと逐次投入で追加やってもそれで物価があっという間に上昇しない限りただの無駄玉な(上に政策の爆発を早める)だけに、そういう話は強弁でスルーしながら、強い企業収益と雇用の所で説明していくという荒業に出ているということですな。


・付利がどうのこうの

最後の質問でしたが。

『(問) 付利の引き下げについてお伺いします。総裁はかねて付利の引き下げについては検討されていないというふうに重ねて表明されていますが、そのお考えというのは現在でも変わっていないのか確認させて下さい。また、近い将来そうした考えが変わる可能性がないかどうかについても併せてお願いします。』

『(答) 付利の引き下げについては検討しておりませんし、おっしゃるように近い将来考えが変わる可能性もないと思っています。』

字面で出ているよりも会見ビデオのニュアンスはもっときっぱりという感じで、どうせなら会見要旨の所に(キリッ)と入れて欲しかった(嘘)という所ですが(^^)、これを受けて昨日は中期が6.5bpの引けまで金利上昇していたり、付利下げを全力で予想していた何とかストの方々(の一部)が色々と混乱しておられたりと大変に香ばしい光景が見られましたな。

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2015/10/08

・会見ネタは詳しくは明日ですけど簡単に

こんな辺りから。
http://jp.reuters.com/article/2015/10/07/idJPL3N12724C20151007
News | 2015年 10月 7日 18:58 JST
UPDATE 2-2%早期達成姿勢は変わらず、新興国減速の影響注視=日銀総裁

『[東京 7日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は7日、金融政策決定会合後の会見で「物価の基調は着実に高まっている」として追加緩和を見送った背景を説明した。一方、2%の物価目標の早期達成に必要なら、ちゅうちょなく追加緩和に踏み切る姿勢を強調。新興国経済の減速が国内の輸出・生産に影響を与えている点にも言及し、市場の追加緩和期待をつなぎとめた。』(上記URL先より、以下同様)

という風な解説になっていますが、印象としては追加緩和期待をつなぐというよりは追加緩和期待を盛り上げないようにする、という感じではなかったかと思います。

つまりですね、まああたしゃ毎度申し上げておりますように追加緩和をするよりもQQEの枠組み変更で金利政策に移行して時間軸を思いっきり長くするのと長期金利安定化スキームを打ち込むのが現実的に採る選択肢だと思うのですけれどもそれは兎も角として、月末追加緩和をするにしたってこのタイミングで追加緩和を示唆しちゃうとクレクレばかりが盛り上がってしまっていざ追加緩和を実施という事になると何をやっても材料出尽くしで、うっかりしたら「追加が足りない」とか言われる可能性だってある訳で、戦術的にも今回追加示唆とかしないわなあと思うのでありました。

でまあどうせ10月追加緩和をぶち上げている方々からもそういうレポートとか出てくるだろうなあとは思いますし、大体誰でも想像できそうな話ではありますが、これって既に「中央銀行のコミュニケーション」という意味では対話もへったくれも無くなっている状態な訳でして、まあうっかりしたら黒田総裁の時に出口に掛からないのかもしれませんけれども、こういうコミュニケーションをしていて出口政策とかまともに出来る気が1ミリもしないですから、何だかんだ言いまして将来は恐いですなあ以外の感想が中々出てこないというものです。


質疑応答は大体予想通りで「都合の悪い経済指標等でのツッコミ」→「似たようなジャンルの都合の良い経済指標等での返しで問題ないと説明」というああいえばこう言うを絵に描いたような質疑応答になっておりまして、一応念のためその一端を上記記事から引用しましょう。『<家計の予想物価上昇率は安定>』という小見出しから。

『現時点では追加緩和に踏み切らない理由として、「物価の基調は着実に高まっている」と説明。生鮮・エネルギーを除く新コアコアCPIが8月は前年比1.1%まで上昇したほか、日用品などの価格上昇が続いている点を指摘した。日銀が2日に公表した企業の物価見通しは、1─5年後いずれも下方修正された。市場では、日銀が物価のけん引役として重視する予想物価上昇率が低下している証左として追加緩和観測が高まっている。しかし総裁は、家計のアンケートでは将来物価が上昇するとの回答比率が横ばいであることを踏まえ、「家計の予想物価上昇率は全く変わってきていない」と反論。企業の物価見通しも、「足元下がっているが先行き上昇する見方は変わっていない」と指摘した。』

まあ質問された時点でこういう答えが出てくるのは確実でしたが見事にテンプレ通りの回答でちょっと笑ってしまいましたですが、そういう質疑の中でこの部分はちと「おー」と思った。『<新興国減速で輸出・生産横ばい>』という小見出しから。

『8月の鉱工業生産が前月比で1.2%と大幅に下落し、7─9月も2四半期連続で前期比マイナスとなる可能性が懸念されているが、総裁は「GDPに占める鉱工業生産のシェアは2割くらい」と指摘。物価を左右する需給ギャップを占う上では「全体の労働需給や企業設備の稼動状況などを見ていく必要があり、鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない」と説明した。』

>鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない
>鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない
>鉱工業生産は重要だが、それがGDPの大半を決める状況ではない

・・・・・・・・・・・・(゚д゚)

えーっとすいません、生産って経済の前向き循環メカニズムが回るためのエンジンの一つではないのかと思うのですが、とは思いますし、上記説明にある全体の労働需給とか設備稼働状況云々というのを見るというのは話としては分かりますが、そうは言いましても生産統計って確りと経済状況にリンクしていると思いますし、まあ大体過去生産の所が変調になると先行きの経済見通しが変調になるという流れがある訳でして、これはちょっと強がりモードではないかと。

あと、質疑応答の最後の最後にこんなのがありましたな。

『仮に追加緩和に踏み切る場合、市場では国債の買い入れ拡大余地が少ないため、金融機関の手元資金に付く利息である当座預金の付利を引き下げるとの憶測がくすぶっているが、「付利引き下げは検討していないし、考えが近い将来変わる可能性もない」と切り捨てた。 』

これは結構なきっぱり型の言い切りでして、マネタリーベースを拡大するというQQEの建付けが生きているうちには付利の下げというのは選択肢にならんでしょうなあと思います。つまり建付けを全面的に変える場合に話としてあり得ないことも無いのでしょうが、現実に付利撤廃するとMBを増やしにくくなり、金利政策フレームワーク言いましてもどうせMB減ると引締めだ引締めだと言い出す置物理論の人たちがいるので、MBの積み上げがやりやすい状態というのは維持しておいた方が良いと思いますし、何らかの都合でまたMB積み上げをしようとした場合に一旦付利を廃止してしまうと廃止後に(利上げでもないのに)付利復活という訳にも行かないですから、まー枠組み変更しても付利は残しておいた方が無難ですよね(出口の問題もありますし)。



ただまあ何ですな、昨年10月に騙し討ち緩和を実施した、というのが思いっきりここに来て負の遺産になっている訳でして、「追加緩和を示唆しないのは次回の緩和でサプライズを与えるため」という解釈が普通に湧き上がってくるのが今のマーケットの仕様になっていますので、まさに先ほど申し上げたコミュニケーションの崩壊という話ではあるのですが、まーそういう調子で10月展望レポートで追加緩和ガーの話はまだまだ続きます、黒田先生の今後の作品にご期待ください!状態になっているのは致し方なしという所かと思いますが、そうやって追加緩和クレクレ状態の中毒状態に市場をしてしまうのが中期的に見てどうなのと言うと明らかにダメだろとしか思えません。


でまあ昨日は追加緩和空振りを受けて何とかストの皆様のレポートとかも出ていたようなのですが、どこの誰とは申しませんが「内閣改造の日に日銀が追加緩和で内閣改造のニュースを食うのは良くないので今回は次回緩和に向けた検討にとどめた(概ね意訳)」というようなレポートを拝読した瞬間にコーヒー盛大に吹いた次第なのですが、なんか知らんけど追加緩和を盛大に煽っておられた方々にくやしいのうwwwくやしいのうwwwという風情になっているのが何ともかんとも。

なお、10月30日追加緩和を全くないとは申しませんが、やるにしてもその追加緩和は次の政策枠組み見直しまでの時間繋ぎの物であり、逆にQQE政策の変身時期が極めて近い事を意味する追加緩和であって、追い込まれて追加緩和という敗北宣言は出てこないという妄想は相変わらず変化ないと申し上げておきましょう。

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