決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2012年度上期に書いた分)

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2010年度までの見出しはこちら

2012/09/28「基金国債買入の年限区分を撤廃」
2012/09/26「8月議事要旨より、何か9月の見通し下げの布石が足りませんな」
2012/09/21「予想外の追加緩和の月報と総裁会見など」
2012/09/20「決定会合は景気判断引き下げ&追加金融緩和」
2012/08/17「マクロプルーデンス関連やマクロストレステスト関連のペーパーから」
2012/08/16「8月月報は判断下げた所を判りやすく」
2012/08/15「7月決定会合議事要旨から:買入達成のためのテクニカルな変更にはあまり抵抗が無い」
2012/08/13「決定会合では基金国債買入の下限金利撤廃は見送るが早速翌日にオペ札割れ」
2012/08/10「決定会合声明文は需要の重要項目を3つ判断を下げるも先行き見通しや総括判断は維持」
2012/07/19「6月会合議事要旨も経済見通しが楽観的/輪番オペと基金オペ1年以内にマイナス応札可能に」
2012/07/18「金融経済月報の内容も殆ど変化なし」
2012/07/13「とても微妙な政策決定会合レビュー(その1)」
2012/07/06「さくらレポートも強めの内容」
2012/07/03「短観は存外良い内容/オペ先選定は良いのだが今さら積極応札できないような気がする」
2012/06/29「次世代RTGS第2期の内為大口決済RTGSのその後に関するペーパーより」
2012/06/26「日銀の昔の調査月報の内容が凄い件について」
2012/06/25「5月会合議事要旨から、意味不明なまでの楽観はこの時からですなあ」
2012/06/20「金融経済月報は意味不明なまでに楽観的な内容になっている件」
2012/06/18「声明文は判断を上げたり下げたり妙な事をしています」
2012/05/30「2年国債入札で前代未聞の事務ミスによる入札やり直し」
2012/05/29「4月2回目会合の議事要旨:見通しが甘いのは兎も角そのリスク認識で何故5月会合がああなる」
2012/05/28「基金国債買入の割り振り変更/金融経済月報は現状認識が妙に強い」
2012/05/25「輪番オペの買入で物価連動と変動利付を1200億円振替」
2012/05/24「決定会合声明文がやたらあっさり味な上に景気の現状認識が強くなっています」
2012/05/10「10日ほど経って読んでみると楽観論が既にあばばばーになっている展望レポート鑑賞」
2012/05/09「金融調節レポートから少々」
2012/05/08「4月前半会合の議事要旨:宮尾審議委員の動きが判らん」
2012/05/02「決定会合声明文の景気認識は引き上げです」
2012/05/01「決定会合は満額以上の資産買入」
2012/04/23「金融システムレポートより」
2012/04/16「3月決定会合議事要旨および雑感」
2012/04/13「金融経済月報は何か妙に強いんですけど」
2012/04/11「決定会合声明文は景気判断引き上げ/ドル特則決定/宮尾委員は何故か追加緩和提案無し」
2012/04/06「生活意識アンケート」
2012/04/03「日銀短観はもっと良いと思ったのに拍子抜け」

2012/09/28

○基金国債買入の対象年限分けを撤廃

こんなん出ました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120927a.pdf
資産買入等基金による国債買入の当面の運営について

『同国債買入については、本年4月27日付「資産買入等基金の国債買入・社債等買入の当面の運営について」により、これまで、買入対象銘柄を「残存期間1年以上2年以下」と「残存期間2年超3年以下」に区分して入札を行ってきましたが、今後は、残存期間による区分を行わず、買入対象銘柄を「残存期間1年以上3年以下」として入札を行うことがあります。』

ということで、先般基金国債買入の応札下限金利を撤廃しましたが、その後に基金国債買入を実施したら落札金利が逆イールドになっちゃいましたなという現象もございますし、まあその前から手前が札割れして後ろが按分とか、逆に手前にどどんと札が入っているのに後ろが札割れとか起きて、まあ毎度毎度入札オファーをする金融市場局の調節担当部署も需給動向ヒアリングするのも大変ですがなという感じでございました。市場金利に関しても既に3年までは実質0.10%割れ状態(買いに行けば10割れで売りに行くと10)とゆーのが続いておりましたので、まあこれはそのような市場状況を追認したというのと、オペレーションをやりやすくしました、という所でしょう。

今回の措置に関しては上記URL先にありますように「金融市場局」名で出ておりますので、建付けとしては「金融政策としての何らかの政策的意図はございません」という事になります(何らかの政策的な意図を持ってアナウンスしたい時には決定会合での議決事項に持って行く)ので、これ自体は特段の政策的な意味合いは無いという事になりますが、市場的に言えば3年以内の国債金利形成の部分で、2年と2年超の所での需給の差(=新発国債が出る分)に伴う逆イールドチックな動きが無くなり、まあこの期間の利回り形成がスムーズになる、というと格好いいですけれども、要するに横一線になるということですな(^^)。

とか何とか考えますと、昨日の2年新発が0.10%一本値入札(なお一本値ではありますが電波発信装置のドクターZ先生にお断りしますがどう見ても日銀のご指導とかございませんので念の為^^)で按分が9%強となりまして、先月よりやや弱めの入札になった(先月は平均が0.10%割れで足切り100円の按分が5%でした)のですが、この銘柄が買入対象になって(発行日が来月15日なのでまだ対象にならない)以降は0.10%をちょっと切った辺りでこの銘柄が捌けて、その間は他の銘柄もまあその辺の金利に収斂する、とかまあそんな感じになるんでしょうかね、よー判らんけど(もうちょっと詳しく話をすると、当然ながら対顧客でショートセール対応をしたりするとカバーニーズが発生するので、その分だけ金利が下がりやすくなるので新発債よりもそれ以外の方が多分実力ベースの金利は低くなると思う)。

ま、今さらいう話でも無いですが、基金国債買入自体は来年の末まで継続するのが確定している(そらまあ状況が激変して物価でも物凄い勢いで上昇すれば別ですが)という大変に素敵な状態になっておりますので、どう見ても来年の秋口位まではこの調子の金利形成になるんでしょうなあ、とほほのほ。

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2012/09/26

○8月決定会合議事要旨から少々

まあこの翌月にご案内の通り景気見通し引き下げと追加金融緩和があったので今更感のある議事要旨なのですが、まあ鑑賞素材として。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120809.pdf

・この回の議事要旨を見ても大勢意見が9月にコロッと変わった事が今一歩ワカランチ会長な件について

小見出しが長いですかそうですか(^^)。

まあ何ですな、8月会合から9月会合まで6週間ほどありましたので、そう考えますと6週間もあるから世の中その間にどどーんと変わりましたという話はあるにせよ、その6週間の間に何か外的ショックってありましたっけ?と考えると外的ショックがあった訳でも無い(というよりも外的ショック要因は改善しているぞなもし)んですから、普通(議事要旨だって後付で作っているのですし)もうちょっとこの議事要旨に次回の決定会合での大きな変更を示唆する文言があるような気がする(というか傾向としてそういうのはある)のですけれども、執行部報告の部分は思いっきりそうですし、『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分でもうちょっとその辺を強調したような書き振りがあって然るべきだと思って読んだので不思議感は否めません。

勿論懸念を示す部分はあるのですが、何と申しますか毎度この議事要旨を飽きもせず読みはじめて早10年近くというこのあたくしが文章の全体の雰囲気として思ったのが、何となくそーゆー感じ、という事でございますので、だいぶあたくしの主観的なイメージが入っております事を念の為申し上げます。

つーことで該当部分について少々。


・海外経済について

『海外経済について、委員は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していないとの見方で一致した。何人かの委員は、欧州債務問題を背景に、グローバルに企業の景況感が悪化していることもあって、減速した状態がやや長引いているとの認識を示した。』

『先行きについて、委員は、不確実性は引き続き大きいが、次第に減速した状態から脱していくと見込まれるとの認識を共有した。一人の委員は、ユーロエリア経済が停滞した状態から脱するには時間がかかるとみられることから、期待される海外経済の回復は、米国や中国の動向次第の面が大きいとコメントした。』

ということで米国や中国の動向ガーという話はあるものの、指摘しているのが一人の委員という表現になっていてまして何だかなーって感はございます。つーかその後の西村さん、山口さん、宮尾さんの講演ではもうちょっと海外経済に対する懸念の話を強調していたように見える中で、8月頭の会合ではこのあっさり味ぶりというのも微妙にアレ。

で、肝心の米国経済ですが。

『米国経済について、委員は、基調としては緩やかな回復を続けており、先行きも、緩和的な金融環境などを背景として、緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。多くの委員は、バランスシート調整圧力が残る中で、家計や企業には支出スタンスを積極化しにくい面があり、企業マインドなどに弱めの動きがみられるものの、ガソリン価格の下落に伴う実質購買力の改善や比較的堅調な株価を背景に個人消費が底堅い動きをみせ、住宅販売にも持ち直しの兆しがみられているとの認識を示した。』

ということで、まあ確かにバランスシート調整圧力の話はしているものの、何かトーンが明るめ。

『複数の委員は、住宅投資に動意がみられているが、GDPに占める住宅投資の比率が低下しているため、個人消費への波及を含め、景気全体を押し上げる効果については、慎重にみておく必要があると述べた。』

その中で複数の委員が「住宅が底打ちしているけど景気全体の押し上げ効果はどうよ」という指摘で、これはまあ確かにそうですなとは思いますが、何かこの翌月に「住宅が上がると景気が良くなるんです」という触れ込みでMBS買入を打ち込んだ逆さ絵おじさんがいるのがまた皮肉っちゃあ皮肉(^^)。

ユーロ圏は華麗にスルーして中国経済。

『中国経済について、委員は、高めの成長を続けつつも減速した状態がやや長引いているとの見方を共有した。』

ほう。

『何人かの委員は、こうした減速には、物価安定と成長の両立するかたちでのソフトランディングを目指して、金融引き締めや不動産投機の抑制策などを講じてきた効果が時間をかけて現われている面があると述べた。』

というと何となくポジティブに見えますが・・・・・・

『先行きについて、大方の委員は、不動産販売の持ち直しなど改善の兆しも見受けられており、回復の時期は多少後ずれしているものの、徐々に回復傾向が明らかになっていく可能性が高いとの認識を示した。これらの委員は、最近のインフレ率の低下を受けて、累次の金融緩和策が実施されているほか、インフラ投資の前倒し執行や消費喚起策も実施されており、家計の実質購買力の改善とも相俟って、政策効果が次第に発現していくと考えられると述べた。インフラ投資について、ある委員は、一人当たり資本ストックがまだ乏しく、生産的な投資を拡大する余地があると付け加えた。』

と、ここまでは威勢の良い話。

『何人かの委員は、中国経済の先行きについて、当局の慎重な政策スタンスが減速局面を長期化させる可能性や、景気刺激策が不動産投資に向かうことにより、経済停滞下での資産価格上昇となる可能性があるとコメントした。』

つーことで、まあ直近で言えば米国経済よりも中国経済のモメンタムの方が金融政策運営に影響があったと思われますが、そちらに関しては「何人かの委員」が指摘という事で、まあこの辺りについては先ほど申し上げた「何でこの後の6週間で豹変しましたねん」ネタからしますと一応先行き警戒に関する話が示されている点、という所ではあるのですけれどもね。


・国内経済情勢に関して

『以上の海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』

ほうほうそれでそれで?

『景気の現状について、委員は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつあるとの見方で一致した。委員は、海外経済は減速した状態から脱しておらず、外需はやや弱めの動きとなっているが、国内需要は堅調に推移しており、景気全体としては7月の中間評価の見通しに概ね沿って推移しているとの認識を共有した。』

>7月の中間評価の見通しに概ね沿って推移している

まあ何ですな、そうじゃないとこの時点で何らかの措置になるというのが政策ロジックですので、こう表現しないといけない面はあるのですが、この6週間後に景気認識と先行き見通しをガラッと変えたのを拝読すると何ともねえという所で。

でまあ話は脱線しますけど、金融政策変更の前後を比較するとどうも最近の日銀というか白川総裁の体制になってからその傾向が強い気がするんですが、景気判断とかの部分がいきなりドカンと変更になるというイメージが強くて、しかも後付で出てくる議事要旨見ても今回のように前回との差が何でここまで生じたのかがワカランチ会長というような場面もありというのが、これまたコミュニケーションという意味で日銀の情報発信を受ける方からするとムツカシヤという所と思います。

議事要旨が次回会合前に出ないという甚だ残念な件についてはこらまあ日銀法の規定上どうしようもないのでそれはあきらメロンという所なのですが、もうちょっとこの辺の景気認識に関する見解が(その後に出てきた講演を見ると)この回だってそれなりに見解があったと思われる所で、議事要旨が決定事項に近い線で丸めてしまう形で出されると、何がどうなって前回と今回の間の判断変更になったのかというのが見えにくくなると思うのですよね。

FRB方式はあれはあれでカオスにも程がある(しかし今朝はNY市場プロッサー総裁発言で株安とか言ってましたけど、物価重視派のプロッサー総裁がQE3にいちゃもん付けるのはお約束みたいなもんで、単に市場が下がりたがっていたのの言い訳に過ぎないでしょ)のですが、日銀方式(?)も今回のような場合に何か????化する所もあり、まあその辺のバランスって難しいですよねと思うのでございました。


などと話が逸れましたが元に戻しまして。

『設備投資計画について、ある委員は、日本政策投資銀行の調査で改めて前年度をはっきりと上回っていることが確認されたが、機械受注の4〜6月実績および7〜9月見通しが弱めであることから、計画通り設備投資が実施されるかどうかについては、引き続き注意してみていく必要があると述べた。』

というのもありますが、まあこの辺りは「先行き警戒」という話がございまして。

『委員は、輸出は、欧州向けの減少等から、持ち直しの動きが緩やかになっており、そうした輸出の影響を強く受ける鉱工業生産も足もと弱めとなっているとの認識で一致した。』

『複数の委員は、中国経済の減速に伴い、中国向けの中間財や資本財の出荷が影響を受けていると指摘した。また、別の複数の委員は、中国経済が不動産投資などを主因に減速局面を脱するとしても、わが国の輸出にそれほど大きなインパクトをもたらさない可能性もあると述べた。何人かの委員は、このところの鉱工業生産指数の実績が予測指数を下回る傾向があることを指摘し、今後の動きを慎重に確認していく必要があると述べた。足もとの生産が力強さを欠いている点について、何人かの委員は、基本的には足もとの輸出の動きを反映したものとみられるが、企業が先行きの輸出の減速や政策効果の剥落を見越して生産調整を始めている可能性もあるとの認識を示した。』

とまあそういう感じで、数名の委員による輸出と生産に関する懸念はこの辺で示されているのですが、全体でみた時に当時はその辺のトーンがあまり反映された形になっていなかったというのがふーんという所ではございます。


・物価に関して

経済のリスク要因の所は華麗にスルーしまして物価に関して。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっており、先行きは、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。足もとの動きについて、大方の委員は、原油価格の反落を受けて石油製品が前年比マイナスに転じたことの影響が大きく、経済の動向も併せてみれば、7月の中間評価時の想定に概ね沿って推移しているとの認識を示した。』

ほうそうですか(棒読み)

『複数の委員は、足もとの消費者物価の背景として、原油価格の反落の影響のほか、昨年末以降需給ギャップの改善ペースが鈍化している影響がラグを伴って反映されている可能性や、企業の価格決定力の回復にもたつきがみられることを指摘した。』

需給ギャップの改善ペースが鈍化している影響キタコレ。

『物価の先行きを巡るリスクについて、委員は、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要があるとの認識を共有した。』

ふむ。

『何人かの委員は、家計や企業の短期的な予想物価上昇率が物価動向の実績の影響を受けやすい点を指摘したうえで、消費者物価の前年比上昇率が低い状態が長く続き、物価は上昇しにくいという予想が強まることにより、需給ギャップの改善ほどには実際の物価が上昇していかない可能性に注意する必要があるとの見方を示した。ある委員は、2008 年にかけて需給ギャップがプラスとなった局面での経験を踏まえると、今回の局面でも、食料・エネルギーを除く消費者物価はなかなかはっきりとしたプラスにはならない可能性があるとの見方を示した。また、複数の委員は、夏季ボーナスの支給状況や所定内賃金の動向を踏まえると、物価の先行きについては慎重な見方をとらざるを得ないと述べた。』

とまあそういう事で、当然ながら展望レポートの時点でこの辺の点検が行われると思うのですが、9月の金融政策決定では景気判断をどどーんと下げたのが背景にあるという理屈になっているのでございますが、8月の議事要旨を見ると景気ガーの話よりも物価に関する話の方が指摘事項が目に付くという印象を受けましたけど実際はどうなんでしょうかね。10年後にならんと判らんのですけれども10年後に覚えているとも思えず(^^)。


・佐藤さんと木内さんの主張キタコレ

最後の『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『ある委員は、包括的な金融緩和政策の実施から2 年近く経過した現時点でデフレを脱却できていないことを踏まえると、為替相場への働きかけなど、インフレ期待を高める一段の工夫が必要ではないかとの認識を示した。』

どう見ても佐藤委員です本当にありがとうございました。

『また、一人の委員は、市場からデフレ脱却に向けた日本銀行の姿勢に疑念を抱かれれば、政策効果が減殺される可能性があると述べた。』

これは木内委員と見ましたがどうでしょうか。

『これに対し、別の委員は、緩和的な金融環境を実体経済に波及させていくにはやはり成長力の強化が欠かせないと指摘したうえで、物価安定のもとでの持続的成長経路への復帰を目指すことは日本銀行の固い意志であることを明確に情報発信していくべきと述べた。』

・・・・・・・・いやまあそれはそうなのですが、昨日の山口副総裁講演へのマニアックな悪態を書きながら思ったのですが、「成長力の強化が必要」というのは確かに正論でして、日本の場合物価が上がりにくい背景に構造的な問題があるでしょとも思いますし、経済に対して人口動態とかも影響ない訳は無いぞなもしとは思うのですが、それら構造問題に関して直接働きかける事が出来ない立場にいる政策部門の人が構造問題を強調するというのは、「構造問題のせいにして言い訳をしている」という風にみられますぞなもしという話になるんだなあとか思ったりする訳ですな。

ですからして、まあ成長基盤強化に関してはまあ趣旨は趣旨でその通りだとは思うのですが、それを前面に主張しまくるのも如何なものかという話になるのかなあとか思うのでございました、はい。

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2012/09/21

お題「月報とか総裁会見とか」

決定会合レビューネタはまだ続く^^;

○金融経済月報:先行き見通しが下がっているのですが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1209.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1208.pdf(前回)

例によって概要部分だけで勘弁。

・現状判断

『わが国の景気は、持ち直しの動きが一服している。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

ということで総括判断が下がったのは声明文と同様です。で、個別需給項目に関しては今回の声明文では無かったので以下概要部分で確認となるので確認ですな。

『輸出や鉱工業生産は、海外経済の減速した状態がやや強まるもとで、弱めとなっている。一方、国内需要は、復興関連需要などから底堅く推移している。すなわち、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、雇用環境が改善傾向にあるなかで、底堅く推移している。住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)

『海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。輸出は持ち直しの動きが緩やかになっており、生産も足もと弱めとなっている。一方、国内需要をみると、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回)

海外経済が「減速した状態がやや強まる」と判断が下がったのはこれまた声明文どおりでございまして、以下個別需要項目を見ると輸出が「持ち直しの動きが緩やか」から「弱め」に下がり、生産に関しても「足もと弱め」から「弱め」という形で、まあこちらは前回と同じちゃあ同じですが、「足もと」というのを抜いて弱くなっているニュアンスをやや強めています。

個人消費に関する部分では、「緩やかな増加」から「底堅く推移」とこれまた判断を下げておりまして、その背景になっている部分について「消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果」となっているのが「雇用環境が改善傾向」という形に変わっておりますな。


・先行き見通しなのですが・・・・・・・・

『先行きのわが国経済は、当面横ばい圏内の動きにとどまるとみられるが、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということでほほうという感じなのですが、声明文では「当面横ばい圏内の動きにとどまる」という所で終了している訳ですが、月報の方ではその次の部分がありまして、そこは従来の見通しを残しているという何とも微妙なテイストで、一瞬「あれ見通し下がってないのか」と思ってしまいましたぞなもし。

・・・・・・・でまあ次にネタにする総裁会見を見るとまあその答えがあるのですが、会見での説明は「景気のメインシナリオを下方修正した」とありまして、「回復時期が後ずれしている」という説明をしております。でもって今回の追加緩和の意図として「従来の見通していた軌道を踏み外さないようにするために」という説明になっておりますので、これはまあつまり「今回の追加緩和が効果を出すことによって先行きの回復という流れが維持できると良いなあ」ということでまあ見通しの後半部分を維持しているという話でございましょうな、うんうん。

個別需要項目は以下のような感じです。

『輸出や鉱工業生産は、当面弱めに推移するとみられるが、その後は、海外経済が減速した状態を次第に脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などから、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、当面海外経済減速の影響を受けつつも、企業収益が総じて改善を続けるもとで、防災・エネルギー関連の投資もあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用環境の改善傾向が維持されるもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。』(今回)

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

ということで、輸出と鉱工業生産の部分では「当面弱めに推移するとみられるが」というのが入っておりまして、当面の見通しが下がっているものの、その先に関しては引き続き「海外の減速が脱却したら増加」という見通しを維持しているのが微妙にアレではございますけど。

でもって他の部分に関してはまあ微妙に変化はあるものの、基本的な部分についてはそれほど大きな変化はありませんな。まあ何でそんなに変えていないのかは先ほどの通りだと勝手に推察します。


・不確実性の部分では「欧州債務問題」が抜けて「円高」が入る

ここは声明文でもございましたが、要するに円高懸念というのが入るというのが今回の変化として大きな部分の一つでございます罠。

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(前回)

ということで為替市場動向というのに思いっきり言及しているのが何度も申し上げていますが、まあ今回踏み込んだなという所かと思います。


・物価見通しは変わっていないようですが

物価の現状認識。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の反落などから、下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の反落などから、下落に転じている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

まあここは数字的な話なので良いとしまして先行き見通し。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、下落幅を縮小していくとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、国際商品市況の反落の影響が残ることなどから、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

ということで、物価見通しは変わっていないのですけれども、金融経済月報では「当面」の話しかございませんで、金融政策運営として呈示している「中長期的な物価安定の目途」というのが有る訳で、では中長期的な物価見通し、つまり例の「遠からず1%に達する」というのがどうなったのかという話は総裁会見の方に。

#金融面は特に言及する部分も無いので引用割愛します。



○総裁会見から:今回はメインシナリオの下方修正

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1209b.pdf

・冒頭説明部分から

冒頭説明の所が例によって長くていきなり3ページ分あるのですが、メインシナリオを下方修正しましたぞなというのが2ページのケツ辺りから説明されています。

『これまで、景気の先行きについて、やや長い目でみれば、国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していく、という判断を行ってきました。また、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014 年度以降、遠からず1%に達する可能性が高い、と判断してきました。』

『しかし、先程申し上げたような情勢判断を踏まえると、日本経済がこうした「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という軌道を踏み外さないようにするためには、一段の金融緩和を行うことが適当であると判断しました。すなわち、資産買入等の基金を10 兆円程度と大幅に増額するとともに、資産の買入れを着実に進めるための措置を講じることとしました。』

という事で、「「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という軌道を踏み外さないようにするためには」とか微妙な物言いをしていますが、まあ要するに「追加緩和措置を打たないと見通しの達成が難しくなってきた」という話ですな。


・シナリオ下方修正を明言し「展望レポートを待たずに」追加緩和実施ということは・・・・・・

で、冒頭説明の後に最初の質問がこうなっていまして。

『(問) 景気判断については、前回の決定会合に比べると下振れリスクを強く意識した内容に変わっていますが、景気回復の時期、あるいは物価上昇率が1%に達する時期は、日銀のこれまでの想定に比べて後ずれしているという認識でよいのでしょうか。』

その答えですが・・・・・

『(答) 最初に申し上げると、下振れリスクを意識したというよりも、メインシナリオ自体を下方修正したということです。』

メインシナリオ下方修正キター!

『わが国の景気は、振り返ってみると、本年前半は「年率3%」と「緩やか」という形容詞で表現できる以上の高めの成長を実現しましたが、その持続性については慎重に見極めていく必要があると考え、「緩やかに持ち直しつつある」と表現してきました。とりわけ世界経済の下振れリスクに注意を払ってきましたが、実際このところ、世界経済は減速感を強めてきました。』

ということで海外経済の減速がメインシナリオ下方修正の最大のトリガーのようですな。後はまあ先月末の鉱工業生産とかも衝撃の弱さでしたけれども、その背景がこれまた同じで海外の減速に伴う輸出の減速なのですから、まあよーするに従来の回復シナリオにあった「海外が回復してそれに回復ドライバーが内需からバトンタッチ」というのがどう見ても無理ですなという話になったという所。

『そうした中で、わが国の景気についても、本日の会合で「持ち直しの動きが一服している」と判断を下方修正し、先行きも当面横ばい圏内の動きにとどまるとみています。そうした状態から脱して緩やかな回復経路に復していく時期については、半年程度後ずれすると予想しています。』

その半年の根拠はどうなんでしょとか思いますがまあ兎も角。

『これまで、景気の先行きについては、やや長い目でみれば国内需要が底堅さを維持し、海外経済が減速した状態から次第に脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくという判断を行ってきました。また、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、徐々に緩やかな上昇に転じ、2014 年度以降、遠からず1%に達する可能性が高い、と判断してきました。』

さいですな。

『しかし、先程述べたような情勢判断を踏まえると、日本経済がこうした「物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していく」という、日本銀行として当初想定していた軌道を踏み外さないようにするためには、展望レポートを待たずに一段の金融緩和を行うことが必要であると判断し、本日の決定を行ったということです。』

>展望レポートを待たずに
>展望レポートを待たずに
>展望レポートを待たずに

・・・・・・・・・つまり、経済物価見通しが展望レポートで示された経路ですすんでいるのであれば、展望レポートの見直し時期の点検作業によって金融政策をどうするかというのを決定する、というパスで問題は無い筈なのですが、今回に関しては「経済物価見通しが展望レポートで示された経路で進んでいない」ので「展望レポートを待たずに」追加緩和をする、とまあそういう理屈になっているのですな、うんうん。


・今回の対応はまあ協調緩和では無いです罠

まあ当然こういう質問が来ますが。

『(問) 9 月に入り、ECBが無制限の国債買入れを表明し、続いてFRBがいわゆるQE3を表明しましたが、こうした欧米の中央銀行の動向が今回の日銀の政策判断に影響したのかどうか、お伺いします。』

『(答) 各国の中央銀行は、常にそれぞれが置かれた経済・金融情勢に応じて、最適な政策を行うよう努めており、日本銀行も含めてどの国の中央銀行も、他国の中央銀行がある政策を行ったから自分たちも行う、という機械的な対応は採っていません。(以下割愛)』

でまあ別の質問に関する説明部分でこういうのがありまして。

『少し具体的に3 つの次元で申し上げます。1 つは、政策課題との関係です。FRBの場合は、米国経済の問題の中心である住宅市場の下支えが重要であるとの観点から、MBSや期間の長い国債の買入れを行っているということです。ECBの場合は、周縁国の国債金利が財政の問題も反映して上昇している中で、その周縁国の国債を一定のコンディショナリティのもとで買い入れることで、金利上昇に対応した政策を採っているということです。日本銀行については、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが重要な課題だという認識のもとで、リスク性資産を含めて様々な資産を幅広く買い入れると同時に、成長基盤強化の支援という、中央銀行としては異例の措置にも踏み込んでいるということです。』

これは金融緩和が積極的かとかいう質問に対する答えの部分なのですが、まあここの説明にありますように、今回の措置ってECBは危機対応の国債買入、FRBは景気判断を引き上げながらの労働市場重視の追加金融緩和となっていて、日銀の場合は景気判断の引き下げによる追加金融緩和と、まあ「景気判断による追加金融緩和」という一番素直な金融緩和措置でございまして、そういう意味では各国中銀のロジックが全然違う中ですから協調行動とかそういうのは表面的な見方という話になろうかと思います。


・日本の方がコミットメントが強いんですがという説明ではありますが・・・・・

上記の後半部分の答えの元質問はこちら。

『(問) 2 つお伺いします。1 つ目は、欧米の中央銀行の政策との比較についてです。9 月にECBとFRBがそれぞれ緩和の強化を打ち出しています。ECBは無制限に国債を買い入れる、FRBは期限をはっきり定めずに毎月MBSを買っていくという策を打ち出しています。日銀も、今回、緩和を強化したわけですが、ECBやFRBと比較すると、外形的には、「無制限」「無期限」という形の欧米に比べ、緩和姿勢が弱いとみる向きもあると思います。この点について、総裁はどうお考えですか。(2番目は次に)』

『(答) まず、各国の中央銀行は、それぞれの国や地域の政策課題や金融経済情勢を踏まえ、最も効果的な政策手段や政策の枠組みを選択するよう努めていると思います。従って、FRBあるいはECBとの比較で、日本銀行が、金融政策において、先程おっしゃった「大胆さ」あるいは「積極性」において見劣りするとは思っていません。』

ほう。

『緩和に対する姿勢は、どのような手段あるいは武器を使ったかではなく、どのような手段あるいは武器を使おうとも、最終的にどのような金融緩和の状態を実現したかという結果でもって判断されるものと思います。』

ほうほう。

『そういう意味では、先程も少し触れましたが、日本の金融環境は、先進国の中でも最も緩和的だと思っています。』

実質金利ェ・・・・・・・

というのは兎も角として、まあこの先の説明部分は中々良い説明。最初の部分はさっき引用した通りなのでその先から。

『第2 に、資産買入れの上限や期限についてです。FRBは、先週のFOMCにおいて、MBS買入れの上限や期限を予め定めず、労働市場の見通しが改善するまで継続すると決定しました。もっとも、予め上限や期限を定めておくかどうかに関わらず、政策目的の達成に不十分と判断されれば金融緩和を強化するという考え方は、どの中央銀行も同じです。』

これは仰る通りで、ECBにしてもFRBにしてもコンディショナリティ―付の「無制限」であって、ドラギ総裁が定例理事会の冒頭で説明したように「あらかじめ上限を設けない」というのが正確な話なんですよね。

『例えば、日本銀行では、資産買入等の基金に上限や期限を定めていますが、それらを累次にわたって拡大、延長してきており、当初の残高目標は35 兆円程度で期限2011 年末であったのが、現在は80 兆円程度で期限2013 年末と、当初の予定を遥かに上回る、大規模かつ長期の緩和政策となっています。』

ということで、必要ならば延長を続けるというのは物価安定の目途で示しているので、別に日銀の基金だって期限が来たら自動終了ではないのですよね、という話を更に詳しく説明。

『第3 に、実質的なゼロ金利を維持する期間の示し方です。FRBは、例外的に低い水準の政策金利が、少なくとも2015 年央まで正当化される可能性が高いとしていますが、これはあくまでも現時点での経済・物価見通しを前提にした場合の蓋然性を述べているものであって、2015 年央まで低金利を維持するというコミットメントではありません。』

その通りですな、というかこういうのを説明する辺りちょっと白川さんバーナンキにムッとしているのではないかと勝手に妄想を逞しくするあたくし。

『一方、日本銀行の場合は、当面の「中長期的な物価安定の目途」である消費者物価の前年比上昇率1%が見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していくこととしています。これは、政策の時間軸を日本銀行が目指す状態を見通せるかどうかに紐付けた明確なコミットメントです。』

こらまた微妙な説明ですが、この「中長期的な見通し」という部分だって裁量部分が入るので、「紐付けコミットメント」というのは説明的にどうなのかねという気はせんでもないが、まあ経済状況から考えて日本の方が結果的に低金利が長期化しそうなのはその通りでしょうな。

『従って、「日本銀行の政策の方が大胆さに欠ける」という批判については、政策の内容についてもそうは思っていませんし、政策の結果として実現している金融環境についても、そうした批判は全く当たっていないと強く思います。』

だそうな。


・物価見通しについて

先ほどの質問の2番目。

『もう1 点は、先程の質問と関連しますが、景気の先行きについて、当初のシナリオよりも回復時期が半年程度後ずれする可能性があるとの認識を示されましたが、物価についても、「2014 年度以降、遠からず1%に達する」という見通しが後ずれする可能性があるのか、お考えをお聞かせ下さい。』

これは良い質問。

『それから、物価上昇率1%の達成時期が後ずれしたのかというご質問です。半年に1 回、展望レポートを示す時には、経済・物価について包括的、体系的に検討を行い、その上で数字を出していくわけですが、今回は、経済のシナリオを基本的に修正していくに当たり、先々の経済・物価についてもある程度の見方を共有しながら議論を進めました。』

ほう。

『政策判断に当たって、私ども自身が望ましいと思っている姿を目指して最適と思われる政策を展開するわけですが、そうした軌道を踏み外さないように、今回、こうした対応を採ったということです。数字については、10 月末の展望レポートでお示ししますが、私どもの政策判断との関係でいえば、そうした望ましい状況に至る軌道を踏み外さないように、今回の対応を採ったということです。』

何か答えを誤魔化しておりますが、まあ要するに「遠からず1%に達する」というのはどう見ても遠ざかっている(大体からして物価見通しの前提に「経済回復で需給ギャップが縮小して物価が上昇する」というのがある訳で、その一方で見通しの経済回復が遅れるというのですから当たり前ではあるのですが)という所なのでしょうが、その辺は展望レポートで、という事でしょう。

つまり、展望レポートの所ではきっちりとその「遠からず1%に達する」の見通しが少なくとも後ずれするという形になって、そうなりますと必然的に追加金融緩和が必要という、まあそんな流れになるんでしょうなあというのは把握しました。

#もうちょっとあるのですが今日はこの辺で勘弁

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2012/09/20

お題「さすがに今回は評価したい追加金融緩和」

ええまあ昨日は「どうせ麿だから」と思いっきり悪態を散々申し上げておりましたが、こりゃまた大変すいませんでしたという所でございます。なお、予想のような物は豪快に外しましたので謝罪はしないでも無いですが賠償は受け付けませんのでよろしゅうに。


○声明文より:景気認識と先行き見通しを引き下げ、リスク要因に為替動向を追加

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120919a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120809a.pdf(前回)

なお、英文声明文の比較も入れていきますので英文版の声明文のURLもつけておきます。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120919a.pdf(今回英文)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120809a.pdf(前回英文)

今回は追加緩和に関する部分があるので景気に関する表現が前回(は現状維持)と比較して全体感のみの説明となっていますが、まあその辺は何かの措置を実施した時の仕様につきご勘弁ありたし。

・海外経済について

『海外経済は、減速した状態がやや強まっている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を背景とする投資家のリスク回避姿勢はやや後退しているものの、今後の市場の展開には十分注意していく必要がある。』(今回)

『海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。』(前回)

ということで、海外経済についてこれまで入れていた「一部に改善の動き」というのが外れて、「減速」という形になっているのが下げ。欧州債務問題に関しては(そらまあECBのOMTが打ち込まれたのですから当たり前ですが)「リスク回避姿勢はやや後退」と現状認識を上げていますが、先行きについては「十分注意していく必要がある」が不変ですな。

でですね、この海外経済の部分を英文で見るとこうなります。後半の国際金融市場云々の前の部分だけを比較しますと・・・・・

『Overseas economies have moved somewhat deeper into a deceleration phase.』(今回)
『Overseas economies have shown moderate improvement, though limited in scope; on the whole, they still have not emerged from a deceleration phase.』(前回)

まあ日本語の表現と同じちゃあ同じですけれども、deceleration phaseから依然としてemerge(=持ち上がる)していないというのが、思いっきり今回はimprovementの文言が外れてdeceleration phaseに向けてmoved somewhat deeperとなっておりまして、英文で見た方が下方修正のニュアンスがより見やすいという感じがします。


・国内経済について:景気の現状認識

ここの部分も細々見てみるのだ。

『わが国の景気をみると、本年前半は堅調な内需を背景に高めの成長を実現してきたが、上述の海外経済の状況を反映し、持ち直しの動きが一服している。』(今回)

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。(以下個別需要項目の部分は割愛)』(前回)

現状認識を「持ち直しの動きが一服」と下げていますが、こちらの英文はと申しますと・・・・・

『Japan's economy registered relatively high growth in the first half of 2012, supported by the firmness in domestic demand. Nonetheless, the pick-up in economic activity has come to a pause, reflecting the aforementioned developments in overseas economies.』(今回)

『Japan's economic activity has started picking up moderately as domestic demand remains firm mainly supported by reconstruction-related demand.』(前回)

ということで、「started picking up moderately」としていたものが「the pick-up in economic activity has come to a pause」と、こちらも英文で見た方がニュアンスとして下方修正しましたねえという感じがするのですがどうでしょうか。しかし「aforementioned」って確かに英和辞典見ると「先に述べた」って訳があるのですが、中々お目に掛かれない単語のような気がするんですけれども(^^)。


・国内経済について:物価の現状認識

『この間、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっているが、既往の原油価格の下落が下押し要因となっている。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

ここはまた微妙で、下押し要因の説明をしつつも、その要因は一時的要因ですよというアピールをしているという中々難しい説明(英文読んでもニュアンスは同じような感じなので引用割愛)。


・国内経済について:先行き見通し

でまあ今回は展望レポートを待たずに先行き見通しを下げたのは、まあタイミング的にはここで下げておくのが良いという話を昨日申し上げた通りの結果になってほほーという感じです。

『こうしたもとで、当面、景気は横ばい圏内の動きにとどまるとみられ、消費者物価の前年比はゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

まあようやく「緩やかな回復経路に復していく」から「当面横ばい圏内」に見通しを引き下げたかという感じですが、その見通しの引き下げによって資産買入基金拡大と基金買入の期間延長を行っているという建付けになっておりますぞなという所です。

あとですね、消費者物価の見通しですが、これはここの日本語の接続の関係上仕方ないのですが、今回の声明文の日本文を見ると「当面」がどう掛かっているのかが微妙で、消費者物価の見通しが下がったかのように見えるのですが、英文声明文を見ますと・・・・・・

『Against the backdrop of these developments, economic activity is expected to level off more or less and the year-on-year rate of change in the CPI to remain at around 0 percent for the time being.』(今回)

『As for the outlook, Japan's economy is expected to return to a moderate recovery pat has domestic demand remains firm and overseas economies emerge from the deceleration phase. The year-on-year rate of change in the CPI is expected to remain at around 0 percent for the time being.』(前回)

ということで、CPIの見通しの所に前回も今回も「for the time being」ってありますので、CPIの見通しそのものに変化がある訳ではありません。しかし横ばいって「level off more or less」って言うのか・・・・・


・景気リスク要因:ついに円高(と株安かも)に言及とな!

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きいほか、金融・為替市場動向の景気・物価への影響には注意が必要である。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(前回)

今回は思いっきり「金融・為替市場動向」というのを入れていまして、まあ金融市場というのが海外金融市場なのか株価なのかがよく判りませんが、為替市場動向というのはどこからどう見ても円高の影響懸念ですので、まあリスク要因部分ではありますが円高進行の悪影響について言及したのは、ちょうど昨日ネタにした先般の大阪での麿講演での為替に関する言及っぷりから見たら上出来上出来。

英文でもその部分はちゃんと記載されています、当たり前ですが。

『Regarding risks, there remains a high degree of uncertainty about the global economy, including the prospects for the European debt problem, the momentum toward recovery for the U.S. economy, and the likelihood of emerging and commodity-exporting economies simultaneously achieving price stability and economic growth. Furthermore, attention should be paid to the effects of financial and foreign exchange market developments on economic activity and prices.』(今回)

『Regarding risks to the economic outlook, there remains a high degree of uncertainty about the global economy, including the prospects for the European debt problem, the momentum toward recovery for the U.S. economy, and the likelihood of emerging and commodity-exporting economies simultaneously achieving price stability and economic growth. Regarding risks to the price outlook, careful attention should be paid to future developments in international commodity prices and in medium- to long-term inflation expectations.』(前回)

大体日本語通りですけれども、こちらでも為替市場への言及をしてアピールしておりますな。


・追加緩和実施で「一段と強力な追加緩和」と

まあそらそうですが。

『こうした景気・物価情勢を踏まえ、日本銀行は、資産買入等の基金を10 兆円程度と大幅に増額するとともに、資産の買入れを着実に進めるための措置を講じることが適当と判断した。これらによる一段と強力な金融緩和の推進は、長めの金利やリスク・プレミアムへのさらなる働きかけを通じて、企業や家計等の金融環境をより緩和的にする。本日決定した金融緩和の強化は、これまでの措置の累積的な効果と相まって、日本経済が物価安定のもとでの持続的な成長経路に復していくことを確実なものにすると考えられる。』(今回)

ここは追加緩和実施で今回入っている文言ですが、これに対応する英文では、

『Based on these economic and price developments, the Bank of Japan judged it appropriate to expand the total size of the Program substantially by about 10 trillion yen and take the aforementioned measure to ensure the steady implementation of asset purchases. These measures in pursuit of powerful monetary easing will make financial conditions for such economic entities as firms and households even more accommodative by further encouraging a decline in longer-term market interest rates and a reduction in risk premiums. The Bank expects that, together with the cumulative effects of earlier policy measures, today's decision to enhance monetary easing will ensure the return of Japan's economy to a sustainable growth path with price stability.』(今回)

ということで、ここで「measures in pursuit of powerful monetary easing」と入れていまして、最後のパラグラフには元々「the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing.」というのがございまして、「pursuing powerful monetary easing」というのを2回入れる形でまあ強調していますなという所ではございます。


・最終パラグラフは同じ

ここの文言は前回と同じです。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。こうした認識のもとで、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。』(今回)

前回と全文一致ですので前回分の引用は割愛します。でまあどうでも良い話ではあるのですが、英文の声明文のこのパラグラフなのですが、英文自体は全文一致なのですが、何故か改行位置が違うのでどこか変更があったのかやたら悩んでしまいましたです、はい。



○基金買入の拡大と買入期間の延長と資産買入の下限金利撤廃

声明文別紙(ファイルの3ページ目以降)とこちらを参照。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120919b.pdf
「資産買入等の基金運営基本要領」の一部改正等について

ということで今回は、

(1)短国買入5兆円拡大で拡大分を来年前半に積み上げる
(2)長国買入5兆円拡大で拡大分を来年後半に積み上げる
(3)(2)の結果として来年末まで他の買入分の残高を維持する(=基金の期間来年末まで延長)
(4)従来1年以下だけだった買入系オペの買入下限金利の0.1%を撤廃する

というセットになっています。

でですな、まああたくし的解釈からしますと、買入の拡大分の積み上げ期間について、短国なら年内、長国なら来年前半でも十分回ると思ったのですが、今回わざわざ買入分を後に持って行ってまして、その点で言いますと買入のペースが足元で拡大しないという話ではあるのですけれども、逆に来年になっても買入の残高が拡大するということですので、買入がオファーベースでは継続するという形になります。手前でどどーんと増やすよりも先の方まで買入が続くという形を取っているのは、米国のいつまでやるのかワカランチ会長なMBS買入のメソッドをちょっと意識しているのかなあと思いましたけれども、まあ市場的には手前でどどーんと買入が増えてその後は残高維持ペースに買入オファーが減るよりは日銀要因による需給のブレが平準化されますなという所でしょうか。

でもって今回は基金の期間を来年末まで延長となりましたが、景気見通しを引き下げた事にも対応しておりますぞなという所で、展望レポートを待たずに景気見通しの引き下げと買入期間の延長を行ったのは、まあ従来のシナリオがちょっとお前それ楽観的だろという内容でしたので、現実的な対応で誠に結構という話ではございますな。


さらに買入系オペの買入下限金利の0.1%を撤廃したわけですが、これは基金残高の積み上げという意味では撤廃するのがテクニカルに必要な話でして、これによってとりあえず基金買入対象銘柄の3年以内の国債金利がどの程度下がるかというとまあそんなに極端には下がらないとは思いますけれども、0.1%じゃないと入れられないという状態が解消されるので札が入りやすくなる分だけ需給が良くなりやすいという面もありますな。とは言え金利が下がってくると今度は当該年限の国債売って日銀当座預金に積み上げてしまえばヨロシという動きが出ますので、そうそう金利が馬鹿下がりとかにはならないという所でしょうな。

でね、この下限金利撤廃というのは「基金残高の積み上げをしやすくする」という事に繋がるのですけれども、それは当然ながらその買入拡大の結果として、「日銀当座預金残高が拡大する」という事になります。従いまして逆から言いますと「日銀当座預金残高の拡大をしやすくする」事によって「基金残高の積み上げが進む」という事になる訳でございまして、それはどういう事かと申しますと、日銀当座預金残高の積み上げをしにくくするような超過準備付利金利の撤廃などの引き下げ措置は施策として遠のいた、という事になる訳でございますのでその辺は誤解の無いように。

まあそれから、これによって買入オペの札割れ問題は解消されますから、買入対象銘柄の期間長期化も遠のいたという風に解釈できると思います。


○つーことでちょっと雑感

まあ何ですな、今日のモーサテでどこぞの株式コメンテーター(電話)が「日本の緩和が足りない」とか言ってましたが、日銀って元から他の中銀が買わないETFとかREITとか中銀的には結構無茶なもん買っているんですけどねえ。つーか長期債の購入だって昔から輪番を無期限に実施しているのは日銀だけですがな、というような従来からの話をスルーして目の前の現象面だけで日銀ガーとかクレクレ言ってるとか何なんでしょうねとか思いましたがそれは兎も角。

まあ先般のFOMCだも重要なのはMBSの買入がどうのこうのというのもありますが、それに加えて「ビハインド・ザ・カーブ」的な緩和スタンスの表明というのが重要なポイントであったと思いますので、まあそういう意味では今回の日銀の措置はここもとの麿モードからちょっと軌道を変えたというのが同じく重要ポイントだなあと思いましたけどどうなんでしょうか。

昨日の駄文でも申し上げましたが、もとより足元では政策委員の皆様の中で宮尾委員が明確に為替への懸念なども含めて下振れリスク強調の話を強いトーンで行い、山口副総裁も為替に振れて下振れリスクの話をしていましたし、西村副総裁は中国の不動産バブルへの言及など、やはりやや景気に弱いトーンの話をしておりました。

で、新任の佐藤委員は景気物価見通しが明らかに弱く、木内委員についてはちょっとその辺微妙によく判らない面があるのですが、まあ基本的には景気への見方は強くはない、というのは概ね示されていたと思いますので、先月末の鉱工業生産の衝撃の糞数字とか、海外経済のアレとかを見て麿がやっと諦めたのか、中の人たちが頑張って麿を押し切ったのかは存じませんが、まあ昨日申し上げた「そうは言ってもどうせ麿が突っ張るだろうからねえ」というイメージとは思いっきり違う結果になったのは中々結構な結果ではございました。

この前のFOMC出た時にも申し上げましたが、そもそも「景気認識を引き上げながらも追加金融緩和」というのは4月29日の時に実施しています(ちなみに2月の物価安定の目途とのセットでの金融緩和時には景気認識は引き上げてはいなかったものの下げてもいなかった)が、その後麿総裁が何か変なもんでも食ったのかという勢いで急に麿モードになっていて何かどうも顔が麿のきかんしゃトーマスが突っ走るでござるの巻という感が漂っていたのがここへ来て軌道修正というか元々の軌道に回帰してきたという感じでまあ良かったですねという所ではございます。足元で日銀の政策変数が何が何やらワカランチ会長的な所があったのですが、景気見通しに基づく中長期的な物価見通しと、その見通しのリスク認識を見ながらの緩和スタンスの継続強化というロジックが少し元に戻って見えやすくはなったかなあ、などと斯様思うあたくしではございました。


なお、市場の反応としては株高円安で債券は先物20銭とか上昇したのですが、その後はとりあえず上がったので戻り売りの人の実弾だか何だかの影響で先物は失速するわ、カーブはスティープするわという結果だったようですが、まあそんなもんですかね。

#とまあそんな所で本日は勘弁

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2012/08/17

○マクロプルーデンスがどうしたこうした

今月の頭(3日)に出てたのですが。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j13.pdf
マクロプルーデンス政策手段を巡る最近の議論

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120803a.pdf
日本銀行のマクロストレステスト:信用リスクテストと金利リスクテストの解説


・マクロプルーデンスにルールベースを入れるという論点

で、まずはマクロプルーデンス関連から少々(URL再掲)。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j13.pdf
マクロプルーデンス政策手段を巡る最近の議論

最初のアブストラクトの所から。

『金融システム全体の安定を確保するための「マクロプルーデンス」に関する取組みが各国に広がっている。「マクロプルーデンス」の考え方自体は決して目新しいものではないが、その具体的な政策論はまだ途上であり、政策当局におけるコンセンサスが形成されているとは言い難い。こうした中、中央銀行をはじめとする各国の金融当局の間では、マクロプルーデンス政策の実用化に向けた議論が活発になっている。本稿では、政策手段の選択、政策発動のタイミング、政策効果の波及経路を中心に、最近の実用化に向けた議論を紹介する。』

ということでして、んじゃまあ今回のお題は何ですねんという話ですが、

『本稿では、マクロプルーデンス政策の実用化に向けた最近の議論の中から、次の3つの論点を中心に紹介する。

(1)政策手段の選択。多種多様な候補の中から、どの政策手段を選択するか。
(2)政策発動のタイミング。いつ、どのような状況で政策手段を発動するのか。
(3)政策効果の波及経路。引締め局面と緩和局面では、どのような波及経路が想定されているのか。』

ということで説明がある訳ですが、政策手段の所はスルーしまして政策発動のタイミングの所ではルールベースにするかというような論点が紹介されております。

『冒頭で紹介したマクロプルーデンスの考え方を踏まえ、横断的な観点と時系列的な観点の双方から金融システムのリスクを評価することが、関係者間の共通認識となっている。マクロプルーデンス政策手段は、これら2つの観点から金融循環の過熱状況を評価した結果に基づいて、発動することが想定されている。』

金融循環の過熱状況の評価という話は金融システムレポートの所でネタになっておりまして、直近版は2012年4月19日に出ておりますのでご参考までに。
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr120419a.htm/


『既にマクロプルーデンス政策手段を導入している国・地域をみると、こうした様々な情報を吟味しながら、裁量をある程度重視した政策運営がなされている。彼らの考え方の基本的な背景には、リスクや市場構造は常に変容するため、特定の限られた指標に頼った機械的な政策運営は危険という認識がある。また、金融循環のメカニズムが十分に解明されていないという問題もある。』

まあさいですな。

『もっとも、既にマクロプルーデンス政策手段を導入している国・地域の中には、ルールの要素を採り入れようとする先もみられる。前述のとおり、マクロプルーデンス政策は、政策目標やその達成状況を数値化しにくく、政策の透明性を高く保ち、説明責任を果たすことが難しい。このため、コミュニケーションを円滑にする手段として、何らかの指標を参照した政策運営が検討されている。』

ほほう。

『例えばスイスの可変資本バッファーは、不動産融資の対GDP 比率と居住用不動産価格を主な参照指標として明示しており、ルールを一定程度重視する方針をとっている。』

全体に網掛けるような政策の発動という意味では特定の経済数値に紐付けするのも難しいですが、確かにまあマクロプルーデンス政策そのものがどう見ても不人気方面の物でありますので、ある程度説明が出来るようにした方が政策発動をしやすいです罠という面もあり、中々難しい論点ではありますなとゆーところでしょうか。


でまあその後に金融循環におけるマクロプルーデンス政策の効果の波及経路に関する説明として、可変資本バッファーを例にして図解をしているのですが、長くなるので引用割愛(図表を引用するスキルもございませんのでorz)ということで、上記URL先を読んで味噌という所です。


・マクロストレステストはまあ毎度の悪態ツッコミを少々と興味深い所を少々引用

続きましてマクロストレステストのお話から。(URL再掲)

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120803a.pdf
日本銀行のマクロストレステスト:信用リスクテストと金利リスクテストの解説

『要旨

世界的な金融危機以降、金融システムのリスクを評価する手法の一つとして、マクロストレステストが各国で注目を集めている。日本銀行も、金融システムレポートの中で、その時々の金融経済情勢を反映したマクロストレステストを毎回実施している。本稿では、金融システムレポートで実施しているマクロストレステストの分析手法について、信用リスクテストと金利リスクテストを中心に詳しく解説する。』

ということで、まあそもそものネタ元が金融システムレポートなので、金融システムレポートの時に突っ込んだ話をまた行うでござるの巻という所なのですがw

『本稿では、金融システムレポートで実施しているテストの分析手法について、信用リスクテストと金利リスクテストを中心に解説する。』

ほう。

『信用リスクテストは、マクロ経済環境の悪化を想定するものである。景気後退局面において、貸出ポートフォリオから生じる信用コストと株式ポートフォリオから生じる株式関係損失の双方を銀行の期間収益で吸収することができるか、さらに、銀行の自己資本は損失に対するバッファーとして十分かどうかを検証している。』

『金利リスクテストは、市場金利の上昇を想定するものである。運用・調達の期間ミスマッチは銀行の本源的な役割である満期変換機能を通じて生じるものであるが、このミスマッチが金利上昇を通じて資金利益や債券評価額に及ぼす影響を検証している。』

『いずれのテストも、銀行ごとのバランスシート情報と日本銀行金融機構局が推計したパラメータをもとに、金融機構局が一元的に行っているトップダウン型のテストである。』

ほほう。

『本稿の構成は次のとおりである。2 節では、わが国銀行のエクスポージャーの中で比較的大きな割合を占めている国内企業向け貸出、株式保有、国債保有を中心に、これらのリスク特性を簡単に整理する。これらのエクスポージャーがわが国の金融システムに及ぼす影響を計測する手法として、3 節では信用リスクテスト、4 節では金利リスクテストを順に解説する。最後に5 節では、マクロストレステストの活用事例を紹介し、結びに代える。』

ということで、まあ銀行の中の人とかだと先刻ご承知の話だとは思いますが、こちらの解説ペーパーではどういう置きによってどういう計算をしていますかとかについての説明を金融システムレポートよりもやや細かく話をしておりまして、まー日銀のプルーデンスウィングがどういうロジック構成でこの辺りを認識しているのかというのを読むのに吉かと存じます。

でまあそれはそれとして、毎度の悪態ツッコミを少々。

『2.わが国銀行のリスク特性』って所から。

『わが国の銀行収益は、信用コストと株式関係損益に大きく左右される傾向が続いている。特に2000年代以降、景気後退局面において信用コストと株式関係損失が同時に発生する傾向がみられ、Tier I 資本の減少要因となってきた。その背景には、保有株式の評価差益の減少や、減損処理の厳格化のもと、企業向け貸出からの信用コストが増加するような景気後退局面では、当該企業に対する市場評価も悪化するため、株式関係損失が発生しやすいことが考えられる。とりわけ、貸出先企業との取引関係を重視した政策保有株は、安定株主として長期保有することを目的としたものであり、銀行は相場動向に応じて機動的に売買しにくい。このため、株価が大幅に下落すると、減損による損失の計上を強いられることになる。また、大口貸出先の株式を銀行が大量に保有する傾向があることも、集中リスクの高まりを通じて、銀行の損失を拡大させる一因となっている。』

というのはいつもの指摘で、そらまあ仰る通りなのでございまして、プルーデンスウィングの方からは保有株式の削減をしましょうね(はあと)というのが折に触れて発信される訳ですが、そもそも論として日本の取引慣行ガーとかいう話もありますが、そんな事よりも最近の成長基盤強化の取り組みの中で・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110614b.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給における出資等に関する特則」の制定について

とかやっておられる訳で、いやまあ確かにプルーデンスウィングとマネタリーウィングでは見ているポイントが違うからそうなるというのは当然ちゃあ当然なのですが、やはり中央銀行様という一つの組織という事を考えますと別のウィングだから言ってることがほこたてですとか言うのは如何なものかという話じゃネーノとは思いますけどね。

いやまあプルーデンスウィングが言ってるのは「銀行の自己資本対比過度な集中」であって、成長基盤強化の話とは別ですよ、という風に説明するんでしょうけどね。


『銀行の運用・調達動向をみると、貯蓄超過主体である企業・家計の銀行預金は引き続き増加傾向にある一方、銀行貸出が伸び悩んでいる(図表3)。こうした中、貸出を上回る預金流入は債券投資に振り向けられている。世界的な金融危機以降、特に国債保有残高の増加が目立っている。保有債券を残存期間別にみると、大手行は、金利リスクを抑制する観点から、短中期ゾーンを中心とした年限構成を選好する一方、地域銀行は長期ゾーンを中心とした年限構成をとっている(図表4)。地域銀行は、大手行に比べて貸出利鞘の縮小幅が大きいことから、相対的に利回りの高い中長期債投資によって有価証券利回りを確保することで、収益力の維持を図っているとみられる。債券保有残高の増加により、以前に比べ、地域銀行を中心に銀行経営は市場金利の影響を受けやすくなっている。』

というのもいつもの話ですが、いつものツッコミと致しましては、そもそもそんな状況を作っているのは包括緩和政策による「長めの金利の低下を促す」政策なんですけどねえと思うのでして、毎度毎度出る度に悪態つくあたくしも大概にしつこいのですが(^^)、どうなんでしょうね。


などと悪態ばかりついても何ですので、信用コストモデルの説明部分なんぞも引用。

『3.信用リスクテスト』の所から。

『日本銀行の信用コストモデルは、銀行ごとの債務者区分の格付け遷移行列を基礎情報としている点に特徴がある12。』

で、その脚注12番ですがこうなっています。

『12 各国金融当局のテスト手法を概観すると、金融システム全体の貸出債権のデフォルト確率とデフォルト時損失率をもとに、マクロの信用コストを推計する手法が多数派である。詳細は次の論文を参照。Otani, A., S. Shiratsuka, R. Tsurui, and T. Yamada, "Macro stress-testing on the loan portfolio of Japanese banks," Bank of Japan Working Paper Series, No.09-E-1, March 2009. Foglia, A., "Stress testing credit risk: A survey of authorities' approaches," International Journal of Central Banking, Vol.5, No.3, September 2009.』

『債務者区分は金融庁の金融検査マニュアルで指定されている自己査定区分に準拠しており、正常債権である「正常先」と「その他要注意先」、要管理債権である「要管理先」、「破綻懸念先」、「破綻先・実質破綻先」の計5 区分からなる。格付け遷移行列により、期初から期末にかけて、それぞれの区分に分類されていた貸出債権がどこの区分に遷移したか、半期ごとに捕捉することができる。』

なるほど。

『国内企業向け貸出のうち、貸倒引当金の繰入対象となる未保全の貸出残高について、先行きの債務者区分の遷移を推計したうえで、遷移後の貸出残高に限界的な貸倒引当率(下方遷移のときは正、上方遷移のときは負)を乗じることで、信用コストの増減を求めている。』

こら面白いとか思うのですが、まあこの部分の最後にありますように・・・・・

『信用コストモデルに関する留意点は次の2 点である。信用コストモデルの中では、先行きの銀行ごとの貸出残高を一定と仮定している。この仮定のもと、「破綻先・実質破綻先」に遷移した貸出債権はその期のうちに償却され、償却分に相当する貸出残高は、基準時点における債務者区分の構成比を用いて、5 つの債務者区分に按分している。また、このモデルでは、貸出条件緩和債権の要件見直しなど、制度要因を明示的に勘案していない。このため、現実にストレスが生じたとしても、何らかの政策措置がとられている場合には、テスト結果に比べ、信用コストの増加が抑制される可能性がある。』

ということですが、逆に言うとヒストリカル分析を行う際に、制度要因によってストレスが過小評価される可能性もあるという事ではないかなあとか思ったのですがどうでしょうかね。


あとまあここの信用リスク計算の中でコア業務純利益の試算という話がありまして、そこも少々引用。

『コア業務純益は、資金利益および非資金利益の合計から経費を控除したものと定義される。ここでは簡単化のため、貸出に関連した資金利益のみが先行きのマクロ経済環境に応じて変化し、その他の収益と経費は基準時点の水準から不変と仮定している。』

『貸出関連の資金利益に関しては、長期貸出金利に連動して、銀行の貸出利鞘が変化すると想定している。わが国の現状をみると、資金調達金利の変化が相対的に緩慢なため、長期貸出金利が低下する局面では、貸出利鞘は縮小する傾向がある。』

ほう。

『実際には、長期貸出金利が低下する局面であっても、運用・調達の期間ミスマッチによって貸出利鞘が短期的に拡大する可能性や、債券売却によって益出しが行われる可能性があるが、ここでは勘案していない15。』

脚注にありますけれども、それは金利リスクのテストの方で検証していますが、「わが国の現状をみると、資金調達金利の変化が相対的に緩慢なため、長期貸出金利が低下する局面では、貸出利鞘は縮小する傾向がある」となという所でありまする。


でまあ金利リスクテストの方ですけど。

『4.金利リスクテスト』

『市場金利の変動は、銀行の運用・調達にかかるキャッシュフロー(運用・調達利息)や割引率の変化を通じて、銀行収益に影響を及ぼす。金利リスクテストは、実体経済その他の条件は一定との仮定のもと、市場金利の変動に伴う銀行の期間収益の変化を検証するものである。金利リスクテストでも、信用リスクテストと同様、3 段階の手順を踏んでいる(図表9)。まず、市場のイールドカーブに関するストレスシナリオを選択する。次に、ストレスシナリオとして描写した市場金利の上昇ショックが、貸出利息、調達利息、債券利息、債券評価額に及ぼす影響を試算する。最後に、これらのファクターをもとに、Tier I 比率に換算する。』

ということでふーんという感じなのですが。


『金利リスクテストでは、ベースラインシナリオと3 種類のストレスシナリオを選択している。ベースラインシナリオでは、基準時点の無担保市場金利(1 年以下はLibor、1 年超はLibor ベースのスワップ金利)に織り込まれていた金利経路が実現すると想定している。具体的には、基準時点における市場のフォワードレートカーブに沿って、短期の市場金利が先行き推移していく16。』

つーことなのですが・・・・・・・

『ストレスシナリオには、3 種類の金利上昇シナリオ(パラレルシフト、スティープ化、フラット化)を選択している(図表10)。パラレルシフトシナリオでは、全年限の金利がベースラインシナリオ対比で1%pt 上振れする。スティープ化シナリオでは、10 年物金利がベースラインシナリオ対比で1%pt 上振れする。フラット化シナリオでは、翌日物金利がベースラインシナリオ対比で1%pt 上振れする。』

とまあここまでは良いのですが。

『1%pt の上昇幅は、いずれもショック発生後1 年間の累積変化であり、四半期ごとに基準年限の金利が0.25%pt ずつ上昇していく。なお、金利上昇のパターンや程度は、金利リスクの特性を明らかにする観点から設定したものであり、蓋然性を勘案したものではない。』

・・・・・・・・・つーことで、まあこの話って金融システムレポートが出た時にも同じ悪態ついたのでただの繰り返しになるのですが、四半期ごとに25bpの金利上昇なんぞそれショックでも何でも無くて普通の金融正常化局面の話ですので、もしかすると金融機構局では金融政策正常化なんてそんなのはショックシナリオみたいなもんでそう簡単に正常化なんぞ出来るかよウエーハッハッハとか思って作っているのならお洒落だなあという風に今回も思うあたくしなのでありました。

まあ何ですな、貸出と違って債券ポートフォリオに関しては(こちらの説明で引用していない部分に指摘されていますが)イールドカーブ形状の変化に対して動態的に変化していくものでして、シナリオの期間が1年間という中でポートの構成が不変という置き自体が動態的な観点からすると非現実的だとは思うのですが、結論部分を見ますと静態的に見た場合の特性は良く示されているのかなとか思うのでありました、ということで『Tier I 比率に及ぼす影響の検証』の部分から引用。

『最後に、以上4 つのファクター(貸出金利、資金調達金利、債券利回り、債券評価額)をもとに、先行きのTier I 比率を試算する。信用リスクテストとは異なり、ここでは、運用・調達の期間ミスマッチを明示的に勘案した形で、資金利益を算出している。一方、非資金利益、経費、信用コストは、基準時点の水準から不変と仮定している。』

という置きのもとにどうなったかと言いますと・・・・・・

『実際のテスト結果をみると、運用・調達の期間ミスマッチのために、運用金利と調達金利は一様に変化しない。住宅ローンなど、満期の長い固定金利型貸出を多く扱っている銀行や、残存期間の長い固定利付債を多く保有している銀行ほど、期間ミスマッチが大きく、金利上昇局面で資金利益が伸び悩む(または減少する)傾向がある。また、こうした銀行は、債券評価損が増大しやすい18。15 年変動利付国債による金利上昇ヘッジが効きにくいフラット化シナリオの場合、この傾向はより顕著になる。大手行と地域銀行を比較すると、これらの特徴は地域銀行に多くみられる(図表11、12)。』

ちなみに脚注18はこうなっています。

『18 現実には、満期保有目的の債券は時価が著しく下落しない限り、会計基準上、償却原価で評価される。一方、金利リスクテストでは、全ての債券を時価評価の対象としている。これは、会計的な価値ではなく、経済価値の変化を評価していることに等しい。』

ということで、まあなるほどなと思う結論になっておりました。

#ということで虫干しネタ恐縮至極

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2012/08/16

○金融経済月報では下方修正項目が判るように(^^)表示してます

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1208.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1207.pdf(前回)

例によって【概要】部分だけ比較という手抜きですいません。

・現状の総括判断は変わらず

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

まあ声明文で示されている通りです。


・現状判断の項目別部分ですが・・・・・・・・・

項目別の部分を一気に引用してみますね。

『海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。輸出は持ち直しの動きが緩やかになっており、生産も足もと弱めとなっている。一方、国内需要をみると、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)

『海外経済は、緩やかながら改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。わが国の国内需要をみると、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は、振れを伴いながら、緩やかに持ち直しつつある。こうしたもとで、企業の業況感をみると、内需関連業種を中心に緩やかに改善している。』(前回)

ということで、前回と今回を比較してみた場合、現状判断を引き下げた部分が最初に並んでいるというのが見えるかと思います(どこをどう下げたのかという話は声明文の比較でやりましたので割愛)。海外経済に関してはまあ毎度最初に示されるのでこれは平常運転なのですが、その後に輸出、生産と今回現状判断を引き下げた需要項目への言及が続いていますな。

で、この月報と声明文を比較すると、声明文のほうでは

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出は持ち直しの動きが緩やかになっており、生産も足もと弱めとなっている。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている』(8月会合の声明文より、海外分は別項なので引用割愛)

となっていまして、月報の方が語順的に下方修正しましたというのが目立つような格好になっているのがチャーミングとしか申し上げようが無いワーディングになっておられまして、はてさてこれはどういうインプリケーションがあるのでしょうかとか直ぐに考えてしまうのがドラめもんクオリティでございます(^^)。

まあ声明文では突っ張っているものの、やはり現状判断を下げざるを得ないだろ常識的に考えて・・・・・という事務方の思いが出ているのではないかとか考えるのは深読みのし過ぎですかそうですか(^^)。


・先行き見通しは変化なし

総括判断、需要項目ともに見通しには変化がありません。

『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

リアルに全文一致でして、一言一句変わらない所か改行位置も同じ(あたくしは引用時に改行を改変しています、為念)という有様です。


・リスクの話も同じ

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(今回)

ここも全文一致です。


・物価に関しては現状は実際の状況を反映、先行き見通しは同じ

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の反落などから、下落に転じている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の反落などから、下落に転じている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

国際商品市況に関して「既往の」というのが入ったのが違いますな。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、国際商品市況の反落の影響が残ることなどから、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、緩やかな下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

ここも文言は微妙に変化していまして、国内企業物価については「国際商品市況の反落の影響が残る」という言い方なので、まあそのうち下げ止まるでしょうというニュアンスはありますが、基本的な部分での見通しが変化した訳では無いようです。


・金融面なのですが・・・・・・・

普段は概ねスルーするのですが今回はチェック。

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利も横ばい圏内の動きとなっている。この間、円の対ドル相場、長期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(今回)

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利も横ばい圏内の動きとなっている。この間、円の対ドル相場、長期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(前回)

さいですな。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』(前回)

と、ここの文言が変化した件については声明文に反映されていたので話題になりましたよね。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、プラスで推移している。CP残高の前年比もプラスで推移している。一方、社債残高の前年比は、電力債の償還超が続くもとで、マイナスとなっている。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、2%程度のプラスとなっている。』(今回)

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、プラスで推移している。CP残高の前年比もプラスで推移している。一方、社債残高の前年比は、電力債の償還超が続くもとで、マイナスとなっている。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、2%程度のプラスとなっている。』(前回)

・・・・・・・・・ということで敢えてこのクソ長い部分を前回と今回と全文引用してみましたけれども、金融面に関する記述が思いっきり全文一致にも程がある状態でありまして、じゃあ何で今回ここの文言を変えたのか、というのは結局ワカランチ会長のままであるという結論になるのでございました。

先般ネタにしましたように、会見での質問がイマイチ(買入を途中で止めちゃうのかみたいな質問だと答えが明らかなのでダメでしょ)だったというのもありますし、そもそも金融経済月報は会見の翌日にならないと出ないのでシャーナイナイなのではございますが、この金融経済月報を出されてから会見をしたら「金融面に関する認識に変化が無いのに何で声明文の文言を変更したのか教えてください」という直球質問が飛んだんだろうなあとか思うのでありました。結局謎が残るままですなあ。

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2012/08/15

○7月決定会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120712.pdf

・国際金融市場に関して

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から

『この間、委員は、金融システムの安定確保という観点からは銀行間の資金調達市場の状況が重要であるが、この点は欧州中央銀行による大量の資金供給の効果などから、総じて安定した状態が続いており、リーマンショック時のように国際金融資本市場が動揺し、これを起点に世界経済が大きく下振れるといった昨年末頃に強く懸念されたような事態が生じる可能性は低下しているとの認識を共有した。』

『もっとも、何人かの委員は、欧州債務問題の解決には時間を要するとみられる中で、問題解決に向けた各国の政府・中央銀行などの動きが市場の期待と乖離することなどにより、市場が急速に不安定化するリスクには、引き続き十分注意する必要があると付け加えた。』

まあそうですなという所ではありますが、ただ欧米の中銀が示している懸念に比べてちと懸念度弱い気もするざます。

で、長期金利の話があるのがへーという感じなのですけどね。

『米独を中心に長期金利が既往最低水準まで低下している点について、委員は、欧州債務問題への懸念が払拭されない中で、安全資産とみなされている米、独、そして日本の国債に対する需要が高まっていることが影響しているとの見方を共有した。』

ほう。

『複数の委員は、米独の長期金利が名目成長率を下回る水準となっていることを指摘したうえで、いずれ金利が成長率と整合的な水準に上昇する可能性がある一方、成長率が金利水準と整合的な水準に低下する可能性も考えられると述べた。』

後者の可能性を先に考えるのではないかと思いますけど・・・・・・・・

『そのうえで、これらの委員は、その動向については、わが国の長期金利にも影響する可能性があるので、注視していく必要があると指摘した。』

やや謎気味の指摘なのですが、何かこの部分のトーンを見ると「欧州債務問題で安全資産プレミアムが乗っている主要国金利が上昇したら日本の金利もどどーんと上昇するのではないか」的な懸念を示しているように読めるのですけれども、そもそも欧米主要国金利がアホのように低下する中で日本の長期金利って1.1%位から0.8%位まで下がったに過ぎないのでして、そんなに注視するもんかいなという風に思うお話(つーか債券市場投資家的には金利ちったあ上がってくれないと利息収支が改善せんぞなもしと思っている人の方が多いんじゃねえのかと)でして、何を懸念してますねんという違和感を感じた所ではございます。

が、わざわざ議事「要旨」に載ってきた話ですので、何かを懸念しているのでしょうかね。どういう文脈で議論されていたのかが興味あるっつーかよく判らんので何なんでしょという所です。


・海外経済見通し

8月に現状判断がやっと下がった訳ですが、7月議事要旨を見ますとこの時点ではまだ見方が強いというか楽観モードというか。めんどいので各国の所スルーしてまとめの所を。

『こうした議論ののち、複数の委員は、先行き海外経済が減速から脱していく際のメカニズムとして、米国経済と中国経済が相互に好影響を及ぼしながら、世界経済の牽引役としての役割を担うことになる可能性が高いと述べた。』

ほうそうですか(棒読み)。

『一人の委員は、先行きの海外経済の成長率を評価するうえでは、金融危機や欧州債務問題の影響によって、海外経済の潜在成長率が低下している可能性も念頭においておく必要があると付け加えた。』

・・・・・・・一人ですかそうですか(棒読み)。


・国内経済

8月に現状判断を下げた輸出と生産について

『また、輸出について、委員は、持ち直しの動きがみられているとの見方で一致した。生産について、委員は、こうした内外需要を反映して、振れを伴いながら、緩やかに持ち直しつつあるとの認識を共有した。複数の委員は、足もとの生産の回復が力強さを欠いている点を指摘したうえで、基本的には海外需要の弱めの動きが表れているものとみられるが、生産面の動きからは内需の堅調さが必ずしも十分確認できない面もあるので、今後のデータをしっかりとみていきたいと述べた。』

この辺の認識が8月でどう変化しているのでしょうかねえ、という意味でメモメモ。


先行きに関して

『景気の先行きについて、委員は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとの見方で一致した。そのうえで、委員は、外需の回復が明確化するまでの間、内需の堅調さが持続するかどうかがポイントであるとの認識を共有した。』

ここは毎度同じで8月も同じ。

『この点、複数の委員は、エコカー補助金の予算切れや震災後のペントアップ需要の一巡など、足もと堅調な個人消費を支えている要因のうちのいくつかは今後剥落することが見込まれるが、一方で企業収益や雇用・所得環境の改善など、ある程度持続性を持ち得る要因も働くと見込まれると指摘した。多くの委員は、6月短観で示された2012 年度の事業計画について、売上・収益が改善するもとで、企業が設備投資を増加させていく方針であることが確認されたことを指摘したうえで、先行き企業収益が改善していけば、設備投資の増加が見込まれるほか、雇用・所得環境の改善を通じて個人消費を下支えすることも期待できるとの見方を示した。』

・・・・・・何かそうなのか???という気はするんですけど。

『一人の委員は、昨年度の厳しい企業業績を背景に夏の賞与が弱めの動きとなると見込まれることを指摘したうえで、こうした動きや各種政策による需要刺激策の終了が個人消費の動向に影響を及ぼさないかも注意してみていく必要があると付け加えた。』

と思うのですけどねえ。


・物価に関して

毎度こういう話になっているのですけれどもね。

『多くの委員は、国際商品市況の下落を背景に、当面の物価は弱含みで推移するとしても、これが実質購買力の向上を通じて個人消費を支える効果も期待されるため、基調的にみると、需給ギャップが着実に縮小するもとで、物価が緩やかな改善傾向を辿るとの見通しは変わらないとの認識を示した。』

とのことで更に・・・・・・

『一人の委員は、需給バランスの状況が現在と近い水準にあった2004 年頃と比較して、@中国における賃金上昇を背景に輸入物価の低下圧力が和らいでいること、A流通構造の再編などがかなり進展しており、一段の効率化余地が低下していると考えられること、B企業による利益重視の価格設定行動がみられるようになっていること、C消費者の低価格志向は根強いものの、一部に高付加価値消費へのシフトもみられていること、などを指摘したうえで、当時と比較すれば、マクロ的な需給バランスの改善に連れて物価が上昇しやすい面があるとの見方を述べた。』

あたしゃーはあそうなんですかとしか申し上げようがございません程度の知見しか持ち合わせておりませんので残念なのですが、どちらかというと米国とか英国とかの物価に関する論議を見ておりますと、需給ギャップに対する感応度が下がっているのではないか的な指摘をよく見るような気がするんで、何かここの部分見ててそうなのかねえという気がしたのですが、おじちゃんは頭が悪いので良くワカランチ会長でございまする。


・金融政策運営に関して:コミュニケーションギャップと申しますか

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から少々。

どう見ても麿です本当にありがとうございましたという部分を発見。

『一人の委員は、中長期的な物価安定の目途を実現していくうえでは、物価が景気と関係なく上昇することは望ましくなく、景気が良くなり需給ギャップが改善するもとで、企業収益や賃金の上昇ともバランスの取れたかたちで物価上昇が実現していくよう、金融緩和の最適なペースを引き続き意識する必要があると付け加えた。』

>金融緩和の最適なペースを引き続き意識する必要がある
>金融緩和の最適なペースを引き続き意識する必要がある
>金融緩和の最適なペースを引き続き意識する必要がある

まあ前提部分はその通りなのですが、結論が何かこう先日の8月定例会合後の麿会見での麿モードを彷彿させてくれますの。

でまあそれはそれとしまして、この部分で為替市場が反応したとかどこぞのベンダーが言ってましたがそれは無いと思うのだが・・・・・・

『複数の委員は、欧州債務問題を起点として大きなリスクが顕在化した場合などには、わが国に色々なルートで悪影響が及ぶ可能性があるため、様々な選択肢を予め排除することなく、適切に対応できるよう備えておく必要があると述べた。』

えーっと、そんなの当たり前の話をしているだけでしょというか、こちらの部分が「複数の委員」なのかよとか思っちゃう方なんですけど(本来この話って「委員は〜の認識を共有した」となるものでしょ、だって当たり前の話じゃないですか)、何かこれで反応した事にしているとかんなアホなと思いましたですけど、本当にこれを為替市場の人が材料にしているとすれば、逆に日頃の麿様の麿節によってどんだけ日銀の姿勢に対する見方が曲がっているのかという話でもあろうかと存じます次第。今申し上げましたように、「大きなリスクが顕在化したら様々な選択肢を予め排除せずに適切に対応」ってあーたそんなの当たり前田のクラッカーな話でありまして、それで反応されるっちゅうことは麿発言によって日銀の包括緩和とか物価安定の目途とかにおける見解を自ら否定しているのかちゅう事ではないかとゆー話。


まあ何ですな、先日の麿会見の要旨見てて思ったのですが、どうも会見(ただし現状維持の時)で麿様が言ってることとと、たとえば先般の山口副総裁の広島での講演などもそうですが、ここで示されている議事要旨とかにあるような情報発信との間に微妙なギャップがあって、更に言えば麿がやりたくないでおじゃるとか言っても結局そうはなっていなかったりするとゆーよーな現実がありますと、総裁発言の重みが無くなるちゅうか発言がスルーされてしまい、金融政策のコミュニケーションポリシー的にどうなのかね、と思ったりもするのですが、もうちょっと色々と纏めてみたいと思います。


・金融政策運営について:札割れ対策関連

そもそも何で札割れ対策をしているのかという話から当たり前ですが始まります。

『このところ、応札額が未達となるいわゆる「札割れ」が固定金利オペ等において頻繁に発生し、基金の着実な積み上げに支障が生じていることについて、委員は、「札割れ」の発生自体は、短期の市場実勢レートが低下し、しばしば0.1%を下回るようになっていることによるものであり、日本銀行による強力な金融緩和が市場に浸透していることのひとつの表れではあるが、日本銀行の強力な金融緩和を推進する姿勢を明確にする観点からは、そうした状況のもとでも、資産買入等の基金の積み上げを着実に行っていくことがきわめて重要であり、そのための具体的な方策を検討すべきであるとの認識を共有した。』

>そうした状況のもとでも、資産買入等の基金の積み上げを着実に行っていくことがきわめて重要であり
>そうした状況のもとでも、資産買入等の基金の積み上げを着実に行っていくことがきわめて重要であり
>そうした状況のもとでも、資産買入等の基金の積み上げを着実に行っていくことがきわめて重要であり

・・・・・・・・まあ政策の建付け上当然ちゃあ当然の話なのですが、こちらに関しても先日の麿様会見におかれましては後半部分の「日本銀行の強力な金融緩和を推進する姿勢を明確に〜」以降の話を質疑応答ではしてませんでしたし、同日の別の質疑でも「そうした市場の状況や入札の状況等を点検しながら、資産買入等の基金の着実な積上げを進めていく方針です」と上記にあるような強い認識を示していなかったりする訳でして、この辺もさっきのコミュニケーションギャップになるのではないかとか思ったりして。


でまあ実施した措置に関しての部分はご案内の通りなので割愛しまして。

『この措置に伴う短期の市場金利への影響について、委員は、固定金利オペや補完当座預金制度の適用金利をこれまでと同様0.1%とし、これらの金利との間で金利裁定が働くことを踏まえると、市場金利が大きく低下するとは考えにくいとの認識を共有した。』

まあ結果そうなりましたが、買入額を増やしていくとその限りでは無いでしょうな。

『この間、一人の委員は、市場において一部で補完当座預金制度に基づく付利金利の引き下げの思惑が生じていることが「札割れ」につながっている面があり、今回の措置がこうした付利金利の引き下げ予想を強めることがないよう、適切な情報発信を行う必要があると指摘した。』

この部分はほほーと思ったのですが、わざわざ議事要旨にこのように記載しているという所には意味があると思われる話でして、つまり基金の積み上げを行う際にはその反対側サイドに超過準備が積みあがるのですが、その超過準備の積み上げをしやすくするという観点からすると付利金利の引き下げはその逆になる話ですよね、という事をちゃんと説明しておきましょうねという事をここに載せて、さらに強調しようということですな(^^)。まあ付利下げガーとか言ってる人たちは目をよく開けて読むべしという所ですな。

『こうした指摘を踏まえ、委員は、今回の一連の措置と補完当座預金制度に基づく付利金利との関係について改めて議論を行い、現在の0.1%の超過準備への付利と「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0〜0.1%程度で推移するよう促す」という金融市場調節方針の組み合わせのもとで、金融緩和効果が最大限発揮されるとの認識を改めて確認した。』

基金の積み上げがしやすくなるという話のような気もするが(^^)。

『固定金利オペについて、委員は、「期間3か月」と「期間6か月」をその時々の市場の状況に応じて柔軟に使い分けていくことが適当であるが、そのうえで、さらにきめ細かく資金需要に対応していく必要がある場合に備えて、「期間6か月以下」と広い表現で示していくことが適当との認識で一致した。』

せっかくですからもっと使い勝手の良い1か月位で一つお願いします。

『今回の一連の措置について、何人かの委員は、資産買入等の基金の積み上げをより着実に進めることに資するものであり、本年末に65 兆円程度、来年6月末には70 兆円程度まで積み上げていくとしている資産買入等の基金の積み上げは予定どおり達成することが可能であると述べた。』

基金国債買入札割れ攻撃ェ・・・・・・・・・


とまあそんな感じで、中盤以降読むべしという感じですが、前半の景気認識に関しては8月でどのように変わったのかを見ておくためにメモメモという感じでした。

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2012/08/13

○決定会合レビュー続きで肝心の話を忘れていたので

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120810.htm

CP等買入(資産買入等基金) 3,000 2012年8月15日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 5,000 2012年8月14日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 2,000 2012年8月14日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年8月14日 2012年11月15日

オペ結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120810.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 4,000 4,000 0.000 0.000
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 1,050 1,050 0.000 0.000
共通担保資金供給(資産買入等基金)(8月14日スタート分) 41,485 8,014 19.3
CP等買入(資産買入等基金) 8,380 2,545 0.113 0.114 60.7

ということでオペがございましたが、金曜にあたくし決定会合レビューをした時に肝心の基金国債買入の買入金利下限をどうしたかのネタを華麗にヌルーしておりまして誠にあいすいません事でございまするm(__)m

んでまあご案内のように先週のMPMでは基金国債買入の応札下限金利を0.10%で維持したのでありますが、まー確かに札割れが1日オファー分で1回あったものの、直近ではその1回という事ではございますので、だからいきなり下限撤廃というのもっつーのは判らんでも無いので、まーシャーナイナイかなあという所です。

逆にですな、調節担当部署がMPMの前に堂々のオペオファーをして連続札割れを見せて「さあお願いしますもう無理ぽです」という風にやってくるのかなとも思ったのですが、何せ「頑張れ」と言われると限界まで頑張って三文惜しみの百失いというのが美徳とされますジャパンクオリティを体現したかのように基金買入オペのオファーをMPMの翌日に打ってくる所に味わいというか何というか。

いやね、翌日に打たないで多分一番このゾーンで業者の在庫があると思われる2年新発を入れられるタイミングで打てば良いのにとか思ったのですが、わざわざ14日渡しで2年新発が入らないタイミングのMPM翌日オファーというのが頑張ってるんだか頑張って無いんだか色々な意味でオモシロスなオファーではございますが、まあどのくらい札割れをするのかなあとか見ていたら、1年〜2年は5000億円のオファーに対してきっちり4000億円の応札、2年〜3年は2000億円のオファーに対して1050億円の応札とどちらも綺麗なラウンドの数字になり(前回は3594/5000と964/2000)どう見てもどこかの投資家札です本当にカムサハムニダという結果に。

いやね、このオペだとどうせ0.10%でしか売れない訳ですが、最早水準が見事なまでに0.10%から沈んだ状態の為、業者の場合は0.10%割れでも買う投資家が店頭にいる(超過準備付利と関係ない人がいるから)のでオペに応札する意味はなく、まあ投資家で何らかの事情でロットでこのゾーンを外したい(益出しとか金繰りとか)人で、まあ業者に4ケタ億円売りに行ってもどうせ0.10%ビットになるでしょうから(もっとしょぼいロットなら兎も角さすがに4ケタを0.10割れのビットは中々厳しいでしょ)、日銀オペのタイミングで売ればヨロシアルねという人がいたら札は入りますなあとか思った次第ですけど、金曜は短い方で4000億円も札が入ったのかあという所でありまする。

さてさて、7月末現在の基金買入の残高ですがこちらの(別表2)にございますな。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120731.htm/

「資産買入等の基金」の内訳(単位:千円)

長期国債 14,042,167,260

つーことで7月末で14兆422億円の買入残高になっていまして、8月の買入が金曜のオペも含めまして9608億円なので買入残高が15兆円になった訳ですが、12月末までに24兆円の残高にするのが目標になっている訳で、あと9兆円積まないといけないという中で市場環境が今の調子だと基金買入オペは札割れが続くのが必定、しかも次回のMPMは9月18〜19日でして、前回の基金短国買入の応札金利下限撤廃をMPMの声明文でアナウンスした手前、基金国債買入に関しても応札下限金利の撤廃をするとなればMPMの時にならざるを得ない(まあしらっと通常でやるという戦法はあるのですが、前回との整合性が取れないので日銀的には見苦しいにも程があり、たぶんそうはならない)のですが、この間に幾ら札が入ってくれるのか中々大変じゃネーノという感じです。

たぶん最大打って次のMPMまで5回とか(毎週打つという計算ね)ですけれども、まー目の子で応札が1回5000とかあったらオイシイ方だと思われまして、まあこの間に買入が出来るのが2兆あるか無いかとかそんなもんでしょ(下手したら1兆位じゃねえのと思いますけど)と思いますと、9月19日からの実質3か月で買入を7兆円以上積まないと目標行きませんがなとゆー計算になる次第。

てな事も考えますと、今回素直に下限金利撤廃しておいた方が買入も楽でしょうし、変に年末に向けてペースを加速させる必要も無いですし(余程の市場環境の変化が無い限り買入対象年限を伸ばすか下限金利を撤廃しない限りどう見ても24兆達成は無理でしょ)、何かここでスパッと割り切った方が後で加速買入して市場の需給を歪めるより良いと思ったんですけどねえ、というのを一応数字を出して計算してみました(^^)。

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2012/08/10

お題「決定会合レビューである」

昨日のMPMの結果が出た後ドル円が15銭位円高に振れて戻ったのですが、その15銭程度振れた所でブルームバーグが「追加緩和見送りで円高に」というフラッシュを打っててクソワロタです。

もうね、一瞬15銭振れるとか誤差の範囲内だろと思うのですが、とにかくブルームバーグニュース的には完全にテンプレ状態というか思い込み状態になっていて、とにかく日銀の現状維持は必ず円高という固定観念に凝り固まっておられるようでございまして、為替ちゃんが少しでも動いたら予定調和のヘッドラインを打とうとしているというのがよく判る態度でございまして、こういうのを「結論先に有りき」というのですなあと思うのでありまして、関係者一同の猛省を促したいものであると思うのでした。

まあそれはそれとして今回もまた微妙な所に微妙なアレのある内容ではありますた^^;


○声明文:現状判断の総括と先行き判断を変えずに重要需要項目の現状判断を下げるという器用な事を

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120809a.pdf(今回:日本語版)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120809a.pdf(今回:英語版)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120712.pdf(前回:日本語版)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120712a.pdf(前回:英語版)


・海外経済の判断引き下げ

まずは海外経済に関するパラグラフ。

『海外経済は、緩やかながら一部に改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。』(今回)

『海外経済は、緩やかながら改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。』(前回)

ということで「緩やかながら改善の動きもみられているが」の中に「一部に」が入るというヘッジクローズてんこ盛り状態となっておりまして、そこまで入れるかという感じですが、これが英文になると最早何が何だかワカランチ会長でして、最初の一文に対応する所だけ引用比較してみましょう。。

『Overseas economies have shown moderate improvement, though limited in scope; on the whole, they still have not emerged from a deceleration phase.』(今回)
『Overseas economies have shown some, albeit moderate, improvement, but on the whole still have not emerged from a deceleration phase.』(前回)

・・・・・・・・いやね、あたしゃ英語が得意な訳では無いのでよく判らんのですけど、この今回の表現って何か普段中々見ない英語になっているように見えるんですが、こういう言い回しって普通に使うものなのでしょうかねえ。


・景気総括判断は変化なし

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

ということでこちらは変化が無いのですけれども・・・・・・


・輸出と生産という大物の現状判断が下がりました

下がりましたっつーよりは日銀の景気判断がそもそも市場の見方対比強気過ぎにも程があっただろというのはあるのですけれどもね。

『公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)

『公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(前回)

ということでここまでは同じです。

『輸出は持ち直しの動きが緩やかになっており、生産も足もと弱めとなっている。』(今回)
『輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は、振れを伴いながら、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

ということで輸出と生産という需要項目の大玉の現状判断が下がったのですが、この部分の英文表現がどうなっているのかを確認。

『The pick-up in exports has moderated, and the recent reading on production has been relatively weak.』(今回)
『Exports have shown signs of a pick-up. Reflecting these developments in demand at home and abroad, production has started picking up moderately with some fluctuations.』(前回)

こちらに関しては、英文の方を見ると更に判りやすいですけれども、ヘッジクローズてんこ盛りだった表現がすっきりとしたという感じで、まあそういうと悪態になりますが、往生際の悪い判断をしていた所をやっと成仏しやがったかおせーよという感じではございます。


・何でここで金融環境の表現を変えるのかが意味不明

次の部分は声明文を見ていて「はて??」と思う所。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『こうしたもとで、企業の業況感をみると、内需関連業種を中心に緩やかに改善している。この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』(前回)

企業の業況感云々は日銀短観を踏まえた部分ですのでまあ良いとしまして、今回何故か金融環境の表現が変化。でまあこれまた英文と比較。

『Meanwhile, financial conditions in Japan are accommodative.』(今回)
『Meanwhile, financial conditions in Japan have continued to ease.』(前回)

ということで、延々と「have continued to ease」だったのが今回急に「accommodative」に変化しております。

ちなみにこの緩和が続く云々ってそもそもはリーマンショック後に企業金融オペだのCP買入だの導入してその効果が出てきてCPレートとかが思いっきり低下した辺りの2009年5月から6月に掛けて「金融環境をみると、ひところに比べて緊張感が後退しているものの、なお厳しい状態が続いている。」→「この間、金融環境をみると、改善の動きがみられるものの、全体としては、なお厳しい状態が続いている。」となってから延々と改善の動きが続いている形になり、震災で一旦それが止まったものの、(なので2011年3月と4月はその表現が無い)震災の影響が緩和された2011年5月以降にまた改善の動きという話になっておりましたので、まあ確かに延々と引っ張り過ぎというのはその通りではあります。

ただですね、「緩和した状態にある」と表現を変えたとなりますと、「ああもう追加の緩和をしたくないのね」というような受け止め方をされ兼ねない(というのは日銀と申しますか麿の日頃の言動も要因としてある訳で、これがFRBだと別に気にされなかったりすると思うのですけれども・・・・・)訳ですし、何でこのタイミングで・・・・と思う所ですの。

まあ特段の政策意図は無いと思いますし、おそらくは足元での短い所の市場金利の低下(を受けて基金短国買入の買入下限レートを撤廃したのですし)を受けて「もう散々金利が下がりましたがな」という認識を示したとか、短観などの資金繰り判断関係とかが相変わらず良いとかありますし、6月の金融経済月報でも金融環境に関する部分で、従来まで入っていた「実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある」というのを削除したりして、布石は打っていたのですけれども、景気判断の中で現状認識の需要な需要項目に関しての引き下げを行いながら「追加金融緩和をやりたくないんですねえ」的な受け止めをされやすい表現変化っつーのも何かチグハグな希ガス。

あとね、あたくし的にここの表現を見た時に思ったのは、ちょうど昨日ネタにした森本審議委員の金沢での講演&会見における、会見でのこの発言なんですよ、ということで再掲。

『中小・零細企業の金融の安定という観点では、行政でもファンドを創設するなど対応を進めておられますが、来年3 月の金融円滑化法の終了に伴う中小・零細企業への影響を懸念するご意見も多数頂戴しました。』(8月2日金沢での森本審議委員講演後記者会見より)

・・・・・・・・何かね、審議委員が地方巡業して折角こういう声を拾ってきているのに、その越えを拾った直後の金融政策決定会合声明文で金融環境についての認識を「have continued to ease」から「accommodative」に変えるってのがあたくし的には何だかな感がするのでございまして、金融経済懇談会を何のために実施しているのよと小一時間問い詰めたいと思ったのは細かいいちゃもんですかそうですか。

それに山口副総裁の広島での金融経済懇談会でも為替円高の影響についての意見が多く聞かれた(貸出とかの方については言及は無かったようですが)とか有る訳で、そういう地方経済における厳しい認識を聞いてきました的な会見を連発してみた後にこれというのも何ですかねという違和感がございます。

とまあ、おそらく特段の政策意図も無い所にこれだけ延々と悪態をつかれて日銀的にはポカーンという感じかもしれませんが、まーあたくしの周囲限定の話ではありますけれども、ここの金融環境に関する文言には引っ掛かる人が結構多かったという局地的なお話も付言させて頂きたく存じますです、はい。


・物価に関しては変化なし

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

まあこれは変わる変わらんという話では無いですから。


・先行き見通し、リスク認識は変わらず

全文一致なので今回分を引用するのみで勘弁。

『先行きのわが国経済については、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(今回)



・金融政策の決意表明みたいな部分にも微妙な変化があるのですが

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。』(今回)

という所までは前回と表現は同じです。

『こうした認識のもとで、日本銀行は、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく。』(今回)
『こうした認識のもとで、日本銀行は、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。』(前回)

ということで、今回「今後とも、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて間断なく金融緩和を進めていく」という一文が入りましたのがほほうという感じです。

日本語版の方を見ますと、これは最近よく説明している「残高を積み上げて行くから毎月緩和を追加しているんですよ」という部分を明文化することによって「毎月毎月追加緩和見送りとか報道するんじゃねえよ」てなメッセージを送りたい、というのはあるのかなあと取れますなとゆー所でして、緩和継続しています的なアピールモードに見えます。


でまあこの英文を見ます。

『Based on this recognition, the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing. It will proceed with the monetary easing in a continuous manner by steadily increasing the amount outstanding of the Asset Purchase Program.』(今回)

『Based on this recognition, the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing.』(前回)

ということで、前半の「pursuing powerful monetary easing」に関する表現は相変わらずの現在完了進行形で、2月の物価安定の目途を出した時の「The Bank will continue to pursue powerful monetary easing and will also engage in efforts to support strengthening the foundations for Japan's economic growth as a central bank.」が5月に引っ込んで、6月から現在完了進行形で復活するという攻撃は継続。

んでもって今回入った一文は「It will proceed with the monetary easing in a continuous manner by steadily increasing the amount outstanding of the Asset Purchase Program.」という事で、まあ基本的にはさっき話をしたアピール系の表現に見えますけれども・・・・・・

ただまあ何ですな、これがもしFRBの声明文だったりしますと、APPの残高枠そのものを拡大するという決意表明をしていると読まれそうな表現でもございまして(日銀だとまあ日頃の言動がアレなのでそういう解釈をされにくいと思う)、ここの文章を見た海外勢がどう解釈するのか聞いてみたいなあと思います。中々味わいのある表現が入ったなと思いましたよ。


で、その次。

『日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく方針である。』(今回)
『日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく。』(前回)


『The Bank continues to conduct monetary policy in an appropriate manner. The Bank will also do its utmost to ensure the stability of Japan's financial system, while giving particular attention to developments in global financial markets.』(今回)

『The Bank continues to conduct monetary policy in an appropriate manner. The Bank will also do its utmost to ensure the stability of Japan's financial system, while giving particular attention to developments in global financial markets.』(前回)

「方針である」になったのですが英文は同じですな。


ということで、英文も読みながら声明文を味わってみましたということで。


○これは微妙にアレな決定ではないかと

金融政策決定会合の声明文とは別に(当日の午後3時ごろ)出たのですがこんなのが話題になってました罠。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120809a.pdf
成長基盤強化支援資金供給(米ドル特則)の第1期貸付の実施延期について

『成長基盤強化支援資金供給(米ドル特則)の第1期貸付については、貸付実施の通知日を本年8月30日、貸付日を本年9月6日、返済期日を2013年9月6日、貸付利率を米ドルの6か月物LIBOR(英国銀行協会が公表するLondon InterBank Offered Rate)として実施することとしていました(注)。しかしながら、LIBORの改革を巡り関係者の間で議論が行われている情勢であることに鑑み、実施日をいったん延期することが適当と判断しました。』


ということなのですが、何かわざわざLIBORに関する騒ぎを大きくしてどうすんのという感は拭えないお話でして、LIBORがそういう議論になっているというのであれば、OISでも何でも使って日銀がレートを決めて実施すれば良いだけの話じゃないかと思いますけど。つーかこれって成長基盤強化支援という日銀の建付け的に重要な施策のはずなのに、金利が決められない如きで半月以上先の話を延期するとかちょっとよく判りません。

つーか成長基盤強化をしたいんって話で実施するんですから別にまあサービスレートでも良い訳で、レートをFF誘導目標のレンジの上のレートの0.25%にしたっていいですし、ディスカウントウィンドウのレートにしたっていい訳で、何でここで「延期」という選択肢になるのでしょうかねえ・・・・

と思いつつ、ドル資金供給オペの3か月物金利って何で決めてたっけと思って見たら・・・・
http://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/ope_h/opetori13.htm/

『(B) 固定金利方式
ニューヨーク連邦準備銀行が貸付期間に応じたドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ市場における実勢金利を勘案して指定する利率を貸付利率とする方式。 』

うむ、そういやNY連銀が決めたレート(ドルスワップのレート)を使ってましたな^^;

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2012/07/19

○6月会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120615.pdf

・やはり海外経済に関しての部分がアレ

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』を見る訳だが。

『国際金融資本市場について、委員は、スペインの銀行の不良債権やギリシャの政治情勢などへの懸念を背景に、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要があるとの認識で一致した。』

ということで、冒頭は国際金融市場情勢に関する話でして、この話が延々と1ページの3分の2位のスペースを使って展開されておりましてこの最後は、

『そのうえで、何人かの委員は、何らかのきっかけで、資金調達市場を含めて、市場が急速に不安定化するリスクには、十分注意する必要があると述べた。』

という風に締めているのですが、まあこの部分に関しては「今の所落ち着いて来たけれどもまだまだ警戒は必要だし解決には時間が掛かる」という警戒モードになっているのですけれども、ここでそういう警戒モードなのにどうして決定会合の出来上がりベースではこの警戒モードが前面に出てこないのでしょうかと相変わらず疑問ではあります。

でまあその国際金融情勢よりもアレなのが米国。

『海外経済について、委員は、回復が遅れ気味であり、全体としてなお減速した状態から脱していないものの、緩やかながら改善の動きもみられているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、次第に減速した状態から脱していくと見込まれるとの認識を共有した。』

というのは声明文にも出ていた話。アレなのはこの次。

『何人かの委員は、海外経済の先行きについては、新興国・資源国が牽引役を一手に引き受けるのではなく、新興国と米国経済の双方が牽引役となる可能性もあるとの見解を示した。』

>新興国と米国経済の双方が牽引役となる可能性
>新興国と米国経済の双方が牽引役となる可能性
>新興国と米国経済の双方が牽引役となる可能性

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほほう

『米国経済について、委員は、緩やかな回復を続けており、先行きも、緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。複数の委員は、6月のベージュブックにおける各地域の景気判断は全体として明るめであり、米国経済の緩やかな回復が続いていることを示唆していると述べた。』

『非農業部門雇用者数の伸びが鈍化し、失業率の低下が足踏みしている点について、多くの委員は、過去半年程度の数字を均す、ないしは他の雇用関連指標と併せてみれば、雇用情勢は引き続き緩やかな改善方向にあると判断されるとの見解を示した。このうちの複数の委員は、当面の個人消費は、雇用環境の緩やかな改善に加えて、ガソリン価格の下落に伴う実質所得の増加により、底堅く推移するとの見方を示した。』

『そのうえで、多くの委員は、バランスシート調整圧力がなお残る中、欧州債務問題の影響に加え、来年初に財政支出削減や増税が一斉に実施される、いわゆる「財政の崖」を巡る動きやその影響については、注視する必要があると指摘した。』

とまあそういう事でして、どうも6月会合での議論では米国経済の先行きに関してやや強めに見ていたのではないかと思われる節がある次第でございますが、はてさて本家の米国様がトーンダウンさせる(トーンダウンしたのだからツイストのおかわりをしたのですし)中でこの辺の見立てを今月の展望レポート中間評価でどういう話をしていたのかは気になりますなとゆーよりも意地悪く確認したい所。


・国内景気に関して

まあ基本的には声明文や総裁会見で示されたようなお話ですが確認の為。

『景気の現状について、委員は、海外需要の回復は幾分遅れ気味であるものの、復興関連需要などから国内需要が予想以上に堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつあるとの見方で一致した。』

『景気の先行きについて、委員は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとの見方で一致した。多くの委員は、外需の回復が明確化するまでの間、内需の堅調が持続するかどうかがポイントであるとの認識を示した。』

ということですが、その内容に関してはこんな感じ。

『この点、何人かの委員は、企業収益が改善していけば、設備投資の増加が見込まれるほか、雇用・所得環境の改善を通じて消費を下支えすることも期待できるとの見方を示した。もっとも、複数の委員は、エコカー補助金の予算切れが近づいているほか、公務員給与引き下げの影響や、今夏の賞与は弱めとなる見通しにあることなどが、個人消費を下振れさせることはないか注意する必要があると述べた。』

『このうちの一人の委員は、このところ有効求人倍率が改善している一方で失業者数が高止まりしていることは、一部の産業で雇用のミスマッチが拡大している可能性があることを示唆しており、このことが雇用者所得や個人消費の改善を後ずれさせないか注視していると付け加えた。』

『この間、設備投資について、ある委員は、法人企業景気予測調査において、今年度の設備投資計画が製造業、非製造業ともにしっかりとしていると指摘した。そのうえで、今後、短観においてもこうした前向きな投資スタンスがみられるか、また、実際に計画が実行に移されていくか、注視していきたいと述べた。』

とまあそんな感じでして、両論併記っぽいのですがこの後に出た短観で企業部門と雇用がやや強めに出ているという事で、7月の展望レポート中間評価でろくすっぽ見通しが下がらなかったのはそうなりますわなという所でしょうな、上記のように企業部門の所と雇用に関する話を注目しているというのが出ている訳ですからして。

ただまあ何ですな、この辺の議事要旨の書き方は短観見てから企業部門と雇用の所に関する議論の部分を特に強調しましょうかという可能性はありますけど(^^)、いずれにせよこのようなトーンでの議論→短観と来るとそらまあカワランチ会長ですなあとなるのでしょ。


・リスク要因

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きいとの見解で一致した。』

>米国経済の回復力
>米国経済の回復力
>米国経済の回復力

・・・・・・ほう。

『このうち、欧州債務問題について、委員は、その深刻化に伴う国際金融資本市場の不安定化や海外経済の下振れが、最も強く意識しておくべきリスク要因であるとの認識を共有した。何人かの委員は、欧州債務問題を巡る懸念が常態化していること、また、その影響で円高・株安に振れやすくなっていることが、企業や家計のマインド等を通じて、わが国の設備投資や個人消費を下押しする惧れもあると述べた。』

とまあそういう事ですが、まあこのトーンで短観迎えて7月中間レビューだから前回会合の結果は順当、とまあそういう話になりますなという事で。


○輪番オペ1年以下の応札金利がどうのこうの

こんなんありました。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M7BZ9Q0YHQ0X01.html
日銀、輪番オペ1年以下の下限金利撤廃−マイナス金利容認も(1)

『7月18日(ブルームバーグ):日本銀行は長期国債買い入れ(輪番オペ)の残存期間1年以下を対象に0.1%の下限金利を撤廃し、マイナス金利での買い入れも容認する。同オペでの応札額が予定額に届かない「札割れ」を回避する対応策。広報担当の中村毅史氏によると、17日に証券会社など取引業者に通知した。具体的には正の金利を入力することになっていたものを、短期国債や1年以下について、「正、負、ゼロのいずれかの値」を入力することに変更。日銀がマイナス金利でも購入することは初めて。同オペではこれまで日銀が買い入れる際に利回りが0.1%を下回る場合は対象外としていた。中村氏は「下限金利がなくなるので、札割れは起きにくくなるだろう」との見方を示した。』(上記URLより)

でまあこういうのが出ますと早速「基金長期国債の買入に関しても買入下限金利撤廃の可能性高まる」という連想が出るのですけれども(というかそんなコメント見ましたが)、これはやはり「買入残高の確保をする為に1年以下の所でバンバンやりまっせ〜」という話でありまして、理屈としては基金短国買入の下限金利撤廃と同じです罠。

ただまあ何ですな、こういうの出すと当然ながら変な思惑を呼ぶのでどうなのよという気もするんですけど、恐らくは日銀的には足元で別にレートが馬鹿下がりしている訳でもなく、マイナス落札何ぞ夢のまた夢という状態の今だから変に思惑を呼ばないと判断したんだろうなあとは思いますし、まあ大体それで問題ないとは思うのですが、やはり足元ではちょっとその手のコメントも出るわなあとか思いました(が先ほども申し上げましたように、この施策を見て「これで基金長期国債買入下限金利の撤廃が見えてきた」とか言うのは発想のひねりが足りませんのでもう少し頭を捻りましょうという所で(^^)。

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2012/07/18

○決定会合関連続きである(金融経済月報)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1207.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1206.pdf(前回)

でまあ本文も読んでみたのですがネタにするにはちょっと微妙なので(量が多い上に非常に細かい)いつものように『【概要】』部分だけで勘弁。

・現状判断総括

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

どう見ても判断不変です本当にありがとうございました。

・現状判断需要項目別

めんどいので一気に引用。

『海外経済は、緩やかながら改善の動きもみられているが、全体としてなお減速した状態から脱していない。わが国の国内需要をみると、公共投資は増加を続けている。設備投資は、企業収益が改善するもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は、振れを伴いながら、緩やかに持ち直しつつある。こうしたもとで、企業の業況感をみると、内需関連業種を中心に緩やかに改善している。』(今回)

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、緩やかながら改善の動きもみられている。こうしたもとで、輸出には持ち直しの動きがみられている。国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。以上の内外需要を反映して、生産は緩やかに持ち直しつつある。』(前回)

海外経済に関しては語順を変えておりまして従前の結論が「改善の動きもみられている」だったのが今回の結論では「減速した状態から脱していない」になっていまして、ここの判断は微妙に下げております。

で、その下げの影響がどこに来るかと言いますと、次のセンテンスになるのですが、前回は「改善の動きもみられている」ので「輸出には持ち直しの動きがみられている」という風に文章が続くのですけれども、今回はそう書くと文章として繋がらなくなるという点を考慮したのか、「輸出にも持ち直しの動き」云々の文言は文章の後ろの方に入るという芸の細かさ。

ちなみに、月報全文の輸出に関わる部分でどういう話をしているのか興味があったので、その部分を子細に確認しましたが、主要な所では米国経済の状況について『基調としては』という毎度おなじみのヘッジクローズが入ってみたり、『このところ、欧州以外の地域を含めグローバルに企業マインドがやや慎重化している点にも注意が必要である。』などと微妙なヘッジクローズが入っていまして、さすがに全くカワランチ会長という事でも無いという感じですな。


で、国内需要に関しては公共投資、設備投資、個人投資、住宅投資に関しては前月の判断を踏襲していまして、輸出の部分が概要での表現に変化は無いものの、5月の鉱工業生産が悪かったことだと思われる(というか全文にそう書いてある)ことでしょうが、生産に関しては「振れを伴いながら」というヘッジクロースが入っています。業況感云々は短観を反映しています。


・先行き見通し総括

『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

どう見ても(以下同文^^)。


・先行き見通し需要項目別

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

・・・・・・・・・・・・先行き見通しに関しては全然変わっていない(企業収益に関する部分で「改善する」が「改善を続ける」に代わっただけ)という事で、まあ何もカワランチ会長でございました事よ。そら展望レポートの見通しも基本的に変わらんわなという事で。


・リスク要因

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(前回)

どう見ても(またも以下同文^^^^)。


・物価、金融環境

こちらに関してはまあ現象面に関する部分以外で特段の変化はありませんので物価の所の今回分だけ引用しておきます。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の反落などから、上昇テンポが鈍化している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

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2012/07/13

お題「中々不思議な決定会合でございました」

決定会合の時はヘッドラインだけで反応してはいけませんなorz

○ヘッドラインでバタバタ

声明文はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120712.pdf

・・・・・・・・・でまあニュースヘッドラインですけれども、あたくしが見ておりましたブルームバーグニュースだと最初に「45兆円」という基金のうち買入系の残高拡大のヘッドラインが出て「おお緩和!」と思ったらその後に「固定金利オペ5兆円減額」というのが出て「ありゃ?」となり、その後「短期国債買入の下限金利撤廃」を見て「げげげ!」となった次第でありまする。

市場ちゃんの反応は最初「45兆円」で追加緩和キタコレと思って債券先物も上昇したのですけれども、株高&円安に反応したのを見て債券先物下落したものの、「短国買入の下限金利撤廃」でまた先物が上昇したものの冷静に考えるとそれだけで反応するもんかとかいう感じ(かどうか知らんが)で下がってみたものの、「よく見たら基金残高が変わらないじゃないか」という事でぬか喜びした分の反動で株は下がるわ円安は反転するわとなったのを見て債券市場再びワッショイモードと相成りました。

ということで、まあ不肖このあたくしも展望レポートの中間評価で今回は見通しが特段の変更が無いのであるからして、当然ながら何も無いとか油断してたらややこしい内容の物が出てきて最初ヘッドラインの方を見ながら「???」となっていたのですが、これは声明文を子細に読まないと何が何やらワカランチ会長であると思って読んだ次第ですけれども(大汗)、まあヘッドラインで反応すると間違えますなという代物でありまして、どうも決定会合関連はヘッドラインだけで反応しない方が良いようですの(−−)。


○追加緩和ではないが必ずしも据え置きではないというような不思議な内容

声明文再掲
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120712.pdf

「追加緩和ではない」というのは何処を見ると判るかと申しますと、声明文の題名を見ると判るのでございます。

『当面の金融政策運営について』(今回)

基本的に最近の追加金融の際には、たとえば4月27日会合声明文にありますように、『金融緩和の強化について』と出ますので、上記の表題という事はつまり追加緩和ではないのですが、後で申し上げますように「展望レポートの見通しが基本的に変わらず、リスク認識も特に変わっていない」という事に成っていますので、その部分と整合性が取ると追加金融緩和は行いませんよ、とまあこうなります。

コミュニケーションポリシーという意味では日銀の経済物価見通しが甘いんじゃねえのかという極めて重要な話はさておきますと、これはこれで日銀から示される経済物価見通しに整合的な金融政策行動という事で、まあ為替市場とか株式市場の方々からするとナンジャソラという所でしょうが、従来からの日銀行動パターンからすると読みやすくなりましたな(重ねて申しますがその決定が妥当かどうかという話はさておきますので念の為)という事で。


でまあ声明文の景気認識の所をスルーして先に今回のオペ関連決定事項を引用しますと以下の通り。

『8.なお、このところ、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション等において応札額が未達となるケースがみられている。日本銀行は、資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて前述の金融緩和を間断なく進めていく観点から、本日の会合で以下の措置を決定した。

(1)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを5兆円程度減額し、短期国債買入れを5兆円程度増額する。

(2)短期国債の買入れをより確実に行うため、当該買入れにおける入札下限金利(現在、年0.1%)を撤廃する。CPの買入れについても同様とする。

(3)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションについて、金融機関の資金需要に柔軟に対応するため、「期間3か月」と「期間6か月」の区分をなくし、「期間6か月以下」とする。』

ここにありますように、固定金利オペから短国買入への振替ですので、まあ資金供給的には期間が若干長くなっているという意味では緩和を強化していない訳でも無い、というのがありますし、「資産買入等の基金の着実な積み上げを通じて前述の金融緩和を間断なく進めていく観点」という事ですので、つまり「基金の積み上げをより円滑に行う」という施策でもありまして、その意味からしますとやはりこれは全くの現状維持かというとそうでは無くて「緩和効果を実質的に高める」という話でありますので、「追加緩和じゃないけど現状維持でも無い」という中々不思議な決定となります。

何せこうやって書いているあたくしも「これどう読むと良いのやら」と10分くらいは悩んで、人様とああだこうだ意見交換した結果、まあこういう事でしょうと言う風に解釈が落とせたという所でございますので、こらまあ為替市場や株式市場が「何が何だか判らない」と反応するのもさすがに今回はシャーナイナイと思うのでございました。



○短国市場の反応が一番的確でしたな(短国買入下限金利撤廃関連)

でまあ短国(CPは短国と整合性を取るためのおまけみたいなもん)買入の下限金利撤廃なのですが、これ最初見た時にはあたくしも「げげげ、短国金利が下がるのかよ」とか思ったのですが、よくよく考えますと超過準備付利の0.10%は変わっていませんので、ゆうてみれば短国保有している銀行さんが手持ちの短国を0.10%割れで日銀に打ち込んで0.10%でブタ積みするか、0.10%で買える短期国債があったら買い戻す(とりあえずブタ積みしておいて市場動向見ながら0.10%になるとすかさず短期国債買うとかね)という事にはなるものの、日銀への売却を見込んで0.10%割れの短国をバンバン買い進むかというとそうは普通に考えてならん罠という話。

とまあ冷静に考えたのか、短国市場では最初0.10%割れというリリースを見た時に、それまでの気配であります所の0.095%オファー/0.100%ビットという気配からオファーが全部引いてしまったのですが、その後普通に0.095%オファーが残り、何事も無かったかのような展開に。

もうちょっと判りやすく申しますと、0.10%を割った短国を買う人っていうのは基本的には(1)準備預金制度の外側に居るひと(海外投資家とか投資信託とか)、(2)お家の事情で買わないといけないひと(決算対策などで国債残高を積み上げる必要がある場合とか、担保繰りがショートして買わないといけない場合とか)、の2種類でして、今般の決定で日銀がこれに加わった、という意味ではそらまあ短期国債の需給的に言えば需給が締まるので金利が上昇しにくくなったというのはほぼ間違いないと思われるのですが、今回新規参入して来ました日本銀行ちゃんは総額9.5兆円(5ページ目の別紙にある通りね)の買い主体とゆー事でして、まあ短国市場の現在の発行量からしますと、短国の流通市場のレートを0.09%だ0.08%だという所まで下げるほどのインパクトは無いですな、という話。


んでまあこれが出たので「付利引下げへの思惑」という見解も聞かれるのですが、これに関しては総裁が会見でも全力で否定していたように、実際にはこの施策は「付利金利の引き下げを遠くする」ものであります。何でですねんと申しますと、今回の措置は短国買入の残高を積みやすくする為の措置であり、付利を維持しながら買入のレートの方は下げて買入を進めたいという事でありますからして、付利下げちゃう(特にゼロにしちゃった場合)と折角進むようになった買入がまた進まなくなる恐れがあるという話でございますので、この買入下限金利撤廃の解釈で付利下げへの第一歩とか言うのは残念ながら外れですのでご注意ありたし。


あとですね、短期国債の買入がこれで積みやすくなったので、基金の買入拡大が実はやりやすくなったというのもありまして、まあ短国市場の規模から考えるとただのヤマ勘で言えばもう10兆くらい積んでも何とかなるような気がするのですがどうでしょうかね(あまり買い過ぎると当然ながら短期市場での短国不足モードになるのでレートが沈みだしてアヒャヒャヒャヒャとなるので調子に乗って基金拡大を短国でホイホイやられても市場的には勘弁)。まあ市場金利がここまで来た状態で短国買入拡大してどういう効果がありますねんというツッコミはさておきましてですけれどもね(^^)。


ただまあ債券市場的には中短期の金利どころか10年まで買われやがっていて、5年以下の所に関しては「今回オペの札割れ対策で0.10%の下限撤廃したんだからいずれ買入が厳しくなってきたら基金国債買入に関しても0.10%撤廃来るかも」とか「いずれは買入の年限が拡大されるかも」というような思惑が出やすくなるのはまあシャーナイナイと思いますし、付利下げに関してもこらまあ思惑は相変わらず出てくるのもシャーナイナイと思いますのですが、ちと威勢よく反応し過ぎのような気もせんでもない(が米国がアレだとまだ強いでしょうな)。



○固定金利オペの扱いがどうなるのかも注目

さっきの再掲。

『(3)固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションについて、金融機関の資金需要に柔軟に対応するため、「期間3か月」と「期間6か月」の区分をなくし、「期間6か月以下」とする。』

という事でございまして、足元では殆ど意地になっているのかというような雰囲気で固定金利オペを3か月物のロールを6か月で打ち続けてオペ残が30兆ちょいまで減ってくるというお洒落な事態になっておりましたが、「金融機関の資金需要に柔軟に対応するため」という事になりましたので、まあさすがに市場が皆さん揃ってイラネと言ってる6か月物オペはフェードアウトするんでしょう。

でまあ市場の需要という意味では1週間物とか3週間物とか、まあその程度のオペでも打って頂きますと幸甚に存じますという事で、固定金利オペが「期間6か月以下」という形になったのでありますから、この際昔のフツーのオペに戻して頂いて、単にそのレートが入札方式ではなく指値方式(今の市場金利水準だったら入札でも指値でも同じようなもんですから)となるだけとなってくれると随分とオペの窮屈さも解消されると思います。

ただまあそこまでやってしまうと余りにも極端な変化ですので、いきなりそこまで行くかはこらまあオペの打ち方を見て行かないとワカラン話ではございますなという所です。

いずれにせよ、固定金利オペが総額で25兆円まで残高が落ちますと、単純に資金供給を固定金利オペだけで実施すると恐らく金が足りなくなるのではないかという気が。最近は買入系の残高が基金オペの影響で拡大しているので単純比較できないのですけれども、ここ3年くらいのスパン(3年というのは単にあたくしが手元で集計している数字がその期間しかないのでというしょうも無い理由)において短期オペの残高って一番少ない時で27兆円位(2010年の7月頭頃)でして、金の回りが悪くなっていることと買入拡大をしている事を勘案するとどうなのかは微妙ですけれども、まあ多分固定金利オペだけだと市場の資金需要を充足できないタイミングがあるだろうなあと思うのです。

つーことで、まあいずれタイミング次第では通常の金利入札オペの実施とかも入るのかなあとか思いますと、まあこの固定金利オペに関しては(より長い所の買入が拡大された結果として)役割はかなり終了モードとなってきたのではないかとゆー感じでして、正直今回固定金利オペに関しては「6か月以下」という変更をするだけでも良かったような気がしますが、まあ基金の総額増やさないという形にしたかったのと、固定金利オペの比重を下げたかったという事なんでしょうなあと思うのでありました。


○などと書いていたら時間がががががが

いつもの仕様ですかそうですか、ええまあ3連休らしいので連休中に気が向いたら続きをアップしますです、と言い訳をしておきますが(^^)、その他ポイント。

・展望レポートの中間見通しは変わっていない

まあ中間評価に関しては後日申し上げますが、細かく変化はあるものの、声明文の中にありますように、

『5.4月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価について、2012年度の国内企業物価は、見通しに比べてやや下振れるものの、2013年度は、概ね見通しに沿って推移すると予想される。消費者物価(除く生鮮食品)は、概ね見通しに沿って推移すると見込まれる。』

ということで、2013年度に関する見通しには変化が無い(から今回追加緩和していない)のがポイントですわな。で月報見れば判明しそうですし、会見でも総裁がコメントしていましたけれども、物価の「遠からず1%に達する」の旗も下ろしてはいませんですな。


・経済認識もまあ横ばい

声明文の経済認識もまあ横ばいです。詳しくは後日。


・まあおちつけ(小ネタ)

声明文は今見ますとちゃんとしたのが出ているのですが、最初は公表文書の文書そのものをスキャンしたものをPDFにした状態で日銀のサイトにアップされるのですが、最後の別紙(=資産買入等基金の内訳表)のスキャンが豪快に斜めになっておりまして、まあ落ち着けと思った市場参加者は恐らく数百人では効かなく居たと思われます。忙しいのは判りますがあまりにもネタとして面白すぎるのでご注意されるのが吉かと(^^)。


ということで基金の内訳変更関連の後講釈だけで終了しまして甚だ申し訳ございませんでしたm(__)m

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2012/07/06

○さくらレポート関連

今日は海外の方がメインなのでこちらは簡単に。
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer120705.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer120705.pdf(全文)

概要の方から。

『I. 地域からみた景気情勢

各地の景気情勢を前回(12年4月)と比較すると、全地域から改善方向の報告があった。各地域の判断をみると、多くの地域が「緩やかに回復している」、「持ち直している」などとしている一方、いくつかの地域では「持ち直しの動きもみられるが、なお足踏み状態にある」などとしている。』

ということでその次にありますように、ものの見事に全地域で判断引き上げと来たもんで、こりゃ益々来週の決定会合は現状維持で従来の基金買入を引き続き進めて行って様子を見ますよコースの香りが高まって参りましたなあ。うんうん。

でまあ主要需要項目に関して。

・設備投資

『設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、維持・更新投資や新製品対応投資、震災後の復旧関連投資などを中心に、8地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)から、「持ち直し」や「増加している」等との報告があったほか、四国からは「底堅い動き」との報告があった。』

企業収益が改善しつつあるっての今回も出てますのう。


・個人消費

『個人消費は、自動車に対する需要刺激策の効果や被災地での震災関連需要などを背景に、7地域(東北、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「増加を続けている」や「持ち直し」、「堅調に推移している」との報告があったほか、北陸からも、「底堅い動きとなっている」との報告があった。一方、北海道からは、「横ばい圏内で推移している」との報告があった。

大型小売店販売額は、消費マインドが改善傾向にあるもとで高額品などが堅調なことから、多くの地域から「持ち直し」や「底堅く推移している」との報告があった。ただし、東海や近畿からは、「スーパーは弱めの動き」との報告があった。


乗用車販売は、全ての地域から、需要刺激策の効果などを背景に、「高水準が続いている」や「増加を続けている」等の報告があった。

家電販売は、薄型テレビなどの駆け込み需要の反動により、東北を除く全ての地域から、「低調に推移している」や「減少している」との報告があった。一方、東北からは、「震災に伴う買い替え需要が引き続きみられることもあって堅調に推移している」との報告があった。

旅行関連需要は、ほとんどの地域から「持ち直し」との報告があった。』

こらまた威勢が良い話。


・生産

『生産は、国内需要の持ち直し等を背景に、東北と東海から、「増加している」、4地域(北海道、北陸、関東甲信越、四国)から、「持ち直し」等の報告があったほか、近畿や中国からは、「一部に持ち直しの動きがみられる」との報告があった。一方、九州・沖縄からは、「全体としては横ばい圏内の動き」との報告があった。

業種別の主な動きをみると、輸送機械は4地域(北海道、東北、関東甲信越、東海)から、「増加している」、中国から、「操業度を幾分引き上げている」、2地域(四国、九州・沖縄)から、「高水準の生産を維持している」との報告があった。一般機械、鉄鋼でも、多くの地域から、「高水準の生産を続けている」、「緩やかに増加している」等の報告があった。こうした中、電子部品・デバイスについては、東北、関東甲信越からは、「減少している」、「弱い動き」、中国、九州・沖縄からは、「横ばい圏内の動き」となっている一方、北海道、北陸、東海は、「持ち直している」、「持ち直しの動きがみられる」と区々の動きとなっている。』

電子部品デバイスが弱いけど他は堅調とな。


・雇用・所得

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「引き続き厳しい状況にあるが、改善の動きがみられる」との報告があった。雇用情勢については、多くの地域から、「回復している」や「改善の動きがみられる」等の報告があった。また、雇用者所得は、多くの地域から「下げ止まっている」等との報告があった。』

ということで雇用関連に関してもまあ状況は厳しいとしつつも内容的には「でも改善してきていますよ」てなトーン。


まあそんなわけで、主要需要項目を見ても書きっぷりのトーンが明るめになっているのが、概要説明部分の特徴でして、こらまた次に出てくる欧州や英国のどよよーんとした話とは思いっきりトーンが違いますなあという所で、昨日は中国も利下げしたりしてましたが、そんな中全力で独自路線って何かここで勝負する所なのかよという疑問はあるのですが、ジャパンの方はこんな結果になっております。

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2012/07/03

○短観雑談である

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1206.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1203.pdf(前回)

前回の短観雑談は4月3日に書いたのですが、早くもそれから3か月ですかそうですか。

・前回の先行き予測DIの達成状況

            (3月時点)     (6月時点)
          現状→6月予測    現状→9月予測
製造業大企業   ▲4→▲3       ▲1→+1 
製造業中堅企業  ▲7→▲8       ▲6→▲7 
製造業中小企業 ▲10→▲15     ▲12→▲15

非製造業大企業   +5→+5      +8→+6
非製造業中堅企業  ▲1→▲5      +3→▲3
非製造業中小企業 ▲11→▲16     ▲9→▲15

でまあ前回書いたことを再掲しますとこうなるのだ。

(ここから4月3日の駄文です)
で、今回はまーよーするに12月に悪化した分をどのくらい取り戻せたかという話になるのですが、現状判断DIの推移をみると製造業が全般悪化気味、非製造業が引き続き好転傾向という流れが今回も変わらずというのが何だか妙っちゃあ妙な展開ではございますな。で、先行きDIの達成状況という面で言えば12月に予想されていた悪化ほどの悪化を示していない、という点ではこれはまあ良い傾向っちゃあ良い傾向ではありますが、まあ製造業の現状判断DIが傾向として沈み気味なのがやや遺憾であります。

まあ何ですな、非製造業が妙に堅調なうちに製造業が戻ってくるのが先か、製造業のヘロヘロに引っ張られて非製造業もコケるのが先かという話になるんでしょうか、良く判りませんけど。(以上あたくしの4月3日の駄文)

・・・・・・・でまあ今回ですけれども、「何か数字良いじゃねえの」というお話でございまして、しかも短観の回答期間6月中(概ねこれ6月中旬辺りになるとかでしたっけ)ですので欧州債務問題はあばばばばーという中でございますけれども、まあそれはさておきまして的な結果になっておられて金融市場でアヒャアヒャ言ってるのが少々汗顔な気分になりますな(違うか)。

まあ今回は全てのカテゴリーについて3月時点での予測指数よりも高い数値が出ております。ただまあ回復傾向にある中での予測指数って大体固めに出てくる傾向がありますので、達成度合いもそうですけれども前回対比でみた場合に製造業中小企業以外の全てのカテゴリーが前回対比でDI好転(ちなみに3月短観で前回対比のDIが悪化したのは製造業の中堅と中小)となっております。

とまあ考えると製造業の改善傾向は引き続きアレで、しかも中小企業に関して景気回復の恩恵が回ってませんがなという話ではあるのでその辺は遺憾の極みでございますが、まあこの数字総体として見た場合には悪くはありませんがなという話になるでしょうな(市場予想よりも良いですし)。


・雇用判断DI

             (3月時点)      (6月時点)
           現状→6月予測     現状→9月予測
製造業大企業   +8→+8       +8→+6
製造業中堅企業  +4→+9       +8→+8
製造業中小企業  +8→+9      +10→+8

非製造業大企業   ▲2→▲2      ▲3→▲3
非製造業中堅企業  ▲3→▲4      ▲4→▲6
非製造業中小企業  ▲4→▲4      ▲3→▲5

これまた前回と傾向が同じで、製造業の余剰に対して非製造業の不足となっていて、前回対比でみた場合に非製造業が好転傾向(全規模合計で見た場合は▲3→▲3で変わらないです、為念)となっていて製造業は悪化傾向(全規模合計で見た場合は+8→+9で若干の悪化になっています)という内容。製造業の雇用判断DIがじりじり悪化傾向になっている中で非製造業の雇用判断は不足傾向強まるということで、まあこういうの見せられると日銀の「足元の経済は内需が堅調で回復傾向」という図に思いっきり整合的となっているという内容。まあそんなに悪い数字でも無いような希ガス。


・想定為替レート

今回はあまりこちらが話題になっていなかった気もするのですが、折角数字を拾っておりますので過去1年分の推移を並べてみましょう。

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2011年度全体 (上期) (下期) 2012年度全体 (上期) (下期)

2011年6月調査   82.59   82.59   82.59    −         −    −
2011年9月調査   81.15   81.26   81.06    −         −    −
2011年12月調査  79.02   80.26   77.90    −          −   −
2012年3月調査   78.93  80.20   77.69    78.14       78.04   78.24
2012年6月調査   79.27   80.18   78.35    78.95      78.98   78.93

2011年度に関してはまあ兎も角として、2012年度の想定レートに関しては3月時点の数値からあまり変わっておりませんで、引き続き80円割れですかそうですかという感じですな。だからこそあまりネタになってないと思うのですが。


・金融商品取引業クオリティを今回も鑑賞

毎度毎度毎度申し上げておりますように、本来は「証券会社」だけをカテゴリーにして集計して頂きますと非常にオモシロ集計になるのですが(「投資業等」が入った分だけ動きがマイルドに)、どうも投資業等の皆様におかれましても段々クオリティーがアレになってきたようで誠に遺憾に存じます(^^)。

        (3月時点)       (6月時点)
        現状→6月予測      現状→9月予測
金融商品取引業 ▲10→+16   ▲38→▲11

で、前回3月短観について4月3日に書いた駄文を見ますと・・・・・・

(4月3日の駄文より)
前回は「前回予測がドンピシャで当たっている」という怪奇現象(?)が起きた訳ですが、今回はまあ普通に見通しよりもよろしゅおすえという結果。で、調子に乗って先行き見通しが堂々のプラスになっているのですが、これはどう見ても死亡フラグに見えてしまうのは悲観脳ですかそうですかどうもすいません。 (以上4月3日の駄文から)

・・・・・・・・・・・・やはり死亡フラグでしたかorzorzorz

というか3か月前の予測指数対比で業況判断DIが54ポイントも悪化するとか金融商品取引業の皆様におかれましてはどんだけ目先の事しか見てないんですかと小一時間問い詰めたい所ですが全力で自主規制。


#なお6月短観と言えば設備投資計画のような気がしますが、そういうのは本職の方々が分析されているのでそちらをどうぞ、と思ったら朝の公共放送ニュースで短観の設備投資計画の上方修正をニュースにしてますわ


・で市場の反応とか景気判断とか

まあ正直市場が反応したのか反応したのかよくワカランチ会長という感じでしたが、何となく先物が数銭下がったような気もせんでもないという所ですかねえ。つーても昨日の場合は何か知らんが先週の金曜に大変にアレな引値になっていたように思えた超長期様がいきなり堅調という素敵な展開になっていて短観もへったくれも無い結果となっておりましたかね。つーかお縄先生離党しかも頭数が微妙というニュースの方が先物が(これまた数銭程度のような気がしますが)反応していた(買い方向ね)ように思えます。

まあそれはそれとしまして。

まー何ですな、この短観の数字ですとそれ単体で見た場合で言えば何でこの数字で追加緩和のおかわりをする必要があるのでしょうかというような内容でございまして、これだと「只今絶賛拡大中の追加金融緩和を粛々と進めていきます」と言えばそれはそれで理屈は通るというオソロシスな結果。

まあ後は物価安定の目途を出して強力な金融緩和を推進云々の話との整合性ってどうなのよという話なのですが、実は声明文に関して言えば「強力な金融緩和」云々の文言は戻って来たものの、前回の声明文の英文比較(正本は日本語で英文はあくまでも参考扱いではありますが、英文だと言語的に日本語を駆使して微妙なニュアンスを微妙なままにしておくという日銀文学が通用しないケースもある訳で)をした時に見られますように、「今後の金融政策に関して更に強力な緩和を追及する」的な表現は外しているという素敵な事もあります(前回決定会合後の駄文をご参照くらはい)ので、こらまた微妙な感じになってきましたバイという所でしょうか。

MPMは来週でして、まあ今週はBOE(はあまり関係ないと思いますが)やらECBやらがあって、普通に考えるとBOEの場合は国債買入拡大方向、ECBの場合は金利操作はあるかも知れんがより重要なのは信用緩和なのでそっちの方向(利下げは金融市場が落ち着いてから実施した方が良いんじゃないかと、下手に利下げすると金融市場の機能低下のデメリットの方が先行しそうな悪寒)とかでございまして、まあその結果を受けて金融市場がまたクレクレ言いだして追加緩和しないと許さん的な展開になるでしょうかねえ〜なんてえ事を気にはしておったりします。

もちろん展望レポートの中間レビューで経済物価見通しが下がれば普通に追加緩和のおかわり(基金国債買入で多分あと5兆程度、ただし来年上半期分ならば拡大は物理的にたぶん可能でしょ、目の子ですけど。ちなみに個人的にはETFの方が良いんじゃネーノとは思うのですが日銀の嗜好的に合わなさそう)とかになるんでしょうかねえとは思いますが、少なくともこの短観で経済見通しが下げるのもちょっとややこしくなりましたがなという所でしょう。物価に関しては足元で原油価格の下落とかあるから若干アレですが、経済見通しが下がらない中で中長期的な物価見通しが下がるというのも少々アレですし、はてさてどうなるのでしょうかという所ですわな。

10月の展望レポートの書き換え(この時には予測期間が1年延びる)の時に資産買入等基金の買入期間延長(半年延長)と若干の枠拡大で済ませるものならその方が運営的に窮屈では無い、とか何とか考えそうな悪寒がするのですが、さてクレクレ市場がそれで許すのでしょうかというとねえ・・・・・・という所かと(−−;


○まあ通常の文言なのですが市場環境的にご無体な文言となるという雑談

と書いて何の事やらという事だと存じますが(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120702d.htm/
金融市場調節取引の2012年度対象先公募等について

ということで、まあどれを見ても良いのですが最初の『国債売買オペの2012年度対象先公募について』をチェックチェック。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120702e.htm/
国債売買オペの2012年度対象先公募について

『1.はじめに
日本銀行では、次のスケジュールで、国債売買オペの対象先を公募し、現在の対象先を見直すこととしました。

公募スケジュール公募開始日 2012年7月2日
公募締切日 2012年9月5日午後3時
選定結果の公表 2012年10月中旬以降の予定
選定先との取引 選定結果の公表後所要の準備が整い次第開始

2.対象先の選定
対象先は、「国債売買オペの対象先選定基準・手続」(別紙)に基づき選定します。ただし、現段階では予見できない事情のために、別紙記載の基準等を適用することが不適当と判断される場合には、当該予見できない事情をも勘案して選定を行うこと、または選定された対象先の見直し等を行うことが極く例外的にあります。』

というこの辺のスケジューリング等の文言は大体共通でて、要綱に関しては例えば国債売買オペに関してはこちら。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120702e.pdf
国債売買オペの2012年度対象先公募について

まあああだこうだと色々と書いてあって都合22ページにもなるのですが、選定基準を書いてあります別紙(2ページ目から)の冒頭の文言をよく見るとこんなのが(−−)。

『2.対象先としての役割

○ 金融調節を機動的・効率的に遂行する観点から、対象先には以下の役割を遵守することを求めます。
(1)国債売買オペに積極的に応札すること
(2)正確かつ迅速に事務を処理すること
(3)金融政策遂行に有益な市場情報または分析を提供すること』

>(1)国債売買オペに積極的に応札すること
>(1)国債売買オペに積極的に応札すること
>(1)国債売買オペに積極的に応札すること

まあ通常ベースでは極々普通の文言なのですけれども、昨今の金融市場情勢では国債売買オペと申しましてもあーた市場金利が0.10%切ったら応札しない方が市場参加者の経済合理性という意味で正しい姿となっていますがなという所でございまして、まあ金融市場局的なお立場としてこれはこれで入れる文言ではございますが、しかしながら市場環境がそもそもこうなってしまっている中で落札シェアがどうのこうの(別紙4ページ目、ファイルの5ページ目になりますがそちらで色々と書いてある)とか仰られましても何だかなあ的な部分が無い訳では無い。

#まあ揚げ足取りというツッコミは有ると思いますが以下思いついた揚げ足雑談が続く

まあ国債売買オペに関しては長期国債の長いのとかもあるから別にまあそっちで積極的に応札すればという話もあるかもしれませんけど、基金国債買入とか、輪番の1年以内とかに関して市場金利よりも不利な所でオペ実績の為に応札するというのはそれはそれで金融政策の有り方としてどうよという風に思う所もございます次第でして、まあ金融市場局的にはただの板挟みモードなのでそんな事あたくしのようなチンピラゴロツキに言われても知らんがなという所ではあると存じましてその辺は大いに同情の余地はあるのですが、昨年の今頃はこの文言を見ても特段の違和感が無かったであろうと思いますと、いやまあ基金国債買入を市場のフィージビリティー以上に増やしちゃいましたなってな話ではございますが、誠にアレなものを感じるところでございます。

ちなみに、国債補完供給に関しましては当たり前ですが積極的に応札云々の文言はございませんが(そもそも受動的に実施するオペだから)、共通担保全店オペとか今ではそれは基金オペ(固定金利オペ)形式の実施ばっかりじゃネーノ札割れ続出でんがなというのにも普通に従来通りの文言が入っておりまして、誠にオサレなものを感じる次第ではございます。

まあ何だ、『ただし、現段階では予見できない事情のために、別紙記載の基準等を適用することが不適当と判断される場合には、当該予見できない事情をも勘案して選定を行うこと、または選定された対象先の見直し等を行うことが極く例外的にあります。』ってヘッジクローズが入っておりますので、札割れオペに関してはまた別の考え方というのも有って然るべき(じゃないと結果的にご無体オペになってしまう場合が有り得る)じゃネーノとかふとそんな事を思うひとときなのでございました。・・・・・・・とは言ってもシェア計算に札割れ分除外とかするとそれはそれで今度はオペの札割れ続出に拍車を掛ける可能性もありそうですし、まあ運用的に難しいなあと思いますけどね。つーかこんな所で変なツッコミを入れる輩が出るような状況というのが金融市場局カワイソスという話ではあるのですが(−−;

#まあマニア向け雑談な上にただの揚げ足取りで甚だ恐縮

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2012/06/29

○これは中々

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j11.htm/
次世代RTGS第2期対応実施後の決済動向

本文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j11.pdf

『日本銀行は、2011 年11 月に次世代RTGS 第2 期対応(1 件1 億円以上の大口内為取引のRTGS 化)を実施し、決済の安全性が一段と向上した。日本銀行当座預金における決済量は想定通り大きく増加したが、大口内為取引の件数・金額がピークとなる3 月末も含め、決済は円滑に行われている。1 件1 億円未満の小口内為取引についても、時点ネット決済の決済金額の大幅な減少によって決済リスクが大きく削減された。第2 期対応の実施により、わが国は、大口資金決済に関する国際的な安全性基準をより高いレベルで達成していると言える。』

ということで、昨年11月に大口内為のRTGS化が実施されたあと、特段のトラブルもなく粛々と運営されているというのがさすがの日本クオリティなのであります。内為取引に関しては大口が金額ベースで物凄く多くて、件数ベースでは小口が物凄く多いという事になっています(主に証券決済要因で大口の金額がやたら多くなるとかそういう話だったような)。

本文の図表1という所にその辺があるのですが、2012年3月の1営業日平均で大口内為の件数が1.1万件で金額が9.5兆円、小口内為の件数が550万件で3.0兆円という風になっておりますな。3月末日だと大口が5.1万件の42.5兆円で小口が1956万件(!)の14.1兆円という規模だそうです。


んでもって今回の第2期対応でどうなったかという話ですが、本文2ページのBOX1の所に色々と書いてますけれども、まあこういう風になりましたと。

『次世代RTGS第2期対応は、全国銀行データ通信システム(全銀システム)に構築されたインターフェースを経由し、流動性節約機能を備えた日銀ネットを通じて大口内為取引をRTGS処理するものである。 ここでは、第2期対応後の処理フローを図解する。仕向銀行から全銀システムに送信された内為取引のうち、大口内為取引について銀行間の資金決済に必要な情報が抽出され、これが全銀システムから日銀ネットに送信されてRTGS方式で決済される。日銀ネットでRTGS処理された結果は、全銀システムに送信され、それを受けて全銀システムが被仕向銀行に為替通知を送信する。なお、1件1億円未満の小口内為取引については、従来どおり時点ネット決済で処理される。』

つーことでその状況ですけれども、まあ興味の無い人はスルーする話だがあたくしはこういうの読むのが好きなので延々と引用する。

『@加盟銀行から全銀システムへの送信状況』から少々。

『3月末の大口内為取引について、加盟銀行から全銀システムへの送信状況を第2期対応前後で比較すると(図表3)、第2 期対応後では送信が大幅に早期化していることが分かる。』

という事でその要因ですが、

『大口内為取引の送信タイミングが早期化した要因としては、大口内為取引が、時点ネット決済の下で内為制度のリスク管理策として設けられている仕向超過限度(支払金額と受取金額の差の上限)による送信制約を受けなくなったことが一因と考えられる。』

決済実務している人には当たり前の話だと思うのですが、普段こういうのあまり馴染みのないあたくし的にはへーへーへーの連続でして。

『すなわち、第2 期対応前では、一部の加盟銀行が、仕向超過限度に抵触することがないよう午前中の大口分の送信を抑制していたほか、仕向超過限度額を日中臨時に引き上げる制度を利用する場合には、それが反映されるまで電文の送信を待つことがあった。第2期対応後は、大口内為取引が仕向超過額管理の対象外となり、早期に送信できるようになったものと考えられる。』

『このほか、加盟銀行間において、第2 期対応の実施後における内為取引の円滑な決済を図る観点から、月末日の大口内為取引の送信・決済に関して、内為取引の専用時間帯(8 時半〜9 時。概要は後述)を活用し決済を早期に行うことを申合わせたことも、送信タイミングの早期化に影響したものと考えられる。』


ところでRTGSになる前の内国為替決済って本支店間取引じゃない場合であっても全銀為決前に引出が可能(と書くと何が何やらですが、つまりどこかの銀行からATM使って他行振込をした場合、被仕向銀行側、つまり受けた側での入金ってほぼ即時に入っていて、受けた側で預金引き出しがサクサク出来るのですが、実は銀行同士の資金決済は全銀内為決済時限にならないと実施されませんでしたよねという話)でしたけど大口RTGSにしたらどうなるんでしょとか素人ですいませんが第2次RTGSの話を見ている時に思っていたのですが、その辺の話がその次に。『A全銀システムから日銀ネットへの送信状況』から。

『(月末日朝の事務量への対応)』という小見出しを見ると「おお!」と思う訳ですが。

『全銀システムは、加盟銀行からの内為取引の送信を、先日付分については決済日の5 営業日前から、決済日当日分については月末日では7 時半、通常日では8 時半から受け付けている。こうした取引の受取人口座への入金は、従来、決済日において銀行間の資金決済(時点ネット決済)を待たずに行われていた。他方、第2 期対応の実施後は、大口分の受取人口座への入金は、日銀ネットを通じた銀行間のRTGS 決済の完了後に行われることとなる(前掲BOX1)。』

なるほど。まあこれで内為のヘルシュタットリスク(みたいなもの)が相当削減できましたという話になります罠。

『こうしたスキームの下、日銀ネットの開局時刻は9 時であったため、従来9時前に行われていた受取人口座への入金については9 時以降に後ずれすることになる。取引が集中する月末日では、顧客への入金が大幅に遅れる惧れがあり、これへの対応が課題となった。』

月末は顧客口座からの総合振込とか支手決済(なんて最近は減ったのかね)とか約定弁済とかのセンター処理が色々あって、これが残高不足でセンター処理不能明細として上がってくると法人担当者はヒーコラ言う訳でございまして(−−)

『このため、日本銀行は全銀ネットと協議し、月末日については、日銀ネットの開局時刻を30分前倒しし、内為専用時間帯(8 時半〜9 時)を設定することとした。』

なるほど。

『また、全銀ネットでは、円滑な決済を確保する観点から、全銀システムから日銀ネットへの送信開始時刻を日銀ネット開局から5 分後(月末日8 時35 分、通常日9 時5 分)とし、加盟銀行が流動性を予め投入できる時間を確保した。』

ということで、まああたくしが最初に短期市場関連を触っていた時には資金決済と言えば即時決済以外だと時点決済でございました(歳がばれますが)ので、この10ウン年で隔世の感があるなあとか思うのでありました。まあその間に通信技術も発達しましたしコンピューターの処理能力も向上したというのもあるでしょうけれども。

でまあ『A全銀システムから日銀ネットへの送信状況』、『B日銀ネット上の決済状況』という部分も興味深いのですが、引用しているとキリが無いので『B日銀ネット上の決済状況』の後半あたりから。

『(流動性投入の状況)』という所からですが。

『こうした決済の円滑性は、各金融機関が当座勘定(同時決済口)に投入する流動性の多寡に大きく影響される。以下では、各金融機関が決済のために投入した流動性の日中推移を確認する。』

ということで計数については引用割愛しますが。

『こうした状況は、各金融機関が、各取引の市場慣行等を意識しながら、取引の集中する時間帯に決済に必要な流動性を潤沢に投入していることを示すものと考えられる。午前中に潤沢に投入された流動性が、終日大きく減少することなく高い水準が続く姿は第2 期対応の実施前と変わらない。』

ふむ。

『回転率(決済金額/投入流動性)をみると(図表9)、第2期対応の実施以降、低下しており、流動性はこれまでにも増して潤沢に投入されていることが分かる。』

ふむふむ。

『これは、金融機関における流動性コストが極めて小さい金融環境の下で、大口内為取引に関する申合せの遵守に加え、大口内為取引は、@主に顧客(企業・個人)の振込に利用されるため、顧客サービスの低下を防ぐために加盟銀行が取引の早期の決済を志向している、A顧客間の当日・即時の取引が多く含まれるため、資金部署が取引を予め正確に把握しておくことが困難である、B先日付取引などにより、日銀ネット開局直後における全銀システムからの送信が集中する、といった理由などから、加盟銀行が日銀ネットの開局と同時に、従来よりも厚めに流動性を投入しているためと考えられる。』

>金融機関における流動性コストが極めて小さい金融環境の下で
>金融機関における流動性コストが極めて小さい金融環境の下で
>金融機関における流動性コストが極めて小さい金融環境の下で

ということで、現在は量的緩和状態になっておりますので、当座勘定同時決済口に流動性を集めに投入する事に対する機会費用が特段掛かる訳では無い、という状況でして、RTGS第2期を導入を円滑に実施という点からすると量的緩和状態(&金融不安とか無い状態)で良かったですねというような話になるのですが、これはつまりインターバンクにおける限界的に必要な流動性についての構造変化が恐らくは生じているという話でもありまして、現在の包括緩和を解除する時に流動性をあまり急激に引けませんなあという話にもなるかなとか思いましたです。

まあ前回の量的緩和解除の時も、それ以前の長期化した量的緩和によってインターバンクが限界的に必要とする流動性の量が良く判らんがなという事で、オペの期落ちを利用して資金を実質的に引いていくという形を取った(4月から徐々に引いて行ったら5月大型連休の所でコツンと来ましたねあの時は)のですが、まあ出口政策というのはこういう所での資金需要を変に逼迫させないようにというような事も考えないといけない話で、特にジャパンの場合は決済とかがやたら精密に出来ていて、しかも世の中もそれが普通だと思って動いているという面があるので、その辺アバウトでもシャーナイナイとかで済ませられる欧米諸国とは違う難しさがあるなあと(いつになるか知らんけど)量的緩和状態からの正常化という話の時になったら悩むのかなあとか思うのでありました。

ということで話がずれましたが纏めの所を引用。

『また、第2期対応の実施によって、6年に及ぶ次世代RTGSプロジェクトが完了するとともに、わが国における全ての大口資金決済のRTGS化が達成したことになる。このことは、わが国において、大口資金決済に関する国際的な安全性基準の中で、特に望ましいとされている「日中の即時決済の実現」が達成されたことを意味する。日本銀行では、今後も、わが国決済システム全体の安全性と効率性の確保に向けて努力していきたい。』

実に素晴らしいことであります。

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2012/06/26

・これは凄い!!!

日銀HPの新着情報にこんなのが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120625a.htm/
調査月報(1945〜1955年)の掲載について

『日本銀行では、過去に公表した資料のうち、日本銀行の政策運営や調査・研究活動などを振り返るうえで資料的な価値の高いものを、ホームページに随時掲載しています。今般、1945年(昭和20年)から1955年(昭和30年)までの「調査月報」(注)に該当する資料を「日本金融史資料昭和続編(第1巻〜第6巻)」から抜粋のうえ掲載しましたので、ご利用ください。なお、1956年(昭和31年)から2006年(平成18年)までの「調査月報・季報」につきましては、既に掲載していますので、併せてご利用ください。』

ということでワクテカしながらリンク先を見るとその中にはこんなページへのリンクが(^^)。

http://www.boj.or.jp/research/past_release/mh02.htm/
調査月報:国内経済調査(1945年8月〜1946年12月、1950年4月〜1954年6月)
日本金融史資料(昭和続編):第2巻より

国内経済調査(昭和20年8月〜11月)
http://www3.boj.or.jp/josa/past_release/mh02_001.pdf[PDF 11,238KB]

ということでクソ重いので踏む際にはご注意ありたいのですが、題名は「経済情勢調査」なのですけれども、内容的には経済情勢だけではなく、その中に「要録」とかあって『蘇聯対日宣戦布告』とか『戦争終結の大詔渙発』とか『ポツダム宣言全文』とか(ちなみに9ページから11ページにあります)あったり、まあ色々な資料があってこれは凄いという感じです。

んでまあ冒頭に『国内経済調査(上)』の『昭和二十年八月―十一月』というのがありますので物は試しに引用(ちなみにスキャンしたもののPDF化なのでテキスト打ちはあたくしの手によりますので落丁乱丁勘弁)。当然ながら原文は縦書きです。

『財界概況

マリアナ喪失以来聯合軍の進攻は頓にその度を加へ、我本土に対する空襲の激化と海上輸送力の低下により軍需生産は急速に減退を来たし長期の抗戦継続は春頃より殆んど絶望的状況に陥りたるが、八月に入るや六日史上未曾有の惨虐なる原子爆弾広島に投下せられ、更に翌々八日に至りては突如ソ聯の宣戦布告あり、我国は一億玉砕か終戦かの重大岐路に立ちたるも、十四日畏くもポツダム宣言受諾の大詔渙発せられ、茲に四年に亘る大東亜戦争は遂にその目的を達することなく終結するの止むなきに到れり。而して鈴木内閣総辞職の跡を受け十七日成立せる東久邇宮内閣はポツダム宣言降伏条項の趣旨に沿ひ、陸海軍の復員を首め戦争継続を前提とする諸般の体制を廃止し民主々義化の第一歩を進めたるも二ケ月に満たずして退陣、十月九日新たに幣原内閣の成立を見憲法改正其他各般の民主々義的施策の実現に努むることとなりたり。』

ってまあ延々と話が続くのですが・・・・・戦後インフレの状況とかの説明などありまして、真面目な話これってPDFで公開とかじゃなくて復刻印刷して書籍にして頂ければ(スキャンしたものの書籍化でも構わないのですが)とりあえずあたしゃ喜んで購入するんですが無理ですかねえ。一目均衡表の本を5万円払って買うような方も世の中にはいる(あたくしはそこまでは思いきれませんでしたが、酒田罫線法だのアストロなんちゃら本だのをせっせと買っていた時代もありましたなあと遠い目^^)のですからこれはもっと行けると思うのですけど(^^)。

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2012/06/25

○5月決定会合議事要旨からこれまた少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120523.pdf
特段まあこれというのは無いのですがちょっとだけ。

・欧州金融市場のリスク認識だけやたら警戒という不思議ちゃん

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の冒頭が『1.経済情勢』でして。

『国際金融資本市場について、委員は、欧州債務問題を巡る懸念等から、このところ神経質な動きがみられ、当面注意してみていく必要があるとの認識で一致した。多くの委員は、ギリシャの政治情勢やスペインの銀行の不良債権を巡る懸念などを背景に、再び、欧州周縁国の国債利回りが上昇し、欧州系金融機関の金融債の信用スプレッドやCDSプレミアムが拡大していると指摘した。また、多くの委員は、欧州債務問題を起点に、世界経済の先行きに対する不透明感も幾分高まる中で、投資家のリスク回避姿勢が強まっており、各国の株価は大幅に下落し、国際商品市況も原油価格を中心に軟調となっていると述べた。』

『複数の委員は、新興国・資源国の株価や通貨が大きく下落しているが、これにはリスク回避姿勢の強まりや国際商品市況の下落が影響しているとコメントした。一方、大方の委員は、安全資産選好から、日米独の長期金利は一段と低下し、為替市場では円やドルが増価していると指摘した。このうちの何人かの委員は、長期金利低下の背景について、先行きの経済・物価情勢に対する慎重な見方や、各国中央銀行による国債買入れなどの強力な金融緩和の影響も小さくないと述べた。』

『この間、何人かの委員は、金融システムの安定確保の観点からは、銀行間の資金調達市場の安定が重要であると指摘した。そのうえで、資金市場は、欧州中央銀行による大量の資金供給の効果などから、現在のところ、総じて安定しているものの、長めのベーシス・スワップのドル調達プレミアムが上昇傾向にあることや、ギリシャの銀行からの預金流出の動きが続いていることなど、注意すべき事象も起こっていると述べた。』

『こうしたもとで、委員は、大量の資金供給等の措置は、あくまでも「時間を買う」政策であることを十分に認識したうえで、各国政府や関係当局が財政・経済構造の改革を進める必要があるとの見方を共有した。何人かの委員は、こうした改革は政治的にも難しく、その道のりは平たんではないと指摘した。』

とまあ国際金融資本市場に関する部分をまるまる引用しましたが、こうなったあといきなり次が・・・・

『海外経済について、委員は、全体としてなお減速した状態から脱していないものの、米国経済が緩やかな回復を続けるなど、改善の動きもみられているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、新興国・資源国に牽引されるかたちで、成長率は再び高まっていくと見込まれるとの認識を共有した。』

と、いきなり別の会議の議事要旨かとツッコミを入れたくなるような温度差にワロタとしか申し上げようがないのですが、まあご案内の通り景気判断は強めになっているというのが5月会合でもございましたので、それはまあ中身を読んでちょという感じですが、海外経済に関する部分で中国経済に関する部分がやたら長い記述になっていまして、まあ公式見解は兎も角として意見はあったんじゃねえのかねという感じはせんでもない内容ではございました。めんどいので中国経済が云々の部分はスルーするが。


・物価に関する部分が中々オモロイ

『何人かの委員は、物価情勢における最近の変化として、業界再編等を背景に、企業の価格決定力に回復の兆しが窺われることや、高齢化に伴う需要構造の変化に対応して、コンビニエンスストア等で高付加価値化の動きがみられることを指摘した。1〜3月の内需デフレーターの前期比がプラスに転じた点について、複数の委員は、消費や設備投資など幅広い需要項目で着実に改善している点に注目していると述べた。』

ほう。

『複数の委員は、こうした足もとの物価情勢における前向きな動きなどについて丁寧な情報発信を行っていくことは、デフレ予想を強めない観点からも、重要であると述べた。』

うむ、これはまあ色々と意見は分かれそうですが、7割ほど同意という所でしょうかあたしゃ(^^)。そして物価見通しが弱い佐藤さんが審議委員入りする事によって物価に関する議論がどうなるかに期待するあたくしである。


・『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』はまあ色々と小ネタが多い

『複数の委員は、仮に欧州債務問題を起点として大きなリスクが顕現化した場合、わが国経済に悪影響が及ぶ可能性があるため、様々な選択肢をあらかじめ排除することなく、適切に対応出来るよう備えておく必要もあるとコメントした。』

ふむ。しかしその一方で・・・・・・・・

『一人の委員は、日本のデフレには構造的な要因が作用しているほか、金融政策の効果波及には長いラグも存在しており、これらを無視して、足もとの物価動向だけに機械的に対応して金融緩和を進めると、金融市場の不測の事態等を通じて、中長期的な経済や物価の安定が損なわれるリスクがあると述べた。』

・・・・・・・・・・・・今第2の柱ですかそうですか何なんですかそらという感じではございますが、これって麿先生ですかねえ(ニヤニヤ)。

『委員は、わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することは、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要であるとの認識を共有した。』

まあ政治方面へは伝わらないようですがね。

『何人かの委員は、長期金利が一段と低下しており、何かのきっかけで金利が非連続的に反転上昇するリスクに注意が必要であると述べた。このうちの一人の委員は、長めの金利上昇が金融機関の財務に影響するようなことがあれば、金融緩和効果が発揮されなくなってしまうと述べた。』

まあ復興国債200兆円発行して日銀引き受けさせるだのいうようなアホウが出てくると話は違いますのでこういう指摘は指摘で重要なのですけれども、ただまあ一方で現実問題としてはとりあえず買わないとねえという状況は資金バランス的には続きやすいので、あまり指摘をしてばかりいると狼少年モードとなってしまうので、電波浴先生のような電波反論が出てくるという面もあって中々難しいですな。


・この時出席している(と思われる)金融市場局長はどのような表情だったのでしょうか(^^)

『資産買入等の基金について、委員は、現時点においては、4月末に増額した基金による金融資産買入れ等を着実に進め、その効果を確認していくことが適当との見解で一致した。一人の委員は、市場やマスメディアにおいては、基金の枠を増額するかどうかという点ばかりが注目されるが、現在の基金の枠内であっても、買入れを進めることで金融緩和を強化することになるという事実を、より丁寧に説明していくことも大切であると述べた。』

ということで現状維持になった(4月27日に拡大したばかりですから当たり前ですが)訳で、周りが喧しい件についてもまあそらそうですなという感じですけれども、この先の札割れ云々の部分が金融市場局的に中々同情を禁じ得ない記述なのですが、これ議事要旨の原稿書いた人狙ってるでしょ正直に白状しなさい(^^)。

『長期国債買入れで札割れが発生したことについて、委員は、札割れは強力な金融緩和が市場に浸透していることのひとつの表れであるとの認識を共有した。』

というのは前からこの説明になっています。

『複数の委員は、多額の資産買入れを進め、大量の資金供給を行っていけば、札割れが発生しやすくなるのは予想されたことであり、そのことを意識して、前回会合では、買入れ対象とする長期国債や社債の残存期間を、従来の「1年以上2年以下」から「1年以上3年以下」に延長するとともに、固定金利オペの減額を行ったと付け加えた。』

ふむふむ。

『これらの委員も含め、多くの委員は、基金による買入れを実現すべく、金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した。』

>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した
>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した
>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した
>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した
>金融調節部署はオペ運営面で工夫を講じていく必要があるとの認識を示した

まあ調節部署的には「おめーらがホイホイ拡大するから大変な事になっとるんじゃヴォケがあああああ」という所ではないかと存じます次第で、執行部からの報告者として出席者のお名前に入っておられる青木金融市場局長様におかれましてはどのような表情で目の前で展開される議論を聞いておられたのか誠に同情の念を禁じ得ない(同情するなら札入れろですかそうですか^^)所ではございますが、恐らくは置物スキルを最大限に発揮されて置物と化しておられたのではないかと勝手に妄想。

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2012/06/20

○金融経済月報がこれまた何か強いように見える件について

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1206.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1205.pdf(前回)

例によって手抜きですいませんが『概要』部分の比較で勘弁。

・総括判断で国内を引き上げとな

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の経済をみると、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(前回)

従来の新興国が牽引する云々という見通しに対して、ここで国内の判断を引き上げたのを総括判断に入れる事によって、新興国が牽引云々が怪しくなったものの国内需要とかが強いんですよとアピールする狙いがあるとしか思えない次第で、何で主要国中銀が揃って下振れ警戒を強める中でそう強気に出てくるのかが謎ではあります。


・現状判断を需要項目別に

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、緩やかながら改善の動きもみられている。』(今回)
『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、改善の動きもみられている。』(前回)

とまあ海外が下がっているのですが・・・・・・

『こうしたもとで、輸出には持ち直しの動きがみられている。』(今回)
『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。』(前回)

どうしてこれが強くなる・・・・・・・

『国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。以上の内外需要を反映して、生産は緩やかに持ち直しつつある。』(今回)

『国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業の業況感に改善の動きがみられるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかに増加しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(前回)

設備投資の部分で「企業収益の改善」に言及しているのと、個人消費は「緩やかな増加を続ける」とまあ改善傾向が続くという表現。生産に関しては横ばい圏内から「緩やかに持ち直しつつある」とこれまた上方修正と、国内需要は上方修正というのは声明文比較の通りであります。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、まあ声明文と同じですけれども牽引役の顔触れが微妙に変わりながら従来の判断を維持というのが声明文よりもやや読みやすい(この辺の表現自体は声明文と同じです、為念)という感じでしょうか。

『輸出は、海外経済が減速した状態を脱していくにつれて、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が改善傾向をたどるもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が次第に改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

これがまたややこしいのですが、輸出の部分は海外経済の成長率云々の表現がどう見ても下がっている(方向性は拡大で不変ですが、発射台の水準が違いますがな)のに輸出の見通しは更に強くなっているという不思議バージョン。国内需要に関しては企業収益が「次第に改善」から「改善」と言い切り調にして表現を強め、個人消費に関しては雇用環境の部分で「雇用環境が徐々に改善に向かう」から「雇用環境が改善傾向をたどる」とこれまた雇用の部分を表現を強めているという見通しの需要項目にも判断前進傾向がみられます。


・一応申し訳のように入る文言

この2行が申し訳のように入っておりますが、これまでの文章を見るとどう見ても判断が強まるという麿大勝負モードとしか見えない中で入れられても何とも申し訳程度にしか見えないという印象になるのはあたくしの気のせいですかそうですか。

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。とくに、欧州債務問題に伴う国際金融資本市場の状況については、十分注意してみていく必要がある。』(今回)


・物価は現状を反映して表現の変化はあるが基本的に変わらん

よってここは引用だけ。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の反落などから、上昇テンポが鈍化している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の上昇などから、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)



『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、上昇テンポが鈍化するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)


・金融環境部分に衝撃の変化があったりする

まあそれを衝撃と言うのかどうかは微妙ですけれども、金融面の部分をスルーして金融環境の説明部分。なお金融環境の総括判断は『わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』なのですが、金融環境の現状認識部分を比較するとあれ?という変化が。

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。』(今回)

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。』(前回)

・・・・・・・・・・・ということで、はて何ですねんという所ですが、従来まで入っていた「実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある」という表現を何と今回堂々の削除。つまり実体経済活動や物価の状態が改善されているので金融緩和効果がより高まって来るという例の理屈が炸裂という事ですが、何もあーたギリシャ総選挙の前日に勝負せんでもええじゃろと思うのでして、wait and seeで何の問題がありますねんという感じです。

ちなみに昨日ネタにしなかった部分になるのですが、総裁記者会見でもこんな質疑がありまして・・・・

『(問) 金融緩和の効果は、一般論として、景気がよくなっていく時に、より効果が高まるとみられると思いますが、今回、景気判断を若干上方修正されたことで、これまで累次打ち出してきた政策の効果がより大きくなるという考え方はできるのでしょうか。』

『(答) 日本銀行が行っている強力な金融緩和が、どのようなルートを通じて景気の刺激効果を持つのかとのお尋ねが、これまでも何回かありました。その時、私はいつも、第3番目の効果として「時間軸効果」を挙げていました。つまり、例えば同じゼロ金利であっても、あるいは同じ1%の金利であっても、景気がよくなり企業の収益率が高まってくると、同じ金利の持つ景気刺激力がより高まってくるわけです。そういう意味で、景気がよくなる程度に応じて、緩和力も刺激力も強まってくるということになります。(以下延々と麿のドヤ顔説明が続くのですが長いので割愛)』(以上15日の総裁記者会見より引用)

どう見てもドヤ顔です本当にありがとうございましたという所ですが、別に政策当局者は相場師じゃないのですからここで勝負する必要は無いでしょうし、大体からして勝負しないと第2の柱的な弊害でもあるというのなら兎も角、日本に関してはどう見てもそんなの見られないでしょという中でどうしてこうなったという感じではあります。

ということで、誠に不思議な金融経済月報でありましたが、勝負が大当たりすると良いですね(棒読み)。

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2012/06/18

○声明文は上げたり下げたりと不思議な攻撃

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120615a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120523a.pdf(前回)

・海外情勢に関する現状認識を引き下げているような希ガス

まず冒頭の海外情勢に関する話。

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、緩やかながら改善の動きもみられている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、神経質な動きが続いており、当面十分注意してみていく必要がある。』(今回)

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済が緩やかな回復を続けるなど、改善の動きもみられている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、このところ神経質な動きがみられ、当面注意してみていく必要がある。』(前回)

これが微妙にヤヤコシイのですけれども、まず改善云々の所は「緩やかながら」というのが入ってきたので下げたように見えるのと、米国の改善の話が抜けているのが微妙で、この部分が金融経済月報での表現でどういう扱いになっているのかを確認ですな。

んでもって国際金融市場に関しては「十分注意」ということでさすがに注意レベルが引きあがっています。そらまあそうよという感じですけれども。


・国内景気の現状認識は何と引き上げ

『わが国の景気は、復興関連需要などから国内需要が堅調に推移するもとで、緩やかに持ち直しつつある。』(今回)
『わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(前回)

はあそうですか(棒読み)という感じで、そらまあ経済指標自体は比較的堅調に推移してますけれども、何もこの段階で現状判断引き上げなくてもと思うのは気のせいですかそうですかはいはい。

『公共投資は増加している。設備投資は、企業収益が改善しつつあるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかな増加を続けているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。輸出にも、持ち直しの動きがみられている。以上の内外需要を反映して、生産は緩やかに持ち直しつつある。』(今回)

『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業の業況感に改善の動きがみられるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかに増加しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。生産は、なお横ばい圏内にあるが、以上の内外需要を反映して、持ち直しに向かう動きがみられている。』(前回)

需要項目別の部分は語順も変わっているのでまとめて引用するという手抜きプレイに出ましたが(汗)、設備投資に関する部分でその背景を「業況感の改善」から「収益の改善」に引き上げているのがこらまた威勢の良い話ですなあというのと、輸出に関して「横ばい圏内」から「持ち直しの動きがみられている」に引き上げですとな。

んでもって生産に関しても「横ばい圏内にあるが持ち直しの動きが」という表現から「緩やかに持ち直しつつある」に引き上げです(他の需要項目は変わらず)ということで、需要項目のうち企業部門に関して強くなっているという威勢の良い話。

『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

ということで金融環境と物価面の現状判断は変わらず。


・先行き見通しがこれまた微妙

上記のように国内経済の現状判断を引き上げながら海外経済の現状判断を下げているのですが、先行き見通しに関してはこれまたややこしくなっていて、国内部分に関しては微妙に強くなったようにも見えるという状態で、海外に関してはどう見ても下げているという器用な攻撃に出ているのが今回の決定会合声明文のお洒落というか訳判らん所であります。

ただまあこの比較を見て一発で最初に気が付く部分があるかと思いまして、まあ「やっとその前提を取り下げたか遅えよ」とは思うのでございますが、その部分を勘案するとこの見通しって結論の文言は同じですがまあ引き下げになっていると見た方が妥当な気がします。

『先行きのわが国経済については、国内需要が引き続き堅調に推移し、海外経済が減速した状態から脱していくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

震災復興云々の部分は現状判断の方に移動しているのでチャラと見なしますが、ここに関しては上記の国内での企業部門の現状判断改善を受けていますので「国内需要」とスッキリとした形にしたのはまあ微妙に判断を上げているような感じが。

それはそれとして今回の声明文の中であたくしが一発目に気が付いた部分はこの中の海外部分でございまして、「減速した状態」という文言が入っているのは恐らくは現状判断の部分(元々「減速した状態」という表現自体はあるのですが)において何となく判断を下げたような感じになっている事を反映しているのですが、それはそれとして更に注目というか重要ポイントになるのは「新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり」という部分が削除されていることでございます。

これって展望レポートにおける日本経済の先行き見通しのうち、海外部門の前提条件になっている部分でございますので、まあこれをいつ取り下げるのやらとは思っておりましたけれども、ここへ来てやっと下げたか遅えよ全く往生際が悪いわとか言う悪態は兎も角と致しまして、現状判断を少々上げてもこの部分で結構チャラになるの巻という所だとは存じますが、これまた今日出る金融経済月報の方でどういう評価になっているのかは確認したいと思います(意地汚く月報の方では判断が残っているかも知れんし^^)。

しかしまあ何ですな、海外経済に関しての現状判断が微妙に下がって先行き見通しも下がっているのに国内経済の現状判断における輸出部分は上がっているとか中々訳がワカランチ会長になっている次第で、正直今回の声明文は何というかなテイストを醸し出しております。

ちなみに、新興国経済云々ですけれども、今日ネタにしている時間があるかどうか分からないのですけれども、(不覚にも自称BOEヲチャーのあたくしが出てすぐにネタにせずに週末越えをしてしまったのですが)BOEではキング総裁が講演(14日ですから木曜なのですが、ロンドン市長公邸でのスピーチで20日初回実施予定の流動性対策オペの発動やら追加金融緩和の重要性を示唆した物凄い勢いで重要厳戒態勢モード講演をしているのだ)して、その中で新興国経済の減速についても言及してますし、これまた今日ネタにする暇はどう見ても無いのですが、先般来続いておりますFED高官スピーチの中でアトランタ連銀のロックハート総裁がこれまた中国インドブラジルをご指名で「最近明らかに減速している」と言及してたり(これは6日の講演なのでちと古いざんす)という事で、まあ普通に海外の中銀の皆様が新興国に関して最近の減速について揃って懸念を表明しておりますので、何ぼなんでも「新興国・資源国に牽引される形で」云々という見通しを下げざるを得ませんなあという話だとは思いますが、しつこく申し上げますようにやっと取り下げるとか往生際が悪いにも程があるわと存じます次第でございます。


消費者物価の見通しに関しては変化なし。

『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)


・リスク要因に関しては前回と文言一致

透かし読みをしても全く同じ(^^)によって手抜きで今回だけ引用。

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(今回)


・ああだこうだと書いてある最後の部分には「強力な金融緩和」が復活&「金融市場の安定」云々が入るのですが・・・・・

これに関しては報道ベースを見ますと会見で質疑応答が(当然ながら)あったようで、そこでの言い訳が中々香ばしいテイストを醸し出しておられるようでございますが、まあそれに関しては今日出ると思われる会見要旨を見ながら楽しむと致しまして、ここの文言鑑賞に関しては4月27日会合だと声明文の章立てが違っていて書きっぷりがだいぶ違うので、比較するならその前の4月10日会合の声明文を持ち出す事になりますので、それも参考に鑑賞である。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、幅広い経済主体による成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。』(今回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。』(前回)

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。デフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しの双方を通じて実現されていくものである。』(4月10日の声明文)

前半部分ですが、今回は「幅広い経済主体による」というのを打ち込んでおりまして、成長力強化の努力について日銀以外、つーかまあ政治向けだと思いますが、声明文で一応アピールしているつもりのようですが、どうせ政治方面にはその声は届かないと思いますけどね。

でもって後半部分。

『こうした認識のもとで、日本銀行は、成長基盤強化を支援するとともに、強力な金融緩和を推進している。日本銀行としては、引き続き適切な金融政策運営に努めるとともに、国際金融資本市場の状況を十分注視し、わが国の金融システムの安定確保に万全を期していく。』(今回)

『日本銀行としては、引き続き適切な政策運営に努めていく。』(前回)

『こうした認識のもと、日本銀行としては、強力に金融緩和を推進していくとともに、成長基盤強化を支援するための資金供給を通じて、日本経済の成長基盤強化に向けた民間金融機関による取り組みを支援していく。(成長基盤強化のドル特則詳細決定部分割愛)』(4月10日の声明文)

ということで、国際金融市場云々の話をしていまして、まあ先ほども申し上げましたようにBOEのキング総裁がものすごい勢いで警戒モードになって金融市場安定の為のタームレポファシリティの発動を決定しているという背景もありますので、そらまあここはその辺の文言入れないと、いくら日本の金融市場が相対的には安定感が非常に高いと申しましても、それはそれでリーマンショックみたいな事が起きたら無傷では済まないのはリーマンショックで経験済みという事でもありますので、警戒感を出さないというのは太平楽にも程があると言われたでしょうから警戒モードを入れたのはまあ結構なお話。

で、強力な金融緩和云々の文言が復活したのですが、ここの表現が微妙に微妙な気がするので、念のためと思いまして英文声明文を見るとそこにはお洒落な事態が。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120615a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120523a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2012/k120410a.pdf(4月10日)

英文声明文の該当箇所、ちょっと長く引用して読みにくくてスイマセンが一応この部分全部引用してみます。

『The Bank recognizes that Japan's economy faces the critical challenge of overcoming deflation and returning to a sustainable growth path with price stability. This challenge will be met through efforts by a wide range of economic agents to strengthen the economy's growth potential and support from the financial side. Based on this recognition, the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing. The Bank continues to conduct monetary policy in an appropriate manner. The Bank will also do its utmost to ensure the stability of Japan's financial system, while giving particular attention to developments in global financial markets.』(今回)

『The Bank recognizes that Japan's economy faces the critical challenge of overcoming deflation and returning to a sustainable growth path with price stability. This challenge will be met through efforts to strengthen the economy's growth potential and support from the financial side. The Bank continues to conduct policy in an appropriate manner.』(前回)

『The Bank recognizes that Japan's economy faces the critical challenge of overcoming deflation and returning to a sustainable growth path with price stability. The goal of overcoming deflation will be achieved both through efforts to strengthen the economy's growth potential and support from the financial side. With this in mind, the Bank will pursue powerful monetary easing, and will support private financial institutions in their efforts to strengthen the foundations for Japan's economic growth via the fund-provisioning measure to support strengthening the foundations for economic growth. At today's meeting, as shown in the Attachment, the Bank established detailed rules for a new U.S. dollar lending arrangement equivalent to 1 trillion yen, of which a preliminary outline was released at the previous meeting in March.』(4月10日)

長くてスイマセンが、「powerful monetary easing」云々の箇所を見ると微妙な往生際の悪さというか微妙な日銀文学クオリティが垣間見られます。

即ちですな、4月10日には「the Bank will pursue powerful monetary easing」と「今後も強力な緩和をpurse(追及とか遂行とか)するお」と仰せなのですが、今回は「the Bank has been providing support to strengthen the foundations for economic growth and pursuing powerful monetary easing」と現在完了形になっていて、先行きの所が前回の表現と同じく「The Bank continues to conduct monetary policy in an appropriate manner」となっておりまして、「これまでは強力な緩和を実行しておりましたが、先行きに関しては先月申し上げましたように適切に行いますとしか申し上げようがございませんなあ」という風になっておられるのが何ともアレ。

基本的に声明文に関しては日本語が正本で英文はサービスで付けているという建付けになっている筈でございますので(で良いんですよね?>中の人)英文はあくまでもおまけではあるのですが、ここの表現を見ますと声明文を見た海外のクレクレの皆様におかれましては「表現が変わっていない」という風に思うような気がするのですが、まあこれはどこからどう見てもそういう意図があって「in an appropriate manner」を残しているのでしょうからして、つまりは海外のクレクレに向けては「クレクレうるせえんじゃヴォケ」とまあそういう意思表示である、と斯様思うのでございました。


とまあそういう事で、今回の声明文は何かあちこち上げたり下げたり、止めには英文の表現にまで味わいのあるという事で、ヲチャー的にはかなりの滋味がある内容でございました(^^)。

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2012/05/30

○2年国債入札で事務ミスとな

昨日の2年国債入札ですが後場になりましてこんなのが。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/resul014.htm
入札結果発表時刻の遅延について

『本日の2年債入札については、入札事務トラブルの発生により、結果の発表時刻は、予定時刻(12時45分)から遅れる見込みです。発表時刻については、状況が判明次第追って発表します。』

システムトラブルと書いていなかったので何でしょ???という感じでして、入札データを何らかのミスで飛ばしたとかそういう世界なのかね????などと妄想も膨らんだのですが、しばらくの間ステータスが「原因調査中」となっておりまして、そのうち「入札のやり直しの方向で対応」となりまして・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120529b.pdf
再入札の実施について

『本日の2年債入札については、再入札を実施します。オファー時刻は14時00分、申込締切時刻は14時30分、結果発表時刻は15時15分とします。』

ってな事になったのですが、ベンダーなどの報道によると「日銀の事務ミス」という話でシステムトラブルでは無く、日銀ネットで同様に応札するという事なのでまあシステム的に重大な問題が有った訳では無いと一安心。

しかしこの「再入札の実施」的なニュースが流れた時に何故か債券先物が上昇して高値143.43円(+0.20円)とかになって、たまたまの偶然なのかどうかは知らんですけれども、それは買い材料じゃないだろと思いながら眺めるの巻。

んでまあ落札結果はこの通り。
http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/resul014a.htm
2年利付国債(第317回)の入札結果

6. 価格競争入札について
(1)応募額 24兆2,699億円
(2)募入決定額 2兆4,780億円
(3)募入最低価格 100円00銭0厘 (募入最高利回り) (0.100%)
(4)募入最低価格における案分比率 52.4544%
(5)募入平均価格 100円00銭0厘 (募入平均利回り) (0.100%)

・・・・・・・・・・・・\(^o^)/

日銀の資産買入等基金および輪番オペの買入最低レートが0.100%即ちこの銘柄ですと100円となる訳でございますので、即ちこの国債100円で買っててきとーに保有して日銀に売却してもキャピタルゲインは鐚一文無く、保有期間利回りに関してもクーポンが0.10%なので日銀当座預金に置いて超過準備状態にしている時と同じ利回りという大変に素敵な結果となりました。

いやまあ既に短国で0.10%割れというのがありますのでこんなもんちゃあこんなもんなのかもしれませんが、いやあの仮にも2年債ですよ2年債という事でございまして、しかも100や500とかの端額の話じゃなくて、新発が2兆7000億円(実際は第U非価格のおかわりもあるのでもっと多い)出るとゆー中で0.100%ですかそうですかという所ですし、しかもお洒落にも程があるのは第U非価格入札もがっつり入っているという状態。

http://www.mof.go.jp/jgbs/auction/calendar/nyusatsu/2012/resul014b.htm
2年利付国債(第317回)の第U非価格競争入札結果

6. 募入決定額 1,511億円

・・・・・・・・・・まあ素敵(^^)。

ちなみに、こういう状況を「100円で財務省から買って100円で日銀に売却する簡単なお仕事」とも申しますが(違)、超マニアックな話をすると同じ100円でもまあ少しだけ工夫の余地は無い訳でも無いような気がします。まあゴミみたいな話なのでここではスルーします(ニヤニヤ)。

http://www.mof.go.jp/jgbs/topics/press_release/20120529.html
2年利付国債(第317回)の再入札について

『本日実施された2年債の入札において、国債入札の事務を行う日本銀行で事務トラブルが発生したことを受け、入札をやり直し、再入札を行いました。関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。今後、このような事態が発生しないよう、日本銀行とともに、再発防止に努めてまいります。』

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120529c.pdf
本日の2年債の再入札について

『本日実施された2年債の入札において、日本銀行での事務上の問題から、一部の参加者について入札データを入力できない事象が発生したことから、財務省と調整のうえ、再入札を行いました。再入札については17時に事務手続きを終了しています。関係者の皆様には、ご迷惑をお掛けいたしました。お詫び申し上げます。日本銀行としては、今回の事態を踏まえて、再発防止に努めてまいります。』

まあ10年国債とかだったらそれこそエライコッチャでして、ろくすっぽ動かない2年国債だったのでまあ市場に与えるダメージとかも大したことでは無くて(入札やオペで日銀ネットの打鍵していた事もございますあたくしと致しましては、応札でトラブル状態になった入札参加者の日銀ネット打ち込み担当者や担当ディーラーの皆様におかれましては寿命が1年くらいは着実に縮まったと思いますので誠にご愁傷様としか申し上げようがございませんが・・・・・・)不幸中の幸いという感じでしたな。

http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK081590620120529
UPDATE1: 国債入札トラブルは応札限度額の誤入力が原因 複数チェックも機能せず=日銀
2012年 05月 29日 21:56 JST

『[東京 29日 ロイター] 日銀は29日、同日に行われた2年物国債の入札で事務上のトラブルが発生し再入札を行う事態になったことについて、業務局の職員が別の年限の国債入札画面に入札参加者毎の応札限度額を入力したため、本来のデータが更新されず、応札できない参加者が発生していたことを明らかにした。国債入札に関する事務を3人態勢でチェックしているが、それも機能しなかった。日銀では、市場に混乱を与えかねない重要なミスと認識しており、可及的速やかに再発防止策を策定する。業務局の杉浦俊彦総務課長が語った。』(上記URLより)

との事ですが、まあ第T非価格競争入札の応札限度額の更新を入力ミスしたという話のようで誠に残念という所ですが、まー入札の方式が色々と複雑になっているのでこういう事は起きえる話で、今回はその件数がアホのように多かったのでどうしようもありませんでしたってな話でしょうか。事務は堅確に願いたい物であります。

しかしロイターこれは言い過ぎwwww
http://jp.reuters.com/article/domesticJPNews/idJPTYE84S04W20120529
国債入札で異例のやり直し、今後の安定消化に課題も
2012年 05月 29日 20:05 JST

事務ミス捕まえて「安定消化に課題も」ってそこまで言う話じゃねえだろと思うのでありまして、ロイターのマッチポンプクオリティの高さを垣間見る記事ではございますなあと思うのでありますけどね。そらまあ事務ミスは勘弁してとは思いますけれども、じゃあこの手のミスを減らすために第1非価格止めますかとか第1非価格の限度額更新を年イチにしますかとか、オファーバックの時限を遅くしますとかって訳には行かないでしょうし。

ただまあフェイルセーフみたいな枠組みが有った方が良さげな気がしますけど(具体的にはイメージが無いが、汗)。

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2012/05/29

お題「4月の追加緩和&展望レポート時の決定会合議事要旨より」

ギリシャを華麗に撃破したムーシャ先生が今度はクラウドコンピューティングやBPRなどに目を付けられたようですorzorzorz
http://www.musha.co.jp/3995

ということで4月27日決定会合議事要旨から少々と思ったら引用大会になってしまいました。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120427.pdf


○景気認識に関連して

展望レポートと追加緩和の出た4月27日決定会合議事要旨ですが、まあ展望レポートがご案内の内容でしたので景気認識の所を鑑賞するのである。

・欧州問題についての見通しが結果として大甘の皇子状態でしたが

珍しく『T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要』の辺りから参ります。

『3.海外金融経済情勢』の冒頭は『世界経済は、全体としてなお減速した状態から脱していないが、改善の動きもみられている。』というまあ見通しが強くねえかという展望レポートの内容に反映されているのと同じ話ですけれども、欧州経済に関する所とか欧州債務問題の所が残念感漂うのである。

『欧州経済をみると、ユーロエリア経済は停滞感の強まりに歯止めがかかっている。』

ほほう。

『輸出は、米国や新興国向けを中心に持ち直しの動きがみられている。民間設備投資は減速し、個人消費も、概ね横ばいとなっている。家計や企業のマインドは、周縁国では悪化した状態が続いている一方、ドイツやフランスなどで持ち直しの動きもみられている。こうしたもとで、生産は減少しているが、そのペースは幾分緩やかになっている。』

てな感じで欧州も改善の兆しが!としていたのはまあ結果的にギリシャの選挙だスペインの格下げ(S&Pによるソブリン格下げがこの直後で銀行格下げがGW中でしたな)とかあったので残念でしたねという所ではありますが、この華麗な間の悪さに関しては・・・・・・

『海外の金融資本市場をみると、ギリシャを巡る情勢は、総じて小康状態にある一方、スペインやイタリアでは、今後の財政再建や構造改革の実現性を巡り、市場の懸念が再燃しつつある。』

>ギリシャを巡る情勢は、総じて小康状態にある一方
>ギリシャを巡る情勢は、総じて小康状態にある一方
>ギリシャを巡る情勢は、総じて小康状態にある一方

どこの北ハマー先生ですかという感じですがまあこれは選挙の結果が出る前ですから同情の余地はだいぶありますけど、もうちょっと物の言い方はあるような希ガス。

『欧州各国国債の対独スプレッドをみると、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルのスプレッドは、概ね横ばいとなっている一方、財政再建の進捗に対する不透明感や金融システム不安を抱えるスペインや、労働市場改革を巡る不確実性が残るイタリアのスプレッドは、再び拡大してきている。欧州の株価は、スペイン金融機関に対する懸念に加えて、フランス大統領選挙の決選投票を控えた不透明感などもあって、銀行株を中心に下落している。』

というような状態でありまして、

『投資家のリスク回避姿勢が強まる中で、米国やドイツの長期金利は低下しており、新興国の株価や通貨は、総じて弱含んでいる。』

てな話になっているのですから、欧州債務問題に関してもう少し展望レポートでのリスク認識が強くなっていてもおかしくは無いですし、さらに申し上げれば上記にあるような「ギリシャを巡る情勢」がまさしくあばばばばーな状態になっている中だというのに今月の金融政策決定会合での声明文での現状認識がしらっと強くなって先行き見通しに変化が無いというのは何ですねんという風に思うのですけどね。

ただまあこの次部分が少々アレなのですけれども、それはこの先の所の前振りになっておりますなあという感じです。

『そうした中にあっても、欧州系金融機関の資金調達環境は、総じて落ち着いている。ECBの3年物オペによる大量の資金供給によって、ユーロの資金余剰感が残るもと、ユーロのターム物金利の対OISスプレッドは横ばいで推移している。ドルの資金調達環境については、ドルのターム物金利の対OISスプレッドが横ばい圏内で推移する中、ベーシス・スワップ(ユーロ/ドル)でみたドル調達プレミアムは幾分低下している。』

いや市場の関心は流動性じゃなくてソルベンシーだろと思うのですけど・・・・・・・・


んでまあ欧州問題に関する『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の現状認識に関する『1.経済情勢』部分を読みますとこうなっています。

『国際金融資本市場の動向について、委員は、短期金融市場を中心として、総じて落ち着いているとの認識を共有した。委員は、欧州債務問題の解決が道半ばであるもとで、スペインやイタリアの財政悪化が意識されているものの、ECBによる大量の資金供給など、各国の政府や中央銀行が様々な施策を講じてきている結果、欧米の金融機関の資金調達環境は改善しており、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは一頃よりも低下しているとの認識で一致した。』

ということで、さっきの部分がどうも前振りになっているのではないかという感じですが、先ほども申し上げたようにここへ来ての市場のテーマって市場のシュリンクによる資金繰りがどうのこうのという話では無くて、ソルベンシー問題という流れになっている訳でして、LTROなどの施策で流動性は確保されている(キリッ)とかいう認識を出されましてもそれは少々ピンボケじゃないですかというツッコミをしたくなる次第。


『そのうえで、委員は、ギリシャの総選挙やフランス大統領選挙の決選投票などを控え、欧州政治情勢を巡る不透明感が強いこともあり、当面の市場動向については注意深くみていく必要があるとの見方を共有した。』

いやね、まあ4月末時点ではギリシャのユーロ離脱ネタは話のネタとしては存在してもシナリオとして真面目に検討する話では無い(テールリスクとしての認識はあったけど)という感じでしたから、上記の認識はかなり甘いんじゃないかなとは思うけどまあ見解として判らんことも無いとかそういう話かなとは存じますが、しかしながら「注意深くみていく必要があるとの見方を共有した」のにそのリスク顕在化する中で何で今月の金融政策決定会合では以下同文の悪態に付き割愛。

でまあこれでもかと引用するのですが、『2.経済・物価情勢の展望』ではこんな話。

『1月の中間評価時点の見通しとの比較で2012 年度を中心に幾分上振れる点について、委員は、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクが低下し、市場環境がやや改善したことなどによるものとの認識を共有した。』

まあこの時はそうでしたが、それが1か月持たない所が実に惜しいですな。で、上振れ下振れリスクに関しての欧州債務問題の話。

『まず、実体経済面の上振れ・下振れ要因として、委員は、@国際金融資本市場や国際商品市況の影響を含めた、海外経済の動向、A復興関連需要を巡る不確実性、B企業や家計の中長期的な成長期待の動向、Cわが国の財政の持続可能性を巡る様々な問題、の4点を挙げた。』

というのは展望レポートに示された通り。

『海外経済の動向を巡るリスクについて、委員は、@欧州債務問題の解決にはなお多くの課題が残っているもとで、国際金融資本市場における緊張が再び高まり、株安や円高を伴うかたちで、世界経済ひいてはわが国経済の下押し圧力となる可能性、』

という事でどう見ても1か月持たずにリスク顕在化orz

更に止めを刺すように第1の柱、第2の柱の点検の部分でもこんな話に。

『次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点を踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクとして、委員は、景気面では、@欧州債務問題に端を発するテイル・リスクは低下しているが、国際金融資本市場や海外経済を巡り、なお大きな不確実性が存在する、』

まあこれでもかと引用しましたけど、先ほどからしつこく申し上げておりますように、そらまあ見通しが外れる事もありますし、しかも事がギリシャだのの一件でございますので、日銀の見通しが外れたって別にシャーナイナイというだけの話だと思うのですが、それに対応して警戒感を高めるとかいうようなメッセージが今月のMPMで出てくるどころか、その逆で声明文では「強力な緩和」の文言をしらっと削除してみたりして、少なくともMPMで出てきた公表文書ベースで見れば警戒感が高まっていますよ的なメッセージが出ていないという有様。

総裁会見では強力な緩和云々の4月までの声明文を読み直したりしていましたけれども、市場(というか世間一般)へのメッセージという点ではまあ不用意というか脇が甘いというかという感がぬぐえませんなあと思うんですけどね。


・物価の見通しに関して

引き続き『U.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』という展望レポートの検討に関する部分から少々。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の先行きについて、委員は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高いとの見方で一致した。』

というお話は展望レポートやら声明文やらに示されていましたわな。

『前提となる国際商品市況について、委員は、地政学リスクの高まりなどから原油価格を中心に強含んでおり、先行きについても、新興国の経済成長に伴う食料・エネルギーの需要拡大などを背景に、基調的には緩やかな上昇傾向を辿るとの想定を共有した。』

ほほう(棒)。

『1月の中間評価時点の見通しとの比較で幾分上振れる点について、委員は、経済見通しの上方修正に伴うマクロ的な需給バランスの改善に加えて、為替円高の修正や原油価格上昇の影響によるものとの認識を共有した。』

ほほう(棒)。

・・・・・・・・・何かシナリオに綻びがあるようなチラリズム感が漂っておりますが(-_-メ)



○追加緩和に関する辺りから少々


・追加緩和のロジック

悪態はこの辺までにして『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』を読む。

『次に、わが国経済は、中心的な見通しとしては、物価安定のもとでの持続的成長経路に復する蓋然性が高いとみられるが、依然として様々な不確実性があることを踏まえ、委員は、そうした見通しをより確かなものとするため、この段階で金融緩和を一段と強化することにより、経済・物価にみられている回復への動きをしっかりと支えていくことが適当との認識で一致した。』

という話ですが、政策ロジックとしては・・・・・・

『具体的には、委員は、資産買入等の基金の増額を図ることなどを通じて、長めの金利およびリスクプレミアムの低下等を促すことが適当との考えを共有した。』

という事で、相変わらず長めの金利(ちなみにこの「長めの金利」というのは「長期金利」ではありませんので間違えないように)の低下とリスクプレミアムの低下って話です。

『具体的な資産買入れの対象資産について、委員は、一頃と比べれば投資家のリスク回避姿勢が緩和しており、社債やCPの発行環境も総じて良好な状態を続け、企業の資金調達が円滑に行われている現状などを踏まえると、長期国債を主体とすることが適当との認識で一致した。』

ということで、ETFとJ−REITの話がスルー傾向になっているのは何でしょ。

『そのうえで、リスク性資産の買入れについて、委員は、金融資産の市場動向や日本銀行の買入れ余地、日本銀行の財務の健全性との関連などを踏まえたうえで検討することが適当との見方を共有した。』

ほほう。でまあ財政ファイナンス云々の部分は後にして具体的にはこういう話。

『こうした議論を踏まえ、資産買入等の基金の増額の具体的な検討を行うため、議長は、買入対象となっている金融資産の市場動向や日本銀行の買入れ余地、日本銀行の財務の健全性との関連などについて、執行部に説明を求めた。』

ちなみにどうでも良いのですが、「日本銀行の財務の健全性」というのはまあそらそうなのですけれども、こういう言い方をすると「そもそも国がダメになったら日銀の財務がどうのこうのとか言っても仕方ないだろ」とか「日銀は自分の庭先だけ綺麗にしようとしている」とか言われるのでありまして、そもそも何で「日本銀行の財務の健全性」という議論が出るかと言えば、それは日銀のバランスに穴が開いたらその部分は納税者負担で埋めないといけない訳で、それは財政政策の範疇だろという話に繋がる訳でございますからして、もうちょっとこう「不測の事態で意図せざる納税者負担を掛ける事のないように」っていうような言い方をした方が、メッセージ的に見せ方がよろしいんじゃないかなとか思うのですけどどうなんでしょうかね。

いやまあもちろん短期市場とか債券市場の人は「財務の健全性」と言えば言いたいことは伝わるのですけれども、特に非伝統的政策という金融市場ルートにしても通常の金利ルートだけじゃない政策をしようとしている中においては、この手の言葉づかいについても少し検討した方が良いのではないでしょうかと斯様思うのはお節介ですかそうですか。

と、話が逸れましたが具体論。

『議長の指示を受けて、執行部は以下のとおり説明を行った。

・ 現在、基金が買入対象としている金融資産の市場規模、特定企業への信用集中を防ぐ観点から実施している措置との関係、市場環境などからみると、国庫短期証券、CP、社債、不動産投資信託投資口(J−REIT)について、買入額の増額には強い制約がある。もっとも、J−REITは、一頃に比べれば、市場規模が幾分拡大していることもあり、少額ならば買入増額の余地はある。長期国債については、買入額を大幅に増額し、かつ残存期間を1〜2年程度に限定した場合、円滑に買入れを進めていくうえで先々支障が生じる可能性がある。

・ 日本銀行の財務の健全性という観点からみると、国庫短期証券、長期国債、CP、社債については、当面、制約は強くない一方、指数連動型上場投資信託受益権( ETF ) については、価格変動リスクが大きい点に留意する必要がある。』

ふむふむ。

『以上の執行部の説明を受けて、委員は議論を行った。6か月物の固定金利オペにおいて応札額が未達となるケースが生じていることについて、委員は、市場の資金需要がすでに充足されており、日本銀行による金融緩和の効果が強力に浸透していることの一つの表れと考えられるが、資産買入等の基金をより円滑に運営する観点からは、固定金利オペを5兆円程度減額し、長期国債の買入れに振り替えることが適当との認識を共有した。』

ここの話だけ見ると札割れで基金残高行かない場合にどうするのという点について、何か「札割れ上等」と開き直るんじゃないかという雰囲気を醸し出しているのはどうなのかという希ガス。ただまあ足元で国債買入の割り振りをいじってみたりして、現場の方は頑張って残高を達成するべく動いている感があるのですが、MPMでこの辺について「いや我々の目的は長めの金利の低下とリスクプレミアムの縮小なのでそれが達成できた結果札割れになって基金残高未達でもシャーナイナイですよ」と言うのはまあ最後の最後努力した結果として行かなかったらそう言うしか無いと思いますけど、途中でその辺のニュアンスの話をするのは「努力しないのか」というツッコミの元なので注意した方が良さそうですな。

『委員は、そうした振り替え分も含めると、長期国債の買入額については、全体で10兆円程度思い切って増額することが適当との認識で一致した。ETF、J−REITについては、市場規模面での制約や日本銀行の財務の健全性にも配慮しつつ、リスクプレミアムの低下を促す観点から、各々2,000億円、100億円増額することが適当との認識を共有した。また、2年までの金利がきわめて低い水準まで低下してきていることを踏まえると、多額の長期国債や社債の買入れを円滑に進め、長めの金利に効果的に働きかけていくためには、買入対象年限を3年まで延ばすことが適当との考えで一致した。』

ほうほうという感じですが、ETFの2000億円は少ない感が。

『この点に関連し、一人の委員は、わが国の資金調達構造をみると、相対的に長期の社債やモーゲージ・ローンの割合が高い米国と異なり、期間3年以下の貸出の割合が高く、それに概ね対応する期間の金利に働きかけることが引き続き効果的と考えられると付言した。』

という話が辛うじて1名から出ていますが、まあここまでの話を見るとどちらかと言えば「目標残高から逆算してフィージブルな買入ってどうよ」的な話になっている感がありまして、ロジックとフィージビリティーの整合性が中々香ばしい事になっておりますなあという感じです。

『基金増額後の買入れ完了の目途について、委員は、本年末時点において予定する資産買入等の基金の規模は従来通り65 兆円程度とすることを確認した。そのうえで、委員は、本年中の長期国債の買入れペースがすでにきわめて大きな金額となっていることを考えると、長期国債5兆円分については、2013 年入り後、同年6月末を目途に買入れていくことが適当との認識を共有した。』


・財政ファイナンス云々の話

さっきの流れで割愛した部分を引用。

『複数の委員は、日本銀行の国債買入額がきわめて多額となっていることを踏まえると、日本銀行の強力な金融緩和が財政ファイナンスと誤解されることのないよう、細心の注意を払う必要があると付け加えた。この点に関し、委員は、わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要であるとの認識を共有した。』

まあこれはそうですなあとしか申し上げようがございませんが、細心の注意もへったくれもあれだけ総裁が全力で情報発信してたら大丈夫じゃないですかね(^^)。


#簡単に流すつもりが引用大会になってしまいまして他のネタがスルーになってしまいましたorzorzorz

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2012/05/28

○基金国債買入の年限割り振りを手直しとな

金曜のオペオファー
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/of120525.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 3,500 2012年5月29日
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 3,500 2012年5月29日
共通担保資金供給(資産買入等基金) 8,000 2012年5月29日 2012年8月30日

固定金利オペの方は良いとしまして、基金国債買入の割り振りが1年〜2年と2年〜3年をどちらも3500億円にして、ついでに(これはオペのオファーを見ないと載っていないのですけれども)1社辺りの応札限度額を拡大してオファー満額まで応札できるようにしました(従来は確かオファーの半分まで)。これはまあ前週の水曜日に基金国債買入の1年〜2年が6000億円のオファーに対して4805億円しか応札が無くて債券市場的には見事な3年以内ゾーンへの点火状態になってしまったとゆー素敵な事態を受けての割り振り変更。

まー何ですな、前回の実績からすると(前回は応札が4805億円&7008億円)こういう割り振りになるんでしょうなという所でもあるのですが、従来が6000億円&1000億円のオファーだったのでこらまたいきなりどどーんと3年の買いを増やしましたなあという話でございまして、その割り振りを見た債券市場は5年とかの中期ゾーンが強くなってみたり先物が上がってみたりしていましたが、超長期が弱くてなのかこの後に示すオペの結果で意外に1年〜2年の応札が多かったのをネタにしたのかどうかは知りませんが、まあ後場は謎の下げでしたが、まー中短期は堅調という事で。

オペ落札結果
http://www3.boj.or.jp/market/jp/stat/ba120525.htm

国債買入(資産買入等基金)(残存期間1年以上2年以下) 9,575 3,506 0.000 0.000 36.6
国債買入(資産買入等基金)(残存期間2年超3年以下) 6,156 3,520 0.000 0.000 53.9
共通担保資金供給(資産買入等基金)(5月29日スタート分) 18,690 8,005 42.8

ちなみに固定金利3か月オペの応札がやたら増えている(前回木曜日の応札は11010億円、前々回火曜日の応札は9980億円)のもチャーミングでこれはこれで話題ちゃあ話題なのですけれども(足元で当座預金残高が低水準という話で、3年の国債よりもGCレポ金利の方が高いとか何ともアレ)それはスルーしまして、応札のバランスが今回は9575億円&6156億円に。

2年〜3年の落札利回りはまあ誰もが予想するように利回り較差0.000%(前回は平均0.011%で足切り0.010%)となりましたので、貫録の3年まで0.100%で日銀様お買い上げ確定と相成りましたからしてそらまあ3年ゾーンまで0.10%よりも甘いオファーが出なくなる罠とか思うのですけれども、1年〜2年の応札が今回多いとは何ぞねという所でして、応札がこうなりますと次回のオファーも3500億円&3500億円でやるのかねという気もせんでも無い。

まあ今回の場合は決定会合後の総裁会見で(あたくしが金曜に引用したように)補完当座預金制度の付利金利の引き下げに関して全力で否定していたというのが効いたのと、その前まで1年〜2年の方に思いっきり寄せて買っていて2年〜3年はおまけという感じだったのが急に半々になったので(そもそも2年ゾーンは新発の供給があるので需給的に違う筈ですからして)需給的に1年〜2年の方が本当はありました(特に売る必要も無かったので持っていただけで買入が減るとなると話が変わる罠って事でしょ)という所ですかね。

木曜に出てた輪番の買入内訳変更についてもそうなのですが、今回の基金国債買入の割り振りに関しては基本的には金融市場局マターで実施しているので、それには基本的には政策的意図は無いという建付けになっている(もちろん2年〜3年の買入が増えればその分だけ将来的に買入が大変になってくるだろうなあとかその手の思惑が出るのはシャーナイナイなのですけど)ので、今後も市場動向を見ながら割り振りが変更になるのは有り得る話とゆー事ではあろうかと思います(もともとそういう風にアナウンスされたたし)。ただまあ割り振り直したら今度は手前の応札が多くなったとか皮肉な展開で金融市場局カワイソスと言ったところですな、うんうん。

つーことで、まあ今後割り振りが変更になってもそれは技術的対応というのが建付けとなるっちゅう事ではございますけれども、そうは言っても技術的対応という名の下に「なお書き修正」をした事もあります(「なお書き修正」はMPMでしたけど)ので、割り振りが変われば変わったで何かの意志がーみたいな解説は出てくるのは仕方ないでしょうなあとは思うのでありました。ただまあ大事な事なんでもう一度申し上げますと、今回の対応はあくまでも「買入が大幅札割れとかして資産買入等基金の残高達成が出来なくなる事を防止するための技術的対応」ではございますので念の為。


○金融経済月報は声明文と同様に「現状認識を強く」しております

例によって例の如く概要部分だけで勘弁ではあるがささっと比較しませう。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1205.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1204.pdf(前回)

・総括判断

『わが国の経済をみると、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(今回)
『わが国の経済をみると、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(前回)

明確キターというのは声明文にもございました通りでございますがまあそういう事で。

・現状判断

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、改善の動きもみられている。輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。』(今回)

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、改善の動きもみられている。輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。』(前回)

と、ここまでは前回と同じです。

『国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業の業況感に改善の動きがみられるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかに増加しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(今回)

『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費は、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。公共投資も、ここにきて増加に転じている。以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。こうしたもとで、企業の業況感をみると、輸出関連業種に慎重さが残っているものの、内需関連業種が改善を続けており、全体として概ね横ばいとなっている。』(前回)

語順が変わって比較しにくいので全部まとめて引用しちゃいましたけれども、この辺りは声明文比較でも同じように比較したように、公共投資に関して「増加に転じている」が継続して「増加している」と言い切り調になって↑でして、設備投資の判断は同じですけれども、その背景にあるのが復旧需要の話から「企業の業況感の改善の動き」になっているのが↑となっています。更に個人消費に関しても「消費マインドの改善傾向」が入っているのが↑と、内容的に足元の改善傾向を強調した形になっています。


・企業の業況感について(これは月報本文から)

で、その企業の業況感に関してですが、よくよく見ますと前回の時点では「輸出関連業種に慎重さが残っているものの」とか「全体として概ね横ばい」とかいう表現になっていたのが、今回は「企業の業況感に改善の動きがみられるもとで」となっておりまして、はてさてこれは何ですねんという所ですが、これは本文の方に説明がありますのでそちらでも。

月報本文6ページ目(PDFだと8ページ目)から。

『大企業の業況感については、一頃弱めとなっていた製造業がこのところ持ち直しており、非製造業では改善傾向が続いている。中小企業の業況感については、製造業、非製造業とも、総じてみれば、改善傾向にある。』(今回の月報本文より)

ちなみに前月は短観を受けてああだこうだと1ページ半くらい使って説明しているので、冒頭の部分だけ引用しますが、4月月報本文5ページ目(PDFだと7ページ目)から。

『企業の業況感をみると、輸出関連業種に慎重さが残っているものの、内需関連業種が改善を続けており、全体として概ね横ばいとなっている。3月短観の業況判断DIは、全産業全規模でみると、概ね横ばいとなった。業種別・規模別にみると(図表13)、製造業では、大企業、中小企業ともに、国内販売の好調などを受けて自動車は改善したものの、アジア向け輸出の不振などから鉄鋼、化学、はん用機械などが悪化したため、全体では横ばいないし若干の悪化となった。一方、非製造業では、大企業、中小企業ともに、堅調な内需を反映して、小幅改善している。』(前回の月報本文より)


・先行き通しは見事な全文一致

折角のデジタル媒体なのですが、あたくしの場合まず前回比較をするとなりますと、紙に打ち出して重ね合わせて透かし読みをするのが最初の一歩でありますが何か?

『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が次第に改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

全文一致なので比較はしません(^^)。


・物価に関しては国内企業物価に少々変更が

まあここはそんなに大きなインプリケーションはありませんが比較。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、既往の国際商品市況の上昇などから、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、概ね横ばいとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、上昇テンポが鈍化するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、強含むとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)


・金融面ではこの部分ががががが

『金融面をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利も横ばい圏内の動きとなっている。前月と比べ、長期金利は低下し、株価は下落している。この間、円の対ドル相場は前月と概ね同じ水準となっている。』(今回)

>円の対ドル相場は前月と概ね同じ水準
>円の対ドル相場は前月と概ね同じ水準
>円の対ドル相場は前月と概ね同じ水準
>円の対ドル相場は前月と概ね同じ水準
>円の対ドル相場は前月と概ね同じ水準

・・・・・・・・ほう。

いやまあ月報リリースしている時って4月末で81円近辺で先週前半は79円台なので「概ね同じ水準」ちゃあその通りではあるのですが、市場心理というか気分的に80円乗ってるか乗っていないのかというのは(今時点という限定ではあるものの)ちょっと意識される所なのですが、そこを「前月と概ね同じ水準」で片付けるところが何と申しますか日銀クオリティと申しますかなんですけどねえとか糞細かい所に目をつけて指摘するどこの姑か小姑かというのがドラめもんクオリティである事は今に始まった事ではございません(^^)。

80円の所が何となく今は意識されるでしょというのを把握していないでこういう表現をしているなら「市場との対話」についてもう少し考えた方が良いと思いますし、把握した上でそこをスルーして「概ね同じ水準」で片付けている(まあこちらだと予想するが)となりますと、物価に関する表現でプラスになるとプラスを強調するのに若干のマイナスだと「概ねゼロ近傍」という表現に走るというような「日銀文学における表現の非対称性」がまた出ていますなあという話でございまして、また日銀の得意技が出てやがるわと思うあたくしなのでございました。ええあたしゃ性格悪いですが何か?

#以下の金融環境に関しては銀行貸出、社債、CPの残高に関する変化があるけどスルーします

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2012/05/25

次のネタはまあマイナーネタだが付随する小ネタもあるので。

○輪番のゾーン別内訳のマイナーチェンジ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120524a.pdf
長期国債買入れにおける物価連動債および変動利付債の買入金額の変更について

『日本銀行では、物価連動債の市中残高が減少していることを踏まえ、長期国債買入れにおける国債種類・残存期間による区分別の買入金額について、下記のとおり、物価連動債を1,200億円減額し、変動利付債を1,200億円増額することとし、次回買入れより適用することとしました。なお、買入総額(年21.6兆円)など、長期国債買入れの運営に係るその他の事項については、変更ありません。』

ということで、物価連動国債に関しては足元では市中残高が減少してきておりまして、まーどこかで減額するんでしょうなあと思っておりましたし、今回は減額をするけれども買入そのものは続く(半額になる)という形ですので、まあ政策インプリケーションは無い措置ではございます。

最初このリリースが出る時に情報ベンダー見てたら「輪番の買入内訳の変更」というのだけ出ていたので一瞬「あれ?」と思ったのですが、日銀のサイトを見に行ったらこれがあったのでなるほどと思った次第。

・・・・・・・・という事だけですと小ネタにもならないのですが、ここから先が小ネタなのです(^^)。

今回の輪番のゾーン別内訳変更なのですが、金融政策決定会合(長いからMPMで勘弁)での決定では無いのですよね。と申しますのは、先ほどの公表文書に『2012年5月24日 日本銀行金融市場局』とありましたように、リリースしているのが「金融市場局」という事ですので金融市場局の判断によって(最終決定権限者は誰だか知らんが多分理事(いわゆる執行部)ですよね?教えてジェネラル!!)決定されましたというのを示している訳ですよ。

でまあその辺があたくし的には「あれ?」と思った次第でして、輪番のゾーン別内訳ってMPMマターじゃなかったのか???とか思って過去のリリースをあたくしの当時の駄文(俺様備忘録ですから^^)を見ながら調べてみました。


前回に輪番の買入のゾーン別内訳が変更になったのは2009年3月のMPMで輪番の買入額が拡大になった時です罠。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/k090318.pdf

『2.金融市場における年度末越えの資金調達は概ね目処がつきつつあるが、年度明け後も、後述するような厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張が続く可能性が高い。このような状況下、日本銀行は、金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要であると判断した。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため、長期国債の買入れを以下の通り増額することとした。これまで年16.8 兆円(月1.4 兆円)ペースで行ってきた長期国債の買入れを、4.8 兆円増額し、年21.6 兆円(月1.8 兆円)ペースで実施する(当月より実施)。』(2009年3月MPM)

ということで、確かによく見るとMPMで決定した声明文の中には総額の話しか無くて、内訳については別建てでリリースされています。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/mok0903a.pdf
長期国債買入れにおける残存期間等区分別買入金額の変更について

『本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長期国債買入れの増額(年16.8兆円→21.6兆円)が決定されたことに伴い、国債種類・残存期間による区分別の買入金額を下記のとおりとし、次回買入れより適用することとしました。なお、買入対象国債や買入頻度など、長期国債買入れの運営に係るその他の事項については、変更ありません。』

ということでよくよく考えてみると、当時の増額時には基本的に当初決めたバランスを維持するような感じでの増額でして、「増額」そのものには政策的なインプリケーションがございましたが、「割り振り」については政策的なインプリケーションが無かったなあと思うのですよ。

ただ、この時は上記にあるように「政策委員会・金融政策決定会合において、長期国債買入れの増額(年16.8兆円→21.6兆円)が決定されたことに伴い」とありますので、おそらく金融政策決定会合でこの部分の話もあったんでしょう(議決したのかどうかは謎、というか議事要旨見るとそっちには載っていないっすな)なあとは思われますです。はい。

#ちなみにその時の議事要旨。最後の方に声明文と声明文別紙があります。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2009/g090318.pdf

あとね、先ほどの2009年3月MPM後の『長期国債買入れにおける残存期間等区分別買入金額の変更について』をよく見ると、リリースしているのが『2009年3月18日 日本銀行』とあって、金融市場局の名前が無いのが判ると思いますが、MPMで議決した事をリリースする場合には部局名では無くて「日本銀行」としてリリースする(ただし今日の最初のネタになった総裁会見要旨を見れば判るように、別にMPMマターじゃなくても「日本銀行」という名前でリリースしている公表文書はあるので、「日本銀行」とあるもの全てがMPMを通ったものとは限らない)ので、まあこの時はMPMを通っていそうな感じだなあとか思われるのですな。

よりわかりやすいのは当初の輪番ゾーン別買入導入でして・・・・・

そもそも輪番のゾーン別買入(と変国物国30年の買入追加)が行われたのは2009年1月のMPMでございます。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/k090122.pdf

ここの別紙にある『本日の措置について』に『5.長期国債買入れにおける対象国債の追加および残存期間等区分別買入れの実施(公表資料4・5参照)』というのがありまして、その公表資料4・5というのは

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/mok0901b.pdf
「国債売買基本要領」の一部改正について

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/mok0901c.pdf
長期国債買入れの当面の運営について

というのがありまして、こちらはそもそもが声明文の別紙と紐が付いている形になっていますので、これは明らかにMPM議決マターであるという話になるのですが、そらまあこの時は初回ですからMPM通しますでしょうし、新しい買入が増えたので当然MPMを通ったんですなという所でしょう。

つまり、実は輪番のゾーン別内訳に関しては執行部で変更することも出来るという話だったのね(現に今回はそうなっている)という所なのですが、まあ常識的に考えて例えば1年未満をゼロにして全部超長期に振りますというような「政策的インプリケーションやアナウンスメント効果のある場合」というのはMPMで議決するという事になるんでしょうねえと言うのが今回の措置で判りました。

まあ今回はMPM当日に出すとその辺が判りにくくなるので、今回の内訳変更には政策的なインプリケーションは無いですよ、というのを強調する為にあえて1日ずらして発表したという事でしょうかね。よー判らんですけど。


ちなみに更に関係ないですが、2009年1月の『長期国債買入れの当面の運営について』を見ていて改めて気が付いたのですけれども・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/mok0901c.pdf(再掲)

『6.長期国債保有に関する方針
日本銀行が保有する長期国債の残高は、発行銀行券残高を上限とする』

・・・・・・・当時あたくしの書いた駄文を読み直してみたら、この表現の部分を完全にスルーしている所が汗顔の至りでございます(内訳の分析する方に頭が行ってました)が、いわゆる「銀行券ルール」がMPMによる議決を経て明文化されたのってこの時だったんですねというマニア話でございます。それまでは会見での発言や国会答弁などで所謂銀行券ルールの話をしておりまして、まあ当たり前のように受け止めていたのでこの文言をスルーしてしまいましたが(汗)、実はそういうのがあったんだなあとか改めて確認作業をするうちに認識したのでドヤ顔で皆様にご披露でござるの巻とゆー所でございます。

#まあ日銀の中の人からしたら当たり前の話でしょうけれども、汗

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2012/05/24

○声明文が何でこんなにあっさり味なの??

毎度おなじみの声明文比較ですが・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120523a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120427a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120410a.pdf(前々回)

比較対象は本来は前回なのですが、前回は展望レポートの回でしたので表現などで比較しにくい部分もあり、前々回とも合わせて比較したいと存じます。


・海外経済については欧州問題の言及があるものの・・・・・・

ここの表現については声明文の構成上前回&前々回の分との比較になります。

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済が緩やかな回復を続けるなど、改善の動きもみられている。国際金融資本市場では、欧州債務問題を巡る懸念等から、このところ神経質な動きがみられ、当面注意してみていく必要がある。』(今回)

『海外経済をみると、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは低下し、米国経済も緩やかに回復している。』(前回)

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済では緩やかな改善の動きが続いているほか、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっている。国際金融資本市場も、総じて落ち着いている。』(前々回)

前々回にあった欧州経済の現状についての明るい表現を外したのと、国際金融資本市場に対する表現がこらまあ当然なのですが変化しています。

・・・・・・・とは言いましても、「神経質な動き」とか「注意してみていく必要」とか表現的になんちゅうか警戒モードっぽくない物言いになっているのが、そもそも今回の決定会合の結果公表が11時37分などという早い時間な上に、声明文の分量も一見して最近の分量から減っているのが判るという代物になっている所に来て欧州問題に関する表現の警戒モードっぽさがあまり強くないと来ますと、最初に声明文を見た印象が「あれ??」となるのは当然でございまする。

いやね、こちらにありますように、前回思いっきり「欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは低下」と言った手前急にまた警戒モード全開にするのがあまりにも恥ずかしいというのはあるかも知れないですけれども、これって別に日銀のせいでも何でもない話なので、普通にあっさり豹変して警戒モード全開にしておけば良いじゃないのと思うんですけど・・・・・・・


・経済の現状認識があちこち強くなっているのですが

まあ確かに足元までの国内経済のデータは別にダメダメという訳でも無くて、普通に堅調っちゃあ堅調なので現状認識が強くなっていてもそらまあ変じゃないのかもしれませんが、それならそれで欧州問題の警戒モードをもうちょっと強調しないとバランス的に「日銀はこんな状況でも景気に強気で下振れ警戒意識が薄いの???」というメッセージを送るんじゃねえの(後でまた同じ事申し上げますけど)と思うのであります。

いやね、別に強気なら強気でも結構なのですが、欧州問題がマジでわけのわからん状態で何がどう転ぶのか判らないという状況において、こんな所で相場を張らないでも良いと思うのですけどねえ。いやちゃんと警戒しているよって言うのであれば、もうちょっとバランス考えればとか思うのですけどねえ。

ということでこちらも前々回および前回との比較になります。まずは総括判断。

『わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(今回)
『わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、前向きの経済活動に広がりがみられるなど、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(前回)
『わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(前々回)

ということで、前回に見通しを進めましたが、前向きの経済活動云々の表現が削除されているのをどう評価するのかが少々微妙で、まあ一般的には表現があっさり味になるほど内容に対する確信度が高まっているというのが日銀(まあそれは日銀だけじゃないけど)文学の傾向という事になるのですが、もしかしたらさすがにこの状況下で前向きの経済活動云々と入れるのがマズーと思って外しているのかもしれないなあとは思います。まあいずれにせよ現状認識は展望レポートと同じですけれども、内容は以下にあるように更に強くなっているという感じだと思います。

以下需要項目別の部分は前々回との比較になります。

『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。』(今回)
『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。』(前々回)

ここは同じです。

『国内需要をみると、公共投資は増加している。設備投資は、企業の業況感に改善の動きがみられるもとで、緩やかな増加基調にある。また、個人消費は、消費者マインドの改善傾向に加え、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、緩やかに増加しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。』(今回)

『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費は、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。公共投資も、ここにきて増加に転じている。』(前々回)

公共投資の表現が強くなり、設備投資に関しても従来の「被災した設備の修復」から「業況感の改善」という解説になっており、設備投資に対する現状評価が明らかに上方修正になっています。個人消費に関しては「底堅さを増している」から「緩やかに増加」となっている上に、こちらにも「消費者マインドの改善傾向」というのが入りまして、表現が強くなっているというまあ強いですねえという感じ(住宅投資については表現が変わっていません)。

『生産は、なお横ばい圏内にあるが、以上の内外需要を反映して、持ち直しに向かう動きがみられている。』(今回)

『以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。こうしたもとで、企業の業況感をみると、輸出関連業種に慎重さが残っているものの、内需関連業種が改善を続けており、全体として概ね横ばいとなっている。』(前々回)

生産に関してはまあ同じですね。業況感に関しては前々回は短観の出た直後の声明文ですので短観を踏まえて書いているのでこれはまあ比較しなくて良いです。

『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前々回)

こちらには変化はありません。


・先行き見通しは同じですな

これは前回との比較で。

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『経済の先行きについては、本日公表の展望レポートで点検したとおり、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、展望レポートの見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。やや長い目でみれば、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する蓋然性は高いと考えられる。』(前回)

前回は展望レポートの関係上表現が長くなって物価に関してああだこうだと話を書いてありますが、まあ基本的な見通しに変化はありません。


・リスク要因に何故か「米国経済の回復力」が入る

これは前々回との比較をします。

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復力、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、国際商品市況の動向、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などに、注視する必要がある。』(前々回)

ということで、米国経済の回復力というのが入ったのはふーんという感じなのですが、前々回という事ですから欧州問題が燻りつつも再点火モードになる前との比較なのに欧州債務問題の表現が同じちゅうのも(いやまあこう言えば良いでしょと言われたらはいそうですかという話ではあるのですが・・・・・・)何かこう警戒しています系のメッセージに欠けるなあと思うのですけどねえ。


・注目を集めた「強力な金融緩和」の削除

で、最後のパラグラフも注目されましたがな。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。この課題は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。日本銀行としては、引き続き適切な政策運営に努めていく』(今回)

前々回はこうなっていました。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。デフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しの双方を通じて実現されていくものである。こうした認識のもと、日本銀行としては、強力に金融緩和を推進していくとともに、成長基盤強化を支援するための資金供給を通じて、日本経済の成長基盤強化に向けた民間金融機関による取り組みを支援していく。(以下ドル特則の話になるので割愛)』(前々回)

前回はこうです。

『日本銀行は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力な金融緩和を推進している。こうした日本銀行の政策は、長めの金利およびリスクプレミアムの低下や、金融市場の安定等を通じて、経済活動を支えている。また、実質的なゼロ金利政策等の推進は、景気の改善につれてその効果が強まっていくと考えられる。(以下追加措置の話なので割愛)』(前回)

前回は展望レポートなどの関係で体裁がちょっと違うので単純比較しにくいのですが、その上に引用しました前々回と比較しますと、「今後も強力に金融緩和を推進する」というのがあっさり味の「適切な政策運営」に化けているのがアチャー感漂う訳ですよね。

ちなみに英文だとこうなります。

『The Bank recognizes that Japan's economy faces the critical challenge of overcoming deflation and returning to a sustainable growth path with price stability. This challenge will be met through efforts to strengthen the economy's growth potential and support from the financial side. The Bank continues to conduct policy in an appropriate manner.』(今回)

『The Bank recognizes that Japan's economy faces the critical challenge of overcoming deflation and returning to a sustainable growth path with price stability. The goal of overcoming deflation will be achieved both through efforts to strengthen the economy's growth potential and support from the financial side. With this in mind, the Bank will pursue powerful monetary easing, and will support private financial institutions in their efforts to strengthen the foundations for Japan's economic growth via the fund-provisioning measure to support strengthening the foundations for economic growth.(以下割愛)』(前々回)

『The Bank has been pursuing powerful monetary easing, with its virtually zero interest rate policy and implementation of the Program mainly through the purchase of financial assets. Such measures by the Bank have been supporting economic activity by encouraging a decline in longer-term interest rates and risk premiums, as well as by maintaining financial market stability. By continuing to pursue monetary easing with the virtually zero interest rate policy, easing effects are expected to strengthen on the back of progress in economic recovery.(以下割愛)』(前回)

ということで「the Bank will pursue powerful monetary easing」とか言ってたのが、「The Bank continues to conduct policy in an appropriate manner」とこらまたあっさり味の表現になっていて、クレクレが五月蝿いから削除したのかとか思うのですけれども、ここで削除するならそもそも何で2月の物価安定の目途を出したのかと小一時間問い詰めたいのですな。

いやまあそのクレクレの話を措きますと、物価安定の目途についても将来的には達成できる可能性が高いとか前回の展望レポートで言及している上に今回も景気認識を引き上げ、しかもその内容が「業況感の改善で設備投資が拡大へ」とか「マインドの改善で個人消費が拡大へ」とか随分とまあ威勢の良い話をしているのですから、そらまあ削除するというのも先行きお強気であるというのであれば判りますし、そうやって着実に改善しているのだから何もそう毎度毎度追加緩和クレクレの不毛な要求するんじゃねえよゴルァというのは理屈としては判りますけれども、そうは言いましても足元の欧州あばばばばーとそれに引っ張られて株式市場がゲロゲロマーライオンという状態になっている中で、別に張らんでも良い相場をここで張る必要は無いだろと思うのでございます。

まあ麿様におかれましては、任期残り1年を切って参りまして麿が正しい金融政策とは何ぞやというのを皆さんに知らしめるでおじゃるというスイッチでも入ってしまわれたのかと勝手にこちらは心配したくなるのでございますが・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M4GHEP6JIJUU01.html
日銀総裁:強力に緩和推進する姿勢「全く変わっていない」−会見 (2)

『5月23日(ブルームバーグ):日本銀行の白川方明総裁は23日午後、定例記者会見で「日銀が強力に緩和を推進していく姿勢は全く変わっていない」と述べた。日銀は同日開いた金融政策決定会合で全員一致で政策の現状維持を決定。会合後に発表した声明から「強力に金融緩和を推進していく」との文言が抜け落ちたことから、金融緩和の姿勢が後退したのではないかとの見方が出ていた。』(上記URLより)

まあ会見に関しては今日出てくる会見要旨を見てから明日また詳しくやりたいと思いますが、会見でこういう風に言うなら元の文言削除するなよなと思うのですよね。

『白川総裁は声明の文言が変わったことについて「日銀の政策スタンスは、4月の展望リポート発表後の公表文に書いた通り、強力な金融緩和を推進していくということで全く変わっていない」と言明。「毎回この文章を書くのもどうかなということで、今回は『適切な』という言葉で表現したが、もし『強力』ということについてご疑念があれば、そこはまったく変わっていない」と強調した。』(上記URLより)

>毎回この文章を書くのもどうかなということで
>毎回この文章を書くのもどうかなということで
>毎回この文章を書くのもどうかなということで

・・・・・・・・・・・・・・すいません、会見報道のこの部分(あたくし最初に見たのはこれじゃなくて別ですけれども、まあ内容は同じでした)を見て飲んでた茶吹いて椅子から転げ落ちそうになりましたので謝罪と賠償を(嘘)。

えーっと、「物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営」という所には・・・・・
http://www.boj.or.jp/mopo/outline/sgp.htm/
物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営

1.強力な金融緩和の推進
2.成長基盤強化の支援
3.金融市場の安定確保

とございまして、「強力な金融緩和」というのはメッセージのある話じゃなかったんでしたっけと思う次第でございまして、何つーかもう何やってますねんと思うのでございまする。

てな訳で、今回は現状維持は織り込み済みで注目は会見ですねえとか思っていたら、思わぬ事に声明文があまりのあっさり味風味でネタになるという不思議展開となってしまいましたとさ。

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2012/05/10

お題「今更展望レポートなど」

今さらですが展望レポートを鑑賞。

○何かあちこちが上方修正になっている展望レポート

めんどいので基本的見解で勘弁ですが。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1204a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110a.pdf(前回:昨年10月)

・海外景気に関しては「テイル・リスクの低下」の話が前面に

いやもう何と申しますかつい2週間前に出たものだというのに何かこの部分だけで実にこう香ばしいものがあったりするのですけれども。

『2.国際金融資本市場および海外経済』の所から適当に拾ってみます。

『こうしたもとで、昨年末頃に強く懸念されていたテイル・リスク、すなわち、国際金融資本市場が動揺し世界経済が大きく下振れる可能性は低下してきている。また、米国経済の緩やかな改善が続くなど、世界経済にはやや明るい動きがみられるようになってきている。』(今回)

ほほう(棒)。

『海外経済の先行きに関する中心的な見通しとしては、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの想定のもとで、新興国・資源国に牽引されるかたちで、徐々に成長率が高まっていき、見通し期間中の年平均成長率は、過去の長期平均との比較で高めになると見込まれる。』(今回)

>国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの想定のもとで

・・・・・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

ちなみに前回はこうなっております。

『海外経済の先行きに関する中心的な見通しとしては、当面は、国際金融資本市場の緊張が残る中、先進国を中心に減速した状態が続くとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で、再び成長率を高めていくと考えられる。このため、見通し期間中について平均的にみれば、高めの海外経済成長率を想定することができる。』(前回)

何かこう考えると何時まで経っても前提に結局国際金融資本市場の問題が残りますという話になるような気がするんですけど、見通しそのものは前回よりも微妙に強くなっているのが(そらまあ結論が強くなっているのですから当たり前ちゃあ当たり前ですから)。

で、肝心の新興国ですが。

『この間、新興国・資源国経済については、先進国経済の改善のほか、インフレ圧力の低下やその下での金融緩和などを背景に、生産・所得・支出の好循環が徐々に強まり、高めの成長で推移する可能性が高いと考えられる。』(今回)

『この間、新興国・資源国経済は、多くの国で、当面は幾分減速した状態で推移するとみられるが、その後は、インフレ圧力の低下に伴って、家計の実質購買力が回復することなどから、高めの成長を実現していく可能性が高い。』(前回)

という感じでこれまた見通しが引き上げになっているというはあそうですかという内容になっておりますな。うーむ。


・金融環境では資金需要や貸し出しの部分に変化が

金融環境についてはまあそんなに変化はないのですけれども。

『資金需要面では、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。企業の資金調達残高をみると、銀行貸出の前年比は、昨年末にプラスに転化し、足もとではプラス幅が拡大している。』(今回)

『そうしたもとで、企業の資金調達残高をみると、銀行貸出は前年比減少幅が縮小傾向を続け、足もとではほぼ前年同水準にまで回復しているほか、社債・CPの発行残高は前年を上回っている。』(前回)

まあこの辺が強くなった程度で大きな変化はないのですが、金融環境が安定している事に関してこんな記載があります。まあ前回もその手の話をしているのですけれども、今回は「本行の取り組み」のアピールがあるのがほほうという所で。

『以上のように、わが国の金融環境は、欧州債務問題を受けて国際金融資本市場の緊張が強かった局面においても、大きな影響を受けることはなく、安定を維持してきた。こうした金融環境の安定の背景として、日本の金融システムが、景気後退、株価下落、長期金利上昇などの負のショックに対し相応の耐性を備えていることや、日本銀行が強力に金融緩和を推進していることが挙げられる。』(今回)

欧米も強力に緩和してますけどね^^;


・日本景気見通しも上がっている訳で

『4.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『(1)経済情勢』から。

『最近の景気をみると、なお横ばい圏内にあるが、前向きの経済活動に広がりがみられるなど、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(今回)

これはまあ声明文にもありますように足元で現状見通しを引き上げています。

『こうした足もとの状況も踏まえつつ、わが国経済の先行きを展望すると、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、2012 年度前半には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『しかし、供給面の制約がほぼ解消された現在では、需要面の動向が重要性を増してきている。そのことを念頭に置いて、先行きを展望すると、わが国経済は、当面、海外経済の減速や円高の影響を受けるものの、その後は海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

何か良く見たら前提条件が半年前と同じじゃねえかという気がする上に、(リスク要因でもその指摘が無いのがアレなのですが)供給面での制約が原発再稼働の遅れ(しかし再稼働も糞もそもそも事故とかで止まった訳でも無い原発について再稼働するかしないかの議論になるというのが意味不明ではありますわな)というのでまた復活するという話があるような・・・・・・

んでまあどういう話かと言いますと。

『すなわち、輸出が増加基調に復するほか、復興需要の増加が公的需要・民間需要の両面で、年度を通じて景気の押し上げに寄与すると考えられる。こうしたもとで、生産から所得・支出への波及メカニズムも徐々に強まるため、2012 年度全体をみると、比較的高い成長率となることが予想される。2013 年度については、復興需要による景気押し上げ効果が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012 年度対比では幾分鈍化するものの、海外経済が高めの成長を続けるもとで、潜在成長率をはっきりと上回る成長が続くと考えられる。』(今回)

『1月の中間評価時点の見通しと比べると、2012 年度および2013 年度の成長率は、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは低下し、市場環境がやや改善したことなどから、2012 年度を中心に、幾分上振れて推移すると考えられる。』(今回)

という話になっているのですが、前回との比較で言いますと、全体感としての「波及メカニズム」についてやや強いニュアンスになっているのと、欧州債務問題のテイルリスクがどうのという話が出ているのが違いますが、後は半年前の見通しの通りという感じになっています。

前回はこんな感じ。

『すなわち、2011 年度下期は、輸出や生産を中心に、海外経済減速や円高の影響を受けるとみられる一方、資本ストック等の復元に向けた復興需要が、公共投資、民間設備投資、住宅投資、さらには耐久消費財の消費といった様々な面で、徐々に顕在化してくると考えられる。2012 年度は、復興需要が年度を通じて寄与することに加え、海外経済の成長率が緩やかに高まり、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムが働くため、比較的高い成長率となることが予想される。2013 年度については、復興需要の押し上げ寄与が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012 年度対比では鈍化するものの、新興国・資源国を中心とする堅調な海外需要のもとで、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』(前回)

『なお、2012 年度までの見通しを、7月の中間評価時点の見通しと比べると、海外経済の減速や円高の影響から、幾分下振れると考えられる。』(前回)


・物価の見通しに関する部分から

今回目立つのはこの『(2)物価情勢』の分量が長くなったことでして、まあ一応物価安定の目途を出したというのに敬意を表したかどうかは知らんですが、物価安定の目途を出した事を受けて物価見通しに関する説明分量を増やした、というのは物価をより重視していますよというアピールをしているですと解釈して欲しいという意思だと思いますので(^^)、その点については受け止めたという事で。

ちなみに前回はこの部分の分量が1ページ弱だったのですが、分量がほぼ倍になっていまして、2ページ弱程の分量になっておりますので、こういうのは日銀文学的に言えば「それだけ注目度を引き上げているんですよ」というアピールである、という風に解釈すべきものでしょうなという事でござる。

で、先行き見通し。

『先行きの物価を巡る環境を展望すると、マクロ的な需給バランスは、上述の通り、景気が緩やかな回復をたどるもとで、改善していくと考えられる。中長期的な予想物価上昇率については、市場参加者やエコノミストの見方は概ね1%程度で安定的に推移しているほか、家計の見方にも大きな変化はみられず、見通し期間においても安定的に推移すると想定できる。国際商品市況については、地政学リスクの高まりなどから原油価格を中心に強含んでおり、先行きについても、新興国の経済成長に伴う食料・エネルギーの需要拡大などを背景に、基調的には緩やかな上昇傾向をたどると想定される。』(今回)

というのがそもそもの前提条件になっていますが、この前提条件に関しては昨年10月の見通しとの変化はありません(めんどいので前回分の引用を割愛)。でもって例の部分なのですけれども。

『以上の環境を前提に、物価情勢の先行きを展望すると、国内企業物価指数の前年比は、国際商品市況の緩やかな上昇や、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、見通し期間を通じて緩やかな上昇を続けると見込まれる。消費者物価の前年比は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。』(今回)

ということで、この「見通し期間のその後」というのを出す意味が何なのかというのは色々とツッコミどころがありそうなのですが、まあ威勢の良い話をしたいだけでしょというのが債券市場の受け止めで、本当に日銀の経済見通し上方修正をその通りですねえとか思っているならブルフラットしませんがなという所ですな。

しかしまあその先行き見通し期間の「さらに先」の話をわざわざ持ち出して威勢の良い話をするというのは、これはまあ展望レポートの枠組みを悪い言い方をすれば逸脱して希望的観測を述べているような部分であって、それってコミュニケーションポリシー的には誤解を招くような気もする、のですがまあ(少なくとも国内の金利関係の)市場がこの文言をどう見てもスルーしているのであまり問題になっていませんけど、まあどうなのかなとは思います。

『今回の消費者物価の見通しを、1月の中間評価時点と比較すると、景気の見通しが幾分上方修正されており、その分、マクロ的な需給バランスの改善も見込まれるうえ、為替円高の修正や原油価格上昇の影響もあって、幾分上振れしている。』(今回)

>為替円高の修正や原油価格上昇の影響
>為替円高の修正や原油価格上昇の影響
>為替円高の修正や原油価格上昇の影響

・・・・・・・・・ええまあ短期的な相場の動きでどうこう言うのもアレですが、余りと言えば余りにもそのタイミングが北浜先生過ぎるわという事で(^^)。

でもって更にその説明が続くのが前回と違う所。

『上記のとおり、物価情勢は、「中長期的な物価安定の目途」に向かって改善しているが、その実現にはなお時間がかかるとみられる8。』(今回)

>その実現にはなお時間がかかるとみられる
>その実現にはなお時間がかかるとみられる
>その実現にはなお時間がかかるとみられる

っての声明文の方には無かったっすなあ。で、その脚注の8番ですが。

『8 1990 年代以降の消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の動きを年度ベースでみると、1年間に約1%ポイント改善したのは、消費税率の引き上げや国際商品市況の大幅な上昇といった要因が影響した時期に限られている。』(今回)

まあこれはこれで事実ではございますが、何かわざわざ書かれますと戦意あるんかいなとか突っ込まれたらどうするんだかという気もしますけどね。

『この点について、実体経済の強さが物価上昇圧力を生み出すというメカニズムに即して整理すると、循環的な要因と構造的な要因の双方が作用していると考えられる。』(今回)

『循環的な要因としては、リーマン・ショックによる景気の落ち込みがきわめて大きかったため、マクロ的な需給バランスは現在なお改善途上にあることが挙げられる。このため、先行き景気が緩やかな回復をたどるもとでも、マクロ的な需給バランスが概ねバランスした状態に達し、マクロの需給面から物価を押し上げる力がある程度明確になってくるのは、見通し期間の終わり頃になると予想される。』(今回)

『また、構造的な要因としては、経済成長率が趨勢的に低下してきたことが挙げられる。すなわち、他国に例をみない急速な高齢化に対して、成長力を強化する取り組みや社会保障制度の持続可能性を高める見直しが十分に進まなかったことで、企業や家計の成長期待が弱まり、支出行動が慎重化した。こうした状況が、物価の下落圧力をもたらす要因として作用してきたと考えられる。』(今回)

ほほうという所で。


・海外に上振れ要因加わるとな

『5.上振れ要因・下振れ要因』の所ですがまずは『(1)経済情勢』から。

『第1に、国際金融資本市場や国際商品市況の影響を含めた、海外経済の動向である。国際金融資本市場が動揺し世界経済が大きく下振れるテイル・リスクは低下したが、そうしたリスクの根源的な原因である欧州債務問題の解決には、なお多くの課題が残っている。』(今回)

『欧州中央銀行の資金供給等により市場の安定が保たれている間に、周縁国における競争力の引き上げや、財政の持続可能性の確保といった改革が着実に進めば、市場からの信認が強化され、世界経済の上振れ要因となる可能性がある一方で、改革の実行に関する懸念が再燃した場合には、国際金融資本市場における緊張が再び高まり、世界経済ひいてはわが国経済の下振れ要因となりうる。』(今回)

つーことで、前回はこの海外経済動向に関しては下振れ要因の話しか無かったのですけれども上振れが加わったのがはあそうですかという感じで。


・財政云々の話が加わる

前回と比較すると、この第1の部分が前回の第1+第2に相当して、前回の第3が第2に、第4が第3になっておりまして、今回の第4は何かと申しますと・・・・・

『第4に、わが国の財政の持続可能性を巡る様々な問題がある。』(今回)

キタコレ。

『例えば、高齢化の進行にもかかわらず、近年、家計の貯蓄率が下げ止まっていることなどを踏まえると、人々は、政府債務残高の累積から、社会保障制度の維持可能性や将来の税負担増などへの不安を感じ、支出行動を慎重化させている可能性がある。』(今回)

ほほう。

『財政の持続可能性に対する信認が低下するような場合には、そうした人々の将来不安の強まりから、経済の下振れにつながるおそれがある。他方、中長期的な財政再建の道筋が明らかになり、また、社会保障制度の維持可能性が高まれば、人々の将来不安は軽減され、経済に好影響が及ぶと考えられる。』(今回)

ほうほう。

『なお、金融市場のグローバル化が進展している現状を踏まえると、多くの先進国で公的債務残高への懸念が生じている中で、わが国の財政運営に対する市場の目も厳しくなってきているとみられる。そうしたもとで、仮に財政再建に向けた取り組みが不十分であると市場に評価された場合は、長期金利の上昇を招き、金融機関の経営ひいては日本経済全体に悪影響が及ぶと考えられる。』(今回)

うむ、まあ日銀心の叫びという感じですな。


・物価の上振れ要因にこんなのが

基本的には同じ話なのですが、第1の部分に妙な記述が。

『他方、成長力強化への取り組みが成功し、差別化された新たな財・サービスが広く創出されていけば、潜在需要が顕在化するかたちで価格が上昇し、中長期的な予想物価上昇率が高まることも考えられる。こうしたシナリオにおいては、経済成長率が上振れるとともに、物価は経済成長率の上振れから予想される以上に上振れる可能性がある。』(今回)

気持ちは分かるがどう見ても希望的観測です本当にありがとうございました。


・第1の柱、第2の柱

最後の『6.金融政策運営』から少々。

『まず、第1の柱、すなわち先行き2013 年度までの経済・物価情勢について、相対的に蓋然性が高いと判断される中心的な見通しについて点検する。上述の通り、わが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、2012 年度前半には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定のもと、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、今回の見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。こうした経済・物価見通しを総合的に評価すると、やや長い目でみれば、日本経済は、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくと考えられる。』(今回)

ちなみに前回の同じ部分を全部引用すると長くなるので結論だけ。

『こうした経済・物価見通しを総合的に評価すると、日本経済は、「中長期的な物価安定の理解」に基づいて物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要するものの、やや長い目でみれば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していくと考えられる。』(前回)

まあ若干上方修正されていますけれども、よくよく見ますと基本的な部分は前回の見通しを平行移動させただけという感じですなあ。


『次に、第2の柱、すなわち、より長期的な視点も踏まえつつ、金融政策運営の観点から重視すべきリスクを点検する。』(今回)

『景気面では、欧州債務問題に端を発するテイル・リスクは低下しているが、国際金融資本市場や海外経済を巡り、なお大きな不確実性が存在する。また、国際商品市況の一段の上昇が、交易条件の悪化に伴う実質購買力低下などを通じて、国内民間需要を下押しする可能性もある。さらに、復興関連需要については、今後の強まり方や経済効果などを巡る不確実性がある。』(今回)

今回は国際商品市況の上昇云々の話が新しく入ってます。

『この間、中長期的な成長期待については、成長力強化への取り組み次第では、上振れ・下振れ双方向の可能性がある。財政の持続可能性確保へ向けた取り組みも、経済動向に大きな影響を及ぼし得る。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(今回)

財政の維持可能性云々が加わっています。

で、結論の所ですけれども、

『現時点において、過度に楽観的な期待に基づいて金融的な不均衡が生じているとは考えにくい。もっとも、政府債務残高が顕著に累増しているなかで、金融機関は多くの国債を保有しており、何らかのきっかけで、長期金利が上昇した場合、経済・金融に大きな影響を与える可能性がある点に留意しておく必要がある。こうした観点からは、金融政策の運営に対する信認を維持していくことが重要である。』(今回)

ということで、見通しを引き上げたのと、足元で総裁が妙にその辺の話を講演でしている事も受けたんでしょうなあとは思いますが、一応第2の柱での金融不均衡云々の話を加えているのがチャーミングなのと、これまた財政維持可能性に向けた取り組みの話が出ています。

あと、最後の所になりますが。

『第2に、日本銀行としては、強力な金融緩和の推進と併せて、わが国経済の成長基盤強化にも、中央銀行の立場から引き続き取り組んでいく。』(今回)

ということで、まあ前回もこの話自体はあったのですが、わざわざこの項を独立させて「成長基盤強化に取り組む」というのを強調しているのはほほうという感じではございました。

#引用増量企画でどうもすいません

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2012/05/09

○金融調節に関するレポートでござる

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/ron120508a.htm/
2011年度の金融市場調節

『本稿では、2011年度の金融市場調節運営について説明する。』

ということで本文はこちら(やや重め注意)
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2012/data/ron120508a.pdf

こちらのレポートは金融市場調節で何をやった結果どうなったのかという話を延々としているのですが、その中で市場概況の話とかもありまして、その辺を読んでおりますと中々味わいがあるのでその辺から雑談でも。


・2月以降の相場レビュー部分に微妙な味わいが

国際金融市場の動向部分ではこういう話を。(本文4ページ)

『2012 年入り後は、後述するように、日本銀行を含めた主要中央銀行が協調対応策を打ち出したことや、欧州中央銀行が金額無制限の3年物オペ(BOX1を参照)によって潤沢な資金供給を行ったことなどが好感され、市場の緊張感は一頃に比べれば和らいだ。米国経済の先行きについても、事前予想を上回る経済指標がみられたことなどから、悲観的な見方が幾分後退した。これらを受けて、市場における米ドル調達コストは大きく低下したほか、VIXは2011 年度初と同程度の水準での推移となるなど、投資家のリスク性資産に対する投資姿勢は回復方向の動きとなった。米欧株価は上昇基調を辿り、米国ダウ平均株価は、リーマン・ブラザーズ破綻以降では初めてとなる13,000ドルを回復した。また、米欧の社債流通利回りの対国債スプレッドは、縮小に転じた。この間、米欧の長期金利は、低水準での推移を続けた。』

日本の債券市場に関しては本文16ページ。

『期間1年までのイールドカーブが0.1%の水準で完全にフラットとなる中、金利低下圧力は、2年物国債利回りに波及した。日本銀行による包括緩和政策の枠組みのもとで、いわゆる「時間軸効果」が働いたと考えられるほか、資産買入等の基金の運営として行う残存期間1年以上2年以下の国債の買入れは、市場参加者に対して国債の大口かつ安定した売却先を提供した形となり、2年物国債への投資に対する安心感を与えた。2年物国債利回りは、2011 年度入り後の時点では0.20%程度であったが、一段と水準を切り下げた(図表20)。2011 年10 月に資産買入等の基金による国債買入の買入上限が9.0 兆円程度に増額されて以降は、概ね0.12〜0.13%程度で、2012 年2月に買入上限が19.0 兆円程度に増額されて以降は、一段と低下して0.11%程度で、極めて安定的に推移した。』

株式市場と為替市場については本文20ページ。

『2012 年に入ると、欧州債務問題を巡る緊張感の高まりが一服し、投資家のリスク・テイク姿勢が徐々に回復するとともに、米国経済の先行きに対する悲観的な見方が幾分後退するなか、米国の2年物国債利回りが上昇した一方、上述のようにわが国の2年物国債利回りは低水準の推移を続けたことから、日米金利差は幾分拡大した。加えて、わが国の貿易赤字が主として海外投資家に意識されたことも相まって、ドル/円相場は円安方向に戻し、3月末にかけては82〜83 円前後で推移した。また、日経平均株価は、米国株価の上昇や為替円安を背景に上昇し、3月には一時、東日本大震災以降の高値を更新する水準まで回復した。』

・・・・・・・・・さて、何に味わいがあるかという話ですが^^;

まあ実は最初の2つについてはまあそうですねという感じですけれども、最後の株式市場と為替市場の所で2012年2月以降の株価上昇や為替円安について「本行が中長期的な物価安定の目途などの金融政策スタンスの明確化を示した事を受けて」というような文言が一切入っていないのが何というかもう味わいがあると申しますか麿の顔色見てるだろと申しますか、まあそういう事でございます(^^)。

まあ実際問題として日銀の追加緩和およびそのスタンス強化というのが100%の為替市場の動きの原因かというと、米国の景気が強そうに見えていて、FF先物とかに見られるように米国の時間軸が短期化してたという所とか、何となく欧州問題が鎮静化したように見えていた事なども思いっきり効いていたと思うのではありますので、金融政策の効果を過大に見られて過剰期待されてクレクレ言われても困りますがな、というのもまあそれはそれで正しいとは思います。

でもまあこれが仮にFRBだったら物凄い勢いで「我々の適切な金融政策運営が資産価格や為替市場にも好影響をもたらしました(ドヤッ)」って言いだすんだろうなあと考えますと、まあ謙虚ちゃあ謙虚なのですが、アピールという点でどうなんでしょうという気がすると申しますか、そもそもおまいら包括緩和の中に資産価格ルートや為替ルートの政策効果を見てねえのかと小一時間問い詰めたい所でもございますなあと感じるのでありまする。


・更にどうでも良いツッコミですが

本文13ページの『BOX3 日米における短期国債利回り』というのを見てちょっとだけ思った事なのですがね。

『わが国の短期国債(国庫短期証券)利回りは、総じてみれば補完当座預金制度の適用利率である0.1%近傍で推移した。この間、やや仔細にみると、例えば2011 年8〜9月頃には、国庫短期証券の発行入札において、0.1%を下回る利回りで落札される場面がみられた(図表15)。この時期は、欧州債務問題や米国連邦政府債務の上限引上げ問題の深刻化を受けて、グローバルに投資家の間でいわゆる「質への逃避」の動きが強まったことなどから、補完当座預金制度の対象とならない海外投資家がわが国の国庫短期証券への投資を積極化させていた(図表16)。このため、同制度による下限金利を画す機能が一時、十分に働かなかったものと考えられる。』

ちなみにこの辺の考察に関しては『BOX2 補完当座預金制度と大量資金供給のもとでの翌日物金利』を参考にしつつこの項の先を読むと中々宜しい。

『もっとも、0.1%を下回る水準への金利低下の動きは、総じて一時的かつ小幅なものにとどまった。また、国庫短期証券を保有するための資金調達手段や、国庫短期証券の代替的な投資手段として用いられるGCレポ取引の利回りも、補完当座預金制度適用利率である0.10%近傍で推移した(BOX2を参照)。』

ということで、まあ確かに金融政策のタイムスパンから考えますとこの間の動きは「総じて一時的かつ小幅」という話になると思うのですが、市場の現場労務者のタイムスパンと致しますと、主に3か月物が主要の商品となっております短期金融市場におきまして「2011年8〜9月ごろには」と言われるような1か月以上の期間というのはそもそもの主要投資対象商品の期間から見るとその3分の1から半分の期間になる訳でございまして、短期金融市場現場労務者的には十分な長期間でもございます。

つまりですな、いやまあ総体で言えばそうなのかもしれないですけれども、市場の時間感覚と違う文言がこういう風にしらっと出てくるのを見ると、今はまあ市場がベタなぎだからどうでも良いですけれども、それこそリーマンショック後の短期金融市場に関して連日のように悪態をついていた頃というのがあったように、市場の時間感覚も考えて頂いた方が宜しいのではないかという気もする場面もあると存じます次第。

・・・・・・ってまあつまらない所で揚げ足取りのような悪態で恐縮至極ではございますけれども、金融緩和状態が長引いてしかも色々なバックストップがあるという状況だとすっかり(市場参加者の方もそうですが)のほほんとしてしまうっつー罠がございますので、その辺も考えないとなあとか思うのでありました。

などと悪態を書きましたが、こちらのBOX3の後半は(短期市場の人にしてみれば常識ですが)市場構造の日米比較の話があって、非常に良い内容ですので目ん玉よく開けて100回嫁と思いますです、はい。



・国債保有残高の予想について

本文42ページの『BOX11 日本銀行の保有する長期国債残高の動向』はこの前総裁会見で話をしていた件ですな。

でまあ前提を端折って結論の部分だけ引用しておくがちゃんと読んでおくように。

『国債買入オペで買入れる長期国債が、2012年中は2011年度実績と同様の残存期間となり、その後、2013年入り後は、残高が2012年末と同様の水準となった場合、2012年末の合計額は、約92兆円(うち基金分24兆円)、2013年6月末の合計額は、約97兆円(うち基金分29兆円)となる見込みである。この間、銀行券発行残高(月中平均)は、直近3か月の平均的な伸び率(前年比+2.3%)で増加するとの仮定のもとでは、2012年12月に約83兆円、2013年6月に約82兆円となる見込みである。』

でまあグラフがその中にあるので判りやすいですが、銀行券発行残高対比でみると今年中に基金での買入も含めると堂々の発券残高越えになりますという話になっておりまして、2013年6月はそれに5兆円乗っかるという素敵な状態になりますが、どうせまだ買入残高目標は増えると勝手に思ってる(あと5兆はいけるでしょ^^)ので更にこのグラフが素敵な事になるのでしょうなあ。


ちなみに、このレポートなのですが、引用した「BOX」での各種トピックス説明など、普段皆様の多くがスルーしておられます所の短期金融市場の細かいけど重要な話について判りやすく纏めてありますので、実をいうと短期市場の人よりも債券市場の人とか、金融政策に興味があったり色々と意見があったりする方でどう見てもお前それ実務的論点が無いだろ(=フィージビリティーが無い政策に意味は無いっしょ)という話をする方必読という感じです、とは言っても債券市場の方は兎も角として後者の人たちはそういう事に興味が無いから実務的なフィージビリティーを無視した話を展開するんでしょうけどね(−−)。

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2012/05/08

お題「4月前半決定会合議事要旨」

7月中旬まで祝日が無いような気がしますが気を取り直して参りましょう(−−)

○4月前半決定会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120410.pdf

・経済状況の認識とか先行き見通し

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々見る訳ですが。

『国際金融資本市場について、委員は、総じて落ち着いているとの認識で一致した。』

ほほう。

『委員は、欧州債務問題の解決は道半ばであるものの、欧州中央銀行による大量の資金供給やギリシャに対する金融支援の実施等を背景に、同問題が世界的な金融危機を引き起こすテイル・リスクは低下しているとの認識で一致した。』

ほほう。

『そのうえで、多くの委員は、イタリアやスペインの財政悪化が意識される中、投資家のリスク回避姿勢が幾分強まっていると指摘し、財政問題を抱える国の国債利回りが、一旦低下したギリシャも含めて、再び上昇していることを踏まえ、今後も、欧州債務問題の動向については注意深くみていく必要があると述べた。一人の委員は、欧州の一部で国債金利の上昇はみられるが、銀行間の資金市場が安定している現状を踏まえれば、国際金融資本市場は総じて落ち着いていると評価できるとコメントした。』

ほほーという感じですが、まあ確かに4月10日の時点ではこんな感じっちゃあこんな感じだったかも知れませんが、その後どう見てもスペインに引火したりという流れになって今週にはご案内の有様というのが中々残念感が。

『海外経済について、委員は、全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済では緩やかな改善の動きが続いているほか、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、新興国・資源国に牽引されるかたちで、成長率は再び高まっていくとの見方を共有した。』

まあ米国に関しては雇用関連の指標が少々アレですが、まあ悪化という程では無いという所なのかと思いますが、欧州は再び暗雲モードですし、新興国・資源国と言えば先般の豪州の予想以上の利下げに示された景気の先行き懸念とかが出てきましたというのがこれがまた4月10日時点での見通しが現時点で示されると何とも残念なテイストを醸し出すのが日銀クオリティ。

ちなみに、ユーロエリアと新興国に関してはこんな感じである。

『ユーロエリア経済について、委員は、停滞感の強まりに歯止めがかかっているとの認識を共有した。何人かの委員は、ドイツでは失業率の低下が続く一方、ユーロエリア全体の失業率は既往ピークに達するなど、主要国と周縁国の経済格差は拡大する方向にあると指摘した。先行きについて、委員は、緊縮財政の継続や金融機関による資産圧縮の動きなどを背景に、当面、停滞色の強い状態が続くとの見方を共有した。複数の委員は、主要国と周縁国の経済格差の拡大は、ユーロエリア経済の不安定要因となりうるため、注意が必要であるとコメントした。』

『新興国・資源国経済について、委員は、既往の物価上昇による実質購買力の低下や金融引き締めの影響などから、幾分減速しているが、一部の国では、インフレ率の低下や輸出の持ち直しなどから、改善に向けた動きがみられているという認識を共有した。』

てな感じですが、その後の展開がどうもそうなっていないのが残念な所ですわな。


・国内景気の先行き見通し

んでもって国内景気の先行き見通しだが。

『景気の先行きについて、委員は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。輸出・生産について、多くの委員は、海外経済の回復を主因に、持ち直しに向かうとの見方を示した。』

『このうちの一人の委員は、輸出・生産を起点とする経済の好循環がどの程度強まるかは、今後の景気回復ペースを規定する重要なポイントであると付け加えた。設備投資について、一人の委員は、3月短観における2012年度設備投資計画が当初計画としては高めの伸びとなっていることを指摘したうえで、これが景気をしっかりと下支えしていくかどうか、注視していく必要があると述べた。』

とまあ威勢の良い話になっておりまして、(そういや後回しになっていて恐縮ですが)展望レポートの見通しとかも基本的には威勢の良い話になっているのですが、その一方で足元ではリスク要因がまとめて絶賛顕在化中という例年の偽りの夜明けシリーズが好評開催中(何か年々開催時期が早まっているような気がするがorz)という風になっているのが残念感漂うのでありまする。

#でまあ思うのですが、これ日銀法で規定されているから如何ともし難いというのは判るのですけれども、議事要旨が出るのが次回決定会合以降というタイミングになりますと、その間の外部環境の変化次第では今回のような残念感漂う代物になってしまうので、何かこう法解釈でもうちょっと早く出せないのかな(通常会合の一部を議事要旨承認の為に行う決定会合みたいな事にするとかは・・・・まあ無理でしょうね)とは思うのであります(が英文議事要旨も出している関係上ロジ的にしんどいというのも判りますけどね)

でもって先行きリスク。

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、欧州債務問題が世界的な金融危機を引き起こすテイル・リスクは低下しているとの認識を共有した。そのうえで、委員は、欧州債務問題の今後の展開、国際商品市況の動向、新興国・資源国における物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きいとの見解で一致した。』

ほほう。

『複数の委員は、仮に中国経済の成長ペースがはっきり下振れる場合には、海外経済の成長率上昇を前提とした日本銀行の経済見通しに影響すると指摘した。別の複数の委員は、わが国の電力需給を巡る不確実性にも引き続き留意する必要があると付け加えた。』

ということで、どう見てもその後の3週間少々でこれらのリスクが色々と顕在化中という風情になっているのが実にアレな所ではございます。


・CPIに関して

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっており、先行きは、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。』

つーのはまあ良いとしまして。

『2月の前年比が小幅のプラスに転じたことについて、複数の委員は、調査銘柄の変更が影響している面があり、この影響を取り除けば、基調に大きな変化はないと指摘した。』

という話になっているようですが、この複数の委員の指摘に対して先般の決定会合後の総裁会見を見るとどちらかと言えば「大きな動きとして改善の流れになっている」というような話をしてたように見えるのはどういう事ぞという所でございまして、先日の決定会合の議事要旨ではここのところがどういう論議になっていたのか気になる所です。

『一人の委員は、費目別でみると、輸入品との価格競争もあって下押し圧力のかかりやすい「被服及び履物」の前年比がこのところプラスに転じているのは、企業の価格決定力が回復しつつある兆しかもしれないと述べた。』

ほう。

『委員は、物価情勢は着実に改善しており、先行きについても、景気が持ち直しに向かう中で、マクロ的な需給バランスが改善していくため、やや長い目でみれば、消費者物価の前年比プラス基調が徐々に定着していくとの見方を共有した。』

ということで、まあCPIが上がって行って目途を遠からず見通せるという話の前提にそもそも国内景気の先行き持ち直しというのがある訳でございまして、先ほど申し上げたような下振れリスク顕在化モードとなる中どうなのよって感じもするざますけど。

『そのうえで、複数の委員は、わが国で物価上昇率が高まりにくい状況には、国民の間に物価は上がらないという意識が長年のうちに根付いたことが影響しているのではないかとの見解を示した。これに対して、一人の委員は、こうした物価観が社会にあることは認められるものの、その影響は不変ではなく、何らかの社会経済環境の変化をきっかけに、比較的大きく変化することもあり得ると付け加えた。』

どうなんでしょうねえ。

『複数の委員は、企業は品質やコストの上昇を価格に転嫁せずに、生産性の向上や賃金の下落で吸収しようとする傾向があると述べたうえで、このうちの一人の委員は、こうした価格や賃金の設定に関する企業行動が今後変わってくるかどうかが、物価の先行きを考えるうえで重要なポイントであると述べた。』

まあそもそも引き下げデモクラシーの蔓延する国で企業行動も変わりようが無さそうな気がしますけどね。それどころか政治家が率先して「原発は止めろ、電気代は上げるな」とか「公務員給与を広範囲に下げます」とかデフレ推進な話をしてますからねえ。

一方で英国みたいに物価上昇が定着してついにホームメイドインフレ(というかスタグフレーション)発生かという話になっているような国もありますけど、それはそれで誰得インフレという感じですし、どうなるのやらという感じです。


・展望レポートに向けて

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から少々。

『何人かの委員は、次回の決定会合では「中長期的な物価安定の目途」を導入して最初の展望レポートを取りまとめることが予定されており、当面目指している1%と、物価の見通しとの関係をどのように整理するか、また、その整理を踏まえ、政策を巡ってどのような説明を行っていくか、しっかり検討する必要があると述べた。』

ということで検討した結果(展望レポートネタがまだでどうもすいませんすいません)が先般の決定会合での決定という話になった訳ですが、結局の所総裁会見を子細に見ますと昨日大量ネタ投下しましたように、どうもその見通しと金融政策における措置との関連についての説明がクリアカットになっていないように思えますがどうなんでしょ。

いやまあ裁量ですから(キリッ)でも良いには良いのですが、どうも整理をしてるのかしてないのかが良く判らんがなという感があるのは、例の「遠からず1%に達する可能性が」という文言が入っているのと、質疑応答にあった「今回の決定は見通し期間で1%に達するという見込みになっていないからですよね」という質問に対する総裁の例の答え(『今回の見通し期間である2013年度までにおいて、見通し中央値で消費者物価の前年比1%が見通せていないことが、今回の金融緩和強化の理由かという問いについてお答えすると、それはそうではありません。』という奴ね)が話をややこしくしている感は拭えずということで、しっかり検討した結果がこれかよという気はする。


・基金買入の効果

『資産買入等の基金について、委員は、累次にわたり実施した資産買入れ等の基金の増額は、金融市場に対して一定の効果を発揮しているとの見解で一致した。』

ふむ。

『多くの委員は、金融政策の効果は、株価や為替といった短期的な金融市場の変動にも及んではいるが、あくまでも景気や物価へどのように波及していくのか点検していくものであると述べた。そのうえで、委員は、現時点においては、2月に増額した基金による金融資産買入れ等を着実に進め、その効果を確認していくことが適当との見解で一致した。』

金融政策の効果に関して、こちらの議事要旨では金融市場ルートという中で株価や為替という部分にも触れられているのですが、一方で総裁会見の中で金融緩和政策の効果に関して質問されている部分では金利低下ルートとリスクプレミアム縮小ルートを主に説明しておりまして、何かこの辺って政策委員会全体のトーンと麿の麿トーンの間に若干のズレが発生しているのではないかという疑念が。

『一人の委員は、基金を通じた資産買入れは、手段としては非伝統的であっても、金利やリスク・プレミアムへの影響を通じてその効果が実体経済に及んでいくという点で、想定されている波及メカニズム自体は、伝統的な政策と変わらないと述べた。』

まあこれはそうなのですが、ではその実体経済に向かう前の金融市場ルートにおいて、株価という資産ルートとか為替ルートとかという部分をどう捉えてどう評価するのか、という点に関してイマイチ良く判らん部分があります。まあ逆さ絵のおじさんは明らかに為替とか株価ルートを思いっきり使おうとしていますし、BOEの場合は株価の話はしませんけど国債買入によってポンドが下がって景気刺激というロジックを展開させていましたし(その結果今度はインフレが下がりにくくなって困っているのですけど)とゆー所でありまして(ECBはその辺り結構ガチガチ)、いわゆる量的緩和をしている政策ロジックにおける資産価格ルートや為替ルートに関しての論点整理はどうなっているのやら、というのも気に掛かる所ではございます(まあそういう意味ではECBはLTROとかやってバランスシートは拡大してますけれども、あくまでも流動性供給であって買入では無いですからその手の話はしていない、というのもある)。

『買入れの状況に関して、多くの委員は、国債の大量償還を迎えた3月下旬以降、再び、資金余剰感が一段と高まり、固定金利オペの応札倍率が低下してきている点を指摘した。』

ということでまあ6か月の減額になったのですが、後講釈的に考えると6か月オペの減額は別のタイミングでこっそり実施する方法って無かったのかなあとは思いますけどまあ中々難しいかなあ。


・財政マネタイぜ―ション云々

『累次の資産買入等の基金の増額によって長期国債の買入規模が拡大している点について、複数の委員は、日本銀行が財政ファイナンスを行っているという疑念を生じさせることを通じて市場の不安定化につながることのないよう、こうした国債買入れの目的を引き続きしっかりと説明し続けていくことが重要と述べた。』

まあ正直言って時限的マネタイゼーション(ただし2年債まで(今は3年までになりましたけれども)という事で歯止め)やってるように見えますけど、それは兎も角として財政ファイナンスをやっているかどうかの話って日銀がどうのこうの言うよりも政府というか政治の方がどういうスタンスを取るかの話ですがなという所ではあります。

『そのうちの一人の委員は、上記の疑念を招かないためには、日本銀行の国債の保有状況について透明性の高い説明をしていくことが重要であると述べたうえで、最終的には、財政の持続可能性が維持されることが不可欠であると指摘した。この委員は、財政の持続可能性は、それに対する信認が失われると、金融システムの安定や物価の安定に大きな悪影響が生じ得るという点で、金融政策が機能するための大前提であると付け加えた。』

麿ですかそうですか。まあ保有状況の話はしてもしなくても最終的には同じような気もしますが。

ということで4月前半議事要旨ネタはこんな所である。

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2012/05/02

いやあドル円80円台に戻っていて良かったですね(棒読み)。

昨日は資産買入ネタをあーでもないこーでもないと書いたら時間が無くなるとゆー誠に遺憾な展開となりましたが、まあどうせ明日から連休だから書きそこなった話についてまた連休中にまとめておけばいいやと思っている人がいるのはこちらです(と言って読者の皆様を期待させると外せなくなるのでネタ投入する気になるという効果がある)。

#まあ全部投入できるかどうかは知らんが

ということで昨日の続きとかその他少々。

○声明文比較:景気判断引き上げでござる

声明文の景気判断が引きあがっている件につきまして今さらですが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120427a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120410a.pdf(前回)

金融経済月報の出る回(前回)と違うのと、展望レポートの公表および追加緩和措置の実施があったので体裁がやや違いますがまあ見てみましょう。

・景気判断および海外経済

『海外経済をみると、欧州債務問題が金融市場に大きな混乱をもたらすリスクは低下し、米国経済も緩やかに回復している。こうしたもとで、わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、前向きの経済活動に広がりがみられるなど、持ち直しに向かう動きが明確になりつつある。』(今回)

というのがまずあるのですが、これに対応する部分は前回の声明文から拾うとこうなります。

『わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(前回)

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、国際商品市況の動向、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。』(前回)

ということで、今回はまず「前向きの経済活動に広がり」とか「持ち直し明確」とか現状判断を引き上げていまして、しかも(これは全くもって意味が分からんのですけれども)欧州債務問題のテイルリスク化についての懸念の後退を思いっきり示しているという展開。海の向こうでは2日前に出てたFOMC声明文で「金融市場の束縛は経済の見通しに顕著な下方リスクを与える」と前月に出していた「金融市場の束縛は緩和されてきたが」という前回付けた上方修正チックな文言を削除している中ですので更に目立ちますがなと思います。


・先行き経済見通し

『経済の先行きについては、本日公表の展望レポートで点検したとおり、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

これに関しては相変わらずという感じでして、前回はこうなっていますわな。

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、まあ基本的なシナリオは同じです。


・先行き物価見通し

『消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、展望レポートの見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い。やや長い目でみれば、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復する蓋然性は高いと考えられる。』(今回)

『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

ちなみに前回展望レポートの昨年10月での声明文ではこうなっています。

『しかし、物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要すると予想されるうえ、国際金融資本市場や海外経済の動向次第で、経済・物価見通しがさらに下振れするリスクにも、注意が必要である。』(昨年10月の2回目会合)

で、昨年のこのときは上記の見通しに基づきまして基金の国債買入を5兆円拡大していますので、まあそーゆー意味では展望レポートでの見通し点検→金融緩和強化というのは前回に引き続き今回も実施でござるの巻となっていますわな。


○今回もまあ形としては2月14日路線の踏襲である

次のパラグラフですが。

『日本銀行は、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力な金融緩和を推進している。こうした日本銀行の政策は、長めの金利およびリスクプレミアムの低下や、金融市場の安定等を通じて、経済活動を支えている。また、実質的なゼロ金利政策等の推進は、景気の改善につれてその効果が強まっていくと考えられる。』(今回)

はあそうですか。

『本日決定した金融緩和の一段の強化は、これまでの措置の累積的な効果と併せ、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復することを、さらに確実なものにすると期待している。』(今回)

こちらに関しては2月14日のと比較するのが吉。

『日本銀行は、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとすることが必要と判断した。このため、今回、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化することを決定した。』(2月声明文より)

まあ基本的には似ていますが、前回は「政策姿勢の明確化」であり今回は「経済の成長経路への道筋を確実にする」となっていまして、そういう意味では今回の方が押し上げ的なニュアンスを(理屈の上では)強めているという所ですわな。

まあ今日は会見ネタが間に合わない(すいませんすいません)と思うのでスルーしますが、当然ながら総裁会見でも今後も押し上げやるのかという質問がありまして、これがまた麿が麿だけに微妙にやるんだかやらないんだか判らんような表現になっていましたけど、まー普通に考えてどんなに遅くても10月の展望レポート時点で経済物価情勢に大した進展がなければ何らかのおかわり措置の実施があるでしょうと思うのが素直な見方になるのではと。

ちなみに中間レビューで何かあるかというのはちょっとクレクレ頻度が高いような気もしますが、昨日うだうだ書きましたように一応次回に関しては国債買入を5兆円乗せる(乗せると来年の前半も基金国債買入が月2兆円ペースの買入になって短い所の吸い上げ大会にも程がある状態が続いて中短期ゾーン中心の運用をする所涙目が続くのですがorzorz)余地があるので、それでも入れるんでしょ。


○日銀というか麿の心の叫びキタコレ

政治にボールを投げているつもりなのですが、どう見てもボールが届きません本当にありがとうございました。

『上記の強力な金融緩和の推進に当たり、日本銀行は、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないかどうかを確認していく。わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要である。』(今回)

・・・・・・・・・・・麿心の叫びキタコレという感じですが(^^)、まあ要するに「財政マネタイズを目的に買入をしている訳ではありませんよ」と言いたいのと、「日銀にクレクレ言いながら財政再建に向けた取り組みどころか復興国債100兆円発行して日銀に引き受けさせろとか言い出す政治家逝って良し」と言いたいというのは良く判りますが、まあ残念なのはその玉が飛んでいるという認識は無いでしょうなあという所です。

会見でもこれに対応したオモシロ質疑があったのですがそれは明日か明後日にでも。

#最後のパラグラフはいつもの話なので引用割愛

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2012/05/01

さて今回の追加緩和策、普段から見ている人的には良く作り込んだと評価したい追加策で、まあそういう言い方はあまり良くないですけれども「満額回答以上」の追加緩和で評価高いと思うのですが、ドル円が(別の要因で)円高になったから「予想通りでしたね」とか言うモーサテの(以下悪態につき自主規制)。

まあ今回の追加緩和策については作り込みが細かいので単純に「結局5兆円でしたから」とか言う(自主規制)さんが出るのも仕方ない面があるにせよ、「国債購入10兆円拡大」が報道で前面に出なかったのは説明のハッタリが足りなかったのではないかという気もします。

ということでレビューであるが、そのようにエラソーに言うあたくしも全部ポイントを抑えてレビューできるのでしょうか(汗)。抜けがあったら教えてつかーせ。

声明文より。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120427a.pdf


○資産買入等基金の拡大と期間延長と買入対象銘柄年限の拡大にETF等買入も!

ではまずは資産買入等基金の拡大の内訳を引用してうだうだと解釈してみる。

『(1)資産買入等の基金を65兆円程度から70兆円程度に5兆円程度増額する。その内訳は次のとおりとする。

@ 長期国債の買入れを10兆円程度増額する。

A 指数連動型上場投資信託受益権(ETF)の買入れを2千億円程度、不動産投資法人投資口(J−REIT)の買入れを百億円程度、それぞれ増額する。

B 期間6か月の固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションについては、応札額が未達となるケースが発生している状況を勘案し、5兆円程度減額する。

(2)買入れ対象とする長期国債の残存期間については、今回の増額分を含めて多額の買入れを円滑に進め、長めの金利へ効果的に働きかける観点から、従来の「1年以上2年以下」を「1年以上3年以下」に延長する。社債についても、長期国債と同様に、買入れ対象の残存期間を延長する。

(3)基金の70兆円程度への増額は2013年6月末を目途に完了する。なお、本年末時点における基金の規模は従来通り65兆円程度とする。』

というのは3ページに別紙があるのですが、まあ別紙読んでもこらまあ何が何だか判るまであたくしのようなマニアでも5分くらいは掛かるかもしれませんなあという代物ではございます、良く出来ているけどね。

つーことで小見出しをバカスカ投入しながら気が付いたポイント並べてみる。


・「基金5兆円程度拡大」の表現はまあ何ですな

『(1)資産買入等の基金を65兆円程度から70兆円程度に5兆円程度増額する。その内訳は次のとおりとする。』

まあこれはこれで従来「基金の残高が幾ら」という数字を出していたのでシャーナイナイな面もあるのですが、そこはやはり海の向こうの逆さ絵オジサンを見習って「これをやるんですよ!!!」というのを物凄い勢いでアピールするというのもあって良かったんじゃないかな、と後付としては思うのです。

つまりですな、基金の総額の話は最後の方に書くとして、「国債10兆円買入拡大!!」「ETF2000億円買入拡大!!」「J-REITの買入も拡大!!」とかいうのをアピールする為に、「資産買入等基金による国債やETF、J-REITの買入を拡大します」という表現にするというのは・・・・・・まあクソ真面目な日銀だけにちと厳しいのでしょうか。

何せ金曜の市場ですけれども、最初に「基金の5兆円増額」というのがヘッドラインに出てしまい(まあその後の一般メディアの報道もそうですが)、その瞬間に為替は円高に派手に振れて、その後「国債買入10兆円増額」「ETFなどの増額」のヘッドラインが出たのでいきなり為替はドテン円安方向になったという流れでございまして、微妙なテイストでございました。

まあその後東京時間の13時から急に米国債が買われてユーロが下がって円高に振れて残念な展開になったのですが、これは別要因という所ではあると思いますけれども、もうちょっとハッタリを効かせると出方も違ったような気もせんでもないという所ではございます。

まあ今回の施策に関しては非常に良く作り込んでいて、実に素敵な追加緩和であって、冷静にこの内容を読むとかなり頑張った上にサービスというかお土産まで付いているというのは判る人には判ると思うのですけれども、「パッと見でわかりやすいハッタリ」というのを示すというのも「市場(ただし足元の短期金融市場や債券市場ではない)への働きかけ」という意味では重要な論点かも知れないなと思うのです(が、そうなったらそうなったでハッタリケシカランとか言い出すかも知れないですが、笑)。


・国債買入の拡大によって「月2.2兆円程度」のペースの買入になりそうです

今回は10兆円の買入拡大なのですが、「うち5兆円は12月末までの買入」となりますので、現在の「月1.5兆円程度の国債買入」が「月2.1兆円程度の国債買入」に買入ペースが拡大する結果になりますので、この部分だけ見ると「買入期間を延長しないで5兆円の国債買入拡大」となった形。まあ国債買入が更に加速となるのでございますな、うんうん。

ちなみに、基金買入の3月末数字ですけれども、基金の国債買入の銘柄別明細はこちら
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/release/2012/mei1203.pdf

の2ページ目にありますように、実は年内に償還の来る銘柄の買入がありまして(2年299回以前、5年69回以前、10年246回以前)、額面合計が4971億円ありますので、この分も買わないといけないので、実際には5.5兆円を8か月で買い増ししないといけませんとなりまして、これを8で割ると6800億円チョイとなりますので、実際には月に2.2兆円ペースの買入が必要になりますがなという話になります罠。


・半年の期限延長分には買入拡大余地もありそうな感じですなあ

んでもって残りの5兆円部分の拡大は半年期限を延長した事になるのですが、こちらに関しては単純に月割りすると6か月なので8000億円少々の買入ペースになりますが、同じように計算すると(あたくしの足し算が間違っていなければ)償還分9746億円が乗っかってくるので、月1兆円の買入ペースになりますわな。

でまあこの半年部分をあと5兆円オンすると月の買入額が1.9兆円程度となるので、そんなこんなを考えると次回何かしましょうとなった場合には「次の半年で買入をする国債をあと5兆円乗っけまひょか」という話になるんでしょうなあ、何かバナナのたたき売りみたいでアレですけどね。


・ETF、J−REITの買入拡大は久々でまあ良かったんではないかいな

ここもとの基金拡大に関してはいつも「国債の買入」拡大で終始していて、そもそも包括緩和でリスクプレミアムに働きかけるのでしたら既に下がっている金利よりも中々アガランチ会長の株式市場にという話をこの前書いた訳ですが、今回はその「信用緩和」部分にもフォーカスしてETFやJ−REITの買入を拡大したのはまああまり期待されて無かったので(そっちの市場には)ポジティブサプライズだったんじゃないですかねえ。どうせなら2000億円と言わず5000億円とか思ったけどまあいっか。


・固定金利オペ6か月物縮小は調節技術的には評価が高いけど皮肉な面も

まあ固定金利オペに関しては「より長い期間の物の買入等拡大」の影響でそもそものニーズが無くなってきたというのがありまして、先般も金利競争入札オペの残高がゼロになるとかいう泣けるような事態になっていたりしておりまして、固定金利オペの残高を基金の残高としてカウントしている以上、こっちの残高維持のプライオリティーが高くなるという事情もあって、オペレーションの自由度を却って悪化させているという状態だったのは何度も申し上げております通り。

従って今回固定金利オペの中で特にイラネ状態の6か月物が5兆円減るのは調節技術的には大変に結構な話で、これで金利競争入札方式のオペが入れやすくなるなあ(まあ買入が増えてるから実際にはやっぱり当座預金残高が増えて来るのであまり変わらないような気もせんでもないけど・・・・)とは思います。

まあ言ってみれば「6か月固定金利オペ→3年(今回買入銘柄の足を延長している)までの買入」という日銀版オペレーションツイスト(ただし売りが伴う訳では無い)もどきみたいな話ではありますけれども。

でまあ残念無念なのは、これはある意味身から出た何とやらなのですけれども、そもそも資産買入等基金という「等」に本来買入でも何でもない固定金利オペを含めていた結果として、今回の追加緩和策の見せ方が「基金拡大5兆円」となってしまったことですが、これはまー最初に固定金利オペを基金の残高に入れる事によって出来上がりの数字を大きく見せようとしていた(んでしょ??)ツケをここで払わされることになったというブーメラン現象でもあって中々皮肉な味わいではございます。

ちなみに、固定金利オペが減っても資金需給上必要なオペレーションは金利入札方式で実施されますので、そういう意味ではこちらのオペが減る事と日銀当座預金残高の増減にはあまり関連が無いという事実がありまして、まあ例によってどこぞの本職の癖にお前は目ん玉をどこに付けているのだというようなとある金利債券系何とかストの方が「基金の65兆円が変わらないので日銀のバランスシート拡大ペースは変わらない」とか言っているレポートを金曜日に拝読しましたが、まあそこらの素人なら兎も角、金利債券系の何とかストを看板にして商売している本職がそういう事を言うとか一回三途の川の片道切符ドラム缶クルーズツアーにご参加される事を強くお勧めしたいと思われる次第でございます。

#うむ、また脱線悪態に


・買入対象銘柄の「3年への延長」に社債もしらっと含まれるとな

んでもって買入の対象期間ですけれども再掲すると・・・・・

『(2)買入れ対象とする長期国債の残存期間については、今回の増額分を含めて多額の買入れを円滑に進め、長めの金利へ効果的に働きかける観点から、従来の「1年以上2年以下」を「1年以上3年以下」に延長する。社債についても、長期国債と同様に、買入れ対象の残存期間を延長する。』

国債の3年までの買入よりもひえーと思ったのは社債の買入銘柄の対象期間も延長になった事でして、買入社債の対象玉が減ってきているのはありますし、国債の方と平仄合わせるというのもまあ判りますけれども、ある意味ETFよりもリスクがデカイ可能性もある(ETFは価格変動リスクだが社債は飛んだら元本ですからねえ)社債の買入対象銘柄の期間を延長するとはやるなあという感じ。

これでまあ社債ディーラー歓喜の展開になりますし、3年辺りから手前の日銀買入対象銘柄を持っている投資家も持ち玉が上手くすれば(最初のうちは玉が多いから必ずしも0.10%にならないかもしれませんが)0.10%で日銀に打ち込むことが出来るというウハウハにも程がある展開。

ただまあ問題は「売った後に買うものがねええええええ!」という話なのですが、社債市場に関してはポジティブにも程がある話。正直こっちの3年への延長は予想して無かったわ、というか延長するとか中々のチャレンジャー。


・国債買入のやり方にも配慮があるのがすげえええええ

展望レポート(まで今日は間に合わない)の後辺りにしらっとこんなのが出てました。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120427d.pdf
資産買入等基金の国債買入・社債等買入の当面の運営について

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、資産買入等の基金の運営として行う国債買入、社債等買入について、買入対象の拡大等を決定しました。これらのオペレーションについては、次回実施分より、当面、以下のように運営することとします。

1.国債買入

・ 買入対象銘柄を「残存期間1年以上2年以下」と「残存期間2年超3年以下」に区分し、それぞれのオファー金額を定めたうえで、同時に入札を行う。
・ オファー金額については、実施の都度、通知する。

2.社債等買入
・ 残存期間による区分は行わない。
・ オファー日およびオファー金額については、従来通り、あらかじめホームページ上で公表する(5月、6月分については公表済み)。』

国債に関してはご案内の通り、2年ゾーンに新発国債がありまして、一方で3年ゾーンには新発国債が有りませんという事で、当然ながらここの部分には流通玉の量の差があるのです。その一方で今の基金による買入のやり方というのは0.10%という下限金利対比の利回り較差競争入札になっていますので、絶対金利水準によって入る物が決まるという流れ。

つまりど〜ゆ〜事かと言いますと、普通にやっていると3年に近いゾーンの玉がバカスカ吸い上げられて、一方で供給が毎月アホのようにある2年カレント近辺の吸い上げが減ると言う事になるので、需給の関係から2年と3年の金利が並ぶところまで3年の金利が下がるどころか、需給が歪み易くなるので瞬間芸として2年と3年の金利が逆イールドになっても不思議では無いという展開になる訳ですな。

まあ固定金利オペだの買入だのの拡大によって足元のGCレートと1年TBがうっかりすると瞬間風速でインバートするようなもんの債券市場版が発生するというおそロシアな話になるかもねえというような話をしていた訳ですが、この国債買入の期間別対応によって3年ゾーンの需給が日銀買入のせいで無用にタイトになるというのを避けられそうな感じではございます。

オファー金額は買入実施の都度通知というのは、まあこれは現実問題として応札状況とかを見ながら考えるという話になる訳で、初めてやる事ですから仕方ないというかこうせざるを得ないと思います。ただまあいずれ日銀の買入額によって需給のブレが生じるのは云々的な指摘は出てくるなあとは思います。


金曜は3年ゾーン(次回から買入対象になる2015年3月償還物)が0.125%になって(引値も5年87回や10年268&269回で0.125%でした)おりまして、一方で2年カレントは最初0.105%出合ったあと、良く考えたらしばらく2年が入らないんじゃネーノ(上記リリースはまだ出ていなかった)となって0.110%が出合ったりしてたような気がするのですが、まあ上記リリースによって2年カレントが妙に重くなる事も無しという事ですな、うんうん。


○ということで買入等拡大に関して

総じて申し上げますと、これはもう物凄い勢いで良く作り込んでいる上に、市場の期待値が低かったETFなどの買入の拡大など、金利以外への働きかけに関しても配慮しているという中々頑張った内容で、お土産付きという辺りに2月の追加緩和や、もうちょっと前で言えばかつての輪番4000億円増額と同じようなテイストを感じる訳でして、現状の中ではかなりの頑張りだったと思います。


○と、ここまで書いたら時間がががががが

いやまあ連休だったんだから連休中に準備しろよと言われると申し訳ございませんとしか言いようが無いのですけれども(汗)。

買入の明細についてうだうだ書いているだけで終了してしまいましたが、今回の声明文およびその内容に関しては他にもインプリケーションが続々(^^)なので頭出しだけ。

・景気判断引き上げながらの緩和拡大

これはまあ2月もそうでしたが、今回についても展望レポートにおける景気判断の引き上げに緩和の拡大がセットになりまして、そーゆー意味では2月の緩和拡大と同じ路線を継続していますよというのが示されています。

まあ金利債券系の人たちには先刻ご承知の話かとは思いますが、どうも為替とか株式とかの人たちには中々そのあたりの確信が持たれていない(のはそもそも麿が麿節で講演とかするというのがアレなのですが)ので、この部分は改めて確認できましたという所でしょう。


・この部分は泣いた

声明文の項目5番に全債券市場関係者が泣いた、かどうかは知らんが(^^)。

『5.上記の強力な金融緩和の推進に当たり、日本銀行は、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から問題が生じていないかどうかを確認していく。わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要である。』

>わが国の財政状況が厳しく、そのもとで日本銀行が強力な金融緩和を推進していることを踏まえると、財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要である

というのはこれは泣けるというか政治にボールを打っているのでしょうが、まあその政治家諸兄がボールがあるという自覚が無いのが残念過ぎます。

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2012/04/23

○FSRですかそうですか

金融システムレポートキタコレ

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr120419a.htm/(紹介ページ)

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr120419a1.pdf(全文)←重い(4M)ので注意
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr120419a2.pdf(要旨)←これも1Mです

つーことでまあ出ているのですが、これを子細に読んで子細にネタにすると大変なことになりますのでまあ要旨の方を見ながら雑談をば。

要旨の最初のページ(というか最初のページは表紙なので2ページ目ですが)にまずはまとめがあるのですけれども、今回のレポートの本来のポイントは最初の『わが国金融システムの安定性評価』というのに大体尽きますなという感じです。

『・ わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。』

まあそらそうや。

『・ 金融的な不均衡という観点から金融システムの状況を点検すると、期待の強気化に起因した不均衡の存在を示唆する指標は観察されない。金融機関が抱えるリスク量は、全体として自己資本対比でみて引き続き減少している。もっとも、わが国の政府債務残高が顕著に累増しているもとで、金融機関が多額の国債を保有していることには留意しておく必要がある。』

「期待の強気化に起因した不均衡の存在を示唆する指標は観察されない」というのがまあ当たり前ちゃあ当たり前ですが本来のポイントで、これは金融政策運営における第二の柱の点検に対する日銀執行部のお答えでもある、という話ですわな。


『・ マクロ・ストレス・テストとして一時的な景気後退や国内金利が一律に1%上昇するケースを想定しても、銀行の自己資本基盤が全体として大きく損なわれる事態は回避されると試算される。さらに、より厳しい前提でのストレス・テストの結果を踏まえると、金融システムの安定性を長期的に確保し、円滑な金融仲介活動を維持していくためには、次の点に留意する必要がある。』

という話で、結論としては「とんでもないストレスでも無ければ無問題」という話の筈なのですが、何故かこれが報道ベースになるとこうなります。大体どこのメディアも同じようなトーンなのですが、たとえば日経の記事だとこんな感じ。

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819591E3EBE2E3E18DE3EBE2E6E0E2E3E09797E0E2E2E2
金利1%上昇なら銀行6.4兆円損失 日銀が試算
2012/4/19 19:36

でまあこの記事でもそうなのですが、まあ中身を見れば上記のような書き振りもあるのですけれども、「金利が上がると銀行が大損すると日銀が計算している」というようなヘッドラインになってしまうのがメディアクオリティ。

いやね、メディアとしてはヘッドラインがセンセーショナルで記事に注目が集まる方が商売として正しい、というのは判るのですけれども、こうやって数字のインパクトのある所を記事にすることによって今回の金融システムレポートの本来の趣旨と微妙にずれた話の方がクローズアップされるというのも如何なものかという感はせんでもない。

つーのも、まあこの記事のヘッドラインを見て「日銀は金利が上昇すると大変なことになると言っている」⇒「日銀はデフレ脱却すると金融危機になると言っている」というように悪意の脊髄反射をする人たちというのが一定量いる(まあちょっと検索掛けるとホイホイ見つかるのが頭痛いのですが)次第でありまして、それこそデフレ何とか議連の方々とかが本気になってそういうねじ込み方をして来そうなのが最近のクオリティ。

まあそれだけじゃなくて、最近の金融政策動向に関する市場の反応って、それこそ普段金融政策とか真面目に見ている訳でも無さそうな人のが多いのではないかと思われる(というと怒られるかもしれませんけど)株式市場とか為替市場の方々がワッセワッセと動いており、まあそちらの方がインパクトあるというある意味残念な状態になっておりまして、そーゆー方々ってたとえば金曜にネタにした麿講演だって別にいつもの麿クオリティなのですが、ニュースヘッドラインを意識したと思われる今の金融政策運営に関する部分の報道をみて為替市場が反応するとかいうような感じで、まあ「中身見ないでベンダーヘッドラインに反応」という風になっている一方で、ベンダーはベンダーで記事が注目されれば勝ちとばかりに何かキャッチーなヘッドラインを書こうとしているという状態ですので、この手の「見せ方」にも一段の工夫が必要になるのではないかと思われる次第ではございますなとか思うのでした。


・・・・・・と話が逸れましたがさっきの続き。

『・ 銀行の貸出債権の質に目立った改善はみられない。経済が長期間にわたって停滞する場合、銀行の期間収益を上回る信用コストの発生が続く可能性がある。

・ 株価の下落と金利の上昇が同時に発生するなど、内外の金融資本市場に大きなショックが生じると、銀行の有価証券関係損益が大きく悪化する可能性がある。その影響は金融と実体経済の相乗作用の中で増幅され得る。

・ 銀行は概ね十分な量の外貨流動性を保有しているが、複数の外貨調達手段が同時に活用できなくなるような状況では、追加的な資金繰り対応が必要となる可能性もある。』

だそうなのですが、まあ要旨の方から適当に感想および悪態をば。

要旨本文10ページと11ページ(PDFだと11枚目と12枚目です、以下同様)。

『2.わが国の金融システムにおけるリスク(2)信用リスクB:企業向け貸出の採算』

『・ 銀行の貸出金利は低下を続けている。

・ これには、金融緩和のもとで、銀行の資金調達コストが低下していることや、CP・社債市場で良好な発行環境が続いていることが影響している。また、業態を超えた貸出競争が激化していることも、貸出金利低下の一因となっている。

・ 貸出金利の低下は、銀行の貸出採算を一段と悪化させる可能性がある。

・ 2010年度の中小企業向け貸出金利は、低格付先を除くと、採算を確保できる水準に設定されている。ただし、こうした貸出採算の確保は、最近の各種政策措置により信用コストが減少し、採算水準が通常以上に低下している面が大きい。

・ 仮に信用コストが2006年度以降の平均水準まで上昇する場合、貸出金利が変わらなければ、全体で貸出採算の黒字幅が3割程度縮小する計算となる。』


『2.わが国の金融システムにおけるリスク(2)信用リスクC:住宅ローンの採算』

『・ 銀行の住宅ローンの採算も悪化している。

・ 住宅ローン残高の動向をみると、住宅金融支援機構の減少幅が縮小しているほか、インターネット専業銀行が伸びを高めている。

・ 業態を超えた金利競争の激化は、家計の利払い負担の軽減に寄与する一方、銀行の住宅ローンの採算を悪化させている。

・ 先行き、家計の所得環境が一段と悪化する場合には、貸出債権の質が低下し、信用コストの増加につながり得る点に注意を要する。』

ということですが、いやまあ金融システムレポート的には仰る通りではあるのですが、そもそもあんさんらの金融政策ウィングの方が中小企業支援オペ(はもう終了しましたが)やったり、成長基盤強化と称して低利融資をしろと言わんばかりの施策を打ち込んでみたりしてる訳でございますし、最近ではその成長基盤強化も小口向けとかまで作るという念の入れようでございまして、何つーかまあ仰ることは判るのですが、日本銀行全体として見た場合に「で??」という印象を受けるのはまあ毎度のお話でございます。てか金融緩和長期化してるんだから仕方ないじゃん。


でもって要旨本文15ページ。

『2.わが国の金融システムにおけるリスク(3)市場リスクB:銀行の金利リスク』

『・ 銀行の金利リスク量は増加している。

・ 銀行では、預金の流入が続く中、債券投資が増加しており、預証率が上昇している。
・ 大手行は、短中期ゾーン中心の運用を続けており、平均残存年限は2年半ば程度に抑えられている。
・ 地域銀行では、長期ゾーンへの投資額が引き続き大きく、足もとの平均残存年限は4年程度に達している。』

ということでキタコレという感じですが、この辺の背景に関してはFSRの本文の50ページ以降に色々と書いているので読んで味噌という所ではございます。

ただまあそんな事仰いましてもそもそも政府が国債絶賛大発行しておりまして、一方で民間資金需要の方は相変わらずで資金需要のあるのは政府ですがなというような状態になっているのですからそう言われましても困りますがなという話ではあると思うのですけどね。


そしてストレステスト云々の所は要旨本文の17ページ以降にあります。18ページから。

『3.わが国金融システムのリスク耐性(2)金融資本市場の変化に対するリスク耐性@:国内金利の上昇』

はーい。

『・ ストレス・シナリオとして国内金利が一律に1%上昇するケース(パラレルシフト)を想定しても、銀行の自己資本基盤が大きく損なわれる事態は回避される。

・ パラレルシフトの場合、債券時価損失額は、大手行で3.4兆円、地域銀行で3.0兆円となる(2011年12月末時点、期間収益などを勘案しない場合)。

・ また、自己資本比率(Tier I比率)の押し下げ幅は、期間収益や有価証券全体の含み損益なども勘案したベースでみて、大手行で0.3%pt程度、地域銀行で0.4%pt程度となる。もっとも、地域銀行のうち3割以上の銀行でTierI比率の押し下げ幅が1%ptを超える。』

とまあそういう話でして、実際にはこの金利上昇シナリオってどういう置きになっているのという話は(要旨の図を見ると何となくわかりますけど)詳しくはFSR本文の74ページ以降に詳しく書いてあるのでこれまた読んで味噌という感じです。

ちなみにFSR本文75ページ目にはこのような説明があります。

『また、銀行の資金利益も金利上昇に伴い変化する。大手行では変動金利型貸出や満期が短い貸出が多く、金利の上昇が速やかに貸出金利に反映されることから、金利上昇に伴い資金利益は増加しやすい71。一方、地域銀行では満期の長い固定金利型貸出が多く、金利が上昇してもただちに貸出金利の上昇には結びつかない。このため、地域銀行では金利上昇による調達コストの増加に比べて運用収入の増加は小さく、資金利益は減少する。』

ちなみに71というのは脚注でして。

『71 たとえば、パラレルシフトの場合、金利上昇後1 年間の資金利益の増加額はTier I 資本との対比でみて大手行で0.3%となる。一方、地域銀行の資金利益はTier I 資本との対比でみて0.9%の減少となる。』

とのこと。

『金利上昇により資金利益が増加する場合でも、金利上昇後1 年程度では、資金利益の増加額は債券時価損失額と比べて小さい。このため、短期的には金利上昇は銀行のTier I 比率を押し下げる方向に作用する。パラレルシフトの場合、Tier I 比率の押し下げ幅(期間収益勘案後)は、2012 年度上期末時点で、大手行で0.3%pt 程度、地域銀行で0.4%pt 程度となる72。もっとも、地域銀行のうち3割以上の銀行でTier I 比率の押し下げ幅が1%pt を超える(図表V-2-3)。地域銀行は自己資本対比で金利リスク量が大きい分、金利上昇の影響を引き続き受けやすい状況にある。』

『以上のストレス・シナリオでは、金利が1 年かけて上昇することを想定している。もっとも、過去の相場変動をみると、1998 年末の運用部ショック時や2003年夏のVaR ショック時には、国債利回りが突発的に上昇した(図表V-2-4)。また、最近の欧州でみられたように、財政に対する信認が低下すると国債利回りは短期間のうちに大きく上昇する。このように、市場金利は非連続的に大きく上昇する可能性がある点には十分に注意する必要がある。』(以上ここまでFSR本文75ページから76ページより引用)

という事で、まあ実際問題として財政インフレ懸念みたいな話になったら実はその程度では済まないですがなという指摘もあったりするのがチャーミングではございます。


でですな、銀行の株式保有がどうのこうのというのは毎度毎度FSRが出るたびに耳タコのように出てくるネタなのですが、要旨22ページにはこんなのが。

『4.金融機関の経営課題(1)リスク管理の実効性向上』

つーことで。

『・ 金融機関には、引き続き、信用リスクや市場リスクなどに対するリスク管理の実効性を向上させることが求められる。この際、海外経済の動向や国際金融資本市場から波及するリスクや、各種リスクの連関も考慮しながら、統合的にリスク管理を行うことが重要である。

@信用リスク

・ 業況が悪化した企業に対して経営改善支援のための取り組みを強化し、企業再生の実効性を向上させることが必要。
・ 再生可能性の評価に応じ債務者区分や引当の見直しなど、信用リスク管理面の対応を適切に講じることも重要。
・ 海外貸出についても審査体制の整備・強化やモニタリングの向上が求められる。』

というのがあるのですが、詳しくはFSR本文だと82ページ以降にああだこうだと有るのですけれども、そこを見ますとFSR本文の83ページには・・・・・

『まず、国内貸出にかかる信用リスクについては、中小企業は厳しい財務状況に直面しており、銀行の貸出債権の質に大きな改善はみられていない。金融機関は、業況が悪化した企業に対して経営改善支援のための取り組みを強化し、企業再生の実効性を向上させることが必要である。同時に、再生可能性の評価に応じ債務者区分や引当の見直しなど、信用リスク管理面の対応を適切に講じることも重要である。国内貸出の採算が悪化する方向にあることを踏まえると、信用リスクと貸出金利設定のバランスを点検することも重要である。』

とか何とかありまして、そらまあ金融システムレポートとしては正論なのですけれども、「信用リスクと貸出金利設定のバランスを点検することも重要」と言ってる同じ組織の人たちが中小企業貸出支援だの成長基盤強化の小口版を作るとかしている訳でして(以下同文^^)。

ちなみに、話の流れ上スルーしましたが、株式保有云々の話に関してはその部分を切り取って概説している日銀レビューが同時に出ていまして・・・・・・・

わが国銀行の株式保有と貸出・債券との連関リスク
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j06.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j06.pdf(本文)

要旨から引用しますと・・・・・

『わが国銀行の株式保有は、収益を不安定化させる要因となっている。加えて、銀行は特定の取引先に対し、株式保有とともに多額の融資も実行しており、仮にこうした取引先が倒産すると、銀行は貸出と株式の双方から損失を蒙る。さらに、民間部門の資金需要が低迷する中、銀行では国債を中心とした債券保有が増加している。株価と金利は同じ方向に動くことが多いが、株式と債券のヘッジ効果を勘案しても、銀行の株式保有は大きい。また、金融市場におけるショックなどを契機にこうした関係が崩れると、銀行は株式と債券の双方から大きな損失を蒙るおそれがある。したがって、銀行は企業取引上の相対的なメリットを吟味したうえで、計画に沿って着実に株式リスクの削減を進めていくことが重要である。』(上記要旨より)

まあ中身は本文見てちょという感じで、これはこれでFSRの趣旨を踏まえた話としては正しいのですけれども、そういう話を打ち込む側から成長基盤強化の施策の中でこんなのを出しているのは何ですねんという気はする。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel110614b.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給における出資等に関する特則」の制定について

まあ日銀の理屈を勝手に想像すると、「成長基盤強化の出資等は良い出資だが、それが過ぎるとリスクの集中化に繋がるから程々にしましょう」という話になるとは思うのですけれども、何かまあ株式保有を減らせと言う話をする別の片手では成長基盤強化で出資等をしましょうというのも何だかなあという風には思うのであります。

ま、FSR書いている人たちが一番そのあたりの悪態を意識しているとは思うのですけれども、政策の整合性ってどうなってますねんという風にFSRが出るたびに書くあたくしもあたくしという所で。

#という辺りで時間が無くなってしまったので他の講演会見ネタは華麗にスルー

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2012/04/16

お題「3月決定会合議事要旨ネタと言いつつあたくし的雑感を混ぜています」

ふむ、東京時間はあまり反応してなかったように見えた中国GDPネタだが海外時間になってスペインとの合わせ技一本になったのですか、よー知らんが。

で、3月会合議事要旨である

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120313.pdf

まずは金融政策決定に関する議論の辺りから

○成長基盤強化関連

まずは『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から少々。

『成長支援資金供給について、委員は、執行部提案のとおり、成長支援資金供給の拡充を図ることが適当との認識で一致した。』

ほうほうそれでそれで?

『大方の委員は、デフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくという認識に照らすと、前回会合において、政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化したことと、今回の成長支援資金供給の拡充は一つの政策パッケージと位置付けるべきものとの認識を共有した。』

パッケージという事でその前のどう見ても米国FOMC見て実施しました金融政策に対して成長基盤強化を突っ込む事によって何とか体裁を整えましたとか意地の悪い事を言ってはいけません(−−)。

『そのうえで、ある委員は、今回の施策を打ち出すとともに、わが国経済のデフレの背景についてしっかりと説明していくことが重要であると付言した。』

まあそれもそうなんですが、どちらかというと「金融緩和をしても中々実体経済に対する効きが良くならない件について」っていうお題で説明した方がプレゼン的には良いんじゃねえのかと思うあたくし。と申しますのは、「デフレの原因は成長期待の弱さ」というのはどうも責任転嫁チックに映るお題でありまして、そういう説明をするよりも「金融緩和が実体経済に対しての効きが悪い」という話をした方が、同じ説明するにしても「確かに金融緩和しても企業の資金需要って盛り上がらないですよねえ〜」的な説明となりますし、あまり言い訳というか責任転嫁チックにも聞こえないので宜しいんじゃないかという気がするのですが気のせいですかねえ。

しかしこの成長基盤強化に関してはどこからどこまでが本当の呼び水でどこからどこまでが金融機関の「ご協力」なのかがイマイチワカランチ会長な話ではございましてですな。

『これまでの成長支援資金供給の効果について、複数の委員は、一定の呼び水効果を発揮しているとの認識を示した。また、何人かの委員は、金融機関が引き続き成長基盤強化に取り組むための態勢整備を進めていることを踏まえ、日本銀行として、こうした金融機関の取り組みをしっかり支援していくことが適当であるほか、今般、執行部から示された一連の措置は、かねて金融機関から寄せられていたニーズと整合的であり、適切な対応と考えられるとの意見を述べた。』

どこまでが本当の呼び水でどこまでがヨイショなのかは良く判らんのですが、たぶん最後の辺りにあるのは金融機関のご協力的なヨイショの香りもするんですけど。


○基金オペ関連についてと追加緩和関連雑談

『資産買入等の基金について、委員は、前回会合以降、中短期ゾーンの国債利回りが一段と低下しており、累次にわたり実施した資産買入等の基金の増額は、金融市場に対して一定の効果を発揮しているとの認識で一致した。』

ということで、中短期ゾーンの利回りの低下というのが基金オペの効果、という話になっているのですが、ここのロジックも中々難しい所でございまして、基金オペ自体は65兆円でござるという量で勝負的な見せ方も一方で行っている(特に最近はそういう流れになっている)のですが、そもそも基金オペのスタートの時点では「長めの金利(長期金利では無い点に注意!)およびリスクプレミアムの縮小を促す」という話をしていた(いやまあ今でも上記のようにしているのですが)ので、金利が低下するとか社債やCPのスプレッドが縮小したというのは政策効果が出ましたよという話になるのですけれども、一方で量がどうのこうの的な話をして、65兆円必達体制という事にもなっているので話がヤヤコシヤという感じになっております。

包括緩和ってQEとCEのハイブリッドと言ってしまえばまあ格好は付くのですが、徐々にQEチックな見せ方になっていますし、まあ市場もQE的な意識の方が(もともとそれはあったけど最近は更に)強いという所をもうちょっと整理しないとオペの運営が益々難しくなるんじゃないのかなあとか思うのでございまする。

『さらに、多くの委員は、最近の株価や為替の動きは、欧州債務問題を巡る緊張感の緩和や米国経済の回復を示す経済指標を受けて、グローバル投資家のリスク回避姿勢が後退していることを反映したものと考えられるが、前回会合の決定はそうした動きの後押しにもつながっている可能性があるとの認識を示した。』

さいですな。まあ2月の決定は市場の反応が効きすぎで却ってクレクレに拍車を掛けているという皮肉な結果も招いているのですが。

『一人の委員は、円高修正や株価の持ち直しがみられる状況下において、前回会合で明確化された政策姿勢への理解を市場に一段と浸透させることを通じて、企業の設備投資需要等を顕在化させることが望ましく、そうした観点から、前回会合に続き、長期国債を対象として、資産買入等の基金を増額することが適当との見解を述べた。』

これは宮尾審議委員の追加緩和提案の話(1対8で否決されましたが)ですが、「前回会合で明確化された政策姿勢への理解を市場に一段と浸透させることを通じて、企業の設備投資需要等を顕在化させることが望ましく」っていうのも何かえーという理屈ではあるのですけれども、その辺の金融市場の動きが企業の設備投資云々に繋がらないのが問題のような気もするんですが、まあそれは兎も角として、このロジックで追加緩和提案をしたのであれば、何で今月の会合で追加緩和提案をしなかったのかが良く判らん。

『こうした見解に対し、大方の委員は、現時点における経済・物価の情勢を踏まえると、2月に増額した基金による金融資産買入れ等を着実に進め、その効果の波及を確認していくことが適当との考えを示した。』

まあこれはこれでそうなのですが、展望レポートの時に点検を行ってまだ時間が掛かるので緩和のおかわりをする、という話をするのかそれともとりあえず放置プレイになるのかは微妙は微妙なのでしょうが、ただまあ資産買入等基金の期間が今年末までになっていることですから展望レポートで基金の期間を半年くらい延長して、買入ペースを維持して長期国債で10兆円おかわりとかいうのはロジック的に成り立つかなと。

本当はFRB的な作戦で「買入の残高を維持する事によって緩和が継続される」という理屈を使えば「買入の債券等の償還再投資で緩和継続」とか勿体ぶった方が一粒で二度オイシイのですけれども、最初の所で書いたように、日銀の包括緩和って元々の理屈が量で勝負という形になっていないので、そこは理屈というか屁理屈の再構築作業が必要になろうかと。

でまあその「量で勝負」的な話というか「バランスシート政策」的なロジック(追記:というよりはこれはFRB流のインチキ時間軸という方が正しいですかそうですか)を使うとしますとですな、たとえばの話「資産買入等基金の残高65兆円は今年末までに達成し、その残高を2014年末までは維持する(ただし第二の柱に伴う点検作業付というのを入れておけば宜しいがな)」とか何とか言って絶賛時間軸延長もどきのような話をするというのも有りかなあとか思いますけどどうなんでしょ。

実際問題としては中長期的な物価安定の理解による強力な金融緩和政策の推進という枠組みには「中長期的に+1%のCPI上昇が安定的に見込めるまでは資産買入等基金は維持される」というのが自動的に含まれていて、さすがに2014年末だと微妙だけど2013年末位まではどうせ大楽勝で維持する事になりますし、そもそも論としておそらく日本のインフレフォビア(とゆーよりは「負担は嫌だけど果実は欲しい病」という感じという指摘の方が正しいような気がします・・・・・・)からしてCPI+1%が見えるような頃になったらデフレ脱却を喜ぶのでは無くて「インフレケシカラン」的な話が増えてきてアホ政治家たちが急に態度を帰るに100万ジンバブエドルなので気にせんでええんちゃいますかとも思いますけど。

ただしこの方式の最大の問題点は、展望レポートの見通し期間が2013年度までなので、暦年ベースで2014年3月末で切れている所でございまして、展望レポートで見通しを出してもいない期間の所まで金融政策の時間軸を置くのは(経済データ直接紐付けの時間軸では無い限りにおいて)さすがに理屈に無茶が有りすぎます(まあ大体からして「中長期的な物価水準」という意味では2014年時点での「中長期的な物価水準」がどうなのかという話になるのですからそもそも論として無茶なのですがそこは敢えてスルーしないといかん話ではありますけれども、それが出来なさそうなのが麿クオリティ(というかまあ中銀としてはそっちが普通で逆さ絵オジサンの方がインチキなんですけど、米国様がそれで来ている以上仕方ないと割り切った方が良さそうな・・・・)のですが、だからと言って2013年度末とかにするとFRBと比較されてダメじゃん扱いになって全くの無駄玉になりますので、この際ヤケクソでどうせ鉛筆舐め舐めなんですから(おいおい)2014年度までの見通しを出すようにしたらどうっすかと思ったんですけど(^^)。


○財政ファイナンスの部分を引用しつつ単にそれはマクラであたくしの雑感

途中からあたくしの雑感というか妄想金融緩和ネタになってしまいましたので一旦小見出しを変えてみて上記の続きを。

『累次の資産買入等の基金の増額によって国債買入規模が拡大している点について、何人かの委員は、日本銀行が財政ファイナンスを行っているという疑念を生じさせることを通じて市場の不安定化につながることのないよう、こうした国債買入れの目的を引き続きしっかりと説明し続けていくことが重要と述べた。』

まあ日銀的にはこういう話をするのが大人の対応とも言えますが、そもそも財政ファイナンスへの疑念がどーしたこーしたというのは中央銀行サイドの方が買入なり資金供給無制限攻撃なりを止めるとか縮小するというのであれば別ですけれども(そんなのは今の状況下ではできませんがな)、そーでは無いという状況においては、一義的に政府サイドあるいは政治サイドの方に玉がある訳で、米国にしろ英国にしろ欧州にしろ(ええまあ欧州の場合は一部怪しげな国があってそれが問題になっていますけれども、欧州は財政政策と金融政策の主体が必ずしも一体ではないので別のケースちゃあ別のケース)財政に関しては締め方向で推進を行っており、その流れの中で財政締めているんだから金融政策は緩和的にしてサポートしないとマズーですがなという流れになっている訳ですよね。

然るに、まあ政府サイドは一応財政健全化っぽい話をしてはいます(・・・・ただまあ消費税の話をクローズアップというのも何か違和感があって、本来は社会保障と税の一体改革、というか社会保障の方をどうするのかのデザインが大事な話だとは思うのですけれどもそれは兎も角)けれども、党の方では与党でも野党でも金融緩和しやがれの圧力は掛けるけど財政健全化に関する話はどこへやらという感じなので、そーゆー意味ではまあ玉は日銀には無いので、ここの所って「日銀がしっかり説明云々」というよりも「中長期的な財政の維持可能性についての取り組み姿勢がきちんと示される事が重要」くらいは言ってやれば良いんじゃないのとか思うのですけどどうでしょうかねえ。


○固定金利オペに関して

『何人かの委員は、このところ、固定金利オペについて、6か月物について札割れが生じているほか、3か月物についても応札倍率が低下していることに言及し、札割れは強力な金融緩和が市場に浸透していることの一つの表れであるが、本年末の期限に向けて買入れが実現できるよう、一段と努力する必要があると述べた。』

まあこの論点は先ほども申し上げた通りで、包括緩和の枠組みにおける基金オペの位置づけが微妙にファジーになっているので、残高必達なので札割れ上等とも言えないのですけれども、その一方で政策効果が効いて(というかまあ当初よりもより長いものの買入が増えた結果という面もあるけど)より長い金利(1年とか2年とか)が低下した結果として固定金利オペの札が入らなくなっているという面があって、各種政策が効いて効果が出てくると固定金利オペなどの札割れが起きやすくなって残高が達成できなくなるという何というお洒落な展開という感じですわな。うんうん。



○景気見通しに関連して

という所が大体今回のお題なのですが、景気認識に関する部分で先行き見通しに関する所から少々。

『景気の先行きについて、委員は、1月の中間評価時の見通しに沿って、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』

こらまあ声明文やら金融経済月報にもあるように相変わらずの海外頼み。

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、欧州債務問題の今後の展開や国際商品市況の動向、新興国・資源国における物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が大きいとの見解で一致した。欧州債務問題について、委員は、リーマン・ショックのようなテール・リスクが顕在化する可能性はひとまず低下したとみられるものの、欧州債務問題に対する市場の見方が急変する可能性には引き続き注意が必要であるとの認識を共有した。そのうえで、委員はこの問題が世界経済に対する重石となる構図は大きく変わらないとの見方で一致した。』

・・・・・と3月には認識していて4月の決定会合前にスペインがまた引火モードとなっておられるというのに何でこの前の決定会合ではああいう話になる????

『そのうちの一人の委員は、何らかの問題が顕在化すると一気に金融市場に不安が拡がる一方、「防火壁」が不十分で対応に時間を要するとすれば、今後も金融市場の不安定化は繰り返される蓋然性が高いと付け加えた。』

どう見ても顕在化です本当にありがとうございました。


んでもって消費者物価指数に関して。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ%となっており、先行きは、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。』

というのは兎も角として・・・・・・

『一人の委員は、消費者物価(除く食料およびエネルギー)の前年比マイナス幅が引き続き大きめとなっている点が気がかりであると述べた。これに対し、別の一人の委員は、現行の2010年基準の消費者物価指数では、エコポイント制度の影響から価格下落率の大きいデジタル家電のウエイトが大きくなっており、これが消費者物価の前年比を押し下げていることを割り引いてみる必要があると述べた。複数の委員は、消費者物価について、前年比が上昇した品目の比率から下落した品目の比率を差し引いた計数や刈込平均値が上昇基調にある点などに言及しつつ、緩やかながら基調的に物価が上昇に向かっているとの認識を示した。複数の委員は、最近の原油価格の上昇が今後どのように物価指標の動きに反映されていくのか注意してみていく必要があると述べた。』

ふーんという感じですが、コアコアが低い系の景気の悪い話よりも威勢の良い話の方が多そうな雰囲気。ただまあ金融面の所で・・・・・

『ある委員は、短期的なインフレ予想が引き続き低い水準であることに言及したうえで、こうした動きはインフレ率が中長期的にみて安定的な水準(アンカー)に収束していくペースを遅くする方向に作用するので、十分な注意が必要であるとの見方を示した。』

という話をしている人もいる(何となくさっきのコアコアの話をした人と同一人物の香りがするが)なあという所です。

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2012/04/13

○金融経済月報である

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1204.pdf(4月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1203.pdf(3月)

・現状判断総括判断

『わが国の経済をみると、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(4月)
『わが国の経済をみると、持ち直しに向けた動きもみられているが、なお横ばい圏内にある。』(3月)

ということで、こちらは声明文と同じで語順を変えて判断引き上げキタコレ。

・現状判断の需要項目別

基本的には声明文と同じであります。

海外経済

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、改善の動きもみられている。』(4月)
『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していない。』(3月)

とまあ海外経済の判断を上げている訳ですが、そのタイミングでスペインがアレになったり雇用統計がアレになったりするのが日銀クオリティ。

国内需要項目ですが・・・・・・

『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費は、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。公共投資も、ここにきて増加に転じている。以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(4月)

『輸出や生産は、こうした海外経済の動向や円高の影響などから、引き続き横ばい圏内の動きとなっている。国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費も、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増している。また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資は下げ止まっている。この間、生産や公共投資などにも、先行きの持ち直しをうかがわせる動きがみられ始めている。』(3月)

一度に引用しちゃいましたが、表現が変わっているのが公共投資と生産で、公共投資、生産ともに上方修正になっています。

・・・・・・ということなのですが、今回更にアレなのは引用している部分の冒頭部分にあります所でして、「円高の影響」という部分がしらっと外れているのが何だかなあという感じです。いやまあ確かにちったあ円高是正されましたし流れは止まったような所ではあるのですが、水準的には80円とかですから鉦や太鼓で介入して仙谷さんが防衛ラインがどうのこうのとか言ってた時よりも円高水準なのでありまして、こんな所でいきなり「円高の影響」という文言が外れるのも何だかなあという感じです。

そらまあ短観の想定為替レートが円高になったよねと言いたいのでしょうけれども、ここで文言抜くとか何ちゅうか危機感足りないとか思いっきり言われると思う訳で、もうちょっと考慮という物は無いのかとか思ってしまいますわ。つーかね、麿のこの前の講演とかもそうなのですが、こういうような所でポロポロやっているとそのうち金利市場も日銀の立場とか知らんがな状態になってくるでマッタクモウと思うんすけどねえ。

#一つの文言だけでこれだけ粘着する方もする方とか突っ込まないように(^^)


短観の評価

こちらは今月のみとなります。

『こうしたもとで、企業の業況感をみると、輸出関連業種に慎重さが残っているものの、内需関連業種が改善を続けており、全体として概ね横ばいとなっている。』(4月)

うーむ。


・先行き見通し総括判断に変化なし

『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(4月)

『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(3月)

「次第に横ばい圏内の動きを脱し」という文言が外れていますが、これは冒頭の語順変更と平仄を合わせておりますな。


・先行き見通し需要項目別

『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、復興関連需要などを背景に、引き続き、公共投資は増加し、住宅投資も持ち直し傾向をたどると考えられる。設備投資は、企業収益が次第に改善するもとで、被災した設備の修復・建替えもあって、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要を反映し、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(4月)

『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。設備投資は、当面、海外経済減速などの影響は残るものの、被災した設備の修復・建替えもあって、基調的には緩やかな増加を続けると予想される。住宅投資、公共投資は、復興関連需要の顕在化などから、徐々に増加していくと考えられる。個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。こうした内外需要のもとで、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(3月)

またまた一気に引用しちゃいましたが、設備投資の見通しが「基調的には緩やかな増加を続ける」とあったのが、今回は「緩やかな増加基調を続ける」とありまして、これが上方修正かと言われると甚だ微妙なのですが、大体従来の日銀作文からすると「基調的には」というのを頭につけているのは「うーん、たぶんそうなると思うんですけどまあ何ですなあ〜」的なニュアンスである、という事を示しますので、そーゆー意味では上方修正。

公共投資と住宅投資が「徐々に増加」から公共投資が「増加」になって住宅投資が「持ち直し傾向」となっているのが謎でして、公共投資は伸びるけれども住宅投資はそこまで伸びないという事なのかとは思いますが、じゃあ何で今回から声明文などに公共投資と住宅投資を入れましたねんという気はする。

しかしまあ何ですな、「企業収益が次第に改善するもとで」という文言が今回入っているのですが、こういう月報の出る所で電器関連のあばばばばーな決算が出てくるとゆーのが相変わらずの日銀クオリティ炸裂という所で、何かトーンとして明るめの(声明文もそうでしたが)金融経済月報が出る側から逆の事案が出るというのが間の悪さを感じさせまして誠に香ばしい様式美を感じます次第。


・物価に関しては変化なし

まあカワランチ会長という事で。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、概ね横ばいとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(4月)
『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、概ね横ばいとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(3月)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、強含むとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(4月)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きなどを反映して、当面、強含むとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(3月)

変化が無いとゆー事はつまり展望レポートと同時に・・・・(^^)


・金融面もほぼ変化なし

引用すると長くなるので割愛しますが、基本的に変わらずで、CPと社債の発行残高が前年比減少した話がある程度で特段のインプリケーションはございません。

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2012/04/11

○声明文比較でござるの巻

まずはお約束の声明文比較。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120410a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120313a.pdf(前回)

・景気認識は微妙に引き上げています

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済では緩やかな改善の動きが続いているほか、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっている。国際金融資本市場も、総じて落ち着いている。』(今回)

『海外経済をみると、全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済にこのところ改善の動きがみられているほか、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっている。国際金融資本市場も幾分落ち着きを取り戻してきている。』(前回)

ということで、まず海外に関しては米国経済の改善について「動きが続いている」と上方修正していて、国際金融資本市場に関しても「総じて落ち着いている」とこれまた判断を引き上げています。


んでもって日本景気の判断に関して。

『わが国の経済は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている。』(今回)
『わが国の経済は、持ち直しに向けた動きもみられているが、なお横ばい圏内にある。』(前回)

まるで国語のテストのようですが(^^)、語順を変えるとニュアンスが変わる典型ですなこれ(^^)。

次が需要項目別。

『輸出は、これまでのところ横ばい圏内にとどまっている。国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費は、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増しているほか、住宅投資も持ち直し傾向にある。公共投資も、ここにきて増加に転じている。以上の内外需要を反映して、生産は、なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている』(今回)

『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増している。一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高の影響などから、引き続き横ばい圏内の動きとなっている』(前回)

語順が変わったり微妙に新しいのが入っていたりで比較するのがめんどいですが、今回分の語順に則して読みますと、設備投資と個人消費は前回と同じ、生産に関しては「横ばい圏内→持ち直しに向かう動きがみられる」となっていまして判断若干の引き上げです。

また、住宅投資に関しては声明文で従来特段触れていない期間が長かったのですが、こちらは金融経済月報の方では毎回記述がありまして、3月の月報では「持ち直し傾向にあり」となっているので判断据え置き(ちなみに月報では昨年11月から同じ表現です)でして、公共投資に関しては3月声明文の何故か先行き見通し部分で『実際、このところ、生産や公共投資などにも先行きの持ち直しをうかがわせる動きがみられ始めている。』となっているので現状判断上方修正です。なお、今の引用部分にありますように、生産に関しても公共投資と同様に前月の段階で先行きの持ち直しに関する言及があり、その見通しに沿った動きが出ている、という話でもございます。


金融環境と物価。

『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

ということでこちらは同じです。


・先行き見通しは変わらずですが・・・・

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。実際、このところ、生産や公共投資などにも先行きの持ち直しをうかがわせる動きがみられ始めている。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

基本的に見通しは同じなのですが、「次第に横ばい圏内の動きを脱し」というのが抜けている、ということは、ここの字面比較だけで言えば、今回は日銀をして現状認識が横ばい圏内の動きを脱しているという話でもあったりするのですが、まあ最初の所では「なお横ばい圏内にあるが、持ち直しに向かう動きがみられている」としているので、そこまでの判断上げではないのでしょうけれども、まあこの辺トーンが強くなりました罠という事で。


・リスク要因

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、国際商品市況の動向、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などに、注視する必要がある。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や国際商品市況の動向、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(前回)

ここは読点と改行位置しか変わっていません(改行部分は反映させていません)が、変化したのはおそらく出来上がり時のレイアウトの関係だと思われます。


・決意表明みたいな部分

ここの表現変化も味わいが深い。

『日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することがきわめて重要な課題であると認識している。デフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しの双方を通じて実現されていくものである。こうした認識のもと、日本銀行としては、強力に金融緩和を推進していくとともに、成長基盤強化を支援するための資金供給を通じて、日本経済の成長基盤強化に向けた民間金融機関による取り組みを支援していく。本日の会合では、前回3月の会合において骨子素案を決定した日本銀行が保有する米ドル資金を用いた新たな1兆円の資金供給枠(米ドル特則)について、別紙のとおり詳細を決定し、実施することとした。』(今回)

『日本銀行は、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断している。そのうえで、当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを条件とする。併せて、本日拡充を決定した成長支援資金供給を通じて、わが国経済の成長支援にも取り組んでいく。』(前回)

今回は「中長期的な物価安定の目途」に関する話から「デフレ脱却が重要」「でもデフレの脱却は金融政策だけじゃなくて成長力の強化が必要ですよ」という話をしているのが注目される所でございます。

まあどう解釈するのかが何とも難しいのですけれども、あたくしめは「デフレ脱却の重要性を強調してやる気を見せた」+「政府に対するメッセージというか玉投げ」であると解釈してみましたがどうでしょうか。

・・・・・・・・とはいえ、まあ当然の如く残念な話ですが、決定会合に関する報道を見てもここら辺の話ってあんまりない(さすがに本職の皆様のレポートにはこの点を指摘する人はいますので、まあおまいらそういう人のレポートを読んでおけと思うのですが^^)わけで、まあ政府、というか政治サイドが自分たちの所に玉が飛んでいるという認識はねえわなと思うのでありまする。まあいつものクオリティなので驚きませんが。


○ドル特則の詳細決定

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120410a.pdf
「成長基盤強化を支援するための資金供給における米ドル資金供給に関する特則」の制定等について

『4.貸付利率

貸付利率は、基本要領6.(1)の規定にかかわらず、貸付実行後、当初6か月間は、貸付の通知日における米ドルの6か月物LIBOR(英国銀行協会が公表するLondon InterBank Offered Rateをいう。以下同じ。)を適用し、それ以降返済期日までの間は、6か月経過時における米ドルの6か月物LIBORを適用する。

5.貸付金額
貸付金額は、貸付先の希望する額とする。ただし、その金額は、基本要領8.の規定にかかわらず、6.に定める貸付限度額および当該貸付先が差入れている共通担保の担保余裕額相当額を超えることはできない。

6.貸付限度額等
(1)貸付総額の上限は、基本要領9.(1)に定める貸付総額の上限とは別に、120億米ドルとする。

(2)貸付先毎の貸付額の上限は、基本要領9.(2)に定める貸付先毎の貸付額の上限とは別に、10億米ドルとする。

7.貸付受付期限

6.(4)に定める貸付限度額算出の根拠となる時点は、借り換えにかかるものを除き、平成26年3月31日以前に限る。

(附則)
本措置は、本日から実施し、平成30年6月30日をもって廃止する。』


てな感じで一部拾って引用しましたが、まあ要するに6か月LIBORで最長4年程度の貸出をしますよという話で、対象が外貨建ての投融資に関わるものという、大体3月会合で示された骨子にあるような内容。全体で120億ドルまでということで、現在の為替換算で概ね1兆円程度という話でございますな。

まあ以前政府の出した総合円高対策の日銀バージョンみたいなもんですが、日銀の場合はJBIC経由での貸出とかではなくて、金融機関相手の貸出になるので日銀的には金融期間相手のリスクを取っているという話ですし、そもそも共通担保を担保として取るので、まあ円建て担保でドル貸しますよ系の話ではありますわな。

特段どうという話でも無いようなあるようなという所ですが、一つ言えるのはこれで日銀が昔から持っているドル資産が財務省に移管とかしにくくなりましたねという所ですわな。


○何故か今回は宮尾審議委員が追加緩和提案見送り

声明文ですけど。

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注))。』

脚注ではこうですな。

『(注)賛成:白川委員、山口委員、西村委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員。
反対:なし。』

・・・・・・・・宮尾審議委員は何で今回追加の資産購入提案をしなかったのか理解に苦しむ。

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2012/04/06

○生活意識アンケート

一昨日出ていたのですが(汗)
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1204.pdf

『』つけるとうっとうしいので引用しますが以下『』をつけません。ちなみに表抜きのQ&Aは16ページ以降にございます。

・先行きの景況感が若干改善とな

Q3. 現在の景気をどう感じますか。

1 良い0.1 ( 0.2 )
2 どちらかと言えば、良い1.2 ( 1.3 )
3 どちらとも言えない17.0 ( 14.9 )
4 どちらかと言えば、悪い52.5 ( 52.8 )
5 悪い29.0 ( 30.4 )

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。

1 良くなる6.7 ( 5.2 )
2 変わらない55.9 ( 53.3 )
3 悪くなる37.1 ( 41.1 )

()が前回調査の数字ですが、現状認識に関してやや改善・・・・と言っても「悪い」系が「どちらとも言えない」に昇格しただけなので大した改善とは言い難いものがありますし、先行きに関しても単に「悪くなる」が減った程度というのが残念な所ですが、まあ悪くなるよりはマシ。


・まあこのアンケートの見どころは物価に関する部分である

Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった6.6 ( 5.8 )
2 少し上がった41.4 ( 40.9 )
3 ほとんど変わらない39.0 ( 39.2 )
4 少し下がった11.8 ( 12.1 )
5 かなり下がった0.7 ( 1.2 )

Q12-a.(Q12で1または2『上がった』と答えた方へ)「物価」が上がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ2.0 ( 1.2 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ84.1 ( 85.3 )
3 どちらとも言えない13.1 ( 13.2 )

Q12-b.(Q12で4または5『下がった』と答えた方へ)「物価」が下がったことをどのように思いますか。

1 どちらかと言えば、好ましいことだ28.8 ( 35.3 )
2 どちらかと言えば、困ったことだ29.9 ( 27.3 )
3 どちらとも言えない39.9 ( 36.7 )

ということで、まあこれは既に本職の方も指摘していましたが、物価が下がったと答えた人の中で「物価が下がったことが好ましいことだ」と答えた割合が6.5ポイント低下しているのはまあこら良い傾向でもありますなあと思われる次第で、これだけデフレ脱却がどうのこうのという話がそこらに広がっている中で、やっとデフレケシカランというのが一般ピープルの人口に膾炙してきたというのは結構な事ではございますなあと存じます訳で、この辺りはリフレ政策どうのこうの言ってる方々の宣伝も効果を表しているんじゃないかと思いますけどね(^^)。

とは言いましても、物価が上がった方の「困った事だ」の方は相も変わらずの有様でございまして、そらまあ自分の生活での話とマクロ的に好ましい話は違いますからというのはありますけれども、インフレフォビアの方が相変わらずの中でさて現在のヘドニック効きまくりのCPIが1%だの2%だの上昇した時に国民の皆様は何を言い出すのやらというのがテラオソロシスではございます。


・更に物価のアンケートより

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。

平均値:+3.4 ( +3.2 )
中央値:+0.5 ( +0.5 )


Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。

平均値:+4.0 ( +3.6 )
中央値:+2.0 ( +2.0 )


Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。

平均値:+4.3 ( +4.0 )
中央値:+2.5 ( +2.0 )

一応先行きの物価の上昇予想については引き上げになっていますが、まあよくよく考えてみますと足元までの物価上昇の認識が平均値で+3.4なのですから先行きの+4.3ったって足元の部分をほぼゼロに補正すると先行きが+1.0程度で、基本的にこれが高めに出てくるという傾向を勘案するとまあそんなに高くないですね、という話になるんでしょうな、残念無念。


・日銀のホームページに関する回答とかに泣いた

20ページにこんなのがありました(^^)。

以降のQ21〜23は日本銀行の広報活動に関する質問です。

(注)今回特別に調査。なお、3月および9月調査ではその時々の情勢を踏まえながら個別のテーマに関する調査項目を設定しています。

Q21.日本銀行では、日本銀行の政策や業務などについて多くの方々に知っていただくために、様々な広報・PR活動を行っています。日本銀行が行っている情報発信や広報・PR活動のうち、ご存知のものはありますか。【複数回答】

1日本銀行ホームページによる情報発信 9.5
2日本銀行の政策・業務などに関する新聞・TV・インターネットなどを通じた報道 26.9
3総裁・副総裁・審議委員による記者会見・講演 21.8
4各種統計の公表 15.8
5各種調査レポートの公表 6.7
6日本銀行本支店における店内見学 3.8
7季刊広報誌「にちぎん」の発行 4.7
8広報パンフレットの作成・配布 2.2
9貨幣博物館(日本銀行本店)や金融資料館(日本銀行旧小樽支店)における展示 7.6
10日本銀行本支店における様々なイベント(親子見学会、特別展示、日銀グランプリなど) 2.1
11政策や業務に対する幅広い意見の聴き取り 2.4
12いずれも知らない 44.7
13その他 1.2

>いずれも知らない 44.7
>いずれも知らない 44.7
>いずれも知らない 44.7

。・゚・(ノД`)

Q22.日本銀行では、インターネットのホームページを通じて金融や経済に関する様々な情報を日々発信しています。これまで日本銀行のホームページをご利用いただいたことがありますか。

1よく利用する(平均月1回以上) 0.0
2利用したことがある 5.2
3利用したことはない 93.6

>利用したことはない 93.6
>利用したことはない 93.6
>利用したことはない 93.6

(;∀;)イイハナシダナー

Q22-d.(Q22で3「利用したことはない」と答えた方へ)これまで日本銀行のホームページをご利用にならなかった理由は次のうちどれですか。【複数回答】

1日本銀行や金融・お金のことについて関心がないから 20.7
2ホームページでどのような情報が得られるのかを知らないから 33.5
3新聞・TV・インターネットなどの報道から得られる情報で十分だから 31.4
4その他 4.3
5インターネットを利用しないから 25.2

>インターネットを利用しないから 25.2
>インターネットを利用しないから 25.2
>インターネットを利用しないから 25.2

ちょwwwwwどういうサンプルなんですかとかつい思ってしまうのですが、世の中的にはこんなもんなんですか、あたくしも趣味で金融政策ストーカーとかかなり浮世離れしている人間ですので良く判らんのだが、まあこの調査のサンプルが金融に関心のなさそうな人になっているというのは把握した。

まあいずれにせよ広報担当涙目のアンケート結果ではございますわな。


つーことで、最後のコーナーは余談ですけど、まあ今回のアンケートでは「デフレはケシカラン」というのがようやっと定着しつつある兆候が見えますなあというのが収穫ですが、一方でインフレフォビアは相変わらずだし、先行きの物価見通しに関してもそんなに大きな変化は見受けられず、やや上昇はしたものの、中長期的に望ましい水準にCPIベースの出来上がりで成る為にはちょっと厳しいんじゃないですかねえというようなお話なんですかね、よー知らんが。

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2012/04/03

○短観である

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1203.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1112.pdf(前回)

製造業大企業の現状判断DIが前回対比横ばい、ということでまず一発目の印象は「もっと良いと思ったのに拍子抜け」という所ではございましたが・・・・・・・・


・前回の先行き予測DIの達成状況

           (12月時点)     (3月時点)
           現状→3月予測    現状→6月予測
製造業大企業   ▲4→▲5       ▲4→▲3 
製造業中堅企業  ▲3→▲10      ▲7→▲8        
製造業中小企業  ▲8→▲17     ▲10→▲15

非製造業大企業   +4→+0      +5→+5
非製造業中堅企業  ▲4→▲8      ▲1→▲5
非製造業中小企業 ▲14→▲21    ▲11→▲16

前回はこの辺見ながらこんなまとめをしていました。

でまあ製造業大企業はプラスから更に改善予想だったのがドテンマイナスになって先行きベクトルも下向きですね、というのは確かにそうなのですが、こよくよく見ると非製造業の方は前回の先行き予測DIよりも良い数字が今回の現状判断DIに出ていまして、非製造業大企業に至ってはプラス4ですよ奥様凄いですわね〜という感じでして、製造業大企業のヘッドライン数値はアレでございましたが、非製造業は概ね前回の予想よりも景況感が良くなっており、製造業に関しても大企業以外に関しては9月短観における先行き予測DIをほぼ達成またはより改善しておりまして、製造業大企業のヘッドラインが前回から悪化するわ先行きのベクトルも下ですけど、他の所はそこまで悪くないという感じですな。

とはいえ、製造業大企業の悪化がラグを伴ってこれから効いてきますよね、という話でもありますよね。(前回12月16日の駄文より)

で、今回はまーよーするに12月に悪化した分をどのくらい取り戻せたかという話になるのですが、現状判断DIの推移をみると製造業が全般悪化気味、非製造業が引き続き好転傾向という流れが今回も変わらずというのが何だか妙っちゃあ妙な展開ではございますな。で、先行きDIの達成状況という面で言えば12月に予想されていた悪化ほどの悪化を示していない、という点ではこれはまあ良い傾向っちゃあ良い傾向ではありますが、まあ製造業の現状判断DIが傾向として沈み気味なのがやや遺憾であります。

まあ何ですな、非製造業が妙に堅調なうちに製造業が戻ってくるのが先か、製造業のヘロヘロに引っ張られて非製造業もコケるのが先かという話になるんでしょうか、良く判りませんけど。


・雇用判断DI

           (12月時点)      (3月時点)
           現状→3月予測     現状→6月予測
製造業大企業   +6→+7       +8→+8
製造業中堅企業  +9→+8       +4→+9
製造業中小企業  +7→+8       +8→+9

非製造業大企業   +1→▲1      ▲2→▲2
非製造業中堅企業  ▲2→▲3      ▲3→▲4
非製造業中小企業  ▲2→▲1      ▲4→▲4

こちらも前々回、前回と同様の傾向が続き、引き続き非製造業のDIの方が強めになっており、現状判断DIでマイナス(というのは人手不足ということ)という状態になっているのが非製造業、ということでして、これまた現状判断DIで見られる非製造業の方が強めな上に、製造業の雇用人員判断は大企業とかを見ると悪化(全体集計すると前回の+8から今回+8で変わらない)している一方で非製造業の雇用人員判断DIが改善続くとゆー傾向がこれで半年くらい続いておりまして、この分裂気味の流れってサステイナブルなのかどうかが気になる次第ではございます。

まあ雇用吸収力という意味では非製造業の雇用判断DIが改善(つーか現状でも先行き予想でも人手不足!)なのは良い話ではあるのですが。


・想定為替レート

前回に続き今回も反応。折角だから前回の分も見ながらここ9か月の流れをいれてみませう。

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)     2011年度全体 (上期) (下期)   2012年度全体 (上期) (下期)

2011年6月調査       82.59   82.59   82.59         −    −    −
2011年9月調査       81.15   81.26   81.06         −    −    −
2011年12月調査      79.02   80.26   77.90          −    −    −
2012年3月調査       78.93   80.20   77.69        78.14   78.04  78.24

意外に為替レートが保守的になっているのがほうほうという感じですが、まあ皆様が指摘しておられるように、この想定レートだと為替が80円台推移とかになると企業収益は全体としてはウハウハになるという話ですな。


・相変わらずの金融商品取引業クオリティ

毎度申し上げておりますように、本来は「証券会社」だけをカテゴリーにして集計して頂きますと非常にオモシロ集計になる(「投資業等」が入った分だけ動きがマイルドになってしまって誠に残念無念^^)ので、個人的には証券業っつーかセルサイドを別カテゴリーにして頂くのキボンヌ(^^)。

            (12月時点)    (3月時点)
           現状→3月予測   現状→12月予測
金融商品取引業  ▲30→▲20     ▲10→+16

前回は「前回予測がドンピシャで当たっている」という怪奇現象(?)が起きた訳ですが、今回はまあ普通に見通しよりもよろしゅおすえという結果。で、調子に乗って先行き見通しが堂々のプラスになっているのですが、これはどう見ても死亡フラグに見えてしまうのは悲観脳ですかそうですかどうもすいません。


・で市場は華麗にスルーというのが最早短観の様式美&景気判断的にどうよ

もうね、短観と言えばかつては一大イベント扱いだったのですが、もうここのところ延々とそうなんすけど短観でも債券市場が全然反応しないどころか、昨日は期初の売り攻撃だか何だか知りませんが、短観弱めに出ているのに債券市場下がるでござるの巻となる位に経済指標の扱いがアレですな。

で、日銀の景気判断どうなるのという話ですけれども、まあ基本的には「先行きは緩やかな回復基調」という見通しに整合的な流れですし、大体からして(いつも申し上げておりますように)回復局面において先行き判断DIは控えめに出る傾向がありますので、引き続き非製造業の改善が続くということでそこまで悪くも無いっちゅうことっすかね。よー知らんけど。

まああまり良い数字が出ちゃうと追加緩和という話をするときに益々政策の整合性がアレになるので適当に弱めの数値も出ていて「景気回復傾向がまだ強くないのでそれを後押しするんですぅ」とか何とか言って追加緩和するのには良い言い訳になったのではないでせうか(^^)。

ちなみに、時間軸政策およ中長期的な物価安定の理解というフレームから整合的な追加緩和(まあ買入拡大というよりは買入期間の延長と、国債買入の拡大をセット販売する(=買入ペースを維持して半年くらい伸ばすと基金買入の国債残高は自動的に増えるので、ただしこの手はあと1年くらいしか使えないのが残念)とかそんな話でしょ)をするのは展望レポートでの見通し公表という所で、米国様のように半年以上時間軸を放置プレイをしていても大丈夫な国だと楽なのですが、日本の場合はクレクレ連中が五月蝿いので半年位でやっとかないといかんでしょという話っすよねえ。残念な話ですが。


といういつもの話でした。

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