決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2014年度下期に書いた分)

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2010年度までの見出しはこちら

2015/03/31「考査方針で色々言ってるけど金融政策との整合性が微妙に変」
2015/03/25「日銀から市場分析絡みのペーパーが期末なので幾つか出ています」
2015/03/24「2月議事要旨ネタ続き」
2015/03/23「2月決定会合議事要旨は「物価の基調を総合判断」に傾いている状況が示されています」
2015/03/19「レポ市場に関するペーパーが出ているのだが国債決済期間短縮先にありきな感じに見えて残念(メモ)」
2015/03/18「3月声明文では遂に目先の物価マイナス転の可能性を言及するが基調は変わらず攻撃キタコレ」
2015/03/10「債券市場サーベイは案の定絵誘導性の低下を懸念と」
2015/02/26「2月月報はやはり1月対比でちょこちょこと上方修正」
2015/02/25「1月議事要旨は12月と比較すると従来の野党審議委員の主張が多数意見化している件について」
2015/02/24「1月決定会合議事要旨は10月の緩和は何だったのかという追加緩和全くやる気のない内容」
2015/02/19「2月決定会合声明文は全体的にシンプルになり内容的には結構強くなりました」
2015/02/02「1月金融経済月報はやや上方修正」
2015/01/29「またまたアリバイ市場との対話が打ち込まれるの巻」
2015/01/27「12月決定会合議事要旨が1月会合の伏線になっているのだが伏線過ぎて後付予定調和の可能性が」
2015/01/22「日銀まさかの(ほとんど)ゼロ回答なMPMで追加緩和時期は10月までなさそう」
2015/01/19「さくらレポートの地域の視点が微妙に大本営発表チックですな」
2015/01/16「支店長会議関連:挨拶が妙に短いですな」
2015/01/15「5年金利がゼロに沈んだ翌日に債券市場サーベイの2月実施がアナウンスとな」
2015/01/09「生活意識アンケートの結果が日銀に極めて手厳しい件」
2014/12/29「12月金融経済月報は声明文と同様に謎に強い景気認識/11月議事要旨で示された「前向きの循環」の証拠が12月の経済指標で悉く覆されている件について」
2014/12/22「12月決定会合は謎の景気判断上方修正&総裁会見がイカサマロジックの香り」
2014/12/17「短観の物価見通しアンケートは特段面白くもないヨコヨコの内容」
2014/12/16「12月短観は可もなく不可もない内容のようですな」
2014/12/02「謎の日銀リサーチラボシリーズが投下されました」
2014/11/26「アリバイ対話会合アナウンスとな/結局追加緩和の理由が訳分からない10月31日議事要旨なのでした」
2014/11/20「決定会合声明文は微妙な上げ下げをしているが相変わらずゴテゴテして見苦しい」
2014/11/07「10月1回目の決定会合議事要旨は次回の追加緩和の予兆が全く示されていないのが特徴」
2014/11/06「決済高度化に関するペーパーが出ています(メモ)」
2014/11/03「追加緩和関連のレビューです」
2014/10/27「FSRの不動産関連部分の記述が面白い件について」
2014/10/23「10月金融経済月報から:執行部の逃げ理論の片鱗が少々」
2014/10/22「WPの法務関連シリーズで顧客資産の扱いの法的論点が面白そう(ただしメモのみ)」
2014/10/21「さくらレポートが仙台支店を除いてすっかり執行部忖度モードで無駄に強い件」
2014/10/14「短期市場サーベイが間の悪いタイミングで投下/9月MPM議事要旨を鑑賞」
2014/10/10「貨幣史ネタで幕末の話がかなり面白そう(メモ)」
2014/10/09「マクロストレステストに関する纏めのペーパー来ましたよ(メモ)」
2014/10/08「声明文はまたまたヘッジクローズが入る/白井さんの謎提案またキタ/くだらない国会質問でMPM中断」
2014/10/02「短観は久々に「見通しDIの未達」が発生と怪しげな内容」
2014/10/01「金融研究所DPSの金融史ネタは実に面白い(マニア的に)」

2015/03/31

○日銀の来年度考査方針が出ている件について

先週金曜に出ていたのですけど(汗)。
http://www.boj.or.jp/finsys/exam_monit/exampolicy/kpolicy15.pdf
2015 年度の考査の実施方針等について

まずは『(2)考査でみられた課題』から引用。

『日本銀行は、2014 年度の考査で、金融機関の業務と財産の状況の的確な把握に努めるとともに、リスクプロファイルに見合ったリスク管理の実効性を点検した。』

ここで日本銀行のリスク管理はどうなっているなどと聞いてはいけません(MPMでいるも点検してますもんね!!!!)

『わが国の景気が緩やかな回復基調を続ける中で、金融機関の経営体力やポートフォリオの質は全体として改善してきており、貸出や有価証券運用などの面でリスクテイクを積極化する動きもみられた。』

ポートフォリオリバランスキタコレですねわかります。

『各金融機関は、引き続きリスク管理体制の整備を進めているが、貸出や有価証券運用の積極化や新規業務への取組みなど、リスクプロファイルの変化に見合った管理体制の整備に課題のある先がみられた(主な課題については、別添参照)。』

日本銀行いや何でもないです。

『大手金融機関は、国際的な業務展開とグループベースの経営戦略を進めており、グローバルかつ複雑なリスクを適時に把握し、経営に活用していく力をいかに高めていくかが課題となっている。一方、地域金融機関は、おしなべて基礎的収益力が低下傾向にあり、先行きも人口減少などによる営業基盤の縮小を予想する先が少なくない。そうした金融機関では、これら環境変化を踏まえて、地域の成長力向上に貢献しつつ、より長期の収益力をいかに向上させていくかが課題となっている。』

・・・・・・・・・・・まあそれはそうなのだがイールドカーブに過度な低下圧力をかけて長期金利を下げることによって預貸利鞘をガシガシ削っているのがマネタリーポリシーウィングな訳でorz

次が『3.2015 年度の考査の実施方針』ですが、細々引用するのも何ですので『(1)基本的な考え方』を引用。

『金融機関は、金融仲介機能を適切に発揮し、企業や家計の経済活動、ひいては、国・地域の成長力向上に貢献していくことが期待されている。経済のグローバル化や人口の減少・高齢化など、わが国の経済が直面する諸課題に対応し、活力ある産業構造を実現していく上で、金融が担うことのできる役割は大きい。金融機関がこの役割を安定的に果たしていくためには、明確な経営戦略に基づいてリスクテイクを行うとともに、リスクを適切に管理し、将来にわたって経営の健全性を維持していくことが重要である。日本銀行は、こうした認識や、2014 年度の考査でみられた課題を踏まえ、2015 年度の考査を以下の考え方に基づいて実施していく。』

というのがマクラでして・・・・・・・

『第一に、金融機関の経営戦略や業務運営方針を確認した上で、資産査定や、有価証券運用・新規業務などの調査を行い、ポートフォリオの質や資産負債構造など金融機関のリスクプロファイルについて、その足許の状況と先行きの方向性を把握する。』

『第二に、金融機関のリスクへの対応力を点検する。』

『第三に、金融機関の経営・業務の状況に応じ、先行きの金融経済情勢の変化やストレス発生時における収益・経営体力への影響と対応を点検する。』

『第四に、2008 年度以降実施している「リスクベース考査」の枠組みのもとで、めり張りのある運営を一段と強化していく。』

でまあ中身の方は全部引用すると長くなるので引用端折っているので上記資料を読んでちょという所ですけれども、内容的には「特に海外業務や有価証券投資業務のリスク管理がちゃんとできているのか」というあたりと、「大手機関の場合は傘下グループも含めて網羅的に点検しますよ」という辺りがあって、地域金融機関に関しては第三の所に・・・・・・

『地域金融機関は、おしなべて基礎的収益力が低下傾向にあり、先行きも人口減少などによる営業基盤の縮小を予想する先が少なくない。こうした点を踏まえ、考査では、ダウンサイドリスクを含む複数のシナリオのもとでの収益シミュレーションを実施するとともに、より長期での地域経済・営業基盤の展望と、そのもとでの課題認識や対応方針を確認する。』

とあるのがお察しという所ですかそうですか(−−;

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2015/03/25

○日銀から(期末接近なので)色々とペーパー類が出ている訳だが

・国債市場の流動性についてのペーパーはこの前の中曽副総裁講演よりはだいぶマシにはなったものの・・・・・・

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2015/wp15j02.htm/(サマリー)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2015/data/wp15j02.pdf(本文、ちと長いので注意)

サマリーの方から。

『市場の「流動性」が高い、あるいは低いといった表現は良く使われるが、その意味するところは必ずしも一様ではなく、「流動性」を定量的に測定することも容易ではない。そうした制約を踏まえたうえで、本稿では長期国債先物、現物国債、SCレポなどさまざまな市場の取引データを用いて新たな流動性の諸指標を構築し、国債市場の流動性について多面的に考察する。』

11月の中曽副総裁講演で先物市場では売買ができているから問題がないという話をしていたり、短国マイナス金利知らんがなとか言い出してそのあと日銀トレードは跋扈するわ流動性低下ヒャッハーとなるわで、それが1月21日のMPMで破裂して22日以降の北斗の拳相場になったわけですが、それに比べればまあだいぶマシではあります。11月の中曽講演への悪態はこちら


『先物市場のビッド・アスク・スプレッドや値幅・出来高比率といった伝統的な指標をみる限りでは、2014年10月の量的・質的金融緩和の拡大以降も、国債市場の流動性は目立っては低下していないようにみられる。』

結局それか!

『しかしながら、先物市場におけるいわゆる「板」の厚みや1回の取引が市場価格に及ぼす影響、現物国債市場における証券会社の提示レートのばらつき、SCレポ市場における国債の「貸借料」など、本稿が新たに取り上げる諸指標は、2014年秋以降、国債市場の流動性が低下していることを示唆している。』

低下していることを示唆しているとかいうレベルじゃないんですけどね。

『これは、この時期の長期金利の急激な低下や短期・中期ゾ−ン金利のマイナス化を反映した一時的なものである可能性がある一方、日本銀行による巨額の国債買入れや市場の構造変化、金融規制の変化などを反映している可能性もあろう。国債市場の流動性については、今後とも幅広い指標を用いながら継続的かつ多面的に点検していくことが有益と考えられる。さらに、市場参加者とのコミュニケーションを通じて、上述のような各種指標に表れにくい市場流動性に関する見方なども丁寧に確認していくことが求められる。』

・・・・・・・・とまあそういう説明で、結局「一応気にしていますよ」というのは分かったのだが、そもそも金利低下やマイナス金利化が日銀買入のせいだろとか、金融規制云々の話をしているが本当に流動性のある市場なら別に他の参加者が出てくるだろとか思う訳で、ほぼほぼ日銀の無慈悲買入のせいだろオメーとしか思えないのだが結論はまあこの程度ですかそうですかとゆー所ですが、まあヨイショレポートしか出てこないのではというような中で一応は日銀買入の影響について言及しているだけだいぶよろしいんじゃないですかねとは思います。

ちなみに中身なのですが、現物の所でエンサイドットコムとかの電子取引プラットフォームでのデータを使うんだったら、そもそも現物債の店頭取引が円滑に行われるために必要不可欠な業者間売買のブローカー取引部分についての集計をした方がよろしいと思いますし、ブローカー取引が活発であればディーラーのポジションがほぐれやすいので対顧取引もやりやすいというものでありまして、業者間売買取引(アウトライトと入替取引の出来高とか日中ボラとか板の厚さとか)についての考察があると大変に読みやすかったと思いますけどどうなんでしょうかね。

あと、先物と現物債の相関がどうのこうのが市場流動性指標というのはイマイチ良くわからん分析で、イールドカーブがバカスカ動いたらそこの相関って関係なくなる(まあイールドカーブが無茶苦茶に動く市場だから流動性が無いという言い方も分からんではないが)ので、そこってクソ真面目に分析するもんかね(日中のイールドカーブのボラティリティを計測するのであれば意味があるかも知れないけれども)と思うのですけどね、うんうん。

#電子取引だけが店頭売買ではない、とはいっても最早そこまでくると数値が出てこないものなのでそれは仕方ないですな


・日銀リサーチラボが2本ございました

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j01.htm/
金融不均衡を察知せよ!:金融活動指標による金融不均衡の把握

『資産価格のバブルや信用量の過剰な積み上がりなど金融不均衡を放置しておくと、金融危機やそれに伴う急激な信用収縮といった問題に繋がりうる。こうした事態を引き起こさないためにも、いち早く金融不均衡を察知することが求められる。本稿では、金融不均衡を把握するために開発された『金融活動指標』について解説を行う。『金融活動指標』は14のマクロ経済指標から構成されている。それぞれの指標が、過去の趨勢からどの程度乖離しているかによって、金融活動の過熱・停滞を判断するものである。こうした動きを色で表現した「ヒートマップ」によって、金融不均衡の状況を視覚的に把握することが可能となる。「ヒートマップ」において赤色が増えてくれば、より広範囲にわたって金融不均衡が過熱方向で蓄積されていると判断される。』

ということで、こちらはFSRで毎度掲載されておりますヒートマップについての説明になります。以前もWPとか出ていました(下の方に参考文献がある)のですが、今回はまあ簡単な解説になっております。

『最後に、留意点をいくつか述べる。第一に、選択された指標は過去の経験に基づき決定されている。このため、新たな金融活動や変化する金融仲介活動――例えば、海外との繋がりの強まり――を把握するうえでは限界がある。このため、ヒアリング情報なども活用しながら、金融システムのリスクを総合的に把握していく必要がある。第二に、金融不均衡を把握するうえでは、様々な相互作用に対する目配りをする必要がある。金融活動指標は、それぞれの主体の動きに着目している。もっとも、過去の金融危機の経験を踏まえると、金融と実体経済の相互作用や金融機関間の取引関係など様々な相互作用も把握・分析していく必要がある。そのために、早期警戒指標に加えて、相互作用を勘案したマクロ・ストレス・テストの活用などが重要である(日本銀行が行っているマクロ・ストレス・テストについては北村ほか(2014) を参照)。』


もう一本はこちら。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab15j02.htm/
金融危機後の景気回復はなぜ緩慢なのか:金融政策運営への含意に関する一考察

『先般の世界的金融危機に限らず、これまでの金融危機の歴史を振り返ると、危機後の景気回復は、通常の回復局面に比べて緩慢となっている。その背景には様々な要因が考えられるが、金融危機による企業の資金調達環境の悪化を通じた生産性の低迷等が指摘されている。そうしたもとで、危機後、緩慢な景気回復に陥らないようにするには、金融政策をどのように運営したらよいのであろうか。Ikeda and Kurozumi (2014) [PDF 425KB]は、企業の資金調達環境の悪化を契機とする生産性低迷から緩慢な回復が生じるモデルを構築し、金融政策分析を行っている。その分析からは、(1)金融政策運営は、危機後、インフレ率に反応しつつも、実質GDPの変化に対して強力に対応するという政策スタンスを示すことが重要なこと、(2)こうした景気安定化重視の政策スタンスは、企業の将来に対する期待の改善を通じて、投資や生産性の回復を促すため、インフレ安定化重視の政策スタンスよりも望ましいこと、が示されている。』


ということで次の『金融危機後の緩慢な景気回復の要因』のところに・・・・・・・・

『一般的には、実質成長率は、「労働投入」、「資本投入」、「全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)」の3つの要因によって規定される。ここでは、米国連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミストによる研究(Reifschneider, Wascher, and Wilcox (2013))を参考に、これらの要因から、金融危機後の緩慢な景気回復の背景を整理する。』

つーことで整理があるのですがその金融政策へのインプリケーション。

『それでは、金融危機後の景気後退からの回復が緩慢にならないようにするには、金融政策運営をどのように行ったらよいのであろうか。』

『従来の金融政策分析(例えば、Woodford (2003))は、この問いへの答えを提供するのに十分な分析枠組みを備えていなかった。従来の分析で用いられたモデルには、経済は、何かしらのショックが生じたとしても、比較的速やかに元の成長パスに復するという仮定が置かれていた。その上で、インフレ率とGDPギャップの変動の加重和によって近似的に測られた社会厚生を悪化させる源泉として、主に価格硬直性が導入されている。こうしたモデル設定のもとで社会厚生を最大化する金融政策の特徴は、社会厚生悪化の源泉である価格硬直性に対処するため、インフレを安定化させることであった(従来の金融政策分析についての平易かつ簡潔な解説は、木村・藤原・黒住(2005)を参照)。』

ほほう。

『一方、Ikeda and Kurozumi (2014)は、金融面の影響を受けて、景気が後退し、その後の回復が緩慢となるメカニズムを導入したモデルを構築して、金融政策分析を行っている。その分析からは、金融政策運営は、金融危機後、インフレの安定よりも、景気の安定を重視するという政策スタンスを示すことが重要との結果が示されている。』

>金融危機後、インフレの安定よりも、景気の安定を重視するという政策スタンスを示すことが重要
>金融危機後、インフレの安定よりも、景気の安定を重視するという政策スタンスを示すことが重要
>金融危機後、インフレの安定よりも、景気の安定を重視するという政策スタンスを示すことが重要

ほっほー。

『Ikeda and Kurozumiのモデルには、企業の資金調達環境の悪化が、足許の景気を後退させると同時に、新しい技術に対する企業需要の低下から技術導入やR&Dに関する投資を減少させる結果、TFPが低迷し、景気回復が緩慢となるというメカニズムが取り入られている(図4)。こうしたメカニズムは、金融危機後の緩慢な景気回復を表現するモデルを構築した近年の研究(例えば、Queralto (2013))でも取り上げられている。』

全要素生産性要因が重要とな!!

『このモデルにおいて、インフレ率や実質成長率等に応じて政策金利を調整する金融政策ルールを考えると、緩慢な景気回復の原因となる企業の資金調達環境の悪化が生じた場合に、社会厚生を最大化する政策ルールは、インフレ率に反応しつつも、実質成長率に対して強力に政策反応するという特徴をもつとの分析結果が得られている。』

ほうほう。

『こうした結果が得られるのは、Ikeda and Kurozumiモデルでは、資金調達環境の悪化による景気後退からの回復が緩やかなものにとどまるため、価格硬直性に起因する社会厚生の悪化よりも、緩慢な回復に起因する社会厚生悪化の方が相対的に大きく現れるからである。また、こうした景気安定化を重視した政策スタンスは、企業の将来に対する期待の改善を通じて、投資や生産性の回復を促す。実際、金融危機シナリオのもとでシミュレーションを行うと、景気安定化を重視した政策スタンスは、従来の金融政策分析が望ましいとしてきたインフレ安定化の政策スタンスよりも、TFPの回復を促すことが示されている(図5)。』

ということですが、これは金融危機が起きていない日本の事ではなくて欧米の事を述べているのであって、置物理論に対するイヤミだとか考えてしまうのは心が濁っている証拠ですので注意しましょうね!!!!!!

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2015/03/24

○MPM議事要旨ネタ続き

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150218.pdf

・政策決定部分での先行き政策に関するパートから

ということで昨日の続きです。

『先行きの金融政策運営の考え方について、多くの委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

まあこれは良いのですが、この後債券市場の流動性低下に関する話が出てくる訳で。

『何人かの委員は、この間の国債市場におけるボラティリティの高まりを指摘した。』

キタコレ。

『複数の委員は、金利低下方向へのやや行き過ぎていた見方の調整を映じていると指摘したうえで、イールドカーブは引き続き低水準に維持されており、「量的・質的金融緩和」の効果は引き続きしっかり発揮されているとの見方を示した。ある委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は、資産買入れの進捗とともに累積的に強まり、イールドカーブ全体へのアンカーになると考えられると述べた。』

まあその程度の認識だということです。

『また、別の委員は、このところの金利上昇には、米国金利上昇や原油価格の下げ止まりが影響しているとの見方を示した。』

1月22日からの金利上昇ってどう見ても1月21日の金融政策決定会合で追加緩和の思惑が飛んでしまったのが要因でして、10月緩和の時点で示されたヤケクソ追加緩和ロジックからすると原油が一段下がったのだから追加緩和のおかわりというような話になって来ますよねとなっていましたから、そらまあ普通に考えて追加緩和無いと思っても「何をしでかすか分からない」という認識になっていましたからアタクシも無いと思いながらも市場の思惑に煽られて正直生きた心地しなかったのですよね。

#付利下げとか煽ってた連中はハイボラ債券市場の責任とって欲しいわと思うわ(笑)

でまあこれは制度の建付け上の問題なのですが、12月の決定会合議事要旨の時点で1月の会見で示されるような方向性は出ていた(12月になったら急に総合判断だの基調だのという話がメインになっていた)のですが、議事要旨が出たのは1月会合後でしたし、12月会見の時点ではそこまで転向した感じを出していなかった訳で、ここは金融政策運営のミスコミュニケーションではあると思うのですが、10月に1回市場との対話を放棄する形で騙し討ち追加緩和を実施して、1月にまた前に戻って基調だの総合判断だの言いだしてダマテンで元に戻した格好になっていますので、そら債券市場のボラは上がるし、その上流動性を日銀買入で枯渇させているんですから一度上がったボラがそう簡単に下がらん罠という話になりますよね。

10月追加緩和時点で市場との対話を放棄したので、緩和政策を継続しているうちはまだしもですけれども(それでもこのボラですけど)出口という話になったらどういう事になるのか(出れないとかそういうツッコミは無し)とかおそロシアにも程がありますな、うんうん。

『一方、複数の委員は、市場参加者のリスク許容度の低下や市場機能の低下を映じている可能性があると指摘した。』

『複数の委員は、国債の買入れを継続することは技術的には当分可能であるとみているが、先行きにおける持続可能性についても留意しておくことが必要であると述べた。』

・・・・・・・・ということでどう見てもこちらの指摘が妥当というか、この指摘以外あり得ないと思うのですけれども、実に嘆かわしいのはここの表現にありますように指摘しているのは「複数の委員」であって、「多くの委員」では無いことです。

まあだいたい誰がしてきているのかは想像がつきます(石田、佐藤、木内のお三方確定で森本さんも含まれるかも)のですが、問題はここの文章の流れを読むに執行部サイドは知らんがな状態になっていそうな気がする(まあ正式に問題があると認めるとQQE継続する際のプロコン比較の中のコン成分が増えるという話になるので執行部的に認めにくいというのは分からんでもないが)ところでして、この調子で市場との対話とか言われましてもヘソが茶を沸かすので勘弁してください。

『また、ある委員は、消費者物価の前年比に対する原油価格下落のマイナス効果が剥落し、物価上昇率が高まる局面において、金融市場のボラティリティが高まる可能性について述べたうえで、適切な情報発信を進めていくことの重要性を指摘した。』

その前に輪番札割れ(割れないにしろ前日比50毛強とかの大流れ)とか政府からタオルとか、そちらの方が先に来るのではないかという悪寒もしますが。


・経済のパートから投資と消費と雇用の所を引用しますね

前半の経済に関する議論から少々。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で緩やかな増加基調にあるとの認識を共有した。先行きも、企業収益が改善傾向を辿る中で、緩やかな増加基調を続けるとの見方で一致した。』

ほう。

『ある委員は、昨年10〜 12 月のGDPベースの実質設備投資は前期比ほぼ横ばいであったが、資本財総供給の動きなどを踏まえると設備投資は緩やかな増加基調にあるとみられ、2次速報値での改定状況や投資計画の実行状況を注視していると述べた。別のある委員は、緩和的な金融環境のもと、原油安による収益押し上げ効果もあって、中小企業の設備投資の増加も期待できるとの見方を示した。』

ということで設備投資の出る出る詐欺は今度こそという見通しなのでしょうかね。


『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けるとの認識を共有した。多くの委員は、今春の賃金改定交渉では、好調な企業収益を背景に、大企業を中心として賃上げが期待できるとの見方を示した。このうち一人の委員は、アンケート調査によれば、人手不足感の強い中小企業でも賃上げに前向きになっていると述べた。』

春闘に期待しておりますが出だしは順調でよかったですね(棒)!!!

#この程度で物価2%になるのかどうか知らんが


『個人消費について、委員は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体として底堅く推移しているとの認識で一致した。』

ほう。

『委員は、駆け込み需要の反動減が長引いていた自動車や家電といった耐久消費財においても、販売が改善傾向にあるとの見方を共有した。委員は、先行きの個人消費について、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとの見方で一致した。』

へー。

『何人かの委員は、消費者マインド関連指標について、なお慎重さが残るものの、改善の動きがみられつつあると述べた。また、何人かの委員は、先行きの個人消費をみていくうえでは、賃上げなどを通じ、名目所得が幅広く改善していくかどうかが重要であるとの見方を示した。』

お賃金キター。

『複数の委員は、最近の原油価格の下落が、先行き、家計の実質購買力の上昇を通じて個人消費を押し上げるとみていると述べた。』

どさくさに紛れてしらっと物価目標2%を否定するかのような記述があるのですが、あまりにもしらっと入れられているのでこの文脈でどういう話があったのかが分からないのが残念ですな(−−;

『一方、ある委員は、1月入り後の消費について、ヒアリング調査などによれば百貨店やスーパー、乗用車販売などでもたついている可能性があると述べた。』

まあ実際はそんなことろではないかと。

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2015/03/23

○2月決定会合議事要旨は物価目標の柔軟化および裁量による総合判断に傾いていることを示しますな

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150218.pdf

・物価の見方に関して

ということで今朝はインスタントで『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』のところから拾ってみます。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は、昨年10 月末の金融政策決定会合で拡大を決定した後も、引き続き所期の効果を発揮しているとの判断を共有した。これらの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調は改善傾向を辿るとの見方を共有した。』

ということでこのコーナーの冒頭から基調キタコレ!

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。』

この前は足元の動きがインフレ期待を下げるという話をしていたのにねー。

『何人かの委員は、物価の基調の判断に当たっては、様々な物価指標を点検するとともに、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率、さらには背後にある経済の動きとも併せて総合的に評価していくとの考え方を示した。』

経済の動きも併せてとなると思いっきり総合判断ですね!!!!ってまあ野党審議委員の皆様が主張している(そもそも総合判断で追加緩和に反対していたのですから)わけでして。

『この点、多くの委員は、景気が緩やかな回復基調を続けるもとで、需給ギャップは改善傾向を辿るとの見方を示した。予想物価上昇率についても、委員は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとの見方を共有した。』

すっかり足元の物価注目の話がどこぞに。

『一人の委員は、サーベイ調査でみると、短期の予想物価上昇率は現実の物価上昇率の動きを受けて低下しているが、中長期の予想物価上昇率は維持されており、市場の指標であるブレーク・イーブン・インフレ率も原油市況の反発などから上昇に転じていると述べた。』

『別の委員は、企業の価格設定スタンスが、価格引き下げから価格引き上げ方向に転換してきていると述べた。』

何か都合の良いものを並べているような希ガス。

『こうした議論を踏まえ、多くの委員は、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提にたてば、原油価格下落の影響が剥落するに伴って消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は伸び率を高め、2015年度を中心とする期間に2%に達する可能性が高いとの見方を示した。』

ふーん。

『これらの委員は、先行きの原油価格については不確実性が高く、原油価格の動向次第では、その時期は多少前後する可能性があると付け加えた。また、別の一人の委員は、日本経済のファンダメンタルズがやや長い目でみてしっかりと改善し、賃金と物価を循環的に押し上げる力も高まっていることを踏まえると、2%の目標は十分に実現可能だと指摘した。何人かの委員は、消費者物価の前年比は、原油価格下落の影響から、目先ゼロ%近傍まで低下する可能性があるが、重要なのは物価の基調であり、この点では変化はないと指摘した。複数の委員は、こうした物価の見方について、しっかりと説明していく必要があると述べた。』

前回下がった時よりも一段と下がっているのに基調が強いっていうのは何なんでしょ。原油安は日本経済にとってはプラスだから基調という意味では強化されるってのは今に始まった話じゃなくてこの前の原油価格下落での追加緩和対応とは何だったのかと。

『これに対して、一人の委員は、原油価格下落の影響を除いても物価上昇は緩やかであり、フィリップス曲線のシフトも観察されていないと指摘し、短期間のうちに消費者物価の前年比が安定的に2%に達するのは相当難しいと述べた。』

最後に冷水をぶっかけている審議委員が1名いてルイボスティー吹いた(^^)。

市場機能の話とか経済物価情勢の先行きに関する話(と今日やっていないほかのネタ)は明日で勘弁でございますが、政府からの出席者の見解に面白い部分が。

『財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。』

ということで・・・・・・・・・・

『・日本銀行には、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の物価安定目標を実現することを期待している。』

前回はこのように記述されていました。

『・日本銀行におかれては、引き続き、「量的・質的金融緩和」を着実に推進され、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を達成して頂くことを期待している。』(1月決定会合議事要旨)

・・・・・・・・前回までは「QQEを推進して」「できるだけ早期に」達成しろという表現だったのに対して、今回は「経済物価情勢を踏まえつつ」となっている上に、早期にというのがなくなっているという実にこう味わいの深い文言になっておりまして、つまりは無理やり円安に振ってまで早期達成しなくて良いわ迷惑じゃヴォケというのが政府のQQE梯子外しキターという所でして、さてこうやってQQEタコ踊りの梯子を外されたところで黒田総裁がどういう動きに出るのか、という辺りは金曜に外国特派員協会で講演をしているのでそれをネタにしないといかんのだが時間と量の関係で本日はパスですすいませんすいません。

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2015/03/19

・レポ市場に関する日銀レビューシリーズ

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/rev15j05.htm/
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2015/data/rev15j05.pdf

これは腰を据えて料理すると色々と味わいがあるのだが、トライパーティー形式の銘柄後決めGCレポって在庫ファイナンスで山のようにトラザクションしないといけない状態になっている業者的にはニーズが高いのだが、資金運用サイドとしてはトライパーティーに払うフィーが出ないこの現状金利状態ェ・・・・・というのがあって、だったら他の運用手段があるわなとかそういう話になって(そらまあGCレポ取引金利が相対的に高くて運用として魅力が高ければ流れてくると思うが、金利の絶対水準が小さすぎて差があっても実収入ベースで屁のような差しかでないと厳しいでしょ)コールに取引が流れるだけのような希ガス。

まあレポ信託でGCSCがセットになっている分というのはそのまま移行すると思うのですが、それにしてもトライパーティーに払うフィー分をこの金利でどう捻出するのかと考えるとこの短国がリアルゼロ金利状態というのは如何ともし難い状況です罠と存じます次第です。

なお詳しく読み込んだ後再度ネタにするかもしれませんししないかもしれません。まあざっと見たところ「国債決済期間短縮至上命題でちょっと突っ走り過ぎじゃあございませんですかねえダンナさん」という気はしますがね。

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2015/03/18

○3月決定会合声明文はついに足元の物価マイ転でも「基調が良いので知らんがな」と開き直る

小見出しが長いですかそうですか(^^)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150317a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150218a.pdf(前回)

・現状判断:物価の記述のみ変更

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(前回)

から始まる現状判断記述部分ですが、まあ物の見事に全文一致状態になっております。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

ここまで全文一致ですな。

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。』(前回)

こちらも全文一致とな。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

とまあそういうことでここまで全文一致という無風にも程がある現状認識。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%台前半となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

ということで現状判断の物価の表現は(実際の数字なので当たり前ではありますが)下げられましたですな。しかしどうでも良いちゃあどうでも良いのですが、予想物価上昇率って毎度「全体として上昇」という判断をしているのですが、延々と上昇していたらとっくの昔に2%を超えていそうなもんですけどねえ(ゲス顔)。



・先行き見通し:足元の物価マイナス転でも「基調が良いので知らんがな」と開き直りキター!!!

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(前回)

ということで「当面プラス幅を縮小」というのが遂に「当面0%程度」という表現に変化しておりまして、0%「程度」には当然ながら小幅の上下が含まれますので(会見でも質問が出ていたようですが)、これはつまり向こう数か月程度(が「当面」という言葉の日銀文学的な意味)の期間にCPI前年比がマイナス転換しても「想定通り」という話になります。

でまあ目先のCPIマイナス転換を今現在見通しに入れている中で今回の金融政策判断が現状維持、ということになりますと、そらまあマイナス転したら即追加緩和という可能性はなくなったという話(だってマイナス転即追加緩和なのなら見通しでマイナスの可能性を出した今回の時点で追加緩和するのが筋)ですな。もちろんほかの条件が大きく変化していれば別ですけど。



・リスク要因といつもの宣言文書は毎度同じ

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

へえへえそうだっか。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(前回)

こちらも毎度同じですな。


・木内審議委員の反対票と提案は今回も同じだが「集中期間」は次回に終わりますね


『(注1)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員。反対:木内委員。反対した委員は、「『量的・質的金融緩和』の拡大」(2014年10月31日決定)前の金融市場調節方針が適当であるとした。』(今回)

『(注1)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員。反対:木内委員。反対した委員は、「『量的・質的金融緩和』の拡大」(2014年10月31日決定)前の金融市場調節方針が適当であるとした。』(前回)

ちなみに木内さんは「MB年間80兆円ペース拡大」と「国債買入残高80兆円ペース拡大」に反対しているので反対は2か所にあります(が同じなので1つだけ引用)。

『(注3)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

『(注3)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(前回)

ということで木内さんの反対票と別議案に関しては毎度のように出されて毎度のように否決されているのですが、「2年間程度の集中対応措置」という部分はどういう扱いになるのかというのと、反対票の「追加緩和前に戻す」というののリンクがどうなるのか、次回(または展望レポートの回になるのかもしれませんが)辺りにどういう出し方をするのか意外に難しい気がします。

木内さんの基本的な考えとして「物価安定目標を中長期的に目指す」というのがメインで残るのですが、ではQQEのペースをそのまま継続するのかという話になるとアセスメントが必要になる訳で、他の誰も実施しなくて木内さんだけが実施することになってしまう「集中対応期間が終わったところでのアセスメント結果」を出してもらうという事になりますので、はてさてどういう結果をだしてくれるのか注目したいですし、内容的に他の審議委員が乗れるものに変更できるかどうか(たぶんならないと思うけど)というのもあまり期待しないけど期待をするかというところでしゅ。



○足元の物価マイナス転でも「基調」で逃げる攻撃が確定しましたが先行きを妄想すると意外に難しい

つーことでまあ今回の決定会合はクソ面白くもなく想定通りの結果が炸裂しまして、2年で2%とは何だったのかという話にはなるとは言いましても、そのあたりの話は1月2月の決定会合およびその後の説明で勝負付けは終わっている感じでしたから今回「目先のマイナスは知らんがな」という話を思いっきり表に出してくるのは見え見えなので会見どうでも良いかと思ってたら意外に延々と会見をやっていたのがふーんという所で。

でまあ足元では春闘での賃上げガーと威勢の良い話(って過去最高過去最高言うけど、その過去最高とはディスインフレ突入以降の過去最高であってもっと前だともっと上がっていたのでは無いか等という景気の悪い話をしてはいけませんかそうですか)をしていまして、これが「企業や労働者の物価感が2%の物価安定目標に向けてリアンカー(「リ」アンカーゆうて過去に2%アンカーされていた事ありましたっけというツッコミをしてはいけません)されつつあります(キリッ)」という話になりますので、基調としての物価安定目標に向けた動きは着実に進んでいます(キリッ)と逃げられる訳ですよ。

ちなみに総裁がいつかの講演だかで話をしていましたと思うのですが、スウェーデンだかの話を持ち出してきて「労使の賃金交渉の話のスタートが2%水準から始まるという状況こそが2%の予想物価上昇率が安定的にビルトインされている状態である」と評価しておりまして、そういう文脈で言えばこの賃金の部分を思いっきり重視しているので、春闘の威勢の良いニュースが出ている間は「基調」で言い逃れする気が満々という大変に素敵なお話ではあります。

さらに申し上げますと、非常に皮肉な話ではありますが物価がアガランチ会長となっていることから、賃上げとのセットでこの先では実質賃金のプラス転換となって皆さんハッピーじゃないですか!!という話にもなりますし、それによって個人消費がウマーとなるかもしれませんしと、実にこういいことずくめな訳でして、まあ何ちゅうか暫くは言い逃れ可能という流れが続くわけですよ、うんうん。

まあそれから強引に通貨安に持って行って肝心の輸出は伸びないけど通貨安でコストプッシュの輸入インフレとなっても誰得な上に消費が落ちるだけじゃんというのが示されてしまった(本来コストプッシュの部分を輸出の伸びを起点としたメカニズムによって相殺するのでウマーという見込みだったのが当てが外れた訳で)ので、これ以上円安に振ってもウマーでもなんでもないという認識が政治方面にも広がってきたというのがあって、追加緩和打ち込んで一段の円安に振って物価を強引にコストプッシュで上げる必要がないじゃろという話になってきたのも大きい、とまあそういう話です罠とゆー所だと思うのですよ。

てな感じですので、現状出ている説明とロジックを総合的に勘案すると賃上げの結果の波及と原油価格下落のベース効果一後の状況を確認するまでは現在の政策に変化は起きない、とまあそういう結論が導きだされるというものであります。


・・・・・・・ただまあ以上の話って肝心の「物価の基調」の部分やら「インフレ期待」にかかわる部分やらが鉛筆なめなめの世界である、というのが曲者なのでありまして、足元では統一地方選挙を控えて特に回復の出遅れで物価上昇だけ先に食らってマズーな地方の声を重視している政治方面が、統一地方選挙終わったらあっさり味で豹変して「円安にしやがれゴルァ」となるやも知れずですし、まあ日銀の現執行部としては政府の方面から正式にタオルを放り投げてくれない限り(というかうっかりしたら正式にタオルが飛んできても意地を張って)「2年程度を念頭に置いてできるだけ早期に2%の物価目標達成」という看板は下ろせないのですが、政治方面から達成期間に関して梯子を外されているので動きようがないという状態であって、梯子が再度確りと設置されたら2年で2%タコ踊りを盛大に再開するという可能性も大有りと考えますと、まあ先行きシナリオ通りに推移したとして本当の本当に追加緩和無いのか、と言われると中々そこまでは断言できませんなあという話なのが困る訳ですよ。


でまあその円安ヒャッハーという線以外にどういうのが考えられるかと、「早期に達成」という看板を下ろさないままでその達成時期に関して「基調」を使いながら有耶無耶のうちに引っ張るという「勝ち逃げ」スキームというのがアリエール話というか、まあ現実的にはそういうのが逃げ場として使えるかなとは思うのですよ。

その場合って勝ち逃げタイミングとしては「賃金も上昇しています、今年は実質賃金も上がっていますので皆さんハッピーですよね、ああそれから足元の低迷は原油のせいで、これも景気にはプラスですから基調としての物価は2%に向けての道を更に固めていますよね!!」という説明をしやすい時期、という事になりますので、時期的に来年とかまで引っ張ってしまわない方がお得としか申し上げようが無いですし、あまり引っ張ると昨年のように逃げ損なってアチャーという事になると思われるんですよね。

でまあそのタイミングでQQE大勝利宣言をしつつ、2%物価目標達成に関しては「基調」だの「インフレ期待のリアンカーに成功」だのと言って達成したことにしつつも、実際の物価上昇にもうちょっと時間がかかるから緩和的な金融政策は続けますぜウェーハッハッハという事で、まあその時に日本版Taperingをするのかというとそこまで気合は入れられないでしょうけれども、一方で国債買入の物理的限界というのもあるのでどうなんでしょうねという所ではあるかも知れませんね。

#ただまあ本来的に言えば目標達成が展望みたいな話が人口に膾炙すれば債券投資家が一段とポジション落とすのですから買入は続けやすくなるのでしょうけれども何せ買入が無慈悲すぎるので


ということで、まあ次回会合で何もない(ジンバブエ先生がどういう提案をするのか、というかその前に就任記者会見で「日銀が国債買うと統合政府での債務が消滅する」という珍理論について日銀事務方の中の人たちが破綻の無い理屈にどう直したのかの結果が見たいですが)でしょうし、普通に考えると先ほど申し上げたように当分動かない筈なのですが、つらつらと可能性を考えると意外に難しいわというお話になりますな、うんうん。

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2015/03/10

○アリバイサーベイキタコレだが内容ワロタ

http://www.boj.or.jp/paym/bond/bond1502.pdf
債券市場サーベイ<2015年2月調査>
回答期間:2015年2月18日〜2月25日
調査対象先数:40先

・・・・・・・・ということでサーベイキタコレであるが、そもそも長期金利の先行き見通しなどというものが無駄以外の何物でもなく、質問内容に関しても別に自由記述欄や要望みたいなのがある訳でもなくて、これならQSS調査の方がよっぽど読む意味あるわという物件なのですが、何せ「市場との対話を行っています」という一貫の中で「市場機能はありまぁす(キリッ)」とエクスキューズするためのアリバイサーベイにしか見えない物件なのでこのようになるのも止む無し。

などと悪態をつきながら中身を読みますと、

『1.債券市場の機能度の状況(長期国債の流通市場を念頭において、ご回答下さい)』

短期国債の流通市場は何故念頭に置かないのでしょうか??????などと突っ込んではいけません。

『(1)貴行(庫・社)からみた債券市場の機能度(注)』

『(現状)
1. 高い 2先
2. さほど高くない 26先
3. 低い 12先』

40社中2社しか「債券市場の機能度が高い」と言ってませんがそれでも債券市場の機能などに問題がないと仰せで。

『A貴行(庫・社)からみた市場参加者の注文量について、板の厚み(注)等を念頭においてご回答下さい。』

『(現状)
1. 多い 0先
2. さほど多くない 22先
3. 少ない 18先』

多いというのがゼロとかもうね。

でまあこの項目の最後の当たりが更に味わいが深い。

『E貴行(庫・社)の概ね意図した価格で取引ができているかご回答下さい。』

『(現状)
1. できている 13先
2. さほどできていない 19先
3. できていない 7先』

『F貴行(庫・社)の概ね意図した取引ロット(1回当たりの取引金額)で取引ができているかご回答下さい。』

『(現状)
1. できている 14先
2. さほどできていない 13先
3. できていない 12先』

・・・・・・・・ということで、現時点で取引の流動性に問題があると考えている向きが6割超という状態になっております次第ですが、これはまあどこからどう見ても将来の金融正常化に対して阻害要因になる話でありますし、更に言えばこんな状態でレポ取引にストレスを掛けることになる国債決済のT+1化を推進するとか自殺行為としか思えないのですが大丈夫かよという感を更に強くするアタクシ。

念のためしつこく申し上げておきますが、流動性が急になくなるとどういう事になるのかというのは昔々その昔(確か1998年)に債券先物の取引システムを意味不明に改定した際に、注意気配制度とか特別注意気配制度とかを無くしてしまって値段がとんでもなくワープするようになった結果、当時多くの現物債の取引のヘッジが集中していた債券先物市場の流動性が蒸発してしまい、ヘッジ市場の流動性が急になくなってしまったのでオファービットは開くわ売買のロットは捌けなくなるわとなって、その後の債券暴落の土壌を作った(引き金になったのは運用部ショックと言われるものだが、実際問題としては運用部の国債買入停止額自体は当時の市場規模でも屁であって、本当の原因はその前に行われた東証の債券先物システム変更による極端な流動性の低下)という事案がある訳で、せっせと国債買入を継続して流動性を無くしていくところに国債決済のT+1化とか将来の悲劇の伏線を張りまくっているようにしか思えないのですけどねえ。

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2015/02/26

○ちと遅くなりましたが金融経済月報

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1502.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1501.pdf(前回)

・現状判断は基本的に声明文通りですが声明文比較の時に見落としていたのがありましたので(大汗)

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(前回)

という上方修正をしておりまして・・・・・・・・・

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

輸出が引き上げというのも声明文通りですね。

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。』(前回)

ここなんですけれども、個人消費の表現が微妙に変化していて、たぶんこれは微妙ながらも下向き修正ですなという話を声明文比較の時にしましたが、これ良く良く見ると雇用所得の部分が「着実に改善するもとで」だったのが「着実な改善を背景に」と改善の所の表現がスッキリ系になっていまして、しらっと表現が強くなっているのですね、というのを声明文比較の時に不覚にも見落としておりました(大汗)。

『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)
『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まっている。』(前回)

ということで生産の引き上げ、というのも声明文で示されている通りです。


・先行き見通しは消費と生産が引き上げ

『先行きについても、景気は緩やかな回復基調を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。』(前回)

ということで消費税云々の所が消えて更にスッキリ系になったのは声明文の通り。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。』(今回)

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、緩やかな減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。』(前回)

先行き見通しの個別項目は声明文にはありませんので今回初比較になりますが、輸出は判断不変、公共投資は若干下(ただし水準そのものは高い)、設備投資は不変ですな。

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(前回)

個人消費の部分で駆け込み云々が抜けておりますが、それ以外の表現は同じで判断不変ですけれども、まあこれは表現がスッキリ系ですなという所です。住宅投資も判断不変で、生産は表現を強めていますが、これはまあ現状判断の引き上げとリンクしていますね。


・リスク要因は毎度同じ

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

これはまあ判で押したように毎回同じですな。


・物価に関しても判断不変とな

まあここは声明文通りですけどね。

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

事実関係としての数値については変化がありますが、予想物価上昇率の部分は毎度毎度の「やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる」となっておりましていやはやとしか申し上げようがございませんがががが。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(前回)

先行き判断も不変ですが、物価の水準が下がっているのに「当面下落を続ける」と表現しているので、もう思いっきり足元の物価マイナス化進行も知らんがなという展開になっているというのが実にこう味わいが深いというものです。


なお、この先は金融環境ですが毎度の『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』からいつもの表現になっているので割愛します。

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2015/02/25

○1月金融政策決定会合議事要旨ネタの続き

昨日は体が花粉症に慣れてなくて朝から超ヘロヘロだった(今日は花粉慣れ?した)という極個人的事情により物価に関する部分だけネタにしましたが、引き続き1月会合議事要旨が意外に面白いので昨日の続きを。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150121.pdf

・12月と比較すると「基調的な物価の動き」の話が盛大に強調されている件について

2月会合後の定例会見では総裁が「物価の基調ガー」というのをひたすら連発していてもう目先のコアCPIが(消費税抜きで)マイナス転しようと知らんがな状態になっているというのは把握したのですけれども、昨日ネタにした物価に関する政策委員会の政策判断にかかわる部分での内容が12月会合と1月会合で変わっているのですよね。

つまり、2月の会見見た後だからこの1月議事要旨自体は予定調和的なイメージを受けるのですが、12月会合の議論と比較するとナンジャソラという感じになっているのは何なんでしょというお話。

昨日引用しましたが1月会合議事要旨での『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について』というパートを前回と比較してみると非常に味わいが深いのですよ。

『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識で一致した。(中間割愛)また、多くの委員は、物価の基調の判断に当たっては、様々な物価指標を点検することが重要であり、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率、さらには背後にある経済の動きとも併せて総合的に評価していくとの考え方に変わりはないと述べた。さらに、これらの委員は、予想物価上昇率の動向を点検する際には、ブレーク・イーブン・インフレ率など市場の指標やエコノミスト、企業、家計などへのサーベイ調査の結果だけでなく、企業や家計の物価観やそのもとでの行動の変化、例えば価格設定行動や賃金交渉などを評価することが重要であると指摘した。』(1月MPM議事要旨)

『原油価格の下落と金融政策運営の関係について、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大が原油価格の下落そのものへの対応と市場の一部では受け止められており、その後の原油価格下落を受けて追加緩和を予想する声も聞かれると指摘した。大方の委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大は、原油価格の下落そのものに対応したものではなく、需要面の弱めの動きや原油価格の下落から物価上昇率が短期的に伸び悩む中で、デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぐために実施したものであるとの認識を示した。ある委員は、今後の金融政策運営を考えるうえで重要なのはあくまで物価の基調的な動きであり、広い意味での予想物価上昇率の動向がポイントになると述べた。』(12月MPM議事要旨)

ということで、まあ書き方が違うので比較して読みにくいかもしれませんが、「基調が重要」という話が12月会合時点では「ある委員は」という表現になっていたのに、1月会合では思いっきり全員一致に近い見解となっているという表現になっておりまして、これはまあつまりこの間に「2年で達成」に対してポッキリと折れてしまった誰かさん(達)がいるという事を示しているのではないかと思われる次第で、実にこう味わいが深いと思うのですがどうでしょうかねえ。


・資産買入政策の持続可能性について留意すべきとの議論にも政策的含意が無いわけではなさそうなのだが

でまあ昨日引用した部分の続きですけどね。

『先行きの金融政策運営の考え方について、多くの委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

これはまあヨロシとしまして。

『この間、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」のもとで、このところ金利が一段と低下していることについて、リスク要因の点検に当たっては、金融機関経営への影響や金融面の不均衡が蓄積するリスクなども、注視していく必要があると述べた。また、このうち複数の委員は、買入れを継続することは技術的には当分可能であるとみているが、先行きにおける持続可能性についても留意しておくことが必要であると述べた。』

まずここで分かるのが金融不均衡などに言及している「何人かの委員」というのが少なくとも3名以上であり、しかもどうせ執行部がこういう話をする訳が無いですし、学者2名はこの手の実務的なお話に関して全くの役立たず(なお更に弩級の役立たず所かマイナス寄与に入れ替わる模様)なので、そうなりますとこれは残り4名のうち少なくとも3名ですので、森本さんが入っているかは微妙ですけれども、石田さん、佐藤さん、木内さんはガチで指摘しているという事で実に頼もしいですね。

さらに複数の委員なので2名以上になりますが、「買入の持続可能性について留意」という指摘をしておりまして、ただ一方でこの指摘をしている委員の皆様って多分昨日引用した中で「物価安定目標の達成は2015年度を中心とした期間という時期からは更に遅れそう」という指摘をしている人と多分重なると思われます上に、この方々が別に追加緩和という話をしていない。とまあそういう事を考えますと、「現在の緩和政策が長期化することを考えて、緩和政策をより長期間継続できるようなデザインに変更すべき」という話にいずれ繋がって来ると思うのですよね。

つまりどういう事かと申しますと、今やっている「MB年間80兆円拡大」などというのは、枠組みとして「短期決戦」を前提にしている訳で、そもそも物価安定目標を2年を念頭にできるだけ早期に(と言いつつ遅延していますけど)達成することが前提にあるので、このような短期決戦フレームを組む事が出来るわけです。現状オープンエンドという話にはなっていますが、上記の政策委員のご指摘を待つまでもなく、市場の中の人たち的にはどこをどう見てもこのペースでの買入が向こう2年も3年も続けられないと確信している訳ですし、だいたいからして日銀だって「できるだけ早期に達成」という事で今の枠組みが長期化することを前提にしている訳ではありません。

然るに、物価安定目標達成時期を柔軟化する(さすがに2%は実際に物価が上がって怨嗟の声が出まくる事が起きて政治的に持たなくならない限り下げないでしょ)という話になると、そもそも論として緩和政策の継続期間も長くなる訳で、そうなった場合は短期決戦を前提にしている今の枠組みを変える必要がありますし、今後は「一気に投入」じゃなくて「状況を見ながら適宜調整」というフレームワークに変わるでしょとなる(のですがそれはどこの白川ドクトリンですかと思うので少なくとも置物一派の皆さんは白川さんと山口さんに土下座してそれまでの罵詈雑言を謝罪すべきだと思うの)と思いますよね、とゆー話でして、しかも12月から1月の間で「基調ガー」の勢力が拡大している訳ですから、そんなこんなでこの政策枠組みの技術的な持続可能性という問題が重要になってきそうですねと。

なお、そんな状況の中で「国債をただで買っているから1000兆円買える(キリッ)」という政策の技術論も何もないド素人な上に複式簿記にも理解が無いジンバブエ理論を提唱される方(つーかなんでそういうのがエコノミストはともかく大学教授になるのかと日本の経済学会には自浄作用とか競争原理とか働いていないのかと小一時間問い詰めたいのだが)が政策委員会に加わるので、どのようなオモシロ議論が発生するのか10年後の議事録まで待ってられないので議事要旨でジンバブエ先生のジンバブエ理論ご開陳の巻という部分を大公開していただきたいと思います。副総裁だと執行部の一員だからスットコドッコイ発言をあまり公開しにくいかも知れないけど、ヒラ審議委員だったら事務方的にも別に問題ないでしょ(ニヤニヤ)。


などと話が逸れてしまった上に気が付いたら時間が無くなってきたので議事要旨ネタはこんな所で(あとたぶん追加はないのですがあったら追加します)。

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2015/02/24

○1月決定会合議事要旨を見るとそもそも1月時点で追加緩和する気が碌にない件について

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2015/g150121.pdf

ということでこちらを鑑賞するのですが、このトーンならそらまあ2月の会合での会見はああなりますわなというような内容でございまして、では10月の追加緩和とは何だったのかという風情が更に高まるのでありました。


・まずは展望レポート中間レビュー状況を見ましょう

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『3.中間評価』から参ります。

『以上のような認識を踏まえ、展望レポートの中間評価についての議論が行われた。』

つーことで。

『委員は、このところ原油価格が大幅に変動しており、消費者物価の見通しは、先行きの原油価格の想定によって大きく影響を受けることを踏まえると、今回の中間評価では、前提となる原油価格を委員間で揃えることが適当であるとの認識で一致した。具体的には、最近の原油価格の推移や市場における先物価格などを参考に、原油価格(ドバイ)が1バレル55 ドルを出発点として、見通し期間の終盤にかけて70 ドル程度に緩やかに上昇していくと想定した。また、大方の委員は、その場合におけるエネルギー価格の寄与度の試算を公表することが有用であるとしたうえで、消費者物価指数(除く生鮮食品)前年比におけるエネルギー価格の寄与度は、2015 年度で− 0.7〜− 0.8%ポイント程度、2016 年度で+ 0.1〜+ 0.2%ポイント程度になるとの認識を共有した。』

原油価格の置きを入れた話ですな。

『ある委員は、消費者物価(除く生鮮食品)からエネルギー価格の寄与度を差し引いた数値が、物価見通しのベンチマークと誤解されないよう、丁寧に説明していく必要があると述べた。』

ほうほう。まあそこまで気にしていないとは思いますけどね。

『こうした原油価格を前提に、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、昨年10 月の展望レポートでの見通しと比較して、2014 年度は下振れているとの認識で一致し、その主な要因として、年度前半の個人消費が弱めの動きとなったことを挙げた。』

14年度の成長見通し下げで要因は年前半の個人消費が弱いって要するに消費税の影響を読み間違えたという話でしょうが、物価上昇による実質所得減少の悪影響もあるんじゃないですかねえ。

『一方、委員は、2015 年度、2016 年度については、原油価格の下落、為替円安、政府の経済対策の効果、消費税率引き上げの延期などから上振れており、潜在成長率を明確に上回る成長になるとの見方を共有した。』

2015年度、2016年度は潜在成長率を明確に上振れる成長へと「上方修正」しているとはこれはこれは。

『また、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格の大幅下落の影響から、昨年10 月の展望レポートでの見通しと比較して、2015 年度にかけて下振れているとの認識で一致した。』

というころで物価の先行き見通しキタコレですが・・・・・・

『もっとも、多くの委員は、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率に規定される物価の基調的な動きに変化は生じておらず、着実に高まっていくとの見方を示した。』

「基調的」攻撃はすでに始まっております!!!

『これらの委員は、原油価格下落の影響は前年比でみるといずれ剥落することを指摘したうえで、その影響が剥落するに伴って消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は伸び率を高めることになると述べた。』

基調が強いのでこうなります。

『「物価安定の目標」である2%程度に達する時期について、多くの委員は、原油価格が現状程度の水準から先行き緩やかに上昇していくとの前提に立てば、2015 年度を中心とする期間に達する可能性が高いとの見方を示した。これらの委員は、先行きの原油価格については不確実性が高く、原油価格の動向次第では、その時期は多少前後する可能性があると付け加えた。さらに、これらの委員は、2016 年度については、10 月の展望レポートでの見通しから概ね変化していないと述べた。』

・・・・・・・すでに2年で2%という話は前提にも出てこないというのが実にチャーミングな上に、原油価格が弱かったら更に後ろ倒しになるのも平然と容認している訳で、そもそも論としてこの時点で物価の動向を受けた形での追加緩和の可能性がほぼ皆無という状態になっているのがわかるというものでありまする。

『これに対し、一人の委員は、円安にもかかわらず消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比プラス幅が足もとゼロ%台前半にとどまっていることを踏まえると、先行き2%を持続的に実現することは難しいとの認識を示したうえで、2016 年度までの成長率および物価は政策委員の中央値を大きく下回るとの見通しを示した。』

あちゃー。

『別の一人の委員は、原油価格の下落、中長期的な予想物価上昇率の上昇モメンタムの弱まりなどから、2016 年度までの見通し期間を通じて物価見通しは下振れており、消費者物価(除く生鮮食品)は見通し期間中に2%に近づくにとどまるとの見方を示した。』

ありゃー。

『さらに別の一人の委員は、先行きの物価は委員の中央値よりも低いとみており、2015 年度を中心とする期間に2%に達するのは難しいとの見方を示した。』

ナムナム。

・・・・・・ということで3名の見通しはそもそも展望レポートの見通し期間に2%の物価目標達成は展望れきませんという話になっているのですが、その割にはこの3名から追加緩和などの提案が出ていないのは何ででしょ、というのが今回の議事要旨では示されていない(なおこのうち1名は多分木内さんで、木内さんだけは政策提案をしているのですが)のがこの議事要旨の不親切なところですなと存じます。

まあこの2名に関して追加緩和とかの提案が出ない理由としては「そもそも短期間で目標をリジッドに達成しようというのが無茶なのであって、基調がしっかりしていれば少々目標達成が遅れても問題はないし、そこを無理するのは良くない」という話だとは思います。

#そう考えるとここの3名は木内、佐藤、石田の各氏ですかね


・金融政策決定に関する物価に関する議論部分から

続いて『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は、昨年10 月末の金融政策決定会合で拡大を決定した後も、引き続き所期の効果を発揮しているとの判断を共有した。多くの委員は、10 月末の決定は、デフレマインドの転換が遅延するリスクに未然に対応したものであるが、その後、原油価格が一段と低下し、消費者物価指数の前年比伸び率が低下しているにもかかわらず、中長期的な予想物価上昇率はしっかりと維持されていると指摘した。』

鉛筆なめ要素が強い中長期的な予想物価上昇率が維持されているので云々ということで、では10月に追加の判断をした時とこの1月の時とどこがどう違ってきているのかという事について具体的に示した上で中期的な予想物価上昇率ガーという話をして頂きたいのですが、このままだと結局のところはやりたい施策に合わせて中長期の予想物価上昇率を自由自在に持ち出してくるという流れになりそうですな。


『金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、「物価安定の目標」は安定的に達成すべきものであり、金融政策運営に当たっては、物価の基調的な動きが重要であるとの認識で一致した。』

・・・・・・・・お、おう。

まあ何ですな、この基調的な動きが重要というのは全く持ってその通りではあるのですが、一方で日銀っていままで「バックワードルッキング的に形成されるインフレ期待」というのも重視していて、10月の追加緩和でもその部分を注目して政策対応したはずなのに、このMPMでは完全に「基調」の方に逃げてしまっているという形(だからこそ2月決定会合後の総裁会見が物価に関する質疑でひたすら「基調」で逃げる形になっていたわけですよ)でして、屁理屈の出し入れ自由自在というものです。

『そのうえで、委員は、@「物価安定の目標」は消費者物価の総合指数で定義している、A展望レポートにおける見通しでは、基調的な物価の動きを比較的よく表す「消費者物価指数(除く生鮮食品)」を用いている、B今回は原油価格が大幅に変動していることを踏まえ、消費者物価におけるエネルギー価格の寄与度を示すことが適切であるとの考え方を共有した。』

というのはまあともかくとして。

『また、多くの委員は、物価の基調の判断に当たっては、様々な物価指標を点検することが重要であり、需給ギャップや中長期的な予想物価上昇率、さらには背後にある経済の動きとも併せて総合的に評価していくとの考え方に変わりはないと述べた。』

置物BEI万能論is何処という所ですな(ニヤニヤ)。

『さらに、これらの委員は、予想物価上昇率の動向を点検する際には、ブレーク・イーブン・インフレ率など市場の指標やエコノミスト、企業、家計などへのサーベイ調査の結果だけでなく、企業や家計の物価観やそのもとでの行動の変化、例えば価格設定行動や賃金交渉などを評価することが重要であると指摘した。』

賃金交渉キタコレですが、このあたりの白黒が付いた結果として物価に対する影響が指標として見えて来るのが夏以降という話になりますので本来はその時点が正念場になるのですが、先ほどネタにしましたように、そもそも政府サイドの方が2年で2%に対して腰が砕けている辺りが今後どう金融政策運営に影響してくるかですね。

『このところの予想物価上昇率の動向について、多くの委員は、原油価格が一段と下落し、物価上昇率が低下する中でも、デフレマインドの転換は着実に進んでいるとの認識を示した。』

ということで鉛筆成分の高い予想物価上昇率に関する認識が出てくるのだ。

『複数の委員は、今春の賃金交渉に向けて連合では2%以上のベースアップを要求する方針を決定したほか、経営者側も賃上げに前向きな姿勢を示していることなどを指摘し、企業や家計のデフレマインドの転換は着実に進んでいると述べた。』

うむ。

『また、何人かの委員は、中長期的な予想物価上昇率は、市場指標では低下する動きもみられるが、家計や企業、エコノミストなどのサーベイ調査では、総じて維持されていることを指摘した。この点に関し、このうち一人の委員は、中小企業を対象とするサーベイは、経営者自身の見方をもとに回答される場合が多いため、個々の企業の見方をより反映していると付け加えた。』

ほうほうそうですか(棒)。

『この間、ある委員は、今春の賃金交渉で賃上げが実現したとしても、それが経済・物価情勢に大きな影響を与えるとまでは期待すべきでないと述べた。』

これは冷や水キタコレですな(ニヤニヤ)。


更に話は続いて今度は「原油価格下落と金融政策の関係」というのがありますよ。

『原油価格下落と金融政策運営の関係について、委員は、@原油価格の下落は、やや長い目でみれば、経済活動に好影響を与え、物価の押し上げに寄与するものであり、また、前年比のマイナス効果(いわゆるベース効果)はいずれ剥落する、A物価に対する短期的なマイナス効果が、予想物価上昇率の変化を通じて物価の基調に影響を与えるのでなければ、ベース効果の剥落に伴って物価上昇率は高まっていく、B金融政策運営上は、予想物価上昇率や需給ギャップなどに規定される物価の基調に変化がないかを見極めながら政策判断を行う、との考え方を共有した。』

それは分かったが10月との整合性は????と言うと次にこんな指摘が。

『この点に関し、複数の委員は、昨年10 月の「量的・質的金融緩和」の拡大は、原油価格下落そのものに対応したものではなく、原油価格の下落等に伴う物価上昇率の低下が予想物価上昇率に及ぼす影響、すなわちデフレマインドの転換を遅らせるリスクを懸念して行ったものであるという点を、より丁寧に説明していく必要があると述べた。』

まあ理屈は理解したが、ではそう判断するに至った根拠となる経済指標や経済情勢に関する認識などがどうなっているのかというのを説明して、その説明が合理的だと思えるような内容なのかという点について小一時間問い詰めたい。

でまあそういうことで、

『以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、「マネタリーベースが、年間約80 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」という現在の方針を継続することが適当であるとの見方を示した。』

以上、物価および予想インフレ率の部分に絞ってネタにしてみた訳ですが、まあこのロジック展開を見るとどう見ても追加緩和にはならない、という事になると思う訳ですがいかがでしょうかね。

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2015/02/19

○決定会合声明文:今回は前回比較よりも文章構成的に景気判断が強くなっていますな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150218a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150121a.pdf(前回)

・景気判断全体の構成がシンプルになっています

前回との比較をした時に一番目立つのは「今回は文章がすっきりしている」という事であります。つまり各部分の前回比較を見ると強くなっている部分というのはありますけれども、全体の文章がすっきりしているというのはつまりヘッジクローズ部分が減っているという事であり、それは即ち「判断に自信度が上がっていることを示す」という状況であるという事を意味します。

でまあ今の景気判断というのは足元の物価はともかくとして基調は前向きの循環メカニズムが回っていますという話ですので、その状況下で文章がシンプルになるというのは前向き循環メカニズムについて自信を深めている、というのを意味するのですけれどもホンマカイナという感はだいぶ致しますな。

なお、物価目標の2年での達成についてすっかりスルーとなってしまったので、せめて景気判断だけでも強くしないと格好がつきませんし、まあここは一発鉛筆を舐めますか、などというようなことは無いと存じますが・・・・・・・・・・


・ということで現状判断

『わが国の景気は、緩やかな回復基調を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(前回)

まあこの時点で思いっきりシンプルになった罠という所ですが、「基調的に」が抜けて駆け込み需要云々のところをすっぱりと外したものの、その「基調」が回復の所に入っている所が微妙にチャーミングという所です。以下需要項目別のお話。


『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直している。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。』(前回)

海外経済は同じ、輸出はこれまた文言をすっきりさせて判断を引き上げています。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

設備投資の緩やかな増加基調は分かったがいつ本格的に出てくるんでしょうかという所ですな。でもって設備投資と公共投資は文言同じです。

『個人消費は、一部で改善の動きに鈍さがみられるものの、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、全体としては底堅く推移している。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。』(前回)

個人消費に関しては「一部で改善の動きに鈍さが〜」というのが入りましたが、「基調的には底堅く推移」というのが「全体としては底堅く推移」という表現に変更しておりまして、これ引き上げなのか引き下げなのか訳分からんという感じですが、まあ前段の改善の動きに鈍さ云々というのがあるので微妙に下方修正をしたという事でしょうかねえ。

『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は持ち直している。』(今回)
『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まっている。』(前回)

住宅投資は文言一致ですが、生産は下げ止まりから持ち直しということで、生産に関しては上方修正という形になっておりまして、今回は輸出と生産という結構大きな項目を上方修正しておりますな。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%台半ばとなっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

物価の数値に関しては0%台後半から半ばに下がっておりますが、他の所の話は同じですな。


・先行き見通しも表現がスッキリ

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(前回)

駆け込み需要云々の文言が現状判断から抜けているので先行き見通しからも抜けまして、これまた表現がすっきりした形になっておりまして、物価見通しに関しては現状判断を下げておりますが先行きの見通しが下がっておりまして平然と先行きの一段の低下を容認する形になっていますな。


・リスク要因と毎度の決意表明っぽい部分は文言一致

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

文言一致ですな。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(前回)

ということでリスク要因と毎度の所期の効果を発揮して云々というのは文言一致となっておりまして、ついでに言いますといつもの木内さんの提案も同じ文言となっております。

つー訳で、今回の声明文は文章がスッキリとした上に生産と輸出を上方修正するという攻撃にでておりますので、何でまたこのタイミングでこんなに上方修正をしてくるの(しかも直近出たGDPがあじゃぱーだったというのに)という所ではありますが、まあ1月決定会合の動きが明らかに「2年」を形骸化する(ただし2%については変わりませんですよ)流れになってくる中で景気判断の部分を威勢よくしておきましょうという感じになっているのではという先ほどの邪推はあくまでも邪推ですけどなんかそういうサムシングを感じるというのは意地が悪いですかそうですか。

なお、今回は会見も40分ほどで終了しまして、まあ2年の話にしても目先の物価が下がる件についても前回の決定会合での会見でのロジック立て直しに加え、政府方面からも基調さえ確りしていれば目標達成の期間にあまり拘る感じではないというような情報発信が続きましたので、そういう意味では勝負付けが終わっている話になっておりまして、そういう辺りからも会見の質疑は前回会見よりもスムーズではございましたがその辺に関しては会見要旨が出てからまた明日という事で。

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2015/02/02

○超今更ネタですが金融経済月報

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2015/gp1501.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1412.pdf(前回)

遅くなりましたが今回は声明文比較の方もしておりませんでしたので月報比較で声明文比較に替えておきます(超大汗)。例によって【概要】部分から。

・現状判断は一か所だけ上方修正

『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(今回)
『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(前回)

てな訳で総括判断には変化がありません。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

海外経済、輸出、設備投資、公共投資の文言も同じです。


『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まっている。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まりつつある。企業の業況感は、一部に慎重な動きもみられているが、総じて良好な水準が維持されている。』(前回)

個人消費、雇用所得、住宅投資のところも同じで、これだけ全部同じなのに生産だけ判断が上昇しているという謎展開で、その謎展開の理由は在庫調整の進捗が良い事であるという話のようです。なお業況感云々は短観直後の月報で出るものなので今回は割愛されるのが仕様です。


・先行き判断も一か所だけ文言変更

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。』(前回)

こちらも全文一致。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、緩やかな減少傾向に転じていくとみられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、次第に減少傾向に転じていくとみられる。』(前回)

輸出はいつもどおりの見通し。公共投資のところが「次第に減少傾向」というのと「緩やかな減少傾向」というののどちらが強いのか最早文学過ぎてわかりません><

『設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。』(前回)

全文一致とな。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(前回)

生産も同じですね。


・リスク要因も同じ

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

これまた全文一致。


・物価は先行き判断を下げるの巻

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

現状判断では相変わらずの予想物価上昇率は全体として上昇攻撃がありましてお前は何を言ってるんだ状態ですが、こちらはまあ現状判断部分なのでそうですかという所ではあるのかも知れませんが、1%程度という数字から0%台後半という数字表現になりましたな、うんうん。


『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、エネルギー価格の下落を反映して、当面プラス幅を縮小するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられる。』(前回)

先行き判断ですが「当面現状程度のプラス幅」という表現だったものを下方修正して「プラス幅を縮小」としておりますが、日銀文学的にはこの「当面」というのは英文でいう「for the time being」でして、数か月程度は数か月程度ですが、半年程度になると「しばらくの間」になりまして、「for some time」となりますので、それよりは短い期間ではあるのですが、目先数か月程度弱含みになりますという話になっておりますな。

ただまあ一方でご案内のように展望レポートでは先行きの見通しに関して手前の物価見通しは下げたものの、先行きの方は下げるどころか引き上げとなっておりますので、それとセットで考えますと、今回展望レポートを出して先行きは別に変わらないどころか上昇ですよ(キリッ)と出すことによって、足元の物価情勢を政策判断から切り離して「一時的なので無問題(キリッ)」とできるようになり、そのため今回やっと判断文言をいじれましたという話でしょうな。

なお物価先行きに関して英文バージョン比較を置いておきますね。

『With regard to the outlook, excluding the direct effects of the consumption tax hike, producer prices are expected to continue declining for the time being, reflecting movements in international commodity prices, and the year-on-year rate of increase in consumer prices is likely to slow for the time being, reflecting the decline in energy prices.』(今回)

『With regard to the outlook, excluding the direct effects of the consumption tax hike, producer prices are expected to continue declining for the time being, reflecting movements in international commodity prices, and the year-on-year rate of increase in consumer prices is likely to be at around the current level for the time being.』(前回)


・金融環境に関する説明には新味なし

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)以下の部分は特段のインプリケーションもなさそうですのですが、せっかくですので本文の方ではどういう記述をしているのかを比較してみましょう。

まずは短期。

『短期金融市場をみると、長めのターム物を含め、金利は低位で安定的に推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.1%を下回る水準で推移している。ターム物金利をみると、3か月物国庫短期証券利回りは、概ねマイナスの領域で横ばい圏内の動きとなっている。3か月物ユーロ円金利およびユーロ円金利先物レートは、いずれも横ばい圏内の動きとなっている(図表36)。』(今回背景説明)

『短期金融市場をみると、長めのターム物を含め、金利は低位で安定的に推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.1%を下回る水準で推移している。ターム物金利をみると、3か月物国庫短期証券利回りは、マイナスの領域で横ばい圏内の動きとなっている。3か月物ユーロ円金利およびユーロ円金利先物レートは、いずれも横ばい圏内の動きとなっている(図表44)。』(前回背景説明)

もしかして年初に短国入札の足切りが100円になったから「概ね」がついたのかという所ですが、どう見てもマイナス状態の長期化は凶悪な事態なのですが「低位で安定的に推移」という表現にまとめられているのはいつものクオリティ。

ヒャッハー長期。

『長期国債の流通利回り(10 年新発債)は、米欧長期金利の低下や昨年秋の日本銀行の金融緩和拡大などを背景に低下しており、最近では0.2%台前半で推移している(図表38)。』(今回背景説明)
『長期国債の流通利回り(10 年新発債)は、米欧長期金利の低下などを背景に低下しており、最近では0.3%台半ばで推移している(図表46)。』(前回背景説明)

ということで、短国マイナスの長期化→利付国債のマイナス化→マイナス領域拡大→ヒャッハーという話についてはもしかしてこの文章には書いていないだけでご認識があるのかもしれませんけれども、まあ思いっきり知らんがな的な表現になっている辺りが市場との対話アリバイ会合の屋上屋を架すのに余念がないだけの事はありますなという所でございまする。

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2015/01/29

○アリバイ屋上屋を架すの巻

昨日の夕方こんなのが出ていました。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150128a.pdf
2015年1月28日
日本銀行金融市場局
市場参加者との対話の場の拡充について

ほうほう。

『本銀行は、「量的・質的金融緩和」のもと、国債や各種のリスク性資産など、広範な金融資産を買い入れています。こうしたもとで、日本銀行金融市場局では、市場参加者との対話の強化に向け、「市場参加者との意見交換会」の開催や「東京短期金融市場サーベイ」の公表早期化など、さまざまな取り組みを進めてきています。さらに、四半期毎の「債券市場サーベイ」を、新たに2015年2月調査から開始することとしています。』

そうですね。

『そのうえで、日本銀行金融市場局では今般、さらに以下のような方策を通じて、市場参加者との対話の場を一段と拡充していくこととしました1。』

ほうほうそれでそれで??

『1.「債券市場参加者会合」の創設』

ほっほー。

『日本銀行金融市場局は、本年から開始する「債券市場サーベイ」を有益に活用し、市場参加者との対話を一段と強化する場として、「債券市場サーベイ」や「市場参加者との意見交換会」にご参加頂いている金融機関を対象とする「債券市場参加者会合」を、新たに開催することとしました。』

ちょwwwおまwwwwww

えーっとすでにこういうのあるんですが・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141125c.pdf
「市場参加者との意見交換会」の開催について

えーっとすいませんこれとどこがどう違うのでしょうかという所ですが、どうもその先にある説明によると人数を減らしてスモールミーティングにして意見交換がどうのこうのという事のようですが、そもそも聞く耳持ってないと思われている状態だと別に意見交換しても意見出てこないと思いますし、どうせオペ先にはいろいろとヒアリングしてるでしょうからわざわざこういうのやるのはアリバイ会合としか思えんのだがまあ機能すると良いですね(棒読み)。


『2.「市場調節に関する懇談会」の拡充』

ほえ??

『オペレーション対象先との間で原則として年2回2開催してきた「市場調節に関する懇談会」について、今後は開催日時を事前に公表するとともに、対話の強化を進める観点から、時間も若干拡大して開催する方針です。開催頻度は従来通り原則年2回とし、次回会合は2月25日に開催する予定です(詳細は別紙参照)。』

いわゆるオペ懇について開催を公表する(中身が公表される訳ではないでしょうが)うえに時間を延ばすと言う事のようですがso whatという所でして、まあそれよりも唐突にこういう施策が出てきたのはなんででっしゃろとか考えるほうが味わいがあるかもしれませんね!!!!!

まあなんですな、今回のアナウンスとか見てても思うのですが、そもそも短期のインターバンク部分の調節が伝統的金融政策のメインだったから仕方のない面はあるにせよ、どうも日銀におかれましては「金利の市場はオペ先」という認識が抜きがたくあるように思えるわけでして、いやあの実際に金融市場での金利商品を実体経済と繋いでいるのはディーリングルームの中だけではないですし、たとえば毎度申し上げております「名目プラス金利とマイナス金利の非対称性」という話にしたって、市場の中だけ見ていると見えにくいものがあったりするとか思うので、市場との対話という中であまり狭いところばかり見られても困るなあとか思ったりもしますけどね、うんうん。

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2015/01/27

○後入先出で12月決定会合議事要旨ネタ

1月会合ネタの残りを片付ける前にこちらですいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g141219.pdf

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・海外経済に関して

『海外経済について、委員は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復しているとの見方で一致した。先行きについても、委員は、先進国を中心に、緩やかな回復が続くとの認識を共有した。』

てな感じで基本的に経済情勢に関しては強いですよ。以下ちょっと鑑賞。

『地域毎にみると、米国経済について、委員は、民間需要を中心に着実な回復を続けているとの認識で一致した。委員は、雇用の改善やガソリン価格の下落を背景に個人消費が堅調に増加し、そのことが企業活動にも好影響をもたらしているとの見方を共有した。』

米国に関しては強いです、というか世界経済が米国一本足打法みたいなもんだが。

『ある委員は、景気回復が続くもとでアジアなど新興国からの輸入が増加しており他地域にも好影響が及んでいると指摘した。先行きについて、委員は、家計部門の堅調さが企業部門に引き続き波及していくもとで、しっかりとした回復を続けるとの認識を共有した。複数の委員は、雇用環境の改善が急速に進んでいることなどを踏まえると、回復テンポが上振れる可能性もあると付け加えた。』

どう見ても米国には超強気です本当にありがとうございました。

『ユーロエリア経済について、委員は、このところ回復のモメンタムが弱まっているとの認識を共有した。先行きについて、委員は、企業マインドの慎重化の拡がりなどから当面回復がもたつく可能性が高いものの、個人消費の底堅さや輸出の増加などに支えられ、基調的には緩やかながらも回復を続けるとの見方で一致した。同時に、委員は、低インフレが長引く可能性やロシア情勢の影響には注意が必要であるとの認識を共有した。何人かの委員は、ギリシャにおける政局混乱がマイナスの影響を及ぼす可能性があると付け加えた。』

そこまで下は見ていないと。

『中国経済について、委員は、引き続き構造調整に伴う下押し圧力がかかっているが、外需の改善や景気下支え策もあって、総じて安定した成長を維持しているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組んでいく中で、成長ペースを幾分鈍化させながらも、総じて安定した成長を続けるとの見方を共有した。』

『新興国経済について、委員は、先進国向け輸出の増加を起点に景気が持ち直している国・地域が徐々に増えている一方で、ASEANの一部、ブラジル、ロシアなどでは依然弱めの動きが残っており、全体として成長に勢いを欠く状態が続いているとの認識で一致した。』

中国は強くはないが弱いという感じでもないですな、新興国が弱いのはまあそうですねと。

『ロシア経済について、多くの委員は、原油価格の下落を背景に通貨ルーブルの下落が加速し、これに対して利上げが実施され金融環境がタイト化するもとで、内需を中心に景気が停滞しているとの見方を示した。』

ほう。

『新興国経済の先行きについて、委員は、国・地域毎に差は残るものの、米国を中心とする先進国の景気回復の波及と、それを起点とした内需の持ち直しから、成長率を徐々に高めていくとの認識を共有した。』

ということで結論は米国一本足打法ですが、まあその米国が強いですからこんなもんでしょうかね。


・すでに12月会合の時点でだいぶ理屈の立て直し(またの名をすり替え)が起きていますな

で国内経済物価情勢部分。

『わが国の景気について、委員は、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと作用し続ける中で、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいるとの見方で一致した。』

『景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとの認識を共有した。』

ほうほう。

『何人かの委員は、このところの原油価格下落は企業収益や家計の実質所得を通じて景気の押し上げ要因になると付け加えた。』

で、以下需要項目に関して個別の話がいろいろとあるのですが、まあ基本的に強めの話が並んでおりまして、読んでいて下振れ警戒の強さみたいなニュアンスを感じさせないような作りになっているのはやはり1月会合の展望レポート中間レビューで成長率見通しを上ブレさせたこともあって議事要旨の出来上がりがそんな感じになっているんですねなどという事は良い子のみんなは言ってはいけませんですかそうですか。

でもって肝心の物価部分。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、+1%程度となっており、当面現状程度のプラス幅で推移するとの認識で一致した。』

ほうほう。

『多くの委員は、既往の原油価格の下落が、今後しばらく、物価の下押し圧力として働くとの見方を示した。このうちの何人かの委員は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみた消費者物価の前年比が、来年前半にかけて1%を下回って推移する可能性があると指摘した。』

それですと追加緩和ではないのかと小一時間なのですが後程もうちょっと詳しいのが出てくる。

『ただし、多くの委員は、原油価格の下落は経済活動に対してプラスに作用するため、やや長い目でみれば、需給ギャップの改善を通じて基調的な物価の押し上げ要因になるとの認識を示した。』

10月の議論is何処??

『予想物価上昇率について、委員は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとの見方を共有した。』

これずーっと上昇上昇言い続けているのですからそろそろ2%くらいになってもおかしくないと思うんですけれども(ゲス顔)。

ということで『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の最初にこんなのが。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は、10 月末の金融政策決定会合で拡大を決定した後も、引き続き所期の効果を発揮しているとの判断を共有した。すなわち、これらの委員は、わが国の長期金利は緩やかに低下しており、やや長い目でみた予想物価上昇率の高まりともあいまって、実質金利は低下方向にあり、そのことが企業・家計の支出行動を支えているとの認識を示した。』

実質金利低下で支出行動を支えるという置物理論もしらっと入っているのがチャーミング。

『原油価格の下落と金融政策運営の関係について、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大が原油価格の下落そのものへの対応と市場の一部では受け止められており、その後の原油価格下落を受けて追加緩和を予想する声も聞かれると指摘した。』

一部じゃなくて全部ですが何か??????

『大方の委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大は、原油価格の下落そのものに対応したものではなく、需要面の弱めの動きや原油価格の下落から物価上昇率が短期的に伸び悩む中で、デフレマインドの転換が遅延するリスクの顕現化を未然に防ぐために実施したものであるとの認識を示した。』

同じことだろうがオイ。

『ある委員は、今後の金融政策運営を考えるうえで重要なのはあくまで物価の基調的な動きであり、広い意味での予想物価上昇率の動向がポイントになると述べた。』

ということで、1月会合後に大手を振って登場した「基調的な動きが良いと”判断されるのであれば”どこに問題があるのでしょうか足元の物価?んなもん一時的だったら知らん」という話の片鱗がここに出ているのですが、なんかさっきのところからそうなのですが、今回の決定会合議事要旨って1月決定会合でのロジック豹変を意識してロジック豹変につながる部分を強調して掲載してねえかという気がするのはアタクシが良い子じゃないからですね!!!!!!111

ちなみにちょっと飛ばしますけど先のほうにこんなお話も。

『先行きの金融政策運営の考え方について、(途中割愛)委員は、金融政策運営に関して、原油価格の下落による下押し圧力が続くもとで月々の消費者物価指数の動きに注目が集まる傾向があるが、需給ギャップや予想物価上昇率、賃金などの動向をよく点検しながら物価の基調を見極めていくことが重要であるとの認識で一致した。』

ということで、すっかり「基調的な物価が重要」という話に12月会合の時点ですり替わっているのですけれども、それでは10月追加緩和時の総裁会見での冒頭説明を改めて鑑賞しましょう。

実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、それがどのような理由によるものであれ、予想物価上昇率の好転のモメンタムが弱まる可能性があります。そうなれば、せっかくここまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅れてしまうリスクがあります。その意味では、わが国経済は、デフレ脱却に向けたプロセスにおいて、今まさに正念場、critical momentにあると言えます。今回、追加緩和を決定したのは、こうした考え方に基づくものです。』(これは10月31日総裁定例記者会見より、赤字は引用者によります)

で、そもそも予想物価上昇率自体が鉛筆なめなめの世界であるという事を勘案すると、10月追加緩和を決定した時の予想物価上昇率に関する考え方と足元での予想物価上昇率に関する考え方のどこがどう変わっているのかについて小一時間問い詰めたい(なお屁理屈が返ってくる模様)というところではあります。


・予想物価上昇率に関してはどう見ても鉛筆なめなめです本当にありがとうございました

で先ほどの続きに戻りまして。

『予想物価上昇率について、委員は、市場の指標やエコノミストなどの調査をみるだけではなく、企業や家計の物価観やそのもとでの行動の変化を捉えることが重要であるとの認識を示した。』

鉛筆なめなめキタコレ!

『そのうえで、「量的・質的金融緩和」拡大後の予想物価上昇率の動向について、多くの委員は、原油価格が一段と下落し、物価上昇率が低下する中でも、デフレマインドの転換が着実に進んでいるとの見方を示した。』

これまた1月会合における説明と同じで、「追加緩和をした結果実際の物価が下がっても予想インフレが下がらないので効果が出ました(ドヤァァァ)」というインチキ理屈になっておりますが、その間のBEIの低下に関しては「なんだか世界的にBEIって下がっているけどマインドなどを見ると下がっていませんから」という説明で済ますところが鉛筆なめクオリティ。

#つーかそもそも生活意識アンケートって昔から似たような数字しか出てねえじゃんと思うのだが・・・・・・

『何人かの委員は、来春の賃金交渉に向けて連合では2%以上のベースアップを要求する方針を示しているほか、先日公表された「経済の好循環の継続に向けた政労使の取組について」においても、「経済界は、賃金の引上げに向けた最大限の努力を図る」方針が明記されるなど、企業や家計の行動に変化がみられ始めているとの認識を述べた。』

お賃金キタコレ!

『他方、ある委員は、今年の経験も踏まえると、主要企業における賃金交渉の結果が先行きの物価に与える影響に強く期待すべきでないと述べた。』

これはどの野党審議委員か存じませんが見事な水ぶっかけ発言(^^)。

『ブレーク・イーブン・インフレ率などマーケットの指標について、複数の委員は、原油価格下落を受けた世界的な低下傾向の中でこのところ若干低下しているが、「量的・質的金融緩和」の拡大の効果もあり、欧米に比べれば低下幅は小さいとの見方を示した。』

・・・・・( ゚д゚)
・・・・・(つд⊂)ゴシゴシ
・・・・・(;゚д゚)

えーっとすいません、欧米と比較してどうするんでしょうか??????????????????

『何人かの委員は、家計や企業、エコノミストなどのサーベイ調査では、中長期的な予想物価上昇率は総じて維持されており、12 月短観でも企業が引き続き物価上昇率の高まりを予想していることが示されたと述べた。』

ということで鉛筆なめなめですなあというところで実にこうアレな味わい。


・原油価格の下落の影響はプラスという情報発信が重要とな

『原油価格下落の物価に対する影響について、委員は、@短期的には押し下げ要因になる、A一方、やや長い目でみれば、経済活動に好影響を与え、基調的な押し上げ要因になる、B前年比でみた短期的な物価押し下げ要因はいずれ剥落する、との認識を共有した。』

はあそうですか。

『そのうえで、多くの委員は、デフレマインドの転換が続くのであれば、原油価格の下落はいずれ物価上昇率に対して押し上げ方向に作用するとの見方を述べた。』

でもこの「マインドの転換」という部分で使っている予想インフレ率について市場のBEIは華麗にスルーするとかやっているのですけどね!!!!

『以上のような考え方について、委員は、引き続き丁寧に情報発信していく必要があるとの認識を示した。』

いやあ10月追加緩和の時にあんな話(さっき引用したやつ)をしておいて何が情報発信だか・・・・・


・物価指数に関する部分でしらっと大きな論点が書かれていました

「先行きの金融政策運営の考え方」の部分にしらっとこんな話が。

『複数の委員は、幾つかの公的統計では賃金などを実質化する際に帰属家賃を除く消費者物価を用いていると指摘したうえで、物価情勢を判断する際には、このところ住宅市場を巡る環境変化などを背景に帰属家賃が消費者物価の押し下げに寄与している点に留意すべきとの見方を示した。』

・・・・・・・ということでしらっと一文が挿入されているのですが、これって石田審議委員がだいぶ前から指摘していますし(昨年の2月でしたな)、佐藤審議委員も言及していたと思いますが、そもそも論として適切な物価指数は何ぞや的な話にもつながることで、この点についてこのタイミングの議事要旨にしらっと掲載されているのが味わいがあるように思えますがどうでしょうかね。


・これは良い指摘

さらにその直後に良い指摘が。

『この間、ある委員は、「量的・質的金融緩和」のイールドカーブ全体に対する下押し圧力が一段と強まっており、リスク要因の点検にあたっては、金融機関経営や広義の決済システムへの影響などについて、これまで以上に注視していく必要があると述べた。』

(;∀;)イイハナシダナー

市場の中だけの視点だったり経済学者的な視点だったりすると名目マイナス金利ってあまり弊害と思わないみたいで、だからまあマイナス金利に関して日銀(まあ何だかんだ言っても日銀の政策やってたり調節やってたりする所はリテール金融とは無縁ですからね)も市場の何とかストとかでもあまり気にしない人が多いなあとは思うのですよね。

でも実際問題として「マイナスの貸出金利」なるものは存在しえない訳であるという事を考えますと(金融市場の中ではご案内の通り存在しますが)、プラスの金利を低下させていくことの実体経済に対する効果とマイナスの金利を深堀していくことの実体経済に対する効果は非対称であるし、そもそも名目ゼロ金利制約といっても金融仲介業務をするのにタダでは仕事できないのですから、そういう意味ではその非対称となる閾値というのはおそらく金融システム全体を維持するためのコストが賄える所に相当する位置ではないと(一時的にコスト割れでのビジネス継続が容認できても永遠には容認できないのと同じ理屈で)長期的な意味でのサステイナブルに意図した政策効果を起こすことが難しいのではないかと思いますし、その辺を軽視する向きのレポートとか便所紙にもならん机上の空論だわと思うアタクシなのでありました。

・・・・・・とまあ話がそれましたが、この視点を指摘する審議委員の方もおいでになる(大体誰かの想像はつきますが^^)というのは心強いのですが、逆に言うとほかの審議委員の方はどうなのよというのと(まあ市場の実務関連に近い3名は危機感もっていると思いますけど)、そもそもそういう話は黒田さん置物さんはさておき、ほかの執行部は認識してるはずの話なのに全然スルー(中曽さんの「短国マイナス金利は政策効果(キリッ)」というのはその意味でショックが大きい梯子外しでおそらく日銀の市場に対するスタンスという意味では相当信用なくしたと思う)しているようにしか見えない(どころか調節スタンス的に短国マイナス金利を維持しようとしているとしか思えない打ち方なのはなんなんでしょ)のはなんだかねえという感じです。


・木内さんの提案そろそろ内容を変えて「QQEを見直した結果こうなので」にすべきでは

毎度の木内さんの見解部分。

『別の一人の委員は、「物価安定の目標」を2年程度で達成するのが難しいとみられる中で、「量的・質的金融緩和」が長期間継続される、あるいは極端な追加措置が実施されるという観測が市場で高まれば、金融面での不均衡の蓄積など中長期的な経済の不安定化に繋がる懸念があるとの見方を示した。』

ということで以下毎度の提案になるのですが、それよりも現状がまさに「QQEが長期間継続される」とか「次の追加緩和でさらにヤケクソ攻撃が炸裂する可能性が」というような市場の認識になっていると思いますので、その辺に対するアセスメントを出していただきたいと思います。

『そのうえで、この委員は、@金融市場調節方針および資産買入れ方針については「量的・質的金融緩和」の拡大前に戻すこと、また、A先行きの金融政策運営については、「物価安定の目標」の達成期間を見直すとともに、「量的・質的金融緩和」の継続期間を2年程度に限定し、その後柔軟に見直すとの表現に変更することを主張した。』

2年程度云々は貫禄の安定クオリティなのですが、もうすぐ2年なので「見直した結果こうすべき」という提案に次回あたりからは切り替えていただきたいものです。

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2015/01/22

お題「決定会合レビューだがPC復旧中にてやや簡単バージョンです」

しかしまあ何ですな、このタイミングで愛機があばばばばーというのは、「悪態を何度も書いていると負のオーラでパソコンがいかれる」っていう水の伝説みたいなオカルトですか(だいぶ違う)。

#業務連絡:メーラーが復活していないのでメール対応が暫時とまっております

○決定会合:市場の期待(?)を盛大に外した上に実質的にはロジックも修正

まあ何ですな、丁度昨日の朝に金ファクさんの水曜コラムで「ハト派タカ派と言った次元ではなく日銀はヤケクソになっているので何が出てもおかしくない」というような趣旨の指摘がありましたように、実際問題としては10月に追加緩和した後に3ヶ月で更に追加に追い込まれたらどこからどう見ても逐次投入ですし、失敗を認めたようなもんだから追加は無い、とは思いましてもやはり金ファクさんの指摘にはアタクシなんぞも頷く所が大でしたから、ここで追加緩和打たれたらほかの人たちはともかくとして債券市場は更に死亡だわとか頭を抱えておりましたですよ。

ということで今回は市場の期待(というか事前の煽り)を盛大に外してくれて市場破壊が進んで虫の息でありますところの債券市場的なところの人としてはホッと一息でございましたが・・・・・・・・・・

でまあ昨日申し上げたような事情で本日もちょっと簡略バージョンなのでいつもとややパターンを変えましてみます(今晩ECBあるから早めに修復したいところではありますな)。

・資産買入に変化なし(あっても債券市場的にはもはや困るが)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/k150121a.pdf

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成8反対1)(注1)。

マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』

『2.資産の買入れについては、以下の方針を継続する(賛成8反対1)(注2)。

@ 長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間は7年〜10年程度とする。

A ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。

B CP等、社債等について、それぞれ約2.2 兆円、約3.2 兆円の残高を維持する。』

・・・・・ということで買入に特段の変更はなしですな、つーかここでやられたら死ぬのでホッと一息ですな。なお反対は木内さんの「追加緩和前のペースに戻せ」です。

まあ何ですな、会見ネタは明日投下予定ですが、会見聞いた感じ&展望レポートの中間レビューを見ますと「追加緩和に関して結構なゼロ回答」であったなあという所で、もしかしてサプライズ好きの黒田日銀なので「ここまで期待されたら外すしかない」としたのかも知れませんね!!!!

#たぶん政策ロジックを立て直しにかかったからなのですが


・成長基盤は「額や期間の拡大」ではなくて「対象先の拡大」で来た上に拡大した先が画期的

『3.近く期限の到来する「貸出増加を支援するための資金供給」(以下「貸出増加支援」)、「成長基盤強化を支援するための資金供給」(以下「成長基盤強化支援」)、「被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーション」および「被災地企業等にかかる担保要件の緩和措置」について、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)1。

@ 期限を1年間延長する。

A 「成長基盤強化支援」(本則)の対象金融機関毎の上限を1兆円から2兆円へ、総枠を7兆円から10兆円にそれぞれ引き上げる。

B 「貸出増加支援」および「成長基盤強化支援」について、日本銀行の非取引先金融機関が各々の系統中央機関を通じて制度を利用し得る枠組みを導入する。』

「貸出増加額の2倍」の部分とか「4年」の部分とかを増やすのではないかという予想をしてたような気がしますが(やるなら額かなとか)、そのような方向での変更は無しという結論となりました。本則とか総枠とかは増やしましたが、これに関してはそもそも論として受動的に決まる額なのでここを増やしたからといって成長基盤や貸出増加支援がそのとおりに増える訳でもありません。

ただし、今回「おー」と思ったのはBの部分で、これは結構な画期的な変更。

つまりですね、今回のBは「日銀考査対象ではない所に与信をしますよん」という話ですし、「日銀考査対象じゃない所に日銀取引を開放しますよん」という話でもありまして、かなーり画期的ですわなあとか思いつつ、これ何ぼ担保付貸出と言っても考査しない所への貸出とか従来の個別プルーデンスな建付からだいぶ踏み込んだ感じです。

まあ「非取引先金融機関」ではあるけれども取引先としての適格性に関するモニタリングは制度利用に当たって仲介をすることになる系統中央機関が行うので、という整理になるものだと思います。実際の主な対象は信用組合と日銀当座預金口座を持っていない信用金庫とかですかねえ(後は労金とか農林系とか)という所ですので、MB拡大的な意味でのインパクトは2倍のところをいじるよりは小さいでしょうが、地域金融機関への門戸拡大というのは質的な意味では大きな話だと思いますので、これ自体はマクロ的に地味でも意味は大きいっすな、うんうん。

なお、脚注にある『1 基本要領等の所要の改正は次回以降の金融政策決定会合で行う。』というのは、決定事項のB部分に関しての詳細を詰めるのにそこそこ時間がかかる(事務面とか手続面とか)ということで、これはまあ2月には間に合わないで3月になるんでしょうかねと思います。


・・・・・・・・・でですな、当座預金非取引先に対して日銀の貸出増加支援とか成長基盤強化支援の貸出制度を開放するという施策を行いまして、日銀の考査先でもないところに与信を出すという施策が出たわけですから、与信ですらないことでもありますし「補完当座預金制度」について日銀当座預金非取引先に開放するのも検討すべきではないでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

ええ別に非取引先が決済システムに参加したいと言っている訳ではありませんから、別に補完当座預金制度に非取引先が入ったからと言って決済システムにリスクが増える訳でもありませんし、これだと別に与信でもないですから今回の決定よりも信用機構的な意味でのハードルは低いと思いますがねえウヘヘヘヘヘ。


・展望レポート中間レビュー:ロジックが元に戻るというかなんと言うか

声明文の景気物価認識および見通しの部分は本日は簡略版のためパス(金融経済月報での前回比較で代用する予定です、基本的にそちらに包含されますので)しまして、展望レポート中間レビューにワープします(^^)。

まずは声明文の記述から。

『6.10月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率は、2014年度について下振れる一方、2015年度、2016年度はともに上振れるとみられる。消費者物価は、基調的な動きに変化はないが、原油価格の大幅下落の影響から、2015年度にかけて下振れると予想される。2016年度については概ね不変である2。』

『2 今回の中間評価では、原油価格が大幅に変動していることを踏まえ、政策委員は、見通し作成に当たって、原油価格の前提を次の通りとした。すなわち、原油価格(ドバイ)は、1バレル55ドルを出発点に、見通し期間の終盤にかけて70ドル程度に緩やかに上昇していくと想定している。その場合の消費者物価指数(除く生鮮食品)におけるエネルギー価格の寄与度は、2015年度で−0.7〜−0.8%ポイント程度、2016年度で+0.1〜+0.2%ポイント程度と試算される。』

原油の置きの方とか物価の方とかを先に見てしまいますが、何気に力強いのは今回の見通しって「2015年度、2016年度ともに成長率見通しが上振れ」なことですな。「物価見通し(の2015年度)が下がったのに追加緩和しないとはこれ如何に」という話が多いですし、そもそも10月の追加緩和の時には足元の原油価格下落を受けた物価低下に思いっきり反応した形で追加緩和を実施したのですから、足元の物価見通しが下がった(しかも盛大に)のに追加緩和をしないのは何ですねんとなりますわな。

でですね、それに対するお答えというのが総裁会見でも出ていたので詳しくは明日なのですけれども、今回はそもそも論として「成長率見通しは上振れ」なわけですから普通に経済見通しをベースにした金融政策という意味では追加緩和するほうが変ですし、総裁会見でのお答えは10月の説明はいったい全体なんだったんですかというような感じで「原油価格の下落による影響はそれが2次的な効果を出してインフレ期待の低下に繋がらなければ無問題だしむしろプラス」(キリッ)という説明になっていまして、お前は何を言ってるんだというところですが、まあそういうロジックに盛大に摩り替えてきた(いやまあ日銀執行部に言わせれば「別にぶれていませんが何か」という所でしょうが、外野からしたらロジックを思いっきり都合よくカメレオンしているとなるわな)という所ですな。


・・・・・・となりますと、脚注の原油価格の置きですけれども、10月ロジックを踏まえますと「1バレル55ドル」という出発点の数値ですけど、それこそ4月に40ドルくらいにでもなっていた日にはもう出オチにも程がある状態ですから次回展望レポートで追加緩和待ったなしとなるはずですが、上記のようなロジックを前面に出してきた(どう見ても傍から見たら変更だが変更でないと言い張るみたいなので一応そういう風に書いておく)ので、次の展望レポートのときに状況が違っても平然としていると思いますし、これだと4月にコアCPIがマイ転しても平気な顔して「メカニズムに変化がないですし更に成長見通しは上昇しています、追加緩和?何ですかそれ??」と言い出しそうな勢いですな。


それから物価のところではわざわざ「基調的な動きに変化はないが」と入れている辺りがカメレオンロジックで七色の変化球キタコレとしか申し上げようが無いところで、基調的な動きに変化が無いので原油価格が下がってもヘーキヘーキという説明であって、ロジックのレインボーマン状態の日銀執行部(というか企画局というか)恐るべしという所ではございますな、うんうん。

でまあその辺の背景となるレインボーロジックに関しては会見ネタのところで更に確認するということで見通し数値の変化に参ります。



・見通し数値もご案内のとおりでして

コアCPI(除く消費税)

2015年度:+0.4〜+1.3<+1.0>
前回見通し:+1.1〜+1.9<+1.7>

2016年度:+1.5〜+2.3<+2.2>
前回見通し:+1.2〜+2.3<+2.1>

ということでクソワロタという所ですが、手前の見通しをここまで盛大に下げた上で「2015年度を中心とする期間に2%達成」とか抜かしておられますので、これは即ち15年度の頭であります所の4月分CPIが相当低くても(後ろに向けて盛大に上昇すれば)+1.0%の年度平均は達成できるからヘーキヘーキという話ができますし、そうなると3月の全国CPIと4月の東京CPIが確認できるであろう時期でありますところの次回の展望レポート時点で「見通し変わったから政策変更」というのは(物価推移を受けた形では、ということで外的ショックがあったら別でしょうけど)無いですなという所です。


実質GDP

2014年度:−0.6〜−0.4<−0.5>
前回見通し:+0.2〜+0.7<+0.5>

2015年度:+1.8〜+2.3<+2.1>
前回見通し:+1.2〜+1.7<+1.5>

2016年度:+1.5〜+1.7<+1.6>
前回見通し:+1.0〜+1.4<+1.2>

こちらは2015年度が盛大にあがっていますが、足元を下げているので下駄の部分がありますからそれはそれなのですけれども、基調的な話としては上方修正ということになっておりまして、潜在成長率を上回る実質成長の続く中で需給ギャップはプラスで推移して物価が上昇しますぜウェーハッハッハというお話ですな。


○ということで追加緩和が出るのは10月に延びましたがオペの手直しにも注意

つーことで簡略版につき簡単におさらい状態でどうもすいませんという所ですが、今回はここまで見ましたように、10月の追加緩和はなんだったんですかというような感じで「基調的な物価の動きは維持されている」(キリッ)というのに戻して来まして、原油価格の一時的な低下の影響は知らんがな状態になりましたし、上記のように来年度の見通しを下げましたので、「えーっとすいません2015年4月ってQQE導入から2年ですよね」というツッコミに対しては盛大にスルーしつつレインボー屁理屈を繰り出す準備が万端になりましたから、こら4月追加緩和はねえわとしか思えませんですな。従来はアクチュアルの物価がだめだったら4月に申し開きできないでしょとなっていましたが、「原油の影響はどうしようも無いのでそれは知らん」と開き直って2015年4月近辺のはずの達成時期をスルーすることに成功したので、まあタイムリミットは延びましたなとしか申し上げようが無い。

でまあ会見での説明とかも含めまして考えますと、結局のところお賃金の動向とかの話とか原油価格下落の2次的な効果が出るのかどうかとか、まあその手の話って明確になってくるのが夏以降でしょうなあ、ということになることが想定されますので、まあ次の政策どうするのという話は10月展望レポートまで引っ張れるとなるでしょうなあと思われまして、4月までに追加緩和に追い込まれる予想は撤回ですなこりゃという所です。

ただここで落とし穴がありまして、ご案内のように債券市場があばばばばーとなっている訳で、昨日の追加緩和無ししかもどう見ても10月まで追加緩和こねえだろ(というのが普通に読むと読み取れると思うのだが)となりましたせいかどうか知らんけど債券市場がちょっと調整しましたが、それはそれとしまして、別に国債買入ペースは無慈悲ペースのままなのですから、日銀の描いている絵のとおりに行くかよヴォケとなったらまたまた債券市場がヒャッハーになってオペがヒャッハーになっていくでしょと思われますので、そうなった場合には輪番夢の札割れまたはとんでもないマイナス金利での購入とかいうのも相変わらずアリエールですな。

で、そうなりますと「そもそもの金融政策の持続可能性」という話が出てきますので、それはそれでどう見てもマズーという話になりますから、そういう意味では輪番に関してはオペが爆発しないように注意しながら運営しないと思わぬところで日銀も足を掬われる結果になりますから注意しましょうね
という所でありますな、うんうん。

#ということでやや簡略版で恐縮至極

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2015/01/19

○さくらレポートネタの筈が時間が無くなったので「地域の視点」ネタだけ

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer150115.htm/
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer150115.pdf
地域経済報告 ―さくらレポート― (2015年1月)

景気判断の部分は後日ということで(汗)『II.地域の視点』のところから。

今回のお題は『各地域における中小企業の現状と活力ある企業の特徴』ということで、中小企業に回復の恩恵が来ていませんですな的な話が出ているのを受けておりますなこりゃという所で。

『1.中小企業の現状等』
(1)中小企業を取り巻く経営環境と足もとの収益動向』

ほうほう。

『各地域の中小企業の収益動向をみると、人口減少・少子高齢化や大企業の海外拠点拡充等が進んでいる環境下で、企業規模が相対的に小さく、製品・サービスの差別化を図れていない先を中心に、厳しい状況にある企業が少なくないが、近年は、内外需要が持ち直すもとで、全体としては緩やかながらも改善傾向をたどっている。ただし、2014年度入り後は、消費税率引き上げ後の需要面における弱めの動きや円安等に伴うコスト負担の増加等から、業種や企業間でのばらつきが広がっているとの声が聞かれている。』

>円安等に伴うコスト負担の増加等

等を沢山入れていますが一応言及してますな。

『すなわち、海外需要の増加が波及している業種(自動車・電気機械・航空機関連部品等)や、設備投資関連の業種(産業用機械等)、公共・建設投資関連の業種(建設等)、大企業の業績改善効果が及んでいる業種(運輸、人材派遣等)、円安のメリットが顕れている業種(造船、訪日外国人観光客関連の宿泊等)等では、収益の改善が続いている先が多い。』

『こうした一方で、内需依存度の高い業種(食料品、小売、飲食等)や、住宅投資関連の業種(建材、工務店等)等では、収益環境が悪化しているとの声が増加している。その要因としては、消費増税に伴う反動減の長期化や天候不順、実質所得の減少を反映した消費者マインドの悪化等による売上の減少に加え、円安等に伴う原材料価格の上昇、電力料金の負担増、人手不足を背景とした人件費の増加等に直面するもとで、販売価格への転嫁が進まない点も挙げられている。この間、足もとの原油安のプラス効果は、既に実感している先がみられる一方、これまでのところ十分に浸透していないとの声も聞かれている。』

>足もとの原油安のプラス効果
>足もとの原油安のプラス効果
>足もとの原油安のプラス効果

ほうほうそうですかそうですか、10月の追加緩和は何だったんでしょうかねえ。

『(2)中小企業の設備投資、雇用・賃金スタンス』

キタコレ!

『中小企業の設備投資、雇用・賃金スタンスをみると、先行きの需要減少に対する懸念や足もと厳しい収益状況等に直面している先では、依然として抑制的な姿勢を続けている。その一方で、業況堅調先を中心に前向きなスタンスを取る動きもみられている。具体的には、設備投資に関しては、政府の補助金や緩和的な金融環境等の後押しもあって、これまで先送りしてきた老朽化設備の維持・更新や効率化・省力化に向けた投資を実施する先に加え、需要増加を見込んだ能力増強投資に踏み切る先もみられている。』

>需要増加を見込んだ能力増強投資に踏み切る先もみられている

ほほう。

『また、雇用・賃金面に関しても、人手不足への対応の観点を含め、新規・中途採用の積極化による人員増強を図ったり、賃金水準の引き上げや賞与増額など処遇改善を進めているとの声が聞かれている。』

ということで、どうもこの辺の纏め部分だけを見ますと、今回の「地域の視点」に関しては威勢の良い話になっているという辺りが中々味わいの深い所ではないかとも思ったりします。

なお以下の部分は皆さん見てくらはい。

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2015/01/16

○支店長会議の挨拶要旨の量が微妙に減っている件について

うむ。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/siten1501.htm/
支店長会議総裁開会挨拶要旨(2015年1月)

『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。わが国の金融システムは、安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。』

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』

まあこの挨拶要旨はそれこそ思いっきりの要旨ですけどね。

10月の支店長会議での挨拶要旨はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/siten1410.htm/

『(1)わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。先行きについては、緩やかな回復基調を続け、駆け込み需要の反動などの影響も次第に和らいでいくとみられる。

(2)物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。先行きについては、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。

(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。

(4)「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(これは10月の挨拶)


・・・・・・ということで、随分とあっさり味になっているのですが、これ趣旨自体は毎度のクオリティと致しましても、今回見ていて「おー」と思ったのは2点あって、(1)物価に関する部分が記載されていない、(2)先行き見通しに関する部分が記載されていない、という所です。

でまあそれをどう解釈するのかは勝手な所ではありますが(そもそも挨拶がこんなに短い訳ではないので)、こうやって表に出して来る「要旨」の中で物価に関する記載と、先行き見通しに関する記載が削除されている、というのは、来週直ぐにやってくる展望レポート中間レビューがあって、そこで何らかの下方修正をしないと行けないから、ここで10月展望レポートを踏まえた話をそのまますると、そこから1週間も経過しないうちに下方修正が来るとか結果的に黒ちゃんウソツキにも程がある、という批判が飛んでくるのもさすがにマズーでしょうなあとか、まあそんな配慮をしてるんじゃないですかねえ(ニヤニヤ)。

てな事を考えますと、まあ既にそういう報道もありますけど来週のMPMでは中間レビューでの下方修正が打ち込まれるという所で、その程度がどのあたりになるのかはここからの鉛筆の舐め具合政策委員会での議論に依存するので下手な事をここで書けないという話で、とりあえず執行部的には下方修正待ったなしという認識なんでしょうなあというのは把握した。


なお、念のため昨年7月の支店長会議挨拶のURLも置いておきますが、中間レビュー前だからと言っても昨年7月は物価の言及も先行き見通しの言及もありましたので一応ご確認ください。
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/siten1407.htm/

#さくらレポート本チャンの方に関しては時間の関係で今朝はパスで勘弁(週末更新待ったなしですかね)

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2015/01/15

○このタイミングのアレさが日銀伝統の間の悪さクオリティで様式美すら感じますな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2015/rel150114a.htm/
「債券市場サーベイ」の開始について

いやあ5年の金利が間もなく溶鉱炉に沈もう(なお5年の入札が来週なので溶鉱炉に沈むのは何ぼ何でも入札の後だと信じたい)としているわ、生命保険会社さんでは貯蓄性保険商品の販売を金利環境の為に停止しようとしているわというこのご時世に「債券市場サーベイ」の実施とはこれは投資家に喧嘩を盛大に売っているのかという素敵にも程があるタイミングでの発表に落涙を禁じ得ない。

『日本銀行金融市場局は、昨年11月5日、「市場参加者との対話の強化に向けた取り組みについて」の中で、「債券市場サーベイ」の導入について公表しておりましたが、今般、「債券市場サーベイ」の準備が整ったことから、2015年2月調査から開始することとしました。』

ニヤニヤ。

『なお、2015年2月調査の結果は、3月9日に公表する予定です。』

ということですが、こちらの「取り組みについて」にありますように・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141105b.pdf

(参考)「債券市場サーベイ」の概要
【調査対象先】国債売買オペ先のうち、サーベイにご協力頂ける先
【調査項目】債券市場の機能度や金利見通しなど
【調査頻度】四半期毎(2月、5月、8月、11月に調査実施)
【公表時期】原則として調査月翌月の金融政策決定会合初日の5営業日前
【公表方法】日本銀行ホームページに掲載

とありますので、つまりはオペ先対象のアンケートでございまして、日銀の国債および短国の買入オペが投資家を排除してでも買う(まあポートフォリオリバランス促進したいのだから投資家を排除するのは当然と言われてしまうと「私の金融緩和」を理解しておりませんで誠に申し訳ございませんとなるのが残念ですが)という中ですし、大体からしてこの手のサーベイでケチョンケチョンなお返事をするのは(内務省検閲により削除されました)。

でまあこちらにありますように、元々2月に調査して3月に公表するというのは予め決まっている予定表通りに実施しているので、債券投資家に喧嘩売っとんのかゴルァなどと言われましても言われた方が困ってしまうでしょうなあとゆー所ですな。


つーことでまーこれ自体は取り組みの方のペーパーにありますように「2014年11月5日」に公表されたもので、これは追加緩和を実施した直後に打ち込んだもので、この時には確か短国買入について市場の動向を勘案してMB積み上げに対する短国買入の比重を落とすことによって短国市場に掛かるストレスを軽減するとかいう触れ込みだったりして、追加緩和をする中でも市場機能に対しても配慮しましょう的な雰囲気だけは醸し出していたのですが、いざこのペーパーに書かれた施策を実施しましょうというタイミングになった所では既に短期にしても長期にしても市場がぶっ壊れ状態になっているわ、短国買入は結局国内の普通の運用目的の投資家を排除して日銀が買入を積み上げる気満々というスタンスを明確に示してくれるわという状況になっており、「サーベイの実施について」というのが出た瞬間に「ナメトンノカゴルァ!」と血圧が急上昇なされた投資家の皆様が多数発生されたのではないかと思いますと、この日銀の芸術的なまでの間の悪さというのに、もはや様式美を感じてしまうのでありましたとさ、という所ですな。

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2015/01/09

○生活意識アンケートの結果が非常に味わいが深いのでじっくり(?)鑑賞

今回のこれは面白かった。
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1501.pdf
「生活意識に関するアンケート調査」(第60回)の結果 ―― 2014年12月調査 ――

でまあ結果をビジュアルに見るのは前半部分をじっくりと鑑賞するのがオヌヌメですけれども、数字を拾ってコピペするのは最後の所を使うのが良いので、引用関連は「説明は前半、数字は後ろのページ」から引っ張って参ります。

・景況感悪化キタコレ

『1-1. 景況感等』の『1-1-1. 景況感』の解説から。

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「良くなった」との回答が減少し、「悪くなった」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「良くなる」との回答が減少し、「悪くなる」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。』

『なお、現在の景気水準については、「どちらかと言えば、良い」が減少した一方、「どちらかと言えば、悪い」、「悪い」との回答の合計が増加した。』

まあグラフ見れば思いっ切り分かりますが、盛大に悪化していますなあ株価は上がってるんですけどね!!

『Q1.1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。
1良くなった5.9(11.1)
2変わらない54.7(56.9)
3悪くなった38.8(31.5)』

『Q2.Q1のご回答について、そのようにお考えになるのは、主にどのようなことからですか。【2つまでの複数回答】

1マスコミ報道を通じて21.5(18.6)
2景気関連指標、経済統計をみて11.0(9.1)
3勤め先や自分の店の経営状況から31.4(32.1)
4自分や家族の収入の状況から57.7(60.4)
5商店街、繁華街などの混み具合をみて26.7(24.1)
6その他3.8(4.5)』

実は収入状況とか経営状況とかで悪化している訳ではないのがお洒落ですが・・・・・・・


・収入は増えているけど支出が更に増えていて暮らし向き悪化キタコレ

『1-2. 暮らし向き、消費意識』の所が更に味わいが深い。

『1-2-1. 現在の暮らし向き』

『現在の暮らし向き(1年前対比)については、「ゆとりがなくなってきた」との回答が増加したことから、暮らし向きD.I.は悪化した。』

まあこれはグラフの方を鑑賞すればよろしかバイと思います。

『1-2-2. 収入・支出』

『収入の増減については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が減少したことから、現在の収入D.I.はマイナス幅を縮小した。先行き(1年後)は、「減る」との回答が増加したことから1年後の収入D.I.はマイナス幅を拡大した。』

『支出の増減については、実績(1年前対比)は、「増えた」との回答が増加したことから、現在の支出D.I.はプラス幅を拡大した。1年後の支出D.I.は「減らす」との回答が増加したことから、マイナス幅を拡大した。』

・・・・・・・・ということで、この先に雇用環境の部分もあるのですが、それも含めましてマインドとして見た場合に雇用環境は改善して収入も増えているのですが、それ以上に支出が増えている結果として暮らし向きの判断が悪化しているのはまあ仕方ないとしまして、実に味わいがあるのは将来の支出に関する部分でして、

>1年後の支出D.I.は「減らす」との回答が増加したことから、マイナス幅を拡大した。
>1年後の支出D.I.は「減らす」との回答が増加したことから、マイナス幅を拡大した。
>1年後の支出D.I.は「減らす」との回答が増加したことから、マイナス幅を拡大した。

・・・・・・・・・(;∀;)イイハナシダナー

というか全然イイハナシダナーでも何でも無いですが(涙)、この後に出てくる物価に関する結果を見ますと実感としてのアクチュアルな物価上昇傾向は更に高まっており、先行きの物価上昇期待に関してもおおむね横ばい(ヘッドラインでは下がった下がったと出ていますが、良く見ると概ね横ばいと読むほうが妥当ではないかと思うのですが)と思われる訳でして、「デフレマインドが払拭されてインフレ期待が定着すると現金を持っているのが損になるので消費や投資が活発になる」というリフレ置物理論とは一体全体何だったのかと小一時間問い詰めたいのですが、どう見ても「収入は増えて雇用マインドが改善しており、インフレ期待もそれなりにあるという中で消費者が将来の消費を減らすと言ってます」って結果はその置物理論を盛大に打ち砕いておられるので、それはつまりQQEの根本的な理論に欠陥があったという話になりませんかねえ(ニヤニヤ)。


・雇用マインドは改善しているのが更にタチが悪い

『1-2-3. 雇用環境』

『1年後を見た勤労者(注)の勤め先での雇用・処遇の不安については、「かなり感じる」との回答が減少したことから、雇用環境D.I.は改善した。(注)勤労者:会社員・公務員(会社役員を含む)およびパート・アルバイトなど。』

ということでこれまたグラフの方を見るとマインドは改善するの巻なのは先ほど申し上げた通り。


・物価マインドは恐らく横ばいだし足元の上昇意識は更に高まっていると思う

『1-3. 物価に対する実感』の所ですけどね。

『1-3-1. 現在の物価』

『現在の物価(注1)に対する実感(1年前対比)は、『上がった』(注2)との回答が減少した。
また、1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+5.3%(前回:+4.8%)、中央値は +5.0%(前回:+5.0%)となった。

(注1)「あなたが購入する物やサービスの価格全体」と定義。消費税率引上げの影響を除くベース。
(注2)『上がった』は「かなり上がった」と「少し上がった」の合計。』



『1-3-2. 1年後の物価』

『1年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が減少した。
また、1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.8%(前回:+4.8%)、中央値は+3.0%(前回:+3.0%)となった。

(注1)消費税率引上げの影響を除くベース。
(注2)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』



『1-3-3. 5年後の物価』

『5年後の物価(注1)については、『上がる』(注2)との回答が減少した。
また、これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると 思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.0%(前回:+3.8%)、中央値は+2.0%(前回:+2.0%)となった。

(注1)消費税率引上げの影響を除くベース。
(注2)『上がる』は「かなり上がる」と「少し上がる」の合計。』

・・・・・・とまあこうなっていまして、この中では先行きの物価に関しての「上がる」が減少というのがヘッドラインに思いっきり出ていましたけれども、まあ減ったと言ってもグラフを見れば判るように微減にとどまっていまして、それよりも実際の数値を見ると特に5年後の物価に関しては前回よりも平均値が上昇していたりしますので、まあこれって基本的に先行きの物価見通しは概ね横ばい程度(なお数字がやたら高いのはアンケートの仕様)という感じで良いのではないかと思いますし、現在の物価に関する部分は平均値、中央値とも変化した数値が更に高まっておりまして、まあバックワードルッキング的な物価期待は上昇する可能性が思いっきり高いという結果になっておりまして、この点で言えばまあ日銀的にはニッコリの筈。

ではあるのですが、先ほども申し上げましたように物価に対しては上昇したという意識が強まって雇用に関するマインドも改善していて収入も増えているという評価になる中で、実際の物価上昇に伴って景況感は悪化するわ先行きの消費マインドは下がるわでは、そもそもの置物QQE理論の前提のどこか(または全て^^)に欠陥があるということですから全然ニッコリじゃないと思います
けどね!!!


・物価上昇が困ったことだがまた増えるの巻

『1-3-4. 物価上昇・下落についての感想』

『1年前と比べて物価が『上がった』(注1)と答えた人(約8割)に、その感想を聞くと、8割台前半の人が「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答した。
また、1年前に比べて物価が『下がった』(注2)と答えた人(約2%)に、その感想を聞くと、「どちらかと言えば、困ったことだ」との回答が5割台半ばとなった。

(注1)『上がった』は「かなり上がった」と「少し上がった」の合計。
(注2)『下がった』は「かなり下がった」と「少し下がった」の合計。』

まあこの状況で「下がった」と答えるのは余程の変わり者なので放置するとして、上がった方の「困ったこと」が多いのはいつもの仕様としましても、この回答が結構増えているのが中々こう味わいがあります。


・大変に深い味わいがあるのが日銀に関する部分

『1-6. 日本銀行に関する認知度、信頼度等
(注)原則6月・12月調査において質問。ただし2011年6月は実施していない。』

の所が実にこう味わいがあるのですよ。で、それは何処かというと・・・・・・・・・

『1-6-4. 日本銀行への信頼度』

さあ盛り上がって参りました!!!!

『日本銀行への信頼度を尋ねたところ、『信頼している』(注1)と回答した人の割合は4割台前半となり、『信頼していない』(注2)と回答した人の割合は約1割となった(図表19(1))。

(注1)『信頼している』は「信頼している」と「どちらかと言えば、信頼している」の合計。
(注2)『信頼していない』は「信頼していない」と「どちらかと言えば、信頼していない」の合計。』

『(5)日本銀行を信頼していますか。
1信頼している14.2(13.5)
2どちらかと言えば、信頼している29.0(30.2)
3どちらとも言えない45.3(46.7)
4どちらかと言えば、信頼していない7.7(6.6)
5信頼していない3.0(2.2)』

信頼していないが増えているように見えますが。

『『信頼している』との回答の理由としては、「日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思うから」との回答が最も多く、次いで「中立の立場で政策が行われていると思うから」との回答が多かった(図表19(2))。』

まあこれは良いとして。

『一方、『信頼していない』との回答の理由としては、「中立の立場で政策が行われていると思わないから」、「日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから」、「日本銀行の活動について分かりやすい広報や意見聴取の努力が不足していると思うから」との回答が多かった(図表19(3))。

でまあこのグラフを見ると判りやすい(コピペがしにくいので数字の方はパス)のですが、信頼していないというのの回答で多いのが「中立では無い」「物価や金融システムの安定に役立っていない」というような政策に直結する反対が絶賛増加していて、某福井の俊ちゃんの何とかファンド問題とかの時に盛大に増えた『組織や職員に誠実なイメージを持っていないから』的なイメージの方の反対見解は減っているというのが中々こう深い味わいという物を感じる訳で、このままですと「物価安定目標2%」に対して生活者の方から十字砲火が飛んできて日銀火達磨になるんじゃないですか大丈夫ですかというのが気になる所ではあります。

いやまあ信頼していないの1割を捕まえた部分なので大勢意見は別の所にあるかもしれませんけれども、物価と雇用に関するマインドと先行き景況感や消費マインドの乖離を見ておりますと、今後急速にそういう話になったらそもそも何のための2%目標だという話になって、却ってデフレマインドの強化になってしまう訳で、「2年で2%」という無理ゲーではなくて「中長期的に」とか「フォーキャストターゲット」みたいな話をメインに持っていくようなQQEの戦線縮小を考えた方がいいんじゃないかと思いますが、それは置物の首が飛ぶ(連座して残りの2名も飛ぶかもしらんが)話になるのでまあ無理でしょうね。

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2014/12/29

○12月金融経済月報である

しかし声明文と同様に経済見通しを妙に上方修正している(まあ基本的に声明文の中の経済物価認識をより詳しく書いているもんだから当たり前だが)のですが、先日来申し上げておりますように、原油安での追加緩和という声を抑える為に上方修正とかいう大変に政治的(?)な修正じゃないかと思いっ切り疑いたくなるのですけどねえ。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1412.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1411.pdf(前回)

例によって手抜きで【概要】の比較を行うだよ。

・現状判断に関して

現状判断部分は基本的に声明文どおりになります

『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きが残っているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

(日本語の方で)主文が入れ替わった書き方になっているのと、生産面の弱め云々が抜けたのは声明文と同様です。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

ここも声明文と同じなのですが、海外経済の現状認識が変わっていないのに「そうしたもとで」とか言って輸出を上げているんですよね、謎である。

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いているが、足もとでは下げ止まりに向けた動きもみられている。』(前回)

これまた声明文と同様ですが、駆け込み需要関連に関しては上記のとおりで一段落という図になっております。

『以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まりつつある。企業の業況感は、一部に慎重な動きもみられているが、総じて良好な水準が維持されている。』(今回)
『鉱工業生産は、在庫調整が続くもとで、弱めの動きが残っている。』(前回)

でまあ生産も引上げと。


・先行き見通しですが需要項目別に見ると・・・・・・・・

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に収束に向かっていくとみられる。』(前回)

反動が収束云々の部分が「次第に」というのが抜けて収束します(キリッ)的になったというのは声明文と同様ですが、以下需要項目別に見た部分(というのは声明文には含まれない)を見ますと・・・・・・・

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。』(前回)

輸出の見通しが上方修正ですよ!!!!

『国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、次第に減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。』(今回)

『国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けたあと、次第に減少傾向に転じていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向をたどるなかで、緩やかな増加基調を続けると予想される。』(前回)

公共投資、設備投資は全文一致とな。

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとみられる。住宅投資は、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。』(前回)

個人消費と住宅投資も全文一致とな。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、在庫調整の進捗もあって、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(前回)

で、在庫調整云々の部分が抜けておりますが、現状認識の方で在庫調整云々の部分が抜けましたのでそれに対応しているという感じですな。

・・・・・・・と考えると、結局これって輸出の部分が一番上がっているという形になるのですが、ホンマカイナという感じではありますな、うんうん。


・リスク要因、物価に関しては全文一致

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

うむ。

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の大幅な下落を反映して、3か月前比で下落している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

うむ。

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面下落を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられる。』(前回)

とまあそういうことで、全文一致は良いのですけれども、消費者物価の見通しは「当面」という数か月程度の時間的概念の見通しを続けること自体が物価目標の達成時期を後ずれさせることになるんですけれどもねえ(と言いつつもっと下がりそうな感じなのですけどね、ニヤニヤ)。


・金融市場に関して短国の話は無い

金融環境の部分ですけれども、こちらに関してはまあ毎度おなじみのこれ。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

んでもって内容に関しては計数の違い部分はありますけれども、判断としては特段の変化もありませんのでその辺は割愛しますが、最後の金融市場

『金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利は横ばい圏内の動きとなっている。前月と比べ、長期金利は低下している。この間、円の対ドル相場および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(今回)

折角一旦浮いた短国金利がマイナスに沈んであばばばばーという状況でしたが何という能天気な現状認識横ばいという感じですが、では背景説明を含む全文では何か説明しとるんかいなと思って全文を見ますと最後の方になりますが、本文19ページ(PDFだと21枚目)の所に『(2)金融市況』というのがありましてですね、

『短期金融市場をみると、長めのターム物を含め、金利は低位で安定的に推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.1%を下回る水準で推移している。ターム物金利をみると、3か月物国庫短期証券利回りは、マイナスの領域で横ばい圏内の動きとなっている。3か月物ユーロ円金利およびユーロ円金利先物レートは、いずれも横ばい圏内の動きとなっている(図表44)。』(今回)

とまあごくごくあっさり味で「マイナスの領域で横ばい圏内の動き」としているだけという辺り、市場方面では短国マイナスで色々と問題が発生しているのは知らんがなという日銀クオリティが如何なく発揮されていて誠に残念という所ですな、うんうん。



○11月決定会合議事要旨は認識の背景が12月の所で色々とコケている気がするんだが・・・・・・・

てなわけで11月決定会合議事要旨です。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g141119.pdf

・海外経済の認識は基本的に確り

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『国際金融資本市場について、委員は、米国の堅調な経済指標や良好な企業決算などを背景に投資家のリスクセンチメントの改善が続き、総じて落ち着いた展開であったとの見方で一致した。何人かの委員は、国際的な金融規制が市場に与える影響について、FRBの金融政策が正常化に向かう過程でどのように現れてくるか注視する必要があると指摘した。』

「国際的な金融規制が市場に与える影響について、FRBの金融政策が正常化に向かう過程でどのように現れてくるか注視する必要がある」というのは中々結構な指摘ですな、というのを最初に確認して置きまして、海外経済ですけれども・・・・・・・

『海外経済について、委員は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復しているとの見方で一致した。先行きについても、委員は、先進国を中心に、緩やかな回復が続くとの認識を共有した。』

というのが基本的な話で、地域別を見ますと(引用するとクソ長くなるので割愛しますが)米国は強くて、欧州に関しては下げ止まり的なイメージ、中国に関しては構造調整で下がる分各種対策でまずまず、新興国はイマイチという感じですな。


・国内経済に関して:7−9落ちているけど前向きの循環メカニズムは継続となっていますが・・・・・

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きが残っているが、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方で一致した。多くの委員が、7〜9月のGDP(1次速報値)について、4〜6月の落ち込みからの反発力の弱さを示すものとの認識を示した。』

ほうほうそれでそれで?

『もっとも、委員は、@賃金が緩やかな上昇を続けるもとで、販売統計などをみると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は和らいできていること、A在庫調整が進むもとで9月の生産は増加に転じていること、B機械受注(船舶・電力を除く民需)が4か月連続で増加していることなどを指摘しつつ、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムが依然として作用し続けているとの認識で一致した。』

ほほうそれはそれは(^^)。

>@賃金が緩やかな上昇を続けるもとで

http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/26/2611p/dl/pdf2611p.pdf
毎月勤労統計調査 平成26年11月分結果速報
平成26年12月26日【照会先】大臣官房統計情報部雇用・賃金福祉統計課

『現金給与総額は1.5%減 一般労働者は1.5%減、パートタイム労働者は1.2%減』

ええまあこの統計出たの先週末ですから今月のMPMには間に合っていませんから別に問題ないですけれども11月の「前向きの循環メカニズムが作用(キリッ)」とした上に12月に現状認識と先行き見通しを強くしたというのが味わいが深い。

>A在庫調整が進むもとで9月の生産は増加に転じていること

http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
鉱工業指数(生産・出荷・在庫、生産能力・稼働率、生産予測指数)
【平成26年11月分速報】(平成26年12月26日発表)

『今月は、生産、出荷は低下、在庫、在庫率は上昇であった。』

まあこちらも10月分は生産プラス在庫マイナスなのでこの素敵な結果出たのは超直近で今月のMPMには間に合っていませんけどね!!!!!!

>B機械受注(船舶・電力を除く民需)が4か月連続で増加していること

http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/juchu/1410juchu.html
平成26年10月実績:機械受注統計調査報告
平成26年12月11日
内閣府経済社会総合研究所

『3.民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の動向を見ると、26年9月前月比2.9%増の後、10月は同6.4%減の7,780億円となった。このうち、製造業は同5.5%減の3,438億円、非製造業(除く船舶・電力)は同7.5%減の4,426億円となった。』

(;∀;)イイハナシダナーという所で落涙を禁じ得ません!!!

・・・・・などとこの時から出た後の経済指標を並べてみますと実にこう味わいがあるとか言うのは性格が悪いですかそうですか。

『こうしたもとで、景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に収束に向かっていくとの見方を共有した。』

さあどうなるんでしょうねえ(棒読み)。


・でまあ需要項目別の先行きですが輸出(というか円安効果)が強い

『輸出について、委員は、横ばい圏内の動きとなっており、先行きについては、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくとの認識で一致した。複数の委員は、海外生産移管の影響が下押し要因として作用し続ける点に注意を促した。この点、ある委員は、やや長い目でみれば、現状程度の為替相場の水準が続けば、海外生産移管の動きも抑制されていくと考えられる点を強調した。』

ということなのですが、単純に円高だからという話ではなくて、趨勢的に需要があるのが海外なので海外生産にシフトするのが自然である、という面もある訳で、円安に振れば済むという問題ではなくて、国内需要が強くなるような施策が進む(要は日本経済の成長力が高まる)というのが重要なポイントじゃネーノと思うし、大体からして円安で輸出の工場が増えてヒャッハーってそれ思いっきり発展途上国の成長モデルじゃねえかと存じますが。

『設備投資について、委員は、企業収益が改善する中で、緩やかな増加基調にあり、先行きも、緩やかな増加基調を続けるとの見方を共有した。多くの委員は、7〜9月のGDP(1次速報値)の設備投資が前期比小幅のマイナスとなった点について、資本財総供給など供給側の統計の弱さを反映したものであるが、企業収益は良好で、設備投資計画もしっかりしており、先行指標である機械受注が4か月連続で増加していることなどを踏まえると、先行きは増加が見込まれるとの認識を示した。』

いやまあさっき引用した機械受注統計も先行き見通しはプラスはプラスですからね(棒読み)。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けるとの見方を共有した。何人かの委員が、各種のアンケート調査などを踏まえると、今年の冬季賞与についても、前年比で明確な増加が期待できるとの見方を示した。一人の委員は、改善の勢いに一服感がみられた労働市場も、9月の求人者数や労働時間などの指標をみると再びモメンタムを取り戻しているとの見解を述べた。』

とまあ相変わらず雇用所得の所が強気で、結局「追加緩和以来進行した円安によって輸出が伸びたり企業の投資が国内回帰してくる」というのと、「労働需給がタイトであるので賃金が増える」という2点に思いっきり頼った見通しになっていますよね、という所ですな。

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいるとの認識で一致した。』

まあその辺を前提にしているので個人消費に関しても強めの見方になっています。

『委員は、販売統計の多くが増加に転じるなど、耐久消費財以外の分野では、駆け込み需要の反動の影響が和らいでおり、また、反動が長引いていた自動車などの耐久消費財についても、概ね下げ止まっているとの認識を共有した。委員は、先行きの個人消費について、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響も次第に収束していくとの見方で一致した。複数の委員は、エネルギー価格の下落は、実質所得を増加させる方向に作用するため、個人消費には好影響を及ぼすと指摘した。』

だそうな。


・消費増税の反動に関して

個人消費に関しては追加でこんなのがあります。

『何人かの委員は、今回、消費税率の2段階の引き上げが想定されていたもとで、耐久消費財を中心に、2回分の駆け込み需要とその反動が生じた可能性に言及した。』

へー。

『ある委員は、消費税率引き上げ以外に、ソフトウェアのサポート期限切れや建設機械の排ガス規制の強化といった要因による駆け込みとその反動が重なったと述べた。別の一人の委員は、過去に比べて、消費税率引き上げによる実質所得低下の影響が低所得者層を中心に大きいことなどが影響している可能性を指摘した。』

ふーん。

『また、何人かの委員は、夏場までは反動の大きさは概ね想定内との声が多かったことを踏まえると、それ以降の天候不順が反動の影響をやや長引かせる要因となった可能性があるとの見解を示した。』

はいはい天候天候、つーか2%物価目標達成って天候如きでコケルるものなんですかねえ。

『この間、多くの委員が、最近、消費者マインド関連などの指標が幾分慎重化方向の動きとなっている点を指摘した。』

ほうほう。

『この背景について、複数の委員は、天候要因に加え、円安のマイナス面や2回目の消費税率の引き上げが広く報じられたことが影響した可能性を指摘した。』

おいさっき2回分の消費税率引き上げの駆け込み需要がという話があったじゃねえか(まあ同じ人とは限らないけど)と小一時間。

『もっとも、別の複数の委員は、雇用・所得環境は着実に改善しており、冬季賞与についても増加が期待できることを踏まえると、今後、消費者マインド関連などの指標は改善に向かうとの見方を示した。』

ふーんという所ですな。今年の年末ジャンボに並ぶ人の多さが久々のクソ多さだったのを見るとマインドって本当に改善に向かうのかいとは思いますがただのアネクドートなのでどうでも良いですかそうですか。


・金融市場の反応は落ち着いているとな

『2.金融面の動向』から。

『「量的・質的金融緩和」の拡大後の市場動向について、多くの委員が、国債市場においては、市場の反応は落ち着いており、長めのゾーンの金利が大きめに低下するかたちでイールドカーブがフラット化したこと、また、株価やJ−REIT価格が上昇したことなどを指摘しつつ、これまでのところ市場はポジティブに反応しているとの見解を明らかにした。』

マイナス金利は無視ですかそうですか。

『ある委員は、この間の株価や為替相場の動きは、企業収益や米国経済などファンダメンタルズの改善を伴っているとの見方を示した。』

じゃあ何で金利が低下するんだよヴォケ。

『これに対し、一人の委員は、「量的・質的金融緩和」の拡大後も長期金利が低位で安定しているのは、国債市場において日本銀行が過大な存在となっていることが背景にあり、不均衡蓄積のリスクがあるなど、必ずしも歓迎すべきものではないと述べた。』

(;∀;)イイシテキダナー


・金融政策運営にかかわる部分の記述がこれまた色々と味わいが深い訳でして

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですけどね。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は、前回の金融政策決定会合で拡大を決定したこともあって、引き続き所期の効果を発揮しているとの判断を共有した。すなわち、これらの委員は、わが国の長期金利は低位安定しており、やや長い目でみた予想物価上昇率の高まりともあいまって、実質金利は低下方向にあり、そのことが企業・家計の支出行動を支えているとの認識を示した。』

そもそも日本経済に成長力があるけれども、実質金利の高さが投資行動の妨げになっている、というのであれば実質金利を下げると投資行動が劇的に出てくるのでしょうけれども、実際には成長力が非常に低い所にあって、成長期待が低いから実質金利下げて効くのは金融商品への投資ばっかりで実体経済への投資に回らん、という話だとすれば現状認識のセッティングが間違っているんじゃねえかと思う訳で、もうこの実質金利の話止めればと思いますけど、置物理論の根幹をなすだけに引っ込みがつかないという状況なのでしょうが、つまり置物理論というのは優秀な大和魂によって気合と根性があれば軟弱な腑抜けの米英なんぞ一撃でというような前提に基づいてその先の理論が構築されているというどこかで見た話と似ているという事なんじゃネーノという所ですな、うんうん。

『複数の委員が、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定した先月末以降、ブレーク・イーブン・インフレ率などのマーケットの予想物価上昇率の指標が上昇していることを指摘した。』

BEIキターーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

という事でBEIスキーな方と言えばあの置物大先生を思い出してしまいますが(そういえば置物先生の楽しい置物ワールドが先週の日経朝刊で展開されていたらしいのですがうっかり読み忘れたわorz)、その後消費増税先送りやら原油価格の低下と共にBEIが親指を立てながら溶鉱炉に沈んでおられると存じますが12月決定会合議事要旨が出たら12月にこの人たちはどの面下げてBEIの話をしているのか是非拝読したい物であります。

『ある委員は、予想物価上昇率については、様々な指標をやや長い目で評価すべきものであるとしつつも、「量的・質的金融緩和」の拡大により、日本銀行の「物価安定の目標」実現に向けた強いコミットメントを改めて示したことで、企業の賃金交渉スタンスや価格設定行動などにも好影響を与えていくのではないかとの期待を明らかにした。』

するかよヴォケ。

『別の一人の委員は、インフレ予想がアンカーされていない日本では、実際の物価上昇率の低下が予想物価上昇率に影響を及ぼすため、「量的・質的金融緩和」を拡大したことは、先手を打つ意味で必要な対応であったと強調した。』

はいはい逐次投入逐次投入。というか「必要な措置は全部取った(キリッ)」との整合性は??????


・前回反対の人たちの見解

とまあ最初の所から中々面白いですけれども次がこの話。

『前回会合で「量的・質的金融緩和」の拡大に反対した委員のうち何人かは、直ちに拡大前の金融市場調節方針および資産買入れ方針に戻ると日本銀行の政策運営の信認が損なわれる惧れがあるなどとして、今回、拡大前の金融市場調節方針および資産買入れ方針に戻すことを求める考えはない、との立場を明らかにした。』

まあ難しい所ですが。ただ市場に対する悪影響は加速しているので時間の経過と共に弊害が拡大しているから買入ペースを下げるべき、という提案を今後しても良いと思いますけどね!!!

『このうち一人の委員は、市場と適切なコミュニケーションを図りながら、市場の状況に応じた弾力的なオペ運営を行うなどの工夫によって、追加措置に伴うリスクを最小限にとどめるよう努力すべきであるとの見解を述べた。』

どう見ても市場を壊してまで金利を下げようとしているオペを実施していますが、一方で金融市場局様におかれましては「市場との対話」と称したアリバイ会合の実施には余念がないとかもう末期症状にも程がある訳で。

『また、ある委員は、大量の国債買入れにより長期金利を押し下げることで、金利による財政規律維持のメカニズムが損なわれるリスクについては、これまで以上に留意する必要があるとの見方を示した。』

まあ留意して無いでしょ執行部はという所で。


・政策効果には結局成長力とか構造問題の解決とかが必要でしょという所で

で、この先が今後の金融政策運営と木内さんの毎度の反対提案ですけれども、それはスルーして最後の部分が中々涙を禁じ得ません。

『何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」の効果が幅広く行きわたるためには、大企業を中心に増加基調にある企業収益が、雇用・賃金の増加、国内での設備投資、下請企業等との取引価格の上昇といったかたちで、家計や地域経済、中小企業にしっかり波及していく必要があるとの認識を述べた。』

もはや金融政策ちゃいますが、再分配の方はというと相変わらず企業に税制メリットだせばトリクルダウンという話ばっかりですけどね!!!!

『複数の委員は、物価の改善がベースアップを含む賃金増加や企業の価格設定スタンスの変化に繋がる前向きな動きを絶やさないようにするため、日本銀行としても様々な機会にその重要性について情報発信すべきである、との見解を示した。』

それって一歩間違えるとただの統制経済になるんですけどね。

『この間、委員は、@財政運営への信認を確保することは極めて重要である、Aそのためにも、政府には、「中期財政計画」に沿って持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に進めることを期待している、との認識を改めて共有した。』

民間にああだこうだ言うよりも政府に財政構造改革の話をした方が話の筋が通っていますし共同文書の趣旨にも沿うと思いますけどね。


#とまあそんな所で嫌味タラタラで読むとそれなりに味わいがある議事要旨でございましたとさ

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2014/12/22

○決定会合レビューである:声明文は上方修正&原油安即追加緩和の話をフェードアウトしたいようで

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141219a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141119a.pdf(前回)

・現状判断はあちこち引上げとな

『わが国の景気は、基調的に緩やかな回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も全体として和らいでいる。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きが残っているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

こちらですが、駆け込み需要の反動の影響が「全体として和らいでいる」に変わっていまして、ついでに言うと「基調的には緩やかな回復」の部分が前に来ているので文章全体として見た場合にも上方修正感が漂いますな(なお英文版だと『Japan's economy has continued to recover moderately as a trend,』が前回も今回も最初に来ているので語順をいじったのは正式版だけです)。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。そうしたもとで、輸出は持ち直しの動きがみられている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

海外経済の現状判断は同じなのですが輸出は「持ち直しの動きが見られている」に上方修正というプレイが出ておりましてえーという感じですな。設備投資と公共投資は同じです。

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いてきたが、足もとでは下げ止まりつつある。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いているが、足もとでは下げ止まりに向けた動きもみられている。』(前回)

住宅投資に関して判断を引き上げとかホンマカイナという感じなのですが・・・・・・・・・・

『以上の内外需要のもとで、在庫調整の進捗もあって、鉱工業生産は下げ止まりつつある。企業の業況感は、一部に慎重な動きもみられているが、総じて良好な水準が維持されている。』(今回)
『鉱工業生産は、在庫調整が続くもとで、弱めの動きが残っている。』(前回)

てなことで業況感の所は短観直後の声明文に入るのが仕様なのでそれはそれとしまして、在庫調整の進捗で生産は下げ止まりつつあると上方修正ですってよ奥様!!

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

予想物価上昇率に関しては相変わらずこの表現で往生際が悪いにも程がありますが、何せ戦局の悪化を認めてしまうと死んでしまうという大本営発表体質になっているので致し方なし。


・先行き見込も引上げとな

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も収束していくとみられる。消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に収束に向かっていくとみられる。消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられる。』(前回)

ということで先行き見通しですけれども、今回はしらっと駆け込み需要の反動の影響が収束するという事になっていまして、色々とホイホイを先行き見込が引き上げになっている一方で、物価の見通しに関しては毎度の『当面現状程度のプラス幅』という表現です。

でまあこの「当面」というのはこの前まで使われていた「暫くの間」よりも時間の概念として短いという建付けになっておりましたので、表現として同じものを続けている時点で物価見通しが下方修正されているのではないか、というツッコミはあるのですが、この部分に関して日銀に屁理屈を投下して貰いますと「確かに「当面」という表現をしていますが、その「当面」より先の見通しについて声明文では表現しておりませんが何か?」という凄まじい屁理屈が投下される筈です。

つーかまあそれ以前の問題として「現状程度のプラス幅」というのもこの先どこからどう見ても怪しいのですけれども、どこまで言い逃れをするのか、という点に関しては会見でああだこうだ言っているのですけれども、「この先の物価動向を決めるのは賃金」という話をしておりますので(詳しくは会見要旨が出てからネタにします)、即ち「春闘の結果を見てから判断しましょう」というロジックで今後攻めてくることが想定されます。詳しくは会見出てからね。


・リスク要因とかの部分は全文一致

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

毎度の全文一致である。

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(前回)

まあこれも毎度の全文一致でして・・・・・・・・・

『(注3)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

『(注3)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(前回)

さすがにもうすぐ2年終わるので「2年間程度の集中対応措置」という表現を使うのも如何なものかという気がするが木内さんの提案も貫録の全文一致です。あと「追加緩和前の買入ペースに戻せ」ということで木内さん反対をしているのも前回と同じです。


○会見ネタのメモである

前回の会見では消費税絡みの質問が続き、余計な事を言わないようにという配慮があったと思われますけれども黒田総裁が延々と想定問答を見ている光景&冴えない表情が目立ちましたが、今回の会見は前回と違いまして「原油価格に関して」の質問が集中する形になりまして、まあそちらに関しては事前にロジックが出来あがっている事に加えて、政治的にマズーな質問でも無いので普通に受け答えしていた感じがあります。

つーかですな、質問の方がイマイチツッコミが足りないなという所でもありましたし、答える黒田さんも適当に質問を躱して答える感じが多くて正直おもんないわという会見(つーか途中でライブ中継どうでも良くなって事務作業に入ってしまいましたがな)で、辛うじて最初の質問(幹事社じゃ無い方)と途中の質問で毎度のあの方の質問位がちったあ見れたかねという所で。

でまあこの記事が中々良くまとまっているので会見録読む前に引用しませう。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NGTKRE6TTDSI01.html
日銀総裁:原油安は物価押し上げに−前年比の影響いずれ剥落
更新日時: 2014/12/20 00:01 JST

『(ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は19日午後の金融政策決定会合後の記者会見で、原油価格の下落が物価に与える影響について「前年比でみた影響はいずれ剥落していく」とした上で、経済活動に好影響を与えていくことで、「やや長い目でみると物価を押し上げる方向に作用する」との見方を示した。』(上記URLより、以下同様)

・・・・・・・(;゚д゚)

えーっと、この前原油価格下落でアクチュアルの物価が低下することによってバックワード的にインフレ期待が上昇しにくくなるから追加緩和を実施、という話をしていたと思いますが・・・・・・・・・・・

『黒田総裁は「原油が相当大幅に下がっているということは事実だ。これは石油をほぼ100%輸入している日本にとっては経済を押し上げる効果を強く持つ」と指摘。一方で、 「足元の物価上昇率には、特に短期的には押し上げ要因として働いてくる」と述べた。その上で、原油価格の下落は「前年比でみた影響はいずれ剥落していく性質のものであり、原油価格の下落が経済活動に好影響を与えていくということで、基調的に物価を押し上げる要因になり得る」と指摘。』

だから別に追加緩和をしなくて良いと言って反対した委員が4人いた筈ですががががが。

『「もちろん原油価格の動向によって不確実な面はあるが、やや長い目でみると原油価格の下落は物価を押し上げる方向に作用する」と語った。』

何というイカサマ説明。でまあちょっと飛ばしまして更に引用。

『黒田総裁は消費者物価の前年比について「15年度を中心とする期間に物価目標である2%に達する可能性が高いとみている。ただ、足元で原油価格が下がっているので、来年の前半には物価上昇率が加速していくことは考えにくいかもしれない」と述べた。』

加速どころか下がるように思えますが・・・・・・・・・・・・

『さらに、「これも原油価格、為替、需給ギャップの影響、そして何より重要な賃金の動向にも左右されるので、もう少し様子をみてみないといけないと思う」としながらも、「基本的な物価の見通し、つまり15年度を中心とする期間に物価目標に達する可能性が高いという見通しには変わりはない」と語った。』

お賃金キター!!!

ということで、急に中長期的な物価に関しては需給ギャップが決めるもので、その中で重要なのは労働需給の部分であり賃金の動向である(キリッ)という話を持ち出してきまして、これは「春闘の結果が出て賃金動向が出るまでは需給ギャップの動向を見極める時期(キリッ)」というロジックの盛大なすり替えが炸裂しているのが実にこうイカサマの香りプンプンという所ですし、質疑が原油価格動向の所に集中していたので、まさに思うつぼという感じでこのすり替えロジックを炸裂させている(だから質疑が全然噛み合わない)というのが今回の会見だったと思います。

なおブルームバーグニュースは記事でイヤミを書くのに余念が無いようでここはワロタ。

『日銀は10月31日の決定会合で、消費増税後の需要の弱さと「原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている」と指摘。「短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある」として追加緩和に踏み切った。黒田総裁は追加緩和について「原油価格の下落そのものに対応したというよりも、物価の基調的な要因、広い意味での予想物価上昇率への影響を考慮した」と説明した。』

なお、詳しくは会見要旨が出てからネタにしますが、今回はイカサマロジック(というかロジックすり替え)炸裂の回となっていまして、そういう意味では政策ロジックの一貫性とかそういうのを求めても無駄無駄無駄というのが良く見えてくると思われます、はい。

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2014/12/17

○短観の物価見通し関連

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/bukka/2014/tkc1412.pdf

・販売価格見通しは今回も絶賛低下とな

1ページ目が『1.販売価格の見通し(現在の水準と比較した変化率)』ですけれども、全業種合計を見ますときっちりと販売価格見通しが前回に引き続きまして今回も低下しておりまして、まあ何と申しますかあばばばばーな状況。

しかもこの数字って「現在の水準と比較した変化率」となっていて、年率換算ではありませんので、5年で2.0%だと年率換算0.4%になる(正確には複利計算しないといけないですが面倒なのでパス)とか実にチャーミング。

ただまあ毎度の傾向ですが、大企業の方が数値が小さくて中小企業の方が数値が大きいのですが、これに関しては春に企画局謹製の我田引水レポートが炸裂していたのはご案内の通りでして、大企業の場合は足元の数字や市場に影響されるが中小企業の見方の方がレジームシフトの際によりビビットに反応する(キリッ)という解釈になっています。

・・・・・・・ということで中小企業の数値を見ますと、これがまた残念な事に全体と同様に全般の数値は低下しておりまして、バックワードルッキングによって企業の価格設定行動が強気化する可能性とは何だったのかという話をしてはいけませんし、ましてや追加金融緩和でインフレ期待の低下を抑制するという話が全然効果を出していないのですが追加金融緩和は妥当な政策だったのでしょうかなどというツッコミをするのは敗戦思想であり政治将校に吊るされるレベルのツッコミであります。

ではこれを屁理屈大魔王として読み場合どうなるかと申しますと、「引き続きインフレ期待上昇がやや遅れる懸念があるので追加緩和をしないといけない!!」となるのが正しいイカサマ解釈だと思います。


・とは言いましても物価の方は一応ヨコですな

2ページ目が『2.物価全般の見通し(前年比)』ですがこの数値は大体横という結果になっておりまして、更に我田引水大魔王として解釈しますと、1ページ目は華麗にスルーして2ページ目の結果を見まして「レジームシフトに際して最も敏感に反応する中小企業のインフレ期待は中長期で+1.9%で安定的に推移していて誠に望ましい」という話になりますが、「ただ全体で見た場合のインフレ期待はまだ2%に達していないので、引き続き異次元緩和政策をドンドン推進しちうぞー」という話になる訳すな。

・・・・・・・・・・とか何とか考えますと、今回の物価アンケートあまり面白くないっちゃあ面白くないのですけれども、よくよく考えてみると販売価格判断の方が下がって物価見通しが下がらないという状況ってそれどう見ても企業収益的にはマズーという話になると思われまして、その分の穴埋めによーしパパ省力化投資しちゃうぞー(みたいなのは短観の設備投資の所で一応見えるのが救い)という話になれば誠に結構なのですが、それよりも人件費抑制しますかとか費用をどこかで削りますかとかいう話になると甚だ残念という事でして、まあどうもパッとしない結果でしたな、という事だと思います。

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2014/12/16

○短観は可も無し不可も無しという感じに思えますが・・・・・・・・

うむ。
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1412.pdf

えーっとですな、先行き予測DIが下を向いているのでイクナイ!という見方はあるのもまあそうかなとは思いますが、方向性として連続して下を向いているのだとアカンという話ではあるのですが、今回下向きになったこと自体は勿論上向いているよりはイクナイのですけれども、単なる踊り場に留まるかも知れませんという所で。


・前回の先行き予測DIの達成状況

         (9月時点)      (12月時点)
         現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業   +13→+13     +12→+9 
製造業中堅企業  +5→+5       +7→+1        
製造業中小企業  ▲1→0        +1→▲5

非製造業大企業   +13→+14   +16→+15
非製造業中堅企業  +7→+7      +7→+4
非製造業中小企業  0→▲1       ▲1→▲4

でまあ前回の短観では「久々に予測DIが未達」という結果になっていて、これは死亡フラグの可能性があり、特に非製造業の方が未達度合い大きくてマズーという話をした(ちなみにこの未達度合いと短観数値をグラフにして90年くらいからの時系列を見ると味わいがある)のですけれども、今回の短観では前回の先行き予測DIが概ね達成して、非製造業大企業や製造業中堅企業では上振れして達成という形になっていまして、ちょっとこれは一安心という所です。

勿論先行きが下を向いているのは気にする話ではあるのですが、回復傾向にある中でも先行き予測DIって慎重に出るケースが多いので、今回に関しては前回短観で足元DIが6月予測数値未達だった、というような状況を鑑みて先行き予測がより慎重になったという事だとすれば今の局面は踊り場的な局面で済む、という風にも思えますので、そこまで悪いという話ではないのではないかと。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲1→▲1       ▲1→0
製造業中堅企業 ▲7→▲9       ▲6→▲8
製造業中小企業 ▲5→▲8       ▲8→▲3

非製造業大企業   ▲16→▲17    ▲18→▲18
非製造業中堅企業  ▲18→▲23    ▲20→▲22
非製造業中小企業  ▲21→▲27    ▲22→▲25

うーんこのという感じですが、先ほどの業況判断DIは先行きが下向いているけどそんなに悪くは無いと思われますという所なんですが、雇用判断DIは絶対水準自体は強いのですけれども9月に見ていたよりも雇用判断が若干緩和されている感じですし、先行きの予測も9月短観ほどに逼迫感が無いという風になっていまして、前回の短観では業況判断が弱かったけれども雇用判断はやたら強いという感じだったのの逆が出ている感じで、こっちは(絶対水準的には問題ないけど)気になるなあと思うのですがどうでしょうか。


・価格判断DI

昨年9月短観からしらっと投下された物件。

販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲4→▲4        ▲3→▲3
製造業中小企業 ▲4→▲2        ▲5→▲4

非製造業大企業  +4→+6      +5→+7
非製造業中小企業 ▲2→+2      ▲3→+2


仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

        (9月時点)        (12月時点)
        現状→12月予測       現状→3月予測
製造業大企業  +17→+18       +19→+21
製造業中小企業 +38→+43       +39→+44

非製造業大企業  +21→+22      +21→+23
非製造業中小企業 +29→+33      +27→+33

今回はあまり前回予想から大きく動いていないですし、水準自体もそんなに変わっていないのでコメントし辛いですな。


・毎度お馴染み金融商品取引業の業況判断DI

毎度お馴染み金融商品取引業業況判断DIですが。

        (9月時点)       (12月時点)
        現状→12月予測      現状→3月予測
金融商品取引業 +22→+35   +50→+42

おお久々にぶれているじゃんと思うのですが、+50とかまた威勢が良いですなと思うのですけれども、先行きの予測DIが調子に乗っていない辺りが死亡フラグではないのでちょっと安心ですね!!!


・その他で言えば設備投資とか需給とか在庫とか

まあその辺は本職の方々が分析しておりますからご案内の通りだとは思いますが、設備投資計画が意外に下方修正されてないなという辺りも含めて今回の短観って可も無し不可もなしというような結果だったように思えます。

ただまあ毎度ですが、マインド系のデータとハードデータの間に微妙に差が出るとか、法人企業統計とGDP2次速報の関係のように、どうも色々と微妙なずれがあるのでこれだけでどうのこうのという話は難しいって事なんでしょうかね。

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2014/12/02

○日銀リサーチラボというのが出たのだがターゲット設定がちょっと良く判らない件について

昨日はこんなのが投下されていました。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141201a.htm/
「日銀リサーチラボ」の創刊にあたって
2014年12月1日
日本銀行

『日本銀行では、日本銀行職員による様々な専門分野における調査・研究活動を幅広い読者を対象に分かり易く解説することを目的として、『日銀リサーチラボ』を創刊しました。』

ほう。

『これまでにも、日本銀行が行った調査・研究の成果は、『金融経済月報』や各種レポートの他、「調査論文」、「日本銀行ワーキングペーパーシリーズ」、「日銀レビュー」、金融研究所の『金融研究』、「ディスカッションペーパーシリーズ」を通じて公表されてきました。』

で?

『この度創刊となりました『日銀リサーチラボ』は、日本銀行の情勢判断や政策運営に関連する様々な専門分野における調査・分析の成果を、金融経済に関心を持つ幅広い読者の方々に、できる限り平易かつコンパクトに説明することを目指しています。』

ということなのですが・・・・・・・・・・・・

記念すべき一発目はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab14j01.htm/
中央銀行の情報発信と市場心理:2013年中の日米における2つのエピソードを巡って
鎌田 康一郎(日本銀行)

『要旨

証券の価格や変動は、市場参加者の確信(confidence)の程度に左右される。しかし、主流派マクロ経済学では、そうした考え方にあまり関心が払われてこなかった。鎌田・三浦(2014) [PDF 2,115KB]は、この確信という概念に再び着目し、公的情報と私的情報からなる2重構造モデルを用いて、国債市場において群集行動が発生するメカニズムを解明しようと試みたものである。本稿では、2013年に日米で発生した2つのエピソードを取り上げ、鎌田・三浦モデルに基づいて、金利の急上昇とボラティリティ拡大の原因を探る。分析結果は、中央銀行の情報発信が、市場心理に働き掛ける有効な手段であると同時に、意図せざる市場変動をもたらす原因にもなり得ることを示唆している。』

ということでこれ暫く前に出ていたワーキングペーパーシリーズの説明じゃんと思ったのですが、その内容を見ても結局WPのダイジェストではあるのですが、従来の日銀レビューシリーズよりは見た所難しくて、元のWPは計算式が大量に出ていてハクション大魔王レベルのアタクシは泡を吹いたのですが、数式無いのだが結局説明があまり平易に見えない辺りがこの情報発信のターゲットはどこですねんという疑問ががががが。

これなら別に日銀レビューでええじゃんと思うのですが、それはそれとして一発目のお題が「中央銀行の情報発信」というのは最近の追加緩和を巡る執行部および白井審議委員辺り(宮尾さんのも大概でしたが白井さんがあまりにも異次元に壊滅的なので霞んでしまいますな)の情報発信が誠にアレな中で、もしかしてこれは何かのギャグで題材が選ばれたのではないかと・・・・・・・・・


なお、二発目はこちらです。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/lab/lab14j02.htm/
わが国のマクロ的な賃金決定の特徴は何か?:賃金版ニューケインジアン・フィリップス曲線の日米比較
新谷 幸平、武藤 一郎(日本銀行)

『要旨

当論文では、わが国におけるマクロ的な賃金決定の特徴を把握するため、Gali(2011)が導出した「賃金版ニューケインジアン・フィリップス曲線(NKWPC)」を日米のデータを用いて推計した。NKWPCの枠組みでは、観察された賃金上昇率と失業率の関係を経済学的な概念に関連付けて解釈できる。分析を通じて、日本におけるNKWPCの実証的パフォーマンスは米国より総じて良好であるほか、日本ではその傾きは近年フラット化しているが、なお米国より急であることが判明した。その理論的背景として、日本では賃金の粘着性が米国よりも小さい点が影響している可能性がある。賃金の物価スライドを考慮した場合、日本では米国と異なりインフレ率が賃金に与える影響がさほど明確でないが、近年では日米共にその影響は以前に比べ大きくないことが確認された。この結果には、近年両国のインフレ率が低位安定してきたことが影響している可能性がある。』

置物一派の皆さんがよく「デフレでも賃金が下げられないので企業収益が悪化する」というような形でデフレの弊害の一つとして挙げていたと存じますが、こちらではしらっと『日本では賃金の粘着性が米国よりも小さい』という話が入っている(まあどう見てもそうなのですが)のがお洒落ですね^^;

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2014/11/26

○久々にアリバイ会合キタコレ!

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141125c.pdf
「市場参加者との意見交換会」の開催について

『日本銀行金融市場局では、以下の要領で「市場参加者との意見交換会」を開催します。本会合は2013 年4 月以降、適宜の間隔で開催されてきているものです。』

適宜の間隔って前回だいぶ前だった気がしますが。

『3.参加予定者

・市場調節取引先、機関投資家などの実務担当者
・日本銀行金融市場局長、金融市場局市場調節課長、金融市場局市場企画課長、企画局政策企画課長 ほか』

『4.内容

日本銀行より、@「量的・質的金融緩和」の拡大後の市場動向と市場調節運営、および、A「市場参加者との対話の強化に向けた取り組み」(「債券市場サーベイ」の開始等)についてご説明し、意見交換を行う予定。』

との事ですが、昨年の場合は折角大規模緩和を打ち込んだのに名目金利を下げたいのか実質金利が下がれば名目金利が下がらなくても問題ない(=インフレ期待が上がれば無問題)のかに関して説明が混乱(導入前に黒田総裁は名目金利を下げるような言い方をしていたのに実際に始まってみると金利が上昇しているのに放置プレイな発言をしたのがそもそもの間違い)したので実施されたという所ですが、今回は日銀的に言えば「政策効果が出て金利が下がっている」という状況なのに会合を久々に実施とはこれ如何にという所ですな(ニヤニヤ)。

でまあこれだけ市場機能を圧殺するわ騙し討ちオペやらバキュームオペやらを実施しておいて対話とかヘソが茶を沸かす事案ではございますが、まーこういうのやると言い出しているのはそれだけ苦情が出ているんでしょうなあというのだけは把握した(^^)。

さて、まあ施策のご説明なんぞはどうでも良いのですが、これだけ市場にフリクションを与えて、金融市場における金融仲介機能を阻害している(ゼロ金利制約における資産買入系の非伝統的政策というのは本来的にそういう副作用があるっつーか、それをする事によって別の効果を出そうという政策なんだから仕方ないのだが)訳でして、しかもそれをさらに強化するという話なのは別に説明されなくても分かっておりますので、折角「ご説明」するのでしたら「市場に死んで頂きます」という政策が「いつになったら出口になるのか」という明確な目処を出して頂きたいですし、目処が無理なら必達目標時期を出して「ここまで籠城戦をしていただければ包囲網が解放されますからそこまで籠城して我慢して下さい、なおその時点でダメなら執行部全員切腹して死にゆく市場の皆様と心中するので許してください」という話をして頂きたいものですな(無理なのを承知な上で言ってますので念のため^^)。

そもそも超大規模国債買入を1年半も実施して「目標達成しないなら更に追加すれば良いじゃないか」という理屈でおかわりをするというのも良く良く考えたらおかしい話で、普通これだけハチャメチャな買入を実施してしかも導入当初には2年で達成できるのは当然で達成できなければ辞任とかこの政策の理論的バックボーン(笑)の副総裁様が仰せだった訳ですから、更に追加緩和して(月によっては)新発国債の当月市中消化部分を全部買う位の勢いでの買入を実施するのにまた半年後くらいに「足りないなら更に追加緩和」とか言い出す前に「そもそも国債買入MB直線一気理論ではデフレ均衡脱出は出来たかも知れない(この調子でスタグフ的に推移するとそれも怪しい気がするが)けれども、2%を達成させるためには別のアプローチがあるのではないか」という話になって頂きたい訳でして、その辺の見極めの目処の時期はいつですねんという話だとは思いますけどね。うんうん。

#しかし今の黒田さんだとそのまま「目標達成が遅れているのは国債買入が足りないから」と言いそうで・・・・・


ということで他にも講演ネタ等沢山ございますが消化不良にも程があるので本日は以下決定会合議事要旨ネタで。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g141031.pdf

まあ全体的に読みますと「物価安定目標」のありかたについての考え方が思いっきり激突(従来より異論が結構出てはいましたが)した会合でしたなあというのと、そもそも追加緩和の効果に関する疑問も打ち込まれていまして、政策の副作用に関する反対派の見解ご尤もとしか言いようがない内容ではございましたな。


○テクニカルな注目ネタが最初と最後に2つありましてですな

・事務局メンバーが強化(?)されているのに非常に深い味わいを感じましたが・・・・・・・・

議事要旨の1ページ目(PDFファイルの3枚目、以下同様に本文のページと2枚ずれます)には『(開催要領)』というのがあるのですけれども、ここの一番下にある『(事務局)』というのは政策委員会室の室長と企画役1名、企画局から企画役2名というのが基本的なメンバー(審議役とかが入っている場合もある)になるのですけれども、今回は企画局の企画役が何故か3名になっているのに非常に味わいの深いものを感じた次第で、過去の決定会合議事要旨をパラパラ見たのですが、3名になっているのは結構稀ですなあと思いましたので真っ先にメモとして置いておきます。

なお、そのインプリケーションについてはさっぱり判らんのですけれども、いつもより1名多いというのは何かの意味があるのでしょうなあ(てきとう)と思います。


・追加緩和でご相談(報告?)とな

本文11ページにワープしまして『W.政府からの出席者の発言』から。

『金融市場調節方針の変更等に関する議論を踏まえ、政府からの出席者から、財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した( 12 時31 分中断、12 時42 分再開)。』

ちなみに前回のQQE導入時の議事要旨はこちらですが
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130404.pdf

こちらを見ましても「中断の申し出」というのは無いのですが、では中断っていつありましたねんと見ますと例えばこの時なんぞですな。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2006/g060309.htm/
金融政策決定会合議事要旨(2006年3月8、9日開催分)

『議長が金融市場調節方針の変更および新たな金融政策運営の枠組みの導入についての議案を取りまとめたことを受け、財務省および内閣府の出席者より、議案への対応について政府部内の意見を調整し、また、必要に応じて財務大臣および経済財政政策担当大臣と連絡を取るため、会議の一時中断の申し出があった。議長はこれを承諾した(午後1時17分中断、午後1時46分再開)。』(上記2006年の量的緩和解除時の議事要旨より)

ということでこの時は量的緩和解除に関しての会合で30分間中断していた訳ですけれども、今回は緩和解除ではなくて追加緩和で中断というのがこれまた味わいのある流れではございますなという事ですが、これまたそのインプリケーションについては良くわかりません(白目)ということで(^^)。


○景気認識に関する議論は途中まで全く追加緩和の必要性が無いのが実に笑える件

執行部報告の部分も大概に強い話なのですが『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』を見てもまあ基本はそんな感じなのがワロエルというかワロエナイというか。

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと働いており、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方で一致した。』

以下需要項目別展開。

『輸出について、委員は、振れを均せば横ばい圏内の動きとなっているとの認識で一致した。設備投資について、委員は、企業収益の改善が続いていることなどを背景に緩やかに増加しているとの見方を共有した。雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもとで、雇用者所得は緩やかに増加しているとの見方を共有した。』

ほほう。

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に基調的に底堅く推移しており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできているとの認識で一致した。その一方で、多くの委員が、消費税率引き上げが個人消費を下押しする影響は、駆け込みの大きかった耐久財や住宅を中心に長引いているとの見方を示した。』

ほうほう。

『鉱工業生産について、委員は、足もとの前月比はプラスとなった一方、自動車などの耐久消費財や建設財を中心とした在庫調整の動きはなお続いているとの見方で一致した。』

で何故追加緩和??と思いながら物価へ。

『物価面について、大方の委員は、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、このところ物価の下押し要因として働いていると指摘した。多くの委員は、原油価格の下落の影響などから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%前後で推移するとの見方を示した。』

「暫くの間」ですかそうですか。

『多くの委員は、現状程度の原油価格を前提とした場合、前年比でみた物価上昇率への下押し圧力は、来年度前半頃まで継続することとなるため、物価見通しは7月の中間評価と比べて下振れるとの見方を示した。』

でもそれは一時的要因ですよね。

『このうち何人かの委員は、こうした物価面での下押し圧力が、予想物価上昇率に与えるマイナスの影響について懸念を表明した。』

予定調和理論キタコレ!!!

『現状の予想物価上昇率について、何人かの委員は、全体として上昇しているとの認識を示した。別の一人の委員は、やや長い目でみれば上昇傾向は続いているものの、消費税率引き上げの影響を除いたブレーク・イーブン・インフレ率など中長期の予想物価上昇率を示す指標は8 月頃から横ばいないし低下していると指摘した。』

これで追加緩和の理由とはこれまた弱いですなあ・・・・・・・・・


○追加緩和の理由に関しての話が微妙にアレな件

でまあその次が今回頑張って長くなっている『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』である。

『多くの委員は、原油価格の下落は長い目でみて日本経済にとってプラスであるものの、このところの大幅な下落は、消費税率引き上げの後の需要面での弱めの動きと合わせて、短期的には物価の下押し要因として働いていると指摘した。』

この現象部分に関しては「多くの委員」でしょうな。

『そのうえで、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクが大きいと述べた。』

えーっと、それは5人の委員がそう言っている話ではないかと思いますが、まあ確かに5対4なので「多くの委員」である事には違いは無いのですが、何となく執行部案が超優勢であるような威勢の良い表現テクを使うのが日銀文学鑑賞の上での楽しみというものです。

・・・・・・というか延々と1年以上に渡って月報で「予想物価上昇率は全体として上昇していると見られる」って現状認識示して置いて今更「デフレマインドの転換が遅延」というのは意味が判らんのですが、1年以上も予想物価上昇率が全体として上昇しているのにまだデフレマインドが転換しないとか意味が判らんのですが。

#デフレマインドに逆戻りするリスクがある、というのならまだ話は分かる

『これらの委員は、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、このタイミングで追加的な金融緩和を行うべきであると述べた。このうち何人かの委員は、わが国では、長年にわたってデフレが続いたため、予想物価上昇率の形成は、実際の物価上昇率の動きに大きな影響を受ける傾向があり、ここで物価上昇の足踏みが長引けば、影響が懸念されると述べた。』

何ちゅうかな理屈だがまあこの話は何度か出てましたな。

『このうち一人の委員は、このことは、年末から来年にかけて、企業が事業計画を策定したり、賃金交渉を行う重要な時期であることを踏まえると、特に重要であると付け加えた。』

言ってる事は判らんでも無いが、それが効果をだすのに時間がかかるので2年で2%との整合性という意味ではどうなのよという感じで、そもそも2年で2%を目指しているのに、そんなにタイムホライズンの長い話を持ち出してQQEの目標達成のタイムホライズンの方はどうなってますねんという気はするし、こんな話が普通に出てくるという事はそもそも直接的に「2年なりの短期で達成するパス」が見えて居ない事の証拠ではないかとも思ってしまうのですけどねえ。

『また、何人かの委員は、日本銀行は、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した際、「2年程度の期間を念頭に、できるだけ早期に」「物価安定の目標」を実現するとのコミットメントを行っているが、追加緩和を実施するに当たっては、デフレ脱却に向けた揺るぎない決意を示すために、こうした考え方にいささかも変わりがないことをしっかりと説明していく必要があると述べた。』

ニヤニヤ。

『このうち一人の委員は、日本銀行は、これまで、何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、2%の「物価安定の目標」を実現するために必要であれば、躊躇なく調整を行うとの方針を繰り返し述べており、ここで政策対応を行わなければ、そうしたコミットメントを反故にするものであると理解され、日本銀行に対する信認が大きく損なわれる可能性もあると述べた。』

ポカーン。だったら最初から「見通しが下振れたから追加緩和」と説明して欲しいのですが、追加緩和の理由は「足元の物価伸び悩みが期待インフレの低下を起こすリスクに対応」でしたので、そもそも説明が変じゃないですかねえ。

『この間、別の一人の委員は、今回、追加的な金融緩和を実施することによって、2015 年度下期には、2%の「物価安定の目標」の安定的な達成が十分視野に入ると考えられ、そうであれば、その時期には、出口戦略の議論が開始できる状況になる可能性もあると述べた。』

どう見ても宮尾審議委員です本当にありがとうございました。

『また、一人の委員は、今回提案された追加緩和措置は、景気の前向きな循環メカニズムが維持される中で、回復を後押しするものであり、企業収益や雇用・賃金などに対してこれまで以上にしっかりとした効果を発揮していくことが期待できると付け加えた。』

ではその効果についてメカニズムを説明して頂きたい。


○逐次投入がどうのこうのの部分ワロタ

更に追加緩和賛成派の見解が続く。

『この間、複数の委員は、もともと「量的・質的金融緩和」は、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続するために必要な時点まで継続するものであり、オープンエンドの措置であることをしっかりと説明していくべきであると述べた。』

それは良いのだが2年の方の期限は??

『具体的な追加緩和の内容について、何人かの委員は、今回の措置が人々のマインドに働きかけるものであることを踏まえると、戦力の逐次投入と受け取られないよう、リスク量や副作用も勘案のうえ、可能な限り大きな規模を目指すべきであると述べた。』

クソワロタという感じですが、逐次投入しないで出来るだけ大きな規模にしたら「その後に調整」ってどうやってやるんでちゅかねえ。

『そのうえで、複数の委員は、@マネタリーベースの増加ペースを年間約60〜70 兆円から約80 兆円に拡大するとともに、A長期国債の買入れ額についても、年間約50 兆円から約80 兆円に拡大することが望ましいと述べた。このうち一人の委員は、このところ短中期金利が大きく低下する一方で、やや長めのゾーンは相対的に高めであることを指摘したうえで、イールドカーブ全体の金利低下を促すという「量的・質的金融緩和」の基本的な狙いを実現するためには、短期国債買入れとのバランスや、長期国債の買入れ平均残存期間などもあわせて検討すべきであると付け加えた。』

短期国債買入とのバランスですかそうですか。

『この点に関し、何人かの委員は、資産買入れ方針は、金融市場調節部署が金融市場の動向を踏まえてある程度柔軟に対応できるようにする必要があると述べた。』

丸投げキタコレ!

『また、複数の委員は、ETFおよびJ−REITといったリスク性資産の買入れについても、思い切って増加すべきであると述べた。』

まあこれはどうでも良い。

『この間、委員の質問に対応して、執行部からは、オペレーション面の対応可能性やリスク量などについて補足説明を行った。』

補足説明してこれですかそうですか。


○反対意見がどう見てもまともな件について

以下反対意見を鑑賞。

『一方、何人かの委員は、現時点で追加的な金融緩和を行うことに慎重な見方を示した。これらの委員は、先行きの物価見通しに対するリスクが大きくなっているとの見方は共有しつつも、経済・物価の基本的な前向きのメカニズムは維持されており、現行の金融市場調節方針・資産買入れ方針を継続することが適当であると述べた。』

まあそうですな。先行きの見通しが大きく変わったというのではないならそうなる罠。しかも別に大きな外的ショックがあった訳でもないし。

『また、何人かの委員は、追加的な金融緩和による効果は、それに伴うコストや副作用に見合わないと述べた。』

(;∀;)イイシテキダナー

『追加緩和の効果について、何人かの委員は、追加緩和によって金利は一段と低下すると見込まれるものの、名目金利は既に歴史的な低水準にあり、実質金利も大幅なマイナスとなっていることや、資産買入れの効果はその進捗とともに累積的に強まる性質のものであることを踏まえると、経済・物価に対する限界的な押し上げ効果は大きくないと述べた。』

>経済・物価に対する限界的な押し上げ効果は大きくない

ですなあ。

『また、期待への働きかけについて、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」は導入時には人々の期待を変化させる効果を持ったが、追加的にこれを拡大しても、その効果は導入時と比べてかなり限定的なものにとどまると述べた。』

(;∀;)イイシテキダナー

『このうち一人の委員は、効果の持続性についても疑問があると付け加えた。』

これは手厳しい(^^)。

『追加緩和のコスト・副作用について、複数の委員は、市場機能の一段の低下を指摘した。このうちの一人の委員は、MMFやMRFなどで運用難のリスクが高まる可能性があると述べた。』

(;∀;)イイシテキダナー

『さらに、複数の委員は、一段の金利の低下が金融機関の収益や仲介機能に与える影響について懸念を示した。』

そもそも非伝統的政策は市場の金融仲介機能を阻害する性格がありますが、低金利の長期化と必要以上の低下はそういう話にもなりますわな。

『この間、何人かの委員は、年間約80 兆円の増加ペースで国債買入れを行うとなれば、フローでみた市中発行額の大半を買い入れることになるため、国債市場の流動性を著しく損なうだけでなく、実質的な財政ファイナンスであるとみなされるリスクが、より高くなると指摘した。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『また、一人の委員は、結果として円安が進めば、これまで景気回復を下支えしてきた内需型の中小企業への悪影響が懸念されると述べた。』

これはまた黒田さん(および執行部)にイヤミですな。


○物価安定に関する議論部分も味わいが

『この間、人々のインフレ予想について、ある委員は、人々の行動様式は、緩やかな物価上昇を前提としたものに着実に変わりつつあることを踏まえると、「量的・質的金融緩和」は、その役割を十分に果たしていると評価できるとしたうえで、月々の消費者物価の前年比に逐一反応すべきではないと述べた。』

>月々の消費者物価の前年比に逐一反応すべきではない
>月々の消費者物価の前年比に逐一反応すべきではない
>月々の消費者物価の前年比に逐一反応すべきではない

(;∀;)イイハナシダナー

『複数の委員は、帰属家賃を除いた消費者物価の前年比は1%台後半で推移しており、消費税率引き上げ分も考慮すると、物価は相応に上昇しているというのが家計の実感であると述べた。』

石田さんは確実ですがもう一人は佐藤さんと見ましたがどうでしょうか。

『この間、別の複数の委員は、2%の「物価安定の目標」は、成長期待の高まりなどを踏まえて中長期的に達成すべきものであり、「2年程度の期間」に過度にこだわるべきではないと述べた。』

ここがほほうという所で、2%を「中長期的に」という人が「複数」となっていて木内さん以外にも「そもそも2%という設定は良いのだが2年程度の短期で達成というのに無理がある」という話になってきているのが味わい深いですな。

以下もう少しありますがパスして展望レポートの反対部分を鑑賞。


○採決の後に展望レポートとな

『X.採決』の次に『Y.「経済・物価情勢の展望」に関する検討と決定』というのもいつもと順番が違っていて味わいがありますが、中断時間から考えてこの部分の検討時間が50分も無さそうな辺りが何ともアレ。

『以上の議論によって決定された金融市場調節方針および資産買入れ方針を前提としたうえで、「経済・物価情勢の展望」に関する議論を行った。経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方で一致した。そのうえで、従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから、2014 年度について幾分下振れるものの、2015 年度、2016 年度については、従来の見通し対比、概ね不変との見方を共有した。』

ということでサラッと流していますが、本来は「追加緩和が無かった場合に見通しがこうなるので追加緩和を実施します。で、それによって見通しはこう変わります」というのが示されるべきだと思うのですが、そうなると「見通しが下振れたので追加緩和」という第一の柱的な話になってしまいまして、過去の「必要な施策は全部実施した」(キリッ)というのは何だったのだという話になってしまうので、採決の後に「追加緩和を前提とした」見通しの話をしている(ことになっている)辺りが実に日銀文学の侘び寂びというものを感じさせてこれだけで抹茶3杯は行けますわという所で。

でまあ途中は良いとしまして『2.「経済・物価情勢の展望」の決定』を鑑賞。

『白井委員からは、物価見通しについて、「見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い」を「見通し期間の終盤までに2%程度に達する可能性が高い」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

何ですかねえこの先生は・・・・・・・・議案に賛成しておいてこれは無いだろ。

『佐藤委員からは、@物価見通しについて、「次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する」から「見通し期間の中盤頃に2%程度を見通せるようになる」に変更すること、A第1の柱の中心的な見通しについて、「2%程度の物価上昇率を実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

この@の部分はフォーキャストターゲットの考え方であって、Aの部分は「足元の物価を実際に2%を付けることを過度に重視すべきではない」という考え方で、さらっと流されていますがかなり重要な論点を含んでいますので覚えておくのが吉。

『木内委員からは、@予想物価上昇率の見通しについて、「中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく」から「中長期的な予想物価上昇率も安定的に推移する」に変更すること、A物価見通しについて、「当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する」から「今後も概ね現状程度の水準で安定的に推移する」に変更すること、B先行きの金融政策運営について、「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」から「中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする」に変更すること、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

木内さんの論点は「中長期的に目指せば良いじゃないか」という話で、これは毎度の提案でも示されている話ではありますな。対外公表文に関してもその趣旨の提案をしていますがそこは引用パスということで。

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2014/11/20

○決定会合レビュー:声明文は相変わらずゴテゴテして見苦しい

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141119a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf(10/7)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410a.pdf(展望レポート基本的見解)

今回は基本的に月報タイミングに合わせて前々回と比較しますが、たまに展望レポート基本的見解の記述と比較するという感じで。

・現状認識:何か知らんが細かく上げ下げしていますな

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きが残っているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(10/7)

という総括判断は同じ。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(10/7)

輸出引き上げたのか。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかな増加基調にある。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は全体として和らいでいる。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできている。』(10/7)

設備投資の部分は「増加している」が「増加基調」ということで下がっていまして、公共投資は同じ、個人消費の所は基本的な部分は同じなのですが駆け込み需要の反動の影響の部分で10月7日の所で「ばらつきを伴いつつも」という文言を加えたのを削除するという訳のわからん動きを示しておりまして、微妙に引き上げ。

『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いているが、足もとでは下げ止まりに向けた動きもみられている。鉱工業生産は、在庫調整が続くもとで、弱めの動きが残っている。』(今回)

『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。鉱工業生産は、在庫調整の動きもあって、このところ弱めの動きとなっている。企業の業況感は、消費税率引き上げの影響などから改善に一服感がみられるが、総じて良好な水準を維持している。』(10/7)

住宅投資は「下げ止まりに向けた」云々となって引上げとなっております。生産の所もこれまたややこしくて、在庫調整の所は「動きもあって」が「続くもとで」という事で表現が変わっていますけれども要するに在庫調整が起きているという説明ですが、生産全体については弱めの表現の部分が「残っている」という形で願望入りながら上げているという感じですか。業況感に関しては短観に関する部分なので今回は入っていません。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(10/7)

ここは毎度同じ。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる(注1)。』(10/7)

まず、物価の現状については遂に「1%程度」に変わりましたが、これは英文の所を見ますと、

『On the price front, the year-on-year rate of increase in the consumer price index (CPI, all items less fresh food), excluding the direct effects of the consumption tax hike, is around 1 percent.』(今回)

『On the price front, the year-on-year rate of increase in the consumer price index (CPI, all items less fresh food), excluding the direct effects of the consumption tax hike, is around 1-1/4 percent.』(10/7)(4分の1の所はフォントの関係上改変しています)

ということでやっと下げましたかそうですかという所ですが、インフレ予想に関しては「やや長い目で見れば」と思いっきり見苦しい文言が加わっています。これは直近の直近の展望レポートに登場しておりまして・・・・・・・・

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。』(展望レポート基本的見解5pより)

ということで、これが声明文に出てきたという話ですが、英文を見ると更に見苦しさがががが。

『Inflation expectations appear to be rising on the whole from a somewhat longer-term perspective.』(今回)
『Inflation expectations appear to be rising on the whole.[Note 1]』(10/7)

「from a somewhat longer-term perspective」って英訳する方も相当困ったんですねという感じで実に味わいが深い。


・先行き見通しの物価に関しては「もうすぐ1%近辺から戻ります」と来ましたが大丈夫ですかねえ

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に収束に向かっていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に和らいでいくとみられる。』(10/7)

何ちゅうかもう泣ける表現ですな。なお英文。

『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to continue its moderate recovery trend, and the effects including those of the subsequent decline in demand following the front-loaded increase prior to the consumption tax hike are expected to dissipate gradually.』(今回)

『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to continue its moderate recovery trend, and the effects including those of the subsequent decline in demand following the front-loaded increase prior to the consumption tax hike are expected to wane gradually.』(10/7)

waneがdissipateに変わっていまして、まあ後者の方がより「無くなる」という意味が強い筈だったので言いたい事は伝わったが何ちゅうかねえという感じです。

『消費者物価の前年比は、当面現状程度のプラス幅で推移するとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(10/7)

なお英文。

『The year-on-year rate of increase in the CPI is likely to be at around the current level for the time being.』(今回)
『The year-on-year rate of increase in the CPI is likely to be around 1-1/4 percent for some time.』(10/7)

これがまあキタコレではありますが、実際は展望レポートの時にこのように表現が入っていまして・・・・・・

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い10。』(展望レポート基本的見解6pから)

ということですので、展望レポートの時と同じではあるのですが、1月の声明文以降続いていた「for some timeは1%台前半、ああそれからfor some timeって半年程度な」といったもののその半年程度とは何のことだという感じだったものに対して、今回は発射台の数字を「現状程度のプラス」とか微妙な言い方して、英文でも「the current level」とかナメトンノカという表現ではございますが、まあ要するに足元の1%近辺(総裁会見でついに今回1%割れの可能性に言及していてフラッシュも打たれていましたがそれは明日にでも)まで発射台を下げましたな。

しかしながら今後上昇していくパスについて、従来の「半年程度横ばう」という意味をもつことになっている「暫くの間」から、それよりも期間の短い「当面」という表現に変えて来ましたので、これは即ち次回の展望レポートの時に1%近辺とかですと物価見通しのパスから外れているという話になりますので、その時は追加緩和待ったなしという話になりますし、だいたいからして「当面」なのですから来年の4月を待たずしてもアクチュアルな物価が上昇してこないと追加緩和しないと話がおかしくなるという事になりそうです。

でまあ前回の追加緩和によって「足もとの物価動向を重視して兎に角アクチュアルの物価を2%まで持って行く事を重視」というのを鮮明に打ち出した(ので4人も反対が出た訳だが)のですから、足元の物価が中々アガランチ会長(来年前半はそもそも論として前年比の所が苦しい筈なのだが)となりますと結構早い時期に追加緩和に追い込まれるという「バズーカの逐次投入」ってな意味不明な展開になるとか思うと落涙とかいうよりも吐き気を禁じ得ません。


・リスク要因は欧州低インフレ長期化とか今更入るが表現が紛らわしい

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(10/7)

これ「欧州における」がどこまで掛かっているのかが一瞬分かりにくいので、欧州の話なのか日本の話なのかが分かりにくいぞなと思いますので表現の改善キボンヌ。なお英文見たら分かりました。

『Risks to the outlook include developments in the emerging and commodity-exporting economies, the prospects regarding the debt problem and the risk of low inflation rates being protracted in Europe, and the pace of recovery in the U.S. economy.』(今回)

『Risks to the outlook include developments in the emerging and commodity-exporting economies, the prospects for the European debt problem, and the pace of recovery in the U.S. economy.』(10/7)


・最後の部分はいつも通り

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注3)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(10/7)

木内さんの提案もいつも通りでしたな。


・票決に関して

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(賛成8反対1)(注1)。』(今回)
『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。』(10/7)

でまあ反対が木内さんで「元に戻せ」とことで反対なのですが、前回反対した他の3名は賛成となりまして、まーここの所は微妙ちゃあ微妙なのですが、前回決定された事項を覆すという事になると、今度は覆す方に色々と説明する義務が生じてきますし、一旦決定した事を極端な情勢の変化も無いのに直ぐに戻すというのも妙な話ではありますので、まあ賛成する方も反対する方も言いたい事はわかるという感じです(ちなみに2000年のゼロ金利解除の時も解除に反対した植田審議委員(当時)が次の会合で賛成に回っています)。

今回に関しては「消費増税先送り」というのが出たので財政規律に対する懸念がやや高まるという変化が生じているのですが、まあ選挙モードの中ですから選挙終わってみないと今後どうなるのかというのも判らんという所でもあって、今回の会合で早急に「財政規律の懸念が高まっているので過大な国債購入は財政規律との絡みで問題である」と提案するのも難しいという所で、まあ前回反対の4名がどちらに回ってもそれほど違和感無いなという所ではあります。

ただまあ今後に関しては財政規律の絡みの問題に加え、前回追加緩和で反対が出たのと同様の感じで、足元の物価にフォーカスした動き(つまり追加緩和のおかわり)が来た時には色々と反対の動きが高まるんでしょうなあと思われます。

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2014/11/07

○10月1回目の会合議事要旨の特色は「追加緩和の予兆が無い」事ですなあっはっは

ほいな。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g141007.pdf

・経済の検討部分を読んでも追加緩和の予兆が見られない件について:国内経済編

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』を読むのだが、まあ予想通り(?)次の会合で追加緩和政策を実施した件についての予兆が無いのが味わい深いというものです。今回の追加緩和は物価要因での緩和でしたから国内経済と物価の部分だけ鑑賞しましょう。

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと働いており、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方で一致した。景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に和らいでいくとの認識を共有した。』

ほほう。

『輸出について、委員は、弱めの動きが続いているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、海外生産移管など構造的な要因を考慮しても、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくとの見方を共有した。複数の委員は、9月短観で大企業製造業の海外での製商品需給判断DIが先行き改善していることも、こうした見方を裏付けていると指摘した。』

短観を見て裏付けとな。

『設備投資について、委員は、企業収益の改善が続いていることなどを背景に緩やかに増加しており、先行きも、緩やかな増加基調をたどるとの見方を共有した。』

でまあここの設備投資の話が長かったりする。

『委員は、9月短観をみると、企業の業況感は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響などから改善に一服感がみられるが、総じて良好な水準を維持しているとの認識で一致した。企業収益について、複数の委員は、過去最高益となった2013年度に続き、2014 年度も最高益を更新する可能性が高いと述べた。委員は、こうした業況感や収益動向を背景に、9月短観における2014年度の設備投資計画は上方修正され、しっかりとした増加になっているとの認識で一致した。』

短観キタコレ。

『何人かの委員は、こうした良好な企業マインドや堅調な事業計画は、企業がこのところの景気の弱さを一時的なものと捉え、前向きな姿勢を維持している証左であるとの認識を示した。』

企業の姿勢が前向きという認識だったのが何故その後にインフレ期待の低下懸念という話になったのかと小一時間。

『ある委員は、こうした前向きな判断の背景として、海外子会社の良好な業績を受けて連結利益が好調であることも指摘できると述べた。別の一人の委員は、人手不足で賃金が上昇する環境下では、企業は省力化のための設備投資等を通じて生産性を高める必要があり、中長期的にはこれが経済全体の生産性を高めていくと考えられると述べた。』

ほうほうそうですかという所で次は展望レポートでの先行きメインドライバーである所の雇用情勢。

『雇用・所得環境について、大方の委員は、労働需給が着実な改善を続けるもと、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けるとの見方を共有した。』

うむ。

『多くの委員は、消費税率引き上げ後の反動にもかかわらず、企業の積極的な雇用スタンスが維持されていることを指摘し、人手不足感の強まりや好調な企業業績を踏まえると、先行き雇用・所得環境の改善が続く可能性が高いとの見方を示した。』

『この点に関し、一人の委員は、冬のボーナスや、来春にかけての賃金交渉に対する期待を示した。この間、別の委員は、失業率は引き続き低下傾向にあるが、新規求人は減少しており、経済活動が幾分減速していることを反映していると述べた。さらに別の委員は、ここ数か月の一人当たり名目賃金の上昇は、ベースアップやこれに伴う調整的な一時金などで高めとなっているが、景気のもたつきが長引く場合には、先行き上昇ペースが鈍化する可能性があるとの見方を示した。』

何気に2名ほど先行き懸念している人がいるのね。展望レポートでは盛大に強気一辺倒という感じだったのですが・・・・・・・・・・・

さて個人消費。

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできているとの認識で一致した。委員は、家計支出のうち自動車などの耐久財消費や住宅投資については、駆け込み需要が大きかった分、反動減の影響が長引いているが、百貨店やスーパーの売上高は持ち直し傾向にあり、天候不順の影響も減衰してきているとの見方を共有した。』

ほう。

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとの認識を共有した。そのうえで、多くの委員は、実質所得の低下が個人消費に与える影響の大きさと、それがどの程度の期間にわたって続くかについては不確実性が大きく、予断を持つことなく点検していく必要があるとの見方を示した。』

なるほどここは懸念しているのね。

『このうち一人の委員は、9月の「生活意識に関するアンケート調査」において、家計の景況感や暮らし向き、収入DIが悪化している点を指摘し、実質所得低下の影響は非正規雇用者や低所得者に強く現われている可能性があると述べた。』

そらそうやろ。

『鉱工業生産について、委員は、自動車などの耐久消費財や建設財を中心とした在庫調整の動きもあって、このところ弱めの動きとなっているとの見方で一致した。何人かの委員は、在庫調整の影響が自動車以外の関連業種にも及んでいることを指摘した。先行きについて、大方の委員は、当面、在庫調整の影響などから弱めの動きとなるものの、短観における売上・収益計画が下方修正されていないことを踏まえると、駆け込み需要の反動の影響が次第に和らぐ中で、緩やかな増加に復していくとの認識を共有した。』

まあ気になるのは短観出た直後だから短観の話が出るのは致し方ないにしても、先行きが明るいという話の根拠にやたらめったら短観が出てくることで、ハードデータとマインド指標の乖離が続いて居ますが何なんでしょという話が指摘され続ける中で短観短観と連呼して先行きの明るさの話をするというのも何だかなあという感じではあります。

『ただし、何人かの委員は、先行きの回復ペースには不確実性があり、しっかりとした回復の時期は後ずれする可能性があるとの見方を示した。』

ですなあ。


・物価部分を見る訳だが(たぶん)白井さんの謎理論にクソワロタ

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、足もと幾分プラス幅が縮小していることを指摘したうえで、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。委員は、最近の前年比プラス幅の縮小は、エネルギー関連品目の押し上げ寄与の低下が主因であるとの認識で一致した。』

ほうほうそれでそれで?

『この点について、大方の委員は、消費税率引き上げ後の反動にもかかわらず、企業の価格設定スタンスに特段の変化はみられないとの見方を共有した。もっとも、複数の委員は、いわゆるコアコア指数の上昇に一服感がみられることを指摘し、個人消費のもたつきが影響を及ぼしている可能性もあると述べた。』

企業の価格設定スタンスに特段の変化が見られないのにいきなり3週間後にインフレ期待の低下懸念とな。

『先行きについて、何人かの委員は、エネルギー価格の動向によっては、一時的に消費者物価の前年比は1%を割る可能性もあると述べた。ただし、大方の委員は、マクロ的な需給バランスが着実に改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も上昇していくもとで、消費者物価は再び上昇傾向をたどるとの見方を共有した。』

前回の会合でここらの記述がどうなっているのやら(白目)。では予想インフレですけど・・・・・・・

『予想物価上昇率について、大方の委員は、全体として上昇しているとの認識を共有した。』

ほっほーーーーーーーー!!!!!!

『これに対し、一人の委員は、基本的な認識に差異はないものの、消費税率引き上げの影響を除いたブレーク・イーブン・インフレ率など中長期の予想物価上昇率を示す指標は8月頃から横ばいないし低下しているため、「足もとでは横ばいになっている指標が多くなっているものの、やや長い目でみれば上昇傾向は続いている」と表現すべきであるとの認識を示した。』

ちなみにこれ白井さんの謎提案の話だと思うのですが、そもそも物価連動国債のBEIは消費税率引き上げの影響が加味されていて(コアCPIの数字使ってるんだから当たり前)、当然ながら先行きの物価見通しだけではなく消費増税などのような制度要因に対する思惑部分も加味されるのですが、どうやって「消費税率引き上げの影響を除いたBEI」というのを計算したのか小一時間問い詰めたい。

『別のある委員は、他の経済指標と異なり予想物価上昇率は直接観察できないため、これまでも様々な指標をやや長い目で評価してきていると述べた。また、複数の委員は、予想物価上昇率の評価にあたっては、アンケートや市場の指標だけでなく、実際に人々の経済行動が予想物価上昇率の高まりを前提にしたものに変化してきているかどうかという点が重要であることを指摘した。』

ということで、何ちゅうか別に今回の追加緩和理由になった「期待インフレ率の上昇が遅れて云々」という記述が無いのが非常にこう深い味わいを感じるのでありました。


・円安の影響はまあこういう話になる罠

まあ順当ですな。

『この間、円安のわが国経済への影響について、大方の委員は、現時点では、全体としてみるとプラス方向に働いているとの認識を共有した。』

ほう。

『委員は、円安は株高や対外資産の増加に伴う資産効果を通じて個人消費を押し上げるほか、製造業の収益増加を通じて設備投資や賃金を増加させるとの見方を共有した。複数の委員は、円安が定着すれば、製造業の海外生産移転のペースを抑制し、国内での設備投資が促されるとの見方を示した。また、何人かの委員は、円安に伴う訪日客の増加により、旅行収支も改善していると指摘した。一方、委員は、円安には輸入価格上昇による交易条件の悪化や、それに伴う実質所得の減少といったマイナス面があるとの認識を共有した。複数の委員は、こうしたマイナス面は、中小企業や非製造業、地方経済に現われやすい点に注意が必要であると述べた。』

まあ順当で、ここで円安イクナイとは言えんですわな。

『この間、複数の委員は、最近の国際商品市況安を踏まえると、今次円安による交易条件の悪化は、2008年にかけての円安局面に比べ限定的であるとの見方を示した。』

ほっほー。

『一人の委員は、円安のネットの経済効果は明らかではないが、貿易構造の変化などから、円安のプラス効果は従来よりも低下しているとの認識を示した。』

なるほど。


・短期金利マイナスの評価

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『短国レートがマイナスを付けたことについて、何人かの委員は、日本銀行が「量的・質的金融緩和」のもとで強力な金融緩和を行っていることの現われであると述べた。』

・・・・・・・・・・・・・・・orzorzorz

『複数の委員は、期末要因が剥落した後も短国レートはマイナスとなっており、市場機能などへの影響を注視していく必要があると述べた。』

ということで、複数の委員はご理解しているようですが、どうも理解はされていないようですので(まあ総裁があの調子だからお察しという所ですが)今後国債買入が拡大する中で更にまたあばばばばーな阿鼻叫喚が起きるのではないかと今から心配されるところではあります。まあ阿鼻叫喚の声を出さずに先生!債券市場ちゃんが息をしていないの!!状態になりそうな気もしますがががががが。

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2014/11/06

○これは面白そうだがまだ精読していない

なお債券市場に関係あるかと言われると多分ない。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j07.htm/
主要国における資金決済サービス高度化に向けた取組み

全文はこちらの日銀レビュー
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j07.pdf
主要国における資金決済サービス高度化に向けた取組み

エグゼクティブサマリーから。

『主要国の金融機関では、資金決済サービスの高度化という観点から、様々な取組みが進められている。具体的には、資金の即時振込の実現や、国内送金における商取引情報の添付・拡張(金融EDI <Electronic Data Interchange>)が挙げられる。こうした中、本年6月に公表された政府の「『日本再興戦略』改訂2014」では、わが国の金融・資本市場活性化の一環として、資金決済サービスの高度化について検討を進めることとされている。これらの取組みを進めるにあたっては、諸外国の先進的な取組みを参考にしながら、わが国の実情に即した形で、資金の即時振込と金融EDIの活用をともに進めていくことが望ましい。日本銀行としても、政府と連携しつつ、こうした決済サービスの高度化に向けた取組みを支援していく方針である。』

でまあこの一環で新日銀ネットにおける各種の機能拡張が進んでいる訳でして、これは決済の鬼(かどうか知らんが)青木前決済機構局長の置き土産ですねわかりますという所ですが、内容はリテール資金決済の利便性向上でありますが、リテール資金決済の利便性、効率性向上によって企業や個人の経済活動の利便性、効率性を向上させるという話で、実は輪番で長期と超長期どっちを買うのというような話よりも地味だけど重要なんじゃネーノと思いますし、円の国際化という文脈にもつながる話ではございますなというところで。

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2014/11/03

ご案内の通りQQEで2年で2%で逐次投入しない筈の黒田日銀が追加緩和を実施したのですが、色々と論点があり過ぎて何なので11月3日(〜5日辺りを予定)に色々と書き物をしておりまして、ネタが多いのでこちらにまとめて置いておこうかと。

政策ロジック編:政策効果の検証が全くないという点と2%物価目標に対する考え方についてのロジックについて
展望レポート確認編@:全体の説明が雇用情勢一点突破になっている上に潜在成長率が下がっているとはこれ如何に
展望レポート確認編A:どこまで逝っても雇用情勢以外の説明に説得力が無い件
展望レポート確認編B:リスクアセスメントの話とか金融政策運営の話とかちょこちょこ違和感がありますなあ
コミュニケーション&フィージビリティ編:騙し討ち金融政策ですなという話と来年フローで110兆買えるのかという話
総裁会見編:質疑応答で困った質問に全然答えていないという所に追い込まれてバタバタ緩和したというのが見える話

お題「こりゃビックリの追加緩和:その1政策ロジック編」

で余りにも論点が多いので幾つかに分けてこれから徐々にアップしていきます。まずは政策ロジックの面からツッコミ所を幾つか申し上げようかと思います。本当は土曜日からアップするもんなのですが例によってぐうたらと頭を眠らせてあまり動いていなかったので週明けに向けて祝日だが月曜日なのでリズムを取り戻す為に書くというものです。


○全体を一応確認しつつ追加緩和はわかったがこれまで行った政策効果の検証は無いのかという点

やや時間が長かったのは展望レポートの楽観見通しで揉めたのかと思っていたらこんなに早く「降参」するとは思ってませんでした。いやはや話が違うじゃねーか。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf
「量的・質的金融緩和」の拡大

『(1)マネタリーベース増加額の拡大(賛成5反対4)(注1)

マネタリーベースが、年間約80兆円(約10〜20兆円追加)に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』

実際は足元が70兆円のペースで拡大しているので「10〜20」と書いてある20兆円の方はイカサマにも程があってまずこの時点で毎度おなじみのイカサマプレゼンが出ていますがその話はまた後ほど。

『(2)資産買入れ額の拡大および長期国債買入れの平均残存年限の長期化(賛成5反対4)(注2)

@ 長期国債について、保有残高が年間約80兆円(約30兆円追加)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間を7年〜10年程度に延長する(最大3年程度延長)。

A ETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約3兆円(3倍増)、年間約900億円(3倍増)に相当するペースで増加するよう買入れを行う。新たにJPX日経400に連動するETFを買入れの対象に加える1。』

MB拡大ペースを年間10兆円分引き上げるのですが、従来の70兆円の枠組みの時に20兆円拡大するという事になっていた短期国債およびその他固定金利オペや貸出支援がどこからどう見ても無理になり、現実問題として短期国債入札までもがマイナス金利に突入してしまい、そこら中からカチコミが飛んできているのは兎も角として、この調子で来年も継続するとなると短国金利がどこまでマイナスになるのかもわからんという状況でしたので、短期が買えなければ長期を買えば良いじゃない攻撃を行ったのに加え、当初QQE導入した時よりも発行年限が新規発行分でもストック分でも長期化したことを踏まえて買入の平均年限を長期化しましたという話だが、短期のフィージビリティは一息ついた(が結局これだけの長期国債を買ったら担保足りなくなるだろうし、そもそも誰が当預を積むのかという話もあるがそれも後ほど)けど今度は長期国債市場の方に無茶苦茶なプレッシャーが掛かるという話なので、結局国債市場は長期も短期も将来的に碌な事にならないのは自明。

でまあおじちゃんあまり詳しくないのですが、ETFとREITってこれフィージブルなのですかねえ。何か1兆円のペースをいきなり3兆円とか3の数字合わせみたいな言葉遊びの勢いで3倍にされているのですけどインデックスばっかり強くなるとかREIT物あるのかよとか大丈夫なんですかねえ。


・・・・・・・とまあそういうことで盛大に戦力の逐次投入が実施された訳でございますが、何せ今回の施策の説明に関して声明文および会見(会見テキストはどうも週明けのようなのでそのネタはまた水曜にでも投下予定ですけど今回の会見放送見たら黒田さん顔ひきつってましたよね)での説明を見ますと「下振れ対応」なのは判るが、そもそも論として昨年4月5日のQQE実施において何度も黒田さんは「必要かつ十分な措置を実施」したと説明していましたし、その後の展望レポートなどでも含めて2回の消費増税についても織り込んだ見通しを出していた筈なのですよね。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2013/kk1304a.pdf
『(答) 今回、必要な措置は全て採ったと言ってよいと思います。もちろん、経済も金融も生き物ですので、その時々の状況をみて、必要があれば躊躇なく調整していきますが、2 年で2%の物価安定目標を達成するために、現時点で必要な措置は全て決定したと考えています。』(昨年4月4日総裁会見の4ページより)

そらまあリーマンショックみたいな外的ショックが起きれば2年を待たずして何らかの追加緩和を実施するのも仕方ないのですが、今回の声明文の説明がどうなっているのか確認しましょう。再び今回声明文から引用します。

『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』(今回の声明文、以下同様)

消費税増税の影響という当初予定通りの事象に加えまして、原油価格の下落というのを入れていますが、そらまあ高値からは下がっているけど別に価格ショックという程の物でも無いですし、大体からして原油輸入国の日本では原油価格が下がって別に困る話ではない(まあさすがに書いてありますが)訳で、この原油価格の下落を捕まえて外的ショックというのは無理があります罠というところです。

・・・・・・・・となりますと、そもそもの経済物価見通しがおかしかったという可能性があるのですが、基本的に消費税そのものは理念的には短期的に言えば駆け込み需要とその反動がチャラ、中期的には消費税で減少する可処分所得分が財政による分配によってどのようにカバーされるのかという点がポイント、とまあそういう話になりますので、経済見通し云々よりは「そもそも論として過激なまでに行っているMB拡大政策が妥当なのか」という点を考え直さないといけないのではないでしょうかねえ。

なお、今回若干良心の呵責でもあるのか声明文の3番がちょっと面白くなっていますけどね。

『3.今後も、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う2(注3)。』

前回の声明文の当該箇所ではこのように記述がありました。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf
『6.「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(これは前回10月7日の声明文)

ご覧になれば判りますように、今回はさすがに恥ずかしいと思ったのか『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており』というのが抜けておりますが、ただまあ総裁会見の説明ではやはり効果を発揮している的な説明をしていたように記憶しておりまして(詳しくは週明けに出る会見要旨を見る)、結局の所MB投入は効果がある(キリッ)という話になっているのですよ。

しかしですね、少し考え直して頂きたい訳でして、そらまあMB拡大は金融緩和方向になる(少なくとも量的な意味での引き締めにはならん)のですが、そのMB拡大の定量的な効果に関してのレビューも無い状況で「足りないから追加すれば良いじゃないか」というのは、戦局が好転しないから兵士を輸送船で送り込めば良いじゃないかと言いながら大した護衛もつけずに丸腰同然の輸送船を送り込んでバシー海峡でガンガン沈められるわ無事に到着しても物資も武器弾薬も無いので結局使い物にならないわとなっていたどこぞの国の戦争末期とどこがどう違うのかと小一時間問い詰めたい訳でありまして、そらまあ作戦参謀でございと言って椅子にふんぞり返って動員する方は数字合わせだけしてれば満足かも知れませんが、バシー海峡で海の藻屑にされてしまうが如き仕打ちを受ける金利市場関係者としては何の為にその動員を行っているのかきちんと説明しろやと蓆旗でも立てて押し寄せたくなる心境であります。

ええまあQQEの当初導入時に関しては定量的な部分ってやってみないと判らない的な所もあったかもしれませんけれども、既に始まってから1年半も行ったのに未だに定量的なレビューが何もないとか非伝統的政策だから判らんで済ますには余りにも無茶苦茶な話で、これがまあ市場機能とかその辺に対して特段毒にも薬にもならない話ならああそうですかでスルー出来る可能性はあっても、ここまで市場にプレッシャーを掛けた上に、更にもっと強烈なプレッシャーを掛けて金利市場そのものを壊そうとしているのですから、これまでのMB拡大政策がどのように2%物価目標に対して効果があったのか、そしてこれから拡大する予定のMB(および資産サイドの構成)がどのように効果を出して2%物価目標を早期に達成できるのか、という点について「量を出せば効くに違いない」とか「気合」とかでは無いきちんとした見方というのを「政策委員会として」示して頂きたいですし、まさかそのような事は無いと信じていますが、「2じゃインパクトが無いから3だ」みたいな木っ端役人の数字遊びをベースにしてこの追加緩和の数字が作られたなどとい事では無いという事を(日銀レビューみたいな「日銀の見解ではなく個人の見解です」的な逃げの入ったモノではなく)政策委員会としてきちんと示して頂かないと、ほとんど丸腰の輸送船でバシー海峡に送り込まれる方はたまったもんじゃないですよと申し上げておきましょう。


とまあそういう事でして、話の途中で決定内容の確認もしたのでグダグダになったので改めて纏めますと、今回の決定を見て明らかになったのの一つが「政策手段の妥当性に対する効果測定も検証も行っていない」という事でありまして、これだけの市場へのプレッシャーおよび価格形成を歪ませるような副作用を発生させても実施する程の定量的な効果が本当にあるのかのレビューも無ければ先行きの見通しも無いとか、戦争末期で敗戦待ったなし状態のダメダメ軍隊のようで落涙を禁じ得ません。

つーかですな、MB拡大の定量的効果が明らかでこの追加によって確実に早期2%物価目標達成出来るのであればそらまあ一時的なプレッシャーは耐えるしかないでしょうとなりますが、そもそも1年半MB拡大を盛大に実施したのに実は足りませんでしたという状況なのにここから追加して意味があるのかというのもありますし、大体からしてフィージビリティを検証(は後でやります)するまでも無く年間80兆円の国債買入残高拡大とか何年も継続できるとは到底思えない(というか1年持つのかも分からん)のですが、そのフィージビリティが爆発する前にきちんと2%目標が達成されるというグランドデザインが全く示されない(示すも糞も検証していないのだから無理)のに3だから80兆円とか悪乗りプレゼンのノリで政策投下して大丈夫かとしか思えん。



○そもそも2%物価目標に関する定義もちゃんとできていない点について

さてさて、今回の特徴は何せ「実務家の政策委員が全員反対に回った」という所でして、毎度の木内さんは兎も角として、石田さん、佐藤さんに加えまして、基本的に今まで執行部提案に反対はしなかったし、講演などでも執行部見解のリファーから大きく外れる事のなかった森本さん(前職は東電副社長)が反対に回ったというのが前回のQQE実施とは大きく異なる点です。

まあ反対した委員の理由はさすがに今回の決定会合議事要旨では詳しく出るでしょう(それより10年後にじっくり読みたい)とは思いますが、声明文では反対理由に関しての説明は無いのが仕様なので理由は足元では想像するしか無いのですが、今回の追加緩和決定理由に該当する声明文の項番2を見ると大体状況が推測できるというものです。ということでさっきの項番2を再掲。

『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。』

という所まででは追加緩和をする理由になっていません。以下がポイント。

『しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』

ナンジャソラとしか申し上げようがない説明ですけれども、期待インフレ率上昇のメカニズムとして、

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1401a.pdf
『そういった政策のアナウンスメントに対応してフォワード・ルッキングに上昇する部分もあると思いますが、実際に物価上昇率が上がっていく過程の中で、いわばバックワード・ルッキングに予想物価上昇率が上昇していく要素も、両方あると思います。』(本年1月22日総裁会見の6ページから)

ということで、バックワードルッキングにアダプティブなインフレ期待形成、というのがあって、この説明ですとまずはその点を意識しているというのもあるのでしょうが、「好転している期待形成のモメンタムを維持」とは何ですねんと考えた場合に「2%物価目標」に対する実務家の皆様と日銀執行部(および腰ぎんちゃくの役にしか立っていない曲学阿世の学者審議委員諸氏)の見解の相違というのが見えてくるように思えます。

つまりですね、「期待形成のモメンタム」というのはよーするに「とにかく勢いで2%を何とかヒットさせる」ことによってバックワードの期待形成も更に強めて2%インフレ予想をアンカーさせたいというお話でありますし、これまた会見での総裁の説明が(記憶に間違いが無ければ)明らかにそういう趣旨の説明になっていて、CPI(中長期的には総合なのですが短期的にコアでしょうかね)2%という数値をできるだけ早期に叩きだしたい、というのが今回の「実際には途中でゴメンナサイしている追加緩和」になった訳でしょう。

一方で木内さんの場合は2%は中長期的に目指すという話ですし、佐藤さんの場合は2%目標という概念についてよりフレキシブルに考えるべきであり、足元のCPI数値を過度に重視するのではなく、よりフォワードタ―ゲット的な説明ですし、石田さんも佐藤さんと似たような話をしていました。森本さんは今まであまりその辺に触れていないのでよく判りませんけれども、実務家として考えた場合にやはり同様に足元のCPIヒットを過度に重視するあまり、国民厚生的に必要が無い施策を実施するのは如何なものかという論点なんでしょうなあと想像しますが、こればっかりは議事要旨を見ないとよく判りませんのでとりあえずこの会合の議事要旨担当の方には出来るだけ分かりやすい記述をお願いいたしたく存じます。

まあそんな訳でして、2%物価目標というのはあるけれども、それに対する具体的な形がどうなのかという点について政策委員会での意見が分かれているということで、そらまあ超コンセプチュアルに言えばフィリップスカーブの切片が2%であり、景気が1サイクル回る中でCPIが平均すると2%程度で安定推移する、という点は全員一致だと思うのだが、足元の数値をどう評価するのかという点で意見が大きく異なっていると思われますし、まあフレキシブルインフレーションターゲットの考え方からすると反対している実務家の皆様の見解に分があると思いますし、実務家の皆さんはこの追加緩和で起こり得る様々な副作用も勘案して実務家として賛成しがたいという事になったと思いますので、今回の反対4票しかも全員実務家で賛成しているのは執行部と腐れ学者2名というのは非常に重い意味を持つと思います。

まあそもそも追加緩和をしたら何で物価上昇のモメンタムが強くなるのかがさっぱり判らない(だいたいからして追加緩和ったって単にMB拡大ペースをちょっと上げているだけ)のですが、まあそれは兎も角としましても、検証という意味で言えば先ほどの「政策効果の検証」の他に「2%の物価数値をを短期的にヒットさせに行くのが本当に妥当なのか」という点についても、先ほどのMB拡大と同様に当初の決定がアプリオリに正しいのでその通りに突き進むだけ、という政策当局者としてあるべき姿勢を逸脱しているのではないかと思われるロジックが絶賛展開されている、という点にこの追加緩和の先行きが危ぶまれる訳です。

いやまあこれによって2%物価上昇して、しかも経済は良くなる(ただの円安コストプッシュ物価上昇だったらそれは短期的には物価上昇だが中期的に見た場合には購買力の低下から需要の低下を通じて先行きのデフレ圧力を高めるだけ)というのであれば別にこれはこれで勢いと気合で結果オーライかもしれませんが、そうなるメカニズムも結局期待と気合だけなのですからまあ先行きは暗いですよね。




2014/11/03

お題「追加緩和に関する論点その2:展望レポートの見通しを点検するとボロがボロボロ」

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf(前回4月)

超長くなるので何回かに分けます(って結局アップするから同じなのだが)。

決定内容の方で皆さん(ってワシもそうですが)ビックリしていて肝心の展望レポートにおける見通しの方へのツッコミが瞬間反応できなかったかと思いますが、展望レポートのとりあえずは基本的見解部分に対してツッコミを入れると色々とボロがあるので逐語確認をしていこう、というかなり無謀な企画を投下します。

土曜日の昼に背景説明を含む全文が出ておりまして、本当は全文を逐語確認をすると更に味わいが深いのと、そもそも前回の展望レポートでも基本的見解部分と背景説明部分で微妙にニュアンスが違う所があったりしてかなり面白かったのですが、今回は前回4月と比較しながら色々と確認していこうと思います。

というのはですね、今回ロジック崩壊の謎追加緩和を実施した訳ですが、そもそも論としてこれだけの謎緩和を実施するのですから、先ほど申し上げたような「MBの定量的効果」についてもそうなのですが、じゃあこの政策を追加投入した結果何がどうなって物価が上昇してインフレ期待が上昇して2%物価目標が達成できるのかという点を確認するのは展望レポ―トなのであるので、メカニズムを確認したいという話な訳ですよね。

○結論から先に申し上げると「労働需給」以外に物価が上昇する明確なメカニズムが無い

まあ小見出しの通りでして、まー大体そこしか物価が上昇します(キリッ)の説明のしようがないという事もありますが、ものの見事にメカニズムが労働需給に関する話に集中しておりまして、雇用所得環境の改善が弱まったらどうするんでしょうねえとしか申し上げようが無いかなーり脆弱な話が以下展開されるのでお楽しみに。

それから政策のそもそも論に関わる部分なども最初の方からいきなり飛び出すので中々面白いのですけれども、結局基本的見解の部分を何度読んでも労働需給以外の状況は物価2%達成に背を向けている状態にしか見えない説明になっています。

なお数値については予想通りで手前はGDPと物価が下げ、2015年度はGDPほぼ横で物価は下げて中心が+1.7なのは兎も角として大勢見通しの上限が+1.9で全体の一番強いので+2.0という下げ方。2016年度はGDPが微かに下がっているけれども物価は変わらず、という中々謎の数値になっていますが、これって「追加緩和込みでこの数字」ですからねえ・・・・・・・


○物価見通し時期とメカニズムの説明が更に雑になっているエグゼクティブサマリー

最初の『<概要>』が全体纏めです。

『2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(今回)

『2014年度から2016年度までの日本経済を展望すると、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(前回4月)

ということでこちらは同じ。

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高い。その後、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(今回)

『消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)は、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高い。その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していくとみられる。』(前回4月)

でまあこれに関しては直近の金融政策決定会合声明文も比較したいのですが。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf
『消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(10月7日決定会合声明文より)

となっておりまして、今回の展望レポートで物価先行き見通しの文言を変更しています。つまり従来示していた「1%台前半」という数値が「現状程度のプラス幅」となりまして、その現状とは何ぞやと言いますと直近公表された全国コアCPIが消費税抜きで+1.0%となっている事から、物価の先行き見通しについて手前の部分を下げた格好になっていまして、その期間に関しては従来の「暫くの間」という半年程度を意味するとされる文言から、より期間の短い「当面」に変更になっています。

数値が下がっているのは、以前の会見で黒田総裁が1%を割らないという趣旨の発言を行ったことに対するヘッジ文言でありまして、これで目先1%割れの数字がヒットした時の申し開きが出来た形になっていますが、そこの数値を下げた以上半年程度の期間を意味する「暫くの間」というのを入れると、そもそも論として最初にご紹介した展望レポートの物価見通し2015年度+1.7%という数字がどこからどう見ても無理という話になる(+1.7%と出ている数値は年度平均なので、足元の弱さが継続して発射台が低くなると達成に対しては相当厳しくなる)ので「当面」としない訳に行かなかったのでしょうな。

でまあその辺の操作をして先行きに関しては同じとしているのがもうだいぶ無理がある。

『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから、2014年度について幾分下振れている。物価の見通しは、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(今回)

『従来の見通しと比べると、成長率の見通しは、輸出の回復の後ずれなどから、2014年度について幾分下振れるものの、物価の見通しは、@雇用誘発効果の大きい国内需要が堅調に推移するもとで、労働需給が引き締まっており、この傾向はさらに強まることや、A中長期的な予想物価上昇率の高まりが実際の賃金・物価形成に影響を与え始めているとみられることから、概ね不変である。』(前回4月)

となっていまして、従来との見通し対比の部分の文言がこれまた実に味わいがありまして、成長率の見通しに関して従来無かった「駆け込み需要の反動の影響」というそもそもそれって見込んだうえでの成長率見通しでは無かったのかと小一時間問い詰めたい文言が入っており、消費増税の影響を読み誤りましたというのを本人たちは言わないのでしょうが、どこをどう見てもそうですよねとしか申し上げようがない表現になっているのが味わいがありますな。

更に申し上げますと、物価の見通しの所がもっと味わいがありまして、まず2015年度の所にある「国際商品市況の下落など」からというこの「など」の文言が実に怪しげな雰囲気を醸し出しておりまして、ではこの「など」とは何ですかと小一時間問い詰めたい。

そしてもっと面白いのは、先行きの物価上昇メカニズムに関して前回の展望レポートでは引用した通りにメカニズムの説明があるのですが、今回はその物価上昇メカニズムに関しての言及が無く、要は物価上昇メカニズムが薄弱であるという事を意味しているんでしょとしか申し上げようが無い辺りも実に香ばしい所ではあります。


○中心的な見通し:おいこら潜在成長率下がっているぞという話など

続いて『1.わが国の経済・物価の中心的な見通し』の『(1)経済情勢』から参ります。

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。4〜6月における成長率は、自動車などの耐久消費財を中心に駆け込み需要の反動の影響が大きかったことや輸出が弱めの動きとなったことなどから、大きなマイナスとなった。また、夏場には天候不順も、個人消費の一時的な下押し要因として作用した。もっとも、駆け込み需要とその反動といった振れを均してみれば、潜在成長率を上回る成長が続いている4。また、今回の景気回復は、雇用誘発効果の大きい国内需要に主導されていることもあって、雇用の増加と労働需給の引き締まりは、着実に進んでいる。』(今回)

『わが国の景気は、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、基調的には緩やかな回復を続けている。輸出は弱めとなっているが、国内需要が堅調に推移するもとで、景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けている。国内需要は雇用の誘発効果が大きいため、2013年度の成長率の下振れにもかかわらず、労働需給は概ね想定に沿って引き締まり傾向が強まっている。』(前回4月)

まずご覧になれば判るように、前回対比で文章が長くなっている時点でヘッジクローズ満載の香りという訳ですが、前回対比で異なっているのが「生産面の弱さ」への言及が最初にある部分、次が足元までの弱い要因に関する言い訳文言が入っていて、消費増税駆け込み需要の反動、輸出の弱さ、夏場の天候などを言い訳としております。

従って今回は前回あった「景気の前向きの循環メカニズムはしっかりと作用し続けている」という文言が外れ、「雇用の増加と労働需給の引き締まりは、着実に進んでいる」という表現に替わって(生産が弱いのだから前向きの循環メカニズムとは言えないでしょうからね)、これから先にも頻発するのですが、最初に申し上げたように「雇用情勢の改善」一点突破でメカニズムを説明して行きましょうという流れが鮮明なのが特色です。

ま、それ以外に説得力のある改善メカニズムを示すことが出来ないんすけどね(迫真)!!!!!


・・・・・・・・・・とまあそれよりももっと重大なのはここの脚注4にとんでもない記述があるのですよ。

『4 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台前半ないし半ば程度」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(今回)

『3 わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、このところ「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当幅をもってみる必要がある。』(前回4月)

ちょwwwww潜在成長率推計が下がっているとはどういう事やねんという話でして、後の方でありますけれども先行きの成長メカニズムの説明の中で前回も今回も「規制改革や成長戦略、企業の生産性向上や内外需掘り起しで中長期的な成長期待や潜在成長率は次第に高まって行く」という説明が入っているのに足元では下がっているとはどういう事ですかという話でもありますし、より深刻な問題としては、そもそもの物価目標2%に関連する話に繋がると思うのですが、「そもそも潜在成長率が極めて低い状態の中で、2%の物価上昇率を短期的にヒットさせるべく政策運営を行う必要があるのか」という点が浮上するのではないかと思うのですけどどうなんでしょうかねえ。


○先行きの見通しは雇用情勢一点張りのメカニズムにしか見えない件について

『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかな増加に向かっていくと見込まれ、家計部門、企業部門ともに所得から支出への前向きの循環メカニズムは持続すると考えられる。このため、わが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(今回)

『先行きを展望すると、国内需要が堅調さを維持する中で、輸出も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される3。』(前回4月)

まず輸出の見通しが「増加していくと見込まれ」から「向かっていくと見込まれ」に下がっているのと、好循環メカニズムで示されている「生産」も諦めてしまって外れておりますので、従いまして「所得が上昇しないと循環メカニズムは持続しません」という完全なまでに雇用一点張りの見通しになっていますので、賃金が上昇しないと話が始まりませんという所でして、先の方でも当然ながら「お賃金は上がります(キリッ)」という説明はしているものの、それ以外のメカニズムが無いというのがダメじゃんというのに加えまして、そもそも足元の需給ひっ迫がそれこそ設備のペントアップじゃないですけれども一時的なペントアップ需要によるものだとしますと結局の所好循環という風にはならないんじゃないですか大丈夫ですか検証しているのですかというお話ではございます。

『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである』(今回)


という所で一旦アップします。



2014/11/03

お題「追加緩和の論点:その2展望レポート基本的見解のロジックを鑑賞(経済情勢メカニズム編)」

さあ続きですよ!!

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1410b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1404b.pdf(前回4月)

○経済が見通し通りに推移するメカニズムに関して鑑賞

さっきの続きから。

『第1に、日本銀行が今般拡大した5「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる6。すなわち、「量的・質的金融緩和」のもとで、名目長期金利の上昇圧力は抑制されている一方、予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下している。銀行貸出残高は、緩やかに増加している。このような緩和的な金融環境が民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(今回)

『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる4。すなわち、「量的・質的金融緩和」のもとで、名目長期金利の上昇圧力は抑制されている一方、予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下を続けている。銀行貸出残高は、緩やかに増加している。このような緩和的な金融環境が民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(前回4月)

ということで、基本的に言ってる事が4月の展望レポートと変化していないというのは、これ即ち先ほどの政策ロジック編で申し上げましたよう所の「政策の効果測定や検証が出来ていない」という話のような気がしますがそれは兎も角として、実質金利に関して前回「低下を続けている」とあったのが「低下している」に変わったのは何ですねんというのがまず最初の疑問。名目の金利に関してはどう見ても下がっているのですから、予想物価上昇率が横ばいであっても実質金利は「低下を続けている」とするのが妥当でして、然るに「予想物価上昇率は全体として上昇しており」とはどういう事やという所でワロタとしか申し上げようがない。

その他の効果として貸出残高の緩やかな増加とかあるけど、そもそも論として「緩和的な金融環境が民間需要を刺激する」という前提そのものに関してのレビューは全然なくて、実質金利が下がれば消費や投資が拡大されるという置物理論についての検証は皆無のまま推移しているというのが如何な物かと申し上げざるを得ない。

次が海外経済ですが、この調子で前回分まで全部引用しているととんでもない量になってしまうので、基本的にゴリゴリ突っ込まない部分では前回分引用を割愛しますね。

『第2に、海外経済については、先進国が堅調な景気回復を続け、その好影響が新興国にも徐々に波及する中で、緩やかに成長率を高めていく姿を見込んでいる。』(今回)

ちなみに前回との違いは新興国に関して先進国の回復が徐々に波及「していく」だったのが「する」となっている点で、新興国改善について微妙ではあるが若干上げている感じです。

『主要国・地域別にみると、米国経済については、家計支出を起点とする前向きな循環に支えられながら、徐々に成長率を高めていくと予想される。欧州経済については、債務問題に伴う調整圧力が残り、物価上昇率の低下傾向もみられるものの、個人消費の底堅さや輸出の増加などに支えられ、緩やかな回復を続けると考えられる。』(今回)

米国は前回よりも強い表現、欧州は物価に関する表現が加わっているのと、先行きにあったマインド改善の文言が抜けていてやや弱くなっています。

『中国経済については、当局が構造改革と景気下支え策に同時に取り組んでいく中で、僅かに成長ペースを鈍化させながらも、概ね安定した成長を続けると想定している。その他の新興国・資源国経済については、国・地域によるばらつきはあるが、先進国の景気回復の波及と、緩和的な金融環境を受けた内需の持ち直しから、成長率を緩やかに高めていくと見込んでいる。』(今回)

中国は同じ、新興国は金融市場の落ち着きが云々という前回にあった文言が抜けて微妙に上方修正です。

『第3に、公共投資は、経済対策の押し上げ効果から高水準で推移してきたが、本年度下期中には緩やかな減少傾向に転じていくと想定している。』(今回)

これは前回の見通しを横に伸ばしただけ。

『第4に、政府による規制・制度改革などの成長戦略の推進や、そのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取り組みと内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率は、緩やかに高まっていくと想定している。』(今回)

ここも前回と同じですが、先ほどの所で申し上げましたように、既に足元で推計される潜在成長率が低下している中でこの説明って何なんですかと小一時間ではある。


では年度別展開を。

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2014年度下期については、個人消費は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響がしばらくは残るものの次第に減衰し、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、底堅く推移すると見込まれる7。』(今回)

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2014年度については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響から、4〜6月の成長率は、耐久財などの個人消費を中心に、いったん落ち込むと予想される5。もっとも、雇用・所得環境の改善に支えられて、個人消費の基調的な底堅さは維持され、駆け込み需要の反動の影響も夏場以降、減衰していくと考えられる。』(前回4月)

ということで雇用環境に関して「着実な」改善とここだけは自信満々のようで、雇用所得環境改善の一点突破で突撃というのが良く判りますな。

『設備投資は、企業収益の改善や金融緩和効果が引き続き押し上げに働くもとで、長年の投資抑制による設備老朽化に対応した更新投資や、労働需給の引き締まりを受けた省力化投資、為替相場の動きも踏まえた国内拠点の再構築などの投資ニーズの高まりがみられることから、しっかりと増加するとみられる。この間、輸出は、海外経済が回復するもとで、為替相場の動きも下支えとなり、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。こうしたもとで、鉱工業生産は、在庫調整の進捗もあって、緩やかな増加に復していくと予想される。』(今回)

『この間、輸出は、2013年度末にみられた駆け込み需要への対応から国内向け出荷を優先する動きや米国の寒波などの一時的な下押し要因が剥落するもとで、先進国の成長率が高まっていくことから、緩やかながらも増加に転じていくとみられる。設備投資についても、企業収益の改善や設備稼働率の上昇、金融緩和効果などから緩やかな増加基調をたどると見込まれる。以上の内外需要を反映して、わが国経済は夏場以降、潜在成長率を上回る成長経路に復していくと予想される。』(前回4月)

ということで、語順が変わっているので何ですが今回の語順で整理して見ますと、設備投資の先行きが強くなるメカニズムとして説明しているのを順に見ていくと、まずは「収益の改善」「金融緩和効果」なのですが、収益の改善が輸出企業の円ベースの収益改善なのであれば経済には好影響かも知れんが、それ単体で設備伸びるかよという話で、金融緩和効果も同様なのですが、それが直接的に投資に繋がるというのをアプリオリに正しいとして良いのでしょうかねえと思われるところです。

前回の時点では「設備稼働率の上昇」というのが説明にあって、まあそれは確かに生産拡大に伴う設備投資だから王道ですなあというのがあったのですが、今回はその部分が抜けていて以下にあるようなそれは前向き循環メカニズムちゃうやろという物しか出ていないのが実に残念というものです。

つまり「長年の投資抑制による設備老朽化に対応した更新投資や、労働需給の引き締まりを受けた省力化投資」というのは基本的に一時的な効果でありますし、省力化投資されたらそもそも労働需給が緩和するだろと思う次第でして、何ちゅうかそれを持って設備が伸びるというのはどうなのかねと思います。それから「為替相場の動きも踏まえた国内拠点の再構築などの投資ニーズの高まり」とは言いますが、そもそも海外生産になっている要因の中に為替以外の「需要地に近い所で生産する」という動きもある訳ですし、円安が一時的にしか進行しないのであればそう為替だけの要因でホイホイ生産拠点を動かしてくるとは思えん。

それともっと意地の悪い話をすると、国内生産拠点に回帰というのは「コスト勘案して国内の方が安くてウマー」という事でもあるのですが、それって結局の所「生産拠点としての国際競争力を為替調整でしていますよ」ってな話で、それは海外の労働者との相対比較で日本が安いという状態になったという話なので、それって単に為替調整で日本が海外対比で相対的に安くなったつまりビンボになったという話であって、本当に国民厚生上正しい姿なのでしょうかねえとは思うのでありました。


『2015年度から2016年度にかけては、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、@緩和的な金融環境と成長期待の高まりを受けた国内民間需要の堅調な増加と、A海外経済の成長による輸出の増加に支えられて、前向きの循環メカニズムは維持され、潜在成長率を上回る成長が続くと見込まれる。』(今回)

『2015年度から2016年度にかけては、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、@緩和的な金融環境と成長期待の高まりを受けた国内民間需要の堅調な増加と、A海外経済の成長による輸出の増加に支えられて、前向きの循環メカニズムは維持され、潜在成長率を上回る成長が続くと見込まれる。』(今回)

でまあここのメカニズムは往生際悪く同じになっています。

『2016年度までの成長率の見通しを、7月の中間評価時点と比べると、2014年度については、駆け込み需要の反動の影響や輸出の弱めの動きなどから幾分下振れるものの、2015年度と2016年度については概ね不変である。』(今回)

あっそう。


○物価の見通しもひたすら雇用情勢の改善による物価上昇の話のオンパレード

次が『(2)物価情勢』である。

『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、このところ1%台前半で推移している。』(今回)
『消費者物価(除く生鮮食品、以下同じ)の前年比は、プラス幅を拡大しており、このところ1%台前半で推移している。』(前回4月)

現象面なので比較することも無いのですが兵どもが夢の跡っぽいので引用してみた。

『物価上昇率を規定する主たる要因について点検すると、第1に、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、雇用誘発効果の大きい国内需要の堅調さが雇用の増加をもたらすもとで、労働面を中心に着実に改善傾向を続けている8。すなわち、失業率は3%台半ばとみられる構造的失業率近傍で推移しているほか、現在職探しをしていないが求職意欲を持つ人々なども含めた広義の失業率も低下傾向を続けるなど、労働需給は着実に引き締まり傾向が強まっている9。企業は、駆け込み需要の反動による需要の落ち込みを一時的とみているとみられ、前向きな雇用スタンスを維持している。こうしたもとで、所定内給与がはっきりとした増加に転じるなど、賃金の改善も続いている。また、非製造業を中心に設備の不足感も強まってきている。このため、マクロ的な需給バランスは、本年度後半にプラス(需要超過)基調が定着し、それ以降、プラス幅が一段と拡大していくと考えられる。そうしたもとで、需給面からみた賃金と物価の上昇圧力は、着実に強まっていくと予想される。』(今回)

需給バランスに関しては基本的に労働需給が改善してますぜ凄いですぜという話なのですが、とにかく労働需給が改善しているという話を一生懸命にしたいらしく、前回は(引用しませんが)この部分11行だったのが今回は15行に絶賛拡大しておりまして、涙ぐましいアピールの跡が見受けられます。

ということで需給ギャップに関しては労働需給改善の一点張りで勝負に来ておりますが、もう一つの予想物価上昇率を鑑賞してみましょう。

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、やや長い目でみれば、全体として上昇しているとみられる。こうした予想物価上昇率の動きは、実際の賃金・物価形成にも影響を及ぼしていると考えられる。例えば、労使間の賃金交渉において、企業業績などに加え、物価上昇率の高まりも意識され、ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施された。企業の間でも、従来の低価格戦略から、付加価値を高めつつ販売価格を引き上げる戦略へと切り替える動きがみられている。』(今回)

ま、この辺もまた前回と基本的な話は同じなのですが、「ベースアップが久方ぶりに多くの企業で実施された」(キリッ)ってのにはそもそもの政府からの要請もありーの、消費税増税するから仕方無い罠的な話もありーのでございまして、本当にそれがインフレ期待に基づくものなのかねというのは甚だ疑問でありますし、毎度説明されて耳タコなのですが、企業が付加価値高めつつ販売価格を引き上げる戦略云々に関しても結局全体的な意味ではコモディティー化の流れがそう簡単に逆回転するとも思えないので、ミクロの話としては面白いのですが全体の一般物価に関する議論でこの話を持ち出すのはどうかという気がします。

『先行きも、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を推進し、実際の物価上昇率が高まっていくもとで、中長期的な予想物価上昇率も上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』(今回)

あっそうという所ですが、前回はこの部分、「実際の物価上昇率が1%を上回って上昇する中で」とありましたので、これは即ち日銀が目先1%割れ突入も覚悟しているということを示す訳ですな。最初のエグゼクティブサマリーにもありましたように。

『第3に、輸入物価についてみると、このところの為替相場の動きは、消費者物価の押し上げ要因として作用する一方、原油価格をはじめとする国際商品市況の下落は、当面物価の下押し圧力となる。』(今回)
『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、エネルギーを中心とした押し上げ効果は本年夏頃にかけて減衰していくと予想される。』(前回4月)

ということで原油が当面下押しという話が入りましたな。

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると、当面現状程度のプラス幅で推移したあと、次第に上昇率を高め、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い10。』(今回)

『以上を踏まえ、消費者物価の前年比(消費税率引き上げの直接的な影響を除くベース)の先行きを展望すると8、暫くの間、1%台前半で推移したあと、本年度後半から再び上昇傾向をたどり、見通し期間の中盤頃に、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高い。』(前回4月)

ということで、とうとう「2015年度を中心とする期間」に正式に降参してきましたが、岩田副総裁の辞任マダーという所なのですけれども、国会で既に「説明責任を果たすのが重要(キリッ)」と意地汚く地位に執着する姿勢を明らかにしましたので、説明責任とやらを果たしてもらおうじゃないかという所っすな。

『その後は、中長期的な予想物価上昇率が2%程度に向けて収斂していくもとで、マクロ的な需給バランスはプラス幅の拡大を続けることから、強含んで推移すると考えられる。2016年度までの消費者物価の見通しを7月の中間評価時点と比較すると、2015年度については、国際商品市況の下落などから幾分下振れるものの、2016年度については概ね不変である。』(今回)

基本的な見通しは同じです。


#では次はリスク認識と金融政策部分になります


2014/11/03

お題「追加緩和の論点:その2展望レポート基本的見解のロジックを鑑賞(リスク要因&政策編)」

ということで展望レポートの続き参ります。

○上振れ下振れ要因では輸出の所の降参ぶりと雇用の自信満々振りが好対照

続きまして『2.上振れ要因・下振れ要因』のまずは『(1)経済情勢』から参ります。

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、輸出動向に関する不確実性がある。輸出の伸び悩みが続いている背景には、新興国経済を中心とする海外経済のもたつきや世界的な投資活動の弱さに加え、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も影響している。』(今回)

『上記の中心的な経済の見通しに対する上振れ、下振れ要因としては、第1に、輸出動向に関する不確実性がある。このところの輸出の弱さの背景には、基本的に、わが国経済との結びつきが強いASEANなどの新興国経済のもたつきの影響が大きいが、わが国製造業の海外生産移管の拡大といった構造的な要因も相応に影響している可能性が高い。』(前回4月)

ということで、一番外しまくっている輸出の部分ですが、今回やっと海外生産移管に関する構造的な要因について「影響している」と認めた(今までは影響している可能性云々)のは降参モードという感じですが・・・・・・・・

『先行きの海外経済を巡るリスク要因としては、米国経済の回復ペースやそれが国際金融資本市場に及ぼす影響、欧州における債務問題の展開や低インフレ長期化のリスク、新興国経済における構造調整の進展度合い、地政学的リスクなどが挙げられる。また、わが国企業の先行きの内外生産ウエイトについても、為替相場の影響や生産移管のペースなどに伴う不確実性は高い。なお、海外生産の拡大は、輸出を抑制する要因であるが、子会社からの配当など、企業収益の押し上げを通じて成長に寄与する面もある。』(今回)

『このため、新興国経済の先行きや、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどの海外経済の動向やわが国企業の内外生産ウエイトの状況次第で、輸出は上下双方向に変動する可能性がある。』(前回4月)

だいたいこうやって文章が長いのは往生際が悪い状態になっているというものでして、内外生産ウェイトに関しては設備投資の先行きにあるように今後国内回帰が起きるといいなという話をしているんでしょうし、海外生産の拡大で子会社からの配当で企業収益の押し上げ言いますけど、それって別に国内の雇用に必ずしも結びつくかどうかは謎じゃないですかね、というのは毎度お話をしている通りです。

『第2は、消費税率引き上げの影響である。1回目の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減や実質所得減少の影響はなお残存しており、引き続き見極めていく必要がある。また、2回目の消費税率引き上げがどのような影響を及ぼすかについても、その時点の消費者マインドや雇用・所得環境、物価の動向によって変化し得る。』(今回)

これは前回分引用しませんが、前回は消費税率引き上げの影響は大丈夫という話でしたので今回は明らかに下げとなっています。

『第3に、企業や家計の中長期的な成長期待は、規制・制度改革の今後の展開や企業部門におけるイノベーション、家計部門を取り巻く雇用・所得環境などによって、上下双方向に変化する可能性がある。』(今回)

『第4に、財政の中長期的な持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の将来不安の強まりや経済実態から乖離した長期金利の上昇などを通じて、経済の下振れにつながる惧れがある。一方、財政再建の道筋に対する信認が高まり、人々の将来不安が軽減されれば、経済が上振れる可能性もある。』

この2つは前回と同じです。


では『(2)物価情勢』を見てみましょう。

『上述のような経済の上振れ、下振れ要因が顕在化した場合、物価にも相応の影響が及ぶとみられる。それ以外に物価の上振れ、下振れをもたらす要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、実際の物価と賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、その上昇ペースには、実際の物価の動きやそれが予想物価に及ぼす影響の度合いなどを巡って不確実性がある。』(今回)

前回はこの部分がこうなっていましてですね。

『第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向が挙げられる。中心的な見通しでは、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく中で、人々の予想物価上昇率も一段と上昇していく姿を想定しているが、どのようなペースで上昇していくかについては注意する必要がある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(前回4月)

アダプティブなインフレ期待の高まりに関して記述しているのは前回も今回も同じですけれども、今回はそのアダプティブなインフレ期待の高まりが足元の物価上昇モメンタムの鈍化で弱まる件について懸念して追加金融緩和を実施した、ということになっていますので、記述が思いっきり弱気トーンになっています。

でまあ今回のは上記に更に続くのですけどね。

『この点では、来年度に向けた労使交渉において、過年度の物価動向や先行きの物価見通しが賃金にどのように織り込まれていくかが重要である。また、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が物価の下押し要因として働いているが、この下押し圧力が残存する場合、予想物価上昇率の改善が遅延するリスクがある。』(今回)

ということで、先ほどの所でもありましたが、要するにインフレ期待を押し上げる為には賃金が上昇しないとどうもならんという話をしている訳ですな。

『第2に、マクロ的な需給バランス、とくに労働需給の動向がある。中心的な見通しでは、労働供給面で、近年の高齢者や女性による労働参加の高まりや最近みられているパート労働の正規雇用化が、今後もある程度続くことを前提としているが、この点を巡っては不確実性がある。とくに、通常の失業率に加え広義の失業率も低水準となっているだけに、人手不足感が一段と強まる可能性がある。』(今回)

ここだけ嘘のように強気の話になっていて、前回対比でもここの表現は強くなっていますので、まあ何度も申し上げておりますように、今回の展望レポートのメカニズムは雇用情勢の改善一点突破になっているのですが、そもそも何でMB拡大ペースを引き上げると雇用情勢が改善するのかさっぱり判らん訳で、今回の追加緩和のメカニズムの説明はどうなってるんだと小一時間ですな。

『第3に、物価上昇率のマクロ的な需給バランスに対する感応度、すなわち、企業が需給の引き締まりに応じて価格や賃金をどの程度引き上げていくかについて留意する必要がある。この点、消費税率引き上げ以降の消費動向が、先行きの企業の価格設定行動にどのような影響を及ぼすか不確実性が高い。』(今回)

こちらについては「この点」以下のやっぱり需要が落ちて物価が上がりませんでしたの可能性について言及が入ったのが前回と違う所で、やはりダメじゃんという風情ではありますな、うんうん。

『第4に、国際商品市況や為替相場の変動などに伴う輸入物価の動向や、その国内価格への波及の状況によっても、上振れ・下振れ双方の可能性がある。』(今回)

これは当たり前の話なのでまあヨロシ。


○金融政策の点検作業だが「物価のリスクが下に大きい」だと?????

最後の『3.金融政策運営』部分である。

『以上の経済・物価情勢について、「物価安定の目標」のもとで、2つの「柱」による点検を行い、先行きの金融政策運営の考え方を整理する。まず、第1の柱、すなわち中心的な見通しについて点検すると、わが国経済は、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断される。』(今回)

こちらに関しては2015年度云々が明示されたというのは前の方でもご紹介したとおりです。

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、輸出の動向や消費税率引き上げの影響など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。』(今回)

『次に、第2の柱、すなわち金融政策運営の観点から重視すべきリスクについて点検すると、中心的な経済の見通しについては、輸出の動向など不確実性は大きいものの、リスクは上下にバランスしていると評価できる。』(前回4月)

あらら消費税の影響入りましたなあ。

『物価の中心的な見通しについては、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きく、下振れリスクが大きい。』(今回)
『物価の中心的な見通しについても、中長期的な予想物価上昇率の動向などを巡って不確実性は大きいものの、リスクは上下に概ねバランスしていると考えられる。』(前回4月)

ちょっと待てお前下振れリスク対応で追加緩和を実施しているのに何でリスクアセスメントが追加緩和込みで前回対比下振れになっているんだと小一時間問い詰めたい。大丈夫かこのアセスメント。

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない11。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、漸減傾向が続いているが、なお高水準である点には留意する必要がある。』(今回)

『より長期的な視点から金融面の不均衡について点検すると、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されない9。もっとも、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は、このところ減少しつつも引き続き高水準である点には留意する必要がある。』(前回4月)

えーっとすいません、既に散々っぱら国債を購入した挙句にペースを引き上げる決定をしているのに今更金融機関の国債保有残高の話をしてどうするんですかというか、人の心配するよりもてめえの心配をしろと小一時間。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回4月)

ということで最後の文言は一緒でして、こちらには「所期の効果を発揮しており」とあるのに、冒頭のエグゼクティブサマリーの部分ではこの文言が削除されているというのは何なんでしょうというか、良心の呵責でもあるんですかというかな話ですな。


ということで展望レポート基本的見解の全文鑑賞会となってしまいましたが、何度も申し上げておりますようにメカニズムが全て「労働需給が改善して需給ギャップも改善するし経済物価情勢が良くなる」攻撃一点張りで勝負しておりまして、労働需給コケたらそもそもQQEとは何だったのかという話になる筈なのですけれども、再び兵を集めて輸送船で送り出すという作業になりそうなのがオソロシス。



2014/11/04

お題「追加緩和の論点:コミュニケーションについて&オペのフィージビリティについて」

ということで追加緩和の論点ネタ続きであります。

#うひゃー最も見たくないアレな物体がモーサテに出てるからチャンネル変えるか

○騙し討ちキターということで旧法時代に里帰りですねわかります

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf

今回の声明文における決定に至る理由の部分を引用しましょう(しつこいですが)。

『2.わが国経済は、基調的には緩やかな回復を続けており、先行きも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。ただし、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断した。』

でまあ今回はアダプティブなインフレ期待の維持というような話と、モメンタム維持という文言に見られますように物価の上昇に勢いを付けたいというのがあるのは把握しました。

・・・・・というのは判るのですが、直近までの黒田総裁をはじめとする執行部の見解はこの声明文の「しかし」以前の話しかしておりませんで、この「しかし」以降の話は別にしてませんでしたよね急に何を言い出しているんですかというのが誠に遺憾としか申し上げようがないことであります。

会見(はテキスト出たらやりますが)での説明ではやたらと早期に2%をヒットさせる事に拘った説明をしているように見受けましたし、声明文にある「モメンタム」というのも踏まえて考えますと、急に「何でも良いから強引に2%に引き上げに行かないといけません(キリッ)」という話に急転換したとしか思えませんで、その間のプロセスがさっぱりワカラン

http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko141018a1.pdf
2014年10月18日
日本経済と金融政策── 日本金融学会2014年度秋季大会における特別講演 ──

だいたいですな、この前執行部の腰ぎんちゃくと思われる宮尾さんの講演でも、

『国民の望む「物価の安定」とは、単に物価が上昇するだけでなはなく、雇用、賃金、企業収益の改善などを伴いながら、経済がバランス良く持続的に改善し、その結果として、物価の緩やかな上昇が実現する状態を指します。』(上記URLの宮尾審議委員講演より、以下同様)

ということでモメンタムとかそういう話じゃなかったですし、

『その目標を、消費者物価上昇率で「2%」としたのは、経済の成長力や競争力強化へ向けた幅広い主体の取組みが進展し、持続可能な「物価の安定」と整合的な物価上昇率は上昇していくという認識に基づいています。』

って言ってるけど今回の展望レポートでは潜在成長率の推計値を引き下げているんだから、そうであったらそもそも論として「短期間で2%」を目指す事自体が妥当なのかという議論になってしかるべき(よりフレキシブルに考えるのなら話は別だが)ですが、そういう話も何も無しで急にロジックがワープしている辺り何ちゅうかお前ら昔の「衆議院解散と公定歩合についてはウソをついてよい」時代に戻ったのかよとしか申し上げようが無くて、新日銀法とは何だったのかという話になりますな。


○プレゼンの「3」は悪乗りに過ぎる件&追い込まれるのが先か爆発するのが先か

でまあ会見の中継も当然ながら見たのですが、そこに用意されているフリップが「3」を並べているのにもう血圧急上昇ですよ先生(ちなみにETFとREITが3倍で7年が10年までになるので年限が最大3年で長期国債が50兆から80兆だから30な)。

えーっとですな、前回が2倍だからとりあえず3の数字を出してこけおどしをしようという事なのだと思いますが、何度も申し上げておりますように、展望レポートのメカニズムとかも単なる「労働需給の改善で需給ギャップ改善」「賃金上昇で経済の前向きメカニズムが回る」という労働市場一点張りになっていますし、先般来申し上げておりますように、そもそも論としてMB拡大の効果についてのレビューも説明も無い状況なので「追加緩和やって物価目標行くんですか」というのが信用されてないでしょうから、株価とか為替が頭打ちになると早速催促相場になって「じゃあ次は4ですか」という事になるんでしょうね。

何か薬使っている内に効きが悪くなってもっと薬をとか言って更に強いのをやっているうちにラリパッパ状態になっているとしか思えないプレゼン振りに落涙を禁じ得ないですが、良く良く考えてみると今回の政策はMB拡大ペースは10兆円増えただけで、短国拡大できないから長期に振り替えたのと、ETFとREITの買入ペースを拡大した(これがどの程度の定量的な物なのかは株の人に聞かないとよく判らんのでパスしますが)という内容ですので、「3」という数字でも出して威勢よくプレゼンする(のと騙し討ちしてサプライズ演出する)のしかできないのかねとは思う所であります。

つまりですね、今回逐次投入(逐次投入にしては小出しじゃなくて有り金勝負っぽいが)を開始しましたので、次回に関しては市場から催促攻撃が来て「4」を出すしかないですなという話になるでしょうし、別に今回の施策によって「安定的な2%」のタイミングが近くなるとは到底思えない訳ですから、今回の追加の賞味期限いつまででしょうねという話になりますし、次はより無茶振りな「4」を出さないと効きません罠、というラリパッパ状態の拡大から廃人コースというのが見え見えなだけに実に辛いですな。


だいたいですな、この次で申し上げますが輪番のフィージビリティを簡単に考えますと、来年のフローの買入ペースがカレンダーベースの国債市中発行にかなり接近してくるという状況であって、一方で2%物価目標達成がどうのこうのという話をする訳ですから早いうちに実際の物価が1.5%位まで上がらないと話にならないという状況なのですが、オペのフィージビリティを勘案しますと2%以前の1.5%水準に行くよりも前に債券市場の方がオペ回らなくなって爆発する方がオソロシスという話でもあったりしますorzorz



○来年の長期国債買入はフローベースで110兆円(以上)とな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141031a.pdf

声明文にありますように今回は年間80兆円ペースで長期国債の買入を拡大ということになっております。

http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mei/mei.htm/
日本銀行が保有する国債の銘柄別残高

直近の数字は10月20日の残高になりますが、こちらの残高から来年の償還銘柄の額面を拾って来まして(2年324-335、5年88-94、10年268-276、20年28-30、変国8-10、物国4-6)全部足し合わせると29兆9833億円となりますので、既に現時点で来年の償還額が貫録の30兆円となります。

これから買う中でも来年償還物があるでしょうし、大体からして1年以内輪番での買入は1年以内で償還が来るので、それも加えるとフローベースでの来年の長国買入額は110兆円以上になるという事ですが、ここで今年度のカレンダーベース市中発行額を見てみましょう。

<カレンダーベース市中発行額>
http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2014/calendar131224.pdf

なるほど当初ベースで155.1兆円かまだ45兆円少ないな・・・・・・などと瞬間思ってしまいそうですが、よくよく考えるとここには1年短国が入っていますので、長期国債の市中発行額を計算する際には27.5兆円引かないといけないので、カレンダーベースの市中発行を昨年並みで置くと長期国債の市中発行が128兆円程度の所にフローベースで110兆円を購入するということで、これを新発国債引受と言わずして何というのでしょうかという大変にアレな話で、しかもこの日銀ちゃんは短国買入で見られましたように別に割高割安とか適正価格とかいう概念が無く高級掃除機のように盛大に成行で国債を買ってくるというのは既にご案内の通りで、その結果短国市場が見事に死亡してしまった訳ですから、どこからどう見ても次に死亡するのは債券市場(まあ既にだいぶ死んでいるのですが)です本当にナムナムという所ではございます。


○ということで買入の方も相当苦労しそうですな(買入予定表キタコレ関係)

夕方5時前くらいに出てましたっけ。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141031e.pdf
当面の長期国債買入れの運営について

『日本銀行は、長期国債買入れについて、当面、以下のとおり運営することとしました(2014年11月4日より適用)。なお、来月以降は原則として、毎月、最終営業日に公表することとします(次回は11月28日に公表する予定)。』

何せ今回は量をどどーんと増やすので実際に買うにあたってちゃんと回るのかというのが心配されるという状況でして、もはや平均残存を揃えに行くとかそういう細かい話を気にするよりも「物理的に回るのか」というのが重大という流れになりそうなので、様子を見ながら毎月変更するのは買入する方としてはそうなるなあとは思います。

でまあそれはそれで仕方ないとは思うのですが、年間フローベースで110兆円の買入を行い、しかも買ったものを全く売らないというオソロシスな投資家(ついでに言えばレポ市場への品貸しも消極的(国債補完供給はT+0じゃないと出てこないし5営業日までしかロール出来ないとか市場基準で言えば「買い占め締め上げ投資家」にしか見えません)という人の動きが毎月可変というのも何ともアレな話ではございます。

つまりですね、日銀の買入内容が債券市場の需給に圧倒的に影響を与えていくのが明白な中で、買入の内容が毎月変わるという事になりますと、債券市場の読みで一番重要なのが「来月のオペ明細がどうなるのか」って最早それ相場でも何でも無いですがなと思います。

それから金融市場局気が利かねえなあと思うのはこの公表が「月末」となっている事でして、どうせ月末ったって月末の引け後に公表だと思うのですが、月末というのは債券インデックス対比で投資を行っている人たちが翌月のインデックス更新に対応して売買をするタイミングでございまして、翌月のイールドカーブに思いっきり影響を与える案件が月末の引け後に出てくるとなりますとインデックス系の投資家は月末にインデックス更新の売買するの非常に困るんですけど、まあこれは25日くらいに公表することにしてくれれば済むだけの話ではありますので改善をお願いいたしたく存じます。別に金融市場局で出すものだしタイミングの問題だったら数日前に倒すのも別に問題ないでしょと思いますのでよろしゅうに。

では内容に関して。

『1.買入金額 毎月8〜12兆円程度を基本とする。ただし、政策効果の浸透を促すため、市場動向を踏まえて弾力的に運用する。』

政策効果の浸透云々よりも「買入が出来るか」という感じだと思いますが、これだけのレンジを取っているのは何でですねんというのはあります。今後の買入はオープンエンドになるので、償還ペースに合わせて買入の増減をある程度やって、残高の増加ペースをできるだけ一定に近くしたいという積りなのでしょうかねえ。

『3.国債種類・残存期間による区分別の買入金額 別紙のとおり』

ということで別紙の方ですけどね。

1年以下:1,100〜2,500程度×2
1−5年:5,000〜12,000程度×6
5−10年:4,000〜6,000程度×6
超長期:1,300〜4,000程度×5
変国:偶数月1,400程度
物国:奇数月200程度

ということですが、今生きている紙と比較しますと、中期の上限が7000億円から1.2兆円、超長期の上限が3500億円から4000億円に引き上げられていまして、これはとりあえず中期の買入を思いっきり増やして残高を稼ぐという事でしょうが、中期って今さらポートから外すほど玉持っている人いるのかよと思いまするに実にいやーな予感しかしません。中期の金利が馬鹿低下するのか買えなくなって輪番の買入が長期にシフトするのかよく判らんですが兎に角開けてみないと判りませんな。

ただまあいずれにしても月額10兆円近くの買入フローとかどう見てもこれ1年持たせられるのかも微妙じゃないのと思われますし、金利先高観でも出てくればそらまあ日銀に売りたい人はワサワサ出てくるかもしれませんが、今回の追加緩和決定が物価を2%に上げる事に直接的に繋がるとは到底思えない(円安で瞬間芸で押し上げは出来てもそれはただのコストプッシュ)という風に思っている中なのでそう簡単に売りが出てこないでしょと思いますけどねえ。

あと、今回追加緩和のどさくさに紛れて長期の下限を4000億円に下げて現状追認しているのですが、そもそも今生きている紙の時点でもとっくの昔に1回の買入額が4000億円でして、追加緩和のどさくさに紛れて下げてくるとか姑息にも程がありまして相変わらずディテールを見ると市場をナメトンノカという感じではありますな。

ちなみに、これ買入資産サイドの話だけしましたが、そもそも論として「これによって拡大する超過準備を誰が持つのか」という事を考えますともっと絶望的になる訳で、誰が超過準備を持つのかと考えますと結局短期市場とかにも盛大にプレッシャーが掛かってくる事になるんでしょうなあと非常にくらーい先行き見通ししか出てきませんが、これで物価全然上がらなかったらおまえら常盤橋公園の便所に頭突っ込んで反省してこい(くらいでは済まないが)という所ですな。


#なお、年内の短国買入に少し負担が軽くなる筈(その後は上記の理由でやっぱり酷い事になると思われますががががが)なのですが、いつものパターンだと5日に保有銘柄残高が出るのでそこで長期国債の方も含めて計数確認をアップデートする所存




○総裁会見だが文章に落としたのを見ると「質問に答えていない」のが多いですなあ

いやね、この総裁会見はさすがにベンダーさん提供の中継放送を見たのですが、黒田さんの表情って説明の時にはまあいつもの感じではあったのですが質疑応答が始まると段々表情が険しくなったり目が泳いでいたりと、今年前半の自信満々モードはどこへやらという辺りに今回の決定の背景が垣間見れるような気がするのは気のせいですかそうですか。

でまあさすがに会見をじとーっと見ているだけの余裕は無かったので半分流して聞いていましたが、途中から「何か質疑が噛み合っていないような気がするのだが」と思って音を聞かないで画像だけ見てましたがやはり文章を見るとそうでしたなという感じです。

これはつまりどういう事かと申しますと、今回の決定は確かに騙し討ち的な意味では効果的ではあったのですが、別に狙った訳でも何でも無く事前に練り込んだ訳でないんでしょうなあという印象でありまして(まあ日経あたりがどうせ迫真とか言ってみてきたような自主規制を書いているんでしょうけど読んでないから知らん)そもそも練り込んでいるなら反対4票も出ませんし、質疑応答がここまでグダグダになることも無かろうと思うのですがどうでしょうかねえ。

http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2014/kk1411a.pdf

○冒頭説明では「2%の達成」への拘りを示すがこれは「足元物価にリンクした政策運営化」を意味しますな

冒頭説明(形式上は最初の質問に対する答え)から。

この辺から声明文の項番2にある今回の追加緩和理由の説明になります。

『「量的・質的金融緩和」の導入以降、1年半が経過しましたが、これまでのところ、所期の効果を発揮しています。すなわち、わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けています。物価面では「量的・質的金融緩和」を導入する直前の昨年3月の時点でマイナス0.5%であった消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、プラス1%台前半まで改善しました。』

所期の効果を発揮というのは声明文では図々しいと思ったのか外して居ましたが、展望レポート基本的見解の最後の所にも入っていましたし、こちらでもその説明。でも所期の効果というのをQQE導入前と比較する時点でだいぶ大本営発表の香りがしますが、まあここまでは追加緩和の理由ではありませんな。

『もっとも、消費税率引き上げの後の反動減は、自動車などの耐久消費財を中心にやや長引いています。また、このところ原油価格が大幅に下落しています。こうした需要面の弱めの動きや原油価格の下落は、物価の下押し要因として作用しています。消費者物価の前年比は、9月には+1.0%まで伸び率を縮小しました。もとより、消費税引き上げに伴う需要面の弱さは既に和らぎ始めていますし、原油価格の下落は、やや長い目でみれば、日本経済に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用すると考えられます。ただ、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクもあると考えられます。日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するために、ここで「量的・質的金融緩和」を拡大することが適当と判断しました。』

これは声明文の項番2で書いてあった「しかし」以下をもうちょっと詳しく説明しています。でまあ以下の部分が今回の声明で(キリッ)とやりたい部分ですな。

『「量的・質的金融緩和」は、人々のデフレマインドを払拭し、予想物価上昇率を引き上げることを狙った政策です。予想物価上昇率がどのようなメカニズムで形成されるかについては様々な議論がありますが、長年にわたってデフレが続いたわが国では、米国のように予想物価上昇率が既に2%程度にアンカーされている国とは異なり、実際の物価上昇率の変化が予想物価上昇率の形成に大きな影響を与えていると考えられます。実際の物価上昇率の伸び悩みが続けば、それがどのような理由によるものであれ、予想物価上昇率の好転のモメンタムが弱まる可能性があります。そうなれば、せっかくここまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅れてしまうリスクがあります。その意味では、わが国経済は、デフレ脱却に向けたプロセスにおいて、今まさに正念場、critical momentにあると言えます。今回、追加緩和を決定したのは、こうした考え方に基づくものです。』

今はインフレ期待を上げようという中なので、バックワードルッキングによるアダプティブなインフレ期待形成を重視して物価上昇のモメンタムを与えたい、という理屈は理屈として判るのですが、ではなぜMB拡大ペースを10兆円ほど増やすと物価上昇のモメンタムが付くのか、という点についての定量的な説明が無い訳ですし、そもそも論としてここまでの物価上昇におけるMB拡大の効果が定量的にどの程度あって、どういうメカニズムで作用したのか、というレビューも無い状況で「これまでの政策が所期の効果を発揮したから更に兵力を投入すれば効果を発揮するに違いない」というようなノリだけで突っ込まれても丸腰輸送船で戦地に送られる兵隊の方としては全く納得いきませんが、という話は昨日申し上げた通り。

『今回の措置はデフレ脱却に向けた日本銀行の揺るぎない決意を改めて表明するものです。デフレのもとでは、価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環が続きました。』

デフレだと好循環が起き難いというのはまあそうですな。

『「量的・質的金融緩和」によって、デフレマインドの転換が実現すれば、価格の緩やかな上昇を起点として、売上・収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇というかたちで経済の好循環が実現することになります。』

でも「デフレだと好循環が起き難い」から「何でもいいから物価が上がれば好循環が起きる」というのは別問題ではないかと思われますし、(後の方の質疑できっちり突っ込んでいる優秀な方がいますが)今回の展望レポートで足元の潜在成長率推計を引き下げているような経済状態の中で短期的に強引に物価を上昇させる(そもそもMB拡大で物価が都合よい所に上げられるんですかねえ上がるにしてもハチャメチャな事になりませんかねえという話は一旦措く)のって本当に好循環の達成に繋がるんですかねえと思うのですが、そういう検証や点検は無く「最初にこう決めたのがアプリオリに正しい」という無反省理論で特攻するのが今回の追加緩和の本質であるというのが良く判ります。

『この春の労使間の賃金交渉で物価上昇率の高まりが意識され、多くの企業でベースアップが実施されました。企業の価格設定行動も変化の途上です。』

消費増税とかコストプッシュとかまあいいです。

『いま、この歩みを止めてはなりません。「物価安定の目標」が人々の気持ちの中にしっかりと根付き、これからは2%の物価上昇を前提として行動しようと思うためには、日本銀行がその早期実現に強くコミットし、これを実現していくことが何よりも大切です。昨年4月に申し上げた通り、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の早期実現のためには、できることは何でもやる方針です。』

とまあそういうことで、結局の所追加緩和がどういうメカニズムで効果を発揮するかとか、その定量的な意味は何かという話はこの政策おっぱじめて1年半も経過しているというのに何が何だか判らんというまま特攻が続くという戦争末期状態で、気合だけは十分ということでありまして、それはもしかしたら物価は上がるのかもしれないけれども国民厚生的にどうなんでしょうかねという話っすな。

『今後も日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで「量的・質的金融緩和」を継続します。何らかのリスク要因によって見通しに変化が生じ、「物価安定の目標」を実現するために必要になれば、躊躇なく調整を行うという方針にも変わりはありません。』

ということですが、まあこれを見て明確なのは「今後も足元の物価次第で政策がフラフラする」という話でありますので、目先は当分物価上がらんでしょという事ですから追加緩和クレクレがそのうち始まるでしょうし、将来間違って円安効果で物価が上に振れてくると今度は急に雰囲気が変わる可能性も微粒子レベルでは存在するかなとも思われますしという所っすかねえ、よー知らんが。


・急に決まりましたねえという質問

幹事社の実質最初の質問。

『(問) 2点目の質問ですが、今回の提案というのは総裁の提案という理解でよろしいのでしょうか。また、先程critical moment というご説明がありましたけれども、総裁がその辺のことを胸に抱いたタイミングというのがいつ頃だったのかをお聞かせ下さい。』

『(答) 金融政策決定会合における議論については、議事要旨という形で公表されることになっていますので、具体的に申し上げることは避けたいと思います。』

まあこれは良いとしまして。

『展望レポートが議論される中で、金融政策について、ここで、追加的な緩和──「量的・質的金融緩和」の拡大──を検討すべきだという意見が委員の方々から出され、それを踏まえて執行部に案を作ってもらい、それを巡って議論し、「量的・質的金融緩和」のかなり思い切った拡大を決めたわけです。』

まあ執行部も「政策委員」ですから委員の方々からというのは貴殿の事ではないでしょうかと思いますけれども、展望レポートを議論しているんだったら潜在成長率が下がっている中で追加緩和をして2%の物価目標に短期的に強引に近づけようというのは必ずしも正しいかどうか判らんという話になると思うのですけれども何で追加緩和を検討すべきかという話になるんでしょうかねえ。

つーか景気回復と物価上昇のメカニズムが労働需給一点張りになっていますが、でしたらまあ追加緩和が需給ギャップにどのような影響を与えるのかという説明を頂きたいのですが、この先の質疑でも残念ながらそのような説明は無く、単なる「決意」とか「3」とかの話しかない訳でして、そらまあ初回の昨年4月は気合も判るのですが1年半継続して結局また気合かよという所ですな。

『その理由は、先程申し上げた通りであり、また、この点は「量的・質的金融緩和」の拡大についての公表文でも触れている通り、物価面では、このところ、消費税率引き上げ後の需要面での弱めの動きや原油価格の大幅な下落が、物価の下押し要因として働いている。このうち、需要の一時的な弱さはすでに和らぎはじめているほか、原油価格の下落は、やや長い目でみれば経済活動に好影響を与え、物価を押し上げる方向に作用する。しかし、短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがあるということから、日本銀行としては、こうしたリスクの顕現化を未然に防ぎ、好転している期待形成のモメンタムを維持するため、ここで、「量的・質的金融緩和」を思い切って拡大するべきであるという結論に至ったわけです。』

こうやって無駄に繰り返しをするのは好意的に見れば気合を強調したいという事ですが、悪意を持って見ますと他に話すことが無いので同じ話を繰り返して時間を稼いでいるという事でもあります。

『私自身も色々な指標を見て、感じるところもありましたし、政策委員の方々も色々とお考えだったと思いますが、より具体的には、政策委員の経済見通しが出され、議論する中で、「量的・質的金融緩和」の拡大が必要であるという意見が出され、今申し上げたような決定に至ったということです。』

ほうそうですか(白目)。


・量的な説明皆無キタコレ!!!

これは直球質問。

『(問) 2点お尋ねします。まず、なぜ10〜20兆円の拡大をしたのかという理由です。もう1点は、日銀はこれまでも大規模な金融緩和を続け、所期の効果を発揮しているとおっしゃっていましたが、今回、10〜20兆円増やすことによって、人々のインフレ期待が急激に変わるのか、その効果についてもう少し詳しく教えて下さい。』

(;∀;)イイシツモンダナー

『(答) マネタリーベースの増額ペースを約60〜70兆円から約80兆円に拡大する際に、資産の内容として、長期国債の保有残高の増加幅を更に30兆円拡大するなどの措置を講じました。これは先程申し上げた通り、足許の消費の弱さや、特に原油価格のかなり大幅な下落によって、物価上昇率が、やや下がってきており、そうしたことが続くと物価上昇期待自体も下がってきてしまいます。そうなると、例えば、将来の賃金や価格の設定についても下がってくる恐れがあります。そうなると、せっかく実現しつつあるデフレマインドからの転換が大幅に遅れてしまう懸念があり、そうしたリスクを未然に防ぐ観点から、必要十分な拡大をしたということです。』

全然答えになってNEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!!

『また、今回の政策により、どのような効果が期待されるかという点については、それぞれの委員がそれぞれの考えで経済見通しを出し、今回の展望レポートに添付されています。それを見て頂いてもわかりますように、物価面を中心に、それなりの効果が出るのではないかと思います。』

もうお前ナメトンノカという答えですが、要するにそういう答えしか出来ないということですので、ここは一発木久扇師匠の木久扇モデルとやらがある筈(以前山本幸三先生がモデルを使って必要なMBについて説明していたから無いとは言わせない)なので、師匠のご登場を切にお願いしたいと思いますし、2年で2%に届かない場合の説明責任を果たすと仰っていたのですから今こそ説明をお願いいたしたく存じますのではよ出てこいやオラオラオラ!!!!


・2年で2%は諦めたんでしょうかとか何で見通し下がっているのかという件

『(問) 今回の追加緩和を受けても、昨年4月の導入時におっしゃられた、2年程度で物価2%を目指すという考えは、今の時点でもお変わりないでしょうか。また、今回の追加緩和を織り込んでも、展望レポートの政策委員の物価見通しをみると下振れていますが、これは政策委員の中で緩和効果に疑問を持っている人がいるということなのでしょうか。追加緩和をしても物価見通しが下振れている理由について、総裁のお考えをお聞かせ下さい。』

そらまあこの調子でゴリゴリやられたら目が泳ぐわなとは思います(・∀・)

『(答) 第1点目については、全く変わっておりません。2年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に物価安定の目標を実現するという、そもそもこの「量的・質的金融緩和」の目的がそういったものでありまして、この考え方は全く変わっておりません。』

ほほう。

『もちろん、2年程度というのはもともとある程度幅を持たせた表現であり、そのうえで、昨年4月に「量的・質的金融緩和」を導入した直後の展望レポートでは、2014年度、2015年度の見通し期間の後半にかけて2%程度に達する可能性が高いとしていました。その後、本年4月の展望レポートでは、見通し期間が2016年度まで延長されましたので、2014年度から2016年度までの見通し期間の中盤頃に2%程度に達する可能性が高いとしていました。』

言い逃れキタコレ。

『今回の展望レポートも全く同様に、見通し期間の中盤頃、すなわち2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いとみており、そういった見通しに変化はありません。いずれにせよ、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に2%の「物価安定の目標」を実現するという考えに変わりはありません。』

ということで「追加緩和をしているのに見通しが下がっていているとはナメトンノカ」という質問に対しては全く答えていませんな。


・円安進行は国民厚生上問題があるのではないかという質問だが・・・・・・・・・

『(問) 総裁は、本日の会合より前も、原油価格が下がり、ガソリン価格が下がるという現状がある中で、基本的に需給ギャップの縮まり等を通して物価が上がるモメンタムは変わっていないというご説明をされていました。それがうまくいっていると言っていて、国会でもそういった答弁をされていたと思います。それがこの2、3日で急に変ったような唐突感を覚えるのですが、物価上昇の基本的なメカニズムというものが変わっていないのかをお伺いしたいと思います。』

これ前段の質問なのですが最後の聞き方が非常に残念で、コミュニケーションポリシーの方で質問すれば良いのにとしか思えん。

『また、既に円安も進んで、地方を中心として円安によるコストプッシュインフレみたいなものを非常に気にされている声もたくさんあり、かえって消費の減退を招くのではないかというリスクも懸念されてきたわけです。あえてここで追加緩和により、さらにリスクを高めるとも言えると思うのですが、そこについてはどのようなご見解でしょうか。』

なので質問するならコミュニケーションで質問するか円安のインフレが目指す姿なのかのどちらかを聞けばよかったと思う。なぜなら答えですけど・・・・・・・・・

『(答) 「量的・質的金融緩和」の基本的なメカニズムは、全く変わっていませんし、その好循環のメカニズムがなくなってしまったということはないと思います。』

と逃げた挙句に以下繰り返しの説明を延々と展開されるのですが、まあ誤魔化しの見本として引用しておきますね。

『基本的に、非常に明確な形で、2%の「物価安定の目標」に強くコミットし、それを裏打ちするために大規模な量的・質的な金融緩和を行うもとで、イールドカーブ全体、名目金利全体を押し下げることを行い、さらにはリスク資産も買い入れて、リスクプレミアムを圧縮しています。同時に、物価上昇期待を引き上げて、実質的な金利、あるいは実質的なリスクプレミアムを圧縮することを通じて投資や消費を刺激し、経済全体を成長させることによって、いわゆるGDPギャップを縮小し、賃金、物価の上昇圧力を作っていきます。そして、またそれを物価上昇期待でさらに押し上げていくという基本的なメカニズムは、変わっていませんし、それはこれまで予期していた効果を発揮してきたと思います。』

『ただ、先程申し上げたように、このところ消費税の駆け込みの反動減の影響が自動車等でやや長引いています。そうしたもとで、ごく最近ですが石油価格が大幅に下落し、そういったことから現に消費者物価の上昇率も少しずつ縮小してきているといったことが起こって、それが今後さらに続くとすれば、やはり物価上昇期待に対する影響も懸念されますし、そもそも好循環にマイナスの影響を与えるリスクがあります。そういったリスクに未然に対処するために、「量的・質的金融緩和」の拡大を決定したということです。』

クドクドと同じ話を繰り返す攻撃キタコレ!!!

『なお、この緩和措置というのは、あくまでも今申し上げたようなことを通じて物価安定目標の早期達成をより確実にするために行うわけであり、為替相場等に対する影響を目的としたものではありません。』

ということで、前半のクドクド説明は肝心の「円安の国民厚生」という質問に対して全然答えないで逃げるための前振りでして、これは同じ話をクドクドとされると聞いている方も疲れてきて肝心の所を答えて居ない事にその場では気が付かない可能性が高まる、というこの手の会における基本的なテクニックの一つであります。


・どう見ても戦力の逐次投入ですが

『(問) これは、いわゆる戦力の逐次投入という指摘は当たらないのでしょうか。』

剛速球質問キタコレ。

『(答) 全く当たらないと思います。』

クソワロタ。

『というのは、先程申し上げたように、基本的に「量的・質的金融緩和」の効果は予期した通りの成果を上げてきています。ただ、様々な要因があって――原油価格の大幅な下落も1つですが、消費税の反動減がやや長引いていることや、あるいは世界経済の見通しが、最近のIMFの見通しでも、さらに若干引き下げられたことなど、様々な要因がある中で――、ここで示したリスクが出てきているのです。これが実際に顕在化し、せっかくデフレマインドを転換させてきている途中で、またデフレマインドの方に戻ってしまっては、これまでの成果が減ってしまいますので、そういったことにならないように、こういう対応をしました。』

『様々な要因からリスクが出てきたので、それに対応したということで、戦力の逐次投入にもなりませんし、逆に言えば、これでは不十分でこういったリスクに対応できないとは全く思っていません。これだけのことをやれば、こういったリスクに十分対応できると思っています。』

いやシナリオ通りに行ってて効果を発揮しているのに追加緩和だからどう見ても逐次投入だろ。


・質問が長いが面白いかつ辛辣ですが答えは完全に逃げです

『(問) 昨年4月4日に異次元緩和を実施されて1年半が経ちました。金融政策は、大体1年から1年半ぐらいで効果を現すということですが、今がちょうどそういう時期になっています。』

師匠もそう言ってますな。

『新たに示された経済見通しをみると、今年度の成長率は0.5%に引き下げられて、物価見通しは1.2%に若干引き下げています。これを黒田総裁が就任される前の、2013年1月の白川前総裁の最後の見通しと比べると、当時の2014年度の見通しは、コアCPIが0.9%、成長率が0.8%でした。つまり、物価については、まだ辛うじて上回っていると言えますが、成長率については当時の見通しすら下回っています。』

(;∀;)イイシテキダナー

『つまり、物価はどうにか上がっても成長率は上がらないということを端的に示していると思います。今日の展望レポートでも、こっそりとまでは言いませんが、潜在成長率の評価を引き下げられています。つまり、日本経済は一段と成長しないという姿になっています。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『先程、「量的・質的金融緩和」は、予期していた効果を発揮してきたとおっしゃいました。ただ、結果としては、物価がちょっと上がったけれども成長率は一向に上がらない、むしろ下がったという姿になっています。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『日銀法では、物価の安定を通じて健全な経済発展に資することを理念とすると書いています。この理念にすら反していると思うのですが、このQQEというのは本当に効果があったのか、これからあるのか大いに疑問があるのですが、如何でしょうか。』

(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー
(;∀;)イイシテキダナー

『(答) その点は、私は全く意見が違いまして、今おっしゃったことは単にかつての見通しが甘かったということを語っているというふうに思います。』

まずこの時点で全然違うだろおいという事ですし、言うに事欠いて前任者の見通しが甘かったので今の見通しが前と対比して弱く見えているだけですとかもうヤケクソですな。

『私どもは、昨年4月4日に「量的・質的金融緩和」を導入して以来、経済の実態を常に慎重、冷静に点検し、金融政策として必要かつ十分なものかどうかというのを毎回の政策決定会合で議論をして参りました。そうした中で、先程申し上げたような消費税の駆け込みの反動減が耐久消費財でやや長引いているとか、世界経済の見通しが全体としてやや下振れているとか、そうしたもとで原油価格がかなり大幅に下がったといった現状を踏まえて、2%の「物価安定の目標」をできるだけ早期に達成するために、デフレマインドの転換が遅延するリスクを未然に防ぐという観点から、「量的・質的金融緩和」を拡大したということです。』

またこれです。

『実質成長率は、色々な要因で様々に振れています。そうした中で、中長期的にみた潜在成長率は、常に申し上げている通り、基本的には金融政策でどうこうするというよりも、構造政策、成長戦略に係わるものだと思います。ただ、その中でも、デフレ下では、どうしてもイノベーションが行われない、リスクテイクが行われない、十分な投資が行われないということになりがちです。』

『そこで、2%の「物価安定の目標」を安定的に持続できる形になれば、企業や家計が緩やかな物価上昇を前提にして、賃金とか価格あるいは投資その他を決める、ということで、より望ましい経済成長になるということであり、この点、私どもの考えは現在も全く変わっていません。』

デフレが良くない、という話と「短期間で2%の物価目標を目指す」というのは別次元の話で、デフレが良くないのであればデフレ脱却に向けた動きをすれば良い話で、そのための方便で短期間で2%の物価目標を目指すと言いましたが潜在成長率が中々上がらないので2%目標は急いで目指すものでは無くてもうちょっとだけ長めのスパンで目指した方がプレッシャーかからないですよね的な現実路線に転向する(浜田先生とかそういう話をしてますよね)のかと思いきや足元では潜在成長率が下がっているのにより過激に特攻するという流れになっているという答えになっていますな、オソロシス。


・1.7%だが後半大きく伸びるという見通しのようで

『(問) 今回の緩和は必要かつ十分な緩和とおっしゃいましたが、2015年度のCPI見通しを見ると、中央値で1.7%、かつ分布チャートを見ますと下振れリスクがあるような形です。これで本当に必要かつ十分なのかと疑念の余地もあるわけですが、必要かつ十分だと言い切れるその理由をもう少しご説明頂けますでしょうか。』

そらそうなるわな。

『(答) これはもちろん、政策委員の方々に年度で見通しを出して頂いており、半年とか四半期とかそういうものでは全然ありませんので、何とも申し上げられませんが、基本的に、2015年度の前半は、原油価格の下落が物価の下押し要因として働いていきます。そして、年度の後半にかけて、こうした下押し要因が剥落するもとで、需給ギャップの改善や予想物価上昇率の上昇を背景にして、消費者物価の前年比は伸びを高めていくとみられます。従いまして、引き続き2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと思います。つまり、2015年度の消費者物価の見通しが幾分下振れたのは、1.9%という中央値から、1.7%に落ちたわけですが、それは主として原油を初めとする国際商品市況の下落によるものであり、そういったものは先程申し上げたように、年度後半に剥落しますので、十分この1.7%という見通しの中央値のもとでも、2015年度を中心とする期間に2%程度に達する可能性が高いと、そのように考えられるからこそ、展望レポートにそのように書いてあるわけです。』

つまり見通しが低い委員がいるから下振れリスクが高くなり、1.7%になっているのは手前が落ちたから年度平均の数字が下がっただけで後半の見通しは同じですという言い訳になっている訳ですな、うんうん。

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2014/10/27

○金融システムレポートにおける不動産関連部分の説明が非常に滋味が深い件について

すっかり遅くなりましたがFSR
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr141017.htm/
金融システムレポート(2014年10月号)

概要と全文はこちら(割と重いので注意)

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr141017b.pdf(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr141017a.pdf(全文)

でまあ今回も読み物としては面白いので折に触れてネタにする所存なのですが、今朝は数字を確認しながらオペの部分をああだこうだ書いたので時間ががががとなってしまったのでこれ読んでいて実にこう違和感というかアレな感があった部分だけネタにしますね!!!

以下本文より引用します。

『はじめに』という鏡の所にこんな記述があるのですがね。

『分析面では、@不動産市場の状況に関する詳細な検討、A個別行データを用いた金融機関のポートフォリオ変化に関する実証研究、B金融機関の資金流動性リスクに関する分析の拡充、C海外貸出や信用リスクアセットの決定に関するマクロ・ストレス・テストの改良、などを行い、内容の充実を図った。』(本文1ページ、ファイルの3枚目より)


本文16ページ辺りから引用しますね。

『第三に、不動産業向け貸出は、引き続き、緩やかな伸びにとどまっている。上述の通り、貸出全体の増加額に対する寄与は引き続き相応に大きいが、伸び率自体は、前回の増加局面である2006 年頃に比べればかなり低めである(図表III-1-18)。不動産市場では、都心部や大都市圏の一部で需給がタイト化し、高額取引も出てきているが、2006〜2007 年頃のような地域的広がりはまだみられていない。地価上昇の程度や広がり、大規模土地取引件数、キャップレートなど、様々な関連指標でみても、2006〜2007 年頃のような水準には達していない。金融機関の不動産業向け貸出は、こうした不動産市場全般の状況と概ね整合的と考えられる(不動産市場の状況については、BOX 2 を参照)。』

でまあBOX2というのは後ほど引用しますが、認識としては全体としては問題なしという事ですけど・・・・・・・

『不動産業向け貸出の伸びは、引き続き、業態や地域による違いがみられており、相対的に地域銀行、地方圏の伸びが高い点は、半年前の本レポートから変わっていない。大手行では前年を下回る状況が続いているが、地域銀行では個人やその資産管理会社等による貸家業、不動産業者向けの貸出の伸びが高まっている(図表III-1-19)。』

ここでまず引っ掛かる訳で、不動産市場の需給がタイト化しているのは都心部や大都市圏の一部なのに何故不動産業向け貸出の伸びが地域銀行や地方圏で高くて大手行では下回っているのかと。

『貸家業向けが増加しているのは、需要面では、高齢化や単身世帯の増加に伴い都市部への移住ニーズが高まりつつあること、供給面では、今後の相続税制の変更等を念頭に、土地所有者等の資産活用意識が強まっていることが背景とみられる。』

ちょwww都市部への移住ニーズが高まりつつあるのに何で地域銀行で貸家業向け貸し出し伸びてるねん。

『地域別にみると、三大都市圏より地方圏の方がこのところ全体の伸びに対する寄与を高めている(図表III-1-20)。九州では、福岡などの都市部への人口流入からオフィスビル・商業施設や住宅向けの貸出が、東北では住宅移転需要や都市部の再開発等を反映した貸出が伸びている。』

ということで最後には個別の地域的な話をしてサラサラ読んだ場合の最後の印象をマイルドにしているのですが、この書き方って特段のアセスメントしていないけど「不動産市況の動向と不動産関連貸出の伸び方が整合的でない」というのを記述しないでも読む人に判るように書いているだろとゆー大変に滋味の深い所ではあります。


ついでにこの続きになる本文18ページのBOX2を引用しましょう。図表が本文にはあるのでご覧あれ。

『BOX2 不動産市場の状況について』

『ここでは、不動産業向け貸出の背景となっている、不動産市場の最近の動向について確認する。最近の不動産業の業況をみると、他の産業と概ね同じ動きとなっており、過去の不動産ブームの時期にみられたような、不動産業に偏重した動きは生じていない(図表B2-1)。不動産の取引動向を確認するため、大規模土地取引の件数をみると、物流施設や発電施設などを含む生産施設関連などを中心に増加しているが、資産保有・転売目的の取引については、現時点では大きく増加してはいない(図表B2-2)。』

ほう。

『次に、不動産価格の動向を確認するため、都道府県別の商業地価上昇率の分布をみると、中央値についてみれば、足もとの水準は2000 年代中頃の不動産ブーム期に近づきつつあるが、分布全体の動きをみると、1980 年代後半や2000 年代中頃にみられた分布の上方への広がりが、現在は観察されない(図表B2-3)。すなわち、現時点では、不動産ブーム期に典型的にみられたような、一部大都市に偏った商業地価の上昇が生じていない。もっとも、東京に限って、商業用不動産(土地、建物)の個別物件ごとの取引額の分布をみると、2006〜2007 年時ほどではないものの、高額物件の取引が幾分増加している様子も確認される(図表B2-4)。』

微妙に一部がヒャッハーというのを控えめに表現ですねわかります。

『不動産の需給環境について、東京のオフィス空室率をみると、リーマン・ショック前と比べれば依然高水準であるが、このところは低下傾向が明確化しており、オフィス賃料は、需給の改善を受けて、新築ビルを中心に上昇している(図表B2-5)。』

うむ。

『この間、将来の賃料収入を見込む形で不動産ファンドの取得する物件価格は上昇しており、J-REIT(不動産投資信託)のキャップレート(賃料などの分配金を投資口価格(J-REIT の時価)で除した値)は低水準で推移している(図表B2-6)。もっとも、キャップレートを要因分解すると、現時点における分配金要因の上昇幅と投資口価格要因の上昇幅はいずれも、2006〜2007 年頃と比べれば限定的であり、キャップレートの水準も、当時ほどには低下してはいない。』

ということで直前のヒャッハーはまだ見られませんと。

『J-REIT の資金調達面では、資本調達、金融機関借入がともに増加しており、調達額は高水準となっている(図表B2-7)。こうした多額の資金調達を背景に、J-REIT の物件取得額は、2013 年以降、大幅に増加し、2006 年頃のピーク時とほぼ同水準となっている(図表B2-8)。もっとも、最近におけるJ-REIT の物件取得は、私募ファンドからの既存物件の取得が多く、不動産ファンド全体の市場規模は、2006〜2007 年頃とは異なり、このところ大きくは増加していない(図表B2-9)。』

「私募ファンドからの既存物件の取得が多く」という辺りに微妙な香りも感じますがまあそれはそれ。

『以上を踏まえると、不動産市場では、個別にみれば高額物件の取引なども増加傾向にあるとはいえ、全体としてみれば、これまでのところ過熱感はみられていないと評価される。』

という結論になっているのでした。まあ不動産市場そのものに関してはそれほど過熱みたいな話にはなっていないのですが、その前にある不動産向け貸出の市況との整合性の辺りがひじょーに気になる所ではありまする。

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2014/10/23

○すっかりスルーしていましたが金融経済月報

10月金融経済月報ですけどね。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1410.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1409.pdf(前回)

毎度ですがまずは【概要】部分から。

・現状判断部分は声明文どおりですけどね

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

基本的に現状判断部分は声明文で示されていますがまあ鑑賞鑑賞ということですが、ご案内の通りでして、消費税増税の駆け込み反動がどんだけ続いていますねんというのもさることながら、ここで重要なのは今回入っている「など」というマジックワードでありまして、「など」というのは具体的に何を示しているのかご説明を頂きたいという質問をすると嫌がられますのでオヌヌメ。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。』(前回)

輸出は弱めという認識を継続。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできている。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。』(前回)

駆け込み需要の反動に関する部分は「ばらつきを伴いつつも」とヘッジクローズを打ち、ついでに「全体として」ともヘッジクローズを打った上で「徐々に和らぎつつある」とあるのを「和らいできている」と引き上げるという作戦に出ていますが、これって駆け込み需要の反動ネタでそう長期間引っ張る訳にも行かないという事実がある訳で、駆け込み需要反動ネタを引っ張れないけれども、そうは言っても需要がV字回復してくれないので各種ヘッジクローズを打ち込んでいるという話。

でですね、総括判断の所にある「など」という話になってくる訳ですが、何ぼ何でも駆け込み需要の反動だけを需要が盛り上がらない事の理由にするのは時間的に無理があるので、駆け込み需要の反動に関してはヘッジクローズてんこもりにしながら緩和という話にして、総括判断に「など」というのを入れている訳でして、これが年末辺りに景気がまだ盛り上がらない場合にどういう表現になるのかというのが見ものであります。

つまり、ここの「など」の説明が徐々に具体化せざるを得なくなってくる、となりますとまあ普通に下方修正必至なのですが、具体化するにあたってどうせ最初は一時的要因として扱えるものを出して来るだろうなあと思いますとこれまた味わいがあるというのもので、11月会合の声明文でどういう表現になって来るのかが楽しみというものです。


『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。鉱工業生産は、在庫調整の動きもあって、このところ弱めの動きとなっている。企業の業況感は、消費税率引き上げの影響などから改善に一服感がみられるが、総じて良好な水準を維持している。』(今回)

『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、基調として緩やかな増加を続けているが、足もとでは弱めの動きとなっている。』(前回)

業況感の所は短観要因で特段弱くは無いですが、生産はご覧のとおりさすがに下方修正でしたね。


・先行き見通しですが現状の所で下がっているのに先行きは超微修正のみとはどういう事や

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に和らいでいくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。』(前回)

この「など」が何ですねんという話ではありまして、総裁会見などでも特に説明は無かった筈なので、足元で急に出て来た「など」の影響ってそんなに簡単に緩和されるものなのかが極めて謎としか申し上げようがありませんな(^^)。

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくと考えられる。国内需要については、公共投資は、高水準で横ばい圏内の動きを続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善傾向を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

何気に字数が違うので良く見ますと、公共投資の所に「当面」というのが入っていて、先行き公共投資がいつまでも高水準でいられるのかねという話なんですかそうですか。

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみられる。住宅投資は、当面、駆け込み需要の反動の影響が残るものの、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、当面弱めの動きとなったあと、緩やかな増加に復していくと考えられる。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移し、駆け込み需要の反動の影響もさらに和らいでいくとみられる。住宅投資は、当面、駆け込み需要の反動の影響が残るものの、次第に底堅さを取り戻していくと予想される。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、当面弱めの動きを残しつつも、緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

で、消費とか投資の所の先行き見通しですが、前回は「当面弱めの動きを残しつつも」という表現を使っていて先行き改善に向かう話をしていたのですが、現状判断に見られますように実際にはそこの見通しを盛大に外した格好になっている筈なのですが、何故か生産の先行き見通しに関しては、さすがに「当面弱めの動き」という風になっているものの、「その後は回復(キリッ)」という見通しは意地じゃなかった維持するという中々の大本営クオリティ。


・リスク要因は同じ

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)


・物価

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で横ばい圏内の動きとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、3か月前比で緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

現状に関する部分は物価では判断とかいう話ではないのでまあ良いとしまして予想物価上昇率ねえ・・・・・・

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

でまあこの見通しに関しては先般の支店長会議での総裁あいさつでも示されていました(めんどいので引用してませんでしたが)けれども、「暫くの間」という文言が半年程度を意味する、と今年の1月に黒田総裁が仰っておられましたので、つまり来年の4月ごろまでは1%台前半で推移するという見通しを示しておられる、という事になるかと存じますが、それはどこからどう見ても「2年で2%」の物価目標達成は困難である、という見通しを示したものであると理解されますので、就任前および就任後にも散々っぱら大口を叩いておられた置物大師匠はどの面下げて副総裁職に留まっておられるのか小一時間問い詰めたい所でございます。

実はここの表現が今回の展望レポートでどうなるかも見物でして、何の断りも無く2%水準への到達期間を「2015年度を中心とする期間」に先送りしているので、そのダマテンが許容されているという認識の元で今回も普通に「暫くの間1%台前半」という表現を使ってくるのは見え見えなのですけれども、「2年で2%」の整合性については期日が迫れば迫るほど許さんという状態になってくると思われるのでそこらへんでどういう応酬があるのかを楽しみたい所です。


・金融環境の認識を見るとどう見ても短国金利のマイナスをどうでもいいと思っている件について

でまあ金融環境に関する話ですが、この最後の部分を見るとトサカですよ先生!!!

『金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利は幾分弱含んでいる。前月と比べ、円の対ドル相場は下落している。この間、長期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(今回)

『金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利は横ばい圏内の動きとなっている。前月と比べ、株価は上昇している一方、円の対ドル相場は下落している。この間、長期金利は前月と概ね同じ水準となっている。』(前回)

そもそも短国金利がマイナス定着に関する言及が概要部分では全く無いという訳でございまして、書いていないということは即ち月報の鏡にあたる部分に記すような重要な問題であるとは全く思っていない事を意味する次第ですから、結論からすると「短国金利マイナスの弊害とか知らんがな」という認識を日銀がお示しになっておられるということではあるっつー話ですな(そもそもあったら月初から3.5兆円の買入とか打ち込ませないでしょ何ぼ何でも)。

ただまあこの月報の後でご案内の短国買入札割れなどの問題が更に深刻化している訳で、まあ今日明日の動向によってまた変わるかもしれませんけど(明日短国買入を思いっきり減らしたりスキップしたりして足元見られないようにした方が結果的には買入がスムーズに進捗すると思うのだが自動バキュームマシン状態になっているからそんなテクニックは使ってこないでしょうし、ここまで市場が壊れると少々のテクニックでも効かないかも知れんですしねえ)、どうせこの状況のまま来月のMPMに突撃という事になるでしょうから、11月の月報で何か書いてるかねという辺りを期待せずに確認したいと思います。



・本文から少々気になる所を:個人消費部分をどうとらえているか

以下は本文となります背景説明から個別項目出来になる所を確認します。

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできている(図表15)。財の消費動向を小売業販売額(実質)でみると(図表16(1))、1〜3月に駆け込み需要から伸びを大きく高めたあと、4〜6月はその反動から大幅な減少となった。その後、7〜8月は4〜6月対比で小幅の増加となり、天候要因などの影響を受けつつも、耐久財以外の分野を中心に、駆け込み需要の反動の影響は和らいできている。』

ということで、何か普通に考えると実質賃金の減の影響はどうなのよという風に思うのですが、以下の部分でもそうなのですが実質賃金減少の話は意地でも触れない(触れたらそもそも物価安定目標とは何だったのかという話になり兼ねないので)のがお洒落というもので、概要にあったマジックワード「など」に天候要因が含まれているようですが、しかし「天候要因など」ということで、そこにもしつこく「など」がありまして、何ぼ何でも正面切って書けないけれども、実質賃金減少に関してはこの「など」で察してくれということでしょうかよくわかりません><;

『耐久財の消費動向をみると(図表16(2))、乗用車の新車登録台数は、駆け込み需要の反動の影響から4〜6月に大きく減少したあと、7〜9月はほぼ横ばいとなった。家電販売額(実質)については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要や一部ソフトウェアのサポート期限切れに伴うパソコンの更新需要の反動減から、4〜6月に前期比で大きく減少したあと、7〜8月は増加したが、天候不順の影響がエアコン等でみられたこともあって、ごく小幅にとどまった。』

例えばここの4−6の自動車の所にありますように、駆け込み需要の反動です(キリッ)と言い切れる部分に関してはさっきのような「など」が出てこないのでして、耐久財に関する話を見ると駆け込みの反動とWinXP更新特需と天候要因が改善を遅らせているという話。

『この点、耐久消費財については、元々駆け込み需要が大きかった分、その反動減は規模が大きくかつ長引く性質のものであると考えられるが、関連メーカーなどからは反動減からの回復の遅れを指摘する声が聞かれている。』

鏡の部分と違って背景説明の部分は大本営発表的な部分もありますが、良く読むと微妙にこんなフレーズが突っ込まれていたりしているのがチャーミングでして、駆け込みの反動が当初見込みよりも(元が大きかったから)幅も時間も長い、というのならまあそこだけちょっと見通しと違いましたねという話だと思うのですが、ここは両面の説明になっている感じで、一応表面的には今申し上げたような趣旨で「だからこれは若干想定外だけど特段問題ない」という説明ではあるのですが、わざわざ入れている辺りは反動からの遅れが実はもっと別の要因で続いている可能性があるのではないかという説明にも使えたりするのがお洒落です。

『全国百貨店売上高は、4月に駆け込み需要の反動から大幅な減少となったあと、5月以降は持ち直している(図表17(1))。全国スーパー売上高についても、4月に大きめの減少となったあと、5月以降は緩やかな持ち直し傾向にある。コンビニエンスストア売上高については、駆け込み需要に伴う振れは比較的小さく、緩やかな増加傾向を続けている。いずれの業態についても、耐久財以外の分野を中心に、反動減の影響は徐々に和らいできており、8月下旬から9月にかけては夏場の天候不順の影響も減衰してきている模様である。』

ほう。

『ただし、地域別にみた改善ペースのばらつきを指摘する声も引き続き聞かれている。』

ばらつきというのは別の要因が背景にあるような気がしますが・・・・・・・・

『この間、サービスの消費動向をみると(図表17(2))、旅行取扱額は、月々の振れを均してみれば、国内旅行を中心に底堅く推移している。外食産業売上高も、中国産鶏肉問題や天候不順の影響はみられるものの、こうした要因を除いた基調としては底堅い動きを続けている。』

ということで、まあ基本的には「など」に関しては天候要因が多くて、あとまあXP特需とか鶏肉問題とか(それって個別企業の話で外食全体に跳ねたかよと思うのだが・・・・・)あくまでも一時的要因という話を連呼していますな、うんうん。


・物価に関して:先行き判断の部分で原油価格下落の影響に対する予防線を

物価の説明の途中から参りますね。

『最近の消費者物価の前年比をみると、財(除く農水畜産物)は、8月は前月からプラス幅が縮小したが、基調としては強めの動きが続いている。内訳をみると、食料工業製品は、8月は前月からプラス幅が若干縮小したが、基調としては、既往のコスト高を転嫁する動きが続くもとで、プラス幅は拡大傾向にある。耐久消費財や被服も、プラス基調が続いている。一方、石油製品は、原油価格の下落を受けて、プラス幅が縮小している。』

ほうほう。

『一般サービスについては、ひと頃に比べるとプラス幅が縮小しており、6月以降は前年比横ばいとなっている。これには、携帯電話通信料の新料金導入や、外食の一部における昨年の値上げの反動などが影響している。一方、ウエイトの大きい家賃は、水準でみると下げ止まりつつあり、前年比のマイナス幅はごく緩やかに縮小している。この間、公共料金については、電気代を中心に、前年の上昇の反動が出ていることから、プラス幅の緩やかな縮小が続いている。』

一般サービスが上昇しないと物価が持続的に安定的な小幅上昇軌道に乗らないとは思うのですがががが。

『国内の需給環境について、9月短観をみると(図表32)、製商品・サービス需給判断DIは、製造業では6月からほぼ横ばい、非製造業では小幅悪化しているが、均してみれば改善傾向は維持されている。販売価格判断DIをみると、6月にかけて改善したあと、足もとは非製造業中心に小幅の悪化となったが、先行きは再び改善する姿となっている。この間、生産・営業用設備判断DIと雇用人員判断DIの加重平均である短観加重平均DIは、緩やかな改善が続いており、先行きも1992 年5月以来の水準まで「不足」超幅が拡大する姿が見込まれている。』

ということで、需給環境に関しては短観が出ている回の月報なので仕様として加わっているのですけれども、まあ短観を使うとこうなりますよね(棒読み)という感じではあるのですが。


『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。ただし、当面、このところの原油価格の下落などが、一時的な下押し要因となって現れる可能性がある点には注意が必要である。』

ということで、原油価格の下落のヘッジ入りましたという所ですが、この辺に関して「原油価格が下がるのは消費にはプラス」とか言い出すと説明的には泥沼にはまりますので、恐らくその辺で良い下落みたいなしょうも無い話はしてこないと思いますが、さてどうなるのかが楽しみですね。


・予想物価上昇率は毎度の1行コメント

『この間、予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる(図表33)。』

でまあ図表33というのが上記URLのPDFの55ページ目にあるのですが、どう見てもこれ足元で下向いているでしょうというのはこの前の宮尾さんの講演でも同じのがありましたのでツッコミをしたとおりでありまする。


・では本文での短期市場の説明はどうなっているでしょうか?????

最後の所になりますけどね。

『短期金融市場をみると、長めのターム物を含め、金利は低位で安定的に推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.1%を下回る水準で推移している。ターム物金利をみると、3か月物国庫短期証券利回りは、幾分弱含んでおり、小幅のマイナスとなる場面もみられている。3か月物ユーロ円金利およびユーロ円金利先物レートは、いずれも横ばい圏内の動きとなっている(図表42)。』

・・・・・・・・・・ふーんという所ですが、まあ11月月報でどういう説明になるのかを確認したい所です。

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2014/10/22

○これは興味深い(ただし超一部の人向け)ペーパー(だがまだ殆ど読んでいない)

金融研究所ディスカッションペーパーである
http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/14-J-17.html
ドイツにおける顧客財産保護にかかる法制度
-有価証券寄託法を中心として

アブストラクトは上記URL先にありまして、本文はこちら(そこそこ重いので注意)。
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/14-J-17.pdf

アブストラクトのURL先から。

『2008年の金融危機を契機として、金融機関が破たんした場合に、当該金融機関が顧客から預かっていた資産をどのように取り扱うべきかが、国際的な議論の俎上に載せられている。そのような背景のもとで、本稿はドイツの「有価証券の保管および買入れに関する1937年2月4日の法律(Gesetz uber die Verwahrung und Anschaffung von Wertpapieren vom 4. Februar 1937)」(寄託法)を検討対象として取り上げる。』

ほうほう。

『寄託法は、有価証券取引における顧客財産保護を目的として、「第3章 倒産手続における優先的地位」において32条と33条という2つの規定を設ける。32条は、有価証券の所有権・共有権を有しない顧客に対して倒産手続上の優先権を付与する規定である。33条は、金融機関に有価証券の質入れを授権し、当該授権に基づいて有価証券が質入れされた顧客を清算手続に参加させることで、これらの顧客間における損失の平等な負担を実現することを目的とする。これらの規定はともに、金融機関の倒産手続において一定の財産から構成される特別財団から顧客が倒産債権者に先立って弁済を受けることを認めるものである。』

うむ。

『本稿は、寄託法の規定に関する解釈上の問題や特別財団の分配の基準・手続を検討することを通じてドイツにおける顧客財産保護制度の理解を深めることを目的とする。そしてわが国における立法論への示唆と、顧客財産保護に関する比較法研究の視座を獲得することを目指す。』

ということですが、この「顧客」という概念については本文の最後(最終章最終項の『(2)比較法研究への視座』)に指摘がありますが・・・・・・・

『最後に、比較法研究への視座として興味深いのは、顧客財産保護の議論においていかなる「顧客」が想定されているかということである。例えば、32条の倒産優先権に関する債務履行要件については、1923年に1896年寄託法が改正された直後から、交互計算との関係が問題として取り上げられていた98。このことは、倒産優先権を付与すべき主体として、商法の適用のある顧客が想定されていたことを示唆するものといいうる。また、32条に基づく特別財団の分配手続において有価証券の現物返還が顧客の利益にかなうとされていたことも99、金銭配当では代替できない利益を有する顧客が念頭に置かれていたものと考えることもできる。』

『これに対して、例えば、アメリカの証券投資者保護法(SIPA)は、ブローカー・ディーラーや銀行を同法による補償を受ける顧客に該当しないとしている。これらの者は「積極的かつ自衛能力のある(active and sophisticated)投資家」であるので、SIPAによる保護が必要ないとされるのである100。そうだとすると、アメリカ法のもとで顧客財産の保護が議論される場合、「顧客」として想定されるのは専門知識に乏しい投資家(消費者としての性格を有する投資家)であると考えることができる。』(これは本文28ページ以降から引用しています)

ということで、顧客財産という概念での話ではありますが、一般的な取引のうち未清算部分に関する処理をどうするのかという話にもつながるネタと見ました次第ですけどそれで良いのですかね??

でまあ以前もお話したと思いますが、リーマンの日本法人が保全命令受けた時に約定未決済取引をどうするのかという点においてどう処理するのかという所が数日間空転していた(法的にどうするのかの担保が微妙にも程があったから)のも日本では市場の混乱に影響を与えたと思っております(現場的な意味で)ので、特に国際的な金融機関が飛んだ場合の破産法制を国内法および海外の法令との整合性をできるだけ取りつつも明確化していくというのは今後とも検討を深めて頂きたいものである、とまあ斯様思う次第なのであまり皆様の興味がなさそうな話ですがこういうのがありますよんとご紹介させて頂きました次第。

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2014/10/21

○それに関連してアンケートにも悪態の火の粉が飛ぶのである

金曜にこんなの出てましたけどね。

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/ron141010a.htm/
わが国短期金融市場の動向
――東京短期金融市場サーベイ(14/8月)の結果――

サーベイ結果および解説の全文はこちら。
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron141010a.pdf

ではありますが、まあ纏めのHTMLの方から簡単に悪態を。

『東京短期金融市場サーベイの概観』

ってえことで、最初に『はじめに』ってのがあるんですけどね。

『日本銀行金融市場局は2008年以降、わが国短期金融市場の取引動向などを把握するため、「東京短期金融市場サーベイ」を実施している。このサーベイは当初は隔年で実施していたが、市場動向をより的確にフォローする観点から、昨年より毎年実施することとしており、本年8月、第5回目となる調査を実施した。』

ほうほうそれでそれで???

『このサーベイは、従来同様、日本銀行のオペレーション対象先および短期金融市場の主要な参加者を対象として実施している。今回のサーベイの調査対象先は296先と、昨年の284先からさらに増加している(回答率100%)。』

へえへえそうだっか。

『なお、従来、サーベイ実施時点(8月)から結果公表(同年12月〜翌年2月)までかなりの期間を要していたが、今回、市場参加者からの要望などを踏まえ、できる限りの公表早期化を図っている。』

まあ確かに早くなりましたな。

『すなわち、調査の基準時点は従来の調査同様7月末時点とし、集計結果の時系列的な比較可能性を確保する一方、結果の公表は従来と比べ2〜4か月以上前倒しし、10月に公表することとした。これは、市場動向を適切にフォローし、必要に応じて市場整備のための取り組みを円滑に進める観点から、サーベイ結果を極力速やかに市場参加者の方々などと共有した上で、これを有効に活用しながら、関係者などとの対話を重ねていくことが望ましいとの問題意識に基づくものである。』

ほっほー。

『日本銀行金融市場局としては、今回のサーベイ結果も有効に活用しながら、短期金融市場も含めたわが国金融市場の活性化に向けた関係者の取り組みを積極的に支援するとともに、自らも中央銀行の立場から、可能な限りの貢献を果たしてまいりたい。』

貢献した結果があの短国買入による市場機能の破壊行為なのは何かのギャグでしょうか?????

・・・・・・ということで掴みの所で「んなこと言われたらアンタ、往生しまっせ〜」と申し上げたくなるのですが、この次の『概要』が落涙を禁じ得ません。

『短期金融市場での資金調達残高は増加し、リーマン・ショック以前の2008年夏頃の水準近くまで戻している。』

『この背景としては、まず、日本銀行の補完当座預金制度のもとでの超過準備の付利金利(0.1%)をメルクマールとする裁定取引の広がりが挙げられる。また、市場参加者の一部には、取引関係や社内の事務体制・ノウハウの維持、業務継続体制の強化などの目的から、無担保コール取引を継続的に行っている先もみられる。こうした動きが、取引全体の下支えに寄与していると考えられる。さらに、投資信託などの主体が、株価上昇などを受けて増加した余剰資金を短期金融市場で運用していることや、日本銀行の大規模な国債買入れのもとで国債の特定銘柄の調達ニーズが高まったことなどを受け、レポ取引が増加していることが、取引全体の増加に寄与しているとみられる。』

はあそうですか。

『この間、国庫短期証券などの運用利回り低下や収益性が見込みにくくなった有担保コール取引を抑制する動きが一部でみられていることを受けて、短期金融市場の収益性や機能度が前年に比べ低下したと回答する先が全体の3割程度でみられた。もっとも、全体の6割程度の先では、短期金融市場の収益性や機能度は、前年と比べ「概ね変わらない」と回答している。』

そらまあ8月時点の調査ですからねえ。

『これらの点を踏まえると、わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられるが、日本銀行としては、今後とも短期金融市場の動向を、日々のモニタリング活動や本サーベイ、市場参加者との対話などを通じて、適切にフォローしていく考えである。』

>わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられる
>わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられる
>わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられる

おもろいやないかい〜、腕上げたな〜、という所でございますが、ここの説明文中に「7月末を基準として8月に調査した時はこうでしたがその後の状況はこのサーベイに反映されていません」というような文言でも入っていればまだ望みがあるというものですが、ご案内の通り9月以降からは市場の様子が様変わりしている訳で、まずこのサーベイの紹介文書である所のこの書面中にそれらしき記述が全然存在しない(ついでに言うと本文中にもその手の記述が1ミリも存在しないのでお暇な方はご確認あれ)という時点で金融市場局が短国買入で市場の玉を全部買ってマイナス金利にするわ市場取引を干上がらせるわというプレイを演じている事に関して何らの問題意識を持たずに無邪気にMB積み上げがディレクティブだから買うんだもんね〜とやっているってえのが良く判るという代物であります。

いやまあアンケート自体のタイミングは仕方ないですし、サーベイ取ったのだから公表した方が良いのですけれども、上記にあるように8月のサーベイの時点で既に「短期金融市場の収益性や機能度が前年に比べ低下したと回答する先が全体の3割程度でみられた」という状態であったならば、その後の9月における市場状況を加味したら「わが国の短期金融市場の機能は全体として維持されていると考えられる」と平然と纏めるのは如何なものかとしか思えませんですわなあ。

そらまあ8月に実施したサーベイの時点では確かに市場機能は低下はしているものの全体としては維持されていたと思いますが、その後の市場環境の急変(しかもそれが日銀ドリブンなのですが)に対する考察なりが何も入らないという時点で「金融市場」局という名前ついてるセンスが感じられないという誠に残念なものが公表されましたなあという所で。

なおサーベイの中身に関してはお暇な方はご覧あれなのですが、何せ9月に市場環境が変わってしまいましたのでそこは補正を掛けて読まないといけませんぞな。

#しかしまあ間が悪いタイミングで出てくる所が日銀クオリティですなあというところで


○さくらレポートの基調判断が強めの件について

展望レポートを前に支店長会議が開催されましてね。

総裁の挨拶(のうち原稿部分)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/siten1410.htm/

もうコピペですなという感じですが。

『(3)わが国の金融システムは、安定性を維持している。そうしたもとで、金融環境は、緩和した状態にある。
(4)「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』

ということで、金融システムに関しては先週金融システムレポートが出ていてまだネタにしていなくてすいませんすいませんという感じですが、QQEについても所期の効果を発揮云々といういつもの話でありまして、とりあえず黒田総裁におかれましては金融システムの安定的なマクプル話とか、短国市場が壊滅している市場機能がどうのこうの話とか、そういう話には1ミリも興味をもっていない(そもそも黒田さんは財務省時代に理財畑は殆ど踏んでいないので国債流通市場とかに関する理解が全然無いはず)ので、国債流通市場が壊滅すると実は金融システムに対しても一部負荷が掛かってくるんですよねえとかそんな事全然考えないでしょという所ではあります。

話が逸れましたがさくらレポート。

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer141020.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer141020.pdf(本文、重いので注意)

つーことで概要の方から少々。

・展望レポートの中長期見通し下方修正は無いということですねわかります

『I. 地域からみた景気情勢』から。

『各地の景気情勢を前回(14年7月)と比較すると、東北から、回復テンポが緩やかになっているとして判断を引き下げる報告があったものの、残り8地域では、景気の改善度合いに関する基調的な判断に変化はないとしている。』

ほっほー!!!

『各地域からの報告をみると、東北を含め全地域で、基調的には、「回復を続けている」、「緩やかに回復している」等としている。この背景として、生産面において一部に弱めの動きがみられるものの、国内需要が堅調に推移し、雇用・所得環境が着実に改善していることが挙げられている。この間、個人消費については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできている等の報告があった。』

ということでどう見ても強気です本当にありがとうございましたという所ですし、個人消費に関しての先行きが上記のように強めになっている辺りを見ますと、まあこれはどこをどう見ても展望レポートでの先行きシナリオには変更が加えられない(足元の数値を受けた修正はあってもそれは単なる修正で済ませる)というのが想定されるというか各取り纏め店の方で忖度いや何でもないです。

なお7月さくらレポートの当該部分を引用してみましょう。

『各地域からは、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているものの、基調的には、「回復を続けている」、「緩やかに回復している」等の報告があった。この背景としては、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかな増加基調を続ける中で、雇用・所得環境も改善していることが挙げられている。』(7月さくらレポート概要より)

となっていまして、大体まあ文章量が長くなる=いいわけ文言の増加=判断が怪しくなっている=そのうち下方修正待ったなし!!という話ではあるのですけれども、まあその日銀文学鑑賞面からみた話は兎も角としまして、「生産に弱めの動き」というのを入れながら「消費が持ち直し」という表現を打ち込むことによって相殺するというお得意の作戦を使っておりまして、これは今月の展望レポートではヘッジクローズが長くなる見苦しい文書になるものの、結局の所見通しは変えませんよと言ってるようなもんでしょうなあ。

・・・・・ただし子細に見ると微妙な部分もある、というのが以下のお話ですけど、まあ総括的な基調判断がこのような代物ですので強いという話になるんでしょうね。


・消費税増税の反動に関連して総括表現を鑑賞

北海道

『基調的には緩やかに回復している。この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動は、和らいできている』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が一部にみられているが、基調的には緩やかに回復している』(7月)

前回は駆け込みの反動が「一部に」見られていた筈なのに何故かその反動がまだ続いているですかそうですか(棒読み)。

東北

『消費税率引き上げの影響による反動がみられるものの、基調的には緩やかに回復している』(10月)
『消費税率引き上げの影響による反動がみられるものの、基調的には回復を続けている』(7月)

東北は前回の時点でも消費税増税の反動に関して直球で指摘していた唯一の地域でして、今回下方修正したのもまあその流れから考えますとフラットな指摘なんでしょうな、うんうん。

北陸

『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかに回復している』(7月)

全文一致キタコレなのですが、駆け込み需要の反動の影響が続いているじゃんという気がするのですがががが。

関東甲信越

『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』(7月)

ヘッジクローズキタコレですかそうですか(^^)。

東海

『基調としては回復を続けており、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も、幾分ばらつきを伴いつつ全体として和らいできている』(10月)
『足もと消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動もみられているが、基調としては回復を続けている』(7月)

東海は堂々駆け込み反動が和らぐという表現が入っていますね!


近畿

『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調としては緩やかに回復している』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調としては緩やかに回復している』(7月)

おやこちらも全文一致。


中国

『生産面で幾分増勢の鈍化がみられるものの、基調としては緩やかに回復している。この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響は全体として和らぎつつある』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているものの、基調としては緩やかに回復している』(7月)

こちらも駆け込み反動の緩和という話をしているのですが、東海は「和らいできている(キリッ)」という感じなのですが中国については「和らぎつつある」と微妙にヘッジの入った文言(そもそもその前にどちらも「全体として」という盛大なヘッジ文言が入っていますが)ですな。


四国

『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている』(7月)

趣味の日銀文学鑑賞苦節(嘘)10ウン年のアタクシ歓喜の文言変更でありまして、この「など」というのが曲者であるというのは日銀文学鑑賞の基本中の基本でありまして、駆け込み需要の反動というのは基本的にこれは弱い話でありまして、その弱い部分に「など」という万能ヘッジワードが入ってきた訳で、質問をできるのであれば「ここに入った”など”というのには何が含まれているのでしょうか」と聞くのが基本であります。

ということは四国は実質的には現状判断下げてますな。


九州・沖縄

『基調的には緩やかに回復している。この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減は、徐々に和らいできている』(10月)
『消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動減がみられているものの、基調的には緩やかに回復している』(7月)

徐々にという表現ではありますが、反動減の緩和については東海並みに普通に強い説明していますな。

・・・・・・・ということで、まあ判断が総じてみると横ばいなのですけれども、各地域の報告部分を個別に展開していくと、最初の所にあった説明文言にあるほど消費増税の駆け込み反動って緩和されてきているのか????という感じはせんでも無い。


・需要項目別に関しては時間が無いので(こら)設備投資と消費だけ

『設備投資は、北海道、東海から、「一段と増加している」、4地域(東北、北陸、関東甲信越、近畿)から、「増加している」等、3地域(中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」等の報告があった。この間、企業の業況感については、「底堅く推移している」、「製造業・非製造業とも横ばい圏内で推移している」等の報告があった。』

前回ですけどね。

『設備投資は、北海道、東海から、「一段と増加している」、4地域(東北、北陸、関東甲信越、近畿)から、「増加している」等、3地域(中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」等の報告があった。この間、企業の業況感については、「非製造業を中心に悪化した」、「底堅く推移している」等の報告があった。』(7月さくらレポート概要から)

設備投資の判断は前回は上がったのですが、今回は基本的に横ばいで、一方業況感に関しては短観の現状判断DIを反映して改善という感じになっていますな。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「基調として緩やかに持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「基調的に底堅く推移している」等の報告があった。この間、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響については、複数の地域から、ばらつきを伴いつつも、「全体として和らいできている」等の報告があった。』

前回はこの通り。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「緩やかに回復している」、4地域(北陸、東海、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、近畿、中国)から、「底堅く推移している」等の報告があった。この間、多くの地域から、耐久消費財(乗用車、家電等)や一部の高額品を中心に、「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられている」等の報告があったほか、「反動減が縮小してきている」等の報告もあった。』(7月さくらレポート概要から)

何か現状判断の総括部分的には駆け込み需要の反動が和らいでいるという話になっていた筈なのですけれども、良く良くここ見ますと「基調的には」というヘッジ文言が乱発されているようになっていて本当にこれ強いのかよという感じですな、うんうん。


・地域の視点は観光ですかそうですか

『II.地域の視点』のお題は今回『各地域における観光振興に向けた取り組みと地域経済への影響 ― 成長産業としての期待の高まりと観光需要の創出・獲得等に向けた取り組み ―』というブツになっておりまして・・・・・・・・・・

『1.各地域の観光需要の動向』

『各地域における最近の観光需要の動向をみると、大方を占める国内観光客が堅調に推移する中で、外国人観光客が大幅な増加を続けているため、全体としては緩やかながら着実に増加している。すなわち、国内観光客は、ガソリン価格の上昇、ETC割引率の縮小、天候不順等に伴い、夏場にかけて幾分弱めの動きとなったとの声も聞かれているが、基調としては、景気回復や雇用・所得環境の改善等から、堅調に推移しているとの声が多い。』

ほうほう。

『この間、消費税率引き上げに伴う影響は特段うかがわれないとの声が相応に聞かれている。』

そらそうよ。

『また、外国人観光客は、為替円安、ビザ発給要件の緩和に加え、アジアにおける中間所得者層の拡大、交通インフラの整備・拡充(空港発着枠拡大、定期便就航・LCC増便、港湾整備等)等を背景に大幅な増加が続いており、観光客全体に占める割合も徐々に高まっているとの声が少なくない。』

円安キタコレ!

『もっとも、そうした中にあって、東日本大震災で被害を受けた地域の一部や、他の地域との差別化が進んでいない観光地等では、依然として厳しい状況が続いているとの声が聞かれており、地域によって観光需要の獲得に差が生じている面が見受けられる。』

まあどこもかしこもという訳にはいかんでしょうな。

でまあその次の『2.最近の観光需要の特徴等』ですけど、国内の方が味わいが。

『国内観光客は、アクティブシニアの需要が引き続き旺盛なうえ、雇用・所得環境の改善等から、このところファミリー層や若年層の観光需要も回復傾向にあるとの声が多い。』

なるほど高齢者の消費に依存ですかそうですか。

『また、一部地域では、企業業績の改善等を背景に法人需要が増加しているとの指摘も聞かれる。こうしたもとで、名所旧跡見物等の従来型観光に加え、地元の自然や伝統文化・産業等を体験したり、スポーツやアニメ関連のイベント等への参加を目的とする体験型・交流型観光を志向する観光客が増加しているとの声が多く聞かれている。この間、観光客の消費行動に関しては、シニア層を中心に価格が高めであっても良質なサービスを求める傾向が強まっているとの声が少なくない一方、交通費等を抑制し、その分、飲食、アクティビティなど旅行の主目的への支出を重視するメリハリ消費が広がっているとの声も聞かれている。』

つーことで、まあ一方的に観光でヒャッハーという訳でも無さそうですなという所です。詳しくは本文を読みますと色々と面白いのですが時間と量の都合上単に備忘代わりに引用だけしておきました。

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2014/10/14

○月報の前に9月MPM議事要旨ネタでも参ります

月報ネタの前に9月MPM議事要旨ネタを先に。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140904.pdf

今回は新企画で前回議事要旨と比較する(全部ではなくて一部ですが)訳ですが、『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』部分を鑑賞してみたいと思います、と申しますのはここもと声明文での景気判断が匍匐前進の如く下方修正(下方修正だから匍匐後退か)となっているのでその辺との整合性を鑑賞するのも味わいがあるかなと思いましてですね。


・もしかして景気判断の「基調的には」回復という文言の示唆する事が変わってないかという仮説

『わが国の景気について、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が依然みられ、輸出や生産は弱めの動きとなっているものの、家計・企業の両部門において、所得から支出への前向きな循環メカニズムがしっかりと働いており、基調的には緩やかな回復を続けているとの見方で一致した。景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した。』(9月)

『わが国の景気について、委員は、最近の輸出や生産には弱めの動きがみられるものの、家計・企業の両部門において、景気の前向きの循環メカニズムがしっかりと働いていることから、総括判断としては、緩やかな回復を続けているとの評価を維持することが適当であるとの見方で一致した。景気の先行きについても、委員は、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した。』(8月)

ということで、総括部分を比較すると輸出や生産の動きが「弱め」となっているのですが、声明文比較をした時にはどうなっていたかというのとの整合性を見るとこれがまた面白い。

ちなみに過去の駄文の9月声明文比較はこちらです
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisaku14-01.html#seisaku140905

つまりですね、9月声明文では輸出については前月も当月も『輸出は弱めの動きとなっている』としていまして、声明文中では現状判断が下がったようには見えないのが味わいがあって、生産に関しては『鉱工業生産は、基調として緩やかな増加を続けているが、足もとでは弱めの動きとなっている。』と主文の差し替えを行って「足もと弱め」というのを主文にして判断を下げるというプレイに出ていたのですな。

あと、今回景気に関して「基調的には」回復ということで「基調的には」攻撃が入っていますが、声明文の方ではこの基調的には攻撃が4月の声明文から入っていまして、当初声明文に入れられていた「基調的には」文言は「消費税増税の駆け込み反動があるものの」という事を意味していた筈なのですけれども、実はこの9月議事要旨を見ると声明文での「基調的には回復継続」というのは消費税の駆け込み反動だけではないサムシングなヘッジクローズの意味合いが入ってきているという事を意味するとゆー話になっているのでした。


・輸出の見立ても比較すると味わいがあります

『輸出について、委員は、弱めの動きが続いているとの見方で一致した。何人かの委員は、その動きの背景として、製造業の海外生産移管といった構造的要因が相応に影響していると指摘した。複数の委員は、7月の実質輸出は増加したものの、持続的な増加に繋がるかどうか確認していく必要があると指摘した。』(9月)

『輸出について、委員は、このところ弱めの動きとなっているとの見方で一致した。委員は、弱めの動きの背景として、新興国経済のもたつきや米国の需要が1 〜 3 月期に落ち込んだことがラグを伴って春先まで日本の輸出を下押ししたことなど循環的要因の影響を指摘した。同時にこれらの委員は、製造業の海外生産移管といった構造的要因も相応に影響しているとの見方を示した。』(8月)

海外の見立ての所は引用していませんがこの前の部分にありまして、引き続き基本的には強めの見方を示しているのですが、そういう見方を示しながら輸出の弱めの状態を循環要因メインで説明するのはさすがに無理があるという話になってきたんでしょうなあと思われる次第。つまり前月には輸出の弱さについて『委員は〜循環的要因の影響を指摘した』とありますように、主文としては循環要因だったのですが、今回は『何人かの委員』(=野党審議委員)の構造要因の指摘だけ入っているというのが味わいがあるというものです。

『先行きの輸出について、委員は、海外経済の回復などを背景に、緩やかな増加に向かっていくとの見方を共有した。この間、ある委員は、欧州や新興国における設備投資の回復が緩慢であることを指摘し、輸出が着実な増加に転じていくにはしばらく時間がかかるとの見方を示した。』(9月)

『先行きの輸出については、委員は、先進国を中心に海外経済の成長率が高まっていくもとで、緩やかな増加に向かっていくとの見方を共有した。このうち複数の委員は、海外生産移管などに起因する構造的な下押し要因の影響も、先行き徐々に減衰していく可能性が高いと述べた。別の何人かの委員は、構造的な要因の影響を重視し、海外経済に対するわが国の輸出の感応度は低下しているとの認識を示した上で、輸出は回復に向かうものの、そのペースは緩やかなものにとどまるとの見方を示した。』(8月)

循環VS構造みたいな話が9月議事要旨ではバッサリ無くなっていまして、声明文などでの見た目以上に議事要旨では判断が悪化しているんじゃないですかねえと思われるところです。


・今回妙に長いのが雇用所得環境と賃金の話

話の都合上8月分から先に引用しますが。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は着実な改善を続けており、雇用者所得も緩やかに伸び率を高めているとの認識を共有した。先行きについても、委員は、経済に前向きの循環が働くもとで、雇用者所得は緩やかな増加を続けるとの見方で一致した。』(8月)

となっているのですが、9月は妙にこの議論が長いのだ。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続けるもと、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも緩やかな増加を続けるとの見方を共有した。』(9月、以下の引用部分暫くはこの続きです)

何か「伸び率を高め」が「増加しており」ってなっているのが微妙に下方修正の香りもしますがそれは兎も角。

『複数の委員は、毎月勤労統計において、所定内給与が前年比でみてプラスに転化しており、ベースアップが反映されてきているとみられることや、特別給与の伸びも、夏季賞与の増加を映じて高まっていることを指摘した。また、複数の委員は、実質賃金について、消費税率引き上げの影響を含む物価上昇率で計算すると減少しているが、消費税の影響を除けば前年比プラスの伸びとなっていることを指摘した。』

出たな消費税の影響除き攻撃だが、そもそも「消費税も上がるし法人減税してるしお前ら賃金上げろやゴルァ」の影響はスルーして消費税の影響抜き攻撃とは如何なものかと。

『一人の委員は、ベースアップを含めた所得の増加に向け、前年のような政府も関与する仕組みが本年も必要かもしれないと述べた。』

しらっと入っていますがどう見ても統制経済です本当にありがとうございました。

『一方、ある委員は、失業率が上昇するなど雇用環境の改善が多少鈍くなっていることを指摘し、足もとの輸出や生産が弱めとなっていることが影響している可能性があると述べた。』

ほうそうですかという所ですが足元の話がそんなに直ぐに跳ねるのかね、と思ったら反論みたいなのキタコレ。

『別の一人の委員は、雇用や所得は景気に遅行するため、この先も所得形成力が維持されていくかどうか注視していく必要があると述べた。』

まあさいですな。そして議論は更に続く。

『労働需給の逼迫が賃金に与える影響について、ある委員は、労働供給の制約もあって経済成長率が高まらない中、総需要の伸びが緩慢なことから、賃金の上昇も緩やかなものにとどまる可能性を指摘した。』

ふーん。

『別の委員は、企業は潜在的な労働供給を引き出すような努力を行っており、労働市場の需要・供給両面の増加から緩やかな賃金の上昇と潜在成長率の上昇が起こっている可能性があると指摘した。』

そ、そうなのか???????????誰この指摘しているの???????

『他のある委員は、人手不足に直面した企業が省力化投資を行うことによって労働生産性を引き上げ、経済の成長力が高まっていくことが考えられると述べた。』

それは良いのですが(先週出てた機械受注が謎の強さでしたが)そうなると雇用には跳ねないという話になると思います。


・消費についての議論も長くなっているが色々とお悩みのようですな

『個人消費について、委員は、駆け込み需要の反動減の影響は依然みられているものの、全体としては、徐々に和らぎつつあるとの認識で一致した。委員は、家計支出のうち自動車などの耐久財消費や住宅投資については、駆け込み需要が大きかった分、反動減の縮小テンポは緩やかになっているが、百貨店やスーパーの売上高は、月々の振れを均してみれば、持ち直し傾向をたどっているとの見方を共有した。』(9月)

『個人消費について、委員は、品目によってその程度には差はあるものの、全体としては、駆け込み需要の反動減の影響は徐々に和らぎつつあるとの認識で一致した。消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動について、何人かの委員は、耐久財を中心に駆け込み需要が大きかったため、反動もそれなりに大きくなると見込まれるとの認識を示した。』(8月)

まあ基調的な所では大体似たような話をしているようですが・・・・・・・

『何人かの委員は、夏の天候不順の影響が、足もとの消費の実態をみえにくくしていると指摘したうえで、主要百貨店の8月の売上高が改善していることは、消費の底堅さを示していると述べた。また、何人かの委員は、このところ需要側統計の家計調査でみた消費が、販売側統計でみた消費対比弱めである点について、毎月勤労統計との整合性を勘案すると、現在調査対象となっている世帯の収入の伸びが実勢より低く、消費の伸びにも下方バイアスがある可能性を指摘した。』(9月)

『ある委員は、耐久財以外の動向についても、しっかりと注視していく必要があると付け加えた。一方、別の一人の委員は、インターネット通販の販売額は4 月を底に順調な回復が窺われると指摘した。』(8月)

微妙に怪しげな数値が出ている件についての議論が色々でていますが、家計調査のサンプルに問題がある攻撃キタコレという所で、いやまあそうであればそれで良いのですけれども、得てしてこういう時は「自分の見立てに都合の良い統計が正しくてそうじゃないものはサンプルバイアスがある」という解釈をしがちなので注意した方が良いと思いますよ。

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善が続き、消費者マインドも改善していることを踏まえると、底堅く推移していくとの見方を共有した。この間、ある委員は、家計のマインドについて弱めの動きを示す指標があることから、慎重に見極める必要があると指摘した。』(9月)

『先行きの個人消費については、委員は、実質所得の押し下げの影響には注意が必要だが、雇用・所得環境の着実な改善が続いていることを踏まえると、底堅く推移していくとの見方を共有した。』(8月)

ということで、消費の先行き見通しはまあ当然ながら判断維持なのですが、ただまあ議論の部分に関する記述がくどくなっているのは背景に政策決定会合における見解の対立があるという事ではないかと思われます。


・生産に関しても見解の開きが拡大しているように見えるがやはり弱くなっていますな

『鉱工業生産について、委員は、基調としては緩やかな増加を続けているが、足もとでは駆け込み需要の反動の影響などから弱めの動きとなっているとの見方で一致した。』(9月)
『鉱工業生産は、委員は、足もとでは駆け込み需要の反動や輸出のもたつきなどを反映して弱めの動きとなっているが、基調としては緩やかな増加を続けているとの見方で一致した。』(8月)

これは声明文で示されている通り。

『この点、何人かの委員は、自動車など一部の業種では在庫調整が行われていると指摘した。』(9月)
『このうち多くの委員は、足もと、一部業種で在庫の増加や出荷・在庫バランスの悪化がみられることを指摘した。』(8月)

表現的には「在庫調整」と直球で書いてある今回の方が生産の現状に対する懸念を強くしているのですけれども、一方でその人数が「多くの」から「何人かの」に減少していまして、どうもこう執行部的な大本営発表台湾沖航空線大戦果ヒャッハー的な見解と野党審議委員のいやそのりくつはおかしい的な見解の差が拡大しているんじゃネーノと思われるところです。

『先行きについて、委員は、生産予測指数やサーベイ調査などを踏まえると、当面弱めの動きが残りつつも、緩やかな増加基調をたどり、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した。この間、ある委員は自動車産業から他業種に在庫調整が波及するリスクに注意する必要があると指摘した。』(9月)

『先行きについては、委員は、内外需要の動向などを反映して、緩やかな増加基調をたどり、駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとの見方を共有した。』(8月)

でまあここもワロタのですが、生産の先行き見通しについて8月は「内外需要の動向などを反映」だったのですが、9月は「生産予測指数やサーベイ調査などを踏まえると」となっていまして、先行き見通しの根拠が明らかに薄弱になっている(しかも生産予測指数とか今次局面で毎度毎度下方修正されているという代物ですし)というのが実に味わいがあるというものです。

・物価の議論も確認

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、プラス幅が幾分縮小する局面を伴いつつも、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。その先の消費者物価の前年比については、大方の委員は、マクロ的な需給バランスが着実に改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も上昇していくもとで、今年度後半から再び上昇傾向をたどるとの見方を共有した。』(9月)

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、プラス幅が幾分縮小する局面を伴いつつも、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方で一致した。その先の消費者物価の前年比については、大方の委員は、マクロ的な需給バランスが着実に改善を続け、中長期的な予想物価上昇率も上昇していくもとで、今年度後半から再び上昇傾向をたどるとの見方を共有した。』(8月)

ということでここの見方の文言だけは安定のカワランチ会長ですが、今年度後半って10月からだと思うのですが、「今年度後半から上昇傾向」というのと半年程度の期間を意味する「暫くの間は+1%台前半で推移」というのはそろそろ整合性が取れて来れなくなると思います。

『この点に関連して、複数の委員は、人件費を含むコストの上昇を企業が価格に転嫁する動きが物価押し上げに繋がっていくとの見方を示した。一方、ある委員は、小売データに基づく物価指数がこのところ下落傾向にあることを指摘し、駆け込み需要の反動減が長引くもとで、企業の価格設定スタンスが変化するリスクには注意する必要があると述べた。また、予想物価上昇率について、何人かの委員は、このところブレーク・イーブン・インフレ率が低下していることを指摘した。この点、多くの委員は、予想物価上昇率について、家計・企業・エコノミストに対するサーベイ調査や、市場金利など、様々な指標を用いながら、引き続き丹念に点検していくことが重要であると述べた。』(9月)

『この点に関連して、一人の委員は、既往の原油高や円安効果が剥落していくため、先行きの消費者物価の前年比伸び率の低下を懸念する声があるが、品目の相対価格の積み上げで物価予測を行うのは不適切であり、マクロ的な物価の決定要因である需給ギャップと予想物価上昇率に着目すべきであると指摘した。この間、複数の委員が、このところのサービス価格の動きに回復感を欠いている点には注意が必要であると述べた。このうち一人の委員は、企業が販売価格を持続的に引き上げるようになるためには、成長期待や将来所得の上昇期待が高まる必要があり、この点、政府による成長戦略の迅速な実行や企業による成長力や競争力を高める努力が欠かせないと述べた。』(8月)

ということで論点が違っているのでまあ8月分は観賞用に置いてみましたという感じですが、しらっと「小売データに基づく物価指数の推移」とか「BEI」とかの話が出ていて、物価は行くんです攻撃でどこまで突っ張って良いのですか大丈夫ですかという野党審議委員筋と見られる方々のツッコミの記述が目立つようになってきましたね。


・指摘している人がいましたか(・∀・)

つーても短国買入のマイナス金利が発生した(と思われる)のは9月9日の短国買入でしたので、この時点ではこの程度の指摘がちょっと入っている位なのは致し方なし。

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』にこんなのが。

『ある委員は、各種の指標をみる限り、国債市場の流動性がここにきて低下している訳ではないが、本行の買入れが国債市場の流動性や金利形成に与える影響については、引き続き分析していく必要があると述べた。』

まあ何ですな、これ10月1回目のMPMでどういう指摘があったか(ちょうど短国買入3.5兆円攻撃の直後でしたが)とか、次回展望レポートで金融政策の先行きに関する話もちったあするでしょうから(ちなみにアタクシは何か来年の政策に関する紙が出るとは予想しておりません)その時に短国市場破壊に関する問題意識があるのか無いのかを確認したいと思います。

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2014/10/10

○これはまたマニア悶絶の貨幣史シリーズ

http://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps14.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2014年収録分

こんなん出ました。
http://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/14-J-15.html
幕末期の貨幣供給-万延二分金・銭貨を中心に-藤井 典子

『幕末開港後のインフレ要因として、万延改鋳後の貨幣数量の増加が指摘されてきた。本稿では、この時期の貨幣数量に関する基礎データを得るため、新史料を用いて1858年から1867年にかけての貨幣数量を推計するとともに、幕府による貨幣の使途を分析した。』

ほうほう。

『推計結果から、貨幣在高(匁建て)の増加は、(1)万延改鋳の時期(1860から1861年)、(2)将軍上洛や内戦のために万延二分金が増発された時期(1862年から1865年)、(3)大政奉還直前の時期(1866年から1867年)、に分かれ、時系列データが整備されている匁建てでの物価の推移と類似することが観察された。地域的にみると、貨幣の払い出しは、上方や東海道に対して重点的になされ、全国に供給が行きわたっていたわけではなかった。』

『また、銭貨については、四文銭と百文銭の増加が目立った。この背景としては、物価上昇に伴う銭貨需要の増加に対応するため、幕府が一文銭に代えて、四文銭や百文銭の供給を増加させた側面があったとみられる。この間、銅一文銭は素材として海外に流出したこと等により、その在高は激減した。』

何という楽しそうな(マジで)シリーズということで、この前の金融史ネタに加え貨幣史ネタとかこの連休は大型台風も直撃するようですので嵐を避けてお読みになられるのが吉かと(ただしマニアのみ推奨)存じます。

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2014/10/09

○これはかなり面白いと思う日銀ペーパー

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/ron141008a.htm/
日本銀行のマクロ・ストレス・テストについて

『世界的な金融危機以降、金融システムのリスクを評価する手法の一つとして、マクロ・ストレス・テストが各国で注目を集めている。日本銀行も、金融システムレポートの中で、その時々の金融経済情勢を反映したマクロ・ストレス・テストを毎回実施している。本稿では、金融システムレポートで実施しているマクロ・ストレス・テストの枠組みを解説する。』

ほうほう。

『日本銀行のマクロ・ストレス・テストの枠組みは、日本の金融システムのリスクを的確に把握するため、改良を重ねてきている。現在の日本銀行のマクロ・ストレス・テストの特徴は、(1)金融セクターとマクロ経済セクターの2部門からなる中規模・構造モデルである『金融マクロ計量モデル』を用いて、金融と実体経済の相乗作用を取り込んでいること、(2)金融セクター全体の集計値だけではなく、個別金融機関の自己資本比率や資金利益等の動きも分析できること、である。』

ということで本チャンはこちらにある(結構量があるので注意)
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2014/data/ron141008a.pdf

・・・・・・・なお、「日本銀行の」マクロストレステストですが、別に日銀ポートフォリオのマクロストレスをテストしている訳ではありませんので念の為申し添えます。

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2014/10/08

お題「決定会合レビューだが声明文が更にヘッジクローズ満載&その他悪態ネタがががが」

何か知らんがおはぎゃあでございますが、昨日のこちらも何というかアレでございまして、物価を上げれば全てうまく回りだすというのを過大評価しててこの手のデメリットの検討というか覚悟(強引な政策で均衡脱却するんだから仕方ないのですよね)をきちんとレビューして居なかったツケが回ってきましたなあという感じで。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2014100700428
「低金利政策見直しを」=自民総務懇談会
(2014/10/07-13:01)2014

しかし物価目標までまだまだなのにここで円安デメリットとか言ってどうしますねんというかもう話が段々ハチャメチャになってきているのはそもそも置物師匠とかの理論が「個別では筋が通っているけれども全体の整合性が無い」というのに鏡写しみたいなもんでしょうかねえ。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ND1PRL6JTSEA01.html
円が反発、安倍首相発言受け買い強まる−日銀は現状維持決定
更新日時: 2014/10/07 16:26 JST


○決定会合レビュー:声明文は益々ヘッジクローズが増えるの巻&先行き見通しに謎文言発生

てな訳で色々と味わいのある決定会合声明文でありましたが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k141007a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140904a.pdf(前回)

英文バージョンはこちら。
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k141007a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140904a.pdf(前回)

・現状判断はまたまたヘッジクローズが増える

『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響から生産面を中心に弱めの動きがみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(今回)
『わが国の景気は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動がみられているが、基調的には緩やかな回復を続けている。』(前回)

ということで現状判断の総括判断に関してはついに「生産面を中心に弱めの動き」というのを入れて来ましたが、総括判断としては「基調的には緩やかな回復」となっている辺りは往生際が悪い訳ですが、何せここを変えたら政策変更になりますので、ポツダム宣言受諾モードになるまでここの判断は上方修正されることはあっても下方になることはありませんな(ニヤニヤ)。

これを英文バージョンで見ると分かりやすいですけれども(毎度申し上げていますが英文はあくまでもサプリメンタルなもので本チャンではありません)。

『Japan's economy has continued to recover moderately as a trend, although some weakness particularly on the production side has been observed due mainly to the effects of the subsequent decline in demand following the front-loaded increase prior to the consumption tax hike.』(今回)

『Japan's economy has continued to recover moderately as a trend, although the subsequent decline in demand following the front-loaded increase prior to the consumption tax hike has been observed.』(前回)

主文は「Japan's economy has continued to recover moderately as a trend」ですので、総括判断そのものは変わっていない、というのが英文を読むと分かりやすいと思いますが、その後にあるalthough以下の部分が更にああでもないこうでもないとなって言い訳モードになっている辺りが実に味わいが深いというものです(というか見苦しさが増しているのだが)。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している。輸出は弱めの動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、緩やかに増加している。公共投資は高水準で横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

需要項目別に関してですが、海外、輸出、設備投資、公共投資までは前回の判断を踏襲しています。

『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響は、ばらつきを伴いつつも全体として和らいできている。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境が着実に改善するもとで、基調的に底堅く推移しており、駆け込み需要の反動の影響も徐々に和らぎつつある。』(前回)

個人消費ですけれども、主文の方は同じですけれども駆け込み需要云々の件については一瞬上方修正しているのか下方修正をしているのか分かりにくいですが、結論が「和らいできている」になっているので上方修正(というか好転方向)になっています。これまた英文を読むと判りやすい。

『Private consumption has remained resilient as a trend with the employment and income situation improving steadily, and the effects of the decline in demand following the front-loaded increase have been waning on the whole, albeit unevenly.』(今回)

『Private consumption has remained resilient as a trend with the employment and income situation improving steadily, and the effects of the decline in demand following the front-loaded increase have gradually begun to wane.』(前回)

主文は同じでして(日本語が同じなのだから当然)、and the effects of the decline〜以下の部分ですが、英文だと「have gradually begun to wane」から「have been waning on the whole」となっているので、内容的には駆け込み反動の影響による減少が消える云々が始まったという表現から現在進行(完了)形になっているのでまあ普通にここも「影響が和らいでいる」というのを強めているんでしょうな。

しかしまあ日本語だと毎度見ているから目が慣れていますが、英文で「on the whole, albeit unevenly」とか書いてあるのを見るとやはりヘッジクローズてんこ盛りの見苦しさが目に付きますなあ。

『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。』(今回)
『住宅投資は、駆け込み需要の反動減が続いている。』(前回)

ここは同じ。

『鉱工業生産は、在庫調整の動きもあって、このところ弱めの動きとなっている。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は、基調として緩やかな増加を続けているが、足もとでは弱めの動きとなっている。』(前回)

生産は貫録の下方修正ヒャッハーであります。

『企業の業況感は、消費税率引き上げの影響などから改善に一服感がみられるが、総じて良好な水準を維持している。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となってる。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる(注1)。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

この注1部分がまたまた爆笑の発作を禁じ得ない物件なのですがその話は後ほど。企業の景況感に関しては短観の時になると出てくる奴でまあこれは妥当。金融環境と物価は毎度同じですなあ。


・先行き見通しが不変に見えるが不変じゃないとな!!!&2年で達成は骨抜きですねわかります

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復基調を続け、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動の影響も次第に和らいでいくとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

一瞬これ前回と同じに見えるのですが、透かし読みをしてみると字数が違うのであれれと思って良く見ると、今回「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動などの影響」という文言に前回までなかった「など」という必殺の万能ワードが入っているのがオソロシス。

では英文で当該部分を確認してみましょう。比較しやすくする為に文章を途中で切りますよ。

『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to continue its moderate recovery trend,』(今回)
『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to continue its moderate recovery trend,』(前回)

ふむふむ。

『and the effects including those of the subsequent decline in demand following the front-loaded increase prior to the consumption tax hike are expected to wane gradually. 』(今回)
『and the effects of the subsequent decline in demand following the front-loaded increase prior to the consumption tax hike are expected to wane gradually.』(前回)

ほうほうそうですかそうですかという所ですが、日本文だと「など」になっていますが、英文だと「消費税率引き上げの前に拡大した後に起きた減少を含む効果」というような文章になっていて、「など」というよりはニュアンス的にもうちょっと広くなっているように見えるのが味わいが深いというものですが、しつこく申し上げますが英文は参考資料です。

まあいずれにせよ見通しの主文は同じですけれども、それに付随する部分とは言え必殺ヘッジクローズの「など」が入ったのが実に味わいが深いなあとは思いましたが、これ透かし読みでもしないと中々気が付かないかもしれませんな(あたしゃ最初気が付かなかったですよ汗)、うんうん。

でまあそれはそれで味わいがあって実にアレなのですが、先行きの物価見通しに関して相変わらず今回も「暫くの間1%台前半で推移」と仰せでして、確か「2年で2%達成できなければ最高の責任の取り方は辞任」と仰せの方がいたと存じますが、「暫くの間」が半年程度の期間を意味すると1月の定例会見で黒田総裁が仰せでしたので、10月の時点で「暫くの間1%台前半で推移」ですと明らかに2年で2%の達成は間に合わないという正式見通しになりますが、これに関して置物副総裁の所感を小一時間問い詰めたいところではありますが、まあこの点は会見を聴いた限りではあまりゴリゴリ突っ込んで居なかったと思いますが、展望レポートがあるのでその時にという所でしょうか。



・リスク要因以降は前回と同じ

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。』(今回)

『「量的・質的金融緩和」は所期の効果を発揮しており、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(前回)

ということでこちらは同じでして、木内さんの提案も同じなのですが、「2年間程度の集中対応措置」という表現はさすがに残り半年なので止めた方が良いと思いますし、大体からしてこの表現だの「今から2年」と誤読されたら全然話が違う事になってしまうので表現変更を強く要望致します(どうでも良いけど)。



○決定会合レビュー:白井さんの謎提案キタコレ

全くもってこのお方は何なんでしょうかとしか申し上げようがない。

『(注1)白井委員は、予想物価上昇率の記述について、足もとでは横ばいになっている指標が多くなっているものの、やや長い目でみれば上昇傾向は続いている、との表現にすべきであるとして反対した。』(今回)

・・・・・・・・・・・・・??????????????

何ちゅうか貴女様の頭の中に詰まっているものはまさかオガクズか何かでいらっしゃいますかとお伺いしたくなるかのような表現変更でして、そもそも直接的な計測が難しくて総合判断しないといけない予想物価上昇率の部分について政策変更を伴わないのに表現を変更するというのが政策ロジック的に全然整合性が取れない話でありまして、こういう表現変更を提案するならそれにセットとして予想物価上昇率を望ましい水準に引き上げる為の施策を出さなかったらそれは政策当局者ではなくてただの傍観者でありますし、しかもインフレ期待の部分についてはまさにQQEの建付け的に金融政策で何とかしようというものでありますので、この提案しておいて政策変更提案無しという行動はそもそも論として現在の金融政策運営の建付けとなるロジックを理解していない事を意味しているのですが、まあオガクズ脳なので理解できていなくても致し方ないのかもしれませんね。

しかしまあ何ですな、このオガクズ先生は講演などで毎度毎度クソ長いけれども単に「ねえねえアタシってこんなに色々な事を知っているのよ凄いでしょう」という内容の文章を投下してヲチャーの時間を浪費させるのを得意技としておりますので、単なる自己顕示の世界で提案しているのかも知れませんが、もう一つのケースとしては昨年3月の謎提案によって自分だけ新体制に向けたゴマスリ提案をして他の政策委員に反対票を投下させてコミュニケーションをややこしくしたという実績がありますように、年金問題で散々引っ掻き回した挙句に具体的な話の前にコロンビア大学に逃亡するというどこぞの先生と同様に、沈没前の船から逃げ出すネズミのような動きを示しているのかも知れず、ただの自己顕示ならばどうでも良いのですが、もしかしたらドブネズミモードが入っているかも知れませんなあと思うのでありました。


○自己顕示といえばゴミのような質問で金融政策決定会合を中断させる馬鹿のホームラン王がいるようで

声明文は「以上」ということで終わりなのですが、3ページ目に『(参考)』というのがありまして・・・・・・

(参考)
・開催時間――10月6日(月) 14:00〜16:18
10月7日(火) 9:00〜9:54、11:22〜13:49(注)
(注)会合は、黒田委員の国会出席のため、9:54〜11:22の間、中断した。

ということで、ご案内の通り国会出席がありましたが、質疑の内容はと言いますと(詳しくは国会会議録が出るのですが数週間程度後になるので直ぐには判らん)・・・・・・・・・・

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ND1ZZK6KLVRE01.html
日銀総裁:「円安で問題生じてない」、見通し下振れれば緩和
更新日時: 2014/10/07 12:44 JST

『民主党の福山哲郎氏の円安についての質問に対し、黒田総裁は「円安が輸出、グローバルに展開している企業の収益、設備投資等に一定のプラスの効果がある一方、輸入コストの上昇、あるいはその価格転嫁を通じて、特に非製造業の収益に押し下げ圧力として作用するということは事実」と述べた。その上で、「その影響は産業や企業規模によって異なるが、一般論として言えば、経済や金融のファンダメンタルズを反映した形で円安になるということであれば、多分、全体としてみれば景気にとってはプラスであろう」と指摘。「金融あるいは経済のファンダメンタルズを反映して為替レートが動くことは経済にとって、全体としてマイナスではない」と語った。』(上記URLより、以下同様)

金融政策決定会合を止めてまで質問するのですからさぞかし緊急性と重要性の高い質問をしているんでしょうねえ福山哲郎先生。

『どういう状況になれば追加緩和の引き金を引くのか、という質問に対しては、「これまでのところ2%の物価安定目標の実現に向けた道筋を順調にたどっている。したがって、2%の物価安定目標の実現を目指して、これを安定的に持続するために必要な時点まで量的・質的緩和を継続していくことが重要だ」と言明。 その上で、「何らかのリスク要因で見通しに変化が生じて、2%の物価目標を実現するために必要になれば、調整を行う。具体的には、見通しが下振れになった場合は当然、調整は追加緩和になろうと思っている」と語った。』

・・・・・・・・・えーっと質問は「円安の影響」と「追加緩和について」のようにお見受けしますが、それのどこが金融政策決定会合を止めてまで行う程の緊急性と重要性を伴った質問なのか全く理解致しかねるのでございますが、もしかして福山哲郎委員様の自己顕示アピールだけの為に政策決定会合という大変に大きな資源を投下して、しかも市場に大きな影響を与える行事を中断させたのでしょうかと疑問を呈したいところでございまして、まあこの一件で福山哲郎先生のお名前は金融市場に轟き渡る事になりましたので、自己顕示が出来て大変良かったですね悪名だけどと存じます次第。

まあ可及的速やかにこういうホームラン級の馬鹿者は議員バッチを外される事をお勧めしたいと思うのでございますが、どうしても質問しないといけない超重要問題であったというのであれば福山哲郎先生の見解を是非お伺いしたい訳で、実は超重要で緊急性を要するような質問をしたのにニュースになっていないだけだったというのであればこの部分は全面的に撤回して深く陳謝しないといけなくなるので説明プリーズという所ではありますな、うんうん。

#そういや昨日の国会と言えば団扇のニュースを国営放送で全然やっていませんでしたが(銃声)


○決定会合レビュー:その他少々

同日にこれも公表されていましたけどね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel141007a.pdf
「適格担保取扱基本要領」の一部改正等について

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、下記の諸措置を講ずることを決定しましたので、お知らせします。本件は、適格担保の担保価格等に関して金融市場の情勢等を踏まえて行った定例の検証の結果に基づき、本行資産の健全性および市場参加者の担保利用の効率性を確保する観点から、適格担保の担保価格等を見直すものです。』

ということで、これは単なるテクニカルな定例見直しでして、最近は皆さんも見慣れたようで特にどうというのもありませんけれども、この定例見直しは基本的に対象となる資産の直近までの値動きを基に機械的に担保掛け目を変更するものでして、掛け目がどう変わっているのかを見ると市場の値動きを思い出して味わいというか感慨がわいてくるものです。


あと会見なのですが、今回の会見は(詳しくは会見要旨が本日出るので明日)為替市場の質問ばかり飛んでいまして、しかもその質問の聞き方がゴミとしか思えないものが並んでいて(唯一上手い質問だったのは某地方紙の記者さん(と聞こえましたが)による質問)実に悲惨なクオリティだわ、マイナス金利定着オペの質問は誰もしないわということで、ある程度そうなるだろうなあとは想定していましたが想定を上回る低クオリティに落涙を禁じ得ません。

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2014/10/02

○短観は久々に「先行き見通しの未達」キタコレでありましてですなあ

ということで短観。
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1409.pdf

ヘッドラインの数字は製造業大企業DIが市場予想より上に振れて非製造業大企業DIが市場予想より下に振れるという解釈に困る内容な上に、足元鉱工業生産とかの指数を見るとどう見てもうんことしか思えない状況なのになぜか短観の設備投資とかのDIは強いというマインド指数とハードデータの相違が益々高まるという謎展開でして、これはまあ解釈が如何様にも出来るので来週のMPMでは大本営発表もとい見通し通りに展開しているという話になるだけでしょうなあと思われる次第。

ただですな、あたくしがだいぶ前から短観の手抜き観察してて見ている「先行き見通しの達成状況」が今回久々の未達となったのが気になるのですよね・・・・・・・

・前回の先行き予測DIの達成状況

         (6月時点)     (9月時点)
         現状→9月予測    現状→12月予測
製造業大企業   +12→+15     +13→+13 
製造業中堅企業  +6→+8       +5→+5        
製造業中小企業  +1→+3       ▲1→0

非製造業大企業   +19→+19   +13→+14
非製造業中堅企業  +10→+8    +7→+7
非製造業中小企業  +2→0       0→▲1

前回あたくしこんな事を書いているのですよ。

(ここから7月2日に書いた駄文の再掲)
ただまあ若干気になるのは9月予測数値が製造業で上向きになっている事で、それ自体は別に悪い話でも無いですし、消費税増税の影響が懸念ほどでは無かったからという事を示しているのかもしれませんが、基本的に回復局面での短観の先行き予測数値というのは傾向として慎重な見方(つまり先行きは基本現状よりも下を向く事が多い)を示すものという風に記憶しておりまして、今回この水準から上向き予測になっているのはマインドの好転と言えばそうなのですけれども死亡フラグのような気もせんでも無い所が引っ掛かります。とは言いましても増税という特殊要因が入っているのでまあ今回の数値は外れ値の可能性もあるのでフラグキタコレとはならんとは思いますけどね。

と申しますのは、非製造業の先行きに関しては横ばいないし下ですが、こちらは概ね昨年9月短観辺りでの現状と先行き見通しの乖離位の水準(絶対値もほぼこの辺)なので、まあこんなもんかなと思いますし、非製造業的には消費税増税要因の直接的な影響は一巡しましたという感じですかねえ良くわかんないけど。
(再掲終了)

で今回はご覧のとおりで6月時点の予測よりも9月の数値がほぼ悪化(非製造業中小企業だけ予測指数通り)している所がアタクシ的にはマズーじゃねえのと思う所でして、基本的に景気が上を向いてきた時というのは前回の予測指数対比で足元の数値が上振れる(つまり見通しが慎重という意味)のですが、これが下振れに転じた時(つまり見通しよりもその後の状況が宜しくないという意味)って短観DIもその後コケるというのが傾向としてはあるように見えます、というか時系列データを日銀のサイトから落としてきて表計算ソフトでグラフでもちょちょいと作れば何となくそれらしく見えるのですよね(^^)。

でまあめんどいので大企業の方だけちょっと見たんですけど、まあ2004年からの時期だと予測指数未達だけどその後また戻るの巻という傾向もありますので、足元の動きについてもうだめバイと言い出すほどでは無いとは思うのですが、その前(平成バブル崩壊以降)とかその後(リーマンショック以降)とかですと予測指数達成度合いが未達方向に振れてから短観DIもその後ズルズル落ちるという動きがあったりしますので(別に難しい作業要らないですから興味のある方はご確認あれ)、次回短観辺りで「踊り場」なのか「やっぱりだめバイ」なのか見えてくるという話っすかねえとは思いますが、てきとうにグラフ作ってビジュアルで見る(自助努力でお願いします^^)と製造業は踊り場っぽいけど非製造業は何かヤバそうな感じに見えますので念のため申し添えます。

ちなみに、前回「予測DIが未達」だったのは製造業大企業で2012年9月および12月短観、非製造業大企業で2012年12月短観だったりします。


・雇用判断DI(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業  +2→+1       ▲1→▲1
製造業中堅企業 ▲2→▲4       ▲7→▲9
製造業中小企業 ▲1→▲6       ▲5→▲8

非製造業大企業   ▲14→▲14    ▲16→▲17
非製造業中堅企業  ▲15→▲18    ▲18→▲23
非製造業中小企業  ▲18→▲23    ▲21→▲27

DIの達成度合いが未達キタコレとなっている割には雇用判断の方はやたらと強い(労働需給的に)内容になっていて、これは何ですねんという感じで非常に判断に苦しむ内容。まあ毎度毎度ここの数値は日銀的にニッコリの内容が続いているのですが、今回は更に日銀ウハウハの展開で、恐らくというかまず間違いないと思うのですが、日銀の説明的には「雇用情勢が強いので雇用者所得の拡大は継続して、所得の拡大から内需の堅調さが続くので景気も物価もヘーキヘーキ」という話になると思いますので、さっきの未達云々は華麗にスルーされるものと思料されます。


・価格判断DI

昨年9月短観からしらっと投下された物件。

販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業  ▲2→▲2        ▲4→▲4
製造業中小企業 ▲4→0         0→▲2

非製造業大企業  +8→+6      +4→+6
非製造業中小企業 +2→+4      ▲2→+2


仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

        (6月時点)        (9月時点)
        現状→9月予測       現状→12月予測
製造業大企業  +20→+19       +17→+18
製造業中小企業 +40→+43       +38→+43

非製造業大企業  +23→+22      +21→+22
非製造業中小企業 +33→+34      +29→+33

つーことで販売価格判断DIが前回の予測が未達になっているというのが実にこうアレな状態になっておりまして、物価目標達成ェ・・・・・・・という所ではあるのですが、企業収益的な観点からすると仕入価格判断DIの方も前回の予測が未達になっているという結果になっていますので、そういう意味ではチャラではあるのかねと思うのでありました。


・毎度お馴染み金融商品取引業の業況判断DI

毎度お馴染み金融商品取引業業況判断DIですが。

        (6月時点)       (9月時点)
        現状→9月予測      現状→12月予測
金融商品取引業 +14→+35   +22→+35

最近謎にあまりぶれなくなっているのと、予測が相変わらず楽観的というのは何でそうなっているのかが良く判らんですが、DIがあまりぶれないというのは市場のボラが低下している事と関係あるのかねとか思ったり思わなかったり。


・その他で言えば設備投資とか需給とか在庫とか

まあその辺は本職の方々が分析しておりますからご案内の通りだとは思いますが、設備投資がハードデータ対比で妙に強い数値が出てねえかというのがある一方で、需給判断DIとか在庫判断DIとかを見るとどう見ても在庫が増えて需要の方は伸びイマイチというような数値になっているのに、何で雇用と設備投資の判断がやたらめったら強いのよという辺り、何かやや謎が多い短観ではあります。

まあ何ですな、最近鉱工業生産の予測指数が全然当てにならないという流れとかがあるのを見ますと、足元の業況判断DIの未達も含めてマインド系の指標って無駄に強めに出ているようにも見えるのですけれども、実際の所は今後のハードデータを見るしか無いんでしょうなあという所で。

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2014/10/01

○これは素敵なペーパーが出ております!!!

http://www.boj.or.jp/research/imes/dps/dps14.htm/
金融研究所ディスカッション・ペーパー・シリーズ
2014年収録分

今回の更新分で何が垂涎かと申しますと、ジャンルの「金融史」モノが2本出ていることでありまして・・・・・・・

http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/14-J-13.pdf
日本銀行の対民間信用供与における「国債担保貸出」の位置づけについて

http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/14-J-14.pdf
1980年代における金融政策運営について:アーカイブ資料等からみた日本銀行の認識を中心に

ちなみに両方とも結構な量なのですけれども、今日は後者の方からちょっとだけ。

(再掲)
http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/14-J-14.pdf
1980年代における金融政策運営について:アーカイブ資料等からみた日本銀行の認識を中心に

・冒頭部分を読んだだけでもう涎が(^^)

本文に入る前の目次を見ただけでも既に涎が出てくるのですが(^^)、章の見出しだけを引用しますとこの通り。

『T.第 2 次石油ショックへの対応(1978 年末〜1980 年夏)
U.為替相場を意識しながらの公定歩合引き下げ(1980 年夏〜1981 年前半)
V.貿易摩擦に配慮しながらの慎重な緩和(1981 年後半〜1983 年秋)
W.貿易摩擦の拡大と金融政策、日米円ドル委員会(1983 年秋〜1985 年夏)
X.「国際政策協調」の進展と金融政策(プラザ合意からルーブル合意まで)
Y.内需主導の経済成長と金融政策(1987 年春〜1989 年春)
Z.金融引き締めとその継続(1989 年春〜1991 年夏)』

もう見出しを見ただけでお腹一杯になれますけれども(^^)、要するに金融政策運営が国際協調とか為替とかそっちに従属して動いている期間が長くて、まあその結果がお察しの結末となったという話でして、本文1ページの部分の『はじめに』の所に詳説がありますのでその辺でも。

で、話の流れから「はじめに」の途中となります本文2ページ目から引用します。

『この時期の金融政策運営を歴史的観点からみると、以下に挙げるように、金融政策運営上の教訓となる大きな経済変動を経験する中で、その後の金融政策運営の柱となった考え方や金融調節手法等が生まれるきっかけとなったという点で、大きな転換期であったと位置付けることが可能である。』

新金融調節キタコレですねわかります。

『このうち、金融面の不均衡の問題(バブルと金融政策との関係)については、これまでも採り上げられることが多かったが、対外不均衡是正への配慮から中長期的な物価安定を目指す方向への移行、金融自由化の進展に対応した金利機能の活用という観点でも、1980 年代は転換点として重要な位置づけにあるということができる。』

まさにそうですな。

『@ 80 年代を通じ、対外不均衡是正に配慮した金融政策運営を行わざるを得ない状況が長く続いたが、80 年代末になると、政策運営上、中長期的な物価安定を目指す方向へと徐々に移行していったこと。』

『A この間の資産価格やマネーサプライ、銀行貸出の大幅な変動については、相応の注意は払われていたものの、そのマクロ経済への中長期的な影響に関する評価は不十分なものであり、この経験と反省が、中長期的な物価安定を達成するうえで金融面の不均衡にも配慮するとの、その後の日本銀行の金融政策運営に対する考え方につながっていったこと。』

『B 金融自由化の進展に対応するため、従来の規制金利体系を前提とする金融政策運営手法から、短期金融市場の金利機能を活用した金融市場調節中心の金融政策運営手法への転換に着手したこと。』

ということでAの所の説明をもうちょっと引用します。

『・後世からみてバブルの拡大を許したとされる 88 年において日本銀行は、本格的な引き締めに移行しなかった。その背景には、それまでインフレを助長しかねないとして警戒していた投機的な動きが一服する一方で、高成長を前提とする設備投資の増加が供給能力の拡大を通じて物価安定に寄与すると考えており、むしろ引き締めの必要性が若干薄らいだと考えていたことがあるように窺われる。』

『・ 引き締めの効果が拡がりつつあった 90 年末以降については、景気の腰は強いとの見方を維持し、バブル崩壊に伴うバランスシート調整の潜在的な影響を深刻に受け止めることはできず、むしろバブルに陥った経済の正常化が日本経済の健全な発展につながるとの考え方に立って、91 年前半まで引き締めを継続した。』

バランスの良いレビューですな。で、その次が何気に味わいががががが(^^)。

『・日本銀行は、70 年代後半以降、金融政策運営にあたってマネーサプライを従来以上に重視するようになった。もっとも、日本銀行は、マネーサプライを公式に金融政策の目標と位置付けたことはなく、あくまで、金融政策運営上、他のさまざまな指標とあわせて注意を払う情報変数のひとつとして位置付けていた。』

なるほど。

『また、80 年代に入ると、金融自由化の進展により、マネーサプライと物価との関係が不安定化したこと等が指摘された。日本銀行は、他の指標とあわせてマネーサプライにも一定の注意を払いつつ金融政策を運営するとのスタンスを継続したが、80 年代後半にはマネーサプライの高い伸びが観測されていた時期があったにもかかわらず、物価が安定していたこと等から、長期にわたり金融緩和を続けた。』

直線番長ェ・・・・・・・・などとツッコんではいけません。


・参考資料がこれまた味わいが

最初の所に戻って引用しますけどね。

『本稿では、日本銀行金融研究所アーカイブ保管資料(以下、アーカイブ資料)をはじめとする同時期に作成された資料を活用しつつ、金融経済情勢や金融政策運営について、当時の日本銀行からみた認識を整理する。』

『日本銀行アーカイブには、当時の日本銀行が作成した資料が数多く残されている。著者たちは、多くのアーカイブ資料を読んだが、これらのアーカイブ資料の中でも、日本銀行内部の会議である支店長会議や民間銀行首脳との懇談会などの場で総裁が行った挨拶の原稿、総務局長・営業局長から支店長あての私信形式の通知類は、当時の政策関係部局が作成したものであり、日本銀行の情勢判断や政策スタンスを知る上で貴重な情報を含んでいるように窺われた。』

これは凄い。

『本稿では、これらの資料のほか、日本銀行が発行した『調査月報』や外部の出版物を通じて日本銀行関係者が明らかにした見解等から示唆される経済情勢認識や政策運営に関する考え方について整理することにする。』

てなことで、脚注の所を見るとこんな説明があります。

『3 資料をみる限り、本稿が対象とする時期において、支店長会議は年 4 回(1 月、4 月、7月、10 月)行われ、その席上における総裁挨拶の原稿は、総務局長(機構改編のため1981年2 月以前は総務部長、1990 年6 月以降は企画局長)名で、事後的に局室研究所長、支店長、海外駐在参事あてに通知された。また、地方銀行首脳との懇談会は年9 回行われ、その席上における総裁挨拶は、総務局長名で、支店長、事務所長に通知された。外部には支店長会議における総裁挨拶要旨を公表していたが、これらの総裁挨拶では、金融経済情勢のほか、当面の政策スタンス、やや長い目でみた政策運営上の課題等について、より踏み込んだ見解が示されている。』

『4 「総務局長(総務部長、企画局長)私信」は、随時、総務局長の個人名で支店長あてに通知された。また、「営業局長私信」は、随時、営業局長の個人名で支店長、事務所長あてに通知された。いずれも、職名としての局長ではなく局長の個人名で発出されたものではあるが、そこに記述されている情報は、組織として共有されたと考えられる。このうち、金融政策変更時に発出された「総務局長私信」には、政策判断の背景等について、同時に対外公表された文書より踏み込んだ記述があるように窺われる。また、「営業局長私信」のうち四半期毎に送られていた通知では、窓口指導の基本方針、およびその背景となった市中銀行の融資姿勢や貸出先の資金需要に関する情報が記載されている。』

・・・・・・・・もうここの文言を見るだけでお腹一杯になれますが、『1 日本銀行金融研究所アーカイブは 1999 年に発足し、歴史的資料の収集・保存・公開を順次進めている。2014 年3 月末現在、約81,000 フォルダーの資料が目録に掲載されている。』との事ですので更にワクワクテカテカですな。


・・・・・・・・てな訳で、イントロのイントロの部分だけ引用しましたが、途中の「コラム」でも『コラム 3 金融自由化と短期金融市場運営の見直し』とか『コラム 4 窓口指導の推移』とかあって涙がちょちょ切れそうなのがあります(というか面白かったですよ)ので、その辺からちょこちょこ見ていくのもオヌヌメしたいと存じます。

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