決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2021年度下期に書いた分)

トップページへ

見出しはこちら(追いかけ建設中なのは勘弁島倉千代子)
2021年度までの見出しはこちら
2010年度までの見出しはこちら

(メモ:各記事へのリンクの貼り方を6年分キャッチアップの儀と共に簡略化。全部日付のみにする)

下期の見出し

2022/01/26「基調的インフレは刈込平均と最頻値が上がるが品目数ベースが伸び悩みとはナンデスカ」
2022/01/25「MPMプレビュー今更ジローネタで展望レポートの鏡を見るがこれ無茶苦茶上方修正なんですよね定性的には」
2022/01/19「決定会合レビュー:政策は変更なくて貸出増加支援は相変わらずノーズロで継続」
2021/12/29「10月決定会合議事要旨:まああんまり大した話はしておりませんが12月主な意見との物価記述の差でも確認しましょう」
2021/12/28「12月会合主な意見は物価の部分が強くなった以外は相変わらずしょうもない内容」
2021/12/20「12月決定会合ではコロナオペ限定とはいえQQE以降では珍しく「手段の切り分けによる取捨選択」が行われる」
2021/11/19「9月会合議事要旨の内容が相変わらず貧弱な件について」
2021/11/11「10月会合主な意見を見たが考察に深みもなければ意味もないというタコ物件で審議委員の程度の低さに泣いた」


2022/01/26

〇基調的インフレは刈込平均と最頻値が上がるが品目数ベースが伸び悩みとはナンデスカ

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

例によってPDFの図表を見ると刈込平均が良い感じで来ているように見えますが
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf

エクセルちゃんの方を見まして、前回の数字に直近のを加える、という手抜き攻撃をしますと(本当は遡及改訂入ることがあるのでちゃんと貼り直しすべきです、サーセン)。

暦年2020年は15年基準のCPI、2021年は20年基準のCPIがベースになっています。例によって例の如く左から順に刈込平均値、加重中央値、最頻値。

Jan-20 0.3 0.0 0.3
Feb-20 0.2 0.0 0.3
Mar-20 0.1 0.0 0.2
Apr-20 -0.1 0.0 0.3
May-20 0.0 0.1 0.3
Jun-20 0.1 0.1 0.3
Jul-20 0.0 0.1 0.1
Aug-20 0.0 0.1 0.1
Sep-20 -0.1 0.1 0.2
Oct-20 0.0 0.1 0.3
Nov-20 -0.1 0.1 0.1
Dec-20 -0.3 0.0 0.1

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2

Dec-21 0.9 0.1 0.3

(11月までは前月に公表されていたデータをそのまま貼り直しましたので遡及改訂があったらゴメンチャイ、今日はちょっと時間が無いので手抜きしました)。

最頻値の+0.3ってのは割と高めの数字でして、日銀謹製の集計エクセルの中では+0.5が目の子で見た感じ(max関数とか使えというツッコミはよくわかるのだが、汗)一番高めの水準になっているので、まああと二息って所ですな、うんうん。

上昇品目下落品目の構成も今回は手抜きで12月に出てた11月までの数字に今回の数字を拾って加えますという手抜きでゴメンチャイ。

左から上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率ですな。基準年はさっきと同じで暦年2020は2015年基準、21は2020年基準です。

Jan-20 61.8 36.5 25.2
Feb-20 60.0 38.4 21.6
Mar-20 57.9 40.5 17.4
Apr-20 58.3 39.2 19.1
May-20 59.1 38.6 20.5
Jun-20 59.7 38.0 21.6
Jul-20 54.9 42.4 12.4
Aug-20 53.7 43.6 10.1
Sep-20 56.0 41.3 14.7
Oct-20 54.9 36.5 18.4
Nov-20 51.2 40.2 11.1
Dec-20 48.0 43.6 4.4

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9

Dec-21 58.8 34.3 24.5

品目構成ベースではイマイチ盛り上がっていない、というのが面白みがありまして、価格の上がる品目と上がらん品目というのが明確に分かれていて、上がる品目の方はホイホイと上がり、しかもその幅が大きくなってきている、とかそういう事なんでしょうか?実は下がっている品目比率というのが9月辺りから安定して推移しているんですよね。

まあこの辺は物価統計の分析をきちんとしたことが無いので(本職の何とかストじゃないから勘弁してつかあさい)良くワカランチ会長ですすいません。
 

〇12月決定会合議事要旨(その1)珍しくちょっとだけ良い指摘があるような気がする

どうせ明日からFOMCシリーズになってしまいますのと、本日は時間があんまりないのでコロナオペ延長云々の所だけまずは見て後の話は後の話にします、すいません。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2021/g211217.pdf

『V.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から先である。

『以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。当面の金融政策運営スタンスについて、委員は、@特別プログラム、A円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、BETF・J−REITの買入れの「3つの柱」に基づく金融緩和措置は所期の効果を発揮しており、引き続き、この「3つの柱」により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要であるとの見解で一致した。』

所期の効果を発揮してるんなら何で物価2%、とかそういうツッコミは本日の趣旨ではないのでその次に行く。

『そのうえで、委員は、2022 年3月末に期限を迎える特別プログラムの4月以降の取扱いについて議論した。』

はい。

『委員は、金融環境は、2020 年春の感染症拡大直後には緩和度合いがいったん低下したが、特別プログラムの導入以降は、全体として改善しているとの評価を共有した。』

ほうほう。

『一人の委員は、今次局面では、日本銀行・政府の措置や、金融機関の積極的な対応もあって、企業の資金調達環境は、業況感の大幅な悪化に連動することなく、総じて緩和的な状態が維持されたと指摘した。そのうえで、この委員を含む多くの委員は、こうした政策対応は、その後の経済の回復や物価の下支えに、大きな効果を発揮してきたとの認識を示した。』

ほうほうそうですかそうですか。

『複数の委員は、特別プログラムの下支え効果として、企業倒産が歴史的な低水準に抑制されてきたことを挙げた。』

『別の複数の委員は、感染症拡大直後から足もとまでの金融環境の改善状況を踏まえると、感染症という非常事態への対応として導入した特別プログラムの一部については、所期の役割をおおよそ終えており、終了に向かうべきであるとの認識を示した。』

所期の役割が終わっている、という意味で言えば特別プログラム関係なくリスク性資産の買入ってリスクプレミアムの過度な拡大による悪影響を抑える、という意味合いから言ったら所期の役割を終えてるんじゃないでしょうか、と思う訳でございますが、この部分、先に行くとちょっといい話が出て来るので乞うご期待。

『こうした議論を経て、委員は、大企業では、CP・社債市場が良好な発行環境となっており、貸出市場でも予備的な流動性需要に落ち着きがみられることなどを踏まえると、コロナオペのうち大企業向けや住宅ローンが中心となっている民間債務担保分に加え、CP・社債等の買入れ増額措置については、期限どおり終了することが適当であるとの見解で一致した。』

そもそも論として「住宅ローン」って何でコロナオペに入れなければいけなかったのか、というのが未だに謎(でも何でもなくて、初期段階でコロナオペ残が頭打ちになった時にコロナオペの数字を作ろうとして住宅ローン担保証券をコロナオペ適格にした、というのは火を見るより明らかではあるのですが、その話はどうせ日銀が絶対否定する)で、結局曖昧なままかよという感じです。

あと、増額措置は良いんですけどそもそも必要なの?という話を今後するのかというと、この続きには何気に良い話がしらっとぶっこまれている。

『CP・社債等の買入れ増額措置に関して、複数の委員は、CP・社債の信用スプレッドがきわめて低水準となるもとで、企業の信用力に応じた金利形成が難しくなっているという副作用にも配慮すべきであると指摘した。また、一人の委員は、こうした市場機能への影響に加えて、年金・生保等の運用に与える影響にも配慮し、CP・社債等の買入れは平常化することが適当であると述べた。』

ほうほう。というかそもそも「正常化する」んだったら日銀が普段からのべつまくなしに買う方が正常じゃないんですけど、話がそこまで踏み込んでいるのかどうかはこの文面ではよくわからん。

でもって最後の「一人の委員」は鈴木さんだと思うのですが、市場機能とか年金生保とか言ってもその話は債券村の村民にしか受けないロジックなので、この話をするならば「資源の適正配分」という文脈で主張をした方が賛同を得られると思うの。まあ村民受けする話をしてくれるのもアリガタヤではあるのですが、村の外から賛同得られないと結局あの村は自分たちの事だけ内輪の論理で話をしているだけ、という扱いから中々抜け出せないんですよ。


でもって以下の話(存続する方のオペがどうのこうのとか特別付利の扱いとか)は飛ばしまして、MBの話がありましたのでそれも見てみましょう。


『また、委員は、今回の特別プログラムの見直しがマネタリーベース等に及ぼす影響についても議論した。』

キタコレ。

『ある委員は、今回の特別プログラムの見直しに際しては、経済や物価に悪影響がないことや、マネタリーベースの拡大方針との整合性を説明する必要があると指摘した。』

ほうほう。

『この点に関し、一人の委員は、2020 年春以降のマネタリーベースの増加は、感染症拡大による企業等の予備的な流動性需要の高まりに対し、日本銀行が潤沢な資金供給によって応えてきた結果であり、感染症の影響が和らげば、流動性需要の後退に伴い、マネタリーベースも減少する筋合いにあるとの認識を示した。そのうえで、この委員は、このようなマネタリーベースの変動は短期的なものであり、そうした変動を均した長期的なトレンドでみれば、マネタリーベースの増加基調は維持されるため、オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しないと述べた。』

まあその屁理屈は分かるんだが、だったらコロナオペぶっこんだ当初に3本の鉛筆出して数字をやたらアピールしたのは何だったのかと小一時間問い詰めたい。

『別の一人の委員は、イールドカーブ・コントロールのもとでは、マネタリーベースは長期金利の目標水準への誘導のための資産購入によって事後的に決まる側面が強いことから、マネタリーベースの一時的な減少自体には大きな意味はないとの見解を示した。』

『そのうえで、この委員は、特別プログラムは緊急時の流動性対策であり、通常のマクロ経済政策とは異なることを丁寧に説明すべきであると述べた。 』

ちょwww「マネタリーベースの一時的な減少自体には大きな意味はないとの見解」ってまあこれは置物系の人じゃないと思いますが、何ちゅうかこの置物理論形骸化攻撃ワロタ。

・・・・・・という辺りで本日は時間が無くなったので残りは後日成敗します。


2022/01/25

お題「MPMプレビュー今更ジローネタで展望レポートの鏡を見るがこれ無茶苦茶上方修正なんですよね定性的には」

値動きの後点け理由も難しい昨今の相場である。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2U43PD?il=0
2022年1月25日5:54 午前
米金融・債券市場=利回り低下、ウクライナ情勢緊迫化や米利上げ懸念で

ウクライナ情勢緊迫化で債券利回り低下⇒わかる
米利上げ懸念で債券利回り低下⇒え?え??

〇展望レポート基本的見解の鏡の所だけでも色々と味わいがあるのでとりあえず出遅れたが比較を

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2201a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2110a.pdf(前回)

・まあ上方修正でしょうと思っていましたが、昨年4月と同様に上方修正即コロナ拡大という間の悪さw

10月の展望レポートは明らかに「手前はさておきまして今後はアフターコロナですぜヒャッハー」というものでして(実際にコロナもそういう流れでしたわな)、今回の1月展望レポートはさらに一本踏み込んでいて、最早先行き見通しではコロナ云々とかナニソレ状態になっておりまして、コロナ後のニューノーマルに対してどうなのよ、という見通しを出しましたが、ちょうど昨年の4月に上方修正な展望レポートを出した途端にコロナがアイヤーとなったのはご案内の通りでして、日銀ちゃんって何でこー間が悪いんでしょうね。

まあ何ですな、ここからFEDが何をするとかECBが何をするとかそういうの見てから4月に見通しをバシッと引き上げれば良いような気もしないでもなかったのですが、まあゆうてみれば今回って「定性的に文章を見ると無茶苦茶(特に物価の)内容がクッソ強い見通しになっている」のだが、「出来上がりの物価見通し数字は大して上がっていない」というオモシロ見通しになっておりまして、このオモシロ見通しっぷりも良く分からんのですが、まあその辺を念頭に置いてまずは鏡から参りませう。

鏡と申しておりますが<概要>って奴ね。

・1ポツ目(経済の見通し):細々と色々なものを上方修正しているのだが「オントラック」ともいえそう

『・日本経済の先行きを展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(今回)

『・日本経済の先行きを展望すると、当面は、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押しの影響が残るほか、輸出・生産が供給制約により一時的に減速すると見込まれる。もっとも、その後は、ワクチンの普及などに伴い感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(前回)

前回時点ではサービス消費についてコロナの影響が「当面は残る」、輸出や生産が供給制約により「一時的に減速」でしたが、今回はそれぞれについて「〜が和らぐもとで」という事で、既にこれらについては徐々に回復していく、と決め打ちしてきてまして、当面の下押しの表現がサクッと削除されているのがセクシーですね。

まあそれが壮大なフラグ建築士になってオミクロンェ・・・・・・なのはアレ(日銀の新着が最近職員のコロナ感染のお知らせだらけになっているのは同情を禁じ得ない)なのですが、今まで程の経済への下押しは回避できる、という見通しなんでしょう。

あと、前回はワクワクチンチンパワーについての言及があって、ワクワクチンチンパワーで経済活動再開や!となっていたのですが、これも既に前提としてあるのでヘーキヘーキ、という話になったのですが、3回目接種がどうしたこうしたというのが出ている(というか直近ではそっちにリソース割いてる余裕があるんけ状態のようにもみえるが)のがこれまたアレですが、まあいずれにしましても前回も「コロナの先」の話が多く言及されていましたが、今回は明確に「コロナ後」の話をしているというのが特徴です。

そらまあ欧米の金融政策がコロナモード終了って言ってる中で日本だけコロナが下押しでうだうだうだ、と言ってる場合じゃない、というのもありますし、そもそも論からしてコロナ対処が進むことによって時間の経過と共に「アフターコロナ」になっていくのですから、10月見通しからオントラックで概ねメインシナリオ通りに進行している、ということでもあろうかと思います。

『その後も、所得から支出への前向きの循環メカニズムが家計部門を含め経済全体で強まるなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(今回)

『見通し期間の中盤以降は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが家計部門を含め経済全体で強まるなかで、わが国経済は、ペースを鈍化させつつも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(前回)

ここの表現も割と微妙な作りになっていまして、たぶん今日間に合わないのでどっかの土日祝日で纏めて成敗しなければとは思っていますが、展望レポートの本文中にはこの「その後」の時期について明確に記載されていまして、展望レポート基本的見解4ページ第3パラグラフに記載されているのですが、需給ギャップは「来年度前半頃にはプラスに転じ」とありまして、つまりは今年の7−9の辺りで需給ギャップがプラスになる、と時期を明確に書いてぶっこんできたのが特徴的です。

前回は「見通し期間の中盤以降に前向きの循環メカニズム」とあって、前向き循環するには需給ギャップがプラスになっていないと行けないから見通しとしてギャップのプラス転化は織り込んでいるのですが、その時期を今回のように示していないのは、まあ要するにヘッジクローズというか逃げ口上な訳でございますので、今回はそういう意味ではオントラックはオントラックでも先行き自信ニキはかなり確信しているという定性的には強い鏡1ポツ目になっておりますぞ。



・2ポツ目(物価の見通し):定性的には無茶苦茶強いのと「1%」を敢えて突っ込んだ理由が知りたい

問題の物価ちゃん。

『・先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格が上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、振れを伴いつつも、プラス幅を拡大していくと予想される。』(今回)

『・先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。』(前回)

ここで特筆すべきは見てもお分かりの通り今回「原材料コスト上昇」というのを加えたこと。もちろんコストプッシュの話ではあるのですが、一方で価格転嫁が出来るようになる、というのはそれだけ企業や家計が価格上昇に対しての許容(というか諦めかもしれませんけどそれはさておき)する動きになってくるのではないか、という日銀の認識を示している訳でして、まあこの辺は先日の12月短観での企業の物価、販売価格設定見通しの強気化や、アネクドータルなヒアリングなどを受けてのことでしょうが、ここが強くなるというのはデカいのでありまして、ただの一言追加ではなく、インフレ期待の上昇とかそっちのほうにまでつながるお話です。

『その後は、エネルギー価格上昇による押し上げ寄与は減衰していくものの、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどによる基調的な物価上昇圧力を背景に、見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くと考えられる。』(今回)

『その後は、一時的な要因による振れを伴いつつも、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調としては徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

後半も凄くて、今回の見通しの中に「基調的な物価上昇圧力」というのをぶっこんでいるのがこれまた物凄い勢いでの強気化になります。色々と特殊要因混じってますけど、22年度の見通しは押し上げ要因込みのものな訳で、それが剥落しても物価上昇率は下がらん、っていってるのについて、従来は何となくお気持ちでそういう数字になっている、という感がアリアリだったのに対して、今回は(たとえそれが希望的願望であったとしても)「基調的な物価上昇圧力」によって実力ベースの物価上昇率が高まっていきますよ、というのを鏡の前面に打ち出した(まあ従来から本文の願望見込みでは記載されていましたけれども自信ニキではなく願望見込みっぽいものでした)という訳ですので、これまた強いのよね定性的には。

然るに、出来上がりの物価の数字が大して変わっていない(22年度が+0.9⇒+1.0で23年度が+1.0⇒+1.1)というのは何ですねんという感じですが、どうせ今回思いっきりこの数字を引き上げると政策修正思惑の方がどうのこうのとか碌でもない事考えているんでしょうなあと思いました(個人の邪推です)。


でもって、さっきの所の最後、前回は「基調としては徐々に上昇率を高めていくと考えられる」だったのが今回は「基調的な物価上昇圧力を背景に、見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くと考えられる。」なので定性的な自信ニキもあるのですが、何故か今回「1%」という数字がドドーンと出てきたのが怪しくて、もちろん黒ちゃんのあの物言いからして、別に今すぐ政策どうのこうのの話が出る可能性は皆無でしょうが、この1%という数字は以前の麿ドクトリンにおいて「とりあえず現実的に目指せる1%を目指し、それを達成してから2%に向かおうではありませんか」という絵があったので、その絵を思い出させるような「1%」なのでありまして、別に黒ちゃんが元気満々なうちはこの1%もただの数字でしょうが、「主君押し込めモード」になった場合、不死鳥の如く蘇る麿ドクトリン、ということになりますと、1%達成は「中間目標達成!!!」という事を意味する数字になり得る(なると断言した訳ではありませんので念のため)ので、何かこう色んな所でトロージャンホースというか埋伏の毒というか、まあ微妙なサムシングを感じるのは考えすぎですかそうですか。


・3ポツ目:見通しの上振れ下振れは経済オントラック、物価は上振れって話ですわな

ここは前回比較しても仕方ないので今回のだけ。

『・前回の見通しと比べると、成長率については、2021 年度は供給制約の影響から下振れる一方、2022 年度は政府の経済対策の効果や挽回生産などを背景に上振れている。物価については、資源価格の上昇やその価格転嫁などを反映して、2022 年度が幾分上振れている。』(今回)


・4ポツ目:リスクには資源価格動向が追加投下されました

詳しくは本文の方を見ればよくわかるのですが、供給制約の部分を内外経済の両方に振り分けて資源価格の項目を増やした形です。

『・リスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。また、供給制約の影響を受けるもとでの海外経済の動向に加え、資源価格の動きやその経済・物価への影響についても先行き不確実性は高い。』(今回)

『・リスク要因としては、引き続き感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。とくに、感染抑制と経済活動の両立が円滑に進むかどうか不確実性が高いほか、一部でみられる供給制約の影響が拡大・長期化するリスクにも留意が必要である。』(前回)


・5ポツ目:リスクバランスはご案内の通り物価がバランスに引き上げ

『・リスクバランスは、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている。』(今回)

『・リスクバランスは、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクの方が大きいが、見通し期間の中盤以降は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、下振れリスクの方が大きい。』(前回)

ご案内の通りです。確かにここがバランスということになりますと、総裁会見でも質問があって昨日のネタにしましたように、コロナモード終了後の政策金利ガイダンスをどうするのか、という話になる訳でして、下振れリスクが大きいと見ているので「今の政策金利または下」というガイダンス文言を入れるのが理屈として正当化されますが、リスクがバランスだったら「または下」というのはさすがに書く理由がない(しかも物価のリスクまでバランスに昇格している)ので、真面目にこのガイダンス考えると中々ややこしいですな。

まあどうせ今の昭和温泉旅館金融政策なのでエイヤーで何かテキトーな理由をねじ込んでガイダンス文言を無理矢理ねじ込んで来るんじゃなかろうか、という位には今の日銀の没論理屁理屈大王ぶりを理解しておりますので、まあそこはあまりロジカルに考えても予想の観点からは無駄かな、とは思っておりますwwwww

#すいません時間の関係でこれで勘弁




2022/01/19

〇決定会合レビュー:政策は変更なくて貸出増加支援は相変わらずノーズロで継続

声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220118a.pdf

ちなみに前回声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217a.pdf

・片岡さんの反対理由はもっと進歩すべきである、やりなおし(審議委員はやり直さなくてよろしい)

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。』

例によって片岡さんの反対理由ですが、

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員。反対:片岡委員。片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。』

と実は脚注1を物は試しに12月会合声明文から貼ってみて文字チェックしましたが(^^)、いつもどおり同じでございます。

・・・・・・・えーっとですな、「企業の前向きな設備投資を後押しする観点から」というのが最近ずーっと片岡さん言ってるんですが、だったら企業の前向きな設備投資とやらの現在の金利状況における金利弾力性がどの程度あるのか、というのをちょっと示してくれないですかねえと思う訳でして、金利水準がダブルデジットとかそういうなら兎も角、銀行貸出も含めてクッソ低い中で金利弾力的な設備投資ってものがそもそも存在するのかよと小一時間問い詰めたい訳ですよ。

いやそうじゃなくて、需要予測とか企業側のアベイラビリティとかで決まる面が殆どじゃねえのかと素人(大昔は金貸しの手先をしてたが前世紀の話だからワイ完全素人)のイメージですになって恐縮ではございますが、そうなんじゃないの??と思います。

それにですね、そんなに企業の借入金利下げると設備投資が出る、ってんだったら何で前回会合のコロナ対策で拡大したCP社債買入の正常化に賛成するのよという所でして(あっちは全員一致なので片岡さんも賛成)、むしろ国債対比スーパーマイナススプレッドになるくらいまでCP社債をバンバン買いまくるって提案したら政策金利下げなくても企業の借入金利下がるんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)。

それよりも相変わらず物価が1%くらいにしか行かない見通しを平然と出すわ、それに輪を掛けて最近の黒ちゃんの会見では(政策修正はしない、というのを強調したいという気持ちが前面に出過ぎた結果として)「2%目標達成は見通せません!!」(キリッ)ってやってしまうというお前フォワードルッキングな期待形成に働きかけるんじゃなかったのかよと言いたくなるような情報発信に余念がないという日銀主流派の在り方について大いに論難すべきではないでしょうかね。

・・・・・まあ何ですな、以下「ぼくのかんがえたさいきょうのついかかんわりゆう」になってしまいますけれども、奇しくもあれは1月会合でしたが、2004年の1月に俊ちゃん総裁最後の当座預金残高拡大(当時の定義で金融緩和の拡大)をしたのですが、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2004/k040120.htm/
金融市場調節方針の変更について(2004年1月)

この時ってこれまでの「景気は回復していく」というシナリオ通りにオントラックで経済情勢が推移しているという判断の結果、情勢判断を上方修正していてるのに追加緩和措置を取る、というオモシロ政策を実施してて、会見要旨を見ると何か俊ちゃんの妖術で誤魔化しているという感じの無茶苦茶説明になっているのですが、まあ要は「押し上げ介入(って言われても今の若い衆は分からんですかそうですか)」みたいなことをしました、って話ですわな。

当時の俊ちゃんの会見
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2004/kk0401a.htm/

この時の俊ちゃんの言い草に

『昨年10月に発表した展望レポートの中で示した標準シナリオとの関係では、概ね標準シナリオの通りに経済は動いているが、先行きこれをさらに良い姿につなげていく必要がある。そうした意味で、現在比較的良い方向に経済が動き始めていることは、極めて歓迎すべきことであるが、これで満足してはならない。おそらく、民間企業や金融機関におかれては、構造的な改善を伴いながら、こうした好循環をより確かなものに持っていこうという努力と決意を固められつつある段階ではないかと思う。金融政策の面でも、こうした民間の決意と努力をさらにしっかりとサポートしていきたい。今回の措置の真の狙いはこの点にある。』(この部分だけ直上URLの2004年1月会合での福井総裁(当時)会見より引用)

というよく考えたらお前は何をいってるんだという理論がある訳で、どうせなら今回の展望レポートで物価の先行きに関する訂正判断が盛大に上がっているのを踏まえ、「物価上昇の流れを確かなものとするためにも日銀が追加緩和によって断固たる姿勢を示して2%物価安定目標達成に向けたフォワードルッキングな期待形成に働きかけるべき」位の気合重視の理由にすると、2013年当初の気合がすっかり抜けて腑抜けと化しているわ2%行かないとか連呼するわの黒ちゃんに喝を入れられて良いんじゃないですかねえ、とか妄想するのでした。


・またノーズロで延長か!

『2.日本銀行は、「貸出増加を支援するための資金供給」について、貸付実行期限を1年間延長することを決定した(全員一致)。』

またノーズロかという感じで、しかも今般なコロナオペが4月から徐々に期落ちを迎えるので、一部はこれをい受け皿にするでしょうから延長するんでしょうなというのは想定内なのですが、そもそも論としては金融環境は緩和的で金融機関の貸出態度は無茶苦茶にユルユルで、展望レポートの基本的見解でも「民間金融機関は積極的に金融仲介機能を果たしている。」となっております中で、いつまでこれ続けますねんというのは思いっきりある。まあ今はコロナからの回復期だからとか何とか言ってればよいのかもしれませんけど、ポストコロナとなっていく中で相変わらずのノーズロで良いのかねというのはある。


・フォワードガイダンスも変更なしですが・・・・・・・・・・

ここにきてガイダンス修正がどうのこうのとかそういう話もあるので再確認だわさ。

『3.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』

『引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、Bそれぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJREITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。』

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。』

だいたいからしてガイダンスてんこ盛りにも程があって、シンプルにしろやと思うのですが、これも昭和温泉旅館金融政策の弊害という感じでありますな。

分解すると(1)YCC+QQEのフレームワークのガイダンス(2)マネタリーベースのオーバーシュート型コミットメント(3)コロナ対応オペを運営しますよという話(4)コロナの影響次第では追加緩和をするよという話(5)政策金利は上げませんよという話、になります。

でもってこれ厳密に見ればコミットしているのは最初のパラにある(1)と(2)であって・・・・・

(1)はあくまでもYCC+QQEの枠組みを継続すると言ってるので金利水準がどうのこうのというのはコミットしていない(金利水準の話は(5)にある)ですな。

(2)はご案内のように、コロナオペで盛大に拡大したMBが4月以降徐々に落ちていく額が結構とんでもない額になるのですが、それでも「拡大方針は同じなので一時的に減るのは(50兆円とか落ちても)無問題」という最早それが「拡大方針」なのかよくわからんが、なにせオーバーシュート型コミットメントを引き合いに「FEDはワシが育てた」とか言わなきゃ良い事を言ってしまった謎の看板コミットメント

(3)はコロナ対応しますよという話なので別にコミットメントではない

(4)必要なら躊躇なく、って言ってるけど実際全然やらないんですから狼おじさんにも程がある訳ですが、これはただの決意表明であって、実際の行動を伴ない決意表明とかアル中の断酒なみにどうでもよいが一応書いてある。ちなみにコロナの前は「物価上昇のモメンタムが維持されなくなるようなら」だわさ(次でまとめて)。

(5)この「政策金利については」の文章に最初の「当面、新型コロナ・・・・」が掛かるのかどうか、というのが日本語ムツカシアルねで微妙なのですが・・・・・・・

コロナ前の声明文で2020年1月の声明文ですけど。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2020/k200121a.htm/

こちらの項番2を見ると、(ということで以下は2020年1月即ちコロナ前のガイダンス文言、長いので段落分けをします)

『2.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』

『政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』

『今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』

『特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる(注2)。』(この部分だけ直上URL先の2020年1月会合声明文より)

とあって、「躊躇なく緩和」と「政策金利」にモメンタムが紐ついていたので、まあその流れから言うと今回もコロナに政策金利が紐ついている感じですな。

・・・・・・はまあ良いんですけど、そもそもここの文言って以前からそうなのですが、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを「想定している」なのであって、別にコミットメントでも何でもない、という諸葛孔明の罠があって、ただ一方で会見のオーラルでは黒ちゃんが政策の修正は金輪際ありませんというのを無暗矢鱈と強調する、という流れになっていて、それが何か今回の会見では(ロイター報道とかがあったからそれに反発したかったんでしょうけど)更に暴走機関車モードになっておられますがな、という感じなのですが詳しくは本日会見要旨が出てから参ります。



・・・・・・・ということで昨日夜なべをしなかったツケが回ってきて(夏休み明けなんで・・・・)展望レポート基本的見解に辿り着く前に時間切れになってしまいましたサーセン。今朝はここで勘弁。



2021/12/29

〇虫干しネタになりますが10月決定会合議事要旨

まあ今更ジローではありますが。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2021/g211028.pdf

・10月展望レポート時点での物価に関する記述を確認しておきましょう

というのは昨日になって遅ればせながらネタにした「12月会合主な意見」での物価に関する委員の意見と比較しましょうかってな話の為ですが。

『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の『1.経済・物価情勢の現状 』における物価の話から。

『物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格などは上昇しており、0%程度となっているとの見方で一致した。』

というのは良いとして現状認識に関しては、

『複数の委員は、携帯電話通信料やエネルギー価格を除いた、実力ベースでみた消費者物価の前年比は、小幅のプラスとなっていると指摘した。このうちの一人の委員は、短観の各種指標にみられるように予想インフレ率が持ち直しているとの評価を述べたうえで、経済再開に伴う需給ギャップの改善等も踏まえれば、基調的な物価上昇圧力は、わが国でも徐々にではあるが、高まってきているとの見方を示した。別の一人の委員は、消費者物価指数を構成する品目のうち、感染症の影響から価格が下落していたとみられる品目が、このところ上昇に転じていることに注目していると述べた。』

これが10月末時点での認識なので、さっきの基調的な物価で見れば、

Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2

Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0

って辺りの時点での話ですから、こういう認識を複数の委員が示していて、でもって12月を迎えた結果12月会合主な意見の方で物価の話が(相変わらず9人中6人しか書いていないのがムカツクんですがそれはそれとして)威勢良くなっているのは当の然ということになるんでしょうな。

でもって(そういえば1月展望まで3週間切ってるのに10月展望の基本的見解本文ネタをすっ飛ばしておりますすいませんすいません)『2.経済・物価情勢の展望』という項目、即ち展望レポートの検討での物価の話の所を確認しますが、展望レポートに書かれている部分(最初の方に書いてある)のはまあ既知の話なので飛ばして内訳部分を見ると、

『こうした物価見通しの背景について、委員は、労働や設備の稼働状況を表すマクロ的な需給ギャップは、足もとではマイナス圏で推移しているが、先行きは、潜在成長率を上回る成長経路に復していくもとでプラスに転じ、見通し期間の中盤以降はプラス幅の緩やかな拡大が続くとの見方を共有した。』

中盤以降のプラス拡大ってのが眉唾ですがまあ先に行く。

『また、委員は、家計の値上げ許容度は賃金上昇率の高まりなどを反映して緩やかに改善するほか、企業の価格設定スタンスも徐々に積極化することから、コスト転嫁と価格引き上げの動きが拡がっていくとの認識で一致した。』

いやーアタクシ近眼老眼乱視の三段重セットで字が読めないせいか「賃金上昇率の高まり」という文字列が認識できないんですけど(自爆)。

『そのうえで、委員は、現実の物価上昇率の高まりは、適合的期待形成を通じて、家計や企業の中長期的な予想物価上昇率の上昇に繋がり、更なる物価上昇を後押ししていくとの見方を共有した。』

そら良いんだが、前回現実の物価上昇率の高まりによる期待は消費抑制につながった、というのは忘れないでもらいたい、と思ったがその時の当事者は当時の総裁の黒ちゃんと当時の理事の雨宮さんしか居なかったりするのでした。

『一人の委員は、世界的に気候変動問題への意識が高まり、石油・石炭が再生エネルギー等に代替される動きが続くもとで、エネルギー価格の上昇は長期間持続し、物価上昇圧力となる可能性があると指摘した。』

コストプッシュですけどね。

『ある委員は、経済正常化の進展に伴う需給ギャップの改善を背景に、既に大きく上昇している企業物価の消費者物価への転嫁が強まっていく可能性があるとの見方を示した。』

問題はここよ。この転嫁が回らないと賃金上げる原資が無いのですが、まあそれ以前の問題で企業が防衛的に動くと転嫁してもそれでホッとするだけでお賃金上げてくれないのよね。

『一方で、この委員は、日本では、コロナ禍でも企業が雇用をある程度維持してきたことから、米国のような人手不足による賃金・物価の急上昇が生じる可能性はそれほど高くないと付け加えた。』

と思ったらこの人賃金の指摘してるわ。ちょっと別ルートの理由だけど。

『別の委員は、輸入原材料の価格上昇を転嫁する動きが消費者物価を押し上げているが、わが国における賃金上昇や供給制約に起因する物価上昇圧力は弱いと指摘した。』

その通りなのだがそこを何とか持って行く話を日銀にはやってもらわんと困る。

『一人の委員は、消費者物価の前年比はプラスに転じたが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、予期できる将来において「物価安定の目標」の達成は難しいと述べた。 』

まあこれは片岡さんじゃないかな。

『こうした議論を経て、委員は、物価の見通しは、前回と比べると、消費者物価指数の基準改定の影響を主因に 2021 年度が下振れているとの見方で一致した。』

・・・・・・・・ということで、現状認識では割と威勢の良い意見が出るのだが、いざ展望レポートに落とし込むとなると、この時はCPI基準年改定によるマイナスがでかくてどよよーんとしていたから、というのもあるのかもしれませんけど、現状認識での威勢のよさはどこへやらという感じの尻すぼみになるのでありました。


・政策運営に関する部分で円安の影響の話があったとな

『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ですが、最近はあまり揉める要素(ジンバブエ要因)が無いのでおもんないのですが、10月会合では何と「円安の影響」でコーナーが設けられております。(そのほかが商品価格の上昇と金融政策、という言われんでも結果はお察しの話なのでそこは割愛します)

『更に、委員は、為替円安の影響についても議論した。』

「為替円安の影響」に地の文章ではアンダーラインが引いてあります。

『何人かの委員は、為替円安の影響について、輸出を押し上げる効果は従来よりも低下しているが、海外収益の増加や株高を通じて日本経済全体に対してはプラスに作用しているとの見解を示した。』

ほうほうそうですかそうですか。ちなみに12月会合の主な意見でも為替円安の話で意見言ってる人いましたね。

『一人の委員は、金融政策運営の観点から、為替円安の影響を考えるうえでは、経済全体へのマクロ的なインパクトの見極めが重要であるとの認識を示すとともに、同時に、業種や規模、個々の経済主体によって、その影響が不均一であることも念頭に置く必要があると指摘した。』

そらそうなんだが結論が無い。やりなおし。

『別の委員は、このところ円安等に起因する物価上昇がみられるが、現状ではインフレ圧力の強まりが日本全体の経済厚生を低下させる可能性は低く、強力な金融緩和を維持すべきであると述べた。』

実際問題として円安ファクターってそんなに効いてるのかねというのが良く分からんので詳しい人教えてちょ。

『ある委員は、足もとの為替円安は、各国の物価上昇率や金融政策スタンスの違いを反映していると述べ、為替円安の影響を議論する際には、実体経済や金融市場を通じた様々な波及経路を総合的に考慮する必要があるとの見方を示した。』

そらそうなんだが結論が以下同文。

『複数の委員は、為替相場や資産価格は金融政策の重要な波及経路ではあるが、それ自体が目標ではないことにも留意すべきであると述べた。』


・そういえばどうでもよいですがマリーアントワネット理論がだんだん変わっていますね!!!

9月議事要旨では『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』の中に例のマリーアントワネット理論が有った訳ですが・・・・・・・・・

『また、ある委員は、余資を現預金で保蔵する家計が投資信託などに積極的に投資するようになれば、配当収入を通じた可処分所得の増加が期待されると述べたうえで、金融政策の効果波及を高める観点からも、金融資産投資についての理解浸透を図るべきであるとの認識を示した。 』(ここの部分だけ9月会合議事要旨より引用)

10月議事要旨では『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要 』の『2.経済・物価情勢の展望 』の方にこの理論が引っ越しをしていまして・・・・・・・・・・

『別の委員は、NISAや中小企業による確定拠出年金の利用促進等により、家計の金融資産を幅広い層の所得向上に向けて有効活用していくことが重要であるとの見方を示した。』

・・・・・・おや?「賃金が上がらないのならば株式投資をすれば良いのに、オーッホッホッホ」のマリーアントワネット理論がちょっと変わっておりますね。「家計の金融資産を幅広い層の所得向上に向けて有効活用していく」とは何の事ぞという感じでして、別に家計の預貯金だって退蔵物件な訳ではなくて、預貯金になっていれば預金金融機関による有価証券投資によって社会的には活用されるのであって、それを家計が直接やるのか金融機関が代わりに行っているのか、というだけの話だと思いますけどね。

でまあ昨日ネタにした12月会合主な意見では特にそのことネタにしませんでしたけど、そういやマリーアントワネット理論の意見が無かったですなあとか思ったりするわけで、いやーあっはっはっは(棒読み)と申し上げておきませう。




2021/12/28

〇前回の議事要旨ネタの前に順序が逆だが今回のMPM主な意見を拝見するが物価の話以外見るものは無い

基本的に議事要旨も主な意見も最近はオモンナイのですが、さすがに世界中銀ウィークともなりますと政策委員会の皆様もちったあ反応するでしょうと思って拝読。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2021/opi211217.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2021 年 12 月 16、17 日開催分)

・前向きの循環メカニズムが進むんじゃなかったんでしたっけ

最初の『T.金融経済情勢に関する意見』の『(経済情勢)』に珍しいものが幾つか。

『・ 12 月短観では、設備投資の増加計画が確認されたが、イノベーションに繋がる成長投資や多くの国内従業者が働く非製造業・中小企業による設備投資の計画に力強さがみられない。』

何ですかね、またまた先日の黒ちゃん経団連講演との関連になりますが、黒ちゃんの説明だと成長投資とかが出てくることによって日本経済の成長力を高めて2%物価目標達成へという白川ドクトリン全開のお話をしていましたが、どうも現状ではこうではないですかねえ、という身も蓋もない指摘が。

まあそういう身も蓋もない状況だからこそ企業の成長に向けた投資(それが何故かDXとカーボンニュートラルなのは正直謎なのだがまあそこはさて置くとしまして)が必要だと力説した、ということなら整合性が取れるのですが、展望レポートなんかでの読み筋だと既に企業部門で前向きの循環が回っていて、設備投資が強くて、その設備投資による資本ストックの増強とか生産性の向上によって前向きの循環メカニズムが持続するから持続的成長によって物価の基調も徐々に上がって行って2%達成だぜヒャッハーっていうのが中長期的な展望になっているのでありまして、これは中々身も蓋もない指摘で結構なのですが、じゃあ1月の展望レポートの時にこの辺りの見通しについてもイチャモンつけていただいて何なら展望基本的見解の記述に反対、とか残して頂けると大変に良いのではないかと存じますので是非お願いいたします。

『・ 交易条件の悪化に加え、物流の混乱や供給制約の長期化も企業収益を押し下げ得る。こうした中で価格転嫁が十分に進まない場合、利益から資本や労働への分配が滞るリスクが高まる。』

労働への分配が滞るも何もそもそも(ピー音)、というような個人の話はさておきまして(−−;、この部分に関してはまあそうですよねーって思うのだが、コストプッシュの転嫁ができないと企業収益をスクイーズするというネタは何故かこう「それはゆうはならん」みたいな感じがするというか避けて通っているというかな感がするので結構な指摘ですな。


と、褒めてみましたが、一方でいつものように大本営発表を垂れ流す委員もいます。

『・ 政府において賃上げ促進に向けた検討がなされている中、感染症への警戒が継続するもとでも企業活動が活発化し、賃金と物価が大きなタイムラグを伴うことなくそれぞれ安定的に上昇することで、前向きな消費活動に結び付く好循環に繋がることが期待される。』

大本営発表というよりも台湾沖航空戦幻の大戦果という風情ですが、誰が書いたか分からん作りになっているにしても、これだけの台湾沖航空戦モードを堂々と文章にして世に出してしまおう、という精神にはある種の感動を覚える(別に褒めてはいなくて面の皮の厚さに感心してるだけ)。


・今回の主な意見の経済部分ってちょいちょい先週の黒ちゃん講演のカウンターみたいなのがあるのよね

こんなのがあります。

『・わが国の企業が海外での地産地消を進めてきた結果、円安が企業業績や株価にもたらすプラスの効果は、かつてより小さくなってきている。』

まあこういう意見が出ていまして、いや何で12月会合でその話が出るのやらとは思うのですが、またまた先般の黒ちゃん経団連講演(ということであの講演は目先の政策云々では別にインプリケーション無いのですが、色々な意味で味わいのある講演だったっちゅうことですな)で為替円安のプロコン説明をしていたのに対するイヤミみたいなのが入っていますな。MPMの方が先にありましたので、黒ちゃん経団連講演の中でこの手のカウンターに対するお答えもしてた、という風に思えるのも経団連講演の滋味を増すことになっております。


・そんな話で「主な意見」の貴重な文字数を使わんでくれ

経済のパートの最後の意見だが。

『・人々が安心して経済活動を再開し、グローバル経済が安定的な成長軌道に復するためには、世界に広くワクチンが行き渡り、新たな変異株の出現リスクひいては感染・重症化を抑制していくことが極めて重要である。』

極めて重要なのはその通りなんだが、MPMの主な意見という場にこれ書くの何の意味があるんだよとこれ書いた人に小一時間問い詰めたい。ただの字数の無駄じゃろ。


・物価については上がる期待をしている人が多いですね

『(物価)』のパートですが、相変わらず6つしか意見が無いのは残念ではありますけど、内容は今回結構強気なもの、あるいは強気になれると良いなあ的なもの、という風情でして、威勢が良いまでいうと言い過ぎな気がしますが、まあ何か少しは希望の光がみたいな感じ。

『・ 消費者物価の前年比は、0%程度となっているが、目先、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。』

これは大本営なのでどうでもよい。

『・ 原材料価格の上昇等を背景に企業物価が歴史的な伸びを続ける中、消費者物価についても、基調的な上昇圧力が徐々に高まってきているように窺われる。』

ほうほうそうですかそうですか。

『・ 12 月短観では、仕入価格と販売価格のギャップが拡大しているが、企業の物価見通しが上方修正されるなど、価格設定行動に変化の兆しが窺われる。』

と、この二つが「希望の光が見えてきたような気がせんでもない」タイプ。

『・ 予想インフレ率は中長期を含めて足もと上昇しており、物価上昇圧力は、先行き高まっていくと見込まれる。また、政府が賃上げの推進を行う中、来年以降の賃金上昇率が注目される。』

これは勇ましい。

『・ 需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると、2023 年度末に「物価安定の目標」を達成するのは難しいが、企業の価格設定行動や予想インフレ率の変化には注目している。』

期待度たっぷりの意見ですね。

『・ 次回展望レポートでは、最近の予想物価上昇率や原材料コストの上昇などを踏まえ、物価は下振れリスクが大きいとの従来のリスク評価の妥当性を点検する必要がある。』

最後がこれでして、こちらの人はリスクバランスの話ではありますが、下振れが大きいをそろそろ引っ込めるべきでは、という話。

まあそもそも展望レポートの見通しって成長見通しのリスクアセスメントと物価見通しのリスクアセスメントのアグリゲートしたものが整合的でない、という謎見通しになっているのは、今年4月の展望レポートで謎の成長見通し強気転換(前向きの循環メカニズムというパワーワードが復活した会合ね)以降ずーっとその状況が続いてて、物凄く違和感があるというか、強めの物価を出して緩和縮小観測が出るのがとっても嫌なのか、実際に物価が上がる現実が起きると「物価が上がれば世の中ハッピー」の邪宗置物理論の化けの皮がはがれてアベノマスクに続いて廃棄される惧れにビビってるのか知らんですが、この整合性の無さというのは前からナンジャソラ状態でございましたので、ここを修正してくると色々と日銀も味わいが出て来るし、そういう時に黒ちゃんの任期の残り時間カウントダウンとぶつかると更に味わいも出ようというもので、何か来年に向けて急にオラワクワクして来ただ!!と(たぶん錯覚か幻覚なのですが)思う年の瀬でございました。

なお、政策の部分に関する意見ですが・・・・・・・・

・コロナ臨時対応も通常の政策も区別が議論の上でどうなっているのかよくわからんのだが

MBとの関係はさすがにあれだけ言われているだけに・・・・・・・

『・特別プログラムの見直しに際しては、経済や物価に悪影響がないことやマネタリーベースの拡大方針との整合性を説明する必要がある。』

『・ 昨春以降のマネタリーベースの増加は、感染拡大による流動性需要の高まりに日本銀行が潤沢な資金供給で応えてきた結果である。今回の措置により短期的にマネタリーベースが減少しても、長期的な増加トレンドは維持されるため、オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しない。』

と、言い訳に色々と苦慮しておられるようですがwwwそれはそれとしまして、

『・特別プログラムは、コロナ禍対応の政策であり、基本的にはコロナ禍が終われば手仕舞いさせるべきものである。特別プログラムを全て手仕舞いすることになったとしても、それはコロナ禍対応の終了であり、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとでの金融緩和の縮小を意味するものでは全くない。』

というのは話しは分かるのですが、

『・わが国の物価上昇は原油・資源価格上昇を受けた部分が相応にあり、中長期の予想物価上昇率は2%の「物価安定の目標」にアンカーされていない。現段階での金融緩和政策の修正は、コロナ禍からの回復に水を差し、景気後退と物価下落をもたらしかねず、時期尚早である。』

この「修正」ってのが今回のコロナオペ一部終了を意味しているのか、全体的な話で言ってるのかがわからんし、そもそもあまり過去の例がない政策をぶっこんでおいて、その効果の点検とかについて、政策のパーツパーツについて検討して必要なものは続ける、不必要なものは修正する、ってのは過去の類例の少ないような非伝統的政策を実施するにあたって当然行うべきことなのですが、よくわからんけど緩和っぽいからぶっこんで、それがどうなっても修正するのは緩和後退だからダメ、という姿勢の方がよっぽど非科学的にも程があると思うのだが、毎回よーゆーわという感じですな。



2021/12/20

お題「日銀決定会合レビュー:政策手段をキチンと切り分けた対応をしたのですが今後もこの調子で温泉旅館のシンプル化キボンヌ」

どもども、中銀祭りの中金曜日お休みしました中の人の事情によりまして、今日は浮上しましたが明日はまた潜航しまして明後日から平常運転に戻ります(予定です)。

ということで本来ならFEBの深掘りを先にしようかとかECBとかBOEとか思っていたら、意外な事に日銀が割と面白い事をして頂きましたので本日は主にそちらの話題から。


〇日銀決定会合レビュー:個別の政策手段について個別に達成状況を見ながら対応とは中々

・新コロオペのうちCP社債買入の停止までは読めた(12月とは思わなかった)がこのきめ細かい対応は読めんかった

てな訳で声明文。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217a.pdf
当面の金融政策運営について

『1.新型コロナウイルス感染症は、引き続き内外経済に大きな影響を及ぼしているが、わが国の金融環境は、全体として改善している。大企業についてみると、CP・社債市場は良好な発行環境となっているほか、貸出市場でも予備的な流動性需要に落ち着きがみられる。』

うんうん。

『中小企業の資金繰りについては、総じてみれば改善傾向にあるが、対面型サービス業など一部には、なお厳しさが残っている。こうした情勢を踏まえ、日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、中小企業等の資金繰りを引き続き支援していく観点から、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの一部について、以下のとおり、期限を 2022 年9月末まで半年間延長することを決定した。』

一部なのでCP社債だけ終了なのかな、と思ったら意外な事に細かい切り分けisある。

『(1)新型コロナ対応金融支援特別オペ(全員一致)

@感染症対応にかかる中小企業等向けのプロパー融資分は、現行の取扱いのまま、期限を半年間延長する。

A感染症対応にかかる中小企業等向けの制度融資分は、2022 年4月以降、貸出促進付利制度上の付利金利を0%(カテゴリーV)、マクロ加算残高への算入は利用残高相当額としたうえで、バックファイナンス措置として期限を半年間延長する。

B大企業向けや住宅ローンを中心とする民間債務担保分は、期限どおり、2022 年3月末をもって終了する。』

ここですが、日銀の出しているポンチ絵に則って後で詳しくですが、なんと今回ってコロナオペの中身について個別の内容をきちんと切り分けて精査し、役割を果たしたと判断された分についてきっちりと終了する、という事で、QQEおっぱじめて以降の日銀とは思えない細かいムーブをしておりまして、この点が今回良い意味で裏切られた(個人の感想です)点ですな。

『(2)CP・社債等の買入れ

CP・社債等の買入れ増額措置は、期限どおり、2022 年3月末をもって終了する。2022 年4月以降は、感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻し、CP・社債等の買入れ残高を、感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に引き下げていく。』

CP社債の買入ですが、こちらは「感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻し」ということですので、社債の場合は月2000億円(1-3年1250と3-5年750)が月1000億円(日銀保有銘柄の償還状況によって月単位では若干の上下がある)になり、CPは月1兆円くらいだったのが月5000億円くらい(これまた償還状況や季節性によって多少の上下がある)になる、ということですな。

でもってまあ元に戻すって言ってるんだから3-5年の買入は3末で終了ですよヤッホーという事になりました。発行体当たりの限度額に関しては若干ファジーな所があって、

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo83.htm/
コマーシャル・ペーパーおよび社債等買入基本要領

附則の項番4になりますが、

『4.一発行体当りの買入残高の上限は、CP等については令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間、社債等については令和4年4月1日から令和9年3月31日までの間、金融調節の円滑な遂行の観点から必要と認める場合には、基本要領5.の規定にかかわらず、3.本文またはただし書きに規定する水準から基本要領5.本文またはただし書きに規定する水準までの範囲内において決定し得るものとする。』(この部分は直上URL先のCP社債買入基本要綱から引用、以下暫く同様)

となっておりまして、では元々の額と変更後の額は幾らでしたっけというと、元々の額は本則の項番5になります。

『5. 一発行体当りの買入残高の上限

一発行体当りの買入残高の上限は、CP等については1,000億円、社債等については1,000億円とする。ただし、CP等、社債等のそれぞれについて、買入れの時点において、買入残高が買入毎に本行が別に定める時点における一発行体の総発行残高の2割5分を超えているものについては、買入対象から除外する。』

増額した額は附則の項番3でして、

『3.一発行体当りの買入残高の上限は、令和4年3月31日までの間、基本要領5.の規定にかかわらず、CP等については5,000億円、社債等については3,000億円とする。ただし、買入れの時点において、買入残高が買入毎に本行が別に定める時点における一発行体の総発行残高に占める割合が、CP等については5割、社債等については3割を超えているものは、買入対象から除外する。』

となっておりますので、基本的には残高1000億円になるのですが、特に社債に関しては期落ちで残高1000億円になるまでこの銘柄の買入はしませんよ、ということになると、うっかりすると数年のスパンで買い入れ対象から外れる、というお茶目なことが起きえるので、一応お助け措置は発動するということになるようで、この発動要件は明示されていないのでよー分からん所がありますけど、まあこの条項の趣旨から鑑みて、3月末の個別エクスポージャーが増える方向の買入はしてくれないんじゃないですかねえ(3-5年はどうせ2023年にならないと償還が来ないので、当面1000億円オーバーになっている銘柄でも1-3年の期落ち分見合いは買ってくれる(ただし足が2027年3末を超えるものは1000億円までで打ち止めになるのだがその話は2024年になってからの話だから今は気にしなくてよい)んじゃないかという想定だがあくまでも個人の類推だが制度の趣旨から言ったらそんな感じじゃないですかね)。

CPの場合も多分同じような感じで、個別銘柄に関しては1000億円超過銘柄については期落ち分までしか買わない。ただし足が2023年3末を超えるものが1000億円になったら打ち止め、という感じになるんですかねえ。もしかしたらそんな微温的なことしないでCPに関しては1000億円になるまで買い入れ対象外にしちゃうかも知れませんけど。



・今回の決定は雨宮副総裁の徳島金懇の会見に背景説明がありましたなというお話

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211209a.pdf
雨宮副総裁記者会見要旨
―― 2021年12月8日(水)
午後2時30分から約25分
(徳島市・東京間オンライン開催)

こちらの5ページ(PDFも同じく5枚目)のケツの部分にある質疑応答から。

『(答)(前半部分割愛)本日の講演では、一種の特徴点をいくつか切り出してご説明しましたが、全体として金融環境をみると、大企業については、今ご指摘のあった通り、CP・社債市場は良好な環境ですし、貸出市場をみても、むしろ借入れは大企業については返済モードになっています。一方、中小企業については、総じてみれば改善していますが、対面型サービス業などに一部には厳しさが残っているということです。個人に目を転じると、個人事業主については中小と同様一部に厳しさは残っていますが、住宅ローン市場は安定しています。こうした金融環境全体を更に点検しながら、政策のあり方については検討していきたいと思っています。』(この部分直上URL先の12/8雨宮副総裁会見要旨より)

ここで、CP・社債だけではなく、大企業向け貸出、中小企業向け貸出、住宅ローン、というのを細々と説明していた伏線が今回回収された、ということになりますわな。なるほどなるほどと思いましたが、延長するのと延長しないのをセットで今回だす件については、延長しない方を12月に出して勝負してくる必然性が無いから、全部延長以外だったら1月かなと思っていたので、その点はちと踏み込んだ感がありますけど、それよりなにより今回は特別オペの中での切り分けをしてきたのがおーという感じでしたが、上記のように細かく分析した結果を細かく政策に反映させる、とか何でもどんぶり勘定で昭和温泉旅館絶賛大増築をして、しかも個別施策へのツッコミ(CPや社債のスプレッドが銘柄によっては国債アンダーになってるとか買入のやり過ぎじゃないでしょうか、みたいなツッコミ)が来ても、施策は全て一体としてQQE政策を構成している(キリリッ)というインチキ説明を繰り広げておりました、というあの日本銀行様とは思えない細かいものが示される
のでありました。


・コロナ特別オペをカテゴリーで切り分けたのは偉い!!!

12/17(金)金融政策 (参考)中小企業等向け資金繰り支援の延長 [PDF 79KB]

ってのをポチっとなとするとまたもポンチ絵が登場するのだが。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217b.pdf
中小企業等向け資金繰り支援の延長

『新型コロナ対応特別オペ』の所を切り分けているのが今回の決定見て「おー」と思ったことですな!!

つまり、特別オペの見合いになっている部分について元々そういう分け方なのだが3つに分けまして、

民間債務担保分→終了
制度融資分→マクロ加算2倍を1倍、この部分に関する特別付利0.1%を撤廃して付利0.0%(カテゴリーU→V)
プロパー融資分→従来通り

という形にしました、ということですが、この特別オペ、もとはと言えば昨年3月に導入した際には『民間企業債務を担保(約8兆円<2020年2月末>)に、最長1年の資金を金利ゼロ%で供給する新たなオペレーション(残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算)を導入する。』って物件だったのですが、残高があっという間に頭打ちになってしまったので数字を作らないとヤバいとでも思ったのか(個人の妄想です)、4月の会合で「オペ残高相当額に0.1%の特別付利(まだ分からんでもない)」「住宅ローン担保証券も担保に加える(コロナ対策に何の意味があるのか今でも全くの意味不明)」というような残高かさ上げ政策をぶっこんできた訳ですな。

でもってその後に5月に臨時会合ぶっこんで「制度融資分」と「プロパー融資分」を加えて、期限をしらっとその時に延長して、更に延長延長としながら、今年3月には『より効果的で持続的な金融緩和について』という意味不明なお題目によって付利制度の方を分離して『貸出促進付利制度』という最早何が何だかワケワカメの作品になり、カテゴリーTからVまでの制度になった、ということですな。

#不肖このアタクシでもこの部分一々確認しながらじゃないと書けないので、色々と確認してたら時間が段々怪しくなるの巻ですわよ奥様

・・・・・・でもってポンチ絵に戻りますと、そのポンチ絵にあるように、そもそもこの「民間債務担保分」ってのは、大企業向けの貸出債権や社債、CPを担保にぶっこんで特オペに参加するとマクロ加算が得られます、というだけの制度だったものに、ニバイニバーイが付くわ特別付利が付くわで謎に残高がバンバカと増えたものなのでありまして、確かにこのコロナオぺ導入当初、日銀はあの悪名高き「3本の鉛筆」のポンチ絵を出してきまして(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200601d.pdf)数字をアピールする、というのを特にFRBに対抗したのか額を出すためにナンジャソラなオペをぶっこんだわけですよ。

でまあコロナ対策、と銘打ったのでこれが引くに引けなくなって、しかも後になって付けた「中小企業資金繰り対応制度」の方とまとめてすべてが「新型コロナ対応金融支援特別オペ」になっていたので、日銀の謎理論「パッケージとして効果を発揮する」によって全部ダラダラと延長され、お蔭で特オペの残高が80兆円とかになって、当然ながら短期市場にも影響するわオペ先と非オペ先の待遇格差がでかくなるわという有様だったのですが、今回はこの特オペを「パッケージ」としないで「個別の政策内容をきちんと見て、それぞれの手段がスコープとしている対象における金融環境を確認」して、「必要なものと不必要なものの切り分けを行う」というよく考えたら当たり前の事なのですが、何せ前任者を口ぎたなく罵って今の座を確保しておられます黒田日銀と致しましては、謝ったら死ぬ病の重篤な罹患者として、一度突っ込んだ政策は止めない、という昭和温泉旅館政策スキームを建築しておられたので、今回のこの措置は(普通にやるべきことをしているだけなのですが)すんばらしい事だし、日銀の中の人が正常化してきてるじゃん、と思うのでありました。


つーかですな、そもそも論としてポンチ絵の方に『大企業向け・住宅ローン 中心』として示されているのが思いっきり「CP・社債買入」と特オペの「民間債務担保分」でありますが、どこからどう見てもCP社債に住宅ローン関係ないので、そうすると民間債務担保分の特オペの何ぼが住宅ローン担保証券見合いだったのよって話で、そもそもコロナ感染症全然関係ないやんというのをバカスカと実行してしかもマクロ加算ニバイニバーイに特別付利0.1%までついてたとか、どんだけ一部のオペ先優遇してたんだと小一時間問い詰めたい所ではありますな(インチキでもコロナ対応の残高を積み上げたい、という昨年3月時点での切迫感というお気持ち自体は分かるのだが、3本の鉛筆による残高アピールをあっという間に引っ込めたのに、こっちをダラダラ続けた辺りが謝ったら死ぬ病に特徴的な症状です)。

とか何とかまあそんな訳で、そういう阿呆な状況が是正されましたことは慶賀の至りですし、今後もこの調子で、昭和温泉旅館金融政策について、全部スクラッチでぶっ壊して作り直せとは思いますが、まあそれが無理にしても、温泉旅館の建て建てマシマシ建屋やそれを繋ぐ謎の渡り廊下などが、段階的に整理されて、令和にふさわしい温泉旅館へと改築されていくことを期待するのでありました。


・ところでカテゴリー別付利残高を確認してみる

直近公表されているのは9月積み期間に掛かる数字ですな。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211122b.pdf
貸出促進付利制度のカテゴリー別残高(2021 年 9 月)
2021 年 11 月 22 日
日 本 銀 行

カテゴリーT 51,334 億円
カテゴリーU 717,527 億円
カテゴリーV 594,270 億円

このカテゴリーT対象が「プロパー融資分」でして、カテゴリーU対象が「コロナオペ(除くプロパー融資分)」になっていますので、このうち制度融資分が何ぼかというのは公表されていませんが、制度融資として現在実行されている額から逆算すれば出て来る数字ですな、うんうん。

ということですが、マクロ加算だの特別付利だのという話においては、コロナオペ80兆円のうち5兆円だけが特別付利が残って、カテゴリーUに関してはカテゴリーVに降格するのとそもそも終了して残高自体が無くなるのと、ということになるので、付利ついてる当預が大きく減ることになります(とは言っても既存のオペ分の付利は突如無くしたりはしないでしょうから4月になっていきなり75兆特別付利の当預が落ちる訳ではない筈なので悪しからず)わな。

これMBは減るわ(オペ自体が終了する部分)、付利されてる当預残高が盛大に減るわ、コロナオペによるマクロ加算も減るわで、短期市場の金利形成が読みにくくなって(当預的にはそういうことになるけど、CP社債オペの縮小と民間債務部分の特オペが廃止になる事によって浮いて出て来る現物もあるから、そっちの兼ね合いもありそう)中々シャレオツな事も予想されまして、とにかく特別付利とか言う物件によって真面目に考える気力を喪失しておりましたアタクシにおきましても、おらワクワクしてきただ!という感じになるのかならんのか、ということでこれは3月くらいからハッスル(某証券ではない)できるかも知れませんな、うんうん。


#経済物価情勢の現状判断???そういやそういうのがありましたな・・・・・・・・・・・・・




2021/11/19

お題「9月会合議事要旨ネタで超今更ジローすいませんすいません」

だいぶ遅くなってしまいましたがそろそろ片付けておかないとマジで忘れそうなので(汗)。

〇日銀の超虫干しネタで恐縮ですが9月会合議事要旨ネタで勘弁ナリ

9月終わりですから何せコロナ緊急事態宣言中の会合の議事要旨ですから割り引いて読みますが・・・・・・・

9月会合議事要旨、実施されたのは9/21−22なのでだいぶ過去の話ですね。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2021/g210922.pdf

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』をサラサラと確認します。なにせ2カ月前の会合の物件ですから「なるほどこの時とこんな変化があったのね」という確認用。

・その前にどうでもよいのですがリスクリバーサルがどうのこうのというのが無い件

最初の『国際金融市場』のパートですが、

『国際金融市場について、委員は、デルタ株の感染拡大の悪影響や中国不動産セクターの債務問題への警戒感などから、株式市場を中心に神経質な動きがみられるものの、ワクチン接種の進捗に伴う世界経済の回復を背景に、市場センチメントは総じて良好な水準を維持しているとの見方を共有した。一人の委員は、ハイイールド債の利回りが過去最低水準で推移するなど、海外クレジット市場の一部ではリスクテイクの強まりが窺われることから、低金利環境が反転した場合の影響を注視する必要があると述べた。』

そういえば以前はこのパートで何故か知りませんが「ドル円為替市場のリスクリバーサルのポジションの傾きを見ると円高リスクをみている市場参加者が多いことがわかるので」云々って話をしている人がいて、こっちも飽きずに毎回「お前は何を言ってるんだ」と申し上げておりましたが、最近の会合ではすっかりその部分が無くなっております。と考えますとあの謎の指摘を毎回していた政策委員は・・・・・・・・ゴクリ。


・国内景気の先行き見通しでは設備投資がコケる可能性についてはノーマークでしたな

いやまあこの点は直近の7−9GDP速報で出てきて「あれれ?」って話だったので、そういう意味では別にこの会合で指摘されていなかったのが先見の明がどうのこうの言う気は無いのですけれども、7−9GDPで設備投資が弱めに出てきたのが、単なる一時的なもの(7−9のコロナ再拡大によって単純な後ずれが生じただけで期跨ぎの入り繰りだけで済む話)なのかというのは今後のポイントの一つになるんジャマイカと(個人の感想です)。

『景気の先行きについて、委員は、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、ワクチン接種の進捗などに伴い感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとの見方を共有した。』

『また、その後の景気展開について、委員は、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きな循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済は更に成長を続けるとの見方で一致した。』

あんまり所得が増えている気がしないんですが(汗)。

『一人の委員は、8月の感染急拡大を受けた対面型サービスの回復の遅れや、各種供給制約による自動車関連の生産調整が、目先の景気の下押し要因となるが、気候変動対応やデジタル化関連の投資といった前向きな動きに支えられて、経済全体の回復基調は続いているため、従来の回復シナリオを変更する必要はないと指摘した。』

DXは分からんでもないのだが気候変動対応の動きって本当に前向きな動きだけなの???

『ある委員は、足もとで感染者数が減少に転じていることは明るい材料ではあるが、諸外国の動向を踏まえると、わが国でワクチン接種が一段と進捗しても、感染拡大の波は生じるとみられ、経済活動との両立を考慮した行動制限のあり方について、検討が進むことを期待したいと述べた。』

こちらは(海外で最近増えているのが気持ち悪いのですが)望ましい方に外れて良かったですよね。

で、個別コンポーネントなのですが、

『輸出や生産について、委員は、一部に供給制約の影響を受けつつも、海外経済の回復を背景に、増加を続けているとの認識を共有した。先行きの輸出・生産について、委員は、目先、東南アジアの感染拡大に起因する部品調達難等から自動車関連を中心に下押しされるものの、基調としては、世界的なデジタル関連需要の堅調な拡大や設備投資需要の回復を背景に、増加を続けるとの見解を共有した。』

まあこれはこんなもんでっしゃろ。

『設備投資について、委員は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直しているとの認識を共有した。一人の委員は、世界的なデジタル関連需要の拡大を背景に、情報関連や資本財関連の企業収益は改善しており、これが同分野における設備投資の堅調さに波及しているとの見方を示した。』

『先行きの設備投資について、委員は、企業収益の改善に加え、緩和的な金融環境にも支えられて、増加傾向が明確になっていくとの見解を共有した。』

とありますように、まあ9月当時だからこういう見方になっているの別に変じゃないのですが、7−9のGDP1次速報見てからこういうのを見ますに、設備投資の動向に関してはここからは普通に回復していくし、今回は底堅いですよねってのがコンセンサスだったので、設備投資の動向は注意しないといかんのでしょうな。12月MPMでどういう評価になっているのかが見たい所であります(10月MPMと展望(もまだ全部ネタにしてない)では特に懸念みたいな話しは無かった筈)。

『ある委員は、わが国企業のデジタル化の遅れを取り戻すには、来年度以降もソフトウェア投資の高い伸びが必要であり、短観などを注視していきたいと述べた。この委員は、こうした企業の構造改革に関しては、取引先金融機関の役割も重要であると付け加えた。』

前半はよくわかるのだが後半の取引先金融機関の役割is何???って感じでして、いまどきの金融機関に取引先企業のデジタル化に関して何か物凄い役割が出来るとかそういう機能あるのかよというのは????????????にも程があるのですが、まあアタクシも金貸しの手先をやっていたのは遠い遠い昔になってしまいましたので今の状況はよくわからんですけえ、詳しい人教えてジェネラル!


・消費と雇用・所得の話を読んでいると後ろの方に行くにつれ「前向き循環メカニズム」とは何ぞやという疑問がががががが

『個人消費について、委員は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力が依然として強く、引き続き足踏み状態となっているとの認識で一致した。先行きの個人消費について、委員は、当面、対面型サービスを中心に低めの水準で足踏みした状態が続く可能性が高いが、その後は、ワクチン接種の進捗などから感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、ペントアップ需要もあって、再び持ち直していくとの見解を共有した。』

まあそうですわな。

『多くの委員は、わが国のワクチン接種率は欧米並みの水準にまで高まったが、デルタ株の感染拡大などにより、ペントアップ需要は未だ顕在化していないと指摘した。』

この時点では全くこの通りの状況でした。

『これに関し、何人かの委員は、ワクチン接種が幅広い年齢層で進捗し、重症化リスクが低下するもとで、今後、公衆衛生上の措置が緩和されていけば、ペントアップ需要は顕在化していくとの見方を示した。』

でまあそんな感じになっている気はします(といって10-12の個人消費見ないと分からないけど個人的なイメージとしては、ただそれがペントアップというのか、というとこれまたよくわからんが)。

『一人の委員は、ワクチン接種証明書の活用なども進めば、対面型サービスでも、感染抑制と消費活動の両立がより容易になると期待されると指摘した。そのうえで、この委員は、この先も一定程度の感染発生は避けられないとみられることや、わが国消費者のリスク回避姿勢の強さを考えると、先行きの消費の回復タイミングやペースについては留意が必要であると付け加えた。』

どうでもよいのだがこの人、ワクチン接種証明書の活用とかそういう細かい話はせんでもエエンチャウノ?

『ある委員は、公衆衛生上の措置が緩和されれば、消費はいったん持ち直す可能性は相応にあるが、夏季賞与の弱さなどを踏まえると、その持続力には不確実性が高く、今後、雇用者所得の動向が家計のマインドに及ぼす影響等を注視していきたいと述べた。』

仰ることはその通りなのですが、さっきのところで「また、その後の景気展開について、委員は、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きな循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済は更に成長を続けるとの見方で一致した。」ってあって、この「ある委員」さんも「所得から支出への前向きな循環メカニズムが強まる」という見方に賛成している(「一致した」のだから)のに、何でここでこういう話をするんだか意味が分からん次第でして、だったらさっきの部分の「前向きの循環メカニズムが強まる」云々に関して留保意見を述べろやヴォケ、と思いました。何かね、その場で賛成しておいて後からいちゃもんつける謎の人みたいなでちょっと感じ悪いですよね、と思ったらその次の雇用所得環境がですねえ・・・・・・・・

『雇用・所得環境について、一人の委員は、労働需給は緩やかに改善しているほか、一般労働者の所定内給与の前年比は+1%前後と、2015〜 2019 年頃の平均的な伸びに回復していると指摘した。』

その状況で物価目標2%達成したら一般労働者は実質減収になるんですが・・・・・・・・・・

『別の一人の委員は、雇用や賃金は回復基調にあるが、感染症拡大前の状況に戻るには時間を要するとの見解を示した。』

感染拡大前の状況というのが所定内給与の伸びが前年比+1%前後だそうなのですが、それにも時間を要すると仰せになっておりまして、いや別にその見方自体はまあそんなもんじゃろな、と思うのですが、いやあの一般労働者の所定内給与が+1%くらいしか伸びない世の中のどこで「所得から支出への前向きな循環メカニズムが強まる」のかがさっぱり理解できないんですが、せめてさっきの人も含めてこの辺りの指摘をしている政策委員の方々くらいは「前向き循環メカニズム」の表現に留保意見を入れて欲しいわと切に願いますし、いや真面目な話、この「前向き循環メカニズム」って昔から日銀の大好きなキーワードというかバズワードなんですけど、ちょっと定義を再度きっちり説明して頂きませんと困りますなあという感じがしましたですよ。

『先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動の持ち直しや企業業績の改善を受けて、持ち直していくとの見方を共有した。 』

「持ち直していく」ですからね、雇用者所得が力強く上昇する訳でも無いのに、どこから「前向きの循環メカニズム」が発生するのか、たぶん一般労働者でありますところの不肖このアタクシにはさっぱり理解致しかねますが、まあなんせ「給与が増えないなら株や投資信託で収入を得ればいいじゃない」というマリーアントワネット理論が平然と登場する(ちなみに今回も出ていますのでお楽しみに)政策委員会・金融決定会合でございまして、まあ上級民の考えることはよくわかりませんですわ、あははははははは。



・最近の商品市況の上昇と実体経済の関連についての議論パートが香ばしい件について

物価の現状部分はまあどうでもよいのでパスしまして先行き部分を鑑賞ですが、先行き見通しに関しても別に面白くは無いので、その後にある「物価の先行きに関連し、委員は、最近の商品市況の上昇の転嫁やその実体経済との関連について議論した。」って所から鑑賞します。

『物価の先行きに関連し、委員は、最近の商品市況の上昇の転嫁やその実体経済との関連について議論した。』

『ある委員は、現時点では、原材料コスト上昇の消費者物価への波及は限定的であるが、経済正常化の進展に伴い、需給ギャップの改善が実現すれば、そうした動きは強まっていくのではないかと述べた。』

理屈の上ではそうですな、理屈の上では(棒読み)。

『別のある委員は、エネルギー価格の上昇や、原材料コスト上昇に伴う食料工業製品の値上げといった身近な財・サービスの価格上昇は、総合的な物価指標の動きと乖離し得るため、その消費行動に与える影響について注意してみていく必要があると述べた。』

頼む、もうちょっと分かりやすく説明してくれ。たぶん「総合物価が上がらなくても身近なものが上がるとそれで消費が落ちるので注意しないと行けないよね」って言いたいんだと思うのだが。

『一人の委員は、企業が資源価格上昇によるコスト増加を製品価格に転嫁できなければ、設備投資や人件費の抑制に繋がり、ひいては所得の増えない家計が消費を抑制することになるため、持続的な物価上昇を実現するためには、そうした悪循環を変化させていく必要があると指摘した。』

お、良い事をおっしゃいますね!!資源価格上昇によるコスト増加を抑制するために円安を阻止したら如何でしょうか???マイナス金利政策の撤回とか簡単で良いと思いますよ(超棒読み)。

『別の一人の委員は、国内ではコスト上昇の価格転嫁が難しい状況が続いているとの認識を示したうえで、そうした状況に変化が生じるかを見極めるにあたっては、成長分野への労働力移動や企業の新陳代謝の促進、イノベーション力や収益力の強化に関する進捗を注視すべきであると述べた。』

えーっとですね、理屈として言いたいことは分かるんですが、それって時間軸が全然違う話だと思うのですけれども、どういう時間軸で考えているのよ????????

この後の経済物価先行きリスク要因にも???な部分はあるがまあどうでもよいのでパスする。


・まあ予想通りの話ししかしていないが当面の金融政策運営9月号

気候変動オペの執行部提案説明部分はぶっ飛ばして『W.金融政策運営に関する委員会の検討の概要 』に参る。

『委員は、金融政策運営に関連する各種の留意点についても意見を述べた。』

ということで途中から読みますが、まずは皆様による言いっぱなしコーナーを鑑賞します。

『一人の委員は、海外では、インフレ率の高まり等を受けて資産買入れの縮小に向けた動きを開始した中央銀行もあるが、わが国では、「物価安定の目標」の実現には時間がかかると予想されることから、3月の「点検」により持続性と機動性を増した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、強力な金融緩和を粘り強く続ける必要があると述べた。』

単に地蔵の癖に「3月の「点検」により持続性と機動性を増した」とは何のことでしょうか。しかもこの時だって機動的にやったのは九龍城塞金融政策の増築であって、全然機動じゃないんですけどね。

『別の一人の委員は、ワクチン接種が先行する国々では、経済が正常化し、ペントアップ需要が高まる中で、コロナ禍に対応するための経済政策を徐々に手仕舞う動きがみられているが、わが国では、経済正常化以降に予想されるペントアップ需要の強まりを、2%の「物価安定の目標」の達成に繋げていくことが重要であると指摘した。この委員は、そうした海外情勢のもとで、イールドカーブ・コントロールの枠組みにより金利上昇を抑えることは、わが国の相対的な金融緩和度合いを高め得ると付け加えた。』

なるほど。ところでさっきのパートで皆さん「最近の商品市況の上昇の転嫁やその実体経済との関連について議論した。」ようなのですが、海外対比で相対的に緩和度合いが高まるのであれば、為替市場の円安が一段と進行して、商品市況の上昇に円安のダブルパンチになると思うんですが、その辺はどうご認識なのでしょうかしら???いやまあ別に輸入コストが上昇するのが無問題ですよ、っていう論者のご意見ならば別に全く問題無いのですが、まさかとは思いますがこの委員さん、輸入コスト上昇による企業収益への悪影響を懸念したりはしていないですよね〜(棒読み)。

『この間、ある委員は、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要があるとの認識を示した。』

はいはい片岡さん片岡さん。


・政府との連携云々で色々と斜め上の意見がボロボロと出ているのは実に頭がクラクラしてまいります

『政府との連携に関して、一人の委員は、コロナ禍において効果を発揮してきた財政政策と金融政策のポリシーミックスは、経済が正常化していく脱コロナ禍局面においても重要であると述べた。』

まあこれは9月の時点だから仕方ないのですが、直近に至ってはとうとう高止まりするインフレについて全部中央銀行のせいにされたらタマランチ会長とばかりに、FED高官の皆様が「財政支出による需要増もインフレに影響」とか「先行きはコロナ対策の財政臨時措置が縮小することもインフレの鎮静化に効く」というようなお話をおっぱじめておられまして、いやー中々味わいがあります。

『別の一人の委員は、ポスト・コロナの経済社会と政策について、政府とビジョンを共有すべきであり、具体的には、財政政策と金融政策の連携はもとより、気候変動対応や成長促進、経済構造の転換などにおいても方向性を共有することが望ましいと指摘した。』

だから何なんですか???というかそういう話は中央銀行の仕事じゃないでしょ。

『ある委員は、感染症への対応に加え、デジタル化や脱炭素化という重要な課題にわが国が取り組んでいくうえで、政府と本行が、同じような長い時間軸も意識しつつ、それぞれの役割を果たしていく必要があるとの見解を示した。』

日銀はきちんと決済システムを回して信用秩序を維持してマクロ経済の安定化を図っていればよいのであって、DXとか脱炭素とか政府にやらせておけばとしか申し上げようがないし、大体からしてそういう話しは物価目標を達成してマイナス金利だの長期金利操作だのというような異様な政策から脱却してマクロ経済の安定化を達成してから言えよこのデコスケ。


・9月会合のマリーアントワネット理論はやや進化しておられましたなw

『そのほか、一人の委員は、9月積み期から特別付利の適用が始まった「地域金融強化のための特別当座預金制度」について、金融調節に支障がないか注視していきたいと述べた。』

早速支障が出たのはクソワロタ。

『また、ある委員は、余資を現預金で保蔵する家計が投資信託などに積極的に投資するようになれば、配当収入を通じた可処分所得の増加が期待されると述べたうえで、金融政策の効果波及を高める観点からも、金融資産投資についての理解浸透を図るべきであるとの認識を示した。』

もともと「給与が増えないなら投資信託を買えばいいじゃない」だったのですが、給与が増えないのに何で投資信託買えるのかとか、そもそもそういう家計だったら投資したもので発生する含み損への耐性が全然無いんだからアカンヤロ、みたいなツッコミをされるとアカン事に気が付いたのかもしれませんが、マリーアントワネット理論が若干進化して「余資を現預金で保蔵する家計」に進化しました!!!!!!!

・・・・・・しかしですね、今日び「いざという時のお金」とか「住宅購入や子供の教育資金などに充てるためのお金」なんかじゃない意味で「余裕資金はこれこれほどあるわ〜」という家計がオール現預金ってのはさすがに想像しにくいのですし(個人の感想です)、今の日本の状況だとそこまで余裕ぶっこんでる家計ってどの程度いるのやらという気もする訳でございまして、まあ何だかなあという感じです。

ところで「金融資産投資についての理解浸透を図るべきである」とのことですが、金融広報中央委員会ってえのがございまして、こんな意見を毎度どどーんと書かれると情報サービス局カワイソスだな、というのを今更ながらに思いました(涙)。


・気候変動オペに関してのところは華麗にスルーしながら悪態のみ

『続いて、委員は、気候変動対応オペの制度設計について議論を行った。』

ってのがあるので読むんですが、その一発目から

『ある委員は、対象となる投融資について、大まかな類型を示しつつも、具体的な判断は金融機関に委ねる仕組みとなっており、本行のミクロの資源配分への関与を極力避けることが可能であると指摘した。』

そもそも気候変動に対して有利なバックファイナンスをする、といってる時点でミクロの資源配分に全面関与していますが、という感じですが、以下「中央銀行がミクロの資源配分に関与するのを回避している仕組みですよね」というエクスキューズが並ぶだけなので華麗にスルーしますが、その先に、『更に、委員は、気候変動対応オペの運用にあたって留意すべき事項についても議論を行った。』から始まる部分がありまして、そこのケツにこういうのがあってワロタ。

『何人かの委員は、本行の説明責任の観点から、気候変動対応オペの政策効果を検証していくとともに、気候変動が物価面などマクロ経済に与える影響など、関連分野の調査・研究を深めていく必要があると指摘した。』

えーっとすいません、そこまで言うなら先行してやっていた「成長基盤強化貸出」の政策効果の検証を是非やって欲しいですし、まあそれ以前の問題で「量的・質的金融緩和政策」の検証につきまして、物価目標が達成できない言い訳はもう結構ですので、どうやったら日本銀行の政策で物価目標を達成できるのか、という検証をして頂きまして、日本銀行だけではなく、他の外部要因も必要というのであれば、マイナス金利だのYCCだのオーバーシュート型コミットメントだのというようなものは潔く撤回して頂きたいんですけどねえ。


・・・・てな感じですな。政策面に関する議論の所は本当に読む部分が無くなったわという感じです。そのうち委員の議論パート全部飛ばして事務局の情勢判断発表だけ読み出しそうですわwww


2021/11/11

〇10月無風&展望レポート会合の主な意見だが

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2021/opi211028.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2021 年 10 月 27、28 日開催分)1

まあ最近のMPM絡みの物件は端的に言って「読むに値しない」と趣味の自称野良日銀ヲチャーのワイですらスルーしたくなる物件の集合なのですが、そうは申しましても読まないでいるとヲチャーとしての人徳ポイントが下がりますので読まざるを得ない。

・そもそも経済情勢の部分を呼んでいても何ちゅうかこのパッションというものがですなあ

パッションとかハッスルとか言ってると某社の回し者みたいですが(回し者ではありません)、『T.金融経済情勢に関する意見』の(経済情勢)から参りましょう。

『・ わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。

・ わが国経済は、当面は感染症の影響や供給制約に下押しされるものの、ペントアップ需要の顕在化に伴い、緩やかに回復していくとみられる。

・ わが国経済は、目先は供給制約等により生産・輸出面での下押し圧力が強まるものの、来年度以降は堅調な設備投資等が見込まれることから従来の回復シナリオが維持されると考える。

・ 感染症への警戒感と供給制約の影響が和らぐ来年前半には、景気の改善が明確となると見込んでいる。ただし、ウィズコロナのもとでサービス消費の持ち直しが順調に進むかどうか不確実性が高いほか、供給制約の影響が拡大・長期化するリスクや海外経済の下振れリスクには留意が必要である。

・ 感染症の新規感染者が急速に減少し、ワクチン接種も進展するもとで、感染症による経済の下振れリスクが低下する一方、早期の経済正常化による上振れリスクを意識する必要がある状況になっている。』

とりあえず最初の4つをダラーっと並べてみましたが、よく見たらこれ意見少しずつずれてますですよね。「回復している」が同じでも、現状が「厳しい状態」「下押しされる」というのが割れてるし、先行きだって「回復が明確になる」という人(後半2名)と、「回復すると思いますけど・・・・・」ってニュアンスに読める人(前半2名)とかあるし、先行きだって上振れリスクの可能性を見る人と下振れを見る人がいたりしますわな。

いやまあ見解の相違があるのは実に結構なので、その点についてどうよという話を、統計のエビデンスなり、アネクドートなりでも良いですし、アネクと言えばまさに出身業界で詳しく見ている経済動向のアネクドート(そういうために色々な業種から人が来るのが重要なのですが、能無し経済学者と能無し置物一派何とかストを並べても屁の役にも経たん)をじっくりと論議しながら、各委員の見方を補完していく(別に一致する必要はないけど)ことによって、委員の見方をブラッシュアップしましょう、ってえもんだと思うんですよねー。

然るに、今回のMPMだってMPM声明文みたら「10 月 28 日(木) 9:00〜11:38」となっておられまして、いやあの展望レポート出すのにこの時間に終わるけ?って感じでして、なんかこうおまいら議論というものをしていないで、単にご意見発表をした後に執行部がご用意した展望レポート基本的見解にはいはいはいってサインしてるだけなんチャウのかって思ってシマウマな訳ですよ。

しかもですね、よく考えたらまだネタにしていませんですが(すいませんすいません)今回の展望レポートの基本的見解って、内容を見ますと従来の「コロナモード」から、むしろ「コロナ後」を見据えた書き方に代わっているんですよ(というのは可及的速やかにネタにします)。そう考えますと、もうちょっとこうコロナ後を見据えた話が議論のメインになるとかにならんのか、と思うのですが、なんかこう通り一遍の前回同様の話をしているようにしか伝わってこない(個人の盛大な偏見です)のは何なんでしょう、とまあこれを書いてる中の人としてはこの点についてはちょっとトサカに盛大に来ているので直球をぶん投げているつもりです、はい。

以下の経済情勢に関する意見ですけどね。

『・ 9月短観では、企業部門において前向きの循環メカニズムが維持されていることが確認できたが、供給制約の影響が十分に織り込まれていない可能性がある点は割り引いてみる必要がある。』

それは何をもってそういう判断をしたんでしょうか?まあアタクシも別に短観細々分析している訳でも無いので偉そうなことは言えないのですが、企業の仕入価格判断の辺りを見ると豪快な勢いで「上昇」方向にDIが傾いている(ので販売価格判断の方も上がっている)ので、供給制約の影響を意識しているんだと思ったんですけどねえ。これは誰が言ってるのか知らないですけれども(分かりようがない)、近いうちに金懇がある人でしたら、是非金懇でこう判断した理由についてお聞かせ願いたいし、もし金懇が無くても、次回MPM後に出て来る議事要旨で確認したいから議事要旨にもうちょっと詳しいのを載せて欲しいと思いました。


『・ 中国における電力の供給制約が長期化することで、同国内の経済や世界のサプライチェーンへの影響が拡大することがないか、注視が必要である。』

うーん、そこの指摘かあ・・・・・・・・

『・ 足もと海外における供給制約や電力不足の影響が顕在化しており、特に中国経済の減速感が強まっている。今後、中国の成長率の下方屈曲が起きないかに注目している。』

と、なんかよー知らんのだが中国経済様に対する懸念の意見が二つでているんですが、そんなに中国重要だったら経済分析の議論の中でも中国コーナー作ってくれませんかねえとは思う(新興国でひとくくりにする中に中国が入っている)。欧(はともかく)米の話があんまり無くて中国の指摘がどどーんと出てくるのって日銀公式が出してくる「海外経済の見通し」という説明が基本的に米国中心の主要国が先に来て、その後に新興国、って並びになっているのに対して、このように「主な意見」の方では中国話ばっかり独立して登場っての何か微妙感がありまして。

『・ デジタル化と気候変動対応の加速の促進、国内従業者の7割が働く中小企業の生産性向上と賃金上昇の実現が重要である。』

うん、重要ですね。で何をどうすれば良いの?

『・ 金融システムは、全体として安定性を維持しており、先行き感染が再拡大しても、金融仲介機能が大きく低下するリスクは抑制されている。』

うーんわざわざ言及する事かいな。

『・ NISAや確定拠出年金の利用促進等により、家計の金融資産を幅広い層の所得向上に活用していくことが重要である。』

ちょwwwwwまた中村審議委員wwwwwwwこの「賃金が上がらないならNISAで増やせば良いじゃない」というマリーアントワネット理論wwwwwwwwww

まあマリーアントワネット理論はさて置くにしましても、ジジイが退職金を毎月分配型投信にぶっこんで分配金を所得の足しにする取り崩しモードとかならともかくとして、NISAで資産価格目出度く上昇したぜヒャッハーってなったからと言って評価益をバックに消費増やすっていう感覚がアタクシ根が貧乏性なのでさっぱりワカランチ会長でして、いやまあそら富裕層のお方が沢山ある資産の中で値上がりしましたし高級腕時計でも買いますか(置き引きダメ!ゼッタイ!!)というのは何となくそういうもんだろうなあとは思うんですが、なんかこう「所得向上」って言われると物凄い違和感があって、「資産向上して将来不安の払拭に繋がると良いですね」という方向なら分かるんですが、「所得」と言われるとそれは何か違う気がするんですよね(個人の感想です)。

ということで議論してるんだかしてないんだかよくわからんですが、経済のパートここまで。


・物価のパートに7つも意見がある!やったね!!

次の(物価)の所ですが、一時は意見が物凄く少なくてお前ら物価目標やる気あんのかこのスットコドッコイ(物価目標の達成が見えないとマイナス金利とYCCが延々と続くのでこっちは死活問題、というか既に死んでるようなもんだが)などと申しておりましたが、さすがに世界的に物価がどうのこうのと言われるこのご時世になり7つも意見が出るようになりました、なお政策委員の人数は9名ですけどね!!!!!!!!

『・ 消費者物価の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格などは上昇しており、0%程度となっている。先行きは、当面、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。』

いやそれは良いんですけど、以前もコストプッシュ(原油価格上昇によるエネルギーと、アベノミクスに黒田緩和による円安、消費増税に伴う便乗値上げも含んだ影響)で物価が1%とか行った時に、それが単に消費の下押しになって華麗にズッコケてしまった、という事案があったのでして、当面の話しとかいいから、それがサステイナブルなものになるか、という話をするのが展望レポート作る意味なんじゃないでしょうか。

『・ 経済再開に伴う需給ギャップの改善や予想インフレ率の持ち直し等を踏まえれば、基調的な物価上昇圧力は、わが国でも徐々にではあるが、高まってきている。』

予想インフレが持ち直しているからと言って消費がスライドで増えるかというのは別問題でして、ジャパンの場合はとにかくコストプッシュで上がった物価によって適合的期待形成が働いた場合、家計が防衛的になってしまって、企業における価格設定の強気化が持続しないことなのではないかと思うんですがその辺はどうなんでしょうかねえ。

『・ 企業の予想インフレ率や期待成長率の上方修正に加え、世界的な気候変動対応に向けた動きからエネルギー価格の上昇が続く可能性もあるため、インフレ圧力は従来よりも強まっていると思われる。』

節子、前半はええんだが後半はタダのコストプッシュや。

『・ 10 月からの公共料金や食料工業品等の値上げは原油価格等の上昇に伴うものであるが、これによりペントアップ需要の発現時期や強さに影響し得る点には留意が必要である。』

やっとコストプッシュの弊害の指摘がきました。

『・ 輸入原材料の価格上昇の転嫁が消費者物価を押し上げているが、賃金上昇や供給制約による価格上昇圧力は弱い。』

いやだからそれを何とかする方策考えるのが2%物価目標をできるだけ早く(早期とは言っていない)達成するって標榜しているお前らの仕事なんだが他人事のように言ってる場合じゃないの分かってるのかね、いやまあ認識してるだけマシなのかも知れんが。

『・ 消費者物価の前年比はプラスに転じたが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると「物価安定の目標」の達成は難しい。』

片岡さんキタコレで、まあこれはこれで一つの見方(というかこの点は片岡さんに賛成するわワシも)なんですが、他の人との見解の差を議論してるのかなあというのは毎度疑問でして、「あーはいはいわかりました片岡さん、では次の方どうぞ」ってな感じで黒ちゃん議長が議事回しをしているのではないか疑惑は高まるのでしたwww

『・ 日米インフレ率の差は主にサービス価格であり、その大部分は賃金である。賃金引き上げには労働市場が更に引き締まることが必要である。家計・企業の待機資金の支出を後押しするためにも、所得と賃金の引き上げを目指すことが望ましい。』

じゃあ何をすると労働市場が更に引き締まるんでしょうか。何だったら追加金融緩和でもしたら宜しいんじゃないでしょうかねえ(棒読み)。



・金融政策運営に関する意見を見たら二つほどネタがあったわ

次が『U.金融政策運営に関する意見』のパートになりますが、罵倒合戦の鑑賞とか、一部政策委員による毒電波を鑑賞しながらの電波浴などのエンターテイメント要素が無くてクソ面白くも無いのですけれども、今回はちょっと別の意味で味わいがありました。


・コロナオペの継続に関連する意見が2つほどあるというべきが2つしかないというべきか

最初にコロナオペに関連する意見。

『・感染症の資金繰りへの影響は、売上の低迷が続く業種や中小企業に限定されつつある。今後も、企業金融の改善の裾野が拡がっていくか、12 月短観等の関連データを点検したい。』

『・社債等の買入れについては、大企業の資金繰りが改善を続けていくもとでは、価格決定メカニズム等の市場機能や年金・生保等の運用に与える影響にも一層の配慮をしていく必要がある。』

企業金融に関する意見が二つありまして、コロナオペの継続云々(社債買入もコロナオペ絡みで年限延長と買入枠の拡大を行いましたからね)の話に繋がりますな。ただ恐らく12月会合ではコロナオペどうするという話が出てきてもおかしくないタイミングなのですが、もしかしてこのお二方以外の方々は途中でコロナオペの評価とかそういうのをしないままいきなり執行部から議案が飛んできてから検討するとか、そういう雑な事をやってるんじゃねえの、と思ってしまいました。

あと、社債買入云々の所ですが、「信用力に応じたスプレッド形成に対する強力な介入を継続すると資源配分の形成を歪め、その結果として日本経済の成長力強化を阻害する要因になるリスクがあるのではないか」というような感じで正攻法で突っ込んで頂きたい訳で、生保や年金の運用云々というのは、そらまあ当事者的には死活問題ではあるものの、金融政策ってのはマクロ政策なのですから、別にそういう所を引き合いにだして政策の是非について話をしなくても良いんじゃないの、と思うのですよ。

いやこれがマクロじゃなくてもっとミクロっぽい所で、日銀当座預金の特別付利や複層化したマクロ加算の設定は、日銀オペ参加者とそれ以外の間での市場に対する参加条件を人為的に歪める政策であり、マクロ加算比率の低下によって生保・年金・投資信託などにマイナス金利負担を押し付けることになる、みたいな話で持ち出すんだったら分かるのですが、社債買入という全体的な政策で一々生保年金の運用ガーって言ってしまうのは、まあ贔屓の引き倒しだし、反対する方が「金融政策はマクロ目標を達成するために行うもので生保年金の目先の運用問題でどうこうするものではない、それに物価目標を達成すれば生保年金の運用環境は好転するのは明らかなのだから目先の利害得失で政策判断するのは馬鹿のホームラン王」って言われたらどう反論するんでしょこの人、という感じがするので、もうちょっとものの言い方というのを考えて欲しいですね。


・うん、だからどうするんですかね??

『・ 基調的なインフレ率が依然として低いわが国では、ペントアップ需要が高まる局面でも、これまでの極めて緩和的な金融政策を粘り強く継続していくことが重要である。』

継続することが目的化していますけどね!

『・ 家計の消費意欲や値上げへの許容度が高まっていくためには、賃金上昇への期待の高まり等を通じた将来不安の解消が必要である。企業収益の増加が賃上げに繋がり、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるよう、現在の金融緩和を粘り強く続けることで経済を下支えしていく必要がある。』

いやあのそれやって今まで全然賃金上がってないのに何で同じことしかやらないの???


・交易条件悪化ネタ

まあ政策の手段の話が無い、というのは上記と同じですけど交易条件悪化シリーズが並んでいたので別小見出しにしてみた。


『・ このところ円安やエネルギー価格上昇に起因する物価上昇がみられるが、現状ではインフレ圧力の強まりが日本全体の経済厚生を低下させる可能性は低く、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで行っている強力な金融緩和は維持すべきと考える。』

は???コストプッシュしたら交易条件悪化するじゃろ。「経済厚生を低下させる可能性は低く」じゃなくて「それよりも緩和政策による国内景気の押し上げのメリットが勝る」ならまだ理屈として筋が通ってるんだが。


『・ 交易条件悪化の影響を緩和するためには、景気の改善や予想インフレ率の引上げを通じて、企業が原材料価格の上昇を国内の販売価格に転嫁しやすい経済環境を整える必要がある。』

と思うんだったら追加緩和でも何でもしたらどうでちゅかねえ(棒読み)。

『・ 交易条件の悪化への対応としては、金融緩和により需給ギャップを改善させ、価格転嫁が進み易くなる環境とすることが重要である。』

追加金融緩和だったら片岡さんなのですが、ただの金融緩和と言ってるので結局今の政策をダラダラ続ける話しかしていなさそうですねー。


・為替円安の話

『・ 足もとの為替円安は、各国の物価上昇率や金融政策スタンスの違いを反映している。為替円安の影響を議論する際には、実体経済や金融市場を通じた様々な波及経路を考慮する必要がある。』

何かその円安に対する評価、だいぶ違うと思うんだけどな〜。

『・ 為替や資産価格は金融政策を行ううえでの重要な経路だが、それ自体が目標ではないことには留意すべきである。』

物価安定目標がかすりもしない人たちがこれを言っても「So What?」以外の言葉が思い浮かばん。


・PDCAの発想の無い方がおいでのようですな

これは酷い。

『・金融政策の正常化とは、他国の政策動向にかかわらず、わが国での「物価安定の目標」を安定的に達成することであり、目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない。この点は、対外的に丁寧に説明すべきである。』

>目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない
>目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない
>目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない

目標に達していないのでしたら、その原因をよく考えて、金融政策の手段を修正したら上手く行くかもしれないので手段を再検討する、というような発想もないとは恐れ入りました。

敵軍が鉄条網敷いて機関銃を並べている陣地に向けて小銃をもった白兵突撃を撃退されても撃退されても何の反省もなひたすら繰り返すのが正しい在り方とご認識のようですが、そのような発想は害悪でしかありませんので今すぐ政策委員辞任されることをお勧めします。

・・・・・とまで言うと言葉尻とか言われそうですけど、この意見書いたお方、もうちょっとものの言い方というのを考えた方が良いんじゃないかなと思いました(お前が言うな、ってツッコミでアタクシが火の海ですかそうですか)。これじゃただの無限バンザイ突撃の推奨じゃないですか。



そんな訳で相変わらずの有様で、辛うじてコロナオペ関連の2つだけ政策インプリケーションが無くは無かった程度の話で、じゃあお前ら何をどうやってどういうパスで物価目標の達成するんだ、という話も相変わらずないという残念な「主な意見」だったのですが、悪態書きだすと結局血圧をホイホイと上げながらキーボードを叩いてしまうので、本日は主な意見だけで勘弁と相成って誠に申し訳ございません。9月議事要旨と今回の展望基本的見解が宿題に残りましたな(超滝汗)。