金融政策概観(2021年度下期)

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2021年度下期の見出し(これから徐々に間を埋めて行きますよ!2021/11/21記)

2021/12/29「基調的な物価がかなり強くなっているのだが何で最近の黒田さんは物価にヨワヨワな話をしてるんじゃろ」
2021/12/28「1−3月オペ変更なし/新コロオペ82兆円/初回気候オペ2兆円」
2021/12/27「経団連講演を見て定例会見を確認すると「2%向かって物価が上がられると実は困る」という日銀の本音が垣間見えます」
2021/12/24「歳末恒例の経団連講演では成長力強化しないと2%達成しないという白川ドクトリンに回帰する説明が行われる」
2021/12/23「黒田総裁のMPM会見はコロナオペ見直し以外の所でボロボロとなんか変な説明が目につきます」
2021/12/22「地域金融機関の与信引き当てに関する機構局のペーパーがあったが実際問題としては税務との兼ね合いがあると思うの」
2021/12/20「12月会合レビュー:コロナオペという限定局面ですが政策手段の切り分けを行うという久々のGJが入りました」
2021/12/15「中銀ウィークプレビュー雑談/カーボンニュートラルが企業の資本コストを下げるという雑なペーパー/銀行券動向の話はオモロイ」
2021/12/14「12月短観私家版分析:企業セクター強いしインフレ期待も上昇してるよ!!」
2021/12/07「黒田さんが気候変動と金融の話をしていたのだがこれまたなんかスカスカなお話」
2021/12/06「ESG投資に関する日銀レビューに日銀のESGへのやる気の無さを感じましたw」
2021/11/17「地域金融機関向け特別付利が始まったと思ったらいきなりの削減という珍事というかアホというか」
2021/11/11「10月会合主な意見を見たが考察に深みもなければ意味もないというタコ物件で審議委員の程度の低さに泣いた」
2021/11/02「豪中銀に見るコミットの時間的不整合/展望レポート基本的見解がウィズコロナからアフターコロナに転換(書き出しだけ)

2021/12/29

〇やっとのことで基調的な物価の上昇キタコレなのだが直近の黒ちゃんの物価上がらん発言は・・・・・・・・

虫干しネタの成敗をするとか言いながらネタの先入先出法(誤用)によって直近ネタである。

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf
消費者物価の基調的な変動

PDFの図表を見ただけでもキタコレとなっておりますが、エクセルの方をポチっとなとして中身を見ますと苦節何年やっと来ました(ただしコストプッシュ)という風情ですわよ。

折角だからコロナ直前からの2年間の推移を貼っておきましょう。暦年2020年は15年基準のCPI、2021年は20年基準のCPIがベースになっています。例によって例の如く左から順に刈込平均値、加重中央値、最頻値。

Jan-20 0.3 0.0 0.3
Feb-20 0.2 0.0 0.3
Mar-20 0.1 0.0 0.2
Apr-20 -0.1 0.0 0.3
May-20 0.0 0.1 0.3
Jun-20 0.1 0.1 0.3
Jul-20 0.0 0.1 0.1
Aug-20 0.0 0.1 0.1
Sep-20 -0.1 0.1 0.2
Oct-20 0.0 0.1 0.3
Nov-20 -0.1 0.1 0.1
Dec-20 -0.3 0.0 0.1

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2

さあもりあがって参りました!!!!!と言いたいのですが、よく見ると加重中央値と最頻値が碌すっぽ上がっていない、というのが何かこうアレげなものを感じますが、ここは歳末でもありますので威勢よく(全然意味が違う)刈込平均が一気に1%に迫る勢いになっていることに万歳三唱しておきませう。ばんじゃーい。

更にシャレオツなのは上昇品目下落品目の構成の方でして、これまた基準年に関しては2020と2021の間で変更になっていますが、まあそれは兎も角として推移をみるとこの有様。左から上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率ですな。

Jan-20 61.8 36.5 25.2
Feb-20 60.0 38.4 21.6
Mar-20 57.9 40.5 17.4
Apr-20 58.3 39.2 19.1
May-20 59.1 38.6 20.5
Jun-20 59.7 38.0 21.6
Jul-20 54.9 42.4 12.4
Aug-20 53.7 43.6 10.1
Sep-20 56.0 41.3 14.7
Oct-20 54.9 36.5 18.4
Nov-20 51.2 40.2 11.1
Dec-20 48.0 43.6 4.4

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9

何気に下落品目比率が着実に下がっているのがイイハナシダナーという風に思う訳で、個人的に言えば財布に全く優しくないので物持ちは良くなるわダイエットは進むわ(大嘘)とまあアレではあるのですが、こうやって物価がホイホイと上がってなんか2%達成したように見せかけてしまえば大勝利宣言と共にマイナス金利政策とかYCCとかリスク性資産の買入とかそういうものがさっくりと無くなり、円債村というよりも特に短期村と致しましては、「仕事するだけマイナスサムなのだが何もしないと人のマイナスもおっかぶされるので火の粉を無限に払い続けないといけない」という賽の河原の亡者モードで、そんなところに若いのを配置してくれないし年寄りは徐々に力尽きてしまうし、という悲しい状態からプラスサムのアリガタヤアリガタヤ時代になって頂ければお仕事も潤って誠に結構、とまあそういうとらぬ狸の皮算用をする訳ですな。

・・・・・・然るに、またもあの話となりますが、12月MPM後の総裁会見とその後の経団連講演で2%に行きません(キリリッ)とか威張って堂々と黒ちゃんが仰せになっているのは何ですねんというお話であります。

QQEの後ってなんか同じような感じで概ねコストプッシュ(円安と消費増税のドサクサと消費増税の対策で財政打ったりした影響)な物価上昇が起きておりましたが、あの時点で何か上手い事大勝利宣言をして足抜けしてしまえば良かった、と後付けでは思うのですが、まあ確かに途中まで調子よすぎの物価だったから、そらもうちょっといい数字見たい、とかそういう欲が起きてしまうのシャーナイナイと思うのですよね。

でもって、そこで引っ張っていたら結局あばばばばーとなり追加緩和となり謎の手直しをしたと思ったら逆切れマイナス金利からの惨状となった訳ですが、その時の教訓を生かすのであれば、そろそろ「ようやく日本でも物価安定目標に向けた前向きの動きが始まって来ました!!!!」とか鉦や太鼓で大宣伝することによって、任期の最後の最後で勝ち逃げという美しいフィナーレを迎えることができるかも知れないじゃないですか。もし美しいフィナーレ迎えたいなら本当は今辺り、まあ年初でも良いのかもしれないですが、早い時期に勝利への序曲を宣伝しておいた方が良い筈だし、そらアタクシのような市場の片隅のチンピラゴロツキですらそう思うんですから、日銀の中の人達(ただしボンクラ政策委員を除く)だってそういうのは分かっている筈なんですよね(個人の妄想です)。

しかしながら、ここに来てなんか黒ちゃんわざわざ「2%物価目標は物凄く遠いんです」と勝ち逃げをマッコウクジラで否定する発言するのの意図is何?というのが大変に不思議でありますので、これを考察(という名の妄想)すると(1)実は黒ちゃんもう1期総裁をやるので別に23年3月までに勝ち逃げをしなくてもよい、(2)新機軸は全部後任に放り投げる気満々で自分の代では方向性を出したくない、(3)風呂敷を広げ過ぎてしまってどう閉じて良いのか分からない、(4)そもそも緩和を縮小すると何が起こるか分からないから怖いのでビビりで問題先送り、等とパッと思いつくのですが、何ぼ何でももう1期はお身体的にちょっとアレでしょうから、張り込み過ぎて引くのが最早怖いという状況になってしまっていると妄想しておきます。

概ねこの辺りの数字ってのは当然ながら日銀の中でも総務省の公表数字を待つまでもなく調査統計局の方で分析してて、今回のMPMとかでもこれに近いものは周知されている筈なので、それまで踏まえてのあの物価に関する行きません宣言と考えれば意外に味わいの深い年末の黒ちゃんなのでした。



2021/12/28

〇オペ紙変更なしと来ましたな&その他オペ関連メモメモ

・特に日銀何も勝負せずに輪番据え置きと来ました

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211227c.pdf
長期国債買入れ(利回り・価格入札方式)の四半期予定(2022年1〜3月)

−1年:1500×1(前回1500×1)
1-3年:4500×4(前回4500×4)
3-5年:4500×4(前回4500×4)
5-10年:4250×4(前回4250×4)
10-25年:1500×1(前回1500×1)
25−年:500×1(前回500×1)
物価連動国債:600×1(前回600×1)
変動利付国債:300×1/4(前回300×1/4)

という事で変更なし。4月以降コロナオペの期落ちがバカスカ来る事が予想される中で、そんなに輪番目立つ減らし方するのもどうなの、という見方がある一方で、逆に4月以降はコロナオペ期落ちによるMB減少が見え見えなので、そこに減額ぶつけに行くとさすがに何か勘ぐられてしまうので減らすなら今回、という見方(個人の勝手な憶測です)かねとは思いましたが、何せコロナ対応各種臨時措置による日銀当座預金のアホウのような拡大があるので、MB的には輪番の方が誤差になってしまってて、今更ここを上げ下げするのがどうなのよというのもあるし、大体からして3か月ごとの公表に変更したってのは、毎月の上げ下げで色々とメッセージ出しているように言われたくないって事でしょうから、これが据え置きだからどうのこうのというのをあんまり評価する必要ってないんじゃないのとは思うのですけどね。

とは言いましても、目先の需給で価格ちゃんは動いてしまいますので、注目するなと言っても注目してしまうのが市場の中の人の仕様でありまして、まあどうせあーだこーだと講釈は出ると思うのですが、暫く前みたいに「市場を出来るだけかく乱しないようにしながらオペ減らしますわ」みたいな一本の流れみたいなのは無いんじゃないのかね、とは思いますけれども、むしろコロナオペの期落ちがある程度進んできた辺りから何かまた新たな意図を持った流れが出来るとオモロイかな、とは思います。(なのでコロナ対応のあれこれMB攻撃でアホラシカと思ってあんまり見て無かった国債買入残高の状況については年末分からまた定例の月初計数確認を再開しようと思います)

しかしまあ何ですな、物価連動国債の輪番はそろそろ減らしてもエエンチャウのという気がするんですが、ただのイメージの話で本当の所はよくわからんですけど、コロナオペも3月で多くの部分が打ち切りだというのに、こっちはコロナ対応(みたいなもん)で拡大したのが減りませんなあという所でありまして、物価ちゃんが珍しくもプラス圏で推移して来年とか見た目だけは更にドン、というご時世なんですから、ここ少しはいじるのかなとちょっとだけ思ってたんですけど据え置きなのね、そうですかそうですか。


・社債CP買入は3月までは既存通り(当たり前ですが)

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211227a.pdf
CP・社債等買入のオファー日程(2022年1月〜2月)

CPは5000×2、社債は1250(1-3)+750(3-5)ですが、まあ3-5年に関しては(いつぞやの指値オペと違って今度は本当の本当に)サイゴン陥落前に出る最終輸送機の1月は2便前と相成りますので、乗り遅れの無い様にという風情ですが、まあサイゴン陥落したからどうなのというと社債市場がカオス化する訳でもないでしょうから(個人の感想です)まあ別にね、といった所なのかもしれません、よー知らんけど。


・新コロオペ82兆円www

先週金曜ネタですが。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211224e.pdf
新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーションの実施結果

2.貸付予定総額
貸付予定総額 124,679億円
(参考)貸出残高(注) 821,939億円
(注)2021年12月27日時点の貸付残高の見込み。

ちなみに前回は
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211125a.pdf

(参考)貸出残高(注) 804,993億円
(注)2021年11月26日時点の貸付残高の見込み。

となっておりましてちゃっかりと増えているのがお茶目でございますが、まあ普通に考えて軽く半分は今後期落ちで落ちていくでしょうなあ(もっとかもしれんがよくわからん)ということで、一応この減少は「MBの拡大方針」というのには矛盾しない、という超越理論によって気にしないことにしているという話ではあるんですけど、よくよく考えてみますとそもそもQQEをおっぱじめた時にニバイニバーイと言いながら日銀当座預金が年間80兆円ペースで拡大(当時は日銀保有国債は50兆円ペースで拡大でしたなナツカシヤ)と仰せになっていたその80兆円分のオペがバカスカ期落ちが来て、どのくらい歩留まりするのかわからん(カテゴリーTの分は歩留まり間違いなしだけど後は他のオペに振り替えになったりするのも含めた意味での歩留まり状況はよくわからんですよね)ものの、例えばの話40兆円落ちても「一時的」と言えるのか、という問題は多々ございますわな。

でまあその話をすると「そもそも量とは」という話になるのでありまして、この政策において資産買入の結果として量が出る、というのはその通りであっても、量そのものを目標にするという事に何の意味があったのか、と言っても日銀公式はオーバーシュート型コミットメントなんぞを入れて置物理論の顔を立てるというイカサマ検証をしているだけに、まあ黒ちゃんのいるうちにここの見直しはせんのでしょうな、ナムナム。


あと、地味な論点ではあるのですが、このコロナオぺ、バカスカ出た理由は何といってもマクロ加算ニバイニバーイと特別付利というとってもスイーツな餌があったからホイホイと札が集まった訳でございまして(現にコロナオペ入れた当初はあっという間に札が頭打ちになったので、住宅ローン担保証券とかもはやコロナとどこがどう関係があるのかわからんもんまでコロナオペ対象にして数字作りに狂奔したのが昨年3月4月5月辺りのお話)、これって要はかつて「超過準備付利10bp(法定所要準備は無利子)」というエサがあったから超過準備が積みあがりました、というのと同じ話でして、じゃあその「奨励金レートで付利された超過準備」には何の意味があるのよという論点(ゆうてみれば不胎化された超過準備みたいなもんですから)とか、まあ色々なオモシロ論点が転がっているのですが、そういう点をつつくと蜂がブンブン飛んできて収拾がつかなくなるので放置プレイな日銀公式なのでありました。


〇そういえば気候オペもあったので後日の為にメモ

気候変動対応のためヒー〇テックの肌着を買ったんで補助金80兆円下さい。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211223a.pdf
気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションの実施結果

1.概要
貸付実施の通知日時
2021年12月23日(午前9時30分)
貸付日
2021年12月24日
返済期日
2023年1月30日

何故か1年1か月なのね。

2.貸付予定総額
貸付予定総額 20,483億円

ほうほう2兆円ですかそうですか。

(参考)対象投融資の残高(注)
(注)今回の貸付にあたり、本オペの貸付対象先から報告された「わが国の気候変動対応に資する投融資残高」の合計。これが貸付限度額となる。

こういうの報告させるのね(全然真面目にオペ実施要項を見てない)

基準時点 2021年9月末
対象投融資の残高 24,761億円

ということで対象融資額が2.5兆円くらいで2兆もオペ入った(と言ってもこれ気候オペ先だけが報告しているので世の中全体の数字ではない筈)とは一応日銀としてはニッコリという所ですかね。まあ何でこんなの作ったかなあとは思いますけど。




2021/12/27

〇MPM後の総裁会見と経団連での講演がどっちも物価2%到達を思いっきり否定していたのは何だったのか

という壮大な小見出しですけど(笑)、先週の総裁会見では物価の事結構聞かれてて、堂々の2%行きません宣言をぶっこんでいましたし、経団連の講演では遂に「成長力が上がらないと2%行きません」というあのーすいませんその話は9年前に白川さんが既にしてた話なんですけど、というのをぶっこむというこの連弾でしたが、まあよく見れば(よく見なくてもそうですが)MPM後の総裁会見って物価が上がるの質問やたら多かったのよね、ということで木曜の黒ちゃん会見ネタの残りを少々。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211220a.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2021年12月17日(金)
午後3時半から約60分

・よくよく読んでみると「物価が上がって目標達成が近づくと実は困る」という答弁をする黒ちゃんェ・・・・・・・・

『(問) 今の質問にちょっと重なる部分があるのですが、来年以降、欧米の中央銀行と政策のスタンスの差ができると、どうしても、最近の円安が金利差で更に進むとか、輸入物価の上昇につながったりとか、そういう必需品、一般の人への副作用みたいなものが膨らむ惧れもあるのではないかと考えますが、その辺りはどういうふうにお考えでしょうか。』

という質問が割と早い部分にあります。そういえば今回の会見ですが、質問が割と「今の質問に関連して」という枕詞の付く質問が出るのが目立っておりまして、質問する皆様の進歩を感じられるのは宜しゅうございますな、と思いました。なんだやればできるじゃん、という感じですが、多分今回のMPMは出てきた施策自体が玄人向けのしか無かったから記事にするなら海外との比較だ、ってのはあったんでネーノってのはあるけど。

ちなみに「今の質問に関連して」というよりも前の質問で黒ちゃんが説明した話に関連している質問って感じの方が多かったので、「今の総裁のご説明に関連して」って質問した方が綺麗なのと、そうやって質問すると黒ちゃんの方も安易な回答をすると別の人からの更問で苦しくなる、という緊張感が出るような気がするので、そうなるとあのやる気のない想定問答棒読みのポンポコリンな答弁も改善されるのではないでしょうか(個人の妄想です)。

『(答) 現在の輸入物価上昇の大きな要因として、石油、天然ガス、その他のエネルギー資源価格が国際的に非常に上昇している点があります。わが国は、エネルギー、石油や天然ガスを殆ど輸入に頼っていますので、それが企業物価の動向にかなり反映されてきています。更に、今、エネルギーだけではなく、鉄鋼などの価格も国際的に上昇し、それが影響しているということがあります。』

それは良いんだかじゃあ何で日本の消費者物価はそんなに上がってこないんでちゅかねえ、というような話をする訳は有りません。

『その資源高の原因をみると、やはり世界的に経済活動の再開が進んで需要が大きく拡大する中で起こっており、今のところ、輸出の増加あるいは海外収益の拡大といったプラスの効果の方が、原材料コスト上昇によるマイナスの効果を上回っていると考えています。』

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『それから円安云々についてですが、現在の交易条件の変化に円安が大きく影響していることはないと思いますが、もし為替相場が円安の動きになると、円建ての原材料コストを押し上げる一方、同時に、輸出金額あるいは海外子会社の収益を押し上げることもあります。』

この辺は数日後の経団連講演でも話をしておった。

『最近の企業収益の改善動向、あるいは消費者物価の落ち着きを踏まえると、若干の為替の円安は、これまでのところわが国経済にプラスに作用していると思います。』

おいこらちょっと待て、何だその「消費者物価の落ち着きを踏まえると」ってのは?????

『今後為替がどのように動くかは色々な状況によりますので、欧米が金融引締め、あるいは金利の引き上げを行ったとしても、必ず円安になるとも限りませんし、また、そうした状況で仮に若干円安になっても、先ほど申し上げたように、現在の状況をみると、むしろわが国経済にプラスに作用すると思います。』

コストプッシュを頑なに認めないと。

『ご指摘の欧米と日本銀行の金融政策スタンスの違いについては、確かに、欧米はかなりのインフレになっていますので、金融引締め、金融緩和の正常化に動き出しているわけですが、わが国の場合は、物価上昇率は 0%程度、色々な一時的な要因やエネルギー価格を除いても+0.5%程度と、2%にはまだ相当遠いわけです。』

ほうほうそうですかそうですか、ということはさっき「消費者物価の落ち着きを踏まえると、若干の為替の円安は、これまでのところわが国経済にプラスに作用」とゆうとったがその理屈からすると物価目標達成したら円安はマイナスに作用するんけ??

『従って、現在の大規模な金融緩和を粘り強く続けていくことは、わが国の経済・物価にとって必要なことだと思いますし、先ほど申し上げたように、それが交易条件の悪化を通じて、日本経済に大きなマイナスになるというような状況ではないと思っています。』

いやいやいや、だって「消費者物価の落ち着きを踏まえると、若干の為替の円安は、これまでのところわが国経済にプラスに作用」だったら物価が上がったら困るじゃん、だったら2%目標って達成する必要ないじゃん、という話になるんですが。

・・・・・と考えて金曜日にネタにした経団連での講演での「成長力の引き上げによって物価目標達成」という話を読みますと、つまりは成長力も上がらんで物価がホイホイと上がると、それは日本経済になんのプラスにもならん、即ち経済に見合った物価上昇目標というのがあって、今の日本経済はその段階に達していません、という結論になりまして、それってどこからどう見ても白川ドクトリンの世界(と急に真面目になって麿と言わないアタクシ)の話をしている、ということジャンと少々ビックリするのでありました。

まあ何ですな、是非これは次回の総裁会見で「前回の定例会見や年末の経団連講演などのお話を総合すると2%物価安定目標は日本経済の成長力引き上げが進む中で徐々に達成されていくもの、というご説明と理解しましたが、そのような趣旨で理解して宜しいでしょうか」と誰かぶっこんでみて、「然り」と来たら次の人が更問ですよ更問。


・でもコストプッシュしたらどうするの?の質問には忍法煙巻き回答の術を披露しています

物価絡みで後の方でこんな質疑が。

『(問) 先ほどの質問と少し重なるところもあるのですが、総裁にお伺いしたいのは、来年にかけて仮に物価がコストプッシュで上がっていって、CPIが色々な要因で動く中で、家計の実感が物価上昇を嫌悪するとか消費活動に影響するようなことになって、例えば消費が減少するとか弱まるといったときに、なかなか賃金はすぐには上がってこないと思うので、そういった状況になった場合は、日銀として対応する余地があるのか、それとも政府が対応すべきところなのか、お願いします。』

直球質問キタコレ。この直球への回答は苦しいわなと思ったら案の定ダラダラと長広舌の回答になっておる。

『(答) それは大変微妙なところであり、例えば、米国のFRBは、物価の安定とともに雇用の極大化も目標に入っています。他方で、殆どの中央銀行は物価の安定は目標に入っていますが、雇用の極大化は入っていませんし、日本銀行も入っていません。』

会見の映像を見ていないのでどういう感じでこの部分回答しているのかよくわからんのですが、この質問って普通に想定問答にぶっこまれている筈で、何でこんな斜め上から回答をおっぱじめているのか良く分からんのですが、もしかしたら事務方謹製の想定問答集が「斜め上の話しから回答を始めて煙に巻きましょう」とか書いてあるんですか????????????

『ただ、先ほど来申し上げているように、日本銀行法が「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を使命としていることから言って、ただただ物価が上がればよいということではなく、あくまでも賃金、物価の両方が上がっていく中で、2%の「物価安定の目標」が実現されることが好ましいわけです。』

何が何でも2%達成とか、むしろ以前は経団連の前で「2%への招待状」ということで、日銀が2%を達成する社会を作るからお前ら遅れるんじゃねえぞ、と仰せになっていた時のあの覇気は何処に逝ってしまわれたのでございましょうか(棒読み)。

『ここからは日本銀行政策委員会としての公式の議論ではありませんが、2%の「物価安定の目標」が実現されて、日本経済の成長率といいますか労働生産性上昇率が 1%強あるとすれば、賃金は 3%程度上がっていかないといけません。そのように物価が上がり、賃金も上がっていって、実質賃金も上がっていくという形で、2%の「物価安定の目標」が達成されることが望ましいわけで、』

さてここでアベノミクスの生みの親ともいわれておりました浜田宏一大先生によります2%物価目標の重要性についてのありがたいご説明を確認しましょう。え、「さてここで」の時点で何を引用するか分かるわお前はどこまで粘着質なんだですと???

・・・・ぐぬぬ、なんか例の名小見出し「名目賃金は上がらないほうがよい その理由はあまり理解されていない」がいつの間にやら会員じゃないと見れない記事になってやがるあんな貴重な歴史的資料を、と言ってもまあ金払えば読める(なお無料会員でも月5本の記事は読めるそうな)ので無くなってない訳だから文句を言う必要はないんですが、あれは歴史的に極めて重要な発言なのでダイヤモンド社におかれましてはきっちりと残しておいていただきたいですな。

『それに向けて私どもも努力しますが、やはり何といっても、賃上げ企業に対する法人税の減税など政府が様々な形で賃上げを促進しようとされていることは、非常に好ましいことだと思っています。』

まあ努力するのはエエンだが法人税が下がるとかそういうインセンティブで上げた賃金っていうのはサステイナブルじゃない気がするんだよなー。

『それから、ごく一時的な要因で物価が上がっているときに、すぐに金融を引き締めることは好ましくないと思います。やはり金融緩和によって経済活動が活発になり、企業収益も増えて雇用も増え、雇用が増えるところで賃金も上がっていくわけですから、そういう意味では、私どもとしては、やはり賃金、物価の両者がいわば好循環の中で上がっていくという形になるように、金融政策として最大限の努力をし、他方で、もちろんご指摘のような政府の政策も大変有効だと思いますので、それはしっかりと実施して頂くと有り難いと思っています。』

この回答自体は筋論としてその通りなのですが、問題なのは例えばFEDが直面している「コストプッシュの物価上昇がブロードベースになり、物価上昇に対する生活給要求が高まる上に労働供給に制約がある中で生産性の伸びを上回る物価上昇が起きている時にどう対処するのか」という話であって、質問もそっちの方の話の筈なんですが、そこについては回答をしたくないので、そもそも論をおっぱじめて誤魔化すの巻に出てきているようですが、この回答、冒頭の部分から斜め上の話しから始まっているので、恐らくこの点については日銀の恐れるシナリオになっているから正面から回答し難いんでしょうな、というのは把握しました。


・・・・・・・・・ということでですね、まあ日銀の政策自体はどうせ地蔵オブ地蔵ではあるのですが、来年になって年度が替われば2023年の黒ちゃんの任期までカウントダウンがおっぱじまる、という中で、先般のMPMにおける「政策手段を見ながら所期の効果を達成した施策を部分的に引っ込めるプレイ」とか、今引用した会見および先週木曜の経団連での講演における「2%達成は無理無理無理」と言いながら「達成するには成長力の強化が必要」などのように、だんだんポスト黒ちゃんというか、置物政策からの足抜けを着々と進めてきているのではなかろうか、と勿論これは置物政策被害者の会会員番号334番のアタクシのポジトー成分は入っておりますが、ただまあ来年に向けた変化の胎動みたいなのがだんだん見えて来たように思えるのですが、何せ日銀のことですからそうやって期待させておいても、アタクシが見たのはただの蜃気楼だったという事になるかもしれないので油断も隙もありません。

でですね、まあどうせ今週はFED高官が急に余計なことを言い出さない限りは中銀ネタの棚卸週間だと思いますし、年初にはFOMC議事要旨という大イベントがあるのでFED中心の成敗かもしれないですけれども、日銀もちょっとずつ微妙な足抜けっぽいのもないではない(実は完全にすっ飛ばしているのですが10月展望レポート(基本的見解)の本文の書きっぷりがだいぶ変わっているのもやっぱりこの流れになってみるとちゃんと整理しておいた方が良いのかと後付けで思うなどのように)ので、その辺も整理して行こうかと思います。

#とか先の話しばっかりしてるうちに時間が無くなったので今朝は甚だ簡単で恐縮ですがこんな所で




2021/12/24

〇歳末恒例の経団連での黒ちゃん講演です

・何といっても今回はお題を見て吹いたのですが過去のお題を確認してみましょう

昨日は歳末恒例の経団連での黒ちゃん講演があったようですが、なんかヘッドラインが碌すっぽ無かったような気がする(アタクシの見落としなだけかも知れませんので念のため申し添えます)ので、後から「あ、そういや今日だったかしら」と思いながら講演のお題を見たとたんに爆笑の発作www

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211223a1.pdf
金融政策と企業行動:
金融政策の効果波及経路と日本企業の構造変化
── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──

こwwwれwwwわwww

とうとう物価目標が行かないのは企業のせいと自分たちの無見識を棚に上げて責任転嫁をしだしたかと笑ってしまいましたが、言ってることはソフトだけど結構それに近い話をしているところもあって笑いました。

さてここで毎年年末に行われる恒例の経団連での講演、幣駄文でも恒例になっておりますが、こちらの黒ちゃん講演お題の推移を確認してみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_all/index.htm/
講演・挨拶等
年別一覧

この辺りからピコピコと拾ってくるわけですが。

2013年12月25日 黒田総裁 【講演】「デフレ脱却の目指すもの」
2014年12月25日 黒田総裁 【講演】「『2%』への招待状」
2015年12月24日 黒田総裁 【講演】「転換点を迎えて」
2016年12月26日 黒田総裁 【講演】「世界経済の新たなフェーズと日本経済の課題」
2017年12月26日 黒田総裁 【講演】「人手不足を越えて:持続的経済成長への展望」
2018年12月26日 黒田総裁 【講演】「わが国の経済・物価情勢と今後の展望」
2019年12月26日 黒田総裁 【講演】「好循環の持続に向けて」
2020年12月24日 黒田総裁 【講演】「感染症への対応と中長期的な日本経済の課題:ポストコロナも見据えて」
2021年12月23日 黒田総裁 【講演】「金融政策と企業行動:金融政策の効果波及経路と日本企業の構造変化」

・・・・・・・まあどういう感想になるのか、ってのは人次第のような気がするのですが、最初の威勢のよさがだんだんトーンダウンしてきて、途中から持続的成長みたいな話になり、8年半経って何を今さらとしか言いようのない「金融政策の効果波及経路と日本企業の構造変化」とかそういうのは最初に考えてから政策導入しろよ馬鹿かお前らというお題になっているのがおとーちゃん泣けてくるわって感じでございますが、まあ皆様のご感想はどんなもんでしょうかね。


・金融政策の波及効果と言えば置物大師匠の図表www

何せ今回はお題の半分が「金融政策の波及効果」なので再掲しますが講演テキストの15枚目をご覧あれという感じですね。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211223a1.pdf

こちらスライド15枚目の下半分が「図表2」になっていまして、『金融政策の主な効果波及経路』という図になっております。さてここで2013年に京都商工会議所で置物とかいう物体が能書きを垂れていた時の波及経路図を見てみましょう。

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/data/ko130828a2.pdf

こちらは図表だけのページですが、スライド7枚目にあの伝説の風が吹けば桶屋が儲かる波及経路、『「量的・質的金融緩和」の波及経路』がございますが、まず笑えるのは最初の部分が、置物経路だとちゃんと「2%インフレ目標コミットメント」「マネタリーベース増加」とてめえらがやっている政策の看板を掲げていたのですが、今回のこの図表、スタート部分が単に「金融政策」となっているのみでありまして、個別の政策手段が何に影響するかという話を(一応してないわけでもないですが)かなりフニャフニャに説明していますし、何といっても「インフレ期待上昇」が片隅に追いやられるということで、物価安定目標を達成すると経済の好循環が起きるという本末転倒置物リフレ理論はどこに行ってしまったのでしょうか、って別に無くなっても構わんのだが、そういう邪教に則って展開した馬鹿政策の後始末と、関係者の責任の所在の追求と然るべき制裁を加えてから転向しろやこのクソボケがあああああ!と馬鹿政策の被害をモロに食らった円債村短期村の一村民としては申しあげたいところですな。


・金融政策の波及効果の説明が見苦しい言い訳にしか見えないのは気のせいですかそうですか

などという悪態はさて置きまして、こちらの本文、前半の構成が今申し上げました金融政策の波及効果のチャネルでして、説明が無駄にクッソ長い(個人の感想です)なので途中飛ばしつつ引用しちゃってスマンのだが(なんせ本文が11ページもありやがる)拝読しましょう。『2.金融政策の効果波及経路』って小見出しから参ります。

『はじめに、金融政策の効果が、企業等の資金調達や支出行動の変化を通じて、どのように実体経済に波及していくのか、その経路の全体像を概観します(図表2)。』

図表2ってのはさっきご確認いただいたフロー図ですな。

『金融緩和を例にとりますと、その効果波及には様々なチャネルが考えられます。代表的には、第1に、企業が必要な資金を必要な時に調達できること、すなわち資金のアベイラビリティが改善するチャネル、第2に、金利が低下し、企業の資金調達コストが低下するチャネル、第3に、内外金利差の拡大などを通じて、為替レートが円安方向に動くチャネル、があります。』

ほうほうそうですかそうですか。

『そして第4に、金利の低下に加え、リスクプレミアムへの働きかけなどによって、株価等の資産価格が上昇するチャネルも存在します。』

欧米では住宅価格の急騰という形でしょみーんの生活にまでモロに跳ねてきて(先般シュナーベルだかが言ってましたがラテン諸国と比較してドイツ様の持ち家比率低いからドイツ様にモロにレントの上昇が跳ねておるようですな)、資産価格のアカンタレな上昇で格差は拡大するわ生活必需のレント上昇が一般ピーポーの生活を圧迫するわ、というような論点が言われて問題視されている、という欧米諸国の潮流の中、ジャパンの中央銀行様は暢気でよろしゅおすなあ(はんなり)。

『第3の為替レートチャネルや第4の株価チャネルは、金利の低下が起点となっていることを考慮すれば、「金利チャネルの系」と言うことも出来ます。』

株価の方はまあ良いんだけど為替レートって別に内外金利差だけで起きるもんじゃないんですけどねえ、まあいいけどさ。

『以下では、日本企業の構造変化との関わりが相対的に大きいと考えられるアベイラビリティ、金利、為替レートの3つのチャネルに焦点を当てて、順にご説明します。』

という時点でお察しになられたかと思いますが、なんと今回のこの講演の前半でありますところの金融政策尾波及効果がどうしたこうした話は、上記の3つのチャネルを通じた波及効果が日本企業の構造変化によって小さくなっている、という説明をおっぱじめる事になる訳です。

いやさあ、別にそれ2013年以降に大きく変化した話じゃなくて、麿の時代からずーっと指摘されてて、麿日銀はそういう事もあるから金融政策単体で物価上昇率を飴細工みたいに変えられる訳ないですよね、そもそも金融政策単体で出来るのはマクロ経済の調整であって飴細工みたいに成長を思いっきり持ち上げるような事できませんよね、っていうような(直接言ってたかどうかは麿著作集と麿講演集を見ないといかんのでパスしますが少なくとも金融政策とはそういうもんです、という認識に立ったドクトリンを展開していたのは疑いない所です)ドクトリンをもって政策の運営に苦労していた訳ですが、えーっとすいませんあんたら8年半も政策大迷走して何を今さら構造変化で政策波及チャネルが弱まっているとか言うのかよとゆー所ですな。

では拝読。どうも読み進めると一々悪態を書きたくなるので結論に近い所から引用するようにしますね(^^)。


・企業が資金余剰の中ではアベイラビリティ・チャネルの効果は低くなる(キリッ)って何を今さらジロー

今の次が『(アベイラビリティ・チャネル)』って小見出しになります。

『まず、アベイラビリティ・チャネルです。このチャネルは、貸出市場やCP・社債等の資本市場で、企業が調達できる外部資金の量の変動を通じて、企業の支出行動に影響を与えるチャネルです。』

はい。

『企業の持つ内部資金が少ないほど、また外部資金への依存度が高いほど、効果が大きくなるチャネルと言えます。』

いきなりの出オチに草も生えないwwwwwwwwww

『中小企業を含めたわが国企業のバランスシートを長期的にみると、2000 年代以降、現預金の保有が大きく増加し、自己資本比率も内部留保の蓄積により趨勢的に上昇しています(図表3)。このため、少なくとも平時では、流動性制約に服している企業の割合は低下しており、アベイラビリティ・チャネルの重要性も、従来に比べれば低下していると考えられます。』

じゃあ金融政策効かないじゃん。という話ですが、転んでもただでは起きない屁理屈捏ね太郎なのが日銀クオリティでして、まあアタクシも屁理屈捏ね太郎の成分が一部に入っている(全部じゃないよ!)のでこの負け惜しみのような付け加えに泣いた。

『もっとも、リーマン・ショックや今回のコロナショックなど、大きなショックが発生した際には、不確実性の上昇に伴う予備的な流動性需要の高まりや、CP・社債市場の機能低下などを背景に、資金のアベイラビリティが低下し、企業の支出活動は大きく制約されます。このような局面では、中央銀行が、流動性の潤沢な供給を通じて、企業の事業継続を支えることが決定的に重要となります。』

節子、それ金融政策やない。

・・・・・いやまあ金融政策ちゃあ金融政策ですけれども、マクロ経済調整という文脈の金融政策で波及経路がどうのこうのという話をするときに、ウォルター・バジョット的な中央銀行のLLRの話をまじぇまじぇされましてもそれは話を混乱させるだけの事なんですが、この部分の続きの引用は飛ばしますが、お察しの通りコロナ関連措置を行って日銀頑張りましたアピールになるのでした。


・金利チャネルの効果を延々と説明しているが企業が資金余剰主体であるという話はネグるんですね

次が『(金利チャネル)』になります。

『続いて、金利チャネルに話を移します。金利チャネルには、まず、名目金利ないし予想物価上昇率への働きかけを通じて、実質金利を変化させることで、企業や家計の資金調達コストに直接影響を及ぼす経路があります。』

ほうほう。

『政策金利の変更に伴う貸出金利やCP・社債金利の変化は、その典型です。さらに、金利の変化には、株価や為替レートなど金融資本市場の変化を通じて、間接的に実体経済へと波及する効果もあります。』

と来て何の話をするのかと思えば(ちょうどここでページが変わる)次のページの冒頭でズッコケた。

『この点、日本銀行は、本年3月に実施した「金融緩和の点検」において、金利の低下が経済・物価に影響を及ぼす経路に関する実証分析を行いました(図表6)。』

お手盛り点検の話はクッソどうでも良いので飛ばしまして先に行きます。

『金融資本市場を通じる経路のうち、為替レートについては、この後詳しくご説明しますので、ここでは、まず、資金調達コストの経路に焦点を当てます。資金調達コストの変化は、具体的には、耐久財の消費や住宅投資、設備投資、在庫投資など幅広い国内民間需要に影響を与えます。』

『これらのうち、マクロ経済学の創始者であるケインズは、有名な『一般理論』において、長期金利から設備投資へのチャネルを最も重視しました。』

『現在、日本銀行は、イールドカーブ・コントロールという金融政策の枠組みのもと、伝統的な短期金利だけでなく、長期金利も低位で安定的に推移させることで、設備投資を中心とする民間需要を下支えしています1。』

ところで日本の長期金利と設備投資に関してここ20年くらいの間に何か相関関係が有意に取れるのでございましょうかねえ。

でまあ以下なんか設備投資がどうのこうのという話に流れて行ってしまいまして、最後には遂に気象変動対応オペの話まで行くのですが読んでてナンジャソラな話なので割愛します。


・為替チャネルについても変化があるような話をしれっと入れているのがチャーミング

次の小見出しは黒ちゃん大好き『(為替レートチャネル)』になります。

『次に、為替レートチャネルです。為替レートは、金融政策が直接目標とする対象ではありませんが、内外金利差の変化などを通じて、間接的に金融政策の影響が及びます。とは言え、どの年限の金利差が影響するかは、その時々の市場動向に大きく左右されるうえ、経済学者の間でも現実の為替レートの動きをうまく説明・予測できるモデルの構築は、理論的にも実証的にもきわめて難しいことが知られています。』

それなのに為替レートチャネルって言いきってるのナンジャソラという感じですが更に鑑賞。

『為替レートの変動は、貿易相手国との間で、財やサービスの相対価格を変化させ、ひいては企業の様々な意思決定に大きな影響を与えます。このため、為替レートは、経済や金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが何よりも重要です。』

「ファンダメンタルズを反映して安定的に推移するのが重要」というのと「金融政策で為替レートに金利を通じて影響を与えて波及効果を出す」っての決定的に言ってることが矛盾しているんですけれども・・・・・・・・・・・・

『この点について、トリシェ元欧州中央銀行総裁は、日米欧の中央銀行が、同じ2%の物価目標を目指して金融政策運営を行っていることが、為替レートの中期的な安定に繋がっている可能性を指摘しました2。』

この辺から前任者罵倒タイムになります。見苦しいけど引用しておきます。

『たしかに、かつては、わが国企業が、為替レートの過度な変動に悩まされる局面が度々ありました。しかし、日本銀行が 2013 年に2%の物価目標を採用し、大規模な金融緩和を開始して以降、為替レートのボラティリティは低下しています(図表8)。このことは、企業の事業環境を巡る不確実性を低下させるうえで、重要な役割を果たしてきたのではないかと思います。』

為替レートのボラ低下とQQE政策導入の関係は疑似相関かも知れませんよね、という話はスルーするのが黒田日銀クオリティ。


でもって罵倒タイムはここで終わって説明タイムに戻りますが、

『そのうえで、為替レートは、大きく分けて3つの経路を通じて、経済・物価に影響を与えます。第1に、為替円安は、自国で生産する財やサービスの価格競争力を高めることで、輸出数量の増加に繋がります。第2に、為替円安により、名目の輸出金額や海外事業の円建て収益は増加します。第3に、為替円安は、輸入コストの上昇を通じて、家計の実質所得や内需型企業の収益を下押しします。』

でもってこのように来るのですが、

『このように、為替レートは、経済・物価に様々な影響を与えますが、それぞれの影響の大きさは、日本企業のグローバル化に伴って、中長期的に変化しています。以下では、この点を少し掘り下げてご説明したいと思います。』

「それぞれの影響の大きさは、日本企業のグローバル化に伴って、中長期的に変化しています」っていう時点で結論がお察しになれられるかと思います、掘り下げて説明しているのはめんどいのでパスしまして結論部分。

『以上のように、為替レートの変化がわが国経済に及ぼす影響は、構造的に変化しています。それでもなお、わが国における為替円安の動きは、方向としてみれば、経済と物価をともに押し上げるという基本的な構図に変化はない、と考えています。』

だそうです。

『そして、わが国の消費者物価の上昇率は2%の物価目標を下回っていること、また、わが国のファンダメンタルズに照らせば、資本逃避を懸念するような状況にはないことを踏まえると、わが国にとって、為替レートの円安方向の動きは、基本的にプラスの効果の方が大きいということになろうかと思います。』

と、微妙な言い方をして最後にこのヘッジクローズが来ているのがチャーミング。

『ただし、為替円安にはプラス、マイナス両面の影響があり、またそれらは個々の経済主体の事業内容や支出構造によって現れ方が様々であることには、十分な留意が必要であると考えています。』

(・∀・)ニヤニヤ


・次のコーナーでは企業が設備投資しろという話を延々と展開するのでありました

金融政策の波及効果の話は以上でしたが、この次のコーナーが『3.日本経済の成長力強化と物価安定目標の実現に向けて』というお題になっておりまして、従来は物価安定目標を実現するから皆さんも設備投資など行って行きましょうね消極的なスタンスだと置いていかれますよ(例えば2014年の「『2%』への招待状」辺りを見ますとよくわかるので是非ゲラゲラ笑いながら読んで頂きたい)という話でしたが、遂に説明が「成長力を強化すれば物価目標も行きまっせ」という何処からどう見ても麿ドクトリンに回帰する話に成り下がって(成りあがって)おりまして、ああ無情といった所でしょうか(・∀・)。

なんせ書き出しが、

『次に、これまでご説明してきた金融政策と企業行動の関係を踏まえ、ポストコロナにおける日本経済の成長力強化に向けた課題について、お話しします。』

って話でして、その続きが・・・・・・

『わが国経済は、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を開始した 2013 年以降、コロナショック発生直前の 2019 年まで、平均すると年+0.9%のペースで成長してきました。』

しょぼ過ぎる。

『この間、わが国企業は、政府の政策の後押しもあって、「働き方改革」など労働環境の整備に努め、女性や高齢者の労働参加を強力に促してきました(図表 13)。その結果、この間の雇用者数は、人口減少という逆風にもかかわらず、400 万人を超える大幅な増加を示しました。』

単に生活きつくなって働きに出ている人とかがこういう説明を見ると多分トサカに来ると思うのでこういう説明はポリティカリーな意味で控えた方が良いと思うんですが上級国民の巣窟にいると気が付かないのかな。

『もっとも、最近では、女性の労働参加率が既に米国を上回る高い水準に達し、人口の多い「団塊の世代」も 70 歳台半ばを迎える中で、女性や高齢者を牽引役に労働参加率をさらに上昇させていくことが難しい局面に入ってきています。』

60歳で定年になって夢の年金ジジイ生活を夢見ていた(出来るとは言ってないし過去形なのに注目して下さいorzorz)アタクシが絶望するような事言わんでくれ。

『そうした中で、わが国経済が成長力を維持・向上させていくためには、資本ストックの蓄積を図るか、生産性を高めていく必要があります。』

ということでその次が、

『この点で、設備投資や研究開発投資は、重要なカギを握ります。』

ということで設備投資しましょうねDX投資しましょうね脱炭素しましょうねリカレント教育しましょうね、という話が延々と続き、自分たちが2%物価目標を達成するから付いてきなさい!という気迫は完全に無くなって企業の皆様の設備投資によって成長力が高まらないと2%達成しません、という話になっておるのですが、だったらマイナス金利政策とかそういうの要るの??と思いますし、クレジットスプレッドやリスクプレミアムを無駄に潰すことによって、資源の適正配分という意味では無駄に不必要な所に配分が行われてしまうような弊害をもたらすリスクのある、過度なリスク性資産の日銀による買入とかを全面的に終了した方がエエんじゃないの、とかそんなツッコミをしたくなる結論部分でした。このコーナーの結論部分まで飛びますと、

『本日縷々ご説明したように、日本銀行の大規模な金融緩和は、アベイラビリティ・チャネルや金利チャネルを通じて、事業活動や投資に取り組みやすい環境を提供しています。また、為替レートの安定的な推移も、企業活動を巡る不確実性の低下に繋がっています。そして、金融政策判断の拠り所となる日本のインフレ率は、欧米と異なり、物価目標を下回って推移しています6。』

『このため、日本銀行の政策スタンスは、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」による強力な金融緩和を、粘り強く続けることが基本となります。』

はあそうですか。

『このように、現在は、わが国企業にとって、低金利とこれまでに蓄積した内部留保を有効活用し、デジタル化や脱炭素化に向けた投資を増やしていくのに望ましいマクロ経済環境と言えます。』

何でDXとカーボンニュートラルの限定列挙なのよ、と思いますがそれはさておき、

『企業の支出行動が積極化し、それに伴ってわが国経済の成長力が高まっていけば、金融緩和効果は一段と強まり、2%の物価目標の実現にも近づいていくことが期待できます。』

という結論になっておりまして、2%物価目標達成降参宣言をしているようにしか見えませんし、大体からしてここから先ってグローバルな物価上昇に伴うコストプッシュのインフレが先に来て2%達成とはこんなにアカンタレなものだったのか、と日銀が総叩きになるリスクがあったりすると思うのですが、昨日ネタにした総裁会見での「2%は行きません(キリッ)」と言い、今回の企業の設備投資が無かったら2%行かないもんね講演と言い、さてはお前らコストプッシュで物価が上がって日銀総叩き、岸田さんは当然の如く「日銀のチョンボですなあ」で梯子を外して日銀だけが大炎上(上手くすれば安倍ちゃんにも延焼)、という素敵な未来を意識しだしているんでネーノって気もせんでもないですな、というような妄想を逞しくしながら年末恒例の黒ちゃん講演鑑賞をするのでした。





2021/12/23

〇黒ちゃん会見である(出遅れてますが)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211220a.pdf

・幹事社の最初の質疑でとりあえず今回のコロナオペ見直しの説明は示しているの巻

最初は黒ちゃんの説明で、その次が多分幹事社の質問だと思うのだが(金曜は会見見てない)二つ質問があるのでまずは前半から。

『(問) 今日の決定会合で、資金繰り支援のコロナ対策について一部見直ししたわけですが、中小企業向け資金繰り支援コロナオペについては、来年 9 月まで延長ということでして、対面型サービスに一部厳しさが残っているとご指摘されていますけれども、具体的にどのような点をご懸念されているのかご説明ください。(後半割愛、というか次に)』

『(答) 中小企業の資金繰りは、先ほど申し上げたように、総じてみれば改善傾向にありますが、対面型サービスなど一部になお厳しさが残っているということだと思います。例えば、今週公表した 12 月短観の資金繰り判断DIをみますと、中小企業全体では+8 とプラスになっているわけですが、中小企業のうち、感染症の影響を受けやすい「宿泊・飲食」と「対個人サービス」については、それぞれ−33、−11 と、なお大きめのマイナスとなっており、改善が遅れています。こうした状況を踏まえ、引き続き、中小企業等の資金繰り支援に万全を期す観点から、コロナオペのうち中小企業支援に相当する部分を半年間延長することとしたわけです。』

実際には「一部の業種の為に何でマクロ全体政策を延長するねん」というツッコミはあるのですが、先日も申し上げましたように、アタクシ多分今回の決定に関しては評価する人なのですが、その評価するというポイントが全然人と違うみたい(アタクシがコミュ障なのもあるがオーラルで説明するとどうも別の解釈をされるのよこれがまた)でして、政策手段の中身をちゃんと切り分けた対応をした、つまりこの臨時措置だけじゃなくて他の施策についても(今のダマテンテーパーみたいな姑息な方法じゃなくてちゃんとした形で)政策手段の有効性、妥当性についての切り分けをすれば、無駄な政策や有害無益な政策が削除できませんかね、というのの小さな一歩になって欲しいと思っているんで、正直何で対面サービスのために中小企業全部の融資を優遇する政策継続するんじゃお前らは、というのはあるが、日銀としては「特定業種の中小企業向けプロパー融資だけインセンティブを与える」みたいな政策は出来ません(やるべきでもない)からこうなるのはシャーナイ位の事は分かっておりますわよオホホホホ。

『最近では、オミクロンという新たな変異株が発生するなど、感染動向を巡って不確実性の高い状態が続いています。こうした中、年内のこのタイミングでなるべく早く延長を打ち出すことが、感染症の影響を受けやすい中小企業やそれを支える金融機関の安心感につながると考えています。(後半割愛)』

バリバリの想定問答丸読みって感じですけど、まあ是非はさておき理屈は分かる。今後更に中小企業の全体としての資金状況が改善した時にこの施策どうしますねん、という課題は残り続けるでしょうな。


・海外との比較ですがここは切り分けて質問しないと絶対に日銀の蒟蒻問答で逃げられますわな

幹事社質問の後半。

『(問)(前半割愛)また、米国や英国の方で、物価の上昇を踏まえて金融引締めの動きがありますけれども、日本も原材料高や円安ドル高の進展で原材料価格の上昇が指摘されており、その物価上昇を背景に、日銀としては 2%目標を掲げているわけですが、今後どのように政策運営をしていくお考えかを教えてください。』

黒ちゃんの答え。

『(答)(前半割愛)次に、各国の金融政策に関することですが、各国の金融政策は、自国の経済あるいは物価の安定を目指して行っていますので、経済・物価情勢の差異に応じて金融政策の決定内容や方向性に違いが出るのは当然だと思います。』

まあこの答えも微妙ちゃあ微妙で、こういう回答をすると「ではなぜ海外では物価が政策当局が困るくらいまで上昇しているのに、日本では上がらないのでしょうか(という質問は既に前回の総裁会見でも出ているが)??その差の中には日本銀行の金融政策対応が不適切である、という点があるのではないでしょうか????」ってぶっこまれたときにどういう回答をするのか見てみたいんですよね。

『ご指摘の通り、今週、FRBは、資産買入れの減額のペースを加速する決定を行ったほか、ECBは、パンデミック緊急買入れプログラムのもとでの資産買入れの終了を決定しました。また、BOEは、政策金利の引き上げを決定しました。』

はい。

『もっとも、これら海外中央銀行の決定が直ちに日本銀行の政策スタンスに影響を及ぼすことはありません。』

この所よ。これを威張って(るかどうか知らんけど)言われましても、じゃあ何でお前の所だけ達成しないんだよ日銀の政策がヘタクソだからじゃないの???と思うんだが。

『海外のインフレ率をみますと、米国では 7%程度、ユーロ圏や英国では 5%程度に高まっています。一方、わが国の消費者物価の前年比をみますと、全体として 0%程度となっています。もちろん、その中には、携帯電話通信料の引き下げの影響が−1.5%程度の下押し要因になる一方で、エネルギー価格の上昇、昨年のGo To トラベルの裏要因など押し上げ要因が重なっているわけですが、これら一時的な要因やエネルギーを除いたベースの物価上昇率をみても+0.5%程度ということになっており、目標の 2%とはなお距離があります。』

特殊要因除いても+0.5って他国に対して死ぬほど劣後しているんですがそれを威張って(かどうか知らんが)言われましても困るんですけど。

『また、先行きの消費者物価を展望しても、前年比上昇率は、日本銀行の現在の見通し期間の終盤である 2023 年度にかけて徐々に高まっていくとはいえ、1%程度の伸びにとどまると予想しています。』

だったら上がるような施策を他国の状況を参考にしたら出来るんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)。

『日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくという方針です。』

と言ってるんだが、そもそも「現在の強力な金融緩和」が物価上昇に寄与していないから、世界的に物価上昇の流れが起きている中で日本だけ取り残されているんじゃないでしょうかねえ。つまり追加緩和なんんじゃなくて、そもそもの今の枠組みの設計に問題があるんじゃないですかねえ。


・質問はちょっと惜しいのだが黒ちゃんが謎に興奮(?)して回答でボロを出しておりますな!!!!!!!

という悪態をついた所で話しの都合上質疑の後ろの方にワープしまして、こんな質疑がありました。

『(問) イールドカーブ・コントロールについてお伺いしたいと思います。この政策を導入してから既に 5 年以上経過したわけですけれども、この間、パンデミックの危機対応みたいなものもありましたが、欧米の中央銀行でこの政策を採用したところはありません。このイールドカーブ・コントロールがむしろ長期にわたって低金利予想を定着させて、それがその低成長・低インフレ・低金利のいわゆる「日本化」のようなものを深化させているという、そういう見方もできるわけですけれども、だから欧米の中央銀行は導入しなかったのではないかという見方もできるわけです。これについて総裁はどうお考えなのかということと、こういう問題意識で日銀の中で議論されていることはないのかお伺いします。』

うーん惜しい、そう決め打ちでぶっこまれてしまうと質問の決め打ちをマッコウクジラで叩き斬ってしまえば終わってしまうのでありまして、やはりここは「日本も他国も強力な金融緩和を実施し、パンデミック後に他国は大幅な物価上昇を示す中、日本は2%に程遠い物価上昇しか示していません。これは日銀の現在の枠組みに何か足りない事、あるいはやらなくて良い事があり、それによって物価上昇が他国に対して劣後する要因になっているのではないでしょうか」ってな感じで包括的にぶち込んでみたらどうでしょうか?「適切だと思ってる」だけで返すかも知れないけど。

ちなみに、そこで構造要因の話を延々とした場合、「そのような構造要因があるのであれば、金融政策単独では物価目標の達成が難しい、ということになるので、金融政策によって物価安定目標を達成しよう、という2013年の政府との共同文書にある役割分担に無理があるので、見直す必要があるのではないでしょうか」と斬り返すんですけどね!!!!!!!!会見で誰か連携プレーでやってくれませんかお願いしますお願いします。

なお、質問の聞き方がちょっとアレですが、今の政策の枠組みそのものについて何らかの検討をしないといかんのではないか、などという高尚な議論ができそうなのは(雨宮さんは普通に出来るんでしょうけど副総裁の立場でやるとは到底思えんし)鈴木さん位しか居なさそうだし、新入りはよくわからんけどリフレ馬鹿カルテットの若田部片岡安達野口にそのような見識があるとは1ミクロンも思えないのでまあ議論される訳はありません!!!


・・・・などと質問に文句垂れてしまいましたが、この回答が何か黒ちゃん無駄なキレ芸を示していまして、回答の方が結構なレベルの隙だらけという作品に仕上がっているので、これはこれで質問としては良かったのかもしれません。キレさせてボロださせるってのはあんまり好きじゃないけど。


『(答) まず、ご指摘のようなことは全く考えていません。今言われたようなことは、各国の中央銀行にせよ、様々なエコノミストでもそういう議論をしている人はいないと思います。』

こういう答え方をしたということは、この時点で「黒ちゃん入ってる入ってる」って奴です。

「いないと思います」は言い過ぎ。そもそもだいたいからして経済学者とか世の中のウケ狙いだか何だか知らんけど、とにかくトンチキ理論を捻りだしてくる人の多さと言ったら経済学ほど世に与える害悪は無いのではないか(他学問出身者による偏見ですので念のため申し添えます)というレベルな訳ですから、「いないと思います」まで断言するのさすがにマズいっしょ。なんせ世の中には「日銀当座預金残高を10%引き上げれば期待インフレ率が0.44%ポイント高まる」という珍説を唱える著名経済学者が発生するという位なんですから。

惜しくも会見見て無いから誰が質問したのかよく分からん(最期の質問、という順番と回答のキレっぷりからして何となく察しが付く築地新聞のあの人なのかなという気もするが)のですが、これは黒ちゃんが質問者よほど大嫌いなのか、それとも、「政策の枠組みがそもそも当を得ていないのでは??」というそもそも質問をされるのが黒ちゃん的には激痛なのか、まあ微妙に判断致しかねますが、マッコウクジラで否定するにしてもこんなキレ方することないじゃん、と思いました。

『それから、世界の中央銀行の中にはイールドカーブ・コントロールを入れたところもありました。ただ、その国の物価が非常に上がってきたので、金利を上げ、イールドカーブを低位に置くことをやめています。それはその国の経済・物価情勢に合わせて行われたということであり、イールドカーブ・コントロールが異常な政策ということでは全くないと思います。』

クソワロタ。じゃあ何で豪州は物価達成して日本は達成しないんだよ。10年なんて長い金利にフォーカスしたからダメだったんじゃないの???(10年という金利にコミットしたという事が10年間目標達成が出来ない、という期待を形成した。とか屁理屈は何とでも言えますからにゃー)

『ちなみに、量的緩和は日本銀行が始めて、その後、殆ど世界中の中央銀行が導入しました。それから、フォワードガイダンスも日本銀行が最初に導入して、世界に拡がりました。』

今まで前任をボロクソに罵っていた黒ちゃん、遂に自分の就任前の政策について世界の先駆けであると言い出す有様なのですが、おじいちゃん過去の日銀の業績否定して総裁就任したの忘れちゃったの???

『ただ、最近になって、途上国や一部の規模の小さなオープンエコノミーの中で、あまりフォワードガイダンスでコミットするのもどうかという議論が出ていることは事実です。従って、様々な金融政策のツールについて色々なことが言われることは当然だと思いますけれども、今言われたようなこと、つまり金利を下げると経済成長率や物価上昇率が下がるという議論をする人はあまりいないかと思います。』

あ、質問の趣旨捻じ曲げて答えてる。質問で行ってたのは「長期均衡」としての成長率とか物価の話しだったんですけどね。まあ何か回答の方がメロメロになっていたのが印象に残りますよねこれ。


・事実その通りだから仕方ないのは仕方ないけど目標達成しないのを堂々と言われましてもwww

こんな質疑がありました。

『(問) まず、物価見通しについてですが、メインシナリオは基本的に変わっていないということかと思いますけれども、海外ではインフレの圧力が一段と強まっています。日本の物価も、このメインシナリオよりも上振れるリスクが高まってきているのかどうか、また想定以上にインフレが上振れた場合は、政策対応の備えがあるのかについてお聞かせください。(後半割愛)』

想定以上にインフレが上振れたら、それは目標達成に近づくのでイイハナシダナーな筈なんですが、黒ちゃんこの回答はクソワロタwwwwwwwwwwwwww

『(答) まず、物価の上昇について、確かにわが国の場合は、ご承知のように、企業物価は相当に上がってきています。11 月には前年比+9%と 41 年ぶりの上昇になり、基本的に先ほど申し上げた国際的なエネルギーその他の商品価格の上昇を反映しているわけですが、そうしたもとで日本銀行の短観や民間の様々な物価の見通しなどをみますと、従来よりも見通しあるいは予想物価上昇率が少し上昇してきていることは事実です。来年 1 月の金融政策決定会合は、展望レポートをまとめる機会ですので、その際に政策委員会のメンバーから、経済・物価の見通しやリスクバランスを聞くことになります。』

ほうほうそれでそれで?

『前回の展望レポートですと、物価上昇率については、ダウンサイドリスクの方が大きいという見方が多かったわけですが、中心的な見通しがどのくらい上がるのか上がらないのか、仮に上がらないとしてもダウンサイドリスクよりもアップサイドリスクの方が大きいのか、あるいはニュートラルになるのか、今後の動向をみながら政策委員会で十分議論していくことになると思います。』

ふむふむ。

『先ほど申し上げた、足許、実力ベースで+0.5%、携帯電話通信料の引き下げやエネルギー価格の上昇その他全部を入れたところで 0%程度というものが、少しずつ年度末にかけて上がっていき、更に新年度からは、携帯電話通信料が今年 4 月に下がった分が剥げ落ちますので、その分、引き上げに効いてくる可能性もあります。』

イイハナシダナー(かどうかは知らんが)。

『他方で、エネルギー価格はどんどん上がっていくのではなく、だんだん上昇率も下がってきています。あるいは、Go To トラベルが再開されると消費者物価の引き下げの方に効いてくるなど、様々な要素がありますので、今から決め打ちはできません。』

そらまあそうなんですけど、この次がお前は何を言ってるんだ状態になります。さあご覧ください!!

『ご指摘の通り、これまでのように常に下振れるというダウンサイドリスクばかりではなく、アップサイドリスクがあるかもしれませんが、2%に及ぶもしくは超えるといった欧米のようなことになる可能性はまずないと思います。』

ちょwwwwwwおまwwwwwwww自信満々に物価目標未達宣言するなよwwwwwwwwwwwwwww

黒ちゃん就任当初は何が何でも2%だの2%への招待状だの色々と根性出した発言をしていたのですが、今や黒ちゃん自らが堂々の2%未達宣言をする訳で、いやあのお前さんが端から2%未達宣言してるのに、何で期待インフレが上がるんだよという話で、おじいちゃんフォワードルッキングな期待形成に働き掛けてフィリップスカーブをシフトアップさせるんじゃなかったのというお話でございまして、こんな自信満々に物価目標未達宣言するのはさすがに見識が問われると思うんで、ハッタリでも「2%に向けて着実に上昇していく」って説明しろよという所。

黒ちゃんがモルダーあなた疲れてるのよ状態なのか、それとも本格的に(ピー音)が来たのか、なんか良く分からんのですが、これもまたコミュニケーション的に今まで言ってた話とチャウやんという事。

まあどうせこの直後の、

『従って、欧米のように金融政策の正常化に向けて動き出すということにはならないと思います。(後半割愛)』

を言いたいからモルダーあなた疲れてるのよ状態になっているのだろうとは推察致しますが、そんなの「物価が上昇するのは望ましいですが、それが一時的上昇で2%を安定的に維持すると見込みにくい場合は残念ながら正常化に向けて動き出すという訳にはいかないと思います」位にしておけばよいのに、目先の正常化を否定するあまりに物価が行かないのを強調するとか本末転倒にも程がありまして、何ちゅうか黒ちゃん大丈夫かとしか申し上げようがないですな。

などとノリノリで悪態ついてたら時間が無くなったので本日はこの辺でご勘弁くださいませ。MPM議事要旨とかいうのもありましたが、ボンクラの議論を見るのは時間の無駄なのでネタにはしますが後回しです。





2021/12/22

・引き当ての問題は税務上の引き当てを認めてくれるかどうかでだいぶ違ってくると思うの

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb211221.htm/
地域金融機関による引当方法の見直しと審査・管理の工夫
2021年12月21日
日本銀行金融機構局

こちらは例によって例の如くなのですが、PDFバージョンで使っているエディタがMSの普通のワードじゃないのか、それともフォントで通常のMSゴシックみたいなのを使っていないだけなのかよくわからんのですが、いずれにしましてもUTFフォントじゃないと外字扱いになってしまいまして、アタクシが普段使っているアップローダー(大昔の奴をそのまま使っているのですがテキストサイトのアップにはこの程度の単機能の方が楽なのでそのまま使うでござるの巻)だとそのフォントカバーしていないので、一々手で直すという苦行が待っておりまして、お蔭で最近はFSRの本文をネタに出来ないという実に怪しからん状態。

でもってこちらの本文もいつもと同じ(何故か機構局金融システム調査課案件だけこの現象が起きる)なので、HTMLの要旨だけ引用します。

『要旨

コロナ禍中にあって、取引先企業それぞれの財務状況に応じた与信管理の重要性が高まっている。そうしたなか、地域金融機関による引当方法の見直しが進展しているほか、入口審査や中間管理上の工夫もみられている。本稿は、前年のレポート「地域金融機関における貸倒引当金算定方法の検討事例」の続編として、こうした引当方法の見直しや審査・管理の工夫について、地域銀行・信用金庫の取り組み事例を紹介することを目的としている。本稿で紹介する事例は必ずしも全ての金融機関にとって合理的な選択肢になるとは限らないが、各行庫の貸出方針や貸出ポートフォリオの特性に応じた与信管理を検討していくうえで参考になると考えられる。』

これ、去年も同じこと書いたと思うのですが、管理会計上引き当て増やしても、税務上の引き当てを認めてくれないとやる方にメリットがないし、財務基盤の強化につながらない(そらまあ有税引き当てしたのが実現すれば後年に税効果出るけど)から、特に規模が小さくてそんなめんどい事やってられるか!って金融機関は多いと思うんで、高度化云々の話しはそれはそれで結構なのですが、そもそも実績ベースでしか税務上の引き当てを認めようとしないで税金を出来るだけ取ろうとする税務当局ってのを何とかして頂きたい所で、引き当てを積んでも後で否認されたら面倒なだけなんすよね。まあ税収をきちんと取ろうというインセンティブが税務当局にあって、自分の庭を綺麗にするのは大事な話だから税務当局の動き自体はそら組織としてそうなるだろうなあ、というのも分かるので仕方ないのはありますわな。

ということでですな、これ現状がどうなっているのかってのコロナ後で色々と変わったのかも知れないのですけれども、日銀とかはこうやって「適切な引き当て」というのも分かるし、事例紹介するのが無駄とは思わんのですが、この辺りは税務との調整、つまりはそこになると政治判断ということで高次の次元での決定が必要だと思うのですが、そっちを何とかしてくれや、と毎度のようにこの話が出るたびに申し上げていますが、現状はどうなっているんでしょうかしらねえ。

なお本文はこちら。話としては面白いですよ。
https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsrb211221.pdf




2021/12/20

お題「日銀決定会合レビュー:政策手段をキチンと切り分けた対応をしたのですが今後もこの調子で温泉旅館のシンプル化キボンヌ」

どもども、中銀祭りの中金曜日お休みしました中の人の事情によりまして、今日は浮上しましたが明日はまた潜航しまして明後日から平常運転に戻ります(予定です)。

ということで本来ならFEBの深掘りを先にしようかとかECBとかBOEとか思っていたら、意外な事に日銀が割と面白い事をして頂きましたので本日は主にそちらの話題から。


〇日銀決定会合レビュー:個別の政策手段について個別に達成状況を見ながら対応とは中々

・新コロオペのうちCP社債買入の停止までは読めた(12月とは思わなかった)がこのきめ細かい対応は読めんかった

てな訳で声明文。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217a.pdf
当面の金融政策運営について

『1.新型コロナウイルス感染症は、引き続き内外経済に大きな影響を及ぼしているが、わが国の金融環境は、全体として改善している。大企業についてみると、CP・社債市場は良好な発行環境となっているほか、貸出市場でも予備的な流動性需要に落ち着きがみられる。』

うんうん。

『中小企業の資金繰りについては、総じてみれば改善傾向にあるが、対面型サービス業など一部には、なお厳しさが残っている。こうした情勢を踏まえ、日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、中小企業等の資金繰りを引き続き支援していく観点から、新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムの一部について、以下のとおり、期限を 2022 年9月末まで半年間延長することを決定した。』

一部なのでCP社債だけ終了なのかな、と思ったら意外な事に細かい切り分けisある。

『(1)新型コロナ対応金融支援特別オペ(全員一致)

@感染症対応にかかる中小企業等向けのプロパー融資分は、現行の取扱いのまま、期限を半年間延長する。

A感染症対応にかかる中小企業等向けの制度融資分は、2022 年4月以降、貸出促進付利制度上の付利金利を0%(カテゴリーV)、マクロ加算残高への算入は利用残高相当額としたうえで、バックファイナンス措置として期限を半年間延長する。

B大企業向けや住宅ローンを中心とする民間債務担保分は、期限どおり、2022 年3月末をもって終了する。』

ここですが、日銀の出しているポンチ絵に則って後で詳しくですが、なんと今回ってコロナオペの中身について個別の内容をきちんと切り分けて精査し、役割を果たしたと判断された分についてきっちりと終了する、という事で、QQEおっぱじめて以降の日銀とは思えない細かいムーブをしておりまして、この点が今回良い意味で裏切られた(個人の感想です)点ですな。

『(2)CP・社債等の買入れ

CP・社債等の買入れ増額措置は、期限どおり、2022 年3月末をもって終了する。2022 年4月以降は、感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻し、CP・社債等の買入れ残高を、感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に引き下げていく。』

CP社債の買入ですが、こちらは「感染症拡大前と同程度の買入れペースに戻し」ということですので、社債の場合は月2000億円(1-3年1250と3-5年750)が月1000億円(日銀保有銘柄の償還状況によって月単位では若干の上下がある)になり、CPは月1兆円くらいだったのが月5000億円くらい(これまた償還状況や季節性によって多少の上下がある)になる、ということですな。

でもってまあ元に戻すって言ってるんだから3-5年の買入は3末で終了ですよヤッホーという事になりました。発行体当たりの限度額に関しては若干ファジーな所があって、

https://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo83.htm/
コマーシャル・ペーパーおよび社債等買入基本要領

附則の項番4になりますが、

『4.一発行体当りの買入残高の上限は、CP等については令和4年4月1日から令和5年3月31日までの間、社債等については令和4年4月1日から令和9年3月31日までの間、金融調節の円滑な遂行の観点から必要と認める場合には、基本要領5.の規定にかかわらず、3.本文またはただし書きに規定する水準から基本要領5.本文またはただし書きに規定する水準までの範囲内において決定し得るものとする。』(この部分は直上URL先のCP社債買入基本要綱から引用、以下暫く同様)

となっておりまして、では元々の額と変更後の額は幾らでしたっけというと、元々の額は本則の項番5になります。

『5. 一発行体当りの買入残高の上限

一発行体当りの買入残高の上限は、CP等については1,000億円、社債等については1,000億円とする。ただし、CP等、社債等のそれぞれについて、買入れの時点において、買入残高が買入毎に本行が別に定める時点における一発行体の総発行残高の2割5分を超えているものについては、買入対象から除外する。』

増額した額は附則の項番3でして、

『3.一発行体当りの買入残高の上限は、令和4年3月31日までの間、基本要領5.の規定にかかわらず、CP等については5,000億円、社債等については3,000億円とする。ただし、買入れの時点において、買入残高が買入毎に本行が別に定める時点における一発行体の総発行残高に占める割合が、CP等については5割、社債等については3割を超えているものは、買入対象から除外する。』

となっておりますので、基本的には残高1000億円になるのですが、特に社債に関しては期落ちで残高1000億円になるまでこの銘柄の買入はしませんよ、ということになると、うっかりすると数年のスパンで買い入れ対象から外れる、というお茶目なことが起きえるので、一応お助け措置は発動するということになるようで、この発動要件は明示されていないのでよー分からん所がありますけど、まあこの条項の趣旨から鑑みて、3月末の個別エクスポージャーが増える方向の買入はしてくれないんじゃないですかねえ(3-5年はどうせ2023年にならないと償還が来ないので、当面1000億円オーバーになっている銘柄でも1-3年の期落ち分見合いは買ってくれる(ただし足が2027年3末を超えるものは1000億円までで打ち止めになるのだがその話は2024年になってからの話だから今は気にしなくてよい)んじゃないかという想定だがあくまでも個人の類推だが制度の趣旨から言ったらそんな感じじゃないですかね)。

CPの場合も多分同じような感じで、個別銘柄に関しては1000億円超過銘柄については期落ち分までしか買わない。ただし足が2023年3末を超えるものが1000億円になったら打ち止め、という感じになるんですかねえ。もしかしたらそんな微温的なことしないでCPに関しては1000億円になるまで買い入れ対象外にしちゃうかも知れませんけど。



・今回の決定は雨宮副総裁の徳島金懇の会見に背景説明がありましたなというお話

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2021/kk211209a.pdf
雨宮副総裁記者会見要旨
―― 2021年12月8日(水)
午後2時30分から約25分
(徳島市・東京間オンライン開催)

こちらの5ページ(PDFも同じく5枚目)のケツの部分にある質疑応答から。

『(答)(前半部分割愛)本日の講演では、一種の特徴点をいくつか切り出してご説明しましたが、全体として金融環境をみると、大企業については、今ご指摘のあった通り、CP・社債市場は良好な環境ですし、貸出市場をみても、むしろ借入れは大企業については返済モードになっています。一方、中小企業については、総じてみれば改善していますが、対面型サービス業などに一部には厳しさが残っているということです。個人に目を転じると、個人事業主については中小と同様一部に厳しさは残っていますが、住宅ローン市場は安定しています。こうした金融環境全体を更に点検しながら、政策のあり方については検討していきたいと思っています。』(この部分直上URL先の12/8雨宮副総裁会見要旨より)

ここで、CP・社債だけではなく、大企業向け貸出、中小企業向け貸出、住宅ローン、というのを細々と説明していた伏線が今回回収された、ということになりますわな。なるほどなるほどと思いましたが、延長するのと延長しないのをセットで今回だす件については、延長しない方を12月に出して勝負してくる必然性が無いから、全部延長以外だったら1月かなと思っていたので、その点はちと踏み込んだ感がありますけど、それよりなにより今回は特別オペの中での切り分けをしてきたのがおーという感じでしたが、上記のように細かく分析した結果を細かく政策に反映させる、とか何でもどんぶり勘定で昭和温泉旅館絶賛大増築をして、しかも個別施策へのツッコミ(CPや社債のスプレッドが銘柄によっては国債アンダーになってるとか買入のやり過ぎじゃないでしょうか、みたいなツッコミ)が来ても、施策は全て一体としてQQE政策を構成している(キリリッ)というインチキ説明を繰り広げておりました、というあの日本銀行様とは思えない細かいものが示される
のでありました。


・コロナ特別オペをカテゴリーで切り分けたのは偉い!!!

12/17(金)金融政策 (参考)中小企業等向け資金繰り支援の延長 [PDF 79KB]

ってのをポチっとなとするとまたもポンチ絵が登場するのだが。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217b.pdf
中小企業等向け資金繰り支援の延長

『新型コロナ対応特別オペ』の所を切り分けているのが今回の決定見て「おー」と思ったことですな!!

つまり、特別オペの見合いになっている部分について元々そういう分け方なのだが3つに分けまして、

民間債務担保分→終了
制度融資分→マクロ加算2倍を1倍、この部分に関する特別付利0.1%を撤廃して付利0.0%(カテゴリーU→V)
プロパー融資分→従来通り

という形にしました、ということですが、この特別オペ、もとはと言えば昨年3月に導入した際には『民間企業債務を担保(約8兆円<2020年2月末>)に、最長1年の資金を金利ゼロ%で供給する新たなオペレーション(残高の2倍の金額を「マクロ加算残高」に加算)を導入する。』って物件だったのですが、残高があっという間に頭打ちになってしまったので数字を作らないとヤバいとでも思ったのか(個人の妄想です)、4月の会合で「オペ残高相当額に0.1%の特別付利(まだ分からんでもない)」「住宅ローン担保証券も担保に加える(コロナ対策に何の意味があるのか今でも全くの意味不明)」というような残高かさ上げ政策をぶっこんできた訳ですな。

でもってその後に5月に臨時会合ぶっこんで「制度融資分」と「プロパー融資分」を加えて、期限をしらっとその時に延長して、更に延長延長としながら、今年3月には『より効果的で持続的な金融緩和について』という意味不明なお題目によって付利制度の方を分離して『貸出促進付利制度』という最早何が何だかワケワカメの作品になり、カテゴリーTからVまでの制度になった、ということですな。

#不肖このアタクシでもこの部分一々確認しながらじゃないと書けないので、色々と確認してたら時間が段々怪しくなるの巻ですわよ奥様

・・・・・・でもってポンチ絵に戻りますと、そのポンチ絵にあるように、そもそもこの「民間債務担保分」ってのは、大企業向けの貸出債権や社債、CPを担保にぶっこんで特オペに参加するとマクロ加算が得られます、というだけの制度だったものに、ニバイニバーイが付くわ特別付利が付くわで謎に残高がバンバカと増えたものなのでありまして、確かにこのコロナオぺ導入当初、日銀はあの悪名高き「3本の鉛筆」のポンチ絵を出してきまして(https://www.boj.or.jp/announcements/release_2020/rel200601d.pdf)数字をアピールする、というのを特にFRBに対抗したのか額を出すためにナンジャソラなオペをぶっこんだわけですよ。

でまあコロナ対策、と銘打ったのでこれが引くに引けなくなって、しかも後になって付けた「中小企業資金繰り対応制度」の方とまとめてすべてが「新型コロナ対応金融支援特別オペ」になっていたので、日銀の謎理論「パッケージとして効果を発揮する」によって全部ダラダラと延長され、お蔭で特オペの残高が80兆円とかになって、当然ながら短期市場にも影響するわオペ先と非オペ先の待遇格差がでかくなるわという有様だったのですが、今回はこの特オペを「パッケージ」としないで「個別の政策内容をきちんと見て、それぞれの手段がスコープとしている対象における金融環境を確認」して、「必要なものと不必要なものの切り分けを行う」というよく考えたら当たり前の事なのですが、何せ前任者を口ぎたなく罵って今の座を確保しておられます黒田日銀と致しましては、謝ったら死ぬ病の重篤な罹患者として、一度突っ込んだ政策は止めない、という昭和温泉旅館政策スキームを建築しておられたので、今回のこの措置は(普通にやるべきことをしているだけなのですが)すんばらしい事だし、日銀の中の人が正常化してきてるじゃん、と思うのでありました。


つーかですな、そもそも論としてポンチ絵の方に『大企業向け・住宅ローン 中心』として示されているのが思いっきり「CP・社債買入」と特オペの「民間債務担保分」でありますが、どこからどう見てもCP社債に住宅ローン関係ないので、そうすると民間債務担保分の特オペの何ぼが住宅ローン担保証券見合いだったのよって話で、そもそもコロナ感染症全然関係ないやんというのをバカスカと実行してしかもマクロ加算ニバイニバーイに特別付利0.1%までついてたとか、どんだけ一部のオペ先優遇してたんだと小一時間問い詰めたい所ではありますな(インチキでもコロナ対応の残高を積み上げたい、という昨年3月時点での切迫感というお気持ち自体は分かるのだが、3本の鉛筆による残高アピールをあっという間に引っ込めたのに、こっちをダラダラ続けた辺りが謝ったら死ぬ病に特徴的な症状です)。

とか何とかまあそんな訳で、そういう阿呆な状況が是正されましたことは慶賀の至りですし、今後もこの調子で、昭和温泉旅館金融政策について、全部スクラッチでぶっ壊して作り直せとは思いますが、まあそれが無理にしても、温泉旅館の建て建てマシマシ建屋やそれを繋ぐ謎の渡り廊下などが、段階的に整理されて、令和にふさわしい温泉旅館へと改築されていくことを期待するのでありました。


・ところでカテゴリー別付利残高を確認してみる

直近公表されているのは9月積み期間に掛かる数字ですな。
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211122b.pdf
貸出促進付利制度のカテゴリー別残高(2021 年 9 月)
2021 年 11 月 22 日
日 本 銀 行

カテゴリーT 51,334 億円
カテゴリーU 717,527 億円
カテゴリーV 594,270 億円

このカテゴリーT対象が「プロパー融資分」でして、カテゴリーU対象が「コロナオペ(除くプロパー融資分)」になっていますので、このうち制度融資分が何ぼかというのは公表されていませんが、制度融資として現在実行されている額から逆算すれば出て来る数字ですな、うんうん。

ということですが、マクロ加算だの特別付利だのという話においては、コロナオペ80兆円のうち5兆円だけが特別付利が残って、カテゴリーUに関してはカテゴリーVに降格するのとそもそも終了して残高自体が無くなるのと、ということになるので、付利ついてる当預が大きく減ることになります(とは言っても既存のオペ分の付利は突如無くしたりはしないでしょうから4月になっていきなり75兆特別付利の当預が落ちる訳ではない筈なので悪しからず)わな。

これMBは減るわ(オペ自体が終了する部分)、付利されてる当預残高が盛大に減るわ、コロナオペによるマクロ加算も減るわで、短期市場の金利形成が読みにくくなって(当預的にはそういうことになるけど、CP社債オペの縮小と民間債務部分の特オペが廃止になる事によって浮いて出て来る現物もあるから、そっちの兼ね合いもありそう)中々シャレオツな事も予想されまして、とにかく特別付利とか言う物件によって真面目に考える気力を喪失しておりましたアタクシにおきましても、おらワクワクしてきただ!という感じになるのかならんのか、ということでこれは3月くらいからハッスル(某証券ではない)できるかも知れませんな、うんうん。


#経済物価情勢の現状判断???そういやそういうのがありましたな・・・・・・・・・・・・・





2021/12/15

〇ということで歳末中銀祭りな訳ですが別に考えもまとまっていないが俺様メモ

・FOMC

何ですかね、今回ってほぼ何をするかに関するコンセンサスって出来ている筈だと思うのですけれども、「出た後の相場の反応が分からん」というめずらしやなパティーンになっておる気がするんですが。

えーっとですね、今までのFEDの方式が大きく変わらんとすると、パウエルのおっちゃんとしては「市場をクラッシュさせたくないけど、かといってゴルディロックスヒャッハー相場にはしたくない」ということと、インフレに関してはさすがに軟着陸させれないかなーって思ってて、あとは何気にこの株式と住宅がヒャッハーヒャッハーしてて年金のエクイティだホームエクイティだウヒャッホウってアメリカンクオリティでサステイナブルじゃない消費がフィーバーされても困る、とかそんな感じだと思うの(個人の感想です)。

ということで、まあテーパリング加速して3月末に終わるくらいの勢いにするじゃないですか、でもって恐らくは出てくる物件のタカ派度合いが声明文>SEP>ドット>会見QAって感じでトーン調整してくると思うのね。とは言えさすがに今から3回利上げ予告ホームランするメリットどこにもないから(やるならどんなに早くてもテーパリング終了直前とか直後)それを受けて市場ちゃんの方がどっちで反応するのかがワカランチ会長です正直。

だいたいですな、FOMC後にパウエル記者会見以外の高官発言がサクッと(翌日以降)飛び出してくると話は別ですけど、そうじゃない限りにおいて、だいたい市場様の反応って、声明文のトーンよりもSEP会合だとドットに反応して、その後会見QAのオーラルに反応するって感じだと思うのよ。でもってその反応が気に食わない(強気のトーン出している積りなのに市場がヒャッハーするようなケース)と高官発言で水をぶっかけに行くのですけれども、その位からやっと声明文とかのトーンも見直される、ってパターンが多いような気がするんですよねー。

あと、アタクシ的に気になっているのは、利上げはゆっくりやりながらもAPPの方を調整すれば穏健にリスク性資産の調整をしながら景気は冷やさんで済みます、って発想になるんでネーノという面かな、とは思います。まあFEDよりもそのスタンスが思いっきり出ているのはECBではあるのですが(先日のシュナーベルの講演などにあるように)。

ということでフラグ建築士としては、テーパー加速で1-3で完了位の勢いにするものの、ドットは来年2回行くか行かないか位で、でも成長と物価の見通しは上がる(物価を理由にして先の成長見通し下げたら味わい更に出るんだが)、なお会見では「利上げは別の話ですよ」を繰り返して、そんなにタカなのは出ないので市場ちゃんそっちに反応するけど、落ち着いて声明文読んだら普通にタカタカで後からありゃーとなる、というのに100ブラードと言った所でどうでしょう。


・ECB

まあ何ですな、PEPPの3月終了を決めて「でも利上げは別問題で来年上がられるような環境になるかどうかは分からんし今のマクロ見通しをベースにすると利上げなんてトテモトテモ」って話をするんでしょ、としか思えん。

つまり、BOEはちょっとわけわかめなのでパスしますが、ECBもFEDも資産買入の縮小の方を急いでくるというのを基本にしてくると思うんですよねー(個人の感想です)。ちがうのかなー。


・日銀

まあ何ですよね、先日の雨宮副総裁の金懇挨拶と会見を見るに、まー何か新しい機軸は出してくる気配皆無って感じですよね。3月期限のコロナオペの延長に関してですけど、こんなの3か月も前に決め打ちする必要はサラサラ無くて、1月会合で全然大丈夫。そのまま現施策延長なら12月会合で決める可能性はありますが、何らかの手直しをする可能性があるなら1月に決めるでしょうし、いずれにしても様子見したいでしょうから今回は普通にパスするんじゃないかなーと思います。

あと、短観ってアタクシ的にはつえええええと思ったのですが、なんか「先行き見通しが伸び悩み」みたいなヘッドラインが多いのね(←報道を真面目にチェックしていない人)と思いまして、9月短観で先行きそれなりに下だった(9月短観はコロナがかなり落ち着いてきてこりゃ10月には何らかの緩和措置来るかもね、という状況での調査でしたのでそれなりに下なのは仕様として)中で今回全然堅調な数字を叩きだしているのと、何といっても価格サーベイの部分がこれだけ強くなっているのですから、(それが国民厚生的に良いのかどうかは別にして)物価これは上がって然るべき位の勢い(上がるかどうかは知らんけど)に読めたんですよね(個人の感想です)。

日銀ちゃんがこの機を逃さずにQQE大勝利の宣伝をしながら、物価1%乗せの所で堂々の政策大成功ってアピールして、マイナス金利解除と言わんでも色々と政策を縮小する、でも緩和的なので無問題みたいな現実路線に走ってくれる(この機を逃したらまた政策戻せないっしょ)のを物凄い勢いで祈っておりまして、丑の刻参りでもしたい所なのですが、おっちゃんジジイだから丑の刻とか起きれないんで誰か代わりにお願いいたします。

まー今回は日銀ちゃん、1ミクロンも注目されていないから余計なことしないで色んな事は1月の展望レポートの時にぶっこめばいいんじゃないですかね。

という後日自分が思い出す用のメモでしたサーセン。

〇シャレオツなペーパーが出ていたのだがこれサンプルに偏りがあり過ぎなんとチャイマスカねえ

こんなの出てました。
https://www.imes.boj.or.jp/research/abstracts/japanese/21-J-11.html
ディスカッションペーパーシリーズ(日本語版) 2021-J-11
全文 (PDF, 1,730 KB)
CO2排出量と企業パフォーマンス:Double Machine Learningを用いた日本の実証研究
有賀涼、五島圭一、千葉貴司

こらまたカーボンニュートラルなネタで日銀ちゃんったらアイキャッチなお話が好きですなあ、と思いながら上記URL先のサマリーページを拝読。

『本研究では、2011年度から2019年度においてCO2排出量が取得可能な東証一部上場企業を対象に、CO2排出量と企業パフォーマンスの関係について、長期パフォーマンス、短期パフォーマンスおよび資本コストの側面から実証分析を通じて評価を行った。』

ほうほう。

『その際、先行研究で用いられている手法の潜在的なバイアスに対処するため、Chernozhukov et al.[2018]が提案するDouble Machine Learningを採用したセミパラメトリック・モデルによる分析を行った。』

何かさっぱり分からないが凄いことをしているんですね!!!!!!!!!!!!!

『分析の結果、CO2排出量の少ない企業ほど(1)長期的な企業パフォーマンスが良好となること、(2)株主資本コストが低くなること、が確認された。』

ほっほー。

『これは、CO2排出量の少ない企業に対して投資家が将来の経営リスクを低く見積もり、リスク・プレミアムを低めに設定することで、当該企業の市場価値が高くなることを映じた結果と解釈できる。』

そ、そうなの???2019年度辺りならその話分かるんだが2011年度とかでカーボン何とかとかそんな主流の話でしたっけ??????と思いつつ、

『また、CO2排出量の少ない企業ほど短期的なパフォーマンスが高いことや、負債コストが低いことも示唆されたが、それと同時に、これらの関係性について、先行研究の多くで用いられている推計手法の結果はバイアスを含む可能性があり、その評価に注意が必要であることも示された。』

ということなのですが、アリガタヤな事に本文が日本語で書いてあるので字面ならアタクシでも読める(わかるとは言っていない)。

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/21-J-11.pdf
CO2排出量と企業パフォーマンス:
Double Machine Learningを用いた日本の実証研究

本文をちょっと拝見しますが、例によって序論と結論だけ見るので『1. はじめに』って所の途中から参りますが・・・・・・・・・・

『このような世界的な潮流を背景に、わが国においても、京都議定書の採択を受けて制定した地球温暖化対策推進法(1998 年 10 月公布)を皮切りとして CO2 排出量削減に向けた対応を進めてきている。2020 年 10 月には、2050 年までにカーボン・ニュートラルを目指すことを政府が表明するなど、本邦企業においてもCO2 排出量削減に対する社会的要請が一段と強まることが想定される。』

ふむふむ。

『しかしながら、企業による CO2 排出量削減の取組みは、社会全体にとっては価値があるものの、企業自身や企業に与信を行う金融機関、企業への投資家等にとって好ましいものであるか、換言すれば、CO2 排出量が少ない(多い)企業ほどパフォーマンスが高い(低い)かについては、学術的にコンセンサスが得られていない。』

そもそも業態によっても違うし、結局は「規制などで行動を制限されるようになるやならざるや」という話しのような気がするんですけどね。

『理論的には、CO2 排出量と同様の文脈で議論される企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)活動に関する先行研究を援用すると、CO2排出量と企業パフォーマンスの関係は正負のいずれにもなり得る点が挙げられる1。』

CSRと違うのは今回の話が法規制の直接的な対象になると強い確度で想定されることでしょうかね。

『両者が正の関係であると主張するものは、環境対策投資等の企業の CSR 活動は企業にとっての追加的なコストであり、利益水準の低下を通じて、企業の価値を下押しすると考える立場に立っている(Friedman [1970])。両者が負の関係であると主張するものは、CSR 活動が、利害関係者との関係改善やエージェンシー費用の低下を通じて企業価値を高めると考える立場に立っている(Jensen and Meckling [1976]、Porter and Van der Linde [1995]、Ambec and Lanoie [2008]、Freeman [2010])。』

一瞬「逆じゃネーノ」と思ったが脚注に『1 正の関係とは、CO2排出量が少ない(多い)と企業パフォーマンスが低い(高い)ことを示し、負の関係は、CO2排出量が少ない(多い)と企業パフォーマンスが高い(低い)ことを示す。以降同じ。』とのことでした、ニホンゴムツカシイネ。

『さらに、CO2 排出量を削減することが、将来起こりうる移行リスクに先行して対処しているものだと考えれば、将来的な規制対応コストや訴訟リスクが抑制され、企業パフォーマンスが向上する可能性もある(Ambec and Lanoie [2008])。』

負の相関があるとすれば、企業に掛かる移行リスクを想定してるからじゃネーノというかそこしか考えないと思うんだけどなーというのはアタクシの個人的感覚なんだが。つまりは規制要因(想定されるものを含めた)を投資家が考えるからでネーノという割と身も蓋もないイメージ。

『CO2 排出量の削減が企業価値や利益率の向上につながるのであれば、企業にとっては、CO2 排出量を自発的に削減するインセンティブが存在する。また、投資家にとっても、CO2 排出量の削減を進める企業に投資するインセンティブが生まれ、グリーン投資が加速するきっかけとなり得る。』

『一方で、CO2 排出量の削減が必ずしも企業価値や利益率の向上に結びつかないのであれば、企業が CO2 排出量を主体的に削減するインセンティブは生まれず、投資家が CO2 排出量の削減に取り組む企業に投資するという行動にもつながらない。』

『このため、気候変動リスクを軽減するには、企業による CO2 排出量の削減を誘引するような枠組みを構築する必要があるだろう。』

までは話として分かるんだが、

『こうした点を踏まえると、企業の CO2 排出量と企業パフォーマンスの関係は、CO2 排出量の削減に向けた取組みの方向性を考えるうえで重要な論点といえる。』

ここがナンノコッチャという感じで、むしろこの点は市場の外部(政府)によるインセンティブ設計が効果的に機能しているのかどうかを測る指標として考えるものじゃないのか、というかノーインセンティブの状態では進みにくいから各国の政府などによる取り組みをしているのであって、何ちゅうかこれ話が逆になってねえかという気が凄いするんですが。

『そこで、本研究では、わが国企業を対象として、CO2 排出量と企業パフォーマンスの関係について、実証分析を通じて多面的な評価を行う。具体的には、東証一部上場企業のうち、CO2 排出量を開示している企業を分析対象とし、2010 年度から 2019 年度のデータを用いて、企業パフォーマンスとの関係を長期的なパフォーマンス、短期的なパフォーマンスおよび資本コストの観点から分析する。』

『その際、本研究では、多くの先行研究で使用されている線形回帰モデルの潜在的なバイアスに対処するため、Chernozhukov et al. [2018]にて提案された Double Machine Learning(DML)を実証分析手法として採用する。DML とは、セミパラメトリック・モデルに対して機械学習を利用して政策処置効果を推定する手法であり、特に、本研究で目的変数とする企業パフォーマンスのように、共変量として多数の候補が考えられる場合に有効な手法である。詳細は 3 節で説明する。』

なんか知らんが有効な方法らしい。

『本稿の構成は次のとおりである。2 節では、CO2 排出量と企業パフォーマンスに関する先行研究を概観する。3 節では分析に利用するモデル等について説明し、4 節では本研究で用いるデータと変数の定義を示す。5 節では分析結果を述べる。6 節では本稿のまとめを行う。』


ということですが、次の『2. 先行研究』を見ますと・・・・・・

『以下では、日本を対象とした研究、海外を対象とした研究、および資本コストとの関係に注目した研究に大別して結果を紹介する。結果を概観すると、日本を対象とした研究では、CO2 排出量は企業パフォーマンスと負の関係にあるという報告が多いものの、海外を対象とした研究では結果が一意ではなく、CO2 排出量と企業パフォーマンスの関係についてコンセンサスが得られていない状況となっている。なお、資本コストを対象とした研究では、CO2 排出量と概ね正の関係、すなわち CO2 排出量が少ない企業ほど資本コストが低い関係にあることが指摘されている。』

ということになっているのですが、先行研究の事例を見ますに、

『Nishitani and Kokubu [2012]、Fujii et al. [2013]および Lee et al. [2015]は、CO2 または GHG 排出量と企業パフォーマンスが負の関係を示すことを報告している。Nishitani and Kokubu [2012]は、東証一部に上場している日本の製造業 641 社を対象として、単位 CO2 排出量当たりの売上高とトービンの q の関係を分析している。同論文では、市場規範の影響を考察するため、ISO14001(環境マネジメントシステムに関する国際規格)の取得前後の企業パフォーマンスの違いに着目した分析を行い、分析対象企業が、ISO14001 を取得した後に単位 CO2 排出量当たりの売上高を向上させ、企業価値(トービンの q)を高めた可能性を指摘している。』

『Fujii et al. [2013]は、日本の製造業を対象として単位 CO2 排出量当たりの売上高と ROA の関係を分析し、CO2 排出量が少ない企業ほど ROA が高いという結果を報告している。』

『また、Lee et al. [2015]は、日本の製造業 362 社を対象として単位総資産額当たりの CO2 排出量とトービンの q や ROA との関係を分析し、いずれも、両者が負の関係を示すとの結果を報告している。』

『一方、Iwata and Okada [2011]は、分析対象とする指標により結果が異なることを報告している。同論文では、日本の製造業を対象として、単位売上高当たりのGHG 排出量と企業パフォーマンス(ROE やトービンの q など)の関係を分析し、GHG 排出量が ROE と負の関係を示す一方、トービンの q と正の関係を示す結果を報告している。』

との話なんですけど、

『以上で紹介した先行研究の多くでは、企業パフォーマンスと CO2 排出量以外の説明変数(コントロール変数)との間に線形性を仮定した、線形回帰モデルを採用している。』

おじちゃん頭悪いから良く分からんのだが実は全然違うファクターによって決まっている可能性って排除できるんけ???

『本研究では、企業パフォーマンスとコントロール変数の間の線形性の仮定によるバイアスに対処した分析を行うが、企業パフォーマンスと CO2排出量の関係については引き続き、線形性を仮定する(具体的な定式化は 3 節を参照)。』

うーんこの。

『なお、企業パフォーマンスと CO2排出量に非線形な関係が存在することを指摘する数少ない研究としては、Kimbara [2010]がある。同論文は、日本の化学セクターおよび食品セクターの上場企業を対象とした分析の結果、単位 CO2排出量当たりの売上高と ROA の間に逆 U 字型の関係が存在することを報告している。』

何かこういうの業種によっても違いそう(特に以前なら環境基準に掛かる規制が必ずしも一律では無かった可能性だってあるじゃんとかまあその手の諸々思うんですが)な気がするんですけどね。ちなみに海外だともっといろいろなバラエティのある結果が出ているようですが長くなるので飛ばします。


・・・・・でもってまあ結論に関してはサマリーにあった通りなのですが、最後の方に、『補論 4.分析対象企業と対象外企業の比較 』ってのがありましてですね・・・・・・・・・

『4 節(1)で述べたとおり、本研究は、2020 年 12 月時点で東証一部に上場している企業 2,186 社のうち、CO2 排出量のデータが取得できる 591 社を分析対象としている。現在、わが国では CO2 排出量の開示は各企業の自発的な取り組みに委ねられており、本研究の結果はサンプルの偏りを反映している可能性がある。』

そらそうよと思う次第で、当然ながら規制対応とかで意識しないと行けない業態とか企業と、そこまでまだ包括的な規制が来る前だったら一々だしてませんですよ、という所もあるでしょうし。

『そこで、本研究で分析対象とした企業と対象外の企業について目的変数の分布を比較し、選択バイアスの有無を検証した。具体的には、星野[2009]を参考に、本研究で分析対象とした企業を処置群、分析対象外とした企業を対照群とし、目的変数の平均値の差から算出される平均処置効果(ギリシャ文字がありましたが外字になったので割愛)のほか、逆確率による重み付け手法(Inverse Probability Weighting: IPW)や二重にロバストな手法(Doubly Robust: DR)から推定される平均処置効果(さっきと同じ)を検証した。なお、傾向スコアの算出に利用する共変量には 4 節(4)で示したコントロール変数を用いた。また、傾向スコアの外れ値による影響を避けるため、スコアが0.99 以上または 0.01 以下のデータは除外した14。』

『結果は表 A のとおりである。株価純資産倍率、トービンの q、ROE および ROAについては、対照群に比べて、処置群の値が低い傾向があることが示された。その一方で、資本コストに関しては、(これまたギリシャ文字ですけど株主資本コスト)と(負債コスト)では有意差がみられないうえ、差の水準自体も小さな値となっている。』

『したがって、特に CO2 排出量が長期と短期の企業パフォーマンスに与える影響について、本研究の含意を分析対象外の企業まで含めて一般化可能であるかについては、慎重に評価する必要があると考えられる。』

ということになっていまして、何ちゅうかこの規制対応要因がでかいってことで、そーゆー文脈で考えたらやはりカーボンニュートラル政策に関しては規制の制度設計無くしては中々進まん、という話な気がしました。


〇調子に乗って中銀ウィーク前の暇ネタシリーズやろうと思ったら時間がアレなのですが銀行券に関する日銀レビューもオモロイ

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/rev21j15.htm/
2021年12月10日
企画局 吉澤謙人、前橋昂平、柳原弘明、門川洋一
発券局 稲田将一

何故か発券局よりも企画局の面々の人数が多くて、しかも決済機構とか金融市場とかではないのね、という辺りに謎の味わいを感じますがサマリーページだけご紹介。『要旨』って奴です。

『近年、クレジットカード決済の拡がりなどから現金決済の機会が減少する一方、銀行券発行残高が増加する「銀行券のパラドックス」と呼ばれる現象が、グローバルに観察されている。』

ほうほうそうですかそうですか。

『背景として、低金利環境による現金保有の機会費用の低下や、経済の不確実性の高まりを受けた予備的需要の強まりなど、取引動機以外での銀行券へのニーズの高まりが指摘されている。』

そらそうよ。

『コロナ禍では、このパラドックスが更に強まった。すなわち、景気の悪化や、「巣ごもり消費」によるEコマースの拡大により、現金決済の機会は一段と減少したが、銀行券発行残高は増加した。実証分析によれば、公衆衛生上の措置は銀行券発行残高を有意に押上げたほか、その効果は昨春の感染症拡大直後が最大で、その後は縮小した。感染症に伴う不確実性の高まりを受けた予備的な現金保有ニーズが、銀行券の動向に影響したとみられる。』

これはそうでしょうなー、と思う訳で本文ちゃんはこちら。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/data/rev21j15.pdf
コロナ禍における銀行券の動向

中のグラフとか中々面白いのですが、地の文章だけ引用してもイマイチ面白さが伝わらんなあ、というのは時間が無いから引用しない言い訳成分は無いとは申しませんが(笑)それよりも何よりも、内容そのものは要するに上記の要旨の通りの話が展開されているのですが、それを実際の定量的な数値として可視化されているのがオモロイということです。

ということで是非上記PDFの日銀レビューみてくんなまし、とは思うのですが、この日銀レビューを書いているのが何故か企画局、というのにアタクシは謎の味わいを感じておりまして、発券局は当然分かるのですが、なぜ決済機構局ではないのか、というのは何で何ですか教えて教えてねえ教えてよ!!!!と思うのでありました(変なところを気にするアタクシ)








2021/12/14

お題「短観私家版分析ですが今回の短観はワシ的にはつえええええええええ!!と思うのですけどね」

これはノビテルもニッコリですね!!!!
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211213/k10013386271000.html
ことしの漢字は「金」 京都 清水寺で発表
2021年12月13日 18時27分

五輪だから金とか発想が安易すぎてアホラシイのでもうやめたら(何故か野球の話ばっかりになる流行語大賞についてはNPB大好きのアタクシが見てもあほらしいと思うのですからもっと世間的にアホだと思われてそう)。

「かね」と読むほうが今年の漢字、なら皮肉が色々と効いてて結構なんだが。


〇短観私家版分析ですが私家版分析によると無茶苦茶強いんですがががががが

短観(概要)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2112.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2021/tka2109.pdf(前回)


・業況判断DIの達成状況:何でこんなに企業部門は強いのよおおおおおおお

         (9月時点)       (12月時点)
         現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業   +18→+14     +18→+13 
製造業中堅企業  +6→+1       +6→+5        
製造業中小企業  ▲3→▲4       ▲1→▲1

非製造業大企業  +2→+3       +9→+8
非製造業中堅企業 ▲6→▲7       +1→+0
非製造業中小企業 ▲10→▲13     ▲4→▲6

毎度この時は前回に書いた自分の駄文を改めて読み直しているのですが、長広舌の駄文で申し訳ないですが前回はこんなこと書いておりました。

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
いやー製造業強いっすねえ。まあ前回の見通し自体もそんなに弱くない(景気回復期における短観は基本的に先行きDIが堅めに出るので、若干下程度は基本先行き見通しは強め、だと思っています)のですが、きっちりとそれを上回る数字を出してきました。先行き予想DIを超過達成しているのはまあ今回も同じですが、ただまあ上記で書いておりますように、前回と前々回(3月6月短観)での超過達成が禿げ上がる程の(6月は製造業のみ)勢いだったのに対して今回はそこまででもないですが、この間延々と緊急事態宣言だの何だのとやっていた中でこれなので、(それは緊急事態宣言をしているけど外食とか飲み会とか大規模イベントだけ攻撃されているだけだったという尻抜け宣言だったから、という説はありますが)まあ強いんちゃいますか。
(引用ここまで)

でもって今回、前回製造業つええええええとか書いていたのですが、今回は製造業よりもむしろ非製造業の改善の方が目立ちますね。でも製造業も前回の時点では先行きやや弱めに出ている(ただこの先行きは業況DIが特にプラス圏に来ると先行き見通しが堅めに出る傾向があるのでそこは仕様の範囲内かもしれませんが)中で堂々の前回並みとなっている訳で、まあ9月短観見て強い!と思った水準維持なんだから強いでしょ。

という出オチのような短観ですが、個別の調査項目も今回は強いのよね〜。


・雇用判断DI:ここ2回ほど微妙な感じが漂っていたが再度人手不足モードへGO!

(ここの数値はマイナスが大きい方が雇用情勢的には良い)

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業   ▲5→▲6       ▲9→▲10
製造業中堅企業  ▲11→▲14     ▲14→▲16
製造業中小企業  ▲13→▲15     ▲17→▲21

非製造業大企業   ▲11→▲14    ▲15→▲19
非製造業中堅企業  ▲19→▲23    ▲24→▲28
非製造業中小企業  ▲24→▲24    ▲31→▲35

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
前回は「おや??こようのようすが・・・・・・・・・・・・」という小見出しをつけてみましたが、なんか業況感に対して雇用が絶対値自体は不足方向なので別に悪くは無いのですが、業況感の勢いに対してこっちの不足拡大がイマイチだよなーと思ったのですが、まあ今回に関しては「予測値未達」が殆どですけど、全てにおいて不足感が高まっているのでまずまずという感じですかね。まあこっちも雇用不足度合いの拡大に関しては製造業の方が大きいですね。
(引用ここまで)

いやーこでは強いですわ。前2四半期ちょっと(絶対水準としての不足は不足ですけど)状況が横ばいっぽかったのですが、ここにきて企業の人手不足感高まる、ということですから先行きの需要に自信ニキという所ですかねえ。

まあこういう景気の良い雇用の数字が出ているというものの、アタクシの懐具合は以下自主規制でございますけど、この業況判断の強さに雇用判断の強さの中で何でこうお賃金はそこまで伸びないのよと小一時間問い詰めたい。



・3月短観より私家版チェック新項目にした需給判断等の部分


国内需給判断
        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業   ▲2→▲3       +2→+1
製造業中小企業 ▲17→▲16      ▲12→▲13

非製造業大企業  ▲15→▲14     ▲11→▲10
非製造業中小企業 ▲20→▲20     ▲13→▲14



海外需給判断
        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業  +7→+4        +8→+7
製造業中小企業 ▲7→▲6        ▲3→▲5


(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
何か前回に書いたの前々回の継続になってて何ですねんという感じですが、この推移を見ていると国内需給判断は供給超過(ただし実際にどうなのかというのはこれまた多分アンケートだから堅めに出しているんでネーノという気がする)になっているのですが、海外需要が何かやたらめったらこの3回の短観で強くなっている、というのを見るに、結局の所今までの回復は「海外需要が神風級に高まったので上がりました」がドライバーなんでネーノという気がががががが。
(引用ここまで)

これは日銀ニッコリの結果で、ここもとって上記の前回書いた時にありますように、主に「海外需給判断」が盛大に上がってひっぱっていた感のある需要も、国内の方が全体的に前回の見込み数字よりも強く、水準自体も前回から改善、というのが国内の方が顕著になっている訳でこりゃ強いわ。


さらにこのコーナーは3月短観から在庫水準判断(在庫水準判断は過大側がプラスなので数字が小さい方が強いっちゃあ強い、あとこちらは先行き判断の数値は無いので現状判断だけです、在庫の話だから製造業だけ)を見てますが、せっかくなので今回も見て見ますと、


製商品在庫水準判断
      (9月時点)  (12月時点)
        現状      現状
製造業大企業  +3      +5
製造業中小企業 +11     +9


製商品流通在庫水準判断
      (9月時点)  (12月時点)
        現状      現状
製造業大企業  ±0      ▲1
製造業中小企業 +7      +2

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
在庫に関しては相変わらず減っていて、と思ったら製造業中小企業は在庫水準上がっているのね。まあ流通在庫併せたら減っていないし、大企業は在庫不足に近くなってきている感じなのでこれ自体の流れは同じなのかな。
(引用ここまで)

大企業に関しては在庫増えているのですが、中長期業の在庫減っているし、流通在庫もかなり減っているので、相変わらず在庫が足り無さそうな感じでこれは供給制約ですね!!!!!


・価格判断が前回エライ強いと思ったが今回はその上を行くツエツエ蝿状態ですわ

同じコーナー(これは短観概要の2ページ目にさっきの需給判断、在庫判断と共にのっている)でこっちはもう少し前からの私家版分析ネタ。

販売価格判断
        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  +10→+10       +16→+17
製造業中小企業 +9→+14        +16→+22

非製造業大企業  +6→+5       +10→+4
非製造業中小企業 +1→+3       +6→+5


仕入価格判断
        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測      現状→3月予測
製造業大企業  +37→+34      +49→+43
製造業中小企業 +50→+51      +60→+61

非製造業大企業  +17→+18     +25→+26
非製造業中小企業 +29→+31     +39→+41

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
いやー販売価格判断無茶苦茶上がっているじゃないですか〜全カテゴリーでプラスだし、しかも前回予測数値を超過達成して販売価格引き上げの動きですわよ日銀さんニッコリですね!!!!!

と言いたいのですが、見ればお分かりのように仕入価格判断の方が鼻血の出る勢いで上がっていて、前回書いた数値を引っ張れば昨年の12月短観から見て製造業企業が+5→+37、製造業中小企業が+15→+50ってナンジャソラ状態になっておりますな、ナムナムナム。

どうみてもコストプッシュです本当にありがとうございましたという風情なのですが、その割に消費者物価に統計上は跳ねていない(スーパーで一部葉物野菜の価格とか見ると卒倒しそうになるので見ないようにしておりますがそれは生鮮なのでキニシナイということでさておきまして)ようですけど、消費者物価の統計がアホほどヘドニックかけてておかしいのか、はたまた流通段階でコスト上昇が吸収されているのか、という感じですが、もしかしたら国内向けは値上げしにくいけど海外向けでそれは吸収してるとか????なんか難しくておじちゃんよくわからん。
(引用ここまで)

いやーまあコストプッシュの面が多分にあるのですが、まあそれはそれとしても販売価格判断だって上がっているし、この数字見て物価が上がらなかったらおかしいわ、というような数字になっております。コストプッシュだろうが何だろうが、来年は物価目標達成への展望が開けたと大嘘でも言い張れるタイミングがないですかねえ。前回の勝ち逃げ失敗の反省はここで行かされるでしょうか????????



・設備投資計画がこれまた全然コケる気配のない強さ維持sugeeeeeeeeeeee

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
今回も13ページに設備投資計画のグラフがありますが、見た感じ2018年度並みの推移をしていて、こっちは相も変わらず強いのですな。まあコスト増に関しても上述した販売価格のところを見ると転嫁の動きも出てきているんで、設備投資のここの数値強いと日銀は基本的に企業での前向き循環メカニズムがワークしている、という認識で押してくると思いますので、まあそういう事やぞという感じで。
(引用ここまで)

いつもの13ページの『▽設備投資額(含む土地投資額)の足取り』ですが、ご案内の通りだとは思うのですが、いつもならそろそろ下向きアイヤーとなる時期になってもさほど落ちるでもない、ということでいやもう何ちゅう企業部門の強さよ、というのが今回の短観ですわなと思うのですけれども、この企業部門の強さ、家計部門的には波及してるのやらしてないのやら・・・・・・・・・・



・何じゃこの銀行業のDI跳ねあがり??

業況判断DI

        (9月時点)      (12月時点)
        現状→12月予測    現状→3月予測
銀行業      +6→±0     +23→+13 
協同組合金融業  ▲5→▲3      ▲3→±0        
金融商品取引業 +14→+18    +10→+18
保険業     +20→+12    +25→+29
貸金業等     ▲5→+5      +5→±0

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
何と、2回連続で金融商品取引業があんまりウゴカンチ会長で先行き見通しもヨコっぽいのを出してきまして、雪でも降るんじゃないかと気にしておりますが、よくよく見れば先行き予測で今回よりも改善する、という能天気な見通しをだしてきまして、他の金融業の皆様が(基本的に堅めに出しているから、というのはありますけど)先行きを慎重に見る中でこのヒャッハーマインドには相変わらず敬服せざるを得ないのですが、これが変な死亡フラグになっていないことを祈りたいと思います。12月短観が楽しみだなー(棒読み)。
(引用ここまで)

金融商品取引業の見通しが外れましたというのを楽しみに見に行きましたら、銀行業が何か謎のDI大幅上方跳ねあがり、という珍しいものをやっています。これは何ですか????????




・そういや企業金融

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
などと書いたら7月MPMでちゃっかり来年3月までのコロナオペ延長が決まってしまいましたが、企業金融の方は相変わらず緩和的となっているし、業況感の改善も続いているのに、どこがどう企業金融がタイトでコロナオペを延長せにゃならんのよ、という感は大いにするんですけど、はてさてどうなる事やら。
(引用ここまで)

・・・・・・・ということで、そもそも9月短観の時点でこんなことを書いておりますが、物は試しに資金繰り判断DIの推移でも出して進ぜよう。2020年12月から並べるよ。

大企業:12月+11→3月+14→6月+15→9月+16→12月+16
中小企業:12月+4→3月+6→6月+8→9月+9→12月+9

ついでだから金融機関の貸出態度も去年の12月から並べると

大企業:12月+15→3月+16→6月+16→9月+17→12月+17
中小企業:12月+19→3月+19→6月+19→9月+18→12月+18

てな感じになっていまして、まあずーっと企業金融は緩めに推移している訳でして、このうち中小企業向けの金融機関の貸出態度がどの程度まで政策で下駄をはいているのか存じませんが、それにしましてもこの状況下で借入困難、という先で、まあその直撃ヒットバイコロナの方が厳しいのは分かるし、コロナ落ち着いたら何とかなるってのも分かるんだが、そうじゃなくて単に経営がアレなのがコロナのせいに出来てラッキー組がいるんでネーノとか思ってしまうようなこのゆるゆる企業金融ですわな。

まあここの数字、正直これ以上良く成りようがない位のレベルなので、単月の数字だけ見て3月のコロナオペ延長云々のインプリケーションは出せない(というか出すならどう見ても縮小)と思うのですが、なんせ雨宮さんがこの前「短観なども見る」とか言ってしまった手前確認するの巻となりました。



・今回の企業の物価見通しはさすがに話題になるじゃろ!!!!!!!!(強い!!!!!!!のですが・・・・・・)

例によって手抜きなので前回のに付け加えて9四半期(コロナ前の最後の短観から)にしますわw

販売価格見通し 全規模合計 全 産 業

1年後 12月:0.6%→3月:0.2%→6月:-0.3%→9月:-0.2%→12月:-0.1%→3月:0.2%→6月:0.5%→9月:0.7%→12月:1.2%
3年後 12月:1.0%→3月:0.9%→6月:0.5%→9月:0.6%→12月:0.6%→3月:0.9%→6月:1.1%→9月:1.3%→12月:1.7%
5年後 12月:1.4%→3月:1.4%→6月:1.2%→9月:1.2%→12月:1.3%→3月:1.5%→6月:1.7%→9月:1.9%→12月:2.3%

大 企 業 製 造 業

1年後 12月:0.0%→3月:-0.3%→6月:-0.5%→9月:-0.4%→12月:-0.3%→3月:-0.1%→6月:0.2%→9月:0.5%→12月:1.1%
3年後 12月:-0.2%→3月:-0.3%→6月:-0.6%→9月:-0.5%→12月:-0.5%→3月:-0.3%→6月:-0.1%→9月:0.1%→12月:0.6%
5年後 12月:-0.3%→3月:-0.3%→6月:-0.5%→9月:-0.5%→12月:-0.6%→3月:-0.4%→6月:0.1%→9月:0.2%→12月:0.7%

大 企 業 非製造業

1年後 12月:0.4%→3月:0.1%→6月:0.0%→9月:0.1%→12月:0.3%→3月:0.2%→6月:0.4%→9月:0.5%→12月:0.7%
3年後 12月:0.8%→3月:0.7%→6月:0.7%→9月:0.8%→12月:0.6%→3月:0.9%→6月:1.0%→9月:1.1%→12月:1.2%
5年後 12月:1.0%→3月:1.0%→6月:1.1%→9月:1.3%→12月:1.1%→3月:1.3%→6月:1.4%→9月:1.6%→12月:1.7%

大改善キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!って感じでございますが、なんかこうその大改善が製造業の方が大改善、というのを見るとこれはタダのコストプッシュなのではないか、という疑念も起きないわけではない(非製造業の上げがイマイチ)のですが、なんせ適合的期待形成という理屈によりますとコストプッシュでも何でもまずはアクチュアルの物価が上がらんと話が始まらん、という理屈になっておりますので、そう考えたらどこからどう見てもコストプッシュ起点にするしかないじゃん。。


物価全般見通し 全規模合計 全 産 業

1年後 12月:0.8%→3月:0.5%→6月:0.3%→9月:0.3%→12月:0.3%→3月:0.4%→6月:0.6%→9月:0.7%→12月:1.1%
3年後 12月:1.0%→3月:0.8%→6月:0.7%→9月:0.6%→12月:0.7%→3月:0.8%→6月:0.9%→9月:1.0%→12月:1.2%
5年後 12月:1.1%→3月:1.0%→6月:0.9%→9月:0.8%→12月:0.9%→3月:1.0%→6月:1.1%→9月:1.1%→12月:1.3%


物価全般見通し

中小企業 製 造 業

1年後 12月:0.9%→3月:0.6%→6月:0.3%→9月:0.3%→12月:0.3%→3月:0.5%→6月:0.8%→9月:0.9%→12月:1.5%
3年後 12月:1.0%→3月:0.9%→6月:0.7%→9月:0.7%→12月:0.7%→3月:0.9%→6月:1.1%→9月:1.2%→12月:1.5%
5年後 12月:1.2%→3月:1.1%→6月:1.0%→9月:1.0%→12月:1.0%→3月:1.1%→6月:1.2%→9月:1.4%→12月:1.6%

中小企業 非製造業

1年後 12月:1.0%→3月:0.7%→6月:0.4%→9月:0.4%→12月:0.4%→3月:0.5%→6月:0.6%→9月:0.8%→12月:1.2%
3年後 12月:1.1%→3月:0.9%→6月:0.7%→9月:0.7%→12月:0.8%→3月:0.8%→6月:1.0%→9月:1.1%→12月:1.4%
5年後 12月:1.2%→3月:1.1%→6月:1.0%→9月:0.9%→12月:1.0%→3月:1.1%→6月:1.2%→9月:1.2%→12月:1.4%

(ここから前回9月短観を受けて10/2に書いたもの)
こちらもまた前回駄文は引用しませんが、今回は企業の物価全般見通しが見事にコロナ前を回復しておるのですが、まあゆうてコロナ前を回復しただけで、全然2%とか夢のまた夢という数字であって、こうなってくると麿が最初にしょうが無くぶっこんだ「目標は2%だが中間目標1%」っての妥当オブ妥当だったんですねえ、というのが分かるのですが、どうせ置物一派に言わせると「2%目標にしなかったら1%にも行ってない」みたいな理屈で正しいと言い張るに100ジンバブエドルですけどね。

なお、これは前回も書きましたが、皆さんすっかり忘れかけていると思うので(私もそうだが、笑)、しつこく申しあげると、コロナ前って「まるっきり物価がアガランチ会長なのですがそろそろ何と申し開きをするんでしょうか、まさか10年間達成しないとは言わないと思うので何かの落とし前(全面降伏かバンザイアタックの追加緩和)を」って感じの話しだったのがコロナで全部すっ飛んでしまって日銀にとってはすっかり有耶無耶に出来るという黒ちゃんの悪運の無駄遣いプレイになっていた、と言う事実はあるので、そこは忘れてはいけません。
(引用ここまで)

前回は「やっとコロナ前を回復しただけで、しかもあの時期って寧ろ「物価が全然上がらんですがどう申し開きするんでしょう」と言われてた時期でしたよね」ってな話を上記のようにしておった訳ですな、ついに!!なんと!!!物価見通しも1%台に全期間乗って来ましたよ!!!!!!!!!!!!

というこの短観数字を見ると物価上がらない訳が無いと思うのですがさてどうなるのでしょうか・・・・・・・・・・・・・




2021/12/07

〇そういや黒ちゃんが気候変動と金融の話をしていたのでこれまたクリップメモメモ

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko211129a.htm/
【挨拶】
気候変動問題における金融の役割 〜3つの不可欠な要素〜
パリ・ユーロプラス主催「東京・インターナショナル・ファイナンシャル・フォーラム 2021」における挨拶の邦訳

またこの会合か。

最初はどうでもよいので『2.気候変動問題に対する意識の高まり』から。

『気候変動問題は、日々の生活にも大きな影響を与えるようになっており、人びとの問題意識も高まっています。地球規模での気温上昇のほか、大規模な自然災害の深刻さや発生頻度が増しています。気候変動は長期にわたって社会や経済活動に広範な影響を及ぼします。しかしながら、個々の企業や家計が経済活動を行う際に、それらが排出する温室効果ガスが気候変動にもたらす影響が十分には考慮されていない結果、社会・経済全体として過大な量の温室効果ガスが排出されています。』

んだんだ。

まあそう言ってる黒ちゃんは社会的にまったく意味がないマイナス金利の押し付け合いという事の為に多くの人員がそこに張り付いて何かしている、という負の外部性みたいな市場を率先して作りましたけどね!

『気候変動問題に対応するためには、こうした「負の外部性」を克服すべく、グローバルな対応を長期にわたって継続して行っていくことが求められます。また、科学技術・研究、エネルギー政策、各種規制、カーボンプライシングなど多面的なアプローチが必要です。日本では、昨年秋、政府が2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言し、目標達成に向けた様々な検討が進められています。こうしたネットゼロ(二酸化炭素排出量の実質ゼロ化)の実現を目指す動きを持続させていかなければなりません。』

というのは分かるんだが、その次の小見出しに来ると・・・・・・・・・

『3.金融に期待される役割』って小見出しなんですが、

『こうした中で、金融セクターには、気候変動問題への対応において大きな役割が期待されています。サステナブル・ファイナンスの実現と促進です。そのためには、(1)気候変動に伴うリスクに対する金融システムの頑健性強化、(2)ネットゼロへの円滑な移行を支援するための金融資源の動員、(3)ディスクロージャーの拡充による市場機能の活用、の3つの要素が不可欠であると考えています。』

というのがあって、お話自体はありきたりなんですが「ネットゼロへの円滑な移行」の部分を読むと、いやあのすいません日銀さんちゃんと真面目に考えてるのかと小一時間問い詰めたくなるのよ。その部分引用すると・・・・・・

『(2)ネットゼロへの円滑な移行を支援するための金融資源の動員

次に2点目は、ネットゼロに向けた円滑な移行を支援するための金融資源の動員です。今後、中長期にわたって地球規模で脱炭素化の動きが大きく進んでいくと予想されます。そうした取り組みには社会全体で莫大な規模の資金が必要となります。たとえば、直近の国際エネルギー機関(IEA)の報告書によれば、2050年までにネットゼロを実現するためには、2030年まで世界全体で年間約4兆米ドルの投資が必要とされています2。これらを支えるためには、金融仲介機能が円滑に発揮されることが不可欠です。金融セクターは、自身が有する専門性や創意工夫によって、企業の脱炭素化の取り組みをバックアップしていかなければなりません。』

はあそうですか。

『実際の資金調達・供給にあたっては、各地域の市場構造に応じて、最適な方法を組み合わせていくことが重要です。たとえば、日本においては、グリーンボンドの発行額・件数は増えてきているものの、海外と比較すると規模・件数ともに小幅にとどまっています。そのため、金融資本市場を通じた資金供給に加えて、日本のような銀行中心型の金融システムにおいては、銀行を通じた気候関連投融資の促進が重要となります。銀行が自らの専門的知見を活かして、企業の脱炭素化に向けた取り組みを支援していくことが期待されます。これは欧州にもあてはまる点ではないかと思います。』

という話をしていまして、

『また、こうした背景から、日本銀行では、先般導入した「気候変動対応オペ」において、グリーンボンドを直接購入するのではなく、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応の投融資をバックファイナンスすることとしました。日本の市場構造を踏まえると、最も効果的な方法であると考えています。』

と来まして、

『加えて、産業構造によっても最適な資金支援のあり方は異なります。気候変動問題への対応は喫緊の課題ではあるものの、脱炭素化の取り組みには相応の時間がかかります。経済全体の脱炭素化を進めるうえでは、ただちに脱炭素化を実現することが難しい産業・業種に対して、それらの構造的な変化を安定的に支援していく取り組みも重要です。』

と最後にやっと書いてあるんですが、この「それらの構造的な変化を安定的に支援していく取り組みも重要です」とか暢気に言ってる部分ってそれこそ昭和の時代のエネルギー革命のときに三井三池を始めとして石炭産業での労働争議とか大変なものがあった訳じゃないですが、黒ちゃんのご年代なら同時代に見てたと思う(アタクシ位の年代でもさすがにこの時代の話は知識としてしか持ってない)訳で、経済があれだけ成長していた時ですら産業構造の転換って無茶苦茶大変で、そういうのは金融に求める役割とかじゃなくて、政府が主体となってやらにゃアカン話だし、それどころか既に原油価格が高騰したから産油国ちゃん生産増やしてよと言ったって「今後使うなと言ってるお前らの為に何で頑張って生産増強しないと行けないんだよ馬鹿」という話になっております次第で、トランジションの問題で政府というか国際的な仕組みも含めて色々とやれやと思うのですが、何ちゅうかこの暢気な説明は何なの(個人の悪態です)。


ということで、その暢気さはまとめにもありまして、

『4.むすび

最後になりましたが、気候変動問題への対応はコストや経済成長の制約と捉えるべきではありません。脱炭素化はイノベーションを誘発し、新たな産業や雇用を創出する大きな可能性を秘めています。気候変動問題に立ち向かっていくためには、社会を構成するすべての主体が、地球を救うために必要な責任ある行動を取っていくことが何より不可欠です。』

いや現実問題としてグリーントランジションの影響で化石燃料の生産増強とかの投資が進まなくなると現有燃料のコストが高止まりするんだし、産業構造転換って個別レベルになると大袈裟ではなく生きるの死ぬのの世界になるんだから、仮にも広義の政府部門の人間がプラスの側面の話しだけ暢気にしてる場合じゃないだろ・・・・・・・

『日本銀行としても、本日述べたような3つの要素を踏まえつつ、金融機関や市場参加者とともにネットゼロに向けた取り組みを強力にサポートしていきたいと考えています。

ご清聴ありがとうございました。』

はっきり言って何とかオペとかどうでもよい(そもそも新たな有望な投融資機会が出来るんだったら別に日銀のオペとか無くても民間は勝手に投融資をするんであって、日銀がああだこうだ言い出すのが邪魔)。

ということで、まあ何ちゅうか日銀はんは楽しそうでよろしゅおすなあ(はんなり)という感想でございました。




2021/12/06

・そういえば月末月初のドサクサに紛れて(紛れた訳でも無いのでしょうが)日銀レビューシリーズでESGキタコレ

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/rev21j13.htm/
ESG投資の発展に向けた実務的な課題とその克服に向けた取り組み
2021年11月30日
金融市場局 森駿介、長谷部光*、石川篤史
*現・金融機構局

ご紹介ページの方の『要旨』を見る。

『近年、環境・社会・ガバナンスといった要素を投資判断に組み込むESG投資がグローバルに拡大している。わが国においてもESG投資残高は増加しているが、まだ発展の途上にある。市場参加者からの指摘をもとに、わが国におけるESG投資の発展に向けた実務的な課題を整理すると、(1)企業のESG情報開示の拡充、(2)ESG評価に関する透明性向上、(3)ESG投資における投資目線の確立、の3つにまとめることができる。本稿では、3つの課題の現状と、課題克服に向けた最近の取り組みを紹介する。』

ということで本文があるのだが、

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2021/data/rev21j13.pdf
ESG 投資の発展に向けた実務的な課題とその克服に向けた取り組み

うーんまあ良いんですけどどっかのESG何とかストのレポートみたいな話なので、まあ良くも悪くもこれは社内の御進講用には使い勝手が良さそうな日銀レビューですな、という感想しか起きなかった、というと何かボロカス言ってるみたいで申し訳ないのですが、そもそも本件に関して中央銀行が価値判断を示すのはどうなのか、ってのは昔も今も思っている(別にESGが良い悪いの話ではなくて中央銀行の矩という話)し、これも価値判断を回避しているからただのご紹介レポートになっているんでしょうな、シャーナイ。

まあそれはそれとしまして、大体からしてこういう研究してる暇があるんだったら何で物価2%目標が行かないのか、というのを今の政策を是とした屁理屈大建築ではなく、事実を直視してスクラッチで研究して頂く方が気候変動対応でどうのこうのよりもよっぽど金融安定化にも資する訳で、物価安定目標が達成できていないのにダラダラと屁理屈つけてマイナス金利政策とYCCを牛の涎の如く垂れ流している時点で日銀は何をやってもポンコツのカスダニなので頼むからそっちの研究して下さい優秀な頭脳使って。





2021/11/17

〇地域金融機関向け特別付利の改訂クッソワロタ

これわwwwwwwwwwwwwwwwww

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211116a.pdf
「地域金融強化のための特別当座預金制度基本要領」の一部改正について

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/rel211116b.pdf
地域金融強化のための特別当座預金制度の見直しについて

『地域金融強化のための特別当座預金制度の適切な運営を確保する観点から、特別付利対象金額の上限を次のとおり見直す。

・ 次の@またはAのうち、いずれか小さい金額を上限とする。

@ 対象先の 2019 年度の当座預金残高(所要準備額を除く)に足もとの全当座預金取引先の当座預金残高の伸び率を乗じて得た金額(見直しなし)

A 対象先の 2019 年度の当座預金残高(所要準備額を除く)に 2017 年度から 2019年度までの全当座預金取引先の当座預金残高の平均的な年間伸び率(104.9%)を乗じて得た金額

(実施日)
・ 本年 11 月積み期間における特別付利から適用する。ただし、年度途中における見直しが金融機関経営に及ぼす影響に配慮し、経過措置として、今年度中(2022年3月積み期間まで)は、本件決定前の直近積み期間(本年 10 月積み期間)における各対象先の特別付利対象残高までの付利を行う。』

っていうことで、まあ要するに「制度入れたら予想外の物凄い勢いで特別付利対象預金が拡大しちゃいましたので梯子を外すことにします」という施策でして、さっそくこれかよという中々爆笑させて頂きますと同時に、名古屋の総裁会見は何だったのかと(いやまあその場で「変更します」とは言えないのは分かるけど)中々味わいのある梯子外しでした。

時間が無くなったのでもうちょっとこの辺は調べて何か続きを書くかも知れません。


2021/11/11

〇10月無風&展望レポート会合の主な意見だが

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/opinion_2021/opi211028.pdf
金融政策決定会合における主な意見
(2021 年 10 月 27、28 日開催分)1

まあ最近のMPM絡みの物件は端的に言って「読むに値しない」と趣味の自称野良日銀ヲチャーのワイですらスルーしたくなる物件の集合なのですが、そうは申しましても読まないでいるとヲチャーとしての人徳ポイントが下がりますので読まざるを得ない。

・そもそも経済情勢の部分を呼んでいても何ちゅうかこのパッションというものがですなあ

パッションとかハッスルとか言ってると某社の回し者みたいですが(回し者ではありません)、『T.金融経済情勢に関する意見』の(経済情勢)から参りましょう。

『・ わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。

・ わが国経済は、当面は感染症の影響や供給制約に下押しされるものの、ペントアップ需要の顕在化に伴い、緩やかに回復していくとみられる。

・ わが国経済は、目先は供給制約等により生産・輸出面での下押し圧力が強まるものの、来年度以降は堅調な設備投資等が見込まれることから従来の回復シナリオが維持されると考える。

・ 感染症への警戒感と供給制約の影響が和らぐ来年前半には、景気の改善が明確となると見込んでいる。ただし、ウィズコロナのもとでサービス消費の持ち直しが順調に進むかどうか不確実性が高いほか、供給制約の影響が拡大・長期化するリスクや海外経済の下振れリスクには留意が必要である。

・ 感染症の新規感染者が急速に減少し、ワクチン接種も進展するもとで、感染症による経済の下振れリスクが低下する一方、早期の経済正常化による上振れリスクを意識する必要がある状況になっている。』

とりあえず最初の4つをダラーっと並べてみましたが、よく見たらこれ意見少しずつずれてますですよね。「回復している」が同じでも、現状が「厳しい状態」「下押しされる」というのが割れてるし、先行きだって「回復が明確になる」という人(後半2名)と、「回復すると思いますけど・・・・・」ってニュアンスに読める人(前半2名)とかあるし、先行きだって上振れリスクの可能性を見る人と下振れを見る人がいたりしますわな。

いやまあ見解の相違があるのは実に結構なので、その点についてどうよという話を、統計のエビデンスなり、アネクドートなりでも良いですし、アネクと言えばまさに出身業界で詳しく見ている経済動向のアネクドート(そういうために色々な業種から人が来るのが重要なのですが、能無し経済学者と能無し置物一派何とかストを並べても屁の役にも経たん)をじっくりと論議しながら、各委員の見方を補完していく(別に一致する必要はないけど)ことによって、委員の見方をブラッシュアップしましょう、ってえもんだと思うんですよねー。

然るに、今回のMPMだってMPM声明文みたら「10 月 28 日(木) 9:00〜11:38」となっておられまして、いやあの展望レポート出すのにこの時間に終わるけ?って感じでして、なんかこうおまいら議論というものをしていないで、単にご意見発表をした後に執行部がご用意した展望レポート基本的見解にはいはいはいってサインしてるだけなんチャウのかって思ってシマウマな訳ですよ。

しかもですね、よく考えたらまだネタにしていませんですが(すいませんすいません)今回の展望レポートの基本的見解って、内容を見ますと従来の「コロナモード」から、むしろ「コロナ後」を見据えた書き方に代わっているんですよ(というのは可及的速やかにネタにします)。そう考えますと、もうちょっとこうコロナ後を見据えた話が議論のメインになるとかにならんのか、と思うのですが、なんかこう通り一遍の前回同様の話をしているようにしか伝わってこない(個人の盛大な偏見です)のは何なんでしょう、とまあこれを書いてる中の人としてはこの点についてはちょっとトサカに盛大に来ているので直球をぶん投げているつもりです、はい。

以下の経済情勢に関する意見ですけどね。

『・ 9月短観では、企業部門において前向きの循環メカニズムが維持されていることが確認できたが、供給制約の影響が十分に織り込まれていない可能性がある点は割り引いてみる必要がある。』

それは何をもってそういう判断をしたんでしょうか?まあアタクシも別に短観細々分析している訳でも無いので偉そうなことは言えないのですが、企業の仕入価格判断の辺りを見ると豪快な勢いで「上昇」方向にDIが傾いている(ので販売価格判断の方も上がっている)ので、供給制約の影響を意識しているんだと思ったんですけどねえ。これは誰が言ってるのか知らないですけれども(分かりようがない)、近いうちに金懇がある人でしたら、是非金懇でこう判断した理由についてお聞かせ願いたいし、もし金懇が無くても、次回MPM後に出て来る議事要旨で確認したいから議事要旨にもうちょっと詳しいのを載せて欲しいと思いました。


『・ 中国における電力の供給制約が長期化することで、同国内の経済や世界のサプライチェーンへの影響が拡大することがないか、注視が必要である。』

うーん、そこの指摘かあ・・・・・・・・

『・ 足もと海外における供給制約や電力不足の影響が顕在化しており、特に中国経済の減速感が強まっている。今後、中国の成長率の下方屈曲が起きないかに注目している。』

と、なんかよー知らんのだが中国経済様に対する懸念の意見が二つでているんですが、そんなに中国重要だったら経済分析の議論の中でも中国コーナー作ってくれませんかねえとは思う(新興国でひとくくりにする中に中国が入っている)。欧(はともかく)米の話があんまり無くて中国の指摘がどどーんと出てくるのって日銀公式が出してくる「海外経済の見通し」という説明が基本的に米国中心の主要国が先に来て、その後に新興国、って並びになっているのに対して、このように「主な意見」の方では中国話ばっかり独立して登場っての何か微妙感がありまして。

『・ デジタル化と気候変動対応の加速の促進、国内従業者の7割が働く中小企業の生産性向上と賃金上昇の実現が重要である。』

うん、重要ですね。で何をどうすれば良いの?

『・ 金融システムは、全体として安定性を維持しており、先行き感染が再拡大しても、金融仲介機能が大きく低下するリスクは抑制されている。』

うーんわざわざ言及する事かいな。

『・ NISAや確定拠出年金の利用促進等により、家計の金融資産を幅広い層の所得向上に活用していくことが重要である。』

ちょwwwwwまた中村審議委員wwwwwwwこの「賃金が上がらないならNISAで増やせば良いじゃない」というマリーアントワネット理論wwwwwwwwww

まあマリーアントワネット理論はさて置くにしましても、ジジイが退職金を毎月分配型投信にぶっこんで分配金を所得の足しにする取り崩しモードとかならともかくとして、NISAで資産価格目出度く上昇したぜヒャッハーってなったからと言って評価益をバックに消費増やすっていう感覚がアタクシ根が貧乏性なのでさっぱりワカランチ会長でして、いやまあそら富裕層のお方が沢山ある資産の中で値上がりしましたし高級腕時計でも買いますか(置き引きダメ!ゼッタイ!!)というのは何となくそういうもんだろうなあとは思うんですが、なんかこう「所得向上」って言われると物凄い違和感があって、「資産向上して将来不安の払拭に繋がると良いですね」という方向なら分かるんですが、「所得」と言われるとそれは何か違う気がするんですよね(個人の感想です)。

ということで議論してるんだかしてないんだかよくわからんですが、経済のパートここまで。


・物価のパートに7つも意見がある!やったね!!

次の(物価)の所ですが、一時は意見が物凄く少なくてお前ら物価目標やる気あんのかこのスットコドッコイ(物価目標の達成が見えないとマイナス金利とYCCが延々と続くのでこっちは死活問題、というか既に死んでるようなもんだが)などと申しておりましたが、さすがに世界的に物価がどうのこうのと言われるこのご時世になり7つも意見が出るようになりました、なお政策委員の人数は9名ですけどね!!!!!!!!

『・ 消費者物価の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格などは上昇しており、0%程度となっている。先行きは、当面、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。』

いやそれは良いんですけど、以前もコストプッシュ(原油価格上昇によるエネルギーと、アベノミクスに黒田緩和による円安、消費増税に伴う便乗値上げも含んだ影響)で物価が1%とか行った時に、それが単に消費の下押しになって華麗にズッコケてしまった、という事案があったのでして、当面の話しとかいいから、それがサステイナブルなものになるか、という話をするのが展望レポート作る意味なんじゃないでしょうか。

『・ 経済再開に伴う需給ギャップの改善や予想インフレ率の持ち直し等を踏まえれば、基調的な物価上昇圧力は、わが国でも徐々にではあるが、高まってきている。』

予想インフレが持ち直しているからと言って消費がスライドで増えるかというのは別問題でして、ジャパンの場合はとにかくコストプッシュで上がった物価によって適合的期待形成が働いた場合、家計が防衛的になってしまって、企業における価格設定の強気化が持続しないことなのではないかと思うんですがその辺はどうなんでしょうかねえ。

『・ 企業の予想インフレ率や期待成長率の上方修正に加え、世界的な気候変動対応に向けた動きからエネルギー価格の上昇が続く可能性もあるため、インフレ圧力は従来よりも強まっていると思われる。』

節子、前半はええんだが後半はタダのコストプッシュや。

『・ 10 月からの公共料金や食料工業品等の値上げは原油価格等の上昇に伴うものであるが、これによりペントアップ需要の発現時期や強さに影響し得る点には留意が必要である。』

やっとコストプッシュの弊害の指摘がきました。

『・ 輸入原材料の価格上昇の転嫁が消費者物価を押し上げているが、賃金上昇や供給制約による価格上昇圧力は弱い。』

いやだからそれを何とかする方策考えるのが2%物価目標をできるだけ早く(早期とは言っていない)達成するって標榜しているお前らの仕事なんだが他人事のように言ってる場合じゃないの分かってるのかね、いやまあ認識してるだけマシなのかも知れんが。

『・ 消費者物価の前年比はプラスに転じたが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると「物価安定の目標」の達成は難しい。』

片岡さんキタコレで、まあこれはこれで一つの見方(というかこの点は片岡さんに賛成するわワシも)なんですが、他の人との見解の差を議論してるのかなあというのは毎度疑問でして、「あーはいはいわかりました片岡さん、では次の方どうぞ」ってな感じで黒ちゃん議長が議事回しをしているのではないか疑惑は高まるのでしたwww

『・ 日米インフレ率の差は主にサービス価格であり、その大部分は賃金である。賃金引き上げには労働市場が更に引き締まることが必要である。家計・企業の待機資金の支出を後押しするためにも、所得と賃金の引き上げを目指すことが望ましい。』

じゃあ何をすると労働市場が更に引き締まるんでしょうか。何だったら追加金融緩和でもしたら宜しいんじゃないでしょうかねえ(棒読み)。



・金融政策運営に関する意見を見たら二つほどネタがあったわ

次が『U.金融政策運営に関する意見』のパートになりますが、罵倒合戦の鑑賞とか、一部政策委員による毒電波を鑑賞しながらの電波浴などのエンターテイメント要素が無くてクソ面白くも無いのですけれども、今回はちょっと別の意味で味わいがありました。


・コロナオペの継続に関連する意見が2つほどあるというべきが2つしかないというべきか

最初にコロナオペに関連する意見。

『・感染症の資金繰りへの影響は、売上の低迷が続く業種や中小企業に限定されつつある。今後も、企業金融の改善の裾野が拡がっていくか、12 月短観等の関連データを点検したい。』

『・社債等の買入れについては、大企業の資金繰りが改善を続けていくもとでは、価格決定メカニズム等の市場機能や年金・生保等の運用に与える影響にも一層の配慮をしていく必要がある。』

企業金融に関する意見が二つありまして、コロナオペの継続云々(社債買入もコロナオペ絡みで年限延長と買入枠の拡大を行いましたからね)の話に繋がりますな。ただ恐らく12月会合ではコロナオペどうするという話が出てきてもおかしくないタイミングなのですが、もしかしてこのお二方以外の方々は途中でコロナオペの評価とかそういうのをしないままいきなり執行部から議案が飛んできてから検討するとか、そういう雑な事をやってるんじゃねえの、と思ってしまいました。

あと、社債買入云々の所ですが、「信用力に応じたスプレッド形成に対する強力な介入を継続すると資源配分の形成を歪め、その結果として日本経済の成長力強化を阻害する要因になるリスクがあるのではないか」というような感じで正攻法で突っ込んで頂きたい訳で、生保や年金の運用云々というのは、そらまあ当事者的には死活問題ではあるものの、金融政策ってのはマクロ政策なのですから、別にそういう所を引き合いにだして政策の是非について話をしなくても良いんじゃないの、と思うのですよ。

いやこれがマクロじゃなくてもっとミクロっぽい所で、日銀当座預金の特別付利や複層化したマクロ加算の設定は、日銀オペ参加者とそれ以外の間での市場に対する参加条件を人為的に歪める政策であり、マクロ加算比率の低下によって生保・年金・投資信託などにマイナス金利負担を押し付けることになる、みたいな話で持ち出すんだったら分かるのですが、社債買入という全体的な政策で一々生保年金の運用ガーって言ってしまうのは、まあ贔屓の引き倒しだし、反対する方が「金融政策はマクロ目標を達成するために行うもので生保年金の目先の運用問題でどうこうするものではない、それに物価目標を達成すれば生保年金の運用環境は好転するのは明らかなのだから目先の利害得失で政策判断するのは馬鹿のホームラン王」って言われたらどう反論するんでしょこの人、という感じがするので、もうちょっとものの言い方というのを考えて欲しいですね。


・うん、だからどうするんですかね??

『・ 基調的なインフレ率が依然として低いわが国では、ペントアップ需要が高まる局面でも、これまでの極めて緩和的な金融政策を粘り強く継続していくことが重要である。』

継続することが目的化していますけどね!

『・ 家計の消費意欲や値上げへの許容度が高まっていくためには、賃金上昇への期待の高まり等を通じた将来不安の解消が必要である。企業収益の増加が賃上げに繋がり、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるよう、現在の金融緩和を粘り強く続けることで経済を下支えしていく必要がある。』

いやあのそれやって今まで全然賃金上がってないのに何で同じことしかやらないの???


・交易条件悪化ネタ

まあ政策の手段の話が無い、というのは上記と同じですけど交易条件悪化シリーズが並んでいたので別小見出しにしてみた。


『・ このところ円安やエネルギー価格上昇に起因する物価上昇がみられるが、現状ではインフレ圧力の強まりが日本全体の経済厚生を低下させる可能性は低く、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで行っている強力な金融緩和は維持すべきと考える。』

は???コストプッシュしたら交易条件悪化するじゃろ。「経済厚生を低下させる可能性は低く」じゃなくて「それよりも緩和政策による国内景気の押し上げのメリットが勝る」ならまだ理屈として筋が通ってるんだが。


『・ 交易条件悪化の影響を緩和するためには、景気の改善や予想インフレ率の引上げを通じて、企業が原材料価格の上昇を国内の販売価格に転嫁しやすい経済環境を整える必要がある。』

と思うんだったら追加緩和でも何でもしたらどうでちゅかねえ(棒読み)。

『・ 交易条件の悪化への対応としては、金融緩和により需給ギャップを改善させ、価格転嫁が進み易くなる環境とすることが重要である。』

追加金融緩和だったら片岡さんなのですが、ただの金融緩和と言ってるので結局今の政策をダラダラ続ける話しかしていなさそうですねー。


・為替円安の話

『・ 足もとの為替円安は、各国の物価上昇率や金融政策スタンスの違いを反映している。為替円安の影響を議論する際には、実体経済や金融市場を通じた様々な波及経路を考慮する必要がある。』

何かその円安に対する評価、だいぶ違うと思うんだけどな〜。

『・ 為替や資産価格は金融政策を行ううえでの重要な経路だが、それ自体が目標ではないことには留意すべきである。』

物価安定目標がかすりもしない人たちがこれを言っても「So What?」以外の言葉が思い浮かばん。


・PDCAの発想の無い方がおいでのようですな

これは酷い。

『・金融政策の正常化とは、他国の政策動向にかかわらず、わが国での「物価安定の目標」を安定的に達成することであり、目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない。この点は、対外的に丁寧に説明すべきである。』

>目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない
>目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない
>目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない

目標に達していないのでしたら、その原因をよく考えて、金融政策の手段を修正したら上手く行くかもしれないので手段を再検討する、というような発想もないとは恐れ入りました。

敵軍が鉄条網敷いて機関銃を並べている陣地に向けて小銃をもった白兵突撃を撃退されても撃退されても何の反省もなひたすら繰り返すのが正しい在り方とご認識のようですが、そのような発想は害悪でしかありませんので今すぐ政策委員辞任されることをお勧めします。

・・・・・とまで言うと言葉尻とか言われそうですけど、この意見書いたお方、もうちょっとものの言い方というのを考えた方が良いんじゃないかなと思いました(お前が言うな、ってツッコミでアタクシが火の海ですかそうですか)。これじゃただの無限バンザイ突撃の推奨じゃないですか。



そんな訳で相変わらずの有様で、辛うじてコロナオペ関連の2つだけ政策インプリケーションが無くは無かった程度の話で、じゃあお前ら何をどうやってどういうパスで物価目標の達成するんだ、という話も相変わらずないという残念な「主な意見」だったのですが、悪態書きだすと結局血圧をホイホイと上げながらキーボードを叩いてしまうので、本日は主な意見だけで勘弁と相成って誠に申し訳ございません。9月議事要旨と今回の展望基本的見解が宿題に残りましたな(超滝汗)。




2021/11/02

〇それはそれとして今さらの豪州ネタメモ(本日決定会合ですので野次馬メモ)

https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2RS1EK
2021年11月1日3:05 午後
シドニー外為・債券市場=豪ドル・NZドル横ばい、豪中銀理事会控え

『豪10年債利回りは、15ベーシスポイント(bp)低下の1.918%。1カ月前は1.49%だった。対米国債スプレッドはプラス35ベーシスポイント(bp)。豪3年債利回りは22bp低下し、1.045%。先週末は2019年半ば以降で最高の1.25%まで上昇した。先週1週間では90bpの大幅上昇となった。』(上記URL先より)

日本人大好き豪ドルちゃんですが、ご案内の通り昨年のコロナアイヤーの2020/03の決定会合時に3年金利(と政策金利)が25bpになって、その後11月に追加利下げで0.10%にした訳ですが、インフレアイヤーの図となっていやさすがにもう緩和政策の縮小方向じゃろ、とか何とか言われているうちに、

https://jp.reuters.com/article/australia-bond-idJPKBN2HI08L
2021年10月28日11:46 午前
豪3年債利回り急騰、中銀が買いオペ見送り 早期利上げ観測強まる

『[シドニー 28日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行、RBA)は28日の定例オペで、3年債利回り目標の対象である2024年4月償還債の買い入れを見送った。これを受けて同国債の利回りは目標を大きく上回る水準に急上昇し、市場の早期利上げ観測が強まった。』

『同国債利回りは0.50%まで上昇、中銀の目標である0.1%を大幅に上回っている。中銀は現在0.1%の政策金利を引き上げるのは2024年以降になるとの見通しを示しており、3年債利回り目標がこの見通しの核をなす。同利回りを目標水準に維持できなければ、市場の早期利上げ観測が強まることになり、22年半ばまでの利上げも想定に入ってくる。』(以上上記URL先より)

まあこの辺に関しては既に詳しい方がきっちりと解説しておられますので、その辺を読んでいただければ良い訳ですが、上記にあるように11月定例理事会まで待てずして陥落というのがお洒落な訳ですが、まさに時間的不整合を絵に描いたような展開になっていて、良い勉強になりますわ。

なお、この3日前はこんなんでしたから、信じていたらあばばばばーって奴なんですが、しかしまあこれだけ威勢よく言って置いて梯子外ししちゃうとなると、中銀のコミットメントが全然信用されなくなる可能性があるんですけど、むしろこれからの豪州中銀が「ガイダンス」とかを出すとかいうお笑いプレイをするのかどうか、というのが楽しみです。

ということでさっきの3日前はこの状況でした。
https://jp.reuters.com/article/australia-rba-rates-idJPKBN2HF0B6
2021年10月25日2:54 午後
焦点:豪債券市場、中銀とトレーダーが「全面対決」

『<今回は中銀の勝ち>

豪中銀は22日に市場介入によって売り圧力を抑え、指標とする2024年4月償還債の利回りを0.19%前後から0.12%前後に押し下げた。しかし、それでも中銀の目標値である0.1%をわずかながら上回っており、エルワーシー氏をはじめとする市場関係者は、今回の中銀の対応で投資家の疑念が払拭されたとは見ていない。』

『総裁は1カ月前には、賃金の伸びは低迷しており、オーストラリアの賃金とインフレの動きは諸外国とは異なることから、「なぜ来年や2023年初めの利上げが織り込まれているのか理解に苦しむ」とも述べた。ロウ総裁のハト派的な姿勢は、ニュージーランド準備銀行(中央銀行)のタカ派姿勢と対照的だ。ニュージーランド中銀は先に7年ぶりの利上げに踏み切った。』

『FIIGの債券部門ディレクター、スティーブン・マッキー氏は「諸外国がコロナ後に向けて動き出しているのに、豪中銀は2024年まで金利を動かさないと、いつまで言っていられるだろうか」と中銀の姿勢に疑問を呈した。』(以上上記URL先より)

・・・・・・・では日銀のYCCは何でワークするかって話ですが(しかも3年どころか10年金利)、これは皆さまご案内の通り、肝心のインフレが上振れどころか上がりもしなくて、日銀の政策目標ってどこにあるんでしたっけ状態であることによる訳でして、これがあーたジャパンでもCPIがホイホイと上昇して3%だということになったら(その時ってアタクシ中銀の話で駄文垂れ流している場合じゃなくて生活防衛のために金拾いに勤しまないといけないかもしれませんがそれはさておき)もっとシャレオツなことが起きるんですが、おそらく日銀様の場合、10年カレント国債だけ連続指値無制限オペを実施して、イールドカーブ的にその銘柄だけ0.10%だけど他の銘柄は金利上昇、みたいなゴミ施策を実施すると思いますが、まあそれも一種の梯子外しであることは変わりません。

とは言いましても、もはやマネタリー拡大とかやってる場合じゃないし、利上げ後から見た場合に不自然に低い金利の国債を延々と買い支える、ってえのはニクソンショックの時に漫然と外国為替市場を開けて円高防衛やって結局大敗北するわ、市中に散布されたマネーがのちの狂乱物価の要因となったという説もあるらしい(詳しくは断言しない)ともいわれる禍根を残したどこぞの政府と中央銀行ってえのもあるように、政策変更直前で不適切なオペレーションを大量に実施すると、その後始末をちゃんと行わないとそれこそそのマネーが(本当にそうなのかは議論の余地ありますけど)更なる災厄の元になったら何のために政策やってるのかわからん、ということになりますわな。

まあ固定相場みたいなのをやると、経済のファンメタからの乖離がでかくなって閾値に来たら大爆発、というのはニクソンショックにEMS危機にアジア通貨危機に、と何ぼでも例が出て来る訳でして、フォワードガイダンス政策ってのはせめてFED位のレベルでフワッとさせて、口頭で適宜強い意志とやらを出して弄っていくしか無くて、それだってかなりの難易度ということが良く分かりますし、まあ今日何をRBAが出してくるかわからんですけど、この辺の流れは将来の日銀にも降りかかる災難の筈なので(降りかからないmeas永遠のゼロインフレ)、日銀も目を皿のようにして見ていることでしょうな。

同じ文脈で、メイクアップストラテジーだのアベレージターゲットだのというのもすっかり無かったことになりそうな勢いのFEDちゃんだったりしますけど、この手の時間的不整合問題は普通に起こるし、しかも20世紀の頃と違って主要国では為替管理とか資本移動管理とか原則やってない訳で、国内市場だけ鎖国状態で締め上げるってのが出来ないんですから、さらにその動きが面白プレイになる、という意味で豪州のは(日銀による変なバイアスあるいは忖度の入ったレビューじゃない)レビューを自分でも後日作っておいた方が良いのかもしれませんね、などと思いました。

と、ただの感想文ですサーセン。


〇展望レポート基本的見解本文:今回の書きっぷりが「アフターコロナ」っぽいのに転換している件について(内容は明日で勘弁)

展望レポートちゃんですが、基本的見解だけやってそこから先がスルーなのですが、今回って実は基本的見解レベルのところで色々とアセスメントを変更しております、というのが今回の展望レポートの1つの大きな特徴だとアタクシは思っております。

詳しくは(朝寝昼寝するか好天に誘われてフラフラとレジャーモードならない限り)明日にでも投下しますが、前回までの展望レポートではとにかく「コロナ感染症の影響と今後の感染症の展開」というのを前面にだして、「感染症がどうこうってのは結局不確実だからワシらも先行きの決め打ちできんわな〜」ということで、まあ意地悪い言い方をすれば逃げを打ってたのですが、今回って特に見通しの部分、何気に決め打ちとは言いませんけれども、コロナ以降記述を削除していた潜在成長率の見通しとか、物価見通しに関しても何でこうなる的なものを従来よりも明確に記述したり、という風になっています。

つまりですね、これ物凄い希望的観測になるんですけど、この展望レポートの書き方って「コロナ後の世界を考えた」っていう物件になっている、というのは(どうせ誰も指摘しないけど)結構変わったなーって感じだと思うのです。例によってあたくしが比較引用するとどうしてもぶつ切りになってしまうので、これは是非前回の展望基本的見解と今回の展望基本的見解を並べてざっくり眺める、というのをやって頂ければと思うのですが。

ということですので、そらまあ世界的にもそっち方面の話の中で日本だけコロナオペ継続がどうのとか言う話になっている場合なのか、というと展望レポートの基本的見解は、そらもちろん政策的にこれがどうのこうのというようなインプリケーションはカシュカリ総裁の毛髪程もございませんが、さすがに日銀の中でも認識は「ウィズコロナ」から「アフターコロナ」への遷移が起きている(ただしドテカボチャ連中の頭の中は知らん)という事なので、そら政策対応にしましても、一時のように「必要ならばマイナス金利の深掘り」とかいうようなステージは終わっているし、そうであればターゲットは変わらんにしてもより長い所のイールドカーブがどうしたこうしたに関しても、コロナモードだからとにかく低位に、というものでも無い(てかまあオペの方はもうちょっと前にもしらっと減らしたりもしましたけどね)、とかそういう感じで、搦手の方からは色々と考えていない訳でもない、というのは一応伝わりました(ただのアタクシの希望的願望による電波ゆんゆんだったらサーセン)。