金融政策概観(2021年度下期後半)

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2021年度下期後半の見出し

2022/01/31「今まで散々円安礼賛してた日経が円安で生活に重荷とか書きだしておりますw」
2022/01/26「基調的インフレは刈込平均と最頻値が上がるが品目数ベースが伸び悩みとはナンデスカ/NHKがインフレで問題が起きてるしバイデンが苦労しているという話を!」
2022/01/25「1月展望レポートの鏡を見るとガリガリに上方修正なんですよね」
2022/01/24「質問のツッコミが厳しくなっている黒田総裁会見(その3)」
2022/01/21「コミュニケーション上問題の多い黒田総裁会見(その2)」
2022/01/20「ロイター砲を否定するあまり暴走機関車状態の黒田総裁会見(その1)」
2022/01/19「決定会合レビュー:政策は変更なくて貸出増加支援は相変わらずノーズロで継続」
2022/01/17「ロイターが政策見直し記事をぶっこんで円債下げ」

2022/01/31

そういや昨日某経済新聞の1面のトップがこんなんだったじゃないですか(普段買わない読まないをモットーにしている金融屋さんにアルマジロなワタクシだが駅売りのスタンドやコンビニなどで1面トップが見えたらその文字列はちゃんと把握しておく位の嗜みはある、なお最終版だったのかどうかは知らん)。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2455T0U2A120C2000000/
円安の重圧、暮らしに 10年で婦人服の価格13%上昇
2022年1月30日 2:00 [有料会員限定]

ヘッドラインしか見て無いので(しかもチラ見)実は中身をよく知らんのだが、無料部分の頭の所を拝読。

『「円安は日本経済にプラス」といわれてきた構図が変わりつつある。』(上記URL先より、以下同様)

お前さん方がそのように言いまくってたのに都合が悪くなると旗振り役が真っ先に逃げて他人事www

『スマートフォンや家電、衣料品など身の回りの製品の輸入依存度が高まり、円安による物価高が家計を圧迫しやすくなった。半面、製造業の海外移転で円安が輸出を押し上げる力は弱まった。』

それお前さん方がどんどんやれやれって紙面で宣伝してたんじゃなかったっけ、というのもさることながら、そもそも最初の見出し「10年で婦人服の価格13%上昇」ってお前ら物価目標2%なのすっかり忘れてるだろうとそっちの方に食いついてしまいましたwwwwwwwwww

ま、どうせ記事の本チャンの中には賃金が上がらないのに輸入物価が、って書いてあるとはさすがに信じたいが(その記述が一切なくて10年で13%上昇を重圧とか言ってたら笑うが)、「10年間で13%上昇が重石」みたいなヘッドラインを付けてしまうデスクだか編集だか知らんけど、チミは物価目標を何だと思ってるのかと問いたい。

・・・・・・などという月曜の朝からしょうもない悪態はさておきFOMCパウエル会見だが今回は実に分かりやすい説明である、と思ったんだがどうでしょうかね。


2022/01/26

〇基調的インフレは刈込平均と最頻値が上がるが品目数ベースが伸び悩みとはナンデスカ

https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/index.htm/
基調的なインフレ率を捕捉するための指標

例によってPDFの図表を見ると刈込平均が良い感じで来ているように見えますが
https://www.boj.or.jp/research/research_data/cpi/cpirev.pdf

エクセルちゃんの方を見まして、前回の数字に直近のを加える、という手抜き攻撃をしますと(本当は遡及改訂入ることがあるのでちゃんと貼り直しすべきです、サーセン)。

暦年2020年は15年基準のCPI、2021年は20年基準のCPIがベースになっています。例によって例の如く左から順に刈込平均値、加重中央値、最頻値。

Jan-20 0.3 0.0 0.3
Feb-20 0.2 0.0 0.3
Mar-20 0.1 0.0 0.2
Apr-20 -0.1 0.0 0.3
May-20 0.0 0.1 0.3
Jun-20 0.1 0.1 0.3
Jul-20 0.0 0.1 0.1
Aug-20 0.0 0.1 0.1
Sep-20 -0.1 0.1 0.2
Oct-20 0.0 0.1 0.3
Nov-20 -0.1 0.1 0.1
Dec-20 -0.3 0.0 0.1

Jan-21 -0.3 0.0 0.0
Feb-21 -0.2 0.1 0.1
Mar-21 -0.1 0.1 0.1
Apr-21 -0.3 0.1 0.1
May-21 -0.1 0.1 0.1
Jun-21 0.0 0.1 0.1
Jul-21 0.2 0.1 0.1
Aug-21 0.3 0.1 0.2
Sep-21 0.6 0.2 0.2
Oct-21 0.6 0.1 0.2
Nov-21 0.8 0.1 0.2

Dec-21 0.9 0.1 0.3

(11月までは前月に公表されていたデータをそのまま貼り直しましたので遡及改訂があったらゴメンチャイ、今日はちょっと時間が無いので手抜きしました)。

最頻値の+0.3ってのは割と高めの数字でして、日銀謹製の集計エクセルの中では+0.5が目の子で見た感じ(max関数とか使えというツッコミはよくわかるのだが、汗)一番高めの水準になっているので、まああと二息って所ですな、うんうん。

上昇品目下落品目の構成も今回は手抜きで12月に出てた11月までの数字に今回の数字を拾って加えますという手抜きでゴメンチャイ。

左から上昇品目比率、下落品目比率、上昇品目比率−下落品目比率ですな。基準年はさっきと同じで暦年2020は2015年基準、21は2020年基準です。

Jan-20 61.8 36.5 25.2
Feb-20 60.0 38.4 21.6
Mar-20 57.9 40.5 17.4
Apr-20 58.3 39.2 19.1
May-20 59.1 38.6 20.5
Jun-20 59.7 38.0 21.6
Jul-20 54.9 42.4 12.4
Aug-20 53.7 43.6 10.1
Sep-20 56.0 41.3 14.7
Oct-20 54.9 36.5 18.4
Nov-20 51.2 40.2 11.1
Dec-20 48.0 43.6 4.4

Jan-21 46.7 44.6 2.1
Feb-21 49.0 42.7 6.3
Mar-21 51.0 41.0 10.0
Apr-21 50.2 41.8 8.4
May-21 51.1 41.4 9.8
Jun-21 50.6 42.0 8.6
Jul-21 51.9 41.0 10.9
Aug-21 56.1 36.2 19.9
Sep-21 57.1 35.1 22.0
Oct-21 58.4 34.1 24.3
Nov-21 59.2 33.3 25.9

Dec-21 58.8 34.3 24.5

品目構成ベースではイマイチ盛り上がっていない、というのが面白みがありまして、価格の上がる品目と上がらん品目というのが明確に分かれていて、上がる品目の方はホイホイと上がり、しかもその幅が大きくなってきている、とかそういう事なんでしょうか?実は下がっている品目比率というのが9月辺りから安定して推移しているんですよね。

まあこの辺は物価統計の分析をきちんとしたことが無いので(本職の何とかストじゃないから勘弁してつかあさい)良くワカランチ会長ですすいません。
 

〇公共放送様が過度な通貨安ヤバいよインフレヤバいよという話を今週2本もぶっこんでいる件

まあただのメモっちゃあメモではあるのですが、何せ黒ちゃんの先日の会見を見てると「国土を焦土にされて原爆まで落とされてるのに本土決戦とか言ってる昭和の軍人」モードになってきている(個人の感想です)感が強いのですな。負けが込んで来て精神のキャパを超えるとそこから先はおかしくなってしまう、というのは何を隠そう(隠す話でもないですが)アタクシだって小僧アウトライトディーラーを駆け出しで仰せ使ってデビュー直後にロスカットヒットして悔しくて悲しくて情けなかったけど泣きながら(マジで泣いてた)ロスカットの方はきっちりとしたんで、まあ負けが込んでいる時の気持ちは何となく分かるような気がする。

でもってそういう時の為にロスカットルールというのがあるので、あれを守れない人は極端なところまで行ってしまうと会社の経営を揺るがしてみたりガチで潰してしまったり、みたいな所まで最早挽回不能なのは分かっているのに悪あがきしてさらに傷を深めちゃったりする、という例は古今東西色々とございますわな。

アタクシのような下賤の下民が超上級国民の黒ちゃんの人となりなんぞ存じ上げる訳は有りませんが、先日の会見とか特にこの「プライドが高くて負けを認めなくて意地を張りまくる」というのがよく出ておりまして、こういう人はロスカット強制退場ルールでもないと負けを認めないために次から次へと余計な誤魔化しを続けて事態をさらに悪化させるという負け戦ができない人な訳ですな。

・・・・・・・すいません悪態が長くなりましたが、今週の公共放送記事、中々シャレオツなのが2本投下されていたんですよね。

過度な通貨安はアカンという話
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220117/k10013434461000.html
ビジネス特集
お金の価値が1年で半分に減った国
2022年1月17日 17時08分

『お正月にもらって机の中で大切にしまっておいたお年玉。何かと入り用な年末にポチ袋を開けたら、中身のお金が半分になっていた…。今、中東のある国でこんな事態が起きているんです。(イスタンブール支局 佐野圭崇支局長)』(上記URL先より、以下同様)

まあ記事は読んで味噌と存じますが、いずれアーカイブになってしまうので小見出しを引用しますと、

日本に人気 あの観光地に異変?
「年金だけで暮らせない」街から聞こえる悲鳴
1年で半分になったトルコのお金の価値
背景に常識破りの「利下げ」
エルドアン大統領が推し進める「トルコモデル」とは
深まる混乱 経済団体も「NO!」
新年の予算が組めない−日系企業にも影響
リラを守るための「奇策」
トルコリラはどこへ

ってな構成ですが、通貨価値の下落でパンも買えなくなったという話の所のこの報告は泣いた。(改行は減らしました)

『市場から徒歩5分のパン屋には、行列ができていました。ここは格安でパンを提供する市営のスタンドです。

長さ30センチ余りのバゲットが1本1.5リラ(=約12円)、通常の半値以下で買えます。

一般の店で買い物する余裕のない人が増えているのです。「年金だけでは暮らしていけない。いつも腹が空いているけどお金が足りない」毎日、バゲット2本だけで生活しているという男性はこう訴えました。

撮影を始めるとすぐに「俺たちに恥をかかせるつもりか!」と、行列の中から怒号が飛んできました。

安いパンしか買えない惨めな姿をさらしてくれるな、というのです。正直、格安のパンを買う後ろめたさにまで想像力が及ばず、今、人々が抱えている、暮らしへの不安やストレスを思い知らされた瞬間でした。

スタンドと行列に頭を下げて、その場を後にしました。』

記事の最後に書いてありますが、こちらの支局長さん、2013年入局ということで割とお若い方のようですが、この部分の謙虚な取材に好感を受けました。まあ要するに通貨安が行き過ぎてアイヤーとなっている、というお話をしておりまして、この記事自体は通過大暴落国のご紹介に過ぎないにしましても、ちょうど円安の影響で云々というのが徐々に話題になりつつあり、今週のMPM後の総裁会見でも悪い円安に関する質問を某12チャンネルの著名キャスター様が行っておられる、という確かにその質問は貴女様が聞かないと黒ちゃんまともに回答せんから実に妥当な質問であると思いましたが、まあそういうツッコミの来る昨今ということなので、公共放送様に於かれましても、だんだんこの手のものが出てくるのは堅牢無比で盤石の黒田城だったお城の足元から土台の土が少しずつ崩壊始まってるんじゃないか、とまあそんなことを希望的観測も含めまして(笑)思うのでした。

と思ったら昨日もこんなんぶっこんでましたわ公共放送。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220120/k10013438611000.html
【詳しく】バイデン大統領はなぜ不人気なのか?
2022年1月20日 8時18分

『アメリカのバイデン大統領が、厳しい状況に直面しています。

就任から1年を迎えるなか、世論調査では「不支持」が「支持」を上回り、戦後の歴代大統領の中でトランプ前大統領に次ぐ低さとなっています。政治経験の豊かさを売りに、社会の分断を埋めると訴えて当選したはずなのに、なぜなのでしょうか?そして、トランプ氏の復活の可能性は?

詳しく解説します。(ワシントン支局長・高木優)』(上記URL先より、以下同様)

そらもう理由はアレでしょアレ、と思ったら案の定である。

『なぜバイデン大統領の支持率は低いの?

大きな原因のひとつが、アメリカ国民の家計を直撃しているインフレです。世界的な問題となっているインフレですが、アメリカでは先月(12月)の消費者物価指数が1年前と比べて7%上昇し、およそ39年ぶりの高水準を記録しました。

インフレは、大統領ひとりのせいとは言えませんが、これまでの大統領選挙で勝敗のカギを握ってきた東部の州を今月訪ねて有権者に話を聞くと、多くの人がインフレへの不満を口にしていました。』

でもってマイク向けられるオッサンのサムネが入ってそのオッサン曰く、だと思うけど、

『「あらゆる物価が上がっています。私の場合、以前より収入は増えましたが、生活のためにもっと多くのお金が必要になっています。バイデン大統領にはとにかくインフレを収束させてほしい」』

ってことで、インフレ長くなってきましたし、ペイチェックの方がちゃんと上がらんときついわ的な感想なんでしょうねえと思ったりしました。


・・・・・・・・というのが昨日きっちりとぶっこまれておりまして、何かこれもそら直接そういう話ではないですけど、「物価が上がればすべて解決」みたいな単純な話じゃないですよ、という文脈だし生活価格上昇はアカンよねという話だし、黒田城の外堀にしれっと埋め立てを行いつつあるようなこの連打、ということで公共放送実にイイハナシダナーである。


一方でどこぞの日銀黒田大総裁様は「円安は全てにおいて良い円安」みたいなのを堂々と言ってしまうし、1%になっても政策変更する必要は一切ないみたいな枠組み逸脱の説明までしちゃうし、ということですが、何せロスカットルールがありませんので、結局の所は世間からの大批判に耐えられなくならないと、今の調子で黒田さんの意地とか対面とか面目玉とかの為にロスカットしないで延々と誤魔化しをした結果、そういうので会社が傾いてしまったような事例のように日本が傾かれても一緒に船に乗ってるほうとしては迷惑極まりないのでありまして、今回の総裁会見みてると(最近特にその傾向酷くなっていますが今回は明らかにそのレベルが)黒ちゃん完全に焼きが回った老害状態にしか見えないので、まあ参院選にキッシーさん勝っていただいて政治的背景を一段と強化した所で斬首(比喩表現ですよ)して頂きたいものだと切に思って止みません。



2022/01/25

お題「MPMプレビュー今更ジローネタで展望レポートの鏡を見るがこれ無茶苦茶上方修正なんですよね定性的には」

値動きの後点け理由も難しい昨今の相場である。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2U43PD?il=0
2022年1月25日5:54 午前
米金融・債券市場=利回り低下、ウクライナ情勢緊迫化や米利上げ懸念で

ウクライナ情勢緊迫化で債券利回り低下⇒わかる
米利上げ懸念で債券利回り低下⇒え?え??

〇展望レポート基本的見解の鏡の所だけでも色々と味わいがあるのでとりあえず出遅れたが比較を

https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2201a.pdf(今回)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2110a.pdf(前回)

・まあ上方修正でしょうと思っていましたが、昨年4月と同様に上方修正即コロナ拡大という間の悪さw

10月の展望レポートは明らかに「手前はさておきまして今後はアフターコロナですぜヒャッハー」というものでして(実際にコロナもそういう流れでしたわな)、今回の1月展望レポートはさらに一本踏み込んでいて、最早先行き見通しではコロナ云々とかナニソレ状態になっておりまして、コロナ後のニューノーマルに対してどうなのよ、という見通しを出しましたが、ちょうど昨年の4月に上方修正な展望レポートを出した途端にコロナがアイヤーとなったのはご案内の通りでして、日銀ちゃんって何でこー間が悪いんでしょうね。

まあ何ですな、ここからFEDが何をするとかECBが何をするとかそういうの見てから4月に見通しをバシッと引き上げれば良いような気もしないでもなかったのですが、まあゆうてみれば今回って「定性的に文章を見ると無茶苦茶(特に物価の)内容がクッソ強い見通しになっている」のだが、「出来上がりの物価見通し数字は大して上がっていない」というオモシロ見通しになっておりまして、このオモシロ見通しっぷりも良く分からんのですが、まあその辺を念頭に置いてまずは鏡から参りませう。

鏡と申しておりますが<概要>って奴ね。

・1ポツ目(経済の見通し):細々と色々なものを上方修正しているのだが「オントラック」ともいえそう

『・日本経済の先行きを展望すると、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(今回)

『・日本経済の先行きを展望すると、当面は、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押しの影響が残るほか、輸出・生産が供給制約により一時的に減速すると見込まれる。もっとも、その後は、ワクチンの普及などに伴い感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。』(前回)

前回時点ではサービス消費についてコロナの影響が「当面は残る」、輸出や生産が供給制約により「一時的に減速」でしたが、今回はそれぞれについて「〜が和らぐもとで」という事で、既にこれらについては徐々に回復していく、と決め打ちしてきてまして、当面の下押しの表現がサクッと削除されているのがセクシーですね。

まあそれが壮大なフラグ建築士になってオミクロンェ・・・・・・なのはアレ(日銀の新着が最近職員のコロナ感染のお知らせだらけになっているのは同情を禁じ得ない)なのですが、今まで程の経済への下押しは回避できる、という見通しなんでしょう。

あと、前回はワクワクチンチンパワーについての言及があって、ワクワクチンチンパワーで経済活動再開や!となっていたのですが、これも既に前提としてあるのでヘーキヘーキ、という話になったのですが、3回目接種がどうしたこうしたというのが出ている(というか直近ではそっちにリソース割いてる余裕があるんけ状態のようにもみえるが)のがこれまたアレですが、まあいずれにしましても前回も「コロナの先」の話が多く言及されていましたが、今回は明確に「コロナ後」の話をしているというのが特徴です。

そらまあ欧米の金融政策がコロナモード終了って言ってる中で日本だけコロナが下押しでうだうだうだ、と言ってる場合じゃない、というのもありますし、そもそも論からしてコロナ対処が進むことによって時間の経過と共に「アフターコロナ」になっていくのですから、10月見通しからオントラックで概ねメインシナリオ通りに進行している、ということでもあろうかと思います。

『その後も、所得から支出への前向きの循環メカニズムが家計部門を含め経済全体で強まるなかで、わが国経済は、潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(今回)

『見通し期間の中盤以降は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが家計部門を含め経済全体で強まるなかで、わが国経済は、ペースを鈍化させつつも潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』(前回)

ここの表現も割と微妙な作りになっていまして、たぶん今日間に合わないのでどっかの土日祝日で纏めて成敗しなければとは思っていますが、展望レポートの本文中にはこの「その後」の時期について明確に記載されていまして、展望レポート基本的見解4ページ第3パラグラフに記載されているのですが、需給ギャップは「来年度前半頃にはプラスに転じ」とありまして、つまりは今年の7−9の辺りで需給ギャップがプラスになる、と時期を明確に書いてぶっこんできたのが特徴的です。

前回は「見通し期間の中盤以降に前向きの循環メカニズム」とあって、前向き循環するには需給ギャップがプラスになっていないと行けないから見通しとしてギャップのプラス転化は織り込んでいるのですが、その時期を今回のように示していないのは、まあ要するにヘッジクローズというか逃げ口上な訳でございますので、今回はそういう意味ではオントラックはオントラックでも先行き自信ニキはかなり確信しているという定性的には強い鏡1ポツ目になっておりますぞ。



・2ポツ目(物価の見通し):定性的には無茶苦茶強いのと「1%」を敢えて突っ込んだ理由が知りたい

問題の物価ちゃん。

『・先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格が上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、振れを伴いつつも、プラス幅を拡大していくと予想される。』(今回)

『・先行きの物価を展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。』(前回)

ここで特筆すべきは見てもお分かりの通り今回「原材料コスト上昇」というのを加えたこと。もちろんコストプッシュの話ではあるのですが、一方で価格転嫁が出来るようになる、というのはそれだけ企業や家計が価格上昇に対しての許容(というか諦めかもしれませんけどそれはさておき)する動きになってくるのではないか、という日銀の認識を示している訳でして、まあこの辺は先日の12月短観での企業の物価、販売価格設定見通しの強気化や、アネクドータルなヒアリングなどを受けてのことでしょうが、ここが強くなるというのはデカいのでありまして、ただの一言追加ではなく、インフレ期待の上昇とかそっちのほうにまでつながるお話です。

『その後は、エネルギー価格上昇による押し上げ寄与は減衰していくものの、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどによる基調的な物価上昇圧力を背景に、見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くと考えられる。』(今回)

『その後は、一時的な要因による振れを伴いつつも、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、基調としては徐々に上昇率を高めていくと考えられる。』(前回)

後半も凄くて、今回の見通しの中に「基調的な物価上昇圧力」というのをぶっこんでいるのがこれまた物凄い勢いでの強気化になります。色々と特殊要因混じってますけど、22年度の見通しは押し上げ要因込みのものな訳で、それが剥落しても物価上昇率は下がらん、っていってるのについて、従来は何となくお気持ちでそういう数字になっている、という感がアリアリだったのに対して、今回は(たとえそれが希望的願望であったとしても)「基調的な物価上昇圧力」によって実力ベースの物価上昇率が高まっていきますよ、というのを鏡の前面に打ち出した(まあ従来から本文の願望見込みでは記載されていましたけれども自信ニキではなく願望見込みっぽいものでした)という訳ですので、これまた強いのよね定性的には。

然るに、出来上がりの物価の数字が大して変わっていない(22年度が+0.9⇒+1.0で23年度が+1.0⇒+1.1)というのは何ですねんという感じですが、どうせ今回思いっきりこの数字を引き上げると政策修正思惑の方がどうのこうのとか碌でもない事考えているんでしょうなあと思いました(個人の邪推です)。


でもって、さっきの所の最後、前回は「基調としては徐々に上昇率を高めていくと考えられる」だったのが今回は「基調的な物価上昇圧力を背景に、見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くと考えられる。」なので定性的な自信ニキもあるのですが、何故か今回「1%」という数字がドドーンと出てきたのが怪しくて、もちろん黒ちゃんのあの物言いからして、別に今すぐ政策どうのこうのの話が出る可能性は皆無でしょうが、この1%という数字は以前の麿ドクトリンにおいて「とりあえず現実的に目指せる1%を目指し、それを達成してから2%に向かおうではありませんか」という絵があったので、その絵を思い出させるような「1%」なのでありまして、別に黒ちゃんが元気満々なうちはこの1%もただの数字でしょうが、「主君押し込めモード」になった場合、不死鳥の如く蘇る麿ドクトリン、ということになりますと、1%達成は「中間目標達成!!!」という事を意味する数字になり得る(なると断言した訳ではありませんので念のため)ので、何かこう色んな所でトロージャンホースというか埋伏の毒というか、まあ微妙なサムシングを感じるのは考えすぎですかそうですか。


・3ポツ目:見通しの上振れ下振れは経済オントラック、物価は上振れって話ですわな

ここは前回比較しても仕方ないので今回のだけ。

『・前回の見通しと比べると、成長率については、2021 年度は供給制約の影響から下振れる一方、2022 年度は政府の経済対策の効果や挽回生産などを背景に上振れている。物価については、資源価格の上昇やその価格転嫁などを反映して、2022 年度が幾分上振れている。』(今回)


・4ポツ目:リスクには資源価格動向が追加投下されました

詳しくは本文の方を見ればよくわかるのですが、供給制約の部分を内外経済の両方に振り分けて資源価格の項目を増やした形です。

『・リスク要因としては、引き続き変異株を含む感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。また、供給制約の影響を受けるもとでの海外経済の動向に加え、資源価格の動きやその経済・物価への影響についても先行き不確実性は高い。』(今回)

『・リスク要因としては、引き続き感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要である。とくに、感染抑制と経済活動の両立が円滑に進むかどうか不確実性が高いほか、一部でみられる供給制約の影響が拡大・長期化するリスクにも留意が必要である。』(前回)


・5ポツ目:リスクバランスはご案内の通り物価がバランスに引き上げ

『・リスクバランスは、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている。』(今回)

『・リスクバランスは、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクの方が大きいが、見通し期間の中盤以降は概ね上下にバランスしている。物価の見通しについては、下振れリスクの方が大きい。』(前回)

ご案内の通りです。確かにここがバランスということになりますと、総裁会見でも質問があって昨日のネタにしましたように、コロナモード終了後の政策金利ガイダンスをどうするのか、という話になる訳でして、下振れリスクが大きいと見ているので「今の政策金利または下」というガイダンス文言を入れるのが理屈として正当化されますが、リスクがバランスだったら「または下」というのはさすがに書く理由がない(しかも物価のリスクまでバランスに昇格している)ので、真面目にこのガイダンス考えると中々ややこしいですな。

まあどうせ今の昭和温泉旅館金融政策なのでエイヤーで何かテキトーな理由をねじ込んでガイダンス文言を無理矢理ねじ込んで来るんじゃなかろうか、という位には今の日銀の没論理屁理屈大王ぶりを理解しておりますので、まあそこはあまりロジカルに考えても予想の観点からは無駄かな、とは思っておりますwwwww

#すいません時間の関係でこれで勘弁







2022/01/24

お題「長くなってしまいましたが良い質疑が多かったので総裁会見ネタがその3になってしまいました」

限界集落の冬の村祭りの話が公共放送ネタに!!
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220121/k10013442701000.html
日銀が"利上げ??"揺り動かされた金融市場【経済記者コラム】
2022年1月23日 1時21分


〇やっと見ごたえのある質疑応答が聞かれるようになっておとうちゃんは嬉しいよ(総裁会見その3 )

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220119a.pdf

昨日の続きから参ります。ってダラダラと展望の鏡すらネタにしないままこっちやってるんじゃねえと言われそうですが(いやアタクシも反省している)、今回の会見は(ロイターじゃない人が)いきなりロイターネタぶっこんで来るわ、昨日の続きでここから質疑応答貼るんですが、この2つ前の「悪い円安」質問と「1%しか行かないって何度も仰せのようですがだったら何で追加緩和しないんですか」質問と来まして、その次のこの質問という感じでやっとこう記者の皆様がやる気だしていいのをぶっこんで来てますので実に結構結構。

・政策が昭和温泉旅館なのでロジックを聞かれると見事に支離滅裂になる良い例ですな

『(問) 2%の物価目標の導入から丸 9 年を迎えるので、長い目で見た政策運営の考え方についてお聞かせください。総裁は、就任当初、物価目標の達成のために、マネタリーベース、つまり量の急拡大を前面に打ち出されました。2016年には金融調節の方針を量から金利に変更したものの、枠組みとしては量的緩和を続けています。9 年近く経っても物価が鈍いということは、量の緩和というのは、物価に与える効果は、当初期待したほどのものではなかったという解釈でよろしいでしょうか。』

「効果が無かった」とかいうとああだこうだと屁理屈を付けてくるのだが、早期目標達成っていって行った政策が早期達成してないんだから「当初期待したほどのものではなかった」としか申し上げようがないのにわざわざ念押しするとはこれは良い畜生質問(いいぞもっとやれ)。

『それに関連してもう一点ですが、短期国債を含めた国債の保有残高は 2021 年に年間で減少しました。それからマネタリーベースもコロナ対策の資金繰り支援策の終了に伴って、一時要因とはいえ今年は減少する可能性があるかと思います。先ほど質問しました量の拡大が物価に与える効果に対するお答えも踏まえて、量の面での金融政策運営を今どのように整理しているのかお聞かせください。』

「オーバーシュート型コミットメントとの関係」と質問すると「拡大方針」なので問題ありません、と回答するのが分かっているのであえてオーバーシュート型コミットメントの文言を使わないのが匠の技としか申し上げようがない、素晴らしい。

でもって黒ちゃんの回答ですが、以下黒ちゃんの説明がボロボロ、というよりもそもそも昭和温泉旅館金融政策の母屋の状態がどうだったか、でもって今はその母屋は何処へ?というのを確認するためにも是非2013年のQQE導入時の声明文を参考にしながら黒ちゃんの説明を鑑賞して頂ければ、と思いますのでURL貼っておくね。

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130404a.pdf
(これは2013年4月4日の声明文です、以下この声明文から引用しているのは「」(2013年4月の声明文から)って書きますね。

『(答) 2013 年 4 月に「量的・質的金融緩和」を導入して以来、量的・質的と言っているように、量も質、金利も十分に考慮しながらやってきたわけです。』

おじいちゃんおじいちゃん、それ言い出すとQQE当初の「今回決定した「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。」(2013年4月の声明文から)が出て来るんですけど、そうすると長期国債バカスカ買わないと行けないし、資産価格ルートって言ってるんだからじゃあ何でETF買ってないのないのとかそういう話になるんですがな。

『ご指摘のように、当初は 2 年程度を目途に大規模な金融緩和をするということだったわけですが、その後、様々な状況のもとで、2 年程度というのは落とし、できるだけ早期に 2%の「物価安定の目標」を達成するという、2013 年 1 月の政府との「共同声明」、あるいは同月の金融政策決定会合におけるコミットメントを維持して行ってきています。』

ほうほうそうですか。ところで2013年1月って白川総裁の時なんですが、4月にQQEぶっこんできた時には、「日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する(注1)。このため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を2倍以上に延長するなど、量・質ともに次元の違う金融緩和を行う。」(2013年4月の声明文から)ということで、白川ドクトリンを頭から否定して次元の違う金融緩和を行う、と豪語してたと思うんですが、いつの間に2013年1月に戻っているんですか????

それに今頃になって気が付くワシもワシなんだが(笑)、「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現」するためにQQEやったんだったら、2年程度に拘らないでしかも今回の会見の前半の方で堂々と「見通し期間中は1%程度しか行きません」を連呼している訳なのですから、別に異次元政策しなくていいんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)。

『量か質かというか、量か金利かというのは、量といっても実際は金利を通じて経済に影響が出るので、』

資産価格ルートはどこに行ったのでしょうか???と思うのですが、じゃあ資産価格ルートの話をしていないのかと言えば、直近の経団連での年末恒例の講演資料ですが、こちらのURL先がその資料で、
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/data/ko211223a2.pdf
PDFだと2枚目の下半分、たぶんスライド4枚目(打ってあるページは2ページ)に『図表2 金融政策の主な効果波及経路』ってのを話をしていたのですが、この時の波及経路図をみますと、波及経路の中間部分に4本の柱みたいな感じで「アベイラビリティ」「実質金利」「為替レート」「株価」ってのがあって、「量といっても実際は金利を通じて経済に影響が出るので」と、まるで金利一本足打法のような話しとは随分と雰囲気が違うんですよねー。

『そうしたことを踏まえて、現在の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」でイールドカーブ・コントロールというものにして、現在に至っているわけです。』

と言ってる割には昔の枠組みは直そうとしないし直近の説明とも異なる話をしていますね!!!

『そういう意味で量か質かといっても裏表のような関係で、量を無視することではないわけですし、フォワードガイダンスでも「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続すると言うとともに、マネタリーベースについて、消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に 2%を超えるまで、拡大方針を継続するということも言っています。』

それが減って行くことがほぼ確実視されることについて質問の後半で聞いてたんだが・・・・・・・・・

『量を無視してということではなくて、量と質、量と金利、両方考えているわけです。先ほど来申し上げているように、金融政策の影響のチャネルとしては、基本的には金利を通じて経済活動に影響を与えていくということはその通りだと思いますが、量について一定のコミットメントを示すという意味もあろうかと思いますので、現在のフォワードガイダンスは、マネタリーベースについてこういったことを述べています。』

なお、さきほどの経団連の講演での波及経路表のどこを見ても量の記載はありません。

『ただ、これはあくまでも拡大方針ということで、ご指摘のように、短期的には振れたり一時的にマイナスになったりすることがあったとしても、基本的にマネタリーベースの拡大方針を続けるということのコミットメントの意味は大きいのではないかと思います。』

という答えをしているんだが、するってえと何かね??「借入金を返済するという方針を継続することが重要なのであって、短期的には返済できない場合があったとしてもコミットメントの意味は大きい(キリッ)」とか言って借入金延滞して良いんですか黒ちゃんの理論だと、と毎度思うのだがこれで済むんなら「やる気を見せれば実績が上がらなくても問題ない」とかいうのと変わらん話しだし、当初の声明文での威勢の良い強い意志というものはどこに行ったんですかね。

ちなみに声明文ついでに言いますと、2013年4月4日の声明文の最後はカッコよく「今回決定した「量的・質的金融緩和」は、これを裏打ちする施策として、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、市場や経済主体の期待を抜本的に転換させる効果が期待できる。これらは、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。」(2013年4月の声明文から)とある訳で、今回の展望レポートで物価のアセスメントの(出来上がりの数字ではなくて)内容を上方修正し、期待物価上昇率に関しても現状判断を引き上げた状況になるのですから、まさに高まりつつある予想物価上昇率を上昇させるんだったら、「1%しか行きません」を連呼するの無茶苦茶意味不明なんですよね。

まあ何だ、黒田日銀の置物政策って、まあそもそも置物理論自体がトンチキ政策だったから順当な結論になったんですが、とにかく途中からは目先の対処で何か屁理屈つけて誤魔化すことと、もはや経済物価情勢判断から金融政策をするのではなく、金融政策を今の時点でどう誤魔化せば問題の先送りが出来るのか、ということの判断から逆算してロジックもそうだし情勢判断も決めているもんだから、実際に望ましい物価のムーブが起きているのに何故かそれを総裁が会見で否定して回るという謎現象になっている訳ですな。

ただまあ何ですな、黒ちゃんはさすがに頭良いからそういう意味で破綻しているのは先刻ご承知で、それでもこれまでは世界的にも物価が中々上がらんから「世界も緩和中」で誤魔化せてたのが、遂に誤魔化し切れなくなってきたわ、質問する記者もだんだん鋭くなってきたわということで、今後は記者の皆様の鋭鋒と黒ちゃんの喧嘩腰対決が楽しみになってまいりましたな。

なお、これが置物くらいの脳内お花畑になると、「私は進化した」とか自分の60年来の理論が破綻しているのに気が付いてないんじゃないかという発言を堂々とするので、まあ脳内お花畑だと人生楽でよいでしょうな。



・アフターコロナの政策金利ガイダンスに関する突っ込み

上記質疑の次の人の質問がこれまた鋭くて結構結構。

『(問) 先ほど総裁が言われていた、政策のフォワードガイダンスのところで、政策金利については、現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定されているということですが、これは 2019 年 10 月からずっと使われています。先ほど冒頭で言われていたリスクバランスのところで、当面、経済に関しては下振れリスクが大きいということですが、こことの関係をお伺いしたいと思います。』

『すなわち、経済のリスクが下振れからバランスになれば、現状の政策金利を下回る水準で推移することの必要性がなくなるのかどうなのかということをお伺いしたいと思います。』

これどういうことかと言いますと、そもそもこの政策金利ガイダンスはコロナの前は、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2019/k191031a.htm/
2019年10月31日金融政策決定会合声明文

「1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、一段と高まる状況ではないものの、引き続き、注意が必要な情勢にあると判断した1。こうした認識を明確にする観点から、以下のとおり、新たな政策金利のフォワードガイダンスを決定した(注1)。

日本銀行は、政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。」(この部分だけ直上URL先の2019年10月金融政策決定会合声明文より引用)

となっていて、その前ですけれども、例えば2019年9月決定会合声明文を見ると、

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2019/k190919a.htm/
2019年9月19日金融政策決定会合声明文

「(項番5)政策金利については、海外経済の動向や消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、少なくとも2020年春頃まで、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している。」(この部分だけ直上URL先の2019年10月金融政策決定会合声明文より引用)

となっていた訳です。すなわち、元々「今の金利または下」という表現は「モメンタムが損なわれる惧れ」(ってナンノコッチャという感じではありますがまあそれは兎も角)という「下振れリスク」対応として入れた文言でありまして、モメンタムがコロナに(2020年3月会合以降)取って代わったのですが、まあ要するに「下振れ対応文言」な訳ですよ。

ということはですよ、コロナの影響が季節性流行性感冒に(伏字)前副総裁の毛髪を加えた程度、ということになって、健康上の問題はさておき経済社会全体に甚大な影響を与えるほどのこともない、というような事になった場合、当然ながらその面での下振れリスクは考慮外となる訳です。

しかもですよ、この間に2014年以来となりますが、今回物価の見通しについても「リスクバランス」になった訳で、過去この金利ガイダンスある時って基本物価の方は常に下振れリスク認識だった訳で、こちらもバランス、ということになったら「パンデミックフェーズが終わったよ」となった時に「今の水準または下」という政策金利ガイダンスを置きっぱなしにしているのは論理的におかしい、という事になりますので、実はコロナフェーズが終わりましたとなると日銀はまたまた温泉旅館に変なものを増築しないと行けなくなるという事態が待っているのでありまする。

・・・・すいません能書き長くなりましたがじゃあ黒ちゃんの回答はどうかと言えば、

『(答) そういうことではないと思います。』

だいたいこうやって頭ごなしに否定するときは黒ちゃんの論理が破綻しているという認識を強く持っている時、というのは黒ちゃんの仕様だと思います(個人の感想です)。

『あくまでも、金融政策については、2%の「物価安定の目標」が安定的に達成されることが目標です。その過程で、当然、経済の動向がどうかということと、経済のリスクが上下にどのように分布しているかということは、物価の動向をはかるうえでは重要な要素ではありますが、経済の見通しのリスクバランスが上下バランスするかしないかによって、金融政策自体が変わるということはありません』

えーっとすいません、質問は「フォワードガイダンスをどうするのか」であって別に政策金利を上げ下げすることじゃないんですけど、どうもおじいちゃん「政策金利は上げません」というのしか頭にないでしょ。じゃあ政策金利のフォワードガイダンスがなんで下振れ対応になっているんだよ、ということでどうもここは聞かれたら困るらしい。


・そもそも2008年型の物価上昇と今回は異なるのではないかという根源的なツッコミに対して

ちょっと先に行きます。

『(問) 先ほど総裁は、コストプッシュ型のインフレは長続きしないと、2008年の動向を引き合いにおっしゃいましたけれども、2008 年と現在では事情が違うのかとの観点からの質問です。』

これは実に仰る通り。

『2008 年当時の資源高の原因としては、台頭する新興国の需要の急増や、ドル安に伴う投機マネーの流入といったことが主因だったのではないかと思います。他方で、今回の供給制約というのは、ご承知の通り、新型コロナウイルスが主因でして、2008 年を引き合いにコストプッシュ型のインフレが長続きしないで終わると、そのように判断されている根拠をもう少しお伺いできますか。』

正統派の鬼ツッコミで感動した!黒ちゃんの回答はどうなっているかと言えば・・・・・・・・・

『(答) 当然のことながら、今回の資源価格、特にエネルギー価格の上昇については、様々な要因があると思います。』

早速話を誤魔化しに掛かっております!!!!!

『欧米を中心に、感染症からの回復がきわめて著しく、需要が急増したことに対して、特に天然ガス、石炭、あるいは石油といったエネルギーの供給が、一部のボトルネック等で追い付かないということもあって、価格が上昇したということですが、』

ほうほう。

『例えば、欧州における天然ガスの価格上昇にしても、ずっと続くとは殆どの人が考えていませんし、先物価格の動きなどをみても垂れていくということになっていますので、一時的でないという人は殆どいないと思います。』

そもそもこの日本語何を言ってるのかわからん。

『ただ、それがその他の様々な状況と絡んで、賃金あるいはその他の商品、消費財等の価格上昇に結び付いていくとインフレになり得るということですが、商品価格の上昇自体が一時的でないということではないと思います。』

引き続きイミフ。

『そういう面からみると、確かに先進国の一部では、単に資源価格、エネルギー価格が上昇しているだけでなく、賃金が上昇し、その他各種の財やサービス価格の上昇が起こっている国があります。そうした国は、新興国の中にもあり、既に金利を上げたり、あるいはこれから上げようというところもあるわけです。』

コストプッシュだからどうのこうのの話は???

『他方で、わが国をみた場合には、そうした状況にないのは明らかですので、資源価格の上昇が 2008 年のようなことではなく、ずっと続くとか、あるいはわが国の消費者物価の上昇率に幅広い、そして持続的なものをもたらす可能性は、今のところ見当たらないということだと思います。』

ちょっと待て、世界的には商品価格上昇が一時的に終わらないという話なのに何で日本では資源価格が上昇しないんだよ、超円高でも目指してる積りなのか?????

ということで、自分で余計な説明をしてしまったために墓穴を掘ってしまったという感じでした。


・最後の質問ェ・・・・・・・・・・

でもってこの次が最後で、相変わらず何故か時間制限があるという謎の記者会見で困ったものなのですが、最後まだ数人いる中(のように見えた)でご指名された方の質問がこれである。

『(問) 先ほど来、物価目標の話に質問が色々出ていますが、日銀は、物価目標とは別に、それと別の違った意味で重要な目標として、女性の幹部比率を2023 年までに 10%にするという目標を掲げています。早いものであとその目標年次までもう1年となりましたが、この目標に向けた進捗状況はどのようになっていて、目標達成が現時点で見込めているのでしょうか。最近のFRBの理事人事などをみても、海外の中央銀行では女性の活用が更に拡がっている中、日本を代表する公的機関である日銀の取り組みは相応の重要性を持つと理解しておりますので、その点について教えてください。』

・・・・・・orzorz

いやあのですね、そらもうジェンダーギャップの問題とか重要なのは分かるんですが、時間が無制限に用意されてる会見なら兎も角、時間が切られてて最後このお方だけじゃなくて他の人も質問しようとしてたっぽい(会見の中継動画によれば)状況で、しかも今回の展望レポート会見って物価見通しのリスクアセスメントを変更したり、物価見通しの定性的な記述部分を強くしたり、アフターコロナを見据えた時に政策の在り方ってどうなのよ、という感じの良い質疑が連発してたわけですよね。

まあ誤解されると困るからしつこく言うけど、この質問自体はお話としては重要な話ではあるんですが、金融政策決定を受けた会見で緊急に質問しないと行けない事なのかと小一時間問い詰めたい訳で、他の機会で聞くなり、別途インタビューでもして記事にすりゃ良いじゃん、という質問を何故時間の限られている(くり返して言いますが時間が無制限ならまあこういう質問も良いんですよ時間無制限なら)会見のしかも最後でするのか、と言えばそらもうアタクシなんぞは心が汚れておりますので、鋭いツッコミ食らってタジタジまたはキレかかっておられる黒ちゃん(今回はここ数回の中ではエライ元気に見えたが、まあキレてたって方が正しいんでしょ)に対して、目先の金融政策以外の、回答するのが余裕のよっちゃん大王イカな質問をすることによって、これ以上の追及を封じましたよ親分様、って感じのフンドシ担ぎ質問にしか見えません次第で、まあ率直に言って(以下の記載は内務省検閲により削除されました)。

なお回答はパス。まあ日銀はジェンダーギャップの解消とか女性の働きやすい職場とか、その手の取り組みについては先駆的に頑張っていると思いますよ。



2022/01/21

〇総裁会見がやっぱり色々と面白い(興行的な意味であって政策的な意味ではない)ので引き続き

https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220119a.pdf

・やはりコミュニケーション上問題のある総裁発言でした(昨日の補足というか訂正というか)

昨日「事件発生」とした総裁答弁の部分。念のためと思って音源を探してきてちょっと実際の音と確認したら字面との違いは一部のてにをは程度でしたのですが、やはり字面で見るのと音源で聞くのとでは受ける強さが違うなーと思ったのですが、改めて何がこの言い方の悪さなのか再度。

『(答) まず、利上げを議論しているかについては、そうした議論は全くしていません。』

という事なのですが、先日来申し上げておりますように「コミットメントとしての政策金利の現状維持または引き下げ」というのは「新型コロナ感染症の動向を踏まえて不確実性」に対して紐がついているので、本来ここで議論を全くしていない、とする理由はコロナ感染症の不確実性をメインにおかないとイカン訳ですよ。これが第一の間違い。

一方、黒ちゃんの説明は以下のように進んでいまして、

『展望レポートやその前の短観、その他でも示されているように、物価が 2%の「物価安定の目標」に向けて着実に上昇しているという状況にはないわけです。』

とあって、単純に「足もとの経済物価情勢と、今後の見通しを考えた場合に利上げの議論が具体化するような状況には至っていない」というのなら良いのですが、ここで「物価が 2%の「物価安定の目標」に向けて着実に上昇しているという状況にはない」としたのが第二の間違いでして、物価目標に向けて着実に上昇しているという状況かどうかは政策金利コミットメントとは関係ない話で、しかもこの部分は別のコミットメントであるYCC+QQE枠組みの継続に関するコミットメントに関連するワードなので、これを持ち出してしまうと。「物価が2%行くまで微調整の利上げすらしないのか」という話になってしまい、今のコミットメント文言はそこまで排除していないので、ここで黒田さん声明文のコミットメント文言を逸脱してる訳ね。

『商品価格の上昇等、主として一時的な要因で若干物価が上がっていることは事実ですが、それでも 0.5%程度ということで、展望レポートでも示されている通り、委員方の中心的な見通しは、2023 年度、この展望レポートの終盤にかけても、1%程度の物価上昇率というものです。』

からの、

『そうしたもとで利上げや現在の緩和的な金融政策を変更するというようなことは、全く考えていませんし、そうした議論もしていません。』

これ言ってることを再確認しましたが、確かにこういう説明なんですが、字面に落とすと現在の情勢判断として利上げ議論が起きない、というようにも読めなくは無いのですが、説明の流れからして、「1%程度の物価上昇が起きても金輪際利上げしません」と言っているようにしか聞こえなかった(改めて聞いてもそう思った)訳でございまして、それだと日銀声明文を逸脱した「黒田さん個人の見解」になってしまっているんですよね。

いや別に黒田さん個人の見解を出すなという気は無いのですが、特に公表文書の解釈に関わるような部分で「個人の見解」を何の断りもなく堂々と出されてしまうと、受け手としては非常に困るし、だいたいからして政策動向予想をするに際して、「公表文書で書いてることと総裁が行ってたことに差がある」だと何を基準に判断すれば良いのか訳分らなくなるので、こういうのはちゃんと「私個人としましては」というのを入れて説明して頂きたいんですが、そういうのを入れようとかそういう冷静さも欠いていた(からやたら元気に見えた)という精神状況だったのではないでしょうか黒ちゃん。

『また、今回の「当面の金融政策運営について」という公表文でも、はっきりと書かれている通り、日本銀行は 2%の「物価安定の目標」を実現し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、そしてマネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に 2%を超えるまで、拡大方針を継続する、としています。公表文の最後には、「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」としていますので、利上げというようなことは全く考えられないということです。』

で、最後の所で声明文のガイダンス文言にリファーしているから字面で見ていると雰囲気的にほほうで流しちゃうのですが、自分でも言っているように政策金利のガイダンスは「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、」が掛かっている筈なのですが、「利上げというようなことは全く考えられないということです。」の理由の中で一切コロナへの言及がない訳でして、そうなるとこれはやっぱり黒田さん、政策金利のフォワードガイダンスがコロナひも付きってのをすっかり忘れて金輪際利上げしないみたいに読み替えてしまっているのではないか、と思ってしまいますな。

まあ確かに日本語的には「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し」の掛り受け関係が最初の所だけ、と読んで読めなくは無いのですが、水曜日にネタにしましたように、コロナ前の政策金利のガイダンス文言の時は「モメンタム」に紐付けされているのが明らかに分かる文章になっていたので、その継続という意味で考えれば明らかに掛り受け関係は2文目まで及ぶんですよね。


まあ何ですな、次回会合でちゃんとこの部分はクリアカットにして頂かないと、ただで無くさえ崩壊しているコミュニケーション、更に崩壊しますがな、と思いました。


・展望レポート物価見通しの展望レポート本文記載内容と出来上がりの物価見通しの前回差分が整合しない件について

さて、昨日と今日ネタにした質問は実は2部構成で、ということで質問だけ引用しましたので、改めて質問から質疑を引用しますね。

『(問)(前半割愛)二点目は、今回の展望レポートで物価見通しのリスク評価を、これまでの下振れから中立に引き上げていますが、この金融政策へのインプリケーションを教えてください。正常化が近づいているのか、あるいは追加緩和までの距離が拡がったと言えるのかどうか、総裁のご見解をお願いします。』

どこからどう見たって「そうですね」以外の回答のしようがない質問なのですが、

『(答)(前半割愛)次に物価について、リスクが概ね上下にバランスしていると修正したのは、先ほど申し上げたように、物価の先行きについて、中心的な見通しでは需給ギャップの改善が続くもとで、企業の価格設定スタンスは徐々に積極化し、原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むと考えているためです。』

ん???

『前回の展望レポートまでは、感染症や海外経済に起因する経済の下振れが物価に波及するリスクに加えて、物価は上がりにくいことを前提とした企業慣行や考え方が根強く残るもとで、需給ギャップの改善や原材料コストの上昇との対比で、物価の上昇ペースが鈍くなる下振れ方向のリスクを、より強く意識する見方が大勢だったわけです。』

そこは分かるんだが。

『もっとも、今回はこうした下振れリスクだけでなく、最近の企業物価の上昇あるいは短観における企業のインフレ予想の高まりなどを踏まえると、上振れ方向のリスクも同時に意識する必要があるということです。そういう意味で、リスクは上振れリスクと下振れリスクが概ね見合っているということで、上下にバランスしているとしています。』

という説明になっているのが良く分からなくて、標準的なシナリオを上方修正しているのか、リスク認識を上方修正しているのかが良く分からん言い方になっているんですよね。でまあ多分また今日も間に合わない予定の展望レポート鑑賞の儀ですが、展望レポートの言い方を見ると標準シナリオの時点で強くなっていまして、でもってリスク認識も上げていると読めるから、黒ちゃんの回答はこれはこれで展望レポート基本的見解の本文中の書きっぷりとは整合的なんですが、その割には10月見通しの数値が2022年度で+0.9⇒+1.0、2023年度で+1.0⇒+1.1と僅か0.1ポイントしか動いていなくて、展望レポートの書きっぷりの前回差分と、見通し数値の前回差分の整合性が無いんですよね。

これだけ強い言い方をしているのに何で・・・・・・・

『ただ、その中心的な見通しは、見通し期間の最終時点でも 1%程度にとどまるということであり、そうした点は十分考慮しつつ、金融政策について先ほど来申し上げている通り、現在の金融の大幅な緩和を粘り強く続けていくということを今回も確認したということです。』

となっていて、何でこれだけ威勢の良い上方修正をしているのに数値が上がらんのか、というのがどうも理解に苦しみますな。


・悪い円安論キタコレ

ちょっと先に行きまして、ここからの質問が割とこう言い感じで厳しくて結構でした。

『(問) 円安についてお伺いします。昨年 10 月の決定会合後の記者会見で、黒田総裁は現時点では悪い円安ではないという発言をなさいました。その頃は 1ドル 113 円近辺だったと記憶していますけれども、その後一時 1 ドル 116 円台まで円安が進む局面もありました。現段階でも悪い円安ではないという認識は変わっていないでしょうか。また、今後アメリカの利上げなどが進んでいけば、円安が更に進んでいく可能性もあります。どこまで許容するのかというのをお伺いしても、なかなかお答えにはならないと思いますので、聞き方を色々考えていたのですが、どういう状況になったら日本にとって悪い円安になっていくのでしょうか。』

そらさっきの公共放送のニュースのような状況でんがな、と思いますし、これは識者の方が素早く展望レポート全文の方をお読みになって、ツイッターランドの方に投下して頂きアリガタヤにも程があるのですが、そのご指摘によりますと展望レポート全文で円安の効果についての分析コーナーがあり、よくよく見ると結果が「インバウンドにプラスになる以外碌すっぽ効果は無い」という(展望レポート全文の方は政策決定会合議決事項じゃないのを良い事にしれっと)スタッフの皆様によりますイヤガラセなのか静かなる反乱なのか存じませんが、そういうのが出てたりという事で、いい加減もうちょっと言い方のトーンを変えないと、「円安でコスト増」「円安で生活費上昇」の批判が日銀に向かうぞ、とアタクシなんぞは懸念するのでございますが、アタクシのような下賤には理解致しかねる上級国民の黒田大先生様、相変わらずの円安絶賛礼賛である。

『(答) 為替相場の水準などについて、具体的にコメントするのは差し控えたいと思いますが、いつも申し上げている通り、為替相場は経済や金融のファンダメンタルズを反映して、安定的に推移するということがきわめて重要であると思っています。そのうえで一般論として申し上げますと、為替相場の変動というものは、財・サービスの輸出の数量、輸出採算や海外事業の収益、そして輸入原材料のコストなど、様々なルートを通じてわが国の経済に影響を及ぼします。これらの影響は、わが国の経済・貿易構造の変化に伴って変化しているわけですが、為替円安が全体として経済と物価をともに押し上げて、わが国経済にプラスに作用しているという基本的な構図に今のところ変化はないと考えています。』

なお、今日はそこまでやりませんが、この分析に関しては・・・・・・

今回の展望レポート全文(2色刷51枚組です)
https://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor2201b.pdf

本文40ページ、PDFのページ数で言えば41枚目の頭から『(BOX1)為替変動がわが国実体経済に与える影響 』というのがあるのでそれを読んでつかあさい(人の受け売りですすいませんすいません)。

まあそんな分析もある中ですが、

『従って、悪い円安ということは考えていません。ただ、為替円安の影響が、業種や企業規模、あるいは経済主体によって不均一であるということには十分留意しておく必要があると思っています。いずれにしても、悪い円安というようなものは、今考えていませんし、考える必要がないと考えています。』

凄いですねこの言い切り。この調子でやってて円安と資源価格上昇に加えて海外物価上昇の影響を食らって生活物資の価格や、農漁業などで必須の燃料コストの大幅上昇とかが起きた時に、日銀が全ての悪の原因を押し付けられるリスクがあるんですけど、まあ黒ちゃんは残り1年2カ月だから後は野となれ山となれの逃げ切り姿勢なんでしょうね(個人の妄想です)。


・2%行かないとか言って威張る暇があったら追加緩和しろというツッコミを待っていました!

いやーこの質問は是非誰かして頂きたかったので感謝感謝(一応会見音声は確認したのでどこの誰かは存じておりますが敢えてここでは書きません)。

『(問) まず、なかなか物価が上昇しない、賃金の上昇が伴わなければ持続的にならないという点は理解できるのですが、日銀が、なかなか 2%にいかないよ、と言い続けると、人々も、そうか、いかないのか、となって予想インフレに悪影響を及ぼしてしまう惧れも、異次元緩和の日銀のロジックから考えるとあり得るかなと思うので、むしろ追加緩和すべきではないかとの発想もあるかと思うのですけれども、それについてのご所見を伺いたいと思います。(後半割愛)』

実に良い質問である、感動した!!!!のだが・・・・・・

『(答) まず、物価につきましては、展望レポートでは政策委員会の各メンバーが示した各々の考え方の中央値を示していますが、私は、今の委員の見通しの中央値が非常にネガティブともポジティブともどちらにも考えておらず、きわめてまっとうな見通しだと思っています。ただ、見通し期間の最終時点でも 2%に達しないというのは大変残念であることは事実です。』

だからそれを「残念です」で済ませてたら「期待に働きかける政策」にならなんじゃないですか、という質問なのだが、どうもおじいちゃん2013年に言ってた事をお忘れになられているようですね。ちょっとおじいちゃんもう限界なんじゃないでしょうか。

昨日引用した最初の部分でもそうだし、昨日と今日引用している部分でもそうですが、1%程度しか行かないので政策修正は不要、とドヤ顔で主張されても困るんですが、という質問な訳な事に途中で気が付いたのか、コンポーネントの話を始める中で・・・・・・・・・

『展望レポートでも示している通り、2022 年度は、携帯電話通信料の下落の影響が剥落するとともに資源価格の影響が若干続いているというもとで 1%程度ですが、2023 年度は、当然のことながら、資源価格の物価に対する貢献は剥落していきます。その中で、むしろ需給ギャップの改善や予想物価上昇率の上昇といった持続可能な要素で物価が 1%台の上昇になるという見通しですので、その先を想定すれば、2%に向けて徐々に物価が上昇していくという形にはなっているのではないかと思います。』

やっとこの説明(ずーっと+1.0%程度の上昇という見通しになっているが、22年度までは特殊要因コミコミの数字で、23年度はプラスの需給ギャップと上昇したインフレ期待による実力部分が増えるんですよ、という説明)をしたか、という感じでして、最初からこの説明しろよと思うのですが、さっきまでは政策金利修正に絡めた質問をされてたもんだから物価が上がらん方ばっかり強調するという回答。

でもって「そんなに上がらないなら追加緩和して上がるようにしろや」と言われるとこの説明になる訳で、お前ら本当にご都合主義にも程があって、政策としてやりたいこと(足元の日銀の場合は「何もやらずに時間稼ぎ」がやりたいことのようですが)が先に有って、情勢判断をそのやりたいことの後付けで説明してるだろう、というのが実によくわかる説明になっています。

『そうしたもとで、現在の大規模な金融緩和というものを、イールドカーブ・コントロールのもとで、短期政策金利を−0.1%、10 年物国債金利をゼロ%程度に維持することで必要かつ十分な金融緩和が行われていると考えており、これを引き続き、粘り強く続けていく必要があると考えています。』

必要かつ十分だと思うんだったら将来は2%に向かって進む、という事の筈なんだが、その一方で政策修正について質問されると「物価が1%程度にしか上がらないので金輪際考えていません」と説明する、というのを一つの会見の中で二枚舌しちゃうのさすがにトンチキにも程がありますよね。


・政策金利ガイダンス文言の確認の応答がおかしい

今の質問、後半も実に良い質問でして、

『(問)(前半割愛) また、2%を目指して、2%が安定的に達成できるまで、必要な時点まで、今の緩和を粘り強く続けると思うのですが、これは、すなわち、長短金利操作目標についても現行水準で維持することをコミットしているということでしょうか。』

これは良い更問。

『(答)(前半割愛)二点目については、先ほど申し上げたように、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、感染症だけでなく、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとしているうえに、政策金利については、現在の長短金利の水準またはそれを下回る水準で推移することを想定しているとしているわけです。従って、当然、金利については、引き上げることは全く想定していませんし、必要があれば更に長短金利を引き下げるということをコミットしているということです。』

あれれ?この言い方だと新型コロナについての掛り受け関係が金利のガイダンスに掛かってないんちゃうの??

『(問) 安定的に 2%が達成されるまでそうするということですね。』

『(答) そうです。』

ということで、明らかにこの黒ちゃんの回答は暴走機関車な訳でして、声明文の趣旨を逸脱した発言を個人的見解とか情勢判断としてというような事を断らずに勝手に政策ガイダンス文言を変更していますね!!!!


・・・・・・しまった。時間が無くなってしまいました。しばらく総裁会見が詰まらんと悪態つきまくっていましたが、ここ数か月急に(外部情勢の好転というか何というかもあり)総裁会見がホットになってきたし、厳しい質問もきちんと飛んでくるようになりまして、どこぞの太鼓持ちのふんどし担ぎ質問のようなもので埋め尽くされるような事も無くなった(今回とかも少しあって誰とは言わんけどまたかよと呆れましたが)なあと思いますので、もうちょっと次回からはねじり鉢巻きで臨みたいと思いますサーセン。





2022/01/20

お題「物価見通しが引き上げになっているのに政策の話になると暴走機関車になる総裁定例会見(その1)」

記念リンクである。イイナシダナー。
https://jp.reuters.com/article/-idJPL4N2TZ3H5
2022年1月20日2:30 午前
ユーロ圏金融・債券市場=独10年債利回りがプラス圏に一時浮上、19年5月以降で初

『[19日 ロイター] - ユーロ圏金融・債券市場では、ドイツ10年債利回りが2019年以降で初めてプラス圏に一時浮上した。数年間にわたりマイナス利回りとなっていた域内債券が転換点を迎える可能性を示唆した。ドイツ10年債利回りは一時0.025%まで上昇。終盤ではマイナス0.001%とゼロ%をわずかに下回ったが、前日比では1.6ベーシスポイント(bp)上昇した。』(上記URL先より)


さて、本来は今日は展望レポートがアタクシ的にはオモロイ(そういえば前回のも実は本文構成が突如アフターコロナにフォーカスしておおおおお!と思ったのですが本文をネタにするのドサクサで忘れてしまいましたサーセン)と思うのでネタにする予定でしたけれども、黒ちゃんが会見で正月の屠蘇酒の飲み過ぎなのか、変なハーブの研究(間接表現)でもしたのか、というような勢いになっていまして、黒田はんえらい元気でよろしおすなあ(ぶぶ漬け話法)というような答弁を行っておりまして、その結果下記のようにややこしいことになっておりますので会見の方から先に参ります。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-01-18/R5VPXUT0AFB401
債券は上昇、黒田日銀総裁の利上げ議論否定で買い優勢
日高正裕
2022年1月19日 6:58 JST 更新日時 2022年1月19日 15:32 JST


〇黒田総裁の会見答弁が突如として暴走機関車になっているのは何でですかね

んな訳で総裁定例会見。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2022/kk220119a.pdf
総裁記者会見要旨
―― 2022年1月18日(火)
午後3時半から約60分


・最初(冒頭説明の次)の質疑はごく普通の質疑でしたがが後からツッコミどころを提供しとる

ってことでして、まあこれ答弁が暴走機関車になっているのはこの次の4pからになるのですけれども、この質疑に対して突っ込んでいく記者の皆様の質問、という図は大変に良かったと言いますか、何だ皆さんやればできるじゃん役立たずだの暴言並べてゴメンヨという所ですが、確かに外部情勢の変化によって「やっぱり日銀の政策がおかしくねえか」となってきたというのも大きいんでしょうね。

では最初の幹事社からの質問でこれ自体は穏当です。3ページ目になります。

『(問) まず、年初でもあり、今年の世界経済の展望についてお伺いします。世界経済は回復基調にあるもとで、インフレの高まりもみられており、海外の主要中銀は昨年末から金融政策の正常化の方向に舵を切っていますが、その世界経済に与える影響や、先行きの世界経済のリスク要因などについてどのようにご覧になっているか、お聞かせください。』

『 次に、物価上昇についてお伺いします。日本でも物価の上昇圧力が高まっていますが、要因としては、資源高であるとか、円安によるコストプッシュの面が大きいかと思います。日銀が期待する好循環による物価上昇とは異なる形になっていますが、こうした物価上昇の持続性についてどのようにお考えかお聞かせください。また、こうした環境下で、金融政策運営で配慮すべき点についてお考えをお聞かせください。』

これ自体は非常に答えやすい質問になっているのですが、ここで黒ちゃん余計な長広舌を振るったら後でその長広舌にツッコミを食らう、という非常に素敵な展開になっておりますので、この質問をした幹事社(竹橋新聞(仮名)さんでしたと記憶)、狙って諸葛孔明の罠を仕掛けたのならオソロシスではあります。

黒ちゃんの回答。アホのように長い。

『(答) 先ほど申し上げたように、世界経済は、国・地域毎のばらつきを伴いつつも、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、高めの成長を続けると予想しています。当面は、物流の停滞や労働力不足といった供給制約が、米国を中心とした先進国の経済活動の重しとして作用するほか、インフレ率の押し上げ要因となりますが、そうした供給制約は次第に和らいでいくと考えています。ただし、こうした見通しを巡っては、不確実性が大きいと思います。』

ということで、

『具体的には、第一に、先進国の供給制約が想定以上に長期化・拡大する場合には、世界経済の成長率が下振れする可能性があります。』

『第二に、一部先進国でみられるインフレ率の高止まりに対しては、各国中銀が金融政策により適切に対応すると考えていますが、国際金融市場への波及などを通じて、グローバルな金融環境が想定以上に引き締まる場合には、新興国を中心に世界経済が下振れするリスクがあります。』

『第三に、中国経済についても、中長期的な成長力の低下が徐々に進むもとで、不動産セクターの調整の影響などにより、減速感が一段と強まる惧れがあります。』

『以上のような下方リスクの一方で、各国の家計部門における、いわゆる「強制貯蓄」の取り崩しが急速に進むことなどを通じて、海外経済が消費活動を中心に上振れる可能性もあると思います。日本銀行としては、これらのリスクを含め、先行きの世界経済の動向を注意深く見ていく所存です。』

というのはこれ展望レポート基本的見解の経済のリスク要因の項番2を読んでるだけという感じでございまして、いやまあ確かに質問に対する答えはそれで良いのかもしれないけど、今回新たにリスク要因に加えた資源価格動向の話(何故か冒頭説明でもスルーしていた)も入れれば良いのにとは思うのですが。


後半が物価の話。

『次に、物価ですが、先ほど申し上げた通り、消費者物価の前年比は、既に小幅のプラスとなっており、先行きは、今回の展望レポートでお示しした通り、見通し期間終盤にかけて 1%程度の上昇率が続くと予想しています。こうした状況のもとで、現在の金融緩和を修正する必要は全くありません。』

「物価上昇の持続性についてどのようにお考えかお聞かせください。また、こうした環境下で、金融政策運営で配慮すべき点についてお考えをお聞かせください」って質問に対してのっけから「現在の金融緩和を修正する必要は全くありません」と喧嘩腰にぶっこんで来る辺りが暴走の予兆である。

『日本銀行としては、2%の「物価安定の目標」を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていく方針です。』

あとで強烈にツッコミが来るのだが、「2%を目指す」って言ってる中で展望レポートの中心数字だと22年度、23年度がどっちも+1.1%で、足元は+0.0%、ただし携帯除くと+1.1%になるというお告げが展望レポート基本的見解の中心見通しにありますので、まあ要するにずーっと1%程度の推移という状態なのに、2%目指すために追加緩和する気が全くないとはどういうことですねん、という所ではあります。

『そう申し上げたうえで、最近の物価上昇圧力の背景としては、わが国経済の持ち直しに伴う需給ギャップの改善に加え、エネルギー価格の上昇や原材料コストの高まりも影響しています。過去のわが国経済を振り返ると、資源価格の上昇を主因とする物価上昇は、リーマンショック前の 2008 年に典型的にみられた通り、一時的なものにとどまることが多かったように思います。』

この説明だと今の物価上昇の影響は資源価格上昇を受けていて、それだと一時的に終わることになる、って説明になってお前さん展望レポートの+1.1%→+1.1%は何ですねんという話ですが、

『そうした経験も踏まえると、持続的な物価上昇が実現するためには、中長期的な予想物価上昇率が高まる必要があります。すなわち、家計の間で値上げ許容度が高まり、物価がある程度上昇するとの物価観が、経済主体の間に定着することが重要になります。』

展望レポートの話はまた追って行いますが、日銀の絵によると特殊要因全部剥落後の23年度物価については、需給ギャップのプラスとインフレ期待の高まりによって+1.1%ですぜ、というような感じだと思うのですので、この説明自体はその通りではあるんですが、「中長期的な予想物価上昇率が高まる必要があります。」って言っちゃうの何か展望レポートの見通しを否定してねえかって感じですな。展望レポートの見通しは(願望レポートではあるにしたって)23年度に向けて適合的期待形成に加えてフォワードルッキングな期待形成も加わってインフレ期待高まることを「前提に」して書いてあるんですから、ここで「必要になります」とか「重要になります」とか他人事みたいに言うのはちょっとアカンナーと思います。

それにですね、期待インフレが上がるのが重要、と言ってるのに「物価が+1%程度で推移しますので追加政策は不要」とか言ってたら、そもそも論としてフォワードルッキングな期待形成が+2%じゃなくて+1%にとどまってしまうんじゃないですかねえ。というツッコミどころも提供しておるのが芸術点が高いです。

『この点、企業収益がはっきりとした改善を続ける中、人手不足感の強まりを反映して、このところ賃金は緩やかに上昇しています。また、政府も税制等を通じて企業の賃上げを促しているほか、コロナ下で蓄積したいわゆる「強制貯蓄」の存在もあります。これらは、家計の値上げ許容度を下支えする要因として期待できます。一方で、雇用の改善や賃金の上昇が本格化する前に、物価上昇が家計の所得環境やマインドに悪影響を及ぼさないか注視していく必要があると思います。』

ちょwwwおまwwww何が何でも物価上昇とか言ってなかったっけ。というか浜田大先生の名言によりますと(以下いつもの過去発言ほじくり返しなので割愛します)。

『日本銀行としては、今後とも、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、企業収益の増加や労働需給の改善を促し、その結果として、賃金と物価が持続的に上昇していく、いわゆる好循環の形成を目指していく所存です。』

それは良いんだがそのためにマイナス金利だのYCCだのって本当に必要なんでちゅかねえ・・・・・・



・フォワードガイダンスに対する暴走説明

事件はこの次の質問で起きました。

『(問) 二点お伺いします。一点目ですが、一部で、日銀が物価 2%目標を達成する前の利上げを議論しているとの趣旨の報道がありました。そうした議論を実際に行っておられるのか、事実関係を教えてください。現在のイールドカーブ・コントロール政策の枠組みでは、物価目標の実現前に長短金利を引き上げることは可能だと思いますが、総裁はどのような経済・物価・金融情勢になれば、目標実現前に利上げを行うこと、もしくは議論することが可能とお考えでしょうか。(後半割愛)』

この質問、思いっきり「報道がありました」とかロイターネタ(質問したのはロイターさんではありません)で突撃が来たわけです。

でですね、これがあるから昨日声明文ネタと称してフォワードガイダンスの再確認をしましたが、2%目標が安定的に持続するまで必要な時点まで継続するのは「YCC+QQEという枠組み」になります。

そもそも論を申し上げれば、YCC移行時に示された総括的な検証とYCCの背景説明によりますと、短期政策金利だけではなく、イールドカーブ全体にいわゆる「均衡金利」の概念を取り入れて、その各年限の均衡金利水準をプロットした「均衡イールドカーブ」に対してある程度実際のイールドカーブを下方にシフトさせ、その部分を金融緩和効果として使う、ただし下方シフトをやり過ぎると限界的な効果が逓減するのに対して副作用が強まるので、無限に金利を下げればよいのではなくて、「適度な緩和度合い」を保つ、というのがYCCの肝な訳ですな。

でもってですね、そもそも均衡金利自体が幅のある概念なので、それを短期金利から長期金利に持って行けば更に幅のある概念になってしまい、結局後付けじゃないと分からんよねというような話にはなるので、均衡イールドカーブをファンチャートみたいに示していく、というようなチャレンジは日銀も回避して(YCC当初はカーブの変化を示したりしてましたが)おります。

でもね、いくら均衡イールドカーブが幅のある概念と言ったって、物価が0%カツカツの時と、物価が2%に近い時に均衡イールドカーブの位置が同じってことは概念的にあり得んじゃろという話であります訳でして、そうなると均衡イールドカーブの上方シフトに伴ってYCCのレンジというのも変化が起きて然るべき、ということになる筈なんですよ。そもそも最初そういう話だったし。

・・・・・と、本来はそういう筈なのですが、ここで黒ちゃん暴走をおっぱじめてしまうのでした。


黒ちゃんの回答。

『(答) まず、利上げを議論しているかについては、そうした議論は全くしていません。』

まあ情勢として2%物価目標達成が全然視野に入っていないし、議論を全くしていないのはそらそうよではあるのですが、そもそも次の説明が(枠組み云々関係なく)おかしい。

『展望レポートやその前の短観、その他でも示されているように、物価が 2%の「物価安定の目標」に向けて着実に上昇しているという状況にはないわけです。』

いやあのそれを威張って言われてもこまるんですが、だったら追加緩和しろよボケナス、というツッコミが後にあってよく聞いた素晴らしい!と思いましたが、なんかノリノリでうっかり色々とアタクシが書いてしまって今朝は無念の時間切れの予定(さすがに今日は出来れば夜なべしないと展望レポートの成敗しないうちにFOMC来ちゃうからマズーですな、と焦る)。

『商品価格の上昇等、主として一時的な要因で若干物価が上がっていることは事実ですが、それでも 0.5%程度ということで、展望レポートでも示されている通り、委員方の中心的な見通しは、2023 年度、この展望レポートの終盤にかけても、1%程度の物価上昇率というものです。』

今回(も)割と会見でツッコミの当たりが強かったの、この物言いでカチンと来たってのはあるわなと思います。利上げしないというのを強調しすぎるあまり、「政策は変更しない」「でも物価は行かない」ではお前2013年からこの方何やってたんだよということになりますわな。

『そうしたもとで利上げや現在の緩和的な金融政策を変更するというようなことは、全く考えていませんし、そうした議論もしていません。』

追加緩和はしないんでちゅか〜という感じで、片岡さんももうちょっと頑張れば良いのにと思うのです。

でもってですね、この次が明らかに逸脱発言になっておりまして、

『また、今回の「当面の金融政策運営について」という公表文でも、はっきりと書かれている通り、日本銀行は 2%の「物価安定の目標」を実現し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、そしてマネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に 2%を超えるまで、拡大方針を継続する、としています。』

はい。

『公表文の最後には、「当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」としていますので、利上げというようなことは全く考えられないということです。(後半割愛)』

えーっと、質問は「政策枠組みガイダンスの中では利上げが可能ですが」という声明文に示されている通りの事を混ぜながら質問しましたが、黒田さんのこの説明ですと、厳密に会見要旨(要旨であって文字起こしではない)の書き方を見れば「今はコロナだから利上げは全く考えられない」という情勢判断の説明をしているようにも読んで読めなくはないですが、明らかに会見での説明のニュアンスとして市場の中の人の多くが理解したのは「2%達成に必要な時点まで利上げしないと黒田総裁が発言した」という説明でありまして、いやこれは枠組みの話と情勢判断の話をちゃんと分けて説明しないとミスリードにも程があるだろ、という答弁でありました。

・・・・・・・しまった、ここで時間が無くなってしまったのですが、実は今の質疑応答、後半の質疑もなんかドイヒーな説明でして、

『(前半割愛、というかさっき引用した部分の続きです)二点目は、今回の展望レポートで物価見通しのリスク評価を、これまでの下振れから中立に引き上げていますが、この金融政策へのインプリケーションを教えてください。正常化が近づいているのか、あるいは追加緩和までの距離が拡がったと言えるのかどうか、総裁のご見解をお願いします。』

どこからどう見ても「然り」としか答えようのない質問なのですが、よほど「緩和の修正」がお嫌いなのか、この質問に対してああでもないこうでもないと変な小理屈を捏ねまくった挙句に回答を誤魔化す、という挙に出ております。

本来なら、物価見通しが上方修正されるとか2%物価目標達成に少しでも近づいている話であって、それこそ提灯行列でもして奉祝とかいって会見場に入る前に企画局の幹部と一緒に練り歩く位のパフォーマンスを見せて欲しい位のものなのですが、何故か目標達成に近づく話を素直に認めようとしない、という黒田さん。なんか変なもんでも食ったのではないかと心配になってまいります。

ということで続きは明日で勘弁してつかあさいすいませんすいませんすいません。






2022/01/19

〇決定会合レビュー:政策は変更なくて貸出増加支援は相変わらずノーズロで継続

声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2022/k220118a.pdf

ちなみに前回声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217a.pdf

・片岡さんの反対理由はもっと進歩すべきである、やりなおし(審議委員はやり直さなくてよろしい)

『1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。』

例によって片岡さんの反対理由ですが、

『(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員。反対:片岡委員。片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。』

と実は脚注1を物は試しに12月会合声明文から貼ってみて文字チェックしましたが(^^)、いつもどおり同じでございます。

・・・・・・・えーっとですな、「企業の前向きな設備投資を後押しする観点から」というのが最近ずーっと片岡さん言ってるんですが、だったら企業の前向きな設備投資とやらの現在の金利状況における金利弾力性がどの程度あるのか、というのをちょっと示してくれないですかねえと思う訳でして、金利水準がダブルデジットとかそういうなら兎も角、銀行貸出も含めてクッソ低い中で金利弾力的な設備投資ってものがそもそも存在するのかよと小一時間問い詰めたい訳ですよ。

いやそうじゃなくて、需要予測とか企業側のアベイラビリティとかで決まる面が殆どじゃねえのかと素人(大昔は金貸しの手先をしてたが前世紀の話だからワイ完全素人)のイメージですになって恐縮ではございますが、そうなんじゃないの??と思います。

それにですね、そんなに企業の借入金利下げると設備投資が出る、ってんだったら何で前回会合のコロナ対策で拡大したCP社債買入の正常化に賛成するのよという所でして(あっちは全員一致なので片岡さんも賛成)、むしろ国債対比スーパーマイナススプレッドになるくらいまでCP社債をバンバン買いまくるって提案したら政策金利下げなくても企業の借入金利下がるんじゃないですかねえ(鼻ホジホジ)。

それよりも相変わらず物価が1%くらいにしか行かない見通しを平然と出すわ、それに輪を掛けて最近の黒ちゃんの会見では(政策修正はしない、というのを強調したいという気持ちが前面に出過ぎた結果として)「2%目標達成は見通せません!!」(キリッ)ってやってしまうというお前フォワードルッキングな期待形成に働きかけるんじゃなかったのかよと言いたくなるような情報発信に余念がないという日銀主流派の在り方について大いに論難すべきではないでしょうかね。

・・・・・まあ何ですな、以下「ぼくのかんがえたさいきょうのついかかんわりゆう」になってしまいますけれども、奇しくもあれは1月会合でしたが、2004年の1月に俊ちゃん総裁最後の当座預金残高拡大(当時の定義で金融緩和の拡大)をしたのですが、

https://www.boj.or.jp/announcements/release_2004/k040120.htm/
金融市場調節方針の変更について(2004年1月)

この時ってこれまでの「景気は回復していく」というシナリオ通りにオントラックで経済情勢が推移しているという判断の結果、情勢判断を上方修正していてるのに追加緩和措置を取る、というオモシロ政策を実施してて、会見要旨を見ると何か俊ちゃんの妖術で誤魔化しているという感じの無茶苦茶説明になっているのですが、まあ要は「押し上げ介入(って言われても今の若い衆は分からんですかそうですか)」みたいなことをしました、って話ですわな。

当時の俊ちゃんの会見
https://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2004/kk0401a.htm/

この時の俊ちゃんの言い草に

『昨年10月に発表した展望レポートの中で示した標準シナリオとの関係では、概ね標準シナリオの通りに経済は動いているが、先行きこれをさらに良い姿につなげていく必要がある。そうした意味で、現在比較的良い方向に経済が動き始めていることは、極めて歓迎すべきことであるが、これで満足してはならない。おそらく、民間企業や金融機関におかれては、構造的な改善を伴いながら、こうした好循環をより確かなものに持っていこうという努力と決意を固められつつある段階ではないかと思う。金融政策の面でも、こうした民間の決意と努力をさらにしっかりとサポートしていきたい。今回の措置の真の狙いはこの点にある。』(この部分だけ直上URLの2004年1月会合での福井総裁(当時)会見より引用)

というよく考えたらお前は何をいってるんだという理論がある訳で、どうせなら今回の展望レポートで物価の先行きに関する訂正判断が盛大に上がっているのを踏まえ、「物価上昇の流れを確かなものとするためにも日銀が追加緩和によって断固たる姿勢を示して2%物価安定目標達成に向けたフォワードルッキングな期待形成に働きかけるべき」位の気合重視の理由にすると、2013年当初の気合がすっかり抜けて腑抜けと化しているわ2%行かないとか連呼するわの黒ちゃんに喝を入れられて良いんじゃないですかねえ、とか妄想するのでした。


・またノーズロで延長か!

『2.日本銀行は、「貸出増加を支援するための資金供給」について、貸付実行期限を1年間延長することを決定した(全員一致)。』

またノーズロかという感じで、しかも今般なコロナオペが4月から徐々に期落ちを迎えるので、一部はこれをい受け皿にするでしょうから延長するんでしょうなというのは想定内なのですが、そもそも論としては金融環境は緩和的で金融機関の貸出態度は無茶苦茶にユルユルで、展望レポートの基本的見解でも「民間金融機関は積極的に金融仲介機能を果たしている。」となっております中で、いつまでこれ続けますねんというのは思いっきりある。まあ今はコロナからの回復期だからとか何とか言ってればよいのかもしれませんけど、ポストコロナとなっていく中で相変わらずのノーズロで良いのかねというのはある。


・フォワードガイダンスも変更なしですが・・・・・・・・・・

ここにきてガイダンス修正がどうのこうのとかそういう話もあるので再確認だわさ。

『3.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』

『引き続き、@新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、A国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、Bそれぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJREITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。』

『当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。』

だいたいからしてガイダンスてんこ盛りにも程があって、シンプルにしろやと思うのですが、これも昭和温泉旅館金融政策の弊害という感じでありますな。

分解すると(1)YCC+QQEのフレームワークのガイダンス(2)マネタリーベースのオーバーシュート型コミットメント(3)コロナ対応オペを運営しますよという話(4)コロナの影響次第では追加緩和をするよという話(5)政策金利は上げませんよという話、になります。

でもってこれ厳密に見ればコミットしているのは最初のパラにある(1)と(2)であって・・・・・

(1)はあくまでもYCC+QQEの枠組みを継続すると言ってるので金利水準がどうのこうのというのはコミットしていない(金利水準の話は(5)にある)ですな。

(2)はご案内のように、コロナオペで盛大に拡大したMBが4月以降徐々に落ちていく額が結構とんでもない額になるのですが、それでも「拡大方針は同じなので一時的に減るのは(50兆円とか落ちても)無問題」という最早それが「拡大方針」なのかよくわからんが、なにせオーバーシュート型コミットメントを引き合いに「FEDはワシが育てた」とか言わなきゃ良い事を言ってしまった謎の看板コミットメント

(3)はコロナ対応しますよという話なので別にコミットメントではない

(4)必要なら躊躇なく、って言ってるけど実際全然やらないんですから狼おじさんにも程がある訳ですが、これはただの決意表明であって、実際の行動を伴ない決意表明とかアル中の断酒なみにどうでもよいが一応書いてある。ちなみにコロナの前は「物価上昇のモメンタムが維持されなくなるようなら」だわさ(次でまとめて)。

(5)この「政策金利については」の文章に最初の「当面、新型コロナ・・・・」が掛かるのかどうか、というのが日本語ムツカシアルねで微妙なのですが・・・・・・・

コロナ前の声明文で2020年1月の声明文ですけど。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2020/k200121a.htm/

こちらの項番2を見ると、(ということで以下は2020年1月即ちコロナ前のガイダンス文言、長いので段落分けをします)

『2.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』

『政策金利については、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。』

『今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。』

『特に、海外経済の動向を中心に経済・物価の下振れリスクが大きいもとで、先行き、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れが高まる場合には、躊躇なく、追加的な金融緩和措置を講じる(注2)。』(この部分だけ直上URL先の2020年1月会合声明文より)

とあって、「躊躇なく緩和」と「政策金利」にモメンタムが紐ついていたので、まあその流れから言うと今回もコロナに政策金利が紐ついている感じですな。

・・・・・・はまあ良いんですけど、そもそもここの文言って以前からそうなのですが、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを「想定している」なのであって、別にコミットメントでも何でもない、という諸葛孔明の罠があって、ただ一方で会見のオーラルでは黒ちゃんが政策の修正は金輪際ありませんというのを無暗矢鱈と強調する、という流れになっていて、それが何か今回の会見では(ロイター報道とかがあったからそれに反発したかったんでしょうけど)更に暴走機関車モードになっておられますがな、という感じなのですが詳しくは本日会見要旨が出てから参ります。



・・・・・・・ということで昨日夜なべをしなかったツケが回ってきて(夏休み明けなんで・・・・)展望レポート基本的見解に辿り着く前に時間切れになってしまいましたサーセン。今朝はここで勘弁。




2022/01/17

お題「引き続きだいたい備忘メモで恐縮ですが円債はロイター記事で下げるわ米債は指標悪いのに下げるわ」

結局円債暴れなかったの木曜だけだったのかよ・・・・・・・・・

〇落ち着いたと思ったらロイター記事でまたまた下げとかもうね(円債メモ)

https://port.jpx.co.jp/jpx/template/quote.cgi?F=tmp/popchart&QCODE=601.555
長期国債先物(夜間除く) 22年3月限

取引日 2022/01/14
立会区分 日中取引
始値 151.00(08:45)
高値 151.01(08:46)
安値 150.64(09:32)
現在値 150.80(15:02)
前日比 -0.26
取引高 42,745

寄って10分もしないうちに下がってその後更に下がって寄りから35銭も下げて上がって下がって前場引けが66銭なのでかなりの安値水準と来まして後場持ち直すものの引けにかけては垂れましたというチャート(後になると出なくなるので日中足を朗読してみました)ですかそうですかは良いのですが、急落して戻してというのをしたもんだからまた先物の出来高が4.2万枚とかどうなってるのこの相場。

https://jp.reuters.com/article/tokyo-dbt-idJPL4N2TU1NO
2022年1月14日3:25 午後
〔マーケットアイ〕金利:国債先物は大幅反落で引け、長期金利0.145% 日銀政策巡り警戒感

『[東京 14日 ロイター] -
<15:12> 国債先物は大幅反落で引け、長期金利0.145% 日銀政策巡り警戒感

国債先物中心限月3月限は前営業日比26銭安の150円80銭と3営業日ぶりに大幅反落して取引を終えた。日銀の金融政策正常化を巡る思惑が市場の一部で出たことが材料となった。新発10年国債利回り(長期金利)は同2.0bp上昇の0.145%。 前日の夜間取引では先物が上昇、また米国市場でも国債利回りが低下(価格は上昇)したが、円債先物は朝から売り先行でスタート。序盤以降も下げ幅を拡大した。岡三証券の金利シニアストラテジスト、鈴木誠氏は「日銀の金融政策正常化を巡る思惑が市場の一部に出ており、相場が反応しているようだ」との見方を示した。』(上記URL先より、下記TRADEWEBも同様)

TRADEWEB
   OFFER BID  前日比 時間
2年 -0.075 -0.07  0.01 14:43
5年 -0.025 -0.02  0.02 15:09
10年 0.141 0.146  0.021 15:09
20年 0.527 0.533  0.025 15:10
30年 0.715 0.721  0.016 15:12
40年 0.75  0.757  0.012 15:13

相変わらず横綱から20年が動きますなとか言いながらしれっと5年が人が見ぬ間に随分と水準訂正しておりますな。

ということで何か他人事のように記事にしているのですが、実際にはロイター記事の影響でして、しかも英文しかないという辺りに怪しさを感じるものの、とは言いましても某飛ばしのヒーさん(特定のベンダーの特定の記者を名指ししたものではなくあくまでも一般名詞として申し上げておりますので念のため申し添えます)ではないので何かバックグランドにあるのか、とか考えてしまいますが、書いた方の署名見たら普通にジャパンの方じゃないの。うーん。

URLがクソ長いのでハイパーリンクは途中の文字列までに引っ掛けておきます。
https://www.reuters.com/markets/currencies/exclusive-boj-debates-messaging-eventual-rate-hike-inflation-perks-up-2022-01-13/
January 14, 2022
4:22 PM GMT+9
Last Updated 3 days ago
Macro Matters
Exclusive: BOJ debates messaging on eventual rate hike as inflation perks up
By Leika Kihara

どう見てもジャパンの方にしか読めないお名前ではありますが。『Summary』ってのを見ると、

『・BOJ phasing out QE, next move would be to raise rates
・Rate hike hardly imminent with inflation below target
・But BOJ starting to drop hints of future end to zero rates
・Guidance allows BOJ to hike rates before inflation hits 2%』(上記URL先より、以下同様)

「利上げは直ぐの話しじゃないけど、そもそも2%の物価目標に行く前に政策金利の引き上げができるので、BOJとしては物価上昇を受けて利上げのヒントみたいなのを出すのはやぶさかでは無い模様」って感じですかそうですかそうですか。

『TOKYO, Jan 14 (Reuters) - Bank of Japan policymakers are debating how soon they can start telegraphing an eventual interest rate hike, which could come even before inflation hits the bank's 2% target, sources say, emboldened by broadening price rises and a more hawkish Federal Reserve.』

ホンマカイナって感じではあるのですが、思いっきり仮にですけれども、黒ちゃん後の事まで考えると後任が全部後始末をするの地獄だから何ぼ何でも利上げの可能性についての仄めかし位はしておかないと、黒ちゃん退任後にまたジャガーチェンジしたという事になるのでそれはそれでマズイ、というような発想が日銀の中の人的にあったとしますじゃないですか(ちなみに黒ちゃんはそういうのを金輪際考え無さそうな人なので、考えるとすれば黒ちゃんでも置物一派でもない人ですな、あとはお察し)。

そうした場合、世界的にインフレ抑制で金融を抑制的までもっていくかは別にしても、緩和的な政策を停止するとか、それでもアカン場合は何かしまっせ何時までもあると思うなゴルディロックス、という折角のビックウェーブがあるので、そのビックウェーブがあるうちに何か着手しておきたい、ってなスケベ心が働くというのも分からんでも無いので、まあ何かそういう下心が何かの拍子に出たのか、そういう雰囲気を感じ取ったのか、はたまたただの飛ばしのヒーさん(あくまでも固有名詞ではなく一般名詞です)なのかはよくわかりませんが、まあそういう感じのお話ではありますな、うんうん。

しかしまあ何ですな、3月に利上げのような流れになっていて、こりゃ1月のFOMCで予告ホームランぶっかましてくるのかよという勢いになっているとは言え、今回のインフレがそう簡単に急落するという感じでもないし、大体からして0-0.25%の金利が1-1.25%になって金利要因だけで景気腰折れせんじゃろ(そもそもその程度で腰折れする程度の景気なら物価がこんなに上がらんし、何だかんだ言ったって2018年の時は物価は2%超えた訳でもなかったんですから、あれを参考にするのがイミフ)とは思う(個人の感想です)ので、別にFEDのファイティングポーズがそんなに簡単にコケるとはおもっておらんアタクシなので、何もこんなタイミングで痩せ馬の先走りをせんでもエエジャロと思うのですが。この手の話をするチャンスは今年の半ばとかだってあるだろうに何でこうなるんでしょうね。

『While an actual rate hike is hardly imminent and the BOJ is on course to maintain ultra-loose policy at least for the rest of this year, financial markets may be under-estimating its readiness to gradually phase out its once-radical stimulus programme.』

アンダーエスティメイトもへったくれもそもそも日銀の「何が何でも2%」の理屈であれば、今のように「2%は当分無理」という見通しを出してノホホンとしている方がおかしいのに、一方でマイナス金利の弊害除去とか言いながら、だったらマイナス金利撤回しろよと思うのですが、それはしないで一部の日銀当預先に特別付利とかして、市場参加者のイコールフィッティングを阻害するというプレイをする、という弥縫策だけは知能の無駄遣いの如く次から次へと湧きだして来る、という状態な訳ですな。

あとですね、どうせやるなら福井の俊ちゃんの如く、量的緩和解除を実は視野に入れだす中で「景気判断引き上げているのに当座預金目標の引き上げという押し上げ介入」をするという位のインチキプレイをしてこそ日銀と思うのですが、そういうインチキプレイに出ないのか出れないのかは兎も角、まあ碌でもない事やってるという自覚があるから、押し上げ介入みたいな発想は起きなくて縮小の発想になるんでしょうな、ナムナムナム。

『Notably, the BOJ's carefully worded promises to keep monetary policy accommodative apply only to steadily pumping cash into markets ? not to keeping rates at current low levels.』

黒ちゃんの着ぐるみを誰かに着せないとそういう発言が出るとも思えないのですが、まあ間違って明日出たら爆笑の発作を起こすけれども黒ちゃんの体調不良を真っ先に疑います。

『"The BOJ never committed to keep rates on hold until inflation exceeds 2%," a source familiar with the BOJ's thinking said, a view echoed by two more sources.

"That means theoretically, it can raise rates before inflation is sustainably above the target."』

でもってですな、この部分は確かに理屈としてその通りで、毎度おなじみ声明文ですが

12月声明文
https://www.boj.or.jp/announcements/release_2021/k211217a.pdf

『6.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。』(この部分は直上URL先の2021年12月金融政策決定会合声明文より)

とありますように、「QQE+YCC」は続けると言っているが、その金利水準についてはコミットしていない(マイナス金利とはどこにも書いていない)のですな。まあ「金融緩和」って言ってるんだから中立金利よりも緩和的な水準に金利が設定されてないとおかしいのでそういう意味でのコミットはありますが、まあこの「a source familiar with the BOJ's thinking said, a view echoed by two more sources.」というのが何とでも取れる書き方(にしてるんでしょうけど)なのでアレですが、まあ確かに記事の指摘の通りで利上げ自体出来るにはできるんですよね。というかYCCって導入当初の説明では「均衡イールドカーブ(既に死語と化しているが)に対して緩和的な状態のイールドカーブを維持するのだが、その時に金利を下げ過ぎても副作用が大きくなるので、過度な金利低下は抑制する」という事になっておりましたので、状況の変化によって均衡イールドカーブがシフトアップしているという認識(ということにしておく、という意味であってそもそも均衡イールドカーブなどというのは中立金利以上に架空の概念であることは言うまでもありません)であれば、YCC政策における適正な金利水準も変化し得る、ということになりますので、まあ別に金利上がってもエエンチャウノ、という理屈は言えない訳ではありません、黒ちゃんが言うとは思えないけど。


しかしまあ何ですな、この声明文項番6ってフォワードガイダンスとオーバーシュート型コミットメントなのですが、ロイターちゃんのさっきの記事の後半には輪番での国債買入ペース減少の話がありまして、こちらもコロナオペで当預が無駄に増えた方ばっかり気にしていて輪番の国債ネタを追っかけるの止めてたの申し訳なかったのですが、記事の後半に『JOINING THE LINE FOR THE EXITS』って小見出しがあって、

『The BOJ has already been phasing out quantitative easing (QE) by steadily tapering asset purchases. The current pace of its bond buying is less than one-fifth the level in 2016, when it shifted to a policy targeting interest rates from the pace of money printing.』

『It is also slowing purchases of risky assets and will phase out a coronavirus pandemic-relief loan scheme in March, a move that will reduce cash supply to the economy.

The BOJ has been able to taper without shocking markets partly as the moves came when stocks were rallying and the yen was weakening as a trend.』(以上2つ前のURL先のロイター記事に戻り引用)

とかあって、ご丁寧にグラフちゃんの方には別リンクもあって、

https://graphics.reuters.com/JAPAN-ECONOMY/BOJ/jnvwejbgzvw/index.html
BOJ has steadily 'stealth' tapered its JGB buying
Chart shows sharply slowing pace of BOJ's JGB buying

こちらはネットの買入がどうのこうのではなくて買入実額の話のようですが、まあオーバーシュート型コミットメントとの整合性がどうなのよという話もコロナオペの期落ちと共にツッコミどころが多いし、アタクシのように日銀ストーじゃなかったヲチャー(自称)を延々とやっておりますと、まあ屁理屈に関しては一応屁理屈のロジックは理解しながら悪態申しあげますが、そもそも「拡大方針に変わりはなくコロナ対応での急増急減はキニシナイ」という理屈が一般的な海外投資家に通じる訳もないのでありまして、その辺りも含めて何か今回の会合、凄まじくどうでもよい決定会合だった筈なのですが、無駄に注目を集めそうな感じになってしまいましたな、うんうん。