決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2013年度下期に書いた分)

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2010年度までの見出しはこちら

2014/03/28「家計のインフレ予想に関する企画局謹製レポートは追加緩和を否定して出口への抜け道を用意するもの」
2014/03/17「2月決定会合議事要旨は案の定施策は追加緩和では無いとの建付け」
2014/03/14「貸出支援オペは予想通りの内容」
2014/03/13「3月金融経済月報は見事なまでにカワランチ攻撃」
2014/03/12「決定会合は声明文横ばいでサービス一切なし攻撃」
2014/02/24「1月議事要旨は新興国に懸念を示す向きも」
2014/02/21「金融経済月報は声明文同様で経済物価に関する表現が前回と全文一致なのに何故あの決定?」
2014/02/19「貸出支援措置の延長と拡充を妙にフレームアップして実施した2月決定会合」
2014/01/31「2003年10月10日の量的緩和政策コミットメント強化の議事録関連雑談」
2014/01/28「12月会合議事要旨から」
2014/01/27「月報も概ね声明文と同様で内容は強気化しています」
2014/01/23「決定会合声明文は結構強気化&中間レビューは見事にオントラック評価」
2014/01/17「さくらレポートは大本営ワッショイモード/日銀の現業部門を紹介するコーナー開設とな」
2014/01/10「生活意識アンケートを鑑賞」
2013/12/27「11月会合議事要旨:2年で2%に明確に懐疑的な委員が3名確実に居ることが判明」
2013/12/25「国債発行計画&償還乗換/12月月報も謎のヘッジクローズ付内容」
2013/12/24「無風会合なのですが声明文に謎のヘッジクローズがポコポコ入っているのが不可解」
2013/12/18「金融機関から日銀が購入した株式の売却は延長との事で」
2013/12/17「12月短観は基本的に良い内容となっています」
2013/12/11「日銀トップページから謎のオモシロコーナーへのリンクがががが」
2013/11/27「10月2回目決定会合議事要旨は鑑賞物としては中々面白い」
2013/11/26「11月月報は見事に無風で海外経済認識を若干引上げのみ」
2013/11/22「決定会合声明文は海外経済を若干引上げ」
2013/11/20「展望レポート全文ネタファイナルで物価に関する部分」
2013/11/19「展望レポート全文鑑賞会続き」
2013/11/13「展望レポート全文鑑賞会:まあ要するに強気です」
2013/11/08「10月MPM議事要旨から(その2):9月の短国市場金利低下が一時的とな」
2013/11/07「10月MPM議事要旨より」
2013/11/05「展望レポート全文鑑賞会の前座メモ」
2013/11/01「展望レポート(基本的見解):4月の強気見通しをConfirmする形の内容で市場との乖離さらに高まる」
2013/10/30「FSRネタ更に続き:金融システムのリスクに関しての記述も従来とは一味違いますな」
2013/10/29「FSRネタ続き:QQEでも国債市場の流動性は確保されていると言ってますが・・・・」
2013/10/28「金融システムレポート内容はQQEの自画自賛モード&シバキアゲ風味弱まる」
2013/10/24「金融システムレポートはサマリーの書き方がちょっと変化してますよ(メモ)」
2013/10/22「さくらレポートは威勢の良い内容だが、消費に関する部分ってこれ只の2極化じゃねえのかと」
2013/10/18「中央清算機関に関する開示の市中協議文書とな」
2013/10/14「10月月報:物価に関する説明が総裁の威勢の良い説明と温度差がありますね」
2013/10/10「9月議事要旨は前向きの循環メカニズムに関する見解の相違が見られますな」
2013/10/07「決定会合レビュー/国債市場の流動性指標に関するペーパー」
2013/10/03「生活意識アンケートはどう見てもコストプッシュの弊害ががががが」
2013/10/02「短観内容はほぼ順当」

2014/03/28

○インフレ予想に関する味わいの深い日銀レビューキタコレ!!

さて本日は本当は師匠の先般のしょうもない講演をネタにする予定でしたが、そのような物件よりも遥かに意義深いかもしれない日銀レビューが投下されましたので鑑賞させて頂きたいと存じます。

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/rev14j01.htm/
家計のインフレ予想の多様性とその変化

『要旨』

『インフレ予想を特徴付ける要素のひとつは、その「多様性」もしくは「ばらつき」の大きさであり、家計のインフレ予想の「ばらつき」はとりわけ大きい。インフレ予想が変化する局面では、平均値や中央値といったインフレ予想指標の統計量では把握しきれない「ばらつき」の変化が、予想分布の形状の変化として現れる。本稿は、こうした観点から、家計がもつ中期インフレ予想の分布が時間の経過とともにどのように変化してきたかという点について、『生活意識に関するアンケート調査』を用いて検証を行った。その結果、2013年入り後の物価上昇局面における予想分布には、2008年の物価上昇局面に観察されなかった特徴的な変化がみられた。』

足元で家計のインフレ予想に「今までに無かった特徴的な変化がみられた」という事で、続きはWebでではなくて日銀レビュー本文ででございますよ!!!

本文はこちら(Webですかそうですか)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2014/data/rev14j01.pdf

『はじめに』から。

『インフレ予想(inflation expectations)とは、各種の経済主体がもつ、「将来の物価動向に対する見方」である。インフレ予想は重要な経済変数のひとつであり、実質金利(名目金利とインフレ予想の差)や価格・賃金設定行動を通じて、経済・物価動向に幅広く影響を及ぼすことが考えられる。』

ということで物価安定目標などに置かれましても重要なインフレ予想に関するペーパーが出たということになりますとこれは正座して読まなければいけないのがマニアの心得というものです(^^)。

『こうしたインフレ予想を表す指標には、インフレ予想を直接尋ねるサーベイから、物価連動国債やインフレスワップなどの市場情報からインフレ予想を抽出するものまで、様々なものがある1。このうちインフレ予想に関するサーベイは、2000年代半ば以降、整備・拡充されてきた(図表1)。近年では、調査対象者が企業や市場関係者に拡充されるだけでなく、予想対象期間の長期化が進められている。2014 年3 月からは、日本銀行の『短観』でも、企業のインフレ予想について調査が開始される。こうした整備・拡充の結果、対象者間のインフレ予想の多様性(disagreement)や、予想対象期間ごとのインフレ予想の多様性を把握することが以前に比べ容易になっている。』

ということで、まずは次の『インフレ予想の多様性』という所に参ります。


・インフレ予想のばらつきという図表に滋味がありますな

『インフレ予想は予想する主体によって様々であり、全ての人が同じ予想を共有している訳ではない。家計、市場、企業を対象としたサーベイの結果をみると、いずれのインフレ予想にもばらつきがあり、特定の水準に収斂していないことが分かる(図表2)2。』

ということで図表2というのは本文の方を見て頂きたいのですが、よーするに家計のインフレ予想の分布が裾が広い形になっているものの、企業と市場のインフレ予想分布は一定の数値に収斂する傾向があって、更に言うと企業よりも市場のインフレ予想の中心値が低いという日銀的に見てケシカラン状態になっている訳ですよ。

『インフレ予想の多様性は、予想を立てる際に参照した情報の違いによって規定される面がある。例えば家計の場合、消費バスケットや収入水準など自身の置かれた環境のもとで、インフレ予想を立てている。このため、参照する情報は家計によって区々となり、インフレ予想のばらつきが大きくなりやすい。』

なるほど。

『一方、市場関係者やエコノミストの場合、予測モデルにマクロ経済情報を投入することで、インフレ予想を立てている。このため、インフレ予想のばらつきは、モデルの予測精度の差などに起因したものとなる傾向が指摘されている3。』

>予測モデルにマクロ経済情報を投入することで、インフレ予想を立てている

ふむふむ。

『市場のインフレ予想の多様性は家計ほど強くなく、今後10 年間のインフレ予想(10 年予想)は、2004 年の調査開始以降、中央値を挟んで上下0.3%pt という極めて狭い範囲に半数の予想が集中している。上場企業間のインフレ予想のばらつきも、市場のそれに近い。特に大企業では、業界の需要予測を立てる際、エコノミストの経済・物価予測を参照したりすることから、結果として、市場と似通ったばらつきが生じやすいと考えられる。』

つまりまあ市場と家計のインフレ予想が思いっ切りベースとなっている物に相違があって、その結果として期待インフレ率として示されている物としてあるのが「市場由来」と「家計由来」で思いっ切り異なってくるという話をしておりますが、何気にこうお洒落なのは先ほどの市場の期待インフレの推計に関する記述でございまして「予測モデルにマクロ経済情報を投入することで」という部分はまあ事実そうなのですけれども、この記述部分を戸田奈津子先生ばりに超訳しますと、市場のインフレ予想は予測モデルでカバーが難しい何らかの不連続な変化が生じた場合には足元のアクチュアルな個別物価変化に敏感に反応しやすい傾向のある家計のインフレ予想の変化に対して遅行する可能性がある、とまあそういう事を暗に説明しているというのが大体この後の展開を見ると読み取れると思ったのですがアタクシの妄想ですかそうですか(^^)。


・家計のインフレ予想の分析が以下続くのだ

つーことでこの後は暫く家計のインフレ予想の計測結果に関する分析があって、これはこれで中々面白いのですが引用してるとオワランチ会長になるので何で多様性が発生するのかという部分の解説を引用しますが、その前の部分図表見ながら読むと面白い(だいたい直観的にそうですねという説明になっています)ので一読をオヌヌメ。

『こうした家計間のインフレ予想の多様性やその変化を規定している要因のひとつとして、インフレ予想を立てる際に家計が参照する情報の違いが挙げられる。『生活意識に関するアンケート調査』で問われている「物価」は、消費者物価指数など特定の物価指標で代表されるものではなく、「回答者が購入する物やサービスの価格全体」である。このため、それぞれの家計がイメージする「物価」は、それぞれの消費バスケットに対応したものとなっている。この点も、家計間のインフレ予想に多様性をもたらす一因となっている。』

ですな。

『そこで、インフレ予想を立てる際に参照する価格情報の違いを定量的に確認するため、時系列モデルを使った分析を試みた。具体的には、@購入頻度の高い品目の価格情報、A購入頻度の低い品目の価格情報、Bインフレ実感、C5 年予想からなる4 変数VAR(ベクトル自己回帰)モデルを用いて、2 種類の価格上昇ショックの発生時における5 年予想の変化幅を、年齢階層別に計測した。』

なお結果の「図表5」は本文をご覧あれ。

『計測結果から、2 つの傾向を読みとることができる(図表5)。第一に、購入頻度の高い品目の価格(食料・エネルギー価格)が上昇した場合、いずれの年齢階層も5 年予想を引き上げている。なかでも、若年層の引き上げ幅が大きく、他の年齢階層に比べ、こうした品目の価格情報を重視する傾向をみてとれる。』

『第二に、購入頻度の低い品目の価格(食料・エネルギー価格を除く、財・サービス価格全般)が上昇した場合、若年層や高年層が5 年予想を据え置く傾向があるのに対し、中年層は5 年予想を引き上げている。中年層は、購入頻度の高い品目のみならず、基調的な価格変動を表す、より幅広い品目の価格情報を重視する傾向がみられる。』

ほほー。

『このように、同じ価格情報に直面していても、参照する価格情報が異なることで、家計間にインフレ予想の多様性が生じていると考えられる。』

で、生活意識アンケートの昨年9月の調査に関する話とかもあるので読んで味噌。


・最近の予想分布に変化が表れているというキタコレな話

というのが序論でして、4ページの『最近の予想分布の特徴』という所からがキタコレであります。

『2013 年入り後、家計の5 年予想の分布に、2 つの特徴的な変化が生じている(前掲図表4)。』

ほほう。

『第一に、物価下落方向の歪みが大きく縮小した(同様の変化は、市場の予想分布からも確認できる。詳細はBOX 参照)。第二に、物価下落方向の左裾だけでなく、物価上昇方向の右裾も薄くなり、2%の予想を中心に尖りが増した。すなわち、デフレを予想する家計だけでなく、高インフレを予想する家計も少なくなり、2%近辺に予想が集中するようになっている。これら2 つの特徴には、どのような要因が影響しているのだろうか。』

>2%近辺に予想が集中するようになっている
>2%近辺に予想が集中するようになっている
>2%近辺に予想が集中するようになっている
>2%近辺に予想が集中するようになっている
>2%近辺に予想が集中するようになっている

さあ盛り上がって参りました!!!!!!!

『第一の特徴である物価下落方向の歪みには、過去の価格情報が強く影響していると考えられる。』

つまりバックワードルッキングでアダブティブにインフレ期待が上昇するという「まず物価が上がればこっちのもの」論でありまして、そこの説明はすっ飛ばして結論を引用しますとこうなります。

『結果をみると、先に紹介した2013 年入り後の特徴のうち、第一の特徴である物価下落方向の歪みが縮小していく様子は、過去の価格情報で概ね説明されている(図表7)。実績値、予測値とも、予想分布の左裾が薄くなっており、デフレ予想の割合が減少している。』

物価が現実に上昇したのでインフレ予想の中で物価下落方向の予想即ちデフレ予想が弱まっているとのことですよ!!!

『ただし、シミュレーションによる予想分布の予測値は、山がなだらかであり、実績値が2013 年入り後に2 %の予想を中心に尖りを増していった点を再現できていない。また、予想分布の予測値は、時間の経過とともに物価上昇方向の右裾が厚くなる結果、平均値が上昇するのに対し、図表3で示したとおり、現実の平均値は不変であった。このように、過去の価格情報のみでは、第二の特徴である予想分布の尖りを十分に説明することができない。』

さあ益々盛り上がって参りました!!!!!!!


・インフレ目標の周知が効果を出している可能性とな

次の『(予想分布の尖りを形成した要因)』という小見出し部分に参ります。

『以上の結果は、2013 年入り後の予想分布の変化を理解するには、過去の価格情報以外の情報を無視することができない可能性を示唆している。すなわち、2013 年入り後の局面では、過去の価格情報(インフレ実績の上昇)が予想分布を物価上昇方向にシフトさせる圧力として働いているなかで、過去の価格情報以外の何らかの情報が2 %に予想を収斂させている可能性が考えられる』

2013年入り後に発生した「過去の価格情報以外の何らかの情報」ということですと消費税増税に関する議論が妙に盛り上がって結局増税が決定されて近い将来の消費税増税の期待が幅広い経済主体にビルトインされたという情報ですね!!!!(すっとぼけ)

『この予想分布の尖りは、2008 年にかけての物価上昇局面にはみられなかった現象である(前掲図表4 )。当時は、2007 年央から物価下落方向の歪みが縮小するにつれて、予想分布が全体として物価上昇方向にシフトしていった。さらに2008 年には、予想分布の山は尖らずにむしろ低くなり、緩やかなインフレ予想と高インフレ予想からなる2 つの山を形成していた。』

先般の円安コストプッシュインフレとは違いますとな。

『今回の局面で生じた予想分布の尖りは、前回の物価上昇局面で観察されなかっただけでなく、今回の局面における1 年予想の分布からも観察されない(前掲図表4)。この間の1 年予想の分布は、全体として物価上昇方向にシフトしており、特定の水準に予想が集中する様子はみられない。また、5 年予想の分布の尖りは、徐々に形成されたものではなく、2013 年入り後に突如として生じている。』

短期のインフレ予想では無く5年のインフレ予想に影響を与えているとな。

『これら一連の事実は、予想分布の尖りの形成には、5 年予想のみに影響する中期的な要素が2013 年初から新たに作用している可能性を示唆している。』

更に盛り上がって参りました!!!!!!!!!!!!

『以上の分析からは、中期的な要素の中身を特定することはできないが、ひとつの可能性として、金融政策の認知度が考えられる。』

キターーーーーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーーーーー!

『2013 年9 月調査と12 月調査には、「物価安定の目標」──消費者物価の前年比上昇率で2 %── の認知度に関する問いが設けられている。この設問の回答をもとに認知度別の予想分布を算出したところ、5 年予想の分布は、「物価安定の目標」を認識している家計の方が、2%を中心に鋭く尖った形状となっている(図表8)。一方、同目標を見聞きしたことのない家計は、予想分布の山が低く、その分、両裾が相対的に厚い。』

そういう質問を前に入れたら回答が誘(内務省検閲)。(追記:一応質問の順序を確認したら先に長期インフレ予想を出させる建付けになっていましたが、そこの回答をしてから前の答えを見直す可能性だってある訳でやはり同じ疑念は残る)

『こうした現象は、金融政策に関する情報発信が、家計の多様なインフレ予想を2 %に収斂させる役割を果たしている可能性を示唆している6。』

(;∀;)イイハナシダナー

日銀が目標を設定したからと言って物価が2%に誘導される訳じゃねえという話を金懇で思いっきりしておられた木内審議委員のご感想を是非お伺いしたい所ではあります(^^)。


・最後に市場の予想分布の話もありますよん

でまああとちょっと記述があるのですがそこはパスして、結論部分の後にある『BOX 市場のインフレ予想の多様性』という所も少々鑑賞。

市場の予想分布のこれまでの傾向の所はまあ本文読んでちょという所ですが、その後の『(2013 年入り後の特徴)』という所から。

『こうした市場のデフレ懸念は、その後、弱まっている。2013 年入り後、物価の下落よりも上昇を意識した予想が多く形成されるようになっており、予想分布の歪みは、物価下落方向から上昇方向に変化している。これは、長期的な物価動向に関する市場のリスク認識が変化するなかで、1%以上の予想が増加していることを表している。予想対象期間が異なるので単純比較はできないが、物価下落方向の歪みが縮小する動きは、本文中でみた家計と同じである。』

ほほう。

『一方、市場では、2%の予想自体はなお少数派であり、10 年予想の平均値は2%の「物価安定の目標」を下回っている。こうした背景として、市場では、デフレやゼロ・インフレがリスクとしてなお意識されており、引き続き、予想分布の左裾がマイナス圏に伸びている。こうした予想が残存していると、市場の平均予想は上昇しにくくなる。』

「残存していると」「上昇しにくくなる」って辺りに誠に味わいの深いワーディングを感じる訳でございまして、以下お察しということで自主規制(^^)。


#ところで何で企画局?と思ったのですが直近でもインフレ予想に関するリサーチペーパーって企画局の中の人が出してるのね、ふーん

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2013/wp13e11.htm/
ゼロ金利下におけるインフレ予想と家計支出の関係:マイクロデータによる分析
2013年7月12日

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2013/wp13j11.htm/
購買力平価を利用したわが国のインフレ予想の計測の有用性について
2013年9月20日


なお、最後に念の為申し添えますが、「日銀レビュー」シリーズ(その他のWPも同様)は(本文にもありますように)日銀の公式見解を必ずしも示すものではありませんという建付けになっておりますのでよろしくお願いいたします。

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2014/03/17

○2月決定会合議事要旨ネタ

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140218.pdf

まずは『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・海外経済は強めのトーン

『海外経済について、委員は、新興国の一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつあるとの見方で一致した。先行きについても、委員は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとの認識を共有した。』

というのは良いとしまして、

『多くの委員は、新興国・資源国の動向等には引き続き注意する必要があるが、海外経済全体としてみれば、ひと頃に比べ下振れリスクは低下した状態にあるとの見方は変わらないと付け加えた。』

ということで、海外経済に関して「下振れリスクは低下」という認識を2月には示していて、まあ月報の表現や総裁会見での話っぷりを見ると3月会合でも見方は変えて無さそうですな、うんうん。

ちなみに米国経済に関しては、

『先行きについて、委員は、政府債務の上限問題が決着し、財政面の下押し圧力が弱まると見込まれることから、景気の回復ペースは徐々に高まっていくとの見方を共有した。』

とのことで、更に一人の委員の意見ですが、

『ある委員は、米国経済は寒波の影響から1〜3月は弱めとなる一方、4〜6月はその反動から成長モメンタムが強まる可能性があり、その場合、日本経済の消費税率引き上げに伴う落ち込みを相殺する方向に作用すると述べた。』

というような記述もありまして、海外経済の討議部分はまあトーンとしては楽観的に見えましたがどうでしょうかねと思います。


・国内もまあ強めですなあ&輸出に関して

で、国内景気ですけれどもね。

『わが国の景気について、委員は、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働く中で、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられているとの見方を共有した。』

ふむ。

『昨年10〜12 月の実質GDPについて、何人かの委員は、輸入の高めの伸びを主因に純輸出が成長率を押し下げる方向に作用したと述べた。ただし、これらの委員は、国内需要の堅調さを背景に潜在成長率を上回る成長が続いていると指摘した。』

今回の月報などでもそういう話になっていますが、10-12のGDP1次速報が出たこの時点でも、GDPの評価はこういう形になっているようで、決定会合後の会見で黒田総裁がやたら強い話をして口が滑ってGDPの見通し数字達成という話までしてしまったのはこの辺りに背景があったのかも知れませんなという所です。

『景気の先行きについて、委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとの見方を共有した。』

ふむ。

『複数の委員は、輸出と設備投資の増加が、消費税率引き上げ後の個人消費の反動減を補っていけるかどうかが、今後の景気展開の鍵を握るとの見方を示した。このうち一人の委員は、家計や企業のマインドが悪化した場合に、消費・投資行動の委縮を通じて、自己実現的に景気の悪化を招くことがないか注視していく必要があると付け加えた。』

うむ一応警戒している人もいるのね。

で、輸出なのですけど。

『輸出について、委員は、ASEANなど一部新興国向けに弱さが残り、引き続き勢いを欠いているが、海外経済が先進国を中心に回復しつつあるもとで、振れを伴いつつも、持ち直し傾向にあるとの認識を共有した。先行きについて、委員は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくとの見方で一致した。』

はあそうですか。

『何人かの委員は、既往の円安にもかかわらず、輸出が勢いに欠けている背景には、わが国製造業の現地調達拡大を伴う海外生産シフトといった構造的な要因が作用している可能性があると述べた。このうち一人の委員は、わが国製造業が海外での収益力を高めることは、所得収支の改善を通じて、国民全体の貯蓄や純資産を増加させるなどプラスに働く面もあると付け加えた。』

いやまあそうかも知らんがそもそも円高是正して輸出中心に国内景気を回復させようって話をしていたのですからして、そっちのレビューはスルーしてプラスに働く面もあるというのも何だかねえ。

『何人かの委員は、一部の分野において、堅調な国内需要を受けて国内向け出荷を優先する一方で、輸出向け出荷を抑制する動きがみられており、消費税率引き上げ後の内需の反動減が見込まれる4〜6月には、輸出の増勢が強まる可能性もあると指摘した。』

ホンマカイナという感じもしますが、何かこの話3月の総裁会見やら月報では一部の分野の話から全体の話っぽい言い方になっていませんですか何かこう大本営発表モードになっていませんかとちと心配。


・個人消費には先行き警戒のコメントがさすがに見られる

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境が改善する中で、引き続き底堅く推移しており、消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられているとの認識を共有した。』

というのは良いとして。

『委員は、自動車や家電などの耐久消費財の動きには、冬季賞与の増額など雇用・所得環境の改善とともに、消費税率引き上げ前の駆け込みも相応に影響している可能性が高いとの見方で一致した。』

ほほう。

『先行きの個人消費について、委員は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

ふむ。

『何人かの委員は、消費者コンフィデンスが昨年10 月以降弱めの動きとなっていると指摘したうえで、その背景には消費税率引き上げが意識されている可能性があり、今後の動きを注視していく必要があると述べた。この点に関し、ある委員は、消費者態度指数の内訳をみると、「収入の増え方」や「暮らし向き」の判断が最近悪化しているため、雇用・所得環境の改善ペースの鈍化を消費の下振れリスクとして意識しておく必要があるとの見方を示した。』

まあそうですな。

『これに対し、一人の委員は、消費者態度指数のうち「雇用環境」は改善傾向を維持している点を指摘したうえで、雇用不安の後退は予備的貯蓄の抑制を通じて、消費・非製造業主導の自律回復メカニズムを支えているとの見解を示した。』

ほー強気の人もいるのね。


・物価に関して

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとの見方を共有した。多くの委員は、昨年12 月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が+0.7%まで上昇するなど、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

んでもって、

『多くの委員は、個人消費の底堅さとマクロ的な需給バランスの改善を背景に、企業がコストを販売価格へ転嫁しやすい状況が続いていると指摘した。この点に関し、ある委員は、最近の物価上昇率の高まりについて、円安によるコストプッシュ型と指摘される場合があるが、実際には、コストプッシュ型の物価上昇の際にみられるような生産の縮小は生じていないと付け加えた。』

つ「駆け込み需要」

『この間、一人の委員は、為替円安が物価に与える影響がかつてに比べ大きくなっている可能性があると指摘した。』

価格転嫁しやすくなっているからという事でしょうか、端折り過ぎて良くわかりません。

『予想物価上昇率について、委員は、マーケットの指標や各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。』

まあ物価は全体的に強気のトーンで纏められてますな。


・貸出支援拡充は追加緩和ではありませんとは言っていますが・・・・・・・・・

『X.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」について、多くの委員は、金融機関の貸出増加や成長力強化に向けた取り組みはデフレ脱却のため極めて重要であるとの認識のもと、ともに受付期限を1年間延長してはどうかとの意見を表明した。』

まあこの辺の言い訳は良いとしまして。

『そのうえで、多くの委員は、金融機関の一段と積極的な行動や企業・家計の前向きな資金需要の増加を強力に促し、日本銀行としての「強い意志」を示す観点から、資金供給の規模と期間の面で、思い切った拡充を行ってはどうか、と述べた。』

何でしょうねえ、この後に「追加緩和じゃない」という話をしているのですが、だったらもっと淡々と実施した方が宜しかった訳で、「強い意志を示す」とか変なこと言わない方が吉だと思うのですが、強い意志を示すと政治方面へのアピール以下自主規制。

『具体的には、貸出増加支援資金供給の貸付限度額について、何人かの委員は、大手行中心に積極的に利用されている現状を踏まえると、金融機関の貸出増加額の2倍まで引き上げることにより、金融機関のインセンティブを強めることが考えられると述べた。成長基盤強化支援資金供給の規模について、何人かの委員は、金融機関が成長力強化に向けた取り組みを行っていくうえで、十分余裕のある金額とするのが適当であると述べた。』

まあこの辺は敢えてツッコミを入れない。

『貸付期間について、複数の委員は、0.1%の固定金利での資金供給期間を現在の1〜3年から4年に延長することにより、金融機関の金利リスクテイク能力が高まる効果を期待できるとの見方を示した。このうち一人の委員は、貸付期間を4年へ延長すると同時に、1年毎に金融機関のオプションによる期日前返済を認めることにより、金融機関はバランスシート規模を柔軟に調整することができるのではないかと述べた。』

ま、ここの4年固定に関しては金融機関のALMマッチング的にリスクを軽くしてあげるというのが思いっきりありますよね。


でもって追加緩和じゃないという話の部分。

『貸出増加支援資金供給等の制度見直しの意義について、何人かの委員は、「量的・質的金融緩和」により供給している大量のマネタリーベースが、金融機関の貸出増加や成長力強化の取り組みに利用されることは極めて重要であり、今回の見直しは、「量的・質的金融緩和」の効果波及メカニズムを強化するものであると指摘した。』

別にMBを大量供給しなくても金融機関がホイホイ貸出する事は可能なんですけど何か引っ掛かる言い方。

『多くの委員は、「量的・質的金融緩和」に関して、従来から経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うこととしているが、わが国経済は2%の「物価安定の目標」に向けた道筋を順調に辿っており、今回の見直しはこうした「調整」にはあたらないと述べた。』

>今回の見直しはこうした「調整」にはあたらないと述べた
>今回の見直しはこうした「調整」にはあたらないと述べた
>今回の見直しはこうした「調整」にはあたらないと述べた

あっそう。

『一人の委員は、貸出増加支援資金供給等の受付期限の1年延長や4年間の固定金利での資金供給が、「量的・質的金融緩和」の継続期間と何らかの関係があるとの思惑を生じさせないよう、対外的な情報発信には注意する必要があると述べた。』

でまあ対外的な情報発信がどう見てもノリノリだったので見事に追加緩和期待が高まりましたな。

『さらに、この委員は、貸出競争を助長する可能性など将来の金融機関の財務体質に及ぼし得る影響にも注意する必要があると付け加えた。この間、ある委員は、貸出増加支援資金供給について、地域金融機関の利用が大手行対比で少なめとなっている現状を踏まえると、今回の見直しを契機に、同資金供給のメリットに関する対外的な発信を一段と強化してはどうかと述べた。』

ふーん。

ということで、貸出支援関係の強化は「追加緩和ではなく調整でも無い」という話をしているのですけれども、その前に「強い意志」とかそういうスケベな考えもある訳で、その辺りが情報発信によって追加緩和期待が浮上してという事になりました罠という所ではございまする。

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2014/03/14

○貸出支援オペ関連

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/rel140311a.pdf

27ページ組で読むのもエライコッチャでございますが、基本的には前回のMPMで公表された基本的な考え方をそのまま要綱に落とした感じです。一瞬読むとほえ?と思うかもしれない所だけ少々引用。

PDFのページのベースで何ページという形で書きますね。なお本当は改定前の部分に取消線が引いてあって改定後の部分に下線が引いてあるのですが、引用の都合上改定後の部分だけ引用して、取消線部分の引用を割愛している点を最初にお断りします。

4ページ

別紙1(『「貸出支援基金運営基本要領」中一部改正』)の『6.貸付利率および利息の徴収』から。

『(1) 貸付利率は、次のイ、およびロ、に定める利率とする。
イ、 年0.1%とする。
ロ、 7.(2)に定める借り換えにかかる貸付利率については、イ、の規定にかかわらず、当初貸付けの実行日における貸付利率の定めによって決定される利率とする。ただし、当分の間は年0.1%とする。』

・・・・・・・これですけれども、貸出増加支援や成長基盤の本則が4年固定になったので、今回の措置で小口特則とかABL特則に関しては借り換えの際の金利を当初金利でFIXするという形になったという意味です。

なお、従来に関しては成長基盤の本則は1年更改で借り換えの度に金利リセット、貸出増加支援に関しては当初3年で借入すれば3年までは固定でしたが次の借り換えは金利リセットでしたので、4年固定を確実な形にする為の要綱変更となりますな。従来の貸出分に関しては当初の通りの金利リセット方式が継続します(そらまあ変更したら”貸出条件変更先”だわな^^)。


22ページおよび24ページ

別紙7(『「貸出支援基金の運営として行う貸出増加を支援するための資金供給基本要領」中一部改正)』)から。

既往部分の借り換えの残高に関する部分が22ページ。

『(5)貸付限度額

貸付実行日毎の貸付先毎の貸付限度額は、次のイ、からロ、を控除した金額と借り換えの対象となる貸付けの金額とを比較して、いずれか小さい方の金額相当額とする。

イ、当該貸付先による平成24年10月から12月までの四半期における貸出(政府に対する貸出、地方自治体に対する貸出ならびに金融機関等および預金保険機構その他の別に定める公的法人に対する貸出を除く。以下同じ。)の月末残高平均額(四半期に属する各月末における残高の平均額をいう。以下同じ。)に対する、貸付毎に別に定める四半期における貸出の月末残高平均額の増加額

ロ、当該貸付先に対するこの基本要領に基づく貸付け(6.に定める貸付けを除く。)の残高』

要するに既往部分に関しては「残高が減らなければ同額までのロールが可能」という事です。

今後の部分に関する貸付限度額に関する部分が24ページ。

『(5)貸付限度額

貸付実行日毎の貸付先毎の貸付限度額は、次のイ、からロ、を控除した金額の2倍の金額相当額とする。

イ、 当該貸付先による貸付毎に別に定める四半期における貸出の月末残高平均額ロ、 平成24年10月から12月までの四半期から、イ、において別に定める四半期の直前の四半期までの各四半期における、当該貸付先による貸出の月末残高平均額のうち、最大の額』

すげえややこしい書き方になっていますが、2012年10〜12以降の末残平均値の既往ピーク残高から直近の四半期の末残平均値の増加分を計算して、その分の2倍まで貸出をしますよという話で、これはつまり増加した分をどうせ4年固定で借りれるなら後に繰り越した方がお得なので引っ張ろうという作戦をさせないための手段という事で、まあ当初アナウンスされていた話ではあるのですが、なるほど文章に落とすとこうなるのかと感心してしまいましたとさ。

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2014/03/13

○金融経済月報から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1403.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1402.pdf(前回)

まずは概要部分の確認。

・現状判断部分は声明文と同じです

まあ当然なのですが備忘メモでもあるので引用。

『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(今回)
『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(前回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は伸びが幾分高まっている。』(今回)

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

とまあここまでは声明文で示されている部分なので声明文同様で輸出が下げで設備投資と生産を上げとなっています。


・先行き見通しでは案の定需要項目見ても変化なし

でまあ需要項目別の話が書いてある先行き見通しを比較。

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

という総括判断は声明文どおりに変化なしですけれども、需要項目別の話は月報の概要部分に出てきますのでそちらを確認、特に輸出に注目してみますが・・・・・・・

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

・・・・・・・・・はあそうですかという所ですが、貫録の先行き見通し文言不変の巻です。

『国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

ということで国内需要の先行き見通しも同じということで、なんとまあと言うか案の定というかですけれども、見通し文言は需要項目別のブレイクダウンでも変化はありませんでしたという事で、貫録の見通し不変攻撃でどう見てもクレクレ攻撃無回答です本当にカムサハムニダという所ですな。


・リスク要因、物価も前回同様なのですが・・・・・・・・

この辺も声明文で示されている通りです。

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(前回)


『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)


『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

前回と全文一致なのは良いのですけれども。消費者物価の先行き見通しなのですが、ここで示されている「暫くの間」というのは「半年程度」という話だったと思うのですが、「暫くの間」という文言が採用されてから既に3か月が経過しておりまして、まあ程度の部分は幅を持って見るとしましても、次回は4か月目になりますからそろそろ文言どうなるのか楽しみですな(棒読み)。


・金融環境では社債の発行環境の判断を引き上げ

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回、前回も同じです)

から始まる金融環境の所ですけれども、社債の所がこういうお話。

『CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。』(今回)

『CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。』(前回)

今回引上げとなという感じですけれども、まあ散々発行スプレッドが縮小しまくった所でやっと判断引き上げというのが変なフラグ立てにならないように願いたい物です。


・でまあ本文の輸出の辺りを鑑賞してみる

でまあ普段は斜め読みするこの先の本文ですが、輸出の現状判断をより子細に書いている本文を鑑賞してみませう。本文3ページ(PDFファイルの5枚目)です。

『実質輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている(図表6(1)、7)。実質輸出は、昨年4〜6月に伸びを高めたあと、7〜9月は減少したが、10〜12 月は再び増加した。その後、1月の10〜12 月対比は大きめの減少となった。』

というのは現象の話。

『もっとも、1月については、中国をはじめとした東アジア向け輸出が大幅に減少している点からみて、春節(中国等の旧正月)の影響を受けて振れている可能性がある。』

ふーん。

『また、一部の財では、消費税率引き上げ前の駆け込み需要などに伴う供給制約が、輸出の抑制につながっている可能性もある。』

これは(この先にネタにする予定の)総裁会見でも同じ説明をしていた(当たり前だが)のですけれども、ホンマカイナという気がだいぶするんですがそうなの???

『地域別に輸出動向をみると(図表7(1))、米国向けは、4〜6月に大幅増となったあと、7〜9月、10〜12 月と小幅の減少となったが、1月の10〜12 月対比は小幅ながら再び増加した。米国向け輸出は、寒波による現地の自動車販売の減少など、このところ一時的な動きの影響を受けているが、基調的にみれば、同国の景気が裾野を広げつつ緩やかに回復するもとで、為替相場動向の影響もあって、自動車関連を中心に増加傾向にある。』

『EU向けは、4〜6月にかけて下げ止まったあと、7〜9月以降は自動車関連や資本財・部品を中心に増加を続けており、全体として持ち直している。』

『中国向けは、現地販売の改善を背景に自動車関連が緩やかに回復しているほか、半導体製造装置など資本財の一部に改善の動きが引き続きみられており、全体として持ち直している。足もと、1月の10〜12 月対比は大きく減少しているが、これは、上述した春節の影響を受けている可能性がある。』

『一方、NIEs向けについては、一進一退となっている。ASEAN向けについても、振れを伴いつつも、均してみれば弱めの動きが続いている。この間、その他地域向けについては、為替相場動向の影響が下支えとなるもとで、昨年前半には緩やかに増加していたが、昨年央以降は弱めとなっている。』

ということで主に落ち込みは一時的要因という話になっておりますな。しかし為替相場動向の影響が下支えになって云々とあるのですが、下支えになってこの結果ですかそうですかという気がだいぶするのは気のせいですね!!

『財別にみると(図表7(2))、自動車関連は、一部の新興国における需要の弱さが続いているなかで、足もとでは、米国の寒波の影響、中国などの春節の影響、さらには国内販売の大幅増に伴う供給制約などが、一時的な下押し要因となっているため、全体として減少している。もっとも、基調的にみれば、米国景気の緩やかな回復や為替相場動向の影響などから、増加傾向をたどっていると考えられる。』

どうも先ほどの供給制約云々は自動車輸出の事を示しているらしいです。

『資本財・部品についても、足もとは落ち込んでいるが、基調的には、東アジア向けの半導体製造装置などを中心に、緩やかに持ち直している。情報関連(含む映像機器、音響機器)も、足もとでは落ち込んでいるが、基調的には、スマートフォン向けの部品の動きなどを反映して、下げ止まっている。この間、中間財については、国内需要増加による供給制約が影響している可能性もあって、NIEs、ASEAN向けを中心に弱めとなっている。』

ということで、これ読んでいると全体的にそういう説明になっているから仕方ない面はあるのですが、「足もとは落ち込んでいるが基調的には上昇」という説明の連発になっていて、何度も同じ文言が登場するのでちょっとワロタという感じです(^^)。


輸出の先行き見通しを説明しているのが本文6ページ(PDFファイルの8枚目)になるのですが、ちょっとだけ引用しておきます。

『輸出を取り巻く環境をみると、海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある(図表8(2))。主要地域別にみると、米国経済は、寒波の影響から幾分弱めの指標も散見されているが、景気は緩やかな回復を続けており、その裾野に徐々に広がりがみられてきている。欧州の景気は、持ち直している。中国経済については、一頃に比べて幾分低めで、安定した成長が続いている。この間、中国以外の新興国・資源国経済の一部は、弱めの動きを続けている。』

へえへえそうだっか。

『円相場については、対ドル、対ユーロとも、振れを伴いつつも下落しており、実質実効為替レートでみると、2007 年頃の水準を幾分上回る円安となっている(図表8(1))。』

さいですな。

『先行きの海外経済は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとみられる。また、上記のような為替相場の動きも、引き続き輸出の押し上げに作用していくと予想される。』

ということで、えーっと為替が行ってるのに輸出が思ったほど伸びないという話では無いのかというのがひじょーに気になる所ではあります。ちなみにこの先は地域別見通しを全体的な話に加え、財の項目まで含めて説明していますが引用しているとキリが無いのでパスという事で。

あと、消費税の影響に関する説明が今回の月報19ページ(PDFファイルの21枚目)に本文終了後の囲みコラムとして『(BOX)物価指数における消費税率引き上げの直接的な影響』という形で掲載されていますのでご鑑賞あれ。

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2014/03/12

今回の決定会合は皆様予想していた通りに会見の方が注目となりましたが、会見テキストは本日出ますのでテキスト読みながらのネタは明日にも続くとゆー所で宜しくオナシャス。


○決定会合声明文:堂々の先行き見通しリスク認識不変の巻

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140311.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140218a.pdf(前回)

・現状判断:輸出を下げて設備投資と生産を上げ

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(前回)

ということで総括判断は毎度おなじみの緩やかな回復ね。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。輸出は、このところ横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(前回)

輸出の現状認識を下げてきましたが、海外経済の認識は変わっていないのですな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しが明確になっている。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は伸びが幾分高まっている。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

ということで設備投資の現状判断に持ち直しが「明確」と来ましたので判断引き上げ、生産に関しても「伸びが幾分高まっている」という表現でこれも判断引き上げでして、他の需要項目の表現は前回と同じですね。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

金融環境と物価の表現は同じです。


・先行き見通し:貫録の全文一致

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)

どう見ても全文一致です本当にカムサハムニダという所ですが、つまりそれは金融政策に関して特段の調整は必要ないっすなあウッシッシという事を意味しております。


・リスク要因もカワランチ会長で白井さんの意味不明提案も同様

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(前回)

『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、5.の記述に反対した。』(今回)
『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、7.の記述に反対した。』(前回)

ということでリスク要因の文言は全然変更なしという所ですが、正直欧州債務問題よりも他の要因の方が重要じゃねえかという気もするんだが、直近での動向を踏まえた表現の変更とかが特段無いというのは、まあ要するに最近の動向でリスクガーとか言う程の事も無いですぞなもしという話で、これまた強気の見方を反映しています。

で、白井さんの反対(項番が前回と今回で違うのは貸出支援措置の延長強化に関する記述が前回あった関係です)も相変わらず謎というかセンスねえなあと思うのですが、「リスク要因」が何でその「雇用所得環境の改善ペース」という事になるのかと小一時間問い詰めたい訳で、普通そういうのはリスク要因じゃなくてメインの見通しの中に含めるものじゃないですかという話でございますよ。もしリスク要因入れるなら新興国の金融市場とかじゃないですかねえ。

#ちなみに狂乱物価と言わた時代にはベアが想定外の大幅上昇で物価上昇に加速が掛かったなどという記述をどこかで見たことがあったような気がしますけどね

まあ何ですな、この雇用所得環境云々ってえのはさっきニュースネタにしたあまりんの謎発言にありますように、政権注目のネタでもありますので、白井さんったらもう自己アピールに熱心で一人目立ちたがるんですからもう困りますわねえ奥様という所でございまして、そういや昨日はOECDがECBと日銀はもっと緩和が必要な場合もとか市場が喜びそうな発表をしていたようですけれども、緩和が必要なのはいいけど手段が無いんだよクソボケという所で、無責任にも程があるわこの国際機関とか思いましたが白井さんも国際機関(OECDじゃなくてIMF)のエコノミストとかやってらっしゃいましたっけとか禿しくどうでもいい事を思い出しましたわ。


・最後の文言も相変わらず同じで木内さんの提案も同じなので今回分引用だけ

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

実際問題としては安定的にCPIが1%以上という見通しになっているのですから、デフレからの「脱却に導く」って表現さすがに変えた方が良いんじゃないかと思いまして、物価安定の目標に向けて進むとかそういう表現にしたらどうなのよとも思うのですけれども、まあ変に文言いじってああだこうだと外野から言われるのも(お前が言うなと思わないように)マンドクサという話だと思うので変化させてないんでしょうな。

木内さんの提案もいつも通りです。

『木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

中長期的に目指す件に関しては木内さんの提案は毎度反対されていますが、先般来の審議委員(ただし学者2名を除く)の情報発信を見ますと、経済の成長を伴わないで物価だけ上昇するのは政策当局として如何なものかと考えるみたいな話は多く出ていますし、この集中対応措置云々というのがもうちょっと何とかならんのかとは思いますが、いずれ物価安定目標の定義というか考え方の部分で「とにかくマンデートなんだから物価上昇に持って行けば良いんだよ」と開き直ってしまっている(ように見える)執行部と、いやそのりくつはおかしいという審議委員との間でのギャップが表面化して大変に面白い展開になる事を希望致したく存じます。



○つーことで明日の会見ネタの先取りで:今回は前回見られたサービス成分(のようなもの)を排除ですな

会見ネタは本日の会見要旨を見てからまた投下しますがとりあえずブルームバーグニュースから。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N29L506JTSET01.html
黒田日銀総裁:現時点で何か金融政策を調整する必要あるとは思わない
更新日時: 2014/03/11 18:03 JST

『黒田総裁は一方で、輸出については「勢いに欠けている」と指摘。「昨年、量的・質的金融緩和を導入した時点で思っていたよりも、輸出が弱め」となっていると述べた。 その背景としては、東南アジア諸国連合(ASEAN)など新興国経済のもたつきに加え、「米国の寒波や東アジアの春節の影響、それから駆け込み需要への対応で国内向け出荷を優先する一部企業の動きなど一時的要因も作用しているのではないか」と指摘。先行きについては「これら一時的要因がはく落するもとで、先進国の成長率が高まっていることから、中国やNIESなどアジアを経由した間接的な影響も含めて、輸出は緩やかに増加していく」と述べた。』(上記URLより)

どうも構造的な問題(輸出品の現地生産)も言及したようなのですが、それよりも一時的な要因の方を強調しておりまして、現状判断で輸出の判断を下げたのはあくまでも現実がそうだから下げただけで先行きの見通しは変わらんぞなもしという強気の姿勢です。


『黒田総裁はGDPについて「外需が弱めとなった一方で、国内需要が堅調に推移していることを確認する内容であり、全体として景気の前向きな循環メカニズムは引き続き働いている」と言明。先行きについても「こうした前向きの循環は途切れずに、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けていくという見通しには変わりがない」と述べた。』(上記URLより)

直近のGDP2次速報が弱かった訳ですが、このような説明をしているという事はつまり物価は順調に推移しているし先行きのメカニズムは変わっていないし見通しも変わってませんよ平気平気という話ですが、成長率が見通しよりも弱くて物価は堅調に推移ってそれただ単にコストプッシュとかそういう話じゃないですか国民厚生的にどうなんですかと小一時間。


『黒田総裁は11日の定例会見であらためて13年度の成長率見通しについて問われ、「その先の年度と併せて、4月の展望リポートであらためて公表する」と述べるにとどめた。』(上記URLより)

で、注目の前回定例会見での「+2.7%は行きます」発言の再ツッコミでございますが、先ほどの部分にありましたように「そのような数字よりも前向きの循環メカニズムが継続していることが重要なのです(キリッ)」という攻撃に出ておりまして、更に数字の話については忍法先送りの術ということで4月の展望レポートで攻撃に出ましたな。

でまあ展望レポートで攻撃というのは単なる忍法先送りの術なだけではなく、足元の数値が見通しに行かなかったらそれが直接的に政策判断に自動直結するのではなく、あくまでも展望レポートという先行き見通しの中で示しますということですから、先行きの見通しが重要でありますよという話でもありまして、つまりは+2.7%行かなかったから自動的に追加緩和というのはあり得ん(まあGDPターゲットにしている訳じゃ無いから当然ですが)というメッセージも含めていると思われますので、その点でも体勢を立て直したという感じだと思います。

つーかですな、今回の発言内容(正式版は本日出ますが)を見ますと、2月会見での「+2.7%達成が困難とは思っていない」発言が黒田さんにしては珍しいレベルの失言というかやっちまった発言だったという事になりまして、あの時点で「GDPに関して言えば数値がどうなるというだけではなく、前向きの循環メカニズムが途切れることなく続いていることが重要なのです(キリッ)」とか何とか言って具体的な数値の話を回避しておけば良かった(具体的数値が重要なのはディレクティブの量的数値とマンデートの2%物価上昇目標ですから)訳でして、ただまあ今回の発言が出るまでは「これはGDP+2.7%行かないのを何かの言い訳に使う布石なのではないか」とも想像(妄想寄り)される状況でしたので、今回このような説明をしているのは前回ちょっとやっちまったという所なのでしょうなあと思われますがどうでしょうかね。


まあ詳しくは会見要旨と共に投下しますが、出ているものを見て回った感じですと、今回の総裁会見は色々な意味で「体勢を立て直した」という感じでして、前回の貸出支援関連施策の延長強化において妙にフレームアップして、それこそ2倍とかまたガイジンとか他市場の金融政策シロートが喜びそうなフレーズを出してアピールしちゃった結果として、金融政策運営に関して「退かぬ、媚びぬ」という体勢への疑問が思いっきり浮上して、追加緩和観測が思いっきり前倒しとか浮上とかいう感じになっていた訳ですが、今回はそのようなサービス成分は皆無という展開になっておりまして、まあ元に戻ったという印象を強くしたという所だと思います。

まあ日銀としても前回の措置についてそこまで市場ウケする積りで考えていなかったのかもという所はあるのかと思いますが、ドラギのおっちゃんの先般の会見(もう少し書き残しネタもあるので後日)に関しても、もしかしたら市場のクレクレ観測が強いことに関して必要以上に火消しをしていたという感じで体勢の立て直しをしたのかなとも思えるのですな。まあクレクレ市場に対してはちょっとしたサービスでも過剰サービスになる可能性があり、コミュニケーションというのは難しいという事じゃないかという所で、この場合先入観というのも重要で、サービスにしろ火消しにしろ、言う人が違う(例えば麿だったらと想像しましょう^^)と市場の反応も全然違ったりするので、まあ難しい話だ罠と。


ちなみに公共放送でもこういうヘッドラインですので、追加緩和無いですよのニュアンスは伝わっているんでしょうな。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140311/k10015894111000.html
日銀総裁 金融政策の調整必要ない
3月11日 16時54分

#貸出支援の要綱に関しては時間の都合で本日はパスで勘弁してつかあさい、なお内容は想定通りです

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2014/02/24

○1月展望レポート中間評価の決定会合議事要旨

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2014/g140122.pdf

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

・海外経済に関して

『国際金融資本市場について、委員は、FRBによる資産買入れ縮小開始の決定後も総じて落ち着いた動きとなっているとの認識を共有した。新興国市場について、何人かの委員は、政治情勢が不安定な国や経常収支赤字など構造的に問題を抱えている国では、やや神経質な動きとなっていると述べた。このような議論を経て、委員は、新興国市場を含め、国際金融資本市場について、引き続き注意してみていく必要があるとの見方で一致した。』

ということで、これは1月会合の議事要旨ですが、一応この時点でも新興国市場に関するリスク認識を示しているという形になっていまして、2月議事要旨でこの辺の認識がどうなっているのかを確認したいと思います。

『海外経済について、委員は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつあるとの見方で一致した。先行きについて、委員は、先進国を中心に、緩やかに回復していくとの認識を共有した。一人の委員は、今月公表されたIMFの世界経済見通しが、昨年10月時点に比べて、米国を中心に上方修正されたことを指摘したうえで、米国経済が海外経済を牽引していくと見込まれると述べた。』

先進国中心ですかそうですかという所ですが、海外経済の所では二つほどオモロイ指摘が。

『(米国について)この間、ある委員は、FRBによる積極的な金融緩和は、景気回復を下支えする一方、資産価格の形成が歪められるリスクもあると述べた。』

何というお前が言うなですが(−−;

『(欧州について)もっとも、複数の委員は、緩和的な労働需給環境のもとで賃金調整圧力が続き、ディスインフレ傾向が長期化する可能性には注意が必要であると指摘した。』

先進国ディスインフレって(今日時間が無いのでネタにしませんが)FRBの方でもこの前のミニッツで他の先進国がディスインフレという話をしていまして、何か味わいがありますなという所です。


・国内経済に関して

国内経済に関して。

『わが国の景気について、委員は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられているとの見方を共有した。委員は、家計部門では、雇用・所得環境が改善する中で、個人消費や住宅投資は堅調に推移しており、企業部門でも、企業収益が改善する中で設備投資が持ち直しているなど、引き続き、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働いているとの認識で一致した。』

というのはいつも通りの話なのですが、前向きの循環メカニズムねえという気は相変わらずします。

で、輸出ですけど。

『輸出について、委員は、引き続き勢いの弱さは懸念材料だが、海外経済が先進国を中心に回復しつつあるもとで、振れを伴いつつも、持ち直し傾向にあるとの認識を共有した。何人かの委員は、既往の円安にもかかわらず、輸出が勢いに欠けている背景として、海外各国における設備投資が弱めに推移していることなど、海外経済の動向が影響しているとの見方を示した。この点、ある委員は、海外経済の設備投資について、先行指標である機械受注の外需が、このところ振れを伴いつつも持ち直しを続けていると指摘し、回復の兆しがみられると述べた。一人の委員は、一部の分野では、国内需要の強さから輸出余力が乏しくなっているという側面もあると指摘した。』

そらまあ構造要因で輸出が円安でも伸びにくくなっているという話をおっぱじめる訳には行かないというのも分かりますが、いやそうなんですかねえという気がする説明になっております。

個人消費に関連して。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は緩やかながらも着実な改善を続けており、雇用者所得にも持ち直しの動きがみられているとの認識を共有した。先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復がはっきりするにつれて、持ち直しが次第に明確になっていくとの見方で一致した。』

というのは良いとしまして、

『これに対して、一人の委員は、先行きの賃金上昇率について、消費税率引き上げの影響を除いたベースでみた物価上昇率を下回る可能性もありうると指摘した。』

という指摘もありますが、まあそれ以前に消費税率上昇の影響まで考えたら物価上昇率並みの賃金上昇って見込めないですよね、という状況なのですが・・・・・・・・・

『先行きの個人消費について、委員は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要とその反動の影響による振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとの見方で一致した。』

『複数の委員は、先行き、雇用者数が増加し、雇用者所得の持ち直しは明確になっていくことを踏まえれば、個人消費は底堅く推移するとの見方を示した。一人の委員は、消費者コンフィデンスが昨年10 月以降弱めの動きとなっていると指摘したうえで、その背景として消費税率引き上げを意識している可能性があり、今後の動きを注視していく必要があると述べた。』

つーて良く良く考えますと消費税増税ほどは雇用者所得が伸びるとも思えませんので、この一人の委員が指摘する件ってもっと注意しないといけないような気がしますな。


・なお物価は強気ですな

いや真面目な話「物価は行ったけど個人消費は冷え込んで、2%の物価目標達成が見えてきたのは良いけれどもそこにあった景色は別に好景気でも何でも無かった」というお洒落な状態になってしまうんじゃネーノという懸念があるのだが。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、+1%台前半となっており、先行きも、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、+1%台前半で推移するとみられるとの見方を共有した。多くの委員は、昨年11 月の消費者物価(除く食料・エネルギー)の前年比が+0.6%まで上昇しているなど、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

ふむ。

『このうちの複数の委員は、底堅い個人消費を背景に、企業がコストを販売価格へ転嫁しやすい状況になっており、先行きもこうした動きは続いていくとみられると付け加えた。先行きの消費者物価の前年比について、多くの委員は、エネルギー関連の押し上げ寄与は縮小するものの、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりといった基調的な物価上昇圧力は次第に強まっていくことから、暫くの間、+1%台前半で推移すると述べた。』

この辺の「物価上昇要因が徐々に円安エネルギーから需給ギャップと期待インフレの上昇に変わっていく」という話は展望レポートで示された通りです。

『この間、一人の委員は、為替円安が物価に与える影響がかつてに比べ大きくなっている可能性があると指摘したうえで、今後、円安傾向が反転した場合には、消費者物価の前年比の上昇ペースが想定以上に鈍化する可能性があると述べた。』

ほほー。

『予想物価上昇率について、委員は、各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。複数の委員は、中長期的な予想物価上昇率について、横ばいを示す指標が増えていたが、最近は再び上昇を示す指標もみられており、上昇傾向は維持されているとの見方を示した。』

はあそうですかという感じですが、確かに消費税前で微妙に値上げ気分が多くなっていて、消費者コンフィデンスが落ちている事の裏表で、一般の物価上昇期待が上がっているかもしれませんなと思いまして、景気は伸びないのに物価だけは順調に行くという素敵な未来が起きないようにして欲しいものだと思います。


・展望レポート中間評価

中間評価で物価の見通しが低い人の見解はいつも通り。

『一方、複数の委員は、昨年10 月の展望レポート時と同様に、予想物価上昇率の変化が現実の物価上昇率の高まりに繋がる点について不確実性が高いと考えられることなどから、自身の物価見通しは中心的な見通しに比べて慎重であるとの見方を示した。』

実際問題として物価上昇期待が消費者コンフィデンスの低下につながった場合って最初は物価が上昇するかも知れんが持続性としてどうなのよという論点はあるでしょうな。

『先行きのリスク要因について、委員は、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられるとの認識を共有した。新興国・資源国経済の動向について、多くの委員は、一部の国は経常収支赤字など構造的な課題を抱えており、国際金融資本市場の動向と併せて、引き続き注視していく必要があると述べた。』

「国際金融資本市場の動向と併せて」ってありますからEMのあばばばばーな件に関しては注視という話なのですけれども、それなら2月会合でその経過を見て何らかの話が出ないのかねという気はしますけど。


・2年で2%とオープンエンドに関して

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所ですけどね。

『対外的な情報発信について、多くの委員は、日本銀行は、@「2%の「物価安定の目標」を、2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」と約束するとともに、A「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する」との方針を明確にしているが、両者はともに重要なコミットメントであり、相互に補完的の認識を示した。』

相互補完的という説明はいつも聞くのですが、これまあやっぱり普通に分かりにくいですよね。それよりも「2年」と「2%」が並立する目標という説明をした方が良いと思うのですけど・・・・・・・・

『「量的・質的金融緩和」の継続期間について、多くの委員は、2年という期間で厳密に区切っているという訳ではないということを、誤解のないように明確に説明していく必要があるとの認識を示した。』

ただまあ2年で達成するんですからねえ。

『同時に、何人かの委員は、そのことによって「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する」というコミットメントを弱めることがないように十分留意しなければならないと述べた。』

という所に説明の無理があると思う訳で、やはりこれ見て何を言いたいのか判らんという質問はやって来るというのも現実だったりするのですけどね(個人的事例ですが)。


・フォワードターゲットに関して

これは重要な論点。

『一人の委員は、上記の方針における「必要な時点まで」という文言は、先行きの見通しに基づいて判断するものであるとの認識を高めていく必要性を指摘した。』

これはフォワードターゲットのイメージの話をしているのかなという気がします。

『これに関連して、ある委員は、金融政策の効果が実体経済や物価に波及していくには、ある程度のタイムラグがあることを考慮する必要があると付け加えた。』

これだけ書かれると何が何だかワカランチ会長ですが、つまり金融政策のタイムラグを考えるとアクチュアルな足元の物価数値云々にこだわり過ぎることなく、フォワードターゲット的な見方で物価目標を考えるべきという話をしているんですな。


・消費税増税は織り込み済みという話

『何人かの委員は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要によって2014 年1〜3月に成長率が高まり、その反動によって4〜6月に成長率が一旦落ち込むことは、委員の見通しの標準シナリオに織り込まれていることを、対外的により明確に説明する必要があると指摘した。』

まあここでも出ていますが、先ほどの森本審議委員講演でもありましたように、基本はこの筈なのですけれども、2月のフレームアップ決定によりまして「あれれ???」となってしまっているんですよねえという所です。


ということで、議事要旨そのものには(1月の物ですし)それほど新しい話があった訳でも無いですけれども、ちょこちょこ面白い話が有ったという感じです。

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2014/02/21

○金融経済月報(概要)は経済物価部分見事に全文一致

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1402.pdf
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1401.pdf

えーっとですな、今回ですが経済物価情勢と金融環境の総括部分が見事に全文一致となっています。以上終了というとアレですので今回分だけ引用しておきます。

・現状判断部分

『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』

この辺は声明文でも示されています。


・先行き見通し部分

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』

ということでこちらは前回と全文一致(なのでめんどいから前回分との比較をしていませんけれども念の為ご確認ください)となっていますが、輸出の所に見られるように海外経済は回復して緩やかに上昇するそうですよ先生。


・リスク要因

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』

これも声明文と同様で、新興国経済の動向というのはありますが、新興国市場がどうのこうのという話に関しては言及していないのは、まあメジャーなリスクじゃないですよね今の所という所ですな。


・物価に関して

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』

『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』

この「暫くの間」ってのですが前回の声明文や月報でこういう表現になりまして、約半年前後という話になっていましたので、これあと2か月ほどした時にどういう表現になるのかが楽しみですなあ(棒読み)。


・金融環境に関して

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』

これもいつも通りです。あとコンポーネントの部分に関しては数字的な部分基本的に起きた現象の説明となっていますので、前月比較で計数が動いたものはその通りに表現されていますが、認識として示されている部分は前月と同じです。めんどいので引用割愛。


ということで、ものの見事に金融経済月報も同じということで、今回は貸出支援関連措置の延長と強化を実施して「ほーれほれ」とプレゼンする一方で、ここら辺の文言を全く変えなかったというのは「追加緩和ではない」「逐次投入では無い」「見通しは不変」というのを強調したいという面もあろうかと思うのですが、先日来申し上げておりますように、これによって逆に「経済物価情勢に変化が無くても何らかのサービス政策が打ち込まれる可能性がある」という認識が持たれるようになったんじゃないですかねえという気はするのでありました。

ということでほーれほれ作戦というのは2倍のプレゼンの辺りとかも含めてちょっと悪ノリだったんじゃないかなあとは思いますが、実は今回の麿イズム強調攻撃というのが必殺技「なし崩しで黒日銀を(ちょっと)漂白して大風呂敷撤退大作戦」への布石という意図があるならそれはそれでアリかも知れませんね、ヲチャー的には困ったもんだ(というかそういうロジックの有耶無耶転換って恥ずかしくないのかねとも)とは思いますが。

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2014/02/19

お題「政策的な論点が拡散してしまった今回のMPMレビュー」

副題をつけるとすれば「この決定に関して置物副総裁の説明を求めたい」であります。

○景気判断は兎も角リスク認識も変わっていないのはどういう事でしょうか

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140218a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140122a.pdf(前回)

景気判断に関わる部分のうち現状判断部分。

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)


景気判断に関わる部分のうち先行き見通し部分。

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(前回)


リスク認識に関わる部分。

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)
『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(前回)

注1というのは白井さんの謎反対でして、声明文のワーディングで反対するのだったら木内さんみたいに議案出してくれないと何の為に反対しているんだか意味不明にも程があるので議案を出せと思うのですが。


・・・・・・・・・・とまあこういう感じで今回の決定会合ですが見事なまでに景気判断、見通し、リスク認識共に全文一致となっていまして、ECBが先般の定例理事会で新興国市場の混乱が金融市場に与える影響について下方リスク認識を示したのと比較対照してみますと何とも認識がのほほんとしていますなあという所です。

で、この件については最初に決定内容見てから景気の部分を見て「何じゃこの全文一致は」という感想を持った人が(少なくともアタクシの知り合いには)多かった次第でして、せめて新興国市場関連のリスク認識について言及した方が良いんじゃネーノと思うのですけれども(見通し下方修正しろとはさすがに申し上げませんが)、今回は謎の目くらまし政策を打ちこんで何かやりました的なアピールをしながら景気判断も見通しもリスク認識も変化なしという「政策的に分かりにくい」決定になっておりますという所です。

まあ後で再度申し上げますが、こういう訳のわからん出し方って「白日銀」みたいなデジャビュ感が漂ってくる訳でありまして、まあそもそも今回出てきた施策が麿日銀時代の(当初は何かヤケクソで出した感もありましたが途中からは)麿ご自慢(かどうか知らんが)の包括緩和政策の両輪的な物件を大々的にだして来るという時点でどうなのよとも思います。

それは兎も角、注1の方を見たら白井審議委員は相変わらず『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、6.の記述に反対した。』と仰せのようですが、今回は普通に考えて一部の新興国などにおける金融市場の混乱などの今後の影響に関しての言及を入れるだろセンスねえなあと思うのでありました。

なお報道ベースによりますと、新興国市場に関するリスク認識を会見で総裁が言及したとのことでして、まあこれは会見テキスト出てからまたネタにしますが、声明文には示さないけれども会見で言及というのも何ともバランスの悪い話ですなあとは思う(日銀的理屈で言えばメジャーなリスクとしては認識していないので掲載していません、という事になる筈)のですけれどもねえ。

ちなみに英文の声明文でも当該部分は全文一致である事を申し添えます(引用すると長くなるので今回はパス)。


○さて今回の政策ですが色々とツッコミ所はある訳で

・またニバーイニバーイかよ!!!

なお丸八真綿さんのCMで高見山大五郎さんがという話をしても若い衆はポカーンとして自分の歳がばれてしまいますので注意しましょう(^^)。

『3.近く期限の到来する「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」について、規模を2倍としたうえで、1年間延長することを決定した(全員一致)1。』

『すなわち、「貸出増加を支援するための資金供給」については、金融機関が貸出を増加させた額の2倍まで、日本銀行から資金供給を受けられることとする。「成長基盤強化を支援するための資金供給」については、本則の総枠を3兆5千億円から7兆円に倍増する。また、両資金供給について、固定金利0.1%で4年間(現在は1〜3年間)の資金供給を受けられることとする。』

『日本銀行としては、こうした見直しが、貸出増加や成長基盤の強化に向け、金融機関の一段と積極的な行動や企業・家計の前向きな資金需要の増加を促すことを期待している。』

まあ色々とツッコミ所はあるのですが、成長基盤強化貸出の残高内訳を見ると・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131129c.pdf
成長基盤強化を支援するための資金供給の実施結果

こちらにありますように、本則32,393.4 億円、ABL等特則1,035.9 億円、小口特則74.77 億円、米ドル特則7,368.9 百万米ドルとなっていまして、本則の方が枠をかなり使っている状態なのでそれを2倍にするというのは判るのですが、貸出増加支援供給に関して「貸出増加させた額の2倍」にする合理的な理由が全くもって意味不明としか申し上げようがなく、これは何なんでしょうという所です。

まあとにかく「2」を連呼してニバーイニバーイが昨年4月4日のキャッチフレーズだから2倍にしたかったんでしょうという話ではあるのですが、しかしどこをどう捻ってもこの貸出増加の2倍というのは銀行への飴玉以外の意味が判らん話ではありますがその辺のネタは後ほど。


・4年固定というのには意味がありますが

これ最初出た時に4年のLTROみたいな勘違いを誘発するような書き方になっているのが「見せ方が上手」と言ってしまえば上手なのですが、こういうのは誤認勧誘いやまあどうでもいいです。

声明文別紙の『貸出増加支援資金供給等の制度見直しの骨子(注1)』ですけどね(注1というのは「要綱に関しては次回のMPMで決定します」という事です)。

『1.貸出増加を支援するための資金供給
@ 受付期限を1年間延長する(注2)。
A 貸付限度額は金融機関の貸出増加額の2倍相当額とする(注3)。
B 貸付金利は4年固定0.1%とする。ただし、1年毎に金融機関のオプションによる期日前返済を認める。

2.成長基盤強化を支援するための資金供給
@ 受付期限を1年間延長する(本則、ABL 特則、小口特則、ドル特則)(注4)。
A 本則の総枠を3兆5千億円から7兆円に倍増する。対象金融機関毎の上限を1,500 億円から1兆円に引き上げる。
B 本則、ABL 特則、小口特則について、貸付金利は4年固定0.1%とする。ただし、1年毎に金融機関のオプションによる期日前返済を認める。』

従来は貸出増加支援については1年、2年、3年のどれかを金融機関が選択して、その時の適用金利は0.1%、エンドが来た時にトータルで4年になる所まではロールが可能(ただしこの時に貸出が減っている場合はダメ)で、その時の適用金利はその時の誘導目標金利(なお元々この制度できた時(基本要綱制定2012年12月20日)に誘導金利はバンドでしたので「現在は0.1%」としていまして金利誘導止めている現在もそれが生きている格好です)。従って0.1%確約の期間が1年延びた格好になっているのと、今回は貸出増加額の2倍という謎施策になっているという事です。

成長基盤強化に関してはABL等特則だけ2年で、本則、小口特則、ドル特則は1年となっていまして、最終的には同様に4年まではロール可能となっていましたが、適用レートはドル特則以外は先ほどと同様(つーかそもそも貸出増加支援の方が後から出来ています。こちら最初に出来たのが2010年6月15日)となっています(ドル特則は6か月リセットのLIBORベース変動金利)ので、今回こちらも0.1%確約の期間が長くなったのと、「1行あたりの限度額を大きく拡大」したことが目玉ですな。

つーことでですな、まあこれが4年に伸びたことと、「2倍借りれる(貸出増加支援)」だの「1行あたりの限度額拡大(成長基盤強化)」だのというのは大手銀行さんを中心とする人たちにとってはウハウハになる話ですな、ただし当該貸出が伸びれば、という前提が付きますが。


・4年とか5年とかの金利が下がるという話もありますがさて・・・・・・・

でまあ今申し上げましたように、これって大手中心に銀行さん(しつこく申し上げますが貸出が伸びれば)ウハウハとなり得る施策なのですが、これによってのメリットってファンディングが4年0.1%でフィックスできるという部分で、ALM的な意味で調達のデュレーションが伸びるのがポイントじゃねえかと思うのでありまして、まあ綺麗な言い方をすると将来の金融正常化の時に銀行の調達デュレーションを少しでも長くすることによって長期ゾーンの国債売却を抑制する効果がありますねという所ですが、意地の悪い言い方をすればこれって2年で2%達成の暁には将来的に金融正常化局面になる筈で、本当に来年の今頃に目標達成という事になっていればどう遅く見積もっても2年後くらいにはゼロ金利政策じゃなくなっているでしょうからその時にはこの4年固定借入がもうウハウハ状態になっていまして銀行に対する掴み金状態になってますなあという所でありまする。

なお、話が少々脱線しますが、そのような銀行ウハウハ施策を制定するに当たりまして、従来学者様でいらっしゃった際に「日銀は天下り先の銀行や短資などを優遇するインセンティブがあって金融政策がゆがめられている」などと大変に品のよろしいご批判というかただの言いがかりをしておられた方が最近は副総裁という名前の置物になっておられると聞いておりますが、その置物師匠におかれましてはこのような銀行優遇貸出制度に対して何故反対なさらないのか全く持って理解致しかねますので明快なご説明を願いたい物であります。

それは兎も角。

でまあ直接にこれで0.10%越えの金利の中期国債を買う、というよりは多分先ほどと同じ理屈で「ALM的に調達デュレーションが伸びる」という事になりますので、別に中期では無くてもこの分は国債を買いやすくなりますわな、という所なのでまあ(しつこく申し上げますが貸出が伸びれば)金利にもそこそこ効果が出るのかもしれませんし出ないかも知れません。


・貸出増加支援に関しての仕掛けについて

『(注2) 現行制度に基づく貸付は3月実行分を最後とし、6月実行分から新制度(1.A、B)に移行する。現行制度のもとでの貸付限度額の未利用枠は引き継がれない。新制度では、四半期毎の貸付限度額の未利用枠は次回以降に引き継がれない。』

ということですが、そらまあこれ固定4年で借りれるなら枠は温存して正常化が近くなる所まで引っ張る事になるでしょう(大体からして今は無担保コールで調達した方が安いから)となりますから、まあ次回に引き継げないというのは「オラオラお前らさっさと利用しやがれコノヤロー」という事でして、これによって金融機関が未使用の枠をドンドン使ってくれるといいですね(棒読み)という所です。


・成長基盤強化の1行あたりの限度額設定がどうなのかという点について

『A 本則の総枠を3兆5千億円から7兆円に倍増する。対象金融機関毎の上限を1,500 億円から1兆円に引き上げる。』

とありますが、現状の本則の利用状況は先ほど引用した
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131129c.pdf
の3ページを見ると

          貸付残高     貸付先数
大手行       11,563.6 億円  10 先
地域金融機関等 20,829.8 億円  109 先
合計         32,393.4 億円  119 先

となっていまして、地域金融機関等の方が利用額が大きくて貸付先も分散されているので、本来の趣旨に叶っていると思うのですが、上限をここで引き上げると大手金融機関が枠を使ってしまう結果になりゃせんかねという気がして、それって本来の趣旨的にどうなのかねという気がするんですが。

まあそうなったらなったで枠を増やせば良いという事なのかもしれませんが、何か制度の趣旨よりも残高を拡大したいという意向の方が前面に出ているように見えて個人的には釈然としない面もあるぞなという所です。どちらかというと地域金融機関による成長基盤強化融資に繋がるような施策になった方が良いような気がするんですがね。


・ところで貸出増加支援の30兆円の積算根拠は???

『(注3) 金融機関の貸出増加率と本制度の利用率が現状程度となるとの仮定で試算すると、本制度による最終的な貸付残高は30 兆円程度となると見込まれる。』

こちらは正直判らん。まあなんとなく「枠はその時じゃないと使えない」攻撃によって残高の拡大ペースは早まる(しつこいですが貸出が増えればの話ですけどね)かも知れませんけど。




○政策ロジックの混線に関して

・追加緩和では無いのですよね&今さら麿施策復活ですかそうですか

そもそも論として今回は最初に申し上げましたように景気判断も見通しもリスク認識も変えていないのですから、その中で金融政策に関して変更をするというのはあり得ない話でございまして、そういう意味では今回の施策は金融政策のフレームワーク的には緩和では無いという建付け。

しかしながら(詳しくは会見要旨が出てからまた悪態を申し上げると思いますが)今回は白川麿総裁時代の目玉施策を箪笥の底から引っ張り出してきてちょっと刺繍を施して「ほらこんな綺麗なおべべがありますよ」と仰々しくだして来るというのをして、まあ追加緩和と勘違いしてくれればそれで良しみたいな見せ方になっておりまして、何だかなあという感じであります。

いやね、貸出が伸びないと意味がないのはその通りなのですけれども、それって元々麿総裁時代のロジックでして、そういう麿理論をケチョンケチョンにしていた筈の置物副総裁におかれましては今回の施策に関してご説明を頂きたいと思うのですよねえ。


なお、MBの目標は変わっていませんので、「仮に日銀の目論見通りに」成長基盤と貸出増加支援が伸びて来ると、その分短期のオペが減る、というか運営が楽になるので、月曜に1年新発4bp割れとかいうエクストリーム金利になっていた短国金利がゼロだのマイナスだのに突っ込むリスクが少しは下がるかもしれませんねとは思いますが、まあそもそも貸出が伸びなければ意味ないですけどね。


・フレームアップの仕方が麿状態になっている点の落とし前をつけてほしい件

まあそもそも今回の施策は6月末に期限が来る施策を延長するのに際してちょっと色を付けてみました程度の話でもあるのです(ただしこれ本当に出口が直ぐに見えてくるようになったら金融機関に対してウハウハ効果を発揮します)が、さてそれをどういう見せ方をするかという話なのですが・・・・・・・・・

『日本銀行としては、こうした見直しが、貸出増加や成長基盤の強化に向け、金融機関の一段と積極的な行動や企業・家計の前向きな資金需要の増加を促すことを期待している。』

と声明文にはあるのですが、はてさてどうなんでしょという所でありまして、会見を報道ベースで見た感じでは、結構「どうだ凄いだろう!!」という感じで見せていたように思われます。

・・・・・・・・えーっとですな、それはそれで本来はそういう話だと思うのですが、そもそも異次元緩和政策というのはMBを拡大すると期待インフレが高まって実質金利が下がることから資金需要が発生する、という理屈を展開していた筈でありまして、MBの目標を変えないのに貸出支援関連のオペを手直しすると「企業・家計の前向きな資金需要の増加」が起きるというのはどういう事でしょうか。

貸出に直接働きかけるような政策を打ってそもそも効果があるのか(日本の場合は別に金融機関サイドに貸出が伸びないボトルネックがある訳では無い)という話もありますが、それはそれとしましても、当初は「MBを異次元に拡大すると実質金利が下がって色々と上手くいく」という木久扇師匠の超越理論をベースにして説明していた筈で、今回の施策をフレームアップし過ぎると今までの話はナンダッタンダという事になる訳でして、それは政策ロジック的に如何なものかという感じはします。

#なお念のために申し上げますが、あたしゃMB増やせばすべてうまくいくとかいう理論を信じている訳では無くて、麿理論の方がまあ本来の話で、ただ麿の問題点は気合とハッタリが足りなかったという所だと思うのですので、方向性として今回の方がまあオーソドックスでしょと思いますが、これまでとの整合性を問うている次第

#特に置物副総裁におかれましては「MB増やして長期国債買って期待を転換してインフレ期待を高めれば実質金利が下がるので資金需要が発生する」という話を展開していましたし、それまでの麿日銀をケチョンケチョンに言っていた訳でして、その辺の落とし前というのをちゃんとつけて頂かないと心情的に全くもって釈然としない所ではあります

まあいずれにせよ、この施策をフレームアップし過ぎると「逐次投入」的な印象を与えることにもなりますし、さてどうなんでしょうかねえという気はしますけどどうなんでしょ。


○他にも突っ込みネタがあるような気がするが時間がががが

ということで続きは明日なのですが、本来淡々と延長すれば良いだけのネタをわざわざ着飾って「ほーれほれ」と見せつけて市場にアピールする、というのが何ともこうインチキというか狸的な所でありまして、黒日銀は「退かぬ、媚びぬ、振れぬ」という感じだったのがちょっと腰が砕け気味になってきたなあという印象を与えるのでありました。こりゃ市場が恫喝すると何か出るという期待は高まるだろうなあとは思うのでありました。

続きは会見要旨と共に明日。

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2014/01/31

○決定会合議事録キタコレ

さあ議事録が出て参りました!!!
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2003/index.htm/
金融政策決定会合議事録 2003年

2003年と言えば6月に行われました超長期62回債の入札が0.8クーポンで出て100円20銭平均15銭足切りで入札されてその日の引け後に100円ヒットしたと思ったら翌日以降あじゃぱーとなった大変に素敵な事案がありましたいわゆる一つのVaRショックがあった時ですな。

でまあこの年の議事録で最初に見るのは10月の1回目会合でありまして、この時に「量的緩和政策のコミットメントの明確化」が実施された訳でして・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010.htm/
本日の金融政策決定会合における決定について
2003年10月10日
日本銀行

『1.わが国経済は、輸出環境が好転し企業の業況感も改善するなど、緩やかな景気回復への基盤が整いつつある。先行きについても、輸出や生産が増加することを通じて、次第に前向きの循環が働き始めると考えられる。もっとも、過剰債務や過剰雇用などの構造的な問題が根強く残っている中、国内需要の自律的な回復力が高まるにはなお時間がかかるとみられる。

2.日本銀行は、かねてより消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、量的緩和政策を続けることを約束しているが、経済情勢が回復に向かいつつある現時点において、上記の方針を堅持することを強調したい。日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下の措置を講じることを決定した。今回の措置は、金融政策面から、最近の景気回復に向けた動きをより確実なものとすることに資すると考えている。


(1)当座預金残高目標値の上限の引き上げ

 金融調節の柔軟性を高め、流動性供給面から機動的に対応する余地を広げる観点から、日本銀行当座預金残高の目標値の上限を引き上げ、これまでの「27〜30兆円程度」から、「27〜32兆円程度」とする(別添)。

(2)国債買現先オペの期間延長

 金融調節を機動的に行う観点から、国債買現先オペの最長期間を現在の6か月から1年に延長する。

(3)金融政策運営の透明性の強化

 金融政策運営の透明性を強化する観点から、量的緩和政策継続のコミットメントをより明確化するとともに、経済・物価情勢に関する日本銀行の判断について説明を充実する(「金融政策の透明性の強化について」参照)。』


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2003/k031010b.htm/
金融政策の透明性の強化について
2003年10月10日
日本銀行

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、金融政策の透明性を強化する観点から、以下の施策を行うことを決定した(全員一致)。』

『経済・物価情勢に関する日本銀行の判断についての説明の充実

 金融政策運営についての日本銀行の基本的な考え方やその前提となる経済・物価情勢に関する判断を、適時適切にわかりやすく説明していくため、以下の見直しを行う。

(1)3か月毎の「中間評価」の公表 「経済・物価の将来展望とリスク評価」(4月・10月に公表。以下「展望レポート」という)で示した標準的な見通しに比べ、上振れまたは下振れが生じていないか、3か月毎の(1月・7月の)決定会合で検討し、「金融経済月報」の「基本的見解」の中で公表する。

(2)月報の即日公表

 「金融経済月報」は、現在、決定会合の翌営業日に公表しているが、このうち「基本的見解」部分について、即日公表することとする。

 また、「基本的見解」をよりわかりやすく簡潔なものとする。「展望レポート」については、簡潔な基本的判断とその背景を詳しく説明した記述に分けて公表することとする。

(3)総裁記者会見の即日実施等

 総裁記者会見は、現在、月1回目の決定会合の翌々営業日に行っているが、月2回目の会合を含めてすべての決定会合後、当日中に行うこととする。』

ちなみに月報に関しては現在は「概要」「本文」という形になって、基本的見解の即日公表という形式ではなくなりましたが、その代わりに声明文の中での経済に関する説明が詳しくなって、実質的に基本的見解の即日公表と同じ事になっています。しかしこうやって引用すると改めて思い出すのですが、総裁記者会見の即日実施とかすっかり当然の如くに思っていましたが、ほんの10年ちょっと前に始まったんですなあ。


『量的緩和政策継続のコミットメントの明確化

 日本銀行は、金融政策面から日本経済の持続的な経済成長のための基盤を整備するため、消費者物価指数(全国、除く生鮮食品。以下略)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで、量的緩和政策を継続することを約束している。日本銀行としては、このコミットメントについては以下のように考えている。

 第1に、直近公表の消費者物価指数の前年比上昇率が、単月でゼロ%以上となるだけでなく、基調的な動きとしてゼロ%以上であると判断できることが必要である(具体的には数か月均してみて確認する)。

 第2に、消費者物価指数の前年比上昇率が、先行き再びマイナスとなると見込まれないことが必要である。この点は、「展望レポート」における記述や政策委員の見通し等により、明らかにしていくこととする。具体的には、政策委員の多くが、見通し期間において、消費者物価指数の前年比上昇率がゼロ%を超える見通しを有していることが必要である。

 こうした条件は必要条件であって、これが満たされたとしても、経済・物価情勢によっては、量的緩和政策を継続することが適当であると判断する場合も考えられる。』

でまあこのコミットメント明確化ナツカシスという感じですが、実際問題としてはその前に短期ゾーンの市場金利まで上昇した所で手形オペのクソ長いのを実施してシグナルオペ(当時は最初打っても誰も気が付かなくて、短期市場上がりの人間だけ大騒ぎしていて、債券の人が気が付くまで少々時間が掛かったというのは懐かしい思い出)を連発して、その上総裁だかが金利上昇に対する火消し会見をしたりして鎮静化した後にこの会合があったんですけど。


・・・・・・・・でまあこの時はあまり気にしてませんでした(だって債券市場が大変なことになって火消しをした後の纏め会合みたいな感じだったし、当時はそこまでロジックを気にしていなかったので)けれども、実際にはこの決定会合では「経済物価情勢に関する現状判断と先行き判断を引き上げているのに追加金融緩和を実施」という押し上げ介入っぽい内容ですし、当時書いた駄文ですがまだサイト作る前の物で多分公開していない物をさっき見直したら、「為替介入非不胎化」の話を岩田一政副総裁が会見だか講演だかで行った直後にこの決定だったので、為替介入非不胎化実施みたいな文脈でも言われていたりしたのかなあとか思うのでありますが、まあそんなこんなでこの時の追加緩和措置っぽいものに関しては金融政策のロジック的に色々と微妙な物があったんですよね。


ということでその回の議事録はこちら(画像のPDFなのでアホ程重いのでご注意)
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2003/gjrk031010a.pdf
2003年10月9日〜10日の金融政策決定会合議事録

でまあ今申し上げましたように、こちらの議事録はワープロソフトで作成したモノホンの議事録をスキャンした物をPDFにしているという物件ですので、(あたくしのスキルと手持ちの道具を前提にしますと^^)ネタにしようとするとこれを必死こいてタイピングしないといけないという極めて遺憾の極みである状況になるので、惜しい事に今日はネタにはできませんすいませんすいません。

なお、もし読むのであれば2日目の議論が始まる47ページから先に読むとヨロシと思いますし、もっと簡潔に読むのでしたら最後の票決前の議論が始まる77ページから先を読むのが面白いと思います。

ちなみにその直前の76ページには俊ちゃんの俊ちゃん節があるのでそこだけタイプ打ち。

『福井議長

これはちょっとビッグクエスチョンだな。なかなか難しいから少しまた調査統計局の研究も交えてそれはそれで詰めて欲しい。ただ、私は計数的詰めも大事だが、より本質を見極めるところが大事だと思っており、そこのところをこれからまたしっかり議論していきたいと思う。他になければ少し早いがここでコーヒーブレイクを取りたい。後の議題がギッシリ詰まっていっるし、しっかり議論して欲しいことが今日は多いものだから、短めに、40分から再開しよう。』(上記2003年10月10日議事録76pより)
(午前10時27分中断、午前10時40分再開)

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2014/01/28

○金融経済月報も海外を引き上げ&強気化(というかシナリオの自信拡大化というか)ですな

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2014/gp1401.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1312.pdf(前回)

ということで海外の判断を引き上げてリスク認識を中立に近くした瞬間に中国とEM発であじゃぱー相場になるというのが様式美の世界と言っても差し支えないのですが、そういう様式美の世界は白い時代の風物詩とも言えましたが、黒い時代にこういう様式美が発生するというのにも何かの味わいを感じてしまうという事かも知れませんで旦那さん。

http://jp.reuters.com/article/idJPTYEA0N08U20140124
米株は大幅続落、新興国懸念でダウ平均318ドル安
2014年 01月 25日 08:43 JST

例によって例の如く概要部分だけでございますが(汗)。


・現状認識総括判断:声明文と同様

『わが国の景気は緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(前回)

この辺は大体声明文と同じなのですが、今回は駆け込み需要に言及ね。


・現状認識個別判断:海外を盛大に引き上げ&駆け込み需要に言及

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(前回)

輸出は「持ち直し傾向」と微妙に歯に物の挟まったような判断が継続していますが、海外経済に関しては持ち直し⇒回復で思いっきり上がっていますし、緩慢な動きに関しても「なお〜残しているが」という表現になって全体的な判断を大きく上げている格好ですな。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境が改善するなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は、広がりを伴いつつ改善を続けている。』(前回)

国内需要項目に関しては消費税前の駆け込み云々以外の部分は同じです。


・先行き見通し総括判断は全文一致

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

声明文の通りですな。


・先行き見通し需要項目別ではこれまた海外が引上げも輸出は同じとな

『輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

輸出の見通しは同じなのですが海外経済認識が上がっているのに輸出は「緩やかな増加」に留まっているのは何ででちゅかねえ(棒読み)。

『国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)

『国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(前回)

国内需要と生産に関してはどう見ても全文一致です本当にカムサハムニダ。


・リスク要因が盛大に改善しているのも声明文どおり

『この間、リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

まあこうした途端に海外市場がおはぎゃーになるのが様式美。


・物価に関しては声明文と同様

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる』(前回)

前回が+0.9%を受けて1%「程度」だったのが今回+1.2%を受けて「1%台前半」になりました。


『物価の先行きについて、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、プラス幅を拡大するとみられる。』(前回)

で、今回変更された表現に関わる物価上昇のパスに関しては先週声明文の説明と総裁会見の説明でああだこうだと申し上げた通りで、向こう半年程度は1%台前半(と言っても消費税が上昇するとその分が入ってグチャグチャになりまして、一応日銀は消費税分の下駄を2%で置いていますが実際にはどうなるんでしょうかね)で推移して、その間に物価上昇のコンポーネントがコストプッシュから徐々に需給ギャップ改善に伴う「実力ベース」の物になって行きますという話をしておりまして、その後はインフレ期待が実際の物価上昇に適合的に上昇して引き上げられるので物価が上昇というお話。


・金融環境は同じです

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

という所から先の実際の数値の部分以外の認識に関しては変化ないですので、めんどいから今回の分だけ引用しておきます。

『マネタリーベースは、日本銀行による資産買入れが進捗するなか、大幅に増加しており、前年比は4割台半ばの伸びとなっている。』(今回)

『企業の資金調達コストは低水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台半ばのプラスとなっている。CP・社債の発行残高は、概ね前年並みとなっている。企業の資金繰りは、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、4%台前半の伸びとなっている。』(今回)

『金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利は横ばい圏内の動きとなっている。この間、円の対ドル相場、長期金利および株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(今回)

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2014/01/23

お題「決定会合レビュー」

ということで概ね声明文からであります。

○市場の反応(ただし株と為替)に?????

決定会合の結果自体は当然のように「現在のQQEを継続」(だから表現は現状維持なのですが緩和拡大継続ではあるんですけど)だったのですが、株式市場とか為替市場の反応がワケワカランチ会長。

http://jp.reuters.com/article/idJPL3N0KW26920140122
東京株式市場・大引け=小幅続伸、日銀会合で売買交錯
2014年 01月 22日 15:34 JST

『金融政策の据え置き決定後は、外為市場で一時1ドル104円割れとドル安/円高が進行。連動して日経平均も下げ幅を拡大し、一時164円安となった。ただ、下値を売り込む向きは限られ、ドル/円の切り返しとともに日経平均もプラス圏を回復。日銀がリスク要因として「日本経済をめぐる不確実性は引き続き大きい」との表現を削除したことを評価する声もあった。』(上記URLより)

ということでMPM結果出て為替ドリブンなのか株式ドリブンなのかイマイチワカランチ会長ではあったのですが、(上記URLだと為替ドリブンっぽいが株式ドリブンな気もする)なんかおまいら期待していたのかよというのも???でしたが、その後全値戻し以上に戻ったとゆーのもアレでございましてもう何が何やらという所でしたな。

まあ債券市場的には予想通りにも程があるのでそんな反応は無かったのですけど、ということで声明文の辺りから。


○声明文:さらに強気化していますなウェーハッハッハ

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2014/k140122a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131220a.pdf(前回)

ちなみに後で使うので英文声明文も

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2014/k140122a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k131220a.pdf(前回)

・現状認識:駆け込み需要の言及に海外経済判断引き上げ

『わが国の景気は、緩やかな回復を続けており、このところ消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(前回)

ということで消費税上げ前の駆け込み需要言及キタコレです。

『海外経済は、一部になお緩慢さを残しているが、先進国を中心に回復しつつある。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(前回)

更にキタコレなのはこちらで、海外経済の判断が持ち直しから回復に引き上げ。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けている。雇用・所得環境が改善するもとで、引き続き住宅投資は増加し、個人消費は底堅く推移しており、これらの分野では消費税率引き上げ前の駆け込み需要もみられている。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境が改善するなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は、広がりを伴いつつ改善を続けている。』(前回)

住宅投資と個人消費に関して消費税駆け込みに関する言及が加わりました。企業業況感については前回分が短観が出た直後のMPMなので今回は出ていないという形なので無いのには政策インプリケーションはありませんです。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

まあここはこうでしょう。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%台前半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

物価に関してですが、直近公表分のコアCPIが+1.2%になったのを受けて「1%程度」から「1%台前半」と表現を強くしていますなということで・・・・・・・


・先行き見通しは物価に関する言及に注目

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

こちらは全文一致。

『消費者物価の前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースでみて、暫くの間、1%台前半で推移するとみられる。』(今回)
『消費者物価の前年比は、当面、プラス幅を拡大するとみられる。』(前回)

これがまたワケワカランチ会長でして、「プラス幅を拡大」という部分が削除されているという事で、一見すると物価の先行き上昇に対して判断を弱めたようにも読めるのですが・・・・・・・・

総裁会見の記事から
http://jp.reuters.com/article/idJPTYEA0L04S20140122
物価目標2%達成に自信、増税による実質所得減など注視=日銀総裁
2014年 01月 22日 19:06 JST

こちらでの説明では来年度末辺りに2%の物価目標達成に対する自信度を更に深めているような話になっております通り、別に先行きの見通しに自信がなくなった訳ではありませんので、ここの表現を見て先行き自信が弱くなったので追加緩和示唆キタコレと喜ぶと糠喜びになりますし、そーゆーレポートを見たらどう見ても誤認です本当にカムサハムニダと認識するのが吉。

と申しますのは、その次の部分に展望レポートの中間レビュー部分がありますけれども・・・・・・・・

『昨年10 月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率、消費者物価ともに、概ね見通しに沿って推移すると見込まれる。』(今回)

とありまして、後ろにある展望レポート中間レビューの参考図表にもありますように、特段大きな変更が行われた訳でもなくという内容(つーか物価見通しのレンジが下が若干上がっていますが)でありまして、展望レポートで示す中長期的なタイムホライズンでの経済物価見通しが不変ということはこれつまり物価の先行き見通しに関して何か変化があった訳では無い、という話になる訳でございますな。

でもって何でここの表現が微妙に分かりにくいかと言いますと、物価の先行き見通しの部分で今回使っている『暫くの間』と『当面』の差が一見さんに分かりにくいからでありまして、ではニュアンスが分かりやすくなる場合もある英文の当該部分を比較してみましょう。

『The year-on-year rate of increase in the CPI, excluding the direct effects of the consumption tax hike, is likely to be around 1-1/4 percent for some time.』(今回)(なおクオーターの部分はあたくしのPC環境上1-1/4に改変しています)
『The year-on-year rate of increase in the CPI is likely to rise for the time being.』(前回)

・・・・・・・・・フォーザタイムビーイングとフォーサムタイムの差が判るかと言われますとこれがまた分かりにくいにも程があるのですが、見通しが変わっていない、つまりベースラインシナリオ通りに物価が推移しており、その結果表現が変わっている、アンド今回の物価先行き見通しに「消費税増税の直接的な影響」という言及があり、それは必然的に4月以降の物価見通しも含まれるという事を勘案しますと・・・・・・・

「暫くの間」というのは消費税増税の直接的な影響が物価に跳ねている期間も含めた期間、すなわち3か月超半年程度までの期間を指していますという事になりますし、そもそも物価見通しを変えて居ない中で前回が「当面上昇する」という説明をしているというのは、つまり前々回の+0.9%から今回+1.2%に上昇するという見通しの話をしていましたぞなもしという話を意味する訳で、まあ確かに元々年末にかけて1%台に上昇してその後しばらく(食料品やエネルギーの効果が剥落するので)1%台で上昇率はその辺の水準で推移するというのが基本的な見通しだった事を踏まえるとそういうことですなという所です。


ところで話は戻りますが、今回の声明文英訳バージョンですけれども、「1%台前半」という表現が「アラウンドワンアンドクオーター」になっているのはナンジャソラという感じで、まあ要するに11月コアCPIの+1.2%近辺で暫く推移するという事を言いたかったというのは伝わるのですが、何というかピンポイント予想しているみたいで珍妙でワロタです。


・リスク要因の表現がどう見てもドヤ顔です本当にカムサハムニダ

『リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

この(注1)については後ほど申し上げます。まあそれよりも今回おーというのはリスク認識の表現の下振れ警戒文言が外れた所。英文だとニュアンスが更に分かりやすい。

『Risks to the outlook include developments in the emerging and commodity-exporting economies, the prospects for the European debt problem, and the pace of recovery in the U.S. economy.[Note 1]』(今回)

『Regarding risks, there remains a high degree of uncertainty concerning Japan's economy, including the prospects for the European debt problem, developments in the emerging and commodity-exporting economies, and the pace of recovery in the U.S. economy.』(前回)

ということで、前回はリスクに関して経済にconcerningなリスクが大きいという説明だったのが、経済のリスクはこの通り、という話になっていまして、先ほど現状認識で海外の認識の引き上げが行われたのがありましたが、こちらのリスク認識が改善している方が更にウヒョーという感じです。

なお、リスク認識の順序が変わっていまして、これは欧州問題に関するリスク認識が下がったという事を意味するというのが日銀文学のお作法です。


・最後の文言はいつもと同じ

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注2)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

で、注2にある木内さんのいつのもの提案も同じです。

『(注2)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)


○展望レポートの数値ネタは割愛

先ほどの5番目を再掲します。

『5.昨年10 月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、成長率、消費者物価ともに、概ね見通しに沿って推移すると見込まれる。』(今回)

ということで数値ネタを入れるのが本来のお作法なのですが、時間と他ネタの都合で華麗にスルーの方向でありまして、まあ今回に関しては物価見通しの下限の方の人がちょっと見通しを上げてきたのがほほーという感じを受けた程度(細かい数値は声明文の別紙を見てちょ)ですかね、うんうん。


○白井さんの提案の意味不明度合いに更に拍車が掛かっている件について

さて今回の声明文ですが先ほどご紹介した6番の所に戻ってみましょう。

『6.リスク要因としては、新興国・資源国経済の動向、欧州債務問題の今後の展開、米国経済の回復ペースなどが挙げられる(注1)。』(今回)

で、この注1ですけれども・・・・・・・

『(注1)白井委員は、国内の雇用・所得環境の改善ペースにも言及すべきであるとして、6.の記述に反対した。』(今回)

・・・・・・・・・・・?????

いやあのかなーりどうでも良い部分で反対とか何なんでしょという所でして、これ「下振れリスクはまだ大きい」とか言うならまだ意味があると思うのですが、別に声明文に掲載していなかったらその部分について警戒していないという訳では無い筈で、その中で国内の雇用所得環境の改善ベースをわざわざ載せるかどうかというので一々反対とかもう何のための反対だか判らんわ。

単に賃上げが重要と吠えている政権の皆様に対してアピールでもしたかったんですかMPMは貴方様のアピール会場じゃないんですよという所で、決定内容や金融政策の根幹にかかわる部分を普通に賛成しているのにこのような瑣末な部分でわざわざ反対するという頭の構造が理解致しかねますが、この前の謎講演での説明でもそうですが、これ本人は「コミュニケーションの改善の為に分かりやすい表現を」という文脈で大真面目にやっているっぽい所に本格派のアレの風格を感じるものでして、早い所任期が来ていただきたい物だと願って止みません。


○ところで貸出支援基金関連の延長という暫く前のニュースは何だったのかという件

ちなみに貸出支援基金の延長みたいな話は特段無かったのですが・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/mkt_ope/len_b/index.htm/
貸出支援基金

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo80.htm/
貸出支援基金運営基本要領

http://www.boj.or.jp/mopo/measures/term_cond/yoryo81.htm/
貸出支援基金の運営として行う貸出増加を支援するための資金供給基本要領

ちなみに「3年固定が可能」なのは一番下にある貸出増加を支援する資金供給になりますが、2番目と3番目のURL先にああだこうだと書いてありますが、例えば貸出増加支援の基本要綱の7番目に『7. 貸付実行日および借り換え』というのがあって、この項番1にこのような記述が。

『(1) 貸付実行日は、別に定める日とする。ただし、平成26年6月30日以降、(2)および(3)に定める借り換えを除く貸付実行は行わない。』

で、この(2)と(3)は当初貸出のロールオーバーになりますので、実質的には現在貸出支援基金は今年の6末までオファーされる可能性があるという話でして、まあそう考えますと別に今すぐ期限を延長しないといけない話では無いので、そもそも何でこの話が出て来たのかが良く判らんという説もだいぶあったりしますな。

なお、QQEでの資産買入拡大予定表によりますと、貸出支援基金に関しては昨年が10兆円、今年が5兆円拡大の見込み(で作ったものの昨年は結局6兆円しか増えていないのはご案内の通り)で作っていますが、今年が昨年の半分になっているのは単に期間が半分になっているから、という理解で良かったですよね???


会見と月報ネタに関しては明日でございますが、会見に関しては更に強気度が上昇しているように見えまして、今回のMPM捕まえて追加緩和の可能性が高まるとか示唆とか言い出すアホウはあまり居ないとは思いますけれども、ウケを取りに平然と言い出す本職の方もこれまた散見されますので誠にアレという事で。

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2014/01/17

○さくらレポート

概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer140116.htm/
レポート全文(重いので注意)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer140116.pdf


・北陸も「回復」に格上げで総括判断は全て「回復」文言とな

ということで今回のさくらレポートですが、またまた上方修正攻撃で全地域で「回復」という表現になっておりますが、出来上がりの判断を見ますと・・・・・・・・・(なお基本的に以下の部分は概要の方から引用しています)

『北海道 緩やかに回復している
東北 回復している
北陸 緩やかに回復しつつある
関東甲信越 緩やかに回復している
東海 回復している
近畿 緩やかに回復している
中国 緩やかに回復している
四国 緩やかに回復している
九州 緩やかに回復している』

ということで、「回復している」という言い切り方になっているのは東北と東海だけで、他は「緩やかに」とかついていまして、北陸の場合は「つつある」まで入っている(ところで北陸ってここもとずーっと一番弱めの判断なのですが何故北陸なのでしょうか)ので、まだ上方修正の糊代がありますね!!!!!!

なお、「回復」の次は「拡大」という表現になる筈ですが、基本的に拡大と来ると普通は金融政策的には超緩和しているなら正常化局面へという話になるので(ただしQQEは物価に思いっきりフォーカスしているので必ずしもリンクしないのかも知れませんが)どうなるんですかね。

『各地の景気情勢をみると、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかに増加している中で、雇用・所得環境も改善していることを背景に、「回復している」、「緩やかに回復している」等の報告があった。前回(13年10月)と比較すると、4地域(東北、関東甲信越、近畿、九州・沖縄)で景気の改善度合いに関する判断に変化はないとしているほか、5地域(北海道、北陸、東海、中国、四国)からは雇用・所得環境に支えられた個人消費の改善等から判断を引き上げる報告があった。』

総括判断に関しましては前々回が8地域(東北以外全部)、前回が9地域(つまり全部)で上方修正して、今回は5地域で上方修正となっていますが、まあ今回に関しては「全地域が回復という認識になった」という方が意味合いとしては大きいんでしょうかね。


・各需要項目に関して

『公共投資は、東北、九州・沖縄から、「大幅に増加している」等、6地域(北海道、北陸、関東甲信越、近畿、中国、四国)から、「増加している」、「増加傾向を維持している」との報告があった。また、東海からは、「高めの水準で推移している」との報告があった。』

前回もそうですが公共投資の即効性たるや「こうかはばつぐんだ」って奴ですな。

『設備投資は、4地域(北海道、東北、関東甲信越、東海)から、「増加している」等、4地域(近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」、「持ち直しの動きが広がっている」等の報告があった。また、北陸からは「底堅く推移している」との報告があった。この間、企業の業況感については、多くの地域から、「改善している」、「広がりを伴いつつ改善を続けている」等の報告があった。』

設備投資に関してはまあ増加とか持ち直しとかの表現ですけどこちらはあまり威勢良い改善という訳でもないですのう。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善していること等を背景に、北海道から、「緩やかに回復している」、5地域(北陸、東海、近畿、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直している」等の報告があったほか、関東甲信越から、「底堅さを増しており、都心部では強めの動きとなっている」との報告があった。また、東北、中国から、「底堅く推移している」との報告があった。』

こちらに関しても引き続きで雇用所得環境の改善で個人消費が確りの推移という話ですな。

『住宅投資は、消費税率引き上げ前の駆け込み需要等もあって、8地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「増加している」等の報告があった。一方、北海道からは、「持ち直しの動きが鈍化している」との報告があった。』

駆け込み需要キタコレという所で、北海道以外は総じて強くなっています。しかし駆け込み需要来るんでしたらこの際10%への増税も普通に予定通り実施すれば駆け込み需要が更に爆裂ですよとかくだらない事を考えてしまうアタクシですが、駆け込み需要ってそれドリンク剤飲んでるのと似たような「未来から力を前借りする」スキームですかそうですか。

『生産(鉱工業生産)は、国内需要が堅調に推移しているほか、海外需要も緩やかに持ち直していることを背景に、5地域(北海道、北陸、関東甲信越、近畿、中国)から、「緩やかに増加している」等の報告があったほか、東北、四国から、「持ち直している」等の報告があった。また、東海からは、「高めの水準で推移している」との報告があった。この間、九州・沖縄からは、「緩やかな増加の動きに一服感がみられる」との報告があった。』

ほう一服感ですかそうですか。

『雇用・所得動向は、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。』

今回は地域の視点の方でも出てきますが、これがすっきり表現型になっているのがほほーという所で。

『雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は改善している」等の報告があった。雇用者所得は、九州・沖縄から、「概ね横ばい圏内となっている」との報告があった一方、5地域(北海道、関東甲信越、東海、近畿、四国)から、所定外給与や賞与の増加等を背景に、「改善の動きがみられている」、「持ち直しの動きがみられている」等の報告があった。』

こちらも微妙に地域によっては上方修正という所ですな。


・ちなみに消費の部分

『大型小売店販売額をみると、百貨店は、多くの地域から、高額品の販売が堅調となっているなど、「持ち直しの動きが続いている」、「堅調に推移している」等の報告があった。スーパーは、複数の地域から、「概ね下げ止まっている」、「持ち直しの動きがみられている」等の報告があった。』

『乗用車販売は、新型車投入効果や消費税率引き上げ前の駆け込み需要等を背景に、多くの地域から、「増加している」等の報告があった。』

『家電販売は、節電機能に優れた白物家電が堅調であること等を背景に、多くの地域から、「持ち直しつつある」、「底堅い動きとなっている」等の報告があった。』

『旅行関連需要は、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。この間、複数の地域で、外国人観光客が増加しているとの報告があった。』

前半の3つは何か駆け込み需要キタコレという所でして、最後の旅行の所は資産効果と円安効果ですかそうですかという感じの話ですな。


でまあ全体的には前回出た時に「これはまた強いですなあ」という感じでしたが、今回はそらまあ上方修正と横ばいがほぼ半々ですから当然ちゃあ当然ですが、前回出てきたこの要旨部分のいやー来てますなあこれはという印象ほどのキタコレ感は無いですねと思いましたがどうでしょうかね。


・地域の視点で雇用所得情勢の話キタコレですな

毎回その時のテーマでのお題が出てくる『II. 地域の視点』なのですが、前回のさくらレポートでは『各地域における最近の消費行動の特徴と企業の販売・価格面での対応』というのがお題になっていて、今回は『各地域における最近の雇用・賃金動向 ――人手不足感が強まるもとでの企業の対応――』となっておりまして、もうこちらはキタコレ感ががががが。

後半の方から。

『こうした労働需給を反映して、業種や企業規模、地域を越えた人材獲得競争が激化しているほか、様々な雇用ミスマッチも顕在化しており、一部の企業からは必要な人員を確保できないといった声が聞かれるなど、企業の人手不足感が強まっている。特に、賃金や就労条件でミスマッチの大きな業種・職種や、知名度・待遇面で大企業に見劣りする中小企業などでは、人材確保が困難化しており、時間外労働や休日出勤等で凌いでいるとの声が強まっている。また、建設、医療・福祉、小売、製造業等で必要な人材を確保できず、工期の遅延や事業の縮小、新規出店計画の見直し、受注・生産の制限等を余儀なくされるなど、人手不足が事業活動のボトルネックになる事例がみられ始めており、特に東日本大震災の被災地等では顕著となっている。』

『こうした状況下、人手不足感の強い業種を中心に、求職者の実情に合わせて採用要件を緩和・弾力化する動きや、未経験者の資格取得支援などを前提とした育成型採用に転換する動きが広がっている。このほか、非正規労働者の正社員化により現有戦力を一層活用する動きや、就労条件の多様化により従業員の定着促進を図る動きも進みつつある。また、女性、高齢者、外国人の活用を積極化・多様化する動きが広がっている。すなわち、女性については、女性のニーズを意識した営業・研究開発分野などでの活用、管理職への登用が進みつつある。高齢者に関しては、技能継承を企図して定年後も継続雇用する動きが広範化していることに加え、雇用期間の再々延長や退職後の復職雇用を図るなど、労働力としてなお依存せざるを得ない状況もうかがわれる。外国人についても、製造業の増産要員に加え、インバウンド観光対応や海外事業強化などを企図して、戦略的に外国人留学生や現地採用者を活用する動きが広がっている。この間、公的機関や民間企業等では、雇用ミスマッチの改善に向けて、求職者に対する支援の一層の充実を進めている。』

ということで人手不足となという話ですがさて賃金はと言いますと・・・・・・・・

『賃金動向をみると、正社員の定例給与を改定して賃金を引き上げる動きは、現時点では一部にとどまっている。』

まあそうでしょうなあ。

『もっとも、時間外給与については、製造業の生産回復や非製造業の人手不足を補うために増加しているほか、冬季賞与についても、企業業績の改善に伴い増額する動きが地域・業種を問わず広がっている。また、非正規労働者の時給については、建設労働者やシステムエンジニア、小売、宿泊・飲食サービスのパート・アルバイト、製造業の期間従業員等で、労働需給の引き締まりや最低賃金の改定等を背景に上昇しているとの指摘が聞かれている。この間、直接的な給与支給だけでなく、福利厚生の拡充・復活により処遇を改善する動きもみられている。』

所定内給与が上がって頂きたい物でありまする(ポジショントークではありません^^)。


先行き見通しに関しては・・・・・・・・

『先行きの雇用についてみると、経営合理化を進めている製造業や消費増税後の反動減の影響を懸念する企業の一部では採用抑制姿勢をみせているものの、新規出店要員の確保や団塊世代の退職者補充、技能継承の必要もあって、採用を積極化する企業が増加していることから、当面は労働需給の改善傾向が続くとの見方が多い。』

『賃金の引き上げについては、景気回復の持続性や他社の動向を見極めたい、あるいは固定費の増加は回避したいなどとする声が多い一方で、従業員の士気向上や人材確保等を目的に、何らかの形での対応を前向きに検討する動きも広がりつつある。』

頭数は足りないけど払う物は増やしたくないですかそうですかという状況で、もう一息ですな。


なお、要旨の方からチマチマ引用しましたが、特にこの「地域の視点」の所は(今回に限らず)本文の方を見ると非常に面白いというか興味深いので本文の方をご鑑賞してくらはい。


○いつの間にかこんなコーナーが出来ていました

うっかりしていたのですがどうも先週末だか今週の頭からこんなのが。

http://www.boj.or.jp/announcements/annai/genba/index.htm/
現場発の業務紹介
現場発の業務紹介記事を掲載しています。

ということで2つのコーナーがありまして・・・・・・・・・

フォーカスBOJ(Bank of Japan)
広報誌「にちぎん」に掲載している現場発の業務紹介の記事を掲載しています。
http://www.boj.or.jp/announcements/annai/genba/focusboj.htm/

「日銀探訪」
時事通信社「MAIN」に連載されている日本銀行の各課長のインタビュー記事を掲載しています。
http://www.boj.or.jp/announcements/annai/genba/tanbou/index.htm/

ということで、広報誌の方は兎も角として、時事メインに連載されていた記事が日銀の公式ページコンテンツに登場とか日銀的には斬新な気がします。米国だと地区連銀のページで地区連銀総裁がCNBCとかブルームバーグに登場した時の記事リンクが普通に貼ってあったりするのですが日銀でこういうのあまり見なかった希ガス。

なお、「日銀探訪」ですけれども、記事そのものは少々前なので、こちらに出ている各課長さんは当時の課長さんでございますので念の為。


まあ最近はこの手のコーナーが日銀HPのコンテンツに追加されてきますなという所ですが、そもそも日銀って発券とか決済とかの巨大インフラを支えている訳でして、金融政策の話よりもそっちの方が世の中的には重要だし止まったらクリティカルにも程がある話でして、日銀ガーの皆様におかれましては日銀が金融政策だけやっている機関ではないというご認識をして頂ければと存じます次第。

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2014/01/10

○生活意識アンケート

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1401.pdf

今回のアンケート結果なのですが、何か微妙に変ちゅうか何ちゅうか。今日は珍しく要旨の方から引用してみる。(ただし図表貼り付けスキルは無いのでビジュアルな部分はPDF先を見てちょということで)

・謎の景況感

本文2ページ(本文ページとPDFファイルのページは一致しています)から。

『景況感のうち、現在(1年前対比)については、「悪くなった」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。先行き(1年後)については、「悪くなる」との回答が増加したことから、景況感D.I.は悪化した。なお、現在の景気水準については、「悪い」と「どちらかと言えば、悪い」との回答の合計が減少し、約4割となった。』

まずのっけからワケワカランチ会長な結果になっているのですが、1年前対比の景況感が前回対比悪化したというのが増えているってのがだいぶ違和感あるのですが、更にアレなのは本文3ページにあります『(図表3)金利水準についての見方〔Q5〕』でして、今回『金利が低すぎる』の回答が増えている所でございます。景況感悪化が増えてるなら金利が低すぎるの回答減るもんじゃネーノという所(実は9月調査でも景況感が前回対比悪化しているのですが、金利の回答は低すぎるが減っていました)でして。


・収入と支出の話

本文5ページから。

『収入の増減については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が増加し、「変わらない」との回答が減少した。先行き(1年後)は、「減る」との回答が増加し、「変わらない」との回答が減少した。一方、支出の増減については、実績(1年前対比)は、「減った」との回答が増加し、「変わらない」との回答が減少した。先行き(1年後)は、「増やす」との回答が増加し、「変えない」との回答が減少した。』

収入減っているのに先行きの支出増やすとはどういう事ですねん?????ということでここも何か良くワカランチ会長。


・物価の話

本文6ページから。注記割愛。

『現在の物価に対する実感(1年前対比)は、『上がった』、『下がった』との回答が減少し、「ほとんど変わらない」との回答が増加した。また、1年前に比べ、物価は何%程度変化したかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.2%(前回:+4.0%)、中央値は+3.0%(前回:+2.5%)となった。』

同様に本文7ページから。

『1年後の物価については、『上がる』との回答が減少し、「ほとんど変わらない」、『下がる』との回答が増加した。また、1年後の物価は現在と比べ何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+4.9%(前回:+4.9%)、中央値は+3.0%(前回:+3.0%)となった。』

短期見通しにおける物価上昇という見込みは増えているものの、数値的に見た場合には変わらないと。

本文8ページから。

『5年後の物価については、『上がる』、『下がる』との回答が増加し、「ほとんど変わらない」との回答が減少した。また、これから5年間で物価は現在と比べ毎年、平均何%程度変化すると思うかについて、具体的な数値による回答を求めたところ、平均値は+3.9%(前回:+4.1%)、中央値は+2.5%(前回:+2.0%)となった。』

中長期見通しですが、上がると下がるが増えて、平均値は下がり中央値が上がるとか中々ややこしい結果になっておりますが、まあ要するに中央値上がっているから物価見通しは上昇していますよねという話ですね。


・デフレはイクナイという宣伝効果が出ているようにも見えるがそもそもサンプルがアレ

本文9ページから。

『1年前と比べて物価が『上がった』と答えた人(6割台後半)に、その感想を聞くと、約8割の人が「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答した。一方、1年前に比べて物価が『下がった』と答えた人(約3%)に、その感想を聞くと、3割台半ばの人が「どちらかと言えば、好ましいことだ」と回答し、3割台前半の人が「どちらかと言えば、困ったことだ」と回答した。』

ということで、物価下落に関して「困ったことだ」という回答が増えているのは結構な話なのでしょうけれども、そもそも論として1年前と比べて物価が下がったという回答をするのがイミフにも程が有るというかお前はどういう日常消費をしているのかと小一時間問い詰めたい所ではあるので、サンプルがちょっとねえという感じではあります。


・これはワロタ

本文12ページの『1-6. 日本銀行に関する認知度、信頼度等』から。

『日本銀行の2つの目的(「物価の安定」、「金融システムの安定」)のうち、「物価の安定」を目的としていることについては、「知っている」との回答が3割台半ばとなった(図表15(1))。』

『日本銀行が、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げていること、および量・質ともに次元の違う金融緩和(「量的・質的金融緩和」)を行っていることについては、それぞれ「知っている」との回答は約3割となった(図表15(2)(3))。』

『日本銀行が、「金融システムの安定」を図ることを目的としていることについては、「知っている」との回答が3割台後半となった(図表16(1))。』

と、記述だけ見てると面白くないのですが、この図表、特に本文13ページの図表15(2)、(3)を見ると前回対比で何故か知らんが物価目標に対する認知度が低下しているという訳のわからん結果になっておりまして、何かこれサンプルバイアスが変な出方してるんじゃネーノとさすがに思ってしまうのでありました。


なお、もう一つワロタのは本文22ページの『((3)日本銀行を信頼していない理由(2つまでの複数回答)〔Q23-c〕』の結果でありまして、日本銀行を信頼しない理由のトップが『中立の立場で政策が行われていると思わないから』という風になったのが昨年6月調査(この項目は半年ごとの質問なのでその前は一昨年の12月調査になります)だったのですが、この項目の回答がますます拡大しておりまして、そらまあプライムミニスターさんが「私の金融緩和」とか言い出しちゃうくらいですからそうなります罠と思いながらも、ここを見るとサンプルに変なバイアスの出方をしているにしてもここの部分はきっちりと回答が出ているという大変に心の温まる結果となっております。


・ちょっと気になった所

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1401.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1310.pdf(前回)

今回の27ページ、前回の15ページにアンケートの標本がありますけれども、もともとこのアンケートはサンプルの中で60歳代の回答が人口対比多目に出ているのですが、今回の結果って前回に比べても60歳代の回答が多いのが影響しているのかもしれないなあとか思ったんですけどどうっすかねえ。

ということで鑑賞会でした。

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2013/12/27

○11月決定会合議事要旨:2年で2%って大丈夫かという委員が明確に3名とな

つまり宮尾さんと佐藤さんと木内さんですねわかりますという所ですが、他の見どころも含めて少々という所ですが。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g131121.pdf

・経済情勢に関しての表現を見ながらつらつらと

まあ別にこれ今回に始まった事じゃないのですが、経済物価情勢に関する政策委員の討議の中で意見が概ね一致している部分とか、意見に幅がある部分とか当然ある訳なのですが、そこをどう表現するのかというのを見ておりますと、今回は「見方を共有」「認識を共有」「見方で一致」「認識で一致」の4つが混在して出てくるのでふーんと思いながら読むのでありました。

#なお、毎回この表現を適宜使っているのですが、何かこう使い分けをしているのがちょっと目に止まったので書いただけなのですけど、ちょっとへーと思っただけですが、この4つの表現の用語はどういうニュアンスの違いを指しているのか早見表でも作って欲しいものです(−−;

でまあ海外の所とかもありますがあまりややこしい議論はなさそうなので国内の方から参ります。『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の議事要旨本文8ページから。

『わが国の景気について、委員は、緩やかに回復しているとの見方を共有した。』

見方を共有とな。

『委員は、家計部門では、雇用・所得環境が改善する中で、個人消費や住宅投資は堅調に推移しており、企業部門でも、収益が増加する中で、設備投資が持ち直しているなど、引き続き、生産から所得、支出へという前向きの循環メカニズムが働いているとの認識で一致した。』

前向きの循環メカニズムという認識では一致なのですね。

『7〜9月の実質GDPについて、多くの委員が、前期比年率4%程度の高成長が続いた本年前半からは減速したものの、内需を中心に景気の前向きな動きが続いていることを示すものであったと述べた。一方、一人の委員は、在庫寄与度の大きさや、雇用者報酬が前期比マイナスとなったことを踏まえると、内容は不芳だったとの見解を示した。また、ある委員は、これは一時的な減速ではなく、成長率の基調が下方シフトしたことの表れではないかと述べた。』

まあ恐らく意見が明確に大きく割れた場合に、このように「こんな意見がある一方でこんな意見がありました」という書き方になるんでしょうなと思いますが、「成長率の基調が下方シフト」ってこら中々厳しめの指摘ですな。

『景気の先行きについて、委員は、生産・所得・支出の好循環が持続するもとで、緩やかな回復を続けていくとの見方で一致した。』

こちらは見方で一致ですかそうですか。


・雇用所得環境について

でまあ需要項目の所の前半は飛ばして雇用所得環境以降をば。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給は緩やかな改善を続けており、雇用者所得にも持ち直しの動きがみられているとの認識を共有した。先行きの雇用者所得について、委員は、経済活動や企業業績の回復がはっきりするにつれて、持ち直しの動きが次第に明確になっていくとの見方で一致した。』

ふむふむ。

『ある委員は、来春の賃上げについて、現時点で経営者の反応は区々だが、企業業績の回復が明確になるにつれて前向きの対応が増加するとの見方を示した。一人の委員は、東京商工会議所の調査などをみると、中小企業でも、収益が改善する中で賃上げに前向きな姿勢を示す先も現れていると指摘した。』

『別のある委員は、「政労使会議」のような仕組みは、経済主体が、合成の誤謬に陥ることなく、安心して賃金や物価を上げられるようにする効果を持つとの見方を示した。』

合成の誤謬云々って一昨日の経団連での総裁講演でも話をしていましたな(^^)。もしかして総裁??

『一方、一人の委員は、大企業で賃上げが実現しても、中小企業への波及は限定的であり、マクロでの影響は限られる可能性があると述べた。ある委員は、人口減少などの構造問題を抱えるもとで、デフレ解消の観測だけで、企業が内需の成長期待を高め、大幅な賃上げに踏み切るとは考えにくいと述べ、従って、賃金の上昇が実現するためには、外需の動向が重要であるとの見方を示した。』

と、前半では威勢の良い話がありましたが、少なくとも2名の委員がそもそもの持続的な雇用者所得の上昇に懐疑的ということですねわかります。

『来年4月の消費税率引き上げについて、一人の委員は、実質賃金にはマイナスに作用するが、それが経済全体にどの程度の影響を及ぼすかは、やや長い目でみた賃金の上昇期待などによっても変わり得ると述べた。この点に関し、ある委員は、家計において消費税率引き上げの影響は以前から相応に織り込まれていること、また、財政や社会保障に関する家計の将来不安を和らげる効果も期待できることなどから、消費へのマイナスの影響はある程度減殺されると指摘した。』

消費増税の影響に関する記述については微妙な意見を並べているだけで全体の認識に関する記述が無いのが気になるちゃあ気になりますな。そらまあやっぱりヤバイですとはここで出せませんけど。


・個人消費について

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境に改善の動きがみられる中で、引き続き底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ほうほうそうですか。

『複数の委員は、GDPベースの7〜9月の実質個人消費の伸びは鈍化したが、10 月の新車登録台数は明確に増加しているほか、百貨店販売も悪天候の影響を考慮すると比較的堅調に推移しているなど、個人消費の底堅さは維持されていると述べた。』

つ駆け込み需要

『先行きの個人消費について、委員は、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとの見方で一致した。』

ほうほう一致ですかそうですか。

『10 月の消費者態度指数が下落したことについて、何人かの委員が、消費税率引き上げの決定が影響している可能性を指摘しつつ、一時的なものかどうか注視する必要があると述べた。』

何人かの委員ですかそうですか。

『この点について、複数の委員は、最近、株価が上昇していること、景気ウォッチャー調査の季節調整値でみると10 月は上昇していることから、消費者マインドが一段と落ち込む可能性は高くないとの見方を示した。』

うーん何かそれは・・・・・・

『また、別のある委員は、雇用・所得環境の改善が進むにつれ、消費者マインドは好転していくとの考えを示した。住宅投資について、委員は、増加しており、先行きも、増加傾向を続けるとの認識で一致した。』

だそうです。


・物価に関して3名が先行きに懐疑的キタコレ

今回のメインイベントは多分こちらです。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっており、先行きも、需給ギャップが縮小し、予想物価上昇率が上昇していくもとで、プラス幅を次第に拡大していくとの認識で一致した。』

『複数の委員が、7〜9月のGDPにおける内需デフレーターが前年比で5年振りにプラスとなったことを指摘し、個人消費をはじめとする内需の底堅さが物価上昇に寄与しているとの認識を示した。また、別の複数の委員は、消費者物価については、エネルギー関連だけでなく、幅広い品目において改善がみられていると述べた。』

とまあここまでは前座でして。

『この間、一人の委員は、需給ギャップの縮小が物価に反映されるまでにある程度の時間がかかり、また、先行きの予想物価上昇率の上昇ペースが緩やかなものとなる可能性を指摘した。』

『ある委員は、世界的なディスインフレ傾向の中で、日本の物価が国内独自の要因で伸び率を高めていくかどうか注視しているとの見方を示した。』

『また、一人の委員は、消費者物価の前年比の上昇ペースは、今後次第に鈍化するとみていると述べた。』

真ん中の方が指摘する世界的なディスインフレは前から指摘されていた件なのですが、物価の先行き上昇基調が目標に向かって進むのかという件についてはこのように3名の政策委員(つーか審議委員)が懐疑的というのがきっちりと示されましたな、というのが多分今回の議事要旨の見どころですな。

『物価と賃金の関係について、ある委員は、予想物価上昇率の上昇を通じて物価が上昇するためには、マクロの雇用者所得よりも一人当たり賃金が上昇することが重要との見方を示した。』

なるほど。

『この点に関して、複数の委員は、パート比率の上昇は、一人当たり賃金の上昇の観点からはマイナスの要因だが、世帯あたりの可処分所得が増加すれば、物価上昇圧力は強まるのではないかと述べた。』

そ、そうなのか????

『予想物価上昇率について、委員は、各種の調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。』

まあこれはいつもの話なので良いとしまして。

『ある委員は、住宅金融支援機構の調査によると、本年入り後、住宅ローン借入に占める変動金利型の比率が低下していることを指摘しつつ、こうした動きは家計の中長期の予想物価上昇率の上昇を示唆している可能性があるとの認識を示した。』

物価が上昇すると金利が上がるという話ってそんなに人口に膾炙しているものなのでしょうか??


・先行きの金融政策についての部分から少々

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』ということで議事要旨本文11ページから。

『先行きの金融政策運営について、大方の委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続すること、その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行うとの認識を共有した。』

というのはまあ良いとしまして。

『このうちの複数の委員は、人々のデフレマインドを払拭するためには、2%の「物価安定の目標」を掲げ、その実現を目指すことが重要である点を改めて強調した。』

気合キタコレ。

『ある委員は、インフレーション・ターゲットという発想の前提には、適正な物価上昇率という考え方があり、多くの国でそれは2%であると述べた。』

何か前回の会合でもそうなのですが、時に微妙に微妙なフレーズが一発必ず入るようになってきているのは何なんでしょうかねえ(すっとぼけ)。

『これらに対し、一人の委員は、中長期の予想物価上昇率は、生産性上昇率など経済のファンダメンタルズで決まる側面が強いため、2年程度でその水準を2%に収斂させて「物価安定の目標」を達成するのは難しいとみられると述べた。』

ということですが、この後の部分を見れば判るのですがこれは木内審議委員の提案につながる話なので、これ自体は木内さんの意見となります。提案内容は毎回同じなので引用割愛。


ちょっと飛びまして予想物価上昇率の上昇メカニズムに関しての部分を鑑賞。

『予想物価上昇率が上昇していくメカニズムについて、複数の委員は、日本銀行が2%の「物価安定の目標」の早期実現を明確に示し、これを裏打ちする大胆な金融緩和を実行することで、人々の期待の転換が促されるという、フォワード・ルッキングなメカニズムと、実質金利の低下による需給ギャップの縮小を通じて、現実の物価が上昇することで、適応的に予想物価上昇率が上昇するというバックワード・ルッキングなメカニズムの双方が働くとの見方を示した。』

つまり気合で引き上げるのと、コストプッシュでも何でもいいからまずは実際に物価が上昇すればマインドセットが変わるんだよというヤケクソの香りもしますがまあそういう話。

『そのうえで、これらの委員は、この二つのメカニズムを通じて、2%の「物価安定の目標」に到達することができると述べた。』

ほうほうそうですかそうですか。

『ある委員は、フォワード・ルッキングなメカニズムについて、景気の持続的な改善が続くとの見通しによって人々の期待の転換が促される点に言及した。』

気合にしても景気が持続しないとダメですよねという話はまあそうですな。

『何人かの委員は、2%の「物価安定の目標」に到達する経路、特に、予想物価上昇率の上昇という点については、市場などの一部に懐疑的な見方もあることから、対外的により丁寧に説明していく必要があると付け加えた。』

市場などの一部の皆さんは信心が足りないとのことですが、はてさてどういう「丁寧な説明」をするのでしょうかという所ですな^^

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2013/12/25

○国債発行計画

キタコレ
http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2014/20131224.htm
平成26年度国債発行計画の策定等を行いました

http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2014/gaiyou131224.pdf
平成26年度国債管理政策の概要

http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2014/yoteigaku131224.pdf
平成26年度国債発行予定額

http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/fy2014/calendar131224.pdf
カレンダーベース市中発行額

でもって平均年限が結構伸びたのですが、カレンダーベース市中発行額を見ると2年と1年を削って超長期と流動性供給を増やしたという格好になっているように見えますが、そもそもこの1年短国の所は3MのFBを削ってチャラにするので、実際はここの3Mが減るのか減らないのかがワカランチ会長(単純に2.5兆円を3Mから振るのだったら13回の入札が1回2000億円減る勘定になるけど、そこは他の資金繰り諸々の問題があるから外から見ていると謎のブラックボックスで、そもそもFB部分は国債発行計画のカレンダーベース市中発行額と別件バウアー)ではありますな、うんうん。


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131224a.htm/
平成26年度中に償還期限の到来する本行保有国債の借換えのための引受け
および平成26年度における国債買入消却への対応に関する件

『平成26年度中に償還期限の到来する本行保有国債(以下「償還期限到来国債」という。)の借換えのための引受け(以下「借換引受け」という。)にかかる取扱いについて、「対政府取引に関する基本要領」(平成11年3月26日決定)2.の規定に基づき、償還期限到来国債のうち、利付国債額面総額11兆1,000億円について、割引短期国債をもって、借換引受けを行うこと。』

『平成26年度中に財政投融資特別会計が国債整理基金特別会計を通じて行う財政投融資特別会計国債の買入消却において、本行保有国債に関し、次のとおり取扱うこと。

(1) 本行保有国債額面総額2,000億円を上限に、現金を対価として買入消却に応じ得る扱いとすること。
(2) (1)の国債買入消却への対応方針に基づき、「平成26年度において財政投融資特別会計が行う買入消却に現金を対価として応じるための国債売却実施要領」を別紙のとおり制定すること。』

ということですが、来年は麿時代の包括緩和(懐かしいね)の名残で日銀保有国債の償還が11月末の日銀保有残高ベースで計算すると額面で25.54兆円ありまして(あと12月に輪番で買う残存1年以内2200億円(うち1100億円はオペ実施済)のうち年内償還物以外の部分が加わります)、これを全部償還乗換すると今年はウハウハですけれども来年になると乗換分の償還が来てあじゃぱーになりますので、まあ償還乗換はほぼ前年並みにして平準化したんですな分かります。

あと、国債整理基金による日銀保有国債買入が2000億円ですがこれは前年度並みですな。

ちなみに本年度はこうなっていました。(本年度分は予算の遅れがあったので1月29日公表)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel130129c.htm/

今年度は償還乗換の再乗換が行われていましたが、来年度は償還乗換の再乗換はやらないということですので、じゃあ再乗換幾らやったのかとか何処の計数見ると判るのかがイマイチ判っていませんが(たぶん営業毎旬と対政府取引の辺りを目を皿のようにして見ると判るような気がしますが)、償還乗換は再乗換を含めやや減るんですかね、良くわかりませんが。

#詳しい人教えてジェネラル


○金融経済月報概要も謎のヘッジクローズ状態

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1312.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1311.pdf(前回)

・現状判断部分は当然ですが声明文と同様

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(前回)

ということで総括判断は同じでして、以下項目別に関しては声明文での表現と同じなのでめんどいからそのまま比較引用。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境が改善するなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は、広がりを伴いつつ改善を続けている。』(今回)

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

変化した点は声明文と同様で、雇用所得環境の判断を前進させたことと、短観を受けた表現の部分で企業の業況感について「広がりを伴いつつ」という威勢の良い文言が入っていることです。


・先行き見通しはやはり微妙なヘッジ文言が入る

『先行きのわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

というのは声明文にもありました通りですが、まあこうやって比較すると今回の表現がだいぶ見苦しくなっているのが良く判りますわという所でして、以下項目別展開は声明文に無いので良く確認しませう。

『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

輸出と海外経済は変わらずと。

『国内需要については、公共投資は、当面増加傾向をたどったあと、高水準で横ばい圏内の動きとなっていくとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)

『国内需要については、公共投資や住宅投資は増加傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

公共投資に関しては「当面」増加傾向をたどったあと高水準で横ばい圏内という何か微妙な説明になっていまして、水準は高いけど前年比の伸びは止まるという事でしょうかよくわかりません><;

設備投資に関しては見通し同じで、住宅投資については次の個人消費の方に移っていますので次。

『個人消費や住宅投資は、振れを伴いつつも、基調的には、雇用・所得環境の改善などに支えられて、底堅く推移するとみられる。』(今回)
『個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。』(前回)

基本的に文章が長くなっている時というのは碌なもんじゃないのですが、今回はご覧のように「振れを伴いつつ」という消費税増税を意識したんですかねえという部分があり、さらに「基調的には」というヘッジクローズも入るという書き方になっています。

あと気になったのは今回は「雇用・所得環境の改善など」と謎の「など」が入っている事でして、これは何ですねんという所で駆け込み需要の事でも言いたいのですかよくわかりません(本文読んでもイマイチ判らなかった)。

『こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加基調をたどると考えられる。』(今回)
『こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(前回)

生産に関しても増加「基調」とここでヘッジクローズ文言が入るという有様でして、いやまあ消費税増税の影響について書いてみましたという事なのかもしれませんが、この次にネタにする総裁会見でございますが、会見の方では総裁様におかれましてはQQEはもうウハウハで物価安定目標に向けて順風満帆ですわウェーハッハッハという威勢の良い話を連発しているようにしか見えないので、このやたら「当面」「基調」「など」とかのヘッジクローズが目立つ概要が出てくるのが全くもってイメージに合わないので違和感がががががという所でありまする。


・不確実性に関する部分は同じ

これは声明文と同様。

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)


・物価に関する謎部分は謎のまま+さらに謎

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きなどを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

声明文では消費者物価の事しか書いていないので国内企業物価に関してはこちらで読めるのですが、ここでも国内企業物価に関して謎の「など」というのが入っていますがこれは何でしょうか消費税増税に向けた値上げとかを意味しているのでしょうか??

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、プラス幅を拡大するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇幅が縮小するとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(前回)

ということで国内企業物価の見通しは強くなっていまして、消費者物価の「当面」はこちらにも入っていますが、本文読んでもこのまんましか書いていないので結局この「当面」とは何ぞねというのは謎のままです。

なお、ここに該当する話で昨日声明文英文比較をしたのをご紹介しましたが、ドメドメのアタクシは「is likely to rise for the time being」と「is likely to rise gradually」のニュアンス差がワカランチ会長だったので詳しそうな人をとっ捕まえて聞いたら、前者(12月声明文)の方が上昇するというニュアンスが弱くなっていて、これ「当面」で示される時間の概念というよりは上昇角度の概念じゃネーノという説明を賜りましたが、アタクシが聞いた人による説明につきそれが本当に本当かの保証は致しかねますので念のため申し添えます(アタクシの備忘で書いておきますです、はい)。


・金融環境では企業の資金繰りの部分が判断前進キタコレ!

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

から先のファイナンシャルコンディションに関しては、基本的に現状に関するデータを基にした説明になっているので、前回比の変化と言ってもそれは数値とかで出ている話なので基本はスルーなのですが、今回はおーという変化がががが。

『企業の資金繰りは、改善した状態にある。』(今回)
『企業の資金繰りは、総じてみれば、改善した状態にある。』(前回)

ということで、キタコレという話ですが、まあこれは短観の資金繰り判断DIの変化なんかを受けてやっと言い切り型にしましたねという所です。

ただまあ全体的なトーンを見ますと、前半の経済物価に関する部分で色々とヘッジ文言が入っていて、なぜこのタイミングでヒョコヒョコとヘッジクローズが入ったのよという謎展開な月報(ただし概要)でございましたという所です。

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2013/12/24

○金融政策決定会合は声明文に謎変化

つーことで金融政策決定会合声明文。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131220a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131121a.pdf(前回)

決定内容は同じなのでスルーしまして経済物価情勢に関する部分から参ります。

・現状判断がやたら強くなっています

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(前回)

という総括判断は同じ。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。』(今回)

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。』(前回)

と、ここまでは同じです。強くなっているのはこの先。

『個人消費は、雇用・所得環境が改善するなかで、引き続き底堅く推移している。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。』(前回)

個人消費自体の判断は同じなのですが、雇用・所得環境の部分の記述が強くなっていますな。

『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は、広がりを伴いつつ改善を続けている。』(今回)
『以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

業況感の所は短観の時に出てくる物なので比較しませんが、まあ「広がりを伴いつつ」という時点でつええわなという所で。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

これは同じ。

『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

もうね、ここがキターーーーーー(・∀・)ーーーーーーーーーー!!な訳でございまして、コアCPIが一度目の+0.9%の時には「0%台後半」という表現だった訳でして、直近のコアCPIの動きと、まあ目先も強めに推移しそうな状態というのを受けて堂々の「1%程度」攻撃でありまして、これはどう見ても日銀ウハウハモードという事でございますな。


・先行き見通しには妙にヘッジが入る

という事で、まあ声明文を最初から順に読みますとこの項番3の所で日銀勝利モードキタコレ状態の風情を感じてウヒョーと思うのですが、その次の項番4になると急にヘッジ入りになるのがワケワカメ。

『先行きのわが国経済については、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、当面、プラス幅を拡大するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(前回)

見れば分かりますように、前回のスッキリ表現からヘッジクローズのコテコテ入った美しくない表現になっております。つまり「消費税率引き上げ〜」というのは見れば直ぐに分かりますが、そのほかにも「基調的には」だの「当面」だのヘッジクローズが入る(しかも「次第に」という拡大方向の表現が抜ける)という流れになっていて、手前の勝利宣言待ったなし(とまで言いますと大袈裟ですが)と言うような流れに対してこのヘッジクローズ満載は何なんでしょという感じです。

しかも何かこのタイミングで急に「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動」といういまさら何を仰る兎さんな表現が入るとか、今まで自信満々だったものの先行きに不安感を持ったんですかねえとか思いたくもなるのですが、それにしては手前がやたら威勢が良いとなっているとかバランスを取った積りなのか誰かに配慮したのかというのが謎でございますにゃ。まあ一つの仮定として考えられるのは手前の物価に関する表現あたりを更に自信満々の強い物にしたので、そうは言っても2年で2%行くかよという懐疑派の審議委員が4人ほどおいでですので、そちらの皆さんへの気を使ったんでしょうかねえなどと仮定(というか邪推)してみますけど正直良く判らん。

こういう時には英文を見るのも吉。

『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to continue a moderate recovery as a trend, while it will be affected by the front-loaded increase and subsequent decline in demand prior to and after the consumption tax hike. The year-on-year rate of increase in the CPI is likely to rise for the time being.』(今回)

『With regard to the outlook, Japan's economy is expected to continue a moderate recovery. The year-on-year rate of increase in the CPI is likely to rise gradually.』(前回)

英文見ると更に分かりやすいのですが、「as a trend」だの「for the time being」だの何かまあ弱い表現になっていまして、英文で見た方が先行き見通し部分が随分弱くなったねえというのが更に分かりやすい(そもそも2文しかなくて2行だったのが分量倍になっているという時点で見苦しくなっています罠)のですが、はてさてこの英文部分の変化を受けて「日銀が先行きの経済物価情勢の自信がなくなってきている」→「追加緩和待ったなし」という話が出てくるかどうかがお楽しみというのは細かすぎですかそうですか。


・リスク要因とか先行きの所は同じ

項番5と6は前回と全文一致ですので今回分だけ引用。

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。』(今回)

なお(注)は例によって例の如くの木内審議委員の「物価安定目標は中長期的に目指す」という提案で残り全員が反対して否決されるという部分です。

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

しかしまあ何ですな、この前どこぞのヴェリタスだか何だかで2年の文言が消えたとかいうネタの蒸し返しをしておりましたが、あーたQQEローンチしてほぼ9か月経過しているんだからそら2年を入れっぱなしにせんじゃろ常識的に考えてと思うのですが、とりあえずきさらぎ会の講演テキストを100回音読される事をオヌヌメしたいと思います。

『このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

つーことで、今回の金融政策決定会合は無風は無風なのですが、声明文で「現状判断を益々強気にしているのに先行き見通しに妙にヘッジクロースが入りまくる」という謎の変化を示しておりまして、別にどっちもヨコで良かったと思うのにどうしたんでしょというのが不可思議な声明文という所ではございました。会見要旨は今日出ると思いますので金融経済月報と合わせて鑑賞という事で。

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2013/12/18

・株式売却の延期ですかそうですか

金融機関から購入した株式の件は元々が通常の政策委員会での決定で、大引け直前にその話が出て大騒ぎになったという事案がありましたなあ(遠い目)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131217a.pdf
2013年12月17日
日本銀行が金融機関から買入れた株式の売却延期について

『日本銀行は、本日開催した政策委員会において、「株式買入等基本要領」の一部改正等について別紙のとおり決定しました。』

へえへえさいだっか。

『日本銀行が金融機関から買入れた株式については、2014年3月末までは原則として売却を行わない扱いとしてきました。今回の決定では、内外金融資本市場の動向等を踏まえ、その期限を2年間延長し、2016年3月末とすることとしました。あわせて、従来と同じ売却期間を確保する観点から、売却を完了する期限についても、2019年9月末から、2021年9月末まで2年間延長することとしました。』

ほうほうそうですかいい感じで株式市場上昇してますけどねえ。いやあのETF買入と矛盾するから延長と言うのでしたら判るのですが、この「内外金融資本市場の動向等」というのを見ると昔むかしその昔に国鉄清算事業団が汐留の土地の売却を不動産価格高騰を煽るとか言って延期しているうちに不動産市場があじゃぱーとなった事案が頭に浮かぶのはジジイですかそうですか。

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2013/12/17

○短観である

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1312.pdf

・前回の先行き予測DIの達成状況

         (9月時点)     (12月時点)
         現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業   +12→+11    +16→+14 
製造業中堅企業   0→+2       +6→+3        
製造業中小企業  ▲9→▲5       +1→▲1

非製造業大企業   +14→+14   +20→+17
非製造業中堅企業  +8→+7     +11→+10
非製造業中小企業  ▲1→▲2      +4→+1

何と9月に引き続きで達成状況という意味では全セクターに渡って9月時点での見通しを上振れて推移するわ、全セクターの現状判断DIがプラスに転換するわと引き続きの強い結果となりまして、先行き見通しは下がっていますなというのはありますけど、9月の時も概ね同様の傾向がありまして先行きの改善はあまり見ていなかったという図になっておりますので、ベース水準が上昇したからそらまあ先行き見通しは足元対比下がる罠と。

まあしかし何ですな、今回の3月予測の数値をみると全てのセクターにおいて3月予測の数値が9月時点の現状判断、先行き判断DIよりも上な訳ですから、まあ若干頭打ち感はあるかも知れんが水準自体悪くなる雰囲気じゃないですな。


・雇用判断DI

          (9月時点)      (12月時点)
          現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  +4→+4       +3→+3
製造業中堅企業 +4→+3       +0→+1
製造業中小企業 +6→+2       +0→▲2

非製造業大企業   ▲7→▲9      ▲11→▲11
非製造業中堅企業  ▲11→▲14    ▲13→▲14
非製造業中小企業  ▲13→▲16    ▲19→▲21

毎度の事なのですが業況感の改善ほど改善していないですな。前回の予測対比で見た場合に状況改善しているとは言うもののこんなもんですかねえ・・・・・・・・


・想定為替レート

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2011年度全体(上期)(下期) 2012年度全体(上期)(下期)

2012年12月調査   −     −   −    78.90   79.09  78.73

(円/ドル)   2012年度全体(上期)(下期) 2013年度全体(上期)(下期)
2013年3月調査   80.56   79.15  81.94   85.22   85.10  85.33
2013年6月調査   82.21   79.25  85.11   91.20   91.25  91.16
2013年9月調査    −    −    −    94.45   94.77  94.14
2013年12月調査   −    −     −    96.78   97.60  95.97

古いのは12月の以外割愛してみましたが、まあこんなもんですかそうですか。


・価格判断DI

9月短観からしらっと投下された物件ですが、『2.需給・在庫・価格判断』にございますな。

販売価格判断(「上昇」-「下落」)

        (9月時点)         (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業  ▲2→▲3        ▲4→▲3
製造業中小企業 ▲10→▲6       ▲7→▲5

非製造業大企業  +1→+2      +1→+3
非製造業中小企業 ▲7→▲4      ▲5→▲2


仕入価格判断(「上昇」-「下落」)

         (9月時点)         (12月時点)
         現状→12月予測      現状→3月予測
製造業大企業  +22→+22       +21→+20
製造業中小企業 +36→+45       +37→+44


・・・・・・・・・えーっとですな、こういうのをコストプッシュというのではないでしょうかと思うのですけれども、まあアンケートなので基本的にこの辺は仕入の方は実際よりも高めの数字が出て販売の方は実際よりも低めの数字が出てくるだろうなあ(答える人たちの心理を考えると)と思われますので実際にここまでなのかというのは???ではある(だったら業況判断がそこまで上がるか??と思う訳で)のですが、ただまあ販売価格判断DIが前回の予測指数程の改善を示していないのは頭打ち感が漂う気がするのは気のせいですかそうですか。


・金融商品取引業の業況判断DIェ・・・・・・・

毎度お馴染み金融商品取引業業況判断DIですが。

          (9月時点)       (12月時点)
         現状→12月予測     現状→3月予測
金融商品取引業 +39→+50     +68→+64

前回は企業規模別産業別計数で前回対比最大のDI悪化(28悪化)を示した金融商品取引業ですが、今回はまた華麗に上昇とかワロスワロスなのですが、何かのフラグにしか見えないのは実は6月短観の時もDIが現状判断+67で先行き見通しDIが+60と、まるで今回と同じような水準になっていることでございまして、このジンクスが再発すると3月短観では全業種中最悪の落ち込みを金融商品取引業が華麗に示すのではないかとか変なフラグに気が付いてしまいましたorzorz


・資金繰り判断DI

そういや資金繰り判断DIで前回までDIマイナスだった中小企業が遂にプラス転換しましたというのは(;∀;)イイハナシダナーなのでしょうかね。


なお、一応真面目な話もしますと、設備投資計画は下方修正になっているけれども、これはいつもの仕様でして、グラフの方(貼れないので本チャンを見てちょ)を見ますとまあ無茶苦茶良いという程では無いですが、別に悪い数字でも無く巡航速度で推移という感じに見えますな。どうも価格判断の所が怪しげなのですが、別に悲観する数字でもないでしょという所ですよね。

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2013/12/11

さてさて、何か知らんが今朝のモーサテによりますと来週のMPMで追加緩和を示す発言が出るかどうか注目しているという為替市場の方がおいでのようですが、一般論でよろしければ何ぼでも出ると思いますが、ここもと審議委員の皆様が色々と話していましたが、ここにきて執行部方面からは威勢の良いメッセージが出ているという流れになっているように思えますので、まあその辺りを見ながら雑談モードでございますわよ奥様。


○それにしても日銀がノリノリである

日銀のトップページ
http://www.boj.or.jp/

・・・・・・・・・・えーっとですね、あたくし気が付いたのが昨日の昼過ぎなのですが、毎日(除く週末)だいたい欠かさずにこのページを見ている変人のあたくしこちらを見て「???」な違和感を受けてふと見ると上段に赤い枠が二つ。うち左の方は前からある震災関連情報のコーナーなのですが、いつの間にか(というか多分昨日の昼だと思うのですが)その右に『2%の「物価安定の目標」と「量的・質的金融緩和」』という謎のリンクが発生しております。

ということで早速見に行くアタクシ。

http://www.boj.or.jp/mopo/outline/qqe.htm/
2%の「物価安定の目標」と「量的・質的金融緩和」

ということで、『2%の「物価安定の目標」』というのと『「量的・質的金融緩和」 』という小見出しのコーナーがあって何か説明を展開しております。

んでもってふーんと思ったのは後半の「量的・質的金融緩和」の説明部分で『(4)「量的・質的金融緩和」の継続』というのを明記している部分でして、まあもとより建付け上資産買入はオープンエンド状態になっているのですが、一応その部分を明記したのねという所。

『(4)「量的・質的金融緩和」の継続

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』

とありますように、QQE実施時の声明文をそのまま書いているだけではあるのですけど。

なお、ご丁寧に英文のページもあります(当然だが)。

http://www.boj.or.jp/en/mopo/outline/qqe.htm/
"Price Stability Target" of 2 Percent and "Quantitative and Qualitative Monetary Easing"

・・・・・・・・まあ何ですな。ここにきてこんなページが新設されるというのは、追加緩和ガーとかいう外野が喧しいから説明文入れるかというのもあるでしょうが、それよりも足元で物価水準がコアCPIで1%近くになってきて来年1Qでは1%乗せも見えて来ているという状況になり、QQEローンチ当初は雲をつかむような話だった本件も(ただの円安や燃料費コストプッシュ要因のような気もだいぶしますが)数字の上では順調に進んでいる(ように見える)という状況になり、日銀の中の人がノリノリになって出してきましたねえという印象を受けるのは気のせいですかそうですか。

しかも昨日ネタにした黒田総裁講演にもありますように、最近はすっかりもう日銀様におかれましては「マンデートでやれと言われてるんだからやるんだよ」「フィリップスカーブを気合で上げるんだよ」「そのためには良い物価上昇でも悪い物価上昇でも何でもいいから現実の物価が上昇するのが大事なんだよ」という大変にノリノリの気合モードになっておられるようにしか見えませんので、その気合モードの一貫でこのようなページがQQE突っ込んでから半年経過という妙なタイミングで新設されるという事であると勝手に解釈致しましたが如何でしょうかねえ(ニヤニヤ)。

・・・・・・・・てな訳で、どう見ても日銀ノリノリであるという状況なのに、消費税増税で景気が落ち込んであばばばばーになるでしょうとかそういう話が出て予防的追加緩和ガーとかいう話になると思う方が無理があると思うのですがねえ。

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2013/11/27

本日は展望レポート公表となった回の決定会合議事要旨ネタの他に木内さんの講演もあったのですが、議事要旨ネタをいじっていたら時間が無くなってしまうという時間配分の失敗によりまして議事要旨ネタだけとなってしまいましたすいませんすいません。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g131031.pdf

反対3票の辺りを中心に拝読する訳ですが・・・・・・・・・

最初の方から延々と流しまして『V.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要』の後半になります『2.経済・物価情勢の展望』から鑑賞開始である。


○景気対策の効果

『経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、委員は、@内需が堅調さを維持する中で、外需も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続する、Aこのため、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けるとの見方を共有した。そのうえで、委員は、7月の中間評価時点と比べると、成長率は概ね不変であるとの見解で一致した。』

ということで年別の展開が以下書かれていますが、まあその内容自体は展望レポートで記述されている話なので割愛するとしましてその先。

『複数の委員は、海外経済見通しの下振れなどは、経済成長率見通しを押し下げる要因となるが、政府による経済政策パッケージの効果を含めた内需の押し上げによって、全体としては横ばいないしは幾分上振れするとの見方を示した。』

としらっと記載されていますが、結局のところ経済対策パッケージがなかりせば下振れしていたんですねわかります、というのは会見などでツッコミを結構受けていて答えがムニャムニャとなっている部分ですがまあこういうことですな。


○中長期的な期待インフレに関して

『消費税率引き上げの直接的な影響を除いて物価情勢の先行きを展望すると、大方の委員は、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを反映して上昇傾向を辿り、見通し期間の後半にかけて、「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとの見方を示した。』

『一人の委員は、物価が見通し通りに上昇するには、賃金、特に恒常的な所定内給与が上昇することが、@個人消費をより下支えするとともに、A中長期的な予想物価上昇率を上昇させるうえで、非常に重要であると指摘した。』

『消費税率の引き上げ前後の時期の物価動向について、ある委員は、短観における中小企業の販売価格DIが依然としてマイナスであると指摘し、中小企業による税率上昇分の転嫁が順調に進むかどうか注視していく必要があると述べた。』

というのはまあ良いとしまして。

『中長期的な予想物価上昇率について、大方の委員は、「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向を辿り、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくとの見方を共有した。』

大方ですねわかります。

『ある委員は、マネーストックが着実に増加しており、これがラグを伴って実際の物価上昇率を引き上げ、さらに予想物価上昇率も引き上げるとの見方を示した。』

師匠キターーーーーー(・∀・)ーーーーーー!!

・・・・是非その辺の定量的な分析についてのご発表を金融経済懇談会でお願いしたいのですが(棒読み)。

『一方で、一人の委員は、2%に向かって予想物価上昇率が上昇することは不確実性が高いと指摘し、見通しが下振れた場合、日本銀行の見通しや金融政策に対する信認を毀損する惧れが大きいと述べた。』

『また、別のある委員は、足もとまでの予想物価上昇率の推移を踏まえると、「物価安定の目標」である2%に向かって予想物価上昇率が上昇し、収斂していくのは難しいとの見方を示した。』

えーっとこれはもっと露骨に言うと現在執行部が説明している「需給ギャップがゼロの状態で物価が安定して2%になるという状態のフィリップスカーブ」という物価安定目標2%の姿について、1名の委員はそら相当怪しいのではないかという意見ですし、もう一人は既にどう見ても無理ですぞなという身も蓋も無い見解を述べておられますな。

『この間、一人の委員は、今後、米国の金融緩和縮小によって日米の金融政策のスタンスの違いが明確に認識されれば、為替の円安傾向や株価上昇などが起き、これらを通じた予想物価上昇率の上昇・実質金利の低下によって、実体経済の好循環がさらに強まる可能性が高いとの見方を示した。』

・・・・・・・となると良いのですが、もとよりその姿勢であるECBに続いて米国が「金利で勝負」という姿勢を明確にした場合、何故か突然量じゃなくて金利に注目して為替市場が円高に反応して量で勝負している梯子を盛大に外されるに1万ドラクマとかそういう話にならないことを心から祈念申し上げます(棒)。

しかしもう円安株高で予想物価上昇率の上昇とか、それは所得と生産の前向きの循環メカニズムと違いますがなただの輸入インフレと資産効果狙いじゃないですか普通に格差拡大ですなあなどという無粋なツッコミをしてはいけません。何でも良いので先ずは現実の物価が上昇する事によって人々の物価観を変える事によってフィリップスカーブを上方シフトさせるんですよ!!!!!ということでまあ兎に角ヤケクソで良いから現実の物価が上がってちょというのがこの一人の委員の発言から垣間見えると存じますので、そういう点からすると消費税増税の価格転嫁でインフレ期待上がらないかなあと思っている訳で・・・・・・・


少々ワープして「上振れ・下振れ」の部分で経済の方はまあさておき物価に関する部分で予想物価上昇率の話がまたまた出てきます。

『中長期的な予想物価上昇率について、多くの委員は、過去にみられた物価や賃金の緩やかな下落を反映してなかなか高まらない可能性がある一方、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく過程で、予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もあるとの見方を示した。』

もうちょっと露骨に言いますと・・・・・・・・・

『さらに、委員は、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要があるとの認識で一致した。』

でまあこの部分なんですけれども、良く良く考えてみますと今の政策委員会メンバーの方々って一番若い宮尾さん(その辺の世代が4人なのですが)でも第一次石油ショックの時に小学生とかで実は物価上昇時代を知っている世代でして、この「現実の物価が上がると物価観って変わるんじゃネーノ」という件については思いっきり世代による感覚差があるだろうなあと思うのでした。

でまあそこは兎も角として、昨日ネタにした黒田総裁の会見でも申し上げましたが、最近はこの物価上昇によるバックワードルッキング的な期待インフレ率上昇に関連して、いわゆる悪い物価上昇と良い物価上昇という論点を華麗にスルーするようになっていますね、うんうん。


『一人の委員は、所定内給与が上昇してくれば、人々が物価や賃金の上昇を前提に行動する傾向が強まるため、中長期的な予想物価上昇率が上がりやすくなるとの見方を示した。』

所定内給与・・・・・・・orz

『別のある委員は、実際の物価上昇に伴うインフレ予想の上昇に加えて、景気が持続的に改善するとの見通しが拡がることなどを通じて、フォワード・ルッキングな予想形成の力がどの程度強まっていくかに注目していると述べた。』

景気が持続的に改善の見通しとな!!

『この間、一人の委員は、足もとの中長期的な予想物価上昇率の上昇ペースは緩慢ないしは横ばい圏内であり、下振れリスクは大きいと指摘した。』

さっき難しいとか言ってた人ですねわかります。


○物価そのもののリスク認識まとめ部分も味わいが

ちょっと飛ばしましてその続き。

『これらの議論を受けて、何人かの委員は、自身の経済・物価に関するリスク認識は、全体として下方に厚いと述べた。もっとも、多くの委員は、見通し分布チャートが示す通り、委員全体のリスク分布は、上下にバランスしており、展望レポートの記述としては、委員の全体としての判断を示すべきであるとの見方を示した。』

下方に厚いのが何人かいるのに「全体のリスク分布は上下にバランス」とはこれは不思議ですねえ(棒読み)。

『こうした経済・物価見通しに対する上振れ・下振れ要因に関する議論を経て、委員は、特に海外経済や中長期的な予想物価上昇率の動向を巡る不確実性は大きく、これらがわが国の景気・物価に与える影響について、引き続き注意が必要であるとの認識を共有した。』

という割には展望レポートでの記述では強気の自信満々にしか見えないのはどういう認識共有なのでしょうか。



○第2の柱の点検で財政の指摘

これは重要な論点なので引用しておきます。ということで第1、第2の柱の点検部分から。

『委員は、現時点では、資産市場や金融機関行動において過度な期待の強気化を示す動きは観察されないものの、政府債務残高が累増する中で、金融機関の国債保有残高は引き続き高水準である点には留意する必要があることを改めて確認した。』

まあ実際は財政健全化に向けた取り組みが必要とかもあったのでしょうがそこは丸めているのでしょうかね。


○展望レポートの記述を変更とな????

後の方で白井委員が提案したと書いてあるので白井さんの見解であることが分かるのですが、最後に白井さんの謎提案。

『この間、一人の委員は、「2本の柱」による点検とは何かということを対外的に丁寧に説明する必要性を指摘し、「基本的見解」の冒頭で展望レポート全体の構成について記述するべきであると述べた。』

んーっとですね、まあ確かにこれ最初出た時にアタクシも勘違いしてた位の案件でございますが、不肖このアタクシがこのようなブツを以前書いておりますので白井さんにおかれましては是非ご鑑賞ありたいと思ったのですが良く考えたら過去ログ見られてケチョンケチョンに書いているのが見つかるのでやっぱりいいです見ないで下さい(^^)。
http://www.h5.dion.ne.jp/~bond7743/seisakudainino.html
金融政策の枠組みの「第1の柱」「第2の柱」とは何ぞやというお話(特集ページ)

なお読めば分かりますが書いたの6年前だわナツカシス。


○でまあ途中を飛ばして3名の反対提案を拝読の巻

先行きの金融政策運営に関する討議の部分というのも鑑賞箇所なのですが、まあ今回の場合は展望レポートの反対提案部分を読むとその辺の論点が指摘されているという理由で手抜きしてそのコーナーをスルーしまして。

『2.「経済・物価情勢の展望」の決定』の部分から。

・白井さん

『これに対し、白井委員からは、@分かりやすさ向上の観点から、「基本的見解」の冒頭に「今回の展望レポートでは、まず、わが国の経済・物価の先行き1年から3年の中心的な見通しについて示し、次いで、そうした中心的な見通しに対する上振れ、下振れ要因を指摘する。最後に、その見通しについて、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているかという観点による点検(第1の柱)、および、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクの点検(第2の柱)を行い、先行きの金融政策の考え方を整理する。」との段落を挿入する、』

はあそうですかとしか申し上げようがないので論評不能。

『A経済情勢の上振れ・下振れ要因について、海外経済の動向と家計の雇用・所得動向等の不確実性が大きいことから、また、物価情勢の上振れ・下振れ要因について、中長期的な予想物価上昇率の動向とマクロ的な需給バランスに対する物価の感応度等の不確実性が大きいことから、それぞれ「下振れリスクを意識する必要がある」ことを記述する、』

『B金融政策運営について、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた「道筋を順調にたどっている」から「道筋を緩やかにたどっている」に変更することを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

最初の謎提案は兎も角としまして、白井さんの骨子は「経済に対する下振れリスクの強調」と「2%物価目標ってそんなに順調じゃねえだろ」という部分になりますな。


・佐藤さん

『佐藤委員からは、@見通し期間後半にかけての物価見通しについて「2%程度に達する可能性が高い」から「2%程度を見通せるようになる」に変更する、A中心的な見通しについて「2%程度の物価上昇率が実現し」から「2%程度の物価上昇率を目指し」に変更する、B物価見通しのリスクについて「上下に概ねバランスしている」から「下方にやや厚い」に変更する、を内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

佐藤さんの骨子は物価にフォーカスしていて、展望レポートで示されている分布からしてまあ佐藤さんの見通しが下の方にあるんでしょうなあと想像がつきますが、「物価見通しが弱め+下方リスクの指摘(強調ではない)」という所になっているようですな。


・木内さん

『木内委員からは、@予想物価上昇率の見通しについて「「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していく」から「実際の物価上昇率の高まりもあって緩やかな上昇傾向をたどると考えられる」に変更する、』

木内さんの場合は「物価見通し」だけではなくて「予想物価上昇率の見通し」の方にも反対提案で、2%の予想物価上昇率達成に向けて時間がかかるでしょという指摘ですな。

『A見通し期間後半にかけての物価見通しについて「「物価安定の目標」である2%程度に達する可能性が高いとみている」から「上昇幅を緩やかに拡大させていくことが見込まれる」に変更する、』

物価見通しが弱いのは佐藤さんと同じですが、そもそも2%を見通せるとも書かないとはそらかなり厳しめのお話。

『B先行きの金融政策運営について「2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う」から「中長期的に2%の「物価安定の目標」の実現を目指す。そのうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付け、その後柔軟に見直すこととする」に変更する、などを内容とする議案が提出され、採決に付された。採決の結果、反対多数で否決された。』

でまあ3番の提案は今に始まった事では無いのですが、異次元緩和の資産絶賛買入は長期化させると弊害の方がでかいので一旦2年で切ってという話なのですが、この木内さんの提案の弱い部分は「中長期的に目指すんだったら結局2年後にも何らかの緩和政策を実施しないといけない筈だが逸れに関するグランドデザインはどうなっているの」というのが無い点かなと思うのです。

そらまあ2年先とかの話なんぞ知らんがなという所ではあるのですが、そうなると何で2年間はこの盛大な買入を継続せにゃならんのよという話にもなって、中長期的にやるならもっとゆっくりやれば良いじゃんというような提案内容でもとは思いますが、ただまあそれをすると現在の気合でフィリップスカーブを上方シフトさせるとか、デフレはそれが長期化することによって脱却が困難になるという説明と背馳するロジックになるのでまあ難しいでしょうな。


○せめて展望レポートの経済物価部分の記述くらいは提案一致できませんかね

ということで3名とも提案ポイントが微妙に違う上に、議案として出ているのは@から番号振っているように全部まとめて一つの提案になりますので、この形だと各人がオールオアナッシングの形で突撃する事になって、執行部が構築しているトーチカに対して個別撃破されるという旅順203高地絶賛突撃状態になっている訳ですな。

この前の講演で示されましたように宮尾審議委員も下振れ強調で潜在的には4名反対となってもおかしくは無いのですが、惜しい事に反対票は揃ってもその後の議案が個別提出個別撃破となると実際問題としてはそんなに執行部に対するプレッシャーにならんのではないかと存じますので、宮尾さんの講演を見て夢の展望レポート書き直しで決定会合徹夜で執行部悶絶事務方ヒャッハー(なお来年4月30日は惜しくも翌日土曜でも祝日でもありませんので念の為)という話になるのかというとこれがまたそうでも無さそうな気がするのが惜しい所です。

んな訳で次回の展望レポートの際には是非経済物価部分の記述くらいは反対提案の票決が一致すると吉(なのか凶なのかは知りませんが^^)っつーかまあそうじゃないと執行部へのプレッシャーにならんでしょと申し上げておきますが、念のため申し上げますと野次馬根性で面白がってゆうとる訳では全くございませんのでよろしくご理解ご賢察賜りますようお願い申し上げます(棒)。

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2013/11/26

○金融経済月報から:見事なまでに無風である

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1311.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1310.pdf(前回)

・現状認識

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(前回)

現状認識部分は基本声明文どおりですけどね。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は、改善を続けている。』(前回)

ということで、海外経済の部分が「半歩前進」となっている以外は同じなのは声明文と一緒です。


・先行き見通し

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

というのは声明文でも前回対比変わらずでしたが、では項目別展開に関してはどうよというのは声明文に無いのでこちらはチェックじゃ。

『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

ほう。

『国内需要については、公共投資や住宅投資は増加傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(今回)
『国内需要については、公共投資や住宅投資は増加傾向を続けるとみられる。設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。』(前回)

ほほう。

『個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(今回)
『個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(前回)

どう見ても全文一致です本当にありがとうございました。ということで見事な無風ですなこりゃ。


・リスク認識

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

こらまた声明文と同様であっさり味の全文一致モード。


・物価に関して

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

現状についてはそらまあ大本営発表するのも限界がありますのでそんなにバイアスは無いのですけれども、まあCPIの前年対比伸び率の数値がヨコだったせいもあって要因含めて見事に同じなのですが予想物価上昇率に関しては物国17回のBEIェ・・・・・・・と思うのですが良い子の皆さんはゴリゴリとツッコんだりしてはいけません(−−;

でまあ物価の現状に関しては声明文での記載がありますので良いとしまして先行きですが・・・・・・

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、国際商品市況の動きを反映して、当面、上昇幅が縮小するとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、緩やかな上昇を続けるとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(前回)

先行きに関しては国内企業物価に関してちょっと見通しを下げましたな、といっても「上昇幅が縮小」なのでそんなに目くじら立てる話でも無さそうではあります。なお声明文には企業物価に関する先行き見通しの記載がありませんが、これは別に今に始まった事では無くて大昔(麿総裁時代でも同様)からそういう仕様なので特段の意図はございません(筈です)ので念の為。


・金融環境の細かいところは引用だけしておきます

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回)
『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(前回)

とまあこちらの表現も同じでして、あとまあ細かい所に関しては今回もまた現状について淡々と説明しているだけで特段政策的にどうのこうの的な示唆はありませんが今回分の引用だけしておきます。

『マネタリーベースは、日本銀行による資産買入れが進捗するなか、大幅に増加しており、前年比は4割台半ばの伸びとなっている。』(以下ここから先は全て今回分のみの引用)

『企業の資金調達コストは低水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。』

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、プラスとなっている。企業の資金繰りは、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、4%程度の伸びとなっている。』

『金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利は横ばい圏内の動きとなっている。前月と比べ、株価は上昇している一方、円の対ドル相場は下落している。この間、長期金利は前月と概ね同じ水準となっている。』

ということで、まあものの見事に無風という結果でございましたが無風というのも記録しておかないと忘れてしまうので引用しましたがただの増量企画ではないかと言われるとぐうの音も出ませんのでツッコミは謹んで却下させていただきとう存じます(^^)。

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2013/11/22

○決定会合レビュー:声明文では海外経済の現状認識を若干引上げのみの変化

無風の割には昨日は12時を回ったのは何ででっしゃろ?ってまあそれまでの12時前終了の連発の方が早いんですけどね。

でまあ声明文比較は前々回の10月4日会合の物を使います(前回は声明文に景気判断に関する文言が入らない(金融経済月報が出なくて現状維持の場合は1行声明になるのです)ので)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131121a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131004a.pdf(10月4日)

・経済の現状認識部分で1か所の変更(判断に関わらない所でもう1か所ありますが)

声明文の変更箇所は2か所ですが、うち1か所は政策的含意の無い部分ですので実質的に変更箇所1か所になります。経済現状認識部分の海外経済部分ですが、そこだけ出しても芸が無い(誰ですか増量しようとしてるだろというツッコミをするのは!)ので一応この部分は全部比較。

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(10月4日)

総括判断は同じ。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体として緩やかに持ち直している。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(10月4日)

つーことで輸出の判断は変わらないのですが、海外経済に関する部分が微妙に文言変更となっております。でまあ今回なのですが「徐々に」というのと「緩やかに」という形容詞の変化の方に目が行ってしまうと判断が上がっているのか下がっているのかワカランチ会長となってしまうのですが、判断の変化はそこではなくて当該文の後半にある「持ち直しに向かっている」が「持ち直している」と変化した方を見るのが正しくて、つまり今回は海外「経済」の認識(輸出の認識ではない)をちょっと前進させた、という解釈になるのであります。

#ニュースヘッドラインを見ると総裁会見で「半歩程度前進」と説明していたようですね

まあ何ですな、こういう文学(じゃないけど)に関しては普段から見慣れていると最初の形容詞ではなく後半の方に目がサックリと最初に行くのですが(ドヤァ)、そうは言ってもんなの判るかヴォケという方にオヌヌメなのは「英文版で比較」という作戦でありまする。

http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k131121a.pdf(今回声明文英文版)
http://www.boj.or.jp/en/announcements/release_2013/k131004a.pdf(10月4日声明文英文版)

該当部分を比較してみましょう(輸出部分は割愛しますよ)。

『Overseas economies as a whole are picking up moderately, although a lackluster performance is partly seen.』(今回)
『Overseas economies as a whole are gradually heading toward a pick-up, although a lackluster performance is partly seen.』(10月4日)

つまりですな、先月の判断は「pick upに向かっている」だったのが今月の判断は「pick upしている」となりますのでこれは判断が前進している、とまあこういう事になる訳ですので、日本語を読んでワカランチ会長の場合は英語の方がニュアンスが伝わりやすい場合がありますので困ったときは英文比較を見るのがオヌヌメということでありまする。

なお、念のため付け加えますと、声明文の正本は日本語版でありまして、日本語のワーディングに関しましては決定会合議決事項となっております(ので決定会合議事要旨を見ると議事要旨の最後の部分に記載されています)が、英語版に関しましては決定会合議決事項とはなっておらず、あくまでもご参考版として日銀スタッフが声明文の趣旨を踏まえて翻訳している物件となりますのでよろしくです。

#たぶん英文声明文を議決事項にするとそれだけでMPMが2時間くらい長くなると思う^^;


ということで明日(というか来月)役立つ(かどうか知らんが)豆コーナーになってしまいましたが、まあ今回の決定会合声明文はその位しかネタがねえちゅうことですな。とはいえ一応続き。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は改善を続けている。』(10月4日)

需要項目別の判断部分は全文一致ですが、企業の業況感云々という部分が今回抜けとなっておりますな。ただまあこれは短観が出た直後の決定会合声明文の場合に出る判断なので、今回抜けているのはそもそもの仕様となっておりますので政策判断に関する含意はありません。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)
『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(10月4日)

何せ今回はコアCPIについてもヨコヨコでしたからここの文言も同じとな。


・先行き判断、リスク認識等にも変更なし

並べるほどのもんでも無いですが。

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(10月4日)


『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(10月4日)

なお、別にこれは今に始まった事ではありませんが、リスク要因の中に「今後予定されている消費税増税の経済に対する悪影響」という文言は入っておりません。実際に予定通り引上げですよというアナウンスのあった10月4日の声明文(と金融経済月報)にも入っておりませんので念のため。


・決意表明みたいな文言と木内さんの提案も同じです

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている』(今回)

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(10月4日)

はあそうですかという所ですが。

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(10月4日)

ちなみに木内審議委員の提案ですけれども、決定会合議事要旨での説明を読むとまあ判るかもしれないけど判らないかもしれませんのですが、木内さんの提案というのは「2%は2年じゃなくて中長期で目指す」という意味では緩和継続の期間が長くなる可能性もあるのですが、実際問題としての行動提案は「とりあえずQQEは2年で切っていったん終了」という話で、終了した後QQEをどうするのかの話は無いので、まあそれはそれでその時点で改めて考えるって事になります、というのはまあ分かりますな。


一方で日銀が現在声明文で示しているのは「MBを年間60〜70兆円拡大する」という部分だけです。つまりこの声明文の文言の項番1と2を文字通りに読めば、「日銀が今後何らかの変更決定をしない場合は、MBを年間で60〜70兆円拡大するというのは自動延長」「その際の内訳は国債を平均7年で50兆円、ETFとJ−REITは年間1兆円と300億円、残りの10〜20兆円相当部分に関しては成長基盤強化とか短期オペとかその他諸々で調整(社債とCPは今年末の買入残高を維持するに留まる)」という事になりますので、何の決定行動も起きないで現状維持が続くと勝手にドンドン延長になる(それが技術的にフィージブルなのかという論点は別)のですな。

ただしここでややこしいのは物価目標を2年を念頭に出来るだけ早期に実施するとぶち上げて「必要な措置は全部投下した」と言っている部分でして、つまりは日銀の見通し通りになったら(なると思ってない人の方が民間エコノミストでは圧倒的主流と思われますが^^)当然ながらこのMB拡大ペースの修正とか場合によっては縮小という話になるので、書いてある文書を文字通り読んだ場合と、2年で達成という強い意志の部分で示されている先行き政策行動の含意が微妙にずれているというのがヤヤコシスなのですな、うんうん。

つーことで、木内さんの提案というのは(議事要旨見れば書いてありますが)(1)そもそも2%の物価安定目標が2年で行くのは厳しい(2)今は2年で行かせようとしてMBの馬鹿拡大をしているが、2年で2%行くのが怪しいのでこのままだと更に馬鹿拡大が継続になる(3)それはどう考えても副作用が大きい(4)だから2年で行かせるための馬鹿拡大ペースについては再考が必要(5)よって目標は中長期的に物価目標を目指すことにして、MBの馬鹿拡大も一旦2年で切ってその後様子を見ましょう、という趣旨になっている、ということだと思われるのですが、これがまた議事要旨での説明もイマイチ判りにくいですし、木内さんももうちょっと丁寧に説明してくれるとわかり良いのだがと思うのでありまする。

・・・・・・って今さら何か月も経過してそういう話をするのも何ですが、追加緩和がどうのこうのという話の中で議論が混乱しているようですのでちょっと補足してみました。

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2013/11/20

○展望レポート全文ネタたぶんファイナル

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310b.pdf

最後に物価の部分を引用します。本文29ページ以降(ファイルの31枚目)『(物価変動を取り巻く環境)』から。

・まず要因分解ですがその中に今回のレポート中でも味わいの深さでは白眉級のものが

『先行きの物価情勢を展望するにあたり、物価上昇率を規定する主たる要因について点検する。』

ということで。

『第1に、マクロ的な需給バランスは、緩やかな改善を続けている(図表39(1))。先行きのマクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げによる振れを伴いつつも、潜在成長率を上回る成長が続くという景気展開を反映して20、見通し期間中、緩やかな改善基調をたどると考えられる。そのもとで、見通し期間の半ば頃にはマクロ的な需要超過に転じ、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。』

ということですが、この脚注20の部分、潜在成長率幾らで置いているのかについて記載されていましてね。

『20 潜在成長率については、リーマン・ショック後の経済の落ち込みを受けて、資本ストックの伸びが鈍化したことなどから、一時的に0%近傍まで低下した(図表39(2))。その後は、実体経済が緩やかに成長する中で、潜在成長率は幾分持ち直している。見通し期間中の潜在成長率については、生産関数アプローチに基づく一定の手法で推計すると、期間平均では「0%台半ば」と計算されるが、見通し期間の終盤にかけて資本蓄積などに伴い徐々に上昇していくと見込まれる。ただし、潜在成長率は、推計手法や今後蓄積されていくデータにも左右される性格のものであるため、相当の幅をもってみる必要がある。』

という記述は前回展望レポートと同じでして、ここの部分に変化はなく、本文の記述に関しても4月と同様です。

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、マーケットの指標や各種アンケート調査などを踏まえると、全体として上昇しているとみられる。』

はあそうですか(棒)。

『債券市場関係者に対するサーベイ調査をみると、昨年末以降、予想物価上昇率は高まりつつある。』

昨年末以降と来たか(棒)。

『固定利付国債と物価連動国債の利回り較差から求められるブレーク・イーブン・インフレ率についても、やや長い目でみた上昇傾向を維持している21 22。』

やや長い目と来たか。まあ10年物国のBEIは1%程度なんですけどね!!

で、さすがに脚注22の所で『22 ブレーク・イーブン・インフレ率や一部のサーベイ指標には、消費税率引き上げの影響が含まれていることにも注意する必要がある。』とありまして、まあそこまで図々しくはないですねというのはニコリとします(^^)。

『エコノミストに対するサーベイ調査をみても、中長期の予想物価上昇率は上昇している(図表40)。また、各種サーベイ調査から家計の見方をみても、短中期の予想物価上昇率は上昇している(図表41)。』

とまあここまでは良いとしまして。

『先行きについても、「量的・質的金融緩和」のもとで中長期的な予想物価上昇率は上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。景気の持続的な改善が続くとの見通しのもとで、実際の物価上昇率が高まっていくとみられることも、こうした動きに寄与していくと考えられる。』

前半の所は同じなのですが、実際の物価上昇率が高まったことにより後半の分が加わったのがお洒落ではあります。ただまあ足元の物価上昇はどう見てもコストプッシュだろと思うのですけれども、一応日銀の説明では幅広い拡大の中に個人消費などの強さを背景にしているとかディマンドプル的な意味合いも込めようとしていたり、後半の文の頭に「景気の持続的な改善が続くとの見通しのもとで」とかこうディマンドプルインフレみたいなフレーバーを入れているのが味わいがあるというものです。

ただまあこの辺も微妙なのですが、とにかくコストプッシュでも良いから物価が実際に上昇してしまえば期待の転換が進みやすくなるだろという論点も思いっきりある訳でして、(それが多くの国民にとって幸福なのかどうかは知らんですが)達観してコストプッシュでもいいじゃない物価が上がれば物価上昇期待が上がるかも知れないよというテイストもこの中には入っているように見えます(つーか最近黒田総裁の説明が段々そんなテイストを示しているように見えるのだが)次第で、ここに入っている文言の味わいがまたこう滋味深いものがあって茶の湯の世界のような表現ではございます。

ということでまあ今回の展望レポートは色々と味わいがある部分があるのですが、味わいの中でも白眉の一つがこの部分、ということで終わりにするとちょっとアレですので後を少々引用しますね。

なお、念のため申し上げるとこの表現は「基本的見解」の部分でも記載されていますので、基本的見解を見た段階でも何か一応申し上げた気はしますが、コストプッシュとディマンドプルの区別とかその辺りに関するイメージをあまりその時に感じていなかったような気がするので(記憶が怪しい^^)、改めて白眉ということでご紹介の巻なのでありまする。


第3の要因は輸入物価ですがこれはさすがに前回対比見通しが下がっています。

『第3に、輸入物価は、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、一頃に比べ上昇している(図表42)。先行きについては、世界経済の持ち直しに沿って、総じてごく緩やかな上昇傾向をたどると考えられる。』


・フィリップスカーブがどうのこうの

でまあ物価見通しの方は飛ばしまして最後の部分。

『こうした物価見通しをマクロ的な需給バランスとの関係(いわゆるフィリップス曲線)で整理すると(図表43)、消費者物価の前年比は需給バランスの改善に伴い過去の正の相関に沿って上昇していくとともに、予想物価上昇率の高まりからフィリップス曲線自体も徐々にシフトアップしていく姿を想定している。』

徐々にシフトアップってのがこれ微妙で「期待の転換」だったら一気にシフトアップするんじゃないのかねとは思いますが、この辺り気合系とエコノミスト系の間で違うのかもしれませんね。

『この点、刈込平均値や上昇・下落品目比率など消費者物価の基調的な変動を捉える指標の動きをみると(図表44)、前回の景気回復局面(2003〜2007年頃)では、需給ギャップ対比で抑制的な動きとなっていたが、最近はそうした乖離はみられていない。当時は、労働派遣の規制緩和や輸入品を活用した低価格戦略など、マクロの需給とは別の「負の価格ショック」が物価の押し下げ要因となっていたと考えられる。一方、今次局面では、新興国における賃金上昇や為替相場の動向、労働規制面の動き、さらには企業の価格設定行動の変化等を踏まえ、当時のような「負の価格ショック」は発生しないと想定している。』

ほっほー、ってここをゴリゴリやるとまた一席できそうな気がするがめんどいのでパス。

『ただし、わが国経済では15年近くにわたってデフレ状態が続いてきただけに、@マクロ的な需給バランスに対する物価の感応度(フィリップス曲線の傾き)、A企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向(フィリップス曲線のシフトアップの程度)ともに不確実性は大きく、消費者物価が想定通り上昇していくか十分注意してみていく必要がある。』

『この間、物価と名目賃金の関係を確認しておくと(図表45)、消費者物価と時間当たり賃金との間には、長い目でみれば概ね同時に変動するといった安定的な関係が確認される。上記の見通しでは、先行き、労働需給の引き締まりや人々の予想物価上昇率の上昇を反映して時間当たり賃金が緩やかに上昇していく中で、消費者物価も徐々に上昇率を高めていく姿を想定している。』

前回はここで労働生産性の動向によって物価と名目賃金の関係が異なってくるという解説があったのですが、その部分がバッサリ削除されているのが少々気にはなるのですが何でじゃろ????

ということで2週間も引っ張ってどうもすいませんでした。

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2013/11/19

○展望レポート全文ネタの続きを忘れていましたので投下(汗)

あと少々である(汗)。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310b.pdf

・見通しの需要項目別展開は雇用所得環境部分がほほーという感じです

本文26ページ(ファイルの28枚目)の『(雇用・所得環境)』から。

『雇用・所得環境をみると、労働需給面では、底堅い内需を受けて非製造業の労働需要が増加を続けていることに加え、輸出や鉱工業生産の持ち直しを背景に製造業にも漸く前向きの動きがみられ始めていることから、全体でも緩やかながら着実な改善が続いている(前掲図表9)。』

という現状認識を示しておりまして、その説明はこうなっています。

『労働投入量(雇用者数×総労働時間)も、雇用者数の伸びを主因に、このところ緩やかに増加している(図表36(1))。この間、労働力人口比率の動きをみると(図表36(2))、高齢化に伴う人口動態の変動が趨勢的な押し下げ要因として働いているが、このところ女性や高齢者の労働参加の増加によって幾分上昇するなど、これまでの低下トレンドには歯止めがかかっている。非労働力人口の中で、「就業を希望し、かつすぐに仕事につける状態にあるが、適当な仕事がないため求職活動を行っていない人(求職意欲喪失者)」の割合が歴史的な低水準となるなど(図表36(3))、潜在的な労働供給余力が低下しているとみられるなか、経済活動の高まりに伴って企業側の雇用不足感が高まるもとで(前掲図表9(1))、女性や高齢者の労働力活用が一段と進んでいると考えられる。』

ほほう。

『こうした労働需給の改善は、名目賃金にも影響し始めている。』

(キリッ)って感じですが、この辺の(キリッ)振りは前回展望レポートでの雇用所得環境の認識部分からかなーり(キリッ)成分が高まっているなあという書き振りになっていますが、どこを比較するとどうとは説明しにくいので前回のを全体として読んで確認してちょ。

『すなわち、一般労働者の一人当たり名目賃金の前年比は、所定外賃金の増加や夏季賞与の3年振りのプラス転化に伴い、小幅のプラスとなってきており、パートの時間当たり名目賃金もごく緩やかに前年比プラス幅を拡大している(図表37(2))。』

とまあここまでは威勢がヨロシのですが。

『そうしたなかで、労働者全体でみた一人当たりの所定内給与が未だ前年比マイナスとなっている点については、パート比率の趨勢的な上昇に加え、最近では、前述した通り女性や高齢者の一層の活用に伴い、パートの労働時間がさらに短時間化していることも作用している(図表37(1))。』

『こうした平均賃金の動きは、前述した労働需給の改善や雇用者数の増加と同時並行的に進んでいる現象であり、雇用者数と一人当たり賃金を乗じた雇用者所得をみれば、前年比でプラスに転じてきているなど(前掲図表9(4))、所得環境は全体として改善しつつある。』

ということで、所定内給与がマイナス継続となっている件については労働市場の需給改善と構造的な問題の両方から説明できるけど全体としてはポジティブである、と結局ポジティブで締めているのが今回の現状認識部分の強めなところです。

先行きの見通しの表現では基本的に4月の展望レポートと同じとなっていまして、一方で現状の表現が結構強気感が強くなりましたねという事ですから4月はどんだけ強気見通し出していたんですかねという感じです。念の為引用。

『先行きについては、労働需給の改善傾向が続き、失業率は引き続き緩やかな低下傾向をたどっていくと見込まれる(前掲図表9(3))18。そうしたもとで、名目賃金にも、次第に上昇圧力がかかっていくと考えられる(図表37(3))。とりわけ見通し期間の後半にかけては、労働需給の引き締まりの影響に加え、予想物価上昇率の高まりもあって、ベースアップも含めた所定内給与の上昇を伴いながら、賃金の上昇傾向がはっきりしてくると想定している。』

実はここ読んで「おーつえーわー」と思って前回と比較しようとしたら実は前回もこういう見通しを出していたのを見て(@∀@)となったアタクシです。

『こうしたもとで、雇用者所得は、見通し期間中、徐々に伸びを高めていくと考えられる。労働分配率については(図表37(4))、先行き景気回復が続くもとで、緩やかな低下基調をたどるものの、見通し期間後半にかけては、前回の景気拡大局面の後半に当たる2004〜2007年の平均をやや上回る水準で下げ止まっていくと想定している19。』

でもってこの脚注19ですが。

『19 これは、規制緩和もあって派遣労働者を中心とした非正規雇用が大きく拡大し、そのことが賃金の下方圧力として作用していた2004〜2007年頃と異なり、現下の局面では、こうした面からの賃下げ圧力は幾分弱まっていると考えているためである。』

ほほうという感じですが、ちなみにこの指摘は前回の展望レポートでも入っております。


・雇用改善の認識は個人消費見通しにも反映する一方で資産効果をしらっと削除

その次が『(家計の支出行動)』でしてね。

『個人消費については、引き続き底堅く推移している。その背景には、団塊の世代をはじめとした高齢者層の活発な消費行動が下支え要因として底流に作用するもとで、年初以来、消費者マインドの改善、株価上昇や為替相場動向を反映した金融資産の価値増加による資産効果が(図表38(4))、個人消費の押し上げに働いてきたことがあると考えられる。』

さいですな。

『最近は、年初来の押し上げ効果が持続しつつも徐々に緩やかとなる一方で、個人消費の底堅さを支える要因として、前述した雇用・所得環境の改善の重要性が増しつつある。』

キタコレ(・∀・)という所で。

で、先行きの個人消費は消費税増税の影響を受けながらも増加しますよという話が展開されているのですが、その要因として示しているのが以下のようになっています。

『こうした見通しの背後にあるメカニズムとして、第1に、高齢者の消費が、需要側(団塊世代の高い消費意欲)と供給側(企業による高齢者需要の掘り起こし)双方の要因から、持続的に消費全体を下支えしていくことが考えられる(図表38(3))。』

『第2に、前述のとおり、雇用者所得の改善が次第にはっきりしていくことが、勤労者世帯を中心に消費を後押ししていくと考えられる。ただし、名目可処分所得の伸びは税や社会保障の負担増加もあって緩やかなものにとどまるうえ、消費税率引き上げや電力値上げなどが実質所得を抑制する方向に働くと予想される(図表38(1))。』

へえへえそうだっかという所ですが、前回の展望レポートではこの第2が実は第3になっていまして、じゃあ第2には何があったかと言いますと小見出しでも書いた通り「株価上昇などの資産効果」となっていまして、今回しらっと「資産効果が消費を支える」という部分を削除しています。まあ元々引用部分の最初にあったように資産効果が緩やかにという認識をしめしていますので、そういう意味ではしらっとという程でも無いのかもしれませんが、当初QQE投下時点では実質金利の低下からの政策効果として資産効果やらポートフォリオリバランスやらを強調していた(まあ実際に株が上がったからというのがデカイ気がしますがががが)のと比較するとだいぶ違ってきているなあとは思うのでありました。

・・・・・・・・とここまでやった所で時間がががが(汗)。物価の話はまたいずれするかもしれませんがしなさそうな気がします。まーこの前の総裁講演で結構出ちゃいましたからね。

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2013/11/13

○他のネタをやっているうちに1週間以上経ってしまったが展望レポート全文ネタを少々(大汗)

展望レポート全文である
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310b.pdf

ちなみに前回分はこちら
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf

でまあこれ例によって図表を横に置いて本文読んだ方が良いのですが、図表の貼りつけスキルはございませんのでURL先をご覧になりながらということでお願いいたします。


・基本的に色々と改善してウッシッシとな

背景説明のパートは10ページ(PDFファイルで12枚目)から始まりますが、経済動向のパートと物価動向のパートでは前回記述していなかった話の中でそのウッシッシ感がでているのが味わいを感じますな。

例えば経済動向のパートですけれども4月ではその経済動向の説明を外需、内需、雇用所得環境という感じで説明して終了なのですが、今回の展望レポートではその後にこんなのが付いております。本文11ページから。

『最近の景気展開の特徴を、GDPの需要項目に即してみると(図表11)、海外経済の成長率がはっきりとは高まらないもとで、輸出は持ち直しつつも勢いをやや欠く動きとなっている。設備投資についても、全体として持ち直しているが、製造業では回復の動きはなお緩慢である。一方、個人消費や政府支出は、しっかりした増加を示しており、景気全体の回復をけん引している。こうした状況を反映して、サービスや建設など非製造業の活動は、製造業の生産に比べて、改善の姿がより明確となっている(図表10(3))。』

ということで「景気展開の特徴」というのを今回はちゃっかり入れて説明する辺り、まあ足元の景気回復状況に関してウッシッシと思っているのが伝わるという意味で誠に味わいがあるというものでございます。

まあ問題は個人消費にしても政府支出にしても足元のしっかりした増加というのがどこまでサステイナブルなんですかねえという所ですけど。


・物価の説明に地価動向キタコレ&物価の説明ェ・・・・・・・

今申し上げたウッシッシは物価の所にも散見されていまして、これまた前回はスルーしていた地価動向の話が入っているのがお洒落です。物価動向パートの本文12ページに当たるのですけれども。

『この間、地価は、下落幅が徐々に縮小してきている。都市部では、小幅ながら上昇に転じている一方、地方圏では、下落を続けている。2013年の都道府県地価調査(7月1日時点)で地価の前年比をみると、東京、大阪、名古屋の三大都市圏では、商業地がプラスに転じたほか、住宅地は概ね下げ止まった。また、地方圏においては、商業地・住宅地ともに、マイナスとなったが、マイナス幅は縮小している(図表17)。』

キタコレという所なのですが、これがまた更に味わいがある事に4月の展望レポート、すなわち異次元緩和をローンチしてヒャッハーとなっていた時点で作成されたと思われる前回の展望レポートにおかれましては、物価動向パートのこの当該部分で書かれていたのは何と「金融市場動向」でございまして、えーっともしもしその時々で一番自分たちの見通しに都合の良いネタを繰り出してきてませんかという所ではありますが、そもそも「純粋エコノミスト的な見通しを出すもの」というよりも「(良く言えば)金融政策コミュニケーションツール(悪く言えば「政策プロパガンダレポート」)」と思えばまあ都合の良いネタを手を変え品を変えホイホイ繰り出してくるのは当然ですな(−−)。


でまあ物価動向の所ですけどね。

『物価面をみると、国内企業物価の前年比は、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、年度初にプラスに転じ、その後はプラス幅を緩やかに拡大している(図表13(1))。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、企業収益の改善などを背景にマイナス幅が縮小傾向を続け、最近は概ねゼロ%となっている(図表13(2))。』

企業収益の改善ですかそうですか。

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の推移をみると(図表14(1))、年度初は昨年のエネルギー関連や耐久消費財の動きの反動から、一旦マイナスとなった。その後は、原油市況や為替相場を反映して、エネルギー関連(石油製品・電気代)が再び上昇している。また、個人消費が底堅く推移するもとで、コスト高を転嫁する動きがみられたこともあって、財(除く農水畜産物)に分類される耐久消費財、食料工業製品やその他財、一般サービスの内訳である外食などで、徐々に改善の動きが広がった(図表15)。』

うーむこの。いやまあアグリゲートすると企業収益改善しているし個人消費が底堅いからコストプッシュを転嫁する動きという形になるのかも知れないけど、短観DIとか見てると確かに販売価格のDI上がっているけど仕入価格のDIはもっと上がっていて、それって本当は個人消費が底堅いから転嫁しているというよりは仕入価格が上がってもうタマランチ会長だから転嫁しているだけのような気もせんでもないのですがどうなんですかねえ。何か図表15を見ると結局石油関連ばっかりのような気もしますし・・・・・・

『このため、除く生鮮食品全体の前年比もプラスに転じ、最近は0%台後半となっている。消費者物価の基調的な変動を捉える指標として、刈込平均値7やラスパイレス連鎖指数8、消費デフレーターをみると、昨年央以降、改善が一服していたが、このところ再び改善している(図表14(2))。また、消費者物価(除く生鮮食品)を構成する各品目の前年比について、上昇品目の割合から下落品目の割合を差し引いた指標をみても、このところ比較的はっきりと改善している(図表16(1))。』

ほう。

『家計調査における単価の動きをみても、前年比の上昇傾向が続いている(図表16(2))。』

んーっとですね、図表16(2)を見ると一旦改善(上昇)した後に落ちているようにも見えるのですけれども。ってゆーか最近スーパーとかホカ弁屋とかで買い物してて思うのだが、販売物件の単価を上げるのではなく量を減らしたり質を落としたりして調整してお値段同じとか、お買い得価格にしたりしてる動きが徐々に露骨になってきている気がするんですが身の回り5メートルとマクロ状況は違いますかそうですか。


・QQE波及経路の説明を思いっきりカットキタコレ

本文13ページからが金融情勢のお話で最初が金融環境というパートです。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。日本銀行は、4月に導入した「量的・質的金融緩和」のもとで、マネタリーベースが年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう、長期国債買入れなどを進めている。こうしたなか、マネタリーベースは大幅に増加しており、前年比の伸び率も拡大を続けている(図表18)。日本銀行は、今後も、「量的・質的金融緩和」のもとで、マネタリーベースが上記のペースで増加するよう金融市場調節を行っていく9。』

とまあそういう説明があるのですが、前回はこの金融環境のトップの小見出しのお名前がそもそも『(量的・質的金融緩和)』となっていまして、QQEをローンチしましたよという話をした後に、QQEの波及経路の説明が延々とございまして(前回の本文11ページ以降)、ああだこうだと話(買入をバンバン実施してイールドカーブ全体を下げて桶屋が儲かるみたいな話ね)があったのですけれども、今回はこの部分をバッサリ削ったのがこれまた実に味わいの深く、まさに侘び寂びの世界という所です。

まあつまりQQEに関しましてですが、波及経路がどうのこうのみたいな具体的な話をまあ当初は色々としていましたが、足元では基本的にQQEという名の気合と大和魂によってインフレ期待に直接働きかける事によってインフレ期待が上がって期待が転換してフィリップスカーブがシフトアップするという異次元期待転換理論を強調しておりますのと、そもそも当初説明していた名目金利が下がってどうのこうのみたいな話も直近では金利下がりモードではありますが、まあQQE突っ込む直前より金利高いんでネーノとか為替って結局100円程度しか行かないですよねとかやいのやいの言われるとアレというのもあって、そういう突っ込まれる脇は見せずに行きましょうとなったという事ですね、と読むとこれまた実に滋味深い代物でありまする。


・見通しを展開すると強いっつーか前提が色々というか

でまあ金融環境の部分は華麗にスルーしまして本文16ページ以降の『3.2013年度後半〜2015年度の経済・物価の見通し』ですが、全体感の展開を鑑賞しましょう。

『わが国経済の先行きを展望すると、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも10、前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される。』

今回初出じゃないですけど、前向きの循環メカニズムキタコレという所でこの後も何回も連呼されるのでありまする。その期間別展開が以下に続きます、まずは今年度後半。

『先行きの景気展開についてやや詳しく述べると、2013年度下期には、内需が堅調に推移するもとで、外需の改善も次第に明確になっていくと考えられる。』

外需も改善ですかそうですか。

『まず、公共投資は、当面、増加傾向で推移したあとは、高水準で横ばい圏内の動きとなると見込まれる。輸出や鉱工業生産は、海外経済が持ち直すにつれて、緩やかに増加していくと予想される。そうしたもとで、企業収益が改善を続けることに伴い、これまで先送りされていた維持更新の動きが広がることもあって、企業の設備投資の持ち直しがより明確となるほか、雇用・所得環境の改善に支えられるかたちで個人消費の底堅さが続くなど、企業、家計双方の部門において、前向きの循環メカニズムがよりはっきりと働いていくと考えられる。』

ということで設備投資が企業収益改善をドライバーにしてヴィンテージ更新なども含め堅調で、雇用所得環境の改善がサポートで個人消費が強いそうです。

『加えて、個人消費を中心に、1回目の消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で発生すると予想されることから、下期の成長率は上期からさらに幾分高まり、年度全体の成長率もかなり高めになると考えられる11。』(ちなみに脚注11は消費税が10%まで予定通り上昇を前提にしていますという脚注です)

さいですか。んでもってその後。

『2014年度から2015年度にかけても、消費税率引き上げによる振れの影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長が見込まれる。』

ほほう。

『2014年度については、今後予定されている総額5兆円規模の経済対策の実施を前提とすると、公共投資は、上期中、引き続き高水準で推移したあと、次第に減少傾向となると見込まれる。輸出は、海外経済の持ち直しが次第にはっきりするもとで、伸び率を高めると考えられる。さらに、国内民間需要は、基調的な動きとしては、前向きの所得形成が続き、各経済主体による成長力強化への取り組みの効果もあって成長期待が次第に高まるもとで、金融緩和効果も強まっていくため、設備投資を中心にしっかりした動きを続ける可能性が高い。経済政策パッケージの一環として実施が予定されている各種企業減税策も、設備投資にプラスに作用していくと考えられる。この間、個人消費については、各種の税負担が実質可処分所得の押し下げに働くなか、上期を中心に、消費税率引き上げ前の駆け込みの反動も相応に生じるとみられるが、基調的には、雇用・所得環境の改善に支えられて、底堅さが維持されると考えられる。』

つーことでやたら強気ですけれども、(クソ長くなるので前回分は引用しませんが)この中で海外経済に関する記述はさすがに前回よりは弱くなっていましてそこは下がっています。でもってこれ読みますと結局の所公共投資がドライバーですかそうですかというのと、本当に雇用所得環境が改善を続けるのでしょうかという所がキモになるという話ですな。

『2015年度については、公共投資が減少傾向をたどるほか、設備投資も、資本ストックの充足に伴い、循環的にみれば次第に減速方向となる。ただし、海外経済が長期平均並みの成長ペースに復すること、国内面では、成長期待がさらに幾分高まるもとで、金融緩和効果や各種企業減税の効果も強まっていくこと、などを背景に、潜在成長率を超える成長が続くと予想される。』

ということで内需から外需に一部がバトンタッチしてバランスの良い成長という話になっているのですが、どさくさに紛れてしらっと「成長期待がさらに幾分高まるもとで」とかこらまた都合の良い話がございますなあというのが味わいがある所ではございまする。


つーことでやたら強い罠と思いながら、この後の需要項目別展開と物価見通しの部分は時間と量の関係上明日以降(汗)。

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2013/11/08

○いやあ一時的要因ですかそうですか(10月MPM議事要旨ネタの続き)

まあ何ですな、そんな短期市場様なのでございますが・・・・・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g131004.pdf

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所ですが、政策変更なしはまあ良いと致しまして、9月の末に掛けて短国レートなどが盛大に低下してあばばばばーとなった件について議論が有りましてですな、

『最近の短国レート低下の影響や短期オペの応札倍率の低下について、多くの委員は、中間期末を控えた短国保有ニーズの高まりという一時的な要因が影響しているとの認識を示した。ある委員は、マネタリーベースの積み上げは予定通り進捗していると指摘した。別の一人の委員は、「量的・質的金融緩和」が効果を発揮するためには、目標に沿って積み上げを進め、経済主体の期待に働きかけ続けていくことが重要であるとの認識を示した。こうした議論を経て、委員は、期明け後の状況を含めて今後の動きを注視しながら、マネタリーベースの着実な積み上げを図っていくことを確認した。』

「中間期末を控えた短国保有ニーズの高まりという一時的な要因」っていやまあそれはそういう面はありましたけど、そもそも一番買っているのは日銀様でございまして、かつ短国の買入というのはQQEを継続してMB拡大を行っている中では趨勢的に拡大される訳でございますので、これは「MB拡大におけるオペレーション上の問題が発生する兆候」という危機感を持って頂きたい訳でして、先程も申し上げましたように今月については短国買入のペースが上がる関係上、その間に何らかの需要側の要因(海外要因とかバランスシート要因とか)で短国のニーズがピョコンと高まるとアチャーという展開になったりしますので、まあこれで今月短国のレートが下がった時にMPMでどういう話になるのかは鑑賞したい所ではありますな。

ま、こちらはあくまでも「議事要旨」でありますので、あまりそのオペレーションの限界ががががみたいな話を思いっきり書くのも如何なものかということで、上記表現の中にある「期明け後の状況を含めて今後の動きを注視しながら、マネタリーベースの着実な積み上げを図っていく」という辺りに金融市場局に対して何かちょっとアレだがとりあえずお前ら何とかうまくMB積み上げ頑張れやという部分が含まれているかなとも思いますので、まあそれはそれとしてという事なのかもしれません。

しかし今年の年末に関しては(どうせ12月は財政要因資金余剰ですし)MB達成楽勝としまして、来年末に向けてここから60兆から70兆円程度MB拡大ってどういう姿になるんでしょうなあ。

#ということで何か議事要旨ネタが小出しで誠に恐縮ですがまだ続くかも知れませんし続かないかもしれません(大汗)

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2013/11/07

○10月一発目のMPM議事要旨はそんなに面白くないのですがががががが

正直総裁会見の方が面白かったのでつい時間を大消費してしまったので続きがあるかも知れません。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g131004.pdf

・景気の先行きに関する認識がここの文言だけ見ると大きくぶれていないような気がする件

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の所なんですけどね。

『景気の先行きについて、委員は、生産・所得・支出の好循環が続くもとで、緩やかな回復を続けていくとの見方を共有した。』

ふむ。

『複数の委員は、景気が持続的に回復していくためには、内需から外需、非製造業から製造業へと回復の動きが拡がっていくことが重要だが、これまでのところ輸出や生産の回復ペースは力強さを欠いていると指摘した。』

『一人の委員は、製造業には海外経済の回復の後ずれなどにより下振れる可能性がある一方、非製造業には高齢化に対応したサービスなどの需要掘り起こしが進むことにより上振れる可能性があるとの認識を示した。』

だそうなのですが・・・・・・・・・・

『委員は、先行きも国内需要が堅調さを維持していくためには、雇用・所得環境の改善が消費を支えるという前向きの循環が持続することが重要であるとの見方を共有した。そのうえで、委員は、雇用者所得について、今後、持ち直しの動きが次第に明確になっていくとの認識で一致した。』

うーむ、ここの認識が一致していると前向きの循環メカニズムで堅調な内需がサステイナブルに推移するという話になるのですよね。ちなみに現状認識についてはこういう話になっているのですけど。

『わが国の景気について、委員は、企業・家計の両部門で所得から支出への前向きな循環メカニズムが働いているとみられることから、緩やかに回復しているとの見方で一致した。』(これは今引用している部分のちょっと前の方にある話です、為念)

これがまた日本語マジックとしか申し上げようが無いのですが、「一致した」という文言がどこの部分に掛かるのかが非常に解釈が難しくて、「緩やかに回復しているとの見方」が一致したのは日本語の文法的に間違いないのですが、問題はこの「前向きな循環メカニズムが働いているとみられる」という部分でありまして、この部分について一致したのかしていないのかが日本語文法的に曖昧になっているのが議事要旨作文マジックとしか申し上げようがない所でございます。一瞬読むと一致しているようにも見えるのですが、実際問題として一致しているなら展望レポートの見通しがあれだけ上下にぶれる訳がないのでありまして(^^)、はてさてこれはどう解釈したら良いんでしょうと申しましてもこればっかりは低い方の見通しを出していると思われる審議委員の皆様の見解をお伺いしないとワカランチ会長なので金懇キボンヌという所ですな。

で、まあ話を戻しまして。

『ある委員は、とくに定例給与の増加が重要であるとの見方を示したうえで、労働市場の流動性が低いわが国では、正社員を繋留するために定例給与を引き上げるインセンティブが経営側に生じにくいと指摘し、賃金引上げに向けた各種取り組みの成果に期待していると述べた。』

なるほど。

『別のある委員は、来年春の定例給与引上げに期待しているが、それまでの間は賞与による押し上げ以外に所得環境の目立った改善は見込みにくいとの認識を示した。』

まあそうです罠とは思いますが、労働需給にスラックがある状況(何か展望レポートでは労働需給について引き締まりという話があるし、さっきの黒田総裁会見でも(引用割愛しましたが)労働需給に関しては結構強めの話をしているので日銀の認識はそうでない可能性がオオアリクイですので念の為申し添えます)の中で無理繰り定例給与の引き上げを行うと、他の部分(非正規とか新規雇用とか)に皺寄せが行くだけのような気もするんですけど、その辺に関する論点ってどうなんでしょうかねえ。


で、消費税の影響に関して。

『消費税率引上げの影響について、一人の委員は、労働生産性の上昇を背景に消費者の恒常的な所得見通しが改善すること、雇用環境が改善するもとで家計の借入制約が弱まり消費を平準化しやすくなること、低所得者層への影響緩和措置が講じられることなどから、個人消費の下振れリスクはある程度抑制される可能性があるとの見方を示した。』

そ、そうなのか・・・・・・・・・・

『この点に関連して、ある委員は、わが国の産業構造に占めるサービス産業のウエイトが高まる中で、そうした産業の相対的に低い労働生産性をいかに引き上げるかが賃金上昇の鍵になると指摘した。』

上昇しませんなそら。

『政府の経済政策パッケージの効果について、複数の委員は、景気が下振れる可能性は低下したと述べた。』

まあそらそうですが、財政サステイナビリティーの話はという件に関してはイイシテキダナーな部分があるので紹介しようと思ったら時間ががががなので続きは明日。

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2013/11/05

○展望レポート全文鑑賞会・・・・・・だが時間が無いので前座だけ(大汗)

展望レポート全文(基本的見解を含む)である。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310b.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304b.pdf(前回4月)

・全体的には・・・・・・・

まあ子細に見ると色々と面白いっつーか味わいがあるのですが、それはそれとして全体として見た印象としまして、今回は「金融政策の効果アピール」というのが目立ちますねという所でして、その一方で「金融政策の波及メカニズムの説明は相当割愛しやがってますね」という辺りが目につきますな。

まあ大体会見のトーンでもそんな感じなので全体のトーンがそういう事ですよねという所ではあるのですが、まー前回の展望レポートで出した大風呂敷に関して「ほうら見通し通り進んでいるでしょ(満面のドヤ顔)」というトーンが全力で漂う内容となっておりまする。

でもって内容に関しては時間が(汗)なので明日以降なのですけど・・・・・・・・・・


・良く良く見たら2014年度の見通しが微妙な件について

ちなみに基本的見解の方になりますが、展望レポート見た時に2015年度の見通しについてネタにしましたが、良く良く見ると2014年度の見通しが微妙なのよ。

つまりですね、2014年度の見通しなのですが、大勢見通しで2014年度って+0.9〜+1.5となっていて中央値が+1.5というどんだけ票が偏っているんだよというのもさることながら、今回の見通しファンチャートの方を見るとリスク認識含めた数値の上限が4月や7月の時以上に上に振れていまして、ファンチャートの上限数値が3%台に乗っているという見通しになっているのですよね。

あと全員見通しですが、こちらは+0.5〜+1.6となっていまして、つまりそもそも+0.5という潜在成長率カツカツかそれ以下の見通し(+0.9でも大概だが)という思いっきりそれ展望レポートの経済パスのビューと違うやんという人が1名(というか2名)いるのがお洒落なのと、全員見通しの上限は+1.6なのにファンチャートの上限が3%ってどういう上振れ認識になるんでしょうか(まあ元々上限+1.5の7月でも上限が2.7%位(?)なのでそもそもこの上振れ予想の人のリスク認識がどんだけ上方バイアスあるんだという事なのかも知れんが)というのがほえ?という感じでした。

・・・・・・・・って図を出さないで説明しても分かりにくいと思いますので、まあリスクバランスチャートと表の方を見てちょという所です。

なお、2013年度に関しては4月対比で見た場合にGDPの見通しレンジは上昇しているのに中心値は下がっているというのも何か謎というかつまり4月に出していた予想数値はより願望度が高かったということですね分かりますというのも味わいがあったなあと思います。

#ということで続きは明日以降(大汗)

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2013/11/01

お題「決定会合レビュー:だいたい展望レポート鑑賞」

ということでMPMでごじゃる。

○声明文&中銀スワップ取極常設化

声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131031a.pdf

『日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

マネタリーベースが、年間約60〜70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う。』

ということで今回も展望レポート公表の回なので景気判断云々の話は展望レポートに含まれまして声明文あっさりなのは4月の展望レポート回のMPMと同じです。

中銀スワップの常設化
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131031c.pdf

『カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行は、本日、現行の時限的な中央銀行間の流動性スワップ取極を常設化することを公表した。これらのスワップ取極は、今後、別途の通知があるまで存続することになる。

常設化された取極は、上記の6つの中央銀行において、2つの中央銀行間スワップ取極のネットワークとして構成されており、各中央銀行が自国・地域において、いずれの他通貨によっても、流動性を供給することを可能とするものである。こうした流動性供給は、対象となる通貨に係るスワップ取極の当事者である2つの中央銀行が、市場の状況によって必要と判断した場合に行うことが可能である。

現行の時限的なスワップ取極は、金融市場の緊張を緩和し、金融市場の緊張が経済に及ぼす影響を軽減することに貢献してきた。常設化された取極は、引き続き、流動性の安全弁として機能することになる。』

ということで、セーフティーネットの形として6中銀スワップを常設化して、必要な時には発動しましょうねという話で、まあ順当というか良く良く考えたら何で今まで臨時措置継続状態でやっていたのねという所ですな。


○展望レポート基本的見解:見通し数字は横で書きっぷりは更に強いとな

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1310a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1304a.pdf(前回基本的見解)

・まずは見通し数値

4月、7月、10月と比較すると味わいがあるアルヨ。

2013年度大勢見通し

実質GDP
(4月):+2.4〜+3.0(+2.9)
(7月):+2.5〜+3.0(+2.8)
(10月):+2.6〜+3.0(+2.7)

コアCPI
(4月):+0.4〜+0.8(+0.7)
(7月):+0.5〜+0.8(+0.6)
(10月):+0.6〜+1.0(+0.7)

2014年度大勢見通し

実質GDP
(4月):+1.0〜+1.5(+1.4)
(7月):+0.8〜+1.5(+1.3)
(10月):+0.9〜+1.5(+1.5)

コアCPI(消費税影響抜き)
(4月):+0.7〜+1.6(+1.4)
(7月):+0.7〜+1.6(+1.3)
(10月):+0.8〜+1.6(+1.3)

2015年度大勢見通し

実質GDP
(4月):+1.4〜+1.9(+1.6)
(7月):+1.3〜+1.9(+1.5)
(10月):+1.3〜+1.8(+1.5)

コアCPI(消費税影響抜き)
(4月):+0.9〜+2.2(+1.9)
(7月):+0.9〜+2.2(+1.9)
(10月):+0.9〜+2.2(+1.9)

ということで、実は見通し数値なのですが4月の展望レポートから7月中間見通し、今回の展望レポートと数値ってそんなに変わっていないのですよね。でもまあ読んでみれば判るように、今回の展望レポートって記述内容的には4月の展望レポートよりも更に強気化していまして、文言がこれだけ強気化する中で見通し数値が同じって何じゃそらという所で、最早展望レポートではなくて願望レポートでも無く、どこぞの何か年計画の目標数値ですかこれはという話になりつつあるのではないでせうか。


あと、味わいがあると言えば全員見通しの推移で2015年度の所を見るとオモロイ。

2015年度全員見通し

実質GDP
(4月):+1.3〜+2.1
(7月):+1.2〜+2.1
(10月):+1.2〜+2.0

コアCPI(消費税影響抜き)
(4月):+0.8〜+2.3
(7月):+0.7〜+2.3
(10月):+0.7〜+2.2

んーっとですね、見通しとかドンドン強くなっているのに全員の見通し数値を見ると実質GDPにしてもコアCPIにしても一番の景気強気派の人が見通しを今回微妙に下げていまして、いやあのそれで何で展望レポートの記述文言が更に強くなるのかと小一時間問い詰めたい所ではありますな。


・記述量が増えた部分と減った部分に味わいがありますな

さてさて、ではまあ記述の方に参りますが、今回の展望レポート見てて記述の関連で思ったのはまあこんな所ですかね。

(1)全体の文章量が若干増えた(目の子で5.5ページ→6.2ページとかそんな感じ)
(2)経済認識、経済の先行きに関する記述が前回は全体の話だけだったのが今回は要因をブレークダウンした内容が増えている
(3)一方で金融緩和政策の波及ルートに関する説明文言は見事にカット
(4)先行きの見通しについては明るい話が「所与」状態になっている

とりあえずざっと思いついたのがこの4点で、もう一つの点は今しがた申し上げたように「記述が益々強気になっているのに見通し数値の方が大して強気化していない、つーか4月の時点よりも若干だけど下がってねえか」といううーんこの謎状態というかつまりそもそも4月に出した数値が鉛筆なめ(銃声)。


でですね、全体分量に関しましてはさすがに前回の展望レポートの基本的見解の方であまりにも説明を端折り過ぎていて、こうなると言いたいのは分かるのだが背景説明が無いとそもそもその見通しがどうなのか検討できんぞなもしと言う苦情が結構あったんでしょ(あたくしも当駄文で申し上げていた気がしますが)と存じます。

そして上記(2)と(3)が実にこう味わいがある所でして、つまり(2)で示された経済の状況に関しては(そらまあこれだけ財政吹かしてるんだからそうだ罠とは思いますが)足元で国内経済の状況がまあ堅調に推移していますねということで、説明する方としてもウッシッシとばかりに説明しやすい所なのでつい筆も進むという事ですし、(3)の金融政策の波及ルートに関しては結局の所「異次元政策で期待の変化でデフレ均衡打破でフィリップスカーブが上方シフト」というメカニズム以外の説得力のある説明をするのが苦しいから、余計な突っ込まれ所は削除するというのが正しいあり方ですねわかりますという所になるのでしょうなあと思ったのですがどうでしょうかねえ(ニヤニヤ)。

つーことで、以下引用部分ですけど『』で書いてあるのは今回の展望レポート基本的見解部分からの引用です。前回分との比較の時には(今回)(前回)と注をいれますね。


・読んでて見事に味わいを感じたのはさっきの(3)相当部分である

本文1ページの辺りなのですがね。

『第1に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中で、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。すなわち、「量的・質的金融緩和」のもとで、名目長期金利の上昇圧力は抑制されている一方、予想物価上昇率は全体として上昇しており、実質金利は低下方向にある。銀行貸出残高の前年比は、緩やかにプラス幅を拡大している。このような緩和的な金融環境が民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(今回)

『第2に、日本銀行が「量的・質的金融緩和」を着実に推進していく中、金融環境の緩和度合いは一段と強まっていくと考えられる。すなわち、「量的・質的金融緩和」は、長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え、期待の転換を通じて予想物価上昇率を上昇させ、実質金利を低下させる効果が期待できる。これらが民間需要を刺激する効果は、景気の改善につれて強まっていくと考えられる。』(前回)

今回無くなっている文言が「長めの金利や資産価格などを通じた波及ルートに加え」という部分でして、QQEの効果に関して前回は「これこれの波及ルートに加えて期待の転換で実質金利ガー」という説明だったのが今回は思いっきりその波及ルート部分をネグって「予想物価上昇率は全体として上昇」(キリッ)というのをメインにおいて、名目金利に関しては買入による上昇圧力抑制という論点と、まあQQEローンチ当初の説明がやり過ぎだったという事にはなるのですが、当初は名目金利を全力で下げる話をしていたのがすっかり実質金利の話になってしまいましたねという所ですし、資産価格の方は上昇止まってしまったこともあって盛大にスルーですかそうですかという所。

まあつまり金融政策に関する説明で波及ルートがどうこうという話を下手にすると色々とツッコミを食らうので、期待物価上昇率に比重をだいぶかけるようになってきましたねという話っす。


・経済の総括判断および先行き見通しは当然の如く4月対比で強い

同じく本文1ページ。経済情勢の現状認識と先行きという冒頭も冒頭部分ね。

『わが国の景気は、緩やかに回復している。需要面をみると、輸出は持ち直しつつもやや勢いに欠ける一方、個人消費をはじめ国内需要は堅調に推移している。こうした内外需要を反映して、生産面では、鉱工業生産の増加ペースが緩やかにとどまる一方で、サービスや建設など非製造業の活動は強めに推移している。』(今回)

『わが国の経済をみると、下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている。』(前回)

先程申し上げたように、今回は前回と違いまして経済物価情勢に関する記述の中で要因にブレークダウンした部分の記載があって読みやすくなりましたが、まあ4月と比較してるから分かりやすいですけれども記述が強気化することすること。


『先行きは、内需が堅調さを維持する中で、外需も緩やかながら増加していくと見込まれ、生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる。このため、わが国経済は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される2。』(今回)

『先行きは、金融緩和や各種経済対策の効果から国内需要が底堅く推移し、海外経済の成長率が次第に高まっていくことなどを背景に、本年央頃には緩やかな回復経路に復していくと考えられる。その後は、2回の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の影響を受けつつも、生産・所得・支出の好循環が維持されるもとで、基調的には潜在成長率を上回る成長を続けると予想される3。』(前回)

先行きの見通しに関しましては、これまでの金融経済月報の流れでも示されていましたけれども、4月時点ではどちらかと言うと外需ドリブンでの回復を見ていたのに対して、今回の見通しでは主に内需が引っ張って行って、徐々に外需の寄与も効いてくるという形になっているので、成長見通しの質としてはかなり強気化していますし、さっき並べたあたくしの気が付いた点の4番目に相当しますけれども、『生産・所得・支出の好循環は持続すると考えられる』という風な記述が今回ありますように、そもそも現状が「前向きの好循環メカニズムが働いている」という認識になっていて、先行きに関してもその認識が継続というように、うーむそんなに強かったっけという部分が平然と所与として組込まれているというのがセクシーとしか申し上げようがございません。

なお、前回も今回もそうなのですが、この強気の展望レポート見通しにはちゃんと消費税引き上げ2回分出来上がり10%までの動きを織り込んでいるのにご注意くらはい。


・見通しの前提に関して

『こうした見通しの背景にある前提は、以下のとおりである。』

ということで説明があるのですが、前回は「海外経済」→「金融緩和」→「公共投資(第二の矢)」→「規制緩和・制度改革(第三の矢)」という順序でしたが、今回はその1番目と2番目がひっくり返っておりまして、先行きの強気見通しの中で実質金利低下というドヤ顔説明しやすいものを前に持って来ましたねわかりますという所ですな。

でもって金融緩和はさっき引用しましたので海外経済部分。

『第2に、海外経済については、4月の展望レポート時点の想定と比べると幾分弱めに推移しているが、国際金融資本市場が総じて落ち着いて推移するとの前提のもとで、先進国を中心に、次第に持ち直していく姿を見込んでいる。』

ちなみに前回は「米国・中国ドリブン」という絵になっていました。

『主要国・地域別にみると、米国経済については、緩和的な金融環境が維持され、財政面の下押し圧力も次第に和らいでいくことなどを背景に、回復テンポは徐々に増していくと予想される。欧州経済についても、債務問題に伴う調整圧力は残るものの、家計や企業のマインド好転などに支えられ、次第に持ち直していくと考えられる。中国経済については、当局が構造調整を進めつつも、同時に景気下支え策を講じていく中で、現状程度の安定成長が続くとみられる。』

『一方、その他の新興国・資源国経済については、金融環境の引き締まり傾向もあって、当面、成長に勢いを欠く状態が続く可能性が高い。』

つーことでまあ全般ちょっと下がっているのと、新興国に関してはさすがに懸念を示してますな。

あと、第二の矢と第三の矢ですけれども。

『第3に、公共投資は、既往の各種経済対策の効果に加え、新たに策定される予定の経済対策による追加の押し上げ効果も予想されることから、2014年度上期にかけて高水準で推移するとみられる。』

『第4に、政府による規制・制度改革や今後見込まれる各種の企業向け減税措置、企業による内外需要の掘り起こしなどもあって、企業や家計の中長期的な成長期待は、緩やかに高まっていくと想定している。』

基本的な部分は同じなのですが、追加の経済対策やら企業向け減税などの第二の矢、第三の矢のおかわり部分が入っているのがまあ当然ちゃあ当然ですがちゃんと入っているのがチャーミング。


・見通しの年度別ブレークダウン

『以上を前提に、見通し期間の景気展開をやや詳しく述べると、2013年度下期については、海外経済が持ち直しに向かう中で、これまでの為替相場の動きもラグを伴いつつ下支えとなり、輸出や鉱工業生産は緩やかながらも増加していくと見込まれる。そうしたもとで、企業収益の改善に伴い設備投資は持ち直しがより明確となるとともに、個人消費も雇用・所得環境の改善に支えられて底堅く推移するとみられる。加えて、個人消費や住宅投資では消費税率引き上げ前の駆け込み需要が発生するため、2013年度下期の成長率はかなり高めになると予想される3。』

ほほう『これまでの為替相場の動きもラグを伴いつつ下支えとなり』ですかそうですか。

『2014年度の成長率については、上期を中心に駆け込み需要の反動が出ることから、前年度に比べればかなり鈍化するとみられる。ただし、海外経済の持ち直しが明確となる中で輸出が伸びを高めるほか、金融緩和や各種企業減税の効果などから設備投資もしっかりとした増加を続けるため、潜在成長率を上回る成長は維持されると考えられる。』

『2015年度についても、2回目の消費税率引き上げによる振れは予想されるが、生産・所得・支出の好循環は維持され、潜在成長率を超える成長が続くと見込まれる。以上の見通しを7月の中間評価と比べると、成長率は概ね不変である。』

つーことで「前向きの循環メカニズムは維持され続ける」「次第に外需が寄与してくる」ということで、2015年度まで潜在成長率を超える成長が続くんですってよ奥様という所です。まあ強いというのは4月の時点でも強かったんですけどね。


・物価情勢に関する記述では期待インフレの部分ががががが

本文3ページから。

『物価上昇率を規定する主たる要因について先行きを展望すると、第1に、マクロ的な需給バランスは、消費税率引き上げの影響による振れを伴いつつも、緩やかな改善傾向をたどり、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。この間、労働需給の引き締まり傾向は明確となり、名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくとみられる。』(今回)

『先行きの物価上昇率を規定する要因を点検すると、第1に、マクロ的な需給バランスは、緩やかな改善傾向をたどり、見通し期間後半にかけて需要超過幅を拡大させていくと予想される。この間、労働需給の引き締まり傾向は明確となり、名目賃金にも次第に上昇圧力がかかっていくと見込まれる。』(前回)

消費税云々の記述が入った以外は同じというか元々の見通しも強いんですよねえ。


『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、「量的・質的金融緩和」のもとで、実際の物価上昇率の高まりもあって上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。こうした予想物価上昇率の高まりは、企業や家計を含めた価格・賃金形成に徐々に浸透していくとみられる。』(今回)

『第2に、中長期的な予想物価上昇率については、足もと上昇を示唆する指標がみられる。先行きも、「量的・質的金融緩和」のもとで上昇傾向をたどり、「物価安定の目標」である2%程度に向けて次第に収斂していくと考えられる。』(前回)

・・・・・・・・・お〜こりゃ強気化してるわという感じで、「実際の物価上昇率の高まり」だの「予想物価上昇率が高まると価格や賃金に浸透」とかどう見ても強気化です本当にありがとうございましたという風情なのですが、何でこれだけ強気化しているのに大勢見通しにおける2015年度の物価上昇率のアッパーが下がっているんでしょうかねえ(棒読み)。

『第3に、輸入物価については、国際商品市況や為替相場の動きを反映して、当面は上昇要因として作用すると見込まれる。』(今回)

『第3に、輸入物価については、為替相場の動きが当面の上昇要因として働くうえ、国際商品市況が世界経済の成長に沿って緩やかな上昇基調をたどるとの想定のもと、見通し期間中、上昇を続けると見込まれる。』(前回)

さすがに世界経済の成長でどうのこうのというのを削ったか。



・上振れ下振れ要因でほほうという部分を少々

まずは経済情勢に関する上振れ下振れ要因の本文4ページから。

『第2に、家計の雇用・所得動向がある。』

というのが今回新たに入った記述でキタコレなのですが。

『前述のとおり、これまでの景気回復は、個人消費を中心とした堅調な国内需要が主導してきた。先行きも国内需要が堅調さを維持していくためには、雇用・所得環境の改善が消費を支えるという前向きの循環が持続することが重要である。』

ということで既に前向きの循環は所与ですよ。

『この点、企業収益が改善する一方、企業を取り巻く競争環境が引き続き厳しい中にあって、労働需給の引き締まりや予想物価上昇率の高まりに伴い賃金が上昇していくかどうか注視していく必要がある。』

まあ確かにさっきの見通しの所にもそう書いてありましたが、もう今後労働需給が引き締まって予想物価上昇率も高まって行くというのが話の前提として堂々と置かれているのがニャンとも。


でもって物価の所で本文5ページですけどね。

『物価に固有の上振れ、下振れ要因としては、第1に、企業や家計の中長期的な予想物価上昇率の動向について不確実性が高い。』

というのは前回も記述されていたのですが・・・・・・・・・

『人々のインフレ予想が、過去にみられた物価や賃金の緩やかな下落を反映して、なかなか高まらない可能性がある一方、実際の物価や賃金の上昇率が高まっていく過程で、予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もある。加えて、消費税率引き上げに伴う幅広い品目の一斉の価格上昇が、人々のインフレ予想に与える影響についても注意してみていく必要がある。』(今回)

『企業や家計の予想物価上昇率が過去の緩やかな物価下落を反映するかたちで形成され、これがなかなか高まらない可能性がある一方、期待の転換により予想物価上昇率が比較的早期に上昇する可能性もある。』(前回)

前回の「期待の転換により〜」という願望ですかそうですかという記述部分が今回は堂々の「物価が上昇」だの「賃金が上昇」だの「消費税増税の影響でインフレ予想が上昇」だのどう見ても記述が具体化で物価上昇に対する自信度が高まっているとしか思えない記述内容となっておりまして、ドヤ顔モードの香りがするのですが何故2015年度の物価見通しの数字が以下同文。


・金融政策の効果ドヤ顔キタコレ

金融政策運営に関する説明部分はまあ同じでして、当然ながら追加緩和を示唆するような話とかは無い(必要な調整を行うという文言は前回も今回もありますけど)ですが、本文7ページのこの記述には微苦笑。

『金融政策運営については、「量的・質的金融緩和」のもとで、実体経済や金融市場、人々のマインドや期待など、好転の動きが幅広くみられており、わが国経済は2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋を順調にたどっている。』(今回)

どう見てもドヤ顔全開です本当にカムサハムニダ。

『今後とも、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(今回)


前回がこうでしたので。

『先行きの金融政策運営については、日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する7。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う。』(前回)

『このような金融政策運営は、実体経済や金融市場に表れ始めた前向きな動きを後押しするとともに、高まりつつある予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(前回)

ということで、まあ結局の所金融政策の効果に関しては「予想インフレ率」の所で効果が出ていますよ凄いでしょうというような説明(が一番やりやすいのでそうなるのは当然ちゃあ当然ですが)になっていて、ドヤァとアピールというのが味わいのあるレポートでございました。

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2013/10/30

○しつこくFSR

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023b.pdf(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023a.pdf(全文)

FSRは要旨だけ見てもまあ面白いのですが、基本的に全文を読まないと味わいが出てこないので、量が多そうに見えますが図表もかなり多いのでページ数ほどの文章量は無いですから全文読みを推奨します。

で、今日は『X.金融仲介機関に内在するリスク』から少々。

・前回ほどはクローズアップされていませんが・・・・・・・・・・

前回のFSRでは特に地域金融機関のうち相対的に規模の小さい金融機関などを念頭に置いたと思われる「経営基盤の改善」に関する話がドヤっとばかりに出ていてふーんと思ったのですが、今回のFSRではその辺の記載はソフトになりましたが、まあ銀行の信用コストに関する説明部分ではその手の話もありますなあという所で。

本文34ページ(PDFファイルの39枚目以降)『1.銀行・信用金庫』から。

『信用コスト・貸出債権の質』という小見出しの部分は以下の通り。

『2012 年度における金融機関(銀行・信用金庫)の信用リスク量(非期待損失)は、自己資本との対比で減少した12(図表V-1-1)。これは、貸出残高が前年を上回ったものの、資産内容の改善が続いていることや、業績不振の企業に対する金融機関の支援によりデフォルトの発生が抑制されていることによるものである。2012 年度の信用コスト率は、引き続き低水準となった(図表V-1-2、図表V-1-3)。不良債権比率は、信用金庫で、2008 年度以降、幾分上昇して推移しているが、大手行・地域銀行では低位で安定している(図表V-1-4)。』

うむ。

『もっとも、貸出債権の質については、業態や金融機関によってばらつきがみられる。企業向け貸出について、債務者区分別の構成をみると、大手行・地域銀行では、正常先の割合がリーマン・ショック後にいったん低下した後、直近にかけて以前の水準まで回復している(図表V-1-5)。信用金庫でも、正常先の割合が回復に転じているが、そのテンポは緩やかである。また、正常先債権の割合は金融機関間のばらつきが大きく、銀行、信用金庫のいずれについても、その割合が低位なまま改善が見られない先がある(図表V-1-6)。』

まあこの辺に関連して前回のFSRでは金融システムに関する今後の課題というような話を展開されていましてえーと思ったのですが、今回に関してはこういう感じでサラサラと記載されています。

『貸出債権の質にばらつきがみられる背景としては、中小企業の一部で厳しい財務状況が続いていることが挙げられる。リーマン・ショック時に、金融円滑化法や信用保証協会による緊急保証制度など中小企業の経営を金融面から支援する各種政策措置が採られた結果、中小企業の多くは、一時的に著しい経営悪化に陥りながらも事業の継続が可能となった。足もとでは、こうした下支えもあって多くの中小企業で業況は改善しており、信用保証協会の保証先の収益も2012 年度にかけて回復している(図表V-1-7)。もっとも、一部の先では業況は依然として厳しく、業績の低迷が続いている先も相応にみられている(図表V-1-8)。』

『こうした状況を踏まえて、金融機関は企業の経営改善に向けた取り組みを着実に進めてきている。金融機関は、経営改善計画の策定や金融面の支援に加え、前述の海外進出支援や、ビジネスマッチング、事業承継など、幅広い観点から企業を支援している。また、中小企業再生支援協議会など外部の専門家との連携や、事業再生を目的としたファンドの設立といった動きも広がっている。金融機関にとっては、こうした取り組みの実効性をさらに高めていくことが引き続き重要となっている。』

とまあこういう感じの流れでの記述になっていますなという所ですが、そうは言いましてもやはり貸出資産内容の改善が見られない金融機関も居ますよねというような記述はしっかり行われている訳でして、見た感じソフトにはなりましたが問題認識自体は継続していると見た方が良いのでしょうな、うんうん。


・海外貸出に関しては順調っぽい認識ですの

その次の『海外貸出の信用リスク』というのは本文36ページ(PDFファイルの41枚目)。

『邦銀は、大手行を中心に海外貸出を大幅に伸ばしているが、邦銀の国際業務部門における信用コスト率は、低下傾向が続いている(前掲図表V-1-2)。大手3グループにおける不良債権比率も、各地域において低水準となっている(図表V-1-9)。近年、伸長しているアジア向け貸出の信用コスト率をみても、各国で低位となっており、欧米の金融機関よりも低い水準にとどまっている(図表V-1-10)。この背景には、邦銀は海外貸出における案件の選別をある程度、慎重に行っていることがあると考えられる13。もっとも、国・地域によっては経済の減速感が強まっている点には注意する必要がある。』

うーむあっさり味。そらまあ現状がそうならこうなります罠。


・金利リスクの部分ではコア預金の説明が入っているのがオモシロス

『(2)金利リスク』の部分は例の金利がどうなって幾ら損失みたいな話ばかりがクローズアップされますがまずはその部分。本文39ページ(ファイルの44枚目)から。

『金利上昇時の債券時価損失』

『上述のとおり、金融機関では幅広い資産、負債が金利リスクを内包しているが、保有債券については、その評価損益が決算等での情報開示、配当可能利益の算定、自己資本比率の算定(国際統一基準行の場合)等に影響する15。こうした点を踏まえて、金利リスク量のうち、保有債券にかかる部分を取り出してみると、金融機関全体の金利リスク量は今年度入り後に大きく減少した。直近時点の100bpv は、大手行が2.9 兆円、地域銀行が3.2 兆円、信用金庫が1.9 兆円となっている16(図表V-1-15)。また、長期ゾーンの金利(10 年金利)が1%pt上昇し、短期ゾーンの金利はあまり上昇しないケース(スティープ化)を想定すると、大手行で1.4 兆円、地域銀行で2.1 兆円、信用金庫で1.5 兆円となっている(前掲図表V-1-11、前掲図表V-1-15)。大手行において、パラレルシフトとスティープ化の損失額の違いが大きいのは、大手行の保有債券が短中期ゾーンを中心としており、デュレーションが相対的に短いことによるものである。』

ということでまあここの部分が報道でネタになる部分ですな。まあ数字よりも「大手行での金利リスクが減少」というのがネタとしては大きめで、先ほどの信用コストの部分でも大手行の改善(および海外貸出の好調さ)が示されていて、大手行に関する資産の改善についての指摘が多いなあと思うのでありました。


まあそれよりもオモシロスだったのはコア預金に関する説明があった部分ですけど、今引用した部分の続きにこんなのが。

『資産・負債の満期構成と金利リスク量』

『金利リスク量の算定では、資産・負債の満期構成をどのように仮定するかという点が重要である。金融機関には、期限の定めのない資産・負債や、期前解約のある金融商品が少なからず存在しており、これらについて適切な想定を置いていく必要があるが、特に流動性預金の取扱いは重要である。』

キタコレ。

『上述の100bpvでは、流動性預金は、全て3 か月以内の短期調達と仮定している。しかし、実際には、流動性預金の相当部分は長期にわたって滞留し、その預金金利の変動も、市場金利に比べて小幅にとどまる。』

流動性預金に関しては、預金金利の変動が市場金利に比べて小幅に留まるという指摘(実際そうですが)は重要あるね。

『金利リスクの管理実務においては、こうした点を勘案して、流動性預金の一定部分を長期調達とみなす「コア預金」という考え方が存在する17。多くの金融機関は、流動性預金が増加するもとで、コア預金の考え方を取り入れたリスク管理を行っている(図表V-1-16)。この考え方のもとでは、負債デュレーションが長期化するため、資産・負債の期間ミスマッチは縮小し、算定される金利リスク量は小さくなる。』

キタコレ!

『わが国では、流動性預金の占めるウエイトが高く、この影響を考慮していくことは合理的である。他方、コア預金のデュレーションは、金融経済の動向次第で変動し得ることから、金融機関は金利環境や預金動向などを注視しつつ、適切に金利リスク管理を行っていく必要がある。』

まあ実際問題本格的な金融引き締めなんて今世紀に入ってから行われていないですし、前回の金融引き締め局面ではそもそも小口預金の金利は規制金利(MMCが自由金利)で、規制金利における一番長いのが3年物期日指定的預金だった訳ですから(ワイド金融債は東京銀行以外5年で定額郵貯が10年な)だった訳ですからして、実際問題としてどういう動きになるのかとか予想つけにくいにも程が有りますなと思いますです、はい。

まあそれは兎も角として、金融システムの課題ガーみたいな書きっぷりが相当ソフトになりましたね今回はというのが印象的なFSRではございましたと言う事で。

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2013/10/29

○ということでFSRネタの続きである

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023b.pdf(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023a.pdf(全文)

『W.金融資本市場から観察されるリスク』というコーナーがありましてですな。

『わが国の金融資本市場では、金利、株価、為替いずれの市場においても、今年度に入ってボラティリティが上昇する場面がみられたが、その後は、緩やかに低下している。本章では、量的・質的金融緩和導入後の金融資本市場の動向を概観したあと、国債、株式、為替の各市場からみたリスクの所在について点検する。』

ということで『2.国債市場からみたリスク』という所(本文24ページ、PDFで29枚目)ですけどね。

『ボラティリティとリスク・リバーサルの状況』

こらまた随分と高尚なお話を。

『国債市場では、ボラティリティ(MFIV:モデル・フリー・インプライド・ボラティリティ)は本年4 月に上昇した4(図表IV-2-1)。それ以降も、ボラティリティは高めの水準で推移していたが、このところ緩やかに低下している。もっとも、リスク・リバーサル(コール・オプションとプット・オプションのインプライド・ボラティリティの乖離幅)から投資家の先行きのリスク認識の偏りをみると、本年4 月以降、先行きの金利上昇への警戒感は続いている(図表IV-2-2)。』

ちなみにこのボラは債券先物を使っているのですが、先物オプションじゃなくて現物オプションの方が投資家動向という点では意味があるんじゃネーノとか、そもそも為替レートのように交換比率なものじゃない現物資産の場合は、原資産への投資に対するリスクアペタイトが価格上昇時と下落時では非対称になる(この点については後ほどのコラムでも似たような話がががが)のでリスク認識の偏りをリスクリバーサルで見るというのは為替の場合はアリだと思うのですが、現物資産の場合ってその部分の補正を掛けた方が良いのではないのかと思いますけど(もっと厳密に言えば為替レートについても単なる交換レートではなくて、ペア通貨のうち高金利通貨のロングの方がポジティブキャリーになりますけど金利差と価格変動のバランスから言ってまあ交換レートと言って問題ないでしょとかそういう話ですよね)どうなんでしょうかねえ。おじちゃん頭悪いからよくわかんないけど。

『以下では、長期金利に影響を与える各種の要因について点検する。まず、財政悪化懸念による金利上昇リスクについて、ソブリンCDS プレミアムをみると、足もとで目立った変化はなく、財政悪化懸念の高まりは特段窺われない(図表IV-2-3)。もっとも、国債市場における海外投資家の保有比率や売買比率は趨勢的に上昇しており、国債の安定消化という観点から、今後とも海外投資家の重要性は増していくと予想される(図表IV-2-4、図表IV-2-5)。このなかで、わが国財政状況への関心が高い海外投資家も少なくないことなどを踏まえれば、財政悪化懸念が金利に与える影響については、引き続き注意が必要である。』

まあこの辺はそういう話しかできません罠。

『次に、ファンダメンタルズの点から市場参加者の物価見通しをみると、サーベイ調査、BEI(ブレーク・イーブン・インフレーション:固定利付国債と物価連動国債の利回り差)のいずれからみても、予想物価上昇率は全体として上昇しているとみられる(図表IV-2-6、図表IV-2-7)。』

キタコレ。

『ただし、@物価連動国債は固定利付国債対比で市場流動性が低く、流動性プレミアムが上乗せされている可能性があること、Aサーベイ調査、BEI ともに先行きの消費税率を織り込む動きに影響されている可能性があること等から、幅を持って解釈する必要がある。』

BEIの場合は織り込む動きもへったくれも間接税動向がモロに反映しますがね。

でまあ異次元緩和で金利が低位になっています攻撃が本文27ページの辺りからになりまして・・・・・・・

『海外との関連では、米国をはじめとする諸外国の長期金利上昇も国内金利の上昇圧力となっているものと思われる。ここで、わが国の長期金利を、主成分分析により日米独英の4 か国共通な「グローバル要因」と「その他要因」への分解を行うと、足もとでは、「グローバル要因」の金利上昇圧力を、「その他要因」が打ち消すかたちで、長期金利が安定していることが示唆される(図表IV-2-8)。』

ちなみにこの本文は説明文もさることながら図表を見ないと面白くないのですが、図表の磔刑スキルは無いですしそもそも磔刑して良いのかどうかも微妙なのでまあ皆さん本文をちゃんとご覧になると宜しいかと存じます。でまあ図表を見ると更に分かりやすいのですがキタコレですなあ(^^)。

『前述のように、財政悪化懸念の高まりが窺われないなかで、国際的にみてもわが国の長期金利が安定しているのは、日本銀行による大量の国債買入れが実施されていることもあってボラティリティが落ち着きを取り戻しつつあることや、投資家の債券売却の一巡といった需給要因も影響していると考えられる5。』

ちなみに脚注5には『5 この間、日本銀行は国債買入れにおいて、1回当たりの買入れ額を小口化する一方でオペの回数を増やすなど、オペ運営面での工夫を行った。』と宣伝に余念がありません。

『投資家へのアンケートをみても、「海外金利」は、この間の海外金利上昇とともに、上昇方向への寄与が幾分高まっている一方、「短期金利/金融政策」や「債券需給」が引き続き金利低下要因となっている(図表IV-2-9)。』

ということでどう見てもQQEの効果発揮との見解(まあそうでしょうけど)です本当にカムサハムニダ。

しかしこの先の説明は微妙(^^)。ちなみに同じく本文27ページな。

『債券需給の観点から、投資家動向をみると、4 月には、主要な投資家である都市銀行の売却が目立ったが、その後は、都市銀行の売り越し幅は総じて縮小している(前掲図表III-3-5)。また、国内投資家の対外証券投資動向をみると、国内債から外債へのシフトといったリスク・テイクの動きは、海外金利のボラティリティの高まりもあって、今のところ概ね限定的である(前掲図表III-3-7)。こうした投資家の売買動向も国内長期金利が落ち着いている背景の一つと思われる。』

そ、それは「ポートフォリオリバランスが起きていない」という事になるのでネガる話ではないかと・・・・・・・

『もっとも、長期金利はいったん上昇すると、ボラティリティの高まりとこれを受けた債券の売り、金利の上昇といった連鎖が生じやすいことには注意が必要である(国債市場におけるボラティリティの非対称性はBOX を参照)。』


で、このBOXの所ですけど本文29ページにありまして・・・・・

『資産価格のボラティリティは、価格上昇局面よりも価格下落局面の方が大きくなりがちであるという意味で、非対称性を持つことが知られている。実際、長期金利の変化とボラティリティの関係をみると、金利上昇時(価格下落時)ほどボラティリティが大きくなるという非対称な関係が明確にみられる7(図表B-1)。』

『このような非対称性が生じる理由としては、投資家の損失回避行動や投資家の運用ルールが挙げられる。市場には債券を買い持ちしている投資家、売り持ちしている投資家の双方が存在するが、全体でみれば買い持ちの状態にある。』

ですなあ。

『債券を買い持ちしている投資家は、価格上昇時には債券を保有し続ける傾向にあるが、価格下落時においては、損失回避のために売却が起こりやすく、これがボラティリティを高める要因となる。また、「損失やリスク量が一定の範囲を超えるとポジションを落とす」といった投資家自身の運用ルールも、非対称性をもたらす要因の1 つと考えられる。』

という事で、まあそらそうよという説明になっていますが、要はマーケットがネットでロングポジションなのですからそら価格の上昇と下落ではマーケット全体として見た場合の損益状況が非対称だ罠ということで、債券現物のようにそもそもロングの方が本質的に有利(クーポン入るから)な商品の場合は特にそうなる罠という話ですよね。


で、実はさっきの債券市場ちゃんが息をしていないのネタが前振りになるのはこのコーナーの最後の部分でして、小見出しが『国債市場の流動性』キタコレという本文28ページ以降です。

『最後に、国債市場の流動性の状況を確認する。市場の流動性を評価するうえでは、いくつかの関連指標があるが、「これを見ればよい」という唯一の決定的な指標があるわけではない。そこで以下では市場流動性についての手掛かりを得る指標として、出来高、ビッド・アスク・スプレッド、値幅・出来高比率を示す6(図表IV-2-10)。』

で、この脚注6ですが、先般出ていました日銀レビューシリーズでして、

『6 ビッド・アスク・スプレッドとは、買い手が提示する価格と売り手が提示する価格の差である。値幅・出来高比率とは、日中の値幅を出来高で除したもの。なお、国債市場の流動性については、次の文献を参照。土川顕・西崎健司・八木智之、「国債市場の流動性に関連する諸指標」、日銀レビュー、2013-J-6、2013 年。』

モノはこちらですのでご参考までに。
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2013/data/rev13j06.pdf

『まず、出来高は、長期国債先物、10 年新発債ともに、4月の量的・質的金融緩和導入前後で、振れを伴いながらも増加したが、その後、減少する場面も見られた。ビッド・アスク・スプレッドは、長期国債先物については、量的・質的金融緩和導入後も目立った変化はないが、10 年新発債については、量的・質的金融緩和導入後に、若干拡大している様子が窺われる。』

ほうほうそれでそれで?

『ただし、過去の水準と比べて目立って拡がっているわけではない。値幅・出来高比率は、長期国債先物、10 年新発債ともに、4 月の量的・質的金融緩和導入後にいったん上昇する局面がみられたものの、その後は、緩やかに低下している。もっとも、長期国債先物については、量的・質的金融緩和導入前の水準には戻っていない。』

ふむ。

『以上の状況から、4 月の量的・質的金融緩和導入後、国債の流動性に関連した一部の指標が悪化したことが窺える。その後は、緩やかに回復しつつある指標が多いものの、今後の国債市場の流動性を巡る状況には引き続き注意が必要である。』

「一部の」指標が悪化してその後は「緩やかに回復」とはこれまたセカンダリーマーケットやってる人の体感からしたら何か違和感ねえかという気はするんだが、確かにまあ債券市場はOTCだし、単純に売買高というよりは本当の本当に重要な「流動性」というのは「大口執行が出来るのか」というか、まあもっと端的に言ってしまえば「ポジション(ポートフォリオ)の投げ踏みがどの程度円滑に行えるのか」という所でありまして、そーゆー点からしたら恐らく現状って別に投げ踏みを必要とするような相場環境じゃないから実害はないのですけれども、実際問題としてそれなりのポジションで投げ踏みを出来ますかという意味での流動性というのは多分QQE以前と対比してかなり悪化しているんじゃないのですかねえと思いますが、まあ正直これは定量化しろと言われても定量化できない話なのですよねえ。

でまあこの「定量化できない流動性」というのが実際問題としていざ鎌倉モードの時に一番重要になるのでございますが、まあ定量化できないからこういうレポートには書きにくい所でもありますので、別にレポートに書いて無くても認識して頂いているとは思いますのでそれならそれで良いのですけれども、その辺りの認識についてはある程度市場との共有化が必要ですよねと思いますのでよろしくお願い申し上げたい所ではありまする。

ということで、最後の市場流動性部分に対してはちょっとうーんとなってしまう(今申し上げたようにまあ書いていない部分で認識していれば良いのですけど)債券市場へのQQEの影響認識でございました。

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2013/10/28

○FSRから少々

上記の雑談がついつい無駄に長くなったのでこっちのネタががががが(汗)。

http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023b.pdf(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023a.pdf(全文)

・やはり前回あった『金融機関の経営課題』というのが無くなっている件

前回のFSRではまとめの部分で上記のようなコーナーがありまして、
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr130417b.pdf(前回FSRの要旨)

・収益力の向上
・自己資本基盤の強化
・リスク管理の実効性向上

ってなのがあって、そのうち収益力の向上という所では『・合併などを通じて経営効率の改善などを図ることも、収益力向上のためのひとつの選択肢。』というような事をしらっと記載していたのですが、今回のFSRでは金曜に申し上げたようにFSR要旨にも本文にもこの手の記述が無いのがほほーという事で。

いやまあだからどうしたと言われますと微妙に困りますが(^^)。


・QQEの効果が金融仲介機能に出てきているとな

まあどう読むのかというと難しいのですが、1回さらっと読むと今回のFSRは「QQEの効果が出てきていますよ」という話をしている部分が散見されるような印象を受けたのですがどうですかね。良く良く細かい計数を子細に観察するとまた結論が違うような気もせんでもないが・・・・・・・・・・

つまり、『V.金融仲介活動の点検−量的・質的金融緩和導入後の動向を中心に−』という部分が本文ですと9ページ(PDFだと14枚目)からはじまりますが・・・・・・・・

『1.企業・家計を取り巻く金融環境』

『今年度入り後の状況をみると、企業からみた金融機関の貸出態度は、「緩い」超幅がやや拡大した(図表III-1-1)。また、企業の資金調達コストは低下を続けている(図表III-1-2)。こうしたもとで、企業の資金調達残高は伸びを高めている(図表III-1-3)。5 月にかけて長期金利が小幅上昇したことを受けて、住宅ローン金利は一時上昇したものの、足もとにかけて低下に転じており、住宅ローン残高は相応の伸び率を維持している(図表III-1-4、図表III-1-5)。』(本文9ページ)

『3.金融仲介機関の資金運用の動向』

『金融機関(銀行・信用金庫)では、日本銀行による国債買入れが増加するなかで、国内債券の保有が大幅に減少している(図表III-3-1)。一方、大手行を中心に現預金(日銀当座預金など)が増加しているほか、貸出残高も伸びを高めている(図表III-3-2)。このように、資金運用の内訳に大きな変化が生じるもとで、資金運用残高は、全体として伸びを高めている。これは、現預金の増加ほどには国内債券が減っていないことや、国内貸出や海外資産といったその他の資産が増加していることによるものである。』(本文13ページ)

貸出が伸びたり海外資産が伸びたりしていていますかそうですか。


『4.金融機関の貸出と有価証券投資』

『金融機関の国内貸出残高は、伸び率を高めている(図表III-4-1)。本年8 月には、信用金庫の貸出残高は、3 年8 か月ぶりに前年を上回った。貸出先別の内訳をみると、大企業向けが伸びを高めているほか、中小企業向けもマイナス幅が縮小してきている(図表III-4-2 左図)。個人向けは高めの伸びを維持している。企業向け貸出を業種別にみると、東日本大震災以降、電力会社向けの貸出残高が増加しているほか、不動産業向け貸出残高もこのところ伸びを高めている(図表III-4-2 右図)。また、高い成長が見込まれる医療・福祉業に対する貸出残高も増加傾向にあるほか、本邦企業の海外企業買収や資源・エネルギーに関連した貸出も増加している。』(本文15ページ)

成長分野や海外投資に向けた貸出が増加していますかそうですか。

『金融機関の貸出が今年度入り後も伸びを高めている背景には、企業の資金需要と金融機関の融資姿勢、両方の要因がある。金融機関に対するアンケート調査から企業の資金需要を確認すると、大企業については「この3 か月間で増加した」とみる先が多い状況が続いている(図表III-4-3)。中小企業については、同「減少」とみる先が多かったが、ここにきて「増加」とみる先と「減少」とみる先がほぼ拮抗してきている。中小企業の資金需要は、総じてみるとなお弱めであるが、不動産業向けのほか、業況が上向いた先の設備投資、再生エネルギーや医療・福祉など成長分野への事業展開といった資金需要も、緩やかながら広がりがみられつつある。』(本文16ページ)

資金需要に活発化の兆候ですかそうですか。

・・・・・・とまあそんな感じで景気の良い説明が割と続く感じの説明文になっています(実際の数値を事細かに見て行くとまた別の話が出てくるようにも思えるが今日はそこはスルー)という所ですが、まあこの貸出に関する部分の纏めはこうなっていますので念の為。

『このように、企業の資金需要は、全体としては徐々に増加してきているが、まだ力強いものとはなっていない。これは、企業が、過去10 年程度にわたって、設備投資をキャッシュ・フローの範囲内にとどめる慎重な財務運営を続けており、この傾向がなお根強いためである(図表III-4-4 左図)。貸出残高と設備投資(対キャッシュ・フロー比率)の関係を推計してみても、キャッシュ・フロー対比でみた設備投資の低さが貸出残高の伸びを下押ししてきたとの見方と整合的な結果が得られている1(図表III-4-4 右図)。足もと、わが国の経済に前向きの動きがみられつつあるなかで、こうした傾向が今後どのように変化していくかが注目される。』(本文16〜17ページ)

有価証券投資についてはこんな感じ。

『(3)有価証券投資の動向』

『金融機関の有価証券投資動向をみると、国債を中心とする国内債投資は趨勢的に増加を続けてきたが、量的・質的金融緩和の導入以降、円金利の上昇リスクに対する意識が強まったことなどから、大手行では国債保有残高が減少した(図表III-4-15)。地域金融機関でも、国債の一段の積み増しに慎重な先がみられ始めており、国債保有残高の伸びが頭打ちとなっている。外国証券や投資信託など、円金利以外のリスク性資産への投資残高は増加傾向にあったが、このところの海外経済・金融資本市場の不透明感の高まりから、足もとは伸び悩んでいる。』(本文20ページ)

『金融機関の預金超過は、長期にわたる成長の停滞やデフレのもとで、家計や企業が資金の運用・調達面で、上述のようなリスク回避的な姿勢をとり続けてきたことによるものである。金融機関の有価証券投資、資産負債管理(ALM:Asset Liability Management)は、こうした環境を前提にして行われてきたと考えられる。もっとも、足もとでは、わが国経済に前向きな動きが広がるとともに、金融機関の貸出が増加している。また、第U章2 節でみたとおり、家計においても、投資信託などのリスク性資産の保有が幾分増加している。足もとのこうした変化は、まだ小幅なものであり、さらに持続性や広がりをもったものとなっていくかよくみていく必要があるが、そうしたもとで、今後、金融機関の有価証券投資にどのような変化が生じていくのか注目される。』(本文21〜22ページ)

さすがに貸し出しの方ほど景気の良い話をしている訳ではありませんな。


ということで、QQE以降の「金融仲介活動」の部分を超駆け足で引用しましたけれども、具体的な計数の話やら最後の方でちょっとしょぼーんとなる所などはございますが、前半の特に貸出に関する所のトーンが妙に明るいというか威勢の良い話になっているのはそらまあQQEの政策がこのように効果を発揮していますよ(キリッ)という説明をしたくなるでしょうからそうなる罠とは存じますが(^^)、こらまた威勢の良いトーンですなと思ったのでございましたとさ。

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2013/10/24

○金融システムレポートキタコレ:サマリーの書き方に変化がががが

こちらが大体エクゼクティブ・サマリーみたいなもん
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr131023.htm/
金融システムレポート(2013年10月号)

プレゼンテーション形式のまとめになっている「要旨」
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023b.pdf(重いので注意)

詳細説明つきの「全文」
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr131023a.pdf(さらに重いので注意)

#なお、全文、要旨ともに前回3月よりもファイル容量が5割増し位になっています。

ということで出たのが昨日の夕方で本文精読しているヒマ(と体力)が無かったのでとりあえず最初のHTMLの方を見て「あれなんか今回違うな」と思ったのですが・・・・・・・・


今回の金融システムレポート紹介ページ
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr131023.htm/(再掲)
金融システムレポート(2013年10月号)

前回の金融システムレポート紹介ページ
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr130417.htm/
金融システムレポート(2013年4月号)

これを比較して頂くと判るのですが、今回のFSRからこの紹介ページの章立てが変わっているのですよね。つまり、前回までは『金融システムの安定性確保に向けた課題』というのが入っていまして、まあ露骨には書いていないけれどもやれ株式リスク落とせだの収益力上げろだのという話が最後の所にあって、そこが結構なスペースを取っていたのですが、今回の章立てではその話は無くなっております。

つまり要旨部分でも同様で『金融システムの安定性確保に向けた課題』という記載が外されておりまして、もしかしてこれは異次元緩和政策の影響によるものではないか(異次元緩和でポートフォリオリバランスとか言っているのであまりそこでプルーデンスガチガチの話を前面に出すのも如何なものかという発想???)と勝手に妄想しましたがはてさてどうなんでございましょうかねえ(^^)。

なお、当然ながら冒頭の『金融システムの総合評価』というのがとにかく一番重要な結論ですのでここは押さえないと。

『わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。金融資本市場や金融機関行動において、過度な期待の強気化など、金融面の不均衡を示す動きは、現時点では観察されない。金融資本市場では、2013年度に入って各市場のボラティリティが高まったが、その大きさは、過去のストレス時に比べれば限定的なものにとどまっている。』

まあそうですな。

『金融機関(銀行・信用金庫)では、全体としてみると、規制上の自己資本比率、リスク量対比でみた自己資本、いずれの観点からも、資本基盤は充実しているとみられる。また、十分な資金流動性も確保されている。このため、大幅な景気後退や金利上昇など、さまざまな経済・金融面のショックに対しても、資本基盤、資金流動性の両面で、金融機関は相応に強いリスク耐性を備えている。』

ですです。

『金利が景気の改善を伴わずに大きく上昇する場合でも、金融システムは基本的に安定性を維持するとみられるが、金利上昇の背景や程度、速さによっては、想定を超えて影響が及ぶ可能性がある点には留意が必要である。』

つ鏡

『また、個別にみると、資本基盤が相対的に弱く、リーマン・ショック後の資産内容の回復が遅れている金融機関もみられる。こうした金融機関では、経済・金融面に大きなショックが生じた場合、自己資本比率が大きく低下する可能性があることから、着実に自己資本の強化に取り組んでいく必要がある。』

つ鏡

『金融仲介活動は、前回レポート時に比べて、より円滑に行われるようになっている。すなわち、量的・質的金融緩和の導入後、企業・家計を取り巻く金融環境は、より緩和的となっている。金融機関の貸出は徐々に伸びを高めているほか、社債やエクイティ調達など、金融資本市場を通じた金融仲介も活発になっている。』

まあ預金がもっと増えているんですけどね!!!!

『こうしたなか、金融機関の基礎的な収益力は、趨勢的な貸出利鞘の縮小などから、低下傾向に歯止めがかかっていない。これらは、現下の金融システム全体の安定性や仲介機能に影響するものではないが、中長期的には克服していくべき課題である。』

ということで、課題の部分を割とさらっと流しているなあという印象を受けまして、そういう意味ではリスクアセスメントを淡々と行っているというような感じでもあるのですが、全文精読して更に前回や前々回の内容と比較するという作業をまだ行っていませんのでそれはまた後日やるかも知れませんが、たぶん要旨部分をサラッとネタにして終了の悪寒も。


んーっとですね。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131024/t10015509031000.html
「金利1%上昇で7.9兆円損失」試算 10月24日 7時5分

もうこれお約束のニュースと化していますが、折角FSRで色々と分析しても結局このヘッドラインだけが走る格好になるので、この試算数値出すの止めたらとか思っちゃいますよ(まあFSRの仕様上出さない訳にもいかないから仕方ないけど)。

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2013/10/22

○さくらレポート関連である

総裁あいさつは
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2013/siten1310.htm/
ですけれどもこれはコピペみたいなもんで正直どうでも良いです。

で、さくらレポートですがご案内の通りで全地域上方修正キタコレであります。

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer131021.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer131021.htm/(本文、PDF59枚あるので注意)

以下、断りの無い限り(概要)から引用します。

・判断9地域上方修正ですかそうですか

『I. 地域からみた景気情勢』

『各地の景気情勢を前回(13年7月)と比較すると、国内需要が堅調に推移し、生産が緩やかに増加している中で、雇用・所得環境にも改善の動きがみられていることから、全地域で判断を引き上げる報告があった。各地域からの報告をみると、8地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「回復している」、「緩やかに回復している」等、北陸から、「着実に持ち直している」との報告があった。』

北陸以外が「回復」となという所ですが、前回が8地域(東北以外全部)上方修正で今回が9地域(つまり全部)上方修正ねえ。


・各需要項目に関連して

『公共投資は、各種経済対策の効果等から、3地域(北海道、東北、九州・沖縄)から、「大幅に増加している」、6地域(北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国)から、「増加している」、「増加傾向を維持している」との報告があった。』

公共投資の増加というのはまあ見事に即効性がありますなあという所です。

『設備投資は、4地域(北海道、東北、関東甲信越、東海)から、「増加している」、「緩やかに増加している」等、4地域(近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」等の報告があった。また、北陸からは「底堅く推移している」との報告があった。この間、企業の業況感については、多くの地域から、「改善している」等の報告があった。』

でまあ設備投資も堅調でして・・・・・・・・・・・

『個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられること等を背景に、6地域(北海道、北陸、東海、近畿、四国、九州・沖縄)から、「緩やかに持ち直している」、「持ち直しの動きがみられている」等の報告があったほか、関東甲信越から、「底堅さを増しており、都心部では強めの動きとなっている」との報告があった。また、東北、中国から、「底堅く推移している」との報告があった。』

ふーん都心部強めなんですかそうですかとじっと手を見る(吐息)というのは兎も角としまして、雇用所得環境改善で個人消費堅調とかもうキタコレで景気判断上方修正待ったなしといった風情でありまして、展望レポートでは(まあさすがに物価は上方修正しないと思いますが)GDP見通しに関しては先の所に関しては盛大に強そうなのが出て来そうですね!!!!!!

『大型小売店販売額をみると、百貨店は、多くの地域から、高額品の販売が堅調となっているなど、「持ち直しの動きが続いている」、「堅調に推移している」等の報告があった。スーパーは、一部の地域で、「弱めの動きが続いている」との報告があった一方、複数の地域から、「下げ止まりつつある」、「持ち直しの動きがみられている」との報告があった。』

今回の「地域の視点」はこの消費に関する話なのでオモロスですよ。

『乗用車販売は、新型車投入効果等を背景に、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。家電販売は、節電機能に優れた白物家電が堅調であること等を背景に、多くの地域から、「底堅い動きとなっている」、「下げ止まりつつある」等の報告があった。』

『旅行関連需要は、多くの地域から、「持ち直している」、「堅調に推移している」等の報告があった。この間、複数の地域で、外国人観光客が増加しているとの報告があった。』

ふーんという所ですが、何かこれって二極化傾向じゃネーノとか思うのは僻みですねそうですね(白目)。

『住宅投資は、7地域(東北、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)から、「増加している」、「緩やかに増加している」等の報告があった。また、北陸から、「着実に持ち直している」、北海道から、「緩やかに持ち直している」との報告があった。』

各項目絶好調ですな。

『生産(鉱工業生産)は、国内需要が堅調に推移しているほか、海外需要も持ち直しに向かっていることを背景に、4地域(北海道、北陸、近畿、九州・沖縄)から、「緩やかに増加している」等の報告があったほか、4地域(東北、関東甲信越、中国、四国)から、「持ち直している」等の報告があった。また、東海からは、「高めの水準で推移している」との報告があった。』

>海外需要も持ち直しに向かっていることを背景に
>海外需要も持ち直しに向かっていることを背景に
>海外需要も持ち直しに向かっていることを背景に

どう見ても好景気待ったなしです本当にカムサハムニダ。

『業種別の主な動きをみると、輸送機械は、「高操業を続けている」、「増加基調にある」等の報告があった。また、電子部品・デバイスは、「緩やかに持ち直している」等の報告があったほか、一般機械でも、「持ち直している」等の報告があった。鉄鋼は、「緩やかに増加している」等との報告があったほか、化学も、「増加している」等の報告があった。この間、金属製品について、「増加基調にある」等の報告があったほか、窯業・土石についても、「高水準の生産を続けている」との報告があった。』

そんなに製造業強いのかねと思うのですが、今回はまあ見事なまでに威勢の良い報告が連発です。

『雇用・所得動向は、多くの地域から、労働需給面が「緩やかに改善している」等の報告があったほか、雇用者所得についても、複数の地域から「持ち直しの動きがみられている」等の報告があった。』

前向きの循環メカニズムキタコレ!

『雇用情勢については、多くの地域から、「労働需給は緩やかに改善している」等の報告があった。雇用者所得は、四国、九州・沖縄から、「概ね横ばい圏内となっている」等の報告があった一方、4地域(北海道、関東甲信越、東海、近畿)から、賞与や所定外給与の増加等を背景に、「改善しつつある」、「持ち直しの動きがみられている」等の報告があった。』


ということでまあどう見ても強い話のオンパレードということで、海外経済の影響で2%物価目標の達成が困難になった場合にどうのこうのというような微妙なお話を副総裁が金曜に行っていたとは思えないような強い話のオンパレードとかそんなに強いのかよと不思議感は漂うのですが、まあこの調子ですと展望レポートの成長率見通し相当強いのが出てきそうですなあ。


・地域の視点は「消費動向」と「価格設定」なのですが・・・・・・・・・・

『II.地域の視点』のお題がまあ今回この手のが来るかと思ったら案の定来た『各地域における最近の消費行動の特徴と企業の販売・価格面での対応』という内容でありまふ。


『各地域における本年入り後の個人消費の動向をみると、引き続き弱めの地域があるものの、年央にかけての消費者マインド改善や足もと雇用・所得環境に改善の動きがみられるもとで、多くの地域では緩やかな持ち直し、または底堅い基調となっている。』

という景気の良い話ですが・・・・・・・・

『やや仔細にみると、地域間では幅があり、都心部や地方中核都市、生産・建設工事・国内外の観光客が増加している地域では、高額品・高付加価値サービスや旅行・外食等の選択的支出を中心に前向きな消費行動がみられている一方、引き続き動意に乏しい地域も残っている。また、企業からみると、商圏の特徴(人口・産業構造等)、事業内容(取扱商品・サービス)、販売戦略の違いによって、各社の販売地合いに大きな差がみられている。』

ということで綺麗に書いていますが、要するにこれはどう見ても二極化です本当にカムサハムニダ。

『最近の消費行動の特徴をみると、生活必需的な食品や日用品等の基礎的支出については、各地域とも総じて消費者の抑制的な支出スタンスが続いている。一方、高額品・高付加価値サービスや旅行・外食・耐久消費財等の選択的支出については、株価上昇等による資産効果や消費者マインドの改善等を背景に「商品・サービスへの選好を上方にシフトする動き」や、「趣味・嗜好品や非日常的なイベント・サービス(ハレ消費・コト消費)には支出を惜しまない動き」がみられており、メリハリを意識した消費行動が進展している。』

不肖このアタクシ不勉強にしてこの「コト消費」って初めて聞いたのですが、コトと言われるとコトメとかウトメとかそっちの方を連想するアタクシは小町脳ですねすいません。まあ何かの記念日とかに贅沢しましょって話ですかねえよー知らんけど。

それは兎も角として、これってアグリゲートすると確かに「基礎的支出は抑制してメリハリのついた選択的支出をします」って話ですけれども、しらっとそこに「株価上昇等による資産効果」という文言が入っておりますように、これまた個別の人々にブレークダウンした場合にはどう見ても二極化です本当にありがとうございましたという話ですねわかります。

『この間、地方圏の企業からは、高額品や高付加価値サービス等の品揃えが充実している都市圏への消費流出が強まっているとの声も聞かれている。』

・・・・・・・・・・・・・・二極化待ったなし!

『消費者属性別にみると、シニア層や富裕層では資産効果や企業業績の回復等を背景に、高額品・高付加価値サービスに対する消費を増やしている。シニア層では孫のための消費や家族3世代での旅行需要などもみられており、勤労者世帯の消費の下支えになっている状況もうかがわれる。』

ということで、この辺の詳細は本編の方にやや詳しいのがあるので、全文の方から見ますと・・・・・・・

本文11ページ(PDFファイルの13枚目)以降に記載があります。【シニア層・富裕層による高額消費】って所から引用しますと・・・・・・・・・

『・時間にも資産にも余裕のあるシニア層の旅行意欲はきわめて旺盛で、高単価なツアーやグレードの高い宿泊施設の利用が伸びている(札幌、函館、金沢、横浜、新潟、名古屋、京都、下関、高知、大分、鹿児島、本店<東京>)。

・シニア層は孫のためとなると支出を惜しまず、高単価の教育用品や玩具、節句商品等が売れている(札幌、名古屋、下関、福岡、鹿児島)。

・このところ3世代ないし祖父母と孫だけでの買い物や外食、旅行等が増加しており、シニア層が勤労者世帯の消費を下支えしている(札幌、新潟、広島、鹿児島、那覇)。

・会社経営者・役員や医師等の富裕層では、株価上昇等による資産効果を背景に、輸入車、高級時計、ブランドバッグ、宝飾品、美術品、呉服などの高額品消費を積極化している(多くの支店、本店)。

・富裕層・高所得者層の消費者マインドが改善するもとで、超高級品や以前よりも格上のブランドや商品を買い求める動きも少なくない(札幌、仙台、金沢、静岡、京都、大阪、神戸、広島、下関、福岡、本店<東京>)。

・業況が回復している建設業や不動産業経営者の消費意欲が旺盛(松山、高知、熊本)。』(この部分さくらレポート本文11ページから引用)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アタクシには関係ない話ですけどね!!


『勤労者世帯においても、夏季賞与や所定外給与の増加など所得面に改善の動きがみられる中で、衣料品における定価販売での購入や旅行・外食等の支出が増加しているほか、一部の都市圏においては先行きの所得増加等を見越してローンを利用した消費も増えつつあるなど、部分的に節約志向を緩和する動きもみられている。』

そ、そうなのかと思って本文にあります報告を拝見。

『【高額品】富裕層以外にも、40〜50 代のサラリーマン層が、輸入ブランド衣料品や高級腕時計を購入するケースが広がるなど、贅沢を我慢してきた層が支出を増やしている(横浜)。独身男性・サラリーマンが、先行きの所得増加を見越して高級腕時計・高級車購入時にローンを組むケースが増加している(金沢、横浜、本店<千葉、東京>)。

【衣料品】婦人服を中心にクリアランスセール開催時でも定価販売が増加(仙台、名古屋、高知、大分、長崎、鹿児島)。以前に比べ購入点数が増加しており、主力の衣料品だけでなく、アクセサリーやバッグ等の身の回り品・雑貨等を「ついで買い」する動きがみられる(高松、高知)。

【自動車】消費者マインドの改善を背景に、希望ナンバー申請やオプション追加が増加している(本店<東京>)。』(この部分さくらレポート本文11ページから引用)

引用していて目から汗がががががが。

『【旅行】旅行者数が増加しており、これまで旅行支出を控えていた層の需要回復がみられている(秋田、大阪、高松)。最近は若い女性やファミリー層が外食や旅行の機会を増やしている(神戸)。

【外食】今年度入り後、客数がリーマンショック前の水準にまで回復(松山)。レストラン利用時にドリンクやサイドメニューの注文が増えるなど客単価が回復(名古屋、松山、長崎)。一部の顧客層で、時間外労働の増加など雇用・所得環境の改善を受けて外食利用頻度が増加している(釧路、熊本、本店<栃木>)。

【観光施設】消費者マインド改善を背景に、今夏の来場客数は過去最高水準となった(大阪、本店<千葉>)。来場客の滞在時間も長くなっており、飲食・物販も含めた客単価が上昇(長崎)。

【ゴルフ場運営】若年層やビジター層を中心に新規入会が増加しているほか、休会や退会の相談も減少(神戸、松山)。

【フィットネスクラブ・学習塾】消費者マインドが改善する中、各種有料レッスンやキッズ向けの利用が増加しており、多少高くても価値を見出せるサービスには支出を惜しまない傾向(松山、本店<東京>)。』(この部分さくらレポート本文11ページから引用)

おいこの商品のパッケージのグラム数が減ってるじゃねえかとかロースカツ弁当の販売が無くなってヒレカツ弁当に代わったけどどうせこれ成型肉だろ言ってるあたくしにはどうもピンと来ない話ですががががが。


『また、働く女性の増加や労働参加率の上昇などを背景に、消費主体として女性の存在感が高まっているとの声も聞かれている。』

そうなんすか。ちなみに女性の消費拡大に関する事案はこんな感じ。

『・晩婚化や結婚後も働き続ける女性の増加等を背景に、女性の所得や貯蓄は増加しているとみられ、足もとは景気回復ムードの強まりもあって消費を活発化させている(京都、高松)。また、自己啓発や、家事代行など生活関連サービスの需要が増加(本店<東京>)。

・女性の労働参加率が上昇する中、特に中高年女性において、高額化粧品の購入や高価格帯のツアー・ホテルを積極利用する動きなど、モノ・コト両面で消費が活発化(札幌)。

・軽自動車等からの買い替えも含め、女性が輸入車を積極購入する動きや、自動車購入者に占める女性比率の高まりがみられる(札幌、松本、松江、高松、大分、本店<東京>)。

・高単価な一眼レフカメラを購入する女性が増加(長崎、水戸)。

・ボーナスの増加もあってか、20〜30 代の女性がワンランク上の価格帯の衣料品・雑貨を日頃のご褒美として購入するケースが増加(高松)。

・バブル時代を経験している40〜50 代の女性の衣料品等の購買意欲がこのところ旺盛(横浜)。

・映画やアミューズメントが盛況なほか、女性を中心に観劇やエステ、料理教室の需要が急増するなど、消費者マインドが改善するもとで余暇や娯楽に対する支出を積極化する動きがみられる(前橋、横浜、福岡、本店<埼玉、東京>)。』(この部分さくらレポート本文12ページから引用)

うーむそうなのですかねえ。どうも個人的な印象と整合性が取れないのですけれどもこうだって言うんですからこうなんですかねえ。



で、引用が多くて長くなったので消費行動の部分はこの辺にしまして価格設定に関する話の方に飛びますと・・・・・・・・・・

『原材料や製商品の仕入価格が上昇している企業の価格設定行動をみると、市場の競合状況やブランド力によって、対応に大きな差がある。ブランド力のある趣味・嗜好品や高付加価値化を伴った商品・サービス等の値上げは、消費者段階まで波及しつつあり、高付加価値品については値上げが受け入れられやすい環境になりつつあるとの声が聞かれている。この間、一部の観光ホテル等では、国内外の観光客増加による需給バランス改善を受け、客室単価を引き上げる動きもみられている。』

『一方、消費者の低価格志向が根強い商品・サービス等では、トップブランドが値上げを率先している一部の加工食品等を除き、他社との競合が激しく、仕入価格の上昇を販売価格に転嫁できないとの声が多い。このため、小売業では、内容量を減らして価格を据え置く「実質値上げ」や、セール対象品目・頻度の見直し、商品構成の見直し(PB商品・高付加価値品の充実)等で採算を維持しようとする先が多い。中には、値上がりしている商品を敢えて特売品にすることで、集客を図っている先もみられる。また、価格交渉力の弱い中小食品製造業や飲食店等では、仕入先や原材料の見直し等のコスト削減努力を続けているが、「企業努力の限界」に来ているとの声も聞かれている。』

どう見ても二極化です本当にありがとうございましたという所ですが、「小売業では、内容量を減らして価格を据え置く「実質値上げ」」ってのは第二種兼業主夫であります所のアタクシが最近見てて特に思う所で、暫く前に結構全体的な価格設定の上昇傾向が見られたのですが、最近は「量や質を落として再度販売単価を下げる」という動きが顕著にみられるように存じますがどうでしょうかねえ。

基礎的支出に関わる部分で実質値上げと言っても結局販売単価を抑えるという価格設定行動になっているという事は、それって何かあまり景気の良い話では無いと思うのですけれども本当に前向きの循環でトリクルダウンするのかよと思っちゃいますけどねえ、などと辛気臭い話をしてはいけませんかそうですか。

で、結論。

『先行きの個人消費は、当面は現状の基調が続き、今年度末にかけて消費増税前の駆け込み需要が消費の押し上げに働くとみる企業が多い。もっとも、地方公務員の給与減額や企業の撤退等の影響が懸念される地域があるほか、来年度以降については駆け込み需要の反動減の大きさなど現時点では見極め難い要素が多い。このため、消費の持続性は、来春の賃金引き上げなど雇用・所得環境の改善に依るところが大きいとの声が大勢となっている。』

まあそういう話ですな。

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2013/10/18

○中央清算機関に関するバーゼルによる情報開示テンプレとな

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/rel131017i.htm/
BIS支払・決済システム委員会と証券監督者国際機構代表理事会による市中協議報告書
「清算機関のための定量的な情報開示基準」の公表について

ということで、カバーノートの邦訳(仮訳)をちょっと拝読。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/data/rel131017i2.pdf

『CPSS-IOSCO「金融市場インフラのための原則」(以下「FMI原則」)は、金融市場インフラ(FMI)に対し、その参加者や関係当局、幅広い公衆に対して、関連情報を提供することを求めている。FMI原則を遵守するにあたりFMIに期待されている情報開示内容の重要な構成要素として、CPSSおよびIOSCOは本日、「清算機関(CCP)のための定量的な情報開示基準」と題する市中協議報告書を公表し、市中コメントを募集する。これは、2012年12月にCPSSおよびIOSCOが公表した「金融市場インフラのための原則:情報開示の枠組みと評価方法」(以下「情報開示の枠組み」)を補完するものである。』

という事で中央清算機関の情報開示基準云々という話で、あたくし不勉強につきこの辺の話を通常フォローしている訳では無いので何ですが(汗)。

『2012 年4 月に公表された、CPSS-IOSCO「金融市場インフラのための原則」の原則23 は、FMIに対して、最低限、取引の件数や金額に関する「基礎的なデータ」を開示することを求めている。原則23 はまた、FMI にその財務状況、潜在的な損失に耐えるための財務資源、決済の適時性および他の業務遂行状況の統計といったデータを開示することを求めている。FMI は、参加者および将来の参加者が当該システムに参加することのリスクを十分理解するために十分な情報を開示しなければならない。こうした情報開示は、参加者向けに限られるのではなく、公衆向けに行われることが期待される。』

つーことで中央清算機関の財務状況をグローバルに一定のテンプレで公表しましょうという話で、これはこれで判るのですが、リーマンショック時に決済関連で混乱が生じた際に起きた問題として、破産法制が(当然ちゃあ当然だが)国によって違いまして、クロスボーダーの取引だとISDAのマスターアグリーメントがあるから逆に分かりやすいのですが、ドメ取引の場合に拠点によって決済処理の仕方がワケワカランチ会長ということで、何か微妙に「で、この取引は個別清算できるのかできないのか」というのがジャパンの場合は暫く止まっていたりしてましたな。これが一国で閉じている主体だったら特段問題も無いのかも知れませんが、拠点ごとに扱いが違ってくる場合の整合性ってどうよとかゆー話になると中々複雑になりそうな気もする次第。

#まあ日本の場合はそもそも金融取引の新しいモノが入った時に既存法制や税制との折り合いをつけるためにややこしい建付けにしているもの(代表的なのはレポですが)があって、これが破産法制との折り合い的にどうよというのがあったりするし、金融取引に関する未清算取引の法的な扱いについても解釈が微妙(判例がそんなに多くないですし)というのもありますから更にヤヤコシヤなのだが

つーことで、まあその点は別の所で当然の如く議論になっている話ではあるのですが、金融取引における破産法制の国際的な整合性をクロスボーダーだけではなくてドメ部分でもある程度整合的になっていくようにしないと、グローバル展開をしている企業が飛んだ場合の処理がサクサクと進まない可能性はあるんじゃネーノとかそんな事を考えてしまいました。つーてもその辺の法制で海外との整合性云々って一番折り合いがつかなさそうな話なので難しいでしょうけどね。

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2013/10/14

○10月金融経済月報である

ということで1週間放置状態でした(汗)。
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1310.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2013/gp1309.pdf(前回)

大体声明文と同じ感じなんですけどね。

・現状判断

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(前回)

総括判断は同じですが、総裁会見での説明はやたらと威勢が良かったのはご案内の通り。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(前回)

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。』(前回)

つーことでこの辺も声明文と同じですが、設備投資と住宅投資を引き上げて、海外経済、公共投資は判断同じです。

『個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は、改善を続けている。』(今回)
『個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

個人消費の所の前向き循環メカニズム攻撃も同じですな。企業の業況感についての言及が入るのは短観の直後に行われるMPMの仕様です。


・先行き見通し

先行き見通しは声明文より月報の方が若干詳しいアルね。

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復を続けていくとみられる。』(前回)

『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出は、海外経済の持ち直しなどを背景に、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

とまあこの辺は同じで、今回表現が変わったのは次の部分。

『国内需要については、公共投資や住宅投資は増加傾向を続けるとみられる。』(今回)
『国内需要については、公共投資が各種経済対策の効果から引き続き増加傾向をたどり、住宅投資も増加していくとみられる。』(前回)

えーっと、今回「表現がすっきりした」のですが、通常表現がすっきりするのは先行き見通しの確信度が高まった時に使う手法ですけど、今回はモノが「公共投資」なので各種経済対策の効果云々という文言を外したのも何かほえーという感じですが、消費税増税が決まったので公共投資が出るでしょうという予想になって、それ自体が「経済対策」とは違いますがな的な認識を示したのでしょうかとか悩んでしまいますが、まあ恐らくこの「各種経済対策の効果から」という表現がうっとおしいのでどさくさに紛れて外して、外すタイミングとして消費税キタコレという事だったのかもしれません。

『設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(今回)

『設備投資は、企業収益が改善を続けるなかで、緩やかな増加基調をたどると予想される。個人消費も、雇用・所得環境の改善に支えられて、引き続き底堅く推移するとみられる。こうしたもとで、鉱工業生産は緩やかな増加を続けると考えられる。』(前回)

とまあ先行きはさっきの所以外盛大に全文一致でござるの巻。


・リスク要因、物価

これがまた見事に全文一致。

『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『この間、世界経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

まあ相変わらずこれだけです。

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市況や為替相場の動きを背景に、緩やかに上昇している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

予想物価上昇率に関しては月報本文で相変わらず『この間、予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる(図表33)。』(月報本文17ページより)といつものあっさり味の説明しかないのですが、ESPフォーキャストとか5年物物価連動国債BEIとかはこの間上昇しておりましたので良かったですね(棒読み)と申しておきましょう。なお、その後の10年新発物価連動国債の発行時点のBEIは強い入札ではありましたが1%だったのは2年で2%達成に対してむにゃむにゃなどと言わないのが大人のたしなみ。


・金融環境

最早面倒になってきたので今回分の引用だけ。金融市況に関する部分で(相場水準が違っているから当たりマエケンだが)表現が前回と異なっていますがキニシナイ。

『わが国の金融環境は、緩和した状態にある。』(今回、以下も今回分です)

『マネタリーベースは、日本銀行による資産買入れが進捗するなか、大幅に増加しており、前年比は4割台半ばの伸びとなっている。』

『企業の資金調達コストは低水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加している。』

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、プラスとなっている。企業の資金繰りは、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックの前年比は、3%台後半の伸びとなっている。』

『金融市況をみると、短期金融市場では、オーバーナイト物コールレート(加重平均値)は0.1%を下回る水準で推移しており、ターム物金利はやや弱含んでいる。前月と比べ、円の対ドル相場は上昇している一方、長期金利は低下している。この間、株価は前月と概ね同じ水準となっている。』(今回)


・本文でちょっとオモロイのがあったのでおまけ

本文の説明部分で物価動向に関する現状認識がありまして、その所での説明を読んでてほほうと思ったのでおまけに引用です。ちなみに本文16ページの頭からになりまして、PDFファイルだと18枚目からになります。

『消費者物価の前年比上昇率がこのところ幾分拡大している背景をみると、公共料金については、各社の値上げや為替相場動向を反映した燃料コストの上昇を受けて、電気代が大きく上昇していることの影響が大きい。財については、前年の反動もあって、石油製品がプラス寄与をはっきりと拡大していることが大きく影響している。』

どう見てもコストプッシュです本当にカムサハムニダ。

『ただし、それに加えて、個人消費が底堅く推移するもとで、一部には為替相場の動向を受けたコスト高を転嫁する動きもあって、耐久消費財、食料工業製品、その他財などで、マイナス幅が縮小、ないし小幅のプラスに転じる動きが徐々に広がりつつあることも、財全体の押し上げに働いている。』

>一部には為替相場の動向を受けたコスト高を転嫁する動きもあって
>一部には為替相場の動向を受けたコスト高を転嫁する動きもあって
>一部には為替相場の動向を受けたコスト高を転嫁する動きもあって
>一部には為替相場の動向を受けたコスト高を転嫁する動きもあって
>一部には為替相場の動向を受けたコスト高を転嫁する動きもあって

・・・・・・・・・おうおう(^^)。

えーっとですね、黒田総裁はMPM後の定例会見で消費者物価についてこういう説明をしていたんですよね。

『消費者物価の動きについては、先程申し上げたように、6 月にプラスになり、徐々にプラス幅を拡大しており、基本的に、こうした傾向は続いていくと思います。ただ、毎月毎月の数字は色々な要素で影響されますので、一本調子に上昇率が高まっていくと決めつけることはできないと思います。基本的には、足許の上昇の状況をみると、確かに、エネルギー価格や電力料金の上昇が1 つの要因になっていることは事実ですが、他方、食品その他の様々な消費財価格の下落幅も徐々に縮小してきています。現に、食料・エネルギーを除く消費者物価指数でみても、マイナス幅が徐々に縮小してきています。そういう意味で、全般的に需給が次第にタイトになる中で、価格転嫁が進みつつあり、幅広い品目で物価を巡る環境の改善が起こっています。そうした傾向は、今後とも続いていくし、さらに強まっていくだろうと思っています。』(10月4日黒田総裁記者会見から)

まあ世の中物は言いようという言葉もございまして、確かに今回の金融経済月報では国内の需給環境(ちなみに今引用している部分の直後に該当します。本文16ページ後半っす)について供給超ではあるものの、その幅が縮小しており、販売価格判断DIでは輸入コストの転嫁が見られて上昇しているという認識が示されているので、まあそういう文脈で読めば確かに月報と同じ話をしているっちゃあしているのですけれども、月報の説明だとどう見てもただの輸入価格ドリブンの上昇にしか見えないのを、黒田さんの説明だとあたかも需給ギャップ改善によって物価が上昇しているのが主因であるかのような言い方になっているというのが何ともお洒落としか申し上げようがありません。

まあ何ですな、これが作文恐るべしという所なのですが、月報の方での説明だと「輸入価格ドリブン」となっているものをそのまま説明しても芸が無いどころかその物価上昇は誰得物価上昇なのでしょうと言われますからして、説明用になった場合には需給ギャップが改善傾向にあるというのを前面に出して臨むと、物は言いような能力の秀逸さに対して、ついつい素直にぶっちゃけてしまって身も蓋もなくなるというのを仕様にしておりますアタクシなんぞは爪の垢でも煎じて飲みたい所ではございまする。

などと微妙に褒めたつもりでイヤミを言ってますが、月報での物価および需給ギャップに関する説明が以下続きますので引用しておきますね。

『この間、一般サービスについては、ウエイトの高い家賃が弱めの動きを続けているため、全体の改善は明確ではないが、外食が小幅のプラスに転じているほか、他のサービスも、振れを伴いつつ、一頃に比べてマイナス幅が縮小傾向にある。』

もうこうなったら帰属家賃無理矢理引上げるしかありませんね(違)。

『国内の需給環境について、9月短観をみると(図表32)、国内での製商品・サービス需給判断DIは、6月短観に引き続き、製造業・非製造業、大企業・中小企業の区分にかかわらず、「供給超過」超幅が縮小した。』

つまり需給ギャップ改善と。

『販売価格判断DIについては、輸入コスト上昇分を価格に転嫁する動きが引き続きみられたこともあって、非製造業大企業では2008 年9月以来、5年振りに「上昇」超に転じたほか、非製造業中小企業および製造業でも「下落」超幅が縮小を続けた。』

>輸入コスト上昇分を価格に転嫁する動きが引き続きみられたこともあって
>輸入コスト上昇分を価格に転嫁する動きが引き続きみられたこともあって
>輸入コスト上昇分を価格に転嫁する動きが引き続きみられたこともあって

価格設定行動の強気化ではなくて単に止むに止まれる攻撃にしか見えませんけどにゃあ。

『この間、生産・営業用設備判断DIと雇用人員判断DIの加重平均である短観加重平均DIは、緩やかな改善を続けており、先行きも一段の改善が見込まれている。』

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2013/10/10

○9月議事要旨と申しましても日本のMPM議事要旨から少々

10月月報ネタをするつもりだったのですが味わいがあるので9月MPM議事要旨を先にお送りいたします(^^)。

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130905.pdf

・前向きの循環メカニズムに関する見解の相違

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の部分で実にこう味わいというか香りの高い箇所がありましてその深い味わい(勝手にそう解釈しているだけですが)に感動したのでまずはそこから。

最初に海外経済に関する議論の概要がありまして、その後国内に関する議論の概要があるんですけれども、議事要旨本文8ページ(PDFファイルで10ページ)からです。

『以上の海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』

ということではじまりはじまり。

『わが国の景気について、委員は、企業部門において収益の改善が設備投資にプラスに作用しており、家計部門においても雇用・所得環境の改善の動きが個人消費を支える要因となるなど、企業・家計の両部門で所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第にしっかりと働いてきていると述べた。こうした認識を踏まえ、委員は、先月の「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」へと判断を前進させることが適当であるとの見方で一致した。』

一見するとふーんと流しそうな箇所なのですが、あたしゃこの中の前半の文章の締めが「述べた」となっている所に全力で反応してしまい、「述べた」って何だよそれと思い直近の議事要旨での表現を確認するのでした。

8月会合議事要旨から。
『わが国の景気について、委員は、国内需要の底堅さに輸出の持ち直しも加わって経済活動の水準が緩やかに高まる中で、所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第に働き始めているとみられることから、緩やかに回復しつつあるとの見方で一致した。』

7月会合議事要旨から。
『わが国の景気について、大方の委員は、国内需要の底堅さに輸出の持ち直しも加わって経済活動の水準が緩やかに高まる中で、企業部門において所得から支出へという前向きの循環メカニズムが次第に働き始めているとみられることから、緩やかに回復しつつあるとの認識を示した。』

ということで、普通この部分の表現は「委員は何ちゃらとみられることからこういう認識を示した(とか見方で一致した)」という風な書き方をしていて、まあこれはこれで日本語マジックでありまして、前半の「〜とみられる」という部分について実は全員が一致なり認識を共有しているのかというと表現的にどっちとも取れる(一致したのは声明文に掲載するという意味での景気判断の文言であると読めるので)のようになっておりますが、今回の議事要旨ではこの最初の文章が「〜と述べた。」という表現になっているのがちょっと違うというか、読んでて盛大に引っ掛かったので過去の議事要旨に戻って確認した次第なのです。

つまりですな、今回に関しては「前向きの循環メカニズムが次第にしっかりと働いてきている」という認識に関して「〜とみられる」とか「〜との認識を共有した」という文章構成にしていないのは、「いやちょっと待てその判断は早計過ぎる」という認識をそれなりに強く示した政策委員の方がもしかしたら複数おいでになっていて、その結果こういうちょっといつもと違う違和感のある表現になったのかと思うのですよ。だって今回の表現だと前向きの循環メカニズム云々の所は別に一致したとかそういう風になっていないのが明確に判るような文章の書き方になっていて、一致したのは「景気判断の文言前進」であるというのが判るようになっていますからね!!

・・・・・・・とまあ勝手に長々と俺様解釈をしてしまいましたが、実際にどうなのかはその場にいた人じゃないと判らないですのであくまでもこれはアタクシの俺様解釈である点念の為申し添えます。


でまあその続きから。

『何人かの委員は、前回会合以降公表された経済指標は、総じて良好であり、経済全般にわたり上向きのモメンタムがみられているなど、生産・所得・支出の好循環メカニズムが着実に機能していると述べた。ある委員は、輸出の回復力の弱さや製造業の活動水準が低めであることはやや気がかりとしつつも、2四半期連続で高い成長率となる可能性が高いことから、景気判断を進めることに同意した。』

まあ何ですな、実はさっきの俺様解釈で頭を捻らなくてもこちらで「前向きの循環メカニズムが確りとというのは如何なものかと思うが景気判断の前進だけは勘弁してやるか」という委員が1名(何となく誰かの想像がつかないでも無い^^)は居ることが確認される訳ですが、ただまあ1名だけの反対だったら「認識を概ね共有」みたいな書き方になると思うので、さすがに前向きの循環メカニズム強調攻撃に関しては如何なものかという認識が他の委員からも示されたんじゃネーノという気はします。


・雇用所得、個人消費に関して

でまあその前向き循環メカニズムの環境に関する部分から。

『雇用・所得環境について、委員は、労働需給の緩やかな改善が続き、雇用者所得にも持ち直しの動きがみられているとの認識を共有した。』

ふむ。

『何人かの委員は、6〜7月の特別給与は明確に増加しており、一人当たり名目賃金も下げ止まりつつあると指摘したうえで、家計部門でも所得から支出へという前向きな循環メカニズムが働いてきていると述べた。』

何人かの委員ですかそうですか。

『個人消費について、委員は、雇用・所得環境に改善の動きがみられる中で、引き続き底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ふむ。

『ある委員は、完全失業率が低下するもとで、労働市場における需給バランスが改善していることに加え、企業収益も増加していることから、雇用・所得の改善は当面持続すると期待できると述べた。そのうえで、こうした動きは、恒常的な所得見通しの改善というファンダメンタルズ要因から、堅調な個人消費を支えていくとみられると付け加えた。』

普通は「述べた」という表現を使う時には「ある委員は」とか「複数の委員は」というような主語になりまして「委員は」という政策委員会をアグリゲートした主語を使ったケースってあまり見た記憶が無いのでまあさっきの所は盛大に引っ掛かったんですよね。

『別のある委員は、個人消費はこれまで株高による資産効果を背景に増加してきたが、最近ではこうした効果が低下しており、回復の持続性について注視する必要があると指摘した。』

ということで、消費の堅調さについて「前向きの循環メカニズム」と評価する委員がいる一方で、別の委員は「資産効果を背景にしたもの」という指摘をしていまして、まあそもそもここの部分をどう解釈するのかというのは根本的な部分になりますので、さらっと記述されていますが超重要な論点ではないかと愚考致します。

『住宅投資について、委員は、持ち直しが明確になっているとの認識で一致した。鉱工業生産について、委員は、こうした内外需要を反映して、緩やかに増加しているとの見方を共有した。』


・景気回復の持続性とか需給ギャップの縮小について

さらにその続き。

『こうした議論を踏まえ、何人かの委員は、今次局面での景気回復パターンは、従来の輸出を主導とした製造業中心の回復とは異なり、個人消費を主導とした非製造業中心の回復であると述べた。このうちの一人の委員は、「緩やかに回復している」と過去に判断していた複数の局面と比べ、鉱工業生産指数の水準は低いものの、第3次産業活動指数の水準はかなり高いと付け加えた。』

『そのうえで、委員は、景気回復のパターンは異なっているとしても、2四半期連続で潜在成長率を上回る高い経済成長が続く見込みであることを踏まえると、需給ギャップは着実に縮小しているとの認識を共有した。』

『この間、何人かの委員は、先行きの生産・所得・支出の好循環がさらにしっかりとしたものになるためには、輸出や設備投資を主導とした製造業の回復を伴うことが重要になると述べた。』

ということで、こちらでも製造業の回復が必須と見る向きと、製造業がやや弱めでも行けるんじゃないかと見る向きがあるようで、結構この辺は見解が割れているように見えますな。まあ製造業の回復が伴うのが必須とあたくしも思いますが。


・物価について

以下物価に関して。

『物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっており、先行きはプラス幅を次第に拡大していくとの見方で一致した。多くの委員は、足もとの消費者物価の動きには、エネルギー関連の押し上げだけでなく、幅広い品目に改善の動きがみられたことが影響しているとの見方を示した。』

ほほう。

『複数の委員は、個人消費の底堅さを背景に、企業が高付加価値品を投入する動きや積極的な価格設定行動がみられるなど、物価にプラスの影響が出ていると述べた。』

うーんこれは微妙じゃないかなあ。

『これに対しある委員は、消費者物価の前年比プラス幅は、前年のエネルギー価格下落の反動などが剥落するため、今後、拡大が一服する可能性があるとの認識を示した。』

さいですな。

『一人の委員は、雇用者所得の伸びは消費者物価上昇率を上回っていることから、物価が上昇するもとでも、実質所得は増加していると指摘した。』

そ、そうなのか・・・・・・・・・・・・とじっと手を見るあたくしorzorzorzorz

『別の一人の委員は、先行きの物価動向を判断する際には、所定内給与の動きが重要であると指摘したうえで、来年の春闘の状況について注視したいと述べた。』

ですなあ。まあ消費税上がるからせめてその分を幾らかは反映されると思いますが(根拠無)。

『ある委員は、世界的なディスインフレ傾向に改善の兆しがみられない中で、日本の物価が国内独自の要因で伸び率を高めていくかどうか注視しているとの見方を示した。』

毎回この指摘がありまして、今回は引用を割愛していますが海外経済に関する議論の中でも同じ人だと思われますが、世界的なディスインフレ傾向の中で特に米国に関してインフレ期待が低下するリスクについて指摘している部分もこれまた今回もございますが、これ1名しか指摘して無いってのも何だかなあと思うのですけど・・・・・・・・・・

『予想物価上昇率について、委員は、家計やエコノミスト、市場参加者に対する調査なども踏まえると、全体として上昇しているとみられるとの認識を共有した。』

ふーん。

『ある委員は、予想物価上昇率が緩やかに上昇していくもとで、企業が販売価格を引き上げる環境が整いつつあるかという点が重要であると述べた。予想物価上昇率の解釈について、別のある委員は、消費税率引き上げの蓋然性に対する認識の影響を識別することは難しいことに留意する必要があるとの見方を示した。』

でまあ企業の販売価格引き上げ云々に関しては確かに春先とかは上昇の香りも感じたのですが、最近何かちと違うんでネーノというのはあくまでも超個人的感想です。


ということで、9月は「前向きの循環メカニズム」を会見で連呼するわ声明文でも「雇用・所得環境に改善の動きがみられる」という表現が入るわで、大変に景気認識が強くなったMPMだったのですが、その中ではまあ「ちょっとそれはどうか」という議論も実は混じっているな、という風に読み取りましたけれどもどうでしょうか????というのが今回のMPM議事要旨読書の結果でありまする。

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2013/10/07

○決定会合声明文は引き続き順調との認識

まあそうなります罠という所ですが。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k131004a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2013/k130905a.pdf(前回)

・現状認識では設備投資と住宅投資を引き上げ

『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(今回)
『わが国の景気は、緩やかに回復している。』(前回)

ということで現状判断の総括判断は同じですね。

『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(今回)
『海外経済は、一部に緩慢な動きもみられているが、全体としては徐々に持ち直しに向かっている。そうしたもとで、輸出は持ち直し傾向にある。』(前回)

海外経済の認識、輸出に関しては全文一致。

『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直している。公共投資は増加を続けており、住宅投資も増加している。』(今回)
『設備投資は、企業収益が改善するなかで、持ち直しつつある。公共投資は増加を続けており、住宅投資も持ち直しが明確になっている。』(前回)

つーことでここが今回の変更点になりますが、公共投資の判断は同じですが、設備投資に関しては持ち直し「つつある」→「している」と認識を引き上げ。住宅投資については「持ち直しが明確」から「増加を続ける」にこれまた判断を上方修正になるのですが、住宅投資ってこれ消費税駆け込み分が効いているんじゃネーノという気がだいぶするのですが、その辺は華麗にスルーした表現の声明文というのが味わいがございます(月報でどの位その辺を表現してくるかは気になりますが、従来のパターンから考えて「これは消費税増税前の駆け込み」というような指摘は無く、全体として見た場合に暫くは消費税増税前の駆け込みで需要が持ち上がるみたいな話しかしないと思います)。

『個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。企業の業況感は改善を続けている。』(今回)

『個人消費は、雇用・所得環境に改善の動きがみられるなかで、引き続き底堅く推移している。以上の内外需要を反映して、鉱工業生産は緩やかに増加している。』(前回)

消費、生産は同じで、企業の業況感云々の部分は短観の出た回の仕様で、短観の数値自体は引上げになっていましたからこれは順当。

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(今回)

『この間、わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。予想物価上昇率は、全体として上昇しているとみられる。』(前回)

金融環境と物価に関する記述も同じ、予想物価上昇率は「全体として上昇」のままですかそうですか。


・先行き見通しから先は全文一致

『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(今回)
『先行きのわが国経済については、緩やかな回復を続けていくとみられる。消費者物価の前年比は、プラス幅を次第に拡大していくとみられる。』(前回)

つーことで先行き見通しは全文一致ですけれども、今月は2発目のMPMで展望レポートが出る次第で、さてその時どういう認識を示しますかねという所ですが、まあこの調子だと普通に強い見通しが出て2年で2%達成ですよウッシッシというのが出てくると想定されますな。

『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(今回)
『リスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開、新興国・資源国経済の動向、米国経済の回復ペースなど、日本経済を巡る不確実性は引き続き大きい。』(前回)

リスク要因に関しても同じでして、米国のFiscalDragの影響に関する言及は特に無しという所で、まあ債務上限云々については一時的な話になるでしょうという事なのでスルーなのは良いとしまして、FRB様がまさしく財政問題をネタにしてTaperingを見送りの巻となっている中でその辺を華麗にスルーというのもちょっとこう楽観的ですなあ相変わらずという印象はございますな。

最後の部分は今回も同じなので今回分だけ引用しておきます。

『日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続する。その際、経済・物価情勢について上下双方向のリスク要因を点検し、必要な調整を行う(注)。このような金融政策運営は、実体経済や金融市場における前向きな動きを後押しするとともに、予想物価上昇率を上昇させ、日本経済を、15 年近く続いたデフレからの脱却に導くものと考えている。』(今回)

で、(注)の木内審議委員の提案とその否決っぷりも同じです。

『(注)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、「量的・質的金融緩和」を2年間程度の集中対応措置と位置付けるとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、宮尾委員、森本委員、白井委員、石田委員、佐藤委員)。』(今回)



○会見で質問が来たのはワロタぞな(師匠&アブラハム)

総裁記者会見で質問が来たのはワロタとしか申し上げようがございません。まあ詳しくは今日の会見要旨にも出てくるでしょうが、総裁会見での質問については「それはこちらでコメントする事ではありません」という感じだったと思いますが、別途説明はあったようでございますな。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131004-00000178-jij-bus_all
日銀副総裁、謝礼受領を否定=アブラハムサイトに記事掲載
時事通信 10月4日(金)21時1分配信

『投資助言会社アブラハム・プライベートバンクのグループが運営するウェブサイトに、就任前の岩田規久男日銀副総裁のインタビュー記事が掲載されていた問題で、日銀は4日、副総裁が「謝礼などは一切受け取っていない」と説明していることを明らかにした。』(上記URLより)

ということですが、こちらの引用記事にありますように「掲載されていた」という表現になっているのにも味わいがありまして、金曜の朝見た時にはあったと思った木久扇師匠のインタビュー記事が金曜の昼前にはサックリと削除されていまして、何か問題となった途端に削除って逆に目立つからマズーじゃねえのと思うのですけどねえ。

海外投資新聞「識者の見方」(リンクはしない)
http://media.yucasee.jp/offshore-news/columns

こちらに先日まで師匠のインタビュー記事があって、そちらに例の高度な理論に基づく「当座預金残高80兆円になったら物価は2%行きます」という説明があったので、こちらの記事が削除されたのは誠に遺憾にも程がある(まあどうせ誰かが魚拓取っているでしょうから問題は無いですけど)所でございまして、金融経済懇談会でデビューしたら手ぐすね引いて待っておられます記者の皆様が当座預金残高と物価の関係について海外投資新聞さんのインタビューを題材にツッコミが飛ぶのになあと残念に思うのでありました。

『アブラハムについて、証券取引等監視委員会は3日、違法に投資商品販売を行ったとして、金融庁に行政処分するよう勧告した。岩田副総裁は日銀内部の聞き取りに対し、学習院大教授時代の今年1月下旬、同社の取材を受けたことを認めた。その上で「インタビュー以外の関係はない」と話したという。』(2つ前のURLの時事通信ニュース記事より引用)

まあこんなので一々首が飛んでいたら首が幾らあっても足りませんからそんな話になるような案件では無いにしましても、まあ一般的なメディアじゃない所のインタビューとなりますと一応事前にバックとか確認しておくもんじゃないのかねとゆー気もしますし、当時からまあ微妙にアレな評価もありました(のであたくしは以前ここの記事を引用する時に「ここから引用するのは如何なものかと思うのだが」という断り書きをしたと思います、つーかリンクを敢えて張らない時もありましたし)し、何ちゅうか脇が甘いっすなあとしか。

まあそのインタビューを受けた云々よりもその内容の方が突っ込まれて然るべきだと思われますので、インタビューを受けた云々に関してはあまりゴリゴリ言う気もしませんな。辞任するなら政策の方で辞任して頂かないと意味が無いのでww

やまもといちろうさんがもう一発エントリー投下中なのでご参考までに^^;
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2013/10/post-4e88.html
アブラハム・高岡壮一郎さん、今日も元気に金融庁へ喧嘩を卸売
2013.10.06 |

#同社の関連ネタで色々と検索掛けると味わいの深いものが鑑賞できるので確かにネトヲチ向けかも



○国債市場の流動性に関する指標とな

先週金曜に投下された日銀レビューである
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2013/data/rev13j06.pdf
国債市場の流動性に関連する諸指標

『わが国の国債は、広範な市場取引において様々な用途で利用されており、これが円滑に行われるためには、十分な流動性を国債市場が有していることが1つの重要な条件となる。もっとも、実際に国債市場の流動性を検証・把握する場合、複数の評価軸が並立しており、これに対応する関連指標も多様である。国債市場の流動性を評価するうえでは、可能な限り幅広い関連指標を確認し、総合的に把握していくことが重要であると考えられる。本稿では、これらのうちいくつかを紹介する。』

ということで、以下色々な分析をしていて中々興味深いので読んで味噌。では話が終わってしまいますので(つーてもまあアタクシが変にコメントしないで素直に読んだ方がオモロイと思う)冒頭の部分をば。

『「市場流動性」には、確立された厳密な唯一の定義といったものが存在するわけではないが、「流動性の高い市場とは、大口の取引を小さな価格変動で速やかに執行できる市場である」(Bank for International Settlements<1999>)といった定義は比較的頻繁に引用されており、広く共有されている。そうしたもとで、市場流動性を巡る研究において、市場流動性の状況を検証・把握する際には、次の4つの評価軸が提示される
ことが多い。』

ふむ。

『第1は、市場の取引量(volume)である。市場の取引量が大きければ、頻繁な取引や短期間での大口の取引が、より容易になると考えられる。』

『第2は、買い手と売り手の提示価格の差(tightness)である。これが小さいほど、取引当事者の(いずれかが)意図する価格からあまり乖離することなく取引を行うことができると考えられる。このような意図した価格からの乖離は、取引当事者にとっては取引コストの上乗せとして意識される。』

『第3は、市場の弾力性(resiliency)である。価格に撹乱が生じた場合でも、実勢価格へ収束するスピードが速ければ、その分、取引をより円滑かつ速やかに行うことができると考えられる。』

『そして第4は、市場の厚み(depth)である。現在の価格水準で取引できる数量が大きい、市場に厚みがある状況であれば、その分、取引当事者が意図した価格と現実の取引価格との差が小さくなると考えられる。』

ということで、これらに関する指標としては・・・・・・

『市場流動性の評価軸が複数並立する中で、これらに対応する国債市場の流動性指標も、様々なものが存在する。以下では、これらのうち、@市場の取引量を示す出来高と売買回転率、A取引コストを示すビッド・アスク・スプレッド、B市場の弾力性を近似する指標として、価格変化と出来高の比率である値幅・出来高比率、C市場の厚みを示す「板情報」、の4 つの指標について取り上げる。』

という事で説明があります。

・・・・・・でまあこういう分析は分析で重要ですし、別にそれを否定するわけでは無いのですが、現場労務者である所のアタクシからちょっとだけ申し上げさせて頂きますと、こういう分析は結局の所後付けになってしまいますし、まあ上記で言えば「市場の弾力性」に相当する部分になるとは思いますけれども、そもそも市場の価格の付き方がどうなんでしょとかいう面とかも重要だと思いますし、それこそ異次元緩和みたいな場合とか、リーマンショックみたいな場合のように、「市場のそれまでの前提を大きくシフトさせるような状況」が発生した(または政策として「させる」)場合の市場流動性とか価格形成の変化とかって話になると、定量的な部分だけでは把握しにくい部分があるとは思いますので、こういう分析の重要性を否定する積りはサラサラございませんが、頭の良い人たちの集まりの場合、こういう分析に重きを置きすぎてしまって対応が遅れるというような事になりますと折角の分析の意味がなくなってしまいますのでその辺はご留意頂きたいと存じます。

では定性的分析とはどのような物ですねんとツッコミを受けますとこれがまた職人の勘としかお答えのしようが無いのが全くもって残念な所なのですが、金融政策がアートかサイエンスかというのと同様に、非伝統的政策における公開市場操作に関してもアートなのかサイエンスなのかという話があるんじゃ無いのかねと思うのでありました、と纏めにならない纏めでした。

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2013/10/03

○生活意識アンケートェ・・・・・・・

生活意識アンケートである
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1310.pdf

本当は図表で結果を説明している前半部分を見ると分かりやすいのですが、図表を磔刑にするスキルがございませんので本文16ページ以降のアンケート調査結果の詳細部分からの引用で恐縮至極です。まあ図表見るのが判りやすいぞな。

なお、以下のQ&Aに関わる部分は全て上記URLから引用しますが、いつものように『』をつけるとレイアウト上読みにくくなるので『』をつけませんのでよろしくです。質問の答えの数字は回答%で、()内の数字は前回調査(6月時点)での数値になります。


・どう見ても先行き景況感頭打ちです本当にありがとうございました

Q1. 1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか。

1 良くなった12.3 ( 13.2 )
2 変わらない66.9 ( 68.2 )
3 悪くなった20.6 ( 18.0 )

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。

1 良くなる16.2 ( 24.3 )
2 変わらない57.8 ( 58.5 )
3 悪くなる25.8 ( 16.8 )

・・・・・・・でまあここなんですけれども、本文2ページの方に3月調査も含めた分での推移があって更にビジュアル的に判りやすいですけど、足元の景況感については6月に大きく改善したのですが今回は若干悪化、先行きの景況感については6月に若干改善したものが今回悪化しておりまして、しかもこの悪化によって3月時点の水準を下回っておりまして、これはどう見ても景況感頭打ちですという絵に描いたような結果。


・雇用環境判断は改善しているのに暮らし向き判断は悪化とな

本文図表の方だと4ページと5ページになります。

Q6. 1年前と比べて、あなたの暮らし向きがどう変わったと感じますか。

1 ゆとりが出てきた4.7 ( 4.9 )
2 どちらとも言えない53.4 ( 55.5 )
3 ゆとりがなくなってきた41.6 ( 39.2 )

これまた図表付の方だと分かりやすいのですが、6月に盛大に改善したものが今回やや悪化。まあ悪化の度合い的には3月水準までの悪化には至っていないのが救い。


Q20.これから1年後を見たとき、あなた(またはご家族)は、勤め先での雇用・処遇(給与、ポスト、福利厚生など)に不安を感じますか。

1 あまり感じない16.2 ( 16.4 )
2 少し感じる49.9 ( 47.8 )
3 かなり感じる32.2 ( 33.8 )

うち勤労者(注)
 (注)勤労者:会社員・公務員(会社役員を含む)およびパート・アルバイトなど。

1 あまり感じない 17.2 ( 17.0 )
2 少し感じる 51.5 ( 47.9 )
3 かなり感じる 31.2 ( 34.8 )

ということで、こちらは改善しているのでして・・・・・・・・・・・・


・どう見てもコストプッシュです本当にありがとうございました

物価に関連する質問がありまして、まずは本文6ページ以降の図表に相当する部分ね。

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。
―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値(注1):+4.0 ( +3.1 )
中央値(注2):+2.5 ( +1.0 )

(注1)極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。 ―― 全サンプルの単純平均値は + 4 . 1 (前回調査<2013/6月実施>:+ 3 . 2 )
(注2)回答を数値順に並べた際に中央に位置する値。


Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
※消費税率引上げ分は含めずにご回答下さい。

平均値(注1):+4.9 ( +5.1 )
中央値(注2):+3.0 ( +3.0 )


Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。
※消費税率引上げ分は含めずにご回答下さい。

平均値(注1):+4.1 ( +4.3 )
中央値(注2):+2.0 ( +2.5 )

・・・・・・・・・ほほうという所ですが、足元に関しては物価が上昇したという意見が多く、先行きが若干下がったように見えない事もないのは足元上がった分だけ先行きの数字が下がっただけのような感じですので、まあ先行きの物価期待については特段の変化が無いと見るのが妥当じゃないですかね。

とまあこの部分だけ見ると日銀の2年で2%に向けた動きは引き続き順調なのですが・・・・・・・・・


さっきの暮らし向き判断に関する質問には続きがありまして。

Q6-b.(Q6で3「ゆとりがなくなってきた」と答えた方へ)
その理由は次のうちどれですか。【複数回答】

1 給与や事業などの収入が減ったから59.5 ( 61.5 )
2 利子や配当などの収入が減ったから12.7 ( 10.0 )
3 不動産の購入などの支出があったから4.4 ( 3.0 )
4 物価が上がったから47.5 ( 33.7 )
5 不動産・株式などの資産の価格が下がったから4.5 ( 2.7 )
6 扶養家族が増えたから9.0 ( 8.0 )
7 その他20.4 ( 26.6 )

>4 物価が上がったから47.5 ( 33.7 )
>4 物価が上がったから47.5 ( 33.7 )
>4 物価が上がったから47.5 ( 33.7 )

他にもこんな質問が有りましてですね。

Q9. 1年前と比べて、あなたの世帯の支出はどう変わりましたか。

1 増えた37.8 ( 34.5 )
2 変わらない42.9 ( 46.9 )
3 減った17.9 ( 17.4 )

Q9-a.(Q9で1「増えた」と答えた方へ)
支出が増えたのはなぜですか。【複数回答】

1 収入が増えたから4.8 ( 5.6 )
2 将来の収入増が見込まれるから1.2 ( 2.3 )
3 不動産など実物資産が値上がりしたから1.6 ( 0.9 )
4 株式や債券などの金融資産が値上がりしたから1.2 ( 2.9 )
5 住宅など不動産を購入したから6.7 ( 6.4 )
6 車など耐久消費財を購入したから17.6 ( 20.8 )
7 扶養家族の増加などに伴う支出があったから23.7 ( 26.5 )
8 生活関連の物やサービスの値段が上がったから56.6 ( 42.1 )
9 その他24.4 ( 27.6 )

>8 生活関連の物やサービスの値段が上がったから56.6 ( 42.1 )
>8 生活関連の物やサービスの値段が上がったから56.6 ( 42.1 )
>8 生活関連の物やサービスの値段が上がったから56.6 ( 42.1 )

ということで、収入支出に関する全体の数値に関しては本文5ページの図表に載っているのですけれども、この辺のコストプッシュでアチャーという話に関しては惜しくも図表に載っておりませんので、詳細質問の方をご覧いただく必要があるのですが(^^)、まあ今回の生活意識アンケートについては何と申しますか絵に描いたような結果で、「年前半は何となく雰囲気が良かったので良いなあと思ったのだがふと気が付くと収入は増えないのに生活物価は上がってあれれ?」という風になっていますとかテンプレのような解釈が可能となる中々素敵な結果となっておりましたので少々長く引用させて頂きましたです、はい。

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2013/10/02

○短観である

9月短観概要
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1309.pdf

まあ真面目な分析は本職の方がやるのでいつもの見物行為を。


・前回の先行き予測DIの達成状況

         (6月時点)     (9月時点)
         現状→9月予測    現状→12月予測
製造業大企業    +4→+10    +12→+11 
製造業中堅企業   ▲4→▲3      0→+2        
製造業中小企業  ▲14→▲7      ▲9→▲5

非製造業大企業   +12→+12   +14→+14
非製造業中堅企業  +7→+7      +8→7
非製造業中小企業  ▲4→▲4     ▲1→▲2

今回は達成状況という意味では全セクターに渡って6月時点での見通しを上振れて推移ということですからまあ強い結果となりましたが、実は今回の短観に関しては「常識的に考えて強いだろ」ということであまり市場の事前予想とか気にしていなかったのですが、大企業製造業で+7辺りが市場の事前予想だったらしくて、数字をベンダーで最初に見た時に「この事前予想低くねえか??」と思ったのですが、もしかしたらその答えのヒントが後の方に出てくるかもしれません(^^)。



・雇用判断DI

        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業  +8→+5       +4→+4
製造業中堅企業 +8→+6       +4→+3
製造業中小企業 +11→+5      +6→+2

非製造業大企業   ▲4→▲7      ▲7→▲9
非製造業中堅企業  ▲7→▲12     ▲11→▲14
非製造業中小企業  ▲7→▲12     ▲12→▲14

まあ確実に改善してるちゃあしてるのですが、今回もそうなのですが、業況感が派手に改善している割にはこちらの方はイマイチ感だなあと思うのですよね。

とは言え、今回の短観について公共放送ニュースではこのように雇用判断DIの改善を報道しておりまする(前回の短観では価格判断DIの上向きぶりについて報道していました、為念)。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131002/t10014962051000.html
日銀短観 従業員の不足感が強まる
10月2日 5時49分

『日銀が1日発表した短観=企業短期経済観測調査では、景気の回復傾向を背景に、従業員が足りないという企業が増えて、人手不足を感じている企業の割合を示す指数は5年3か月ぶりの高い水準となりました。』

『この結果、調査対象のすべての企業を合わせた「全規模・全産業」では、前回より4ポイント減って「マイナス5」となり、人手不足と感じている企業の割合が5年3か月ぶりの高い水準となりました。』

『このように、今回の短観では国内の雇用環境が改善しつつあることが伺える結果となりましたが、本格的な景気回復に向けては、こうした流れがさらに加速し、賃金の上昇に波及するかが大きな鍵となりそうです』(上記URLより、途中端折っていますので念のため)

とまあこんな感じでありまして、公共放送ニュースでは製造業非製造業のブレークダウンはしないで、企業規模別の全体の数値(これは短観見ると判りますが、大企業以外が前回マイナス入りだったのですが、今回大企業もマイナスになったので全部マイナスキタコレ状態になっている)での話をして、景気の良いトーンで説明をしていまして(画面にデカデカと数字を出すという方式ですな、ニュース動画が見れる人はご覧あそばせ)文章だと賃金の上昇に波及するかが云々とありますが、耳で聴く感じですとそれよりも「良くなりましたよ!!」という連呼の方が印象に残るので、ニュースのトーンとしては字面よりも更に明るい感じで威勢良く報道されていましたので念のためご報告させて頂きます(^^)。


・想定為替レート

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)   2011年度全体(上期)(下期)     2012年度全体(上期)(下期)

2011年6月調査   82.59  82.59  82.59           − − −
2011年9月調査   81.15  81.26  81.06           − − −
2011年12月調査  79.02  80.26  77.90           − − −
2012年3月調査   78.93  80.20  77.69     78.14   78.04  78.24
2012年6月調査   79.27   80.18  78.35     78.95  78.98  78.93
2012年9月調査   −     −   −        79.06  79.16  78.97
2012年12月調査   −     −   −       78.90   79.09  78.73

(円/ドル)   2012年度全体(上期)(下期) 2013年度全体(上期)(下期)
2013年3月調査   80.56   79.15  81.94   85.22   85.10  85.33
2013年6月調査   82.21   79.25  85.11   91.20   91.25  91.16
2013年9月調査    −    −    −     94.45   94.77   94.14

ということで、ここ半年で想定為替レートが9円弱ドル高に振れた形になりましたけれども、そろそろ実勢レートとの間にある糊代が無くなってきたのが気になる点でして、為替要因での業績見込み上方修正の余地はそろそろ無くなって参りましたねえというのはありますな。

あと、想定為替レートと実勢レートのかい離が小さくなっているという事は、即ち為替レートが何らかの事情(米国がコケるとか欧州があばばばばーになるとか)で円高に振れた場合に産業界から日銀何とかしろのクレクレ大合唱が始まり、市場的にもそのクレクレ大合唱に色々と影響されることもあるでしょうなあというまあそんな予想は立つのでありました。


・金融商品取引業の業況判断DIェ・・・・・・・

見込みが華麗に外れたりブレが非常に大きかったりするのが仕様の金融商品取引業業況判断DIですが。

        (6月時点)       (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
金融商品取引業 +67→+60   +39→+50

この足元でDIが28も悪化しているのは金融商品取引業だけでして(短観の鏡のページにあります企業規模別産業別の計数を目を皿のようにして拝読しましたが、現状判断DIが前回対比で20悪化したのは無いようにしか見えません)、もしかして今回の短観における市場事前予想数値があまり強くなかったのは金融商品取引業者の中の人たちの景況感も反映しているんですねわかりますというオチなのでありますた。

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