トップページに戻る
月別一覧インデックスに戻る



2005/10/31

お題「植田前審議委員の量的緩和政策レビュー(続)」

金曜の続き。解除さきにありきで前のめりになっている政策委員会はまあ落ち着けって所なのでしょうか?以下『』内は10月27日の日経新聞25面より。

○量的緩和政策効果について

量的緩和政策は「時間軸効果」+「大量の流動性供給」とであると指摘した上でその効果についてはこのように。

『ゼロ金利を続けるという時間軸効果は、短期から中期の金利を低位に安定させ、経済や金融システムを下支えした。これに対して、ゼロ金利実現に必要とする以上の流動性供給がどのような役割を果たしたかはいまひとつはっきりしない。』

だいたい多くのビューもそんな感じです。特に量的緩和政策導入当初に期待されていた「量」のポートフォリオ組み替え効果などに関してはこんな感じ。

『流動性の量そのものが強いポートフォリオ組み替え効果や総需要刺激効果をもったという説得的な証拠は得られていない。』

植田さんもスルーしているのですが、かつて岩田副総裁が講演で指摘した「当座預金残高目標の引き上げが事後的にドル買い介入とバランスしてますけど」って話に関してのレビューが欲しいところではございます。(植田さんは「景気判断を上方修正しているのに当預目標引き上げするのは筋が通らない」という立場だったと記憶しておりますが)

ちと話がそれますが、まー今般の景気復活に関してあたくしの勝手な見方としては、それまでの銀行シバキアゲ政策による政府のデフレ政策がりそな銀行救済スキームのあたりで一転して、「いやもう税金突っ込みますよ法的整理はしないから安心してね〜」っていう「政府の債務保証」って形の見せ金スキームへの転換が何だかんだと言っても効いているんでしょうねって所ではないかと思うのですが。直接の財政支出は伴ってないけど、偶発債務って形の債務ですかねぇ。何せあい変らず「決済性預金は全額保護」しているんですから金融システムは国が丸抱えな状態である事には変化が無かったりするのですが。


○時間軸政策を崩すのはどうかという話

話を元に戻しまして。

『短期金利がゼロになった後、金利の世界でさらに緩和効果を生み出す一つの方法は、将来の短期金利について強いメッセージを発することである。例えば景気がよくなりインフレ率が上昇して、普通の中央銀行なら金利を上げ始めるような情勢になってもしばらくゼロ金利を続けるという意思表示ないし約束を前もってしてしまうわけである。すると市場が予測する将来の短期金利、したがってその時点での中長期金利にも低下圧力がかかる。この金利低下が経済を刺激するのである。』

まぁ皆様もご存知の話ではございますが、時間軸政策のキモはここですな。で、それに対して恐らく現在の地均し前のめり状態になっている政策委員会に対する苦言なのではないかと思われるくだりが。

『そう考えると、普通の(優秀な)中央銀行員が当然と思うタイミングで金利を上げ始めるのは時間軸政策の趣旨に反することになる。そこから少し遅れて動くというのがポイントである。』

この先は金曜日に引用しましたので割愛。まぁこれが植田さんの「べき論」なんですが、以前ご紹介したように、植田審議委員最後の政策決定会合(4月5、6日)でもこんな意見があったのですが、まぁこれも植田さんのご意見でしょう。

「この間、ある委員は、強力な金融緩和策を維持することによって将来インフレや資産価格の過度な上昇が生じる可能性は否定できないが、現時点では、依然として物価下落率が拡大した場合のコストの方が大きい、と述べた。さらに、この委員は、資金余剰感の強まりを背景に金融機関が余剰資金の運用に苦慮していることは事実であるが、こうした状況は、金融機関が必要とする以上の流動性を供給することを通じて金融機関行動に働きかけるという観点からは、量的緩和政策の本来の効果が発揮されてきたものとみることも可能であるとして、当座預金残高目標の削減に対して否定的な見方を示した。」

この方が退任してからはもう政策委員会大暴れというか自作自演というか。。。


○で、まぁ早めの対処は如何なものかと

量的緩和政策の出口をどうするのかという話に関して『出口の必要条件しか明らかにしていないので、日銀サイドにかなりの裁量余地が残る。』と指摘し、景気の見通しに関しては『出口のための必要条件は来年の早い段階で満たされることになる。』ということを踏まえたうえで植田さんは『中央銀行としてのリスク・マネジメントの問題』という表現を使って説明しています。

『早めに利上げをすれば、再びデフレに舞い戻るリスクを若干覚悟することになる。利上げを遅らせれば、インフレが加速していくリスクをとることになる。どちらを重視するかだが、』

ということで比較する訳ですが、

『長期的に望ましいインフレ率がゼロよりもかなり上(2%前後としている先進諸国が多い)とすれば、インフレ率がゼロ%を超えた後、多少加速して上昇するのはある意味望ましいともいえる。』

『他方、再びデフレが深刻な問題となるようなことがあれば日銀の信認は大きく低下することは必至である。』

全くアグリーなのですが、まぁ政策委員会には須田審議委員のように講演で「理念的には物価上昇率がゼロ%」(2005年2月9日の講演、一応フォローしておくと、物価統計のバイアスやサンプリングの問題があって物価統計上の数値にそのまま当てはめる訳には行かないとは言ってますが)というようなお話をするインフレファイターならぬ物価上昇ファイター(苦笑)がいるので中々こういう判断にならないのではないかと存じますが。

植田審議委員としては量的緩和解除のタイミングはこのような見解だそうです。

『いったん利上げに転じれば、0.5−1%程度までは無理なく翌日物金利を引き上げることが出来そうだと確認してからでも遅くはなさそうである。時間軸政策の基本的考え方もそういうことであった。』


まぁ日銀におかれましては落ち着いて対応して欲しいのですが、べき論は兎も角として予想屋として考えると日銀先走りのリスクを考慮しておかねばなるまいっていうのが市場的な判断になっているんでしょうな。そうじゃなかったら今更金融緩和余地がろくすっぽない状況で中短期ヘロヘロの長期超長期ゾーンはやたらと確りという展開にはなるまいて。

という訳で、延々とご紹介をさせていただきましたが、まぁこの植田さんの言うような方向には行きそうも無いのが実に悲しい所でございます、涙。




2005/10/28

お題「これはいかがなものか/その他」

え?野村ロンドンで債券部門を25人削減?・・・OTL

○「逝って良し!」な某議員の続報

読者様からのご指摘によって発見したネタなのですが(^^)。

先週金曜日のドラめもんで20日の参議院財政金融委員会のお話をしましたですな。主なネタは相変わらずその発言は軽率じゃネーノ(などというような穏当な言い方ではありませんでしたが^^)、本来最初に書こうと思っていたネタは「おまけ」と称した部分でした。以下再掲。

-----
途中から聴いたので話の流れはちと判らんのですが、昨今の企業買収(というかただの株式買占めなのだがそれは兎も角)の話をした後に、ジャスダック上場の日銀株(本当は出資証券)のお値段がここの所大幅に上昇していると言う指摘をしてこんな趣旨の質問をしておった人がいたんですよこれが。

「日銀はそれこそ輪転機があって通貨を発行できる訳ですが、株を大量購入して日銀資産を有効に活用するように要求する株主が現れた場合の企業防衛策というのはどのように考えているでしょうか(思いっきり意訳ですが、まぁそんな質問)」

お前は国会を子供電話相談室と勘違いしているのかと小一時間。というかその位下調べしてから質問しねぇのかこの馬鹿はとしか言いようが無いです(ちなみに当然ながら総裁の出る必要もなく小林理事が説明してました)。
------
(以上先週金曜日にあたくしが書いた話)

てな訳で参議院中継のストリーミング放送を見た(というより聴いた)時の感想をこのように申し上げたのですが、くだんの議員センセイ様はご本人のWebでこのような事を書いております。

http://www.apionet.or.jp/~koutaro/news/2005-10/news20.html

『午後は日銀総裁相手。阪神ファンだと聞いていたので、阪神球団上場問題を問うてみたが、見事に逃げられた。お得意の金融市場についての質問には、丁寧に的確に答弁いただいた。日銀株が急騰していることを引っ掛けて「福井総裁。阪神の問題は他人事ではありませんよ。今買い占めにあうのはキャッシュリッチな(現金をたくさん保有している)会社。日銀は究極のキャッシュリッチ企業ですよ。防衛策は大丈夫ですか?」なんてわざとらしく聞いてみた。もちろん、日銀の株は議決権がないし、配当も法律で上限が規制されている。村上ファンドもこんな会社は狙わないだろう。』

まぁ阪神球団上場に関しては兎も角として、日銀株問題に関する質問は「わざとらしく」って感じには見えませんでしたが(まぁあたくしの印象ですからアレですが)、こちらの議員さまにおかれましては国会における審議(本件は日銀報告の参考人質疑になるのかな?)という貴重な機会を何と心得ているのでしょうかねぇ。

で、次のくだりを読んで血圧急上昇ですよ。

『今回はこのようなギャグも織り交ぜて質問を作ったので、委員会では「田村さんもひねりが利いてきたね」などとけっこう受けがよかったようだ。』

国会でギャグですか?国会の運営に掛かる費用は誰が出しているんでしょうかねぇ?それに国会に出席するために日銀総裁を筆頭に幹部の人たちが通常業務をおっぽりだして時間を割いているんですけど???

本当に「ギャグで質問」しているのであれば、ふざけたこと甚だしい話であって、屁のような額とは言え納税をしている国民として憤りまで感じてしまいます。何か懇親会とかの席上で日銀総裁に聞いてみたってのならギャグでも良いかも知れませんが、国会審議ですよ国会!!、まぁあたくしの読み筋は「下調べもろくにしないで間抜けな質問をしたのに気が付いたのでギャグと言う事にしようとした」って線なのですが、どちらにしても逝って良しという所でしょう。

委員会質疑で質問の時間が十分に回ってこない会派だってあるというのに・・・・



○米債連動相場とは・・・・・

昨日の債券相場。まぁ色々あったようですが、ざっくりと見ると米国債券市場連動という所のようで。朝方は米債がレンジ下抜けしたために円債もヘロヘロ。昼休み時間に何だか急に米債が大爆騰したと思ったら債券先物もいきなりギャップを空けて爆騰。午後2時半頃米債がヘロヘロになると先物は一気に値を消して引け際は米債が戻って債券先物も戻ると。

いやまぁバックにどういうフローがあるのか知りません(というかフローがそれなりにあればこんな上ったり下がったりという動きはせんと思うのだが)が、これだけ海外市場の動きに振らされるってそりゃ何よって感じでございますわな。

結局はレンジ内で大暴れしているという状況のようなのですが、それにしてもちとこの落ち着きの無さは唖然としてしまいますわな。


○植田和男前審議委員の「経済教室」

えー何度かお話したように、あたくしは5年ほど日経新聞というものを購読していないという市場関係者にあるまじき行為を継続しております。よって話題の官能じゃなかった文学作品ネタを振られても全く判らんということで、協調性の無い事甚だしい人間でございます。

などという宣伝は兎も角(^^)、そんな訳で昨日のドラめもんで「植田和男総裁キボンヌ」などと書いたのは別に日経の経済教室(25面)とタイアップしていたのではなく偶然の一致。

で、その経済教室ですが、内容に関しては不肖あたくしが禿げ上がるほど賛同したくなるような所でありますわな。量的緩和政策の枠組みに関する部分は現在の絶賛地均し中の政策委員会の皆様は百万回読めと。

『すなわち、時間軸政策をあまりに強い形で実施すると、金利引き上げがきわめておそくなり、結果としてインフレ率が適切な値を大きく上回って上昇するリスクを冒すことになる。ただし、こういうリスクを全くとらないのでは、そもそもこの政策を実行していることにならない点に注意が必要である。』

まぁその他もろもろは昨日の日経新聞朝刊25面を読みましょうという所ですが、本石町日記さんのところでもエントリーがございますのでそちらも併せてご覧下さい。

#続編は書くかもしれないし書かないかもしれません




2005/10/27

お題「小ネタ雑談を少々」

風邪引きがあちこちにおいでのようです。皆様もご自愛を。

○大暴れ30年国債

昨日の債券相場では30年国債がいきなり(火曜日の20年国債入札後からその傾向はありましたのでいきなりでも無いですけど)ヘロヘロ。引値(日本相互証券じゃなくてブルームバーグから引っ張って来た絶賛無料提供の大和証券SMBCの引値)では先物24銭安に対して30年20回債は9.5毛甘の2.48%ですとな。先週末は先物3銭安で5毛強の2.38%までやっていたと思えばこの有様で、入札からここまで思いっきりアナザーワールドで大暴れという状況には呆れるしかございませんです。

まー元々あたくしのように市場の片隅で棲息する者にとっては訳の判らん動きをする30年なんですが、イールドカーブのケツの部分が時々驚くほどチョッピーに動くというのはどうもねぇって思いますわな。20年と30年を両方発行する意味がそんなにあるの?って思うのですけど。1銘柄あたりの発行量が多いほうが流動性高まって業者も投資家もやりやすい(仕掛けるのが好きな人は困るでしょうけど)と存じますが。

一応備忘録代わりに書いておきますと、何だかドイツのどこぞのファンドブリーフとかを発行している銀行だかに身売り観測が出て発行見合いの担保みたいな感じで持っている(恥ずかしながらあまり詳しくないので物凄くイイカゲンな書き方ですいません)30年国債(だけじゃなくて各国の超長期債券)の処分売りが出るのではないかという観測があったのでワールドワイドに超長期ゾーンの債券が崩れたそうな。うーんワケワカメ。

以前から30年国債というと欧州(というかドイツ)系の訳の判らん買いやら売りやらが炸裂して激しくはた迷惑な動きをするのが得意技でございましたが、まぁ相変わらずで困ったものです。

しかし20年国債入札の翌日でまだまだ皆さん在庫抱えている筈のタイミングでご丁寧にも超長期ゾーンに訳の判らん(あんまり相場と関係ない理由で)売りが出てくるというもまた迷惑なお話ではございますな。まぁ20年は30年ほど悲惨な状況ではなかったようですので大怪我って程ではないでしょうが。


○2年国債入札ですが

いやまぁ0.3%クーポンって何よって言いたくなるのですが、タイミングが物凄く素晴らしいことに米国市場で中短期債も長期債もヘロヘロというかレンジを抜けてきているのではないかというような状態。昨日の引けでは0.265%と相変わらず0.2%台後半でヘロヘロのようですが、はて大丈夫なんでしょうかねぇ。まぁ0.3%はさすがにやり過ぎというか、2年が0.3%で10年が1.5%台ってのはどうも感覚的に(要するに科学的な根拠は無いんですけど)しっくり来ませんので、どっちかが修正されると思い続けてはや1ヶ月(おいおい)。


○バーナンキ新議長で話題が盛り上がっております

まぁ読者の皆様におかれましては普段からあたくしがネタ元としてご紹介しているbewaadさんのブログもチェックしておられるかと存じますが、そちらのエントリーでバーナンキ関連ネタの論考を行っているネット上の記事をご紹介しています。リンク先をポチポチとクリックして色々と読むのが吉かと存じます。またいつもの本石町日記さんの所では「日本の金融政策はエコノミクスじゃなくてポリティックスなのか」というエントリーからコメント欄でこれまた興味深い議論が。

で、そんな高度なお話でも何でもないのですが、ふと思った雑感で昨日書いているうちにすっかり忘れた事を少々。

・アカデミックな世界からのご就任といえば・・・・

バーナンキ氏のご紹介に絡んで言われるのが「学者出身」というお話でございます。学者出身でボード入りして実際の政策対応で手腕を発揮しつつ生き物であります経済との折り合いをつけていっているという事で評価が高いのでしょう。

で、今の日本ではどうなのよって話ですが、そこで植田和男前審議委員ですよ先生ということで(^^)。当座預金残高目標引下げ論議において金融政策としての筋を通すべしという主張は、現在の何でもありというか結論先にありきで理屈後付け(何せ水野審議委員に到っては「政策委員会のメンバーが変っていけば政策が変るのは当たり前」という何となくはぁそうですかと言ってしまいそうな理屈から「ゼロベースで金融政策見直し」という大変に素晴らしい提唱をしちゃったりする訳で)状態の日銀政策委員会を見ておりますと大変に懐かしく思われますな。

という訳で、植田和男総裁・・・とまでは日本では難しいんでしょうけど、副総裁になって頂きたいものですなぁと思うのですが(^^)。


・実務経験がどうのこうのと言いますが・・・・

メディアの報道を見ておりますと、どうも「実務経験がどうのこうの」っていう点でツッコミを入れている人もおいでのようです。グリーンスパン議長はその前はいわゆる民間エコノミストだったんですかね。

んじゃあその実務経験とやらがどうなのよという話なのですが、世に「生兵法は怪我の元」などという大変に素晴らしい諺がございして(-_-メ)、マーケット出身者だからマーケットを熟知しているので・・・・というお話がアテにならないというのは、「量的緩和解除を円滑に進め市場にショックを与えない為には当座預金残高目標を3条件達成前に引き下げないといけません」(この「コミットメント3条件の達成前に解除準備をする」という時点でコミットメントの意味が無くなっている上に結論先にありき。で、経済状況が見通し外した時におまいらどうするんだと小一時間だという話は皆様耳にタコだと思いますが)という怪電波絶賛発信中の提案を行っているお二方が「マーケット出身者」である時点で大変にアレな訳でございますな。

まー「マーケット出身者」だけに経済動向に関してもつい相場観が強く入ってしまい、「将来はこうなる筈だから事前にポジションを組む(=量的緩和解除の事前準備とかね)必要がありますな」って発想についついなってしまうのでしょう。トレーダーの相場観が外れりゃ大損(まぁそうなる前に軌道修正するんですが^^)という結果になりクビ、大外ししたエコノミストやストラテジストは評価を下げて(稀に百発百中で外す為に絶賛大人気になる人もいますけど^^)これまたクビになれば済む話なのですけれども、日本銀行政策委員会審議委員というお立場でそんなに相場観入れまくる必要はないんじゃないのかなあって思うのですが。

いやまぁ勿論先行き見通しを考えると言う事に関して否定する訳ではないのですが、その辺のバランスが何だか悪いように思えるですよね〜。うまく言い表せませんがそういう感じっす。

#しかし「生兵法は怪我の元」って我が身にも当てはまりますな。





2005/10/26

お題「バーナンキ新議長雑感」

ネタはまぁこれでしょって所で(^^)。実は夜中には既にバーナンキ氏の後継指名ニュースはあったらしいのですが、あたしゃそんな時間にニュースを見ない人なので昨日は起き抜けにいきなり書いたという感じでした。で、当然ながらもう皆さんが論じていただいているのでそれを読みつつ講演本を読みつつ。

と言ってもまとめでも何でもなくて(おい)単にあたくしの雑感を書きならべるだけですが。


○期待されてスタート

グリーンスパン氏がボルカー氏の後任に指名された時ってのはあたくしまだ学生だったんでそんなに詳しくは無いのですが、「ボルカーさんのような偉大な人の後釜にしちゃあ小物ですなあ」みたいな評判だったと記憶してまして、そ〜ゆ〜点では最初から期待されているというか輿望を担ってというか、まぁある意味大変ではございますな。「論功行賞人事かよ!」などと悪態ついていたら実は中々の大臣だったというどこぞの爺さんみたいな方が楽かも知れませんね。


○金融市場というか債券市場的な見方

まぁだいたい皆さん同じような見解に収斂されているようでして、「FRBのボードメンバー入りしてからは現実的な対応をしているんで良いんじゃないでしょうか」って所のようですわな。あと結構同じ指摘が多かったのは「インフレターゲット」に関してでして、「米国の現状を考えれば物価水準重視ってのは別にハト派じゃねーだろ」って所ですな。あたくしも同感でして、バーナンキ副議長(当時)といえばデフレ突入阻止のために緩和政策を矢継ぎ早に打って来た時の印象が強いのですが、物価水準重視という意味で言えば資源価格高騰がまともに影響する現状の米国経済においては逆にインフレファイター振りを発揮する局面が発生するかもしれませんな。

昨日は米国市場の動きを見て「バーナンキ氏になってちょっと緩和的になるって評価なんですかねぇ」と書いてみたものの、まぁ今日というか昨日の米国金融市場が特に継続的じゃないところをみますと、必ずしもそうでも無かったようで、やはりこーゆー長期的な影響のあるネタはその瞬間だけ見てインプリケーションをしてもあまり意味無しと言ったところですか。そもそもサプライズは無い人事でしたしね。

しかし米国の材料で米国をも超える上昇を示した日経平均というのはそりゃ何なんのよという感じですが(苦笑)。


○でまぁインタゲなんですが

日本におきましてインタゲ導入という話になると、「リフレ政策の実施」→「金融緩和」という連想から「とにかく金融緩和」っていう風なイメージが先行している訳ですが、別にインタゲ導入論者の皆様におかれましても物価上昇率が10%や20%になるまでリフレをやれと言っているのでは無い訳でして、あくまでも現在のデフレを止めて「マイルドなインフレ」を企図してるって事ですわな。逆に資源価格高騰がモロに物価に跳ねて来る米国では「マイルドインフレに保つ為には引き締め汁(というよりは以前の緩和政策を元に戻しているだけのような気もするが)」という話になるようですし。(ってこのくだりはあたくしの勝手な解釈なので、本当はどうなのよってのをご指摘キボンヌです)。

まぁ確かにCPIゼロが展望できるようになった(まだマイナスなのに!)らいきなり量的緩和解除モード全開で地均しあるいは根回しを開始してしまう日銀様の動きを見ておりますと、どうも根本的にマイルドインフレ状態に持っていこうという発想に乏しいのではないかなどと思いたくなってしまいます(内部的には必ずしもそんなにガチガチのゼロインフレ原理主義じゃないと信じたいですが)んで、物価目標あるいは参照値の導入って話も日本ではまだ先の話になりそうですな。インフレになってから(っていつの話だ?)導入するって話になりそうな予感。


まぁ同じインタゲどうのこうのって話でも、経済状況の条件が違う米国と日本ではその結果として出てくる金融政策の方向性は違って来る(物価上昇水準が全然違うのだから当たり前ですが、つーか日本は下落ですな)のであって、別に馬鹿正直(?)に米国と同じようにイールドカーブが動く必要は無い筈なんですけど、さてこれからどうなるんでしょうかねぇ(とひとごとモード)。


○その他雑感

・日経金融新聞の妙な記事

昨日の日経金融「ポジション」欄では「CPIペッグだと緩和解除が遅れるから別の観点から考えてみるのはどうよ」みたいな趣旨の記事があったのですが、そりゃあーた「量的緩和解除」という結果先にありきで都合のいい指標を持ち出してくるって何じゃいなという感じですわな。

日銀シンパの積りなのかも知れませんが、いわゆるひとつの贔屓の引き倒しって奴ではないかと思うのですが、つーか元々そういう陰謀で書いていたりするかも知れませんが(笑)。


・増税路線ですかそうですか

定率減税の廃止がどうのこうのって話で、微笑の貴公子であらされらる所の石大先生が「景気対策での定率減税という意味は無い」というお話をしておられましたのを朝っぱらから5回以上はあちこちのテレビで拝見してしまい誠に遺憾でございます。

いやまぁ財政再建も大事なんですけど、物価状況はまだデフレ状態で、景気だって回復とは言っても拡大局面って言うほどの状況かよって現状で早速増税歳出削減減税廃止ってぇのはそりゃどうなのよと。

日銀に対しては「デフレ期待の払拭」を求めてるんですから喪前らも景気がちょっと回復してきたくらいでいきなりマインド冷やすような事をするなと小一時間問い詰めたい所でございますなぁ。


#今朝は思いっきり寝坊したので甚だ簡単な雑感で大変恐縮。バーナンキ新議長に関してはネット上のあちこちできっとまとめをしている人がいるに違いないので探してみましょう!と、人に下駄を預けてしまうあたくしなのでした。わはは。


2005/10/25

お題「バーナンキ議長!/フラットニングのインプリケーション?」

○次期FRB議長にBernanke氏が内定

寝ぼけ眼でテレビをつけたらこのニュースで見事に起きてしまいました(^^)。早速以前購入して3回くらい読んだ講演集「リフレと金融政策(高橋洋一訳、日本経済新聞社)」を今日は読まないといけませんな。つーかFRBのWebには過去の講演が出てますので真面目に読む必要があるか。(上記の本に出てた奴は思いっきり読みましたが)

でもって米国市場は株高債券安になっているらしいのですが、このインプリケーションは正直某地上波テレビ番組を見ててもワケワカメ。と思ったらブルームバーグテレビをみたら株高は大型企業買収案件の方が効いてそうですな。わはは。

まぁ前日引け対比という意味ではややベアスティープニングしているようでして、そりゃまぁこの一日だけでどうこう言い出すのは即断もいい所ですが、グリーンスパン議長よりはもうちょっと緩やかにやっていくのではないかという予想なんでしょうか。そのために中短期債より長期債の方が売られたということかな??


でまぁ日本に対してど〜ゆ〜影響があるかと言いますと、これもまた蓋を開けてみないと判りませんが、まぁあたくしが思うに「日銀は物価水準目標あるいは参照値の導入をする事になるでしょう」→「量的緩和解除が先送り」→「今までのフラットニングから反動ですなぁ」という所で、カーブはスティープですが、上下は正直良く判らん。中短期が買われるような気がするのですが、さすがにダウナスが上昇して米債売られてるから買いちゅうのもむりむりですかね。

2003年5月31日に日本金融学会で行われた講演(を高橋洋一さんが訳した上記の本を読んでいるのですが)では日銀に対して「物価水準目標の採用」(インフレ目標ではない)を提言してます。

あたくしが誤読していなければ、過去のデフレ期間において仮に1%の物価上昇が起きたと考えた場合(デフレを取り返すって意味でしょうな)の物価水準(2003年時点では1998年の実際の物価水準から約5%高い水準)を目標にして景気刺激的な金融政策を継続(すると時間軸効果も発揮されますわな)しましょうってお話になっておりました。

バーナンキ氏はこの講演で日銀の量的緩和政策(この時はコミットメント3条件は公表されていませんでした。コミットメントが出たのは2003年のVaRショック後です)に対して「日銀の声明は、測定されたインフレ率がゼロに戻るやいなや現行水準の政策的刺激を取り下げる、ということを意味していると解釈できます。特に、長期的にインフレ率をプラスはおろかゼロに維持するという明示的なコミットメントはなされておりません」(「リフレと金融政策」122p〜123pより)と異論を述べていました。で、折角コミットメントを導入したのに結局今の状況って日銀の地均し(本石町日記さんに言わせると「根回し」だそうで^^)が効果を発揮してバーナンキ氏の指摘に近い展開になっているのが何ともアレですな。


ま、どちらにしても景気刺激的な金融政策が採られるでしょうって思惑にはなると思います。暫く市場はそんな感じで動くんでしょうけれども、実際問題としては現実と折り合いをつけながらやっていく人ではないかと漠然と思っておりますので、そう極端な変化は無いと思いますけどね。



○フラットニングのインプリケーション(なんちゃって)

今日どうなるかは知りませんが、ここの所円債のイールドカーブは絶賛フラットニング。下がっている時は「金融政策の早期引き締め観測」とまでは言いませんが、ほとんどそんな勢いで中短期が売られるのは兎も角として、戻る時にも20年だの30年(特に30年のようですけど)が戻ってブルフラットってそりゃどうよと思う次第。金曜の先物3銭安で30年5毛強には呆れました。

まぁ中短期に関してもだいぶ落ち着いてきたようですけれども、どうもこう何度も申し上げてますが、この絶対水準かつ金融緩和余地が無い状態でイールドカーブがフラットニングするってのは幾ら米国などの主要国のイールドカーブがフラットニングしてるからって言っても、そりゃちと変じゃネーノって思う訳ですが。

でも思ってばかりいても相場がそう動くのでは後付けでも何でもいいから理屈だけは作っておかないと精神的安定が得られないのが市場参加者というものでして(笑)、後付け理屈を考えるとこうなりますわな。

「CPIプラス転換」→「2、3ヶ月したら量的緩和解除」→「2000年の再来で逆噴射」→「景気腰折れ懸念」→「長期金利は上らない」と言う事でして(本当かどうかは兎も角、そういう理屈付けもできるという話で聞いて下さいな、はぁと)現実に日銀の金融政策の影響を受ける中短期ゾーンは日銀のアクションを見ながら、長期ゾーンは景気先行き見通しを見ながら動くのでこ〜ゆ〜ワケワケメな動きになっているんでしょうなぁと言う事ですな。

そういえば「市場との対話」とか言っている人たちがいましたが、この緩和しようの無い金利水準にしてイールドカーブのフラットニングが起きるというのはど〜ゆ〜意味なのかということは日銀の審議委員様はいかようにお考えなのでしょうかねぇ。

単なる需給にしてはちょっとここの所トレンドになっているような感じですし、ど〜にもこ〜にもこんな理屈でもつけないとって感じではございます。





2005/10/24

お題「総裁答弁続き/プライマリーディーラー制度雑感」

○総裁国会答弁続き

金曜は前日の国会(参議院財政金融委員会)答弁に対しまして(あたくし的には)久々に勢い良く「もうね、アホか馬鹿かと」を連発しましたが、続々と(というのはオーバーですが)ご意見を頂きまして大変ありがとうございました。

で、ご本人の承諾によりまして、頂きましたご意見ご感想メール(の一部)をご紹介します。

『ところで、昨日の国会答弁で、福井総裁が「長期的には買入額は減らすよ」と発言してお叱りを受けている件ですが、率直に申し上げて、「そんなことも織り込まれてなかったの??」というのが印象です。冷静に日銀のB/Sの状況を考えれば、すごく当たり前のことのように思われるのですが。。。』

金曜日に米国市場で株安債券高をやってくれたので救われた面がございまして、木曜のイブニングの急落は何だったんだって感じにはなりました。市場が冷静になったのかどうかは正直良く判らん(ちゃんと見て無いし)所で、相変わらず先物3銭安で5年が5糸甘なのに10年が5糸強(273回だけ1毛強)で20年2.5毛強に30年5毛強って過激なイールドカーブを見るに相場がどうも落ち着いていない悪寒が致しますが。まぁそれは兎も角。

量的緩和政策の解除後の輪番オペの扱いに関しては、現在の状況がそのまま引っ張られると上記のご指摘通りで「買入減額ですがな」ということになろうかという所(あたくしもそう思う)なのですが、この点に関してはまだ意見が分かれている所ではないかと思います。

まぁそういう事を申し上げるのもアレですが、審議委員の皆様の地均し発言の中で、地均ししながらも市場に衝撃は与えたくないって考えからなのか「量的緩和解除後も低金利が続く」という趣旨のフレーズが多いのも変に輪番が減らないという期待を与えているのではないかという気も致します。微妙なところですが。


まー確かに発言の全部を見れば単に一般論を語っているのに過ぎないのですが、一般論を言うにもタイミングというのがある訳でして、福井総裁の「一般論」話は妙にタイミングの悪いものが多いという印象で(まぁスルーされるようなのは印象に残らないのだから当たり前ですが^^)す。過去においても大昔の債券日々絶賛連騰相場時代に「国債は償還されるものであって株式バブルと同列にして国債バブルというのはちょっと変です」などと一般論を言って益々燃料投下をしたり、その他色々と楽しい(楽しくないのだが)発言をして下さる訳です。

正直、もうちょっと当たり障りのない言い方(金曜も言ったけど「輪番の扱いはその時の経済状況で適切に判断する」とか)をして頂きたいというのが要望(??)でございますわな。何でそう黒白つけるような言い方をしちゃうんでしょうかねぇ。>総裁

ま、それ以前の問題として、今までの総裁以下各審議委員が地均しモードになっているので、それらしい発言が出ると「すわ地均しか」という風にマーケットが捉えてしまい、妙に反応しやすくなっているというのがございますが。


で、まぁそれはそれとして輪番オペにつきまして、あたくしの勝手な印象で話をすると、輪番オペが「その日イールドカーブ上一番安いゾーンの中長期国債買入」になっている為に、2年債などの中期ゾーンの吸い上げ装置として働く事が多く、輪番減額をすると中短期ゾーンの需給が悪化する悪寒が致します(発行量を減らせば別ですが)。中短期の金利が上昇しやすくなるとイールドカーブがすげぇフラット化でもしてくれれば別ですが、やはり全体の金利水準にも影響するでしょう。そもそもイールドカーブがあまりにもフラット化すると投資家も困りますし。


○プライマリーディーラー(国債市場特別参加者)制度雑感

先日の国債市場特別参加者会合で10年債の引受シ団がどうしたとか参加者制度がどうしたとかいう話がございました。で、まぁ特別参加者を集めて会合をやって「この制度はどうしようもない」などというアホウがいる筈が無いので「誠にケッコウケッコウ」という議事要旨になるのはある意味当たり前なのですが(笑)。

『10年債の入札日の値動きだけを見ると、強めの入札となった後、引けにかけて弱くなるというケースも少なくないが、入札日一日の値動きではなく、その前後一週間といった少し長いスパンで見れば市場は安定していると考えられるのではないか。』

まぁそうとも言えますが、その事前準備を狙って変に買いを入れたりするような動きをする意地悪ディーラーみたいなアクティブ投資家もあり、まぁ何とも言いがたいですな。ただ明らかにこりゃちょっと・・・っていう時は事前に調整するようにはなりましたな。

『特別参加者制度においては、各社が応札責任等を負うことにより、参加意識の高いマーケットが形成されてきている。』

それはちょっとヨイショですな。

『マーケットでは入札の過熱感が指摘されることも、ままあるが、特別参加者制度の導入から時間が経過すれば、徐々にこなれてくる面が大きいのではないか。』

次にご紹介する意見の方が妥当と思います。1年の間に何回入札したのよ。

『また、「入札の過熱」については、特別参加者のメンバーである各社が、一定のコストを覚悟で続けて行くのか、メンバーから外れるのか、自社の経営上の問題として判断することであり、制度の問題という形で議論するのは筋が違うのではないか。』

ということで、まぁこの人の意見が妥当な所かと。毎度毎度の割高入札をみると、証券会社の人たちはど〜してそんなに身を切ってるのでしょうかと思うのですが。残存者利益でも狙っているのかも知れませんが、国債なんてのは(参入するには資本は必要ですけど)参入障壁が他の商品比低いものですから、本質的に残存者利益がどうのこうのってのは見込み難いと思いますけどね。

まぁその他の売買で儲けようってのかもしれませんし、その辺は毎度毎度割高入札をする人たちのホンネがどの辺にあるのかは判りませんがね。


いまさら10年国債の引受シ団ちゅうのもアレですから廃止は時間の問題でございましょうなぁと思いますけど。


○興味深い議論

何か毎度毎度この方のブログを紹介しているあたくしは人の褌で相撲を取っておりますですかそうですか(超大汗)。

http://bewaad.com/20051022.html

『今月の抵抗勢力「教職員&文部科学省」』ってお題ですが、ちょうどあたくしも当該新聞記事(ただし毎日のではなく東京新聞ですが)を読んで「教員の待遇ってそんなに大騒ぎして切り下げないといけないような状態なんだったっけ??」と疑問に思っていた話題だったので、大変に興味深く読めました。

で、そのコメント欄での議論が益々興味深いので、エントリーともどもご一読をお勧めしたく存じます。いやまぁ毎度紹介しているあたくしはコバンザメみたいでアレですが。





2005/10/21

お題「逝ってよし!」

という話の前に、昨日ネタにした経済財政諮問会議資料の「4つの経験則」の1と2について毎度お馴染みbewaadさんが解説をしてますというご紹介をば。http://bewaad.com/を是非ご覧下さい。しかしあの諮問会議は・・・・・


○国債市場特別参加者会合での指摘

本当はプライマリーディーラー制度に関する雑感も書きたい所でございますが、次の話があるので(月曜分のネタを温存してるんだろうという指摘をしてはいけません)ここでは日銀袋叩きの図という部分に関して引用をしておきますね。

『9月の初めからの長期金利の上昇は、株高や景況感の改善等による面もあるが、日銀からの極めて積極的な情報発信が市場の大きな反応を招いたという面もあるのではないか。特に時間軸効果の影響の大きい5年ゾーンにおいて0.5%から0.9%程度まで金利が上昇したが、これは、市場のコンセンサスが急速に一方向に動いた結果と考えられる。日銀による情報発信は、金融政策の先行きの透明性の向上を意図したものとは思うが、今回のケースでは市場のボラティリティを著しく高めることになったと考えている。(途中割愛)日銀は、これらの点(CPIはプラス転換するかもしれないけど、全体的な景気動向はどうよって話です)を配慮し、今後、十分慎重な情報発信を心がけて欲しい。』

別のお方(だいたいどこの誰かは予想できますけど^^)はより手厳しい指摘です。

『量的緩和解除の3条件が明示されているのだから、その条件が満たされていくかどうか及びそのタイミングをマーケットが判断していくのが本筋であり、日銀はビハインド・ザ・カーブで政策変更をすることが想定されていたにも関わらず、最近の一連の発言で、いわゆる「地ならし」をしてしまい、それがマーケットに対してサプライズとなったことが足元の金利上昇の一因。』

『ただ、今までのところ、むしろ市場のほうが冷静になったためか、長期金利の上昇は限定的であり、足元では少し金利が下がってきている。これは、もちろん株安ということもあるが、2年債利回りで0.3%近くという水準は、フォワードレートから計算すれば、2年後に3ヶ月金利が0.6%〜0.7%まで上がってこなければ概ねペイできる水準であって、そこまでの政策変更は行われないだろうという判断が市場でなされており、その結果、5年で0.9%、10年で1.6%に迫ったところで水準感からの買いが入ったということだったのではないか。』

冷静になっているのかどうかは少々アレですが、確かに昨日朝の時点では「やっと下げ止まったですねよかったですね」という雰囲気が市場に流れていたものと思われ。

『ただし、日銀が量的緩和解除に更に前のめりになるようなことになれば、冷静だったマーケットが懐疑的になりかねない。例えば、可能性は少ないとは思うが、連続利上げが行われ、さらには毎月1兆2000億円行われている長国買入が減額されることまであり得るという想定に立てば、スパイラル的に長期金利が上がるリスクもあるかもしれない。こうした余計なリスクの芽は予め摘んでおくべきであり、ゼロ金利を長く継続して欲しいというつもりはないが、日銀の情報発信については、これまで決定会合で議論されている通りにやっていただきたいというのが正直な印象である。』

で、問題の国会答弁になるのですが・・・・・・


○もうね、アホかと馬鹿かと

昨日の午後2時から行われた参議院財政金融委員会(どうでもいい話だが、衆議院と参議院で同じ事をやってる委員会の名前を変える必要があるの?)に福井総裁がご出席。最初ちょっとだけストリーミング放送聞いたのですが、別の「逝ってよし」案件(後述します)がありまして一気に聴取する気力が萎えたらその後に爆弾投下ですよ先生。

2時半過ぎから債券先物が下がりだした(で、相変わらず超長期ゾーンが強いらしいです。ナンノコッチャ相場ですな。)のは、財政規律問題に絡めて長期金利に言及した部分で打たれたフラッシュが原因のようです。以下ソースは昨日のブルームバーグニュース「福井日銀総裁:長期金利は非常に低いーリスクプレミアム小さい(7)」って奴です。

『ご承知の通り、世界的に長期金利は低いが、日本の市場においても、長期国債の金利は非常に低い水準にある。おそらく今は、国民の財政規律に対する不信感がむしろなくて、リスクプレミアムが非常に小さい状況になっている』

で、まぁフラッシュはさっきのお題のように打たれる訳でして、日頃から日銀が地均しに余念が無いことを勘案すると「また地均しか!」と市場が考えるのは当然のことでございます。金利水準がどうのこうのって言い出すなよアフォと思う訳ですが。


そんな訳でそれまで137円50銭台で落ち着いていた債券先物は引けに掛けて見事に下げて137円20銭割れまでやって25銭引け。で、その後に出てきた答弁がイブニングセッションでなおも下げの原因となったようで、誠に遺憾極まりない(ちなみに安値137円77銭!)答弁ですわな。

量的緩和を終わらせるのであれば長期国債の買入額も減らすべきではないかって質問をした民主党の大久保勉委員に対してこんな答弁をしたそうな。

『将来を見渡したとき、長い方向性としては当然減らしていくことになると思うが、これもまた一瀉千里に早めに調整することが本当に市場に対して円滑な調整になるかどうか、やはり市場条件を大事にしながら、われわれとしてはできるだけスムーズな調整を図っていきたい』

で、まぁ「長国買入は長期的には当然減らす」って事でまさにゲロゲロ。おまいは昨日の国債市場参加者特別会合の議事要旨を読んでないのかと、オブザーバーで日銀の人間が出席しているらしいのだが、その報告は聞いてないのかと小一時間問い詰めたいものであります。もうね、アホかと馬鹿かと。

だいたいからして成長通貨供給がそもそものお題目なんですから、その時の経済情勢次第で長国買入はどうなるか判らん筈なのに、もう決め打ちで発言する所が、「従業員が働かないのが悪い」とどこぞの経済誌のインタビューで言及して日本中(除く当該企業関係者)を爆笑の渦に巻き込んだ某経営者を彷彿させる率直なご発言(笑)と言ったところでしょうな。そんなの「その時の経済情勢次第」と言えば済む事じゃん。


○そもそも「期待の安定化」と「市場誘導」は違います

このコメントに続いて総裁様はこんな事を仰せです。

『いわば、市場関係者に十分予見可能性を与えながら調整を進めていくのがわれわれの責任ではないか』

別の質問に対してこんな事も仰せのようです。

『本当に消費者物価指数がわずかでもプラスの世界に入って以降は、市場はもっとさまざまな経済の変動や、将来の政策の構図に対して敏感に反応するようになると思う。したがって、金融政策も期待の安定化に相当努力しなければならない』

根本的に「期待の安定化」というのを間違えています。さっき引用した国債市場特別参加者会合での指摘をよく読めと。大体からして経済の将来状況が100%予見可能じゃないのに金融政策の予見可能もへったくれもあったもんじゃ無いでしょ。

この調子で日銀が熱心に「地均し(笑)」を行った結果として市場金利が利上げ前提状態になった後で「市場も景気回復を織り込んで金利が形成されており、利上げも無問題」とかいい訳をして利上げをするのを自作自演と言わずして何と言うのでしょうか?

ちなみに昨日は輪番云々発言の後、激怒激怒大激怒モードの知人ディーラーから「あの総裁は何とかならんのか」というコメントを頂いたり、別のディーラーからは「もう速水(前総裁)状態だなありゃ」というコメントを頂いたり。全然期待の安定化になっていないという事を理解して頂きたいものです。

2000年のゼロ金利解除の時は諸般の事情(謎)で金融市場ヲチをしていなかった為にイマイチ雰囲気は判らないのですが、上記コメントにあるように、速水優さまの生き霊(ここで「あ〜る田中いきりょう」というネタを思い出したあたくしは漫画の読みすぎですかそうですか)でもとりついているのか、それとも日本銀行のDNAなのか知りませんが、先日中原伸之前審議委員が指摘した「5年前に良く似ている」状態全開と言ったところでしょう。




○おまけ:もう一人の「逝ってよし!」はもっと酷いです

そんな質疑応答が行われた参議院財政金融委員会ですが、途中でストリーミング放送を聴く気がなくなったのはその前にメガトン級の大馬鹿野郎が大馬鹿質問をしていた為です。

途中から聴いたので話の流れはちと判らんのですが、昨今の企業買収(というかただの株式買占めなのだがそれは兎も角)の話をした後に、ジャスダック上場の日銀株(本当は出資証券)のお値段がここの所大幅に上昇していると言う指摘をしてこんな趣旨の質問をしておった人がいたんですよこれが。

「日銀はそれこそ輪転機があって通貨を発行できる訳ですが、株を大量購入して日銀資産を有効に活用するように要求する株主が現れた場合の企業防衛策というのはどのように考えているでしょうか(思いっきり意訳ですが、まぁそんな質問)」

お前は国会を子供電話相談室と勘違いしているのかと小一時間。というかその位下調べしてから質問しねぇのかこの馬鹿はとしか言いようが無いです(ちなみに当然ながら総裁の出る必要もなく小林理事が説明してました)。

以前民主党(の一部議員)が乱発する質問主意書をつらつらと眺め、「その質問内容は公開情報で判る範囲内のことで、お前が自分で調べろよ政策秘書だっているんだろうに」などと思った事があるのですが、自民党にもこんなのがいるとはもう今の国会は情け無い限りでございます。「田村君」とか呼ばれてたんで、はて誰でしょうと思ったらこの人でした。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/profile/335.htm

ま、プロバイダー経由で訴状が来ても困りますので(それはそれで身を張ったネタになるが^^)この華麗な(笑)経歴を何じゃこりゃなどと言う気は毛頭ございませんが、あなた証券会社にいたら「日銀株」ネタって話のネタに使いませんかって思うのですが、この人は一体全体何をやっていたんでしょうかねぇ。

頼むから国会では下調べをして質問して欲しいものです。「日銀政策」とかいう新語を編み出す人が衆議院にいるかと思えば参議院はこの有様。何かどっちも業界出身な所に激しく情け無いものを感じます。




2005/10/20

お題「妙な相場ですな/いまさら経済財政諮問会議」

テレビ東京の朝の経済ニュース番組。最初に出てくる某キャスターの顔を見るだけでダウが上ったか下がったか判るというのもアレですが、今朝のように大幅上昇するとやたら元気で声が大きくなるというのが微笑ましいというか香ばしいというか。声出しすぎでさっきからマイクの音が割れ気味ですよ〜♪

○戻るにしても妙なタイミングではございます

昨日は中短期だけではなく長期どころも確りと上昇。あたくしが趣味(?)とする2年カレントゾーンまで2.5毛強だの3強だのとなって公社債売買参考統計値を見たら0.25%ですかそうですか。月曜に0.295%の安値をマークして水曜には0.25%っちゅうのも何考えてるんだこの相場って感じですな。ユーロ円金先06年9月限も引け後には99.64まで復活してまして、月曜の99.58は一体全体何だったんでしょうかね。

どうもここの所材料に素直に反応するというよりはワンテンポ遅れて反応する事が多い気がするんですが、まぁその辺はあたくしもお友達に取材して回らんとイカンのですが(苦笑)。9月の連休ウィークに平均株価が13000円に乗った所ではあまり債券反応せず、その翌週から債券売られだす(まぁ確かにハリケーンで米債がどうのこうのってのはありましたが)のも然り、今回に関しても平均株価が下げだしてから1週間くらいかかってやっと債券復活というワケワカメな展開。

「ここの所」と書きましたが、体感的にはここ数年その傾向が益々強くなってきているようなのは思いっきり主観的なお話なんですが、(単にあたくしがヘタクソだからではないかという質問は却下です)その傾向があると勝手に決め付けて(笑)、理由について仮説を立てると「運用機関のメガ化」というのがあるのではないかという時々持ち出すお話になるのでありました。

特に中短期ゾーンというかマネーマーケットの世界で大きなポジションを持っているのはメガバンクな訳ですが、このメガバンクも気が付けば3つ(UFJと東三、みずほBKとみずほCBは別々にオペレーションしてるから5つであるとも言えますが、いずれ4つにはなりますな)という事で、まぁ減る減るといった所。数は減って一行あたりのポジションは増えてますので、この人たちの懐具合というかアクションが市場に与える影響がかつてより大きくなっておりますですな。

銀行だけじゃなくて生損保とかも同じくですが、あちこちでメガ化が進み、運用機関のオペレーションがまともにマーケットインパクトを与えるようになっており、相変わらずVaSR(バリュー・アット・サラリーマンリスク、本石町日記さんが言い出した言葉ですな^^)相場という債券市場の本質的な問題点(というか病理なんですが)があるんでしょうな。そのために「材料が出る」→「会議」→「さてオペレーション」ってな動きになるのかなぁと勝手に思うのはあたくしだけでしょうか?

しかしまぁ量的緩和の出口に関する地均し(笑)で発生した「量的緩和早期解除観測」(だけではないけど)でこれだけ動き回るのでは先が思いやられますわな。というかこのくらい動くのが普通といえば普通なんですが。


○経済財政諮問会議

一昨日の諮問会議で「福井総裁が量的緩和政策の長期化を求める政府を牽制した」という報道がありまして、昨日の債券市場ではちょっと話題になっておりました。諮問会議ヲチャーを自称するあたくし(思いっきり嘘です)としては禿げ上がるほど不覚でございました(汗)。

経済財政諮問会議の議事要旨や配布資料は内閣府のWebから経済財政諮問会議ってのがうだうだ並んでいるメニューの一番最初にありますので、そこから辿れば見つかると思いますが、債券市場で話題になったのは後半部分の「財政健全化の4つの経験則について」という民間議員が提案したペーパーに基づく議論の所ですな。

福井総裁はこの配布資料についてそりゃちょっとどうよって指摘したのですが、それを議事要旨から拾うとこんな感じです。

『経験則1、2、3、4の中の3と4について、念のためコメントする。』

『まず経験則3は、リスクプレミアムの縮小という表現になっているが、今マーケットで仕事をしている人たちから言えば、現実には、リスクプレミアムはこれ以上下がりようもないところまで下がっている。今後はいかにしてリスクプレミアムを発生させないかという見方がされており、更に低下というと違和感がある感じがする。リスクプレミアムをいかに発生させないかということが重要ではないか。』

配布資料の「経験則3」にあるくだんの部分ですが、まぁ資料を見ると判るのですが、改革(小さな政府に向けた取組み)をすると国民の信頼が高まり、将来に対する期待が発生しますってフローチャートになっておりますわな。で、この将来に対する期待とやらが『将来の税負担増の軽減』『財政破綻のリスク低下⇒長期金利の低下(リスクプレミアムの縮小)』ってモノなんですな。

・・・・・そりゃ福井総裁じゃなくてもツッコミは入れたくなると思うんですが。幾らなんでも「財政リスクプレミアムが縮小すると長期金利が低下」っちゅうのは一般論としてはともかく、現状認識をしてこれから施策を打っていこうという会議で言い出す事ではないと思うぞ。

ちなみに、将来に対する期待の先には「生涯所得の増加」⇒「民需拡大」ってなってるのですが、「小さな政府に向けた取組み」で将来の税負担が軽減するって言ったってじゃあ財政支出が減る方はどこでどう埋めるのかと聞きたくなりますが。何かどこぞの政党のWebで「郵政民営化をすると社会保障は充実するわ戦略的外交で安全保障は確立できるわ安心で安全な社会が維持できるわともうウハウハですよ(意訳)」って図があった(今でもありますが)のを思い出しますな。いやまぁ気持ちは判らんでもないけどさぁ。。。。。


『経験則4では、財政収支の黒字化にはデフレの克服が急務とあるが、財政収支の黒字化は今後の長期的な課題なので、デフレ克服の後どういう経済運営が行われるかということがより重要であり、実体経済が持続的に成長し、かつ物価が安定しているということが大事ではないか。デフレを克服すればあとは黒字化、というようには直結しないという気がする。』

こちらでは「デフレが継続すると自然減収するからデフレを克服しろ」ってまぁ基本的に当たり前の話をしています。ただこの資料の書き方もどうかと思うのは、内容が「2001年以降歳出削減しているけどもデフレ継続で自然減収してるんじゃゴルア!(意訳)」って図になってるんですな。

で、この最初の「デフレの克服が急務」ってお題で、インタゲ(及びその類似政策)導入に相当反対な福井総裁としては「カチン」と来た(「まずデフレを止めよ」という本がございますな^^)んでしょう。そのカチンと来た所で資料を見れば、「日銀がデフレを放置しているから財政再建が進まないんじゃゴルア!」と読んでしまってもおかしくない訳でして(笑)、上記の発言になったのではないかとあたくしにしては珍しく日銀総裁寄りの解釈をしてみるのでありました。

まぁインタゲ導入に対して釘を刺したというのが福井総裁の真意ではないかと勝手に人の胸中を憶測するあたくしでございました。


ま、前半の政府系金融機関の統廃合議論の方が面白いと思いますよ。




2005/10/19

お題「金融のエキスパート(笑)」

昨日の某金融専門(笑)日刊紙の2面。マーケット解説記事なのですが、どうも「金先マーケットの市場は来年末までゼロ金利が続くと言ってます」ちゅう趣旨の記事に見えました。どうも金先の各限月価格からインプライドフォワードレートを出して分析しているようなのですが、絶対水準は気にしないんですかそうですか。

記事のお題を見た瞬間に激しく「?????」で何度も読み返したのですけれども、そ〜ゆ〜風に書いていた(現物は手元に無い)と思うんですが、ちと幾らなんでもそりゃ無いでしょ。先日も申し上げましたが、2006年9月きりの金先が金利換算で0.4%近傍というのは2006年9月のSQ(株のSQとは別の日)時点で3ヶ月Tiborが0.4%になっちゃうんですかねぇと市場で言ってる訳なんですが、それでゼロ金利ですかぁ?一応記事チェックしてから出してると思うんですけど、そりゃど〜よ。

というのは前置きで本日はこちらが本題。
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516320051012002.htm

10月12日の衆議院財務金融委員会で颯爽とご登場した佐藤ゆかり議員と武藤副総裁の質疑応答を含む会議録が昨日アップされたのでちょっと読んでみるのでありました。


○本当に言ってるよ「日銀政策」

『それから、本題でありますが、財政再建と日銀政策につきまして、以下六、七問、時間の許す限りお伺いさせていただきたいと思います。』

この後も「日銀政策」という謎のキーワードが続きますが、どうも「金融政策」の事を言いたいらしいです。うーむ。


○その理屈はどうかと思うのだが

『現在は、十年国債の利回りが一・五%近辺と、いまだ低水準ではございますが、財務省試算によりますと、これもやはり、十年金利が二%を超えてまいりますと、国債の利払い費が急速に上がってくるというような状況で、やや財政の持続性に対する懸念も上がってくるというような金利水準というふうに伺っております。』

えー多分2%位まで上昇する可能性を前提に予算だか発行計画だかってございませんでしたっけ?まぁそれはともかくとして。
 
『財政再建は、そういう意味で、やはり今、金利上昇が始まる前からある程度手だてを打っておくべきことではないかというふうに考えておりまして、やはり金利が上昇し始めてから初めて手を打つのでは手おくれではないかというような形で考えております。』

金利が上昇できないような経済状況で財政再建をしたら景気が悪化すると思うんですがその辺は如何お考えでございましょうか??


○今一歩会話が成立していない希ガス

『そこで、デフレ対策としての位置づけではなくて、財政再建に向けました国債管理政策という新たな枠組みの中で、今後政府と日銀がどう一体化政策をとる余地があり得るのかどうかという点につきまして、財政再建の観点から、日銀政策の今後について、まず武藤副総裁にお伺いをさせていただきたいと存じます。』

まぁ要するに金融政策を国債管理政策の一環としてとらえる意思や如何という質問なんでしょうな。で、武藤副総裁の答弁。

『今、我が国の国債残高、巨額な国債残高を抱えたマーケットというものを考えますと、この国債を順調に消化して、市場での円滑な価格形成を促すということが極めて重要なことであると認識しております。そういう中で、恐らく御質問の御趣旨は、これから金融政策が量的緩和政策から何らかの形で出口政策という形で移っていったときに、長期金利の動向、ひいてはそれが財政にどのような影響を与えるかということについてのお尋ねであろうかと思います。』

『日本銀行といたしましては、基本的には、この長期金利というものは、経済の状況、それから人々の物価に対する見方によって決まるものというふうに考えております。したがいまして、日本銀行としてなすべき最大のことは、金融経済情勢を見きわめながら適切な金融政策を運営することによりまして、物価の安定と持続的な経済成長の実現に努めていく、そういう形で、ひいては財政再建でありますとか、あるいは円滑な国債消化にも寄与することができるのではないかというふうに考えておるわけでございます。』

思いっきり一般論でスルーされているようですな。

『ありがとうございます。日本経済にとりまして、やはり今後中期的に最重要課題と見られます財政再建の観点で申し上げますと、やはり政策変更で金利上昇を引き起こすような事態になります結果、国の利払い費が増大して、その結果、また新発国債を発行せざるを得ないような状況になりますと、政策としては本末転倒ではないかというような気もいたします。』

言ってることの意味が判りませんが。


○いまさら2008年問題ですかそうですか

佐藤さん延々と2008年問題がどうのこうのという質問をなさっておられます。

『九八年度の、先ほど申しました緊急経済対策で増発しました十年国債が集中満期を迎えます二〇〇八年度問題ですけれども、残されましたそれまでの向こう三年間というのは、毎年度国債の償還額が増加の一途をたどる現状にございます。財務省の試算でも、当初は二〇〇八年度に償還額が百三十兆円台の大台に乗るという見込みも出まして、その結果、財務省の方でも、国債の前倒し償還ですとかいろいろなものが工夫として計画されておりまして、償還の分散化を図っておられるということは伺っております。』

国債を前倒しで償還したら大変な事が起きますなどというのは野暮なツッコミですが(買入消却のことを言いたかったんでしょうね)、いまさら2008年問題で大騒ぎしてる債券市場関係者はいないと思いますよ。まぁこの質問に絡めて日銀政策(笑)と国債管理政策がどうのこうのという質問をまたしてるので、2008年問題は話のマクラなのかもしれませんが、結局質疑応答が2008年問題がらみのお話になっていますな。


○質問が延々と「財政再建に日銀も協力しろ」なのは・・・・

『そこで、国債管理政策のもとで日銀が協調政策を選ぶのか、あるいは一線を画しまして、あくまで日銀の独立性を最重要視するのか。この二〇〇八年度問題を意識した観点で、対応策について、日銀の基本見解を武藤副総裁にお伺いしたいと思います。』

というような感じで何度も武藤副総裁に質問していますが、まぁあたりさわりのない一般論で返されているという感じの質疑応答が続いています。このネタばかりで引っ張っているのはやはり財務省うわなにをするぁwせdrftgyふじこlp;@:


○おまけ:単なる言い間違えか深層心理か・・・・

ところで武藤副総裁の答弁でこんなのが。

『今の我が国経済の先行きというものにつきましては、(一部割愛)現時点におきましても、やはり今年度末から来年度にかけまして消費者物価がプラスに転じていく可能性が高い、その可能性が徐々に高まっていくというふうに考えておるわけでございます。』

この前は「今年度末から来年度にかけてCPIの安定的プラスが展望」って言ってた筈なのですが、これは単なる言い間違えなのかそれとも・・・・・・(^^)





2005/10/18

お題「結論が先にある訳ですな」

相変わらず板に張り付いていませんのでネタが今や日銀粘着モードとなってしまっておりますが(苦笑)その前に一応相場メモ。

昨日の債券市場はまたまたフラットニング。2−3年辺りが一番売り込まれるというか超長期は買われるというもう無茶苦茶としか言いようが無い展開。2年の0.295%って何よって感じではございますが、まぁこの辺のゾーンを強力に買い向かうことのできる大手投資家といえば大手銀行ではあります。でもこの人たちは実はディーラーみたいな動きをする人でもありますので、相場を反転させる事はよーしませんな。どこぞの系統金融機関が最強なのですが・・・・

しかしまぁグローバルフラットニングだか何だか知りませんが、「あと数回の引き締めはあるけどもう金融引き締め最終局面」っていう国のイールドカーブを真似る必要は無いと思いますがねぇ。というか、本当に景況感が改善してインフレ期待が起き、金融引き締めステージに入るような景気状況だと債券市場が認識しているのであれば、イールドカーブは長期がより売られる形でスティープニングする筈。それが日銀の動きの予想に敏感な中短期金利が上昇して長期は変らず(どころか超長期は低下しちゃったりする事もありますが)という金利形成ってのは、「日銀は金利引き上げをする可能性が高いけど、金融引き締めをする程景気って良くないんじゃネーノ?」という風に市場は言ってる(後で申し上げますが、必ずしもそうかというと??でもありますがね^^)と思うんですが。

まぁしかし1年TBも0.05%ですか、という訳で前置きが長くなりましたが本題は9月7、8日の金融政策決定会合議事要旨。
http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/g050908.htm


○まず解除ありきですかそうですか

例によって「当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」ってところをネタにするのですが。

『何人かの委員は、長めのオペに対する応札が好調であり、無理なく当座預金残高目標を達成できる状況においては、市場における円滑な金利形成を促すとともに、将来における金融政策運営の機動性・柔軟性を高める観点から、自然体でオペ期間を短縮していくことが望ましいとの見方を示した。』

そもそもオペに対する応札が好調なのは日銀がカンカンに景気に強気になっているのが示されたから「こりゃ量的緩和解除が近いですか」ということになったというのが背景のような気がしますが、それは兎も角。

「市場における円滑な金利形成」「将来における金融政策運営の機動性・柔軟性を高める」って所はもう思いっきり量的緩和政策の解除を前提とした議論になっているようで実に香ばしい。まぁこの日に出た金融経済月報は景気回復を高らかに宣言していた訳で(9月9日にドラめもんネタにしたですけど)、出てきた物との整合性は取れてはいますが(笑)。

この指摘もある意味凄い。

『この間、ひとりの委員は、オペ期間の短縮に当たっては、結果としてターム物金利のボラティリティが過度に高まらないよう配慮する必要があると付け加えた。』

自分たち(この人が中原さんだったら該当しませんので念の為^^)で早期解除期待を振り撒いておいてボラティリティが過度に高まらないようにっていう発想がとっても素敵です。もし解除期待を振り撒いている人たちの誰かがこの委員なら「逝ってよし」といったところでございますわな。


○対外的な情報発信が重要だから皆で期待を振り撒くんですかそうですか

で、最後の部分が実に香ばしさ爆発。

『何人かの委員は、消費者物価指数の前年比のプラス転化が視野に入ってくる中で、量的緩和政策解除の時期や具体的な手順、さらにはその先の金融政策運営に対する市場参加者の関心は高まっており、今後、対外的な情報発信が一段と重要な課題になるとの認識を示した。』

ここを読んで引っ掛からない人は日銀ストー(略)としての修行が足りません(^^)。

本来量的緩和政策のコミットメントというのは「3条件が達成されるまで緩和政策を続ける」というのがミソな訳ですが、ここでは既に「何人かの委員」がCPIがプラスに転じる前から量的緩和政策解除の具体的手順に関して情報発信しておりますわな。条件達成前から「やるやる」と言っていれば市場は勝手にそれを織り込みに逝く訳でして、量的緩和政策の時間軸効果が減殺される事になります。ということは、一昨年の9月に行った「コミットメント」という名前の「お約束」はどうなったんでしょうかと小一時間ですな。

で、まぁこの政策会合以降に立て続けに行われた講演などで各審議委員の言いたい放題が大爆発。確かに講演日程なんかはだいぶ前から決まっていると思うのですが、妙に審議委員の皆様が立て込んでいる直前の会合でこの「情報発信云々」というのは実に予定調和的で、思わず陰謀論を提唱したくなります(笑)。

『この間、複数の委員は、情報発信に当たっては、経済金融情勢の変化に応じた機動的な金融政策運営を損なうことがないよう十分な配慮が必要であると述べた。』

残念ながら無理でしょう。情報発信は金融政策をどうするこうするという話ではなく、景況感に関する話をすべきものではないかと存じますが、「まず解除ありき」という姿勢を出して事細かに解除後の世界の話をするのでは・・・・

『この点に関し、ひとりの委員は、今後、時間軸効果が薄れていく中で、量的緩和政策は、実質的にはコミットメントのないゼロ金利になっていくとの見方を示したうえで、このような政策効果の変化を踏まえた情報発信が重要であるとコメントした。』

こりゃ福井総裁ですな。で、総裁様も情報発信ですか、こりゃ日銀に振り回される日々が続きますなぁという感じです。は〜。



2005/10/17

お題「週明けは雑談小ネタで」

呑んでばかりいたら週末に一気に来ましたですわorz

○ユーロ円金利先物は相変わらずですな

ユーロ円金利先物というものがございますが、この商品相変わらず動きが元気というか豪快というか。まぁずっと売られているのですが、金曜日の中心限月の2006年9月限は安値99.595となっておりますわな。

ちゅう事は、来年9月時点での3ヶ月ものTIBORが0.405%だと申しているのですが、そうなりますとこの時点で足元のオーバーナイト金利が0.25%じゃきかないか、追加引き締め観測が強くなっているかという事を意味しますので、まぁさすがにそりゃ幾ら何でもやり過ぎではないかと思うんですが。現物債の金利と無関係とまでは言いませんが、「おまいら国債のイールドカーブ見て売買しとるんか」と突っ込みたくなるような値段がつくのが金先クオリティではありますが、2年国債まだ0.2%台なんですからそれはちと幾らなんでもアレではないかと。


で、引き合いに出した2年国債なんですが、昨日も弱くてとうとう気分的(あくまでも)な節目の0.25%を抜けて0.26%なんて所をやってしまいました。0.2台後半ですかそうですかという感じですけど、金曜日にも指摘したように、短期金融市場(ユーロ円金先はちとやり過ぎっぽいですが)の金融引き締め織り込み度と長期債というか債券市場の金融引き締め織り込み度がだいぶ違っているようでして、さてどっちが正しいんでしょって所ですわな。

現状では債券市場では「量的緩和は解除しても金利が上るような事はない(いきなり0.25%まで誘導目標が上る事は無いでしょう)」というのが標準的な見方のようですが、短期市場は金融政策の直撃弾を食らうだけにより警戒的になる傾向はありますが、それにしましてもどっちかというと早期引き締めを織り込みに行っている雰囲気でして(よー知らんが)、この先注目ですね。


○日銀総裁記者会見補足の補足

見落としていましたが(汗)こんなのがございました。

『(答)実体経済と物価は、不可分一体なものであるが、強いて分ければ、景気回復の持続可能性を改めてしっかり確認するということだと思う。これからそういったことを判断する時点までにリスク要因がどのように変化し、リスクがあっても経済が確実にそれをこなしつつあるかどうかなどについて、今後の推移を十分点検しなくてはならない。さらにその最終判断の時点で、その先の様々なリスク要因に対して日本経済がこれを十分に乗り越え、緩やかであっても持続性をもって景気回復を続けられるかどうかが、重要な判断ポイントである。』

『物価は、消費者物価指数が数か月プラスになった、あるいは先行き見通しもプラスだと判断しても、その物価が形成されていく背後の事情、つまり経済の持続的回復と裏腹であるが、需給の関係がどのように変化しつつあるか、ユニット・レーバー・コスト(単位当たりの労働コスト)の状況がどのように変化しつつあるかなど、物価形成の一番重要な決定要因のところを探り当てて、きちんとした判断を固めたい。』

燃料投下(笑)質疑の前で、会見の冒頭近辺に出た質疑応答なんですが、まぁここの所は会見のスタート段階ではあまり強気タカ派傾向を出さない(途中から段々強気タカ派になっちゃうんですが^^)というのが総裁クオリティでして、その分を勘案する必要はありますが、どうも労働コストというか雇用者所得の推移に関しては気にしているようですな。統計上はかなり改善傾向だったりしてますけど。


○量的緩和政策終了のインパクトを気にしてるんでしょうかねぇ

同じく木曜の総裁記者会見から。

『この前の講演でも申し上げたが、時の経過とともに経済情勢の大きな変化を背景に、量的緩和政策の効果については、短期金利がゼロ%であることによる効果が次第に中心的な役割を占めるようになってきている。従って、量的緩和政策の枠組みの変更自体は、金融政策が突如不連続に変化することを意味するものではない。このことをまず十分にご理解頂くことが大切である。』

短期金利の操作を中央銀行がする時はその変化たるや常に不連続になるので、この理屈っちゅうのも訳判らんとしか言いようが無いですし、だいたいからしてそういう事を言い出すから債券市場が「量的緩和政策を解除した後にゼロ金利政策を導入する」という風に解釈するんですがって感じなんですが。

まぁ好意的に解釈しますと、量的緩和政策の解除によって市場が混乱して、その結果解除に失敗するのを相当に気にしているとも言えるのですが、その為に「地均し」と称して市場を先に解除モードに持って行くというのは「市場との対話」じゃねぇと思うんですけどね。


『私どもは、市場との対話に十分工夫を重ねながら、まずは量的緩和政策の枠組みの変更があっても不連続なものではなく、その後の政策運営にあたっても、市場における期待の安定化に十分配慮しながら政策運営を進めていきたいと思っている。』

これ以上工夫を重ねられても困るのですが(苦笑)。悲願(?)の量的緩和政策解除を円滑に推進するために地均しをせっせとしている訳ですが、それは市場との対話じゃなくて単なる市場の誘導でしょうな。まぁ日銀の先行き見通しがズバリ当たれば結果オーライですが、前回のゼロ金利解除でミソをつけて今回また失敗したらその先の事を考えると、日銀が財政の打ち出の小槌化に追い込まれる悪寒が激しく発生してガクガクブルブルでございます。


まぁこの辺の「市場との対話」に関する議論は決定会合議事要旨を読んで見たいと思います。どういう発想でやっているのでしょうかねぇと思うんですが。




2005/10/14

お題「総裁記者会見など」

フジテレビ騒動の時に対岸の火事というよりは買収されやがってざまーみろ状態で報道していた印象の強い東京放送様は自社の問題はどう報道してるのでしょうかと興味一杯ですけど、まぁ正直あっそう程度の印象ではございます。つーか朝から暑苦しい人をテレビで見たくはないので東京放送だけは見ないんですけどね。

ま、買収されるのが嫌なら上場廃止でも持ち合いでもしやがれと。

○審議委員のまとめ(12日)の補足訂正

CPIプラス転換時期に関して武藤副総裁のブルームバーグインタビューを改めて読み返してみると、文脈としては「今年末から来年初にかけて、特殊要因が剥落していく結果プラスに転じる」「来年度にかけては、安定的にゼロ%以上と判断できるようになる可能性が高くなってきている」という風になっておりましたので、まぁ物価の見通しに関してはちと書き方間違いでしたな。謹んでお詫びいたしますが賠償は致しません。

ちなみに、西村審議委員に関しては基本的に福井総裁と同じ見方という所でほぼ問題ないようです。


○微妙に不思議な相場展開

まぁ業者間スクリーンが目の前に無いのであまり細々とした話はできませんけど、ここの所やっと20年だの30年だのが弱くなってきた感じですが、それにしても相変わらず10年は1.5%台で妙にしっかりですわな。まぁ最近のコンセンサスらしきものは「量的緩和解除をしてもゼロ金利(あるいは0.1%程度の低金利)が暫く続く」ってことらしいので(人によっては長期金利の上昇防止措置が取られるとの見解もありますが、んな事は日銀がする訳無いと思うんですけどね)、中短期債に比較して10年あたりの金利上昇がマイルドになるという展開。

で、ふと2年債の位置なんぞを見ておりますと、昨日はとうとう0.24%あたりまで金利上昇。この金利上昇のしかたもドカンドカンと上昇するのではなく、じりじりと売られながらじりじりと金利上昇という形でして、あまり戻ってくれそうな感じがしない動きではあります。

それにしても2年0.25%近辺まで来るということは、リスクプレミアム込みとしても感覚的には量的緩和解除後にさっさと短期金利が上昇するというのを織り込みに行っているような感じですしわな。2年債は短期金融市場(とかユーロ円金先とかスワップとか)に影響されやすい面が多々あるので長期ゾーンとはちと別の理屈で動く事もあるのですけれども、短期金融市場と債券市場の温度差がちとあるのかなぁとも思ってしまいます。

まぁここへ来てその修正が起きているのがイールドカーブのスティープ化なんでしょうけれどもね。


○総裁記者会見続き

記者会見要旨がでましたので昨日の続き。

http://www.boj.or.jp/press/05/kk0510b.htm

字面を見ると最初のうちは火付けをしないように言葉を選んでいるように見えますが・・・・・

・前半ではこんなトーン

『当面の政策運営については(一部割愛)もともとの約束に従って量的緩和政策を堅持していく。これに尽きる。ただし、先行き量的緩和政策の解除つまり量的緩和政策の枠組み修正の判断基準については、繰り返し申し上げている通り、2003年10月に明確にした3つの基準に忠実に沿って、正確に判断していきたい。消費者物価指数の前年比が数か月均してみてゼロ%以上で推移することと、先行き再びマイナスに戻らないと見込まれることは必要条件である。ただし、十分条件ではない。十分条件でないという意味は、この2つの条件を満たすと機械的に量的緩和政策の枠組みを修正するということではない、ということである。量的緩和政策の枠組み修正にあたっては、この考え方に沿って、経済・物価情勢を改めて点検し、全体として消費者物価指数の前年比が安定的にゼロ%以上になったと言えるかどうかを、ボードメンバーで十分確認したい。』

まぁこんな感じでやっておりまして、量的緩和政策解除後の金融政策をどうしますかって話に関しては「その時に適切な判断をしますよ」って内容に終始しております。当たり前ですけれども。


・日銀は干渉されませんが何か?

燃料投下質問が前半途中に出るわけですが(^^)。

『(問)量的緩和の解除に関しては閣僚から慎重な対応を求める声が出ている。これに関連して、総裁は先の国会答弁で、異常な政策をいつまでも続けるわけにはいかない、といった趣旨の発言をされているが、一般の国民からすれば、量的緩和やゼロ金利に慣れてしまっており、何が異常かわからないと思われる。改めて量的緩和政策をいつまでも継続した場合の副作用について、どのような考えなのか伺いたい。』

『(答)副作用は数多いが(注:たしかあたくしの聞き取りでは「副作用を挙げたらきりがない」と言ってたような希ガス)、かねてから申し上げている通り、一番重要な副作用は、金利機能を封殺しながら政策運営をしていることだと思う。』

金利機能の封殺キターーーーーーーーー!

『従って、この量的緩和政策の枠組み修正は早すぎてはいけないが、遅すぎてもいけない。遅すぎるとデメリットがメリットを大きく上回るリスクがあると思う。その辺の判断をきちんとしなくてはいけないし、これからが重要な局面だと思う。』

フォワードルッキングキターーーーーーーー!

『ただし、おっしゃったような注文が具体的についているという認識は、鈍感なのかもしれないが、持っていない。現状、消費者物価指数はまだわずかであるがマイナスの世界で動いており、私どもは今の政策を堅持すると申し上げているので、不一致はないと認識している。』

注文なんぞ聞いてませんキターーーーーー!

という感じで、まぁこの辺を読みますと(後でも同じような質疑応答がありましたが)、量的緩和解除後に金利政策を行う時に「ゼロ金利政策」というのは採らないと見る方がフツーだと思うんですが。当預残を下げている期間中(で超過準備が大量残りの時)に結果としてゼロ金利になってしまうというのはゼロ金利政策とは言わん筈なのですが、意図的なのか無意識なのか本職の方々でもこのあたりを混同して説明する向きが見受けられるのが残念ですな。


・インフレ参照値について

公式発言としてはこのようになっているということで一つ宜しく。

『期待の安定化を図るためにどのような道具立てあるいはコミュニケーションの仕方があるかについても、まだ多様な考え方があり、今のところはこれを収斂させて物事を組み立てていこうという段階には至っていない。インフレ・ターゲティングやインフレ参照値がお題目的に議論されるのを私は好まないが、そうしたものについてもバリエーションが可能であり、私どもとしてはさらにそこに知識創造を加えながら、本当にそうしたものが使えるのか否か、使えるとしてもどのように組み立て直して使えるのか、あるいは全く使えないのか、これから十分に検討したいと思う。』

これをどう読むかちゅう事なんですが、字面を見ると「前向きに検討する」という感じなんですけど、どうも会見のストリーミングを見た感じでは「やる気ねぇよ」って印象でしたが、これはあたくしの勝手な思い込みかもしれません。ただ今までの総裁発言から考えるとそんなにやる気は無いと思いますが。

しかしあたくしには「そんなもの」と聞こえたんだけどなぁ(笑)。


・長期金利の安定化に関して

『市場金利、特に長期金利を金融政策で飴細工のように一定のポジションに置き換えることはできないと思う。それ故に、私どもは情勢判断に正確を期して政策を遂行する以外になく、情勢判断が正しければ、長期金利は、多少の振れを伴っても、結局のところ先行きの経済・物価見通しに関する人々の観測と一致するところに修正されていくはずである。そのような運営を行っていく以外にはないと思う。』

飴細工キターーーーーーー!

『もちろん、市場の中でその方向性と違った動きをすることによって鞘取りなどのいろいろな取引が行われると思うが、実勢から離れた市場金利の水準を長く維持できる力のある人は、この世の中には存在しない。結局は、経済実勢に合ったところに金利は修正されていくと思う。金融政策のスタンスと経済の先行き見通しについて、多くの皆さんの見通しと私どもの見通しが一致していて、政策もそれに一致している限り、非常に飛び離れた金利が長く続くという危険はそれほど大きくないと思う。』

このくだりと、先ほどのインフレ参照値に関するくだりを関連させて「量的緩和解除後には長期金利の安定化策を日銀は打ち出す必要に迫られるだろう」というような趣旨の見解を出されていたどこぞの方がおいででしたが、それはちと違うような希ガス。

どっちかというと長期金利放置プレイ(今までもそうでしたが)だと思いますけどね。大体からしてインタゲおよび類似政策の提案の趣旨は「インフレ期待をマイルドインフレで安定化させる」というものであって(間違っていたらゴメンナサイ、即座に訂正致しますのでご連絡お待ちしております!)、その「期待の安定化」を「期待」=「長期金利」と結びつけると話がややこしくなるのではないかと。

まー国債管理政策の一環で長期金利の安定化策を取ってくれという話は出るでしょうけれども、さすがにそれは筋が悪い話なので中央銀行としては認められませんなって所だと思うんですが。


まぁそんな感じ(どんな感じだ?)で。




2005/10/13

お題「金融経済月報/総裁の名(迷)言爆発?」

まずは毎度お馴染みの金融経済月報チェック。

○細かいけど結構ポイント突いた所で判断が前進している訳でして

今月の金融経済月報→http://www.boj.or.jp/seisaku/05/pb/gp0510_f.htm

例によって9月分と比較。

・現状判断部分:住宅投資がいきなり上方修正

『わが国の景気は、回復を続けている。』ってあたりの部分は特に9月分と変わらないのですが、「あれ?」と思ったのは現状判断部分のこのところ。

(10月)『また、住宅投資にはこのところ増加の動きがみられる。』
(9月)『この間、住宅投資は横ばい圏内で推移しており、』

住宅投資の横ばい圏ってのはあたくしが毎月飽きもせず月報チェックを始めてから延々と続いていたので正直何年ぶりに上方修正したんでしょうというくらいなんですが、住宅投資の増加傾向ってのがいきなり出てきたのは「そうなんですかねぇ」という感じです。まぁ確かに最近再開発案件の大型マンションが物凄い勢いで売りに出されていますが。。。。そうなの??


・先行き判断部分:IT部門の調整云々が消えました

(10月)『海外経済の拡大を背景に、輸出は増加を続けていくとみられる。』
(9月)『海外経済の拡大が続くもとで、輸出の伸びは次第に高まっていくとみられる。』

米国経済は株価だけみてると若干アレの香りもするなどというツッコミをしてはいけません(笑)。ここで輸出の先行き見通しが若干強めになるのですか。

(10月)『こうした内外需要の増加を背景に、生産も増加基調をたどるとみられる。』
(9月)『こうした内外需要の増加や、IT関連分野の調整一巡を背景に、生産も増加基調をたどるとみられる。』

イット関連分野の調整がどうのこうのというフレーズがとうとう消えました。


・物価の現状と先行きに関しては9月と全く同じです

まるで同じなので比較もへったくれも無いのですが、同じですだけじゃ寂しいので先行き見通し部分を引用しておきましょう。

『物価の先行きについて、国内企業物価は、原油高等を反映して、上昇を続けるとみられる。一方、消費者物価の前年比は、需給環境の緩やかな改善が続く中、米価格のマイナス寄与が剥落していくことや、電気・電話料金引き下げの影響が弱まることなどから、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じていくと予想される。』


○迷言続出の予感:総裁記者会見

昨日は福井総裁記者会見のストリーミング放送(ただし録画)というものを初めて見て(というか聞いてというか)みました。ブルームバーグが放送しているものですので残念ながらブルームバーグ端末が無いと見えませんので悪しからず。

会見要旨そのものは本日日銀Webにアップされますが、会見をぶっ通しで見た印象としては「いやー総裁やる気全開ですなー」って所でした。これが字になるとどういう雰囲気になるのかはよく判りませんが。

で、今回の記者会見で気になった名(迷)言。ただしあたくしのメモベースですので正確性については保証いたしかねますが、本線は外していないと思います。


・ライトタイミング!

金融政策の変更に関して「ライトタイミング」ということで早すぎず遅すぎずみたいな発言をしていたのですが、これはもう大昔の副総裁時代に金融政策の変更に関して「ジャストタイミングで考えている」と発言して次の瞬間に債券先物を特別売り気配にして頂いたことを物凄く懐かしく思い出すというものでございます。合掌(何に?)。

しかし量的緩和政策のコミットメントはビハインド・ザ・カーブを覚悟していた筈なんですけれども、出口がみえてきたらいきなりフォワードルッキングですかそうですか。


・インタゲは「そんなもの」ですかそうですか

量的緩和政策解除後の政策枠組みに関連してインフレターゲットや物価参照値の導入はどのように考えているかという趣旨の質問に対する回答の中で、本当に「そんなもの」が使えるかどうか良く検討して云々というお話をしておりまして、なるほど総裁様はインタゲあるいは物価参照値というようなのは嫌いなのねって印象を強く受けました。

ちなみに、その他の質疑応答でも金利ターゲットの政策になった場合は「金利を通じて(市場と)対話する」とか量的緩和政策の副作用に関して一番大きいものとして「金利機能の封殺」を挙げてみたりと、金利ターゲット政策になった場合は昔の政策に戻りますよって雰囲気が全開でしたな。


・どうも物価下落懸念は1ミリも無いようで

コミットメント第2条件に関して「展望レポートで発表される物価見通しは、予想期間に対しての平均値であって、第2条件は先行きの見通しがゼロ以上であるので、展望レポートの見通しがプラスだからと言っても第2条件が達成されていない可能性もありますがどうでしょう」みたいな質問があった時に総裁は「訳判らん質問ですなぁ」みたいな感じで回答してました。

その答えなんですが、「現状がプラスで先行きがプラス予想だったら予想期間の全期間プラスだからそんな質問されても困りますなぁ(激しく意訳)」という感じでして、どうも総裁様におかれましては「現状プラス転換したけど、先行き見通しは下向きベクトルで、平均してみるとプラスです」という状況は想定の範囲外(笑)のようでございます。はあそうですか。


ま、会見要旨を読んで続報をということで。武藤副総裁の国会発言もちと後で。




2005/10/12

お題「審議委員の小まとめ」

いや昨日は随分と平均株価が強かったですな。債券も後場から下げていたようですが、例によって昨日もまた相場あんまり見てないので、見てきたかのような後講釈は致しません(汗)。

審議委員の講演などが一巡(西村審議委員の講演は最近無いようですが)したようなのであたくしなりに纏めてみようかと思い、あたくしが勝手にポイントかな〜と見ている部分に関してどうなのよってのを並べてみました。一応正確を期したつもりですが、発言の字面を見ているとニュアンスが微妙な所もあるので解釈が変な所もあるかもしれません。念の為・・・・

○最近の講演等のタイミングはこんな感じです

福井総裁=9月30日定例記者会見10月3日衆議院予算委員会
武藤副総裁=9月5日ブルームバーグインタビュー6月23日講演
岩田副総裁=9月15日講演
須田委員=9月28日講演
中原委員=10月3日講演
春委員=10月4日講演
福間委員=9月14日講演
水野委員=9月20日講演
西村委員は特に最近講演無かったですが、インタビューがあったかも知れない。

ということなので、念の為この辺にあたって確認される事が吉かと存じます。また、以下のリストに西村委員が入ってないのでまだ出来が悪い事を予めお断りしておきます。


○CPIのプラス転換時期について(以下一部敬称略)

今年末にかけて=福井、岩田、福間
年末頃=中原、春
来年度にかけて=武藤、須田?、水野?

須田委員は強気っぽい言い方をしておいて記者会見で「特定した訳では無いが」みたいな発言でしたが、まぁ強気なんでしょう。水野委員は時期については特にコメントはないですが、「展望レポート通り」という見通しのようです。まぁ要するに皆揃って遅くとも来年度にはプラテンと。


○量的緩和政策の解除時期

福井=来年度にかけて
岩田=「出口は近づいている」
中原=2条件達成後も慎重な対応が必要
春=来年度初以降に

須田委員はCPIの強気と同じく解除時期についても前のめりっぽいニュアンス。福井総裁は国会答弁などで「急にそこから引き締めるというふうなことを一度も申し上げたことはないわけでして」と言ったり、その前の記者会見でも量的緩和政策を解除してもかなりの低金利(もしかしたらゼロ金利)をするという言い方。

福間、水野の両委員は解除前に当預目標の引き下げを提案していますが、これは解除に時間を掛けるというお話でもありまして、解除後に関しても漸進的な対応という感じです。


○量的緩和3条件達成前の当預目標引下げ

引下げの提案中=福間、水野
技術的対応を否定しない人=福井、武藤、春
否定的な人=岩田、須田、中原

で、この中で武藤副総裁は「解除前提の引下げは不可(6月の講演でしたが)」というコメントで、須田委員は「別に技術的に必要ないので不要」というコメントなので、もしかしたらこの二人の位置関係は逆なのかもしれませんが一応こうしてみました。当預目標の引下げが引き締めを意味しているので否定というのは中原委員。


○緩和解除後に新たなコミットメントを設けるかという話

否定的な人=福井、須田、水野
「望ましい物価目標」設定を推奨する人=岩田、中原

この中で須田委員が講演で思いっきり否定してますんでまぁ一番強硬なのでしょうが、福井総裁も国会答弁なんかを読んでいるとどうも否定パワーが強そうですな。水野委員は否定的というよりは慎重対応という感じですか。


○量的緩和政策の「量」の意味

この部分に関しては最近の講演などから拾ってはいますが、「いや他にも意味を認めていますが」とか言われちゃったりして(大汗)。

福井=流動性対応
武藤=企業金融の緩和、物価下落防止
岩田=流動性対応、景気下支え
須田=流動性対応
中原=景気下支え
春=流動性対応、物価下落防止
福間=流動性対応
水野=流動性対応

まぁ金融不安に対する流動性対応というのは全員認めているのですが、それ以上の積極的な意義はどうなのよって話ですな。最近まっきり言わなくなりましたが、以前は岩田副総裁は「事後的に為替介入の非不胎化になっている」という指摘をしておりました。


とまぁそんな感じで作ってみましたが、まだまだ完成品とは言いがたいものもございますのでご指摘などいただければ誠に幸いです。

(で、早速補足です)

○審議委員のまとめ(12日)の補足訂正

CPIプラス転換時期に関して武藤副総裁のブルームバーグインタビューを改めて読み返してみると、文脈としては「今年末から来年初にかけて、特殊要因が剥落していく結果プラスに転じる」「来年度にかけては、安定的にゼロ%以上と判断できるようになる可能性が高くなってきている」という風になっておりましたので、まぁ物価の見通しに関してはちと書き方間違いでしたな。謹んでお詫びいたしますが賠償は致しません。

ちなみに、西村審議委員に関しては基本的に福井総裁と同じ見方という所でほぼ問題ないようです。




2005/10/11

お題「予算委員会での総裁発言を確認する/その他」

本題の前にメモを2つほど。

○相場メモ

金曜日の債券市場ではイールドカーブがスティープニング。どうも木曜の相場はやはり「上値がやたらと重い」という印象が強かったようでして、その前に長期ゾーンに入っていた買いも割と逃げ足の早い資金だったらしく、平均株価が弱かったのですがあっさり売りになってしまいました。で、まぁ売り込まれていた中期だの先物だのが確りと。

今週は5年国債の入札がありますが、0.7%カレントだと居心地悪そうですが、まぁ今のところ0.8%の方に近いので居場所としては良さそうな気がします。

○中原伸之前審議委員の時事通信インタビュー

金曜の時事メインに記事が出ていたようですが、そのヘッドラインの中に『今の日銀はゼロ金利を解除した5年前と良く似ている』というのがありまして、ゼロ金利解除前後の様子をイマイチ知らないあたくしとしてはそうなのですかというしか感想は無いですけど、景気に関して『悪い金利高とスタグフレーションが最大のリスクだ』というのには頷けるものがございますな。詳しくは時事メイン、あるいは時事通信社刊行の「金融財政」(でしたっけ?ただし一般店頭販売はしてない筈なので詳しくは同社にお問い合わせを)にインタビュー記事が出ると思いますのでそちらをご参照下さいな。(と無責任なあたくし)


では本題。

○衆議院予算委員会

先日「異常な政策云々」という福井総裁の発言が飛び出した衆議院予算委員会の会議録が衆議院Webにアップされました。衆議院Web→会議録→予算委員会→10月3日から閲覧できます。

で、その予算委員会での福井総裁発言前後でどんな話をしてたのかということですが、既に週末に毎度お馴染みbewaadさんが纏めていたりするので(http://bewaad.com/20051008.html#p01)、まぁそちらを読みましょうで終了するのも何ですので、どんな文脈でこの話になったのよという所をちょっとだけ。

『○山本(幸)委員 私も全くそのとおり(引用者注:竹中大臣が「デフレ脱却にはマネーサプライ増加が重要」と答弁した事かと)だと思うんですが、では、どうしてデフレ期待が払拭できないかという話をちょっとしたいと思います。日本銀行は量的金融緩和というのを続けていて、これは結構なことだと私は思っておりました。これも、ゼロ金利解除の失敗に懲りてそういうことになったんですけれども、去年の一月までは大変すばらしいパフォーマンスだったと私は思っているんですが、そこでとめちゃったんですね。そこまでの伸ばしたものが今ごろきいてきて、いろいろな実体経済にいい影響を与えているんじゃないかと思っているんですが、私が心配しているのは、去年の一月以降打ちどめにしちゃったので、そっちの影響がこれから出てくる。それと、原油価格それから社会保障の負担等が絡むとちょっと心配じゃないかという懸念を持っているわけですね、杞憂に終わればいいですけれども。』

うーん、マネーサプライが大幅に増えるまで当座預金残高目標を増やし続けろというお話をしているように読めるのですが、(もうちっと前にマネーサプライが伸びないのは何故だという論争をしている)景気が上向きになりだした時点では量をどうのこうのというよりは「ビハインド・ザ・カーブ」を強調した方が意味があるような気がしますな。まぁ日銀も訳判らん理屈を振り回しだすのでこれに騙されてあたくしも時に訳判らん話をするのですが(汗)。

『そこで、一番日本銀行にやってもらいたいのは、デフレ期待を早く明らかに払拭してもらいたい。そうしないと、どんなに金を出しても効果が薄い。これはもう経済理論からも、過去の昭和恐慌の歴史から、あるいはアメリカの大恐慌の歴史から見ても、金だけ出したらいいというものじゃない。そうじゃなくて、期待感ががらっと変わって、いや、将来的にはもうデフレじゃないんだ、将来的には少なくともマイルドなインフレになるんだというようにがらっと期待感が変わったときに、すべてがうまくいき出すんですよね。私はそう思っているんです。』

で、この後にCPIに上方バイアスが掛かるからCPIのゼロ%ではデフレ脱却とは言えず、1%以上無いとデフレ脱却とは言えないって話をした(さっきご紹介したリンク先にそのあたりの引用がございます)上で、福井総裁の答弁がございます。

『○福井参考人 かねてより幾たびかお答え申し上げてきておりますけれども、消費者物価指数の前年比変化率がゼロ%になれば日本経済が本当に最終的に我々が目指すべき望ましい、均衡のとれた経済になるとか、CPIゼロ%が我々にとって本当に望ましい物価水準であるとかいうふうに考えていないということをたびたび申し上げました。』

確かにその発言だいぶ前に見たことあります。日本経済が云々って話をしてたのはCPIのプラス転換がまるで展望できない頃によくしていましたが、最近では地均しモード全開ですんで久しぶりに聞きましたな。じゃあCPIゼロ%が望ましい物価水準ではなく、もっと上だという話をするのかと思えばさにあらず。

『そういう状態に持っていくための一つの通過点、重要な通過点がCPIがゼロ%というところであり、量的緩和政策という、世界にも日本にもかつてとられたことのない異例な金融政策というものをいつまでやるんだということは、最低限そこまでやっていけば、我々はその後も安全に経済を運転していけますと。急にそこから引き締めるというふうなことを一度も申し上げたことはないわけでして、それからも日本経済に対しては、金融政策の面からは十分弾力的に、そして持続的な成長が可能になるような、そして物価の安定が最終的にうまく実現できるような経済に持っていきたい。その一つの大きな通過点がCPIゼロ%ということで、異常な政策をいつまでも続けろというふうな御意見には我々は断固くみすることはできないということでございます。』

えー、何というか微妙に訳のわからん言い方をしているのですが、どうも「CPIがゼロ%になったら量的緩和は止めるけど、超低金利政策は維持するんだからそれで勘弁しやがれ」と言っているような気が致しますな。

どうも「最悪ゼロ金利でも良いから兎に角金利政策に戻したい」という風に考えているのではないかと思う今日この頃ですが、福井総裁は現在の量的緩和政策に関して時間軸が短縮されてきて単なるゼロ金利に近づいてきた云々という話を先日しておりまして、その認識通りであれば別に大騒ぎしてゼロ金利政策にする必要は無いと思うんですがどうなんでしょう。実(ゼロ金利じゃない金利政策)より名(ゼロ金利でも量的緩和解除)を取りたいんでしょうかねぇ。どうも理解致しかねますな。

#今日からの金融政策決定会合ですが、金融経済月報でなお強気になるのかどうかくらいですかね。月末の展望レポートの方が注目でしょうが、月報で方向性は見えるでしょう。





2005/10/07

お題「手形オペの期間短縮、その他少々」

昨日の相場は寄りで上に値を飛ばしてスタートしてなお上伸したものの、株価下落が止まると妙に売られてて、引けに掛けて株価一段安で寄り近辺まで値を戻したというように見えましたが、これが果たして強い相場なのか上値の重い相場なのかというのは現物債の板状況を眺めていないので如何とも言いがたいですな。

まぁ10年国債入札で下落しまくった相場の反発分なのですが、どうも買い方も足が速い資金のようでして、今までのパターンで言えばちょっと上ると直ぐに降りてしまうので、一旦(買った分の一部かもしれないけど)降りたりする動きもあったんでしょうな。まぁちゃんと見て無いのであまり見たようなことを書くのはアレですので前置き程度という感じ。

で、前置きの雑談が長いのですが、いつの間にか日銀様のWebにこんなものが(http://www.boj.or.jp/recruit/recruit84.htm)あるではないですか。35歳位までの方が対象ですかそうですか(謎)。


○手形オペの期間短縮

昨日実施された全店手形オペは期間150日となりました。札割れだ何だと騒いでいた時には300日以上の期間で打っていた訳でして、半分くらいまで短縮しましたかそうですかという所です。もともと9月は資金余剰気味なのであまりオペを打つ必要が無い上に、長いオペを打っていた関係上期落ちも少なしという所なのかと(真面目に検証してないけど)思うのですが、ここのところあんまり手形オペ自体がそんなに多くなかったりしますな。

で、そのオペの期間なんですが、直近4回の全店手形オペを見ますと(日付はオファー日)8月8日=309日、8月23日=232日、9月27日=195日、昨日=150日という感じで順調に(笑)短期化中。ちなみに本店手形オペは8月4日=171日、8月18日=170日、9月21日=116日、9月30日=114日という感じですので、やはり9月になってから期間短縮中ということですな。

まーそもそも手形オペの期間を長くしたのは、そうしないと札割れするからなのですから札が入るのに期間を長いまま放置するのは変という結論になる訳ですが、地均しモード全開(除く中原審議委員)状態になっているので、「これもまた地均し」とか解説する人が出てきそうな希ガス。ま、その下心はあるんでしょうけどね(爆)。


○恐るべし相場神

昨日一昨日と平均株価は豪快に下落してしまいましたが、一昨日の恐怖金融新聞朝刊で「株価が上昇ですよ」って特集をやっていて、相場神様(某外資系証券の超有名ストラテジスト、肩書きはチーフインベストメントオフィサーでしたっけ?)が「長期上昇トレンド、3−5年後には日経平均2万円」というご託宣があったというのは皆様ご存知かと思います(^^)。

で、あたしゃーこのお告げの解釈に関して当初は「これはもしかしたら3−5年後を待たずして2万円なのか?」とか「そもそも今1万4千円近いのに5年で4割しか上らんというのが強気見通しなのか?」などと悩んでしまったのですが(笑)・・・・

同日にもう一人の天災株式アドバイザーであらされるところの「髪(タイプミスではない)」と一部ヲチャーに称され絶大な人気を誇る某氏(いや一度この人の講演聞いた事あるんですけど、話面白いですよ)がご自身のブログで「日経平均1万4千円はすぐにでも」とカンカンの強気になっていたと気が付きガクガクブルブル。しかもこちらの先生に到っては9月の上昇相場の時に「相場の上昇が早すぎで黄色信号」みたいな警戒モードだったのに、その警戒モードが外れた途端に平均株価が2日で450円(昨日の日経平均は引けで何だか妙に値が飛んでました。引値で見れば2日で400円ですな)とか下落するのは・・・・これはもう神のコラボレーション(謎)としか言いようがないですわな。おーオソロシ。


○春審議委員の講演

10月4日に行われた講演で、一昨日要点だけ箇条書きしましたが、一応引用しておきます。

・コアCPIの見通しについて
『コアCPIは、先行き、米価格のマイナス寄与がなくなっていくことや、電気・電話料金の引き下げの影響が弱まることなどから、年末頃にかけて前年比ゼロ%ないし若干のプラスに転じていく可能性が高いと考えています。』

これはほぼ全員一致している。

・量的緩和政策の量の効果に関して

『「量」の面については、金融システムに対する不安感が強かった時期において、金融機関の流動性需要に応えることによって、金融市場の安定や緩和的な金融環境を維持するとともに、物価下落が企業収益の下落などを通じて経済活動の収縮を招くリスクを回避することに効果を発揮しました。』

微妙なのですが、景気押し上げ効果は認めていないとも取れそうな希ガス。


・当座預金残高目標の引下げ問題

『当面、現状の30〜35兆円の水準を継続し量的緩和政策堅持の姿勢を示していくことが適切と考えておりますが、量的緩和政策の枠組みのもとで資金需要に合わせて目標を慎重に引き下げていくことも、ひとつの選択肢と認識しています。』

資金需要に合わせた技術的な引下げを容認しているのですが、そもそも量的緩和というのは必要以上に量を出すことによって効果を出すという話ではなかったかと小一時間なのですが(笑)、まぁ現状のように短期金利の先高感があってオペの札割れが回避される状態なら技術的引下げの話はやってきませんわな。

この技術論というのも曲者でして、景気失速懸念でも出てきて短期金利の先高感が無くなってしまうと、当然ながらまたオペイラネって事になりますので次第にまた札割れ続出モードになってしまうと予想される訳です(そうならないかもしれないけどね)。そうなりますと、「景気失速懸念が出ているのに技術的観点では当座預金残高目標の引下げをするのが適切」という訳の判らん話になりかねないという諸刃の剣。素人にはお勧めできない論議ではございます(笑)。


・量的緩和政策変更時期の予想

『いつ量的緩和政策の枠組みを変更する時期を迎えられるかに関して言えば、さきほど申し上げた景気・物価の見通しが想定通り実現していくとすれば、2006年年初以降その可能性は徐々に高まっていくと思っています。』

そんな予想はしなくてよろしい(笑)。


・変更にあたっては予防的かビハインド・ザ・カーブか

『量的緩和政策の枠組みを変更すべきかどうかの決定は、早すぎても遅すぎてもいけない訳ですが、私自身はどちらかと言えば再びデフレに戻らないことを重視しながら約束の条件に照らして判断していきたいと考えています。』

「デフレに戻らないことを重視」と言っていますが、「早すぎても遅すぎてもいけない」と言うのが曲者。量的緩和政策の枠組みが本来ビハインド・ザ・カーブを前提にしていた筈ですので、少々アレですなって気もします。

まー基本的には執行部大勢順応的な講演ですなぁという感じですね。もともとそういう感じのお方なので特にサプライズなしではあります。

#うみゅ。何とか職場変更後一週間続いたぞ



2005/10/06

お題「フラットニング雑考/その他」

そういやあたくしが現場にいない時は相場が暴れるというジンクスがあったのですが・・・・・

○上ってフラットニングしてるのですが

昨日の債券相場は前日の入札後に大下げした反動がいきなりやってきて大反発。米国株式が何となく下がって平均株価も何となく下がったというのもありますが、まぁ昨日の入札の結果に対しての売り込み方がやり過ぎでしたなぁという事なんでしょうが、ちょっと節操無さ過ぎではなかろうかと思うのですが、まぁそれは兎も角。

んじゃあ昨日のイールドカーブはどうよってことになりますと、中期から先物に掛けては確りだったのは今までの下げの裏返しなので戻るならそういう形になるのですけど、超長期ゾーンが相変わらず強く、下げでも相対的に確りしていた超長期が上っても強く、中期や先物よりも超長期の方が強いと。

えー、まぁグローバルフラットニングでどうのこうのとか言われる訳なのですが、昨日申し上げた事の続きになりますけど、主要国のイールドカーブがフラットニングしているから日本もフラットニングと言われましてもそれ別問題じゃネーノと愚考する次第。米国では相変わらず金融引き締め局面な訳で、もしかしたら引き締めが打ち止めになるのかならないのかって状況ですわな。方向が相変わらず引き締めだけどインフレはコントロールされてますってな話だからフラットニングしやすいんでしょ。

然るに日本の場合は、今のところでは仮に量的緩和政策解除という話になっても金融引き締めが別に打ち止めになる訳ではないと思うのですが、もしかしてちょっとだけ金利が上ったら打ち止めになるという解釈なんでしょうか。そうとでも考えないと金利がこの絶対水準にいるのに上っても下がってもフラットニング(まぁ昨日のフラットニングは一時的現象かもしれませんが)するというのはどうもよー判らんですわな。


○どうも出口は市場が連れて行ってはくれないようで

植田前審議委員のお言葉らしいのですが、あたくしの思うべき論で申し上げますと、量的緩和政策に関しては景気が上向きになっている(らしい)現在のような状況でこそより効果を発揮すると思います。従って単にコアCPIがプラス転換するという事象面で解除するのではなく、インフレ期待が醸成されて、長期、超長期ゾーンの金利が上昇する形でイールドカーブがベアスティープ化するまで待てば、そりゃもう財務省様あたりでも「頼むから金融引き締めして昂進したインフレ懸念を冷やしてくれ」って話になるでしょうにと思う訳で。まぁその前に弊害が見え見えになってくれば同じようなことになるでしょう。

でも現実には日銀がせっせと「地均し」をして市場の金融政策に関する期待に対して方向性を与えちゃってるので、逆に「早期解除期待」がインフレ期待の前に醸成されるという有様。だからこそイールドカーブがフラットニングしているわけですな。元々はこの量的緩和コミットメント3条件は「ビハインド・ザ・カーブ」を前提にしていた筈でしたのですが、いつの間にやらそんな話はどこへやら。一昨日ご紹介した中原審議委員の講演で久しぶりに聞きましたよって感じです。何せ福井総裁を筆頭に本来のDNAを発揮?して「予防的金融政策モード」になって地均しをはじめてますからねぇ。

以前(だいぶ前、景気回復もCPIのプラス転換も「ハァ?」って感じだった時ね)あたしゃービハインド・ザ・カーブの上塗りになるような政策(例えば、当初の条件に対して糊代をつけて第1条件を先送りするような提言)に対して「ビハインド・ザ・カーブが前提の政策やってるのに、それをより強化するような政策変更をするのは如何なものか」と噛み付いていた訳ですが、何の事はありませんでしたなぁという感じです。

出口は市場が連れて行ってくれるのではなく、日銀がせっせと出口への道を整地しておりますが、大丈夫でしょうかねぇ。。。。



○これはお勧め

いつも引き合いに出してますから読者の皆様におかれましては既にご覧になっているかもしれませんが、毎度お馴染みbewaadさんの昨日のエントリーhttp://bewaad.com/20051005.htmlの最初の話「(小泉首相の政治理念=リバタリアンという話に対して)断じてリバタリアンではない!」は、最初にこの「小泉=リバタリアン」話を読んだ時にあたくしが感じた「?????」感への答えになっています。

「小さな政府」とか「規制緩和」とかとりあえず一般ウケするというか否定しにくいスローガンは出すものの、その実金融行政ではもの凄い勢いでああせえこうせえとまるで大昔の産業指導状態だったりしているのはスルーですかそうですかっていうのが相変わらずの日経クオリティですわなぁという感じ。

まぁ何というか困ったもんですなぁと思います。





2005/10/05

お題「小ネタを少々」

昨日は春審議委員の講演もあったのですがちょっとパス。

○10年入札の日に中期と先物が売られますか

昨日の10年国債入札。まぁ例によってそんなに仔細に見ていた訳ではないですが、入札結果自体は事前予想よりも1銭ちょっと弱かったという感じだとおもうのですが、テールが3銭というのはまぁ10年にしては流れた(ちなみにここ2回のテールは1銭)という印象ですし、また間の悪い事に平均株価が後場から続伸したのでヘッジが入る下がるのも判るのですが・・・

終わってみれば先物前日比75銭安の5年49回債が6.5毛甘の0.84%で10年272回債は6毛甘の1.56%と相変わらず先物や5年が弱いですなぁという動きになっておりまして、どうもこれはまたも中期ゾーンに売り物が出て、先物にはヘッジなのかショート攻撃なのか判りませんが、まぁこっちも売り。業者のヘッジだけでここまで下がる事は無いので、まぁ投資家な人の売りが出たというところでしょう。

例によって例の如く、いつも足の早い大手銀行の皆様はポートの主要部分が中期債らしいので、どうしても実弾が出てくる時には中期ゾーンから崩れる事になりますし、全体のヘッジをしようとすれば先物売るしかないでしょうし・・・・ということで、ちとあーた中短期叩き過ぎでは無いかと思うのですが、勢いがついて困ったもんですなぁという感じです。


○去年の「早期利上げ懸念」相場と比較してみる

去年の6月といえば5月に12000円から10500円近辺まで反落した平均株価が11000円台を奪回して、米国10年国債が4.7%台などというレベルで動いていたのですが、株価の反転(=本格的景気回復)をネタにして俄かに量的緩和の早期解除観測が台頭して中期債中心に売られたのですが・・・・・

5年カレント物の居場所を基準にして利回り見ると下げ過程にあった時期では昨年の6月8日が該当しますわな。先物に関してはちょっと残存日数と限月交代の関係で昨日の数字と単純比較するのはちと無理があるので省略しますが、まぁ激しくざっくりということで各年限を比較するとこんな感じ。

          昨年6月8日   昨日
20年カレント  2.265%   2.125%
10年カレント  1.700%   1.560%
5年カレント   0.835%   0.840%
2年カレント   0.145%   0.235%

(数字は日本相互証券の債券引値の筈ですが、あたくしの手控え帳面ベース。30年は昨年のデータが手控えにありませんでした、汗)

まぁ何ですな。短期金利の引き上げ観測がより具体化しているから2年あたりの金利水準が膨らんでいるのは判らんでも無いのですが、それと比べると10年とかの金利ってちと低くねぇかって思う訳でございますな。確かに海外市場でイールドカーブがベアフラット化してたりするので日本もベアフラットとか、教科書通りに言えば金融引き締めによって短期金利のほうが影響受けやすいからベアフラットというのは話としてはあるのですが、ちとフラット化するには絶対水準が低すぎの感は拭えませんなぁという感じです。20年や30年は発行量が増えているので需給を反映してそんなに金利がフラットしてないというのもまぁそんな感じでしょうか。


○春審議委員講演メモ

春審議委員の講演が行われましたが、ちとご紹介する時間が本日はございませんので、メモだけ。

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0510b_f.htm

・景気見通しに関しては強気(というか審議委員の大勢と同じ)
・物価に関しては年末頃にかけてプラス転換を予想
・量的緩和政策の「量」は流動性対応と物価下落防止の下支えとの認識
・3条件達成前の当預の技術的な引下げは否定せず
・金融政策変更に関しては「再びデフレに戻らないことを重視したい」

あまり変った主張は無いようです。




2005/10/04

お題「福井総裁と中原審議委員」

短観に関しては改めて。まぁ横ばいで先行きも横ばい圏内ですが、要するに「6月からあんまり変ってない」というのが結論ですわな。市場の方が6月時点から比べて現在の方がより実体経済に近くなってきたと勝手に後講釈をしておきましょう。

○また言っちゃいましたな

福井総裁といえば国会に呼び出されて答弁する時に時々やっちゃうお方なのですが、昨日も衆議院のどこぞの委員会(忘れた)で山本幸三氏に対して、『(量的緩和政策という)異常な政策をいつまでも続けろ)からというご意見にはわれわれは断じて屈することはできない』(ブルームバーグニュースより)って言っちゃいましたな。

いやまぁお気持ちはそうなんでしょうなぁってのは既に皆さんに思いっきり伝わっていますけど(笑)、それを言うのはどうよって所でしょうか。実際の質疑応答を見てませんけど、まぁまたお得意の「売り言葉に買い言葉」だったのでしょうか。相手が山本幸三さんだし。

と、言う訳で3条件のうち何故か3条件目が達成されていて、先行き見通しもだいたい毎度毎度プラス予想になっていて2条件目が達成となりますと形式要件のCPI安定的プラス推移が達成されたら解除したいんですかそうですか。

かつて「金利に蓋をする」と国会で答弁して信じる者たちの足元を見事に掬ってくれた事がございましたが、まぁ今回に関しては足元が掬われるような経済状況にならない事を祈りたいとは思いますが、しかし困ったお方ですわなぁ・・・・としか言いようの無い発言でした。


○慎重派発言の目立つ中原審議委員講演

http://www.boj.or.jp/press/05/ko0510a_f.htm

詳しくチェックしているとちと長くなるので激しく端折ります。

・景気の先行きに関するリスクとして外需を

講演の中で経済の現状認識と先行き見通しに関連して「先行きの不透明感が強い外需」というお題で一項を設けています。

『日本経済の力強い回復を達成するためには、内外需のバランスのとれた成長パスが必要であり、その意味で外需の果たす役割は引き続き大きいと考えます。これまでのところ、海外経済は総じて潜在成長率程度の緩やかな成長を維持していますが、足許では、特に米中両国経済の先行きにつきまして不透明感が高まっている点が心配です。』

ということで、このあと色々と指摘しているのですが、ざっくりまとめると原油価格の上昇と、米国の長期金利上昇および今までの利上げの効果、米国のハリケーン被害に伴う財政支出問題などという所でしょうか。米国に関しては楽観しすぎじゃネーノと言ったところかと。


・当座預金残高引下げ問題に筋論が久々に出てきましたよ

「量的緩和政策の評価と今後の金融政策運営」というお題で話をしていまして、内容は結構あるのですが、今朝は寝坊した関係上(おい)ちと簡単に。

まず現状に関して中原審議委員はこのように。

『日本経済は景気の「踊り場」をほぼ脱しつつあるとはいえ、数多くの構造問題を抱える中、慎重な企業行動が続いていることなどもあって、その回復は依然として緩やかです。また、先行きの外需の動きに振らされる可能性も否定できません。企業の資金需要は弱く、信用創造によるマネーサプライの増加も当面期待できません。消費者物価の前年比伸び率も、年末頃にかけてゼロ%ないし若干のプラスに転じていくと予想されていますが、様々な特殊要因の動きに左右される中で、将来のデフレ脱却の時期が必ずしも明確に展望されている訳ではなく、インフレ期待も依然として低いままです。』

消費者物価指数に関しては実は講演の中で見通しについて詳しく話しをしていまして、その中で『新たな物価下押し要因が発生しない限り、年末頃にかけて消費者物価はゼロ%ないし若干のプラスに転じていく可能性はあるでしょう。』と述べていますのでこの物価見通しに関してはまぁあまり他の審議委員と見方は変りません。念の為。

で、久々にこの理屈を聞くことが出来て誠に結構ですなぁというのがこの先。

『こうした中で、当座預金残高目標の引き下げというプロアクティヴな政策変更は、これまでの当座預金残高目標の引き上げを実体経済の更なる悪化を抑えるための追加緩和措置として行ってきた経緯を踏まえますと、少なくともモーメンタムとしては、金融をより引き締めることを意味することとなり、現状では適当ではないと考えます。』

確かにそうなのですが既に先週福井総裁が「流動性需要に対応」とかしれっと言っていたところが実にアレでございますわな。

『当座預金残高目標の引き下げ論では、現在の当座預金残高目標を維持した場合に生じる副作用、例えば、「短期金融市場での取引減少や市場機能の低下」、「財政規律の低下」、「資産インフレ・リスクの高まり」、「量的緩和政策を変更する際のコストの大きさ」といった点なども問題視されています。しかし、こうした副作用はそもそも政策の導入時からある程度想定されていたものであり、ここに来て無視し得ない程深刻化している訳でもありません。』

まぁ仰るとおりだと思います。で、この続きの部分があるのですが、そこに関してはちと??なので引用割愛。


・直球投げてきましたが・・・・・

今後の金融政策運営に関してってところで中々強烈な直球を投げています。

『まず、第一に、市場の期待の安定を図るためのポイントとして最も重要なのは、中央銀行として、政策運営の軸をぶらさないこと、政策の一貫性を維持するということだと思います。言うまでもなく、経済や金融は生き物であり、時々刻々環境が変化し、また不透明要因が数多くある中で、将来の金融政策を具体的にイメージすることは難しく、現実に政策の副作用が大きくなり、国民経済に損失が生じたり、資源配分に大きな歪みが発生するような場合があるかも知れません。その場合には、当然ながら機動的な政策の修正や変更が必要なことは言うまでもありません。しかしながら、先程も申し上げましたように、現在および先行きの経済にとって大きな副作用が生じないと見込まれる限りは、これまでの政策変更を行ってきた経緯を反故にし、政策の一貫性や中央銀行としての説明責任を放棄するような場当たり的な政策運営は中央銀行の信認を著しく傷つけ、その後の政策運営に支障を来たす惧れがあることには十分に注意しなくてはなりません。』

いや全くですわな。「人が変ると政策もゼロベースで変る」みたいなこと言ってる人と思いっきり対極にございますな。まぁ審議委員の大勢というか日銀の中の人というか、ちょっと株価上昇で浮かれすぎなんじゃないでしょうかとあたくしも思いますもんね。

ま、そういうことで。



2005/10/03

お題「総裁記者会見続き」

金曜にご挨拶したように、あたくし本日からは運用部門の中の人ざんす。フォローするのは相変わらず債券の予定ですので引き続き自分の勉強(と本人は一応思っている)を書き散らしていきたいと存じます。

ま〜金曜もそんな訳で相場を全然見て無いので人のフンドシで相撲を取るあたくしなのですが、先日ネタにした須田審議委員の講演に関してbewaadさんが日曜にエントリーをアップしておられます。いつもいつも「なるほど」と頷くことが多いですが、今回もまた勉強になりましたので(散々参考にしてますんで皆様既にURLご存知だと思いますが)是非ご一読を。→http://bewaad.com/20051002.html

さて、総裁記者会見要旨は日銀のWebhttp://www.boj.or.jp/press/05/kk0509f.htmにございます。会見の質疑応答の量自体は多くは有りませんが、まぁ内容は本石町日記さんが「長距離砲発射」というように量的緩和の量の効果をいつの間にか単なる流動性危機対応にすりかえるわ、量的緩和政策の終了時期を高らかに決め打ちするわともうエライコッチャですわな。これで間違って景気が失速したら日銀打つ手無くなるんですが(国債引受とかヘリコプターマネーとかならありますが)本当の本当に大丈夫なんでしょうか??


○量の効果がいつの間にか・・・・

冒頭の質疑応答で「量的緩和政策の持つ意味は、次第にゼロ金利に近づいてきている」という発言の意味について聞かれた福井総裁はこう言いました。

『量的緩和政策の実態的な中身が、次第にゼロ金利政策そのものに近付いていくことを申し上げたのは、量的緩和政策の枠組みを修正する将来いずれかの時点で、金融緩和の度合いがガタンと階段をつけるように不連続に変化するわけではないことを申し上げたかったからである。』

合ってるかどうか責任は取りかねますが、勝手に総裁のコメントを補足しますと、景気実態と物価動向によって量的緩和政策の時間軸期待は短くなるので、量的緩和政策の終点が近くなった時には時間軸効果がなくなっている(ので不連続な変化にはならない)という事を言いたいのでしょうな。で、この続きのコメントはまた自分で自分の首を絞める結果にならんことをお祈りしますよ。

『つまり、今日に至るまでの段階でも、金融機関における信用不安を背景とした流動性の予備的需要は趨勢的に減ってきているわけで、それが最後の段階までずっと続いていく。そうだとすると、流動性の予備的需要が減衰する中で、量的緩和の枠組みで最後までコアとして残るものはゼロ金利そのものということである。そのように、量的緩和政策は、実行し続けている過程で中身が次第に煮詰まってきている。』

量的緩和政策の量の効果に関して「金融機関における信用不安を背景とした流動性の予備的需要」という話に持ち込んでいますわな。いやまぁ量の効果に関して為替介入の非不胎化効果以外に何かあったのかと言われると、正直あたしゃーよー判らんのですが、そうは申しましても今まで「量の増大は金融緩和であって、経済への効果がある」って言ってやっていた政策を何の公式なレビューもなしに(審議委員が講演で言うのはあくまで審議委員個人の意見)「流動性の予備的需要」って話に持ち込むのは如何なものかと。

というか、そのあたりに関してはデフレ脱却が完全に展望できて量的緩和政策を解除した後になってから「いや〜♪どうも流動性の予備的需要としての効果しか無かったみたいですね〜♪」(あたしゃそれだけしか効果なかった訳ではないと思うけど)ってレビューすれば良いのにと思う訳ですが、今から総裁がそんなこと言い出してどうする。

つまり、当座預金残高目標の「量」の効果に関して流動性予備需要以外の効果を認めないのであればデフレ脱却前に景気が失速した場合に打つ手はまぁ長期国債の買入拡大(福井体制になってから拡大してない)しか無くなりますけど、そこまで勝負を掛けるほどの物かよって思うんですな。それに量的緩和政策導入時に、「量的緩和政策はゼロ金利政策と違う」と日銀として公式に表明している訳でして、そこのところの落とし前もつけて欲しい訳ですな。

まぁ本石町日記さんの言葉を拝借すると「日銀の運が良いといいですね」って感じです。しかしわざわざ勝負する事は無いと思う。


○緩和解除の方法は決め打ち無用でしょうな

次の質疑の一部は金曜にご紹介した部分ですが。

『(問)お話を伺っていると、今の枠組みが終わった後、まだゼロ金利政策があるということのようであった。しかし、海外の一部では、量的緩和が終わること自体がゼロ金利の終わりという見方がある。今の景気の底堅さがさらに増し、将来、量的緩和を解除した時に、純粋なゼロに近いゼロ金利政策というものより、もう少し乖離した形で、ややそれよりも高い金利を目指すということはあり得るのか。』

答えは長いので最初の段落だけ引用。

『(答)今のこの段階ではそこまでは予見出来ない。量的緩和の枠組みの修正のタイミングがいつ頃になるか、まだ明確に予想し難い段階にある。その先の金利の操作について、何か予断を持ち得る状況かと言うと、それは全くない。そういう予断は一切持たないで、今後の経済情勢・物価情勢にきちんと符合するような政策をしていかなければならない。それは非常に真剣な課題であり、「何かしたい」とか、「こうあるべきだ」とか、「こうなるだろう」という絵を予め画用紙に描いて、それに沿って我々が政策の中身を詰めていくという態度は採りたくないし、採らない。情勢判断に忠実でありたいと思っている。』

本石町日記さんがhttp://hongokucho.exblog.jp/3546386/のエントリーで話題にしたように、今後は解除方法がどうなるかって事に関して色々な予想が出てくると思います。上記エントリーのコメント欄でも議論になっていますが、まず最初に話題になるのは「当座預金残高を所要くらい(たぶん6兆円とか7兆円とか)に下げるのにどのくらいの期間が掛かるか」って話だと思います。

で、現状だと1ヶ月から3ヶ月くらいかかるとかもうちょっとかかるとかいう話で、そのために「量的緩和終了後にゼロ金利」って話になるのですが、どうも議論に混乱があると思うのはこの「ゼロ金利」って言葉でして、「短期市場金利の誘導目標がゼロ」という意味の「ゼロ金利政策」なのか、「当座預金残高を所要残に落としていく過程で結果的に短期市場金利がゼロになっている」という意味の「結果としてのゼロ金利」なのかが曖昧のまま論議が始まっている気がします。

で、「結果としてのゼロ金利」に関しては、今の時点で量的緩和政策を解除すれば最低でも1ヶ月くらいはゼロ金利になるかもしれませんが、現状のように市場の期待時間軸が短期化している時には資金供給オペの期間を短くできますので、順調にオペ期間の短期化を図ればその分だけ当座預金残高を引くのに必要なエネルギーが減るので、将来はもっとスムーズに金利政策に移行できる訳ですな。そう考えますと、現時点での延長で「当座預金残高を所要に引くのに何ヶ月掛かるから云々」という議論は必要かもしれないけど、それを参考にして「結果としてのゼロ金利が何ヶ月続くから」という決め打ちはイクナイと思います。先週の物価統計もマイナスだったんだし時間はまだあるでしょ。


で、総裁の記者会見に話は戻りまして、総裁の答えにあるように「情勢判断に忠実でありたいと思っている」というのが正しいでしょうな。で、その直前に結果ありきで政策を詰めていく態度は取らないとも仰せですが、その割には何で量的緩和政策解除の地均しをするですか皆様はと小一時間問い詰めていると初日から遅刻するので本日はこの辺で(^^)。