決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2007年度上期に書いた分)

トップページへ

見出しのページはこちら

2006年下期はこちら
2006年上期はこちら
2005年下期はこちら
2005年上期はこちら
2004年下期はこちら
2004年上期はこちら
2003年下期はこちら

2007年上期の見出し

2007/09/26「8月決定会合議事要旨より」
2007/09/20「決定会合は8対1/ヘッドライン研究/月報は微妙に下方修正」
2007/08/29「7月の会合で指摘していた不透明感が顕在化したということですな」
2007/08/24「サブプライムはメイン部分に出てこなかった8月月報/票決は8対1」
2007/07/25「短期市場フォーラム終了」
2007/07/24「OIS市場のレポート」
2007/07/20「生活者意識アンケート続き」
2007/07/19「金融政策決定会合議事要旨/生活者意識アンケート」
2007/07/18「面白そうなペーパーが2本ほど出てました」
2007/07/13「8対1でした/細かい部分の下方修正が目立つ7月金融経済月報」
2007/07/09「さくらレポートから/第1の柱第2の柱リターンズ」
2007/07/06「ペーパーの補足」
2007/07/05「金融債の信用スプレッド分析ペーパー/西村審議委員講演と刈り込み平均」
2007/07/03「予想ど真ん中の短観」
2007/06/27「5月決定会合議事要旨/BISも間違える第2の柱」
2007/06/22「必見!正しい第2の柱の意味」
2007/06/21「4月27日会合の議事要旨から」
2007/06/18「6月月報は大きな変化なしでした」
2007/05/23「4月会合(1回目)で出たロンバートの回廊論議」
2007/05/22「5月月報では国内企業物価を上方修正」
2007/05/08「3月会合議事要旨から」
2007/05/01「やや弱気になった展望レポート」
2007/04/23「衆議院財務金融委員会での四半期報告質疑から」
2007/04/20「従来路線どおりに強気なさくらレポート」
2007/04/11「金融経済月報に見る物価認識の非対称性」
2007/04/04「生活意識アンケート」
2007/04/03「あまりインパクト無かったけど短観出ました」



2007/09/26

さて8月の金融政策決定会合議事要旨ですが・・・・
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070823.pdf

○金融経済月報ではさらりと流していたサブプライム関連ですが

本文5ページ(PDFファイル7ページ目、以下同様に本文+2ページになります)から始まる『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』でありますが、サブプライム問題に関して(当たり前ですが)色々と意見が交換されていた事が読み取れると存じます。

んでまあやたらと長いので全部引用するとそれだけで駄文が終わってしまうのですが(1ページ強に渡ってサブプライムの話と米国経済の話になっておりまして・・・)、ほほうと思ったあたりを引用するだよ。

8月会合時点では基本的にはこういう認識でござんした。

『海外経済に関して、委員は、世界経済全体としては、地域的な拡がりを持って拡大が続いているとの認識を共有した。』

『米国サブプライム問題に端を発した各国金融市場の動向について、委員は、基本的には、市場参加者がリスクとその価格付けに関する従来の見方を改め、株式市場、クレジット市場、為替市場などでポジションの調整を行っていることが背景という見方で一致した。』

『もっとも、多くの委員は、今後の調整の程度やスピードによって世界経済に与える影響は異なり得るので、引き続き注視していく必要があるという認識を示した。何人かの委員は、海外経済は拡大を続ける可能性が高いが、そうしたシナリオの不確実性は高まっていると付け加えた。』

てなわけで、多くの委員の様子見に加えて「シナリオの不確実性拡大」に関して複数の委員が言及していた訳でして、8月の月報基本的見解では先行き見通しに関して特に書き換えなし(9月になって「全体として」という文言が入ったのはご案内の通り)でしたが、その間にこういう認識は出てたちゅうことですわな。なるほどなるほど。



○7月の個人消費コンフィデンス落ち込みに関して

本文7ページ(の最後)より。

『一部の消費者コンフィデンス指標が足もとやや悪化していることについて、何人かの委員は、特別減税の廃止や地方税の負担増、年金問題、ガソリン高に関する懸念などが、消費者マインドに影響を与えている可能性はあり、今後の動向は注意してみていく必要があると述べた。』

でこの部分、7月会合でどんな話をしてたかと言えば・・・・

『複数の委員は、特別減税の廃止や地方税の負担増、年金問題、ガソリン高に関する懸念などが、消費者マインドに影響を与えなないか、注意してみていく必要があると述べた。』(7月の決定会合議事要旨本文6ページ)

つまり、7月時点で複数の委員が指摘していた個人消費のマインドに悪影響を与えた要因が顕在化してきているのではないかというお話になっていると読めちゃいそうです。まあ大勢意見ではなくてあくまでも複数の委員の意見ではありますけれども。


○消費者物価に関して意見割れる(?)

本文9ページになります。

『一人の委員は、デジタル家電などウェイトの大きい一部の品目が下押しに働いている一方で、消費者の生活に身近な財・サービスでは値上げの動きが拡がっており、消費者物価指数( 除く生鮮食品) の構成品目では上昇品目数が下落品目数を上回る状況が11 か月連続でみられていると述べた。』

上昇品目と下落品目云々の話が議事要旨に出たの久しぶりな気がしますが、それはそれと致しまして物価が上るでしょという話と上らないでしょという話がこんな感じで。

『これに対し、何人かの委員は、小売段階での競争環境が厳しい中で、コスト高を販売価格に転嫁することが難しい状態が続いていることが大きいという見方を示した。(この次に携帯電話料金の指摘もしてますが引用割愛)』

『この間、別の複数の委員は、企業のコスト高に対する吸収余力がなくなってきていることは事実であるので、物価上昇圧力がいずれかの段階で予想以上に強まるリスクも念頭に置くべきであるとコメントした。』

このあたりなんですけど7月会合ではこうなってました。

『ある委員は、小売段階において、コスト高を販売価格に転嫁することが難しい状態が続いており、物価上昇が明確化する時期については不確実性があると述べた。』

『別の委員は、一方で、企業のコスト高に対する吸収余力がなくなってきていることも事実であるので、インフレ圧力がいずれかの段階で予想以上に強まるリスクも念頭に置くべきであるとの考え方を示した。』(以上7月の決定会合議事要旨本文8ページ)

7月は「ある委員」「別の委員」とそれぞれ一人の委員が話していた件に関して8月は「何人かの委員」「複数の委員」が両方の立場で議論をしていたということですかな。まあこの文章一つの意見として繋げても(やや妙ですが)あまり変ではないとも言えるので、実は両論併記の人もいるのかもしれませんが(^^)。ところで「何人かの委員」と「複数の委員」ってどっちが多いんでしたっけ??


○金融政策運営に関して付け加えられた部分

8月会合議事要旨の『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』に新たに加わったのがほほうという感じ。本文10ページ。

『何人かの委員は、データや情報の分析を更に深めたうえで、先行き、金融市場が落ち着きを取り戻し、経済・物価情勢が見通しに沿って展開していくとの確信を持つに至った時点では、金利水準の調整を先送りすることは適当ではないと述べた。』

ただまあこれに対する意見もあった次第。

『複数の委員は、金融政策はフォワード・ルッキングに行っていく必要があると指摘したうえで、金融環境が実体経済に及ぼす影響を踏まえると、当面の金融市場の状況について十分注意してみていく必要があると述べた。』

『そのうち一人の委員は、市場の安定を図るための短期的な流動性供給と経済・物価見通しに基づく中長期的な金融政策運営は、概念としては別の物であるが、金融面のショックが実体経済に及ぼし得る影響は考慮する必要があると付け加えた。』

この辺の話は利上げ近しモードだった7月には逆にスルーされている部分でして、こりゃ勝手に想像(かなり妄想)するに、7月には「まあ8月利上げですよウッシッシ」という感じでサラサラ流していた利上げ論議が8月会合時点ではサブプライムのせいでどう見ても様子見です本当にカムサハムニダという流れになっていたので利上げするのか様子見るのかに関して論議になったということなんでしょうかな(濃厚妄想モード^^)。

まあこのあたりの話が8月に入ったのが何とも味わい深いです。

トップに戻る





2007/09/20

お題「金融政策決定会合とか金融経済月報とか」

昨日の時事メイン10時33分配信記事によりますと、FOXテレビのインタビューでグリーンスパン氏は「FRBには無分別な判断をした一部の投資家を結果的に救済することになっても経済の安定を維持する義務がある」といった趣旨の発言をしたそうですな。言わんとすることは判りますけど、あたくしの感覚からすると、この先生今はドイツ銀行グループのアドバイザリーだかなんだかやってて報酬も受け取ってる立場でありますからして、利害関係人(しかもドイツ銀行グループはサブプライム問題での被害がでかいと言われてますし・・・・)による利益誘導発言ですがなとか思ってしまう(言うなら利害関係人じゃない立場で言えと)のですが、もしかしてあたくしの感覚がおかしいんでしょうか????


と前置きの悪態が長くなりましたが決定会合あれこれ。


○水野審議委員が利上げ提案でしたか

決定会合どう見ても現状維持(「利上げ見送り」というのもよく考えたら変な言い方ですな、トリシェみたいに予告ホームランしてるわけじゃないんですから・・・)なのに、13時回っても決定会合が終わらねえとか思ってたら8対1でございました。結果出る前には「利上げと利下げ提案が出てたら面白え」とかギャグを言ってたのですが、利上げ1票だったか惜しい(笑)。

水野審議委員の先日の講演によれば、今回は一旦様子見モードになるという意味で現状維持に賛成しても何らおかしくはないと思ったのですが、米国の利下げをあくまでも「予防的措置」であって、景気悪化ではないというロジックで利上げを出してきたということなんでしょうかね。詳しくは議事要旨みないと判りませんけど。

まあそのロジックはロジックと致しましても、その発想の中に、「一度出した方向性を引っ込めるのは簡単にできない」というのがあって「方向性の自己目的化」状態になっているとなりますとそれは如何なものかと存じます次第でして、それって例えは良くないけど、支那事変おっぱじめたら全然エグジットできず結果はご存知の通りとなった人たちを思い出してどうもねって所であります。そうではない事を切に希望致します次第です。

ま、方向性を一度出したら状況が変っても自己目的化ってのは困りますけど、さりとてコロコロとドテンドテンされても困りますけれどもね。市場的には何か変な仕掛けみたいな動きでその後下がってたみたいですけれども、ふーんという感じであります。

・・・と微妙に悪態をついているようですが(苦笑)、後でご紹介する金融経済月報を見ると微妙な形で下方修正(普通は下方修正とは言わないが、月報(ただし基本的見解のみ^^)読みが趣味のあたくしには下方修正に見える)をしていますが、よく見りゃサブプライムの話がねえええええというのもありまして、基本線に変化が無いとなれば例の「確信度の問題」になるので、現状維持のロジックもそりゃどうなのよという事になるのがアレなのでございますが。

#水野さん、あえてドンキホーテ(安売りの殿堂じゃない方)を買って出ているのかも知れないですけどね



○総裁記者会見のヘッドライン研究(??)

月報の前に記者会見の話なのですが、今回の会見に関してブルームバーグと時事メインとロイターの打って来るヘッドラインを眺めていたらオモロイ傾向があるように見えました。

と申しますのは、ブルームバーグとロイターは総裁の「タカ派」的な部分を前半のヘッドラインに打ってまして(しかもロイターは日本語よりも英語の方がよりタカの印象を与える打ち方)、時事メインでは「注視する」というのを最初に出してきているという印象でして、最終的には日銀のサイトに今日アップされるものを読むということになりますが、印象違いますなあという所でございます。特にブルームバーグニュースでは総裁記者会見の記事の見出しが『福井日銀総裁:今後も想定通りなら金利調整の必要性変わりない』となってまして、いやあタカ派ですなあ(誰が?)という感じです。

で、研究とか言ってるくせにブルームバーグのヘッドラインのスクリーンショット取り忘れている間抜け振りがドラめもんクオリティなのですが、ロイターと時事を比較してみると面白れえのです。最初から数本を並べてみるとその印象の違いが明確なので引用してみますね(^^)。なお日付とかベンダー名(JIJIとかRTRSとか)とか「福井総裁」ってあたりは割愛してますのと、手元の紙ベースの記録なので念の為。

(時事メイン)
16:32 国内経済、8月会合以降で大きな変化はない
16:33 米経済は下振れリスクが高まり、世界経済の不確実性が増大
16:33 逆資産効果を通じ米消費に悪影響与えるリスクある
16:33 市場動向を引き続き注視する必要がある
16:33 米経済、いずれ潜在成長に戻るシナリオ崩れていない

(ロイター日本語版)
16:32 海外中銀の適切な政策判断は日本経済にとって好ましい影響
16:32 米経済、サブプライム問題波及し、景気下振れリスク高まっている
16:32 ECBやFRBの政策で日銀の判断が狭められることはない
16:32 米国経済の調整、当初予想よりも少し時間かかるがリセッションには至らず
16:33 水野委員は利上げを提案、金融市場注視も世界や日本経済拡大の可能性高い

(ロイター英語版)→BOJ'S FUKUI SAYSが全部頭につきます
16:31 CURRENT RATES VERY LOW COMPARED WITH JAPAN'S ECON CONDITIONS
16:32 CAN SAY YEN CARRY TRADE A MARKET DISTORTION RESULTING FROM TOO LOW RATES
16:32 DOES NOT SEE NEED FOR NOW TO DRASTICALLY CHANGE SENARIO IN BOJ OUTLOOK REPORT
16:32 DOUNSIDE RISKS FOR U.S. ECONOMY RISING
16:33 WANTS TO LOOK AT TANKAN TO JUDGE CAPEX STRENGTH

一応早いものから5本分を引用した積りですが、印象違いますなあという所で(^^)。ブルームバーグを入れてないのは単にスクリーンショット取り忘れで他意はありませんけど、先ほど申しあげたようにタカ派的な印象を与えてくれますな。



○微妙に下方修正&サブプライムの話がねええええ(金融経済月報)

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0709.htm(9月分)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0708.htm(8月分)

殆ど中身が同じという所が何ともでございますが、違っている点は2箇所+α。

・現状判断部分における住宅投資

『住宅投資は足もと減少している』(9月)
『住宅投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(8月)

・先行き判断部分における海外経済の部分

『輸出は、海外経済が全体として拡大するもとで、増加を続けていくとみられる。』(9月)
『輸出は、海外経済の拡大を背景に、増加を続けていくとみられる。』(8月)

で、注目すべきはこっちの方でありまして、「海外経済の拡大」と言い切ってたものに「全体として」というヘッジクローズ(苦笑)が入っている所に、先行きの不透明さが高まったという心が現れているというものであります(^^)。

ちなみに、物は試しに英語版(http://www.boj.or.jp/en/type/release/teiki/gp/gp0709.htm)を読んでみたら海外経済が云々部分はこのようになっておりました。

『Exports are expected to continue rising against the background of the expansion of overseas economies as a whole.』(9月)
『Exports are expected to continue rising against the background of the expansion of overseas economies.』(8月)

このas a wholeがあるのと無いのとではどうニュアンスが違うのよという話に関しましては英検1級不合格(受験だけなら誰でもできるというツッコミは謹んで却下^^)のあたくしにはよーワカランチ会長ですけど、どうなんすか?


で、もう一丁気が付いたのは今回の基本的見解部分にサブプライム関連のお話がねえええええということであります。とは申しましても、前回も景気の基調判断部分にその話はなくて、金融面で『為替・資本市場では、米国の住宅金融問題に端を発した世界的な不透明感の高まりを背景に、わが国でも、前月と比べ、長期金利は低下し、株価は下落している。』という形にしかなってないんですが。

で、書きながら物凄く勝手な解釈を思いついたんですが、サブプライム問題の影響が前月段階では「金融面」であったものが、景気の基調判断における海外経済部分に「全体として」という言葉に昇格したとも言えるのかもしれませんが、それはちと強引な解釈ですかそうですか(^^)。

トップに戻る






2007/08/29

お題「先行きの不透明要因がこの会合後に顕在化ということで」

東京では皆既月食の代わりに雷雨でしたな。月食見ながら「天狗じゃ!天狗の仕業じゃ!」ってやりたかったんですが(あほ)。

安倍内閣支持率上昇で何となくホッとしたのですけど、重要閣僚の面々を見ると今の布陣の方が「安倍内閣」らしいと思う(政治思想的に)のは気のせいかしらん?

しかし中古住宅販売悪かったのに翌日の住宅価格指数公表になって壊れた蛍光灯のように反応するとは、米国市場(特に株)の中の人たちファンタジーモードになってきたのでしょうか。それに「利下げクレクレ相場」だった筈なのにFOMC議事要旨が先行き景気懸念で嫌気とは。メリケン連中は景気に関係なくプルーデンスで利下げするとか思ってたのでせうか?????

余談が長くなりましたが決定会合議事要旨。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070712.pdf

○先行きの不透明要因としていたものが

さて、7月11日、12日の金融政策決定会合議事要旨・・・なのですが、前回分の公表から8時50分公表になりやがりまして、迅速な公表をしたいという一環なのは良く判るのですが、やはりこの議事要旨は朝の慌しい時に斜め読みするのではなく、後場の何もないマターリとした時間帯(1時半とか2時とか)にマターリとしながら読むところに味があると思うのですけど(^^)。朝は業者も投資家も、ポジション(ファンド)持っている人は忙しいのよね。

などと申しましても、この時間になったのは仕方ないですので(^^)、まあ読むわけですが、今回の決定会合議事要旨では「この時点で先行きの不透明要因としていたもの」がその後顕在化してきましたというお話になりますので、これはこれで政策ロジックという面を考えると「信用収縮問題が一定のカタをつけないと正常化路線は難しいですなあ」というお話になると思います。

その割には相場の方は「短い所が強いけど長いところは弱め」という状況になっております次第でして、カーブが何となく立ってきているのは漠然とした財政拡大懸念とか、正常化路線の遅れによる先行きの引締め強化懸念とか、何となくそんなキーワードが浮かんできますけど。

#そういうとBEIはどうなのと突っ込む人がいるので一応申しますと、アレは現在は参加者が非常に限定された市場でして、とてもとても国内の市場参加者の総意を示しているものではありませんのよね。

という訳で、その米国経済の見立てですが、議事要旨本文5ページ目(上記PDFファイルだと7ページ目、以下同様です)にあります『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』という部分にございます。

『米国経済について、委員は、景気拡大が続いているが、住宅市場の調整が続く中で、そのテンポは緩やかに減速しているとの見方を共有した。複数の委員は、設備投資については、減速過程にあるが、均してみれば先行指標が緩やかに増加していることなどからみて、4 月の展望レポート時点に比べて下振れリスクは小さくなっていると指摘した。』

という基本的認識でありましたが、この先が延々とサブプライムの話になるのでありましたよ。

『多くの委員は、サブプライム住宅ローンを巡る問題を含め、住宅市場の調整の帰趨には引き続き不確実性があるとの認識を示した。ある委員は、住宅価格の伸びが鈍化していることによって、消費者信用の借入れがこれまでに比べて容易でなくなってきており、そのことの影響が消費行動に出ている、と述べた。』

『サブプライム住宅ローンについて、何人かの委員は、現時点で蓋然性が高い訳ではないが、仮にクレジット市場が深刻な影響を受けることになれば、わが国を含む世界の金融経済情勢に悪影響を及ぼす可能性は否定できないので、そうした観点からも引き続き注意深く事態の推移を見守る必要があると述べた。』

ということで、残念な事に蓋然性が高い訳ではないことが徐々に顕在化しつつありますなあ。まあ一般企業金融まで「深刻な」影響を受けてるわけでもない(影響が無いわけでも無いので念の為)とは思いますけど、7月12日時点よりも益々留意が必要とな。

『これに対し、一人の委員は、住宅市場の調整は実体経済の基礎的条件に関する問題から、金融セクターの一部に限られた問題へと性格が変化しており、わが国の金融政策を考えるうえでは大きなウェイトを占めないと述べた。』

まあそういう考えもありますが、結果的には米国や欧州でうんこの投げ合いというか地雷(トリガー)の踏み合いになりましたので残念でございました。今がキモなんでしょうけどね。この先は米国の物価の話になりますが一応引用します。

『物価面について、何人かの委員は、コアの消費者物価の伸び率は低下してきているものの、労働需給など資源の稼働状況は高いうえ、原油価格も上昇していることなどから、インフレ圧力が沈静化したとみることは時期尚早であると述べた。以上の議論を経て、委員は、米国経済の先行きに関し、年末にかけて、ソフトランディングが実現する蓋然性が高いが、引き続き上下双方向のリスクに対し注意を払っていく必要があるとの見解を共有した。』

どう見ても上方向のリスク(インフレ昂進)の扱いが僅少です。本当にありがとうございました(^^)。


○円高も警戒してましたね

この続きで本文8ページになります。『金融面の動向』ってところです。

『複数の委員は、実質実効為替レートがプラザ合意以来の円安水準となっているなど、為替相場が円安方向で推移していると指摘したうえで、企業は安定的な為替相場を望んでおり、円高方向に急激に変動するリスクを警戒する声が出ていると述べた。』

残念ながらその後、円高に急激に変動しました。本当にカムサハムニダ。


○先行きの金融政策運営は「丹念に点検」なのは当然ですけど

まあ利上げ提案に対して反対する理由はそれしかないのですけど、本文9ページの『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』のところであります。

『これらの委員(引用者注:現状維持賛成の委員)は、4 月の展望レポートで示した見通しに概ね沿って経済・物価情勢は推移しているが、見通しの蓋然性とそれに対するリスクをさらに見極めるため、引き続きあらゆる指標や情報を丹念に点検することが適切であると述べた。』

『何人かの委員は、現時点で考えられるチェックポイントとして、例えば、米国経済の状況、I T関連財など国内生産の動向、賃金の動向、物価を巡る環境などが考えられるが、金融経済情勢は、絶えず新しい事象が生じるものであるので、何か特定の指標なり、特定の分野を念頭に置いて考えることは適当でないと述べた。大方の委員は、引き続き幅広い視野で見通しの蓋然性を確認し、リスク要因を点検していくということが重要であるとの意見で一致した。』

という話をしておりまして、かつ8月には7月会合で示していたリスクが顕在化した格好になるわけですから、利上げするとなりますとこれらの問題(信用収縮とか急速に円高に振れた為替とか)が大したことございませんという説明をきちんとできるエビデンスがないと、政策ロジック的に難しいのではないかと思われます(水野審議委員は別のロジックなのでこの件はあまり関係ない)ので、現状維持派がひっくり返るのはちょっとハードル高いですねという感じです。


○「中間評価のウェイトを上げるのは如何なものか」という話が

その続きの部分からですが。

『複数の委員は、経済・物価情勢の見通しの吟味は、毎回の金融政策決定会合で行っているのであり、中間評価を行う会合に特別の重みを持たせて考えるのは不適切である、と述べた。』

まあそれは正論なのですが、月曜日にご紹介した先日の総裁定例記者会見における総裁のコメント(月報の基本的見解の中でサブプライム問題への言及が限定的だった点に対する質問に対しての答えで)にありました、

『また、金融経済月報については、詳しくは展望レポートの時に十分分析をし、詳しいアウトルックを出す。中間レビューにおいてはそれとの乖離を述べる。マンスリーな変化については、基本的な変化について不確実性が多い時に、あえて不確実性を乗り越えて楽観シナリオ、あるいは悲観シナリオを作り上げるということはしないというやり方になっています。』(8月23日福井総裁定例記者会見より。月曜の駄文で引用しました)

とはちとズレがあるような無いような。うーむこの辺よくワカランチ会長・・・・

#本日も引用で嵩を稼いでしまいましたスイマセンスイマセン

トップに戻る








2007/08/24

○月報ではサブプライムへの言及はあったものの

今回の月報→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0708.htm
7月の月報→http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0707.htm

で、景気に関する部分に関して前月と違っているのは2箇所だけ(展望レポートの中間レビューは今回ございません、為念)でありまして、それは景気の現状認識部分になりますが、そのうち1箇所は7月短観を受けた企業の業況感の部分になりますので実質的にはこの1箇所だけ。

・公共投資

『公共投資は低調に推移している。』(8月)
『公共投資は、このところ横ばいとなっているが、基調としては減少している。』(7月)

そして、信用収縮関連のお話はどこですかと申しますと、月報基本的見解の最後の部分に該当します金融に関する部分にこのように言及が。

『為替・資本市場では、米国の住宅金融問題に端を発した世界的な不透明感の高まりを背景に、わが国でも、前月と比べ、長期金利は低下し、株価は下落している。また、円の対ドル相場は上昇している。』(8月)

ということで、言及してるけど景気に関する部分には信用収縮のお話が無いちゅうことでありまして、現状では本件はあくまでも金融面に関する問題であると言う評価になっているという事で、このあたりは景気へのダウンサイドリスクへの言及を行ったFRBとはちと違いますな。ECBやBOEに近いと言った所なのでしょうか(まあFRBの声明も信用収縮落ちつけば無問題とも読めますけどね)。

ということで、今回の月報では信用収縮問題を景気に対するリスク要因に加えるという形は取らずというのが判りましたので、トーンとしては従来通りということです。まーその「従来通り」がここもとちょこちょこトーンダウンしてるので、月報のトーン自体そんな無茶苦茶強い訳でも無いのですが、従来路線は絶賛継続中ということで。


○8対1でしたな

決定会合の票決は8対1で水野審議委員は利上げを提案。

今利上げすべきかという話はさておいて、フォワードルッキングの金利調整という政策ロジック的に言えば「足元の確信度合い」という謎のファクターを加えずに展望レポート中間レビューの7月というタイミングで利上げを提案した水野審議委員の方が筋論としては筋論でありますなということで、今回日和らなかったのはそれはそれで筋が通ってると思いますわな。

まあ今回水野審議委員が現状維持賛成に回りますと、どう考えても9月で審議委員の多数がいきなりひっくり返るという図は想像しにくいところであります(まあ今までの例で言えばいきなり変るというのもありましたけど^^)わな(信用収縮が思いっきり収拾して株価も為替も7月の頃に戻っているというのなら別でしょうけど)。

そして昨日は面倒なのでスルーしましたが、9月スキップした後10月の短観とか見て足元の確信度合いとやらが高まるのかと言えば、調査期間までまだ暫くあるから何ともいえませんが、今の調子だとどう見ても短観がよくなるとは思えませんので決め手弱し。展望レポートの見直し時点とか言ってると10月末になり、そうなるとじゃあGDP見てからの11月・・・と話がズルズルと延びるの巻という話になるかなとか思ってましたんで、その点で言えば水野さんが現状維持にひっくり返った場合にはあとあと金融政策の思惑という点では効いてくるところだったかも知れませんですわな。

まあこれで水野さんはタカ派としての確固たる地位を獲得しましたので、30日の講演をワクワクテカテカしながら待ちたいと存じます。

トップに戻る






2007/07/25

○とりあえず一段落でございますな

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji07/tanki0707d.htm
「短期金融市場の機能向上への取組み」最終報告書の公表について

ということで、上記から最終報告書へのリンクへ行きますと11ページ(本文8ページ)の報告書がございまして、こちらに関してはまあ読めという所であります。長らくお疲れ様でございましたです。

で、この取り組みの中での成果として出た具体的な施策についても色々とネタにさせて頂きましたが、そういや一件華麗にスルーしてたのが「国債担保の差入れ・払出し事務の外部委託可能化」でして、実は「これって多分レポのT+0を展望して、クリアリング銀行やトライパーティーレポを推進しやすくする企画なんだろうなあ」と思ったのですが、思っただけでその先あまり考えておりませんでしたので(おい)、改めてこちらの報告書を拝読して「そうでございますな」と思う次第。

まあ何ですわな、この手のサービスが成立するためにはある程度手数料収入が無いといかんですわなあという所でして、ゼロ金利じゃなくなったとは言え、金利水準がこの有様ですと委託に出そうとか思っても委託に出すまでの手間隙(業務プロセスの変更とかシステム対応とか)に掛ける労力が間尺に合わんとか、受託としても手数料大して期待出来ない水準ですわなあ(手数料払った出来上がりが有担コール出すのと変らん水準とかだと何のためにやってるのかワケワカランという話ですわな、出す方としては)とか、金利の絶対水準がこのあたりですとまだまだ前途遼遠っぽい気が致します。

えーっと、ところでフェイル慣行なんですが、やはり合理的なフェイル慣行の定着に向けてということでございますので、日銀オペのフェイルに関しても・・・ってそれはダメでございますかそうですか(^^)。


んでまあ福井総裁様の挨拶。
http://www.boj.or.jp/type/press/koen07/ko0707b.htm

『私からは、この「取組み」を通じて感じたことを、2点だけお話しておきたいと思います。第1は、市場参加者による実務的検討というアプローチが非常に有効だということです。』

『課題を克服していくことは、様々な困難を伴うものです。これを乗り越えていくためには、実務に関する専門的な見識と的確なビジネス・ジャッジメントの双方が必要です。だからこそ、「実務家が知恵を出し合うことによる価値創造のプロセス」が有効なのだと思います。』

まあ左様でございますな。どんな良い施策でも実務上のフィージビリティーを無視あるいは軽視されますとどうしようもありませんですから、今後とも(まあ日銀の短期金融市場関連の場合はその手の弊害は無いっすけど)よろしくお願いしたいものであります。

ま、ここから具体的施策がスタートしますが、とりあえず関係者の皆様一段落でお疲れ様でございましたm(__)m

トップに戻る





2007/07/24

○これはまた素晴らしい寡占市場

昨日はこんなレポートが日銀から。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0707b.htm

本文はこちら(PDFで表紙含めて18ページ)
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/data/ron0707b.pdf

ということで、レポート本文は図表が多いのでページ数の割にはさらさら読めますので、本文を読んで頂きたいものと存じますが。

まとめ部分のHTMLページ(要は日銀のサイトを見に逝くとまず見る方でありますな)を見ますとこのように記述がございます。

『もっとも、金利スワップ市場全体と比較すると、OIS市場はまだ参加者が限定的である。特に、本邦金融機関の取引はごく一部に止まっており、少数の外資系金融機関への集中度が高い、このため、市場流動性は必ずしも高くないといった点が指摘されている。』

PDF本文の6ページにそれに対応する調査結果が出ているのでありますが、業態別シェアが外資系金融機関97%という素晴らしい数字となっておりまして、その次のページを見ますと取引集中度が上位3先で7割超ということで、どうみても寡占市場です。本当にカムサハムニダ。

でね、その上位3社が資金量の多い順に邦銀3行とかいうのならまだしも、上位3先って前のページにありますように外資系金融機関様な訳でありまして、何と申しますかその市場からインプライドされた数字で「市場が織り込む先行きの政策金利パス水準を分析する」とか言われましても少々困惑を禁じ得ませんわなあと思うのですよ。いやまあ一応TB/FB金利とかとも裁定してる(というかレポートにもあるように取引ロットが3000だの4000億円だのという状況ですので他にそれだけのロットを捌けて反対売買簡単に出来るのはこれしかない(GCも一応あるけど)と思われるので当然ちゃあ当然ですけど)のでこの市場だけ場外格闘場という訳でも無くて、参考にするなとは申しませんけど、日銀がせっせとOISOISと熱心にレポートを出して注目させようというのも何かねえって感じではありますが。市場参加者が使ってメリットあると思ったら続々参加してくるでしょと思うんですが、標準ロットが1000億円の整数倍とかいうオトナの市場だと、無力参加者であります所のあたくしとしてはにゃんとも・・・・

ま、PDFファイル(=レポート本文)の結論部分(最終ページ)には全く違和感は無いのでありまして、まあこの市場はこれからの市場だと思うのですな。ということで、日本銀行の別の部局様におかれましてはあまり「OIS市場からのインプリケーションを得る」と鐘や太鼓で盛り上げるよりは暖かく市場発展を見守って頂きたいものであると存じます。

『OIS 市場は、昨年初に漸く取引が本格化し始めた市場であり、市場参加者もまだ限定的である。今回の調査でも、上述の通り、同市場がまだ発展の初期段階にあることが確認された。もっとも、冒頭みたように本邦金融機関の多くは利用に関心を示しており、市場はさらに発展していく潜在性を有している。既に参入している先の間でも、多様な利用者の参加により、市場の厚みが増していくことに対する期待が強い。』

と、このように冷静に纏めているレポート本文なのでありますが、まとめページのHTMLの方をみると妙にポジティブな書き方になっているところがアレでございますわな(^^)。

トップに戻る





2007/07/20

○生活意識に関するアンケート調査続き

昨日の続きですが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0707.pdf

アンケート結果を前回調査(3月調査)と比較した数字が出ているので判りやすいのですが、今回の結果を見ますと「景気の先行き見通しはやや悪化」「物価の先行き見通しはやや上方修正」「雇用環境の先行き見通しはやや改善」というセットになっておりまして、1番目と2番目を足すとスタグフレーションですかとか言いたくなるのですが(苦笑)、3番目を見ると必ずしもそうでもないという話になりますな。

ま、あたくしも恥ずかしながらこの調査ウォッチ始めたのここ1年くらいですし、そんなに必死こいて見てるわけでもないですので、統計のクセとかよーわからんのでアレですけど、結果をぼーっと見てるとちょっと意識が分裂してるような感じもしますわな。

(以下上記URLより引用、適宜レイアウトいじってます。なお回答の()内は前回調査の数字です)

Q4. 1年後の景気は、今と比べてどうなると思いますか。
1 良くなる   10.2 ( 12.3 )
2 変わらない 64.3 ( 67.0 )
3 悪くなる   24.7 ( 20.0 )

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。
1 かなり上がる  7.2 ( 3.3 )
2 少し上がる  64.6 ( 55.3 )
3 ほとんど変わらない 23.9 ( 36.1 )
4 少し下がる   2.3 ( 4.0 )
5 かなり下がる  0.3 ( 0.3 )

Q20.これから1年後を見たとき、あなた(またはご家族)は、勤め先での雇用・処遇(給与、ポスト、福利厚生など)に不安を感じますか。

1 あまり感じない 15.5 ( 14.3 )
2 少し感じる    47.5 ( 45.4 )
3 かなり感じる   33.5 ( 38.2 )

うち勤労者(勤労者:会社員・公務員・その他雇用者、パート・アルバイト)

1 あまり感じない  16.6 ( 14.8 )
2 少し感じる     46.7 ( 43.8 )
3 かなり感じる   36.4 ( 41.0 )
(引用終了)

ということで、何となく微妙な感じではありますが、あたくし的にちょっとふーんと思ったのは景気の先行き悪化が案外増えていることでして、これはどの辺が影響してるのかが興味あるところです。資産価格関連では特に悪い話は無いので、政局の不安定感とか、税源移譲+定率減税全廃の影響とかあるのかなあとも思うのですが・・・・

ま、このアンケート調査で金融政策に直撃する訳でもないでしょうが、景気の先行き悪化予想が増えて、物価の先行き予想は上方修正されているというコンボは中々扱いにムツカシイお話ですなあという感じ。

トップに戻る





2007/07/19

まずは金融政策決定会合議事要旨から。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070615.pdf

○8時50分公表ってのはちょっと・・・・・

今回から公表時間が8時50分になったのをあたくしもすっかり失念してまして、朝っぱらからヘッドラインが出て来て慌てて議事要旨を読んでいたら気が付けば寄り付きになってしまうという有様(汗)。

いやあのですな、こういう読むのに時間が掛かる(実際問題としては読むべきポイントがあるので物凄く時間が掛かるという程のものでもないですけれども)のをクソ忙しい寄り付き前に出されましても誠に遺憾なのでありますけれども。じゃあ経済指標はどうなのかとツッコミが来そうですが、あれはまあその「数字」というのがまず出てきて第一反応が起きて、その後中身をまあざっと読みますかって話になるので少々違いますわな。

たまたま今回はあまりビックリネタが無かったから良かったのですが(^^)、ヘッドラインの打ち方次第でセンセーショナルなミスリードが出来そうなネタが転がっていた場合にどうなるのか。まあ見てみたい気もしますが(こら)。

#経済指標の場合はヘッドラインリスクは無いですからね

ま、要望とかあったのかもしれませんけど、あれは入札とか無い日の後場にマターリと読むのに味わいがあるわけでして(謎)、寄り付き前のクソ忙しい時に読むのは何とも。というわけで、別に引け後の公表でも良いんですけど・・・

それよりも次回の決定会合で議事要旨内容の承認をする(よって次回の決定会合後にならないと絶対公表できない)という法内容を何とかして頂きたく存じます次第で。

という話は兎も角。

○長期金利上昇(6月頭の)に関する議論

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の『2.金融面の動向』部分はほとんどが6月頭の世界の長期金利上昇に関する議論でありました。議事要旨8ページ目(PDFファイルでは10ページ目です、以下同様に2ページのズレがありますので念の為)から。前半の現状認識部分は割愛しまして。

『長期金利上昇の背景に関して、何人かの委員は、長期金利上昇が景気拡大を反映したものか、インフレ期待の高まりに起因するものかの見極めが重要であり、後者であるとすれば、物価とインフレ期待が安定しているもとでの緩和的な金融環境という、世界経済の高成長を支えてきた構図の変化を意味し得る点には注意が必要だと指摘した。』

左様でございますな。

『その上で、複数の委員は、現時点ではインフレ期待は安定しているとみられ、株価が上昇する一方で長期金利は安定していたというこれまでの流れが若干修正されたとみることができるのではないか、との見解を示した。』

ということで、まあこの時点では「ここもとの動きは自律調整の範囲内ですわな」という結論。まあそりゃそうでしょう。

『こうした議論を経て、委員は、債券市場がまだ落ち着き所を見出していないことから、長期金利上昇に伴う実体経済への影響、株式・為替など他市場への影響、グローバルな資金の流れへの影響などを、引き続き注意深く見ていく必要があるとの認識で一致した。』

というまあ一般的な結論に落ち着くのですが、これが情報ベンダーフィルターを経由すると「長期金利上昇の実体経済の影響を注視する必要がある」という所がヘッドラインで打ち込まれるのであります。何だかな〜。


○毎度お馴染みの情報発信について

本文9ページ目の『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』では毎度お馴染みの如く情報発信問題に関して論議が行われている訳なのですが、毎度毎度これがネタになるというのも何かこうアレなのですけど・・・・

『何人かの委員は、足もとの消費者物価が低迷する中で、金融政策をどのように運営していくのかについて市場参加者、メディアなどの関心が高く、具体的な政策変更のタイミングについての憶測もみられると指摘した。』

このタイミングの問題なんですけど、短期市場のように金融政策変更がまともに直撃する人にとっては大変重要な話なんですけど、より長いところをやる人にとっては実は7月だろうが8月だろうが9月だろうが大差ない(20年に対する3か月なんて屁でしょ^^)筈でして、それより重要なのは将来的な大体の方向性がどうなるのよって話だと思うんですが。

より具体的に言えば、まあ現状の延長線上で引っ張って行って今の金利調整ステージがどの位の水準まで行くのかという話(実際問題としてはその間に経済情勢が変化するので、必ずしもそうなるとは限らないけど)がより長い金利の人たちにとって大事な話でしょと言う次第でして、その辺の感じがイマイチこうモヤモヤと霧がかかったようなところがありまして、と思うのだが。

ま、目先の金融政策云々という話になるとどうしても直撃弾を食らう短期の人たちの声が大きくなるのでタイミングの方への関心が強いように見えてしまいますなあとか、昨今の場合で言えば昨年の12月に「12月利上げ出来なかったから当分利上げできない」というように、タイミングと将来の金利調整パスへのイメージ変化が直結するような見方、何と申しあげたらいいのか、金融政策パスの手前ルッキングとでも申しましょうか、まあそんな見方があるので、妙にタイミングが注目されてしまうというのもあるのかもしれません。

『この点に関して、多くの委員は、フォワード・ルッキングな政策運営の枠組みに対する市場参加者などの理解をさらに深めていく必要があると述べた。また、多くの委員は、政策運営に関する具体的なスケジュール感を示唆していると受け止められるような情報発信を行うことは、市場との双方向のコミュニケーションを維持する上で不適切である点を強調した。』

ですから、確かに経済は生き物ですから先の事など判らないですし、それに対して変にコミットするのも予定外の事態が生じた時に手足を縛ることになっては元も子もないというのも判るのですが、「先の事は全く白紙」みたいな話が出てしまうから逆に先ほど申しあげた先行きのパスに関するイメージがつかみにくく、結果として却って参加者の目線が手前ルッキングになり、タイミングの話が妙に注目されるのではないかとも思う次第。

『こうした議論を経て、委員は、金融政策運営の基本的な考え方を繰り返し説明していくとともに、経済・物価の現状と先行きに関する判断を、引き続き丁寧に説明していくことが重要であるという認識で一致した。』

まあこの辺の間合いは難しいというのはありますので、今後も試行錯誤は続くと存じますが、まあ市場の価格に対する論評的発言は避けていただきたいものだと存じますです、はい。



○生活意識に関するアンケート調査を簡単に

・・・・と書いてたら時間がなくなってきたので、もうひとつの話はちと駆け足で(多分続きは明日)。

「生活意識に関するアンケート調査」
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0707.pdf
一覧するなら16ページ目以降をご参照なのですぅ。

ま、本日は物価の所だけ見ておきますが、18ページ目にそのあたりの質問結果がございます(以下上記URL先より引用、一部割愛してます)

Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)。

1 かなり上がった6.0 ( 3.4 )
2 少し上がった47.0 ( 35.0 )
3 ほとんど変わらない41.0 ( 52.6 )
4 少し下がった4.8 ( 8.4 )
5 かなり下がった0.2 ( 0.4 )

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。

平均値 +3.7 ( +2.3 )
中央値 +2.0 ( 0.0 )

Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる7.2 ( 3.3 )
2 少し上がる64.6 ( 55.3 )
3 ほとんど変わらない23.9 ( 36.1 )
4 少し下がる2.3 ( 4.0 )
5 かなり下がる0.3 ( 0.3 )

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。
平均値 +4.5 ( +3.0 )
中央値 +3.0 ( +1.0 )

(以下引用終了)

とまあそういう結果でして、何となくこれは単に燃料価格に引き摺られているような気もしないでもないのですが、まあ年度替りの価格改定が効いてるとかあたくし如きでも何となく感じるところの生活体感的物価の上昇(日常品価格の上昇とか、値下げ商品が減りましたなあとかね)を反映してるとか、色々と報道された製品卸売価格引上げ報道とかも効いてるのかも知れません。ま、トレンドになるのかというのは即断できない話ではありますが。

#ということで本日は駆け足モードで恐縮至極

トップに戻る






2007/07/18

お題「相場は言うことも無いので日銀のペーパーでも」

まあ相場の方はこの調子で月末の指標やら来月のGDPやら出ないと動意が起きそうもないですが、何かここの所日銀から色々とペーパーが出ていますのでそのあたりでも。

#しかし農林大臣の会見映像には朝からワロタ

○市場が織り込む将来の政策金利がどうのという話

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev07j08.pdf

金曜に出てた日銀レビューでございますが、米国でFF金利先物レートから市場のが予想する将来の政策金利経路を見た場合にどうなりますかというお話でして、こちらは日銀レビューということで判り易く概略を説明してて、ややこしい計算式を見た瞬間に人間マーライオンになるあたくしにも優しい(^^)。

でまあ結論はFF金利先物にはリスクプレミアム、というか金利に上方バイアスがありますよ、即ち例えばFF金利先物レートが期先限月までベタッとフラットの場合、将来の金利変更無しを織り込んでいるのではなくて、将来の金利引下げがあるかも知れないということを織り込んでいるんだというお話だと理解致しました。本文にもありますように、米国ではこれに関する研究が色々と行われているそうな。

で、まあそこまでは良いのですが、このリスクプレミアムに上方バイアスがあるっちゅうのも何となくこう微妙にアレでございまして、(本文にも指摘がありましたが)そもそもこれらのデータが揃っている時代の中で金融引き締め局面となっていた時代が短い(おまけにグリーンスパン時代の最後の金利引上げ局面では「メジャードペースでの引上げ」を行い、FF金利引上げパスが「予測可能」だったのでリスクプレミアムに下方バイアスがこの間掛かりにくかったんじゃないのかとか疑問は少々ある訳でして(それにれ近年は引き締め局面の期間の方が短いと思いますし・・・)、このリスクプレミアムの上方バイアスはサンプル期間全体の金融経済環境に起因するかも知れませんわなあとも思うのですが。

それからですな、あまりFF金利先物市場を知らんで申しあげるのも僭越な話ではありますが(と言いつつ書く訳だが^^)、FF金利先物市場の特性として上方バイアスが発生しやすい市場だという可能性もあるとは思うんですよね。例えば本邦だと、ユーロ円金利先物市場にはどうしてもヘッジニーズ(バンキングALMのヘッジとか)が入り易いのと、精算価格がユーロ円TIBORというまあバーチャル金利(とか言うと銀行勘定から苦情が^^)で、今一歩短期金融市場の現物金利とリンクしてない部分があるとか、まあそのあたりの事情から常にTB/FBや国債金利からインプライドされる金利からT/Lスプレッドを勘案しても高いんジャマイカという金利になったりすると見てるんですが、まあその手の「市場そのものにバイアスがある」という部分も無視出来ないと思うんですが、米国での研究はどうなっているのでしょう。

と、書きながらふと思ったのですが、このリスクプレミアム云々って単に何もない時にターム物金利が足元金利よりも高くなるという話とどこがどう違うんだという気もしないでもないので(などと割り切ると失礼ですかそうですか)確かに先物などのデリバティブ市場の方がデータ取りやすいから分析しやすいというのはあるかも知れませんが、現物市場の方の分析もひとつお願いしたいものであります。短期のデリバティブ取引って(米国は知らんが)どうもあたくし如きの無力参加者には敷居が高こうございまして、あーたOIS取引なんぞに逝ったら想定元本500億円でも端物扱いじゃあーりませんでしたっけというものでありまして、より参加者層が広い現物(市場ごとに参加者が違うのがまた面白いのですけど)からインプリケーションをお取りになるのが実際の金利操作をしている部門の態度としてあるべき姿じゃねえのかなどと僭越な物言いをするあたくし。

というわけで、結論(冒頭にもありますが)部分はちとアレなものが。

『量的緩和解除以降のわが国では、OISレートが金融政策に関する市場の期待を抽出する手段の一つとして定着しつつある。但し、現状の利用方法は、リスク・プレミアムがゼロと仮定したうえで将来の金利変更の織り込み度合いを算出するというものが中心であり、米国についての分析でプレミアムの存在や変動が示されていることを踏まえると、特に期先のレートからは、市場の期待を正確に抽出できない可能性も否定できない。』

まあそりゃそうなのですが、それを言い出しますと昔からその話が出るたびに悪態をついておりました「金先市場が織り込む先行きの政策金利」(最近はOISのせいか金先ネタが減りましたが^^)も同じでありまして、これを持ち出すと大体期先金利の織り込みぶりが現物扱っている人たちから見ると「何じゃコリャ」という水準になるのですよね。

ま、さっきも悪態つきましたが、本邦のOIS自体一部の人たちが夢のような大玉を振り回す市場でまだまだ参加者の厚みに乏しいので(ということで、市場の規模を取引高だけで測るのはイクナイと思うのでありますよね、自分で手を振ったことのない人には中々理解してくれない所なのが厳しいんですが)そもそもOISにやたら注目する自体どうなのよと思いますけど。


○非常に重要なペーパーのような気がしますが・・・・・

昨日アップされたお題が『低金利環境下における均衡金利とイールドカーブ』でして、もう見た瞬間に「おおおおお!」と叫んでしまいましたよ。で、そのURL先を見に逝ったのですが。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp07e18.htm

>全文ダウンロード(PDF) 全文は英語のみの公表です。

・・・・(-_-メ)

ということで本文を読む気力は涌かず(こら)、日本語の要約部分だけを拝読させていただきました。

『主な結論は、以下の通り。(1)均衡金利を長期的な名目GDP成長率に対する期待値で近似することについて、統計的に否定的な結果は得られなかった。(2)日本銀行のコミットメントは、ゼロ金利政策の継続期間に対する予想とCPIのリンクを強めることを通じて、ゼロ金利下でも、CPIの水準次第で長期金利が動くように貢献した。(3)10年金利のターム・プレミアムは、2004年ごろから低下トレンドを辿っている。』

ほうほう。ところでここにある「長期的な名目GDP成長率に対する期待値」って何ざんすかと思うのですが、それは本文を読まないといけないんでしょうな(涙)。んでまあ(2)の結論も何か体感的にはそうなんですかと少々「???」が飛び交うのでありますけど。正直、長期金利いじってる人たちがCPIに注目しだしたのって結構後の方(それまでは「ああマイナスですなあ」で終了^^)でして、2003年の金利低下→上昇時にはCPIもへったくれもなく利上げ期待が盛り上がったような気がするんですけど、まあそれも本文(涙涙)。

まあ英検20級(嘘)のあたくしとしてはこーゆー重要そうなペーパーは日本語でも出して頂きたいのでありますけど。。。。。

とまあ本日はこのへんで。

トップに戻る









2007/07/13

お題「金融経済月報の現状判断が・・・・」

ヤケクソで8対1予想をしたら当たるとはこれいかにorz

○というわけで8対1

この8対1という結果を受けてちょっと債券先物上昇しましたけど、まあ7対2と8対1は事前予想のストライクゾーンということで何ともという所でしょうか。昨日も書いたように、8対1ですとまあ8月やってもやらなくてもどっちでもあまり不自然さは無いですので、そーゆー意味では日銀(というか政策委員会)は8月のアクションに関してフリーハンドを確保していると解釈できそう。よってこれから次回会合までの経済指標を見て「8月やるのかやらないのか」という話になるんでしょうな。ただし市場の予想大本命は8月という線は崩れてませんけど。


○現状判断が細かい部分で下方修正されている月報

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0707.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0706.htm(前回)

今回は展望レポートの中間評価がありまして、そっちで物価の見通しを強めにしているのが話題になるんでしょうが、文書を頭から読んでいると何かトーンダウンっぽいのが気になるのでありますよ。まずは展望レポートの中間評価。

『わが国の景気は、4月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)で示した「経済・物価情勢の見通し」に概ね沿って推移すると予想される。物価面では、国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、2007年度は、「見通し」に比べて上振れるものと見込まれる。2008年度の上昇率は、「見通し」に概ね沿ったものとなると予想される。この間、消費者物価は、2007年度、2008年度とも、「見通し」に概ね沿って推移すると予想される。』

ということで、物価の先行きを上振れで予想してるのですけど、経済情勢に関する現状判断部分に関してはちょっと下方修正してるのが気になるのですよ。

・景気の現状、住宅投資と生産

『住宅投資は横ばい圏内の動きとなっている。』(7月)
『住宅投資も、振れを伴いつつ緩やかに増加している。』(6月)

住宅に関しては販売業者の出し渋り(先高感による)の要因もあるのでまあ下方修正即良くない話かというとその辺微妙なのかもしれませんけど。

『内外需要が増加する中で、生産は、足もと横ばいながら、基調としては増加を続けている。』(7月)
『内外需要の増加が続く中で、生産も増加基調にある。』(6月)

生産の現状についての表現がちと苦しめですなあ。


・民間銀行貸出

普段余り見ないのですが、金融面にも表現の変化が。

『民間銀行貸出は緩やかに増加している。』(7月)
『民間銀行貸出は増加している。』(6月)

『CP・社債の発行残高は前年を上回って推移している。』(7月)
『CP・社債の発行残高は前年を幾分上回っている。』(6月)

ということで、差し引きチャラなのかもしれませんが、銀行貸出の伸びが鈍化しているというのもちょっと気になったですよ。


・物価に関して原油価格反落の表現が消える

『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、ゼロ%近傍で推移している。』(7月)
『消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の原油価格反落の影響などからゼロ%近傍で推移している。』(6月)

『消費者物価の前年比は、目先、ゼロ%近傍で推移するとみられるが、』(7月)
『消費者物価の前年比は、目先、原油価格反落の影響が残ることなどからゼロ%近傍で推移するとみられるが、』(6月)

ふむふむ。

ということで、先行きに関しては物価については原油価格などの反発が数字としてはフォローになるのかもしれませんが、景気の現状判断部分で認めているような細かい下方修正があるというのはどうなんでしょうかねって気にはなる所であります。

トップに戻る





2007/07/09

○さくらレポート

PDFで50ページございますのでリンク先注意。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0707.pdf

特にまあこれがどうというのもございませんで、基本的に順調なのが続いているけど地域間格差はありますなあってところでしょうか。

『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、すべての地域において拡大または回復方向の動きが続いており、地域差はあるものの、全体として緩やかに拡大している。』

『こうした中、総括判断において、「拡大」としている関東甲信越、東海、近畿と、「回復」方向にあるその他の地域との間で、依然、地域差がみられている。なお、4月の支店長会議時と比べると、総括判断は、全9地域のうち、6地域で現状維持としている。こうした中で、東北が個人消費の底堅さ等を背景にやや上方修正した一方、東海が人手不足等を背景とする生産活動や設備投資などのスピード調整から、また北陸が個人消費の弱めの動きから、それぞれやや下方修正している。』

ということで、総括判断では1地域上方修正で2地域下方修正なんですが、東海の下方修正ってスピード調整の意味が強いですし、北陸も元々が『回復を続けている』となっており、それほど弱い地域でもなかった訳ですが、一方で上方修正している東北は元々が『緩やかな回復を続けている』と弱い地域でしたんで、トータルすると別に悪くは無いとなるんでしょうな。それから個別の展開を見ますと・・・・

個人消費で東北上方修正で北陸下方修正
設備投資で北海道が上方修正
生産は東北が上方修正
雇用所得は中国が下方修正

ということで、まあこれまたほぼチャラって奴ですが、形から見ると弱い地域が上方修正してるんで悪くは無いって話になるんでしょうかな。

んでまあ、今回は中小企業の収益動向に関してを『地域の視点』コーナーで取り上げていますが、引き続き大企業と比較しての出遅れが指摘されていまして、製造業については比較的好調ですが非製造業はやや厳しめという所のようでございますな。

まあ総じて言えば引き続き順調で推移し、地域間格差は相変わらずあるけれども気持ち縮小ということでしょうか。


○唐突ですが金融政策の第1の柱第2の柱リターンズ

BISにも間違えられた金融政策の第2の柱に関してですが、昨年3月の『新たな金融政策運営の枠組みの導入について』を改めて見るのでした。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/k060309b.htm
で、この英語版を読んでみようという無謀な企画が今朝の雑談なのであります。正直読んでるの1箇所だけなのでアレでございますが。
http://www.boj.or.jp/en/type/release/zuiji_new/k060309b.htm

第1の柱、第2の柱の日本語版をまずは読むのである。

『第1の柱では、先行き1年から2年の経済・物価情勢について、最も蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているかという観点から点検する。』

良く見りゃこれも難しい表現でして、「日銀が今見ているメインシナリオが、物価安定の下での持続的成長に該当するか点検」って何か持って回ったような言い方ですな。そもそもメインシナリオがそうじゃない時だったらどういう対応をしていくのでしょうか(まあそのときは緩和的または引き締め的な政策をしますって話なんでしょうが)。

『第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検する。具体的には、例えば、発生の確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因についての点検が考えられる。 』

んでまあ、この第2の柱の冒頭部分の『踏まえつつ』の「つつ」が重要でありまして、長期的な視点を踏まえた部分と踏まえてない部分がございますという話、要するに基本シナリオ以外の部分が第2の柱になるちゅうことなんですけれども(詳しくは6月22日の駄文をご参照下さいませ)、正直もうちょっと判り易く書いてちょと思うのであります。

で、これが英語になるとどうなるのでせうか。

『The first perspective is examining, as regards economic activity and prices one to two years in the future, whether the outlook deemed most likely by the Bank of Japan follows a path of sustainable growth under price stability.』

第1の柱は向こう1、2年の経済物価情勢に関する蓋然性の高いシナリオが物価安定の下での持続的成長のパスに乗ってるか点検って読めますのでなるほどと。

『The second perspective is examining, in a longer term, various risks that are most relevant to the conduct of monetary policy aimed at realizing sustainable growth under price stability. More specifically, for example, the Bank of Japan may examine risk factors that will significantly impact economic activity and prices when they materialize although the probability is low.』

第2の柱なんですが、日本語で『踏まえつつ』となってる部分が『in a longer term』となっているように見えるのでありまして、ここを見ると「つつ」のニュアンスがちゃんと伝わるのかなあという気もせんでもない。というか逆に『in a longer term』を入れないで様々なリスクの点検をするという文章にした方がニュアンスが伝わりそうな希ガス(と言っても日本語本文にあるのを書かない訳にもいかないですから仕方ないのですけれども・・・・)。

・・・・まあそれって日本語の文章でも同じなんですけれどもね。日本語難しいがな。


ということで本日はあたくしの語学力の関係上これだけなのでありますが、よくよく考えてみたら海外投資家(というかアクティブなファンド筋)が日本の金融政策がらみで「何を考えとるんじゃ」という動きをしてくる事が多々ございます(最近は平和ですが)ので、英語でのリリースも暇があれば(中々ヒマとエネルギーが捻出できませんが^^)見ないといけませんな。

しかしこれは兎も角として、議事要旨まで英文リリースしてるのでありまして、こりゃ作るの大変ですわなあと思います。


トップに戻る






2007/07/06

○ところで昨日の続きですが

昨日ご紹介した銀行の信用スプレッドがどうのこうのというペーパーなのでありますが、本業の人とお話してましたら、いくつか勉強になるご指摘を賜りましたのでちょっと紹介&あたくしの雑感付け加え。

この分析なんですが、分析している期間が2004〜2006年度というところが何とも残念なところでありまして、この時期は既にりそな銀行救済スキーム炸裂以降でありまして、大手銀行に関して言えば信用不安が存在しないに等しい状況でしたんで、正直申しあげてこの時期のスプレッドは信用リスクの反映というよりは現物債券の需給動向に依存する部分が多かったんじゃないのかというのが現場感覚的な理解。まあ分析結果でも各行の自己資本比率などがろくにスプレッドに反映していないという話でしたが、まあさもありなんという感じ。

まあそんな次第でありまして、CDSのデータ自体がそんなに昔まで取れないでしょうからCDSで分析するのは無理でしょうが、せめて2000年以降の信用スプレッドの分析をしていただかないと色々と面白いインプリケーションは出てこないんじゃないですかっていうのがございますわなという話。

あと申しあげますと、メガバンクのCDSに関しては、そもそもメガバンクを対照資産にするCDS市場の参加者には海外投資家が多くて、国内の多様な投資家が参加している社債(メガの場合は金融債じゃなくて社債扱いですな)市場の方がどう見ても市場としての広さがあるんじゃないでしょうかという指摘も頂いたので、それもまた付言させていただきたく存じます。

ではでは。

トップに戻る





2007/07/05

○中々興味深い結果が出ている銀行のクレジットスプレッド分析

きのう日銀のサイトにアップされてたワーキングペーパーシリーズのお題は『3メガ行のクレジット・スプレッドの決定要因――厳密最尤法によるCDSプレミアムの分析――』であります。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/wp07j10.htm
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/wps/data/wp07j10.pdf

本文はPDFで20ページございますのでご注意。で、あたくしは何せこの「厳密最尤法」の読み方も知らん(「もっともごもっとも」でございますかな^^)のですが、何となく現物債いじってたりしたこともあるあたくしとしては最初の部分で少々頭の中に???印が。

こちらの分析では3メガ行のクレジットスプレッド推移を分析しているのでありますが、分析対象としてCDSを使うのに少々違和感が。確かに一般事業会社のSBなんかですとそもそもの発行がスポット的ですので、この分析の本文4ページに指摘されている『デリバティブであるCDS の方が、社債に比して、市場流動性に富むと思料されるためである。実際、日米両国において、CDS プレミアムの方が、社債金利の対国債金利スプレッドよりも、価格発見機能が高いことを示唆する実証分析結果が得られている(Baba and Inada (2007)、Longstaff, et al. (2005))』というのも左様でございますなあというのはありますが、こと3メガという話になると、恒常的に相当量の社債(あるいは金融債)が発行されていることもありますので、CDSスプレッドが社債よりも価格発見機能が高いかというと少々疑問も。

もう一つ付け加えるならば、社債とCDSでは参加者層の厚みが違う訳でして、例えばの話(それ用に特化しているのは別として)普通の投信とか年金とかのポートがCDSを使ってポートフォリオのヘッジをしてるかというと(あたくしの知らないところでそういうの有るのかもしれませんが)まあ一般的じゃないという話ではないかと思料。

ま、CDSの方がデータ取りやすいとか処理しやすいですし、現物債券は銘柄ごとの需給要因とかありますので、必ずしもCDS使うのがイクナイという話でも無いのですが、折角現物債券の市場に厚みがあるのですから、そっちからの分析も拝見したいものであります。まあここもとの期間の分析であれば直感的にはどっちを使っても大差無さそうですが、CDS/社債の本職の人のご意見はどうなんでしょ(ま、実際にはどっちのデータを使うかという点で両方の分析してると思うのですけれども)。

#念の為申しあげますと、まとめ部分で『最後に、先行研究との関連で、本稿の限界および貢献を述べておく。先行研究も、本稿も、市場流動性の多寡や需給ショックといった点は、定数項や状態変数によって十分かつ明示的に制御されていない。』と述べてますんで。

という点は兎も角と致しまして、米国の商業銀行CDSデータ(シティ、バンカメ、JPモルガンチェース)との比較分析部分を見て「ほほう」と思ったあたくし。まずは本文15ページより。

『第3 に、わが国では、イールドカーブがインプライする短期金利引き上げペースは、重要な決定要因とはなっていなかった一方で、米国ではそうなっている。すなわち、米国では、5 年金利水準を制御した下で、より早期の利上げが見込まれる場合、CDS プレミアムは大きい。』

CDSプレミアムは大きいということは信用スプレッドが拡大するというお話でありますな。で、まとめ部分の本文16ページでは改めてこのように述べられています。

『わが国では、米国と異なり、イールドカーブが示唆する短期金利引き上げペースは、重要な決定要因とはなっていない。短期金利引き上げは、本稿の定式化の下では、(調達費用の増加に起因する)運用・調達金利格差の縮小を意味するので、そうした縮小が、わが国では、メガ行の信用リスクの市場評価にて材料とはなっていないようだ。』

『サンプル期間である2004〜2006 年度において、わが国の短期金利水準が米国に比べて圧倒的に低かったことを踏まえると、このような日米間の差異からは、上記のような金利格差の縮小が銀行の資産価値に与える悪影響が、短期金利の水準に対して、非線形に増大していく可能性を指摘できよう。もっとも、本稿の一連の分析結果だけでは、その妥当性は十分に吟味され得ないので、今後の課題としたい。』

なるほどと思いながら、そう言えば昨年の量的緩和解除からゼロ金利解除のあたりでは主に海外発で日本の銀行株に関して「政策金利引上げは銀行の収益拡大要因なので銀行株買い」というレポートなどがドカドカ出ていて、金利債券の世界の住人達から「そりゃ違うんジャマイカ」という疑問が出ていたなあというのを思い出したあたくし。

でもこの分析によりますと、やはりCDSで示される『より早期の利上げが見込まれる場合、(商業銀行の)CDS プレミアムは大きい』ということでして、「利上げは銀行株買いってのは変じゃねえの」と言ってた金利債券の感覚は世界共通ということでしょうか。まあその間の株価がどうなってるのかまで見てないから「信用スプレッドの拡大と株価の上昇」が同時に起きてるのかもしれませんが、まあ普通に考えると信用スプレッド拡大は個別要因としては株価下落でしょうな。

既に米国のCDS市場で「利上げは信用スプレッド拡大」という結果が出てたのに「利上げは銀行株買い」とか言ってたぎゃーじんさんたちの理屈もワケワカランですわな。まあただの(自粛)なのかもしれないですけど(^^)。


○西村審議委員講演と刈り込み平均CPI

http://www.boj.or.jp/en/type/press/koen07/ko0707a.htm

正直申しあげまして、一昨日3分の2を読んだだけでその先まだ読んでる根性も時間も無かったのですが、とりあえず前半部分を見てるだけでも色々と「ほうほう」と(図表を見ながらですけど)思いながら読んでいたのでありました。で、読んでて「おお!」と思ったのは講演の真ん中あたりにある『2. Increased Uncertainty in the Policy Transmission Mechanism』という見出しの部分でして、フィリップス曲線分析の物価指標として使っているのが、図表4を見るとわかるのですが、10%刈り込み平均CPIを使っておるのですな。で、その脚注。

『The inflation rate is the year-on-year rate of change in the CPI (excluding fresh food), which is widely considered to be representative of Japanese consumer price inflation and on which the Japanese version of Treasury inflation protected securities (TIPS) is based. The basic characteristics of this rolling estimation exercise do not change if we use the trimmed-mean CPI inflation rate referred to later in this speech instead of CPI (excluding fresh food) inflation.』

だいぶまえにCPIのトレンドを見るのに何が適切かっていう趣旨のペーパーが日銀から出てまして、一時は10%刈り込み平均CPIも話題になってましたんですが、ここのところさっぱりその話題も減ってきてるなあと残念に思っていたあたくしと致しましては、ここの部分を読んでて「おお!」と思ったのですよ。いやまあそれだけですけど(^^)。

という訳で、突っ込むとオモシロそうなのですが、全然料理してない途中ものをお出ししてしまい恐縮至極なのでありました。

トップに戻る





2007/07/03

お題「短観その他少々」

東京は毎日蒸すわ雨は碌に降らんわと最悪ですな。

#しかし質への逃避で買われた(ことになっている)米国債金利の低下を好感して米株式買われるってのも(マジで言ってるのであれば)何たる都合の良い後付け・・・・

○例によって短観

http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/tk/gaiyo/tka0706.pdf

短観の内容に関しては本職の皆様がちゃんとした分析をしているのですが、まあ予想のど真ん中で、内容的には特に利上げが加速したり減速したりするものでは無かったというお話のようです。まあ例によって「前回の予測指数がどの程度達成できているのか」というのを見るのであります。

・ヘッドライン

            (3月時点)       (6月時点)
            現状→6月予測  現状→9月予測
製造業大企業   +23→+20    +23→+22
製造業中堅企業  +16→+12    +13→+14
製造業中小企業  +8→+7      +6→+4

非製造業大企業  +22→+23    +22→+23
非製造業中堅企業 +5→+4      +8→+7
非製造業中小企業 ▲6→▲10      ▲7→▲10


大体ご覧になればお判りのように、基本的に先行き予測指数にはクセがあるのですが、現在のように「景気がいい」と言われるときには先行き見通しが慎重に出やすくなるのですな。で、今回なんですけれども、前回までとちと違うのは(1)前回調査で出た先行き予測についての達成度合いがマチマチ(今までは大体前回の慎重予測をぶち破る内容だったんですが)な事ですが、これはまあ絶対水準が絶対水準なだけにニャンとも。で、(2)としては、先行きの予測指数でして、こちらの数字が実は3月時点での先行き予測と比較して強くなっていることでありますかな。まあ先行き慎重なのは変りありませんが、3月時点よりも先行き予測DIが好転しているのは株価や為替などが要因なのか、何となく販売価格が上昇しているのが要因なのか、何だか良く判らないですけど、ちょっと強いなあと思いましただよ。

ちなみに前回は(1)は前回の先行き慎重度合いよりも良い内容(=達成度合いは良好)で、(2)に関してはマチマチですが、非製造業大企業以外は先行き予測DIが前回よりは悪化、ただしそもそもの発射台が下がっていた、という感じでしたので、前回調査時点からトータルして考えると、昨年9月調査をピークにそれ以降やや低下気味だったマインド面に関しては、この3月で歯止めがかかり、今回の6月調査で先行きへの堅調さが戻ってきましたという所になるのでしょうか。シロート見立てですけど。


・雇用判断

前回は製造業での雇用不足感拡大は一服したという数字でしたが。


            (3月時点)       (6月時点)
            現状→6月予測  現状→9月予測
製造業大企業    ▲7→▲8      ▲6→▲9
製造業中堅企業  ▲8→▲9      ▲6→▲9
製造業中小企業  ▲6→▲8      ▲3→▲7

非製造業大企業  ▲19→▲19    ▲17→▲19
非製造業中堅企業 ▲13→▲14    ▲14→▲17
非製造業中小企業 ▲14→▲16    ▲9→▲13

今回は前回予測よりも不足感の拡大は無いという結果。これまた多分統計のクセだと思うのですが、先行きの雇用人員判断に関してはだいたい「固め」に出る傾向がありまして、人が余ってるという雰囲気の時には先行き判断が余剰気味に、不足感があるときは先行き判断が不足気味に振れやすいようですので、先行き予測をトレンドとして信用しすぎるのも何なのですが、どうもここ2回の数字だけ見てると「人員判断」的には不足は不足としてもさすがにその不足拡大感はこの辺までというところでしょうか。

で、今回もまたいつも派手派手に振れる証券業の業況判断DI(^^)。

        (3月時点)       (6月時点)
        現状→6月予測   現状→9月予測
証券業    +34→+52     +34→+52

どう見ても大本営発表です。本当にありがとうございました。


○ところでCPIはイマイチで雇用の数字は良かった訳ですが・・・・・

以下妄想モード全開でありますので念の為申しあげますが。

先週末に出た指標はCPIがイマイチで雇用は結構という数字。まあ誠に結構な数字の出方(インフレ無き経済成長ですから)でございましたが、金融政策という話になると、本職の方によりますと6月の全国コアCPIも▲0.1%とマイナスになりそうですという事ですので、さて8月にコアCPIマイナス状態で利上げするのかいなという話は生じるのであります。

でですな、全て妄想モードで話しが進みますが(^^)、ゼロ金利解除と前回の利上げに際しては、ゼロ金利解除の直後にCPIの基準年改定が待ち構えておりましたし、前回の利上げ後はまあ本職の方々の予想通りでエネルギー価格とか通信料金とかの影響でコアCPIがゼロに低下した訳でありまして、そーゆー意味では「ここで利上げをかましておかないとタイミング的にちとマジイ」というのもあったんではないかと勝手に妄想(当然ながら政策委員会としてはそんな事は全く考えていないとなるでしょう、為念)されるのですな。で、今回に関してはどうなのよという話ですが、問題はコアCPIのプラス転換がいつ頃になってくれるのかの読みとなるのかなあと。

つまりですな、コアCPIマイナスなんで8月利上げをスキップしても9月とか10月くらいに(即ち7月や8月の全国コアCPIが)CPIのプラス転換が見えて来るのが確実なのであれば、敢えてコアCPIマイナスで利上げをする冒険をする必要もないと思うのですけれども、まあコアCPIのプラス転換がもうちょっと先(本職の方がたによれば年末あたりらしいですけど)だというのであれば、そこまで引っ張るという選択肢は無さそうなので、やっぱ8月かなあ何て思うのですな。

以上、思いっきり妄想で語っておりますので念の為。ちなみにあたくしのべき論で言えば、全国コアCPIのプラス転換を見届けてからの3次利上げ、その代わり先行きの金利調整ペースはもうちょっと早くなるというのでまあ大丈夫なんじゃないかとは思うのですが、今までの金利調整の流れが着手を早めにしてそのかわりペースをゆっくり(という言い方も変ですが)となっているように見えますので、今更福井総裁のもとでこの流れを変える訳にもいかんでしょうなあという所で。

まあそんな訳で変な裏読みを披露させていただきました。

トップに戻る








2007/06/27

お題「またも虫干しですが5月決定会合議事要旨」

今朝も2年と10年の前日比利回りがわずかに低下(上昇してるのは3か月TBだけ)している画面を前に「債券市場は反落しました」とはまた・・・と思ったら6時台になったら「買われました」になってました。悪態が聞こえたのかな(^^)。(モーサテのことね、正直矢吹さんから佐々木さんになって劣化が著しいんですけど)

#世の中には「概ね横ばい」という便利な言葉があるんだからもっと活用すればいいのにと思うのですけど^^;


○BIS年次報告

本題に入る前に別の話ですが、BIS年次報告の中でオモロイ記述があったという話を本石町日記さんが。あたくしも言われて年次報告斜め読みしたら、『The second move was based on the second perspective』(本年2月の利上げは金融政策の枠組み第2の柱を基に行われた)という所を見てのけぞったのでありました。BISも日銀の公式見解を否定っていうのはまあ本石町日記さんのご指摘の通りで、例の枠組みがムツカシイってのがあると思いますが、BISが実は(第2の柱を物凄い勢いで誤解しているという意味で)あたくしと不勉強振りで大差無いという事でもあろうかと(え?)。

ちなみに同報告の中で日本の金融政策どうのこうのというのは4ページ(実質3ページ)ほどの分量でありまする。本石町日記さんの当該エントリーはこちらです。最初のコメントに対する次のコメント氏の豪快な釣られっぷりに乾杯→http://hongokucho.exblog.jp/7023721/



さて本題の5月決定会合議事要旨でありますが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070517.pdf

○CPIを巡る議論

本文8ページ(PDFでは10ページ、以下同様に2ページ分のズレがございます)でCPIを巡る議論が分かれているように見える記述がありまして、久々に「おお」と思ったんでございます。

『何人かの委員は、@昨年ほどではないが、原油価格の反発を受けて、ガソリンなどの石油製品の価格が上昇してきていること、Aマージンの比較的薄い食料品などでは、海外での需要増加や為替円安による仕入価格の上昇を販売価格に転嫁している品目が少なくないこと、B上昇品目の数が下落品目の数を上回ってきており、企業の価格設定力が徐々に回復してきている可能性があること、といった最近の特徴的な動きを挙げながら、基調的な物価上昇圧力は緩やかながら着実に高まってきていると述べた。』

『これに対し、何人かの委員は、企業間の競争は厳しく、消費者の価格上昇に対する抵抗感も依然として強いことから、企業の価格設定力はほとんど高まっていないと考えられると指摘した。また、別の一人の委員は、わが国の物価上昇率が低水準であるのは、サービス価格による部分が大きいが、これには、サービス産業の生産性や賃金の動きが影響しているのではないかと指摘した。』

後者の企業間の競争云々ですが、先日の武藤副総裁の講演の中で(昨日ご紹介したときにはその部分スルーしたのですけれども)物価の現状と先行きに関するお話があったのですが、その中でやたらと『厳しい競争環境』を連発しておりましたので、ここにあります議論の中で「物価上昇圧力はそんなに高くない」派に武藤副総裁参戦という所なのでしょうかと思うと中々な部分でございました。


結論はこうなっております。

『こうした議論を経て、委員は、消費者物価の上昇率が基調として少しずつ上がっていくとしても、当面の速度については不確実性が大きいとの見方で一致した。複数の委員は、年度入り後の各種サービス価格の改定がどうなるかが注目されるとコメントした。』

各種サービス価格の改定に関してはこの会合の後に出たCPIでは地味ながら改定されているものがそこそこございましたという結果だったと記憶しておりますが。


○珍しく不動産価格の話がポジティブのみでした(^^)

金融面の動向という部分ですけれども、例によって不動産関連のお話が出てたのですが、珍しくバブル警戒の色が無いのはどういうことでしょうか(^^)。

『上場不動産投資信託( R E I T )がこのところ上昇していることについて、一人の委員は、都心ではオフィス需給の逼迫から賃料引き上げの動きが広がっており、こうした不動産投資の収益性の高まりを反映したものと評価して良いのではないかとコメントした。』

これはどういう風の吹き回しでせうか。


○例によって情報発信について

当面の金融政策に関する委員会の検討というところで、毎度お馴染みの如く金融政策運営に関する情報発信について議論が行われている訳ですが、そもそも論として情報発信について毎度毎度長々と記述するような議論が起こるというのが何というかちとアレなものを感じるのでございますけど・・・・・

本文9ページより。

『何人かの委員は、市場では、先行きの政策運営に関連して、経済・物価情勢の改善の度合いを具体的にどのような指標をみて判断するのか、また、特に足もとの消費者物価が低迷する中で、金融政策をどのように運営していくのか、といった点について、引き続き関心が高いと指摘した。』

まあそりゃそうですが、その次がずっこけるのでありまして。

『こうした点に関連して、多くの委員が、フォワード・ルッキングな政策運営という点について市場参加者の理解をさらに深めていく必要があると述べた。』

だからそのフォワードルッキングな政策運営というのが禅問答の世界(蒟蒻問答にならないようにね^^)なのだと小一時間。

『このうち一人の委員は、個々の経済・物価指標の動きを評価する際には、それらをもとに先行きを展望して、標準シナリオの蓋然性やリスクシナリオが変化するのかどうか、という視点が大切であると付け加えた。』

ということは、フォワードルッキングがどうのこうのというよりは、やっぱ「データ重視だけど、足元の一時的な振れには一々対応しないです」「で、今の状況は緩和的ですよん」という説明の方が判りやすいと思うのでありますが、まあ実際その説明がワークするかと考えると実は自信のないあたくしがここにいるのです。

大体からして金融政策(プルーデンス方面の話ではない)の効果にタイムラグがあるんですから、余程のショックでもない限り目先に振り回されて対症療法的対応を取るなんてぇのは有り得ない話なんですから、そういう意味では金融政策フォワードルッキングなのは当たり前という事でもありますし・・・・


で、武藤副総裁の会見でも触れられてた部分。

『一人の委員は、利上げのスケジュールは決まっていないという点は当然であって、この点を強調しても、かえって日本銀行の金融政策が分かりにくいという印象を与えてしまうのではないかとの問題意識を述べた。』

『これに対し、何人かの委員は、今後の経済情勢次第で利上げのインターバルが変化しうるという点は、今回の展望レポートの中で記述を工夫したポイントの一つであり、市場の理解を得るよう、引き続きしっかりと説明していく必要があると述べた。』

うーん、正直ここは難しい。その前の展望レポートからの継続性ということを考えると、今回の展望レポートで記述を工夫したのは確かにそこは重要なのでありますが、最初の委員が言ったように、その点を殊更強調するのもワケワカランとなるというのも理解できる所でありまして、まあ結局ロジックがやたらややこしい(というかつぎはぎというか・・・)のがこのような議論を呼ぶ所なのかも知れませんな。

いじょ。

トップに戻る






2007/06/22

お題「あたくしの大いなる間違いについて(第2の柱関係など)」

ということで、本日のドラめもんは是非ご覧下さい。いやあの昨日書いた内容っておめえ間違ってるだろと思ったお方は別に良いのでありますが・・・・

昨日書きました4月27日の議事要旨関連に関するお話で、読者の皆様のご指摘によりあたくしの大勘違いが判明したのは「5月14日の日経記事に関する話」と「第2の柱に関するあたくしの理解(というか誤解)」でございます。まずは日経記事関連のお話から。


○日経報道を否定する福井総裁インタビューがございました(汗)

物価安定の理解に対するバラツキという5月14日の日経新聞記事を紹介がてら昨日は4月27日の議事要旨をご紹介しましたが、その部分を再掲すると

『こうした議論を踏まえて、委員は、「中長期的な物価安定の理解」の具体的な数値についての議論を行った。多くの委員は、概ね1%を中心値として、上下0.5%ないし1%程度の範囲との見方を述べた。』

『さらに別の一人の委員は、1%よりもゼロに近いプラスの値を中心に考えていると述べた。』

(4月27日金融政策決定会合議事要旨より)

となります。まあこの時点で報道されていた「マイナス0.5%−プラス0.5%」というのが微妙ではあったのですが、頭から「これは誤報」と申し上げるわけにも行かず、他のレンジの部分が合っていたので「実は誤報じゃなかったのかなあ」と悩んでしまい、間違いと言い切る自信が無かった次第でありまして(汗)。

で、読者の皆様からご指摘を頂いて始めて知ったのであります(という時点で自分の不勉強ぶりを恥じ入るしか無いのですが)が、週刊東洋経済の6月16日号に福井総裁のインタビュー記事が掲載されておりまして、その中で5月14日の日経報道に関する質問と答えがございました。インタビューの真ん中あたりになりまして37ページ下段になります。

そこで、福井総裁は日経記事に関して明確に否定しておりまして、各審議委員のレンジは0%−2%であると発言していました。ご教示頂きました読者の皆様に大感謝すると共に、自らの不明につきましてここに謝罪させていただきたく存じます。



○『新たな金融政策運営の枠組み』に関するあたくしの大誤解

本日は自分の不勉強ぶりを晒す文書ばかりでして、こういうのを「穴があったら入りたい」って心境だなあと思うのですが、自分の間違いはちゃんと訂正しないとネットの文章はキャッシュになって半永久的に残るんで、きちんと直さないといけないです。ということであたくしの大誤解をご紹介しましょう(超大汗)。

昨日あたくしはこう書きました。

(昨日のドラめもんより)
・・・・とつらつら考えますと、この金融政策の第2の柱ってのは「より長期的な展望でのリスク要因」というよりは単に「サブシナリオの点検」なんじゃねえのかという気もしてきた(冷静に考えたら展望レポート見た時点で気が付いても良かったように思えますが、そこはあたくしの不勉強の致す所)のであります。(つまり時間のスパンが同じじゃねえのという意味です)

・・・・何だかこの「第1の柱」と「第2の柱」の区別が良く判らなくなって参りました><;
(以上昨日のドラめもんより)

で、読者の皆様からご指摘を受けまして、改めて昨年3月の文書を読んでみたあたくしが愕然としてしまいましたんですよ(滝汗)。

http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/k060309b.htm

『(2)2つの「柱」に基づく経済・物価情勢の点検』

『金融政策の運営方針を決定するに際し、次の2つの「柱」により経済・物価情勢を点検する。』

『第1の柱では、先行き1年から2年の経済・物価情勢について、最も蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路をたどっているかという観点から点検する。』

『第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検する。具体的には、例えば、発生の確率は必ずしも大きくないものの、発生した場合には経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因についての点検が考えられる。』

目の玉かっぽじってよく読んでみますと、第1の柱はあたくしの理解しております通り、先行き2年以内のメインシナリオに対する点検であります。で、肝心の第2の柱なんですが、「上記メインシナリオ以外のサブシナリオ・リスクシナリオに対する点検」なんですね。『より長期的な視点を踏まえつつ』というのをいつの間にやら『より長期的な視点を踏まえ』と脳内変換して理解しておりました。何たる勘違いと大いに愕然とするあたくしなのであります。いや正直申し上げて、改めて読んだ瞬間にリアルで冷汗でまくりでした。

あたくしが把握したことをもうちょっと詳しく整理してみます(ということですので、もしあたくしの理解に問題ありましたらご教示賜りますと大変ありがたく存じます。えーっと合ってっても「それで大丈夫」って教えていただけるともっと嬉しいのですが、汗)のでお付き合い下さい。

この第1の柱、第2の柱ってえのは、「物価安定の下での持続的な経済成長」を点検するための判断ファクターが2つあるというお話でありまして、じゃあその「物価安定」とは何ぞやというのが展望レポートで示される「中長期的な物価安定の理解」および2006年3月10日の日銀公表文『「物価の安定」についての考え方』であります。

即ち、先行き2年以内の経済物価情勢に対するメインシナリオが「物価安定の下での持続的な経済成長」に合致しているかどうかを点検するのが第1の柱でありまして、それ以外のサブシナリオ・リスクシナリオに関しての点検および、より長期的な観点、即ち2年を超える期間を展望した場合に、目先2年のシナリオでは「物価安定の下での持続的な経済成長」に合致するけれども、その先まで考えた場合にそうはならないリスクなどを点検する、というのが第2の柱であるということとあたくしは理解致しました。即ち、これらの「柱」はあたくしたち市場参加者が良く使う言い方の「相場シナリオ」なのではなくて、相場シナリオに則った「点検作業」なのであります。うーむ書いてて判ったような判らんような表現ですが、もうちょっと良い表現があるのかもしれません。

そうなりますと、昨日申し上げた「第1の柱と第2の柱の時間軸が同じなんじゃないか」というのは、第2の柱が見ているのは第1の柱でフォローされない部分の全てなのですから、見ている時間のスパンが重なるのは当たり前という事になるのですよ。いやあもう思いっきり誤解もいいところで、自分の不勉強ぶりに情けない思いでございます。

で、こういう位置づけになっているからこそ、6月15日の福井総裁記者会見で「第1の柱と第2の柱に等しくウェイトを置いている」という発言が出るのだと理解致しました次第。「メインシナリオだけでなくてリスクシナリオにも十分目配りしていますよ」というメッセージだったと言う事なんですね。



○ただまあこれ誤解を誘発しやすいのは確かだと思うんです(と言い訳)

えー、こういうのを俗に「引かれ者の小唄」などと申しますが(爆)、あのその一応言い訳になっちゃいますけどちょっとだけ申し上げますね。

先ほども申し上げましたが、市場参加者が相場見通し会議なんぞのようなイベントを実施する際には、時間軸とその間のメインシナリオを中心にして頭の中を整理しながら話をすると思うんですよ普通。そしてサブシナリオとかリスクシナリオとかは「メインシナリオの前提を崩す場合」というような扱いとしてある意味セットで考えるものになると思うんですなこれがまた。

で、一方で先ほどご紹介した「新たな金融政策の枠組みの導入」の説明文書での「第1の柱」「第2の柱」は第1の柱と第2の柱の中で同じタイムスパンと別のタイムスパンが混在しているので、市場参加者が普段慣れている頭の中の整理法とちょっと違っている訳でして、こりゃまあ誤解を誘発しやすい書き方だと思うんですよ。ついでに申しあげると、「より長期的な視点を踏まえつつ」って部分がまた誤解を誘発しやすい訳でして、もうちっときっちりと「第1の柱で点検された見通しに対する様々なリスクや、より長期的な視点に立った場合に重視すべきリスク」というような書き方にしていただけますとクリアカットになったのではないかと思います。冗長な文書があまり美しくないのは理解できますが、時にはくどく説明するのも大事なのではないかなあと思ったのでありました。



そんな訳ですから、昨日ご紹介した4月27日の決定会合議事要旨において、『また、下振れの場合として、経済情勢の改善が足踏みするリスクがあるほか、経済情勢が改善する場合でも物価が上昇しない状況が続くリスクもあるとの点で認識が一致した。』とあるのはまさしく第2の柱の点検であるということになる訳です。

で、ここもややこしいと思うのですが、『経済情勢が改善する場合でも物価が上昇しない状況が続く』のがリスクとは何のこっちゃ(それが一番望ましい姿ではないかという意味ね)と瞬間思ってしまうのですけれども、これは物価が上昇しない状況が続き、物価指数の数値に過度にファーカスして政策運営を行うことによって、経済情勢の改善に見合った政策金利の調整が遅れ、より将来において必要以上に経済情勢が過熱するリスクがあると言いたいのかなと思ったのですけれども、その理解で合っておりますでしょうか。。。。


ということで、議事要旨の続きとか武藤副総裁の講演+記者会見とかネタが全部繰越になってしまい、本日はあたくしの無知蒙昧を披露する場となりました、アセアセ。

(追記:一応上記の理解で第1の柱、第2の柱の整理は合っているようです^^)

トップに戻る






2007/06/21

お題「決定会合議事要旨(4月27日)」

日銀からはネタを3本投下していただいた訳ですが、まあ3本とも惜しくも相場にはインパクトになりにくかったようですな。まあ想定の範囲内ってのもありますが、寄り付き10分前に決定会合議事要旨のように読むのに時間がかかるものを出されても精査してるヒマがないという感じも致しましたです。ま、昨日は法人企業統計があったのでそっち優先でもあったんですが(^^)。

ということで3本まとめてやっつけるのは重いので今日は決定会合議事要旨で力尽きるものと存じます(汗)。まずは4月27日の議事要旨から。(追記:と思ったら案の定時間切れになったので今日はこの要旨チェックだけで勘弁願います。明日二日酔いじゃなかったら頑張るだよ)

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070427.pdf
(4月27日の議事要旨)

重大な追記:読者の皆様の指摘によりまして、この日に書いた内容に大いなる誤解や大いなる勘違いが連発していることを知りました。ということで、翌日にこの内容を確認、というよりは書き直しのエントリーを作成致しました。詳しくはこちらをご覧下さい。

○1か月前の新聞報道の裏を取ってみる(^^)

旧聞もいいところですが、5月14日の日経新聞(諸般の事情で手元にあるのが国際版なんですが)3面に「物価安定の目安、日銀にバラツキ」というお題で記事が出たんですが、その見出しに『消費者物価 小幅マイナス容認論も』『金融政策 微妙な影』とございまして、記事のリードには『この(引用者注:物価安定の目安)討議の際に一人の委員は下限は小幅マイナスでよいと主張した。』とございまして、記事ではこの主張が「プラス0.5%〜マイナス0.5%」であったという報道でした。

・・・で、まあ今回の議事要旨で該当する部分は要旨の11ページ以降(PDFファイルでは13ページ以降、以下同じようにファイルと要旨のページが違うのでご注意)になるのですが、具体的な数字を議論してた部分は本文12ページですな。

『こうした議論を踏まえて、委員は、「中長期的な物価安定の理解」の具体的な数値についての議論を行った。多くの委員は、概ね1%を中心値として、上下0.5%ないし1%程度の範囲との見方を述べた。』

で、問題の委員と見られる人の部分はこうなります。

『さらに別の一人の委員は、1%よりもゼロに近いプラスの値を中心に考えていると述べた。』

なるほど幅が1%で中心がゼロに近ければプラス0.5%からマイナス0.5%というのも似たようなもんといえば似たようなもんでもありますな。記事では『マイナスの下限を主張した委員は、中長期的に望ましい水準はゼロ%より少し上』となっていたのでまさに記事の通りだったりします。なるほどなるほど。

というかそもそも論として、金融政策決定会合での議論内容が議事要旨公表前に表に出ること自体が如何なものかという話がありますわな。リークする方もする方だし書く方も書く方。しかも書いてるのが日本の経済クオリティペーパーと自他共に認める日経新聞って所に落涙を禁じ得ませんが。

ちなみに、上記日経記事によりますと9人の委員が示した望ましい物価上昇率の図まで出てまして、もう思いっきり見てきたような記事になってますが(図を文章で説明するのはめんどいのでお暇な方は古新聞を漁って下さい)、その図と議事要旨の記述を比較してみると日経の記事の方が詳しかったりする(概ね議事要旨の記述で裏を取ると大体正しそうな感じです)のですな。ちなみに議事要旨での記述はこのようになっております。

『多くの委員は、概ね1%を中心値として、上下0.5%ないし1%程度の範囲との見方を述べた。このうち何人かの委員は、中心値は1%より若干低い水準を考えていると付け加えた。これに対して、一人の委員は、1%から2%程度の範囲が適当と述べた。また、別の一人の委員は、0%台後半との意見を示し、さらに別の一人の委員は、1%よりもゼロに近いプラスの値を中心に考えていると述べた。』

どう見てもリーク記事です。本当にありがとうございました。

・・・という話は兎も角、この記述と日経の記事併せて見てると、望ましい物価上昇率のレンジは0%〜2%で示されてて中心値が1%になってるけど、最頻値取りに行ったら1%切るんジャマイカという気がするんだけど。。。。。。


○2つの柱の検討部分でちと判らなかったんですが><;

本文8ページより。

『第1の柱、すなわち、2008年度までの経済・物価情勢について最も蓋然性が高いと判断される見通しについて、政策金利に関して市場金利に織り込まれている金利観を参考にしつつ点検すると、委員は、わが国経済は、生産・所得・支出の好循環のメカニズムが維持されるもとで、息の長い拡大が続く可能性が高いとの判断で一致した。』

まあそうですか。

『第2の柱、すなわち、より長期的な視点を踏まえつつ、金融政策運営という観点から重視すべきリスクの点検を行った。この点に関して、委員は、金融政策面からの刺激効果が一段と強まる可能性がある中で、中長期的にみて、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分につながるリスクに留意する必要があるとの認識を共有した。また、下振れの場合として、経済情勢の改善が足踏みするリスクがあるほか、経済情勢が改善する場合でも物価が上昇しない状況が続くリスクもあるとの点で認識が一致した。』

ここの部分が正直良く判らなかったんですが、「また、下振れの場合として」云々が「第2の柱の検討」に掛かるのか、単に経済物価情勢の先行きの下振れリスクなのかが読んでて微妙に判りにくいんですよね。で、仕方が無いので展望レポートの該当箇所を読んでみるとこうなります。

(展望レポートより)
『第2の柱(略)を点検すると、経済・物価情勢の改善が展望できる状況下、金融政策面からの刺激効果は一段と強まる可能性がある。例えば、仮に低金利が経済・物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、企業や金融機関などの行き過ぎた活動を通じて、中長期的にみて、経済・物価の振幅が大きくなったり、非効率な資源配分につながるリスクがある。一方、前述のような下振れ要因が発生した場合、経済情勢の改善が足踏みするような局面が考えられる。また、経済情勢の改善にもかかわらず、物価が上昇しない状況が続く可能性もある。』

ということですので、展望レポートの記述と議事要旨を合わせれば、先ほどの「下振れの要因として」云々は第2の柱の検討だということになりますです。はい。

じゃあ引用部分で書いてある「前述のような下振れ要因」とは何ぞやという話になりますと、そのちょっと前のあたりで示されている経済物価情勢の先行き展望の中で発生しうる下方向の不確実性ということになると思われます。

・・・・とつらつら考えますと、この金融政策の第2の柱ってのは「より長期的な展望でのリスク要因」というよりは単に「サブシナリオの点検」なんじゃねえのかという気もしてきた(冷静に考えたら展望レポート見た時点で気が付いても良かったように思えますが、そこはあたくしの不勉強の致す所)のであります。(つまり時間のスパンが同じじゃねえのという意味です)

・・・・何だかこの「第1の柱」と「第2の柱」の区別が良く判らなくなって参りました><;

#判らなくなった所で時間切れなので続きは明日以降・・・

トップに戻る






2007/06/18

○ところで金融経済月報

などと書いているうちに時間がなくなってまいりましたが、今回の金融経済月報は見事なまでに前月と同じ(物は試しにすかし読みしたら良く判ります)でして、特に書くことも無いのですよ。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0706.htm(6月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0705.htm(5月)

違っているのは2箇所だけです。

・物価の現状部分

『国内企業物価は、国際商品市況高などを背景に、』(6月)
『国内企業物価は、国際商品市況の反発などを背景に、』(5月)

・金融面(あんまり見ないのですが・・・)

『CP・社債の発行残高は前年を幾分上回っている。』(6月)
『CP・社債の発行残高は前年並みの水準となっている。』(5月)

まあどちらも現状認識の部分ですが、企業の資金需要に関する金融面の部分に関してはちょっとだけ注目しておきます。ただ基本的な内容は全然変っていませんので「判断は思いっきり据え置き」でよろしいんじゃないでしょうか。

トップに戻る







2007/05/23

お題「ロンバートに関する議論・・・かな」

昨日公表された議事要旨は4月9、10日分だけでしたので、先日日経新聞が報道していた展望レポート作成決定会合の内幕話らしき記事に関する話は次回のお楽しみといった所のようで。

で、今回はその4月9、10日の決定会合議事要旨から。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070410.pdf

○ロンバートに関する議論が行われた訳だが

本文8ページ(ファイルでは10ページ)目の「V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要」の頭の部分で興味深い議論が。

『短期金融市場の動向について、多くの委員は、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、期末最終営業日に上昇したが、総じて0.5% 前後でしっかりとコントロールされていると述べた。(途中割愛)このほか、補完貸付の利用額が期末最終営業日に増加した点を踏まえ、複数の委員は、補完貸付制度が有効に機能したこともあって、期末を波乱無く越えることができたと述べた。』

で、その次にこんな話が。

『一方、別の複数の委員は、補完貸付制度が金融機関行動や市場機能に与える影響を吟味する必要があると述べた。こうした議論を経て、これらの何人かの委員は、今回の期末最終営業日の短期金融市場の動向は、今後、短期金融市場の機能向上や補完貸付の適用金利のあり方について検討する際に参考となるとの認識を示した。』

これをあたくしなりに解読致しますと、期末だと言ってガンガンロンバートが使われるちゅうのは、ロンバートが金利回廊設定としての機能はしているけど、市場機能という意味では金利回廊が狭くねえかという論点で「複数の委員」が話をしていたということですわな。

まあ利上げ前では足元0.25%VSロンバート0.40%でしたけど、今回は足元0.50%VSロンバート0.75%で回廊の幅は広がっているのですが、誘導目標が倍になっているのに回廊の幅は倍まで広がっていないという見方も出来る訳でして(というのも妙な理屈ではありますが、苦笑)、さてまあこの誘導目標とロンバートの金利差をどうするのという議論は次回の利上げの時に課題になるのかもしれませんな。

・・・・というような話を同じように読む人はいると思いますので、恐らく本職の人からも「次回利上げ時にロンバートの幅が拡大するのではないか」という指摘あるんじゃないかなと思います。次回の誘導目標75bpでロンバート125bpってのも微妙に座りが宜しくない気もしますんで(何たる根拠レス^^)、どっちかと言うと誘導目標が100bpになった時にロンバートの幅を拡大して150bpにする方が座りがよさそうにも思えますが。


○これは・・・・・

本文7ページ(ファイルの9ページ)から。

『多くの委員は、既往の原油価格反落の影響や携帯電話の低料金プラン導入の影響などから、3月の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比は、2月に続き小幅のマイナスになる可能性が高いと指摘した。一人の委員は金融経済月報の「ゼロ%近傍」という表現は、こうした小幅のマイナスを含む意味であると付言した。』

4月の金融経済月報が出たときに「物価表現の非対称性」などと悪態をついた訳ですが(笑)、一応気にしている人はいたんですかそうですか。本当にカムサハムニダ。


○内閣府の方は引き続き注文多いですな

まあ今回の決定会合議事要旨ではあまり「おお!」というのは見当たらなかった訳ですが、最後の政府出席者からの発言を見ると何と申しますかねえという感じも。本文10ページ(ファイル12ページ)の真ん中あたりに『また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。』から始まるくだりがあるのですけれども、この部分が長い長い。で、その2番目ではこうなっておりますです。

『先行きの経済・物価については、上振れリスクよりもむしろ世界経済の動向等がわが国経済へ与える影響や企業部門から家計部門への波及等が今後の経済動向の鍵となると考えられ、そうした観点から下振れリスクには十分留意する必要があると考えている。』

『(前半割愛)日本銀行におかれては、政府の政策取り組みや経済の展望と整合的なものとなるよう、市場の動向にも配慮しながら実効性のある金融政策運営に努め、経済活動や物価の下振れリスクを考慮して、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境を維持することにより、責任を持って金融面からしっかり経済を支えて頂くことを要望する。』

いやあのそれだけ言うなら2月に議決延期請求をするという行動を示していただきたかったんですけど。というか今の金利水準がその「極めて低い金利水準による緩和的な金融環境」なのかどうかの内閣府様のご意見が良く判らんのですよね。大変恐縮ですが「言うだけ番長」の香りがしますなあという感じではあります。


○これは別件ですが参議院財政金融委員会でもロンバートの話が

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/166/16605100060011a.html
上記URLでちゃんと見られるかちと怪しいのですが、その場合は
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0105/main.html
から見ると吉かもしれません。5月10日の参議院財政金融委員会会議録より。後半の西田実仁委員(公明党)の質疑の中盤あたりから。

(西田委員の質問から抜粋です)『特に長短金利の形成システムということについてで、まず短期金利でございますけれども、これはちょっとやや技術的な話ですけれども、短期ゼロ近傍金利は、今、日銀の金融調節に時として異常な現象が出来してきておりまして、それは突発的な巨額の日銀貸出しの実行であるというふうに思います。今年の一月二十六日に一兆二千七百億、二月十六日が一兆七百、二月二十一日が一兆八千百億、三月三十日は二兆七千八百億円と。日銀貸出しがこの今申し上げたところでも非常に突発的にまた巨額に出ているわけですね。これはなぜでしょうか。』

ということで、ロンバート貸出に関する質問があったんですけれども、稲葉理事の説明の後に西田委員からは「それはそれとしてロンバート貸出に対する金融機関の行動審査みたいなものも必要ではないか」というような趣旨の質問がありまして、福井総裁が説明を。ちと長いですけれども。

『市場関係者の行動は、できるだけ日本銀行がいわゆる口頭指導でお行儀を正すというよりは、できる限り市場の中で適切な行動を取らなければ、あるいは読みを誤ればペナルティーを受けるということが望ましいというふうに思います。ですから、本来ですと、資金繰りの予測を誤った金融機関は市場の中で非常に高い金利で最終的な帳じりを合わせるというふうなのが一番いいわけでございます。』

『しかし、そうはいいましても、私どもは政策金利を目標とする、今であれば〇・五%前後と、この金利を実現しなければいけませんので、両方の要請を満たしていくために、補完貸付制度といって市場の中で普通に取れる金利よりは少し高い金利を払わなきゃいけない。そういう意味では市場の中で罰則金利を払いながら帳じりを合わせる金融機関が時として出ると、こういう仕組みで運営しているわけであります。諸外国の中央銀行でも多かれ少なかれ似たような仕組みになっています。』

『今の補完貸付金利の水準が十分そういう両目的を達成するために適切な高さに設定されているかどうかというのは、今後また経済がより望ましい方向に行き市場の機能もより円滑に動くようになった場合に今の水準が適切かどうか、つまり目標としている政策金利に比べて補完貸付金利が幾らか高いわけですが、この高さが十分かどうか、もっと高い方がいいんじゃないかというふうなことはこれから更に検討していく課題として残っているというふうに思っています。』

ということで、まあロンバートの幅がいつまで経っても0.25%の訳は無いとは誰もが思っているでしょうが、幅拡大は案外早めに論議になってくるのかもしれませんな。ただまあこれ自体は一般論のお話でもありますし、先ほど引用した決定会合議事要旨も単に3月期末を受けた「時候の世間話」みたいな面もあると思いますので、これだけを見て「すわ、次回からロンバート拡大」と騒ぐのは早計でしょう。

#ま、足元100bpの時はロンバート150bpでしょ

ちなみに、この時の質疑で平野達男委員(民主党・新緑風会)がNHKのリーク報道問題を突っ込んでおりまして、ほうほうなるほどと思いながら読んだのですが、その話は後日。それと、今回引用した西田委員なんですが、前職は東洋経済副編集長だそうですが、質問の内容が物凄くアレでございまして、東洋経済大丈夫かと誠に憂慮の念に耐えないのでありました。まあ読んでみると凄いですよマッタクモウ。

トップに戻る






2007/05/22

ちょっとお休みしてた分の遡及ネタで恐縮ですが、まあ相場がこの調子でございますし(おい)。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0705.htm(5月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0704.htm(4月)

○目に付いた変更点は国内企業物価

既にご存知のことかとは思いますが(^^;

『物価の現状をみると、国内企業物価は、国際商品市況の反発などを背景に、3か月前比でみて上昇に転じている。』(5月)
『物価の現状をみると、国内企業物価は、既往の国際商品市況の反落が影響し、足もとでは3か月前比でみて弱含んでいる。』(4月)

ということで、ここぞとばかりに反転してますよって現状のお話ですが、先行き見通しに関しても上昇という事に。

『物価の先行きについて、国内企業物価は、目先、国際商品市況高の影響などから、上昇を続けるとみられる。』(5月)
『物価の先行きについて、国内企業物価は、国際商品市況の下げ止まりに伴い、目先、横ばい圏内の動きになるとみられる。』(4月)

まあ物価のトレンドが上昇だという基本的な発想(というか願望というか・・・・)があるからなんでしょうけれども、どうもこの手の物価に関する表現を拝見しておりますと、下落方向の時は「弱含み」だの「ゼロ近傍」だのという表現をして直接的な言い方にならないのですが、上昇方向の時は「上昇」という表現になるような気がするのはあたくしの気のせいですかそうですか(^^)。


でまあその他マイナーな変更点ですが。

・公共投資

『公共投資は、足もと横ばいとなっているが、基調としては減少している。』(5月)
『公共投資は、足もと幾分増加しているが、基調としては減少している。』(4月)

まあ基本的な部分は変らないですな。あとはまあ見事に同じ表現になっています。4月月報では短観を受けて『総じて良好な業況感』という表現が入っていたのが抜けたくらいでございます。


○ということで月報の基本的な内容が全然変化ないのですな

まあさすがにCPIが下がった分に関しては表現を変えております(でも+0.1%が小幅のプラスで▲0.3%がゼロ近傍なのは日銀クオリティなのですけど^^)し、個人消費が伸び悩んでいることに関してとか微妙に表現が後退したりはしてるんですけど、基本的な部分であります所の冒頭のお言葉は、『わが国の景気は、緩やかに拡大している。』というのが昨年7月(つまりゼロ金利解除)から変ってませんなという所なのであります。

#まあ昨年7月に一気に表現を前進させたノリノリ状態から基本的に変っていない(一部トーンダウン)というのは景気の拡大(してんのかという話は措く^^)ペースが相変わらず緩やかであるということも意味してそうですが。。。

金利調整(=利上げ)路線継続なんでまあ「緩やかに拡大」の旗はよー降ろさんということなのでしょうけれどもね。

トップに戻る







2007/05/08

お題「3月の決定会合議事要旨」

相場的には特にインパクトありませんでしたが。
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/giji/g070320.pdf

○岩田副総裁の現状維持賛成に関して

本文8ページ(ファイルでは10ページ)に岩田副総裁と推定される人の現状維持賛成に関する見解がございます(PDFをテキスト引用してるので機種依存文字があります)。

『この間、一人の委員は、前回の利上げについては、4月の展望レポートで十分な経済・物価情勢の説明を行うまで待つ余裕はあったと思うが、@一旦決めた政策の方向性を細かく変更することは市場に無用な混乱を与える惧れがあること、A 0.5% 程度の金利水準は市場機能の維持・強化の観点からも必要と考えられることから、現在の金融市場調節方針を維持することが適当であると述べた。』

ということでして、まあこのあたりを読みますと、岩田副総裁が2月に利上げに反対した理由は「まあそんなに急がなくてもよいんじゃないでしょうか」というタイミングの問題であって、景気の先行きに関して強い懸念があって利上げに反対するという訳では無かったということなのかと推察されるのであります。もし景気の先行きに強い懸念(というか先行き悲観と言うか)があるのなら利下げ提案するでしょうから。。。。

念の為再掲しますが、3月8日に岩田副総裁が講演を行った時の記者会見(講演内容は日銀執行部としてのモノでして、政策委員としての岩田さんの見解は記者会見で示されておりました)で、2月の決定会合での利上げに反対した理由について以下のように答えています。同日の会見要旨から。

『今ご質問で実体経済について触れておられましたが、賃金あるいは個人消費の弱めの動きは──2006 年12 月の金融政策決定会合後の記者会見でも総裁が触れたと思いますが──、現在、必ずしも払拭されていない、そしてIT部門を中心に生産面で軽度の調整が起こる可能性もあるという状況のもとで、物価上昇率の先行きに不透明性が強いということが、私が反対した半分の理由です。』

『もう半分の理由は、私どもは現時点では2007 年度までしか成長率や物価の見通しを出していませんが、中長期の意味での物価安定が重要だということを考える場合、やはりそうした点も含めて展望レポートなどで丁寧に説明してからでも遅くはないのではないかという点から反対票を投じました。』

ということで、不透明なのは物価であって景気先行きに関して特に悲観しているとかいう訳ではない(楽観はしてないと思うけど)という所なのでしょう。まあ元々岩田副総裁は量的緩和時代には景気に関しては強気に見る傾向のある人でしたし。


で、この2番目の理由、『0.5% 程度の金利水準は市場機能の維持・強化の観点からも必要と考えられる』とはこれはこれは。市場機能云々といえば福間前審議委員(この会合の時はまだ審議委員でした)の得意のネタ(とか言ったら失礼ですね^^)でございましたが、岩田副総裁が市場機能維持強化の論点を出すとは少々意外というか新鮮というか。あまりその方面からの話に関する印象が薄かったもんで。

ちなみに、この部分をとりあげてブルームバーグニュースがややセンセーショナルっぽくヘッドラインを打っていましたが、惜しくも(??)市場は反応しておりませんでした(^^)。

まあ余程景気が失速してこない限り残念ながら次に利下げがあるという選択肢は無さそうですな、というかそんな経済状況になられたら困りますが(苦笑)。


○利上げ後の短期市場の動向

岩田副総裁(と推定される人)の見解の続き部分から。

『2月の利上げ後の短期金融市場の動向について、多くの委員は、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、月末にかけて一時上昇する場面もあったが、0.5% 前後にしっかりとコントロールされていると述べた。また、これらの委員は、ターム物金利も横ばい圏内で推移しており、2月の利上げは、市場の金利観に大きな変化を与えずに、順調に消化されたとの認識を示した。』

というかターム物金利が横ばい圏内なのは12月以来延々と利上げするのしないのとやっていた上に、次回の利上げはど〜せ早くて(2月利上げ時点での市場の一般的な予想としては)選挙シーズン以降だから早くて8月9月でまあ10−12月期じゃないでしょうかという解釈だから金利がぶれなかったという事かと。ま、そーゆー意味では「市場の金利観に大きな変化を与えずに、順調に消化された」ともいえるのですが。

コールレートが2月末に上昇してどこぞのストラテジストが「日銀の金融調節がヘボだから円キャリーの巻き戻しが起きた」という意味不明の言説を公表して市場の失笑を買っていましたなあ何て事を思い出すのですが(笑)、まあ決定会合時点では余裕余裕と言った所なんでしょう。テクニカル的には相変わらず積み前半に金利が高止まりして積み後半のある時点から金利が急に下がるという(コールの加重平均ベースだとあまり動いてないんですけど、レポとか現先のレートあるいは雰囲気ベースだと相変わらずその傾向は継続してますな。ややマイルドになってきた感じですが)傾向はまだございますけど、まーそのテクニカルな話まではケンチャナヨということでしょうか。


○市場との対話について

で、その続き。

『市場との対話について、多くの委員は、合議制による意思決定のもとで日本銀行が発信すべき情報は、経済・物価情勢に関する判断や金融政策運営に関する基本的な考え方であり、この点に関する市場の理解をより十分に浸透させる努力が必要であると述べた。』

『また、多くの委員は、「新たな金融政策運営の枠組み」に基づきフォワード・ルッキングな政策運営を行っていくことについて、適切な情報発信に努めていくことが重要であり、そうした観点からも、2008年度までを見通し期間とする4月の展望レポートにおいて、経済・物価情勢の見通しとリスク評価、それを踏まえた政策運営の基本的な考え方をしっかりと整理し、分かりやすく示していくことが重要であるとの認識を示した。一人の委員は、その際、「中長期的な物価安定の理解」について金融政策運営との関係を改めてよく説明する必要があると付け加えた。』

という事を議論しておりまして、その点を受けて今般の展望レポートならびにその後の総裁会見などで説明されているのですが、相変わらず何と申しますかこうワケワカランのですよね。この前も書いたと思うのですが、そもそも「中長期的な物価安定の理解」で示される消費者物価がヘッドライン(総合)の物価指数であり、展望レポートで示される審議委員の物価見通しの数字がコア(除く生鮮食品)の物価指数という時点で話がややこしくて敵わんのですが。

結局「何か特定の経済指標に一点張りしてる訳ではない」といいたいのでしょうけれども、どうもその辺りを変に説明しようとするから話がややこしくなると思うんですけれども。


○あとはややおまけですが・・・・生産について

まあどうでも良いのですが(^^)、本文6ページ目。

『生産について、委員は、昨年10〜 12月期の大幅増加の反動から足もと小幅の減産となっているが、均してみれば増加基調にあり、先行きも、内外需要の増加を背景に、増加基調をたどる可能性が高いとの認識で一致した。』

なるほど、これが3月の金融経済月報(基本的見解)で『生産も増加を続けている』→『生産も増加基調にある』となった背景でございますかそうですか。


○おまけ2・・・消費者物価について

『多くの委員は、既往の原油価格反落の影響や携帯電話の低料金プラン導入の影響などから、2月の消費者物価指数(全国、除く生鮮食品)の前年比は、小幅のマイナスになる可能性があると指摘した。複数の委員は、3月以降についても暫くは同様の状況となる可能性があるとの見方を示した。』

『もっとも、物価を巡る基本的な環境について、多くの委員は、設備や労働といった資源の稼働状況の高まりを踏まえると、今後とも潜在成長率を上回る成長が続くのであれば、消費者物価への上昇圧力が高まっていくと考えられると述べた。一人の委員は、マクロ的な需給ギャップの改善と消費者物価の上昇との関係が近年変化している可能性があるほか、サービス価格は非製造業の賃金の影響を受けやすいことにも留意すべきであると指摘した。』

この潜在成長率ってのも推計の世界なんで、本当に消費者物価への上昇圧力が高まっていくのかっちゅう話はありますけれども、まーこの部分に関してはいつもどおりのお話になっておりますな。展望レポートで示された通りです。

トップに戻る








2007/05/01

お題「展望レポートは前回よりも弱めになったように見えます」

結論を先に言えば、内容的には弱くなった印象です。その中で利上げのポーズを見せるのはちと無理あるんじゃネーノという感は致します。

総裁記者会見で「物価マイナスでの利上げの可能性」って威勢の良い話が出ていると報じられてますが、まあそちらに関してましては本日出るであろう会見要旨をじっくりと読んでから改めて申し上げますが、展望レポートが弱いのをそこでバランス取りに行くのは無理筋の香りが。。。。

ということで、本日は展望レポート4月号(の基本的見解)を前回10月号と比較して読んでみるの巻でございます。

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0704.htm(今回4月)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor0610.htm(昨年10月)

○で、まず結論

先ほどもちょっと申し上げましたが、全体的な結論を先に申し上げると、内容的には弱くなった印象で、利上げに関するロジックがより「バブル警戒」にシフトした為に論理展開に無理っぽいものを感じるという所です。ただまあバブル警戒にシフトした分だけ物価水準が低めでも利上げする理屈(あたくしには屁理屈に思えますがまあそこは措く)が通せるといえば通せるので、その点からの利上げ警戒を残させるって事にしてバランスを取ったのでしょうか。(よって総裁会見での物価マイナスでも利上げの可能性言及もその一環でしょ)

先行き見通しが強いので先行き順調に推移すれば利上げって理屈じゃないところが、まあ現実的といえば現実的ですけれども、ちょっと目先の利上げはやりにくい感じですなあ。


○経済見通しに関して

まずは冒頭部分ですが、

『好調な企業部門に比べると、家計部門の改善テンポがやや緩慢であるが』(今回)
『企業部門は幾分強め、家計部門は幾分弱めとなっているが』(前回)

とありますように、家計部門の改善が弱いという事をより強調しています。まあ確かにその通りでございますけど、冒頭にこれがありますので、まあトーンダウンですなあという感じを受けましたです。で、先行きですが、成長率の部分にちょっとふ〜んです。

『成長率の水準は、2007年度、2008年度とも、潜在成長率を幾分上回る2%程度で推移する可能性が高い。』(今回)
『成長率の水準は、2006年度は2%台半ば、2007年度は2%程度と、潜在成長率近傍に向けて徐々に減速する可能性が高い。』(前回)

でね、前回と今回比較すると、今回の2008年度の実質GDPの大勢見通しが+2.0〜+2.3(中心+2.1)%でして、前回の2007年度は+1.9〜+2.4(中心+2.1)%ですので、多分これは同じ数字と見てよいはずなのですが、前回は「潜在成長率近傍」で、今回は「潜在成長率を幾分上回る」ですな。前回の場合は「上ったあと巡航速度に下がる」という予想になっており、今回は2007年度の見通しが下方修正されていて「巡航速度のまま推移」という形になっているので、表現を工夫していると言えばそうなのかもしれませんが、前回の伝で言えば「潜在成長率近傍で推移する可能性が高い」となるんじゃないのかなあ。。。


企業部門から家計部門への所得移転と個人消費に関して。

『第3に、好調な企業部門から家計部門への波及が、緩やかながら着実に進んでいくとみられる。グローバルな競争や資本市場からの規律の高まりを意識した企業の人件費抑制姿勢は続くとみられるが、雇用者数の増加が続く中で、労働市場の需給がさらに引き締まっていけば、賃金の上昇圧力は徐々に高まっていくと想定される。』(今回)

『第3に、雇用者所得や配当の増加などを通じて、好調な企業部門から家計部門への波及が進んでいくとみられる。雇用者数は着実な増加を続けるとみられる。賃金の上昇は、これまでのところ、企業の根強い人件費抑制姿勢などから緩やかであるが、労働市場の需給が着実に引き締まってきていることを踏まえると、いずれは上昇が明確になる可能性が高い。』(前回)

「進んでいくと見られる」→「着実に進んでいくと見られる」というのと「(賃金の)上昇が明確になる可能性が高い」→「上昇圧力は徐々に高まっていくと想定される」ということで、先行き見通しが随分と穏やかになったという印象を受けます。結果として個人消費に関しては・・・

『個人消費は緩やかな増加基調を辿る可能性が高い。』(今回)
『個人消費は、着実な増加を続けるとみられる。』(前回)

どう見てもトーンダウンです。本当にありがとうございました。


○物価見通し

まあこれは見ての通りですが一応メモメモ。

『先行きは、原油価格の動向にもよるが、前年比でみて目先はゼロ%近傍で推移する可能性が高いものの、より長い目でみると、プラス幅が次第に拡大するとみられる。その結果、2007年度はごく小幅のプラス、2008年度は0%台半ばの伸び率となると予想される。』(今回)

前回とは比較致しませんです。


○上振れ・下振れ要因に関して(その1)

引用してると終わらなくなりそうな予感がしてきたので、ここの部分はちょっと引用しませんけど、読んでてふーんと思った点を。

説明している分量ですが、米国経済に関する言及が前回比増えております。また、米国のインフレに関しては前回の「インフレ予想が高まる可能性」が「インフレ圧力が減衰しない可能性」に変化してまして、米国のインフレに関してはよりリスクを強調してるんじゃないのかという希ガス(これは勘違いかも知れないので本編を読んだ方が良さそうですけど)。

それから前回はさらっと触れていたIT関連財の在庫調整に関連する部分が要因の一つとして昇格(?)しているのが注目されるところであります。説明もやや詳しくなっておりますね。


○上振れ・下振れ要因に関して:金融面をより強調してバブル警戒にシフト(か?)

まあ誰が読んでもここは気が付くと思いますが(^^)。

『第3に、金融環境などに関する楽観的な想定に基づく、金融・経済活動の振幅の拡大である。』(今回)
『第2に、企業の投資行動の一段の積極化である。』(前回)

ということで、今回はより金融面への注目を強くしていますわな。

『企業や金融機関などの財務面での改善が進む中、実質金利が極めて低い水準にあることから、金融・経済活動が積極化しやすい環境にある。』(今回)

この部分に対応する前回の言及はこの先で引用する中にある『極めて緩和的な金融環境のもとで』という部分かと思います。

『また、大都市で地価の上昇傾向が明確化してきているなど、資産価格の動きも、そうした行動を活発化させる方向に作用すると考えられる。』(今回)
『また、大都市を中心に地価の上昇地点が広範化してきていることなど、資産価格の動きも、民間需要を押し上げる方向に作用することが考えられる。』(前回)

ということで、金融環境、地価動向に関しては前回よりも表現を結構強めにしておりますわな。

『こうした中で、仮に、期待成長率や資金調達コスト、為替相場や資産価格の見通しなど、先行きの採算に関する楽観的な想定に基づいて金融・経済活動が積極化する場合には、金融資本市場において行き過ぎたポジションが構築されたり、非効率な経済活動に資金やその他の資源が使われ、長い目でみた資源配分に歪みが生じるおそれがある。』

『このような行動は、短期的には景気や資産価格を押し上げることがあっても、その後の調整を余儀なくされ、息の長い成長を阻害する可能性がある。』(ここまで今回)

『もっとも、極めて緩和的な金融環境のもとで、企業が、期待成長率や資金調達コスト・為替相場見通しなど、採算に関する楽観的な想定に基づいて投資を一段と積極化する場合には、成長率が一時的に大きく上振れる反面、その後は資本ストックの過剰な積み上がりの反動が生じ、調整を余儀なくされる可能性がある。』(前回)

ということで、今回に関しては思いっきりバブル警戒シフトになっているように見えますな。まあ正直ここくらいしか前回対比で表現が強めになっている部分(細々とした所ではもうちょっとありますが)は見当たらないという感じです。ここを強めにしたのはそれこそ「金利当分据え置きでワッショイワッショイ」とならないように釘をさしたという風に解釈したんですけどどうでしょうかねえ。


○物価上昇率の先行き部分

当たり前ですが、ここはトーンダウンです。

『次に、物価上昇率の先行きについても、上振れ・下振れ両方向の不確実性があることに留意する必要がある。』(今回)
『次に、物価上昇率の先行きについても、上振れ・下振れ両方向の要因に留意する必要がある。』(前回)

要因が不確実性に化けておりますな。

『景気拡大が続く中にあっても、賃金の上昇テンポが生産性との対比で高まっていかないような場合には、物価への下押し圧力が根強く残ることが考えられる。』(今回)

『景気拡大の長期化にもかかわらず、生産性の上昇が継続し、賃金の上昇が遅れる場合には、物価が上昇しにくい状態が続くことも考えられる。』(前回)

賃金の上昇が遅れるが高まっていかないに化けた結果、物価に関しては上昇しにくいが下押し圧力に化けたのでありました(^^)。

それから前回は『第3に、潜在成長率の影響である。』ということで、潜在成長率の上昇が物価の押し上げ要因になるという部分がごっそり抜けております。まあ全体的にトーンダウンもいいところ。


○金融政策に関して

基本的には上記の「上振れ・下振れ要因」で引用した部分を踏まえていますので、前回との比較結果も同じようになります。よって引用は一箇所「ほほう」と思った部分だけ。

『ただし、企業部門の体力や金融システムの頑健性が高まっていることから、物価下落と景気悪化の悪循環が生じるリスクはさらに小さくなっていると考えられる。』(今回)

『ただし、金融システムの安定が回復し、設備、雇用、債務の過剰が解消されてきていることから、それが物価下落と景気悪化の悪循環に転化するリスクは小さいと考えられる。』(前回)

ここに関しては表現を強くしていまして、デフレスパイラルへ再突入のリスクをより小さく見ているという所は「こりゃ表現強くしてますな」って感じです。まあ好景気が続いているってのならそうなんでしょうけど。


○「中長期的な物価安定の理解」の点検、政策委員の見通し

という箱が出てまして、ここの点検を実施してるんですが、CPIの計測誤差とCPIの糊代に関してどっちも小さいですかそうですかというのは何となく把握しましたが、イマイチあたくし腑に落ちない点がありますので総裁会見などを見てから再度お話するかもしれません。

で、政策委員の見通しなんですけど、大勢見通しではなくて最後の表にあります全員の見通しの中で、コアCPIの見通しの下限数値が▲0.1%になっていた訳でして、えーっとこれは岩田副総裁でございますな(^^)。

まあその他気が付いた事が有りましたら明日。

トップに戻る






2007/04/23

お題「4月17日の衆議院財務金融委員会半期報告」

夕張市長選挙で羽柴誠三秀吉氏次点のニュースに驚倒。

しかし民主党は今回も鉄板で圧勝して競り合いに弱いと言う結果ですな。参議院選挙も事は無しって感じですね。

先日ちょっとネタにしました4月17日の衆議院財務金融委員会の議事要旨が早くもアップされていましたのでそこからまあヒマネタになりますが。

http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009516620070417009.htm

ちなみに、「金融政策のプロ」でPh.Dをお持ちの著名議員様によります「美しい国の美しい金利」云々という珍質問に関してはbewaadさんのエントリーに同感するものであります。それからコメント欄の一国民さんのコメントにも深く同意。エライ人の「お言葉」を使って擦り寄る茶(自粛)の図ですな。

まあそれは兎も角として、ふ〜んと思った質疑を。

○第2の柱で利上げをしたのではないかという質疑(佐藤氏)

自民党の佐藤ゆかり委員から。委員会質疑なので質問はこの前と後に沢山並んでおりますが、途中部分を切り取っております。

『ところで、これら二回の利上げについてですが、当時のコア消費者物価を見てみますと、前年比で、旧系列ベースでも〇・五%前後の時点で二回の利上げが実施されております。その一方で、昨年三月の量的緩和の解除の際に、日銀の政策委員の方々の中長期的な物価安定の理解というものが公表されておりますが、当時の政策委員の方々の中心値は一%でございました。すなわち、その二回の利上げの時点では、この政策委員の方々の中心値であります一%よりも低い消費者物価の前年比の次元で利上げが行われたわけであります。』

『要するに、受ける印象といたしましては、これらの二回の利上げについては、物価に照らした政策判断であったというよりは、むしろ、福井総裁御指摘のように、緩和効果が経済の一部にいびつな形で出現をしてくる、そういうこと自体に対する収拾の意味合いの方が強かったのではないかというふうに思われるわけであります。実際、現状を見てみましても、今回の景気回復局面では都市部の不動産向けの貸し出しが拡大しまして、そういったことから不動産価格が一部で大幅に上昇するなど、日銀の御指摘どおりの、いわば一部の経済部門に緩和効果がかなりきき始めたというような状態も散見されたわけでございます。』

『その結果、バブル的な影響が一部の部門において発生するのを回避するために、中小企業や地域経済など回復がおくれる部門にとりましてはむしろ早過ぎるかもしれないようなタイミングで二回の利上げが行われ、万が一、その結果、緩和効果の波及というのがその時点でとまってしまうようなことになれば、これはまことに残念ではないかと思われるわけでありますが、そこで、もう一度福井総裁に確認をさせていただきたいと思います。』

これは良い指摘ですが、総裁の答弁はこうなっておりました。これまた例によって前半割愛しますが、前半は一般論でございました。

『そういう視点から、私ども、既に、量的緩和からの脱却、ゼロ金利からの脱却、そして、極めて慎重ながら、緩やかな金利の引き上げというプロセスに入っているわけでありますけれども、物価安定とい視点を一度も視野から外したことはございません。現実の足元の消費者物価指数は、原油価格の変動等を受けまして多少のアップダウンをしており、現況、足元では、消費者物価指数が前年比若干マイナスという状況になっておりますけれども、今後の経済は、政府の見通しあるいは私どももシナリオとして置いておりますややロングランな持続的かつ安定的な成長というものを土台に考えますと、やや長い視点で見ますと、日本の消費者物価指数は緩やかな上昇基調をたどっていくであろう。私どもが中長期的な物価安定の理解として政策委員会のメンバーとして共有しております〇%から二%という範囲内にこの物価指数が入っていく。そういう視野を踏まえながら金融政策の運営を行っているということでございます。』

ということで長い上に、佐藤委員の後続の突っ込みが無いのが非常に残念なのですが、中長期的に0%〜2%に入るという視野で運営するとなっている中で0.5%のCPIで利上げしてる割には物価上昇圧力が強いという訳でもないというのはどうもこう何だかな感は拭えません。ちなみに物価安定の理解に対する説明文はこちらにございますので。
http://www.boj.or.jp/type/release/zuiji_new/mpo0603a.htm

ところで、ここ読んでて「おお!」と思ったのは総裁答弁の中に『足元では、消費者物価指数が前年比若干マイナスという状況になっております』ってある部分です。皆様ご案内の通り、あたくし日銀公表文書(金融経済月報とか福井さんや武藤さんのスピーチ要旨)でCPIは「ゼロ近傍で推移」となってて、マイナスという数字を随分と避けますなあと散々悪態ついてましたが、福井総裁はさすがにそのあたりの政治的な空気を読むのはお得意なようで、この場で「ゼロ近傍」というとまたツッコミを食らうと見たんでしょう(かどーかは知らんが^^)。

まーいずれにせよ、「足元のCPIがマイナス」という表現が福井総裁の口から出たことにはある意味ホッとしましたよん。



○そのミクロ介入的金融政策はどうなのかと(佐藤氏)

金融政策の波及効果に関して佐藤委員が質問してるのですが。

『こういった観点で、従来、日銀の金融調節の手法を少し見てまいりますと、いわゆる銀行が中心的な参加者でありますコール市場というものが主軸となりまして、それでコールレートというものが政策金利として置かれて、そこで日々の金融調節というものが行われてきているわけでありますけれども、その一方で、企業金融というのは今非常に多様化をしてきている時代にあります。そうしますと、この日銀の日々の金融調節が、銀行がメーンな参加者でありますコール市場を主体としたもので果たして波及効果として万全なものが期待できるのかどうかという観点も上がってくるのではないかと思います。』

『そういう意味で、これからは、やはり、以前から議論が上がっているとおりでありますが、場合によっては株式あるいは社債等もより積極的に公開市場操作の対象に入れるような形で、そして、より公開市場操作そのものに近いような形式で日銀の金融調節を行うような、そういったお考えあるいは検討、取り組みのようなものがお考えの中におありになるものかどうか、そのあたり、波及経路の改善という意味でお伺いしたいと思います。』

公開市場操作という用語を誤用してますがなという突っ込みはさておき、こりゃまた思いっきりどミクロ介入な話をしてますな。一時期のように金融機関がヘロヘロになって金融仲介機能にガタが来るので日銀が介入しなきゃいかんというのなら兎も角、今更ミクロ介入もねえだろうと思うのであります。まー稲葉理事が答弁してますが、答弁の方は普通の話をしてますので引用省略。



○まともに竹中氏の名前をだして次期総裁論議(近藤氏)

民主党の近藤洋介委員から。最初に中央銀行総裁としての資質という質問をして、『職務の公正性』という話を引き出してからこんな質問を。

『日本銀行の総裁の条件として、いわゆる選挙に出た経験のある方、そして、ある政党に所属をして活動した方というのは、私は個人的には余り好ましくないと考えるんです。過去、日本銀行の歴史をひもといて、日銀の事務当局に昨晩伺いましたが、福井総裁までで二十九代、日銀総裁がいらっしゃるようでありますが、日銀総裁になる前に国会議員であった方、貴族院議員は除きますが、いわゆる選挙で選ばれた国会議員の経験を経て日銀総裁になった方は戦前もいらっしゃらなかった、こういうことであります。』

『私は、そういう意味でも、これは明文化されておりませんが、中央銀行としての一つの良識なのかな、こう思っておりますが、総裁の御見解はいかがですか。』

これはまた露骨な質問ですなあ。勿論福井総裁は「それは政府と国会が判断すること」と答えるしか無いのですけれども。で、まあその後になると思いっきり竹中氏の名前が出てくるのでした。

『そこで、私は、具体名で恐縮ですが、こういうふうに全国紙でも「竹中氏の名」というのも出ているので、あえて触れさせていただきますけれども、竹中平蔵前総務大臣の名前が取りざたされたりするというのはちょっと異常だなと思います。』

『なぜなら、国会議員になられた方というのは、やはりそれなりのさまざまな、幾ら公正性、中立性を担保しようとしても、やはりああいう形で、しかも、党公認で出られてしまった、今はやめられたとしても、ああいう形で活動された方というのが、今、随分早い序盤戦で、さまざまな雑誌だけでなくてこういうところにも出ているというのは、名前が取りざたされているというのは、私は、日本銀行の中立性、公正性を担保する意味でも非常によくないことだな、こう思うんです。非常に残念だなと思いますし、こういった方のお名前、私は、竹中さん個人も大変不幸だなと思います、御本人の意思とは全く別なところで勝手に書かれるわけですから。これは新聞社の勝手でありますけれども。』

『しかしながら、日本銀行の公正性、中立性を担保するという意味では、やはり、あれだけ激しい選挙戦を戦われた方が、今はおやめになったとしてもどうかな、一政党のためにかかわった方が日本銀行の総裁として名前が浮上するというのは、これは大変公正性という観点からも残念だ、こういうことを御指摘申し上げたいと思うわけであります。』

で、この後は先般の日銀の政策に関するアンケート結果を持ち出して政策の中立性がどうのという質問になっておりますが、正直言ってテーマを拡散させすぎ(竹中氏を叩いてると思ったらその次は1月の利上げ騒動での自民党の対応を批判し、その次に利上げ批判になるという流れで、結局全部突っ込みが出来てない)だと思いますがね。


そして先日の本石町日記で書かれてましたが、「ルールを守れ」ということで理事を退席させた近藤委員が伊藤達也委員長に質問時間オーバーを指摘された部分は笑いました。

『済みません、後ろに座られる方は御退席いただきたいということを申し上げているんですが、ルールを守っていただきたいと思います。余りこのことで時間をとりたくないので、よろしくお願いいたします。』

そして質問時間がオーバーした所で伊藤委員長曰く、

『近藤君に申し上げます。申し合わせの時間が過ぎていますので、おまとめをください。ルールをお守りください。』

(^^)。

えーっと、その他にも質疑が色々とあるのですが、まあこの手のものを紹介してるとキリが無いので皆様テキトーにご覧下され。

トップに戻る






2007/04/20

○今回も判断据え置き

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/chiiki0704.htm
レポート本文は下記URLですが、PDFで51ページあるのでご注意。
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/chiiki_rep/data/chiiki0704.pdf

内容は盛りだくさんで大変興味深いのですが、例によって最初の総括判断の部分をまず読むわけですな。

『各地域の取りまとめ店の報告によると、足もとの景気は、すべての地域において拡大または回復方向の動きが続いており、地域差はあるものの、全体として緩やかに拡大している。(説明部分割愛)こうした中、総括判断において、「拡大」としている関東甲信越、東海、近畿と、「回復」方向にあるその他の地域との間で、依然、地域差がみられている。なお、1月の支店長会議時と比べると、すべての地域で、拡大または回復方向での総括判断を据え置いている。』

ということでして、総括判断は今回も据え置きとなっていまして、各項目に関しては、雇用・所得環境の雇用者所得について北海道が判断を下方修正した(やや弱めの動き→弱めの動き)以外は判断維持となっております。まあ2月に利上げしたばっかりですから利上げの影響がそう直ぐに出るわけでも無いでしょうけれども、利上げがあったけど地域経済への悪影響は見られていないって事になるんでしょうかね、よーわからんが。


その次に『地域の視点』ってコーナーがございまして、こちらも中々興味深いのですけれども、全部ご紹介してるとオワランチ会長になりますので、最初の雇用賃金情勢に関してですが、本文4ページ(ファイルの6ページ)目にまとめが載っておりますのでそこから引用。

『先行きについては、企業の採用意欲が根強い中で、労働需給の引き締まり傾向が続くものとみられ、賃金引き上げの動きも徐々に広がっていくと予想される。もっとも、団塊世代の退職・再雇用に伴う賃金の引き下げや、賃金の低い新卒社員の増加などから、今後、一人当たり平均でみた賃金の伸び率が大きく高まっていく姿は想定しにくいと思われる。』

ということで、このあたりは最近の武藤副総裁の講演や福井総裁の会見などでも指摘されていることですが、まあ要するに先行きは明るいという話でしょう。「団塊世代の退職・再雇用に伴う賃金の引き下げや、賃金の低い新卒社員の増加」で一人当たり賃金の上昇が抑制されるちゅうのは、「統計的には良くないように見えるけど実態ベースでは悪い現象ではありません」っていうことですもんね。

まー特にこれで利上げ前倒しとかいう勢いのある内容ではないと思うのですけど、引き続き先行きに関しては強気に見ているという感じではないでしょうか。

トップに戻る




2007/04/11

お題「4月金融経済月報:物価認識の非対称性ですか?」

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0704.htm(今回)
http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/gp/gp0703.htm(前回)

○真っ先に目に入ったのは第5段落

今回の金融経済月報を紙に打ち出した所であたくしが一番注目していた部分は第5段落目でございます(^^)。

『物価の現状をみると、国内企業物価は、既往の国際商品市況の反落が影響し、足もとでは3か月前比でみて弱含んでいる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格反落の影響などからゼロ%近傍で推移している。』

「ゼロ%近傍で推移している」ですかそうですか。さてここもとの月報で足元のコアCPIの推移をどう表現していたかというのを過去の月報を並べて見ますとこうなります。

2006年4月月報〜2007年1月月報
→『プラス基調で推移している。』
2007年2月月報
→『小幅のプラスで推移している。』
2007年3月月報
→『原油価格反落の影響などからゼロ%近傍となっている。』

2月月報公表の時点で判っている全国コアCPIは12月分でして、この時は前月の+0.2%→+0.1%になって、先行きもゼロとかになりそうって見方でしたので「プラス基調」の旗を降ろしたと思うんですが、+0.1%の時には「小幅のプラス」と表現してて、▲0.1%の時には「ゼロ%近傍」というのはプラスマイナスというものを0%を中心にして考えた場合に表現に非対称性がございませんでしょうかと申し上げたくなります。何で「小幅のマイナス」と言わんのでしょうか。


○こういう文学的処理(?)はどうかと思うのですが

という訳で、この部分に真っ先に目が逝ってしまうあたくしのこの性格もどうにかならんかと思うのですが(などとは毛頭思ってません^^)、次に考えてしまうのは何で「小幅のマイナス」じゃなくて「ゼロ近傍」にしちゃうんでしょうかねえということ。

あのですな、こういう非対称な表現をすると「+0.1%の時にはプラスと認識していて、▲0.1%の時にゼロ近傍と認識するということは、日銀(の政策委員会)には物価に対する見方にバイアスが掛かっていないか」と突っ込まれる事必定じゃねえのかとあたしゃ思うんですけどねえ(会見では突っ込みがなかったらしいですが^^)。となりますと、あの「物価安定の理解」で示したレンジにはどういう意味があったんでしょうかという話になりそうですな。

ま、あたくしが勝手に妄想するに「マイナス」って表現を使いたくなかったので「ゼロ近傍」で流したというような話じゃないかと思うんですよね。でもね、毎度お馴染みの物価はプラス基調を続けるという先行き見通しに対して自信満々なのでしたら現状に関して「マイナス」と表現しても別に無問題だと思うんですけどねえ。「マイナスを認めているじゃないか」という突っ込みには「これは一時的要因です、先行きプラス基調です」って堂々主張すりゃいいじゃんと思う訳でして、そうならんのは実のところ先行きに自信が無いからじゃないんでしょうかと妄想が入るのはあたくしの邪推ですかそうですか(--)。

まああれだ、そういういろんな突っ込みをされちゃう表現をするのはどうなのよって所ですな。

つーことで、まずはいつもの逐条比較(?)の前に気になった物価表現の部分についてひとくさりでした。以下通常モード。


○景気認識に関わる部分は短観を受けた箇所以外前月と同じ

前月と同じですし、上のほうで能書き垂れたので引用は割愛。短観に関する表現は『総じて良好な業況感が維持される中』となっておりまして、短観の評価としては「総じて良好な状況が維持されている」ということになっているということですわな。まあ当然ちゃあ当然ですが。

現状認識、先行き見通しとも個別に展開した部分まで前月と表現に変化はございません。


○国内企業物価の先行き見通しから「弱含み」を削除

『物価の先行きについて、国内企業物価は、国際商品市況の下げ止まりに伴い、目先、横ばい圏内の動きになるとみられる。』(4月)
『物価の先行きについて、国内企業物価は、国際商品市況の反落の影響から、目先、弱含みないし横ばいで推移するとみられる。』(3月)

ということで、国際商品市況に対して「反落」→「下げ止まり」という認識から「弱含み」が削除されましたな。まあその川下への波及がどうもジグザクしてるのが昨今の国内物価クオリティのようですが。


○原油価格下落(反落)の先行きに与える影響を微修正

『消費者物価の前年比は、目先、原油価格反落の影響が残ることなどからゼロ%近傍で推移するとみられるが、より長い目でみると、マクロ的な需給ギャップが需要超過方向で推移していく中、プラス基調を続けていくと予想される。』(4月)

毎度お馴染みの「より長い目でみるとプラス基調」攻撃ですが、よく見ると3月と表現が違います。3月は目先の要因とされている原油価格に関してこうなっていました。

『費者物価の前年比は、目先、原油価格反落の影響などからゼロ%近傍で推移するとみられるが、(以下同文^^)』(3月)

「反落の影響」→「反落の影響が残る」というのは表現としてどうなのよと考えますと、「〜が残る」という部分には「もう影響は終了なのですけれども、ちょっと余韻がございます」ってものを感じる(まあ原油価格もここもと比較的落ち着いてます)のですがどうなんでしょう。


という訳で月報はまあそんな感じでございます。内容自体は前月と思いっきり同じで、物価先行き見通しの表現をちょっとだけ強めにしていると言った所ではないでしょうか。

トップに戻る






2007/04/04

○生活意識に関するアンケート調査

http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/ishiki/ishiki0704.pdf

15ページ目以降に箇条書き方式で詳細が記載されております。過去の流れに関しては前半のグラフ付きの方が読みやすい。で、内容を見ておりますと、物価の先行き見通しとか景況感とかが悪化してますなあというのは判るのですが、あたくしがほほうと思った部分をば。

・地価の先行きに関して(16ページ)

問18. 先行きの土地の価格(地価)はどうなると思いますか。
1 上がる42.8 ( 46.2 )
2 変わらない36.4 ( 35.0 )
3 下がる18.7 ( 17.4 )

(引用者注:()内は12月調査結果です、以下同様)

調査対象期間に今年の公示地価が出てない訳ですが、地価が「下がる」がやや増えてるのはちょっと「へえー」でございました。とは言え上るの方が多いのは多いですけど。

・雇用環境に関して(19ページ)

問20.これから1年後を見たとき、あなた(またはご家族)は、勤め先での雇用・処遇(給与、ポスト、福利厚生など)に不安を感じますか。

1 あまり感じない14.3 ( 15.8 )
2 少し感じる45.4 ( 48.3 )
3 かなり感じる38.2 ( 34.5 )

うち勤労者:会社員・公務員・その他雇用者、パート・アルバイト

1 あまり感じない14.8 ( 16.9 )
2 少し感じる43.8 ( 48.1 )
3 かなり感じる41.0 ( 35.1 )

・・・・・ううむ、そうなのか。不安が拡大しとるのか。うーむ。

同じ理屈で家計に関するアンケート結果も「収入減った、支出減らした」という話になっております。うむむ。


・日銀に関して(21ページ)

問23-c.(引用者注記:日本銀行を)信頼していない理由は何ですか。【2つまでの複数回答】

1 日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立って
いると思わないから22.0 ( 23.7 )
2 政策の内容や意図に反対だから7.1 ( 5.2 )
3 中立の立場で政策が行われていると思わないから53.9 ( 44.8 )
4 日本銀行の活動について分かりやすい広報や意見聴取の
努力が不足していると思うから30.5 ( 31.5 )
5 組織や職員に誠実なイメージを持っていないから42.4 ( 44.8 )
6 その他5.8 ( 5.2 )

これは13ページのグラフを見たほうが判りやすいですけど、5番の回答が1位から転落してよろしゅうございましたな、おっほっほ。で、3番が1位と言うのも如何なものかと思いますが、一難去らずにまた一難と。ナムナム。

しかし繰り返しになりますが、家計と雇用に関する結果があたくしのイメージより弱めですな。そんなもんなのかにゃ。

トップに戻る




2007/04/03

○短観をいつもと同じようにチェック

短観のヘッドラインは市場の事前予想よりも若干弱かったというところだと思いますが、毎度お馴染みの「前回の先行き予想」よりは悪くなかったという感じではあります。とは言え、前回は「その前の先行き予想は下向きだったけど結果は上向き」でして、今回の場合は「前回の先行き予想は下向きで、結果も下向き、でも予想ほどは悪くない」という形ですので、まあ前回短観のような強さって感じじゃありませんですか。

#ま、延々と上向き続けるのは無理ですわな

・ヘッドライン

で、その前回時点での予想対比ですけど。

            (12月時点)       (3月時点)
            現状→3月予測  現状→6月予測
製造業大企業   +25→+22    +23→+20
製造業中堅企業  +21→+13    +16→+12
製造業中小企業  +12→+7      +8→+7

非製造業大企業  +22→+21    +22→+23
非製造業中堅企業 +7→+5      +5→+4
非製造業中小企業 ▲4→▲9      ▲6→▲10

毎度お馴染みの真ん中の2つの数字(調査サンプル企業に見直しがあったので12月の数字は昨年12月に公表された数字とはちと違います。今回の数字は修正済のベース)を比較すると「先行きやや悪化すると思っていた程悪化しませんでしたなあ」という所でしょうな。


・雇用判断DI

前回は「前回予想するほど雇用の不足感が拡大していない、だけど不足感拡大」でしたが、さて今回はと言いますと・・・

            (12月時点)       (3月時点)
            現状→3月予測  現状→6月予測
製造業大企業    ▲6→▲8      ▲7→▲8
製造業中堅企業  ▲9→▲10      ▲8→▲9
製造業中小企業  ▲7→▲10     ▲6→▲8

非製造業大企業  ▲16→▲19    ▲19→▲19
非製造業中堅企業 ▲12→▲14    ▲13→▲14
非製造業中小企業 ▲13→▲16    ▲14→▲16

えーっと、全体的に不足は不足なのですが、製造業での雇用不足感の拡大は一服したという事でしょうか。


で、オマケはいつも派手派手に振れる証券業の業況判断DI(^^)。

        (12月時点)       (3月時点)
        現状→3月予測   現状→6月予測
証券業    0→+40      +34→+52

9月時点では▲4が+36まで豪快に回復するという予想だったのですが結果は0という大本営発表振りでしたが、今回は比較的予想に近い数字で結構でございますな。ただまあ先行きの予測がこれまた随分と威勢の良い数字ですけど(^^)。


トップに戻る