決定会合議事要旨や金融経済月報などについて(2011年度下期に書いた分)

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2012/03/23「資金循環統計がもうすぐ出ます」
2012/03/21「見る人が見るとかなりヤケクソ状態だったのが判る2月決定会合議事要旨」
2012/03/16「金融経済月報は判断をやや上方修正」
2012/03/14「決定会合声明文はやや判断上方修正/宮尾委員の緩和提案/決定会合時間が長いよ」
2012/02/23「微妙にツッコミどころがある1月決定会合議事要旨」
2012/02/15「決定会合でいろいろと新しい事をしました」
2012/02/02「12月会合議事要旨より:欧州下振れ警戒&社債札割れ評価が微妙に??」
2012/01/25「決定会合声明文では時間軸をアピールとか芸が細かい」
2012/01/17「生活意識アンケートでは物価見通しが低下/さくらレポートは回復の足踏み」
2012/01/13「ボルカールールに関して金融庁と日銀が意見書を出したそうで」
2012/01/11「バーゼルの流動性リスク管理関連リリース」
2011/12/29「12月金融経済月報は微妙な下げ方をしています」
2011/12/28「11月の2本の決定会合議事要旨から」
2011/12/22「決定会合声明文は現状認識を下げてきました」
2011/12/20「短観のCP発行系列/物価期待に関する中々味わいのある日銀レビュー」
2011/12/19「日銀がツイッター開始とな」
2011/12/16「12月短観は微妙な結果」
2011/12/15「取引先選定基準の件補足/11月金融経済月報より」
2011/12/14「日銀の取引先選定基準がマイナーチェンジ」
2011/12/01「6中銀のドルスワップ協定金利引き下げ&マルチカレンシースワップ協定締結」
2011/11/17「決定会合声明文はトーンが弱めに」
2011/11/14「10月1回目の決定会合議事要旨、追加緩和の可能性はまあ結構あったのねという感じです」
2011/11/02「展望レポート続き、やはり何か違和感のある結論部分」
2011/11/01「展望レポートは下振れリスクを強く意識しているのに見通しが基本的に変わっていないという不思議ちゃん」
2011/10/31「ワタクシの夏休み中に追加緩和をしていたので声明文レビュー」
2011/10/21「さくらレポートは回復ペースダウンも基本的には確り目の認識」
2011/10/19「新装開店の金融システムレポートはマクロプルーデンス政策の香りが」
2011/10/14「9月決定会合議事要旨では従来の政策に関する微妙な大本営的自画自賛が気になります」
2011/10/12「金融経済月報は声明文ほどの下げという感じはしません」
2011/10/11「声明文はかなりの降参モード」
2011/10/07「マクロモデルに関するレポートが出ているのでメモ」
2011/10/04「短観&生活意識アンケート」

2012/03/23

○期末にレポート出過ぎです(笑)

最近日銀の新着情報を見るとお判りのように・・・・・・・
http://www.boj.or.jp/whatsnew/index.htm/

何か妙に色々なペーパーやらレポートがバカスカ出ている事に気が付くかと思われますが、いやまあ期末だから今年度目標達成の帳尻モードというか駆け込みモードでバカスカ出ているというのは判るのですが、読む方といたしましてはこうバカスカ一度に出されますとしんどいので勘弁して頂きたく存じます次第。いやまあ世の中期末の帳尻モードで余計な仕事が(保身の為以下激しく自主規制)。

そんな中で月曜に出ていたこれはオモロス。

資金循環統計の特徴と拡充に向けた取り組み
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/rev12j05.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2012/data/rev12j05.pdf(図表含む本文)

日銀レビューシリーズですので量もお手頃で、ついでに申し上げるとハクション大魔王並みに数字が苦手のあたくしにとってはややこしい計算式が一切(!)出てこないというとても一般ピーポーに優しいブツでございます。

で、中身としては資金循環統計の読み方ガイドっぽくなっているのがまたチャーミングでございまして、資金循環統計ってそろそろ直近のが出る筈ですので、この日銀レビューを見ながら資金循環統計および参考図表をご覧になるのが吉ではないかと存じます。

一応「資金循環統計とは」という話の部分だけ引用しておきます。中身もオモロイのですけれどもそれは読んでちょ。

『資金循環統計とは』

『日本銀行が作成する資金循環統計は、わが国における家計、企業、金融機関といった部門毎の金融資産・負債の推移を、包括的に記録したものである。その特徴をまとめると、第一に、各部門における金融資産・負債の残高(ストック)と金融取引(フロー)の両面を捉えていることが挙げられる。第二に、資金循環統計は国民経済計算体系の国際基準に準拠して作成されていることから、諸外国と比較しながら、わが国における金融活動や金融構造の特徴を明らかにできる。第三に、わが国の資金循環統計は、主要国・地域と比べると取引項目や部門が細分化され(図表1)、より詳細な資金フローを把握できる。』

『もっとも、資金循環統計はすべての部門にまたがる資産・負債関係を詳細に記録しているため、一見すると、統計の見方や部門別の特徴がわかりにくいという指摘もある。このため、日本銀行では、統計の公表に際し、部門別の動向や足許の特徴をわかりやすく説明した「参考図表」を作成し、その充実を図ってきているほか、資金循環統計の解説や作成方法をホームページ上で公開するなど、統計の理解促進に向けた様々な取り組みを行ってきている。』

この参考図表がかなり面白いんですよね(^^)。

『こうした取り組みの一環として、本稿では、やや長めの視点を交え、わが国の資金循環の動向を紹介する。また、資金循環統計の整備・拡充に向けた取り組みについても述べる。国際的には、既存の統計データでは金融システムに潜むリスクを十分に把握できない(「データ・ギャップ」の存在)という問題意識が共有されており、日本銀行でも積極的に取り組んでいることを紹介する。』

ということで後は読んでくんなまし。

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2012/03/21

さて本日はいろいろな事を実施した2月決定会合議事要旨である。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120214.pdf

○景気認識は引き上げ

まあ今回の議事要旨は金融政策決定に関連する論議の部分が面白うてやがて悲しき日銀ウォッチかな(字余り)という風情でございますので景気認識部分は簡単に。

本文5ページ(PDFファイルだと7ページ)から始まる『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から少々。

・海外経済とか欧州債務問題とか

『国際金融資本市場について、委員は、ECBの3年物オペ等による大量の資金供給の効果が浸透する中、欧州系金融機関の資金調達環境は改善を続けており、これを背景に、欧州債務問題を巡る市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいるとの見解で一致した。』

ということでああだこうだ書いてますが、金融資本市場に関しての結論は例によって例の如く『(抜本的な問題の解決には)依然として不確定要素が多く、市場の緊張が再び高まる可能性には十分注意する必要があるとの認識を共有した。』となってはおりますが、その後に関しては割と威勢が良い。

『海外経済について、委員は、欧州債務問題や新興国・資源国における既往の金融引き締めの影響などから減速しているものの、米国経済ではこのところ改善の動きがみられているとの認識で一致した。先行きについて、委員は、当面、ユーロエリア経済を中心に減速が続くものの、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで、成長率は再び高まっていくとの見方を共有した。』

何をどうすると新興国・資源国に牽引されるのかという感じではありますが、米国経済に関する部分を読んでいてほーと思った箇所はこちら。

『(米国経済について)このうち何人かの委員は、企業部門の好調が家計部門へと及んでいく自律回復のメカニズムが働きつつある可能性を指摘した。』

ふーんという感じですが、新興国や資源国が強くなる見通しの件に関してですが。

『新興国・資源国経済について、委員は、既往の物価上昇による実質購買力低下や金融引き締めに加え、欧州経済の減速に伴う輸出減少の影響などから、全体として幾分減速しているとの見方を共有した。複数の委員は、NIEs、ASEAN経済は、引き続き欧州経済減速の影響を受けているものの、タイの洪水の影響が薄れてきているため、輸出は持ち直してきていると指摘した。』

ほう。

『先行きについて、委員は、インフレ率の低下に伴い、金融政策の緩和余地が拡大する中、家計の実質購買力の回復等により内需が堅調に推移し、再び成長率が高まっていくとの見解で一致した。何人かの委員は、幾つかの国でインフレ率の低下を受けて引き締めから緩和に転じている点に言及した。』

ということで、新興国のインフレの落ち着きで金融政策の緩和余地が出来ている点を指摘しているということですかそうですか。


○国内景気も明るい話ですが・・・・・・・

『景気の現状について、委員は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっているものの、内需は震災復興関連の需要もあって底堅い展開を辿っているとの見方で一致した。』

ということですが、項目別の話を見ますとこれまた景気の良い話の方が多い感じ。まあ金融経済月報がそうなのですから当然ですけど。

『ある委員は、12月の生産の実績が7か月振りに前月時点の見通しを上回ったことに触れ、生産活動の下押し圧力が和らいできているとみられると述べた。』

『別のある委員は、世界的なIT関連の在庫調整進捗が、情報関連の輸出や生産に前向きな影響を及ぼしているとの見方を示した。設備投資について、委員は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にあるとの認識で一致した。』

ほほう。

『何人かの委員は、企業収益の下振れやそれが株価持ち直しを遅らせる影響に留意する必要があると述べた。』

ここだけは景気の悪い話。

『複数の委員は、企業マインドを表す指標がやや改善していることを指摘した。個人消費について、委員は、震災後一旦抑制された需要の復元もあって、底堅く推移しているとの認識を共有した。』

ということで、全般的に明るい話になっていますがな。で、先行きですが。

『景気の先行きについて、委員は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくことなどから、緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』

というのは声明文にある通り。

『そのうえで、委員は、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き、景気の先行きを巡る不確実性が大きいとの見解で一致した。』

とまあ不確実性の話はしていますが、全体のトーンが強めになっている中で何で追加緩和をしたんでしょうかねえという疑問がここまでを読むと益々強くなる(ってゆーかこの辺までの認識は声明文や金融経済月報に書いてありましたが)のでありました。


○とりあえず物価の話が言い訳ですかそうですか

まあその次にこういうのを書いているので、一応政策のロジックとしての整合性を取ろうとしているというのは把握した。

『消費者物価( 除く生鮮食品)の前年比について、委員は、概ねゼロ% となっており、先行きは、当面、ゼロ%近傍で推移するとの見方で一致した。』

さいですな。

『そのうえで、複数の委員は、食料・エネルギーを除く消費者物価やGDPデフレータの下落が続いている点に留意する必要があると付言した。』

ほっほー。

『そのうちの一人の委員は、GDPデフレータと消費者物価指数の動きに乖離がみられる要因について、@ 円高局面における輸出企業の価格設定行動、A 原材料高局面における輸入企業の価格設定行動、B 投資財等の著しい品質向上の影響、の3点に整理したうえで、物価情勢の判断に当たっては、消費者物価指数を中心としつつ幅広い指標を点検することが適当であると述べた。』

はあそうですかという所ですが、その後の金融面の動向の所にこれまた物価の話が。

『複数の委員は、家計や企業の短期的なインフレ予想がこのところ幾分低下していることに言及した。このうちの一人の委員は、こうした動きはインフレ率が中長期的にみて安定的な水準( アンカー) に収束していくペースを遅くする方向に作用するので、十分な注意が必要であるとの見方を示した。』


・・・・・・・・ということで、まあ追加緩和する言い訳じゃなかった政策ロジックは何となく取り繕じゃなかった構築されているというのがこの部分であります。


○中長期的な物価安定の目途に関する部分から既にアレなテイストを醸し出す

とまあ景気認識に関する部分を引用しましたが、ここまではマクラみたいなもんで、この先の『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』(本文8ページより)がアレでござる。


・導入に至った経緯の部分からもうアレ

もうね、のっけからツッコミどころ満載のアレでございます。オモロイから改行してポイントを読みやすくしてみるつもり(機種依存文字は原文ママですのでマカーの皆様ご勘弁)。

『当面の金融政策運営を検討するに当たって、委員は、

@ 金融政策運営に関する情報発信については、かねてから、より良いあり方を模索する不断の検討が必要との認識が委員間で共有されてきたこと、

A そうした中、前回会合では、米国FRBにおいて情報発信のあり方を巡る検討が進められていることを踏まえ、何人かの委員から改めて、「中長期的な物価安定の理解」や、それに基づく時間軸の示し方について、検討していく必要があるとの問題提起があったこと、

B 実際に、米国FRBが物価安定に関する「長期的な目標(longer-run goal)」を示したことを契機に、中央銀行の物価安定に対する姿勢について関心が改めて高まっていること、

等を踏まえ、金融政策運営に関する情報発信のあり方について議論することにした。』

もうね、最初の部分でいきなり楽しいのですけれども、まあ@は置いといてAって何ですねんという話でして、「前回会合で話がありましたですお!」というのを(1月の決定会合議事要旨にも書いてありましたが)アピールしているところが日銀なりの宣伝だと思うのですが、それならお前らの方が率先して実施すりゃよかったじゃんという話でございまして、実に残念感溢れる話ですが・・・・・・・

直後のBを読みますと「FRBが実施した政策の結果を見て反応しましたですお」と思いっきり仰せでございまして、おまいらの金融政策決定変数はFOMCか!!と盛大にツッコミたくなるようなお話ですが、まあ逆に言えばこういう表現を思いっきり入れているのはある意味清々しいまでの開き直りっぷりとも言えまして(-_-メ)、とりあえずヤケクソモードになっていたというのが良く判る部分が冒頭から炸裂するのであります。

でですな、まあ確かに「FRBの出方を見てから施策を打ち込む」とやった上に、ちょうど米国の経済指標が強くてフォワードガイダンスってコミットメントじゃないよね的な状態になってきた事もありまして、市場タイミング的には大変に結構な結果とは相成りましたけれども、まあ金融政策ロジック的には見事なまでに政策変数外部依存的なものを見せてしまったという事で、コミュニケーションポリシーとしては誠に遺憾に存じますという事ですし、こうなりますと今のFRB(というかバーナンキ)がまさにそういう感じですけれども、「市場の尾を追う犬」に日銀もなってしまい、そうなりますと第2の柱もマクロプルーデンスもどこかへ飛んでしまいますなあ(一応この時の声明文などには第2の柱は入っていますしこの後にも出るには出ますが)という流れへと踏み出してきてませんかねえという感じがする訳で。


・物価安定の理解の変更点

『「中長期的な物価安定の理解」の位置付けについて、大方の委員は、日本銀行の政策姿勢が伝わり難いとの指摘が一部にあることに触れ、日本銀行が目指すべき中長期的に持続可能な物価安定と整合的な物価上昇率を「各政策委員の理解」として示していることが、その一因となっているとの認識を示した。』

別にアンダースタンディングでもパースペクティブでも判りにくい訳でも無いような気がするんですけど、中長期的なという概念入れたら理解でも目標でも大差ないような。

『これらの委員は、概念的定義、時間的視野、中心的指標といった、日本銀行の物価安定に関する基本的な考え方は変わらないが、これまで「各政策委員の理解」として示してきた物価上昇率を全政策委員の一致した見解である「日本銀行としての判断」というかたちで公表すれば、日本銀行が目指す物価の安定をより明確にできるのではないかと述べた。こうした意見を踏まえて、中長期的に持続可能な物価安定と整合的な物価上昇率として、政策委員全員で共有できる数値表現について検討することとなった。』

まあ日銀としての見解を示しました従来は政策委員の見解の集合体ではなくて機関決定という意味での理解でしたから違いますよという話ではあるのですが、そもそも従来の物価安定の理解だって公表文書として出ているものは議決事項(展望レポートでの見通しであれば議決はしているけれどもそもそも単なる数値分布なのでその分布の表現自体は一義的に決定する)なのですから、まあ何と申しますか象徴的な違いのような気もするんですけどねえ、まあいっか。


・で、その数値について

『具体的な数値表現を検討するに当たって、何人かの委員は、従来同様、@ 物価指数の計測誤差(バイアス) 、A 物価下落と景気悪化の悪循環への備え(のりしろ) 、B 家計や企業が物価の安定と考える状態(国民の物価観) の3つの観点を踏まえる必要があると指摘した。』

まあこの辺は公表文書にもありましたな。

『このうちの一人の委員は、財政政策の発動余地が狭まっていること等を踏まえると、従来より厚めののりしろを確保する必要があるとの見解を示した一方、その他の委員は、3つの観点について、昨年4月の「中長期的な物価安定の理解」の点検時から大きな動きはないと考えられると述べた。』

厚めののりしろが必要とな(1名だけど)。

『多くの委員は、政策姿勢を明確に示すためには、ピンポイントの数値で示すことが望ましいが、日本経済の構造変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きいことを踏まえると、ある程度幅を持って示しておく必要性も小さくないとの見解を示した。』

ふーんという感じですが、この先に出てくる話が色々とアレ。


・1%の数値は将来的には引き上げることになるでしょうとの事ですが

『何人かの委員は、現在の国民の物価観が低めであること等を勘案し、当面は、現在「中心」として示している物価上昇率1%を目指すとしても、より長い目でみた場合には、目指すべき物価上昇率は1%を上回る水準に高まる可能性があり、この機会を捉えて、こうした可能性を踏まえた表現に変更することが考えられるとの見解を示した。』

『このうち複数の委員は、「1〜2%」という表現も一案であると述べた。』

ほほうという感じですが、この後の方(結論部分)にもあるのですが、まあ1%の数値を中間目標的なイメージで考えるべきというようなニュアンスの人がそれなりにいるという感じではございますが、しかしそうなりますと時間軸ってどうなるんでしょうねえ、まあ今すぐにどうのこうのの話ではないから良いけどさ。


・どう見ても本末転倒です本当にありがとうございました

その次がアレ。

『また、ある委員は、為替相場が長期トレンドとして一方向に傾くことがないよう、長期的には主要国の多くと共通の物価上昇率を目指す必要があり、現状、それは「2%」であると述べた。』

というのを見た時にはさすがにのけぞりましたが、それってどこのカレンシーボードだよって感じでありまして、いやあのまず最初に考えるべきなのは「国民経済的に一番適切な物価水準はどこか」という話であって、まず最初に為替の話が来るとか、お気持ちは判るけどその理屈はどう見ても本末転倒です本当にありがとうございましたという所でありまして、これ誰の意見なのか思いっきり興味があります事ですよ(ニヤニヤ)。

『別の一人の委員は、わが国が直面している経済状況は海外主要国と異なることから、必ずしもこれらの国と同じ水準まで目指すべきことにはならないと述べた。』

『これに対し、何人かの委員は、従来の「消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、中心は1%程度」という表現を大きく変える必要はないと考えていると述べた。』

まあこちらの方がさすがに穏当なように思えますけどね。


・結論部分もまあ先行きの引き上げの可能性という感じですな

『こうした議論を経て、委員は、当面、目指すべき物価上昇率は「1%」とし、より長い目でみた場合には、中長期的に目指すべき物価上昇率が変わり得ることを踏まえ、「2%以下のプラスの領域にある」と幅を持って表現することが適当との見解で一致した。』

まあさっきの所およびこの辺を見ると1%が2%とかになる可能性もあるという話っすね。


・表現方法に関して

『多くの委員は、これまでの「理解」という言葉の語感からは、日本銀行が受け身的に経済物価情勢の改善を待っているかのような印象を受けがちであり、能動的に達成を目指す姿勢が伝わりづらいとの認識を示した。』

ほうほうそうですか(棒読み)。だって長期デフレの原因は構造問題とか言う麿がいる(その主張はそれはそれで正しい面もあると思いますけどね)んですもんねえ。

『また、何人かの委員は、@「目標」は、一定の物価上昇率を維持するために、短期的な物価の振れに対して機械的な政策運営を行う印象を与えがちである、A 「目標」や「定義」は、固定的・硬直的な語感があり、日本経済の構造変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きい状況下では相応しくない、B 「目安」は、政策姿勢を示していく上では「理解」と同様、曖昧さが残る、と述べた。』

ふーん(棒読み)。

『こうした議論を経て、委員は、上述の中長期的に持続可能な物価安定と整合的な物価上昇率について、「中長期的な物価安定の目途」と呼ぶことが適当との見解で一致し、その英語表現については「The price stability goal in the medium to long term」とすることが相応しいとの認識を共有した。』

もう英語だけで良いんじゃないですか(ニヤニヤ)。とここまでが物価安定の目途。


○時間軸政策では追加緩和余地を見せてますな

・追加緩和おかわりの姿勢について

『委員は、「中長期的な物価安定の目途」の導入と併せて、「日本銀行は、『中長期的な物価安定の理解』に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、」という時間軸の表現についても見直すことにより、政策姿勢の明確化を図ることが望ましいとの考え方を共有した。』

別に変える必要あったんかねという気はするのですが・・・・・・

『同時に、実質的なゼロ金利政策以外に実際に行ってきている政策措置も念頭に置きつつ、時間軸政策の対象となる政策運営に関する記述を「実質ゼロ金利政策を継続していく」から「実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」に置き換える方が、より正確かつ能動的な表現となり、日本銀行の政策姿勢が伝わり易くなるとの見解で一致した。』

まあやる気を見せたというのもあるけれども、資産買入を今後も継続または拡大するというのを示しましたということで・・・・・・

『何人かの委員は、見直し後の表現であれば、日本銀行として、今後も必要に応じて追加的な手段を講じていく姿勢にあることがより分かり易いとコメントした。このうちの一人の委員は、こうした見直しにより、時間軸政策の効果は強化されることになると述べた。』

追加緩和を今後も行うというニュアンスの重要性を何人かの委員が主張とな(^^)。


・FOMCにいちゃもんワロタ+α

『また、別のある委員は、時間軸政策の継続期間について、特定の時期で示す方法や、特定の指標等の公表値と紐付ける方法と比較して、現在日本銀行が採用している、経済物価情勢に関する政策当局の予想と紐付ける方法は、先行きの金融政策に関する期待の安定化を図るとともに、政策の信頼性を維持する観点から望ましいとの見方を示した。』

どう見てもFOMCディスりですという感じですが、特定の指標等の公表値と紐付けていないという話をしているのも注目な。あくまでも「中長期的な物価上昇率」についての「目途」ですから間違えないようにと言っても先般の総裁記者会見での質問を見てもそこを正確に把握してそうな記者は質問4本だかあったうちの1本だけだったように思えます。


・一応第2の柱は残る

『複数の委員は、今後の金融政策運営に当たっても、これまで同様、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、わが国経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを確認していくことが重要であり、このことについて、適切な情報発信に努めていく必要があると述べた。』

一応残っているのですけれども、まあそこまでの話を見ているとちょっと空しい感じもしますな。



○追加緩和の部分があまりにもグダグダすぎる点について

とまあここまでもオモロスですが、その次の部分がこれまた今回の白眉かも。

『委員は、こうした政策運営に関する情報発信のあり方の見直しに併せて、一段の金融緩和強化策を講じることが、日本銀行の政策姿勢の明確化を行動で裏付け、その効果を高める観点から望ましいという認識を共有した。』

ということですが・・・・・・・・

『複数の委員は、こうした政策の組み合わせにより、長めの金利や企業・家計等の意思決定に働きかけ、金融緩和の効果をさらに強めることが期待できると述べた。また、委員は、このタイミングで金融緩和の強化策を講じることは、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとする観点からも重要であるという考え方を共有した。こうした認識や考え方を踏まえて、具体的な金融緩和強化策についての議論が行われた。』

・・・・・・・・・えーっと、追加緩和しますお!というのは判るのですが、景気認識とか金融市場とか、どの辺りに対して問題があって、それに対してどのような経路で政策効果を出そうとして追加金融緩和政策を実施するというような話がろくすっぽ行われていないというか、そもそも何か気合みたいな話しか無くて、政策ロジックに関する意見の集約が行われているような気配が見当たらないのは気のせいでは無いように思えますが。


『まず、資産買入等の基金について、大方の委員は、日本銀行の政策姿勢の明確化を行動で裏付ける観点から、10兆円程度という思い切った規模の増額を行うことが適当との見解を示した。これらの委員は、買入れの対象については、現在の金融環境等を勘案すると、長期国債とすることが適当との認識を共有した。このうち複数の委員は、本年末までに増額を完了することが適当と述べた。』

・・・・・・・・・・こらまた何じゃそらという感じでして、まあさっきの所も気合みたいなのが先にありきの印象が強かったですが、この部分に至ってはどう見ても10兆円先にありきです本当にカムサハムニダという感じでございまして、その10兆円を実施するためという結論が先にあって、10兆円を積むためにフィージブルなのは長期国債(と言っても2年以内ですけど)の買入を拡大するのが適正、という風に話が進んでいるとしか思えん。

そらまあクレジットスプレッドとかは縮小してるし、ターム物金利は低下しきっているので、CP社債買入や短国買入、固定金利オペの拡大はフィージブルじゃないのは判りますし、ETFだと10兆も増やせないしREITなら猶更だから消去法で国債になるというのもまあ判るには判りますけれども、本来は「こういう効果を出したいから基金の拡大をこのような資産クラスで行って、その額を(まあ腰だめの数字であっても)考えてみたらこうなりました」という順に話が決まる筈なのに、今回はその辺が思いっきりグダグダになっていて、しかもその点を議事要旨で思いっきり出しているのがまあ清々しいっちゃあ清々しいですが・・・・・・

ただね、これだと結局の所追加金融緩和なりの金融政策変更を行うという際の政策変数というかトリガーも判らんですし、何をどう考えて追加緩和をこのように行ったのかというのも判らんですし、まあ金融政策のコミュニケーションポリシーとしては極めて訳ワカランチ会長になってしまいましたね、という所かと思いまして、その前の目途の部分でコミュニケーションポリシーの改善みたいな話をしているのは何ですねんという悪態をつきたくなる所ではございますな。


あとはおまけみたいなもんですが。

『何人かの委員は、今回10兆円程度の増額を行うとすると、趨勢的な銀行券需要見合いの買入れと合わせ、日本銀行による長期国債の買入れ全体としてみると、年率換算で約40兆円という大規模なものとなることに言及し、こうした買入れが財政ファイナンスを目的としたものでないことを明確に意識し、対外的にも説明していくことが重要との見解を示した。』

とか言いながら今後の追加金融緩和余地に関する話も前の方ではあった訳で、もはや意味が判りません(いやまあ追加金融緩和余地の話とこの話は別の人がしているんでしょうけど)。

『何人かの委員は、わが国経済のデフレからの脱却は、成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものであり、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが重要であるとの見解を述べた。』

まあそうなんですけど日銀も率先して給与削減とかデフレ政策してますけどね!!!!

#ということで中盤以降ほぼ全部引用という引用大会で恐縮至極でした

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2012/03/16

○金融経済月報から少々

しょうもない能書き書いてたら時間が押して来たので簡単に。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1203.pdf(3月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2012/gp1202.pdf(2月)

例によって概要部分の比較です。

・総括判断

『わが国の経済をみると、持ち直しに向けた動きもみられているが、なお横ばい圏内にある。』(今回)
『わが国の経済をみると、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。』(前回)

キタコレ。で、個別項目ですが。

・海外経済

『海外経済は全体としてなお減速した状態から脱していない。』(今回)
『米国ではこのところ改善の動きがみられているが、欧州債務問題や新興国・資源国における既往の金融引き締めの影響などから、海外経済全体としては減速している。』(前回)

やたら長いですが、まあ表現的にはだいぶ改善してます罠。

・国内需要、個人消費

『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費も、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増している。』(今回)
『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にある。個人消費も、震災後一旦抑制された需要の復元もあって、底堅く推移している。』(前回)

エコカー減税関連の話が加わりましたがほぼ横ばい。

・住宅投資、公共投資

『また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資は下げ止まっている。』(今回)
『また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資も下げ止まっている。』(前回)

ご覧の通り同じですな。


・先行き見通し総括判断

『先行きのわが国経済は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ということで、「当面横ばい圏内」というのが「次第に横ばい圏内の動きを脱し」と上方修正されていまして、想定される横ばい圏内の期間が短くなっている訳ですな。


・輸出

『輸出は、海外経済の成長率が高まることなどから、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)
『輸出や生産は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後、海外経済の成長率が高まることなどから、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

ということで、こちらも横ばい圏内の期間が短期化されています。


・設備投資

『設備投資は、当面、海外経済減速などの影響は残るものの、被災した設備の修復・建替えもあって、基調的には緩やかな増加を続けると予想される。』(今回)
『設備投資は、当面、海外経済減速の影響などを受けつつも、被災した設備の修復・建替えもあって、基調的には緩やかな増加を続けると予想される。』(前回)

同じですな。


・住宅投資、公共投資

『住宅投資、公共投資は、復興関連需要の顕在化などから、徐々に増加していくと考えられる。』(今回)
『住宅投資、公共投資は、復興関連需要の顕在化などから、徐々に増加していくと考えられる。』(前回)

こちらも同じ。

・個人消費

『個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、底堅く推移するとみられる。』(今回)
『個人消費も、雇用環境が徐々に改善に向かうもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。』(前回)

引き続き、というのが抜けて文章がすっきりしているのはまあ自信が高まっているという奴です。


・生産

前回のは先ほどの輸出の所にありましたのでそちらをご確認ください。

『こうした内外需要のもとで、生産は緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

こちらは横ばい圏内をすっ飛ばして緩やかに増加なので割と自信持って上方修正という感じでしょうかね。


・物価、金融環境は一部除いてほぼ同じ

ということで、現状認識と先行き見通しが引き上げとなっているという月報でありますが、物価と金融環境に関しては、国内企業物価の見通しについて『国際商品市況の動きなどを反映して、当面、強含むとみられる。』と引き上げになった以外は特段の変更(為替市場や株式市場への現状認識部分は相場の変化を反映して変わっていますがそれは特段のインプリケーションは無いのでキニシナイ)はありませんでした。

ということでまあ上方修正ですね、という結果でございました。

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2012/03/14

○決定会合ネタは色々あるのですがまずは冷静に(?)声明文比較

声明文の体裁が毎回変わっているので直近3回分のURLを付けるアルね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120313a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf(2月)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120124a.pdf(1月)

・成長基盤強化支援措置拡充の為に・・・・・・

今回はいつも最後にある「デフレ脱却の為に成長力強化が必要」という話を冒頭に持ってきていますが、これはまあ成長基盤強化支援措置の拡充を行うという今回の決定会合結果に整合的になるように作ったためでしょうな。

『わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面している。この課題への取り組みは、わが国経済の新たな経済成長の基礎を築いていくうえで不可欠である。デフレからの脱却は、こうした成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。以上を念頭に、民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが、重要である。』(今回)

冒頭にこの文言が入りましたが、文言自体は2月声明文と同じ(なので2月分の引用は割愛します)です。


・前回は金融緩和で今回は成長基盤強化ですかそうですか、で措置の内容

まあ単に期限が終わって枠も一杯まで使って前回の新規分が按分になってしまうという事ですから、そらまあ成長基盤強化貸出の延長と増額というのはロジックとしてそうですなという所でして、まあ絵としてはソツなくまとめてみましたでござるの巻と言った風情でしょうか。

『こうした認識のもとで、日本銀行は、2月に政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化した。これに続き、本日の政策委員会・金融政策決定会合においては、以下の通り、成長基盤強化を支援するための資金供給(以下、成長支援資金供給)を拡充することを決定した。円貨、外貨両面での拡充により、貸付額の総額は、3兆5千億円から5兆5千億円に2兆円増加する。』(今回)

で、その内容としては期限の延長および枠の拡大だけではなく、新しい施策も入っていますという話ではございます。

『(1)成長支援資金供給(本則)では対象としていない小口の投融資を対象に、新たに5千億円の貸付枠(小口特則)を導入する(別紙1)。』

別紙1ではこのようにあります。

『成長支援資金供給における小口投融資を対象とした新たな貸付枠の概要

1.対象とする投融資

わが国経済の成長に資すると認められる、1件当たり100万円以上1,000万円未満の投融資。金額以外の要件は本則(注1)と同じ。

(途中は従来の本則と同様の話になるので引用割愛)

8.貸付受付期限

2014 年3月末(新規貸付の最終実行期限は同年6月末)。』(別紙1より)

ということで、今回は本則に加えて小口対象を入れていまして、成長基盤強化に加えて中小企業支援チックな雰囲気も持たせましたという事ですけど、実際問題としてはこの100万円以上1000万円未満の投融資に紐付けで管理とかめんどくさくてカナワンチ会長ではないかとも思われまして、なんちゅうか従来以上に微妙なテイストを醸し出すのですけれども、まあ銀行企画部門とかはこういうのにもせっせと応じたりしたがりそうですから(これが証券会社だとあまりその辺の「ご配慮」がないのが証券会社クオリティ)、札そのものは集まるのでしょう。わざわざ紐付けで0.10%のファンディングが付きますよとか宣伝されると銀行も有難迷惑な気も。


『(2)成長に資する外貨建て投融資を対象に、日本銀行が保有する米ドル資金を用いて、新たに1兆円の貸付枠(米ドル特則)を導入する(骨子素案、別紙2)。本特則については、議長は、執行部に対し、次回の金融政策決定会合までに具体的な検討を行い、報告するよう指示した。』

こちらは議長指示ということで、次回の決定会合時に続きがあるでしょうという話ですが、別紙2はこのようになっています。

『成長を支援するための米ドル資金供給の骨子素案

1.対象とする投融資
わが国経済の成長に資すると認められる、1年以上の外貨建て投融資。各対象先金融機関は、成長に向けた取り組みと対象とする投融資の関係が明確になるよう、取り組み方針を策定し、日本銀行の確認を受ける。

2.対象先金融機関
成長支援資金供給の対象先金融機関のうち、ニューヨーク連邦準備銀行に米ドル口座を保有する先および同行に口座を保有する先へ米ドル決済を委託している先。

3.資金供給方式
米ドル資金の有担保貸し付け(注)。

4.貸付期間
1年とし、3回の借り換えを可能とする(最長4年)。

5.貸付利率
市場金利。

6.貸付総額
日本銀行が保有する米ドル資金のうち、1兆円相当。』(別紙2より)

ということで、これはまあ基本的には昨年財務省が「緊急円高対策パッケージ」だか何だか既に名前を忘れていますが(大汗)、その時に導入した「対外直接投資への呼び水としての外貨準備を活用した貸出制度」の日銀バージョンという事で、それが本当にドル安是正に効くのかというと????な所はございますが、日銀の保有する外貨の有効活用ができて良かったですね(棒読み)という所ですか。

円高対策(になってるのかどうか知らんが)に成長基盤強化ネタを突っ込むとか中々涙ぐましい努力をしているのでありました。

あとは本則とABL特則という従来からあるオペに関して、枠が一杯になってしまった本則に関しては期間延長と枠の拡大のセット販売、ABL特則は相変わらず残高は伸び悩んでおりますので、枠の拡大はしてもシャーナイナイという事で枠拡大スルーですかそうですか(^^)。という訳で該当箇所は以下の通り。

『(3)2010年6月に導入した成長支援資金供給(本則)について、新規貸付の受付期限を2014年3月末まで2年延長するとともに、貸付枠を3兆円から3兆5千億円に5千億円増額する。

(4)2011年6月に導入した出資や動産・債権担保融資(いわゆる「ABL」)などを対象とした成長支援資金供給(ABL特則)について、現行5千億円の貸付枠のもとで、新規貸付の受付期限を2014 年3月末まで2年延長する。』


・声明文の景気に関する文言は上方修正多し

体裁がここのところ毎回変わっているので比較する順番がややこしいのですが、今回の声明文の語順に沿って比較します。


海外経済

『海外経済をみると、全体としてなお減速した状態から脱していないが、米国経済にこのところ改善の動きがみられているほか、欧州経済も停滞感の強まりに歯止めがかかっている。国際金融資本市場も幾分落ち着きを取り戻してきている。』(今回)

『わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。』(2月)

ということで、海外経済に関しては「減速」で、まあ今回も減速の判断自体は変わっていないのですが、状況に関して改善という話になっていますな。


現状総括判断

『わが国の経済は、持ち直しに向けた動きもみられているが、なお横ばい圏内にある。』(今回)
『わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。』(2月)

ということで、横ばいは横ばいなのですが、先ほどの部分と相まってやはりやや上方修正チックな香りがするようになっていますな、ここだけ見ると前回とあまり変わらないが。


国内需要

個別項目の話が2月声明文には無かったので、1月との比較です。

『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復などから、緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても、自動車に対する需要刺激策の効果もあって、底堅さを増している。』(今回)
『すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても底堅く推移している。』(1月)

個人消費が政策効果でという但し書き付きながら「底堅さを増している」と上方修正。


輸出・生産

『一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高の影響などから、引き続き横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響も残るもとで、横ばい圏内の動きとなっている。』(1月)

こちらは変わらず。


金融環境・物価

これは2月と比較。

『この間、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)
『一方、わが国の金融環境については、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(2月)

ということでこちらも同じ。


先行き見通し

『先行きのわが国経済については、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。実際、このところ、生産や公共投資などにも先行きの持ち直しをうかがわせる動きがみられ始めている』(今回)

『わが国経済の先行きについては、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きい。もっとも、最近では、欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいる。米国経済では、バランスシート調整の重石はあるものの、このところ改善の動きがみられている。わが国についても、内需は震災復興関連の需要もあって底堅い展開を辿っている。』(2月)

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(1月)

まあ何だ、随分明るくなってますな。

先行きの物価に関しては毎度同じなので今回分だけ。

『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)


リスク要因

これは1月と比較。

『景気のリスク要因をみると、欧州債務問題の今後の展開や国際商品市況の動向、新興国・資源国の物価安定と成長の両立の可能性など、世界経済を巡る不確実性が引き続き大きい。物価面では、国際商品市況や中長期的な予想物価上昇率の動向などを、注視する必要がある。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れをもたらす可能性がある。米国経済については、このところ一部に底堅い動きもみられているが、バランスシートの調整圧力は引き続き経済の重石となっている。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。海外金融経済情勢を巡る以上の不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。物価面では、国際商品市況の先行きについては、地政学リスクの影響を含めて、不確実性が大きい。また、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(1月)

これはワーディング的に1月と同じような書き方をすると声明文全体の分量が長くなり過ぎるので短くしている、というのはあるのでしょうけれども、まあ一々具体的に書いていた部分がシンプルになった(実際問題として言ってることは同じなのですけれそも)のと、そこまでのトーンが明るめになっている事のセットによりまして、内容的に明るくなってますよねという感じがします。


最後の所に一応

中長期的な物価安定の目途がどうのこうのの話は2月と同じなのですが、最後にこの一文が入っているのはまあ今回の政策打ち込みに対応しているものです。

『併せて、本日拡充を決定した成長支援資金供給を通じて、わが国経済の成長支援にも取り組んでいく。』(今回)



○決定会合関連雑談:宮尾委員の緩和提案

決定会合声明文脚注より。

『(注1) 本日の金融政策決定会合では、宮尾委員より、資産買入等の基金を5兆円程度増額し、70 兆円程度とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:宮尾委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員、森本委員、白井委員、石田委員)。』

ということですが、何をどう提案したのかは議事要旨を見るとして、まあ宮尾さんは前も一人で緩和提案したりしてたので、鉄砲玉キャラになってきている感じではございますけれども(^^)、どういうロジックで緩和提案したのか、その内容とかも含めて興味がございます。

まあしかし今回はこの緩和提案があったので、「まあそうは言っても先行きどこかで追加緩和あるでしょ」という認識になったの(かどうか知らんが)債券市場は結局若干のブルフラットとなっていたのがチャーミングでした。決定会合の時間が長引いて変な期待とその反動が起きた分のクッションに結果的にはなった感じですにゃ。

しかし、昨日の何とかストの方々のレポートを見ておりますと「これで追加緩和が遠のいた」的なコメントも散見されて、まあ昨日の決定会合の時間が妙に伸びて妙に期待を高めたことによって何とかストの皆さんもちょっとトサカに来ていたのかもしれませんね!!!!


○決定会合関連雑談:時間がなげえよ

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/state_2012/index.htm/
金融市場調節方針に関する公表文 2012年

『2012年 3月13日 当面の金融政策運営および成長基盤強化支援の拡充等について(14時07分公表)』

ということで今回の決定会合終了は14時7分と結構長かったです。

で、皆様ご案内のように、それだけ遅くなるという事は何か期待以上の物が出てくるのではないかという思惑が高まる(政策変更の時に遅くなる、というのが仕様なので)わけで、為替市場では円安が進行(と言っても30銭かそこらですが)し、平均株価は上昇(1万円に届いたり届かなかったりとかだったような希ガス)し、債券先物は瞬間芸ですが何か妙な上昇をしたりもしたという動きがありましたが、まあ結果はそもそもの予想の範囲内(ドル何とかとか小口特則とか面白いネタもありましたが)で、まあスパイスとして宮尾審議委員の追加緩和提案があって否決されましたという話でした罠。

で、その結果どういう話になったかというとこんな感じ。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M0SNWO0UQVI901.html
円が反発、日銀追加緩和見送りで買い圧力−対ドルで一時81円台

『3月13日(ブルームバーグ):午後の東京外国為替市場では円が反発している。日本銀行はこの日の金融政策決定会合で金融政策の現状維持を決定。一部で追加緩和期待が出ていたため、失望感から円を買い戻す動きが出ている。更新日時: 2012/03/13 14:51 JST 』(上記URLより)

つまりまあそういう事で、変に決定会合の時間が長くなってしまったので無用に思惑を生んでしまい、その結果失望とか言われましても困りますがなとは言いたいでしょうが、市場が(特に海外とか外野で)妙な期待をしていた向きもあっただけに、今回の時間の伸びっぷりはちと罪作りでしたな。

もしこの決定が13時前とか遅くとも13時の第1四半期(?)辺りに出ていれば、予想通りですねで終了で、もしかしたら宮尾審議委員の緩和提案をもうちょっと評価するような動きになったかも知れませんが、先に過大な期待をして余計なものを織り込んでしまった為にその反動が起きましたねという結果。

まあ何ですな、今回は決定事項が多かったのでロジ的に時間が掛かったんだろうなあというのは判るのですが、前回の決定会合であれだけのネタを打ち込んでも決定会合の結果発表が12時43分であった事を勘案しますと、ちょっと時間が掛かり過ぎ。ロジ的にチョンボがあって遅れたとかはまあ無いでしょうけれども、ロジに改善の余地があるのであれば改善して頂きたいものです。

いやまあ何かで議論が揉めたんでしょうねえとは思うのですが、ちょっと議事の段取り的にどうだったのかなというように思える訳でして、決定会合終了時間によってこういう変な思惑を呼ぶ、というのもちょっとどうかと思いますので、公表時間は一定にする方がやはり宜しいのではないかというのがこういう事案がある度に思うんですけどねえ。勿論議論を尽くすのが大事だというのも判るのですが・・・・・・・・・

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2012/02/23

○ということで1月決定会合議事要旨ですが、公表方法何とかならないのでしょうか・・・・・・

先週出ていたネタで恐縮ですが。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2012/g120124.pdf

まあ2月の会合で大ネタが炸裂したので1月会合自体は地味ですなという事になるのかもしれませんけれども、まあ示唆されるものもあったりしてということでサラサラと。

・期待インフレの低下を指摘

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

本文9ページ(PDFファイルでは11ページになります。以下同様で2ページ分ファイル上ではずれます)から。

『何人かの委員は、欧州ソブリン問題の長期化や各国の金融緩和等を背景に、対ユーロを中心に円高圧力が根強く、これがわが国の株価や企業マインド、ひいては景気の下押し圧力につながらないかどうか、注視していく必要があると述べた。』

という所から始まる部分でございますが、この先がインフレ期待の話になっています。

『複数の委員は、家計や企業の短期的なインフレ予想がこのところ幾分低下していることに言及した。』

キタコレ。

『このうちの一人の委員は、こうした動きは、生鮮食品やその他購入頻度の高い品目の物価上昇率の動向に影響されていると考えられると述べた。別の一人の委員は、短期的なインフレ予想の低下により、インフレ率が長期のアンカーに収束していく速度が遅くなる可能性があると付け加えた。』

ほほ〜、ということで本文11ページ(展望レポートの中間評価)から。

『物価面のリスク要因として、委員は、国際商品市況の先行きに関する不確実性が大きいとの見方で一致した。原油価格については、イラン情勢を巡る地政学リスクが意識され、このところやや強含んで推移しているが、仮にイラン情勢が緊迫化した場合、原油価格の大幅上昇等を通じて、わが国を含め、世界経済に大きな影響を与え得るだけに、今後の展開を注意深く見ていく必要があるとの認識を共有した。』

原油上昇→物価上昇ではなく、原油上昇→景気下押しを懸念しているのですね、わかります。

『複数の委員は、消費者物価がプラス圏で定着するようになるには時間がかかると予想されることを踏まえると、家計や企業が物価は中長期的にも上昇しにくいという予想を強めていくことにより実際の物価が下振れる可能性に、注意する必要があるとの見方を示した。』

期待インフレ率低下の議論キタコレ。


・FRBのコミュニケーション戦略に対応しましょうかねえという検討

念の為ですが、この決定会合は前回のFOMC決定前(直前)に行われておりますざます。

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の本文12ページより。

『政策金利を巡る時間軸について、委員は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していくとの方針を、これまで以上に粘り強く対外的に説明していくことがきわめて重要との認識を共有した。』

ほほう。

『何人かの委員は、こうした時間軸の示し方は、現下の日本経済の情勢等を踏まえると、金融政策の透明性や有効性の観点から適切であるが、米国FRBがコミュニケーション政策を見直していることもあり、情報発信のあり方については不断に点検を続けていくことが重要であると付け加えた。』

>米国FRBがコミュニケーション政策を見直していることもあり

・・・・・・ということで、FOMCでの時間軸強化によって日米金利差がどうのこうので為替がああだこうだとなると困りますので日本の時間軸が長いんですよと宣伝しようという話があったりしますし、「情報発信の見直し」という話もあったりしますわな。

『このうちの一人の委員は、情報発信に当たっては、時間軸を通じた景気刺激効果は、景気回復が進むにつれて徐々に強まっていく性格のものであることを、しっかりと説明していく必要があると述べた。』

これはまた懐かしい理屈。俊ちゃんの話によくあったわ。


・ということで議事要旨発表のタイミング何とかならんのかといういつもの話

つーことでですね、この議事要旨が2月の決定会合の前に出ていると、「期待インフレ率の低下を意識している」という部分と「情報発信に関してFRBの見直し結果を意識している」という部分の合わせ技で、別に政治家がやいのやいの言い出す前から今般の色々な政策打ち出しへの布石は打たれていましたよね、という話になるような気がするのよ。

となりますと、政治に押し込まれた(そらまあ政治がやかましいのは検討を加速する材料にはなったとは思いますが)という印象、というかそのような報道(ロイターとかの「日銀は政治に押し込まれて云々」強調報道とか国益を何だと思ってるんだと存じますけれども所詮ロイターですからねえ)が目立つのですけれども、まあFRBが見直しをした際には市場の反応見ながら何か出しましょうかね位の準備はしていたのですなあ(準備してないと今回のような割と考えているかなあと思われる施策、つーか政策の方向性見直し(下振れ対応→俊ちゃんスキームへの転換)は出てこないでしょ)と思われるのですな。

然るに、この議事要旨が出るのが次回の決定会合終わった後になりますので、前回の決定会合でどのような議論が行われて、それが次回の会合にどう影響していきそうなのかというような検討がイマイチできないというのは何か勿体ないですなあと思うのでございますよ。それに次回の決定会合前に議事要旨出るようになったら、議事要旨に対する注目度も上がる(ので毎度飽きもせず読んでいるあたくし歓喜の展開でもあるというポジションではないがポジショントークも含め^^)という気がするんですけどどうでしょうかねえ。

ちなみに議事要旨見ますと、本文15ページにこのようなのがありますわな。

『Z.議事要旨の承認

議事要旨(2011年12月20、21日開催分)が全員一致で承認され、1月27日に公表することとされた。』

ということで、議事要旨って決定会合の議決事項になっているのですけれども、日銀法を見ると・・・・・・

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H09/H09HO089.html
日本銀行法(平成九年六月十八日法律第八十九号)

(議事録等の公表)
第二十条  議長は、金融調節事項を議事とする会議の終了後、速やかに、委員会の定めるところにより、当該会議の議事の概要を記載した書類を作成し、当該書類について金融調節事項を議事とする会議において委員会の承認を得て、これを公表しなければならない。

2  議長は、委員会の定めるところにより、金融調節事項を議事とする会議の議事録を作成し、委員会が適当と認めて定める相当期間経過後に、これを公表しなければならない。

(上記URLより引用)

ということで、1が議事要旨の公表、2が議事録の公表に関する話なのですが、ここにありますように議事要旨の承認が『当該書類について金融調節事項を議事とする会議において委員会の承認を得て』とあるのが極めて遺憾でございまして、この部分って何とかならんのかと思うのですよね。議事要旨承認の為の政策委員会って何とか法解釈駆使して出来ませんかねえとか思うのですけれども難しいですかねえ。


・その他議事要旨ネタ:札割れの解釈が・・・・・・・

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の本文12ページから。

『資産買入等の基金について、委員は、金融資産の買入れ等を着実に進め、その効果の波及を確認していくことが適当との認識を共有した。何人かの委員は、このところ、社債等買入れや国庫短期証券買入れにおいて札割れが生じ、6か月物の固定金利オペの応札倍率が低下していることは、強力な金融緩和が市場に浸透していることの一つの表れであるとの見方を示した。』

・・・・・・・・・・・・???????

『このうちの一人の委員は、金融市場の状況次第では、引き続き札割れが生じ得るとの見方を示したうえで、今後もオファーを地道に継続し、市場の安心感を維持していくことが重要と指摘した。別の一人の委員は、金融緩和を強化するために、基金を導入した以上、基金の積み上げの期限が本年末であることを念頭に置いて、買入れが実現できるよう一段と努力する必要があると述べた。』

・・・・・・・えーっとですな、この部分なのですけど、最後の一人の委員さんが言う「基金を導入した以上、基金の積み上げの期限が本年末であることを念頭に置いて、買入れが実現できるよう一段と努力する必要がある」という話が自然な話のような気がするのですが、特に前半の「強力な金融緩和が市場に浸透していることの一つの表れである」という部分がアレでございまして、このニュアンスだと札割れしていても無問題的なイメージを与えるのでございますよ。

となりますと、基金残高の積み上げってコミットメントですよねと言う風に市場は基本的に認識していると思われる(それを前提に2年とかの金利が下限に張り付いて来ているのですから・・・・・・)のですが、札割れの結果として残高積みあがらないなら別に結構ですよというスタンスだと話が違いますがなという理解になり兼ねませんわなという所と存じます。

まあその後の17日の白川総裁講演で前のめりな緩和積極姿勢が伝わったので一旦はこの辺りへの疑念も後退しているようには思えるのですが、今回の基金買入に関しては前回実施した社債・CP買入とは違い、市場安定化なのではなく金利引き下げ促進という施策であって、残高をコミットしているというのが話が出てきた時のスタンスの筈ですので、あまり「強力な金融緩和が市場に浸透していることの一つの表れ」というようなのんびりした解釈をするのは市場に「という事は買入基金積み上げなくても良いと思っているのか」という疑念を与える事に繋がりかねないので、前回の買入の時と同じような評価をするのはマズーではないかと思うのであります。

つまり何だ、前回の社債・CP買入は市場安定化策であって、市場が安定化したら札割れになるようにそもそも設計していたので札割れ上等で政策効果の浸透の結果ですというロジックは正しかったが今回札割れ上等的な物言いをするのはあまり宜しくないよねっつー事である。

ということで時間も無くなったので本日はこんなところで勘弁でございまする。

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2012/02/15

○その前にロイターさんすいませんすいません

先週「追加緩和も」とロイターが報道した時に「何をアホな」という勢いで書き物でdisりましたが、何とビックリ追加緩和実施というのが今回の落ちでございまして、謎記事とか悪態ついて大変恐縮至極でございまして今回に関しては素直にお見それ致しましたm(__)mと

・・・・・・・とひとくさり赤恥大会を致しましたが、まあそれはそれと致しまして今回の決定会合は色々とネタを大量投下して頂きましたので、大量投下されたネタを料理するでござるの巻という事であります。


○それに関連してリーク報道合戦をするメディアは如何に国益を損ねているかが判ったの巻

今朝の公共放送ニュース(5時半)の「今朝の主なニュース」の2番目がこれ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120215/t10013023911000.html
NY市場 3か月半ぶり円安水準 2月15日 5時22分

『14日のニューヨーク外国為替市場は、日銀が一段の金融緩和に踏み切ったことを受け、円を売ってドルを買う動きが強まり、円相場は1ドル=78円台半ばと、3か月半ぶりの水準まで値下がりしました。』(上記URLより)

このWeb版だと題名は上記のようになっていますが、公共放送の本チャンの見出しは「日銀の金融緩和で円安に」(6時半では「日銀緩和で円安進む」でした)となっていましたが、今回は上述のように事前のリーク報道みたいなのが全然出なかった(情報管理がちゃんとできて良かったですねという所ですがそもそもそれが当たり前ではある)結果市場がサプライズで動いてくれた訳でして、つまり事前リークをするアホウは腹を切って死ぬべきであり、唯一ネ申又吉イエスによって地獄の火の中に投げ込まれるべき存在である、という件が今回の市場の反応を見て明らかになるのでありました。

ということで、不毛な上に国益を損ねる事前リーク報道合戦は厳に慎んで頂きたい訳でして、報道機関と銘打っているのに自社の営業>>>>>国益とかいうなら報道機関の看板を下ろして「当社はアジビラを印刷して販売しております」ときちんと説明して頂きたいと存じます次第であります(まあ事実認識がどう見ても間違っている記事や社説を堂々出すアジビラ新聞が既に散見されるという説もありますが・・・・・・・)。


とまあそんな前置きは兎も角として・・・・・・


声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf

「中長期的な物価安定の目途」について
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214b.pdf


ではまずは「中長期的な物価安定の目途」の方から参りますね(^^)。


○時間軸とか金融政策の枠組みとかには何ら変更はないのですけどね・・・・・・・(物価安定の目途関連)

改めて今回の公表文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214b.pdf

『「中長期的な物価安定の目途」について

1. 日本銀行は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念として、金融政策を運営している。その際の「物価の安定」は、中長期的に持続可能なものでなければならない。

2. 本日の政策委員会・金融政策決定会合では、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けた日本銀行の姿勢をさらに明確化する取り組みの一環として、「中長期的な物価安定の目途」を新たに導入した。

3.「中長期的な物価安定の目途」は、日本銀行として、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を示したものである。この「中長期的な物価安定の目途」について、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることとした。従来は、「中長期的な物価安定の理解」として、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を示していた。』


では従来の中長期的な物価安定の理解はどうだったでしょうか。こちらに過去の推移がございますのでこれをポチポチと見ればよろしある。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/transparency/index.htm/
金融政策の透明性

元々はこちらにある
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/mpo0603a.htm/
「物価の安定」についての考え方(背景説明含む)

とかこの時に公表されている
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2006/k060309b.htm/
新たな金融政策運営の枠組みの導入について

の所にああだこうだと書いてある訳で、こちらにある『「物価の安定」についての考え方』が元々あったものなのですな。

つまり・・・・・・

『2.「物価の安定」についての考え方

「物価の安定」とは、家計や企業等の様々な経済主体が物価水準の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況である。

「物価の安定」は持続的な経済成長を実現するための不可欠の前提条件であり、日本銀行は適切な金融政策の運営を通じて「物価の安定」を達成することに責任を有している。その際、金融政策の効果が波及するには長い期間がかかること、また、様々なショックに伴う物価の短期的な変動をすべて吸収しようとすると経済の変動がかえって大きくなることから、十分長い先行きの経済・物価の動向を予測しながら、中長期的にみて「物価の安定」を実現するように努めている。

物価情勢を点検していく際、物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを対象とした指標が基本となる。中でも、統計の速報性の点などからみて、消費者物価指数が重要である。

「物価の安定」とは、概念的には、計測誤差(バイアス)のない物価指数でみて変化率がゼロ%の状態である。現状、わが国の消費者物価指数のバイアスは大きくないとみられる。物価下落と景気悪化の悪循環の可能性がある場合には、それを考慮する程度に応じて、若干の物価上昇を許容したとしても、金融政策運営において「物価の安定」と理解する範囲内にあると考えられる。

わが国の場合、もともと、海外主要国に比べて過去数十年の平均的な物価上昇率が低いほか、90年代以降長期間にわたって低い物価上昇率を経験してきた。このため、物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率は低くなっており、そうした低い物価上昇率を前提として経済活動にかかる意思決定が行われている可能性がある。金融政策運営に当たっては、そうした点にも留意する必要がある。

本日の政策委員会・金融政策決定会合では、金融政策運営に当たり、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率(「中長期的な物価安定の理解」)について、議論を行った。上述の諸要因のいずれを重視するかで委員間の意見に幅はあったが、現時点では、海外主要国よりも低めという理解であった。消費者物価指数の前年比で表現すると、0〜2%程度であれば、各委員の「中長期的な物価安定の理解」の範囲と大きくは異ならないとの見方で一致した。また、委員の中心値は、大勢として、概ね1%の前後で分散していた。「中長期的な物価安定の理解」は、経済構造の変化等に応じて徐々に変化し得る性格のものであるため、今後原則としてほぼ1年ごとに点検していくこととする。』(以上、2006年3月9日公表の『新たな金融政策運営の枠組みの導入について』より)


で、その後2009年12月18日の金融政策決定会合でこの「中長期的な物価安定の理解」の明確化ということでこのリリースが行われた訳ですよね。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/un0912c.pdf
「中長期的な物価安定の理解」の明確化

『(明確化のポイント)
・ゼロ%以下のマイナスの値は許容していない
・中心は1%程度
消費者物価指数の前年比で2%以下のプラスの領域にあり、委員の大勢は1%程度を中心と考えている』
(以上、2009年12月18日公表の『「中長期的な物価安定の理解」の明確化』より)


・・・・・・・でですね、改めて今回の公表文書を読みますと(再掲します)、

『「中長期的な物価安定の目途」について

1. 日本銀行は、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」を理念として、金融政策を運営している。その際の「物価の安定」は、中長期的に持続可能なものでなければならない。

2. 本日の政策委員会・金融政策決定会合では、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けた日本銀行の姿勢をさらに明確化する取り組みの一環として、「中長期的な物価安定の目途」を新たに導入した。

3.「中長期的な物価安定の目途」は、日本銀行として、中長期的に持続可能な物価の安定と整合的と判断する物価上昇率を示したものである。この「中長期的な物価安定の目途」について、日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とすることとした。従来は、「中長期的な物価安定の理解」として、中長期的にみて物価が安定していると各政策委員が理解する物価上昇率の範囲を示していた。』(今回公表された『「中長期的な物価安定の目途」について』より、以下同様)

で、この続きにこれでもかとうだうだと説明が続きまして・・・・・・

『4. 「中長期的な物価安定の目途」の背後にある「物価の安定」についての基本的な考え方については、以下のとおり、これまでと同様であることを確認した。

@概念的定義:「物価の安定」とは、家計や企業等が物価水準の変動に煩わされることなく、経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況である。

A時間的視野:十分長い先行きの経済・物価の動向を予測しながら、中長期的にみて「物価の安定」を実現するように努めるべきものである。

B中心的指標:物価指数としては、国民の実感に即した、家計が消費する財・サービスを対象とした指標が基本となり、中でも、統計の速報性の点などからみて、消費者物価指数が重要である。』

この部分は2006年3月に公表された『「物価の安定」についての考え方』の説明文の冒頭から4パラグラフまでの内容と合致していますわな。

『5.「中長期的な物価安定の目途」を具体的な数値として示すに当たっては、これまでの点検と同様、@物価指数の計測誤差(バイアス)、A物価下落と景気悪化の悪循環への備え(のりしろ)、B家計や企業が物価の安定と考える状態(国民の物価観)、の3つの観点を踏まえて検討した。その際、日本経済の構造変化や国際的な経済環境などを巡り、先行きの不確実性が大きいことに留意する必要がある。このため、「中長期的な物価安定の目途」について、現時点では、「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にある」とある程度幅を持って示すこととした。そのうえで、「当面は1%を目途」として、金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。

6. 「中長期的な物価安定の目途」は、今後も原則としてほぼ1年ごとに点検していくこととする。』

この部分は先ほどと同様の『「物価の安定」についての考え方』の説明文の5パラグラフから最後までの内容に相当する部分ですわな。

で、今回ちょっと違うのは「のりしろ」について明確に記述している事(物価安定の明確化の時ものりしろについては明言しておらず、2006年の段階では『物価下落と景気悪化の悪循環の可能性がある場合には、それを考慮する程度に応じて、若干の物価上昇を許容したとしても』という分かったような分からんような言い方しかしていない)が違うのと、『金融政策運営において目指す物価上昇率を明確にした。』と言う表現をして、その水準が1%という事なのですが・・・・・・・・



えーっとですな、そもそも論で申し上げれば、以前の『「物価の安定」についての考え方』の記載してある『新たな金融政策運営の枠組みの導入について』(2006年3月公表)の冒頭に『日本銀行法は、金融政策の理念として、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と定めている。日本銀行はこの理念に基づいて適切な金融政策運営に努めている。』とあって、その物価の安定を図るという「物価の安定」って何ぞやという事で、それを「中長期的な物価安定の理解」という形で明示していた訳ですよね。

つまりですよ、今回「金融政策において目指す物価上昇率を明確にした」とドヤ顔(かどうかしらんが)で書いてある文章って、そもそも従来の話と同じであって、しいて言えば従来は「中心が1%」だったのが「当面は1%を目途」に表現が変わっただけの事であって、金融政策のフレームとしては全然変わっていない訳ですよ。

即ちですな、従来の枠組みにおいては、「中長期的な物価安定の理解が達成できるまで、現在の超緩和的な金融政策を継続する」と言ってまして、その中長期的な物価安定の理解で示す物価水準が「中心1%で2%以下のプラスの領域」ってなっていたのが「1%を目途」となっただけの話で、結局の所「中長期的にCPIが1%となる事が展望できるまでは現在の金融政策を継続しますよ」というのは何ら変化が無い訳ですよ。

よってこれを単体で捕まえて時間軸が伸びた縮んだというのはナンセンスにも程がある話ですし、まあ日銀的には今回の「明確化」を持って「インフレ目標導入」とか言われましても「いやあの以前からフレキシブルターゲットとしてのインフレ目標のようなものは出していまして、今回は単に従来出していたものを素人の皆様にも判りやすくくどくど説明したものなんですけど」というような所なのでしょうが、まあそれはそれで政治家の皆様やメディアの皆様、株式市場や為替市場の皆様が喜んでくれればよろしかばいという感じなんでしょうかね。


しかしまあ何ですな、こんなの出せるならとっとと出せばよという感じでして、今回は「検討指示」となるかと思ったのですが、まあ今回出すことによって政治的な圧力云々の問題は思いっきりありますし、そういう意味では結構アヒャヒャな所もありますが、出している物自体は単に縦書きの看板を横書きにした程度のものでありまして、実質的に何の変化もしていない、という意味で実は確保しているちゅうのが日銀的な結論になろうかと存じます。

#まあこの結果見て内閣の皆さん大喜びなのですからチョロイもんですなという感じですが、さすがに「何で2%じゃないんだ」とご指摘の方もいるのはまあ当然ちゃあ当然ですわなと存じます

こちらに関するその他のネタはまた後で。続いて追加緩和の方につきまして。


○追加緩和の方はちょっとビックリである

改めてURLを
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf

『金融緩和の強化について

1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下の決定を行った。

(1)中長期的に持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率として、「中長期的な物価安定の目途」を示すこととする(注1)。日本銀行としては、「中長期的な物価安定の目途」は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域にあると判断しており、当面は1%を目途とする。

(注1) 「『中長期的な物価安定の目途』について」を参照。

(2)当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないことを条件とする。

(3)資産買入等の基金を55兆円程度から65兆円程度に10兆円程度増額する。買入れの対象は長期国債とする(注2)。現在、資産買入等の基金の残高は43兆円程度であるため、今回の増額分と併せ、本年末までに残高は22兆円程度増加することになる(注3)。

(注2) 基金の内容等については別紙参照。
(注3) 日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、年間21.6 兆円の長期国債の買入れを行っている。』

という所までがまあ今回の追加緩和の話ですが、1.については先ほどああでもないこうでもないと書いた通りでして、要するに別段実体ベースで言えば変化がある話ではなく、日銀の時間軸(これは展望レポートでの物価見通しとのセットですね)にも変化のある話ではございませんな。

で、2.につきましては・・・・・・・・

『当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく。』(再掲)

とあるので、何となくインフレ目標っぽく見えますが、そもそも先ほどから申し上げている通り、従来の金融政策の枠組みにおいても、金融政策は「中長期的な物価安定の理解」を達成することを目指して運営していたのでありまして、それは「中長期的に消費者物価の前年比+1%が中心」という事でありますので、そこには実質的な変化はありません。

ただまあこの表現は割とペテン的な所があって、1%という数字が足元の数字なのか中長期的な数字なのかが敢えて曖昧になっているので、インフレターゲットっぽく見せていますけれども、そもそも現在の先進国の金融政策運営において「足元の物価指数」のみを見ながら運営するようなリジッドなターゲットで運営している中銀なんぞございません(あったらFRBもBOEもECBも現在はターゲット水準を上回っているのだから金融緩和政策を終了しないといけませんがな)で、普通に「中長期的な水準」としての数字を示している、と考えるのが本来は妥当なのでございます。大体からしてここでも「それが見通せるようになるまで」と書いてある訳で、つまり足元1%という話じゃないよね、という事でありますが、まあそれ自体は普通の話ですな。

んでもって、後半にある「実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」っていうのはまあ何と言いますか景気づけに言ってるようなものでございまして、そもそも「強力な金融緩和の推進」というのは別に今回初めて言い出した訳でも何でも無いというのに注意すべきかと存じます。すなわちですな・・・・・・

http://www.boj.or.jp/mopo/outline/sgp.htm/
物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営

『概要

日本銀行は、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するために、包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、金融市場の安定確保、成長基盤強化の支援という3つの措置を通じて、中央銀行としての貢献を粘り強く続けている。』(上記URLより)

ということで、そもそも従来やっている政策自体が「強力な金融緩和の推進」(ここにただし自称、などと付けてはいけません^^)でありますという建付けになっておりますので、そういう意味では今回の声明文における「追加緩和をしましたお!」といううちの最初の2つの部分に関しては「はいはいそうですかそうですか(棒読み)」と読むのが本来の正しいお作法なのですが、まあ福井の俊ちゃん時代にはその点に関して散々悪態を付きましたが、麿の場合は今回そういう意味ではやっとこさ福井の俊ちゃんスキームを導入したともいえますなあという感じで、まあ何か努力の跡がみられる(何という上から目線>自分)ので、棒読みとかはいはいワロスワロスなどとは言わないのが大人としての正しいあり方ではないかと思うのであります(散々棒読みしてますかそうですか^^)。


つーことで、問題は「基金買入10兆円増額」でございまして・・・・・・


○これから毎月1.5兆円の購入キタコレ

先ほどの声明文の別紙にありますように、今回長期国債(2年以内ですが)を10兆円購入拡大という話で、しかも別紙にありますように『2.2012 年末を目途に増額を完了する。』というのに変化なし、ということですので、これはすなわち今年末に基金国債買入の残高を19兆円にするのですけど・・・・・・

ちょうど昨日は営業毎旬報告の日だったのでその数字を。
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2012/ac120210.htm/
営業毎旬報告(平成24年2月10日現在)

別表2の所に『「資産買入等の基金」の内訳』というのがありますので、それを見ると宜しいのですが、基金国債買入の残高って直近時点で3.8兆円しかないのですよね。

つまり、今年の12月までですからざっくり言って10か月の間に、今3.8兆円の国債買入残高を19兆円にしないといけませんという話ですから、15.2兆円を10か月で買うという話になるので単純に計算して月に1.5兆円とかの基金国債購入をする訳ですから、週3000億円ペースで買ってやっとカツカツとかいう素敵な話ではございまして、どう見ても2年債が1年TB状態になります本当にカムサハムニダという風情でございまする。

つーかですな、2年ゾーンを月に1.5兆円購入するという事はですよ、現在の2年新発国債の毎回の発行予定額が2.7兆円(第U非価格競争入札の状況によって発行総額はぶれる)という状態ですので、2年ゾーンの新発債の発行額の半分以上を買うような勢い(実際には2年以内の複数銘柄を買う事になるのでそういう単純な話ではないですけど)というおそロシアな展開になりますので、そらまあ現在1年TBがだいたい0.1025オファーの0.1038(月曜の入札のアベレージ)ビットとかだと思うのですけれども、 それこそ2年ゾーンがそんな感じになってしまうんでしょうなあという所でございます。

まあ元々2年ゾーンは月曜の引けベースでも0.120%の引けとか(引けはオファーサイドでした)でしたので、それが0.105/0.110になってSo What?という意見もあろうかとは存じますが、ただまあこの調子の買いが少なくとも年末まで続くのですし、その時点でまだ物価安定の理解達成の目途が立っていなければ少なくとも残高維持の為に買いは続くという事になるでしょうからとか何とか考えますと、すなわち2年カレント近辺の金利がその程度である事あと10か月継続という事ですからして、3年とか4年とか5年とかの金利ってそれにどのくらい影響されるかなという所ではございます。まあいずれにせよ月1.5兆円というのはいい感じでヤケクソの香りも漂う勢いの良さでございまして、1年どころの金利がぐっちゃり潰れているのが2年まで全部波及という事で、全くのウゴカンチ会長状態で瀕死状態の短期市場の皆様から致しますと、まほうの緩和で楽しい仲間がぽぽぽぽ〜ん♪という所でございますなという所でもございます。

今の所イマイチイメージつかみにくいですけれども、2年の金利が1年の金利位になるとしますと、そのゾーンをその金利で買ってどないしますねん誰が買いますねん(って日銀が買うのですが)という事で後ろに波及となるんでしょうなあというのが昨日の引値だったかなあ(それにしては2年とか5年とかをオファーサイドで引値付けないあたりに往生際の悪さを感じますが)という所でしょうか。


というのがまあ今回の新規イベント(^^)に関するあたくしなりの後講釈という所でございますが、以下その他諸々の周辺論点とか

○声明文比較

声明文比較ってのは周辺論点ではないですけれどもね(^^)。

今回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120214a.pdf
前回声明文
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120124a.pdf

まあ今回は「金融緩和の強化について」というお題になっているようにそもそもが書き方違っているので比較しにくいのですが・・・・・・

・現状認識は少なくても下がってはいなさそう

『わが国経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。一方、わが国の金融環境については、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

ということで、個別項目に関しては割愛攻撃になっているので、本日の金融経済月報(そういや1月の月報比較してないので12月以降の推移を含めて比較しますね)を見ないといけませんな。

『わが国の経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。(途中割愛)この間、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

ということで現状判断は少なくとも下がってはいない見るのが妥当っぽい。


・先行き見通しは不確実性を強調するも・・・・・

『わが国経済の先行きについては、欧州債務問題の今後の展開やその帰趨、電力需給の動向や円高の影響など、引き続き不確実性が大きい。もっとも、最近では、欧州債務問題を巡る国際金融資本市場の緊張は、昨年末頃に比べると幾分和らいでいる。米国経済では、バランスシート調整の重石はあるものの、このところ改善の動きがみられている。わが国についても、内需は震災復興関連の需要もあって底堅い展開を辿っている。』(今回)

「不確実性が大きい」というのを強調したのは判断下げではありますが、その後を見ると欧州債務問題、米国経済についての状況判断が上がっており、復興関連の需要云々の部分でも「底堅い展開」という表現になっていて、そういう意味では現状判断の方が実際問題としては上がっている可能性もあるなあとは思われます。まあ復興需要云々に関しては従来の先行き見通しにある「復興関連の需要が徐々に顕在化」という見方の反映でもあるかと思いますが。

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)


・じゃあ何で追加緩和したの???

ということで次の所になるのですが。

『日本銀行は、先行きの内外経済の不確実性がなお大きい中で、最近みられている前向きの動きを金融面からさらに強力に支援し、わが国経済の緩やかな回復経路への復帰をより確実なものとすることが必要と判断した。』(今回)

今回は不確実性対応でもあるけれども、「押し上げ介入」っぽい物言いになっているのが従来の追加緩和と違う所でありまして、俊ちゃんスキーム発動と試しに書いてみたのはその辺りでもあったりしますが後ほど。

『このため、今回、わが国経済のデフレ脱却と物価安定のもとでの持続的な成長の実現に向けて、日本銀行の政策姿勢をより明確化するとともに、金融緩和を一段と強化することを決定した。日本銀行としては、引き続き強力な金融緩和を推進していく。併せて、わが国経済の成長基盤強化にも、中央銀行の立場から取り組んでいく。この間、欧州債務問題がわが国の金融市場ひいては金融システムの安定を脅かすことのないよう、万全を期していく。』(今回)

成長基盤強化とか金融システムの安定(先ほど出しましたURLの中に『物価安定のもとでの持続的成長へ向けた最近の政策運営』というのがあったと思いますが、そちらにあります話でもあります)といういつもの話をしています。

この辺り従来はこう書いてありました。

『日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針である。また、日本銀行は、資産買入等の基金の規模を累次にわたって大幅に増額することにより金融緩和を強化してきており、そのもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めている。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。』(前回)

ということで、まあこの辺はいつもと同じような所ですが・・・・・


・展望レポートの最終パラグラフ相当部分を敢えて今回入れたのは・・・・・・

最後のパラグラフに日銀の意地みたいなのを見た。

『わが国経済は、現在、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な課題に直面している。この課題への取り組みは、わが国経済の新たな経済成長の基礎を築いていくうえで不可欠である。デフレからの脱却は、こうした成長力強化の努力と金融面からの後押しを通じて実現されていくものである。以上を念頭に、民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取り組みを続けていくことが、重要である。』(今回)

展望レポートでもこの話をしていまして、昨年10月の展望レポートの「基本的見解」の最後の部分にこのような記述がございます。
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110a.pdf

『日本経済が直面している問題は、リーマン・ショック後の大幅な需要の落ち込みからの回復という短期・循環的な問題にはとどまらない。より根源的には、中長期的な成長期待の低下という、長期的・構造的な要因が重要である。すなわち、わが国経済は、これまでも、急速な高齢化や労働生産性の伸び悩みなどを背景とした経済成長率の趨勢的な低下という基本的な課題に直面してきた。加えて、日本経済は、震災からの復旧・復興という新たな課題にも直面している。対GDP比で先進国中最大の政府債務を抱えるもとで、市場からの信認を確保し続けていくため、中期的な財政健全化への展望を明確にする必要にも迫られている。こうした課題を克服し、先行き、新たな経済発展の基礎を築いていくためには、日本経済が置かれている以上の状況を正しく認識しつつ、政府、中央銀行、金融機関、民間企業とも、中長期的に持続可能な成長力の強化に向けて、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくことが重要である。』(昨年10月公表の展望レポートより)

ということで、このパラグラフは「ワシらは押し上げ介入ちっくに追加緩和したんですから特に政府はうだうだしてないでちゃんとして下さいね」という風に政府に球を投げかけているという部分でもあると解釈致しましたがどうでしょうかねえ。


○俊ちゃんスキームと呼んだ訳

今回の決定に関してですが、先ほど申し上げたように「押し上げ介入」ちっくでもあり、「姿勢を見せる」というような決定という意味では福井総裁時代の当座預金残高拡大の最後の局面に似ているのではないか、というような話を識者の方々(^^)としておりました次第でございまする。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2004/k040120.htm/(2004年1月の当座預金残高目標拡大)

で、まあここにありますように、この時は経済見通しに関しては景気回復についての見通しは強めとなっている中(ただし物価の見通しは弱め)「政策スタンスを明確に示す」という最早何が何だか判らない「姿勢を見せる」追加緩和という俊ちゃん節爆裂の措置でございましたわな。

『わが国の景気は緩やかに回復しており、先行きについてもその持続が見込まれる。ただ、回復のテンポは、過剰債務など構造的な要因が根強いもとで、なお緩やかなものに止まると考えられる。消費者物価は、需給バランスが徐々に改善しつつもなおかなり緩和した状況の中、引き続き小幅の下落基調を辿るものと予想される。この間、金融・為替市場の動きとその影響には注意が必要である。日本銀行は、以上のような情勢を踏まえ、デフレ克服に向けた日本銀行の政策スタンスを改めて明確に示し、今後の景気回復の動きをさらに確かなものとする趣旨から、当座預金残高の目標値の引き上げを行うことが適当と判断した。』(上記URLより)


また、今回の基金買入の「10兆円拡大」に関しては2009年3月に実施された輪番オペ予想外の拡大にも似ている所があるなあとも思うのです(この時の総裁は麿なので俊ちゃんスキームではないが俊ちゃんっぽい香りがしました)。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2009/k090318.pdf(2009年3月の輪番拡大)

まあこの時は輪番の拡大はあるかもねという話ではありましたが、従来輪番の増額を行う際には月2000億円の拡大を行うというのがパターン化されていましたけれども、この時は従来の刻みをいきなり増やして4000億拡大で市場が「おお!」と反応したのですよね。

『金融市場における年度末越えの資金調達は概ね目処がつきつつあるが、年度明け後も、後述するような厳しい金融経済情勢を背景に、市場の緊張が続く可能性が高い。このような状況下、日本銀行は、金融市場の安定を確保するため、引き続き、積極的な資金供給を行っていくことが重要であると判断した。こうした観点から、長期の資金供給手段を一層活用し、円滑な金融調節を行っていくため、長期国債の買入れを以下の通り増額することとした。

これまで年16.8兆円(月1.4兆円)ペースで行ってきた長期国債の買入れを、4.8兆円増額し、年21.6兆円(月1.8兆円)ペースで実施する(当月より実施)。』(上記URLより)

この時はまあ経済見通し自体はそんなに強くは無かったですが、どうせ2000億円やるなら折角だから4000億円どどーんとやってサプライズにしましょうや、的な動きになって居た訳ですが、今回に関してもそんな雰囲気は濃厚に漂う所ではございます。何せ10兆円拡大しましたので、買入実施時期のエンドを延長しない限りここからの残高拡大はさすがに物理的に厳しい事になる(新発を殆ど吸収するような状況になったら2年ゾーンあたりの中短期ゾーンの投資をそれなりに行っている銀行業態憤死してしまいますがな)と思われますので、そーゆー意味では今回は刻まないでどどーんと10兆円増額したのは結構思い切っている感じではあります(物理的制約という意味で)。

今後は増額するなら買入を実施する期間の延長をする(例えば月1.5兆円の買入をその先半年継続すれば償還来る分の落ちもある可能性が出てくるが、とりあえず単純計算では9兆円近く増額が出来る)か買入対象銘柄の足を長くする(ただし残存3年に延ばしても3年新発債というのは無いので極端に買入対象銘柄が増える訳では無い、ただ中短期の金利はどどーんと下がるので次にやらなければいけなくなった時のタマですな)という感じで、いずれにせよ物理的にはこの辺りがほぼ今の形では限界っぽいので、限界まで一気に打ってきましたよんというのも以前の輪番サプライズ拡大を彷彿させる感じですなあという所であります。


○まあ為替と株価に効いたからよかったんではないですか

昨日の反応としては、最初は為替も株も債券もあまり動かず、債券はちょっと上昇しましたが、その後謎の買いで1円高まで上昇して(何故サーキットブレーカーが発動しなかったのかが意味不明、どういうシステムになってるんだ)下落しましたけれども大体20銭高位に上昇してカーブはブルスティープ(中期の引値が全部スーパービットサイドでついているような気がするのですが・・・・・)となりました。

んでもって為替は最初反応してなかったのですが、その後円安進行してて、その流れの中に謎の買いもあったので、まあこの手のネタが好きな海外さんが反応したのではないかという風情。円安進行を見て平均株価も上昇と中々素敵な展開ではございました。

まあ何ですな、株価と為替に効いたからとりあえず日銀的にはしてやったりという感じでございましたが、その時間にまあ仲間内で話していたのは「これで麿が会見でダイナジーな発言をしたらテラアホスなのでもう今日は会見しなくていいよ」とか「精巧な麿の着ぐるみを福井の俊ちゃんに着せて・・・・」などというような碌でもないネタでございましたが、どうもその後のヘッドラインを見ておりますとさすがの麿もぶち壊し発言は殆ど無かったようで(イブニングセッションでは債券先物は上昇していました)誠に結構と申しますか、失礼な事を仲間内で話していて麿様どうもすいませんという所でございます。


○米国がインフレターゲット導入というなら日本のこれもインフレターゲット導入ですわな(水準の問題はあるが)

まあ何ですな、今回決定した物価安定の目途云々に関してですけれども、まあどう見ても従来の延長線上であまり大きな変化があるとは見えないのですが、それは米国が先般のFOMCで示したデュアルマンデートの理解(とあたくしが勝手に命名しているもの)に関しても従来の延長線上で大きな変化があった訳では無い(最早大杉勝男なので引用しませんが以前バーナンキ議長の会見を引用した時にその部分ありましたよね)のでございまして、米国の措置を「インフレターゲット導入」というのであれば、今回の日銀の措置に関しても「インフレターゲット導入」というべきであり、これを「米国はインフレターゲットだが日本のはターゲットではない」とかいうのは何ぼなんでも議論としておかしい。

いやね、当然ながら水準の1%の方に対する批判というのはあると思いますが、枠組みそのものに関して米国は褒めるが日本はdisるとかいう人がいたらそれはちょっとバイアス掛かりまくりだと思いますよ。

ちなみに、あたくしはそもそも米国の先般の措置がリジットなインフレターゲット導入じゃない(フレキシブルターゲットと言えばフレキシブルターゲット)と思っていますので(デュアルマンデートなのだから当然だし、大体からしてLonger runの2%にコミットしている訳でも無いフレキシブルターゲットでしょこれって)、日銀の決定に関しても従来から行っているフレキシブルターゲットの中で1%を強調しただけでしょとしか認識しておりませんでありますが、まあ数字の問題という大問題はありますが(^^)、枠組み自体は(展望レポートでの経済見通しの数値化なども含め)日本と米国の建付けが更に似てきてますなあというのはございます。


ま、日本と米国の違いはそもそもの物価水準がアレというのに加え、政治圧力として掛かっているのが日本の場合は「緩和ヤレヤレ」の一方で米国の場合は「物価が上昇しているのに緩和継続とはケシカラン、銀行や証券会社優遇か」というような話でございまして、米国の場合の明確化は政治的に「中長期的に2%を目指しているんですよ」というアピールも必要という意味では日本と逆方向なのがチャーミング。そらまあ物価水準が違いますから当たり前っちゃあ当たり前ですけどね。


○政治家の反応メモ

とりあえずいいからお前は喋るなと。

http://jp.reuters.com/article/JPbusinessmarket/idJPTYE81K3IO20120214
日銀のCPI1%メド、実質的インフレターゲット決定と認識=財務相
2012年 02月 14日 15:15 JST

・・・・・・・・いやだから以前からそういう意味では実質的インフレターゲットは実施しているのでありまして、財務大臣がいきなりこういう話をすると残念無念という感じではございます。従来の枠組みを理解してませんでしたと言ってるのと同じじゃわ。

『物価政策でも消費者物価の前年比上昇率1%を目指すと明確な表現に変更したことについて「実質的にインフレターゲットを決定したものと受け止めている」と述べ、「10兆円の長期国債の買入増を表明したことは1%の物価上昇実現に向けた日銀の具体的な強い意志の表れだ」と語った。』(上記URLより)

ただまあ後半にある「日銀の意志の表れ」というのがレクの跡を感じさせる所でございますので、まあ日銀的にも今回「実質的インフレターゲット」という話をされる件に関しては敢えて無駄に突っ込まないという方針を取っているなあという雰囲気は感じました。


えーっとね、球はそっちに行ってるんですけど・・・・・

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities/idJPTK073213420120214
UPDATE1: 日銀の追加緩和「大事なのは結果」、株・為替・物価への効果を注視=前原民主政調会長
2012年 02月 14日 18:41 JST

いやあの「大事なのは結果」というのは正論なのですが、経済に関しては与党の皆さんも重大な責務を負っておられるのですが、何ですかその他人事のようなコメントは・・・・・

ちなみに、インフレ目標導入と報じていたのはあたくしの記憶によると朝日、共同とかで、インフレ目標導入とは書いていなかったのは読売(読売は追加緩和をヘッドラインにしていた)だったかなあとか思いますが、ちょっとURLとか集めるの面倒だったのでとりあえずメモだけね。

あとですな、そういや昨日は色々なレポートを斜め読みしましたが、インフレ目標インフレ目標連呼でいやはやという感じでございました。いやまあ米国のアレがインフレ目標なら以下同文という感じですけど・・・・そういや武士の情けで名は伏せますがどこぞのレポートで米国の物価安定の理解の2%の数値に関して「コアPCEデフレーター」とか思いっきり間違えてレポート書いている人がいてあまりの残念さに泣きそうになった(足元の参照なら兎も角、中長期的な目標にコアを使うのは理屈からしておかしい。コアを使うのは足元のブレを排除してトレンドを見るための便宜的な扱いであって、中央銀行が本来目指す物価は当然総合物価指数である)ことだけ付け加えさせて頂きたく存じます(^-^)。


○その他論点は気が付いたら書きます

ということで(さすがに今日は下準備してますので^^)延々と書いて誠に申し訳ありませんでしたが、英文公表分の比較とか、いろいろとまだまだネタがあるっちゃあありますけれども、まあとりあえず会見とかも続きますので続きは明日ということで(^^)。

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2012/02/02

○12月会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g111221.pdf

・海外経済に対してここでも懸念

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

まずは欧州問題。

『先行きについて、委員は、欧州ソブリン問題を解決するうえで即効薬はなく、市場の緊張状態が長期間続く可能性が高いとの認識を共有した。多くの委員は、年明け後、財政懸念国の国債や欧州金融機関の社債のリファイナンスが本格化することに言及した。また、複数の委員は、来年6月末までに9%の自己資本比率の達成が求められている中で、欧州系金融機関によるドル建て資産を中心とした資産の圧縮の動きが既にみられており、今後、こうした動きが加速し得ることに懸念を示した。』

『この点に関連し、別の複数の委員は、現状は、欧州系金融機関による資産圧縮のペースが緩やかであるため、他の金融機関が何らかのかたちで埋めていくことが可能となっている面があると指摘した。何人かの委員は、新興国では欧州系金融機関のプレゼンスが小さくないだけに、それらの資産圧縮のペースが加速した場合の新興国経済への影響などについては、不確実な面が大きく、注意してみていく必要があると述べた。』

どう見ても悪化懸念ですな。そして海外全体に関して。

『海外の金融経済情勢について、委員は、欧州ソブリン問題を背景とした国際金融資本市場の動揺やそれに伴うコンフィデンスの低下、新興国における既往の金融引き締めの影響などから、減速しているとの認識で一致した。』

『先行きについて、委員は、当面は、欧米を中心に減速が続くものの、その後は、新興国に牽引される形で、成長率は徐々に高まっていくとの見方を共有した。』

ほほう新興国(棒読み)

『ある委員は、インフレ率が高めの水準で推移しており、今後の政策運営の難度を高める可能性があるという点は、新興国・資源国だけでなく、欧米でも同様であり、留意が必要と指摘した。』

ほほう。で、その先がま〜ああだこうだと続くのですが、欧州に警戒していますという話が続きますのでそこはスルーしまして問題の新興国。

『新興国・資源国経済について、委員は、既往の物価上昇による実質購買力低下や金融引き締めに加え、欧州経済の減速に伴う輸出減少の影響などから、幾分減速しているとの見方で一致した。欧州ソブリン問題の波及について、複数の委員は、一部の国では、貿易面を通じた影響だけでなく、欧州系金融機関による資産圧縮の動きの影響もみられていると指摘した。』

ということで、これで先行きが回復するんかいなという感じですが・・・・

『そのうえで、委員は、金融・財政面での政策対応余地が小さくないことから、先行き景気の大幅な減速は避けられるとみられるが、物価安定と成長を両立することができるかどうか、引き続き不透明感が高いとの認識を共有した。』

ということで、不透明感が高いのに先行きの世界経済の見通しは「新興国に牽引される形で成長率は徐々に高まっていく」んですね(棒読み)というところでございますが、まあそういう所ですな。


・国内景気の先行きリスク

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、海外金融経済情勢を巡る不確実性がわが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要があるとの見方で一致した。とりわけ、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れ要因となる可能性があるとの認識を共有した。また、来年の早い時期に予定されている財政懸念国の国債や欧州金融機関の社債のリファイナンス本格化や、欧州国債全般を巡る格下げ方向の動きが、国際金融資本市場の緊張感を一段と高める可能性があるとの見方で一致した。』

ふむふむ。

『何人かの委員は、海外経済が一段と下振れた場合には、為替円高と相俟って輸出が基調として減少に転じるとともに、株価の下落やマインドの悪化などから、国内設備投資等の内需も下振れる蓋然性が高まると述べた。国内固有のリスク要因として、何人かの委員は、電力供給の不確実性や復興関連予算の執行の遅れなどを指摘した。』

ということで為替円高キタコレという所でございまするが、リスク認識もこんな感じで先行き見通しが楽観に過ぎないかねという感じはせんでもない。


・基金社債買入札割れの件

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所でおやっと思ったのはこの辺り。

『基金による社債等買入オペレーションにおいて札割れが続いていることについて、複数の委員は、金融緩和が浸透していることの表れであり、引き続き、買入れを続けていくことが、投資家の安心感を通じて、社債の発行環境を良好に保つことにつながるのではないかと指摘した。』

・・・・・・・・・うーむ。

えーっとですな、この理屈って前回の社債やCP買入の時に札割れが起きた時の理屈に似ているのですが、前回のリスク資産買入はリスク性資産の価格が市場の緊張の結果おかしくなっていたので、その正常化をする為に行う(ので市場が正常化すると買入の応札がゼロになるような水準に買入のレートを設定している)という信用緩和の措置だったのでこの理屈で良いと思うのですが、今回の基金買入って「買入額の目途」というのがあった筈ですので、そういう意味からすると「買入残高が積みあがらないのはケシカラン」という話にならないといけないような気も。

ただまあ何ですな、現実問題として社債の買入に関しては札が集まるのかという事もありまして、ここから無理繰り残高増やそうと思ったら買入対象の拡大(銘柄ごとの買入上限を拡大するか対象となる銘柄の信用判定を緩和するか)という話になるという事で、まあそれはプルーデンス的に日銀として受け入れ難いという話だということなんでしょう。その結果として上記のような理屈が繰り出されるという話になるとあたくしは想像(妄想)しましたがどうでしょうかね??

まあもともと包括緩和政策というのは量的緩和と信用緩和のハイブリッド的な部分がありますので、信用緩和政策としての社債買入に関しては金利が低下した事によって目的は達成されており、今後は札割れとかになって残高目途が達成できなくても買入そのものを継続することによって信用緩和政策としての金利低下が具現化できていれば無問題、という理屈であってもまあそれはそれで話の筋は通ります(が、基金買入の残高の進捗状況ガーとかいう人もあちこちにいると思いますので、その対策を考えないとまたペテン呼ばわりされるだけではないかと思います)から、今回こういう理屈を繰り出して来たんでしょう。

ということで、ここの1文のインプリケーションとしては、まだこの指摘が総意という訳では無いものの、社債買入の札割れを受けて対象の緩和が行われるという可能性は惜しくもあまり高くないでしょうな、という事になるんでしょう、と思います。

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2012/01/25

お題「決定会合レビューだけで本日は勘弁である(汗)」

何で「このままでは回らなくなるから増税」って言わないのかねこの人は。
http://www.47news.jp/CN/201201/CN2012012401001617.html
首相「消費増税は国民に還元」 就任後初の施政方針演説

増税分還元するなら最初から増税すんなよ。単にお前らのばらまきマニフェスト(笑)の財源に使うだけだったら意味ねえわ。

権丈先生のページにこんなのがありましたのでご参考までに。
http://news.fbc.keio.ac.jp/~kenjoh/work/minsyu_nousei.pdf

という悪態は兎も角として決定会合レビューを。

○声明文比較とか

まずは声明文比較。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/k120124a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111221a.pdf(前回)

・ヘッドラインの文言は変わったが中身が同じとはこれ如何に

現状判断部分ですが・・・・・・

『わが国の経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)
『わが国の経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、持ち直しの動きが一服している。』(前回)

ということで持ち直し一服→横ばい圏内ということで踊り場入り認定確定キタコレ、なのではございますが・・・・・・

『すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても底堅く推移している。一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響も残るもとで、横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても底堅く推移している。一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響もあって、横ばい圏内の動きとなっている。企業の業況感については、内需関連業種に底堅さがみられるものの、全体としては、改善の動きが鈍化している。』(前回)

企業の業況感云々は短観が出た直後の決定会合の声明文で必ず出るネタなので、その分が削られるのはまあ仕様という所です。

『この間、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『この間、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

・・・・・・・ということで、現状認識のヘッドライン部分に変更があるのに、需要項目別の中身に関しては何の変更も無いという謎声明文となっています。まあ今日出る金融経済月報を見るとまた変化があるのかもしれませんが、つまり現状認識に変化が無い場合は横ばいが続きますよ、という話ですよねこれって(前回の時点で回復方向が横向きになり、それが継続しています、という事なのでしょうから)。


・先行き見通しは変化なしとな

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きになるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

どう見ても同一文言です本当にありがとうございました。

まあ何ですな、先ほど謎声明文とは申し上げましたが、一応前回時点で「当面は横ばい」という予想をだしているので、今回はそういう意味では当初予想通りは予想通りではあるのですけれども、でもまあこれって先行き見通しにおける「当面」というのの時間軸がどうなっているのというのが気になりますなあ。たぶん用語的に「当面」というのは「今後2〜3か月(というか1四半期程度)」とかいう位じゃないかと思うのですが、実際問題としてはどういう感じなんでしょうかね。つーか「当面横ばい圏内」という見通しを前月から変えないと1か月分だけ下方修正になるんですけどね(ニヤニヤ)。


・リスク要因

展望レポート中間レビューの部分は次に致しますので先にリスク要因の所を。

『景気のリスク要因をみると、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れをもたらす可能性がある。米国経済については、このところ一部に底堅い動きもみられているが、バランスシートの調整圧力は引き続き経済の重石となっている。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れをもたらす可能性がある。米国経済については、バランスシート調整の影響などから、減速が長引く可能性がある。』(前回)

欧州に関しては警戒継続、米国に関しては「一部に底堅い動きもみられるが」と減速は長引かなかったですねというのを入れて若干明るくしていますが、バランスシート調整圧力を「経済の重石」として「偽りの夜明け」への懸念を表明という事でまあ引き続き下振れ警戒。


『新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。海外金融経済情勢を巡る以上の不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。』(今回)

『新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。海外金融経済情勢を巡る以上の不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。』(前回)

こちらは変わらずですな。

『物価面では、国際商品市況の先行きについては、地政学リスクの影響を含めて、不確実性が大きい。また、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

『物価面では、国際商品市況の先行きについては、上下双方向に不確実性が大きい。また、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(前回)

物価に関しては上下双方向の不確実性というのを「地政学リスクの影響」と来て、まあイラン問題による原油価格上昇リスクに言及となりましたな。


・展望レポート中間レビュー

『10月の「展望レポート」で示した見通しと比べると、2011年度の成長率は、海外経済の減速に加え、過去の実績値の改定の影響もあって、下振れるとみられる。もっとも、わが国経済は、2012年度前半には、緩やかな回復経路に復していくとみられ、2012年度および2013年度の成長率については概ね見通しに沿って推移すると予想される。物価については、国内企業物価・消費者物価(除く生鮮食品)とも、概ね見通しに沿って推移すると予想される。』(今回)

でまあ別紙の方に見通しの集計表(参考1)とリスクバランスチャート(参考2)があるのですが、2011年度の実質GDPがドカンと下方修正されてて2012年度も微妙に下がってまして、2013年度は若干上がっていますが、それは2012年度の下げの下駄修正分なんでしょうなこれ。

で、声明文の方にもテクニカル要因の説明(というか申し開きというか)がありますけれども・・・・・

『(注3)2011年度の実質GDP成長率の修正には、過去の実績値の改定に伴い、2011年度への発射台(年度中の各期の前期比伸び率がゼロであった場合の年度平均の前年比)が約0.5%ポイント低下したことの影響も大きい。』

ほほう(棒)

で、そこの次の注にはこんなのが。

『(注4)消費者物価指数の参考指数として、連鎖基準指数が公表されている。その連鎖基準指数ベースでみた場合、先行き2013年ごろの前年比は、通常の固定基準年指数に基づく今回の消費者物価見通しに比べて、若干低くなっている可能性がある。』

つまりは物価はアガランチ会長だという事を言いたいと。

でもってリスクバランスチャートですけれども、2013年度の所はそうでもないのですが、手前の2年(2011年度は実質2か月ですけど)に関してはチャートが若干左肩寄りになっているという感じでして、つまり下振れ警戒度が高まっているという話になるかと思います。

そらまあ相変わらず先行き見通しが「資源国や新興国が引っ張って世界経済の需要が伸びるから日本経済も回復軌道に乗ってくるでしょう」となっている訳で、そっちの方が見方甘くねという感じですから、それとのバランスという意味では下振れ警戒になるのはそうですかねとゆー所で。


・今回実に味わいがあるのが最終パラグラフ

最終パラグラフの自己アピールコーナー(^^)である。

『日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針である。また、日本銀行は、資産買入等の基金の規模を累次にわたって大幅に増額することにより金融緩和を強化してきており、そのもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めている。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。』(今回)

『日本銀行は、資産買入等の基金の規模を累次にわたり大幅に増額し、そのもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めている。また、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針を明らかにしている。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針である。』(前回)


文言は前回と今回は一緒なのですが、何が違うかと言えば見ればお分かりのように語順が変わっています。

でまあこういう語順が意味も無く変わるというのは無くて、まあ通常あるパターンとして文章の据わりの関係で語順をいじるって可能性は勿論あるのですが、今回に関しては別にここの順序を入れ替える必然性は通常だったら無い筈で、こういう時は何考えて語順を入れ替えたのかを考えないといけません(いや別に考えなくても良いのですが、考えないとマニアの名折れですから^^)。

・・・・・・で、0.5秒ほど考えた結果(つまり一瞬で思ったのですが^^)あたくしが妄想したのは「ああこれはFOMCを意識してるのね」という事ですな(^^)(^^)(^^)。

つまりですな、今回のFOMCで出てくる施策(のようなもの)ってメインが「政策金利の将来予想パスの提示」ということでして、それはつまり時間軸政策みたいな部分という事になります。で、どうせ「米国が2013年中は利上げしないと言っているが日銀は何でそういうことを言わないんだケシカラン」とかいちゃもんつけられるのが毎度の事になるので、そーゆー流れの中で「日銀だって時間軸みたいな政策をやっているんですよ」というのを強調する為に、従来は「資産買入していますよ」というのを最初において、その次に時間軸みたいな部分を記述していた(MBSの償還再投資やらツイストオペの実施とかやっていた時分から最近までは「資産買入」の方が注目されていたから)部分の語順を逆にしたという事でしょう。

ま、たぶんそれで合っていると思うのですが(^^)、この芸の細かさが日銀クオリティという所ですかそうですか。これでまたFEDがMBSの買入とかの実施(それを最近ではQE3とか言うようですが、本当の事言うとQEというよりはCE(特定市場のお助け対策ですから)なんですけど、どうも金融政策に関する話題ってキャッチ―な説明の為に重要な論点をスルーする傾向がありますなあ)とかなった場合にまた語順が変わったら更に詫び寂びの世界を感じるという事で(^^)。

#昨日の端折りネタの続きをやってる時間が無くてどうもすいません

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2012/01/17

○生活意識アンケートネタを忘れてただよ

金曜に出てたんですけどね(汗)
http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1201.pdf

質問と回答の数値は21ページ以降、図表形式になっているのはその前の部分になります。Q&A方式なので引用部分に『』とかつけると見苦しくなるということで『』つけませんが、以下のQ&A部分は上記URLより引用していますのでその辺よろしくお願いいたします。

・物価に関して

23ページ以降のあたりを見るのが吉ですが。

Q12.次に「物価」についておうかがいします。あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか(「物価」とは、あなたが購入される物やサービスの価格全体のことです)

1 かなり上がった5.8 ( 7.1 )
2 少し上がった40.9 ( 44.8 )
3 ほとんど変わらない39.2 ( 35.0 )
4 少し下がった12.1 ( 11.0 )
5 かなり下がった1.2 ( 1.0 )

Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。

平均値:+3.2 ( +3.6 )
中央値:+0.5 ( +1.5 )

・・・・・ということで上がったが減って変わらないが増えてきたキタコレでありまして、しかもその数値ですが中央値の数値が見事に低下していますな。


Q14. 1年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる5.8 ( 7.8 )
2 少し上がる49.3 ( 54.1 )
3 ほとんど変わらない34.1 ( 30.5 )
4 少し下がる8.6 ( 5.3 )
5 かなり下がる0.5 ( 0.3 )

Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。

平均値:+3.6 ( +4.4 )
中央値:+2.0 ( +3.0 )

・・・・・短期的なインフレ期待低下キタコレ。もともと消費者アンケートで出てくる数値って統計上のCPI数値と比較して派手派手に高い数値が出てくる傾向がある中でこの低下というのはどう見てもインフレ期待低下です本当にありがとうございました。


Q16. 5年後の「物価」は、現在と比べるとどうなると思いますか。

1 かなり上がる18.7 ( 24.5 )
2 少し上がる51.3 ( 51.5 )
3 ほとんど変わらない16.8 ( 15.6 )
4 少し下がる8.8 ( 5.3 )
5 かなり下がる1.7 ( 0.9 )

Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。

平均値:+4.0 ( +4.7 )
中央値:+2.0 ( +3.0 )

・・・・・・まあそれよりもアレなのは中長期的なインフレ期待が低下していますね、という数字が出ている所ですかね。ただまあ上昇低下という見方(Q16)を見ると先行きの見方に対して方向性までは顕著な変化という訳では無いですかねという所ですな。


・かなりヒマネタだが日本銀行に対する信頼がどうのこうの

これは図表の方を見た方が分かりやすいと思いますが、18ページとか19ページの辺りに表があって中々味わいがあるのですが・・・・・・

Q23.日本銀行について、以下の(1)〜(5)の項目のそれぞれに対し、あなたの考えにもっともあてはまると思われる番号に1つずつ○を付けて下さい。

(5) 日本銀行を信頼していますか。

1 信頼している13.8 ( 12.8 )
2 どちらかと言えば、信頼している28.9 ( 28.1 )
3 どちらとも言えない46.8 ( 48.7 )
4 どちらかと言えば、信頼していない7.4 ( 6.7 )
5 信頼していない2.5 ( 2.4 )

・・・・・前回との比較だけで見ると「信頼している」の増え方が多いように見えますが、18ページの方を見ますと前々回からの比較がありまして、これを見ると着実に「信頼していない」が増えていますなあという所でありまして何と申しますか味わいがあると言いますか、そらまあ「追加緩和見送り」とか報道するようなクレクレ状態が蔓延すりゃあボディーブローのように効いてきますわなあと思うのでありました。


Q23-c.((5)で4または5(『信頼していない』)と答えた方への質問)信頼していない理由は何ですか。【2つまでの複数回答】

1 日本銀行の活動が物価や金融システムの安定に役立っていると思わないから43.2 ( 47.4 )
2 政策の内容や意図に反対だから10.3 ( 8.5 )
3 中立の立場で政策が行われていると思わないから33.3 ( 35.7 )
4 日本銀行の活動について分かりやすい広報や意見聴取の努力が不足していると思うから38.0 ( 35.7 )
5 組織や職員に誠実なイメージを持っていないから24.4 ( 25.4 )
6 その他6.1 ( 4.2 )

・・・・・・これまた19ページを見ますと吉なのですが、トレンドとして増加している回答はのは「政策の内容や意図に反対だから」という事でして、はあそうですかという所ではございますが、政策の内容に反対というのは兎も角、意図自体はマンデートの通りですからそっちに文句言われてもねえと言う気はするのですが。まあ「政策の結果が出ていないから」という選択肢になると思われる1番の表現がニャンとも微妙なので(と言ってこの選択肢を詳しく「物価」と「金融システム」に分ける意味があるのかも良くワカランチ会長ですが)アレなのですがね。

ということで肝心の景況感のネタは華麗にスルーでした。


○さくらレポートは震災からのV字回復は終了して「景気回復の足踏み」である

概要
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer120116.htm/

全文(PDFで55ページあるので注意)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer120116.pdf

んでもって概要の方からサラサラと。

・景気回復の足踏みという総括判断

『I. 地域からみた景気情勢』から。

『各地の景気情勢を前回(11年10月)と比較すると、7地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄)から、海外経済減速の影響などを背景に、このところ「持ち直しのテンポが緩やかになっている」、あるいは「持ち直しの動きに一服感がみられる」、「足踏み状態にある」など、持ち直しの動きが一服しているとの報告があった。』

ということで今回のさくらレポートの主要論点はこれですなという感じですが(^^)。

『一方、四国からは、「生産面で弱い動きがみられるものの、全体としては持ち直し基調にある」と、前回から大きな変化はないとの報告があった。また、東北からも、「震災関連特需による押し上げ効果もあって、被災地以外の地域では震災前を上回る水準にまで復してきているほか、被災地の一部でも経済活動再開の動きがみられるなど、全体として回復している」と、前回までの動きが現在も継続しているとの報告があった。』

ほほう(棒)。


・でまあ需要項目別

『公共投資は、東北から、「大幅に増加している」、関東甲信越から、「増加に転じている」との報告があった一方、他の7地域(北海道、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)からは、「減少している」等との報告があった。』

公共投資は総じてみるとそんなに変わらんということですかな。

『設備投資は、震災後の復旧関連投資の増加や、新製品対応投資、新規出店にかかる投資増などを背景に、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、中国、四国)から、「持ち直し」や「増加している」との報告があった。一方、近畿からは、「企業収益が頭打ちとなる中、やや弱めの動きがみられる」との報告があった。また、九州・沖縄からは、「弱めの動きとなっている」との報告があった。この間、複数の地域から企業の業況感について、海外経済の減速や為替円高などを背景に、慎重化しているとの報告があった。』

設備投資は総じてみると持ち直し傾向も景況感が慎重化と。

『個人消費は、一部耐久消費財で駆け込み需要の反動減がみられているものの、消費マインドの改善や被災地での復旧関連需要などを背景に、6地域(東北、関東甲信越、東海、近畿、中国、四国)から、「持ち直し」や「増加を続けている」、九州・沖縄から、「底堅い動きとなっている」との報告があった。また、北陸からは、「下げ止まっている」との報告があった。一方、北海道からは、「持ち直しの動きが鈍化している」との報告があった。』

個人消費は概ね増加傾向とな。

『住宅投資は、7地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、中国、四国、九州・沖縄)から、「持ち直している」等との報告があったほか、近畿からは、「下げ止まりの動きがみられている」との報告があった。一方、北陸からは、「弱い動きとなっている」との報告があった。』

住宅投資は持ち直し傾向。

『生産については、海外経済の減速に伴う輸出の弱まりなどを背景に、ほとんどの地域から、「増加ペースは緩やかになっている」や「このところ弱含んでいる」、「横ばい圏内の動きとなっている」との報告があった。こうした中、北陸からは、「全体としては生産水準が回復している」といった報告があった。』

生産が弱めですなあ。

『雇用・所得動向については、多くの地域から、「引き続き厳しい状況にあるが、改善の動きがみられる」との報告があった。雇用情勢については、ほとんどの地域から、「改善傾向」との報告があった。また、雇用者所得についても、多くの地域から、「下げ止まっている」等との報告があった。』

雇用が改善傾向(ただし元の水準が厳しいけど)という事ですな。


・地域の視点ネタ

前回そういえばスルーしましたが、『II. 地域の視点』というのがありまして、その時々のトピックスをネタにしているのですが、今回のお題は『各地域における最近の雇用情勢について』という話です。

『各地域における雇用情勢は、東日本大震災(以下、「震災」)後に総じて厳しい状況となったものの、その後は生産水準の回復や国内需要の持ち直しなどを背景に、改善傾向をたどっている。地域別にみると、産業構造や復旧・復興需要がもたらす効果の違いなどを反映して、改善の動きにはばらつきがみられている。』

まあばらつきがあるのは今回のさくらレポート全体的にそんな感じもせんでもない。

『こうした改善の動きは、製造業・非製造業とも非正規社員が中心であり、正規社員については慎重な雇用スタンスを崩していない。すなわち、製造業では、先行きの不透明感が強いことなどを理由に多くの先が国内での正規社員の増員には慎重なスタンスを維持している。非製造業では介護関連などで正規社員を増員する動きがみられているものの、収益低迷や人口減少に伴う先行きの内需低迷予想などを背景に、正規社員の増員には総じて慎重なスタンスにある。』

まあ概ね短観の雇用判断DIに沿った話ですな。ということでまあ一応「改善傾向」となっている雇用をネタにしてはいるものの、そもそもの水準がアレですのでそんなに景気の良い話にはなっていませんな。最近はどうも景気が長々とパッとしないのでこちらで使われるトピックスもこういう感じのものが続いていますな、過去2年分(去年4月は震災の為地域の視点コーナーそのものが無かった)のお題はこの通り。

2011年10月:最近の地場企業の経営戦略について
2011年7月:東日本大震災後の地域経済における特徴的な動きについて
2011年1月:各地域において成長が期待されている産業の動向と今後の課題
2010年10月:最近の雇用・所得動向
2010年7月:最近の家計支出の動向と関連企業の対応
2010年4月:最近の地場企業の設備投資動向
2010年1月:根強い価格下落圧力の中での企業戦略

ちなみに、もっと昔に戻ると

2007年4月:1.各地域からみた最近の雇用・賃金情勢について
        2.近年の東京における高額消費市場の特徴――海外ブランドや外資系ホテルの動向を中心に
2007年1月:各地域からみた最近の住宅投資動向について

などという景気の良い話の時もありましたなあ(遠い目)と言った所でございまする。

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2012/01/13

○ボルカールール関連

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120112a.htm/
ボルカー・ルール(案)に関する米国当局宛のレターについて

『金融庁及び日本銀行は、2011年12月28日、米国の金融規制当局が公表したボルカー・ルール(案)の市中協議文書に関して、米国当局宛に連名でレターを発出しました。内容については、以下をご覧ください。』

ということで内容はこちら。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120112a1.pdf(原文)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120112a2.pdf(抄訳)

めんどいので抄訳から。

『このレターは、ボルカー・ルール(案)に関する我々の懸念に対して、適切な考慮を求めるものである。2点指摘したい。』

『第一に、金融規制の国境を越えた影響について適切な考慮を行うことの重要性と、影響を受ける国との協調の必要性について指摘する。金融規制の域外適用に関して、母国当局が規制・監督の主要な責任を負っていることについては、米国も異論はないものと確信している。日本市場に対する悪影響が潜在的には深刻であること及び日本の銀行における関連取引のコストが大きく増加することを踏まえると、ボルカールール(案)の域外適用を控えるか、「支配」及び「関連会社」の定義を修正し、外国の銀行グループに支配される米国外のジョイント・ベンチャーや現地法人を含まないようにしていただきたい。』

いや全くでございます。

『我々としても、監督の質を更に高めるよう鋭意努めており、米国における日本の金融機関の活動について、綿密かつ効果的な監督を継続していく所存である。』


『第二に、我々は、ボルカールール(案)が、日本国債の取引に悪影響を及ぼすことを懸念している。』

ほほう。

『ボルカー・ルール(案)は、日本国債の取引コストを増加させ、米国の銀行の日本における現地法人の撤退につながるおそれもある。日本の銀行の中には、米国業務からの撤退や業務の大幅な縮小を強いられるところが出てくる可能性もある。このような反応により、日本国債の流動性や価格に更なる悪影響が及び得る。』

ふむふむ。

『現下の情勢において、世界のソブリン市場で同様の事態となる可能性がある。これを踏まえ、規制適用除外対象の証券を大幅に拡大し、日本国債を含めるようにしていただきたい。』

全くですな。

『我々の意見の詳細は、別添を参照されたい。別添においては、ボルカー・ルール(案)がもたらす以下の点に言及している。』

『1. 外国の銀行グループに属する米国外の拠点に対して、ボルカー・ルール(案)が直接に適用される点。

2. 規制適用除外証券が米国債等に限定されているため、日本国債及び他のソブリン債市場に対して深刻な悪影響が生じ得る点。

3. 短期の為替スワップ取引に対する規制により、米ドルの資金調達が困難になる点。

4. 米国外のファンドに対する投資決定に対して不確実性を生じさせる点。』

『また、この場を借りて、ドッド・フランク法716 条のいわゆるスワップ・プッシュアウト条項に関して、米国内銀行と比較して外国銀行が差別的な取り扱いを受けることとなっている点を再度指摘したい。本条項の起草者も、預金保険の対象となっていない外国銀行支店等を本規制の適用除外条項から除いているのは、意図しない結果だという議会証言を行っている。法案提案者が当初意図していたように、預金保険の対象となっていない外国銀行支店等についても、免責条項を含め、米国内銀行と同様の取り扱いがなされることを確保していただきたい。』

ということで結局抄訳を全部引用してしましましたが、こういうのはガシガシやって頂きたいと存じます次第で、金融庁と日銀の健闘を希望致します。

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2012/01/11

○とりあえずバーゼルV関連ネタのメモ(後で改めて読むかも)

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/rel120110b.htm/
中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループによるプレス・リリース「中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループがバーゼルIII流動性基準及び基準実施状況の評価についての戦略を承認」の公表について

『バーゼル銀行監督委員会の上位機関である中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループは、1月8日、バーゼルIII流動性基準及び基準実施状況の評価についての戦略について、プレス・リリースを公表しました。詳細につきましては、以下をご覧ください。』

ということで、詳細はこちらだが後でくわしく読んでみる所存。まあ流動性規制に関しては今年の金融市場にも影響を与える話になる筈だと思っていますので(あとは短期金融市場に関する規制(流動性規制と被る)および資本規制に加えて中央銀行の担保政策)本件は要確認かなあと。

バーゼル委員会のリリース
http://www.bis.org/press/p120108.htm
Basel III liquidity standard and strategy for assessing implementation of standards endorsed by Group of Governors and Heads of Supervision
8 January 2012

仮訳はこちら
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2012/data/rel120110b.pdf

一応ちょっとだけ引用しておく。

『バーゼル委は、バーゼルIIIに加え、バーゼルII及びバーゼルII.5(すなわち、2009年7月の市場リスク及び再証券化の取扱い強化)の実施を評価する予定である。また、総裁・長官グループは、評価結果を公表するというバーゼル委における合意を承認した。バーゼル委は、結果公表に関する手続きを議論し、定義する予定である。総裁・長官グループはまた、最初のピア・レビューは、欧州連合、日本、及び米国における実施評価とすることにも合意した。これらのレビューは、2012年の第1四半期に開始される。』

ほう。

『流動性カバレッジ比率に関して、総裁・長官グループのメンバーは、銀行は安定的な資金調達構造と、ストレス時に流動性ニーズを満たすために利用可能な高品質の流動資産を保有するべきである、との中心的な原則を改めて確認した。流動性カバレッジ比率が実施されれば、その100%の閾値は、平時における最低基準となる。しかし、ストレス期には、銀行はその流動資産プールを利用することが予想され、結果として最低要件を一時的に下回ることもあり得る。バーゼル委は、平時に積み上げられた流動資産は、ストレス時に利用されることが意図されていることを明示的に定め、流動性カバレッジ比率のルール文書を明確化することにより、この原則を更に説明することを求められた。また、バーゼル委は、流動性プールの利用が正当化される状況について追加的な指針を提供する予定である。更にバーゼル委は、流動性カバレッジ比率の働きが中央銀行の政策を阻害したりこれと抵触したりすることがないよう確保すべく、ストレス期において中央銀行が銀行といかに関わり合うかについて調査する。』

中々お経ちっくでアレでございますが(単にあたくしの頭が悪いだけ)、まあ要するに流動性カバレッジの比率が高めの所に設定されそうな話で、そうなりますと即ち金融機関のレバレッジが掛けにくくなりますよねと思うのですが、それで良いのか金融業界と思う面もだいぶあったりする。まあバーゼルクオリティだからこうなるのですけれども。

『また、総裁・長官グループは、流動性カバレッジ比率を最低基準として2015年に導入することへのコミットメントを再確認した。メンバーは、ネット資金流出の水準についてのいくつかの調整とともに、高品質の流動資産プールに関する個別の懸念に対応することにより、流動性カバレッジ比率の鍵となる側面を最終化することに向けた、バーゼル委の焦点の当て方、作業の道筋及びスケジュールに係る提案を完全に支持した。現在検討されている修正は、いくつかの鍵となる側面にのみ適用され、規制枠組みの根本的なアプローチを大きく変更するものにはならない。』

まあ規制強化になりそうな悪寒。つーか流動性カバレッジどうのこうのとか言われると、商業銀行というか預金金融機関はそらまあそもそも流動性バッファがあるから良いけど、投資銀行とか証券業者とかの場合はそもそもが商品有価証券を在庫に持ってクルクル回すのがお仕事であって、そういう人を捕まえて流動性カバレッジとか言われると商売するのに大変ですがなという話になるような気がするんだが、要は投資銀行なんぞするなという事ですかねえ。

『総裁・長官グループは、バーゼル委に対し、これら3つの点についての提案を2012年末までに最終化の上で公表するよう指示した。キング総裁は、「流動性カバレッジ比率の狙いは、銀行に平時には健全な資金調達構造と十分な流動資産を確実に保有させることで、中央銀行が、最初の貸手ではなく最後の貸手としてのみ役割を果たすことが求められるようにすることにある。流動性カバレッジ比率はいくつかの銀行にとって大変な課題となるかもしれないが、強固な流動性の枠組みがもたらす便益は、これに伴う実施コストを上回る。」と述べた。』

そうですかねえ。何かバーゼルの庭先論になって金融が委縮する結果経済の停滞を招いたりしませんかねえ。

ということでとりあえずメモでした。

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2011/12/29

○12月金融経済月報はトーンを弱めていますな

少々出遅れてますが単に忘れていただけです(汗)。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1112.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1111.pdf(前回)

例によって概要部分だけで勘弁。

・現状認識総括判断

『わが国の経済をみると、海外経済の減速や円高の影響などから、持ち直しの動きが一服している。』(今回)
『わが国の経済をみると、持ち直しの動きが続いているものの、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(前回)

これは声明文の所にもありましたが、「持ち直しの動きが一服」と踊り場入りになりつつありますなあ的な文言が入ったのも注目されますが、散々円高が続いている中で今さら的に円高の影響というのが出てきたのがへーという所ですな、うんうん。


・現状判断需要項目別

『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復もあって、緩やかな増加基調にある。』(今回)
『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復もあって、緩やかに増加している。』(前回)

増加に毎度おなじみのヘッジ文言「基調」キタコレ。


『個人消費も、底堅く推移している。また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資も下げ止まっている。』(今回)
『個人消費も、底堅く推移している。また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資も下げ止まりつつある。』(前回)

ここは公共投資の下げ止まりを明言してちょっと上がっています。

『一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響もあって、横ばい圏内の動きとなっている。企業の業況感については、内需関連業種に底堅さがみられるものの、全体としては、改善の動きが鈍化している。』(今回)

『一方、輸出や生産は、震災後に減少した海外在庫の復元もあって増加を続けているが、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(前回)

輸出や生産の判断を下げてきましたし、その要因の中に円高が入っているのも中々アレ。タイの洪水に関してはまあ達観してしまえば一過性になるんでしょうからあまり気にしませんけど。

あと、短観の評価もここにありますが、まあ文章の結論が「改善の動きが鈍化」になっているのであまり強い評価ではないですわな。


・先行き見通し総括判断

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きになるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響を受けるとみられる。もっとも、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

まあ何ですな、前の部分で言及している「円高の影響」に関しては前回の先行き見通しに先行きの見通しとして入れているという事ですので、そーゆー意味では「今回は判断を下げたけれども既に従来の見通しで言及していたことですよ」という説明になるでしょうし、まあ政策を据え置く理屈としては「これは見通しの範囲内ですがな」という話をすることも出来るという優れものですなあという感じです。

つまりですな、今回はそもそもの「新興国などによって先行き回復」という旗は降ろしていない上に、当面の見通しについて海外経済の減速とか円高とかタイの洪水とかいう要因についての言及を華麗にスルーして「横ばい」としていますので、そーゆー意味では先行きの見通しについてはどっちでも行けるようになっている両にらみっぽい感じになっているのかなあとか思うのですけどどうでしょうかね。まあ今後の経済指標見ながら判断という当たり前っちゃあ当たり前の結論なんでしょうね。


・先行き見通し需要項目別

『輸出や生産は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられるが、その後、海外経済の成長率が高まることなどから、緩やかに増加していくと考えられる。』(今回)

『輸出や生産は、当面、横ばい圏内の動きになるとみられるが、その後、海外経済の成長率が高まることなどから、緩やかに増加していくと考えられる。』(前回)

同じである。

『設備投資は、当面、海外経済減速の影響などを受けつつも、被災した設備の修復・建替えもあって、基調的には緩やかな増加を続けると予想される。住宅投資、公共投資は、復興関連需要の顕在化などから、徐々に増加していくと考えられる。個人消費も、引き続き底堅く推移するとみられる。』(今回)

『一方、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きもあって、徐々に増加していくと考えられる。個人消費も、引き続き底堅く推移するとみられる。』(前回)

設備投資の先行きが「当面、海外経済減速の影響などを受けつつも」「基調的には」「緩やかな」とヘッジクローズ満艦飾になっているのが誠に残念感漂う所でございまする。


・物価に関しては前回と変わらん

ので引用は割愛。消費者物価は当面ゼロ近傍というのは貫録のカワランチ会長で困ったもんです。


・金融面では社債の所だけ変化

『社債市場の発行環境についても、総じてみれば、良好な状態が続いている。』(今回)
『社債市場の発行環境についても、発行体の裾野に拡がりがみられるなど、良好な状態が続いている。』(前回)

ここに「総じてみれば」が入ったのが良くワカランチ会長。いやまあ国内非金融部門に関してはそんなに状況変わっていないと思うので、それ以外の所に関してなのですかにゃあとか思ったが良く判らん。


まあ全体的に見ると先行きどっちに転んでも良いような書き方になってはいるので、追加緩和近いでっせウッシッシと1点張りするほどの感じでもないのではありますが、全体的な書き方のトーンは弱めになったかなあというような印象でしょうか。あくまでもあたくしの個人的印象ではありますけどね。

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2011/12/28

まずは11月15、16日の定例会合の方から。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g111116.pdf

○景気認識は下がる訳ですが

『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』の辺りから。

・欧州債務問題

『国際金融資本市場について、委員は、引き続き、欧州ソブリン問題に対する懸念が強い状況にあるとの認識を共有した。』

ということで欧州の話が色々とあるのですがてきとーにピックアップ。

『欧州ソブリン問題について、何人かの委員は、共通通貨のもとで賃金と労働生産性のバランスを律するメカニズムの弱い国までもが、資金調達金利の低下を享受できたことで不均衡の拡大につながった可能性は否めないとの見方を示した。』

『そのうえで、委員は、中央銀行による国債の買入れや流動性の供給は重要ではあるが、そうした措置を採っている間に、関係国が財政健全化を着実に進め、同時に産業競争力の強化など中長期的な成長力を高める構造改革に取り組むことが必要であるとの認識を改めて共有した。』

つまり解決には時間が掛かると。

『ある委員は、資金支援がかえって財政健全化や構造改革を遅らせることのないように、適切に条件付けがなされる必要があるとの考えを示した。』

これは1名の指摘のようですが、ここの論点って中々難しくて、この指摘自体はその通りで正論ではあるのですが、金融市場が動揺している時にそのまま正論で押し通すと金融市場の動揺が収拾できないというリスクもある訳でして、どこまで正論で押すのが良いのかというさじ加減は難しいと思われます。

つまりですね(話が逸れて恐縮ですが)、ECBとか麿とかがその正攻法パターンなのですけれども、市場が動揺している場合には福井の俊ちゃんみたいな大風呂敷パターンの方が市場の動揺を抑えるのには有効だと思われる次第でありまして、そーゆー意味ではあまりこの辺をガチガチにするのもどうかと思いますし、俊ちゃんの場合は結果出口政策に繋がったからいいようなものの、そうならないで大風呂敷の収拾がつかなくなってしまうと今度はそこまでの大風呂敷が弊害を生む可能性もありというのもござんして、じゃあどうすればよいのかというのは永遠の課題なのかもしれませんなと思います。

『何人かの委員は、わずか数年前には、ギリシャを含めほとんどのユーロ圏諸国が同じような金利水準で資金を調達することができていたことを考えると、ひとたび信認が低下した場合には市場環境が急速に変わり得るという事実を重く受け止めるべきであるとコメントした。』

まあそうですな。


・先進国経済はダメダメ的な評価ですなあ

米国について。

『米国経済について、委員は、回復を続けているが、そのテンポはごく緩やかなものにとどまっているとの見方で一致した。』

『ある委員は、夏場以降、欧州ソブリン問題の緊張度が増す中で、経済の不確実性が高まっており、マインドの低下を通じて、企業や家計の支出スタンスに影響を及ぼしていると指摘した。これに対し、何人かの委員は、自動車販売が堅調であり、それ以外のいくつかの経済指標も市場予想を上回る結果となったことから、夏頃みられたような景気後退懸念は幾分和らいでいると指摘した。』

認識はまちまちのようです。

『先行きについて、委員は、金融緩和の効果が引き続き景気の回復を後押しするものの、財政・金融政策のさらなる発動余地は限られており、バランスシート調整の圧力が根強く残る中、成長ペースは緩やかなものにとどまる可能性が高いとの見方を共有した。』

欧州について。

『ユーロエリア経済について、委員は、欧州ソブリン問題に端を発する金融システム不安の高まりを受けて、減速が明確になっているとの認識を共有した。』

減速が明確キタコレ。

『委員は、国債利回りの上昇が周縁国から主要国にも拡がっているもとで、欧州の金融機関が貸出運営スタンスを厳格化するなど資産圧縮の動きを強めており、意図しない金融引き締めの効果がこれまでよりも強く現れつつあるとの見方で一致した。』

アチャー。

『何人かの委員は、欧州ソブリン問題の影響は、貿易取引や国際金融資本市場を通じて、欧州域内にとどまらず、グローバルにも波及しつつあると指摘した。』

アイヤー。

『先行きについて、委員は、欧州ソブリン問題を巡る金融資本市場の緊張が続く中、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が働きやすく、景気回復の動きは抑制されたものになることは避けられないとの見方を共有した。』

アイゴー。

ということで欧州の見通しが無茶苦茶悪くなってますな、いやまあ当然ではありますが。


・新興国は内需に期待なんですかそうですか

『新興国・資源国経済について、委員は、金融引き締めの効果に加え、先進国経済の減速に伴う輸出の減少の影響などから、幾分減速しているものの、堅調な内需に支えられて、総じて高めの成長が続いているとの見方で一致した。』

うーむ。

『複数の委員は、国によって状況が異なるものの、これまでの金融引き締めの効果もあって、食料品価格を含めて物価上昇圧力が幾分低下し、金融緩和余地が拡がっていることは好材料であると述べた。』

うむむむむ。

『先行きについて、委員は、多くの国で、景気は当面幾分減速した状態で推移した後、インフレ率の低下による実質購買力の回復などから、高めの成長を実現していく可能性が高いとみられるが、物価安定と成長を両立することができるかについては、なお不透明感が高いとの認識を共有した。』

ということで纏めているのですが、まあ新興国の「高めの成長が続く」というシナリオも微妙にアレな感じがしますし、先ほどの先進国に関しては欧州の悪化が拡大しているという話になっていますし、何かパッとしませんなあという話なのですよね。


○しかし先行き見通しがカワランチ会長とな

『こうした海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。』

ということでその先があるのですが、先行き見通しがこうなるのが海外情勢に関する話のトーンからするとどう見ても希望的観測です本当にありがとうございましたという風情。

『景気の先行きについて、委員は、当面、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響を受けるとみられるとの見方で一致した。また、その後は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』

まあ11月定例会合の声明文にある通りなのですが、ここまでの海外経済に関する論議のトーンと比べて何でこうなるのという感じがせんでもない。


○しかし子細に見るとまた別の味わいもあるのだ

しかしその先を見ると微妙な味わいもありまして・・・・・・・

『何人かの委員は、設備投資の先行指標である機械受注(民需、除く船舶・電力)の10〜12月期見通しが減少している点や、住宅投資の先行指標である住宅着工件数が各種住宅取得促進策終了前の駆け込み需要の反動もあってやや大きく減少している点について、これが一過性のものであるかどうか慎重に確認していく必要があるとの認識を示した。』

12月短観ェ・・・・・・

で、その先はリスク認識でして、

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、海外金融経済情勢を巡る不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要があるとの見方で一致した。』

というのはまあどうでも良いとして。

『当面の国際金融資本市場の動向について、委員は、問題解決の糸口が得られるまでは、緊張感の高い状況が継続する蓋然性が高いとの見方で一致した。委員は、米国経済について、バランスシート調整の影響などから減速が長引く可能性があり、新興国・資源国について、物価安定と成長を両立することができるかどうかなお不透明感が高いとの認識を共有した。』

下振れ認識強まってますなあ(後で出る)。

『何人かの委員は、こうした情勢がわが国経済の先行きに及ぼす影響について、既往の円高や海外経済の減速の影響から、輸出関連業種を中心に今年度の収益見通しを下方修正する動きがみられており、設備投資や雇用の下振れにつながるリスクがあると述べた。これらの委員は、輸出関連業種では、既に企業マインドが悪化する兆しがみられている点が気になると付け加えた。』

12月短観ェ・・・・・・・

『こうした議論を踏まえ、複数の委員は、前回会合以降、下振れリスクが幾分高まっている可能性を指摘した。』

ということで、まあ12月会合議事要旨が出るのは例によって1月会合の後なので12月議事要旨を見てから1月会合のプレビューをするのが出来ないというのが残念ですが、ここの辺りをみておりますと、短観とか受けてどういう評価してるのかというのが興味ある所であります。

ちなみに、『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』の所ですけれども、

『複数の委員は、前回会合以降みられている一部経済指標などの弱さが一過性のものかどうか慎重に見極めていきたいと述べた。』

と、改めて言及がありまして、1月会合に向けて経済指標を見極めるという話になるんでしょうなあと思うのでありました。


6中銀スワップぐるぐる巻きとドルスワップ金利の引き下げ会合議事要旨から超簡単に。
http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g111130.pdf

○スティグマ問題ですな

『V.中央銀行の協調対応策と日本銀行の措置に関する執行部説明の概要』から。

『第1に、米ドル・スワップおよび米ドル資金供給オペレーションに適用される金利を0.5%ポイント引き下げ、これを2011年12月5日以降のオペレーションから適用する。これにより、新たな貸付金利は、貸付期間に応じたドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ市場における実勢金利に0.5% ポイント上乗せしたものとなる。』

ほいな。

『海外では、米ドル資金供給オペレーションの適用金利における市場金利からの上乗せ幅が大きいため、同オペに応札したことが明らかになった場合に、市場調達できないほど信用力が悪化しているのではないかという風評を招くことを惧れて、利用をためらう先が少なくないとの指摘がある。今回の引き下げは、こうした点にも配慮し、同オペの安全弁としての機能を高めることにより、米ドル調達金利の安定化機能を強化することを目的としている。』

まあそうですな。


でまあ『W.討議』の所ですけれども、

『米ドル資金供給オペレーションの適用金利の引き下げについて、委員は、米ドル調達金利の安定化機能や、安全弁としての機能は強化されるとの見解で一致した。風評リスクを懸念して同オペの利用をためらう先が海外では少なくないことについて、複数の委員は、適用金利の引き下げにより、信用力に問題のない先でも利用のメリットが大きくなるため、利用をためらわなくなるのではないか、との見方を示した。』

まあECBオペの応札が多かったのはご案内の通りでお助けオペの機能は強化されましたな。

『これに対し、何人かの委員は、同オペ利用にかかる風評リスクは幾分緩和するとみられるが、その度合いについては不確実性が大きいとの見方を示した。別の一人の委員は、同オペの適用金利引き下げが、金融機関の安易なオペ依存をもたらさないかどうかについても、注意してみていく必要があると述べた。』

まあこれは仕方ない面があるのですが、この手のオペレーションはどう出口政策を設計するのかという話になるんでしょうな。

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2011/12/22

○決定会合声明文:今回は景気の文言に変化がある訳で

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111221a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111116a.pdf(前回)

・景気の現状認識に関しては引き下げ&「円高」指摘に注目

総括判断はこの通り。

『わが国の経済は、海外経済の減速や円高の影響などから、持ち直しの動きが一服している。』(今回)
『わが国の経済は、持ち直しの動きが続いているものの、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(前回)

ついに一服になりましたか踊り場ですかそうですか、というのもあるのですが、今更「円高の影響」というのが出てきたというのがこれは何の判じ物ですかという感じでございまして、まあ為替の影響が半年ほど経って出てきましたとでもいう話になるのでしょうか。

まあ勝手に妄想しますと、足元の追加緩和が下振れリスクだの円高(介入とセットだったり)だのという形で実施していますから、円高の影響という話をしておかないと格好が付かないとか、次に何かやる(当然ながら追加緩和でございますが)時の言い訳を今から用意したのかなとかゆー所ですな。

需要項目別は以下の通り。

『すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかな増加基調にあるほか、個人消費についても底堅く推移している。一方、輸出や生産は、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響もあって、横ばい圏内の動きとなっている。』(今回)

『すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても底堅く推移している。一方、輸出や生産は、震災後に減少した海外在庫の復元もあって増加を続けているが、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(前回)

設備投資の増加に毎度お馴染みのヘッジクローズ「基調」が入りましたのと、輸出や生産を「横ばい圏内の動き」と引き下げていますな。

短観を受けた評価はこの通り。

『企業の業況感については、内需関連業種に底堅さがみられるものの、全体としては、改善の動きが鈍化している。』(今回)

ということで評価は今一歩的な扱いですな。

『この間、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

金融環境と物価に関する文言は前回と同じです。


・先行き見通しも微妙に下がる訳で

『先行きのわが国経済は、当面、横ばい圏内の動きになるとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響を受けるとみられる。もっとも、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

先行きですけれども、基本的な「新興国・資源国の成長に牽引されて緩やかな回復経路に復していく」というのは変わっていないのですが、目先の見通しに関しては従来の「影響を受けると見られる」から「横ばい圏内」というのをやっと明記しましたねという所でこれまた下げという感じです。


・リスク要因には変化が無いとな

んでもって今回はリスク要因には変化を入れていないというのもほほうという感じ。まあ違和感はございませんですけど(^^)。

『景気のリスク要因をみると、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れをもたらす可能性がある。米国経済については、バランスシート調整の影響などから、減速が長引く可能性がある。』(今回)

『新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。海外金融経済情勢を巡る以上の不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。』(今回)

『物価面では、国際商品市況の先行きについては、上下双方向に不確実性が大きい。また、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある』(今回)

ということで、こちらの文言は前回と同文です。この次のパラグラフは毎度の決意表明エイエイオーみたいな部分ですが、こちらに関しても前回と同文になっておりますけれども長くなるので割愛である。

つーことで、リスク要因を下げていないというのにはあたくし的にはそうかなあとは思いますけれども、欧州問題とか何となく一山越えた感じだったり、足元の米国経済が何となくマシな指標が出ているとかゆーのはあるものの、リスク要因を変えていないというのは、より構造的な問題に対する懸念、というかバランスシート調整の影響の大きさについて懸念してるっちゅうことでしょうな。


○一瞬「何でカナダドル?」と思いましたが(^^)

日銀の昨日のリリースにはこんなのも。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111221b.pdf
「カナダドル資金供給オペレーション基本要領」の制定等について

・・・・・何で唐突にカナダドル???と思ってPDFを開けてみたら37ページもあるという分量で、その先を見たらカナダドルに続いて英国ポンド、ユーロ、スイスフランの資金供給オペの話と、米国における日本円供給オペの話がありまして、まあ要するに6中銀による相互スワップぐるぐる巻きの話でございました。


○あとどうでもいいのだが共同通信またやりやがった

昨日の共同のフラッシュニュース(ブルームバーグに配信されたのを見たのですが)はまたまた「日銀、追加緩和を見送りへ」でして、何というかもうアホかと馬鹿かと何度言えば良いのやらという感じではございましたが、47NEWSや地方紙などのサイト見ますと日銀の金融政策決定に関するニュースはニュースネタになっていなくて、白川総裁の記者会見のニュースが今回の決定会合ニュースになっていたので、まあ今回は全国に「追加緩和見送り」の馬鹿見出しが並ぶ形にはならなかったのかなあとか思うものの、東京新聞(=中日新聞東京本社謹製)本紙を見ないと安心はできませんな。

以上MPMネタ。

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2011/12/20

○雑談シリーズその2:短観のCP発行環境

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/ref/2010/tkref1112.pdf
CPの発行環境(発行企業ベース)<参考系列>

毎度おなじみの日銀短観における「発行企業ベースのCP発行環境」ですが、今回はこのような結果になりました。()内は前回(9月)集計分の数字ね。転記間違えて無いと思うが間違えてたらゴメンチャイ。

社数別構成比、%   全産業(大企業)   製造業(大企業)  非製造業(大企業)    
1.「楽である」     31(32)     35(35)    29(30)            
2.「さほど厳しくない」 68(67)     65(65)    70(69)
3.「厳しい」       1(1)       0(0)      1(1)
DI           30(31)     35(35)    28(29) 
集計対象数(社)   162(174)    75(86)    87(88)

・・・・・・いやあのこの環境でCPを実際に発行している企業さんで「厳しい」ってのはどこのどなた様でいらっしゃいますかという感じなのでございますが、どうも非製造業の中で1社だけ(集計対象数と構成比の%値から類推するとどう見ても1社しかいない)「厳しい」とお答えのようなのですが、まあ申し訳ございませんがこの状況で厳しいとかおっしゃる発行体さんでしたらそもそもCP発行しない方が宜しいのでは無かろうかと存じますが。短期の格付け取得する費用だって勿体ないでしょ。

でですな、まあこの数字自体は「ふーん」という感じではあるのですが、非製造業の中で「楽である」が1%(1社)だけ「さほど厳しくない」に転向したお方がいるほうがへーという感じでございまして、日銀のCP買入効果は物凄いものはありますけれども、日銀の買入対象外のCP発行体というのもいます(日銀当座預金取引先ね)のでその辺りの誰かですかねえとか邪推するのもオモシロスではあります。

しかしまあ上記のURL先ですが、2008年12月調査というリーマンショック後の影響でオープン金利が爆騰してGCレートがロンバートに張り付いてCPレートがとんでもなく上昇して連日悪態をついていたころの数字を見ると実に味わいの深いものを感じますな、うんうん。


○後で読む(かもしれません)

日本の物価変動の背景:事実と論点の整理 2011年12月19日
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2011/wp11j09.htm/(要旨)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2011/data/wp11j09.pdf(本文、PDFで51ページです)

以下要旨の方のURL先から引用します。

『本稿は、東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局による第4回コンファレンス「日本の物価変動とその背景:1990年代以降の経験を中心に」(2011年11月24日開催)の導入セッションにおける報告論文である。』

とのことでございまして、

『本稿では、1990年代以降におけるわが国の物価変動の背景について、基本的な事実を確認するとともに、誘導型のフィリップス曲線の枠組みを用いて主要な論点を整理した。』

『第一の論点は、予想インフレ率は低下したのか、低下したとすればどの程度かという点である。これには、予想インフレ率の動きの背景は何かという点も付随する。』

『第二の論点は、何故、需給ギャップが長期間にわたってマイナスの領域にあったのかという点である。』

『第三の論点は、その他の要因として、為替動向やグローバル化の進展、規制緩和の影響などをどのように考えるかという点である。ただし、この論点には、本稿で取り上げなかった要因として、何か他に重要なものがあるかということも含まれる。』

ほほう。

『可変パラメータ・モデルを用いて、1990年度以降のインフレ率をフィリップス曲線の各要因(トレンド・インフレ率要因、需給ギャップ要因、その他要因、自己ラグ)に分解すると、1990年代以降のインフレ率低下には、トレンド・インフレ率要因、需給ギャップ要因、その他要因の3要因全てが寄与しているとの結果が得られる。しかし、こうした推計結果はあくまで誘導型のフィリップス曲線に基づくものであり、その背後にある構造に潜む本源的な理由は何かまでは識別できていない。当コンファレンスを含め今後のリサーチを通じて、そうしたことに関する理解が一層深まることが期待される。』

でまあ事実と論点の整理の部分が17ページ(最初の1ページはアブストラクト)で、補論の所に数式がありますが、基本的には文書と図表なのでとりあえずハクション大魔王のあたくしでも何となく眺めることはできるという代物でございますので、まあ読んで味噌という所で。

ちなみに、後で読むとか申しましたが予想インフレ率の辺りからちょっとだけ引用。上記URLの本文の方になりますが、本文の9ページ目(URL先のページでは10ページ目に相当します)から10ページ目に掛けて。

『(日本銀行による「物価の安定」の内容に関する情報発信)』

『まず、1990 年代以降の日本銀行による「物価の安定」の内容に関する情報発信を整理すると、次の事実が浮かび上がる(図表11)。』

図表11には三重野総裁時代の講演まで遡って「物価の安定」に関する日銀の講演やステートメントが出ているので必見(^^)。

『第一には、日本銀行が目指す「物価の安定」の内容に関する情報発信は、時と共に充実してきたことである。』

ほう。

『中央銀行による説明手段が現在よりも限られていた旧日銀法下では、「物価の安定」の内容については総裁講演や国会答弁などを通じて説明が行われていた。現行の日銀法の下では、こうした従来からの説明に加え、2000年に「『物価の安定』についての考え方」が公表されたほか、2006年以降は、「金融政策運営に当たり、各政策委員が、中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率」である「中長期的な物価安定の理解」が示されるようになった。』

なるほど。

『第二には、そうした情報発信においては、ほぼ一貫して、物価の安定を「インフレでもデフレでもない」状況と考えていたことである。』

さいざますな。

『2000年の「『物価の安定』についての考え方」では、これを「家計や企業等のさまざまな経済主体が、物価の変動に煩わされることなく、消費や投資などの経済活動にかかる意思決定を行うことができる状況」と言い換えている。2006年の「新たな金融政策運営の枠組みの導入について」においても、ほぼ同様の定義が使用されている。』

ふむふむ。

『第三には、物価指数が有する計測誤差(バイアス)の問題を早期から認識していたことである。』

ふーん(棒)。

『1996年に公表された米国のボスキン委員会のレポート(Boskin et al. [1996])を契機として、消費者物価指数が有しうる計測誤差、とりわけ上方バイアスの可能性が、各国政策当局に強く認識されるようになった。日本銀行でも、ボスキン・レポートの翌年である1997年には、総裁講演において、物価指数が有しうる計測誤差について言及している。また、2006年の「新たな金融政策運営の枠組みの導入について」では、「『物価の安定』とは概念的には、計測誤差(バイアス)のない指数でみて変化率がゼロ%の状態」とした上で、物価下落のリスクに備えた「のりしろ」や物価が安定していると家計や企業が考える物価上昇率なども考慮する必要があるという認識が示されている。 2009年12 月には、「中長期的な物価安定の理解」の明確化が行われている。』

ふーん(棒)。

『このように、1990 年代以降の日本銀行による「物価の安定」の内容に関する情報発信を振り返ると、「物価の安定」の内容そのものはこの間ほぼ一貫していた。その情報発信は、旧日銀法時代から行われてきたが、現行の日銀法の下で金融政策の透明性が重要性を増す中、充実が図られてきたと考えられる。』

まあそうは仰っても世間に伝わったイメージ的にはボスキンバイアスを華麗にスルーした状況での「インフレでもデフレでもない」というのが日銀の認識というような伝わり方をしていた(あたくしの主観バイアスは勿論ございますが)と思いますし、そこの所をもっと強硬に否定してボスキンバイアスの話を強調していたという感じはしないのでございますけどねえ。いや伝えないメディアが悪いという風に言うのかもしれませんけれども、ゼロ金利解除や量的緩和解除の時って「バイアスはそんなに大きくは無いかもしれません(キリッ)」とか「日本の場合はそもそも物価上昇が低い状況が長かったので(キリッ)」という説明の方が目に付いたような印象があるんですけどねえ。


と、軽く嫌味を申し上げた後その次の部分も味わいというか香ばしさというか。

『(政府関係者や有力紙の物価に対するスタンス)』

キタコレ。

『次に、民間の「物価観」を探るために、同時期における政府関係者や有力紙の物価に対するスタンスをみると、以下の各点を指摘できる(図表12)。』

この図表12ですけれども、「有力紙」の論調で引用されたのが日経と朝日(デフレに関する報道件数という集計では朝毎読+日経産経です)となっていますが、そこで引用されている1994年10月4日の日経社説が実にこう味わいの深さというものを感じさせて下さる訳で是非お読みください(^^)、ちなみに本文38ページ(URL先のファイルで39ページ目に相当)にございます。

『第一には、1990 年代から2000 年代初頭までは、内外価格差の縮小を伴う物価の下落は基本的に望ましいと考えられてきたことである。後で確認する通り、1990年代初頭には、大きな内外価格差が存在していた。そうした下で、例えば1993年の経済白書では、「内外価格差が解消して日本の物価が低下すると仮定すると、その前の状態よりも消費者の効用は高まる」との見方を示していた。』

内外価格差是正とかテラナツカシス。

『マスコミの論調も、2000年代に入るまで、「日本の消費者物価は、もっと下がってよい」という考え方が主流であった。』

まあそれがさっきの奴ですが、2000年代に入るまでということですからつまり金融危機以降もそうでしたねということね。

『第二には、2000 年代初頭以降、持続的な物価の下落が経済に悪影響を及ぼすという認識が急速に広まったことである。』

『例えば、2001 年の経済白書では、持続的な物価下落をデフレと定義した上で、「程度が緩やかであっても、デフレは経済に悪い影響を与えていると考えられる」との見方を示している。マスコミの論調も、デフレの弊害を強調するようになった。主要紙のデフレに関する報道件数をみると、2001年に大きく増加した後、2002年から2003年にかけてピークに達しており、この間に物価に対する見方が非連続的に変化したことが窺われる。』

ということで、日銀ばかり悪者扱いにされるのは勘弁して頂きたく存じますと言うニュアンスは把握しましたとか言うのは読みが皮相にも程がありますかそうですか(^^)。

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2011/12/19

○各種世間話

・ほほう

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111216a.htm/
Twitterによる情報発信の開始について

『本日、日本銀行は、Twitterによる情報発信を開始しましたので、お知らせします。』

ということで、日本語版が
https://twitter.com/Bank_of_Japan_j
のようですが、どこぞの財務省みたいにカスタム君とかコクサイ先生とか出てこないのでしょうかとは思いますが、一般ピープルに身近なのは発券局と言いたい所ですが発券関連というのも一般ピープル的には金融機関経由でのお話ですもんね。まあ災害の時などに一般ピープルにも馴染みが出来るという事で、日銀自体は世の中が順調に回っている時にはあまり目立たないもんでしょうからねえ。

ただまあ何ですな、せっかくこういうのがある訳ですから、教えて!にちぎんとか貨幣博物館とか、そっちのシリーズ物もやっていただければと存じます次第で。

http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2005/ron0509c.htm/
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2005/data/ron0509c.pdf
日本銀行の広報活動と金融教育分野での取り組み(6年前のドキュメントですが)

ちなみに財務省ではサイトのトップの右の方で年中カスタム君がつぶやいています。
http://www.mof.go.jp/

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2011/12/16

○短観である

12月の短観が出ると「ああ今年も終わりですなあ」と季節を感じるのはあたくしだけですかそうですかorz

http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1112.pdf

・前回の先行き予測DIの達成状況

        (9月時点)         (12月時点)
        現状→12月予測    現状→3月予測
製造業大企業   +2→+4       ▲4→▲5 
製造業中堅企業  ▲3→▲2      ▲3→▲10 
製造業中小企業 ▲11→▲12     ▲8→▲17

非製造業大企業   +1→+2      +4→+0
非製造業中堅企業  ▲8→▲10     ▲4→▲8
非製造業中小企業 ▲19→▲22    ▲14→▲21

前回はこの辺見ながらこんなまとめをしていました。

まあ6月は震災の落ち分があるので微妙ではあるのですが、ここのDI推移だけ見ていると普通に回復局面ですよね、という話になるでしょう。よーするに12月短観でこのトレンドが継続するのかどうかで、継続すれば実は回復はホンモノという事なんでしょ。(10月4日のあたくしの駄文より)

・・・・・でまあ製造業大企業はプラスから更に改善予想だったのがドテンマイナスになって先行きベクトルも下向きですね、というのは確かにそうなのですが、これよくよく見ると非製造業の方は前回の先行き予測DIよりも良い数字が今回の現状判断DIに出ていまして、非製造業大企業に至ってはプラス4ですよ奥様凄いですわね〜という感じでして、製造業大企業のヘッドライン数値はアレでございましたが、非製造業は概ね前回の予想よりも景況感が良くなっており、製造業に関しても大企業以外に関しては9月短観における先行き予測DIをほぼ達成またはより改善しておりまして、製造業大企業のヘッドラインが前回から悪化するわ先行きのベクトルも下ですけど、他の所はそこまで悪くないという感じですな。

とはいえ、製造業大企業の悪化がラグを伴ってこれから効いてきますよね、という話でもありますよね。


・雇用判断DI

        (9月時点)         (12月時点)
        現状→12月予測     現状→3月予測
製造業大企業   +5→+4       +6→+7
製造業中堅企業  +6→+3       +9→+8
製造業中小企業  +8→+6       +7→+8

非製造業大企業   +3→+1      +1→▲1
非製造業中堅企業  +0→▲2      ▲2→▲3
非製造業中小企業  +1→+0      ▲2→▲1

これまた前回と同じくですが、引き続き非製造業のDIの方が強めになっており、先行きどころか現状判断DIでマイナス(というのは人手不足ということ)という状態になっているのが非製造業、ということでして、先ほどの現状判断DIでもそうですけれども、製造業よりも非製造業の方が強めの景況感、雇用判断をしているという所でしょうか。前回は何かホンマカイナとか思ってましたが、どうもこういう傾向なんですね最近は。

非製造業が人手不足モードになる中、製造業の雇用人員判断DIが悪化(このDIはプラスの方が人員過剰という事になるので悪い)しているという分裂傾向なのは何でなんすかねえ・・・・・・

・想定為替レート

普段は華麗にスルーしますが、今回は反応。

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル) 2010年度 全体 (上期)(下期)  2011年度 全体 (上期)(下期)

2011年6月調査   86.03  89.00 83.05           82.59  82.59 82.59
2011年9月調査    −    −  −             81.15  81.26 81.06
2011年12月調査   −    −  −             79.02  80.26 77.90

・・・・・・・まあ何だ、やっと80円割れにしましたかそうですかという風情で。


・相変わらずの金融商品取引業クオリティ

金融機関の業況判断等って所にあるのですが、本当は以前のようにカテゴリーが「証券会社」になっていた時(「投資業等」が貸金業と一緒に集計されていた)の方が面白かったのですけど、今回は別の意味で面白い。

            (9月時点)      (12月時点)
           現状→12月予測    現状→12月予測
金融商品取引業  ▲44→▲30      ▲30→▲20

金融商品取引業というカテゴリー、以前の証券業というカテゴリーの時もそうでししたけれども、この業種に関しては短観の先行き予測DIが実際のDIと全然当てはまらないにもほどがあるという素敵な業種なのですが、何と今回は前回予測がドンピシャで当たっているというおそロシアな展開が起きているのですけれどもこれは何のフラグでしょうか。


しかしまあ何ですな、前回も前々回も「しかし相場が反応しませんなあ」とか書いておりましたが、今回に関しては(まあ想定からそんなにぶれていないからというのはあるでしょうが)先物のシステム変更で何とザラ場の短観発表とか昔を思い出しますが、日本債券市場貫録のウゴカンチ会長クオリティーを誇るだけにザラ場の短観発表でも緊張感が無いですかそうですか。


まあそれはそれとして、これで日銀の景気判断どうなるのという話ですけれども、この程度だと「景気回復のペースが減速しているが先行きは緩やかな回復基調に復する」というラインを大きく変える必要はなさそうな気がするのですがどうでしょうかね。3月短観で更に下向き傾向が強まる、というのであればちょっと考えるかもしれませんけれども、そもそも回復局面において先行き判断DIは控えめに出る傾向がありますので、現状判断DIが全般的に落ち気味になって来ると話は別ですけれども、今回については非製造業が何気に改善傾向を継続していますからね。まあ非製造業のDIに関してはやや遅行気味でもありますから過大評価も出来ませんけどね。

つーことで反応しにくい短観のような気がしましたです、はい。

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2011/12/15

○昨日の日銀取引先の改定の件について補足

まあ補足って程の話でもないですが。

昨日URLをうじゃうじゃつけたネタですけれども、まあ要点としては、

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111213b.htm/
「日本銀行の当座預金取引または貸出取引の相手方に関する選定基準」等の一部改正について

の別紙1
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/data/rel111213b1.pdf

に基本的な考え方があって、他の資料に関してはそれを実務に落としこんだらこうなりますという話を並べているので、ここの新旧対照表を見ればよろしある。

で、銀行等の既存取引先に対して追加された条項部分を読みますと、

『(2)申出者の親会社が銀行持株会社である場合には、(1)に加え、銀行持株会社の連結自己資本比率が、直前の決算期末において、第一基準が適用される先については8%以上、第二基準が適用される先については4%以上であること。』

というのがあるのと、確認する直近決算が「中間期末を含む」となった点、それから、

『(3)(1)または(2)の要件を充足している場合であっても、その水準が一時的なものであると認められるとき、当該直前の決算期末以降の状況変化により信用力に問題が生じているとき、または流動性リスク管理が適切でないとみられる等その他信用力に問題があると認められる特段の事情があるときは、要件を満たすものとして取扱わない。』

のところに「または流動性リスク管理が適切でないとみられる等」というのが新たに書かれています。これは証券会社など他の業態に関しても同じ変更が行われていまして、ポイントに関しては昨日の繰り返しになりますが、「グループ連結(あるいは子会社連結)の自己資本比率を要件として追加」したことと、「流動性リスク管理状況を審査の対象にすることを明示」したという所になりますわな。

まあこの話自体は突然降ってわいたというよりは、昨今の流れとして金融機関の経営に関するモニタリングをグループ企業全体を対象にして行うとか、バーゼルの方でテーマになっている金融機関の流動性リスク管理(とかシャドウバンキングのモニタリングとかありますが、今回は日銀の取引先選定の話なのでシャドウバンキングは関係ない)のモニタリング強化とかいうのがあって、その辺りを今回反映させましたね、という所ではないかと思いまする。


でですな、まあそれはそれではあそうですかってなもんなのですが、前半の方は兎も角として、流動性リスク管理の強化という話に関しては、まあマーケット的にもボディーブローのように影響は出てくる話かもねとは思う訳で、流動性リスク管理強化の流れを受けると金融機関が従来以上に流動性の確保を行うようになる、となりますと、超過準備が今以上に積みあがりやすくなって、流動性リスク管理上持ってて損のなさそうな短期金融資産というか短国あたりのニーズが更に高まったりするのかねとか漠然と思うのであります。まあ金融機関が流動性積み上げるニーズが高まると勝手に資金供給額が増えてくれて今の日銀的にはウハウハかもしれませんなという所ですが、流動性の積み上げが増えすぎるとそれはそれで市場の金の回りが逆に悪くなるかもしれませんし、影響がどう出るのかというのは決め打ちしにくいところではございます。


○虫干しネタで今さら11月金融経済月報(しかも概要だけ)

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1111.pdf(11月)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1110.pdf(10月)

総じて言いますと今回は「景気に関しては国内要因は比較的堅調で海外要因を下げ」「金融環境に関しては緩和拡大」という内容になっていまして、まあ微妙に分裂気味ではありますが、海外下がったらそれを口実に追加緩和はできますよねという内容ではありますな。

今更ネタですので簡単に比較をば。

・総括判断はヘッジクローズが入る

『わが国の経済をみると、持ち直しの動きが続いているものの、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(11月)

『わが国の経済をみると、持ち直しの動きが続いている。』(10月)

いつものパターンではあります(^^)。


・現状認識の需要項目部分は国内需要要因が上げ

『国内需要をみると、設備投資は、被災した設備の修復もあって、緩やかに増加している。個人消費も、底堅く推移している。また、住宅投資は持ち直し傾向にあり、公共投資も下げ止まりつつある。一方、輸出や生産は、震災後に減少した海外在庫の復元もあって増加を続けているが、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(11月)

『生産や輸出は、震災による落ち込みからの回復過程に比べてペースは緩やかになっているが、増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は、被災した設備の修復もあって、緩やかに増加している。個人消費も、一部に弱さが残っているものの、全体としては持ち直している。また、住宅投資は持ち直しの動きが明確になっており、公共投資も下げ止まりつつある。』(10月)

今回は海外と国内を分けて説明していまして、国内に関しては設備投資は変わっていないものの、個人消費、住宅投資が上がっている一方で、輸出や生産に関しては現状判断を下げています。


・先行き見通しもヘッジクローズが入る

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響を受けるとみられる。もっとも、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(11月)

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(10月)

いやあヘッジクローズというかくどくど言い訳というか実に味わいが(^^)。


・見通しの需要項目も海外が下げで国内は確り目

『輸出や生産は、当面、横ばい圏内の動きになるとみられるが、その後、海外経済の成長率が高まることなどから、緩やかに増加していくと考えられる。一方、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きもあって、徐々に増加していくと考えられる。個人消費も、引き続き底堅く推移するとみられる。』(11月)

『海外経済は、当面減速するものの、基調的には、新興国を中心に底堅く推移すると考えられる。このため、輸出は、海外在庫の復元の動きもあって、緩やかな増加基調をたどるとみられる。こうしたもとで、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きもあって、徐々に増加していくと考えられる。個人消費も、底堅く推移するとみられる。生産は、緩やかな増加を続けると考えられる。』(10月)

輸出や生産の見通しを「緩やかな増加」からさすがに下げたのですが、国内の見通しに関しては特に下がっていませんし、個人消費については「引き続き」底堅く推移という形で、まあ割と国内要因については確り目の見通しになっておりますな。その後企業関連ではややトホホな指標(機械受注とか法人企業統計とか)がありましたので、この辺の認識が今日の短観も含めて来週の決定会合でどうなるかですな。


・金融環境

物価の所は同じなのでスルーして金融環境の所。

『わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』(11月)
『わが国の金融環境は、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさがなお窺われるものの、緩和の動きが続いている。』(10月)

おや?

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、発行体の裾野に拡がりがみられるなど、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、増加の動きがみられている。』(11月)

『コールレートがきわめて低い水準で推移する中、企業の資金調達コストは緩やかに低下している。実体経済活動や物価との関係でみると、低金利の緩和効果はなお減殺されている面がある。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いている。CP市場では、良好な発行環境が続いている。社債市場の発行環境についても、発行体の裾野に拡がりがみられるなど、良好な状態が続いている。資金需要面をみると、運転資金需要が増加する動きがみられている。』(10月)

ということで、この辺基本的には変化ないですが、企業買収関連とかいうのが入っていて、これは円高メリットの話とかの絡みですかとか、前向きな資金の話ですかとかゆー雰囲気が少々。


『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出の前年比は、小幅の増加に転じている。社債、CPとも、残高は前年水準を上回っている。こうした中、企業の資金繰りをみると、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックは、前年比2%台後半の伸びとなっている。』(11月)

『以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行貸出は減少幅が緩やかに縮小している。社債の残高は前年を上回っており、CPの残高は9月は概ね前年並みとなった。こうした中、企業の資金繰りをみると、中小企業を中心に一部で厳しいとする先がなおみられているが、総じてみれば、改善した状態にある。この間、マネーストックは、前年比2%台後半の伸びとなっている。』(10月)

総括判断にもありましたように、中小企業の資金繰り云々の部分が抜けましたかそうですかという所で、さてこのように判断を上げた中で更に成長基盤強化で中小企業支援みたいな事をするんですかという気もするのですが、まあ成長基盤強化ネタを打ち込むときにはそういう辺りは華麗にスルーなんでしょうな(ニヤニヤ)。

#ということで超虫干しネタでどうもすいません

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2011/12/14

・何かたくさん書いてあるので全部読めていないのだが

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111213b.htm/
「日本銀行の当座預金取引または貸出取引の相手方に関する選定基準」等の一部改正について

『日本銀行は、本日開催した政策委員会において、「日本銀行の当座預金取引または貸出取引の相手方に関する選定基準」等の一部改正に関して、次のとおり決定しましたので、お知らせします。当座預金取引または貸出取引の相手方に関する選定等を適切に行う観点から、「日本銀行の当座預金取引または貸出取引の相手方に関する選定基準」(平成10年6月23日決定)を別紙1 [PDF 166KB] のとおり、「国債振替決済制度の参加者口座および顧客口座の開設基準ならびに間接参加者および外国間接参加者の承認基準」(平成15年1月7日決定)を別紙2 [PDF 189KB] のとおり、また、「代理店の設置等に関する基本要領」(平成12年6月30日決定)を別紙3 [PDF 174KB] のとおり一部改正し、本日より実施すること。』


http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111213d.htm/
オペレーションの対象先等の選定等にかかる信用力の基準等の一部見直しについて

『日本銀行は、「日本銀行の当座預金取引または貸出取引の相手方に関する選定基準」(平成10年6月23日決定)の一部改正(注1)に伴い、オペレーションの対象先等(補完貸付先を含む。以下同じです。)の選定等にかかる信用力の基準および補完貸付先の承認取消しにかかる予告措置を一部見直し(注2)、(注3)、本日より実施することとしましたので、お知らせします。見直し後の基準は、本日以降、日本銀行が新たにオペレーションの対象先等を選定する場合に適用するほか、現在、既にオペレーションの対象先等に選定されている先が継続して満たすべき要件となります。』


・・・・・・最初の方の別紙1を斜め読みしただけなのですが、信用力の基準に関して従来「直近決算」は本決算のみを対象にしていたのを中間決算も対象にするようになったのと、銀行の親会社が持株会社の時には銀行本体だけではなくて持株会社の決算も信用力判定に使う事になったのと、決算に関する形式要件を満たしていても却下する場合があるという中に「流動性リスク管理が適切でないとみられる等」という文言を新たに加え、バーゼルだか何だかの「金融機関の流動性リスク規制」に対応するようになった(「日銀が適切と認めない」場合は却下なのですが、わざわざ明言しているのは、流動性リスク規制導入を意識した形なんでしょ)という所でございましょうか。

よー判らんからちょっと教えてジェネラルである。>これ読んだ人m(__)m

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2011/12/01

○ドル供給金利引き下げのお助け+マルチカレンシースワップとな

つーことで昨晩臨時政策決定会合が実施された訳ですが、金利の方はまあどうでも良いとして本命はこちら。

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/rel111130e.pdf
国際短期金融市場の緊張への中央銀行の協調対応策

『カナダ銀行、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度およびスイス国民銀行は、本日、国際金融システムに対する流動性支援提供能力を拡充するための協調対応策を公表した。本日公表する協調対応策は、金融市場における緊張を和らげることによって、こうした緊張が家計や企業に対する信用供給に及ぼす影響を軽減し、ひいては経済活動を支えることを目的としている。』

『上記中央銀行は、既存の時限的な米ドル・スワップ取極に適用される金利を50ベーシス・ポイント引き下げ、新しい金利を米ドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ・レートに50ベーシス・ポイント上乗せしたものとすることに合意した。新しい金利は、2011年12月5日以降実施されるすべてのオペレーションに適用される。米ドル・スワップ取極の期限は、2013年2月1日まで延長される。なお、イングランド銀行、日本銀行、欧州中央銀行およびスイス国民銀行は、3か月物資金供給の入札オファーを、継続して実施する。』

『上記中央銀行は、不測の事態への対応措置として、市場の状況によって必要とされる場合に各国・地域において上記中央銀行いずれの通貨でも流動性供給を行えるよう、各中央銀行間でそれぞれ時限的なスワップ取極を締結することにも合意した。現時点では米ドル以外の外国通貨での流動性供給が必要な状況ではないが、仮にそうした必要が生じた場合に速やかに対応し得るよう、取極を整えておくことが適当と判断される。これらのスワップ取極は、2013年2月1日まで継続することとする。』

ということで、欧州のドルファンディング市場がアレになってきているので、お助けオペのレートを引き下げるという事ですが、従来ドルOIS+1%での資金供給をしていたのをOIS+0.5%に引き下げたというのは中央銀行的には結構頑張ってお助けをしたという事です罠。だってリーマンショックの時にこのオペレーション打ち込まれた(http://www.boj.or.jp/announcements/release_2008/un0809c.pdf)のですが、その時のレートから下げるってえんですからそらまあお助けモードでございますわな。

あと、今回は発動はしないようですが、第3パラグラフにあるようにマルチカレンシースワップも可能という事になっていますので、米ドル以外での他通貨での資金供給オペも可能性が出て参りましたという事で。


『日本銀行は、本日、臨時金融政策決定会合を開催し、上記中央銀行と協調して、最近の国際短期金融市場の緊張に対応するための措置を講じることとした。具体的には、現在日本銀行が実施している固定金利方式の米ドル資金供給オペレーションの貸付金利を0.5%ポイント引き下げ、12月5日以降のオペレーションから適用する。この引き下げにより、新たな貸付金利は、貸付期間に応じたドル・オーバーナイト・インデックス・スワップ市場の実勢金利に0.5%ポイント上乗せしたものとなる。』

ということでドルオペ金利の利下げになりますので、これでどのくらいオペの応札が増えるのでしょうかね。よーわからんけど。

『また、現在米国連邦準備制度との間で締結している米ドル・スワップ取極、およびこれを原資とする米ドル資金供給オペレーションの期限を、2013 年2月1日まで6か月延長することとした。さらに、上記中央銀行との間で、2013年2月1日を期限とする為替スワップ取極を締結することとした。これにより、日本銀行は、5中央銀行が必要とする場合に円資金を供給することが可能となるとともに、日本銀行が必要とする場合に現行の米ドルを含む5通貨の調達が可能となる。』

ドルスワップの期限延長と、他通貨でのスワップ協定の締結ということで、ちょうどこの前ネタにした10月18日のバーナンキ議長の講演(「The Effects of the Great Recession on Central Bank Doctrine and Practice」)でも金融安定化の為に自国通貨だけではない資金供給が重要という指摘をしてましたように、まあ今後は主要中銀の中でのマルチカレンシー供給というのが、バックストップとしてのファシリティーになるという事なんでしょう。

『わが国の金融環境は、緩和の動きが続いており、わが国金融機関の外貨資金繰り動向をみても問題は生じていない。しかし、今後、国際金融資本市場が一段と不安定化した場合、その影響がわが国にも及ぶ可能性がある。日本銀行としては、今後とも各国中央銀行と緊密に協力しつつ、金融市場の安定確保に努めていく方針である。』

まあ今回は欧州お助けオペですからね。

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2011/11/17

○決定会合声明文はトーンが弱めになっています

声明文比較である。
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111116a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111027a.pdf(前回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111007a.pdf(前々回)

・現状認識では個人消費を微妙に上げるも輸出や生産を下げる

『わが国の経済は、持ち直しの動きが続いているものの、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(今回)

『日本経済は、供給面の制約が解消されてきている中で、持ち直しの動きが続いている。』(前回)

ということで、今回は海外経済の減速の影響ということで総括判断を下げていますが、まあもともと前々回の時点でも海外経済の先行き見通しとしては『先行きについて、海外経済は、当面減速するものの』(前々回)としていましたので、そういう意味ではこれはメインシナリオの想定範囲内、という事ではないかと思います。


『すなわち、国内需要をみると、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても底堅く推移している。一方、輸出や生産は、震災後に減少した海外在庫の復元もあって増加を続けているが、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている。』(今回)

『すなわち、生産や輸出は、震災による落ち込みからの回復過程に比べてペースは緩やかになっているが、増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても、全体としては持ち直している。』(前々回)

ここは前々回と比較してみましたが、個人消費が「持ち直し」から「底堅く推移」と強くなっていまして、その一方で輸出や生産は引き下げという形になっています。


・国際金融市場の緊張についての言及キタコレ

今回の声明文ではこの部分が入りました。

『この間、国際金融資本市場の緊張度は引き続き高いものの、わが国の金融環境は、緩和の動きが続いている。』(今回)

従来はこの前半部分が無かったのですが、ついにこの点についての言及キタコレであります。


・先行き見通しは「当面の減速要因」が増える

『先行きのわが国経済は、当面、海外経済の減速や円高に加えて、タイの洪水の影響を受けるとみられる。もっとも、その後は、新興国・資源国に牽引される形で海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについて、海外経済は、当面減速するものの、基調的には、新興国を中心に底堅く推移すると考えられる。そうしたもとで輸出が緩やかな増加基調をたどることや、資本ストックの復元に向けた国内需要が顕現化してくることなどから、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前々回)

ということで、先行きの中長期的な部分に関する後段は同じような話をしていますので、メインシナリオに変化はないのですが、当面の減速要因に円高とタイの洪水が加わってトーンそのものは弱めになってきましたな。


・リスク要因で欧州ソブリンに加えて米国バランスシート問題もより強調

『景気のリスク要因をみると、欧州ソブリン問題は、欧州経済のみならず国際金融資本市場への影響などを通じて、世界経済の下振れをもたらす可能性がある。米国経済については、バランスシート調整の影響などから、減速が長引く可能性がある。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。海外金融経済情勢を巡る以上の不確実性が、わが国経済に与える影響について、引き続き注視していく必要がある。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、欧州のソブリン問題の帰趨や、バランスシート調整が米国経済に与える影響について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、引き続き、丹念に点検していく必要がある。』(前々回)

本当は展望レポートと比較するのが筋のような気もしますが、まあ手抜きで前々回の声明文と比較しますと、欧州ソブリン問題に関する説明が長くなり、更に「国際金融資本市場への影響」による経済の下振れ、という従来からリスク要因として指摘されていた金融市場と実体経済の負の相互作用に言及しているのと、米国のバランスシート問題に関しても「米国経済の減速が長引く可能性」に言及するという事で、このリスク要因をかなり下方向にシフトしましたという感じです。

あとまあオモロイなと思ったのはリスク要因について前々回は「丹念に点検していく必要がある」だったのが「引き続き注視していく必要がある」と内容が昇格(?)した感じですな。

ということで、リスク要因を中心に弱めのトーンという感じでした。

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2011/11/14

○今さらですが10月1回目の決定会合議事要旨よりメモ

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g111007.pdf

まあこの次の決定会合で追加緩和が出て展望レポートも出たので今更というかおまけ程度という感じですがメモと雑感。

・海外経済に関して

『V.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』から。

『国際金融資本市場について、委員は、欧州ソブリン・リスク問題に対する懸念や世界経済の先行きに対する不透明感から、投資家のリスク回避姿勢が一段と強まっており、緊張の高まった状況が続いているとの認識を共有した。また、投資家の強い安全資産選好を反映して、米国やドイツの国債、あるいは円など、安全とみなされている資産・通貨には、資金が集まりやすくなっているとの見方で一致した。』

ということでソブリンリスクに関してですが。

『ソブリン・リスク問題について、多くの委員は、ギリシャの財政再建や構造改革への取り組みが難航する中、欧州諸国の国債を多く保有する欧州系金融機関の財務の健全性に対する懸念が高まっているとの認識を示した。また、欧州金融安定ファシリティの機能拡充や規模拡大に向けた対応に時間を要していることもあって、欧州の金融システム全体に対する不安心理が強まっていると指摘した。』

てな感じで問題は拡大中という話になっています。で、地域別ですけれども・・・・

米国経済

『米国経済について、委員は、回復を続けているものの、そのテンポはごく緩やかなものにとどまっているとの認識を共有した。多くの委員は、個人消費の伸び悩みの背景として、住宅市場の低迷、雇用環境の改善ペースの鈍化、株価下落を受けた消費者コンフィデンスの悪化などを指摘した。』

『先行きについて、委員は、バランスシート調整圧力が引き続き経済の重石となっているもとで、財政面や金融面からの景気梃子入れ余地が限定的なことから、当面、景気回復は緩やかなペースにとどまるとの見方を共有した。』

まあこの辺は最近ずっとこんな感じ。


ユーロエリア

『ユーロエリア経済について、委員は、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。多くの委員は、海外経済の減速を受けた輸出の伸び悩みに加えて、家計のマインド悪化に伴う個人消費の弱含みなどから、これまで欧州経済を牽引してきたドイツなど主要国においても、成長が鈍化していることを指摘した。こうした状況について、これらの委員は、ソブリン・リスク問題の影響が、マインドの悪化を通じて、実体経済にも及んできているとの見方を示した。』

どう見ても金融と経済の負の相互作用です本当にありがとうございました。


新興国

『新興国・資源国経済について、委員は、輸出の減少や既往の金融引き締めの影響から、成長テンポが鈍化してきているが、堅調な需要を背景に、総じて高めの成長を維持しているとの見方で一致した。先行きについて、委員は、基本的には、新興国・資源国は高めの成長で世界経済を牽引していくとみられるが、物価安定と成長を両立することができるか、なお不透明感が高いとの認識を共有した。』

ふ〜んという感じですが。

『また、何人かの委員は、投資家がリスク回避の一環として新興国から資金を引き揚げる動きをみせている点について、こうした動きが拡がることになれば、新興国の経済活動を金融面から下押す可能性があると指摘した。』

ほほう。

『ある委員は、中国においては、やや長い目でみて、地方からの低賃金労働者の供給余地が乏しくなるなど、構造的な転換点が到来しつつあり、潜在成長力が低下する可能性にも留意が必要であると述べた。』

なるほど。ということで結論としては・・・・・

『以上の議論を経て、@ 欧州では、ソブリン・リスク問題の影響の深刻化を受けて、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が強まっていくリスクがあること、A 米国では、雇用の改善テンポが依然として緩慢なうえ、家計のバランスシート調整や住宅市場の調整が長引くもとで、景気は上方に弾みにくく、下方に振れやすい状況が続くと考えられること、B 新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高いこと、など、海外経済の先行きには引き続き留意が必要との見方で一致した。』

という話になって、まあこの辺を見ていますと「海外情勢を理由に追加緩和してきてもおかしくはないですなあ」という風に読めたりする(少なくともそういう施策を実施するための布石を打ったような形になっている)のでして、この前もちょっと申し上げましたが、この議事要旨を次回の決定会合の実施前に公表するような段取りにしておくと「次回の決定会合に関するインプリケーションを提示」という意味合いからした場合の「コミュニケーションツール」としての利便性が高まるのではないか、と思うのです(が制度上たぶんそれは簡単に変更できないというのと、議事要旨をまとめるのもこれまた大変というのがあるんですよね、事務局の皆さん?)。


・景気の先行きに留保条件付きまくりとな

で、日本の景気に関してですが現状は飛ばして先行き見通し。

『景気の先行きについて、委員は、海外経済は、当面減速するものの、基調的には底堅く推移すると考えられること、そうしたもとで、輸出は、緩やかな増加基調を辿ること、資本ストックの復元に向けた国内需要が顕現化してくることなどから、わが国経済は緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。』

ということで、まあ声明文を見たときに受けた「降参モード」と同じですけれども、海外経済への警戒モードというか、欧州の「負の相互作用」の指摘をしていましたので、更にこの辺りの印象が弱くなるという感じではないかと思います。

で、下振れリスクがこれがまた説明が長いのよ。

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響に、引き続き最も注意が必要であるとの見方で一致した。』

ほうほう。

『多くの委員は、欧州のソブリン・リスク問題が世界経済全体を下押しする中で、輸出が下振れるリスクが高まっているとの認識を示した。このうち、複数の委員は、とりわけ自動車や情報関連の海外需要の下振れには注意が必要であると付け加えた。何人かの委員は、これまでの円高が、輸出や企業収益の悪化をもたらすだけでなく、企業や家計のマインド悪化を通じて、より広範な影響をもたらす可能性に注意が必要であると指摘した。』

と、一部の委員の指摘はかなり厳しめ。

『このうちの一人の委員は、円高の定着が一因となって、基幹工場や研究開発拠点の海外シフトが加速するようなことがあれば、産業空洞化をもたらすとともに、わが国の成長期待が低下する惧れがあると述べた。別の一人の委員は、最近、円高を活かした海外企業の買収例が急増していることは、わが国の潜在成長力を高めるものとして、積極的に評価できる面もあると述べた。この間、複数の委員は、電力供給制約の影響も引き続き意識しておく必要があると指摘した。こうした議論を踏まえて、委員は、わが国経済を巡る不確実性は引き続き高く、下振れリスクを意識する必要があるとの認識を共有した。』

一部に前向きの指摘もありますがイマイチ感はぬぐえず。つーか展望レポートの時には為替円高のメリットっぽい話はスルーされてましたな。


・ということで追加緩和の可能性について

『W.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『当面の金融政策運営について、委員は、8月に一段と強化した金融緩和措置のもとで金融資産の買入れを着実に進め、その効果の波及を確認していくことが適当であるとの認識を共有した。』

『そのうえで、何人かの委員は、欧州ソブリン・リスク問題の拡がりに起因する国際金融資本市場の不安定化等を背景に、前回会合よりも経済・物価の下振れリスクは幾分高まっているのではないかと述べた。何人かの委員は、今後、必要に応じて適切な措置を講じていくことが重要であるとの見解を示した。このうちの一人の委員は、事態の展開によっては、先行き更なる金融緩和が必要となる可能性もあるとの認識は、前回会合から変わっていないと付け加えた。』

ということでですね、この部分とかを見てますと、先ほどおよび先日も申し上げましたように、この決定会合議事要旨が10月後半の決定会合前に公表されていたら、展望レポートの時点で下方修正するついでに何か追加緩和のようなものが出る可能性ももうちょっと指摘できたような気もせんでも無い、すなわちいつもの「押し込まれ感」が緩和できていたんじゃないかなあと思うのであります。

つーかさ、日本の場合現状では財政問題がどうのこうのとか言うのって(口では兎も角として)別に真剣に市場のテーマになっている訳じゃないから昨今のような決定会合の度に政治圧力っぽい動きが出ても「ふ〜ん」で済んでいる面があるんですけど、将来のどこかの時点で市場が財政のサステイナビリティーがどうのこうのとか急に言い出す時に「日本の中央銀行は政治当局による押し込みに弱いので最終的には財政マネタイズ懸念」みたいな認識が高まる恐れはありますなあという感じはしますがなという事で。

#政権だって不安定にも程がありますし

ちなみに、そんなときってのは大体国債の消化の構造に変化が生じた後の話ですからして、日本の場合ですとまずは年金が払い超になってからご相談、ってそれ自体はもうそんなに時間が無いんですけどね。

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2011/11/02

○などと悪態を書いていたら時間が無くなってきたのですが展望レポート比較の続きの要点だけ

この後「総裁定例会見」「31日の総裁講演」「31日の総裁会見」「10月前半の議事要旨」とネタが続く上に今晩はFOMCでありますし、それ以前にあたくしが休んでいる間にFEDの高官があちこちで講演している訳でございまして、ネタが鬼のようにスタックしておりますが、幸いにも何だか知らないけれども明日は国民の祝日のようでございますし、週末もあるので必死に追いかけて、もしかしたら適当に休みのうちにネタ投下(消化という方が正しい)せにゃいかんがなという所で、今から明日は何時に起きてどういう時間の使い方しようという感じですが(苦笑)。

えーっとですな、昨日は展望レポートの先行き見通しの基本的な部分の所で終了しちゃいましたが、その先ってどうなのよという話ですな。文章引用して引用というのは時間の関係で華麗にスルーします(後でやります)ので箇条書きメモで。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110a.pdf

・円高の影響に関して

これがまた今回「あれれ?」と思ったのは円高による企業行動の影響に関して妙にポジティブな話をしている所です。まあ確かに全部が全部ネガティブな訳でも無いですがな、というのはあると思いますが、今回その点が妙に明るい話をしているのが気になりました。展望レポートの基本的見解の本文8ページにありますのでご覧あれ。


・物価見通しに関して

ああでもないこうでもないとは書いてありますが、基本的に今回見通しは下げていないというのがこれまた微妙。先行き下振れリスクがあってしかもGDPの見通しそのものは下がっているというのに、物価の見通しに関しては下げたのはCPI基準改定によるテクニカルな低下部分だけで、それって何か整合性取れてるんですかというのはやや???な感じです。


・上振れ、下振れ要因に関して

前回と今回を比較するとこうなっています。

(前回の上振れ、下振れ要因)

1.震災の直接的な影響
2.成長期待などの低下(主に震災の影響による)
3.海外経済
4.グローバルインフレ

(今回の上振れ、下振れ要因)

1.欧州債務問題
2.海外経済
3.復興需要の不確実性
4.成長期待などの低下(震災の影響+円高の影響)

ということで、リスク要因は思いっきり下になっているのですが、その中で実に(;∀;)イイハナシダナーなのは3.の所でしょう。そこだけは引用しておくわ。

『第3に、復興需要に関する不確実性がある。被災地では、自動車や家電製品をはじめとした耐久消費財の買い替え需要が、すでにある程度顕在化している。また、瓦礫の処理や仮設住宅の建設など、復興に向けた様々な活動も進められている。しかし、インフラ、企業設備、住宅建設など、各種資本ストックの復元は、民間需要、公的需要とも、現時点では限定的な規模にとどまっている。』

『これらの復興需要については、今後、街づくりの全体像も含めて復興計画が具体性を増し、補正予算等が執行されていく中で、徐々に本格化していくと考えられる。ただし、復興需要の規模やタイミング、またその景気刺激効果については、復興計画が具体化していくスピードや、民間需要の好循環を生み出す地域経済の将来展望を描けるかどうかなど、いくつかの要因に依存するため、引き続き幅をもってみておく必要がある。』

つまり政府に文句を言いたい訳ですねわかりますわかります。


・物価の不透明要因

まあこれに関しては「震災の直接的な影響」という部分が外れ、リスク要因的には下振れリスクが高まったという感じですが、その一方で輸入物価に関しては従来の国際商品価格がどうのこうのの話が上方リスクだけじゃなくなったかと思ったら、今度は新興国の基礎的な需要が経済成長により高まるという話が出てきて、中々往生際が悪い(違うか)なという味わいがするのでございます。


・第1の柱、第2の柱

まあ基本的にあまり変わっていないのがチャーミングですが、第2の柱の部分ではこんな事を。

『景気については、バランスシート調整が米国経済に与える影響には引き続き注意が必要である。また、欧州のソブリン問題については、今後、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が、強まっていくことにならないかどうか、注視していく必要がある。』

しかしですな、既に現状認識部分で「負の相乗作用が起きている」というのを示しているのにこれを第2の柱で済ませていいもんなの????

『新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。』

なのにメインのシナリオはこの地域が引っ張って世界経済は成長に復するんですよね・・・・

『こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、丹念に点検していく必要がある。』

ということのようですな。


・最後にも政府に注文を(^^)

最後の所が泣いた。

『日本経済が直面している問題は、リーマン・ショック後の大幅な需要の落ち込みからの回復という短期・循環的な問題にはとどまらない。より根源的には、中長期的な成長期待の低下という、長期的・構造的な要因が重要である。』

ほほう。

『すなわち、わが国経済は、これまでも、急速な高齢化や労働生産性の伸び悩みなどを背景とした経済成長率の趨勢的な低下という基本的な課題に直面してきた。加えて、日本経済は、震災からの復旧・復興という新たな課題にも直面している。対GDP比で先進国中最大の政府債務を抱えるもとで、市場からの信認を確保し続けていくため、中期的な財政健全化への展望を明確にする必要にも迫られている。』

仰る通りです。

『こうした課題を克服し、先行き、新たな経済発展の基礎を築いていくためには、日本経済が置かれている以上の状況を正しく認識しつつ、政府、中央銀行、金融機関、民間企業とも、中長期的に持続可能な成長力の強化に向けて、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくことが重要である。』

つまり日銀にクレクレばかり言ってないでお前らもちゃんとやれやゴルァということですねわかります。


・しかし最後の見通し数字が強い(弱くない、という意味で)ですよね・・・・・・

まあ見通し数値に関しては単純に4月の見通しの時間軸が伸びている(後ずれさせている)という感じで、何かこの展望レポートって冒頭の辺りを読んでいると結構警戒的なトーンで弱めなのに、先行き見通しの所になってくるとだんだん平常運転モードになってきて、最後の見通し数字になると単純に後ずれモードになっているだけという感じになっているのが何だかなあという感じがします。

#引用とかに関してはどこかで追記メモ形式で実施しておきますね

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2011/11/01

今回の追加緩和に関しては展望レポートが味わいがあるのでそれを読んでみた訳でって今さら何を言うとかゆーツッコミはご勘弁の程を。


○ということで展望レポートだがこれがまた何か話の流れが変である

達人は背景説明を含めた全文をちゃんと読むべきでありますが、手抜きで基本的見解の部分だけの比較でござる。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1110a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104a.pdf(前回)

と言いましてもこれ全部で文章部分だけで15ページありますので、逐次比較とかしておりますと分量がなんぼになりますねんでございますので、その辺は適宜サラサラと。

・まず頭の部分で欧州債務問題の「負の相乗作用」を指摘している訳で

章立ては毎度「海外情勢」→「国内金融環境」→「今後の見通し」→「リスク要因」の順序なのですが、まず最初に注目されるのは海外情勢部分のお題目であります。

『2.国際金融資本市場および海外経済』(今回)
『2.海外経済および国際金融資本市場』(前回)

・・・・・まあこれだけで既に話の流れが読めるという感じだと思いますが(^^)、今回はその欧州債務問題の状況について色々と説明する部分が冒頭に来まして、その状況のまとめとして欧州債務問題の現状についてこのように指摘しています。

『このように、欧州では、財政、金融システムおよび実体経済の三者の間に負の相乗作用が働き始めており、金融情勢や実体経済の先行きに関する不確実性が高まっている。』

負の相乗作用キタコレという所ですな。


・では海外経済の現状判断の地域別展開ですが

『以上を踏まえつつ、海外経済の動きをみると、新興国・資源国に牽引される形で高い成長を続けてきたが、本年春以降、先進国を中心に、成長ペースが鈍化している。』

ということで地域別展開部分を比較してみる。

米国

『地域別にみると、米国経済については、ガソリン価格の上昇や日本の震災の影響など、一時的な要因が春ごろの減速に寄与した面もあるが、基調的にみても、家計の過剰債務や住宅市場の調整が長引き、雇用の改善も緩慢なもとで、回復のペースはごく緩やかなものにとどまっている。』(今回)

『地域別にみると、米国経済は、2010 年秋以降、金融緩和や減税措置延長などの財政刺激策などもあって、先行きの回復傾向の持続性に対する懸念は後退している。』(前回)

回復傾向の持続性の懸念が後退したものの、そのペースは結局の所ごく緩やかという事ですので、これ修正方向としては微妙ですけれども、ただまあ前回よりはトーンダウンっぽい書き方にはなっていますね。

欧州

『欧州経済は、輸出が好調なドイツなどを中心に、全体として緩やかに回復してきたが、ソブリン問題を背景とした金融環境や企業・家計マインドの悪化などから、減速が明確になっている。』(今回)

『欧州経済は、輸出が伸びているドイツなど一部の国と、ソブリン問題を背景とした緊縮財政の影響から低調な動きが続く域内周縁国の間で、景気回復ペースの格差が顕著となっているが、全体としてみると、緩やかに回復している。』(前回)

どう見ても下方修正です本当にありがとうございました。

新興国

『一方、新興国・資源国経済では、物価上昇による実質購買力の低下や金融引き締めの効果に加え、先進国経済の減速の影響などから、幾分減速しているが、生産・所得・支出の自律的な好循環が基本的に保たれているもとで、総じて高めの成長が続いている。このため、多くの新興国・資源国では、インフレ圧力は十分に沈静化していない。』(今回)

『この間、新興国・資源国経済は、旺盛な内需や海外からの資本流入のもとで高成長が続いている。』(前回)

まあだいたいこういう感じで文章量が長くなるのは自信度が下がっている証拠ですな。


・で、海外の先行き見通しですが

『海外経済の先行きに関する中心的な見通しとしては、当面は、国際金融資本市場の緊張が残る中、先進国を中心に減速した状態が続くとみられるが、その後は、新興国・資源国に牽引される形で、再び成長率を高めていくと考えられる。このため、見通し期間中について平均的にみれば、高めの海外経済成長率を想定することができる。』(今回)

『先行きの海外経済については、新興国・資源国経済の高成長に牽引され、回復を続けることが想定される。世界経済全体の成長率は、2010 年に続き、2011 年、2012 年も、高い成長率を記録した金融危機前の10 年間の平均を上回って推移する見込みである。』(前回)

・・・・・・これね、まあ一応ヘッジクローズが入ったりして下方修正は下方修正なのですけれども、基本的な見通しは結局のところ『高めの海外経済成長率を想定することができる』となっているのが非常に謎というか無理があるんじゃないのという感じがするのですよね。

ちなみに、地域別展開を見るとこうなるだわさ。

『米国経済については、緩和的な金融環境が経済の下支えに働くと考えられるものの、バランスシート調整の圧力が根強く残る中、成長のペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。』(今回)

『米国経済については、新興国・資源国向けを中心に輸出が増加基調をたどるほか、緩和的な金融環境を背景に、個人消費や設備投資が引き続き緩やかに増加するため、回復を続けると考えられる。』(前回)


『欧州経済についても、ソブリン問題の影響が当面実体経済に作用し、景気回復の動きは抑制されたものになると考えられる。』(今回)

『欧州経済については、輸出の増加が徐々に内需に波及し、中心国と周縁国の格差を伴いながらも、全体として緩やかな回復が続くとみられる。』(前回)


『この間、新興国・資源国経済は、多くの国で、当面は幾分減速した状態で推移するとみられるが、その後は、インフレ圧力の低下に伴って、家計の実質購買力が回復することなどから、高めの成長を実現していく可能性が高い。』(今回)

『新興国・資源国経済は、インフレ懸念の高まりを背景に、金融引き締めの動きが続くとみられるが、旺盛な内需や海外からの資本流入が続くもとで、高めの成長を維持する公算が高い。このうち、中国経済は、所得水準の向上や都市化の進展を背景として、個人消費や住宅投資、各種のインフラ投資が増加基調をたどるため、高成長を維持すると考えられる。NIEs・ASEAN 諸国の経済は、輸出に加え、設備投資や個人消費などの国内民需も増加が続くと見込まれるため、景気は拡大基調をたどると予想される。』(前回)

めんどいので一気に引用だけしましたが、全部下げている上に新興国経済って確かその「インフレ圧力の低下」がちゃんとできるのかよという話を以前から決定会合声明文の中でもリスク認識として入れているような気がするんです訳で、何かまあ正直言って新興国の見通しも微妙にどうなのって感じがしますよね。更に今回はこんなヘッジクローズも。

『ただし、こうした見通しについては、経済にきわめて大きな影響を及ぼしかねない金融市場のショックは、回避されることを前提にしている。そうした前提を裏付ける政策当局の姿勢として、10 月央にパリで開催されたG20 の声明では、銀行システムや金融市場の安定を保つために必要な全ての行動を取ることに引き続きコミットしている旨、明記されている。』(今回)

いやでもあんさんさっき「負の相乗作用」って話になっていたと思うんですけど・・・・・


・国内金融環境に関しては日銀の緩和効果のアピールと欧州との違いの強調

国内金融環境の部分ですけれども、まあ国内の金融環境は緩和されていますねというのは当然なのですけれども、この中でいろいろと日銀のアピールが行われているのが悲しいですな。

『国際金融資本市場が不安定な中にあって、以上述べたわが国の金融環境と、米欧の金融環境との間には、際立った違いがみられる。例えば、銀行間取引の緊張度を表すLIBOR−OISスプレッドは、米ドルとユーロについては夏場以降拡大しているが、円については安定している。社債の信用スプレッドも、米欧では上昇が目立っている一方、わが国では上述の通り低水準で安定している。』

ニポーンのOISって最近取引ってあるの???という気もしますがまあそれは兎も角としまして日本の金融環境は緩和であることは仰せのとおり。で、その理由について説明するのですが、第4の部分に泣いた。

『第4に、日本銀行が、市場に対して潤沢に資金を供給していることや、包括的な金融緩和政策のもとで、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J―REIT)といったリスク性資産の買入れを行っていることも、金融環境の緩和に寄与していると考えられる。』

ほうほうそうですかという感じですが、リスク性資産の買入を行って金融環境の緩和に寄与するんだったら今回の追加緩和でもリスク性資産の購入を行った方が良かったんじゃないですかねえとかツッコミを入れてはいけませんですかそうですか。まあ一応日銀の理屈としては「既に金融環境は緩和的なので追加緩和でリスク性資産の購入を行うのではなく、2年などの金利の低位安定の方が効果がある」というのが繰り出されると思いますが。


・で、海外下げているのに何で先行き見通しがほとんど下がらないの????

次が先行き見通しなのですが・・・・・・・

『そのことを念頭に置いて、先行きを展望すると、わが国経済は、当面海外経済の減速や円高の影響を受けるものの、その後は海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『今後の経済の見通しは、電力を始めとする様々な供給面の制約が、いつどの程度のペースで解消していくかに大きく依存する。そのうえで、先行きを展望すると、わが国経済は、当面、生産面を中心に下押し圧力が強い状況が続くと考えられる。(途中長いので割愛)秋口以降は、サプライチェーンの再構築も一段と進むとみられることから、電力の需給逼迫が改善に向かうもとで、供給面の制約は和らいでいくと見込まれる。そうした状況になれば、海外経済の改善が輸出や生産の増加につながり、わが国経済の回復を支える原動力として、再びはっきりと作用してくる。さらに、震災によって毀損した資本ストックの復元に向けた動きも、次第にわが国経済を押し上げる方向で寄与してくるものと考えられる。』(前回)

ということで、前回は何せ震災の影響がどうなるかという話が多く(展望レポートの中でも前回はその部分に多くの説明を割いています)、ちょっとその部分が長いのですけれども、結局の所従来からの基本的な見通しが今回実は変わっておらず、まあ単にその時間軸が1年程度先に延びただけ、という風になっているのが何だかなあ感があるのですけれ
ども。

いやね、別に見通し変えないなら変えないでも良いのですけれども、それならば何かここまでこれでもかとばかりに(ここにもあるように日本成長の最大のドライブ役であると思われる)海外経済の現状判断を下げているのかというのが謎でありまして、何か微妙に話の整合性がアレな気がする。

『すなわち、2011 年度下期は、輸出や生産を中心に、海外経済減速や円高の影響を受けるとみられる一方、資本ストック等の復元に向けた復興需要が、公共投資、民間設備投資、住宅投資、さらには耐久消費財の消費といった様々な面で、徐々に顕在化してくると考えられる。2012 年度は、復興需要が年度を通じて寄与することに加え、海外経済の成長率が緩やかに高まり、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムが働くため、比較的高い成長率となることが予想される。2013 年度については、復興需要の押し上げ寄与が徐々に減衰していくことなどから、成長率は、2012 年度対比では鈍化するものの、新興国・資源国を中心とする堅調な海外需要のもとで、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』(今回)

『以上のような動きを背景に、わが国経済は、2011 年度前半は、下押し圧力が強い状態が続いた後、年度後半にかけては、輸出や生産がはっきりとした増加に転じるもとで、年度前半からの反動もあって、景気回復テンポが高まる可能性が高い。2012 年度入り後は、輸出・生産を起点とする所得・支出への波及メカニズムの働きがはっきりし始めるとともに、資本ストックの復元に向けた需要の増加も続くため、潜在成長率を上回る成長が続くと考えられる。』(前回)

・・・・・・つまり「潜在成長率を上回る成長が続く」が前回(半年前)と比較して1年ほど伸びましたね、というのが基本的な見通しです。単にこれ時間軸が伸びただけで見通しそのものはあまり変わっていない、というのが実にこうアレな結果でございます。


と、ここまでやったら時間が無くなってしまったので以下明日に続きますが、中々この後も味わいのある話をしていてオモロイのですけれども、肝心の結論の部分が何でそう強いのよ(下げていないのよ、という意味でふ)というのが微妙にアレな所であったりします、という話は明日も続きます。

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2011/10/31

○何かまあ良く判りませんがねえ

またまた例によって例のごとく謎の事前報道とかあってまた政治方面から押し込みがあったんですねとか思うのですけれども、確かもう1か月以上ドル円で76円台か77円台で推移しているし、あたくしのお休み中はユーロはどちらかというと確り目だと思うのに急に何でこういう話になっているのか浦島太郎ちゃんのあたくしにはどうも良くワカランチ会長なのですが、まあ要するに政治方面の無策のツケ回しが来たんでしょ、としか思えないのですが実際はどうなんでしょうかね。

まあこれから読みますように、声明文だの展望レポートだので政府に文句垂れモードになっているという事はまあ日銀的には「クレクレは甘え」と言いたいんでしょうなあとか思いますが、その一方で今回の基金拡大が全部国債というのがこれまた何ですかなというのもありまして・・・・・

などとつらつらと考えるものの、まあ市場ちゃんに向かってみないと何が何やら良く判らんのでとりあえず思ってみただけの事をふたこと程申し上げただけでござる。


○ということで声明文比較

http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111027a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111007a.pdf(前回)

今回は展望レポートがセットになっているので、声明文の流れが微妙に違うのでざっくりとした比較になりまふ。

・現状認識

『日本経済は、供給面の制約が解消されてきている中で、持ち直しの動きが続いている。金融環境をみると、CPや社債の発行環境が良好な状態を続け、企業の資金調達コストも緩やかに低下するなど、緩和の動きが続いている。』(今回)

『わが国の経済は、持ち直しの動きが続いている。すなわち、生産や輸出は、震災による落ち込みからの回復過程に比べてペースは緩やかになっているが、増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても、全体としては持ち直している。この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさがなお窺われるものの、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(前回)

需要項目別の話が今回抜けていますが、詳しくは展望レポートでという形ですな。ただまあ基本的な見解は「持ち直しの動きが続く」と変化がないとゆー格好に。

・先行き見通し:経済に関して

『日本経済の先行きについては、当面、海外経済の減速や円高の影響を受けるものの、その後は海外経済の成長率が再び高まることや、震災復興関連の需要が徐々に顕在化していくことなどから、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)

『先行きについて、海外経済は、当面減速するものの、基調的には、新興国を中心に底堅く推移すると考えられる。そうしたもとで輸出が緩やかな増加基調をたどることや、資本ストックの復元に向けた国内需要が顕現化してくることなどから、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

これまた「緩やかな回復経路に服していく」というのも同じですな。


・先行き見通し:物価に関して

『しかし、物価の安定が展望できる情勢になったと判断されるにはなお時間を要すると予想されるうえ、国際金融資本市場や海外経済の動向次第で、経済・物価見通しがさらに下振れするリスクにも、注意が必要である。』(今回)

『消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

ということで、今回は上記の文章の次に追加緩和を行いますという文言が続くのですが、声明文ベースで「なお時間を要すると予想される」というのは今回初ではあるのですが、実際には4月の展望レポートでもこの文言はございまして、今回わざわざ声明文に入れたという点には意味があるとは思いますが、そうは言っても別にこの物価判断自体は以前から継続しているものですから、実際問題としては「下振れリスク対応」という所なのでしょうが、追加緩和実施する為に単に下振れリスク対応だけだとちょっと寂しい(今日はネタ書きが間に合わないから明日にしますが、総裁会見では「下振れリスクの一部(要するに欧州債務問題)が具現化した」というのを強調していましたので、まあ実際問題として物価なのかというとこれが微妙に微妙ですな、うんうん。

リスク要因に関しては展望レポートになるので割愛しまして。


・今回の追加緩和の理由

『日本銀行は、8月に強化した金融緩和措置のもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めているが、物価安定のもとでの持続的成長経路への移行をより確かなものとするためには、金融緩和を一段と強化することが必要と判断した。』(今回)

『その際、上記の金融環境のもとで企業の資金調達が基本的には円滑に行われている現状を踏まえ、資産買入等の基金を5兆円程度増額する対象は長期国債とし、それを通じて金融市場全体に緩和効果のさらなる浸透を図ることが適当と判断した。』(今回)

今回は(実際問題としては政治に押し込まれたのかなあとか思いますがそれはそれとして)下振れリスク対応で実施しているようにしか見えないのですけれども、下振れリスク対応で実施し、長期金利などの金利水準は低位で推移しているという認識の中で何で2年国債の買入だけ拡大なのかは良く判らんっす正直言って。やるならETFじゃないんですかねえ(ETF単独ならいきなり5兆もやる必要はないと思うが)と思いますけど。

それに今回は補正予算で国債増発とかの話(まあ市中消化分の増額は屁のような額に収まりましたが)がある中で国債の買入だけを増やすというのは財政ファイナンス的観点からどうなのよという気もしますが、リスク資産は増やしたくないというのが先に来ている感があって、ま〜見るからに政治的状況からクレクレうるさいからとりあえず出すだけ出したって所なんでしょうな。よー知らんけど。


・10兆円増額の宮尾さんの提案とな

脚注にこんなのが。

『本日の金融政策決定会合では、宮尾委員より、資産買入等の基金を10兆円程度増額し、60兆円程度とする議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:宮尾委員、反対:白川委員、山口委員、西村委員、中村委員、亀崎委員、森本委員、白井委員、石田委員)。』(今回)

はあはあそうですかという感じですけれども、宮尾さんは10兆円増額の内訳をどういう風に提案したのでしょうかにゃあ。2年国債10兆円増額なのかなあとは思います(固定金利オペはどう見ても拡大するのは無理だし短国に関してはオペ残が増えると直ぐに3M以内の短国が0.10%割るような中で買入拡大するのはこれまた無理)けれども、出来上がりが14兆円になると当該期間の10年と5年と2年と20年の発行額が月に均すとざっくり6兆円とかのような気がする(大体の記憶ベースの感覚で申し上げている(10年前の10年の発行額とかとっさに出てこないので勘弁)ので、総額14兆買うとなるとそこそこの吸い上げになるような気もするがどうなんでしょうかね。まあ席に戻ってみればその辺のイメージも思い出すでしょ(汗)。


・悲痛な叫びのコーナー

今回は読んでいて実にこうアレな部分が2か所。

『なお、日本銀行は、資産買入等の基金とは別に、銀行券需要の趨勢的な残高に概ね見合うよう、安定的な資金供給を行うという観点から、現在、年間21.6 兆円の長期国債を買入れている。』(今回)

『こうした日本銀行の取り組みが、日本経済の中長期的な成長力の強化に結びつくためには、民間、政府を含め各方面が、緩和的な金融環境を活用しつつ、それぞれの役割に即した取り組みを続けていくことが重要と考えている。』(今回)

・・・・・・・ええもうね、日銀としては頑張っているんですけど何でおまいらいつもクレクレばかり言うんだよ勘弁してくださいお願いします。という風に言いたいのは把握したという感じですが、今回は思いっきり政府に対して「ちゃんとやれ」というのが出ていまして、しかも展望レポートの方でも(どうも今日は休み明けでアレですので展望レポート詳細比較まで間に合わないのですけれども)リスク要因に「復興需要に対する不確実性」というのを思いっきり挙げているのが更にもう何か日銀的に政府に対してトサカに来ているっぽいのが伝わる所でございまして実に味わい深いものを感じましたがどうでしょうかね。


・そういや今回は期限はそのまま

別紙の方で拡大内容の詳細が挙がっていますが、そこではご案内のように基金国債買入の5兆円増額がありますが、期限に関しては『2012 年末を目途に増額を完了する。』(今回)ということで変化なし。

まあ何ですな、今回に関してはリスク性資産の買入じゃない(国債だってリスクあるでしょとかいう話をしだすと話が本質から逸れるので華麗に無視してください)ので期限を延ばすと却ってリスク性資産の買入ペースが落ちるという残念な展開になってしまいますし、国債の買入であれば別にまあそんなに無理はないでしょうから、期限はそのままにしておくのが妥当でしょうと思います。


#ということで展望レポート比較に予想通り間に合わなかったですすいませんすいません

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2011/10/21

○さくらレポートである

http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/rer111020.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/brp/rer/data/rer111020.pdf(本文)

前回はV字回復モードでしたがさて今回は・・・・・・

・今回も回復継続もペースダウン

以下概要の方から。

『各地の景気情勢を前回(11年7月)と比較すると、5地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、九州・沖縄)からは供給制約の解消などから持ち直し方向の報告があった一方で、4地域(北陸、近畿、中国、四国)からは前回からの持ち直しの基調に大きな変化はないとの報告があった。なお、複数の地域からは、「海外経済減速などの影響が生産活動の一部にみられ始めている」という報告があった。』

ほほう。

『この間、震災で甚大な被害を受けた東北からは、「被災地以外の地域では震災前を上回る水準にまで復してきているほか、被災地の一部でも経済活動再開の動きがみられるなど、全体として回復している」、関東甲信越からも、「着実に持ち直してきている」と、震災以降の経済活動の着実な立ち上がりを示す報告があった。』

震災の直接的な影響は(直撃の東北を除いて)かなり少なくなってきましたと。

『また、複数の地域から、「地域・業種・規模間で、持ち直しの動きにばらつきがみられている」との報告があった。』

ということで、上方修正している地域は上記にあるように5地域となっていますが、海外減速の影響が出ているとか、持ち直しの動きにばらつきとか微妙にヘッジクローズが入っているのですが、これまた先般の決定会合で見られたヘッジクローズ満載の声明文とは一読した時のトーンが明るめですなあという感じです。

需要項目別に引用。

『公共投資は、東北から、「持ち直している」、関東甲信越から、「下げ止まりつつある」との報告があった一方、他の7地域(北海道、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州・沖縄)からは、「減少している」等との報告があった。』

そらそうですな。


『設備投資は、震災後の復旧関連投資の増加や、新製品対応投資、新規出店にかかる投資増などを背景に、7地域(北海道、東北、北陸、関東甲信越、東海、中国、四国)から、「持ち直し」や「増加している」との報告があった。一方、近畿からは、「企業収益が頭打ちとなる中、やや弱めの動きがみられる」との報告があった。また、九州・沖縄からは、「弱めの動きとなっている」との報告があった。この間、多くの地域から企業の業況感について改善の報告があった一方、一部の地域から為替円高を懸念する報告もあった。』

為替円高キタコレですが、まあ設備投資はまちまちなのね。


『個人消費は、一部耐久消費財での駆け込み需要の反動がみられているものの、供給制約の解消や消費マインドの改善、被災地での震災関連需要などを背景に、6地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、近畿、中国)から、「持ち直し」や「増加を続けている」、九州・沖縄から、「底堅い動きとなっている」との報告があった。また、北陸からは、「下げ止まっている」との報告があった。一方、天候不順の影響などから、四国からは、「弱い動きとなっている」との報告があった。』

消費が何気に強いですの。

『品目別の動きをみると、大型小売店販売額では、消費マインドが改善しつつあることなどを背景に、ほとんどの地域から、「持ち直し」や「下げ止まり」の動きがみられているとの報告があったが、四国や九州・沖縄からは天候要因などを理由に、「弱い動き」との報告があった。乗用車販売については、供給制約の解消などを背景に、全地域から、「持ち直し」や「減少幅縮小」の動きがみられるとの報告があった。一方、家電販売は、アナログ放送終了前の薄型テレビなどへの駆け込み需要の反動などにより、全地域から、「減少」方向の報告があった。こうした中、旅行関連需要は、ほとんどの地域から、「持ち直し」や「減少幅縮小」の報告があった。』

品目別でも家電の駆け込み需要落ち込みを他の部門がカバーしているような感じで堅調ですね。


『生産については、供給制約の解消により、ほとんどの地域から、「増加している」または「持ち直している」等との報告があった。この間、複数の地域から、「海外経済減速などの影響が一部にみられ始めている」との報告があった。』

ほほう。

『業種別の主な動きをみると、7地域(北海道、東北、関東甲信越、東海、中国、四国、九州・沖縄)からは、輸送機械について、「増加している」や「生産水準を引き上げている」等の報告があった。また、4地域(北海道、東海、中国、九州・沖縄)からは、鉄鋼について、「輸送機械の生産増加から持ち直している」といった報告があった。一方、複数の地域からは、海外経済の減速や在庫調整圧力などを背景に、電子部品・デバイスや化学、一般機械で、「弱めの動き」等の報告があった。この間、東北からは、「鉄鋼や紙・パルプ、食料品は、太平洋沿岸部の生産設備が甚大な被害を受けたことから、依然として低水準となっているものの、生産設備復旧に伴い操業を再開する先も徐々にみられている」といった報告があった。』

こちらは業種ごとにまちまちですな。


『雇用・所得環境については、多くの地域から、「引き続き厳しい状況にあるが、改善の動きがみられる」との報告があった。』

ほうほうそれはそれは。

『雇用情勢については、ほとんどの地域から生産活動の持ち直しなどを背景に、「改善傾向」との報告があった。また、雇用者所得についても、多くの地域から、「下げ止まっている」等との報告があった。』

ということで、どうも個人関連部門が比較的先行きを含めて確り目の中で、海外経済動向と為替の円高傾向が懸念材料ですね、というような感じになっていますが、先ほども申し上げましたように、さくらレポートも月報と似たような感じで、国内景気に関しては別に足元で悪化している訳ではないですよそらまあV字回復分は一旦閉店ガラガラになったかもしれませんけど回復は継続してまっせ、という感じで、そんなに暗い話をしている訳ではありませんな、という所であります。

来週は展望レポートですけれども、この調子だと「回復が継続している」というのを維持する事からその分だけ基本的な認識が強くなる一方で、リスク認識を引き上げたり、物価見通し辺りの見通しをまあそんなに強気じゃないトーンで示してどっちに転んでも良いようなバランスの取り方をしてくるのかねえという感じですかな。

まあ海外経済というか欧米経済がバランスシート調整過程にある訳でして、その点からするとフローで循環回復してもストックがゲロゲロ状態というのが海外では続くでしょうから、それを経済の現状認識と先行きのリスク認識というような形でバランスとって見通しを出すしかないんじゃないですかね。

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2011/10/19

○久々にFSR

金融システムレポート(2011年10月号)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr111018a.htm/

全文(PDFで86ページ)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr111018a1.pdf

要旨(PDFで25ページ)
http://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr111018a2.pdf

こちら、前回分は東日本大震災の影響もあったようで発行中止となってしまったという中々残念な展開でしたが、今回は内容も一新して登場。ということでまだ全部読んでいないので要旨の最初のページにある『新しい金融システムレポートの刊行』という所から少々。

『・従来の『金融システムレポート』と『金融市場レポート』を統合し、新しい『金融システムレポート』を刊行。新しいレポートでは、マクロ・プルーデンスの視点をこれまで以上に重視して、わが国の金融システムの安定性を評価する。

・ 今回のレポートでは、以下の諸点で分析を充実した。

@ 金融システムの頑健性評価の観点から、実体経済や金融資本市場にストレスが生じるケースを複数想定し、マクロ・ストレス・テストを強化。

A 新たに開発した「金融マクロ計量モデル」を活用して、実体経済と金融の相乗作用の分析・評価を強化。

B システム横断的な観点から、銀行とつながりの深い銀行以外の金融部門(保険会社など)に内在する各種リスクを点検。

C 金融不均衡の蓄積状況を異なる角度から評価するため、金融面のマクロ的なリスクを表す指標を拡充。

D 金融資本市場がわが国の金融システムに及ぼす影響に鑑み、金融資本市場から観察されるリスクの分析を強化。』

ということで、まあ中身に関してはまだ斜め読みしかしていないので続きは明日だったりする(FOMCネタも明日送りと言いながら続きをやっていないだろというツッコミはしないように)のですけれども、従来のFSRでは主に銀行の与信部分とか株式持ち合いとか、割とそっち関連の話が多かったような印象があるのですが、今回はもうちょっと市場部門の方の話が増えている感じがします。

まあそれはそれで昨今のマクロプルーデンスの重要性に鑑みますとそらまあそうですなあと思いますし、別にそれ自体に悪態を連ねる気もないし必要も無いのでございますが、まあマクロプルーデンスも使いようという感じでして、その概念で押していく結果金融正常化を急ぎすぎるとか引締めバイアスがかかるとか、変に金融機関にリスク取らせない方向になるとかいうのは勘弁だなあとか思うのでありますです。

ま、後はマクロプルーデンスの精緻化に力を注ぎ過ぎて、頭でっかち路線に走るのもご勘弁願いたいと思いますなあとか思うのですけどね。

要旨4ページ『1.わが国金融システムの安定性評価』から。

『・ わが国の金融システムは、震災以降も、全体として安定性を維持している。

・ マクロ・リスク指標からは、金融不均衡の蓄積は確認されない。

・ 銀行やそれ以外の金融機関が抱えるリスクも、自己資本対比でみて概ね抑制された状態にある。

・ もっとも、国際金融資本市場で神経質な展開が続く中、以下の点に留意する必要がある。

・ 内外の金融資本市場間の連関が高まるもとで、わが国の金融資本市場もやや神経質な展開となっている。仮に海外の国債市場や株式市場が変調を来たす場合には、短期間のうちにわが国に波及し、国内証券関係損益が大幅に悪化する可能性がある。

・ 金融機関の信用コストは全体として減少しているものの、貸出債権の質は改善していない。

・マクロ・ストレス・テストでは、仮に外部環境に大きなストレスが生じたとしても、銀行の自己資本基盤が全体として大きく損なわれる事態は回避されると試算される。ただし、相対的に収益力や自己資本基盤が弱い銀行では、自己資本比率が先行きも低い水準にとどまる可能性がある。』

だそうで、まあそうですなあという感じですが、この辺りを見ると当面マクロプルーデンス的に銀行もっとリスク落とせとか金融不均衡が発生していてケシカランとかいう話は出てこなさそうなので一安心という所でしょうか(^^)。ただまあ銀行の資本増強に関してはどこかのタイミングで課題になってくるような気がします。

てな感じでまあ色々とありますが、要旨じゃなくて本文を読んで味噌という事で。金融市場レポートと統合されたので従来とはだいぶ雰囲気が違う内容になっています。

あ、あとこんなのもありますがこれから読みます。

http://www.boj.or.jp/finsys/fs_policy/fin111018a.pdf
日本銀行のマクロプルーデンス面での取組み

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2011/10/14

まずは9月決定会合議事要旨から少々

http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2011/g110907.pdf

○景気認識に関しては「欧州債務問題がリスク」も国内景気の基本トーンは案外強い

まずは『U.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要』のあたりから少々。

・海外経済に関して

『委員は、海外の金融経済情勢について議論を行った。』って事でああでもないこうでもないという話が展開されますが、その結論は・・・・・

『海外経済の先行きを巡る下振れリスクが幾分高まっているとの認識で一致した。』

というまあそうですなという結論になっているのですが、そのキモは基本的に欧州ソブリン問題→金融システム不安→実体経済への悪影響→ソブリン問題の拡大に戻る、というネガティブフィードバックというまあ普通にそうですよねというお話でございます。

『何人かの委員は、ギリシャに対する第2次支援策の遅れが嫌気されて、財政健全化を巡る懸念が強い諸国の国債価格が大幅に下落している中、これらの国債を多く保有している欧州系金融機関を中心に、ドル資金調達コストが上昇しているほか、株価が下落しているなど、欧州の金融システム全体に対する不安が強まっていることを指摘した。そのうえで、これらの委員は、ソブリン・リスク問題の影響が、金融資本市場の動揺やマインドの悪化を通じて、実体経済にも及び始めているとの見方を示した。』

ということで、ネガティブフィードバックが起きているという指摘をしているのはまあさよですなという所ですが、そーなりますと先行き追加の金融緩和もというようなお話になるんでしょうなあと思う訳ですが、すでに報道されておりますように、その辺の指摘もあったりします、後ほど。

『こうした議論を経て、委員は、ソブリン・リスク問題の短期的な終息は難しく、しばらく世界経済の下振れ要因となり続ける蓋然性は小さくないこと、今後さらに、財政と金融システム、実体経済の負の相乗作用が強まっていくことにならないかどうか、一段と注意してみていく必要があること、などの認識を共有した。』

という事でまあさよですなという話になりますが、以下あたくしの愚考になりますけれども、従来(というかこの時点辺りと言うか)は「ギリシャって本質的に赤字垂れ流し企業みたいな状態になっているから、注射をしても結局は穴の開いた容器に注水してるようなもんだから延々とダメですよね」という感じでのソブリン問題長期化という文脈だったと思いますが、問題が金融機関の資本問題という話になってくると、もしかしたら金融機関の資本増強という形で解決が早くなるかもしれませんね、という気がせんでもないがたぶん楽観論だと思われます(汗)。

まあ結局一般的な不良債権処理問題と違うのは、赤字垂れ流し企業だったら破綻させられますけれどもギリシャの場合って破綻処理ができるのかというのと、そもそも破綻処理しても肝心の収益力(というのも変ですが)を回復させるような大鉈振るえないと話が始まらないというのが極めて残念な所で、一回負担を軽くしても赤字垂れ流し状態じゃあ同じことをまた数年後にやるだけですからね。

という雑談は兎も角として、新興国経済に関して。

『新興国・資源国経済について、委員は、金融引き締めの影響から、成長テンポが鈍化してきているが、堅調な需要を背景に、全体としては高めの成長を維持しているとの見方で一致した。そのうえで、複数の委員は、新興国・資源国の中でも、景気拡大基調が続いている国がある一方で、減速感がみられる国があるなど、各国の状況は一様ではないとの認識を示した。』

『先行きについて、委員は、当面、新興国・資源国は高めの成長で世界経済を牽引していくとみられるが、物価安定と成長を両立することができるか、なお不透明感が高いとの認識を共有した。』

ということで、まあ新興国経済に関しては今回(10月)の決定会合声明文でやっと降参モードになったのですが、この部分を読みますと9月は「一様ではない」という話を指摘する人もいますが、「高めの成長を維持で一致」という事ですからまあ9月時点でも比較的強気ちっくだったように見える訳で、欧州ソブリン問題の方がアレなので目立ちますけれども、新興国に関して従来の認識や見通しに対して変調が生じるという足の掬われコースもあるような気がしてまいりましたがどうでしょうかね。


・国内景気に関して

『景気の現状について、委員は、震災による供給面の制約がほぼ解消する中で、着実に持ち直してきているとの見方で一致した。また、生産や輸出について、震災前の水準に概ね復しているとの認識を共有した。何人かの委員は、サプライチェーンの修復が順調に進み、懸念されていた夏場の電力問題も、民間の様々な努力により、結果的に生産活動の大きな制約となることは避けることができた、との見解を示した。』

『そのうちの一人の委員は、生産面をみると、一般機械や電気機械といった業種では震災前の水準を上回っていると述べた。設備投資や個人消費について、委員は、持ち直しているとの認識を共有した。何人かの委員は、@ 大企業の2011年度の投資計画が4年ぶりのプラスになっていること、A 新車登録台数や家電販売、百貨店売上高が増加していること、B 企業・家計の景況感は改善方向にあること、などを挙げた。』

ということで、何か随分と威勢が良いじゃねえかと。

『景気の先行きについて、委員は、堅調な海外需要を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた国内需要の顕現化などから、2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくとの見方を共有した。生産の先行きについて、多くの委員は、予測指数や企業からの聞き取り情報を踏まえると、自動車関連で震災による販売の落ち込みを取り戻すための増産の動きもあって、10〜12 月にかけて増加を続ける可能性が高いと述べた。一人の委員は、電力使用制限令が予定より早く解除されることも、生産の増加に寄与し得るとコメントした。』

これも威勢が良いですな。

『景気の先行きを巡るリスクについて、委員は、震災による供給面の制約がほぼ解消する中、海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響に、最も注意が必要であるとの見方で一致した。』

まあそういう事ですが、これがまたこの先が長いのよ。

『多くの委員は、足もとでは、とりわけ、欧州のソブリン・リスク問題が世界経済、ひいては日本経済を下押しするリスクが高まっていると述べた。そのうえで、何人かの委員は、電子部品・デバイスの生産がこのところ弱含んでいることなどを踏まえると、情報関連の海外需要の下振れにも注意する必要があると述べた。』

『また、複数の委員は、自動車関連での震災による販売の落ち込みを取り戻すための増産の動きに関して、海外需要を過大に見積もっている惧れがあり、その結果として在庫が積み上がるリスクがあると指摘した。』

ほほう。

『中長期的なリスク要因として、多くの委員は、足もとの円高が輸出や企業収益の下押し圧力として働くだけでなく、その基調が定着した場合には海外生産シフトの加速を通じて国内産業の空洞化をもたらす可能性があることや、点検後の原発の再稼働に目途が立たない中、電力供給を巡る不確実性の長期化が経済活動を制約する可能性があること、などを挙げた。海外生産シフトについて、一人の委員は、円高は海外シフトを促す主因ではないが、タイミングの選択に影響を与えている可能性は大いにあるとの見方を示した。』

とまあこのようにリスクの所をああでもないこうでもないと書いている一方で、現状認識と先行き見通しは更に強めのトーンという中々お洒落なバランスのとり方になっていますが、さて10月の議事要旨ではこの辺のバランスがどうなっているのかねというのを注意したいかなあとか思うのでありました。


・物価統計に関して

『この間、委員は、今回の基準改定を踏まえつつ、基調的な物価変動をどう捉えればよいかについて議論を行った。』

ほうほうそれでそれで?

『何人かの委員は、基準改定の影響が小さい系列としては、価格変動の大きな品目の影響を除去した10%刈込平均値のほか、ラスパイレス連鎖指数も有用であるとの認識を示した。』

刈込平均の話は前からございましたが、ラスパイレス連鎖指数の話が思いっきり前面に出てきたのはふーんという所であります。

『別の一人の委員は、現行の消費者物価指数は、薄型テレビなど購入頻度の低い数品目の価格下落の影響を大きく受けており、仮にこれらの品目を取り除いて前年比を計算すれば、1% 弱のプラスで推移していることを指摘した。』

ほうほう。

『これに対し、複数の委員は、購入頻度が低いという理由でそれらの品目を取り除くことには慎重である必要があるが、薄型テレビやパソコンなどは、海外の統計に比べて大幅な品質調整がなされている可能性が高く、そのことが消費者物価指数全体を押し下げる傾向をもたらしていることも考えられると述べた。』

まあ確かにCPI統計そのものにもツッコミどころがあるとは思うのですが、この辺りのネタを日銀がガリガリ突っ込んで行くとまた総務省がヘソを曲げそうな気がするのは気のせいですかそうですか(^^)。

『こうした議論を経て、委員は、物価情勢を判断するうえで、物価指数の特性やその評価方法に留意することは重要であり、基調的な物価動向の適切な捉え方について今後も検討を続けていくことが大切であるとの認識を共有した。』

ちなみに(以前ネタにしたので覚えている方は覚えていると思いますが)金融政策として見た場合の物価統計に関する日銀レビューシリーズが2006年2月に出ていますのでご参考までにリンクを付けておきます。またこのアップデート版が出てくることキボンヌ。

金融政策の説明に使われている物価指数(2006年2月)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2006/rev06j02.htm/(概要)
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2006/data/rev06j02.pdf(本文、PDFで10ページです)


○何か自画自賛成分が増えているような気がするのは懸念されます

『V.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要』から。

『当面の金融政策運営について、何人かの委員は、このところ、景気の下振れリスクは幾分高まっているが、8 月に実施した基金の増額に際し想定していた範囲内であるとの見解を示した。』

まあそうじゃないと追加緩和実施です。

『また、何人かの委員は、米欧金融資本市場で緊張が高まっているにもかかわらず、日本の金融市場の安定が維持されていることには、基金の増額が何がしか影響していると述べた。』

・・・・・・・・・?????????

えーっと、そもそも基金の増額したって言っても実際に買入とか6か月固定オペとかどんだけ増やしましたねんと思うのです(ちなみに6か月固定オペの新規実施は1本8000億円ね)けれども。まあETF買入による効果とか、CP買入による効果(CPについてはもはや民業圧迫状態で副作用と化しているが)とかの話なら分からんでもないですけれども、実際問題として別に基金増額した分をすぐに買ったわけでも無い話をそこまで言うかという違和感がそこはかとなくするのである。

つーかさ、株式市場方面の人の話を聞くと「今日のETF買いってどうだったよ」みたいな足元のフローに関心があって、ストックとして幾ら買っているとかいう話での効果という感じじゃないように思えるのですけど。いやまあ買入の玉が増えたというのは重要な論点ではございますが。


『こうした中で、複数の委員は、日本経済の直面する厳しさが、国内外の構造的な要因から生じている面も大きいことを踏まえ、金融政策で対応し得る問題とそうではない問題を見極めながら政策を進めていく必要があると述べた。』

というのをバーナンキ議長が言うと文句が出ませんが、日銀からこういうのが出ると「ま〜た追加緩和出し渋りの日銀理論だわ」と言われてしまうのはまあ残念な所です。

『別の複数の委員は、欧州のソブリン・リスク問題の帰趨が不透明であるなど、景気の下振れリスクがなお高いことを踏まえると、事態の展開によっては、先行きさらなる金融緩和が必要となる可能性もあるとの見解を示した。』

そらそうよという感じですがキタコレですね。

『これに対し、一人の委員は、金融緩和の一段の強化が、市場の流動性低下や金融機関の収益機会の縮小などを通じて、かえって、金融システムを不安定化させたり、金融政策の効果浸透を阻害したりすることがないよう、十分に配慮する必要があると述べた。』

というのをFOMC議事要旨に掲載されると以下同文^^;


でですな、その後に成長基盤強化の資金供給に関しての認識がこれまた何か自画自賛っぽくて銀行の中の人たちの本音ベースの話と乖離が生じているのではないかというのが懸念される所なのよ。

『成長基盤強化を支援するための資金供給について、委員は、金融機関がわが国経済の成長基盤強化に向けた自主的な取り組みを進めるうえでの「呼び水」としての役割を果たしてきたという認識で一致した。』

エライ勢いで上から目線ですが、別に金融機関は紐付け低利融資受けなくても市場でなんぼでも低利調達できますし、大体からしてこの絶賛運用難のご時世の中で成長性のある所があったら金融機関の方が勝手にホイホイと資金を出すと思うのですけれどもねえ。

『一人の委員は、借入先金融機関の個別投融資計画をみると、日本銀行の貸付条件を上回る期間や金額の案件が比較的多く、成長分野の案件に対する民間金融機関の積極的な取り組みが感じられると述べた。』

まあ何だ、上記見解に関しては銀行の中の人たちの率直なご意見を賜りたい所ですのでタレコミよろしくお願いいたしますという感じですが・・・・・・・・・

『委員は、期落ち分や期前返済分をカバーしつつ、残高を維持するとともに、今後は、6月に決定した新たな貸付枠による資金供給を通じて、ABLや出資に対する金融機関の取り組みを後押ししていくことになるとの認識を共有した。』

ABLは兎も角として「出資」って何ですねんという話はすでに悪態ついたと思いますので割愛しますが、何だかこの辺りも自画自賛臭が漂ってまいります。

『新たな貸付枠での第1回目の資金供給が381億円にとどまったことについて、複数の委員は、本貸付枠は、額の多寡にかかわらず、ABLの活用に向けた取り組みを促す機能を果たしていると評価した。』

はあはあそうですか(棒)。

『一人の委員は、新たな貸付枠の導入の公表以降、多くの金融機関でABLの活用に向けて動産担保を評価する体制を整備する動きがみられ始めているとコメントした。』

はあはあそうですか、銀行の企画部門っつーのも以下自主規制。

『何人かの委員は、ABLの認知度のさらなる向上に向けて、日本銀行は資金供給以外にも、様々な努力を続けていく必要があると述べた。』

小さな親切大きなナントカになりませんように(棒)。


・・・・・・・雑談のつもりが最後雑言になってしまいましたorz

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2011/10/12

○金融経済月報の概要部分は声明文ほどのトーンの引き下げではないのですが・・・・・

まあこれはこれで味わいが深いというか何というか。

http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1110.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/mopo/gp_2011/gp1109.pdf(前回)

・現状総括判断

『わが国の経済をみると、持ち直しの動きが続いている。』(今回)
『わが国の経済をみると、震災による供給面の制約がほぼ解消する中で、着実に持ち直してきている。』(前回)

というのは声明文と同じですな。

・現状判断需要各項目:生産と輸出

『生産や輸出は、震災による落ち込みからの回復過程に比べてペースは緩やかになっているが、増加を続けている。』(今回)
『生産や輸出は、供給面の制約がほぼ解消する中で、増加を続けており、概ね震災前の水準に復している。』(前回)

まあここも声明文と同じ。

・現状判断需要各項目:設備投資と個人消費

『こうしたもとで、設備投資は、被災した設備の修復もあって、緩やかに増加している。個人消費も、一部に弱さが残っているものの、全体としては持ち直している。』(今回)

『こうしたもとで、設備投資は、被災した設備の修復もあって、持ち直している。また、個人消費も、一部に弱さが残っているものの、全体としては持ち直している。』(前回)

ここなんですけれども、声明文では昨日申し上げましたように・・・・

『こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても、全体としては持ち直している。』(今回の声明文)
『こうしたもとで、国内民間需要についても、持ち直している。』(前回の声明文)

ということで、前回の声明文では「国内民間需要」という形でまとめて一括り状態になっていたので、「全体としては」というのが何となく下方修正チックに見えて、声明文比較をすると前月から下げたように見えます。

でも、こうやって需要項目別に並べてみると、設備投資に関しては「持ち直し」が「緩やかに増加」になっているのはどちらかと言えば強くなっているように見えますし、個人消費に関しても元々「全体としては」とか書いてありますので、あんまり下げた感が無いという辺りが声明文比較の時に受けた印象とだいぶ違ってくる所かなあと思います。

まあ端的に言ってしまえば先月は月報の概要部分で微妙にヘッジクローズをまぶしていましたねという話(ちなみに良く良く見たら先月の月報概要の比較ネタをやっていなかったという残念な忘れ物があった事に気が付くあたくし。だって先月前半はネタ多彩だったんだもんorz)でして、まあ前回の追加緩和措置の時にいろいろと下げていた(後日エントリーにはしませんがどこかに追記しておきます)面があったのを声明文の方にどどーんと出したという事なのでしょうかね。何か微妙なのでもう一度推移を精読してみます(汗)。

#ちなみに個人消費の文言に関しては8月月報概要からこの表現です


・現状判断需要各項目:住宅投資、公共投資

『また、住宅投資は持ち直しの動きが明確になっており、公共投資も下げ止まりつつある。』(今回)

・・・・・でもって今回「あれ、声明文ほど下がっていないぞ」という印象を受けるのはこの部分でございまして、この部分って前回の月報概要に無い部分であります。昨日ネタにしましたように、声明文ではここぞとばかりのヘッジクローズ文言入りが目立つ印象だったのですが、月報概要ではこの「明るい話」が入っているせいで印象が全然違う感じでございますな、うんうん。


・先行き見通し総括判断

『先行きのわが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(今回)
『先行きのわが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。』(前回)

ふむ。

・先行き見通し需要項目:海外経済、輸出

『海外経済は、当面減速するものの、基調的には、新興国を中心に底堅く推移すると考えられる。このため、輸出は、海外在庫の復元の動きもあって、緩やかな増加基調をたどるとみられる。』(今回)

『輸出は、堅調な海外需要を背景に、増加を続けるとみられる。』(前回)

まあこの辺は声明文と同じようにヘッジクローズてんこ盛りである。


・先行き見通し需要項目:国内民間需要

『こうしたもとで、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きもあって、徐々に増加していくと考えられる。個人消費も、底堅く推移するとみられる。生産は、緩やかな増加を続けると考えられる。』(今回)

『こうしたもとで、設備投資、住宅投資、公共投資は、資本ストックの復元に向けた動きもあって、徐々に増加していくと考えられる。個人消費も、底堅く推移するとみられる。生産は、ペースを緩やかにしつつも、増加を続けると考えられる。』(前回)

ここはまあ実質的には前月と変わっていないといえそうです(生産の部分が変化しているけれども前月の見通し通りに推移しているという感じかと)。


・物価について

現状認識部分はこちら。

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の動きを反映して、横ばい圏内の動きとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『物価の現状について、国内企業物価の3か月前比をみると、国際商品市況の動きを反映して、横ばい圏内の動きとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、下落幅が縮小を続け、概ねゼロ%となっている。』(前回)

先行きに関しては国内企業物価の先行き見通しが下がっています。

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、弱含みで推移するとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『物価の先行きについてみると、国内企業物価は、当面、横ばい圏内の動きを続けるとみられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

ということで、物価は若干見通しが下がった感じです。金融面の部分は基本的に認識に変化はないので華麗にスルーしますが、先ほど申し上げたように、現状認識部分で微妙に明るい表現が入っているので、印象としては声明文ほどの降参モードを感じない、という中々不思議ちゃんな月報概要でございました。

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2011/10/11

○声明文はヘッジクローズ入れまくりで降参寸前の風情

いつものようにヘロヘロと声明文比較
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k111007a.pdf(今回)
http://www.boj.or.jp/announcements/release_2011/k110907a.pdf(前回)

・景気の現状判断

『わが国の経済は、持ち直しの動きが続いている。』(今回)
『わが国の経済は、震災による供給面の制約がほぼ解消する中で、着実に持ち直してきている。』(前回)

供給制約の話が完全に抜けたのは(まあそうだろうなとは思いますが)良い流れなのですが、表現の方は前回対比横ばいなのか上なのか下なのかよくワカランチ会長ではございまする、がこの先は延々と降参モードが続くのでまあそちらをご覧あれという所でありまする。

『すなわち、生産や輸出は、震災による落ち込みからの回復過程に比べてペースは緩やかになっているが、増加を続けている。』(今回)
『すなわち、生産や輸出は、増加を続けており、概ね震災前の水準に復している。』(前回)

えーっとですな、つまり震災で落ち込んだ分のV字回復はしましたが、V字回復はそこまでとなって、後は横ばいモードになりつつあるという事でございますかそうですか。

『こうしたもとで、設備投資は緩やかに増加しているほか、個人消費についても、全体としては持ち直している。』(今回)
『こうしたもとで、国内民間需要についても、持ち直している。』(前回)

「全体としては」攻撃キタコレという感じですが、前回表現がすっきりしていたのに対して今回は「緩やかに」だの「全体としては」だの色々とヘッジクローズが入っているというのが実にアレでございます。

『この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさがなお窺われるものの、緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、概ねゼロ%となっている。』(今回)

『この間、金融環境をみると、中小企業を中心に一部企業の資金繰りに厳しさが窺われるものの、総じて緩和の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、基準改定に伴い下方修正され、概ねゼロ%となっている。』(前回)

金融環境は「総じて」が抜けて上方修正(というか緩和というか)しているのがほほうという感じで、物価については基準改定の下方修正云々が抜けただけなのでまあそんなに現状判断はカワランチ会長っすかね。


・先行き見通し

見通しのパラグラフを全部まとめて比較してみる訳だが。

『先行きについて、海外経済は、当面減速するものの、基調的には、新興国を中心に底堅く推移すると考えられる。そうしたもとで輸出が緩やかな増加基調をたどることや、資本ストックの復元に向けた国内需要が顕現化してくることなどから、わが国経済は、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(今回)

『先行きのわが国経済は、堅調な海外需要を背景とする輸出の増加や、資本ストックの復元に向けた国内需要の顕現化などから、2011 年度後半以降、緩やかな回復経路に復していくと考えられる。消費者物価の前年比は、当面、ゼロ%近傍で推移するとみられる。』(前回)

ということで(物価の方は変化無いのでどうでも良いが)経済先行き見通しの部分ですけれども、文章がやたら長くなってああでもないこうでもないというのが延々と並ぶでござるの巻となっております。更に中身を見ると従来見通していた回復のドライブとしての海外経済に関して「堅調な海外需要」としていたものが「当面減速するものの」、「基調的には」、「新興国を中心に」、「底堅く推移」とこれまた前回部分の直球ストレートな表現から比較した場合に見事すぎる程の留保文言入れまくりという実に素敵な変化になっておりまして、もう残念無念としか申し上げようがございません。

だいたいこういう留保条件やヘッジクローズが沢山入るというのは先行きの確信度が下がりましたよねとゆーのはご案内の通りでございまして、まあだいぶ降参気味になっているなあというのは更に続くのだ。


・リスク要因もこれまた

『景気のリスク要因をみると、欧州のソブリン問題の帰趨や、バランスシート調整が米国経済に与える影響について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、引き続き、丹念に点検していく必要がある。』(今回)

『景気のリスク要因をみると、バランスシート調整が米国経済に与える影響や、欧州のソブリン問題の帰趨について、引き続き注意が必要である。新興国・資源国では、物価安定と成長を両立することができるかどうか、なお不透明感が高い。こうした海外情勢を巡る不確実性や、それらに端を発する為替・金融資本市場の変動が、わが国経済に与える影響については、丹念に点検していく必要がある。』(前回)

ここで芸が細かいとしか申し上げようが無いのは、欧州と米国のリスクについての語順変化でございまして、今回は欧州ソブリン問題が目先は米国問題よりもリスク高いですよねと言いたいのは把握した。

『物価面では、国際商品市況の先行きについては、上下双方向に不確実性が大きい。また、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(今回)

『物価面では、国際商品市況の上昇により、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある。』(前回)

今回はついに国際商品市況による物価のリスクを従来の「上振れ」から「上下双方向」に変更になったのがチャーミング。つーかまあ従来の国際商品市況の上振れ云々というのが、欧米英が「一時的な要因の剥落後は物価は低下気味」って予想する中で日本だけ何でデカップリングするねんという所でしたので、まあようやくこの辺りを下げてきましたねちょっと遅かったんじゃネーノという所でしょうか。


・被災地オペの延長

これは今回実施された件ですが、良く考えたらこれも追加緩和と無理矢理言えば言えない事もない訳ではないという感じですが(^^)。

『被災地金融機関を支援するための資金供給オペレーションについては、その受付期限を6か月延長し、2012 年4月末とすることとした。被災地企業等にかかる担保適格要件の緩和措置についても、その適用期限を6か月延長し、2013 年4月末とすることとした。』(今回)

ほうほうそうですか。


・最後に「適切に対応する」というのを入れていますな

で、何か知らんが決意表明みたいに見えたり見えなかったりする最終パラグラフですが。

『日本銀行は、現在、8月に一段と強化した金融緩和措置のもとで、金融資産の買入れ等を着実に進めている。また、日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく方針である。日本銀行としては、こうした包括的な金融緩和政策を通じた強力な金融緩和の推進、さらには、金融市場の安定確保や成長基盤強化の支援を通じて、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰するよう、中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく。』(今回)

という部分は大体前回と同じような表現(微妙に違いますけれども基本的には同じ話なのでめんどいから前回分の引用は割愛します)なのですけれども、今回はこの表現が入ったのがアレ。

『今後とも、先行きの経済・物価動向を注意深く点検したうえで、適切に対応していく方針である。』(今回)

・・・・・・まあリップサービスなのかも知れませんけれども、こういうのを一々入れているのは欧米が追加緩和おかわりモードになっている中で日銀が素っ気なくゼロ回答をしている場合でも無かろう、という所だと思われますが、まーいずれにせよ追加で何かやらないと行けないかなという話になった場合(たぶんそれは11月のFOMC次第だと勝手に愚考しますが)への下準備でござるの巻というところかと。


てな感じでして、総合すると「だいぶ降参モードになってきましたね」という所ではないでしょうかね、うんうん。

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2011/10/07

・これは面白そう

http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2011/wp11j07.htm/
『金融マクロ計量モデル』の概要

論文はこちら
http://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2011/data/wp11j07.pdf

『要旨

本稿は、日本銀行で開発を進めている『金融マクロ計量モデル』(Financial Macro-econometric Model、以下FMM)の解説である。FMMは、金融セクターとマクロ経済セクターの2部門からなる中規模・構造モデルである。FMMによって、金融・実体経済間のフィードバックが生み出す様々な現象を定量的に分析することが可能となった。FMMの最大の特徴は金融セクターにある。銀行のリスク管理行動を現実に即してモデル化しており、その構造は世界でも数少ないものである。こうしたFMMは、特にマクロ・ストレス・テストに用いるものであり、金融システムの頑健性やそのマクロ経済への影響を様々な角度から整合的に検証することができる。』

で、その説明はこちらにありますが、当然のごとく最初の数ページと図表を斜め読みしただけな上に、あたくしの頭の構造はハクション大魔王なみに数字に弱いと来たもんですから(・・・・・というネタを振ってもポカーンという人の方が多いのか。ちなみにあたくしハンバーグは大好物でごじゃりますよ^^)まあ読んでもポカーンなのですが、呻吟しながら読むと(連関図とかもあるから)計算式はともかくとしてどういう理屈で作っているのかはもしかしたら何となく頭に入るかもしれませんなと密かに期待。

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2011/10/04

○んでまあ短観

短観である。
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1109.pdf

・前回の先行き予測DIの達成状況

        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業   ▲9→+2       +2→+4
製造業中堅企業 ▲12→▲7       ▲3→▲2
製造業中小企業 ▲21→▲15     ▲11→▲12

非製造業大企業   ▲5→▲2      +1→+2
非製造業中堅企業 ▲17→▲16     ▲8→▲10
非製造業中小企業 ▲26→▲29    ▲19→▲22

前回は思ったほど落ちなかったかなあとか思ってみたこの短観の数字ですけれども、今回は何と言いましても「6月時点での予測数値よりもほぼ改善(製造業大企業だけは予測数値ドンピシャ)」というのが特徴ということで、まあ簡単に言ってしまえば「震災の直接的な影響が剥落した」という話なのでしょう。先行きの数字が弱めですねというケチのつけようは勿論あるのですが、大体の場合景気回復期って「先行き予測DIが控えめに出る」→「実際にはもう少し改善したDIが出る」というループが続き、そのうちピークになると「先行きDI予測が未達になってくる」という風になるのが短観DIの仕様ですので、まあ6月は震災の落ち分があるので微妙ではあるのですが、ここのDI推移だけ見ていると普通に回復局面ですよね、という話になるでしょう。よーするに12月短観でこのトレンドが継続するのかどうかで、継続すれば実は回復はホンモノという事なんでしょ。


・雇用判断DI

        (6月時点)      (9月時点)
        現状→9月予測     現状→12月予測
製造業大企業   +8→+5       +5→+4
製造業中堅企業 +10→+6       +6→+3
製造業中小企業 +14→+8       +8→+6

非製造業大企業   +4→+2      +3→+1
非製造業中堅企業  +4→+2      +0→▲2
非製造業中小企業  +6→+3      +1→+0

引き続き非製造業のDIの方が強めで、よくよく見たら先行きDIでマイナス(というのは人手不足ということ)まであるのですか、なんかホンマカイナという感じですが。


・想定為替レート

普段は華麗にスルーしますが、今回は反応。

(参考)事業計画の前提となっている想定為替レート(大企業・製造業)

(円/ドル)     2010年度全体(上期)(下期) 2011年度全体(上期)(下期)

2011年6月調査   86.03     89.00 83.05     82.59    82.59 82.59
2011年9月調査    −       −   −      81.15    81.26 81.06

・・・・・・・・全然レートが変わっていませんなあorz


・相変わらずの金融商品取引業クオリティ

金融機関の業況判断等って所にあるのですが、本当は以前のようにカテゴリーが「証券会社」になっていた時(「投資業等」が貸金業と一緒に集計されていた)の方が面白かったのですが。

             (6月時点)      (9月時点)
            現状→9月予測     現状→12月予測
金融商品取引業  ▲40→▲17       ▲44→▲30

しかし毎度思うのですが、確かにまあ市況産業だしビジネスサイクルが異常に短い仕事だから仕方ないというのは判るのですけれども、短観の先行き予測DIが実際のDIと全然当てはまらないにもほどがあるというか、この予測DIの外れっぷりは個別の各業種には見られない凄まじさで、まあおまいら先の事を考えても「下手な考え休むに似たり」って奴だということである(自爆)。


しかしまあ何ですな、これ書く為に前回の短観の時に書いた駄文を読み直したのですけれども、前回の短観の時も「しかし相場が反応しませんなあ」とか書いていたのにはワロタとしか申し上げようがありません。まあ「先生!債券市場ちゃんが息をしていないの!!」と言ってしまうと身も蓋もないので前向きな解釈を致しますと、日本の債券市場は現在の世界経済についての要点をきちんと把握しており、今の問題は欧米のバランスシート問題なのだから、足元での循環的な上げ下げは所詮些事に過ぎず、回復しててもfalse dawnじゃネーノと達観して反応していません、ということになるのでしょう・・・・というのは買い被りで、おそらくは単に売るほどモノが無くて買うのは今日の10年入札と思っているのでウゴカンチ会長なだけだと思いますが(^^)。


○生活意識アンケート:なにこの「美しい」物価見通し

http://www.boj.or.jp/research/o_survey/ishiki1110.pdf

まあここを読んでいて一番注目しているのは物価見通しの所です。でまあ物価に関しては東北の集計分がどうのこうのというのは関係ないと思うのですけれども、一応その辺も今回は発表数値にあるので、いつもと違って3本立てになっております。前回6月調査数値が()で、今回の数値のうち東北地方を除外したのが<>です(6月は東北地方がアンケート対象外)。


Q13. それでは、1年前に比べ現在の「物価」は何%程度変わったと思いますか。

―― 数値をご記入のうえ、上・下いずれかに○をお願いします。なお、「0%」と思われる方は、記入欄に「0」とご記入下さい。

平均値(注1):+3.6 < +3.6 >( +3.6 )
中央値(注2):+1.5 < +1.5 >( +2.0 )

(注1)極端な値を排除するために上下各々0.5%のサンプルを除いて計算した平均値。
 ―― 全サンプルの単純平均値は +3.7 <+3.7> (前回調査<2011/6月実施>:+3.8)。
(注2)回答を順番に並べた際に中央に位置する値。


Q15. それでは、1年後の「物価」は現在と比べ何%程度変わると思いますか。

平均値(注1):+4.4 < +4.4 >( +4.8 )
中央値(注2):+3.0 < +3.0 >( +3.0 )

 ―― 全サンプルの単純平均値は +4.6 <+4.7> (前回調査<2011/6月実施>:+5.2)。


Q17. それでは、5年後の「物価」は現在と比べ毎年、平均何%程度変わると思いますか。

平均値(注1):+4.7 < +4.8 >( +4.5 )
中央値(注2):+3.0 < +3.0 >( +3.0 )

 ―― 全サンプルの単純平均値は +4.9 <+4.9> (前回調査<2011/6月実施>:+4.9)。

・・・・・・・ほほう、1年前と比較した物価に関しては下がったと見ており、先行きの予想も平均値ベースでは若干下がっている(中央値ベースは同じ)とですか。で、長期的な物価見通しは上昇していると。

ということで、何か知らんけど絵に描いたように「足元では物価上昇の一時的な要因が剥落したので物価に対する短期的な見方は下がりましたが、長期的な物価見通しに関しては電力や消費税増税などの今後の物価上昇要因を意識して上昇しています」とこじつけられそうな結果になっているのがチャーミング。

まあ目先的に金融政策へのインプリケーションとなると、足元の認識が下がっていても中長期的な物価期待に関しては変わらないどころか若干上昇なので、この辺りからは特段追加緩和を急がないといけませんがなという話にはならない、という実にこう有りがちな結果になっているのでありました。

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